東京オリンピック
開催 建前の議論 責任のなすりあい
残り時間僅か 三ヶ月切る
漂流
どこに流れ着くのか
いつの間にか 開催ありき
安全安心も 追いかける
無事なオリンピック終了 お祈りします
オリンピック関係者・・・ 2016・2017・2019・2020・・・ ■2021 / 2/19・2/20・3/2・3/25 聖火リレー・スタート・・・3/19・4/13・4/24・・・ 4/27・4/28・4/29・4/30・・・ 5/1・5/2・5/3・5/4・5/5・5/6・5/7・5/8・5/9・5/10・・・ 5/11・5/12・5/13・5/14・5/15・5/16・5/17・5/18・5/19・5/20・・・ 5/21・5/22・5/23・5/24・5/25・5/26・5/27・5/28・5/29・5/30・5/31・・・ 6/1・6/2・6/3・6/4・6/5・6/6・6/7・6/8・6/9・6/10・・・ 6/11・6/12・6/13・6/14・6/15・6/16・6/17・6/18・6/19・6/20・・・ 6/21・6/22・6/23・6/24・6/25・6/26・6/27・6/28・6/29・6/30・・・ 7/1・7/2・7/3・7/4・7/5・7/6・7/7・7/8 無観客開催決定・7/9・7/10・・・ 7/11・7/12・7/13・7/14・7/15・7/16・7/17・7/18・7/19・7/20・・・ 7/21・7/22・7/23 オリンピック・・・ |
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コロナ禍 感染拡大中 収束が見られない |
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東京オリンピック 開催 延期 中止 国民の7割 開催反対 |
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本音の議論 見られない |
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被害者 出場選手 末端の担当者 色々なサポーター 先が見通せない 不安 |
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政治家・担当役員 担当責任 区分 不明 |
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国際オリンピック委員会(IOC)・トーマス・バッハ会長 国際パラリンピック委員会(IPC)・アンドリュー・パーソンズ会長 国務大臣・ 丸川珠代五輪相 東京五輪・パラリンピック組織委員会・橋本聖子会長 東京都・小池百合子知事 ● 国務大臣(東京オリンピック競技大会・パラリンピック競技大会担当)は、日本の内閣に期間限定で置かれる国務大臣。現在の正式名称は、国務大臣(2020年度に開催される東京オリンピック競技大会及びパラリンピック競技大会の円滑な準備及び運営に関する施策を総合的かつ集中的に推進するため企画立案及び行政各部の所管する事務の調整担当)。通称・略称は、東京オリンピック・パラリンピック担当大臣、オリ・パラ担当大臣、五輪・パラ担当相、五輪担当大臣、五輪担当相、五輪大臣、五輪相など。 |
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●小池都知事と丸川担当相 東京五輪は大丈夫? 2016/8
東京都知事選で小池百合子知事を「スタンドプレーばかりうまい人」と酷評していた丸川珠代氏が3日、五輪相に就任した。2020年東京五輪・パラリンピックに向け、国と都の調整役を担うポスト。都職員からは小池知事との関係を不安視する声が出ている。 東京大会の開催費用は招致段階の想定から大幅に膨らむ見通しだ。国と大会組織委員会、都の3者で負担の見直し作業を進めているが、小池知事は選挙中から、都の負担を「できるだけ少なくしたい」と訴えていた。 知事は2日の就任記者会見で、大会費用を検証する調査チームを設け、「予算の軽重、準備態勢、工程表の妥当性を調査する」と宣言。早々に五輪の課題に取り組む姿勢を示した。外部の専門家も交え、9月下旬開会予定の都議会までに中間報告をまとめる考えだ。 一方、丸川氏は都知事選で自民党が擁立した増田寛也氏の応援演説に何度も登壇。「内輪の話に終始する人はいらない」と党都連批判を繰り返す小池知事をやり玉に挙げ、「都議会と事を構えようとする人が知事になれば、時間を無駄にする」と指弾していた。 内閣改造まで五輪相を務めた遠藤利明氏は、組織委の森喜朗会長や舛添要一前知事との間で、調整役としての手腕を評価されていた。小池知事は森会長との関係も良好ではないとの指摘があり、森会長は今後の協力態勢は「小池さん次第」とけん制している。 ある都幹部は「前に進めないといけないことがたくさんあるのに、このメンバーでは一騒動ありそうだ」と不安を隠さず、「政治家なので大人の対応をしてもらいたい」と話す。 小池知事は3日、丸川氏の五輪相起用について報道陣に問われ、「国民、都民にとっていい大会になるよう連携したい」と強調。選挙戦での批判については「(丸川氏が言った)言葉はよく存じておりませんが、それぞれ立場もあるんでしょう」と応じた。 |
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●「スカートの担当相いるのだから」 小池百合子知事、ゴルフ会場問題 2017/2
東京都の小池百合子知事は1日、2020年東京五輪のゴルフ会場となる霞ケ関CC(埼玉県川越市)が女性を正会員に認めていないことを批判した上で、「せっかくスカートをはいておられる五輪担当大臣もいるのだから、もっと明確に言うべきではないか」と述べ、丸川珠代五輪相に対応を求めた。 都庁内で開かれた五輪・パラリンピック関連イベントでのあいさつで語った。 小池氏は霞ケ関CCの対応を「(性別を含めたあらゆる差別を禁じた)五輪憲章や、東京大会でもうたわれているさまざまな課題をクリアしているのか、大いに疑問を持っている」と指摘した。 この問題では、国際オリンピック委員会が五輪憲章に抵触するとして大会組織委員会などに改善を求めており、丸川五輪相は1月31日の記者会見で「五輪憲章にかなう形で結論が出ることを望んでいる」などと述べていた。 |
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●丸川元大臣、都知事選への出馬を否定 2019/10
自民党の丸川珠代元五輪担当相は、来年の東京都知事選について、「参院選に当選したばかりなので、しっかり国政で、東京のために働きたい」と述べ、出馬を否定した。 丸川元大臣は18日夜、自民党の都議や区議らとの会合に出席。会合で高島・東京都連幹事長が、「私どもと同じ目線で都政をしっかり守れる知事をつくらなければならない」と挨拶するなど、自民党都連では、再選を目指す小池知事への有力な対抗馬を探していて、一部からは丸川元大臣を推す声が上がっている。 |
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2020 東京オリンピック 延期 | |
●東京2020の延期が正式決定 2020/3/25
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委員会)は3月24日、7〜9月に予定していた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020)の延期を発表した。同日、安倍晋三内閣総理大臣、森喜朗・組織委員会会長、トーマス・バッハ(Thomas Bach)国際オリンピック委員会(IOC)会長の3者による緊急電話会談で決定し、具体的な開催時期については今後4週間以内に調整するという。オリンピックの124年の歴史で、世界大戦による影響から中止は3度あったが(1916、40、44年)、延期は今回が初めて。これに伴い、26日から予定されていた聖火リレーは中止となった。日本では夏までに新型コロナウイルスが終息する可能性もゼロではないが、予選会を開催できない競技や、選手のトレーニング環境の確保が難しいという先行きが不透明な状況が大きく、正式発表前にカナダやオーストラリアは選手団を派遣しない方針を示していた。 授与される金・銀・銅のメダルや聖火リレー、フィールドキャスト(大会スタッフ)およびシティキャスト(都市ボランティアスタッフ)のユニホームには“東京2020”の文字が入っているが、緊急電話会談に同席した小池百合子・東京都知事は、開催が21年になっても大会名称は東京2020から変更しないことを明言している。 サッカー男子は、国際サッカー連盟(FIFA)の規定で出場資格が原則23歳以下の“1997年1月1日以降に生まれた選手”となっている。延期が決まったことで資格が“1998年1月1日以降に生まれた選手”に変更された場合、日本代表のキャプテンを務める中山雄太選手やベルギーで活躍する三好康児選手などが出場不可となる。同様に体操やボクシングなども年齢制限を設けており、出場資格への影響が懸念される。 ●オリンピック選手村に新型コロナ専門の保健所開設か 2020/10/20 新型コロナウイルスの流行により『東京2020オリンピック・パラリンピック』が2021年に延期され、この記念碑的なスポーツイベントに向けて、東京で無事に開催できるかどうかが注目されている。組織委員会はまた、選手や観客の安全を確保するだけでなく、コストを削減するために大会の縮小についても話し合われてきた。 共同通信によると、このほど主催者は、選手やコーチ専用の検体回収や感染経路の追跡調査などを行う専用の保健所機能の設置を検討しているという。 選手村にある通常の診療所とは異なり、独立した新型コロナの検査施設を持つとの話もある。保健センターの計画は、政府と東京都、オリンピック組織委員会の間で今月末に詳細が議論されるようだ。 晴海に位置する選手村には、大会のために東京にやってくる約1万人のスポーツ選手が集まることになっている。主催者側は、診療所に加え、共有施設での感染拡大を防ぐための予防策を実施することも議論する。 ●東京オリパラ選手村に保健所開設へ 医療者不足に懸念も 2020/10/28 来夏に延期となった東京五輪・パラリンピックの選手らの新型コロナウイルス対策のため、東京・晴海の選手村内に発熱外来や保健所の分室が設けられる見通しとなった。大会組織委員会に「感染症対策センター(仮称)」を設け、国内外の選手の健康状態を集約して、クラスター(感染者集団)の発生を防ぐ狙いだ。 政府や東京都、組織委が27日の調整会議で検討案を確認した。選手村には大会期間中、選手やコーチら約3万人が出入りするため、医療態勢の強化は必要不可欠とされていた。 司令塔になる「感染症対策センター」は、組織委内に置く。各国・地域の選手に協力してもらい、センターで体温などの健康状態や行動を把握。陽性者との接触があったかが分かるアプリ「COCOA(ココア)」の入ったスマホも携帯してもらう。こうした情報をセンターに集約することで、選手らに陽性の疑いが出た場合、大会関係者の間で速やかに共有できるようにする。 選手村には当初から設置予定だった総合診療所に「発熱外来」を設け、熱が上がったり、せきが出たりする選手が感染していないか医師が診察するほか、民間検査機関による検査を行う方針だ。 また、感染者が出た場合、搬送先を調整したり、濃厚接触者を特定したりするため、保健所の「分室」を村内か近隣に設ける方向で調整する。選手村を管轄する中央区保健所に負担を集中させないためだ。軽症や無症状者については、ホテルなどでの宿泊療養を検討している。ただ、課題も ・・・ |
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2021 |
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●丸川五輪相へ「一緒に頑張りましょう」 小池知事が激励 2/19
橋本聖子氏が五輪相を退いて東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長になったことに伴い、後任の五輪相に就いた丸川珠代参院議員(東京選挙区)は19日午前、「本当に身の引き締まる思いだ」と記者団に語った。 丸川五輪相によると、18日夜に小池百合子都知事と電話し、「一緒に頑張りましょう」と激励された。丸川氏は「しっかりお支えする」と返したという。 丸川氏の五輪相就任は2度目。橋本氏からの引き継ぎ式は19日午後を予定しているが、午前から衆院予算委員会に臨んだ。橋本氏について「アスリートの立場に立ち、1年延期で非常に苦しい思いをしながら準備をされている皆さまの立場に立ち、前に進んでいくのではないか。全力でお支えしたい」などと答弁した。 |
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●橋本会長・小池知事・丸川五輪相、ニュー“五輪トップ3人”が始動 2/20 東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長は19日の初執務で、東京都の小池百合子知事との初会談や、後任の丸川珠代五輪相への引き継ぎ式に臨み、今後の大会準備での国や都との連携を確認した。女性のトップ3人を中心とした立て直しの動きが本格化した。 橋本氏は組織委職員への就任あいさつで、「国民に信頼される東京大会にすることが私の最大の使命だ。オリンピアンとして魂を込めて会長職を全うし、安心安全の大会にする」と決意を表明した。 小池氏との会談では、五輪開会式まで半年を切っていることを踏まえて、小池氏が「スケートも自転車も最後の1周が厳しい」と、橋本氏が現役時代に打ち込んだ競技になぞらえ現状を表現すると、橋本氏は「知事にもご指導いただきたい」と応じた。 丸川氏への引き継ぎ式では、橋本氏が新型コロナ対策の推進などの重点課題を伝達した。丸川氏は「国民の理解を得て初めて大会の開催は成功と言える」と職員に呼び掛けた。 |
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●東京五輪を"ボイコット"する日本国民がこうむる「どえらい逸失利益」 3/2 終息しないコロナの感染状況を受け「東京五輪開催」反対派が多くなっているが、本当にそれでいいのだろうか。スポーツライターの酒井政人さんは「開催決定・中止を決める権限はIOCにあり日本(東京)にはない。夏季五輪の自国開催は一生に一度のビッグイベントで、その体験を逸するのは惜しい。国民も大会関係者も最大限の感染対策で開催に向け準備すべきではないか」と訴える――。 ●開催国日本(東京都)に東京五輪を「中止」する権限はない 東京五輪の開催まで5カ月を切ったが、国民の心は東京五輪から離れているように見える。 読売新聞社が行った世論調査(2021年2月5〜7日調査)では、「観客を入れて開催する」8%、「観客を入れずに開催する」28%と、開催に前向きな考えを持つ人が計36%いたが、「再延期する」33%、「中止する」28%と、6割を超える人が予定通りの開催に否定的な回答をしている。 緊急事態宣言の延長に加えて、2月3日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視ともとれる発言を巡るドタバタが国民の“いらだち”を増幅させたのは確かだ。その怒りの矛先が東京五輪にもぶつけられているような形だ。 「新型コロナが収束していないのに、開催は時期尚早」 「無観客開催、海外選手の隔離・追跡、医療体制の拡充といった対策をしたとしても、安心できない」 そうした気持ちは理解できる。だが、ここは冷静な判断が重要だと私は考える。 ルール上、開催国とはいえ日本(東京都)に東京五輪を「中止」する権限はない。決定権があるのはIOC(国際オリンピック委員会)で、東京都らは「考慮の要求」しかできない。 IOC、JOC、東京都の3者で締結した「開催都市契約」には、IOCは「本大会参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠がある場合」には中止する権利を有すると記されている。IOCが中止を決めた場合、日本側は補償や、損害賠償を請求する権利を放棄することも明記されている。 ●東京都が開催拒否した場合はスポンサー企業への返金と違約金が発生 東京五輪・パラリンピックの大会経費は、大会が1年延期となったことで新たに2940億円が必要となり、総額1兆6440億円まで膨れ上がった。東京五輪が中止となると、日本側は経済的に大きな損失を被ることになる。それは、いずれ国民の生活にも大なり小なり影響を与える。また東京都が開催を拒否した場合は、さらにスポンサー企業(68社、総額約3500億円)への返金と違約金が発生する可能性がある。 2月19日に行われた先進7カ国(G7)首脳のテレビ電話会議では、新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の結束の証しとして今夏に安全・安心な形で東京五輪・パラリンピックを開催する日本の決意を支持するとの首脳声明をまとめている。 状況を俯瞰すると、東京五輪は開催される方向で進んでおり、東京五輪の中止を求めることは事実上できない。そうだとすれば、ホスト国であるわれわれ日本人は今、何をしたらいいのか。それは開催のための“準備”ではないか。 ●コロナと東京五輪の「両立」する手立てはないのか 「オリンピックのために、毎日毎日、練習してきて、これで出れなかったら何のためにやってきたのか……」 かつて、こんな言葉を発したアスリートがいる。モスクワ五輪(1980年)の参加をめぐり、現在JOCの会長を務める山下泰裕ら23競技の選手・コーチ約100人が集まり、涙の訴えを起こした。しかし、同年5月24日、JOCはモスクワ五輪への「不参加」を決定する。いまから41年前の“悲劇”である。 ワクチンの接種が始まったとはいえ、まだまだ新型コロナウイルスに対しての恐怖心は強い。この状況下で、大きな声で「東京五輪を開催したい」とは言えない空気になっているが、東京五輪を目指すアスリートたちの“心の声”はどうだろうか。 東京五輪の開催が決まったのは2013年9月。アスリートたちは7年半前から東京五輪の舞台を目指して準備をしてきた。スポーツ選手のピークはさほど長くない。4年に一度のオリンピック。今回が最後のチャンスとなるアスリートもいる。自分の素直な気持ちを発信できず、開催されることを祈りながら、黙々とトレーニングに励んでいるアスリートたちも多いに違いない。 緊急事態宣言下でも必要に迫られて通勤電車に揺られて会社に向かう人は少なくない。それはコロナとの共存を図りながら、勤務先の企業や経済をまわしていくためだろう。東京五輪でも「両立」するための手立てが取れないだろうか。 ●徹底した感染防止対策で日程を終えた全豪オープンに学べ 現状、大会の運営方法で決まっていないことは多い。観客は入れるのは入れないのか。世界中から集まる選手や関係者をどのように受け入れるのか(一定条件を満たせば入国後2週間の待機免除をするのか)などを早めに決定することが重要だ。 参考になるのは2月21日まで豪州メルボルンで行われたテニスの4大大会、全豪オープンだ。新型コロナウイルス対策が徹底されたなかで全日程を無事に終えた。東京五輪とは大会の規模が異なるが、開催に向けてのヒントになることがたくさんあり、大会関係者は大いに学ぶべきだろう(※)。 ( ※編集部註:チャーター機で豪州入りした参加選手や関係者ら1016人に対して約2週間の隔離措置を義務付け/隔離期間中はコートでの練習は許されたが、時刻やパートナーを指定され、上限2時間という制限付き/紙のチケットを全廃し、観客はスマホに表示した電子チケットのQRコードをゲートでかざして入場。売店での支払いはカード限定にするなど、「接触レス」を徹底/開催地ビクトリア州のロックダウン(都市封鎖)発令に伴い、大会期間の途中の5日間を無観客で開催、など。) 筆者は北京五輪の北京国家体育館(通称「鳥の巣」)でウサイン・ボルト(ジャマイカ)が男子100mで世界記録を樹立したシーンを目撃している。9万人の大観衆が熱狂して、スタンドにいたジャマイカ人は興奮して踊り出した。これがオリンピックなのかと衝撃を受けた。 東京五輪はいつものようなオリンピックの光景が見られないかもしれない。それでも、スポーツが持つ圧倒的なパワーを多くの日本人に感じてもらえるはずだ。1964年の東京五輪を経験していない世代にとっては、夏季五輪が自国で開催されるのは一生に一度ともいうべきビッグイベントだ。参加するアスリートだけでなく、多くの国民にとって“特別な夏”になるだろう。 ●できない理由を並べるより、やれる可能性を探るべきではないか いま日本国民にできることは何か。 東京五輪の成功に向けて、一致団結することではないだろうか。これは精神論ではない。まず、国内の新規感染者をさらに減らすために、気を緩めずにマスク着用や3密・会食の回避を徹底すること。テレワークを増やすこと。ひとりひとりが最善の感染対策を講じたうえで、ルールを決めて可能な限りの来日者を迎え入れる。それこそがコロナ禍における日本が誇る「おもてなし」の気持ちともなるのではないか。 主役となるアスリートたちが気持ちよく競技に向かえる雰囲気をつくり、温かい声援を送る。できない理由を並べるより、やれる可能性を探るほうが人生は絶対に楽しくなる。コロナ禍で蔓延した“沈んだ空気”をスポーツの力で少しでも明るいものにするチャンスだと私は信じている。 |
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●3/25 聖火リレー・スタート ●2021/3/25 (木) 福島県 スタート Jヴィレッジ 全天候型練習場 楢葉町・広野町 / Jヴィレッジ 全天候型練習場 楢葉町 / 楢葉町役場 広野町 / 福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校 川内村 / 双葉地方広域市町村圏組合消防本部 いわき市 / いわき陸上競技場 富岡町 / 富岡駅前 葛尾村 / みどりの里ふれあい館 双葉町 / 双葉駅 大熊町 / 常磐自動車道高架下付近 浪江町 / 浪江町立浪江小学校前 南相馬市 / 南相馬市役所 ゴール 雲雀ヶ原(ひばりがはら)祭場地 ●「復興五輪」というけれど…福島で聖火リレースタート、被災者の思い複雑 東京五輪の聖火リレーが25日、始まった。初日のコースは、東日本大震災と原発事故で被災した福島県沿岸部。復興が遅れ、まだ誰も住めない地域がある。「復興五輪」の理念に複雑な思いを抱く被災者がいる中、ランナーは未来への願いを込めてトーチをつないだ。一方で、新型コロナウイルス禍での開催を不安視する声も根強い。 「テレビで見ていたがれきもなくなっていた。何もない所もあったけど、福島が復興しているって伝えたかった」。富岡町の第1走者、中学1年の嶋田晃幸さん(12)は、走り終えて笑顔だった。 東京電力福島第一原発がある大熊町で生まれ育ったが、家族で宮城県に避難して10年になる。「トーチはずっしりしていた。日本の1億人の聖火をつなぐ1人になれたことで、より重く感じた」 大熊町のリレーのコースは、避難指示が解除された西部の大川原地区。沿道では約300人が聖火を見守っていた。武内一司さん(67)もその1人。来月完成する近くの商業施設で、喫茶店を10年ぶりに再開する。 町で1人で暮らし、家族は南相馬市にいる。「前の東京五輪の時はテレビで聖火見て興奮したけど、今回は実感わかねえ。若い人はいねえし、元の町には戻らねえ。復興、簡単じゃねえよな」 同じく原発立地地の双葉町は、今も居住者がゼロのままだ。周辺で建物の解体が進むJR双葉駅前に、避難先から住民ら約500人が集まっていた。太鼓グループの演奏を機に第1走者が走りだすと、「がんばれー」と声援が飛んだ。 自宅が原発から5キロの中里真江さん(69)は、夫といわき市に住む。家は放射線量が高く、避難解除のめどはたたない。 「孫娘が第1走者で、コロナ禍で走っていいのか悩んでいた。家は床が沈んで、イノシシが入りめちゃくちゃ。復興は考えられない。複雑ですね」。孫娘の走る姿を見ると、「うれしい。涙ぽろぽろです」と目を潤ませた。 帰還困難区域が残る浪江町では、町職員渡辺聖子さん(45)が走った。10年前、津波で多くの友人や知人を失った。自宅は流されたが、両親は何とか助かった。 「帰りたくても町に帰れない状況を、世界に知ってもらう良い機会。避難先から来てくれた懐かしい顔が、沿道にたくさんあった」。にこやかな渡辺さんが続けた言葉には、力がこもっていた。 「人もいない状態で何が復興だと思うけど、小さな光を見つけていきたい」 |
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●不平等なIOCと東京都の「開催都市契約」 3/19 国際オリンピック委員会(IOC)と東京都らが締結した契約書について、橋本聖子大臣が「大会開催の延期が可能と読みとれる」と発言。その契約内容は東京都らにあまりに不利な条件となっていました。 ●一般公開された国際オリンピック委員会(IOC)との契約書をチェック オリンピックというイベントが、民間NPOである「国際オリンピック委員会(IOC)」によって仕切られていること、そしてそのIOCが定めた厳格なルールに従い、開催地に立候補した都市に運営が委託されるビジネスモデルとなっていることは、メディアでもよく取り上げられる話題です。 実は、この IOCと開催都市との間のルールを定めた「開催都市契約」が、東京都オリンピック・パラリンピック準備局のWebサイト上で公開されていることをご存知でしょうか? この契約書は、85条の秘密保持義務を別途締結された付属合意書によって一部免除することにより、合法的に開示されています。 ●開催都市契約によって東京都らが一方的に背負う義務と責任 開催都市契約は、付属文書を除く本体だけで全87条もある、かなり大部な契約です。 しかし、その中身を根気よく見ていくと、「ここまで一方的な契約を、都民にさしたる説明もなく結んで問題ないのだろうか?」と驚かずにいられないほど、IOCにとって一方的に有利な契約条項の見本市・オンパレード となっています。 その中でも特に東京都サイドに不利であることがわかる条項群を7つ、翻訳版からピックアップしてみました。 ●(1)東京都サイドがすべての運営責任を負担 東京都および日本オリンピック委員会(NOC)は、第1条により、スタジアム等を建設し大会を行うのに必要な資金を集め、人を動員し、イベントを運営する責任を一身に負っています。これに対し、第13条に基づきIOCが提供するのが、エンブレムやマスコット等の利用権およびチケット・放映権等の収入分配(レベニューシェア)権です。この相互関係が開催都市契約のコア部分となります。しかしIOCの仕事はといえば、競技によって発生する無形の財産権を開催都市にライセンスし、金の流れを仕切るだけに過ぎません。 ●(2)「お・も・て・な・し」も契約上の義務に 通常のビジネスの契約であれば、契約書に書かれたことが合意のすべてであり、仮にどこかで口頭で合意した事実があっても排除すると明記されるものです。契約の世界ではこれを口頭証拠排除原則(Parol Evidence Rule)と呼んだりします。これに対し本契約第7条では、立候補過程で東京都側がIOCに宣言した内容も、すべて契約の義務となると定められています。たとえば、2013年のIOC総会で東京都がプレゼンテーションした「お・も・て・な・し」を提供するのも、契約上の義務の一つということになります。 ●(3)IOCに発生する損害迷惑の一切を補償・防御 さらに第9条では、大会に関しどんなトラブルが起きようとも、東京都らは、ライセンサーであるIOCおよびその関連会社に発生する損害を補償し、免責し、防御する義務を負っています。この条項をみただけでも、異常なほどの一方的契約条件であることがおわかりいただけるのではないでしょうか。 ●(4)選手や関係者の宿泊施設も提供 最低でも選手・関係者ら16,000人が収容できる宿泊施設、いわゆる「選手村」を用意する義務が第29条に定められています。この義務を果たすために建設されたのが、東京都中央区の大規模再開発エリア「HARUMI FLAG」です。大会終了後はリフォームの上、マンションとして売り払われることが決まっています。万が一、大会期日が延期されたら、マンションの引渡し日も遅れるのでしょうか。 ●(5)財産権はすべてIOCに帰属 第41条には、大会に関する財産権もIOCが「永久に独占」できると高らかにうたわれています。まるでドラえもんに出てくるジャイアンのような口ぶりです。 ●(6)IOCが得るライセンスフィーは20%以上、しかも税負担なし 2月時点の試算では少なくとも100億円以上の剰余金が発生すると見込まれているこの大会。第44条の定めにより、IOCは大会で計上される剰余金の20%を、資金調達リスクを負うことなく、運営の労もなく得ることができます。しかし、開催都市東京都には直接の分配はありません。東京都は、一方的に事業運営リスクだけを負っていることになります。さらに第50条では、本来IOCが納めるべき税金相当額までも、東京都らが負担させられる条件が課されています。企業間のライセンス契約でドラフトする例をたまに見かけますが、よほどの事情がない限り相手に拒絶される条件です。 ●(7)IOCからのみ契約解除と大会中止が可能 今回のパンデミックのようなことがあっても、契約を解除し大会を中止する権利はIOCのみが裁量を持つということが、第66条に書かれています。また、2020年中に大会が開催されない場合にも、IOCが解除できる旨が書かれています。 ●橋本聖子五輪相が言う「2020年中は延期可能」は本当か? 民間NPOに過ぎないIOC相手に、なぜ公共団体がここまでへりくだらなければならないのか?と疑問に思うような条項がずらりと並んでいます。一般企業同士であれば、このような契約書を修正なしに受け入れることは考えられないレベルであり、不平等契約の教科書として教材指定 したいぐらいです。 そんな開催都市契約書に関し、今ホットな話題となっているのが、東京オリンピック競技大会担当大臣を務める橋本聖子氏が「大会開催日程の延期も可能と解釈できる」と発言した件についてです。 「東京五輪、政治日程を左右 IOCに開催判断権限 「5月」節目か 東京五輪の契約には開催延期に関する明確な規定はない。「20年中に開催されない場合」はIOCが中止を判断できるとの規定はある。橋本聖子五輪相は3日の参院予算委で「解釈によっては、延期は20年中であれば(可能だ)と取れる」と述べた。 日本経済新聞 2020年3月12日」 新型コロナウイルスが世界的な流行をみせ、WHOがついにパンデミックを宣言。大会の開催を危ぶむ声が出始める中で、この橋本大臣の主張の根拠はどこにあるのか。 記事前段のIOCによる解約権については先ほど見たとおりですが、後段の延期を可能とする解釈について開催都市契約第71条をみてみると、確かに、パンデミックは「締結日に予測できなかった不当な困難」であると主張できそうであり、それによって合理的な変更の考慮を要求できるとあります。 ただし、それを受け入れるかどうかはIOCの裁量に委ねられます。莫大な施設建設費や運営責任を負わされながら、こうした不可抗力ともいえる事態にあっても、東京都らは「考慮の要求」しかできない のです。 こうした一方的な契約内容でも従うのが立候補の条件だったといえばそれまでなのですが、通常のビジネスセンスでは受け入れがたいほどの不平等な契約内容を甘く見積もったそのリスクが、今回の新型コロナウイルスの流行で現実のものとなってしまったといわざるを得ません。 |
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●東京オリパラ延期の舞台裏 4/13 新型コロナウィルスの問題で、2020年オリンピックパラリンピック東京大会(東京オリパラ)の延期が発表されました。この発表までの間、日本の首相、組織委員会の会長や事務総長、一部の理事などが開催、延期などと様々な発言を行い、日本の報道も混乱していましたが、東京オリパラの開催についてはどのようなルールに基づいての意思決定が行われたのでしょうか。そこで、今回は、東京オリパラの延期を題材に、スポーツ法の世界を解説させていただきたいと思います。 スポーツイベントの法律実務を検討する場合、最も重要なのは適用される法律(政治判断を含む)の理解ではありません。確かに法令遵守はもちろんですが、むしろ実際のスポーツイベントで最も重要になるのは、スポーツ業界の業界内ルールです。 スポーツの世界では、スポーツイベントの主催者がそのイベントに関するルールを定めます。スポーツイベントの主催者は、国ではなく民間団体がほとんどで、そのルールの法的性質は法律ではなく、契約上の権利義務に過ぎません。その内容に関しては、契約自由の原則から、主催者と関係者が合意します。したがって、スポーツイベントの法律実務を理解する上では、まず、このような合意、スポーツイベントの業界内ルールを把握することが最も重要になります。それでは、今回の東京オリパラの開催をめぐる業界内ルールはどのようなルールになっているのでしょうか。 オリンピックが開催される場合、主催者である国際オリンピック委員会(IOC)と組織委員会、開催都市は、開催都市契約を締結します。公表されている開催都市契約20201を確認すると、組織委員会や東京都が、IOCが定めるオリンピック憲章2を遵守することを前提とする条項もあります(序文G、H)。したがって、オリンピックにおける業界内ルールとしては、オリンピック憲章や開催都市契約2020が存在します(これ以外にも、様々な契約を行っていることが考えられますが、これらは公表されていません。そこで、本稿では、オリンピック憲章や開催都市契約2020を前提に解説します。)。 オリンピック憲章や開催都市契約2020では、主催者であるIOCにオリンピックに関する決定権が包括的に帰属するよう明確に定められています(オリンピック憲章オリンピズムの根本原則第7項、第1条第4項、第7条第1項第1文第2文、第2項、付属細則1.1、第37条付属細則2、第58条や、開催都市契約2020序文B、第6条第1文ないし第3文、第13条最終文、第26条第4文、第41条第a項第1文など)。そして、特に東京オリパラ大会の中止、延期に関する条項としては、開催都市契約2020第66条第a項第1号、第71条に定められています。これらの条項では、大会参加者の安全が深刻に脅かされる場合のIOCの単独裁量による中止権が定められ、組織委員会は、予測できない困難に応じた合理的な変更を提案できるに過ぎないことが定められています。一方で、これ以外に、東京オリパラ大会の中止、延期に関して、組織委員会や東京都の決定権、関与権、拒否権などを明示する規定はありません。 となると、東京オリパラ大会の中止、延期に関する法的権限については、IOCに決定権があり、組織委員会や東京都には何ら法的権限がありません(日本でも大きな話題となったマラソンの札幌移転についても、組織委員会や東京都には何ら法的権限がありませんでした)。 このようなオリンピックの業界内ルールについては、あまりにもIOCが一方的で、不公平ではないかという意見も見られます。 ただ、オリンピックなどのメガスポーツイベントは、主催者への権限集中、収益集中のため、主催者自体にスポーツイベントに関する様々な権利が集中する形で設計がなされます。このようなスポーツイベントに関する様々な決定権はOrganisers’ Rightsなどと呼ばれます。そして、その内容は、前述のとおり、契約によって関係者との間の合意事項となることによって明確になります。したがって、このようなスポーツイベントの決定権について関係者が関与、あるいは拒否することができるようにするためには、契約締結以前の段階で、主催者と折衝の上、このOrganisers’ Rightsの行使に関する関与権や拒否権を定める必要があります。 ただ、オリンピックのようなメガスポーツイベントの場合、主催するIOCなどの国際競技連盟が極めて大きなバーゲニングパワーを有することから、このような主催者との折衝は難航を極めます。今回、東京都や組織委員会が開催都市契約2020の締結以前にどれくらいIOCと折衝したかは明らかになっていませんが、ほとんど折衝はできなかったものと想定されますので、上記のような業界内ルールになることはやむを得なかったとも思われます。 現在、東京オリパラの延期に向けて、東京都や組織委員会などで追加費用を含めた様々な検討が始まっています。しかしながら、延期された東京オリパラの具体的内容については、最終的にIOC理事会の判断次第です。具体的にいつ実施するのか、新型コロナウイルス問題が継続する場合の東京オリパラの中止、再延期などについては、IOC理事会がどのような判断を行うかを想定しながら、検討していく必要があるでしょう。 ● オリンピックが開催される場合、主催者である国際オリンピック委員会(IOC)と組織委員会、開催都市は、開催都市契約を締結します。 ... 一方で、これ以外に、東京オリパラ大会の中止、延期に関して、組織委員会や東京都の決定権、関与権、拒否権などを明示する規定はありません。 |
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●膳場貴子アナ 丸川珠代五輪担当相に「本当に大臣ですか」 4/24
フリーアナウンサーの膳場貴子(46)が24日、キャスターを務めるTBS系「報道特集」に出演。丸川珠代東京オリンピック・パラリンピック担当大臣(50)に対して「本当に大臣ですか?」と呆れたような態度を見せた。 番組では、金平茂紀キャスターが23日の丸川氏の会見で、「五輪と感染対策のどちらが優先事項か」などと質問した様子を放送した。丸川氏は「感染対策において一番の現場を持っているのは東京都。東京都はまさに五輪の主催者なので、どのような大会を実施すればどのような負荷が医療にかかるのか一番よくご存じ」と回答をはぐらかした。 さらにバッハIOC会長が緊急事態宣言と五輪開催は無関係という主旨の発言をしたことを踏まえ、丸川氏に「バッハ会長と同じ認識なのか」と問いかけても「IOCと東京都が話をした上でそれを言ったかどうかは分からない」と回答を避けた。 このやり取りを聞いた膳場アナは「丸川大臣の答えを聞いても『えっ、本当に五輪担当大臣ですか』という印象でした」とぼう然としていた。 丸川氏は東大卒業後の1993年にテレビ朝日に入社しアナウンサーとして活躍。膳場アナも東大から1997年にNHK入局している。東大としてもアナウンサーとしても先輩の大臣の対応に、解せない様子だった。 |
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●「東京五輪の医療提供体制が提示されない」丸川五輪相が不快感 4/27 丸川珠代五輪相は27日の記者会見で、新型コロナウイルス感染状況を踏まえた東京五輪・パラリンピック実施時の医療提供体制が東京都から提示されないままだとし「開催当事者として、そろそろ示していただきたい」と苦言を呈した。 約2週間前に問い合わせたが明確な回答がないと明かし「主催者としての責任、医療現場を預かる責任をどう果たすのか。国はどう支援すればいいのか非常に戸惑う」と不快感を示した。 東京都の小池百合子知事は記者団の取材に、丸川氏の発言内容を確認すると述べるにとどめた。 丸川氏は、大会組織委員会が日本看護協会に看護師500人の確保を依頼したことには「地域医療に多大な負荷をかけないのが大会開催の前提。看護協会の意見をよく聞いて取り組んでほしい」と求めた。 ●丸川五輪相が五輪医療体制を巡って東京都に苦言 4/27 丸川珠代五輪相(50)が27日、定例会見を行い、東京五輪、パラリンピックにおける東京都の医療体制の方向性について苦言を呈した。 丸川五輪相は医療体制に関しては東京都と組織委員会で検討するべきという考えを示しており、「私が知る限り東京都が厳しいコロナの状況の中で開催するためにどのように取り組んでいくのか具体的なことをお示し頂いていない。残念ですけれども、感染症の専門家にご相談いただいているのかどうかも明確ではありません」と批判。「東京都がまず大会主催者としての責任、一方では医療の現場を預かる者としての責任、両方の責任をどのように果たすのかについて、明確な発信なり方向性なりを示して頂かないと、私達も非常に戸惑っている状況」と続けた。 さらに都には2週間前に「事務方を通じて内々に投げかけをさせていただいている」と明かし、「東京の感染を抑えることが全国からお客様がおいでいただくための大切な条件。そろそろ、大会を開催する当事者としてお示しいただきたい」と苦言を呈した。 大会組織委員会が日本看護協会に対して大会期間中の医療スタッフとして500人の看護師を要請した件については「1カ月ほど前に要請をされたとうかがっています。一番ピークの日で400人ということですから、そこから考えますと、かなり削り込んで本当に必要な数を精査してご相談をされてている気がいたします」と言及。一方で「いずれにしても地域医療に多大な負荷をかけないのが大会開催の前提。組織委員会には看護協会のご意見をうかがって、医療体制の確保について取り組みを進めていただきたい」と述べた。 ●丸川珠代五輪担当相 小池都知事に苦言も世間から“カウンター批判” 4/27 丸川珠代東京五輪・パラリンピック担当大臣が4月27日、閣議後の記者会見でした東京都に対するコメントに、批判が集まっている。毎日新聞など報道各社によると、丸川氏は、「東京都が大会の主催者として責任をどのように果たすのか。明確な方向性を示していただきたい」などと苦言を呈したという。 この丸川大臣の発言に対し、Twitterでは「責任を東京都だけに押し付けているような発言」「自分も五輪相として説明責任果たすべきでは」などと逆に疑問の声が続々と上がっている。 ●小池都知事に不快感あらわ。どのような発言だった? 東京新聞の報道によると、丸川氏は東京五輪・パラリンピック実施中の医療体制について「主催者としての責任、医療現場を預かる責任をどう果たすのか。国はどう支援すればいいのか非常に戸惑う」などと発言した。 さらに毎日新聞によると、丸川氏は2週間前に、東京都に対し医療提供体制の方針を示すよう求めていたという。その上で、「医療の現場を預かるのは東京都。こうしたい、ああしたいという声は何も届いてこない。どのように支援すればいいのか戸惑っている」と苦言を呈したという。 一方、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が、東京2020大会組織委員会が日本看護協会に看護師500人の確保を依頼したと報じたことについては、「地域医療に多大な負荷をかけないのが大会開催の前提。看護協会の意見をよく聞いて取り組んでほしい」と語るにとどめたという。 ●「丸川大臣も説明責任を果たしていないのでは?」厳しい声も この丸川大臣の一連の発言が報じられると、Twitter上で批判の声が寄せられた。 Twitterでは「無責任すぎる。責任を東京都だけに押し付けているような発言」「自分(丸川氏)も五輪相としての説明責任を果たすべき」「何が何でも五輪を開催したいというだけでは?」などと疑問の声が上がった。 丸川大臣をめぐっては、24日に放送された「報道特集」(TBS系)での発言にも批判の声が上がった。 番組では、「オリンピック開催と感染対策、どちらが優先事項と思われていますか」との質問に対し、「感染対策について1番の現場を持っているのは東京都」などと発言。自身の考えを明確に述べることを避け、質問に正面から答えなかった。 丸川氏の返答に対し、キャスターの膳場貴子さんは「『えっ...本当に大臣ですか?』という印象でした」と厳しく指摘し、以下のように述べていた。 3ヶ月後に迫るオリンピックについても、どういう状況なら開催するつもりなのか。その場合のプランA、プランB、プランCはどういうものなのかといった情報が全く示されていません。1年間、コロナ禍に直面してきたにもかかわらず、情報の開示や根拠の提示が進んでいる実感が全く持てないというこの政府の対応に対して、本当に改めてもどかしく、残念です。 このコメントについては、Twitterで「国民の言いたいことを全て代弁してくれた」「本当にその通りだと思う」などと声が寄せられていた。 IOCや東京2020大会組織委員会、そして東京都が連携して歩みを進めるはずの東京五輪・パラリンピックだが、足並みが揃う様子はない。 ●小池知事「よく聞いていただきたい」丸川五輪相に反論 4/27 東京都の小池百合子知事は27日、丸川珠代五輪相が新型コロナウイルスの感染状況を踏まえた医療提供体制が都から示されていないと苦言を呈したことに、「実務的には詰めている。都の役割の部分と、そこは組織委員会のほうで決めておりますので、よく聞いていただきたい」と反論した。都庁で報道陣に答えた。 丸川五輪相はこの日の会見で、都の対応について、「主催者としての責任、医療現場を預かる責任をどう果たすのか。国はどう支援すればいいのか非常に戸惑う」などと不満をにじませていた。 発言を受けて小池知事は「いまプレイブックを作るにおいて明日、会議があり、すでに実務的には詰めている」と明かした。さらに、「連携しながらやっていることでありますので、コミュニケーションをしっかりとっていく必要がある」と述べた。 ●五輪期間中の医療「既に協議」 丸川氏に反論―小池都知事 4/27 東京都の小池百合子知事は27日、丸川珠代五輪担当相が東京五輪・パラリンピック期間中の医療提供体制の問い合わせに都が回答していないと不満を述べたことについて「既に実務的には詰めている」と反論した。都庁で記者団に語った。 小池氏は、28日に都や大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)などによる5者会談が開催されることを明らかにした上で、医療関係者の派遣などに関して「都の役割を組織委と決めている」と説明。「連携して安全安心な大会にすべく、それぞれが力を出していく」と述べた。 ●丸川氏「東京都の考えがまったく聞こえない」五輪医療体制で苦言 4/27 丸川珠代五輪担当相は27日、閣議後の記者会見で、7月に開幕する東京オリンピックの医療体制について、「東京都が大会の主催者としての責任、医療の現場を預かるものとしての責任をどのように果たすのか。明確な方向性を示していただきたい」と東京都に苦言を呈した。 大会組織委員会が日本看護協会に対し、大会期間中の医療スタッフとして看護師500人の確保を要請したことに関する質問に答えた。丸川氏は2週間前に政府の事務方を通じ、東京都に医療提供体制の方針を示すよう求めたことを明らかにし、「医療の現場を預かるのは東京都。こうしたい、ああしたいという声は何も届いてこない。どのように支援すればいいのか戸惑っている」と述べた。 6月に判断を先送りする観客制限の判断についても、「東京の感染状況をしっかり抑えることが、全国からお客様に来ていただくための大切な条件。東京都の考えがまったく聞こえてこないので、非常に懸念している」と語った。 ●五輪相も「見せていただけない経費」 6割は公費なのに 4/27 東京五輪・パラリンピックの経費が1・6兆円にまでふくらんだ大会組織委員会の予算。いったい何に使っているのか、その使い道は正当なのか。検証しようにも、オリパラの五輪担当大臣ですら見られない経費があるという。 「組織委員会が民間ベースでやりとりしているお金というのは、中には守秘義務がかかっていて、私どもも見せていただけない経費があるということをご理解いただければと思います」 丸川珠代五輪相は19日の衆院決算行政監視委員会で、こう述べた。オリパラに関するお金の使い方の妥当性の検証は、政府として限界があるとの認識を示したかたちだ。 組織委は、東京都が50%出資してつくった公益財団法人。オリパラの広報や警備、各競技会場の運営や大会ボランティアの募集、聖火リレーや開会式の準備、チケット販売など、幅広い業務を担う。 1・6兆円の予算の主な内訳は、仮設会場の整備費など9千億円、輸送などの大会関係費6千億円、コロナ対策費1千億円。都は7千億、国は2千億円を負担し、6割が公費による負担だ。国際オリンピック委員会(IOC)との契約では、組織委が赤字の場合は都や国が穴埋めすることになっており、さらに負担が増える可能性もある。 組織委は大会を終えたら、1年後をめどに解散する予定になっている。大会の報告業務や契約分の支払いなども大切な仕事だ。だが、1998年の長野冬季五輪で、招致委が会計帳簿を処分してしまい、招致にまつわる買収疑惑の解明がはばまれた。 都議会では、組織委は都よりもIOCとの関係が深いため、文書管理や情報公開について都の条例が適用されないことが問題視され、昨年3月、組織委に対して文書を適切に保管するよう求める内容の条例が制定された。だが、こうした制度が十分に機能するのかは不透明だ。 五輪ではこのほか、国と都が別枠にしている「関連経費」もあり、総額は3兆円を超える。 丸川五輪相は決算委で「私ども国が出す経費については非常に細かく、もちろん会計検査院のチェックも入る」と強調。都の経費については「単独で出しておられるところはおそらく都議会でご覧になる」と語った。 |
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●東京五輪の観客上限6月に判断へ、国内規制準拠が基本−5者協議 4/28 東京五輪・パラリンピック組織委員会と政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の代表者は28日、残り3カ月足らずに迫った大会開催を巡り協議し、国内観客の受け入れについて6月に判断することで合意した。上限は国内イベント規制に準じることを基本とすることでも一致した。 5者が共同声明で発表した。声明によると、合意内容は新型コロナウイルス変異株への感染が日本国内で急増している状況も踏まえて決めた。IOCとIPC、組織委は安全な大会を実現するため、大会関係者の削減に引き続き努めるとしている。 協議には組織委の橋本聖子会長のほか、丸川珠代五輪相、小池百合子都知事、IOCのトーマス・バッハ会長、IPCのアンドリュー・パーソンズ会長が参加し、オンライン形式で開催した。 橋本氏は協議後に会見し、「ぎりぎりの判断として無観客という覚悟は持っているが、状況が許せば、より多くの観客に見てもらいたい」と発言。医療に支障をきたすような状況が想定される際は、無観客も決断すると述べた。5者間では五輪を開催すること自体は合意したという。 世界的に新型コロナ感染の収束が見通せない中、3月下旬の5者協議では既に海外観客の受け入れ断念を決めた。国内でも変異株の感染が急拡大しており、橋本会長は21日、当初4月中に決める予定だった国内観客数(会場動員)の上限について「どの時期に最終判断するか調整中。6月も選択肢」と述べていた。 安心安全な大会運営を最優先課題とする組織委やIOCにとって、今後は外国の選手や大会関係者が入国する際の水際対策に加え、大会での徹底した感染対策が課題となる。 組織委によると、東京大会では現時点で国内観客向けに五輪約364万枚、パラリンピック約77万枚の計約441万枚の観戦チケットが販売済み。昨年12月に公表した予算計画ではチケット収入を900億円と計上していた。 東京都は25日から3回目の緊急事態宣言に入っており、五輪を想定したテスト大会でも観客受け入れ体制の見直しを迫られている。組織委は23日、5月9日に国立競技場で開かれる陸上大会の無観客開催を決め、日本バレーボール協会も1、2日に予定する大会を無観客で実施すると発表した。 ●丸川五輪相「懸念は十分承知」 尾身会長発言に言及 4/28 今夏の東京五輪・パラリンピックに関係する政府、東京都、大会組織委員会と国際オリンピック委員会(IOC)国際パラリンピック委員会(IPC)の5者協議が28日、オンラインで開かれ、丸川珠代五輪相(50)が協議終了後、取材に応じ、政府コロナ分科会の尾身茂会長が「開催に関する議論をすべき時期に来ている」と発言した件について言及した。 丸川氏は「国民の皆さまの中にも大会を開催することによって起きる人の流れが感染拡大を起こし、医療を逼迫(ひっぱく)すると懸念していることは十分承知しています」とした上で「専門家のお立場から考えを示したと思っている。専門家の皆様と連携し、よく協議していきたいと思っている」と話した。 ●田崎史郎氏、丸川五輪相の小池都知事批判に「公開質問状を出した」 4/28 政治ジャーナリストの田崎史郎氏が28日、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」(月〜金曜・午前8時)にスタジオ生出演した。 番組では、丸川珠代五輪相(50)が27日の記者会見で、五輪組織委が日本看護協会に対し、約500人の看護師派遣を要請している件について、新型コロナウイルス感染状況を踏まえた東京五輪・パラリンピック期間中の医療提供体制が東京都から提示されないままだとし「そろそろ大会を開催する当事者としてお示しいただきたい」と対応の遅れに苦言を呈したことを報じた。 丸川氏は会見で、約2週間前に問い合わせたが明確な回答がないと明かし「主催者としての責任、医療現場を預かる責任をどう果たすのか。国はどう支援すればいいのか非常に戸惑う」と不快感を示した。 批判された小池百合子都知事(68)は同日夕に都庁で記者団の取材に応じ、「実務的には既に詰めている。都の役割と組織委員会の役割を決めている」と主張。「いずれにしても連携しながらコミュニケーションをしっかり取っていく必要がある」と強調した。 田崎氏は、今回の丸川氏の発言に「これ、丸川さんがいきなりケンカを売ったように見えると思うんです」とした上で「でも、昨日ずっと調べていたら、丸川さんが五輪担当大臣に復帰されたのが2月18日。その時にすぐ丸川さんは小池さんにあいさつ行っているんです。そこで、水際、入国阻止の部分は政府がやります、医療は都でお願いしますと、そこで仕分けができているわけです。都からの考え方が出てくるのを待っていたんですけど、いつまでたっても出て来ない。3か月が切ったところで丸川さんがドーンって言った」と解説した。 さらに田崎氏は「本来なら丸川さんが小池さんに電話して、どうなっているんでしょうか?早く出してくださいねって言えばすむ話だと思ったんですけど、事務方で水面下でやりながら答えがない。と」とし「記者会見で言うってことは丸川さん、その重さ分かっていると思う。公開質問状を出したっていうことなんです。非公式な部分で全然ダメなんで公開質問状を出したっていうのが昨日なんです」と指摘していた。 ●丸川大臣VS小池知事 東京五輪に暗雲…内紛勃発? 4/28 丸川珠代オリンピック・パラリンピック担当大臣が、大会期間中の医療体制について、「具体的な提示がない」と東京都に苦言を呈しました。小池百合子知事は「事務的には詰めている」と反論しています。 オリンピック開幕まで3カ月を切るなか、表面化した国と都の対立。都内で感染拡大が続くなか、医療体制を巡り、東京都に不満を爆発させた丸川大臣。一体、何が? ●丸川大臣が“都への不満”爆発 丸川大臣:「看護師の要請を日本看護協会に組織委員会がなさったということは、承知をしておりまして。いずれにしても、地域医療に多大な負荷を掛けないということが、大会開催の前提だと私は思います」 27日の会見で、組織委員会が大会期間中500人の看護師の派遣を要請したことについて、こう語った丸川大臣。 質問が政府のサポート体制に及ぶと、突然、せきを切ったように東京都への強い不満をあらわにした。 丸川大臣:「まず今後、必要になるかどうかということについて、東京都に明らかにして頂きたいというのが、私の正直な思いであります。私の知る限り、東京都がこの厳しいコロナの状況のなかで、開催するためにどのように取り組んでいくのかという具体的なことを、まだ私たちにお示しも頂いておりませんし。また、残念ですけれども、感染症の専門家にご相談されているかどうかについても明確ではありません」 2週間前から大会期間中の医療提供体制の確認を求めていたにもかかわらず、東京都から政府に一切報告がないといら立つ丸川大臣。 その後も、東京都への強い批判の言葉を続ける。 丸川大臣:「医療の現場を預かるのは東京都ですから。ですので、東京都がまず自分たちが、一方では大会の主催者としての責任。そして、一方では、医療の現場を預かる者としての責任。この両方の責任を、どのように果たすのかということについて、明確な発信なり、方向性なりをお示し頂かないと。私たちもそれをどのようにお教え申し上げればよいのかということについて、非常に戸惑っているという状況です。内々には、投げ掛けは実はさせて頂いて、私も非常に懸念しておりますので。内々には事務方を通して投げ掛けをさせて頂いておりますけれども。まだ明確に『私たちとしては、このように感染状況を抑えたいので、こうしたい、ああしたい』という声は何も届いておりませんので。そろそろ、そこは、大会を開催する当事者として、どのようにするおつもりなのかということを、お示し頂きたいと思っています」 説明を求められた小池知事は…。 小池知事:「(Q.丸川大臣がきょう(27日)、先ほどの会見でオリンピック大会開催時の都の医療体制の負荷について、国から都へどう考えているか投げ掛けたところ、返答が示されないと戸惑っていると発言されたのですが)確認します」 「確認する」とだけ言い残し、足早に立ち去った小池知事。2人の因縁は、今に始まったことではなかった。 ●丸川大臣VS小池知事…因縁バトル再燃? 5年前、自民党に“けんか”を売るような形で突然、都知事選へ出馬を強行した小池氏。別の候補を応援した丸川氏は、小池氏を激しく批判した。 小池氏:「たった1人で崖から飛び降りたつもりでした」 丸川氏:「チームプレーができない人はいりません」 小池氏:「知事は、政党が選ぶのではございません。組織が選ぶものでもございません。皆さんの一票一票の重なりこそが、知事を選択するのであります」 丸川氏:「スタンドプレーがうまくても、チームプレーができないと、何も物事が前に進まない」 結果は、小池氏が圧勝した。「犬猿の仲」ともささやかれる2人だが、丸川氏が東京オリンピック・パラリンピックの担当大臣に就任した時には…。 小池知事:「(Q.東京オリンピック・パラリンピック担当大臣に丸川珠代氏が就任したことについて)お互いに国民、都民にとって良い東京オリンピック・パラリンピックになるように連携したい」 丸川大臣:「東京大会の成功のために私ができることは、何でも行いたいと考えております」 ●丸川大臣の言葉に小池知事は… オリンピック開幕まで3カ月を切ったタイミングで表面化した不協和音。 丸川大臣:「医療への負荷をどう考えるのか。特に人流が発生するということに伴って、おそらくですが、大会の中身、会場の中で感染するということについては非常にリスクが低い。特に日本の皆さま方は、感染のマナーをしっかり守って下さっていて、『大きな声を出さない』『会場内での消毒』『動線の確保』ということについて、ご協力を頂いております。ただ、東京の街自体が感染が抑えられてる状況でなければ、感染の少ない地方からやってこられたお客様が、東京で感染をして帰るということにもなりかねません。そのことについての東京都の考えというものが、全く聞こえてきませんので、非常に懸念をしております」 東京都に対する丸川大臣の厳しい指摘に都庁の幹部は…。 東京都の幹部:「まるで当事者ではないような発言で、自治体に丸投げというのは無責任だし、今の医療現場がどれほど厳しい状況なのか理解されていないのではないか」 午後になり、丸川大臣について答えた小池知事。 小池知事:「(Q.丸川大臣のオリンピックでの医療体制について、都に示してほしいとの発言について)それらはですね、今、プレーブックを作るにおいて、あす(28日)、その会議もあって、すでに実務的には詰めております。そして、都の役割の部分と、そこは組織委員会で決めておりますので、それらについてよく聞いて頂きたいと思います。これは連携しながらやっていくことでありますので、コミュニケーションしっかり取っていく必要があると思います。あす(28日)、いずれにしましても、5者会議でそういったことも詰めながら、安全安心な大会にすべく、それぞれが力を出していくということであります」 |
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●この聖火リレーは意味があるのか 4/29 筆者は今から20年ほど前に、埼玉県戸田市に住んでいたのだが、荒川沿いに建設された戸田漕艇場に隣接する道路は、オリンピック通りと呼ばれていた。埼玉でオリンピックは変じゃないかと調べてみたところ、この戸田漕艇場は1964年の東京オリンピックの際にボート競技場になったところであるという。その時にこの道路を聖火ランナーが通ったことから、通称オリンピック通りと呼ばれるようになったそうである。 筆者が生まれたのが1963年なので、オリンピック当時の記憶はない。当時の聖火ランナーがどこを走ったのか、正確な記録は見つけられなかったが、東京都立図書館がまとめたところによると、当時は日本全国を4コースに分けて、全国から聖火を繋いで東京に集まるというコースが設定されていたそうである。 第3コースで埼玉が設定されているので、そのときに戸田のオリンピック通りを走ったという事かもしれない。我が町宮崎も第2コースで通過しているが、オリンピックにちなんだ地名や通り名は聞いたことがない。やはりそれだけ、東京からの距離は物理的にも精神的にも、今より遠かったという事だろう。 国外からの到着地として沖縄が設定されているが、当時まだ沖縄は日本に返還されていないので、国外と表記する以外になかったのであろう。それでも聖火ランナーコースに設定したあたり、当時の政治的意志を感じさせる。オリンピックに政治は持ち込まないのがセオリーであるが、「国」が主体になる以上、どこかに政治が顔を出す。 一方2021年の聖火リレーは、福島を出発地として、47都道府県全部を一筆書きのようにして結び、最終的に東京に帰ってくるというコースが設定されている(聖火リレールート情報)。各府県の実施状況がニュースになったりしているが、一般観覧を規制したり、公道での実施を中止したりするところもあった。またタレントの聖火ランナー辞退も何件かあったようである。 ここ宮崎県の聖火リレー実施は4月25日と26日で、2週間ほど前から道路には交通規制の看板が立てられた。 ところが宮崎県では23日、大型のクラスターが発生し、これまで10人前後だった1日の感染者数が、一気に35人に跳ね上がった。クラスターが発生したのは、県北部の美郷町というところの高齢者施設である。かなり山の方の町で、実は宮崎の聖火リレースタート地である高千穂町に近い。人口密集地域ではないが、内部から自然発生するわけはないので、誰かが持ち込んだ、つまり人の出入がそこそこあるということである。 またその前日の22日には、都城市役所でクラスターが発生している。そこでは変異ウイルスへの感染が疑われる患者も新たに7人が確認されるなど、三郷町とはまた違った状況にある。都城市は、宮崎県下では宮崎市に次ぐ2番目の経済規模があり、ここは2日目の聖火リレーコースに設定されている。 まさに条件としては満身創痍の中、宮崎県の聖火リレーは強行された。ご承知のように宮崎は車社会なので、交通規制が敷かれると、現場に近づくことが難しくなる。近くまで車で行ってあとは歩きで接近も考えられるが、宮崎では各店舗に駐車場は用意されているものの、汎用のパーキングは非常に少ない。近隣の店の駐車場に車を乗り捨てて観覧というのも、迷惑な話であろう。加えて大量の感染者を出したあとに人が集まる場所へ行くのも憚られることから、宮崎市内での観覧は断念した。 あとで知ったのだが、オリンピック公式サイトでは聖火リレーの模様を動画配信していた[東京2020オリンピック聖火リレー 4月25日(日) 宮崎県 1日目]。 ただ、見たいところにジャンプしようとするたびに毎回CMが挿入されて、自分は一体何を見せられているのかわけがわからなくなる。それならNHKのハイライト[東京2020オリンピック聖火リレー]を見た方がいいだろう。 当日は厳しい観覧規制やセレモニーの縮小などが行なわれたが、そうまでして実施する聖火リレーにどういう意味があるのか。そもそもこの聖火リレーは、福島の復興祈願や、コロナで落ち込んだ心を元気づけようという主旨があったものと思うのだが、大型クラスター発生直後に強行するものでもないだろう。ウイルスに負けるな!! という決意は買うが、ウイルスは個人が気合いで戦ってどうにかなるものでもない。 そもそも地方人にとってオリンピックとは、たとえ東京開催であっても例年通りテレビで観戦するものでしかない。ましてやこんな聖火リレーで一体感を感じろというのも、無理な話である。 GW中は九州全域、そのあと日本海側を北上して北海道で折り返し、太平洋側を南下して、ゴールは7月23日となっている。そもそもオリンピックそのものが開催できるのかどうかも危ぶまれている状況で、聖火は本当にこのまま最後まで日本中を駆け巡るのだろうか。 ●「IOC」と「五輪貴族」を支える商業的システムの実態… 4/29 2020年3月、新型コロナウイルスの感染拡大により、東京五輪の開催延期が決定した。あれから1年。さまざまな問題が解決されないまま、開催まで3か月を切った。 やりがい搾取に非難が集まった無償ボランティアから、東京五輪の核心に迫った『ブラックボランティア』(角川新書)には、問題の背景がわかりやすく解説されている。ここでは、ノンフィクション作家の本間龍氏が著した同書を引用し、東京五輪の“カネ”にまつわる話題について紹介する。 ●公益事業ではなく「巨大商業イベント」である 最初に東京五輪とは開催費において夏季五輪史上、最大規模であり、巨大な商業イベントであることを確認したい。なぜ「商業イベント」であることを確認するのが重要かといえば、それこそがボランティアという無償行為の精神とまったく相反するものだからだ。 2016年9月、東京都の調査チームは東京五輪の総経費がついに3兆円を超える見込みであることを明らかにした。 13年1月の招致ファイルに掲載されていた7340億円の実に4倍以上、前回、前々回と比べても倍以上となっており、通常の商業行為ならとっくに破綻している金額である。さらに、開催延期と新型コロナウイルス対策で、2940億円追加された。しかも現状で組織委が負担するとしているのは7000億円ほどなのだから、杜撰な計画による失敗を国民の税金で尻しり拭ぬぐいさせようとしているとしか言いようがない。 このとてつもなく巨額の費用を必要とする五輪を支えるのが、 (1)テレビ放映権料 (2)スポンサー協賛費 (3)チケット販売 (4)税金 である。 際限のない予算膨張という状況の中で、唯一順調なのがスポンサー企業集めである。過去のロンドン、リオ五輪のスポンサー企業がそれぞれ14社、19社(サプライヤー企業を除く)であったのに対し、東京五輪は2021年4月には81社に達しているからだ。 これを可能にしたのは、過去大会まで金科玉条とされていた「一業種一社制度」の撤廃である。スポンサー企業の権利とはオリンピック・エンブレムの使用権であり、各社はそれぞれの宣伝活動でエンブレムを使用し、自社が五輪に協賛していることを発信できる。 そのエンブレムの使用価値を最大限に高めるために、前回のリオ五輪まで協賛企業は一業種一社までと厳格に決められていた。例えば車業界で言えば、トヨタが協賛社になれば、他社はもう協賛することができなくなるという仕組みだ。 これはマーケティング的に言えば至極当然のことだ。ブランドイメージ戦略とは自社こそが最高、他に並ぶ物がないという存在を目指すのであって、世界でたった一社に五輪エンブレム使用権を付与するというIOCの戦略は、ブランド価値の最大化を図る優れたものだったと言える。 企業側も高額の協賛金を出すのだから、その業界の中で唯一「五輪に協賛しています」と言えることがライバル企業に対して非常に高い価値を生む。そうしたIOCと協賛企業の思惑が一致して、リオ大会までは一業種一社制がほぼ守られてきた。 だが、この制度には難点もある。協賛企業の数に上限があるということだ。つまり、どこの国でも数十、数百億円単位の協賛金を出せる業種・業界は多くても20程度だ、ということである。 だが、東京大会ではその制約を一気に取り払ったため、史上空前の数の企業がスポンサーとなった。制約を外したのはスポンサー収入を増やしたいためだが、あまりの膨張によって五輪が完全なビジネススキームで運営されていることが強調された。私が『ブラックボランティア』という本を刊行したのは2018年7月で、開催までまだあと2年という段階だったが、すでに多くのスポンサー企業が五輪マークをつけたテレビCMを流しており、協賛価値の可視化に余念がなかった。つまり、もはや国民誰もが五輪は企業マネーで運営されていると分かっているのだ。 そうした中で、その五輪運営に無償性や公益性を旨とするボランティアを使おうとするのは明らかな矛盾であるが、人々の関心がそこに向かうのは巧妙に避けられている。 ●商業化は84年のロサンゼルス五輪から 五輪商業化の元をたどれば、1984年のロサンゼルスオリンピックにさかのぼる。以降、スポンサー企業集めが解禁され、競技への注目度喚起のためプロ選手の参加も解禁された。そのため、五輪の基本理念であった「アマチュアスポーツの祭典」という概念はすでになくなっている。 ロス以前のオリンピックは都市や国家が中心となって開催されるもので、必然的に予算の多くは税金であり、その節約のために無償ボランティアは必要不可欠であった。それまでのオリンピックはアマチュアリズムを基本とした祭典であり、そこには利潤追求という目標はなかったからだ。 だがその理想ゆえに開催国は巨額の赤字に悩まされ、オリンピックの存続そのものが危ぶまれていた。72年には米国コロラド州が住民投票でデンバー冬季大会を返上する事態となり、76年のモントリオール大会は巨額の財政赤字を発生させた。その結果、84年の五輪招致に手を挙げたのはロサンゼルスだけという状況に陥っていたのだ(『オリンピックと商業主義』小川勝著、123ページ)。 それゆえに、企業スポンサー制の導入という税金に頼らないシステムを構築する必要があった。 一業種一社の原則は、スポンサー制度を始めたロス五輪組織委員長のピーター・ユベロス氏が五輪のブランド価値を最大化するために導入したとされている。またこの時点では、この原則は過度の商業主義に陥らないための歯止めと考えられていたようだ。 だがロス五輪以降、IOCはすべての競技におけるプロの参加、企業参加、全世界へのテレビ放映権の販売等の五輪の商業化をさらに推し進め、巨額のスポンサー料金とテレビ放映権料に支えられた現在の体制ができ上がった。 2015年4月14日の日経新聞によれば、08年北京大会の国内スポンサー収入は当時の為替レートで約1460億円であり、14年ソチ冬季大会は約1560億円だったとされている。そして今回の東京オリンピックでは、従来守られてきた一業種一社の原則さえ外し、史上最大と推定される4000億円以上と推定される資金を集めている。 もちろん、一業種一社の原則を外すことはJOC単独でできることではなく、IOCの許諾を得ている。つまりIOCは、過度の商業主義を戒めてきた従来の規制もやめて、さらに多くの協賛金を集める方向に舵を切ったのだ。 その方針に応じた多くの企業は東京大会を収益確保の絶好の機会と位置づけているのであり、間をとり持つ電通は、すでに協賛金のマージンだけで数百億円の利益をあげているはずだ(金額は非公表)。 ●IOCと五輪貴族を支えるスポンサーシステム 五輪は4年に一度しか開かれないが、その間もIOCや世界各国の五輪委員会は様々な活動をしている。その活動を支えるのが、企業協賛によるスポンサーシステムである。 そのカテゴリーはIOCと契約して全世界で五輪マークを使えるTOP(The Olympic Partner)であるワールドワイドパートナーと、五輪開催国の組織委が独自に集めることができるオリンピックパートナー呼称は各国で少しずつ異なる)に大別される。そのオリンピックパートナーの中で、協賛金の額によってさらに数段階のカテゴリーに分かれている。組織のHPをご確認いただけたらと思う。 五輪協賛においてもっともランクづけが高いのが、14社しかない「ワールドワイドオリンピックパートナー」だ。彼らはIOCと直接契約し、世界中でオリンピックのロゴを活用したマーケティング活動が可能となっている。全世界で周知できるため金額も破格で、4年契約で1年あたり100億円程度と言われている。 どの企業も言わずと知れたグローバル企業であり、ゴールドパートナーとして世界中どこの国の自社広告でも五輪マークを使用してスポンサーであることを周知できる。このカテゴリーは一業種一社制となっており、マーケティング的価値も極めて高いと言えるだろう。 だが2017年には、1997年から20年間にわたってワールドワイドスポンサーであった米ファストフード大手のマクドナルドが撤退した。超グローバル企業といえども巨額の協賛金負担は重く、同社にとっての価値がかつてほどではなくなりつつあるのではないか、と世界中で話題になった。 IOCと直接契約するワールドワイドパートナーの次のランクが、各国内の五輪委員会と契約するオリンピックパートナーである。今回の東京大会では上からゴールドパートナー、オフィシャルパートナー、オフィシャルサポーターという3つのランクに分けられており、2021年4月現在でそれぞれゴールド15社、パートナー32社、サポーター20社の計67社となっている。その契約金は明らかにされていないが、ゴールドは150億円、パートナーは60億円程度と推測されている。つまり、67社で4000億円以上の協賛金を集めていると考えられるのだ。 ●一業種一社の原則を捨てた東京五輪 前述したように、元々五輪スポンサー企業は一業種一社が鉄則であった。 だが主催者にとっては、そうすることによって、スポンサーとなる企業の数が自ずと制限されてしまうというマイナス面があった。リオやロンドン大会でのスポンサー数が20社以内であったのは、五輪で名を売り、その協賛金の負担に耐えられる業界や業種がその程度であることを示している。 ロンドンとリオ五輪のスポンサー企業名と業種を見てみよう。 一見して分かるのは、精密機器、金融、自動車など、一致する業種が多いことだ。そしてそれは東京でも同じである。 ここで東京のスポンサーを業種別に分けてみよう。 まず初めは国内最上級のゴールドパートナー15社。組織委のHPで企業ロゴを押すと、契約カテゴリーが記載されている。 次に、ゴールドの下に位置するオフィシャルパートナーの企業群を見てみよう。 こちらは組織委のHPでロゴを押してもそれぞれの社のHPに飛ぶだけで契約カテゴリーが明記されておらず、分かりにくい。ささいなことだが、協賛金の多寡でHPではきっちり区別されている。 さらに、3番目のカテゴリーとなるオフィシャルサポーターは下の図のとおりである。こちらは組織委のHPでは、社名だけでロゴの掲載もない。 これらのスポンサーが得られる権利は、 ・ 呼称やマーク類の使用権(大会エンブレム、マスコット、JOCエンブレム、JOCスローガン「がんばれ!ニッポン!」等) ・大会会場におけるプロモーション権 ・大会関連グッズ等の利用権 ・商品・サービスのサプライ権 などである。すでにテレビCMや町中には、大会エンブレムを冠した広告が溢あふれているから、誰でもその例を見ているだろう。 一見してわかる通り、東京大会の協賛企業の業種は多岐にわたっている。そして、・金融・生保・精密機器・食品・旅行代理店・セキュリティ・航空・印刷・郵便宅配・新聞社、など実に10種の業界の企業が複数参加している。こうなるともはや完全にカニバリズム(共食い)現象を起こしていてマーケティング的価値は低下しているが、それでも参加企業が増え続けるのは、ライバル社だけに五輪スポンサーを名乗られたくない、という競争心が巧みに利用されているからではないか。 ●「ボランティアは無償」「電通には億単位のPR費」 組織委員会の欺瞞 4/29 「IOC」と「五輪貴族」を支える商業的システムの実態…日本が変えたオリンピックの“あるルール”とは から続く 東京五輪を巡っては、これまでにさまざまな問題が噴出してきた。何より深刻なのは、新型コロナウイルスだ。国内では沈静化の兆しはなく、ワクチン接種も諸外国から大きく遅れをとっている。世論調査でも中止・再延期を望む人が8割を超えており、大会が無事開催されるかどうかはいまだ不透明だ。 ここでは、ノンフィクション作家の本間龍氏による『 ブラックボランティア 』(角川新書)を引用。やりがい搾取に非難が集まった無償ボランティアから、東京五輪の問題の核心に迫る。 ●「やりがいPR」で再び炎上 2018年5月22日、以下のNHKニュースが話題になった。 〈 五輪組織委員会は、ことし3月、8万人を募集する大会ボランティアについて、1日の活動時間が8時間程度で交通手段や宿泊場所は各自が手配し、費用も自己負担とするなどの募集要項案を公表したが、ネット上では「こんな条件ならやりたくない」といった批判の声などが上がっていた。こうしたことを受けて、ボランティアの在り方などを有識者が検討する初会合が都内で開かれ、会議では「募集にあたってはボランティアのやりがいをわかりやすくPRしていくことが必要だ」といった意見が出された。〉 語るに落ちるとはこのことではないだろうか。待遇面が劣悪であるとして批判が高まっているのに、その批判を横に置いて「やりがいPRを強化せよ」とはどこまで見当はずれなのか驚いてしまう。PRするのにも億単位の費用がかかるのだから、そんなことをするよりも交通費や宿泊費を支払う方がいいに決まっている。 しかも、そのPRを実施するのがまたしても電通である。五輪で巨額の利益をあげる企業が人々に無償で働くことの重要さを説くとは、ブラックジョークとしか言いようがない。案の定、ネット上では「ボランティアには一銭も払わないのに、電通には億単位のPR費を払うのか」という批判が渦巻いた。 この報道には続報がある。5月28日の共同通信は、「ボランティア検討委員会」の第2回会合で、「ボランティアの自宅や宿泊先から活動場所となる競技会場などへの交通費は組織委が支給すべきだとする提言をまとめた」と報じた。この有識者会議も、さすがに世論の批判を無視できないと考えたのだろう。その後、交通費として1日あたり1000円の支給が決まった。 ●無償ボランティアになるためにカネを払う? 開催に至る過程で、怪しい「五輪便乗商法」も行われていた。しかもそれを、大学が中心になって開催しているとなると穏やかではない。 2018年6月、筑波大と神田外大が「国際スポーツボランティア人財育成プログラム」を開催した。リーフレットの「開催目的」には、「ラグビーワールドカップ2019や東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会などの国際大会におけるボランティアとして活躍するために教養・知識を身につける。障害のある人へのサポート方法などを実技を通して学ぶ」とある。つまりラグビーWCや東京五輪でのボランティア活動を主目的にしているのだが、この講座のウリは、2日間の講座を受講すれば「修了証」をもらえることで、それが五輪ボランティアへの応募にプラスになることを匂わせている。 驚かされるのは、これが有料(2日間で5000円)であることだ。無償ボランティアへの応募のために、有料の講座で資格を取れ(もちろん必須ではないが)というのだから驚きを禁じ得ない。ボランティアはすべてが自己負担であるにもかかわらず、そのボランティアになるために資格が必要だとは、どこまで善意の学生からむしり取ろうというのだろう。 同じような講座を東海大も開催しているが、その勧誘メールには次のように書かれている。 〈 東京2020オリンピック・パラリンピック大会では、約8万人の大会ボランティアが募集される予定です。このボランティアは、2018年9月中旬に参加応募され、書類審査や面接などを経て選考されます。選考の際には、スポーツボランティアの知識や経験、ボランティアに関する資格等を有していることがアドバンテージになるでしょう。そこで本学では、「第1回スポーツボランティア研修会」を開催いたしますが、受講希望者多数のため、追加で「第2回スポーツボランティア研修会」を、下記の日程で開催することと致しました。多くの皆様のご参加をお待ちしております。また、この研修会を修了し、スポーツボランティアとしての活動経験があれば、「スポーツボランティア・リーダー養成研修会」への受講資格が得られます。〉 こちらは筑波大よりも「スポーツボランティア資格が五輪ボランティア選考でアドバンテージになる」ことを明確に謳っている。こちらの受講料は1500円で、たった1日、2時間の講習で修了証がもらえる。 つまり、このスポーツボランティア講座の修了証とは、その程度の講習時間で得られるレベルのものであり、東京五輪のボランティアに決定後、組織委が無料で行う研修を受ければ誰でも取得できる程度のものと考えられる。それを有料で行う大学側の見識とはどういったものだろうか。学生もこのようなものに貴重なカネと時間を割かないよう、強く伝えたい。 そもそも組織委が一番欲しいのは大学生なのだから、このような講座を受けずとも、大学生であるというだけで採用となるはずだ。 ちなみに上智大学は「通訳・言語サービスボランティア養成講座」を開催しているが、こちらは無料。大学によってかなりの差があるものだ。 ●ボランティア3原則は東京五輪に馴染まない そもそもボランティアとはどういう行為なのだろうか。基本に立ち返って考えてみたい。それが東京五輪のボランティアと合致するか見てみよう。 〈ボランティア3原則 (1)自発性……『自主性・主体性』 ボランティア活動は、誰からも強制されたり、義務として行うものではない。業務命令や半強制的な指導にもとづく援助活動は含まれない。 (2)非営利性……『相互性・相対性』 ボランティア活動は、原則として無償の、非営利的援助活動である。また、その活動は時間や費用を費やすため、ある程度の賃金は必要となる。このため、実費程度の支援を受ける有償ボランティア活動は許容されている。 (3)公共性 ボランティア活動は、社会的に認知された公共的な福利をもたらす活動である。活動の目標やニーズが共観(ママ)可能、社会的に共有可能で、その参加もある程度開かれていることも重要。活動やその運営組織についても、公開性・透明性が必要で、社会に対する説明責任が求められる。 ボランティアについて調べると、これ以外にも先駆性・フロンティア性や創造性があげられるが、多くの場合は先の3つが中核的・基本的要素として紹介されている。 一目瞭然だが、このうちもっとも東京五輪と乖離しているのが(2)の非営利性だろう。東京五輪はスポンサーからの協賛金とテレビ放映権などで運営される完全な営利目的の商業イベントなのだから、非営利性とはまったく相容れない存在であるからだ。 同時に、営利目的の場であるのだから、(3)の公共性や公益性の福利をもたらす活動ともまったく方向性が違うものだ。さらに、五輪における業務は主催者(組織委)が一方的に指定し、ボランティアはその遂行のみを求められるのだから、(1)における自主性や主体性とも異なる。あらかじめ決められている業務(観客誘導や荷物検査など)をやるだけであるから、そこには創造性や先駆性もない。また、組織委は自らの収入総額や支出詳細を明かさないから、公開性や透明性がなく、説明責任を果たしていない。これは(3)の公共性もないということだ。 つまり、組織委が求める「ボランティア」とは「無償労働」という意味だけであって、ボランティアが目標とするものは殆ど存在しないし、合致もしないのだ。本来はアルバイトと呼ばなければならないのに、賃金を払いたくないからボランティアと呼び、誤魔化しているに過ぎない。だがその仕掛けがあまりにも大々的なため、多くの人々が騙されてしまうのだ。しかしボランティアは無償などという決まりは一切ないし、有償ボランティアも存在している。 ●さまざまな有償ボランティア 「ボランティアはタダ」と思っている人は驚くだろうが、日本にも数多くの有償ボランティア団体がある。日本の主な有償ボランティア団体を挙げてみよう。 ○青年海外協力隊 ○国境なき医師団 ○国連ボランティア ○国際交流基金 ○国際ボランティアNGO 日本国際ワークキャンプセンター 中長期ボランティア ※申込み金はあるが、現地での宿泊・食費は現地NGO負担 ○公益財団法人 オイスカ・インターナショナル 研修センターボランティア ○ 特定非営利活動法人地球緑化センター 「緑のふるさと協力隊」「若葉のふるさと協力隊」 青年協力隊や国境なき医師団は専門知識が必要とされるのだから当然だ、と思うのであれば、五輪ボランティアの職種を見てほしい。そこには通訳や医療(医師・看護師・薬剤師)などの専門知識が必要な仕事がいくつもある。専門知識を要する他のボランティアであれば、なにがしかの対価(宿泊費・交通費・生活費)などが支給されるのが当然の仕事でも、五輪ボランティアでは無償になっている。これは明らかにおかしい。 2019年10月、私の元に一つの情報が届いた。コンビニエンスストアなどで配られている「タウンワーク」という人材情報誌に、「東京2020オリンピック・パラリンピックを支える仕事特集」と題され、人材派遣会社パソナが募集しているというのだ。実物を取り寄せてみてみると、確かに募集がある。採用期間は「2020年2月から9月までの期間限定」とし、「国際スポーツ大会でのイベントスタッフ」となぜか東京五輪の名前を伏せながら、8業種のアルバイトを募集している。8つの業種は、国際コミュニケーション、各競技会場運営など、ボランティアの募集種目と内容はほとんど変わらない。 それまで組織委は「五輪を支えるのはボランティアだ」として、無償ボランティアを大々的に募集してきたにもかかわらず、どういうことなのか。同じ仕事内容にもかかわらず、ボランティアは何時間働いてもタダだが(交通費のみ1日1000円支給)、アルバイトは時給1600円とあり、1日働けば12000円近くになる。私はこの件について組織委に質問を送った。その顛末については、私の「 note 」をお読みいただきたい。 東京オリンピックはボランティアのみならず問題が山積しているが、ボランティアは矛盾の縮図のように思える。私の書籍『ブラックボランティア』では、オリンピック貴族である組織委や電通、伴走する国内の大手メディア、搾取される善意のボランティアたち、その構図を浮き彫りにした。ご一読いただき、オリンピックというイベントの本質を考える一助としていただけたらとてもうれしく思う。 東京オリンピックはボランティアのみならず、問題が山積している。 最後に一つ付け加えるなら、酷暑の問題だ。みなさん、忘れているかもしれないが、東京の夏は本当に暑い。 昨年、東京都では6〜9月に熱中症で約5800人が救急搬送され、200人の方が亡くなった。 コロナによる医療のひっ迫の中で、本当に安心安全な大会は可能なのか。組織委は真剣に、現実的に考えてほしい。 熱中症の危険を負いながらの奉仕。ボランティアはやはり、矛盾の縮図なのだ。 ●大逆風の東京五輪、「中止カード」を先に切るのは菅首相か小池都知事か 4/29 ●東京五輪が1番!一般市民は後回しで反発高まる 今から4カ月前の2021年1月、菅義偉首相は東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪)について「人類が新型コロナウィルスに打ち勝った証」「東日本大震災からの復興を世界に発信する機会」だと胸を張っていた。しかし、残念ながら今の調子でいけば、苦しむ自国民を見殺しにしながら「負け戦」へとつき進む「日本の狂気」を全世界に見せつけるだけになりそうだ。 アスリートやその家族、関係者、そして五輪ファンの方たちには大変申し訳ないが、東京五輪への「逆風」がシャレにならないところまできている。 まず、槍玉にあげられているのが、緊急事態宣言が、IOCのバッハ会長の来日予定日の前にピタッと終了するといういわゆる「バッハシフト」だ。五輪開催のための露骨な「東京は大丈夫ですよ」アピールに、休業や自粛を余儀なくされている国民の間で批判の声があがっている。 また、「聖火リレー」への疑問の声も少なくない。緊急事態宣言の対象となっている自治体が「命を守るために出かけるな」「外で騒ぐな」「越境するな」と喉を枯らして呼びかけている。にもかかわらず、その横を、聖火をもった著名人が大量のスタッフの引き連れて練り歩くという矛盾を指摘する声が後を絶たない。 既に炎上状態になっているが、さらに灯油をぶっかけた形になったのが、「看護師500人動員」と「選手用病院確保」だ。4月9日、東京五輪組織委員会(組織委)が日本看護協会に「大会にご活躍頂く看護職の確保に関するご協力について」という文書を送って、500人の看護師確保の協力を要請したという。また、JNN(TBS系列のニュースネットワーク)が報じたところによれば、組織委はアスリートが感染した際に収容できる指定病院の確保に動いているというのだ。 国民に対してはさまざまな我慢を強いているにもかかわらず、東京五輪には医療資源をしっかりと動員する。まるで「五輪が1番、医療が2番、3、4がなくて、5に政治家、6、7くらいで国民」というかのようだ。そんな日本社会の「序列」があらためて明らかになったことで、国民の怒りが爆発しているのだ。 東京五輪への風当たりが強くなっていく中で、永田町界隈ではある「暗闘」に注目が集まっている。菅義偉首相と、小池百合子東京都知事のどちらが先に「五輪中止」をぶち上げるのかというバトルだ。 ●菅首相と小池都知事、どちらが先に「五輪中止」を叫べるかという競争 4月12日の共同通信世論調査によると、東京五輪について「中止するべきだ」は39.2%。「再延期するべきだ」(32.8%)を合わせると、72%が通常開催に否定的だ。時事通信の世論調査もだいたい同じで65.4%が開催に後ろ向きだという。 これだけ圧倒的な「民意」が存在するということは裏を返せば、国民のフラストレーションが極限まで高まったタイミングで「五輪中止・再延期」のフラッグを掲げた政治家は、圧倒的な支持を得られるかもしれない、ということなのだ。 では、そんな「掟破りの五輪中止カード」を一体誰が切るのかというと、ともに「負けられない戦い」が間近に控え、互いに主導権争いでバトルを展開しているあの2人しかいない。 そう、7月4日に東京都議会議員選挙(都議選)が控えている小池百合子東京都知事と、秋までに衆議院議員選挙をしなくてはいけない菅義偉首相である。 「おいおい、どちらも五輪をゴリ押ししている当事者じゃないか」と思うかもしれないが、政治家というのは選挙のためならどんなモラルの欠いた行為でもできてしまうものなのだ。また、今回は「民意」という強い後ろ盾もある。 実際、政治家にとって選挙がどれほど重要なのかを熟知している、元大阪市長の橋下徹氏も4月27日の「ゴゴスマ」(TBS系)に出演した際、小池都知事が状況を見て「五輪中止」と言い出す可能性を示唆して、下記のように話していた。 「コロナの状況を見ていると出来るのか?とみんな思っている。それが頂点に達したところをとらえて、小池さんはいち早く無理だという発言をされるんじゃないか。そういうのは天才的能力があると思っている」 まったく同感である。さらに言わせていただくと、この五輪中止カードがミソなのは、あくまで「政治利用」なので本当に「中止」をしなくてもいいという点だ。例えば、「国民のために五輪は中止すべき」という公約を掲げて選挙に勝ったとしても、「いろいろ交渉をしましたがIOCとの契約もあるので無理でした」というような感じでウヤムヤにできてしまう。そんな無責任が許されるわけがないと思うかもしれないが、これまでの日本の選挙を振り返ってみるといい。公約やらマニフェストが律儀に守られたケースの方が圧倒的に少ない。 つまり、IOCと「国民の不満が高まっているので一度、中止議論をしますけど、そのままちゃんと開催しますから」という風に、裏で握ってさえいれば、小池都知事にとっても、菅首相にとっても「五輪中止」は支持率爆上げの政治カードになり得るということだ。 ●「天才・小池百合子」の巧みな戦略 では、いったいどちらが先に「五輪中止」を掲げるのか。大方の予想では、「天才・小池百合子」に軍配が上がると見られている。 これまでも小池都知事は、政府のコロナ対策の「先手」を打つというスピンコントロール(情報操作)で、「頼りにならない政府と比べると、小池さんは頑張っているなあ」というブランディングに成功し、昨年6月時点では7割という高い支持率も得ている。 また、女性蔑視発言で森喜朗氏への国民の批判が高まった絶妙なタイミングで、四者会談を拒否することを表明するなど、小池氏の国民の不満の方向性、ピークを捉える「選球眼」に関しては、その辺の政治家は足元にも及ばない。 例えば、菅政権が「アスリートにワクチンを優先的に接種させるべきか」などとじっくり検討しているうちに、小池都知事が「本日、コロナ感染状況を踏まえて、東京都としては五輪を中止すべきだとバッハ会長に申し上げました」などと不意打ちを喰らわせる可能性はゼロではない。 ただでさえ「感染拡大を防ぐために何もしていない」なんて叩かれる菅政権の評価は地に落ちるだろう。 本当は誰よりも通常開催したいという気持ちがありながらも、国民の命を守るために、苦渋の「英断」を果たした女性リーダーとして小池都知事は評価され、「日本初の女性首相」という野望にまたひとつ近づく。一方、菅首相は「決断できないリーダー」「五輪に固執する既得権益おじさん」というようなネガティブイメージが定着するかもしれない。 そうなれば、実際に五輪が中止になるかどうかはさておき、菅政権の支持率はガクンと落ちる。現時点で有力視されている9月の解散選挙の結果もかなり厳しいものとなり、「菅おろし」がスタート。有力な「ポスト菅」も見当たらないなかで、安倍晋三元首相の「復権」も現実味を増しそうだ。 ●菅首相が小池都知事に「負けない」ためにはどうすれば良いか もちろん、このような「菅政権終焉シナリオ」というのは当然、菅首相側も意識している。派閥の後ろ盾もない菅首相が「中継ぎ」で終わることなく延命し、権力の座に座り続けるには、「天才・小池百合子」の裏をかくしかない。 では、どうするのか。 選択肢のひとつとしてあるのは、小池都知事よりも早く「五輪中止」のカードを切って、「国民の信を問う」と解散、都議選とのダブル選である。 今言われているような「9月解散」では正直、菅首相に未来はない。ワクチン接種が劇的に進み、感染が収束するなどの奇跡でも起きない限り、じわじわと支持率を下げたまま衆院選に突入して、過半数は守れたとしても、議席を大きく減らす可能性もある。選挙の弱い総裁を担ぐほど、自民党は優しくない。 だったら、一か八かで逆転の東京五輪中止のカードを切るという可能性もあるのではないか。 実際、それを思わせるような動きが続いている。 4月15日、菅政権の後ろ盾である二階俊博幹事長がTBSのCSの番組で、「これ以上無理ということなら、すぱっとやめないといけない」と与党トップとしてはじめて東京五輪中止の可能性に言及した。しかもこの発言を受けて、丸川珠代五輪相は「ある意味当たり前のことだ」と肯定をしているのだ。 普通に考えれば、これは世論の反応を伺う「観測気球」ではないだろうか。 さらに気になるのは、この5日後、多忙を極める小池氏が二階氏に会いに行っていたことだ。会談内容は、緊急事態宣言とワクチン接種についてだというがタイミング的にも、二階氏の五輪中止発言の真意を探りにいったと考えるべきだ。やはりこれは「Xデー」に向けて、狐と狸のばかしあいが始まっていそうだ。 もちろん、これらはすべて筆者の推測に過ぎない。ただ、一つだけ断言できるのは、もはや東京五輪は、アスリートのためでもなければ、国民のためにもなっていない。ましてや、「平和でより良い社会をつくることに貢献」なんて理念ともかけ離れてしまっている。 なんのための五輪なのか。この原点に立ち戻れば、政治カードにされる前におのずと答えは見えてくるだろう。 |
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●丸川五輪相 東京五輪・パラで都との医療提供体制の連携「早期に調整」 4/30 丸川珠代五輪相(50)は30日、閣議後に会見。東京五輪・パラリンピックにおける、東京都との医療提供体制の連携について「事務方の間で地域医療に負担をかけない形でのあり方について早期に調整を行うと聞いております」と語った。丸川大臣は27日の会見で、東京都から具体的な提示がないままだとし「当事者としてお示しいただきたい」と苦言を呈していた。また、都との調整について「人の流れが生じる点についても(検討内容に)含む」と語った。 また、大会の際に選手を受け入れる指定病院を30か所程度確保する方針に反発の声が多く上がっていることについては「丸ごとすべてそのためにおさえると言うことではない。地域医療に支障をきたさない程度で必要な医療のサービスを提供して頂くことで、個別に調整を行っている」と強調した。 ●丸川五輪相、五輪の医療体制「早期に都と調整」 4/30 丸川珠代五輪相(50)が30日、閣議後の定例会見を行った。 前回の定例会見で、丸川五輪相は都から大会に向けての医療体制の具体策が出てこないことへ「明確な発信なり、方向性なりを示していただきたい」と、苦言を呈した。その後、小池都知事とやり取りはあったのか、との問いには「(28日の)5者協議でお会いしたが、都知事がご説明があったのは現状の感染対策だった」と溝を感じさせつつ「私どもの事務方と都の事務方の間で地域医療に負担を掛けない形での東京大会での医療体制のあり方、人の流れが生じることへの対策を含む、その点について早期に調整を行うと聞いている」と、都との調整に入ることを明かした。 また、政府が感染した選手などを受け入れる指定病院を30か所程度確保する方針を示し、反発を呼んでいることについては「私の理解している限りでは、丸ごとすべてそのためだけに抑えてしまうものではない。地域医療に支障が生じない範囲で大会指定病院として必要な医療のサービスを提供していただくということで個別に調整していると承知している」と説明した。 ●小池都知事が28日の5者協議で都の感染対策を説明 丸川五輪相明かす 4/30 丸川珠代五輪相(50)が30日、閣議後の会見で、東京都の小池百合子知事(68)から、都の感染対策の現状について説明があったと明かした。 丸川氏によると、28日に行われた政府、都、組織委員会、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会で行ったオンラインでの5者協議で、知事から説明があったという。前回の閣議後会見で、五輪・パラの医療提供体制をめぐり「東京都の考えがまったく聞こえてこない。非常に懸念している」と、都に苦言を呈していた。 さらに「私どもの事務方と都の事務方の間で、地域医療に負担を掛けない形での東京大会での医療体制の在り方について、早期に調整を行うと聞いています」と話すなど、今後、すみやかに担当者間で話し合いを進めていくとした。 ●「丸川五輪相VS小池都知事」で囁かれる中止の布石説 4/30 中止のXデー≠ェ近づいているのか。新型コロナウイルスの猛威は終息する様子がなく、今夏の東京五輪がいよいよピンチだ。東京都の新規感染者は29日に1027人となり、3か月ぶりに1000人の大台を突破。大阪では1日あたりの死者数が過去最多の44人に上るなど、国民からは五輪開催を疑問視する声がさらに強まっている。 一方で、28日に開かれた政府と大会組織委員会、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)による5者協議では、IOCのトーマス・バッハ会長(67)が「粘り強さ、逆境でへこたれない精神」と日本人をたたえつつ「今回も乗り越えることが可能」と相変わらず前向きな姿勢を崩さなかった。 そんな中、大会関係者の間で波紋を広げたのが丸川珠代五輪相(50)の直近の言動だ。東京都の小池百合子知事(68)に対して「開催当事者として(五輪開催時の医療体制を)そろそろ示していただきたい」と27日の会見で苦言。翌日に5者協議を控えるタイミングで、わざわざ開催が危ぶまれるような発言をしたことで「ついに始まった。中止を見据えた布石を打っている」(ある大会関係者)との臆測を呼んでいる。 表面上は「開催」で足並みを揃えつつも、当事者間で微妙なすきま風≠ェ吹き始めた東京五輪。開幕まで3か月を切っても、気運は一向に盛り上がらないままだ。 |
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●小池都知事のシタタカ戦略…いよいよ「五輪撤収、責任回避モード」に突入か 5/1 ゴールデンウィークが始まったものの、小池知事の思うように人流は止まっていない。禁酒とステイホームで東京を締め上げるほど、人は東京から周辺地域や地方に流れ出している。 この動きが引き金となって変異型ウイルスの感染が全国に広がるのではないか。そのリスクが今、格段に高まっている。 もはや「東京に来ないで」では済まされず、逆に地方の自治体から「東京から来ないで」の大合唱を浴びせられるのも時間の問題である。 人流の抑制に失敗した場合、その責任はいったい誰が取るのか。いかに鉄面皮な小池知事であっても、「知らぬ存ぜぬ」を決め込むわけにはいかない。そんな中、小池知事は動画作成にご執心である。ステイホーム用に都が用意した「おうちで満喫コンテンツ」の売りは、何と言っても恩賜上野動物園のジャイアントパンダ「香香(シャンシャン)」の動画である。 知事の強い意向で急きょ追加された。ただ、当のシャンシャンは、新型コロナの影響で「おうち」の中国に帰れずに日本で足止めを食っている。パンダファンには不幸中の幸いかもしれないが、なんとも皮肉な状況と言っていい。 それはともかく、家で楽しむ動画はネット上に溢れかえっている。わざわざ自治体が税金をつぎ込んで労力をかけてまで作成する意味がどこにあるのか分からない。芸能人やタレントとの動画共演が好きな小池知事の“道楽”に付き合っているほど、都民は暇ではないだろう。 ●「広報東京都」は五輪特集 さて、「広報東京都」の5月号が自宅に届いた。新型コロナの情報はわずか1ページしかなく、12ページ中4ページを割いて「東京2020大会」を大々的に特集していた。都民に外出自粛を呼びかけておきながら、これでもかと言わんばかりに五輪の開催情報を掲載しているのだ。 オリパラ組織委員会が打ち出した500人の看護師確保要請に負けず劣らず、都民・国民の神経を逆なですること甚だしい。こうした動きを見ると、小池知事のスタンスは五輪強行開催のようにも見受けられるが、本心はまったく違うところにある。民意の流れを読むことに長けた小池知事が、そこを見誤るはずはない。 状況証拠はある。4月23日、ある資料が公表された。タイトルは「新型コロナウイルス感染症対策に係る東京都の取組」。この資料は、財務局主計部を中心に突貫工事で作成されたと聞く。59ページに及ぶ資料は、過去1年間、都が実施した様々な対策についてデータを交えて事細かに記載したものである。中でも目を引くのは、これまでに投入した事業費の総額が3兆4444億円にも上るということだ。 小池知事は「都民の皆さん、私はこんなに税金を費やして精一杯頑張っているんです」と主張したいのだろう。小池知事は外部からの批判に弱いため、各方面からの「何もやってない」コールに神経をとがらせているのだ。だが、都民からすれば、3兆円も投じて感染を抑え込めないなんて、と呆れられるのがオチである。 ●小池知事は「総括」に入っている ただし、資料作成の理由はそれだけではない。 小池知事は、民間機関がコロナ第1波に関しての報告書をまとめる際、「オン・ゴーイング(現在進行中)なので取材には応じられない」としていた。しかし、今回、第4波がオン・ゴーイングの最中、なぜ、自らの実績をひけらかすような資料を作成したのか。この点を見逃してはいけない。 「コロナとの戦いを総括し次に備える」 これこそが、本当の動機ではないだろうか。小池知事はモニタリング会議などの専門家から日々、新型コロナの情報を得ており、変異型ウイルスの脅威についても嫌というほど理解しているはずだ。だとすれば、今回の短期集中の緊急事態宣言では抑えきれないことも重々わかっている。つまり、その先に迫っている五輪開催がほぼ不可能なことも、である。 既に一部では、五輪中止を誰が言い出すかに注目が集まっているが、言い出しっぺが必ずしも拍手喝采を浴びるとは限らない。むしろ、新型コロナの感染が確認されて以降、小池都政がどんな対策を実施し、どれだけの成果を上げたのか。裏返せば、対策の失政の度合いこそが大きく問われることになる。 五輪中止となれば醜い責任の押し付け合いが始まるのは火を見るより明らかだろう。つまり、小池知事はそれを見越して、五輪中止で負わされる傷を最小限に留めなければならないと考えているのではないか。 だからこそ、自らの実績をしっかりまとめ、五輪中止のタイミングに備えている。迷走を繰り返した安倍前内閣や菅内閣よりも「少しはマシ」だったと都民に感じてもらえれば、小池知事の勝ちなのである。 駄目さ加減のより少ないほうに軍配が上がることを一番理解しているのが、小池百合子という政治家である。 もはや五輪撤収モードは止まらない。 |
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●東京五輪「日本の状況考えれば十分開催できる」遠藤利明副会長 5/2
東京五輪・パラリンピック組織委員会の遠藤利明副会長は1日のBSテレ東番組で、現時点で東京大会の開催は可能だとの認識を示した。「世の中に(新型コロナウイルスが)まん延し、できないとの判断がないとは思わないが、日本の状況や対応を考えれば十分開催できると思って取り組んでいる」と述べた。中止する場合の判断期限や中止の可能性については「考えていない」と語った。 6月に決める観客上限については「無観客の方が準備は楽だが、プロ野球やJリーグの状況を踏まえて判断する」と強調。「状況が許せば5月(の判断)もあるかもしれない」と述べた。 ●オリンピックは再延期か中止を──開催で世界中から変異株集める恐れも 5/2 初の1年延期を経て、東京オリンピックの開会式まで90日を切った。一方で、新型コロナウイルス感染症拡大が再燃している。政府は25日、東京や大阪をはじめとする4都府県に3度目の緊急事態宣言を発出した。特に、イギリス型やブラジル型、南アフリカ型、インド型等の変異株拡大に警戒を強めている。共同通信が4月に実施したオリンピックについての世論調査によると、再延期を望む声が32.8%、中止が39.2%と、国民の72.0%が今夏の開催を望んでいないことが明らかになった。今夏のオリンピックは、延期あるいは中止すべきだ。 今夏開催を取りやめるべき理由はただ一つ。訪日外国人の激増だ。100万人規模の観光客受け入れは断念した。しかし、選手およそ1万5000人に加え、各国の役員や要人、報道関係者などが大挙して東京にやってくる。その数は、最大で9万人。当然、出国時の陰性証明を求めたり、来日後の2週間の隔離や期間中に頻繁な検査を行ったりと、さまざまな対策を打つとされている。 とはいえ、これまで我々が経験してきたように、感染者の入国と、入国者からの感染拡大を100%止めることはできないだろう。最も大きな問題は変異株だ。開催を強行すれば、世界中から東京に変異株を集めてどうなるのか。壮大で愚かな人体実験をすることにもなりかねない。 昨年秋、陽性者の増加が落ち着きを見せ始めたことで、政府は9月から入国制限の段階的な緩和を実施した。しかし、入国者が増えるごとに陽性者と死者数も増増加してきた。8月までは146カ国からの入国を拒否していたが、9月に一時帰国していた留学生の再入国を認めたのを皮切りに、9月に五つの国と地域との間で企業の駐在員などの往来を再開。10月には、全世界を対象に厳しい制限は解除した。 しかし、12月にはイギリス型の変異株対策でイギリスからの入国拒否が始まり、再び全世界からの新規入国を停止した。訪日外国人の数は、入国緩和とともに拡大し、10月に2万7000人、11月に5万7000人、12月におよそ5万9000人の外国人が日本を訪れた。訪日外国人の数と、陽性者数、死者数には強い相関があるのではないかと疑われる。 陽性者、死者が急増した年末年始、多くの国民が不安な時を過ごした。ピークの1月には、陽性者数が15万4000人、死者が2500人を数えた。この急拡大の要因が全て訪日外国人によるものとはいえない。しかし、増加のタイミングとピークの高さを見ると、偶然の一致とはいい切れない。12月は、8月に比べ5万人の訪日外国人が増加した影響が少なからずあるだろう。 さて、オリンピックだ。この6月から7月にかけ、9万人の外国人が訪れるとすれば、年末年始の倍近いインパクトが懸念される。しかも、オリンピックに参加する206カ国から、どれだけの変異株が集まるのだろう。これまで先進国の中では比較的小さな被害で済んできた日本とはいえ、あまりにもリスクが高すぎる。今夏のオリンピック・パラリンピックは延期または中止すべきだ。東京を変異株の見本市会場にしてはならない。 ●「五輪中止」二階発言の疑心暗鬼 5/2 政府や東京都などと国際オリンピック委員会(IOC)が足並みをそろえて開催に突き進む東京五輪・パラリンピックについて、二階俊博自民党幹事長が「中止」に言及したことが内外に大きな波紋を広げた。菅義偉政権誕生の立役者で、「首相以上の権力者」といわれる二階氏の発言だけに、国内はもちろん、海外のメディアまでが速報する騒ぎとなった。二階氏はすぐ、文書で釈明コメントを出して軌道修正したが、「政界随一の寝業師」(自民長老)と呼ばれる同氏があえてタブー視されてきた「五輪中止」を口にしたことで、自民党内に「ポスト菅政局を念頭に置いた発言」(閣僚経験者)との疑心暗鬼も広がった。 二階氏は15日午前の民放CS番組録画で「これ以上とても無理だということだったら、これはもうスパッとやめなければいけない。オリンピックでたくさん感染病をまん延させたっていったら、何のためのオリンピックか分からない」と、真顔で語った。大阪を起点とするコロナ感染「第4波」に首相が苦闘する中での自民最高実力者の発言とあって、内外メディアの速報を受けて、ネット上でも五輪中止論が急拡大した。二階氏は間を置かずに「何が何でもオリンピックとパラリンピックを開催するのか、と問われれば、それは違うという意味で申し上げた。安全・安心な大会の開催に向け、しっかり支えていくことに変わりはありません」とするコメント文を発表。五輪主催者の小池百合子都知事や丸川珠代五輪担当相は「叱咤(しった)激励と受け止めた」と口をそろえ、大会組織委員会の橋本聖子会長も「心配されての発言」などと事態の鎮静化に躍起となった。 そもそも、首相をはじめ政府・与党幹部の間では「中止という選択肢はない」が合言葉。IOCも開催まで100日を迎えた段階で、ジョン・コーツ副会長の「大会は必ず開催され、7月23日に開幕する」との発言を公開しており、二階発言は「全く想定外の事態」(組織委幹部)だったとみられる。しかも、これまで独特の“二階節”で政局を動かしてきた人物の発言だけに、自民党内でも二階氏の「真意」をめぐって揣摩(しま)臆測が飛び交う状況となった。 そうした中、首相は16日に訪米し、17日未明にバイデン米大統領との日米首脳会談を行った。同大統領の初の対面での首脳会談として世界の注目を浴びたが、首相はその中で東京五輪について、これまでの「コロナに打ち勝った証し」との常套(じょうとう)句に代えて「世界の団結の象徴」として開催を実現する決意を伝え、同大統領も「その努力を支持する」と応じた。しかし、ここにきての全国的なコロナ感染拡大が五輪の前途に立ちふさがり、各メディアの最新の世論調査では「中止・延期」を求める声が7割を超え、米有力メディアも「一大感染イベントになる可能性」を警告するなど、開催への環境は厳しさを増すばかりだ。 このため、自民党内に「最終的に感染爆発で開催中止に追い込まれれば、首相は即時退陣」(閣僚経験者)との声も出るだけに、今回の二階発言を、「首相を見限り、ポスト菅のキングメーカーを狙う思惑」などと勘繰る向きもある。その一方で二階氏周辺は「司会者の誘導質問に引っ掛かった二階氏のミス。菅・二階体制は全く揺らいでいない」と強調する。しかし、変幻自在の言動で政局を意のままに動かしてきた二階氏だけに「政局的意図がないはずはない」(細田派幹部)との見方は根強い。このため5月以降への先送りが想定されている五輪開催最終決断をにらみ、「ポスト菅」も絡めた自民党内のざわめきは収まりそうもない。 ●青木理氏、東京五輪の開催に「もういい加減、冷静に考えましょう… 5/2 2日放送のTBS系「サンデーモーニング」(日曜・午前8時)で、コロナ禍での東京五輪・パラリンピックの開催について特集した。 番組では、丸川珠代五輪相が4月27日の記者会見で、五輪組織委が日本看護協会に対し、約500人の看護師派遣を要請している件について、新型コロナウイルス感染状況を踏まえた東京五輪・パラリンピック期間中の医療提供体制が東京都から提示されないままだとし「そろそろ大会を開催する当事者としてお示しいただきたい」と対応の遅れに苦言を呈したことを報じた。 また、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は28日の衆院厚生労働委員会で開催について「組織委員会など関係者が感染のレベルや医療の逼迫(ひっぱく)状況を踏まえて議論をしっかりやるべき時期に来ている」と述べたことも伝えた。 さらに28日の東京五輪組織委と日本政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の代表者による5者協議で国内の観客上限について、当初の4月ではなく6月に決めることで一致したことも報じた。会合では、IOCのバッハ会長が「日本の社会は連帯感をもってしなやかに対応している。大きな称賛をもっている。精神的な粘り強さ。へこたれない精神をもっている。それは歴史が証明している。逆境を乗り越えてきている。五輪も乗り越えることが可能だ。献身的な努力で未曽有のチャレンジをしている」と呼びかけた。 こうした中で、大会期間中に日本看護協会に500人規模の看護師派遣を要請したことに反対論が起きていることを受け、菅義偉首相が「現在休まれている人がたくさんいると聞いている。可能だと思う」などと述べたことも伝えた。 スタジオでは、4月10日から12日に共同通信が実施した世論調査で東京五輪・パラリンピックについて「今夏開催すべき」が24・5パーセント、「再延期すべき」が32・8パーセント、「中止すべき」が39・2パーセントだったことを紹介した。 この1週間での東京五輪への動きにコメンテーターでジャーナリストの青木理氏は開催について「もういい加減、冷静に考えましょうよ、ということですよ」と指摘し、世論調査で7割が中止か再延期を求めていることに「市民が望まないオリンピックをやってどうするんだろうか。やれるんだろうか」と疑問を投げかけた。 さらに「医療の話でも大阪はもう医療崩壊状態になってしまっている。重症者対策をやらなくちゃいけない。かつワクチンですよね。政府の説明を信じるとしても7月末までに高齢者やる、9月までに国民全員分のワクチンが入ってくる。北海道から沖縄まで全国津々浦々で、ものすごい医療資源の集中投入が必要になるわけですよね。その時に猛暑のオリンピックだから当然、医療スタッフがいりますよね、選手のために。そんな医療資源、つまり三正面作戦ができる状況ですか?今。本当に考える」と指摘した。 続けて「選手をはじめとする大会関係者を毎日(PCR)検査するっていうんだけど、これ数万人って言われているんですよね。数万人の検査を毎日やる能力ってあるんでしたっけ?今、東京都は、だいたい1日多い時でも2万いってないんですよ。それを数万人に毎日検査して、その検査の能力あるんですか?仮にあるとして、じゃあ一般の感染者の検査どうするんですか?あるいは、そんな能力があるんだったら最初からモニタリング検査、どうしてやらなかったんですか?っていう話にもなる」と疑問を投げかけた。 その上で「検査にしても医療資源にしても今の市民感情にしても、僕は、もうオリンピックをやらない、やれない決断をそろそろするべきだ、する時期じゃないかなと僕は思います」と提言していた。 ●舛添氏、小池都知事と丸川大臣の確執に「バカコント」と苦言 5/2 先月27日、丸山珠代オリンピック・パラリンピック担当大臣が閣議後の記者会見において「医療の現場を預かるのは東京都。大会を開催する当事者としてどのようにするおつもりなのかということをお示しいただきたいと思っている」などと苦言を呈したことに対して、東京都の小池都知事が「実務的には詰めている」としたうえで「都の役割の部分と組織委員会の方で決めているので、それらについてよく聞いていただきたい。これは連携しながらやっていくこと。コミュニケーションをしっかりとっていく必要がある」などと反論。両者の溝が浮き彫りになった。 一連の出来事に元東京都知事で国際政治学者の舛添氏が言及。「世の中楽しみを奪われているから、こういうバカコントがあってもいいのでは」と皮肉交じりに苦言を呈した。 「なぜ、(小池都知事と丸川大臣が)直接喋らないのか」 そのような疑問に対して話を振られたのは、元厚労省官僚で元衆議院議員の豊田真由子氏。豊田氏は「すごくわかりやすい」と話すと「あの二人だけの問題だけではなく、自民党と小池さんがむっちゃ仲が悪い。政治は敵か味方か。小池さんは自民党の衆議院議員だったが、都知事になるときに自民党から公認がでなかったので飛び出した。自民党は別の候補を立てて戦って小池さんが勝っている。自民党からすれば、選挙で戦った相手は生涯の敵」などと持論を展開。 さらに豊田氏は「この危機下だから仲良くやってよと国民の皆様は思うかもしれないが、むしろ絶対無理。手柄を持たせてしまったら、次の選挙のとき、自民党の候補を立てた時に負けてしまう。都知事に限らず、自分のお住いの知事が政権与党の知事か、それとも野党の知事かで国との距離感が全く違う。関東でみても明確に色は分かれている」と説明した。 |
●東京五輪 9知事が「感染次第で中止・延期」 全国知事調査 5/3
新型コロナウイルス感染拡大の影響が懸念される東京オリンピック・パラリンピック開催について毎日新聞が全47都道府県知事に行ったアンケートに対し、五輪の競技が行われる埼玉、静岡、山梨を含む9県の知事が「感染状況次第で中止・延期にすべきだ」と回答した。その他の知事は「わからない」とするなど多くが明確な回答を避けた。開催がもたらすメリットについては「状況次第で中止・延期」とした9知事を含む41知事が「ある」「どちらかといえばある」と答えた。 7月23日〜9月5日の間に開かれる五輪・パラリンピックを巡っては、国内で新型コロナワクチン接種や患者対応が十分でない中、大会に医療資源を振り向けることが批判されるなど開催を疑問視する声がある。報道各社が開催について尋ねた4月の世論調査では「中止・延期」がおおむね6〜7割台となっていた。 ・・・ ●英紙が東京五輪中止を求める「日本医療界の怒り、嘆き、憎悪」を特集 5/3 英高級紙「ガーディアン」は、新型コロナ禍の深刻化により日本の医療界で東京五輪に対する「憎悪」が増幅していると厳しく糾弾した。 同紙は、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が日本看護協会に対して大会期間中の医療スタッフとして看護師500人の確保を要請し、菅義偉首相もその方針を支持している問題を特集。この件に関して医療従事者が激怒する声を取り上げた。 「東京五輪の主催者は、500人の看護師にボランティアを依頼して日本の医学界に怒り≠引き起こした」と指摘する同紙がまず紹介したのが、日本医療労働組合連合会(医労連)の森田進書記長の声だ。 「深刻なコロナウイルスのパンデミックとの闘いに従事している看護師を、五輪にボランティアとして派遣するという提案をやめなければならない。私は、患者と看護師の健康と生命へのリスクにもかかわらず、五輪の開催を主張することに激怒している」と日本国民の生命を危険にさらそうとしている政府や東京都、大会組織委員会に対して怒りをあらわにした。 また同紙は、最前線で働く医療従事者の声として名護市で働く看護師のコメントも報道。「怒りを感じるだけでなく(要求の)鈍感さに驚いた。それは人間の生命がいかに軽視されているかを示している」と暴走を続ける東京五輪の主催者に向けて悲痛な叫びを上げた。 そして東京都医師会の尾崎治夫会長が、日本でより感染力の高い新型コロナウイルスの変異種が蔓延しているため五輪の開催は「非常に難しい」との見解を示したことも併せて報じた。 こうした医療界の声を踏まえ「こうした要請は、国際オリンピック委員会(IOC)や主催者が、日本でパンデミックが悪化し続けているにも関わらず、このイベントが疲れ果てた医療従事者に耐え難い負担をかける可能性があるという警告だ」と同紙は断罪した。 日本を医療崩壊へと導いているといっても過言ではない東京五輪。開催を強引に推し進める主催者たちは、開催強行により失われる多くの国民の生命に対してどう責任を取るつもりなのだろうか。 ●東京五輪にスポーツドクター200人募集 医師から苦言 5/3 東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会が大会期間中に選手のけがの治療などを行う医師を200人程度募集していることが分かりました。 東京オリンピック・パラリンピックの期間中に約500人の看護師派遣を要望している大会組織委員会。同様に各会場の医務室などで患者に対応するスポーツドクターを日本スポーツ協会を通じて200人程度募集していることが分かりました。 スポーツドクターは医師免許を取得後、4年が経過し、必要な講習などを受けた後に得られる資格で、スーパーJチャンネルにも出演している日本医科大学の北村義浩特任教授も募集を受けた一人です。 日本医科大学・北村義浩特任教授:「まず200人の募集がかなり多い人数というのが1つ。2つ目はそのなかには2つ書かれていないことがあった。1つは給与。報酬が書かれていないのでボランティア募集だなということ。もう一つは五輪の運営に関わる人にどのくらいPCR検査をするのか」 協会が対象者に送った募集案内によりますと、活動内容は熱中症や新型コロナの疑いがある人への救急対応に加え、けが人の治療が中心。 少なくとも数日程度は従事できることが条件のうえ、ボランティアなので交通費相当額を除き、謝礼は支給されません。さらに、北村特任教授はこう懸念を示します。 日本医科大学・北村義浩特任教授:「医務室に行くための交通費は払ってくれるということだが、ということは毎日、自宅から通えということなので、そうすると大会運営に関わる職員が自宅に帰れば家族もいる。公共交通機関、混雑時に動けば感染リスクも高くなる。そういうリスクが高い医者を医務室に置いておくこと自体、納得できなかったのでこれはおかしいやり方だなと思います。(募集の)200人という数字はちょっと多い。この方々が足りないと言っている地域のワクチンの打ち手になる方がよろしいのでは」 ●“わきまえる女性”橋本聖子会長がスケート界の怒りを買う理由 5/3 東京オリンピック界隈が騒々しい。 橋本聖子氏(68)が会長を務める東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が日本看護協会に対して大会期間中に看護師500人の派遣を要請したニュースが流れると、SNSは批判一色に染まった。 しかも今回は、政治家まで参戦したことで騒ぎは一層大きなものになった。丸川珠代オリンピック・パラリンピック担当大臣(50)は、記者会見で東京都に対して牽制の言葉を発した。 「医療の現場を預かるのは東京都。ですので東京都がまず自分たちが一方では大会の主催者としての責任。そして一方では、医療の現場を預かる者としての責任。この両方の責任をどのように果たすのかということについて、明確な発信なり方向性なりをお示し頂かないと。私たちもそれをどのようにお教え申し上げればよいのかということについて、非常に戸惑っているという状況です」 それに対して小池百合子都知事(68)は、「確認します」と冷たく対応。2020年の都知事選では、再選を狙う小池都知事への刺客として丸川大臣の出馬が噂された因縁もある両者の間で、緊張感あふれるやりとりが交わされた。 ●「聖子ちゃんはすごかったよ」 そんな女の戦いが繰り広げられる中で、めっきり存在感が薄いのが組織委員会の橋本聖子会長。前任の森喜朗氏(83)はよくも悪くもニュースに名前が出ることが多かったが、橋本氏は会長就任以降も発言に注目が集まる機会が少ない。アスリート出身で知名度は2人に負けないはずだが、小池都知事や丸川大臣と比べると主張も個性も一般層に浸透しているとはいいがたい状態だ。 そもそも、橋本聖子という人はどういう人間なのだろう。スピードスケートと自転車の二足の草鞋をはいていた現役時代を知る元新聞記者は、当時の橋本氏についてこう語る。 「現役時代の聖子ちゃんはすごかったよ。実績はもちろん人気もすごかった。聖子ちゃんを嫌いだっていう人に会った記憶がない」 経歴をたどれば、その言葉が嘘でないことは納得できる。 橋本氏は、東京オリンピックが開催された1964年に北海道で生まれた。スピードスケートで早くから頭角を現し、中学3年生で全日本選手権を初制覇。1984年のサラエボ大会でオリンピック初出場を果たすと、その後もカルガリー、アルベールビル、リレハンメルと4度の冬季オリンピックに出場している。 それと並行して、自転車競技でも1988年のソウル、バルセロナ、アトランタと3度夏季オリンピックに出場している。夏季と冬季両方のオリンピックに出場したのは日本人として初で、合わせて7度の出場は日本人女子として史上最多。前代未聞のスーパーアスリートなのだ。 1992年のアルベールビル冬季オリンピックでは、スピードスケート女子1500mで銅メダルも獲得している。名前の「聖子」も聖火にちなんでの命名であり、オリンピックとこれほど縁のある人生を送っている人はそういない。 政治家としての経歴も華々しい。1995年に参議院議員選挙に立候補し、初出馬で当選。最後のオリンピックとなったアトランタオリンピックへの出場は1996年なので、その時はすでに国会議員でもあった。 それ以降、現在まで当選回数は5回。すべて参院選比例区への立候補で、獲得票数は常に上位で危なげなく当選を続けている。 2016年には、女性として初めて自民党参議院議員会長に就任。そして2019年にオリンピック・パラリンピック担当など複数の役割を担う立場として初入閣。森氏の後を継いで組織委員会会長に就任したのは記憶に新しい。 ●典型的な“わきまえる”タイプ? 橋本氏のキャリアを見れば、アスリートとしても政治家としてもエリートコースを完璧に走り切ってきた姿が見えてくる。にもかかわらず、人間としての個性が見えてこないのはどうしたことだろうか。 「森さんの言葉を借りれば、典型的な“わきまえている”女性だよね。言葉の力があるわけではないし、絶対にこうしたいと強く主張するタイプでもない。彼女に強いリーダーシップを期待するのがそもそも間違っていると思う」 前出の元新聞記者はそう言いつつも、橋本氏をかばってみせた。 「だからこそ、組織の中でうまくやって来られた部分は否定できないでしょう。スポーツしかやって来なかった彼女が政界入りしてどうなるかと思ったけど、森さんを筆頭に長老たちに可愛がられてここまで来た。とんがってもいないし、周りを見てスタンスを調整しながら、与えられた職務はそれなりに果たす。今も会長としての仕事を真面目にやってるんじゃないかな」 しかし、橋本氏の出世を苦々しく思う人もいる。橋本氏はスピードスケートでの絶大な実績によって、2006年から2019年まで日本スケート連盟の会長を長く務めていた。しかしスケート連盟はスピードスケートだけでなく、フィギュアスケートも管轄していた。そのフィギュア界では、橋本氏の評判は極めて悪いのだ。フィギュア取材が長い現役の中堅新聞記者は、「あのときのことは今でも許せません」と怒りを露わにする。 「あのときのこと」とは、2014年ソチオリンピックの打ち上げパーティーで高橋大輔にキスを強要したとされる事件だ。 「当時の橋本氏は日本選手団の団長も務めていて、選手から見れば決して機嫌を損ねてはいけない存在だった。その立場を利用して、公衆の面前で口と口のキスですからひどいですよ。さらに問題が発覚した後も、謝罪は書面だけ。逆に、高橋選手が『大人と大人がハメを外しすぎたということで、お酒が入ってしまい、はしゃぎすぎてああなった。反省してます』と謝罪に近い言葉を発する羽目にまでなりました。フィギュアファンは決してあの事件を忘れません」 2014年のソチオリンピック関連では、浅田真央への“安倍総理(当時)とのハグ強要事件”も起こしている。 「ソチから帰国したあとの記念品贈呈式で、明らかに戸惑っている真央ちゃんに何度も総理とハグするように促していました。安倍総理が気を使って一度は断ったものの、橋本さんが強要するようにハグさせた。しかも流れの中で羽生結弦さんが真央ちゃんにハグを勧める形になって、羽生さんにまで批判が及びました。ただ、どう考えても悪いのは橋本さんです」(前出・中堅記者) さらに最近では、水泳業界からの評判も芳しくないという。日本水泳界の至宝である池江璃花子の白血病公表に対する発言がきっかけだという。池江が診断を公表した2019年2月12日の4日後に、オリンピック関連のイベントで橋本氏が「オリンピックの神様が池江璃花子の体を使って、オリンピック、パラリンピックというものをもっと大きな視点で考えなさいと言ってきたのかなと思いました」と発言したのだ。 「白血病は競技復帰どころか生命の危険さえある病気。しかも池江選手は当時18歳です。そんな彼女が苦しみ抜いて白血病を公表した直後のあまりにも無神経な発言に周囲は驚きました。発言の真意を問われて『私たちこそが、池江選手の治療できる環境、頑張ってもらえる環境を作らなければならない』と釈明しましたが、まったくアスリートファーストじゃないですよね」(前出・中堅記者) 直前には「私も高校3年生の時に(腎臓の)病気をして、立ち直ることができた一人であるなというふうに思っております」と自分の体験に重ねてエールを送っていたが、この時も“神様発言”への批判が巻き起こった。 橋本氏自身は小学生の時から腎臓の持病を抱えてアスリートとして活動を続けて、輝かしい実績を残した。そのことは誰にも否定されるものではない。その背後には、芯の強さや粘り強さといった性質があるのだろう。 しかし現在は、肝心の“芯”がどちらを向いているのかが見えない状態だ。一見物腰は静かだが、その“芯”が国民の意志と相反するものだった場合、大きく国民の期待を踏み外す危惧も感じる。 前任の森氏の危うさはわかりやすかった。しかし橋本氏の存在感のなさは、もしかするとそれ以上に危ういものなのかもしれない。 ●東京五輪は開催すべき? 47知事に聞くと… 入り交じる期待と不安 5/3 新型コロナウイルスの影響が懸念される今夏の東京オリンピック・パラリンピック開催について毎日新聞が全47都道府県知事に行ったアンケートに対して、五輪の競技が行われる埼玉、静岡、山梨を含む9県の知事が「感染状況次第で中止・延期にすべきだ」と回答した。新型コロナウイルスの感染対策に国などが万全を期して開催できるように望む声が上がる一方、第4波の拡大が収まらない中、国の対策への注文や提言も多く寄せられた。開幕まで3カ月を切った大会に対する不安がにじんでいる。 アンケートでは41知事が開催のメリットを認めるなど大会に向けた期待は大きい。新潟県の花角英世知事は「各国・地域の参加状況や国内の感染状況などから無観客での開催や中止・延期もあり得る」としつつ、「アスリートにとって4年に1度の晴れ舞台で多くの国民も活躍を楽しみにしている」と回答した。宮崎県の河野俊嗣知事も「半世紀ぶりの日本での開催で、アスリートはもとより国民にとってもさまざまな意味で特別なもの」と開催を待ち望んでいる。 ●コロナ感染次第では… 「感染状況次第で中止・延期にすべきだ」と回答した9県知事も開催の意義に理解を示しつつ、中止・延期すべき状況や国への注文を具体的に挙げた。 静岡県の川勝平太知事は「各国からアスリートを迎えるに当たっては感染状況を落ち着かせる必要がある。国民が『いつでも、だれでも、何度でも』検査を受けられる体制を構築するよう国に求めたい。そのことが開催国としての責務ではないか」と投げかける。 山梨県の長崎幸太郎知事は4月に記者会見で述べた発言と同様に「県民の健康状態に極めて大きな深刻な影響を及ぼすような感染状況であるならば開催を延期・中止すべきだ」との考えを示す。沖縄県の玉城デニー知事も「国民、県民の生命を守ることが最優先である」として「東京を中心とした各地に緊急事態宣言が発出されるなどした場合」は中止・延期すべきだとした。 他に、中止・延期すべき状況について、秋田県の佐竹敬久知事が「全国を対象とした緊急事態宣言が出た場合など」。茨城県の大井川和彦知事が「どのような対策を講じたとしても開催が無理だと誰もが判断する状況」と回答。また、長野県の阿部守一知事は「開催の是非については多くの方が納得できる基準を設けて判断することが必要」と国などに注文を付けた。 ●「対策の徹底」求む 9県以外の知事からも要望や注文が上がった。鹿児島県の塩田康一知事は「感染が地方に拡大することがないよう感染症対策を徹底していただきたい」と懸念を示す。高知県の浜田省司知事は「コロナ禍における(事前合宿の)受け入れにあたって必要となる財政支援をお願いしたい」。石川県の谷本正憲知事は「諸外国と連携し、水際対策をはじめとした感染防止対策を強化すること」を求めた。 国や東京都のコロナ対策が不十分だとして「五輪を開く資格がない」と批判していた島根県の丸山達也知事は「開催の賛否については回答を控える」とした。 開催を巡っては、自民党の二階俊博幹事長が4月15日にテレビ番組の収録で「これ以上とても無理だということだったら、これはもうスパッとやめなきゃいけない」と発言。大会組織委員会の橋本聖子会長は同23日の定例記者会見で「(開催の)不安は私にもたくさんある」と述べている。また、楽天の三木谷浩史会長兼社長は4月に自身のツイッターで「今年の五輪開催はあまりにリスクが高すぎると思っており反対です。アスリートの方々には本当に申し訳ないけど、一生懸命生きているのはアスリートだけでないので」と投稿した。 ●敗色濃厚の五輪に看護師「動員令」、悲しきかな大戦末期に瓜二つ 5/3 『釣りバカ日誌』という漫画がある。シリーズ映画化もされて大ヒットした。そのタイトルにもあるように、本当にそのことが大好きで熱中してしまう、肯定的な意味で「バカ」を使う例だ。一方で、熱中するあまり、社会的な常識や一般的な配慮に欠ける側面もあわせ持つ。同作ではそこが笑いを誘った。 東京オリンピックまで3カ月を切って、3回目の緊急事態宣言が発出されているいま、どうしても東京オリンピックを開催したい「五輪バカ」の暴走が目立ってきた。もはやその言動が失笑を買っていることにも気付いていなようだ。 ●「選手やコーチに毎日検査」で安全確保実現の腹積もり 東京オリンピック・パラリンピックに参加する選手などに、新型コロナの感染防止に必要なルールをまとめた「プレーブック」が更新されたのは、大型連休に入る前日の4月28日のことだった。国際オリンピック委員会(IOC)や東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会が作成したものだ。 それによると、日本への出国前96時間以内に2回の検査を行うことや、入国後は選手、コーチのほかに帯同する関係者も、原則として毎日、検査を受けることなどが明記されている。今年2月に公表されたものより、検査体制が強化されている。それで菅義偉首相が標榜する「安全安心な大会」を実現するつもりらしい。 だが、そもそも「安全安心な大会」だったら、毎日の検査は必要ない。安心できないから、毎日の検査を義務付ける。もはや「安全ではない」ことを示しているに等しい。 ●いつの間にか消えた「新型コロナに打ち勝った証」の宣言 今年1月には、菅首相が国会における施政方針演説で、こう明言していたはずだった。 「夏の東京オリンピック・パラリンピックは、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、また、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたいと思います」 それが、4月の日米首脳会談のあとに公表された「日米首脳共同声明」では、「バイデン大統領は、今夏、安全・安心なオリンピック・パラリンピック競技大会を開催するための菅総理の努力を支持する」とある。いつの間にか「安全安心な大会」に置き換わっている。それでシラを切っている。 ●休んでいる看護師をも「動員」 大会組織委員会が日本看護協会に、大会の医療スタッフとして看護師500人の派遣を要請していたことを明らかにしたのは、4月26日の会見でのことだった。3回目の緊急事態宣言が発出されている現状からすれば顰蹙を買っても仕方ない。現場の看護師からもSNS上などで反対や批難の声があがった。 ところが、この件について菅首相は、4月30日に記者団の問いかけにこう答えている。 「看護協会の中で、現在、休まれている方もたくさんいらっしゃるというふうに聞いていますので、そうしたことは可能だというふうに思っています」 だったら、緊急事態宣言が発出されて、大阪府が医療崩壊の危機に直面しているいまこそ、協力を求めるべきではないのか。休んでいる看護師にもそれぞれ事情はあるはずだ。これは明らかに「動員」を示唆している。 ●「安心安全を最優先」でも「中止」や「延期」は選択肢になしか そうした中でも、聖火リレーは続けられている。だが、各地で公道を走ることが中止され、観客もなくひたひたと聖火が渡っていくだけ。いったい、どこの誰のための聖火リレーが日本を縦断しているのだか、まったくわからない。 そもそも、今年2月に女性蔑視発言で森喜朗・前組織委員会会長が辞任して、橋本聖子氏が後任の会長に就任すると、理事会における女性の割合を40%以上にすることを提唱し、新たに12人の女性理事が就任した。これにあわせて組織委は定款も変更し、理事数の上限を35人から45人に引き上げた。それで女性の比率は20%から42%となった。 だが、それだけ人が増えたことで、それまでの1人当たりの発言時間が短縮される。以前の発言時間を維持しようとすれば、会議が長くなる。それで充実した議論が尽くせるのか。ただ増やせばいいというものでもない。中身の問題だ。人が増えたところで、現状に異論や批判が出ないとすれば、首を傾げたくなる。 その橋本会長は、看護師500人要請を認めた直後の28日、IOCなどとの5者会談で、「医療に支障を来すような状況になったら、安心安全を最優先するため『無観客』を決断しないといけない」と発言したとされる。 いや、「安心安全を最優先」なら「無観客」ではなく、延期や中止だろう。 無観客で、海外から来た選手は関連施設に隔離して毎日、検査を実施する。北朝鮮のように新型コロナ対策を理由に選手を派遣できない国も増えてくるはずだ。出場国は限られ、規模は縮小され、当初の経済効果も見込めず、オリンピックとも呼べないような大会を日本で開催する大義が見えてこない。新型コロナウイルスの感染拡大で苦役を強いられる現状で、国民がいっしょになんて喜べない。それとも、3カ月後には新型コロナウイルスが消えてなくなるという保証でもあるのか。ないから毎日の検査が必要とされる。 ●敗色濃厚を察知しながらも泥沼に突っ込んでいった大戦末期と同じ道ではないか 「五輪バカ」には、中止という選択肢はない。主催者側に立てば大会を実行することが目的となる。とにかく「やった」「やってみせた」という実績と歴史を残すことに意固地になる。それがあちらこちらでハレーションを生む。 かつての日本が敗戦へと突き進んだ道。奇襲攻撃に成功して歓喜したまではいいが、やがて戦局が変わり、本土が空襲され国民の多くが犠牲となっても「戦争バカ」の指導者たちは戦争を止めるとは言い出さなかった。領土と国民の生命、財産を守るという軍隊の本分を見失っていた。敗色濃厚となっても、学徒を動員し、特攻で多くの若者の命を引き替えにした。 それどころか、看護師500人の動員をこの期に及んで求めながら「休んでいる人がいるから大丈夫」とは、「食料は現地調達できるから大丈夫」と兵站を甘く見た敗因に通じる。最前線で戦っている人間だけが、その過酷さを知る。 国民が昨年に引き続き、この大型連休中も我慢と苦難を強いられながら、それでも東京オリンピックはやるというのなら、その決意は「戦争バカ」と変わらない。 ●忍び寄る「中止」の気配… Xデーに至る「3つのシナリオ」とは 5/3 東京五輪開催がいよいよ土俵際だ。新型コロナウイルスの猛威は収まる様子がなく、医療現場はひっ迫。「五輪をやる状況ではない」との世論が大半を占める現状だ。とはいえ、仮に中止になるとすれば、誰がいつ、どのような形で決断するのか。複数の五輪関係者の話を基に中止に至る3つのシナリオを考察する。 一つは国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(67)が決断するパターン。言わずもがな、五輪の主催者で開催の決定権を持つのはIOCだ。どの国の誰が中止を提言しようと、最終的にはIOCが決定することになる。 だが、IOCは収益のほとんどを4年に1回の夏季五輪でまかなっている。最も大きな収入源であるテレビ放映権、さらにスポンサーからの多額の拠出金だ。大手広告代理店を含め、4年に一度のサイクルで循環する五輪マネー≠フ流れが止まれば、たちまち存立の危機に陥る。バッハ会長が断を下すにしても、放映権とスポンサーの問題がクリアになることが絶対条件。となると、スパッといくとは考えにくい。 2つ目のシナリオは日本側がギブアップ≠オた場合だ。こちらも最終的にはIOCが決定するが、主催者に場所を提供する立場として開催都市契約を結ぶ東京都、または日本政府が「もうできません」とバンザイすればすんなり中止に至るだろう。無論、この場合は日本側に多額の違約金の支払いが課せられるため、IOCとしては傷は少なく済む。 この場合の焦点は、日本側の誰が中止を提案するかにある。可能性としては菅義偉首相(72)、小池百合子知事(68)のどちらか。もちろん両者が見極めるのはコロナ感染状況ではなく世論、つまり政局だ。 すでに丸川珠代五輪相(50)は中止を見据えて布石を打つような発言が見受けられるが、違約金や経済的デメリットを天秤にかけても中止を訴えた方が政治的メリットがあると判断した場合は急転直下の「ギブアップ宣言」はあり得る。その気配をいち早く察知し、世の中の「風」を読むにたける小池知事が先んじて「中止」と声を上げるパターンはないとは言い切れない。 いずれにせよIOC、日本側とも決断に至るには相当のリスクをはらむ。そうなると最も現実的なのは「両者の話し合い」だろう。法曹関連に携わる組織委関係者は「バッハ会長、菅首相、小池さん。キーパーソンはたくさんいますが、さすがに独断で決められない。多方面に影響を及ぼすし、代償が大きすぎる。最終的には5者会談の場で決まることになるのでは」と臆測含みで話す。 話し合いといえば聞こえはいいが、要は誰が猫の首に鈴をつけるか≠フ状態。となると、やはり誰からも言いだせず、グズグズのまま開催に至る公算が大きい。どんな結末を迎えるにしても、問題は山積みだ。 |
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●世界中の世論を無視して五輪開催へ突っ走るのか 5/4
先月28日、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの観客上限方針などを話し合う大会組織委員会、東京都、政府、国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)の5者協議が都内とオンラインで開かれた。五輪相・丸川珠代は「国としては、まずは防止に全力を尽くして7月の東京大会を安心安全に。新型コロナ対策調整会議は本日、変異株に対応した追加的な対策として(都、組織委との)3者の考えを取りまとめたところ。プレーブックの改定についても緊密にやってきた」といつもの調子で説明した。 ところが同日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長・尾身茂は衆院厚労委員会で、開催について「そのときになって判断するのでは遅い。世界では発展途上国も含めて感染が非常に広がっているのは事実。リスクは当然ある。いろんなことを今から考え、組織委員会など関係者が感染のレベルや医療の逼迫(ひっぱく)状況などを踏まえて、国民に知らせるのが組織委員会、関係者の責任ではないか。五輪・パラリンピックに関する議論をしっかりやるべき時期に来た」と、開催の是非について言及した。 これに対して丸川は「国民の皆さまの中にも大会を開催することによって起きる人の流れが感染拡大を起こし、医療を逼迫すると懸念していることは十分承知しています」と世論の反対は承知しているとの認識を示した。また組織委員会会長・橋本聖子は5者協議後の会見で「今日の5者協議で開催をするということは合意した」と開催を再確認したことを強調し、コロナ逼迫を意識しているが中止の選択肢がないことを前提にIOCのバッハ会長来日を待つ構えだ。豪州では五輪キャスターの大会時訪日中止など、外堀は埋まりつつあるが、このまま突入すれば、五輪失敗の世界世論も生まれかねない。 ●「東京五輪、開催すべきでない」米紙が記事掲載、コロナ禍長期化で 5/4 米紙サンフランシスコ・クロニクル(電子版)は3日、世界各地で新型コロナウイルスの影響が長期化する中、今夏の東京五輪は「開催されるべきではない」とする同紙スポーツコラムニストの記事を掲載した。パンデミック(世界的大流行)は終息しておらず、終わりに近づいてすらいないと強調している。 記事を執筆したアン・キリオン氏は、ワクチン接種が順調に進む米国では緊張が緩和しつつあるが、インドや欧州の一部、南米の多くの国では深刻な状況が続いていると指摘。安全な形で開催するのに、開会式までの3カ月弱では「時間が足りない」と訴えた。 また日本は、水際対策や感染抑止で比較的成果を上げているものの、ワクチン接種が進んでおらず、変異株も目立ってきていると説明。新型コロナ禍の教訓を求めるとすれば、人々の健康より経済を優先してはならないということだとし、それに沿わない方策は「期待に反する結果を招く」と警鐘を鳴らした。 ●柔道を完成させた嘉納治五郎、東京オリンピックの招致にも成功する 5/4 1938年5月4日、「日本体育の父」と呼ばれる嘉納治五郎が亡くなった。現在の柔道を創立したほか、オリンピック招致にも成功するなど、日本のスポーツ界の発展に大きく関わった。 嘉納は一体どのような人物だったのか。歴史学者の濱田浩一郎さんがこう語る。 「『柔道の父』とも言われる嘉納ですが、少年時代から成績はよかったものの、体が弱く、先輩たちにはよくいじめられたようです。それもあって、人一倍『強くなりたい』という思いが大きくなったとき、柔術に出会います。 柔術の師範のもとで稽古を重ね、嘉納はどんどん力をつけていきます。 19歳の頃には、日本を訪問したアメリカのグラント大統領の前で柔術を披露したほどの腕前となっていました。その後、さまざまな流派の柔術を学び、各流派の優れた技などを集めて現在の『柔道』を作り上げました。1882年、自分の道場である『講道館』を設立しています」 講道館設立後は、多くの人々へ指導をおこない、海外にも柔道を普及させるべく努めた。また、「講道館」設立と同時に、学習院で政治学や経済学の講師を始めている。 「嘉納は、30代以降、教育現場での活躍が目立ちます。熊本にある第五高等中学校(現・熊本大学)や、東京高等師範学校(現・筑波大学)などの校長に就任し、地方でも柔道を広めるべく動いていました。のちに東洋大学になる『哲学館』でも講師を務めています。 30代直前にヨーロッパへ外遊した際、ベルリン滞在中に宰相ビスマルクの失脚を目の当たりにした嘉納は、政治家も地位を失うと活躍できなくなることから、『人間と生まれて偉大な仕事をするためには、なんとしても教育だと思うようになった』という言葉を残しており、教育の重要性を常に意識していました」(濱田さん) 柔道の伝道者として、海外でも嘉納の名は有名になる。1909年には日本人初のIOC(国際オリンピック委員会)委員となり、1912年に開催されたストックホルムオリンピックには、日本の選手たちを初めて参加させた。本大会には、嘉納が才能を見出したマラソンの金栗四三選手らが出場しており、自身も団長として参加した。 「徐々に国内でオリンピックへの興味・関心が高まり、晩年の嘉納はオリンピックを日本で開催すべく奔走します。その甲斐あって、1936年のIOC総会で、1940年の東京オリンピック開催が決定するに至りました。 開催が決まると、嘉納は『東京日日新聞』のインタビューに『単にスポーツ競技だけの大会ではない、わがスポーツ界の威力を発揮し、わが国の文化や国民精神を各国の人々に理解させ、国民精神の作興にも資せしめねばならない』(1936年11月14日発行)とコメントしています。 その2年後、カイロでおこなわれたIOC総会から帰国する船旅で、嘉納は肺炎により息を引き取ります。遺体は、オリンピック旗に包まれた姿で、横浜港から降ろされたということです」(濱田さん) 嘉納が亡くなった影響は大きく、日中戦争が激化するなか、1940年の東京オリンピックは、ついに返上することになる。 |
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●9県知事「東京オリンピックの中止・延期を考慮すべき」 5/5 日本では、新型コロナの第4次大流行のため一日6000人に達する確定患者が発生しており、一部広域自治体長は「オリンピックの中止・延期を考慮すべき」と主張した。 毎日新聞は47都道府県の知事を対象に、東京オリンピック・パラリンピック開催に関するアンケート調査を実施した。その結果、合わせて9県の知事が「感染状況次第でオリンピックを中止・延期にすべき」と回答した−と3日に報じた。 知事がこうした意見を述べた自治体は、オリンピック開催地の東京都と隣接する埼玉、山梨をはじめ秋田・茨城・長野・静岡・鳥取・大分・沖縄の各県だった。残りの自治体のうち、33知事は回答を拒否し、5人は「分からない」と回答した。「感染状況にかかわらず開催すべき」と回答した知事は1人もいなかった。 山梨県の長崎幸太郎知事は「県民の健康状態に極めて大きな深刻な影響を及ぼすような感染状況であるならば開催を延期・中止すべきだ」とし、「東京都を中心として全国各地に緊急事態が発令される等の場合にはオリンピックは中止・延期されるべき」と語った(原文ママ)。 川勝平太・静岡県知事は「各国からアスリートを迎えるに当たっては感染状況を落ち着かせる必要がある」とし、「国民が『いつでも、だれでも、何度でも』検査を受けられる体制を構築するよう国に求めたい。そのことが開催国としての責務ではないか」と語った。 延期・中断を考慮すべきという意見を出した9人には含まれてない丸山達也・島根県知事は、開催すべきかどうかについての回答は拒否しつつも「(日本政府には)五輪を開く資格がない」と批判した。コロナ対策が不十分というのが理由だ。丸山知事は今年2月にも東京オリンピック開催に否定的な意見を披歴している。 毎日新聞は「大多数の知事は、選手らが4年に一度開催されるオリンピックの舞台で活躍するのを待っているという事実を認める等、オリンピックの意義そのものは認めているが、開幕まで残り3カ月もないオリンピックに対する不安はぬぐいきれていない」と報じた。 日本政府は先月23日、東京・大阪・京都・兵庫県の4都府県に緊急事態を発令した。期限は今月11日までと予定されているが、延長される可能性が高い。3日の新規コロナ陽性者数は日本全国で4470人だった。 コロナで1年延期された東京オリンピックは今年7月23日に開幕し、8月8日まで行われる。その後、8月24日から9月5日までパラリンピックが予定されている。 ●東京五輪招致疑惑 世界陸連前会長の出国禁止解除 5/5 東京オリンピック招致をめぐる贈収賄疑惑で捜査対象となっているセネガル人の世界陸連前会長について、フランス捜査当局が出国禁止措置を解除しました。 セネガル人のラミン・ディアク世界陸連前会長は、東京オリンピック招致をめぐる贈収賄疑惑で金銭を受け取った疑いがもたれていて、捜査対象となっています。 フランスのパリ郊外で暮らし、出国禁止となっていましたが、親族によりますと、フランス捜査当局は保証金50万ユーロの支払いと今後の召喚に応じることを条件に措置を解除しました。保証金50万ユーロは、ディアク前会長が以前会長を務めたセネガルのサッカークラブが肩代わりしたということです。 ディアク前会長は、ロシアの陸上選手のドーピングを隠ぺいする見返りに賄賂を受け取った罪で、去年9月、禁錮4年、罰金50万ユーロの有罪判決を受けています。 ●日仏外相会談 東京 パリの五輪・パラ成功へ緊密連携で一致 5/5 イギリスを訪問している茂木外務大臣は、フランスのルドリアン外相と会談し、ことし夏に東京、3年後にパリで、それぞれ開かれるオリンピック・パラリンピックの成功に向け、緊密に連携していくことで一致しました。 G7=主要7か国の外相会合に出席するためイギリスのロンドンを訪れている茂木外務大臣は、日本時間の5日未明、フランスのルドリアン外相とおよそ20分間会談しました。 会談で両外相は、覇権主義的な行動を強める中国について意見を交わし、東シナ海や南シナ海での一方的な現状変更の試みや、香港情勢、新疆ウイグル自治区の人権問題について深刻な懸念を共有しました。 また、茂木大臣は、フランスが近年、インド太平洋地域への関与を強化していることを高く評価する意向を伝え、両外相は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力の具体化に取り組むことを確認しました。 そして、両外相は、ことし夏の東京オリンピック・パラリンピックと、3年後の2024年のパリオリンピック・パラリンピックの成功に向け、緊密に連携していくことで一致しました。 ●コロナ「厳しい状況続く」 小池都知事 5/5 東京都の小池百合子知事は5日、都庁で記者団に対し、新型コロナウイルスの感染に関して「厳しい状況が続いていると考えざるを得ない」との認識を明らかにした。 11日が期限の緊急事態宣言を延長する必要性について問われると、「専門家の意見を伺いながら、どうあるべきなのか議論したい」と述べた。 小池氏は大型連休を振り返り、感染力の強い変異株が都内で広がっていることや、都の発熱相談センターへの相談件数が高水準にあることを懸念。「ステイホームしている都民や、働きづめの医療従事者に感謝する」と話し、引き続きテレワークなど人出の抑制への協力を求めた。 ●五輪マラソンテスト大会 「完全自粛」呼びかけでも沿道に観戦者 5/5 東京オリンピックのマラソンコースを使用したテスト大会「札幌チャレンジハーフマラソン」が5日午前、札幌市の大通り公園―五輪マラソン中間点で実施された。北海道でも新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化しており、東京五輪・パラリンピック組織委員会が沿道での「密」回避のため、観戦の「完全自粛」を呼び掛けたが、市街地を中心に沿道には観戦する人の姿が一定程度見られた。 沿道には「感染症予防のため、観戦自粛をお願いします」と書かれた看板を設置。沿道での「密」回避を注意喚起するため、約300人増やして約770人体制で対応したスタッフは「感染症予防のため、観戦自粛をお願いします」と書かれたプラカードを首からさげていた。 一方で、沿道では「五輪ムリ 現実見よ」と五輪開催に批判的なプラカードを掲げた人の姿も。レースのテレビ中継では、沿道の女性が「オリンピック反対」と訴える声が聞かれた場面もあった。 ●宇都宮健児氏「一刻も早く」東京五輪開催中止へ 5/5 度重なる都知事選への出馬で、都政への強い関心を示す弁護士宇都宮健児氏(74)が5日、ツイッターを通して、持論でもある「東京五輪開催中止」へのオンライン署名を求めるコメントを投稿した。 「東京オリンピック・パラリンピックの開催中止を求める署名を立ち上げました」と切り出し「新型コロナの感染拡大を鑑み、人々の命や暮らしを危険にさらしてまで開催を強行するべきでなく、一刻も早く開催中止を判断・要請するようIOCとIPC、国、都、組織委に求めます」と主張した。 ツイッターに張られた署名サイトは進入禁止の交通標識を五輪マークのように並べたデザインで、署名人数は5日午後8時過ぎに3万人を超えた。 ●ロンドン五輪組織委会長のコー氏が本音ポロリ 5/5 世界陸連(WA)の会長でIOC委員のセバスチャン・コー氏(64)5日、北海道・札幌で開催された東京五輪マラソンのテスト大会を視察した。 レース終了後の記者会見に出席したコー氏は「今日、札幌そして北海道は最高レベルの大会を運営する力があることを示し、証明された」と満足げに語り、本番を見据えたコロナ対策については高評価を下した。 一方、東京五輪は依然として厳しい世論にさらされている。中止を求める声が大半を占める中、記者団から「もし東京五輪の組織委会長だったら?」という質問が飛んだ。コー氏は2012年ロンドン五輪の組織委会長を務めた経験がある。それを踏まえ、コー氏は「私から申し上げられるのは、今回の東京2020組織委員会の会長じゃなくて良かったと言うこと。そうじゃなかったのがうれしい」と本音をポロリ。「ロンドンもいろいろな複雑な状況やチャレンジがありましたが、歴史的に見てこれほど大変な、人々の理解を超えるような難しい大会はなかったのではないか」とした上で「橋本(聖子)会長は素晴らしい。これほどのチャレンジ、大変なおとはないというお話をしました」と語った。 逆風が吹いている状況については「心配や懸念という国民感情は私もよく理解できます」と言いつつ「このコロナのパンデミックが終わった時に向け、何が希望であり、光であるかを考えた時、この五輪やパラリンピックを開催できるということが希望の光になるということです。それも大会を安全に開催して成功させると思っております」と熱い思いを口にした。 |
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●東京五輪中止で日本は「損切り」を 5/6
東京オリンピックを巡り、米ワシントン・ポスト紙(電子版)は5日のコラムで、日本政府は五輪中止を決断し、負担の「損切り」をすべきだと主張した。 コラムでは、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長らを「地方行脚で小麦を食べ尽くす王族のように開催国を食い物にする悪い癖がある」とし、多額の大会経費を開催国に押しつけていると批判。新型コロナウイルス対策によるさらなる経費増大を踏まえて、「パンデミック(世界的大流行)の中で国際的メガイベントを開催するのは非合理的」と指摘した。 また「中止は痛みを伴うが浄化される」として、早期の決断を促した。 ●日本に東京五輪中止促す ワシントン・ポスト 5/6 米有力紙ワシントン・ポスト(電子版)は5日のコラムで、日本政府に対し東京五輪を中止するよう促した。 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長を「ぼったくり男爵」と呼び、新型コロナウイルス禍で開催を強要していると主張。「地方行脚で食料を食い尽くす王族」に例え、「開催国を食い物にする悪癖がある」と非難した。 コラムは大会開催を前進させている主要因は「金だ」と指摘。IOCは収益を得るための施設建設やイベント開催を義務付け「収益のほとんどを自分たちのものにし、費用は全て開催国に押し付けている」と強調した。その上で、日本政府は五輪中止で「損切り」をすべきだと訴えた。 五輪に否定的な報道は米国で相次いでおり、ニューヨーク・タイムズ紙は4月、コロナ禍の五輪開催は最悪のタイミングで「一大感染イベント」になる可能性があると指摘。サンフランシスコ・クロニクル紙は5月3日、世界で新型コロナの影響が長期化する中、東京五輪は「開催されるべきではない」との記事を掲載した。 ワシントン・ポストのコラムは日本が既に当初費用を大きく上回る「250億ドル(約2兆7千億円)をつぎ込んだ」とし、膨大なコロナ対策費用が今後かさむとの見通しを説明。国外からの観客を受け入れず、観光収入も見込めないとした。 パンデミック(世界的大流行)の中で国際的な大イベントを開催するのは「非合理だ」として、日本は少なくとも規模の縮小か延期に向けてIOCと交渉できる立場にあるとした。 ●東京五輪に吹く逆風、「嫌韓」利用し世論好転目論む“甘い算段” 5/6 迷走が止まらない。政府が東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に新型コロナウイルス感染症の対策として発令中の緊急事態宣言について、今月11日までとしている期限を延長する方向で調整に入った。複数のメディアが報じて明らかとなったもので、それによれば2週間から1カ月の延長幅を軸に専門家の意見を重ね合わせつつ各自治体側と協議し、早ければ7日にも正式決定される見込みという。 沈静化する気配の見られない変異株主体の感染拡大に政府側も内心頭を抱え込んでいるのは間違いない。菅義偉首相は5日、発令中の緊急事態宣言に関し「人流については間違いなく減少している。効果は出始めてきているのではないか」と強弁してみせたが、鵜呑みにする国民は少ない。先月25日に発令されてから11日間で一体どのような効果が出始めてきているというのか。相変わらず具体性に乏しく短絡的な見解のみに終始し、まったく説得力のない発言は逆に疑念を強める結果を招いている。 今月17日には国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が来日する方向となっている。2日間の滞在予定で初日に広島市での聖火リレー式典に出席し、翌日は菅首相、そして東京都の小池百合子知事と7月開催の東京五輪・パラリンピックに向けた会談を行うスケジューリングで調整が進められている。そもそも政府側は強く否定しているものの、このバッハ会長の来日を前に各地へ緊急事態宣言の発令やまん延防止等重点措置の適用を行い、コロナ感染拡大を食い止めようとした疑いが強まっていた。 IOCトップ来日のタイミングで東京がコロナの危険に晒されている現状を直接体感されてしまったら、大会開催を強行する上で大きな足枷になる危険性が強まってしまう。世界の主要メディアからも、バッハ会長の訪日はニュースとしてクローズアップされるのは必至だ。それだけに、その最中で東京など4都府県に緊急事態宣言の発令、他県等にもまん延防止等重点措置が適用されているとなれば「日本のコロナ危機」があらためて世界各国に詳報されることになる。 だからこそ事前に感染拡大の食い止めを図りたいところであったが、政府側の見通しが余りにも甘かったこともあって結果としてバッハ会長の17日来日時の緊急事態宣言発令解除は絶望的になった。この流れには開催地の東京都、そして東京五輪・パラリンピック大会組織委員会、日本オリンピック委員会、日本パラリンピック委員会など大会に携わる関係者も多くがショックの色を隠せない様子だ。 札幌市内では5日に東京五輪のテスト大会となるハーフマラソンが行われたが、本来であれば大きく盛り上がるプレイベントであるにもかかわらずクローズアップされたのは「2日に過去最多の感染者が更新され、自粛が呼びかけられる北海道でなぜ矛盾するレースを強行するのか」という類のブーイングばかりだった。参加した東京五輪代表の男女マラソン日本代表選手たちも一様に戸惑いを隠せず、男子代表の服部勇馬選手が「本当に走っていていいのか」と思わず苦しい胸中を明かすなど実に後味の悪い大会に終わってしまった。 もちろんマラソン代表ランナーらアスリートたちに1ミリたりとも責任があるわけはなく、すべてはご都合主義と利権ばかりを追求してコロナ禍にあえぐ現状を黙殺し続け、東京五輪の強行開催だけに突っ走るIOC、日本政府と東京都幹部、組織委など大会関係者たちの大罪である。開幕まで残り約2カ月半と差し迫ったこの時期、本来ならば五輪ムードが相当高まっているはずなのだが、現実は日を追うごとに「開催反対」の声が際限なくいっそう強まるばかり。こうなると東京五輪は、やはり国民無視の“異常で危険な大会”と断じざるを得ない。 ただ、ここまで大会開催に大半の国民から総スカンを食らいながらも政府や組織委など大会主催者側が今の逆風を好転させる一縷の望みとして期待しているトピックスがある。反日ムードを煽りまくる韓国の存在だ。 お隣の韓国は相も変わらず複数のメディアを発信源に日本批判を繰り返し続けており、徐々に近づいてきた東京五輪参加も格好の“口撃材料”としてバッシングを行っている。 たとえばIOCが東京五輪での政治的パフォーマンスを禁ずる方針を打ち出したことに乗じ、旭日旗の大会期間中の使用を認めないよう強く求めるキャンペーンも韓国国内では有識者が旗振り役となって公然と行われている。旭日旗問題には韓国国内メディアも強い関心を寄せ、この話題を記事化した某紙では旧ドイツ・ナチス総統のヒトラーと東京五輪を招致した日本の安倍晋三前首相が握手し、両国国旗として「ハーケンクロイツ」と「旭日旗」を並び立たせるイラストまで掲載したほどだ。 韓国の某大学教授に至っては日本政府による福島第一原発の処理済み汚染水の海洋放出決定に反発しつつ、東京五輪の選手村で福島県産の農産物が使用されることにも「誤った決定」と何の根拠もない支離滅裂なイチャモンをつけ、その暴論を悪びれる様子もなく自国メディアに述べているのだから呆れ果てるばかりだ。 このような言いがかりも甚だしい福島絡みの反日詭弁は、これまでも韓国国内では当たり前のように起きている。実際これに煽られる形で韓国側は昨年延期される前から東京五輪の選手村では参加する自国選手団について空輸でわざわざ食材を取り寄せ、帯同する自国の専用シェフに調理させる方針も固めていた。延期された大会はコロナ禍で条件がより厳しくなったことで、果たしてここまでの傍若無人が許されるのかは不透明だが、いずれにせよ我々日本人の神経を逆なでする愚行であることは確かだろう。 こうした韓国側の容認できない数々の“挑発行為”に日本政府や東京都、組織委など東京五輪に携わる大会関係者側は非公式ルートを通じてでも抗議するべきだと思うが、ナゼか一向に動く気配は感じられずスルーしたままだ。 “開催慎重派”の組織委幹部は、その理由を次のように明かしている。 「散々挑発を受け続けて嫌韓への意識がどんどんエスカレートしていけば、国民は代表選手たちに対して『東京五輪で韓国を黙らせてほしい』という思いに駆り立てられるかもしれないでしょう。だからこれだけ国内で開催反対のムードが高まっている中、何とか風向きを変える切り札として政府高官の間や組織委内部では国民の“韓国憎し”の感情が強まって東京五輪も盛り上がっていく図式を期待しているところもあります。韓国が政府レベルで問題発言や行動を起こしているわけではないので静観していることもありますが、有識者やメディアが誹謗中傷まがいの言いがかりを繰り返していながら黙殺している背景にはそういう裏事情があるのも事実です。まことにレベルの低い、苦肉の策と言えますが・・・」 しかしながら韓国の反日ムードを利用したところで、国民が急変して東京五輪開催を支持するようになるとは到底思えない。愚策ここに極まれりといったところだが、要はそれだけ強硬開催を目論む日本の“黒幕”たちが切羽詰まっている証拠と言えそうだ。 ●「小池さんがオリンピック返上するんじゃないかっていう説がある…」 5/6 政治ジャーナリストの田崎史郎氏が6日、フジテレビ系「めざまし8」(月〜金曜・午前8時)にスタジオ生出演した。 番組では、東京五輪マラソンのテスト大会となった「北海道・札幌マラソンフェスティバル 2021」が5日、札幌で開催されたことを報じた。スタジオでは、出演者が新型コロナウイルスの感染が拡大する中での東京五輪のテスト大会開催の是非について議論した。 その中で社会学者の古市憲寿氏が田崎氏に「田崎さんの予想ではオリンピックはやりますか?できますか?」と尋ねた。これに田崎氏は「できるか?できないか?政府の方は、やるつもりでずっとやっていると思います」と答えた。 さらに古市氏が「東京都知事が寝返ってオリンピック、やっぱり無理ですね、みたいなことを言い出しそうじゃないですか?そういう場合にも政府は、きちんと、やるって決めるんですか」と聞くと、田崎氏は「それも、小池さんが東京オリンピック返上するんじゃないかっていう説はあるんです。説はあるんですけど、最近、小池さんと話した自民党の議員に聞きますと、小池さんは、オリンピック成功させるために頑張ろうねって言われているっていうんです」とコメントしていた。 ●バイデン氏 東京五輪に出席するかどうか結論まだ「新たな情報はない」 5/6 サキ米大統領報道官は5日の記者会見で、バイデン大統領が東京オリンピック(五輪)に出席するかどうかの判断に関し検討が続いていると述べた。「(開幕まで)12週間という期間が残っており、招待に応じて向かうかどうかについて新たな情報はない」と説明し、結論はまだだとした。 4月の日米首脳会談後に発表された共同声明には、バイデン氏が安全・安心な東京五輪・パラリンピックを開催するための菅義偉首相の努力を支持するとの項目が盛り込まれた。 ●東京五輪開催の不合理 5/6 東京オリンピックの開催まで3カ月を切るなか、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、菅首相は7日にも緊急事態宣言の延長の是非を判断すると伝えられました。ワクチン普及でアメリカやヨーロッパの感染増加ペースが鈍化したものの、インドをはじめ世界の多くの国で感染拡大は依然深刻です。 欧米メディアで東京五輪開催の是非をめぐる報道がさらに増えました。 ワシントン・ポストは、日本のリーダーは国際オリンピック委員会(IOC)に対し開催地を変更するよう告げるべきだとするコラムを掲載しました。中止の判断は難しいものの、日本の脅威を癒すことになるとしています。開催は不合理であり、パンデミックの中で日本の世論の72%が開催に消極的なのに、IOCのバッハ会長と取り巻きは王室のように大会は開催すべきと言い続けていると伝えました。 サンフランシスコ・クロニクルは、世界でコロナの影響が長期化する中、東京オリンピックは今年開催すべきではないとするコラムを掲載しました。インドなど多くの国で深刻な状況が続いていて、オリンピックを安全に開催するには時間が足りないとしています。日本のワクチン接種が進まず、変異種の感染も目立っているとして、人の健康を優先すべきだと続けました。 イギリスのガーディアンは、東京オリンピックの開催よりコロナ感染患者の治療に集中すべきだと日本の医療従事者が怒りの声をあげたと報じました。組織委員会が看護師500人のボランティアを求めたことで日本の医療界の憎悪が増幅したとしています。 ●小池百合子知事は東京オリンピック開催中止を進言できるか 5/6 東京都などに緊急事態宣言がなされ、期限である5月11日も近づいて来ていますが、どうにも感染拡大は収まらず、どうやら再延長も不可避の状況です。 「緊急事態宣言、2週間〜1カ月延長で調整 週内にも決定」(朝日新聞) さて東京でも感染拡大は収まりそうにもありません。東京オリンピック開催も難しいということには思いが至らないようです。 東京オリンピックが無事、開催されることしか頭の中にはないのでしょうから、小池氏にとってはそのための「緊急事態宣言」という位置づけにしなかりません。都民には外出の自粛を要請しながら、外国からの選手団は受け入れるのですから誰もが納得がいかないでしょう。普通に考えればもうオリンピック開催なんて現実的ではないよね、と誰もが思っています。トップに立つ者には決断する責任があります。 東京都知事として小池氏には都民の安全を守る責任があります。東京オリンピックを優先するあまりに中止を決断できないのはあまりに無責任です。菅総理、小池知事、橋本聖子会長で協議し、中止を決めてください。決断ができないなら二階幹事長も入ってもらってください。 ●五輪中止提言 米紙から相次ぐ「IOCは訴える?そんなことすれば評判は」 5/6 開幕まであと3カ月を切った東京五輪・パラリンピックだが、ここにきて米国メディアから中止への提言が相次いでいる。米有力紙のワシントンポスト(電子版)は5日、日本政府に対し、中止を決断し、費用の「損切り」をすべきだと主張するコラムを掲載した。 コラムでは「日本はIOCに略奪は他でしてくれと言うべき」と題し、日本を「踏み台」とするIOCの姿勢を糾弾。バッハ会長を「ぼったくり男爵」と皮肉った。開催に否定的な日本の世論、医療体制のひっ迫などに触れ、「世界的大流行の中で国際的なメガイベントを主催することは不合理な決定だ」と、した。 中止の場合、違約金の可能性もささやかれるが「日本が契約を破ったとして、IOCは何をする?訴える?どこの裁判所で?そんな訴訟をすれば、パンデミックの最中にストレスと苦しみのある国で大会を強制するIOCの評判はどうなるか?」と指摘し、「キャンセルは苦痛かも知れないが、浄化になる」と、まとめた。 4日にはサンフランシスコ・クロニクルが世界各地で新型コロナウイルスの影響が長期化する中で、東京五輪について「開催されるべきではない」とするスポーツコラムニストの記事を掲載。米国ではワクチン接種が進み、正常化への兆しが見えている一方で、インドや欧州の一部、南米では深刻な状況が続いているとし、東京五輪開催には「時間が足りない」と訴えた。 4月には有力紙ニューヨーク・タイムスが現状での東京五輪開催について「最悪のタイミング」とし、日本と世界にとって「一大感染イベント」になる可能性があると指摘。「五輪のあり方を再考すべき時期」と、訴えている。 ●五輪選手団にワクチン提供へ ファイザー製、IOCが発表 5/6 国際オリンピック委員会(IOC)は6日、新型コロナウイルスワクチンを共同開発した米製薬大手ファイザーとドイツの医薬品企業ビオンテック両社との間で、今夏の東京五輪・パラリンピックに参加する各国・地域の選手団向けにワクチン提供を受ける覚書に署名したと発表した。IOCは参加者のワクチン接種を義務付けていないが、渡航前の接種を推奨している。 ビオンテックによるとワクチンの提供は5月末にも始める予定で、選手団が日本に入る7日前までに2回目の接種を目指している。 バッハ会長は「今回のワクチン提供は、東京大会を全ての参加者にとって安心で安全なものにしてくれる。ワクチン接種により、予防接種は個人の健康にとってだけでなく、地域社会の人々との連帯と健康への配慮が重要だという力強いメッセージを送ることができる」とコメントした。 ●丸川五輪相、IOCのワクチン提供を歓迎 5/6 丸川珠代五輪担当相は6日、国際オリンピック委員会(IOC)が東京五輪・パラリンピックに参加する各国選手団に向け、米製薬大手ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンを提供すると発表したことについて、「安心安全の大会を進める上で非常に重要なご提案をいただいた」と歓迎した。日本選手への接種時期については「全く見通しがない」とした。都内で記者団の質問に答えた。 丸川氏は、菅義偉首相が4月の訪米時に同社のブーラ最高経営責任者(CEO)と電話会談した際、ワクチンの無償提供の申し出を受けたと明かした。 ●オリンピック反対請願、数万人の署名獲得 5/6 東京:日本では数日前に、「東京オリンピック開催中止」へのオンライン署名を求めるサイトが立ち上げられ、数万人がオンライン署名をした。 この署名サイトは、緊急事態宣言下の東京、大阪、複数の地域で、特に新しい変異株によるコロナウィルス感染が上昇している中で立ち上げられた。緊急事態宣言は5月11日で終了する予定になっているが、日本の複数の報道によると延長になる可能性がある。 延期されたオリンピックは開催まで3カ月を切り、7月23日に開幕することになっている。 請願書は、今月後半に日本を訪問する予定の国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長に宛てられている。同会長は5月17日、オリンピックの聖火リレーに合わせて広島を訪問する模様で、更には東京を訪問する可能性もあるが、東京では小規模のオリンピック反対抗議活動が計画されている。 世論調査では70〜80パーセントの国民がオリンピックの中止か再延期を望んでいるが、そうなる見通しは全くない。菅義偉首相、東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長やバッハ会長はオリンピックは予定通り開催されると繰り返し述べている。 主催者とIOCは先週プレーブックと呼ばれるものを発表し、パンデミックの最中でもオリンピックを開催できることを示すため、選手、関係者が守るべきルールを説明した。この数日の間にいくつかのテストイベントが実施されたが、主催者からはほとんど問題が報告されていない。 この1カ月にわたりオリンピックの聖火リレーが全国各地を回っている。主催者によると、ウィルス検査でリレー関係者のうち8人の陽性が判明した。 日本はこれまでオリンピック準備のため、公式には154億ドルを投じてきたので、面目を保つためにもオリンピックを実施しなければならない状況になっている。収入の73パーセントを放映権に頼るIOCにとっては、東京オリンピックは死活問題である。 オリンピックは「安心安全」であるという主催者側の主張に対し、一部の医療専門家からは反論も出ている。ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルは先月の社説の中で、オリンピックのような大勢の人が集まるイベントは「安全でも安心でもない」と報じた。 主催者はオリンピック中1万人の医療従事者の援助が必要になると述べ、追加看護師500人とスポーツドクター200人の派遣を要請した。この要請に対し、日本看護協会は難色を示している。 東京オリンピック開催中止の署名サイトは、東京都知事選に何回か出馬したことのある弁護士、宇都宮健児氏がスタートした。同サイトは立ち上げから24時間以内に5万人の署名を集めた。 請願書の英語の見出しには、「人々の命と暮らしを守るために東京オリンピック開催中止を求める」と書かれている。 請願書は、オリンピックを安全に開催することは不可能であると示唆し、新型コロナウイルスワクチンの実施等に必要な資金がオリンピックに流出していると述べている。日本人のワクチン接種率は僅か2パーセントである。新型コロナウイルスによるこれまでの死者は日本では1万500人で、世界の水準に比べれば悪くはないが、他のアジアの近隣諸国には劣る水準である。 請願書には、「東京オリンピック・パラリンピックを7月に開催するためには、大勢の医療従事者の方々、また医療施設や医療設備などの貴重な資源、その他のさまざまなリソースを割かなければなりません」と書かれている。 全国紙の毎日新聞が実施した調査では、9つの都道府県知事がオリンピックの中止または再延期を望んでいると述べた。 47人の知事のほとんどは、意思決定権がないことを理由に回答を拒否した。 |
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●「 東京五輪は、やっぱり中止すべきか」〜騒動が示す日本の“劣化”ぶり 5/7 五輪までにはコロナも収まるだろう―。日本人がなんとなく抱いていた淡い期待が今、打ち砕かれようとしている。政治家も国民も、どうしていいのかわからない。誰が決めて、誰が責任を取るのか。発売中の『週刊現代』が特集する。 ●選手が来ない 西田 東京五輪の開会式は、現時点で7月23日に予定されています。残り2ヵ月半しかありませんが、まだ開催か中止かの決断は保留されている。その一方で組織委員会は、看護師500人を会期中の医療スタッフとして確保する要請を出してもいます。東京が3度目の緊急事態宣言のただ中にある今、医療資源をこれほど「五輪優先」で振り向けることには、正直に言って疑問を抱きます。 小笠原 先月の世論調査では、中止か再延期を求める意見が7割に達しました。愛知県では先月、聖火リレーのコース脇に「東京五輪、中止の夢を」と書いたプラカードを持つ男性が現れ、運営側に立ち退きを迫られる騒ぎも起きた。世論を無視して、あくまでも開催を前提にする政府や組織委員会に、違和感を抱く国民は増えていますね。 西田 もしこのまま開催するとしても、無観客になるでしょう。問題は、海外からの観客を入れないのは当然として、選手が集まるかどうかです。コロナで代表の選抜さえままならない国が多い。まして無理に選手団を派遣するとなれば、国内で反対世論が巻き起こるのは間違いない。各国の指導者が容易に決断を下せるとは思えません。 宮台 先月、菅総理はアメリカのバイデン大統領との会談で、選手団派遣の確約を取り付けられませんでした。毎回600人を超えるアメリカの大選手団が来ないとなれば、世界中で「派遣取りやめ」のドミノ倒しが起きます。昨年一年間の人口あたりコロナの死者数で、日本は台湾の90倍、中国の9倍、韓国の2倍となり、比較的感染が少ない東アジアの中での「負け組」が確定しました。世論の沸騰を思えば、アメリカが及び腰にもなりますよ。 西田 一方で、日本政府は海外の選手が集まらなくても、このまま突き進もうと考えているのではないでしょうか。過去にも'80年のモスクワ五輪では反ソ連のアメリカや日本、韓国、中国など約50ヵ国が参加をボイコットしましたし、その次のロサンゼルス五輪では、ソ連をはじめ東側諸国が参加しなかった。それでも開催されるのが五輪です。不完全な形であっても、やると結局「盛り上がった体」になるのが五輪の不思議なところで、今回も「とにかくやれば、ある程度は支持率浮揚につながるだろう」と政権は見ていると思います。 ●冷めているスポンサー 小笠原 政府と、森喜朗氏や橋本聖子氏といった自民党の政治家が要職を占める組織委員会、そして小池百合子東京都知事と、非常に狭い世界の中で国民感情とはかけ離れた決定が繰り返される。これが国内に分断を生み出しています。特に気になるのは、アスリートや元メダリストからも葛藤を訴える声が出ているのに、無視されていることです。女子陸上の新谷仁美選手は「選手としては(開催に)賛成だけど、一国民としては反対」と述べていますし、マラソン元代表の有森裕子さんは「五輪が皆さんの負の要素のきっかけに思われることは本望ではない」と言っている。しかし、組織委員会の森喜朗前会長は「どんな形であれ必ずやる」と言い切ってしまった。 西田 開催すれば、おそらく感染者は増えるでしょうし、政府だけでなくアスリートに対する批判まで激化してしまうかもしれません。今名前が挙がったような政治家がその責任を取るとは思えませんね。 宮台 国家による大災害や大事故のたびに言われますが、日本の政治家を見ていると、戦前の陸軍参謀本部や海軍軍令部の幹部たちを思い出します。彼らは東京裁判で揃って「内心は忸怩たる思いがあったが、空気に抗えなかった」と言いました。森さんはともかく、菅総理や小池都知事は、本当はそう思っている可能性もある。開催を強行したところで、多少の支持率アップがあっても、さほど得をしないからです。所属集団での座席を失いたくないので、空気に抗えず「やめよう」と言い出せないだけでしょう。自分はやめたいのに言い出せないという、原発政策にも見られる日本の劣等性が、ここでも現れているのです。 小笠原 実は、いま東京五輪の利害関係者の中で一番冷めているのがスポンサー企業です。象徴的なのが、これはコロナ前から始まっていた動きですが、マクドナルドやバドワイザーといった大手がこの大会から公式スポンサーを降りたこと。日本でも、スポンサー企業は五輪関連のPRやCM放映にかなり慎重になっている印象を受けます。 西田 企業は損得勘定に最もシビアですから、この状況で東京五輪を強くプッシュすると、むしろ損をしてしまうと見ているのでしょう。コロナ前には「東京五輪前後にインバウンド客は年間4000万人に達する」と言われていましたが、それを見込んだ投資も無駄になる公算が大きい。それならば早めに損切りしよう、と企業はドライに考えている。むしろ未練が大きいのは、政治家や一般国民のほうでしょう。 小笠原 ひとつ心配なのは、東京五輪には無数の中小企業も下請けや孫請けとして関わっていることです。彼らは開催の是非は別として、経営のために会場整備をしたり、バッジやTシャツを作ったりしている。資本力のある大手企業は「儲かりそうにないので撤退します」と簡単に言えるけれど、中小企業はそうはいかない。中止によるしわ寄せを厳しく被るのは、相対的弱者です。 宮台 その通りですが、一方でこれを機に、そもそも五輪のような「祝祭」に頼るビジネスモデルから脱却するべきだろうと思います。マクドナルドの撤退は象徴的です。アメリカの社会学者リッツァの説によれば、五輪が巨大化して世界的な祝祭になった背景には、労働の「マクドナルド化」つまりマニュアル化があった。仕事がマニュアル化されるにつれ、労働者は働く喜びを感じられなくなり、埋め合わせとして祝祭を消費し憂さを晴らすと言います。その意味で、「マクドナルド的労働」と「五輪的祝祭」は資本主義の両輪です。その構図がコロナで崩れました。今後しばらくは祝祭的消費による憂さ晴らしができないので、人々の生き方も見直されるでしょう。そんな流れの中、「五輪で景気浮揚」という発想自体が、日本の劣等性を世界に印象づけることになる。コロナによって、五輪はその役割を終える可能性さえあるのです。 ●「五輪信仰」からの脱却 西田 日本では過去20年ほど、五輪への投資が官民問わず増えました。それがさらに五輪への熱狂を高めるサイクルになっている。代表選手の強化のため'06年に完成したナショナルトレーニングセンターは、国が370億円かけて整備し、味の素が4年3億円の契約でネーミングライツを購入しました。それまで日本が金メダルを量産していた柔道や水泳でルール変更が相次ぎ、対策しなければならない事情もあった。政界と競技団体・アスリート、そしてスポンサー企業やウェア・用具メーカーが一体となって後押ししてきたわけです。こうした流れがあったからこそ、東京五輪の招致成功は日本社会にとって大きな意味を持った。人口減による国力低下と向き合い、それを回避するのが本質的課題のはずが、目先の課題から関心を逸らす役割も果たしました。五輪後の日本では、スポーツ界だけでなく、社会全体の士気の落ち込みが待っているのではないかと懸念しています。 宮台 前回の'64年の東京五輪は、日本人にとっての「意識革命」として機能しました。当時の世論調査が興味深い。それまで日本人はアジアの一員だという意識を抱いていたのが、五輪後は欧米の一員という意識に変わるのです。つまり、「これで日本も先進国の仲間入りだ」という大きな意識転換の契機になったのが、前回の東京五輪です。五輪は非先進国が自信を付けるための道具であり続けてきました。 西田 一方で現在の日本人は、'64年とは逆に、東京五輪を「まだ日本も先進国の一員だ」と国内外に示すためのイベントだと捉えているように感じます。'00年に世界2位だった一人当たりGDPは23位に低落し、平均賃金は欧米の半分近くにまで下がって、韓国にも抜かれてしまった。多くの国民が「日本は先進国ではなくなりつつあるのではないか」という不安を抱いているからこそ、五輪は心の支えになってきた。 宮台 しかし日本人は勘違いしがちですが、経済指標から見て日本はすでに先進国でなく、加えて欧米先進国はさして五輪を重視していない。「五輪を実行できることが先進国の証だ」と考えること自体が、後進性の表れなのです。一流の国は五輪で国威発揚を図る必要がない。だから五輪にこだわるほど、日本は後進性を世界中に告知してしまうことになります。 小笠原 日本はもともと、柔道家の嘉納治五郎がIOCに頭を下げて五輪に出させてもらい、それで世界と対等になったという思い込みがあるから、未だに五輪信仰が根強い。体操や水泳を学ぶ子どもたちに「将来は五輪代表選手になりたい」などと言わせる国は、世界で日本くらいのものです。先ほど宮台さんが、「企業は五輪頼みの経営をすべきではない」とおっしゃいましたが、スポーツ界にも似たような考え方があると思います。五輪を目指すことが一流アスリートの証明だ。そのためには犠牲を払ってもすべてを競技人生に賭けねばならない。だから強化費や遠征費を出してくれるスポンサーや所属協会に忖度して、本心は口にすべきでない……というおかしな「常識」が、アスリートにも一般の国民にも根強くある。しかし、例えば'90年代に新しく五輪種目に加わったスノーボードの世界では、当時の欧米のトップ選手は五輪出場に見向きもしなかった。日本人も「五輪でメダルを取るのがアスリートの最高の目標」という文化を相対化し、見直す時期にさしかかっているのではないでしょうか。 ●強行したら、どうなるか 西田 私は今大会から五輪種目に追加されるサーフィンが趣味なのですが、サーフィンもスノボと同じく、「エクストリームスポーツ」と呼ばれるアウトロー的な文化でありスポーツです。五輪という大きな構造に組み込まれることについては、業界でも賛否が割れています。ミクロな視点から言っても、今大会でサーフィンの会場となる千葉県一宮町では、工事のために一般のサーファーが海岸に入れなくなったり、五輪延期による補償の目処が立たず、地元の人たちも戸惑っています。五輪がスポーツにとって必ずしもいい影響ばかりもたらすわけではない、という現実は確かにありますね。 宮台 スポーツと五輪は本来別物だし、誰もがスポーツに熱狂した20世紀と現在とでは時代精神も変わりました。マイナースポーツでも、本当に好きな人たちが真面目に取り組むことで、競技を支援したいという会社や事業主が実際に出てきています。そのくらいの規模が自然だと感じます。 西田 今、日本ではコロナワクチン接種が遅れに遅れています。アメリカではすでに国民の4割が1回は接種を受けていますが、日本ではたったの2%、250万人しか受けられていない。一日あたりの接種数も伸び悩んでいます。五輪を開催するにせよ、しないにせよ、その理由を国民と世界に向けてはっきり説明することが不可欠のはずなのに、今のところ何のアナウンスもない。このままではマズいと思います。 宮台 極論ですが、事ここに至っては、五輪を強行したならしたで、世界中に恥を晒して批判を受けることになり、日本人や政府の意識が変わる機会にもなり得ます。日本人は昔から、内輪の批判だけでは絶対に変われません。黒船が典型ですが、これも律令時代から知られる日本の劣等性です。 小笠原 でもそれでは、本当に膨大な感染者や死者が出てしまったとき、取り返しがつきません。政府も国民もアスリートも「どうせやるなら」と半ば諦めて失敗に突き進むくらいなら、少しでも早く中止を決断したほうがいいと私は思います。 ●「人々の命と暮らしを守るために、東京五輪の開催中止を求めます」 5/7 現在、国際オリンピック委員会(IOC)、公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)および東京都は、2021年の東京オリンピック・パラリピック開催を強行しようとしています。ところが、周知のように東京都のみならず、国内各地、さらには世界各国では今日に至るまで新型コロナ感染拡大はまったく止まっておりません 。昨年末から開始されたワクチン接種も、現在のところ欧米などの一部地域で普及しているにすぎず、感染防止の決定打とはなっておりません。 ―― 命や暮らしを危険にさらしてまで東京五輪を開催するのか このような状況下で、本年7月に東京オリンピック・パラリンピックを安全に開催できると考えることは極めて難しいと言わざるをえません。この状況で開催すれば、「平和の祭典」であるはずの五輪は、その理念から大いに逸脱する ことになります。出身国によって、満足のいく準備をまったくできなかったアスリートとそうでないアスリートのあいだに、多大な格差が生じます。また、東京に来たところで、感染のストレスにたえずさらされ、厳しい制限を課せられては、満足のいくパフォーマンスを発揮することは不可能です。 東京オリンピック・パラリンピックを7月に開催するためには、大勢の医療従事者の方々、また医療施設や医療設備などの貴重な資源、その他のさまざまなリソースを割かなければなりません。しかし、すでに各種団体が指摘するように、現在の東京都および日本全体にその余裕はまったくありません。外国からの観客を制限したところで、五輪は1万5千人にも及ぶ大規模な人の移動と接触を引き起こします。五輪によって感染状況が悪化することは大いにありうると言えます。 ただでさえ深刻な不足に直面している医療資源を五輪に回すことは、コロナ禍で疲弊している医療従事者の方々をさらに苦しめ、住民および参加者の命と暮らしを危険にさらす ことになります。 ―― 人々の命や暮らしを守ることに資源を割くべき また、新型コロナ感染症により、多くの人々は命を脅かされると同時に、経済的にも困窮を強いられています。とりわけ、非正規雇用で働くことの多い女性・若年層・老年層の暮らしは、わずか一年たらずで劇的に悪化しました。現在、多くの方が、民間団体の主催する食糧や住居の各種支援に頼って暮らしています。このような状況のなか、五輪の延期にともなう追加費用は3000億円 にも上りました(経費総額は1兆6440億円)。 人々の命と暮らしを守ることが自治体の本義であるならば、東京五輪は一刻も早く開催中止を宣言し、窮乏にあえぐ人々に資源を割くべきではないでしょうか。 ―― 国内外から高まる五輪中止の声に耳を傾けて すでに国内外での新聞等による各種世論調査では、五輪開催の中止または延期を求める声がいかに多いかが繰り返し示されています。また、国内外のメディア、多くの政治家たち、またアスリート自身も五輪開催を難しいとするとの意見を繰り返し発表してきました。 政府や都がいまだに五輪中止の判断や要請をしていないことはあまりに遅い失策ですが、今からでも東京オリンピック・パラリンピックの今夏開催中止を即刻決断し、五輪中止によって利用可能になった各資源を、新型コロナウィルスの感染拡大を防ぎ、人々の命と暮らしを守るために向けることを強く求めます。 ●小池都知事「五輪開催に全力」 世界陸連会長と感染対策で一致 5/7 東京都の小池百合子知事は7日、世界陸連のセバスチャン・コー会長の表敬訪問を受けた。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状況だが、小池氏は東京五輪・パラリンピックについて「安心安全な大会開催に向け全力で尽くしたい」と強調。コー氏も「五輪による団結する力を活用して、新しい時代の希望を与える大会の実現に協力したい」と応じた。 小池氏は、人出の抑制などのコロナ対策を紹介。第1次世界大戦やスペイン風邪の流行直後に開かれた1920年のアントワープ五輪を例に挙げ、「東京大会もさまざまな課題があるが何としても成功させる」と述べた。コー氏は「国民や都民がナーバスになっていることは理解している。私たちもコロナ対策に真摯(しんし)に取り組みたい」と語った。 ●小池都知事「安全安心に必要」 五輪選手へのワクチン提供 5/7 東京都の小池百合子知事は6日、国際オリンピック委員会(IOC)が東京五輪・パラリンピックに参加する各国選手団に、米製薬大手ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンを提供する方針を示したことに対して、「安全安心な大会にするために必要な措置だと受け止めている」と述べた。都庁で記者団の取材に答えた。 ●福岡の聖火リレー、7市町で公道での走行中止 5/7 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、福岡県内での東京オリンピックの聖火リレーは福岡、久留米、飯塚など7市町の公道での走行が中止されることになった。開催に向けて準備を進めてきた走者や自治体の関係者には、落胆や戸惑いが広がった。 6日夜、服部知事が記者会見を開いて発表した。リレーが予定されている20市町村のうち、11日は糸島、久留米、太宰府、福岡の4市と志免町、12日は飯塚市と桂川町で取りやめることが決まった。 飯塚市でのリレーに参加予定だった障害者支援施設職員の出水和幸さん(58)(小竹町)は「ある程度の制限があることは覚悟していたが、ショックだ」。約20年にわたって障害者らにボウリングを指導してきた。同市では代替のリレーが行われないが、「気持ちを切り替えて、可能な形で参加したい」と語った。 リレーの準備を進めてきた久留米市の竹村政高・市民文化部長は、「感染状況を考えれば仕方ない。楽しみにしていた市民もおり、実施できないのは残念だ」と肩を落とした。 福岡市の担当者は「安全に実施するためには、必要な見直しだった」とする。公道での走行が中止となった1日目の走者は、同市の平和台陸上競技場内でリレーが検討されており、「準備を滞りなく進めたい」と話した。 志免町の世利良末町長は「町内で30歳代を中心に感染者が増えているうえ、沿道の密も避けられそうにない。これ以上、感染を広げるわけにはいかないと考え、苦渋の決断をした」と述べた。 ●池江璃花子に五輪辞退求める声「私は何も変えられない」 5/7 競泳女子で東京五輪代表の池江璃花子(20=ルネサンス)が7日、自身のSNSを更新した。さまざまな意見がある東京五輪について、池江のSNSに代表の辞退を求めるようなダイレクトメッセージが届いていることについて触れた。 「いつも応援ありがとうございます。インスタグラムのダイレクトメッセージ、ツイッターのリプライに『辞退してほしい』『反対に声を上げてほしい』などのコメントが寄せられていることを知りました。もちろん、私たちアスリートはオリンピックに出るため、ずっと頑張ってきました。ですが、今このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然のことだと思っています。私も、他の選手もきっとオリンピックがあってもなくても、決まったことを受け入れ、やるならもちろん全力で、ないなら次に向けて、頑張るだけだと思っています」とコメントを掲載した。 池江は、19年2月に白血病に見舞われた。体重が15キロ落ちて、抗がん剤の治療で髪の毛も抜けた。そこから大好きなプールで再び泳ぐことを目標にして、闘病生活に耐えてきた。同12月の退院時は「パリ五輪でのメダル獲得」を目標として、復帰の道を歩んできた。 東京五輪は、あくまで大目標であるパリ五輪の途上にある、という位置付けだった。4月の日本選手権でリレー代表に内定したが、その際も涙を流して、驚きを口にしている。大好きな水泳を心の支えとして、結果的に東京五輪の切符を手にした形だ。 その努力は「第2の水泳人生」を歩き始めた池江が「昨日の自分よりも速く泳ぎたい」「自己記録を更新したい」という競技の純粋な喜びを求めて、自身の体調と向き合いながら、ベストを尽くしてきた結果だ。 東京五輪が開催されるかどうかは、1人の選手が決められることではない。 池江は、SNSでこう続けた。「1年延期されたオリンピックは私のような選手であれば、ラッキーでもあり、逆に絶望してしまう選手もいます。持病を持っている私も、開催されなくても、今、目の前にある重症化リスクに日々、不安な生活を送っています。私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません。ただ今やるべきことを全うして、応援していただいている方たちの期待に応えたい一心で、日々の練習をしています。オリンピックについても良いメッセージもあれば、正直、今日も非常に心を痛めたメッセージもありました。この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです」と心境を吐露した。 東京五輪が決まった13年9月、池江は中学1年生だった。自分が東京五輪に出るかどうか、ましてや白血病による闘病生活、五輪1年延期など想像できるはずもない。ただ競技に全力を尽くしてきた先に、ちょうど大学生で迎える自国開催の五輪があったに過ぎない。そんな1人のスイマーに、自分の主張に賛同するように求める、無理を強いる権利は誰にもないはずだ。 池江は、最後に「長くなってしまいましたが、私に限らず、頑張っている選手をどんな状況になってもあたたかく見守ってほしいなと思います」と締めくくった。 ●ジャスティン・ビーバー、東京オリンピックに「苦言」を呈する 5/7 Summaryシンガーのジャスティン・ビーバーが、東京オリンピックで選手が「Black Lives Matter/ブラック・ライヴズ・マター」関連のアイテムを身につけることを禁止するというニュースに反応。 「Baby(ベイビー)」や「Sorry(ソーリー)」などのヒット曲で知られる人気シンガーのジャスティン・ビーバーが、東京オリンピックの式典や競技の最中に選手が「Black Lives Matter/ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命にも価値がある)」(以下BLM)に関連するウェアやアイテムを身につけることを禁止するというルールに苦言を呈した。 昨年5月にアメリカのミネソタ州ミネアポリスで発生した、白人警官による黒人男性のジョージ・フロイド殺害事件をきっかけに活発化している、黒人に対する暴力や差別の撤廃を訴えるBLM運動。 昨年、テニスの全米オープンで、大坂なおみ選手がBLM関連のアイテムを大会中に身につけていたことが話題になったが、先日、国際オリンピック委員会(IOC)は五輪の競技会場や選手村で政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を禁ずる五輪憲章第50条に基づいて、東京オリンピックの競技会場や表彰台で選手が人種差別などに抗議することは認めないと発表。それを受けて、AP通信が抗議活動のなかにBLM関連のアイテムも含まれるのかIOCに確認したところ、“BLMも例外ではない”という回答が返ってきたという。 このニュースをたまたま目にしたジャスティンは、自身のインスタグラムで「彼らはこの決定を覆すべきだ」とコメント。また、F1史上初の黒人ドライバーとして知られるルイス・ハミルトンも、インスタグラムのストーリーで“サムズダウン(ブーイング)”の絵文字を使って反応している。 ちなみに、BLMの活動を全面的に支持するジャスティンは、「僕は自分のプラットフォームを使って、人種差別が悪であるということ、そして人種差別は僕たちの文化に根付いているということを人々に理解してもらいたいんだ。僕は僕の黒人の兄弟や姉妹たちに、自分たちは支えられている、自分たちの姿はちゃんとみんなに見えている、自分たちは大切にされていると感じてほしい。(僕の言動が)気に障るという人がいるかもしれないけど、僕はBLMについて話すのをやめるつもりはない」と、以前、インスタグラムで宣言している。 ●バッハIOC会長、来日断念へ 橋本会長「非常に厳しい」 5/7 東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長は7日、東京都内での定例記者会見で、今月中旬を予定している国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の来日について、国内での緊急事態宣言発令が続くことを踏まえて「非常に厳しいのではないかと思う」との見通しを示した。バッハ氏は17日から広島県で行われる聖火リレーに合わせて来日する方向だったが、断念する可能性が大きくなった。 また橋本会長は、IOCが東京大会に参加する選手団に新型コロナウイルスワクチンを提供すると発表したことに関し、「より一層安全で安心な大会開催に向けて前進すると考えている」と歓迎の意を示した。 日本国内でワクチン接種が進まない状況でありながら、選手には供給される見通しとなったことについては「非常に違和感を覚える方もいるのはよく理解している」と発言。その上で「できるだけ多くの(外国の)方が接種して来ていただくことは、日本の皆さんの安心と安全にも寄与する」と理解を求め、「選手団の健康を守る意味において、アスリートファーストの観点から進めていただければありがたい」と述べた。 ●好転する材料なく かすむ五輪、悲観の声―緊急事態宣言延長 5/7 東京都などへの緊急事態宣言延長を聞くまでもなく、五輪への道はかすんでいる。大会本番へ向けたコロナ対策への反発、不備などが重なり、五輪関係者は「好転する材料がない。環境がドラスチックに悪くなり過ぎている」と嘆く。 変異ウイルスによる感染の広がりで医療体制が厳しい中で、大会組織委員会は期間中の人員として看護師500人の確保を依頼し、スポーツドクター200人を募集した。こうした動きに対して、SNSなどで不信が拡散された。 テスト大会では飛び込みで陽性者が出て、札幌のマラソンでは沿道で五輪反対の声が上がった。聖火リレーは公道中止が相次いでも続けられている。組織委のやり方が負の感情を助長している、と指摘する国内スポーツ関係者もいる。 4月下旬に公表されたコロナ対策のプレーブック第2版も穴が多い。選手らと外部との接触を遮断することを原則としながら、医療人員やボランティアなどとの接触は排除されていない。最終版ではないとはいえ、これでは不安は取り除けない。 海外のスポーツ界からの直近の反応について、国際競技団体の幹部は「すごくネガティブ」だと明かす。日本国内の感染状況のみならず、進まないワクチン接種など政府のコロナ対応そのものも懸念しているという。 今後無観客を決めたとしても、もはや開催への追い風にはならないだろう。国際オリンピック委員会(IOC)は選手団向けにワクチン提供を受けることで米ファイザー社などと合意したが、世論が五輪からさらに離れる火種にもなり得る。組織委の周辺からは「やっても歓迎されない五輪になる。やめる方が正しいのか」という声も聞こえてくる。 ●SNSで五輪中止<pンデミック…「反五輪」の流れさらに加速化 5/7 東京五輪中止を求める世論が勢いを増している。新型コロナウイルス禍が収まらぬ中、五輪開催を強行する国際オリンピック委員会(IOC)、大会組織委員会、東京都、政府らに対し、SNSでは「#東京オリンピックの中止を求めます」「#五輪とても無理です」「#オリンピックより命を守れ」など、中止にまつわるハッシュタグが乱立している。 先日、大会組織委が500人の看護師の派遣を依頼した際にはSNSで大規模な抗議が行われ、昨年の東京都知事選に出馬した宇都宮健児氏(74)が「人々の命と暮らしを守るために、東京五輪の開催中止を求めます」と5日正午から呼び掛けたオンライン署名は6日深夜に15万人を突破した。また、複数の反五輪団体によるオンラインのデモは連日のように行われ、参加者の数も膨れ上がっている。 さらに火に油を注いだのがIOCによるワクチン提供だ。この日、IOCは東京大会に参加する各国・地域の選手団に米製薬会社大手ファイザー製ワクチンを提供することを発表したが、すでに多くの国民が反発している。 まるでコロナ感染拡大の勢いを超える五輪中止ムード。さらに加速しそうな雰囲気だ。 |
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●桐生、新谷ら闘志 ワクチン提供に心境複雑―陸上五輪テスト大会 5/8 陸上の東京五輪テスト大会(東京・国立競技場)を翌日に控えた8日、日本の有力選手がオンラインで記者会見した。男子100メートルは2017年世界選手権覇者のジャスティン・ガトリン(米国)が出場予定。桐生祥秀(日本生命)は「誰と勝負するとかは考えず、自分の走りをすることが結果につながる」と静かに闘志を燃やした。 女子でともに五輪代表に決まっている新谷仁美(積水化学)は5000メートル、田中希実(豊田自動織機TC)は1500メートルにエントリーし、日本記録更新を目標に掲げた。新谷は「結果を出すのは大前提。勝負も意識したい」。田中は「五輪さながらの緊張感やわくわく感を持って走りたい」と本番会場でのレースを心待ちにした。 国際オリンピック委員会(IOC)が東京大会の選手団に新型コロナウイルスワクチンを提供すると発表したことに、新谷は「打たないことで他の人に危険が及ぶのであれば打つ。ただ、恐怖もあって打ちたくない気持ちはある」。女子100メートル障害の寺田明日香(ジャパンクリエイト)も「難しい問題。私たちがワクチンを断って(その分が)皆さんに渡ればうれしいが…」と複雑な胸中を明かした。 ●東京五輪開催に「国民がこんな望んでないオリンピック・パラリンピックって」 5/8 歌手の和田アキ子(71)が8日、パーソナリティーを務めるニッポン放送「ゴッドアフタヌーン アッコのいいかげんに1000回」(土曜前11・00)に出演。緊急事態宣言延長や東京五輪開催について疑問を投げかけた。 和田は緊急事態宣言の延長について「今月いっぱいって。11日(まで)って決めた、4月の後半からの17日間。この期間もよう分からんし。5月いっぱいって言う、これも何なん?5月いっぱいしたらどうなるの。国が考えていることよく分からない。それだったら、GWからやめりゃあ良かったんですよ。何回も何回もちんたらちんたらしてね」と厳しい口調で語った。 また、競泳の池江璃花子(20)のSNSに五輪出場辞退や五輪開催反対に賛同を求める声が寄せられていることについても触れ「申し訳ないんですけど、丸川(珠代五輪相)さんも言うけど、『安心安全な五輪を目指して』ってうちら全然安心してないよね」と強調。「ワクチンもまだ。私がよ。和田アキ子の高齢者がワクチンがいつかも分からへんし、申し込み用紙も来ないし。そんなときにオリンピック選手にワクチン打つことをバッハ(IOC会長)さんが決めたって言うけど、無観客でやるにしてもね、家で見るにしてもうちらが打ってないのに選手だけ?って」と疑問を投げかけ、「(苦しい胸のうちを明かした)池江さんの言っていることも分かりますけど。誰もやらないと言わないもんね」と語った。 そういった事態を踏まえ、延長された緊急事態宣言について「もうみんな言う事聞かないよ本当に。飲食業はつぶれてしまう。あたしなんか本当につらい。今日仕事早く終わったから軽く飲んで帰ろう思ったら、ダメだ、お酒出ないんだと思ったりね」とし、「何で宣言やるときに菅(義偉)さんの、総理の何で承認がいるんですか。あんなもん各自治体でいいと思うのよ。あの時一番大変な時に菅さんはバイデン(米大統領)さんに会いに行ってたって言うんだから。日本って変な国だよね」と厳しかった。 あらためて、東京五輪について「安心安全ってちっとも。国民がこんな望んでないオリンピック・パラリンピックってあるんだろうか」と強調。「始まったら見ちゃうよ。そりゃ」としながらも「うちらには密を避けてって言うのに、国がやる大きなイベントはいいのかね。みんなまとめて選手も来るし。ほんまに何とかしてほしいねんけど」と訴えていた。 ●緊急事態宣言延長で五輪開催より一層厳しくなったと米メディア報道 5/8 東京五輪・パラリンピックの開催中止を求める声が強まる中、緊急事態宣言が今月末まで延長されたことで開催がより一層厳しくなったと米メディアが報じた。 CNNテレビは医師や看護師らコロナ患者に接する医療従事者の医療体制が逼迫(ひっぱく)する中での開催を不安視する声を紹介。日本のワクチン接種率は先進国の中で最低の1%未満である中で、五輪開催が進められていると報じた。また、開催中止を求めるオンライン署名が開始から2日ほどで20万筆を超え、多くの国民が中止を求めているが、組織委員会は予定通り開催すると繰り返し述べていることも伝えている。 また、USAトゥデイ紙は、大型連休が終わって再び通勤ラッシュが始まり、酒類提供禁止で不満がたまる若者たちは路上で飲酒し、IOCのバッハ会長の来日に反対する抗議デモも計画されていたと日本の現状を伝え、世界の中でもワクチン接種が最も遅れている日本では社会的にも政治的にも緊張が漂っているとし、11週間後の五輪開催に疑問を呈している。 五輪開催を巡っては、ワシントン・ポスト紙も5日のコラムでバッハ会長を「ぼったくり男爵」と呼び、日本政府に対して五輪を中止するよう促す記事を掲載している。 ●WHO「東京五輪開催望む」、日本の緊急事態宣言延長でも 5/8 世界保健機関(WHO)で緊急事態対応部門を統括するマイケル・ライアン氏は7日、今夏の東京五輪の開催を望んでいると表明した。また、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を巡るリスクが高まっているため、大会形式に関する判断の多くは直前になるとした。 日本政府は7日、東京都、大府阪、京都府、兵庫県に出している緊急事態宣言の延長を正式に決定。ただ、菅義偉首相は会見で、感染対策を徹底することで安全・安心な大会実現は可能との考えを示した。 ライアン氏は記者会見で「五輪開催がわれわれの希望だ」とし、日本国内の新型コロナ感染症の陽性率は横ばいになっていると指摘。日本当局はこれまでのところ、「非常に体系的でリスク管理されたアプローチ」を適用しており、東京にはウイルスを拡散させるような社会的交流を避けながら、どのように大会を開催するかを決定する「高い能力」があるとした。 その上で「国際オリンピック委員会(IOC)、開催都市である東京、日本政府がリスクをどのように管理するかについて正しい判断を下すと確信しており、リスクを確実に管理するために現在、懸命に取り組んでいる」と言及。観客数など一部の判断はコロナ感染者数の推移を見極めながら開幕直前に行うことが可能とした。 ●五輪中止し感染対策に集中を 5/8 菅義偉政権が、新型コロナウイルス感染「第4波」を受けた緊急事態宣言を31日まで延長し、対象地域を6都府県に拡大することを決めました。大型連休前、「強い措置を集中的に」と言って3度目の緊急事態を宣言したにもかかわらず、感染拡大を抑えられなかった首相の責任が問われます。期限を延長しても感染抑止の道は見えません。行動を制限される国民の疲弊は限界に達しつつあります。政府は対策が効果をあげなかったことを反省し、今度こそ、あらゆる力をコロナ収束に集中しなければなりません。 菅首相は感染が減少していないことを指摘されても「人出は減少した」と述べ、現実を直視しません。全国の重症者数は1100人を超え、ほぼ連日、最多を更新しています。変異株による感染が拡大し、早期に重症化するケースが増えています。 大阪府では必要な医療を受けられない「医療崩壊」が起きています。助かる命が体制整備の遅れで失われていることは重大です。大阪への医師派遣など、政府が全国レベルの広域連携を後押しすることが急務です。医療の危機は大阪以外にも広がっており、国の支援強化は待ったなしです。 PCR検査数は緊急事態宣言中も1日平均約6万人と、厚生労働省が公表している1日最大20万件の検査能力と大きな開きがあります。感染封じ込めのため大規模検査に力を注ぐことが不可欠です。 ワクチン接種の立ち遅れは深刻です。医療従事者にも高齢者にもいまだに行き届かず政府は完了までの具体的行程を示せません。接種率は国際的に異常な低さです。 コロナ対策と東京オリンピック・パラリンピックの今夏開催が両立しないことは宣言の延長によっていよいよ明らかです。多くの医師、看護師や病院を五輪に動員することは危機的な医療体制にさらに重荷を負わせます。医療への負担を理由にホストタウンを辞退する自治体も相次いでいます。 菅首相が開催の判断を国際オリンピック委員会(IOC)に丸投げしていることは無責任の極みです。開催国の政府として、国民の命を守る立場からただちに中止を決断する時です。 菅政権は中小事業者に過酷な営業制限を要請しながら、緊急事態宣言の延長にあたっても補償をしません。酒類を提供する飲食店は書き入れ時の連休も休業し、宣言明けの営業再開を期していました。補償なくさらに休業を要請することは倒産、廃業してもいいということに等しい行為です。演劇、コンサートなどの「無観客」要請も批判を浴びています。文化芸術団体は科学的根拠のない休業、時短、客席減の要請をやめるよう求めています。当然の要求です。 国民の財産権を保障し、私有財産を公共のために用いる場合は「正当な補償」をすると定めた日本国憲法に照らしても政府の姿勢は不当極まるものです。補償とともに持続化給付金、家賃支援給付金の再支給に踏み出すべきです。 国民の命と暮らしを守るためにこれ以上の失敗は許されません。政府が国民に我慢ばかり求める姿勢を根本から改め、補正予算案を編成して抜本的対策に乗り出すことが必要です。 ●東京五輪の観客数、WHO「疫学的な数値で決断を」 5/8 7月に開会予定の東京五輪について、世界保健機関(WHO)の緊急対応責任者であるマイク・ライアン氏は7日の会見で、開催を前提に、会場や選手村、トレーニング施設など多くの人が交わる場所での人数制限を、疫学的なデータに基づいて検討すべきだとの考えを示した。 ライアン氏は「問題はどの程度、人が交わるかだ」と述べ、会場などで選手やチーム、観客の接触を抑えることが重要だと指摘。国際オリンピック委員会(IOC)や東京都、日本政府はリスク管理に「一生懸命努力している」と評価。会場などにどの程度人を入れるか最終判断していないのは「組織の側の失敗ではない。その時の疫学的な数値に基づいてのみ決断できる」とし、観客の人数などは開催前の感染状況を踏まえた上で最終的に判断するべきだとの考えを示した。 |
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●豊田真由子氏 東京五輪中止なら「未来永劫日本にオリンピックは来ない」 5/9 元衆院議員の豊田真由子氏(46)が9日、「ABEMA的ニュースショー」(ABEMA TV)に出演。東京五輪中止を言い出せない“裏事情”を推察した。 五輪開催の是非についての討論となり、共演者から「国のリーダーが『コロナが落ち着いてからもう一回立候補するところから始めます』と言えば拍手する人は多い」と発言すると、豊田氏は「でももし、日本からそう言ったら多分、未来永劫、日本にオリンピック・パラリンピックは来ない」と指摘。「日本政府の人は絶対自分から“逃げた”みたいなことは言えないし、IOCにしてみれば、放映権料が一番大事なので、もはや『やれれば何でもいい』という感じだと思う」と続けた。 MCの千原ジュニアから「実際にやるんですか?」と質問されると「今のままの状況だったら8〜9割やろうと思ってる。『やめます』と言い出す人がいない。政治的にはそれが勝ちだという意見もありますけど、多分そんな短期のスパンでは物事を彼らは考えてなくて、そこで日本がそうすることの長期的なデメリットをすごく気にしていると思います」と豊田氏。 共演者から「本当に未来永劫できなくなるのか?」と疑問の声も出たが、豊田氏は「多分、誰かが誰かのせいにしたい。IOCからしたら、もし日本がやらないって言ったら、『やらないって言ったよね?』ってなっちゃう。全部の責任が日本だということになって、いろんなお金の話とか、オリパラに向けての(準備など)いろんなことが全部日本のせいになる」と推測した。 ●池江璃花子の“叫び”に為末大さんが有森裕子さんが野口健さんが 5/9 白血病による長期療養を経て東京オリンピック(五輪)代表入りを決めた競泳女子の池江璃花子(20=ルネサンス)が7日に、SNSを通じて代表の辞退や五輪への反対を求めるメッセージが寄せられていることをツイッターで明かした。一夜明け、8日までに、この発信を巡る一連の動きに、多くの反応が集まった。 ●池江の連続ツイート (全文) いつも応援ありがとうございます。Instagramのダイレクトメッセージ、Twitterのリプライに「辞退してほしい」「反対に声をあげてほしい」などのコメントが寄せられている事を知りました。もちろん、私たちアスリートはオリンピックに出るため、ずっと頑張ってきました。ですが、今このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然の事だと思っています。私も、他の選手もきっとオリンピックがあってもなくても、決まったことは受け入れ、やるならもちろん全力で、ないなら次に向けて、頑張るだけだと思っています。1年延期されたオリンピックは私のような選手であれば、ラッキーでもあり、逆に絶望してしまう選手もいます。持病を持ってる私も、開催され無くても今、目の前にある重症化リスクに日々不安な生活も送っています。私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません。ただ今やるべき事を全うし、応援していただいてる方達の期待に応えたい一心で日々の練習をしています。オリンピックについて、良いメッセージもあれば、正直、今日は非常に心を痛めたメッセージもありました。この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです。長くなってしまいましたが、わたしに限らず、頑張っている選手をどんな状況になっても暖かく見守っていてほしいなと思います。 ● 元陸上選手で五輪に3度出場した為末大さん(ツイッターで) アスリートやその他の表現者の方も含め様々な方々が自分の夢に向かって一生懸命頑張っていることは何一つ咎められるようなことでもなく素晴らしいことで、それで勇気をもらう人もたくさんいると思います。ただその舞台を行うかどうかはまた別の話で冷静に判断することになりますが、それは別の話です。 陸上女子マラソンで五輪2大会連続メダリストの有森裕子さん(ツイッターで) 組織が「意固地」とも感じる発信をし続けている現状が、このような理不尽な矛先の向けられ方を生んでます! 登山家の野口健さん(ツイッターで) 池江さんご本人に「五輪辞退を求める」といった趣旨の投稿をした人たちは下衆の極みである。五輪開催の有無について意見があれば決定権のあるIOCや、また開催国、開催都市である国や東京都に向けるべき。最もやってはいけないのはアスリートにその刃を向けること。 ●国立競技場周辺で大規模の反五輪デモ「中止しろ!」 5/9 東京五輪の陸上テスト大会が実施された9日、会場の国立競技場(東京・新宿区)の周辺で大規模な抗議デモが展開された。 午後5時、東京五輪中止を求める反五輪団体は日本オリンピック委員会(JOC)や五輪競技団体が入る「ジャパン・スポーツ・オリンピック・スクエア」の前に集結。デモの申請を受けて出動した警察官、警備会社スタッフなどが厳戒態勢を敷く中、デモ隊は「Olympic kill the poor(五輪は貧乏人を殺す)」と書かれた横断幕を手に五輪中止を声高に訴えた。 すぐ隣の国立競技場で男子100メートルで日本人初の9秒台をマークした桐生祥秀(25=日本生命)らが出場する大会が開催される中、抗議団体は「オリンピックを即刻、中止しろ!」とマスク越しに叫んだ。昨年秋、国立競技場の視察に来た国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(67)と対峙して中止を訴えた女性は「国民の7、8割がもう五輪は無理だと思っている。誰のため、何のためにやるのか? おカネや政治が理由なら本当にやめてほしい」と切実に話した。 東京五輪の中止を求める世論は日を追うごとに激化。SNSでも中止デモや署名活動が展開されている。果たして75日後、この場所で無事に開会式が行われるのだろうか。 ●小池百合子 五輪中止ムードで「大ちゃぶ台返し」炸裂の予感 5/9 「小池さんが東京オリンピックを返上するんじゃないかっていう説はあるんです。説はあるんですけど…」 5月6日に放送された『めざまし8』(フジテレビ系)で、政治ジャーナリスト・田崎史郎氏がそう切り出した。その後、同氏は小池百合子都知事と話した自民党議員の話を引用し、「小池さんは、オリンピック成功させるために頑張ろうねって言われているっていうんです」とフォローしたが、どうも雲行きが怪しい。自民党内では世論調査で新型コロナ感染対策を徹底しても「五輪は中止すべきだ」との回答が半数以上を超える結果が出たことに衝撃を受けたという。 もはや、東京五輪中止を求める世界的な潮流は止められない。 米有力紙ワシントン・ポスト(電子版)はコラムでIOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長を「ぼったくり男爵」と呼び「地方行脚で食料を食い尽くす王族」「開催国を食い物にする悪癖がある」「収益のほとんどを自分たちのものにし、費用は全て開催国に押し付けている」などと痛烈に批判。日本政府は五輪を中止すべきと主張した。 IOCの“守銭奴”ぶりと開催に執着する日本の姿勢は、よりによって中国メディアからも断罪されている。中国紙「網易ニュース」は《日本の人口のわずか1%しかワクチンの接種を受けていない。日本人も五輪拒否のムードに満ちている》と分析した上で、《国民の反対や多くの障害にもかかわらず、日本政府やIOCは、東京五輪の開催を決意している。IOCは、五輪によってもたらされる数十億ドルの放映権料を見逃すことは絶対に不可能だ。同様に、日本政府も五輪のために数十億ドルの公的資金を費やしてきた。観客制限でチケットの収益が失われても、日本政府は投資の一部をなんとしても回収することを望んでいる》と“マネーファースト”を批判した。 「ここにきて五輪中止を求める声が増大化した原因はインドの二重変異株の出現にあります。ワクチンが効きづらく、重症化スピードも速い。インドでは1日の新規感染者数が40万人を突破し、火葬が間に合わない。五輪を強行開催し、各国から人の流入が起きれば、二重変異株の蔓延のみならず、新たな変異株が出現する可能性もあります」(医療関係者) こうしたカオスな状況下で本領発揮してくるのが前出の小池都知事だ。口では「五輪開催に向けて…」と言っているが、本心かどうかは疑わしい。自民党内では、「『緑のたぬき』とも呼ばれた小池都知事は信用できない。7月には東京都議会選挙も控えている。とにかく、世間の空気感を読むことに長けている人。頃合いを見計らって『五輪返上』を口にするかもしれない」(永田町関係者)と警戒を強めている。 人気取りで“ちゃぶ台返し”すれば、あとに残るのは巨額の賠償金だ。IOCと開催都市契約を交わしているのはあくまで東京都であり、国ではない。IOCが「中止」を決断しない限り、東京都が開催義務を履行しなければ、損害賠償を請求される可能性が高い。 「IOCはすでに米テレビ局NBCから五輪の放映権料をまとめて受け取っており、東京大会分は約1200億円にのぼる。中止となれば、世界の五輪スポンサーからIOCが返金を求められることになり、その一部負担を都に求めてくることも考えられる。 東京都に支払い能力がなければ、国が肩代わりすることになるが、小池都知事と菅首相の“関係”は最悪。どっちに転んでも、ツケは国民が払うことになる」(スポーツ紙記者) “行くも地獄、戻るも地獄”。何より事実上の決定権を小池都知事が握っていることに戦慄を覚える。果たしてどうなるか――。 |
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●ステージ4でも五輪? 「対策しっかり…」繰り返す首相 5/10 10日の衆院予算委員会の集中審議で、質問に立った立憲民主党の山井和則氏は、東京五輪・パラリンピックの時期に新型コロナウイルスの感染が拡大していた場合でも、予定通り開催するのか否かについて、菅義偉首相にただした。 山井氏は冒頭、「菅首相の頭の中は五輪ファーストでコロナ対策、ワクチン接種、事業者への対策が二の次になってしまっているのではないか」と指摘した。また、これまでの感染拡大傾向から、今年8月に再度「波」が来るという試算を紹介。「ステージ3、ステージ4でも五輪を開催するのか」と問うた。 菅首相は答弁で「大変失礼だ。私は五輪ファーストでやってきたことはない」と反論。しかし、五輪開催については「まず現在の感染拡大を食い止めることが大事だ。開催にあたっては、選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じて、安心して参加できるようにし、国民の命と健康を守るのが責務だ」との答弁を繰り返した。 山井氏は「だから五輪ファースト、五輪ありきと言われるんじゃないか」とあきれた様子を見せた。 ●五輪公式文化プログラムで東北を巡回へ・巨大人形「モッコ」壮行会 5/10 高森町で作られた東京オリンピック・パラリンピックの公式文化プログラムで巨大な人形「モッコ」が東北を巡ります。初公演を前に、壮行会が行われました。高森中学校の校庭に現れたのは、高さおよそ10メートルの巨大人形「モッコ」です。東京オリンピック・パラリンピックの公式文化プログラムで、東日本大震災からの復興をテーマに今月15日から東北を巡ります。 デザインを手がけた人形劇作家・沢則行さんが「いいだ人形劇フェスタ」に参加してきた縁から高森町で製作されました。きょうは壮行会が行われ、町内の小中学校の児童と生徒およそ690人も参加し、実際に東北で行われる演目も披露されました。 高森中学校の生徒会長安藤瑞貴さんは「モッコの旅立ちに立ち会うことができて大変うれしく思う。これからも前に進み続けていってもらいたい」などと話していました。 モッコは岩手県で最初の公演を行った後、宮城県や福島県をめぐり、7月17日に東京で最終公演を行います。 ●「海外メディアは注目。開催について議論すべき時だ」 5/10 東京都への緊急事態宣言が延長される中、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長は7日の会見で、来週に予定されていたIOCのバッハ会長の来日について「非常に難しい」との見方を示した。大会開催の現在地はー。元ANNアメリカ総局長の名村晃一氏に話を聞いた。 まず、開催となれば最大規模の選手団が来日することになるアメリカの反応について名村氏は「もちろんオリンピックは大イベントではあるものの、野球などのプロスポーツも盛んなアメリカ人にとっては、日本人ほどの高揚感のあるものではない。そして“やめたほうがいい”という国民の総意があるわけでもない。それでも、アメリカのメディアの反応は総じて厳しいと言っていい」と話す。 「アメリカの放送局NBCはIOC(国際オリンピック委員会)に対して大きな影響があると言われているし、朝のニュース番組でも画面の隅に五輪のロゴマークを入れるくらい、開催に向け機運を盛り上げようとしている。一方で、大きな新聞ほど論調は厳しい。例えばニューヨーク・タイムズ紙やサンフランシスコ・クロニクル紙は“感染が拡大するからやめたほうがいいんじゃないか”というようなことを書いているし、ワシントン・ポスト紙もIOCのことを揶揄するようなトーンで開催を疑問視するコラムを掲載した。スポーツ雑誌の中にも、“あまりにもお金をかけているし、もうやめられないんだろうね”という記事を出しているところもある」。 これらの懸念の背景にあるは、やはりワクチン接種率の低さだという。「アメリカではすでに全国民の約40%が2回の接種を終えている。一方、日本では2月から始まって、まだ2%程度だ。中国に抜かれる以前は世界2位だった先進国が、ここまで低いのか、というのが取材をしているスポーツジャーナリスト、さらには記事を読む読者たちの反応だ」。 名村氏によれば、日本の動向を注視しているのは他の国のメディアも同様だという。 「日本というのは、感染をうまく抑えている国だと思われていた。その国で、いま再び感染者数が増えてきている。だからこそ、“オリンピックをやる日本でしょ?どう対応するんだろう?開催するの?”と興味を持たれているということだ。例えばイギリスのメディアは、日本政府が開催期間中に看護師の派遣を要請したことについて報じたし、きょうの午前中、菅総理と立憲民主党の枝野代表が開催をめぐって論戦をしたこと、国民民主党の玉木代表が延期に言及したことなどもすぐに海外で流れた。読売新聞は“中止する”が59%だったという世論調査の結果について最終版の2面で取り上げていたが、このこともイギリスやオーストラリアのメディアは通信社の報道をもとに、きちんと報じていた。 先月末には大会を取材するメディア向けのプレイブック(ガイドライン)が更新され、感染防止対策も非常に厳しいものになった。当然、日本としては守ってもらわなければならないものではあるが、来日するメディア関係者が“ここまでやらないといけないの?ここまでしてやる必要あるの?”という気持ちにならないとも限らない。そうなれば、開催についてさらに厳しい論調が出てくることも考えられる。こうした点を踏まえれば、むしろ海外メディアの方が日本のメディアよりも敏感になっていると言ってもいいと思うし、我々日本人は、海外でそのくらい細かく報じられているんだと思わないといけない。 そんな中で、イタリア国際出場のためにイタリア入りしている大坂なおみ選手が、“個人的にはやってほしいという思いはあるが、そうは言ってもこういう状況。今こそ、やるかどうかの議論をすべきではないか”と発言した。このことはAP通信などを通じて、各国のメディアが報じた。選手たちにも様々な考えがあるだろうが、基本的には開催してほしいし、参加したいと思っているはずだし、実際、“行きたくない”と言った選手はいないと思う。それでも客観的に見てやれるのかやれないか、それを議論してほしいという大坂選手の発言はタイムリーで、冷静で的を射たものだったと思う。日本のメディアも、これはきちんと報じて議論すべきではないか」。 ●枝野氏、五輪中止求める 「もう判断の先送りできない」 5/10 立憲民主党の枝野幸男代表は10日の衆院予算委員会で東京五輪・パラリンピックの開催について、「不可能と言ってもいい」との見解を示した 枝野氏は「私も見てみたい。奇跡的にここから感染が抑制できて、開催できることを期待している」とした上で、「今の日本の感染状況と、ここから3、4カ月の想定の中で、国民の命と健康を守ることとオリンピック・パラリンピックの開催を両立させることは不可能と言っててもいいんじゃないかと残念ながら言わざるを得ない。もう判断の先送りはできないタイミングだ」と東京五輪・パラリンピックの中止を求めた。 ●東京オリンピック「開催中止」読売調査6割、ネット上の署名30万超 5/10 週明けの月曜日の紙面には、メディアが実施した世論調査の結果を掲載することがよくあるが、きょうは読売が1面や総合面などで取り上げている。5月7日から9日の間、電話による方式で調べたもので、1092人から回答を得たそうだ。 それによると、新型コロナウイルスを巡る政府の対応を「評価する」との回答は23%(前回4月2〜4日調査35%)に下がり、同様の質問をした昨年2月以降で最低。「評価しない」は68%(同59%)で、最も高かったという。菅内閣の支持率は43%、前回の47%から4ポイント低下。不支持率は46%(前回40%)で、2月以来3か月ぶりに不支持が支持を上回ったとしている。 また、多数の国民が気をもむ今年夏の東京オリンピック・パラリンピックについては「中止するべきだ」が59%、一方で「開催する」は「観客数を制限して」が16%、「観客を入れずに」が23%と、あわせて39%にとどまったという。このうち、開催都市の東京都では61%となり、全国平均よりも高かったことがうかがえる。 5月中旬に予定していた国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長の来日が見送られることになったほか、きょうの毎日によると、インターネットのサイト上で始めた「五輪中止」の署名も開始5日目で30万に到達していると報じている。五輪スポンサーの大手メディアも、「五輪開催」を疑問視する情報をようやく伝えるようになった。 ●東京オリンピック・パラリンピック中止運動に足りないもの 5/10 弁護士の宇都宮健児先生が行っている東京オリンピック大会中止を求める署名運動は、既に31万筆を超えている。 日本国民だけでなく、世界中のまともな人々が東京オリンピックの開催は強行されるべきではないと考え、特に欧米メディアは強い批判をしているが、日本のメディアは海外の報道を伝えるだけで、自ら批難するものはなく、批判のトーンは抑えられている。日本のメディアに主体性がなく無責任なのは今に始まったことではないが、これは本当に情けない限りである。 宇都宮先生の行動力は素晴らしいと思う反面、私は、今回の署名運動に徹底的に欠如している点があると思っている。それは日本の左翼活動家に多いと思う欠点でもあるのであるが、活動をしていることに酔いしれ、本当に達成すべき目的を見失ってしまう傾向が生み出す、ロビイング戦略の欠如である。 宇都宮先生の署名の宛先が、主催者であるIOC、IPC、国、東京都、組織委のみを対象にしている点からもわかると思うが、宇都宮先生をはじめ日本におけるこの種の活動家は、運動そのものに酔いしれ、付託された署名の使い方が稚拙なことが多い。そもそも、署名の名宛人とされているこの人たちは、人命を軽んじても、経済の名の下に一部の利権を受益できる人たちのために、オリンピック・パラリンピックを強行したい人たちなのであって、こんな宛先に署名を送ったところで、まともに取り上げられるわけがない。 私の友人で米国政権で高官を務めていた弁護士の友人も言っていたが、一番効果的なオリンピックの中止の方法は、この署名をもって、オリンピックスポンサー企業に対して、彼らがスポンサーするオリンピックの開催により、人命が損なわれる事態が日本で発生しても良いのかと強く問い、不買運動を展開することだと言っていた。特に、対象にすべきは、欧米の外資系企業である。私も外資系企業の法務・コンプライアンス部での勤務経験があるが、外資系企業は、レピュテーション(風評)リスクに本当に敏感である。企業イメージが損なわれることをしないことが、欧米の外資系企業に特に求められている。 おそらく、オリンピックスポンサー企業は、大金を払っているので苦しい立場である反面、今まさに、中止運動の矛先が自分たちに向かないことを願っていると思う。戦略的なロビイングが行われるアメリカでは、このような場合、スポンサー企業に対して訴えるのが一番良いと考えて弁護士たちは活動するのである。 しかしながら、宇都宮先生の以下のツイートでも明らかであるが、先生の発想には、スポンサー企業に対して活動をするという意識はなさそうである。 「現在東京五輪代表に内定した選手に出場辞退を求める声がネットで溢れている。だが五輪中止を求める相手は選手ではなく、主催者であるIOC、IPC、国、東京都、組織委である。当然のことながら選手にはいっさいの非はない。見通しの立たない辛い状況に置かれている選手をこれ以上苦しめてはならない。」 「東京オリンピック・パラリンピックの開催中止を求める署名を立ち上げました。新型コロナの感染拡大を鑑み、人々の命や暮らしを危険にさらしてまで開催を強行するべきでなく、一刻も早く開催中止を判断・要請するようIOCとIPC、国、都、組織委に求めます。ぜひご署名ください。」 私は、行動力は本当に素晴らしいと思うが、ここに日本の左翼的な思想の方々の活動がいつも話題性だけで終わってしまう弱さがあると考えている。 組織委員会のHPでは、中止を求める人々には有難いことに、オリンピックスポンサー企業の一覧、特に、外資系企業まできちんとわかりやすくワールドワイドオリンピックパートナーとして、示してくれている。 こういう企業に対して、直接的に、オリンピックを強行することに対して、「あなたの会社は、日本の医療崩壊をさらに深刻化させ、日本に住む人の命を犠牲にしてまでオリンピックを強行するのか。」とか、「あなたの会社は日本人を殺すことを容認するのか」と強く責任をスポンサー企業に問うやり方をしなければ、オリンピック中止はできないだろう。 アメリカ政府に期待する声もあるが、バイデン政権は、極めて官僚的な日本と同じような姿勢の弱い政権である。オリンピックに中国の参加を認めるのはおかしいという国内世論もあり、バイデン政権は、オリンピックにアメリカの選手団を送りたくはないが、その決断をできないで先延ばし、先延ばしをしている。バイデン政権も、オリンピックが行われなければ、中国と直面する必要がない(下手くそな平和を演出した祭典に中国とともに参加する必要がない)から、それを望んでいるが、それを決断できないバイデン大統領の弱さがある。 したがって、今、日本人が行うべきは、馬鹿みたく100人くらいが集まって、シュプレヒコールを上げて感染リスクを高めて抗議活動をするのではなく、こういった署名活動の矛先を戦略的に考え、外資系のスポンサー企業の”本社”に対して、国民の6割から7割が反対している事実を突きつけ、「企業として人命を犠牲にすることを強行するのか。」と強く迫るロビイング活動ではなかろうか。 内閣官房参与という立場の人間である人物が、このような軽口を叩いて人命を軽視している現状は極めて異常である。コロナで亡くなった人の家族たちを思えば、このような軽口はまともな人間は叩けないのではないだろうか。しかし、このようなことをする人間を今の自民党と公明党の政権は重用しているという事実を私たちは忘れてはいけない。 「日本はこの程度の「さざ波」。これで五輪中止とかいうと笑笑」 大阪は既に医療崩壊している。医療従事者からしたら、本当に苛立ちしかない日々ではなかろうか。 こうした医療従事者を救うためにも、そして私たちがこれ以上の医療崩壊拡大を防いで、自分たちの命を守るためにも、東京オリンピック・パラリンピック開催は行われるべきではない。 他方で、日本は外圧でしか対極の判断ができない。日本企業もレピュテーションリスクに対する認識はまだまだ薄弱である。だとすれば、東京オリンピック・パラリンピック開催中止運動は、活動家特有の活動に酔いしれるだけではなく、その矛先を外資系企業の「本社」に向けて、戦略的に、正しく行うべきだと私は思う。 |
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●兵庫の五輪聖火リレー、公道では中止 姫路城・篠山城跡で実施 5/11
緊急事態宣言が5月31日まで延長されたことから、兵庫県は5月23日・24日に行われる予定の東京五輪聖火リレーについて、公道での実施を中止し、各日のリレーの到着場所である姫路市と丹波篠山市で開催すると正式に発表した。これにより神戸市と豊岡市で観覧希望者を募集していた聖火リレー出発式は中止となった。 23日は姫路城(三の丸広場)、24日は篠山城跡(三の丸広場)で行う。セレモニーだけになるのか、コースを設けてトーチをつなぐのかなど詳細は未定。どのような形式とするか大会組織委員会と調整する。一般の観客は入れず、応援はランナーの親族らに限って入場を認めるという。 兵庫県では各日90人ずつ、計180人のランナーが選ばれており、兵庫県の実行委員会は「この日のためにトレーニングを積んでいる人もいると聞いている。何とか走ってもらえるよう調整していきたい」とした。井戸知事も「『公道は無理でも、兵庫五国でできないか』と組織委員会に相談したが、新たな形になるので、もともとセレブレーションを予定していた会場にとどめてほしいということだった」と話した。 ●胸中語った錦織圭はいつも通り 五輪への考え変わった瞬間とは 5/11 男子テニスの錦織圭(31=日清食品)は10日の1回戦後の会見で、東京オリンピック(五輪)開催について、「アスリートのことだけを考えれば、やれた方がいい」が、「(新型コロナで)死者がこれだけ出ているということを考えれば、死人が出てまでも行われることではない」と、胸中を明かした。テニスは、五輪が最高峰ではないが、16年リオデジャネイロで五輪に目覚めただけに、複雑な思いだろう。 確かに、テニス選手は、五輪が中止になっても、それほど大きな痛手は被らない。錦織も、リオの3回戦あたりまでは「何を目的に戦っているのか分からなかった」と話していた。世界ランクのポイントも賞金もない。世界の頂点なら4大大会がある。 大会期間中、選手村で食事をしているときに、メダルを取った選手を、多くの人が喜び祝福していた。それを見た後、「みんなのために頑張るという目標でもいい」と心を決めた。その時から、五輪に対する考えが変わったと話した。 もともと日本代表戦は好きだ。日の丸を背負うことに誇りも感じるタイプだ。五輪への思いが変わり、東京五輪も楽しみにしていたからこそ「選手のためだけなら、(開催)できた方がいい」とも思う。ただ、新型コロナに感染した自身の経験からも「1人でも感染者が出るなら気が進まない」とも感じている。 錦織や大坂なおみが、はっきりものを言うことに驚く人は少なくない。テニス選手にとって、自身の意見を話すのは自然な行為。ツアーでは、試合の勝敗に無関係で、要請があれば必ず会見を行わなくてはいけない。拒否すれば罰金だ。その会見で、必ず多くの質問が飛び、自分の考えを聞かれる。だから、今回も言葉を選びながらも、いつも通り、自身の考えを語っただけである。 ●「小池都知事はいつ五輪中止と言い出すのか」 5/11 ●進むも後退するも「いばらの道」 東京都は5月6日にモニタリング会議を開き、11日が期限となっていた緊急事態宣言について月末まで延長することを国に要請しました。都議会自民党ではその判断を受けて、小池百合子都知事に緊急要望を行ったものの、都知事の目に力はなく、心ここにあらずの状態でした。この延長が想定外だったのか、それとも何か全く異なる事を考えているのかと邪推してしまう程でした。 ここのところ、一部のメディアが「小池都知事がオリンピックを返上し、都議選に向かう」と報じています。無責任な報道と受け止めていますが、この1年の小池都知事のオリンピックに関わる言動を見ていると、正直なところ、中途半端な姿勢が気になっています。 例えば都議会本会議場で「大会への決意」を求められても、明確な発言はありません。かと言って、中止にも言及しない、開催都市の長として、どこか無責任であると私はずっと感じてきました。唯一、気合が入っていると感じたのは、今年2月に森喜朗前会長の発言が話題を集めていた頃です。常に世論の風を読んで判断する小池都知事らしいとも言えるかもしれません。 それは、後段に記述する各種アンケート回答にもにじみ出ています。私は、この都知事としての曖昧な態度が、さまざまな臆測を呼び、開催派と中止派が激しくやり合う一因となっていると思います。競泳の池江璃花子選手がSNSでの発言を強いられるなど、次から次へと不必要な展開が生まれています。 私自身は大会を招致し準備を進めていくべきという立場でありますが、全ては東京、日本の未来に禍根を残さないために、どんな形であれ説明責任を果たしていきたいと考えております。 ●準備を進めるとは回答するが… 例えば、毎日新聞が47都道府県知事に行ったアンケートでは、小池都知事は「コロナ感染症の拡大を抑えるため、関係者と一丸となって全力で対策に取り組んでいる。安全安心な大会の実現に向け準備を進める」と答え、準備を進めるとは回答するが「絶対やる」とも「やらない」とも答えない姿勢でした。 《参照:2021年5月4日毎日新聞朝刊「東京五輪・パラ、9県『感染次第で中止・延期』『必ず開催』ゼロ 毎日新聞全国知事調査」》 また、4月29日配信の朝日新聞デジタル「『五輪見届けたいが…』都庁職員からも中止求める声」では、オリンピック開催に懐疑的な職員の声が取り上げられています。 一方、小池都知事は、これまでバッハ会長との信頼関係をアピールし、4月28日の五者協議ではオリンピック開催を前提とした「東京レガシーハーフマラソン」を2022年秋に開催する事を発表しています。つまり、大会を開催したいと考えているが、世論が反対多数のために言い切れない状況なのだと見ています。 そんな中、ネットなどでは「大会中止になった場合でも違約金はない」として、五輪中止を呼びかける主張が目立ってきました。そうした主張には、開催派も中止派も事実誤認が多いので詳しく説明させてください。 ●既に1兆円以上はオリンピックに“投資“している 確かに開催都市契約に「違約金」という言葉は明記されていません。 大会中止となった場合の財政負担については、開催都市契約(66条後段)にこう書かれています。 「理由の如何を問わずIOCによる本大会の中止またはIOCによる本契約の解除が生じた場合、開催都市、NOC(筆者注:JOC日本オリンピック委員会)およびOCOG(同:大会組織委員会)は、ここにいかなる形態の補償、損害賠償またはその他の賠償またはいかなる種類の救済に対する請求および権利を放棄し、また、ここに、当該中止または解除に関するいかなる第三者からの請求、訴訟、または判断からIOC被賠償者を補償し、無害に保つものとする。OCOGが契約を締結している全ての相手方に本条の内容を通知するのはOCOGの責任である」 その上で、立候補ファイルには「万が一、組織委員会が資金不足に陥った場合は(中略)東京都が補填することを保証する」「東京都が補填しきれなかった場合には、最終的に、日本国政府が国内の関係法令に従い、補填する」となっています。 これらを踏まえると、五輪が中止になった場合、日本側が責任を負う可能性はゼロではありません。 具体的にはどのような負担が予想されるか。大会全体の予算案には約1兆6000億円の「支出」が記されています。このうち、既に支出済みの金額がどれくらいあるかが重要です。 例えば競技場などのハード整備は既に完成しています。具体的には、新国立競技場や有明アリーナなど新規恒久施設費用3460億円、既に整備を進めている仮設などが約4000億円、エネルギー・テクノロジー分野の会場整備が約2000億円です。 また、ソフト面でもセキュリティーなど、総額で6100億円の予算があります。仮に半額の約2000〜3000億円使っているとすれば、ハード整備と合わせて事実上1兆円以上は、既に支出のあてが決まっていると考えられます。 ●違約金はなくても多大な損失が発生する 一方で、五輪が開催された場合には「収入」があります。 放映権を原資とするIOC負担金が850億円、海外客などを含むチケット収入が900億円。さらにスポンサー料が、IOCとの直接契約560億円、日本側と契約した3500億円があります。中止の場合、この約5800億円が大幅減となる恐れがあります。 ●1兆円を埋没費用とするか、未来に向けた機会費用とするか こういった背景を踏まえながら、未来の東京、日本に禍根を残さない政治判断をしなくてはなりません。小池都知事は、一日も早くこの説明責任を果たし、都民、国民の皆様の納得と共感を頂くためのリスクコミュニケーションを図るべきです。 私は森前会長の問題発言について、プレジデントオンラインで「『森会長は即刻辞めるべき』という人たちは森会長の役割を誤解している」という記事を発表しました。私があの記事を通じて、最も伝えたかったことは、森前会長の影に隠れて責任を果たさない方々がオリンピックのオペレーションをやっても、この先、いっそう大変になるだろうという懸念でした。 このタイミングで、1兆円を超える「損切りの可能性」と、開催の如何を問わず東京のさらなる未来展望を描かなければいけない。小池都知事の責任は非常に重いと言わざるを得ません。この事実について、議会だけでなく、いまこそ都庁記者クラブをはじめとするジャーナリストの皆さんも、正面から小池都知事に考えを問い質してもらいたいと強く考えています。 私は、東京・日本の未来に向けた座標軸を意識して、必要事項すべてをテーブルに乗せ、真摯しんしな議論を行い、多くの方が納得される判断ができるよう汗をかいていきます。 ●世論におもねる「マーケティング政治」は通用しない 右手に人命、左手に1兆数千億円。頭にご自身の立場。小池都知事におかれては、まずはご自身のパフォーマンスは忘れ、都民、国民と全力で向き合って頂きたいと思うのは私だけではないはずです。 コロナ禍で開催都市の環境は大きく変わりました。開催可否の権限はIOCにあるのは大原則ですが、都民・国民の皆様に説明責任を果たすのは開催都市の長としての責務です。小池知事の愛読書とされる『失敗の本質』にヒントがあるのではないでしょうか。 コロナ流行当初はフリップやフレーズなどで「やっている感」を出し、何となく逃げ切ってきましたが、もうみんな学んでいます。これから必要な事は十分なリスクコミュニケーションです。五輪開催を巡って世論が二分されたままでは、日本は壊滅へと突き進むことになります。 未来に希望と光を呼び込む政治が必要です。政治とは決める事です。為政者とは決める人です。これまでのような世論の風に反応するマーケティング政治は通用しません。まずは小池都知事の考えを明確にすべきです。その上で、何が実現可能で不可能なのかの検証、議論に移るべきだと考えます。 ●「東京五輪は中止すべき」と提言した米有力紙にコメント続々 5/11 米有力紙「ワシントン・ポスト」は5日、「日本政府は損切りし、IOCには『略奪するつもりならよそでやれ』と言うべきだ」と題したコラムを掲載。 日本国内でもこの報道は大きく取りあげられ、クーリエ・ジャポンも同記事の全訳を緊急掲載した。 では、海外の反応はどうだったのか──読者から寄せられた1200件以上のコメントから抜粋して紹介する まず、記事の要旨を振り返ろう。スポーツ・ジャーナリストとして知られるサリー・ジェンキンスは前出のコラム内で、徹底的にIOC(国際オリンピック委員会)の姿勢を批判し、日本はいまからでも五輪開催を中止すべきだと述べている。 その根拠となる主張を下記にまとめた。 ・トーマス・バッハICO会長と委員会メンバーには、そもそも開催国に多大な負担を強いる「悪癖」がある ・日本国民の7割はパンデミック最中の五輪開催に「乗り気ではない」と回答 ・五輪開催の予算超過は以前からある「構造的な問題」で、いまに始まったことではない ・いま日本が損切りとして五輪開催を見送り、ICOが訴訟を起こしたとしても、彼らの印象がさらに悪くなるだけ 「ワシントン・ポスト」には、コラム掲載後に多くのコメントが寄せられた。その声の多くは記事の内容に賛同し、日本に“前向きな中止”を促すものだった。 「オリンピックは何十年も前から『マーケティング』のためのイベントに成り下がった。すべてお金のためだ。国際的な協力のもと、もうずっとギリシャでやればいい」 「日本政府はIOCの要求に応じて、1万人もの医療従事者を揃えないといけないんだよね。しかも、まだ感染拡大が続き、複数の都市が感染防止策の施行を強いられている。IOCに従う必要はなく中止にして、命とお金を守るべきだ」 一方で、「日本のワクチン接種率が2%という事実に驚いた」という声もあった。 またコメント欄には、過去に開催されたオリンピック会場でそのまま放置されたスタジアムなどの施設を紹介する動画も共有されていた。 散見されたのは、「オリンピックを“定住化”させてはどうか」という意見だ。 「私がもしオリンピックを運営するなら、第一に開催地はずっと固定にするだろう(ギリシャでの開催は一番合点がいく)。冬季開催もインスブルックやグルノーブルなどに固定すれば良い」 「過去に建設が完了した優れたオリンピック施設があるのだから、そこでローテーションしながらやればいいじゃないか」 上記のコメントには多数の同意と返答が寄せられていた。 今回のオリンピックに関してだけでなく、各国で4年おきに“今後使われもしない施設”が大金を投じて建設されることに疑問を抱いている人が多かったことがわかる。 日本の、そして海外の世論を受け、日本は決断を下せるのだろうか。 |
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●東京五輪組織委から無観客やむなしの声強まる 5/12
東京五輪・パラリンピックの観客上限を巡る問題で運営主体の組織委員会では、無観客やむなしの声が強まっている。11日までに、複数の大会関係者への取材で分かった。新型コロナウイルスの感染が収まらず、今月末に延長された緊急事態宣言がさらに延びて6月にずれ込む可能性がある。そんな中、国民に開催の理解を得るには6月の決定時期を待たず、早期に無観客を決断すべきとの声が幹部内でも強まっている。 組織委幹部の間で無観客を受け入れざるを得ないとの考えが強まってきた。政府は東京都などに対し、今日12日から月末まで緊急事態宣言を延長。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は7日、宣言解除には「感染状況がステージ2の方向に下降傾向がみられることが重要」と発言した。 この日の都内の感染者数は新たに925人で前週より316人も増加。宣言解除が6月にずれ込む可能性がある中、ある組織委幹部は「早期に無観客を決断した方がいい。大会への国民の安心感も出てくる。さまざまなリスクも軽減される」と語った。 関係者によると、かつてはアスリートのために有観客で開催したい考えだった橋本聖子会長も感染状況や世論の動向を見て、無観客を受け入れる考えにシフト。先月28日、国際オリンピック委員会(IOC)、東京都との5者協議で示した共同文書では観客上限の決定を6月としたが、後の会見で「無観客の覚悟を持っている」と発言していた。 大会関係者によると、早く無観客を決断すれば問題の五輪医療体制も縮小できる。観客の暑さ対策として各会場に配置する医師や看護師の人員も減らせる。同様に警備人員も縮小できる可能性があり経費削減につながるという。 判断が先送りになるほど関係各所の負担は大きくなる。無観客をにらみながら「上限50%」の準備を進めなければならない組織委職員は日に日に、追い詰められている。大会スポンサーも観客が決まらず業務に支障が出ているという。 チケット保有者にとってはホテルや交通機関のキャンセル料に心配が及ぶ。ホテル側も急なキャンセルとなれば発注済みの食材や備品が無駄になり、損害が出る恐れがある。 ただ五輪関係団体は一枚岩ではない。開催都市の東京都はできれば有観客で開催したい。「当然観客は入れたい」と都幹部。無観客なら組織委予算のチケット収入約900億円が入らず、組織委が賄えない分を都が補うことになるからだ。 IOCはバッハ会長をはじめ開幕の近い時期に判断し、なるべく多くの観客を入れたい考え。政府や官邸、組織委の一部でも「5月下旬に感染者が急激に減れば6月まで待って上限50%にした方がいい」との意見もある。別の組織委幹部は「各団体が一致しないので悩ましい」と吐露した。 無観客を飛び越え、中止論が国民世論に広がっている。大会関係者が最も懸念するのは大会の中止。無観客は最後のカードだが、緊急事態宣言が明けるのを待って、判断が遅きに失すれば「世論が持たない可能性だってある」(大会関係者)と危機感を募らせた。 ●東京五輪・パラリンピック組織委員会 / 東京開催の決定を受け、大会の準備・運営のため、14年1月に設立された。日本オリンピック委員会(JOC)と東京都が出資している。会場の整備や大会スケジュールの管理、チケットの販売、プレス対応、感染症対策などの業務を行う。初代会長の森喜朗氏は2月の女性蔑視発言で辞任。橋本聖子氏が後任になった。理事は45人。3月には00年シドニー五輪女子マラソン金メダルの高橋尚子氏ら新たに12人の女性理事が加わった。 ●東京五輪のコロナ対応を巡る経過 3月20日 政府、東京都、組織委とIOC、国際パラリンピック委員会(IPC)の5者協議で海外観客の受け入れを断念することが正式に決まった。 3月25日 東京五輪の聖火リレーが福島県のサッカー施設Jヴィレッジからスタート。11年女子サッカーW杯ドイツ大会で初優勝した「なでしこジャパン」メンバーが第1走者に。 4月15日 自民党の二階俊博幹事長が、大会について中止の選択肢もあることに踏み込んだ。 4月21日 IOCバッハ会長が理事会後の記者会見で、東京都に再発令される見通しの緊急事態宣言について「東京五輪と関係がない」と述べ、国内世論の批判を集めた。 4月27日 丸川珠代五輪相が閣議後の会見で大会の医療提供体制をめぐり、東京都に苦言。前回の五輪相時代も含め小池百合子知事との対立構図が再燃。 4月28日 国内観客数の上限方針について5者協議で「判断は6月に国内のスポーツイベント等における上限規制に準じることを基本に行う」と先延ばしした。 5月5日 米有力紙ワシントン・ポスト(電子版)が日本に対し東京五輪を中止するよう促すコラムを掲載。IOCバッハ会長を「ぼったくり男爵」と呼び、「地方行脚で食料を食い尽くす王族」に例えて「開催国を食い物にする悪癖がある」と非難した。 5月6日 IOCなどは東京大会に参加するアスリート対象のワクチンを、ファイザー社(米国)と共同開発のビオンテック社(ドイツ)から無償提供を受けると発表した。 5月7日 競泳女子で東京五輪代表の池江璃花子が、自身のSNSを更新。開催を巡りさまざまな意見がある東京五輪についてSNSに代表辞退や開催に反対してほしいとの意見が届いたことに言及。「私は何も変えることができません。この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです」と心境を吐露した。 ●茨城県知事 東京五輪・パラ “状況により中止や延期の判断も” 5/12 茨城県の大井川知事は、12日の定例の会見で、11日に続いて12日も県内で新型コロナウイルスの感染者数が70人を超える見通しだとして、感染拡大に警戒感を示しました。 茨城県内では、11日は73人の感染確認が発表され、火曜日では最多となりました。 大井川知事は12日の会見で、12日も感染者数は70人を超える見通しだとして「大型連休の人の移動の影響が徐々に現れ始めている。感染拡大が続く場合には、さらに強い措置を取る必要がある」として、警戒感を示しました。 一方、茨城県では、鹿嶋市のカシマスタジアムが東京オリンピックのサッカー競技の会場になっていますが、東京オリンピック・パラリンピックの開催の是非について、大井川知事は「今の感染状況であれば、安心安全な開催は可能だと感じている」と述べる一方「必ず開催しなければならないということではなく、状況によっては中止や延期という判断もありうる。仮に医療崩壊というような状況の中で開催すれば、世界的にも理解をえられないと思う」と述べました。 また、茨城県内では7月4日と5日に聖火リレーが行われる予定ですが、大井川知事は、聖火リレーが行われる自治体に外出自粛の要請が出されている場合には、公道でのリレーを中止することになるという考えを示しました。 6月の下旬か、遅くとも7月初めには感染状況を見ながら対応を判断したいとしています。 ●鉄道利用者に手荷物検査可へ 省令改正方針 5/12 国土交通省が、鉄道利用者に手荷物検査を行えるよう省令を改正する方針を固めたことがわかりました。東京オリンピック開催前の7月1日施行を目指すということです。 現在、鉄道への危険物の持ち込みは法律で禁止されていますが、東京オリンピック・パラリンピックの開催を前によりテロ対策への強化が求められる中、国交省が、利用客に対し鉄道会社が手荷物検査を行えるよう省令改正を行う方針を固めたことがわかりました。 ただし、全ての乗客に実施することは混雑や運行の妨げにつながるため、危険物を探知する装置や危険物探知犬の巡回などで不審者を絞り込んだ上で手荷物検査を行うことを想定しているということです。また主要なターミナル駅や新幹線の駅などに限定した運用も検討しています。 省令改正は6月1日に公布し、東京オリンピック開催前の7月1日の施行を予定しています。 ●松山英樹は複雑「金目指したい」も「五輪、五輪という風には考えられない」 5/12 男子ゴルフのマスターズで、日本人初のメジャー優勝を果たした松山英樹(29=LEXUS)が11日(日本時間12日未明)、同大会後、初のツアー復帰戦となるAT&Tバイロン・ネルソン(日本時間13日〜16日、米テキサス州)へむけた公式会見に出席し、出場が濃厚な東京オリンピック(五輪)への思いなどを語った。 松山はコロナ禍における東京五輪の実施について問われ「これは本当に何と言えばいいのか分からないですけど。本当に無事に開催されるのであれば、金メダルを目指したい。だけど、今、日本はすごく感染者数も増えて大変な状況だと思うので、一概に五輪、五輪という風には僕は考えられない」と複雑な心境を明かした。 他競技の選手らから五輪開催についてのさまざまな声が聞こえてくる中、一生に1度になるかもしれない大舞台へ強い思いを抱くアスリートの気持ちには一定の理解を示した。それでもコロナ禍の収束しきれていない状況での開催には懐疑的な言葉を続け「4年に1回しかない。今年だったら5年に1回というところで(他競技の選手の)かけている思いというのは僕にはわからないですけど、その人たちにも(五輪を)やってほしい気持ちはありますけど、今の日本の状況考えると、それはどうなのかなという複雑な気持ちではいます」と話した。 ゴルフは男女ともに6月末の世界ランキングを基に、同時点での上位2人が五輪代表に決定する。最新のランキングでは男子は松山が15位で日本人トップで、同2番手は76位の金谷拓実となっている。 ●吉田羊さん「皆さんの思いも乗せて聖火つないだ」 5/12 東京オリンピックの福岡県内の聖火リレーは、県に12日から緊急事態宣言が発令されるのに伴って走行が中止となり、日程初日の11日は福岡市中央区の平和台陸上競技場で無観客の点火式だけが開かれた。大牟田市から福岡市に至るコースを走る予定だったランナーの多くが参加し、トーチを手に聖火を次々とつなぐ「トーチキス」を行って聖火皿に点火した。最終日の12日も同様に、北九州市門司区の関門海峡ミュージアムで点火式が予定されている。 点火式は平和台陸上競技場の特設ステージで行われ、トーチを手にしたランナーたちがポーズを取ったり、誇らしげな表情を見せたりしながら聖火をリレーした。最終的に聖火皿に火がともると、遠巻きに見守った家族らとともに拍手で祝った。 この後、服部知事があいさつ。「公道でのリレーは断念せざるを得ず、私も無念の気持ちでいっぱい」とランナーたちの胸中を思いやった。そのうえで、「聖火をつなぐ姿は歴史に、私たちの心に刻まれた」とたたえた。 ランナーの中には、福岡市のコースを走る予定だった県出身の女優・吉田羊さんの姿も。トーチキスの後、報道陣の取材に応じ、「地元の皆さんの思いも乗せ、聖火をつないだ」と振り返った。 ●「危険な茶番劇やめる時」 米紙、中止求めるコラム掲載 5/12 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は11日、新型コロナウイルスの影響で開催が懸念される東京五輪について、「科学に耳を傾け、危険な茶番劇をやめる時が来た」と、大会中止を求めるコラムを掲載した。 元プロサッカー選手で米パシフィック大教授のジュールズ・ボイコフ氏によるコラムでは、「五輪開催へ強引に突き進む理由は三つ。カネ、カネ、そしてカネだ」と、国際オリンピック委員会(IOC)の姿勢を痛烈に批判した。 日本で新型コロナのワクチン接種が人口の2%に満たないこと、今夏の五輪開催におよそ60%の国民が反対している現状を挙げた上で、「五輪の主催者は、公衆衛生のために、彼らの利益を犠牲にしようとはしない」とした。 ●東京オリンピック・パラリンピック大会は中止・延期し「新型コロナ」対策を 5/12 政府は、「新型コロナ」パンデミックから1年6ヵ月を経過してなお感染拡大に有効な施策を実行せず、感染第4波により3度目の緊急事態宣言の発令・延長を招き、収束は見通せません。2021年夏の『2020東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪)』は、都民と参加選手・関係者の命とくらしを守り、医療を守り、安心安全の生活への回復のみならず、世界的視野からも開催を断念すべきです。政府と五輪主催団体は、世論調査で7割近くが中止・延期を求め、中止を求めるネット署名が数日で30万筆を超えた民意を受け止め、今すぐ中止・延期を決断し、「新型コロナ」対策の抜本的強化に全力を集中すべきです。 東京地評は、開催都市東京のたたかう労働組合の連合体として、開催当事者である日本政府、東京都、大会組織委員会、JOCに対し、開催の決定権を持つ国際オリンピック委員会(IOC)と協議して中止・延期を決定するよう強く求めます。五輪の理念と精神、歴史的意義に立てば、人々の命と暮らしを守るため、開催中止・延期の選択肢以外は考えられません。 現在、政府と五輪主催団体は開催強行の方針に固執しています。「新型コロナ」パンデミックは世界各国で猛威を振るい続け、インドや隣接する東南アジア諸国、中南米においては医療崩壊に至っています。先進国から開始されたワクチン接種も、一部の富める地域での普及であり、パンデミック収束の兆しは見えていません。この状況下で大会を開催すれば国境を越えた人流によって「人々の命を奪う五輪」となりかねず、もはや平和の祭典ではなくなります。五輪は、開催期間中に全世界の紛争当事者・国々に対し停戦を呼びかけるなど、スポーツを通じて国際交流を深め世界平和への道を歩む舞台でもあります。 菅首相が開催の判断をIOCに丸投げし、責任回避に遁走する姿勢は政治家としての最低限の資質を欠いています。開催国の政府として、国民の命を守る立場から中止・延期を決断する時です。全国の「新型コロナ」重症者数は連日最多を更新し、変異株による早期重症化のケースが急増しています。大阪府では、医療従事者の命がけの奮闘にもかかわらず「医療崩壊」により重症患者の入院先が確保できず連日数十人が亡くなっています。政府が全力を集中して支援すれば救える命が、失政により失われています。 いま、菅首相と政府は日本の医療崩壊を防ぐことに全力を挙げるべきです。 東京五輪が開催されれば、世界から1万5千人の選手・コーチ、関係者や参加国の政府要人など9万人が来日するといわれています。無観客で開催し、五輪関係者の外部との接触を断つと言っても完全に感染を防ぐ保障はありません。 国内で医療体制が切迫する事態にもかかわらず、組織委員会は日本看護師協会に対し500人の看護師の確保を依頼し、スポーツドクター200人を募集しました。現に一刻を争う入院先が見つからない重症患者の対応より、五輪関係者へのコロナ対策を優先する姿勢には、本来の五輪精神のかけらも見当たりません。人流を抑制するコロナ対策とスポーツによる国際交流をめざす五輪開催は両立できません。日本政府は真の五輪精神に立脚し、世界の感染収束の努力に連帯するメッセージとして東京大会の中止・延期を発信すべきです。 各国のアスリートは、開催となれば選手生命をかけて出場したいのは当然です。一方で、五輪は世界の国民の応援と共感があってのスポーツイベントであり、毎日数千人が感染で亡くなる下での開催に、選手も戸惑いの声を上げています。また、出身国による準備にも多大な格差が生じます。東京開催に、感染のストレスと厳しい制限で満足のいくパフォーマンスを発揮できない懸念もあるでしょう。大会のために医療資源が確保され、そのことで救える命が救えないなど考えたら競技に集中することもできません。いま、政府と五輪主催団体の無為無策により、責任のない選手に開催の是非を問う声が寄せられ、選手をさらに苦しめています。選手を守り、健全なスポーツの発展のためにも中止・延期を決断すべきです。 東京五輪は準備期間を通じて国民的な世論に後押しされ、開催経費の問題や既存施設の利用優先、マラソンコースの変更、バリアーフリーを国際基準に近づけ障害者の「多様な観戦の権利」を保障する環境の整備が進められるなど、一定の前進面もありました。 同時に「新型コロナ」パンデミックは、日本をはじめ世界的問題である貧困と格差を拡大する資本主義システムの構造的欠陥を浮き彫りにし、五輪の準備と開催にいたる経過においても構造的な格差問題を顕在化しました。開催規模・経費の巨額化、選手のコンディションよりもスポンサーを優先する開催時期と競技時間の設定、招致をめぐる利権や買収、IOCの運営・機構など、グローバル大企業が莫大な利益機会として五輪の運営の細部まで介入し、五輪の基本である市民と市民スポーツの健全な発展が軽視されています。五輪は、抜本的な改革が求められています。 東京地評は、医療現場で患者の命を救うべく奮闘する医療従事者、東京五輪の準備から現在まで携わる公務・民間の多業種の労働者を組織する労働組合として、労働者の安全と雇用、すべての国民の命とくらしを守り、また、開催の影響を受ける子供たちと保護者、教職員の要望に立脚し、2021年夏の東京大会は中止・延期を決断し、「新型コロナ」収束に全力を集中することが必要であると結論します。 「新型コロナ」感染拡大により、とりわけ多数の非正規労働者、女性労働者が経済的困窮を強いられています。東京地評も共催した『食料支援プロジェクト』でも、深刻な貧困の実態は明らかです。五輪延期の追加費用は3000億円にも上り、さらにコロナ対策費用がどれだけ上乗せされるか予想できません。 東京地評は、東京五輪の2021年夏の開催を中止・延期し、五輪に投入される総力を国民の命と暮らしを守る医療体制の拡充、自粛と補償一体の支援拡充、窮乏にあえぐ労働者を救済するよう日本政府に強く要求し、五輪主催団体にも中止・延期を要請します。 ●五輪スポンサーのトヨタ、選手への中止要望「心痛める」 5/12 東京オリンピック・パラリンピックの開催を巡り、トップスポンサーであるトヨタ自動車は12日、「全てのアスリート、国民の皆様が安心して東京大会を迎えられることを切に望む」との意見を表明した。選手個人に国民から中止を求めるコメントが寄せられていることに対しては、「大変心を痛めている。思い悩んでいる」と言及した。 12日に開いたオンラインの決算会見で、長田准執行役員が述べた。長田氏は「全てのアスリート、国民が安全で安心した環境にいるのが、オリンピックの精神の大前提ととらえている」などと説明した。 トヨタは、コカ・コーラやパナソニック、ブリヂストンなどとともに、国際オリンピック委員会(IOC)と最高位のスポンサー契約を結んでいる。東京五輪では、選手村で箱形の自動運転の大型電気自動車を移動手段として走らせる。 トヨタは今年2月には、大会組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発言をめぐり、「大会組織委員会のリーダーのご発言はわたしたち、トヨタが大切にしてきた価値観とは異なっており、誠に遺憾だ」とする、豊田章男社長のコメントを出した。 ●「ワクチン優先接種」に見え隠れするIOCの特権意識 5/12 東京五輪・パラリンピックに参加する各国・地域の選手団に対する新型コロナウイルスのワクチン接種について、国際オリンピック委員会(IOC)が米製薬大手ファイザー社から無償提供を受けることで同社と合意した。接種が確実に進めば、大会中の感染リスクは軽減されるだろう。しかし、国民の大半が接種を受けていない中で、五輪選手だけが優先されることに疑問を投げ掛ける声も聞こえる。選手を隔離し、無観客も想定される「閉ざされた五輪」。その特権的扱いは、世の中の意識との溝をますます広げるばかりだ。 ●「地域社会の人々との連帯」に違和感 国内の緊急事態宣言延長が議論される中、IOCが今夏の五輪開催に向けて、ワクチンを確保したというニュースが流れたのは6日夜のことだ。 5月下旬から7月23日の五輪開幕までに選手らが2回の接種を受けることを目指すという。対象となる日本選手団について、丸川珠代五輪担当相は「選手が1000人程度、監督、コーチが1500人程度になる」と説明した。外国選手団の対象規模はまだ明確になっていないが、日本到着前に接種する可能性が高い。 IOCのトーマス・バッハ会長は「今回のワクチン提供は、東京大会を全ての参加者にとって安心で安全なものにしてくれる。ワクチン接種により、個人の健康にとってだけでなく、地域社会の人々との連帯と健康への配慮が重要だという力強いメッセージを送ることができる」とコメントを発表した。 ワクチン接種で選手たちの安全が確保されるのは結構なことだ。しかし、「地域社会の人々との連帯」というのは、違和感のある表現だろう。IOCは日本国内の開催支持率がいっこうに上がらないことに危機感を抱いている。今後も感染者数が減少せず、五輪開催に対する世論の批判が高まれば、大会を開くことは難しくなると踏んでいるのではないか。 五輪の運営側と国民感覚とのずれは大きく、医療体制が逼迫(ひっぱく)する中、組織委員会が大会に向けて看護師500人、医師200人の派遣を求めていることにも批判が高まっている。五輪開催といえば、何でも優先的な扱いを受けられるような社会状況ではない。 競技者の側には、一般の国民より先にワクチン接種を受けることにためらいもあるようだ。9日に東京・国立競技場で開かれた陸上のテスト大会に出場した女子長距離の新谷仁美は「アスリートだけが特別という形で聞こえてしまっているのが非常に残念です。どの命に対しても大きいや小さいはない。アスリート、五輪選手だけがというのは私としてはおかしな話だなと思う」と話した。 「アスリート・ファースト(選手第一主義)」という考え方も、ワクチンの優先接種に結びつければ曲解される可能性がある。不自由な制限を強いられる日常生活の中、やり場のない不満の矛先がアスリートへ向かい始めているのも恐ろしいことだ。 白血病から復帰し、東京五輪代表に決まった競泳の池江璃花子は、自身のSNS(ネット交流サービス)に五輪出場辞退を要求する意見が寄せられていることを明らかにした。池江は「オリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然の事だと思っています」とした上で「私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません」などとツイッターに書き込んだ。東京五輪開催のシンボル的存在であるだけに、賛否両論、SNS上での議論が過熱している。 ●オリンピックは誰のもの? IOCは206カ国・地域が加盟する巨大な国際スポーツ組織だ。加盟国数では国連を上回るが、あくまでも一民間団体の非政府組織に過ぎない。コロナ禍の中、基本的に新型コロナワクチンは製薬会社と国家が契約を結び、国単位で提供されているケースが多い。その枠組みを越えてIOCが業者から無償提供を受けるのは特例中の特例といえる。 菅義偉首相が4月中旬に訪米した際、電話会談したファイザー社のアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)から「各国の選手団にワクチンを供与したいという申し出があった」という。だが、インドのように連日、数千人規模の死者が相次ぐような国もある。まだまだ世界的な感染拡大が続く中で、五輪はワクチンの無償提供を受けるほど優先される特別な大会なのだろうか。 英国のジャーナリスト、アンドリュー・ジェニングス氏は、著書『オリンピックの汚れた貴族』(野川春夫監訳、サイエンティスト社、1998年)の第1章「オリンピックは誰のもの?」の中で、次のように記している。 「オリンピックは皆のものだと思っていた読者も少なからずいるだろうが、残念ながらそれは間違いである。オリンピックは彼らの独占的所有物なのである」 「彼ら」というのは、特権意識を持つIOC委員たちを指している。この一節を裏付けるように、五輪憲章には「オリンピック競技大会はIOC の独占的な資産であり、IOC はオリンピック競技大会に関するすべての権利を所有する」と記されている。IOCが東京都や日本オリンピック委員会(JOC)と結んだ開催都市契約にも「すべての権利は独占的にIOCに帰属する」とし、大会を中止できる権利を持つのはIOCであると書かれている。 米紙ワシントンポストは、バッハ会長のことを「ぼったくり男爵」と評し、「開催国を食い物にする悪癖がある」などと非難する記事を掲載した。変異株が急拡大し、開催可否が国内外で議論される中で、日本側にリスクを押しつけているという指摘だ。 IOCは、米放送大手NBCユニバーサルとの放映権契約を2014年ソチ冬季五輪から32年夏季五輪まで総額120億3000万ドルで結んでいる。日本円にすれば1兆3000億円にも及ぶ巨額契約で、これがIOCの財政を支えている。しかし、もし大会が中止になれば、返金や損失の可能性が出てくる。IOCが日本の現状を直視せず、何としても大会を開催すると言い張る背景には、そうした事情もあるのではないか。 バッハ会長は本来、広島での聖火リレーに合わせて17、18日に来日し、五輪は平和のイベントであると宣伝するはずだった。しかし、五輪開催に対する世論の批判は収まらず、緊急事態宣言の延長もあって来日は見送られることになった。 ●このままでは「閉ざされた五輪」に 7日に開かれた組織委の橋本聖子会長の記者会見では、報道陣から「ワクチン接種を受けられず、困っている高齢者も多い。そんな中、選手たちに優先的に接種するようでは、特権階級だけの五輪になる。五輪のあり方としてこれでいいのか」という質問が飛んだ。 橋本会長は「多くのみなさんにワクチンが接種されていない中、違和感を持つ方がいらっしゃることを理解する」と答えた上で、「選手団の安全が確保されれば、日本国民の安全安心にも寄与する」と強調した。だが、選手のワクチン接種がすぐさま国民の安心につながるとは考えられない。大会の準備は大幅に遅れ、今も懸念材料は山積している。 組織委ではIOCなどとの協議の上、4月末までに国内観客の制限を決める予定だった。しかし、変異株の拡大と緊急事態宣言に伴い、決定は6月まで先送りされた。橋本会長は「ギリギリの判断として無観客も覚悟している」と話しており、その場合は社会から切り離されたような形での開催になる。選手たちも感染対策のため、競技会場と選手村を行き来するだけの「バブル」の中に身を置くことになり、閉ざされた環境での生活を余儀なくされる。 スポーツは社会生活とともにある。多くのトップ選手は、地域や学校のスポーツ環境を土台にさまざまな協力や支援を得て育ってきた。プロスポーツもファンに支えられている。エリートスポーツの頂点にある五輪は、その成り立ちを改めて認識する必要がある。 「安全安心な大会」「コロナに打ち勝った証し」「勇気と希望を」などと何度繰り返しても、五輪が特殊化した存在であっては支持を集めることはできない。五輪は特権階級のものではなく、人類が受け継いできた貴重な文化だ。離れていった人々の心を五輪に取り戻すためには、今こそ社会とのつながりを意識し、世の中の声に寄り添う姿勢を示さなければならない。 |
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●東京五輪の出場枠70%確定…IOC会見で男性「五輪いらない」と連呼 5/13
国際オリンピック委員会(IOC)は12日、東京五輪の出場枠の70%が確定したと明らかにした。締め切りは6月29日で、残りは30%だが、20%はランキングによって決まるという。この日のIOC理事会後、オンラインで記者会見したマーク・アダムス広報担当が説明した。 東京大会を中止した場合について問われたアダムス氏は、「私たちは大会を実現することに完全に集中している」と述べた。「(日本で)緊急事態宣言が少し延長されたが、私たちは完全な大会を想定し続けている。そうなるべきで、私たちにはそれが唯一とれる道だ」と強調した。 記者会見の終盤には、司会者から指名された男性が質問をせずに、「五輪はどこにもいらない」と連呼して大会開催に抗議する一幕もあった。男性の映像が打ち切られた後、アダムス氏は「記者会見したのが会長ではなくて私で、がっかりさせて申し訳ない」と切り返した。 ● 国際オリンピック委員会(IOC)が12日の理事会後にオンラインで開催した記者会見の質疑応答で、質問者に指名された男性が「ロサンゼルスに五輪はいらない。東京に五輪はいらない」などと抗議するハプニングがあった。 男性は取材に応じたアダムスIOC広報部長には質問せず、抗議のメッセージが書かれた旗を掲げた。バッハ会長は会見に出席しなかった。 ●東京五輪・パラ 仮設会場で大会 会場整備ほぼ計画どおり完了へ 5/13 東京オリンピック・パラリンピックの開幕まで2か月余りとなり、13日からは新たに建設された仮設の会場で、スケートボードなどのテスト大会が開かれます。大会の延期に伴う仮設設備の追加費用は合計で730億円と見込まれていて、観客の扱いが決まらないなか、観客席などの整備はほぼ当初の計画どおり完了に近づいています。 東京オリンピック・パラリンピックの競技会場では、観客数も含めて新型コロナウイルスの感染拡大前の計画どおり運営できるよう、43の施設で仮設の観客席などの工事が進められています。 このうち、江東区の「有明アーバンスポーツパーク」では、7000人を収容できる仮設のスタンドなどがほぼ完成し、13日と14日はスケートボードの、今月17日には自転車BMXフリースタイルのテスト大会が開かれます。 また、同じ江東区の「青海アーバンスポーツパーク」では、8000人収容の仮設のスタンドなどが整備され、14日から3日間、バスケットボールの3x3(スリー・エックス・スリー)のテスト大会が開かれます。 東京オリンピック・パラリンピックの仮設設備にかかる費用は、延期前は3160億円とされていましたが、延期に伴って、いったん建設した設備を安全のために撤去し改めて建設することなどが必要になり、追加で730億円がかかる見通しとなっています。 観客の扱いの判断は来月に先送りされ、大会の開催には賛否もありますが、会場の準備はどのような決定にも対応できることを前提としてほぼ当初の計画どおり整備され、完了に近づいています。 大会組織委員会は「この夏の安全安心な大会開催に向けて支障のないよう引き続き準備を進める」としています。 競技会場で進む仮設設備の工事について、周辺に住む人たちに聞きました。70代の女性は「コロナ禍のなかで、観客を入れた大会は難しいと思うので、こうした工事はむだ遣いになっているのではないでしょうか」と話していました。また、別の70代の女性は「大会のあとの施設の在り方なども含め、オリンピックのお金の使い方をしっかり検証してもらいたいです」と話していました。一方、60代の男性は「工事を始めてからすごい早さで作られ、完成に近づいているので驚きました。大会延期に伴う追加費用はしかたがないと思いますし、せっかく作った施設なのでオリンピックはやってもらいたいです」と話していました。 東京都の小池知事は「テストすることで改善し、本番に備えるということだ。密になっていないかなど改善すべき点もあると思う。それぞれ知見を重ねながらブラッシュアップをしていくということで進んでいるのではないか」と述べました。また、記者団から大会期間中の医療体制について問われると「全体としては組織委員会や国と連携しながらやっている。会場の外側は都が責任を担っていく。いくつかの病院をすでに指定していて、以前から準備をしている。万全な体制で進めていけるよう日々連携している」と述べました。 ●国民 玉木代表 東京五輪・パラ「来年秋に再延期すべき」 5/13 東京オリンピック・パラリンピックについて、国民民主党の玉木代表は、記者会見で、感染収束の見通しが立たない中、国民の命を守ることを最優先にすべきだとして、来年秋に再延期すべきだという認識を示しました。 この中で玉木氏は、東京オリンピック・パラリンピックについて「去年は、全国の感染者数が100人前後のときに開催延期を決めたが、いまはもっと感染者が増え、変異株も流行している」と指摘しました。 そのうえで「無理して開催する弊害は大きく、国民の命を守ることを最優先に道筋を決めるべきだ。ワクチン供給の見通しや酷暑を避ける観点から、現実的、合理的な選択として来年秋がいいのではないか」と述べ、来年秋に開催を再延期すべきだという認識を示しました。 そして、最終的な判断は、専門家による第三者機関で医療提供体制などの客観的な検証を経て、今月中に行うべきだとして、政府に対応を求めていく考えを示しました。 ●IOCが東京五輪を中止しないなら、橋本聖子会長はするべきことがある 5/13 東京、大阪などに加え12日には愛知、福岡にも緊急事態宣言が発令されるなど、コロナ感染拡大が止まらない日本。東京五輪・パラリンピックの開催中止を求める声は国内外で高まっており、米ニューヨーク・タイムズも「危険な茶番劇を止める時がきた」と中止を訴えるコラムを掲載した。五輪中止は誰がどのように決めるのか。中止しないとしたら、日本がやるべきことは何なのか。東京都で五輪招致推進担当課長を務めた、鈴木知幸氏(国士舘大学客員教授)に話を聞いた。 ――世論は大会開催の「中止」に傾いていますが、日本が中止を決定することは可能なのでしょうか。 大会開催を中止する権利は、主催するIOCにしかありません。開催国として会場を提供している日本から申し出るとすれば、「中止」ではなく、「返上」ということになるでしょう。 ――返上すると、どうなるのですか。 返上すると損害賠償請求を受ける可能性はあります。開催都市契約にOCOG(オリンピック組織委員会)の保険に関する規定がありますが、契約条件は不明です。東京五輪・パラリンピックが中止された場合の世界の保険会社が被る損失は20〜30億ドルになるという試算が報じられています。ただ、組織委員会がどのように保険をかけているかは明らかにされていません。 ――過去に返上や中止はあったのでしょうか。 柔道の父・嘉納治五郎が招致に尽力し、1940年に東京で開かれることが決まっていたオリンピックを政府が返上した歴史があります。嘉納は1938年にカイロで開かれたIOC総会に参加し、帰国の途上で亡くなりました。嘉納の死後、日中戦争の泥沼化を理由に日本政府は「返上」を決定しました。その後ヘルシンキ(フィンランド)が代替地になりましたが、第二次世界大戦の勃発により、大会そのものが「中止」になった歴史があります。付け加えると、1980年のモスクワオリンピックは、ソ連と対立するアメリカのカーター大統領がボイコットを同盟国に呼びかけ、日本もそれに同調せざるを得ず、参加しませんでした。この時、柔道男子のメダル候補だった山下泰裕は涙を流して参加を訴えました。それからさらに40年後にあたる2020年の東京開催が、近代五輪史上初の「延期」に。私は「日本五輪史は、返上・ボイコット・延期の魔の40年」と呼んでいます。現実問題に話を戻すと、もう東京五輪は「返上」も「中止」も困難な段階にあります。 ――IOCが中止を決断しない理由はなんでしょうか。 開催中止の決定権を持つIOCが一番注視しているのは、開催国の国内事情ではなく、IF(国際競技連盟)やNOC(各国オリンピック委員会)です。これらの団体から中止を求める声が多数上がればIOCは中止を決めるでしょうが、どこも言い出しません。なお、報道を通じた個別の意見は無視します。というのも、IOCはスポンサー料と放映権料の財源を得ますが、それがIFやNOCに還元されるという構造があるからです。放映権料についていえば、IOCはアメリカの放送局NBCから2032年までの夏季、冬季6大会の放映権料として総額76億5千万ドルを受け取ることで合意しており、一大会の開催ごとに支払われます。無観客の開催になれば、NBCをはじめ世界の契約放送局は歓迎し放映権料を支払います。特にNBCは録画撮りの予定だった開会式を生中継に変更すると表明しています。 ――組織委員会は大会に向けて公認スポーツドクター約200人と、看護師約500人を確保しようとしており、医師については約280人の応募があったと報じられています。国内で医療現場がひっ迫するなかで医療従事者を集めることに、批判の声があがっています。 東京五輪に参加する主要な選手団はチームドクターを連れてきますが、熱中症やケガの治療にはあたれます。ただ、感染症が発生した場合に日本の医療機関と連携して外国人医師も治療にあたるためには法制度上の特例措置が必要です。基本的に、外国人の医師は日本での医師免許がないと医療行為が出来ません。しかし、阪神・淡路大震災や東日本大震災の時は、日本の医師免許を持たない外国人医師に対し、厚労省が緊急避難的措置として医療行為を特例で認めています。今回も、各国選手団のチームドクターにコロナ対策医師を同行させ、大会中は「合同海外医師団」を結成して、コロナ対応に専従させるなどの交渉を、IOCとWHOに突きつけるべきなのです。昨年5月に、IOCとWHOは、延期された新型コロナ禍での東京五輪の安全な開催に向けて連携していくという覚書を交わしているので、それを利用すればよいと思います。さらに、競技会場を無観客にして、「合同海外医師団」が対応すれば、それほど日本の医療従事者は必要ないでしょう。しかし、組織委員会は観客数の判断を6月に先延ばしているのです。「無観客開催」を即刻表明すべきです。 ――日本はIOCに何を求めていくべきだと考えますか。 組織委員会の橋本聖子会長は、今回の五輪開催に限定した「合同海外医師団」の結成など、IOCに対して、無理難題を強く主張して交渉すべきです。一定の要求が認められなかったら、それこそ「返上」すると強気な姿勢で挑むべきです。 ●東京五輪「やるよ」 菅首相 5/13 菅義偉首相は13日、森田健作・前千葉県知事と首相官邸で昼食をともにしながら面会し、夏の東京五輪・パラリンピック開催への決意を重ねて強調した。面会後、森田氏は記者団に「首相に『やるでしょ』と聞いたら、『やるよ』と言っていた。その気だと思う」と説明。実現に向けて新型コロナウイルスのワクチン接種を急ぐ考えも示したという。 ●東京五輪 首相の責任で中止を決断せよ 5/13 開会式(7月23日)まで2カ月余となった東京五輪の中止を求める声が大きく広がっています。メディアの世論調査は「中止」の回答が多数を占め、日本弁護士連合会の宇都宮健児元会長が呼びかけた中止要求オンライン署名は30万人を突破しました。感染拡大が深刻化するコロナの対策と五輪が両立しないことは、誰の目にも明らかです。しかし、菅義偉首相は「五輪ありき」で突き進む姿勢を変えようとしません。これでは国民の命と健康をコロナから守れません。日本政府の責任で五輪中止を一刻も早く決断すべきです。 新聞・テレビの世論調査結果(10日)は、国民多数が今夏の五輪は中止しかないと考えていることを浮き彫りにしました。「読売」は「中止する」が59%にのぼりました。緊急事態宣言の対象となった6都府県の平均では6割を超えています。NHKも中止49%で、無観客23%、観客制限19%を上回りました。JNNでは「延期」「中止」を合わせて65%に達しました。 宇都宮氏が5日に開始したオンライン署名は、わずかの期間に急速に賛同を集め、広がりを見せています。署名は「ただでさえ深刻な不足に直面している医療資源を五輪に回すことは、コロナ禍で疲弊している医療従事者の方々をさらに苦しめ、住民および参加者の命と暮らしを危険にさらす」と訴え、菅首相や小池百合子東京都知事、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長らに中止宣言をすることを求めています。 「医療は限界 五輪やめて!」と記した立川相互病院(東京)の窓の張り紙は話題を集め、コロナ禍で医療がひっ迫する中で看護師に五輪派遣を要請する政府に対する抗議のツイッターデモも行われています。日本オリンピック委員会理事で女子柔道のメダリスト・山口香さんは、開催を強行すれば「負の遺産として残る可能性がある」とし、「結果として感染拡大につながれば、アスリートや五輪への反発につながりかねない」(「東京」12日付)と強く警告します。 しかし、菅政権は国民の不安や批判にこたえません。10日の国会審議では、ワクチン接種の大幅な立ち遅れや、医療従事者を現場から引き離し五輪に振り向ける余裕がない問題、選手を受け入れるホストタウンの地方自治体に大きな負荷を強いることなどが取り上げられました。これに対し首相は「安全・安心の大会が実現できるように全力を尽くすことが私の責務だ」と同じ言葉を繰り返すばかりです。首相の政策アドバイザーの高橋洋一内閣官房参与がツイッターに、日本の感染拡大を「さざ波」と投稿し、五輪中止の声を揶揄(やゆ)したことも不問に付しました。首相の認識と任命責任が問われます。 首相が、開催権限はIOCにあると自分の責任逃れを図っていることは大問題です。開催国の政府が国民の命を最優先にする立場から中止を決めた場合、IOCはそれを覆すことはできません。主権国家として日本が主体的に判断し、中止の決断をしてIOCに伝え、関係する諸団体と協議に入ることが急がれます。東京都の小池知事にも開催都市のトップとしての責任があります。国と都は五輪の中止を決断し、コロナ対策に力を集中する時です。 ●開催中止のカギを握る超大国のボイコットとテレビ局の意向 5/13 東京五輪の開催可否をめぐって賛否両論が吹き荒れている中、米誌「QZ・COM」が「東京五輪はキャンセルされるべき」とし、中止のカギを握る2つのシナリオ≠ノついて報じている。 日本では開催地東京を中心に新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、国内外から東京五輪の実施に疑問の声が続出している。同誌は国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(67)が日本行きを中止したことやワクチン接種率の低さなどを指摘し「日本の報道機関が行った3つの別々の世論調査では、国民の60〜70%が五輪のキャンセルを望んでいる」と伝えている。 その上で同誌によると、日本が東京五輪に250億ドル(約2兆7250億円)を投資し、その80%に税金が使われており、中止となった場合に最大410億ドル(約4兆4690億円)の損失が出るという。つまり、日本サイドとしては簡単に「中止」と言えない理由があるわけだ。 そこで同誌は「五輪をキャンセルするのに必要なもの」とし「アスリートがボイコットを始めたり、主要国が撤退したりした場合、それで十分かもしれない」と報道。すでに北朝鮮が不参加を表明したこと以外、記事中では具体的な国名には触れていないものの、スポーツ超大国・米国の動向が中止の引き金になる可能性を示唆している。 さらに「(中止の)針を動かすかもしれないもう一つのグループ」とし、米国内の五輪独占放映権を持つ米テレビ局「NBC」を挙げた。同誌によると、放映権料はIOCの収入の73%を占め、2013年から16年に42億ドル(約4578億円)の資金をもたらしているという。そこで「NBCが(開催に)前進するのは適切ではないと言った場合に、日本とIOCは意見を聞く必要がある」と伝えている。 開催可否の決定権を持つIOCは12日の理事会で東京五輪の開催を改めて確認し「中止の議論はなかった」としているが、果たしてスポーツの祭典は本当に実施されるのだろうか。 ●「電話連絡」「看板撤去」、聖火リレー中止の余波広がる 5/13 山口県下関市で14日に予定されていた東京オリンピックの聖火リレーの中止が発表された12日、市内では、市職員がボランティアスタッフに電話連絡したり、業者が当日の交通規制を知らせる看板を撤去したりと、中止の余波が広がった。一方、聖火ランナーに選ばれた市民からは「やむを得ない」と理解を示す声も聞かれた。14日の聖火リレーは下関市以外の5市では予定通り行われる。 市や県によると、市内で新型コロナウイルスの感染が拡大傾向にあることや、隣の福岡県に緊急事態宣言が発令されたことを踏まえ、市が山口県へ中止を要請。県が大会組織委員会に申し立て、取りやめることが決まった。当日は代替イベントも行われない。 記者会見した前田晋太郎市長は「様々なリスクを総合的に勘案した。コロナで(感染者が)重篤化したり、亡くなったりするのを防ぐことを、今は最優先に考えたい」と中止の判断をした理由を述べ、「楽しみにしていた人には大変申し訳ない」と陳謝した。村岡知事は「下関市の判断は適切だと思う」と述べた。 市内を走る聖火ランナーは、4月30日に12人が発表された。下関観光コンベンション協会会長の冨永洋一さん(61)もその一人。関門海峡沿いを走る予定で、壇ノ浦の合戦や明治維新など、歴史の転換点となった関門エリアをPRすることを楽しみにしていたという。 取材に応じた冨永さんは「やむを得ない。走ることはできないが、リレーの一員に選ばれたことは誇り。東京五輪・パラリンピックの成功が、私たちの一番の願いであり、これから続く聖火リレーを見守りながら、五輪の成功を祈念したい」と話していた。 県は13日に県東部で予定されていた1日目の中止をすでに決定。県西部・北部を巡る2日目の14日は実施する方針を示していた。 ●池江璃花子を利用した五輪「中止派」と「推進派」の発信に思う… 5/13 競泳の池江璃花子がツイッターに載せた言葉と、そこに記された内容が、さまざまな反応を起こしている。 「いつも応援ありがとうございます」から書き始められた5月7日の言葉が伝えたのは、オリンピック出場を「辞退してほしい」、オリンピック開催に「反対に声をあげてほしい」といったコメントが寄せられているのを知ったこと。 それに対する思い、アスリートととしての心境だった。以下、池江のツイッターから引用する。 ●「五輪の中止を求める声が多いことは当然の事」 「私たちアスリートはオリンピックに出るため、ずっと頑張ってきました。ですが、今このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然の事だと思っています。私も、他の選手もきっとオリンピックがあってもなくても、決まったことは受け入れ、やるならもちろん全力で、ないなら次に向けて、頑張るだけだと思っています。1年延期されたオリンピックは私のような選手であれば、ラッキーでもあり、逆に絶望してしまう選手もいます。持病を持ってる私も、開催され無くても今、目の前にある重症化リスクに日々不安な生活も送っています。私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません。ただ今やるべき事を全うし、応援していただいてる方達の期待に応えたい一心で日々の練習をしています。オリンピックについて、良いメッセージもあれば、正直、今日は非常に心を痛めたメッセージもありました。この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです。長くなってしまいましたが、わたしに限らず、頑張っている選手をどんな状況になっても暖かく見守っていてほしいなと思います。」 ●責任を問う相手は選手個人なのか その後、さまざまな反応が起こった。中心にあったのは選手個人へ向けて辞退を求めるコメントに対する是非で、色合いは異なっても、「非」の声が多数あがった。 池江以外のオリンピック代表選手、あるいはオリンピック出場を目指している選手にも、同じような内容のメッセージが送られるケースはあるという。だが、オリンピック開催に反対する意見を向ける先が違うのではないか。 開催を巡る状況は混沌としている。不透明だ。さまざまな問題にどう対処するのか、はっきりと見えてこない。具体的な、実行可能な策がそもそもないのかもしれない。開催可能とする数字や論拠も乏しい。理解してもらえるよう、説明する気持ちがないようですらある。そしてそれらの責任を問う相手は、組織委員会であったり、東京都であったり、国やIOCである。五輪開催への意見を向けるべきところを冷静に考える必要がある。 あらためて池江の言葉を読み返し、感じることがあった。 そこには与えられた状況で最善を尽くす姿勢が感じ取れる。何が何でも開催してほしいと言っているのではなく、オリンピックが中止になることがあり得る状況であるのも理解し、その上で「やるならもちろん全力で」と記している。 ここにアスリートとして置かれた状況の厳しさがある。 ●疑問を抱きながらの練習ではパフォーマンスは低下する 本来なら、オリンピックから逆算し、そこでベストを尽くすためにどうトレーニングを積んでいくか、代表選考大会など途中にある試合も想定しつつ取り組む。 その土台となるのは、メンタルにほかならない。まっすぐに目標へ向かって努力を積むには、自分の可能性を信じる心が欠かせないのだ。当然、目標となる舞台が存在していることがその前提になる。 昨年、オリンピックは1年の開催延期が決まり、今年再び開催の先行きが不透明になっている現実がある。でもそこで「ほんとうに大会はあるのだろうか」と不安に駆られ、疑問を抱けば、練習に取り組む姿勢も変わってくる。大会を迎えたときのパフォーマンスは、何も不安なく取り組んでいたときと比べれば、きっと低下する。これはスポーツに限った話ではない。 中止という結論が出ているわけではない以上、「ある」という前提に立ち、100%のトレーニングを積もうと努めなければならない。状況を考えれば、気持ちが揺さぶられるときは何度もあっただろう。それを抑え込み、日々励む苦しさは、並大抵のものではないはずだ。池江の言葉にあらためて、さまざまな選手の表情や言葉も浮かぶ。 ●開催の是非の主張に利用される選手たち 今回の池江に寄せられたコメントについてあらためて感じることがある。 五輪辞退を要求するコメントは、各組織の誠実とは言えない姿勢への苛立ちが高じて、選手に開催反対の意思表示を促したいという考えのもとで投稿されたのだろう。それは選手の影響力を利用しようという行為だ。 開催を推進する立場の人の中にもまた、同様に選手の力を利用しようとする行為が見受けられる。今回の報道の直後、「池江選手を(オリンピックで)見たいでしょう」という趣旨の発言をした大臣がいたが、それも同質だ。 これはいずれも選手を不用意に巻き込み、本来とは異なる形で選手を開催の是非の議論の真ん中に立たせる行為である。 選手が今、どういう心境にあり、何と戦っているのか――。そこに思いを馳せてみる意味は決して小さくない。とりわけ、開催を推進する立場をとる人々の、実は選手を置き去りにしているかのような発信の仕方に、そう思わずにはいられない。 ●米国陸上チームが千葉での事前合宿中止「選手の安全面に懸念」 5/13 東京オリンピック(五輪)・パラリンピックを契機に海外選手らと交流するホストタウン事業に関し、12日までに少なくとも34自治体が、事前合宿や交流事業での選手受け入れを断念したことが政府関係者の話で分かった。新型コロナウイルスの影響や感染対策の負担が主な理由だ。 この日はメダル有力な米国陸上チームが千葉県内で開幕前の7月上旬から8月上旬までを予定した事前合宿を中止することが判明。米国陸上競技連盟は「新型コロナウイルスの収束の見通しが立たない中で、選手の安全面に懸念が生じているため」と理由を説明した。当初、同県成田市や佐倉市、印西市は120人規模の受け入れを想定していた。だが、五輪延期が決定した昨年3月以降、具体的な調整は進んでいなかった。米国陸上チームは100メートル金メダル候補のガトリンら有力選手がひしめく。滞在中には公開練習や市民との交流を検討していただけに関係者のショックは大きい。 この日はオーストラリア飛び込みチームも新潟県長岡市での事前合宿を中止することも分かった。長岡市の磯田達伸市長は「国内の感染状況や選手の健康と安全を考えるとやむを得ません。大会に向けた選手たちの努力が少しでも報われるような状況になることを願っています」などとコメントした。 埼玉県上尾市で予定したオーストラリアの柔道チーム、福井県鯖江市で予定した中国の体操チーム、兵庫県神戸市で予定したニュージーランドの競泳チームなど、コロナ禍の収束が見えないこともあり、各地で事前合宿が中止されている。現段階でコロナの感染収束の見通しが立たず、今後も選手の受け入れを断念する自治体は増えそうだ。 ●米CBSが米国陸上代表チームなどの千葉県事前合宿中止伝える 5/13 東京オリンピック・パラリンピックの直前に千葉県内で合宿を予定していた米国の陸上代表チームが、新型コロナウイルス感染拡大による3度目の緊急事態宣言が延長されたことを受けて合宿の中止を決めたと日本のメディアが報じたと、米CBSテレビが伝えた。 120人の陸上代表選手が同地で事前合宿する予定だったというが、同局の取材に代表チームから正式なコメントは出されていない。「現在の状況下での最善策として判断したものと考えています」との熊谷知事のコメントも紹介している。 また、英国の車いすバスケットボールとロシアのフェンシングチームもコロナ禍を理由に千葉での合宿を中止したと伝えている。 CBSテレビは、日本では医療従事者ですらワクチン接種を終えていない状況であるとワクチン接種の遅れを伝えており、多くの国民が五輪の再延期または中止を求めていると報じた。 東京五輪を巡っては、カナダの体操代表チームが新型コロナ感染拡大を理由に6月4〜13日までブラジル・リオデジャネイロで開催される最終選考会を兼ねた南北アメリカ大陸選手権を欠場することを表明。東京五輪への出場権を断念したとして波紋を呼んでいる。 ●五輪事前キャンプ中止「先方から連絡ない」 受け入れ自治体、頭抱え 5/13 東京オリンピック・パラリンピックで大会前に海外の代表チームを受け入れる千葉県内の事前キャンプのうち、米国の陸上チームなど4カ国は中止になることが明らかになった。現時点で受け入れ予定の自治体は、準備を進める一方、情報不足やコロナの影響などを案じている。 アフリカ・ナイジェリアがキャンプを張る木更津市は「連絡が無い」と、頭を抱えている。渡辺芳邦市長が2019年11月、同国を訪問して事前キャンプの実施などで覚書を交わしたが、「必要なら連絡する」と回答があったままだという。今年に入って市の担当課が数回、問い合わせたものの「具体的なやり取りはなく、これではホテルも押さえることができない」という。6月上旬が準備のタイムリミットだが「やって来たらやるしかない」と話す。 ルーマニアとドミニカ共和国のキャンプ予定地の松戸市では、練習会場が新型コロナのワクチン接種会場となり、対応を迫られている。市によると、松戸運動公園を練習会場に予定していたが、公園内の体育館が高齢者向けの集団接種会場となった。また両国では五輪出場が内定していない競技もあり、受け入れ人数や期間が決まっていない。担当者は「受け入れる方向で調整していきたい」と話している。 県内のホストタウン第一号の山武市は、スリランカの五輪・パラリンピック選手団約50人が、大会前の10日間訪れる調整をしているが、来日中の同国スタッフのコロナ感染が確認され、受け入れに慎重になっている。 市などによると、今月5日、都内で開かれた五輪・パラリンピック予選のボートの大会に参加した同国スタッフの陽性が確認された。それまで同国側とはキャンプを実施する方向で情報交換していたが、市は事態を重く受け止めて再協議に入った。 事前キャンプでの感染対策として、内閣官房が示したマニュアルも実施を難しくしている。選手が一般の人との接触を避けて行動するよう、行程表の作成や制限・行動ルールなどをチーム側と詳細に作成することが自治体に求められる。キャンプを実施しても選手らとの接触を制限された中では、自治体が期待した市民との交流が事実上、実現しないことにもなるという。 市担当者は「競技選手ごとに動線を分けて対応しなければならないなど、細かな対応がどこまでできるか難しい。選手に感染者を出してしまったら市にとってダメージになってしまう」と苦慮している。 ●「五輪中止論」高まる日本でワクチン接種が進まない理由 5/13 東京オリンピックの開催まであと100日を切った日本政府は、新型コロナウイルスのワクチンの接種体制を強化しているが、ワクチンに対する国民の不信感が根強い日本では接種が遅れ、五輪開催に対する反発がさらに激化する恐れがある。 日本は他国に比べると、概ねコロナウイルスの感染拡大を防ぐことに成功している。ここ最近、感染者数は増加しているが、日本の100万人あたりの感染者数はわずか5000人程度であり、100万人あたり数万人の感染者を出した米国やフランス、英国などの国々に比べるとはるかに低い水準となっている。 日本では、比較的低い感染率がワクチン接種の緊急性を引き下げたが、ワクチンに関するトラブルの歴史や、予防接種に対する国民の信頼性の低さも、接種が進まないことの一因となっている。 日本はワクチンに対する信頼度が世界で最も低い国の一つであり、2020年のランセット誌の調査では、ワクチンが安全で効果的であると強く同意した日本人はわずか30%だった。また、公共放送局NHKの昨年の調査では、日本人の3人に1人以上がコロナウイルスワクチンを接種したくないと考えていることが示された。 日本におけるワクチン普及は、先進国の中でも最も遅れており、少なくとも1回のワクチン接種を受けた人は全体のわずか2.8%、2回のワクチン接種を受けた人は1%に過ぎない。また、接種対象者は医療従事者と65歳以上の人々に限られている。 日本政府は、7月末までに全国の65歳以上の高齢者3600万人の接種を完了させることを目標としており、5月10日から各自治体での接種を本格化させた。 ワクチンの接種率の低さに加え、最近の新規感染者の急増で、東京が非常事態に陥っていることから、夏のオリンピックを再延期するか、全面的に中止するよう求める抗議活動が活発化している。 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、先月の抗議活動に参加した活動家は、「金メダルは人々の命よりも優先されている」と語ったという。読売新聞の先日の世論調査によると、日本国民の60%近くが大会の中止を望んでいる。しかし、日本の菅義偉首相と国際オリンピック委員会は、大会は予定通り開催されると述べている。 主催者側は、海外からの観客の受け入れ停止や、選手への毎日の検査の実施、観客の公共交通機関の利用禁止措置などによって、大会を安全なものにできると述べている。 日本では1970年代初頭に、天然痘などのワクチンによる副作用をめぐる集団訴訟が多発し、予防接種に対する不信感が高まった。その後、1992年に裁判所が政府に損害賠償を求めたことで、政府が予防接種に消極的になったとされている。 さらに、1990年代初頭には麻疹、おたふくかぜ、風疹の3種混合ワクチンと、小児無菌性髄膜炎の増加との関連が疑われた結果、政府はこれらのワクチンの義務接種を任意接種に切り替えた。 また、子宮頸がんを予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンに関しても、日本では2013年4月に定期予防接種の対象となったが、このワクチンが頭痛や発作を引き起こす可能性があるという報道が相次いだ結果、厚生労働省は同じ年にその積極的推奨を取り消していた。 その結果、安全性や子宮頸がんの予防効果が確認されているにもかかわらず、日本におけるHPVワクチンの接種率は70%から1%を下回る水準に低下していた。 ●五輪中止の違約金、組織委事務総長「考えたことはない」 5/13 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長は13日、仮に東京大会が中止となった場合に国際オリンピック委員会(IOC)から違約金として賠償請求されるかどうかについて「そういう質問が増えているが、考えたことはない。あるのかどうかも、ちょっと見当つかない」との見解を示した。東京都内で報道陣の取材に答えた。 東京都などとIOCは開催都市契約を結んでいるが、大会中止などの決定はIOCが単独で判断できると規定している。中止となってもIOCは損害賠償や補償の責任を負わない仕組みだ。開催都市契約では、中止になった場合、都や組織委は補償や損害賠償などの権利を放棄するとしているが、IOCについてはその記述がない。仮に日本側の判断で開催を返上した場合、日本側に損害賠償の可能性が生じることが識者によって指摘されている。 武藤氏は「こういうものは、どのような事情かということが非常に重要な要素だ。損害をかけたのかどうかということもある。そもそも、そんなことを言い出す人がいるのかも含めて、私には予想がつきません」と語った。 |
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●「東京五輪やめろ」大合唱に感じる危うさ、賛成派が世論に今訴えたいこと 5/14
●どうして東京五輪に矛先を向けるのか? 政府のコロナ対策の不足や不手際に対するいら立ちが募っている。コロナに対してほとんど何もできていない(と思える)政府が強硬にやりたがっている東京五輪になんか賛成してたまるか、という憤りが根底にあるような気がする。 だとすれば、とんだ「言いがかり」ではないか。東京五輪に罪はないのに、まるで東京五輪がコロナ禍の要因か、今後感染を広げる元凶であるかのように反対ムードが広がっている。 4月30日に東京・立川にある病院が窓に『医療は限界 五輪やめて! もうカンベン オリンピックむり!』と貼り出した。「最寄りの病院の叫び」としてツイッターでもこれが投稿されると20万件以上の「いいね!」がついたと話題になった。 しかし、立川のこの病院の疲弊の要因は東京五輪なのか?東京五輪を開催したら、さらなる影響を受けてこの病院の医療体制は崩壊するのだろうか?他の理由がないのか、冷静に考えるべきだ。 医療従事者の疲弊や不満の矛先が「東京五輪」に向くことが正当化されるのは、おかしい。東京五輪を悪者にしても許される空気がいま日本にはある。そういう社会の空気、世論形成のあり方はとても危険だと思う。 ●変異種が海外から持ち込まれる可能性への心配 東京五輪中止を訴える理由のひとつに、新たな感染爆発への不安が挙げられる。「万が一、起こる可能性」は完全には否定できない。 だが、これについては、IOCと東京五輪・パラリンピック組織委員会(組織委)は重大な決断をしている。「海外からの観客の来日は禁止」、これを決めた時点で不特定多数の入国は制約された。管理不可能な観光客が、ウイルスを持ち込んでしまう道は断ったのだ。この決定で、「万が一の可能性」も「曖昧な恐れ」も相当に縮小されたと私は感じる。 また、日本に在住する人だけが見るのなら、すでに昨年からほぼ毎日日本各地で実施されているプロ野球や、同じく週1、2試合行われているJリーグと同じ状況だ。一部で感染は起こっているが、これまでスポーツ観戦で重大なクラスターは発生していない。PCR検査を義務付けていない観客が1万人以上集まっても問題ないのに、「オリンピックは別だ」「やめろ」と主張するのは、いささか感情的な暴論だと思う。 とはいえ、選手が1万5000人以上、コーチや関係者、メディアも含めて約8万3000人が来日すると予測されている。私はこの人数、特に海外メディアの来日を大幅に制約すべきだと思う。 リモート取材が可能な体制を組み、各国メディアにインタビュー映像などをネット配信することで、来日しなくても取材できる方法を確保できないだろうか。 協賛企業のゲストも多数来日する予定だが、これもできるだけ遠慮するよう求め、来日者数をできるだけ抑える努力は今後も重要だ。組織委によれば、大会関係者に発行する入場パスはまだこれからの作業だから、できるだけ削減する方針だという。 ●緊急事態宣言下の東京都民より、数段厳しい行動規範を強要 重要なのは関係者らの来日後の行動である。 組織委と政府、東京都が連携する「対策会議」ではかなり厳格なルールを定め、徹底する準備が進められている。来日する選手や関係者に通知された『プレーブック』に定めた行動規範はものすごく厳しい。以下は、4月28日に公表された第2版の抜粋だ。 ・海外から訪れる全ての大会関係者は、出発前の96時間以内に日本政府が指定する方法で2度の検査を実施し、指定の書式による陰性結果証明書を取得する。日本到着時は空港で検査を受ける。 ・入国翌日から3日間は自室で隔離する。ただし、選手は陰性の証明など一定の条件を満たせば、入国後すぐに練習できる。 ・日本滞在中は原則として毎日検査を実施する。2種類のスマートフォン向けアプリを活用し、検温結果や症状の有無などを毎日報告する。 ・原則として行動は活動計画書に記した内容に限定し、観光地、店舗、レストラン、バー、ジムには行けない。移動手段は大会専用車両のみとし、原則として公共交通機関は利用不可。 ・食事はウイルス対策が施されている施設やデリバリーに限る。 そして、「プレーブックの規則に違反した場合、資格認定証の剥奪などの懲罰的措置を受ける可能性がある」と規定されている。行動ルールを破れば、オリンピックへの参加資格が失われる、という意味だ。 ある競技の代表監督は「これは相当厳しいルールです。選手たちにはほとんど自由がない。オリンピック出場のためでなければ、ここまでは受け入れないだろうと思うくらい、普通の生活さえできないレベルです」と答えた。 つまり、東京五輪に参加する世界中の全選手が、IOCと組織委を通じて、通常ならありえない行動制限、相当に自由を束縛される参加条件に同意し、それでも日本滞在と東京五輪への参加を決断することになる。 それは参加者たちが、自身の健康を守るのはもちろん、東京五輪開催のため、そして日本国民に感染を広げてはならないという強い決意と誠意の証明ではないだろうか。そこまで覚悟して日本に来る、選手たちの心情を受け止める「お・も・い・や・り」が、いまの日本国民には欠落していないだろうか。 ●医療機関や医療従事者への深刻な影響は本当にあるのか? もうひとつ、強硬に東京五輪中止を求める人たちの反対理由は、「医療体制の崩壊」だろう。それでなくても逼迫した医療体制、疲弊した医療従事者に対して、これ以上の負担をかけるべきではない。「わかっているのか!」「オリンピックだなんて、何を考えているんだ。命の方が大事だろ!」という主張だ。 しかし、この論理も相当エキセントリックで、反対のために誇張されすぎていないだろうか。 日本の医療関係者全員がコロナの医療に関わっているわけではない。医療関係者に取材すると、「コロナの医療に影響を与えることなく、東京五輪が必要とする医療チームに協力できる医師、看護師は確保できるはずです」という。 それなのになぜ、つい最近になって組織委員会は「看護師500人、スポーツドクター200人」を追加募集したのだろうか。それがまた批判を浴び、反対する人の不安をあおる形になったのは否めない。この点を組織委員会に尋ねると、次の回答を得た。 「大会時の医療体制については、延期前に一旦確保の目途が立っておりましたが新型コロナウイルスの影響により地域医療の状況が大きく変わったことを受けて、丁寧に対応させていただいております。 そのため、今年夏の大会で活動いただく医療スタッフについて、大会期間中を通じて、一人当たり5日の参画を前提としてトータルで1万人程度の協力を予定していたところですが、現下の医療情勢から、予定人数を集めることは厳しい状況にあり、看護協会および日本スポーツ協会にご相談させていただいたところです」 この動きにも非難や「集まるわけがない」といった悲観論が多かったが、5月12日、『すでに約280人の応募があった』と報じられた。 また、医師や看護師という重要な役目が「ボランティア」という待遇に驚きを隠せなかったが、それには次のような事情があった。これも組織委員会からの回答だ。 「ロンドン大会や、リオ大会では、大会ボランティアとして応募する医師・看護師などが多かったと聞いていますが、東京大会においては、延期前の段階で医療機関や医師会等に、組織委員会より事前に大会時の医療スタッフの派遣にご協力いただけるかどうかをご相談させていただいており、多くの医療機関等から大会運営にご協力いただけるとの申し出をいただいていたことから、各会場の医療統括責任者および選手用医療統括責任者以外の方については無償で活動いただく予定としておりました。 なお、現下の厳しい地域医療の状況を鑑み、参画いただく医療スタッフが所属する医療機関や大会指定病院等へ協力金を支払う予定としています」 考えてみれば、ボランティアとはいえ、病院や医療機関に所属している医師や看護師ならいわば「出向」の扱いだから、まったく無償というわけではないのだろう。 ●選手、関係者、毎日約6万人ものPCR検査が可能なのか? 来日する選手、関係者には徹底したPCR検査が義務付けられた。「当初は4日に1度」としていたが、「全ての大会関係者に対して出国前96時間以内に2回と日本到着時にPCR検査や抗原検査を求める。入国後3日間は毎日検査する」と変更された。選手のほかコーチ、トレーナー、介助者など、選手と行動する人は、4日目以降も毎日検査が行われる。その数は一日6万人に及ぶ。 東京都では連日1万数千件程度の検査数なのに、そんなにできるのか?一般の人々の検査に影響を与えないのか、という不安も生じる。それについては、独自の態勢を整えていると、組織委員会は説明した。 「選手村に滞在するアスリート等に原則毎日実施するスクリーニング検査については、選手村総合診療所近くに設置する検体採取センターにて行う予定です。 また、検体採取センターで行うスクリーニング検査については地域医療体制に支障を生じさせないよう、医療従事者でなくても実施できる唾液抗原定量検査によって行う予定であり、民間による外部委託を予定しております。 なお、海外から来日する大会関係者については、アスリートに一定の接触がある可能性のある者は原則毎日検査を実施し、その他の者は入国後3日まで毎日検査を行った後、必要な頻度(4日または7日に一度)で検査を行うとともに、14日目に検査を実施することとしています。 大会関係者等の検査体制は現在、調整中となりますが、地域医療体制に影響を与えない形での実施を検討しています」 私は、「東京五輪を中止するより開催する方がコロナ対策においても大きな進展がある」という可能性に目を向けることも重要ではないかと感じている。開催するために、これまでになかった施設を作り、これまでなかった数の検査態勢ができる。これはオリンピック後、一般の人々にも活用できるはずだ。 それ以上に、スポーツがコロナ禍で果たせる役割は必ずあるはずで、ひとりひとりの心身の健康に大きく貢献する可能性を秘めいている。それなのに、スポーツの真の潜在能力に目を向けず、「スポーツをやめろ!」と叫ぶ人たちが多い日本の社会が悲しくたまらない。 ●スポーツをやめるな!オリンピックをやめるな! いま私たちは、最大限、コロナ対策に留意し励行しながら、一方で「できる限り、自分に与えられた仕事や日常生活をやめない、可能な形で維持し続けること」をそれぞれが目指し、最善を尽くしているのではないだろうか。 誰もが痛みを感じ、影響を受けながら、互いに思いやって支え合う。これが基本だろう。 ところがなぜ、東京五輪だけは「全面中止」を強いられ、「やめろ」と横暴に叫ぶことがまるで「正論」のような空気になってしまっているのだろうか。スポーツはそんなに悪者なのか? 背景には、「スポーツは不要不急な行為」「オリンピックは、IOCや一部の政治家、スポンサー企業や広告代理店のお金もうけ」と決めつけ、だから「やめたって構わない」という安易な、そして意地悪な心理が働いていないだろうか。 東京五輪中止で失われる選手やスポーツ関係者たちの情熱、彼らが失う「人生」そのものへの補償をどうするのか?それに思いを致し、具体的に代案を言及してくれる人もほとんどいない。それはあまりにも無責任だし、スポーツを軽視しすぎている。 ●「なぜ日本国民にしなかった対策を外国の選手団のためにはするのか」 5/14 5月13日、仏紙「リベラシオン」の一面を飾ったのは、東京の新国立競技場だった。その中央に大きく躍る見出しは「TOKYO KO, LES JO?(東京オリンピックはノックアウトか?)」。世界が、東京が、日本が、誰もがその答えを求めている。 なぜここまで、日本で五輪中止を呼びかける声が大きくなったのか。「フォン・ボッタクリ男爵」こと国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は、なぜ五輪開催を推し進めるのか。予定された本番まで3ヵ月を切った代表選手たちの胸中は……。 仏紙「リベラシオン」は5月13日、一面でこう疑問を呈した。「東京オリンピックはKO(ノックアウト)か?」 在東京特派員による記事「日本の不満を高める五輪」では、日本で広がる反対運動の背景として、政府への不信感や医療の逼迫、優先される選手団と一般市民との格差を指摘する。 「政府は、PCR検査数を増やすこともなく、ワクチンの提供を急ぐこともなく、医療体制を強化することもなく、必要な資金援助をすることもなく、1年以上もウイルスの蔓延を放置している」 そんななか、政府や五輪組織委員会、IOCが「東京五輪の安全性」を語り、国民を安心させようとしていることに対し、「彼らが感染症対策を並べれば並べるほど、『政府が日本国民のために行ってこなかったこと』と、『東京に来るとされる代表団のためにIOCの指示で承諾していること』との間の隔たりが大きくなる」と報じる。 全国で多くの新型コロナウイルス患者が、病院のベッドを待って自宅にいる。持病を抱えた人たちの治療が延期されている。 「医療は限界 五輪やめて! もうカンベン オリンピックむり!」。窓に貼られたメッセージを通して現場の思いを訴えた東京・立川市の病院の看護師はこう同紙の取材に語る。 「看護師たちをオリンピックに派遣するよう求められていますが、私たちが患者を見捨ててアスリートの面倒を見に行くと思いますか? 現実的ではありません」 さらに、オリンピック期間中、3万人の選手団とその関係者へのPCR検査が毎日予定されている。リベラシオン紙は、日本のPCR検査数の少なさや、ワクチン接種の遅れにも懸念を示す。 「現在、東京都の人口1400万人に対し、1日のPCR検査の数が1万件を超えることはほとんどない。1人が4年に1度接種できる程度の割合で行われているに過ぎない」という専門家の言葉を引用し、「東京で1日3万回の検査が可能なのであれば、なぜ住人には提供しないのか。無料でPCR検査を受けるには処方箋が必要であり、自分の希望で受けるには検査に最大250ユーロ(約3万3000円)も払わなければならない。さらに、1億2700万人の国民がいるなか、抗原検査は1日5000件にも満たない」。こう矛盾を問いかける。 ワクチン普及の不公平感についても同様だ。選手団は優先的にワクチンを摂取できることについて、首相は「IOCがファイザー社と交渉して割り当てられたものだ」と言うが、「一般の国民たちは待たされたままだ」。 同紙は、小池百合子東京都知事の動向にも注視している。「都議会議員選挙を控えるなか、世論を無視はできないだろう」。開催地の知事として、「リングにタオルを投げ込むことはできる」と指摘する。 同紙は別の記事で、東京五輪への切符を手に日々トレーニングに励む選手たちの思いも伝える。2016年、リオ五輪の200メートル競走で銅メダルを獲ったクリストフ・ルメートル(30)は言う。 「(日本の状況については)ほかの人と同じ情報しか持っていませんが、信頼しています。よほど状況がひどく悪化しないかぎり、五輪は開催されると考えています」 「無観客にはなるでしょうが、対策が施され、世界でもっとも重要であり、もっとも象徴的なスポーツ大会が開催されると思います」 現在、「準備の真っ只中。(日本の公衆衛生の状況については)あまり注意を向けないようにしている」と話すのは、フェンシングのヤニック・ボレル(32)だ。 「延期の発表以来、いろいろな噂が流れましたが、どれも打ち消されてきました。公式発表がないかぎり、開催を前提にトレーニングを続けます。開催を信じない理由がありません」 フェンシングでは2020年3月から、国際大会が一度しか催されていないという。「いままでとは違った準備になっています。前は定期的に他の選手と対戦するリズムがありました。試合が月に1回から年に1回に変わるのは独特な感じです。ベストを尽くそうと考えています」 もう一本の記事は「トーマス・バッハのオリンピックへの執念」というタイトルでIOCのトーマス・バッハ会長に焦点が絞られている。東京での緊急事態宣言再発令により、5月中旬に予定されていた来日を延期したバッハ会長について同紙は、「バッハはこの1年間、『オリンピックの救世主』というお気に入りの衣装を着てきた」と表現する。 記事によれば、危機管理は彼の得意技だ。2013年、バッハがIOCのトップに就任したとき、組織は財政的に弱体化し、衰退していた。その復活のため、スポンサーからの収入を倍増させ、委員会の長期的な財源を確保するなど、迅速に改革を行なった。 加えて、彼があくまでも楽観的にオリンピックを推し進める理由として、経済的な問題や「組織の継続のため」だけではなく、彼のアスリートとしての過去の経験もあげて説明する。 1976年、バッハはモントリオール五輪に西ドイツの代表としてフェンシングの団体種目で出場。金メダルを獲ったが、次ぐ1980年のモスクワ五輪は西ドイツのボイコットにより、棄権せざるを得なくなった。出場権を失ったというそのときの経験が、選手の立場に立って尽力する現在につながると同紙は書く。 そして、記事はこう締め括られる。「彼はいま、IOCのトップとして日本人を説得しなくてはならない。それとも彼は、反対の声を聞こえないことにするのだろうか」 試合続行か、KOか。いったいレフェリーは、そしてタオルを握っているのは誰なのだろうか。 ●東京五輪・パラ中止求める署名 35万超える 活動の弁護士が会見 5/14 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、東京オリンピック・パラリンピックの中止を求めるオンライン上の署名が35万を超え、活動を行っている弁護士が記者会見して「パンデミックが収束していないことは明らかで、世界中の人々が心から歓迎できる状況ではなく中止すべきだ」と述べました。 日本弁護士連合会元会長の宇都宮健児さん(74)は、東京オリンピック・パラリンピックの中止を求めるオンライン上の署名活動を今月5日からはじめています。 署名は国内外から集まっているということで、14日時点で35万を超えました。 宇都宮さんは「国内でも世界でもパンデミックが収束していないことは明らかだ。東京は緊急事態宣言下で重症患者も増えているが、貴重な医療資源をオリンピックのために割かなければならない」と指摘しました。 そのうえで「世界中の人々が心から歓迎できる状況ではなく中止すべきだ。人々の命を優先するのかオリンピックというイベントを優先するのかが問われている」と述べました。 記者会見に先立って中止を求める要望書を東京都に提出したほか、IOC=国際オリンピック委員会と、IPC=国際パラリンピック委員会にはメールで送ったということです。 また、今後、政府と大会組織委員会にも提出するということです。 東京大会をめぐっては、必要な感染対策を講じれば可能だなどとして、開催を支持するオンライン署名も行われています。 東京都の小池知事は「要望書の提出があったことは報道などでも承知している。世界的なパンデミックではあるが、東京大会を安全安心に開催することは重要だ。IOC、国、組織委員会などの関係者と連携しながら着実に準備を進めていく。都として全庁を挙げるのが役割であり、それを日々進めている。そこに尽きる」と述べ、大会の開催に向けて引き続き準備を進める考えを示しました。 東京オリンピック・パラリンピックの中止を求めるオンライン上の署名が35万を超えたことについて、大会組織委員会の橋本会長は「このような状況の中でオリンピックを開けるのか、何の意味があるのかという多くの人の意見を真摯に受け止めないといけない」と述べました。 そのうえで「海外からの選手団や関係者の管理をしっかり行い、国内の在住者との交流は厳しく制限を設けることによって安心と安全が確保されれば大会の実現は可能だと思う。懸念材料を1つ1つ丁寧に解決していくことに努めていきたい」と述べ国民の理解が得られる大会の実現に向けて準備を進めていく考えを示しました。 ●東京オリンピック「やるなら医療への負荷」考えてと尾身氏がクギ 5/14 新型コロナの感染拡大に伴い、政府は5月14日、緊急事態宣言を北海道・岡山・広島に拡大すると決定した。この日、東京オリンピックの開会式まで残り70日を切ったが、関心の高まっている東京五輪の開催是非について菅首相は冒頭発言で言及しなかった。差し迫ったタイミングでの緊急事態宣言の拡大。対象には、五輪のマラソン競技が予定される札幌市を擁する北海道も含まれている。これまでに政府分科会の尾身茂会長は、感染状況や医療負荷を考慮して五輪開催を判断すべきと指摘している。菅首相と同席した尾身氏は会見で「開催するとすれば、前の日に(開催判断を)やるわけではないですよね?」「(オリンピック前に感染リスクと医療負荷を)評価するのは、オリンピックを開催する人たちの責任だと思います」とクギを差した。 ●質問かわし、またも登場した「繰り返し」フレーズ 感染収束が見通せず、日本国内では東京五輪への逆風は強い。NHKの世論調査(5月10日)では「東京オリンピック・パラリンピックの観客をどうすべきか」という質問に対して、「中止すべき」と答えた人が最多の49%だった。読売新聞が5月7〜9日に実施した世論調査でも59%が「中止」を求めた。会見では、報道陣からオリンピックの開催条件を専門家と相談し、基準を設けて開催是非を判断しないのかと問う質問があった。ただ、菅首相はこの質問に正面から答えなかった。以下、その部分の質疑応答だ。 「 ——質問:政府分科会の尾身茂会長は今日の国会で「感染状況を踏まえて医療への負荷を考慮して決めるのが合理的。最悪のことも考慮するのが当たり前」と指摘した。国民の命を守るために、改めて専門家にはかり、具体的な基準を設けて科学的な根拠に基づく開催是非を判断するべきではないか。 菅首相:オリンピックについてはさまざまな声があることは承知しております。そうした中で、まずは感染拡大を食い止めて、国民の命と健康を守る。このことが最優先であります。いずれにせよ、選手や大会関係者の感染対策はしっかり講じて、安心をして参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていく。これが開催にあたっての基本的な考え方であります。東京大会の医療体制については、地域医療に支障を来さないように確保できるよう調整をしているところであります。現在、組織委員会が協力をする医療機関の確保とともに、現在勤務されていない潜在看護師の方々や、日頃から連携しているスポーツドクターに協力要請をしている。このように私、承知しています。また、ファイザーから各国選手へのワクチンの無償提供が実現し、更に選手や大会関係者と一般の国民が交わらないようにするなど、厳格な感染対策を検討しております。こうした対策を徹底することによって、国民の命や健康を守り、安全・安心の大会を実現することは、可能と考えており、しっかり準備をしていきたい。このように思っております。 」 菅首相の答弁のうち「選手や大会関係者の感染対策はしっかり講じて、安心をして参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていく。これが開催にあたっての基本的な考え方」という言葉。これは、5月10日の衆院予算委員会で東京五輪の開催条件や開催是非を尋ねた野党の質問に対し、正面から答えず、繰り返し用いたフレーズ部分とほぼ同じだ。朝日新聞によると菅首相は国会答弁でも「国民の命と健康を守っていく」というフレーズを、計17回繰り返した。 ●尾身氏、オリンピックの医療負荷判断「開催する人の責任」 質疑応答では、ジャーナリストの江川紹子氏が「海外報道陣など来日する人々をどうやって行動監視するのか」と質問。菅首相は、行動制限に反した場合は「強制的に退去を命じる」ことを含めて検討していると答えた。また江川氏は、尾身氏が国会で「五輪の感染リスクと医療の負荷を前もって評価してほしい」と述べた理由について尋ねた。尾身氏は、一般医療やワクチン接種への負荷や、来日する人の中にも一定数の体調不良者が現れる可能性を指摘。その上で「開催するとすれば、前の日に(開催判断を)やるわけではないですよね?」「(オリンピック前に医療負荷を)評価するのは、オリンピックを開催する人たちの責任だと思います」とクギを差した。以下、質疑応答の内容だ。 「 ——質問:1)政府は選手を守ることは色々な工夫をしていると思うが、選手以外に遥かに多い最大9万人の外国人が来日する。前回の会見で仏ラジオ局の記者が海外報道陣を例示し、行動監視は物理的に可能なのか質問した。首相は選手以外の方は様々な制約があるとした述べなかった。たとえ自主隔離を求めても守ると限らない。五輪関係者、競技団体を含めて同じだ。どうやって9万人もの行動をチェックするか。ホテルに滞在し、一般人と接触する可能性もある。具体的に示してほしい。 2)尾身先生は国会で、五輪の感染リスクと医療の負荷を前もって評価してほしいと述べている。これについて政府はどう対応するのか。色々なケースを想定し、国民に根拠とともに示せるか。 3)尾身先生には先程の感染リスクと医療についての評価が必要な理由についても教えてほしい。 菅首相:まず私から申し上げます。前回の質問の際に、えぇ、マスコミの方が…たしか3万人ぐらい来られるというような話だったと思います。いまそうした方の…入国者と言うんですかね。そうしたものを精査しまして、この間出た数字よりも遥かに少なくなると思いますし、そうした行動も制限をする。そしてそれに反することについては、強制的に退去を命じる。そうしたことを含めていま検討しております。ですから、一般の国民と関係者が来られた人とか、違う導線で行動してもらえるようにしていますし。ホテルも特定のホテルに……国として、指定をしておきたい。指定をして、そうした国民と接触する事のないようにと。そうしたことをしっかり対応している途中だという報告を受けています。 ——評価については… 内閣広報官:自席からのご発言お控えください。 ——答えていただいていないので。感染リスクと医療の負荷について評価してほしいと尾身先生からの言葉について、これを実行するつもりはあるのか。 菅首相:行動指針を決める際に、専門家の方から2人メンバーになっていただいて相談しながら決めさせていただきます。 尾身氏:いまのご質問は、なぜ医療への負荷の評価をしなくちゃいけないかということですが。実はなぜこれだけ多くの人がオリンピックに関係なしに不安に思っているかと言うと、感染者が500いった600いったということよりも医療の負荷というものが…。つまり、一般医療に支障がきて救急外来も断らなくちゃいけない。必要な手術も断らくなちゃいけない。しかも命に非常に直結するようなところまでという状況になっている。さらに、医療の逼迫というのが重要なのは、これからまさにワクチン接種というところに医療の人が…。さらに、色々な人がオリンピックであろうがなんであろうが多くの人がくればコロナにかかる、かからないに関わらず、一定程度の人がなにか具合が悪くなる。いずれ私は関係者の方は、何らかの判断を遅かれ早かれされると思う。仮に開催するとすれば、前の日にやるわけではないですよね?当然X週間、Xデー、Xマンス、時間的余裕を持ってやるわけで。その時の医療への負荷というのはその時わかりますよね。医療がかなり良い状況、中ぐらい、色々分け方がある。その時の状況に応じて、仮にやるのであれば、そのX週間後にどのくらいの負荷がかかるか。状況が悪ければ、さらなる負荷となる。そのことをある程度評価するのは、オリンピックを開催する人たちの責任だと思います。ということで申し上げました。 」 ●どうなる?五輪の医療体制 首都圏の知事、専門病床にNO 菅首相は「東京大会の医療体制については、地域医療に支障を来さないように確保できるよう調整をしているところであります」と述べたが、これにも懸念がある。大会組織委員会は選手や関係者が感染した場合に受け入れる「専用病床」の確保を自治体に依頼している。ところがFNNによると、東京都以外で競技開催を予定している8つの自治体のうち5月13日時点では専用病床の確保の意向を示している自治体がない。これまでに神奈川県や茨城県、千葉県、そして埼玉県などは知事が会見でNOを表明している。 「選手とか関係者用に特別に病院のここをコロナ専用にしてくれと言われても、『はい、分かりました』と対応できる状況ではない」(神奈川・黒岩祐治知事) 「我々としては県民と五輪選手を分け隔てする必要性も感じていませんので、それについてはお断りしています」(茨城・大井川和彦知事) 「少なくとも千葉県が五輪関係者のために、県民が使えない形で貴重な県内のコロナ用の病床を確保したり占有することは、我々としては考えていない」(千葉・熊谷俊人知事) 「感染症法に基づいて、県民の皆さんと同じ判断基準で対応させていただく」(埼玉・大野元裕知事) ●医療ボランティアは… 大会組織委員会はスポーツドクター200人、看護師500人のボランティアも募集している。これについてはSNS上で批判もあったが、読売新聞などによるとスポーツドクターは約280人の応募があったと伝えている。一方で、こんな事例もある。朝日新聞によると、茨城県立カシマサッカースタジアム(鹿嶋市)で選手らのケアをする予定だった看護師らの7割が辞退していた。ボランティアの感染防止策も心もとない。菅首相は会見の中で「ファイザーから各国選手へのワクチンの無償提供が実現」と述べた。ただ、大会を支えるボランティアのワクチンが確保できるかは触れていない。ボランティアが優先接種できるかは現時点で不明だ。 ●急転直下の「緊急事態宣言」拡大、専門家の危機感が背景に 今回の緊急事態宣言は急転直下で決まった。これは政府が政府分科会にはかった当初の諮問案を取り下げ、再諮問に追い込まれた結果だった。政府が5月14日の政府分科会で最初に示した案は、岡山・広島は緊急事態宣言に準じる「まん延防止等重点措置(以下、まん延防止措置)」に、北海道はそれまでの「重点措置」に据え置く方針だった。この政府案に分科会は「待った」をかけた。前日夜の時点で、政府は感染拡大が著しい北海道など宣言を打たない方針だったが、これに危機感を抱いたのが分科会の専門家たちだった。5月13日、北海道内では712人の感染が確認され、1日の感染確認数で最多に。このうち札幌市が499人を占めた。鈴木直道知事も、政府に対して札幌限定での緊急事態宣言を要請する方針を表明していた。 「専門家の意見は、北海道、岡山、広島は非常に厳しい。だから今(緊急事態宣言を)打たないと、という認識だった」(舘田一博・東邦大教授/朝日新聞デジタル) 分科会の了承を得られなかった政府は方針を転換。北海道を加えた3道県にも緊急事態宣言を出す案に切り替えて再諮問し、了承された。まん延防止措置も、群馬・石川・熊本が加えられた。政府が諮問案を取り下げのは初めてのことだった。3度目となる緊急事態宣言が4月25日から東京・大阪・兵庫・京都に発出された時、当初は2週間限定(5月11日まで)の「短期集中」の予定だった。ところが変異株の拡大もあり、宣言は5月31日まで延長された。さらに5月12日からは愛知・福岡が加わり、今回16日からは北海道・岡山・広島も対象に。政府の「当初」の目論見は立て続けにはずれ、宣言の拡大が続いている。 ●気になるワクチンの接種状況は? 頼みの綱であるワクチンだが、首相官邸によると5月12日までに医療従事者・高齢者に接種したワクチンの回数は合計でおよそ530万回だ(※自治体から遅れて報告が上がってくることもあるため、その段階での正確な接種回数は多少変わることに注意)。うち医療従事者向け接種は約470万回、高齢者向け接種は約60万回だ。少なくとも1回以上接種した人の割合は、約385万人と日本の人口(約1億2600万人)の約3%となっている。GW前後から医療従事者向けの接種が安定して増え、GW明けからは高齢者向けのワクチンの供給も増加。直近では1日あたり30万回近くワクチンを接種できている日もあるため、確実にペースは上がっているといえる。ただし、菅首相が表明した「1日100万回」のワクチン接種が実現できたとしても、高齢者約3500万人全員に最低1度でもワクチンを接種するには1カ月以上はかかる。尾身会長は、14日の会見で「全国的なレベルでは実行再生算数は1前後。今の所、全国的なまん延という状況ではない」との見解を示した。ただ、現時点で開催地である東京で感染を抑え込めていない中、70日後にオリンピックのようなイベントを開けるのか。「安心・安全」を繰り返す菅首相や政府の姿勢には懐疑の念が募る。 ●“東京五輪型”生む恐れも…医療現場から中止求む声 5/14 政府が、東京オリンピック・パラリンピックの開催について前向きな姿勢を示すなか、勤務医の労働組合から反発の声が上がっています。 ●森田氏“五輪開催”質問に菅総理「やるよ」 13日、総理官邸を訪れた、森田健作前千葉県知事。約40分の面会後、記者の取材に応じました。森田氏は、菅総理との昼食の席で、東京オリンピックの開催について質問したといいます。森田氏は「『総理やるべきでしょ?』と言ったら、『やるよ』と言っていた。『やるよ』って、それはそうでしょ。総理はそういう気だと思いますよ。ワクチン接種を速めて、少しでも早くやって、オリンピックを目指すようなことは言っていた」と話しました。 ●新たな変異型“東京五輪型”生む恐れも… 菅総理は開催へ前向きな姿勢を見せたということですが、医療現場からは中止を求める声が挙がっています。勤務医で作る労働組合「全国医師ユニオン」の植山直人代表は、「医療上の問題で、東京オリンピックを中止すべきだという考えです。東京に新型コロナウイルスのホットスポットを作ってはいけない」と話し、中止の理由として、世界から数万人の選手や関係者が集まることで、新たな変異株を生む恐れがあることなどを挙げました。また、植山代表は「危険なウイルスが東京オリンピックをきっかけに発生したりしたとなると、100年にわたって東京オリンピック型ウイルスと言われかねない」と話しました。 ●千葉・五輪専用“病床確保”は拒否へ 千葉県の熊谷俊人知事は組織委員会から、オリンピック専用の病床確保を求められた場合、拒否する方針を明らかにしました。熊谷知事は「千葉県がオリンピック関係者のために、県民が使えない形で希少な県内のコロナ用の病床を確保したり、占有することは我々としては考えていない」と話しました。組織委員会の武藤事務総長は、「専用の病床を空けてほしいと言っているわけではない」と述べ、地域医療に迷惑が掛からないような形で協力を求めていく姿勢を強調しました。 ●茨城・ボランティア看護師ら約7割辞退 一方、茨城県では、大会競技場となるカシマサッカースタジアムで、医療ボランティアをする予定の看護師らの約7割が、辞退していたことが分かりました。茨城県看護協会は、「看護師らが所属する病院がワクチン接種などで手がいっぱいで、人員を割く余裕がないのではないか」とみています。 ●尾身会長「医療に対して負荷の評価が重要」 13日、開催の是非について問われた政府分科会の尾身茂会長は、「オリパラについては、遅かれ早かれ関係者による判断が示されると想像している。その判断が示される時点での、感染や医療の状況に応じ、オリパラ期間中、どの程度、医療に対して負荷が掛かるかの評価が極めて重要」と話しました。 ●ナダルが東京オリンピックでプレーするかまだわからないと発言 5/14 世界ランク3位のラファエル・ナダル(スペイン)がイタリア国際に出場中のローマで、東京オリンピックに出場するかはまだ決めていないと発言し、同イベントでのプレーに疑問を呈するテニスプレーヤーのメンバーに加わった。 1年遅れのオリンピックに出場するかと尋ねられたナダルは、「まだわからない。正直なところわからないから、君たちにはっきり答えることはできないよ。自分のカレンダーはまだはっきりしていないんだ」と答えた。 「通常の世界でなら、もちろん僕は決してオリンピックを欠場しようなどとは考えないだろう。そのことには何の疑いもない。これまで僕にとってオリンピックに出場することがどれほど重要だったかは皆が知っていることだ」 東京オリンピックは新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのため、2020年から1年延期されていた。 「現在の状況下では、わからないよ。今後1〜2ヵ月に状況がどのようになるか見てみよう。でも僕はスケジュールを調整する必要がある」と34歳のナダルは続けた。 「通常の年のスケジュールの場合、僕は1月1日からシーズンの終わりまで、ほぼ100%自分の予定を把握している。でも今年は少し違っている。僕らはより臨機応変でなければならない。起こっていることに適応する必要があるんだ」 ナダルは2008年北京五輪でシングルスの金メダルを獲得し、5年前のリオデジャネイロ五輪では男子ダブルスで金メダルに輝いていた。 14回目のフレンチ・オープン制覇に向けての準備を締めくくるため、ナダルはローマでの10度目のタイトル獲得に挑んでいるところだ。彼は7月23日に開幕するオリンピックについて、不確かな気持ちを表明した最新のテニスプレーヤーだ。 セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)は、もしウイルス対策のプロトコルのために3歳の娘を連れていけないというのであれば日本には行かないと示唆し、日本の錦織圭(日清食品)と大坂なおみ(日清食品)はオリンピックが実施可能かについて懸念を見せた。 「私はアスリートだし、もちろんオリンピックを実現してほしいと思っています。それは私が人生を通して待ち望んでいたようなものでもあります。特に昨年は、本当に多くの重要なことが起こりました」と大坂はコメントした。 日本でのCOVID-19による死者数は1万1000人ほどで、ほかの多くの国よりもいい数字だが、アジア諸国の中では少ないほうではない。ワクチンを接種した国民が2%にしか至らない状況の中、ウイルスと拡散しつつある変異種は日本の医療制度に負担をかけている。 パンデミックの最中にオリンピックを開催することについて、日本の世論は反対意見が多数を占めている。世論調査に参加した日本人の60〜80%が、オリンピックをキャンセルするか延期すべきだと答えている。しかし国際オリンピック委員会(IOC)と日本の大会組織委員会は、すでに1年延期された東京オリンピックを予定通り7月23日に開幕すると主張している。 ●コートジボワール、岐阜での事前合宿を取りやめ 5/14 岐阜市と岐阜県関市は13日、コートジボワールのホストタウンとして、受け入れ準備をしていた東京五輪選手団の事前合宿を取りやめると発表した。県地域スポーツ課によると、事前合宿取りやめは、県内のホストタウンでは両市が初めて。 同国の駐日大使から両市に対し、新型コロナウイルスの感染状況などを理由に、訪問できなくなったとする手紙が届いた。 両市は共同ホストタウンとして2018年12月に登録。同国のオリンピック委員会関係者が両市の施設を視察し、両市は応援メッセージ動画を大使館に送るなど交流を深めてきた。事前合宿は岐阜市ではテコンドーと男子サッカー、関市では陸上とアーチェリーを予定していた。両市とも「今後はコロナ禍でも実施可能な交流方法を検討し、引き続き応援を継続していく」としている。 県によると、ホストタウンには、県と両市を含む10市町が登録、事前合宿や事後交流を計画している。 |
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●森永卓郎、東京五輪中止を推測「小池都知事がちゃぶ台返しをする」 5/15
経済アナリストの森永卓郎が5月12日(水)、ニッポン放送「垣花正 あなたとハッピー!」に出演。東京オリンピックの開催について独自の見方を示した。 開催まで2か月余りとなった東京オリンピック。だが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、開催を巡って様々な議論が巻き起こっている。大会組織委員会の中でも、「無観客での開催もやむなし」という声が強まっているといわれ、早期の決断が必要だとの声も出ているが、森永は、それ以上の事態があるのではないかと推測した。 森永:私は無観客以上の大激変が起こるんじゃないかと思っているんです。それは昨日(11日)、小池東京都知事が自民党の二階幹事長と会談したんですね。表向きは全然、オリンピックの中止について話すということにはなっていないんですが、当然その話にも及んでいて、ここで2人が手を握って、小池都知事が突然のちゃぶ台返しで、「東京オリンピックはできません!」という大宣言をするんじゃないかと私は見ているんです。証拠はないんですけれど。 垣花:二階さんと会ったということから、そういう想像が広がるんですね。 森永:政府も自民党も「中止する」なんて絶対に言えないわけですよ。だって、安倍前総理が「2021年にやるんだ」と言って、IOCとも詰めてきたわけですから。だけど現実に、緊急事態宣言下でも東京の感染はどんどん深刻化しているわけですよ。さらにこれからワクチンをバンバン打たなければいけない中、医療体制がひっ迫する中で、東京オリンピックができるのかという現実問題もあるわけですね。 垣花:そこで、小池百合子さんにはちゃぶ台を返すことのメリットがあるんですか? 森永:国民の3分の2が「中止しろ」と言っているわけです(※読売新聞世論調査など)。ということは、小池さんは悪役を演じることによってバーンと人気が上がる。 垣花:小池さんの支持率が上がる。都議会議員選挙も控えている。 森永:国は国の方として、少なくとも10月までには総選挙があるわけですね。そうするとこんな状況の中で、オリンピック開催を強行したら、「メチャクチャじゃないか」という国民の声が高まって、選挙はけっこう負けるかもしれない。二階さんは選挙の責任者ですから、両方の利害が一致する。だから、表向きは出てこないと思うんですが、さも突然小池都知事が暴走した形式をとって、中止を宣言することは十分にあり得るんじゃないかと。 小池東京都知事と二階自民党幹事長の利害が一致して、東京オリンピックの中止もあり得るのではないかと森永は推測した。 また、「中止にまつわる費用の尻拭いをするのは東京都ではないか?」との疑問に対して、森永は「オリンピックの開催都市とIOCの契約には中止の際の違約金という条項はまったく入っていない。東京都の都合でやめるということであれば損害賠償請求の対象になると思うが、コロナ感染で開催できなくなった場合に、損害賠償の権利がIOCにあるかどうかは弁護士の間でも見解が分かれている」と語り、1940年に日中戦争で中止になった幻の東京オリンピックの例を挙げて、「払わなくてもいいのではないか。こんなことは誰も予想しなかったのだから」と自身の見解を示した。 ●五輪中止“日本には決定権がない” というIOCのボッタクリ契約 5/15 東京五輪を「中止すべき」という声が、国内外で高まっている。だが、菅総理は「開催は、IOC(国際オリンピック委員会)が権限を持っております」(4月23日の会見)と他人事のように語る。開催国なのに日本側に決定権がないというのか? 今回、東京都・JOCとIOCが結んでいる「開催都市契約2020」を、経済評論家・佐藤治彦氏が改めて読んでみた。たしかに「中止する権利」は「IOCが有する」と書いてある、驚くべき契約書なのだがーー。 ●世論調査の6割が「中止・延期」でも議論さえしない政府 錦織圭「(オリンピックの開催について)死者がこれだけ出ていることを考えれば、死人が出てまでも行われることではない」(5月10日、イタリア国際での会見) 大坂なおみ「オリンピックは開催してほしいけど、それ以上に大切なことがたくさんある。人々を危険にさらしているなら、今すぐ(開催するかどうか)議論すべきだと思う」(5月9日、同) とうとうトップアスリートからもこの夏の東京オリパラ開催について疑問の声が上がった。 7月の東京都議会選挙と秋までの総選挙を控える菅内閣にとって、東京オリンピック問題で失敗することは許されない。 今や2021年夏の東京オリンピック開催については、ほとんどの世論調査で6割以上が「今年の開催」に反対しているのが現実だ。 当初は聖火リレーが始まり、期日が近くなれば数字は変わる、特にワクチン接種が進み、オリンピックが実際に開催されれば、国民の意識は大きく変わるはずと言われていた。 しかし、3月に始まった聖火リレーを意気揚々と報道しているのは、“皆さまのNHK”くらいで、多くの自治体で感染リスクがあるため公道を走ることを中止したとか、規模を大幅に縮小したという報道ばかりだ。ほとんど走っていない聖火のバトンが渡されていると多くの国民が知っている。 毎日新聞が5月3日に発表した全国47都道府県知事に行ったアンケートで、オリンピック競技が行われる埼玉、静岡、山梨を含む9県の知事でさえ「感染状況次第で中止・延期にすべきだ」とし、それ以外の多くの知事も「わからない」と回答したのだ。 5月17日に予定されていたIOCのバッハ会長の来日も延期され、今や誰が東京オリパラの開催断念を言い出すのかという噂がネット空間を飛び回る事態になっている。 とにかく開催を望む声が上がらない。 ●「選手村で100人、1000人の感染者が出るかも」 つい2年半前。2018年10月の世論調査では、東京が開催都市になることについて「良い」と「まあ良い」を合わせると85%という数字だった(NHK調べ)。 2018年10月といえば、すでに東京招致が決まって5年。東京オリンピックは当初言われたコンパクトで金のかからない大会などではなく、史上最大の莫大な費用がかかること、日本オリンピック委員会が招致活動で買収をしたのではないか?という報道までされたころである。 それでも、大部分の国民は開催に圧倒的な支持をしていたのだ。 それが1年3ヶ月前からの新型コロナウィルスのパンデミックで逆転した。ほとんどの世論調査で、国民の6割以上が反対する。このままでは第二次世界大戦後のオリンピックで唯一の、開催都市の住民に歓迎されないオリンピックになってしまうだろう。 開催すれば、国民の意識は変わるだろうという政治家の読みも、先の錦織圭選手の次の発言が開催のリスクを的確に示している。 「良いバブル(=毎日検査を受け、移動を競技場と宿泊施設などに限定するなど感染防止策)をつくれるなら(開催)できるかもしれないが、それでもリスクはある。選手村で100人、1000人の感染者が出るかもしれない。コロナはとても簡単に拡大するから」。 ●9万人が入国するリスク 多くの国民の反対の世論を押し切って、開催し一時は盛り上っても、もし各国を代表するオリパラ選手間で大規模なクラスターが起きたらどうなるだろう。100人規模の集団感染が起き、オリンピック競技がその一部でも中止されたり、選手や各国の選手団のメンバーが感染症のために入院するようなことになれば、無理やり開催したと政権に致命的な打撃となることは間違いない。 日本は感染が始まってから1年以上経っても海外からの新種の変異型ウィルスの国内流入を阻止できていない。水際対策が全くできないのだ。3月から心配され、4月に入り日本各地でインドからの変異型ウィルスが猛威を振るい大阪などでは医療崩壊状態になっているにもかかわらず、やっと5月10日からインドからの入国者の水際対策を強化するという。ザ・後手後手なのだ。 それが、五輪選手だけで1万人以上の入国があり、全体では最大9万人もの入国が見込まれるオリパラ大会で感染対策を万全にできると言われても、果たして実行できるのか疑問に思うのが当たり前だろう。 ●違約金はないが「全損害は日本がかぶる」という不利な契約 国民の命と健康を第一に考えて、感染が収まらない今年のオリンピックは延期か中止する。そんな当たり前の判断をなぜリーダーたちはできないのか。そう疑問に思う人は少なくない。 4月に入りチラホラと言われるようになったことが2つある。それは、1つは、実は東京オリパラを日本側から中止することはできない。もう一つは、万が一、日本側から中止するようなことがあれば、莫大な違約金を請求される、というものだ。 だから日本側から中止を求めることができないという。その噂は事実なのか? 日本側とIOCが取り交わした契約書「開催都市契約2020」が公表されているので読んでみた。以下、気になるポイントを5つ書いておく。 その1:オリンピック大会に必要な施設の建設、費用の調達、人員の調達、運営する全責任は日本側にある。オリンピック憲章とIOCの基準に基づき、すべての金を調達し建設し運営する責任が開催都市にあるというものだ。(1条ほか) その2:IOCとその関係機関や、スポンサー、サプライヤー、ライセンサーなどが直接、間接にかかわらず損害を被った場合は、そのすべてを日本側が補償し、また、損害を被らないようにしなければならない。(9条) ●決めるのはIOC、日本側は「要求できる」だけとは! その3:大会に関わる財産権はすべて永久にIOCに帰属する。(41条) その4:IOCは大会が始まった後であったとしても、戦争状態、内乱、ボイコット、国際社会の禁輸措置の対象、その他、大会参加者の安全が、理由の如何に問わず、深刻に脅かされると判断した場合、いつでも本大会を中止する権利を有する。(66条) その5:本契約の締結日には予見できなかった不当な困難が生じた場合、東京オリンピック組織委員会は合理的な変更を考慮するようにIOCに要求できる。ただし、その変更は本大会、または、IOCのいずれに対しても悪影響を与えないこと。その変更はIOCの裁量に委ねられること、また、IOCは変更への同意などの義務を負わない。(71条) かなり日本側が不利であることは間違いないようだ。 ●IOCが開催強行したら、世界を敵に回す? さて、まとめてみよう。 大会の中止の最終決定権が契約上はIOC側にあるのは、どうやら間違いなさそうだ。しかし、中止を日本側から申しでることは可能のはずである。それをIOCが受け入れて中止を決定すればいいだけの話だ。IOCは、開催の可否について、WHO(世界保健機構)の勧告に従うというが、それはIOC主導の大会中止のケースだろう。未だ世界の感染者が増え続けている状況の下、日本側から中止の提案をすることは理に叶っている。 最悪の場合は、IOCが合意しないまま、日本から一方的な開催中止をする場合だ。その場合は、契約に基づく、追加的な損害負担を求められることは多いに有り得るだろう。 しかし、その場合であったとしても、国際世論が全面的にIOC側につくとは考えられない。何しろ、すでに欧米の主要メディアから、この夏の東京大会の中止を勧告する記事が相次いでいる。これが世界の世論なのだ。 万が一IOCと日本側が係争状態になったとしても、新型コロナウィルスで生じた中止に対して莫大な損害請求をするようなことはIOCも難しいだろう。それでなくても費用がかかりすぎだと開催に立候補する都市が減っている体。さらに国際的な司法の場で争ったとしても一方的に日本側が負けるとも思えない。 ●スポンサーが賠償請求するとは限らない また、万が一日本側が莫大な損害金を請求され支払うことになったとしても、政府は昨年度の予備費だけで9兆円のコロナ関係の予算を組んでいた。数千億円の出費を国民の命と健康を守り、コロナ対策に専念するためのものだ、と説明すれば多くの国民が納得してくれると思うのだ。 いったい、どのような損害が考えられるだろうか。 オリンピックと金でよく言われるのが、アメリカのテレビ放映権料だろう。その莫大な放映権料のために、アメリカで人気のある競技はアメリカのゴールデンタイムに合わせて実施されると言われる。実際どのくらいの費用をアメリカのテレビ局は払っているのだろうか? 東京大会の放映権を獲得しているのはNBCで、実は夏冬4大会分の放映権をまとめて獲得していて、東京大会がその最後のものになる。金額は44億ドル(約4840億円)だ。単純に考えると1大会1200億円というわけだ。もちろん、この金額がすべてIOCのものになるわけではなく、800億円ほどは東京オリンピック組織委員会に分配されると言われる。 また、日本国内スポンサーは68社あり、2020年大会に向けて3700億円のスポンサー料を払って(一部は物品提供)おり、昨年7月には1年延期になったことによる220億円の追加負担にも応じている。これに加えてインターナショナルなスポンサーも絡んではくる。しかし、いずれもすでに広報活動は数年に渡って行われており、たとえ東京大会が中止になったとしても、その全額を日本側に返還請求されることはないだろう。 いずれにせよ、国民の命と健康を守ることから考えると大した請求額ではないと言えるのではないだろうか。 ●去年の時点で「2年延期」と交渉していれば… 返す返す残念なことがある。それは、昨年の政治の判断ミスだ。 昨年の3月に日本側から2020年のオリンピックの延期を求めた時に、IOCはすんなりと受け入れた。ポイント5つ目にあげたように、コロナで東京オリンピックの契約締結時には予見できなかった不当な困難が生じたので合理的な変更を申し出たということに当たるからだ。 2020年3月24日。その日、当時の安倍首相はバッハ会長と電話で1年延期でほぼ決めてしまった。その時に、延期を1年でなく、2年としておけば、つまり、2022年夏への延期にしておけば、日本国内のワクチン接種も流石に終わっているだろうし、諸外国、少なくとも主要国の多くの感染も落ち着いていたのでは無いだろうか。 2022年7月であれば、それこそ人類がコロナウィルスに打ち勝った証としてのオリンピック大会になったのにと思うと重ね重ね残念だ。 ●今でも、日本人の4割が「今年か来年以降にやりたい」 最新の世論調査(読売新聞5月10日発表)によると、東京五輪の開催について「開催」は39%、「中止」は59%となっている。実は開催の是非に関する世論調査の設問がここ最近、微妙に変わってきている。 以前は、開催、延期、中止という設問が多かったのだが、観客を入れての開催、無観客での開催、中止というものに変わってきているのだ。 世論調査の手法でこの設問に変更すると開催志向の数字が伸びるとされる。読売の結果も、実は「無観客」23%、「観客数を制限して」16%で二つの合計で「開催」が39%だ。 1ヶ月前の世論調査(産経・FNN合同世論調査4月19日発表)では、「開催」24%、「中止」57%、「再延期」18%である。開催と再延期を合計すると42%。すでに大阪が医療崩壊状態になり、3度目の緊急事態宣言発令がほぼ決定されていた頃でも、これほど多くの国民が(今年か、今年でなくても)日本でオリンピックを見たいとしている。 ●なんとか「再延期の要求」はできないものか コロナの感染が収まっていない状態では、心の底から「池江頑張れ!日本頑張れ!」と叫べない。いつ選手に感染者が出ないか、今日の日本の感染者は何人だろうと心配しながらのオリンピックも真っ平御免だ。 私は、何とかウルトラCの展開で、もう一度、もう1年の再延期を勝ち取って、あと1年は国民の命と健康を守り、コロナ対策に専念し、楽しいオリンピックが2022年夏には待っている。そういう決着になってくれないものかと心から祈ってる。それが2年半前に85%もの東京オリンピック開催を是としていた日本の本音だと思うからだ。 ●なぜ日本政府は東京五輪を中止しないのか 事態は簡単ではなく 5/15 東京オリンピックの開始まで約2カ月となり、パンデミックを前に開催を中止するよう求める声は日に日に高まっている。ではなぜ日本政府は、中止について何も言わないのか。事態はそう簡単ではないというのが、その理由だ。 日本の状況は芳しくない。 新型コロナウイルスの感染状況が悪化するに伴い、緊急事態宣言が東京を含む4都府県で延長され、さらに3道県に拡大されることになった。 それでも、東京オリンピック・パラリンピックの中止について、政府からの発言はない。医療関係者も世論も、大多数は予定通りの開催に反対しているのだが。 最近の国内世論調査では、70%近い人が、7月23日からの予定通りの開催を望んでいない。しかし、国際オリンピック委員会(IOC)は依然として、大会は実施すると強い姿勢を堅持している。 東京五輪はそもそも昨年夏に予定されていた。そして日本政府はかねて、大会は確実に安全に実施すると、一貫して主張してきた。 それでも10日の衆議院予算委員会で菅義偉首相が、「私はオリンピックファーストでやってきたことはありません。国民の命と暮らしを守る。最優先に取り組んで来ている」と野党の質問に答えた。この日の答弁では世論の圧力に初めて姿勢を曲げたかのようにも見えたが、14日の記者会見では「国際オリンピック委員会は7月開催を既に決定している」と、従来の主張を繰り返した。 ではいったい、五輪中止を決める権限はいったい誰にあるのか? そして、中止はあり得るのだろうか? ●中止への手順は? IOCと開催都市・東京都の契約(日本語版はこちら)は、明確だ。開催契約を解除し、開催を中止する権利はIOCのみにある。開催都市側に、その規定はない。 なぜかというと、オリンピック大会はIOCの「独占的財産」だからだと、国際スポーツ法を専門とするアレクサンドル・ミゲル・メストレ弁護士は、BBCに説明した。オリンピックの「所有者」として、開催契約を解除できるのはIOCなのだという。 契約解除、つまり開催中止の正当な事由としては、戦争や内乱などのほか、「IOCがその単独の裁量で、本大会参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠がある場合」という項目が記載されている。パンデミックはこの、深刻な脅威に相当するのではないかという主張もあり得る。 オリンピック憲章にも、「選手のための医療と健康対策を促進し支援する」、「安全なスポーツを奨励」という規定があると、メストレ弁護士は指摘する。 しかしこうした諸々にもかかわらず、IOCはなんとしても大会を実施するつもりに見える。 それでは、IOCの意向に反して日本が自ら率先して、開催をやめることはできるのか? 「この開催都市契約の様々な取り決めのもと、もし日本が一方的に契約を解除する場合、それによるリスクや損失はもっぱら地元の組織委員会のものとなる」と、豪メルボルン大学のジャック・アンダーソン教授(スポーツ法)はBBCに話した。 スポーツ法に詳しいアンダーソン教授によると、この開催都市契約はよくある内容のもので、東京都はもちろん内容を承知して締結した。東京都が承知していなかったのは、パンデミックの発生だ。 「契約はいくつかの不測の事態は予見できるものの、現状の性質は言うまでもなく前例がないものだ」と教授は言う。 「オリンピックは最大のスポーツイベントで、日本とIOCにとっては放送権とスポンサーシップという意味で数十億ドル規模がかかっている。巨大イベントなだけに、全ての当事者に巨大な契約上の義務が伴う」 つまり、日本とIOCが開催都市契約の枠組みの中で、共に中止を決定することが、唯一の現実的なシナリオになる。 もしそういう展開になれば、ここに保険という要素がからんでくる。IOCは保険に入っているし、地元の組織委員会も保険に入っているし、放送各社やスポンサー各社も保険をかけているはずだ。 「もしも東京五輪が中止になるなら、こうした大会に関わる保険金支払いの案件として、おそらく過去最大規模のものになるはずだ。紛れもなく」と、アンダーソン教授は言う。 保険金は大会主催者側の経費実費は補償する。しかし、五輪開催を期待して日本国内で行われた数々な関連投資はほとんど補償されない。たとえば、海外から観客が押し寄せると期待して各地のホテルやレストランが投資した改修費などは、取り戻せない。 ●相次ぐ批判 現時点では、五輪開催は不確定なままだ。 ここまでの道のりも難関続きだった。昨年実施のはずが1年延期され、聖火リレーは何度も何度も中断された。海外からの一般観客受け入れは中止。そして今や、完全に無観客で空のスタジアムで競技をするという選択肢さえ検討されている。 開催の是非について発言する選手は少なく、おそらく自分たちも悩み、揺れているのではないかと想像される。代表選手になったアスリートにとってオリンピックは長年の訓練の末に獲得した、競技生活の大きなハイライトのひとつだ。 同時にその一方で、パンデミックの渦中、個人や大勢の健康が不安視されている。 日本有数のスター選手、テニスの大坂なおみ選手は五輪について発言した数少ない1人だが、その大坂選手も慎重なためらいを口にするにとどまった。 大坂選手は今月半ば、「私はアスリートなので、もちろんオリンピックは実現してほしい」と述べつつ、「あまりにたくさん大事なことが起きていて、特にこの1年間」と慎重だった。 「私にとって、もし人をリスクにさらすことになるなら(中略)もちろん話し合うべきだし、今そうなっていると思う。結局のところ私はただのアスリートで、今はパンデミックの最中なので」と、大坂選手は話した。 「でも人として考えたとき、私たちはパンデミックのただ中にあると言えるでしょうし、みんなが健康でなければ、そして安全だと思えなければ、それは間違いなくとても心配なことです」 パンデミックの中でオリンピックを開くのは適当だと思うかという質問には、「率直に言って、確信がもてません」と答えた。 千葉県によると、アメリカの陸上チームが県内で予定していた東京オリンピックの事前合宿を取りやめた。「選手の安全面に関する懸念」が理由だという。これを受けて千葉県の熊谷俊人知事は、「中止の判断は大変残念ではあるものの、米国陸連が現在の状況下での最善策として判断したものと考えています」とのコメントを出した。 五輪開催に関わる大勢が同じように、不確実な状況に揺れている。 各国の選手団を受け入れる「ホストタウン」については、すでに40以上の自治体が感染拡大の懸念から、交流事業や事前合宿の受け入れ中止を決めたという。 また、茨城県の大井川和彦知事は12日、大会組織委から選手用の専用病床を確保するよう打診されたものの、「県民より選手を優先できない」として断ったことを明らかにした。五輪開催については、「必ずやらなければいけないことではない。状況に応じて中止の判断もあり得る」と発言している。 さらに、医師の労働組合「全国医師ユニオン」は13日、「コロナ禍においては安心・安全なオリンピックの開催などありえない」として、「政府に対しては、オリンピック選手や関係者の苦悩を考慮し、医療従事者への社会的要請を明確にするためにも、1日も早いオリンピック開催中止の決断を求めるものである」という要望書を日本政府に提出した。 五輪中止を求める声が国民や医療関係者の間で高まる中、開催を不安視する人も増え続けている。 ●金銭だけの問題ではなく 五輪中止で問題になるのは、金銭だけではない。 もし東京大会が中止となった場合、次にすでに予定されているのは2022年2月開幕の北京冬季五輪だ。 アジアで日本と勢力を競い合う中国開催の大会が次に控えているとあっては、日本政府は出来る限りのことをして東京大会を実現しようとするはずだと、これが大方の見方だ。 日本で前回、夏季五輪が開かれたのは1964年の東京五輪だ。当時は、第2次世界大戦後の日本の復興と再建を表す重要な象徴だと、オリンピックはみなされていた。 今回の東京五輪も、日本にとって象徴的な意味合いがあると、アンダーソン教授は説明する。 「日本ではもう長いこと経済が停滞していたし、津波と福島の原発事故もあった。そのため、東京五輪は日本復興の象徴となったはずだ。そういう意味では特に大事な大会だ」 究極的に、大会を実施すべきかどうかの議論は、実際に実施されるかどうかとは別の話になる。近代五輪の歴史で、オリンピックが中止されたのは過去3回のみ。1916年と1940年と1944年の大会中止はいずれも、世界大戦がその理由だった。 それだけに、どれだけ逆風が高まろうとも、IOCが中止を検討さえしようとしない姿勢から、五輪に詳しい人の多くは東京大会は予定通り7月23日に始まるだろうと見ている。それがどういう形での開催になるのかは、まだ不透明だ。 ●「コロナと寄り添い、どう挑戦するか?」トライアスロンに見た徹底した対策 5/15 東京五輪開幕まで残り70日を切ったいま、新型コロナウイルスの感染者数はとどまるところを知らず、14日には北海道・岡山県・広島県に緊急事態宣言が新たに発令された。全国9都道府県で緊急事態宣言が出されている状況下で、本当に五輪が開催できるのか、不安に思うのは自然なことだろう。 その中、五輪に向けた準備は進んでおり、代表選考に向けた大会などが毎週のように開催されている。どの大会でも重点的に実施されているのが、選手や関係者の行動先をホテルや競技場など、ごく一部のエリアに限定し、外部との接触を徹底的に遮断する、いわゆる「バブル方式」と呼ばれる手法の徹底だ。15日に行われたトライアスロンの世界シリーズ横浜大会には、36の国・地域から計186人が出場。16日に実施予定の一般選手が参加するエイジグループや、ボランティアなどを含めて約4000人規模という、コロナ禍以降では最大規模と言える大会となっている。 大勢の人が携わる中での感染を避けるため、会場となった山下公園への立ち入り禁止、海外選手の専用車での移動に加え、多い選手では最大7回のPCR検査実施を予定するといった対策を実施。女子の部を、日本勢4番手となる39位、2時間0分27秒でフィニッシュした佐藤優香(トーシンパートナーズ・NTT東日本・NTT西日本・チームケンズ)は「バブルの中で安心、安全に大会を戦うことができました。海外から来た選手もいる中で、安心して過ごせたのは大きかったと思います」と、実際に過ごした感想を口にした。 9日に行われた陸上の東京五輪テスト大会でも、今回と同様に海外から選手を招待。そのうえで、競技場と宿泊施設に選手の移動先を限定して日程を消化した。男子100メートルで優勝したジャスティン・ガトリン(アメリカ)は「実際の五輪でどの程度安全を守れるのか確認するために参加しましたが、結果的には成功だったと思います。確かに改善してほしい点はいくつかあるが、順応していけると思います」とコメント。こうした対策が、選手たちに安心感を与えているのは確かなようだ。 ただ、どれだけ感染対策を盛り込んだプランを練り、実行したところで、国民の不安が全て解消されるわけではない。それは、夢舞台を目指すアスリート自身も認識している。スイムで最下位スタートと大きく出遅れ、1時間59分49秒の37位に終わった上田藍(ペリエ・グリーンタワー・ブリヂストン・稲毛インター)は、コロナ禍で五輪を目指すことに対しての複雑な思いを明かした。 「大きな壁に向かっていくという点では、私たちアスリートだけでなく、生活の面で全世界の方たちが大変な状況にあるということを、テレビを見たり周りの人たちの話を聞く中で感じています。その中で、アスリートとして『オリンピック』という言葉を口にすることに対して、とても慎重にならざるを得ないと思っています」 上田は2016年のリオデジャネイロ五輪を含め、3度の五輪出場を誇るこの種目の第一人者だ。しかし、2年前の19年には、レース中の事故による外傷性のくも膜下出血など、2度にわたる大けがを経験。それでも不屈の想いでリハビリを進め、すぐに表舞台へと戻ってきた。37歳の大ベテランにとって、仮に東京大会が中止となった場合、4年後のパリ五輪を目指す道は簡単な決意で選べるものではないだろう。慎重に言葉を選びながら話す心境には、重みがあった。 それでも、上田は現状に悲観するばかりではない。 「アスリートたちは、五輪での目標の達成に向けて生活を作っていくことで、周りの人たちに『一緒に頑張っていこう』とプラスのエネルギーを作り上げようとしています。この状況を(乗り越えるべき)壁と思うのではなく、コロナと寄り添いながらどうスポーツにチャレンジしていけるか。(感染を広げない)ルールにのっとりながら、大会を作って良かったと思ってもらえる取り組み方をしていきたい」 200回以上もトライアスロンに挑み続けた鉄人らしく、どんな状況でも前向きに捉え、進み続ける覚悟を見せた。 トライアスロンは横浜大会の後、五輪代表選考の見込みがあるリーズ大会(イギリス)が6月6日に控えている。男子は小田倉真(三井住友海上)が今大会1時間44分21秒で、優先して代表入りに指定される16位に入り、ほぼ切符を手中にした。残りの枠は18年アジア大会王者の古谷純平(三井住友海上)、今年4月に日本国籍を取得したニナー賢治(NTT東日本・NTT西日本)ら、力の拮抗(きっこう)した選手たちが争うことになりそうだ。女子は現在五輪レースで日本勢3番手の佐藤が、ランキングで30位以内に食い込むことができれば、代表3枠が見えてくる。3週間後に迫った最後の選考レースまで、負けられない戦いは続く。 五輪を開催すべきか、中止すべきなのか。この重大すぎる議論に、簡単に結論を出せるはずもない。ただ一つ言えるのは、未来を信じて最善の努力を続けるアスリートがいる、ということである。 ●五輪の日本選手団名簿から身長・体重削除へ 5/15 日本オリンピック委員会(JOC)が、今夏に開催を予定している東京オリンピック(五輪)の日本選手団名簿から、選手の身長、体重の情報を削除することが、関係者への取材でわかった。個人情報保護の目的のほか、メダル獲得のための戦略的な狙いもある。 JOCによると、情報保護の観点から、名簿の記載内容を見直す議論が昨年から始まったという。同関係者によると、強化本部の会合で「身長、体重情報が選手に対する差別的なことに使われるのではないか」「メダル戦略としては、選手の身長、体重の情報を公開しない方がいい」といった意見が出たといい、今春、記載を見送る方針が固まった。従来はあった出身地や生年月日、最終学歴などの記載については未定という。 選手団名簿は冊子にして選手や関係者、スポンサー、メディアに配布されるほか、ホームページ上で公開される。日本語版と英語版があり、JOCによると、近年は英語版には身長、体重の記載をしていない。また、日本語版でも2006年トリノ五輪のように掲載しなかった事例もある。 JOCの元理事によると、メダル戦略のために選手の身体的な特徴を他の国に知られないようにした方がいい、という考え方は以前からあったという。その一方、名簿をできるだけ具体的にすることで、「ファンに選手を応援してもらったり、子どもたちの目標としてもらったりする、という狙いもあった。何でも隠せばいいというものでもない」と明かす。 JOCは東京五輪で金メダル30個を目標に掲げている。新型コロナウイルスの影響で、世界中の選手たちが十分な準備ができない中で、日本が具体的な数字を掲げることを疑問視する声もあった。そのため、3月の理事会ではメダル目標の取り下げも提案されたが、JOCの山下泰裕会長は「修正する必要はまったくない」と話している。 ●五輪の医療体制「1カ月前には示さないと」 橋本会長 5/15 東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長は15日、朝日新聞社主催のオンラインイベント「Think Gender 東京五輪にできること」に出席し、コロナ対策を含めた大会全体の医療体制について「開会式の1カ月前、より早くそういったことを示していかなければ、国民の皆さんにこの東京大会を開催するという理解を得ることはとてもできない」と述べた。 橋本会長は、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が14日、米CNNテレビのインタビューに「(今夏の開催は)まるで自殺行為だ」と述べたことなど批判が集まっている状況を問われ、「こういった状況で、本当に開催できるのか、延期や中止にしたほうがいいんじゃないか、という声は真摯(しんし)に受け止めていきたい。一番心配されているのはコロナ対策。行動規範(プレーブック)も公表させていただいたし、しっかりと対策をしていきたい」と語った。 開催中止や延期、辞退を求める声が選手個々に直接向けられている状況にも触れ、「何とかしてあげられないのかな、といういらだたしさが私自身にある。怒りの矛先はアスリートではなく、私個人に向けられるべきものであって、それを回避することができていない現状に、非常に選手に申し訳ない」と話した。 6月までに決定する方針の観客数については「安全と安心を第一優先という大会であるのであれば、早く(無観客を)決めた方がいいという声もたくさん寄せられているし、私自身もその覚悟はあります。ただ、多くの子どもたちが、東京大会を何としても見たい、という声もあるので、努力を続けて、『これであれば少しは有観客にしてもいいんじゃないか』というふうに思ってもらえるまでの準備が整うまで、少しお時間を頂きたい」と語った。 ●三木谷浩史氏 東京五輪「リスク大きく ことしの開催は反対」 5/15 楽天グループの三木谷浩史社長は、海外メディアのインタビューに応じ、東京オリンピック・パラリンピックについて、新型コロナウイルスのワクチン接種が遅れる中での開催は非常に危険で、リスクが大きすぎるなどと懸念を示しました。 楽天グループの三木谷社長は14日、アメリカのCNNのインタビューで、東京オリンピック・パラリンピックについて「ワクチンの接種が遅れているのは事実で、世界中から人が集まる大きな国際イベントを開催するのは、非常に危険でリスクが大きすぎる。ことし開催することは反対だ」と述べました。 また、開催が中止になる可能性があるかという質問に対しては「すべての可能性がある。プライベートでほかの国の人と話をするが、多くの人がことしの開催にあまり賛成していない」と述べました。 そのうえで三木谷社長は、この夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催を目指す日本政府の方針について「正直なところ私は『自殺行為のようなもの』と呼んでいる」などと述べました。 ●孫会長も 東京五輪を「懸念」…日本の財界で高まる「中止」の声 5/15 日本では 新型コロナウイルス感染症の拡散が収まる兆候の見えない中、今年7月の東京オリンピック開催を「中止すべきだ」という経済人たちが増えている。 日本の大型電子商取引企業“楽天”の三木谷浩史 会長兼社長は去る14日、米CNNビジネスとのインタビューで「ワクチン接種が非常に遅い日本で、世界中から参加者が来る大規模国際イベントを開催するのは危険だ」として、オリンピック開催に反対の立場を示した。 三木谷会長は日本政府に対して、オリンピック開催は「自殺行為だ」という表現を使って 強く批判した。三木谷会長は「インドやブラジルを含め、多くの国は今も苦しんでいる状況だ。まだ祝う時期ではない」とし「日本政府を説得しようとしたが、これまで うまくいっていない」と吐露した。 日本政府による防疫政策に対しては「10点中2点」と評価した。 また ソフトバンクグループの孫正義会長は メディアとのインタビューで「オリンピック開催を、日本だけでなく他の国々も恐れている」と言及した。 さらに 東京オリンピックのスポンサーである“トヨタ”の永田准 執行役員も去る12日「現在 (日本の)保健状況をとりまき、国民の一部で出ている不満が、選手たちに向けられているという報道に、本当に心を痛めている」とし「スポンサーとして どうすればいいのか、思い悩んでいる」と語った。 財界だけでなく、一般世論もオリンピック開催に反対する方向へと傾いている。去る10日に発表された日本国内のある世論調査の結果によると、回答者の59%が「東京オリンピックを中止すべきだ」と答えている。 |
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●東京パラ100日 JPC会長 “中止の声ばかりニュースに 残念” 5/16 東京パラリンピック開幕の100日前に合わせてJPC=日本パラリンピック委員会の鳥原光憲会長はコメントを発表し「パラアスリートたちは『できない』と諦めるのではなく『どうすればできるか』を考え日々の生活やトレーニングで工夫と努力を重ねてきた。コロナ感染拡大で国民の間に『オリンピック・パラリンピックが楽しみ』という声が広がらないだけでなく、『大会を中止にすべきだ』という声ばかりがニュースになり、残念でならない」としています。 そのうえで「今大事なことは、関係団体が連携し、徹底したコロナ対策による安全・安心な大会の開催に全力を尽くしていることを国内外に分かりやすく繰り返し伝えることだ。同時に大会開催の意義や大会を招致した国・都市としての責任を訴え、誠心誠意、国民に協力をお願いすることが必要だと思う」としています。 そして「多様性を尊重する共生社会を育むまたとない機会となるパラリンピックの価値が収穫を目前にして失われることのないよう、国民の皆さんに温かいご支援をお願いしたい。これまで経験したことのない大会を成し遂げ、いかなる難局も乗り越える日本の力を世界に誇れるよう、パラアスリートたちとともにいっそう努力を続けたい」とコメントしています。 ●「中止表明」トレンドワードに 「小池知事が中止を言い出しかねない」憶測 5/16 新型コロナウイルス感染拡大により、東京オリンピック・パラリンピックの開催を危ぶむ声が巻き起こる中、ネット上ではついに「中止表明」のワードがトレンド入り。俄然、注目が集まるのが東京都・小池百合子知事の動向だ。 東京五輪開幕が2カ月余りに迫ったが、3度目の緊急事態宣言が発令されても、新型コロナウイルスの新規感染者は増加傾向のまま。変異株ウイルスが広まり、感染が減少に転じる要素がなかなか見当たらない。ネット上では小池百合子知事が「中止を言い出しかねない」との臆測も漏れるといった報道が拡散。「破壊大好きな小池百合子さんなら、五輪中止宣言をしたくてウズウズしてると思う」「世界の注目を一身に集めるチャンスですよ」「オリンピックの中止表明は、チキンレース状態な気が…IOCも、JOCも、都も、誰がどのタイミングで言うか?」など様々なコメントが書き込まれた。 ●五輪ボランティアを辞退 …コロナ禍での開催に疑問 5/16 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、東京オリンピックの開催に疑問の声が上がっています。札幌市でもマラソンや競歩が予定されていますが、開催することはできるのか。ボランティアの苦悩を追いました。5月5日に行われた、東京オリンピックマラソンのテスト大会。69人の選手が出場し、約770人のボランティアが大会を支えました。感染拡大防止のため、観戦の自粛も呼びかけられました。 運営スタッフ:「ここでの観戦は自粛をお願いしています」 この大会について、札幌市に寄せられた意見は約400件。そのほとんどが、コロナ禍で開催されたことに対する批判的な意見でした。 東京オリンピックのボランティア 松川七南花さん:「本当はボランティアをやりたかったのですけれど、辞退しようと考えています」 5月12日から緊急事態宣言の対象地域が6都府県に拡大。感染拡大が止まらない中、ボランティアを辞退する人も。果たしてオリンピックは開催できるのでしょうか? 感染拡大が止まらない中、マラソンや競歩の会場となる札幌市民の反応は複雑です。 札幌市民:「延期した方がいいのでは」 札幌市民:「やるしかない。開催してもらいたい」 札幌市民:「アスリートには気の毒だが、この状況で開催するのは考えられない」 5月5日に行われたマラソンのテスト大会では、感染対策として、紙コップの代わりにペットボトルが使われました。ボトルは手袋をはめて回収しました。 このようにして競技を支えたのが、ボランティアの存在です。本番のオリンピックのボランティアに不安が広がっています。 東京オリンピックのボランティア 松川 七南花さん:「本当はボランティアをやりたかったですけど、今の社会の状況を踏まえたら、やるべきではないと考え、辞退しようと考えています」 札幌市の大学生、松川七南花さんは高校3年の時に「フィールドキャスト」と呼ばれる競技運営に関わるボランティアに応募し、選ばれました。しかし、友人と話し合い、参加を見送ることにしました。東京オリンピックのボランティア 松川 七南花さん:「コロナ禍で医療が大変な中で、ボランティアに気軽に参加できないなという話をしていて、私もその通りだなと思っていました」 万が一、オリンピックで感染が拡大したら、医療現場に大きな負担をかけるという懸念と、自らも感染するかもしれないという不安から、ボランティアの辞退を決めたといいます。 松川さんのような「フィールドキャスト」は、全国で約8万人いましたが、そのうちの約1000人が辞退しています。 さらに、交通案内などを行うボランティアもいますが、そちらも辞退が相次いでいます。 札幌市スポーツ局 今野健一課長:「2020年の時点で登録者が529人。現時点で394人が引き続き登録していますので、辞退した人は135人です」 札幌市に登録したボランティアのうち、約4分の1が辞退したことになります。オリンピックの1年延期で都合がつかなくなったことや、新型コロナウイルスの感染拡大の影響とみられています。 活動への影響も懸念されます。 札幌市スポーツ局 今野健一課長:「無観客でやるのか、テストイベントのように観戦自粛をお願いした形でやるのか。方針が示されたら、都市ボランティアの活動の内容も、改めて考えなければならないと思う」 感染拡大の中、揺れるボランティア。オリンピックに向け課題が残ります。 ●小池都知事、開催方針を強調 東京パラ100日前式典で 5/16 8月24日の東京パラリンピック開幕まであと100日となった16日、東京都庁で記念式典が開かれ、小池百合子知事は「希望の明かりとなるように、安全安心な大会に向けて準備を進めていく」とあいさつした。新型コロナウイルス流行の収束が依然として見えない中、開催する方針を改めて強調した。 大会組織委員会の橋本聖子会長、丸川珠代五輪担当相らも出席。橋本会長は開催への決意を改めて述べた上で「どうかアスリートの皆さんを温かく見守り、応援をいただきたい」と呼び掛けた。日本パラリンピック委員会の鳥原光憲会長は「徹底したコロナ対策による安全安心な大会の開催に全力を尽くしていることを、国内外に分かりやすく、繰り返し伝えることが大事だ」と訴えた。 式典では、パラリンピックのシンボルマーク「スリーアギトス」のモニュメントが除幕され、都のパラ応援大使を務める歌舞伎俳優の市川海老蔵さんによる舞踊も披露された。 ●観客数、6月上旬にも判断を 五輪実現へ政府に要請 ―自民・下村氏 5/16 与野党の政策責任者は16日のNHK番組で、新型コロナウイルス感染拡大が続く中の東京五輪・パラリンピック開催をめぐり議論した。自民党の下村博文政調会長は7月に予定通り実現するため、政府や大会組織委員会などに対し、観客数の判断を6月上旬にも明らかにするよう求めた。 下村氏は、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が同月来日するとの見通しを示した上で、「その時までにどの程度なら観客を入れられるのかなどの整理を明示する必要がある」と強調。公明党の竹内譲政調会長は、開催中止を求める世論が増えていることを念頭に、「無観客だっていい。白旗を揚げるのは早過ぎる」と主張した。 これに対し、立憲民主党の泉健太政調会長は「医療の負担を増やさないために何ができるかが最優先だ」と述べ、中止や延期の検討を要求。共産党の田村智子政策委員長も「政府が(今夏の開催は)できないと判断すべきだ」と訴えた。 日本維新の会の浅田均政調会長は、大会組織委、東京都、IOCなどによる話し合いを要請。国民民主党の舟山康江政調会長は、開催の可否を判断する第三者機関の月内設置を提案した。 ●五輪、都庁に危機感 くすぶる小池氏「中止表明」説 5/16 東京五輪・パラリンピックの開催を危ぶむ声が都庁内で強まりつつある。五輪開幕が2カ月余りに迫る中、3度目の緊急事態宣言が発令されても、新型コロナウイルスの新規感染者は増加傾向のまま。変異ウイルスが広まり、感染が減少に転じる要素も見当たらない。小池百合子知事は「安心安全な大会開催に向け全力で尽くす」と繰り返すが、都幹部からは「知事なら中止を言い出しかねない」との臆測も漏れる。 「全然減ってないじゃない」。13日、都モニタリング会議の事前打ち合わせで、小池氏は右肩上がりのグラフを示す感染者推移にいら立ちを隠さなかった。前回の宣言が2カ月半続いたことから、今回は大型商業施設に休業要請するなど「短期集中」の態勢で臨んだはずだった。 しかし、感染は収まらず、宣言は5月末まで延長。都幹部は「連休の人出減少で辛うじて年末年始のような急増にはなってない」としつつ、「感染拡大が今後も続けば五輪は難しい」と認める。 そんな中、国会周辺でささやかれているのが、都議選(6月25日告示、7月4日投開票)に向け、小池氏が顧問を務める「都民ファーストの会」の公約で五輪中止を打ち出すとの観測だ。小池氏の国政復帰論も相まって、まことしやかに広まった。都民ファ幹部は「中止を公約にする話はない」と否定しつつ、「知事が決断すれば従わざるを得ない」と明かす。都議の一人も「知事の頭には『撤退戦』の想定もあるはずだ」とみる。 これに対し、当の小池氏は14日の定例会見で「政局絡みで語られるのはいかがと思う」と不快感をあらわにしてみせた。 ただ、開催是非の最終判断をすべき時期は近づいている。ある局長は「5月末までの宣言が再び延長されることになれば、開催は厳しくなる」との見方を示した上で、こう続けた。「世論や関係者の動向もつぶさに見続け、知事自身が決断するのだろう」。 |
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●「東京五輪の延期・中止」8割以上に ANN世論調査 5/17
東京オリンピック・パラリンピックを延期または中止した方が良いと考える人が8割以上に上ることがANNの世論調査で分かりました。調査は15日、16日に行いました。 東京オリンピック・パラリンピックについて、「7月開催で良い」と答えた人は15%にとどまり、「さらに延期した方が良い」「中止した方が良い」と答えた人が合わせて82%に上りました。 開催した場合、観客はどうすべきか尋ねたところ、「無観客」が半数を上回り、「人数を制限する」が続きました。 ワクチンの接種については、「すぐに受けたい」と答えた人がこれまでの調査で最高の51%に増えました。 また、菅内閣の支持率は35.6%だったのに対し、支持しない人は45.9%で、不支持率が政権発足以来、最も高くなりました。 ●ツイッター「東京五輪は中止します」「東京五輪の開催を支持します」を比較 5/17 新型コロナの影響で東京オリンピックの開催については議論が尽きない状況です。世論調査を見る限り開催に反対の人の方が多いわけですが、ツイッター上では意見が分断している様子が見て取れます。データを見る限りでは、基本的には政権不支持派(おおざっぱにはリベラル系)がオリンピック開催を強く反対しており、政権支持派(おおざっぱに保守系)がオリンピック開催に賛成しているというのがツイッター上での状況のようです。今回は、オリンピック反対派が利用しているハッシュタグ「東京五輪は中止します」とオリンピック開催支持派の「東京五輪の開催を支持します」を比較して、どの程度のツイートがあるのかを見てみましょう。「東京五輪は中止します」と「東京五輪の開催を支持します」それぞれについて、5月8日〜16日のデータを収集しました。 ●ツイート数分析 「東京五輪は中止します」については、85、115ツイートが存在し、そのうちリツイートが65、207ありました。ツイートに参加したアカウントは27、520です。「東京五輪の開催を支持します」については、64、526ツイートが存在し、そのうちリツイートが52、659ありました。ツイートに参加したアカウントは23、060です。「東京五輪は中止します」の方が若干多くツイートされていたようですが、ほぼ同じくらいといってよいのではないでしょうか。大規模炎上研究者的には「炎上というにはまだまだ小さいな」という感じです。 ●ツイートの時間変化 また、ツイートの時間変化を見ると下図のようになりました。これを見ると、どちらのハッシュタグも爆発的に拡散する時期があることが見て取れます。「東京五輪は中止します」は5月10日9時〜11日2時までの18時間に6万以上のツイートとリツイートが行われていました。ちなみに、それまでのツイートはゼロですので、一気に広まった様子が良くわかります。一方「東京五輪の開催を支持します」は5月9日以降、徐々に広がっていっていますが、5月15日12時〜23時までの間に3万5千以上のツイートが突然拡散しています。 ●バーストの要因ツイート どちらのハッシュタグもある瞬間から急激な増加をしているのが分かります。では、どのようなツイートが拡散の引き金になったのでしょうか。「東京五輪は中止します」は月10日9時までは全くハッシュタグが使われていなかったので、そのタイミングのツイートがバーストの原因だったといえそうです。ちなみに、そのツイートはこちら。政権不支持派(おおざっぱにはリベラル系)では大変有名なアカウントです。「東京五輪は中止します」を含むツイートでリツイート数が多いものの上位5件は当該アカウントによるものです。また、拡散の21%が当該アカウント発のものでしたので、ハッシュタグの拡散を「ツイッターデモ」と呼ぶのであれば、当該アカウントが「ツイッターデモ」を引き起こすのに果たした役割は極めて大きいといえるのではないでしょうか。次に、「東京五輪の開催を支持します」のバーストのタイミングについてみてみると、以下の二つのツイートがバーストを牽引していたようです。これら二つのアカウントは、やはりどちらも政権支持派(おおざっぱに保守系)では有名なアカウントです。拡散数上位15ツイートがこの二つのどちらかのアカウントから拡散されたものですので、その影響力が分かります。拡散された「東京五輪の開催を支持します」の49。8%がこの二つのアカウントによるツイートでした。なお、こちらで挙げた3つのアカウントが「東京五輪は中止します」と「東京五輪の開催を支持します」の全拡散の34。6%の発信源となっていることも特筆すべき点の一つです。以上より、どちらのハッシュタグも一部の党派性が強いアカウントの影響を強く受けていることが分かりました。 ●一部のアカウントによる拡散 次に、拡散したツイートがどのくらいのアカウントによって拡散されたのかを調べてみましょう。ここでは、50%のツイートを何パーセントのアカウントが広めたかによって「一部のアカウントが積極的に広めたのかどうか」を調べてみます。「東京五輪は中止します」については、拡散の50%は8。7%のアカウントによって行われていました。「東京五輪の開催を支持します」については、拡散の50%は15%のアカウントによって行われていました。ここから、どちらのハッシュタグも一部のアカウントによる拡散が多いのですが、このような傾向は一般的に発生しますので、特に珍しい現象とは言えません。ただし、「東京五輪は中止します」の8。7%によって半分というのはこれまでのデータから考えても一部のアカウントによる拡散が大きい方だとはいえるでしょう。なお、最大拡散数を見ても、「東京五輪の開催を支持します」を最も拡散したアカウントは128回拡散しており、「東京五輪は中止します」を最も拡散したアカウントは287回拡散していました。 ●党派性の強さ 「東京五輪は中止します」と「東京五輪の開催を支持します」それぞれについて党派性を見てみましょう。ただし、どちらのタグにも「タグ反対派」のツイートが存在しますので、クラスタリングをして最大のハッシュタグ支持系ツイートクラスタ(以下コアクラスタ)のツイートを拡散したアカウントの党派性のみ確認しました。党派性の確認にはこれまでに我々の研究グループが収集しラベリングした党派性アカウントデータを利用しています。その結果、「東京五輪は中止します」のコアクラスタを拡散したアカウントの58%が政権不支持派(おおざっぱにはリベラル系)のアカウントでした。ただし、政権不支持派アカウントの中で当該ハッシュタグを拡散したアカウントは2。7%です。「東京五輪の開催を支持します」のコアクラスタを拡散したアカウントの68%が政権支持派(おおざっぱに保守系)のアカウントによって行われていました。ただし、政権支持派アカウントの中で当該ハッシュタグを拡散したアカウントは1。9%です。この結果は、これまで行ってきたオリンピックに対するツイート内容分析の結果とも合致します。割合から見ると、「東京五輪は中止します」のタグの方が党派性の低いアカウントがコアクラスタ拡散していた可能性が高いと言えそうです。党派性が強いと判断されたアカウントを除くと、「東京五輪は中止します」のコアクラスタを拡散したアカウントは6393アカウント、「東京五輪の開催を支持します」のコアクラスタを拡散したアカウントは4404アカウントでした。それぞれのコアクラスタを拡散したアカウントだけを見ると党派性が確認できなかったアカウントの59%が「東京五輪は中止します」を拡散していたことになり、この結果は、オリンピック中止すべきだが59。7%という世論調査の結果とも合致していました。いや、さすがにこれはただの偶然だけど。 ●結論 オリンピックの是非を考える二つのハッシュタグのデータを分析し、その拡散力や党派性の強さを確認しました。データを見る限りハッシュタグを巡る動きには、どちらにも党派性が強く恣意性が存在することが示唆されました。やはり単にツイッターのトレンドに乗ったというだけでは一般的な社会の意見を反映しているとはいえなそうです。単に「こういうツイートが(何か理由があって)多い」くらいにとどめておいた方がよさそうです。党派性の強い話題については特に。さて、オリンピックの是非についてどちらが意見が多数派かについては、数的には世論調査と同じく中止の方が多いといって良さそうです。数が多いことが正しいこととは限りませんが、バイアスをできるだけ外した時に出てくる結果には一定の意味があるのではないでしょうか。なお、本記事を含め、これまでの記事で利用したデータはすべてツイッター社によって公開されているものです。 ●東京五輪・パラ 全国54自治体で事前合宿などの受け入れ中止 5/17 東京オリンピック・パラリンピックで予定されている海外選手の事前合宿や交流について、国内の感染拡大への懸念などから少なくとも全国の54の自治体で受け入れが中止されたことがわかりました。国によりますと、現時点で正式に受け入れの日程が決まった自治体はなく、専門家は中止の動きはさらに広がる可能性があると指摘しています。 ●感染対策が大きな負担に 東京オリンピック・パラリンピックでは、海外選手の事前合宿や交流を行うホストタウン事業に全国の528の自治体が登録し、そのほかにも事前合宿を個別に予定している自治体もあります。国の感染対策の指針では受け入れ側の自治体に対し、選手や自治体側の関係者を原則、毎日検査する体制を整えることや、移動にはチャーター機や貸し切りの新幹線を手配することなどを求めています。こうした中、NHKが全国の都道府県などに取材したところ、これまでに、事前合宿を中止した国や地域がある自治体は48、交流を中止した自治体は4などと、27の都道県の54の自治体が感染拡大の影響で受け入れを中止したことがわかりました。また、事前合宿の中止を打診され最終調整中が3自治体となっています。全体のうち、相手国側から中止の打診があったケースは8割余りで、それ以外は、自治体側から申し出たり両者で協議したりしたケースでした。具体的には、相手国側からは「日本で感染が収まらず移動にリスクがある」とか「選手やスタッフの安全を確保できない」といった理由のほか、「感染拡大で代表選考が遅れている」という理由もありました。一方、自治体側からは「国が求める水準の感染対策をとることが困難」とか、「練習場がワクチンの接種会場になり確保できなくなった」といった理由があげられていました。内閣官房によりますと、各自治体は国の指針にもとづき相手国側と協議を進めていますが、現時点で正式に受け入れの日程が決まったという自治体からの報告はないということで、専門家は中止の動きはさらに広がる可能性があると指摘しています。 ●ホストタウン制度とは 東京オリンピック・パラリンピックのホストタウンは海外から多くの選手や観客が来日すると見込んで、各地で事前合宿の受け入れや国際交流を行い地域活性化を図ろうと国が初めて設けた制度です。ホストタウンに登録した自治体は交流事業の費用の半分を国が補助するかわりに、交流で得られた効果を東京大会の遺産=レガシーにするために大会後も含めて交流を継続することが求められています。現在は全国の自治体のおよそ3割にあたる528の自治体が登録し、大会前の選手の事前合宿の受け入れや、選手と住民の交流を計画しています。しかし、去年12月に国が示した感染対策の指針では自治体に一定の受け入れ責任が生じると明記され、大会前の交流はオンラインで行うなど選手と直接接触しないよう求めました。また、変異したウイルスの流行を受けて先月、改定された指針では選手や選手と接触する可能性がある自治体側の関係者を原則として毎日検査することが新たに定められ、自治体は県などと連携して検査態勢を確保することが必要になりました。さらに空港や選手村から遠いホストタウンへの移動には、自治体の責任で通常の公共交通機関ではなくチャーター機や貸し切りの新幹線などを手配することを求めています。国は指針の中で「直接の交流ができない中でも、お互いを励まし合い、大会への機運を高めていく取り組みが重要だ」と説明していますが、自治体からは交流の制約が厳しく対策の負担も大きいと戸惑いの声もあがっていました。 ●中止の理由は これまでに海外選手の事前合宿などの受け入れを中止した自治体の8割余りが、相手の国や地域からの申し出によるもので、このうちロシアの体操チームは、新潟県加茂市でことし7月に事前合宿を行う予定でしたが、移動や宿泊の際の感染を懸念して、ぎりぎりまで国内で調整し直接東京に入ると、先月、市に連絡しています。また、世界的なトップ選手が所属するアメリカの陸上チームも千葉県の成田市、佐倉市、印西市で予定していた事前合宿を、選手の安全面への懸念から中止を決めています。今月5日には、ベトナムが、長崎県内の長崎市と諫早市、大村市、それに東京・国分寺市と北海道釧路市で予定していた事前合宿について、「世界的な感染状況を重く見て、合宿は行わない」などとして、自治体側に取りやめを連絡しています。一方、自治体の側から中止を申し出たケースとしては、福井県鯖江市が中国の体操チームを受け入れる予定でしたが、感染拡大が収束する見通しが立たないことから、「選手や関係者の安全確保に多くの課題がある」として受け入れは困難だと打診し、中国側も合意したということです。また、栃木県高根沢町はアフリカのレソト王国の陸上やボクシングなどの事前合宿を受け入れる予定でしたが、練習場となる体育館をワクチンの集団接種の会場に使用することなり、練習場が確保できないとして、受け入れを中止する意向を伝えたということです。このほか、埼玉県東松山市はキューバのテコンドーやレスリングチームが市内の大学の施設で練習などを予定していましたが、大学側から学生の支援を優先するため辞退したいと連絡があり、代替施設の調整がつかなかったため、今月12日に事前合宿の受け入れの中止を決めました。 ●受け入れ中止を決断した自治体 中米・ベリーズのホストタウン、千葉県横芝光町は、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中ワクチン接種との両立が難しい上選手の安全を確保できないなどとして事前合宿の受け入れ中止を決めました。千葉県北東部にある横芝光町は、成田空港に近いことから子どもたちの国際教育につなげようと、3年前、中米・ベリーズのホストタウンの登録を受け、これまで町内の学校に現地の打楽器の楽団を招いて演奏会を開くなど交流を深めてきました。大会期間中、陸上やカヌーの選手団10人程度を受け入れ宿泊場所や練習場を提供する予定でした。しかし準備にあたってきた町役場の担当職員4人のうち1人は、ワクチン接種の準備の担当にもなりその業務にほぼかかりきりとなった上、今月下旬から高齢者への集団接種が始まれば、さらに人手をさかれて受け入れ準備との両立が難しくなる見通しとなりました。また、国の指針に沿ってコロナの感染拡大を踏まえた受け入れ計画を作成する中で町内に唯一ある病院でもコロナの患者は受け入れていないため万が一、選手が感染したりけがをしたりした場合に安全を確保できるかや、専用車両の運転手など選手団に接触する関係者にどれほどの行動管理を求めればいいのかなど、次々に不安な点が明らかになっていきました。そしてベリーズ側とも協議を重ねた上、先月28日、事前合宿と大会後の交流事業の中止を決断しました。この決断について、佐藤晴彦町長は、「コロナ対策のハードルが非常に高く、直接選手村に入ってもらったほうが選手にとってもいいし、町にとってもそこにかけるエネルギーははかりしれない。ワクチン接種という一大事業を最優先で進めながら、事前合宿を受け入れるのは極めて困難だった」と話しています。一方で、町は交流は途絶えさせたくないとしていて、17日も青年海外協力隊員としてベリーズで活動した経験がある町の職員が町内の高校に出向き、新入生を対象にベリーズについて学ぶ授業を行いました。生徒は、「ベリーズのことを学び、身近に感じることができたのでオリンピックでは日本と同じくらいベリーズを応援したいです」と話していました。町では、子どもたちから選手団に向けた応援動画を贈ることを計画しています。 ●専門家「選手の調整に大きな差が生じる」 スポーツ社会学が専門で東京女子体育大学の笹生心太准教授は、事前合宿の相次ぐ中止は国際交流という大会の意義が薄れるだけでなく、大会に向けた選手の調整に大きな差が生じるため競技の平等性でも問題があると指摘しています。笹生准教授はNHKの調査結果について「相手が中止したいといってきたケースが多く、受け入れる日本側の医療体制がしっかりしないと事前合宿もオリンピックも十分な形で開けないと感じた」と指摘しました。また、自治体側が中止を決めたケースを踏まえ、「自治体は地域の医療体制がひっ迫して手が回らない。万が一感染している人が事前合宿に関わり、相手に感染させてしまったら取り返しがつかないと懸念する自治体も多いのではないか」と分析しました。そして世界のトップ選手が所属するアメリカの陸上チームが千葉県内で予定していた事前合宿の中止を決めたことなどで今後も中止の動きが広がる可能性があると指摘し、「事前合宿がすべて中止され海外の選手団が選手村に直行して自国に直帰するぐらいでないと大会は開催できないのではないか」という見方を示しました。事前合宿の中止が大会に与える影響については「オリンピックの基本理念は国際交流を通じて世界平和に貢献することで、ホストタウンはいちばん、真ん中の事業だった。コロナ禍が起きたせいで直接の交流ができなくなったのは、かなりのマイナスだ」として大会の意義が薄れることへの懸念を示しました。さらに競技に対しても「大会前の調整は選手にとって大きなインパクトがあり、それがダメになるなら不利が大きすぎる。日本に近く時差の少ない国が有利になることが起きうるので競技の平等性に問題が生じる。世界最高の競技を見せることができないと思われて、大会への期待感がさらにしぼむ事態も十分ありうる」と指摘しています。 ●「子連れOKじゃないと東京五輪に出場できない」 海外ママ選手たち 5/17 東京五輪に乳幼児や子どもを連れて来られないことにより、大会出場をためらう海外アスリートたちがいる。新型コロナの収束が見込めないなか、日本政府などは3月、海外からの一般観客の受け入れを断念。それに伴い、アスリートの子どもや家族も東京に同行できないことになったからだ。わが子をとるか、五輪を取るか――その狭間に立たされるママアスリートたちの心境は複雑だ。 サッカー女子アメリカ代表であるアレックス・モーガン選手(31)は、昨年5月に娘チャーリーちゃんを出産。9月にはイングランドのトッテナムに加入し、オランダやフランスへの遠征にもチャーリーちゃんを同伴していたという。12月にはトッテナムを脱退してアメリカに帰国。東京五輪にチャーリーを連れてくることができない状況について、4月、現地メディアにこう打ち明けていた。 「母親が競技中に子どもと一緒にいられる選択肢を持つことは大切なこと。幸運なことに、これまで私はチャーリーを連れてどのキャンプにも、試合にも一緒にいることができていた。母親として(子どもに)支えられていると感じることは重要。東京五輪に向け、また五輪の場でもこの思いを持ち続けたい」(米USAトゥデイ・ウェブサイトから) マラソンのアメリカ代表、アリフィン・トゥリアムク選手(32)には、今年1月に生まれたばかりの第一子となる娘ゾーイちゃんがおり、「娘と離れることを想像できない」とし、「これまでになく課題の多い五輪だが、母親や家族、子どもが必要とする配慮と支援がなされることを願う」と話している(米NBCスポーツ・ウェブサイトから)。 陸上女子で歴代単独最多6個の五輪金メダル、3個の銀メダルを保持するアリソン・フェリックス選手(35)は、2歳の娘カムリンちゃんがいる。「娘が1歳になる前に競技に挑んだ時、母親は子どものそばにいる必要があると感じた。こうした母親は考慮されるべき」と公の場でコメントした。さらに女子テニスのセリーナ・ウィリアムズ選手(39)は、3歳の娘オリンピアちゃんと「24時間以上離れたことがない。それが答えだ」として、東京五輪の出場辞退を示唆するコメントを5月10日の会見で述べている。 こうした状況を、小さな子どもを育てる日本の女性アスリートはどう見るのだろうか。陸上女子100メートル障害日本記録保持者で、元7人制ラグビーの選手でもある寺田明日香選手(31)に話を聞いた。寺田選手は現在、6歳の娘・果緒ちゃんを育てながら競技を続けている。 「サッカーのモーガン選手のように遠征に子どもを帯同させるには、ベビーシッターや宿泊所の手配など、チームの理解を得ることが必要です。それが許されていること自体、日本ではほぼ考えられないことです。私の場合は、そもそも合宿などに子どもを連れて行くという選択肢すらありませんでした」 ラグビーで競技に復帰したのは果緒ちゃんが2歳半のとき。合宿中は家族に預けていた。ベビーシッターをつける支援制度が設けられたこともあったが、一度も利用したことはなかったそうだ。 東京五輪で女性アスリートたちから声が上がっていることについては、こう語る。 「世界的に男女平等と女性活躍が謳われているなか、特に日本は後進国。アスリートの世界でもかなり遅れをとっています。東京五輪は史上初のジェンダー・バランスの取れたオリンピックであることを宣言しています。まだ授乳期間中であれば子どもにも影響しますから、女性アスリートが自ら辞退を申し出なければならないような事態になっていることに、モヤモヤとした思いがあります。授乳中のママということが理由で出場を断念することがないようにするべきです。どこで線引きをするかは難しいですが、連れてこなければならないほどの小さな子どもがいる選手は、それほど多くないはず。そこに対応できないということは、日本の力不足を見せてしまうことになるかと思います」(寺田選手) 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長は、国際女性デーの3月8日、東京五輪の公式ホームページで次のようにこう語っている。 <(最も影響を受けた女性アスリートは)旧東ドイツのクリスタ・ルーディング・ロテンブルガーさんです。スピードスケートと自転車、それぞれの競技においてオリンピックでメダルを獲得され、トップアスリートとしても活躍する一方、ドレスデン市議会議員を務め、大学にも通って勉強をされていました。結婚・出産後にカムバックしてメダルを獲得するなど、「こんな人がいるのか」と大変影響を受けた方です。ロテンブルガーさんの生き方を見て、私も自転車に挑戦し、そして政治の道に進む原点にもなりました> <世界は今、東京2020大会に注目しています。これを1つのチャンスと捉え、組織委員会から「ジェンダー平等」や「多様性と調和」について具体的に発信していくことが、日本の社会を変えていくことにつながるのではないか。東京2020大会を通じて、社会の意識改革を目指していきたいと思います> 丸川珠代五輪相もこんなメッセージを発信している。 <東京2020大会を、世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会をはぐくむ契機となるような大会とするべく、日本国政府は、IOC、IPC、東京都及び大会組織委員会とともに、東京大会を史上最高のジェンダー平等の大会とすること、スポーツ界における女性の参画を推進すること、コロナ禍において大きな影響を受けた女性への支援を行うことに、全力で取り組んでいきます> 「多様性と調和」を掲げる東京五輪で、女性アスリートが出場か家族かを選択しなければならない状況にあることを、大会組織委員会はどう受け止めているのか。AERA dot.の質問に対し、以下のように回答した。 「子どもを持つ多くの女性アスリートがオリンピックを含む高いレベルでの競技を続行していることは素晴らしいこと。他方、東京大会は、コロナ禍での大会ということもあり、国際オリンピック委員会(IOC)との協議の結果、アスリートの家族等同伴者の参加は断念せざるを得ないということになっています。ただ、特に幼いお子様については特別の事情もあることから、どのように対応するのか、引き続き関係者のご意見等をお聞きしながら、国際オリンピック委員会(IOC)・国際パラリンピック委員会(IPC)と相談していきたい」 感染対策とのバランスを問われるなかで、アスリートの声にどう対応するのか。橋本会長の目指す「意識改革」が試されている。 ●「東京オリンピック」 自ら中止にすることさえ出来ない日本 5/17 ついに2か月先に迫った東京オリンピック開幕。しかし、今の雰囲気はお祭りではない“災難”になるという憂慮が高まっている。 日本では一部地域の緊急事態宣言発令後も連日6000人台の新型コロナの新規感染者が発生している。日本政府は新型コロナの拡散を防ぐため、東京などに発令した緊急事態宣言の期限を今月末まで延長するなど、対策の水位を高めている。それにもかかわらず、新規感染者はなかなか減らず、むしろ増える傾向を見せている。 状況が悪化し続けていることで、日本国内でも東京オリンピック開催反対の声がますます高まっている。そのうえ、オリンピックに協力的だった日本企業からさえ公開的に反対の声が出ている状況だ。 日本の電子商取引大手・楽天の三木谷浩史社長は13日(現地時間)、米CNNとのインタビューで、東京オリンピック開催を強行する日本政府に対して“自殺行為”と強く批判した。 三木谷社長は「日本はワクチン接種が非常に遅れているだけに、世界中から人が集まる国際的ないベントを開催するのは危険だ。リスクが大きすぎる」とし、「(オリンピック開催は)正直言って自殺行為のようだと考え、中止しなければならない」と主張した。 在日韓国人でソフトバンク社長の孫正義社長もCNBCに出演して「日本だけでなく、多くの国々がオリンピックを開催することを非常に恐れている」とし、「重大で厳しい状況にある。アスリートの派遣をどのようにサポートできるのか分からない」と述べた。 さらに、オリンピック公式スポンサーも心配を隠せずにいる。東京オリンピックのスポンサー企業である日本の自動車メーカー・トヨタ自動車の長田准執行役員は「国民の一部の方の不満がアスリートの皆さんに向けられている状況については、スポンサーとして本当に心を痛めている」と遠まわしに批判した。 日本が誇るスポーツスターらからも批判の声が出ている。女子テニスの金メダル候補として注目されている女子テニス世界ランキング2位の大坂なおみ選手は「オリンピックは私がずっと待っていた大会」とし「(ホスト国の)人々を危険な目に遭わせ、不都合を招く可能性があるのなら、いまこそ議論すべき時だと思う」と話した。 日本男子テニスの看板スターである錦織圭選手も「オリンピックは100人程度が出場するテニス大会とは違う」とし、「組織委員会が外部と遮断する方法を模索するとしているが、選手村には1万人以上の選手が集まるため容易ではない」と指摘した。 日本政府と国際オリンピック委員会(IOC)は依然として「オリンピックは問題なく開催する」という立場を固守している。菅首相は14日の記者会見で「国民の生命と健康を守り、安全で安心できるオリンピックを実現することが可能だ」と述べ「確実に準備していく」と明らかにした。 IOCのジョン・コーツ副委員長も今月8日、オーストラリア・シドニーで開かれた年次総会で「東京オリンピックを取り消したり延期する計画はない」と一線を画した。 実際に日本政府は新型コロナの状況が深刻であるにもかかわらず、オリンピック中止の決断を自ら下すことができない。オリンピックを中止にする権限が開催都市ではなく、IOCにあるからだ。 英国BBCは15日、ホームページに掲載された記事を通して「開催都市と契約書によると、戦争や市民の騒乱のような場合を除いて“IOCが参加者の安全が深く脅かされたり、危険にさらされたりすると判断された時”に限る」と伝えた。新型コロナの流行が参加者の安全を深く脅かすことになるか判断するのがIOCの固有の権限ということだ。 国際スポーツ弁護士のアレクサンダー・ミゲル氏はBBCとのインタビューで「IOCがオリンピックの取り消しを決定しなければならないが、IOCはオリンピックを強行しようとするようだ」と予想した。 最も現実的な方法はIOCと日本が共同で大会を取り消すことだ。しかしこの場合、契約違反などで莫大な金額の保険金や賠償金を支払わなければならない。 オーストラリア・メルボルン大学のジャック・アンダーソン教授は「日本は自ら取り消しを決定することが難しい」とし、「オリンピック組織委員会が莫大な損失を甘受しなければならないため」と指摘した。 BBCによると、日本は以前から東京オリンピックを長期景気低迷や福島原発事故などの試練に打ち勝った“日本復興”の象徴的な行事として大切にしてきた。しかし、そのようなイメージメイキングが今は自ら足を引っ張る形になっている。 2022年2月に予定されている北京冬季オリンピックもオリンピックを諦めきれない要因となっている。アジア地域のライバルである中国が正常にオリンピックを準備している状況で、自国でのオリンピックを中止するわけにはいかないというのが日本の悩みだ。 BBCは「逆風が激しくなっているが、IOCは大会中止を考慮さえしていない」とし、「オリンピックが7月23日にどんな形であれ開幕するとみている人が多い」と懸念を伝えた。 ●五輪・パラ事前合宿受け入れ中止 関東では14の自治体に 5/17 東京オリンピック・パラリンピックで予定されている海外選手の事前合宿について、関東地方の1都6県では、国内の感染拡大への懸念などから14の自治体で受け入れが中止されたことがわかりました。 国によりますと、現時点で正式に受け入れの日程が決まった自治体はなく、専門家は中止の動きはさらに広がる可能性があると指摘しています。 東京オリンピック・パラリンピックでは、海外選手の事前合宿や交流を行うホストタウン事業に全国の528の自治体が登録し、そのほかにも事前合宿を個別に予定している自治体もあります。国の感染対策の指針では受け入れ側の自治体に対し、選手や自治体側の関係者を原則、毎日検査する体制を整えることや、移動にはチャーター機や貸し切りの新幹線を手配することなどを求めています。 こうした中、NHKが関東の1都6県に取材したところ、事前合宿を中止した国や地域がある自治体は、千葉県の6つの市と町、栃木県と埼玉県のそれぞれ3つの市と町、東京都の2つの市で、あわせて14自治体となっています。このほか、茨城県の2つの市と町では事前合宿の中止を打診され最終調整中だということです。全体としては、相手国側から感染拡大が収束しない中、選手の安全面が懸念されるなどとして中止の打診があったケースが多く13自治体、自治体側からは、医療体制や練習場の課題などから中止を申し出たケースも3自治体ありました。内閣官房によりますと、各自治体は国の指針にもとづき相手国側と協議を進めていますが、現時点で正式に受け入れの日程が決まったという自治体からの報告はなく、専門家は中止の動きはさらに広がる可能性があると指摘しています。 スポーツ社会学が専門で東京女子体育大学の笹生心太准教授は、事前合宿の相次ぐ中止は国際交流という大会の意義が薄れるだけでなく、大会に向けた選手の調整に大きな差が生じるため、競技の平等性でも問題があると指摘しています。笹生准教授はNHKの調査結果について「相手が中止したいといってきたケースが多く、受け入れる日本側の医療体制がしっかりしないと事前合宿もオリンピックも十分な形で開けないと感じた」と指摘しました。また、自治体側が中止を決めたケースを踏まえ、「自治体は地域の医療体制がひっ迫して手が回らない。万が一感染している人が事前合宿に関わり、相手に感染させてしまったら取り返しがつかないと懸念する自治体も多いのではないか」と分析しました。そして世界のトップ選手が所属するアメリカの陸上チームが千葉県内で予定していた事前合宿の中止を決めたことなどで、今後も中止の動きが広がる可能性があると指摘し、「事前合宿が全て中止され海外の選手団が選手村に直行して自国に直帰するぐらいでないと大会は開催できないのではないか」という見方を示しました。事前合宿の中止が大会に与える影響については「オリンピックの基本理念は国際交流を通じて世界平和に貢献することで、ホストタウンは一番、真ん中の事業だった。コロナ禍が起きたせいで直接の交流ができなくなったのは、かなりのマイナスだ」として大会の意義が薄れることへの懸念を示しました。さらに競技に対しても「大会前の調整は選手にとって大きなインパクトがあり、それがダメになるなら不利が大きすぎる。日本に近く時差の少ない国が有利になることが起きうるので競技の平等性に問題が生じる。世界最高の競技を見せることができないと思われて、大会への期待感がさらにしぼむ事態も十分ありうる」と指摘しています。 ●「五輪で得られるお金より、人々の健康のほうが重要だ」 5/17 米公共ラジオ局「NPR」のウェブサイトは5月14日、「東京五輪への反対運動が、新型コロナウイルス感染拡大の最中で白熱している」と題した記事を掲載。 日本国内で、看護師から出版社までが組織的に反対の声明を出していることに注目。そして記事内では、オリンピックの歴史を専門とする元アスリートが“気になる傾向”を明かす。 「NPR」に掲載された記事では、東京オリンピックまで残り70日を切ったいま、開催中止を求める運動がより組織的かつ激しいものになっていることを報じている。 そのなかで日本政府は、「あくまでオリンピックが予定通り行われることに固執して」おり、そのための安全策を講じることを約束していることも書かれている。 しかし、地方自治体や医療機関を中心に、オリンピックのためだけに希少な医療資源を提供することを拒否する声を紹介。「NPR」が取り上げた日本で起きている「反対の動き」をまとめると、下記の通りだ。 ・千葉県の熊谷俊人知事の発言「少なくとも、千葉県がオリンピック関係者のために、県民が使えない形で、貴重な県内のコロナ用の病床を確保したり、占有するということは考えていない」 ・約40もの市町村がオリンピック参加選手を受け入れるプログラムから脱退(日本経済新聞の報道を引用) ・130人の医師を代表する労働組合による中止を求める書面提出や、9日間で約35万人のオンライン署名を集めたオリンピック組織委員会への嘆願書 また、同メディアは日本政府が日本看護協会に「500人の看護師派遣」を要請したことを受け、ツイッター上などで大規模な反対運動が起こっていることも取り上げた。 そのほか、宝島社の意見広告も記事内で紹介されている。第二次世界大戦時に米軍と戦うべく竹槍や薙刀の訓練をさせられた子供たちの写真が載った同広告を、「NPR」は、日本人にとって「罪のない命を犠牲にする無慈悲な政府を連想させるもの」だと評した。 同記事では、元プロサッカー選手で現在はオリンピック史の研究家であるジュール・ボイコフ(オレゴン・パシフィック大学)のコメントを紹介している。 「歴史的に、国際オリンピック委員会(IOC)は世論に影響されてきたことはありませんでした。彼らは世論に左右されないのです」 同氏は、IOCの収益の性質についても言及。彼らの収益の90%は放映権であるため、仮に今回の五輪がテレビだけで観戦されることになっても、収益は守られると指摘する。 ボイコフはオリンピックを強行しても、「多くの人にとってオリンピックを特別な存在にしている文化的、人的交流のない比較的つまらないイベントになってしまう」とし、一方で、大会を中止すれば「公衆衛生等がスポーツのイベントよりも重要であることを人々に思い出させることができる」と指摘する。 そして記事の最後は「公衆衛生はスポーツより重要です」「オリンピックで得られるお金より重要なのです」という同氏の強いコメントで締め括っている。 ●「東京五輪の延期・中止」8割以上に ANN世論調査 5/17 東京オリンピック・パラリンピックを延期または中止した方が良いと考える人が8割以上に上ることがANNの世論調査で分かりました。 調査は15日、16日に行いました。 東京オリンピック・パラリンピックについて、「7月開催で良い」と答えた人は15%にとどまり、「さらに延期した方が良い」「中止した方が良い」と答えた人が合わせて82%に上りました。 開催した場合、観客はどうすべきか尋ねたところ、「無観客」が半数を上回り、「人数を制限する」が続きました。 ワクチンの接種については、「すぐに受けたい」と答えた人がこれまでの調査で最高の51%に増えました。 また、菅内閣の支持率は35.6%だったのに対し、支持しない人は45.9%で、不支持率が政権発足以来、最も高くなりました。 ●東京五輪の前にやるべきことがある 5/17 あらゆる医療資源を投入して、コロナワクチン接種を1日も早く進める必要がある──。全国医師ユニオン(勤務医会員約130人)の代表を務める植山直人氏は2021年5月13日、厚生労働省で記者会見を行い、東京オリンピックの開催中止を求める声明を発表した。 「東京五輪の選手・関係者には申し訳ないことだが、医療関係者から中止を求める声をあげることが大事と考えた」。こう話す植山氏は、東京オリンピック・パラリンピック中止を求める理由として、コロナワクチン接種が進んでいない日本の現状を挙げた。「一般国民の新型コロナワクチン接種が完了するのは来春との声もある。コロナの第5波、6波による被害を想定するなら、あらゆる医療資源を投入して、コロナワクチン接種を1日も早く進める必要がある」。 声明では、変異株の脅威を強調。たとえ無観客開催となったとしても、選手やコーチ、大会運営者や報道関係者ら数万人が日本を訪れることから、「全世界からあらゆるコロナ変異株が東京に集まる危険性がある」と指摘。「世界中の人々が新型コロナウイルスと闘っている最中に、新たな変異株を生む危険がある東京五輪を開催することに強く反対する」と訴えた。 また、OECD加盟国の人口10万人当たりの医学部卒業生数が平均13.1人であるのに対し、日本は6.8人と最低クラスにあることを紹介(OECDインディケータ2019年版)。こうした「絶対的な医師不足」が、日本の勤務医の約4割が過労死ライン(病気や死亡に至るリスクが高まる時間外労働時間の目安)を超えて働き、約1割の勤務時間は過労死ラインの2倍に達するという現実を招いたと指摘。「日本の脆弱な医療体制を生んでいるばかりか、ワクチン接種が進まない一因にもなっている」(植山氏)とした。 その上で、「いま医療関係者に要請すべきは、医療体制の確保とワクチン接種への協力であり、スポーツ大会への協力ではない」と強調した。なお、全国医師ユニオンは今回の声明文を、5月13日付で厚生労働省大臣官房に提出し、内閣総理大臣宛で内閣府に郵送している。 |
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●「手いっぱい」 都内のかかりつけ医団体、五輪反対表明 5/18
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、東京都内のかかりつけ医ら約6千人でつくる東京保険医協会は、「医療機関はすでに手いっぱい」だとして、菅義偉首相らに東京五輪・パラリンピックの開催中止を求める意見書を送った。 意見書では、現在の「第4波」によって、各医療機関が感染対策を講じながら日々の診察にあたらざるを得ないため、「余裕をもてない困難に向き合っている」と分析する。 さらに、五輪開催予定の7月になると、猛暑日が増えて熱中症患者が多数発生し、医療機関はコロナ感染との見分けがつくまで「一人一人を隔離して診察する必要がある」という。 現時点で医師、看護師はすでに疲弊し、大会への協力を求められたとしても、「施設にも人材にも全く余裕がありません」と主張している。 そして、「私たちは、感染者数や死亡者数が増加する可能性のあるイベントは、中止することが正しい選択であると思料します」としている。 東京保険医協会事務局は取材に対し、「医療現場では、このまま開催すれば国民の命と健康を守ることができないという危機感が強まっており、意見書の提出に至った」と説明する。 大会組織委員会が、選手らの入院先となる指定病院を計30カ所確保することについても、同事務局は疑問を投げかける。「組織委は多くの熱中症患者の発生など『最悪の想定』を公表していないため、30カ所で足りるのか不明だ。指定病院は総合病院ばかりで、病床が逼迫(ひっぱく)すれば、かかりつけ医から患者を紹介できなくなる恐れもある」 意見書は14日付。菅首相、丸川珠代五輪相、小池百合子都知事、橋本聖子組織委会長に送ったという。 ●東京五輪開催「反対」67% 5/18 3回目の緊急事態宣言が東京都、京都府、大阪府、兵庫県、愛知県、福岡県、北海道、岡山県、広島県に発令されている中、Japan In-depthでは、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催について緊急アンケートを実施した。 アンケートは5月8日から開始、18日までの10日で197名から回答を得た。 結果は、「反対」66.5%、「賛成」30.5%、「わからない」3%だった。 ●賛成の理由 設問2で、「賛成」と答えた方に理由を聞いたところ、「平和の祭典として」を選んだ人が24.3%、菅首相が施政方針演説で表明した「人類がウイルスに勝った証として」(施政方針演説では「新型コロナウイルスに打ち勝った証」)を選んだ人が23%、「景気浮揚のため」が8.1%で、44.6%は「その他」とした。 「その他」とした人に、「賛成の理由」を聞いた。以下、主なものを紹介する。 ・リスクを承知で誘致した責任を成し遂げる。中止は五輪の存続の断念に繋がる。ワールドカップや冬季五輪はシュミレーションしている。 ・選手の努力を達成させてあげたいので。 ・アスリートの応援 ・中止にしても五輪の為のリソースが上手くコロナ対応に振り向けられるとは考えられず、医療体制も構造的な問題なので好転は望めない。社会の空気が落ち込むだけであまり良い効果はない。 ・コロナ禍で全てが停滞ムードでオリンピックを開催し成功させる事が一つ光になり得るのでは。 ・大々的にではなく、こじんまりと密かやかにやればいいと思う ・アスリートに対し万全の感染対策を実施した上でなら開催しても良いと思う。 ・五輪に人生を捧げてきた選手の方たちの事を思うと…。 ・やらない事自体、単なるクソ野党(原文ママ)の政局だから。 ・開催そのものは我が国の国際公約。これ以上の延期はできない。無観客で実施を。 ・反対意見論者には政治的意図を感じる。反日グループの糸引きも濃厚だ。オリンピックの政治利用は断じて拒否したい!単なる平和の祭典でないことはすでに全世界で共通の認識を持たれているから尚、強く開催への意思を示す場であって欲しい。このオリンピックに人生を賭けて望む人たちの希望を砕かないためにも、開催を後押ししたい。 ・中止にするのは簡単ですが、IOCに出す違約金はどこから払うのか? ・2020年以降で、大規模な国際イベントが行われる最初の開催地が北京であることを望まない層は多いと考えるため。 ・ウイルス禍の世界の人々に希望と勇気感動を与えるのことになる。 ・アスリート達の為に。 ・そもそも感染流行なぞしていない、現に超過死亡数はマイナスですから実施する事で前を向き、改善を牽引。止まってはいけない。 ・スポーツの祭典であり、政治的に利用されるべきでない。 ・ワクチン輸入が滞ると思います。 ・左翼が中止に追い込み政権打倒の具としようとしている ・選手と未来を創る若者達の為。 ●反対の理由 一方、反対の理由は、「新型コロナ感染症が拡大する可能性があるから」が71.7%、「オリンピックそのものにもともと反対だから」が11%、「オリンピックにかかる費用は無駄だから」9.4%、「その他」7.9%だった。 「その他」とした人に「反対の理由」を聞いたところ、以下の回答を得た。 ・医療体制がひっ迫しているのにも関わらず、オリンピックだから、という理由で更に医療従事者へ負担をかける理由が分からない ・東アジアにおける都市間競争において東京という都市のプレゼンスを高めることや、文化的なレガシーが残ることには期待しています。しかし、どう考えてもリソースが足りないため開催しないほうがいいという立場です。可能ならもう1年延期でもいいと思います。 ・五輪ホスト国としての気運の高まりを感じない。本来、大会開催に向け、さまざまな分野の人たちが、成功に向け力を注ぐものだと思う。行政だけで作れるものではない。国民の多くが五輪を望んでいない。盛り上がらないと思う。 ・コンセプト作りが下手 ・自国民を守るよりオリンピック開催を最優先としているから。 ・現状のオリンピックは企業の利益を優先するものに変わったため ・緊急事態延長との矛盾、PCR検査への疑問 ・答えは一つじゃない、コロナも費用の無駄もオリンピックの意義も、今の日本には必要無い ・政府は新型コロナウイルス対策に全力で取り組む必要があるから。 ・日本国内のワクチン接種率が低すぎる。そうでなくとも医療機関がひっ迫しており、適切な医療措置を受けられずに自宅待機の陽性者が多い中、オリンピックの為に看護師500人必要だなんて…あり得ないと思う。 ・利権まみれで利権まみれで利権まみれだから。(原文ママ)特定の人間が儲けて、まだやってもないのに莫大な報酬もらってる関係者いるのに医者やガイドはボランティアってふざけてんのか? ●代替案 「反対」と答えた人に「代替案」を聞いた。「政府がオリンピック開催中止をIOCに申し入れる」が48.8%、「新型コロナ感染症拡大が落ち着くまで延期をIOCに申し入れる」が26%、「東京都が政府にオリンピック開催中止を申し入れる」が19.5%、「日本国民の過半数がワクチンを接種するまで延期をIOCに申し入れる」が4.1%、「その他」が1.6%だった。 ただ、オリンピックの「開催都市契約」の当時者はあくまでIOCと東京都なので、政府がIOCに中止を申し入れる権限はない、との指摘があった。筆者の問いの設定が不適切だった点、お詫びする。 契約上は確かにそうだが、政府は「東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣」を置いている。また、国の財政負担も巨額に上る。開催中止を申し出る主体は契約当事者の東京都なのかもしれないが、政府との協議なしに決められものでもないだろう。 緊急事態宣言の解除が見通せず、かつ、高齢者のワクチン接種も始まったばかり、という現在、「反対」の声が多いのはやむを得ないと思う。 おりしも東京、大阪の高齢者を対象にした政府の大規模接種センターでの予約が17日から始まった。菅首相が言うように7月末までに高齢者へのワクチン接種が完了するかどうか、政府も東京都も「東京オリンピック・パラリンピック組織委員会」も固唾をのんで見守っているだろう。 しかし、オリンピックが始まる7月22日時点で、64才以下の国民の多くはワクチンを打てていない事が想定される。また、海外から来る選手約1万5千人やオリンピック関係者ら約9万人と日本の一般市民との接触だが、政府は隔離して一切交わることはない、と言っている。しかし、そんなことが実際可能なのだろうか。結局、国民が「感染拡大の可能性」や「医療への負荷の大きさ」がどの程度なのかわからない状況が続く限り、今回のアンケート結果が今後大きく変わるとは思えないのだが。 ●「日本政府が五輪中止を決める最大の要因は政治的計算だ」 5/18 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長の出身地ドイツでも、東京オリンピックに関する報道がなされている。特に、独紙「南ドイツ新聞」は東京オリンピックに関して、開催に批判的な記事を継続的に掲載してきた。複数紙のオピニオンの内容をご紹介しよう。 独紙「フランクフルター・アルゲマイネ」のパトリック・ヴェルター東京特派員は、このままオリンピックを実行してもオリンピックに対する熱狂は生まれず、菅政権の政治リスクになるだけだろうと述べる。 「観客のいないオリンピックのスタジアムで、アスリートが勝利を目指してテスト競技を戦っても、同時に病院は満床で、大勢の患者が死と闘っているという状況では、オリンピックも盛り上がりようがない」と手厳しい。 一方、「IOCや日本政府の意識は、オリンピックをキャンセルするという決断からは遠のいている」と指摘する。先日開催された国立競技場での陸上テスト大会においても、外国人選手も含めてコロナ感染が発生することなく実行された。 このような実験を重ねるごとに、「安全な大会運営は可能だ」という確信が主催者の間では高まっている。世界保健機関(WHO)も、「国内観客の入場制限の判断がなされていないにもかかわらず」、東京オリンピックのコロナ対策を評価している。 しかし、オリンピックに対する国民の懸念は強まる一方だ。65歳以下の日本人に対しては、開催前にワクチンの接種を受ける機会もないことから、「オリンピックは国民や医療機関への脅威とみなす」のは当然だ。「破滅に向かっているのに誰も止めなかった日本の第二次世界大戦末期の状況と、オリンピックを重ねて皮肉る人々もいる」と同紙は書く。 さらに「日本政府が急ブレーキを引くかどうかを決める最大の要因はコロナの状況ではなく政治的計算だ」と指摘。「現在のところ、菅義偉首相は、オリンピックを成功させられれば10月前後に予定される総選挙で自民党に有利になると考えている」。しかし、開催が政治的なリスクになると判断した場合、「オリンピックを中止することで政治的な支持を得る」ことはありえると述べる。 実際、NHKの最近の世論調査では、内閣への支持率は、過去最低の35%にまで落ち込んでいることを挙げ、政治リスクが高まっていることを指摘した。 独紙「南ドイツ新聞」のトマス・ハン東京特派員は、日本政府や国際オリンピック委員会(IOC)はオリンピックに関するリスクを公正に判断できないからこそ、WHOや他の政府、スポーツ協会など他の関連組織が積極的に行動して、事態に対応していかなくてはいけないと主張する。 「東京オリンピックは、将来、あまり賢くないスポーツマーケティングの専門家から、見習うべきスポーツイベントの例として振り返られるだろう」と記す。 「(トーマス・バッハや橋本聖子は)自分の考えと行動に自信を持ち、同時に常にお金の動きに目を配って、専門家らからの不都合な意見には耳を傾けない」と述べる。「パンデミックにおいてもテレビ契約のある大会開催を守り抜こうとする姿勢こそが、IOCやオリンピック組織委員会に求められるスキルなのだ」と。 組織委員会は感染予防対策を発表しているが、「責任者たちは、パンデミックの状況を深刻化させている要素を無視」しており、「インドでの感染爆発や変異株の流行、東京の住民が開催に否定的なことも気にとめず、自分たちの利益を守ることに集中している」と述べる。 リスクを適切に見ていないことを示すものとして引用されたのは、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長による、4月の衆院厚生委員会での「日本政府は、オリンピック問題に関して、感染症対策分科会からの正式な助言を求めていない」という発言だ。 このようなことから、オリンピックの開催について、「日本政府やIOCが全体の状況を公正に判断することはできない」とハン記者は記す。「だからこそ他の組織が、適切に対応しなくてはいけない」、「ドイツの政府やオリンピック連盟は、パンデミック中のオリンピック開催を支持できるのか今こそ明言すべきだ」という。 一方で、他国からの積極的な提言も望みにくいのかもしれない。たとえば、独紙「南ドイツ新聞」の別の記事によると、ドイツのオリンピック関連団体でもスキャンダルが発生し、混乱している。 2013年、IOC現会長のバッハ氏からドイツオリンピック連盟の会長職を受け継いだアルフォンス・ヒューマン現会長は、同組織の職員らにパワハラを公開書簡で5月初めに告発された。組織内に「恐怖の文化」を作り上げたとされるヒューマンの会長職辞任を求める声がオリンピック直前に高まっている。 ●東京五輪の中止で、誰が損をするのか? 5/18 2021年7月23日から開催予定の東京五輪・パラリンピックについて、中止を求める声が高まっている。元日弁連会長の宇都宮健児氏による中止を求める署名には37万人以上が賛同(18日現在)している他、米・Washigton Post紙に掲載されたコラムでは、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長について「開催国を食い物に」する「ぼったくり男爵」と痛烈に批判された。一方で「日本側の判断で開催を返上した場合、日本側に損害賠償の可能性が生じる」と指摘されるなど、中止による経済的負担や損失を指摘する声もある。では一体、五輪を中止することで損をする人は誰なのだろうか?またその経済的損失は、どの程度なのだろうか? ●正確な試算は困難 驚くべき事実かもしれないが、そもそも五輪開催に伴う正確な予算を算出することは困難だ。そのため正確に中止に伴う費用を算出することも難しく、政府は答弁を拒否している。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(組織委員会)による最新予算では、1兆6,440億円が計上されている。しかしこれは開催の「直接費用」であり、たとえば開催に伴う道路整備や施設のバリアフリー化のための費用など「間接費用」は不透明だ。2019年に会計検査院がまとめた調査報告書では、2012年からの6年間で約1兆600億円の間接経費がかかっていると指摘された。一方、2020年には東京都が間接費用が330億円減となったことを発表するなど、正確な試算は難しいことが浮き彫りとなっている。こうした「間接費用」の存在などから、五輪の中止に伴う経済的負担や損失を算出することは容易ではないが、はじめに予算案のみに絞って考えていく。 ●支出と収入 まず、1兆6,440億円の内分けは以下の通りだ。五輪の開催費用について、収支を担っているのは主に国・東京都・組織委員会の3つのアクター(組織)だ。 アクター別の経済的負担を見ると、 •国 2,210億円 •東京都 7,020億円 •組織委 7,210億円 となっており、組織委員会と並んで開催都市である東京都の負担がほぼ同額であることが分かる。では、この費用はどこから来ているのだろうか。当たり前だが、国や東京都の予算は公費であり、税金によって賄われている。国の支出は当初1,600億円程度であったが、新型コロナウイルスに伴う対策関連費用を計上しており、その額は560億円にものぼる。前述したように「間接経費」まで含めると、予算の2,210億円以外にもすでに約7,720億円が支出されており、あわせて1兆円近い費用が投じられている。東京都で注目すべきは、7,020億円以外にも組織委員会への追加負担として150億円を支払っていることだ。これによって、合計の負担額は7,170億円となっており、組織委員会とほぼ同額の経済的負担となった。東京都については五輪の開催経費とコロナ対策費などが膨らんでいる一方、コロナによる企業収益の悪化やインバウンド需要の低減などにより、その税収は前年度比で4,000億円まで減収している。そのため「都庁内では財政悪化の懸念が広がる」と言われるなど、都の財政状況に大きな負担が強いられている。一方、組織委員会の負担額である7,210億円は、IOCからの負担金(850億円)や企業からのスポンサー費用(計4,060億円)、チケット売上(900億円)によって賄われている。もし五輪が中止となった場合、この費用が大きく変動する可能性が高い。 ●現時点での予算消化 では開催予定まで2ヶ月に迫った現時点で、予定された予算はどこまで支出済なのだろうか。この数字を押さえておくのは、もし開催中止が即時決定した場合、どこまで支出を抑えられるかを推測するためだ。組織委員会によれば今年2月時点で、8,180億円あまりが支出されている。すなわち、全体予算1兆6,440億円の約半分が消化されている状況だ。2月時点からは予算消化は進んでいるはずだが、もし5月時点で五輪の中止を決定した場合、1兆6,440億円の全予算を使い切らずに終えられる可能性もある。もちろん発注・契約済みの業務がほとんどであり、費用の回収は容易ではないだろうが、たとえば開催期間中のスタッフの人件費などは抑えることができるだろう。 ●中止による収入の変化 その上で、五輪が中止された場合の収入について見ていこう。国や東京都による費用負担が変わらないと仮定を置いた上で、大きく変動が予想されるのはIOC負担金とチケット売上の2つだ。まず850億円にのぼるIOC負担金は、大会が中止になった場合に払い戻しが契約によって定められている。また900億円のチケット売上は、中止となった場合は払い戻しされることが予想され、こちらも0となる。国内外合わせて4,000億円以上のスポンサー費用が企業に返金される可能性は低く、各社が加入している保険などによってスポンサー企業側が一定度の補償を受けられると予想されている。おなじくライセンシング費用についても同様だろう。裏を返せば、スポンサー企業は全額ではないにしろ、4,000億円のうち少なくない金額の経済的損失を被ると言える。すなわち五輪中止によって消滅する収入は、IOC負担金とチケット売上を合計した1,750億円だと予想される。IOCと東京都などの契約では、組織委員会が赤字になった場合は都が補填する契約となっているため、この費用は国や東京都によって補填される可能性がある。ここまで予算案のみに絞って、中止による経済的負担を見てきた。国と東京都、組織委員会という3つのアクターで考えた場合、 •中止によって、直接的な収入減に直面するのは組織委員会 •しかし、その赤字分1,750億円は国や東京都によって補填される可能性が高い と言える。 ●違約金・保険 予算案以外の経済的負担を考える上で、重要な存在はIOCだ。前述したように、五輪中止が囁かれた頃から「IOCによって違約金が請求される可能性」が噂されている。IOCは、収入の73%をテレビ放映権料から得ており、もし五輪が中止となった場合はその大半を失う。米・大手テレビ局のNBCは、2032年までに合計76億5000万ドル(約7,800億円)ものテレビ放映権料(*1)をIOCに支払う契約だが、その大半は大会が開催された時点で支払われる契約だ。そのため大会自体が中止となれば、その費用はIOCに渡ることはない。大会が開催された時点で費用の大半をであり、もし中止となればIOCに費用は渡らない。そのためIOCにとっては、大会の開催が死活問題であり、もし開催地である東京都から中止が提案された場合、違約金を求めるのでは?という推測だ。しかしながら、ここ1ヶ月に渡って盛んに主張された違約金については、その条項が契約書に明示されているわけではなく、あくまで憶測に過ぎない(そのため正確には違約金ではなく損害賠償だ)。開催都市契約によれば、五輪中止はIOC側からのみ提案できる。IOCにとっては、開催都市である東京都から不本意に中止を求められれば、巨額のテレビ放映権料を失うことになるため、損害賠償が予測される根拠となっている。では違約金(損害賠償)の請求は、どこまで現実的なのだろうか?可能性はそれほど高くもないが、0ではないとも言える。前述のWashington Post紙の記事では「パンデミックの最中、ストレスと苦痛を被っている国での五輪開催を強制したならば、IOCの評判はどうなるだろうか」と損害賠償が請求される可能性に、疑義を呈している。パンデミックが不可抗力である以上、中止の責任を開催都市に帰した上で損害賠償請求をおこなうことは、IOCの評判を大きく傷つけるだろう。しかし、五輪が商業イベントであることが公然の秘密となった今、彼らが評判を気にするかは分からない。毎日新聞は「法曹界の識者によると、中止の『違約金』は記されていないが、不可抗力条項がない以上、開催義務を持つ日本側から中止を申し出れば、IOCへの賠償責任が生じるという見解で共通する」と指摘している。すなわち •IOCは大会中止によって大きな損失を被るが、それが損害賠償の形で都や国に転嫁される可能性もある ということだ。 (*1)単純計算で1大会あたり1000億円規模となる。 ●保険会社 最後に、保険にも触れておく必要がある。IOCや組織委員会、そしてスポンサー企業などは大会の中止について様々な保険をかけている。そのため、大会が中止となれば「大会に関わる保険金支払いの案件として、おそらく過去最大規模のもの」になると言われる。具体的には、世界の保険会社が被る損失は2-30億ドル(約2,180-3,270億円)という試算がある。逆に言えば、全てのアクターが大会中止によって何らかの経済的損失を被ることは確実だが、保険によって「大会主催者側の経費実費は補償」されることも確かだ。金額の多寡だけで見れば、保険会社の経済的損失は、多大なものとなるだろう。 ●失われる経済効果や「間接費用」の損失 ここまで、五輪の予算案1兆6,440億円のみに絞って見てきたが、中止による損失はそれだけに留まらない。中止に伴って失われる経済効果や「間接費用」の損失など、様々な費用に影響が出る。エコノミストなどにより幾つかの試算が公開されているが、それらをまとめると以下のようになる。 ●5690億円(2021年) みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは、最も小さい5,690億円と試算した。 •簡素化して開催した場合、消費刺激効果の半減で2,494億円の損失 •無観客で開催した場合、消費刺激効果の消失で4,989億円 •中止した場合、消費刺激効果の消失による4,989億円に加え、放送関係費701億円の消失で合計5,690億円 ●6700億円(2021年) SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは、6700億円と試算している。 •7月ごろまで新型コロナの感染拡大が続くと、GDPが7.8兆円減少 •五輪中止により6,700億円、長期にわたる訪日客の減少や国内消費の落ち込みなど加わる ●3.2兆円(2021年) 第一生命経済研究所の永濱利廣・首席エコノミストは、2021年のみで3.2兆円と試算する。 •完全な形で開催された場合に比べ、GDPベースで1兆7,000億円の経済的損失 •経済波及効果ベースでは、3兆2,000億円程度の損失 ●4.5兆円(中長期) 宮本勝浩関西大学名誉教授は、長期的に4兆5000億円以上と試算する。 •簡素化して開催した場合、長期的な経済損失は1兆3,898億円 •無観客で開催した場合、長期的な経済損失は2兆4,133億円 •中止した場合、長期的な経済損失は4兆5,151億円 他にも香港の英字新聞South China Morning Post紙は、2020年時点で延期による損失を6,000億円から2兆円と見積もっているが、中止になればそれ以上の損失が生まれるだろう。「間接費用」などを合わせれば3兆円に達するとも言われる五輪関連の費用は、大会開催を唯一の目的とするならば全てが無駄になってしまうとも言える。 ●予想以上に影響は小さい? しかし悲観的な予想とは異なり、大会が中止されても「経済的影響は恐れられているほど壊滅的ではない」という見方もある。なぜなら、ホテルや航空会社のキャパシティ向上などの観光インフラの強化、そして新国立競技場の改修など大会のレガシー(遺産)はすでに完成しており、日本への訪日外国人旅行客は再び中長期的に増加する可能性が高いからだ。大会中の個人消費はそれほど増加せず、国外から訪れた観戦者による支出は一時的だという過去の経験を踏まえても、中止による追加損失はそれほど多くないという見解だ。すでにパンデミックにより消費は落ち込み、観光業界は壊滅的な影響を受けているため、この状況で大会が中止されることの影響は限定的だという指摘もある。 こうした視点に立った場合、 •累計3兆円にのぼる五輪関連の費用が全て回収できるとは言えず、五輪開催によって2021年に想定されていた経済効果は全て失われる •しかしインフラ整備や投資をもたらした関連する経済効果は、一定度まで回収済み だと言える。前述したとおり「大会開催を唯一の目的とするならば」総費用3兆円はすべて無駄になると言えるが、「間接費用」の線引きをどこまで広げるかによって、損失の範囲も大きく変動する。 ●誰が損をするのか? ここまでの話をまとめると、それぞれ五輪中止によって「損をする人」が見えてくる。 •五輪中止による直接的な損失は、組織委員会の1,750億円。これらが国や東京都によって補填される場合、損をするのは日本国民と東京都民。 •IOCは、1,000億円規模のテレビ放映権料を失うことで損をする。 •スポンサー企業も、合計4,000億円以上のうち一部は無駄になる。 •ただしいずれも、保険によって一定度まで補償される見込み。またIOCは有利な契約や訴訟を通じて、その損失を日本や東京に転嫁できる可能性も有している。 •中止により失われる経済効果の試算は、5000億円から4兆円以上まで幅広いが、すでにパンデミックによって経済的損失は生じているため、五輪中止のみの損失を算出することは困難か。 •恒久施設やホテルなどへの投資などによって既に一定の経済効果は出ており、大会中止の損失は限定的という見方も。 このように見ると、全てのアクターが中止によって何らかの経済的損失を被ることが分かる。あくまで憶測ではあるが、この構造によって国民の8割が中止・再延期を望んでいる中で、誰も中止を言い出せない状況が生まれている可能性が強い。 ●開催による利益との天秤 問題は、こうした経済的損失と開催による利益をどのように天秤にかけるかだ。想定されていた経済効果は国外からの観客断念によって大きく萎んでおり、無観客の可能性もある中で、経済効果やシナリオは大きく変動する。大会を契機として流行が再拡大した場合、開催の利益が大きく縮小する可能性もある。もちろん、パンデミックによる死者と経済的損失を比べることが可能かという倫理的な問いもあるだろう。またIOCや政府は「コロナに打ち勝った証しの五輪」として開催の意義を強調するが、こうした精神的利益が経済的利益を上回るのかを判断するのは容易ではない。加えて、そもそも五輪が本当に経済的利益を生み出すのか?という問題がある。五輪開催は、1外国人観光客の増加および2大会に関連する建設投資の増加によって「日本経済にプラスの効果をもたらすことが期待できる」と言われるが、むしろ開催による経済的リスクは大きいという研究もある。インフラ整備の口実や都市の国際的注目の意義がありながらも、追加コストが重い負担になるという指摘も根強い。こうした研究に注目すると、中止による経済的損失を議論する以前に、そもそも五輪の開催自体がそれほど大きな経済的効果を生み出すのかという不都合な真実について、より実証的な検討が求められていることが分かる。 ●ぼったくり男爵とピンハネ領主 確実に言えることは、組織委員会から国や都に転嫁される可能性がある1,750億円や、不足する費用を補填するために拠出されてきた東京都の追加負担分150億円は、すべて公費であり税金だということだ。一度開催都市に立候補したからと言って、当初計画を何倍も上回り、史上最大規模にまで膨れ上がった大会を黙って見過ごす義務があるわけではない。IOCバッハ会長を「ぼったくり男爵」と呼ぶならば、十分な説明責任を果たさないまま男爵に費用を拠出し、中止に生じる正確な費用を公表しないまま「コロナに打ち勝った証しの五輪」を叫び続けるならば、国や都が「ピンハネ領主」と揶揄されても仕方がないだろう。 ●政府は悪魔、批判する側は天使…予見されていた報道の“偏向” 5/18 ●三島由紀夫が見た五輪 マスコミの一部の報道は、東京オリンピック・パラリンピックを中止する世論をあおることに傾斜しているようだ。ネットの世界でも、連日のようにオリンピック中止や政権批判などを主張する「ハッシュタグデモ(Twitterデモ)」が盛んに行われている。筆者のトレンド欄は、しばしばそのようなタグが目立つ。世論調査(産経新聞・FNN)では、東京オリンピックの開催に悲観的な意見が8割近くで、この傾向はほとんどのメディアの世論調査で共通している。 最近、三島由紀夫の論説を読んだが、その深い洞察と表現力に感銘を受けた。彼は前回の東京オリンピックについて、いくつかエッセーを書いている(『三島由紀夫スポーツ論集』岩波文庫)。その中で、反対論が根強くそれなりに理もあったこと、だが快晴の開会式をみて「これでようやく日本人の胸のうちから、オリンピックという長年鬱積していた観念が、みごとに解放された」と書いている。筆者と同世代の人たち、それよりも下の世代の人たちは、選手の活躍や高度経済成長を象徴する1つのエピソードという「物語」として東京オリンピックを評価してきたことだろう。ところが、三島のエッセーにはそのような「物語」とは違う「開催反対」の世論も触れられていた。 当時の文部省の世論調査でも、開催年(1964年)の前々年までは開催に不安を抱く意見が多数派であった。「オリンピックをやるぐらいなら別なことに予算を使うべきだ」という今日でもよく耳にする意見も多くあった。他方で、政府は世論が盛り上がらないことを問題視し対策に乗り出した。政府と当時のマスコミとがタイアップする形で開催機運を高めた63年からは状況は一変する。根強い反対論はあったが、それでも多数は開催に楽観的な態度に転じた。いわば新聞などのマスコミに国民があおられたといっていいだろう。 今回は逆で、政府とマスコミの方向は異なり、コロナ禍という状況の中で、マスコミの多くは開催に否定的である。あまりに否定的な報道が多く、日本パラリンピック委員会(JPC)の鳥原光憲会長は、選手たちの多くの希望とは異なり「『大会を中止にすべきだ』という声ばかりがニュースになり、残念でならない」というコメントを出しているほどだ。ある意味で“偏向報道”といっていい。 ネットでも同様だ。鳥海不二夫教授(東京大学)の研究「池江璃花子選手への五輪出場辞退要請は誰が行っているのか」によれば、池江選手に誹謗中傷にあたるひどいコメントをしているSNSのアカウントは、政治的に「リベラル」が多いという。ここにも“偏向”が存在する。 だが、ワイドショーや一部のニュース番組は、報道的事実を伝えるよりも、実際には「娯楽」を提供しているだけだともいえる。つまり市場経済の観点からいえば、報道する側(供給)とワイドショーなどを見る側(需要側)の需給が一致しているだけの現象ともいえるのだ。ただし「娯楽」なので、それが事実や問題の指摘を客観的にしているわけではないことに注意が必要だ。米ハーバード大学のマイケル・ジェンセン教授は論文「報道の経済学に向けて」の中で、娯楽としての報道には以下の特徴があるとした。例えば、ニュースは「危機」をあおりがちだという。日本の財政が危機だとか、あるいは年金制度が破綻すると報道すれば、多くの視聴者の関心を引くことができる。 ●本当に定額給付金はムダだった? 最近では、「現金10万円一律給付 40万人申請せず 約600億円国庫返納へ」(NHK)などというニュースがあった。まるで定額給付金政策が“ムダ”だったかのように誘導されかねない。しかし客観的には、たかだか0.3%ほどの“ムダ”が生じたにすぎない。国民の大多数は、定額給付金を生活支援として活用しただろう。また相変わらず「国民の借金」の多さで、財政再建に誘導するニュースも多い。これらなどはまるで財務省の下請け機関のような役割を果たしている。「娯楽」としてもあまりにも手抜きである。 また、政治的な出来事では政府を「悪魔」に、それを批判する側を「天使」に仕立て、後者が前者を打ち倒す構図が好まれる。これを、ジェンセン教授は「悪魔理論」といっている。また、なるべく報道は単純なものが好まれるので、複雑な事件の背景は省略されやすい。これを「あいまいさへの不寛容」ともいう。 例えば、ワクチン接種の状況と連動させて、オリンピック開催を批判する報道を目にした。アメリカの大学の調査をもとにし、日本のワクチン接種の状況が世界100位ほどだとし、そこから「政府は東京五輪開催を目指しワクチン入手と接種加速を強調するが、欧米からは『一大感染イベント』になりかねないとして中止を求める論調が強まる」(共同通信)とするものだ。これをインターネットで報道した共同通信のページには、マスクなしで歩くニューヨークの女性たちの写真が添えられていた。 だが、事実に即して日米の感染状況を見てみよう。米ジョンズ・ホプキンス大学のサイトでの情報をもとにすると、直近ではニューヨーク州の新規感染者数は1800名、東京都は平日の検査結果を反映した15日だと772名である。人口10万人当たりの新規感染者数は、ニューヨークが9.25人、東京が5.53人である。報道写真のイメージとはかなり異なり、東京の方が単位人口当たりの新規感染者数は少ない。また、世界的にも新規感染者数は日本はかなり低い水準だ。もちろんこれだけで、東京や日本は大丈夫だと言いたいのではない。 早稲田大学の安中進講師の実証分析だと、「COVID-19による死亡者数が少ない要因は、『病床数が多い』『65歳以上人口割合が低い』という社会経済的要因であると結論」づけている。また、緊急事態宣言のような人流抑制政策は効果があっても、その発現はゆっくりしたものであることを示している。 この安中氏の研究をベースにすると、現在、政府が進めている65歳以上のワクチン接種の進展が、東京オリンピック開催だけでなく、日本の新型コロナ感染抑制の重要なキーになることがわかる。全国の高齢者が約3600万人で、1回目の接種を終えた人数は約91万人(首相官邸HP)なので、まだ約2.5%でしかない。先週、平日の1回目の接種数は高齢者が7万回程度だった。これまでは医療従事者に重点がおかれていたが、これからは高齢者のワクチン接種により注力することが必要になる。政府は1日のワクチン接種100万人を目標(現時点では最高で約35万人/日)にしているが、これは掛け値なしに重要な目標だろう。「悪魔理論」の指摘する通りに、ワクチン接種報道でもマスコミは自治体の不手際などに注目するケースが多いが、高齢者のワクチン接種の誘導に力を貸すべきではないか。 ●待機の費用、英国は自腹 さらに水際対策が心配だ。インドでの変異株の猛威の前に、インド、バングラディシュ、ネパールからの入国を厳格化し、「原則」禁止している。現在の水際対策では、出国時でのPCR検査、入国時での抗原検査、そして指定された宿泊施設での3日間の隔離がほぼセットになっている。だが、この隔離の費用(宿泊費、食費)は政府から出ている。文化放送「おはよう寺ちゃん」で著述家の谷本真由美(めいろま)氏が話していて知ったのだが、イギリスではこれらの費用は自己負担だという。これを日本でも取り入れた方がいい。これらの費用は自己選択的な入国抑止に役立つだろう。 また、3日間の隔離が終わった後には、原則11日間の自主待機がある。これは自宅や、手配した宿泊施設が待機場所となる。この移動には公共交通機関は使えないのがルールだ。だが、実際には自主待機期間中に公共交通機関を利用しないでいるのか、ひょっとしたら「待機」せずに観光やビジネスなどで出歩いているのではないかなど、当人たちの善意に依存した極めてザルな運用だという指摘もある。また、位置情報をスマホを通じて当局に確認させる仕組みだが、最近の報道では1日あたり最大300人ほどが待機場所での確認ができなかったという。まさに善意はあてにならない。ここでも台湾のような厳格な位置情報の提供と罰則が必要だろう。この話も1年以上言われているが、まったく改善しない。 問題がいろいろあるのは事実だ。だが、日本の報道はあまりにも“偏向”しすぎており、しかも一部は上記の「リベラル」勢力のように、政治的な“偏向”とも連動している可能性がある。これからオリンピックや総選挙が近づけば、さらに“偏向”の度合いが増すかもしれない。安易な「娯楽」に傾斜しないように、マスコミの報道、ネットの動きから距離をおき、冷静になる必要があるだろう。 ●相次ぐボランティア辞退 コロナ猛威で不安の声―看護師確保も不透明 5/18 新型コロナウイルスが猛威を振るう中、東京五輪ボランティアの辞退が相次いでいる。大会組織委員会は「安全、安心な環境確保を最優先に準備を進める」と強調するが、感染への不安は拭い切れない。医療体制は逼迫(ひっぱく)しており、選手の救護に当たる看護ボランティアの確保も不透明な状況だ。 競技会場や選手村の運営などをサポートするボランティア「フィールドキャスト」を辞退した仙台市の女性(25)は「ワクチン接種ができていない中で活動するのが不安」と話す。「感染者が減らないのに開催を強行しようとしている」と、政府や組織委に不信感が募ったことも辞退理由に挙げた。 組織委は当初、フィールドキャストを約8万人確保。森喜朗前会長の失言が問題化した今年2月に約1000人が辞退したと説明したが、現在までの辞退者の総数は明らかにしていない。 看護師らの確保はさらにハードルが高い。新型コロナ患者を受け入れる「立川相互病院」(東京都立川市)は病院の窓に「医療は限界」「オリンピックむり」などと掲示した。担当者は「状況は悪化しており五輪への協力に応じるのは困難だ」と説明する。 茨城県看護協会によると、県内のサッカー会場でのボランティアに看護師41人が決まっていたが、4月に確認したところ、活動を了承している看護師は13人にとどまったという。 産業能率大の中川直樹教授(スポーツマネジメント)は「メガイベントでのボランティアは細かい作業を担うが、欠けるとシナリオ通りに進行できなくなる可能性がある」と指摘。「納得できないところの質問を受けるなど、運営側がボランティアのケアを行うことも重要だ」とも話した。 ●米大手紙が開催中止を最後通告=cスポンサーにもメリットなしと指摘 5/18 米大手紙「ロサンゼルス・タイムズ」が、今夏の東京五輪の開催中止を最後通告≠オた。 新型コロナ禍の深刻化にもかかわらず、国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会は開催中止を求める世論を無視し続けている。 そうした傲慢とも言える姿勢に、超大国の米国大手メディアが最新状況を踏まえて中止を再び勧告した。 同紙は「組織委員会が日本の看護協会に要請した。他の患者の前に、感染したアスリートを入院させるよう30の病院に依頼し、500人の看護師を派遣する。より感染力が強い新型コロナ変異種のまん延により、東京や他のいくつかの都道府県は非常事態宣言下にあり、すでにひっ迫している医療体制から医療資源を転用する理由はない」と断罪した。 さらに「パンデミックは1万1000人以上の日本人の命を奪い、それは他の東アジアの国々よりもはるかに多い」と危機的状況を示したうえで「著名なビジネスリーダーでさえ五輪に反対している。楽天の三木谷浩史会長はCNNとのインタビューで五輪を『自殺行為』と呼び、ソフトバンクの孫正義会長は五輪の開催が日本や他の国々から『恐れられている』とCNBCに語った。テニススターの錦織圭も、彼の口調は完全に変わった」。世論に加えて、世界で活躍する日本の各界著名人も開催を疑問視する現状を指摘した。 さらに「反五輪の感情は、有名人が聖火リレーから次々と脱落し、スポンサーは大会にリンクする広告の掲載をちゅうちょしている」とスポンサー側にとっても大会の後援はマイナスイメージにしかならず、全くメリットがないと強調した。 そして同紙はこう結論づける。「新型コロナ禍の緊張の中で、日本人がファンから抗議者へと変わり、五輪は中止されなければならない」。米大手メディアからの最後通告は大会主催者の耳に届くか。 |
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●「スポンサーの新聞各紙も否定的」菅首相は東京五輪中止を決断するべきだ 5/19 ●このまま開催に向かって突き進んでいいのか 東京オリンピック・パラリンピックの開催中止や延期を求める声が強まっている。このまま7月23日の開催初日を迎えることができるのだろうか。 政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長も、4月28日の衆院厚生労働委員会で「オリンピックの開催については感染レベルや医療の逼迫ひっぱく状況を踏まえ、議論をしっかりやるべき時期にきている」と述べている。 このまま開催に向かって突き進んでいいのか。それとも早く中止・延期を決断すべきなのか。五輪のスポンサーとなっている新聞4社の社説も論調が変わってきている。各紙を読み比べながら考えてみたい。 ●菅首相は「安全安心な大会が実現できるように」と繰り返すが… 菅義偉首相は5月10日の衆院予算委員会の集中審議の中で、東京オリンピック・パラリンピックについて「国民の命と健康を守り、安全安心な大会が実現できるように全力を尽くすことが私の責務だ」とこれまで通りに開催する意思を強く示した。また開催時の感染対策については次のように話した。 「選手たちの行動範囲を原則として宿泊施設や競技会場などに限定する。そのうえで、一般の日本人との接触を回避するため、それぞれの場所での動線分離を徹底する」 「移動方法を原則、専用車両に限定し、厳格な行動管理を実施する。ルールに違反した場合には、大会参加資格を剥奪する」 野党側から「オーバーシュート(感染爆発)しても開催するのか」と問われると、菅首相は「そんなことは全く申し上げていない」と強く反論した。 ●菅政権周辺も延期・中止に傾きつつある 菅首相は「五輪開催が大前提」というスタンスを変えようとしない。かたくなである。盛り上がりに欠け、大半の国民が開催に疑問を抱くなかでのこの態度には驚かされる。 このかたくなさゆえに、沙鴎一歩の目には菅政権が揺れ、延期・中止に傾いているように映る。実際、政権周辺や一部の与党議員からも中止の声が聞こえてくる。延期・中止に傾けば、あとはどの時点でだれがどのような形で表明するかである。 開催までの残り時間は少ない。日本中いや、世界中の人々がともに楽しむことができない五輪に何の意味があるのか。延期・中止の決断が遅れれば遅れるほど負担が増すのは、メダルの獲得を目指してトレーニングを重ねている選手たちである。菅首相は早急に政治決断すべきである。 ●朝日社説「五輪の可否 開催ありき 破綻あらわ」 東京五輪をめぐっては、読売新聞、朝日新聞、日本経済新聞、毎日新聞の4社が「オフィシャルパートナー」としてスポンサーとなっている。各紙はこれまで東京五輪の開催について慎重な書きぶりだったが、ここにきて論調が変わってきた。 5月12日付の朝日新聞の社説は「五輪の可否 開催ありき 破綻あらわ」との見出しを付けてこう書き出す。 「答弁を聞いて、いったいどれだけの人が納得しただろうか。わかったのは、滞りなく大会を開ける状況にはおよそないという厳然たる事実だ」 「おとといの衆参両院の予算委員会で、東京五輪・パラリンピックの開催の可否が大きな論点になった。ところが菅首相は、『主催者はIOC(国際オリンピック委員会)、IPC(国際パラリンピック委員会)、東京都、大会組織委員会』と、責任逃れとしか思えぬ発言を繰り返し、人々に届く言葉はついに発せられなかった」 「おとといの予算委員会」とは前述した10日の国会での審議を含む。朝日社説の「菅首相の責任逃れ」という指摘は分かる。菅首相は新型コロナの感染拡大と開催日の近づく五輪との間に挟まれ、身動きができなくなっているのだ。 ●「『開催ありき』の姿勢が随所に不信と破綻を生んでいる」 朝日社説は指摘する。 「感染爆発と定義されるステージ4の状態でも開催するのか。来日する数万人規模の関係者の行動をどう制御するのか。市民の生命・健康に影響を及ぼさずに、いかにして大会用の医療体制を整えるのか。こうした当然の疑問に対しても、『安全安心な大会が実現できるよう全力を尽くす』と言うだけで、質疑は全くかみあわなかった」 朝日社説は五輪の開催に慎重な立場を取っている。菅政権が強行に五輪を開催しようとしているから、菅首相が嫌いな朝日社説はなおさらその批判が強硬になる。 それにしてもこのまま開催して混乱を招くようでは、世界の国々から嘲笑される。日本の将来のためにもそんな事態だけは避けなければならない。 朝日社説は「世界から人が集い、交流し、理解を深め合うという五輪の最も大切な意義を果たせないことが確実になるなか、それでもなぜ大会を開くのか。社説は明らかにするよう求めてきたが、政府からも主催者からも説得力のある発信は今もってない」とも書き、最後にこう訴える。 「『開催ありき』の姿勢が随所に不信と破綻を生んでいる」 朝日社説が書くように「世界から人が集い、交流し、理解を深め合う」のがオリンピックだ。それができないようでは開催しても意味がない。菅首相はやはり、開催ありきのかたくなな態度を改めるべきである。 ●読売社説「選手に参加辞退を迫り、非難の矛先を向けるのは筋違い」 朝日社説と同じ5月12日付の読売新聞の社説は、「五輪開催の賛否 選手を批判するのは筋違いだ」という見出しを掲げ、白血病による長期の治療を経て五輪代表入りを決めた競泳女子の池江璃花子選手(20)に対してSNSで誹謗中傷が寄せられている問題を取り上げている。 読売社説の書き出しはこうだ。 「新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、東京五輪・パラリンピックの開催中止を求める声が上がっている」 「だからといって、選手に参加を辞退するよう迫ったり、非難の矛先を向けたりするのは筋違いである」 その通りだ。この問題を知ったとき、思わず怒りが込み上げてきた。深刻な病に打ち勝って、日本を代表するアスリートに返り咲いた選手を攻撃するような意見がどうして出るのか。決して許すことはできない。 読売社説は書く。 「池江選手は自身のツイッターで、五輪中止を求める声に対し、『仕方なく、当然のこと』と理解を示す一方、『私は何も変えることができない。それを選手個人に当てるのはとても苦しいです』と心境を吐露している」 愚かなメッセージにも理解を示す、池江氏の度量には頭が下がる。問題のメッセージを投稿した愚か者は、池江氏の心境をしっかり把握すべきである。 ●池江選手が出場を取りやめれば、開催の機運もしぼむ? 読売社説は続けて書く。 「SNS上には池江選手への中傷も見られる。丸川五輪相が『いかなる理由があっても許されない』と述べたのは当然だ。五輪の開催を巡り、心ない言葉を投げかけられている選手は他にもいる」 「五輪の中止を求めるなら、政府や東京都などに向けて声を上げるべきである。出場を目指して努力を重ねてきたアスリート個人に、『辞退して』『反対の声をあげて』と要求するのは、あまりに酷な注文で、配慮を欠いている」 これもその通りである。不満があるのなら、菅首相や小池百合子都知事に向けて発信すべきである。それを正々堂々と行えばいいだけの話だ。 読売社説は前半で「五輪の中止を望んでいる人たちの一部は、そんな池江選手が出場を取りやめれば、開催の機運もしぼむと考えたのだろうか」と言及し、後半で「五輪開催の是非論に、選手を無理やり巻き込むべきではない」と主張する。 ●政府や都などが十分な説明をしないことへの苛立ち 五輪開催の是非。これまで沙鴎一歩は五輪の開催には賛成してきた。 たとえば、昨年4月1日の記事「東京五輪を『1年延期』として本当によかったのか」との見出しを掲げ、こう主張している。 「延期は過剰反応だ。新型コロナは感染力や毒性が弱い。五輪の競技の大半は野外で行われるため、感染は起きない。室内競技でも密接、密閉、密集の3密がなければ問題ない。無観客とすれば競技は行える」という趣旨を書いた。 しかし、いまは事情が違う。感染力の強い変異ウイルスが世界中で大流行している。感染のコントロールがある程度できているとは言え、五輪開催で混乱を招く恐れは否定できない。 読売社説は「読売新聞の全国世論調査では、五輪を『中止する』が59%で最も多く、『開催する』は『観客数を制限して』と『観客を入れずに』を合わせた39%にとどまった」と解説した後、「菅首相は『安全、安心な大会の実現に全力を尽くす』と開催に意欲的だが、大会実現の具体策は示していない。開催への批判が選手に向かう背景には、政府や都などが十分な説明をしないことへの苛立ちがあるのではないか」と分析する。 ●日経新聞だけは社説で「五輪開催の是非」を論じていない そのうえで読売社説は最後に「観客は入れるのか、選手やコーチの安全はどう確保するのか、開幕までにワクチン接種はどの程度進むのか。政府はこうした点を早急に明確にして、国民や各国の選手たちに伝えねばならない」と主張する。 毎日新聞は、5月12日付の社説で、朝日社説と同じく衆参予算員会での審議を取り上げ、「首相から納得のいく説明は聞かれなかった」と菅政権を追及し、最後に「まずは人々の不安に正面から向き合わなければならない」と訴えるなど五輪の開催に否定的だ。菅首相はこうした新聞各社の主張に耳を傾けるべきではないだろうか。 ちなみにオフィシャルパートナーの新聞4社のうち、日経新聞だけはこれまで社説で五輪開催の是非を論じていない。五輪開催に反対なのか、賛成なのか。読者としてはそのスタンスに注目している。もしスポンサーとしての立場が社説にまで影響しているとしたら、新聞社説の存在価値に関わる重大な問題である。 ●ロサンゼルス・タイムズ、東京五輪「中止を」医療体制疲弊と指摘 5/19 米ロサンゼルス・タイムズ紙が18日、「新型コロナウイルスの感染拡大による緊張が続く中で、日本人がファンから抗議者へと転向した今、オリンピックは中止しなければならない」とのタイトルで五輪中止を求めるコラムを掲載した。 かつては壊滅的損害を受けた東日本大震災からの復興を祝うことを目的に「復興大会」と呼ばれた東京オリンピック(五輪)だが、皮肉なことに今は東京五輪そのものが放射能になっていると指摘し、五輪開催に突き進む日本政府や組織委員会を厳しく批判している。 日本では五輪メダリストが引退後に政治家やタレントに転身して人気を博していると紹介し、五輪好きであるはずの日本人の6〜7割が自国で開催される五輪の中止を望んでいるのは異常事態であり、その狂気の沙汰の中で10週間以内に東京五輪は開かれようとしていると同紙。反対の理由の1つとして、組織委員会が日本の看護協会に500人の看護師の派遣を要請したことや感染したアスリートのために30の病院に優先的に入院を受け入れるよう求めていることをあげている。 また、日本のワクチン接種率は3%未満であり、より感染力の強い変異種のまん延により、東京のみならず他のいくつかの都道府県で緊急事態宣言が出されている中で、すでに逼迫(ひっぱく)している医療体制からこれ以上の医療資源を転用する理由はないとも指摘。「国民の反五輪感情は、池江璃花子ら選手に向けられ、著名人が聖火ランナーを次々に辞退し、スポンサーは大会に関係する広告の掲載をちゅうちょしている」と厳しい論調で日本の現状を伝えている。 さらに欧米諸国と比較して日本では集中治療室(ICU)病床数が極端に低いことも指摘しており、人口10万人当たりの病床数はドイツでは34、米国では26なのに対して、日本はわずか5床しかないと伝えている。 そんな状況下でも菅総理は「国民の命と健康を守りながら、アスリートにとって安全安心な大会を行う」と繰り返し主張していることをあげ、ついには楽天の三木谷浩史会長がCNNの取材で「五輪は自殺行為」と語るなど著名人からも疑問を呈する声があがっていると同紙。 また、ソフトバンクの孫正義会長もCNBCに「五輪の開催は日本や他の国から恐れられている」と語り、男子テニスの錦織圭ら選手からも厳しい声が出ていると伝え、「五輪を中止するより開催する方が壊滅的な被害が出る」と、これ以上被害を拡大させないためにも中止するしかないと締めくくっている。 ●「大会中止についての議論は終わった」 米誌が“開催不可避”報道 5/19 残された道は――。新型コロナウイルスの影響で開催可否が取り沙汰されている東京五輪について米誌「フォーブス」は開催中止はないと指摘し、リスクを減らすため、ワクチン接種しかないと伝えている。 東京五輪に向けては中止の署名運動が起きている中、医療関係者からは実施見送りの要請が出され、世論調査も反対派が圧倒的多数と疑問視する声が出ている。 同誌はこうした現状を踏まえた上で「260億ドル(約2兆8340億円)以上の費用がかかる東京五輪はこれまでで最も高額な夏季五輪だ」とし「しかし、公衆衛生上の懸念ではなく、投資されたお金が今やイベントを推進している。衝撃的で壊滅的な出来事が起こらない限り、大会は続行する」とし、開催中止は難しいと報じている。 その上で「大会中止についての議論は終わった。東京五輪は開催されそうだ。主催者とアスリートは、自分たちの安全、東京の安全、そして世界の安全を保証するために、今から約1か月の猶予がある。予防接種、検査、および検疫は、世界の願望と一致させるための重要なツールになる。できるだけ早くプログラムで実行を開始する必要がある」と指摘した。 実際、五輪大会中は海外からの観客を受け入れなくても約1万5000人の選手たちが参加する予定だが「すでに予防接種を受けている人もいるが、多くの人はまだワクチンを利用できていません。躊躇している、またはその安全性を信じていないので、拒否する人もいる」とし「何千人もの未接種の人々が立ち入り、動き回ることを許可することは無責任だ」としている。 国際オリンピック委員会(IOC)は「大会に参加するためにアスリートと代表者にワクチンの接種を要求することはない」とし「できるだけ多くの人を安全に保つ必要があり、ワクチンはその点で大いに役立つ。IOC、組織委員会、そして日本がこれを正しく理解することを期待する」としている。 開催中止が叫ばれている日本でも選手らを対象にワクチン接種が始まる。IOCは「80%以上」の接種率を確信していると言うが、万全を期す意味でも五輪に参加する全選手、関係者が確実に対策を施すことが求められそうだ。 ●IOC、東京オリンピックに合わせて日本に医療陣を派遣 5/19 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ委員長が、東京オリンピックを約2か月後に控え、日本に医療陣を派遣することができると19日、明らかにした。 バッハ委員長はこの日開かれたIOCと東京オリンピック組織委員会のオンライン調整委員会で「オリンピック選手村と競技場で新型コロナに対応する医療陣を派遣することを大会組織委員会に伝えた」と述べた。 バッハ委員長は約12分に及ぶ演説を通して「具体的な内容はまだ明らかにできないが、オリンピック選手村は安全な場所になるはずであり、オリンピックとパラリンピックが非常に安全に行われるという点は明らかだ」と強調した。 続いて「選手村にとどまる全人数の80%以上がワクチン接種を終えた人たちで構成される」とし、「現在も数多くのスポーツイベントが新型コロナの世界的な流行下でも安全に開催されており、東京オリンピックのテストイベントでも大きな問題はなかった」と付け加えた。 ただ、こうした楽観論についてAP通信は「日本選手団は今年6月にワクチン接種を開始する。現在、日本全人口の1~2%のみがワクチン接種を終えている状況」だとし、「高齢者でさえオリンピックが終わる8月初めまでにワクチン接種を完了するのは難しいだろう」と指摘した。 実際に、全国医師ユニオンは日本政府に東京オリンピックの中止を要求した。全国医師ユニオンは「人が動けばウイルスも一緒に広がるため、オリンピックによって感染および死亡者数が増える可能性がある」とし、「もしオリンピックとパラリンピックによって状況が悪化すれば、日本の責任が大きくなる」と明らかにした。 また、AP通信は「東京や大阪など、主要地域の緊急事態宣言は今月末まで延長され、バッハ委員長の訪日計画もキャンセルになった」と日本国内の状況を指摘した。 現在、東京オリンピックは外国人観光客の観戦が禁止されており、日本人の競技場入場が許容されるかどうかは今年6月に決定される予定だ。出場選手1万5000人をはじめ、各国から関係者がオリンピックとパラリンピック参加のために日本入りする予定だ。 一方、IOCと大会組織委員会が準備状況を点検する調停委員会は、同日から今月21日までの3日間続き、今回の調停委員会は7月23日の東京オリンピック開幕を控えて開かれる最後の調停委員会だ。 ●オリンピック事前合宿中止相次ぐ 5/19 新型コロナウイルスの感染拡大で開催を危ぶむ声もある東京五輪、パラリンピック。五輪開幕が2カ月後に迫る中、参加国の事前合宿が相次いで中止となっている。交流を深めるなど、受け入れ準備を進めてきた県内の自治体も対応に追われている。 事前合宿は選手が日本の気候や時差に慣れるために大会前に実施する。県内では16市が13の国と地域を迎える準備を進めてきた。 静岡市では、スペインとモーリシャスの事前合宿が中止となった。両国から中止の申し出があったという。スペインはバドミントン、モーリシャスは柔道、水泳など7競技とパラリンピック陸上の代表チームが6月末〜7月中旬に合宿を予定していた。 同市では、6月に台湾の陸上選手団の合宿も予定されていたが取りやめた。感染状況などをみて、五輪後に改めて強化合宿として実施するという。 市の担当者は「お迎えしたかったが、コロナでは仕方がない。ホストタウンとして交流を深めてきたので、今後も何らかの形で続けていきたい」と話す。 浜松市ではブラジルのボートや野球、柔道、卓球など7競技の選手やコーチら162人が事前合宿を予定していた。このうちボート競技は同市での事前合宿を取りやめ、今月になって「選手村に直接入る」と連絡があったという。野球、ラグビーは出場権を得られなかった。市担当者によると、事前合宿参加者は約半分の79人となる見通し。 焼津市で事前合宿を予定していたモンゴルのレスリングと3人制バスケットボールチームは、新型コロナの感染拡大に加え、出場権獲得がかかる予選が大会直前に控えていることから合宿の中止を決めた。 モンゴルは伊豆の国市でも柔道の事前合宿を予定していたが、中止の方向に。合宿後、いったん帰国し、五輪本番直前に再び来日するスケジュールを組んでいたが、モンゴル国内でも感染が拡大していることから、市側との協議で実施は困難との認識で一致した。 一方で、実施に向けて準備を進める市もある。沼津市では、カナダのフェンシングが7月12〜22日に事前合宿を予定。袋井市は一部競技を除いたアイルランドの拠点となる。市担当者は「アイルランド側と日々メールやズームでのやり取りをしている」と話す。三島市では7月中旬に、男子バレーボール米国代表チームの事前合宿が予定されている。米側から14日に、東レ三島工場体育館で予定通り行うという旨の連絡があったという。 最後まで調整を続ける自治体もある。スペインの卓球チームが事前合宿を予定している湖西市では、スペイン側と「詰めの段階」という。日本の感染状況を見ながら実施するか、直接選手村に入るかメールや通訳を介してのオンラインで連日やり取りを続けている。 市の担当者は「入国の準備などもあるので時間はあまりない。早々に実施できるかどうか決めたい」と話す。 ●巨大企業電通、社会に貢献する日が来るか 5/19 毎日、テレビではコロナ感染者数が発表されている。変異ウイルスが増えてきて、感染者数は増加する一方で、収束の兆しが見えない。そのつど緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も小出しに連発されるが、もう期待されているような効果は出ない。ぐだぐだである。 それを適用される店舗だけが現実に損害を受け、それ以外の人間は「どこで酒飲めばいいんだ」と、義務でもないのに、のん気に路上で、公園で、他県にまで行って飲んでいる始末である。 ワクチン接種も遅々として進まない。接種率は先進国のなかでは最低クラスである。菅総理は昨年から2億回分のワクチンは確保した、と得意顔でいってなかったか。 ●聖火リレー、沿道は楽しそうだが 他方、まるで信じられないことに、地方では粛々と聖火リレーが続いているのである。深夜0時頃、NHK「聖火リレーデイリーハイライト」が一手販売で報じているのだが、それを見ると、けっこう盛り上がっているのである。選ばれた老若男女のランナーたちはパフォーマンスをやったり(やらされたり?)、10人ほどの伴走者もいたり、沿道では日の丸の小旗を振ったりして、いかにも楽しそうなのである。その小旗だが、いったいだれが配っているのだ? ひょっとして電通か? このギャップを納得できる者がいるだろうか。一方では感染者数の増加、他方では聖火リレー。一方では世論の大半がオリンピック中止か延期、他方では既成の事実のごとく五輪開催の準備が進行する。 聖火リレーに参加した人たちも、やっているときは結構本気だろうが、家に帰って落ち着いてみると、あんなことやってよかったのか、とうまく呑みこめないのではないか。しかしこんな矛盾もこの国では当然のことか。3密を避けよ、といいながら、満員の通勤電車はほったらかしだったのだから。 昔バブル以前の日本は、経済は一流、国民も一流、しかし政治は三流といわれたものだ。しかしいまは、経済も政治も国民も三流になってしまった感がある。 東京オリンピックは7月23日が初日。あとちょうど2か月である。だれが東京オリンピックの中止を判断するのか。開催都市の東京都でも、日本政府でもない。IOCだけに中止の権限がある。そして中止してもIOCに賠償責任はない。 そのIOCを、アメリカの有力紙『ワシントン・ポスト』は「収益のほとんどを自分たちのものにし、費用は全て開催国に押し付けている」と批判、バッハ会長についても「“ぼったくり男爵”と揶揄し、IOCを『地方行脚で食料を食い尽くす王族』とたとえた上で『開催国を食い物にする悪癖がある』」と痛罵している。 だがバッハ会長もジョン・コーツ副会長もそんな批判などどこ吹く風、あくまでも開催一本鎗である。巨額の放映権料を支払う米NBCは開催に肯定的で、IOCはこの意向を無視できないから、IOCも簡単に中止にできない。 ●勇気ある者はだれひとりいない もし日本側が独自で中止と判断するなら、IOCは日本側に巨額の損害賠償を課すかもしれない。しかし、五輪組織委員会の武藤敏郎事務総長によれば、IOC、国際パラリンピック委員会(IPC)、政府、東京都、組織委員会での5者会議やIOC理事会でも、開催の仕方をどうするかということだけが議論されており、中止の話は一切出ていないという。 したがって、万一中止となった場合、IOCから何らかの賠償請求があるかどうかについては「考えたことはない。どんな事情かが重要ではないか。そんなことを言い出す人がいるのかも含め、予想がつかない」といっている。 IOCは「開催」が前提。ということは日本側から「中止」に関する話をまったく持ち出していないことがわかる。日本政府にも東京都にも、また五輪組織委員会のなかにもだれひとり、中止を議題に上げようとする勇気ある者はいないのである。二階幹事長が中止という可能性に言及したが、立ち消えになった。中止の可能性さえまったく考えていないのだから、このまま突き進んでいくのだろう。 太平洋戦争もこのようにしてなし崩し的に開戦まで突き進んだのか、という連想をしたくなるが、今回の主役はIOCである。ジョン・コーツがイタリア人なら、バッハとともに、日独伊の三国同盟だといいたくもなるが、そうはうまくいかないのが残念である(コーツはオーストラリア人)。 医者や経営者や有名人がいくら中止をいってみても効果なし。日本の世論や国際世論の大勢が中止ということになっても、これまた無力。しかしそんな反対の声を無視してまで、無理やりに開催して、いったいだれが喜ぶのか。世界から観光客はやってこない。観客は制限するか無観客でやって、だれが喜ぶのか。 40以上の自治体は海外チームの事前合宿の受け入れ中止を決定した。それでも海外からの選手団が1万5000人、関係者が9万5000人(うちメディア3万5000人)がやってくる。 ●無理やり開催して喜ぶのは誰か 菅総理は「選手や関係者の感染対策」をしっかりやり「国民の命と健康を守り、安心安全な大会の実現は可能」というが、これはただの空念仏である。なんの保証にもならない。1980年のモスクワオリンピック不参加のときの選手たちの無念はわかる。しかし今回開催されたとしても、選手たちも手放しでは喜べないのではないか。 といいながら、もし開催したらしたで、テレビが騒げば国民はけっこう盛り上がったりするのではないかという気もする。わたしもちゃっかりテレビを見そうだ。 最近こういうネット記事があった。「香港、電通から五輪放映権 政府、中止なら払い戻し」 その記事によると、「香港政府の林鄭月娥行政長官は11日、定例記者会見で、東京五輪の香港でのテレビ放映権を電通から買い取る契約を結んだことを明らかにした」。香港では民間テレビ局の経営悪化の理由から、政府が初めて五輪の放映権を購入を決めたということである。 電通は東京オリンピックのアジアの放映権を持っているのか? いつの間にそういうことが決まったのか。五輪組織委員会との間で決まったのか。また林鄭月娥長官は「東京五輪がコロナ流行の関係で取り消しになった場合は全額払い戻しを受ける」という。ということは、その場合、当然電通が全額払い戻すのだな。 いったい電通はオリンピックにどこまで食い込んでいるのか。前からちらほら電通の影が見えて気になっていたのである。野村萬斎氏の開会式演出の後任になった佐々木宏氏も元電通である。調べてみて驚いた。どこまで、どころか、オリンピックのすべてに食い込んでいたのである。間違いなく電通は、五輪開催を熱望している。 ●主要なスポーツイベントは全部電通 博報堂に18年間勤めた経験のある本間龍氏は、2017年発行の書籍『電通巨大利権』で次のようにいいきっている。「電通は2020年東京五輪の全てを取り仕切っている。全てとは招致活動からロゴ選定、スポンサー獲得、現在放映されているテレビやラジオCMをはじめとする五輪PR活動、そしてこれから開催までの3年間、全国で展開される五輪関係行事、さらには五輪本番の管理進行等、文字通り『全部』である」。 ということは、聖火リレーの沿道の市民に日の丸の小旗を配ったのもやはり電通だったんだな。本間氏は、東京五輪とは「電通の、電通による、電通のためのオリンピック」とまでいい切っている。 電通はいうまでもなく日本の広告代理店業界の「ガリバー」である。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4媒体における電通のシェア1位は数十年間不動である。売上高は約5兆1468億円。業界2位の博報堂が1兆4662億円、第3位のサイバーエージェントが4785億円と大きく差がついている。 また電通が手掛けるイベントを知って、こんなことまでやっていたのかと驚いた。 1オリンピック / 2アジア競技大会 / 3サッカーワールドカップ / 4サッカークラブ選手権 / 5世界陸上選手権 / 6世界水泳選手権 / 7バレーボール世界選手権 / 8ラグビーワールドカップ / 9博報堂が担当してきたJリーグの選任代理店も2014年から電通のものになった。 いや、まったく知らなかったなあ。世界の主要なスポーツの国際大会は全部押さえているではないか。赤鉛筆片手に司会を楽しんでいた織田裕二の世界陸上(TBS)も、2019年に異常な盛り上がりを見せたラグビーW杯日本大会も、全部電通の仕切りだったのか。 ●理不尽でも存続するシステムはある 前掲書で本間氏はこういっている。「こうしたスポーツイベントは、イベント実施費そのものより、それを支える多くの企業からのスポンサード料や、テレビを中心とするそれぞれの放映権料収入が巨額で、あらゆるメディアとの結びつきを強固にしている」。長年にわたるこの独占は、それらを「運営する人員とノウハウ」が電通以外にはできないようになる。ゆえに「電通が突然機能を停止したら、瞬時にその代わりができる代理店は存在しないのだ。それほど電通は巨大化し、他社との差は広がってしまっている」。 テレビや新聞などのメディアは、重要な利益源である宣伝広告費を電通に握られていて、電通を批判できない。ある意味、電通はアンタッチャブルなのである。電通になにか不祥事があっても、メディアが報道しなかったり、抑制したりするから、国民は電通がどんな組織で、どんな仕事をしているのかを知らないのである。 本間氏はいう。世界にはアマゾン、グーグル、アップル、マイクロソフトなど、多くの業界で他社を圧倒するナンバーワン企業は存在する、しかしそれらは「社会的イノベーションの提供という果実を、利用者のみならず全世界の人々に届けている。だからこそ様々な問題や批判を抱えながらも支持されているのだ」。 トヨタ、松下、ソニー、東芝などの大企業には「国家国民の福祉や反映実現のために会社がある、といった社是があった。だからこれらの企業には、社会への様々な貢献活動の長い歴史がある」「しかし、電通にはそれがない。鬼十則を見ても明らかなように、ひたすら自己の栄達と利益確保を煽り、目標の達成のみを最大価値としている」。稼ぎ出した利益で「日本の社会に貢献しようという文言もなければ意欲もない」「売上高5兆円に迫る超巨大企業は、実に『陳腐で凡庸で利己主義的』な集団なのだ」。 本間氏は、「第四の権力」といわれるジャーナリズムを超えて、いまや「第五の権力」となった電通を解体ないし分割せよという。いっていることは正しい。 しかし世界には理不尽なことがわかっているのに、いったん出来あがったシステムがそのまま存続していくことがある。そのシステムに依存し、委託し、委託されるものにとっては、そのシステムが存続していくことが、既得権益を守るのにもっとも楽でスムーズだからである。だれもが改革を望むのではない。「存続するシステム」を欲する者はすくなくないのである。 ●日本最大のフィクサー企業「電通」の研究 2020/7 フィクサーとは、「(公正ではないやり方で)陰で仲介・調停することで報酬を受け取る黒幕的人物」のことだ。さらに黒幕とは、「陰にあって画策したり指図したりする人」をいう。日本最大のフィクサーを生業としているのが、国内最大手の広告代理店企業、(株)電通である。黒幕は、陰にあってこその黒幕だ。だが「上手の手から水が漏る」ということか、その所業が表に出てくることがある。 ●持続化給付金事業を受注した「協議会」の背景 新型コロナウイルス感染拡大の影響で売上が半減した中小企業などを支援する持続化給付金の再委託問題は、事業を国から受注した一般社団法人サービスデザイン協議会(以下、協議会)が「トンネル会社」の可能性があると報じられたことが発端だった。 協議会は2016年に電通が中心になって設立。電話番号は7月時点で公表されておらず、法律で義務づけられている決算公告の開示も怠っていた。その協議会が、経産省の外局にあたる中小企業庁から持続化給付金事業を769億円で受託し、受託費の97%にあたる749億円で電通に丸ごと再委託。電通はさらに電通ライブなど子会社5社に外注していた。こうした実態が『週刊文春』などの報道で明らかになると、にわかに協議会の実態に注目が集まっている。 かつて公共事業「丸投げ」の対象は独立行政法人だったが、天下りの温床と批判されたことで新たな隠れ蓑が必要になり、役所主導で作られた社団法人が急増したとされる。いびつな利害関係を隠す目的で編み出したのが、トンネル会社を経由させる奇策だった。本来なら官から民に直接発注して競争入札すれば済むことだが、そうするといつも同じ顔触れが受注していることがわかってまずい。批判をかわすために、金の流れを浄化する「別の顔」(トンネル会社)が必要になったのだ ●平川氏は、電通から協議会に送り込まれた“黒幕” 6月8日、笠原英一・アジア太平洋マーケティング研究所所長が、協議会の代表理事を退任した。「持続化給付金事業については一切知らない。電通に聞いてほしい」と言い、「お飾り」であったことを認めて、笠原氏は辞めた。 これを受けて、協議会を“隠れ蓑”にしていた電通が前面に出てこざるを得なくなった。同日、協議会側が事情を説明するために記者会見を開いた。席に現れたのは、大久保裕一氏、榑谷(くれたに)典洋氏、平川健司氏の電通出身の3名だ。新しく協議会の代表理事に就任する大久保氏は、電通の執行役員。榑谷氏は、電通の取締役副社長執行役員(COO)。平川氏は、協議会の業務執行理事だ。 注目すべき人物は、平川氏だ。協議会の設立時に、電通のプラットフォーム・ビジネス局事業企画部長から協議会の理事に就任した。19年6月に電通を退職した後も、引き続き、協議会の業務執行役員を務め、給付金事業の実務を仕切ってきた。 平川氏が、「陰にあって画策したり指図したりする」“黒幕”として電通が送り込んだ人物であることが明らかになった。陰にあった平川氏は、どのような画策をしたのだろうか。その一端が暴かれた。 ●米テキサス州の「前田ハウス」で連日の宴 6月11日発売の『週刊文春』は、持続化給付金を担当する中小企業庁の前田泰宏長官が経産省大臣官房審議官だった17年当時に米テキサス州のイベントに参加した際、近くのアパートを借りて「前田ハウス」と名付けて、パーティーを開き、そこに平川健司氏が同席していたと報じた。 この報道を受けて、11日の参院委員会では、立憲民主党の蓮舫氏が報道の真偽を前田氏に問うた。「パーティーは毎日(開かれていて)、関係者との意見交換はそこでやっていた」と前田氏は釈明し、平川氏がパーティーに参加していたことや、別の場所でも平川氏と会っていたことを認めた。 朝日新聞デジタル(6月12日付)は、委員会で明らかになった点をこう報じた。 「前田氏は15年から大臣官房審議官として協議会と関わるサービス業を所管する商務情報政策局を担当していた。前田氏と平川氏は、その前から交流を始めたという。協議会は平川氏ら電通が中心となって16年に設立され、設立当日に経産省が公募した事業をその後受注した。その後も経産省発注の事業を次々と引き受け、これまでに計14件約1,576億円分を請け負い、その5割にあたる808億円分が電通などに再委託されている」 なんていうことはない。前田氏と平川氏、つまり経産省と電通が結託した“出来レース”だったのだ。電通から送り込まれた黒幕の仕事を、平川氏は完璧にこなしたことになる。だが、米テキサス州の「前田ハウス」での乱痴気パーティーを腹に据えかねる出席者がいたのだろう。週刊文春へのタレコミで、癒着が暴露されてしまった。 ●総務省も、マイナンバーポイント還元事業を電通に再委託 電通“黒幕”の仕事は、それだけではなかった。マイナンバーカードを使ったポイント還元事業の事務を総務省から受託した「(一社)環境共創イニシアチブ」(以下、環境共創)は、実務の多くを電通に再委託していた。 総務省によると、この事業で環境共創に支払われる金額は350億円。そのうちキャッシュレス決済事業者などへの補助金193億円をのぞくと、157億円が残る。このうち電通への再委託額は約9割の約140億円に上る。さらに、電通はグループ企業の電通ライブに実務を丸投げ。電通ライブからは、業務を外注していた。 環境共創は、2011年2月に設立された。それまで省エネ関連事業を経産省から受注していた(独)が、民主党政権の事業仕分けにより受注できなくなったからだ。そこで、経産省と電通が組んで、受け皿の環境共創をつくった。経産省によると、環境共創は同省から過去3年間に受託した事業のうち、35件の計160億円分を電通に再委託していた。環境共創は、事業を電通に丸投げするための“トンネル会社”だったのだ。 ●電通のオリンピック利権の独り占め フィクサー企業、電通の最大の仕事が、東京五輪・パラリンピックである。電通は国際オリンピック委員会(IOC)をはじめ、国際サッカー連盟(FIFA)や国際陸上競技連盟(現・ワールドアスレティックス)、国際水泳連盟などと密接な関係を保っている。とりわけ、史上初の民間運営方式で行われた1984年のロサンゼルス五輪以降、関連団体と太いパイプを築いてきた。 東京五輪の招致段階から、電通は大きく関与してきた。招致活動中の2009年3月に、当時の石原慎太郎・東京都知事は、招致活動の基礎調査などの特命随意契約を電通と結んだ。電通は単なる広告代理店ではなく、複数の企業・団体による共同体(コンソーシアム)の司令塔の役割をはたした。 東京五輪では、電通は国内外の企業約80社と総額3,500億円に上るスポンサー契約を成立させた。大規模なスポンサー集めを素人集団の組織委員会ができるわけがなく、電通に頼りきった。 組織委員会は、開会式・閉会式の企画、運営、出演者の調整や、聖火ランナーも電通に業務委託した。東京五輪のために、政府や都から巨大な資金が電通に流れた。東京五輪を裏で仕切ってきた電通は、オリンピック利権を独り占めしたのだ。 ●東京五輪の招致疑惑 フィクサー稼業の電通の最大の汚点は、東京五輪招致に関する疑惑だ。世界陸連前会長でIOC委員だったミラン・ディアク氏(セネガル)は、東京五輪誘致の不正疑惑により、フランス検察当局の捜査を受けている。 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会の理事長を務めた日本オリンピック委員会(JOC)前会長・竹田恒和氏は、18年に仏当局から事情聴取を受けた。東京五輪開催の実現を確約するために2億5,000万円を支払ったという疑惑のためだ。竹田氏は、19年6月にJOC会長を辞任。トカゲのしっぽ切りならぬ、頭のすげ替えで幕引きを図ろうとした。 だが疑惑の火種は、その後も燻り続けた。ロイター通信は3月31日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事で、電通元専務の高橋治之氏が、13年の招致成功までに820万ドル(約9億円)を東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会から受け取っていたと報じた。高橋氏は、国際オリンピック委員会委員らにロビー活動を行っていた。 ロイターの取材に対して、ロビー活動の一環として、デジタルカメラやセイコー社の腕時計をディアク氏に渡したことを高橋氏は認めた。しかし、「手ぶらでは行かない。それが常識だ」と述べ、国際オリンピック委員会の規定に反しておらず、良好な関係を築くための贈り物だとした。 ●不正疑惑のキーマンは元電通専務の高橋治之氏 高橋治之氏が、五輪の招致不正疑惑のキーマンである。高橋氏は、バブルの時代に「環太平洋のリゾート王」と呼ばれたイ・アイ・イ・インターナショナル総帥だった故・高橋治則氏の実兄だ。イ・アイ・イに巨額の融資をした日本長期信用銀行(現・新生銀行)の経営が破綻したため、治則氏は「長銀を潰した男」の異名をとる。 電通の第9代社長の故・成田豊氏の側近として、高橋氏は頭角を現した。1981年に、電通取締役になった成田氏は、海外のスポーツにビジネスチャンスを見出した。 転機は、84年のロサンゼルス五輪でスポーツに商業主義が持ち込まれたことだった。やがて巨大スポーツ利権ができた時代に合わせて、オリンピックだけでなくサッカーのワールドカップやF1などでも、放映権の卸売とスポンサー集めによる巨大なスポーツビジネスを成田氏は確立した。その実績が評価されて、成田氏は93年に電通の社長に就任した。「電通の天皇」と呼ばれるほどの権勢を誇った。 成田氏のもとで、30代のころから世界のスポーツ機関とわたりあい、数千億円規模ともいわれる放映権料の取引の最前線に立ってきた人物が、高橋治之氏である。電通のスポーツ利権を牛耳り、飛ぶ鳥を落とす勢いで出世階段を駆け上がり、専務取締役にまで上り詰めた。2009年に電通を退社して顧問になっても、海外がらみのスポーツ利権には必ず名前が出てくる。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事に名を連ねた。 ●黒幕の高橋氏が、姿を現した時 新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪の「危機」が起こり、“黒幕”だった高橋氏がついに表に出てきた。高橋氏は3月11日、米ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に応じ、新型コロナウイルスの世界拡大を受け、「今夏の東京五輪の開催が難しい場合は、大会を1〜2年後に延期することが選択肢になる」という見解を示した。 総理大臣や東京都知事でもない、一介の組織委員会の理事が、東京五輪の延期という重大な事柄をマスコミに公表する。東京五輪のキーマンだと知っているマスコミは、高橋氏の取材に殺到した。だが、事情を知らない一般人は、「この人は一体何者か」と呆気にとられていた。組織委員会のトップにも関わらず、ないがしろにされた会長・森喜朗氏が、「大事な時期に軽率なことをおっしゃった」と報道陣に不快感を示したことも無理はないだろう。 東京五輪招致から深く関わってきた高橋氏にとって、東京五輪は最後の大仕事だ。コロナ禍に居ても立っても居られなかったようだ。本来は影にかくれて画策することを本分とする“黒幕”が、姿を現した瞬間だった。 ●不磨の大典『鬼十則』が行動原理 広告会社の電通は、いかにしてフィクサー企業に大化けしたのだろうか。かの有名な不磨の大典『鬼十則』が、推進力になってきた。電通「鬼十則」は次の10項目(原文はカタカナ)である。 1.仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。 2.仕事とは、先手先手と働き掛けて行くことで、受け身でやるものではない。 3.大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。 4.難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。 5.取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは・・・。 6.周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。 7.計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。 8.自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらない。 9.頭は常に「全回転」、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。 10.摩擦を恐れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。 「鬼十則」とは、4代目社長で「広告の鬼」「電通中興の祖」と呼ばれる故・吉田秀雄氏が1951年に定めた10カ条である。吉田氏の最大の仕事は、民放ラジオ放送の立ち上げだ。吉田氏がお膳立てした民放ラジオは51年9月、名古屋市の中部日本放送(株)を皮切りに放送を開始した。当時、地方新聞社が民放ラジオ局を開局のために「人材援助」を求めてくれば、優秀な社員から次々と出向させて、出資にも応じた。民放ラジオ局の仕事を得るための実践論が、『鬼十則』である。 民法ラジオ開局時の吉田氏の先行投資は、テレビ時代に花開いた。「時間を売る」電波媒体を握った電通は、広告業界首位を不動のものにした。役所の仕事を請け負うようになっても、同じスタイルを踏襲した。裏方を送り込んで組織を舞台裏から仕切るのが、フィクサー企業電通のお家芸なのだ。 ●大マスコミにとって電通は最大のタブー 持続化給付金再委託問題、東京五輪の招致不正問題で、電通が一連の疑惑の中心にいることはわかっていても、マスコミが電通を追求することはない。広告収入に依存するマスコミにとって、電通は最大のタブーだからだ。電通には、クライアントに都合の悪い報道をコントロールする「裏の顔」がある。 企業は、自社のイメージダウンになる記事を差し止めたいが、めったなことで実現することはない。そこで、企業は電通にお願いする。電通マンは東奔西走し、差し止めが不可能なら、社名をイニシャルにしたり、見出しや広告から社名を消したりということを、マスコミの編集幹部に会って頼む。「記事の揉み消し業」も、電通の裏の仕事だ。 マスコミは、「電通の闇」を取り上げることはない。現場の記者がやりたいと考えても、営業から「待った」がかかるからだ。電通は、クライアントの広告をストップできる力をもつ。兵糧攻めに遭わないために、マスコミは「電通の闇」の報道を自主規制している。 電通は政界にウイングを伸ばし、政権与党である自民党の選挙向けの政党PRを一手に引き受けた。経産省や総務省の仕事も請け負っている。フィクサーを生業とする電通は、政官財界に隠然たる力をもつ「モンスター」に大化けしたのである。 ●再びガダルカナルの失敗に沈むコロナ対策と東京オリンピック 5/19 ●オリンピックが標的に いつからオリンピックはここまで軽いものになってしまったのだろうか。 新型コロナウイルス感染拡大への対応で、日本中が混乱し、疲弊している。緊急事態宣言を再三発出するが一部地域では感染は止まらず、15日には北海道、広島県、岡山県に宣言が追加された。 医療が逼迫していた地域では、さらに危機的な状況が迫っていると悲鳴が上がっている。決め手になると言われているワクチンの高齢者向け接種が始まったが、多くの地域で予約すら取れない事態が起き、混乱に輪を掛けている。特に連休明けにこの事態が各地で集中した。 時を同じくして、東京オリンピックを中止せよという主張が、政界やメディアから上がり始めた。 確かに国民のストレスは最高潮に達している。そこに大型イベントを開催するというのは、抵抗感があることは理解できる。しかし、それでも疑問に思うことがある。なぜ、オリンピック「だけ」なのだろうか。 日本国内では、プロ野球、Jリーグ、大相撲を始め、各種スポーツイベントが行われている。もちろん、無観客や客数制限があるのでその場にいってというのは、なかなか難しいだろうが、TV等の中継で楽しむ分にはいつもと何も変わらない。 日本だけではない。つい最近まで、日本よりも遙かに激しい感染に見舞われ、ロックアウトなどの、これも日本より遙かに厳しい行動制限を行っていた欧米でも、大リーグやヨーロッパ・チャンピオンズリーグの試合は問題なく行われ、TV等で世界中で観戦されている。これらのイベントに中止の圧力がかかっているようには見えない。 ●政局の材料になるくらい軽い存在 オリンピック中止の主張には、「このような時期に世界中から大勢の人が集まるイベントやって感染爆発を起こしたらどうするのか」があるが、観客を入れなければ先のスポーツイベントと理屈は変わらない。あとは選手団の防疫などで医療資源が必要な場合、医療全体への影響をどう判断するかだ。 無観客にするかどうかの判断も行われていない段階で、他のイベントが何も問題視されない中で、なぜオリンピックだけがやり玉に挙げられるのか。 一つには政治的な思惑があるのだろう。国家行事であるオリンピックは確かに政局の材料となるからだ。「裏暗い欲求不満」を持つ人々が存在するのは確かだ。 しかし、それ以上に残念に思っていることがある。「何のためにオリンピックを東京で開催するのか」、その意識が日本人の間で希薄になってしまっていることだ。政府も、「問題なく開催する」とは繰り返すが、開催することにどういう意義があるかについては説明しない。 悲しいことに東京オリンピックは軽い存在に成り下がってしまった。だからこそ「裏暗い欲求不満」のはけ口にされているのだろう。この理念も展望もなく進むというこの国のあり方、そこにオリンピックだけでなく、新型コロナ対策の混乱・疲弊の原因もあると考えている。 ●これが掲げた理念であった 今回の東京オリンピックの構想は、2008年の北京オリンピックへの支援の中で固まっていった。このころの北京市は大気汚染が深刻で、エチオピアのマラソン世界記録保持者が出場を辞退するほどだった。 ディーゼル車規制などの実績があった当時の石原慎太郎・東京都知事は、環境対策で協力を申し出た。そのなかから、招致に名乗り出る予定の2016年のオリンピックを、ディーゼル車規制で環境対策で進んでいた東京を前面に押し出した、環境オリンピックとしてアピールしようとなった。このときの招致運動は、開催地の決まる2009年に麻生内閣から民主党政権への政権交代があり、盛り上がりにも欠いて成功はしなかったが。 しかし、この後、2013年に決定する2020年オリンピックにも立候補することになった。この時期、世界的にも気候変動への危機感が高まり、2015年のパリ協定に向かう、持続可能性のある世界を求める大きな流れができていた。当然、環境をテーマとした。 北京との協力関係は、その後も続いていた。2013年には北京から使節団が東京に視察に来た。都知事になっていた私は、排ガス・工場排気規制についてそのノウハウを話した。彼らは持続可能性のある都市を作るため真剣に模索していた。そして結局、ドラスティックな転換を選ぶ決意をした。それが、全面的なEVの導入である。 ●北京の決断、東京の足踏み 今や、EVの販売台数で中国はトップに躍り出た。また、かつてあれだけディーゼルにこだわっていたドイツも、フォルックスワーゲンがディーゼル車検査のごまかしが発覚して経営危機に陥ったのを契機に、これも一気にEVへ舵を切った。アメリカもバイデン政権が脱炭素政策を打ち出した。もとよりテスラという先進的な企業が存在している。世界中で、この2年ほどの間にEVの販売が急進している。日本だけが足踏みしている。 持続可能性のある資本主義、世界市場が生まれようとしている。2013年当時よりも今現在の方が環境というテーマがより今日的になり、重くなっている。しかし、日本ではその環境をテーマにしていたはずのオリンピックが等閑に付されているのである。 そして、このとき東京都知事として招致活動の責任者となっていた私は、これに「健康」というテーマを加えた。日本人は平均寿命と日常生活が制限される活動できる健康寿命との差が、この20年近く男女とも8歳以上開いている。つまり平均8年は治療や介護を必要とする状況になる。 後に2020年、コロナ禍直前に上梓した「日本国・不安の研究」で解き明かしたように、日本は医療・介護の負担が膨大に膨れ上がっており、財政を圧迫している。スポーツに親しみ生活習慣病を抑え、健康寿命を延ばすことが、財政面からも日本社会にとって持続可能性を追求することになる。 2012年、IOCが行った覆面調査では国内のオリンピック開催支持率は47%だった。そこにこのようなテーマを掲げてキャンペーンを行い、8月のブエノスアイレスでのIOCの大会時には約90%にも上がっていた。 ●台無しになっていく過程 2020年の開催を勝ち取った後、招致委員会の会長だった私は、同理事長だった竹田恒和・JOC会長と2人で組織委員会の構想を練った。会長には張富士夫・トヨタ自動車名誉会長を予定していた。 しかし、この2人で作った組織図が外に漏れ、不満の声が上がった。そして2013年11月に私は都知事を辞職。2014年1月に組織委員会が設立された際、トップの会長には森喜朗・元総理大臣が座った。 そして新国立競技場建設費3000億円の問題が持ち上がった。当初、新国立のコンペを行うと決めたとき、1300億円程度の建設費と見込んでいた。決定後に費用が嵩んで膨れ上がることはままあるが、それでも2割程度とみていた。この3000億円という数字は森氏の仕切りの結果と言って良い。 森氏は文教族の政治家だった。文部科学省の外郭団体の日本スポーツ振興センター(JSC)が発注者だったが、国土交通省が行うべきだった。建設に素人のJSCでは請負業者の言うがままで、このような建設費になってしまった。 これが問題になったが、2015年に安倍政権が平和安全法制(集団的自衛権)の強行採決を図った直後の夜、安倍首相が森会長に新国立競技場建設計画の見直しを要請して方向転換となった。安倍首相としては、政治生命をかけた平和安全法制の成立が、こんな計画に足を引っ張られたくないと考えたのだろう。コンペはやり直しとなり1500億円の事業費となったもののクーラーがつかず、ウォッシュレットもない残念な建物になっている。 そして森氏は最後は今年になって女性差別発言が明らかになって辞任した。 そもそも、森会長は就任以来、一度も記者会見等で「何のためのオリンピックか」について、話したことはない。 森氏の辞任の後は、何のためにやるのか分からない、利権がらみのオリンピックというイメージしか残らなかった。森氏の罪は本当に重い。 そこにこの新型コロナウイルス感染拡大という非常事態が襲ってきたのである。 ●この泥沼と問題点は同じ 現在の新型コロナウイルス感染拡大に国民がいらだち、怒るのは当然だ。ここにも、全体に対する展望、対策方法への理念、そういったものが何もないのだ。何もなく、ただ事態の悪化と混乱だけが拡がっている。 有事に対するという認識が全く欠落してしまっているのだ。 昨年から感染拡大の阻止には、緊急事態宣言による行動制限の「要請」で対処しようとしている。しかし、同じ民主主義の欧米ではロックアウトのように行動制限は強制である。これには非常時には私権を制限するという発想がある。日本でも2回目の緊急事態宣言の際、罰則を設けようという動きがあったが、野党の反対等で潰れてしまった。罰則がなければ強制力はない。 そのせいか政府が次々と宣言を出しても、逆に規制はどんどんかからなくなってきており、感染の規模は大きくなってきている。ワクチン接種までの間、行動制限で持たせるはずが時間切れとなってしまったようだ。 肝心のワクチンも、日本は自国開発のみか海外製品の承認でも大きく後れをとった。これは薬害訴訟で国の敗訴が続き、当局がワクチンなどの予防接種に対し、トラウマを抱えてしまったことが大きい。 一方、海外では、炭疽菌テロ、エボラ出血熱、SARS、MARSなどの流行で、「感染症は有事、ワクチン開発技術は有事対応の武器」という認識が高まっている。この認識の差は、ワクチン確保のための初動の熱意の差にもはっきり表れた。 なにより、接種を全国の自治体で人口割りで均等に行うという発想がひどい。感染が深刻で周辺地域への影響が大きいのは東京と大阪である。なぜワクチンも医療関係者もここに集中して接種を行い、先に沈静化を図ろうとしないのか。火事が起きているのに、消火器のノズルを火元に向けず、全体に消化剤をばらまいているのと同じだ。 各地での接種でも予約受付の段階で、準備不足からかアクセスそのものが困難という事態が頻発している。 問題の全体像を把握しようとせず、弥縫策を続け、結局、戦力の逐次投入となって、泥沼に嵌まり疲弊する。第2次大戦のガダルカナルでの失敗をこの国は未だに繰り返している。 世界の主要国では、ワクチン接種の効果もあって、感染は沈静化の方向に向かっている。社会生活も経済活動も、平時に戻りつつある。そして、そこでは先に述べたように、持続可能社会に向けて、経済のあり方が劇的に変貌しようとしている。 そのときに、コロナ対策で泥沼に陥り、ワクチン接種すらままならず、そして、当初、環境、持続可能社会をテーマとして高々と掲げたはずのオリンピックが、その理念も忘れ去られ、邪魔者のように扱われている日本を見て世界はどう思うであろうか。これはもう先進国の姿ではない。 せめて、このコロナ禍の苦境を乗り切る象徴としてのオリンピックという志ぐらいは持てないのであろうかと思う。 |
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●山口香理事「IOCも日本政府も大会組織委員会も声を聞く気がない」 5/20
日本オリンピック委員会(JOC)の山口香理事(56)が19日、東京都内でインタビューに応じ、開催に否定的な世論が強い東京オリンピック(五輪)について「国民の多くが疑義を感じているのに、IOCも日本政府も、大会組織委員会も声を聞く気がない。平和構築の基本は対話であり、それを拒否する五輪に意義はない」と意見を展開した。 開催可否の判断については「もう時機を逸した。中止の準備をする時間はない。やめることすらできない」と現状を憂慮した。 ●東京五輪・パラで訪日の関係者 当初見込みの半分以下で調整 5/20 東京オリンピック・パラリンピックで海外から日本を訪れる選手と関係者について、感染対策の徹底を図るため当初見込まれていた20万人余りから半分以下となる9万4000人程度に絞り込む方向で調整が進められていることが分かりました。 東京オリンピック・パラリンピックで海外から日本を訪れる関係者について、大会組織委員会の橋本会長は先週「できるだけ削減すれば新型コロナウイルス対策を講じやすくなる」と述べ、削減を検討していく考えを示しました。 政府関係者によりますと、東京大会で海外から日本を訪れる選手と関係者について当初20万人余りと見込まれていましたが、感染対策の徹底を図るため半分以下となる9万4000人程度に絞り込む方向で調整が進められているということです。 ●東京五輪のコロナ対策「誰も疑念持たない」IOC書簡 5/20 IOC(国際オリンピック委員会)は東京オリンピック・パラリンピックでの新型コロナウイルス対策について「誰も疑念を持たない」とする書簡を発表しました。 IOCのコーツ調整委員長は19日、東京オリンピック・パラリンピックについて、選手やスポンサーらに宛てた書簡を発表しました。 大会における新型コロナ対策が「プレイブック」に定められていて、その徹底的な対策に誰も疑念を持つことはないとしています。 安全で安心な大会を実現し、「トンネルの終わりの光」にするため全力を尽くす義務があるとして、開催を不安視する声が上がるなか、改めて開催への決意を示しました。 また、困難な状況で大会を可能にする日本人の忍耐力や人生をかけて準備してきた選手を忘れてはならないとし、それが大会開催が必要な理由だとしています。 ●中国、東京オリンピック報道に向け3000人近く派遣へ 5/20 7月に開幕予定の東京オリンピックに向け、中国は3000人近くをオリンピック報道のために派遣する予定であることが分かりました。 中国国営の中央テレビによりますと、中央テレビや国営ラジオなどを運営する組織のトップと、国際オリンピック委員会=IOCのバッハ会長は18日、オンライン形式で会談しました。 その中で中国側は7月に開幕予定の東京オリンピックを報道するため、記者とディレクター500人以上を含む3000人近くを派遣する計画であることを明かしました。また中継用の機材は既に東京に到着しているということです。 東京オリンピックをめぐっては中国の習近平国家主席が今月7日のバッハ会長との電話会談で開催の支持を表明していて、コロナ対策と大会運営をどう両立させるのか中国でも注目されています。 ●「オリンピック期間中、セール企画は期間外へ」事業者へ協力要請 5/20 7月23日(金)から実施される予定の「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」。交通量の分散化・平準化のために国(農林水産省、経済産業省、国土交通省)や東京都、東京2020組織委員会は連盟で、事業者に対して「セール等販売促進企画の大会期間外への変更」などの協力を要請している。 現在、都内の道路交通は例年並みの交通量に回復。大会期間中は選手関係者が車両を使い移動することなどから、平年を上回る混雑の発生が想定される。 2019年11月に、東京都、国、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は「物流に係る御協力のお願い」を発出。2021年3月、大会の延期も含めて改めて物流事業者などに交通量の抑制、交通量の分散化・平準化などの取り組みへの協力を要請した。 国(農林水産省、経済産業省、国土交通省)や東京都、東京2020組織委員会は、以下の取り組み例を事業者に要請している。 ●交通量の抑制のための取組例 ・複数荷主の連携による倉庫の共同使用、共同輸配送 ・テナントビル等における集配業務の共同化 ・分散している複数荷主の物流拠点の統合による輸送網の集約 ・静脈物流の集約・効率化 ・輸送頻度の削減 など ●交通量の分散化・平準化のための取組例 ・十分なリードタイムでの発注による柔軟な輸配送時間帯の設定 ・十分なリードタイムでの発注による柔軟な輸配送ルートの設定(首都高速道路や都心に向かう一般道を使用しない輸配送ルートの設定) ・オフィス移転等大規模な物の移動が伴う作業の大会期間外への変更 ・セール等販売促進企画の大会期間外への変更 ・在庫調整による輸配送日の平準化 ・付帯作業見直しや検品作業の簡素化による納品時間の短縮、輸送の効率化 ・セール等販売促進企画の大会期間外への変更(渋滞が予想されるエリアへの配送について、拠点の変更や複数拠点からの配送等) ・納品時間の夜間への変更 など ●その他 ・特に渋滞が予想されるエリアにおいては、トラックの公道待機などによる渋滞悪化を防止するため、可能な限り「駐車スペースの確保」「スムーズな荷物の受け渡し」への協力 ●支えてくれたデニムの街へ恩返し 5/20 東京オリンピックの聖火リレーが19日、岡山県内で始まった。新型コロナウイルスの感染拡大で公道でのリレーは中止となり、聖火を隣の人に受け渡す「トーチキス」方式による代替の式典が岡山市の岡山城下の段で実施された。20日は津山市の津山中央公園グラウンドで、同様の方式で開催される。 デニム生地が特産の岡山県井原市で、縫製工場を営む佐藤美保さん(56)。走ることはかなわなかったが、聖火をつなぐ役割は果たした。式典終了後、「応援してくれた井原の人たちにトーチを見せ、五輪の雰囲気や楽しさを分かち合いたい」と胸を張った。 走り始めたのは6年前。「娘から、東京マラソンに一緒に出ようと誘われた」のがきっかけだった。地域でまちおこし団体の代表を務めており、周囲の薦めもあって、聖火ランナーに選ばれた。 縫製工場は約30年、夫とともに営み、デニムパンツなどを受託生産してきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が状況を一変させた。 東京五輪の延期が決まった後の昨年4月、工場への注文が来なくなった。新たな収入を確保しようと、夫は別の仕事を始めた。「工場は、残務処理が終われば閉めよう」と考えていた。「聖火リレーのことを考える余裕はなくなっていた」 苦境をしのぐ契機となったのは、関連業者の友人に誘われて始めたデニム地の夏用マスクの製造、販売だった。エコバッグのデザイン、製造など新規事業にもチャレンジしているうちに衣類の注文も入るようになった。「閉めるつもりだったのに、新しいミシンも入れて続けている」。厳しい経営環境をたくましく生きている。 福島県で聖火リレーが始まると、井原の人たちは晴れの舞台のためにと、応援の横断幕を作ってくれた。「暗い話題が多かったこの1年。私が走ることで地域のみんなに楽しんでもらえたら」 その思いは実現できなかったが、「周囲への恩返しに」と、聖火を受け取った後、最後に大きく一礼した。記念のトーチとユニホームは、地域の学校や公民館に展示してもらい、多くの人たちに見てもらうつもりだ。 ●米 東京五輪・パラへの対応で日本などと緊密連携の姿勢を強調 5/20 東京オリンピック・パラリンピックへのアメリカの対応について、ホワイトハウスの報道官は「われわれの立場は変わらない」と述べ、アメリカのオリンピック・パラリンピック委員会や日本側と引き続き緊密に連携していく姿勢を強調しました。 ホワイトハウスのサキ報道官は19日、外国メディアの記者向けにオンラインで会見を行いました。 この中でサキ報道官は、およそ2か月後に迫った東京オリンピック・パラリンピックについて「バイデン大統領はこの夏、安全・安心な大会を開催するための菅総理大臣の努力を支持し続ける」と述べ、先月行われた日米首脳会談の共同声明と同様の立場を示しました。 そして、新型コロナウイルスの大会への影響については「日本政府とIOC=国際オリンピック委員会は大会の準備にあたり、慎重に検討していることを理解している。日本政府は公衆衛生が最優先だと強調してきた」と述べました。 そのうえでサキ報道官は「われわれの立場は変わらない。アメリカのオリンピック・パラリンピック委員会や日本側と緊密に連携していく」と強調しました。 ●東京都医師会、オリンピック開催中止を求める書簡を提出! 5/20 医療組織のトップが、開催まで3ヶ月をきった東京オリンピック・パラリンピックを中止するよう声をあげている。新型コロナウイルスの感染が拡大しており、医療体制が十分とはいえないためだ。 約6000人のかかりつけ医が所属し、東京オリンピック・パラリンピックでは医療の要となる東京医師会は14日、国内での新型コロナウイルス感染拡大の現状を受けて、「都内の医師はすでに手一杯の状況であり、受け入れる余裕がほとんどない」と明らかにした。 その上で「我々は当局に対し、オリンピックの開催が困難であること、そして中止の決断をするべきだということをIOCに提案して欲しいと要求した」とし、菅総理大臣に書簡を送ったという。この内容は月曜、同グループのウェブサイトに掲載されている。 都内では現在、医療従事者や療養ベッドの不足が叫ばれており、3度目の緊急事態宣言も今月末まで延長されている。また、まもなく猛暑の季節が訪れることから、熱中症患者も増加することが予想される。書簡には、もしオリンピックが開催され、状況が悪化してしまえば「日本の責任は重い」とも記されていた。 昨年初めて新型コロナウイルスが国内で発生して以降、日本は世界に比べてその感染者数や死者数を大幅に抑えてきた。しかし現在、ワクチンの供給がスムーズでないことから、政権は批判にさらされている。現在のところ、日本国内でのワクチン接種率はわずか3.5%だ。 それでも菅総理大臣は、感染防止策を徹底しながら「安心・安全なオリンピックを開催する」と決意を述べている。しかし国内での五輪中止の声は今や70%以上と言われ、中止を訴えるオンライン署名は35万筆を超えた。テニスの大坂なおみ選手や錦織圭選手らも、開催可否について「議論すべき」とコメントしている。 日本国内での感染者数は月曜時点で3680人まで減少したものの、重症者数は1235人と、連日最多を記録している。 |
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●「緊急事態宣言下でも東京五輪を開催」 IOCコーツ副会長が表明 5/21 国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ副会長は21日、東京オリンピック・パラリンピックを緊急事態宣言下でも開催する考えを示した。大会の準備状況を監督するため、3日間の日程で開催された調整委員会後の記者会見で、「感染対策を講じることで宣言下であってもなくても安全安心な大会が実施される」と述べた。 コーツ氏は開催可能と考える根拠として、緊急事態宣言下の今月、東京都内で海外選手を招いて飛び込みや陸上競技などの大会が開催された事実を挙げた。「宣言下でもテスト大会が最悪の事態を想定した上で成功している。答えはイエスだ」と強調した。 専門家らで構成する政府の基本的対処方針分科会の舘田一博東邦大教授は21日、報道陣に個人的な見解として「東京で緊急事態宣言が出されている状況で五輪ができるとは思わないし、やってはいけないというのがみんなのコンセンサス」と述べた。 この発言の受け止め方を問われ、コーツ氏は世界保健機関(WHO)からのアドバイスやIOCが組織委とまとめた感染防止対策「プレーブック(規則集)」に触れ、開催は可能とした。会見に出席した大会組織委員会の橋本聖子会長も続けて「医学・科学の知見を結集して安全安心な大会を開催する。医療に支障をきたすと厳しいので徹底的に策を講じる」と訴えた。 橋本氏は海外から来日する大会関係者の数を延期前の18万人から約7万8000人まで削減したことを明らかにした。五輪が5万9000人、パラリンピックが1万9000人。 内訳は、五輪がIOCや国際競技団体(IF)などの関係者2万3000人▽五輪映像を制作して各国の放送局に配信する五輪放送サービス(OBS)関係者1万7000人▽メディア6000人――などの計5万9000人。パラリンピックは国際パラリンピック委員会(IPC)関係者やIFなど9000人▽OBS関係者4000人▽メディア2000人――などの計1万9000人。 橋本氏は大会関係者数の削減の徹底、行動管理・健康管理の徹底、医療体制の見直しの徹底を図る「3徹」を推進するとの方針を表明した。医療体制について、現時点で1日当たりの医師は最大230人、看護師は最大310人と想定。橋本氏は「全体の8割程度について(確保の)見通しが立っている」とした。各国・地域の選手団などに実施する検査について橋本氏は「1日最大5万〜6万件程度を想定している」と明らかにした。 ●東京五輪開催「意義がない」 JOC山口理事が“意見” 5/21 JOC(日本オリンピック委員会)の山口香理事が、東京オリンピック・パラリンピックの開催に対し、「意義がない」と厳しい意見を述べました。 山口理事:「国民の多くが疑義を感じているのに、IOC(国際オリンピック委員会)も、日本政府も、大会組織委員会も、声を聞く気がない。平和構築の基本は対話であり、それを拒否するオリンピックに、意義はない」 東京オリンピックの開催について、「意義はない」と厳しい意見を述べたのは、柔道の元世界女王で、JOCの山口理事です。 共同通信のインタビューに応えたもので、山口理事は、これまでもコロナ禍で開催する理由の説明や議論が、不足していることに、批判的な姿勢を取ってきました。 山口理事:「開催のための、その場しのぎの対策を展開するだけ。国民の安全を考慮しているとは、何一つ思えない。大きな溝がある」「応援したかった人が大勢いたにもかかわらず、あえて敵をつくるやり方をしてきたことが残念だ」 そして、開催するか、しないかの判断については…。 山口理事:「もう時機を逸した。中止の準備をする時間はない。やめることすらできない状況に追い込まれている」 中止に関しては、「色んなところへ迷惑が掛かりすぎる」と、関係機関との調整が多岐にわたり手遅れとの見解を示す一方、開催した場合は、医療を中心とした国民生活への影響は必至で、「やるも地獄、やらぬも地獄」と日本の置かれた現状を表現しました。 ●マクロン仏大統領 東京五輪開会式に出席の意向 主要国首脳で初 5/21 フランスのマラシネアヌ・スポーツ相は21日、フランス公共ラジオに出演し、マクロン大統領が7月に開催される東京オリンピックの開会式に出席する意向だと明かした。フランスは、2024年夏季五輪の開催国。主要国の首脳で東京五輪開会式への出席や観戦の意向が伝えられたのはマクロン氏が初めてとなる。 ●五輪中止で資金不足なら「都が補填」 丸川五輪相 5/21 東京オリンピック(五輪)・パラリンピックが中止になったら、どんな財政リスクがあるのか――。21日の閣議後の記者会見で、丸川珠代五輪相は「大会組織委員会が資金不足に陥ったら、東京都が補塡(ほてん)。都が補塡できない事態は想定しがたい」と語った。 会見で記者に「中止に伴う財政リスクについて協議していく時期ではないか」と問われた丸川氏はまず、「引き続き安全・安心を最優先に、大会に向けた準備を着実に進めていく」と述べた。 その上で財政的なリスクについて、大会招致時の立候補ファイルの内容に沿って「万が一、組織委が資金不足に陥った場合は都が補填する。都が補填しきれなかった場合、最終的に国が補填する」と、原則を説明した。 では、都が補塡できない場合とは――。具体例として、赤字補塡に伴う財政悪化で都が財政再生団体に陥った場合などを挙げつつ、「都の財政規模を踏まえると、都が財政的に組織委の資金不足を補填できないという事態はおよそ想定しがたい」と述べた。 現時点では、中止に伴って国には費用負担は及ばないとの見解を示した形だ。 一方、東京都の小池百合子知事はこの日の定例記者会見で、丸川氏の発言を把握しているとことわった上で、「現在、大会の成功に向け、関係者で協力しながら全力で準備を行っている。そういう中で想定外の事象が生じた場合は、IOC(国際オリンピック委員会)、政府、組織委を含めて協議が必要になると理解しております」と述べるにとどめた。 ●人生のどん底で“生きる力”をくれた東京オリンピック 5/21 東京オリンピック・パラリンピックの開催まで残り2カ月となった。5月のFNNの世論調査では「中止した方が良い」との回答が56.6%と過半数を超え、開催に厳しい見方が広がっている。アメリカでもメディアを中心に開催を危惧する声が相次ぐ。 そんな中、57年前の東京大会で金メダルを獲得したアメリカの元五輪代表がFNNの取材に応じ、選手の為に「開催する道を選んで欲しい」と東京オリンピックへの思いを語った。妻のパトリシアさんと共にオンラインでの取材に応じたのは、1964年の東京オリンピック、陸上男子1万メートルで金メダルを獲得したアメリカの元代表選手ビリー・ミルズさん(82)。 カリフォルニア州の自宅リビングには東京でお土産に買ったオリンピックのポスターが飾られていた。 ――日本の最新の世論調査では半数以上がオリンピック・パラリンピックの中止や延期を望んでいる現状についてどう思うか。 ミルズさん: 新型コロナウイルスの感染拡大の厳しい状況にあって日本国民の多くが延期や中止を望むことはとても理解できます。しかし、東京オリンピックの元代表選手として、また、オリンピックによって人生の挫折から救われた人間としては「開催して欲しい」という気持ちがあります。なぜなら、オリンピックは人々に勇気や希望を与える「きっかけ」となりうるからです。57年前に初めて東京に到着した時のことは今でも忘れられません。飛行機の中から見た富士山の美しい姿は、ネイティブアメリカンである私の故郷、サウスダコタ州のブラックヒルを彷彿とさせる荘厳なものでした。アメリカで人種差別を受け続けて育った私には、日本人の控え目さやひたむきな姿は私の部族ラコタ族に通じるものがあり、不思議とほっとした気持ちになったのを覚えています。オリンピックの開催をとおして日本のすばらしさを世界に知ってほしいというのが私の率直な気持ちです。 ――再び東京の地を踏む計画があるか? ミルズさん: 2021年の東京オリンピックは私にとって特別な意味があります。開会式には妻と娘、孫も連れて東京で見届けたいと考え準備もしていました。しかし、新型コロナの感染抑止という事で外国人観客を受け入れない方針が発表されたため、断念せざるを終えませんでした。これは仕方のない事です。きっといつか状況が落ち着いたら、思い出の地を巡るのが夢です。私は、日本にすっかり恋してしまったのですから。東京で食べたお寿司の味が忘れられず、アメリカに戻ってからも1964年からずっと週に1度はお寿司を頂いています。 ――ミルズさんはオリンピックによって人生の挫折を乗り越えることができたと述べているが、どのような経緯があったのか? ミルズさん: 私はサウスダコタ州にあるインディアン居留地で育ちました。幼いころから差別を受けて育ちました。白人居住者の多い街ではレストランに入っても水も出してくれず、1時間近く待たされたこともあります。私の母は8歳の時に亡くなったのですが。その時に父が私にこう言いました。「息子よ、お前の魂の翼は折れてしまった。その翼を癒すことができるのは夢だけだ」と。そしてその父も私が12歳の時に心不全で亡くなりました。私はどうすれば魂の翼を癒すことができるのかをずっと考えていました。そんな時に出会ったのが走ることだったのです。走っている時だけはあらゆる差別や苦しみから解放されたのです。東京オリンピックで陸上男子1万メートルに出場した時、私は無名の選手でした。誰も私が優勝できるとは思っていません。実際ゴールまでの最後の直線に入った時、私は3位でした。しかしその時、私は心の中で叫んでいました「翼、翼が欲しい!」気付いた時には、ゴールのテープを切っていました。 ミルズさんは自己ベストを約50秒更新する28分24秒4の当時のオリンピック新記録で金メダルを獲得した。陸上男子1万メートルで金メダルを獲得したアメリカの代表選手は未だにミルズさんただ一人という。ネイティブアメリカンとして人種差別の中で育ち、様々な苦しみを味わったミルズさん。それでも陸上競技に出会い、差別を乗り越える力を磨いた。ミルズさんが追い求めてきた魂の「翼」は東京オリンピックでの金メダルという形で、その胸に輝いた。全ての苦労が報われた瞬間だった。ミルズさんに生きる力をくれた57年前の東京オリンピック。2021年にも、多くの選手に同じ場所で感動を味わってもらいたいと願う。ミルズさんはインタビューの最後、日本の選手にこうエールを送った。 ミルズさん: 私はオリンピックに出場し、父が言ったように翼を再び得ることができました。私は、スポーツを通じた感動が人々の心をつなげ、また選手自身にも挫折を乗り越えるきっかけを与えると信じています。日本の選手の皆さんに申し上げたい、今は自分のことだけに集中して試合で最高のパフォーマンスを発揮してほしい。私の心は選手の皆さんと共にあります。 ●宇都宮氏「東京五輪中止要望書」を菅首相、丸川五輪相、橋本会長に提出 5/21 弁護士で日弁連元会長の宇都宮健児氏が21日午前、菅義偉首相と丸川珠代五輪担当相、橋本聖子組織委員会会長宛てに、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの中止を求める「東京五輪中止要望書」を提出した。 内閣府に続いて、組織委員会を訪れた宇都宮氏は感染拡大が続く中で「貴重な医療資源や財源をオリンピック・パラリンピックに割くことになれば、助けられる命も助けられなくなる」などと、組織委員会前で語った。 5日から大会中止を求めるオンライン署名を呼びかけ、21日午前までに約37万6000筆以上の署名を集めている。 すでに14日には、国際オリンピック委員会(IOC)と、東京都に対して、中間報告と中止要望書を提出している。宇都宮氏は「50万筆に到達した時点、または7月12日のIOCバッハ会長の来日などに合わせ、何度でも中止の要望書を提出していきたい」とした。 ●緊急事態宣言拡大でも菅首相「安全なオリンピックを行いたい」 5/21 菅首相が新型コロナ拡散による日本国内の緊急事態宣言の拡大にもかかわらず、東京オリンピック開催の意思を曲げなかった。 NHKによると21日、菅首相は緊急事態対象宣言の対象地域拡大を決定した後で取材陣と会い、「選手や関係者の感染防止措置に万全を期し、安全で安心な大会にしたい」と話した。以前と同様、オリンピック強行の意思を再確認したということだ。 日本メディアによると日本政府はこの日、新型コロナ対策本部会議で緊急事態宣言の対象地域に沖縄県を追加した。緊急事態宣言は当初、東京都、大阪府、京都府、兵庫県の4地域を対象に発令されたが、12日に福岡県と愛知県、16日に北海道、広島県、沖縄県が対象地域に追加された。 今回、沖縄県が対象地域に加わったことで、緊急事態宣言の対象地域は10か所に増えた。最も後で対象地域に追加された沖縄県は19日、新型コロナの新規感染者が203人と集計されるなど、状況が深刻化している。 菅首相の確固たる意思にもかかわらず、東京オリンピックの開催はもとより、緊急事態宣言が予定通り解除されるかどうかも不透明な状況だ。菅首相は緊急事態宣言の解除時点などについて「感染状況を最後までよく調べて月末ごろに判断する」と述べた。 ●「独島が日本の領土」韓国教授、東京五輪HPの地図の修正をIOCに要求 5/21 「反日教授」と言われている韓国誠信女子大のソ・ギョンドク(徐ギョン徳)教授が、東京オリンピック(五輪)公式ホームページ上での竹島(韓国名:独島)表記を正さなければならないというメールを国際オリンピック委員会(IOC)に送ったことがわかった。 ソ教授は21日、報道資料を通じて該当メールをIOCのトーマス・バッハ会長と韓国を除く205か国のIOC全体加盟国に送ったと明らかにした。 ソ教授は「以前、東京五輪ホームページに聖火リレーのコースを紹介する日本地図には島根県の上に小さな点を打ち、独島が日本領土のように表記されていた」と主張した。 「韓国政府や民間団体が絶えず指摘した結果、日本は全国地図デザインを変更。訂正された日本地図は、肉眼で見ると独島表記が消えたような措置が取られたが、地図を拡大してみると、独島が日本領土のように表記する小細工が施された」との説明だ。 ソ教授は「(韓国で開催された)ピョンチャン(平昌)冬季五輪当時は、日本が『統一旗(朝鮮半島の形の旗)』に描かれた独島をIOC側に抗議した。IOCの勧告により韓国は独島を抜いた統一旗を持たなければならなかった。日本にまた不意打ちを食らった」と伝えた。 また「東京五輪を通じて、独島を自国の領土として広報しようとする日本の行為をIOC加盟国に正確に伝えて、日本の迅速な措置を引き出そうとした」と付け加えた。 ●東京五輪・パラの必要な医療体制 1日最大で医師230人、看護師310人 5/21 東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会は21日、大会中に必要な医療体制について1日最大で医師が230人、看護師が310人程度必要になると発表した。 大会の準備状況を話し合う国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会後の会見で橋本聖子会長が明かした。 橋本氏は「全体の8割で見通しが立った」と話した。地域医療に影響が及ばないよう、医師は各競技団体を通じて確保したスポーツドクターを主体とする。また、看護師は現役ではない潜在看護師を含めて依頼するとした。 大会指定病院は都内で9カ所から内諾を受け、都外では20カ所と調整を進めている。選手団や大会関係者への検査は1日最大5万〜6万回を想定していることも明かした。 ●五輪の医療体制 1日で医師230人 看護師310人必要と想定 組織委 5/21 東京オリンピック・パラリンピックに向け医療体制が課題となる中、大会組織委員会は大会運営に必要な医師と看護師について、1日最大で医師が230人程度、看護師が310人程度となる想定を明らかにしました。 これは21日、IOC=国際オリンピック委員会と大会組織委員会などが東京大会の準備状況を確認する3日間の会議を終えて組織委員会の橋本会長が記者会見で明らかにしました。 組織委員会は大会運営に必要な医療体制について延期前の計画で期間を通じて医師や看護師など1万人程度が必要だとしていましたが、3割程度を削減し7000人程度を目指しているということです。 橋本会長は現時点で1日最大で医師が230人程度、看護師が310人程度となる想定を明らかにし、このうち関係機関などとの交渉により8割程度が確保のめどが立ったということです。 橋本会長は「新型コロナの対応をはじめ地域医療に支障をきたさない形で人材確保を進めたい」と述べました。 また、橋本会長は来月に判断する観客の扱いについては「観客を入れるかどうかは感染状況による。国民の皆さんやアスリートをはじめとするすべての皆さんが安心安全を実感できないかぎりは非常に難しい。医療体制を含めて支障をきたさないと理解してもらえなければ難しいと思っている」と述べました。 さらに橋本会長は、選手団とは別に海外から訪れるIOCやメディアなどの大会関係者の人数は、オリンピックで5万9000人、パラリンピックで1万9000人の合わせて7万8000人になる見通しを明らかにしました。 延期前の計画の合わせて18万人から半数以下に削減されたとしています。 一方、IOCのコーツ調整委員長は東京大会が緊急事態宣言の出されている期間と重なる場合に開催されるのかという質問に対し、今月、陸上や飛び込みなどのテスト大会が行われたことなどを根拠に開催できるという認識を示しました。 組織委員会は、現時点で1日最大230人程度とする医師は、スポーツドクターを主体に確保し、1日最大310人程度とする看護師は、資格を持ちながら職場を離れている、いわゆる「潜在看護師」を含めて協力を求めていくとしています。 また、選手や大会関係者が、けがを中心にコロナ対応を含めて必要な際に受け入れてもらうための指定病院について、東京都内の9つの病院はおおむね内諾を得て、東京都以外の20の病院については協議を続けているということです。 さらに選手団や大会関係者の新型コロナの検査は、1日最大5万件から6万件程度を想定しているとした上で、公的な検査体制に影響を与えないよう鼻の奥を拭う検査から唾液による検査に切り替えるなどして民間業者への委託を進めていることを明らかにしました。 組織委員会は大会運営に必要な医療体制について、新型コロナの対応に追われる地域の医療に支障がないよう整備を進める考えを強調しました。 ●オリンピックまであと2か月……開催可否についてスポーツ界から 5/21 東京オリンピックの開幕まであと2か月となった(開会式は7月23日)。 6月の強化試合に臨むサッカーの日本代表(U−24日本代表)のメンバーも発表になり、年齢制限のないフル代表のキャプテンの吉田麻也やボランチの遠藤航、それに長くフランスでプレーしているためアフリカ系との対戦経験が豊富な酒井宏樹がオーバーエイジ枠としてメンバー入りした。オリンピック世代ながらフル代表で吉田とセンターバックコンビを組んでいる冨安健洋を含めて、強力な中央での守備ラインが形成できそうだ。 これまで、オリンピックの度にオーバーエイジの起用を巡ってトラブルが起きた。インターナショナルマッチデーに行われるフル代表の試合と違ってオリンピックの場合、クラブが招集を拒否できるからだ。とくに、代表クラスの選手の多くがヨーロッパのクラブに所属しているため、オリンピックへの招集は困難になっている。だが、今回はフル代表とオリンピック代表が兼任であること、そして、日本サッカー協会が選手が所属する各クラブと粘り強く交渉を進めてきたことで最強のメンバーを選ぶことができたようだ。 オーバーエイジも加わって、いよいよ準備も本格化。2か月後のオリンピックが楽しみになってきた。……と言いたいところだが、新型コロナウイルス感染症の拡大は今も続いており、「オリンピックは本当に開催できるのか?」という疑念は晴れていない。 世論調査などではオリンピックの延期または中止を求める声が高まっているが、一方でIOC(国際オリンピック委員会)も日本国政府も少なくとも表面上は東京大会を開催する意向を崩していない(実際には世論の動向を見ながら、誰が「中止」を言い出すのか様子見をしているのだろうが)。 感染症は収まる兆しもないし、頼みのワクチン接種も想定されていたよりはるかに遅れている。そんな状況で、本当に大会が開催できるのか? 中止すべきではないかという声が上がるのは当然のことだ。 オリンピックとパラリンピックでは、選手を含めて10万人近くの外国人が来日するので、感染拡大を引き起こすリスクも高い。選手だけなら宿舎(選手村)と競技会場、練習会場だけに行動を制限して外部との接触を遮断することもできるだろうが、「関係者」の中には政府要人やスポンサー関係、さらにいわゆる「スポーツ貴族」と呼ばれるIOCなど各スポーツ団体の役員などが大挙してやって来るのだ。彼らが、日本の当局の行動規制に従順に従うとも思えない。 もちろん、大会を開催しても関係者が協力して感染の拡大を防ぐことは可能なのかもしれない。だが、同時にオリンピックが原因となって感染がさらに拡大してしまう危険も存在するのだ。オリンピックは、そんなリスクを冒してまで強行すべきイベントだとうは思えない。 もし可能であるなら、もう1年の延期。それができないのであれば、中止を決断すべきであろう。 来年(2022年)にはサッカーのワールドカップも開催されるが、幸いなことに来年のワールドカップはカタール開催となったために11月に開催される。つまり、オリンピックをもう1年延期して2022年7月に開催しても、ワールドカップとバッティングすることはないのだ。 ところで、オリンピックの開催問題はIOCと政府の問題なのではあるが、スポーツ界は当事者として何らかの声を上げるべきなのではないだろうか。すべてを一任して「政府がやるといったらやる。政府が中止と言ったら諦める」などという態度は無責任としか言いようがない。 それでは、ソ連のアフガニスタン侵攻によってアメリカがボイコットし、日本政府もそれに追従した1980年のモスクワ・オリンピックの時と同じことではないか。この苦い経験を経て日本オリンピック委員会(JOC)は日本体育協会(現在は日本スポーツ協会)から独立した。そして、あの時、オリンピック参加の道が閉ざされたために号泣した柔道の山下泰裕が現在のJOC会長なのだ。 しかし、スポーツ界からは2021年の東京大会の開催の是非について、ほとんど声が上がってこない。息を潜めて、あるいは不都合なことには目を閉ざして、政府の決定をじっと待っているようだ。 そんな中で、テニスの錦織圭は記者会見で「死人が出てまでも行われることではない」と語ったし、大坂なおみも「もしオリンピックが人々を危険にさらすのであれば、今すぐに議論すべき」と語ったと伝えられている。 至極常識的で、真っ当な意見だ。 錦織や大坂がこうした発言ができたのは、テニス・プレーヤーにとってはオリンピックという大会が最高の大会ではないからでもある。彼らにとっては、何よりも「グランドスラム」と呼ばれる四大大会が最高の目標であり、オリンピックはそれに準じる大会だ。もちろん、東京で開催されるので今年の大会は錦織や大坂にとっては特別のものではあろうが……。 同様に、プロ・スポーツとして確立されている人気競技の場合はオリンピックというのは最高の大会ではない。 男子サッカーではオリンピックというのはあくまでもU−24の大会でしかないし、野球人にとってはプロ野球のペナント争いの方がずっと大事。アメリカのメジャーリーグの選手はオリンピックには出場すらしない。バスケットボールはアメリカのドリームチームをはじめ、NBAの選手が各国代表としてオリンピックにも参加するが、NBAのタイトルの方が大事なのはあたりまえのことだ。 錦織や大坂がオリンピック開催の可否について、はっきりとした口調で語ることができたのは、彼らにとってオリンピックは最高の目標ではないからであり、また個人競技なので所属団体への遠慮もいらなかったからだろう。 だが、プロとして確立されていないスポーツ。あるいは、人気が低迷しているいわゆるマイナー競技の選手や団体にとってはオリンピックの持つ意味は非常に大きい。 オリンピックの時には全国民が注目するのに、オリンピックが終われば誰もが忘れてしまい、テレビ中継もされなくなってしまう。そんなマイナー競技の選手たちにとっては、オリンピックで好成績を上げて人気を獲得していくことはまさに死活問題だ。こうした競技の団体や選手たちは、オリンピック開催の可否について発言できるわけはない。 しかし、日本のスポーツ界の中心にある日本スポーツ協会やJOC、あるいは各競技団体(とくにメジャー競技の団体)のリーダーたちには、スポーツ人としての意見を表明できるはずだ。それが、国民の共感を得ることにつながるし、それが日本のスポーツの将来にとって大きな財産となるはずだ。 もし、スポーツ界が何も語らないままオリンピックが強行開催されて感染の再拡大を招いてしまったとしたら、責任追及の声はIOCや政府だけでなくスポーツ関係にも向いてくるだろう。そうなったら、日本のスポーツ界は国民の支持を失ってしまう。 黙って、唯々諾々と政府の言いなりになるのはもうよそう。 ●宣言下で東京五輪 できる?できない? 分かれる専門家とIOC 5/21 緊急事態宣言下で東京オリンピック・パラリンピックは開催できるか――。21日、開催の可否を巡り、感染症対策の専門家と国際オリンピック委員会(IOC)の見解が分かれた。 専門家らで構成する政府の基本的対処方針分科会の舘田一博東邦大教授は21日、報道陣に個人的な見解として「東京で緊急事態宣言が出されている状況で五輪ができるとは思わないし、やってはいけないというのがみんなのコンセンサス」と述べた。 この発言についての見解を問われ、IOCのジョン・コーツ副会長は世界保健機関(WHO)からのアドバイスやIOCが組織委とまとめた感染防止対策「プレーブック(規則集)」を挙げて、「感染対策を講じることで宣言下であってもなくても、答えはイエスだ」と反論し、開催は可能との認識を示した。 大会組織委員会の橋本聖子会長も「医学・科学の知見を結集して安全安心な大会を開催する。医療に支障をきたすと厳しいので徹底的に策を講じる」と訴えた。 ●五輪「もしやったら、日本は滅亡するのでは」…市長が危機感 5/21 「命を守ることが一番だと思うので、オリンピックには反対」――。埼玉県坂戸市の石川清市長は20日の定例記者会見で、記者からコロナ禍での東京五輪開催の賛否を問われ、反対の考えを明らかにした。 石川市長は、新型コロナウイルスが感染拡大する現状について「感染症との戦いの中でも異常なものだと思う」との認識を述べた。 五輪については「感染者は昨年よりずっと多い。変異型も出ている。国はやる方向だと思うが、もしやったら日本は滅亡するんではないかな、と思うくらいの危機感を抱いている」と語った上で「政治家は嫌われても、決断するときはするべきだ」として、中止の考えを訴えた。 |
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●「news23」、IOCコーツ委員長の東京五輪開催「イエス」に「驚きの発言」 5/22 21日放送のTBS系「news23」(月〜木曜・午後11時、金曜・午後11時半)で、東京五輪パラリンピックの準備状況を監督する国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会と、大会組織委員会などによる合同会議が21日、最終日が行われ、終了後に記者会見したIOCのコーツ委員長は報道陣からの「五輪パラの開催期間中に緊急事態宣言が発令された場合に、大会は開催されるか」との質問に、「質問に対する答えはイエスだ」と断言したことを報じた。コーツ委員長は「ここまで5万4000人の選手が参加した430のイベントが安全に行われた。テスト大会は宣言下で行われ、成功裏に終えた」と主張した。 また、コーツ委員長は「(バッハ会長は調整会議の初日に)選手村に居住する予定になる80%の関係者がワクチンを接種するとお伝えした」とした上で「選手村に滞在する人の80%がワクチンを打ち、検査も行います。96時間前に検査を受け、到着後も検査を受ける。最初の14日は毎日検査を受ける。ただ、ワクチンが広がるのはうれしいが、ワクチンに依存しているわけではない。定期的な検査こそが、テストイベントがうまくいったことですし、他のイベントにおいても検査が有効だと思っている。特に関心を持っているのは選手村で接触の可能性がある方々。主催者とともにどう運用するか検討する。大変重要なテーマであることは忘れていない」と説明した。 国内世論が五輪を歓迎していないことについて、コーツ委員長は「できうる限りのことをやっており、日本国民の安全を担保している。相関関係はあるかもしれないが、パーセンテージは日本国民のワクチンのパーセンテージと関係があるかもしれない。ワクチンのパーセンテージが上がると世論調査は良くなるかもしれない。我々としては自分たちの仕事をやるだけ。日本国民にとって、安全な大会となるよう、自分の仕事をするだけ」と述べた。 また、番組では菅義偉首相が21日、官邸で小池百合子都知事と会談し東京五輪の開催の見通しについて「オリンピックについて感染拡大防止にまず全力を尽くし、安全・安心な大会にすべく引き続き協力しよう」などと述べたことも伝えた。 今回のコーツ氏の発言をスタジオで小川彩佳キャスターは「今夜、IOCのコーツ委員長は緊急事態宣言下の東京オリンピックについて完全にイエス、開催できる、と驚きの発言をしました」とコメントした。さらに「今日も菅総理は安全・安心の大会を、と繰り返しましたが、これまでの政府の対応を見ますと緊急事態宣言の相次ぐ延長ですとか、とにかく見通しの甘さが目立つように思います。本当に安全・安心の大会が開催できるのか、この見通しだけは間違えないでいただきたいです」と指摘していた。 ●IOC、緊急事態宣言下でも東京五輪は開催 5/22 国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長は21日、たとえ東京で新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が発令されていても、7月23日に始まる予定の東京オリンピックは実施すると発言した。日本では現在、東京をふくめ9都道府県で緊急事態宣言が出ており、23日からは沖縄にも適用される。 コーツ氏は、大会組織委員会とのオンライン会合後に記者会見し、「緊急事態宣言下でも、5競技のテストイベントが実施され成功してきた」と述べ、「選手や日本の人たちの安全を守るために整えてある計画はどれも、最悪の事態を想定したものなので、(緊急事態宣言の中で五輪が開けるかという質問への)答えは、絶対にできるだ」と話した。 「世界保健機関(WHO)からの助言や、すべての科学的助言は、私たちがプレイブックで明示した措置の全てが、健康面で安全な大会の確保に十分だと示している。それは緊急事態宣言中かどうかに、かかわらずだ」 東京など9都府県で現在発令中の緊急事態宣言は5月31日が期限だが、沖縄県への宣言は今月23日から6月20日まで。日本政府は、9都府県の緊急事態を延長するかどうかは今月末に判断するとしている。 日本国内では最近の各種世論調査で、回答者の8割以上が東京五輪を「中止」もしくは「延期」するのが良いと答える、あるいは6割近くが「中止」と答えるなどの結果が出ている。 日本政府はかねて東京オリンピック・パラリンピックについて、「国民の命や健康を守り、安全安心の大会を実現する」と強調し続けている。 日本国内で大会開催を支持する声が少ないことについて聞かれたコーツ氏は、「日本でワクチン接種を受けた人の割合が低いことと、一部の(世論調査の)割合との間に相関性があるかもしれない」と答え、「ワクチン接種数が増えれば世論調査結果も世論も改善すると期待している。しかし、たとえそうならなくても、我々は自分たちの仕事をしっかりやるしかない。自分たちの仕事とは、大会が全ての参加者と日本の全ての人にとって確実に安全なものになるようにすることだ」と話した。 イギリス・オリンピック委員会は、代表選手とスタッフは全員、東京へ向かう前に完全にワクチン接種を済ませることになると発表した。 同委員会は、「イギリス政府はIOCやファイザー/ビオンテックとの合意を通じて、オリンピックとパラリンピックのイギリス代表選手たちとスタッフは、2020年東京オリンピック・パラリンピックの前にワクチン接種を完全に終えることになると確認した。これは、選手・関係者がそれぞれ仕事のため日本に渡航しなくてはならないという、特異な立場にあるためだ」と説明。「この合意にもとづき、選手・スタッフが受けるワクチンはファイザー社から直接入手するものとなり、イギリス市民のために用意された現在の供給量には影響しない」という。 昨年12月に医療従事者や高齢者を優先して始まったイギリスのワクチン接種事業は、今では34歳以上が対象となっている。 ● コーツ氏の発言から、IOCの側から東京五輪を中止することはないというのが、かなりはっきりした。新型コロナウイルスの感染者が急増した東京は現在、緊急事態宣言下にある。日本政府は高齢者へのワクチン接種を始めたが、今のところ1回目の注射を受けた高齢者は約5%にとどまっている。日本の高齢者は3600万人だ。7月23日の大会開始までにその全員の接種を済ませるには、残された時間は少ない。 ●仏マクロン大統領 東京五輪の開会式に出席へ 5/22 次のオリンピック・パラリンピック開催国であるフランスのマクロン大統領が東京大会の開会式に出席すると明らかにしました。 フランスのマラシネアヌスポーツ担当相は21日、ラジオ番組で7月23日の東京オリンピックの開会式にマクロン大統領が出席すると述べました。 また、自身とブランケール教育相も時期をずらして東京を訪れるということです。 各国には東京への派遣人数を抑えることが求められていますが、2024年のオリンピックの開催地であるパリに聖火を引き継ぐため、必要だとしています。 また、フランス選手団にもワクチン接種を進めているとして「明日のことは分からないが、参加者のほとんどが接種を受け、良い方向に向かっていると思う」と話しました。 ●東京五輪児童・生徒81万人観戦計画に変更ナシ「誰が責任をとるのか」 5/22 IOCのコーツ調整委員長が21日の会見で、“緊急事態宣言下”でも大会を開催できると明言し、五輪開催がいよいよ濃厚になってきた。現時点で観客は入れる見込みで、学校の引率により、児童・生徒らも観戦予定だ。都教育委員会によると、“コロナ前”に策定された東京都内の公立小・中・高校などの生徒ら約81万人が観戦する計画については、「現時点で撤回する予定はない」といい、先日も教員らによる「集団下見」が実施されたばかり。保護者や教員からは不安の声が上がっている。 「新年度の保護者会で年間スケジュールが配布されたのですが、観戦行事がしれっと組み込まれていて、この状況なのに行くのかと驚きました。5月末に予定されていた運動会は最近延期が決まったばかり。運動会は延期で五輪は変更がないのはちくはぐだと思う」 戸惑いを隠せないのは中野区の50代女性だ。年間スケジュールによると、小学5年の息子が8月上旬のパラリンピック競技を観戦する予定になっているという。 「こんな状況なら、やめたほうがいい。テレビでの観戦で十分」 各学校で予定されている観戦行事は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が児童・生徒らが大会を観戦するために低価格でチケットを用意する「学校連携観戦プログラム」を活用したもの。都は観戦を希望する学校を募り、組織委が発行する「五輪連携観戦チケット」を必要な枚数分、購入する。都の教育委員会によると、同プログラムを活用した観戦の計画については、コロナ前の18年に都によって策定された。19年8月時点で、都内の公立学校(幼稚園・小学校・中学・高校・特別支援学校)の約81万人の生徒が観戦する予定だった。 今年度予算として「学校連携観戦」の関連事業費に41億円を計上しており、この予算からチケット代が捻出される予定だ。 しかし現在は、第4波が到来し、変異株が猛威を振るう状況。団体での観戦となると子どもたちへの感染リスクが心配だ。この「学校行事」は、全校生徒もしくは学年単位での活動が対象で、必然的に大人数での移動となる。保護者らが不安になるのも無理はない。 小学2年の子どもの保護者の江戸川区の30代男性は、「中止が妥当だと思っていた。こんな状況で生徒を連れていくことが驚き」と話す。学校行事のスケジュールによると、娘が8月のパラリンピック競技を観戦予定だが、できれば参加させたくないという。 「100人単位の子どもを感染リスクから守りつつ連れていくには、無理があると思います。実は娘は喘息持ちで、これまでも電車移動は避け、遠出も控えていました」 こうした保護者らの不安をよそに、都は計画の遂行に向けて動いている。都は昨年12月、参加を希望していた学校(児童生徒数およそ81万人)に対して、新たな日程を示した通知(「東京2020大会における子どもの競技観戦にかかる配券・割当案について」)を出した。コロナ前と変わりなく、生徒らの移動は、電車などの公共交通機関を使うという。 さらに、4月から今月にかけて教員らを集め、緊急事態宣言下で「会場の下見」を行っていた。校外学習に出かける場合は「実地踏査」という下見が必要だからだ。都は参加人数を明かさなかったが、教員らに配られた案内資料によれば、5月10〜11日に行われた国立競技場の下見だけでも約770人の教員が参加予定となっていた。 都は感染対策を講じていたと主張する。 「今回は各校1人までとし、任意での参加。それでも数が多いので、午前・午後に分け、さらに小グループに分けて、密にならないよう感染対策をしたうえで行っています。参加しない人には動画で確認・下見できるように用意しています」(都教委・指導企画課の担当者) 実際に国立競技場での下見に参加した練馬区の小学校に勤める30代の男性教諭に、当日の話を聞いた。この男性教諭が行動を共にした“小グループ”は40人ほど。組織委の担当者を先頭に、並んでトイレや出入り口を確認していったという。 この日は大人が気を付けていたので密にはならなかったというが、会場の下見をする中で、観戦当日に子どもたちが適切な距離が保てるのかどうか、不安を感じたという。 「慣れない会場に行けば、席が隣り合った子同士でしゃべってしまうと思います。トイレの引率時も心配です。各自で行くと迷子になってしまうので、百人以上の生徒を数十人ごとに分けて引率することになります。トイレは狭い空間ですし、観客もいれば密になります」 そして、なにより心配なのは、会場までの電車移動だという。 「電車で都心に出るような校外学習は、したことがほとんどありません。たいていは貸し切りバスを使うので、教員も含め、電車での集団移動に慣れていないのです。観客が入るとなれば、駅の混雑が予想されます。『電車に乗り遅れないか』『迷子にならないか』『一般の乗客に迷惑をかけないか』と心配は尽きないのに、さらに感染対策にも気を付けないといけないなんて……」 組織委に対しては、厳しい意見を寄せる。 「児童・生徒の観戦は中止にしてほしい。この状況で行くことに、まったく理解ができません。生徒にチケットを配布して各家庭で連れていけばいいのに、なぜ学校で行かなければいけないのか。大人数で動けば、当然感染リスクを伴います」 都によれば、今後も複数回の実地踏査が行われる予定だという。 現時点では計画は「敢行」されるようだが、今後の感染状況によっては、生徒らの安全確保が必要な事態も想定される。観戦計画を遂行するか否かの最終判断は、いつ、誰がするのだろうか。 「学校連携観戦プログラム」は組織委の企画事業で、都は自治体のひとつとして参加する形をとっているという。都としては、「通常通りの実施を想定して動いています」(都教委)といい、現状では、組織委が大会の開催中止か無観客開催を決めない限りは、観戦計画を実施する見込みという。 「組織委が観客の上限数を6月中に出すそうで、ここで無観客の判断ならば実施できません。観客を入れるのであれば、都としては観戦計画を実施する予定です。観客を入れるということは、ある程度コロナが収まっているということ。もちろん、各学校が区市町村の教育委員会と相談した上で観戦を見送る場合もあります。都はその判断を尊重します」 なお、児童・生徒らの五輪観戦は、学習指導要領の「特別活動」の「学校行事」のくくりとして扱われる。遠足や修学旅行といった学校行事と同じように、参加がなければ「欠席扱い」になってしまうのか。 「コロナに対する不安から、観戦を控えたい生徒さんもいると思います。彼らが不利益を被らないよう、各校の校長の裁量で何らかの配慮をしてもらうよう、通達しました。例えば、課題学習に取り組むことで出席扱いにするなどです」(都教委の担当者) 観戦計画に対する思いについて、担当者はこう話す。 「目の前でトップアスリートの活躍が繰り広げられたら、子どもは心の中に人生の糧となるような、かけがえのないレガシーを残せるのではないか。ただ、感染状況によって安心安全の確保ができない場合は、当日キャンセルも可能にするなど準備を進めています。子どもたちの安心安全は十分に配慮したいです」 せっかくの日本開催。見せてあげたいという気持ちもわからないでもないが、冒頭の保護者は、今は不安の気持ちが勝るという。 「安全な環境のもとでならいいと思いますが、感染が広がった今はそんな状況ではない。真夏ですし、マスクを付けながらでは熱中症も心配。子どもはあまり症状が出ないですし、無症状のまま家庭に持ち帰って感染を広げないかといった不安もあります」 子どもの気持ちも、すっかり冷めているという。 「もともとスポーツが好きで、コロナ前はパラ競技を体験して楽しむなど盛り上がっていましたが、今は『見に行きたくない』と口にしています。小5なので、ニュースを見て感染状況もわかっていますし、意外と冷静です。本人が行きたくないと言えば、たとえ欠席扱いになってもその気持ちを汲んであげたい」 子どもを預かる立場の学校の教員らの本音はどうか。先の男性教諭が職員室の温度を明かす。 「乗り気な人など誰もいません。正直言って負担です。授業の学習形態や(検温や消毒など)生活様式も変わったので、指導することも増えていますし、神経も使います。どんなに対策をしても、かかるときはかかる。五輪観戦で感染したとなった時に学校のせいにならないか。一体だれが責任を取るのでしょうか」 万が一の場合、心のレガシーどころではないはずだ。状況に応じた冷静な判断が求められている。 ●東京オリンピック「中止」「再延期」が6割超 毎日新聞世論調査 5/22 毎日新聞と社会調査研究センターは22日、全国世論調査を実施した。 東京オリンピック・パラリンピックについては、「中止すべきだ」が40%で最も多く、前回(29%)から11ポイント増加した。「再び延期すべきだ」は23%(前回19%)で、「中止」と「再延期」を合わせて6割を超えた。海外からの観客を入れずに開催する現在の方針について、「妥当だ」は20%(同34%)で、「国内の観客も入れずに無観客で開催すべきだ」は13%(同14%)、「わからない」は3%(同4%)だった。 東京五輪の開催と新型コロナウイルス対策は両立できると思うかとの問いでは、「両立できると思う」は21%だった。「両立できないので新型コロナ対策を優先すべきだ」は71%にのぼり、「両立できないので東京五輪を優先すべきだ」は2%、「わからない」は6%だった。国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ副会長は21日、緊急事態宣言下でも東京五輪を開催すると明言したが、国内世論とは大きな開きがあるようだ。 3月から全都道府県を巡る聖火リレーが行われていることについては、「続けてほしい」は16%にとどまり、「無理に続ける必要はない」は71%だった。「関心がない」も13%あった。聖火リレーは開会式が予定される7月23日まで続くが、ランナーの辞退が相次いでいるほか、新型コロナの影響で公道での開催中止が目立っている。 調査は、携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)機能を使う方式と、固定電話で自動音声の質問に答えてもらう方式を組み合わせ、携帯695件・固定337件の有効回答を得た。 |
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●橋下徹氏、五輪開催に「イエス」のIOCコーツ委員長に不快感… 5/23
元大阪府知事の橋下徹氏が23日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」(日曜・午前7時半)にリモート生出演した。 番組では、東京五輪パラリンピックの準備状況を監督する国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会と、大会組織委員会などによる合同会議が21日に最終日が行われ、終了後に記者会見したIOCのコーツ委員長は報道陣からの「五輪パラの開催期間中に緊急事態宣言が発令された場合に、大会は開催されるか」との質問に、「質問に対する答えはイエスだ」と断言したことを報じた。コーツ委員長は「ここまで5万4000人の選手が参加した430のイベントが安全に行われた。テスト大会は宣言下で行われ、成功裏に終えた」と主張した。 橋下氏は、コーツ氏の発言を「全く納得できませんね」とした上で「僕は感染対策をきちっとやって、民間事業との公平性…オリンピックだけやって、民間事業の方は全部止められるのは納得できませんし、医療状況の逼迫(ひっぱく)性というものも度外視した形でやるのは納得できませんが、いろんな諸条件を全部整備した上で何とかオリンピックやっていくことは模索してもらいたい」と明かした。 さらに「もうひとつ重要なのは、国民感情ですよ。オリンピックっていうのは国家を上げての祝典なわけですから、みんなの気持ちが気分良くオリンピックやらないと、成り立たないと思う」とした上で「コーツさんもバッハさんも何なんですかね?この人は。日本人の国民性を全く分かっていないと思います」と断じた。 ●東京五輪開幕まで2カ月「一定の観客いれて」意見強まる 5/23 東京オリンピック開幕まで23日であと2カ月となりました。焦点となっている観客数に関して一定の観客を入れて開催するべきだという意見が強まっていることがわかりました。 収束のきざしの見えないウイルスの脅威のなか開催の是非が問われている東京オリンピック・パラリンピック。今月21日まで3日間にわたって行われた大会組織委員会などによる合同会議のあと、IOC=国際オリンピック委員会のコーツ調整委員長は、緊急事態宣言が発令された状況でも大会の開催が可能という認識を示しました。 焦点となっている観客数の上限に関しては、無観客を避け一定の観客を入れて開催するべきだという意見が政府や大会組織委員会で強まっていることがわかりました。これは複数の大会関係者が明らかにしたもので会場での感染対策は可能だとして「観客あり」に傾いているということです。 開幕まであと2カ月となったなか街からは開催について肯定的な意見が聞かれました。 ●PCRの結果間に合わず、スケボー五輪予選出場の日本女子全員棄権 5/23 スケートボードの東京五輪予選対象大会「デュー・ツアー」は22日、米アイオワ州デモインで行われ、ストリート女子の準決勝は西村碧莉あおり、織田夢海ゆめから日本勢の全7選手が棄権した。複数の関係者によると、直前に日本代表スタッフの新型コロナウイルス感染が確認され、選手たちはPCR検査で陰性と判明したものの、検査結果が試合に間に合わなかったという。同男子の準決勝は、堀米雄斗が73・00点の3位で決勝に進んだ。 ●平野歩夢選手 スケボーで東京五輪出場へ 5/23 冬のオリンピックで2大会連続の銀メダルを獲得している、村上市出身の平野歩夢選手が東京オリンピックの代表入り内定を確実にしました。 アメリカ・アイオワ州で行われたスケートボードの「デュー・ツアー」。東京オリンピックの選手選考の対象となっている大会です。平野選手は現地時間で21日、男子「パーク」の予選に出場しました。スケートボードの「パーク」とは制限時間内にコースを自由に滑り、技の難易度や独創性などを競う競技です。結果は68人中26位で予選敗退となりましたが、オリンピック予選の世界ランキングで日本人トップになったため代表入り内定が確実となりました。 平野選手はスノーボードで銀メダルを獲得したソチと平昌オリンピックに続き、スケートボードで3度目のオリンピックに出場することになります。 ●枝野氏、五輪「命を犠牲にしてまで」 バッハ会長発言で 5/23 立憲民主党の枝野幸男代表は23日、同党の富山県連大会にオンラインで出席し、「命を犠牲にしてまで五輪に協力する義務は誰にもない。命を犠牲にしてでも五輪に協力しろなどと迫る権限は誰にもない」と述べた。 枝野氏の発言は、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が「五輪の夢を実現するために誰もがいくらかの犠牲を払わないといけない」と述べたとの報道を受けたもの。枝野氏は県連大会のあいさつで「国民の命を守ることを最優先にできないのであれば、五輪は延期なり中止をせざるをえない。そういう状況にあることをバッハ会長自身の発言で確信している」と強調した。 一方、衆院選に向けては「無所属や国民民主党でともに戦っていただける皆さん、ほぼ決まりつつある候補者を合わせれば、小選挙区で定数の半分、つまり過半数を取りうる候補者をひとつのチームとして国民のみなさんにお示しして戦う構造はほぼ完成している」とし、政権交代をめざす決意を改めて示した。 枝野氏はこれまで衆院選の擁立目標について「公認、またはそれに準ずる方で総定数の過半数を小選挙区で立てたい」と述べるにとどめており、連携して過半数の擁立をめざす党名には触れてこなかった。 ●五輪のために日本は、東京は犠牲を払うべきなのか 5/23 “時の人"として急浮上だ。東京五輪の開催を二カ月後に控え、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が22日の一部報道で、国際ホッケー連盟のオンライン総会で「五輪の夢を実現するために誰もがいくらかの犠牲を払わないといけない」と発言。予定通りの開催を強調したことにネット上では憤りの声があふれ、「バッハ会長」がトレンドワードに入った。 バッハ会長は「東京がようやく間近に迫った今、最後のカウントダウンが始まった。この困難な時期に私たちはリカバリー、団結、多様性について強いメッセージを送る必要がある。東京はトンネルの終わりに光を放つだろう」と主張し、「アスリートは間違いなく彼らの五輪の夢を実現できる」と語ったという。 ツイッター上では「オリンピックは犠牲を払って開催するものなのか」「今までで一番悪質な発言では? いくらかの犠牲って五輪のために多少人が死んでも仕方がないってことだよ」「明るい光なんてまったく見える気配がないけど」「ならバッハ会長自身は、一体どんな犠牲を払うんでしょうか?」など憤る声が相次いだ。 ●「東京五輪・パラリンピックは中止すべき」信濃毎日新聞社説 5/23 信濃毎日新聞社は5月23日付の社説で、東京オリンピック・パラリンピックを中止するよう政府に求める意見を表明した。医療体制の崩壊、開催意義の喪失、国民分断の3点をあげて、「東京五輪・パラリンピックの両大会は中止すべきだ」と訴えた。これまで海外メディアからは五輪の中止を求める意見は出ていたが、日本のメディアが中止すべきと表明したことは、踏み込んだ対応と言える。 社説では、新型コロナウイルスの感染拡大で東京などで緊急事態宣言が発令されていることや医療への負担、経済的に追い込まれている人たちの存在に触れ、「7月23日の五輪開幕までに、感染状況が落ち着いたとしても、持てる資源は次の波への備えに充てなければならない」と指摘。「東京五輪・パラリンピックの両大会は中止すべきだ」と訴えた。ワクチン接種の状況について「予防効果が高まるとされる『集団免疫』の獲得はおろか、開幕の時期までに高齢者への接種を終えるめども立っていない」と疑問を呈した。 また、海外観客の受け入れ断念や、選手との交流も見込めないことから、「各国から集う人々が互いに理解を深め、平和推進に貢献する五輪の意義はしぼみつつある」とも指摘した。さらに、菅義偉首相がバイデン米大統領との共同記者会見で、五輪開催を「世界の団結の象徴」と位置づけたことに対して、「何のための、誰のための大会かが見えない」と批判。「反対の世論は収まらず、賛否は選手間でも割れている。開催に踏み切れば、分断を招きかねない」と懸念を示した。 最後に「国民の命と暮らしを守る決断が、日本政府に求められる」と結んだ。 同社の丸山貢一論説主幹は5月23日、度重なる緊急事態宣言の発令を踏まえて「ここ1、2カ月の間、論説委員の中で議論してきた」とハフポスト日本版の取材に説明。「開催が迫ったいまのタイミングで出すべきだと判断した」と語った。 ●立民 枝野代表 医療体制確保できなければ五輪中止か延期を 5/23 開幕まであと2か月となった東京オリンピックについて、立憲民主党の枝野代表は、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、十分な医療体制が確保できなければ、中止か延期にせざるをえないという認識を示しました。 立憲民主党の枝野代表は、23日、党の富山県連の大会に、オンラインで参加してあいさつしました。 この中で枝野氏は、新型コロナウイルスへの政府の対応について、「『Go Toトラベル』の中止や緊急事態宣言の発出の判断など後手に回っていて、根拠なき楽観論で進めていると言わざるをえない」と批判しました。 そのうえで、開幕まであと2か月となった東京オリンピックについて「医療体制がオリンピックに取られることで救えるかもしれない命が失われたら取り返しがつかない。国民の命を守ることを最優先にできなければ、延期や中止にせざるをえない」と述べました。 ●テレビ局は五輪中止を半ば織り込み済み すでに通常番組で穴埋め準備 5/23 東京オリンピック・パラリンピックは、もはや「大会中止決定のXデーはいつか」だけが話題だが、気が気でないのは、660億円の放送権料を払い、空前の放送態勢を敷いているNHKと民放テレビ各局だろう。中止になれば、放送権料は戻ってくるとしても、カネをかけた準備はすべて吹っ飛び、予定していたオリ・パラ番組の代替も必要、あてにしていた関連CMは入ってこない。 ところが、キー局の編成局幹部は「全然、心配していませんよ」なんて話す。中止は半ば織り込み済みということもあるが、五輪放送のスタイルが大きく変わったからだ。 「これまでは競技ごとに各局が中継していたのですが、今回からは集中放送日を決めて、担当テレビ局がその日の競技を朝9時から夜11時までぶっ通しで放送します。日本テレビ系が4日間、TBS系、テレビ朝日系、フジテレビ系が3日間、テレビ東京系が2日間です。大会が中止になっても、細々と穴埋めせず、集中放送日にそっくり通常編成でレギュラー番組を流すだけで対応できます」(編成局幹部) すでに、それを見越して、夏ドラマは前倒しで収録を進めていて、バラエティーは6月から撮りだめする。NHK朝ドラも競技と重なるのは男子競歩ぐらいで、大会中に日曜日は3回あるが、どう転んでもいいように、大河ドラマを最終的に何話にするか、まだ決めていない。東京オリ・パラが中止になっても、テレビ各局は「去年のような大混乱にはもうならない」(テレビ雑誌デスク)そうだ。 中止はCM営業にはマイナスだが、最近はオリンピックは必ずしも売れ筋コンテンツではなくなってきているという。 「陸上、競泳、体操といった人気競技でも、日本の選手やチームがメダルがらみにならないと、スポットCMは集まらなくなっています。準決勝になってようやく埋まるという状態ですよ。ましてや、今回はしらけムードですから、大会前にCM枠が埋まるのは、開会式、女子マラソン、池江璃花子さんの出場種目、陸上男子400メートルリレーぐらいでしょう」(広告代理店オリンピック担当) 直近のロンドン、リオデジャネイロの2大会は、放送権料の高騰とCM営業の不振で、民放全体では赤字に転落した。東京大会の放送権料はさらに高く、「どんなに広告を取ってきても、元が取れないと初めから覚悟している」(前出の編成局幹部)。それでも、視聴率が付いてくるならいいが、それも大して期待できないようだ。 「オリンピック好きは中高年が多いですから、世帯視聴率はそこそこの数字を稼ぐでしょうが、若者層の関心が反映する個人視聴率は超低迷ということが予想されます。スポンサーによっては、オリンピックではなく、若者受けするドラマやバラエティーをやってくれと言ってくるかもしれませんね」(前出のテレビ雑誌デスク) テレビにとっても、東京オリンピック・パラリンピックはうまみの少ないオワコンというわけだ。 ●東京五輪開幕まで2か月 観客の扱い・医療体制など重要課題山積 5/23 東京オリンピックの開幕まで23日であと2か月となりました。国内の観客の扱いは来月まで決まらず、新型コロナウイルスを踏まえた医療体制への調整が続くなど重要な課題がなお山積していて、安全な開催に対し国民の理解を得られるかが問われています。 7月23日の東京オリンピックの開幕まであと2か月に迫りました。 しかし、大会の準備の前提となる国内の観客の扱いはいまだ決まらず、大会組織委員会や政府、東京都は変異ウイルスの感染状況を見極めながら、国内のイベントの観客の上限に準じて来月に決めるとしています。 また大会の医療体制について、組織委員会は、医師や看護師などの数を3割程度削減し、期間を通じて7000人程度を目指していますが、まだ2割程度は調整が続いていて、コロナへの対応を迫られる地域医療への影響を懸念する声も根強くあります。 さらに、IOC=国際オリンピック委員会が、大会中には選手村に入る選手や関係者の80%以上がワクチン接種をしている見通しを示した一方、感染防止を定めた行動ルールがどれだけ守られるのかといった実効性も懸念されています。 組織委員会の橋本会長は、海外からの人数削減と行動や健康の管理、それに医療体制の構築の3つを徹底することで安全で安心できる大会にしたい考えです。 東京大会は残り2か月となってもコロナをめぐる重要な課題が山積していて、安全な開催に対して国民の理解を得られるかが問われています。 ●東京五輪選手団へのワクチン接種の動き加速 開幕まで2か月 5/23 東京オリンピックの開幕まで23日で2か月です。新型コロナウイルス感染の収束が見通せない中、選手や指導者など各国や地域の選手団へのワクチン接種の動きが加速しています。 2か月後に迫った東京オリンピック・パラリンピックに向けIOC=国際オリンピック委員会や大会の組織委員会は「安全で安心な大会の開催」を強調しています。 その一環として、IOCを中心に選手や監督・コーチといった参加者へのワクチン接種を進めていて、これまでに製薬大手のファイザーなどのワクチンが各国や地域のオリンピック委員会を通して無償で提供されることになったほか、南北アメリカの各オリンピック委員会が加盟する団体は1回で接種が終わるワクチンを6000人分確保してアメリカの空港で接種できる体制を整えています。 IOCのバッハ会長は選手村に入る選手や指導者などの80%以上が大会前にワクチンを接種するという見通しを明らかにしています。 一方、国内でも選手団のワクチン接種に向けた動きが本格化しています。 JOC=日本オリンピック委員会などは一般の接種とは別に提供されるファイザーなどのワクチンの接種を来月から始める予定です。 対象はすでに代表に内定している選手や内定の可能性がある選手、指導者などのスタッフで、接種は強制ではなく希望制としています。 一般の医療体制への影響を避けるため、会場は多くの選手が拠点とする東京 北区のナショナルトレーニングセンターとし、各競技団体のチームドクターの協力を得て、接種を進めようと競技団体と調整を行っています。 東京オリンピックの開幕まで2か月となり選手団へのワクチン接種の動きは加速していますが、感染拡大が続く中で開催への理解がどこまで進むのかといった課題は残されています。 ●五輪・パラ 海外選手の禁止薬持ち込み認める法案 成立目指す 5/23 東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、超党派の議員連盟は、日本への持ち込みが禁止されている覚醒剤の成分を含む薬を、病気の治療のために使用が欠かせない選手に限って持ち込みを認める法案をまとめ、今の国会での成立を目指すことにしています。 東京オリンピック・パラリンピックでは、参加する予定の海外の選手のうち、ADHD=注意欠陥多動性障害の治療のため、日本への持ち込みが禁止されている覚醒剤の成分を含む薬を使用している人が10人余りいるということです。 このため、自民党や立憲民主党などの超党派の議員連盟は、IOC=国際オリンピック委員会からの要請も踏まえ、この薬の使用が欠かせない選手に限って、大会期間中の前後に持ち込みや使用を認める特例措置を盛り込んだ法案をまとめました。 議員連盟は、今の国会での成立を目指していますが、野党側からは、ほかの合法な薬で代用できるのではないかという指摘に加え、東京大会の開催そのものに慎重な意見も出ていることから、法案の取り扱いをめぐり与野党の調整が行われる見通しです。 ●バッハ会長の緊急事態宣言 ”無視” 方針で国民の自粛破り加速か 5/23 国際オリンピック委員会(IOC)が日本の緊急事態宣言を無意味≠ニ判断したことで、国民の自粛破りが加速しそうだ。 IOCのぼったくり&はったり男爵コンビ≠ェついにパンドラの箱を開けてしまった。 トーマス・バッハ会長が「五輪の夢を実現するために、誰もがいくらかの犠牲を払わなければならない」と発言し、ジョン・コーツ副会長は緊急事態宣言が出されている中でも東京五輪を開催すると断言した。 この発言に日本国民の怒りが爆発。ネット上では「五輪のための自粛ならしたくない」「国民のことよりそんなにオリンピックが大事なんですか。もう自粛はしない」「大運動会のためなら自粛なんてしない!ばかばかしい」などと新型コロナ禍で強いられる自粛をやめると宣言する声が相次いだ。 IOCのトップが直々に緊急事態宣言が何の意味もなさないと指摘したうえ、日本国民には不当な我慢を強いようとしているのだから、こうした声も当然だろう。たまりにたまっていた国民の不満にIOCの男爵コンビの発言が火をつけたことで、今後、国民が日本政府や東京都からのお願い≠ノ聞く耳を持たず、堂々と自粛破りを行う動きにつながりそうだ。 国民をコケにし続けるIOCや大会組織委員会。もはや国民の我慢は限界だ。 |
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●五輪実現のため「犠牲払わなければ」バッハ会長が発言 5/24
新型コロナウイルスへの懸念で中止論が高まっている東京五輪を巡り、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が、五輪開催を実現するために「われわれは犠牲を払わなければならない」と述べたと、インドのPTI通信が23日までに報じた。「われわれ」に日本人を含める意図があるのかは不明だが、国民感情に配慮を欠く発言として反発を招きそうだ。 22日に開かれた国際ホッケー連盟のオンライン総会であいさつした際の発言という。IOCは21日、コーツ調整委員長が緊急事態宣言下でも開催するとの意向を示し波紋を広げたばかり。 バッハ氏は、海外からの一般観客受け入れ断念を決定した3月にも、声明で「誰もが犠牲を払わないといけない」と強調し、日本側の判断を尊重するとしていた。 ●反対の声も強まる東京五輪 医学アドバイザーが考える開催の条件とは? 5/24 緊急事態宣言が延長され、なかなか感染者数が減らない中、7月に控えた東京五輪の開催に反対の声が強まっています。世論調査では開催に反対の声が過半数の6割に達し、東京五輪の開催中止を求める署名には30万人以上が署名しました。カウンターで開催を支持する署名活動も始まるなど、混乱が起きています。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が「五輪の夢のために誰もが犠牲を払わなければいけない」と発言したとの報道もあり、「これ以上犠牲を払わなくてはいけないのか」などとさらに反発の声は強まっています。 新型コロナウイルス感染症対策分科会構成員で、東京オリパラにおける新型コロナウイルス感染症対策調整会議のアドバイザーも務める川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんに改めて、いま開けるのかどうか聞きました。 ●東京が今の大阪の状態であれば「開催は困難」 ――このインタビューシリーズで何回も東京五輪について質問してきました。最近はオリパラの会議には出られていますか? 3月のインタビュー以降は、内閣官房の調整会議が12月以来、久しぶりに4月に開かれました。これは東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、東京都、国、オリンピック・パラリンピックの競技会の代表などが参加している大きな会議です。それとは別に、組織委員会が感染症の専門家数人を集めたラウンドテーブルも開かれました。 ――どんなご意見を言われたのですか? 僕の意見は以前と変わっていません。みなさんまだオリンピックを「All or Nothing(完璧な形でやるか、中止するか)」で考えているのではないでしょうか。つまりこれまで開催してきた形式の盛大な祭典としてのオリンピックができるか、できないか、で議論がされているのではないかと思います。調整会議では、開催するならばまず「地元の自治体の医療と保健所などに、過剰な負担をかけることは避けること」を条件とすべきだと提言しています。感染者が出た時に、濃厚接触者をたどっていく積極的疫学調査や、クラスターの検査を行ったり、感染者の療養先を探したりすることを地元の保健所がやるのは大変です。そこに圧迫がないようにすることは開催への一つの条件としています。そこで、選手村には、選手村保健所のようなものを作ることが考えられています。もちろん入村時(来日前、入国時、入村後)の検査をどうやるかも規定ができてきています。また、選手たちは基本的には高齢者ではなく、医学的にも重症化リスクが低い人々なので、感染しても重症者が多数出る、ということはないように思います。パラリンピックは少しオリンピックとは少し違った考え方が必要だと思いますが、中等症以上の選手患者で病院がいっぱいになることは考えにくいと思います。ただし、7月の開催時期に、東京が今の大阪のような感染の広がりと医療の状態になっているならば、私は「オリンピックという祭典」の開催は困難ではないかなと思います。患者発生状況、医療体制状況がともにステージ4というような状態でも、同様に考えます。ステージ4は緊急事態宣言となるので、医療体制はぎりぎりになっています。なんとかこの状態を食い止めないといけません。そのためには全体の患者数を抑えることにエネルギーを向ける必要があると思います。医療体制がぎりぎりだとすると、一般医療への圧迫が生じ、例えば大会中の熱中症の人を搬送する救急車がなくなり、収容先の医療機関が見つからなくなります。 ●「開く・開かない」の2択ではなく ――しかし、逆に今の状態から回復していたらまだ開催できる余地はあるということですか? 「オリンピックをやる・やらない」という議論ではなく、流行のフェーズ(段階)がどのあたりならば、フルスケールの開催なのか、ハーフスケールの開催なのか、ベリーリミテッド(とても限られた)開催なのか、ベリーベリーリミテッド(かなり限られた)開催なのか、という議論があっていいと思います。しかし、いつまで経っても「オリンピックを開催するのか・しないのか」の2択での対立した賛否論が表立っています。オリンピックの本質は何か、のそもそもに関する議論が必要だと思います。外国からのお客は入れないということは既に一つ決まっていることですね。 ――ただ、無観客であっても、選手の関係者や報道陣は数万人来日すると言われています。その人たちは、市中のホテルに泊まり、街に出るリスクが懸念されています。 ベリー・ベリーリミテッドな開催で、選手と選手を世話をする人に限ればできるかもしれないと思っています。メディアを多数招くのは無理でしょうね。限られたメディアが代表で取材する形にするなど、相当制限をかける必要があるのではないでしょうか。オリンピックのために海外から来る人は検査をし、行動制限をし、どこかに出かけるためには事前に届け出ることにはなっています。しかし、メディアの質、姿勢は失礼ながら様々なので、制限をかけざるを得ないのではないかと思います。 ――これまでは変異ウイルスがなかった時の議論だと思います。日本でも変異ウイルスが猛威を奮っている状況で、今後流行がどうなるのか専門家でさえ見通せない状況になっています。東京五輪はかなりリスクの高いイベントではないでしょうか? もちろん、感染対策だけ考えれば、「開催しない」という決断が一番簡単でいいと思います。政府がやらないと決めてくれれば、医学アドバイザーの僕もかなり楽になる。でもどうしてもやるとしたら、どういう方法があるかが問われています。感染が一定以上広がっている場合には、オリンピックの基本は何かということを考えたうえで、ベリーまたはベリー・ベリーリミテッドで開くというのが考えられ得る方法ではないかと思っています。ベリー・ベリーリミテッドで開くなら、「オリンピックとはそもそも何なのか?」という基本を考えなければいけない。国際的な競技の場の一つとしてオリンピックを開くのか。選手の中でも、「お客さんがいないなら意味がない。力が発揮されない」と言い出している人もいますね。競技をやることと、お客が見てくれることとどちらを優先させるかという選択ならば、おそらく選手はお客さんを選択はしないでしょう。また彼らは、技を競うためにかなり制限のかかる厳格な生活を受け入れています ――開催に反対な人の一部は、池江璃花子選手に「辞退しろ」という言葉をかける人まで出てきています。そういう圧力を選手に向けることについてどう見ていらっしゃいますか? 悲しいですよね。本来は選手がそうした雑念を払って、余計な事に捉われずに一生懸命試合で力を発揮できる環境を整えないといけません。でも、お祭り的なオリンピックがまず想定されていますが、オリンピックの本質は何かを考えて、スケールを考えてはどうかと思います。 ●感染症の専門家としての判断のしどころは? ――開催するかしないかは来月に決めるということですが、来月に7月下旬の状態を予測できるのですか? ギリギリまで待って「来週からの東京五輪は取りやめます」というならば簡単です。感染対策の視点からは現実が見えているので、意見を言いやすい。でもそんなギリギリまで待っていたら開催の準備はできないでしょうね。1ヶ月前なら判断できるのか、2ヶ月前なら判断できるのかは、僕ら感染対策の立場の人間ではわからない。楽観的に捉えてもいけないし、悲観的に捉えてもいけない。五輪開催には色々な要素があり過ぎます。様々な契約、用意、経済、国際問題にもかかわることでしょう。 ――感染症の専門家が、流行状況を見通して判断できるギリギリのラインはどれぐらい前なのですか? そこの意見も割れるところです。ステージ4なら無理というのは共通理解といってよいと思います。その頃にはステージ4は脱することができるかもしれません。しかし、今の状態から良くなって、またリバウンドということもあれます。ステージ2なら、フルスケールは無理でも限られた形でならできるでしょう。問題はステージ3です。判断が難しい。上向きのステージ3なのか、下向きのステージ3などによっても異なると思います ――ステージ3の場合、開催してすぐステージ4になったら目も当てられないですね。 はい。そうですね。 ――さらに1年延期したとしたらできそうですよね? その頃にはワクチンも行き渡っているでしょうし。 秋に延期でも、ずいぶん可能性は広がるかもしれません。でもそれが可能かどうかは私の方ではわかりません。 ――その代替案は議論されないのですか? そういう議論があるかないかは、私は知りません。 ――新型コロナのような特殊な状況があったんだから、2年延期でもいいじゃないかと思いますけれどもね。 選手のコンディションは別として、もう半年から1年くらい延ばしてもいいじゃないかと感染対策の視点では思いますよね。1年後だったらワクチンも行き渡り、医療も対応に慣れているでしょう。ただ、悪いシナリオをあえて想定すれば、そのころは先進国では収まっていても、開発途上国では流行しているかもしれません。これは誰も予測できません。今、ここにある医療体制の逼迫をどうする? ――五輪を心配するより先に、現在の大阪、神戸は大変な状況になっていますね。神戸では、血中酸素飽和度(SpO2、血液中の酸素量)が70%台(正常値は96%以上)にならないと入院できないと発表もありました。 SpO2が70%台でようやく入院というのはきついですね。かなり厳しいと思います。 ――現実的に医療が逼迫している大阪、神戸では、治療を諦める人、治療する人の命の振り分け、トリアージが現場で始まっているという声も聞きます。 災害医療のようになっていますので、新型コロナで亡くなる人を防ぐのか、手を施しても亡くなる人は亡くなる方に向かわせるのか。医の倫理に関わる判断をしなければなりません。昔は、そういう判断がしょっちゅうありました。僕が受け持っている患者の中で誰を再優先するのか。人工呼吸器や人工透析器など限られた機材を誰に使うのか。一人で当直をしている時に救急車が複数台来て、さっと見てだれを先に診るのか考え、次の来院を断る、などです。 ――それは今現場にいる医師の裁量に任せていいものなのでしょうか?医師の考えによって患者の命が左右されかねません。 僕が現場の医師ならば自分で判断するしかないと思うでしょうね。ただ、それを他の人に強いることはできません。 ――酷な判断になると思います。 医療の本質は酷なんです。それぐらいの覚悟を持たなければいけない。けれども、今の時代はあとでどうなるかも考えなければいけないので難しいですね。またその判断を周辺が理解してくれないとできないことです。 ――燃え尽き症候群が出てくるのではないでしょうか? 出てくるでしょうね。実際、そのようになった後輩もいました。人に言えないだけに負担は重いです。でも医師とはそういう職業でもあります。個人の医師にそういう負担をかけないために判断基準を客観的に決めておくにしても、法律でぎちぎちに線引きをすると現場が余計大変になることがあります。現場には裁量権を持たせなければいけません。それを理解していただきたい。余裕がないと柔軟な判断ができません。繰り返しますが、医療というのは苦しいものです。看取りの医療は別として、今の医療は基本的に死なせる医療ではない。生かす医療です。僕らが若い時の医療は、限界を前にしてダメだと諦めることもある医療でした。先日、ある高齢者施設の医師が言っていましたが、万一の時に患者に自分で「人工呼吸器を希望する・希望しない」「点滴する・しない」という希望を事前に聞いておくことがありますね。「希望しない」とサインした人でも、新型コロナの場合は「治してほしい。手を尽くしてほしい」と希望する人が多いそうです。「コロナでは死にたくない。家族にも会えず、看取りもしてもらえずに死ぬのは嫌だ」ということです。そのまま寂しく死にたくないから呼吸器もつけてほしいと願うのです。医療が進歩した分だけ、難しい問題もまた増えてきているのだと思います。 ●我慢の先に希望がある 制限の解除方法も議論 ――最後に一般の人へのメッセージをお願いします。 それでも、私は未来が暗いとは思っていません。1年前は先が見えませんでした。でも今は違います。これだけのすごい進歩があります。ワクチンは多くの人に安心感を与えています。変異ウイルスに置き換わっていることは考慮しなければなりませんが、変異ウイルスでもこの種類ならワクチンが効くとわかるようになり、ワクチンも変異に合わせて変える技術も進歩しています。手の打ちようが全くないわけではありません。こういう時には粘ることが大事です。いま大変でも、粘った先に進歩がある。それを期待して、今とても苦しいですが、なんとか粘る工夫をしてもらいたいです。専門家の間では日本でワクチンを接種する人が増えたら、その人たちはどれぐらい制限を解除するかという議論も始まっています。「今まで通りの対策を続けた方が安全だ」と言う人もいますが、ワクチンに期待する以上は、それで制限が緩められてハッピーになる人が出てこないといけない。ハッピーになった姿を見ることによって、ワクチンを受けたいという人ももっと出てくるでしょう。ただし、今まで気をつけてきたことを全てなしにするということはないでしょう。全て解除すると、たとえば来年の冬にマスクも何もなしにインフルエンザが大流行するとします。そうするとインフルエンザで亡くなる人が、いま新型コロナで亡くなっている方の数を超える可能性があります。せっかく身につけたいい習慣は捨てずに、強い制限は徐々に外していきたいと思います。それが希望に結びつくはずです。 ●東京オリンピック開催確定か、とんでもない情報が続々と掲載される事態に 5/24 東京オリンピックの開催に関しては様々な意見がありますが、コロナが収まっていない現状を考えれば開催は難しいと思いますし、アスリート視点からみると開催して欲しいという気持ちも痛いほど理解できます。世論も開催するか否か意見が別れている東京オリンピック、既に開催が決定しているかのような情報が続々と掲載されているようなのですが・・・ ●オリンピックと思われる求人が続々と掲載されている・・・ 開催されるとは正式に決まっていないはずのオリンピック、しかし時給2,000円で「大規模スポーツ大会」の会場案内の求人が出ているようです。7月17日〜9月上旬という期間から考えても、ほぼ東京オリンピックとみて間違いないでしょう。 実際に派遣登録をされている方も、かなり求人の連絡が来るようです。 ●実際に「オリンピック関係」の求人を確認してみました 大手求人サイトを何社か確認してみたところ「オリンピック」で検索するだけで50件〜200件ほどの求人を確認できました。期間は7月〜9月の期間限定で時給1,500円〜2,500円程度のところがほとんどですが、仕事内容によっては正社員や高額報酬のところもあるようです。 世界的スポーツ大会の運行管理業務 / 車両の運営管理周りの業務のようです。今の段階で運行管理者を募集するんですね・・・ 世界的スポーツ大会の運行スタッフ / こちらも非常に似ているお仕事ですが、上記と似たような仕事になるでしょうか。週1で4時間OKというのは、もはやボランティアにお願いする内容なのでは。 英会話可能な方限定(日常会話級) / こちらはチケットカウンターのお仕事。「日常会話級の英語スキルを持った方」を募集していますが、時給は驚きの1,800円!これで「高時給」を謳っているのですから、苦笑いしか出てきません。そんな英語スキルを持った方を1か月半限定、しかも時給1,800円で働かせるつもり気なのでしょうか。 そもそもボランティアで募集していたような「運営」に関わる仕事の募集もありました。こうなってくるとボランティアとアルバイトの微妙な違いの方たちを、どうやって分けるのか興味が湧いてきました。確証はありませんが、どうしても「東京オリンピックを開催しなければいけない」人たちがいるのかもしれませんね。 スポーツ観戦大好きな筆者、東京オリンピック2020を本当に楽しみにしていました。しかし世界中がコロナ禍で苦しんでいる昨今、どうしても開催して欲しいとは思えなくなっています。はたしてこのままオリンピックが開催されるのでしょうか・・・どう転んでも、携わる方の安全だけは完璧に守られる状態であって欲しいものです。 ちなみに4月の時点で「今から募集するの!?」と言われていたエンジニアの求人。5月24日現在、まだエンジニアの募集が見受けられました・・・さすがに遅いと思うんですよね、今からエンジニアを採用するのって。 ●韓国人10人中8人「東京オリンピック、開催を中止すべき」 5/24 韓国国民10人中8人は東京オリンピック(五輪)の開催を中止すべきだと考えていることが分かった。 リアルメーターがYTNの依頼で21日に全国満18歳以上の男女500人を対象に実施して24日発表した世論調査の結果によると、回答者の78.2%が東京五輪を「中止すべきだ」と答えた。「開催すべきだ」は13.4%、「分からない」は8.4%だった。 年齢や地域に関係なく、東京五輪を中止すべきだという回答が多かった。 地域別では、ソウルや釜山(プサン)・蔚山(ウルサン)・慶南(キョンナム)で「中止すべきだ」がそれぞれ82.7%、85.3%で目立った。 年齢別では、40代で東京五輪の開催に対する否定的な回答が87.8%で、年齢別平均(78.2%)より高かった。 今回の調査は無線(90%)・有線(10%)のRDD方式(電話調査における無作為抽出の方法)で実施された。標本誤差は95%の信頼水準で±4.4%ポイントだ。 ●東京五輪開催による感染拡大の影響は“限定的” 5/24 東京オリンピック・パラリンピックの選手や関係者の入国による感染拡大への影響は“限定的”とする試算を、東京大学のグループが公表した。 東京大学・仲田泰祐准教授ら研究グループの試算によると、東京オリンピック・パラリンピックの選手や関係者の入国を10万5000人とした場合、1日あたりの新規感染者は約15人、重症患者は約1人の増加になるという。来日する人の数は東京都の人口の1%以下で、開催による感染拡大への影響は“限定的”だとしている。 感染を抑えるためには、パブリックビューイングなどで大勢の人が集まらないように国内の人の流れを抑制することやインド型変異ウイルスに対する水際対策を行うことが重要だと指摘。研究グループでは、試算を五輪開催の議論の参考にしてほしいとしている。 ●バッハ会長の“犠牲が必要”発言は「日本国民に向けたものではない」 5/24 IOC=国際オリンピック委員会は東京オリンピックの開催には「犠牲が必要だ」としたバッハ会長の発言について「日本国民に向けたものではない」と明らかにした。バッハ会長は22日、国際ホッケー連盟の総会で東京オリンピックの開催にあたって「犠牲を払わなければならない」と発言した。 IOCは24日、ANNの取材に対し、この発言について「日本国民ではなく、オリンピック関係者やオリンピック自体に向けたものだ」と答えた。選手へのワクチン接種や海外からの観客断念、来日できる関係者の人数の制限など様々な新型コロナウイルス対策を事例として挙げている。 バッハ会長の発言をめぐっては、日本国民の生活を犠牲にしてオリンピックを開催するのかなどと批判の声が上がっていた。 ●五輪組織委、山梨知事の苦言にクギ「繰り返すなら影響」 5/24 東京五輪の聖火リレーについて、山梨県の長崎幸太郎知事が「スポンサーがあえて人を寄せてしまうやり方はいかがなものか」と20日の記者会見で述べたのに対し、五輪組織委員会の布村幸彦副事務総長が県側に「聖火リレーはパートナー企業の協賛金があって成り立っている。ご理解いただきたい」と電話で要請したことが分かった。 この動きについて、長崎知事は24日、朝日新聞の取材に対し「聖火リレーと感染拡大防止の両立を考えて問題提起をした。それに対して組織委がこういう高圧的なスタンスだと、リレーの実施自体に県民の理解を得られるか、自信がない。たいへん残念に思う。ぜひ建設的な話し合いをしてほしい」と話した。 県内の聖火リレーは6月26、27日に行われる。長崎知事は記者会見で、実施方法についての考え方を問われ、「できる限り公道で」と述べつつ、パートナー企業の車がランナーの前後に連なり、沿道の観衆に応援グッズを配るなどすることに疑問を呈した。 県関係者によると、布村氏の電話は会見の翌日にあり、渡辺和彦副知事が受けた。布村氏は「聖火リレーはパートナー企業の協賛金があって成り立っている。音量を下げ、グッズ配布もランナーに関係あるものに限るなど配慮している。理解いただきたい」と話したという。渡辺副知事が、知事の発言は感染拡大防止への配慮の必要性を述べたものだと説明すると、「いずれにしても聖火リレーは協賛金で成り立っている。発言が繰り返されるようだと影響が出ると知事に伝えてほしい」と述べたという。 組織委の担当者は山梨県に対する電話での要請についてメールでの取材に応じ、「各県とはいろいろなレベルで綿密にコミュニケーションを図るよう努めている」と説明。パートナー企業の活動については「聖火リレーがやってくることを沿道の方々に知らせ、応援をお願いする重要な役割を担っている。聖火ランナーご本人と彼らが有するメッセージの発信を最優先に考えている」としている。(吉沢龍彦) 20日の記者会見での長崎幸太郎知事と記者のやりとり(要旨) 記者の質問 聖火リレーを公道でやらなかったり無観客だったりという判断をしている県もある。知事はどのような方法を考えているか。 知事の発言 やる場合はできる限り公道でやるのがいいとは思っている。思ってはいるが、感染状況次第だ。危惧しているのは、聖火リレーは聖火ランナーが走るのがメインイベントだと思うが、その前後で大規模なスポンサーカーが例えばノベルティーグッズなどを配って、あえて人を寄せてしまうようなやり方はいかがなものか。先日、各県の知事と広島で会合する機会があり、皆さんそこに対して危惧とか憤りを表明していた。聖火ランナーがリレーすることがメイン。あえて他の要素で密の状態を作り、聖火リレーをやるべきでないといった判断を余儀なくされるような事態は(避けられるように)、ぜひスポンサーの皆さんには、良識を持った御判断を願いたい。 ●ワクチン2万人分提供へ 東京五輪、ボランティアら関係者にも 5/24 東京五輪・パラリンピックで、米製薬大手ファイザー社製の新型コロナウイルスワクチンが、日本選手団以外の一部ボランティアや通訳、審判員ら大会関係者にも無償提供される見通しとなったことが24日、関係者への取材で分かった。選手団を含め、約2万人分になるとみられる。選手との接触度合いに応じ、具体的な対象は今後検討する。25日にも発表される。 日本選手団に必要なワクチンは五輪・パラを合わせて約2500人分と見込まれている。 選手団向けのワクチン接種は、日本オリンピック委員会(JOC)が東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で6月1日に始める方向で最終調整していることも判明。人数や日程に関する競技団体への希望調査を実施したJOCは、25日にも公表する。 ●「自然破壊」と批判殺到。代々木公園で、樹木の剪定作業が始まる。 5/24 東京オリンピック・パラリンピックのパブリックビューイング会場のために、代々木公園の木の枝を切るのを止めて下さい――。パブリックビューイング会場建設と、代々木公園の木の剪定の中止を求める署名キャンペーンが立ち上がっている。5月22日夜に始まった署名キャンペーンは、24日午後0時時点で1万4200筆以上が集まっている。 またTwitterでは「#代々木公園の木々をオリンピックから守りましょう」というハッシュタグが作られるなど、剪定と建設中止を求める様々な意見がSNSに投稿されている。 ●東京2020ライブサイト計画 東京都の実施計画によると、東京オリパラのパブリックビューイング会場「東京2020ライブサイト」は、東京・渋谷区の代々木公園と、武蔵野市と三鷹市にまたがる井の頭公園に建設される。 代々木公園では6月1日から建設工事が始まるが、工事準備のために、1部のエリアで高さ4メートルもしくは高さ8メートル以下の枝を切る作業が、5月24日から始まっている。 ライブサイトには大型ビジョンやスクリーンが設置されて競技のライブ中継を実施する他、様々なイベントが開催され、展示ブースや飲食物の販売ブースなどが設けられるという。 元々の計画案では3万人を超える国内・海外からの観戦客を迎える予定だった。しかし新型コロナウイルス感染症が拡大しているため、計画を変更して人数制限などを設けるという。 元々の計画案に掲載されていた代々木公園のライブサイト会場の図。人数制限をするなどの観戦対策をとって実施する予定だという 東京都オリパラ準備局は「オリパラ開催期間中に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などが出された場合には、Jリーグやプロ野球など他のスポーツイベント同様に、国や自治体が定めたガイドラインに沿って人数制限などの対策を取る」とハフポスト日本版に対して説明する。 しかし署名キャンペーンを立ち上げた経営コンサルタントのロッシェル・カップ氏は、新型コロナ感染症を抑えようとしている時に、わざわざパブリックビューイング会場を作ることを疑問視する。 同氏はキャンペーンサイトで「変異株の影響でコロナ感染が拡大しつつあり、ワクチン接種の進捗率が遅い中で、パブリックビューイング会場を作って何千人もの人を集めるという行為自体が賢明ではありません。コロナの影響により、五輪中に日本に訪れる外国人は激減するため、パブリックビューイング会場の必要性もありません。そして、たった数週間のために多くの木を剪定して、形を永久的に変える必要はあるのでしょうか?」と訴える。 ●共感を得ることを目的としているが… 東京都によると、東京オリパラが万が一中止になった場合はパブリックビューイングもなくなるが、現時点で国やIOCなどが開催準備を進めているため、それに向けてパブリックビューイングの準備も進めなければいけないという。 またオリンピックの開催日まで残り60日しかないため、これ以上先延ばしにすることは難しい、と東京都の担当者は話す。 東京都はパブリックビューイングの目的を「都民や国民の共感を得て、大会を成功させること」としている。 しかし、様々な世論調査でも「中止」や「再延期」が「開催」を上回っており、開催中止を求める署名キャンペーンも35万筆以上が集まっている。 こういった状況で、パブリックビューイングのための工事が進み、憩いの場所である代々木公園の木の枝が切られることに、共感よりも反発が広がる結果になってしまっている。 ●東京オリンピック・パラリンピック“観客あり”論強まる 5/24 開幕までおよそ2カ月となった東京オリンピック。 IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長は22日、「オリンピックの夢のためには、われわれは犠牲を払わねばならない」と発言し、開催反対や反発の声が上がっている。 こうした中で、焦点となっている観客の扱いをめぐって、政府や組織委員会では、無観客を回避し、一定の観客を入れて開催できるのではとの見方が強まっていることがわかった。 4月下旬の緊急事態宣言の発令にともない、当初、プロ野球や日本プロサッカーリーグの試合が観客を入れずに行われ、東京大会の無観客開催もやむを得ないとの観測が関係者の間に広がった。 しかし、宣言延長の際に、条件が緩和され、スポーツイベントが5,000人を上限に開催実績を重ねていることから、感染が抑え込めれば、東京オリンピック・パラリンピックも観客を入れて開催できるのではとの見方が、政府や組織委員会で強まっているという。 組織委員会のある幹部は、検討は政府主導で進められているとしたうえで、「仮に宣言が延長されれば、観客についての発表は解除後になる」、「観客ありで開催する場合、遅くとも来月末をメドにチケットの再抽選を行う必要がでてくる」との見方を示している。 ●東京オリンピック残酷史 5/24 1964年の第18回東京夏季オリンピック(五輪)は「夏季」という言葉が色あせた秋の真ん中(10月10日)に開幕した。聖火リレーの最終ランナーは坂井義則という19歳の青年だった。当時、早稲田大1年の陸上中長距離選手だった。外国メディアは彼を「原爆少年(atomic boy)」と呼んだ。坂井は原爆が投下された当日の1945年8月6日に広島県で生まれた。日本の意図は明白だった。第2次世界大戦の敗戦国が惨禍を踏んで五輪開催国に華麗に復活したことを見せることだった。逆説的なのは、日本が夢見ていた五輪開催国の姿は「再起した敗戦国」でなかったことだ。 もともと日本は五輪を通じて帝国の威容を誇ろうとした。アジアと太平洋の広大な地域を号令する、いわゆる「大日本帝国」のことだ。それで招致したのが1940年の第12回東京夏季五輪だった。この大会は地球上のどこでも開催されなかった。1937年に日本が日中戦争を起こすと、西欧世界が反発した。国際世論に押された日本は開催権を返納した。開催権はフィンランド・ヘルシンキに移った。しかし1939年に第2次世界大戦が始まり、五輪は結局、開催されなかった。第1次世界大戦で中止になった1916年の第6回夏季五輪に続いて2回目の中止だ。1916年の五輪を招致したのはドイツ(ベルリン)だった。戦争で中止になった2回の五輪の元招致国はともに戦犯国だった。 2013年9月7日のブエノスアイレス国際オリンピック委員会(IOC)総会で、東京が2020年第32回夏季五輪の開催地に選定された。日本が今回の五輪で見せようとしたのは、2011年東日本大震災と福島原発事故の被害を乗り越えて立ち上がった姿、すなわち再建と復興だった。ところが新型コロナの大流行という事態で2020年7月24日に開幕予定だった大会が1年延期された。新しい開幕日の7月23日まで残り2カ月。それでもまだ大会が開催されるかどうかは不透明だ。日本国内の状況も良くない。新型コロナ感染者と死者の数が減っていない。開催反対の声や再延期を求める世論も強まっている。開催自体を懸念する声、不参加を宣言する選手の声も続いている。 日本政府とIOCは声を一つにして開催を固守している。しかし内心はお互い「大会中止発表」という爆弾を渡し合う姿だ。日本の五輪招致前に掲げたスローガンは「未来(あした)をつかもう(Discover Tomorrow)」だった。大会を招致した後の公式スローガンは「感動で、私たちは一つになる(United by Emotion)」だ。あしたは見えるのか。また、感動で一つになることはできるのか。東京五輪の歴史はなぜこれほど残酷なのか。 |
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●「緊急事態でも五輪」が波紋 IOC幹部ら国民感情逆なで 5/25
新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言下でも今夏の東京五輪が開催できると明言した国際オリンピック委員会(IOC)幹部の発言が波紋を広げている。 日本政府も中止・延期を回避する姿勢では一致しているが、野党は「国民感情を逆なでする」と強く反発している。 IOCのコーツ調整委員長は先の記者会見で、東京に宣言が出されていても大会を開くかとの質問に「答えは完全にイエスだ」と断言。これに続くようにバッハ会長も開催のために「犠牲を払わなければならない」と述べたと報じられ、コロナ禍でも五輪に突き進むIOCの立場が改めて鮮明になった。 五輪開催を目指す立場は政府も同じだが、開幕までの宣言解除は事実上の前提条件だ。宣言下で飲食店や百貨店などが休業や営業時間短縮を強いられる中での五輪強行は国民の理解が得られないとみているためだ。 IOC幹部の発言について、立憲民主党の安住淳国対委員長は24日、記者団に「国民の反発を招いているだけだ」と厳しく批判。同党の原口一博副代表も会合で、政府の五輪事務局担当者に「国民を逆なでするような発言は厳に慎むように(IOCに)言ってほしい」と抗議を求めた。 平井卓也デジタル改革担当相がIOC幹部に追随するように、23日に「パンデミック(世界的流行)下での五輪開催というモデルを、日本が初めてつくることになる」と言及したことも火に油を注いだ。共産党の小池晃書記局長は記者会見で「まるで国民、都民の命を危険にさらして五輪をするといわんばかりの発言だ」と非難した。 自民党内からも苦言が漏れる。中堅議員の一人は「担当ではない人が余計なことを言っている」と不快感を示した。 ●ファイザー製ワクチンの無償提供受けたIOC、ボランティアらにも接種へ 5/25 丸川五輪相は25日の閣議後記者会見で、国際オリンピック委員会(IOC)が米ファイザー社から無償提供を受けた新型コロナウイルスのワクチンについて、東京五輪・パラリンピックに参加するボランティアなど大会関係者への接種も進める方針を明らかにした。日本選手団を含めて約2万人分となるという。 無償提供されたワクチンを巡っては、日本オリンピック委員会(JOC)が日本選手団に対する希望調査を実施し、近く接種が始まる見通しとなっている。丸川五輪相は「安心安全な大会実現のため、審判や各国の選手に頻繁に接触するスタッフについても、接種できるよう調整したい」と話した。 ●力士がサーフィン? 仏公共放送の東京五輪CMが話題 5/25 フランスの公共放送で流れる東京オリンピック中継のCM動画が公開されました。 葛飾北斎風の浮世絵の中で、なんと力士がサーフィンをしています。 すると、今度は、寺の屋根の上でスケートボード。そして、断崖絶壁をスポーツクライミングで登ると、次は短距離走です。 かごから落ちたスイカをシュートで戻すと、最後は棒高跳びで鳥居を越え、競技場に。 動画に出てくるサーフィンやスケートボード、クライミングは、今回からオリンピックに加わる新競技です。 コンセプトデザイナーのフィリップ・ロペス氏は「日本を象徴し、スポーツを連想させるものは何だろうと考えました。選んだのが、力士です。最も難しかったのは、日本の版画の世界観を尊重することでした」と話していました。 ●東京五輪の中止を求めるネット署名、過去最多を更新 5/25 東京五輪の中止を求めて、弁護士の宇都宮健児さんらが署名サイト「Change.org」を通じて今月5日から呼びかけ始めたオンライン署名が25日未明、2012年に同サイトの日本語版が開始して以来最多を更新した。同日午後2時時点で38万8千筆を超えており、いまも継続中。 サイトを運営する「Change.org Japan」によると、署名を呼びかけるページは英語、フランス語、ドイツ語にも翻訳され、世界130カ国以上から賛同が集まった。 これまでの最多は、昨年始めた学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題の再調査を求める署名(現在も継続中)、2番目は黒川弘務・東京高検検事長(当時)の定年延長に抗議し、辞職を求める署名(約35万筆、黒川氏の辞職に伴い終了)だった。 ●東京五輪 米でも開催危ぶむ声 「日本に新たな打撃」 5/25 米国内でも東京オリンピック・パラリンピックの開催を危ぶむ声が徐々に高まりつつある。 ブルームバーグ通信は24日、国務省による日本への海外渡航警戒レベル引き上げを受け「開催の準備が整っていると日本国民や国際社会を納得させようと苦労している日本に新たな打撃となる」と伝えた。日本がワクチン接種に「遠慮がち」で、これまで感染率を低く抑えていたにもかかわらず「感染の再拡大を許した」と指摘した。 CNNテレビも「開催に向けてますますハードルが増える状況に直面している」と報じた。医療従事者の不足や注射器の欠乏を挙げ、「他のアジアの国と比べてもワクチンの普及が遅れている」と指摘。日本のワクチン接種率の低さについて「少なくとも全米25州で(18歳以上)の成人の50%がワクチン接種を終えた米国と著しく対照的」などと比較している。 またAP通信は、今回の国務省の発表が米国選手の参加の判断に「影響を与える可能性がある」と指摘。米国オリンピック・パラリンピック委員会は24日、同委員会や大会組織委員会が実施している対策などで「米国チームの選手が安全に参加できると確信している」との声明を出したという。 ●東京オリンピック開催問題に、なぜ日本メディアは沈黙を続けるのか 5/25 コロナ禍に終わりが見えない。多くの地域に緊急事態宣言が出され、市民生活が大きく制限されている。飲食店は午後8時で閉まり、アルコールは終日提供できない。予定されていたイベントの多くが、残念なことに中止を余儀なくされた。若い世代もあおりを受け、学校では対面授業に制約がかかり、学校行事や部活動が大幅に縮小されている。 そんななか、東京五輪だけが特別扱いされていると多くの人が思っている。このコロナ禍のなかで、数万人の選手と関係者を海外から受け入れて大会を実施することに、ほぼためらいなくゴーサインが下っている。極めて異常な事態だ。 だが、それに輪をかけて異常なことがある。日本の主流メディアがこの状況を、まったくと言っていいほど批判しないのだ。 五輪の開幕予定日まで2カ月を切った。メディアがこのままどっちつかずの態度をとりつづけ、国民の7〜8割が今夏の開催に反対する大会が幕を開けることを許したら──さらには、その影響で新型コロナウイルスの感染爆発という状況になったなら──それはメディアの取り返しのつかない失態だ。日本のメディア史に大きな汚点を残すことになるだろう。 ●「アジェンダ・セッティング」ができていない 最大の問題は、主流メディアが東京五輪開催の是非について、自らの立場を明確にしていないことだ。 最新の世論調査では市民の7〜8割が今夏の開催に反対しており、ツイッターは政府や組織委員会やIOC(国際オリンピック委員会)への批判にあふれている。だが主流メディアはそうした状況について、開かれた議論を展開するイニシアチブをとろうという姿勢を見せない。いったいなぜなのか。 東京五輪開催の是非が国民的な議論のテーマになってから長い時間がたつが、これまでメディアはただ「起きたこと」を伝えるだけだった。開催に反対する市民の声を代弁して、「五輪は中止すべき」と主張することなどなかった。これでは7〜8割の市民の意見を無視しているとみなされても仕方がない。 逆に言えば、もしも「五輪は開催すべき」と信じる主流メディアがあるのなら、そう主張してもらってもかまわないのだが、開催賛成論を唱えるメディアがあるわけでもない。 東京五輪開催問題について、メディアはその重要な働きと想定されている「アジェンダ・セッティング(議題設定)」の機能を放棄しているのだ。いま何が重要な問題(アジェンダ)なのかを、受け手に向けて設定(セッティング)できないなら、メディアの基本的な責務を放り出しているとみられてしまう。それは健全なジャーナリズムではない。 ●外国メディアの報道は細かく紹介するが だが自らの意見は明らかにしない日本の主流メディアが、なぜか熱心に取り組んでいることがある。外国メディアが東京五輪開催に否定的な報道をしたことを、逐一伝えるのだ。 アメリカのニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズ、イギリスのガーディアンやタイムズ、フランスのリベラシオン……。世界の一流紙は東京五輪について、こぞって「中止すべき」と主張する記事やコラムを掲載した。 世界の一流紙はエッジの効いた批判をする。ニューヨーク・タイムズは東京五輪が「3週間の一大感染イベントになる」と書き、ワシントン・ポストはIOCのトーマス・バッハ会長を「ぼったくり男爵」と揶揄した。 こうした外国メディアの報道を、日本の主流メディアはきちんと伝える。しかし、自らの立場は明らかにしない。 自分たちの意見は言えないから外国メディアの報道に頼るという日本メディアのお得意の手法を、私は「黒船ジャーナリズム」と呼んでいる。ただし東京五輪の開催問題について、外国メディアの懐疑論・反対論は積極的に紹介しながら自分たちの意見は明らかにしない本当の理由はわからない。 ひとつ確かなのは、「米紙ニューヨーク・タイムズは東京五輪の開催問題について……」という記事は、もう読み飽きたということだ。 ●IOC要人の重大発言にも何も言わず ここ数日でIOCの要人たちから東京五輪開催の可否にかかわる発言が相次ぎ、大きな注目を集めた。 5月21日にはジョン・コーツ調整委員長(副会長)が、東京に緊急事態宣言が出されている状況下でも五輪は開催できるという見解を示した。 コーツは緊急事態宣言下でも大会を安全に開催できる根拠として、先ごろ外国選手も参加して行われたテスト大会の成功を挙げた。「緊急事態宣言の下で5競技のテスト大会が行われた。最悪の状況を想定して行われて成功している。(「宣言下でも開催するのか」という問いへの)答えはイエスだ」と、コーツは語った。 五輪のマラソンが行われる札幌では、テスト大会が5月5日に行われた直後から感染状況が爆発的に悪化している。本番を見据えたコロナ対策が施され、沿道での応援の自粛も呼びかけられたが、それでも感染拡大に拍車をかけた可能性が高い。 コーツの発言はこうした点を考慮していない。おそらく彼の耳には、札幌の詳細な状況までは入っていないだろう。それでも日本の主流メディアはコーツの言葉をただ伝えるだけで、論評や批判を加えない。 翌22日にはトーマス・バッハIOC会長がコーツの発言を後押しする形で、東京五輪は予定どおり開催されると宣言した。 「東京五輪がようやく間近に迫った今、最後のカウントダウンが始まった。五輪の夢を実現するために、私たちはいくらかの犠牲を払わなくてはならない」と、バッハは語った。 五輪開催のために「犠牲」を払うことまで持ち出した発言に対し、SNS上では怒りと反発が渦巻いた。同時に、バッハの言う「私たち」に日本人が含まれるのかなどという議論も起こった。日本での発言の受け止められ方に危惧を抱いたのか、後にIOCの広報担当が「日本人を念頭に置いた発言ではない」と補足したほどだったが、主流メディアはこの発言に目立った論評を加えていない。 コーツとバッハの発言は非常に重い。とくに「緊急事態宣言が出ていても五輪を開催する」というコーツの言葉は、日本社会の安全に責任を持たない人物が口にすべきことではないように思える。ところが、主流メディアは彼の発言に表立った批判をしていない。これはどういうことなのか。 ●メディアがつくるパラレルワールド 東京五輪の開催可否の問題について、主流メディアは既成事実を追うだけで、自身の意見を発しないのだ。世論調査で市民の7〜8割が反対している五輪の今夏開催について立場を明らかにしなければ、7〜8割の意見を無視しているということになる。 もちろん数がすべてではない。大多数の市民が支持していることが常に正しいと信じる理由はない。だが東京五輪開催の是非をめぐる問題に限定して言えば、「多数派の暴力」のような懸念はほとんどないように思える。世論調査で7〜8割が反対しているイベントが開かれることについてメディアが何ら意見を表明しないのは、自らの義務と責任を放棄していることにならないか。 いま日本のメディアには東京五輪をめぐって、矛盾する「パラレルワールド」が築かれている。 一方には、新型コロナウイルスの感染が収束しないなかで、人々にパンデミックへの警鐘を鳴らす報道がある。その世界では、五輪などというイベントはとても開くことができないと思える。 もう一方には、東京五輪の開催は揺るがないという前提で行われている報道がある。「念願の」大会へ向けて「最後の入念な準備」を行う選手たちをクローズアップする記事がある。サッカー男子代表のオーバーエイジ枠に誰が内定したかというニュースは、大きな見出しで報じられた。 もちろん東京五輪は現時点では開かれることになっているから、これらの報道は妥当なものだ。しかし五輪を開催すべきかどうかがこれだけ議論になっているときに、開催を前提としたニュースが伝えられると、自分のいる世界の足元が、ふらっと揺らぐような感覚さえおぼえる。 ●アスリートの感動の物語をたれ流すのか 開幕予定日まで、あと2カ月弱。主流メディアはこのまま、どっちつがずの姿勢を続け、開催支持とも中止とも唱えずに、7月23日の開会式を迎えるのか。大会が幕を開けたら、それまで自らの責務をほとんど果たさなかったことなど意に介さず、いつものようにアスリートの感動の物語をたれ流すつもりなのか。 テレビは五輪中継で、ツイッターによる応援メッセージを募ることだろう。そこでは「コロナ禍にも負けず頑張ってくれた○○選手に、元気をもらいました!」などという薄ら寒いメッセージが紹介されるのか。 ここまで国民的な関心が高まっている問題についてメディアがはっきりとした立ち位置を示さないのは、異常事態と言っていい。何も言わない裏には、何か理由や意図があるのかと思われても仕方がない。このまま口をつぐんでいたら、メディアへの不信がさらに高まる要因にもなりうる。 だから、最後に書いておく。あなたたちは、この問題に関して、まだ、しかるべき仕事をしていない。それを残された時間で、やってくれないか。まだ遅くない。ギリギリではあるが、間に合う。そう願う。 ●東京オリンピック中止の経済損失1兆8千億円、無観客では損失1,470億円 5/25 ●海外観客受け入れ中止で既に1,500億円の経済損失 新型コロナウイルスの感染リスクを考慮して、東京オリンピック・パラリンピックは中止されるのでは、との観測が国民の間に燻っている。また開催される場合でも、どの程度の国内観客数を受け入れるかについてはなお未定であり、来月に決められる予定だ。これらは、東京オリンピックの開会予定日まで既に2か月を切ったこの時期としては、かなり異例のことである。さらに24日には、日本国内で感染が拡大していることを受けて、米国が日本への渡航警戒水準を最高レベルの「レベル4」に引き上げ渡航中止を勧告したことも、大会開催に向けた逆風となっている。 今年3月に海外からの観客を受け入れない方針を決めた時点で、東京大会の経済効果は相応に失われた、と言える。国内観客とは異なり、海外観客が訪日する場合には、一人当たり多くの支出をすることが期待される。2019年の海外観光客の日本での支出、いわゆるインバウンド消費は総額で4兆8,113億円であった。他方、海外からの大会観客は100万人と見込まれていた。これから、一人当たりのインバウンド需要は15万1,000円程度と計算された。 海外からの観客100万人が日本で使う宿泊費、飲食費、交通費などの支出は、1,511億円となる。海外からの観客を受け入れないと決めた時点で、その分の経済効果が失われたと試算される(コラム「東京オリンピック・パラリンピックで海外観客受入れ見送りの場合の経済損失試算」、2021年3月4日)。 ●国内観戦客の消費支出は小さい 2017年4月に東京都が公表した「東京2020大会開催に伴う経済波及効果」では、大会参加者・観戦者の消費支出(交通費、宿泊費、飲食費、買い物代、施設利用料等)を2,079億円と計算していた。海外観客のインバウンド需要の筆者の試算値1,511億円は、その7割以上を占めている計算だ。これは、国内観客の消費支出が小さいことの裏返しである。 大会開催時に観戦のために地方から東京に来る日本人は少なくないかもしれないが、国内観客は海外観客のように、宿泊費、買い物代に多くは支出しない。海外観客の多くは、大会の観戦だけでなく、その機会に日本で観光や買い物をすることが予想された。また、海外観客が日本に来て食事をすれば、それはGDPを押し上げる(輸出に計上)が、国内観客は地元で食事しても、東京で食事をしてもGDPには影響を与えないのである。 ●開催延期や経費抑制、感染対策で経済効果は変化 2017年4月に東京都が公表した「東京2020大会開催に伴う経済波及効果」では、大会開催に伴う東京都の需要増加は、直接的効果で1兆9,790億円と試算されていた。このうち、大会開催の有無とは関係なく生じる新規恒久施設の整備費(都立恒久施設、新国立競技場)は3,500億円とされた。この分を除いた1兆6,290億円分が、大会開催の有無や観客制限の方策によって変化する経済効果と考えられる。 その後、経済効果を変化させる要因が幾つか生じた。第1は、2020年に予定されていた大会が1年延期され、それに伴う追加支出が生じる見通しとなったこと。第2は、延期に関連して経費削減措置が講じられたこと。第3は、今年3月に海外観客の受け入れを止める決定をしたこと。第4は、新型コロナウイルス感染対策の経費が新たに計上されたこと、である。 ●大会開催の経済効果は1兆8,108億円 こうした変化によって、大会開催の経済効果がどのように影響を受けたかについては、2020組織委員会が2020年12月に公表した組織委員会予算V5(バージョン5)から推測できる。 そこで、東京都の試算、組織委員会の予算、そして海外観客の支出に関する筆者の試算に基づいて、現時点での大会開催の経済効果についてまとめたのが、(図表1)である。海外観客は受け入れず、国内観客は制限なく受け入れるケースである。その場合、経済効果の総額は1兆8,108億円となる。大会が中止となれば、同額の経済損失が生じる計算である。 海外観客の受け入れを止める決定をしたことで、60万枚のチケットの払い戻しが行われたとされる。ただしこの試算では、海外観客に販売されたチケットは、最終的には国内観客にすべて回るものとしている。 ●無観客開催の場合の経済損失は1,470億円 国内観客をどの程度受け入れるかについては、今後の新型コロナウイルス感染の動向をみて、6月に決定される予定だ。現状では、国内観客数が全く制限されない可能性は低く、無観客開催となる可能性も相応に高いと考えられる。 そこで、国内観客半数受け入れケース、4分の1受け入れケース、無観客ケースでそれぞれ経済効果への影響を試算した。試算では、チケット販売の予想額900億円がそれぞれ半分、4分の1、ゼロになるとした。さらに、国内観客数の減少割合に比例して、(図表1)の観戦者の消費支出(海外観客の分は含まない)の額が減少するとした。 その結果を示したものが(図表2)である。国内観客数を完全に受け入れるケースと比較して、半数受け入れのケースでは、チケット購入及び関連消費の減少によって大会の経済効果は734億円減少する。また、国内観客を4分の1受け入れるケースでは、同様に大会の経済効果は1,101億円減少する計算となる。さらに無観客のケースでは、1,468億円減少する。 ●経済損失よりも感染リスクの観点で判断を 国内観客の制限措置によって失われる経済効果、つまり経済損失がもたらす経済への影響は軽微と言える。2020年度名目GDPの規模と比べると、半数受け入れケースでは0.01%、4分の1受け入れケースでは0.02%、無観客のケースでも0.02%に過ぎない。 他方、大会を中止する場合の経済損失は1兆8,108億円と、必ずしも軽微とは言えないかもしれない。しかし、2020年度名目GDPと比べると0.33%の規模であり、景気の方向性を左右する程の規模ではない。 ちなみに、第1回目の緊急事態宣言による経済損失の筆者の推定値は約6.4兆円、第2回目は約6.3兆円、第3回目は現時点で実施が決まっているだけで約1.9兆円、この先延長が決まれば約3兆円などさらに増加する見通しである(コラム「延長・拡大を繰り返す緊急事態宣言に沖縄県が追加」、2021年5月21日)。大会を中止する場合の経済損失は、緊急事態宣言1回分によるものよりも小さいのである。 このように、緊急事態宣言による経済損失などと比べると、国内観客を制限して大会を開催、あるいは大会を中止する場合の経済損失は必ずしも大きくはない。大会開催をきっかけに、仮に感染が拡大して緊急事態宣言の再発令を余儀なくされる場合には、その経済損失の方が大きくなるのである。 以上の試算は、大会の開催・中止の判断、観客制限の判断については、その経済的な損失という観点ではなく、感染リスクへの影響という観点に基づいて慎重に決定されるべきであることを示唆している。 ●米国、日本旅行禁止勧告…東京オリンピック開催可能か? 5/25 米国政府が米国から日本への旅行禁止を勧告した。日本政府が強行している東京オリンピックの開催が五里霧中となったという分析が出ている。 米国国務省は24日(現地時間)ホームページを通じて、日本旅行について既存の警報レベル3の「旅の再考」からレベル4の「旅行禁止」に引き上げ、この日付で発令したと発表した。 米国国民の国務省の旅行警報は4つのレベルに分けられる。△一般予防(1段階)△注意強化(2段階)△旅行再考(3段階)△旅行禁止(4段階)である。 米国政府が日本の旅行禁止を勧告したのは、日本国内のパンデミックが収まらないためだ。国務省は「疾病管理予防センター(CDC)がコロナ拡散のため日本の旅行警報レベル4を発令した」とし、「これは日本の非常に悪化したコロナの状況を示すものだ」とした。CDCはコロナの危険レベルを△低(レベル1)△中(レベル2)△高(レベル3)△非常に高い(レベル4)などに分ける。 日本の一日のコロナ新規感染者数は4000人台にまで急増している。日本政府は感染の拡大を防ごうと三度目の緊急事態を発令した状態だ。 問題は、日本の東京オリンピック(7月23日〜8月8日)が二か月後に迫ってきた点である。国際オリンピック委員会(IOC)と日本政府は強行の意志を示している一方、懸念を示している人々も多い中、米国が旅行禁止勧告を下したのは大きな意味を持つだろうという分析が出ている。今回の措置は、東京オリンピック開催に支障を与える可能性があるということである。 米国国務省が旅行禁止を勧告した国は、日本のほか、イスラエル、ロシア、北朝鮮、ミャンマー、イラン、メキシコ、フランス、ドイツ、カナダなどである。韓国は2段階を維持した。 ●東京五輪 IOC幹部に「国民感情逆なで」指摘...開催どうなる 5/25 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長の「犠牲」発言が波紋を広げている。 バッハ会長は2021年5月22日に行われた国際ホッケー連盟のオンライン総会にビデオメッセージを寄せ、ビデオ内での発言に対して日本国内から批判の声が上がっている。 バッハ会長の発言内容を報じたのはインドのPTI通信だ。PTI通信の報道によると、バッハ会長は「東京大会を実現するために、我々はいくつかの犠牲を払わなければならない。選手は夢を間違いなく叶えることができる」と話したという。 PTI通信の報道を引用する形でバッハ会長の発言を日本のメディアが報じたところ、インターネット上で批判の声が殺到した。バッハ会長が発言した「我々」のなかには日本国民が含まれるとし、「犠牲」の文言に批判が集中している。 インターネット上ではニュースのコメント欄にも「オリンピックのために私たちが犠牲になるの?」「IOCの収益のために日本国民が犠牲を払うということなのか」「誰のためのオリンピック?私たちが犠牲を払ってまでやる必要あるのか」などの声が上がった。 新型コロナウイルスのワクチン接種など解決すべき問題が山積し、五輪開催へ逆風が吹き荒れるなかでのIOCトップの「犠牲」発言。スポーツ紙などの報道によると、IOCの広報担当者は24日、バッハ会長が「我々」としたものは「日本国民にではなく、五輪関係者、五輪運動に向けた発言」と説明したという。 早急にIOC広報が「火消」に走るも、国民感情を逆なでするような発言にインターネット上では怒りの声が収まる気配がみられない。 バッハ会長の発言に対して批判の声が強まった要因のひとつとして、IOCのジョン・コーツ調整委員長の発言があるだろう。コーツ調整委員長は21日に緊急事態宣言下でも五輪は行われると明言。この発言が波紋を広げ、五輪開催に強行的な姿勢を見せるIOCへの反発の声が強まった。 五輪開催まであと2カ月に迫り、IOC幹部が相次いで開催に向けての意志を表示した。これまでの発言とは異なり、今回の発言にはより強い、明確な意思がみてとれた。 IOC幹部の一連の発言に対して、タレントで政治評論家の東国原英夫氏は23日、自身のツイッターを更新し、「ここのところのIOCのバッハ会長やコーツ氏の数々の発言。国民感情を逆撫でする。いよいよ正体が見えて来た感じだ」と投稿した。 五輪開催への逆風が強まるなか、新たな懸念材料が出てきた。国内メディアの報道によると、米国務省は24日、新型コロナウイルスの感染状況を受けた各国の渡航情報を見直し、日本に対する渡航警戒レベルを4段階のうち最も厳しい「レベル4」(渡航中止・退避勧告)に引き上げた。 今回の米国務省による「レベル4」引き上げを受け、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)は24日に声明を出し、米国代表の五輪出場に影響はないとの見解を示した。選手の安全面を懸念した米国の陸上チームが、7月上旬から予定していた千葉県内での事前合宿をキャンセルしていることからUSOPCの動向に注目が集まったが、報道によると、USOPCは米国選手の安全な五輪参加に自信を持っているという。 IOC幹部の発言が日本国内で反発を招き、五輪開催への逆風は止むことなく今なお吹き続けている。バッハ会長は先の国際ホッケー連盟オンライン総会でのあいさつで「カウントダウンに入った。東京はトンネルの終わりの光になる」と発言したという。IOC主導のもと、このまま突き進んでいくのか。東京五輪・パラリンピックは7月23日に開幕する。 |
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●東京オリンピック開催支持の考えを改めて示す 米ホワイトハウス 5/26
アメリカ国務省が日本への渡航中止を勧告したことを受け、ホワイトハウスは、東京オリンピックの開催を支持する考えを改めて示した。 ホワイトハウスのサキ報道官は25日、アメリカ国務省が日本への渡航警戒レベルを「渡航中止」に引き上げても、立場に変わりはないという意向を改めて示した。 また、「バイデン大統領も選手をサポートしている」とも述べ、改めて開催を支持する姿勢を表明した。 さらに、「オリンピックのために日本に渡航する人はかなり限定的だ」としたうえで、「安全確保のために入国や移動に関する非常に具体的な規則や手順を定めている」と、感染対策を強調した。 ●東京五輪の会場運営「1人1日35万円」 委託契約書類に記載 5/26 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会による民間企業への会場運営委託を巡り、毎日新聞は契約書とその内訳書の写しを入手した。内訳書には、大会準備・運営に当たるディレクターなどの1人当たりの「単価」として最高1日35万円と記載。人数や日数を掛け合わせて委託費を積算したとみられ、その総額は契約書の金額と一致している。組織委は「内訳書は参考資料」と説明している。 毎日新聞が今回入手したのは、五輪開催の42会場のうち、組織委が大手広告代理店に委託した武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京都調布市)の準備・運営業務の契約書。契約日は五輪の1年延期が決まる前の2019年12月17日で、期間は翌日から20年9月末まで。契約金額は消費税込みで6億2304万円と記載されている。内訳書には、・・・ ●東京オリンピックの前向きな中止を考えよ 5/26 <移動や宿泊などのロジスティクスを考えれば現状下の五輪開催は無理。それでも多くの関係者が救われる方策はある> 筆者自身は新型コロナウイルスワクチンの接種予約をなんとか取れたが、この感染症は東京オリンピックまでには収まるまい。 菅政権と国際オリンピック委員会(IOC)は自らの存続を五輪開催に懸けているようだが、このままでは失敗して、かえって力を失うのでないか。東京オリンピックが実現可能なのか、シミュレーションしてみよう。 まず、空港で選手たちを出迎え、選手村に送るところから。会期を通じて1万人以上の選手と約6万人の関係者が、世界中から三々五々とやって来る。国ごとに感染対策が違うので、検疫も国ごとや一人一人にテーラーメイド方式による入念な対応が必要だ。 英語のできない選手や役員も多数いる。現在確保している市民ボランティアは、人数は十分でもコロナ禍での細かいニーズに対応できるかどうか。 一方で、国内での移動にバスは使えない。1人ずつに1台の車と運転手、そしてアテンド要員が必要になる。選手村は、現在の相部屋ではなく1人1部屋に。予定されている4000室弱では対応できないだろう。そして食堂は密そのものになるので、各部屋にケータリングすることになる。 通常のオリンピックなら、選手個人、各国役員の判断で問題は片付く。しかし今回は、選手個々の事情と動きを、地方の会場にいる選手についても中央の「司令塔」が把握し、問題が起きれば関係諸方面と調整して解決を図り、アテンド要員に指令を下さなければならない。 これは多数の車・人員を一手に動かすノウハウ、そして通信手段を持つ自衛隊あるいは警察くらいにしかできないことだが、彼らを超法規的に便利屋として使うのは控えるべきだ。だとすれば、今の状況での開催にはやはり無理がある。 よく「IOCはオリンピックのテレビ放映権料で収入の7割を確保し(米NBCだけでも2032年までの独占放映権に76億5000万ドルを約束している)、これをスポーツ振興のためにもろもろのスポーツ連盟や各国のオリンピック委員会などに分配している。そのためオリンピックを中止すれば、それらの活動が成り立たなくなる」と言われる。 しかし今年1月にIOC関係者が、「東京オリンピックが中止になっても、それで活動が停止する競技団体が出ることにはならない」と述べている。日本では生真面目に、「中止のときには違約金を払わねば」などと考えている人がいるが、そんなことはIOCとの契約書には書かれていない。 近代オリンピックは、フランスのクーベルタン男爵の努力で始まった。アマチュア精神を柱に据えた清新なイメージを確立したことは、世界中のスポーツ関係者たちの努力のたまものだ。 しかし今日、オリンピックをめぐって動くカネは巨大化し過ぎた。何にいくらの資金が流れているのか、分からない。だから、「東京大会中止」というより、各国において自由でカネのかからない代替案を公募してはどうか。 例えば、出場予定だった選手が参加する、面白い「東京大会記念」イベントを各国でやってもらい、SNSを通じて世界中で視聴できるようにし、「いいね!」の数を競う。広告収入は、新型コロナワクチン購入のために途上国に寄付する──。 日本がこうしたイベントの開催でイニシアチブを取り、自己資金でSNS上に統合プラットフォームを作ったりすれば、選手たちの気持ちも、IOCや菅政権の命運も、そして日本のイメージも救われるのでなかろうか。 ●選手村にコンドーム15万個 ついにシンガポールメディアが追及 5/26 海外メディアが東京五輪の選手村での感染対策における矛盾点≠猛ツッコミだ。 シンガポールメディア「CNA」は、大会中の新型コロナウイルス感染対策やルールがまとめられたプレーブック≠ノおける選手村での感染対策に注目。「五輪の選手村では、選手間の交流も大幅に制限される。規則では、ハグ、ハイタッチ、セックスは禁止されているが、主催者は依然として15万個のコンドームを配布する予定で混乱を招く」と指摘した。 新型コロナの感染対策として超濃厚接触≠ノあたる性行為を禁止しておきながら、依然として避妊具の大量配布を行おうとしている点を問題視。コンドームを配れば、性行為を奨励していると勘違いする選手も出てくることが予想されるだけにこの矛盾は大きな懸念となりそうだ。 また「各国代表団には新型コロナ対策のリエゾンオフィサーがいて、すべてのルールが守られていることを確認し、常にアスリートを監視する。ただ、ルールの順守を確保することは非常に困難な作業になる」と指摘。性行為を禁止してはいるものの、大量の選手団の中での部屋の行き来や個人の部屋での行動をどこまでチェックできるかも疑問を呈した。 国際オリンピック委員会(IOC)のずさんなルール作り。感染を予防するバブル≠フ維持は無理そうだ。 ●東京五輪 日本選手団のワクチン接種 6月1日から約1600人に 5/26 東京オリンピックに参加する選手や指導者などおよそ1600人を対象にした新型コロナウイルスのワクチン接種が6月1日からナショナルトレーニングセンターで行われることになりました。これはJOC=日本オリンピック委員会が26日、発表しました。 東京オリンピック・パラリンピックに参加する各国や地域の選手団に対するワクチン接種についてIOC=国際オリンピック委員会は、製薬大手のファイザーなどと一般の接種とは別に無償でワクチンの提供を受ける覚書を交わし、国内のオリンピック選手や指導者についてはJOCが各競技団体に希望する時期や対象となる選手などの調査を行っていました。 その結果、一部、海外遠征のため前倒しで接種する選手を除き、6月1日から一般の医療体制への影響を避けるため多くの選手が拠点とする東京北区のナショナルトレーニングセンターで各競技団体のチームドクターが中心となって接種を行うことになりました。 接種は希望制で、対象は代表に内定している選手や内定の可能性がある選手、指導者、そして選手と接触する可能性のあるスタッフなどおよそ1600人だということです。 東京パラリンピックの選手や指導者のワクチン接種についてはJPC=日本パラリンピック委員会が調整を進めています。 感染の収束が見通せない中、各国・地域で選手団のワクチン接種が進められていて、IOCのバッハ会長は選手村に入る選手や指導者などの80%以上が大会前にワクチンを接種するという見通しを示しています。 ●東京五輪・パラ 海外からの関係者 延期前の計画から削減せず 5/26 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は、選手団とは別に海外から訪れる大会関係者の詳しい内訳を公表し、IOC=国際オリンピック委員会の関係者は3000人、IPC=国際パラリンピック委員会の関係者は2000人と延期前の計画から削減していないことがわかりました。 組織委員会は26日の理事会で新型コロナ対策などを議論したあと記者会見し、選手団とは別に海外から訪れる大会関係者の詳しい内訳を公表しました。 全体ではオリンピックが5万9000人、パラリンピックで1万9000人の合わせて7万8000人で延期前の17万7000人から半数以下になっています。 このうち、オリンピックとパラリンピックを合わせて「選手の友人や家族など」は3万人、IOC委員などの家族やスポンサーのゲストなどは「その他」として分類し、6万1700人を削減しました。 一方で、オリンピックファミリーと呼ばれるIOC関係者3000人と、パラリンピックファミリーと呼ばれるIPC関係者2000人、それに各国と地域のオリンピック委員会関係者1万4800人と、パラリンピック委員会関係者5900人は、いずれも延期前の計画から削減していません。 武藤事務総長は「削減していきたいと思っているので何とか協力してもらえるよう話をしたい」とする一方で「これらの人たちは大会に必要不可欠で現時点では変えることができない」と述べました。 組織委員会の理事会では理事の中から再延期の検討や中止の判断についても意見が出されました。 これに関して武藤事務総長は「理事会の中で延期とか中止とかそういう議論があるというのは言及があった。ただ、中止すべきや延期すべきという話はなかった。むしろ開催できるということが一般の人たちになかなか伝わらないのが現状なので、それを十分認識して発信をということだった」と述べました。 このほか、武藤事務総長は組織委員会が進めるジェンダー平等の観点から、東京大会の開会式での選手宣誓を男女で行うことについてJOC=日本オリンピック委員会やJPC=日本パラリンピック委員会と調整する考えを示しました。 ●東京五輪 大会ボランティアもユニフォーム受け取り準備進める 5/26 東京オリンピックの開幕まで2か月を切る中、競技会場などで活動する予定のボランティアも、大会に向けて準備を進めています。 7月23日に開催予定の東京オリンピックまで2か月を切る中、東京都内では競技会場などで活動する「フィールドキャスト」と呼ばれる大会ボランティアに当日着用するユニフォームが配布されています。 26日に、ユニフォームを受け取りに来た板橋区の小林正幸さん(66)は、“デポ”と呼ばれる車両基地を拠点に、大会関係者を輸送するボランティアとして活動する予定です。 これを前に、小林さんは24日に政府が東京に設置した新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターで1回目の接種を済ませ、2回目は来月末に受ける予定だということです。 子どもの頃にテレビで東京オリンピックを見て感動したことが、今でも心に強く残っていて「今回は大会のために役立てることをしたい」とボランティアに応募し、2年ほど前からオンラインで研修を受けるなど、準備を続けてきました。 小林さんは自宅に戻ると早速、新品のユニフォームに袖を通し、気持ちを新たにしていました。 小林さんは「皆さんが納得した形で大会が開催されるのであれば、開催してほしいと思う。東京オリンピックをやってよかったと、世界中の皆さんが思えることを期待しているし、自分も微力ながらお手伝いしたいです」と話していました。 ●社説でオリンピック中止訴えた朝日新聞 HPでスポンサー継続の方針示す 5/26 開幕まで2ヶ月を切った東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、オフィシャルパートナーを務める朝日新聞社が26日付朝刊で、「夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める」と題した社説を掲載した。 新型コロナウイルスの感染収束の見通しが立たない中、新聞社が社説として東京五輪の中止を訴えるのは、長野県の信濃毎日新聞(23日付朝刊)を皮切りに西日本新聞、沖縄タイムスのブロック紙・地方紙だけだった。全国紙が五輪中止論を前面に押し出した社説を掲載するのは初めてとみられる。 報道機関が五輪スポンサーを務める弊害がかねて指摘されてきた中、中止を訴える社説を掲載した朝日新聞は同日、公式ホームページ上で「東京2020オフィシャルパートナーとして」とする文書を公開。オフィシャルパートナーを務める意向を示す一方、「五輪に関わる事象を時々刻々、公正な視点で報じていくことに変わりない」と表明。「社説などの言論は常に是々非々の立場を貫く」と説明している。 ●オフィシャルスポンサーは継続 ホームページで表明 文書は、26日にホームページ上に「お知らせ」として掲載された。 オフィシャルパートナーに名乗り出た経緯について、オリンピック憲章の理念に共感したことに加え、「多様性と調和」を掲げた大会ビジョンに賛同したことを挙げている。大会の開催に賛否がある現状に言及しつつ、「感染状況などを注視し、オフィシャルパートナーとしての活動を続ける」とした。 五輪スポンサーとなったことで、大会運営への批判など報道機能が十分に果たされないことを懸念する声は大きい。この点について、2016年1月に大会組織委とオフィシャルパートナー契約を結んだ当時に「オフィシャルパートナーとしての活動と言論機関としての報道は一線を画す」としたことを振り返り、今後の報道について「多角的な視点からの議論や提言に努める」と誓っている。 ●社説ではオリンピックの中止を訴え 自社の立場について言及見られず 朝日新聞社は26日付朝刊で、「夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める」とした社説を掲載。通常は2本の社説が載るスペースで1本を大々的に載せる“一本社説”の形で、社の意見が強く打ち出されている。 東京都などに出されている緊急事態宣言について、再延長が避けられない状況であると現状を指摘しつつ、「冷静に、客観的に周囲の状況を見極め、今夏の開催の中止を決断するよう菅首相に求める」などと強く五輪中心を訴えている。 自社が五輪オフィシャルパートナーを務めていることに関する言及はない。 ●週刊誌報道が影響? 推測する意見も 社説は同社ホームページ上で26日午前11時半現在、無料で全文が公開されている。社説にもかかわらず同社の「アクセスランキング」で1位に躍り出るなど、近年では異例の事態になっている。 Twitter上では今回の社説について、「姿勢に賛同する」「インパクトは想像以上に凄まじい」などと評価が目立つ一方、「周りに押されて社説は価値がない」「遅すぎる」との意見も目立つ。 小学館のNEWSポストセブンが22日、『五輪スポンサーに雁首揃える大新聞6社に「開催賛成か」直撃』と題した記事を公開し、新聞社の回答に批判が集まったことが影響したのではと推測する意見もあった。 ●東京五輪・パラ中継番組PR 仏公共放送のアニメ動画人気集める 5/26 2024年のオリンピック・パラリンピックの開催国であるフランスでは、公共放送がことし夏の東京大会の中継番組をPRするためのアニメ動画を制作し、このほど公開しました。 力士がサーフィンやスケートボードなど東京大会で新たに採用された競技を次々にこなしていく内容で人気を集めています。 この動画は、フランスの公共放送が東京オリンピック・パラリンピックの中継番組などをPRしようと制作しました。 1分ほどの動画は、浮世絵のようなタッチで描かれたアニメで、力士が巨大な波でサーフィンをしたあと、寺の屋根をスケートボードで滑り降り、さらにはスポーツクライミングのように絶壁を素手でのぼるなど、東京大会で新たに採用された競技を次々とこなしていきます。 5月19日にツイッターで公開されてから2日間で150万人が閲覧するなど人気を集めています。 制作にあたったCM制作会社のアントワン・コランさんは、「浮世絵にできるだけ近づけるために、多くの資料を参照しながら制作にあたりました。浮世絵は動かないものなので、アニメ化するのはとても挑戦的なことでした」と話していました。 フランスは、2024年のオリンピック・パラリンピックの開催国で東京大会についても関心が高く、ことし7月の開会式にはマクロン大統領が出席するとスポーツ担当の閣僚が明らかにしています。 ●千葉県 7月1日からの東京五輪聖火リレー 公道の実施中止で調整 5/26 千葉県は7月に県内で予定されている東京オリンピックの聖火リレーについて、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐことが難しいなどとして、公道での実施を中止する案を関係する市や町に示して調整を進めていることが分かりました。 千葉県内での東京オリンピックの聖火リレーは7月1日から3日までの3日間、21の市と町を走るルートで行われ、各地では聖火の到着を祝うセレモニーも実施される計画となっています。 5月24日には計画どおり実施するかについて、大会組織委員会への最初の報告が求められていましたが、千葉県は「新型コロナウイルスの感染状況が見通せず現時点で判断できない」などとして報告を保留していました。 しかし関係者によりますと県は、感染拡大を防ぐことが難しいなどとして公道でのリレーの実施を取りやめ、ランナーが会場に来てセレモニーを実施する案などを関係する市や町に示し、調整を進めていることがわかりました。 実施方法に関する大会組織委員会への報告の最終期限は、聖火リレーの2週間前の6月17日となっていますが、県は今後の感染状況を見極めながら慎重に判断を行い近く方針を公表することにしています。 ●新型コロナ対応が障壁に…オリンピックホストタウンとして頭を悩ませる 5/26 2019年のラグビーワールドカップで交流を深めた福島県いわき市とサモア。オリンピックでもホストタウンとしてウェイトリフティングと7人制ラグビーの選手などを受け入れる計画だが、新型コロナに関わる対応が壁となって立ちはだかる。 いわき市東京オリンピック・パラリンピック篠原美紀担当課長:「(国の手引きによると、宿泊施設)フロアの貸切りですとか、練習場は貸切り、スタッフの皆さんのPCR検査。それに対して、本当に全てをクリアしていくのは、なかなか難しいというのがございます」 これまでにサモアで確認された感染者はわずかに3人。サモア側はいわき市を訪れたいとしていますが、福島県内やいわき市内で感染が拡大している現状もあり、思いは複雑。 いわき市東京オリンピック・パラリンピック篠原美紀担当課長:「(選手の滞在中)感染が起きて、そしてクラスターが発生などしてしまいますと、いわきの地域の医療ですとかいわきを超えて福島県も調整とか出てきますので、そこが一番の心配になっています」 選手たちを受け入れても市民との交流は難しく、そもそも準備を行える見通しも立っていない状況のいわき市。今後の日程を考えると6月早々には様々なことを決定する必要があるため、担当者は頭を悩ませる日々が続く。 ●アメリカは日本への渡航中止を呼びかけ アメリカ国務省は5月24日、国民向けの渡航情報を見直し日本を「渡航警戒レベル」で最も高い「4渡航中止」に引き上げた。この理由についてアメリカ衛生当局は「日本では変異ウイルスの感染が拡大していて、ワクチン接種をうけたアメリカ国民にもリスクがある」と説明している。 東京オリンピック開幕まで2カ月をきった中での措置だが、アメリカのオリンピック・パラリンピック委員会は「渡航前・到着後・期間中の検査で安全に参加できる」と選手の出場に影響はないとの声明を出している。丸川オリンピック・パラリンピック担当大臣も「いまのところ影響は見込まれない」と話した一方、自民党の二階幹事長からは「”最終的な判断”を下していかなくてはならないと思って”緊張”しているところだ」と、様々な憶測を呼びそうな発言もあった。 |
●聖火リレー「ドローン飛行は禁止」、警察が注意呼びかけ 5/27
東京オリンピックの聖火リレーが6月10日に青森市で行われるのを前に、青森署などは26日、リレー当日にルート上などで小型無人機を飛ばさないよう、市中心部で通行人に注意を呼びかけた。 リレー当日はルート上空に加え、ルートの周囲約300メートルでドローンを含む小型無人機の使用が禁止される。 この日は青森署と県警警備1課の7人が、JR青森駅ビルの商業施設「ラビナ」前で、ドローン飛行禁止区域の地図を載せたチラシを配布した。警備1課の下池綾祐課長補佐は「ランナーの安全確保のために、今後も県内各地で呼びかけを行っていく」と話した。 ●「東京オリンピックの中止について、関係者は誰も検討していない」 5/27 IOC=国際オリンピック委員会の最古参の委員ディック・パウンド氏(79)がCNNの取材に対し、「東京大会の中止という選択肢は排除されている」と話した。 IOC委員を43年前から務めているパウンド氏「東京オリンピックの中止について、関係者は誰も検討していない」「中止という選択肢は事実上、排除されている」と話し、東京大会について予定通り開催される方針だとした。一方で新型コロナウイルスの感染対策については、「何かを保証できる人は誰もいない」と話した。 パウンド氏は今年の初めに「開催確率は75パーセント前後」としていましたが、「研究が進み、確率は遥かに高くなっている」としている。 ●「アルマゲドン」発言のIOC最古参委員に鳩山元首相、舛添氏ら「許せん」 5/27 東京オリンピック(五輪)・パラリンピック開催に前向きな姿勢を示す国際オリンピック委員会(IOC)の元副会長で最古参委員のディック・パウンド氏(79)の発言を、鳩山由紀夫元首相らが厳しく非難した。 パウンド氏はCNNのインタビューで「中止の選択肢は事実上すでに排除されている」と発言したほか、英イブニング・スタンダード紙でも「東京五輪を止めることができるのはアルマゲドン(人類滅亡)だけだ」と語り、中止するには「時すでに遅し」だとコメントしている。 前東京都知事の舛添要一氏は、パウンド氏の“アルマゲドン”発言に「アルマゲドンで脅し人々を勧誘し、サリン大量殺人を犯したのがのオウム真理教だ。このカルト・テロ集団と戦った私は、アルマゲドンという言葉を聞くだけで身の毛がよだつ。IOCは日本の現代史くらいは知っておくべきだ」「パウンドIOC委員のアルマゲドン発言は許せません」とツイートした。 アルピニストの野口健氏は「『アルマゲドンない限り五輪開催』というが、ならば、何故に昨年に開催されなかったのだろうか。昨年はアルマゲドン級であったのだろうか?何をもってしてアルマゲドンなのか、その定義を聞きたい」と疑問を呈した。 鳩山氏は「IOCの最古参のパウンド委員の発言は狂ってるとしか言いようがない」と言及。「『五輪は菅首相が中止を求めても開催される』,『開催しても追加のリスクはないという科学的な証拠がある』こんな非科学的な発言を誰が信用するものか」と、「週刊文春」のインタビューでの発言に触れ、「8割が反対している日本国民を馬鹿にするのもいい加減にしろ」と怒りをあらわにした。 ●東京五輪「6月末までに開催可否判断を」 最古参IOC委員パウンド氏 5/27 国際オリンピック委員会(IOC)のディック・パウンド委員(79)が時事通信の単独インタビューに応じた。カナダ出身で元副会長のパウンド氏は、2001年にフアン・アントニオ・サマランチ会長の後任を決める会長選に立候補(新会長に選出されたのはジャック・ロゲ氏)するなど、長年にわたりIOCに携わっている最古参の委員。新型コロナウイルスの影響に揺れる中で7月23日の開幕を控える東京五輪について、パウンド氏は「(IOCや日本政府は)感染リスクを上げることなく開催できることに確信を持ち続けることが必要」と述べた。また、「いつまでも『多分やる』と言い続けることはできない」とし、テレビ局などの準備も踏まえ6月末までには開催可否の判断をすべきだとの認識を示した。 ● ――日本では東京五輪開催に反対する声も大きい。世論を前向きなものに変えるため、IOCや日本政府がすべきことは何か。 第一に、参加者や日本の方々の感染リスクを上げることなく五輪が開催できることについて、自分たちの中で確信を持ち続けることだと思う。日本政府や組織委は、『五輪が開催できるという決断は、可能な限り最高の科学的知識とワクチンの効果や普及に基づいている』と説明することに対し、十分に積極的ではなかったと思う。IOCは感染リスクが高まることを望んでいないし、リスクが高まるのならば五輪を開催しない。 現時点で言えることは、状況が良さそうに見えるということだ。(選手ら関係者と外部との接触を極力遮断する)「バブル」はつくれるし、来日する者は出発前と来日時にウイルス検査を受ける。健康な状態でなければ、日本の空港からは出られない。参加者は定期的に検査を受け、健康状態に問題がありそうなら、バブル内の特別な隔離状態に置くことができる。全ての参加者は安全に大会に臨める。 唯一、本当に問題なのは観客を入れられるのか、ということだろう。入れるなら、どれくらいか。恐らく100%まで入れられる可能性は低いが、いくらかは容認される可能性がある。だが、無観客なら安全という判断が下されたとしても、世界が終わるわけではない。観客が入れば雰囲気が出て良いことだが、必ずしも必要というわけではない。世界を見渡してみれば、99.5%の人がテレビなどの機器を通して東京大会を観戦することになる。そうした人は観客の存在は気にしない。関心があるのはスポーツ自体であり、観衆を見たいわけではない。五輪のような大きなイベントであったとしても、必要なら無観客で開催できる。 ●コロナ下の五輪、「価値を強めるかも」 ――観客がいない場合、五輪の価値を損ねることにならないか。 それはないと思う。東京大会は(コロナ下で)最初の世界規模のイベントなので、(五輪の価値を)強めるかもしれない。206の国や地域が一堂に会し、パンデミックのさなかであっても世界中のアスリートが何かを行うことになる。率直に言うと、世界中の観戦者に対して、『コロナウイルスに打ち勝つことができる』と示すことができるだろう。 ――日本政府は、コロナ感染対策の行動制限に違反した場合は国外退去を命じることも法的に可能という立場を示している。 その通りだと思う。ガイドラインに故意に違反した者は他の人々を危険にさらすことになるし、懲戒処分を受ける必要がある。 ――コーツIOC調整委員長は先日、東京五輪に際して日本で新型コロナの感染が拡大した場合、責任は日本側にあると発言した。同意するか。 全ての国が自国の感染対策に責任を負わなければならない。私はカナダにいるので、カナダ人が正しいことをしているか確認する必要があるし、日本は日本人に対して確認しなければならない。 ●再延期の「選択肢なし」 ――世界はまだ、不確実性の真っただ中にある。IOCにとって東京五輪を再延期する選択肢はあるのか。 再延期はない。(昨年3月に)延期が決まった当初、日本側は『延期は最大1年までで、それ以上はできない』と言っている。だから今年7〜8月にできなければ、大会は開催されない。現在、選択肢は三つではなく二つになった。開催か中止かだ。 ――再延期できない理由は。 会場の再確保などで日本が負担する追加費用はかなりの額になると思う。来年の国際大会の日程は既に整備されているし、それは東京五輪の延期によって変更されたものでもある。来年2月には北京冬季五輪があり、2024年パリ夏季五輪も間近に迫っている。 ――どのような状況になったら、IOCは東京五輪の中止を検討する必要があるのか。 これからも状況は大きく変わっていくと思う。毒性の強いウイルスや変異したウイルスが拡大していくかもしれない。しかし、現時点で分かっていること、科学的知識を持つ人たちが言うのは、『(東京五輪開催について)受け入れがたいリスクはないだろう、大丈夫だろう』ということだ。100%確実なことはない。あす津波に襲われ、状況が変わることだってあり得る。しかし、特にコロナウイルスに関して私たちが知りうることから判断すると、問題ないように見える。私はチケットを持っているし、東京に行く予定だ。 ――東京五輪が中止された場合、日本側がIOCに対して賠償金を支払わなければならないのでは、という懸念が国内で出ている。 中止によってIOCへの支払い義務が生じるかどうかは分からない。IOCは大会中止の場合に起こりうるリスクに対して保険に入っていると思う。IOCが望むのは、保険会社が何も支払う必要がないことだ。それは大会が開催されることを意味するのだから。 ――大会が中止となった場合、IOCの経済的ダメージはどれほどになるのか。 財務担当者が計算していると思う。全ての利害関係者、スポンサーや放送局は通常のリスクマネジメントや損害を軽減する対策として、予想されるあらゆるリスクに対して保険をかけている。 ●テレビ局など「6月末までに知っておかないと」 ――大会開催の最終的な可否について、いつまでに判断する必要があるか。 とてもいい質問だ。観客を入れるかどうかについては長く待つことができると思うが、大会自体となると…。来日する人やスポンサーのこともあるし、テレビ局やラジオ局は機材や人を日本に送る必要がある。分からないが、6月末までにはやるか、やらないかを知っておく必要がある。いつまでも『多分やる、多分やる』と言い続けることはできない。 ――大会中にクラスター(感染者集団)が発生した場合、打ち切る必要はあるか。 本当に手に負えない大規模な感染拡大があり、日本の公衆衛生当局が『危険過ぎて継続できない』と判断した場合、日本は恐らくIOCなどと協議して決断しなければならない。 ――バッハ会長やIOCが「大会中止は検討していない」と言い続ける理由は何なのか、分かりにくい。本当に検討されていないのか。それとも、そうした可能性について話した場合のネガティブな影響を心配しているのか。 IOCが『中止を考えている』と言った場合、人々は『何てこった。彼らは開催を約束していない』となってしまうだろう。そうではなく、IOCは開催に向けて全力を尽くしている。何か劇的で予期しないことが起こらない限り、それは維持される。つまり、ある意味ではIOCが積極的に大会の中止を検討していないというのは真実だ。 ――北朝鮮は新型コロナ感染の不安により、東京五輪の不参加を表明した。他の国や地域で同様の動きはないか。 五輪は常にリスクを抱えている。時には政治がスポーツを邪魔することもある。北朝鮮が五輪に参加しないのは初めてではない。だから、このことが重要な要素になるとは思わない。 ――仮に今夏の五輪があなたの母国カナダで開催されるとしても、開催に自信が持てるか。 日本で行われる場合と全く同じように進めていくだろう。ワクチンの有効性や社会的距離の確保、バブルをつくれるかなどを評価していく。そして同じ結論にたどり着くだろう。『よし、やれる』と。そして『カナダへようこそ。入国前にワクチンを接種してきてください』と言うだろう。 ●「無条件 強行する」東京オリンピック…コロナ防疫は「どうやって?」 5/27 IOC(国際オリンピック委員会)とともに、今年7月に東京オリンピック・パラリンピック開催を「強行する」という日本政府は、安全面を考慮して 参加選手団への防疫管理と新型コロナウイルス感染症ワクチン接種計画などを準備している。 今日(27日)日本経済新聞によると、日本政府とオリンピック組織委員会は 大会期間中 新型コロナの感染拡散を防止するために、参加選手たちに対する外部との接触を遮断する「バブル方式」の環境を構築する一方、6月から 日本の選手団へのワクチン接種を始めることにした。オリンピックが予定通り開催される場合、およそ計9万4000人の選手団たちと大会関係者たちが日本を訪れることになる。 この日 日本オリンピック委員会(JOC)は、来月1日から日本代表チームの選手団全員を対象に ワクチン接種を始めることを明らかにした。接種対象は 600人あまりの代表選手たちと代表チームへの抜擢が予想されている候補選手、彼らと接触する監督とコーチなど、計1600人あまりが該当する。7月23日の大会開幕前までに、全ての対象者に2回の接種を完了される計画である。 また 海外選手の場合 IOCが米ファイザー社からワクチンを受給し、大会前までに各国と各地域の選手たちの80%以上に接種・完了させる計画である。日本政府の関係者は「このようにワクチン接種が行われれば、大会期間中 新型コロナ感染のリスクは かなり低くなる」と期待した。 一方 各種競技団体の関係者とメディアなどに対する対策も、別途に準備される。彼らの人数は計7万8000人あまりとされ、選手団の5倍を越えるものと予想されていることから、徹底した対策が必要である。このため 組織委員会は、指定宿泊施設以外に 民間ホテル400か所との協議を通じて、彼らが宿泊できるように 別途に配置する計画である。また 彼らは、滞在場所などに対する誓約書を提出しなければならない。 加藤勝信官房長官は今月17日「オリンピックに参加する選手団と団体関係者およびメディアに対しては、誓約書を順守しない場合 国外強制退去のような措置を検討している」と語った。 ●「対策大幅強化しない限り危険な大会に」東京五輪に米識者 5/27 米ミネソタ大学感染症研究政策センターのマイケル・オスターホルム所長が26日、米CNNテレビのインタビューで開幕まで2カ月を切った東京オリンピック(五輪)について、現状の計画は最良の科学的根拠に基づいていないと語った。その上で「中止」という良い知らせを多くの人が望んでいると踏み込んだ。 理由として、世界200カ国余りから1万5000人の選手が集まるイベントにおいて、ワクチンの接種が義務付けられていないことを指摘。国によっては大会までにワクチンを受けられない選手がいるほか、およそ半数の国で18歳以下への接種が認められておらず、接種可能な年齢に達していない選手が多くいることを挙げた。 2つ目の理由として、最近になって米疾病対策センター(CDC)が新型コロナウイルスは空気感染する可能性を認めたことを指摘。その上で、選手の競技場への移動や宿泊施設での相部屋、食堂の利用でどう感染を防ぐのかが不透明であり、現状の対策は不十分だと批判した。 また、各国の選手団がそれぞれ自国から(感染予防の規定がない)マスクを持参することや行動追跡アプリについても、感染を防ぐ上での対策が万全ではない理由にあげている。 「選手や関係者を守るための対策を大幅に強化しない限り、危険な大会になる」と語り、「今すぐチャンスを与えたい」と組織委員会やIOCに中止を決断するよう勧告した。 五輪開催を巡っては、ニュージーランド保健省の新型コロナウイルス対策本部顧問を務めるマイケル・ベーカー教授も25日に「開催する根拠も正当性もない」と批判し、人命が奪われる恐れがあると警告を鳴らしたばかり。開催は「ばかげている」と語っており、各国の感染症の専門家からも中止を促す訴えが相次ぐ状況となっている。 一方、国際オリンピック委員会(IOC)の元副会長で最古参委員のディック・パウンド氏(79)はCNNのインタビューで「中止の選択肢は事実上すでに排除されている」と発言し、開催に前向きな姿勢だ。同氏は26日付の英イブニング・スタンダード紙でも「東京五輪を止めることができるのはアルマゲドン(人類滅亡)だけだ」と語り、中止するには「時すでに遅し」だとコメントしている。 日本の医療従事者や実業家、オフィシャルパートナーの朝日新聞までもが中止を求める中、IOCは開催に向けて着々と準備を進めているとCNNテレビは伝えている。 ●米ホワイトハウス 東京五輪・パラで“公衆衛生優先”に理解 5/27 東京オリンピック・パラリンピックについて、アメリカ、ホワイトハウスの記者会見で質問が相次ぎ、副報道官は日本政府は開催に向けて公衆衛生を優先課題の中心に据えているとして、改めて理解を示しました。 26日のホワイトハウスの記者会見では、アメリカメディアの記者から東京オリンピック・パラリンピックについて、「世論調査で多くの日本人が開催に反対し、スポンサーになっている新聞も反対している。バイデン政権は市民の声に耳を傾けるのか、それとも日本政府の主張を支持するのか、判断する時が来るのか」とか、「このまま開催に向けて進めていくべきだと考えるか」などの質問が相次ぎました。 これに対し、ジャンピエール副報道官は「われわれの立場は変わっていない。オリンピックの開催に向けて、日本政府は公衆衛生を優先課題の中心に据えていると強調している」と述べました。 そして、「日本政府はアメリカ側と緊密に連絡を取り合うと約束している。日本政府が説明してきたことを心から信頼している」と述べ、日本政府は開催に向けて公衆衛生を優先課題の中心に据えているとして、改めて理解を示しました。 |
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●小池都知事“東京五輪・パラ 再延期は難しい” 5/28
新型コロナウイルスの感染拡大を受けてことし夏に1年延期された東京オリンピック・パラリンピックの開催をめぐり、東京都の小池知事は記者会見で、大会の再延期は難しいという認識を示しました。 この中で、小池知事は、感染拡大を受けて1年延期された東京大会について、記者団から「大会の再延期は可能な選択肢なのか」と問われたのに対し「再延期をすれば基本的には大会は全く異なるものになると思う。アスリートそのものもモチベーションや体力が変わってくると思うので、別物と考えたほうがいいのではないか」と述べ、大会の再延期は難しいという認識を示しました。 そのうえで、小池知事は「しっかりと安全・安心を守っていくことができる大会にしていくことがベースだ」と強調しました。 また、大会組織委員会や政府、都などが感染状況を見極めながら、来月に決めるとしている大会の観客数について「今やっている国内のスポーツイベントの上限の規制の中でそれぞれ守っていただいていることがまず基本になる」と述べ、具体的な決定の時期については明言を避けました。 ●東京五輪中止論にポツリ「まるで鎖国していたころの攘夷といっしょだね」 5/28 元東京都知事で作家の猪瀬直樹氏が28日までに自身のツイッターを更新。東京五輪開催是非について私見を述べた。 「オリンピック出て行けって、まるで鎖国していたころの尊皇攘夷といっしょだね」とつづった猪瀬氏。「攘夷は、事態が明らかになるとたちまち消え、尊王開国に転向して何ごともなかったかのようにつぎのステージ、鹿鳴館へと移っていった。ロジックより感情で動いてきたのが日本人とつくづく」と続けた。 猪瀬氏は東京都知事として大会招致活動に携わった経験を持つ。 ●尾身会長 東京五輪・パラ「ウイルス流入のリスクある」 5/28 東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、政府の分科会の尾身会長は、衆議院厚生労働委員会で、変異ウイルスが国内に流入するリスクもあるとして、大会関係者を含め、海外からの訪れる人をできるだけ少なくする必要があるという考えを示しました。 この中で、尾身会長は「一般論として言えば、日本に来る人が、出発前や来てからもしっかり検査を行い、質がよいワクチンを全員が打てば、ウイルスの国内への流入は防げると思うが、必ずしも現実はそうはならない」と指摘しました。 また「インド株が世界にかなり拡散しているので、たくさんの人が来れば、ウイルスが国内に流入するリスクは当然ある」と述べました。 そのうえで「仮に大会を開く場合は、アスリートや大会関係者を含め海外からの訪問者をなるべく少なくすることが重要で、人の流れや接触を含めた国内での感染対策も、極めて強力なものにする必要がある」と述べました。 ●東京オリンピック「開催都市契約」に記された中止要件とは? 5/28 東京オリンピックの開幕まで2カ月を切った中、開催都市の東京都では緊急事態宣言が6月20日まで延長される見通しとなった。新型コロナの感染収束が見通せない中、主催者のIOC(国際オリンピック委員会)側は開催する姿勢を崩していない。 一方で、国内では緊急事態宣言下での五輪開催は難しいのではないかという声は根強い。 感染拡大防止を図る中、都が3万5000人の来場を想定するパブリックビューイング会場を設置することにも批判が出ている。環境に配慮した大会を謳っておきながら、設営や工事のための車両が出入りするため樹木の剪定がされることも、火に油を注いでいる。 田村憲久厚労相は5月27日の国会答弁で「(五輪観戦で)感染リスクが高い行動をすれば、感染拡大が増える」「ご自宅で応援をしていただくようなオリンピックにしていかなければならない」 と指摘。コロナ対応をめぐる休業要請だけでなく、オリンピックをめぐっても都側と国側の足並みの乱れている。 こうした中で注目を集めているのが、IOCと東京都が結ぶ「開催都市契約」だ。菅義偉首相が「開催の決定権はIOCにある」と述べる背景には、この契約がある。 5月28日には日本経済新聞が「五輪開催契約、IOCに『全権』 中止なら日本が賠償も」の見出しで、「日本側が中止を要望した場合、IOCが多額の賠償金を請求してもおかしくないと専門家は指摘する」と報道。Twitterでも「五輪開催都市契約」がトレンド入りした。 ●「開催都市契約」には何が書かれているのか? 「開催都市契約」とは読んで字のごとく、オリンピック・パラリンピックの開催都市と開催都市がある国のオリンピック委員会、IOCの三者が結ぶ契約だ。東京大会のものは、2013年9月にアルゼンチンのブエノスアイレスで結ばれた。 「オリンピック憲章」と開催都市契約には、大会に関するあらゆる権利・義務について定められ、IOCが包括的に決定権をもつことが規定されている。もちろん、大会の中止に関してもだ。 ここにきて注目されるのが、大会中止に絡む「契約の解除」に関する条文(66条)だ。そこにはこう記されている。 ●「損害賠償」は請求されるのか、されないのか。 IOCから賠償金などを求められるかについて、大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は5月13日に「最近、そういうご質問が増えているが、考えたことはない。あるのかどうかも、見当がつかない」と発言している。 だが、開催都市契約には「IOCに対する請求の補償と権利放棄」の項目がある。第9条には「保険」の項目もあり、そこには大会組織委員会(OCOG)が「中止についての保険をかけようと計画する場合、OCOGはOCOGをIOCの保険プログラムに 含める選択肢をIOCに提示するものとする」とあり、ある程度は保険金でまかなえるのではと考える向きもある。 そのため「旧大蔵省出身の武藤さんが“考えたことがない”なんて、あるのだろうか?」(野党関係者)と訝しがる声もある。 松本泰介・早大准教授は朝日新聞の取材に対し「IOC以外が中止を決めた場合、IOCが日本側に損害賠償を請求する可能性がある」と指摘する。 一方で、オンライン署名でオリンピックの開催中止を求める署名を立ち上げた元日弁連会長の宇都宮健児弁護士は5月6日に会見。開催都市契約そのものに「違約金条項」はないようだとした上で、「(コロナ禍を理由に)日本側が中止を求めるのであればIOCも応じざる得なくなるのでは」と主張した。 宇都宮氏は5月6日の会見後、Business Insider Japanの取材に対し「今回のコロナ禍は、1940年に日中戦争で東京がオリンピックを返上したときと同じような非常事態だと考えるべきだ。こうした非常事態に、東京都と政府、組織委員会が中止を申し出て、IOCがNOと言えるだろうか」と話した。 国連のグテーレス事務総長は5月24日、WHO(世界保健機関)の年次総会の開会式で「私たちはウイルスとの戦争状態にある(“we are at war with a virus”)」と発言。戦時下の体制と論理に基づき行動することを求め、ワクチンを公平に分配するように訴えた。 グテーレス事務総長は3月の記者会見でも「私たちの世界は共通の敵に対峙している。私たちはウイルスとの戦争状態にある」と述べている。 ●それでも強気なIOC、なぜ? ただ、IOCはなおも東京大会は実施するという姿勢を崩していない。5月27日、バッハ会長は各国の選手らとの会見で「全幅の信頼を持って東京に来てほしい」と述べ、大会開催に自信を見せた。 IOCとしては、現時点では「参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠」がないという姿勢を堅持していることになる。 一方で、IOCのディック・パウンド委員は週刊文春のインタビューに対し、「菅首相が中止を求めても、大会は開催される」「昨年3月、延期は一度と日本が述べたのだから、延期の選択肢はテーブル上に存在しない」などと発言している。 ただ、日本国内で東京五輪への逆風は強い。NHKの世論調査(5月10日)では「東京オリンピック・パラリンピックの観客をどうすべきか」という質問に対して、「中止すべき」と答えた人が最多の49%だった。読売新聞が5月7〜9日に実施した世論調査でも59%が「中止」を求めた。 世論調査で軒並み「オリンピック反対」が上回る中、パウンド氏のようなIOC関係者から折に触れて漏れる発言は、日本側の市民感情に寄り添うどころか、むしろ逆撫でしかねないものだ。 日本共産党の志位和夫委員長は5月27日の会見で「日本国民の命よりも五輪開催を優先するもので断じて許すわけにいかない」「日本をIOC帝国の植民地扱いする発言で主権侵害だ」と厳しく批判。「保守」の自民党の政権ではなく、「革新」の日本共産党が主権侵害を批判するという事態になっている。 なお、アメリカの公衆衛生の専門家らは25日、東京大会の組織委員会やIOCなどが定めた行動規範(プレーブック)は「科学的なリスク評価に基づいていない」と批判する論文を発表。運営の改善を求めている。 日本経済新聞は、IOCが開催姿勢を崩さない背景には懐事情があると指摘する。 収入のうち、IOCは9割を各スポーツの国際競技連盟(IF)や世界各国・地域のオリンピック委員会(NOC)に分配する。この資金に頼るマイナー競技のIFは少なくなく、昨年の延期時も金策に追われたIFがあった。中止の場合は賠償請求などの手を尽くさないと、トーマス・バッハ会長ら執行部がIOC委員やIFから突き上げを食らうだろう。(五輪開催契約、IOCに「全権」 中止なら日本が賠償も: 日本経済新聞) すでにIOCは昨年の東京大会の延期に伴い、大会剰余金の取り分を放棄している。 いずれにしろ、大会中止に伴いIOCが日本側に賠償責任を求めるのであれば、最終的にはスイス・ローザンヌのスポーツ仲裁裁判所(CAS)での裁判に託されることになるだろう。 先出の宇都宮氏は、コロナ禍という不可抗力にも関わらずIOCが日本に賠償金を請求すれば「世界中から袋叩きになってIOCは崩壊するのでは」と指摘する。 もはやオリンピック精神や「なぜ東京で開催するのか」といった意義は脇に追いやられてしまった。今回のIOCと日本側のやり取りは、これまであまり考えられてこなかった開催国のリスクをあぶり出した。今後、オリンピック招致に手を挙げる都市は少なくなる可能性もあるだろう。 東京オリンピックの開会式が予定される7月23日、聖火はどこに灯っているのだろうか。 ●コロナ感染「全員が負うリスク」 東京五輪参加者へIOC幹部 5/28 国際オリンピック委員会(IOC)は27日、世界各国・地域の選手らを対象にした「国際アスリート・フォーラム」をオンラインで開催し、新型コロナウイルス感染拡大の影響に揺れる7月開幕の東京五輪について意見交換した。 IOCは五輪出場選手に対し、ウイルス感染しても主催者側の責任を問わないとする誓約書に署名を求める方針。米国の関係者がこの点の説明を求めると、IOCのハダッド最高執行責任者(COO)は過去の五輪でも実施してきたと説明。「感染に対して(安全を)保証できる政府や保健当局はどこにもない。私たち全員が負うリスクになる」と理解を求めた。 フォーラムにはバッハ会長も登壇。2時間近いやりとりの中でさまざまな国の代表者が発言したが、東京五輪開催への反対意見や異論は出なかった。ベルギーやロシアの代表者からは、それぞれの選手団でワクチン接種が進んでいる現状が報告され、バッハ会長は「自分自身や日本の人々の安全性を高める」と歓迎した。 東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長はビデオメッセージを寄せ、「心配する方がいらっしゃるかもしれないが、私のミッションはコロナ対策に万全を期して準備に努めること。7月に東京でお会いしましょう」と語り掛けた。 ●「本気で東京五輪を開催する気?」欧米で疑問報道が相次ぐ 5/28 日本で新型コロナウイルスの感染者が収束しない状況を、世界各国は注視している。米国務省は24日、日本に対する渡航警戒レベルを4段階で最も厳しい「渡航中止の勧告」に引き上げた。米疾病対策センター(CDC)も「日本の現状を踏まえると、ワクチン接種を完了した旅行者でも変異種に感染したり広めたりする危険性がある」と警鐘を鳴らしている。 こうした状況で、2カ月後に迫った東京五輪を開催できるのだろうか。米オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)は渡航中止の勧告について、「五輪参加への影響はない」と声明を発表し、日本政府も開催のスタンスを変えていない。加藤勝信官房長官は25日午前の記者会見で、「東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を実現するとの日本政府の決意を支持するという米国の立場にはなんら変更はないと考えている」と述べている。 「USOPCは立場上、五輪を中止にするとは言えないでしょう。常識的に考えれば、渡航中止の勧告が出ている国で2カ月後に五輪を開催するなど考えられない。政府も後に引けない状況で、答弁が苦しくなっている」(一般紙社会部記者) 米国では大手メディアが次々、五輪開催に異を唱えている。ワシントン・ポスト(電子版)も5日のコラムで、日本政府に対し東京五輪を中止するよう促している。コラムでは。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長を「ぼったくり男爵」と痛烈批判。五輪開催の目的は「カネ」と断じ、日本は「五輪中止で損切り」をすべき」と訴えた。また、ロサンゼルス・タイムズ電子版も18日、今夏の東京オリンピックについて「中止しなければならない」とする記事を掲載した。 英国駐在する日本人ジャーナリストは、「イギリス人たちに『東京五輪を本気で開催する気か? 日本はワクチン接種率が低いから、五輪どころではないだろう』とよく聞かれます」と明かした。 「英国は新型コロナウイルス対策で1月からロックダウンしていましたが、3月から小売店が約3カ月ぶりに営業を再開し、今月になって飲食店やパブも営業が解禁されるようになりました。ただそれが実現できたのもワクチン接種率の高さが大きな要因です。日本は7月末までに高齢者向けのワクチン接種を終了させ、9月末までに希望する全国民向けの量を確保するという方針ですが、あまりにも遅すぎる。全国民にワクチンが届く前に、世界中の人たちが集まる東京五輪を開催することを欧州の人達は理解できません」 インドで確認された変異株が世界中で猛威を振るい、日本でも感染者が確認されている。五輪開催に世界中が疑問を抱く中、日本でも開催中止を望む声が日に日に高まっている。菅義偉首相は4月20日の衆院本会議で、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして(東京五輪を)実現する決意に何ら変わりはない」と述べたが、打ち勝ったと証明できないのが現状だ。十分な説明責任を果たさず国民が不安を抱いたまま、このまま五輪開催に突き進んでよいのだろうか。 ●韓国外交長官「東京オリンピック地図の『独島(竹島)』表示、容認できない」 5/28 チョン・ウィヨン(鄭義溶)外交部(部は省に相当)長官は、日本が東京オリンピックのホームページ内の地図に竹島(韓国名:独島)を自国の領土のように表示した状況について、「独島問題に関する日本の誤った行動に対しては、私が決して容認しない」と述べた。 鄭長官は28日、国会の外交統一委員会でこの部分についての外交部の対応を問うキム・ヨンジュ「共に民主党」議員の質問に対し、「その部分について、すでに日本に強力な抗議をした」と答えた。 キム議員は、「今回のオリンピックは全世界が注目するイベントだが、その地図に独島を自国のもののように表示したことに対しては、強い対処があるべきだと考える」と指摘した。これに対し鄭長官は、「キム議員の考えと同じだ。われわれは可能な限り強力な対応を続けていく」と答えた。 この日、鄭長官は日本側に具体的にどんな内容の対応をするかについては言及しなかった。ただ、外交部は前日、「独島は歴史的、地理的、国際法的に明白な韓国固有の領土。日本側が東京オリンピックのホームページ上に独島を日本の領土のように表記したことは、こううした側面で決して受け入れられないものだ」とし、文化体育観光部、大韓体育会などの関連機関の協議を通じた積極的な対応を強調している。 ●東京五輪パラのコロナ感染対策 米の専門家が「不十分」の見解 5/28 東京オリンピック・パラリンピックにおける新型コロナウイルスの感染対策について、アメリカの公衆衛生の専門家グループが不十分だとして改善を求める見解をまとめ、医学誌に発表しました。 25日付けのアメリカの医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に見解を発表したのは、バイデン大統領の政権移行チームで新型コロナ対策のアドバイザーだった、ミネソタ大学のオスターホルム教授など、公衆衛生の専門家4人です。 この中では、IOC=国際オリンピック委員会などが感染対策に必要なルールをまとめた「プレーブック」について、競技会場が屋外か屋内か考慮していないなど「科学的に厳密なリスク評価に基づいていない」と指摘しているほか、接触状況の追跡に、選手の多くが競技中は持たないスマートフォンのアプリを使う前提となっていることなどを問題視しています。 そして、このままでは重症化リスクの高い人もいるパラ選手をはじめ、ボランティアや大会役員、それにホテルの従業員など多くの関係者を感染の危険から十分に守れないと警鐘を鳴らし、改善を求めています。 そのうえで「オリンピックの開催に向け緊急の行動が必要だ」として、WHO=世界保健機関が感染症の専門家やアスリートなどからなる緊急の委員会を招集し、東京大会の危機管理に関する助言をすることも推奨しています。 「プレーブック」は今後さらに更新され、来月、最終版が公表されることになっています。 発表された専門家の見解によりますと「プレーブック」では、選手たちがPCR検査を受ける頻度は定められていませんが、少なくとも1日1回受ける必要があるとしています。 また、接触状況を追跡するのにスマートフォンのアプリを使うことになっていますが、スマートフォンを持って競技する選手はほとんどいないことから、センサーを搭載したウエアラブル端末のほうが効果的だとしています。 このほか、宿舎では相部屋も想定されているなど、屋内での詳細な感染対策が定められていないとして、選手の宿泊は個室にするなど、屋内での人数制限を設けるべきだと指摘しています。 ●「無観客ならやりたくない」異色のアスリートが語る東京オリンピック 5/28 ハンドボール日本代表キャプテンの土井レミイ杏利は“異色のハンドボール選手”だ。大学卒業後、ケガで一度は現役を引退したがフランスで現役復帰を果たし、日本代表のキャプテンにまで上り詰めた。一方で「レミたん」として230万人ものフォロワーを抱える人気TikTokerとしての顔も持つ。東京オリンピックを目前に控え、その注目度も日ごとに増している代表キャプテンに、逆風が吹き荒れる東京オリンピックへの率直な思いと、ハンドボール界の未来予想図を語ってもらった。(ラブすぽ/Yahoo!ニュースVoice) ●もちろん、やりたい。ただ、「無観客」でやるくらいなら…… まだ収まる兆しのない新型コロナウイルス感染拡大を受け、日本では東京オリンピックの開催に否定的な声が噴出している。当然、アスリートにも複雑な感情が生まれるはずだ。今なお、開催の賛否が問われ続ける東京オリンピックを、土井レミイ杏利はどう迎えようとしているのか―― ――東京オリンピック開催に賛否がありますが日本代表のキャプテンとして、この状況をどう受け止めていますか? 日本代表のキャプテンとして言うのであれば、もちろんやりたいです。僕にとっては夢の舞台ですし、ハンドボール界が大きく変わるきっかけになりうる大会なので、それが行われることを信じて、毎日練習しています。 ――土井レミイ杏利という「個人」としてだと、東京オリンピックに対する思いは違いますか? ……違いますね。ひとりの人間として意見するのであれば、もしひとりでも感染してしまうリスクがあるのであれば、開催に踏み切るのは少し違うのかな、という思いもあります。無観客という話も出ていますが、わがままを承知で言うと、ファンの方がいないなら「やりたくない」という思いもあります。ただ、立場上チームを引っ張っていかなければいけないですし、普段の練習ではそういう思いは押し殺さないといけない。ネガティブな感情があるだけでチームにも、個人にも影響が出てしまうので。そこは切り替えて、開催されることを信じて今は過ごしています。 その上で、もし開催されるのであればまず、1人も感染者が出てはならない。そして、あらゆる試合をする中で、国民に感動や元気を与えられる場面がいくつか生まれて「いろいろ大変だったけど、やってよかったね」と最後に言ってもらえるような大会になれば、終わった後に見直される部分もあるのかなと。だから、もし開催されるのであればそれを目指していきたい。オリンピックに出場することで応援してくれない人もいるでしょうし、難しいところもあるけど、僕たちがそれを示さないといけないですよね。 ●ハンドボールの魅力を知らず “マイナー”と認識されているのが一番悔しい ハンドボールという競技は、日本ではまだまだ“マイナースポーツ”の域を脱していない。高い人気を誇るフランスのトップリーグでプレーしてきた土井レミイ杏利の目に、日本ハンドボール界の現状はどう映っているのか―― ――ハンドボール人気の高いフランスと日本の違いは? 野球で言えばプロ野球と草野球くらいの差があると思います。(2019年に)初めて日本の実業団チームでプレーしたときには結構ショックを受けました。フランスにいたころは黙っていてもお客さんが来てくれるので、ハンドボールのことだけを考えればよかったんです。でも、日本ではどうすればお客さんが集まるのか、どうすれば競技の人気が高まるのかを考えなければいけない。ただ、僕が帰国した時点ではそれを本気で変えようとしている人は一人もいなかった。なので、自分でやろうと決心したんです。 ――日本でハンドボールが決してメジャーではない状況について みんながハンドボールはマイナーだという認識を持っているのは事実です。でも一番悔しいのは、ハンドボールがどういう競技かを知った上でそういう認識を持っているわけではないということ。僕はハンドボールはとても魅力的なスポーツだと思っています。でも、日本ではほとんどの人にそこを知ってもらう前の段階で「マイナー」というレッテルを貼られている。そこは本当に悔しいですね。だからこそまずは「知ってもらいたい」という思いで活動しています。 ――東京オリンピックは無観客開催の可能性もありますが、改めてアスリートにとって応援してもらうことの大切さとは? ひとりで成し遂げられることなんて何もないですからね。たとえば何かを乗りこえるにしても、それが達成できた「自分自身」を築き上げてきたのはそれまでの環境だったり、いろんな人との関わりだったりするわけじゃないですか。それがなければ何もやれないし、何も成し遂げることなんてできない。 試合でいえば、その場で声を張って応援してくださる人の後押しって選手にとってはすごくて……。僕もこれまで何度も「今日は応援してくれる人のおかげで勝てたな」という経験を何度もしています。僕にとっては彼ら(応援してくれる人)がいてはじめて、ひとつのチームがそろうという認識なんです。だから無観客でやるというのはチームメイトが全員そろっていないのに試合をやる、という感覚なんです。応援してくれるみなさんがいてこそ、喜びや悲しみが共有できる。そこがスポーツにとっての大きな価値だと思うんです。 TikTokも自分で編集してアイデアを出してやっていますけど、それをフォローしてくれる人がいるからこそ注目されている。そういう意味では、それも自分だけの力ではないんです。だからファンの皆さんはすごく大事ですし、僕は彼らがいないのであれば、試合はあんまりやりたくないというか……。アスリートとしてこんなこと言っちゃいけないんでしょうけど……(苦笑)、でも、それくらいファンの人たちの存在は大切なんだと伝えたいんです。 ●「当たり前」のようにハンドボールがある―― そんな未来が来れば理想的です どの競技にも同じことが言えるが、東京オリンピックは「ゴール」ではない。その先にどんな未来を描けるかが、競技の人気や振興に大きく影響する。ハンドボール界が見据える、オリンピック後の未来予想図とは―― ――東京オリンピック後に日本のハンドボール界は何をする必要がありますか? 僕はそこで結果が出て、ある程度いい流れができたとき、多少なりとも注目されると思うんです。でも、そこで調子に乗らないことが大切ですよね(笑)。そこで大きく出るのではなく、さらに初心に帰って、草の根活動のように、地域密着だったり、細かいことを大切にしないといけない。オリンピックが終われば選手たちはみんな、自分たちのチームに帰ります。そこで講習会でもいいですし地域の活動に積極的に参加するとか、そういう事が必要になる。人気が出ているということは、みんなが注目してくれているおかげなんだよということを忘れないで、ファンの方を大切にしたり、恩返しする。そういう活動をしていくことがスポーツの人気を支えてくれるのかなと思います。 ――日本ハンドボール界の理想の姿を教えてください。 日常に当たり前のようにハンドボールがあるのが理想です。いろんな「当たり前」がありますけど、当たり前のように学校で経験したことがある。当たり前のように好きなチームがある。当たり前のように、みんながハンドボールを知っている。それからプレーヤーとしては当たり前のように毎回オリンピックに出る。当たり前のようにテレビをつけたらハンドボールをやっているとか……。そんな「当たり前」がたくさん生まれるといいなと思います。 ●東京五輪 代々木公園のライブサイト縮小へ 5/28 東京都は、東京オリンピック・パラリンピックのライブサイト会場となる代々木公園について、新型コロナ対策で、観客数を1600人から710人に縮小することを明らかにしました。 東京大会の競技中継などを見られる大規模なライブサイト会場について、東京都は、新型コロナの状況を踏まえ、11会場で実施する計画を見直し、代々木公園や井の頭公園などの8会場に縮小しています。 都は、その上で、代々木公園の大型ビジョン前の観客席について、当初の1600人から710人に減らすことを明らかにしました。政府が決定するイベント開催の条件に沿って、最終的に収容人数を判断しますが、入場は事前申込制にするということです。 また、会場では、アルコールの販売や持ち込みは禁止しますが、暑さ対策のためソフトドリンクは認めます。ライブサイトをめぐっては、新型コロナの感染拡大につながるとの懸念も出ていますが、都の担当者は、「会場は十分な広さがあり、適切な人流コントロールは可能だ」と説明しています。 都は、この8会場のほか、日比谷公園や上野公園など4か所に、比較的小規模なパブリックビューイング会場を設置する予定です。 ●IOCはなぜ日本政府を無視して暴言を繰り返すのか 5/28 昨年(2020年)の延期から新型コロナに翻弄されてきた東京オリンピックが、いよいよ瀬戸際に追い詰められている。野党がそろって「オリンピック反対」を打ち出し、公式スポンサーの朝日新聞も中止を求める社説を出し、世論調査でも「中止か延期」を求める意見が8割を超えた。 そんな中でIOC(国際オリンピック委員会)の委員が、無神経な発言を繰り返している。「緊急事態宣言が出ても大会は決行する」とか「首相が中止するといっても開催する」という発言は、日本の国家主権を侵害するものだ。今のところ日本政府は沈黙しているが、この状況でオリンピックは開催できるのか。 ●「首相が中止を求めても開催する」 今年も東京オリンピック・パラリンピックは、開催が危ぶまれていた。新型コロナの感染が収まらず、緊急事態宣言が出される状況で、今年7月23日に開催できる条件がそろうとは思えないからだ。普通ならそれに対して、日本国民の健康に配慮して協力を求めるのが(外交辞令としても)常識だが、IOCのコメントは常識外れだった。 5月21日の記者会見で、IOCのジョン・コーツ副会長は「緊急事態宣言が出ていてもオリンピックは開催できるのか」という質問に「絶対できる」(absolutely yes)と答えた。 24日には、IOCのトーマス・バッハ会長が、ビデオメッセージで「東京大会を実現するために、われわれはいくつかの犠牲(sacrifice)を払わなければならない」と述べたが、この「われわれ」は「日本国民のことではない」と後に説明した。 そして27日発売の文春オンラインでは、ディック・パウンド元副会長が「菅首相が中止を求めたとしても、それは個人的な意見に過ぎない。大会は開催される」と答えた。 この一連のIOC幹部の発言で特徴的なのは「開催に日本政府の協力をお願いする」というのではなく、「われわれが開催する」とIOCを主語にして語っていることだ。IOCはなぜこのように強気になれるのだろうか? ●不平等な「開催都市契約」 この背景には、開催都市契約という特殊な契約がある。ここでは大会の開催はIOCが各都市に「委任」するもので、主催者はIOCだけである。したがってその中止を決定する権限をもつのもIOCだけだ。 契約には「IOCによる本大会の中止またはIOCによる本契約の解除が生じた場合、開催都市、NOC(各国オリンピック委員会)およびOCOG(オリンピック組織委員会)は、いかなる形態の補償、損害賠償の権利も放棄」すると書かれている。 だから日本政府も東京都も中止を決定できる当事者ではない、という人がいるが、それは誤りである。これは国家間の条約ではないので、日本政府はそれを履行する国際法上の義務を負わない。IOCは国際機関ではなく、放映権料やスポンサー料などの収入で運営される民間団体なので、この契約を執行する権限は日本政府にあるのだ。 たとえば国立競技場をオリンピックに使わせるかどうかは、文部科学省が決定できる。そのためには法改正は必要なく、「新型コロナの感染拡大を防ぐため国立競技場の利用を禁止する」という閣議決定で十分である。 それに対してIOCが異議を申し立てて行政訴訟を起こすことができるが、7月末までには間に合わない。IOCが日本政府に違約金の支払いを求めて訴訟を起こすこともできるが、それも日本の裁判所に起こすしかない。内閣の正式決定に対して裁判所が賠償を認めることは考えられない。 この場合に大事なのは契約上だれが決めるかではなく、中止の決定が妥当かどうかである。もし開会式の段階で緊急事態宣言が発令されており、デパートや映画館に休業要請しているとすれば、国立競技場だけをIOCに使わせることは不当である。IOCが「選手には特別に安全対策を講じたので例外にしてほしい」と東京都に要求しても都は拒否できる。 最終決定権はIOCではなく、日本政府と東京都にあるのだ。それなのにIOCが無神経な発言を続ける背景には、もっと複雑な事情がある。 ●日本政府はIOCの「腐敗のサイクル」を断て その理由は、IOCが日本政府に報復する手段をもっているからだ。東京都がIOCから委任されたオリンピックを中止したら、日本は二度とオリンピックを開催できないだろう。IOCは今後の大会で日本の選手団を拒否するかもしれない。 さらにIOCはオリンピックの放映権料を各競技団体に配分する権限をもっている。これはサッカーやバスケットボールなどのプロスポーツでは問題ではないが、大部分のアマチュアスポーツはIOCの分配する放送権料が最大の資金源である。 IOCの資料によれば、2013年から2016年までのIOCの収入は約57億ドル(約6200億円)で、その73%が放映権料である。収入の90%が世界各国に、アマチュアスポーツの強化費用として分配されている。JOC(日本オリンピック委員会)も年間112億円を受け取っている。 オリンピック開催地を決めるとき、賄賂でIOC委員を買収しないと当選できないことは、周知の事実である。JOCの竹田恒和前会長は、IOCの委員を280万シンガポールドル(約2億2000万円)で買収した容疑でフランス司法当局の追及を受け、竹田会長もJOCも金を払った事実は認めた。 要するにIOCが企業から集めた放映権料が各国に分配され、それが賄賂としてIOCの「五輪貴族」に環流する腐敗のサイクルができているのだ。しかもJOCがIOC委員に金を贈っても、日本の刑法では贈賄罪に問われない。IOCは国際機関ではなく、その委員は「外国公務員」ではないからだ。竹田前会長の容疑も、曖昧なまま終わった。 IOCが異常に強気の発言を続けるのは、このような歪んだガバナンスを利用して、日本政府や東京都が中止したら、今後オリンピック利権は分配しないと脅しているのだ。 こんな脅しでIOCのいうことを聞いたら、菅政権は世界から「IOCのようなヤクザに屈服したのか」と笑い物になる。緊急事態宣言の中でオリンピックだけを特別扱いしたら、国民は自粛要請にも従わないだろう。 IOCは「再延期は認めない」としているので、日本政府の選択肢は開催か中止かの二択である。開催するなら政府は緊急事態宣言を解除し、国民生活を正常に戻すべきだ。 それと同時にIOCと交渉して暴言を撤回させ、ガバナンス改革を要求すべきだ。法的正統性のない五輪貴族に私物化されている組織を、法にもとづく国際機関に変える必要がある。 ●オリンピック前にテロ対策の徹底など確認 全国税関長会議 5/28 全国の税関長会議が開かれ、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、テロ対策や貨物の厳格な審査など、水際対策の強化を徹底することを確認しました。 財務省で開かれた税関長会議には東京の税関長のほか、函館や沖縄など地方の税関長もオンラインで出席しました。 会議では、はじめに麻生副総理兼財務大臣が、東京オリンピックの開幕まで2か月を切ったことを踏まえ「世界では厳然としてテロが起こっており、日本で起きないという保証はなく、テロ対策などをきちんとしておかなければならない。税関長は常に安全、安心に万全を期してもらいたい」と指示しました。 そして大会に向けて、テロ対策や輸入貨物の厳格な審査など水際対策の強化を確認したほか、選手らが持ち込む競技用具などに関する通関手続きを円滑に行うことにしています。 また会議では、新型コロナウイルスのワクチンの輸入を迅速に行うため、通関の手続きを効率化できる制度を活用していることも報告され、引き続き、新型コロナ対策にきめ細かく対応していくことを確認しました。 ●IOCバッハ会長「史上最も準備整った大会 自信を持って東京に」 5/28 IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長はオンラインで開かれた選手との交流フォーラムに参加し「自信を持って東京に来て欲しい」などと述べ安全安心な東京オリンピック・パラリンピックの開催を強調しました。 IOCは、27日に200を超える国や地域の選手たちを対象にした交流フォーラムをオンラインで開きました。 この中でバッハ会長は選手の質問に答える形で「東京大会は史上最も準備の整った大会だ。自信を持って東京に来て欲しい」と述べ、安全安心な大会の開催を強調しました。 また、ファイザーが無償で提供するなどして世界で進む選手たちのワクチン接種についてバッハ会長は「できるだけ入国前に接種してきてほしい。選手や日本の人々の安全がさらに増す」と述べて自主的な接種を改めて呼びかけました。 質疑応答は1時間半におよび、選手からは開催中止や再延期を求める声はありませんでした。 一方、アメリカの選手からは大会のコロナ対策が記された「プレーブック」に、「リスクや影響が完全に排除されるとは限らないため、自己責任のもとで参加することに同意する」という趣旨で明記された同意書の提出について質問がありました。 これについて、IOCの担当者は毎回の大会で同じような同意書が必要だとしてバッハ会長も「かつて、私も選手としてオリンピックに参加したがそのときも署名しなければならなかった」と述べ、今大会に限った対応ではないことを強調しました。 ●五輪・パラ“観客の上限判断は宣言解除後”組織委 橋本会長 5/28 東京オリンピック・パラリンピックの観客の扱いについて組織委員会の橋本会長は「緊急事態宣言が解除されたあとの政府の基準に沿って考えなければならない」と述べ、6月の早い段階で決めるとしていた観客の扱いについての判断が、延長される宣言の解除後にずれ込む可能性があるという考えを示しました。 東京など、9都道府県に出されている緊急事態宣言が6月20日まで延長されることを受けて、組織委員会の橋本会長は28日の記者会見で「延長された宣言期間中の状況を見なければ、観客の上限を決めることは難しい」と述べました。 そのうえで「できるだけ早い段階で決めたいという思いがあったが、政府が示す宣言が解除されたあとの基準に沿って考えなければならない」と述べ、6月の早い段階で決めたいとしていた観客の扱いについての判断が、宣言の解除後にずれ込む可能性もあるという考えを示しました。 また、人の流れを増やすおそれがあると懸念されている、大会中のパブリックビューイングや「ライブサイト」と呼ばれるイベントについては「観客の上限によってさまざまな状況が変化するので、実施内容は計画の見直しも含めて、実施自治体と連携して調整していきたい」と述べました。 このほか、変異したウイルスをめぐり、政府が水際対策を強化しているインドやパキスタンなど6か国の選手団全員が、事前にワクチンを接種すると、IOC=国際オリンピック委員会に誓約したことを明らかにし「国民の安全と参加者の安全を確かなものとするため一歩前進した」と歓迎しました。 |
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●IOCの「自己責任」同意書 署名拒否の場合の明確な回答なし 5/29
国際オリンピック委員会(IOC)が、東京五輪の参加選手らに対して提出を義務付けている同意書に「新型コロナウイルス感染症や猛暑によって死亡するリスクも自己責任」との文言が含まれていることが明らかになった。 ヤフースポーツが同意書のコピーを入手。それによると、過去の大会の内容から新たに新型コロナに関するすべてのリスクを選手が負うことが付け加えられており、感染して健康被害が出た場合のみならず死亡した場合も主催者は免責されることになる。 ヤフースポーツによると、前大会のリオ五輪では感染症や猛暑に関する記述はなく、「死亡の可能性」に言及する異例の内容に疑問の声が出ているという。提出が義務付けられている同意書への署名を拒否した場合はどうなるのか、IOCからは明確な回答はなかったと伝えている。 米国の医療専門家らからもIOCのコロナ感染対策をまとめたプレーブックには批判が出ており、医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に4人の専門家が「感染対策は不十分だ」と指摘する論文を掲載している。 その中で、感染のリスクは自己責任であるとの同意書にも言及しており、IOCは練習並びに試合期間中の完全で包括的な保険を提供するべきだと主張している。 ●コロナも熱中症も「自己責任」 IOC、東京五輪選手の同意書で 5/29 国際オリンピック委員会(IOC)が、東京オリンピックの選手らに求める参加同意書に、自己責任のリスクとして、新型コロナウイルス感染症や猛暑による「健康被害」を盛り込んだことが28日、明らかになった。同意書は各大会で提出が義務付けられているが、今回は重篤な身体への影響や死亡に至る可能性にも言及する異例の内容で、疑問の声も出ている。 少なくとも夏冬の直近6大会では、ジカ熱感染が懸念された2016年リオデジャネイロ五輪を含め、参加同意書に「感染症」や「死亡」の文言記載はなかった。 同意書は参加資格を付与する際に、五輪憲章や反ドーピング規則など大会関連のルール順守を署名付きで誓約させる書類で、選手や各国・地域の国内オリンピック委員会(NOC)関係者らが対象。IOCの担当者は ・・・ ●多くの人が知らない…東京五輪、定員超が応募した「スポーツドクター」 5/29 ●今回募集があったスポーツドクターの仕事 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が行ったスポーツドクターの募集について、一部の報道によると定員200人のところに倍近くの応募があったことが話題となりました。 コロナ禍で医療体制が逼迫している中での医療従事者の募集に、組織委員会に対しても応募した医師に対してもネガティブな意見が見受けられました。連日感染者数や重症患者数が報告され、緊急事態宣言が出ている中ですが、オリンピックなどのスポーツイベントに医療従事者は必要不可欠な存在です。 一人のスポーツドクターとして今回の募集やスポーツドクターの役割などについて考えてみたいと思います。 今回募集があったのは主に競技会場内に設置される医務室などで対応にあたる医師です。オリンピック・パラリンピックの競技期間合わせて5日未満(3日程度も可)もしくは5日間以上の協力、1シフト当たり1時間程度の休憩を含む9時間程度のボランティア業務となります。 医務室ですので、観客の方が体調不良になった場合などに対応することとなります。オリンピックだけでなく、音楽フェスなどでも医務室は設置されますし、冬のスキーシーズンでは大きなスキー場や医療機関まで遠い場合にも医務室が設置されます。 会場の観客の規模に対して、何人当たり医務室1室というように設置の条件が決められています。そのため新国立競技場のように大きな施設の場合には複数の観客用医務室が必要となるため、その数だけ医師や看護師が必要になります。 観客の方に起こることとしては転倒などもありますが、夏の時期のため熱中症などの症状も起こります。スポーツドクターの募集と言ってはいますが、どのような医師でも行える業務となっています。 ●そもそも東京オリ・パラで医師は何をする? オリンピック・パラリンピックでは、観客などに対応する医務室の他にも医療従事者の仕事があります。 1つ目は実際に選手が試合を行っている場を担当する人たちです。これは各競技の医事委員(各競技団体で医事部門を担当している医療関係者)が主に行うこととなっており、選手が試合中にケガをした場合や緊急の処置が必要となった場合に対応を行います。 医師だけでなく看護師やトレーナーなど、多くの医療従事者が関係します。試合以外の練習の時からフィールドでは不測の事態が起こりうるため、競技に関することが行われている期間は常に対応できるよう準備が必要で、勤務時間も長時間になり、多くの人出が必要になります。 また各競技団体によって医事委員などのメディカル部門の人数などには大きな差があり、元々所属している医療従事者のみで対応できる場合もあれば、知人などに声をかけて医療従事者を集める団体もあります。 2つ目は選手村やその他宿泊施設に設置される診療所にいる医療従事者です。選手村は多くの選手が集まるため、選手村などの中に診療所が設置されます。選手村総合診療所では会場の医務室などとは異なり、医療機器も設置され、一般的に行われている診療が受けられる場所になります。 こちらは主に内科や整形外科を専門とする医師が担当しますが、コロナ対策により多くの人が必要になったことから、こちらも追加募集が行われました。 3つ目は主にIOCや各国の関係者に体調不良が起こった場合や、会場で救急搬送が行われることになった場合に対応する医療機関です。予め対応する医療機関は関係者や会場ごとに定められており、決まった手順で受診や搬送が行われるように調整されています。 今大会に関係する医療従事者については、医療体制も含めて数年前から準備が進められてきました。しかし昨年、1年の延期となったことで、元々参加するために予定を組んでいた人が参加できなくなってしまったり、コロナ対策をする上でより多くの医療従事者が必要になったりしたことで、今回の追加募集が行われました。そのため今のようなオリンピック直前の対応になったと考えられます。 ●スポーツドクターは普段何をしている? それでは参加する予定の医療従事者たちは普段どのような仕事をしている人たちなのでしょうか。 スポーツドクターには様々な形がありますが、プロスポーツチームの専属医師としてチームに常に帯同している医師は多くありません。プロスポーツチームのドクターと言っても、試合の際に一緒にベンチに入るような医師もいればケガや病気になった場合にのみ対応する人もいます。 その場合多くの医師は、普段は診療所や病院で勤務し、夜の試合や休日に帯同したり、自分の勤務する医療機関に受診してもらったりしています。つまり常にスポーツ選手だけを診察しているスポーツドクターは多くないということです。 また各競技団体の医療従事者も競技団体専属ということはほとんどなく、チームドクターと同様に普段は診療所や病院で働いていることが多いです。競技団体によって異なりますが、整形外科に限らず内科や産婦人科などを専門とした医師もいます。国内大会や国内で行われる国際大会などのメディカル部門を担当したり、その競技の日本代表が海外に遠征する際に帯同したりするなどします。 既にお話しした通り、競技団体によって医事委員の数も規模も大きく異なりますので、日本代表の国際試合にメディカルが帯同できない団体などもあります。 スポーツドクターの資格として、日本には主に4つの資格があります。スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会認定健康スポーツ医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医の4つです。 この中で日本医師会認定健康スポーツ医はその名前の通り、地域の健康増進に関わる医師で、日常診療の中で運動処方を行ったり、学校医として運動やスポーツに関わったりします。一般的なスポーツドクターのイメージとは異なるかもしれませんが、資格としてはスポーツドクターということになります。 今回のオリンピック・パラリンピックでは各競技現場の医師は各競技団体で募集し、会場医務室や選手村などの医師については、組織委員会からスポーツドクターの有資格者などに対し、学会を経由して募集が行われました。このような募集は自国開催でなければ行われないため、ボランティアとしての参加にはなりますが、スポーツドクターの有資格者は元々スポーツに興味のある医師ですので、日程的に参加できる方は応募したのだと思います。 ●今、医療現場で起こっていること 今回の医師や看護師の募集は、現在コロナ禍にある中で批判的な意見が多数出ていました。これは医療現場が大変な状況にある中、多くの国民が反対しているオリンピック・パラリンピックに貴重な医療資源を割くべきではないということかと思います。 では今現在、医療現場ではどのようなことが起こっているのでしょうか。それぞれの病院によって役割が異なりますので一概には言えませんが、コロナウイルス陽性患者で入院が必要となった場合には対応可能な病院に入院となります。入院ベッドがある、一定程度の規模の病院で入院となるわけですが、コロナ感染者が増加することで入院が必要な人も増加します。 通常は診療科ごとに病棟が分かれていたり、入院できるベッド数が決まったりしています。その中で各診療科が入退院の調整や手術を行いますが、今はコロナ感染者が入院するために一部の病棟ごとコロナ専用病棟にするなどの対応が行われています。 医師であれば理論上は誰でもコロナ陽性患者の診療を行えますが、実際には内科や呼吸器内科、救急科等が対応していることがほとんどです。 そのため元々割り振られていた入院ベッド数が減らされるのは緊急性が低い患者さんが多い科になります。実際に病院によっては、昨年から整形外科に通われる患者さんのうち、変形性膝関節症などの慢性疾患の手術がなかなかできなくなることが起きていました。 また、最近では地域によって、コロナ陽性者の重症者が増加してICUのベッドが埋まってしまうことで、心筋梗塞などの緊急の処置が必要な患者さんの受け入れもできない事態が起こっています。 コロナ陽性患者の治療を受け入れている病院は、3次救急病院など地域の中核病院であることが多く、元々重症患者さんの多い病院です。発熱する病気は、肺炎や尿路感染症など様々な疾患がありますが、今はまずコロナウイルス感染が念頭に置かれます。 その他の病院でも日中の検査ができる時間帯であればまだよいですが、夜間の救急対応の時間帯などになるとコロナウイルス以外の発熱にも関わらず、まずはコロナを疑うために検査や医療資源の問題などから発熱患者さんを受け入れることができず、地域の中核病院に搬送されることが多くなります。 コロナ禍前の状況であれば発熱患者さんは地域の中でいくつかの病院に分散していましたが、現在は一部の病院に特に大きな負荷がかかっている状況です。結果として、地域によってはこれまでの医療であれば救えていたはずの命が救えないなどの医療崩壊が起こっています。今考えるべきことはやはり感染者数を減らすことです。 ●オリ・パラの医療現場への影響は? 現在コロナ禍で苦しい生活を送られている方が多くいると思います。その中でエンターテインメントの象徴であるオリンピック・パラリンピックを行うかどうかは確かに大きな問題です。 今回のスポーツドクター募集に関してはタイミングの問題などもありますが、日本にいる全ての医師や看護師がコロナ対応を行うことができるわけでもないため、人数から考えても医師200人がオリンピック・パラリンピックに参加することによる医療現場への影響は大きくないと思います。他の業種と同じように、コロナ禍によって仕事が減っている医療従事者も少なからずいるためです。 しかしオリンピック・パラリンピックの開催で考えなければならないのは、医師や看護師が実際に現場に行かなければならないことではなく、地域の医療環境への影響です。既にお話しした通り、選手や関係者に何か問題が起きた場合にはあらかじめ定められた医療機関へ搬送されます。 特に海外からの選手や関係者が医療機関を受診する場合には、言語や宗教、医療保険の問題なども生じるため、あらかじめ念入りに対応を検討しています。それでも不測の事態が起こる可能性はもちろん残りますし、受け入れを行う病院はコロナ陽性者の対応もしている病院が多いです。 テスト大会では、宿泊施設と試合会場、練習会場など限られた場所に選手や関係者を“大きな泡で包む”ように外部との接触を遮断するバブル方式が採用されました。バブル方式は接触機会を減らすなどのメリットもありますが、選手や関係者へのストレスも大きく、都市の中で行う大会でどこまで機能するかは不明です。 世論や費用の問題、そして医療への影響などの課題が残る中、開催まで残り2か月となった東京オリンピック・パラリンピック大会。国民や選手、関係者など多くの人が納得する形で結論が出てほしいと願っています。 ●緊急事態宣言が東京五輪の1ヵ月前まで延長。米メディアはどう報じたか 5/29 東京オリンピック・パラリンピックまで60日を切った中で、日本政府が発表した6月20日までの緊急事態宣言の延長について、アメリカの主要メディアも続々と報じた。 ●公式パートナー「朝日」も大会中止を求める ニューヨークタイムズは「日本は緊急事態宣言をオリンピックの1ヵ月前まで延長」と報じた。 同紙は、朝日新聞が行なった最新の世論調査結果を引用し、回答した人の83%が今大会の延期または中止を望んでいることや、朝日新聞がオリンピックの公式パートナーであるにも拘らず、菅首相に対して大会中止求める社説を今週掲載したことなどについて紹介した。 また、関係者による最新コメントとして、以下のように触れている。 「理事会では誰も、大会を中止または延期にすべきという見解を明確には述べていない」「新型コロナウイルスの症例数が減少するにつれて、世論は『改善するだろう』」東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長(27日に行なった記者団との懇談にて) ●利害関係に動機付けられ開催の確固たる姿勢を維持 一方ワシントンポストも「オリンピック反対が高まる中、日本は緊急事態宣言を6月下旬まで延長」と報じた。 同紙も、朝日新聞による最新の世論調査と社説を紹介しながら、IOC(国際オリンピック委員会)について「(それでも)莫大な財政的な利害関係に動機付けられた東京大会を開催するという、確固たる姿勢を維持」と述べた。 同紙も、関係者や有識者の最新コメントとして、以下のように触れている。 「東京はオリンピック史上最も準備の整った主催都市だ」(アスリートへのコメントとして)「大きな自信を持って来日し、大会に向け準備をしてください」IOC、トーマス・バッハ会長(27日) 「大会まで60日を切った。大会がもし中止ということになるのであれば、それはもっと早くに決まっていたはずだ(大会中止の可能性を否定)。私たちは今、大会実現に向かっているモードだ。開催のための運営手順はすべて進行中」(万が一、開会式まで東京の緊急事態宣言が延長された場合でも)「大会は(開催に向け)進められるだろう。なぜなら緊急事態宣言はバブル(試合会場や選手村、選手か関係者が、外部の一般市民との接触を遮断されていること)の外側で行われるし、関連施設および周辺は厳重に(感染防止対策が)整えられる予定だから」IOCの最古参委員、ディック・パウンド氏(27日の電話インタビューにて) 「IOCは世論に注意を払いながらも、内部で世論調査も実施している。外部からの批判により決定を左右されることはない」「最新の科学に基づいての開催決定であり、大会実現に向け進められれば、否定的な声が多く集まってくる(のも避けられない)」「(ワクチン接種済みの選手や関係者数は)*非常に多く、増えている」IOCの広報担当責任者、マーク・アダムス氏(今月初め) (同紙は、IOCが選手村を利用する大半の選手や関係者が新型コロナのワクチン接種を済ませていることを期待しているが、IOCが接種済みか否かをどのように把握しているのか、そもそも把握自体をしているのかなどについては不明としている) 「1年間かけてコロナの感染防止策を学び、ワクチン接種が浸透したことで、オリンピックに向けて楽観的に考えられるようになった」「我々は昨年オリンピックが延期されて以来、長い道のりを歩んできた。よって大会は無事に、そして安全に開催できると思う。しかしながら当然、多くの作業が伴う」「アスリートたちがマスク着用やソーシャルディスタンスなど(*プレイブックに明記された)一般的な感染防止策をきちんと理解し、それに従うことが重要だ。また、選手村ではその情報が多言語でしっかりと伝えられる必要がある」新型コロナウイルスの感染者情報を公開しているジョンズ・ホプキンス大学の上級研究者で、2004年アテネオリンピックの銀メダリスト(水泳)、タラ・カーク・セル博士 プレイブックとは? / オリンピック代表選手や関係者に共有されているルールブックのこと。選手および大会に関わるすべての関係者がルールを1つ1つ頭に入れ、厳密に従うことが大会を安全に開催するために最も大切とされている。 ●ますますファン不在の大会になりつつある AP通信は「東京オリンピックは、ますますファン不在の大会になりつつある」と報じた。 緊急事態宣言が大会のわずか1ヵ月前まで延長され、「現地」の観客を受け入れるか否かの判断もまだされていないことについて、同メディアは「会場が空になる可能性が高くなった」と、完全無観客試合の可能性も示唆した。 記事には、オリンピック・パラリンピック両大会合わせて、期間中に海外から来日する人数は、200を超える国と地域から、1万5000人の選手に加え、何万人もの審判、関連スタッフ、VIP、メディアになるだろうとある。そしてIOCの情報として、選手と関係者の80%以上がワクチン接種済みの予定としている。 また今週初めに、米医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』が解説記事の中でこのように述べたことも紹介した。「大会開催に向け進めるというIOCの決定について、最も信頼できる科学的根拠に基づいていないと考えている」。 同メディアも、以下のように関係者のコメントを紹介した。 (緊急事態宣言下にあったとしても、開催されるかどうか尋ねられ)「はい、もちろん(開催)です」IOC副会長、ジョン・コーツ氏 「アルマゲドン(世界戦争、人類滅亡)でも起きない限り、大会は進む」IOCのシニアメンバー、リチャード・パウンド氏(今週、英国の新聞に対して) 日本で最近物議を醸した「犠牲発言」については 「『オリンピック・コミュニティーのすべて』が、犠牲を払わなければならない」IOC会長、バッハ氏 つまり、犠牲を払う主語は日本人ではなく「関係者」であるとする、バッハ会長の発言を改めて強調した。 以上が主要メディアの報道概要だ。 このほかにも、アメリカではさまざまなメディアがオリンピック開催目前に再発令された緊急事態宣言の延長について報じた。 最近ではニューヨークのプライムタイムに放送されるローカルニュース番組でさえ東京オリンピックの話題を扱っており、メディアを筆頭に「安全な開催」への関心がじわりじわりと高まっているのを感じる。 ●「日本、IOCとオリンピック不平等条約…中止時には巨額の賠償責任」 5/29 東京オリンピック開幕までおよそ50日に迫り、反対の世論が高まる中、日本がオリンピックを中止した場合には契約上、巨額の賠償責任を負う可能性が高いという報道が出た。日本経済新聞は28日、国際オリンピック委員会(IOC)・東京都・日本オリンピック委員会(JOC)・大会組織委員会が2013年にブエノスアイレスで締結した「開催都市契約」文書を確認した結果、「不平等条約といえるほどの条項が多い」と報じた。 同紙が指摘した代表的な不平等条項は、大会中止の権限がIOCのみにあるという点だ。契約上、IOCは「参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合意的な根拠がある場合」に限ってオリンピックを中止する権限があり、この場合、日本はいかなる形態の補償・損害賠償等も請求する権利を放棄することになっている。だが逆に日本が中止を要請したら、IOCや中継権を買った放送局などに日本が補償するよう定めているという。このような契約条項は今回の東京オリンピックに限ったものではなく、以前の大会の際も適用され続けてきたことが分かった。 国際スポーツ大会の契約に詳しい弁護士の松本泰介・早稲田大学准教授は「(日本が先に中止を要請した場合)IOCが日本側に損害賠償を請求する可能性がある」と指摘した。松本准教授は「やむを得ない理由でイベント開催が不可能な場合、契約の双方に対する免責条項を置くのが国際スポーツの世界でも一般的」とし、「オリンピックのような契約の形態は極めて異例」と語った。 異例の契約がこれまで維持できたのは、IOCがオリンピック誘致国を決定する優越的地位にあったからだという分析がなされている。日本経済新聞は「今回の契約内容は、大型スポーツイベントのゆがんだ構造を示している」とし、「巨額の賠償責任があるとしても開催するかどうかを判断する根拠は『安全に大会を運営できるか』であるべき」と報じた。 ●「コロナ戦争」下の日本に教えたい、83年前に“東京五輪”を「中止」した事情 5/29 ●「戦争状態」で本当に五輪をやるべきか? 5月5日、ワシントン・ポスト(電子版)は「日本政府は五輪中止を決断すべきだ」とのコラムを載せた。 毎日新聞の報道によれば、同コラムはIOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長を「ぼったくり男爵」と表現し、「地方行脚で小麦を食べ尽くす王族のように開催国を食い物にする悪い癖がある」と批判。また多額の大会経費を開催国に押しつけており、新型コロナウイルス対策によるさらなる諸経費増大を踏まえて「パンデミックの中で国際的メガイベントを開催するのは非合理的」と指摘している。 さらに国連のグテーレス事務総長は、5月24日に開催された世界保健機関(WHO)の年次総会にて、「世界は新型コロナウィルスとの戦争状態にある」といった発言をするにいたった。 昨年2月13日に国内初の死者が出て以来、1年3ヶ月余で全国のコロナ死者は累計1万人超の数字を記録してしまった。病原菌との戦いが続く最悪の「コロナ戦争」真っ只なかにある日本で、政府はワクチン接種による新型コロナウイルスの収束を前提に、「東京オリンピック開催」を強行しようとしている。しかし今は、とてもオリンピックなど開催できる社会状況にはないはずだ。 何故「中止」の決断をしないのか。オリンピック憲章細則に則れば、IOCに申し入れることもできるはずなのに……。そんな現状を見ていると、国家の非常時を理由に中止された、1940年の「幻の東京オリンピック」との違いを感じずにはいられない。 かつて、日本は史上初のアジア圏でのオリンピック開催権を得て、東京府東京市(当時)での準備を進めた歴史があった。それは、「紀元二千六百年祝典事業」の一環としての東京オリンピック開催であった。 ●一時は盛り上がった「幻の東京五輪」 81年前の1940(昭和15)年。大日本帝国は政府主導で民間とも協力して、様々な行事等から成る「紀元二千六百年祝典事業」を盛大に執り行った。当時の日本国民は、外地(朝鮮、満州、台湾、樺太など)で生活する人たちを含めると約1億500万人。その8割が1万2000以上の行事に参加していた。今日で言うところの「メガイベント」の開催であった。 国民を総動員したこの記念事業で最大のムーブメントは、奈良県橿原市に造営されていた「橿原神宮」(かしはらじんぐう・1890年4月に建設)の拡張工事だ。万世一系の天皇神話を象徴する橿原神宮の祭神は神武天皇であり、戦前は昭和天皇も行幸されている。 また、1939年に国策で設立された日本映画社がこの事業の記録映画「天業奉頌」(てんぎょうほうしょう)を制作し、その上映会場では「紀元二千六百年頌歌」(作詞・東京音楽学校 作曲・信時潔)が演奏され、入場者は斉唱したという。 ここで少し立ち止まり、「紀元二千六百年」とは何なのか、説明しておきたい。この年は西暦「1940年」で、元号では「昭和15年」だった。前出の神武天皇が即位したとされる西暦紀元前660年を「皇紀元年」とすると、1940年は天皇が即位してから2600年後に当たるという解釈である。 この年には全国で各種の国家的な慶事が繰り広げられ、東京オリンピックもその一環としてプログラムに取り入れられた。ちなみに軍用機の名称は「皇紀」の下2桁の数字が採用されており、この年に正式運用が始まった戦闘機は、「00」で「零式」(れいしき)戦闘機、通称「零戦」と呼称された。 そもそも大日本帝国が、1936年のベルリン大会に続く1940年の第12回国際オリンピック競技大会の開催候補地として正式に立候補したのは、1932(昭和7)年のことであった。 他の立候補国は、イタリア、スペイン、フィンランド、ハンガリー、エジプト、アルゼンチン、ブラジル、アイルランド、カナダの9ヵ国である。その中から、最終的に候補地が絞られたのは東京(日本)、ローマ(イタリア)、ヘルシンキ(フィンランド)の3都市であった。日本の招致委員会を代表したのは、“近代柔道の創始者”でIOC委員の嘉納治五郎だ。 1936(昭和11)年7月のIOC総会での投票によって、東京が開催地に最終決定した。開催期間は1940年9月21日〜10月6日が予定され、日本の組織委員会委員長は徳川宗家第16代当主で貴族院議長の公爵・徳川家達が就任した。 開催にともない、政府から東京市、大日本体育協会(現在の日本スポーツ協会)に対して、100万円以上の補助金が支出された。同時期には、明治神宮外苑競技場(現在の国立競技場)や戸田漕艇場など各種競技で使用する施設の建設、整備が始まっている。 ●口火を切ったのは河野大臣の祖父 しかし当時の日本は、中国大陸で中華民国(蒋介石政権)と緊張関係にあった。そのため1937(昭和12)年3月20日の衆議院予算委員会にて、河野一郎(立憲政友会、現ワクチン担当大臣の河野太郎の祖父)は、このように発言している。 満州方面に於て一触即発の情勢にあるから国民よ緊張せよと云うのが、指導原理でなければならぬじゃないか、然るに一触即発は満州にあるんだ、内地じゃ「オリンピック」をやって宜しいんだ、そう云うような誤魔化しの答弁をやって、議会を通ろうとすることは、軍人(注:当時の林銑十郎首相は陸軍出身だった)の取るべきところではない しかしこの当時は、彼の「水を差す発言」に耳を貸す議員はさほどいなかったそうだ。 このように開催に向けてオリンピックムードは高まってきたが、ここで思わぬ事態に直面することになる。それは「開催返上」の機運であった。理由は「支那事変の長期化」だ。日中戦争の影響で、鉄鋼をはじめとした諸資材の入手が困難となり、競技会場の建設が進まず、国内では開催に否定的な空気が広がっていた。 くわえて政府のプロパガンダが成功したことで、国民はオリンピックよりも「紀元二千六百年祝典事業」へ参加することに注力していったのだ。 日本政府(第一次近衛文麿内閣)が開催権の返上を正式に決定したのは、1938(昭和13)年7月15日。開催の2年前であった。このような展開を後世から振り返ると、河野一郎の発言はその時代の日本の事情をズバリ衝いた、勇気ある発言ではなかったか。背景に「戦争」という国難が存在したからこその発言であったのだろう。 東京オリンピックは、紀元二千六百年祝典事業とリンクした国策であったが、いずれも「国家的事業」に変わりはない。しかし、結果的に国民が選択したのは後者ではなく前者であった。 当時の国民の意識としては、東京オリンピックよりも「紀元二千六百年祝典事業」という国民総動員の記念イベントが優先されたのだ。約80年前の東京オリンピック開催について調べてみて、筆者はそのように理解した。 ●解決が難しい「三すくみ」状態 日本政府は、「戦争」を理由に第12回オリンピック大会の開催権を返上した。今日の日本も言わば「コロナ戦争」の真っ只な中にあり、これは紛れもない国家非常事態なのだ。だが、政府、東京都、オリ・パラ組織委員会の三者はどこも「開催中止」を言い出せない、三すくみの金縛り状態になってしまった。 84年前、政友会の1人の議員が議場で、「オリンピック中止」という勇気ある発言をした。反応はあまりなかったが、この発言はその後、国民の支持を受けている。そして、結果として政府は開催返上を決定した。 オリンピックは「メガイベント」だ。投入された資金は3兆円超ともいわれている。何故、今日の「コロナ戦争」下で、関係者は開催に固執するのか。それは「コスパ」による経済的な収支の算術にとらわれているからであろう。 「コロナ戦争」下での数字は日々、更新されており、5月21日時点で1日の感染者は5252人。累計の感染者71万404人、死者1万2177人になった。このまま数字が推移すれば、日本でも都市部の「ロックダウン」が現実となるのではあるまいか。そのとき、現代の日本に河野一郎のような人物は登場するのだろうか。 大会関係者は「Xデー」を恐れている。即ち日本側の「開催返上」を宣言する日だ。先手を打って5月21日にIOCのジョン・コーツ副会長が「緊急事態宣言下であっても、感染対策を講じることで大会が実施される」と発言。 このメッセージは「コロナ戦争」で日々格闘している日本人の感情を逆なでする妄言としか言いようがなく、明らかに「部外者」の感覚だ。2021年「東京オリンピック」中止の世論は日々高まってきている。 ●「オリンピックのキャンセル条件を教えてほしい」 質問に菅総理“迷答弁” 5/29 菅首相が「東京オリンピック開催の有無を判断する新型コロナの感染状況に関する基準を明確に教えてほしい」という現地記者の要請にも、依然として質問とかけ離れた回答をした。 首相官邸によると29日、新型コロナの緊急事態宣言の延長決定をきっかけに前日に開かれた生中継の記者会見で、中日新聞の記者が菅首相に対して新型コロナの感染状況がどの程度ならオリンピックを開催あるいは取り消すのかなど、具体的な基準について質問し、「明確に答えてくれることを要請する」と述べた。 これまで菅首相は準備してきた原稿を参考にして質問の趣旨に反する説明を長々と行ったり、迷答弁で困難な状況から逃れることが多かっただけに、回答を明確にするよう要請したのだ。この日の会見はNHKで生中継された。 しかし、菅首相は今回も質問とかけ離れた回答で対応した。菅首相は東京オリンピック開催の有無を判断する新型コロナの感染状況に関する具体的な基準を示す代わりに、入国者数の縮小やワクチン接種、入国者の動線や一般人との接触制限など、日本政府がオリンピック開催のためにまとめた3つの防疫対策を長く説明した。 菅首相は現在、新型コロナが拡散している状況でも今年の7〜9月に予定されている東京オリンピック・パラリンピックを開催するという意志を重ねて示している。 菅首相は28日夕方、東京都など9つの都道府県の緊急事態宣言を来月20日まで延長することを決め、記者会見で「(オリンピック開催について)多くの方々が不安に思い、心配していることは知っている」とし、「そのような声をしっかりと聞いており、関係者らと協力して安全、安心できる大会に向けた対策を推進中」と述べた。 菅首相は東京オリンピックの準備状況を監督する国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ副委員長兼調整委員長が21日の記者会見で「日本が緊急事態宣言の状況下でもオリンピックを開催できる」と言ったことに関する立場を問う質問に即答を避け、「国民の生命と健康を守ることが政府の責務であり、まずは緊急事態が解除されるよう努力する」と述べた。 このような一連の発言は国内外で激しくなりつつあるオリンピックの取り消し論を一蹴し、オリンピック開催の準備を続けるという意志を強調したものと受け止められている。 菅首相はこの会見に先立って、英国のボリス・ジョンソン首相と行った電話会談でも東京オリンピック開催の決意を明らかにし、ジョンソン首相はこれを支持すると答えたと日本のマスコミは伝えた。 ●選手村での飲酒はOK 国民の不満爆発「アスリートだけ特別扱い」 5/29 東京五輪の開幕まで残り2か月を切ったが、国民の怒りが噴火間近となっている。 米国などでは新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、一部地域では規制が緩和がされつつある。一方で、日本では9都道府県に発令中の緊急事態宣言が6月20日まで延長。東京都の小池百合子知事(68)は、酒類を提供する飲食店、カラオケを使用する飲食店、遊興施設に引き続き休業を要請しており「居酒屋に行きたい」との声が多方面から聞かれる。 そんな中、関係者によると、東京五輪に出場する選手らが宿泊する「選手村」に、アルコール類の持ち込みが許可される見込みだという。この判断にネット上では「国は五輪のことしか考えてない」「居酒屋でも節度をもって飲酒すればOKですよね!」「アスリートだけ特別扱いはおかしいな?」などのコメントがあふれている。 東京五輪の開催を巡ってさまざまな声が上がっているが、国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ副会長(71)による「緊急事態宣言下での開催? 答えはイエスだ」との爆弾発言や、今回の選手村でのアルコール解禁などで、国民の不満は日に日に上昇。ある組織委関係者は「街の飲食店がこんなに苦しんでいるからね…」と頭を抱えた。 先の見えないコロナ禍の現状。国民の行き場のないモヤモヤはたまる一方だ。 |
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●「国民が望まないオリンピックに突き進んで…責任を誰がとるのか?」 5/30
ジャーナリストの青木理氏が30日、TBS系「サンデーモーニング」(日曜・午前8時)にスタジオ生出演した。 番組では、菅義偉首相が28日、新型コロナウイルス感染症対策本部会合を官邸で開き、改正特別措置法に基づき東京、大阪など9都道府県に31日までの期間で発令中の緊急事態宣言を6月20日まで延長すると決定したことを報じた。 スタジオで青木氏は、延長を受けて「政治の役割って何なのかな?って思うんです。政策の方向性を示して、そちらの方向に進ませて、かつ結果に責任を負うことだと思うんです」とした上で「オリンピックの話で言うと、これ誰が責任者なんですか?って。IOCなんですか?国なんですか?東京都なんですか?…よく分からないんですね。このまま突入して、どうも誰も責任を取らないで、ずるずると開催の方に突き進んでいるんですけど、これで開催して何かあったら…感染が拡大したら、一体、誰が責任を取るんですかって明確じゃないんです」と指摘した。 さらに「でも振り返ってみると、この5年、10年ぐらいの日本の政治っていうのは何かがあっても誰も責任を取らない政治家が。森友学園にしても公文書の改ざんにしても閣僚が捕まるような事件が起きても、任命責任を痛感するって言いながら誰も責任を取らないで結果的には官僚、秘書が責任を取っているだけっていうのが続いてきた」と指摘した。その上で「今回の検査態勢だってPCR検査44万件の態勢にするって言っているんですけど、ずっと言ってますよね。でも一向に増えない。そのことに関する説明もなければ、結果の責任も取るっていうこともない状況では、特にオリンピックに関しては本当に僕は心配です。国民が望まないオリンピックに突き進んでいって、できればいいんですけど、できなかった場合の責任を誰がとるのか?あるいは、責任を取って決断をするためにも、誰かがやめるっていうことを言い出せない今の日本の状況を象徴しているというか、このまま行って大丈夫なのか」とコメントしていた。 ●東京オリンピック「竹島」表記論議...韓国不参加の可能性も 5/30 東京オリンピック組織委員会のホームページの地図に日本領土として表示した独島(韓国が主張する竹島の名称)に対し韓国政府側からの削除要求を日本政府が拒否したことをうけ、韓国のオリンピック不参加の可能性が提起されている。 29日、韓国政府などによると、日本は東京オリンピックの聖火リレーコースを紹介する全国地図に島根県の上部に点をつけ竹島が日本の領土として表示した。 これに対し、韓国政府と民間団体などの抗議が殺到すると東京オリンピック組織委員会はホームページを改編し、竹島が見えないように措置したようだ。しかし、画面を拡大すると、まだ竹島の位置に小さな点がそのまま残っており、議論が再び広がった。 これに韓国政府が竹島を日本の領土のように表示した東京オリンピックの地図を是正してほしいと要求したが、日本政府はこれを受け入れられないという立場を固守している。 加藤勝信官房長官は28日、首相官邸で開かれた記者会見で、「竹島は歴史的事実に照らしてみても、国際法上でも、明らかに我が国(日本)の固有の領土」とし「韓国側の主張は全く受け入れられない」と述べた。 これについて、国際オリンピック委員会(IOC)は積極的に介入していない。韓国広報専門家のソ・ギョンドク誠信女子大学教授が、トーマス・バッハ国際オリンピック委員会(IOC)委員長とIOC全体加盟国などに該当マップの修正を要請したが、IOCは東京オリンピック組織委員会の日本側に問い合わせるよう答えたという。 しかし、韓国の場合、2018年の平昌冬季オリンピック当時、どんな政治的宣伝も許可しないというIOCの勧告に合わせて韓半島旗から竹島を削除した事例があっただけに、IOCが今回のことを傍観してはならないという指摘が出ている。韓国政府もIOC委員長の介入を公式要請する案を検討していることが分かった。 一部では、日本が修正をしない場合、韓国が東京オリンピックを“ボイコット”するべきだという主張も出ている。現在、大統領府国民請願掲示板には、「東京オリンピック組織委員会が独島を日本の領土表記だと強行する場合、東京オリンピックへの不参加を宣言するべきだ」という請願が出ている。 請願者は「日本のこのような行為は、オリンピックを利用して独島に対する野心を国際的に露出する宣戦布告も同然だ」とし「5年近く汗を流し準備してきた国家代表選手たちの苦労は残念だが、選手たちにはそれに相応した補償をし、東京オリンピック組織委員会及びIOCが独島を削除しない場合は、東京オリンピックをボイコットするべきだ」と請願した。この請願は、同日午後3時基準で2万3900人以上の同意を得ている。 韓国の政界からも日本が適切な措置を取らない場合、オリンピックには参加すべきでないという声が出ている。 イ・ナギョン共に民主党元代表は27日、フェイスブックに「容認できないこと」とし「日本が最後まで(要請を)拒否した場合、韓国政府はオリンピックボイコットなど可能なすべての手段を動員して断固として対処しなければならない」と明らかにした。 チョン・セギュン(丁世均)前首相は、イ元代表より一日早い26日に、「日本政府は、日本オリンピック地図に表記した独島を削除せよ」とし「日本が最後まで拒否した場合“オリンピック不参加”など、韓国政府ができるすべての手段を総動員しなければならない」と批判した。 ●「本当に開催したかった形ではない」 東京オリンピックに“同情”を示す 5/30 著名な国際政治学者のイアン・ブレマー氏は日本時間の5月30日、東京オリンピックの開催について、日本の新型コロナウイルスワクチンの接種状況などから「中止になる可能性は高い」と考えを示した上で、日本の関係者らに「これは本当に開催したい形のオリンピックではありません」と話した。 イアン・ブレマー氏は国際政治学者で、コンサルティング会社ユーラシア・グループの代表。自身が提唱する「Gゼロ(主導国なし)」を冠する「Gゼロメディア」で東京オリンピックに関する自身の考えを述べた。 ブレマー氏はまず、菅義偉首相が「中止の権限はIOC(国際オリンピック委員会)にある」と話したことについて「首相には主権があります。彼が中止したいといえばそうなるでしょう。しかし、政治的にも経済的にも支払うコストが大きいことは明らかです」とした。 そして、「ワクチンの接種状況において、日本が他の先進国と比べ、どれだけ遅れをとっているかは本当に驚くべき状況です」とし、「私は未だに中止の可能性が高いと考えてはいますが、最後まで予断を許さないでしょう」と話した。 最後には、「日本の皆様や準備を続けてきたアスリートたちに同情します。これは本当に開催したかった形のオリンピックではありません」と締めくくった。 ●東京五輪開催巡り仰天提案 「今度は日本がぼったくり侍に」 5/30 演出家のテリー伊藤(71)が30日放送の「サンデージャポン」(TBS系)に出演。東京五輪・パラリンピック開催を巡り国際オリンピック委員会(IOC)委員幹部による開催強行発言≠ノついて言及した。 IOCのトーマス・バッハ会長は開催に向けて「我々は犠牲を払わなければならない」、最古参であるディック・パウンド委員は「前例のないアルマゲドンに見舞われない限り実施できる」などと発言。これにネット上では批判の声が殺到し「国民より利権が大事なのか」「人命無視を極めた発言」などの声が寄せられている。 IOC委員による強行発言が目立つ現状にテリーは言及。「組織委員会は大会関係者を18万人から9万に減らしたと言っていた。でも一番の問題はIOCファミリーの5000人はまったく数を減らしていないこと」と指摘。 「オリンピック、今のままだと来ちゃいますよ」と断言した上で「IOCの連中にどんどん金を使ってほしい。ぼったくり男爵とか言いましたよね。今度は日本がIOCに対してぼったくり侍になって彼にお金を使ってもらったらいい」と持論を展開した。 ●聖火リレー 福井でスタート 5/30 東京五輪の聖火リレーが29日、福井県内で始まった。初日は高浜町から鯖江市までの9市町で、各ランナーが家族と仲間への感謝や、新型コロナウイルス終息と五輪開催の願いを胸に聖火をつないだ。30日は越前市から再開し、福井市でゴールを迎える。 北陸3県で唯一、公道で催される聖火リレーは、晴天の下でスタートした。 出発地点となった福井県高浜町の若狭高浜海釣り公園では、高浜中学吹奏楽部が演奏で会場を盛り上げた。部長の3年安田心晴さんは「演奏で会場の雰囲気が明るくなったと感じた」と笑顔をみせた。出発式で野瀬豊町長はコロナ禍の不自由に触れ、「今日は前向きな気持ちで走者にエールを送りたい」と述べた。 五輪に2度出場し、県内の第1走者に選ばれた若狭町出身の元バレーボール男子日本代表、荻野正二さん(51)が、滋賀県から届いた聖火をトーチに受け取って一歩を踏み出すと、大きな拍手に包まれた。応援に手を振りながら走り、笑顔で次のランナーに聖火をつないだ荻野さんは「五輪は特別な大会。安全な大会として催し、選手に頑張ってほしい」と願っていた。 どの区間にも大勢の県民が繰り出し、聖火を見送った。聖火ランナーにふさわしい名前の中学生、五輪(いつわ)叶さん(14)は地元の小浜市内を走り、「誇らしい思いで走ることができ、人生の良い思い出になりました」と話した。地元の若狭町内を走った敦賀高校1年の森川芽衣さん(15)は陸上部員。「私も競技を続けて将来はオリンピック選手になりたい」と喜んでいた。 初日の到着地点は鯖江市の西山公園。午後7時20分すぎ、最終ランナーを務めた坂井市出身で俳優の高橋愛さん(34)が式典会場に姿を現すと、大きな拍手がわき起こった。高橋さんは「トーチの重みを感じながら走りました。無事につなぐことができて感無量です」と述べた。(佐藤常敬、小田健司) ●東京五輪まで2か月切る…“安全・安心な大会”ホントにできる? 5/30 東京オリンピックの開会式まで2か月を切りました。 札幌市でもマラソンや競歩が予定されています。感染拡大が続く中、安全に開催することはできるのでしょうか。開催の条件とは? 5月24日から始まった新型コロナウイルスワクチンの高齢者への接種。政府は7月中に完了させたいとしていますが、見通しは厳しい状況です。 そんな中、アメリカ政府は5月24日、日本への渡航警戒レベルを最も高い「渡航中止」に引き上げました。「日本では変異ウイルスの感染が拡大していてワクチン接種を受けたアメリカ国民にもリスクがある」というのがその理由です。 オリンピックは本当に開催できるのか? マラソンや競歩が予定されている札幌市は、準備に不安を抱えています。 秋元 克広 札幌市長:「感染状況について先が読めない。準備などに支障が出てくるのは事実。観客をどうするかという方向性が、まだ見えない」 オリンピックの中止や再延期を求める声が強まる中、開催するための条件について大会組織委員会に聞いてみると…。 大会組織委の回答:「コロナ禍の厳しい状況においては、様々な意見があることは理解しています。一日も早い社会の回復を願い、安全で安心な大会開催実現に向けて、政府・東京都・関係自治体と緊密に連携し、準備に尽力してまいります」 具体的な開催の条件は示されませんでしたが「安全で安心な大会」を目指すとしています。どのような形であれば安全・安心と言えるのか。北海道民はどう考えるのでしょうか? 20代 事務職:「ワクチンが打てる状況だと思うが、まだ全年代の人が打てる状況ではないので、日本全域で緊急事態宣言がなくなるまではやるべきじゃない」 40代 会社員:「感染者が出ない前提条件のもとでやるのであれば、開催してもいい。ウイルスはどんどん変異すると聞いているので恐ろしい」 50代 医師:「これだけ医療が大変だと言っていて、オリンピックでもっと感染が広がったら大変なんじゃないか。だったら、今やらなくてもいいのではという気持ちがある」 残された時間は2か月を切っています。安全・安心な大会は可能なのでしょうか? 感染管理に詳しい、北海道医療大学の塚本容子教授はこう言います。 教授:「開催できる状況ではないというのが結論です」 東京オリンピックの開催に悲観的な結論。その理由は? 教授:「7月末までに65歳以上の高齢者向けワクチン接種が終わるか、なかなか厳しい状況だと思います。集団免疫というのは6〜7割の人が獲得すると、感染が拡大しないと言われています。北海道の65歳以上の人の割合が30%だとして、それが全員終わったとしても6割は到底達成しない」 これだけではありません。塚本教授がオリンピック開催について最も懸念することが…。 教授:「インドの変異ウイルスというのは、5月17日現在、44か国で確認されています。人の入国を許すと、どうしても変異ウイルスが持ち込まれる可能性は一定程度あると考えられます。オリンピックのような多くの人が集まるイベントは、非常に危険だと思います」 感染力が非常に強いインド株の変異ウイルスが、オリンピックを機に国内に広まるのではというのです。 教授:「開催にこぎつけたとしても、医療崩壊につながってはいけないので、それは安心なオリンピックとは言えないと思います」 開会式まで2か月を切った今、緻密な対策と冷静な判断が求められています。 |
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●IOCがコロナ渦中でも東京五輪を「強行開催」したい3つの理由 5/31
東京オリンピック・パラリンピックの中止を求める声が高まる中、国際オリンピック委員会(IOC)幹部による「開催断行」発言が相次いでいる。東京都や日本政府の意向にかかわらず、「開催ありき」で突っ走るIOC。なぜ、そこまで頑(かたく)ななのか? ●東京大会中止は「五輪存続の危機」を招く? 2021年5月21日、IOCのジョン・コーツ副会長は「緊急事態宣言が出ていてもオリンピックは開催できる」と断言。同24日にはトーマス・バッハ会長が、ビデオメッセージで「東京大会を実現するために、われわれは犠牲を払わなければならない」と発言した。 「東京五輪開催」の旗を振る丸川珠代五輪相ですら、IOC幹部の発言に「多くの国民が発言を聞いて反発を覚えたのは自然なこと」と苦言を呈さざるを得なかったほどだ。主催都市や政府の面目をつぶしてまでも、東京五輪開催を「既成事実化」したかったIOCの焦りの表れといえるだろう。 報道では「中止によるスポンサー料やテレビ放送権収入の減少を懸念しての発言」との見方がもっぱら。確かにIOCにとって収益減は痛手ではあるが、そう単純な話ではない。もっと長期的なダメージ、端的に言えば「オリンピック存続の危機」を懸念しているのだ。 ●1.政府・東京都への不信感 IOCがここに来て「たとえコロナ禍で緊急事態宣言が出されていても開催可能」とアピールしているのは、「オリンピック開催反対」の世論に押されて、政府や東京都が中止の決断をするのではないかとの懸念が増しているからだ。 3月4日に下村博文自民党政調会長がテレビ番組で「主力国の選手が大量に来られない場合はIOCも(中止を)考えざるを得ないだろう」と発言。4月15日には、またもテレビ番組で二階俊博自民党幹事長が「とても無理だということだったら、スパッとやめなければいけない。感染病を蔓延させたとなると、何のためのオリンピックか分からない」と発言し、政府は「火消し」に躍起となった。 IOCが単なる「失言」と見過ごせないのは、10月に任期満了を迎える衆院選を控えているから。政府与党としては東京五輪を成功させた勢いで選挙戦に臨む予定だったが、感染拡大が収まる気配はない。 5月17日に発表された朝日新聞の世論調査では東京五輪開催の是非について、「中止する」が43%、「再び延期する」が40%に上った。一方、「今年の夏に開催する」は前月の調査の28%から14%へ半減。予定通りの五輪開催は「民意に反する」ことになりかねない。共同通信が同16日に発表した世論調査でも「中止するべきだ」が、59.7%と過半数となった。 政府与党が警戒するのは、東京五輪開催を堅持する菅義偉内閣の支持率が下がっていることだ。万が一にも東京五輪開催中に新型コロナ感染が拡大して第4波同様の医療崩壊が生じた場合、五輪後の衆院選で与党が惨敗する可能性が高まる。 ならば「国民の生命を守る」を大義名分に中止することで、「政府の英断」をアピールする方が選挙戦に有利ではないかとの見方が与党内に広がっているという。下村政調会長や二階幹事長の中止発言は、そのための「観測気球」と見られている。 東京都にしても、事情は同じ。7月4日に都議会議員選挙が控えているからだ。小池百合子都知事を支える都民ファーストの会(都民ファ)の勢力拡大のため、都が電撃的に「五輪中止」を打ち出すとの観測も根強い。 開催都市だけに、都民の間では国内外から多数の選手や関係者、ボランティアが集まることによるコロナ感染リスクの拡大や医療体制の逼迫、都民の行動制限といった懸念がある。衆院選と違って都議選は五輪前に終わるが、都民ファの議席確保のために「知事の英断」が飛び出す可能性も取り沙汰されているのだ。 ●2.不透明な「北京冬季五輪」の行方 コロナ禍という非常事態だけに、東京五輪だけなら中止でもよいかもしれない。しかし、来年開催の北京冬季五輪にも「黄信号」が点灯している。選挙中は「中国寄り」と言われていたバイデン米大統領だが、就任後は人権問題でトランプ前政権よりも厳しく中国政府に対峙(たいじ)している。 北京冬季五輪も香港や新疆ウイグル自治区での人権問題をたてに、米国が「外交的ボイコット」で圧力をかけた。現時点では選手団の派遣中止までは踏み込んでいないが、米中関係の悪化が深刻化すれば全面ボイコットにもつながりかねない。IOCが最も懸念するのは米国が自国だけでなく、関係国にもボイコットを強制する可能性だ。 米国は中国が強制労働を課しているとして新疆ウイグル自治区製品の輸入禁止措置を取っており、外国メーカーにも適用。ファーストリテイリング<9983>が生産・販売するユニクロ製品の米国輸入を差し止めた。同様の事態がボイコット問題で起これば、北京冬季五輪は失敗に終わるだろう。 東京、北京と立て続けにオリンピックが「失敗」すれば、IOCの威信は地に落ちる。IOCとしては北京冬季五輪の先行きが怪しくなってきただけに、どのような形であれ東京五輪を開催して「成功」をアピールしなくてはならないのだ。 ●3.立候補都市の「消滅」 かつては多数の都市が名乗りをあげて激しい誘致合戦が展開された五輪も、このところは人気薄だ。アテネに決まった2004年の夏季五輪では11都市(第一次選考で脱落した都市を含む)が立候補したが、その後は徐々に減少している。 東京に決まった2020年の夏季五輪では6都市に減り、2028年の夏季五輪では開催地に決まった米ロサンゼルス以外に立候補都市がなく、2032年の夏季五輪も現時点では豪ブリスベン以外に立候補都市はない。 立候補都市が減少している原因は、肥大化する五輪予算だ。これは新しい問題ではない。1970年代から開催予算の高騰で立候補を見送る都市が続出。1984年の夏季五輪ではロサンゼルスしか立候補都市がなかった。 そのためIOCはロサンゼルス五輪から、テレビ放映料の大幅引き上げや競争入札的なスポンサー協賛金制度の導入、記念グッズの販売など民間資金による開催を認める。その結果、税金を使わず黒字を出すことに成功した。 これが「オリンピックは儲かる」との評価につながり、1986年に開催地が決まった1992年バルセロナ五輪では6都市が立候補し、再び誘致合戦が繰り広げられることになる。だが「オリンピックの商業化」で、さらに予算が増大。2008年の北京夏季五輪は400億ドル(約4兆3800億円)、2014年のロシア・ソチ冬季五輪は510億ドル(約5兆5900億円)を投じることになった。 これほどの規模になると民間資金のみによる開催はとても無理で、再び巨額の公的資金を投入するようになった。五輪の経済効果も一部の業界にしか恩恵はなく、国民や開催都市の住民から「五輪に注ぎ込む予算を、生活に関連した事業へ回すべきだ」との声が高まっている。 東京五輪が中止となれば、これまで投入した1兆6440億円は水泡に帰す。うち9000億円は国と都が負担する。ただでさえ巨額の赤字が避けられず、その上、パンデミックなどの非常事態で中止になるリスクが明らかになれば、立候補都市がゼロという最悪の事態もありうる。IOCとしてはオリンピックを「持続可能」とするために、東京五輪を中止させるわけにはいかないのだ。 ●尾身会長 東京五輪・パラ“人流増え感染拡大のリスクある” 5/31 東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、政府の分科会の尾身会長は、参議院決算委員会で、開催に伴い都道府県をまたぐ人の流れが増えることで感染が拡大するリスクがあるとして、対策の検討を急ぐ必要があるという認識を示しました。 この中で政府の分科会の尾身会長は、選手やスタッフが外部と接触できないようにする、いわゆる「バブル」と言われる状態を作ることで、競技場などでの感染リスクを一定程度、コントロールすることは可能だという認識を示しました。 そのうえで尾身会長は「最も重要なことの一つは『バブル』の中ではなく、オリンピックの開催に伴う地域で、人流や接触の機会がどうなるかであり、普通にしておけば、人の流れが増えて、接触機会が増えることはほぼ間違いない」と指摘しました。 そして「オリンピックは特別で、普通のイベントとは違うし、連休もある。県を越えた人々の動きで感染が拡大するリスクは当然あり、どのような対策をとるのか、今から考えておいた方がいい」と述べ、対策の検討を急ぐ必要があるという認識を示しました。 また、丸川担当大臣は「私自身も、当初から、人流対策をどうするのかに論点があると感じている。いま、具体的に検討を進めているところだ」と述べました。 ●オリンピック中止なら開催都市契約違反で賠償金1兆円の可能性も… 5/31 開幕予定日まで2カ月を切った東京オリンピック。世論調査では中止を求める声が半数を超えている。一方、国際オリンピック委員会IOCのコーツ調整委員長は、緊急事態宣言が出ている状況でも大会を開催できるとの考えを示した。今回の放送では、東京オリンピック・パラリンピックの開催について徹底議論した。 ●世論調査では半数以上が「中止すべき」 新美有加キャスター: 東京オリンピック開催まで2カ月を切りました。FNNの世論調査では、中止すべきとの回答が半数を超えています。受け止めは。 馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事: 組織委員会理事として、安心安全な大会とする対策の広報が行き渡っておらず申し訳ない。プレーブック(規則集)がありアップデートもしているが、きちんと伝えきれていない。 泉健太 立憲民主党政調会長:オリンピックの良し悪しではなく、この時期にこんな感染状況であることに世論が反応している。菅政権が招いてしまった。変異株のせいだとはならない。開催できる段階ではない。開催までの期間に開催できる状況にするのは相当大変。 スポーツライター 小林信也氏: 世論調査の数字はやむを得ないが、組織委員会や対策会議の計画がほとんど伝わらないうちに皆さんが結論を決めているように思う。中止した場合の日本のスポーツの損失、国民生活への不利益についてはもう少し皆さんと一緒に検討したい。 ●国に中止の決定権限がない 反町理キャスター: 法律家の立場から、開催問題はどう見えますか。 早川吉尚 立教大学法学部教授 弁護士: 世論調査を見ても、オリンピックとは何か、また東京都・国・組織委員会の法的位置づけについて確認されず議論がなされており、非常に歯がゆい。 反町理キャスター: 開催可否を決めるのは誰かがはっきりわからず、議論だけ沸騰している? 早川吉尚 立教大学法学部教授 弁護士:そう。前提への誤解があまりに多い。まずオリンピックとは、IOCという法人が開催する4年に1回のスポーツイベント。それ以上でもそれ以下でもない。これに対して東京都が開催都市契約を結んだ、つまり会場貸しを約束した。契約内容はオンラインで公開されています。つまり開催するか否かの決定権限は国にはない。そして当事者である東京都が決定権限を持つのは開催可否ではなく、会場を貸すかどうか。今迫られている選択は、約束通りに貸すか、違反してでも貸さないか。 泉健太 立憲民主党政調会長:IOCの行事だからといって、東京都や組織委員会が決定について影響力を及ぼさないことはないというのが国民の理解では。日本の国論、懸念を伝えているのか。戦っている姿が見えない。 馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事: 組織委員会として、リスクマネジメントを踏まえ交渉するのが、橋本聖子会長や武藤事務総長ら事務方の役割。森会長のときから、やりとりは徹底的に積み重ねてきている。 早川吉尚 立教大学法学部教授 弁護士: 法的な話と別に、IOCに対して政治的にプレッシャーをかけ日本の事情を理解してもらうのは重要。また東京都が場所を貸さなければ債務不履行となり、損害賠償が請求される。莫大な金額に上り、東京都だけで抱え切れずに国の財政出動にも。その限りにおいて国会で法的にも議論することは非常に重要。 ●中止なら開催都市契約違反で賠償金1兆円の可能性も 新美有加キャスター: 経済的リスクについて。アメリカのワシントン・ポスト紙が、IOCのバッハ会長を「ぼったくり男爵」と呼び、IOCは収益のほとんどを自分たちのものにし、費用はすべて開催国に押し付けていると非難。日本に対しては中止を決断し損失を最小限にすべきだと主張しています。その場合の賠償金は。 早川吉尚 立教大学法学部教授 弁護士:契約上、日本は開催都市契約の違反で賠償することになる。これは私以外のどの弁護士に聞いても同じ結論が出る。放映権料、スポンサーへの返金を合わせると、各報道に基づけばだいたい6400億円以上、場合によっては1兆円にも。 スポーツライター 小林信也氏:IOCは開催地募集に苦慮している。巨額の賠償を東京に求めれば今後ますます手を挙げる都市が減る懸念はある。それほどの賠償はないという楽観的な声も。 早川吉尚 立教大学法学部教授 弁護士:IOCは資金的に回らなければ困る。そんなに甘くないのでは。また開催地についても、国を挙げてオリンピックを開催できる国家資本主義的な国々もあり、簡単に手を挙げられる。 反町理キャスター: 泉さん、兆のお金が請求されるリスクをとってでも中止すべき? 泉健太 立憲民主党政調会長:IOCも状況認識はしていると思う。真摯に協議をすれば、満額請求は考えられない。折半となるか、ある程度免責になるかということが現実的では。 ●選手以外の関係者の入国が高リスクとなる 新美有加キャスター: 国民の不安・不満を払拭し安全安心なオリンピックを開催するための対策について。橋本聖子会長が掲げるのは、来日人数の削減、選手や大会関係者の行動管理・健康管理、医療体制の見直しの徹底という「3徹」。中でも来日した人の行動管理が一番難しいとされています。大会期間中の行動ルールをまとめた選手や関係者向けのプレーブックは厳しい内容ですが、行動管理はできるのでしょうか。 スポーツライター 小林信也氏: 選手たちは出場のために決まりを守らざるを得ない。リスクがあるのはメディア関係者、オリンピックファミリー、スポンサーゲストら選手と違って管理が難しい人たち。この4万人ほどをゼロに近づければ不安は解消されるのでは。例えばメディアがリモート取材できるような情報を組織委員会から送るとか。 馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事:SNSの使い方を緩和し、選手がメディアを通じずにSNSやツイッターなど情報を出すことを容認できるか。今までのように規制一辺倒だけでは通用しない。 泉健太 立憲民主党政調会長: 来日予定人数はまだ減らせる。中国など3000人の報道関係者を訪日させ全力報道をして北京オリンピックにつなげると言っている。またJOCやIOCがどこまで行動管理できるか。プレーブックの内容は頑張っているが、現実的なコントロールは難しい。 馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事:プレーブックを理解いただき、それに基づいた行動を求めるしかない。GPSで四六時中監視管理することはできない。 泉健太 立憲民主党政調会長: 建前はそう。しかし、行動計画を出せば入国可として何千人も入国させたところ、うち1割ほどの連絡が取れなくなることがすでに起きてしまった。国民は不安に感じている。管理をどれだけ厳格にできるか。 馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事: 選手以外の入国をどこまで絞るかという議論はある。 ●国内観客による人流増加も懸念される 新美有加キャスター:6月が決定の期限とされる観客問題。観客数に上限を設け制限するのか、無観客で開催するのか。 馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事: 開催1ヶ月前の感染状況を踏まえて。5000人、半分、無観客といった選択肢を残しておくことが必要。 泉健太 立憲民主党政調会長: 選択肢は無観客か中止かしかない。海外からの観客がなくても、国内の観客により人流が10パーセント増えれば、パラリンピック閉会後の月末には感染再拡大で再度緊急事態宣言となるという試算も。野村総研の試算では最も経済損失の大きいシナリオ。 スポーツライター 小林信也氏: 人流増加での感染拡大は当然考えなければ。一方、全国で開催されているプロ野球やJリーグで観客のクラスターがないという実績にも注目する必要がある。また、テレビ観戦者が会場の観客の反応に共感する効果という点で、観客にこだわる意味もある。 ●オリンピックが総選挙に与える影響は 新美有加キャスター: 政治に与える影響について。東京オリンピックは7月23日から8月4日、パラリンピックは24日から9月5日。任期満了のため9月には自民党総裁選。そして10月21日の衆院議員の任期満了までに総選挙。 泉健太 立憲民主党政調会長:オリンピック期間中に総選挙は普通あり得ない。そして国民のリスクが少ないタイミングを考えると、高齢者のワクチン接種が終わっており、現役世代も打ち始めている9月ごろ、というシナリオになるのでは。 反町理キャスター: 総選挙を考えたとき、オリンピックの開催は立憲民主党にとって逆風か順風か。はっきり言えば、オリンピックにより国内感染が爆発することが政治状況として望ましいのか。 泉健太 立憲民主党政調会長:そういうことは考えてはいけない。オリンピックが争点なのではなく、コロナ対策が争点。去年と今年のコロナ対策が果たして本当に正しかったのかということが問われる選挙。 反町理キャスター:オリンピックと総選挙の関係について、馳さんは。 馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事:スポーツと政治を絡めてはいけない。どうすれば開催できるのかという一点に絞ってしっかりバックアップしたい。政局の話はしません。 ●感染者数が増加する中“オリンピック”に対する意見が明らかに 5/31 この度、ゼネラルリサーチ株式会社(代表取締役:五條 寿朗、本社:東京都渋谷区)は、全国の20代〜60代男女を対象に、「新しいオリンピック様式」に関する調査を実施しました。 新型コロナウイルスの感染者は増加の一途をたどっており、緊急事態宣言の延長決定やコロナワクチン接種状況の遅れといった、先行きが見えない状態に不安を抱えている方は少なくないでしょう。また、開催まで60日を切った東京オリンピックも同様に、不安視する声も多数挙がっているようです。 東京オリンピックでは、大会をさらに活性化させるために、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンといった新競技が追加されていますが、前例のないコロナ禍のオリンピックであり、新しいオリンピック様式が生まれるきっかけになるかもしれません。 皆さんは今後のオリンピックの在り方についてどうお考えなのでしょう。 そこで、ゼネラルリサーチ株式会社では、全国の20代〜60代男女を対象に、「新しいオリンピック様式」に関する調査を実施しました。 ●調査1:年代別|東京オリンピックの開催で最も不安視されていること はじめに、約2か月後に迫っている東京オリンピックのチケットの有無について伺っていきたいと思います。 「東京オリンピック・パラリンピックのチケットについて当てはまるものを教えてください」と質問したところ、『持っていない(91.7%)』と回答した方が最も多く、次いで『持っている(5.0%)』『持っていたが、払い戻した(3.3%)』と続きました。 ほとんどの方がオリンピックの観戦チケットを保有しておらず、チケットを持っている(いた)と回答した方は全体の8%程度で、その内払い戻した方が3%という結果となりました。 新型コロナウイルスの感染状態やワクチン接種の状況を見て、会場での感染や開催の有無自体に不安を感じているのかもしれません。 では、今回のオリンピックのどのような点を不安視しているのでしょう。詳しく伺ってみました。 「東京オリンピックの開催について不安視していることを教えてください(上位3つ迄)」と質問したところ、10代〜60代で『コロナ変異ウイルスのまん延(20代78.9%、30代82.6%、40代79.8%、50代85.8%、60代73.5%)』『新型コロナウイルス患者の急増による医療崩壊(20代67.2%、30代61.4%、40代70.7%、50代63.7%、60代68.5%)』『新型コロナウイルスによる死亡者の増加(20代32.4%、30代36.2%、40代30.8%、50代33.3%、60代34.0%)』がTOP3という結果になりました。 上位3項目全てが新型コロナウイルスに関連しています。 4位以降は年代ごとに差が出ており、10代〜40代の方では、実際に東京オリンピックが開催されることを見越して、『会場での感染症対策』について不安視しているようです。 50代〜60代の方では、オリンピック出場選手への誹謗中傷を不安視していることが明らかになりました。実際にTwitter上で、東京五輪代表選手へ辞退を求めるツイートや批判といった誹謗中傷の問題も起きています。 一方で、東京オリンピックが開催された場合、どのような効果が期待できると予想されるのでしょう。 「東京オリンピックの開催によって期待できる効果は何だと思いますか?(上位3つ迄)」と質問したところ、各年代で差はあるものの『経済成長の促進』『国全体の気分が明るくなる』『コロナワクチンの普及』『日本ブランドの向上』といった回答が上位に挙がりました。 コロナ禍で日本全体の経済が落ち込んでいる今、オリンピックが経済活性化の糸口となると考えている方は多いようです。 さらに20代〜30代の方は、『地方活性化(20代16.7%、30代16.9%)』『観光客の増加(20代15.7%、30代16.9%)』と回答した割合が高くなっており、日本のインバウンド活性化に期待していることが伺えます。 ●調査2:感染症と今後のオリンピックに対する意見 次に、今後のオリンピックについて調査してみました。次回の開催予定であるパリオリンピックも2年後に迫っており、開催について人々はどのように考えているのでしょう。 そこで、「今後感染症拡大が世界で起きた際にオリンピックの開催はどうすべきだと思いますか?」と質問したところ、6割以上の方が『開催を取りやめる/延期して欲しい(63.4%)』と回答しました。 一方で3割以上の方が『入場制限をせず開催して欲しい(3.9%)』『入場制限をして開催して欲しい(13.3%)』『無観客で開催して欲しい(19.4%)』と回答しました。 開催を取りやめるもしくは延期して欲しいといった意見が多数を占めていますが、約3人に1人は何らかの形で開催して欲しいと回答しており、コロナに限らず開催を支持する方が一定数いるようです。ワクチンの普及に期待している方も多いのかもしれません。 また、開催の賛否についてそのように思う理由を詳しく伺ってみました。 ●開催を取りやめる/延期して欲しい理由 ・「平和の祭典なので、感染症という平和を脅かすものを広めるリスクを抱えてまでやる事じゃない」(20代/会社員/石川県) ・「感染者が増えている中で開催するのは、開催国にとってリスクと負担が大き過ぎるから」(30代/会社員/東京都) ・「いろいろな変異ウイルスが出てきている時にさまざまな国の人が集まるオリンピックは変異ウイルス祭になりかねない。新たなウイルスができるかも」(40代/会社員/三重県) ・「現時点で既に医療崩壊しているし、医療従事者の疲労とストレスが半端なく、医療従事者にこれ以上負担を掛けられない」(50代/会社員/岡山県) ●開催して欲しい理由 ・「ウイルスの蔓延は防ぎたいが、選手たちの今までの頑張りをなしにはして欲しくない」(20代/会社員/千葉県) ・「選手のことを思うと開催した方が良いと思うが、感染拡大が怖いため無観客での開催を希望します」(30代/自営業・自由業/神奈川県) ・「このようなご時世だからこそしっかり対策をして世界的な影響のある感動的なオリンピックを開催してほしいと思うから」(40代/会社員/愛知県) ・「世界でいろいろなスポーツが開催されているのに、コロナ対策をして開催するオリンピックで感染爆発するようなことが起きるとは思えないから開催すべきだと思う」(60代/自営業・自由業/栃木県) などの回答が寄せられました。オリンピックのために頑張ってきた選手のためにオリンピックを開催して欲しいといった声がある一方で、医療崩壊や感染拡大による人的被害といった問題もあり、危険をさらすべきできではないといった声も挙がりました。今回の東京オリンピックや次回のパリオリンピックでは新競技が追加されるなど、オリンピックにも変化が起きていますが、今後のオリンピックで追加を期待する新競技についてはどのように考えているのでしょう。 ●今後のオリンピックに追加を期待する新競技とその理由 ・「ソフトテニス(軟式テニス)。硬式テニスと共に開催する事で硬式と軟式との違いを理解させる事で世界中の人達に硬式と軟式の違う楽しさを実感してもらえそうなため」(20代/公務員/神奈川県) ・「競技チアリーディング。老若男女問わず競技人口があり、エンタメ性もあるから」(30代/自営業・自由業/長野県) ・「eスポーツ。新しい形のスポーツではないかと思う」(40代/会社員/新潟県) ・「ボウリングなど老若男女が参加出来る競技」(60代/会社員/佐賀県) 日本を発祥とするソフトテニスの普及や老若男女問わずに参加できる新競技の追加を期待する声が多数挙がりました。オリンピックの競技については、競技人口の増加や人気に伴って決まっています。近年では、若者の関心を引くために若者人気が高く、注目されるスポーツを採用することもあるようです。 ●調査3:年代別|新しいオリンピック様式を生み出すためのアイデア ここまでの調査で、感染症拡大時のオリンピックのあり方や新競技について意見が明らかになりましたが、このような変化について皆さんはどのようにお考えなのでしょう。 そこで、「オリンピックは伝統を守りつつ、進化をしていくべきだと思いますか?」と質問したところ、各年代に差はあるものの7割以上の方が『はい(20代84.3%、30代77.3%、40代72.6%、50代73.0%、60代71.5%)』と回答しました。 20代で『はい』と回答した方は、8割以上と最も多く、オリンピックは変化していくべきと考えていることが伺えます。 IOCや開催国側は若者の関心を高めるために、新競技を取り入れるなどしています。20代の多くが「進化していくべき」と考えていることから、上手く反映されていることがわかりました。 では、そのように思う理由についても詳しく伺ってみました。 ●伝統を守りつつ、進化していくべきだと思う理由 ・「時代交錯したものより、常に今の価値観に合わせた大会の方が、より発展していくと思うから」(20代/会社員/北海道) ・「世の中は変わるし、新しいものを取り入れていかないものに文化もないと思うから」(30代/会社員/新潟県) ・「世界でたくさんの競技が一同に会して行われる大会は他にないから。時代により競技人口の変化もあるので進化はしていいと思う」(40代/会社員/三重県) ●伝統を守りつつ、進化するべきではないと思う理由 ・「昔からの競技で競っていけばいいと思う。新競技とかで全く分からない競技されてもつまらないから」(30代/会社員/兵庫県) ・「商業化されすぎて純粋に参加できないから」(50代/パート・アルバイト/北海道) ・「各スポーツでは世界大会があるのでそちらで十分だと思う。また、開催国の費用負担が大きいから」(60代/会社員/千葉県) 伝統を守りつつ、進化していくべきと回答した方では、時代の流れや、その時の環境に柔軟に対応すべきと考えている方が多数いるようです。一方で、進化すべきではないと回答した方の中には、今回のコロナ禍でのオリンピック開催によって、オリンピックが商業化しているといった厳しい意見もありました。最後に、ニューノーマルに合わせた新しいオリンピック様式を模索するために、どのような対策ができるか伺ってみました。 ●新しいオリンピック様式のためのアイデア ・「バーチャル技術を活用したネット空間での競技」(20代/会社員/宮城県) ・「臨機応変な対応。4年に一度という枠にこだわらなくても良いと思う」(30代/自営業・自由業/長野県) ・「地区予選の充実。決勝戦だけを“オリンピック大会”として開催する」(50代/会社員/神奈川県) ・「一都市開催では負担が大きすぎるから、競技ごとに数か国で開催して欲しい」(60代/自営業・自由業/栃木県) などの回答が寄せられました。 新型コロナウイルスの流行によってテレワークやオンライン通信ツールの利用が以前よりも浸透しつつあります。時代の流れと共にIT技術が発達している今、オリンピックもオンライン化できないかといった意見も上がっているようです。 ●総括 今回の調査で、東京オリンピックや今後のオリンピックの在り方といった様々な意見が明らかになりました。年代別で差はあるものの、東京オリンピックの開催によって変異ウイルスのまん延を危惧する方が多数いるようです。また、各地で医療崩壊が起きつつある今、オリンピックの開催によって加速すべきではないといった声も上がっている一方で、開催されれば、『経済成長の促進』に繋がるといった声もあり、コロナ禍で落ち込んでしまった経済を回復できるのではないかという期待の声もありました。 今後求められる新しいオリンピック様式については、開催するのであれば、オンラインや世界各地に開催国を分けて実施した方が良い、といった意見が寄せられました。 未だ先が見えないコロナ禍で、オリンピックを存続させるためには新しいオリンピック様式を取り入れていく必要があるのかもしれません。 ●医師1,339人に聞く「東京オリンピック開催」に関する調査 5/31 企業の“メンタルケアの課題”をクラウドサービスで解決する株式会社メンタルヘルステクノロジーズは、医師1,339人を対象に、東京オリンピック開催に関する意識調査を行いました。(調査期間:2021/5/11〜28、調査対象:全国の医師) 東京オリンピック開催に「反対」と回答した医師は全体の2/3を超え、開催を懸念する医師が多いことがわかりました。 <「反対」を選択した医師の意見> そもそも金喰い虫でナショナリズムを煽るオリンピックに反対、また真夏の東京で実施するのは異常。/新型コロナ感染をさらに世界中に拡大/対応できる国、医療機関のキャパがない/このコロナ禍で、日本人患者さえ十分にケアできないのに、患者となりうる海外の方を受け入れる余裕はない。/財政赤字が大きすぎる。誘致の段階から一貫して反対している。/ワクチンが行き届いてないため マスコミの報道などでも伝えられている医療体制の逼迫やワクチンの普及を懸念する声はもちろん、そもそも真夏の東京での開催自体に反対する声が多くみられました。 <「賛成」を選択した医師の意見> 今から中止は困難/感染は防げるものでもない。頑張ってきた選手には是非使用してほしい参加させてあげたい。/オリンピックやらないことによる経済的損失/テレビ観戦でもいいからオリンピックを見たい/日本ならびに世界を活気づけるから 中止判断のタイミングや出場する各国の代表選手を気遣う声が多く見られました。また、経済的な観点やスポーツの祭典を楽しみにしているという声も同時に見られました。 ●東京五輪・パラ “選手村での酒提供” 野党が見直し求める 5/31 東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、政府は、野党側の会合で、大会期間中、選手村での酒の提供などを認めていると組織委員会から説明を受けていることを明らかにしました。野党側は、感染のリスクが高まるなどとして見直しを求めました。 東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、立憲民主党など野党側は、31日、国会内で政府の担当者からヒアリングを行いました。 この中で、政府側は、大会期間中、選手村でのケータリングサービスによる酒の提供のほか、選手みずからが酒を持ち込むことを認めていると、組織委員会から説明を受けていることを明らかにしました。 これについて、野党側は「選手だけ特別扱いする対応で、さまざまな自粛に応じてきている国民の理解は得られない。また、集団による飲酒の機会にもつながり、感染リスクも高まる」として見直しを求めました。 これに対し政府側は「飲酒により感染対策が緩むことがあってはならず、指摘があったことを組織委員会にしっかりと伝えたい」と応じました。 ●オリンピック事前合宿で初来日へ ソフト・豪代表 感染対策は? 5/31 東京オリンピックの事前合宿のためソフトボールのオーストラリア代表が日本に向けて出発しました。チームは6月1日、ホストタウンの群馬県太田市に入る予定で、新型コロナウイルスの感染拡大で東京大会の延期が決まって以降、海外のチームが事前合宿のために来日するのは初めてです。 ソフトボールのオーストラリア代表は東京オリンピックに向け、1日から大会直前の7月17日までホストタウンの太田市で事前合宿を行います。 ホストタウンの事務局を務める内閣官房などによりますと、新型コロナの感染拡大で東京大会の延期が決まって以降、海外のチームが事前合宿のために来日するのは初めてです。 5月31日は選手14人と関係者がシドニーの空港に集まり、家族などの見送りを受け経由地のシンガポールに向けて出発しました。 オーストラリアの競技団体や太田市によりますと、選手たちは感染対策として全員が5月にワクチンの接種を2回受けたほか、日本では宿泊先と野球場の往復以外は外出を自粛し、PCR検査を毎日受けるということです。 出発前、取材に応じた選手の1人は「通常とは異なる大会になるのでしっかり準備したい。日本の人たち、そして私たち自身の安全のためすべてのルールを守りたい。目標は金メダルです」と話していました。 チームを見送ったオーストラリア選手団のチェスターマン団長は「この1年余りは選手たちにとって非常に厳しい時間だったが、待ち望んでいた瞬間がようやく現実のものとなった。選手は自分たちの行動に大きな責任が伴うことを理解している」と述べました。 チームにはシンガポールでほかの選手も合流し合わせておよそ30人が1日、成田空港に到着する予定です。 オーストラリア代表は過去4大会で銀メダル1回、銅メダル3回を獲得した強豪で、7月21日に福島市の県営あづま球場で行われる開幕戦で日本と対戦します。 ●「意義は半分以上なくなった…」子どもとの交流はオンラインで 事前合宿を行う群馬県太田市は学校の部活動などでソフトボールが盛んで、オーストラリア代表はこれまで世界選手権など国際大会の前にキャンプ地として滞在し、選手たちが市内の小学校を訪問するなど交流を続けてきました。 こうしたことがきっかけで太田市は3年前、東京オリンピック・パラリンピックのホストタウンとなりました。 受け入れを前に太田市の清水聖義市長は31日の会見で「選手が気持ちよくプレーできるように準備していきたい。日本が金メダル、オーストラリアが銀メダルをとれればいい」と述べました。 そして、当初計画していた地元の子どもたちとの交流はオンラインでの実施を検討しているとして「意義は半分以上なくなってしまったが、今後のつながりを続けるためにも最大限努力していきたい」と述べました。 一方、オーストラリア代表の選手やスタッフ全員が来日前にワクチンの接種を済ませているのに対し、選手たちが滞在するホテルの関係者などが接種していないことについて清水市長は「関係者にワクチンを接種したほうがいい」と述べ、自治体が事前合宿を受け入れる際の課題で早めの接種を検討すべきだと指摘しました。 ●選手たちの感染対策は 選手やスタッフおよそ30人は1か月半にわたって市内の野球場を拠点に練習するということですが、感染対策はどのようになっているのでしょうか? (太田市とオーストラリアの競技団体によると) ○選手・スタッフ全員が来日前にワクチン接種済み ○滞在期間中、毎日PCR検査を実施 ○野球場は原則、関係者以外の立ち入りを制限 ○選手たちは宿泊先のホテルと野球場の往復以外は外出を自粛 ○日用品などは希望があれば市の職員が調達 ○歓迎のセレモニーは行わない ●ホテルの感染対策は 宿泊するホテルでも感染対策など受け入れの準備が進められています。 ○選手・スタッフはホテルの8階と9階を貸し切って宿泊 ○3階のフロアを共有スペースとして使用 一般の宿泊客がいるほかのフロアには立ち入らない ○3階のフロアには食事とミーティング、ウエイトトレーニングなどの器具を置く部屋をそれぞれ用意 ○ホテルへの出入りは裏口を使用 ○エレベーターは一般の宿泊客が乗っている場合には利用しない ○選手たちの滞在期間中はホテル従業員も毎日、PCR検査を実施 ホテルの葛生直樹マネージャーは「感染対策を徹底し、スタッフも感染しない、選手たちにも感染させないよう準備を進めていきたい。選手の皆さんには安心してホテルで過ごしてもらえればと思います」と話していました。 ●自治体で中止相次ぐ… 東京オリンピック・パラリンピックでは海外選手の事前合宿や交流を行うホストタウン事業に全国528の自治体が登録しているほか、そのほかにも事前合宿を個別に予定している自治体もあります。 しかし、NHKが全国の都道府県などに取材したところ海外選手の事前合宿や交流の受け入れについて5月17日の時点で全国54の自治体で中止され、その後も増え続けています。 ●受け入れ中止 多くは相手国側からの申し出 海外選手の事前合宿などの受け入れを中止した自治体の多くは相手の国や地域からの申し出によるものでした。その主な内容です。 ロシアの体操チーム / 新潟県加茂市でことし7月に事前合宿を行う予定でしたが、移動や宿泊の際の感染を懸念してぎりぎりまで国内で調整し直接東京に入ると4月に市に連絡しました。 アメリカの陸上チーム / 千葉県の成田市、佐倉市、印西市で予定していた事前合宿を選手の安全面への懸念から中止を決めました。 ベトナム /・長崎県の長崎市、諫早市、大村市 ・東京・国分寺市 ・北海道釧路市で事前合宿を予定していましたが「世界的な感染状況を重く見て合宿は行わない」などと、自治体側に取りやめを連絡しています。 一方、それ以外では感染拡大が収束する見通しが立たないことや、ワクチンの集団接種の会場に使用することなどから、自治体側から中止を申し出たり両者で協議したりしたケースでした。 ●専門家は 東京女子体育大学 笹生心太准教授(スポーツ社会学が専門) 事前合宿の中止が大会に与える影響について / 「オリンピックの基本理念は国際交流を通じて世界平和に貢献することで、ホストタウンはいちばん真ん中の事業だった。コロナ禍が起きたせいで直接の交流ができなくなったのはかなりのマイナスだ」 競技について / 「大会前の調整は選手にとって大きなインパクトがあり、それがダメになるなら不利が大きすぎる。日本に近く時差の少ない国が有利になることが起きうるので競技の平等性に問題が生じる。世界最高の競技を見せることができないと思われて大会への期待感がさらにしぼむ事態も十分ありうる」 ●加藤官房長官「対策をしっかりと講じていただく」 加藤官房長官は31日午後の記者会見で「太田市では感染症対策のための選手受け入れマニュアルを作成しており、受け入れる選手などについては用務先を限定するなどの行動管理を行うとともに受け入れ自治体の関係者にも一定の行動管理や健康管理、検査をするなど感染症対策をしっかりと講じていただくこととしている。オーストラリアのチームは初戦で日本チームと対戦すると承知していて、太田市でしっかりと調整を行い最高のパフォーマンスを発揮していただきたい」と述べました。 ●日本政府「オリンピックの観戦客は自費でPCR検査を実施」案に批判相次ぐ 5/31 日本政府が東京五輪の観覧客に新型コロナのPCR検査を自費で受け、陰性の結果を提出する案を推進する。五輪開催を強行しつつ、感染拡大の責任を国民に負わせるという批判が殺到している。 読売新聞は31日、「東京五輪・パラリンピックの観客に対する新型コロナの対策原案に入場時、観客全員に1週間以内に行ったPCR検査の陰性証明書を提示するよう要求する内容が入っている」と伝えた。報道によると、検査費は自己負担となる。ワクチンを接種した人は接種証明書だけ提出すればよい。 また原案には、△競技場ではマスクを常時着用し、△食事や飲酒、高声放歌(大声で騒ぐこと)を禁止し、△退場の際に一度に人が殺到しないよう分散させるなどの内容も含まれている。 問題は、日本で簡単にPCR検査を受けることが難しいことだ。自費でPCR検査を要求することでさえ問題で、容易なことではない。本人が希望すればいつでも無料検査を受けることができる韓国と違って、日本は依然として単純な憂慮だけでは無料検査を受けることができない。個人的な理由で民間病院で検査を受ける場合、2万円を支払わなければならない。 ソーシャルメディアやポータルサイトなどでは批判意見が殺到している。国民の多数の反対を押し切ってオリンピック開催を推し進めることだけでも反発が激しいのに、危険を甘受して“観衆を集客しての開催”を推進することに対しても議論が続いている。 日本政府が“観衆を入場させるオリンピック開催”方針を推し進めるため、専門家の意見を意図的に無視したという指摘も出ている。この日の毎日新聞は「新型コロナ対策などを日本政府に助言する専門家たちが東京五輪開催に関する意見を発表しようとしたが、取り消した」と報じた。 同紙は「当初、医療専門家などで構成された日本政府の新型コロナ対策分科会は感染状況を4段階に分け、2番目に深刻な“3段階”の場合には無観衆開催などの五輪開催案を提言しようとしたが、『専門家が段階別対応を取り上げるのを政府が嫌がる』というメッセージが伝えられ、実現しなかった」と伝えた。 対策分科会は「感染が最も深刻な“4段階”の状況で五輪が開催されれば、医療圧迫がさらに深刻になる危険がある」と警告する計画だった。 ●「五輪の力になりたかった」聖火リレー"全行程中止" ランナーから落胆の声 5/31 鈴木北海道知事は、2週間後に迫った東京オリンピックの聖火リレーについて公道では中止する方針です。ランナーからは落胆の声が聞こえました。 鈴木 直道 北海道知事:「北海道内の全行程で聖火リレーを中止する。点火セレモニーを無観客のオンラインで最小限でやる」 鈴木知事は5月28日、公道での聖火リレーを中止するとしました。 札幌市豊平区の札幌ドーム周辺を走る予定だった札幌市内の中学校に通う湯川総夢くんは落胆を隠せません。 湯川 総夢くん:「しょうがないと思います。走りたかった」 総夢くんの母親:「何も連絡が特に組織委員会からも北海道からもきていない」 各ランナーに当日の集合場所や体調を記録するよう連絡はきていましたが、この時点で中止の知らせはまだ来ていません。 湯川 総夢くん:「聖火をつけて、コロナの中でも光になればいい」 聖火ランナーとして期待に胸を膨らませていた総夢くんでしたが… 湯川 総夢くん:「チーム自体もコロナ陽性者が出たりしている。オリンピックの一つの力、成功のカギになれればと自分も誇りに思っていたのでそれをみんなに届けたかった」 所属するクラブでも仲間に陽性者が出て、練習が中止になるなど感染拡大は身近に迫っていました。聖火リレーの中止に落胆はしつつも、すでに先を見据えています。 湯川 総夢くん:「オリンピックがまた日本で行われる時にはもう一度走りたい」 東京五輪の聖火リレーは、当初6月13日と14日に北海道内で行われる予定でした。 ただ緊急事態宣言が延長されたことに伴い、公道でのリレーを中止。鈴木知事は28日の会見で、「無観客の点火式をオンラインで検討する」としました。 また「ランナーを集めてのイベントは難しい」としながら「思いに沿った措置がとれないか組織委員会と協議する」と話しています。 ●旅行業界 東京オリンピック公式観戦ツアー 販売再開の動きも 5/31 旅行業界では、去年から中断していた東京オリンピックの公式観戦ツアーの販売を再開する動きもあります。 東京オリンピック・パラリンピックの公式観戦ツアーは、大会のスポンサー企業であるJTB、KNTーCTホールディングス、東武トップツアーズの3社が取り扱っていますが、大会の延期を受けて、3社とも去年3月から販売を中断していました。 このうち、JTBは今月24日から、オリンピックの観戦チケットと宿泊をセットにした公式観戦ツアーの販売を再開し、店舗や専用の電話で先着順で受け付けています。 大会が迫り、問い合わせも多いため販売を再開したということで、仮に、大会の中止や無観客での開催となった場合は返金することにしています。 28日の決算会見でJTBの山北栄二郎社長は「オリンピックの開催は安心・安全が大前提で、組織委員会の決定に従って対応していく」と述べました。 また、東武トップツアーズは、ツアーの抽せん販売に向けたホームページでの事前登録を31日まで受け付けています。 一方、KNT-CTホールディングスは、緊急事態宣言の期限となる来月20日以降の販売再開を予定しているということです。 ●東京五輪観客に「陰性証明」求める、1週間以内の取得条件…政府原案 5/31 夏の東京五輪・パラリンピックの観客の新型コロナウイルス対策について、政府が検討している原案が判明した。入場時にPCR検査などの陰性証明書提示を求めることや、会場内での食事や飲酒の禁止などが柱となっている。厳しい対策により、大会期間中の感染拡大防止を図る。 複数の政府関係者が明らかにした。政府と東京都、大会組織委員会は会場の観客数上限を6月中に判断する方針だ。一定の観客を入れる場合を想定し、原案を基に3者で感染対策の具体化を急ぐ。 原案によると、観客全員に事前にPCR検査などを求め、入り口で観戦日の前1週間以内の陰性証明書を提示することを条件に入場を認める。ワクチンを接種した人は接種証明書があれば陰性証明書は求めない。検査費は自己負担で、政府は検査数は1日最大約40万件と試算しており、今後、検査態勢の拡充も図る。 会場では、入り口での健康チェックやマスクの常時着用、分散退場などを徹底する。観戦中の食事や飲酒、大声での応援、ハイタッチは禁止の方向だ。警備員を配置し、違反に対しては入場拒否や退場などの措置も想定している。 ・・・ ●東京オリンピックと第二の敗戦 5/31 目下、日本政治にとって最大の問題は、7月の東京オリンピックを予定通り開催するかどうかという選択である。新型コロナウイルスの感染が止まらず、変異株も広がり、ワクチンの接種も先進国の中では最も遅れている日本では、医療崩壊が現実化している。大阪、北海道などでは、感染しても入院することができず、ホテルや自宅で待機している間に亡くなる人も相次いでいる。こんな状態でオリンピックを開催すれば、貴重な医療資源がオリンピックに振り向けられ、国民の生命は二の次になるという疑問が広がっている。多くの世論調査で、オリンピックをさらに延期あるいは中止すべきという意見は、合わせて70〜80%程度である。 しかし、菅義偉首相は、予定通り開催すると再三言明している。もはや日本政府は合理的政策決定ができなくなったと言うしかない。このような政治のありさまを見ると、第2次世界大戦敗戦直前の日本の指導者の姿を想像する。76年前と今の指導者には多くの共通する思考法が見出せる。 第1は、言葉の置き換えによる現実の隠蔽である。最近の日本のメディアでは医療崩壊という言葉は使われない。ベッドも医師も不足して自宅に隔離される人は自宅療養と呼ばれる。これは、敗北、退却を転進と呼んだ大本営発表と同じである。 第2は、既成事実への屈服である。戦争中、軍の指導者は中国大陸の占領地から撤退することはそれまでに払った犠牲やコストをすべて無駄にすることだとして、反対した。このように誤った方針を転換できない状態が既成事実への屈服である。 現在では、東京オリンピックをめぐって政治指導者は既成事実に束縛されている。今オリンピックを中止すれば、これまでの投下資金はすべて無駄になる。経済学ではそのムダ金をサンクコスト(埋没費用)と呼ぶ。サンクコストの発生は政策決定者の見通しの悪さを示す決定的な証拠である。しかし、サンクコストを恐れるあまり、失敗すると分かっている事業に資源の投入を続け、より大きな破局をもたらすのは、最悪の経営者である。首相もオリンピックに関しては最悪の経営者の行動を取ろうとしている。 第3に、空虚な国家目標のために国民感情を煽り、国家の威信を示そうとするところも、戦中と現在の共通点である。菅首相がオリンピックに執着することは、その後の政治日程と関係している。衆議院の任期はこの10月までなので、首相はオリンピックを開催し、日本選手の活躍で国民精神が高揚したところで、選挙を行いたいという野望を持っている。医学の専門家がオリンピック開催に伴う危険性を指摘しても、首相は大丈夫だという主観的信念を振りかざし、科学的データは無視する。このあたりの精神構造は、一億玉砕、本土決戦という戦中のスローガンを思い出させる。国民の生命を第一に考え、オリンピックを断念するという政治判断を示せば、政治家としての信頼性は高まるはずだが、首相にはそのような計算もできないようである。 76年前の敗戦で大きな犠牲を払った後、日本人は民主主義を確立し、民意に基づく政治、科学的合理性に基づく政策を進めるようになったはずである。しかし、日本人は誤った政策を決めた政治システムを転換したわけでもなかった。狂信の政治は帯状疱疹ウイルスのように日本政治の内側に潜んでいただけで、今また表面化したということができる。ただし、76年前と違い、今の日本には言論の自由がある。政策の誤りは批判することができる。またいくつかの新聞はオリンピックの中止を求める論説を出した。これからも議論を続けなければならない。 ●規模縮小で済む? 五輪ライブサイト、感染警戒で岐路 5/31 東京オリンピック(五輪)・パラリンピック期間中に行われるパブリックビューイングのイベント「ライブサイト」が、岐路に立っている。7月23日の大会開幕に向けて準備が進むが、大会が「無観客」となればイベントそのものが難しくなるからだ。現時点では感染対策を徹底した上で開く方向だが、都幹部からも「難しいかもしれない」との声が漏れる。 「色々な工夫をして、ライブサイトの運営につながってくる。ただ、まずはコロナ対策をしっかりと進めていく必要がある」 28日の定例会見。小池百合子知事は、ライブサイトの実施について問われるとそう述べるにとどめた。 計画では大会期間中、都内には代々木公園(渋谷区)と井の頭公園(武蔵野市、三鷹市)の2カ所にライブサイト会場が設けられる。大型ビジョンで競技を見ることができるほか、競技体験コーナーや飲食を提供するスペースを設置。これとは別に、日比谷公園や調布駅前広場、東日本大震災や熊本地震の被災地4県などでもパブリックビューイングが開催される。 1964年以来の東京五輪開催に向けて、都と大会組織委員会がライブサイトを設ける最大の狙いは、「大会の感動と興奮を共有する」ことだった。その前例となったのが、一昨年秋のラグビー・ワールドカップ(W杯)。「ファンゾーン」と名づけられ、東京では有楽町と調布市に設けられたパブリックビューイング会場は連日満員になった。都の担当者は当時、「会場に来れば世界の誰とでも仲良くなって盛り上がれる。五輪開催時にも、そんな場所になることを目指したい」と話していた。だが、昨年から感染が広まった新型コロナウイルスがその形を大きく変える。水際対策で外国からの観客の受け入れを断念。代々木公園では1日あたりの来場者を3万5千人と見込んでいたが、事前申込制にした上で座席数を710人と半分以下にすることで大幅に減らす予定だ。 観戦中の感染防止策にも神経を使う。競技中は大声を出さずに静かに拍手をすることを求め、持ち込みを認めるのはソフトドリンクのみ。アルコール販売も取りやめた。ただ、会場予定地では観客席の設置準備が始まるなか、本当にライブサイトを開けるかはいまだ不透明なままだ。政府や都、組織委などは競技場での観客の有無や人数上限を6月中に決めると表明。仮に競技場に観客が入れない判断をすれば、ライブサイトを取りやめるべきだとの議論が高まるのは必至だ。実際に、組織委の武藤敏郎事務総長は27日、「無観客ならパブリックビューイングはおかしいという議論は当然ある。今は私もそういう考え方に近い」と発言。「大会の感動と興奮を共有する場」を目指した都庁内からも、「競技場が無観客となれば、ライブサイトのみの運営は難しいかもしれない」と焦る声が強まっている。 ●オリンピックの経済波及効果はもはや望めず〜経済界が危惧する「大博打」 5/31 ●「開催する方がはるかに経済効果がある」? 5月27日に、武藤敏郎・東京オリンピック・パラリンピック組織委員会事務総長がマスコミのインタビューに、「日本経済全体のことを考えたら、五輪を開催する方がはるかに経済効果がある」と答えています。 これは、孫正義・ソフトバンクグループ会長兼社長や三木谷浩史・楽天グループ会長兼社長をはじめ、鈴木悌介・小田原箱根商工会議所会頭など、新型コロナウイルス禍での大会開催に対して懸念を表明する経済人が増えてきていることに対する反論としての発言です。 しかし、これまでオリンピック開催の経済波及効果が大きいとしていたシンクタンクなどが、開催による経済波及効果に懸念を出し始めています。根拠を示さずに、「開催する方がはるかに経済効果がある」とした武藤事務総長の発言には疑問の声が多く出されています。 ●緊急事態宣言による経済損失の拡大 経済界が危惧するのは、度重なる緊急事態宣言延長による経済損失の拡大があります。今年4月の段階で、緊急事態宣言によって日本経済が被るマイナスの影響について、相次いで民間のシンクタンクが試算を発表しました。 それによると、4月25日から5月11日の期間の緊急事態宣言で、日本の年間総生産(GDP)を押し下げる額として、大和総研は3000億円、みずほ証券は4000億円、第一生命経済研究所は4460億円、そして、野村総合研究所は6990億円といった巨額に上ると試算しました。 さらに野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、6月20日までの緊急事態宣言の延長により、さらに1兆2420億円の経済損失が生じ、3回目の緊急事態宣言が出された4月25日から来月20日までを合わせると経済損失は3兆1790億円に上ると試算しています。さらに失業者数も約4万9000人増加すると試算しています。 ●オリンピック開催そのものがリスク化 東京オリンピック開催によって、海外から選手や大会関係者らの入国者数を最大9万人と政府は推計しています。政府は、安全性をアピールしていますが、その対応策への不信も強く、多人数が海外から入国することのリスクへの懸念が強まっていると言えます。 つまり、開催までは良いとしても、開催後に再び、新型コロナの流行が再燃した場合、緊急事態宣言の発出に繋がり、さらに巨額の損失を被るのではないかと懸念されるのです。 過去に国際的なスポーツイベントを担当したある地方自治体職員は、「マスコミに名前を取り上げられるような有名選手は自重するでしょうが、中には観光気分でやってくる選手も多くいます。相手国政府が発行した正式な証明書を持っていて、プレス担当だと入国してくるのですが、デジカメ一個しか持っていなかったり、代表団の大半が行方不明になるなどということも過去に起こっているのです。バブル方式で外出させないとはいうものの、本当に厳格な監視や管理が可能なのか。違反すれば、強制退去や資格はく奪と言いますが、自分の試合が終われば、もう関係ないとなる選手も多い。国際的な大会を経験して、現場を知っていると、大丈夫だとはとても思えない」と話します。また、日本の大学で学んでいる中国人留学生の女性は、「日本から3月に中国に一時帰国した際は、空港から政府の指定したバスで、ホテルに運ばれ、厳しい監視がされて2週間滞在。さらに実家に帰っても、1週間は監視されていました。帰国して2週間で受けたPCR検査は、17回にもなりました。帰国中にワクチン接種を受けましたが、日本に戻ってくると、入国検査で入国後2週間は家にいてくださいねと言われただけで、びっくりしました」と言います。このような現状で、果たして10万人近い選手団と関係者を管理できるのかという指摘は、他の国から帰国した日本人会社員や在日外国人らからも聞かれました。 ●中止しても、「景気の方向性を左右するほどの規模ではない」 中止しても、経済に大きな影響は、もはやないという意見も出てきています。野村総合研究所が、5月25日に発表した推計によれば、東京五輪・パラリンピックを中止した場合の経済損失は、1兆8千億円程度であり、開催によって、さらなる新型コロナの感染拡大を引き起こし、緊急事態宣言の発出を余儀なくされた場合の経済損失の方が大きくなるとしています。中止しても損失額は昨年度のGDPの0・33%に過ぎず、「景気の方向性を左右するほどの規模ではない」との見解です。 一方、東京大学大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授と藤井大輔特任講師のグループは5月23日に、オリンピック選手ら入国による感染者数のへの影響について、「限定的」とする推計結果を発表しています。オリンピックの関係者の入国者数を10万5千人、ワクチン接種率を50%として試算しています。この結果、東京都内における1週間平均の新規感染者数は約15人、重症患者数で約1人を上昇させる程度だとしています。ただし、この試算には感染力の強い変異種は含まれておらず、さらに試算によれば、海外からの入国者よりも、大会開催による観戦者などの人流が活発化することによる感染者増の方が大きいとしています。開催によって人流が増加してしまえば、閉会後の9月、10月に感染者数が増加してしまい、経済への影響も大きくなると指摘しています。 ●開催は「大博打」 3回に及ぶ緊急事態宣言の経済への影響は、次第に大きくなっています。緊急事態宣言が出されている都道府県はもちろんのこと、それ以外の地域にも大きな影響が出ています。そんな中で、東京オリンピックの開催による経済波及効果は、ほぼ期待できない状況になっています。 地方においては、観光産業が経済に占める割合が高く、一年以上に及ぶコロナ禍は地域経済に大きな影響を及ぼしつつあります。北海道のあるホテル経営者は、「オリンピックを開催したことで、変異種などが持ち込まれ、首都圏にさらに緊急事態宣言が出されるようなことになれば、秋以降の首都圏からの観光客が期待できなくなる。東京だけの問題ではなく、地方経済にもさらなる打撃になります」と言います。また、東北地方の金融機関職員は、「地方ではコロナも東京から持ち込まれたという発想が強い。オリンピックで海外から変異種のコロナが持ち込まれ、それが東京から広がるのではと危機感を持っている人は多い。私の知り合いは、東京の大学に行っている息子に、オリンピック期間中は危険を避けるために、東京から戻るようにと言っている」と指摘します。 首都圏の中小企業経営者は、「オリンピックが近づき、テレビなどで日本選手の紹介が流れて、特別番組などで取り上げれば、ある程度は盛り上がるのでしょう。大半の国民は、東京都外の安全なところでテレビで観戦して盛り上がれる。しかし、政治家の人たちが選挙対策での博打勝負を仕掛けているようにしか思えない。うまくいけば、反対していた人たちを叩いて、選挙を有利に進められると思っているのでしょうか。もういい加減、経済は痛んでいるのですから、リスクを取って博打勝負に出るのは止めてもらいたいと言うのが正直な気持ち」と言います。 ●経済効果は望み薄 民間のシンクタンクの推計の通り、東京オリンピック・パラリンピックが無事に開催されたとしても経済効果は、ほとんど期待できないでしょう。しかし、変異種が持ち込まれ、感染者数が再び増加する事態になれば、9月、10月頃になって緊急事態宣言を出さなくてはいけない状態となり、日本経済にさらなる打撃が加わる可能性が強いことは、多くの専門家の指摘する通りです。 開催中止に伴う違約金が膨大な金額に上るという意見もありますが、これも政府や東京都から実際のところが明らかにされていません。 経済界からの様々な懸念をも無視し、経済を回すことよりも優先して開催を進める事情が、まだなにか隠されているのかと疑念を持たざるを得ません。政府は、なぜここまで経済界からの指摘や懸念を無視し、頑なに開催を進めるのか、きちんとした説明を行うべきでしょう。 |
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●東京五輪、グッと増えた「中止」の声 首相繰り返す「安全安心」への違和感 6/1
開幕まで2カ月を切った東京五輪。5月15、16日に実施した全国世論調査(電話)では、「中止」を求める意見がグッと増え、開催への機運は冷え込んでいます。コロナ禍での開催に不安感が漂うなか、菅首相の繰り返す、あのセリフは国民の心に響いていないようです。(朝日新聞記者・渡辺康人) 「東京オリンピック・パラリンピックをどのようにするのがよいと思いますか」。朝日新聞の世論調査では、「21年夏に開催する」「再び延期する」「中止する」の三つの選択肢を挙げて、尋ねてきました。新型コロナウイルスの感染状況が拡大傾向にあると慎重意見が増え、落ち着くと、開催派が盛り返す傾向がありました。20年12月の段階では、「開催」「再延期」「中止」がほぼ3等分に割れていました。 Q:東京オリンピック・パラリンピックをどのようにするのがよいと思いますか。 20年7月=21年夏開催(33%)/再延期(32%)/中止(29%) 10月=21年夏開催(41%)/再延期(26%)/中止(28%) 12月=21年夏開催(30%)/再延期(33%)/中止(32%) 21年1月=21年夏開催(11%)/再延期(51%)/中止(35%) 2月=21年夏開催(21%)/再延期(43%)/中止(31%) 3月=21年夏開催(27%)/再延期(36%)/中止(33%) 4月=21年夏開催(28%)/再延期(34%)/中止(35%) 5月=21年夏開催(14%)/再延期(40%)/中止(43%) 5月調査で、「開催」はわずか14%。4月調査の半分に減り、2度目の緊急事態宣言が出ていた1月の11%に次ぐ最低レベルになりました。男性は18%、女性は11%と女性の方が悲観的な傾向がみられます。 一方、「中止」を求める声は43%と初めて4割を超え、これまでの調査で最も多くなりました。「再延期」と合わせると、慎重意見が8割以上を占めました。 年代別にみると、「中止」が多いのは、60代と70歳以上で、ともに5割を超えました。18〜29歳と30代の若年層では「中止」は3割台とやや低めですが、「再延期」が5割と高め。「開催」は、全世代を通じて10%台にとどまりました。 東京都民では、「開催」21%、「再延期」30%、「中止」46%。予定通りの開催を求める意見が全国より多いものの、「中止」も半数近くにのぼっています。 5月調査の菅内閣の支持率は過去最低タイの33%、不支持率は47%でした。中でも、五輪「中止」派の支持率は20%、不支持は60%。菅首相の五輪開催への前向きな姿勢が、支持離れにつながっているとも言えそうです。 ●五輪を開催する場合に観客数をどうするのがよいかも聞きました。 Q:東京オリンピック・パラリンピックをこの夏に開く場合、観客の数はどうするのがよいと思いますか。 【4月→5月】 通常通りの観客数で行う 2%→3% 観客数を制限して行う 49%→33% 観客なしで行う 45%→59% 「無観客」が59%と4月の45%から増え、「制限」の33%を上回りました。五輪「中止」を望む人では「無観客」が72%を占め、「開催」派に限っても35%が「無観客」がいい、と答えました。 年代別にみると、70歳以上では「無観客」が48%と、他の世代よりは少なめでした。前回1964年の東京五輪を知る世代として、あのとき会場を包んだ歓声と興奮が思い出され、「開催するなら、観客はいないと……」という思いがあるのかもしれません。 菅首相は、国会答弁や記者会見で「国民の健康と命を守り、安全安心の大会を実現することは可能」と繰り返し、強調しています。国のリーダーとして自信を示すことで、国民に安心感をもたらそうとしているのかもしれませんが、反応は芳しくありません。 Q:菅首相は、東京オリンピック・パラリンピックについて、「国民の健康と命を守り、安全安心の大会を実現することは可能」と話しています。あなたは、この発言に納得できますか。納得できませんか。 全体=納得できる(20%)/納得できない(73%) 内閣支持層=納得できる(43%)/納得できない(49%) 内閣不支持層=納得できる(7%)/納得できない(92%) 「菅首相は、東京オリンピック・パラリンピックについて、『国民の命や健康を守り、安全、安心の大会を実現することは可能』と話しています。菅首相のこの発言に納得できますか」と尋ねると、73%が「納得できない」と答える結果となりました。内閣支持層ですら「納得できる」43%よりも「納得できない」49%が上回っています。 5月調査で「菅首相の新型コロナウイルスに取り組む姿勢を信頼できますか」と尋ねると、61%が「信頼できない」と答えました。五輪の「安全安心」の発言に「納得できない」と答えた人に限ると、首相のコロナに取り組む姿勢についても、「信頼できない」が76%に上りました。 多くの人が五輪突入に不安を感じるなかで、「開催しても大丈夫」という理解を広めるためには、万全の対策はもちろん、安心の根拠を丁寧に説明して理解を求める姿勢が不可欠でしょう。それがないまま国民に向けられた「安全安心の大会」という首相のメッセージには、納得度につながらない空疎な響きが感じられてしまいます。 ●日本、五輪ゴルフ代表ユニホームに旭日旗模様…「日が昇る国をイメージ」 6/1 日本が東京オリンピック(五輪)に出場するゴルフ代表チームのユニホームを公開し、「日が昇る国を表すイメージを使用した」と発表した。日本の軍国主義を象徴する旗の旭日旗は広がる太陽光を形象化したものだ。 NHKは先月31日、「東京オリンピックでゴルフの日本代表選手が着用するユニホームが発表された」とし「海や桜といった日本の自然をイメージした」と伝えた。 問題は次の説明だ。放送は「日本代表のユニフォームは5種類で、いずれも日の昇る国を表す斜めのラインが入っている」とし「日の丸の赤や白、それに海や桜といった日本の自然をイメージした青やピンクが採用された」と明らかにした。 旭日旗は日本が第2次世界大戦当時に使用した軍旗で、赤い太陽の周りに広がる光線を形象化している。「旭日旗」という名称自体が日が昇る形の日本国旗という意味だ。英語でも「日が昇る国旗」という意味の「Rising Sun Flag」と呼ばれる。 軍国主義と帝国主義を象徴する旗としてドイツ・ナチスの象徴ハーケンクロイツの使用が厳格に禁止されるのと比較し、日本はスポーツ行事によく旭日旗を使用して論議を呼んでいる。 これに先立ち東京オリンピック組織委員会は公式サイトに独島(ドクト、日本名・竹島)を自国の領土として表示する地図を載せた。加藤勝信官房長官は「竹島は明らかにわが国固有の 領土であり、韓国側の主張は全く受け入れられない」と述べた。 こうした状況で旭日旗を連想させる「日が昇る国」を表すデザインを代表チームのユニホームに使用したと公式発表し、批判の声はさらに強まると予想される。 ●ステージ4なら五輪開催「困難」 分科会有志、検討も 6/1 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の専門家の間で、東京五輪・パラリンピックについて、東京都内の感染状況が「ステージ4(感染爆発)」相当の状態が続けば、開催は困難との意見が相次いでいる。意見は、五輪開催のリスク評価をまとめた上で、分科会の有志による見解として公表することも検討している。 分科会の複数のメンバーが朝日新聞の取材に答えたところでは、17人いる正規メンバーのうち、感染症や経済の専門家の多くは、ステージ4で開催が困難との意見で一致しているという。ただ、大会組織委員会にも別に専門家がおり、社会的な影響も大きいため、打ち出し方を慎重に検討している。表明時期については、組織委が6月中に観客の有無を決める前が望ましいとの意見が出ている。 メンバーによると、五輪開催で全国の人の動きが活発になり、感染状況が悪化することを懸念。開催時に東京都が、緊急事態宣言を出す目安となるステージ4であれば、感染者が増加して医療体制の逼迫(ひっぱく)が深刻化し、国民への医療提供に支障が出ると評価。そのため、「開催は難しい」との認識を共有しているという。 ステージ3(感染急増)で開催すれば、期間中か終了後に感染が拡大する恐れがあると評価。開催するとしても、無観客や大会の規模を縮小するなどの工夫が必要だとの認識だ。 開催によって、ウイルスを国外に広げかねないことへの日本の責任についても指摘している。 分科会は、新規感染者数や病床の使用率などの指標によって感染状況を4段階のステージで評価し、対策の強さなどを決めてきた。 メンバーの一人は取材に対し、「政府に、ステージごとの精緻(せいち)なリスク評価をしてもらいたい」と語った。 分科会の尾身茂会長は28日の衆院厚生労働委員会で立憲民主党の山井和則氏の質問に対して、五輪開催の可否について政府からは「今のところ意見を求められたことはない」としつつ、「どういう方法がいいのか聞かれれば、それは答えることができると思う」と話していた。 ●「芝キレイだったのに」聖火リレー会場、撮影車両のため「わだち状に変色」 6/1 京都府で5月25、26日に実施された東京五輪の聖火リレーで、会場となった府立京都スタジアム(亀岡市)の芝生がわだち状に変色している。ランナーの撮影車両などがピッチ上に設けられたコースを40周以上したため、芝生が傷んだとみられる。 聖火リレーは、緊急事態宣言を受け、公道での走行を中止。ピッチに200メートルの周回コースを設け、計約180人が走行した。 府によると、コース上には保護シートが敷かれていたが、車両の重みで芝生に強い圧力がかかったという。30日にサッカーJ2・京都サンガFCの試合が開催され、観戦した桂川孝裕・亀岡市長が「芝生の植え替えに500万円ほどかかる見込み」とツイッターに投稿し、話題となっていた。 桂川市長は31日の記者会見で「きれいな芝だったので残念。早い段階で整備してほしい」と述べた。府の担当者は「変色は想定外で申し訳ない。何らかの形で修復したい」と話している。 ●東京五輪の「竹島表記」で…韓国民から「不参加」の声高まる 6/1 「東京オリンピックをボイコットすべきだ」。 日本政府が東京オリンピックのホームページで竹島(韓国名:独島)を自国の領土と表記し、韓国内で物議を醸す中、韓国国民からは「韓国政府の抗議にも応じない」として「オリンピック不参加」の声が高まっている状況だ。韓国メディアによると、「75%が参加反対」とのデータもあるという。 韓国のネットユーザーらは「政治的中立を重視するオリンピックで日本が独島を自国の領土と表示するのは適切ではない」と指摘。 「日本が地図を修正せず、韓国がオリンピックに参加した場合、独島が日本の領土であることを認めることになるのでは」 「韓国が不参加を表明すれば、他国も独島問題についてより関心を持つことになるだろう。選手たちには申し訳ないが、国が優先視されなければならない」 「韓国は2018年ピョンチャン(平昌)オリンピックの際、独島を朝鮮半島の旗から削除した。平昌五輪では削除し、東京五輪では独島が日本の領土であるかのように表記されれば、他国の人たちは独島がどこの土地か判断できないのではないか」などの声が出ている。 さらに、韓国大統領府(青瓦台)の国民請願掲示板にも「東京オリンピック組織委の独島日本領土表記強行時、オリンピックの不参加を宣言しなければなりません」というタイトルの請願が登場した。 投稿者は「日本の行為はオリンピックを利用して独島に対する野心を国際的に表わす宣戦布告に違わない。これに対し韓国政府はいつにも増して、断固として対応しなければならない」とし、「東京オリンピック組織委員会およびIOCが独島を削除する措置を取らない場合、東京オリンピックボイコットを請願する」と訴えた。同請願は5月31日午前11時現在、3万7700人以上の同意が得られている。 なお、韓国大統領府の国民請願は同意が20万件を超えると、政府が回答を出すことになっている。 ●東京五輪 訪日選手の管理アプリ、費用ほぼ半減 機能の見直しで 6/1 政府が東京オリンピック・パラリンピックの選手ら訪日関係者向けに開発しているスマートフォンアプリについて、平井卓也デジタル改革担当相は1日の記者会見で、機能を見直した結果、費用を当初の73億2000万円から38億5000万円にほぼ半減させると明らかにした。アプリは6月中の使用開始を目指している。 このアプリは、海外から訪れる観客や選手、大会関係者らの行動履歴や健康状態などを入国から帰国まで一元的に把握・管理するため開発に着手した。しかし、政府が3月に海外からの観客受け入れを断念したことを受け、会場の入場ゲートで行う顔認証など一部の機能について「不要」と判断し、機能を見直す方針を示していた。 平井氏は1日の記者会見で、「海外から一般の方を入れないという決断が非常に大きく、それによる改修だ」と述べた。選手や大会関係者専用になったことで、顔認証機能のほか、ビザ(査証)申請に関係する機能やコールセンターなどの規模を縮小する結果、受注企業との契約金額の大幅削減につながったと説明した。 政府は当初、このアプリを、オリパラ終了後は「インバウンド(訪日外国人)」観光客用アプリとしても活用する方針を示していた。平井氏は、この日の会見で「今回の(アプリの)情報連携基盤などを活用しながら、新たなシステム開発ということになる」と述べ、インバウンド向けは新たな開発作業と費用が必要になるとの見通しを示唆した。 ●高橋尚子 東京五輪への思い、今の師匠は現役時代の自分 6/1 オリンピックというひのき舞台で輝いたスポーツ界のヒロインたちの「その後」は、意外に知られていません。競技者人生がカセットテープのA面だとすれば、引退後の人生はB面。私たちの記憶に残るオリンピアンたちの栄光と挫折に迫ります。今回はシドニー五輪で金メダルを獲得した高橋尚子さんの(下)。引退を決意したきっかけ、東京オリンピック・パラリンピックへの思い、10年後の自分について語ってくれました。 ●「プロアスリート・高橋」ではなくなったから… ―― 2008年、36歳で引退をしましたが決意したきっかけは何だったんですか。 高橋尚子さん(以下、高橋) 自分の考える練習がこなせなくなったというのが最大の理由です。国際大会で勝つためには、大会の日程から逆算し、半年前にはこんな練習メニューをこなし、1カ月前にはこんなタイムを出すというように一日一日、細かいスケジュールを積み上げていくのですが、練習メニューが完璧に消化できなくなってしまったんです。 05年に小出(義雄)監督の元を離れて「チームQ」を発足させて以来、私はスタッフに厳しい要求をし続けてきました。例えばコーチに、1km=4分でペースメーカーをお願いしたとすると、4分05秒になってしまったら許せません。というのは、40kmで計算して3分以上も違ってしまうと、試合では何十位も順位が変わってしまいます。また、その日の練習量を元に翌日の練習を決めるので、全てのバランスが崩れてくるんです。 その一方、1kmで5秒の違いも許せなかった私が、どんなに奮い立たせても自分に課したメニューをこなせなくなってしまったんです。もちろん、もっとメニューをゆるくして行う方法もあったんですけど、それは「プロアスリート・高橋尚子」ではないと考えました。勝つためのメニューがこなせなくなった以上、引退すべきだと決断しました。 ―― セカンドキャリアは考えていましたか。 高橋 全く(笑)。海外合宿は1年のうち約半年、携帯電話は持たない、パソコンなし、テレビなし、コンビニも行かない生活で、走って、食べて、寝るという3つの行動しかしたことがなかったですから。何がしたいという希望はまるでなく、引退後すぐはいただいた仕事を無我夢中でこなしてきたという感じですね。 高橋 マラソン関係のイベント、テレビのキャスターやインタビュアーの仕事が多かったのですが、毎日落ち込んでいましたね。もっと思ったことを整理して言えなかったのか、選手の本音を全然引き出せなかった……とか。でも、あるときふと思ったんです。私はもともと高校2年生で出場した都道府県対抗女子駅伝で、47人中45番目ぐらいの選手でした。45番が40番になり、30、20、10番になり、最後はエース区間を任されて区間賞を取れました。そして金メダリストにもなれた。諦めずに努力していけば必ず階段は上っていけると。今でもまだ自信はないですけどね。キャスターの仕事は、取材した選手の努力の過程や人間的魅力を引き出し、その選手を多くの人に応援していただきたいという一心でマイクを向けています。 ●引退後に「キツいときは人に頼ってもいい」と知った ―― 現在は日本オリンピック委員会(JOC)、陸上競技連盟の理事、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事などスポーツ界の重責に就き、大変なハードワークだと思いますが、現役時代の姿を「自分の師」と呼び、今の活動の原動力にしているとか。 高橋 はい。選手だった頃の自分を思い浮かべ、今の仕事がしっかりできているかを考えています。何しろ現役の頃は1分1秒無駄にしたくなかったし、夜寝るときに「今日1日、1秒たりとも手を抜かずやり切った」と納得して1日を終えたかった。そんな現役時代に比べたら、今はまだ7〜8割ぐらいの満足感ですね。毎日、やらなければならない課題が次々と現れ、あの判断は正しかったんだろうかと思い悩むことがしばしばです。そうそう、引退して、キツいときは人に頼っていいということも覚えました。 高橋 きっかけは2020年の「24時間テレビ」(日本テレビ系列)。ランナーが5km走るごとに10万円を寄付するという「募金ラン」の企画を私が持ち込んだのですが、直前の練習でケガをしてしまい、目標の100kmを走り切れるかどうか不安でした。すると「チームQ」に参加してくれた吉田沙保里ちゃんや野口みずきちゃんが「Qちゃんが走れない分は私たちが走るから」って。自分がリーダーだからしっかりやり遂げなければ、と弱音を吐けないと思っていたのですが、苦しいときは人に頼っていいんだと心が軽くなりました。彼女たちの姿を見て元気をもらい116km完走できました。募金も番組史上2番目の金額が集まったと聞きうれしかったですね。 ―― 東京オリンピック・パラリンピック開催まで2カ月を切りました。関係者としてどうサポートしていきますか。 高橋 正直、2つの思いの間で揺れています。近くで選手たちの頑張りを見てきたので、みんなに応援される形で舞台を整えてあげたいという思いがある一方で、社会の一員としてはこのコロナ禍で多くの人の不安や医療従事者の負担を考えると、「オリパラは特別」とは言えない。開催の実施や中止に関して私には決定権も発言力もないのですが、会議では自分の意見を伝えていきたいと思っています。また、一番気になっているのが、アスリート、社会、組織委員会の距離が離れてしまっていること。その距離を何とか少しでも縮められないかと思案しているところです。 高橋 結婚ですか? 同居しているマネジャーといつか籍は入れたいと考えていますけど、毎日がバタバタと過ぎてしまい、結婚のタイミングが見つからないんです(笑)。以前に「結婚します」と言ったもののなかなか実行しないことで「するする詐欺」と言われるのは困るので、結婚の話はもう振らないでください(笑)。10年後、私が何をしているのかは分からないですけど、ただ一つ確実に言えるのは、走っていること。私自身、走ることで喜びや楽しさ、人とのつながりを、持つことができました。一番うれしいのは、日本にランナー人口が増え、ジョギング風景が当たり前になってきたこと。これからも走る楽しさを多くの人に広めることが、私の生涯の仕事だと思っています。 ●東京五輪韓国代表チームのイ・スンウ、「オリンピックで国を輝かせたい」 6/1 兵役恩恵に関係なく、イ・スンウ(23、ポルティモネンセSC)の2020東京オリンピック(五輪)参加への意思は熱かった。 東京五輪代表チームの招集メンバーに含まれたイ・スンウは先月31日、取材陣とのテレビインタビューで「兵役恩恵のため五輪代表に入った選手は誰もいない」とし、「自信を土台に仲間と善意の競争を繰り広げたい」と述べた。 イ・スンウは、第18回アジア競技大会(2018/ジャカルタ・パレンバン)で金メダルを獲得し、すでに兵役特例恩恵を受けている。当時、アジア大会代表チームを指揮していた監督は、現在の五輪代表チームを率いるキム・ハクボム監督だ。 キム・ハクボム監督は東京五輪を控えて最後に行われる済州合宿にイ・スンウを含ませた。イ・スンウは来る12日と15日に行われるガーナとの2回の強化試合で価値を証明できれば、五輪の舞台に立つことになる。 イ・スンウのポジションは五輪代表チームで最も競争が激しい。 オム・ウォンサン(光州)、チョン・スンウォン(大邱)、イ・ドンジュン、イ・ドンギョン(蔚山)に、チョン・ウヨン(フライブルク)、ソン・ミンギュ(浦項)までたくさんの候補がいる。 しかし、イ・スンウは自信に満ちていた。彼は「小学校を卒業してスペイン留学をしてから、競争で生き残って、生存することが身についた」とし「仲間と善意の競争を最善を尽くして繰り広げる」と述べた。 幼い頃から年齢別の代表チームに絶えず選ばれ、大きな試合の経験が多く、トーナメント経験が豊富というのがイ・スンウの強みだ。アジア大会の時からキム・ハクボム監督のサッカー哲学をよく理解しているという点もプラス要因だ。 イ・スンウは「監督と良い思い出があり、監督が望むサッカーについてよく知っている」とし、「今回もしっかりと対応する」と述べた。 ●PV会場の設置開始、「理解できない」が70.2% 6/1
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●東京五輪・パラのボランティア 約8万人のうち1万人辞退 6/2
東京オリンピック・パラリンピックの競技会場や選手村などで活動するボランティアおよそ8万人のうち、辞退者がおよそ1万人に上っていることが大会組織委員会への取材でわかりました。 大会組織委員会は、背景にコロナ感染への懸念や大会延期による環境の変化があると見ていて、ボランティアにオリンピックとパラリンピックの活動を兼務してもらうなどの対応を取り、大会運営には問題がないとしています。 組織委員会は、東京大会の競技会場や選手村などで活動する「フィールドキャスト」と呼ばれる大会ボランティアおよそ8万人を採用していましたが、ことし2月の森前会長の発言をきっかけに辞退者が相次ぎました。 その後もコロナ感染への懸念や転勤といった環境の変化を背景に、辞退者の数が1日までにおよそ1万人に上っていることがわかりました。 これについて組織委員会の武藤事務総長は「スケジュール表を見て活動が難しいと思う人もいたと思う。オリンピックとパラリンピック両方で活動してもらうなどの対応を取り、運営に問題はないと考えている」としています。 組織委員会によりますと、ボランティアを含む国内から東京大会に参加する関係者はオリンピックでおよそ19万人、パラリンピックでおよそ11万人の合わせて延べ30万人に上り、このうち、警備や輸送などに当たるスタッフが延べ19万人、組織委員会の職員が延べ1万4000人などとなっているということです。 ●五輪ボランティア、1万人が辞退 大会関係者数を初公表 6/2 東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は2日、競技会場などで活動する大会ボランティア約8万人のうち、約1万人が辞退したと明らかにした。理由は個別に聞き取っていないというが、「新型コロナウイルスの感染拡大に対する不安があるのは間違いない」と述べた。 組織委によると、森喜朗前会長の女性蔑視発言があった今年2月ごろまでに約1千人が辞退していた。今春以降、辞退者が急増したという。五輪、パラリンピック両方で活動する人が約1万人おり、業務に大きな支障はないという。 また、武藤事務総長は国内の大会関係者数(選手を除く)を初めて公表した。五輪は計19万人で、パラリンピックは計11万人。内訳は五輪が輸送や警備などのコントラクター12万人、ボランティア5万4千人、日本オリンピック委員会関係者や報道関係者などその他1万人、組織委職員8千人。パラリンピックが、コントラクター7万人、ボランティア2万6千人、組織委職員6千人のほか、日本パラリンピック委員会関係者や報道関係者。 海外の大会関係者も含めると、五輪で計25万人、パラリンピックで計13万人が大会で活動する。 ●東京五輪・パラ「今の感染状況で開催は普通はない」尾身会長 6/2 東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、政府の分科会の尾身茂会長は衆議院厚生労働委員会で「今の感染状況での開催は普通はない」と指摘したうえで、開催する場合には関係者がその理由を明確に説明することが重要だという認識を示しました。 この中で尾身会長は東京オリンピック・パラリンピックをめぐって「今のパンデミックの状況で開催するのは普通はない」と指摘しました。 そのうえで「こういう状況の中でやるというのであれば、開催の規模をできるだけ小さくして管理の体制をできるだけ強化するのが主催する人の義務だ」と述べました。 また「なぜ開催するのかが明確になって初めて、市民は『それならこの特別な状況を乗り越えよう。協力しよう』という気になる。関係者がしっかりしたビジョンと理由を述べることが極めて重要だ」と述べました。 さらに「国や組織委員会などがやるという最終決定をした場合に、開催に伴って国内での感染拡大に影響があるかどうかを評価し、どうすればリスクを軽減できるか何らかの形で考えを伝えるのがわれわれプロの責任だ」と述べました。 一方で、そうした考え方の伝え先や時期などについては「政府なのか組織委員会なのか、いつ伝えるべきかはいろんな選択肢がある」と述べるにとどめました。 また、尾身茂会長は衆議院内閣委員会で開催する場合には組織委員会も新型コロナウイルスの感染最小化に向けて最大限努力する責任があるという認識を示しました。この中で政府の分科会の尾身会長は「仮にオリンピックをやるのであれば、国や自治体、国民に任せるだけではなく組織委員会も感染の最小化に向けて最大限の努力をするのは当然の責任だ」と述べました。また、競技の中継を観戦するパブリックビューイングについて「自分のひいきの選手が金メダルをとったりすれば声を上げて喜びを表すこともあるだろうし、そのあとみんなで『一杯飲もう』ということもありえる。感染拡大のリスクをなるべく避けることを考えればわざわざリスクを高めるようなことをやるのは、一般の市民には理解できにくいというのがわれわれ専門家の意見だ」と指摘しました。 東京オリンピック・パラリンピックをめぐっては、尾身会長をはじめ専門家の有志が非公式に意見交換を重ねています。関係者によりますと、感染状況が『ステージ3』であっても大会の規模を極力最小化しないと、終了後に再び感染拡大につながるリスクがあるといった指摘がこれまでに出されているということです。また、選手の感染リスクの制御は可能だとする一方、来日する報道関係者などは行動規範が守られるか懸念があるといった意見なども出されているということです。尾身会長らはこうした意見や懸念を関係者に伝えたい考えで、調整が進められています。 菅総理大臣は2日夜、総理大臣官邸で記者団に対し「まず感染対策をしっかりと講じて、安全安心の大会にしたい。専門家の方々も感染対策をしっかりやるべきというご意見でしょうから、しっかりと対応していきたい」と述べました。そのうえで、記者団が、東京オリンピック・パラリンピックを開催すべきだと考える理由を質問したのに対し「まさに平和の祭典で、一流のアスリートが東京に集まって、スポーツの力で世界に発信していく。さらに、さまざまな壁を乗り越える努力をして、障害者も健常者も、そうした努力をしっかりと世界に向けて発信していく。そのための安心安全の対策をしっかり講じたうえでやっていきたい」と述べました。 大会組織委員会の武藤事務総長は「しっかり受け止めて準備に生かしていく必要があると思う。この1年間、大きな課題として注力してきたが、できるかぎり規模を縮小していくことには同感だ」としています。そのうえで「最後は観客数の制限をどうするかが大きな課題だと思うので、尾身会長の考えも頭に置きながら関係者と相談していきたい」と述べました。 加藤官房長官は午後の記者会見で「これまで各国との首脳会議の際に、菅総理大臣から安全安心な東京大会を実現する決意を発信し、各国首脳からも支持を得ていて、2月のG7首脳テレビ会議でも同様だった。東京大会の開催に向けては感染対策を徹底すること、海外からの観客は受け入れないこと、安全安心な大会を実現していくことなど、引き続きそれぞれの国々に説明し理解を得ていきたい」と述べました。 ●官邸幹部は「中止の選択肢はない」と言い切る 6/2 東京五輪の日本選手団へのワクチン接種が「味の素ナショナルトレーニングセンター」(東京都北区)で1日、始まった。初日は選手ら約200人が接種。7月中旬までに約1600人の選手・関係者が2回の接種を終える見通しだ。日本選手団の総監督で、日本オリンピック委員会(JOC)の尾県貢・選手強化本部長は「選手から『これで安心して競技ができる』との声があった」と話した。 日本選手団へのワクチン接種もこの日開始され、大会への準備は加速している。医療体制への負荷や感染状況の予測が難しいことを踏まえ、「五輪が国民のためになるのか」(閣僚の一人)との危惧もあるが、官邸幹部は「中止の選択肢はない」と言い切る。 「いよいよ、そういう時期がきた」。ある官邸幹部は、豪州選手団の来日で五輪に弾みをつけたい考えだ。加藤勝信官房長官は5月31日の記者会見で「大会が近づいてきているということの実感にもつながる」。大会組織委員会幹部も「これから入国する選手のニュースが増えれば、空気が変わってくるだろう」とみる。 ただ、新型コロナの収束は依然、見通せない。1日付で経団連の新会長に就任した十倉雅和氏は、大会開催について「いま政府がワクチン接種を含めていろんな態勢をつくっている。それを見極めて、安全・安心な態勢ができた上で実施する。そうでなければ、なかなか世論的に難しいものがある」と指摘。安全・安心を見極める判断材料として、医療体制の逼迫(ひっぱく)が緩和されることなどを挙げた。 ●東京オリンピックHPの「竹島表記」、韓国政府がIOCに「仲裁要求」へ 6/2 東京オリンピック・パラリンピックの公式ホームページの地図に竹島(韓国名:独島)が表記されていることについて、韓国政府は国際オリンピック委員会(IOC)に仲裁を求める方針を明かした。 韓国政府は1日、関係機関を集めて対応を協議し、IOC宛てに仲裁を求める書簡を送ることを決定した。 また、韓国外交部(外務省に相当)は1日、日本の東京オリンピック・パラリンピック公式ホームページ内の「竹島(韓国名:独島)表記」に抗議する意味で、在韓日本大使館の相馬弘尚総括公使を呼び出すと伝えた。 これを前に、韓国が不法占拠を続ける島根県の竹島をめぐり、韓国の大学教授など活動家らは「東京オリンピックの公式ホームページに、島が日本の領土として記載されている」と反発を続けている。 ●ロシアのオリンピック委員会「東京五輪開催は適切」 6/2 ロシアのオリンピック委員会は今年の東京大会の開催について、「安全の面からも適切だ」として全面的に賛同する方針を表明しました。 ロシア五輪委員会、ポズドニャコフ会長:「東京五輪を開催するという組織委とIOC(国際オリンピック委員会)の判断は安全面でも論理的で適切で正しい」 1日に選手らを集めて開かれたイベントで、ポズドニャコフ会長は「東京オリンピックの開催に疑問は抱いていない」と断言しました。 また、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長もビデオメッセージを寄せ、「我々はより一層団結する必要がある」と訴えました。 一方、ポズドニャコフ会長は4月に国後島で合宿をして物議を醸したロシアのサーフィンの選手団について、再び北方領土で練習を行う可能性があることを明らかにしました。 |
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●橋本聖子会長が断言「五輪中止、再延期はない」 6/3
コロナ禍の東京オリンピック(五輪)開幕まで3日で50日を迎えた。大会組織委員会の橋本聖子会長(56)が2日、日刊スポーツの単独インタビューに応じ、「中止、再延期はない」と断言した。来月23日に迫った開幕を前に選手、関係者のワクチン接種や新型コロナウイルス対策が世間に理解されはじめたことが、開催世論が増え始めた理由と分析。観客上限数の決定時期は20日まで延長された緊急事態宣言明けの6月中とする認識を示した。そこで有観客が決定しても感染者数が急拡大すれば、大会直前や大会中でも無観客に切り替える用意があることを明かした。 ―先月「中止すべき」が6割程度だった報道各社の世論調査が、最近では中止と開催支持が拮抗(きっこう)する調査結果も出始めるなど、わずかだが支持する声も増えてきた 「国内のワクチン接種率が上がりつつあり、それなら安心して開催できるのではという国民の声が大きくなってきたように思う。私が知っている厳しいご意見だった方も、だいぶ変わってきた」 ―なぜか 「プレーブック(規則集)第2版がなかなか(国民に)理解してもらえなかった。だが、国際オリンピック委員会(IOC)が海外からの選手団、関係者へ相当強くワクチン接種を促している。選手村滞在者の8割が接種する。(組織委も)検査回数やバブル方式など感染対策を説明してきた。それが国民に伝わってきたのだと思う。医療体制も縮小してきて今後、地域医療に支障をきたさないことが分かってもらえるようになると、さらに理解されてくると思う」 ―中止はないか 「はい。そうですね。東大のある教授が、開催した場合に無観客でやれば(開催しない場合と)感染者数がほとんど変わらないというデータを示した。だいぶ(国民の)理解も進んできたと思う」 ―再延期も絶対にない 「再延期はできないですね。1年延期でも相当な対応、対策をしてきた。これ以上延ばすと、全ての競技場がもう既に他の予約が入っている。そもそも予約を1年間ずらしていただいたことも大変な作業。これ以上、迷惑をかけられない。選手村も用意できない。再延期はもう無理ですね」 ―仮に感染爆発が起きたら開幕直前や大会中でも大会を中止する選択肢はあるか 「世界各国で大変な状況になり、ほとんどの国から選手団が来られなくなったら開催はできない。逆に言えば、そういうこと以外で中止にはならない」 ―観客上限数の決定は宣言明けか 「そうですね」 ―橋本会長はできれば観客は入れたい考えか 「政府が示す基準が全てです」 ―6月に有観客を決めても開幕直前や大会中に感染者数のリバウンドが激しくなった場合、急きょ無観客に切り替えることもあるか 「無観客も覚悟していると言ったのは、そういったところだ」 ―アスリートとしては観客がいた方が良いのか 「最高のパフォーマンスをするために日々鍛え、最高の『芸術作品』を作り上げてきているからこそ、多くの方に見ていただきたいという気持ちは強いと思う。一方でトップ選手たちは観客がいないことでパフォーマンスが低下することもないと思う」 ―橋本会長は最近「他競技が有観客の中、五輪だけ無観客はどうなのか」と述べている。しかし、五輪で東京に集散する人流はその比ではない 「会場内でルール違反をした観客には退場してもらう。問題は会場外。そこでの規制は政府、東京都と一体で考えていきたい」 ―いよいよ五輪開幕まで50日となった。心境は 「アスリートの健康を守り切ることが組織委の仕事。厳しい意見が選手の耳に入り、相当不安を感じていると思うが、安心して世界から選手に来てもらい、日本選手にも安心して準備に取り組んでほしい。万全の体制でバブルをつくり上げるので、安心してほしい」 ● 選手村への酒類の持ち込み、開閉会式のイメージ等に関する一問一答は以下の通り。 ―選手村への酒類の持ち込み、ケータリングで注文可能な現状について 「過去大会と変わらない。今後、ルールが変わる可能性はあるが、選手村はアスリートの大会中の自宅。決められた場所、量であれば現状は飲酒可能。当然、食事会場など公共スペースは禁止で、好きな分だけ持ち込めるわけでもない。選手村内での販売もしない。自宅(居室)の中で楽しむ程度という理解。今後さらに厳しくするかどうか。祝勝会など普通はできない」 ―五輪開幕まで2カ月を切った。開閉会式、最終聖火ランナーのイメージは 「最終的にはIOCが決定する。組織委が式典や最終点火者の人選を提案しても許可されなければ。開閉会式は当初計画と大きく変わった。簡素化、縮小された中、光るものをどこに持っていくか。世界から注目される場面なので、より良いものをと議論している」 ―実際に国立競技場で入場行進してもらいたいか 「希望者は。体調に配慮したアーリーデパーチャー制度もロンドン大会から始まった。入場行進後、退席していいルールなので検討してほしい。まだ数は分からないが、大会中盤、後半の種目の選手は(試合5日前まで)選手村に入れないので人数は必然的に減る」 ―オンラインで開閉会式に参加するプランなど現状はどうなっているのか 「応援態勢も含め、どういう風にすればいいのか。日本の技術力を世界に見ていただくことも考えたい」 ―政府分科会の有志がステージ4であれば開催困難では、との意見をまとめようとしている。考えは 「安全な対策を打って開催をすべきだ、という声なんだと受け止めています」 ―来日するオリパラファミリーが減っていない資料が示された。削減できるか 「配偶者はお連れいただかないことにしたが、その数字が反映されていなかった。まだまだ削減される」 ―ワクチン接種。会長が率先して打つことで大会関係者の優先への後ろめたさ等を緩和させる思いは 「選手と密接に仕事をしていただく方々が先。別枠で提供されるものなので安心し、できるだけ早い段階で接種していただきたい」 ―中止や延期を望む声が大きい中、別枠とはいえワクチン優先接種をためらう選手もいる。開幕50日前に、選手のケアやメッセージ発信で考えていることは 「アスリート委員会を通じて、メッセージは常に出させてもらっている。選手は、いろいろなところからあらゆる情報が入ってきて悩みも非常に多い。直接、伝えた方がいいと言われたので、国内外のアスリート委員会のオンライン会議に出席させていただき、メッセージを出させていただいた。日本ではJOC(日本オリンピック委員会)とJPC(日本パラリンピック委員会)をはじめとする団体のアスリート委員会で。今後も細かく発信していきたい。アスリート委員会を通じて行えば直接、伝わっていく。続けていきたい」 ● 夏冬7度の五輪に出場した立場から見たアスリートにとっての観客、観戦ルール等に関する一問一答は以下の通り。 ―アスリートにとっては、観客がいた方がいいのか 「やはり最高のパフォーマンスをするために日々、鍛えてきたアスリートたちなので。多くの方に見ていただきたいという気持ちは強いだろうなと思う。反対に、すごく鍛えてきて集中力も高いトップアスリートが集う場所ですから、観客がいないことによってパフォーマンスが低下することはないと思う。トレーニングは日々、人がいないところでやっているし、自分自身を高めるためにどうするべきか、を知るプロフェッショナルたちですから。ただ、やはりアスリートとしては最高のものを作り上げてきての芸術作品。直接、多くの方々に見ていただきたい気持ちは強いと思う」 ―観客を入れた場合のルールは 「会場内については、オリンピックもパラリンピックも厳しい制約がある。組織委員会が定めた観戦ルール。これに反する行為があった場合、外に出ていただくこと(退場)もある。場内にお酒を持ち込まない、大声を出さない、マスクを外さない、など1つ1つのルールを徹底してやっていく中、お守りいただけない場合は、ほかの多くの方にご迷惑をお掛けすることになるので(警備員の注意などをへて)出ていただく。そうならないよう、丁寧にご協力をお願いしていく」 ―選手、大会関係者は 「選手たちも行動管理や規制があり、ルールから逸脱することがあれば、厳しいケースではアクレディ(テーション=大会参加資格証)剥奪までやるつもり」 ―通常大会であればどのような50日前だったか 「コロナがなければ、全く違ったことになったと思う。インバウンドも4000万人を目指していたわけなので。相当なにぎわいが、本来の50日前であれば観光客もこの時期からすごいことになっていたでしょう」 ―仮に中止になった場合、国際オリンピック委員会(IOC)から損害賠償を求められる可能性はあるのか 「IOCが最後に決定する、とは言いながら、中止という選択肢がないですから。相当な状況に変わってしまったら別だが、海外から誰も来られなくなってしまえば当然、開催自体はできないと思うが、今はそこまでの状況はないと思う」 ―損害賠償やIOCの負担金850億円を返還する等も含め「分からない」のが正確なところか 「分からない、ということではなく、まだそういったことをどうするかIOCとの協議も必要。今の段階でお話しすることはない」 ●東京五輪開幕まで50日 橋本会長「コロナで分断の世界を一つに」 6/3 東京オリンピックの開幕まであと50日となりました。大会への準備が進められる中、組織委員会の橋本聖子会長は「コロナで分断された世界をスポーツの力で一つにしたい」と開催への意気込みを示しました。 東京大会まで50日に迫る中、大会組織委員会はイベントを開き、メダリストが登る表彰台やボランティアが着用する制服を発表しました。また、式典で使用される音楽もお披露目されました。この曲はアスリートの困難や逆境などの思いをテーマにしているということです。 イベントに出席した組織委の橋本会長は「こんな時代になぜ五輪・パラリンピックを開催するのかと問う声もある。コロナによって分断された世界で人々のつながりや絆の再生に貢献し、スポーツの力で再び世界を一つにするのが、今の社会に必要な五輪・パラリンピックの価値だと確信している」と述べ、改めて開催への意欲を示しました。また、JOC=日本オリンピック委員会の山下泰裕会長も「まだコロナ禍の現状は収束の方向に向かっていないが、安心安全な大会ができると確信している」と述べました。 開幕まであと50日となっても開催の機運醸成が課題ともなっている東京オリンピックについて、都民からは開催へ賛否の声がさまざま聞かれました。 ●不透明な東京五輪…不安を感じる選手たち 6/3 7月23日の東京オリンピック(五輪)開幕まで残り50日となった。日本国内の新型コロナ感染拡大状況が深刻で、開催に反対する声が多い。しかし国際オリンピック委員会(IOC)と日本政府は強行の意志を見せている。その間、オリンピック(五輪)出場を夢見てきた選手の不安感は強まっている。 1年延期となった東京五輪が7月23日に開幕する。しかし日本国内の新型コロナ感染状況は深刻であり、取り消しの可能性は相変わらずだ。1日には新規感染者数がまた2000人を超えた。東京都など9都道府県に発令された緊急事態宣言は20日まで延期された。日本メディアの世論調査の結果、開催反対の意見は60%を上回った。莫大な経済的損失が予想されるが、国民の安全が重要だという世論が形成されている。 日本政府は五輪開催の意志が強い。菅義偉首相は先月28日の記者会見で「多くの方々から不安や懸念の声があることは承知している。 安全・安心の大会に向けて取り組みを進めている。コロナに打ち勝った証がオリンピックになることを望む」と述べた。国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ副会長は「緊急事態が五輪期間まで延長されても予定通り大会を開催する」と再確認した。 選手は出場を悩んでいる。日本のテニススターの大坂なおみと錦織圭は五輪出場について確答を出していない。米バスケットボール代表の予備エントリーに名を連ねたステフィン・カリー(米国)も「何が良い選択なのか悩んでいる」と語った。男子ゴルフ世界ランキング1位のダスティン・ジョンソン(米国)、元世界ランキング1位のリー・ウェストウッド(イングランド)は不参加を宣言した。台湾野球代表はプロ選手が予選出場を放棄し、アマチュア選手だけで構成された。 特に今回の東京五輪を強く待ち望んでいた種目がある。五輪正式種目に採択されて初めてデビューするスケートボード、サーフィン、クライミングなどだ。IOCは若者の関心を引くため「エクストリームスポーツ」を正式種目に採択した。しかし大会が中止になる場合、該当種目の最初のオリンピアンとなる機会が消える。主に10代ー20代の選手が出場するスケートボードの場合、次回大会への出場が難しい選手も多い。 韓国クライミングは女子のソ・チェヒョン(18)と男子のチョン・ジョンウォン(25)が出場権を獲得した。スポーツクライミング代表チームのイ・チャンヒョン監督は「五輪出場が不確かな時間も夢を持ち続けてメダルを目標に練習してきた」と話すが、東京に行けるかどうかは確実でない。オーストラリア女子サーフィン選手のサリー・フィッツギボンズ(31)は「2007年ユース五輪(金メダル)以降、私の夢は五輪だった。出国するのも怖く、健康な状態で東京に行けるか心配だが、必ず行きたい」と話した。 空手も同じだ。IOCは「アジェンダ2020」を通じて開催国に正式種目を追加できる権限を与えた。東京組織委は日本の国技の空手を含めた。これまで類似武術種目のテコンドーに劣勢だった空手としては良い機会だ。 空手は2024年のパリ大会からは除外された。いつまた五輪の種目に含まれるかは分からない。キム・ジョンギュン大韓空手連盟事務処長は「今回が最初で最後になるかもしれない。それで選手たちは本当に熱心に準備しているが、大会が本当に開催されるのかどうか心配している」と伝えた。 選手たちは黙々と汗を流している。先月から空手が強いカザフスタンのアルマトイで合宿中だ。来週はパリに渡って東京五輪の最終予選(12−14日)に出場する。キム・ジョンギュン事務処長は「多ければ3人ほど出場権を確保できると期待している。五輪が開催されるという期待を抱いて最善を尽くしている」と述べた。 野球とラグビーも大会の開催を強く希望している。13年ぶりに五輪に採択された野球もパリ大会からは除外された。2008北京五輪の金メダル獲得で起きた韓国国内の野球ブームをまた期待している。世界ランキング31位のラグビーはアジア最強の日本(8位)が開催国という影響もあってアジア地域予選を通過した。4年後には出場権の確保が容易ではない。 ●カナダが疑問に思う東京オリンピック・パラリンピック 6/3 前回『カナダで殆ど報道されず話題にも上らない東京オリンピック・パラリンピック』を書いたのが3月1日。 あれから3ヶ月、カナダでも東京オリンピック・パラリンピックの報道は増加した。その殆どが「開催されるか否か」「安全か否か」だ。 既に大会まで2ヶ月を切っているのに、いまだに開催されるかどうか安全かどうかがuncertain(不確実)なのだ。 カナダでも「パンデミックなのにオリンピックをするのか?」という疑問と葛藤が存在している。 2020年3月、ICOのアスリート委員であるヘイリー・ウィッケンハイザー氏(6回オリンピックに出場し金メダルを4個持つ元アイスホッケー選手。2021年5月にメディカルコースを修了し'ドクター'となった)は自身のtweetで「この危機(コロナ禍)はオリンピックより巨大です」「IOCがオリンピックを強固に進めると主張しているのは、人類の今の状況を考えると無神経で無責任なことだと思います」と述べ開催延期のきっかけを作った。しかし、IOCや周囲はこの彼女の発言に「ハッピーではなかった」らしい。 陸上競技のチャールズ・フィリベルト=ティブートット選手はウィッケンハイザー氏の発言を受けて「人々は、本当に打撃を受けている。事業を営んでいる人たち、解雇される人たち... それなのにIOCは『まだ大会を開催する』と言っている。無神経だと思う」、「もっと大きな問題は、人々の健康や安全をIOCはあまり配慮していないところだ。選手は苦労しているが、私たち以上に苦労している人はたくさんいる」と選手という立場でありながら、コロナの危機に際してオリンピックは最優先されるべきではないことを指摘。 結果としてカナダIOCが「2020年の夏に予定通りに開催されるのであれば参加しない」と発表、これに賛同する国が現れ、開催延期の運びの糸口となった。 そして2021年の4月、再びヘイリー・ウィッケンハイザー氏は「オリンピックの決定は、IOCではなく(オリンピックの利権に関わらない)医療の専門家であるべきだ」と発言。大会に注ぎ込まれたトレーニング、準備、資金は理解できるが、最終的には「安全性と公衆衛生を重視すべき」、「大会を開催するのであれば、非常に明確で透明性のある説明がなされるべき」とCBC(カナダの公共放送局)に語っている。 5月19日にはトロント大学の感染症疫学者であるコリン・ファーネス氏は「世界的なパンデミックの際の最悪な行動は、世界中から大勢の人が一箇所に集まり、密集して混ざり合い、また戻ってくることだと思います」と発言。 オリンピック開催は、まさにこの『最悪な行動』に当てはまる。 つまり、カナダはパンデミックの中でオリンピックを行うことにかなり懐疑的だ。 一方でIOC委員のディック・パウンド氏は、IOC会長のトーマス・バッハ氏が6月の日本訪問を中止したにもかかわらず、「東京オリンピックは予定通り開催される」と述べている。 同じIOCでもアスリートから選抜されたICOアスリート委員でありヘイリー・ウィッケンハイザー氏は医学の知識とサイエンスに基づき人々の健康と命のリスクを考慮した発言をしている。一方で、古参IOC委員のディック・パウンド氏は「菅首相が中止求めても開催」「アルマゲドンない限り五輪開催」など傲慢な発言を繰り返している。まさに対極である。カナダで圧倒的支持を誇るのはヘイリー・ウィッケンハイザー氏だ。日本では森元会長を辞任に追い詰める一端となったtweet「この人を絶対に追い詰める」が有名。同時に彼女の『政治的意図を無視する姿勢』は利権絡みの人々からは疎まれやすい。ディック・パウンド氏のオリンピック強行開催発言はカナダ国内でさえ「傲慢なIOCの象徴」「カナダの恥さらし」と嫌悪感を示す人が多かった。一方で彼の発言はIOCの横柄さを表しているのでメディアには重宝されているように思う。 5月中旬に行われた東京オリンピックに対するカナダの世論調査によれば、「東京オリンピックにカナダの選手は出場すべきではないと思う」と答えた人は42%、「参加すべきだ」と答えた人は39%だった。「東京オリンピックへの出場は安全だと思うか」という質問に対しては、46%の人が「いいえ」、35%の人が「はい」、19%の人が「わからない」と回答。『行くと決めても、行かないと決めてもOK』という『どうでもいい』感が漂う結果となった。調査を実施した会社は結果にショックを受けたことを認め「オリンピックはテレビで大きな視聴率が取れるので、オリンピックを楽しもうという意欲がもっとあると思っていた」と語っている。 カナダ国内でもオリンピックに対する情熱や熱狂が滑り落ちてしまっている状況を感じずにはいられない。 さてカナダが日本に対して抱く大きな疑問が幾つかある。 ●何故、東京オリンピック・パラリンピックをキャンセルしないのか? 「非常事態宣言下で国民の60〜80%が反対しているのに、何故、キャンセルしないのか?」「何故、強行開催するのか?」「開催するなら何故明確な説明がないのか?」 誰もが安全なオリンピックに疑問を持っている中で、それを実行する価値があるのか?延期した去年よりパンデミックの状態はさらに悪い。それにもかかわらず開催姿勢を見せる。 非常事態宣言下でワクチン接種率が2%台という中、開催する意義と価値があるなら、それは何なのか? 例えIOCが決定権を持っていたとしても国民の殆どが反対している中で、日本政府がIOCに提言もしないというのは何故なのか? 去年の延期決定時よりもパンデミックとしてはより酷い状況となっている。延期は先があるが中止は後がないということなのだろうと推測するが、果たしてそれが医療逼迫の悪化を招いてでもすることなのであろうか? IOCが頑なに開催を望むのは放映権による収入のためであることがいくつかの報道で指摘されている。 ●そうであるなら、日本政府が開催を望む理由は何なのか? 開催キャンセルによってIOCから賠償金を請求されるにしても、パンデミックという特別な理由がある訳だし、法外な違約金や賠償金を日本に請求することはオリンピック開催都市の立候補を妨げる行為となり兼ねない。なので交渉の余地はあったはずなのだ。なのにそれをしなかった。IOCと日本政府は強行開催の姿勢を見せているが、日本国民は反対しており、コロナの感染状況も思わしくなく、ワクチン接種率も低い。 特定の利権やお金目当てであるなら準備段階でそれなりにお金が回ったはずである。既にそれなりに政府が懇意にしている企業にはお金が流れているはずだ。開催キャンセルによって巨額の損失になろうともパンデミックを終息させて経済を回復させた方が損失は低いとの見方もある。よって開催の理由は不透明だ。 開催するなら開催するで、それこそ『明確で透明性のある説明』が必要なはずだが、IOCからも日本政府からも、それらはされていないままである。「オリンピック開催が医療逼迫の悪化を齎すのでは?」という問いにも明確に返答はされていない。開催を強固に表明しておきながら、開催への安全性を証明する科学的な数字やデータによる裏付けはない。 この後に及んでも、開催も安全性もいまだにuncertain(不確実)なのだ。 ●何故、ワクチン接種が日本は飛び抜けて遅いのか? 「オリンピック開催国なのに何故ワクチン準備を怠ったのか?」「準備が遅れた時に、何故、然るべき対策を立てなかったのか?」 日本はワクチン接種開始がG7の国では一番遅かった。それでも『ロジスティックには優れている日本だから、あっという間に接種を終えるのかも』という予測もあった。しかし、5月31日時点でワクチン接種完了者は2.7%、1回目の接種完了者は7.7%(データ: Our World in Data)である。 ワクチン供給、予約や接種実行で躓くのは他国でもあった。しかし他国では数週間程度で解消されてきた問題が日本では解消されていない。日本人であれば『トップダウン方式や自治体との連携問題などで初期に時間がかかるのであろう』と問題の原因と背景は何となく想像がつく。しかし、他国からすれば「1年延期されて準備期間があったのに?」「オリンピック開催国なのに?」と疑問でしかないようだ。 カナダでは既に殆どの州でワクチン接種対象者が12歳以上全員になっている。よって、州が定めた順番に従って1回目の接種を終えているオリンピック選手が多い。オリンピック選手がワクチンを打つことは『特権』ではなくなっているのだ。2月にカナダIOCが「オリンピック選手を優先してワクチンを打つ」案を掲げた時は大きな反発があり、その案は却下された。しかし数ヶ月でそれを特権と感じさせないワクチン接種完了率をカナダは達成した。 日本は医療従事者や高齢者のワクチン接種でさえ完了していない。こういった事情から日本が開催国としての努力を怠ったようにみえてしまう感は否めない。 ●データに基づく具体的なベンチマークや詳細がないのは何故なのか? 「何故、データや数字がないのか?」「ベンチマークによる可否判断がないのは何故なのか?」「詳細がないのは何故なのか?」 通常、他国ではベンチマークが設定され「感染者数がこの数字に達したら規制強化/緩和」「ワクチン接種率がこの数字になったら規制緩和」と前もってアナウンスされるのだが、日本は具体的な数字を出さない。 オリンピックは開催すると繰り返し言いつつも、日本ではベンチマークとなるワクチン接種率や新規感染者数などを出さない。オリンピックの開催条件もキャンセル条件もない。まさに強行開催であり、サイエンスやデータには基づいていないのだ。なし崩し的とも言えるし、行き当たりばったりとも言える。 日本国民がオリンピック開催に反対している理由は医療逼迫を含むパンデミックの悪化を懸念しているからである。オリンピック自体に反対なのではない。本当に安全なオリンピックが約束されるのであれば、現時点でワクチン接種率も新規感染者数もそれなりに説得力のあるものであるはずだ。しかし、そうではない。 IOCにとって、日本は扱いやすい従順な開催国といえる。しかしながら、国民の声を無視しオリンピックというスポーツイベントのためにパンデミック下で国民を危険に晒すという行動は賞賛されないし、むしろ疑問視されている。 そして矛盾が多すぎる。 不特定多数の接触を避け、限定されたバブルを心がけると言っておきながら、選手村においてアルコールの持ち込みは可能。選手の交流は認める。選手村の選手と一般国民の接触はほぼないと言っておきながら、都道府県にキャンプや合宿予定が入っているので交通機関を使って移動することになる。 加えてコンドームの配布など誤解を生む行為の頻発。パンデミックの中でコンドーム配布。「啓発の一環で持ち帰るためのものである」と主張したところで、わざわざ持ち帰る必要性は甚だ疑問である。選手間での濃厚接触を促す行為だと思われても仕方がない。ワクチンを接種していてもウイルスを他者に感染させてしまうことはあるそうなので、キスなどはしない方がいいそうだ。 今まで日本は『技術大国でコロナも程々にうまく抑えてきた国』というイメージがあった。なので余計に、新規感染者が増え、非常事態宣言下でワクチン接種も進まず、国民の60〜80%が開催反対を唱える中、強行開催するという行為の異様さが際立つ面もある。 ●カナダは静観する 前回記事の『カナダで殆ど報道されず話題にも上らない東京オリンピック・パラリンピック』でも書いたが、2020年と違い、カナダは表立った表明はしないと思われる。開催に反対もしないし開催キャンセルに反対もしないだろう。 既に一部の選手やチームは選考辞退や最終予選に行かない決定をしている。参加に関しては個人やチームに任せるというスタンスをとっているように思う。 IOCと日本が既に開催すると言っているのであれば、選手たちはベストを尽くすだけだろう。開催をキャンセルするというのであれば、選手たちはそれを苦痛を伴って受け入れるだろう。 既にオリンピックはスポーツイベントとしての楽しさよりも、お金が絡むイベントの醜悪さをまざまざと見せつけてしまった。オリンピック・スピリッツはなく、原義は説得力のかけらもなく消え失せ、お金への執着と汚さを浮き彫りにしてしまった。 カナダは東京オリンピック・パラリンピック開催に懐疑的である。開催可否よりも、開催が人間として正しい行為なのかどうか疑問を呈する人が多い。『オリンピック開催よりパンデミックの沈静化を優先させるべき』と思っている人は多いように見受けられる。しかし、カナダは開催国ではないのだ。医療逼迫のさらなる悪化やワクチン接種の遅れがあっても、オリンピック開催を声高に唱えているのは日本なのだ。開催で引き起こされる問題は端的に言ってしまえば『他国ごと』だ。 カナダの選手は粛々と準備するであろうし、ベストコンディションも保つ努力をするであろう。チームや選手が参加が安全なものでないと判断したなら、出場辞退することもあるだろう。 障害飛越競技のエリック・ラマーズ選手は体調不良を理由にオリンピック代表選手選考辞退を申し出た際にこう言っている。「オリンピックはアスリートの祭典ですが、東京では本当の意味での祭典にはならないと思います。祝うべき時ではないのです」 アスリートたちに葛藤と苦痛を精神的にも身体的にも与えるオリンピックという点では、東京オリンピック・パラリンピックは突出しているかもしれない。 ●石川のトーチキス、オリンピアン「現役時代よみがえった」 6/3 5月31日に金沢市で、6月1日に石川県七尾市で実施された聖火リレーは両日とも公道の走行が中止されたが183人がトーチキスに参加し、聖火を富山県につないだ。参加した人たちに聖火に込めた思いを聞いた。 東京パラリンピックのカヌー女子代表に内定している瀬立モニカ選手(23)は「トーチキスを通して、たくさんの人がオリンピック・パラリンピックを身近に感じてくれたらうれしい」と話した。 トーチキスする瀬立モニカ選手(左)と中川真依さん(5月31日、金沢市の金沢城公園で)トーチキスする瀬立モニカ選手(左)と中川真依さん(5月31日、金沢市の金沢城公園で) カヌー選手だった瀬立選手は高校1年生の時、体育の授業でけがを負って車いす生活になった。その後、1年間のリハビリを経て、パラカヌーに転向。2016年、リオデジャネイロ・パラリンピックに出場を果たした。2度目の挑戦となるパラリンピックに向け、現在は小松市の木場潟カヌー競技場などで調整を続けている。 瀬立選手から聖火を受けたのは、小松市出身のオリンピアン中川真依さん(34)。水泳女子高飛び込みで、北京五輪とロンドン五輪に2大会連続で出場した。 ステージ上では笑顔で手を振り、次のランナーに聖火をつないだ中川さんは「現役時代の五輪の緊張感や楽しみがよみがえってきた。トーチキスを通して少しでも明るいニュースを届けられたならうれしい」と話していた。 能美市出身の浅田雅子さん(50)は1988年、高校3年の時、水泳女子高飛び込みの日本代表として、ソウル五輪に出場した。「当時は競技のことで頭がいっぱいで余裕がなかった。聖火をつなぐことで、応援してくれた地元の人たちに伝えきれなかった感謝の気持ちを届けたかった」との思いを語る。イベントに参加した理由はもう一つある。浅田さんは現在、地元で年長から小学校低学年の子供を対象としたスポーツ教室を開催。球技やマット運動、トランポリンなどを通じて体を動かす楽しさを伝えている。「石川県で聖火がともる様子を見てもらうことで、『世界はそれほど遠くない』と子供たちに感じてもらいたい」 ●五輪 “改善続いても無観客が限界” 経済同友会 櫻田代表幹事 6/3 東京オリンピック・パラリンピックをめぐって経済同友会の櫻田代表幹事は3日の会見で「感染状況に関する5つの指標の改善が続いたとしても、無観客が限界だと思う」と述べ、デジタル技術を活用した無観客での大会を目指すべきとの考えを示しました。 この中で櫻田代表幹事は「世の中が新型コロナで疲弊する中でオリンピックが日本で行われ世界が団結することの価値は否定しないが、国民が大変不安に思っているのも事実だ」と述べたうえで、開催の判断には具体的な基準を国民に示す必要があるとの認識を示しました。 大会の在り方については「ワクチン接種の結果、感染状況に関する病床使用率などの5つの指標の改善が続いたとしても無観客が限界だと思う。デジタルを駆使して予選も含めて家庭で見られるような日本ならではの大会にすると早く宣言すべきだ」と述べ、開催する場合でもデジタル技術を活用した無観客での大会を目指すべきとの考えを示しました。 一方、職場などで新型コロナウイルスのワクチン接種を行うことについて櫻田代表幹事は「ワクチン接種を進めるためにありとあらゆることをやるのは賛成だ。ただ、接種の担い手や必要な設備の確保など、コスト負担から体制までいろんな課題があるが明確な答えが出ていない」と述べ早期の調整が必要だとの認識を示しました。 ●東京五輪開幕まで50日「安全安心に開催 信じる」JOC 山下会長 6/3 東京オリンピックの開幕まで50日となった3日、JOC=日本オリンピック委員会の山下泰裕会長が会見し「否定的な意見が多いことも理解できるが、大会は安全安心に開催できると信じている」と述べ大会の開催に意欲を示しました。 JOCの山下会長は都内で定例の会見を行い、開幕まで3日で50日となった東京オリンピックについて「国内の感染状況を悪化させるといった不安から大会の開催に否定的な意見が多いことも理解できる。こうした声に対してより具体的な対策を説明していくことが必要である」と話しました。 報道陣から大会の中止や再延期についての可能性を問われると「再延期に関しては、オリンピック単体だけではなくさまざまなことが関係するので現実的に不可能だと思う。大会は安全安心に開催できると信じている」と述べ大会の開催に意欲を示しました。 検討が続いている観客の制限については「安全安心が確保できるのであれば観客を入れてやりたいと思っている。しかし、全国の移動などを含めてリスクになるのであれば無観客の開催もやむをえないと思っている」と話しました。 また、開催をめぐり政府の分科会の尾身会長が「パンデミックの中での開催は普通ではない」などと述べたうえで、大会成功のためにはなるべく小規模にする必要があると指摘したことについて「全くそのとおりだと思う。この発言は重く国民に迷惑をかけないようさらにもう一段努力する必要がある」と述べ、大会組織委員会などと連携して関係者の削減などに取り組んでいく姿勢を改めて示しました。 一方、今月1日から本格的に始まったオリンピックの選手や指導者などに対するワクチン接種について自身も3日、接種したことを明らかにしたうえで「さまざまな考えで辞退する選手もいるが、選手の95%が接種する方向で進んでいる。自分を守るだけではなくまわりに迷惑をかけないことになる」と述べ、選手団の接種に理解を求めました。 このほか、オリンピックの選手団が一堂に集まって開催している壮行会を来月6日に開催することを発表し、今回は感染拡大防止のためオンラインでの開催となるということです。 ●「東京五輪中止を」小金井市議会が意見書を可決 全国初か 6/3 東京都小金井市議会は3日、「東京オリンピック・パラリンピック開催の中止を求める意見書」を賛成多数で可決した。市議会議長名で近く、菅義偉首相や小池百合子都知事に送る。共産など7会派の11人が賛成し、自民、公明など10人が反対した。立憲民主系ら2人は議場を退席した。 意見書は「東京五輪を見切り発車で強行するのは人命、国民生活尊重の観点から許容限度を大きく逸脱する」と五輪の中止や感染防止の徹底を求めている。提案者の1人、片山薫市議は「五輪中止を求める意見書可決は全国の地方議会初ではないか。私たちの意見を受け止め、最善の判断をしてほしい」と語った。 五輪中止を求める動きとしては、5月に小金井市議会の有志11人が意見書と同趣旨の要請書を国と都に送付。多摩地域の市議ら約130人も同様の要請書を送っている。 ●東京五輪で「途上国にウイルスわたる可能性」 尾身会長が指摘 6/3 政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の尾身茂会長は3日の参院厚生労働委員会で、東京オリンピック・パラリンピックで日本から発展途上国にウイルスがわたるリスクがあると指摘した。打越さく良参院議員(立憲民主)への答弁。 尾身氏は「(ウイルスが)医療制度や検査体制が非常に脆弱(ぜいじゃく)な発展途上国にわたる可能性がある」と説明。選手ら大会関係者が日本で感染し、大会後に母国で感染を広げることを懸念したとみられる。 また、競技場外で人出が増えて感染が拡大するリスクがあるため、主催者の国際オリンピック委員会(IOC)に「最大限の努力をする責任」があり、大会規模の縮小などの対策を要求。感染症が流行する中で五輪を開催する以上は「IOCも政府も強い覚悟でやってもらう必要がある」と語気を強めた。 分科会の専門家らは五輪による感染拡大リスクに関する提言を出す方向で準備している。尾身氏は「政府に言っても、IOCに届かないと意味がない」と述べ、IOCに提言を伝える方法を模索していることを明かした。 |
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●尾身会長「自粛している所にお祭りの雰囲気をテレビで見てどう思うか」 6/4
新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は4日午前の衆院厚生労働委員会で、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックについて専門家による提言を「政府は20日以降に(開催について)決められる、と側聞している。その後だと意味がない。なるべく、それよりも前に我々の考えを伝えたい」と、早い段階で提出する考えを明らかにした。 立憲民主党の長妻昭氏の質疑に答えたもので、開催については「本当にやるんであれば、私は緊急事態宣言の中での、オリンピックなんていうことを絶対に避けるということ」と持論を示した。 また「人々が本当は外に出て飲んで、みんなと肩を組んで応援したい。一生懸命、自粛しているところにお祭りという雰囲気が出た瞬間をテレビで見て人々がどう思うか」などと大会運営に注文をつけた。 ●丸川五輪相「通じづらいというのが私の実感」尾身会長発言に見解 6/4 丸川珠代五輪相(50)が4日、閣議後の会見で、新型コロナ対策分科会の尾身茂会長が東京オリンピック(五輪)・パラリンピックについて「何のために開催するのか明らかになっていない」と指摘した件について「我々はスポーツの持つ力を信じてやってきた。別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらいというのが私の実感です」との見解を述べた。 丸川氏は「コロナ対策は国民の皆様にお願いする中で、成立させてこなければならなかった、との思いの中でのご発言ではないか」と推測。さらに「人流対策を含め、海外から来られる方の対策など、お願いベースでやっていることですが、できる対策は何かということを懸命に取り組んでいる。1つ1つの積み重ねが、本格的に社会を動かしていく時のさまざまな知見になると確信しています」とし、五輪のコロナ対策が日本の今後にもつながる対策だと強調した。 尾身氏が五輪開催に伴うリスクについて「政府に言っても、IOC(国際オリンピック委員会)に届かないと意味がない」と発言したことについても言及。「担当の西村大臣のご意向を確認した上で、私どもは専門家のご意見を聞きたい。分科会でご議論されるということであれば、しっかりと共有したい」と話した。 また、閉会式で各国要人やIOC関係者らを招いた菅義偉首相主催のレセプションが中止されると一部で報じられた件については「そのように伺っております。飲食を伴うような形で人が集まることは基本的にやらない。感染防止の観点から行わないということです」と認めた。 ●尾身会長の発言に政府から“反発”の声 観客入れる方向 6/4 政府の分科会の尾身会長は、東京オリンピック・パラリンピックの開催で、お祭り騒ぎのような雰囲気が出た瞬間に、一般の人の協力が得られにくくなるとして、競技と関係ない人の数をなるべく減らすよう求めた。 尾身会長の発言に対し、政府はどのように対応するのか。 国会記者会館から、フジテレビ政治部・亀岡晃伸記者が中継でお伝えする。 尾身会長の発言を受けて、開催への疑問の声が再び広がる中、政府関係者は、「大会を中止するという選択肢はない」と明言していて、丸川オリンピック・パラリンピック担当相は、発言への違和感を示した。 丸川五輪相「われわれはスポーツの持つ力を信じて、今までやってきた。まったく別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらいというのが、私の実感でもある」 また、自民党幹部は「関係ないことを言ってはいけない」、「餅は餅屋だ」と尾身会長の発言への不快感を示す一方、「感染対策を徹底すれば開催できるという意味だ」と理解を示す政府関係者もいる。 その感染対策について、菅首相の周辺は、「6月中旬には、最終版を示す。大会関係者の数はギリギリまで絞り込み、PCR検査や行動制限を徹底していく」と説明している。 また、観客の扱いについて、政府は、6月中には上限を決める方向で、ある政府高官は、「無観客開催という意見もある」と話すものの、少なくとも緊急事態宣言下での上限である、収容人数の50%まで観客を入れての開催を目指したい考え。 さらに大会の意義について、菅首相の周辺は、「コロナで分断された世界を1つにする大会にもなる」と力を込めているが、緊急事態宣言の行方次第では、6月、開催の是非について、再び大きな議論が巻き起こる可能性もある。 ●丸川氏、尾身氏発言に「全く別の地平から見てきた言葉」 6/4 東京五輪をめぐり、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が「五輪をこういう状況のなかで何のためにやるのか」などと発言したことについて、丸川珠代五輪相は4日の閣議後会見で「全く別の地平から見てきた言葉」との見方を示した。 尾身氏は2日の衆院厚生労働委員会で、「普通は(五輪開催は)ない。このパンデミック(世界的大流行)で」と指摘。「そもそも五輪をこういう状況のなかで何のためにやるのか。それがないと、一般の人は協力しようと思わない」と述べた。 この尾身氏の発言について問われた丸川氏は、「我々はスポーツの持つ力を信じて今までやってきた。全く別の地平から見てきた言葉をそのまま言ってもなかなか通じづらいというのは私の実感」と、五輪開催の意義を強調した。「できる対策は何かということに懸命に取り組んでいる。ひとつひとつの積み重ねが、本格的に社会を動かしていく時の知見になる」とも話した。 一方、ソフトボール女子豪州選手団を受け入れた太田市の清水聖義市長が、選手団が週1回程度の買い物をできるよう内閣官房に提案したことに対し、丸川氏は「入国後14日間に関しては、活動計画書に記載して国が確認をした用務先以外は行かないというルール。基本的には買い物に出ることは想定していない」と述べた。入国15日目以降の対応は、必要に応じて協議する考えも示した。 ●東京五輪 丸川氏、立場の違い強調 尾身氏の「何のため」発言に 6/4 東京オリンピックの開催を巡り、連日警鐘を鳴らす政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長の発言を受けて、丸川珠代五輪担当相は4日、閣議後の記者会見で、五輪開催と感染症対策の両立を図る政府の立場との違いを強調した。 尾身氏は2日の衆院厚生労働委員会で「何のためにやるのか」と述べ、五輪開催への懸念を示した。丸川氏は「我々はスポーツの持つ力を信じてやってきた。別の地平から見てきた言葉をそのまま言ってもなかなか通じづらい」と開催の意義を訴えた。その上で、丸川氏は「一つ一つの対策の積み重ねが社会を動かしていく時の知見になると確信している」と述べ、五輪での感染症対策が今後の社会、経済活動の基盤になるとの考えを示した。 尾身氏が3日、参院厚労委員会で「政府に言っても、IOC(国際オリンピック委員会)に届かないと意味がない」と提言を伝える考えを示したことについて、丸川氏は「もし分科会で議論されるのであれば、しっかり共有したい」と話すにとどめた。 ●尾身氏発言に丸川氏“立場違いで認識違う” 6/4 3日、尾身会長が東京オリンピック・パラリンピックの開催について、何のためにやるのか目的を明言すべきだと述べたことに対して、丸川五輪担当相は4日、立場の違いによる認識の違いがあるとの見解を示しました。 丸川五輪担当相「我々はスポーツの持つ力を信じて今までやってきた。全く別の地平からみてきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらいというのは私の実感でもあります」 丸川五輪担当相はこのように述べて、尾身会長とは立場の違いによる認識の違いがあるとの見解を示しました。その上で、「人流対策や海外から来る人の対策を含め、一つ一つの積み重ねが本格的に社会を動かしていくときの知見になると確信している」と大会開催と感染対策を同時に行う意義を強調しました。 一方、田村厚労相は、尾身会長らの提言しようという動きは自主的な研究成果の発表とした上で、政府として参考にできるものがあれば取り入れる考えを示しました。また、「オリンピックで、国内の人の動きが増えるようなことは避けてほしい」と述べました。 ●韓国は東京オリンピックを「ボイコットできる?できない?」 6/4 「日本が最後まで地図の修正を拒むなら、韓国政府はオリンピックのボイコットなど、可能なすべての手段を動員し断固として対処すべきだ」 東京オリンピック組織委員会が公式ホームページに竹島(韓国名:独島)を表記した日本領土の地図を掲載したことを受け、ボイコットを要求する声が高まっている。すでに東京オリンピック開催まで50日を切っている。 韓国政府は日本政府に抗議する一方、国際オリンピック委員会(IOC)に仲裁を要請する形で外交的な解決法を探っている。外交部(外務省に相当)は在韓日本大使館の相馬弘尚総括公使を呼び、IOCに書簡を送って是正を要求した。しかし日本が一歩も譲らない状態であるため、最後の手段としてボイコットが主張されている。 問題は、ボイコットの実効性について専門家らが疑問を示しているという点だ。カンウォン(江原)道のチェ・ムンスン知事は前日、CBSラジオに出演し、「日本の戦術は独島を紛争地域化するものだ」とし、「今はわれわれが実効的な支配をしている島なのに、独島を国際的な紛争地域にし、所有権が誰にあるのかよくわからない状態にしようとしているのが(日本の)戦術だ」と分析した。 外交部1次官出身のチョ・テヨン(趙太庸)「国民の力」議員も同様の意見を明らかにした。趙議員は、「オリンピックをめぐり起こった日本の独島挑発、外交力を発揮して解決せねば」とのタイトルの文章を通じ、「新型コロナウイルスの余波で東京オリンピック自体が中止されるならわからないが、わが国が参加しないとしても東京オリンピックは開催されるだろう」とし、「この5年間、東京オリンピックだけを目標に流してきた韓国の若い選手たちの血と汗を無駄にしてはいけない」と強調した。 こうした状況により、一角では東京オリンピックが中止されることだけが唯一の出口戦略だとも言われている。日本は現在、東京都を含む10の都道府県に今月20日まで新型コロナウイルス緊急事態宣言を下した状況だ。日本のワクチン接種率は2日基準で、少なくとも1回以上接種した人が1099万1098人(2回接種378万人)と、かろうじて10%に達する。 こうした状況で東京オリンピックを強行する場合、むしろ感染急増につながる可能性があるという懸念が日本内部でも少なくない状況だ。しかし日本政府は依然として安全なオリンピックの実現が可能だと主張している。加藤官房長官は同日午前、定例記者会見で「国民が安心して大会を迎えられるよう、感染対策を徹底して準備していく」と述べた。前日、菅首相も「感染対策を確実に講じ、安全・安心な大会をつくっていく」と、再度オリンピック開催の意思を示している。 ●東京五輪開催決定を世界的危機≠ニ海外メディア「変異種をばらまく」 6/4 開催が正式決定した東京五輪が世界中に新型コロナウイルスの変異種をばらまく危機に直面しているとカナダの公共放送局「CBS」が伝えた。 開幕まで49日に迫る中、国際オリンピック委員会(IOC)や組織委員会、日本政府は新型コロナウイルスの収束が見えない中、今夏の五輪開催を明言している。世論調査では約8割が開催に反対し、ボランティアも約1万人が辞退。医療関係者からも中止を求める声が高まっているが、同メディアは「大会が行われる可能性は100パーセント」と伝える。 同メディアは医療の専門家から「停止することを要求している。大会が昨年延期されたときよりも高い死亡率でワクチンの展開はゆっくりで、現在は毎日50万回の接種が行われているが、真の目標は、その2倍。接種率はわずか3パーセントで先進国で最低だ」とし「大会を行うべきか? ムリだと思う」との見解が出ているという。 五輪中止を求める声が強まる中、同メディアは「東京の病院では五輪の開催で兆候がある(新型コロナウイルスの)変種を恐れている」と指摘した上で、ミネソタ大学感染症研究・政策センターのマイケル・オスターホルム所長が「オリンピックが世界中のウイルス感染源になる可能性は確かにあります」とコメントしたという。 同メディアは「オリンピックが開催されたとしても、約200か国から約1万5000人の選手が帰国しなければならない。そして、オリンピックが開催された場合、私たちは世界中で別のパンデミックに直面している可能性がある」と指摘し、五輪開催が世界に危機をもたらす可能性を伝えている。 ●学校向けチケット、キャンセル受け付け 東京五輪・パラ 6/4 東京オリンピック(五輪)・パラリンピックで子どもたちに割り当てられている「学校連携観戦チケット」について、大会組織委員会などが、自治体を通じて学校からのキャンセルを受け付けていることが分かった。 複数の大会関係者への取材で分かった。参加校数を確定させる作業の一環で、コロナ禍を受けた学校の状況を考慮する。キャンセルは今月下旬まで受け付けるという。 学校連携チケットは、開催都市の東京都や東日本大震災の被災地の小、中学校などの児童や生徒が対象で、延期前の時点で五輪で60万枚、パラで68万枚の申し込みがあった。価格は500〜2020円で、会場への移動は公共交通機関を原則としていた。 大会での観客上限は月内に確定することになっており、関係者によると、学校連携チケットの扱いは上限次第で変わる可能性があるという。 ●東京五輪は「100%」開催、ただ「無観客も覚悟」 橋本会長BBCインタビュー 6/4 東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長はBBCのインタビューで、大会の開催は「100%」確実だと述べた。ただ、新型コロナウイルスの感染が急拡大した場合の観客なしでの実施を「覚悟しておかなくてはならない」とした。 東京大会は1年の延期を経て、7月23日に開幕する。開会式まで50日に迫っている。日本では新型ウイルスの感染拡大が続いている。10都道府県では緊急事態宣言が発令中だ。橋本氏はBBCスポーツのローラ・スコット記者のインタビューに、「大会の開催の確率は100%です」と言い切った。 「そしてそのために何をすべきかが、最重要課題だと思っています。国内でのワクチンの接種、あるいは感染の収束についてなかなか先が見えないというような、国民のみなさんの不安や不満といったものから、開催に反対の意見が多いというのも現在、事実です」 「問題は人流というものを極力抑制するためには、観客をどうするかということになっていくんだろうと思います。緊急的な大変な事態が生じた場合には、観客については無観客というのも、いま覚悟していなくてはいけないと想定しています」 「完全なバブルを作りながら、安心安全の空間を海外のみなさんに提供し、そして国内の受け入れ態勢も万全にしていくということで、いま(準備を)行っています」 ●開催「100%」BBCが橋本聖子会長インタビュー伝える 6/4 英BBC放送は3日、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長のインタビュー記事を掲載し、同会長が開催を「100%」確信していると伝えた。 大会中の新型コロナウイルス感染拡大など非常事態に備えて「無観客も覚悟しなければいけないと想定している」とも述べた。記事では第4波が広まっている日本でワクチン接種が遅れている現状や、国民の7割近くが開催に反対していることなども紹介した。 ●共産・畑野氏 東京五輪 開ける条件はない ゼロベースの議論が必要だ 6/4 共産党の畑野君枝衆院議員は毎日新聞政治プレミアに寄稿した。東京オリンピック・パラリンピックの今夏開催について「コロナ収束の見通しが立たないままでは、五輪を開ける条件はない」と語った。 畑野氏は党スポーツ委員会責任者。「選手は五輪を目指して苦しい練習を重ね、試合を勝ち抜いてきた。出場したいのは当然だ。選手にも葛藤があると思う。選手に対してネット上で中傷がされたりしているが、許されないことだ」とする。 そのうえで、「社会の支持がなければ五輪は成り立たない。今は世界と日本がコロナと闘って命と健康を守ることが最優先であることも確かだ。開催を強行すれば五輪に対する反感を生むことになりかねず、それは選手にとっても不幸だ」と語った。 また「共産党は、党としては、今夏の五輪は中止すべきだと主張している。しかし、政府に対しては『国際オリンピック委員会や、大会組織委員会、東京都とゼロベースで議論を』と提案してきた」として、開催を前提とせずにスポーツ団体などと協議するよう、政府に求めた。 ●五輪 聖火リレー きょうから新潟県 予定どおり公道で 6/4 東京オリンピックの聖火リレーが4日から新潟県で始まり、感染症対策が取られる中、糸魚川市をスタートしました。 東京オリンピックの聖火リレーは新潟県内では、4日と5日の2日間行われ、当初の予定どおりすべての区間で公道を走り、14の市町村を回ります。 4日朝はスタート地点の糸魚川市役所で出発式が行われ、感染症対策のため、観覧者が事前に申し込んだ20人余りに限られる中、富山県から引き継がれた聖火が拍手に迎えられて入場しました。 このあと、第1走者を務める糸魚川市出身のお笑い芸人、横澤夏子さんが登場し「感謝の気持ちを持って走りたいです」とあいさつしたあと、トーチに聖火がともされました。 このあと、市役所を出発し、聖火リレーが始まりました。 糸魚川市では、5年前に発生した大規模火災からの復興が進む町並みなどを13人のランナーがリレーし、時折小雨が降る中、笑顔で沿道に手をふりながら1人200メートルの区間を走りました。 聖火リレーはこの後、第2区間の上越市で行われ、午後からは佐渡市などをつないで1日目のゴール地点、南魚沼市の「八色の森公園」で聖火の到着を祝う「セレブレーション」が行われます。 感染症対策として県はできるだけ沿道での応援を控えてインターネットの中継を活用し沿道で応援する場合は周囲と距離を保ったうえで大声は出さず拍手などで応援するよう呼びかけています。 ●のんさん、聖火リレー辞退「岩手行くことで心配かける」 6/4 岩手県は4日、県内で16〜18日に行われる東京五輪の聖火リレーで、初日に久慈市内を走る予定だった俳優・のんさん(27)がランナーを辞退したと発表した。 のんさんは県を通じてコメントを発表。「第二の故郷である岩手県において、わたしが走ることで少しでもみなさんとこの困難を和らげることができるのではと、ぎりぎりまで考え悩みましたが、岩手に行くことで、不安とご心配をおかけしてしまうとしたら、本意ではありません」と辞退の理由を述べた。 のんさんは、2013年に放送されたNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」でヒロインを演じた。以降も舞台となった久慈市をはじめ県内をたびたび訪れ、交流を深めてきた。 県オリンピック・パラリンピック推進室によると、4日までにのんさんのほかに、スキージャンプの小林潤志郎さんら5人がランナーを辞退したという。 ●ついに国内スポンサー企業からも延期求める声「気候涼しい時期に…」 6/4 東京五輪の国内スポンサー企業の一部が、数か月延期を求める動きを見せているという。英メディア「フィナンシャル・タイムズ」が報じた。 コロナ禍で国内では東京五輪中止の世論が形成されている中、今回の報道によると、最近になって一部のスポンサー企業から主催者側に延期の要望を出したという。 その上で、ある企業幹部が「主催者側は開幕日を完全に決定しているようなので、この提案が主催者に強い影響を与えるとは思わないが、より多くのワクチン接種者がいて、気候も涼しく、世論の反発も少ない時期に大会を開催する方がはるかに理にかなっている」と語ったことも伝えた。 それでも国際オリンピック委員会(IOC)をはじめ、大会組織委員会、日本オリンピック委員会(JOC)、日本政府、東京都は開催強行を推し進めている。スポンサーの声も届かないのだから、中止を求める国民には耳を貸さないのもうなずける。 ●外交評論家の提言「東京オリンピックの前向きな中止を考えるべきだ」 6/4 筆者自身は新型コロナウイルスワクチンの接種予約をなんとか取れたが、この感染症は東京オリンピックまでには収まるまい。 菅政権と国際オリンピック委員会(IOC)は自らの存続を五輪開催に懸けているようだが、このままでは失敗して、かえって力を失うのでないか。東京オリンピックが実現可能なのか、シミュレーションしてみよう。 まず、空港で選手たちを出迎え、選手村に送るところから。会期を通じて1万人以上の選手と約6万人の関係者が、世界中から三々五々とやって来る。国ごとに感染対策が違うので、検疫も国ごとや一人一人にテーラーメイド方式による入念な対応が必要だ。 英語のできない選手や役員も多数いる。現在確保している市民ボランティアは、人数は十分でもコロナ禍での細かいニーズに対応できるかどうか。 一方で、国内での移動にバスは使えない。1人ずつに1台の車と運転手、そしてアテンド要員が必要になる。選手村は、現在の相部屋ではなく1人1部屋に。予定されている4000室弱では対応できないだろう。そして食堂は密そのものになるので、各部屋にケータリングすることになる。 通常のオリンピックなら、選手個人、各国役員の判断で問題は片付く。しかし今回は、選手個々の事情と動きを、地方の会場にいる選手についても中央の「司令塔」が把握し、問題が起きれば関係諸方面と調整して解決を図り、アテンド要員に指令を下さなければならない。 これは多数の車・人員を一手に動かすノウハウ、そして通信手段を持つ自衛隊あるいは警察くらいにしかできないことだが、彼らを超法規的に便利屋として使うのは控えるべきだ。だとすれば、今の状況での開催にはやはり無理がある。 よく「IOCはオリンピックのテレビ放映権料で収入の7割を確保し(米NBCだけでも2032年までの独占放映権に76億5000万ドルを約束している)、これをスポーツ振興のためにもろもろのスポーツ連盟や各国のオリンピック委員会などに分配している。そのためオリンピックを中止すれば、それらの活動が成り立たなくなる」と言われる。 しかし今年1月にIOC関係者が、「東京オリンピックが中止になっても、それで活動が停止する競技団体が出ることにはならない」と述べている。日本では生真面目に、「中止のときには違約金を払わねば」などと考えている人がいるが、そんなことはIOCとの契約書には書かれていない。 近代オリンピックは、フランスのクーベルタン男爵の努力で始まった。アマチュア精神を柱に据えた清新なイメージを確立したことは、世界中のスポーツ関係者たちの努力のたまものだ。 しかし今日、オリンピックをめぐって動くカネは巨大化し過ぎた。何にいくらの資金が流れているのか、分からない。だから、「東京大会中止」というより、各国において自由でカネのかからない代替案を公募してはどうか。 例えば、出場予定だった選手が参加する、面白い「東京大会記念」イベントを各国でやってもらい、SNSを通じて世界中で視聴できるようにし、「いいね!」の数を競う。広告収入は、新型コロナワクチン購入のために途上国に寄付する──。 日本がこうしたイベントの開催でイニシアチブを取り、自己資金でSNS上に統合プラットフォームを作ったりすれば、選手たちの気持ちも、IOCや菅政権の命運も、そして日本のイメージも救われるのでなかろうか。 ●橋本会長が中止条件言及「IOCや政府、東京都が難しいという判断下せば」 6/4 東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長(56)が4日、都内で定例会見を開き、大会中止の可能性が出る条件に言及した。 開幕50日前となる3日付の日刊スポーツのインタビューでは「中止、再延期はない」と述べ、英BBC放送に対しても「開催は100%」と語っているが、その発言について質問され「『100%』かと何度も聞かれるのですが、海外からの選手団、お客さまがどなたも来られない状況になった場合は当然開催できません。日々、刻々と変わる世界の感染症の状況を見ながら、適切に決めていかなければいけない」と答えた。 続けて「『100%』の開催ができるよう準備をしていくのが組織委の使命です。ただ、それをやっていてもIOC(国際オリンピック委員会)や政府、東京都が(開催は)難しいという判断を下せば、それはそれで応えていかないといけないのも、私たちの使命。組織委としては今、万全の体制で準備することに尽きる」。最悪の想定として中止が要請されるケースを挙げたと同時に、大会を運営する“イベンター”である組織委の立場を強調した。 中止はない考えは変わらず「組織委は、大会を開催するために委託を受けている団体。全力でご理解いただけるように、コロナ対策を万全として大会開催に向けた準備をしたい」とも力を込めた。 ●福島県の都市ボランティア3割以上が辞退 6/4 福島県は2021年3月から4月にかけて、東京オリンピック・パラリンピックの開催期間中に県内で活動する都市ボランティアに意向調査を行った。その結果、活動の意向を示したのは1143人で、大会延期前の2020年2月と比べて約36%減少した。 都市ボランティアは、競技会場周辺の交通誘導や観光案内が主な活動で、福島県は配置場所の変更などで対応できることから、再募集は行わない。6月中旬から研修が始まるが、県は大会が無観客になった場合には、今後のボランティア活動につながるような措置を検討する予定。 ●オリンピック開幕が近づいているに、日本の新型コロナ防疫は後退 6/4 東京五輪の開幕がわずか50日後に迫っているが、依然として日本の新型コロナの防疫対策はお粗末極まりない。むしろ防疫基調に逆行する五輪運営計画を公開し、自国民の批判を招いている。 日本政府はまだ五輪の観客対策を公式に確定していない。外国人観客の入場を認めない方針だけを今年3月に決定している。新型コロナの陰性証明書を提出するか、ワクチンを接種した国民に限って競技場収容規模の50%以内で入場を許可する案を検討しているという。 日本の経営コンサルティング会社・野村総合研究所は、有料観客を観客席の50%入場させた場合、20億ドル(約2200億円)と予想される無観客開催による損失費用のうち、3分の1水準である6億4000万ドル(約704億9300万円)を挽回するものと見込んでいる。 しかし、日本政府のこうした考えは“幻想”に近い。野村総合研究所は1日、「日本政府の目標通り、1日100万人にワクチンを接種しても、9月上旬になってようやく全人口の40%が2回の接種を終えることになる」とし、「新規感染者はその時から減り始めるだろう」と予想した。 東京五輪が来月23日に開幕し、8月8日まで予定されていることを勘案すれば、今ワクチンを打っても(防疫に)大きな効果がないという意味だ。 さらに、日本政府が準備した『東京五輪 新型コロナ対策原案』には、入場の際、観客全員に入場前1週間以内に行ったPCR検査での陰性証明書を提示するよう要求する内容が盛り込まれている。その検査費は本人負担となる。自費でPCR検査を要求すること自体が非現実的だ。本人が望めばいつでも無料検査を受けることができる韓国と違って、日本は依然として単純な憂慮だけで無料検査を受けることができない。個人的な理由で民間病院で検査を受けると、約2万円の検査費用を支払わなければならない。 ソーシャルメディアやポータルサイトなどでは批判意見が殺到している。国民の多数の反対を押し切ってオリンピック開催を推し進めることだけでも反発が激しいにも関わらず、危険を甘受して“有観衆開催”を推進することに対しても議論が続いている。 防疫対策の弱点はこれだけではない。内閣官房2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室事務局は、選手村内に酒類搬入を認める方針を国会で公開した。事務局は「試合終了後に選手の客室に食べ物を供給するシステムを備えている」とし、「もちろんお酒も含まれている」と明らかにした。 このような内容が伝えられた後、反発が強まっている。現在、日本政府は東京を含む10の広域自治体に新型コロナの緊急事態宣言を発令し、食堂内での酒類販売を制限している。公平性論議が起こるのは当然だ。 立憲民主党の柚木道義 衆議院議員は「店にお酒を出すなと言いながら選手を特別扱いするのは国民の理解を得られない」とし、「お酒を一人で飲まない可能性もあり、感染拡散が憂慮される」と警告した。日本共産党の小池晃書記局長は「オリンピック選手村で酒を出して飲んでもいいなら、全国の居酒屋が“選手村”に名前を変えてもいいのか」と皮肉った。 五輪開催による日本国内の医療体系の崩壊を懸念する声も高い。新型コロナ対策分科会は「五輪開催で日本全域で動きが活発になれば、感染状況が悪化し、医療体系に支障をもたらす」とし、「東京でステージ4段階が維持されれば五輪開催は困る」と主張した。 現在、4段階に分類されている日本の新型コロナ防疫体系で『ステージ4』は感染者の爆発的拡散を意味する最高段階を意味する。現在東京は「ステージ4」に分類されている。 米国のウォールストリートジャーナルは「外国人観客の入場禁止ですでに10億ドル以上を失った状況で大会を強行すれば、新型コロナ再流行の可能性まで考慮すると、損害は避けられない」と見通した。 ●東京2020表彰台は再生プラスチック。組市松紋を立体化 6/4 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は3日、東京2020大会の表彰式の表彰台や楽曲、衣装&メダルトレイを発表した。「持続可能性」への貢献を意識してつくられ、表彰台は使用済プラスチックを使っている。 表彰台は、「みんなの表彰台プロジェクト」によって集められた使用済プラスチックを使用。プラスチックパーツは、全てリサイクルプラスチックで、持続可能な社会に向けた新しいモデルを発信する。 デザインは東京2020エンブレムを制作した野老朝雄氏が担当。「多様性と調和」のメッセージが込められたエンブレムを体現するデザインとした。側面デザインは、東京2020エンブレムコンセプトである「組市松紋」を立体化し、日本の伝統的デザインを幾何学的に発展させ、伝統的な藍染めを想起させる色と合わせ、世界へ日本らしさを発信する。 東京2020表彰式楽曲の作曲は、佐藤直紀氏。国内トップクラスのスタジオミュージシャンと交響楽団から、144人が集結し、弦楽器とコーラスは多重録音も行ない、最終的に総勢256人分の音に編曲されている。 衣装は現代の祭典にふさわしい「新しい礼服」をコンセプトに、「かさね」「おり」「結び」「染め」といった和装の伝統技術を取り入れつつも、暑さ対策など、洋装の機能性を兼ね揃えたデザイン。ファッションディレクター山口壮大氏が担当した。 表彰式でメダルやギフトを運ぶトレイベアラーやエスコートを務めるボランティアは、パンツスタイルかワンピーススタイルのいずれかを自身が選択する。また、資源の有効活用のため、リサイクル繊維を採用する。 メダルトレイは、伝統的な扇子をモチーフに、リサイクル可能な再生ABSを使用している。 |
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●英紙報道 東京五輪スポンサーが延期提案か 6/5
東京オリンピックの一部スポンサーが大会を9月から10月に延期することを主催者側に提案しているとイギリスの新聞が報じました。 イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙は4日、東京オリンピックの一部スポンサーが大会を9月下旬から10月上旬に延期することを数週間前から主催者側に提案していると報じました。それによると、ある企業の幹部は「主催者が7月に開幕すると完全に決めているようなので、この提案が大きく影響を与えるとは思わない。しかし、ワクチンを接種した人が増え、気候が涼しくなり、国民の反対が減ってから開催する方が理にかなっている」と話しているということです。 また、開催を延期した場合のメリットについて、スポンサー側の話として「延期によって、より多くの観客が集まり、会場内での動きが活発になれば広告の効果が高まる」としています。 ●豪ソフト代表、来日後初の練習 東京五輪へ群馬で事前合宿 6/5 東京五輪に出場するソフトボールのオーストラリア代表が5日、事前合宿中の群馬県太田市の市運動公園野球場で、来日後初めて練習した。新型コロナウイルスの感染対策に万全を期し、市民や報道陣には非公開。 大会の延期決定後では海外チームの事前合宿第1号として1日に来日し、太田市に到着。4日まではホテルで隔離生活を送っていた。選手らは全員が新型コロナのワクチンを接種済みで、滞在中は毎日PCR検査を受けている。 合宿は7月17日まで。市民の見学機会を設ける予定だが、感染防止のガイドラインを国に提出するなどの準備が間に合わず、当面難しくなっている。 ●東京地方議会、全国初の「東京五輪中止」意見書採択 6/5 東京のある地方議会が「東京五輪の中止」を求める意見書を可決した。地方議会が意見書を採択したのは全国で初めてで、菅義偉首相と小池百合子東京都知事に送る予定だ。 東京新聞は、東京都小金井市議会が3日「東京オリンピック・パラリンピック開催の中止を求める意見書」を賛成多数で可決したと、翌日付で報じた。与党の自民党、公明党などの市会議員10人が反対したが、共産党議員など11人が賛成し、意見書が可決された。市議会は意見書で「東京五輪を見切り発車で強行するのは人命、国民生活尊重の観点から許容限度を大きく逸脱する」として、政府を批判した。同意見書の提案者の一人は「私たちの意見を受け止め、最善の判断をしてほしい」と語った。意見書の採択が五輪開催の中止に直接的な影響は及ぼさなくても、市議会まで圧迫に乗り出したことで、反対世論はさらに広がるものと見られる。小金井市は東京都新宿区から西に約20キロ離れた地域だ。 意見書の採択までは至らなかったが、東京の他の地域の元・現職市会議員約130人も、同様の要請書を国と東京都に送付したと、同紙は報じた。 一方、東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長は3日、BBCとのインタビューで「大会開催は100%確実」と強調した。ただし、新型コロナウイルスの感染状況によっては無観客もありうると述べた。 ●開催強行なら大規模なサイバーテロの恐れ 英メディアが警鐘報道 6/5 今夏の東京五輪が強行されれば大規模なサイバーテロに見舞われそうだ。 富士通の情報共有ツールに外部から不正アクセスがあり外務省や国土交通省などの個人情報が流出した問題で、東京五輪・パラリンピック組織委員会の個人情報も漏れていたことが判明。富士通側は丸川珠代五輪相に対して経緯を説明したうえで謝罪した。 今回新たに流出が確認されたのは、内閣官房の内閣サイバーセキュリティセンターが東京五輪開催中のサイバー攻撃に備えて実施した情報共有訓練の参加者の所属先や役職、名前などとみられる。 これまでも五輪などの国際大会はサイバーテロの標的となってきたが、今回の東京五輪は新型コロナ禍で運営に混乱が生じている中、非常に深刻な危険が迫っている。 英メディア「サイバースクープ」は「国家にリンクしたハッカーが繰り返しスポーツイベントに関心を示しているため、サイバーセキュリティー対策は五輪主催者にとって必須のものになっている」と指摘したうえで、調査会社フォレスターのメリット・マキシム副社長による警告を報じた。 「今回の最新の事件は憂慮すべきことだ。大規模なスポーツイベントを保護するために、継続的なサイバー警戒が必要である」とマキシム氏。そして「スパイ、そしてサイバーの脅威がある。ランサムウェア(コンピューターウイルスの一種)の犯罪者が、オリンピックに関与する組織や関係者に対して恐喝する機が熟していると見なしている可能性がある」と五輪関係者を標的にした大規模なサイバーテロが起きる可能性が高いと強く警鐘を鳴らした。 新型コロナ禍が深刻化する中で多くの国民の生命を危険にさらそうとしている東京五輪。このまま強行すれば、命だけでなく様々な面で甚大な被害が出てしまいそうだ。 ●マラソンなど開催予定の北海道からも不安の声… 6/5 東京オリンピックの開会式まで2カ月を切った。札幌市でもマラソンや競歩が予定されている。感染拡大が続く中、安全に開催することはできるのか、開催の条件とは? 5月24日から始まった新型コロナウイルスワクチンの高齢者への接種。政府は、7月中に完了させたいとしているが、見通しは厳しい状況。 そんな中、アメリカ政府は5月24日、日本への渡航警戒レベルを最も高い「渡航中止」に引き上げた。「日本では変異ウイルスの感染が拡大していて、ワクチン接種を受けたアメリカ国民にもリスクがある」というのがその理由だ。 オリンピックは本当に開催できるのか。マラソンや競歩が予定されている札幌市は、準備に不安を抱えている。 秋元克広札幌市長:感染状況について、なかなか先が読めません。そういう意味で、準備などに支障が出てくるのは事実だと思っています。私たちで言えば、観客をどうするかという方向性が、まだ見えない オリンピックの中止や再延期を求める声が強まる中、開催するための条件について大会組織委員会に聞いてみると… <大会組織委の回答> コロナ禍の厳しい状況においては、さまざまな意見があることは理解しています。1日も早い社会の回復を願い、安全で安心な大会開催実現に向けて、政府・東京都・関係自治体と緊密に連携し、準備に尽力してまいります 具体的な開催の条件は示されなかったが、「安全で安心な大会」を目指すとしている。 どのような形であれば安全・安心と言えるのか。北海道民はどう考えるのか? 20代事務職:ワクチンが打てる状況だと思うんですけど、まだ全年代の人が打てる状況ではないので、日本全域で緊急事態宣言がなくなるまではやるべきじゃない 40代会社員:感染者が出ない前提条件のもとでやるのであれば(開催してもいい)。ウイルスはどんどん変異すると聞いているので、おっかないですよね 50代医師:これだけ医療が大変だと言っていて、オリンピックでもっと感染が広がったらもっと大変なんじゃないかな。だったら、今やらなくてもいいんじゃないのかなという気持ちがあります 残された時間は2カ月を切っている。安全・安心な大会は可能なのか? 感染管理にくわしい、北海道医療大学の塚本容子教授に聞いた。 北海道医療大学 塚本容子教授:「開催できる状況ではない」というのが結論です 東京オリンピックの開催に悲観的な結論。その理由は? 北海道医療大学 塚本容子教授:7月末までに65歳以上の高齢者へのワクチン接種が終わるかどうかでさえも、なかなか厳しい状況だと思います。集団免疫というのは、6〜7割の人が獲得すると感染が拡大しないと言われています。北海道の65歳以上の人の割合が30%だとして、それが全員終わったとしても6割は到底達成しない算段になります これだけではない。塚本教授がオリンピック開催について最も懸念することは、変異ウイルスの存在だ。 北海道医療大学 塚本容子教授:インドの変異ウイルスというのは、5月17日現在、44カ国で確認されています。人の入国を許すと、どうしても変異ウイルスが持ち込まれる可能性は一定程度あると考えられます。オリンピックのような多くの人が集まるイベントは、非常に危険だと思います 感染力が非常に強いインド株の変異ウイルスが、オリンピックを機に国内に広まるのではという。 北海道医療大学 塚本容子教授:開催にこぎつけたとしても、医療崩壊につながってはいけないので、それは安心なオリンピックとは言えないと思います 開会式まで2カ月を切った今、緻密な対策と冷静な判断が求められている。 ●五輪期間中、コロナと共に日本を襲うかもしれない「ヤバい事態」 6/5 いっこうに収まる気配を見せないコロナ禍により、飲食や観光業界を筆頭に、さまざまな業界において経済と市民生活がズタズタになり、医療体制も崩壊の憂き目にあっている。 そんな状況で、日本政府や組織委員会をはじめとする東京オリンピックの関係者は、国内の貴重な医療資源の一部をオリンピックのために割き、海外から多数の関係者が入国することによる変異株の感染拡大リスクを冒してでも、国民の7〜8割が反対する世論を振り切って、このまま大会を強行開催するかどうかの決断の瀬戸際に立たされている。 ところが、この強気の態度の裏には、どうやら「たとえ世論のほとんどが開催に反対でも、オリンピックがいったん始まってしまえばすべての問題は解決される」と政府などの関係者は考えているフシがある。 たとえ会場での観戦者が当初より絞り込まれても、国民のほとんどが「おうち観戦」するだろうし、マスメディア報道もオリンピック一色となり、日本選手の活躍もあって盛り上がり、少しずつ開催への批判はなくなっていく、というわけだ。 しかし、本当にそう都合よくいくのだろうか。筆者はこうした楽観論に疑問を禁じ得ない。 なぜなら、7月後半〜8月前半という時期を動かすことができないオリンピックを招致すると決めた時点で、我が国は危機管理上、ある大きなリスクを抱えたまま開催に進むことになってしまったからだ。それは、今回のパンデミック発生があろうとなかろうと関係ない。端的に言えば、自然災害の発生リスクである。 今は、多くの人がコロナに気を取られ、あまり気に留めていないのだが、実は、梅雨の半ばから梅雨明け辺りの季節は、毎年多くの自然災害(風水害)が発生し、甚大な被害を出している時期だ。 気象庁のウェブサイトに、「災害をもたらした気象事例」というページがある。地味なページだが、戦後、大きな被害をもたらした気象現象(風水雪害)を一覧で見ることができる。 最近は毎年、いや1年の中で何度も豪雨災害が起きるため、私たちは、いつどこでどんな大災害があったか、もはや一つひとつが区別できず記憶が薄れつつあるのではないだろうか。 そこで筆者は今回、平成から令和までの32年間で、7月下旬〜8月上旬のオリンピック開催期間中、あるいはその直前といえる6月下旬〜7月中旬に、どの程度の自然災害が起きているかを抜粋してみることにした。 すると、半ば予想どおりだが、オリンピック開催時期はやはり多くの風水害が発生していた。それこそ、本来オリンピックが開かれるはずだった昨年の夏は、オリンピック自体がコロナの影響で早々に延期が決まっていて、当時の世間の関心事はコロナ対策(Go To トラベルなど)に移っていた。 しかしその陰で、「西日本から東日本、東北地方の広い範囲で大雨。4日から7日にかけて九州で記録的な大雨。球磨川など大河川での氾濫が相次いだ」という「令和2年7月豪雨」(気象庁HP)が起きていた。言われてみると、報道もなされたし、思い出す方も多いだろう。 当然、歴史にイフは禁物であるし、想像したくもないことだが、仮にコロナ禍が起きておらず、当初予定どおりにオリンピックが開催されていたとして、開催直前、またはその真っ最中に、国内の広範囲に豪雨災害が襲ってきていたとしたら、どうなっていたのかと思うと、背筋が凍る思いがする。 仮定の話はさておき、あと50日弱に迫った2021年のオリンピックの話に移ろう。上記の気象庁のサイトを確認すると、実は、1989年から2020年の32年間で、今回のオリンピック開催期間中に風水害が発生した年は計15回、気象事象の件数ではのべ19件となる。32年間を分母として、そのうち何年で発生したかという確率を出すと約47%となる。 近年、地球環境変動によって大規模風水害の発生は増えているという感覚を持っている人は少なくなかろうから、確率の計算をここ10年間(2011〜2020年)に絞ってみると、オリンピック開催期間中に発生した年は5回(50%)、期間を開催直前2週間(開会式より前に行われる最初の競技開始日の2週間前を基準とする)まで広げると8回(80%)となる。 とはいっても、確率はあくまで確率でしかなく、運命を分けるのは、結局、今年の梅雨前線と台風の動き次第ということになるが、数字としては決して低いものではないということを、私たちは知っておかなければならない。 ちなみに、国際的なスポーツイベントと自然災害の関係では、2019年のラグビーワールドカップの開催期間中に台風が日本列島を直撃し、横浜(神奈川)、釜石(岩手)、豊田(愛知)の3試合が中止になったことは読者のみなさんもご記憶だろう。 同大会は秋の台風シーズンに、1ヵ月強にわたって開催され、しかも試合会場が北海道から熊本まで日本中にあったから、どこかでこういう事態になることは考えられた。 一方、オリンピックの場合、先ほどの気象庁のデータによると夏の風水害が比較的西日本で多く発生している傾向を考えると、会場のほとんどが首都圏で(他は静岡、福島、宮城、北海道)、2週間程度で集中的に開催されることから、台風の直撃が競技そのものに影響する可能性はラグビーに比べれば小さいといえそうだ。 しかし、である。開催前、あるいは開催中に、日本のどこかで、それなりの規模の自然災害が起きた場合、あるいは被害は出なくても、被害が出る恐れがあるほどの豪雨・暴風におびえる地域が出た場合、政府やマスメディアが、「オリンピックでコロナを吹き飛ばすお祭りムードを作るぞ」というノリのままで行けるのだろうか。 災害が、そうしたムードに「水を差す」などとは口が裂けても言えない。となれば、報道量をコントロールして「忖度」するのだろうか。 もちろん、そうした事態になればこそ、オリンピックでの日本の活躍が被災地に勇気を与えるのだ、という主張にも説得力が出てきそうなところだが、行政目線で言わせてもらえば、ひとたび災害が発生すれば、被災地域の地方自治体は人命救助・避難所運営・被害の復旧・救援物資やボランティア受け入れなどにかかりきりとなる。 目下、コロナという「災害」に直面し予防接種でてんやわんやの地方自治体に、さらに自然災害が降りかかってきたらどうなるか。被災地はライフラインがしばらく途絶し、医療機関も被害者対応優先となる可能性があり、しばらくは予防接種どころではなくなってしまう可能性が高い。 そう考えると、被災直後の被災地は、行政に限らず、市民も民間事業者も、誰もが間違いなく大混乱であり、「おうちでオリンピックを見る」どころではなくなってしまう。 繰り返しになるが、そもそも7月後半開会という時期を動かすことができないオリンピックを日本で開催する以上、マラソンを北海道に「引っ越し」させることになった暑さの問題とともに、気象リスクの問題は切り離せなかったはずだ。 もちろん、それを今指摘しても仕方がないのだが、「言霊があるから、起きるなんて問題提起をすべきではない」とか「起きないように祈るしかない」とかいうのは危機管理として失格だ。 コロナ+オリンピックの「二正面作戦」ならば、各種のプロスポーツ競技も開催されている現在の状況からは、切り抜けることは可能だろう。しかし、繰り返すが、オリンピックが始まってしまえばすべての問題は解決されるなどという甘い目論見は、気象状況によっては、いとも簡単に打ち砕かれるかもしれない。 もちろん、災害が起きず「結果オーライ」ならそれでよい。しかし現時点で、「オリンピックの中止・延期を決断しない」という決断をする立場の方々には、「三正面作戦」になっても対応できる準備と覚悟をもって臨んでほしいものである。 ●中止・延期の声が高まる中、東京オリンピックの準備が本格化 6/5 新型コロナウイルスの追加拡散を懸念し、東京オリンピックに反対する声が高まっている中、開幕の準備が本格化している。 大会組織委員会は4日、東京新宿にあるオリンピックメインスタジアムの国立競技場など、オリンピック関連施設と関連する大規模な交通統制計画を発表した。 東京オリンピックは開会式基準で7月23日から8月8日まで、パラリンピックは8月24日から9月5日まで、それぞれ開かれる予定である。そのため、国立競技場周辺の道路では、今月8日から9月30日まで一般車両の通行に対する交通規制が区間ごとに行われる。 また、開・閉会式を想定し、19日午後11時30分から20日午前5時までの間にバスを利用した選手団などの大規模な輸送訓練を行うと説明した。訓練にはバス約150台が動員され、訓練中は国立競技場周辺と青山通りを中心に一般車両の通行が禁止される。 開幕まで50日を切っているが、内外でオリンピックへの懸念の声は高まっている。東京オリンピック開催地である東京都の地方自治団体は、最近、新型コロナウイルスの追加拡散を懸念し、オリンピック・パラリンピックの中止を求める意見書を採択した。 市議会は意見書で大会を強行することは「人命、国民生活尊重の観点から許容限度を大きく逸脱する」とし、オリンピックの中止と新型コロナウイルス拡散防止対策を徹底して行うことを要求した。 また、日本厚生労働省に新型コロナウイルスの状況について助言する専門家組織のリーダーである脇田隆字国立感染症研究所長は「オリンピック開催のリスクを正確に評価するべきだという意見が多い」とし、近いうちにこれと関連した公開的な意見を表明することを明らかにした。 4日、フィナンシャルタイムズ(FT)電子版によると、東京オリンピックの一部スポンサー企業は広告効果を考慮し、オリンピック開催を9〜10月に延期する案を提案したことが分かった。 ●五輪中止なら1兆8000億円の損失、世論悪化も「強行」背水の陣 6/5 東京オリンピック(五輪)は果たして正常に開催されるのだろうか。大会の開幕(7月23日)まで50日も残っていない現在でも明確に答えにくい質問だ。新型コロナ感染再拡大に疲れている日本国民の間では再延期または中止を要求する声が多いが、五輪開催当事者は依然として激しい駆け引きを続けている。 国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、日本政府、東京オリンピック組織委員会の、いわゆる「東京五輪4大主体」が口を閉じたまま互いに表情を眺め合う姿だ。すなわち、爆発することを知りながらも「自分たちさえけがをしなければよい」という心情で隣にリスクを転嫁する爆弾ゲームを連想させる。世界スポーツ関係者らは、「新型コロナ克服の象徴」を自負する東京五輪がもう一つのパンデミックの起爆剤になりかねないと憂慮している。 東京五輪に対する日本国内の世論は厳しい。朝日新聞が先月、日本国民を対象に実施した世論調査で「東京五輪を今夏に開催すべき」という回答は14%にとどまった。「再び延期すべき」が40%、「中止すべき」が43%だった。否定的な回答の比率が83%にのぼるが、これは1月(否定的回答率86%)に続いて2番目に高い。 世論の推移は日本国内の新型コロナ状況と関連している。日本厚生労働省が集計した一日の新規感染者数は2000人を上回る。一日6000−7000人の感染者が発生していた先月中旬と比較すると大幅に減少したが、依然として日本医療システムの対応が難しい状況だ。先月27日からは3日連続で新型コロナによる死者数が100人を超えた。日本政府が東京都など主要都道府県に対して先月25日まで適用することにしていた緊急事態宣言の期限を今月20日まで追加で延長した理由だ。 ●スポンサーの朝日新聞「中止が望ましい」 毎日新聞は2日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長の発言を引用し、「(東京五輪が開催されれば)さらに医療に負担がかかるリスクがある」と憂慮した。労働組合「全国医師ユニオン」の植山直人代表は先月27日、「世界200カ国余りから数万人が集まる東京五輪が予定通りに開催される場合、新たな変異ウイルスを生み出しかねない」と警告した。 世論が悪化し、東京五輪のスポンサーの表情も暗い。約60の企業が総額33億ドル(約3兆7000億ウォン、約3650億円)相当のスポンサーシップ契約を結んで全面的な支援を約束したが、投資したほど効果を出すのは難しいという見方が続出している。トヨタが「国民の心配を認知している」と言及し、楽天は「自殺行為(suicide mission)」という激しい表現を使って懸念を表した。スポンサーシップに参加した報道機関の朝日新聞は先月26日「五輪中止が望ましい」と主張した。 悲観的な状況にもかかわらず東京五輪開催当事者が「大会中止」に言及できない理由はお金のためだ。野村総合研究所は1日、「東京五輪・パラリンピックを中止した場合の経済損失は約1兆8000億円にのぼる」という試算を発表した。日本政府または東京都が先に五輪中止を進める場合、IOCとの契約に基づき、莫大な損害賠償責任を負う可能性もある。毎日新聞は2日、首相官邸所属の幹部の言葉を引用し、「日本政府は(五輪)中止というオプションを考慮しない。引き返すことはできないと判断しているため」と伝えた。 IOCも無観客でも東京五輪を開催するのが有利だ。米放送局NBCと締結した14億5000万ドル規模のテレビ中継権契約を守ることができるためだ。五輪中継権料はIOC総収入の70%を占める。IOCは五輪参加選手から「大会期間中に新型コロナに感染しても本人の責任」という内容の誓約書を受けることにし、波紋が広がった。IOCのラナ・ ハダッド最高執行責任者(COO)は先月28日、「新型コロナに感染しないと保証できる政府や保健当局はない」とし「(誓約書は)以前の五輪から続いてきた手続きにすぎない」と主張した。これに対し読売新聞をはじめとする日本メディアは「健康関連の誓約書は以前の大会にも存在したが、今回は異例にも重態や死亡への言及が含まれた。IOCの意図が疑われる部分」と指摘した。 ●秋の総選挙、菅内閣の運命を左右する変数 日本とIOCが共に「五輪強行」に向かう状況で唯一の脱出口はワクチン接種だ。日本政府は「毎日100万件接種」と「7月末まで高齢者接種完了」を防疫関連の核心課題に設定した。先月末基準で5%台にとどまっている日本国内のワクチン接種率を9月までに40%に引き上げるのが目標だ。 IOCは米国の多国籍製薬会社ファイザーから供給されたワクチンを最大限に活用し、五輪開幕前までに出場選手の接種率80%を達成するという内部目標を定めた。8万人にのぼる五輪ボランティアメンバーに対するワクチン接種計画を用意する一方、大会期間中に日本を訪問する選手団や役員など約9万5000人の動きを統制するためのシナリオも準備中だ。 東京新聞は1日、「五輪が成功するかどうかは秋の総選挙を控えて菅義偉首相と内閣の命運を決める重要な変数」とし「オリンピック・パラリンピック期間中に新型コロナで日本国内の医療体系が崩れる状況になれば政権の基盤も共に崩れるだろう」という見方を示した。 ●韓国では独島・旭日旗問題でボイコット世論まで…不安抱く大極戦士 韓国の選手団は静かに東京五輪の開幕に向けて準備しながらも、国内外の報道に注目している。これまで流した汗と涙が報われるよう最後の準備にまい進しているが、悪材料が続いているため、五輪準備状況には不安が伴うしかない。各種目別の予選を通過して東京五輪出場権を獲得した韓国選手は計23種目・186人(2日基準)。今月末まで続く各種目別予選が終われば200人以上に増える見込みだ。4年に一度開催される五輪はアマチュア種目の選手には人生がかかる挑戦の機会だ。メダル圏に入賞すれば年金や兵役などでいくつかの優遇を受ける。引退後に指導者になる道にもプラスとなる。 しかし雰囲気は尋常でない。日本国内の新型コロナ状況は依然として脅威だ。さらに独島(ドクト、日本名・竹島)と旭日旗の問題が加わった。東京オリンピック組織委員会がホームページの日本地図にこっそりと独島を日本領土として表示した事実が明らかになり、韓日関係が急速に冷え込んでいる。ゴルフ日本代表チームはユニホームに旭日旗を連想させるデザインを採択し、批判世論に火をつけた。 IOCのあいまいな態度も問題だ。是正を要求する韓国側に対して「該当事案は組織委に問い合わせるべき」として手を引いた。2018平昌(ピョンチャン)冬季五輪当時、日本政府が統一旗(韓半島旗・朝鮮半島旗)の独島表示を問題視すると直ちに介入したのとは異なる態度だ。青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)のホームページに東京五輪不参加を要請する請願が登場し、2日にはソウル西大門区(ソデムング)独立門の前で旭日旗を燃やすデモがあった。 バレーボール女子代表のエース金軟景(キム・ヨンギョン)は「五輪開催が目の前だが、依然として落ち着かない雰囲気だ。選手の立場では目と耳を閉じて準備に集中するしかない」と語った。体操代表チームのベテラン梁鶴善(ヤン・ハクソン)は「最近も選手村に選手が集まると、五輪再延期の可能性が話題になった」とし「大会に向けて準備してきたが、中止や延期になれば目的を失う。選手の立場では動揺するしかない」と話した。フェンシング代表の最年長ク・ボンギルは「『リスクが高い五輪を開催する必要があるのか』と話す方々を理解するが、自分たちには人生がかかった挑戦だ。スポーツ選手なら五輪を除いて考えにくい」と内心を打ち明けた。韓国選手団は東京五輪で金メダル7個以上の獲得を目標とし、夏季五輪5大会連続トップ10を狙う。 |
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●東京五輪・パラ 「都市ボランティア」 約3500人辞退 6/6
東京オリンピック・パラリンピックの競技会場や選手村などで活動する「大会ボランティア」の辞退者がおよそ1万人となる中、交通や観光の案内をする「都市ボランティア」でも辞退が相次ぎ、少なくともおよそ3500人に上っていることがNHKの取材でわかりました。 東京大会のボランティアをめぐっては、主に競技会場や選手村で活動する「大会ボランティア」、およそ8万人のうちおよそ1万人が、6月1日までに辞退したことが明らかになっています。 こうした中、4万人以上が活動する予定の交通や観光の案内をする「都市ボランティア」について、採用する全国11の自治体にNHKが取材したところ、回答があった9自治体で、合わせておよそ3500人が辞退していたことがわかりました。 最も多かったのは千葉県で5月末時点で1083人が辞退、次いで宮城県でおよそ800人、福島県で630人余りなどとなっています。 東京都と埼玉県は確認中としているため、辞退者の数はさらに増えるとみられます。 各自治体によりますと辞退の理由は、大会が1年延期され、転勤や進学など生活環境に変化が生じたことや、新型コロナウイルスの感染拡大への不安が多くを占めているということです。 また、海外から観客が来なくなり、参加する意義を見いだすのが難しくなったという理由もあったほか、一部の自治体では開催をめぐり賛否が分かれる中、世論を気にして辞退した人もいたということです。 各自治体では、辞退による運営への影響はないとしつつ、大会本番に向けた実地研修などを進める中で、感染防止対策を説明するなどして、ボランティアの不安の払しょくに取り組むことにしています。 ●感染への懸念 参加辞退相次ぐ 東京オリンピック・パラリンピックのボランティアの中には、新型コロナウイルスの感染への懸念から、参加を辞退する人が相次いでいます。 東京文京区にある筑波大学附属視覚特別支援学校では、教員6人がボランティアとして参加する予定でしたが、活動を通じて感染すれば家族や職場に迷惑がかかるという理由から、すでに3人の教員が参加を辞退しています。 このうち、全盲の視覚障害者で教員の村田愛さん(51)は、3年前から実際にスポーツイベントのボランティアに参加するなどして準備を進めてきました。 参加を希望した理由について村田さんは、「視覚障害者がボランティアとして参加することがあまりないのでぜひ挑戦したいと考えました。生徒にもチャレンジしてもらいたいですし、日頃はボランティアされる側なので、自分たちもできることはやりたいという気持ちでした」と語りました。 しかし、感染拡大が続く一方で自身のワクチン接種の目途が立たず、高齢の家族と同居する中で家族からボランティア活動に参加して欲しくないと言われ、先月下旬に辞退を決意しました。 村田さんは、「残念ですが家に持ち帰って何かあったら大変なので仕方がないです。観客が入るのか入らないのか、どのくらい人と接触があるのかわからなかったのも不安でした。いまこの状況で開催してみんなが『安全安心』と思うかは疑問なので、応援はしたいですが不安を拭い去れない状況です」と話しています。 ●開催めぐり賛否分かれ 複雑な思い 一方、東京大会のボランティアへの参加を決めたものの、開催をめぐり賛否が分かれる中で複雑な思いを抱えている人もいます。 大会ボランティアとして参加する千葉県の会社員、海東靖雄さん(55)は、6年ほど前に、スポーツイベントのボランティアに参加して以来、年に60回から70回、ボランティア活動をしてきました。 背景の異なる人たちとの交流や多くの知識や経験を得られることが魅力だといい、東京オリンピック・パラリンピックでも活動したいとその歴史や活動内容を勉強して準備を進めてきました。 しかし、感染拡大が続く中、50代の海東さんは、現在は開催期間までにワクチン接種の対象となっておらず、活動を通じて感染しないか不安を感じています。 また、5月下旬には、ボランティアのユニフォームを受け取り大会への実感がわいた一方で、開催への賛否が分かれる中、会社の人たちの受け止めや社会のまなざしが気になるといいます。 海東さんは、「コロナの影響でボランティア活動の次の日に、会社に行くことについて『大丈夫かな』と思う同僚もいるだろうと思います。活動の際もボランティアのユニフォームを見るだけで、『ああいう人がいるから感染が収まらないんだ』と思われないかとか、以前はそう考えることもなかったですが、ボランティアへの攻撃的なことばがあるのではないかと不安があります」と心情を明かしました。 そのうえで、「感染者数や医療状況が改善し、余裕のある状態で開催を迎えられることが望ましい。感染予防のため参加する選手も我慢しながらになるが、それでもやりたいという思いに多くの人が納得して、『それなら一緒に支えていこう』という形で開催ができればと思います」と話しています。 ●神奈川 藤沢で研修会 東京オリンピックの開幕まで50日を切る中、セーリングの競技が行われる神奈川県藤沢市では交通や観光の案内をする「都市ボランティア」の研修会が開かれました。 競技会場がある神奈川県藤沢市では、都市ボランティアのうちおよそ90人が辞退していますが800人余りは参加する予定で、大会を控え研修が進められています。 6日の研修会には20人余りが参加し、市の担当者から活動中の感染防止策の徹底や、前後14日間は体温の記録をつけることなど注意事項の説明を受けたあと、市内各地で行う具体的な活動内容を確認し、ユニフォームを受け取っていました。 東京大会のボランティアは、延期や感染拡大などの影響で競技会場などで活動する大会ボランティアがおよそ1万人辞退したほか、都市ボランティアも少なくともおよそ3500人が辞退しています。 研修に参加した50代の女性は「開催までにワクチン接種ができる状況ではないので不安はありますが、一生の記念になりますし地元の役に立てたらうれしいです」と話していました。 藤沢市東京オリンピック・パラリンピック開催準備室の北川麻由さんは、「コロナ禍ではありますが粛々と準備を進めたい。ボランティアの人たちが少しでも不安を拭えるよう努めつつ、どんな状況にも対応できるよう情報収集していきたい」と話していました。 ●体操 内村航平 東京五輪内定 4大会連続出場へ 種目別鉄棒で 6/6 東京オリンピックの代表選考を兼ねた体操の全日本種目別選手権は群馬県高崎市で決勝が行われ、内村航平選手が6日の競技と、これまで行われた代表選考会の結果と合わせてオリンピックの代表に内定しました。内村選手は4大会連続の出場で、東京オリンピックで種目別の鉄棒に出場します。 またこの大会の結果、谷川航選手と北園丈琉選手が、これまでの代表選考会の結果と合わせて東京オリンピックの代表に内定しました。2人はともに初めてのオリンピック出場です。 東京オリンピックの体操男子の代表選考は、4月の全日本選手権、先月のNHK杯、そして全日本種目別選手権の3つの大会の成績をもとに行われます。 オリンピックで個人総合2連覇の内村選手は、東京オリンピックでは種目別の鉄棒で代表入りを目指してきました。 内村選手は5日の予選で15.766の高得点をマークし、6日の決勝に臨みました。内村選手は、冒頭のH難度、「ブレットシュナイダー」を成功させた後、手放し技を次々と決めました。しかし演技中盤に体をひねる技の後、鉄棒を回りきれないミスが出ました。最後の着地はしっかりと止めて15.100の得点をあげました。 6日の決勝ではすでにオリンピックの代表に内定していた橋本大輝選手の15.133に及ばず2位だったものの、これまでの代表選考会の結果と合わせて東京オリンピックの代表に内定しました。内村選手は、4大会連続のオリンピック出場で、東京大会で種目別の鉄棒に出場します。 またこの大会の結果谷川航選手と北園丈琉選手が、ともに初めてのオリンピック代表に内定しました。 男子団体の代表メンバーは、4人のうちNHK杯優勝の橋本大輝選手と2位の萱和磨選手の2人が決まっていて、残りの2人は、代表選考の3大会の成績で団体の得点にどれだけ貢献できるかで選ばれました。 6日の決勝で谷川選手は平行棒のみの出場で、途中、姿勢がやや乱れたものの持ち前の力強い演技で次々と技を決めて14.900の得点をマークしました。谷川選手は、これまでの代表選考会でのゆかやつり輪、跳馬、それに平行棒などの得点と合わせてオリンピックの代表に内定しました。谷川選手は、初めてのオリンピック代表です。 北園選手は、4月の全日本選手権でひじをけがしましたが、治療をしながら本来の演技を取り戻してきました。6日はゆかとあん馬、平行棒で14点台後半の得点をマークしました。最後の鉄棒では、G難度の「カッシーナ」を決めるなど、すべての技を大きなミスなくやりきり、14.666をマークしました。北園選手は、6日とこれまでの代表選考会の結果と合わせて東京オリンピックの代表に内定しました。北園選手も初めてのオリンピック代表です。 ●内村“完璧”求めてつかんだ切符 内村選手は、種目別の鉄棒のみに専念して1年余り、完璧な演技を追い求めながら4回目のオリンピックの切符をつかみました。 内村選手は、長崎県出身の32歳。3歳で体操を始め、日本体育大学などで練習を積みました。優れた空中感覚を持ち味に力をつけ、19歳で北京オリンピックの代表に選ばれ、団体と個人総合で銀メダルを獲得しました。 その後、着地の正確さと6種目すべてで難度が高い技を美しくこなす世界最高のオールラウンダーに成長。個人総合ではロンドンオリンピックから2大会連続金メダル、世界選手権は6連覇と圧倒的な成績を残しました。また団体でも日本の大黒柱としてロンドンオリンピックでは銀、リオデジャネイロオリンピックでは金メダルを獲得しました。 しかし、リオデジャネイロの後は慢性的な肩の痛みに苦しみ、体の負担なども考慮して「オリンピック出場の可能性が一番高いと感じた」と去年、種目別の鉄棒に専念して東京オリンピックの出場を目指すことを決めました。 そして鉄棒の演技にH難度の大技で、2回宙返り2回ひねりの手放し技、「ブレットシュナイダー」を取り入れ、東京オリンピックの代表選考に臨みました。 代表選考会となった4月の全日本選手権と先月のNHK杯では圧倒的な演技で15点台のトップの得点をマークしました。 それでも内村選手は「練習ではもっといい演技ができているので、それが試合でできないといけない。自分が満足いく演技を求めていかなければいけないと思う」と満足せず、「一番目指しているものはやはり完璧な演技。人から“すごくよかった”と言われても自分が満足しないと僕は納得できない」と代表選考の結果ではなく、さらに高いレベルの演技を追い求めていました。 ●谷川航「目標は代表にではなくてオリンピックで金メダル」 谷川航選手は、千葉県出身の24歳。抜群の跳躍力と着地の正確さでゆかと跳馬を得意とし、高校3年生だった2014年に全日本種目別選手権のゆかで3位に入り、2年後の同じ大会では跳馬で優勝しました。 2017年に初めて世界選手権の代表となり、その後、3年連続で代表に選ばれています。4月の全日本選手権では、跳馬で世界最高難度となる大技で、前転とびからの2回宙返りに半分のひねりを加える「リ・セグァン2」を決め、ほかの種目も安定した演技で2位となりました。 先月のNHK杯では2位以内に入れば東京オリンピックの代表に内定しましたが、3位となって、代表内定は持ち越しとなっていました。 男子団体の代表に内定した谷川選手は「目標は代表に入ることではなくてオリンピック本番で金メダルをとることだが、初めてのオリンピック代表なのでうれしい気持ちとホッとした気持ちが強い。小学校で体操を始めた時からの夢でついに代表に入れたので、このチャンスをモノにして金メダルを取れるようにあと1か月、全力でやっていきたい」と真剣な表情で話していました。 代表選考会を振り返り「あん馬や鉄棒など、ミスがところどころあったのが反省点だ。オリンピックのかかる選考会で緊張感がとても高かった。その中で演技ができたことは成長だが、ミスをしなければ団体や個人でも金メダルの可能性が広がるのでミスをしないことを突き詰めていきたい」と話していました。 そして、個人の枠で代表の内定を決めた内村航平選手について「団体のメンバーではないが、オリンピック本番まで一緒に練習や強化合宿ができると思うし、選手村でも話をする機会があると思う。今回の団体のメンバーは、誰もオリンピックを経験したことがないので、アドバイスをもらえたら」と内村選手の経験に期待していました。 ●北園丈琉「金メダルを絶対 使命感感じている」 北園丈琉選手は、大阪出身の18歳。3歳の時に競技を始め、体操の強豪、大阪の清風高校で練習を積みました。身長1メートル56センチと小柄ながら、力強い体幹を生かして手足の先まで伸びた美しい姿勢で6種目すべてで安定した演技ができるのが強みです。 2018年に行われたユースオリンピックでは、個人総合と種目別で合わせて5つの金メダルを獲得しました。そして去年の全日本選手権で2位に入るなど東京オリンピックの延期で代表争いに名乗りを上げました。 しかし、ことし4月の全日本選手権で、ひじをケガし、その後の代表選考に向けてコンディション面が心配されていました。 北園選手は、男子団体の代表に内定したことについて「出た種目のほとんどで自分のベストパフォーマンスが出せたので、素直にうれしいし、ほっとした。それとともに、金メダルを絶対に取らなくてはいけないという使命感を感じている」と話しました。 4月の全日本選手権では、予選でトップに立ちながら決勝の最後の種目の鉄棒で落下してひじをけがしたことを踏まえ「代表選考会は本当にいろいろとあり、すごい経験をしたなと思っている。けがをしてしまったが、諦めずにやってきてよかった。応援してくれた皆さんのおかげだと思うし、感謝しかありません」とときおり笑みを浮かべて話しました。 個人枠での代表内定を決めた内村航平選手については「代表内定をしたあと、“よかったな”と声をかけてもらいました。内村選手とオリンピックに行くのが夢であり目標だったので、一緒に行くことができてよかった」と笑顔を見せました。 そして、ことし3月に卒業した大阪の清風高校は、アテネオリンピックの金メダリスト、米田功さんなど多くの体操選手が卒業したことを踏まえ「中学生のころから、学校に飾られている偉大なオリンピアンの先輩たちのパネルを見て、自分も先輩たちみたいになりたいと思って練習をしてきた。本当によかった」と話していました。 ●米倉英信「今後の大きな試合や人生に強みになる」 米倉英信選手は、内村航平選手との争いで代表を逃し「あと一歩で負けてしまった。この3か月の間、気の抜けない時間を過ごした。オリンピックの権利を取ることはできなかったけど、今後の大きな試合や人生に強みになる。トップ争いができて誇らしく思う」と振り返りました。 また、内村選手が満足のいく演技を出せないまま内定を勝ち取ったことを謝ってきたことを明かし「演技のあと、“すみませんでした”と言われたが、内村選手だったら絶対に金メダルをとってくると思う。僕は、今月のワールドカップで代表になれるように頑張ろうと切り替わった」とオリンピックの代表がかかる今月のワールドカップに向けて気持ちをあらたにしていました。 ●杉野正尭「悔しい思い」 東京オリンピックの代表を逃した杉野正尭選手は「本当に悔しい思いだ。鉄棒はこん身のできだったが、それでも一歩届かなかった。自分のなかではいつも通りだと思っていたが、そうではなかった。平常心を保とうと思いすぎた結果、あん馬で旋回が小さくなって落下につながってしまった」と厳しい表情で6日の演技を振り返りました。 最後の種目の鉄棒で着地を決めたあと、涙を流したことについて「代表を争っていた北園丈琉選手の演技を見て完璧をねらわないといけないと思っていた。手放し技をすべて成功させて、乗っかっていたものすべてから解き放たれて、気付いたら涙が出ていた」と振り返りました。 そして、今後に向けて「0.1も取りこぼせないような試合運びをしていかないといけないと感じたし、もっと強くなって代表を勝ち取りたい。次のステップに向かって一から体操を見直して強くなっていきたい」と再起を誓っていました。 ●日本体操協会 水鳥 男子強化本部長「このメンバーで金メダルを」 日本体操協会の水鳥寿思男子強化本部長は「長い戦いだったが、やっと代表選手を決定することができてほっとしている。これ以上ないくらい歴史に残る代表選考会だったと感じているし、それぐらい高いレベルだった。今回、代表に入れなかった選手も代表の選手と同じくらいメダルを狙える選手だ。それを今大会で感じることができた。選手の頑張りもうれしかったし、このメンバーで金メダルを取りたいという気持ちが高まった」とこれまでの代表選考会を総括しました。 団体のメンバー4人については「日本が一番、胸を張って送り出せる4人だ。率直に金メダルを狙えるメンバー」と評価したうえで、今大会で内定した谷川航選手について、「得意の跳馬、平行棒、つり輪で日本の選手が取れないところのレベルまで取ることができる選手だ。そのスペシャリストとしての貢献に加えて、個人総合の力もあるのでオールマイティに活躍できる。精度を高めれば日本の要として活躍してくれると思う」と話しました。 北園丈琉選手については、全日本選手権の決勝でひじにけがを負ったことを踏まえ「ここまで戻ってくるとは誰も想像できなかった。ケガで調整が大変な中、これだけ安定してできることは、先に決まった2人と劣らない同じレベルかそれ以上の力があると思う」とたたえました。 個人枠で代表に内定した内村航平選手については「内村選手の鉄棒をオリンピックで世界の人に見てもらいたかったので代表に決まってすごくうれしい。4月からの代表選考でこれだけの演技をやっていながら、ここまで追い込まれると想像していなかった。それくらい、代表を争った米倉英信選手がすばらしかった。この苦しい戦いを勝ち取ったのでさらに強くなってオリンピックで金メダルを取る可能性がより高まったと思う」と話しました。 さらに、内村選手が団体メンバーに与える影響について「メンバーが誰もオリンピックを経験していないので、選手の中には怖さもあると思う。内村選手の一つ一つの声掛けが選手に安心感を与えてくれる。彼が“大丈夫”と言うだけで、選手は大丈夫だと思う。団体にいなくても中心選手として活躍してくれる。彼を中心に戦ってきたい」と期待を寄せました。 ●謎の制限だらけの東京オリンピック 6/6 ランナーよりスポンサー車両が目立つ2021年の聖火リレーは、福島県からスタート。主役は誰?(福島県いわき市で2021年3月25日撮影) 「IOCのルールに則り、動画は28日夕方までに削除します。このルールは『新聞メディアが撮影した動画を公開できるのは走行後72時間以内』というもので、2月に報道陣に伝えられました。今回の件で抗議や圧力があって削除するものではありません」 これは、3月28日の「東京新聞編集局」のツイートだ。削除するとした動画とは何か。25日からスタートした、東京五輪聖火リレーの模様を記者が沿道から撮影した映像だ。聖火ランナーの前を走る大会スポンサーの宣伝車両が、実に騒がしく通過していく。車両の上では「踊って楽しみましょう」とDJが叫んでいる。復興を後回しにして五輪を優先したくせに、「復興五輪」という名称を形だけ繰り返し喧伝した結果、聖火リレーのスタートに福島県が選ばれた。あまりに失礼な判断なのに、その地で宣伝車両が爆音で走り抜けたのだ。その模様を映した動画は多く拡散されたが、この「新聞メディアが撮影した動画」は公開が制限されるという。 実に奇妙だ。学生時代、映像制作会社でアルバイトをしていたので、アーティストの来日公演の撮影にしょっちゅう出向いていたが、大御所になればなるほど撮影の条件が厳しくなり、「頭の3曲だけ」や「冒頭の演出は撮影するな。1曲目の途中から45秒だけ使用可」といった指示が下されていた。プロモーター側とアーティスト側の意思疎通が不十分な日もあり、「頭3曲」と言われていたのに、2曲目の時点で屈強なローディから叱責され退場させられたこともある(ちなみに、アメリカのヘヴィロックバンド・DISTURBEDの公演で、彼らの曲を聴くと、いまだにあの叱責が蘇る)。でも、こうして撮影が制限されるのは、当然である。なぜって、彼らは、お金を払って観に来たお客さんに向けてライブをやっているから。映像をどこまで提供するか(の権限)は、彼らに握られていて当然。 では、聖火リレーはどうだろう。東京新聞の記者は、ヘリコプターに乗り込んで、許可なく国立競技場の上空から100メートル走を空撮したわけではない。誰だって通ることのできる道で行われた様子を映したら、それに制限がかかるというのだ。大きな音を鳴らしながら道を練り歩いて、おい、撮るな、アップするな、まぁしてもいいけど72時間な、って、だいぶ偉そうである。 そう、偉そうなのだ。オリンピックって、偉そうなのだ。どこかの国家が主催するわけではないし、それ専用に厳しい法律が用意されるわけでもない。ひとつの団体が、どこかの街を選んで、大規模なスポーツ大会をするだけだ。なぜ、報じる側を制限することができるのだろう。そして、なぜ、それに応じるのだろう。 あちこちに制限がある。日本オリンピック委員会(JOC)のウェブサイトに「東京2020オリンピック競技大会に関する知的財産保護・日本代表選手等の肖像使用について −マーケティングガイドライン−」と題した資料が公開されている。「オリンピックに関する知的財産の保護とアンブッシュ・マーケティングの防止に、ご協力いただきますようお願い申し上げます」とある。アンブッシュ・マーケティングとは、「故意であるか否かを問わず、正当な権利を有していないにも拘らず、オリンピックの知的財産を使用したり、オリンピックの知名度、評判、イメージ等を利用または流用する、いわゆる便乗広告」のことで、「オリンピックをイメージさせるおそれのある広告やPR」をするな、などと書かれている。大会組織委員会や日本広告審査機構が例示したところによれば、「目指せ金メダル」や「祝・夢の祭典」もアンブッシュ・マーケティングに該当する可能性があるとのことだから、そう聞くと、やっぱりもう一回、偉そうだなと口に出してしまう。 スポンサー(オリンピックパートナー)の権利保護のためと主張するが、ひとつの催事を盛り上げるために、様々な声があがるのを制限するって珍奇だ。権利保護ではなく、権利を独占させるために、外野を制限していく。もう皆に周知されているように、東京で行われるオリンピックなのに、競技時間がやたらと朝早かったりするのは、多額の放映権料を払っているアメリカの放送局に配慮したから。IOCは、この放映権料を頼りにしているので、開催地のコロナ感染状況がどうであろうと、とにかくやってもらわなければならない。インバウンドで景気活性化を目論んでいた日本は、その道を絶たれた上で、場所だけ貸す形となった。なぜやるのか、本当にできるのか、といった問いから逃げたまま、聖火リレーをスタートさせた。で、偽りの「復興五輪」をわざわざ立証するかのようなドンチャン騒ぎの聖火リレーをして、その映像を削除させる。 仕組みが歪んでいる。組織が暴走している。利権が稼働している。個人が潰されている。スポーツが曲解されている。それでも開催するのだろうか。どんなに開催が近くなろうが言う、中止したほうがいい。 ●丸川珠代五輪相&橋本聖子会長の発言に疑問 6/6 お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志が、6日放送のフジテレビ系『ワイドナショー』(毎週日曜 前10:00)に出演。開幕が迫ってきた東京オリンピックについて、丸川珠代・五輪担当相や橋本聖子・東京オリパラ組織委員会長の発言について「どんどん国民を分断させていく」と疑問を呈した。 東京五輪については、新型コロナ対策分科会の尾身茂会長が「こういう状況で何のためにやるのか」と懸念を示し、丸川珠代五輪担当相は「われわれはスポーツの持つ力を信じて今までやってきた。別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらいというのが私の実感です」と見解を述べるなど、平行線となっている。 松本は「我々はなんとしてでも選手の命を守る」といった発言について「あれを言うからみんな気持ちが変になっていく、これって何のために言ってんねんやろって思う。本人たちはそういう意識ないのかもしれないけど、オリンピックを反対している人たちに言ってるんじゃないですよね。オリンピックをやろうて言うている人たちにネジ撒いてるというか、『あなたたちもっと声を上げて、オリンピック反対している人達の声を聞こえなくしてくれ』っていうね」と指摘。 賛成派と反対派の分断が広がっていく危険性があり、「全然平和の祭典からかけ離れていく発言やと思うんですよ」と持論を述べ、「ああいうのって、小池(百合子・東京都知事)さんは言わないですよね、うまいから」と付け加えた。 また、「コロナの立場になって、あいつらが一番嫌がることをやっていくっていうことを考えたほうがいいのではないのかなと思います」と“コロナ目線”での検討も必要だと指摘。「そこを考えると、なんとなく答えが見つかってくるような気がする」と語った。 |
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●開催可否で紛糾も 結局、東京五輪は行われそうなワケ 6/7
新型コロナの感染拡大やIT技術の急激な進化で、多くの企業がビジネスモデルの抜本的な転換を迫られています。そんななか最も必要とされるのが一社員の「思考力」です。当連載では歴史の風雪に耐えた基礎的な理論・フレームワーク(思考の枠組み)を紹介し、現在でも色あせないその魅力について学んでいきます。第4回の今回紹介する理論・フレームワークは「意思決定とプロスペクト理論」です。これらの理論を使って、現在話題となっている東京オリンピック開催について考えます。 人生は、進学・結婚・就職・転居など意思決定の連続です。良い意思決定をできれば、人生は豊かになります。ただ、ときに極めて難しい意思決定に直面することがあります。 今、日本人の頭を悩ましている難しい意思決定は、何と言っても東京オリンピックでしょう。7月23日の開幕が迫り、緊急事態宣言が発令されている状況で予定通り開催するべきか中止するべきか、揺れ動いています。 オリンピックの意思決定が難しいのはなぜでしょうか。それにはいくつか理由があります。 第一に、誰がどう意思決定をするのか不明確なことです。 オリンピックの開催都市契約では、中止を決定できるのは主催者の国際オリンピック委員会(IOC)だけです。ただ、この契約はIOCと開催都市・東京都との間で交わされたもので、国家間の条約ではないため、日本政府は契約履行の義務を負いません。今からでも中止に向けてIOCと交渉することが可能です(また交渉が決裂しても、選手の入国や競技施設の利用を制限するなどの方法で中止にすることができます)。 では、IOC・日本政府・東京都という当事者が話し合えば済むかと言うと、そうではありません。 オリンピックは世界的な大イベントなので、国内外の世論、アメリカ・中国など主要国や競技団体の意向なども考慮する必要があります。東京都民も意思決定者なのです。いずれによ、さまざまな関係者が絡み、誰がどうやって意思決定するのか混とんとしています。 第二に、政治的な意思決定であることも厄介です。 「(コンビニが)新しい商品を発売するべきか?」といった経済的な意思決定ならメリット・デメリットを定量的に比較すれば良いのですが、政治的な意思決定では主義・信条・政治的パワーなどが優先されがちです。主義・信条に絶対の正解はないので、対立はなかなか解消されず、関係者が納得できる意思決定に到達しません。 第三に、メリット・デメリットの比較が難しいことです。 開催すれば、世界に夢と希望を与えることができますし、東京都はIOCに違約金を払わずに済みます。一方、新型コロナの感染拡大と医療崩壊が懸念されます。中止すれば、その逆が起こります。夢・希望、経済損失、国民・選手の安全というまったく内容の違うことを比較するのは、容易なことではありません。 第四に、「どちらがメリットが大きいか?」ではなく、「どちらがデメリットが小さいか?(= どっちがマシか?)」というタイプの意思決定であることです。 人は、「今日のランチはラーメンかカレーかどっちにしよう?」といったメリット(この場合はおいしさや空腹感の解消)の大きさを比較する意思決定は比較的スムーズにできます。しかし、今回のように、どっちに転んでも良い結末にならなさそうなことは、「あまり考えたくない」と先送りにしがちです。 3点目と4点目のメリット・デメリットの比較について、少し詳しく考えてみます。 今回とりわけ難しいのは、開催した場合の感染拡大・医療崩壊というリスクをどう評価するかでしょう。菅首相やIOCは、日本国内でプロ野球やテストイベントが開催されていることから、「リスクは十分にコントロールできる」としています。 一方、開催反対派(中止派)は、「プロ野球とオリンピックでは規模が全然違う」と主張します。 ここで、オリンピックとプロ野球を比較すると、オリンピックは国外から多数の選手・関係者が来日することがリスク要因です。ただし、彼らはワクチンを接種しています。プロ野球は、観客数は少ないですが、大半がワクチンを接種していません。 ということで、オリンピックもプロ野球も「どっちもどっち」というところですが、現在、各種の世論調査で過半数の国民がオリンピック開催に反対しているのに対し、「プロ野球を中止にせよ」という声はほとんど耳にしません。 行動経済学の「プロスペクト理論」によると、人間は利益から得られる満足より、同じ額の損失から得られる苦痛の方が大きいため、損失を利益よりも大きく評価します。人間にはリスク要因に対してより強く反応するという習性があるわけです。 オリンピックについては、「夢・希望」といった一般的な利益やプロ野球と比べた「選手・関係者はワクチン接種済み」というプラス面よりも、「国外から多数の選手・関係者が来日する」という損失(マイナス面)に注目が集まるのです。 リスク要因をより大きく評価するというプロスペクト理論の教えからすると、今後、選手・関係者の来日が近づくにつれて、「本当に大丈夫か?」という懸念が強まり、反対派の声がさらに大きくなると予想されます。 では、反対派の世論が大きくなったら、最終的に中止が意思決定されるでしょうか。これはなかなか微妙なところです。 オリンピックの「開催」は、すでに2013年に意思決定されています。それに対し「中止」は、これから新たに行う意思決定です。先ほど紹介したオリンピックの意思決定の四つの難しさからすると、開幕が約50日後に迫った現在の状況で新たに大きな意思決定をするのは、極めて難しいでしょう。 ということで、良いか悪いかは別にして純粋に意思決定論の分析からは、「時間切れで中止を意思決定できず、オリンピックは開催される」と予想されます。 ●JNN世論調査で五輪「開催」44%、「中止」3割、「延期」2割超 6/7 東京オリンピック・パラリンピックについてJNNの世論調査で尋ねたところ、「開催すべき」と答えた人が44%に達する一方、「中止すべき」「延期すべき」もそれぞれ31%、24%と回答が割れました。 菅内閣を支持できるという人は、先月の調査結果より1.0ポイント下落し39.0%と、政権発足後最低を更新しました。支持できないという人は1.3ポイント増え58.3%でした。 新型コロナウイルスの感染防止に向けた政府のこれまでの取り組みについて聞いたところ、「評価する」は34%、「評価しない」は57%でした。政府が9都道府県への緊急事態宣言を今月20日まで延長したことについて、「適切だ」と答えた人が42%でしたが、「短すぎる」も33%でした。また、酒類を提供する店舗への休業要請については「妥当だと思う」が58%、「妥当だとは思わない」が36%でした。 ワクチン接種について聞いたところ、「接種したい」と「もう接種した」が合わせて78%に達しました。どこで打ちたいか尋ねたところ、もっとも多かったのは「かかりつけ医などの医療機関」の48%で、いわゆる”職域接種”を希望する人は20%でした。 政府が目指す、希望するすべての高齢者への7月末までの接種については、「できると思う」と答えた人が先月より3ポイント増えたものの23%にとどまっています。 今年夏に予定される東京オリンピック・パラリンピックについてどうすべきか聞いたところ、「開催すべきだ」が合わせて44%に達しました。一方で、「中止すべきだ」が31%だったほか、24%の人が「延期すべきだ」と回答しています。 LGBT=性的少数者などに対する理解増進に向けた法案については、この国会で「成立させるべきだ」が57%、「成立させる必要はない」は24%でした。 ●武蔵野市パブリックビューイング中止要望 都知事「確認する」 6/7 東京オリンピック・パラリンピックの期間中に井の頭公園で計画されているパブリックビューイングなどを含むイベントについて、地元の武蔵野市が中止を求める要望書を都に提出したことについて、小池知事は「このあと確認したい」と述べました。 都と組織委員会が東京大会の期間中、パブリックビューイングなどを行うイベント会場「ライブサイト」を井の頭公園に設置する計画について、地元の武蔵野市は今月4日、中止を求める要望書を都に提出しました。 これについて小池知事は7日、記者団に対して「ご要望をいろいろ書いていると聞いている。このあと確認したい」と述べました。 東京大会でパブリックビューイングの会場を設ける計画がある都内の自治体が、都に中止を要望するのは武蔵野市が初めてです。 ●五輪の「スーパースプレッダー」を危惧、現状での開催に米専門家が警鐘 6/7 東京オリンピックが開幕する7月23日まであと50日を切った。予定通りに開催されれば異例づくめの大会になる。当日は大会に関する大々的な報道が予想されるが、それ以上に大きく、もっと重要なのは、公衆衛生に関する報道だ。 日本の新型コロナウイルス感染は高い水準で推移し続けている。その水準は、大会の延期が決まった1年前をはるかに上回る。国民へのワクチン接種開始は遅れ、医療態勢は逼迫(ひっぱく)している。朝日新聞は国民感情を反映して先月、大会の中止を訴える社説を掲載した。 それでも日本は予定通りに開催すると宣言しており、あと数週間もすれば大勢の選手団や関係者、報道陣が東京に降り立つ。この状況は、2021年の東京オリンピックが感染の激増を引き起こす「スーパースプレッダーイベント」として記憶されることになるかどうかも含め、幾つもの疑問を生じさせる。 医療倫理を専門とする米ニューヨーク大学グロスマン医学部のアーサー・カプラン教授は3日、CNNの電話取材に応じ、マスコミがこれまでのところ、大会をめぐる公衆衛生問題に十分な脚光を浴びせていない状況に強い懸念を示した。 米国では日常生活が元の状態に戻りつつあり、新型コロナの話は聞き飽きたと感じるようになっているが、そうした状況はニュース報道をゆがめかねないとカプラン教授は危惧する。「メディアにとっては大きな課題がある」「物事が正常に戻ったように描写したがる傾向が存在するが、世界の大部分はそうした状況にない」 「全ての大手報道機関には、スポーツ面だけでなく、公衆衛生面にも同じくらい注意を払う義務がある」「世界中の多くの国が、公衆衛生上の大流行のさ中にありながら、水球やホッケーの代表選手団を送り込むという事実を無視しないことが重要だと思う」とカプラン教授は言い添えた。 ジョージ・ワシントン大学のジョナサン・ライナー医学・外科学教授はマスコミの報道について、何よりも日本のワクチン接種について問いかけるべきだと強調する。 「日本は何千人もの人がかかわる巨大な国際イベントを実施したい意向でありながら、国内でワクチン接種を完了したのは国民のわずか3%にすぎない。スポーツイベントのためにそれほど多くの人材や資源を消費することは果たして公正なのか。資金や物理的資源はもっと多くの国民にワクチンを接種してもらうために費やした方が良くないか。大会組織委員会は選手全員にワクチン接種を義務付けるのか。ワクチン接種態勢が整わない国々からこれほど多くの選手がやって来るのに、それにまつわる倫理はどうなのか。日本が急増の波から立ち直ろうとしている時に、なぜこれほど多くの人を集めるのか」 大会には選手のほかにも大勢の関係者がかかわる。選手を支える何千人ものスタッフや、大会の取材に訪れる海外からの報道陣にも、ワクチン接種証明の提示を求めるのか。それは単純な疑問に思えるが、CNNが3日に取材した時点で、国際オリンピック委員会(IOC)からの返答はなかった。 米放送局のNBCは、そうした課題や中止を求める声を念頭に、大会をどう伝える予定なのか。同社広報は先にCNNの取材に対し「引き続き、7月23日から始まる東京大会の模様を米国の視聴者に届ける」ことに力を入れるとコメントした。 ●東京五輪「開催・中止」の議論の根底にある政治的な思惑 6/7 ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月7日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。開幕まで50日を切った東京オリンピックについて解説した。 イギリスの経済誌フィナンシャル・タイムズが6月4日、東京オリンピックの一部スポンサーが大会の延期を要求していると報じたことを受け、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は5日、「そのような要求はない」と報道を否定する見解を明らかにした。 飯田)オリンピック開幕まで残り50日を切ったというところで、さまざまな報道が出て来ました。 須田)どういう形でやるのかと言う以前に、「やるのか、やらないのか」という問題にもまだ決着がついていないのです。そこは流石に着地して欲しいですよね。選手がかわいそうですから。 飯田)選手は当然、やると信じて準備をしている人が多いですよね。 須田)日本政府は100%やるという方向で政治スケジュールを組んでいますから、余程のことがない限り、延期ないし中止になることはないのだろうと思います。 飯田)海外から人が来るというリスクの部分も言われています。「絞れるところは絞って」ということにはならないのですかね。 須田)その背景に、きちんとした根拠があり、リスクを並べた上で中止か開催かという議論が進んでいるのではなくて、政治的な思惑、特にこの秋にあると言われている解散総選挙を意識したなかで、中止か開催かの議論が進んでいるところが、大きな問題なのではないでしょうか。 飯田)直近に都議選があり、その先には衆議院選が今年(2021年)の10月までにはあるだろうと。その前に自民党は総裁選もあるかも知れない。いろいろと絡み合って来ますね。 須田)開催か中止かによって、支持率が大きく揺れ動くではないですか。政府・与党のなかにも、「野党がそれについて利用しようとしているのだ」という認識が強くありますから、頑なになってしまうのです。弱みを見せたくない、問題点を明らかにしたくないというところがある。もちろん野党にも思惑があるでしょう。 須田)ただ与党の方も、オリンピックを既定路線として、そのあとに解散総選挙戦略を描いて来たという、与党側の政治利用もあるわけです。だからそこは一旦御破算にして、オリンピックについて、先ほど飯田さんがおっしゃったようにどういう形でやるのか、感染リスクを最小限にするためにはどうしたらいいのかというところを、きちんと議論して欲しいと思います。 飯田)6月7日に毎日新聞で、「風知草」というコラムを山田孝男さんが書いていらっしゃいますが、VIPの人たちを除いて、選手と関係者に関しては、ほとんど選手村との行き来だけで感染リスクはないだろうと。VIPの人たちや取り巻きを「バサッ」と削減することによって、感染リスクも減らせるし、スリムなオリンピックを目指せるのではないかと。そういうことはできないのですか? 須田)オリンピックそのものが、ある種の商業主義的な側面が強いから、果たして思い切ってできるかどうかという問題もあるのだろうなと思います。 ●「五輪やれる状況にない」中止求める要望書 札幌 鈴木知事は 6/7 東京オリンピックの開幕まであと50日を切りましたが、新型コロナウイルスの「第4波」の収束が見通せないなか、北海道の労働団体が、北海道にオリンピック中止を求める要請書を提出しました。 「東京オリンピックの中止」を求める要請書を鈴木知事宛に提出したのは、北海道労働組合総連合です。 団体では新型コロナの感染拡大で医療体制のひっ迫が続いているとして北海道が国に対して、オリンピック中止を求めるよう要請しています。 (北海道労働組合総連合 三上友衛議長)「現場ではどの方を入院させるか命の選別が始まっている。さらなる負荷を強いる五輪を今はやれる状況にないと」 鈴木知事は通常開催について国民の理解を得られないとの見方を示しつつも、感染対策を徹底して準備を進めるとしています。 ●東京五輪・パラの中止求める陳情 都議会で不採択に 6/7 東京オリンピック・パラリンピックの中止を求める陳情の採決が東京都議会で行われ、不採択となりました。 東京都議会の定例会は7日が最終日で、議案の採決が行われました。 このうち、埼玉県の住民が、東京オリンピック・パラリンピックを中止し、経費の剰余金を生活に困窮している都民の救済にあてるよう求めた陳情は、不採択となりました。 不採択に賛成した会派は、都民ファーストの会、自民党、公明党です。 反対した会派は、共産党、立憲民主党です。 このほか、7日の本会議では、ワクチン接種を進めるため、都が大規模会場を都内5か所に設ける費用や、地域の診療所が高齢者にワクチン接種を行った場合の協力金などを含む、総額4552億円の補正予算案が可決・成立しました。 ●埼玉県 東京五輪・パラのパブリックビューイング 中止を決定 6/7 埼玉県は、東京オリンピック・パラリンピックの大会期間中に予定していた県内2か所でのパブリックビューイングのイベントについて、新型コロナウイルスの感染状況などを踏まえ、中止することを決めました。 これは7日、埼玉県の大野知事が会見で明らかにしました。 それによりますと、埼玉県と組織委員会はオリンピックやパラリンピックに関するイベントについて、ことし4月に感染拡大を考慮してパブリックビューイングのみの実施とすることを決めましたが、その後、県が感染状況を踏まえ、パブリックューイングの中止も決めたということです。 大野知事は「本来ならば皆さんに集まっていただき感動や興奮を共有する場を提供したかったが、今はその目的が達成できるとは思えない状況だ。主催者として判断せざるをえなかったが、大変残念な気持ちだ」と述べました。 ●棒読み菅首相、五輪判断の基準示せず正念場 6/7 菅義偉首相は7日の参院決算委員会で、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック開催をめぐり、これまで同様に具体的な判断基準を明示しなかった。関係閣僚の援護射撃も反発する野党に火に油を注ぐ展開となり、野党から求められた五輪開催の可否を新型コロナ対策分科会(尾身茂会長)への諮問も却下した。1対1で臨む、あす9日の党首討論では、さらに激しくなる野党の追及をかわせるかが焦点となる。 国会会期末(16日)を控えた締めくくり総括審議で、菅首相が野党から集中砲火を浴びた。立憲民主党の福山哲郎幹事長から五輪開催の判断基準をただされたが、「選手や大会観戦者の感染対策をしっかり講じて〜」など、質問内容とズレた答弁を棒読みした。 首相は追及の嵐に「命と健康を守っていく。これが開催の前提条件。前提が崩れれば、こうしたこと(五輪)は行わない」などとした。だが、福山氏から「前提が崩れるか、どうかは何で判断するのか」と問われ、またも「選手や大会観戦者の感染対策を〜」と棒読み。 炎上を予見した閣僚がフォローしたが、チーム菅の援護射撃は、火に油となった。菅首相が福山氏から判断基準について「イエスか、ノーかで」と迫られると、丸川珠代五輪担当相がPCR検査など関係のない説明を始め、野党の反発で質疑は約3分間ストップするなど、大荒れ模様となった。 首相は「尾身(茂)会長の分科会に、正式に五輪に対しての条件を諮るべき」と迫られると、西村康稔経済再生相が「分科会はオリンピックの開催の可否など審議する場所ではありません。権限はありません」と却下。野党から反発が広がった。一方で20日の緊急事態宣言の解除期限について、首相は「専門家のみなさんの意見を伺う中で判断する」と発言。委員会後の会見で福山氏は「ダブルスタンダード(二重基準)だ」と猛批判した。 あす9日、約2年ぶりの党首討論は1対1で援護なし。五輪開催の可否をめぐって、さらに激しい論戦は必至。11日から英国で開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)へ旅立つ直前、正念場を迎える。 ●五輪パラ開催“国民の命と健康を守ることが前提条件” 6/7 菅総理大臣は、参議院決算委員会で、東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、国民の命と健康を守ることが開催の前提条件だとして、実現に向けて感染対策に全力を挙げる考えを示す一方「前提が崩れれば、そうしたことを行わない」と述べました。 自民党の舞立昇治氏は、新型コロナウイルスの影響を受けた事業者への支援について「債務の一部免除などの措置を講じるかどうかで、コロナ危機への国の対応として評価は大きく分かれる。何らかの救済措置を検討するなど、前向きな答弁をお願いしたい」と問いました。これに対し、菅総理大臣は「官民の金融機関に対して、既存の融資の条件変更や返済猶予などについて柔軟に対応するよう、配慮を要請している。引き続き、事業者の声にも耳を傾けながら、事業と雇用、暮らしを支えていきたい」と述べました。 立憲民主党の福山幹事長は、東京オリンピック・パラリンピックをめぐり「できるかぎり、開催したいと思うが、何が何でも強硬に開催すればいいというものではない。開催を可能とする医療体制や感染者の数といった基準を示す必要がある」とただしました。これに対し、菅総理大臣は「感染対策をしっかり講じて、世界から選手が安心して参加できるようにするとともに国民の命と健康を守っていく。これが開催の前提条件だ。実現できるように対策を講じていくが、前提が崩れれば、そうしたことを行わないということだ」と述べました。 公明党の高瀬弘美氏は、ワクチン接種について「国民が知りたいのは、今後の見通しだ。ゴールの見えないマラソンを走り続けるのはつらいが『ここを曲がればゴールが見えてくる』となれば気持ちは全然違う」と指摘しました。これに対し、菅総理大臣は「7月末までに高齢者への接種を終えるべく、加速化を推進し、6月中旬以降、職場や大学などでの接種を開始する。接種回数は日増しに増加していて、総接種回数が毎日80万回前後増え、合計で1700万回を超えている。全力で接種に励んでいきたい」と述べました。 日本維新の会の柴田巧氏は台湾をめぐる問題について「今週末のG7サミット=主要7か国首脳会議の場で、台湾海峡の平和と安定の重要性をしっかりと主張するべきで、関係国にも理解と協力を得ることが大事だ」と指摘しました。これに対し、菅総理大臣は「従来から、台湾をめぐる問題が、当事者間の直接の対話によって、平和的に解決されることを期待する方針は一貫している。議題は、議長国であるイギリスが調整中だが、わが国の一貫した立場を踏まえつつ、適切に対応していきたい」と述べました。 国民民主党の会派に所属する上田清司氏は個人情報の保護をめぐり「デジタル化は、大量に個人の情報などが流出する側面も持っている。内閣官房などで個人情報が流出したニュースも流れている。個人情報の保護が極めてぜい弱ではないか」とただしました。これに対し、菅総理大臣は「デジタル改革を強力に進める中で、個人情報の保護が大変重要だ。今国会で、個人情報保護委員会の権限を強化し、一元的に監視・監督する法律改正が行われた。公共機関での個人情報の適切な取り扱いは、しっかり確保していきたい」と述べました。 共産党の小池書記局長は、東京オリンピック・パラリンピックの開催をめぐり「菅総理大臣は『命と健康を守れなければ五輪はやらない』とはっきり言った。政府の分科会の意見を求めることを、なぜやらないのか。都合の悪い意見を言われたら困るからだとしかとれない」とただしました。これに対し、菅総理大臣は「政府としては、分科会については、感染拡大や感染状況について対応するところだと思っている。感染状況について、例えば、緊急事態宣言をする場合などに分科会に諮って決めているということだ」と述べました。 また、政府の分科会の尾身会長は「感染症対策を提言してきた者としては、オリンピックを開催することによって、どういうリスクがあるのかや、どう低減できるかというような選択肢も含めてやることは、われわれの責務だ」と述べました。 一方、菅総理大臣は、LGBTの人たちへの理解を促進するための法案をめぐり「議員立法で、政府としてコメントは差し控えるべきだ。自民党総裁としてあえて申し上げれば、自民党は公約として『LGBTに関する議員立法の速やかな制定を実現する』と掲げている。対応は党の執行部に一任しているが、国民の皆さんとの約束を果たすよう、党でしっかり取り組んでいく」と述べました。 このほか、萩生田文部科学大臣は、学校での集団接種について「基本的に、小中学生は集団接種を前提には考えていない。12歳以上の接種が可能だという通知が出ているが65歳まで終わったら、その次の年代や、基礎疾患のある方を優先的にやるべきで、ある自治体が『すべて終わったから、子どもたちにも打つ』というのは、やや順番が違うのではないか」と述べました。 ●参議院決算委員会 関連発言 自民党の二階幹事長は記者会見で、東京オリンピック・パラリンピックについて「野党はいろいろ言うだろうが、われわれは菅総理大臣の方針どおり、しっかり党をあげて協力していきたい」と述べました。また、9日の党首討論について「日頃の考えをしっかりと述べてもらえれば、党は、いかなることがあっても菅総理大臣をしっかり支えていくので、後ろを振り向くことなく、しっかりと討論して国民の期待に応えてもらいたい」と述べました。 立憲民主党の枝野代表は、党の役員会で「東京オリンピック・パラリンピックを開催して国民の命と健康を守れるのかということについて政府は全くのゼロ回答で、何の根拠もない。何ら裏付けのない妄言を吐いているような状況だったことを大変残念に思う。開催を強行するのなら、国民がきちんと安心できるよう説明してもらわなければならず党首討論で迫っていく」と述べました。立憲民主党の福山幹事長は、記者団に対し「安心安全な大会の開催には医療体制や感染者数の指標などの判断基準がいるが、政府は何も答えず全くもって不誠実な答弁だった。だからこそ『専門家の分科会に諮るべきだ』と求めたが、こちらも明確な答弁はない。一方で6月20日に緊急事態宣言は解除されるのか問うと、そちらは専門家に聞くという姿勢は、ダブルスタンダードもいいところだ」と述べました。 共産党の小池書記局長は、記者会見で「自信なさげで総理大臣の答弁としては、もの足りなかった。短いフレーズで答弁し、自分のことばで語ることが全然なかった。どうしても大会を開催したいのであれば、具体的にどういうリスクがありそれをどのように克服するか語るべきだ。そういう説得力のある話はついぞ聞かれなかった」と述べました。 ●東京五輪、首相「私自身は主催者ではない」…開催の判断基準を明言せず 6/7 菅首相は7日の参院決算委員会で、東京五輪・パラリンピックの開催について、「世界から選手が安心して参加できるようにし、国民の生命と健康を守っていく。これが開催の前提と考えている」と述べた。新型コロナウイルスの感染対策と大会開催を両立させる考えを改めて強調したものだ。 首相は「生命と健康を守れなければ(大会を)やらないのは当然だ」と語り、開催の前提条件について「国際オリンピック委員会(IOC)にもしっかり申し上げたい」と述べた。ただ、開催判断に関しては「私自身は主催者ではない」と述べるにとどめ、可否を判断する具体的な基準も明言しなかった。 野党は、政府の対策分科会(尾身茂会長)に開催の是非を諮問するよう求めた。西村経済再生相は「分科会は五輪の開催の可否を審議する場所ではない。そういう権限はない」と否定的な考えを示した。尾身氏は、五輪を開催した場合のリスクを検討するのは「我々の責務だ」と語った。 一方、首相は、総務省の接待問題などの不祥事が相次いでいることについて、「行政に対する国民の信頼を大きく損なう事態となり、政府として深く反省しなければならない。国民の行政に対する信頼回復に努めていきたい」と語った。 ●東京オリンピック幹部、列車に飛び込んで死亡 6/7 今年7月に開かれる東京オリンピックを準備していた日本オリンピック委員会(JOC)の幹部が7日午後、都内の地下鉄に飛び込んで死亡した。ロイター通信が明らかにした。 警察の調べでは、死亡したのはJOCの経理部長で、自ら列車の前に飛び込んだことが分かった。 警察は、オリンピック関連の理由で死亡したのかどうかなど捜査を続けていると発表した。 ●JOC幹部「自殺報道」が海外でも波紋 韓国ではあらぬ憶測も 6/7 日本オリンピック委員会(JOC)の経理部長とみられる男性が電車にはねられて死亡した問題が、海外でも波紋を広げている。 7日午前9時20分ごろ、東京・品川区の都営浅草線中延駅で50代男性が電車にはねられ、搬送先の病院で死亡が確認された。死亡したのはJOCの経理部長とみられ警視庁は自殺とみて調べているが、JOCは「事実関係を確認できていません」と話している。 まだ捜査中で詳細は判明していないが、東京五輪の開催が危ぶまれる中でのショッキングな出来事だけに米誌「ニューズウィーク」や英紙「イブニングスタンダード」など欧米の有力メディアも一斉に報じた。 また、韓国のテレビ局「MBN」は「東京五輪にまた悪材料だ。日本オリンピック委員会で、大会の費用が不透明に費やされているという疑惑に包まれた状態になる」と東京五輪と関連づけて報道。ただ、東京五輪の費用は大会組織委員会の管轄で、JOCは実質的に無関係と言えるだけに、これは根拠のない憶測の域を出ない。 ショッキングな事件≠セけに、あらぬ憶測が広がってしまっているようだ。 ●「決断できず、責任も取れない…偉い人は何のためにいるのか」 6/7 東京オリンピック・パラリンピックを前に、政府の新型コロナ対策分科会・尾身会長の発言が波紋を呼んでいる。尾身会長は3日の参議院・厚生労働委員会において「開催すれば国内の感染あるいは医療の状況に必ず何らかの影響を起こす」「今の状況でやるということは普通はない。やるなら強い覚悟で」「何のためにやるのか。それがないと、一般の人は協力しようと思わない」などと述べ、現在の状況において東京五輪を開催することに対して、強い懸念を示すと、田村厚生労働大臣が「自主的な研究の成果発表」と述べたのに対し、丸川珠代東京オリンピック・パラリンピック大臣は「全く別の地平から見てきた言葉」などと話して批判を集めた。 「許せない。判断できないときは専門家に委ねますと言って、都合が悪いと自主研究と言う。何と学問を侮辱するのか。学術会議のときもそうだったが、学問というのは科学的根拠やそれまでの積み重ねによって成り立っているもので、それを自分たちの都合によって捻じ曲げていいものではもちろんない」 一連の出来事について憤りを露にするのは、お笑いジャーナリストのたかまつなな。たかまつはさらに「偉い人は何のためにいるのか…決断するため、責任を取るためにいる。そのために私たちが選んでいるんですよと。勘違いしないで欲しい。決断もできない、責任も取れないって、何してるんだと思ってしまう」とも続ける。 フェリス女学院出身で元NHK職員、お笑いを通して社会問題に切り込む芸人という異色の経歴から有識者会議などに参加したこともあるというたかまつは、自身が見聞きした有識者会議の様子について「コロナの研究者が可哀そう。本当に酷い御用学者とかがいる。政府の考えを代弁したり、汲み取ったりする」と明かすと「それは学問ではないということを改めて日本社会全体で見直さないといけない」と持論を展開した。 「東京五輪は開催すべきではない」 開催自体について、そのように自身の意見を主張するたかまつ。仮に開催するのであれば「もし、これでも日本の国益のためにやるべき理由があるとしたら、それをキッチリと説明すべき。運動会はできない、修学旅行も我慢してもらっている。だけど日本のため、国際社会のために、こういう理由で必要なんです。例えば、中国との関係で、次が北京オリンピックになることがマズい。日本がやらないといけない。日本の為にGOなんです。そういう考えがあるならしっかりと述べないといけないのに、言わないでやるというのは、酷い責任逃れだ」と述べ、国民に対する説明もなく、開催ありきで突き進んでいく政府の姿勢に苦言を呈した。 |
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●菅総理の答弁には、全く具体性がなかった 6/8
今日の国会では、参議院決算委員会において、菅総理、全閣僚が参加しての審議が行われました。我が党からは、水岡参院会長、福山幹事長が質疑に立ちました。 そこで取り上げたのは、新型コロナへの対応と、特に東京オリンピック・パラリンピックについて、どのような条件下であれば、菅総理の言うように開催できるのか、ということ。 これに対する菅総理の答弁に、私は大変驚きました。 菅総理からの答弁は、 1「選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、世界から選手が安心して参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていく、これが大会の前提であり、これが実現できるように対策を講じていく。」 2「具体的な対策としては、来日する大会関係者の人数を絞り込み、選手や大会関係者のワクチン接種を行い、大会関係者の行動を管理して一般の国民との接触を防止する。」 の繰り返しでした。 本当に安全安心な大会とできるのか、どのような状況なら安心安全に開催できるという基準はあるのか、どのような状況なら開催できないと判断されるのか等々、様々な質問をぶつけられても、答えはこれの繰り返し。特に1を延々と繰り返すばかりでした。 国民がその言葉を聞いて、ああそれなら安心な大会になるな、と納得するようなものでは到底ありませんでした。 今日の参院決算委員会審議を踏まえながら、いよいよ明後日水曜日は党首討論。おそらく今日決算委員会で問われたような疑問は、まだまだ国民の気持ちの中に溜まっていると思われます。 党首討論の場でも、菅総理は、また同じような具体性のない答弁を繰り返すのか。 それはあってはならないことです。 菅総理においては、東京オリンピック・パラリンピックを開催するというのであれば、絶対に具体的に語るべきです。 ●菅首相あす党首討論 逃げの答弁は許されない 6/8 菅義偉首相にとって初の国会党首討論があす行われる。安倍晋三前首相時代の一昨年以来だ。 新型コロナウイルスの感染防止対策や、東京オリンピック・パラリンピック開催の是非が大きなテーマだ。首相は国民の不安や疑問に真摯(しんし)に向き合い、逃げずに答える責任がある。 首相は7日の参院決算委員会で五輪について野党議員に聞かれ、「国民の命と健康が守られなければ、やらないのは当然」と語った。一方で、開催の判断基準を示すよう問われても「国民の命と健康が大前提。それを基準としたい」と述べるだけだった。 海外から人が集まる五輪は感染を広げるリスクがある。どの程度の医療体制と感染状況なら国民の命と健康が守れるのか。基準を示さないようでは、何も語っていないに等しい。 政府分科会の尾身茂会長は、リスクを最小化する必要性を強調し、開催に伴うリスク評価を提言する考えを示している。しかし、首相は提言をどこまで尊重するか考えを示していない。これでは開催ありきと受け取られても仕方がない。 五輪の意義について、首相は「平和の祭典。スポーツの力を世界に発信していく」と語るだけだ。こんな抽象的な説明では、国民の納得は得られまい。 首相はワクチン接種の拡大に躍起だ。接種が進めば国民の不安が和らぐと考えているようだ。しかし、感染再拡大や医療逼迫(ひっぱく)のリスクを抱えた中では、国民は安心できない。 党首討論は、政治家としての信条など骨太な議論をする場だが、最近は形骸化が指摘されていた。安倍氏は森友・加計学園問題の質問に、聞かれてもいないことを長々と話し、議論にならなかった。 立憲民主党の枝野幸男代表が「党首討論は歴史的意味は終えた」と批判すると、安倍氏も「歴史的使命が終わった」と応酬した。国会で言葉の重みが失われている。 指導者が国民の声に向き合い、言葉を尽くして説明することは民主政治の根幹だ。首相のように官僚が用意した原稿を棒読みするようでは、信頼は得られない。 党首討論では質問をかわすことなく、自分の言葉で語るべきだ。 ●五輪固執の首相 6/8 今夏の東京オリンピック・パラリンピック開催に対し、多くの専門家が感染拡大や医療体制ひっ迫の危険を指摘しています。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も「今の状況でやるというのは普通はない」と国会で答弁しました。にもかかわらず菅義偉政権は警告を無視し、感染症専門家にリスク評価を諮問することもなく開催に突き進んでいます。国民の命を危険にさらす無責任な態度です。五輪の今夏開催に道理がないことがますますはっきりしてきました。 尾身会長は「感染のリスクあるいは医療ひっ迫への影響について評価をするのは、われわれのプロフェッショナルとしての責任だ」とも述べ、専門家としての見解を近く表明することを明らかにしました。菅政権は出される意見を真剣に受け止めるべきです。 ところが菅政権は、五輪組織委員会が開く「専門家ラウンドテーブル」や五輪関係の「調整会議」に感染症専門家が入っているとして分科会に諮問しようとしません。ラウンドテーブルと調整会議は五輪開催を前提としており、コロナ感染のリスクを評価する会議ではありません。尾身会長らが示す見解について田村憲久厚生労働相が「自主的な研究の成果の発表と受け止める」と述べ、専門家の公式見解とみなさないとしたことも言語道断です。 分科会は政府が専門家の知見をコロナ対策に生かすために設けた会議です。感染爆発の危険が強い五輪のリスクについて見解を求めないなど、ありえないことです。「人の流れの抑制」など国民に忍耐を求めるときは専門家の説明を利用する一方、五輪開催に都合の悪い意見には耳をふさぐ菅政権の姿勢は最悪のご都合主義です。 東京五輪には選手、大会関係者、メディアで10万人近い外国人が入国します。しかも入国後14日間の行動制限は取りはらわれます。会場外では大勢の観客を集めるライブサイトやパブリックビューイングが各地に設けられます。五輪選手の中で感染が抑えられたとしても、国内で人の流れが増え、感染や医療提供体制に影響を及ぼすことは避けられません。 菅首相は7日の参院決算委員会で「命と健康が守られなければ五輪を実施しないのが当然」と述べました。しかし判断基準は示さず、分科会に諮問せよとの野党の求めにも応じませんでした。 日本共産党の小池晃書記局長は同委員会で、入国時の検疫で陽性と判定されなかった人がその後発症した例があるとして「水際対策」に漏れがあることを指摘しました。選手以外の五輪関係者、メディア関係者や大会業務にかかわる日本人の検査に穴が開いていることも明らかにされました。デルタ株をはじめ新たな変異株が世界中から持ち込まれ、感染爆発が起きる恐れがきわめて強いことが浮き彫りになりました。 菅首相は中止、延期を求める圧倒的多数の世論に向き合おうとしません。リスクを科学的根拠に基づいて検討せず、国民の命を危うくして五輪開催を強行することは許されません。今からでも分科会に諮問して専門家にリスク評価を求め、その結果に基づいて今夏の五輪中止を決断すべきです。 ●山口香JOC理事「今回の五輪は危険でアンフェア(不公平)なものになる」 6/8 <JOC(日本オリンピック委員会)理事だが、東京五輪の開催を危惧する山口香氏。なぜ政府は国民の不安や反対に応えないのか。今回の五輪、そして今後の五輪にどのような懸念があるか。単独取材に答えた> 東京五輪の開会式(7月23日)まで50日を切ったが、新型コロナウイルスの感染が収まらない中での大会開催には、多くの国民が不安や反対の声を上げている。しかし日本政府や東京五輪・パラリンピック大会組織委員会はひたすら「安心・安全」を繰り返すばかりで、人々の疑問に答えているとはいいにくい。そんな状況を危惧する1人が、柔道の五輪メダリストで現在は筑波大学教授を務める山口香JOC(日本オリンピック委員会)理事だ。「五輪は開催されると思うが、今回の五輪は『安全ではなく危険です』から入ったほうがいいと思う」と話す山口氏に、仏リベラシオン紙東京特派員の西村カリンが話を聞いた。 ――東京五輪をめぐる今の混乱状況は、「ノーと言えない日本」と「上から目線のIOC(国際オリンピック委員会)」の関係の悪循環の結果ではないか。 ノーと言えない、というのもあるが、日本人は何かを頼まれたときに、できないと分かっていても「善処します」「頑張ってみます」と曖昧な答えをする。日本側が「なんとか頑張ります」と言えば、IOC側は「できる」と捉える。だからIOCとしては「組織委員会や日本政府が大丈夫だと言っているのに、なぜ国民は怒っているのか?」と不思議に思っているのではないか。IOCには欧米の方が多いので、日本の感染者数を見て、状況はコントロールされていると感じていると思う。実際には、コロナ患者を受け入れられる病院は少ないし、若い人でも入院できず自宅で亡くなるケースが少なからずある状況だ。「また感染が拡大したら医療現場は大変なことになる」と日本人は心配しているが、たぶん、そのことを日本側がIOCにうまく伝えていないんだと思う。 ――IOCはどのようにして情報収集しているのか? 私にはその点は分からない。ただおそらく、「オリンピックはどの国でやっても反対はある。リオデジャネイロでもソチでもデモはあった。いつでもあるんだ」というのがIOCの考え方。今回も、「日本で反対の声があるというが、オリンピックとはそういうものだ」「組織委員会や政府の人たちが大丈夫だと言っているのに、なぜ私たちがこれ以上心配しなくてはならないのか?」という気持ちだと思う。問題なのは、五輪組織委員会、JOC、国と、国民との間で議論が全くできていないところだ。政府や組織委員会、JOCからはこれまで一度も、もしかしたらできないかもしれない、という話が出たことがない。それは、パリ行きの飛行機がいったん飛んだらパリに着陸することだけを考えろというようなもので、途中で何かあっても、違うところに降りたり引き返したりすることはないというマインドなんですよ。飛行機は、天候が悪くても飛ぶことはある。でもそのときは必ず、状況によって引き返すこともありますとアナウンスされる。途中で何かあっても、引き返さないで突っ込みますと言われたら、普通はみんな搭乗しない。「五輪を開催しない」という選択肢を持たずに政府が飛んでいることに、国民はすごく不安を感じていると思う。 ――IOCは来日する関係者や選手の感染防止には力を入れている。一方で、日本国内の関係者のことはあまり気にしていないようだ。例えばボランティアにPCR検査はするのかと政府に聞くと、選手と接触する人だけ、という回答が来る。 五輪に参加する選手の80%がワクチンを接種してくるので大丈夫、と言われている。でも、例えばワクチンを打った選手が目印にワッペンを付けてくれれば分かるが、実際には分からないし、聞くわけにもいかない。(未接種者)20%というのは少なくない数字で、関係者や記者の接種率はさらに低くなると思う。となると、やはり危険はある。五輪はきっと開催されると思う。でも開催にあたっては、「今回のオリンピッは安全じゃなくて、危険です」から入ったほうがいい。危険だからこういう点に気を付けてください、安全を確認しながら少しずつ進んで今回は乗り切りましょう、と。政府やJOCが「安心・安全」と言い続けられるのは、日本人がおとなしいからですよね。 ――6月1日、オーストラリアの女子ソフトボール選手団が群馬県太田市に到着したところを取材する現場では、報道陣の中でのソーシャルディスタンス(対人距離)がゼロだった。五輪が本格的に始まり記者の数も増えたら、どうなるのかと心配になった。 きっと、そういった問題がいろんなところで出てくるんですよ。先ほど話した20%の未接種者との接触の問題もあるだろうし、記者たちのソーシャルディスタンスの管理という問題も出てくる。太田市の取材では、記者たちをコントロールする人も、組織委員会の人もいなかったですよね? そういうことが、あちこちで起きると想像できる。さらには、「アンフェア(不公平)」を感じる人も出てくる。コロナ感染の問題とは別に、選手たちが本当に力を発揮できる状況なのかが問われる。オーストラリアの選手は早めに来日できたが、事前合宿をキャンセルされているチームもたくさんある。また、柔道ではスイスチームが筑波大学で事前合宿をすることになっているが、市や大学側は「来てください。しかし、学生と接触させられません」としている。つまり来日しても練習相手がいない。しかも今回は、練習パートナーを日本に連れてくることができない。ものすごいハンデです。それは柔道だけでなく、いろんな種目で起きていること。でも日本人選手は通常の練習や準備をしてから、本番を迎えられる。「ホスト国のアドバンテージ」となるかもしれないが、そういうアンフェアなことがあちこちに出てくる。アンフェアだけでなく、危険なこともある。本番直前に来日して時差の調整や、日本の夏の暑さに体が順応できないとなったら、屋外競技の陸上などでは危険な事故にもつながりかねない。そうしたさまざまなことをシミュレーションできているかといえば、今はコロナ対策だけで大変で、手が回っていない。 ――外国人選手の移動は原則、送迎バスで行い、外出は禁止。彼らのメンタルヘルスも心配だ。 科学的な見地に基づいて「ワクチン接種をしている人にはこのくらいの行動を認めます。未接種者には行動制限をかけます」といった事前の合意形成もなされていない。人権的な面からも本当にそれでいいのかなと思ってしまう。食事もホテルで毎日出されるものだけ食べる。考えるだけで嫌になっちゃいますよね。開催が迫ってきた今、すごく残念だと思うのは、もう議論する時間がないということ。昨年3月に延期が決まってから、この1年間のうちになぜ必要な議論をしなかったのか。専門家の意見を聞いて議論をして、「こういう状況なら、こうやってできる。それなら安心だね」ということを私たちが分かっていれば、今のようにみんなが不安を感じながら「でも、きっとやるんだろうねぇ......」という感じにはならなかった。それはオリンピックにとってもアスリートにとっても国民にとっても、不幸なことです。日本人はオリンピックが嫌いなわけではない、私もアスリートで、オリンピックやアスリートを応援したいし楽しみたい、そして海外から来た人たちをおもてなししたい気持ちがある。それなのに、このなんとなく嫌な空気の中でみなさんに来て頂くことになる。それは来日した人たちにも伝わると思う。日本の政府には、いかに今のやり方がオリンピックをダメにしているのか考えてもらいたい。 ――学校の部活動は中止され、大勢の子供たちが行動を制限されているなかで、五輪のみ特別扱いされていると考える人もいる。今後、五輪や五輪選手に対する国民の視線が冷たくなる心配はないか。 安心・安全にオリンピックができるなら、それと同じように以前からできていたはず。例えば部活動も、オリンピックのように「こうやったら安全です」と言ってくれたらできただろう。もっと言えば、お金をかければ何でもできます、ということ。選手のPCR検査をします、バスで送迎します――つまりそれは貴族のスポーツで、特別な人たちのものですよ。オリンピックが、それでいいんですか? 今回はだまされたけど、次はだまされませんよ、特別な人たちのためになぜ私たちの税金が使われなくてはいけないのか、と人々は思うだろう。五輪の経済効果がよく言われるが、IOCにとっての経済効果はあるかもしれないが、国や都市にとって長期的な効果は実証されていない。一時的なものであれば、花火大会をやったって経済効果はある。それに今回、「平和の祭典」というのが建前だったと分かった。平和の構築には対話が必要なはずですから。オリンピックはマイナースポーツのためにあると、私は思っている。正直に言えば、サッカー、テニス、ゴルフにオリンピックは必須ではない。テニスなら全仏オープンやウィンブルドンがあり、そこで優勝するほうがよっぽど価値があるし、サッカーだってワールドカップがある。でも、馬術やウエイトリフティングなど普段はそれほど注目されないスポーツにとって、五輪は多くの人に見てもらい、全ての選手がスターになれる4年に一度のチャンスになる。それなのに、オリンピックなんてもういいよ、となったら? 多くのマイナースポーツが大きなダメージを受けると思う。「あなたはアスリートでオリンピックにも出たのに、(開催に対して)ネガティブな意見をするってどういうことだ」と言われることがある。でも私は、何も言わない人のほうが無責任だと思う。オリンピックは今回で終わりじゃない。未来につながっていく。子供たちの夢になっていく。それにマイナースポーツは税金を入れてもらわないと、強化できないのが現実。柔道もそうだが、多くのスポーツは国民の応援があって、税金を使って強化を行っている。だから今後も、国民に応援してもらうために、スポーツの世界にいる人々が国民と向き合ってオリンピックについて議論するべき。国民の不安や疑問を踏まえた上でオリンピックをどのように開催するかを考え、私たちから政府に言っていきましょう、というムーブメントを起こさなければならないと思う。 ――JOC関係者などから、発言について圧力をかけられるようなことはないか? 一般の人からメールで批判を受けたり、SNSで書かれたりすることはあるが、JOCの中で私に面と向かって意見する人はいない。これは日本という国の縮図ですね。きっと議論したくないんですよ。もしかしたら、(私の言うことに)賛同している人もいるのかもしれない。だから逆に議論したくないのかもしれない。国民と開催の是非について議論して、その先に中止の結論があったら困るから。この思考がダメなんです。いろいろな分野で日本が世界の中で競っていくときに、「議論したら負けるから議論しない」では、結局、やる前から負けている。今が、そのことに気付くチャンスだと思う。若い世代にそこに気付いてほしい。若い人たちがこの国を変えなきゃ。議論できる国にしなきゃ。スポーツの世界でも、若い人たちがもっと意見を言って、「こうやっていきましょう」というムーブメントが起きる未来に期待したい。 ●丸川五輪相「東京大会の延期は困難」 6/8 東京オリンピック・パラリンピックについて、丸川担当大臣は閣議のあとの記者会見で、日程を変更した場合、会場や宿泊先の確保が難しくなるなどとして、大会の延期は困難だという認識を示しました。 この中で、丸川オリンピック・パラリンピック担当大臣は、記者団が五輪スポンサーの一部が水面下で東京大会を9月か10月に延期するよう提案したとイギリスの新聞が報じたことについて質問したのに対し「組織委員会は『少なくともそういう話は聞いていない』と言っている。最終的に、延期はかなり難しいというのが私の今の実感だ」と述べました。 そのうえで、すでに、事前キャンプなどの具体的な調整が進められていることや、日程を変更した場合、会場や宿泊先の確保が難しくなることを理由に挙げました。 ●パラ&オリンピック開催期間の「首都高値上げ」は庶民を苦しめる愚策 6/8 新聞などのアンケートでは、国民の6割以上が中止や延期を求めている東京オリンピック。 予定どおり行なわれるとすれば、7月23日に開会式を迎えることになっているが、オリンピックが実施されるとすると、その間、首都高速の昼間の料金がドーンと値上げするのはご存じだろうか? 首都高ドライバーズサイト(HP)には、次のように書かれている。 『東京都及び(公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会がとりまとめた「東京2020大会における首都高速道路の料金施策に関する方針」に基づき、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会期間中は、夜間(0時〜4時)に首都高速道路を利用する交通の料金を5割引し、昼間(6時〜22時)に首都高速道路の都内区間を利用するマイカー等へ料金上乗せ(1000円)を実施いたします』 この値上げの理由は、「期間中の交通渋滞対策」ということになっているが、いくら何でも1000円値上げというのは酷すぎる!(首都高のETCの普通車の基本料金は、300円〜1320円) 適用期間は、オリンピックが7月19日〜8月9日、パラリンピックが8月24日〜9月5日とけっこう長い。 一応、障害者手帳の保有者が運転・同乗する車両及び福祉関係車両は対象外とされているが、普通車、軽自動車、二輪の場合、ETCを付けていても、ナンバープレートが「緑地に白文字」または「黒地に黄色文字」の事業用車両と、ナンバープレートが「白地に緑文字」または「黄色地に黒文字」の車両のうち、 分類番号が「4・・」または「6・・」または「8・・」の車両以外は、1000円上乗せの対象となる。 つまり、マイカーの乗用車はほとんどアウト! ETCのないクルマだと、普通車以下のすべてのクルマが対象で、しかも首都高全線(一部下り線を除く)が上乗せエリア(ETC車は都内区間のみ)。 ただでさえ自粛続きで苦しんでいるなか、首都高を利用せざるを得ないユーザーは、なんでこんな負担を強いられるのか。(補償も雀の涙なのに、自動車税の通知だけは例年通り届いたし) IOC幹部は、「緊急事態でも五輪開催」と強気の姿勢を崩していないが、たとえ開催するにせよ、祝祭的雰囲気は望めない大会になるのは間違いない……。 ●コロナ禍の五輪に威信賭ける日本、後戻り困難に−開幕まで50日切る 6/8 7月23日の開幕まで50日を切った東京五輪。もう後戻りできないところまで来つつあるが、大会の開催と成否を左右する新型コロナウイルス感染症を巡る不安は払しょくされていない。 日本政府と東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、主要なステークホールダーは、五輪に政治的な威信を賭け、巨額のマネーを投じている。開催なら世界の人々を元気づけ、経済・社会の正常化に向けてどのように動き始めるのかを示し得るものの、最悪の場合、感染が拡大し、不安定な日本経済に追い打ちをかける「スーパースプレッダー・イベント」となり、五輪のイメージが傷つく恐れがある。 1年延期が決まった2020年3月以降、五輪を巡る議論は混迷している。当初は今夏までにパンデミック(世界的大流行)収束が期待されたが、ワクチン接種が始まっても新規感染者数の抑え込みに手間取る状況だ。感染リスクが解消されるまで規制継続を望む人がいる一方、中止による経済的損失や信用低下などの悪影響を重視する人もおり、東京五輪は分断の象徴となった。 東京五輪は無事に開催されるのか、結局は中止に追い込まれるのか。日本の政治・経済、医療関係者、アスリートなど、それぞれの論点を整理する。 ●経済 野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストの試算によると、五輪中止の場合の経済損失は約1兆8000億円。ただ、副次的な影響で損失はさらに膨らむ可能性もある。五輪の参加者や関係者、国内居住者の消費が消えるだけでなく、消費や投資を抑え込んでいた国内のムードがさらに悪化しかねない。期待していた海外からの観客は既に受け入れを断念している。ブルームバーグ・エコノミクスの増島雄樹シニアエコノミストは、感染状況が悪化して五輪が中止となり、経済活動への制限が続くという「最悪のシナリオ」になった場合、経済成長率は1.7ポイント下押され、想定していた今年の成長率の大半がかき消されると分析した。さらにひどいのは、五輪開催が感染拡大につながるスーパースプレッダー・イベントとなった場合だ。こうした見方は木内氏のメインシナリオではないものの、開催をきっかけに感染が拡大して緊急事態の状況を余儀なくされる場合、経済損失は中止よりも大きくなると予想した。一方、五輪の成功は収益を生むとともに消費を刺激し、企業や家計のマインドの改善につながり得る。理想的なケースとしては、緊急事態の状況下で縮小する経済から、景気回復へと転換を後押しすることだ。ワクチン接種が加速すればさらに追い風となるだろう。アスリートが競い合う姿が世界中に放送されれば明るいメッセージとなり、世界的にもっと大きな効果があるかもしれない。 ●政治 国民の間では中止・延期論が根強い。ソフトバンクグループの孫正義社長ら経営者からも懸念する声が相次いだ。朝日新聞が5月に行った世論調査では、内閣支持率は33%と昨年9月の政権発足以降で最低水準に落ち込んでおり、菅義偉首相は大会の成功にイチかバチかの賭けに出ているかのようだ。自民党総裁としての任期が9月末に迫っており、10月までには衆院の解散・総選挙も行われる。次の衆院選で野党への政権交代が実現する可能性は低いが、五輪が新たな感染拡大につながれば首相は退陣に追い込まれるかもしれない。来年には参院選も控えている。五輪が成功裏に終わったとしても、内閣支持率を押し上げるかどうか疑わしい。開催国では一たび聖火に灯がともれば国民は競技に熱狂するものだが、ワクチン接種の遅れに不満が広がっている日本の場合、そう簡単に気分を変えられないかもしれない。そもそも五輪自体が開催国の政権浮揚につながるとは限らない。12年のロンドン五輪後の調査によると、当時のキャメロン英首相への支持率は特段上昇しなかった。対照的にロンドン市長だったジョンソン氏は次の首相候補の一人として浮上した。 ●医療関係者 日本の医療関係者は、東京五輪・パラリンピックに世界200カ国から7万8000人の大会関係者が集まることにますます緊張感を高めている。大会組織委員会は当初、約1万人の医師、看護師、医療スタッフを確保する計画だったが、国内におけるコロナ感染の再拡大を受けて約7000人に減らすことを迫られた。それでも組織委の橋本聖子会長によれば、まだ削減後の目標の8割しか確保のめどが立っていない。当初の計画から見れば半分程度だ。47都道府県の看護師ら17万人が加入する日本医療労働組合連合会の森田進書記長は、「患者と看護師の命や健康を犠牲にしてまで五輪開催に固執することに強い憤りを感じる」とする談話を4月に発表した。アスリートや大会関係者、観客のための十分な医療サポート体制を確保できなければ、既に決定している海外からだけでなく、国内からの観客受け入れも断念せざるを得なくなり、アスリートは観客のいないスタジアムで競技に臨むことになる。 ●メディア 14年から20年までの米国での五輪放映権獲得に44億ドル(約4800億円)を投じたケーブルテレビ(CATV)運営会社コムキャスト傘下のNBCユニバーサルは開幕に向け準備を進める。五輪は世界30億人余りがテレビで観戦する。もっとも、視聴率は近年低下しているため、昨年の五輪延期によるペントアップ需要(繰り越し需要)が視聴者の増加につながることをNBC幹部は期待する。21年から32年までの五輪放映権も77億5000万ドルで合意済みのNBCにとって、東京五輪は追い風となろう。NBCは16年のリオデジャネイロ大会で2億5000万ドルの利益を上げている。東京五輪が再延期または中止となった場合の業績への影響は不透明だ。NBCは昨年3月、東京五輪向け広告枠の販売が過去最高の12億5000万ドルに達したと発表したが、その後、契約がどうなったのかは明らかにしていない。広告主の一部は昨年夏に広告費をNBCの他の番組に振り替えた可能性がある一方、返金を請求したケースもあったかもしれない。欧州での五輪放映権を持つディスカバリーも、新たなサービス「ディスカバリープラス」の販売促進で東京大会に期待を寄せる。ただ、五輪が中止となっても両社は保険で守られている。コムキャストのブライアン・ロバーツ最高経営責任者(CEO)は昨年、五輪延期が決まる前に、「開催されなくても損失は出ないはずだ」と説明した。ただ、開催されなければ利益は出ないとも語っていた。 ●保険 五輪中止で最も大きな影響を受けるところの一つが保険会社だ。メディアのほか、各国・地域のチーム、スポンサー、五輪に期待する数多くの企業や組織の保険を引き受けている。東京大会が中止された場合に保険会社が負担するコストは20億−30億ドルと試算されているが、前期赤字の保険業界にとってさらなる打撃となる。スイス再保険は昨年3月時点で、東京五輪は同社にとって最もリスクが大きい契約であり、中止の場合は2億5000万ドルの損失が発生する可能性があるとの見通しを示していた。先週の時点でも試算に変わりはないという。独ミュンヘン再保険は、東京大会が中止になった場合は「影響を受ける」可能性があることを認めたものの、詳細は明らかにしなかった。米エーオンは、中止の場合の影響についてコメントを控えた。もっとも、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、チャールズ・グラム氏は、東京五輪が中止されれば「単一の契約として最大の損失をもたらす可能性がある」としながらも、保険会社の業績予想から大きく外れることはないとの見方を示した。 ●アスリート 五輪ではアスリートが30余りの競技に参加する。4年に1回の五輪はアスリートにとって最も重要なイベント。各競技の頂点に立つことで得られる名誉もさることながら、報酬やスポンサー契約、プロとしてのキャリアを決定し得るからだ。アーチェリー米国代表のブレイディ・エリソン選手(32)は、「五輪は非常に特別なものだ」と言う。前回のリオ五輪では銀と銅のメダルを獲得したエリソン選手は、今大会で金メダルを目指している。「五輪に備えて練習をしていると、人生が4年単位で進んでいるかのようだ」。最高の状態で20年7月の東京五輪を迎えられるよう調整を進めてきたアスリートだが、開催延期で多くはさらなる苦労とストレス、出費を強いられた。フィリピン代表としてリオ五輪女子重量挙げで銀メダルを獲得したヒディリン・ディアス選手(30)のトレーニング先はマレーシアで、家族とは7カ月余り会っていない。ディアス選手は「母や家庭料理が恋しい」と言う。東京大会が中止となれば、これを最後に引退を考えていた選手は五輪でのメダル獲得の夢がついえる。24年のパリ大会を目指す選手は再びトレーニングに戻ることになるが、期間は4年ではなく3年だ。 |
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●最悪の事態は「トーキョーパンデミック」? 五輪、強行開催なら「白いメダル」 6/9
東京オリンピックの開会式まで2か月を切りました。しかし、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長がパンデミック下のオリンピックについて「普通はない」と発言するなど、開催について否定的な立場の人も少なくありません。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、今回のオリンピックを開催するとすれば「きわめて不公平なオリンピックになる」と指摘します。それでも開催を強行する場合は「白いメダルを」といいます。若山氏が独自の視点から論じます。 ジメジメとした雨天がつづいた。外国人が日本で一番苦手なのは、この梅雨どきの湿気と真夏の暑さだという。しかも近年は異常気象で、豪雨や猛暑で亡くなる方も多い。そもそもそんな季節に世界から人を集めようというのは風土を軽視する行為だと思っていた。しかも今はコロナ禍である。 たしかに新規感染者は減少気味で、オリンピック関係者が開催に向けて意気込むのも無理はない。外国からの選手団も入り始めて、大半が反対であった国民のあいだにも「開催もやむなしか」という空気が広がり始めたように思える。 とはいえ感染症の専門家はほとんどが反対だ。温厚で知られる新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も、オリンピック開催に対して専門家らしい反骨を示し、政治家からはその発言に異論もあがっている。絶対賛成なのは、オリンピック関係者と与党政治家とイベントでもうける企業ぐらいのものだろう。 しかし決定権はIOCにあるという。日本側から中止をいい出せば、場所を提供するという契約に違反して莫大な違約金を取られるという話も聞く。バッハ会長は「ボッタクリ男爵」と異名をとる人だ。まるで国民の命と違約金が天秤にかけられて、1日の感染者数がその「針」になっているような気がする。こんな決め方でいいのだろうか。 そしてそこに一つ欠けている視点があるように思える。全世界の人々の命の危険性である。 新型コロナウイルスの感染拡大は、人間の地球規模における過剰移動と過剰集中によるところが大きい。このところの世界の観光地の人の多さは異常であった。そしてオリンピックこそは、今の世界で最大級の人間移動集中装置であり、そこで感染が起これば巨大なクラスターマシンとなりかねない。 来日する人にはワクチンを打つ、PCR検査を行う、というが、どうしても漏れがあるだろう。スポーツとは興奮するものだ。行動も会話もアクティブになる。選手同士の交流はもちろん、 大会関係者、報道関係者、街の人々がそれぞれ接触することもあるに違いない。飛沫が飛び交い、新たな感染者が増えていく中で、新しい変異株が出ないとも限らない。 「安心安全」を呪文のように唱えても、事実はその反対「不安かつ危険」である。オリンピックは一種の祭りであり、あらゆる種類の国家と民族、そして風土、言語、宗教、文化が、激しく熱気を帯びて混合する場である。いかなる対策をとっても、そのような集団と状況を、語学の苦手な異文化交流の機会の少ない島国の人が制御するのは難しいのではないか。得意の「自粛」も通用しないし、心のこもったおもてなしと、厳しい規制は背反するものだ。 オリンピックで危険な変異株が生まれ、感染者に自覚症状がないままそれぞれの国に帰り、感染が広がれば、そうとうの犠牲者が出る。新しいパンデミックは「トーキョーパンデミック」と呼ばれるかもしれない。ブカンとトーキョーが並んで、人類の歴史に悪名を残すことになるのではないか。 武漢の研究所流出説も再び浮上して、世界の人々の心の中に中国の責任論が膨らみつつある。そこに日本の責任論も加われば、東アジア系の人間に対するヘイトクライムも急増するだろう。これまでに積み上げた、日本選手はフェアプレイである、日本の観客はゴミを持ち帰り礼儀正しい、などの評判が崩れ落ちるのは残念ではないか。 もちろん最大の責任は、開催権をもつというIOCにあるだろうが、世界の人々はそのことを認識せず、日本の責任と考える可能性がある。日本という国と文化には、単なるオリンピック組織としてのIOCなどとは比較にならない歴史的存在感があるからだ。そして一国の総理たる人間は、今の日本人だけでなく、その歴史的存在感を傷つけないようにする責務がある。 しかしそれは最悪の場合であって、もちろん何もかもがうまくいく可能性もある。感染もさほど広がらず、オリンピックも思ったより盛り上がるかもしれない。だが、そうなったとしても、良かったと胸を撫で下ろすのは日本人ぐらいではないか。世界の多くの国では(日本もそうだが)今なお非常事態がつづいているのだ。 日本はかつて、国民の命を神風に託して突き進んだ経験があり、今は、全世界の人々の命を幸運(神風)に託しているように思える。結果としてうまくいったとしても、日本はそういう神頼みの国だという印象が、世界の人々の無意識のうちに永く残って、ボディブローのように効いてくるような気がしてならない。「科学技術の国」というイメージは、遠い過去の話になったというのか。 思い起こせば、ロゴマークの盗用疑惑、国立競技場設計案の白紙撤回、誘致における贈賄の疑惑、猪瀬、舛添両元都知事の相次ぐ失脚、森組織委会長の失言退陣、そして折から報道されたJOC経理部長の自殺と思われる死と、このオリンピックは呪われたように御難つづきだ。 また最近、テニスの大坂なおみ選手が、会見を拒否して全仏オープンを棄権した。うつ症状に悩まされていたという。健康健全であるべきスポーツが、メディアにのって宣伝に使われまたそれ自身商品化して、巨大なマネーが動くようになった。前にも書いた「スポーツ資本主義」である。大坂選手のデリケートな神経には、その非人間的なメカニズムがストレスとなっていたのだろう。多くのテニス選手も他のスポーツ選手たちも同情を示しているのは、そのストレスを共有しているからに違いない。 東京オリンピックは、IOCとアメリカのメディアの都合で、過酷な日本の真夏に開催するということで、すでに選手の健康は危機にさらされているのだ。そこにコロナ禍が追い討ちをかけている。僕が選手(特に外国の)だったら「いい加減にしろ」といいたくなる。 いずれにしろきわめて不公平なオリンピックになる。 感染の波は、国によって大きなズレがあり、これからピークを迎え、開催時には混乱の極みに達する国もあるだろう。参加選手は、感染が抑えられている国、ワクチンと医療体制が整っている国、すなわち大国強国に限られる可能性もある。 関係者が目論んでいるごとく、始まってしまえば、競技者は全力を尽くし、応援者はそのパフォーマンスに熱烈な拍手をおくる。スポーツとはそういうものだ。しかし参加できなかった選手と国民はどうだろう。盛り上がれば盛り上がるほど、哀しさと惨めさを味わうことになりはしないか。 スポーツにはルールがあり、誰もがそれに従って競い合う、つまり何かと不公平な実社会とは違って、公平であるところに意味がある。不公平なオリンピックなど意味がない。そんな条件で獲得したメダルが輝くだろうか。 もし開催を強行するなら、尾身会長の発言を考慮して、選手以外の入国を大幅に制限するべきだ。観客が来ないのに、選手の数以上の関係者が来るということが、そもそもおかしい。外国の賓客は丁重にお断りするべきだ。もともと彼ら要人は忙しい。スケジュールの合間をぬって、同盟、友好、近隣などを忖度して来るのであって、本音をいえば感染の危険のある日本にはあまり来たくないだろう。報道陣も最小限にするべきだ。もちろんオリンピックファミリーなどというものは不要である。 そして十分にメダル獲得の力をもちながら不幸にも参加できなかった選手には、金、銀、銅、いずれの可能性もあったという意味で「白いメダル」を差し上げたらどうか。その選考は各競技の専門家に任せることになるだろうが、IOCではなく日本国民の名において。 台湾は日本からのワクチン提供に心からの謝意を示してくれている。もし開催することになったら、不公平なオリンピックを何とか公平なものにと願う日本人の心を示したい。 ●菅首相 党首討論で64年東京五輪の感動を延々と語る 6/9 菅義偉首相が9日、国会の党首討論で「オリンピックについての私の考え方を是非説明させていただきたい」と「安心安全の大会」の対策を行うと述べたうえで、1964年の東京五輪の思い出を語った。 「私、オリンピックについて聞かれるわけですけれども、私自身、実は57年前の東京オリンピック大会は高校生でした。いまだに鮮明に記憶しています」と振り返った。 「例を挙げます」と、「たとえば東洋の魔女と言われたバレーの選手。回転レシーブちゅうのがありました。ボールに食いつくように、ボールを拾って得点を挙げておりました。非常に印象に残っています」「また底知れない人間の能力というものを感じました。マラソンのアベベ選手も、非常に記憶に残っています」 さらに「何よりも記憶に残っているのはオランダのヘーシンク選手です。日本柔道が国際大会で初めて負けた試合で悔しかったですけれども、その後の対応がすごく印象に残っています。興奮したオランダの役員のひとたちが抱きついてくるのを制して、敗者である神永選手にたいして敬意を払った。あの瞬間というのは、ずっとわすれることができなかったんです」と述べた。 そのうえで「そうしたことを子供たちにも見てほしい」と語った。 さらにパラリンピックについても、障害者スポーツに光が当たったのが64年大会だったとも語り、「こうしたすばらしい大会を今の子供や若者に見て、希望や勇気を伝えたい。さらに心のバリアフリー。こうしたものもしっかり、大きなものになると思う」と述べた。 さらに、テレビで40億の人が見ると言われているとし「東日本大震災から復興した姿をぜひみてほしいと思います」と語った。 「世界が新型コロナという大きな困難に立ち向かい、世界が団結して乗り越えることができた。そうしたことを世界に日本から発信したい。そうした思いであります」と述べた。 なかなか終わらないロングトークに、議場がざわつく場面もあった。 ●東京五輪、ボランティア7万人のワクチン接種検討 6/9 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は8日、新型コロナウイルス感染拡大のリスクを下げるための案として、7万人のボランティアに対し、ワクチン接種を検討していると明かした。 武藤氏は「選手に近い立場の方については、選手と同じように考えていく」と話し、開幕までの6週間で会場や選手村のボランティア全員、さらにはメディアを含めた国内の関係者へのワクチン接種案が「検討段階」として出ていることを明かした。 日本代表の選手とスタッフについては、国際オリンピック委員会(IOC)から提供されたファイザー(Pfizer)製ワクチン2万人分の接種が、特別枠としてすでに始まっている。武藤氏は、接種対象を広げる場合のワクチンの追加取得に向けた交渉について「可能性は十分ある」と期待した。 一方、時間が限られている中で簡単な課題ではないとも述べており、「接種しようと思うとワクチンの追加取得が可能か、そういう態勢が取れるかどうか、どこまで対象にするのか、検討すべきことはいろいろある」と話した。 大会のスムーズな進行に欠かせないボランティアは、当初は8万人を確保していたが、すでに1万人が主に新型コロナの懸念を理由に辞退している。 ●加山雄三さん 聖火ランナー辞退 “五輪開催手放しで喜べない” 6/9 東京オリンピックの聖火ランナーとして神奈川県藤沢市を走る予定だった歌手で俳優の加山雄三さんが、辞退したことがわかりました。加山さんは、「今の状況で、オリンピックの開催を手放しに喜ぶことができません」などとしています。 神奈川県によりますと、加山雄三さんは今月28日に聖火ランナーとして藤沢市内を走る予定でしたが8日、辞退の申し出があったということです。 加山さんはコメントの中で、新型コロナウイルスの感染状況に触れ「今、世界の状況を見たとき、手放しに開催を喜ぶことが僕はできません。勇気を持って辞退します」としたうえで「夢であった聖火ランナーを辞退することは残念でなりません」と述べています。 神奈川県内での聖火リレーは、今月28日から3日間にわたって行われる予定ですが、これまでにパラリンピック競泳の金メダリスト、秋山里奈さんやラグビーの稲垣啓太選手、元宝塚歌劇団のトップスター、望海風斗さんが辞退していて、辞退した人は4人となりました。 県では「辞退は残念だが、ご本人の意思を尊重したい」としています。 ●愛知県内15市 県要請で東京大会パブリックビューイング中止へ 6/9 愛知県の大村知事は、東京オリンピック・パラリンピックの期間中にパブリックビューイングを計画していた県内15の市に、県が開催の中止を求め、いずれも開催を取りやめる見通しになったと明らかにしました。また県民に対して、職場や飲食店などで大勢で観戦することを自粛するよう呼びかけました。 9日の記者会見で、愛知県の大村知事は、県内の市町村や経済団体に対し、東京オリンピック・パラリンピックの期間中に計画しているパブリックビューイングを中止するよう求めたことを明らかにしました。 愛知県内では、15の市が大会期間中にパブリックビューイングを計画していたということですが、すべての市が、県の求めに応じて開催を取りやめる見通しだと説明しました。 さらに大村知事は、県民に対して、大会期間中、パブリックビューイングのほか職場や学校、飲食店などで大勢で観戦することを自粛し、少人数で自宅のテレビなどで観戦するよう呼びかけました。 大村知事は「新型コロナウイルスのワクチン接種が終わっていない中で、大勢での観戦を行えば、感染が拡大するのは明らかだ。残念だが取りやめてほしい」と述べました。 |
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●東京五輪 選手など約8割が大会までにワクチン接種見通し IOC 6/10
IOC=国際オリンピック委員会は、東京オリンピックに出場する選手や指導者などのおよそ8割が大会までに新型コロナウイルスのワクチンを接種できるという見通しを明らかにしました。 IOCは9日、オンラインで2日目の理事会を開き、東京大会の組織委員会から開幕まで50日を切った大会の準備状況の報告を受けました。 このあと会見に臨んだIOCのクリストフ・デュビ五輪統括部長は、大会に選手を派遣する各国と地域のオリンピック委員会に調査したうえで、東京大会までに選手や指導者などのおよそ8割がワクチンを接種できることを明らかにしました。 また、理事会では大会の出場選手のうちこれまでに76%に当たるおよそ8500人の選手が出場権を獲得したことが報告され、残りについてはランキングや最終的な予選で決まるという見通しが示されました。 大会の感染対策をまとめた「プレーブック」の最終版は来週公表される予定ですが、デュビ五輪統括部長は海外から日本に入国するメディアや関係者について「14日間の隔離を行うことは絶対だ。それが大会の大前提だ」と述べて、ワクチンを接種していても14日間の行動制限を例外なく行うことを強調しました。 ●東京臨海部、有観客の五輪なら1日6.8万人 6/10 今夏の東京オリンピック(五輪)・パラリンピックを、政府などが検討している「収容人数の50%を上限に最大5千人」の有観客で開催した場合、7会場が集まるお台場、有明など東京臨海部の半径1・5キロ圏内に、1日あたり最大で延べ6万8千人程度の観客が見込まれることが朝日新聞の試算で分かった。一帯には主会場の国立競技場のものとは別の聖火台をはじめ、大会スポンサーのパビリオンなどが設置予定で、チケットがなくても訪れることができるため、さらに多くの人出が見込まれる。専門家は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、人数制限などの必要があると指摘している。 大会組織委員会が公表している競技日程と会場の収容数をもとに試算した。五輪競技は10都道県で19日間にわたって行われ、緊急事態宣言下でのイベント制限に準じた「5千人か定員の50%の少ない方」で開催した場合、観客動員は最大で延べ300万人以上(マラソンなどの路上競技を除く)になる。 なかでも、複数の大会関係者が「人流増が心配だ」と語るのが、お台場と有明をつなぐ「夢の大橋」に設ける聖火台の半径1・5キロにある7会場のエリアだ。 このエリアは、「都市とスポーツを融合させた、国際オリンピック委員会(IOC)の肝いり」(関係者)で、IOCや組織委は「トーキョー・ウォーターフロント・シティー(TWFC)」と名付けた。「チケットがなくても、大会に触れられる」という史上初の取り組みとして、聖火台周辺に遊歩道(約2キロ)を設けるほか、競技体験ゾーン、大会スポンサーのパビリオン、大型グッズ販売店なども設置する予定だ。競技は新採用のスケートボードや3人制バスケットボールなどを実施する。 試算では、五輪が開幕して最初の日曜日となる7月25日に最大延べ6万8千人が観戦するなど、大会期間中に7会場で延べ70万人程度が観戦する見通しだ。関係者によると、お台場海浜公園のコロナ禍以前の7月の来園者数は、1日あたり1万人弱だったという。 ・・・ ●JOC複数の理事「具体的な説明ない」経理部長死亡の原因究明を要求へ 6/10 日本オリンピック委員会(JOC)の経理部長の男性が7日に線路に飛び込み電車にはねられて死亡した件で、複数の理事が10日の理事会で原因究明を求めることが9日、分かった。ある理事は「発生から3日間、JOCから何も具体的な説明がなされていないのは、ありえない。うやむやにしたままでは五輪は迎えられない」と話した。一方、山下泰裕会長はこの日の取材に「ご遺族のご意向を尊重したい」と述べるにとどめ、調査に関しては慎重な姿勢を見せた。 ●ニュージーランド観光相 東京五輪に選手団は予定通り参加 6/10 ニュージーランドのナッシュ観光相が9日、JNNとの単独インタビューに応じ、自国の選手団は東京オリンピックに予定通り参加すると述べました。 Q.ご自身は東京五輪に行かれますか? 「残念ながら私は行けませんが(ニュージーランド)選手団は東京に行き、競技をして帰国するでしょう」(ニュージーランド ナッシュ観光相) 首都ウェリントンでJNNの単独インタビューに応じたナッシュ観光相は、海外からの観客が東京大会を観戦できないのは残念だが、ニュージーランド選手団は予定通り参加すると述べました。 「(日本との関係は)とても大切です。観光面だけでなく貿易面でも両国は長期間緊密な関係を続けていて、これを維持することはニュージーランドにとって極めて重要なのです」(観光相) 厳しいロックダウンを行った後、新型コロナウイルスの感染拡大を抑え、ほぼコロナ前の生活に戻っているニュージーランド。静岡県に1年住んだ経験のある親日家のナッシュ観光相は、日本からの観光客の受け入れ再開時期はワクチンの接種状況にかかっていると話しました。 「どうもありがとうございます。私はスチュアート・ナッシュです。国境をまたぐ往来が可能になった時は(日本の)皆さんを歓迎します。皆さんがまたニュージーランドに来るのを楽しみにしています」 (観光相) ●会津若松市での事前キャンプ中止 エクアドルとカナダのボクシングチーム 6/10 会津若松市によると、6月9日午後10時ごろにエクアドルとカナダそれぞれメールで連絡があったという。 会津若松市では、ホストタウンの相手国となるタイのボクシングチームも事前キャンプを予定していたが、自国で新型コロナの感染が拡大していることを理由に取り止めていた。 会津若松市によると、7月上旬からは日本のボクシングチーム20人程度が事前キャンプを行う予定で、猪苗代町がホストタウンを務めるガーナのボクシングチームの選手3人もこれに参加する予定。 ●東京五輪合宿 「日程が決まらない」焦る職員、宿は仮押さえ 茨城 6/10 東京五輪でモンゴル重量挙げ(ウエートリフティング)選手団のホストタウンを務める茨城県行方市が、対応に苦慮している。開幕まで50日を切りながら、事前合宿の日程が定まらないためだ。「毎日、連絡は取っているのだが」。職員に焦りがにじむ。 モンゴル重量挙げ協会は2019年7月に行方市と受け入れに伴う協定を締結。同年8〜9月に合宿し、市民らと交流を深めた。市側も地域おこし協力隊員に同国の女性を任用、学校給食でモンゴル料理を供するなど、国際理解教育に努めている。 モンゴルのライフル射撃と空手の選手団が、桜川市や城里町での合宿中止を相次いで決めた際も、重量挙げ協会側からは「高温多湿の気候になれるため、合宿を行いたい」との意向が行方市に伝えられた。 一方で、詳しい日程は今も不透明だ。市は、選手団員の宿泊場として、市内の温泉旅館を仮押さえ済み。協会側に連日、メールや電話で日程を知らせるよう催促しているが、新型コロナウイルスの影響か、代表選手が今も未決定といった情報もあるのが現状という。 受け入れに際しては旅館の従業員や市職員らへのワクチン接種も必要となる。「7月中旬の開始がぎりぎりの日程。6月中には決断してほしい」と担当職員。市は21年度予算に関連事業費約1100万円を計上している。 ●IOC、東京五輪の観客判断「期限は6月末」 最終決断時期絞られる 6/10 国際オリンピック委員会(IOC)は9日、東京オリンピックの観客上限について6月末が決定期限との見解を示した。日本側は緊急事態宣言の期限となる20日以降に判断する見通しを示しており、「最終決断」の時期が絞られた。 理事会後の記者会見で、実務責任者のクリストフ・デュビ五輪統括部長は「(観客について)現段階の決定はない。期限は6月末ごろだ」と述べた。 また、選手らに向けて新型コロナウイルス対策をまとめた「プレーブック(規則集)」について、来週にも最終版となる第3版を公表すると明らかにした。規則集を巡っては米国の感染症の専門家が医学誌で課題を挙げるなど内容を不安視する声があるが、デュビ氏は「当初からあらゆる分野の専門家と協力してきた。第3版にはより詳細な情報を盛り込んでいる。批判や指摘に対処しないことはない」と自信を見せた。 さらに、米製薬大手ファイザー社から東京大会の選手団に無償で提供される予定になっている新型コロナワクチンについても言及。既に五輪参加資格を得た選手の約80%にワクチン接種のめどが立っているが、今後も更に接種率を高めていく考えを表明した。 ファイザー社からは日本向けに選手団のほか、審判や通訳ら国内の大会関係者ら計約2万人分のワクチンが無償提供される方針で、東京五輪・パラリンピック組織委員会などは接種対象を約7万人の大会ボランティア、国内メディアまで広げることを検討している。組織委の橋本聖子会長は9日、接種対象の拡大検討の意義について「海外の方々らをお迎えするため、できるだけ接種することが組織委としてのおもてなしだと思っている」と語った。 ●千葉県知事 東京五輪・パラPV中止を発表 6/10 千葉県は県内で開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックのパブリックビューイングの中止を発表しました。 千葉県・熊谷知事「ライブサイトについては、開催を取りやめることにしました」 千葉県の熊谷知事は10日午前に会見を行い、県立幕張海浜公園で開催を予定していた東京オリンピック・パラリンピックのパブリックビューイングを中止すると発表しました。 理由については感染が収まらない中で会場で感動を共有したり、千葉県の魅力を発信したりする当初の目的が達成できないとしています。今後は、会場で予定していたイベントのオンライン配信を検討するということです。 パブリックビューイングをめぐっては、埼玉県もすでに県内での開催中止を発表しています。 ●オリンピックまであと1ヶ月 コーチコメント/トラック競技代表選手団記者会見 6/10 2021年6月9日、東京オリンピックまで1ヶ月余りとなったこの日、伊豆にて自転車トラック競技オリンピック代表選手の記者会見が行われた。『メディアデー』と称される本日の一連の会見は、オリンピックを直前に控え、メディア露出を控えトレーニングに専念している選手たちの声が聞ける、貴重な機会。 会見にはトラック競技種目に出場する6人(短距離:脇本雄太、新田祐大、小林優香/中長距離:橋本英也、梶原悠未、中村妃智)と、短距離ヘッドコーチ ブノワ・ベトゥ、中長距離ヘッドコーチ クレイグ・グリフィンが出席。本記事ではコーチ陣のコメントを掲載する。 Q:ブノワ・ベトゥコーチに質問です。短距離の3選手について、強みと、今最も鍛えていることを教えてください。 ブノワ:1時間くらい語れるテーマですね。簡単にまとめると、新田選手は肉体的に強く、パワーがあり、他の選手に比べれば低い回転数の時力を発揮できます。小林選手もこれに似ていて、低い回転数が得意ですが、最大パワーが弱点です。しかし持久力と「成功したい」という強い思いによって、その弱点をカバーしています。脇本選手は回転力があり、ペダリングが滑らか。乳酸の耐久力も優れています。バランスが取れている一方、他の選手に比べるとパワーが少し劣ります。 Q:クレイグ・グリフィンコーチに質問です。オムニアムに出場する梶原選手、橋本選手の強みを教えてください。 クレイグ:梶原選手はスピードが素晴らしいです。世界の女子選手の中でも、おそらく一番速い選手ではないでしょうか。自分のストレスをコントロールしながら走る力も身についてきました。橋本選手は戦略力に長けた選手です。集団の中でどのようなポジションに位置すれば良いのか、どのような作戦でいつ仕掛けるのかを瞬時に判断し、実行する力があります。 |
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●IOC会長「東京五輪は実施段階」 7月中旬に来日へ 6/11
国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は10日、理事会後の記者会見で今夏の東京オリンピック(五輪)に向けて7月中旬に来日する意向を示した。6月中の来日も視野に東京大会の組織委員会と検討を重ねてきたが、見合わせた。「数時間滞在するために、2週間の隔離期間を経て往復するのはあまり意味がないとなった。組織委とも話し、(大会前の)会議や訪問などに向けて7月中旬に日本に入ることを決めた」と話した。 新型コロナウイルスの影響で、開催に反対する声も上がっている中での準備状況については、順調ぶりを強調。「我々はすべての関係者と連携しながら、実施段階(full delivery phase)に入っている」と話した。 詳細については自身で説明せず、同席したクリストフ・デュビ五輪統括部長が代わって説明。東京大会に参加する選手や関係者の行動ルールをまとめた「プレーブック」の最終版が来週中に公表されることなどを挙げ、今後は、運営スタッフがプレーブックに基づき、あらゆる事態に対応できるようになる必要があるとした。 一方でコロナ禍の中での五輪が迫り、選手たちの気持ちを問われると、元フェンシング選手のバッハ会長は「彼ら、彼女らの気持ちはよく分かる」とし、4年以上かけて準備してきた選手たちを気づかった。 その上で「重要なのは五輪が開かれ、選手たちが五輪で競うことができることだ。そのために、どのような制限も受け入れ、尊重すると、選手たちは(5月末の)フォーラムで明確にしている」とも説明した。 ●IOCバッハ会長「東京大会は完全に開催に向けた段階に入った」 6/11 IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長は、開幕まで40日余りとなった東京オリンピックについて「完全に開催に向けた段階に入った」と述べて大会の予定どおりの開催を改めて強調しました。 IOCのバッハ会長は、10日、3日間にわたってオンラインで行われた理事会のあと、およそ2か月ぶりに会見に臨みました。 このなかでバッハ会長は、日本への訪問について「みずからの隔離期間を考えると大会前に合わせて来日したほうがいいと判断した」と述べて、今月の来日を断念し、大会の開幕に合わせて来月中旬に日本を訪れることを明らかにしました。 そして、大会開催への自信を問われると「すべての関係者との緊密な連携のもとに東京大会は完全に開催に向けた段階に入った」と述べて、予定どおりの開催を改めて強調しました。 また、会見に同席したクリストフ・デュビオリンピック統括部長は、大会本番を想定した新型コロナの感染対策を施したテストイベントでは選手から安全への好意的な評価を受けたとしたうえで「来週には感染対策をさらに細かく盛り込んだ『プレーブック』の最終版を公表する。どの点においても史上最も準備が整った大会だ」と述べて、安全安心な大会への自信を示しました。 また、この日の理事会では、来月東京で行われるIOC総会に2032年夏のオリンピックの開催地としてオーストラリアのブリスベンを推薦することを決めました。 総会ではIOC委員による投票が行われる予定で、過半数の賛同を得て承認されれば、ブリスベンが開催地に決まります。 ●丸川五輪相、東京五輪中止基準について「観客上限を決める際に議論する」 6/11 丸川珠代五輪相(50)が11日、閣議後の会見で、新型コロナウイルス感染拡大が終息しない場合、どれくらいの感染状況でいつまでに、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの中止を考えるのかと、具体的な“中止基準”を聞かれると「観客上限を決める際、しっかりとそうしたことを議論させていただく」と話した。国際オリンピック委員会(IOC)は観客数上限判断時期は「6月末」と発表している。 丸川氏は「専門家のご意見を伺いながら、まず観客上限を決める時にしっかり検討したい」と話した。 ●五輪観客上限の決定時期「6月末」政府がIOCに提案 宣言解除の批判考慮 6/11 国際オリンピック委員会(IOC)が東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの観客上限の決定時期を6月末と発表したことについて、日本政府がIOCに提案していたことが10日、政府関係者への取材で分かった。IOCのデュビ五輪統括部長が会見で時期を示していた。 政府関係者によると、6月20日に緊急事態宣言を解除した直後に五輪の観客上限を決定すれば、また国民から「五輪のために解除した」と批判される。その印象を和らげるため10日ほど間隔をあけて発表する方針となった。 宣言を延長して、1日当たりの感染者数が減っていることや、国内のワクチン接種率が徐々に上がっていることもあり、政府内では上限50%を軸に調整している。チケットの追加販売も行わない方針だ。ただ、都医師会や世論には無観客でやるべきとの意見も根強く残っている。 ●東京五輪のホームページに独島表記…IOC「政治宣伝ではない」 6/11 大韓体育会の李起興(イ・ギフン)会長が東京オリンピック(五輪)のホームページに独島(ドクト、日本名・竹島)が日本の領土に表記されたことを受け、1日国際オリンピック委員会(IOC)に仲裁を求める書簡を送ったが、受け入れ難い回答が届いたことが10日、分かった。 韓国政府消息筋によると、IOCのジェームズ・マクラウド・オリンピック連携局長の名義で作成された回答には「東京オリンピック組織委員会とこの問題を議論したが、独島の表記は単に地政学的な表示であるだけで政治的宣伝ではないという」という内容が盛り込まれていた。 これを受け、韓国政府は受け入れられないという立場だ。 政府はこの日、文化体育観光部の黄熙(ファン・ヒ)長官の名義で仲裁を促す書簡をIOC会長に緊急発送した。 ●「安心・安全」の東京オリンピックと言うけれど…「万全の感染対策」への疑問 6/11 人を集めることは、感染症対策を考える上でリスク以外の何ものでもない。ましてやそれが、世界規模で短期間に集中するようなものであればなおさらだ。 東京2020オリンピックの開幕まで、約40日。 国内でも6月10日にはワクチンの延べ接種回数が2000万回を超えたとはいえ、2度の接種が完了した人はまだ500万人を少し上回る程度。全国の人口の5%程度だ。 世界的に見ても、状況はさまざま。アジアやアフリカでは、まだまだ十分にワクチンが行きわたっていない国々も多い。 準備段階ですでにアスリートごとに大きな格差が生じている状況で、本当にあらゆる国々が平等に競い合える平和の祭典を実現できるのか、はなはだ疑問だ。 五輪を開催するというのであれば、国内外に向けても「なぜ、いま五輪をやるのか」を、最低限納得できる形で説明をすることが必須だろう。 当然、かつて自国で開催された五輪の感動を味わってもらいたい、などという独善的な理由では世界的な納得を得ることはできない。 加えて、政府や東京都、組織委員会からは繰り返し「安心・安全な大会を実現する」といった趣旨の発言がなされているが、具体的な対策や実効性をどう担保するのか、詳細はいまだ見えてこない。 五輪組織委員会が公開しているプレイブック(第2版)などの公的資料をもとに、現状の対策を見ていこう。 ●「安心・安全」の対策、実効性は? 国内外ではオリンピックほど大規模ではないものの、スポーツイベントを開催してきた実績がある。 日本のプロ野球やJリーグなどでは、チーム内で複数人の感染が確認されて試合が中止になる事例は確認されているものの、観客を巻き込んで大規模なクラスターが発生するような事例はほとんど聞かない。 無症候で感染が広がっていて見落とされている可能性もあるが、競技を実施することや観戦する行為そのものは、感染を拡大させる大きなリスクにはなりにくそうだ。 つまり、五輪・パラリンピックの感染対策を考えるうえでは、大会の開催にともなう「競技以外の場所」のリスクをいかに下げるかがポイントとなる。 しかし、その難易度はかなり高そうだ。 5月28日に開催された緊急事態宣言の延長に関する記者会見で、菅義偉首相は、五輪における感染対策について問われると、次の3つの具体例をあげた。 ・入国する大会関係者の絞り込み。五輪では5万9000人、パラリンピックで1万9000人まで絞った関係者の人員をさらに削減要請 ・選手、大会関係者へのワクチン接種 ・海外報道陣を含めた関係者の宿泊施設や移動の集約。および、入国前後、滞在中の検査 海外から多くの人が集まってくることをリスクと考えるなら、来日する人の数を絞る、ワクチンを接種してもらう、行動を管理する、という対策には一定の効果はありそうだ。 ただし、その実効性をどこまで確保できるのかが、読めない。 アスリートや大会関係者用の「プレイブック(第2版)」には、五輪・パラリンピックへの参加に際して、選手・関係者(報道陣含む)に求められるルールが記載されている。 それによると、まず選手にしろ報道陣にしろ、入国から3日間はホテルの自室で隔離されなければならないとしている。 ただし、「アスリート、チーム役員、大会関連の重要な活動を担う大会参加者」は、毎日の検査や組織委員会の管理があれば「例外」となる場合がある。例外となる具体的な基準は記載されていなかった。 来日した大会関係者の移動は、組織委員会や各チームがチャーターした専用車両(バスやタクシー)に限られ、原則的に公共交通機関の利用が禁止されている。 また、入国から14日間は、活動計画書に記載した場所以外への移動ができず、つねに濃厚接触者リストの作成が求められている。 加えて、各自のスマートフォンには接触管理アプリ(COCOA)と6月リリース予定の健康確認アプリのインストールも求められる(スマホを持たない場合は貸し与えられる)。 他国の選手との交流が起こりやすい選手村では、定期的な検査のほかマスクや消毒、換気、そしてフィジカルディスタンスの徹底などの一般的な対策を実施するとしているが、こういった基本的な対策は、最終的には個人の感染対策の意識に依存する。 五輪への出場がかかっている選手がみずから大きなリスクを取るとは考えにくいものの、報道陣や大会関係者なども含めて、世界中から人が集まる中で実効性を担保できるのか、不確定要素は尽きない。 コロナ対策の実効性を担保するために、各国・地域ごとにコロナ対策責任者 (CLO)が任命され、トレーニングを受けるとされているが、現時点でその詳細は公開されていない。 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に、CLOの責任者の任命時期や人数などについて問い合わせたところ、 「コロナ対策責任者の指名は順次進行している。アスリート・チーム役員については各国のオリンピック委員会(NOC)、パラリ ンピック委員会(NPC)による指名となる」との回答があった。 ●選手村での検査、どうやるか? 選手や大会関係者に対する検査ルールは、かなり細かく設定されている。 選手や大会関係者が来日するためには、出国前14日間の健康状態をモニタリングした上で、出国4日(96時間)以内に2度の検査を実施し、陰性であることを確認しなければならない(検査手法は、唾液PCRや抗原検査など、いくつか推奨方法が記載されている)。 また、入国後も選手、大会関係者(報道陣含む)はそれぞれの必要に応じて定期的に検査が実施され、大会期間中に陽性となった選手は出場ができなくなる(濃厚接触者になった場合は、検査で陰性であれば専門家の判断のうえ出場が可能)。 ただし、大会期間中の検査体制については疑問が残る。 選手村には検体採取センターや検査分析設備が整備される方針で、IOCなどと調整しているというが、事前合宿を実施するホストタウンなどの検査・医療提供体制をサポートする具体的な対応については明言されていない。 また、報道陣なども含めて、選手以外の大会関係者に対する定期的な検査の運用方法に関する資料は、6月11日の段階では見当たらなかった。 来日する人数を削減する働きかけをしているとはいえ、オリンピック・パラリンピックに関連して来日する人数は数万人規模。もちろん、すべての人が同時に来日するわけではないが、この数の検査をどうさばくのか、具体的なロジスティックスが不明なのだ。 検査キャパシティは足りるのか、海外からやってくる報道陣に対する検査の運用はどうなっているのか、組織委員会に問い合わせたものの、 「プレイブックは、4月28日に第2版を公表後、その後も各方面からのフィードバックなどを踏まえながら、IOCとも緊密に連携し、最終の第3版公表に向けて改訂作業を行っている。改訂にあたっては、感染症対策に万全を期すべく、WHOや感染症の専門家の意見をいままで以上に積極的に取り入れていく所存。引き続き、組織委としては、第3版のプレイブック発行に向けて関係機関とともに尽力し、コロナ対策に万全を期して安全で安心な大会開催に努めてまいりたい」と、具体的な回答はなかった。 組織委員会で準備している検査のキャパシティが足りなくなれば、自治体の検査体制に影響が及ぶことは免れない。仮に大会期間中に東京などでの感染者数が増えていった場合、大会関係者の検査と自治体住民の検査のどちらを優先することになるのか、不安は残る。 大会を開催するのであれば、こういった不安に対して丁寧な説明をすることは、運営者の最低限の義務だろう。 ●「最も準備されている大会」1カ月前でも準備状況が見えない このほかにも、プレイブックの第2版では具体的な対応について不明な点が多い。感染対策の詳細は、6月中に公開予定の第3版で明かされるという。 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会にその公開日程をたずねても、「6月中の公開を予定している」と具体的な期日について回答はなかった。 IOCのバッハ会長は「東京大会は史上最も準備の整った大会だ」と発言したと報じられている。しかし、開催約1カ月前にもかかわらず、多くの人が不安視している感染対策の具体案は示されていない。 現在、WHOや感染症の専門家の意見を踏まえてプレイブックの改定を進めているというが、できる限り早く、具体的な対策の公開が求められる。 また、仮に大会自体の感染対策が科学的に妥当なものだったとしても、残念ながら住民の不安は完全に消えないだろう。 「3週間の短期間での緊急事態宣言」が2度延長されている現状では、早晩宣言が解除された後に、街の人出が増加することは想像に難しくない。 これに加えて、五輪開催の影響で国内での人の動きが活性化すれば、政府分科会の尾身茂会長が懸念するように、国内の感染状況や医療状況に何らかの影響が出ることは、十分想定できることだ。 国内で想定されるこの先の感染の広がりにどう対応するのか。これは当然、五輪・パラリンピックのプレイブックには書かれていない。 ●日本政府がオリンピック中止を決断するときとは? 6/11 英紙「ガーディアン」の東京特派員ジャスティン・マッカリーは、「請求額は数千億円にも上る可能性──東京オリンピック中止の場合に発生する利害関係」と題した記事を掲載した。 記事では、ほとんどの日本国民や公衆衛生の専門家、さらにはJOC(日本オリンピック委員会)のメンバーまでもが来月の開催に難色を示していることが明らかなのに、IOC(国際オリンピック委員会)を五輪開催に向かわせる「抑えきれない力」は何かを考察している。公式の見解は「(中止は)オリンピックの舞台を夢見てトレーニングを重ねてきたアスリートにとってあまりに残酷だ」とされているが、IOCの幹部は7月23日の開幕にこだわる本当の理由を明言していないと、マッカリーは書く。 スポーツに関する法律専門家レオン・ファーは同記事内で、「東京都がオリンピック開催を拒否すれば、開催都市契約に違反する可能性がある」と述べたうえで、論理的にはIOCが中止によって彼らが被った損失補償を訴えることができると話す。 事実上、IOCが主導して中止を判断するとは考えにくい。中止によって彼らが失う放映権料は約35億ドル(約4000億円)との試算もある。そして放映権料はIOCの収益の75%を占める。だからこそ、彼らは「ハルマゲドンが起こらない限りは開催予定だ」と述べたとも考えられる。 菅義偉首相は、主権国家の政府であってもIOCを止めることはできないと示唆しているが、オリンピックからの利益を得ようとしているのは菅首相も同じだと、マッカリーは指摘。オリンピックが成功すれば、今秋の総選挙で有利になるというのが同氏の推察だ。 とはいえ、前出のファーは「日本政府はオリンピックが安全に開催されないと判断すれば、IOCからの訴訟リスクを負ってでも躊躇なく介入するだろう」と語る。日本政府が中止を決断するとき──それは、コロナ禍でのオリンピック決行に伴うリスクが、中止によって生じる財政負担とIOCからの訴訟リスクを上回る場合だという。 つまり、もしオリンピックがスーパー・スプレッダー・イベントとなって人命を危機に晒し、日本の経済や評判に深刻なダメージが起こると判断すれば政府は中止を決めるだろう。だがその際のIOCからの請求金額も莫大なものになるはずだ。彼らが未曾有の事態でオリンピック開催を迫られる日本の状況を慮るとは考えがたいとし、記事は米パシフィック大学の政治学教授ジュール・ボイコフのこんなコメントで締められる。 「IOCは開催都市の利益よりも自分たちの利益を優先することで有名だが、今回の東京オリンピックではこのことが残酷なほど鮮やかに証明されている」 日本の評判か、IOCからの訴訟リスクか──日本政府はこの2つをどう天秤にかけるのだろうか。 ●東京五輪 パブリックビューイング 中止や見直し求める声相次ぐ 6/11 東京オリンピック・パラリンピックの期間中、都などが計画しているパブリックビューイングについて地元の自治体などから中止や見直しを求める声が相次いでいます。 東京都と組織委員会は東京大会の期間中に、パブリックビューイングや競技の体験コーナーなどをあわせたイベント会場「ライブサイト」を都内では代々木公園と井の頭公園に設置する計画ですが、代々木公園については、オリンピックの期間はワクチン接種の会場として使うことを理由に中止されることになりました。 さらに、井の頭公園について公園が立地する武蔵野市は「多くの人が集まることを懸念する声が数多く市に届いている」として中止を求める要望書を都に提出したほか、三鷹市は中止までは求めていませんが、入場者数の制限や飲食ブースの廃止などの感染対策を徹底するほか、公園内にワクチンの接種会場を設けることなどを都に要請しています。 一方、都の主催で計画されているパラリンピック期間中の調布駅前のホールでのパブリックビューイングについて、地元の調布市が実施の是非を再検討するよう求めています。 さらに、八王子市にある都立大学のキャンパスに設ける会場については、教職員で作る労働組合が会場の貸し出しを中止するよう大学に求め、大学も都に対し、最大限の対策を求めています。 こうした自治体などからの要望について都は、「寄せられた意見を受け止め、対応を検討している。パブリックビューイングの実施によって人流が発生することは否定できず、専門家にも意見を聞きながらできる限りの対策を行いたい」としています。 その上で、政府によるイベントの制限などの状況を踏まえパブリックビューイングの実施の是非や人数制限などの内容を今後、判断する方針です。 東京都などが計画しているパブリックビューイングに対して地元の自治体などから中止や見直しを求める声が相次いでいることについて、小池知事は11日の記者会見で、「それぞれの自治体から要望をいただいているので、いろいろな意見交換をしながら調整しているのが現状だ」と述べました。そのうえで、「大会組織委員会のガイドラインや政府のイベント開催の方針なども踏まえて準備や調整をしていく」と述べました。一方、7月、都内で行われるオリンピックの聖火リレーを公道で実施するかどうかについて、小池知事は、「新型コロナウイルスの感染状況などを踏まえながら判断していく」と述べました。 パブリックビューイングが計画されている八王子市にある都立大学南大沢キャンパスでは、学生からさまざまな声が聞かれました。このうち、3年生の男子学生は、「個人的にはオリンピックを盛り上げるのはいいことだと思っているので、万全の対策を整えた上でやるのがいい。人が集まりすぎるのはよくないのでもしやるのであれば、座る間隔を空けて参加は近所の人に限定したほうがいい」と話していました。一方、2年生の女子学生は、「学生はオンライン授業なのに外部の人をキャンパスに入れていいのか。そもそもパブリックビューイングが必要なのかどうかも疑問で競技の中継は家で見ればいい。パブリックビューイングで盛り上げる方向に動くのは今、やるべきことではないと思う」と話していました。 東京オリンピック・パラリンピックの大会期間中にパブリックビューイングを行うかどうか東京23区に聞いたところ、5つの区が「新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ中止する予定だ」としたほか、12の区が「実施するか慎重に検討している」などと回答しました。NHKは10日までに東京23区に対して、区内でパブリックビューイングや競技の体験コーナーなどをあわせたイベント会場「ライブサイト」を行うかどうか聞きました。その結果、すでに中止を発表した墨田区に加え、杉並区、荒川区、足立区、それに台東区の合わせて5つの区が、「感染状況などを踏まえ、中止する予定だ」と回答しました。一方、「実施する」と回答したのは千代田区、港区、中野区、大田区、それに北区の5つの区でした。ただ、いずれの区も実施する場合は定員を制限するなどの必要な感染対策をとるとしているほか、中には、「今後の状況で見直すこともある」と回答した区もありました。また、中央区、文京区、新宿区、目黒区、渋谷区、練馬区、品川区、世田谷区、豊島区、板橋区、江戸川区、それに葛飾区の12の区は、実施するか中止するかは回答せず、「感染状況などを見ながら慎重に検討している」などとしています。江東区は、当初からパブリックビューイングやライブサイトを行う予定がありませんでした。 東京・港区は東京オリンピック・パラリンピックの期間中、毎日、区立の芝公園でパブリックビューイングを実施する計画です。この中では、公園内に300インチの大型モニターを設置し、芝生の広場から観戦できるようにする予定で、1度に入る人数を2000人までに限定します。そのうえで感染対策を徹底し、観客と観客の間は2メートルの空間を空けられるように地面に目印をつけるほか、大声を出す応援を禁止し、拍手や鳴り物での応援に限ることにしています。また、港区には、80余りの大使館があることから、会場に日本に住む大使や関係者を招き、その国の文化などを来た人に紹介するイベントも計画しているということです。港区の白石直也オリンピック・パラリンピック推進担当課長は、「コロナ禍で、実施か中止か難しい判断を迫られているのは事実で、その判断は予断を許さないが、感染対策を万全に取った上で、みんなでスポーツを応援する喜びなどを共有できる場を作っていきたい」と話していました。 横浜市は、東京オリンピック・パラリンピックに関連して予定されていたパブリックビューイングやイベントの開催を中止すると発表しました。横浜市では、オリンピックの開催期間のうちことし7月31日から8月7日までの間、横浜港の大さん橋ホールで大型スクリーンを使ったパブリックビューイングや競技体験などができるイベントが開催される予定でした。また、市役所でもオリンピックとパラリンピックの期間中、毎日、パブリックビューイングを行う予定だったほか、磯子区の2か所でもパブリックビューイングが予定されていましたが市は、11日、いずれも中止すると発表しました。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため不要不急の外出の自粛が呼びかけられていることなどが理由で、林文子市長は、「市民の安全安心を最優先に検討を重ね判断した。横浜市でも競技が行われので、世界中の人の記憶に残るすばらしい大会となるよう感染症対策を徹底し、大会の成功に貢献していく」というコメントを発表しました。 田村厚生労働大臣は、閣議のあと、記者団に対し「適切な判断を頂いていると思う。他の地域も、専門家にも入って頂き、適切な判断をするのだと思う」と述べました。その上で「アスリートはこの1年間大変な苦労をして、それぞれの競技で戦っているが、われわれも感染を拡大させないという戦いをしなければいけない。どうやってリスクを減らした大会にしていくか、まさに今回のオリンピックの意義は、それそのものだと思う」と述べ、感染リスクを抑えるため、自宅での観戦や応援を改めて呼びかけました。一方、今月20日が期限となっている、10都道府県を対象にした緊急事態宣言などの解除の判断について「政府の分科会や、厚生労働省の専門家会合で、いろいろなご意見もあると思う。しっかり聞きながら、判断していくことになる」と述べました。 加藤官房長官は、午後の記者会見で「基本的に主催者である自治体に、地域の感染状況を踏まえ、実施の可否を含めて開催の在り方を検討していただく。一方で、イベントなどの開催制限は当然あり、政府の分科会で議論していただき、来月以降についてはこれから決めていくことになるので、そういったものも踏まえながら判断していただきたい。各自治体には、組織委員会が示している指針や専門家の意見、イベントの開催制限などを踏まえ、住民の安全を確保する観点も含めて適切に判断していただけるものと考えている」と述べました。 |
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●1000人に聞いた東京五輪開催で不安視していること 6/12
●ゼネラルリサーチ「東京オリンピック・パラリンピックに関する意識調査」 東京オリンピック・パラリンピックの開幕が間近に迫っている。平時であれば純粋に楽しみで指折り数えていたはずだが、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない今の状況下で、この“平和の祭典”とどう向き合っていくべきなのか、わからないという人も多いことだろう。そんな東京オリンピック・パラリンピックに関する意識調査がこのほど、ゼネラルリサーチ株式会社により、全国の20代〜60代男女1,023人を対象にして実施された。 ●調査1:年代別|東京オリンピックの開催で最も不安視されていること はじめに「東京オリンピック・パラリンピックのチケットについて当てはまるものを教えてください」と質問したところ、『持っていない(91.7%)』と回答した方が最も多く、次いで「持っている(5.0%)」「持っていたが、払い戻した(3.3%)」となった。ほとんどの方がオリンピックの観戦チケットを保有しておらず、チケットを持っている(いた)と回答した方は全体の8%程度で、その内払い戻した方が3%という結果となった。新型コロナウイルスの感染状態やワクチン接種の状況を見て、会場での感染や開催の有無自体に不安を感じているのかもしれない。 次に、「東京オリンピックの開催について不安視していることを教えてください(上位3つ迄)」と質問したところ、10代〜60代で「コロナ変異ウイルスのまん延(20代78.9%、30代82.6%、40代79.8%、50代85.8%、60代73.5%)」「新型コロナウイルス患者の急増による医療崩壊(20代67.2%、30代61.4%、40代70.7%、50代63.7%、60代68.5%)」「新型コロナウイルスによる死亡者の増加(20代32.4%、30代36.2%、40代30.8%、50代33.3%、60代34.0%)」がTOP3という結果になった。 4位以降は年代ごとに差が出ており、10代〜40代の方では、実際に東京オリンピックが開催されることを見越して、「会場での感染症対策」について不安視しているようだ。 50代〜60代の方では、オリンピック出場選手への誹謗中傷を不安視していることが明らかになった。実際にTwitter上で、東京五輪代表選手へ辞退を求めるツイートや批判といった誹謗中傷の問題も起きている。 さらに、「東京オリンピックの開催によって期待できる効果は何だと思いますか?(上位3つ迄)」と質問したところ、各年代で差はあるものの「経済成長の促進」「国全体の気分が明るくなる」「コロナワクチンの普及」「日本ブランドの向上」といった回答が上位に挙がった。コロナ禍で日本全体の経済が落ち込んでいる今、オリンピックが経済活性化の糸口となると考えている方は多いようだ。 20代〜30代の方は、「地方活性化(20代16.7%、30代16.9%)」「観光客の増加(20代15.7%、30代16.9%)」と回答した割合が高くなっており、日本のインバウンド活性化に期待していることが伺える。 ●調査2:感染症と今後のオリンピックに対する意見 次回の開催予定であるパリオリンピックも2年後に迫っており、開催について人々はどのように考えているのだろうか。そこで、「今後感染症拡大が世界で起きた際にオリンピックの開催はどうすべきだと思いますか?」と質問したところ、6割以上の方が「開催を取りやめる/延期して欲しい(63.4%)」と回答した。一方で3割以上の方が「入場制限をせず開催して欲しい(3.9%)」「入場制限をして開催して欲しい(13.3%)」「無観客で開催して欲しい(19.4%)」と回答した。 開催を取りやめるもしくは延期して欲しいといった意見が多数を占めているが、約3人に1人は何らかの形で開催して欲しいと回答しており、コロナに限らず開催を支持する方が一定数いるようだ。ワクチンの普及に期待している方も多いのかもしれない。 加えて、開催の賛否についてそのように思う理由を詳しく聞いた。 ●開催を取りやめる/延期して欲しい理由 ・「平和の祭典なので、感染症という平和を脅かすものを広めるリスクを抱えてまでやる事じゃない」(20代/会社員/石川県) ・「感染者が増えている中で開催するのは、開催国にとってリスクと負担が大き過ぎるから」(30代/会社員/東京都) ・「いろいろな変異ウイルスが出てきている時にさまざまな国の人が集まるオリンピックは変異ウイルス祭になりかねない。新たなウイルスができるかも」(40代/会社員/三重県) ・「現時点で既に医療崩壊しているし、医療従事者の疲労とストレスが半端なく、医療従事者にこれ以上負担を掛けられない」(50代/会社員/岡山県) ●開催して欲しい理由 ・「ウイルスの蔓延は防ぎたいが、選手たちの今までの頑張りをなしにはして欲しくない」(20代/会社員/千葉県) ・「選手のことを思うと開催した方が良いと思うが、感染拡大が怖いため無観客での開催を希望します」(30代/自営業・自由業/神奈川県) ・「このようなご時世だからこそしっかり対策をして世界的な影響のある感動的なオリンピックを開催してほしいと思うから」(40代/会社員/愛知県) ・「世界でいろいろなスポーツが開催されているのに、コロナ対策をして開催するオリンピックで感染爆発するようなことが起きるとは思えないから開催すべきだと思う」(60代/自営業・自由業/栃木県) オリンピックのために頑張ってきた選手のためにオリンピックを開催して欲しいといった声がある一方で、医療崩壊や感染拡大による人的被害といった問題もあり、危険をさらすべきできではないといった声も挙がった。今回の東京オリンピックや次回のパリオリンピックでは新競技が追加されるなど、オリンピックにも変化が起きているが、今後のオリンピックで追加を期待する新競技についてはどのように考えているのだろうか。 ●今後のオリンピックに追加を期待する新競技とその理由 ・「ソフトテニス(軟式テニス)。硬式テニスと共に開催する事で硬式と軟式との違いを理解させる事で世界中の人達に硬式と軟式の違う楽しさを実感してもらえそうなため」(20代/公務員/神奈川県) ・「競技チアリーディング。老若男女問わず競技人口があり、エンタメ性もあるから」(30代/自営業・自由業/長野県) ・「eスポーツ。新しい形のスポーツではないかと思う」(40代/会社員/新潟県) ・「ボウリングなど老若男女が参加出来る競技」(60代/会社員/佐賀県) 日本を発祥とするソフトテニスの普及や老若男女問わずに参加できる新競技の追加を期待する声が多数挙がった。オリンピックの競技については、競技人口の増加や人気に伴って決まっている。近年では、若者の関心を引くために若者人気が高く、注目されるスポーツを採用することもあるようだ。 ●調査3:年代別|新しいオリンピック様式を生み出すためのアイデア ここまでの調査で、感染症拡大時のオリンピックのあり方や新競技について意見が明らかになったが、このような変化について人々はどのような意見を持っているのだろうか?そこで、「オリンピックは伝統を守りつつ、進化をしていくべきだと思いますか?」と質問したところ、各年代に差はあるものの7割以上の方が「はい(20代84.3%、30代77.3%、40代72.6%、50代73.0%、60代71.5%)」と回答した。20代で「はい」と回答した方は、8割以上と最も多く、オリンピックは変化していくべきと考えていることが伺える。 ●伝統を守りつつ、進化していくべきだと思う理由 ・「時代交錯したものより、常に今の価値観に合わせた大会の方が、より発展していくと思うから」(20代/会社員/北海道) ・「世の中は変わるし、新しいものを取り入れていかないものに文化もないと思うから」(30代/会社員/新潟県) ・「世界でたくさんの競技が一同に会して行われる大会は他にないから。時代により競技人口の変化もあるので進化はしていいと思う」(40代/会社員/三重県) ●伝統を守りつつ、進化するべきではないと思う理由 ・「昔からの競技で競っていけばいいと思う。新競技とかで全く分からない競技されてもつまらないから」(30代/会社員/兵庫県) ・「商業化されすぎて純粋に参加できないから」(50代/パート・アルバイト/北海道) ・「各スポーツでは世界大会があるのでそちらで十分だと思う。また、開催国の費用負担が大きいから」(60代/会社員/千葉県) 最後に、ニューノーマルに合わせた新しいオリンピック様式を模索するために、どのような対策が考えられるか、自由回答でアイデアを募った。 ・「バーチャル技術を活用したネット空間での競技」(20代/会社員/宮城県) ・「臨機応変な対応。4年に一度という枠にこだわらなくても良いと思う」(30代/自営業・自由業/長野県) ・「地区予選の充実。決勝戦だけを“オリンピック大会”として開催する」(50代/会社員/神奈川県) ・「一都市開催では負担が大きすぎるから、競技ごとに数か国で開催して欲しい」(60代/自営業・自由業/栃木県) 以上のような回答が寄せられた。新型コロナウイルスの流行によってテレワークやオンライン通信ツールの利用が以前よりも浸透しつつある。時代の流れと共にIT技術が発達している今、オリンピックもオンライン化できないかといった意見も上がっているようだ。 ●東京五輪、国民が支持を表明しにくい日本 6/12 東京オリンピックの開幕まで40日余りとなった。日本では中止や延期を求める人がなお多い。だが、開催を待ち望んでいる人もいる。 「一番記憶に残るオリンピックは1984年のロス五輪。日の丸を真ん中に掲げて金メダルを首から下げ涙を流している柔道の山下泰裕選手が誇らしかった。カール・ルイス。神様のように速かった。オリンピック選手は、現実に居る『超人』だった。みんなキラキラしていた。当時、子供だった僕には、オリンピックは、『日常』を『非日常』にしてくれる『超人』たちの最高のエンタメだった。だから僕は基本的に五輪肯定派だ。何故なら素直に『超人』たちの祭典が見たいから」 私がツイッターで受け取った東京五輪の開催を支持するメッセージの一部だ。しかし記事で引用する場合は匿名で、という依頼付きだった。そしてそのようなリクエストは一人からだけではなかった。 「東京五輪の開催には賛成です、アスリートの皆さんに5年間の努力を存分に発揮させてあげたいと思います」とコメントをくれた人も、やはり匿名を希望した。なぜなのか? 理由はたいてい次のようなものだ。「万が一職場や関係者にご迷惑がかかってしまった場合に責任問題にもなりかねない」 ●異論が許されず 東京五輪の中止を求めるオンライン署名サイト「Change.org」の署名は42万筆を突破した。 これは同サイトの日本語版が2012年に開設されて以降で最も多い。 ボランティアは約8万人のうち、およそ1万人が辞退。新型コロナウイルスの患者を受け入れている病院の窓には、「医療は限界 五輪やめて!」とメッセージが貼りだされた。海外選手の事前合宿の受け入れを辞退する自治体も相次いだ。 秋までに行われる衆院選を前に、菅義偉内閣の支持率は政権発足直後と比べ半減。国際オリンピック委員会(IOC)と東京都の契約上、日本政府には五輪の開催契約を解除する権利がないと気づいた時の国民のいら立ちは明らかだった。 国内の議論は極めて感情的なものとなった。異なる意見は許されず、開催に前向きな思いをもつ人はそれを表明するのを恐れた。その影響はアスリートにも及んだ。 白血病から復帰して競泳の東京五輪代表に内定し、多くの人に感動を与えた池江璃花子選手には、出場辞退を求める声がソーシャルメディアで寄せられた。彼女は、「このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然の事」である反面、「それを選手個人に当てるのはとても苦しい」とツイートした。 またBBCが取材したラグビーの中村知春選手も、「東京オリンピック・パラリンピックをやりたい、と声を大にして言えないのは、それはアスリートのエゴだとわかってるから。 別に何も考えてない訳じゃない」とツイッターに投稿した。 「アスリートが五輪に出たいと言えない、やってほしいという声があげられなくなっている」と言うのはジャーナリストの佐々木俊尚氏だ。健全な議論には何が必要かを論じてきた。 ●妥協なき議論 知識の暗記を中心とし、授業でディベートを行わない日本の学校教育も原因の一つとしてあげられる。それが議論の二極化と、妥協を許さない状況を招いていると佐々木氏は言う。 海外で活躍するテニスの大坂なおみ選手や錦織圭選手、ゴルフの松山英樹選手は、コロナ禍で行われる東京五輪についての個人的見解を述べている。一方で、日本のアスリートの多くは意見を公にすることを避けてきた。その背景には、アスリートを「タレント的な無垢(むく)な存在」として見、「政治性を持たないでほしい」と望む世論があると佐々木氏は語る。 そして日本政府は、「安全安心に開催できる」という同じフレーズを幾度も繰り返すばかりだ。 佐々木氏は、「五輪開催に賛成の人、組織委員会や自民党は攻撃されるからと、きちんと説明しなくなってしまった。説明しても無駄だろうとなってしまっている」と説明する。 ツイッターでの発言を名前を出して紹介することを許可してくれた数少ない五輪賛成派の一人である加藤克彦氏は、コミュニケーション不足の問題だと指摘する。 「政府、組織委員会はかなり厳しい感染対策を講じている。プレイブックに書かれている。問題はそれが広く周知されていない事。だから不安が募る。政府、組織委員会はメディアを総動員して感染対策を日本だけでなく世界中で『宣伝』すること。そうすれば安心安全な五輪である事がわかる」 佐々木氏はまた、「ゼロリスク」を求める国民性も背景にあると言う。 「歴史をさかのぼると、原発安全神話というのがありました。リスクはあるんだけれど、エネルギー安定提供が大事だと言うと、少しでも危険があるならやめろという声があがり、絶対に安全と言わないといけない」「今回も、多少の感染はあるかもしれないけれどという説明をすると怒りだしてしまう」 ●事実とデータ それでは、実際に東京五輪が開催された場合、新型コロナウイルスの感染拡大への影響はどうなのか? 東京大学大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授と藤井大輔特任講師が行ったシミュレーションによると、緊急事態宣言が6月中旬に終了し、国内のワクチンの接種が1日に60万本のペースで進むと仮定した場合、東京五輪が行われないと10月の第3週に東京での1日の感染者数は822人になると見込まれる。 また、海外から選手や関係者など10万5000人が入国し、このうち半数がワクチンの接種を終えている場合は、同時期の1日の感染者の数が842人になると計算した。 一方で、大会期間中に応援に出かけるなど人流が2%増えた場合は同時期の感染者数が1046人となり、6%増えた場合は1600人に増加すると想定。人出が増えるのを抑える必要があるとする結果をまとめた。 一般の国民にも開催に否定的な考えを表明している人は多い。 田村愛子氏は、「中止にしたところで死ぬ人はいない。今の現状であれば開催して死亡する人はでる。子供達の、運動会は中止でオリンピックはなぜ開催するのだろう、という純粋な疑問が胸に突き刺さる」とツイッターでコメント。 高橋正和氏は、IOCは「開催は経済の利益だけを考えていて、人間は死んでもかまわない発想。これはオリンピックの精神の真逆」と言う。 吉村光史氏は「オリンピックは何だか『体育会系産業カルト』みたいになってしまっていて異様。謙虚さも無い。余りにも傲慢(ごうまん)な姿勢には驚くより他にない」とのコメントをツイッターで送ってくれた。 海外選手たちの来日が始まり、日本国民の反対世論にかかわらず東京五輪は開催される様子だ。 しかし、なにか間違いが起きた時のコストは大きい。 そして、2011年の東日本大震災からの「復興のシンボル」になると期待された東京五輪は、それが現実的ではなくなったばかりでなく、近年で最も過熱した感情的な議論の的となってしまった。 ●「東京五輪期間はテレワーク」 テレワーク・デイズ2021実施 6/12 東京オリンピック・パラリンピック大会期間を含む7月19日から9月5日まで、「テレワーク・デイズ2021」を実施する。総務省と厚生労働省、経済産業省、国土交通省が、関係府省・団体と連携し、テレワークの集中的な実施を推進。期間中の人と人との接触機会抑制と、交通混雑の緩和を目指す。 テレワーク・デイズは、2017年から東京オリンピックの開会式の7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけ、働き方改革の国民運動を展開。2019年は2,887団体が参加した。 テレワーク・デイズ2021は、東京オリンピック・パラリンピック大会期間中の混雑緩和と、テレワークの全国的な推進を目的とし、テレワークの一斉実施を呼びかける。オリンピックは7月23日から8月8日、パラリンピックは8月24日から9月5日まで実施だが、選手や関係者の移動が見込まれる開会前とオリ・パラの合間も実施期間に含む。 目標は3,000団体の参加。テレワークを実施する実施団体のほか、効果測定(交通混雑緩和、業務効率化等)のアンケートに協力可能な特別協力団体、ノウハウやワークスペースを提供する応援団体も募集する。 ●G7サミット、東京オリンピック開催に「賛意」 6/12 イギリスでG7サミット=主要7か国首脳会議が開幕し、菅総理は東京オリンピック・パラリンピック開催への決意を述べました。参加国からは賛同の意思が示されたということです。 「回復しながら、社会全体をこれまでよりよくしなければならない」(ジョンソン首相) イギリス・コーンウォールで開幕したG7サミットでは、まず新型コロナの感染拡大で落ち込んだ世界経済の回復について議論が行われました。議長国のイギリスのジョンソン首相は「パンデミックは貧富の差をさらに固定した」として、環境に配慮しながら公平・公正な回復を目指す必要性を強調しました。 議論の中で菅総理は、東京オリンピック・パラリンピックについて「世界が団結し、人類の努力と英知によって難局を乗り越えていけることを日本から世界に発信したい」とした上で、「万全な感染対策を講じ、準備を進めている。強力な選手団を派遣してほしい」と呼びかけました。 日本政府によりますと、この発言に対し参加国の首脳から「成功を確信している」という発言があったということです。その後、首脳たちはエリザベス女王ら王室メンバーとコーンウォールにある大型植物園での夕食会に出席しました。 ●東京五輪・パラ “選手ら1日7人程度の感染確認 ”組織委が試算 6/12 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は、11日開かれたコロナ対策を検討する専門家会合で、大会期間中、選手や関係者に1日に7人程度の感染が確認されるという試算を示しました。今後、ワクチン接種などを進め、感染防止の徹底を図りたい考えです。 示されたのは、先月行われた海外選手が参加したテスト大会での陽性者の数などを基に、組織委員会や東京都などが作成した試算です。 それによりますと、大会期間中の選手と関係者を合わせて7万7000人として、1日当たり7人程度の感染が確認されるとしています。 また、入院は最大で選手が1人程度、大会関係者が10人程度、軽症や無症状での宿泊療養は、最大で合わせて57人程度としています。 試算は、ワクチン接種を反映していない厳しい条件で出されたもので、実際は大幅に減る可能性があるとしています。 組織委員会は、こうした試算をもとに、地域医療に支障をきたさない形で大会の医療・療養体制を確保し、ワクチン接種や国内の人の流れの対策に重点的に取り組むことで、感染防止の徹底を図りたい考えです。 ●再開発で住民退去「東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパート」 6/12 2020年の東京オリンピック開催にむけた国立競技場の建て替えのため、2017年に取り壊された公営住宅を追ったドキュメンタリー「東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパート」のポスター画像と元アパート住民によるコメントが公開された。 1964年のオリンピック開発の一環で国立競技場に隣接して建てられた都営霞ヶ丘アパートは、平均年齢65歳以上の住民が暮らす高齢者団地になっていた。単身で暮らす者が多く、何十年ものあいだ助け合いながら共生してきたコミュニティであったが、2012年7月、このアパートの住人に東京都から一方的な移転の通達が届く。監督・撮影・編集は本作が劇場作品初監督となる青山真也。音楽を大友良英が担当した。 2014年から2017年の住民たちを追った本作では、五輪ファーストの政策によって奪われた住民たちの慎ましい生活の様子や団地のコミュニティの有り様が収められ、また移転住民有志による東京都や五輪担当大臣への要望書提出や記者会見の様子も記録されている。東京ドキュメンタリー映画祭2020特別賞を受賞した。 8月13日からアップリンク吉祥寺で公開。そのほか、横浜シネマ・ジャック&ベティ、名古屋シネマテーク、アップリンク京都でも公開。 菊池浩司さん(元アパート住民)コメント / そうだそうだ、懐かしいな、この場所。ウチの下に住んでいた森田さん、もう亡くなっちゃったけど、この時は元気に映っているね。自分は独り身で、家族もいなくて、裁判まで我慢できないから、とっても焦ってたよ。当時、めちゃくちゃだったんだから。犠牲? 姥捨山みたいに扱って、馬鹿にしてるよな。本当。選手の人たちは一生懸命練習しているからなにも言えないけど、五輪の組織委員会の人たちには、自分たちだけ良ければいいんじゃなくて、思いやりを持って接して欲しい。この映画を見て欲しいね。 |
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●2日間で179人が聖火つなぐ 6/13
東京五輪の聖火リレーは10、11日に青森県内を巡った。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で公道での走行中止を余儀なくされる区間が相次いだが、2日間で179人が聖火をつなぎ、県内は笑顔に包まれた。両日を振り返る。 10日は公道での実施が中止となり、代わりに青い海公園(青森市)で約30メートル走って聖火をつなぐ「トーチキス」が行われた。全身の血管に炎症が起きる「川崎病」を乗り越えた中泊町職員の中村蒼太さん(22)は、感謝の気持ちを込めて火をつないだ。1歳で川崎病を発症、病と向き合いながらも陸上競技を続けた。昨年、ようやく治り、病院通いも終わった。「病気がちでも一生懸命頑張れば目標をかなえられることを伝えたい」と笑顔を見せた。板柳町のリンゴ農家、寺本充宏さん(50)が走者を務めたのは、農業の楽しさを伝えるため。走り終えると、「先人が築いてきたリンゴ産業を次の代へつなげたい」と語った。県立青森高校(青森市)のボート部で活躍する尾野 彩空さら さん(18)は手を振りながら笑顔で走り、「ボートの試合よりは緊張しなかったが、周りの人への感謝の気持ちが湧いてきた」と顔をほころばせた。 11日は十和田市から八戸市までの4市町でリレーを実施。沿道には聖火を一目見ようと多くの市民が詰めかけ、感染拡大に気をつけながら拍手で応援していた。世界文化遺産への登録が見込まれる「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一つ、小牧野遺跡(青森市)の保護センター副館長の後藤公司さん(45)は階上町を走った。環状列石をモチーフにしたマグカップを考案するなど、多くの人の興味を引くアイデアを練っている。この日のトーチキスでも片方の足を折り曲げ、「遮光器土偶」をまねてみせた。沿道に手を振りながら大役を果たすと、「コロナ禍だが、前向きなニュースを届けられるように努力していきたい」と誓った。 10日、青い海公園(青森市)で聖火をつないだ野田武尚さん(74)は、1964年の東京五輪で聖火ランナーの「補助ランナー」として沿道を伴走した。「次に日本で五輪をやる時には、絶対に聖火ランナーになろう」と心に誓い、57年ぶりに夢をかなえた。当時は県立七戸高校(七戸町)野球部の3年生。聖火ランナーを務めた陸上部員のそばを走った。聖火ランナーへの憧れが強くなったのは卒業直後。就職した地元の信用金庫で、同僚たちから聖火リレーの思い出を次々と尋ねられ、聖火を手にできなかったことを悔やむようになった。2020年東京五輪の開催が決まると、迷わずランナーに応募した。前回の聖火リレーを思い起こすと、沿道の人はまばらで、盛大な応援を受けた記憶はない。今回はコロナ禍で公道を走れず、距離も30メートルに短縮されたが、「長い距離だと、トーチを落とす不安もある。いい距離だ」と前向きにとらえた。トーチに聖火がついた瞬間、「ついに来たか」と思った。聖火が手にあるのと、ないのとでは全く違った。「(トーチを)持つことができたし、引き継ぐことができた。自分は幸せ者だ」。走り終え、すがすがしい表情を浮かべた。 ●東京オリンピック期間中はテレワーク? 国民に耐久生活を強いる 6/13 経産省の発表です。 「「テレワーク・デイズ2021」実施方針を決定しました」「具体的には、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催期間中は、選手、関係者等の移動も発生することから、人と人との接触機会の抑制や交通混雑の緩和を通じて安全・安心な大会を実現するため、7月19日〜9月5日の間、テレワークの集中的な実施に取り組むこととしました。テレワーク・デイズにおいては、テレワークの実施や支援(自社での取組における工夫やICTツール、ワークスペースの提供など)に御協力いただける方に参加登録をお願いしています。「テレワーク・デイズ2021」の参加登録については、本日より、以下URLにて開始しますので、御協力よろしくお願いします。」 テレワークよろしくって、かなり無責任な発想です。東京オリンピックを優先させるあまり、その間は国民には外出を自粛せよ、と言っているようなもので、ただでさえ、外出自粛が長期になっていますし、飲食店への営業時間の短縮の要請も出口が見えなくなっています。 蔓延防止処置や緊急事態宣言も徐々に解除するそうですが、実際、本当に解除してしまって大丈夫なのかというくらい、減少の仕方は鈍いです。 東京オリンピックの期間は何故、外出を自粛したり業務をテレワークにしなければならないのですか。そのようにしなければ感染拡大が再燃するから、ということを認めているようなものです。 近々、非常事態宣言も一部の地域を除けば解除、恐らくこれまでの中途半端な対策のためにリバウンドが起きることも想定されます。 「コロナに感染したくなかったら、オリンピック期間中は自宅に引っ込んでろ」 これが国(経産省)の方針だというこです。 これまでも耐久生活を強いられてきたのに、オリンピックという国策のためには国民にさらなる我慢を強いるのは本末転倒です。 オリンピック開催強行が何のためなのか、はっきりしました。私たち国民のためではありません。東京オリンピック開催の意義を一般論で語られても… 子どもたちの部活動中止は説明できない「大人の都合」。 ●「台湾の平和と安定重要」 五輪開催支持 ワクチン支援10億回分・G7宣言 6/13 先進7カ国首脳会議(G7サミット)は13日午後(日本時間同日夜)、首脳宣言を採択して閉幕した。 宣言は、中国が軍事的圧力を強める台湾に初めて言及し、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と明記。東・南シナ海への強引な進出にも「深刻な懸念」を示した。東京五輪・パラリンピック開催への「支持」を表明した。 サミットは、自由主義陣営が結束して中国に対抗する姿勢を明確にした。閉幕を受け、議長のジョンソン英首相は記者会見し、「G7が民主主義と自由、人権の恩恵を世界に示す必要がある」と訴えた。菅義偉首相は記者団に「普遍的価値を共有するG7として国際秩序をリードしていきたい」と語った。 日米が重視する台湾海峡の平和と安定は、5月のG7外相会議の共同声明にも明記された。G7内には対中姿勢で温度差もあるが、サミットでは足並みをそろえた。 首脳宣言は、中国の覇権主義的な行動を踏まえ、「一方的な試みに強く反対する」と強調。香港や新疆ウイグル自治区の人権問題にも触れ、「人権と基本的自由を尊重する」よう求めた。 サミットは新型コロナウイルスの世界的な感染拡大も主要議題に取り上げた。途上国などの感染収束を後押しするため、「資金および現物供与を通じ、来年にかけてワクチン10億回分の供与に相当する支援」を打ち出した。 菅首相はサミットで、7月23日に開幕を予定する五輪開催への決意を示し、各国に「強力な選手団」派遣を呼び掛けた。閉幕後には記者団に、「全首脳から力強い支持を頂いた」と述べた。 気候変動対策に関しては、2050年までの温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標実現を確認。二酸化炭素(CO2)回収などの措置が講じられていない石炭火力発電に対し、「新規の国際的な直接支援を年内に終了する」ことで一致した。 ●G7 菅首相 議論を宣言に反映と評価 五輪開催「全首脳が支持」 6/13 G7サミット=主要7か国首脳会議の一連の討議を終えたあと、菅総理大臣は記者団に対し議論の内容を首脳宣言に反映できたと評価し、新型コロナウイルス対策や権威主義との競争などでG7が国際秩序を主導していく考えを示しました。また、東京オリンピック・パラリンピックの開催に全首脳から力強い支持を得たことを明らかにしました。 この中で菅総理大臣は、G7サミットについて「対面では初めての参加だったが、率直に意見交換できた。議論の成果をしっかりと首脳宣言に反映することができたと思っている」と述べました。 そのうえで「新型コロナ、気候変動、さらには経済回復、権威主義との競争に、国際社会が直面する中で、普遍的価値を共有するG7として、これからの国際秩序をリードしていきたい。そして、さまざまな政策について、経済社会のよりよい回復を目指すと同時に、自由で開かれた国際秩序の確立に努めていきたいということを、全体として方向付けをした」と述べました。 また、東京オリンピック・パラリンピックについて「感染対策の徹底と安全安心の大会について、私から説明をさせていただき、全首脳から大変力強い支持をいただいた。私自身、改めて主催国の総理大臣として、こうした支持を心強く思うとともに、東京大会を何としても成功させなければならないという思いで、しっかりと開会し、成功させなければならないという決意を新たにした」と述べました。 ●「オリンピックのための自粛や我慢ではない」 6/13 フリーアナウンサーの大島由香里氏が、国民に対する説明がなく開催前提で進んでいるように感じられる東京オリンピック・パラリンピックについて「オリンピックのための自粛や我慢ではない」などと話し、一児の母として複雑な心境を明かした。 13日にABEMAで放送された「ABEMA的ニュースショー」に出演した大島氏は「開催されるんだな…」と述べる一方、4歳になる娘が通っている保育園の状況を例に挙げ次のように本音を漏らした。 「保育園のイベントがことごとく、ずっと中止になっている。運動会はもちろん、料理のイベント、授業参観も全部が中止になっている。それでいて、一方でオリンピックはやるとなったときに、子どもはずっと練習していたダンスが保護者の前で発表できずに泣いたりしている子もいる。では『なぜ、オリンピックは開催されるの?』と聞かれたときに、ちゃんとした説明ができない状況がずっと続いている」 そのように話した大島氏はさらに「オリンピックのために私たちは生活の自粛とか我慢をしているわけではないというのは思い続けていた。なんて説明したらいいのか…子どもへの説明がわからない」と続けた。 今月20日までを期限として10都道府県に発令されている緊急事態宣言などについて、政府の判断の行方に注目が集まる。 |
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●オリンピックで動く巨額のカネ 「東京五輪」で潤う特権階級は誰だ 6/14
オリンピックとは何なのか。本当に平和の祭典なのか。なぜ商業主義が肥大化したのか。こうした疑問にこたえる五輪本の出版が続いている。五輪の内幕を暴露し、コロナ禍で混迷する東京五輪を予見していたかのようなものが多い。 ●反対運動に焦点 特に外国人の研究者による著作は手厳しい。 『オリンピック 反対する側の論理 東京・パリ・ロスをつなぐ世界の反対運動』(作品社、21年4月刊)は、今や五輪の付き物になった各地の反対運動を振り返り、五輪の変容をまとめている。 著者のジュールズ・ボイコフ氏は1970年生まれ。パシフィック大学政治学教授。元プロサッカー選手。バルセロナ五輪の米国代表。五輪研究の第一人者だという。 平昌、リオ、ロンドン、そして東京、ロス、パリの開催地・予定地での調査・取材をもとに、世界に広がる五輪反対の動きと論理、社会的背景を分析している。 「今日のオリンピックは『資本主義の化け物』」だという。膨大な費用、環境破壊、弱者を追い詰める開催地の都市開発、選手を使い捨てする過度な商業化......。 ボイコフ氏は3年前、『オリンピック秘史 120年の覇権と利権』(早川書房)も出版している。スポーツジャーナリストの二宮清純氏が解説を書いている。 今年3月には『オリンピックという名の虚構――政治・教育・ジェンダーの視点から』(晃洋書房)も出た。歓喜や希望の水面下にうごめく政治的、経済的思惑を暴き、若者の教育やジェンダー、アスリートの権利などについて人権的な視点から切り込んでいる。 著者のヘレン・ジェファーソン・レンスキー氏はトロント大学名誉教授。スポーツとセクシュアリティをテーマに、スポーツ・メガイベントの社会への負の影響について研究を続けている。 「オリンピックはその輝かしい名声に本当に応えているのか」と問いかけている。 ●搾取される国民 日本人の著作では、『オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側』 (文春新書、20年刊)が刺激的だ。著者の後藤逸郎氏はジャーナリスト。元毎日新聞記者。丹念な取材で「IOCを巡る不透明なカネの流れ」「高騰する放送権料のからくり」「二〇二〇年東京オリンピックの真実」などに踏み込んでいる。「利権の闇が広がり、ツケは国民に回される」と手厳しい。 『五輪スタジアム 「祭りの後」に何が残るのか』 (集英社新書、20年刊)は、1972ミュンヘンから2016リオデジャネイロまで、夏季五輪開催地の「今」を徹底調査。各大会のメインスタジアムの「五輪後」の稼働状況、運営形態、維持費の実態を明らかにしている。新国立競技場と東京の「ポスト五輪」を示唆する内容だ。著者の岡田功氏は大阪成蹊大学経営学部スポーツマネジメント学科教授。元毎日新聞記者。 オリンピックのボランティアに焦点を合わせたものでは『ブラックボランティア』(角川新書、18年刊)がある。著者の本間龍氏は元博報堂社員。広告代理店と政治やメディアとの関係に詳しい。17年に出した『電通巨大利権〜東京五輪で搾取される国民』(サイゾー)では、五輪と電通の関係に迫っている。 ●世界最大級のスポーツ・ビジネス 五輪は長くアマチュアリズムに支えられてきた。1964年の東京大会もその延長線上にあった。しかし、1980年代から商業化が進み、「2020東京五輪」は、1964年の東京五輪とは大きく様変わりしている。有力選手は企業のサポートを受け、IOC(国際オリンピック委員会)はスポンサー企業の広告料や、テレビ放映権料で潤う。今や五輪は、世界最大級のスポーツ・ビジネスと化し、コロナ禍でもやめられないということが各種メディアで報じられている。 加えてIOCの首脳部は長年、西欧の貴族らが牛耳り、特権階級化していることなども報じられている。 多数の五輪本は、肥大化した商業主義が制御の効かないレベルに達していることを改めて指摘している。東京五輪の混乱を予告していたといえる。東京五輪後は、さらに何冊かの内幕本が出ることになるかもしれない。 ●東京五輪期間中の「終電延長」決まらぬ鉄道業界、判断遅れが招く危機 6/14 ●東京オリンピック開催のあり方が全く決まらない異常事態 東京オリンピックの開幕までまもなく1カ月となる。新規陽性者数は減少傾向にあるが依然として東京、大阪など10都道府県に緊急事態宣言が発出される中、6月5・6日にJNNが行った世論調査では、44%の人が「開催すべき」と答えた一方、「中止すべき」「延期すべき」は合計で55%に達した。 「開催すべき」とした人の中でも半数以上は「無観客で開催すべき」と答えており、コロナ下でのオリンピック開催に不安の声が高まっている。 しかし菅義偉首相は観客を入れることに強いこだわりを見せているようで、5月28日の記者会見でも「宣言下でも、野球やサッカーは一定の水準で感染拡大防止をしっかりした上で行っている。そうしたことを参考にしながら、対応はできると思っている」と述べている。 無観客で実施するのか、観客を入れるのか。受け入れるのであれば定員の5割を上限とするのか、ひとつの会場で5000人を上限とするのか。これらの結論は当初、4月中に出る予定だったが、感染の急拡大を受けて判断は先送りとなり、最終的な結論は6月まで持ち越すことになった。 その結果、開催1カ月前にして大会のあり方が全く決まっていない異常事態となってしまったのである。 当然、無観客と有観客では必要なボランティアや医療スタッフの数も異なってくる。観客を入れるとしてもチケットの再抽選が必要になるが、その準備が間に合わないという問題もあるなど、関係各所がオリンピックに振り回されているのが現状だ。 ●終電延長を行うかどうか結論が出ない鉄道業界 そして鉄道業界もまた、この問題のあおりを受けている。大会期間中の終電延長を行うか、行わないか、いまだに結論が出ていないのである。 というのも、東京オリンピックではバスケットボールやバレーボール、サッカーなどの競技は、アメリカでのテレビ放映時間などの関係で23時頃まで競技が行われる。 そのため観客が山手線や地下鉄など都心の鉄道ネットワークを経由して各方面の列車に乗り継いで帰宅できるよう、大会期間中、東京圏のJR、私鉄、地下鉄は最終列車の発車時刻を1〜2時間程度繰り下げることが決まっていた。 具体的には、山手線内回りは通常では大崎駅0時23分池袋駅行きのところを、同1時30分発に、外回りでは大崎駅0時42分発池袋駅行きを同1時40分発に繰り下げる。 また山手線と接続し郊外に向かう路線では、たとえば中央線快速は東京駅0時27分発武蔵小金井駅行きを同1時30分発に、常磐線快速は上野駅0時51分発松戸駅行きを同1時50分発に繰り下げる。 元々終電時刻の早いローカル線区では大幅に繰り下げられ、八高線は八王子駅23時14分発高麗川駅行きを同1時10分発に、外房線では千葉駅23時59分発大網駅行きを同1時40分発にする計画だった。 ただ、ここで挙げた数字はいずれも昨年7月時点のもので、現在の終電時刻とは異なる。というのも、今年3月のダイヤ改正で各線区の終電時刻が最大で30分程度繰り上げられたからだ。 コロナ禍以前はオリンピック期間中の終電繰り下げを、ナイトタイムエコノミー振興を目的とした恒常的な終電繰り下げ、さらには終夜運転につなげたいという期待も政財界の一部にはあったようだが、オリンピックが延期されている間に、鉄道業界の潮目はまるっきり変わってしまったのだ。 ●終電繰り下げを強行すれば事故やトラブルの恐れも 今更、終電繰り下げと言われてもというのが鉄道各社の本音だろう。それでも、もし有観客でオリンピックを実施するのであれば、観客の足を確保するために終電時刻の延長が必要になる。しかし、その判断が先延ばしになっているため、鉄道事業者の対応方針が決まらないのである。 終電の繰り下げは行われるのか。大会のオフィシャルパートナーでもあるJR東日本に聞いたところ、観客数の上限が決定した後、大会組織委員会の需要予測と会場、スケジュールを踏まえて、スムーズな輸送を提供できるよう対応すると説明した。 つまり、無観客での開催が決定すれば終電延長は行わず、有観客で行われるとしても、観客数の上限によって、時刻の繰り下げ幅や列車本数を変更することになるようだ。乗務員の手配や車両の運用などを考えると、1カ月前にして方向性すら見えないというのは非常に悩ましい事態に違いない。 昨年予定していた終電繰り下げにあたっては期間中、間合い時間(終電と初電の間の時間)が減少し、設備の保守をはじめとする夜間作業ができなくなるため、1〜2年前からさまざまな工事や検査のスケジュールを調整していた。 しかし、オリンピックが延期となったことで日程を再調整する必要に迫られ、翌年度分の工事を前倒しで実施するなど対応に追われたという。JR東日本と東京メトロは、終電繰り下げを行うことになっても対応できるように、既に工事や検査のスケジュールを調整済みであると答えたが、短期間での再度の調整は現場の苦労も大きかったことだろう。 いずれにしても、余裕のない中で終電繰り下げを強行すれば、そのしわ寄せは現場に行き、事故やトラブルの原因ともなりかねない。どのような結論であれ、政府には一刻も早い決断を求めたい。 ●57年前は「東京五輪音頭」大ヒット、五輪での感動や盛り上げに音楽も貢献 6/14 東京2020オリンピック(五輪)開幕まで1カ月余りとなった。オリンピックを盛り上げるのは選手の活躍だけでなく、音楽も貢献している。57年前の東京オリンピックでは「東京五輪音頭」が大ヒット。アジアで初めてのオリンピックというお祭りムードを盛り上げた。その後、NHKや民放各局が中継や報道番組のテーマソングを決め、音楽でも感動を増幅させている。夏のオリンピックと音楽の歴史振り返る。 日本は12年(明45)の第5回ストックホルム大会(スウェーデン)で初めてオリンピックに参加した。アジアから初参加で、選手2人ながら大歓迎を受けた。1世紀以上前である。 オリンピックに関わる音楽が日本に登場するのは、第10回ロサンゼルス大会(32年=昭7、アメリカ)からと言われる。このころ日本コロムビア、日本ビクター、ポリドールなどのレコード会社が成長した。 前回の第9回アムステルダム大会(オランダ)で、日本人が初の金メダルを獲得。大いに盛り上がり、ロス大会には192人の大選手団を送り込んだ。応援歌なども多数制作された。その代表が「国際オリンピック選手派遣応援歌〜走れ大地を〜」である。 <歌詞>走れ大地を 力のかぎり 泳げ正々 飛沫(しぶき)をあげて 君等(ら)の腕は 君等の脚は 我等が日本の 尊き日本の 腕だ脚だ 朝日新聞社が歌詞を募集した。約5万点の中から、当時17歳だった斎藤龍さんの作品が選ばれた。「走れ大地を」として山田耕筰氏が作曲し、歌手中野忠晴が歌唱した。開幕約2カ月半前の32年5月15日夜に朝日講堂で大々的な発表会が組まれた。しかし、その日に犬養毅首相が殺害される五・一五事件が起き、発表会は中止となった。 4年後の36年(昭11)の第11回ベルリン大会(ドイツ)は、ヒトラー政権下で開催された。応援歌などが定着し「あげよ日の丸」(中野忠晴)などが発表された。大会後には「前畑(秀子)頑張れ!」の名実況を生んだ競泳女子200メートル平泳ぎ決勝のライブレコードも発売されている。 この年の国際オリンピック委員会(IOC)で、40年(昭15)に東京で第12回大会が開催されることが決定した。すぐに「オリンピック選手歓迎歌」(伊藤久男)「東京オリンピック」(古川緑波)「青春オリンピック」(林伊佐緒)などが制作された。しかし、日中戦争などの影響で、日本政府は38年7月に実施を返上。幻の五輪ソングとなった。 戦争の時代でも「平和の祭典」には音楽があった。戦後、ますます結び付きを強くした。新型コロナウイルス感染症の中であっても、その強固さは揺るぎないはずである。 ●五輪と日本の歌メモ (戦後日本の夏季オリンピックと音楽のアレコレ) ●第15回ヘルシンキ大会(52年、フィンランド) 第2次世界大戦後、16年ぶりに日本が参加した。64年の東京大会で「東京五輪音頭」が競作となったが、この大会でも「オリンピックの歌」(作詞・山田千之、作曲・高田信一)が競作となった。灰田勝彦、長門美保、藤山一郎、瀬川伸、竹山逸郎らが歌った。ヒット曲「上州鴉」でNHK紅白歌合戦に出場した瀬川伸は瀬川瑛子の父。 ●第18回東京大会(64年、日本) 開会式では古関裕而作曲の「オリンピック・マーチ」が演奏された。「東京五輪音頭」(作詞・宮田隆、作曲・古賀政男)が初の大会公式テーマソングで、三波春夫(テイチク)橋幸夫(ビクター)三橋美智也(キング)坂本九(東芝)北島三郎と畠山みどり(日本コロムビア)大木伸夫と司富子(ポリドール)つくば兄弟と神楽坂浮子(ビクター)の6社競作となった。この他「この日のために〜東京オリンピックの歌」(三浦洸一と安西愛子)「バンザイ東京オリンピック」(面高陽子)「さあ!オリンピックだ」(平尾昌章と伊藤アイコ)など数々の関連歌が発表された。また、この年「東京の灯よいつまでも」(新川二朗)「ウナ・セラ・ディ東京」(ザ・ピーナッツ)「東京ブルース」(西田佐知子)「サヨナラ東京」(坂本九)「恋の山手線」(小林旭)「あゝ上野駅」(井沢八郎)など、東京にまつわる作品がヒットした。 ●第24回ソウル大会(88年、韓国) NHKが初めて中継や報道番組のテーマソングを制定した。その第1号がヘビメタの女王として人気だった浜田麻里の「Heart And Soul」。NHKは以後、92年のバルセロナ大会(スペイン)で寺田恵子、96年のアトランタ大会(アメリカ)で大黒摩季、00年のシドニー大会(オーストラリア)でZARD。そして16年のリオデジャネイロ大会(ブラジル)で安室奈美恵と主に女性歌手を起用した。ちなみに冬季五輪でも、リレハンメル大会(94年、ノルウェー)は高橋真梨子、ソルトレークシティー大会(02年、アメリカ)はMISIA、トリノ大会(06年、イタリア)は平原綾香だった。NHKに続き、民放各局も各大会でテーマソングを決めた。 ●第28回アテネ大会(04年、ギリシャ) NHKのテーマソング「栄光の架橋」(ゆず)は、記憶に残るテーマソングである。特に体操男子団体で28年ぶりの金メダルを確定させた鉄棒最終演技(冨田洋之選手)で、NHKの刈屋富士雄アナウンサーが発した「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ」は五輪実況史上に残る名フレーズとなった。 ●第32回東京大会(21年、日本) 全国の民放テレビ局共同企画の応援ソング「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」(桑田佳祐)が発表されている。NHKは、いずれも米津玄師が手掛けた「カイト」(嵐)と「パプリカ」(Foorin)をオリンピック・パラリンピック関連曲としている。また「東京五輪音頭」が「東京五輪音頭−2020−」(加山雄三、石川さゆり、竹原ピストル)として復活している。ただ、いずれの楽曲もコロナ禍で存在感は薄くなっている。少しでも大会の盛り上げに寄与してほしいものだ。 ●64年東京大会で5枚組LP 64年の東京五輪後、「TOKYO 1964」というLPレコード5枚組が日本コロムビアから発売されている。録画は普及しておらず、「音」で大会を記録した。1枚目は「開会式」で選手団入場、天皇陛下の開会宣言、日本選手団・小野喬主将(体操)の選手宣誓などが収録されている。2枚目以降は大会日程順で競技ハイライト。5枚目は「閉会式」で、最後は「別れの歌」(蛍の光)の合唱で終わっている。日本コロムビア関係者は「実況を中心に収録したものと思われ、大変貴重な音資料です」と話している。 ●五輪と日本音楽の歴史紹介 古賀政男音楽博物館で、企画展「オリンピックと日本の大衆音楽」が開催されている。コロナ禍で一時閉館していたが再開した。パネル展示だけでなく、戦前の貴重なレコードやCDなどを多数展示。日本における夏冬オリンピックの歴史を、音楽との関わりから紹介している。古賀氏が作曲し、競作となった「東京五輪音頭」の各レコード会社のジャケットや、他の五輪関連レコード、各テレビ局のテーマソングのCDなども並ぶ。一般財団法人古賀政男音楽文化振興財団の主任学芸員の宮本紘視氏は「オリンピックと音楽の関係をまとめている企画展はこれまでなかった。古いレコードなどを集めるのは大変でしたが、古賀先生が愛した五輪を少しでも盛り上げられれば」と話している。展示は8月31日まで(月曜日休館)で入館料あり。所在地は東京都渋谷区上原3の6の12。代々木上原駅から徒歩3分。 ●五輪・パラ 海外メディアのホテルからは不安の声も 6/14 東京オリンピック・パラリンピックでは、海外のメディア関係者も多く訪れます。大会組織委員会は感染対策として宿泊場所を集約する方針ですが、宿泊先のホテルからは不安の声も上がっています。 東京オリンピック・パラリンピックでは選手団とは別に海外のメディア関係者も多く訪れますが、大会組織委員会は感染対策のため入国後14日間はGPSによる行動管理を行い、宿泊先もおよそ150か所に集約する方針です。 宿泊先の一つとなっている東京 日本橋のホテル「住庄ほてる」は、海外メディアの関係者に28部屋を提供する予定です。 別館を1棟貸し切りにするなどして、ほかの宿泊客と接触しないようにしたうえで、大会1週間前の来月16日から受け入れを始める方針です。 ところが、今月になっても詳しい情報が示されないとして、従業員から不安の声が上がっていて、ホテル側は受け入れの詳しい内容について組織委員会に質問を送っていました。 これに答えるため、今月10日、組織委員会の担当者がホテルを訪れ、角田隆社長に受け入れの詳しい計画について説明しました。 角田社長によりますと、組織委員会の担当者は出国前と入国後にPCR検査を受けてからホテルに宿泊することや、3日間は基本的にホテルの部屋で待機し、4日目以降もホテルと競技会場など認められた場所の往復のみで、14日間が過ぎると自由に行動できるようになると説明したということです。 そのうえで、組織委員会から、4日目以降はホテルの従業員などが部屋の清掃に入ってほしいと要望されたということです。 説明を受けたホテル側は、この日の話を聞くまで、入国後14日間の隔離は別の場所で行われると考えていて、来日直後から宿泊を受け入れるとは思っていなかったということです。 角田社長は「われわれは宿泊施設であって隔離施設ではない。従業員に対して、14日間の隔離の最中に対応することになるなんて言えない」と組織委員会の担当者に伝えていました。 組織委員会の説明を受けた角田社長はその内容を従業員に伝えましたが、従業員たちからも不安を訴える声が上がっていました。 角田社長は「隔離を終えた人を受け入れると想定していたので説明の内容は本当にショックだ。行動管理も本当に厳格化できるのかと不安になる。十分な対応をしてもらえない場合、受け入れは難しいかもしれない」と話していました。 ●コロナ療養者か 五輪対応かで悩むホテルも 一方、新型コロナウイルスの患者を受け入れる宿泊療養施設となっている、さいたま市のホテルでは、現在30人が療養していますが、来月からは東京オリンピックで来日する海外メディアの宿泊が予定されています。 その場合、療養者はほかの施設に移ってもらう必要があるとして、療養者の受け入れを続けるのか、オリンピック対応を行うのか、ホテルは悩ましい状況に立たされています。 埼玉県では、13日時点で新型コロナウイルスに感染した258人が、9か所のホテルで宿泊療養を続けています。 このうち、さいたま市大宮区のホテルでは、宿泊療養施設として県に客室を貸し出していて、13日時点で30人が療養しています。 県との契約は今月末までですが、県からは療養者の受け入れを継続してほしいと打診されているということです。 一方、このホテルでは、来月9日から8月10日までは、東京オリンピックで来日する海外メディアの宿泊場所として、およそ100室が、組織委員会に貸し出される予定になっているということです。 オリンピック用の部屋の貸し出しは、新型コロナの感染拡大で東京大会が延期される前に指定・契約されたもので、その場合、療養者には、ほかの施設に移ってもらう必要があるとして、ホテルは悩ましい状況に立たされています。 「パイオランドホテル」の田代秀一代表取締役は、「一生に一度の東京で開催されるオリンピックなので、契約した当時はオリンピックに貢献したい、という気持ちだったが、この状況で宿泊療養者を追い出して、オリンピックの関係者を受け入れるのは、どうなのかと思う。私だけの判断で海外のメディア関係者をホテルに招いていいのか、非常に悩む」と話していました。 ●大会組織委は… 海外のメディア関係者が宿泊する予定のホテルから入国直後の隔離期間の受け入れをめぐって不安の声が出ていることについて、大会組織委員会は「それぞれのホテルに対しては丁寧なコミュニケーションを心がけ、できる限り丁寧に、情報の提供に努めたい」とコメントしています。 また、コロナの宿泊療養施設として使用されているホテルについては「組織委員会としての予定を変更するなどしてできるだけ宿泊療養施設として使用できるよう調整を行っている」とコメントしています。 そのうえで「大会時にコロナの療養施設としての使用が決まっていた施設に対して、組織委員会から大会関係者の宿泊施設としての使用を求めたことはない」としています。 ●G7の「東京五輪支持」に勢いづく菅首相…「無観客もなかったことに?」 6/14 東京オリンピック開催を約一か月後に控えた日本で、「観客を収容しよう」という声が力を帯びている。ワクチン接種を加速させたことで、新型コロナウイルス感染症拡散の懸念が多少 鎮まったことに加えて、菅義偉首相が世界の主要国たちから「東京オリンピックを支持する」という立場を確認したことで、雰囲気が変わってきている。 ただ 専門家たちは「通常のスポーツ競技より観客層が幅広いオリンピックの特性上、大規模な観客を受け入れれば 急激に感染が拡散する可能性がある」と懸念している。 読売新聞と共同通信などの日本メディアによると、菅首相は13日(現地時間)観客を収容するかたちで東京オリンピックを開催する可能性を示唆した。この日の午後 G7サミット閉幕後の記者会見での発言である。 菅首相は、東京オリンピックの観客をどのくらい制限するのかについて「国内の感染状況を基に、他のスポーツイベントの人数の上限に準ずるのが基本となる」と語った。 菅首相は、G7サミットでの成果も強調し「東京五輪での感染対策の徹底、そして安全で安心できる大会に関して説明し、(G7サミットに参加した)全ての首脳たちから(開催に関して)非常に強い支持を得た」と伝えた。つづけて「主催国の首相として このような支持を心強いと思い、大会を何としても成功させねばならない」と覚悟を示した。 菅首相はG7サミットの初日である去る11日「選手団を派遣してほしい」と要請した。その結果 米国と英国・フランスなどが「東京オリンピック開催を支持する」という立場を明らかにした。G7の共同声明にも「我々は世界統合と新型コロナ克服の象徴として、2020東京オリンピック・パラリンピックを 安全で安心できる方式で開催することを支持する」という内容が盛り込まれた。 このような結果を基に、菅首相は 東京オリンピックの「有観客開催」を推進する可能性が高まった。わずか2か月前には「無観客開催は避けられない」という雰囲気が、日本政府内で優勢な雰囲気であった。 「オリンピックが近づき ワクチン接種を加速させれば、世論も肯定的に変わるという期待が高まっている」と、朝日新聞は報道した。最近では 日本政府内で「観客がいなければ、選手が力を出せない」として、競技観覧を許可する方案が論議中であるとされている。 ●菅政権ブチ上げ「五輪期間テレワーク」計画に怒りの声! 6/14 <49日…喪に服すのか><四十九日法要かよ>――菅政権が打ち出した、東京オリンピック・パラリンピック期間中の49日間、企業にテレワークを求める「テレワーク・デイズ」計画に対して、さすがに反発の声が広がっている。 「東京オリンピック・パラリンピック競技大会を安全安心な大会とするため、7月19日から9月5日までテレワークの集中的な実施を呼びかける『テレワーク・デイズ2021』を行います」 武田総務相が11日、そう宣言すると、ネット上には、不満と批判が飛びかった。<企業はテレワークで出社せず、オリンピックはパブリックビューイングで集まれ!って矛盾過ぎ><すべてはオリンピックファースト どれだけ国民に犠牲を強いれば気がすむのか> どうやら菅政権は、五輪期間中の“テレワーク徹底”を経団連などに求めるつもりのようだ。3000団体の参加を目標にしているという。 しかし、東京五輪を優先させ、国民に外出するなとは、怒りの声が上がるのも当然である。どうして、五輪のために日常生活を犠牲にしなければならないのか。しかも、五輪を盛り上げるためにパブリックビューイングを設置して人を集め、競技会場にも観客を入れる方針だ。すでに観戦チケットの42%を販売済みである。 菅政権は、五輪開催の意義を「団結」だとか「絆」などとしているが、これでは五輪観戦を理由に競技場やパブリックビューイングへの外出を奨励される国民と、観戦しないため外出自粛を求められる国民とに分断されることになる。 しかし、この訳の分からない「テレワーク・デイズ2021」に国民が従うのか。 「リモートが可能な企業やサラリーマンは、とっくに実施しています。これ以上、リモートを求められても、ほとんど上積みはないのではないか。なにより、もう国民は政府の呼びかけに耳を貸そうとしていません。緊急事態宣言が発令されても、店舗は酒を提供し、客が殺到している。国民は自粛にもリモートにもウンザリしている。五輪開催は、アスリートのためではなく、菅政権と五輪貴族の利益のためだということも分かってしまった。協力するのがバカらしくなっている国民もいるはずです」(経済評論家・斎藤満氏) このままでは五輪嫌いを増やすだけだ。 ●バッハ会長「G7の五輪開催支持に感謝したい」 6/14 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は13日、東京五輪・パラリンピック開催を支持するとした先進7か国首脳会議(G7サミット)の首脳宣言について、「G7指導者の支持に感謝したい」との談話をツイッターに投稿した。 バッハ氏は、「世界全体の連帯の精神のもとに、あらゆる人のために安全・安心な東京大会を運営することへの大いなる励ましと受け止めている」とした。 |
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●IOCコーツ氏が羽田に到着、東京五輪終了まで日本滞在へ…3日間は |