決め台詞 常套句 言葉遊び

政治は言葉遊びです

総理の 「決め台詞」「常套句 」
実行 実効 言葉とは別ものです

最近 よく目が笑ってます
露わな口の表情 顔の弛み 
任期も残りわずか 気分が乗らないのでしょう
 


安倍晋三・・・
 
 
 
情のこもった目つき
口で話すのと同じ程に
相手に気持を伝えます
 
 
目は口ほどに物を言う
目で殺す 
目で笑う 
 
 
●決め台詞 1
そのキャラクターが特定の場面やシチュエーションで発する、自身の代名詞ともいうべき、テンプレート化されたお約束のセリフの事である。
演劇などで、最高潮に達したときや区切りの場面に決まって言う、気の利いたせりふ。
的確なタイミングで発せられる、体裁の整った印象深い言葉。特に映画やドラマなど創作物の中で用いられる場合は、キャラクターが頻繁に発するお決まりの言葉という意味ももつことがある。
演技が最高潮に達したり区切りがついたときなどに発する、その場にはまったいい台詞。転じて、ここぞというときの小気味いい台詞。 「彼はきざな−を残して帰った」
台詞(セリフ) は舞台やドラマの俳優の言葉です。決め台詞はある役の人がいつも使うちょっとかっこいい言葉です。転じてなんかかっこいい言葉を決め台詞を言うのように使います。「明日には明日の風が吹くさ」と彼は決め台詞を残して去って行った。 
 
 
●決め台詞 2
キャラクターが自身を体現するために発する、テンプレート化した台詞。
決め台詞とは、そのキャラクターが特定の場面やシチュエーションで発する、自身の代名詞ともいうべき、テンプレート化されたお約束のセリフの事である。 『大辞林』には「演技が最高潮に達したり区切りがついたときなどに発する、その場にはまったいい台詞。転じて、ここぞというときの小気味いい台詞。」と説明されている。各種フィクション内に登場し、キャラクターが特定のシチュエーション、特にそのキャラクターがもっとも活躍する場面などで発せられる台詞である。
シチュエーション
お裁きシーン
正義の味方が悪を討つ際に発するパターン。水戸黄門の「印籠のシーン」や、『遠山の金さん』の「桜吹雪の入れ墨を見せつける」シーンに代表されるようなもの。勝ちが確定した状態で発せられるもので、いわゆる『勝利宣言』といえる。
必勝宣言
ヒーローの変身直後、探偵の犯罪への挑戦など、主役となる人物が相手や見えない敵を前にして自身の方針を固める際に用いる。
必殺技パターン
必殺技を放つ際に発せられるもの。単に技名を叫ぶことも多いが、台詞化する場合は前口上を含んだ場合が多い。
常套句
そのキャラクターが口癖のように発している台詞。特にキャラクターの登場シーンなどで、そのキャラを印象付けるのに用いられる。変身ヒーロー、ヒロイン物では、変身→名乗りを上げるまでがワンセットになっている。
ナレーション
特にキャラクターの台詞という訳ではないが、オープニングやエンディング、次回予告など特定のシーンに入ると決まって流れ出すナレーションの類い。特に昭和のヒーローものに多い。
説教
もはやこの人やあの人で有名となったジャンル。特定の台詞はないものの、とにかく至極真っ当でアツい理論を用いて相手の精神に揺さぶりをかける。場合によっては説教用BGMが付くこともある。
主な決め台詞一覧
お裁き
「この紋所が目に入らぬかっ!! こちらにおわすお方をどなたと心得る! 恐れ多くも先の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ!! 一同!ご老公の御前である。頭が高い!控えおろう!!」(渥美格之進『水戸黄門』)
「お天道様が許しても、この桜吹雪は……見逃ねぇぞ!!」、「あの晩、月夜に咲いたお目付け桜夜桜を・・・まさかうぬら、見忘れたとは言わせねえぞ!!」(遠山金四郎『遠山の金さん』)
「一つ、人の世の生き血を啜り、二つ、不埒な悪行三昧、三つ、醜い浮世の鬼を、退治てくれよう、桃太郎」(『桃太郎侍』)
「成敗」(徳川吉宗『暴れん坊将軍』)
「止むを得ん、俺の名前は引導代わりだ。迷わず地獄に堕ちるがよい!!」(『長七郎江戸日記』)
「人の命を弄んだ貴様らに、もはや見る夢は無いのだ!神妙に縛に付け!」(『八百八町夢日記』) 「神妙に」の部分が「大人しく」や「潔く」などに変わる場合がある。
「関わりなき者は去れ!さもなくば、斬る!」」(『八百八町夢日記』)
「いかにも影の八州、閻魔の使いよ」(『あばれ八州御用旅』)
「役儀により冥土への速飛脚、御案内仕る」(『新・大江戸捜査網』)
「手前ら人間じゃねえや! 叩き斬ってやる!」(『破れ傘刀舟悪人狩り』)
「異議あり!」(『逆転裁判』)
必勝宣言
「この金さんの桜吹雪、散らせるもんなら散らしてみろい!!」(遠山金四郎『遠山の金さん』)
「ジッチャンの名に賭けて!」(金田一一『金田一少年の事件簿』)
「乙女盛りに命を懸けて 風に逆らう三姉妹 花と散ろうか咲かせよか」(『有言実行三姉妹シュシュトリアン』)
「とってもご機嫌ななめだわ!」(花咲ももこ『愛天使伝説ウェディングピーチ』)
「地球の未来にご奉仕するニャン!」(桃宮いちご『東京ミュウミュウ』)
「あなたの人生、変わるわよ」(『キューティーハニーF』)
「私達に神のご加護がありますように」(『怪盗セイントテール』)
「ただしその頃には、あんたは八つ裂きになっているだろうけどな」(『刀語』)
「まだまだだね」(越前リョーマ『テニスの王子様』)
「はーひふーへほー」(ばいきんまん『それいけ!アンパンマン』)
「ヤッターマンがいる限り!」「この世に悪は栄えない!」(『ヤッターマン』)
「俺は東城会四代目桐生一馬だ!!」(桐生一馬『龍が如く』)
常套句
「ボンド、ジェームズ・ボンド」(ジェームズ・ボンド007シリーズ)
「覚悟完了。当方に迎撃の準備有り」(葉隠覚悟『覚悟のススメ』)
「あっしにゃあ、関りのねぇこって」(『木枯らし紋次郎]』
「心配御無用」(『秀吉』)
「で、あるか。」(織田信長『利家とまつ』)
「ウチのカミさんがね」(『刑事コロンボ』)
「用件を聞こうか」(デューク東郷『おおっ! ゴルゴ13!』)
「ヅラじゃない」(桂小太郎『銀魂』)
必殺技
「俺の拳が真っ赤に燃えるっ、勝利を掴めと轟き叫ぶっ!!!!」(ドモン・カッシュ『機動武闘伝Gガンダム』)
「震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!刻むぞ血液のビート!山吹色の波紋疾走!」(ジョナサン・ジョースター『ジョジョの奇妙な冒険』)
「闇に惑いし哀れな影よ、人を傷つけ貶めて、罪に溺れし業の魂、いっぺん、死んでみる?」(閻魔あい『地獄少女』)
「テンションMAX!いっけーー!!」(一宮エルナ『ミカグラ学園組曲』)
「プリキュアの美しき魂が! 邪悪な心を打ち砕く!!」(『ふたりはプリキュア』)
「神の名の下に!闇より生まれし悪しき者を、ここに封印せん!チェックメイト!!」(怪盗ジャンヌ『神風怪盗ジャンヌ』)
「汝のあるべき姿に戻れ!クロウカード!!」(木之本桜『カードキャプターさくら』)
「クロウの作りしカードよ、古き姿を捨て生まれ変われ。新たなる主、さくらの名の下に!」(木之本桜『カードキャプターさくら』)
「戦維喪失」(纏流子『キルラキル』)
ナレーション
「隠密同心心得之條。我が命我が物と思わず、武門之儀、飽く迄陰にて、己の器量伏し、御下命如何にても果す可し。尚、死して屍拾う者無し、死して屍拾う者無し、死して屍拾う者無し」(『大江戸捜査網』)
「いつの世にも悪は絶えない。その頃、徳川幕府は火付盗賊改方という特別警察を設けていた。凶悪な賊の群を容赦なく取り締まるためである。独自の機動性を与えられたこの火付盗賊改方の長官こそが長谷川平蔵。・・人呼んで”鬼の平蔵”である。」(『鬼平犯科帳』)
「無限に広がる大宇宙」(『宇宙戦艦ヤマト』)
「銀河の歴史がまた1ページ」(『銀河英雄伝説』)
「この世には、目には見えない闇の住人達がいる。 奴らは時として牙を剥き、君達に襲い掛かる。 彼は、そんな奴らから君達を守る為地獄の底からやってきた、正義の使者・・・なのかもしれない。」(『地獄先生ぬ〜べ〜』)
「遥かな昔 神は光と闇を分け 光に天聖界、闇に天魔界を創造し、それぞれに天使と悪魔を置かれた。また、お守りの為には天地球を創られた。 しかし悪魔達は、自らを神に忌み嫌われた存在であると感じ、天使達を攻撃した。 そして今、天使対悪魔の激戦は、天地球へとその舞台を移したのだ。」(『スーパービックリマン』)
「たった一つの真実を見抜く、見た目は子供、頭脳は大人、その名は名探偵コナン!」(『名探偵コナン』)
「死んでも夢を叶えたい!!いいえ、死んでも夢は叶えられる!それは絶望?それとも希望?過酷な運命乗り越えて!脈が無くても突き進む!!それが私達の、サガだから!!」(『ゾンビランドサガ』)  
 
 
目が据わる / 目が飛び出る / 目で殺す / 目で物を言う / 目に角を立てる / 目に障る / 目には目歯には歯 / 目に物言わす / 目の色を変える / 目の敵 / 目は口ほどに物を言う / 目を掛ける / 目を配る / 目を凝らす / 目を皿にする / 目をつぶる / 目を盗む / 目を引く / 目を丸くする  / 目で笑う  
 
 
 2013
●安倍首相の「名言」生み出すスピーチライター 2013/9
訪米中の安倍晋三首相が、「日本アピール」のための演説を精力的にこなしている。米シンクタンクやニューヨーク証券取引所(NYSE)では、ユーモアや「対抗勢力」に向けた皮肉を交えながら自説を主張した。
2020年の東京五輪開催を勝ち取った背景には、国際オリンピック委員会(IOC)総会での首相の力強いメッセージがあったと海外メディアが報じたほど、最近の首相のプレゼン力は評価が高い。支えるのは、元記者のスピーチライターだ。
「Buy my Abenomics.(アベノミクスは『買い』です)」
NYSEで2013年9月25日に演説した安倍首相がこう口にすると、聴衆からは笑いが起きた。2010年の映画「ウォール・ストリート」で、マイケル・ダグラス演じる大物投資家が言い放つ「Buy my book.」というせりふをもじったとみられる。NYSEがウォール街に建つのを意識して取り入れたのだろう。
首相は来賓として、NYSEの取引終了の儀式にも臨んだ。木づちをたたく後ろには日の丸が掲げられ、そこには「JAPAN IS BACK」「INVEST IN JAPAN」と書かれていた。演説でも「『Japan is back』だということをお話しするために、ここに来ました」と語りかけ、日本の復活が「間違いなく世界経済回復の大きなけん引役になる」とアピールした。
米シンクタンク、ハドソン研究所主催の講演では日本の集団的自衛権の行使に理解を求めた。強調したのは、日本が世界の平和と安定に積極的に貢献していく姿勢だ。中国や韓国は、首相の外交や防衛政策に「日本の右傾化だ」としばしば批判している。これに対しても「答え」を用意した。日本の防衛費は11年ぶりに増額したが、「防衛費は0.8%上がったに過ぎません」。一方で「我々には、軍事支出が少なくとも日本の2倍という隣国があるのです」と指摘。そのうえで「私を右翼の軍国主義者と呼びたいのなら、どうぞ」と突っぱねた。国名こそ伏せたが、ことあるごとに「口撃」してくる「隣国」を皮肉った形だ。
NYSEでは日本語、シンクタンクの講演は英語と使い分けた。2020年の五輪開催地を決める9月7日のIOC総会では、全編英語だった。問題視されていた東京電力福島第1原発の汚染水問題について「状況はコントロールされている」と宣言。質疑でも「影響は港湾内の0.3平方キロの範囲内で完全にブロックされている」と説明したうえ、抜本解決のために自らが責任もって対処していると強調した。汚染水が完全に遮断されているかどうかはその後異論も出たが、IOC総会の場で首相が世界に解決を公約したことで、「東京五輪実現」の流れが決まったとの評価は少なくない。
国際舞台で堂々とスピーチを披露する首相。その立役者として名前が挙がるのが、内閣審議官の谷口智彦氏だ。「AERA」9月23日号では、谷口氏の貢献ぶりを紹介している。
元は経済誌「日経ビジネス」記者で、英語に堪能。「日本人として言うべきことはきちんと言わなければならないし、そのためには自分で発信することをちゅうちょしていては何も始まらない」が持論だという。
6月2日付の日本経済新聞も、谷口氏を詳しく取り上げた。第1次安倍内閣では外務副報道官を務め、当時の麻生太郎外相の訪米時の演説原稿を英語で書いていたという。こうした経験を踏まえて首相がスピーチライターに指名した。外交演説では初稿から起草するケースも少なくなく、5月のサウジアラビアでの演説は「共生・共栄・協働」というキーワードを提案、日本が中東から石油を輸入する「一方通行の関係は過去のもの」と位置づけ、「21世紀は共に生き、共に栄える世紀だ」との内容にまとめた。
首相は演説のシナリオに、現地にまつわるエピソードを取り入れたがるという。今回、NYSEで映画「ウォール・ストリート」のセリフを散りばめたのも、首相の意向を谷口氏がくみ取ったのかもしれない。
米国時間9月26日にニューヨークの国連総会で行われる一般討論演説の中で、首相は女性重視をアピールする予定だ。従軍慰安婦をめぐる日本政府の姿勢を強く批判している韓国をはじめ、諸外国に対してどんな内容で日本の立場を説明するかが注目される。 
 
 
 2016
●安倍総理の決め台詞、それは「悪魔の証明であります」 2016/2
昨日、何気なくテレビをつけたら国会の議論が流れていた。いつも通り、野党(民主党)が与党自民の揚げ足とりを行っていた。さらっとしか見ていないから、正確さには自信がないが、こんな感じのやり取りがなされていた。
野)週刊誌に取り上げられたことへの説明責任がある
安)「◯◯がある」ということは言った側に証明する義務がある。ない事をないと証明するのは「悪魔の証明」だ!
ガヤ)そーだ!そーだ! (中略)
野)現在の税収は、リーマンショック前に時間とともに戻っただけじゃないですか!?このままでは財政状態は良くならない。
安)そんな認識だから、あなたたち民主党政権は1円たりとも財政回復できなかったんんじゃないんですか!?
ガヤ)ぱちぱちぱち〜
僕は不勉強で、あの答弁が即興なのかそうでないのかはわからない。ただ、討論の中で「それは悪魔の証明であります」と言える安倍晋三、純粋にかっけえ。政治を見くびってたよ、ごめん。
しかしこの「悪魔の証明」というフレーズ、なんてクールなんだろう。僕の中二心がすごくウキウキしてくる。そもそも悪魔の証明とは一体なんなのだろうか?
どうやら調べてみると「悪魔の証明」とは消極的事実の証明、すなわち「〇〇していないこと」「〇〇でないこと」の証明が非常に難しく不可能に近いことから、このような言い回しをするのだという。割と当たり前のように使われる言葉みたいだ。
なんで悪魔の証明が大変なのか、しっくりこない人のために次のような例を紹介しておく。
2つの命題A・Bがある
A:僕の大学には1/1生まれの生徒がいる
B:僕の大学には1/1生まれの生徒がいない
Aの証明は簡単だ。生徒のうち誰かひとりでも「自分がそうだ」と言えばそこで証明ができる。しかし、Bの命題はそうはいかない。生徒全員の誕生日を調べなければいけないのである。つまり、悪魔の証明は非常に確認に手間がかかるのである。
この言葉を討論の中で、初めの例のように使用した安倍総理は、言った瞬間「キマったぜ」とでも思ったに違いない。週刊誌が「〇〇がある!〇〇が行われた!」と騒ぎ立てた場合、安倍総理が「〇〇はない。〇〇ではない。」と否定しても説得力に欠けてしまう。証明が困難なのである。そこで「それは悪魔の証明であるから、「〇〇がある」と主張された週刊誌側が事実を証明すべきなのだ」と言ったわけだ。なるほど。
もちろんいつでもこの戦法が通じるわけではない。「それは悪魔の証明だ」という指摘は、証明が出来ないということ・証明することが困難だということを自ら認めることにもなるからだ。
言葉、特にそれの持つインパクトや力が大きなフレーズを使う場合、使いどころ・タイミングが非常に重要になる。言い方やフレーズの選び方1つで結果が変わってくるし、揚げ足を取られるか否かも左右される。改めて、言霊というものの存在を感じた1シーンだった。 
 
 
 2017
●何度も「丁寧な説明」 はたして実行は? 2017/6
安倍晋三首相は通常国会閉会を受けた19日の記者会見で、学校法人加計学園の問題が不信を招いたことを認め「丁寧に説明する努力を積み重ねたい」と述べた。思えば首相はこれまで何度も「丁寧な説明」というせりふを口にしてきたが、はたして実行されたのだろうか。
同種のせりふを探すと、第2次安倍政権発足時の演説にまでさかのぼることになった。「過去の反省を教訓として心に刻み、丁寧な対話を心がけ……」
その後も特定秘密保護法、安全保障関連法の前提となる「集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更」の閣議決定、安保関連法、原発再稼働、沖縄米軍基地問題など、世論が割れる局面でせりふは多用されてきた。  
●言葉の意味ずらす、今の政治 批判逃れの「見事な技術」 2017/8
様々な言葉を繰り出して議論を交わし、時に追及をかわす政治家たちの術。「印象操作」「怪文書」「こんな人たち」という発言を例に、野矢茂樹・東大教授に論理的にひもといてもらった。
最近の政治の場面におけるやりとりを見ていると、言葉の使い方に関して、たいへん勉強になる。
まず、安倍晋三首相からは答えたくない質問への応答の仕方を学ぶことができる。例えば、相手が自分の瑕疵(かし)を明らかにする目的で何か問いを発したとしよう。そのとき、軽々に答えはしない。「あなたの前提が間違っている」と切り返す。私に瑕疵があると考えてそんな質問をするのでしょうが、私に瑕疵はない、と自分を正当化する論を展開する(この部分は長く続くほどよい)。また、その質問は「印象操作だ」と決め台詞(ぜりふ)を言うことも忘れない。以前乱発されていたこの言葉は、きわめて応用範囲が広い。自分に不利な目的で為(な)された質問に対しては、すべて「印象操作だ」と切り捨てることができる。
とはいえ、この手法は場面をまちがえると逆に痛い目にあうだろう。あなたが無実の罪に問われようとしているとして、検事がアリバイを尋ねてきたとする。それに対して「あなたの前提が間違っている」とか「その質問は印象操作だ」と応じるのは、明らかにまずいやり方である。
次に、失言したときの挽回(ばんかい)法を見よう。菅義偉(よしひで)官房長官は、「総理のご意向」と記載のある記録文書を「怪文書」と評した。この言い方が物議をかもしたのは周知のところである。そこで後に菅氏は「怪文書」というのは「不可解な文書」という意味で言ったのだと弁明した。「怪文書」という語は、出所不明な根も葉もない誹謗(ひぼう)中傷の文書という意味である。そこから「出所不明」という部分だけを取り出し「不可解な文書」と言い換える。そして「根も葉もない誹謗中傷」という問題含みのニュアンスは最初からなかったことにする。いささか強引だが、とにかくその場を切り抜ければいいというときには役に立つ技術だろう。
言葉の意味をずらす技術のみごとな例が、加計学園問題についての閉会中審査における小野寺五典氏(自民党)の質問に対する八田達夫氏(国家戦略特区ワーキンググループ座長)の答えに見られる。「政治の不当な介入があったり公正な行政がねじ曲げられたりしたと感じるか」と質問され、八田氏は「不公平な行政が正されたと考えている。獣医学部の新設制限は日本全体の成長を阻害している」と応じた。
問われたのは獣医学部新設の是非ではなく、それを決めるプロセスの公正さである。ところが八田氏は、獣医学部の新設制限こそが不公正なのであり、むしろ今回、不公正が正されたのだと訴えた。「公正」ということの意味がプロセスの公正さから結果の公正さへとずらされている。しかしあまりそう感じさせないところが、巧みである。
安倍首相の「こんな人たち」という発言も問題になった。これに対して首相自身は、閉会中審査において、「選挙妨害に負けるわけにはいかない」と言ったのだと弁明した。ここでは「こんな人たち」という言葉が、その人たちが為した「こんな行為」を意味するものとされている。これも、言葉の意味をずらしていく技の一例である。
安倍首相の「こんな人たち」発言に対して、菅氏は「選挙運動というのは自由だ」と述べてそれを弁護した。つまり、安倍首相の発言は選挙運動における応援演説として適切な範囲のものだというのである。しかし問題は応援演説としての適切性ではなかった。菅氏はここで、批判のポイントをずらしている。批判されたのは、「こんな人たち」という発言に示された首相の人柄や考え方、つまり、反対派を一蹴して拒否するような人は首相としてどうなのか、という点であった。しかし菅氏は「首相として」という観点を「応援演説として」という観点にずらした。相手と同じ土俵に立たないというのは、批判から逃れるときの有効な戦術と言えよう。
だが、こうしたことを学ぶのは、あくまでもこんなやり方に騙(だま)されないためである。言葉をねじ曲げるようなやり方を自ら振り回すべきではない。言葉を大切にしない人を、私は信用する気にはならない。 
●テレビが伝えぬ「小池劇場」 本当のみどころと安倍総理最大の不安 2017/9
連日繰り広げられる小池劇場で注意すべきは、野党「合流」という言葉である。これは安倍総理側に都合のいいミスリードで、ある種の悪意すら感じるものだ。
小池百合子の存在意義と「本当の演目」は10月5日に判明する
実は批判が多い?「小池劇場」
衆議院解散に合わせて小池都知事が「希望の党」の立ち上げを宣言してから1週間、メディアの主役は完全に「小池都知事」と「希望の党」になっている。
「小池都知事」と「希望の党」がメディアジャックしたような状況になったことをメディアは「小池劇場」と呼び、連日コメンテーターたちが「小池都知事の思惑通りになっている」「話題作りが上手い」と、褒めているのかけなしているのか分からない論評を加えている。
確かに、「希望の党」の設立が宣言されてからわずか数日で「二大政党制」の主役を務めるはずであった野党第一党の民進党が実質的に解党に追い込まれるなど、「小池バズーカ」はメディアジャックするに十分すぎる威力を見せている。
しかし、連日繰り返される「小池劇場」を見ていて感じるのは、確かに小池都知事はメディアジャックに成功してはいるが、その内容は批判的なものが多く、必ずしも小池都知事や「希望の党」の好感度向上に繋がっていないということである。
的外れな2大小池批判とは
「希望の党」の登場によって、既存の政界の枠組みの中で「野党第一党」という重要な立場を保っていた民進党があっという間に蹴散らされ、既存の政界の枠組みは破壊されてしまった。こうした既存の秩序が簡単に破壊されてしまったことに対する警戒感が強まったせいか、「小池劇場」での演目は「反小池」色の強いものが目立ってきている。
「小池劇場」で真っ先に演じられるのは、都政と国政の「二足のわらじ」問題である。政治の専門家を含めてコメンテーターたちは、連日続けられる「小池劇場」で「都知事に就任してわずか1年ちょっとで国政に転じるのは無責任だ」という無責任論や、「『都民ファースト』ではなく『自分ファースト』の人」といった政治家の資質に関する批判を繰り返している。
しかし、「小池劇場」で繰り返される、こうした小池都知事に対する無責任論、政治家としての資質に関する批判には違和感を覚えずにはいられない。
それは、これらの批判が「小池劇場」がなぜ始まったのか、という原点を見失ったものに見えるからである。「小池劇場」の発端は、17日に突然永田町に吹き始めた「解散風」であり、25日に安倍総理が行った解散会見であったことを忘れてはいけない。
「国難」を前に、敵の足を引っ張るだけでいいのか?
安倍総理は今回の解散を「急速に進む少子高齢化」「北朝鮮の脅威」という「国難」を乗り越えるための「国難突破解散」だとしている。
安倍総理が掲げたこうした「国難」が、今すぐに解散、総選挙で国民の信を問うべき切迫した問題であるかに関しては様々な意見が出されている。しかし、解散が総理の専権事項であるという現実がある限り、解散の「大義」を議論するのは必ずしも建設的だとはいえない。
重要なのは、解散、総選挙の「大義」が、本当に安倍総理の言うとおり「国難突破解散」であるのであれば、国民の英知を集めてその解決にあたるのが当然だということである。切迫した「国難」を目の前にして、「二足のわらじ」問題を持ち出して「都知事は参加するな」と迫るかのような責任論に「大義」があるかは大いに疑問である。
民進党との「合流」というミスリード
次に、連日メディアで繰り返される「小池劇場」で気になるのは、「合流」という言葉が使われ続けていることである。実質的に解党に追い込まれた民進党の所属議員の多くが「希望の党」からの出馬を目指していることもあり、メディアでは「合流」という言葉が繰り返し使われている。
しかし、「合流」というのは民進党側から見た「希望」に過ぎず、「希望の党」側は早くから若狭議員も小池代表も「合流という考えはない」と「合流」を否定している。それにも関わらずメディアが「合流」という言葉を使い続けることにはある種の悪意を感じてしまう。
「選挙のために集まって看板を替えた政党に、日本の安全、未来を任せるわけにはいかない」
衆議院解散直後の自民党の会合で、安倍総理はこのように発言し、暗に「希望の党」が「選挙のために集まって看板をかけ替えた政党」であると批判した。
しかし、「希望の党」は民進党が看板を替えるために立ち上げた政党ではなく、総理の衆議院解散表明を受けて誕生した政党である。
総理のこうした必ずしも事実にそぐわないような発言が何の抵抗感もなくニュース番組で流されていくのを見ていると、メディアが「希望の党」は民主党と「合流」してできた政党であるという印象を与えるという意図を持っているのではないかと勘繰ってしまう。
また出た、安倍総理の悪癖
安倍総理が「人柄が信用できない」という評価を受けるようになった1つの要因になっているのは、このように事実を自分に都合よく脚色するところである。こうした総理の特徴は、解散直後の28日夕方に渋谷で行った事前告知なしサプライズ街頭演説にも表れている。
解散表明会見を行った25日には「希望の党」について「希望というのはいい響きだ。選挙で各党が政策を前面に打ち出しながら建設的な議論をして国民の期待にこたえていきたい。選挙戦はフェアに戦いたい」と大人の対応を見せていた安倍首相だが、28日夕方に行ったサプライズ街頭演説では、「希望の党」を念頭に、「野党の皆さんは新しい党をつくろうとしているが、90年代の新党ブームの結果、日本は長い経済の低迷に突入した」「ブームからは希望は生まれないんです」と感情を剥き出しにして強い対抗心を見せた。
この感情をむき出しにした演説は、総理の特徴を如実に表したものである。
安倍総理が例に出した「90年代の新党ブーム」が、国民の期待に応えられず、短期間で終焉したのは事実である。しかし、安倍総理の「新党ブームの結果、日本は長い経済の低迷に突入した」という指摘は事実に反した脚色である。
そもそも、90年代に新党ブームが起きたのは、「55年体制」といわれる自民党長期政権に対する国民の不満が形になって表れた現象である。
ここで忘れてならない事実は、新党ブームによって自民党が政権を失ったのは細川内閣が誕生した1993年8月、1990年のバブル崩壊から3年半以上も後のことだったことである。その時には、1989年末に3万8915円という史上最高値を記録した日経平均株価は、2万円前後とすでに最高値から半分の水準まで下落していた。
つまり、新党ブームが起きる前の自民党政権時代には、すでに「日本は長い経済の低迷に突入」していたのである。
「安倍劇場」虚飾の構造
さらに、自民党は下野してから10か月後の1994年6月には、社会党と新党さきがけ(共に当時)と連立政権を組み与党に返り咲いており、自民党が新党に政権を渡していたのは、わずか10カ月だけなのである。
安倍総理の「90年代の新党ブーム」も「ブームからは希望は生まれない」という発言も、事実に基づいたものではある。しかし、すでに日本が「長い経済の低迷に突入」していた後に、わずか10か月だけ政権を担った新党に、「長い経済の低迷に突入した」責任を押し付け、「ブームから希望は生まれない」と結論付けるのは、あまりにも脚色が強すぎる虫のいい主張だといえる。
こうした、少しの事実を大きく脚色するのが、「安倍劇場」の最大の特徴である。
「新党ブームの結果、日本は長い経済の低迷に突入した」という歴史から学ぶべきものは、健全な野党が育たないことも含めて、政権交代が起こり難い制度がもたらす弊害であるはずだ。
安倍官邸は動揺している
「たった一夜にして政策の協議も全くない中で、いつの間にかひとつの政党になってしまっている。まさに選挙目当ての数合わせが進んでいるのではないかなと思っています」
菅官房長官は記者会見で、「希望の党」が「名を捨てて実を取る」覚悟を決めた民進党を取り込もうとしていることについて、このように批判した。しかし、解散権という専権事項を持ち、自分に最も都合のいいタイミングで解散、総選挙を実施する権限を持っている総理側のこうした批判は説得力に乏しいものだ。
そもそも、解散、総選挙において野党は基本受け身でしかなく、始めから時期的不利を強いられる立場に置かれている。解散が行われたら短時間で選挙準備をせざるを得ないという不利な立場にある野党が、「一夜にして」「選挙目当ての数合わせ」に動くのは、始めから有利な立場にある総理側が十分に想定しておくべきことでしかない。
しかも、今回、民進党が「希望の党」に合流できるか否かは、民進党が「希望の党」の政策を呑むか呑まないかにかかっており、基本政策協議にかかっているわけではない。
政府がこうした的外れの批判を行うのは、「希望の党」が突然現れただけでなく、民進党が捨て身で「希望の党」への合流を目指すという想定外の出来事に動揺していることを感じさせるものである。
「決め台詞」を失った安倍総理
「私たちの責任は政策を訴え、結果を出していくこと。正々堂々と政策を訴えていきたい」
解散当日の28日、解散を迎える心境を問われた安倍総理はこのように答えていた。しかし、そうした言葉とは裏腹に解散直後から安倍総理の口から出てくる言葉は、「選挙のために集まって看板を替えた政党に、日本の安全、未来を任せるわけにはいかない」「新党ブームの結果、日本は長い経済の低迷に突入した」といった、およそ政策論争からかけ離れた感情論ばかりになっている。
「選挙戦は未来に向かって、どちらの政策が優れているかを競い合う場にしなければならないが、残念ながら『当選するためにどの政党に移ろうか』、『政党を解散してしまおうか』そんな話題ばかりだ。日本の未来を作るのはブームではなく堅実な政策だ」
「どちらの政策が優れているかを競い合う場」を求めている安倍総理が、正々堂々と自らの政策を訴えずに、「希望の党」が民進党の都合のいいところだけを取り込もうとしていることに対して批判を繰り返しているのは、できれば小池代表と「消費税」や「アベノミクス」の政策論争は避けたいという思いを持っているからだともいえる。
政策論争の相手が民進党であれば、どんな批判を受けても「民主党政権時代よりはいい」という「決め台詞」を口にすれば煙に巻くことができた。しかし、小池代表が相手ではこの「決め台詞」は通用しない。ここが安倍総理の苦しいところだろう。
もし、消費税凍結を主張する小池代表から実現可能な新たな財源を示されてしまったら、たちまち政策論争で窮地に陥りかねないからだ。
小池代表本人の「出馬表明」が政策論争の号砲となる
選挙戦を、安倍総理の望む「どちらの政策が優れているかを競い合う場」に持っていけるかどうかは、現実的に小池代表側にかかっている。そして、その政策論争を実現するためには、小池代表が民進党議員の受け入れに際して厳しい絞り込みを行うことが必要条件になる。
候補者の数を優先して民進党時代と同じ顔触れを揃えたら、有権者からの支持を失うだけでなく、政策論争でも不利な立場に立たされる可能性があるからだ。
策士である小池代表が、よもやこのような単純な戦略ミスをするとは考えにくいことではあるが、「希望の党」の顔ぶれが、民進党に近付けば近づくほど「民進党政権時代よりはいい」という安倍総理の「決め台詞」を復活させることになる。
この言葉が「決め台詞」として通用してしまう限り、政策論争が絵に描いた餅になることは、第二次安倍政権以降の国会論争がすでに証明していることである。
そして、なかなか政策論争に進まないもう1つの大きな要因は、小池代表が総選挙に出馬するかどうかがはっきりしていないことである。
現実問題として選挙態勢を整えるのに時間が必要なことは確かだろうし、出馬するかしないかの結論を先送りすることで「小池劇場」を続けてメディアジャックするというメリットもあるかもしれない。しかし、「国難突破解散」に参戦した以上、小池代表には総選挙に出ないという選択肢はないはずである。都議会最終日の10月5日には総選挙に立候補することを明確にし、1日も早く政策論争を始めて欲しいものである。
与党は政策論争の回避を狙っている
メディアで続けられている「小池劇場」は、安倍総理を含め国民が望む政策論争からかけ離れたものになっているだけでなく、主役を務めている「小池代表」や「希望の党」のイメージダウンを図るかのような内容になっている。
政策議論を横に置き「小池劇場」と小池都知事を持ち上げつつ、政策論争から離れた話題で暗にイメージダウンを図るような選挙戦は、さしずめ「日本的陰湿なトランプ選挙」である。
こうした政策論争が見えない状況から脱するためには、小泉進次郎議員が言うとおり、小池代表が早く退路を断って衆院選出馬を明言するしかない。
与党側は、小池代表が出馬表明するまでは「日本的陰湿なトランプ選挙」を続けることで「小池代表」と「希望の党」の勢いを削ぎ、出馬表明後は「二足のわらじ」問題による無責任批判をすることで、政策論争の時間を短くすることを狙っていることは明らかである。
こうした不毛な議論から抜け出すためには、小池代表が出馬表明し政策論争を仕掛ける以外ない。
国民が期待するのは単なる「野党再編」ではない
小池代表には、「希望の党」の出現によって、イデオロギー対立の少ない政策論争が行われる土壌ができたことを喜んでいる国民を失望させないような英断を期待せずにはいられない。
メディアは「希望の党」の出現後の動きを、「野党再編」と伝えている。しかし、これは必ずしも正しい表現とは思えない。
政権を担う党を「与党」、それ以外の党を「野党」とする定義からすれば、今回の動きも「野党再編」だといえる。しかし、今回の「野党再編」は、与党である自民党と「基本的な理念が同じ」である「希望の党」が主役であるという点で、これまでのイデオロギー対立を抱えた「野党再編」とは一線を画すものである。
「基本的理念」を軸として考えれば、「希望の党」は「野党」ではなく「4.8党」(与党と野党の両方を持つ党)だといえる。
小池代表には、「安倍降ろし」といった小さな「大義」を掲げて「野党再編」をするのではなく、「イデオロギー対立のない政策論争に基づいた政権選択選挙」を目指した「政界再編」を目指してもらいたい。
国民が期待しているのは批判の応酬ではなく、政策論争なのだから。 
●「この国を、守り抜く」 2017/10/8
自民党衆院選のスローガン。安倍首相が第98代首相となり、史上最長の可能性も
10月22日に投開票された衆議院議員総選挙において、自民・公明の与党は、衆院の2/3を超える313議席を獲得して圧勝。「毎年1回サミット(先進国首脳会談)を開くたびに、日本の首相の顔が変わっている」などと、海外から揶揄されていたのも今は昔。安倍首相の在任期間が戦後最長になる日も間近に迫っています。
海外のリーダー達はというと、英国のメイ首相は身内から不信任案をつきつけられ、ドイツのメルケル首相は、連立交渉が決裂。ドイツは政権不在の状態で、再選挙の可能性もでています。フランスのマクロン旋風はあっという間に下火になり、オーストラリアやNZの政権も揺れ動いています。米国のトランプ大統領はというと、支持率が過去最低を更新。来年の中間選挙では厳しい試練に見舞われるでしょう。それに比べると、安倍政権は長期政権というだけではなく、世界を見回しても実に安定している政権なのです。
安倍首相が選挙で勝利したことは、すなわち、日銀の「異次元」の金融緩和政策が賛同を得たということでもあります。日銀は、今後もマイナス金利政策を続けることになりますが、一方でFRB(アメリカの中央銀行)は12月に追加利上げをすることがほぼ確実で、来年も3回程度の利上げが見込まれています。日本とアメリカの金利差は今後も広がることになり、市場は金利のつかない円を売って金利の高いドルを買うという、ドル高/円安の流れが続きそうです。
しかし、国民が自民党に票を入れたいちばんの理由は、日本の安全保障が心配だからです。「自民党が選挙に勝利したのは、北朝鮮のおかげ」なわけですが(麻生太郎副総理)、このままこの国を野放しにしていたら、「安倍首相は一体何をやっているんだ!」と風向きが変わりかねません。
“ 改革に終わりはありません。経済はグローバル化しており、世界で勝ち残らなければ、結局は雇用も維持できません。” 安倍内閣総理大臣記者会見にて
“ 様々な意見の違いや課題があるからこそ、首脳同士が会って胸襟を開いて対話すべきだと思います。対話のドアは常にオープンにしています。” 日韓首脳会談にて
“女性の活躍は、社会政策でなく、成長戦略として捉えています。日本は人口減少の中で労働力が不足していく、もうダメじゃないか、と言われていますが、女性は日本に眠る最大の潜在力です。女性がその能力を開花させていくうえで様々な障害がありますので、それを取り除いていくための政策を進めていきます。” 2017/10/8 党首討論会にて 
“ 重要なことは結果だ。100の言葉より1の結果だ。” 2017/9/30 党首討論会にて
“ 我々自民党は、2009年に政権を失った生々しい経験をしっかり頭に入れています。国民から「ノー」を突きつけられた自民党に再び戻ってはいけない。あの時のことは忘れてはいないし、忘れてはいけないと思っています。” 2017/7/1 福島訪問にて
“ 日本は戦後、民主主義と自由を守り、平和国家としての道を歩んできました。この姿勢を貫くことに1点の曇りもありません。” 2016/12/26 安倍内閣総理大臣の談話〜恒久平和への誓い〜にて
“ なるべく冷静にしようと思い、息を4秒吸って、8秒で吐くようにしている。​” 2016/12/18 Mr・サンデーにて
“ ただスローガンを重ねるだけでは、社会を変えることはできない。具体的な政策なくして、そのスローガンを現実のものとすることはできない。具体的な政策を提案し、実行し、そして結果を出していく決意だ。” 2016/9/28 代表質問にて 
“ 父(安倍晋太郎)の遺志を継ぎ、父が成し得なかったことを何としてもやり遂げたい。” 1991/7 衆院選出馬時 
 
 
 2018
●安倍首相の「規制改革」はウソの常套句だ  2018/6
放送を産業政策だけで論じる危うさ
安倍首相は「放送法4条の撤廃」を諦めてはいない
まさに「勝って兜の緒を締めろ」である。
政府の規制改革推進会議が6月4日、放送事業を見直す答申をまとめた。焦点だったテレビ番組の政治的公平性などを定めた「放送法4条」の撤廃は見送られた。
しかし、安倍首相は同会議で「大胆な規制改革の断行は時代の要請」とも語り、総務省で放送事業の将来を総合的に検討するよう求めた。つまり安倍首相は、放送法4条の撤廃を完全に放棄したわけではない。油断はできない。今後、その危険性があることを私たちは自覚しておく必要がある。
安倍首相の狙いのひとつは、安倍政権を批判する民放をたたいてつぶせる仕組みを作ることにある。アメリカのFOXテレビ(フォックステレビ)のようなトランプ政権を一方的に支持する放送局やインターネット事業者を確保したいのだ。
そうなると、安倍政権のウソをただすメディアはなくなり、ウソで塗り固められた政治が続いてしまう。それは日本国民にとって悲劇以外の何ものでもない。
番組ジャンルの調和撤廃は、日本の社会を分断する
放送法4条の撤廃論については、プレジデントオンラインの4月4日付で「ナベツネも反対する“放送法改正”の乱暴さ」との見出しを付けて取り上げ、次のような内容を指摘した。
「放送の自律を保障しながら公共の福祉に適合するよう規制する法律が放送法だ。その4条では(1)公序良俗を害しない(2)政治的公平さを失わない(3)事実をまげない(4)意見が対立する問題は多角的に論点を明確にする――の4点を放送局に求めている」
「ところが安倍政権は、NHK以外の放送局に対し、番組基準の策定や番組審議会の設置を義務付け、さらに教養、報道、娯楽など番組ジャンルの調和を求めている放送法4条の規定をすべてなくすことを検討してきた」
「放送法4条の撤廃で、一時的には放送業界は活性化されるかもしれない。しかし政治的にかなり偏った番組が氾濫する恐れがあり、事実を曲げた放送がはびこる危険性は強い。視聴者は何が事実で、どれが虚偽かが分からなくなり、自分の興味本位でしかものごとを見なくなってしまう。日本の社会は大きく分断され、大混乱する」
安倍首相に物申せるのはナベツネさんぐらいなのか
そのうえで、最後にこう言及した。
「4月2日、安倍首相は東京・丸の内のパレスホテル東京でメディア関係者らと会食している。出席者は渡辺恒雄・読売新聞グループ本社主筆、熊坂隆光・産経新聞社会長、海老沢勝二・NHK元会長らだった。一体なにが話し合われたのか」
沙鴎一歩の取材によると、会食では渡辺氏が先頭に立って放送法4条の撤廃に真っ向から反対し、「戦時中、新聞やラジオが戦争を煽る政府の宣伝に利用された。この反省から生まれたのが放送法だ。放送法4条によって公共の福祉が守られる。4条を撤廃することはあってはならない」と訴えたという。
ナベツネさん、いいことをいう。それにしても本来なら日本記者クラブに加盟する新聞社やテレビ局がひとつにまとまって安倍首相や安倍政権に抗議すべきだったと思う。
これも「亀の甲より年の功」だが、いまの日本、「1強」の安倍首相にはっきりとものをいえるのは、ナベツネさんしかいないのかもしれない。それも実に悲しいことである。
NHKとネットの在り方についても言及する読売
そのナベツネさんが率いる読売新聞の社説(6月7日付)は「放送事業見直し」とのテーマで「産業政策の視点で論じるな」と主張している。他社の社説に先駆け、しかも1番手の扱いである。書き出しもいい。
「放送の信頼低下を招くような改革が必要だろうか。公共性が高い放送の在り方を、競争力向上を目指す産業政策の視点で論じるべきではない」
さらにこう指摘していく。
「放送内容の質を維持するための規定がなくなれば、過激な番組や、フェイクニュースが多く放送される恐れがある」
「放送に対する信頼が失われ、ひいては国民の知る権利を損なう可能性があろう」
「真偽不明の情報も流れるインターネットの事業者と放送局を、同列に論じることはできない」
放送法4条が撤廃されて大きな損害を被るのは間違いなく国民である。テレビの視聴率が下がっているとはいえ、放送法4条をなくしてネット事業と競争するような形態をとるのは大きな過ちである。むしろさまざまな問題を引き起こしているネットに対する規制を図る方が先ではないだろうか。
読売社説は「番組を放送と同時にネットで流す同時配信については、NHKによる全面実施を早期に解禁する方向性をにじませた」とNHKとネットの在り方についても言及している。
放送には民主主義を支える公共的役割がある
「当初案は撤廃でインターネット事業者の放送参入を促すものだった。安倍晋三首相は政治的公平が不要なネット番組に進んで出演してきた。このため政権に都合のいい番組を増やしたいとの思惑が透けて見えた」
こう書くのは6月8日付の毎日新聞の社説だ。
その毎日社説はさらに「政権が完全に諦めたとみるのは早計だろう。気がかりなのは今回の案が放送と通信の融合と称して両者の違いを軽視していることだ。4条撤廃と発想は同じだ」と指摘する。
「諦めたとみるのは早計」。なるほど、前述した沙鴎一歩の懸念と同じである。
さらに毎日社説は問題点を具体的に挙げながら、偏った方向にかじを切ろうとする安倍政権の危険性を指摘する。
「代表例は、放送と通信の番組をネットで流す際、同じサイトを使う仕組みを作るよう求めたことだ」
「現在、放送番組のネット配信はNHKと民放が別々に手がける。まず放送を一緒にし、さらにネット事業者も加われる体制にするという」
「ネットの普及でテレビ離れが進む中、規制改革推進会議は、新規参入で競争が加速すると、番組の魅力が高まり視聴者にメリットがあると主張する。本当にそうだろうか」
「しかもネットは極端に偏った情報やフェイク(偽)ニュースが目立つ。こうした懸念のあるものが放送番組と同じサイトで流れると、区別がはっきりしなくなる恐れがある。これでは視聴者に有害なだけだ」
同感である。終盤、毎日社説は「そもそも民主主義を支える公共的役割を担ってきた放送と、収益など市場原理で動くネット事業者を同列に扱うこと自体に無理がある」とも指摘するが、これも肯ける。
安倍首相は4条の重要性に気づいているのか
朝日新聞の社説(6月8日付)もその見出しで「引き続き監視が必要だ」と強調し、「心配された事態はとりあえず避けられた。だが、これからも監視を怠ることはできない」と書き出す。
朝日社説は放送法4条の成り立ちから今回の撤廃問題までを解説していく。
「この条文は、放送事業者が自らを律し、良質な番組をつくるための倫理規範だというのが、学界や放送現場で定まった考えだ。戦前の放送の反省にたち、民主社会をおおもとで支える言論や報道を、より豊かなものにする基本の心構えといえる」
「ところが政府自民党は、これを放送局を攻撃・牽制する根拠に使ってきた。その傾向は現政権でいっそう強まる。高市早苗元総務相が、4条違反を理由に電波を停止する措置もあると述べたのは記憶に新しい」
「一方で、この条文があると政治の側ができる口出しも限界を伴う。そこで浮上したのが『撤廃』の考えだ。4条を口実にした介入も、一見その逆をいく撤廃論も、放送を自分たちにとって都合のいい道具にしたいという政権側の思惑が、根底にある点において変わりはない」
安倍政権の放送法4条の撤廃に対し、既存のメディアの新聞やテレビは強く反対した。戦後の民主主義が築き上げたたまものが、放送だからである。
放送だけではない。公平性と事実に価値を置いて自主自律していくことは、私たちが社会生活を送るうえでの基本である。安倍首相や安倍政権は「もりかけ疑惑」で野党に追及され、揚げ句の果てにウソとしか思えない答弁を重ねてきた。そんな政権だから放送法4条の重要性に気づかないのだ。 
●常套句でうやむやにする政治を疑え 2018/10
「遺憾」「不徳の致すところ」――。この二つの決まり文句=常套句(じょうとうく)で、おおかたのことがうやむやにされている感のある今日このごろ。秋の臨時国会は始まったが、このもやもやした思いはどうにも晴れそうにない。「生きた言葉」について考えているという哲学者の古田徹也さん、何か打開策、ありませんか?
――安倍晋三首相の所信表明演説をどう聞きましたか。
「気になったのは、『ピンチをチャンスに変える』という常套句の多用です。この言葉、たとえば上司に言われたら不安になりませんか? 現状の厳しさを本当に理解しているのだろうかと」
「しかも、仮にチャンスに変えられたとしても、試練の中で不確かな可能性が見えたということに過ぎない。そこに賭けるには、相応の根拠と、失敗した場合の備えが必要です。そうした現実の複雑な課題を、なんとなくポジティブな印象の常套句によってうやむやにする。これは、言葉を道具としてのみ扱う典型例だと言えます」
――ん? 言葉は道具じゃないんですか。自分の思いや考えを他者に伝える道具、でしょう。
「もちろん言葉には意思を伝える道具としての働きがあります。でも、それより重要なのは、その意思自体をかたちづくるという働きです。私はいま、こうやってしどろもどろになりながら……質問に答えるべく、しっくりくる言葉を探し、迷い、選んでいます。そうやって初めて自分が何を考えていたのか、何を言いたかったのかがわかり、時に自分でも驚く」
――「そうか、私ってこんなことを考えてたんだ!」と。
「私たちは、迷いながら言葉を紡ぐことで考え、新しい視点を獲得し、新しい可能性を開いていきます。でも安倍さんの言葉には、そのような迷いや逡巡(しゅんじゅん)が見られない。『確固たる信念』と言えば聞こえはよいですが、問いかけてくる相手に対して言葉を尽くし、言葉のやりとりを通して新しい可能性を探る、という姿勢に乏しい。結局は多数決で自分が決めた通りになるのだから、言葉を雑に使っても構わない。出来合いの常套句をそろえて切り抜ければよい。そういう割り切りが見て取れます」
――首相は以前「『そもそも』には『基本的に』という意味もある」と答弁し、それは誤りだとわかった。それでも政府は、「そもそも=どだい=基本」というむちゃくちゃな解釈で、発言を正当化する答弁書を閣議決定しました。
「首相官邸の塀の上には、ハンプティ・ダンプティが座っているのかもしれませんね」
――「鏡の国のアリス」で ・・・  
●首相はジャーキー食べても「ジューシー」 2018/12
「宝石箱や!」「まいうー」。グルメリポートには、そのタレントならではのおいしさを表す定番のフレーズがある。では、視察先で各地の特産品を味わうことが多い安倍晋三首相が、頻繁に発する二つの決めゼリフとは――?
首相官邸で6月、特産のメロンを首相に贈呈したのは、茨城県鉾田市の一行。「イバラキング」と「クインシー」の2品種を口に運んだ安倍首相は、こう頰を緩ませた。「非常にジューシーですね。大変癒やされた」
自民党総裁選を前に地方行脚をしていた8月下旬には、宮崎県西都市の農家でキュウリを試食。首相官邸のインスタグラムで「朝獲(ど)れキュウリをいただきました。ほんとに、うまい! みずみずしくて、ジューシー、最高の味でした」と語った。「#ジューシー」のハッシュタグもついた。
柿、ブドウ、桃などの果物にとどまらず、過去にはビーフジャーキーまで「ジューシー」と表現したこともある。日本テレビのバラエティー番組「月曜から夜ふかし」(2016年1月放送)で「ブレずにジューシーと言う人」として紹介され、ネット上でいじられても、「ジューシー」の表現はブレずに続いている。
もう一つ、安倍首相がよく使う表現がある。今年8月、宮城県東松島市の農業法人で試食したキュウリとミニトマトの感想は「おいしいです。健康にもよさそう」。6月に首相官邸で和歌山県産の梅干しを試食した際は「甘酸っぱい。健康にいい」。第1次政権は自身の健康問題で退陣しただけに、「健康によさそう」な食べ物が気になるようだ。
9月、自民党のネット番組「カフェスタ」に安倍首相が出演した際は、好きな食べ物が話題になった。ハンバーガーが好きだと明かし、「ジューシーなものは食べますか」という視聴者からの質問に、「割とジューシーなものは何でも好きですね」。
そして、好物だというチョコレート菓子「ブラックサンダー」を放送中に一つほおばると、「(国会の予算委員会が)いかにストレスがたまるか。この甘さをとりながら、ストレスを解消する」と話した。10日に閉会した臨時国会での野党の追及も、ジューシーな食べ物と甘い物で乗り切った?
安倍晋三首相の「ジューシー」連発。食レポの達人、彦摩呂さん(52)は「食感や見た目の感想をうまく取り込んでみて」と首相にアドバイスを送る。脱・ジューシーを図るコツも語ってくれた。
彦摩呂さんは、安倍首相は高級店にも行き慣れて経験値が高いと分析。少しの工夫で表現の幅を広げれば、「名グルメリポーターになれます」と断言する。
例えば、ジューシーの代わりに、キュウリのみずみずしさやシャキシャキ感を伝えるため、咀嚼(そしゃく)する音を聞かせつつ、「キュウリの新入社員やー」「シャキッとしてますなあ」。また、赤いトマトを見せながら「うわー、赤いー!」と、あえて見た目の感想を伝えるのも効果的だという。
視察や表敬の際に首相に試食してもらうことで、特産品や食材を広く知ってもらうことを生産者は期待しているはず。彦摩呂さんは「安倍首相もぜひとも名グルメリポーターになって、食の楽しさを伝えていただきたい」とエールを送っていた。 
 
 
 2019
●安倍首相の「共産党か」ヤジはネトウヨの常套句! 2019/11
11月8日参院予算委で答弁する安倍首相(参議院インターネット審議中継より)
つくづく懲りない男だ。昨日8日の参院予算委員会で、安倍首相がまたもや“悪質ヤジ”を飛ばしたことが波紋を広げている。立憲民主党の杉尾秀哉議員が、2016年の高市早苗総務相による「電波停止」発言について質問したときのこと。安倍首相は座ったまま杉尾議員を指差し、「共産党か!」なるヤジを飛ばしたのだ。
杉尾氏は立憲民主党の議員なのに「共産党か!」って……コレ、所属政党を間違えたわけではなくて、ネトウヨがリベラル派や政権批判にレッテル貼りをするときに使うお決まりの文句なのだ。あらためてその品性に愕然とするが、重要なのはヤジがどのような文脈で出てきたかということ。質疑の流れを検証してみると、明らかに、突きつけられた不都合な真実に対する“逆ギレ”であることがわかる。
そのためにも、安倍首相の「共産党か!」ヤジが飛び出すまでの杉尾議員との国会質疑を、振り返っておこう。まず杉尾議員は、公選法違反疑惑で大臣を辞任した河井克行・前法務相の妻で、先の参院選では自民党公認で初当選した河井案里議員が、今春の広島県議選の期間中、複数の自民党県議に現金を持ってきたという中国新聞の報道をあげ、「公選法が禁じる買収や寄付行為にあたるのではないか」「これは極めて重大な問題。安倍首相は事実関係を確認してもらえないでしょうか」と追及した。
すると安倍首相は、「これは内閣の中にいようが外にいようが、与党の議員であろうが野党の議員であろうが、当然、説明責任を果たしていくことが求められているわけであります」と答弁し、議場は騒然。当然だろう。安倍首相が法務大臣に任命した河井克行氏と、その妻で自民党の河井案里氏という「与党議員」に揃って公選法違反という疑惑が浮上しているのに、安倍首相は全く関係のない「野党」まで持ち出して、「与党であろうと野党であろうとこれは同じ」などと繰り出したのだ。杉尾議員も「野党は関係ありません」と突っ込んでいたが、明らかに疑惑を矮小化するためのスリカエ・印象操作ではないか。
次に、杉尾議員は萩生田光一文科相の“資質”とメディアの萎縮について言及。本サイトでも取り上げてきた、大学入学共通テストの英語民間試験の導入をめぐる「身の丈にあってがんばれ」発言を批判し、萩生田大臣を守るために官邸主導で英語民間試験の見送りを決めたのではないかと追及した上で、「今日はどうしても聞きたいテーマがある」と言って、萩生田氏によるあの“報道圧力”文書問題に切り込んだ。
念のため振り返っておくが、これは2014年の総選挙直前に、当時、自民党が在京テレビ局に選挙報道をめぐる圧力をかけた問題だ。『NEWS23』がアベノミクスについて否定的な街頭インタビューを報じたことに対し、安倍首相は「厳しい意見を意図的に選んでいる」と陰謀論まがいの主張をまくしたててブチ切れたのだが、放送から2日後、在京キー局に向けて萩生田光一・自民党筆副頭幹事長(当時)の名前で〈選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い〉なる恫喝文書を送りつけたのだ。
長らくTBSで報道記者を務めていた杉尾議員は、当事、局内にいた“当事者”の一人としての実感からこう質問した。
「私も当時メディアにいて、この文書を見ました。最後のパネルの下のほうですけども、出演者の発言回数、ゲストやテーマの選定、街頭インタビューや資料映像にいたるまで、事細かに注文をつけています。この文書が出る前日に、TBSの『NEWS23』に総理が出られて、街頭インタビューに対して『編集してますね』と噛みついた。それを受けての文書だと私は理解してます。文面は非常に丁寧なんですけども、内容は、言葉は悪いんですけど恫喝に等しいんですよ。私は長くテレビ報道で仕事をしてましたけど、こんな文書見たことありません。萩生田大臣、なんでこんな露骨な圧力をかけたんでしょうか」
しかし、萩生田文科相は、まったく悪びれることなく「過去にも選挙前にこういう形でメディアのみなさんに、ぜひよろしくということで発出した経緯もございます」などと答弁し、報道圧力を正当化しようとした。これに対し、杉尾議員は「いや、これ以前にこんな文書はありませんよ。ここまで細かく書いているものはございません」と反論。さらに安倍政権による報道圧力の問題を掘り下げるため、2016年2月、当時も総務大臣だった高市早苗総務相が、国会で「国は放送局に対して電波停止できる」という趣旨の発言を繰り出した「電波停止」発言について述べようとした。
ところが、その杉尾議員が高市総務相に、放送法における「政治的公平性」の解釈について問おうとしている最中、安倍首相が大臣席から突如、「共産党か!」なるヤジを飛ばしたのだ。
当然、杉尾氏は「野次らないでください、なに野次ってるんですか、何が共産党なんだ」と反発。速記が止まるなど、国会進行に支障をきたすなか、金子原二郎参院予算委員長が不規則発言を慎むよう注意したが、議場はなおも紛糾し、金子委員長は「もう謝ったんだからいいじゃないですか」などと適当に流そうとした。安倍首相はその間も、腕を組んだまま椅子にふんぞり返り、またもや野党側に指をさして何か口を動かしていた。
この一連の流れをたどれば、安倍首相がどういった文脈でヤジを繰り出したかは歴然だろう。ようするに、自民党議員の重大疑惑に続き、閣僚による圧力問題を追及されるなかで、安倍首相はいきなり「共産党か!」なるヤジを飛ばしたのだ。つまり、ネトウヨ的な不規則発言をかますことで、追及に対してきちんと説明することを放棄し、議場を混乱させているのである。まったく救い難いではないか。
この日の夜の『NEWS23』では、アンカーの星浩氏が安倍首相のヤジについて、「これもまた非常に悪質。こんなに自分の席からヤジを飛ばす総理大臣って私も見たことありません」と述べていたが、その通りとしか言いようがない。
周知の通り、安倍首相はこのつい2日前、6日の衆院予算委員会でも、同じような悪質なヤジを飛ばしている。無所属の今井雅人議員が、加計学園問題をめぐる「萩生田副長官ご発言概要」について、萩生田文科相に「文科省でこのメモは見つかったわけですよね。であれば、これは文科省の人が書いたと思われますが」「文科省で見つかったと松野(博一・元文科)大臣がおっしゃっていますから、内容からして誰かがつくっているわけです」と質問を行ったのだが、そこで安倍首相は自席に座りながら、今井議員に指さして「あなたがつくったんじゃないの」なる陰謀論むき出しのヤジを放った。
それだけはない。毎日新聞デジタル版7日付記事(「やまぬ安倍首相のヤジ 今年だけで不規則発言20回超『民主主義の危機』」)によれば、今年、安倍首相は11月6日までの国会で質問者の質問中に発したヤジは、少なくとも26回に及ぶという。たとえば、2月4日の衆院予算委では、厚労省の統計不正問題に関する統計作成などの政治的中立性への疑問に対して「ないよ、そんなもん」。2月18日の同委では、実質賃金の伸び悩みを指摘する野党議員に「(自民党は)選挙で5回勝っている」と驕りまくったヤジを飛ばした。8日の「共産党か!」ヤジも含めれば、今年だけで27回だ。
もっとも、安倍首相は今年に限らず、これまでも散々国会で追い詰められるたびに信じられないようなヤジを飛ばしてきた。
代表的なのは、2015年2月の衆院予算委員会。当時の西川公也農水相への献金問題を追及していた民主党議員に対し、安倍首相はニヤニヤしながら「日教組!」「日教組どうするの日教組!」というヤジだろう。安倍首相は“民主党は日教組から金をもらってるだろ?”とレッテル貼りをしたわけだが、これは完全なデマ。安倍首相も後に事実誤認であることを認め、発言を訂正するにいたった。
同じ年の5月の衆院特別委に、安保法制をめぐる自衛隊の機雷掃海のリスクについて指摘する辻元清美議員に「早く質問しろよ!」とイライラした調子で声を張り上げた。このヤジの前日、安倍首相は「与党側はこんなに静かに礼儀正しく聞いてるじゃないですか。みなさんも少しは見習ったらどうですか」「議論の妨害はやめていただきたい。学校で習いませんでしたか」などとヤジを批判していたにもかかわらずだ。しかも、安倍首相は「早く質問しろよ!」ヤジの3カ月後にも「まあいいじゃん、それで」というヤジをかましている。まったく反省の色がないのだ。
安倍首相は曖昧な答弁が批判を受けると、すぐに「ヤジはやめませんか、いま私が話してるんですから」「国民のみなさん、私が答弁しようとするとこうやってヤジで妨害するんです」などと被害者ヅラするが、他ならぬ本人が野党の質問をヤジりまくっているのである。
前述の毎日記事では、ベテラン政治評論家の森田実氏が「品格がなさ過ぎる。戦後、こんな首相がいたでしょうか」と苦言を呈しているが、もはや“品格のなさ”というより“サイコパス”ではないのか。実際、安倍首相は2016年5月、松本人志の『ワイドナショー』(フジテレビ)に出演した際、国会でヤジを飛ばすことについてこう話していた。
「(国会でのヤジは)独り言だったんですが、独り言(の声)が大きくなった。修行が足りないですね」
国会で追及される政権の問題や政策の不備について、本来、しっかり国民へ説明せねばならないのに、それを放棄して「日教組!」「共産党か!」などと“独り言”でヤジってしまうのだとすれば、はっきり言ってヤバすぎる。6日の「あなたがつくったんじゃないの」ヤジもそうだったが、安倍首相は完全にネトウヨ的陰謀論に支配されて、おかしくなっているのだろう。もはや常人には理解不能の領域だ。このまま、本当に総理の椅子に座らせておいていいのか。有権者はもっと真剣に考えるべきだ。 
 
 
 2020/3
●「政治は結果責任」責任を取るつもりがない時の決め台詞 2020/3/7
日本の危機管理の脆弱性をあらわにした新型コロナウイルス騒動。シャツの一番上のボタンを掛け違えれば、その下は全部ずれていく。要するに安倍晋三が総理をやっている時点で初動ミスなのである。
桜を見る会や東京高検検事長の定年延長問題の追及から逃げまわっていた安倍は、突如スポーツ・文化イベントなどの2週間の自粛を要請することを表明(2月26日)。その翌日には、春休みまで全国の小中高校に一斉休校を要請すると言いだした。新しいトピックを打ち出すことで問題をごまかすいつもの手口だが、これは専門家の意見も聞かずに安倍が独断で決めたものだった。「政治は結果責任。その責任から逃れるつもりはなく、その責任を先頭に立って果たす」と開き直っていたが、安倍がこのように言うのは、過去の事例からもわかる通り、一切責任を取るつもりがないときである。
行動も発言もすべてがデタラメ。子供の発症、重症化は少ないのに、学校だけ閉鎖するのも意味不明。政府は学童保育(放課後児童クラブ)を受け皿にすると言いだしたが、学校なら感染して学童保育なら感染しないのか。科学的根拠を問われた安倍は「疫学的な判断をするのは、困難である」と答弁。無責任にも程がある。「必ず乗り越えることができると確信している」らしいが、これでは国の崩壊に突き進んでいった先の大戦と同じだ。
国民に外出の自粛を求める一方で、安倍と周辺一味は宴会三昧。ヨイショライターの百田尚樹に批判されると、さっそく会食。コロナ対策より百田対策。
秋葉賢也首相補佐官、小野寺五典元防衛相、ネトウヨの杉田水脈もパーティーを開いていた。連日の宴会を批判された安倍は「いけないことなのか」だって。
2月29日の会見では、広報官が書いた原稿と事前に用意された記者の質問への返答(要するに出来レース)をそのまま読み上げ、最後は他の記者の質問を打ち切り、わずか36分で自宅に帰っていった。
安倍はどさくさに紛れて「緊急事態宣言の実施も含めた立法措置を急ぐ」と言いだした。われわれ日本人は今、コロナウイルスと安倍という2つの敵と戦っている。早急にやるべきなのは、一番上のボタンを外し、正確に掛け直すことだ。  
●安倍晋三の名言  2020/4
〇 重要なことは結果だ。100の言葉より1の結果だ。
〇 女性の活躍は、社会政策でなく、成長戦略として捉えています。日本は人口減少の中で労働力が不足していく、もうダメじゃないか、と言われていますが、女性は日本に眠る最大の潜在力です。女性がその能力を開花させていくうえで様々な障害がありますので、それを取り除いていくための政策を進めていきます。
〇 ただスローガンを重ねるだけでは、社会を変えることはできない。具体的な政策なくして、そのスローガンを現実のものとすることはできない。具体的な政策を提案し、実行し、そして結果を出していく決意だ。
〇 改革に終わりはありません。経済はグローバル化しており、世界で勝ち残らなければ、結局は雇用も維持できません。
〇 日本は戦後、民主主義と自由を守り、平和国家としての道を歩んできました。この姿勢を貫くことに一点の曇りもありません。
〇 父(安倍晋太郎)の遺志を継ぎ、父が成し得なかったことを何としてもやり遂げたい。
〇 様々な意見の違いや課題があるからこそ、首脳同士が会って胸襟を開いて対話すべきだと思います。対話のドアは常にオープンにしています。
〇 米国の場合は1回失敗した人の方がむしろ投資家からお金がつきやすいと言われます。その意味では、日本は大切な資源をムダにしているのではないでしょうか。ウォルト・ディズニーは挑戦と失敗を繰り返しました。日本人だったら、ミッキーマウスは誕生していなかったでしょう。 
 
 
 2020/4
●安倍首相の日本語破壊力は、「責任」という言葉を消失させる 2020/4
安倍総理の日本語破壊力は相当なもので、口癖である「いわば」「まさに」といった言葉についていえば、「いずれ本来の意味は失われてしまうだろう」と、以前に書いた。
そして、今、気になっているのは、「責任」という言葉である。安倍首相の日本語破壊力は、「責任」という言葉の存在さえも、消失させようとしているのだ。
一昨日付の共同通信によれば、安倍首相は「私はこれまでも政治は結果責任であると申し上げてきた。全ての責任は首相である私にある。その大きな責任を先頭に立って果たしていく決意に変わりはない」と述べたという。
これを共同通信は、「新型コロナ対応、全責任は自身にあると首相」という見出しで紹介した。
そういう意味なのでしょうか。
これ、もともとの文面は、何も言っていないに等しい。どこで誰に言ったかも書かれていない。こんなの記事といえるの?
「政治は結果責任」というのは、安倍首相自身にはそんなつもりはなかったが、結果的に酷い状況を招いた。だから自分には「結果責任」がある、ということであろう。なので「全ての責任は首相である私にある」というのだけど、この人が口にする「結果責任」というのは、どうしても、「自分の思惑違い、不可抗力でそうなってしまった、今の悪い状況は自分の本意ではない」、という意味に響いてしまい、逆に「責任」とは遠ざかっていく気がするのだ。
そもそも、彼は「責任」をとったことなんて、一度もないでしょう。何があろうと、出すべき証拠も示していないし、嘘ついても辞めてないし。
そして、「その大きな責任を先頭に立って果たしていく決意に変わりはない」という場合の、「責任」という言葉の意味が、不明である。ポーズだけはとり続け、「なんとかしたいと思ってはいる」とだけ、言っているに等しい。
つまりこれは、またうまくいかなかったときに、「もちろん私には結果責任がある。でもこれは私の思っている通りにならなかったために起きたことなので、だから私には本当は責任がないんだけど、政治家の常套句だし、総理大臣でもあることだし、責任は自分にあるっていうことにしますね」とだけ、言っていることになる。
つまり安倍首相は、永久に自分自身には「責任」がない、と言っている。そのことを証明するための意図的な矛盾のロジックとして「結果責任」と言っている。
永久の繰り返しである。
考えすぎ? いえいえ、そんなことありません。
じっさい、彼は責任とったことなんて、一度もないのだから。
だいたいこの文脈で「責任を先頭に立って果たしていく」というのは、日本語として矛盾だらけである。「結果責任しかとらない」と告白している者が先頭に立ったって、あてにできるわけがないだろう。
もともと先頭に立っているくらいだからわかっていてやっていたことに決まっているはずであり、それが首尾よくいかなかったら、「結果責任」ではなく、もともときちんと責任があるはずではないか。
かわいそうなのは、「責任」という言葉である。
本来の意味が骨抜きにされて、安倍首相の言語の中では、「責任回避のため繰り返し置き換え使用するための受け皿」にしか、なっていないからである。
正しい日本語を推進したい方々は、安倍総理が使う日本語は私たちの知っているそれとは違う用いられ方をしているという点について、迅速かつ明確に批判し、後世の人達が誤った用法を受け継がぬよう注意、銘記しておくべきだと、真剣に思う。 
 
 
 2020/5
●安倍総理の記者会見はなぜこれほどに説得力がないのか 5/5
世界各国でロックダウンに伴う休業や休校を解除するニュースが相次ぐ中、日本政府は「緊急事態宣言」を5月31日まで延長することを決定し、それを安倍総理が記者会見で発表した。
4日に行われた会見はこれまでと同様、フーテンにはとても納得できる内容ではなかった。新型コロナウイルスとの戦いを「戦後最大の国難」とか「第三次世界大戦」と言いながら、安倍総理の会見に説得力を感じないのはなぜか。それを改めて考えさせられた。
安倍政権の新型コロナウイルス対応には、最初からもやもやしたものを感じてきたが、それがいつになっても晴れない。それは感染の実態についての納得できる説明がないからだ。説明のほとんどは「専門家がこう言っている」という受け売りでしかない。安倍総理自身がデータや分析を自分で検証し納得した形跡がない。
集団的自衛権の解釈変更の際には、会見場にボードを持ち込み説明したが、あの時は切迫した事態があった訳ではなく仮定のシミュレーションだった。それでも国民に理解させようとボードを使って説明する努力をした。
今は切迫した現実の「戦争」である。しかも「第三次世界大戦」と認識しているのなら、専門家任せにするのではなく、自らが先頭に立ってデータを収集し、自分が納得するまで分析し、それを国民に説明すべきだと思う。
安倍総理の会見の特徴は、事実を提示するよりレトリックでごまかそうとする傾向がある。「断腸の思い」とか「未来を作る」とか安っぽいセリフを並べて煙に巻く。横に専門家など置かなくとも、国民に納得できるまで説明する迫力がなければ「国難」に立ち向かう総理の姿にならない。
4日の会見の内容は次のようなものだ。まず安倍総理は自分が発した「緊急事態宣言」の効果が現れていると強調した。1日700人ぐらいあった感染者数が3分の1に減ったこと、1人の感染者が何人にうつすかを示す「実効再生産数」の値も1を下回ったと強調した。
実効再生産数が1を下回ったということは感染が拡大しないことを意味する。そこで安倍総理はこの結果に「国民みなさんの行動は私たちの未来を確実に変えつつある」と1か月間の国民の我慢を称賛して謝意を表した。
しかしフーテンはそんな大衆迎合のセリフより、日本政府は感染者数と死者数だけでなく、検査数と実効再生産数をなぜ毎日発表しないのかと、そちらの疑問に頭が向かう。
政府が発表する感染者数は実態を表すものではない。検査数を増やせば感染者は増えるし減らせば減る。にもかかわらずメディアは感染者の増減だけを取り上げて国民の恐怖を煽ってきた。なぜ感染者数だけに焦点を当てるのか。そこに戦前の大本営発表と同様の国民操縦の意図をフーテンは感じてきた。
感染者数と死者数だけでなく検査数と実効再生産数を毎日発表すれば、国民は感染の実態をある程度把握することが出来る。むやみに恐れたり、楽天的になることをしなくなる。勿論、前提として政府はその数字を裏付ける証拠も開示しなければならない。政府が発表しないならメディアが要求すべきだ。しかしメディアはただ感染者数の増減に焦点を当て政府の国民操縦に加担してきた。
国民を思う通りに操りたい政府は、国民に実態を知られたくないのが常である。しかしこの危機は国家と国民が一体にならなければ収まらない。そのためには情報開示が何よりも重要だ。だが国民は感染の実態を知らされぬまま、これまで我慢を強いられてきた。
「緊急事態宣言」に効果があったのに、なぜ今月末まで期間を延長するのか。安倍総理は「感染者の減少が十分とは言えない」と言った。現在1万人近くが入院しており、この1か月で人工呼吸器の治療を受ける人が3倍に増えた。
毎日100人を超える患者が退院するが、それを下回るレベルに新規感染者数を減らさなければ、医療現場の改善はできない。患者の在院期間は平均2,3週間なので、そうしたことから1か月の延長を決断したという説明だった。
医療現場が大変なことは分かる。しかし我慢を強いられる国民の方にも、自殺に追いつめられたり、やむなく犯罪に走る人も出てくる。経済的打撃は深刻だ。そうしたことも重ね合わせ、国家全体に目配りした判断なのかの説明はなかった。
欧米の政治リーダーなら複数の案を国民に示し、メリットとディメリットを並列して理解を求めたと思う。延長しなければ医療現場の状態がどうなるかを示す一方、経済的ダメージがどれほど緩和されるかも示す。それが2週間の延長ならどうなるか。1か月ならどうなるかを具体的に示し、そのうえで自分はどう判断したかを説明する。これなら国民も納得すると思う。 ・・・ 
●新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見 5/25
まず冒頭、これを機に改めて、今回の感染症によってお亡くなりになられた方、お一人お一人の御冥福をお祈りします。感染された全ての皆様にお見舞いを申し上げます。
本日、緊急事態宣言を全国において解除いたします。
足元では、全国で新規の感染者は50人を下回り、一時は1万人近くおられた入院患者も2,000人を切りました。先般、世界的にも極めて厳しいレベルで定めた解除基準を、全国的にこの基準をクリアしたと判断いたしました。諮問委員会で御了承いただき、この後の政府対策本部において決定いたします。
3月以降、欧米では、爆発的な感染拡大が発生しました。世界では、今なお、日々10万人を超える新規の感染者が確認され、2か月以上にわたり、ロックダウンなど、強制措置が講じられている国もあります。
我が国では、緊急事態を宣言しても、罰則を伴う強制的な外出規制などを実施することはできません。それでも、そうした日本ならではのやり方で、わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができました。正に、日本モデルの力を示したと思います。
全ての国民の皆様の御協力、ここまで根気よく辛抱してくださった皆様に、心より感謝申し上げます。
感染リスクと背中合わせの過酷な環境の下で、強い使命感を持って全力を尽くしてくださった医師、看護師、看護助手の皆さん、臨床工学技士の皆さん、そして保健所や臨床検査技師の皆さん、全ての医療従事者の皆様に、心からの敬意を表します。
日本の感染症への対応は、世界において卓越した模範である。先週金曜日、グテーレス国連事務総長は、我が国の取組について、こう評価してくださいました。
我が国では、人口当たりの感染者数や死亡者数を、G7、主要先進国の中でも、圧倒的に少なく抑え込むことができています。これまでの私たちの取組は確実に成果を挙げており、世界の期待と注目を集めています。
そして本日、ここから緊急事態宣言全面解除後の次なるステージへ、国民の皆様とともに力強い一歩を踏み出します。目指すは、新たな日常をつくり上げることです。ここから先は発想を変えていきましょう。
社会経済活動を厳しく制限するこれまでのやり方では、私たちの仕事や暮らし、そのものが立ち行かなくなります。命を守るためにこそ、今、求められているのは、新しいやり方で日常の社会経済活動を取り戻していくことだと思います。
コンサートや演劇など、文化芸術イベントは、私たちの心を豊かにし、癒やしをもたらしてくれます。トップアスリートたちが活躍する姿は、私たちに夢や感動を与えます。日本各地へ観光旅行に再び出かける日を心待ちにしている皆さんも多いと思います。感染状況に目を凝らしながら、来月、再来月と、そうした日常を少しずつ段階的に取り戻していく。そのための具体的な道筋についても、本日、お示しいたしました。
プロ野球なども来月、まずは無観客から再開していただき、段階的に観客を増やしていく。コンサートや各種のイベントについても、100人程度のものから始め、感染状況を見ながら、1,000人規模、5,000人規模、さらには収容率50パーセントへと順次、拡大していく考えです。あらゆる活動について感染防止対策を講じることを大前提に、本格的に再開していく。感染リスクがあるから実施しないのではなく、これからは、感染リスクをコントロールしながら、どうすれば実施できるかという発想が重要であると考えます。
学校については、文部科学省が分散登校など、再開に向けた指針を既にお示ししています。
100を超える業種別の感染防止対策ガイドラインは、事業活動を本格的に再開し、新たな日常をつくり上げていくための道しるべであります。事業者の皆さんには、これを参考に事業活動を本格化していただきたい。政府も、ガイドラインに沿った感染防止の取組に100パーセント補助を行うなど、最大150万円の補助金で、町の飲食店を始め、中小・小規模事業者の皆さんの事業再開を応援します。
ガイドラインを完全に守って行動したとしても、感染リスクをゼロにはできない。試行錯誤も覚悟しなければなりません。感染を抑えながら完全なる日常を取り戻していくための道のりは、かなりの時間を要することになります。
本当に多くの事業者の皆さんが、この瞬間にも経営上ぎりぎりの困難に直面しておられる中で、更なる時間を要することは死活問題である。そのことは痛いほど分かっております。それでも、希望は見えてきた。出口は視野に入っています。その出口に向かって、この険しい道のりを皆さんと共に乗り越えていく。事業と雇用は何としても守り抜いていく。その決意の下に、明後日、2次補正予算を決定いたします。先般の補正予算と合わせ、事業規模は200兆円を超えるものとなります。GDPの4割に上る空前絶後の規模、世界最大の対策によって、この100年に一度の危機から日本経済を守り抜きます。
総額で130兆円を超える強力な資金繰り支援を実施します。経済全体を牽引(けんいん)する大企業、地域経済を支える中小企業、オンリーワンの技で成長の原動力となってきた中堅企業、規模の大小にかかわらず、政策投資銀行や公的ファンドを通じて、劣後ローンや出資など資本性の資金を供給します。身近な地銀、信金、信組などによる実質無利子、最大5年元本返済据置きの融資も進んでいます。必要な方に支援を一日も早くお届けできるよう、全力を尽くします。
こうした企業への資金繰り支援について、日本銀行が総額75兆円の新たな支援プログラムを先週決定しました。そして、今後とも政府と日本銀行が一体となって事態を収束させるために、あらゆる手段を講じていく。その決意を異例の共同談話として発表いたしました。正にオールジャパンで、圧倒的な量の資金を投入し、日本企業の資金繰りを全面的に支えてまいります。
事業を存続するために待ったなしの固定費負担も大胆に軽減していきます。人件費への助成を、世界で最も手厚いレベルの1万5,000円まで特例的に引き上げます。雇用をされている方が直接お金を受け取れる新しい制度も創設します。店舗の家賃負担を軽減するため、最大600万円の給付金を新たに創設します。使い道が全く自由な最大200万円の持続化給付金についても対象を拡充し、本年創業したばかりのベンチャー企業の皆さんにも御活用いただけるようにいたします。地方の実情に応じた事業者へのきめ細かな支援も可能となるよう、地方創生臨時交付金も2兆円増額いたします。
コロナの時代の新たな日常、その的に向かって、これまでになく強力な3本の矢を放ち、日本経済を立て直してまいります。経済再生こそがこれからも安倍政権の一丁目一番地であります。
ただ一点、強調しておかなければならないことがあります。それは、緊急事態が解除された後でも私たちの身の回りにウイルスは確実に存在しているということであります。ひとたび気を緩め、ウイルスへの警戒、感染予防を怠った途端、一気に感染が広がっていく。これがこのウイルスの最も怖いところです。
感染防止を徹底しながら、同時に社会経済活動を回復させていく。この両立は極めて難しいチャレンジであり、次なる流行のおそれは常にあります。それでも、この1か月余りで国民の皆様はこのウイルスを正しく恐れ、必要な行動変容に協力してくださいました。こまめな手洗い、今や外出するときはほとんどの方がマスクを着けておられます。店のレジは、人と人との距離を取って列をつくるなど、3つの密を避ける取組を実践してくださっています。こうした新しい生活様式をこれからも続けてくだされば、最悪の事態は回避できると私は信じます。
3つの密が濃厚な形で重なり、これまでも集団感染が確認された夜の繁華街の接待を伴う飲食店、バーやナイトクラブ、ライブハウスなどについては、御協力を頂いていることに感謝申し上げます。こうした施設も、専門家の皆さんに御協力いただきながら、来月中旬をめどにガイドラインを策定し、上限200万円の補助金により、有効な感染防止対策が講じられるよう支援する考えです。それまでの間、どうか身を守る行動を続けていただきますようにお願いいたします。
こうした取組を重ねてもなお、感染者の増加スピードが再び高まり、最悪の場合には、残念ながら2度目の緊急事態宣言発出の可能性もあります。しかし、私は、外出自粛のような社会経済活動を制限するようなやり方はできる限り避けたいと考えています。市中感染のリスクを大きく引き下げていけば、それが可能となります。
そして、そのためには、感染者をできるだけ早期に発見するクラスター対策を一層強化することが必要です。その鍵は、接触確認アプリの導入です。スマートフォンの通信機能により、陽性が判明した人と一定時間近くにいたことが判明した方々、すなわち濃厚接触の可能性が高い皆さんに自動的に通知することで、早期の対策につなげるアプリです。
先月、オックスフォード大学が発表したシミュレーションによれば、このアプリが人口の6割近くに普及し、濃厚接触者の早期の隔離につなげることができれば、ロックダウンを避けることが可能となる大きな効果が期待できるという研究があります。我が国では、個人情報は全く取得しない、安心して使えるアプリを、来月中旬をめどに導入する予定です。どうか多くの皆さんに御活用いただきたいと思います。
同時に、医師が必要と判断した場合には直ちに検査を実施する、検査体制の強化にも引き続き取り組んでまいります。抗原検査の使用が既に始まりましたが、PCR検査についても、民間検査機関への支援に加え、大学にある検査機器を活用させていただくなど、検査機能の拡大を進めます。
検体を採取する体制も増強します。これまでの専用外来に加え、医師会の御協力を頂き、全国で既に100か所近いPCRセンターを設置しており、これを一層拡大していきます。2兆円を超える予算を積み増し、自治体と連携しながら、医療提供体制の充実にも取り組みます。
全国各地で新型コロナ重点医療機関を指定し、今後の流行のおそれに備え、十分な専用病床をしっかりと確保していきます。
ウイルスとの闘いの最前線で奮闘してくださっている医療従事者、病院スタッフの皆さん、介護事業所の皆さんに、心からの感謝の気持ちとともに、最大20万円の給付を行う考えです。
高機能マスクや医療用ガウンなどの防護具についても、ウェブを使って全国の8,000近い医療機関の状況を直接把握しながら、国による直接配布を強化していきます。
感染状況が落ち着いてきたこの機をいかし、様々な取組を加速し、次なる流行のおそれに万全の備えを固めてまいります。
世界に目を向ければ、感染は今なお拡大を続けています。そうした中で、本日の政府対策本部では、水際対策の更なる強化も決定いたします。入国拒否の対象国は、100か国を超えることとなります。経済のグローバル化が進んだ現代で、人の動きが止まることは、世界経済に致命的なダメージを与えます。欧米での厳しいロックダウンによって、生産などの経済活動も大きく停滞しました。世界経済の復活なくして、日本経済の力強い再生もありません。国内で感染が落ち着いたとしても、世界的な感染の拡大に歯止めがかからない限り、真の終息はないのです。
私たちは、自国のことのみに専念していてはならない。内向きな発想では、この世界的課題を根本的に解決することはできないと考えています。しかし、感染が拡大している国では、そうした余裕はありません。これまで世界の政治・経済をリードしてきた国々の多くは、今、国内の対応で手一杯になっている、そうした現実があります。そこに隙が生まれるような事態は、決してあってはならない。こうしたときだからこそ、私たちは、自由民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的な価値をしっかりと堅持していく。そして、こうした価値を共有する国々と手を携え、自由かつ開かれた形で、世界の感染症対策をリードしていかなければならないと考えます。
このウイルスに対する治療薬やワクチンを、透明性の高い国際的な枠組みの下で途上国も使えるようにしていく特許権プールの創設を、来月予定されているG7サミットで提案したいと考えています。
医療防護具については、ここ数か月、国内の増産に取り組んできました。特定の国に依存するのではなく、グローバルな世界で強靱(きょうじん)なサプライチェーンを築き上げていくことも、極めて重要な課題です。我が国のこれまでの経験もいかしながら、世界の感染症対策、コロナの時代の国際秩序をつくり上げていく上で強いリーダーシップを発揮していく。それが国際社会における日本の責任であると考えます。
緊急事態が解除された後の次なるステージにおいても、国民の皆様の御理解と御協力をお願いいたします。
私からは以上であります。
記者質問回答のラストフレーズ
―――雇用と暮らしを守り抜いていくことが私の責任であろうと、こう考えています。
―――第一は国民の健康と命を守り抜いていく、これを最優先に考えていきたいと思います。
―――事業が継続できるように、これからも全力を尽くしていきたいと、こう思っています。
―――その意味におきましても、一日も早くお届けできるように全力で取り組んでいきたいと思います。
―――それは満員電車に対して、満員状況を軽減していくことにおいても大きく寄与してくれるのではないかと期待をしています。
―――こういう状況の中でこうした災害が発生した場合に備えて、武田担当大臣を中心に内閣府防災で今、しっかりと万全を期しているところであります。
―――今度は100近いPCRセンターを設置をして、今までよりも相当能力を上げていきたいと、こう思っております。
―――終わってから検証するのではなくて、今、正にやっているところでありますし、PCRもそうであります。ただ、本格的な全体の検証というのは、これは終息した後、検証していきたいと思っています。
―――全体の政治判断も含めて検証ということについては、これは終息した段階で検証していきたいと思っています。
―――御質問になられた中で提示をされたような様々な課題もある中で、それを踏まえて調整をしているというふうに思います。
―――今、申し上げましたように、オリンピックを開催する上において治療薬、ワクチンも極めて重要であるというふうに考えています。
―――原則を築き上げていくことなのだろうと思います。その中で、世界の感染症対策をリードしていきたいと思っています。
―――国民の御批判に対しては、これも真摯に受け止めなければならないと、この上は、法務省、検察庁において信頼を回復するために全力を尽くさなければならないと、私も全力を尽くしていきたいと思っています。
―――退職金については、訓告処分に従って減額されているというふうに承知をしています。
―――我々、日々の支持率に一喜一憂することなく、与えられた使命に全力を尽くしていきたいと思っています。  
●安倍首相 記者会見 主な発言内容 5/25
安倍総理大臣は25日の記者会見で、緊急事態宣言を全国で解除することを正式に表明し、段階的に社会経済活動を再開していく方針を示しました。記者会見での主な発言内容は、次のとおりです。
黒川元検事長の辞職 「批判を真摯(しんし)に受け止める」
安倍総理大臣は、緊急事態宣言の中、賭けマージャンをした問題で辞職した東京高等検察庁の黒川検事長について、「法務省・検察庁の人事案を最終的に内閣として認めたが、責任は内閣総理大臣たる私にある。批判を真摯に受け止めながらしっかり職責を果たしていきたい。森法務大臣には、検察や法務省の士気をしっかり高め、信頼回復のために全力をつくしてもらいたい」と述べました。
そのうえで、「私に与えられた責務は、新型コロナウイルス感染症を完全に克服して打ちかち、経済をしっかり回復させていくことであり、その間、雇用と暮らしを守り抜いていくことだ」と述べました。
宣言解除の判断は
安倍総理大臣は、緊急事態宣言を解除した判断について、「関東の1都3県と北海道は、先週21日の段階でも、新規の感染者数は減少しており医療のひっ迫状況も改善傾向にあった。この傾向が継続していけば、解除することも可能だと申し上げていたが、こんにちまでその傾向が続いてきた」と述べました。
そのうえで、「東京では、『直近1週間の10万人当たりの新規感染者が0.5人』という世界でも厳しいレベルの基準もクリアしている。神奈川県では、この基準を超えているが、1人以下で、多くはリンクが追えており、専門家から、『解除すべきである』という答申をいただいた」と述べました。
また記者団から「新しい日常生活」をいつまで続ける必要があるのか質問されたのに対し、「治療薬、ワクチンの実現が極めて重要だ。世界的に感染が収束しなければならない中で、治療薬やワクチンの存在が極めて重要だ」と述べました。
「解除の基準に経済状況は考慮せず」
安倍総理大臣は、宣言の解除にあたり、経済状況も考慮したか問われたのに対し、「解除の基準の中に入れたわけではなく、解除は地域の感染状況、医療提供体制、監視体制の3つに注目したうえで、総合的に判断をした」と述べました。
一方で、「経済の状況、国民生活の状況、経営上ギリギリの困難に直面している皆様のことについては、常に私の頭にある。事業の継続と雇用、そして、暮らしを守り抜いていくためにしっかりと下支えしていきたい」と述べました。
テレワーク「コロナ後も働き方の大きな柱に」
安倍総理大臣は、「テレワークが新しいスタイルの1つになってきている。これはコロナ後の世界においても一つの大きな働き方の柱になっていく」と述べました。
外国人の入国拒否措置「慎重に検討 総合的に判断」
安倍総理大臣は、水際対策の一環として、外国人の入国を拒否する措置について、「将来的には、わが国や内外の感染状況などを踏まえながら、国際的な人の往来の再開に向けた検討を行っていくことも重要であろうと考えている」と述べました。
そのうえで、「感染再拡大の防止と両立する形でどのように国際的な人の往来を部分的・段階的に再開できるかについて、慎重に検討したうえで、政府として適切なタイミングで総合的に判断をしていく考えだ。国民の健康と命を守り抜いていくことを最優先に考えていきたい」と述べました。
布マスク「再利用可能 需要抑制に大きな効果が期待」
安倍総理大臣は、全国すべての世帯への布マスクの配布について、「検品の強化によって、配布が予想より遅れているのは事実だ。マスクが手に入らず、到着を待っている皆様に、1日も早く、お届けできるように全力を尽くしていきたい」と述べました。
そのうえで、「国民の皆様には、常時、マスクの着用をお願いをしているところで、仮に全員が毎日、使い捨てマスクを利用するとなると、需要は月30億枚を超えてしまう。需要の拡大に見合うだけの十分な供給量を確保することは引き続き、難しい状況にある。洗うことで再利用が可能な布マスクは、需要の増大を抑えて、需給バランスを回復することに、大きな効果が期待できる」と述べました。
災害発生時の感染防止「“3密”回避へ多くの避難所を開設」
安倍総理大臣は、災害が発生した場合の感染防止の対策について、「これから本格的な台風シーズン、集中豪雨が来襲する時期にあたるが、国民には、新型コロナウイルス感染症が完全に収束していない中にあっても、災害時に危険な場所にいる場合には、避難所に避難するよう心がけていただきたい」と述べました。
そのうえで、「その際、3つの密を回避するなど感染拡大の防止にわれわれも十分に対応していかなければならない。ホテルや旅館などの積極的な活用も含め、可能なかぎり多くの避難所を開設し、マスクなど必要な物資をプッシュ型でこれまで以上に迅速に支援していくことができるよう準備に万全を期していく」と述べました。
9月入学「慎重に検討していく」
安倍総理大臣は「9月入学」について、「学校休業が長期化する中で、いろいろな議論がなされており私は選択肢の1つだと考えているが、与党、自民党でもいろいろな議論があり、極めて慎重な議論もある」と述べました。
そのうえで、「学校再開の状況や、子どもたちや保護者はもとより社会全体への影響を見極めつつ慎重に検討していきたい。拙速は避けなければならない」と述べ、慎重に検討する考えを示しました。
来月のG7サミット「事情が許せば参加したい」
安倍総理大臣は、来月予定されるG7サミット=主要7か国首脳会議に出席するかどうかについて、「アメリカで実際に開催することも含めて、今、調整していると承知している。調整が整い、諸般の事情が許せば、私も参加したいと考えている」と述べました。
世論調査での支持率の低下「与えられた使命に全力尽くす」
安倍総理大臣は、各種の世論調査で、内閣支持率が下がっていることについて、「日々の支持率に一喜一憂することなく、与えられた使命に全力を尽くしていきたい」と述べました。
黒川氏の退職金 処分に応じて減額される
安倍総理大臣は、辞職した東京高等検察庁の黒川検事長の処分について、「先週21日に法務省から検事総長に対して調査結果に基づき、訓告が相当と考える旨を伝え、検事総長も訓告が相当と判断して処分した。私自身は、森法務大臣から『事実関係の調査結果を踏まえて処分を行ったうえで、黒川氏本人より辞意の表明があったので認めることとしたい』との報告があり了承した」と述べました。
そのうえで、「総理大臣として責任を持っている。国民の批判に対しては、真摯に受け止めなければならない。法務省・検察庁で信頼回復に全力を尽くさなければならない。私も全力を尽くしていきたい」と述べました。
一方、安倍総理大臣は、黒川氏の退職金は、処分に応じて減額されることを明らかにしました。
新型コロナへの対応「米と協力し国際的な課題に取り組む」
安倍総理大臣は、新型コロナウイルスへの対応をめぐり、米中関係の対立が深まっていることに関連し、「新型コロナウイルスは、中国から世界に広がったのは事実だと考えている。アメリカは、日本にとって唯一の同盟国であり、アメリカと協力しながら、さまざまな国際的な課題に取り組んでいきたい」と述べました。
そのうえで、「中国も、世界の中で、極めて重要な国で、国際社会で期待されているのは、地域の平和と安定・繁栄に責任ある対応をとっていくことだ。中国がそういう対応をとってくれることを期待したい」と述べました。 
 
 
 2020/6
 
 
 
 
 
 


2020/6

●安倍晋三 
(1954 - ) 日本の政治家。自由民主党所属の衆議院議員(9期)、内閣総理大臣(第90・96・97・98代)、自由民主党総裁(第21・25代)。自由民主党幹事長(第38代)、内閣官房長官(第72代)等を歴任した。  
●政界入りまで 
生い立ち
1954年9月21日に、毎日新聞の記者であった安倍晋太郎と、その妻である洋子の次男として東京都で生まれる。本籍地は山口県大津郡油谷町(現、長門市)である。父方の祖父は衆議院議員の安倍寛、母方の祖父は後の首相、岸信介で、大叔父には後の首相、佐藤栄作がいる。政治家一族であり、安倍は「幼い頃から私には身近に政治がありました」と回想している。幼い頃の夢は野球選手や、テレビを見て刑事になることに憧れていた。
学生時代
成蹊小学校、成蹊中学校、成蹊高等学校を経て、成蹊大学法学部政治学科を卒業した。小学4年生から5年生にかけての、1964年から2年間は平沢勝栄が家庭教師についていた。高校でのクラブは地理研究部に所属。高校卒業後、成蹊大学に進み、佐藤竺教授のゼミに所属して行政学を学ぶ。大学ではアーチェリー部に所属し、準レギュラーだった。大学生の頃は人付き合いが良く、大人しく真面目だったという。1977年春に渡米し、カリフォルニア州ヘイワードの英語学校に通うが、日本人だらけで勉強に障害があると判断して通学を止め、イタリア系アメリカ人の家に下宿しながらロングビーチの語学学校に通った。1978年1月から一年間、南カリフォルニア大学に留学しており、首相として訪米中に同大学を訪問している。ただし、在籍したものの、学士の資格は得ていない。
会社員時代
1979年4月に帰国し、神戸製鋼所に入社。ニューヨーク事務所、加古川製鉄所、東京本社で勤務した。加古川製鉄所での経験は、「私の社会人としての原点」、あるいは「私の原点」だったと回顧している。  
●政界入り 
秘書時代
神戸製鋼所に3年間勤務した後、1982年から外務大臣に就任していた父・晋太郎の秘書官を務める。1987年6月9日、森永製菓社長の松崎昭雄の長女で電通社員の昭恵と新高輪プリンスホテルで結婚式を挙げた。媒酌人は福田赳夫夫妻が務めた。1987年、参議院議員・江島淳の死去に伴う補欠選挙に立候補する意思を示したが、宇部市長・二木秀夫が出馬を表明したことから晋太郎に断念するよう説得され立候補を見送った。
衆議院議員
1991年、父・晋太郎が急死。1993年に父の地盤を受け継ぎ、第40回衆議院議員総選挙に山口1区から出馬し初当選(当選同期に浜田靖一・田中眞紀子・熊代昭彦・岸田文雄・塩崎恭久・野田聖子・山岡賢次・江崎鉄磨・高市早苗らがいる)。当選後はかつて父・晋太郎が会長を務めた清和政策研究会に所属する(当時の会長は三塚博)。1994年、羽田内閣施政下、社会党の連立離脱を期に野党自民党が社会党との連立政権樹立を目指して作った超党派グループ「リベラル政権を創る会」に参加。首班指名選挙では村山富市に投票し自社さ連立政権・村山内閣樹立に貢献。1995年の自民党総裁選では小泉純一郎の推薦人の一人になった。1999年、衆議院厚生委員会理事に就任。
内閣官房副長官
派閥領袖の森喜朗首相が組閣した2000年の第2次森内閣で、小泉純一郎の推薦を受け、政務担当の内閣官房副長官に就任。第1次小泉内閣でも再任した。2002年、水野賢一が外務大臣政務官在任中に台湾訪問を拒否され同辞任した際も理解を示し擁護、小泉首相の北朝鮮訪問に随行し、小泉首相と金正日総書記との首脳会談では「安易な妥協をするべきではない」と毅然とした対応で臨んだ。拉致被害者5人の帰国は実現したものの、この日本人拉致問題は日本側の納得する形では決着せずに難航した。内閣官房参与の中山恭子と共に北朝鮮に対する経済制裁を主張し、拉致被害者を北朝鮮に一時帰国させる方針にも中山と共に頑強に反対した。西岡力は、対話路線などの慎重論を唱える議員が多かった中で、安倍の姿勢は多くの支持を得たと述べている。
自民党幹事長
2003年9月、衆議院解散を控える中で自民党の選挙の顔となる幹事長である山崎拓の性的なスキャンダルが持ち上がったため、小泉は後任幹事長として安倍を抜擢した。閣僚も党の要職も未経験であった安倍の幹事長就任は異例であり、事前には筆頭副幹事長もしくは外務大臣への就任が有力視されていたため、小泉の「サプライズ人事」として注目を集めた。また、自民党は総幹分離の原則が長く続いており、総裁派閥幹事長は1979年の大平正芳総裁時代の斎藤邦吉幹事長以来24年ぶりであった。11月投票の第43回総選挙で与党は安定多数の確保に成功したが、自民党単独では選挙前の過半数から半数割れとなった。ただし前回選挙からは当選者増でもあり、幹事長に留まる。幹事長時代には自民党内で恒常化していた「餅代」「氷代」(派閥の長が配下の者に配る活動資金)の廃止、自民党候補者の公募制の一部導入など党内の各種制度の改正を行った。2004年4月の埼玉8区補欠選挙では、自民党史上初の全国的な候補者公募を実施した(公募に合格した柴山昌彦が当選)。同年夏の参議院選挙では、目標の51議席を下回れば「一番重い責任の取り方をする」と引責辞任を示唆。結果は49議席で、しばらく現職に留まった後で辞任した。同年9月から後任の幹事長の武部勤の強い要請を受ける形で党幹事長代理に就任した。幹事長経験者の幹事長代理就任も異例の事であった。2004年、党改革推進本部長に就任。
内閣官房長官
2005年10月31日付で発足した第3次小泉改造内閣で内閣官房長官として初入閣。2006年9月1日に総裁選への出馬を表明。憲法改正や教育改革、庶民増税を極力控えた財政健全化、小泉政権の聖域なき構造改革に引き続き取り組む方針を示す。  
●最初の内閣総理大臣就任 
2006年9月20日、小泉の任期満了に伴う総裁選で麻生太郎、谷垣禎一を大差で破って自由民主党総裁に選出、9月26日の臨時国会において内閣総理大臣に指名される。戦後最年少で、戦後生まれとしては初めての内閣総理大臣であった。
第1次安倍内閣
就任表明では、冒頭に小泉構造改革を引継ぎ加速させる方針を示し、国家像として「美しい国」を提示した。安倍は小泉前首相の靖国参拝問題のために途絶えていた中国、韓国への訪問を表明。2006年10月に就任後の初外遊先となった中国・北京で胡錦濤国家主席と会談、翌日には、盧武鉉大統領と会談すべく韓国・ソウルに入り、小泉政権下で冷却化していた日中・日韓関係の改善を目指した。北朝鮮が核実験を実施したことに対しては「日本の安全保障に対する重大な挑戦である」として非難声明を発するとともに、対北強硬派のジョン・ボルトンらと連携して国連の対北制裁決議である国際連合安全保障理事会決議1718を可決させ、個別でより厳しい経済制裁措置も実施した。同年9月から11月にかけ、小泉時代の負の遺産とも言える郵政造反組復党問題が政治問題化する。12月には、懸案だった教育基本法改正と防衛庁の省昇格を実現した。一方で、同月、安倍が任命した本間正明税制会長が公務員宿舎への入居と愛人問題で、佐田玄一郎内閣府特命担当大臣(規制改革担当)兼国・地方行政改革担当大臣が架空事務所費計上問題でそれぞれ辞任。この後、閣内でスキャンダルが続いた。2007年3月、安倍の北朝鮮による日本人拉致問題に対する非難と従軍慰安婦問題への謝罪に消極的であることが「二枚舌」とワシントンポストに批判されたが、4月下旬には米国を初訪問し、小泉政権に引き続き日米関係が強固なものであることをアピールした。参議院沖縄県選挙区補欠選挙に絡み、日米関係や基地移設問題が複雑に絡む沖縄県特有の問題があったため、多くの側近の反対を退け2回にわたり沖縄県を訪れて自民系無所属候補の島尻安伊子の応援演説を行うなどのバックアップを行った。5月28日、以前から様々な疑惑のあった松岡利勝農水大臣が議員宿舎内で、首を吊って自殺。こうした中、6月当初の内閣支持率は小泉政権以来最低になったことがメディアで大きく報じられた。同月6日 - 8日には首相就任後初の主要国首脳会議であるハイリゲンダム・サミットに参加、地球温暖化への対策を諸外国に示した。また、議長総括に北朝鮮による日本人拉致問題の解決を盛り込ませた。7月3日には久間章生防衛大臣の原爆投下を巡る「しょうがない」発言が問題化。安倍は久間に厳重注意に処し、久間は直後に辞任、後任には小池百合子が就任した。
参議院議員選挙(2007年)での敗北
2007年7月29日の第21回参議院議員通常選挙へ向けての与野党の舌戦開始早々、自殺した松岡の後任である赤城徳彦農林水産大臣にもいくつかの事務所費問題が発覚。選挙中に発生した新潟県中越沖地震では発生当日に遊説を打ち切り現地入りした。同年の参議院選挙では「年金問題」の早期解決を約束し、「野党に改革はできない、責任政党である自民党にこそ改革の実行力がある」とこれまでの実績を訴えた。選挙前、安倍は「そんなに負けるはずがない」と楽観視していたとも言われるが、結果は37議席と連立を組む公明党の9議席を合わせても過半数を下回る大敗であった。これまで自民党が強固に議席を守ってきた、東北地方や四国地方で自民党が全滅、勝敗を左右する参議院一人区も、軒並み民主党候補や野党系無所属に議席を奪われた。
体調の悪化と総辞職
参院選直後の7月31日の自民党総務会において、「決断されたほうがいい」などと党内からも退陣を促す声が出た(安倍おろし)。 同日、アメリカ下院では慰安婦非難決議が議決されていた。翌8月1日には赤城農相を更迭したが、「遅すぎる」と自民党内からも批判された。広島平和記念式典に行く前日の8月5日から、胃と腸に痛みを感じ、食欲の衰えを感じるようになる。そして、8月19日から8月25日のインドネシア・インド・マレーシア3ヶ国訪問後は下痢が止まらなくなり、症状は次第に悪化し始めた。しかし、慶應義塾大学病院の主治医によると、(17歳のときに発症したという)潰瘍性大腸炎の血液反応はなく、機能性胃腸障害という検査結果であったという。選挙結果や批判を受け、8月27日に内閣改造、党役員人事に着手した(第1次安倍改造内閣)。ところが組閣直後から再び閣僚の不祥事が続き、求心力を失う。9月9日、オーストラリア・シドニーで開催された APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の終了にあたって開かれた記者会見において、テロ特措法の延長問題に関し9月10日からの臨時国会で自衛隊へ給油が継続ができなくなった場合は、内閣総辞職することを公約した。この間も安倍の健康状態は好転せず、体調不良により APEC の諸行事に出席できない状況となり、晩餐会前の演奏会を欠席した。2007年9月10日に第168回国会が開催され、安倍は所信表明演説の中で「職責を全うする」という趣旨の決意を表明した。なお、この表明では自身の内閣を「政策実行内閣」と名づけ、「美しい国」という言葉は結びに一度使ったのみであった。
2007年9月12日午後2時、「内閣総理大臣及び自由民主党総裁を辞する」と退陣を表明する記者会見を急遽行った。また、理由についてはテロとの戦いを継続する上では自ら辞任するべきと判断したとした。これにより同日予定されていた衆議院本会議の代表質問は中止となった。翌日(9月13日)、慶應義塾大学病院に緊急入院。検査の結果、胃腸機能異常の所見が見られ、かなりの衰弱状態にあると医師団が発表した。安倍内閣メールマガジンは9月20日配信分において「国家・国民のためには、今身を引くことが最善と判断した」とメッセージを配信し終了した。なお、病院側は、安倍首相の容体は回復してきているものの退院できる状態ではないとした。9月21日は安倍の53歳となる誕生日だが、病院で誕生日を迎えることになった。このように安倍首相は退陣まで公務復帰できなかった状況だが、与謝野官房長官は「首相の判断力に支障はない」と内閣総理大臣臨時代理は置く予定はないという方針をとっていた。20日の官房長官会見では「首相は辞任と病気の関係を説明するべき」としていた。
9月24日17時、慶應義塾大学病院にて記者会見を行い、自身の健康状態及び退陣に至る経緯について「意志を貫くための基礎体力に限界を感じた」と釈明し、政府・与党、国会関係者並びに日本国民に対して「所信表明演説後の辞意表明という最悪のタイミングで国会を停滞させ、多大な迷惑を掛けたことを深くお詫び申し上げたい」と現在の心境を開陳、謝罪した。さらに、首相としての公務に支障があったにも関わらず臨時代理を置かなかったことについては「法律にのっとって判断した」としたが、これについては、毎日新聞により、政府内でも批判の声があると報じられた。9月25日、第1次安倍改造内閣最後の閣議に出席し、その後国会へ登院して、衆議院本会議での首班指名選挙にも出席した。第1次安倍改造内閣最後の閣議で、閣僚全員の辞職願を取り纏めて内閣総辞職した。安倍は最後の閣議の席上、全閣僚に対して一連の事態に対する謝罪及び閣僚在任に対する謝意を述べた。26日には皇居で行われた自民党総裁福田康夫首相の親任式に出席し正式に辞職し再び病院へと戻った。
突然の辞任への反応
安倍は辞任の理由として「テロ特措法の再延長について議論するため民主党の小沢代表との党首会談を打診したが、事実上断られ、このまま自身が首相を続けるより新たな首相のもとで進めた方が良い局面になると判断した」「私が総理であることが障害になっている」などとした(小沢は記者会見で「打診を受けたことは1回もない」と否定し、以降も「意見を変える気はない」と明言)。一方、自身の健康への不安のためとする理由も、与謝野馨(当時、内閣官房長官)が同日中会見で述べている。24日の記者会見では本人も健康問題が辞任の理由の一つであることを認めた。もともと胃腸に持病を抱えており、辞意表明当日の読売新聞・特別号外でも持病に触れられていた。また、辞意表明前日には記者団から体調不良について聞かれ、風邪をひいた旨を返答している。この「胃腸の持病」について、安倍は辞任後の2011年に掲載された『週刊現代』へのインタビューで、特定疾患である「潰瘍性大腸炎」であったことを明かしている。臨時国会が開幕し内政・外交共に重要課題が山積している中で、かつ所信表明演説を行って僅か2日後での退陣表明について、野党側は「無責任の極み」であるなどと批判した。与党側でも驚きや批判の声が上がったほか、地方の自民党幹部からも批判が出た。9月13日に朝日新聞社が行った緊急世論調査では、70%の国民が「所信表明すぐ後の辞任は無責任」と回答している。安倍の突然の辞意表明は、日本国外のメディアもトップニュースで「日本の安倍首相がサプライズ辞職」、「プレッシャーに耐えきれなかった」(CNN)などと報じた。欧米諸国の報道でも批判的な意見が多かった。
辞任の原因
2007年当時の医師の診断ではカルテ上は「腸炎、または急性腸炎」で一般に言う「腹痛」であったが、実際には「潰瘍性大腸炎」を患っていた。潰瘍性大腸炎は1973年に特定疾患(2015年からは指定難病)に指定されている。
麻生・与謝野クーデター説
安倍の辞任において、幹事長の麻生太郎と官房長官の与謝野が安倍を辞任表明に追い込んだとする「麻生・与謝野クーデター説」が自民党の新人議員の一部によってメディアを通じて広められた。この「麻生・与謝野クーデター説」について与謝野官房長官は、9月18日の閣議後の会見において明確に否定した。さらに麻生幹事長は9月19日に「事前に安倍首相の辞意を知っていたのは自分だけではない」とし、与謝野官房長官も同日「中川(秀直)さんは11日(辞任表明の前日)に安倍さんに会っていて、知っていてもおかしくない」と、中川前幹事長も事前に安倍の辞意を知っていたことを示唆した。  
●内閣総理大臣退任後 
体調回復と活動の再開
慶應義塾大学病院から仮退院し、東京・富ヶ谷の私邸で自宅療養に入った。11月13日に新テロ特措法案の採決を行う衆議院本会議に出席し、賛成票を投じた後、福田康夫首相や公明党の太田昭宏代表へ体調が回復したことを伝えた。2007年末、『産経新聞』のインタビューにて、「『美しい国』づくりはまだ始まったばかり」と述べ、2008年からは活動を本格的に再開し「ジワジワと固まりつつある良質な保守基盤をさらに広げていく」と答えている。2008年1月、『文藝春秋』に手記を寄稿。2007年9月の退陣に関し、体調悪化のため所信表明演説で原稿3行分を読み飛ばすミスを犯したことが「このままでは首相の職責を果たすことは不可能と認めざるを得なかった。決定的な要因のひとつだった」と告白するなど、辞任の主な理由は健康問題だったとしている。2008年3月5日、安倍は勉強会「クールアース50懇話会」を立ち上げ、塩崎恭久や世耕弘成らが入会した。設立総会において、安倍は「北海道洞爺湖サミットを成功させるのは私の責任」と語り、同懇話会の座長に就任した。3月6日、清和政策研究会(町村派)の総会に出席し、「首相として1年間、美しい国づくりに全力を傾注してきたが、残念ながら力が及ばなかった。私の辞任に伴い、みなさんに風当たりも強かったのではないか。心からおわびを申し上げたい」と述べて所属議員に謝罪した。第45回衆議院議員総選挙直後に行われた2009年自由民主党総裁選挙では、麻生太郎とともに、平沼赳夫の自民党への復党と総裁選挙への立候補を画策したが、平沼が難色を示したため実現せず、西村康稔を支援した。
2度目の総裁就任
2012年9月12日、谷垣総裁の任期満了に伴って行われる2012年自由民主党総裁選挙への出馬を表明。自らが所属する清和会の会長である町村信孝の出馬が既に取り沙汰されていたこともあり、前会長の森からは出馬について慎重な対応を求められていたものの、これを押し切る形での出馬となった。当初は、清和会が分裂選挙を余儀なくされた事や5年前の首相辞任の経緯に対するマイナスイメージから党員人気が高かった石破茂、党内重鎮からの支援を受けての出馬となった石原伸晃の後塵を拝していると見られていた。しかし、麻生派、高村派が早々と安倍支持を表明した事などが追い風となり、9月26日に行われた総裁選挙の1回目の投票で2位に食い込むと、決選投票では、1回目の投票で1位となっていた石破を逆転。石破の89票に対し108票を得て、総裁に選出された。一度辞任した総裁が間を挟んで再選されるのは自民党史上初、決選投票での逆転は1956年12月自由民主党総裁選挙以来となった。  
●内閣総理大臣に再就任 
2012年12月16日の第46回衆議院議員総選挙で自民党が圧勝し、政権与党に復帰。同年12月26日、安倍が第96代内閣総理大臣に選出され、第2次安倍内閣が発足した。1度辞任した内閣総理大臣の再就任は、戦後では吉田茂以来2人目である。首相再登板後は、デフレ経済を克服するためにインフレターゲットを設定した上で、日本銀行法改正も視野に入れた大胆な金融緩和措置を講じ、多年に渡って続くデフレからの脱却に強い意欲を示す。大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略を三本の矢と称した一連の経済対策は、アベノミクスと称される。「アベノミクス」は2013年新語・流行語大賞のトップテンに入賞し、安倍が受賞した。
参議院議員選挙(2013年)での勝利
第1次安倍政権時に大敗を喫した第21回参議院議員通常選挙以降、参議院では政権与党が過半数を下回るねじれ国会が続いていた(2009年の第45回衆議院議員総選挙から2010年の第22回参議院議員通常選挙までの期間を除く)。2013年7月21日の第23回参議院議員通常選挙で、政権与党の自民・公明両党が合わせて半数を超える議席を獲得し、「ねじれ」は解消した。
2020年東京オリンピック招致
安倍は2012年12月の首相就任以降、2020年夏季オリンピックの東京招致委員会の最高顧問として各国首脳との会談や国際会議の際に東京招致をアピールした。さらに、2013年3月に来日したIOC評価委員会との公式歓迎行事では演説を行い、歌を披露する場面も見られた。安倍は首相就任後、1964年東京オリンピックの開催が決定した当時の首相が祖父である岸信介であることを持ち合いに、自らがIOC総会に出席してプレゼンテーションを行う意欲を見せていた。これにより開催地決定の直前である9月5日と6日にロシアのサンクトペテルブルクで開催されたG20を途中で切り上げ、6日にブエノスアイレスに到着しIOC委員へ東京支持を呼びかけた。7日の総会では東京のプレゼンターの1人として演説を行い、「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません。」と発言。演説後の質疑応答では総会直前に明らかとなった福島第一原子力発電所の汚染水漏れに関する質問が出た。これに対し安倍は「結論から言うと、まったく問題ない。(ニュースの)ヘッドラインではなく事実をみてほしい。汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている」、「健康問題については、今までも現在も将来も、まったく問題ない。完全に問題のないものにするために、抜本解決に向けたプログラムを私が責任をもって決定し、すでに着手している」と答え、「子供たちの将来や日本にやってくるアスリートに対する責任を完全に果たしていく」と述べた。しかし、汚染水漏れのニュースは後を絶たず、安倍の発言が東電の公表している状況とも異なっているなど、状況は統御されていない事実が明らかになった。このことは国会でも追及されており、安倍は追及に対して「事態は掌握しているし、対応はしている、という意味でコントロールと発言した」と抗弁している。
参議院議員選挙(2016年)での勝利
任期満了に伴う2016年7月10日の第24回参議院議員通常選挙では、北海道・東北地方・信越地方・沖縄県で苦戦したものの、前回を上回る議席を獲得した。安倍はこの結果を受けて、アベノミクスが信任を得たものと主張した]。
東京都議会議員選挙(2017年)での敗北
2017年7月の都議会選挙では57議席から23議席に減らし、2009年の都議選時の38議席にも満たない過去最低の議席数に留まった。これについて、安倍は「大変厳しい都民の審判が下された。自民党に対する厳しい叱咤と深刻に受け止め、深く反省しなければいけない」と述べた。敗因について、「政権発足して5年近く経過し、安倍政権に緩みがあるのではないかという厳しい批判があったのだろう。真摯に受け止めなければいけない。政権を奪還したときの初心に立ち返って全力を傾ける決意だ」と説明した]。
衆議院議員総選挙(2017年)での勝利
選挙前と同じ284議席を獲得し、安倍自民党が大勝した。小選挙区で218議席、比例代表で66議席を獲得した。小選挙区の候補者は、北関東ブロック、東京ブロック、南関東ブロック、近畿ブロック、中国ブロックで比例復活も含めて全員当選した。小選挙区の候補者3名が無所属で当選後、公示日に遡って自民党公認となった。
2025年大阪万国博覧会招致
2018年11月23日、パリで行われたBIE総会において大阪府が2025年日本国際博覧会の開催地に選ばれた。安倍はビデオで、「大阪、関西、日本中の人たちが皆さんをお迎えし、一緒に活動することを楽しみにしている。成功は約束されている」と大阪招致をアピールした。開催決定後、世耕弘成を「国際博覧会担当大臣」に任命することを固めている。
参議院議員選挙(2019年)の結果
自民党は57議席を獲得した。改選前から9議席減となり、非改選の議席を含めた単独過半数を維持できなかった。
通算組閣回数・首相通算在職日数
2019年9月11日に内閣改造を行い、第4次安倍第2次改造内閣が発足。これにより通算組閣回数は11回となる。 2019年11月20日、首相通算在職日数が「2887日」となり、それまでの桂太郎(2886日)抜き歴代最長となった。連続の在職期間は、大叔父の佐藤栄作に次ぐ歴代2位。  
●政見、政策
 
皇室
   皇室典範解釈
「皇統の継承は男系でつないでいくと皇室典範に書いてある」とし「女性宮家はそういう役割を担うことができない」と述べている。
   退位
2016年8月の天皇の生前退位の示唆を受け、政府は有識者会議を設けた。有識者会議および安倍内閣とも、違憲性検討等に時間を要する皇室典範改正ではなく特例法制定での早期決着の方針を志向した。しかし、2017年1月26日の衆議院予算委員会での細野豪志議員からの質問に対し、安倍は皇位継承や女性宮家創設を含めた皇室典範改正について「当然、必要であれば改正いたします」と答弁した。2017年4月21日、有識者会議は最終報告書を安倍に提出した。退位後の天皇の呼称や退位後の制度設計などが含まれる報告書に基づいた特例法案が国会に提出される見込みである。2017年6月7日、参議院特別委員会で、退位特例法案が可決、成立した。本会議では、参議院天皇退位法案特別委員会で「女性宮家の創設等」の検討を政府に求める付帯決議が採択されたことも報告された。安倍は、首相官邸で記者団に「政府としては、国会における議論、そして委員会の付帯決議を尊重しながら、遺漏なくしっかり施行に向けて準備を進めていく」と強調、皇位継承について「安定的な皇位の継承は非常に重要な課題だ。付帯決議を尊重して検討を進めていく」と語った。
   皇位継承問題
2019年03月20日の参院財政金融委員会で、安定的な皇位継承を実現する方策について「旧宮家の皇籍復帰も含めたさまざまな議論があることは承知している」と述べ、戦後に皇籍離脱した旧宮家の復帰に言及した]。
 
国家観
   美しい国
総裁選直前の2006年7月19日に自らの政治信条を綴った自書『美しい国へ』を出版し、10刷・51万部以上を発行するベストセラーになった。政権スローガンも「美しい国日本を作る」とし、自身の政権を「美しい国づくり内閣」と命名した。自身の政権の立場を“「戦後レジーム(体制)」からの新たな船出”と位置づけている。現行憲法を頂点とした行政システムや教育、経済、安全保障などの枠組みが時代の変化についていけなくなったとし、それらを大胆に見直すとしている。小泉構造改革について好意的に捉え、安倍政権においても引継ぎ加速させる見解を総理就任記者会見で表明している。
   グローバリゼーション展開
政治家となって以来、日本の市場を、オープンにして国を開く事を自分の中に流れる一貫した哲学とし、安倍内閣の成長戦略の方針の一つに、「人材や産業を始めとする徹底したグローバル化」を示し、「もはや、国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました。」と発言するなど、「世界に対してどこまでも、広々と、オープンにつながる日本」を追い求めている。具体例としてCT・MRIの医療画像診断や粒子線治療などの最先端医療技術、鉄道インフラなどの海外展開の成長戦略を述べた。2006年の所信表明演説で安倍は、「ヒト・モノ・カネ・文化・情報の流れにおいて、日本がアジアと世界の架け橋となる「アジア・ゲートウェイ構想」を推進する。」と表明。「世界一、ビジネス・フレンドリーな国にしたいと、私たちは言い続けています。この点、シンガポールに追いつき、できれば追い越したい。真剣に、そう思っています。」、「(日米)両国が、TPPをつくるのは、歴史の必然です。」という見解を示し、グローバル企業活動の国境の撤廃を目指している。2014年4月、安倍が内閣総理大臣時代の首相官邸ホームページには、「企業活動の国境、なくす」「グローバル企業は、関税の障壁など、国内外の市場にまたがる制度面の障害をクリアし、より自由に活動できるようになります。」と書かれている。また、「私は、日本を、アメリカのようにベンチャー精神のあふれる、「起業大国」にしていきたいと考えています。」とも述べている。
   アジア・ゲートウェイ構想
第165回国会の所信表明演説にて「日本がアジアと世界の架け橋となる『アジア・ゲートウェイ構想』を推進します」と述べ、内閣官房に「アジア・ゲートウェイ戦略会議」を設置した。第166回国会の施政方針演説では、2007年5月までに「アジア・ゲートウェイ構想」を取りまとめると明言している。
   議員定数削減
2012年11月14日の党首討論で野田佳彦首相が「来年には定数削減する。それまでは歳費を削減する」と述べたことに対し、安倍は「来年の通常国会において私たちは既に私たちの選挙公約において定数の削減と選挙制度の改正を行っていく、こう約束をしています。今この場でそのことをしっかりとやっていく約束しますよ」と述べた。2016年2月19日、野田の質問に対し「政治は結果。定数削減を言うのは簡単だが実際に実行するのはそう簡単ではない」「我が党も責任があるが、共同責任。誰かだけに責任があるわけではない」などと答えた。2016年2月19日、議員定数削減について「必ず実現する。平成32年の国勢調査まで先送りすることは決してしない。自民党総裁としての方針だ」と述べ、自民党案より大幅に前倒しする考えを示した。2018年7月18日、自民党提出の公職選挙法改正案が可決され、参議院議員の定数が6増加した。
 
地方自治
構造改革の推進者であり、地方分権改革(道州制)を推進している。地方創生は、第2次安倍政権における経済政策の一つであり、ローカル・アベノミクスと呼ばれることがある。具体的には、政府関係機関の地方移転や各種特区の活用などが施策として挙げられている。2020年2月4日の予算委員会で、2014年に策定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で20年に東京圏から地方への転出を4万人増加、地方から東京への転入を6万人減少させ東京圏の転入超過を解消する目標を掲げたが、19年は東京圏の転入者が転出者を約14万8千人も上回り3年連続で増え「20年度に逆転させるのは難しい」と述べた。
   国家戦略特区
「岩盤規制」改革の突破口として、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点の形成を促進する観点から、国が定めた国家戦略特別区域において、規制改革等の施策を総合的かつ集中的に推進する特区と位置付けている。
   構造改革特区
実情に合わなくなった国の規制が、民間企業の経済活動や地方公共団体の事業を妨げている場合がある。この弊害を地域を限定して改革することで構造改革を進め、地域を活性化させることを目的とした特区として平成14年度に構造改革特区が創設された。地域の自然的、経済的、社会的諸条件等を活かした地域活性化を実現するための妨げとなる規制を取り除くツールとして、構造改革特区制度の活用を推奨している]。
   道州制特区法の制定・道州制推進
2006年に北海道地方等の特別区域で道州制を導入できる道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律を成立、公布・施行した。道州制導入についても2007年の所信表明演説で「道州制は地方分権の総仕上げ」と表明し、道州制が地方分権の最終形態として好ましいとの見解である。
 
外国人政策
   中国からの公費留学生の大幅拡充
2005年に都内の専修大学講演の中で「中国からの公費留学生の数がまだまだ少ない。思い切って増やして、反日にならずに日本を知ってもらうよう、我々も努力をしていかねばならない」との見解を示し、以後、アジア・ゲートウェイ構想において、公費留学生受け入れの大幅拡充、在留資格制度見直し、留学生の就職を促進している。
   出入国管理・難民認定法改正案を閣議決定
2014年3月11日に、安倍内閣は、高度人材と認定された外国人が永住権を取得するために必要な在留期間を3年に短縮、親や家事使用人の帯同も認められるようにする出入国管理及び難民認定法改正案を閣議決定する。安倍は、女性の社会進出推進の観点から、家事や介護の分野への外国人材活用促進を指示している。
 
少子化問題
「全世代型社会保障」を掲げ、少子高齢化対策に取り組んでいる。2019年10月からは幼児教育無償化が始まり、2020年4月からは低所得世帯の学生を中心に大学や高校の授業料などを実質的に無償化する新制度が始まる予定である。2019年の出生数が初めて90万人を割ったことを受けて、「大変な事態であり、国難とも言える状況だ」と指摘し、少子化対策を担当する衛藤晟一一億総活躍担当大臣に対し、政府が掲げる「希望出生率1.8」の達成に向けて、あらゆる施策を動員して対策を進めるよう指示した。
 
捕鯨問題
2018年12月26日に30年ぶりの本格的な商業捕鯨の解禁や、日本の異例の国際機関脱退である国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退も決定した際は「近代捕鯨発祥の地」山口県下関市を地盤に持つ安倍と「古式捕鯨発祥の地」和歌山県太地町を地盤に持つ二階俊博幹事長の意向が働いたとされる。
 
憲法
総裁選では施行60周年を迎えた日本国憲法を改正すると宣言し、総理就任後の国会で、「現行の憲法は、日本が占領されている時代に制定され、60年近くを経て現実にそぐわないものとなっているので、21世紀にふさわしい日本の未来の姿あるいは理想を憲法として書き上げていくことが必要と考えている」と述べた。また「私は、国会議員になった当初から改憲論者だが、3つの点で憲法を改正すべきだと主張してきた。第一の理由だが、現行憲法は占領軍の手によって、憲法の専門家ではない人たちによって2週間そこそこで書き上げられた、と言われており、やはり国の基本法である限り、制定過程にもこだわらざるを得ない」と述べた。現行憲法の前文については「敗戦国のいじましい詫び証文」「みっともない」と主張している。 2017年5月3日、民間団体のシンポジウムへのビデオメッセージで、新憲法施行年を2020年としたいと表明した。改憲案の具体的内容として、現憲法の9条1項及び2項を堅持した上で自衛隊の根拠規定の追加や、高等教育を含む教育無償化への意向を表明した。改憲への期限を明言した安倍の発言は海外でも報道された。2017年9月の衆議院選挙において、安倍の憲法に自衛隊を明記する公約は、選挙協力する公明党が困惑し、憲法学者らの集会では集団的自衛権の行使を可能としたことに触れ「憲法を改正する資格はない」「総理大臣が最も憲法を順守していない」と述べられた。2020年5月3日、ビデオメッセージで新型コロナウィルスの感染拡大を受け、憲法改正で緊急事態条項の創設の必要性を訴えた。
 
外交
第1次安倍内閣においては、「価値観外交」と「主張する外交」を外交の基本路線とした。このうち、「価値観外交」は、自由、民主主義、基本的人権、法の支配という普遍的な価値観を共有する国の輪を世界、アジアに拡大して行くことを目指す外交戦略であるが、第1次安倍内閣で外務大臣を務めた麻生太郎が、「自由と繁栄の弧」として初めて提唱したものである。自由と繁栄の弧は、民主主義や法の支配などの価値について、日本が非欧米圏における先駆者としての地位にあることに着目した上、北東アジアから、東南アジアを経て、インド、中東、中央アジア、中・東欧にかけての「弧」上にある国との間で、日本がリーダーシップをとってこれら価値を共有し、「弧」地域全体の繁栄に貢献する、その結果として経済や安全保障などで日本も国益を享受するという構想といえる。
第1次安倍内閣当時、「自由と繁栄の弧」には、民主主義や法の支配などの価値を共有しているとはいえない中国の反発を招くとの批判もあったが、就任後初の外遊先に中国を選ぶなど安倍は原則論と現実的対応のバランスを保つことに努めてきており、日本の国際的存在感の低下、尖閣諸島問題に象徴される日中間の力関係の変化という新たな国際情勢のもと、中国との正面衝突を回避しつつ、アジアにおけるパワーバランスを適正に保ち、アジア及び世界の安定と発展に寄与する外交政策であると再評価されている。
2012年12月28日に発足した第2次安倍内閣も、麻生太郎を副総理兼財務相・金融担当相としたほか、谷内正太郎を内閣官房参与としており、改めて自由と繁栄の弧を基本とした外交政策を打ち出すと指摘されている、安倍が、平成24年12月28日にベトナム、インドネシア、オーストラリア、インドなどの首脳と相次いで電話会談を行ったのもその表れと指摘されている。またプラハに本拠を置く国際NPO団体「PROJECT SYNDICATE」のウェブサイトに12月27日付けで掲載された安倍の英語論文では、「アジアの民主主義セキュリティダイアモンド構想」を世界に向けて主張している。
第2次安倍内閣最初の閣僚外遊は、民政移管を進めていたミャンマーへの麻生太郎副総理兼財務相・金融相の訪問で、麻生は「閣僚の最初の訪問先がミャンマーとなったこと自体、政権としてのメッセージである。」と述べている。安倍も、就任後最初の外遊先として、2013年1月16日から18日にかけ、まずベトナムを訪れ、次にタイ、インドネシアを訪問。アジア太平洋地域の戦略環境が変化する中で、地域の平和と繁栄を確保していくため、自由、民主主義、基本的人権、法の支配など普遍的価値の実現と経済連携ネットワークを通じた繁栄を目指し、日本はASEANの対等なパートナーとして共に歩んでいく旨のメッセージを各国首脳に伝達した上、対ASEAN外交5原則を発表した。
道傳愛子は、第2次安倍内閣における「価値観外交」の特色は、中国やインドの間という地政学的優位性が高いインドシナ半島を抱え、経済や安全保障での重要性も高まる東南アジアを重視する点であると述べている。また、日本の価値観外交においては、港や道路などハードのインフラの整備だけでなく、投資環境整備にもつながる法整備支援や、人材育成といったソフトのインフラ整備への協力を、日本の役割として位置付けることが重要と主張している。
 
   アメリカ合衆国
小泉政権により強化された日米安全保障条約をさらに充実させるため在日米軍と自衛隊の一体化を目指しており、集団的自衛権行使のための憲法改正も視野に入れている。安倍政権の外交方針について、北海道新聞や沖縄タイムスなどからは対米追従であるという批判や懸念があるが、2013年3月の施政方針演説によれば「日米同盟をより強固にしたい。わが国の安全確保の観点から当然の取り組みであり、地域の平和と安全に資する。対米追随外交との指摘はまったくあたらない」としている。2014年4月24日の日米首脳会談で、日本の超電導リニア新幹線の技術をアメリカへ無償提供すると表明する。2013年2月の首脳会談でも「日米同盟の象徴」と技術提供を提案していた。なお、リニアの研究は1962年から開始しており、通常では、リニア技術提供を望む場合、ライセンス料が徴収される。2013年3月には、日本企業が米軍のF-35開発に参加することを提言した。2016年アメリカ合衆国大統領選挙中はヒラリー・クリントンと会談を行うも、2016年11月17日に世界の政府首脳に先駆けて大統領選勝利後のドナルド・トランプ次期大統領と非公式会談して本間ゴルフの特注品を贈った。2017年11月5日、トランプ大統領が初来日。北朝鮮への圧力最大化で一致して米製防衛装備の購入も表明した。両者のゴルフプレーを通じたゴルフ外交についても報じられた。
   欧州連合
ドナルド・トランプアメリカ合衆国大統領が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱や、大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)交渉の凍結など、保護貿易主義的政策をとることに対抗し、アメリカとの貿易交渉を優先する従来の方針を転換し、欧州連合(EU)と接近。2013年から交渉が続けられていたものの長年停滞していた日本・EU経済連携協定構想に関し、首席交渉官を交代させるなどして交渉を進め、2017年12月には交渉の妥結を確認した。
   イギリス
2014年7月17日、国家安全保障会議で、戦闘機用のミサイルをイギリスと共同研究することを決めた。この研究は現状日本のシーカー技術を適用した場合どの程度の性能になるかをシミュレーションするもので部品などをやり取りすることはないという。
   東南アジア
第2次安倍内閣は、経済や安全保障での存在感が高まる東南アジアを重視。就任後1ヶ月以内に、自身のベトナム、タイ、インドネシア訪問、麻生太郎副総理のミャンマー訪問など、閣僚がアセアン主要国を次々と訪問した。安倍は、日本がASEANの対等なパートナーとして共に歩んでいく旨のメッセージを各国首脳に伝達した上、2013年1月18日には、訪問先のインドネシアにおいて、対ASEAN外交5原則を発表した。
   中華民国(台湾)
祖父である岸信介や父・晋太郎も親台派であり、自身も台湾などとの交流強化を目指している亜東親善協会の会長を2012年の首相就任まで務めていたほか、第一次安倍内閣の際には羽田空港と松山機場との間の直行便を推進したり、野党時代には台湾を訪問し馬英九総統、李登輝元総統などと会談を行うなど、筋金入りの親台派と言える。また、中華民国政府も安倍のことを親台派であると評価している。また、第三次安倍内閣では国会答弁のなかで「日本の友人である台湾」と同答弁内で述べられた中国、韓国、北朝鮮、ロシアとは別格の表現をしているほか、同年7月29日に行われた参議院の我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において、「台湾は、基本的な価値観を共有する重要なパートナーであり、大切な友人であります」と答弁している。
   中華人民共和国
大叔父の佐藤栄作は中国との国交正常化を目指していたことや、父・晋太郎は日中平和友好条約締結や胡耀邦訪日に携わったことから対中関係を重視してきた。2006年の総裁選は、ありのままの日本を知ってもらうために多くの中国人留学生を受け入れるべきと主張し、小泉政権時に悪化した日中関係の改善に意欲を見せた。2006年の首相就任後の初外遊先に1999年の小渕総理以来の公式訪問として中国を選び、胡錦濤国家主席との会談では8年ぶりの共同文書「日中共同プレス発表」で戦略的互恵関係の構築を合意した。第2次安倍内閣でも親書や日中首脳会談などで戦略的互恵関係を日中関係の基礎と度々位置付けてる。2017年9月には首相の参加は15年ぶりだった日中国交正常化45周年記念行事でも出席した安倍首相は戦略的互恵関係に基づいて日中関係を発展させることを表明し、10年ぶりに日中首脳間で交換された祝電でも戦略的互恵関係を重視し、同年10月の第19回中国共産党大会にも自民党総裁名義で祝電をおくり、同年11月に習近平国家主席や李克強国務院総理といった中国の首脳と第三国で立て続けに会う極めて異例の会談を行い、翌2018年5月には中国の国家主席とは史上初の電話会談も行い、同年6月に日中韓首脳会談で中国首相では8年ぶりに訪日した李克強と様々な合意を交わしてその後の視察にも同行し、同年10月には日本の首相では7年ぶりに公式に訪中して「競争から協調へ」「お互いパートナーとして脅威にならない」「自由で公正な貿易体制の発展」の日中新時代3原則や先端技術やインフラ整備と金融などの協力で一致した。2012年12月、青山繁晴によると、経団連から「中国の言うことを聞け」と要求され激怒したが「経団連会長(住友化学会長)米倉弘昌」からの要求を断ったら第二次安倍総理は誕生しなかった、と述べている。2019年6月27日、G20サミットで来日した習近平と会談し、2020年春に国賓として来日するよう求め、習近平は求めに応じる考えを示した。
   ロシア
2016年12月16日の首脳会談終了後、安倍首相が強調したのは、4島の元住民の墓参など自由訪問の拡充の検討や、4島での共同経済活動を実現するための交渉開始で合意したことだった。また、プーチン大統領は、領土問題と捉えているのは日本だけであろう、4島一括返還は議題にすらできない、2島返還さえないと述べており、領土返還は難しい見通しとなった。
   大韓民国
国交正常化50周年記念式で祖父である岸信介や大叔父の佐藤栄作は国交正常化に大きく関与したと述べ、父・晋太郎は親韓派であり、父親同士が親密だった朴槿恵大統領に官房長官時代から神戸ビーフを贈り手紙をやりとりするなど交流があった。第一次安倍内閣時に「韓国はまさに日本と同じ価値観を持っている」と発言をしている。軍艦島(端島)など明治日本の産業革命遺産の世界文化遺産登録をめぐる韓国との交渉では、朝鮮半島出身者の徴用について、韓国側の要求を受け入れるように外務省に歩み寄りを指示している。第三次安倍政権下では外務省による二国間関係を紹介するウェブページの韓国に関する記載から「基本的な価値を共有する」を削除し、更に2018年には「最も重要な隣国」という表現も削除し、困難な問題があるが未来志向で前に進めていくべきといった表現に改めている。2013年の韓国の月刊誌「月刊朝鮮」(2013年4月号)による安倍へのインタビューで、安倍は日韓関係はじめ歴史問題や憲法改正などについて語った。朴槿恵政権とは2015年12月に慰安婦問題日韓合意を行い、翌年2016年には日韓初の防衛協力協定である日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)も締結し、日米韓の枠組みで初のミサイル防衛合同演習も行った。しかし、朴槿恵大統領の弾劾後は2018年5月9日に日中韓首脳会談のために初訪日した文在寅大統領とは日韓間の懸案は先送りされ、その後の個別の首脳会談で日中が複数の合意文書を交わしたのに対して日韓では目立った成果がなかった。徴用工訴訟問題をめぐって文大統領に「戦略的放置」で対応したとされ、対抗措置も関係省庁に指示したため、文大統領から「日本の政治指導者が政治的な争点とし、問題を拡散させている」と批判され、李洛淵首相も「日本の指導者は反韓感情を利用しているとする見方もある」と反発した。日韓合意に基づく慰安婦財団の韓国による一方的な解散、韓国海軍艦艇による自衛隊機への火器管制レーダー照射、文喜相韓国国会議長による天皇明仁への謝罪要求など日本の対韓感情を損ねる事案も続発し、日本では「日韓関係は史上最悪」と評されるに至り、2019年からは日本側はキャッチオール規制(補完的輸出規制)において優遇措置対象国のホワイト国から韓国を除外して韓国側もGSOMIAを破棄するなど日韓貿易紛争とも呼ばれる状態となった。
   朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)
北朝鮮対策として通信傍受法の要件緩和・対象拡大を主張した。2007年2月12日に訪日したチェイニー米副大統領に、拉致問題が解決するまで北朝鮮に対するテロ支援国家指定の解除をしないように要請した。2016年、北朝鮮が5回目の核実験を行ったことについて「厳重に抗議し、最も強い言葉で非難する」とした声明を発表し、国連演説で異例の名指しで批判して制裁強化の議論を日本が主導する意向を表明した。2017年の国連演説では北朝鮮を非難して「対話を通じた問題解決の試みは無に帰した。何の成算があって三度同じ過ちを繰り返すのか。必要なのは対話ではなく、圧力だ」と演説した。その前には「北朝鮮との対話は無駄骨。最大限の圧力をかけるべき」と主張する寄稿を米紙に行った。2017年9月25日、衆議院解散演説において「北朝鮮には勤勉な労働力があり資源も豊富です。北朝鮮が正しい道を歩めば、経済を飛躍的に延ばすこともできる」と前置きした上で、弾道ミサイル計画を完全な検証可能なかつ不可逆的な方法で放棄させるため「今後ともあらゆる手段による圧力を最大限まで高めていく他に道はない」と述べた。朝鮮中央通信からは「米国の反共和国制裁・圧迫策動に追従してる」として名指しで「安倍の輩」「忠犬」と批判されている。2017年11月20日にトランプ米大統領が9年ぶりに北朝鮮をテロ支援国家に再指定した際は「北朝鮮に対する圧力を強化するものとして歓迎し支持する」と表明した。2018年6月2日の講演で、米朝首脳会談が設定されたことに触れ「核武装した北朝鮮を決して容認するわけにはいかない。抜け道は許さないという姿勢で日本は国際社会をリードし、国際社会とともに圧力をかけてきた。その中で米朝首脳会談が行われることに期待したい」と述べた。これに先立つテレビ出演において「拉致問題が解決していない中で大きな経済支援をすることはない」と述べた。2019年5月に日朝首脳会談を無条件で行う用意があることも表明するも朝鮮中央通信は「面の皮が厚い安倍は方針を変更したかのように喧伝して執拗に平壌の扉を叩くが、わが国への敵視政策は変わっていない」と批判し、同年11月には弾道ミサイルの発射を非難したことに対して朝鮮中央通信は「安倍は世界で唯一無二の白痴、史上最もばかな人間」と罵倒した。
   オーストラリア
オーストラリアとは「基本的価値観を共有する」としている。日豪FTAの交渉を開始し、2006年12月に合意した。2007年3月13日には安全保障協力に関する日豪共同宣言にジョン・ハワード首相とともに署名した。この宣言にはPKOなどの海外活動や対テロ対策、北朝鮮問題などで日豪が協力する、安全保障協議委員会の設置などが明記されていた。「豪との共同宣言が中国狙ったものでない」とした。
   インド
2007年8月に日印首脳会談を行い、政治・安全保障、経済、環境とエネルギーなど多岐に渡って合意した。また、インドの国会において、日印間の更なる関係強化について「二つの海の交わり」と題する政策演説を行った。外務省は「この演説内容はインドに非常に高く評価された。2017年7月7日、モディ首相と会談し、日米印3か国の安全保障協力を強化する方針で一致した。
   中東・アフリカ
2014年1月にオマーンを訪問し、さらにコートジボワールを訪れた。2017年8月10日、国連開発計画のシュタイナー総裁と面会し、貧困・飢餓の撲滅を目指す国連の持続可能な開発目標(SDGs)に向けて努力し、アフリカの開発の提案、防災、女性の活躍の分野で協力して成果を出す意欲を述べた。
 
安全保障
日本版「国家安全保障会議」(NSC)構想を推進した。総理就任以前から憲法改正に関しては集団的自衛権の容認を打ち出してきた。2007年には安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会を開催、集団的自衛権の行使は日本国憲法第9条に反しないとの報告書を得て、宮崎礼壹内閣法制局長官に対し、解釈変更の指示を行ったが、職員の総辞職の可能性を示される抵抗を受け頓挫した。第2次安倍内閣では、集団的自衛権行使容認派の小松一郎フランス大使を2013年8月8日に内閣法制局長官に任命した。しかし、体調不良のため小松は退任し、代わって内閣法制局次長であった横畠裕介を2014年5月16日に内閣法制局長官に任命した。横畠は、2016年3月18日の参議院予算委員会において、「我が国を防衛するためにの必要最小限度に限られる」としながらも「憲法上全てのあらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されていると考えていない」と答弁している。
2006年11月14日、安倍内閣は閣議で、核保有についての鈴木宗男の質問主意書に対して、「政府としては、非核三原則の見直しを議論することは考えていない」と強調しながらも、「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度にとどまれば、保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」との答弁書を出した。
自衛隊について、「政府の立場で言えば合憲であるという立場」と述べつつ、「憲法学者の7、8割が違憲である」「違憲であることが教科書にも記述があるのは事実」と説明し、憲法9条「3項に自衛隊を明記」することで、憲法上の自衛隊の位置付けの議論を促す答弁している。「新規隊員募集に対し、都道府県の6割以上が協力を拒否している」と述べ、憲法への自衛隊明記の必要性を述べた。
第2次安倍内閣においては武器輸出三原則の撤廃を含めた根本的な見直しに着手。2013年10月9日、政府の有識者会議「安全保障と防衛力に関する懇談会」に安倍等が加わり、装備品の輸出を事実上全面禁止してきた武器輸出三原則の抜本見直しを盛り込む方針を固めた。
2014年3月、武器輸出三原則に代わる「防衛装備移転三原則」の原案が与党のプロジェクトチームに示され、同年4月1日に武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則が閣議決定された。
2015年11月1日、長崎で開催された第61回パグウォッシュ会議世界大会へ「非核三原則を堅持しつつ、「核兵器のない世界」の実現に向けて、国際社会における核軍縮の取組を主導していく決意」を表明するメッセージを寄せた。
2016年11月15日、安全保障関連法で新たに認められた「駆け付け警護」を、南スーダンで国連平和維持活動(PKO)を行っている陸上自衛隊の任務に加える実施計画を閣議決定した。安倍は、「自衛隊の安全を確保し、意義のある活動が困難であると判断する場合は撤収を躊躇しない」と述べた。一方で「危険の伴う活動だが、自衛隊にしかできない責務をしっかりと果たすことができる」と述べた。
2017年3月17日、情報収集衛星「レーダー5号機」の打ち上げ成功について「情報収集衛星を最大限活用し、今後とも日本の安全保障と危機管理に万全を期す」とのコメントを発表した。
2017年8月9日、長崎平和祈念式典において、真に「核兵器のない世界」を実現するためには核兵器国と非核兵器国双方の参画が必要であり、日本は非核三原則を堅持し、双方に働き掛けを行うことを通じて、国際社会を主導していく決意を表明した。
   普天間基地移設問題
2013年12月25日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に向け、沖縄県知事の仲井真弘多と会談し、日米地位協定に関し環境面を補足する協定を締結するための日米協議開始などの基地負担軽減策を示した。仲井真は「驚くべき立派な内容だ」と評価して移設先である名護市辺野古沖の埋め立て申請を承認する方針を固め、同年12月27日午前にこの申請を承認した。2018年10月1日、共産党、社民党や労組などでつくる「オール沖縄」が推す玉城デニーが沖縄県知事に当選したことについて「結果は政府として真摯に受け止め、沖縄の振興、基地負担軽減に努めていく」と述べた。2019年2月25日、米軍普天間飛行場の辺野古移設を問う県民投票において、「反対」が有効投票の7割超となったことに対し「結果を真摯に受け止め、基地負担軽減に全力で取り組む」と述べた。なお、この件に関連して安倍は元参院議員・平野貞夫らにより2019年1月28日、「内乱罪を既遂した首謀者」として刑事告発されている。
 
尖閣諸島問題
「歴史と国際法によって、尖閣諸島(中国名:釣魚島)が日本の領土であり、中国と交渉の余地はない」と明言しており、「日本と中国の間が異なる見解を有している」ことを認めている。
   日台漁業交渉
2013年4月に台湾との間で尖閣諸島沖の漁業範囲に関する取り決めを行った。この協定は官邸の独断で成立が決定されたとして、水産庁や外務省などと事前協議を行っていた地元の漁協は強く反発し、「いずれこの漁業範囲から日本船が締め出され中国船や台湾船しかいなくなる」、と強い懸念を出している。実際に台湾漁船は当協定の成立が決定すると、協定の発行前から認められる予定の漁業範囲さえ超えた範囲で操業を開始した。
 
教育
2006年12月に教育基本法を改正し、教育の目標の一つとして愛国心という言葉を盛り込んだ他、義務教育9年の規定や男女共学の項を削除した。内閣府直属の「教育再生会議」を立ち上げ、2007年6月には教員免許更新制を導入した。その他、学校週五日制の見直しや大学進学の条件として社会奉仕活動の義務化を提唱した。その他の政策としては、教育バウチャー制度の導入を検討、「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクト」の座長を務める。2005年5月26日に開催された「過激な性教育・ジェンダーフリー教育を考えるシンポジウム」で自民党プロジェクトチーム座長を務めた安倍は、「男女の性別による差別は決して許されるものではない。」としながらも、ジェンダーフリーは、家族の破壊をもたらす概念であり、明らかに間違いと主張した。ジェンダーフリーの言葉の間違いについては、党内や政府内でも見解の一致が見られるとし、男女共同参画社会基本法の検討の必要性を述べた。
改正後の教育基本法については、「一見、立派なことが書いてあるが、家族・郷土・歴史・伝統・文化・国など、私たちが大切にしなければいけないものが抜け落ちている。日本人として生まれたことに誇りを持つためには、そうしたことを子どもたちに教えていくことが大切ではないか」「“世界から尊敬されている”ということも、誇りが持てるということにとって大切だ。世界に貢献していく際に“日本はこういう理想を持っており、こういう世界を実現していきたい”と述べていく必要がある」と述べている。これと関連して、教科書検定においてパン屋さんを使った題材について伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度(愛国心)に照らして不適切という検定意見がついた。これに対して識者は薄っぺらな愛国心だと指摘した。しかし、政府は「『パン屋』の記述に特定して検定意見を付した事実はない」とし、具体的には「まちやくにのすきなところは」との設問を追加するなど、国や郷土を具体的に盛り込む修正を行い合格した。その過程で、散歩道にあったパン屋さんは消え、自分の住む町や季節ごとの和菓子を作る日本のお菓子屋さんをもっと知りたくなるストーリーとなった。
また、親学を推進する。親学推進議員連盟の会長をつとめ、2012年の「山口県親学推進セミナー」では「戦後の教育の問題点は家庭教育がスポッと落ちてしまい、その存在が希薄化されてきたことにある。家庭教育支援の思索を推進していくように政府は勤めていかなければならない」と述べている。
第二次政権時においては、教育再生実行会議の第一次提言や2013年3月の施政方針演説より、
   6・3・3・4制の見直しによる「平成の学制大改革」を始める
   道徳の教科化
   いじめ対策の法制化
などが主たる教育政策である。
第一次政権時の教育政策については教育再生会議、第二次政権時については教育再生実行会議も参考のこと。
2014年11月21日、2年間で20万人、5年間で40万人分の保育の受け皿を整備し待機児童を無くすと述べている。
2015年道徳教育「特別の教科 道徳」を教科にした。学習指導要領には「児童の道徳性の育成に大きな影響を与えている社会的風潮」のひとつとして「物や金銭等の物質的な価値や快楽が優先される」とある。
2017年5月24日、教育再生実行会議において、大人と子供と向き合う時間を確保することが家庭等での教育力向上に資するとの見解のもと、地域ごとの学校休業日の分散化を図る「キッズウィーク」と称する施策に取り組むことを表明した。
2017年8月3日、第3次安倍第3次改造内閣での記者会見において、「人づくり革命担当大臣」を新設した。子どもへのユニバーサルな教育機会の提供みならず、社会人の学び直しを推進することを企図している。
2017年9月25日、衆議院解散演説において「所得が低い家庭の子供たち、真に必要な子供たちに限って高等教育の無償化を必ず実現する決意です。授業料の減免措置の拡充と合わせ、必要な生活費を全てまかなえるよう、今月から始まった給付型奨学金の支給額を大幅に増やします」、「3歳から5歳児の幼稚園、保育所について全面無償化します。所得の低い世帯について保育所無償化を行うことを考えています」「どんなに貧しい家庭に育っても意欲さえあれば専修学校や高等教育、大学にも進学できる社会に変革をしなければならない。真に必要な子供に限って、高等教育の無償化を必ず実現していく」と述べた。しかし、安倍は2017年11月27日の衆議院予算委員会で選挙公約で掲げた3歳から5歳児の幼児教育・保育の全面無償化について、補助対象とする認可外保育施設の種類などに関し専門家の意見聴取を求め、与党連携で2018年夏までに結論を出すと述べ、制度設計の詳細については先送りすることを表明した。
 
民法論議・家族制度
   夫婦同姓規定
現行の民法規定で定められている夫婦同姓を支持しており、選択的夫婦別姓について「夫婦別姓は家族の解体を意味する。家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという左翼的かつ共産主義のドグマだ。これは日教組が教育現場で実行していることです」と述べている。2016年2月29日に衆議院予算委員会で、岡田克也から、この発言の真意について説明を求められ、「(選択的夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とした)最高裁判決における指摘や国民的議論の動向を踏まえながら慎重に対応する必要がある」と答弁している。野田聖子(自民党)や菊田真紀子(民主党)は、安倍が「夫婦別姓反対の急先鋒」であるとしている。
   離婚後300日規定
女性が離婚後300日以内に出産した場合、子供は戸籍上、離婚前の夫の子供になるという民法の規定に関しては、2007年2月15日の参院厚生労働委員会の少子化問題に関する集中審議において「見直しの要否を含めて、慎重に検討する」と回答し、2月23日の衆院予算委員会において「時代が変わってきて親子関係はDNA鑑定ですぐにわかる」と答弁している。
   婚外子規定
婚外子の遺産相続分を嫡出子の半分とする規定を削除する民法改正に関しては、2013年10月18日の参院本会議において「不合理な差別は、解消に向けて真摯に取り組む必要がある」と答弁している。
   性的少数者対策
2016年1月26日、衆議院本会議において「偏見や不合理な差別があることは残念。今後の国民的な議論も踏まえ、慎重に検討する必要がある。」旨、答弁した。第3次安倍第1次改造内閣において、自民党は性的少数者への理解を促す「性的指向・性同一性の多様性に関する理解増進法案」を取り纏めた。2018年8月2日、杉田水脈衆院議員の性的少数者(LGBT)への行政支援に関する寄稿に対し、「人権が尊重され、多様性が尊重される社会をつくっていく、目指していくことは当然だ。これは政府・与党の方針でもある」と述べた。
 
公務員改革
内閣府特命担当大臣(規制改革担当)兼国・地方行政改革担当大臣兼公務員制度改革担当大臣のポストに渡辺喜美を置き、官僚主導の政治体制、公務員の給料制度、天下り、業界の談合体質など官僚にまつわる諸悪を摘出し、政官業の関係を健全化しようと国家公務員法改正を打ち出した。同改正法に基づいて (1) 官民人材交流センター(人材バンク)の制度設計 (2) キャリア制度の見直し、という2つの作業が開始され、それぞれについて有識者懇談会が設けられた。安倍も成田空港社長に官僚OBがなることを却下したり、東京証券取引所への天下り人事にも横槍を入れるなどの行動を見せていたが、官僚や自民党内から激しい抵抗が起きるようになる。渡辺喜美行政改革担当相が、自民党行政改革推進本部の会合に出席し、各省庁による天下り支援を禁止する案を説明すると、党側に『各省にあっせん機能を残すべきだ』と猛反発されたり、天下り規制の懇談会にて天下りをしている元事務次官7人のヒアリング調査をしようとしたところ、担当官僚が元事務次官に懇談会出席の要請すらしないなどの抵抗が見られた。
この公務員改革で安倍は、特に社会保険庁改革(社保庁民営化)に力を入れていた。年金行政への信頼回復とともに、社保庁の民営化によって公務員削減の突破口にしたいとの狙いからだったが、ここでも激しい抵抗にあった。田原総一朗は、安倍が社保庁民営化を目指していたことで、社保庁がクーデターを起こし、社保庁の年金が酷い状態であるということを社保庁自らが民主党やマスコミに選挙前に広め、「いかに安倍が危機管理ができないか」と国民に思わせて退陣を狙う「自爆テロ」を行い、そしてマスコミもそれに乗った、と主張した。
 
労働政策
第1次安倍内閣では労働ビッグバン、再チャレンジ政策を提唱したが、後に年金記録問題に追われることとなったため、提出された法案は第1次安倍内閣においては成立させることはできなかった。第4次安倍内閣では、働き方改革の実現を目的として内閣総理大臣決裁により働き方改革実現会議という私的諮問機関が設置された。これを経て働き方改革関連法が成立し、かつての政策のいくつかは実現されている。
   再チャレンジ政策
第1次安倍内閣では、小泉政権下によって生じた都市と地方の歪や不安定雇用の増加やいわゆる経済的不平等の是正を掲げ、再チャレンジ政策の一環としてフリーターを正社員として採用するよう企業に要請した。しかし2006年8月の 経団連が会員企業に行なったアンケートによると、フリーターの正規社員採用に約9割が消極的であるとの結果であり、期待通りの成果は出なかった。「ワーキングプアと言われる人たちを前提に言わばコストあるいは生産の現状が確立されているのであれば、それはもう大変な問題であろう」と述べ、「企業も非正規雇用者が正規社員へ常にチャレンジができるように積極的に取り組むことが、中、長期的には企業への信頼感、活力も高まる」という旨の考えを示しており、偽装請負等に関しても、「法令、労働基準法に反していれば厳格に対応していく」旨を述べている。第1次安倍内閣を引き継いだ福田康夫内閣では労働契約法が改正され、有期労働契約が5年を超える場合、これを期間の定めのない労働契約に転換できる権利を得ることとなった。
   最低賃金
最低賃金の抜本的引き上げは、「中小企業を中心に労働コスト増で、かえって雇用が失われ非現実的だ。」とした。2007年3月の参議院の予算委員会では、「最低賃金制度を生活保護以上にしていくという改正を行い、成長力底上げ戦略を進めていく中で、中小企業と労働者の生産性を上げることによって、最低賃金も上げるという二段構えの仕組みを検討している」考えを示した。
   男女共同参画
第1次安倍内閣では女性や高齢者の就業率向上を目指していた。第4次安倍内閣では、経済団体への努力目標として育児休業の3年化の推進を提言した。2014年3月28日、首相官邸で、すべての女性が輝く社会を目指す活動を推進する「輝く女性応援会議」が開催された。各界のリーダーからの宣言や、地域版の「輝く女性応援会議」の開催などが行われている。2017年6月21日、女性の社会進出等に貢献した団体等への表彰式において、「女性が思う存分活躍できる社会に向け、今後も一層尽力することを心から願っている」と述べた。
   ワークライフバランス
日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くということに対する考え方を改革するという定義の下、同一労働同一賃金や罰則付きの時間外労働の上限規制などの実現が示された。2016年12月の政府主催の国際シンポジウムにおいて、働き方改革の成功について男性の意識変革を指摘し、家事や育児を夫婦で共に担うことや、出産直後から夫が育児に取り組めるよう、男性の育休に加え、妻の出産直後の男性の産休を推奨する旨、述べた。その他の具体的施策として、政府と経済界が提唱する消費喚起キャンペーンのプレミアムフライデー、夏季の早期出社・早期退社を奨励するゆう活、時差通勤を促す「時差Biz」なども働き方改革の一環とされる。
   高度プロフェッショナル制度
第1次安倍内閣ではホワイトカラーエグゼンプションが検討されていた。第4次安倍内閣では、高収入の専門職種の一部に対し、裁量労働制を想定した「高度プロフェッショナル制度」が検討された。しかし、高収入の一部専門職を残業代支払いなどの労働時間規制から外すことになり、野党が「残業代ゼロ法案」として批判していた。安倍は、当初の法案から、休日確保の義務化等の働き過ぎ防止を考慮した法案に修正する方針を表明した。2018年6月29日、高度プロフェッショナル制度の新設などを含む「働き方改革法案」が成立した。但し、審議過程で厚生労働省の作成したデータが不適切であったことが判明したため、裁量労働制の適用業種の拡大は削られた。
   1億総活躍社会
2020年1月20日、全世代型社会保障を掲げ、労働意欲のある70歳まで高齢者の就業機会を確保を行うと述べた。高齢者の8割が65歳を超えても働きたいという社会情勢を述べた。
   労働市場の構造改革
企業が賃上げを促進し、政府は賃上げ企業への優遇や失業者対策を進め、労働者は労働市場流動化に同意し失業増を受け入れるという日本版「ワッセナー合意」が構想されていることが明らかになった。ただし、オランダで起こったワッセナー合意は「労組は賃金の抑制」「政府は企業の社会保障負担を低減し労働者のための減税を実施」「経営者は仕事を分かち合い雇用を確保」という内容的には正反対とも言えるものである。
日本版「ワッセナー合意」は、むしろ第1次安倍内閣で提唱された労働ビッグバン(日本版オランダ革命)に近いものであり、日本維新の会のブレーンで小泉構造改革の中心人物であった産業競争力会議メンバー竹中平蔵の主張である「再就職支援金の支払いを条件に従業員の解雇を認めるといった解雇ルール」や「正規と非正規の中間的な雇用形態の導入」などが盛り込まれている。これについては、失業増を受け入れる労働組合はもちろん経済界も難色を示しているとされる。竹中平蔵は第1次安倍内閣の際には、著書の中で「既得権益を失う労働組合や、保険や年金の負担増を嫌う財界の反対で頓挫した」と述べていた。
 
治安政策
組織犯罪処罰法(いわゆる「共謀罪法案」)について、「国際社会で組織犯罪に対応していく役割を果たす上で早期に「国際組織犯罪防止法条約」を批准をする必要がある」として2007年1月25日召集の通常国会で成立を図るよう指示したが、世論や自民党内からの反発が強く、継続審議となった。2017年5月19日、共謀罪の構成要件を改め「テロ等準備罪」を創設することを柱とする組織犯罪処罰法改正案が衆議院法務委員会で自民、公明の与党と日本維新の会の賛成多数で可決、23日に衆議院本会議で可決された。6月15日、参議院では会期延長によらず法案成立を目指した与党は法務委員会の採決を省略する「中間報告」を行う動議を提出し、同日未明の衆議院本会議で「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」(共謀罪の構成要件を改め「テロ等準備罪」を創設する改正組織犯罪処罰法)が自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。安倍は同法成立について「本法を適切に、そして効果的に運用」する旨、また東京オリンピック開催に触れ「一日も早く国際組織犯罪防止条約を締結し、テロを未然に防ぐために国際社会としっかりと連携していきたいと思います。そのための法が成立したと考えております。」と述べた。2017年7月11日、同法が施行された。また、改正組織犯罪処罰法施行により、同年8月10日国連本部に於いて、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)とTOC条約締結が前提条件となる人身取引議定書と密入国議定書、さらに国連腐敗防止条約が締結された。
   特定秘密の保護に関する法律
2013年中旬から安全保障などの情報のうち「特に秘匿するが必要あるもの」を「特定秘密」と指定し、情報にアクセス出来る者の適正評価の実施や漏洩した場合の罰則などを定めた特定秘密保護法の検討を開始した。当法案には国内外で議論を呼び、報道各社が行った世論調査では廃案・見送りが多数を占めるものが大勢を占めたが、一部賛成が反対を上回るものもあった。法案は、2013年11月に衆議院で、12月に参議院で採決された。衆議院では与党に加えみんなの党も賛成したが、参院では直前の与党議員の発言などを受け全ての野党が賛成しなかった。その後、安倍政権の支持率は急落した。この法案に対しては国連が重大な懸念を表明し、海外メディアからは「報道の自由及び民主主義の根本を脅かす悪法」、「日本で内部告発者を弾圧する立法が成立した」、「日本が報道の自由を制限」などと報じられた。元アメリカ国防次官補のモートン・ハルペリンは「知る権利と秘密保護のバランスを定めた国際基準を逸脱している」と法案を批判した。一方で、アメリカ合衆国国務省副報道官のハーフは記者会見で、日本で特定秘密保護法案が成立したことについて「情報の保護は同盟における協力関係で重要な役割があり、機密情報の保護に関する政策などの強化が前進することを歓迎する」と述べ、AP通信は「中国の軍事力増強に対抗するために強い日本を望む米国は、法案可決を歓迎している」と報じた。
 
社会保障
第2次安倍内閣において、内閣に社会保障制度改革推進会議を設置し諮問機関とした。
   中国残留孤児
中国残留孤児問題における訴訟では請求を取り下げられた原告団に面会し、新たな支援を検討していくことを確認した。慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」2007年2月23日に、熊本市の慈恵病院が赤ちゃんポストの設置を計画していることについて、「ポスト」という名前や匿名で子供を置いていけるものだということに大変抵抗を感じると述べている。
   年金問題
年金記録問題では民主党の小沢一郎との党首討論で「消えた年金はどうするのか」という野党からの追及に対し「年金は消えたわけではない」として年金時効撤廃特例法案など具体的な救済案を提示した。該当者不明の年金記録5000万件の照合作業については「三千万人の方々とこの二千八百八十万件を一年間のうちに突合いたします」「一年間で私たちはすべて突合を行うということをお約束をする」と断言、当初2年程度を想定していた調査期間を前倒しすると表明し、自民党の公式HPでも宣伝した。第166回国会本会議においても、「長年まじめに保険料を納めてきたにもかかわらず年金がきちんと給付されないという理不尽なことは、絶対にあってはなりません。このため、国民の視点に立って、できる限り速やかに、かつ、行うべきことはすべて行い、国民の不安の解消に最善を尽くしてまいります。」と答弁した。
社会保険庁は年金記録の照合作業を進めたものの、2008年3月末までに持ち主が判明するのは1000万人程度に留まり、名寄せ困難な記録が1975万件に達すると発表された(人数や件数は2007年12月時点での推計値)。安倍の公約実現は絶望的となり、後任の首相である福田康夫が謝罪する事態となった。内閣官房長官の町村信孝は「亡くなった方もいる。『最後の一人まで』ということはありえない。もとより無理」と述べ、安倍の公約の問題点を指摘した。 2008年3月、社会保険庁の照合結果が公表され、1172万件分の持ち主が特定できたが、名寄せ困難な未解明記録は2025万件に達したことが明らかになった。2019年の参議院選挙演説において、「この6年間、雇用が大きく改善し、380万人が新たに仕事につき始めた。新たな働き手、支え手が増えたことによって、年金の保険料収入は増え」、株式市場での運用で「運用益は民主党政権時代の10倍」になったと述べた。
   介護施策について
2017年9月25日、衆議院解散演説において、自公政権で介護人材に対し月額47000円の処遇改善を実現したことに触れ、更に他の産業との賃金格差を無くすべく更なる処遇改善を推進することを表明した。
   児童を対象とする手当について
民主党の子ども手当は「国家から直接子供たちに養育費がいくことによって、自分たちは両親に対し何の義務を感じる必要がないという議論もあった」と指摘し、「子育てを家族から奪い去り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化だ。これは実際にポルポトやスターリンが行おうとしたことだ」と、2016年2月29日の衆議院予算委員会で発言した。2016年9月28日の参議院本会議において、「民主党政権は児童扶養手当をたったの1円も上げなかった」と答弁した。一方、第48回衆議院議員総選挙前に幼保無償化を発表し2019年10月より実施された。
   医療制度
官民一体で創薬・再生医療を推進する「日本版NIH」の構想を提案した。また、ビッグデータや人工知能を活用した「予防・健康管理」や「遠隔診療」の推進も表明している。
 
経済政策
経済財政諮問会議を第2次安倍内閣で再開した。
2014年に、アベノミクスといわれる以下の3政策からなる経済政策を開始した。
   大胆な金融政策
   機動的な財政政策
   民間投資を喚起する成長戦略
安倍は、2015年11月に行われた民間の講演会において「GDPは、アベノミクスによって成長率がマイナスからプラスに転じた結果、500兆円まで回復している。以降、毎年名目3%以上成長が実現すれば、2020年ごろにGDP600兆円は十分達成できる」と述べた。
2017年9月25日、衆議院解散演説において、「11年ぶりとなる6四半期連続のプラス成長、内需主導の力強い経済成長が実現」と述べ、雇用は200万人近く増加し、2017年春に大学卒業した学生の就職率は過去最高で、「この2年間で正規雇用は79万人増え、正社員の有効求人倍率は調査開始以来、初めて1倍を超えました。正社員になりたい人がいれば、必ず1つ以上の正社員の仕事がある」と述べた。2018年9月14日の自民総裁選討論会において、賃金に関し「大企業では5年連続、過去最高の賃上げが続いており、中小企業においても過去20年で最高となっている」と主張した。
   TPP問題
2012年11月14日の野田佳彦首相の解散表明により選挙の争点として浮上した環太平洋経済連携協定(TPP)について、自民党の「聖域なき関税撤廃」のTPP参加の反対派に対し、安倍は日本商工会議所会頭の岡村正との会談で交渉に含みをもたせ、「TPP推進に対して強い交渉力を発揮して頂けるという強い意気込みは感じたので心強く思う」と評価された。この岡村とのやりとりについて、経団連会長の米倉弘昌も「いいことだ」と歓迎している。しかし、その後の記者会見では「交渉参加に前向きというのはあくまでミスリードだと思います。」と否定し、その結果として衆院選では160人超の候補者が、TPP交渉参加反対を訴える農協(JA)系の政治団体から推薦を受け当選した。
しかし、農水大臣に農政になじみの薄い林芳正を起用し、甘利明、麻生太郎など経済関係の主要閣僚にもTPP賛成派を配置。さらに外交政策に関して助言を行う内閣官房参与には、日本はTPPに参加すべきとの発言をおこなっていた谷内正太郎を起用した。また、TPP賛成派の岡素之や大田弘子をそれぞれ内閣府規制改革会議議長及び議長代理とし、さらに新設の日本経済再生本部に設置された産業競争力会議のメンバーにも日本維新の会と関係の深いTPP賛成派の竹中平蔵や、TPP早期実現要請を行なっていた三木谷浩史を加えた。経済全般のマクロ政策を決める経済財政諮問会議の民間議員も全員TPP賛成派で、高橋進は構造改革派の論客として野田佳彦民主党政権の方針を力強く後押ししていた人物。伊藤元重にいたっては「TPPに参加できないなら、農村部にある多くの工場は閉鎖を余儀なくされる」というのが持論で、野田佳彦民主党政権の「社会保障制度改革国民会議」のメンバーでもあった。
2013年2月23日、日米首脳会談後に共同声明を出した。それまでの関税に関する見解(カークUSTR代表と玄葉外務大臣との会談)は「物品関税の最終的な扱いについてはTPP交渉プロセスのなかで決まっていくもの」であったが、今回の共同声明は「一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する」との表現になった。この会談後、主要メディアにおいてTPP賛成が増加し、共同通信63%、FNN53%、テレビ朝日51%、日本経済新聞47%となった。
2013年3月8日、日本政府が野田佳彦内閣当時の昨年3月の段階から『TPP交渉参加後発組に出された3条件』を把握していたにもかかわらず、国民に条件を告知することなく交渉参加を推進していたことが判明した。安倍はこの問題に関して衆院予算委員会で答弁を拒否し、質問した日本維新の会の松野頼久国会議員団幹事長が「政府が交渉参加のルールを探って議会に説明するのは当然の責任だ」と批判した。また岸田文雄外相は「少なくともわが国には、そうした条件の提示は全くない。引き続き情報収集に全力を挙げる」と答弁していたが、9日になって安倍は「ルールを作っていく上で、最初に入った人たちが後から入った人に議論を覆されたら困るというのは、それはそうだろうと思う」と述べた。安倍政権はこの3条件を政権移行直後に把握したが公表はしていなかった。
2013年3月15日、TPP交渉参加という形で決着が図られることとなった。
2013年4月12日に決着したTPP交渉参加に向けた日米事前協議は大手各紙上でも『高い「入場料」』という言葉が飛び交い、米側に譲りに譲ったものとなった。日本政府のTPP交渉担当者が「なんとしても7月中には交渉に加わりたいのだが……」とあせりの色を隠せない中での事前協議であり、交渉に入る前から通商条件で大幅な譲歩を迫られる可能性があったが、現実のものとなった。焦点の自動車・保険分野では双方とも大幅譲歩であり、自動車分野では自動車関税について当面は乗用車・トラックの関税を維持した上、撤廃時期はTPPが認める範囲で最大限遅らせることで決着、保険分野ではかんぽ生命のがん保険など新商品の申請を事実上凍結したため、投資家に訴える新規事業への参入が不可欠な2015年秋までの株式上場は計画の見直しが不可避となり、政府が復興財源として期待していた日本郵政株式の売却収入4兆円が見通せなくなってしまった。のみならず、非関税措置について9つの分野で日米間で継続協議とされたため、1990年代に経験した日米構造協議、包括経済協議と同様に2国間の枠組みを使って日本に市場開放の圧力をかける構図が繰り返されることになった。
2013年9月25日、ニューヨーク証券取引所で行った講演で、「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました。世界の成長センターであるアジア太平洋。その中にあって、日本とアメリカは、自由、基本的人権、法の支配といった価値観を共有し、共に経済発展してきました。その両国が、TPPをつくるのは、歴史の必然です。」との見解を示した。
2016年12月9日、参議院本会議で記名投票による採決を行い、TPP参加が決議された。
しかし、2017年1月20日、第45代アメリカ合衆国大統領に就任したドナルド・トランプは、同日TPP離脱を表明した。TPP発効条件が加盟12か国のGDPの85%以上を占める6か国以上の国内批准であり、アメリカのGDPは全加盟国の約60%を占めることから、TPP発効は困難となった。
日本政府はTPPに代わる域内経済協定を検討、2017年2月10日(米国時間)、安倍は初の日米首脳会談において、日米間の経済対話、これをさらにアジア太平洋地域に拡大する方向性を話し合った。訪米に同行した財務省関係者は、二国間自由貿易協定(FTA)に発展する可能性を否定しなかった。
2017年3月1日の参議院予算委員会で、安倍は米国のTPP離脱に関し「日本の求心力を生かし、今後どのようなことができるかを米国以外の各国とも議論したい」と語った。
   原発政策
2006年12月22日、(第一次安倍内閣時)巨大地震に伴う津波が生じた場合の原子力発電所の安全性に関する質問に対し、日本の原子力発電所は外部電源又は非常用所内電源のいずれからも電力の供給を受けられる設計であり停止した原子炉の冷却は可能であること、崩壊熱が除去できず核燃料棒が焼損した場合の原発事故について評価は行っていない旨、衆議院で答弁している。
福島第一原子力発電所事故の影響で停止している、日本各地の原子力発電所について、2014年5月1日にシティ・オブ・ロンドンでおこなった演説の中で、安全基準を満たしたところから順次稼働させていく方針を表明した。
 
財政再建
財政について、「成長せずに財政再建できるかというとそれは無理で、絶対に有り得ない」と述べている。プライマリーバランスを2020年に黒字化する目標だったが2025年に延期した。2020年1月20日、来年度予算の税収は過去最高となり公債発行は8年連続での減額であると述べ、財政健全化の進捗を述べた。
   消費税増税
消費税増税について、2012年自由民主党総裁選挙に立候補した5人による日本記者クラブ主催の公開討論会で「時期を間違えると結果として経済の腰を折ってしまう。デフレがずっと今と同じままなら上げるべきでない」と述べた。2013年10月1日に正式に税率の8%への引き上げを表明。
2013年10月1日、消費税増税の判断をこれまで保留してきた安倍は、「国の信認を維持し、持続可能な社会保障制度を次の世代にしっかりと引き渡していくため、14年4月1日に消費税を5%から8%に引き上げる判断をした」と言明した。
再増税は2015年10月に予定されていたが、2014年6月24日のインタビューで安倍は「やっとつかんだ(デフレ脱却の)チャンスを逃してしまうかもしれないなら、引き上げることはできない」と述べ、11月発表の7〜9月期の実質国内総生産を待って最終判断を下す考えを示した。8月9日発売の「文芸春秋」において、安倍は「経済成長こそが安倍政権の最優先課題であることを明言する」とデフレ脱却への決意を語った。
2014年10月7日の参議院予算委員会で、安倍は「今の社会保障制度を次世代に引き渡し、子育て支援のために資金を国民に負担してもらうための消費税だ。仮に消費税率を10%に引き上げなかった場合、社会保障の予算は減ることになる」と述べた。また、同日にIMFは、2015年10月に予定される10%への消費税率引き上げを予定通り実施するべきとの見解を示した。
2014年10月17日、安倍はフィナンシャルタイムズのインタビューに応じ、増税で景気後退すれば歳入も減少して施策自体が無意味になると述べた。11月13日、安倍は消費税率再引き上げの先送りを決めた上、次週に衆議院を解散する方針を固めた。1年半延期して2017年4月からとした。11月18日、安倍は記者会見において、7月・8月・9月のGDP速報から「成長軌道に戻っておらず」、「デフレから脱却し、経済を成長させる、アベノミクスの成功を確かなものとするため」に、2015年10月1日に予定されていた消費税増税は1年半延期すべきことを表明した。
2016年6月1日、安倍は記者会見において、「内需を腰折れさせかねない消費税率の引上げは延期すべき」という判断に基づき、2017年4月1日に予定されていた消費税増税は2年半延期すべきことを表明した。併せて、消費税増税の際は軽減税率を導入する旨を表明した。
2017年9月25日、衆議院解散演説にて、社会保障制度を全世代型へ転換・子育て世代への投資のため、消費税の使途変更を表明した。使途変更は、2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する財政再建目標の達成が「困難になる」とし、事実上撤回した。
内閣府は2019年10−12月期のGDPの速報値は実質で-1.6%(年率で−6.3%)となり、前回の消費税増税直後(2004年4−6月)の-7.4%以来5年半ぶりの大幅なマイナス成長になった。 
●歴史観
村山談話
総裁選を目前に控えた2006年9月7日、「村山内閣総理大臣談話「戦後50周年の終戦記念日にあたって」」(村山首相談話)について、「基本的にその精神を引き継いでいく」とした。その一方で、2006年10月6日、衆議院予算委員会で、A級戦犯について戦争責任については「当時の指導者であった人たちについてはより重たい責任があるが、その責任の主体がどこにあるかということについては、政府としてそれを判断する立場にはない」旨を述べた。2006年10月5日、衆院予算委員会で、東条内閣の商工大臣だった岸信介が対米英開戦の詔書に署名したことへの認識を問われ「指導者には祖父を含め大きな責任があった。政治は結果責任だから当然、判断は間違っていた」とも述べている。
東京裁判については、第1次政権時代、「受諾しており異議を述べる立場にない」としていた。第2次政権では、2013年2月12日の衆議院予算委員会にて、「大戦の総括は日本人自身の手でなく、いわば連合国側の勝者の判断によって断罪がなされた」と述べ、懐疑的な見方を示した。しかし、同年5月には「日本が侵略しなかったと言ったことは一度もない」と述べ、村山談話を継承することを表明した。
慰安婦問題
   河野談話
日本のこれまでの歴史教育に異議を唱え、「新しい歴史教科書をつくる会」を支援して来た自民党内部の議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の事務局長を務めた(現在は顧問)。同会は特に「侵略戦争」や「慰安婦」問題の教科書記述に批判的であり、証拠もないまま旧日本軍による慰安婦の強制連行を認めた「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」(河野談話)を発表した河野洋平を会に呼んで、談話の撤回を要求したこともある。1997年の国会でも、慰安婦の強制連行の根拠とされてきた吉田清治の証言が虚偽であることが判明したため、「河野談話」および教科書への「従軍慰安婦」の記述を載せることは問題であると指摘している。自民党幹事長代理時代の2005年3月27日の講演会でも、「従軍慰安婦は作られた話」と語っている。総理就任後の2006年10月5日には、「河野談話」を「私の内閣で変更するものではない」と発言。
2007年3月1日、河野談話に関する記者の質問に「旧日本軍の強制性を裏付ける証言は存在していない」と発言。米下院に提出された慰安婦問題をめぐる対日非難決議案について、同年3月5日の参院予算委員会において「この決議案は客観的な事実に基づいていません」「これは、別に決議があったからといって我々は謝罪するということはないということは、まず申し上げておかなければいけないと思います」と述べた。この「(旧日本軍による)狭義の強制性を裏付けるものはなかった」という発言は、米国からも批判され、2007年3月16日の国会答弁で河野談話の継承に改めてふれ、「同情とおわび」に言及し、4月3日のジョージ・W・ブッシュとの電話協議で見解を説明する対応をとる。4月27日にはBBCのインタビューに、英語で「極めて痛ましい状況に慰安婦の方々が『強制的に』置かれたことについて大変申し訳なく思う」、「私たちは、戦時下の環境において、そうした苦難や苦痛を受けることを『強制された』方々に責任を感じている」と発言(以上、和訳)。同日、日本のメディアに日本語で「人間として心から同情する。首相として大変申し訳なく思っている」、「彼女たちが慰安婦として存在しなければならなかった状況につき、我々は責任がある」と発言。これについて毎日新聞は、「今回の発言は日本側の「責任」も指摘することで、沈静化を図ったものとみられる。」と報じている。
第2次安倍内閣発足後の2012年12月27日、河野談話について、見直しを視野に入れて検討をおこなう方針を示した。
   日米首脳会談での言及
ブッシュ大統領との2007年4月28日の日米首脳会談後の共同記者会見で、「慰安婦の方々にとって非常に困難な状況のなかで辛酸を舐められた、苦しい思いをされたことに対し、人間としてまた、総理大臣として心から同情しておりますし、またそういう状況におかれていたと言うことに対して、申し訳ない、と言う思いでございます」とあらためて謝罪の意を示した。ブッシュ大統領は「安倍総理の謝罪を受け入れた」と応じた。
安倍は2011年11月、この問題に関して「会談で従軍慰安婦問題は全く出なかった。そもそも日本が米国に謝罪する筋合いの話ではない」とアメリカメディアの報道は事実無根だと主張したが、2013年5月に主張を修正し、実際には日米首脳会談で「元慰安婦の方々に、首相として心から同情し、申し訳ないという気持ちでいっぱいだ」と発言したことは認める答弁書を決定した。
   日韓合意
2015年12月28日の日韓外相会談にて、日本側は従軍慰安婦への日本軍の関与と日本政府の責任を認めて謝罪した上、日本側が元慰安婦を支援する財団に10億円を拠出する事で「最終的かつ不可逆的な解決」とする合意に至った。これについて、「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子供たちに謝罪し続ける宿命を背負わせる訳にはいかない」「今回の合意を踏まえ、日韓両国で力を合わせて、日韓新時代を開いていきたい」と発言した。
靖国神社参拝
首相の靖国神社参拝について「国のために殉じた人たちに対して国のリーダーが尊崇の念を表するのは当然だ。お参りすべきだと思う」と述べている。また、歴史認識を巡って反日騒動が起こった中国と韓国の態度を批判し、外国が靖国神社参拝について抗議するのは内政干渉だという見解を持っている。
安倍は幹事長在任中の2004年・幹事長代理在任中の2005年には終戦の日(8月15日)に参拝を行ったが、官房長官在任中の2006年は4月15日朝、秘密裏に参拝を行った(「内閣官房長官 安倍晋三」と記帳し、ポケットマネーで玉串料を収めた)。安倍は同年8月4日の記者会見で、この件に関し「参拝したかしないかについては申し上げるつもりはない」と述べた。
第1次安倍内閣発足による首相就任後も参拝を続ける意向を示し、2007年1月17日の自民党大会で決定された運動方針でも「靖国参拝を受け継ぐ」ことが明記されたが、外交問題や政治問題になるのを避けるため自身の参拝については明言しない考えを改めて示した。首相在任中は参拝を行わなかったが、安倍はこれについて首相退任後に「『主張する外交』を展開する中で、日本のための将来の布石を打つため大きな決断をした」と説明している。
2012年9月14日党総裁選候補者による共同記者会見で安倍は「首相在任中に参拝できなかったことは、痛恨の極みだ」と述べ、再び首相に就任した場合の対応について「そのことから考えていただきたい」と語った。
第2次安倍内閣発足による首相再任後、2013年の春季および秋季例大祭と終戦記念日の参拝はいずれも見送った。
   首相在任中の靖国神社初参拝
内閣発足からちょうど1年となる2013年12月26日、第1次時代も含め首相在任中としては自身初の参拝を、アメリカ、中国に外交ルートを通じて参拝の連絡をした上で参拝した。安倍はモーニング姿で本殿に参拝し、「内閣総理大臣 安倍晋三」名で白い菊を献花した。靖国神社境内にある世界の全ての戦没者を慰霊する「鎮霊社」にも参拝した。その後、「恒久平和への誓い」と題した「首相の談話」を発表。談話を英訳し、世界に向けてメッセージを発信した。
参拝後、記者団に「御霊安らかなれと、手を合わせて参った。この1年の安倍政権の歩みをご報告し、二度と再び戦争の惨禍によって人々が苦しむことのない時代をつくるとの誓い、決意をお伝えするためにこの日を選んだ。戦場で散った英霊のご冥福をお祈りすることは世界共通のリーダーの姿勢だ。中国、韓国の人々の気持ちを傷つけるつもりは毛頭ない。中韓両国首脳に直接説明したい」などと語った。
この参拝について、人民日報(中国共産党中央委員会機関紙)系の新華経済は日本新聞網の記事を引用し『安倍首相は外交ルートを通じて中韓首脳との会談を模索しており、(2013年)12月28日訪中のスケジュールで調整が進められていたそうだ。だが、これを「単なる政治的パフォーマンスであり、尖閣問題の解決策の提示はない」と判断した中国側が(2013年12月)20日に安倍首相の訪中を拒否。中国に続いて韓国も否定的な返答を寄せたという。今回の靖国参拝はこれに対する“報復”ではないか』と報じた。
   世論調査・ネット調査
安倍の2013年12月26日の靖国神社参拝について、以下の様な世論調査結果が報じられている。
朝日新聞は2013年12月30日の朝刊30面で、安倍のこの靖国参拝後の世論調査「日本の首相が靖国神社に参拝することに賛成ですか。反対ですか。」の質問に対し、20歳から29歳の回答者で支持60%・不支持15%、30歳以上の回答者で支持59%・不支持22%という結果であったと報じた。また、同調査における内閣支持率調査「安倍内閣を支持しますか。しませんか。」の質問に対し、20歳から29歳の回答者で支持53%・不支持33%、30歳以上の回答者で支持55%・不支持33%という結果であったと報じた。朝日新聞は2014年1月25日から26日にかけての定例世論調査でも靖国神社参拝について質問しており、この時は「参拝したことはよかった」は41%で、「参拝するべきではなかった」が46%であった。
共同通信社は2013年12月28・29日に全国緊急電話世論調査を実施し、安倍の参拝について「よかった」43.2%、「よくなかった」47.1%であり、内閣支持率は55.2%(前月比1.0%増)、不支持率は32.6%(前月比0.4%減)であったと報じた。
産経新聞社とFNNの合同世論調査では、靖国神社参拝について、「評価しない」(53.0%)との回答が「評価する」(38.1%)を上回った。ただし、20代と30代では、「評価する」という回答が、「評価しない」という回答を上回っている。
   批判
安倍の2013年12月26日の靖国神社参拝に対し、以下の様な批判がある。
米国ホワイトハウスは安倍のこの靖国神社参拝について声明などを一切発表しなかったが、米国大使館は2013年12月26日に「日本は大切な同盟国であり友好国であるが、近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに失望している」との声明を出した。
米国国務省サキ報道官は「靖国参拝に関する声明を出すかどうか」の質問に「在日米国大使館の声明をみてほしい」と答えた。 / 2013年12月30日、サキ報道官は米国大使館が同年12月26日に出した声明における『失望している(disappointed)』という表現について、『「失望」という言葉は安倍の靖国神社参拝そのものに論評を加えたものではなく、中国や韓国との関係悪化を懸念したものである』、『意見の相違がある時に互いに正直に発言できるのは、緊密な関係の証し』、『日本は大切な同盟国で友好国であり、(今回の安倍の靖国神社参拝は)日米関係全体に影響はない』などと述べた。
EU(欧州連合)の報道官は、靖国参拝に対して懸念を表明し、日中韓各国に対し「EUは、緊張を高める行動を避け、外交で争いを解決する必要性を常に強調してきた」と訴え、地域の長期的な安定に向け建設的な関係を築くよう促した。
中国と韓国の駐日大使も安倍の参拝に抗議した。
韓国最大手新聞の朝鮮日報は『日本の大手6紙のうち、朝日、毎日、日本経済、東京の4紙は社説で安倍首相を批判した。「平和主義」を守ろうとする日本国民と安倍首相を切り離し、日本国内で良心的な声を高めるには、韓国は自らの対応を単なる反日で終わらせるのではなく、より高度な次元に高める必要がある。日本の国内外で安倍首相の批判を高めその立場を失わせれば、この脱線にも必ずブレーキがかかるだろう。』と批判した。
台湾の馬英九総統は「中華民族の一人として、日本政府が周辺国の歴史の傷を顧みず、こうした行動をとったことは理解しがたく失望した」と自らのフェイスブックに投稿した。その後も馬暁光報道官が「第2次大戦後の国際秩序に対する挑戦で、平和を愛する全ての人が断固反対するのは当然だ」などと述べている。
共同通信社は、米国ウォール・ストリート・ジャーナルが「日本の軍国主義復活の恐怖を、自国の権益拡大の口実に使いたい中国への贈り物」と批判したと報じた。
民主党代表の海江田万里は「過去の日本の歴史の負の側面とは一線を画すべきだ。日本の主体的な判断として大局的な立場にたって参拝を自重すべきだ」と述べ、靖国神社が日本の歴史の負の面であるとの認識を示し安倍を批判した。
ロシア外務省情報局長のルカシェビッチは26日、声明を出し、「このような行動には遺憾の意を抱かざるを得ない」と批判した。
韓国外務省報道官は2004年1月23日の定例記者会見で、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席した総理大臣の安倍晋三が靖国参拝に理解を求めたことについて「参拝しない韓日友好を語るのがいかに矛盾しているか、韓国だけでなく、全世界のメディアと知識人、良識ある人が声を上げている。この声が聞こえないのが理解しがたい」と改めて批判した。報道官は「参拝は、帝国主義時代に日本が犯した過ちを反省しないのと同じだ。首相ら指導者が靖国神社を参拝しないことが、韓日友好、地域の安定の出発点だ」と強調した。
コロンビア大学教授のジェラルド・カーティスは講演で、安倍晋三の参拝について「日本の国益にとても高いコストを生む」と批判するいっぽう、再度参拝するかどうかは「中国との取引材料となる」と語った。カーティスは「安倍首相は1年間参拝を自制したが、中韓両国からなにも得られなかった。参拝したから関係がさらに悪化するわけではない」と指摘。今回の参拝に対し、中国の態度は比較的抑制されていると述べ、再参拝の可否を対中関係の改善次第とすることで、局面のてこにできるとの考え方をしめした。参拝に対する米国政府の「失望」表明について、「安倍首相はショックだったかもしれないが、世界は変化している。中国台頭という新たな現実に取り組まなければならない」とした。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は23日、複数の米政府当局者の話として、安倍晋三が靖国神社参拝を繰り返さない保証を、米政府が日本政府に非公式に求めていると伝えた。日中、日韓関係がさらに悪化することを懸念しているとみられる。同紙によると、米政府は参拝後にワシントンと東京で開かれた日本側との「一連の会談」を通じ、近隣諸国をいら立たせるさらなる言動を首相は控えるよう要請。日米韓の連携を阻害している日韓関係の改善に向けて韓国に働きかけるよう促し、従軍慰安婦問題に対処することも求めた。さらに今後、過去の侵略と植民地支配に対する「おわび」を再確認することを検討するよう首相に求める考えだという。米国務省副報道官のハーフは23日の記者会見で、同紙の報道について問われ、「事実かどうか分からない」と述べた。 
●エピソード
政治資金
2015年に、政治資金規正法で禁止されている、国の補助金を受け取った企業からの1年以内の献金(寄付)を受けた可能性があると指摘された。それに対し、安倍は「当該会社が国から補助金を受けていたことは知らなかった。まず事実関係を調査する」として、政治資金規正法の改正も視野に入れた検討の必要性について言及した。献金をした企業は、それぞれ「お答えを差し控える」(東西化学産業)、「(補助金の性質から)政治資金規正法に抵触しない」(電通)、「例外規定の『試験研究』に該当し、法的問題はない」(宇部興産)とコメントした。同種の献金は、与野党の党首以下、多くの政治家や企業が意図せず違反していた可能性がある。献金禁止規定の見直しの必要性が言及されている。
   『週刊現代』による脱税疑惑報道
『週刊現代』は2007年9月29日号(9月15日発売)において、安倍が相続税を脱税していたとの記事を掲載した。内容は「父・晋太郎が生前、自身の指定政治団体に「安倍晋太郎」名義で寄付した6億円以上の政治資金を、66の政治団体に分散させて引継ぎ、3億円を脱税した」というものである。『週刊現代』は安倍の辞意表明当日に、以前から脱税疑惑についての取材を安倍に申し入れていたことを明らかにした。安倍の事務所は「事実無根である」と反論し、発行元の講談社に対して、当該記事を掲載しないよう「警告文書」を送った。事務所の関係者によると、「父である晋太郎が個人資産を政治団体に寄付し、相続税の支払いを免れたのではないか」との質問が『週刊現代』側からあったという。同事務所は、安倍の辞意表明当日の『毎日新聞』夕刊がこの一件について報じたことを受け、自民党本部の記者クラブ(本部平河クラブ)にて、「収支報告書には、あくまでも第三者からの寄付を晋太郎氏名義で記載しているにすぎず、個人献金ではないので相続税の問題はない」とする内容の文書を配布し、疑惑を全面的に否定した。これについて、「高瀬真実」のペンネームで『週刊現代』の当該記事を執筆したジャーナリストの松田光世は、「その説明が正しいなら、安倍事務所は『安倍晋太郎』という偽名を使って政治資金収支報告書への虚偽の記載を毎年続けていたことになる」と述べている。安倍は首相再任後の2014年11月4日、社民党党首の吉田忠智が参議院予算委員会で本件に言及し、週刊誌の記事を根拠にして自発的納税を促したことに対し、重大な名誉棄損に当たるとして吉田を非難し、吉田は「断定的に申し上げたのは申し訳ない」と陳謝した。
後援会事務所等への被害
2000年6月28日、安倍の後援会事務所(山口県下関市)の窓ガラスが割られ、屋内外に火炎瓶2本が置かれた。これに先立つ同月14日には同事務所近くにある催事場駐車場の壁、同月17日には安倍の自宅(同市内)の倉庫兼車庫にそれぞれ火炎瓶が投げられ、自宅の事件では車2台が焼ける被害もあった。事件が起きたのは、安倍が三選を目指した衆院総選挙(同年6月25日投開票)の最中であった。事件の3年後の2003年11月、福岡・山口両県警の合同捜査本部は、指定暴力団(後の特定危険指定暴力団)工藤會系高野組(本部・福岡県北九州市)の組長ら6人を、非現住建造物等放火未遂容疑で逮捕し、工藤会本部事務所(同市内)などを家宅捜索した。同事件では、主犯格の組長に懲役20年、実行犯らに懲役8年から13年の判決が確定した。なお、朝日新聞は、同事件では、1999年に行われた下関市長選挙に際して安倍が推した候補者を支援した土地ブローカーが、被告人の一人となっていると報じている。公判の検察側立証で、この被告人は、安倍が推した候補者の支援活動に当たって当時の安倍の秘書に現金を要求して300万円を工面させ、その後も金を要求したが、安倍側が応じなかったことから、暴力団と共謀して報復したという証言を報じている。
災害への対応について
   新潟県中越沖地震
2007年7月16日、新潟県沖の日本海でマグニチュード6.8の新潟県中越沖地震(最大震度6強)が発生した。第21回参議院議員通常選挙の遊説中に地震発生を知らされた安倍は、いったん官邸に戻ってから、震度6強を記録した柏崎市を訪問した。余震の発生が懸念される中で首相自らが震源地に程近い現地を訪問したことは、危機管理の観点から議論を呼んだ。元経済企画庁長官の堺屋太一は「現場に行ったときに果たして正確な情報が得られるのか。総理大臣は通信情報の拠点におられた方が良かった」と指摘し、衆議院議員の加藤紘一は「担当大臣を派遣するっていうのが本来の第一歩だと思います。総理大臣は大将ですから、一番官邸にいて指示を出すっていうのがいい対応」と指摘した。読売新聞は、「首相が発生直後に行けば、現場が首相への対応に人手を割かなければいけなくなり、行っても混乱するだけだ」との論評も報じている。
   平成26年豪雪
2014年2月に雪害が発生。政府は降雪が厳しくなる前の14日に災害警戒会議を開いて対応し、15-16日には、山梨・長野両県知事の要請に基づき、自衛隊を派遣した。しかし、17日に大雪で車が立ち往生したまま除雪車が進入できない状況となり、産経新聞では「政府の対応が後手に回った」と報じられた。17日の記者会見において、民主党の松原仁は、安倍が前日の16日夜に支援者と天ぷら料理店で会食したことに触れ、「緊張感が乏しい。16日の段階で雪の中で孤立している集落や車があった。残念だ」と述べた。また、海江田万里は、「初動が遅れたというそしりを免れない」と批判した。野党の批判を受け、安倍は、同日の衆院予算委員会で、「関係自治体と連携を密にし、関係省庁一体となって国民の生命、財産を守るため、対応に万全を期す」と述べている。
   令和元年房総半島台風(台風15号)
2019年9月の房総半島台風に対する初動対応について、立憲民主党の枝野幸男は「結果的に対応が遅れたことを率直におわびし、第三者による客観的な検証を急ぐべきだ」と述べた。これに対し、安倍は「初動対応は迅速、適切に行われてきた」と述べた。
   2019年-2020年コロナウイルスの流行
2020年1月26日、2019新型コロナウイルスによる急性呼吸器疾患が中国・武漢市で勃発したことを受け、武漢市の邦人帰国のためのチャーター便の手配等を行うと述べた。2020年2月26日、多人数が集まるスポーツ・文化イベントは、大規模感染リスクを勘案し、今後2週間の中止・延期・規模縮小を要請した。2020年2月27日、感染拡大防止のため全国全ての小中高校や特別支援学校を3月2日からするよう要請した。2020年3月5日、政府は水際対策として中国・韓国からの入国制限のため両国のビザの効力停止を決定した。安倍は、「機動的な水際対策を躊躇なく断行していくことが不可欠だ。今般、積極果断な措置を講じることにした」と強調、「中国や韓国全土から人の流入が続いている。感染拡大を防止し、国民の不安感を解消する」とも述べ、検疫を強化する考えを示した。2020年3月14日、新型コロナウイルスの感染拡大に備え「緊急事態宣言」を可能にする特別措置法成立に関し「あくまで万が一のための備えをし、そのための法律だ。さまざまな私権を制限する緊急事態の判断は専門家の意見もうかがい、慎重な判断を行っていく」と述べた。2020年4月7日、コロナウイルスの感染が広がっている東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に、5月6日までを期間とし、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令した。
福島第一原発事故
2011年5月20日、自身が発行するメールマガジンにて、東日本大震災によって発生した福島第一原子力発電所事故における海水注入対応について当時の首相・菅直人に対し「やっと始まった海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だったのです。」と発信し、「菅総理は間違った判断と嘘について国民に謝罪し直ちに辞任すべきです。」と退陣を要求した。しかし、事故当時の福島第一原発所長・吉田昌郎の判断により実際には海水注入は中止しておらず、菅から中止の指示があったという指摘についても、翌2012年の国会の東京電力福島原発事故調査委員会において、中止の指示を出したのは総理大臣の菅ではなく、官邸へ派遣された東京電力フェローの武黒一郎によるものだったと武黒本人が主張している。これに関し、菅は安倍に嘘の情報を流されたとして、謝罪と訂正を要求していたが、安倍はこれに応じずメルマガの掲載を続けたため、2013年7月16日、菅は東京地裁への提訴に踏み切った。2015年12月3日、東京地裁は「記事は重要な部分で事実であった」としてその請求を棄却した。裁判長の永谷典雄は、「菅氏に東電の海水注入を中断させかねない振る舞いがあった」「(当時)野党議員であった安倍氏が首相の責任を追及したものであり、人身攻撃とは言えない」と指摘した。翌日、菅はこの判決を不服として東京高裁に控訴した。
また、当時安倍は情報の出所として「(経済産業省の)柳瀬か(保安院の)寺坂に聞けば分かる」と記者に話していたため、柳瀬唯夫に対して多くの記者達から「注水を止めたのは総理の指示か?」という問い合わせがあったという。柳瀬にとってその問い合わせは寝耳に水であり「ありえません」「安倍さんの言っていることは嘘です」と返答したという。
タイムズは、首相再就任後の2013年、福島第一原発の汚染水が大量に土壌や海洋に流出していることが判明したことに関して、具体策の提言はないが政府の介入により対策を行う意向を安倍が示したと報じている。
財務省の決裁文書改竄問題
2018年3月19日、森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改竄について「理財局内や(近畿)財務局内の決裁文書の存在すら知らない。指示のしようがない」と述べ、関与を否定した。一方「行政府の長として責任を痛感している。最終的な責任は私にある」と陳謝した。本件に自身や配偶者(安倍昭恵)が関与しているなら「首相も国会議員も辞める」とする自身の答弁が改竄に影響を与えたとする見方も否定した。同月26日の党役員会で、衆参両院の予算委員会で行われる佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問に触れ、「地検の捜査にも協力しながら、政府として徹底した調査を急がせたい。政府、国会、それぞれの立場でしっかりと全容を解明し、膿を出し切ることが重要だ」と述べた。設置認可や敷地の国有地払い下げへの関与に関し、「私や妻、事務所は一切関わっていない。もし関わっていれば首相も国会議員も辞める」と述べている。不起訴になり証拠が開示されなくなった。 2020年自殺した人の手記が公開されたが再調査を拒否した。
桜を見る会に関する問題
2012年から毎年行われているがホテルニューオータニ「鶴の間」で行われた前夜祭は1人当たり5000円でNHKの取材にホテルは「1人11000円からで値引きには応じられない」と答えているが安倍は「ホテル側が設定した価格」「国会から求められれば説明責任を果たす」と説明している。 2019年5月5日に宮本徹が資料を請求したら内閣府の担当者は2019年度4月13日に開催された桜を見る会の紙媒体の招待名簿を5月9日に廃棄したと答え、安倍は安倍晋三後援会桜を見る会前夜祭の明細書等も「そんなものはない」「800人が参加」「安倍事務所にも後援会にも入金はないので領収書を発行してもいない」「国会対応は党に任せている」と言っている。
同年11月29日、総務省と山口県選挙管理委員会が2018年分の政治資金収支報告書を発表。計6つある安倍の関連政治団体は、いずれの報告書にも前夜祭に関する収支を記載しなかった。安倍は「会場受付で参加者から集金してホテル側に渡したにすぎない。政治団体に収支が発生して初めて記入の義務が生じる。政治資金規正法違反には当たらない」と主張している。
2020年4月15日、全国の弁護士や法学者500人以上が同月21日にも、公選法違反(寄付行為)などの疑いで安倍と後援会幹部の計3人の告発状を東京地検特捜部に提出することが明らかにされた。
黒川弘務東京高検検事長の定年延長問題
2020年1月31日、政府は黒川弘務東京高検検事長の定年を6カ月延長する閣議決定を行った。これに対し、立憲民主党の枝野幸男は、国家公務員法に基づき黒川東京高検検事長の半年間定年延長の決定を「違法、脱法行為だ」と批判した。安倍は、定年延長の決定について「法務省の人事案を承認しただけだ」と述べ、定年延長は検察のトップを含めた総意の人事であるとし、官邸が介入したとの指摘は「あり得ない」と強調した。  
●発言
2002年
   原子爆弾の保有・使用に関する発言
2002年2月、早稲田大学での講演会(非公開)における田原総一朗との質疑応答で「小型であれば原子爆弾の保有や使用も問題ない」と発言したと『サンデー毎日』 (2002年6月2日号)が報じたが、安倍は同年6月の国会で「使用という言葉は使っていない」と記事内容を否定し、政府の“政策”としては非核三原則により核保有はあり得ないが、憲法第九条第二項は、国が自衛のため戦力として核兵器を保持すること自体は禁じていないとの憲法解釈を示した岸内閣の歴史的答弁(1959年、1960年)を学生たちに紹介したのであると説明した。2016年4月には鈴木貴子の質問主意書に対し「憲法9条は一切の核兵器の保有や使用をおよそ禁止しているわけではない。しかし核拡散防止条約及び非核三原則に基づき、一切の核兵器を保有し得ない」とする答弁を閣議決定した。
   民主党を「中国の拡声器」
2002年5月19日中国・瀋陽総領事館北朝鮮人亡命者駆け込み事件に関して、日本国外務省の不手際を調査するため中国を訪問した民主党を、テレビ番組において「中国の拡声器」と批判した。安倍は2日後の5月21日、参議院外交防衛委員会において、民主党の激しい反発に遭い、発言を撤回した。
   辛光洙の保釈署名者の土井たか子と菅直人に対する発言
2002年10月19日広島市・岡山市の講演において「1985年に韓国入国を図り逮捕された辛光洙(シン グァンス)容疑者を含む政治犯の釈放運動を起こし、盧泰愚政権に要望書を出した人たちがいる。それが土井たか子、あるいは菅直人だ」「この2人は、スパイで原さんを拉致した犯人を無罪放免にしろといって要望書を出したという、極めてマヌケな議員なんです」と発言した。この発言は両議員から抗議を受け、同月21日の衆院議院運営委員会の理事会で取り上げられ、社民党の日森文尋衆院議員が抗議した。また、土井党首も記者団に「人格とか品格の問題にかかわる」と不快感を示した。結局、安倍が自らの発言を「不適切」と認めたことで、同月25日の衆院議院運営委員会の理事会にて決着した。大野功統委員長が安倍に「適切さを欠く表現があったと思われるので注意して欲しい」と伝え、安倍は「官房副長官という立場を考えると、不適切な発言だったので、今後十分注意する」と述べたという。その後、大野委員長が、このやりとりを理事会で報告し、民主、社民両党も了承した。
2011年
   日韓図書協定
2011年の日韓図書協定について、「国民や歴史に対する重大な背信だ」と批判した。
2012年
   「来年の通常国会において私たちは既に私たちの選挙公約において定数の削減と選挙制度の改正を行っていく、こう約束をしています。今この場でそのことをしっかりとやっていく約束しますよ」発言
2012年11月14日の党首討論で野田佳彦首相が「来年には定数削減する。それまでは歳費を削減する」と言ったのに対し安倍は「来年の通常国会において私たちは既に私たちの選挙公約において定数の削減と選挙制度の改正を行っていく、こう約束をしています。今この場でそのことをしっかりとやっていく約束しますよ」と言って解散したが、逆の立場になった2016年2月19日、野田の質問に対し「政治は結果。定数削減を言うのは簡単だが実際に実行するのはそう簡単ではない」「我が党も責任があるが、共同責任。誰かだけに責任があるわけではない」などと答えた。
2014年
   最高責任者に関する発言
2014年2月13日、自民党の総務会において「最高責任者は私です。私が責任者であって、政府の答弁に対しても、私が責任を持って、その上において、私たちは選挙で国民から審判を受けるんですよ」と発言した。この発言について、自民党の村上誠一郎は「総理の発言は、選挙で勝ったら、拡大解釈で憲法を改正しても、何をしても良いのかと理解できる。その時々の政権が解釈を変更できることになる」と、自民党の船田元は「拡大解釈を自由にやるなら、憲法改正は必要ないと言われてしまう」と、それぞれ意見した。
   消費税10%を延期
11月、「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています。2020年度の財政健全化目標についてもしっかりと堅持してまいります。来年の夏までにその達成に向けた具体的な計画を策定いたします」と発言したが、消費税率が10%に引き上げられたのは2019年10月であり、財政健全化も2020年時点で達成してない。
2015年
   2015年衆議院予算委員会においての野次「日教組どうするの!」
2015年2月23日の衆議院予算委員会において、民主党議員の質問中に、質問内容と全く関係なく「日教組どうするの!」という野次を飛ばし続けた。これについて、「なぜ日教組と言ったかといえば、日教組は補助金をもらっていて、教育会館から献金をもらっている議員が民主党にいる」などと理由を説明した。しかし、後にそれが事実に反することを指摘され、「私の記憶違いにより、正確性を欠く発言を行ったことは遺憾で訂正申し上げる。申し訳ない」と、それが誤りであることを認め撤回した。一方、野次で質疑を遮ったことについては謝罪などのコメントはしていない。
   自衛隊について「わが軍」と発言
2015年3月20日、参議院予算委員会で自衛隊訓練の目的を尋ねられた際、「我が軍の透明性を上げていく、ということにおいては、大きな成果を上げているんだろうと思います」と語った。30日の衆院予算委員会で後藤祐一の質問に対し、安倍は「共同訓練の相手である他国軍と対比するイメージで自衛隊を『わが軍』と述べたわけで、それ以上でもそれ以下でもない」と改めて説明し、「自衛隊の位置づけに関するこれまでの政府見解を変更するものではないし、そのような意図はない」、「軍と呼ぶことは基本的にない」と主張した。また、「言葉尻をとりあげて議論をする意味はあまりない。もう少し防衛政策そのものを議論した方が生産的だ」、「こうした答弁により大切な予算委員会の時間がこんなに使われるならば、いちいちそういう言葉は使わない。ただそれを使ったからどうこういうものではない」と述べた。
   衆議院特別委員会において野次「早く質問しろよ」「大げさなんだよ」
2015年5月28日、衆議院平和安全法制特別委員会において、辻元清美の質疑中に「早く質問しろよ」「大げさなんだよ」とやじを飛ばした。批判を受け、同6月1日の同委員会において「重ねておわび申し上げる。真摯に対応していく」と謝罪した。
2016年
   「デフレ脱却していないがもはやデフレではない」発言
第2次安倍内閣発足後にいわゆるアベノミクスを推進した安倍は、国会内で「もはやデフレではない」とデフレ脱却を主張したが、同時に「デフレ脱却道半ば」と付け加えたため野党議員より意味不明と非難された。
   「私は立法府の長」発言
2016年5月16日、衆議院予算委員会で自身を指して「立法府の長」と発言し、翌17日の参議院予算委員会でも「立法府の私」と発言した。23日の参議院決算委員会で、「もしかしたら言い間違えていたかもしれない」と釈明した。産経新聞社はこの「立法府の長」発言を2016年の国会の名言6位に取り上げた。沖縄タイムスは社説にて、行政府の長を言い間違えたのではなく、何でも可能であるという全能さを表しているのではないか、謙虚さが必要であると批判している。一方、立命館大学教授の大西祥世はこれを、議院内閣制のもとで国会の安定多数を維持している首相の安倍が衆議院・参議院・内閣の「「三位一体」体制の長であるという意味合い」を示す発言であると評した。
   「これまでのお約束とは異なる新しい判断だ。公約違反ではないかとのご批判があることも真摯に受け止めている」
2017年4月の消費増税の再延期について2016年6月、伊勢志摩サミットにて経済リスクを世界のリーダと共有し「世界経済は想像を超えるスピードで変化し不透明感を増している。リーマンショックのときに匹敵するレベルで原油などの商品価格が下落し、さらに投資が落ち込んだことで新興国や途上国の経済が大きく傷ついている」。「現在直面しているリスクはリーマンショックのような金融不安とは全く異なるが、危機に陥ることを回避するため、内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきだと判断した」。「これまでのお約束とは異なる新しい判断だ。公約違反ではないかとのご批判があることも真摯に受け止めている」、「アベノミクス加速か後戻りするのかが参院選の最大の争点だ」と発言。
2017年
   「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」発言
森友問題で2017年2月17日に国会での答弁。2018年、文書改ざん等で佐川宣寿前国税庁長官ら職員20人の処分を公表したが麻生太郎財務大臣も責任を取らなかった。
   「訂正でんでん」発言
2017年1月24日の参院代表質問にて、元民進党の蓮舫議員の発言に対して、「訂正でんでんという指摘は全く当たらない」と云々(うんぬん)を誤読したと思われる答弁をして話題となった。
   「こんな人たち」発言
東京都議選の2017年7月1日に秋葉原駅前での街頭演説で野次に苛立って「皆さんあのように人の主張の訴える場所に来て演説を邪魔するような行為を私たち自民党は絶対にしません。私たちはしっかりと政策を真面目に訴えていきたいんです。憎悪からは何も生まれない。相手を誹謗中傷したって皆さん何も生まれないんです。こんな人たちに皆さん私たちは負けるわけにはいかない。都政を任せるわけにはいかないじゃありませんか」と言ったが菅官房長官は問題は「全くない」「きわめて常識的」だと発言。
2018年
   「エンゲル係数上昇は食生活の変化」発言
2018年参院予算委員会の場で民進党の小川敏夫が安倍の経済政策について、「エンゲル係数が顕著に上がっている」と経済指標から庶民の生活の貧困具合を指摘したが、安倍晋三は「エンゲル係数上昇は物価変動、食生活や生活スタイルの変化が含まれている」「景気回復の波は全国津々浦々に」とアベノミクスによる景気回復を主張した。経済評論家の斎藤満はこれについて、「テストなら0点」「食費は生活の基礎的な部分。支出に占める割合が大きければ大きいほど、生活に余裕がないという指標」「今や外食の単価が下がり、ワンコインでおつりがくることもある。外食費は多くない。安倍や麻生は1万円を超えるステーキを食べに行く金持ちだから、自分と国民の違いが分からない」と答弁について指摘した。
2019年
   「総理なので森羅万象すべて担当している」発言
2019年2月6日、参議院予算委員会において、毎月勤労統計の不正調査問題に関する足立信也の質問に対し、「総理大臣でございますので、森羅万象すべて担当しておりますので…」と発言し話題となった。
   「唯一のミスは大阪城にエレベーターをつけたこと」発言
2019年の大阪サミットのとき、ジョークとして「唯一のミスは大阪城にエレベーターをつけてしまったこと」等と発言したが、「障害者や高齢者を軽蔑する発言だ」と批判された。
2020年
   「募ってはいるが募集はしていない」
2020年1月28日の衆議院予算委員会において、日本共産党の宮本徹による桜を見る会問題に関する質問に対して、「私は、幅広く募っているという認識だった。募集しているという認識ではなかった」と答弁をして話題となった。この答弁に対して宮本は、「私は日本語を48年間使ってきたが、『募る』というのは『募集する』というのと同じですよ。募集の『募』は『募る』っていう字なんですよ」と諭した。
   「春節に際して、多くの中国の皆さまが訪日されることを楽しみにしています」
2020年1月24日、すでに中国では湖北省・武漢を中心に新型コロナウイルスの感染拡大が公に報道されているにも関わらず、在中国日本国大使館の公式HPに中国人観光客の来訪を歓迎する旨の動画メッセージを掲載した。これに対しネット上から疑問視の声が相次ぎ、30日に動画は削除された日本が中国を入国拒否対象に加えたのはそこから2ヶ月以上経過した4月1日である。
   「意味のない質問だよ」
2月12日、衆議院予算委員会で辻元清美が質問の最後に「タイは頭から腐る」と述べたことに対して、質問終了直後に「意味のない質問だよ」とヤジを飛ばした。これに対して野党は抗議し審議が一時中断された。同月17日の衆議院予算委員会で安倍はこのヤジについて謝罪した]。
   「全ての責任は私にある」
4月27日衆院代表質問で特別定額給付金について「もっと早くという批判は私自身の責任として受け止めなければならない。私はこれまでも政治は結果責任であると申し上げてきた。全ての責任は首相である私にある」。  
●人物
   座右の銘
吉田松陰の「至誠にして動かざるもの、これいまだあらざるなり」。「初心忘るべからず」。憲政記念館には至誠(真心)と揮毫している。
   愛読書
古川薫の『留魂録の世界』(留魂録は吉田松陰の著作である)。
   尊敬する人物やファンである人物
幕末期の思想家、吉田松陰を尊敬する。「晋三」の名は、松陰の松下村塾の門下生だった高杉晋作から付けられた。
内閣官房副長官時代に仕えた小泉純一郎、森喜朗を尊敬する対象としている。
石原慎太郎には「政治家にいないタイプ」「つねに挑戦的でかつイケメン」などの理由で嫉妬しており、学生時代には父にあうために来訪した石原に『太陽の季節』文庫本にサインを書いてもらった際にもっと新しいものを買えと全く媚びない言葉を掛けられて憧れを感じている。
   ファッション
寒がりである。クール・ビズの一環である「国会内はワイシャツ・ノーネクタイ」が導入された当初は背広で通していたが、東京新聞の政治ネットモニター調査では、クールビズが似合う政治家第2位となった。2002年、清潔感を大切にしたファッションを心がけていることが評価され、政治経済部門でベストドレッサー賞を受賞。安倍は「いつも私の服をチェックしてくれる妻が受賞したようなもの」とコメントした。
   アーチェリー
大学時代にアーチェリーをしていた安倍は、2005年に全日本アーチェリー連盟の第6代会長に就任している(前任は同じく首相経験者の海部俊樹、父の安倍晋太郎も第4代会長である)。2007年3月25日、連盟から再び会長に推薦され、これを受託したため、14日の理事会で2期目を務めることとなった。首相であるため、職務は副会長が代行することになっている。2006年4月28日のフジテレビのバラエティ番組では、明石家さんまとアーチェリーで対決、その腕前をテレビで初めて披露した。
   ゴルフ
ゴルフも趣味の一つであり、アメリカ留学中も、現地で知り合った友人とプレーしていた。ドナルド・トランプ米大統領や加計孝太郎とゴルフをプレーする仲である。
   野球
少年時代、プロ野球・サンケイアトムズ(現:東京ヤクルトスワローズ)のファンだった。一方で、神戸製鋼所に勤務していたことから「あの会社は阪神ファンじゃなきゃ生きていけない」と冗談めかして語るように、2017年の第48回衆議院議員総選挙では公明党の赤羽一嘉氏の応援に神戸市北区の岡場駅前で行われた街頭演説にて「今日(10月14日)のクライマックスシリーズで阪神タイガースが勝ちました」と発言している。かつてアンチ巨人であったことも公言しており、巨人出身の政治家である堀内恒夫が予算委員会に「初登板」した際には「応援しているチームが痛い目にあい、『本当に憎たらしいピッチャーだ』と思いながらも『この人はすごいな』と思った」と印象を述べた。
   食べ物・調理
かつては寝る前にビデオを見ながら、アイスクリームやせんべいを食べるのが好きだったが、妻の助言でやめた(2017年時点)。(コース料理よりも)自分で注文するアラカルトが好きと、2012年に語っている。得意料理はタバスコ入りの焼きそばと述べている。
   お笑い
お笑いが好きであり、特にタモリのファンでフジテレビ系「ボキャブラ天国」をよく見ていた。これもあり、自らと考えが一部異なる爆笑問題の番組に出演したり、桜を見る会で一緒に写真を撮ったりもしている。
   疾患
国の指定難病の1つである潰瘍性大腸炎を患っており、中学卒業時より悩まされてきた。第1次政権時には病状の悪化に苦悩していたともいわれており、2007年の突然の総理辞任の原因にもなった。
   喫煙
自らの喫煙歴について、「24、25歳ぐらいまでたばこを吸っていて、その後やめた」と打ち明けたうえで、「吸っている時には受動喫煙の立場に立たされる人が不愉快であるとは気づかないが、やめたとたんにそれがよく分かる」と述べた。
関係団体
   安晋会
   日本会議国会議員懇談会
「右派」「保守系」とされる団体では国内最大級の組織であり、安倍と思想的にも近いと朝日新聞で報道された。事務総長の椛島有三、政策委員の伊藤哲夫、役員の高橋史朗は、朝日新聞で安倍のブレーンであると報道されている。安倍は日本会議国会議員懇談会の特別顧問である。
交流関係
週刊誌『AERA』によると、安倍は、小選挙区制度が導入されて二大政党制に近づけば、創価学会は自分から離れてゆくとの判断から、1994年に創価学会と公明党に批判的な宗教団体や有識者で結成された「四月会」(代表幹事:俵孝太郎)の集会などに参加したこともあったと報じられている。また、創価学会に関する自民党の勉強会『憲法20条を考える会』に参加した次の日、自身の選挙区の公明党の大幹部から電話で釘を刺されたことで、政治的野望を持った創価学会が政界での影響力を拡大して行くことを危険視していたという。
首相就任直前の2006年9月22日に極秘裏に東京都内の創価学会の施設で、池田大作創価学会名誉会長と会談を持ったと『日経新聞』・『毎日新聞』・『朝日新聞』・『読売新聞』や『週刊文春』などが報じた。毎日は20日と報道。安倍は池田に父との生前のつきあいについて感謝の意を表し、「参院選での公明党や創価学会の協力を要請」し、池田は「協力を約束した」という。また、「日中関係の早期改善が重要との認識で一致」したという。同月30日には公明党大会に来賓として出席し、祖父も父も「公明党とは交友関係が深かった」として「何か特別な運命を感じる」と語った。
その後、国会で池田と面会した事実があったかという野党の質問に対して、安倍は「そういうことはございません。」と答弁した。2007年2月13日の衆議院予算委員会でも同様に否定した。
   友人
アグネス・チャン / 20代から30代の頃にアグネス・チャンの熱心なファンであった。チャンとは親交がありたびたび食事をともにしている。
加計孝太郎 — 学校法人加計学園理事長 / アメリカ留学時代以来の政治家になる前からの友人である。
家族・親族
先祖に安倍宗任、平清盛、平知盛、佐藤忠信ら。
五世祖父 - 佐藤信寛(政治家)
高祖父 - 大島義昌(軍人・陸軍大将、子爵)
曾祖伯父 - 安倍慎太郎(政治家)
祖父 - 寛(政治家)
祖父 - 岸信介(官僚、政治家・首相)
大伯父 - 佐藤市郎(軍人・海軍中将)
大叔父 - 佐藤栄作(官僚、政治家・首相)
父 - 晋太郎(新聞記者、政治家)
母 - 洋子(岸信介の長女)
兄 - 寛信(三菱商事パッケージング社長。妻はウシオ電機会長牛尾治朗の娘)
弟 - 信夫(岸家へ養子、政治家)
妻 - 昭恵(旧姓・松崎。森永製菓第5代社長・松崎昭雄の長女)
   家庭
妻・昭恵との間に子供はいない。
   岸信夫
実弟の岸信夫が第20回参議院議員通常選挙に立候補した際、安倍は秘書に対して岸の出馬に反対する発言をしたと報道された。当時の秘書は「虚偽の事実を書かれ、地元での声望は地に落ちた」として筆者であるジャーナリストの松田賢弥を訴えたが、山口地方裁判所下関支部は「原告の発言内容がおおむねその通りに掲載されている」として秘書の訴えを棄却した。
系譜
   安倍家
ルーツは平安時代に陸奥国の奥六郡(現在の岩手県内陸部)を治めた豪族・安倍氏一族にあり、 安倍宗任を祖として晋三で44代目であるとしている。山口県大津郡日置村(後に油谷町に分割、現:長門市)の安倍家は、江戸時代には地元の大庄屋を務め、酒や醤油の醸造を営み、やがて大津郡きっての名家と知られるようになった。明治時代になると安倍慎太郎が山口県議会議員に当選し、「安倍家中興の祖」と呼ばれた。慎太郎は地元の名門椋木家から婿養子彪助を迎え入れ、その子である安倍寛は山口県議会議員を経て、1937年に衆議院議員に当選して中央政界へ進出、以降安倍家は山口の地盤を世襲する政治家一家となる。その息子が晋三の父である安倍晋太郎である。岸信介は東条内閣総辞職後に下野して防長尊攘同志会を作った際に安倍寛と親しくなっており、その安倍寛の息子で山口中学と東大の後輩にあたる晋太郎のことをいたく気に入り、娘洋子との結婚を許した。そして慎太郎と洋子夫妻の次男として生まれたのが晋三である。
   佐藤家
安倍晋三の母方のルーツである佐藤家は江戸時代には長州藩士だった家系である。江戸時代最後の当主佐藤信寛は藩の郡奉行筆者役などを務めた信寛の孫娘茂世は山口県官吏だった岸秀助と結婚し、秀助は佐藤家の養子となった。秀助・茂世夫妻の間に生まれたのが晋三の祖父である岸信介(父の実家岸家の養子に入った)、および晋三の大叔父にあたる佐藤栄作の兄弟である。  
 
●言葉遊び国会、劣化政治 2012/4 
これらの言葉は、ここ数十年間で数えきれないくらい聞きました。さらに、近年になり毎週毎日のように見聞きします。まず、色々と書く前に、今回の言葉の中にある政治や国会と言う用語を国語辞典の大辞泉で改めて調べてみますと、次の「」内などが書いてあります。 「政治=1 主権者が、領土・人民を治めること。まつりごと。2 ある社会の対立や利害を調整して 社会全体を統合するとともに、社会の意思決定を行い、これを実現する作用」、「国会= 日本国憲法の定める国の議会。国権の最高機関で、国の唯一の立法機関。衆議院と参議院の 両議院で構成され、主権者である全国民を代表する議員で組織される」
このような用語解説の意味からしても、日本の政治や国会は、本来ならば主権者や選挙権のある国民のためにおこなわなければならないのが、初歩の、基本中の基本でしょう。しかし、 何故、戦後70年近くなっても現実は、そうならないのでしょうか。逆に、悪くなる一方で 「失業者・不安定雇用者の増大」、「中小企業の倒産」、「年金・老後の不安」、 「医療制度の不安」、「過労死」、「格差社会」、「年間自殺者3万人」などの言葉で 象徴されているような状況です。
また、日本の農業だけではなく、 医療、労働、その他、生活や国民が直接関わる多くの分野で不安視されているTPP問題もあります。さらには過去長年に渡る(国民へのだましと金の力によって作られた) 「安全神話」による原発建設推進、その後の福島原発事故によっての放射能被害による惨状など、例を挙げたらキリがないほど重く深く長く国民にのしかかっています。あと、沖縄の普天間始め米軍基地問題も一向に解決する糸口さえ見出せない状況です。
上記のどの問題とっても、可能ならば早急かつ根本的な解決・改善が求められている事項ばかりです。しかし、仮に2009年夏の政権交代以降と限定しても、国会や政治状況は、言葉遊び国会、劣化政治ばかりと国民の目には写ります。なぜ、重大な問題が山積しているのに、こんな言葉が氾濫して、まともな政策実行が先に進まないのでしょうか。これらの件についても多くの人から様々な原因が既に述べられています。まとめてみると、次のことのようです。
1, 小選挙制度そのものから派生している。大政党や有名人(世襲含む)議員に有利な選挙制度のため、国民が(下記事項など)あまり所属政党や議員そのものの実態を知らされないまま投票してしまう。
2, 現在の与党(民主党など)も、野党(以前は与党でもあった自民党など)も基本政策に違いがなく、それは「外交・安保はアメリカの言いなり、内政は大企業の言いなり」という言葉が端的に示している。日本国内に主権もなければ選挙権もないアメリカや大企業奉仕の政治そのものは変わりなかったと言うことでしょう。つまり、両党間の政策の違いは、「カレーライスとライスカレーの違い」でしかなく、その論議の大要は、「根本改善の政策を競い合う討論ではなく、小手先のことばかり、あるいは揚げ足取りの言い合いにしか見えないのではないでしょうか。
3, 重要問題を根本から改善するのではなく大枠は変えないで、国民向けには(そのままでは評判が悪いので)目先だけは変わったごとくの討論に終始し、結局は問題を先送りしている。
4, マスコミも大本の政治を変える流れを報道するのではなく、大臣や有名政治家の言葉尻や言質ばかりを毎日のように取り上げ繰り返すため、真面目な政策論議をしている政治家の姿が国民になかなか見えてこない。
5, 今までの基本政策は変わらないのに、あたかも違った動きのように新党設立や同じ党内での分裂騒ぎなどを必要以上に大きく取り上げるため、何か国民へは目新しいことをするような幻想を振りまく報道となっている。そのようなことから選挙では現行制度の補完勢力にしかなっていない新党などが目立ってしまって、そちらの方へ投票を繰り返した歴史がある。(結局、一時の新党騒ぎは多くの場合、何十年も経ずして無くなっていくのが戦後の歴史だった。
私は、過去も現在も色々と政党や立場の差はあっても与党でも野党でも真面目に国民のための政策を実現しようとしている人もいらっしゃると思います。しかし、そのような議員さんの真剣な議論や政策は面白、可笑しくないのか大抵の場合、言葉遊び国会、劣化政治につながるような報道ばかりが目立っています。中には、そうでない真面目な報道もあることも確かですが、それにしてもまるでお笑い番組みたいに政治が語られる場合も多いです。
言葉遊び国会、劣化政治が続くような状況は、一時は面白・可笑しくても結局は、国民にとってもひいては国全体にとってもいいことではないと思います。先に挙げた諸問題は、もう全てにわたって袋小路状態ですから小手先の、目先の変わったみたいな国民騙しの政策では解決しえない問題ばかりだと思われます。
議員を選ぶ側の国民の目にも、いくら政権交代しても基本政策で同じ政党なら結果は悪くなることや新党騒ぎがあっても結局は根本政治を変えない実態、後でその政党そのものがなくなってきたことも長年の歴史で、しっかり見てきたのではないでしょうか。
昔の方は、「人は言うことよりも、やること見よ」と教えておられます。それは、政治、議員や政党そのものにも当てはまることではないでしょうか。国民の側から「ひたいに汗して真面目に働く人が報われる政策や社会を!」と求める以上、政党や議員の方々へも「面白・可笑しく報道するところよりも真面目に奮闘しているところを見たい」と選挙権行使する側も求めていかない限り、なかなか変わらないような気がします。
言葉遊び国会、劣化政治がなくなり、与野党問わず国民のために地道に奮闘しておられる姿が、日々見えるような状況になれば、大きな諸問題山積の状況下であっても、かすかな将来展望もあるのではないでしょうか。そんな国会、政治、報道を多くの方が望んでおられると思っています。