安倍首相
間違いなく歴史に名を残す素晴らしい首相です
培われてきた日本人の礼節を捨て
独裁 権力
利己 上級国民 主義主張こそが
これからの日本人が持つべき「精神」と
日々の発言と行動で示しています
・・・ 後世に語り継がれるでしょう
施政方針演説要旨・強調点・評価・野党代表質問・安倍政権の問題点・周辺発言・・・ ■総理施政方針演説・枝野代表の代表質問・「安倍政権の問題点」蓮舫・・・ |
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●施政方針演説要旨 | |
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●安倍首相の施政方針演説要旨 ●一、はじめに (1964年の大会と同様)本年の五輪・パラリンピックも日本全体が力を合わせて、世界中に感動を与える最高の大会とする。そこから国民一丸となって新しい時代へと共に踏み出していこうではないか。 7年前、「日本はもう成長できない」という「諦めの壁」に対して(アベノミクスの)三本の矢を力強く放った。わが国はもはや、かつての日本ではない。「諦めの壁」は完全に打ち破ることができた。 ●二、復興五輪 復興しつつある(東日本大震災)被災地の姿を、(海外の人に)実感していただきたい。まさに「復興五輪」だ。 ●三、地方創生 外国人観光客の多様なニーズに応える観光インフラを整え、2030年6000万人目標の実現を目指す。日本の農林水産物の世界への(輸出)挑戦を、力強く後押しする。(地域と継続的に関わる)関係人口を拡大することで将来的な移住につなげ、転出入均衡目標の実現を目指す。 ●四、成長戦略 事業規模26兆円におよぶ経済対策を講じることで、自然災害からの復旧・復興に加え、米中貿易摩擦、英国の欧州連合(EU)からの離脱など海外発の下方リスクにも万全を期していく。 ●五、1億総活躍社会 年金受給開始の選択肢を、75歳まで広げる。75歳以上であっても一定以上の所得がある方には、窓口での(医療費)2割負担を新たにお願いすることを検討する。全ての世代が安心できる「全世代型社会保障制度」を目指し、改革を実行していく。 ●六、外交・安全保障 戦後外交を総決算し、新しい時代の日本外交を確立する。その正念場となる一年だ。 北朝鮮の拉致問題の解決に向けて、条件を付けずに、私自身が金正恩(朝鮮労働党)委員長と向き合う決意だ。 韓国は元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国だ。国と国との約束を守り、未来志向の両国関係を築き上げることを切に期待する。 (ロシアとの)領土問題を解決して平和条約を締結する方針に、全く揺らぎはない。私とプーチン大統領の手で成し遂げる決意だ。 日本と中国は、地域と世界の平和と繁栄に共に大きな責任を有している。新時代の成熟した日中関係を構築していく。 中東地域における緊張の高まりを深く憂慮する。全ての関係者に、対話による問題解決と自制的な対応を求める。自衛隊による情報収集態勢を整え、日本関係船舶の安全を確保する。 ●七、おわりに 国のかたちを語るもの。それは憲法だ。未来に向かってどのような国を目指すのか。その案を示すのは私たち国会議員の責任ではないか。新たな時代を迎えた今こそ、未来を見つめ、歴史的な使命を果たすため、憲法審査会の場で共に責任を果たしていこうではないか。 |
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●安倍首相 施政方針演説 五輪成功に決意 憲法改正議論呼びかけ
安倍総理大臣は衆参両院の本会議で施政方針演説を行い、ことしの東京オリンピック・パラリンピックを「世界中に感動を与える最高の大会」にすると成功への決意を表したうえで、国民とともに新しい時代を切り拓くと強調しました。また、憲法改正については「その案を示すのは国会議員の責任ではないか」と国会の場で議論を進めようと呼びかけました。 はじめに安倍総理大臣はことしの東京オリンピック・パラリンピックについて、「日本全体が力を合わせて、世界中に感動を与える最高の大会」にすると成功への決意を表したうえで、「日本はもう成長できない」とされた「諦めの壁」は、この7年で完全に打ち破ることができたと強調し、「令和の新しい時代をともに切り拓いていこう」と呼びかけました。 ●復興五輪 そして、聖火リレーがかつて原発事故対応の拠点となったサッカー施設、福島の「Jヴィレッジ」からスタートし、浪江町では世界最大級の再生エネルギーによる水素製造施設が本格稼働するなど東日本大震災の被災地で進む復興の状況を説明したうえで、「力強く復興しつつある被災地の姿を実感してもらいたい。まさに『復興五輪』だ」と述べました。 ●観光立国 また、東京大会は地域の魅力を世界に発信する絶好の機会だとして日本が誇る地域文化に触れてもらう「日本博」を開催するほか、IR=統合型リゾート施設の整備については、「高い独立性を持った管理委員会の下、厳正かつ公平・公正な審査を行いながら整備に取り組む」と述べるとともに、2030年に日本を訪れる外国人旅行者を6000万人とする目標の実現を目指すと宣言しました。 ●イノベーション 一方、安倍総理大臣は「第四次産業革命がもたらすインパクトは、経済のみにとどまらず、安全保障をはじめ、社会のあらゆる分野に大きな影響を及ぼす」と述べ、高速・大容量の通信規格、5Gの次の世代にあたる「ポスト5G」や、さらにその先も見据え、大胆な税制措置と予算でイノベーションを力強く後押しする考えを示しました。 ●アベノミクス そして、「新しい経済対策は、安心と成長の未来を切り拓くものだ」と述べ、事業規模が総額26兆円程度の新たな経済対策を講じ、米中貿易摩擦やイギリスのEU=ヨーロッパ連合からの離脱などによる経済の下振れリスクにも万全を期す考えを強調しました。また、「経済再生なくして財政健全化なし」という基本方針を堅持し、引き続き2025年度の基礎的財政収支の黒字化を目指すとしています。いわゆる就職氷河期世代への支援について、「就業を3年間集中で一気に拡大する。あらゆる施策を講じ、意欲、経験、能力を活かせるチャンスを広げる」と述べました。 ●全世代型社会保障 「最大のチャレンジ」と位置づける全世代型社会保障改革については働く意欲のある65歳以上の人たちに70歳までの就業機会を確保し年金の受給開始年齢の選択肢を75歳まで拡大するなど、働き方の変化を中心に据え、改革を進めるとしたうえで、「現役世代の負担上昇に歯止めをかけることは、待ったなしの課題だ」と述べ、年齢ではなく、能力に応じた負担へと見直す考えを強調しました。 ●外交・安全保障 一方、外交・安全保障について、安倍総理大臣は、戦後外交を総決算し、新しい時代の日本外交を確立する正念場の1年だとしたうえで、北朝鮮による拉致問題の解決に向け、条件をつけずに日朝首脳会談の実現を目指す考えを重ねて示す一方、「国民の生命と財産を守るため、毅然(きぜん)として行動していく方針はしっかりと貫いていく」と述べました。 また、北東アジアの安全保障環境が厳しさを増す中、近隣諸国との外交が極めて重要だと指摘し、関係が冷え込む韓国について、「元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国だ。未来志向の両国関係を築き上げることを切に期待する」と述べ、「徴用」をめぐる問題で国際法違反の状態を是正するよう重ねて求めました。 次いで、ロシアとの間で北方領土問題を解決し、平和条約を締結する方針に「まったく揺らぎはない」としたほか、中国については、首脳間の往来に加えてあらゆる分野で交流を深め、新時代の成熟した日中関係を構築していく考えを示しました。 さらに、安倍総理大臣は、ことしが日米安全保障条約の改定から60年の節目となることに触れたうえで、アメリカ軍普天間基地の移設計画の推進とは明示せず、「日米の深い信頼関係のもと、沖縄に駐留する海兵隊のグアム移転に向け、施設整備などを進める」としています。 緊張が続く中東情勢をめぐっては「対話による問題解決と自制的な対応を求める」と述べ、粘り強い外交努力を展開し、自衛隊派遣による情報収集態勢を整え、日本が関係する船舶の安全を確保する考えを重ねて示しました。 一方、地球温暖化対策をめぐり、安倍総理大臣は5年連続で温室効果ガスの削減を実現したと成果を強調し、「アメリカやEUなどの研究機関の叡智を結集し、産業革命以来、増加を続けてきたCO2を減少に転じさせる『Beyondゼロ』を目指す」と述べました。 ●憲法改正 最後に、安倍総理大臣は憲法改正について、「未来に向かってどのような国を目指すのか。その案を示すのは、私たち国会議員の責任ではないか」と述べ、憲法改正の実現に強い意欲を重ねて示し、衆参両院の憲法審査会の場で議論を進めようと呼びかけました。 ● 一方、今回の演説では、総理大臣主催の「桜を見る会」の見直しや野党側が指摘している公文書管理の問題について触れられませんでした。 |
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●「オリンピック」がいっぱい。安倍首相の「夢」がにじんだ施政方針演説 通常国会が1月20日に召集され、安倍晋三首相が今年の政府方針を述べる施政方針演説があった。時間にして約40分。演説の随所には、東京オリンピック・パラリンピックに関する話題が散りばめられていた。 戦後復興の象徴となった1964年大会と、東日本大震災からの「復興五輪」を掲げる2020年大会を重ね合わせつつ、政府方針と五輪ムードを結びつけることで、政権の実行力や政策アピールを演出したいという思いがにじむ内容だった。 一方で、公文書管理のあり方が問われている「桜を見る会」や、自民党の秋元司衆院議員が逮捕されたIR汚職事件、前回の参院選で河井克行前法相・河合案里参院議員が公職選挙法違反の疑いで事務所の家宅捜索を受けた件などには一切触れなかった。 ●「半世紀ぶりに、あの感動が我が国に」と自信 まず演説の冒頭、安倍首相は1964年の東京オリンピックの開会式に言及。その意義について語った。 その上で、今夏に開催される東京オリンピック・パラリンピックで「日本全体が力を合わせて世界中に感動を与える」「国民一丸となって新しい時代へ」など、国民への協力を求める言葉を並べた。 五輪史上初の衛星生中継。世界が見守る中、聖火を手に、国立競技場に入ってきたのは、最終ランナーの坂井義則さんでした。 8月6日広島生まれ。19歳となった若者の堂々たる走りは、我が国が戦後の焼け野原から復興を成し遂げ、自信と誇りを持って、高度成長の新しい時代へと踏み出していく。そのことを世界に力強く発信するものでありました。 「日本オリンピック」。坂井さんがこう表現した64年大会は、まさに国民が一丸となって成し遂げました。未来への躍動感あふれる日本の姿に、世界の目はくぎ付けとなった。 半世紀ぶりに、あの感動が、再び我が国にやってきます。本年のオリンピック・パラリンピックもまた、日本全体が力を合わせて、世界中に感動を与える最高の大会とする。そして、そこから、国民一丸となって、新しい時代へと、皆さん、共に、踏み出していこうではありませんか。 これ以外にも、東京オリンピック・パラリンピックに絡んだ言葉が随所に散りばめられた。 例えば、地方創生に関する部分では「全体で500近い市町村が今回ホストタウンとなります。これは全国津々浦々、地域の魅力を世界に発信する絶好の機会」と訴えた。 また、今春から金融機関の「二重取り」(中小企業の経営者が交替する時、先代・次代の経営者両方から個人保証を取ること)を禁止すると表明した部分では「(1964年に)『東洋の魔女』が活躍したバレーボール。そのボールを生み出したのは、広島の小さな町工場です」と紹介した。 ●「オリンピック開催の本年、戦後外交を総決算する」 外交政策でも、オリンピックを絡めることに余念がなかった。 2019年のNHK大河ドラマ『いだてん』に登場した嘉納治五郎の言葉に触れつつ「オリンピック・パラリンピックが開催される本年、我が国は積極的平和主義の旗の下、戦後外交を総決算」すると胸を張った。 日本が、初めてオリンピック精神と出会ったのは、明治の時代であります。その時の興奮を、嘉納治五郎はこう記しています。 「世界各国民の思想感情を融和し以て世界の文明と平和とを助くる」 オリンピック・パラリンピックが開催される本年、我が国は、積極的平和主義の旗の下、戦後外交を総決算し、新しい時代の日本外交を確立する。その正念場となる一年であります。 総決算の一つとして、安倍首相はロシアとの領土問題(北方領土問題)の解決に言及した。 1956年宣言を基礎として交渉を加速させ、領土問題を解決して、平和条約を締結する。この方針に、全く揺らぎはありません。私と大統領の手で、成し遂げる決意です。 しかし、これは先行き不透明だ。これまで日本政府は歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の「4島返還」を基本方針にしていた。 ところが2018年、安倍首相はプーチン大統領と「1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させる」と合意した。 演説の中の「1956年宣言」とは「日ソ共同宣言」のこと。日本とソ連(現ロシア)が、平和条約の締結後に歯舞群島・色丹島を日本に引き渡すことで同意したものだ。 つまり安倍首相は「4島返還」ではなく日ソ共同宣言で合意した「2島返還」を持ち出すことで、ロシア側の譲歩を引き出そうとし、かつ北方領土への経済協力も推進した。 ところが、プーチン大統領は北方領土問題で妥協は見せていない。とくに返還後に米軍が展開することを警戒しており、道筋は前途多難だ。 ●オリンピックを「憲法改正」にも絡めた 演説の締めくくりで、安倍首相は市川崑監督が手掛けた1964年の東京オリンピックの記録映画を紹介した。 ラストシーンの言葉を引用しつつ、安倍首相は「令和の新しい時代が始まり、オリンピック・パラリンピックを控え、未来への躍動感にあふれた今こそ実行の時」「先送りでは次の世代への責任を果たすことはできません」と前置きした上で、自身の念願である「憲法改正」の話題へと紐付けた。 「人類は4年ごとに夢をみる」 1964年の記録映画は、この言葉で締めくくられています。新しい時代をどのような時代としていくのか。その夢の実現は、今を生きる私たちの行動にかかっています。 社会保障をはじめ、国のかたちに関わる大改革を進めていく。令和の新しい時代が始まり、オリンピック・パラリンピックを控え、未来への躍動感にあふれた今こそ、実行の時です。先送りでは、次の世代への責任を果たすことはできません。 国のかたちを語るもの。それは憲法です。未来に向かってどのような国を目指すのか。その案を示すのは、私たち国会議員の責任ではないでしょうか。 新たな時代を迎えた今こそ、未来を見つめ、歴史的な使命を果たすため、憲法審査会の場で、共に、その責任を果たしていこうではありませんか。 演説の中で安倍首相は、1964年の記録映画は「人類は4年ごとに夢をみる」という言葉で締めくくられていると述べたが、実はこの言葉には続きがある。 実際のラストシーンに映し出される言葉はこうだ。 夜 聖火は太陽へ帰った 人類は4年ごとに夢を見る この創られた平和を夢で終わらせていいのであろうか 果たして、安倍首相の「夢」と、人類・国民の「夢」は一致しているのだろうか。 ●演説を単語レベルで分析すると… Business Insider Japanでは、テキストマイニングの手法で安倍首相の施政方針演説を分析した。 ※「テキストマイニング」とは、単語レベルで文章を分解し「ワードクラウド」や単語の出現頻度などを分析するもの。分析には「ユーザーローカル」のツールを用いた。 一年の政府方針を語る「施政方針演説」ため、動詞では「まいる(〜してまいる)」「創る」「取り組む」などの言葉が目立つ。「新しい時代」は、昨年の改元を意識した文脈で登場した。 ●5回以上登場した名詞は… 最多は聴衆への呼びかけに用いた「皆さん」で21回。東京オリンピック関連の言葉も計19回と登場が多かった(「オリンピック」8回、「パラリンピック」8回、「五輪」3回)。改元後の空気を表現する「新しい時代」は10回だった。 |
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●首相 輸出拡大へ意欲 通常国会召集 生産基盤強化も 第201通常国会が20日、召集された。安倍晋三首相は、施政方針演説で「日本の農林水産物の世界への挑戦を、力強く後押しする」と述べ、農産物輸出の拡大に改めて強い意欲を示した。生産基盤の強化にも言及し、農地の大規模化や牛の増産などを進めるとした。豚コレラ(CSF)などの対策強化に向けて、野生動物や水際の対策を拡充する考えも示した。 首相は、中国への牛肉輸出が再開する見通しになったことや、1日発効の日米貿易協定を活用し、農産物輸出を拡大したい考えを強調。欧州連合(EU)への牛肉や米、環太平洋連携協定(TPP)諸国への乳製品、サツマイモの輸出が増えたとの実績を示し、「販路開拓など海外への売り込みを支援する」と述べた。 一方、農地の大規模化や牛の増産を挙げて「3000億円を超える予算で、生産基盤の強化を進める」と強調した。TPPなどへの国内対策(総額3250億円)を盛り込んだ2019年度補正予算案の早期成立に意欲を示した格好だ。 豚コレラを巡っては、今国会で予定する家畜伝染病予防法(家伝法)の改正で、野生動物対策の法定化などを進める考えを示した。アフリカ豚コレラ(ASF)対策については、同法改正による検疫の強化で水際対策を徹底するとした。 神戸牛やブドウ「ルビーロマン」、米「ゆめぴりか」を挙げて「日本ブランドを、海外流出のリスクから守る」とも述べた。農水省は今国会に、和牛精液や農産物の新品種の海外流出を防ぐ法案を提出する予定だ。 「地方創生」を巡り、地方に移住する若者を応援するため、「移住支援センター」を全国1000の市町村に設置する方針を示した。東京から島根県江津市に移住して就農し、パクチーを栽培する原田真宜さんに触れ、「地方にこそチャンスがある」と語った。 TPP参加国の拡大や、インドを含めた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉を主導する方針も示した。EUを離脱する英国については「速やかに通商交渉を開始する」とした。農政・農協改革については、特に触れなかった。 |
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●施政方針演説で復興五輪成功を強調 「桜」など言及せず 第二百一通常国会が二十日召集され、安倍晋三首相は衆院本会議で施政方針演説を行う。冒頭で東京五輪・パラリンピックに触れて東日本大震災からの「復興五輪」として成功させようと呼び掛ける。改憲は各党に具体案の提示を求め、衆参両院の憲法審査会での議論を促す。重要課題とする「全世代型社会保障制度」の実現に向けて、年金、医療、介護の改革を実行すると表明する。 首相自身が地元支援者らを多数招待して「私物化」と批判を浴びた「桜を見る会」の疑惑や、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)に絡む汚職事件には言及しない。政府が国会から早急な検討を求められている安定的な皇位継承の在り方にも触れない。 東京五輪・パラリンピックについて「日本全体が力を合わせて、世界中に感動を与える最高の大会とする」と強調。東京電力福島第一原発事故により一部区間で運休していたJR常磐線が三月に全線の運行を再開することや、被災地での外国人観光客増などを挙げ、「力強く復興しつつある被災地の姿を実感していただきたい」と訴える。 悲願とする改憲に関しては「未来に向かってどのような国を目指すのか。その案を示すのは、私たち国会議員の責任ではないか」と主張。成長戦略に位置付けるIR政策は「カジノ」や「IR」といった言葉を使わず、「高い独立性を持った管理委員会の下、厳正かつ公平・公正な審査を行いながら、複合観光施設の整備に取り組む」と語る。 全世代型社会保障改革では、年金受給開始年齢を選べる上限を七十五歳に広げると強調。一定の収入がある七十五歳以上の高齢者が病院の窓口で払う自己負担を二割に引き上げる検討を進めると述べる。 外交では、韓国について「元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国だ」と指摘。「国と国の約束を守り、未来志向の両国関係を築き上げることを期待する」と関係改善の必要性を訴える。北朝鮮による日本人拉致問題の解決に向け、日朝首脳会談の実現に重ねて意欲を示す。 沖縄県の米軍基地問題では、普天間飛行場の名護市辺野古移設には直接触れず、「基地負担軽減に一つ一つ結果を出す」と述べるにとどめる。自衛隊の中東派遣については「情報収集態勢を整え、日本関係船舶の安全を確保する」と意義を訴える。 |
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●首相、復興五輪成功を強調 施政方針演説 「桜」「IR汚職」に言及せず 第二百一通常国会が二十日召集され、安倍晋三首相は衆院本会議で施政方針演説を行う。冒頭で東京五輪・パラリンピックに触れて東日本大震災からの「復興五輪」として成功させようと呼び掛ける。改憲は各党に具体案の提示を求め、衆参両院の憲法審査会での議論を促す。重要課題とする「全世代型社会保障制度」の実現に向けて、年金、医療、介護の改革を実行すると表明する。(中根政人) 首相自身が地元支援者らを多数招待して「私物化」と批判を浴びた「桜を見る会」の疑惑や、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)に絡む汚職事件には言及しない。政府が国会から早急な検討を求められている安定的な皇位継承の在り方にも触れない。 東京五輪・パラリンピックについて「日本全体が力を合わせて、世界中に感動を与える最高の大会とする」と強調。 東京電力福島第一原発事故により一部区間で運休していたJR常磐線が三月に全線の運行を再開することや、被災地での外国人観光客増などを挙げ、「力強く復興しつつある被災地の姿を実感していただきたい」と訴える。 悲願とする改憲に関しては「未来に向かってどのような国を目指すのか。その案を示すのは、私たち国会議員の責任ではないか」と主張。成長戦略に位置付けるIR政策は「カジノ」や「IR」といった言葉を使わず、「高い独立性を持った管理委員会の下、厳正かつ公平・公正な審査を行いながら、複合観光施設の整備に取り組む」と語る。 全世代型社会保障改革では、年金受給開始年齢を選べる上限を七十五歳に広げると強調。一定の収入がある七十五歳以上の高齢者が病院の窓口で払う自己負担を二割に引き上げる検討を進めると述べる。 外交では、韓国について「元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国だ」と指摘。「国と国の約束を守り、未来志向の両国関係を築き上げることを期待する」と関係改善の必要性を訴える。 北朝鮮による日本人拉致問題の解決に向け、日朝首脳会談の実現に重ねて意欲を示す。 沖縄県の米軍基地問題では、普天間(ふてんま)飛行場の移設に伴う名護市辺野古(へのこ)への新基地建設には直接触れず、「基地負担軽減に一つ一つ結果を出す」と述べるにとどめる。自衛隊の中東派遣については「情報収集態勢を整え、日本関係船舶の安全を確保する」と意義を訴える。 ●解説 安倍晋三首相は二十日の施政方針演説で、東京五輪・パラリンピックや令和の新時代への期待感を繰り返す一方、首相主催の「桜を見る会」の疑惑や、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業を巡る元内閣府副大臣らの汚職事件には触れず、都合の悪い事実を直視しない姿勢が際立つ。 演説で語らない理由について、政府は「桜を見る会を中止して予算計上していない。捜査中の事件のコメントは控えたい」(西村明宏官房副長官)などと説明。重なる不祥事を覆い隠すかのように、五輪・パラの話題を随所に盛り込んで「夢」や「希望」を強調し、「国民一丸となって新しい時代へと踏み出していこう」と呼び掛ける。 しかし、歴代最長となった長期政権のおごりや緩みが招いた懸案に対し、国民は疑念を募らせる。共同通信の世論調査で、桜を見る会の疑惑を巡り、首相が「十分説明していると思わない」とする回答は86・4%。汚職事件を受けて70・6%がIR整備を「見直すべきだ」と答えている。 「夢や希望」を連呼し、自説を言い募るだけでは国民の理解は得られない。批判にも真摯(しんし)に向き合い、説明責任を尽くす謙虚な姿勢を取り戻さなければ政治不信は高まる一方だ。 |
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●疑惑の説明なし、でたらめな数字、オリ・パラを政治利用 施政方針 日本共産党の志位和夫委員長は20日、国会内で記者会見し、安倍晋三首相の施政方針演説を3点にわたって批判し、昨年の臨時国会に続き野党が結束して徹底追及していくと表明しました。 志位氏は、第一に、「桜を見る会」やカジノ汚職、2人の大臣の辞任について一切言及がなかったと指摘。「安倍首相の責任が直接問われているにもかかわらず、その自覚も、説明を果たそうという姿勢もまったくない。大問題であり、徹底的に追及していく」と表明しました。 第二に、経済について「自画自賛を繰り返したが、挙げた数字がことごとくでたらめだった」と強調。首相が「日本は成長できないという『諦めの壁』は完全に打破できた」と誇ったことに対し、志位氏は、国際通貨基金(IMF)の国内総生産(GDP)成長率の世界順位を挙げ、「第2次安倍政権が発足した2012年は136位だったが、19年は172位と大きく順位を下げている。安倍総裁の任期最後の年、2021年の予想順位は188位だ」と告発。「『諦めの壁』が崩れるどころか、成長できない国にし、『絶望の壁』をつくってしまったのが実態だ」と厳しく指摘しました。 さらに、首相が「来年度予算の税収は過去最高だ」と述べたことについて、「所得税・法人税収は計1兆1980億円減っている。これは景気が悪いということだ。増えているのは消費税収2兆3270億円だ。消費税を増税すれば税収が増えるのは当たり前であり、これを自慢するのは、うそ・でたらめの類いだ」と批判しました。 第三に、「オリンピック」「パラリンピック」「五輪」の言葉を多用し、その数は19回に上ったと指摘。特に、最後の部分で「オリンピック・パラリンピックを控え、未来への躍動感にあふれた今こそ、実行の時だ」とし、憲法改定の話を続けたことについて、「オリンピック・パラリンピックと憲法はまったく関係ない。こういう政治利用を許してはならない。五輪精神をけがすものだ」と力を込めました。 記者からも「桜を見る会」とカジノ汚職、2大臣の辞任に安倍首相が言及しなかったことについて問われました。志位氏は、「桜を見る会」では、安倍首相自身が税金を使い有権者を買収した疑惑や、首相枠でジャパンライフの元会長を招待した疑い、政府が公文書管理法違反を認めたにもかかわらず、「ルールにのっとって適正」だとした虚偽答弁の問題などがあり、「首相自身の責任が二重三重に問われているのに、全くその自覚がなく、説明もしない」と批判しました。 カジノ汚職をめぐっては、「自分が任命したIR担当副大臣が贈収賄容疑で逮捕された。しかも、自ら成長戦略の目玉にすえたカジノでの汚職疑惑であり、首相の責任が直接問われている」と強調。2大臣辞任も、首相の任命責任が問われているのに説明さえ果たしていないと批判し、「あらゆる点で政治のモラル破壊が極まっており、きちんと正さなければ日本の民主主義が壊れてしまう。野党結束して追及していきたい」と述べました。 |
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●安倍首相、6年ぶりに「韓国と基本的価値共有」表現を持ち出した理由は 日本の安倍晋三首相が施政方針演説で韓国について「基本的価値を共有する国」との表現を6年ぶりに使った。しかし、引き続き安倍首相は「国と国との約束を守ることを期待する」と強制動員被害問題は韓国が解決しなければならないという既存の考えに変わりがないことを強調した。施政方針演説は日本の首相が一年の国政方針を明らかにする重要な演説だ。 安倍首相は通常国会開会日である20日に行なった施政方針演説で「韓国は元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国。であればこそ、国と国との約束を守り、未来志向の両国関係を築き上げることを切に期待する」と述べた。安倍首相は2014年の施政方針演説の時まで以前の政権のように韓国を「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」と表現したが、日本軍「慰安婦」問題で対立が深まった後の2015年から「基本的な価値を共有する国」という表現を削除していた。 引き続き文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後の2018年からは「戦略的利益を共有する国」という表現も消して、最高裁判所の強制動員賠償判決後の去年の施政方針演説では韓国について初めから言及しない「無視」までした。基本的価値を共有する国という表現は、韓国が日本と民主主義や法の支配のような基本的価値を共有する国家という意味であり、戦略的利益を共有するという言葉は北朝鮮問題について韓国と日本の協力が必要であるとの意味を内包している。安倍首相が去年の意図的無視から“条件付き”で6年前の表現に戻った背景には、韓日関係のさらなる悪化までは日本も望まないという考えのためと見られる。 しかし、安倍首相演説の強調点は後に登場する「であればこそ、国と国との約束を守り、未来志向の両国関係を築き上げることを切に期待する」という部分だと見られる。日本政府は2018年10月に韓国最高裁(大法院)が強制動員被害賠償確定判決を下したところ、韓国最高裁の判決は1965年の韓日請求権協定違反であり、韓国が国際法を破っており、韓日間の約束は守らなければならないと主張してきた。強制動員被害の問題解決は韓国政府が行うことで、ボールは韓国側にあるという主張だ。安倍首相の演説内容はこのような方針には変化がないという意味だ。 ソウル大学日本研究所のナム・ギジョン教授は「12月の韓日首脳会談で関係回復と(強制動員問題を)対話で解決すると言ったので、その程度に合わせて出したと見ることができる」とし、「日本が『基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国』と韓国を再び表現したため、韓国も強制動員問題を解決せよという圧迫かもしれない」と話した。 恵泉女学園大学のイ・ヨンチェ教授も「東京五輪を控えて韓国との関係を悪化させたくはない。危機管理はする。しかし日本は譲歩しないという意味」として、「焦点は約束を守れという言葉にある」と語った。 北朝鮮に対しては「日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との諸問題を解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を目指す」と述べた。去年の施政方針演説の時に「私自身が条件を付けずに金正恩委員長と向き合う決意であり、あらゆるチャンスを逃すことなく果断に行動する」と述べたが、今回は朝日首脳会談の意志を強調しなかった。朝米対話の停滞による変化と見られる。 安倍首相は現行の平和憲法改正の意志もまた強調した。「国のかたちを語るものは憲法。未来に向かってどのような国を目指すのかを示すのは、私たち国会議員の責任ではないか。新たな時代を迎えた今こそ、未来を見つめ、歴史的な使命を果たすため、憲法審査会の場で共にその責任を果たしていこうではないか」と主張した。 安倍首相は今回の施政方針演説の冒頭部分で「半世紀ぶりに、あの(1964年東京五輪の)感動が、再び我が国にやってきます」と、今年が東京五輪開催の年である点を強調した。 一方、茂木敏充外相はこの日の外交演説で「日韓間の現下最大の課題である『旧朝鮮半島出身労働者問題』(強制動員被害者問題)については、安倍首相から文在寅大統領に対し(昨年末の首脳会談時に)明確に求めた通り、韓国側の責任で解決策を示すよう強く要請するのとともに、問題解決に向けた外交当局間の協議を継続する」と述べた。「竹島(独島)は歴史的事実に照らしても国際法上も日本固有の領土であり、この基本的な立場に基づき冷静かつ毅然と対応する」と述べた。 |
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●安倍首相、韓国を「最も重要な隣国」 施政方針演説で3年ぶりに復活 第201回国会(通常国会)が20日召集され、安倍晋三首相は同日午後、衆院で施政方針演説を行い、憲法改正に改めて意欲を示すとともに、全世代型社会保障改革に関して先送りをしない決意を表明した。外交では、韓国について「最も重要な隣国」との表現を3年ぶりに復活させた。関係改善の意思を示した可能性がある。一方、昨年10月の所信表明演説で触れていた中国の習近平主席の国賓としての来日や、沖縄県普天間基地返還・辺野古移設に関する文言は削られた。 安倍首相は韓国との関係について、「北東アジアの安全保障環境が厳しさを増す中で、近隣諸国との外交は、極めて重要となっている。韓国は、元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国。であればこそ、国と国との約束を守り、未来志向の両国関係を築き上げることを、切に期待する」と強調した。 北朝鮮問題では、「日朝平壌宣言に基づき諸問題を解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を目指す。何よりも重要な拉致問題の解決に向けて、条件を付けずに私自身が金正恩(朝鮮労働党)委員長と向き合う」との認識を示した。 対ロシアでは、「1956年(の日ソ共同)宣言を基礎として交渉を加速させ、領土問題を解決して、平和条約を締結する。この方針に全く揺らぎはない。私とプーチン大統領の手で、成し遂げる決意」と述べた。 中国については、「日本と中国は、地域と世界の平和と繁栄に共に大きな責任を有している。その責任をしっかり果たすとの意思を明確に示していくことが、現在のアジアの状況において、国際社会から強く求められている。首脳間の往来に加え、あらゆる分野での交流を深め広げることで、新時代の成熟した日中関係を構築していく」とした。 一方、通商政策では「自由貿易の旗手として21世紀の経済秩序を世界へと広げていく。欧州連合(EU)から離脱する英国とも、速やかに通商交渉を開始する」と明言した。 安全保障では、「この春から、航空自衛隊に『宇宙作戦隊』を創設する。さらには、サイバー、電磁波といった新領域における優位性を確保するため、その能力と体制を抜本的に強化していく」「日米同盟の強固な基盤の上に、欧州、インド、豪州、ASEAN(東南アジア諸国連合)など、基本的価値を共有する国々と共に、『自由で開かれたインド太平洋』の実現を目指す」と述べた。 中東地域については、「緊張の高まりを深く憂慮する。わが国は全ての関係者に、対話による問題解決と自制的な対応を求める。これまで培ってきた中東諸国との友好関係の上に、この地域の緊張緩和と情勢の安定化のためにこれからも、日本ならではの平和外交を粘り強く展開する」と表明。「エネルギー資源の多くをこの地域に依存するわが国として、こうした外交努力と併せて自衛隊による情報収集態勢を整え、日本関係船舶の安全を確保する」と述べた。 演説の最後には、「国の形を語るもの。それは憲法だ。未来に向かってどのような国を目指すのか。その案を示すのは、私たち国会議員の責任ではないか。新たな時代を迎えた今こそ、未来を見つめ、歴史的な使命を果たすため、憲法審査会の場で、共にその責任を果たしていこうではないか」と呼び掛けた。 社会保障では「年金受給開始の選択枝を75歳まで広げる。在職老齢年金についても、働くインセンティブを失わせることのないよう見直しを行う」、「75歳以上であっても一定以上の所得のある方には、窓口での2割負担を新たにお願いする」と強調。 さらに「社会保障をはじめ、国の形に関わる大改革を進めていく。令和の新しい時代が始まり、オリンピック・パラリンピックを控え未来への躍動感にあふれた今こそ、実行の時だ。先送りでは、次の世代への責任を果たすことができない」と強調した。 財政健全化に関しては、「経済再生なくして財政健全化なし。この基本方針を堅持し、引き続き、2025年度のプライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)黒字化を目指す」と述べた。 |
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●要旨 強調点 | |
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●施政方針演説 安倍晋三首相は通常国会召集日の施政方針演説で、東京五輪・パラリンピック開催年の明るい展望を語り「新しい時代へ踏み出そう」と訴えた。 自民党総裁任期が2年を切り、年内にも衆院解散を探る首相はレガシー(政治的遺産)を意識する。しかし「宴の後」は、短期的には景気下振れリスク、中長期的にはピークへ向かう少子高齢化という現実が待つ。政権の真価は五輪後の対応で問われると言うべきだ。 演説では第2次安倍政権の7年間への自画自賛が目立った。首相は民主党政権当時の「日本はもう成長できないという諦めの壁」はアベノミクスで「完全に打ち破ることができた」と言い切る。 根拠に「経済は7年間で13%成長」などを挙げたが、毎年の実質国内総生産(GDP)成長率は平均1%程度にとどまる。人手不足を背景に雇用は確かに改善したが、国民には豊かになったとの実感はない。 また首相は「引き続き2025年度の基礎的財政収支黒字化を目指す」と言うが、直近の試算は最も楽観的に見ても25年度は3兆6千億円の赤字だ。事業規模26兆円の経済対策を打ち出す一方で、財政再建の熱意に欠けると言わざるを得ない。 そして首相は団塊世代が75歳以上になる22年に向け「全世代型社会保障」が「待ったなしの課題」と表明。一定所得がある75歳以上の医療費自己負担2割、パートなどの厚生年金の適用拡大、70歳までの就業機会確保などを進めると述べた。だが少子化対策や、膨張する介護保険財政改善への具体案は示せなかった。 22年度から急増必至の社会保障費の財源についても、消費税10%以上へのアップを「10年間は不要」としている首相は手当の議論を避けた。これでは国民はサービス低下の不安を強めかねない。 外交・安保では「戦後外交を総決算し新しい時代の日本外交を確立する」と宣言。ところが北朝鮮の拉致問題などは「条件を付けずに金正恩朝鮮労働党委員長と向き合う」。ロシアとの北方領土交渉も「私とプーチン大統領の手で成し遂げる」とした程度で、具体的戦略への言及はなかった。 米国とイランの対立で緊張する中東への自衛隊派遣には野党が中止を求めているが、首相は「情報収集態勢を整え日本関係船舶の安全を確保する」のひと言で済ませた。 ほかにも、脱石炭に後ろ向きだと国際的な批判が強まっている地球温暖化対策について「5年連続で温室効果ガスの削減を実現した」と逆に成果をアピール。東日本大震災の避難者が全国に約5万人いるにもかかわらず、JR常磐線の全面開通や外国人観光の活況を挙げ「復興五輪」を強調したのも違和感が残った。 公費で開かれる「桜を見る会」に首相の後援会関係者が多数招かれた問題では、招待者名簿のずさんな公文書管理が相次ぎ発覚した。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)にも元内閣府副大臣の贈収賄事件で廃止論が再燃。公選法違反疑惑で相次ぎ辞任した2閣僚の任命責任も含め、演説は何の釈明もなかった。 首相は悲願の憲法改正に「案を示すのは国会議員の責任だ」と改めて意欲を示したが、政権の「負の部分」での説明責任が先ではないか。自身が結語で述べた「先送りでは次の世代への責任を果たすことはできない」の言葉をかみしめるべきだ。 |
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●安倍首相、施政方針演説から消えた「デフレ」−2%物価目標は未達成 安倍晋三首相が20日午後に行った施政方針演説から、昨年まで毎回触れていた「デフレ」の文言が消えた。政府と日本銀行が掲げる2%物価目標は未達成のままだ。 昨年の施政方針演説では、バブル崩壊後失われた20年の最大の敵は「日本中にまん延したデフレマインドだった」と指摘。アベノミクスの成果として、「早期にデフレではない状況」を作ったと語った。2018年の演説でも、足元の経済状況について説明した上で、「デフレ脱却への道筋を確実に進んでいる」と述べていた。 12年12月の第2次安倍政権発足以降、首相は臨時国会の所信表明演説で「デフレ」に言及しないことはあったが、年頭の施政方針演説には必ず盛り込んできた。 政府と日銀は13年1月のデフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政策連携で、2%の物価目標の早期実現を掲げた。黒田東彦総裁の下で同年4月以降、大規模緩和を続けてきたが、目標達成には程遠い状況だ。黒田総裁は先月の金融政策決定会合後の記者会見で、目標を堅持し、「早期実現に向けて引き続き大胆な金融緩和を粘り強く続けていくことに変わりはない」と述べた。 |
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●首相 施政方針演説 日韓関係悪化を背景に内容も変化
日韓関係は、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、おととし10月、韓国の最高裁判所が日本企業に賠償を命じる判決を言い渡したことなどを受けて、悪化した状況が続いています。こうしたことを背景に、安倍総理大臣の施政方針演説や所信表明演説での韓国に関する内容も変化してきています。 判決のあと初めて行われた去年1月の施政方針演説では、北朝鮮への対応に関連して、「アメリカや韓国をはじめ国際社会と緊密に連携していく」と述べるにとどめ、日韓関係についての言及はありませんでした。 その後、10月に行われた所信表明演説では、「重要な隣国だ」と述べる一方、徴用をめぐる問題を念頭に、「国際法に基づき、国と国との約束を遵守することを求めたい」と述べました。 そして、今回の施政方針演説で、安倍総理大臣は、「韓国は、元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国だ。であればこそ、国と国との約束を守り、未来志向の両国関係を築き上げることを、せつに期待している」と述べ、国際法違反の状態を是正するよう重ねて求めました。 |
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●首相施政方針演説 全世代型社会保障実現に意欲、改憲議論呼びかけ 第201通常国会が20日召集され、安倍晋三首相が衆院本会議で施政方針演説を行った。首相は、内閣の最大のチャレンジと位置づける全世代型社会保障制度に関し「本年、改革を実行する」と述べて年内に取り組むと表明した。憲法改正については、社会保障など「国のかたちに関わる大改革」の一環として、改憲案を示すことが「国会議員の責任」と訴え、憲法審査会で議論を深めるよう与野党に呼びかけた。 首相は全世代型社会保障改革について、2022年から団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始める中、「現役世代の負担上昇に歯止めをかけることは、待ったなしの課題だ」と強調。一定以上の所得がある75歳以上の医療費の自己負担を、1割から2割に引き上げるなどの検討を進める考えを示した。 科学面では、月面での有人探査などを目指す国際プロジェクトに触れて「人類の新たなフロンティアの拡大に挑戦する」と意欲を示した。技術革新は「経済にとどまらず、安全保障をはじめ、あらゆる分野に影響を及ぼす。国家戦略としての取り組みが必要だ」とし、高速大容量の次世代通信規格(5G)やその先を見据え、税制・予算措置で技術革新を後押しすると述べた。 外交では、韓国について「元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国」と指摘した。元徴用工問題で日韓の主張は平行線だが、関係改善に期待感を示した。習近平国家主席が今春に国賓訪日を予定する中国に対しては、「新時代の成熟した日中関係を構築する」との考えを示した。 緊張が続く中東情勢については「全ての関係者に対話による問題解決と自制的な対応を求める」と表明。中東海域への海上自衛隊派遣の重要性を訴えた。 12年12月の第2次安倍政権発足後、首相の施政方針演説は8回目。与党は22〜24日に衆参両院で与野党の代表質問を行うよう野党側に提案している。 |
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●首相の「台湾」言及に拍手、施政方針演説では異例 安倍晋三首相が20日の施政方針演説で、東京五輪・パラリンピックに参加する選手団のホストタウンとなる自治体とその相手に関し、「岩手県野田村は台湾」と述べると、議場内から大きな拍手が起こった。 日本と外交関係がない「台湾」が施政方針演説に登場するのは平成18年1月20日の小泉純一郎首相(当時)の演説以来で異例。小泉氏は前年の外国人旅行者増の要因として「台湾」に対する査証免除を挙げた。 安倍首相は、東日本大震災後に寄せられた支援に感謝し、選手や関係者らを招いて交流を図る被災地の3自治体を相手国・地域と合わせて紹介。岩手県釜石市とオーストラリア、福島県二本松市とクウェートとともに、野田村と台湾に言及した。 超党派の議連「日華議員懇談会」の幹部は産経新聞の取材に、「習近平国家主席の国賓来日を控えた中国への牽制(けんせい)だ」と語った。 |
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●首相、IRは「観光先進国の実現後押し」と強調 安倍首相の施政方針演説などに対する各党の代表質問が23日午前、参院本会議で始まった。首相主催の「桜を見る会」やカジノを中核とした統合型リゾート(IR)の汚職事件について、首相は改めて陳謝した。 首相は、桜を見る会に自身の後援会関係者らが多数招待されていたことに関し、「真摯しんしな反省の上に今後、私自身の責任において全般的な見直しを行う」と述べ、招待者の選定基準や予算規模などを見直す考えを示した。 IR担当の内閣府副大臣を務めた秋元司衆院議員が逮捕されたことについては「任命した者として事態を重く受け止めている」と語った。その上で「IRは観光先進国の実現を後押しするものだ」と強調した。 また、首相は大学入学共通テストで英語民間試験や記述式問題の導入が見送られたことについて、「公正性の確保を含め、受験生や国民から納得してもらえるものを目指す」と述べ、試験制度のあり方を慎重に検討する意向を示した。 日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が保釈中に海外逃亡した事件については「誠に遺憾だ。同様の事態を招くことがないよう出国時の手続きのより一層の厳格化を図っている」と説明した。 立憲民主党の福山哲郎氏と自民党の岡田広氏の質問に答えた。 |
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●要旨 評価 | |
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●野党、「不誠実」と一斉批判=与党は「堂々たる演説」と評価―施政方針 1/20
安倍晋三首相の20日の施政方針演説について、立憲民主党など主要野党は、首相主催「桜を見る会」やカジノを含む統合型リゾート(IR)をめぐる汚職事件に触れなかったことを「不誠実」などと一斉に批判した。 立憲の福山哲郎幹事長は、桜を見る会などを引き合いに「何ら謝罪も言及もないのはあまりにも不誠実で国民をばかにしている」と非難した。 国民民主党の玉木雄一郎代表は「永遠の道半ばに磨きがかかった演説。そろそろ成果が出てもいいが達成したという話はなかった」と皮肉った。 共産党の志位和夫委員長は「桜の『さ』の字も、カジノ汚職の『か』の字もない。首相自身の責任が直接問われているにもかかわらず自覚が全くない」と訴えた。れいわ新選組の山本太郎代表は首相が憲法改正に言及した点に触れ「失策に目が向かないような選挙の争点づくりを今からやっている」と述べた。 日本維新の会の馬場伸幸幹事長は「自民党が一日も早く憲法改正原案を提案していただくことを期待したい」と語った。 自民党の二階俊博幹事長は「堂々たる発言だった。われわれも懸命に頑張りたい」と強調した。公明党の山口那津男代表は「国会議員に積極的に働き掛ける演説ぶりが印象に残った」と指摘。その上で、2019年度補正予算案などの成立に全力を挙げる考えを示した。 |
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●施政方針演説/空疎に響いた「復興五輪」 長期政権のひずみを謙虚に受け止めず、政治不信を招く懸案に向き合う姿勢はない。東京五輪・パラリンピック成功への意欲だけが先行した。五輪への便乗とみられても仕方あるまい。 第201通常国会がきのう召集され、安倍晋三首相は衆院本会議で施政方針演説を行った。首相周辺は「未来に目を向け、新時代へのスタートを切るとの思いを込めた」と説明するが、昨年と同様に内政・外交の政策課題はこれまでの繰り返しが目立った。停滞感は否めない。 東日本大震災の被災地として注視したのは、震災復興と五輪に関する内容だ。 首相は聖火リレーがJヴィレッジ(福島県楢葉、広野町)で始まることや、東京電力福島第1原発事故で双葉、大熊、富岡3町に設定した帰還困難区域のうち避難指示の一部解除を進めると示した。 宮城や岩手で外国人観光客が増えていることを挙げ、2020年度までの復興・創生期間後も「東北復興の総仕上げに全力で取り組む」と強調。世界の支援に感謝し被災地の姿を発信することを「復興五輪」と位置付けた。 一方で30〜40年は続くと見込まれる第1原発の廃炉作業、たまり続ける放射性物質トリチウムを含む処理水、農産物の風評被害の払拭(ふっしょく)に関しての言及はなかった。 国のリーダーとして、震災から9年近くたっても続く復興課題を語るべきではなかったか。首相が示したのは、「復興五輪」という看板をアピールするための成果の列挙との印象が拭えなかった。 首相は今国会で、全世代型社会保障改革の実現や憲法改正論議の進展に力を入れる方針だ。野党はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)に絡む汚職事件などで、対決姿勢を強めている。 演説では汚職事件のほか、首相主催の「桜を見る会」の問題、英語民間検定試験と国語と数学への記述式問題導入が見送られた大学入試改革に関し、言及を避けた。 政権にとって都合の悪い問題に触れない手法が恒例となってしまった。これでは施政方針演説の体をなさない。 手あかの付いた看板の成果を反復するのは、最長政権の自画自賛でしかない。指摘された疑念に向き合ってこなかった繰り返しが、政権全体のおごりにつながったことを見つめ直すべきではないか。 首相の自民党総裁としての任期は来年9月。悲願とする憲法改正については、改憲案を示すのは「国会議員の責任」と述べた。昨年の「議論を深めることを期待」からやや強め、国会の憲法審査会での与野党の審議を促した。 昨年の国会では野党が求める予算委員会の審議を政府与党が拒むという場面が多く、「1強」の弊害が極まった。改憲論議を国会の責任と言うならば、国会をないがしろにする対応は慎むべきだ。 |
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●「普天間」「辺野古」に触れず 首相の施政方針演説 工期の遅れ影響か 安倍晋三首相は20日に開会した通常国会の衆参本会議で施政方針演説した。沖縄の基地負担軽減に取り組むとしたが、米軍普天間飛行場の返還と、政府方針の名護市辺野古への移設には触れなかった。第2次安倍政権後、首相の施政方針演説は8度目で、普天間返還に言及しないのは初めて。従来は「早期に」「一日も早い」普天間の返還・移設を訴えていた。軟弱地盤改良で新基地の完成が2030年代半ば以降と防衛省が事実上認める中、普天間問題への説明を避けた形だ。 首相は「日米同盟は今、かつてなく強固なものとなっている。その深い信頼関係の下に、2020年代前半の海兵隊のグアム移転に向け、施設整備などの取り組みを進める」と強調。「抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担軽減に、一つ一つ結果を出していく」と述べた。 基地負担軽減に取り組む姿勢は示したものの、普天間と辺野古については直接的に言及しなかった。 過去の施政方針演説では「辺野古移設を進め、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現する」(19年1月)などと表明してきた。 第2次政権後、安倍首相が、臨時国会など当面の政治課題について基本姿勢を説明する所信表明演説で、普天間返還・移設について触れなかったことは4度あるが、内政、外交全般にわたり見解を明らかにする施政方針演説で言及しなかったのは初めて。 今回の演説で沖縄に関する部分は他に、「首里城の一日も早い復元に向け、全力を尽くす」と述べ、焼失した首里城の再建に意欲を示した。 那覇空港第2滑走路が3月に運用が始まることに触れ、「発着枠を10万回以上拡大することにより、アジアのゲートウェーとして、沖縄の振興に取り組む」と決意を示した。 |
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●五輪強調は「疑惑隠し」 首相演説、識者が批判 2020年の通常国会が20日、開会した。安倍晋三首相は施政方針演説で冒頭から東京五輪・パラリンピックを取り上げ「夢」や「希望」を強調したが、首相主催の桜を見る会を巡る問題やカジノを含む統合型リゾート(IR)事業に絡む事件など、数々の疑惑には触れなかった。識者からは「五輪を疑惑隠しに使ってはいけない」「長期政権の弊害だ」と厳しい声が上がる。 「五輪開催を高らかにうたうことで疑惑を隠してはならない」と強調するのはジャーナリストの大谷昭宏氏。「まずは身を正すべきだ」と話す。法政大大学院の白鳥浩教授は「政権が長いほど、すり寄ってくる勢力が出てくる」と指摘した。 |
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●台湾・蔡総統「国会で『台湾』、うれしい」 首相が施政方針演説で言及 台湾の蔡英文総統は20日、ツイッターの公式アカウントで、安倍晋三首相が20日の施政方針演説で「台湾」に触れたことについて「『台湾』という言葉が日本の国会で大きな拍手を浴びたのは実に嬉(うれ)しいことです!」と歓迎した。 蔡氏は11日の総統選で再選を果たしたばかり。施政方針演説を受け、20日夜にツイッターを更新し、「20以上の自治体が台湾選手のホストタウンを希望していたと聞いています。我々も日本にてトレーニングし、競技に参加できるのを楽しみにしています!頑張ろう!東京オリパラ!」と書き込んだ。蔡氏は対日関係を重視し、ツイッターでは日本語でたびたび発信している。 首相は演説で、今年の東京五輪・パラリンピックの際、東日本大震災の被災地のうち29自治体が参加国・地域のホストタウンになると紹介。「釜石はオーストラリアのホストタウンとなります」と述べた後、「岩手県野田村は台湾」と強調し一拍置いた。議場からは「おー」の歓声とともに約5秒間、拍手が続いた。 首相が「台湾」を強調した背景には、香港情勢や新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由に、今春予定の習近平国家主席の国賓訪日に反対する自民党内の一部議員への配慮がある。ただ、「一つの中国」を原則とする中国側からは反発が出る可能性もある。 |
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●韓国紙「基本的価値」共有を評価 首相の施政方針演説 1/20
韓国メディアは20日、安倍晋三首相が施政方針演説で韓国について「基本的価値」を共有する重要な隣国と表現したのは6年ぶりだとして「韓日関係のさらなる悪化は望まないという考えのためとみられる」(リベラル系紙ハンギョレ)と評し、肯定的に受け止めた。 一方、安倍氏が元徴用工訴訟問題などを念頭に「国と国との約束」を守るよう求めたことに関し、ハンギョレや保守系紙の朝鮮日報は従来の日本政府の立場と変化がないことを強調。聯合ニュースも日韓関係が改善に向かうかどうかは「楽観できない状況」だとして警戒を緩めなかった。 |
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●施政方針演説の起業支援で紹介の男性、既に島根県江津市から転居 1/20
安倍晋三首相の20日の施政方針演説で地方創生の好事例として若者の起業支援による移住対策を紹介する中で取り上げられた島根県江津市の男性は、昨年末に県外へ転居していた。市は、国から事前にデータ照会を受けたが、男性のことが演説に盛り込まれているとは知らなかったという。 施政方針演説では、同市が取り組んできた若者の起業支援に触れ、1例として2016年に東京からIターンし、農業の会社を別の男性と共同で起こした男性の実名を挙げて紹介。首相は「地域ぐるみで若者のチャレンジを後押しする環境が(男性の)移住の決め手となりました」と述べた。 一方で関係者によると、男性は昨年末にこの会社を辞め、既に江津を離れていた。個人的な事情という。 市によると、首相が演説で示した市の人口増減のデータなどに関する国からの問い合わせには昨年末に回答していた。 |
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●[施政方針演説] 痛いところ素通りでは 1/21 通常国会がきのう召集され、安倍晋三首相が施政方針演説を行った。 長期政権の実績を強調し、五輪の話題を織り交ぜて明るい展望を述べた。来年9月に自民党総裁任期満了を控え、政治的遺産を意識したのだろう。 ただ、首相主催の「桜を見る会」やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業に絡む汚職事件など政権の懸案には触れなかった。耳の痛いところを素通りしたのでは無責任と言わざるを得ない。 国会論戦を通じて、首相は説明を尽くすべきだ。野党側も問題点を整理して建設的な論戦を挑んでほしい。 東京五輪・パラリンピックについて「世界中に感動を与え、国民一丸となって新しい時代へと踏み出していこう」と訴え、東日本大震災からの復興を世界にアピールしようと呼び掛けた。 だが、避難者が依然、全国に約5万人いることを思えば違和感を拭えない。 さらに第2次政権発足からのアベノミクスや子育て支援、働き方改革で、民主党政権時代の「日本はもう成長できないという諦めの壁」を打ち破ったと自画自賛。社会保障制度改革や成長戦略の実現に向け意欲を示した。 全世代型社会保障制度の構築は、日本の未来を左右する重大課題に違いない。人工知能(AI)などデジタル技術の革新による第4次産業革命に対応する戦略も必要だろう。 ただ、政策を進めるには行政の公平・公正性、透明性に基づく信頼の確保が不可欠だ。 とりわけ、私物化批判を浴びる「桜を見る会」の問題は深刻だ。招待者名簿の廃棄を巡って公文書管理法違反が判明したほか、反社会的勢力らが参加していた疑惑も浮上した。国会の場で真相を解明しなければならない。 元内閣府副大臣の逮捕で汚職事件に発展したIR事業の是非も立ち止まって議論する必要があろう。 安定的な皇位継承策についても言及はなかった。自民党や首相の支持層である保守派に配慮し、女性・女系天皇容認の議論を避けようとする思惑だろうか。疑問が残る。 米国とイランの対立で緊張する中東への海上自衛隊派遣については「情報収集態勢を整え、日本船舶の安全を確保する」と述べるにとどめた。 一方、悲願とする憲法改正については、具体案を示すのが国会議員の責任だとし「憲法審査会の場で、共に責任を果たそう」と呼び掛けた。 施政方針演説は、行政府の長たる首相がチェック機関である議会に政府の基本姿勢を示すものだ。政権の実績や自らが進めたい政策をアピールするだけでは不十分である。 首相が「共に責任を果たそう」と言うのなら、山積する課題に対し真摯(しんし)な議論に応じる姿勢が欠かせない。 |
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●誇示「実績」に疑問続々 台湾言及は歓迎も 安倍首相演説 1/22 安倍晋三首相の20日の施政方針演説のうち、財政再建や地方創生の取り組みを説明した部分で疑問点が次々と浮上している。 長期政権の実績をアピールするため、都合よく事実を切り取ったとの指摘もあり、22日から始まる国会論戦で野党が追及しそうだ。 「日本経済はこの7年間で13%成長し、来年度予算の税収は過去最高となった」。首相は演説でこう指摘し、約63兆円と見込む2020年度の税収に胸を張った。しかし、首相が言及したのはあくまで政府試算の「税収見通し」。景気動向により下方修正することもあり、実績を示すデータとしては不適切とも言える。 首相は「公債発行は8年連続で減額」とも述べたが、年度途中の追加発行を含む決算ベースで見ると16年度発行額は前年度を上回った。菅義偉官房長官は21日の記者会見でこの点を問われ、「当初予算ベースで、ということだ」と釈明した。 地方創生のくだりでは、東京から地方へ移住した成功例として、島根県江津市の男性を実名で紹介した。ところが、一部報道で男性が既に県内にいない疑いが浮上。菅氏は会見で「個人情報」を理由に確認を避けつつ、「江津市に3年以上にわたって居住しており、問題ない」と強調した。 一方、台湾に触れた部分には自民党などから歓迎の声が聞かれた。首相は東日本大震災の際の海外の支援に謝意を表明する文脈で、東京五輪・パラリンピックで岩手県野田村が「台湾」の選手を迎えるホストタウンとして交流を深める予定だと紹介した。 日本と国交のない台湾を施政方針演説で取り上げるのは異例。20日の衆院本会議では、首相がこの部分を読み上げると与党席から拍手が起き、台湾の蔡英文総統はツイッターに「『台湾』という言葉が日本の国会で大きな拍手を浴びたのは実にうれしいこと」と書き込んだ。 |
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●玉城デニー知事「沖縄の思い伝わらず残念」 安倍晋三首相の施政方針演説 1/22 玉城デニー知事は21日、20日に開会した通常国会衆参本会議の施政方針演説で、安倍晋三首相が沖縄の基地負担軽減に取り組むとした一方、米軍普天間飛行場の返還と、政府方針の名護市辺野古への移設には触れなかったことについて「沖縄の思いが伝わっていないのではないか。大変残念」とコメントした。 玉城知事は普天間飛行場の一日も早い運用停止・閉鎖返還と、辺野古への移設に10年以上の時間と予算を要することは、以前から県が主張していることだとした上で「そういうことに一切触れず、基地の負担軽減を進めようとする」と、政府の姿勢を批判した。 また、辺野古への移設工事で、軟弱地盤の改良に伴う設計変更による環境への影響は「当初の計画の予測結果と同程度か、それ以下」とした防衛省の見解に、「あり得ない。(影響は)甚大だ」と述べた。報道陣の取材に応じた。同省は今年の早い時期に設計変更の手続きに入りたい考えで、玉城知事は認めない方針。 玉城知事は「おびただしい数のサンドパイル(砂のくい)を使って地盤改良を行うと、少なからずその海域に環境的な変化は出ると思う」と主張。「どのような影響をもたらすかについて、問題ないと断定するのは考えられない」と述べた。 |
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●消えたパクチー農家について首相「お答え差し控える」 1/23 安倍晋三首相は23日午前の参院代表質問で、施政方針演説で島根県江津市の地方創生の成功例として実名で紹介した男性が県外に転居していたことに関し、プライバシーを理由に説明を避けた。 首相は「江津市の支援を受けて起業し3年以上居住しており、江津市の企業支援の成功例として演説で紹介した。本人に確認して盛り込んだが、演説で記載した内容以外の事柄については個人的な事情などプライバシーに関わり、お答えは差し控えさせていただく」と述べた。立憲民主党の福山哲郎幹事長への答弁。 同市によると、男性はパクチー栽培のため、東京都内から江津市に移住し、農業生産法人を別の男性と共同で起こした。首相は20日の施政方針演説で、同市が「東京から一番遠いまち」と呼ばれていると紹介したうえで、若者の起業支援に力を入れた結果、18年に転入者が転出者を上回ったと説明。「地域ぐるみで若者のチャレンジを後押しする環境が(男性の)移住の決め手となりました」と強調していた。 |
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●「謝らなければ問題にならない」与党からも異論が出る安倍首相の開き直り 1/23 ●国会で提出する法案は「過去最少」の52本に 今年の通常国会が1月20日に開会した。150日間の会期が終わるのは6月17日。その翌日には東京都知事選(7月5日に投開票)が始まる。このため政府は、会期の延長は難しいと判断し、提出する法案を過去最少の52本に絞り込んだ。 開会日の20日には、衆参両院の本会議でそれぞれ40分間ずつ、安倍首相の施政方針演説が行われた。安倍首相は東京オリンピック・パラリンピックについて「世界中に感動を与える最高の大会にする」と述べ、「国民とともに新しい時代を切り拓く」とした。 しかし、私物化が問題視されている「桜を見る会」や、IR(統合型リゾート)事業をめぐる汚職事件、安倍首相が任命した元閣僚の辞任問題については、一切ふれなかった。 これは「安倍1強」の驕りだろう。呆れてしまう。政治とは国民のためにあるということを忘れてはいないか。安倍首相は私たち国民を愚弄している。 野党からは「(桜を見る会などの)問題について何ら謝罪も言及もないのは、あまりにも不誠実で国民をバカにしていると言わざるを得ない。国家社会のあり方についての何らのビジョンも感じられない」(立憲民主党の福山哲郎幹事長)、「桜の『さ』の字もない。安倍首相の責任が問われているにもかかわらず、その自覚がまったくない」(共産党の志位和夫委員長)といった批判の声が上がった。 与党からも「触れなかったのは首相の判断だが、自分であれば違う判断をする」(自民党の石破茂元幹事長)、「国会のスタートは波乱含みだ。桜を見る会の問題に国民は十分な説明が尽くされてないと感じている。IRの汚職事件にも国民の厳しい視線を感じざるを得ない」(公明党の山口那津男代表)という厳しい見方が出ている。 ●真摯な反省や再発防止への決意すら語ろうとしない 安倍首相は1年前の施政方針演説では、厚生労働省などで相次いだ統計不正問題について「国民の皆さまにおわび申し上げる」と謝罪していた。なぜ、桜を見る会やIRの汚職事件に対しては謝罪しないのか。 政府は「会は本年中止し、予算も計上していない。汚職事件の方は捜査中の個別案件だ」(西村明宏官房副長官)と説明するが、こんな説明でだれが納得するだろうか。まだ国会は始まったばかりである。はぐらかすことなく、野党の質問にはきちんと答弁してほしい。 新聞各紙の社説はほとんどが安倍首相の施政方針演説に批判的だ。特に厳しい朝日新聞の社説(1月21日付)は、「通常国会開幕 『説明放棄』は許されぬ」との見出しを付け、こう指摘していく。 「桜を見る会をめぐっては、首相による私物化への批判にとどまらず、招待者名簿の扱いが公文書管理法に違反していたことを政府自身が認めた。『国民共有の知的資源』とされる公文書のずさんな管理は、民主主義の土台を揺るがす。真摯な反省や再発防止への決意すら語ろうとしないのはどうしたことか」 ●「さらりと述べた」という表現にみる朝日社説らしさ 「カジノを含む統合型リゾート(IR)への参入疑惑は、内閣府元副大臣の秋元司衆院議員が収賄容疑で逮捕されたほか、中国企業側が他の衆院議員5人にも現金を配ったと供述するなど、広がりを見せている」 「首相は演説で、問題などないかのように『厳正かつ公平・公正な審査を行いながら、複合観光施設の整備に取り組む』とさらりと述べた。政権が成長戦略の柱に掲げるIRの正当性が根底から問われているというのに、これで国民が納得すると思っているのだろうか」 「真摯な反省や再発防止への決意」は当然であり、「IRの正当性が根底から問われている」との厳しい現実を直視すべきである。「さらりと述べた」という微妙な表現には安倍政権を嫌う朝日社説らしさがみられる。 ●安倍首相は「桜を見る会」の問題を突かれたくない 朝日社説は最後に主張する。 「昨年の通常国会では、参院選への悪影響を懸念した政権の論戦回避が極まり、首相が出席した予算委員会の開会時間は第2次政権下で最短となった。秋の臨時国会も、桜を見る会の追及を振り切るため、政権は幕引きを急いだ」 「あすの衆院の代表質問から国会の論戦が始まる。政権の『説明放棄』を許さぬ、野党の力量が試される」 安倍首相は桜を見る会の問題をよっぽど突かれたくないのだろう。幕引きを急いでいるように映る。この問題の本質は、首相による公的行事の私物化だ。それにもかかわらず、安倍政権は公文書管理という問題にすり替え、官僚の処分という形で幕引きを図ろうとしている。実に情けない政権である。 ●「五輪の政治利用だと言わざるを得ない」 「首相の施政方針演説 五輪頼みでごまかすのか」との見出しを掲げて批判するのは、1月21日付の毎日新聞の社説だ。 毎日社説は「7年間の政権運営をどう総括し、残る任期で何を成し遂げようとしているのか。安倍晋三首相の施政方針演説に具体的な説明はなかった」と書き出し、こう批判する。 「驚いたのは相次いだ政権の不祥事に一言も触れなかったことだ」 「さらに目についたのは、不都合な現実から目を背ける姿勢だ」 「首相は東京五輪・パラリンピックを契機に『国民一丸となって新しい時代へと踏み出していこう』と呼びかけた。高度経済成長下で行われた56年前の五輪と重ね、国威発揚に利用するかのような印象を受ける」 今年夏の五輪と前回の東京五輪とを無理に結び付けている。安倍首相は「復興五輪の成功」との表現も使ったが、これも東日本大震災からの復興と無理やり結び付けているところがある。 安倍首相の言葉には重みがない。そのことは、2006年9月の第1次内閣発足直前、安倍首相が51歳のときに出版した『美しい国へ』(文春新書)を読めばすぐに分かる。この著書の内容は安倍首相が信じる保守主義を強調したものに過ぎず、読者は「何が美しい国なのか」と考え込んでしまう。 最後に毎日社説は書く。 「五輪に乗じて根拠なき楽観ムードを振りまき、国民の目をごまかそうとしているのだとすれば、五輪の政治利用だと言わざるを得ない」 「五輪の政治利用」。安倍首相は桜を見る会だけではなく、オリンピックまでも政権維持に利用しようとする政治家なのである。 ●産経社説も「おかしい」と批判する施政方針演説 1月21日付の産経新聞の社説(主張)も安倍首相の施政方針演説を「おかしい」と批判する。 「政治や行政への不信を招く問題もそうである。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件や昨年10月に公選法違反疑惑で辞任した元閣僚2人らの問題、『桜を見る会』をめぐるずさんな公文書管理への言及を避けたのはおかしい。扱いを誤れば国民の不信が一層増し、国政の停滞を招く。首相はもっと丁寧に国会や国民に語りかけるべきだ」 前述したように、沙鴎一歩は一連の事件や問題について安倍首相が言及しなかったのは、故意的で異常だと思う。不信が増大すれば、国政は停滞する。 しかし産経社説の次の冒頭部分を読むと、その主張が偏っていないかとの懸念も抱く。 「だが、国の基本に関わる皇位の安定継承問題への言及はなく、安全保障の根幹をなす対中政策についての説明は不十分だった。極めて残念だ。国会での活発な論議が必要である」 確かに「皇位の安定継承」も「中国政策」も重要な課題だ。だが、新聞の社説として、その2つばかりを論じていていいのだろうか。新聞としての主張が先に立ち、重要な課題に触れないようであれば、読者もついてこないのではないか。 ●「成長戦略を強化し、生産性を高める狙いは妥当」と評価する読売社説 読み比べてみると、朝日、毎日、産経、日経、東京の各社説はどれも安倍首相の施政方針演説を批判している。批判していないのは読売新聞だけである。 1月21日付の読売社説は「施政方針演説 先送りせず長期的課題に挑め」との見出しを付け、こう書き出す。 「与野党は、日本の将来像を大局的に論じなければならない」 「通常国会が開会した。安倍首相は令和初の施政方針演説で、『社会保障をはじめ、国のかたちに関わる大改革を進めていく』と語った」 「最大の懸案は、人口構造の変化への対応である。団塊の世代がすべて2025年には75歳以上になり、医療費の膨張が懸念される。その後、40年ごろにかけて、生産年齢人口は急減していく」 「将来世代が社会保障の恩恵を受けられるよう、制度の持続性を高める方策が必要となる。高齢者や女性が働きやすい環境を整備することが不可欠だ」 読売社説は社会保障など日本の将来をどうするかということ、つまり国のかたちを国会で議論する重要性を説いている。 そのうえで「成長戦略を強化し、生産性を高める狙いは妥当である」として安倍首相の政治姿勢を評価する。 安倍首相の演説に従って、「憲法の改正を急ぐべきだ」と訴える さらに読売社説は安倍首相の悲願である、憲法改正を取り上げる。 「首相は、憲法改正に関し、『どのような国を目指すのか。その案を示すのは、国会議員の責任ではないか』と指摘した。憲法改正原案の検討を急ぐべきだという考えを示したものだ」 「自民党は既に、自衛隊の根拠規定の追加など、4項目の条文案を示している。各党のこれまでの議論を土台に、立法府として、改正案をまとめる段階にきている」 「国民投票法改正案の審議に手間取り、憲法本体の論議が停滞している現状は看過できない。与野党は、胸襟を開き、憲法審査会を活性化させる必要がある」 読売社説は安倍首相の施政方針演説での主張に従って「憲法の改正を急ぐべきだ」と訴えている。どうしてそこまで安倍首相を支持するのだろうか。 |
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●野党・代表質問報道 | |
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●桜、IR触れず五輪ばかり…国会開幕、首相の説明責任は 1/20
通常国会が20日、開会した。安倍晋三首相が「公私混同」と批判を受けている「桜を見る会」問題や政権が推進してきたカジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐる汚職事件など「疑惑国会」の様相を呈する中でスタートした。 首相は20日に衆参両院の本会議で施政方針演説に立った。 桜を見る会やIR汚職事件、首相が任命した元閣僚の辞任については一切、触れずじまいだったのと対照的に、今年開催される東京五輪・パラリンピックには繰り返し言及。「日本全体が力を合わせて、世界中に感動を与える最高の大会とする」と強調し、「国民一丸となって、新しい時代へと、共に踏み出していこう」と呼びかけた。 しかし、与党内からは続発する問題を危惧する声もあがっている。 公明党の山口那津男代表は20日の参院議員総会で「国会のスタートは波乱含みだ」と指摘。桜を見る会について「国民は十分な説明が尽くされていないと感じている」、IRの汚職事件についても「国民の厳しい視線を感じざるを得ない」と発言した。 この日、公職選挙法違反の疑惑が報じられた自民党の菅原一秀・前経済産業相、公選法違反容疑で事務所が家宅捜索を受けた河井案里・参院議員、河井克行・前法相も国会に登院した。いずれの議員も議員辞職を否定しつつ、詳しい説明をしようとはしなかった。 朝日新聞社が昨年12月に実施した世論調査では、内閣支持率が38%で不支持率は42%。1年ぶりに不支持率が支持率を上回った。自民党総裁の任期は2021年9月で、衆院議員の任期は同年10月。通常国会の展開次第では、政権は求心力を失い、首相が衆院解散に踏み切るかどうかの判断にも影響する可能性がある。 一方、立憲民主党や国民民主党・・・ |
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●官僚怒る 桜を見る会で処分は「トカゲのしっぽ切り」 1/21
「桜を見る会」の招待者名簿などの違法な管理をめぐって内閣府の歴代人事課長が厳重注意となったことを受け、中央官庁で働く官僚たちの間で波紋が広がっている。首相が公的行事に自分の後援会関係者らを多数招いたことが問題視されているのに、「トカゲのしっぽ切り」として官僚だけが責任を問われる格好になったからだ。 「公文書管理法に基づいてしっかりと対応していくことが極めて大事であり、そういう意味で現場の責任者に、そうした対応(厳重注意)をさせていただいた」 菅義偉官房長官は21日の記者会見で、名簿管理をめぐる自身の責任について記者団から問われると、担当者の責任を強調しただけで、自身の責任には言及しなかった。 同会の招待者名簿をめぐっては、2011〜17年度分の管理が公文書管理法に違反していたとして、「文書管理者」だった人事課長5人が厳重注意となった。また、昨年11月に国会提出した推薦者名簿の一部を「白塗り」にする加工をしたとして、現職の人事課長1人も厳重注意となった。 現場の担当者が処分を受ける一方で、トップの首相や菅氏が不問に付されていることに、霞が関の官僚からは疑問の声が上がっている。 財務省幹部は「首相や官房長官・・・ |
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●「疑惑国会」説明避ける安倍首相 党内からも冷めた視線 1/21
相次いだ疑惑をどう説明するのか。国民から厳しい目が注がれる中、通常国会が開会した。ところが、首相は施政方針演説で一切触れず、渦中の議員たちも「捜査中」と口をつぐんだ。野党だけでなく与党内からも批判の声があがり、「疑惑国会」が幕を開けた。 政権に不利な話題には一切触れない――。衆参それぞれ約40分ずつ行った首相の施政方針演説で浮かび上がったのは、首相のそうした姿勢だった。 首相は、夏の東京五輪・パラリ・・・ |
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●代表質問 野党いきなり“辞任要求” 「桜を見る会」「IR汚職」で追及 国会で代表質問が始まりました。「桜を見る会」をめぐり野党が追及です。国会の召集からわずか3日。代表質問で早くも安倍総理に対する辞任要求が飛び出しました。「あなたが疑惑まみれのまま、そのまま地位に留まり続ければ、日本社会のモラル崩壊が続くばかりです。潔く総理の職を自ら辞すことを強く求めます」(立憲民主党 枝野幸男代表) 22日に行われた代表質問。「桜を見る会」をめぐる問題の安倍総理の認識が問われました。「招待者名簿は、野党から資料要求がなされた1時間後に裁断されました。これを“たまたま”などという都合の良い偶然など、多くの方が信じていません」(立憲民主党 枝野幸男代表) 「あらかじめ決めていたスケジュールに従って廃棄したものであり、議員の資料要求と廃棄は全く無関係であると承知しております」(安倍首相) 「正式な公文書の形でなくても、関係官署に名簿が残っている可能性が濃厚。再調査と開示を指示するよう求めます」(立憲民主党 枝野幸男代表) 「招待者名簿については、必要な調査を行った結果、すでに廃棄されていることを確認したものと承知しており、改めて調査を指示することは考えていません」(安倍首相) 焦点の1つとなっている招待者名簿について安倍総理は、「適切に廃棄したものであり、存在を確認するための再調査は行わない」という従来の政府の立場を改めて強調しました。一方、現職の国会議員が逮捕されたIR汚職事件については、「誠に遺憾で事態を重く受け止めている」と述べました。ただ、同時に「観光立国の実現を後押しする」として、カジノを含む統合型リゾート施設事業の推進を続ける姿勢を示しました。 |
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●首相答弁に野党「支離滅裂」 代表質問巡り 野党は22日、「桜を見る会」の問題などが取り上げられた衆院代表質問への安倍晋三首相の答弁に関し「支離滅裂な、つじつまの合わない言い訳を繰り返した」(立憲民主党の枝野幸男代表)と反発した。与党は「桜はもう散ってしまった」(自民党の二階俊博幹事長)と、問題を追及する野党側をけん制した。代表質問を終えた枝野氏は、招待者名簿の再調査や廃棄記録の開示などを首相が拒否した点を「やりたくないという答えでしかなかった」と批判した。憲法改正へ国民の意識が高まっているとの答弁にも触れ「客観的な事実がない」と断じた。 |
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●施政方針演説 地方創生の成功例で紹介 島根の男性、既に転居 安倍晋三首相が二十日の施政方針演説で、地方創生の移住促進策の成功例として紹介した島根県江津市の男性が昨年末に県外へ転居していたことが分かった。北村誠吾地方創生担当相は二十一日の記者会見で「個人的な事情から、現在は江津市を離れている」と認めた。首相は、居住の実態がなくなった事例を取り上げて地方活性化や若者の起業支援の成果を語っていたことになる。菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十一日の記者会見で「男性は三年以上居住していた。演説で紹介するのは問題ない」と強調した。施政方針演説などによると、男性はパクチー栽培に取り組むため、二〇一六年七月に東京から江津市へ移住。市が農地を借りる交渉をして、男性は地方創生交付金の資金の起業支援を受けて就農していた。首相は「地域ぐるみで若者のチャレンジを後押しする環境が移住の決め手になった」と述べていた。江津市によると男性は昨年末に市役所に転居を報告。男性は県外へ移ったが、農業関連事業は継続しているという。市の担当者は「施政方針演説で、男性の話題が使われるとは知らなかった。事前に聞いていたら、別の事例を紹介できたかもしれない」と困惑を隠さない。市に国から昨年末に問い合わせがあり、市の人口増減データなどを提供したが「施政方針演説に使われるとは知らなかった」と話している。 |
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●国会代表質問 首相と野党が攻防 枝野代表は「桜」など追及 国会は、安倍首相の施政方針演説など政府4演説に対する各党の代表質問が始まり、立憲民主党の枝野代表は、「桜を見る会」などについて安倍首相を追及した。立憲民主党 枝野代表「正式な公文書の形でなくても、関係官署に名簿が残っている可能性が濃厚だ。再調査と開示を指示するよう求める」 安倍首相「必要な調査を行った結果、すでに廃棄されていると確認しているものと承知しており、改めて調査を指示した、するということについては考えていない」 さらに安倍首相は、名簿の電子データを廃棄した際のログについても、「セキュリティー上の問題がある」として開示しない考えを示した。立憲民主党 枝野代表「あなたが疑惑まみれのまま、その地位にとどまり続ければ、日本社会のモラル崩壊は続くばかりだ。潔く総理の職を自ら辞すことを強く求める」 一方、国民民主党の玉木代表は、カジノを含む統合型リゾート(IR)をめぐる汚職事件について安倍首相を追及した。国民民主党 玉木代表「IRにからんで自民党の現職国会議員が逮捕されたことだ。言語道断だ」 安倍首相「現職の国会議員が逮捕、起訴されたことは誠に遺憾だ」、「個別の事案の捜査に影響する可能性があることから、詳細なコメントは差し控える」 また、憲法改正をめぐり、玉木代表は、憲法9条に自衛隊を明記する自民党の案が「国会での改憲論議を妨げている」として、取り下げるよう求めた。これに対し、安倍首相は、「問題があるということであれば、御党の案や考え方を憲法審査会の場でご提示いただきたい」と反論した。 |
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●「IR」「桜」野党攻めるも…首相は安全運転 20日の衆院本会議の代表質問で、野党はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の凍結・廃止を訴え、首相主催の「桜を見る会」の問題を改めて追及した。ただ、政府はIRの選定基準に関する基本方針の決定時期を先送りする方向で、安倍晋三首相もこの日は丁寧に議論を進める姿勢を強調し、安全運転でかわした。代表質問で立憲民主党の枝野幸男代表は「今国会はカジノ国会だ。(野党提出のIR整備推進法とIR整備法を廃止する法案を)速やかに成立させるべきだ」と首相に迫った。IRをめぐっては、担当の内閣府副大臣だった秋元司衆院議員が収賄容疑で逮捕されただけでなく、他の自民党議員にも現金授受疑惑が浮上している。野党には、IRを通じて政権を追い込みたい思惑があり、国民民主党の玉木雄一郎代表も「疑惑にまみれたIRの推進を凍結すると宣言すべきだ」と同調。自治体がIRの候補地などを選定する際の前提となる基本方針について「今月にも決定するとのことだが、やめるべきだ」と主張した。これに対し、首相は「高い独立性を有するカジノ管理委員会や国会での議論も踏まえつつ、丁寧に策定作業を進めている」と説明。政府は既に決定を来月以降に先送りする方針を固めており、野党の追及は肩透かしを食らった形だ。枝野氏は首相主催の「桜を見る会」の招待者選定や招待者名簿に関する公文書管理も批判。しかし、政府は国会開会前の17日、招待者名簿を行政文書の管理簿に記載していなかった問題などで歴代の人事課長を処分。首相は昨年の招待者名簿に関する再調査に関して「必要な調査を行った結果、既に廃棄されたと確認している。改めて調査を指示することは考えていない」と述べるにとどめた。答弁中、首相が議場からのヤジを笑顔でかわす一幕もあるなど、この日は安定感が目立った。とはいえ、政権は公選法違反疑惑で辞任した元閣僚2人らの問題も抱えている。代表質問に立った自民党の二階俊博幹事長はこう首相に語りかけた。「政治を行うに際し、大切なことは『謙虚』『丁寧』であり続けることだ」 |
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●首相演説「フェイク」批判も 地方創生成功例は転出、最高税収も暗雲 安倍晋三首相が20日に行った施政方針演説で、正確性に欠ける内容が複数含まれていた。演説では、政府が推進する「地方創生」や「アベノミクス」などの成果について、具体例を挙げて強調したが、誤解を招きかねない表現が散見され、野党からは「フェイク(うその)演説だ」との批判も。通常国会の焦点になる可能性もある。首相は地方創生を巡り、島根県江津(ごうつ)市で若者の移住や起業支援をしたことで転入者が転出者を上回る人口の社会増が実現したと紹介。移住した男性の実名を挙げ「地域ぐるみで若者のチャレンジを後押しする環境が、移住の決め手となった」と言及した。だが現在、男性は江津市に住んでいないことが判明。市は西日本新聞の取材に「家庭の都合で転居された。(起業した会社に)在籍しているかどうか分からない」と答えた。菅義偉官房長官は20日の記者会見で、演説前に本人に確認したとした上で「起業支援の成功例として演説で紹介するのは問題ない」と述べ、男性に関する記述の妥当性を強調した。首相が演説で「来年度予算の税収は過去最高となった。公債発行は8年連続での減額」と述べた部分にも疑問が持たれている。政府が今国会に提出する2020年度予算案では、税収は63兆5130億円と過去最高を見込んでいるものの、あくまで予算上の試算。実際、昨年の施政方針演説で「過去最高」とした19年度予算案の税収は既に下方修正され、20年度予算も修正される可能性がある。「8年連続での減額」とした新規国債の発行額についても、収支が確定した決算ベースでは減額し続けておらず、年度ごとに増減を繰り返している。昨年10月の台風19号の際に「(群馬県の)八ツ場(やんば)ダムが利根川の被害防止に役立った」との演説内容も、正確性を欠く。当時、試験湛水(たんすい)中だった八ツ場ダム単体による防災効果が確認されていないからだ。立憲民主党の中堅は「事実に基づく情報が(首相らに)上がらないのは恐ろしいことだ」と指摘し、政府や首相の姿勢を追及していく構えを見せた。 |
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●「結婚しなくていい」とやじ 夫婦別姓の訴えに、野党批判―代表質問 国民民主党の玉木雄一郎代表は22日、衆院本会議の代表質問で選択的夫婦別姓の導入を訴えた際、場内から「だったら結婚しなくていい」とやじが飛んだと記者団に明らかにした。自民党の女性議員だったと指摘。「非常にショックだった。自民党に任せていたから少子化が止まらなかったんだと改めて思った」と反発した。これに関し、立憲民主党の枝野幸男代表は記者団に、直接やじは聞いていないとした上で、「国会議員としてあるまじき発言だ」と批判した。 |
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●首相、「桜見る会」の私物化否定 カジノ巡り野党と激しく対立 安倍晋三首相は22日始まった衆院代表質問で、「桜を見る会」の私物化疑惑に関し、公選法や政治資金規正法の違反はないと強調した。政府が廃棄済みとする昨年分の招待者名簿の再調査も否定。立憲民主党の枝野幸男代表は、疑惑を隠蔽しているとして辞任を要求した。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)に絡む汚職事件に関し、首相は「現職の国会議員が逮捕、起訴されたことは誠に遺憾だ」と述べたものの、IR推進を堅持する方針も表明。反対する野党と激しく対立した。首相は、桜を見る会を巡り早期に幕引きを図りたい思惑。野党は23日以降の国会論戦でも引き続き追及する。 |
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●国会代表質問“桜”“公選法違反”など追及 国会では、安倍首相の施政方針演説に対する代表質問が行われ、野党側は「桜を見る会」の問題などで安倍首相を追及した。立憲民主党・枝野代表「『桜を見る会』は、後援会の不特定多数に呼びかけて参加者を募ることのできる性格のものなのですか。公職選挙法違反の買収と実質的に何が違うのですか。潔く、総理の職を自ら辞すことを強く求めます」 安倍首相「私の事務所においては、幅広く参加希望者を募り、推薦を行ってきたところであります。(他方)最終的に内閣官房及び内閣府において、取りまとめを行っているところであり、公職選挙法に抵触するのではないかとのご指摘はあたりません」 また、枝野代表が招待者名簿をめぐり電子データの廃棄記録、いわゆる「ログ」の開示を求めたのに対し、安倍首相は、サーバーへの「不正侵入などを助長する恐れがある」として、開示しない考えを示した。2017年までの5年分の招待者名簿が公文書管理法に違反して管理簿に記載されていなかった問題については、「官房長官等から指示や示唆を行ったことはない」と答弁した。また、公職選挙法違反の疑いが指摘されている前大臣らの説明責任については、「今後とも可能な限り説明を尽くしていかれるものと考えている」と述べた。一方、国民民主党の玉木代表は、カジノを含むIR(=統合型リゾート施設)への参入をめぐる汚職事件を受けて、「疑惑にまみれたIR事業の推進を凍結すべき」などと追及した。これに対し、安倍首相は「副大臣を務めた現職の国会議員が逮捕・起訴されたことは誠に遺憾だ」と述べた上で、「IRは観光先進国の実現を後押しするものだ」として、整備を進める考えを示した。また、玉木代表は憲法改正をめぐり、自民党がまとめた自衛隊の明記を含む4項目の条文イメージについて、「問題がありすぎる。憲法審査会での円満な議論のためにいったん取り下げてはどうか」とただした。これに対し、安倍首相は「問題があるというなら、国民民主党の案や考え方を提示してほしい」と述べた。 |
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●総理VS野党「桜を見る会」めぐり代表質問で論戦 国会では22日から安倍総理大臣に対する各党の代表質問が始まりました。「桜を見る会」や閣僚の辞任、IR(統合型リゾート)汚職など山積する問題に総理はどう答えたのでしょうか。 立憲民主党・枝野幸男代表 / 「潔く総理の職を自ら辞すことを強く求めます」 疑惑まみれだと追及するのは、やはり桜を見る会を巡る問題でした。 立憲民主党・枝野幸男代表 / 「詐欺まがいの消費者被害を招いたジャパンライフの山口元会長が『桜を見る会』に招待されていました。山口元会長は招待者区分60番。過去の政府資料によれば、区分60番は総理大臣枠です。(山口元会長は)総理の枠で招待されたのではないですか」 安倍総理大臣 / 「『桜を見る会』の個々の招待者やその推薦元については、個人に関する情報であるため、招待されたかどうかも含めて従来から回答を差し控えさせて頂いているところであります」 立憲民主党・枝野幸男代表 / 「正式な公文書の形でなくても、関係官署に(招待者)名簿が残っている可能性が濃厚です。再調査と開示を指示するよう求めます」 安倍総理大臣 / 「招待者名簿については、文書及び電子ファイルの双方について必要な調査を行った結果、すでに廃棄されていることを確認したものと承知しており、改めて調査を指示することは考えておりません」 立憲民主党・枝野幸男代表 / 「短期間で2人の重要閣僚が辞任に追い込まれました。前法務大臣が検察による強制捜査の対象になるという前代未聞の事態にまで至り、どのように責任を取るのか」 安倍総理大臣 / 「私が任命した大臣が辞任したことは国民の皆様に大変、申し訳なく、任命した者として責任を痛感しております」 立憲民主党・枝野幸男代表 / 「2人が説明責任を果たしたと受け止めているのか認識を伺います」 安倍総理大臣 / 「一人ひとりの政治家が自ら襟を正すべきであり、今後とも指摘に対しては可能な限り説明を尽くしていかれるものと考えております」 国民民主党・玉木雄一郎代表 / 「まず、聞かなければならないのは昨年末、IRに絡んで自民党の現職国会議員が逮捕されたことであります。総理は国民の皆さんにおわびをし、疑惑にまみれたIR事業の推進を凍結すると宣言すべきではないですか」 安倍総理大臣 / 「副大臣も務めた現職の国会議員が逮捕・起訴されたことは誠に遺憾です。かつて副大臣に任命した者として事態を重く受け止めておりますが、個別の事案の捜査に影響する可能性があることから詳細なコメントは差し控えます」 |
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●首相「家族で楽しめるIR」 カジノ利権批判に ●玉木氏「レコードで言えば、私はB面」 代表質問で安倍晋三首相に対し、経済政策や外交政策を中心に姿勢を問うた国民民主党の玉木雄一郎代表。本会議後、一連の疑惑追及に質問時間を割いた立憲民主党の枝野幸男代表との「役割分担」について記者団に問われた。玉木氏はレコードに例え、「昔で言うと、A面・B面。同じことを言う必要がない。それぞれが持ち味を出しながら、行政監視機能と提案機能の二つを果たしていくことが大事だ。今日はうまくそれができた」と振り返った。玉木氏自身はA面なのかB面なのか問われると、笑ってこう返した。「私は常にB面だ」 ●野党への責任転嫁 それこそ「印象操作」では 安倍晋三首相が1カ月半ぶりに国会で答弁に立ちました。自身が主催する「桜を見る会」の問題をめぐって野党代表から追及を受けましたが、その答弁からは責任を転嫁するかのような「巧妙さ」を感じました。「長年の慣行の中で行われてきたことであり、招待者の基準があいまいだった結果として、招待者の数がふくれあがってしまった実態がある」 立憲民主党の枝野幸男代表の質問に対し、首相はこう述べました。桜を見る会に自身の後援者らが大勢出席していた問題は、「長年の慣行」が原因かのような答弁ぶりでした。会の支出は安倍政権下の14年から右肩上がりとなり、19年には倍近くの5519万円となりました。「長年の慣行」は、招待者が増えるのを許してきた環境について説明しているに過ぎず、安倍政権下でなぜ招待者を増やしたのか、という理由を答えているとは言えません。また、会の招待者名簿を「管理簿」に記載していなかった問題では、首相がたびたび「悪夢のような」とやゆする旧民主党政権を持ち出しました。前政権下の名簿管理をめぐり、首相はこの日、「11年と12年は桜を見る会自体は中止されたが、招待者名簿はその時点の完成版が存在していたとのことだ。当時も管理簿に登録せずに廃棄された」と指摘。「この措置を前例として漫然と引き継いだ」と答弁しました。 ただ、会が開かれなかった年を「前例」としたとの説明には、不自然さを感じざるを得ません。安倍政権は桜を見る会の招待者名簿について再調査を拒み続けています。一方で、10年近く前の民主党政権下の内部の状況については詳しく調べて首相が説明する姿にも、違和感を覚えます。首相は野党議員の前のめりな追及に「印象操作だ」と反論することが多々あります。政権の体質や姿勢を問われている問題から自身を遠ざけるような答弁姿勢も、ある種の「印象操作」といえるのではないでしょうか。 ●首相答弁、枝野氏「支離滅裂だった」 代表質問に立った立憲民主党の枝野幸男代表は本会議後、「桜を見る会」「IR汚職」「2閣僚辞任」をめぐる安倍晋三首相の答弁について「支離滅裂、論理的整合性のとれないむちゃくちゃな答弁しかできなかった。大変残念に思っている」と批判した。「これから補正予算、本予算の審議を通じて、同僚議員がしっかりと細かく、その矛盾を皆さんの前に明らかにしていく」と続け、追及し続ける構えを強調した。国会内で記者団に答えた。 ●二階氏「桜、もう散った」 追及続ける野党を批判 「あちらの方々はあんなことばかりずっと続けて言っている。桜ももう散ってしまった」 衆院本会議終了後、代表質問に立った自民党の二階俊博幹事長は国会内で記者団の取材に応じ、「桜を見る会」をめぐる立憲民主党の枝野幸男代表の質問をこう揶揄(やゆ)した。その上で、「早くこの問題から次の建設的な問題に議論を移していかなきゃだめだ」と語った。 ●初日の論戦終了 23日の「バッター」は 通常国会の衆院代表質問は、初日の論戦が終わった。23日も午前に参院本会議で代表質問があり、午後には衆院本会議で代表質問の続きが行われる。衆院では公明党の斉藤鉄夫幹事長、共産党の志位和夫委員長、日本維新の会の馬場伸幸幹事長が質問する予定。参院は立憲民主党の福山哲郎幹事長、自民党の岡田広参院議員副会長が「バッター(質問者)」として登壇する予定だ。 ●首相「問題あるなら案出して」 改憲論議で玉木氏に 安倍晋三首相は、自民党がとりまとめた憲法9条への自衛隊明記などを含む改憲4項目について、「自民党の案はあくまでたたき台。これに問題があるというのなら、御党の案や考え方を憲法審査会の場でご提示いただきたい」と語った。質問した国民民主党の玉木雄一郎代表に対して、憲法改正に向けた議論に乗るよう呼びかけた形だ。玉木氏は質問で「条文イメージ案を取り下げてはいかがか」と求めていた。 ●習氏「国賓」の意味、首相が説明 安倍晋三首相は、中国の習近平(シーチンピン)国家主席が今春に「国賓」待遇で訪日する予定になっていることについて「日本と中国は地域や世界の平和と繁栄にともに大きな責任を有している。習主席の国賓訪問もその責任をしっかり果たすとの意思を内外に明確に示す機会としたい」と述べた。国民民主党の玉木雄一郎代表が国賓待遇について「日本の主権に対する挑戦を含め、中国の覇権主義、国際法や民主主義の基本的価値やルールに反する行動を容認するという誤ったメッセージを送ることにならないか」と質問したのに対し、答えた。首相は「ご指摘のものも含め、様々な懸案が存在している」と玉木氏の問題提起に一定の理解を示しつつ、「こうした懸案については、これまでも私から首脳会談などの際に中国側に提起している。引き続き主張すべきはしっかりと主張し、中国側の前向きな対応を強く求めていく」と強調。外交交渉で問題解決を図っていく考えを示した。 ●ジェンダーギャップ、首相「道筋ついた」 国民民主党の玉木雄一郎代表は安倍晋三首相に対し、ジェンダーギャップ(男女格差)についての見解もただした。世界経済フォーラム(WEF)の2019年の報告書で、日本が153カ国中121位で過去最低だったことを取り上げた。日本政府の「2020年までに指導的地位にある女性の割合を30%に増やす」という目標について、玉木氏は首相に対し、「(目標に)達していない現状をどう考えるか」とただした。首相は「この7年間で上場企業の女性役員は3倍以上に増えた。政権交代前と比べて増加のペースは4倍となっている」などと答弁。「30%目標の実現に向けた道筋」がついたとして、「早期の実現に向けて、政府一丸となって女性活躍施策に全力で取り組んでいく」と強調した。 ●カジノ汚職「任命者として重く受け止める」と首相 安倍晋三首相は、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐって内閣府元副大臣の秋元司衆院議員が収賄容疑で逮捕された問題について、「かつて副大臣に任命した者として事態を重く受け止めている」と述べた。ただ、「個別の事案の捜査に影響する可能性がある」としてそれ以上の論評は避けた。IRの整備について、首相は「国民的な理解が大変重要」と指摘。政府が1月中としてきた決定時期の先送りを検討しているIRの基本方針については、関係省庁やカジノ管理委員会での調整に加えて「国会での議論」を挙げ、「丁寧に策定作業を進めている」と説明した。国民民主党の玉木雄一郎代表の質問への答弁。 ●玉木氏と枝野氏「スタイル」の違い、共闘に課題 国民民主党の玉木雄一郎代表の質問は、党が掲げる政策を立て続けに政府にぶつけていく「提案型」でした。選択的夫婦別姓や国民投票のCM規制のほか、住宅の断熱性向上のためのアルミサッシから木製サッシへの転換も訴えました。同党は「家計第一」をスローガンに掲げています。同党と同様に旧民主党の流れをくむ立憲民主党も、「分配」を重視します。二つの党は政党合流こそ実現しませんでしたが、理念・政策で重なり合う部分は少なくありません。今国会で二つの党が共闘していく上で課題となるのは、「スタイル」の違いではないでしょうか。それは、この日の代表質問でも見て取れました。立憲の枝野幸男代表が桜を見る会の問題などで「追及型」の質問を織り交ぜたのに対し、玉木氏はほぼ一貫して「提案型」でした。過去の国会では、「徹底抗戦」戦術をとる立憲に国民が反発し、特に参院側で足並みが乱れることがありました。二つの党は昨年の臨時国会に続き、統一会派としてこの国会に臨んでいます。政党合流が見送られた中、巨大与党に対峙(たいじ)するための結束力を発揮できるかが課題となりそうです。 ●習氏の国賓待遇、「誤ったメッセージに」 国民民主党の玉木雄一郎代表は、中国の習近平(シーチンピン)国家主席が今春に「国賓」待遇で訪日する予定になっていることをめぐり、「誤ったメッセージ」になりかねないとの懸念を示した。玉木氏は代表質問で、「安倍首相が国賓待遇で接遇することで、中国に対し、世界に対し、日本の主権に対する挑戦を含め、中国の覇権主義、国際法や民主主義の基本的価値やルールに反する行動を容認するという誤ったメッセージを送ることにならないか」とただした。習氏の国賓訪問には自民党内からも批判が出ている。 ●「だったら結婚しなくていい」とヤジか 夫婦別姓の質問中 国民民主党の玉木雄一郎代表は代表質問で「夫婦同姓も結婚の障害になっている」として、選択的夫婦別姓の導入を安倍晋三首相に求めた。その際、議場から声があがり、玉木氏は質問を続ける中で「今、ヤジで『だったら結婚しなくていい』とそういう話がありました」と指摘。「でも、結婚数や結婚率をあげていくことが、国難突破の少子化対策になるんじゃないでしょうか」と呼びかけた。用意した原稿にはなかった表現で、壇上から反論した格好だ。玉木氏はまた、若い男性から「交際している女性に『姓を変えないといけないから結婚できない』と言われた」という相談を受けたことも紹介した。 ●玉木氏「疑惑まみれのIR」凍結を要求 「言語道断。疑惑にまみれたIR事業の推進を凍結すると宣言すべきではないか」 この日の代表質問で3番目に登壇した国民民主党の玉木雄一郎代表は、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐり内閣府元副大臣の秋元司衆院議員が収賄容疑で逮捕された問題をとり上げた。IRの整備地域を選ぶ際の基準を示す基本方針について、玉木氏は「今月にも決定するとのことだが、やめるべきだ」と指摘。政府は1月中としてきた基本方針の決定時期の先送りを検討している。IRをめぐっては、この日最初に質問に立った立憲民主党の枝野幸男代表も取り上げ、政権の姿勢を批判。安倍晋三首相は枝野氏への答弁で「IRはカジノだけではない」と述べ、大型ホテルなども併設する計画であることを念頭に「家族で楽しめるエンターテインメントとして観光先進立国の実現を後押しするものだ」と強調した。 |
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●安倍首相「正々堂々と政策論争を」 きょう22日から各党代表質問スタート 安倍晋三首相は22日午前、施政方針演説など政府4演説に対する各党の代表質問が同日午後に衆院本会議で始まるのを前に「新しい時代の日本をどうするのか、堂々と政策論争を行いたい」と述べた。首相官邸で記者団に語った。 各党の代表質問は今通常国会で初の党首級の論戦。立憲民主党の枝野幸男代表は、首相主催の「桜を見る会」のあり方や、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件を重点的に追及する。枝野氏に続き、自民党の二階俊博幹事長、国民民主党の玉木雄一郎代表も質問に立つ。23日は衆参両院、24日は参院で代表質問を実施する。 |
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●「桜」で安倍首相VS野党の直接対決 ●桜を見る会めぐり安倍首相と野党が全面対決 攻防のみどころは 「ヒアリングに出てこない人事課長について、私の部屋に来ることになっていたんですけれども…すっぽかされました」 「人事課に電話すると誰もいない。人事課長の携帯番号もわからんと。誰一人どこに行っているかわからない。ここまで来ましたからね。課長補佐電話に出てくださいといったら拒否。総理案件なんだからでしょうかね。立法府の要請に神隠しのようなことをやっている。すさまじいですよね」(立憲民主党 黒岩宇洋衆議院議員) あきれ…いら立ち…官僚に向けられたこの言葉は、野党の「桜を見る会追及本部」での出席議員の発言だ。このように追及本部では毎週のように野党と政府の攻防が繰り広げられている。しかし、実際には政府側にのらりくらりとかわされている印象だ。 追及本部での議論が停滞しがちな中で、真相解明の場として注目されるが、やはり国会だ。特に注目されるのが、本会議での代表質問に続いて来週月曜から行われる予算委員会だ。ここで野党と安倍首相が丁々発止のやり取りを繰り広げることになるが、野党がどのように追及し安倍首相はどのように答えるのか。攻防の見どころをまとめた。 ●みどころ1 ずさんな公文書管理 いったいなぜ? 野党側が最近特に追及を強めているのが、ずさんな文書管理の問題だ。この問題では2011年から17年にかけての名簿が、文書管理のルールに則って管理簿に記載されていなかったことが判明。政府側は民主党政権時代の前例が漫然と引き継がれたと説明している。これに対して野党は、当時の桜を見る会は東日本大震災の影響で中止されていると指摘、中止になった会の前例をそのまま引き継いだのはおかしいなどと反論している。 また去年11月に政府が国会に提出した文書では、一部の資料が「白塗り」すなわち消されていたことも判明。政府側は人事課長の判断でありきわめて不適切だったとしつつも、あくまで担当者ベースの問題だと主張、一方の野党側は意図的な隠ぺいだとして政府を追及している。こうした文書管理の問題に安倍首相がどう答弁するかが注目だ。 ●みどころ2 60番の謎、“総理枠・昭恵夫人枠” “60−2357”という数字。これはマルチ商法を展開して破綻した「ジャパンライフ」の元会長に2015年に送られたとされる桜を見る会の招待状にふられた数字だ。過去の資料を元に野党は60番が「総理枠」だと主張、桜を見る会の招待状でマルチ商法の被害が拡大したと追及している。しかし政府側は名簿や資料がすでに廃棄されているとして、明確には認めておらず、誰が呼ばれたかは「個人情報で答えられない」という立場だ。安倍首相が国会答弁でこの総理枠についてどのように説明するかも注目だ。 野党側はまた、後段の「2357」の数字は、1番から順番の通し番号になっているのではないかとして調査を要求したが、政府側は明確な説明をしていない。政府側は、去年の総理枠について1000人程度としているが、野党側はこの数字の大きさから、総理枠が数千人だった可能性があると指摘していて、この点も国会で追及するとみられる。 ●みどころ3 名簿は本当に削除・廃棄されたのか こうした多くの疑問の根幹といえるのが、「名簿は本当に残っていないのか」という問題だ。それは名簿や資料が出てこなければ多くの問題が結局は手詰まりになるためだ。政府側の説明によれば、去年5月に名簿などの資料はシュレッダーにかけられ、データも同じ時期に削除された。野党側は廃棄の経緯が不自然すぎるとして、本当に消したのかデータ削除のログなどを提出するよう要求しているが政府側は「これ以上の調査は必要ない」と応じていない。野党側はまた「政治枠」の名簿などを1年以内に廃棄すれば、翌年誰を呼んだかもわからなくなる、不自然だとも主張。本当は名簿が残っているのではないかと疑っている。 このほかにも、安倍首相夫妻が出席した地元後援者向けの「前夜祭」や、昭恵夫人と関連するとされるケータリング会社の選定の問題など、桜を見る会には多くの論点が残されている。 ●首相の答弁姿勢は?野党の追及どこまで?問われる「政治への信頼」 これまで政府側は「記録が残っていない」「個人情報で答えられない」「担当者の記憶が不明瞭」などという答弁を、判を押すように続けている。国会論戦の焦点は、久々に予算委員会でこの問題で答弁に立つ安倍首相が「対決姿勢」なのか「身かわし戦術」なのか、どのような姿勢で論戦に応じるかだろう。また、「桜を見る会」の見直し策の検討を進めることで批判をかわすことも考えられる。 一方で、安倍内閣の支持率を見ても、一時は桜を見る会や閣僚の相次ぐ辞任などで下落傾向となったものの、下げ止まったり反転したりと、現時点で危機的な状況になってはいない。 対する野党の政党支持率もこの問題で浮上したとは言えない水準だ。これは安倍政権が一連の問題に説明責任を果たしたというよりも、野党側が現政権に代わる受け皿として期待を受けられていない表れに思える。 さらに、この問題を追及すれども名簿や新たな事実などが出てこなければ、桜を見る会の問題の追及はいずれ限界を迎え下火になることが予想される。その中で追及が長期化すれば「桜よりも政策論争をすべき」という声も強まるとみられ、ある野党幹部も「問題には旬がある。いつまでも続けられるわけではない」と認めている。 去年の参議院選挙ではれいわ新選組やNHKから国民を守る党の議席獲得が大きな話題となったが、桜を見る会をめぐる政府与党の不十分な説明と、野党の進展のない追及が続けば、 既存の与野党ともに国民からの大きな不信を招き、次の衆議院総選挙に向けて既存勢力とは異なる勢力の台頭につながるかもしれない。 いずれにしろ、時の政権与党の「特権性」という要素をはらみ、「文書管理」という民主政治の根幹につながっているこの桜を見る会の問題の行方は、政府・与党・野党、すべての当事者にとって「政治への信頼とは何か」という問題を突き付けているように思える。 |
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●二階幹事長ぶら下がり(代表質問を終えて) 国土強靭化の重要性について安倍内閣そのものがそのことに対して大変理解をお示しいただいたというふうに思っております。そして特に国民の生活その他困難に直面されている、そういう人々に対してしっかりと支援ということの呼びかけに対しても、政府もそれに対して理解をお示しいただいたということであります。経済・外交の重要問題については、温もりのあるしっかりとした御答弁をしていただきまして、おそらく関係者は満足していただいたのではないかと思います。普段見過ごされがちな弱い立場の方々もいわゆる困難に寄り添って、そこに政治の光を当て続けていくということが自民党の政治だということをご理解いただきたいという思いがあるわけでありますが、このことは、総理をはじめ、関係者の皆様にも理解していただけたと思います。 ● Q TBSです。憲法改正について、憲法については国会が発議するというものでありながら、あえて今回総理に質問されたというのはどういった点でしょうか。. A やはり、憲法改正は常に国民の皆さんの理解・関心を求め続けていかなければならない課 題ですから、私も短いセンテンスではありましたけれども、折角の機会ですから、一言憲法改正について触れさせていただいたということであります。また、どうせ機会があるでしょうから、憲法問題、或いは憲法改正の問題、そのことに特化して、そのことに集中してまた党内でも大いに議論していきたいと思います。. Q NHKです。幹事長が今お答えいただいた中で、総理の答弁で、日中関係について明確にお話がありました。これについて幹事長はどのようにお考えられましたか。. A まあ、お互いに段々と理解を寄せ合って日中関係というのは、他の外交諸案件と比べて遜色がないというか、寧ろ、重要性が増しておる問題ですね。地理的な条件、そして相手国の国土の広さ。そして国際社会における地位。そうしたことを考えると、中国問題、日中関係、極めて今後も重要であることには変わりない。そういう意味で、我々はしっかりした対応をしていかなきゃいけないという気持ちであります。. Q 読売新聞です。日中関係の案件で、習近平国家主席が来日されるということで、自民党の中でも、一部で国賓来日について、尖閣の問題も含めて迷っている一面もありますが、幹事長はこの点についての見解をお願い致します。 A 世界の中での大国の一つである中国の国家主席が来日されるということは、国民を挙げて歓迎をするということが大事であって、些末なことで色んな議論をすることはどこの国にもありますし、特に日本にはそういう人は、まあまあいるわけですから、それはそれでよくお聞きしたら良いんじゃないですか。. Q 朝日新聞です。憲法の話に戻りますが、常々おっしゃられているように拙速な議論を避けるようにというようなご指摘が今回もありました。総理は期限ありきではないというふうにしつつ、参院選世論調査で国民的意識が高まっている、と国会での議論の進展を期待するような答弁でしたが、これについてはどのようにお聞きになられたでしょうか。 A 当然これはずっとずっと先に延ばしていいというものではありませんから。できるだけそうした議論を始めていくということですね。期限を決めないで始めていくということが大事だと思います。ですから、今、スタート台に立つということに対してお互いの認識が一致した、そういう国会ではないかと思います。. Q テレビ朝日です。ご質問の中で最後に、政治を行うに際し大切なことは謙虚に丁寧にあり続けることとおっしゃいました。特に総理からそれについて言及がありませんでしたが、野党の席からは拍手も起こりました。あえて最後にこういったことをもってこられたその狙いというのはどういったところにあるのでしょうか。. A 政治は常に謙虚であり、常に国民の皆さんに丁寧にご説明するということが大事だ、ということを改めて最後に強調しておきたかったからであります。. Q テレビ朝日です。それは安倍総理に改めて意識してほしい点ということで宜しいでしょうか。 A それは代表質問ですから、それを代表が意識するのは当然ですよ。安倍総理に陳情するものではありません。あえて言って聞かせることでもないけれど。それは当たり前のことじゃないですか。. Q 毎日新聞です。幹事長はお聞きになられませんでしたが、枝野代表からは桜を見る会、IRの問題、大臣の辞任など述べられておりました。総理の答弁はどうお聞きになられましたか。. A まあ、一所懸命分かりやすく説明しているわけですから、あとはあちらの方々が、あんなことばかりずっと続けて言っているわけですよ。桜ももう散ってしまいましたから。ですから、しっかり自らのことに対してよくお考えいただいて、国会審議をより充実感のあるものにしていきたい。あんなことばかり述べていることに、そんなに満足しているわけではないですよね。言ってる方も虚しいと思うんだよ。だから、来年の桜が来ないうちに、早くこの問題から次の建設的な問題に議論を移していかないと駄目ですよ。これは新聞やマスコミが取り上げてくれるから。面白いからってやってるんですよ。まあ、こんな程度でしょう。 Q 毎日新聞です。今の「桜は散った」というのは桜を見る会の問題はとりあえず終わって、もっと本質的な議論をすべきだということでしょうか。. A 現状を言っているのですよ。咲いていますか?. Q 朝日新聞です。玉木さんの質問の中で、夫婦別姓について議論される場面がありました。玉木さんは夫婦別姓を認めるべきだという、それに対して「それなら結婚するな」という野次が議場からあった、と壇上から玉木さんの指摘がありましたけれども、こういうやり取りは幹事長、どのようにお聞きになられましたか。 A まあ、それは言った人、野次をした人の本当の意見を断片的に野次で聞いてね、議場でそれをどう聞いたかって言われても、それほど重大な関心を寄せているわけではありません。. Q 北海道新聞です。総理の答弁の中で、「民主党時代の」といった文言が、桜を見る会の招待者名簿であるとか、デフレ、など何回か出る場面がありましたけれども、長期政権になっている中で、また改めて民主党政権を持ち出して批判をするという姿勢に関してはどのように受けとっておられますか。 A 民主党も、自分たちが政権を担った時期があるわけですから、そこらをお忘れにならないで、しっかり思いおこして、充実したご議論をいただきたい、という思いが総理にあるのでしょう。それは我々が聞いたわけではないが、憶測といいますか。聞いていてそう思いました。. Q TBSです。河井克行議員に関して、河井あんり参議院議員とはまた別に、ご自身の衆議院選挙でも車上運動員に対する規定を超える報酬を支払っていたという報道が出ていますが、この点について、説明責任を改めてどのように果たされるとお考えでしょうか。 A それはお尋ねがあった場合、議員としては適当にお話しなされば良い。質問の意図が何処にあるのかよく確かめてからおやりになったら良いと思います。 |
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●参院代表質問、河井夫妻の「政治とカネ」問題で追及 国会では参議院で代表質問が行われ、河井前法務大臣夫妻をめぐる政治とカネの問題について、野党側が安倍総理を追及しています。国会記者会館から報告です。野党側は、去年の参院選の直前に、自民党本部から河井案里参院議員の陣営に考えられない額の資金がわたっていたのではないかと指摘しました。「河井案里議員の総支部に、参院選前わずか3か月間で、約1億5000万円ものお金が自民党から入金されていたとのこと。考えられない金額です」(立憲民主党 福山哲郎幹事長) 一方、安倍総理はこれについては直接言及せず、次のように答弁しました。「内閣・与党・野党にかかわらず、一人一人の政治家が自ら襟を正すべきであり、可能なかぎり説明を尽くしていかれるものと考えています」(安倍首相) こうした中で、河井案里議員は23日朝、取材に対して、事実関係を認めています。 Q. 党本部から1億5000万円もらったのか? 「頂きましたが、違法ではありません」(自民党 河井案里参院議員) 野党側は、こうした資金が公職選挙法の規程を上回る選挙運動員への支払いなどに使われた可能性もあるとして、引き続き追及する構えです。 |
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●代表質問 野党は将来展望を明確に示せ
安倍首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が始まった。半世紀ぶりに五輪が開催される節目だ。国の針路について、与野党は骨太の論戦を展開すべきである。立憲民主党の枝野代表は、自らが政権を担う場合の方向性として、「支え合う安心」や「豊かさの分かち合い」を掲げた。所得の再配分を重んじ、より手厚い社会保障を目指す考えだ。経済成長を重視するアベノミクスへの対立軸を示したと言える。枝野氏は具体策として、保育士や介護職員の賃金引き上げなどを列挙した。税収を確保するため高所得者への課税強化などを挙げたが、働く意欲をそぎ、活力を失わせる懸念は拭えない。人口が減少する中で、経済のパイをどう拡大するのか。枝野氏は、技術革新など、説得力のある成長戦略を示さなければならない。首相は「成長と分配の好循環を強化し、賃上げが行き渡るよう全力を尽くす」と述べた。デフレ脱却は道半ばである。与野党は、力強い成長を実現する方策について議論を深めてもらいたい。枝野氏が質問で、外交や安全保障政策について、展望を示さなかったのは物足りない。北朝鮮の核の脅威は減じておらず、強権主義を強める中国は米国との対立を深める。国際情勢を直視し、対処策を議論すべきだ。枝野氏が多くの時間を割いたのは、首相主催の「桜を見る会」の問題など政府・自民党の不祥事だ。「安倍政権の利権、私物化、隠蔽いんぺい体質」と批判した。桜を見る会は、安倍内閣の下で招待者が膨れあがり、名簿など公文書のずさんな管理が明らかになった。行政への国民の信頼を揺るがしかねない。再発防止策の徹底が求められる。カジノを中核とする統合型リゾート(IR)を巡る汚職事件で、IR担当副大臣だった衆院議員が起訴された。首相は「重く受け止めている」と答弁した。カジノへの国民の視線は厳しい。政府は、IRの基本方針の決定を先送りする。癒着防止のため、行政と事業者の接触を制限する案も出ている。基本方針の内容を慎重に検討する必要がある。国民民主党の玉木代表は、憲法改正に関し、自衛隊の根拠規定を追加する自民党案の取り下げを求めた。「論理的整合性がとれていない」と指摘した。批判に終始せず、自衛隊のあり方をどう考えるのかを国会で具体的に論じねばならない。 |
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●「桜」招待客名簿 首相が調査拒否 衆院代表質問、野党追及 安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が二十二日、衆院本会議で始まった。首相は自らが主催した「桜を見る会」を巡り、内閣府が廃棄したとする招待客名簿の再調査について「指示する考えはない」と拒否した。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業に絡む汚職事件についても「個別の捜査に影響を及ぼす可能性がある」として語らなかった。 立憲民主党の枝野幸男代表は、桜を見る会の招待客名簿の再調査に加え、電子データを消去した証拠となる履歴(ログ)の開示も求めた。首相は「内容を明らかにすれば不正侵入等を助長する恐れがあり、セキュリティー上の問題がある」として拒否した。 内閣府が招待客名簿の一部で部局名を削除する「白塗り」加工をして国会に提出した問題については「極めて不適切」と認めた。 IR汚職事件に関しては、秋元司元内閣府副大臣が収賄容疑で逮捕、起訴されたことを受け「誠に遺憾だ」と語った。枝野氏や国民民主党の玉木雄一郎代表はIR事業の撤回や凍結を求めたが、首相は「(政府の)カジノ管理委員会や、国会での議論も十分に踏まえ、丁寧に進めていく」と応じなかった。 昨夏の参院選を巡る公選法違反容疑で広島地検から関係先を捜索された河井克行前法相、別の公選法違反疑惑報道を受け辞任した菅原一秀前経済産業相の任命責任については「行政を前に進めることに全力を尽くすことで、国民への責任を果たす」と従来の説明を繰り返した。 海上自衛隊の中東派遣については、枝野、玉木両氏が防衛省設置法の「調査・研究」目的で実施されることを批判した。首相は「現行の法令に基づいて実施可能であるから、特別措置法などの新たな立法措置は必要ない」と強調した。 この日は自民党の二階俊博幹事長も質問に立った。 |
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●野党側「桜を見る会」など追及 代表質問 国会では23日も代表質問が行われ、野党側は「桜を見る会」の問題などで安倍首相を追及した。 共産党・志位委員長「安倍事務所が推薦した人は何人で、そのうち内閣官房と内閣府の判断で招待者にしなかった人は何人いるのですか。事実上、ノーチェックで招待されていたのではありませんか」 安倍首相「私の事務所から何名を推薦したのかについては、既に記録が残っていないことから、その詳細は明らかではありません。また、内閣官房が確認した結果、私の事務所から推薦を行ったもので、招待されなかった例もあったものと承知しております。具体的な人数については、名簿も廃棄されていることから明らかではありません」 一方、日本維新の会の馬場幹事長は憲法改正について、「議論が停滞するなら解散・総選挙に踏み切って国民の信を問う覚悟はあるか」とただした。これに対し、安倍首相は「現時点では、解散は頭の片隅にもない」とした上で、「政治を前に進める上で、信を問うべき時が来たと考えれば、解散・総選挙を断行することに躊躇(ちゅうちょ)はない」と述べた。 また、カジノを含むIR(=統合型リゾート施設)への参入をめぐる汚職事件で捜査が進む中、安倍首相は、政府や自治体の関係者と事業者との接触を制限する規定を「基本方針に盛り込むことを検討する」と表明した。基本方針にはIRの設置基準などが盛り込まれ、来月以降、正式決定される見通し。 |
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●代表質問首相答弁 あまりに不誠実な開き直りだ 通常国会での安倍晋三首相の施政方針演説など政府4演説に対する各党の代表質問が衆院本会議で始まりました。施政方針演説で自らが関わった「桜を見る会」疑惑や目玉政策にしてきたカジノをめぐる汚職事件に一言も触れなかった安倍首相は、代表質問への答弁でもまともに説明せず、開き直りに終始しました。政治を私物化した疑惑や汚職事件の真相を主権者・国民と国会の前に明らかにしなければ、日本の民主主義の土台は崩れます。今後の代表質問や予算委員会の論戦で徹底追及し安倍政権に引導を渡すことが必要です。 ●「総理等」が半数以上 政府主催の「桜を見る会」をめぐる疑惑は、安倍首相らが、自らの地元後援会員や知人を大量に招待し、税金を使って飲ませ食わせしていたという、公職選挙法違反の疑いがもたれている問題です。首相の推薦枠で、悪徳商法で被害を出した人物まで招かれていたことが濃厚になっています。しかもその招待者名簿を廃棄したり隠したりして、国民共有の知的資源である公文書の管理をめぐる法律違反も明らかになっています。 野党の結束した追及によって、内閣府は代表質問前日になってようやく2019年まで過去6年間の招待者の具体的な内訳を公表しました。私物化疑惑が浮上した19年の招待者数は1万5420人で、そのうち「総理大臣等」による招待は8894人と半数以上になっています。最近5年間で増えた招待者数の大半は安倍首相や与党の推薦者で、「政治枠」の膨張が全体の招待者数を押し上げた実態が裏付けられています。安倍首相には、毎年の「桜を見る会」の前夜に、後援会員をホテルで接待していた公選法違反の買収や政治資金規正法違反の疑いもあります。 首相は、代表質問への答弁でも、「桜を見る会」への招待は「最終的には内閣官房、内閣府が取りまとめていた」などというだけで、安倍政権になって招待者が急増していることも説明しません。前夜祭が公選法違反ではないかという追及にも、「ホテルが設定した価格で各自が支払った」としか答えません。疑惑解明に背を向け開き直り続ける安倍首相に、もはや政治を任せるわけにはいきません。 安倍首相には、「森友・加計」疑惑や、自ら任命した閣僚の「政治とカネ」に関わる疑惑による辞任、「成長戦略」の柱にしてきたカジノをめぐる元担当副大臣の汚職事件など、国民と国会に説明すべき数々の問題があります。首相はカジノ汚職事件について代表質問への答弁でも、「誠に遺憾」というだけで、「捜査上の支障」を口実に答弁をしません。閣僚辞任についても答えません。任命責任を認めるなら、少なくともそれぞれの元閣僚や元副大臣らに、国会の場で説明させるべきです。 ●一日も早く退陣を 安倍首相は、疑惑についてはまともに説明しない不誠実な態度をとる一方、売り物として持ち出している政策は詳しく語り、改憲については憲法審査会での議論を重ねることが国会議員の責任だなどと、持論を得々と答弁しました。 疑惑の説明責任は果たさず、消費税増税や社会保障改悪で国民を苦しめ、「戦争する国」づくりや改憲に固執する安倍首相を、一日も早く退陣させる時です。 |
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●各党代表質問 野党は国難対処で存在感示せ 安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問が始まり、衆院本会議で立憲民主党の枝野幸男代表、自民党の二階俊博幹事長、国民民主党の玉木雄一郎代表が質問に立った。首相主催の「桜を見る会」をめぐる情報開示、カジノを含む統合型リゾート(IR)をめぐる汚職事件など政権追及を優先する構えを野党側が改めて示したが、出生率低下、経済、外交・安保、憲法改正など重要な議論の成熟を期待したい。 今年の国会論戦の火ぶたが切られたが、枝野氏は「桜を見る会」を、玉木氏はIR汚職事件を質問の冒頭に挙げて安倍政権の責任を追及し、枝野氏は首相に辞任まで迫った。 言論の自由が保障された国会であり、野党が政権を批判するのは自然なことだ。しかし、口先の軽さは否めない。首相に退陣を求めれば解散総選挙となることも考えられる。衆院選に備え、両党首は昨年末に合流協議を開始したものの、話し合いは不調となり、見送りとなった。 反自民の各党が異口同音に「桜を見る会」やIRへの批判を展開して疑惑化を図り、野党寄りのマスコミと共に政治不信を高めようとしている。これまでも繰り返された一強多弱の国会が、早くも展開されようとしている。 無論、野党側の政権批判は政府・与党を刷新する効用があり、今年の「桜を見る会」の中止などに表れた。ただ首相はIR問題や閣僚辞任問題でも答弁で無難にかわしており、野党の追及も手詰まり感がある。 森友・加計問題、勤労統計不正調査問題なども同様で、内閣支持率は一時下がるが野党の支持率も低いまま上がらない傾向が続いている。むしろ、野党は難問に焦点を当て、代案を提示しながら政権担当能力を示していくべきだ。 この点、両野党の代表が質問で出生率の低下を問題視したのは重要だ。玉木氏は、86万4000人に減ったわが国の出生数について「50年間で100万人減った」として「国難」と位置付け、「婚姻数や婚姻率を上げることが重要」と述べた。 ただ、婚姻数を増やすために選択的夫婦別姓の導入を主張したことは疑問だ。夫婦別姓は家族の絆を弱め、少子化対策になるとは思えない。首相は、結婚を希望する男女に地方自治体が出会いの場を提供する取り組みを後押ししていくとした。 また、枝野氏は少子高齢化問題への対策に関して「社会全体で『支え合う安心』の仕組みを構築しよう」と党の政権ビジョンを提示した。自民党政権が進めた民営化による「小さな政府」に異を唱えて対抗軸を示したものだ。日本の人口を増やすための政策論議は歓迎したい。 二階氏は昨年、猛威を振るった台風など自然災害への対策として「国土強靭(きょうじん)化」の推進を掲げた。世界的に自然災害の大規模化の傾向が強まり、これもわが国が取り組む重要課題だ。また、憲法改正について首相は、自民党案はたたき台であり、野党にも案の提出を求めた。与野党で憲法審査会での議論を活発に行っていくべきだ。 |
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●夕食会の明細書、公開拒否 首相「ホテル側の意向尊重」 安倍晋三首相の施政方針演説などに対する参院各会派による代表質問が23日午前に始まった。昨年の「桜を見る会」前日に首相の後援会が主催した夕食会の明細書について、首相は「どのような形であれ、第三者への公開を希望しないホテル側の意向を尊重すべきだ」と述べ、会場となった東京都内のホテルの意向を理由に公開を拒否した。 立憲民主党の福山哲郎幹事長が「国会の秘密会で明らかにしたらどうか」と質問したのに対する答弁。首相は「ホテル側としては、営業の秘密にかかわるものであることから、公開を前提とした資料提供には応じかねるとのことだった」と強調した。 また、施政方針演説で首相が「来年度予算の税収は過去最高となった」と述べたことについて、福山氏は「見通しに過ぎない」と問題視。首相は「適切な見積もりのもとに計上した。演説の表現に問題があるとは考えていない」と反論した。 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告の国外逃亡をめぐっては、首相は「誠に遺憾」と指摘。「政府として経緯を解明するとともに、出入国時の手続きのいっそうの厳格化を図っている」と述べた。自民党の岡田広氏への答弁。 |
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●憲法改正、与野党に温度差=安倍首相は「活発論議」呼び掛け―代表質問 23日の衆参両院の代表質問で、安倍晋三首相は憲法改正論議を呼び掛けた。党総裁任期満了まで1年8カ月余りとなり、任期中の改憲に向けて、首相は今国会での進展を目指す。しかし、立憲民主党は代表質問で憲法には一切触れなかった。「桜を見る会」問題やカジノを含む統合型リゾート(IR)に絡む汚職事件で与野党の対決ムードは高まっており、話し合いの機運が生まれる見通しは立っていない。 「憲法改正の議論を重ね、国民の理解を深めることは国会議員の責任だ」。首相は同日の参院本会議でこう強調した。続いて開かれた衆院本会議でも、「改憲スケジュールは期限ありきではない」としながらも、継続審議となっている国民投票法改正案の速やかな処理を訴えた。 しかし、主要野党がこれに応じる気配はない。23日に登壇した立憲の福山哲郎幹事長や共産党の志位和夫委員長は憲法改正の是非に言及せず。立憲は22日に質問した枝野幸男代表も触れなかった。 連立を組む公明党の斉藤鉄夫幹事長も23日に質問に立ったが、憲法改正に関する発言はなく、改憲を宿願とする首相と各党の温度差が改めて浮き彫りになった。 23日の本会議後、福山氏は記者団に「数々の不祥事について、不誠実で全く答える気のない感じがした」と首相を厳しく批判。今後、衆参両院予算委員会で徹底追及する意向を示した。 野党の態度軟化が見込めず、自民党の一部には予算審議と並行して改憲論議を進めるべきだとの意見も出ている。しかし、自民党幹部は「憲法審査会を強硬に進めると国会が動かなくなる」と指摘し、改憲論議は当面進まないとの見通しを示した。 |
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●安倍首相「襟正し、説明尽くされる」 辞任閣僚への批判に 参院本会議は23日午前、安倍晋三首相の施政方針演説などに対する各党の代表質問を行った。首相は公選法違反疑惑で辞任した河井克行前法相や菅原一秀前経済産業相らが説明責任を果たしていないとの指摘に対し、「1人1人の政治家が自ら襟を正すべきで、今後とも可能な限り説明を尽くしていかれるものと考えている」と述べた。立憲民主党の福山哲郎幹事長の質問に答えた。 河井氏は昨年の参院選をめぐり公選法違反の疑いで妻の河井案里・自民党参院議員とともに事務所が広島地検の家宅捜索を受けた。 首相は閣僚らの辞任について「国民に大変申し訳なく、責任を痛感している」と発言。「さまざまな批判があることを真摯(しんし)に受け止め、一層の緊張感を持って政権運営にあたっていきたい」と述べた。 また、福山氏は週刊文春が参院選の際に自民党が案里氏の総支部に3カ月で約1億5千万円が入金されていたと報じたことを質問。首相は言及しなかった。 23日午後には衆院本会議が行われ、公明党、共産党、日本維新の会が代表質問する。 |
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●首相「IRは観光先進国を後押し」 桜問題「私の責任で見直し」 参院代表質問 安倍晋三首相の施政方針演説など政府4演説に対する各党の代表質問が23日午前、参院本会議で行われた。立憲民主党の福山哲郎幹事長は、カジノを含む統合型リゾート(IR)を巡る汚職事件に関し「少なくとも捜査の状況がはっきりするまで、IR整備を白紙にすべきだ」と要求。野党が提出したIR実施法の廃止法案を早急に審議するよう求めた。首相は「IRは観光先進国の実現を後押しする」と述べ、整備を進める方針に変わりがないと強調した。 福山氏は首相主催の「桜を見る会」の公文書管理の問題なども追及。「首相として全容解明の責任を果たし、お辞めになるのが潔い身の処し方だ」と強調した。首相は「さまざまな批判を国民からいただいている。真摯(しんし)な反省の上に今後、私自身の責任で、全般的な見直しを行う」と辞任を否定した。 福山氏は公職選挙法違反疑惑で辞任した河井克行前法相、菅原一秀前経済産業相らの任命責任や説明責任についてもただした。首相は「一人一人の政治家が自ら襟を正すべきであり、今後とも指摘に対しては可能な限り説明を尽くしていく」と説明し「国民には大変申し訳なく、任命した責任を痛感している」と謝罪した。 自民党の岡田広氏は、首相が掲げる「全世代型社会保障制度」や、憲法改正議論で参院に期待する点などについて質問した。 午後には22日に続いて衆院本会議が開かれ、公明党の斉藤鉄夫幹事長、共産党の志位和夫委員長、日本維新の会の馬場伸幸幹事長が代表質問を行う。 |
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●「桜を見る会」招待漏れ、人数示せず 首相、名簿破棄理由に 安倍晋三首相は23日の衆参両院の代表質問で、「桜を見る会」について、首相の事務所が推薦しても招待されない例があったと強調したが、推薦者数や招待から漏れた人数は、記録がないことを理由に答えなかった。 23日の代表質問でも、野党が桜を見る会の問題点を首相にただす場面が目立った。共産党の志位和夫委員長は、「首相の事務所が会に推薦した人は何人で、うち内閣官房と内閣府の判断で招待しなかった人は何人いるのか」と質問した。首相は「内閣官房が確認した結果、私の事務所から推薦を行い、招待されなかった例もあった」と説明した。 そのうえで「私の事務所から何人を推薦したのかは、記録が残っておらず詳細は明らかでない」と答弁。推薦者のうち、内閣府や内閣官房の判断で招待から漏れたという例については「具体的な人数は(招待者)名簿も廃棄されていることから明らかではない」と述べた。 立憲民主党の福山哲郎幹事長は、首相後援会主催の前夜祭の会費が、相場より安すぎると指摘されていることに関して、会場となったホテル側の見積書や明細書を「国会の秘密会で明らかにしたらどうか」と提案した。首相は「ホテル側は『営業の秘密に関わる。公開を前提とした資料提供に応じかねる』とのことだ。公開を希望しないホテル側の意向を尊重すべきだ」と述べ、重ねて公開しない意向を示した。 |
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●桜を見る会 首相「隠し立てや虚偽答弁なし」衆参代表質問で強調 安倍晋三首相は23日の衆参両院の代表質問で、首相主催の「桜を見る会」を巡る問題で「説明責任を果たしていない」との批判に対して、「隠し立てや虚偽答弁を行っているとの指摘は当たらない」と強調した。 立憲民主党の福山哲郎幹事長は、問題に関して「すべての混乱の責任は首相にある。隠し立てや虚偽の答弁を繰り返すことなく、全容解明の責任を果たした上で、辞めることが潔い身の処し方ではないか」と追及した。 首相はこれに対し、「桜を見る会、前日に開かれた夕食会の内容については、国会等の場で繰り返し可能な限り説明を行っている」と反論した。その上で「さまざまな批判を国民から頂いている。真摯(しんし)な反省の上に、私の責任において全般的な見直しを行う」とも述べた。 カジノを含む統合型リゾート(IR)整備に向けて政府が策定中の基本方針については、IRの事業者と公務員の接触を制限するルールを盛り込むことを検討する考えを示した。IR事業を巡って、現職国会議員が逮捕された汚職事件を踏まえた措置で、首相は「IRの推進にあたっては、国民的な理解が大変重要だ」とした上で、「接触ルールの策定についても基本方針に盛り込むことを検討する」と答弁した。 海上自衛隊の中東派遣に関しては、派遣区域はホルムズ海峡からペルシャ湾にかけた海域が外れているとの質問には、首相は「ペルシャ湾およびホルムズ海峡の情報については、米国や沿岸国を含む関係各国との連携を通じて一定の情報収集が可能だ」などと説明。「自衛隊が何らかの武力紛争に巻き込まれるような危険があるとは考えていない」とも強調した。 |
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●「桜を見る会」招待、政治枠で膨張 内閣府資料で裏付け 首相主催の「桜を見る会」をめぐり、安倍晋三首相らの推薦枠によって招待者数が膨れ上がったことを裏付ける内閣府の新資料が見つかり、主要野党は衆参両院予算委員会などで徹底的に問いただす方針だ。22日の追及本部会合では、政府にさらなる資料の提出を要求した。 新たに見つかったのは、2014〜19年の招待者数の内訳を記した資料。それによると、19年の招待者数は1万5420人で、15年から約1700人増えた。 このうち、政治枠とみられる「各界功績者(総理大臣等)」と記載された欄の招待者数は、19年が8894人。15年と比べて約1500人多かった。14年の資料にはこの欄がなかった。 一方、招待者数が最も多かったのは18年の1万5910人。「各界功績者(総理大臣等)」も9494人で、前年から約1900人増えた。18年9月には自民党総裁選が行われ、首相が3選を果たしており、関連性を指摘する声もある。 資料は内閣府が21日に与野党へ提示。菅義偉官房長官は22日の記者会見で、これまで示さなかった理由を問われ、「私自身は資料そのものを知らない」と釈明した。 これに対し、立憲民主党の安住淳国対委員長は同日、記者団に「驚きの数字だ。資料の開示を徹底的に要求したい」と強調。その上で「責任を取るべきは最終決裁者の首相と官房長官だ」と述べ、国会で追及する考えを示した。 |
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●「桜を見る会」名簿 官僚処分で幕にならぬ 1/23
安倍晋三首相主催の「桜を見る会」の招待者名簿を巡り、ずさんな公文書管理の実態が次々と明らかになっている。 菅義偉官房長官が過去5年分の関連名簿の扱いについて、公文書管理法に違反する対応だったと認めた。国土交通省でも同様な法令違反があったという。 政府自らが違法性を認めるのは極めて異例で、異常事態といえよう。 何より政府はこれまで「ルールに基づいて適切に保存・廃棄してきた」との説明を繰り返してきた。それが根底から覆ったことになる。言語道断というほかあるまい。 公文書管理法は、保存期間が1年以上の行政文書について、管理簿へ名称などを記載し、公開を義務付けている。廃棄する際も記録に残し、首相の同意を得る手続きが必要となる。 ところが、内閣府は2013〜17年度の招待者名簿は保存期間が1年だったのに、管理簿に記載されていなかった。廃棄の記録も残されておらず、必要な手続きを取っていなかった。 国交省は10年度から6年分の関連名簿について管理簿へ記載していなかった。 記録が残っていなければ、本当に廃棄したのかどうか、確かめるすべもない。「既に名簿を破棄したので分からない」と繰り返してきた政府の釈明自体も成り立たなくなった。 菅氏は法令違反を認めたものの、意図的ではなく「事務的な記載漏れ」とした。さらに通常国会直前の17日、招待者名簿に違法な管理があったとして、内閣府の歴代の人事課長計6人を厳重注意処分にした。 桜を見る会を巡って問題視されているのは、第2次安倍政権発足後、招待者が年々増え続け、首相の後援会関係者や妻の昭恵氏の知人らが多数招かれていたことである。 首相による公的行事の「私物化」があったかどうかが問われているのに、官僚だけに責任を負わせる形で幕引きを図ることなど許されまい。 安倍政権下では、森友学園への国有地売却を巡る公文書改ざんや南スーダンに派遣した自衛隊の日報隠しなど公文書管理に絡んだ不祥事が後を絶たない。 相次いだ問題を受けて改善が図られたはずだったのに、桜を見る会の問題を巡っては、むしろ後退した感が否めない。 桜を見る会の招待者名簿は、保存期間が管理簿への記載義務がない「1年未満」に変更され、早々と廃棄された。招待者の選考が公正、公平だったのか検証する手だてが失われた。 政府は個人情報を抱えるリスクを避けるためと説明するが、額面通りに受け取れない。都合の悪い情報を隠したと勘繰られても仕方があるまい。 きのう始まった衆院の代表質問で、立憲民主党の枝野幸男代表が関係資料の再調査を求めたものの、首相は「名簿は既に廃棄されたと確認している。改めて調査を指示することはない」と述べるにとどまった。 この答弁からは、公文書の取り扱いを巡って法律違反があったとの反省は見えてこない。 首相に求められているのは、先頭に立って政府の公文書管理の在り方を検証し、再発防止策を講じることだ。一連の疑惑について、当事者意識を持って説明責任を果たすべきだ。 |
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●安倍首相、施政方針「桜」言及なしを釈明 立憲・福山氏、退陣迫る 安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問が23日午前、参院本会議でも始まった。演説で「桜を見る会」の問題に言及しなかった理由について、首相は2020年度の開催を中止したことに触れ、「関係予算を全く計上していないことから、(演説に)盛り込まなかった」と釈明した。立憲民主党の福山哲郎幹事長への答弁。 カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐる汚職事件や、自民党の河井克行前法相と妻の案里参院議員の公職選挙法違反疑惑に触れなかったことについては、「内閣として言及することが捜査に影響を与える可能性がある」と説明した。 桜を見る会の問題について、福山氏は「全ての混乱の責任は首相にある」と退陣を迫った。首相は「真摯(しんし)な反省の上に、私自身の責任で全般的な見直しを行っていく」と拒否した。 日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告の国外逃亡に関しては、「誠に遺憾であり、経緯を解明するとともに、出国手続きのより一層の厳格化を図る」と強調した。自民党の岡田広氏への答弁。 |
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●「アベノミクスの次の経済政策を示せば付いてくる中間層がいるはずだ」 22日に続いて代表質問が行われた国会。限られた時間の中、野党は政策ではなく、「桜を見る会」「IR汚職」など、疑惑や安倍総理の追及に多くの時間を割いた。 しかし安倍総理の答弁は従来からの説明を踏襲したものにとどまり、自民党の二階幹事長は「桜はもう散ってしまった。言ってる方もむなしいと思うよ。だから来年の桜が来ないうちに早くこの問題から次の建設的な問題に議論を移していかなきゃだめ。これは新聞・マスコミが取り上げてくれるからうれしがってやっているんだろうけど、まあ、こんな程度だろう」と皮肉った。 こうした国会の様子にネットの意見は割れている。「くだらない問題討論してないで具体的な政策について討論しなよ」「何回も同じ話聞いてる気がするんだけど」という見方をする人もいる一方、「自ら『この話はもう終わりだ』と言える神経すごいな」「終わりにしたいんだろうけどどんどん咲いてきてる」「勝手に散らしてもらっては困ります」と、政府・与党を非難する声も多い。ANNの世論調査でも、「安倍総理本人が、国会の場でさらに説明する必要があると思うか?」との問いに対する答えは「思う」が59%と、「思わない」の33%を上回っている。 23日のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した政治ジャーナリストの細川珠生氏は「逃げ切れると思っているのではないかと思うが、国民がもう少し説明しろと言っていることを深刻に捉えていないと思う、少し鈍感かなと思う。国民の感覚を積極的に知ろうという姿勢が足りないと思う。二階幹事長のような発言が出てくるなど、長期政権によるおごりや緩みは、必ず選挙で跳ね返ってくる。今は政権支持率も45%くらいを推移しているが、選挙になれば分からない。自民党の議員はもう少し緊張感を持つべきだし、このままではいけないという声が党内から出てこないといけない。一方、通常国会では予算案の審議が非常に重要だ。ただ、ご存知のように予算委員会はなんでもありなので、野党はメディアに取り上げてもらえるような話題をやりたがる。野党の中にもきちんとした政策論争をやりたいと思っている人たちもいるはずなので、政策を議論しながら、その中で公文書保存のあり方などについて追及をしていく。そういう国会にしていくべき」と指摘する。 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「野党が延々と攻撃している様子に飽き飽きしている人が多いのではないか。そうなると、野党がどれだけ攻撃しても政権の支持率は下がらない。それで政権側は“支持率が下がらないんだから別にいいじゃないか”と無視する。そしてますます野党がいきり立つ。そういう、非常に不毛な構図になってしまっている。本来は消費増税後の経済対策をどうするのか、イラン危機の中でエネルギーをどうするのかなどの議論をしてほしいが、マスメディア向けには追及姿勢を示した方が盛り上がるし、野党のコア支持層、いわゆる左派の人たちにとっては憎い敵と戦うイメージを打ち出した方がいいから、野党がそちらに傾斜してしまう。そして、ますます野党や新聞、テレビ、野党のコア支持層が孤立し、“今のところは経済状態がいいので安倍政権かな”と感じている、なんとなくの自民支持層やTwitterなどのネット言論がどんどん離反していく。我々がアベノミクスの次を引き継いで効率よい経済を作るんだということを野党が言えば、ついてくる中間層も結構いると思う」とコメント。 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「今は逃げ切ることができるくらいの支持率ということだろうが、逆に言えば潔く説明しても支持率が下がらない強さもあると思う。むしろ何が悪かったのか、野党の攻撃に先んじて自分たち説明し、反省していけば、より盤石な支持になったのではないか」とした。 |
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●衆参代表質問 政策論戦へ誠意示せ
これでは誠意を欠き、身勝手な答弁と言わざるを得ない。衆参両院での代表質問で、安倍晋三首相は野党が追及する「桜を見る会」やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)汚職事件については従来通りの答弁に終始する一方、憲法改正に関しては野党側に具体的な改正案を示すよう求めた。 首相は代表質問に当たって「堂々と政策論争を行いたい」と強調した。だが、政策論戦を深める前提には与野党が課題に取り組もうという認識の共有が必要だ。疑念の解明に後ろ向きでは、その共有は不可能だろう。首相には不信解消への誠意ある対応が求められる。 代表質問で立憲民主党の枝野幸男代表は安倍政権の体質を「疑惑まみれ」と指摘し、首相の辞任を要求。共産党の志位和夫委員長は「政治モラルの崩壊」だと指弾した。 首相主催の「桜を見る会」を巡っては、内閣府が存在しないとしていた関連文書が最近見つかった。廃棄したとする昨年分の招待者名簿も残っているのではないかと考えるのは当然だろう。だが、首相は野党が求める再調査を拒否、電子データの廃棄記録の調査・開示にも応じなかった。 首相は「さまざまな批判があり、真摯(しんし)な反省の上で全面的な見直しを行う」と述べたが、自身の後援会関係者を多数招いた私物化の疑惑を晴らすには、まず事実関係の徹底調査に取り組むべきだ。 IR汚職事件で首相は「現職の国会議員が逮捕・起訴されたことは遺憾で重く受け止める」と述べたものの「捜査に影響する」として、それ以上のコメントを避け、IR事業を既定方針通り推進する考えを示した。 公選法違反疑惑での2閣僚の辞任についても「可能な限り説明を尽くしていくと考える」と述べただけで、任命責任者として説明させるよう指示することはなかった。 これで国民が納得すると考えているのだろうか。与党・公明党の斉藤鉄夫幹事長は「長期政権の緩みやおごりを排し、謙虚さと誠実さを持って国民の信頼回復に努めるべきだ」と述べた。厳しく受け止めるべきだ。 疑念解明への消極的な姿勢とは一転して、改憲では踏み込んだ。国民民主党の玉木雄一郎代表が自民党の9条改正案を「論理的整合性が取れていない」と批判したのに対し、首相は「党の案を国会の憲法審査会の場で提示いただきたい」と反論し、議論促進を求めた。 個別課題でも答弁に疑問が残る。防衛省設置法の「調査・研究」を根拠にした海上自衛隊の中東派遣への批判に関して、新たな立法措置の必要性を否定。「特定の国家が日本関係船舶と認識して侵害行為を行うことはない」と述べた。なぜ、可能性を排除できるのか。 沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設では、軟弱地盤改良のため工期の大幅延長が決まっている。首相は辺野古移設が「普天間の一日も早い危険性除去につながる」と工事推進の考えを示したが、現実を直視しない答弁ではないか。 代表質問で枝野氏は安倍政権の経済、社会保障政策への対案となる「政策ビジョン」を示し、分配を重視する政策を訴えた。玉木氏も女性や若者、子ども、環境政策を取り上げた。総選挙に向けて政権の選択肢を示す狙いだろう。ならば政権交代の実現に向けて、野党側も態勢づくりを急がなければならない。 |
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●混雑状況で開場前倒し=桜を見る会―西村官房副長官 西村明宏官房副長官は24日の記者会見で、首相主催の「桜を見る会」をめぐり、開場時間である午前8時半より前に多数が入場していたことについて「会場周辺の混雑状況により、内閣府の判断で予定より早い時間に開門し、相当数が入場している」と説明した。 政府が国会に示した資料によると、昨年は約8000人が開場時間より前に入場。野党側はこれが安倍晋三首相の支援者で、特例扱いされた可能性があると批判している。 |
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●「桜」ツアー主催は旅行会社=安倍首相、私物化批判に反論 安倍晋三首相は24日の参院代表質問で、首相主催の「桜を見る会」に合わせて安倍事務所が地元支援者に案内した東京都内のツアーについて「私の事務所によれば、希望する方に旅行会社の紹介等を行っていたが、ツアー自体の主催企画はあくまで旅行会社だった」と述べた。共産党の山下芳生副委員長が「桜を見る会の私物化」と批判したのに反論した。 山下氏は、2018年の桜を見る会に多数の自民党地方議員が招待されていたのは、同年9月の党総裁選での地方票目当てだったのではないかとも追及。首相は「自民党内の推薦の経緯等は政府として掌握していない」と語った。 |
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●「桜」予算過少見積もり 首相「望ましいものではなかった」参院代表質問 安倍晋三首相は24日午前の参院代表質問で、首相主催の「桜を見る会」の予算に関し、日本維新の会の片山虎之助共同代表から「過少に見積もられていた」と指摘されたのに対して「私自身は支出等の詳細については承知していなかったが、結果的には望ましいものではなかった」と述べた。 首相は「準備、設営、最低限必要な経費を前提に2014年度以降、予算積算上の見積額を同額としてきた。桜を見る会は長年の慣行の中で行われてきたが、招待基準があいまいであり、結果として招待者の人数が膨れ上がった」と釈明。そのうえで「契約額は予算積算上の見積額を上回っているものの、国会で決議をいただいた内閣府の共通経費の範囲内で執行された」と強調した。 一方で「桜を見る会のこれまでの運用については大いに反省すべきであり、私自身の責任において、招待基準の明確化や招待プロセスの透明化を検討するとともに、予算や招待人数も含めて全般的な見直しを幅広く意見を聞きながら行っていく」とも述べた。 |
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●首相、衆院解散「信を問うべき時、ちゅうちょはない」参院代表質問 安倍晋三首相は24日午前の参院代表質問で、衆院解散について「現時点では解散は頭の片隅にもないが、今後の政治を前に進めていくうえで、信を問うべき時がきたと考えれば、断行することにちゅうちょはない」と述べた。日本維新の会の片山虎之助共同代表への答弁。 |
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●全世代型社会保障「出生率1.8実現へ少子化対策を柱」 安倍晋三首相の施政方針演説など政府4演説に対する各党の代表質問が24日午前、参院本会議で行われた。首相は、政府が夏までにまとめる全世代型社会保障の最終報告について「希望出生率1・8の実現を目指し、今年度内に策定を予定している新たな少子化社会対策大綱で目標実現に向けた道筋を示す」と述べ、少子化対策を柱として位置づける考えを示した。公明党の山口那津男代表への答弁。 首相はまた、春に予定される中国の習近平国家主席による国賓来日について「日本と中国は地域や世界の平和の繁栄にともに大きな責任を有している。その責任をしっかり果たすとの意思を内外に明確に示していく機会としたい」と述べた。 日本維新の会の片山虎之助共同代表は、汚職事件に発展したカジノを含む統合型リゾート(IR)の整備方針について見解を聞く。 午後は共産党の山下芳生副委員長、国民民主党の大塚耕平参院議員会長、自民党の野上浩太郎参院幹事長代行が質問。22日の衆院本会議から続いた代表質問は24日で終わる。 |
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●習氏来日、世界への責任示す=安倍首相「主張すべきは主張」 参院は24日の本会議で、安倍晋三首相の施政方針演説などに対する各党代表質問を続行した。首相は、中国の習近平国家主席が春に国賓として来日することに関し、「日本と中国は地域や世界の平和と繁栄にともに大きな責任を有している。その責任をしっかり果たすとの意思を内外に明確に示す機会としたい」と意義を訴えた。公明党の山口那津男代表への答弁。 日本維新の会の片山虎之助共同代表は国賓とすることについて、新疆ウイグル自治区の人権問題などを日本政府が容認していると受け取られかねないとして疑問視。首相は「主張すべきはしっかりと主張し、中国側の前向きな対応を強く求める」と述べた。 片山氏は反政府抗議活動が続く香港情勢についての認識も聞いた。首相は「一国二制度の下、自由で開かれた香港が引き続き繁栄していくことが重要だ」と強調。「自制と平和的な話し合いを通じた解決を関係者に求める」と語った。 首相は日韓関係悪化の原因となった元徴用工問題に関し、韓国による是正措置の必要性を指摘。北朝鮮の核・ミサイル開発については「米朝プロセスを後押しするとともに、国連安全保障理事会決議の完全な履行により、完全な非核化を粘り強く実現していく」と語った。山口氏への答弁。 |
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●桜見る会「運用反省すべきだ」 安倍晋三首相は24日午前、参院本会議での代表質問で、首相主催の「桜を見る会」に関し「これまでの運用は大いに反省すべきだ。今後私の責任で、招待基準の明確化や招待プロセスの透明化を検討する」と述べた。招待者名簿などのずさんな管理に批判が集まっていることに関し「政府を挙げて公文書管理のさらなる徹底の方策を検討する」とし理解を求めた。 日本維新の会の片山虎之助共同代表は、桜を見る会で政府が計上した予算額を上回る支出が続いていた点を「国会軽視だ」と指摘。首相は「私自身は支出などの詳細は承知していなかった。結果的には望ましいものではなかった」と釈明した。 |
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●政治家の資質とは 参議院代表質問 野党は35分間で57問 「日々勉強!結果に責任!」「国づくり、地域づくりは、人づくりから」を信条とする参議院議員赤池まさあき(比例代表全国区)です。我が国の伝統精神である「智勇仁」の三徳に基づき、「文武経」の政策を国家国民のために全身全霊で実現します。 1月22日(水)から24日(金)まで、3日間の予定で、衆参両院において、安倍総理の施政方針演説に対する、各党の代表質問が行われています。 私が所属する参議院では、23日(木)午前中に各党代表質問が始まりました。国内外で課題山積の中、安倍総理の政権運営に対して、本会議場という全議員が参加しての各党の代表者による質問となります。報道機関も入り、まさに国民注視の場での議論です。 野党第一会派は、案の定というか、予想通り、桜を見る会の公文書管理、閣僚辞職にともなう公選法違反、逮捕者を出したカジノを含む統合リゾート(IR)の3点セットを中心に質問してきました。 何を質問するのかは、野党の判断ですので、どうこう言うつもりはないのですが、気になったのは、35分間という質問時間の中で、57問もの質問をしてきたことです。1問当たり、平均39秒で質問することになります。同じテーマで細かい事実関係の質問を繰り返せば、できないわけではありませんが、それは委員会のような一問一答をすることができる場での手法です。本会議での代表質問は、質問者が質問を一定時間続け、それに対して、総理が質問された事項を一つずつ回答し続けるという形式になっています。ですから、報道される際には、国民に分かりやすくするために、一問一答のように編集されています。 限られた時間でそれだけ多数の質問をすると、自ずと早口となり、会場で聞いていても、何を言っているか、聞き取ることも難しくなります。これでは、国民にはまったく伝わらないだろうなと思いました。それが、野党の支持率向上には繋がらないことは容易に想像がつきます。内容以前の問題だということです。 誰のための代表質問なのか。単に安倍総理を困らせようということなのかと思わざるを得ません。 同日、参議院本会議後の昼には、定例の清和政策研究会(細田博之会長)の議員総会がありました。 司会進行の尾身朝子・衆議院議員が、地元群馬の特産品、こんにゃくの話をしてくれました。群馬県では全国の9割以上を生産しており、低カロリーで食物繊維が豊富な健康食品です。それは、こんにゃく芋からできるのですが、春に種芋を植えて冬に掘り起こし、また2年目の春に植えて大きくして冬に掘り起こし、さらに3年目の春に植え直して冬に大きなこんにゃく芋となってようやく収穫されるとのこと。それだけ手間暇かけて生産しているとのことでした。 それを受けて、挨拶に立った細田博之会長からは、政治家も同様だという含蓄ある話がありました。こんにゃくは3年だが、政治家は一人前になるまで10年はかかると。政治家生活30年の経験を踏まえた重鎮議員からの重みのある発言です。国会で質問するだけでは会議録という記録に残るだけであり、国会での質問が国民に届いて、記憶されることが重要だとのことでした。 野党第一会派の国民無視の早口質問を聞いた直後であったので、その通り、至言だと感じました。 私も衆議院議員4年、参議院議員7年目ということで、国会議員生活も11年目を迎えています。細田会長が指摘するように、ようやく政治家として一人前という年月を迎えているわけで、国民から不信を抱かれることは論外であり、どれだけ国民の輿望に応え、記憶に残る活動を積み重ねられるかと、自戒、自省したいと思いました。 |
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●首相、不祥事続発「申し訳ない」 安倍晋三首相は24日、参院本会議での代表質問で「桜を見る会」や閣僚辞任、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業に絡む汚職事件など相次ぐ不祥事を謝罪した。「大切な審議時間が政策論争以外に多く割かれている状況は国民、納税者に大変申し訳ない」と述べた。国民民主党の大塚耕平参院議員会長が不祥事を列挙し、発言を求めたのに対し答えた。 ただ、首相は私物化疑惑などに従来答弁を繰り返し、政治不信の解消に乗りだす姿勢はうかがえなかった。政策論争が不十分と訴え、不祥事追及に注力する野党へのいら立ちも透けた。 |
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●「桜」名簿廃棄記録開示しないのは「国家機密漏えいの危険増すから」 菅氏 菅義偉官房長官は27日の衆院予算委員会で、首相主催の「桜を見る会」の招待者名簿の電子データ廃棄記録(ログ)を開示できない理由について、「同じシステムを国家安全保障局も利用しており(記録を確認すると)国家機密漏えいの危険が増す。確認は不正侵入の検証などの範囲内で行う」と述べた。また「廃棄の時期は各省庁の判断に委ねられている」として、野党側の開示請求に応じる必要はないとの考えを改めて示した。 |
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●首相「歴代内閣も地元客を招待」 桜を見る会 官房長官は記録の調査否定 安倍晋三首相は27日の衆院予算委員会で、首相主催の「桜を見る会」問題を巡り、地元後援会関係者の招待に関し「招待基準が曖昧だったために、歴代内閣でも地元の方々の出席はあった。他の(首相の)時に一人も呼んでいなくて、私の時に増えたということではない」と述べた。菅義偉官房長官は招待者名簿に関するログ(記録)の調査に関し、内閣府と国家安全保障局が同じシステムのため「国家機密に関わる情報を含めて調査することになり、漏えいの危険が増す」と否定。 また、菅氏は「そもそも招待者名簿は1年未満で廃棄していいルールだ。調べる必要はない」とも述べた。 |
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●800人招待は普通?「桜を見る会」で総理を追及 国会では27日から衆議院の予算委員会が始まり、本格論戦が幕を開けました。野党は「桜を見る会」の問題で安倍晋三総理大臣に迫りました。 各界の功績者が呼ばれるはずの総理主催の桜を見る会。安倍総理の事務所は地元の後援会に参加者を募っていました。 無所属・江田憲司議員:「総理、どういう発想で地元の後援会を、しかも800人ですか、1000人ですか、呼ぼうと思われたんですか?」 安倍晋三総理大臣:「招待基準が曖昧(あいまい)であり、様々な分野や地域で頑張っている方々を幅広く招待しようとしてきたことの積み重ねで結果として招待者数が膨れ上がってしまった実態があり、そのことは反省しなければならないと考えております」 無所属・江田憲司議員:「800人ですよ。普通、呼ばないでしょ?常識で考えて下さい。それを聞いている。なぜそれ(地元の後援会の人)を呼ばれたんですか?」 安倍晋三総理大臣:「招待基準が曖昧であったがためにですね、歴代内閣においても…地元の方々の出席はあったわけでございます」 無所属・今井雅人議員:「総理は答弁のなかで『年を経るごとに人数が多くなったことは反省しなければならない』と謝罪しておられます。『各界功績者(総理大臣等)』、ここの部分だけが急増しているということなんですけれども、この『各界功績者(総理大臣等)』というところが増えてしまったことを反省しているということでよろしいですね?」 安倍晋三総理大臣:「それも含めてですね、反省しているということでございます」 ジャパンライフの山口元会長についても追及。 国民民主党・大西健介議員:「総理が悪徳商法の会長を税金で接待する会に招待していたら大問題ですよ。『個人に関する情報なので回答できない』という答弁を繰り返していますけども、本人が招待されたって言っているんですよ。回答して困るのは招待された人じゃなくて、招待した総理自身じゃないですか」 安倍晋三総理大臣:「桜を見る会の個々の招待者については個人に関する情報であるため、招待されたかどうかも含めて政府としては従来から回答を差し控えさせて頂いているところでございます」 |
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●安倍首相が地元でも「桜を見る会前夜祭」と同じ有権者買収か!
本日、安倍首相入りの衆院予算委員会がようやく開かれた。なんと、安倍首相が一問一答で国会審議に応じるのは、共産党・田村智子議員の追及で「桜を見る会」問題が一気に注目を集めることになった昨年11月8日以来のこと。つまりこの間、「桜を見る会」問題をはじめとして一方的な主張しかしてこなかったのだが、ついに直接追及のやりとりがおこなわれたのだ。 だが、それでも安倍首相は無責任な答弁に終始。たとえば、自民党・小野寺五典・元防衛相から憲法改正について質問を受けた際には、「私が自民党総裁として一石を投じた考えは」などと前置きして自衛隊の9条明記について語ったのに、一方、野党議員から河井案里議員の選挙戦における「安倍マネー1億5000万円投入」問題を追及されると「私は総理大臣としてここに立っているので自民党総裁としての答えは差し控えたい」などと言い出した。 憲法改正の話は「自民党総裁として」雄弁に語りながら、都合が悪いと「総裁としての答えは控える」……。とんだ二枚舌だが、安倍首相がもっともヒートアップしたのは、やはり「桜を見る会」問題の追及。しかも、「野党はデマを飛ばした!」と口角泡を飛ばして野党批判をはじめたのだ。 それは、立憲民主党・黒岩宇洋議員の質疑中に起こった。黒岩議員が「桜を見る会」の前日に安倍晋三後援会がおこなってきた「桜を見る会前夜祭」問題について追及すると、答弁に立った安倍首相がこんなことを言い出した。 「あのー、最初に委員が発表された見積もりのなかには、久兵衛のお寿司を出しているということを、黒岩委員がTwitter、ネット等でですね、広められて、それで報道がなされたわけでございますが、私もそれ見てびっくりしたんですが、果たしてどうなのかと思ったら、これ、久兵衛さんがですね、『そんなことはない』と大変お怒りだったというふうに伺っているところでございます」 「久兵衛が出していないということを黒岩委員がはっきりとおっしゃっていただかないとですね、それをまだ信じている人がいるわけでありまして、まさにみなさんの主張の一部ではなかった(のではないか)」 「黒岩さんも間違われたのであれば、間違ったとはっきりおっしゃったほうがいいのではないか」 「黒岩さんが流布された、まさにデマについてはですね、でもこれは重要なことですよ?」 「(久兵衛のお寿司を出していたということは)それはまったくのデマだった」 「前夜祭」についてホテルニューオータニで参加費が1人5000円というのは安すぎると追及されているのに、突然、安倍首相は「銀座久兵衛」の寿司がふるまわれていたという野党が指摘していた問題を持ち出し、「野党はデマを流した!」「デマを解消しろ!」とがなり立てたのである。 たしかに、安倍首相が言うように、昨年11月15日に「銀座久兵衛」の主人・今田洋輔氏が産経新聞の取材に応じ、「うちの寿司は出していない。過去何年も調べたが、出ていなかった。報道は間違いだ」とコメント。ネトウヨたちはこぞって「野党はデマを流した!」と喧伝し、安倍応援団員のひとりである自称文芸評論家の小川榮太郎氏も、夕刊フジの公式サイト・zakzakで「久兵衛のすしは出ていない。完全な誤報である」(2019年11月18日付)と攻撃。同サイトでは〈「偽メール事件」を思い出す〉などと書き立てていた。 だが、はっきり言ってこの「久兵衛の寿司」問題はデマなどではない。 というのも、「前夜祭」で寿司がふるまわれていたことは、参加者の証言などからも確認されているうえ、昨年11月24日放送の『サンデーステーション』(テレビ朝日)で、ニューオータニの関係者が「一般論として宴会でニューオータニ内の久兵衛以外のすしを提供することは基本的に認めていない」と証言しているからだ。 ●安倍首相は明細も出さず 「久兵衛の寿司を出したと野党がデマを流布」と攻撃 また、久兵衛の寿司がふるまわれていたのではないかと指摘していた立憲民主党の石川大我議員も〈ホテルニューオータニ東京の宴会でのすし提供がホテル内の「銀座 久兵衛」であることは、私のパーティーの見積を依頼した際、ホテル側から当方の事務所が説明を受けたもの〉と述べている(産経新聞ニュース2019年11月19日付)。 そもそも、「銀座久兵衛」はオバマ大統領が訪れた銀座の本店のほか、ホテルニューオータニの本館とガーデンタワーの2カ所に「銀座久兵衛」の支店を出店している。前述したように、銀座本店の主人が「うちの寿司は出していない。過去何年も調べたが、出ていなかった」とコメントしているが、それは銀座本店のケータリングの話であって、支店であるニューオータニの2店舗が含まれていない可能性もあるのではないか。 また、仮に「久兵衛の寿司」が出ていなかったとしても、安い会費で有権者を接待していたという問題の本質が変わるわけではまったくない。 そう考えると、御用メディアの産経や安倍応援団、ネトウヨたちが必死に広めた「久兵衛の寿司は出ていなかった」「野党のデマ」という攻撃こそ、問題を矮小化するためのフェイクと言うべきではないのか。 だいたい、もしそれがデマだと言うなら、安倍首相が「前夜祭」の明細書を出せば明確になる話だ。ところが、安倍首相は「私がホテルに指示できる関係にはない」だの「(ホテル側は明細書について)公開を前提にしていない、営業上の秘密もあるということ」などと明細書の公開を拒否した上、久兵衛の寿司問題を国会の場で「デマ」認定したのである。 こんなネトウヨと同じやり口でしか反論できなかったというのは、逆に「前夜祭」が疑惑と不正だらけであることの証明とも言えるだろう。 しかも、安倍首相の有権者買収疑惑はこの「桜を見る会」前夜祭だけではなかった。 安倍首相は毎年、新年に墓参りなどで地元・山口入りした際などに、安倍晋三後援会が主催する「新春の集い」という新年会を下関市や長門市など複数の会場で開催しているのだが、長門市の会場である大谷山荘での新年会の会費が「桜を見る会」と同じように「安すぎる」という指摘の声があがっているのだ。 大谷山荘といえば、2016年12月にプーチン大統領が来日しておこなわれた日露首脳会談の舞台として安倍首相が選んだ地元・山口の老舗高級温泉旅館で、当時はマスコミがこぞって大谷山荘を取り上げ、“安倍首相にもっとも近いジャーナリスト”としてワイドショーに出演していた山口敬之氏も"安倍首相に大谷山荘へ2回連れて行ってもらった""相当仲良くならないと連れて行ってもらえない"などと自慢していた。 つまり、プーチン大統領を招待するほど安倍首相が贔屓とする高級旅館であるわけだが、本日付の中国新聞デジタルの記事によると、そんな大谷山荘でおこなわれる安倍後援会主催の新年会の会費は、なんと3000円ポッキリだというのである。 ●安倍後援会「新春の集い」の会費の安さを地元新聞が報道 舞台は大谷山荘 「山口県随一」とまで言われる老舗高級温泉旅館でのパーティの会費がたったの3000円──。安倍首相の支援者は取材に対し「ビールは飲み放題だが、食事は刺し身や揚げ物など簡単なオードブル」と話しているが、会場はその辺の宴会場ではなく〈日帰り入浴でも2千円と温泉街の中で一番の高級旅館〉(中国新聞デジタル)なのだ。 しかも、本サイトでも調べてみたところ、大谷山荘での新年会に参加した人のブログを確認すると、2018年の同会には参加者がバス15台で大谷山荘に駆けつけ、その立派な会場には安倍首相の地元後援会会長だけではなく、自民党・江島潔参院議員や北村経夫参院議員といった安倍首相の子飼い議員をはじめ、村岡嗣政・山口県知事や林芳正文科相(当時)の妻も登壇。催しの開始前から和太鼓の演奏が披露されたり、立食の円卓の上には華やかなオードブルが並んでいる。 一方、2016年のこの新年会には約800人が参加したと朝日新聞西部地方版が伝えているが、同年分の安倍晋三後援会の政治資金収支報告書を確認すると、1月27日付で大谷山荘に「会場一式、料理代」として支払われている額は、188万9580円。1人当たりたったの約2362円にすぎないのだ。 繰り返すが、日帰り入浴だけでも2000円する高級温泉旅館で、ビール飲み放題、刺身をはじめとするオードブルまで付いて1人約2000円程度というのはあまりに安すぎるのではないか。実際、中国新聞の記事では、長門市の市民団体の広岡逸樹共同代表が「地元住民が気軽に宴会で使える場所ではない。首相の後援会だから安くしているのでは」と述べ、さらにある旅館関係者もこう証言している。 「総理は地元の誇り。旅館側も赤字覚悟で頑張っているはずだ」 「桜を見る会」の「前夜祭」では会費5000円で足りない分を安倍後援会が補填しているか、あるいはホテルニューオータニ側がサービスしているか、そのどちらかだと考えられている。後者の場合、一般客は1人あたり最低1万1000円以上かかり、ホテルニューオータニ側もメディアの取材に「値切り交渉には応じられない」と答えているのに、それが安倍首相には5000円で引き受けているとしたら、値引き分は安倍晋三後援会への寄附にあたり、政治資金規正法で禁じられた政治団体への企業献金となる可能性がある。 一方、大谷山荘側は〈「宴会費は顧客要望に応じ決めている」として通常料金は公表していない〉(前出・中国新聞)ため一般料金と同じなのかどうかがわからないが、〈新年会の会費3千円について石原良次常務は「人数が多く単価は安くなる。赤字ではやらない。イメージされるほど高級旅館でもない」〉などと回答している。 天皇皇后も宿泊し、日露首脳会談までおこなわれ、旅行ガイドでも「高級旅館」と称されているというのに、旅館側がわざわざ「イメージされるほど高級旅館でもない」とブランドイメージを崩すようなコメントをするのも不自然な話で、地元で指摘されているように、「首相の後援会だから安くしているのでは」「赤字覚悟では」という疑いは晴れないだろう。 ●日露首脳会談の舞台に選んだ山口の大谷山荘 異常な安価でサービスか しかも、パーティ会場である大谷山荘については、ホテルニューオータニと同様の疑惑もささやかれている。それは、政府行事に使用してもらった見返りだったのではないかという疑惑だ。 ホテルニューオータニをめぐっては、昨年10月22日の「即位礼正殿の儀」の翌日23日におこなわれた「内閣総理大臣夫妻主催晩餐会」が予算総額1億7200万円でおこなわれている。この晩餐会は入札もおこなわれず、不透明な選定によってニューオータニに決定しており、こうした国が発注した行事の見返りにニューオータニが値引きをおこなったのではないかという指摘が出ているのだが、実際、ニューオータニの代表取締役常務であり東京総支配人の清水肇氏は「週刊文春」(文藝春秋)の直撃取材に対し、「このあいだの晩餐会もやっていただいた。総理といえば天皇の次くらいの人ですから、使ってもらえるのはありがたいですよ」と自らコメントしているのである。 そして、大谷山荘も、繰り返してきたように安倍首相が日露首脳会談の舞台に選び、プーチン大統領を招いたことで、マスコミが特集を組み、「老舗高級温泉旅館」として一躍名を轟かせた。その宣伝効果は絶大だったことは言うまでもない。その後旅行ガイドには「プーチン大統領が宿泊」「プーチン大統領を癒した」などの惹句で紹介されている。 その上、大谷山荘別邸の近くには、倒産した白木屋グランドホテルの従業員寮が廃屋になっていたというが、〈景観を損ねるうえ、警備上の邪魔にもなる〉という理由で解体・撤去することになり、長門市はこれに補正予算3325万円を計上(「週刊新潮」2016年11月17日号/新潮社)。ようするに、安倍首相がプーチン大統領を大谷山荘に招待したことによって、税金で大谷山荘周辺の環境整備までおこなわれたというわけだ。 叩けば叩くほどホコリが出てくる、安倍首相の有権者買収と不当な値引き疑惑──。「野党はデマを流した!」と騒ぐ前に、まずは国民に対して明細書などの客観的証拠をきちんと示してから説明すべきだ。そして、それをしない・できないということは、自ら「クロ」であることを認めていることに等しい。 |
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●政府「歴代内閣も地元客を招待」 安倍晋三首相は27日の衆院予算委員会で、首相主催の「桜を見る会」問題を巡り、地元後援会関係者の招待に関し「招待基準が曖昧だったために、歴代内閣でも地元の方々の出席はあった。他の(首相の)時に一人も呼んでいなくて、私の時に増えたということではない」と述べた。菅義偉官房長官は招待者名簿に関するログ(記録)の調査に関し、内閣府と国家安全保障局が同じシステムのため「国家機密に関わる情報を含めて調査することになり、漏えいの危険が増す」と否定。 また、菅氏は「そもそも招待者名簿は1年未満で廃棄していいルールだ。調べる必要はない」とも述べた。・・・ |
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●安倍首相「歴代首相も地元出席者あった」桜を見る会 安倍晋三首相は27日の衆院予算委員会で、「桜を見る会」に約800人の地元後援者が招待され「私物化」と批判が出ている問題に関して「歴代内閣でも招待基準があいまいだったのは事実。歴代内閣でも地元の方々の出席はあった」と、主張した。 質問したのは、橋本龍太郎内閣の総理秘書官を務めた江田憲司氏。当時の関係者に確認したとして「橋本総理は、地元の後援会なんて一切呼んでいない。小泉純一郎さんも、地元の人を呼ぼうなんて考えもしなかった(との報道がある)。これが総理大臣たる人物の最低限のモラルだ」と、歴代首相と安倍首相の「モラル」の違いを指摘。「他の人がやっているから、自分もやっていいということではない」と批判された首相だったが「他(内閣の時)に1人も呼んでいなくて、私の時に増えたということではない」と、歴代内閣との比較で反論。「小泉さんはうそをついたということか」と指摘されたが、言及しなかった。 一方、昨年の参院選で、自民党の河井案里参院議員側に党本部から相場の10倍に当たる計1億5000万円が投入された問題については、「一般論」とした上で「政党本部から支部への政治資金の移転は何の問題もない。個別の件は承知していない」と、述べた。 |
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●安倍首相、IR「米大統領の要請ない」 カジノ業者とは意見交換 衆院予算委員会は27日午後、安倍晋三首相と全閣僚が出席して、2019年度補正予算案に関する基本的質疑を続行した。カジノを含む統合型リゾート(IR)事業に関し、首相は「今日に至るまで、トランプ米大統領から要請を受けたことは一切ない」と強調した。野党共同会派の江田憲司氏への答弁。 首相は17年2月の米国訪問時に出席した朝食会で、同国のカジノ事業者と意見を交わしたことを明らかにした。ただ、事業者からの参入要望は「一切なかった」とも述べた。立憲民主党の大串博志氏への答弁。 IR事業に絡む汚職事件をめぐり、江田氏は収賄容疑で逮捕された元IR担当内閣府副大臣の秋元司容疑者(自民党離党)から、何らかの働き掛けがなかったかをただした。首相と菅義偉官房長官はいずれも「なかった」と答えた。 昨年の参院選で自民党の河井克行前法相夫妻の政党支部に計1億5000万円が党本部から振り込まれたことについて、首相は「政党本部から支部への政治資金の移転は何の問題もない」との認識を示した。振り込みを把握していたかも問われたが、「政治資金の運用は党本部に任せている」と述べるにとどめた。江田、大串両氏への答弁。 首相主催の「桜を見る会」をめぐり、江田氏は首相の後援会関係者が多数招かれていたことを追及した。首相は「招待基準が曖昧だったため、歴代内閣でも地元の方の出席はあった。他の(首相の)時に一人も呼んでなくて、私の時に増えたということではない」と釈明した。 |
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●首相、河井氏陣営に秘書派遣認める「私の指示」 通常国会の論戦が最初の山場を迎えます。27日から、安倍晋三首相ら全閣僚が出席し、衆参両院で相次いで予算委員会が開催。この日は衆院予算委が行われました。「桜を見る会」問題やカジノを含む統合型リゾート(IR)事業の汚職事件、辞任閣僚らの公職選挙法違反疑惑などをめぐる首相と野党の攻防をタイムラインで速報し、記者が解説します。 ●数々の「疑惑」…従来の説明繰り返す首相、不誠実 与野党の論戦が本格化する衆院予算委員会の初日が終わりました。この日の焦点は、安倍晋三首相の「説明責任」でしたが、国会審議で首相がその責任を果たしたとは言えなさそうです。 とりわけ野党の質問が集中したのは、桜を見る会問題でした。首相がこの問題について「一問一答」形式の予算委で答弁に立つのは、実に昨年11月8日以来。首相は記者団などに対して「国会から求められれば、出て行って説明するのは当然のことだ」と言っていただけに、どのような説明をするのか注目が集まっていたからです。 しかし、ふたを開けてみれば、これまで菅義偉官房長官らが引いてきた安倍政権の「説明ライン」を越える答弁はありませんでした。従来の説明の繰り返し、という印象です。 例えば、首相の支援者らが多数招待されていたことを追及されると、首相は「招待基準があいまいであったために、歴代内閣でも地元の方々の出席はあった」。招待者名簿など公文書のずさんな管理を指摘されると、菅氏が「民主党政権時代を含め、招待者名簿の取り扱いは公文書管理法に違反するものだった」と答弁し、安倍政権の責任を転嫁する場面も見られました。 確かに首相の立場として答弁しづらい内容もあろうかと思いますが、野党が取り上げたテーマは、報道各社の世論調査などを見ても国民が疑念を抱いていることばかりと言えます。首相や閣僚は耳の痛い質問でも正面から受け止め、できる限り誠実に答弁する――。明日以降の予算委の論戦では、そんな姿勢を期待したいと思います。 ●ジャパンライフ元会長招待? 首相答えず オーナー商法で行政指導を受けたジャパンライフの元会長が勧誘に「桜を見る会」の招待状を使っていたとされる問題。安倍晋三首相は元会長を招待したかどうか問われたが、「個人に関する情報」だとして答えなかった。 国民民主党の大西健介氏が「本人が『招待された』と言っている。自ら公開している人に、なぜ『個人に関する情報だから回答できない』と答弁するのか。回答して困るのは、招待された人ではなくて首相自身ではないか」と追及。だが、首相は「個人の言動を踏まえて政府として明らかにすることは、考えていない」として答えなかった。 首相はまた、ジャパンライフの元会長との関係については「多人数の会合で同席した可能性は否定しないが、1対1でお会いしたことはなく、個人的関係はない」と述べた。 ●法定上限超える報酬、今井氏「資金が潤沢だったから」 「どうしてお金を払えたかといったら、これだけのお金をもらえたからですよ。資金が潤沢だったからではないか。結果的に自民党がたくさんのお金を渡したことが、こういう事態を招いたのではないか」 自民党の河井案里参院議員(広島選挙区)の陣営が昨夏の参院選で車上運動員に法定上限を超える報酬を支払ったとされる疑惑をめぐり、野党統一会派の今井雅人氏(無所属)は安倍晋三首相が疑惑の原因を作ったのではないかと追及した。党本部が河井氏陣営に1億5千万円もの資金を提供したからこそ、このような選挙違反疑惑を招いたという理屈だ。 首相は「私は案里氏だけでなく、全国の候補者の応援をしている。広島選挙区で(河井氏と自民現職の)どちらか一方に肩入れしたということではない」と反論。「さまざまな指摘について、それぞれの政治家が自ら襟を正し、自ら可能な限り説明責任を果たすべきものだと思う」と述べた。 ●河井案里議員に秘書応援、首相「私の指示」 自民党の河井案里参院議員(広島選挙区)の陣営が、昨年の参院選で党本部から1億5千万円の資金を受け取った問題に関連し、安倍晋三首相は「私の秘書が、私の指示によって広島に応援に入ったということだ」と述べ、山口県の地元事務所の秘書が河井氏の選挙を応援したことを認めた。 河井氏への首相の強力なテコ入・・・ |
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●安倍首相、自衛隊明記「国防の根幹」 衆院予算委で論戦開始 衆院予算委員会は27日午前、安倍晋三首相と全閣僚が出席して2019年度補正予算案に関する基本的質疑を行い、実質審議入りした。首相は、憲法9条への自衛隊明記について、「国民のため、命を賭して任務を遂行する自衛隊の正当性を明文化し明確化することは国防の根幹に関わることだ」と訴えた。自民党の小野寺五典氏への答弁。 公明党の国重徹氏は、政権の不祥事が相次いでいることを念頭に、信頼回復への取り組みを聞いた。首相は「国民の厳しい声や批判を受け止め、一層身を引き締めていかなければならない」と語った。 首相は、補正予算案などに盛り込んだ事業規模26兆円の経済対策について「東京五輪・パラリンピック後もわが国の経済が民需主導の力強い成長を実現していくためのものだ」と強調した。自民党の金子恭之氏への答弁。 |
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●衆院予算委 河井夫妻の疑惑など首相追及 国会では、27日から衆議院予算委員会で今年度の補正予算案の審議が始まった。野党側は、自民党の河井前法相と案里参議院議員夫妻の公職選挙法違反の疑惑などについて安倍首相を追及した。 立国社(会派)・今井雅人議員「案里さんに事情を説明しろと指導することができるんじゃないですか」 安倍首相「それぞれの政治家が自ら可能な限り説明責任を果たすべきものなんだろうと、このように考えております」 また、立憲民主党の大串議員が去年の参議院選挙の前に、党本部から河井夫妻の政党支部にあわせて1億5000万円が振り込まれたことについてただしたのに対し、安倍首相は、「一般論として言えば何ら問題ない」と述べた。 その上で、安倍首相の指示だったのかどうかについては「政治資金の運用については、党本部に任せている」と明言をさけた。 また、安倍首相は選挙期間中に自身の秘書を案里議員の陣営に派遣していたことを認め、「知名度が弱いということもあり、私の指示で応援に入った」と述べた。 一方、「桜を見る会」をめぐる問題について、野党系会派の今井議員は、招待者のうち「総理大臣等」の区分のみが年々増加していることを追及した。 安倍首相は、「最終的には内閣官房・内閣府において取りまとめた」と述べるにとどまった。 また、悪質なマルチ商法で行政指導を受けたジャパンライフの元会長が「桜を見る会」の招待状を勧誘に利用していたとされる問題で国民民主党の大西議員は元会長を招待したかどうか、「回答して困るのは、招待された人ではなくて首相自身ではないか」と追及した。 これに対し、安倍首相は個人情報であることを理由に「回答を控える」と繰り返した。 |
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●「桜を見る会」安倍首相の支持層に起きた「異変」 1月に始まった通常国会で焦点の一つが、安倍晋三首相の「私物化」が指摘されている「桜を見る会」の問題です。野党の支持層が批判的なのはわかりますが、朝日新聞の世論調査をみると、安倍首相を支持する層に「異変」が起こっていることがわかりました。問題が発覚した2019年11月以降の世論調査から、首相支持層の本音を探りました。 ●政権の対応に「納得できない」73% 1月25日と26日に行った朝日新聞の世論調査では、「桜を見る会」について、次のように聞きました。 【質問】あなたは、「桜を見る会」をめぐる一連の問題で、安倍政権の対応に納得できますか。納得できませんか。(2020年1月調査) 納得できる(14%) 納得できない(73%) *その他・答えないは省略 「桜を見る会」は一部の時期をのぞいて、首相が毎春、東京・新宿御苑で主催してきました。各界で活躍する人たちを慰労し親睦を深めるのが目的で、当時の吉田茂首相が戦前に開かれていた春の「観桜会」などを参考に、1952年に始めました。 ところが、昨年11月の臨時国会で、「桜を見る会」が問題化します。安倍首相が主催するようになってからは、各界の著名人のほかに、安倍首相の地元の支援者が多く招待されていたとして、野党が安倍首相による「桜を見る会」の「私物化」だと指摘したのです。 こうした批判を受けて、政府は今年の「桜を見る会」の開催を中止しました。安倍首相は招待者の増加について「私自身も反省しなければならない」と陳謝したものの、「私物化」との指摘を払拭するような具体的な説明がされないまま、年を越しました。 ●首相支持層にたまる「不満のマグマ」 1月の世論調査をみると、問題発覚から3カ月たっても、安倍首相の説明に対する有権者の厳しい視線があることがうかがえます。 この間、内閣支持率は11月44%(不支持36%)、12月38%(不支持42%)、1月38%(不支持41%)と推移し、支持は40%を切ったままです。2012年12月に始まった第2次安倍政権では、年末年始を挟んだ12月から1月の内閣支持率は上がることが多かったのですが、今回は横ばいでした。不支持が支持を上回る状況も2カ月連続です。 「桜を見る会」の問題が尾を引いているようです。 それでは、安倍首相の支持基盤と言える内閣支持層と自民支持層は、「桜を見る会」の問題をどう見ているのでしょうか。 【質問】「桜を見る会」について、安倍首相は「私は、招待者のとりまとめなどには関与していない」と説明しています。あなたは、安倍首相の説明に納得できますか。納得できませんか。(2019年11月調査) 納得できる=全体(23%)/内閣支持層(40%)/自民支持層(37%) 納得できない=全体(68%)/内閣支持層(49%)/自民支持層(53%) 【質問】「桜を見る会」をめぐる一連の問題について、あなたは、安倍首相の説明は十分だと思いますか。十分ではないと思いますか。(2019年12月調査) 十分だ=全体(13%)/内閣支持層(25%)/自民支持層(21%) 十分ではない=全体(74%)/内閣支持層(61%)/自民支持層(67%) 【質問】あなたは、「桜を見る会」をめぐる一連の問題で、安倍政権の対応に納得できますか。納得できませんか。(2020年1月調査) 納得できる=全体(14%)/内閣支持層(29%)/自民支持層(24%) 納得できない=全体(73%)/内閣支持層(58%)/自民支持層(62%) 内閣支持層と自民支持層で、安倍首相や政権に対する否定的な評価が高いままであることがわかります。この問題をめぐっては、安倍首相の支持層にも「不満のマグマ」がたまっていると言えそうです。 ●通常国会で首相の説明は―― 今月20日に始まった通常国会。安倍首相は施政方針演説で、「桜を見る会」の問題には一言も触れませんでした。さらに、首相の施政方針演説に対して各党が質問する代表質問でも、野党の党首らから「桜を見る会」の問題について問われましたが、安倍首相はこれまでと変わらない答弁を続けています。 通常国会では、与野党議員と安倍首相らが一問一答形式でやりとりする予算委員会が1月27日から始まりました。はたして、安倍首相から納得のいく説明があるのでしょうか。 |
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●「桜を見る会」しか見ていない左派野党 “身内”の問題には触れず… 中国湖北省武漢市で発生した、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が、日本をはじめ世界各国の政治や経済、社会生活に深刻な影響を与えつつある。こうしたなか、衆院予算委員会は27日、今年初めての国会審議を行ったが、左派野党は相変わらず、首相主催の「桜を見る会」や「政治とカネ」をめぐる疑惑を追及した。 「安倍晋三首相は桜を見る会の前日に、『前夜祭』をホテルで会費5000円で開いた。安すぎるのではないか?」 立憲民主党の黒岩宇洋(たかひろ)氏は27日午後、衆院予算委員会で、こう質問した。 これに対し、安倍首相は「後援会関係者ら800人相当が宿泊する前提で、ホテル側から5000円が提示された」と答弁した。 そのうえで、黒岩氏が昨年、ツイッターで前夜祭に高級すし「銀座久兵衛」が出たと発信したことを指摘し、「黒岩議員はデマを流布した。久兵衛さんは出していないと言っている。間違えたなら間違えたと言うべきだ」と反撃した。 夕刊フジの取材でも、久兵衛側は黒岩氏の発言を完全否定している。 パーティーの会費も、同党の最高顧問の海江田万里衆院議員らが1人5000円程度と計算できるパーティーを開いていた。ホテル側の関係者は、夕刊フジの取材に対し、「メディアや野党にも回答しているが、その通りに報じてくれない」と嘆いていた。 左派野党は、悪質なマルチ商法で経営破綻した「ジャパンライフ」の山口隆祥元会長が「桜を見る会」に招待されたことも追及した。 だが、元朝日新聞政治部長がジャパンライフの顧問を務め、新聞やテレビで活躍する政治評論家らが山口元会長と高級ホテルで勉強会を開き、同社の「広告塔」となっていたことには触れなかった。 山口元会長をめぐっては、TBSが昨年12月、「民主党の鳩山由紀夫政権時も、桜を見る会に招待された」との認識を報じたが、この問題は取り上げないのか。 「自民党一強」の理由が分かる気がした。 |
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●「桜を見る会」追及、衆議院予算委員会は野党側の完敗 ●1月27日の衆議院予算委員会 「桜を見る会」問題を追及する立憲、国民、共産などの野党側は、一問一答の予算委員会になれば、安倍首相を十分に追及できると意気込んでいた。しかし、1月27日に開かれた衆議院予算委員会は、明らかに野党側の完敗である。 野党側は、江田憲司、大串博志、黒岩宇洋、今井雅人、大西健介の各議員が、桜を見る会と1億5000万円問題で安倍首相を追及したが、何の成果もなく完敗した。 ●野党側完敗の原因 野党側完敗の原因は、攻撃のネタ・材料を週刊誌報道に頼り、決定的な証拠を持たず、すべては確たる証拠もなく、単に推測や想像に基づく安倍攻撃に過ぎないからである。 前夜祭については、野党側のアドバイザー的存在の郷原信郎弁護士による「安倍首相は詰んでいる」の主張の誤りが明らかになった。なぜなら、「詰んでいる」ことの大前提である、「ニューオータニ5000円」の違法性や不当性すら、野党側はいまだに全く証明できていないからである。 ●「桜を見る会」は政治倫理の問題であり、法律問題ではない 「桜を見る会」における安倍首相側の招待者増加及びそれに伴う予算増加は単なる政治倫理の問題であり法律問題ではない。 なぜなら、当該行事は首相恒例の行事として、民主党政権時代も後援会関係者の招待を含め盛大に行われていたから、安倍首相側に限って、特段の「買収の故意」(刑法38条)や「違法性の認識」さらには「可罰的違法性」の存在を証明するに足りる事実も証拠も全く存在しないからである。 ●「桜を見る会」による安倍内閣打倒は不可能 野党側は、現在でも「桜を見る会」の追及で安倍内閣を打倒できると甘く考えているようであるが、到底不可能であることを一日も早く悟るべきである。 なぜなら、いかに野党側が必死に追及しても、上記の通り、野党側主張の「買収」や「政治資金規正法違反」などを証明するに足りる事実も証拠も全く存在しないからである。このことは、1月27日の衆議院予算委員会での野党側完敗で増々明らかになった。 ●野党側は予算の審議をせよ 野党側は国民生活に直結する補正予算の審議をせず、もっぱら「桜を見る会」などの追及に明け暮れている有様である。災害復旧、外交、安全保障、景気、社会保障、人口減少、高齢化など問題は山積している。このような野党の体たらくでは、野党への政権交代などは到底不可能である。 なお、1月26日BS朝日「田原総一郎の与野党激論」で、松川るい参議院議員は、「桜を見る会の招待者名簿は長く残すような行政上の重要文書ではない。個人情報保護など、会が終われば速やかに処分するのは当然のことである」旨を述べておられた。筆者も全く同感である。 |
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●衆院予算委員会、野党「桜を見る会」首相責任を追及 国会では今年度の補正予算案の審議が行われ、野党側は28日も、「桜を見る会」を巡って安倍総理の責任を追及しています。国会記者会館からの報告です。 野党側は、安倍総理の答弁は「招待基準が曖昧だったこと」を理由に、責任逃れをしているなどと追及しました。 「何だか他人事のように言っていると、私は感じます。悪いのは招待基準じゃないでしょう。悪いのはですよ、悪用した安倍政権じゃないですか」(「立国社」会派 小川淳也 衆院議員) 「しかし招待基準が曖昧であったことは事実であります。例えば鳩山政権のときにも30分ぐらい地元の後援者と写真撮影をしていることが、堂々と新聞の総理の一日に出ているじゃありませんか、それは事実なんですよ」(安倍首相) さらに、野党側は第2次安倍政権以降、「桜を見る会」の招待者が大幅に増えたのは事実だとして、安倍総理の責任を重ねて追及しました。 経済対策などを盛り込んだ今年度の補正予算案は夕方、委員会で採決され、28日夜に衆議院本会議で可決される見通しです。 |
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●後援会招待「鳩山政権でも」 安倍首相、桜を見る会で―衆院予算委 衆院予算委員会は28日午前、2019年度補正予算案に関する基本的質疑を続行した。首相主催の「桜を見る会」をめぐり、安倍晋三首相は自身の後援会関係者を多数招待したことに関し、「鳩山政権でも当時の鳩山(由紀夫)首相は、地元の後援者と写真撮影していた」と指摘した。野党共同会派の小川淳也氏への答弁。 首相は、同会の招待者数が増加したことについて「責任を感じ、反省しなければならない」と陳謝。その一方で「わが党の歴代首相の時も地元の方はたくさん来ている。突然、安倍政権でそうなったということではない」とも語った。 首相は招待者選定に関し、「各界で活躍する人を幅広く把握する観点から妻の意見を聞き、事務所の担当者に伝えた」と述べ、昭恵夫人を含む関与を認めた。「(妻と)名刺交換をすれば必ず招待状が行くということではない」とも語った。 小川氏は、招待者名簿の電子データが消去された時の端末記録の公開を要求。公開が20年度予算案の審議に応じる「前提」と強調した。 立憲民主党の川内博史氏は、首相主催の会合で参加者が把握できないものが他にあるのかをただした。菅義偉官房長官は「誰が出席したか分からない会は桜の会だけだ」と答弁した。 |
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●桜の会、首相が各界活躍者を推薦 夫人要望も反映、衆院予算委 安倍晋三首相は28日午前の衆院予算委員会で、首相主催の「桜を見る会」を巡り、自身の議員事務所からの招待者推薦に関し「私が把握した各界で活躍されている方々について、推薦するよう意見を伝えたこともあった」と表明した。昨年11月の臨時国会では、事務所が相談を受ければ、意見を言うこともあったと説明するにとどめていた。首相は予算委で「妻の意見を聞くこともあった」と言及し、安倍昭恵首相夫人の要望も反映していたと明らかにした。 桜を見る会での招待者推薦に関し、首相が選定過程で一定程度関与していたことが改めて浮かび上がった形だ。 |
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●安倍首相またも「ゼロ回答」で国会大荒れ。バカにされ続ける国民 菅義偉官房長官は27日の衆院予算委員会で、「桜を見る会」の招待者名簿のログを開示できない理由を語ったと毎日新聞などが報じた。菅氏によると、招待者名簿の電子データ廃棄記録と同じシステムを国家安全保障局も利用しており、記録を確認すると国家機密漏えいの危険が増すとのことから、「確認は不正侵入の検証などの範囲内で行なう」と述べたという。野党側の開示請求には、「廃棄の時期は各省庁の判断に委ねられている」とし、応じない姿勢を見せた。 同予算委員会では「桜を見る会」や、IR汚職事件、官僚の辞任などについて安倍首相に答弁が求められたが、またしても「実質ゼロ回答」。議場は野党からの野次で大荒れとなった模様だ。 ●提出されたのは黒塗りの資料 「今日、内閣府から提出された桜を見る会の文書。総理の工程も、桜を見る会の進行予定も、真っ黒。安倍後援会が正規の案内の開門・受付開始の30分以上前から入園して総理と写真撮影してますが、安倍後援会の行事を、政府公的行事に組み込んでいることを隠すための黒塗りでしょうか。 」 内閣府は2013年に開催された「桜を見る会」の実施要領や飲食物提供業務の入札結果などが記載されている約500枚の資料を、参院予算委員会理事懇談会に提出。しかし、当日の首相行程案などは黒塗りになっていた。安倍首相の地元支援者などを開門時刻より前に入場させ、首相や昭恵夫人と写真撮影をし、特別扱いしたことが判明していたが、野党側はこうした「特別扱い」を隠すためだとして反発した。 また、首相の後援会関係者が多数招かれていたことについては、「招待基準が曖昧だった」とし、「歴代内閣でも地元の方の出席はあった。他のときにひとりも呼んでなくて、わたしのときに増えたというわけではない」と回答した。 ●IR、米から要請は「一切ない」 首相は、2017年2月のアメリカ訪問時に出席した朝食会で、アメリカのカジノ事業者と意見を交わしていた。しかし、事業者からの参入要望はなかったとし、「今日に至るまで、トランプ米大統領から要請を受けたことは一切ない」と述べた。また、収賄容疑で逮捕された元IR担当内閣府副大臣の秋元司容疑者からの働きかけについても「なかった」と答えた。 ●河井夫妻に1億5000万「問題ない」 安倍首相は、河井前法務相夫妻の政党支部に、合わせて1億5000万円が党本部から振り込まれていた件について問われると、「政党本部から支部への政治資金の移転は何の問題ない」と答えた。しかし、2019年参院選の広島選挙区(改選数2)、河井案里参院議員の強豪相手だった溝手顕正・元防災担当相の陣営には1500万円が振り込まれており、党本部の肩入れぶりが露骨に出ていることなどから、自民党内からも不満の声があがり始めている。 ●あまりに乱暴な首相の答弁に集まる批判 立憲民主党の蓮舫参院幹事長は27日、「桜を見る会」についての安倍首相の答弁を「他の首相も後援会を招待していたと自分を正当化した、あまりに乱暴な答弁だった」と怒りをあらわにした。また、国民民主党の原口一博国対委員長は、「桜を見る会」の前夜祭についての明細書公表を首相が拒否したことに触れ、「犯罪を構成する事実を隠そうとしているのではないか。目が泳ぎ、感情的になっていた」と話した。 ●Twitterの声 安倍首相の答弁に、日本のネット上からも怒りの声があがっている。 「久しぶりに衆院予算委で安倍総理の答弁を見た。何を聞かれても呪文のように「定型文」を繰り返し、質疑が噛み合わないことを狙っているかのよう。ひとたび、無理筋のシナリオを描いてしまうと、辻褄が合わなくても強引に言い繕う手法が繰り返されてきたが、過去との違いは「勢い」が衰えていることだ。」 「国会中継をちらっと見ましたが、安倍総理が延々と同じところを読んでいます。安倍総理のような、こんな嘘ばかりの人間がいつまでも総理をやっていること自体が大問題です。」 「実はかなり安倍政権の経済政策を批判してるんだけど一番の悲劇は「それでも他に任せられる人が居ない」って事。安倍政権の経済政策は増税しちゃったので個人的には今や50点台。でも野党が全部0点なんだから「どっちを選ぶ?」と聞かれて0点は選べないのよ。もう雇用がボロボロになるのは嫌なんだよ。」 「小川議員の鋭い質問にボロボロの安倍。もう辞任しとこうよ」 「桜問題。総理が見境がつかなくなった公私混同。ことの本質は衆議院議員安倍晋三さんが内閣総理大臣たる地位を利用して趣旨を歪ませて予算を執行した様々な法違反の疑いがある、と。第三者委員会を設置せよ、と。」 「「桜を見る会」問題に費やされる国会審議の時間が本当に勿体ない。安倍首相が必要な記録を出せば1日で終わる話が、2ヶ月以上も長引いているのは本当に無駄としか言いようがない。そもそも、市民から搾り上げた税金で選挙区の有権者を買収したのに未練がましく首相の座にしがみ付いているのが言語道断。」 「安倍政権下での国会答弁は、論点のすり替え等による不誠実なものが多過ぎて、見る事がストレスでしかない。もしも就職などの面接で同じ様な受け答えをする人がいたら合格する可能性はほぼ無いと思うのだが、今の政治家には必要なスキルだとしたら…良い政治家は世に出て来れないということか。」 「国会答弁見ていて、いうは易し、なんだけど、安倍氏の回答が幼稚すぎて、更に内容自体も幼稚すぎて、頭が混乱する。今私何歳だろう、、とか思った。何もできず、私のような一国民の声はかき消されてしまうんだけどね。でも何かできるかもって、隙は狙ってる笑。」 |
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●ヤジる安倍首相に「こんな非常識で愚かな人物を総理として頂いている」 2/12 | |
国民民主党の小沢一郎衆院議員が12日、ツイッターに新規投稿。安倍晋三首相が衆院予算委員会で、質問を終えた立憲民主党の辻元清美氏に対し「意味のない質問だ」と自席からやじを飛ばしたことに「異常である」と投稿した。
小沢氏は「意味のない質問だった」との安倍首相の発言を記し、「総理が国会の場で野党議員の質問後に一言。異常である。反省はゼロ、感情的に逆切れ。国会の場で、議員の質問に対し、こういうことを言うこと自体、国会延いては国民を馬鹿にしているということ。こんな非常識で愚かな人物を総理として頂いているということこそ国難である」とツイートした。 辻元氏は「桜を見る会」など最近の不祥事に触れ「タイは頭から腐る。社会、国、企業の上層部が腐敗していると残りもすぐに腐っていく。ここまで来たら頭を代えるしかない」と首相を非難。やじは、この発言後に飛び出した。 |
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●首相がヤジ、辻元氏に「意味のない質問だよ」 予算委で 2/12 | |
安倍晋三首相は12日の衆院予算委員会で、質問を終えた立憲民主党の辻元清美氏に対し、「意味の無い質問だよ」とヤジを飛ばした。野党議員は「一国の総理が言うことではない」と抗議し、予算委は10分余り、紛糾した。
辻元氏の質問が終わった直後、NHKのテレビ中継でも聞き取れる声量で「意味の無い質問だよ」とヤジが飛んだ。質問席から去ろうとしていた辻元氏が「誰が言ったの?」と声を上げると、野党議員たちは「総理だ」と指摘した。野党の予算委理事は棚橋泰文委員長(自民党)に詰め寄り、審議を止めて事実確認するよう求めたが、棚橋氏は「私には聞こえなかった」などと拒否。野党側は10分以上にわたり質問時間を浪費することになった。 その後、質問に立った立憲の逢坂誠二氏がヤジの事実関係を問うと、首相は「辻元氏がずっと、私に言わせれば質問ではなく、罵詈(ばり)雑言の連続だった。私に反論の機会は与えられずに。こんなやりとりでは無意味じゃないかと申し上げた」と釈明した。 辻元氏は自らの質問の最後に「タイは頭から腐る。上層部が腐敗すると残りもすべて腐る。総理が桜(を見る会)とか加計とか森友とか、疑惑まみれと言われている。官僚がかわいそうだ」と述べたまま、持ち時間を終えていた。 辻元氏は委員室を退席後、首相のヤジについて「びっくりした。私個人に対しても問題だし、立法府全体で問題視しないといけない。発言の撤回と謝罪を求めたい」と記者団に指摘。「私は歴代総理と議論し、はっきりものを言ってきたが、罵詈雑言ととったのは(安倍)総理お一人だ」とも語った。 |
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●安倍首相「意味のない質問だよ」発言に至った経緯は... 2/13 | |
安倍晋三首相が、質問を終えて退席しようとする辻元清美議員(立憲民主党)に「意味のない質問だよ」と自席からやじを飛ばし、審議が一時紛糾した。その後の別議員が行った、辻元氏へのやじに関する質問に対し、安倍首相は発言を認めた上で、辻元氏の質疑に対し「罵詈(ばり)雑言の連続だった」「私に反論する機会を与えられず...」と理由を説明した。
安倍首相が反発を示した「(辻元氏質問の)最後のところ」は、どのような内容だったのか。本当に「意味のない質問」だったのか。やじの様子や安倍首相の「理由説明」とともに詳しく紹介する。 ●野党側反発で審議中断 2020年2月12日の衆院予算委員会で、辻元氏が約48分の質疑を終えて自席へ戻ろうとした際、安倍首相は「意味のない質問だよ」とやじを飛ばした(この場面は翌日の民放情報番組でも音声付きで報じられた)。辻元氏は、「誰が言ったの?『意味のない質問』だって、誰が言った?今、『意味のない質問だ』って言ったんですよ」と発言主の確認を求めた。野党側はやじに反発し、審議は12分間にわたり中断した。 辻元氏はこの直前(質疑の最後)、和泉洋人・首相補佐官と厚生労働省の大坪寛子審議官による海外出張時の「コネクティングルーム(内部で行き来ができる部屋)宿泊」問題などに触れ、「鯛(タイ)は頭から腐る」という言葉を引用しながら安倍首相の政治姿勢を批判した(詳細は後述)。 審議が再開して質問に立った逢坂誠二議員(立憲民主党)が、やじ発言の事実関係を安倍首相に確認したところ、首相はこう答えた。 ●安倍首相「罵詈雑言の連続だった」 「あの、(質問の)最後のところでですね、ずっと辻元委員が私に質問ではなくて、ずっと、私から言わせれば罵詈雑言の連続だったわけですよ。頭から腐ると、腐ってる本体が私であると、ずっとこれを言い続けたわけですよね、政策に関わりなく。私に反論という反論する機会を与えられずに、延々とそれを繰り返された。私の目の前で、テレビつきで、ですね。それで終えられたんで、終えられたあとですね、それで、こんなやりとりは無意味じゃないか、ということを申し上げたわけでありますが、それは当然、そう思うじゃないですか。相互のやりとりがあって...ここで一方的に罵る、ここは質疑の場であってですね、一方的に罵る場なんですか?私はそうだとは思いませんよ。やっぱりそれでは質疑が無意味になる。私はそれでは質疑が無意味になってしまうと、こう思ったから、これじゃあ無意味じゃないかと、こう申し上げたわけであります」 と、「無意味」を4回も繰り返し、「意味のない質問」発言が自身のものであることを認めた。一方、逢坂氏は「辻元さんが言ったことは当たってると思いますよ」と反論した。 安倍首相が触れた「最後のところ」で、辻元氏は何と述べたのか。辻元氏は質問全体の後半では、和泉首相補佐官と厚労省の大坪審議官による海外出張時の「コネクティングルーム宿泊」問題(週刊文春が報じ、外務省が10日の衆院予算委で事実と認めた)などを取り上げ、公私混同させない姿勢を示すべきだ、と安倍首相に迫っていた(安倍首相や菅義偉官房長官は「公務」だったとの認識を示し、辻元氏の求めには応じず)。最後の質問に立った場面では、次のように指摘した。 ●辻元議員「上層部が腐敗していると、残りもすぐに腐っていく」 「今回は加計学園の渦中の人(編注:和泉首相補佐官)でしたけどね、森友(学園)疑惑も同じ構図なんですよ。真実を知り得る中核にいた人たちは、みんな出世してるんですよ。(当時の財務省の)佐川(宣寿)理財局長は国税長官、ほとぼりが冷めたらですね、中村(稔・理財局)総務課長もイギリス公使に栄転じゃないですか。普通は処分される人なんですよ。 そして今度、加計疑惑の和泉補佐官には何も言うこともできない、すくんでますよね。こんな事、普通の会社だったら『ちょっと来い』と、『お前らはもうダメだ』とやるじゃないですか。結局はですね、口封じだと思われますよ、言えないんですよ、弱み握られているから、そう思われたって仕方がないじゃないですか。だから私は総理のためにもですね、そんなことはないと、仰るんだったら、はっきりとけじめを付けろと言ってるわけです。 総理、最後に申し上げます。鯛は頭から腐るという言葉、ご存知ですか。これはですね、英語とかロシア語でもあるんですよ、死んだ魚の鮮度は魚の頭の状態から判断できる、従って社会、国、企業などの上層部が腐敗していると、残りもすぐに腐っていく。総理が桜とか加計とか森友とか疑惑まみれと言われているから、それに引きずられるように官僚の示しがつかない。私ね、官僚のみなさん、可哀想です。心痛めてる官僚の方、たくさんいると思いますよ。今回(和泉補佐官に関する問題)も見るに見かねて(編注:メディアへの情報提供は)内部からじゃないかな、というぐらい心配しています。子供の教育にも悪いです。長期政権だからじゃないですよ、最初からやってるんですから。桜を見る会も、森友だって総理大臣になる前から講演に行こうとしてた。 まあですね、ここまで来たら原因は鯛の頭、頭を変えるしかないんじゃないですか。私は今日、総理がしっかりけじめをつけると仰ったら、ここまで言うつもりはなかったです。まあ、『私の手で憲法改正を成し遂げたい』と、総理の手で成し遂げることは、そろそろ総理自身の幕引きだということを申し上げて終わります」 この後、安倍首相による先のやじ発言に続く。 国会では野党側が反発を強めており、翌13日に予定されていた衆院予算委は開かれなかった。与野党協議の末、週明けの17日に予算委で集中審議を行い、冒頭で安倍首相にやじ(不規則発言)に関連して発言を求めることで合意した。 |
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●辻元氏への「意味のない質問だよ」とのヤジ、首相が陳謝… 2/17 | |
安倍首相は17日午前の衆院予算委員会で、12日の審議で立憲民主党の辻元清美氏に「意味のない質問だよ」とヤジを飛ばしたことについて、「不規則な発言をしたことをおわびする」と陳謝した。「今後、閣僚席からの不規則発言は厳に慎むよう首相として身を処していく」とも語った。
その後、質問に立った辻元氏は「立法府への謝罪と受け止めた。私ははっきり物を言うが、厳しいことを言っても受け止めてほしい」と述べた。 一方、辻元氏は、首相主催の「桜を見る会」の前日に開かれた前夜祭に関し、「(従来の)首相の答弁は事実と違うのではないか」と追及した。 首相はこれまでの国会審議で、会場のホテルは宛名が空欄の領収書を発行したとし、明細書も受け取っていないと答弁している。 辻元氏はホテル側から首相の答弁と矛盾する回答が寄せられたと説明。首相は「(ホテル側に)確認したい」と述べた。 |
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●安倍政権の問題点 | |
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●安倍政権の問題点 2018/5 | |
戦後最長の政権となるかもしれない可能性すら見えてきた安倍政権。
「安倍さんになってから外交は安定した」「安倍政権はリーダーシップを発揮しTPPをまとめ上げた」「安倍さんの北朝鮮に対する強硬な姿勢は好感が持てる」 ネトウヨ界隈ではまだまだ人気の根強い安倍政権ですが、本当に素晴らしい内閣だったのでしょうか?確かに一つの解釈として安倍政権が優秀だからこの政権が続いているという解釈は可能です。 しかしながら、一方で、こういう可能性はないでしょうか。とんでもないものが現れているのにそれにすら気づけないほどに不感症になっているという可能性です。 この考えはネトウヨ界隈からは「左翼」「朝鮮人」扱いされる私がいくら言おうとも受け入れられないかもしれません。 ただ、個々の事例を冷静に考えると安倍政権が優秀であったと考えるよりも安倍政権が問題点だらけの内閣だったと考える方が妥当な気がしてならないのです。 今日は、そのことを少しだけ書かせていただきます。 |
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●安倍政権の問題点を一言で言えば
安倍政権は戦後最悪の政権であるとノーベル賞を取った安川さんは述べていましたが、私もその立場を取っています。 何が最悪かというのは具体的に上げ始めるとキリがないのですが、一つに問題点を集約すれば「嘘をつきすぎ」ということなんですね。 民主党が高速道路無料化だの米軍基地移設だので嘘をついた時に世論は大バッシングでした。確かに嘘ばかりついてました。 ただ、「民主党は嘘ばかりで信用ならないから自民党」もまた違うんですね。「反動」(こっちがダメすぎるからあっちという考え)でいろいろと物事を決める人が多いですが、民主党が腐ってたからと言って自民党が腐ってないということの証明にはなりません。 安倍政権は100歩譲って民主党と同じ程度には嘘をついています。これこそが問題点です。代表例をあげましょう。 まずはTPPですね。「TPP交渉参加反対ブレない」といい農家から支持を集めておきながら政権を取った途端TPP交渉参加を表明しました。しかもそれにもかかわらず「TPPは国益にかなう最善の結果」「皆様とのお約束を守ることができた」とJAの全国大会で述べたのです。この会合ではヤジも飛んだのですが、世論は実におとなしいというか大嘘を看過したのです。 続いては、安保法案ですね。自民党は戦後長らく集団的自衛権は現行憲法の枠内では行使できないというのをアメリカの従軍拒否の論拠として使ってきました。しかしながら、先の安保法案においては国際法では集団的自衛権が含まれてるだの北朝鮮お脅威があるからだのと騒ぎながら従来と180度異なる憲法解釈となる法案を通しました。 更に言えば、「自衛隊のリスクは減る」とデマを流していました。 とにかくデマを流し倒して押し切ったのです。これはさすがに一時は世論も荒れました。ですが、数ヶ月もすればまた支持率が5割を超えました。 最後の例がアベノミクス第二の矢と言われた積極的な財政出動です。私がデマを流していると思われると困るので「ソース」を出しますが、民主党より緊縮財政です。建設国債は同程度ですが、特例国債は減っています。 つまり積極的ではなく消極的な財政出動なのです。デマなんですね。これも。 他にも上げきれないほどあるのですが、安倍政権の問題は嘘つきというところなんです。そして我々の社会の問題としてはこの大嘘を見破れないくらいに病んでいるということですね。 |
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●御用学者はデタラメばかり
ただ、民主党より嘘がバレにくいのにはもう一つ根深い問題がありまして、安倍政権の御用学者がとても多いということが上げられます。 民主党はこの辺の抱き込みが下手だったのか学者どもに批判されて撃沈しました。しかし、安倍政権はこの辺がうまい。自称保守系論壇人やら自称保守系エコノミストの類が安倍政権を中立偽装しながら擁護するため問題点がなかなか認識されにくいのです。 例えば、イェール大学名誉教授の浜田内閣官房参与ですが、このブログでしばしば指摘しましたがTPPを擁護するにあたってリカードの比較優位論を持ち込みました。 これは読めば中学生でもデタラメだとわかるのですが、「イェール大学名誉教授」「内閣官房参与」とつくと頭が上がらないのが日本人の性なのでしょう。下記の指摘は『TPP亡国論』でおなじみの中野剛志氏や三橋貴明氏も指摘をされていますが、中野氏や三橋氏の指摘を待つまでもなくデタラメだとわかります。 ”19世紀の英国の経済学者デビッド・リカードは、「各国がそれぞれ優位性を持つ産品を輸出し、そうでない産品を輸入することで、全体としての経済厚生は高まる」と説く、「比較優位の原理」を唱えた。この原理は現代でも有効だ。貿易の盛んな二国間において、もし一国が自国の弱い産業を保護すべく関税障壁を設ければ、相手国も同様に、弱い分野の関税を上げるだろう。” 上でリカードの定理を有効だと断言してるのですが、これが極めてアヤシイんです。リカードの比較優位論は完全雇用を前提としたり、運送コストがかからないことを前提としていたりといくつも荒唐無稽な前提で成り立っています。 しかしそこを押し通すのが「イェール大学名誉教授」の肩書きなのでしょう。安倍政権がこれをもとにTPPのメリットを歌えばひれ伏すしかないのかもしれません。 ただ、こんなめちゃくちゃな前提で試算を出しても試算とはとても言い難いというのは常識的に考えればわかるはずです。浜田内閣官房参与だけでなく、私がよく目にする方で言えば塚崎久留米大学教授、永濱第一生命エコノミストなどなど錚々たる肩書きを持った人がこのリカードの比較優位論か出ている経済効果を信じているのです。 中でも永濱氏のTPPへの入れ込みようはすごく保護主義はブロック経済ひいては戦争につながるといったような記述もあります。保護したら戦争になるって極論もいいところ。 その他、安保法案に関しては違憲だというのは左翼と断言する長谷川幸洋や竹田恒泰、辛坊治郎などの乞食論壇人もひどいのでぜひその合憲性の根拠についての論考をご覧ください。文字数の関係で批判箇所を今回は書けないのですが、いずれ書いていきます。(下記の長谷川氏に対する批判はコメント欄がとても充実しており私が書くまでもないかもしれません。) まあ兎にも角にもテレビタレントや大学で教鞭をとっているような人をはじめ社会的権威のある人がそろいも揃ってめちゃくちゃな論法で支持をしているんです。 |
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●嘘に気づけない社会は危機である
おそらく私のような素人が安倍政権を批判したり大学教授を批判したところで「左翼の工作活動」と嘲笑されて終わるでしょう。 まあそれでもいいんです。ただ、私は安倍政権の方が左翼政党だと断言します。 移民を受け入れたりTPPで自国の農業を切り捨てたり、憲法解釈を急変させたりと完全に保守政党とは言えない行動ばかりなのが安倍政権です。最近では「革命」が口癖になりいよいよ壊れたのかもしれません。 エコノミストや教授が権力の監視ではなく太鼓持ちをやるならば徹底的にその人たちを監視するのが市民の役割でしょう。 まあ何はともあれ嘘が山のようにはびこっています。「売国奴」と叫んでいる人こそ売国奴ではないかという今までと異なった見方で物事を見る機会になれば幸いです。 |
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●ポスト安倍政権選択はグローバルな視点から 2019 | |
●1.何から始めるべきかー日本の悲喜劇
2019年は、世界的に大波乱の年になりそうである。就任3年目を迎え、下院中間選挙で敗北したトランプ大統領は、政府機関一部閉鎖に追い込まれている。中国との貿易戦争は激化し、自由社会の「盟主」の地位からの撤退は、世界の各地に外交・軍事上の混乱と動揺を与えている。EU改革を掲げたマクロン仏大統領も、EU離脱を交渉する英メイ首相も、国内に反対派を抱え混迷している。 一人、日本の安倍政権だけは選挙に勝ち続け、衆参3分の2を超える安定政権を誇っている。しかし内情は、森友・加計学園問題や、財務省・厚生省の文書偽造・不正基幹統計問題など、官邸と行政の劣化は留まるところを知らず、アベノミクスも安倍外交も行き詰まっている。与党も野党も選挙民も、賞味期限が過ぎた首相を交代させるパワーすらないという衰退モードに日本はある。その結果、「日本憲政史上最長の首相」が政権の存在目的となる、悲喜劇を招いている。 野党に目を向けると、7月の参議院選挙を控えて野党の再編が始まっている。玉木国民民主党と小沢自由党との合流を前提とした統一会派形成、さらにはこれに対して、参議院でも野党第1党の地位を維持しようとする、立憲民主党と社民党系との統一会派結成が進行している。小選挙区制が導入されて以後、政党の合従連衡はもはや見慣れた光景となっている。参議院選も32の一人区が勝敗を大きく左右するので、野党の統一候補が不可欠になっている。さらにいえば、もともと1993年の衆議院選挙制度改革は、人為的に二大政党制を作り出そうという制度設計に立っているので、小選挙区制のために野党が再編されることは制度の趣旨にあっている。 とはいえこの趣旨が生かされた例は、鳩山民主党が自民党に圧勝した2009年衆議院選挙が最後である。2012年総選挙は与党、民主党の分裂の下で行われ、2014年選挙では維新の党が躍進した。その後2016年に、分裂後の民主党と、大阪維新の会のグループが抜けた維新の党とが合併し、民進党ができる。ところが都議選で「都民ファースト」を掲げブームを作った小池都知事が、2017年総選挙の直前に「希望の党」を結成すると、前原民進党執行部は希望の党への合流を唱え、混乱の中で枝野立憲民主党、希望の党、無所属の会、参議院民進党などに枝分かれした。その後、小池新党は失速して、現在の枝野立憲民主党、玉木(小沢)国民民主党という野党の構成となる。 この過程を理解できる人は少ない。結局、立憲民主党と国民民主党の、「自民党に対抗できる野党」や「野党の大きなかたまり」とは何であるのか。選挙のたびに政党再編が生じるなら、政党から出発してもこの答えは見いだせないだろう。また突然、有力なポピュリズム政党が出現する可能性もある。最後の「まともな政党選挙」が行われた2009年は、奇しくもリーマンショックの翌年であり、それを契機に世界は大きく変わっている。この変容した世界の中での日本政治の課題を確かめることから、逆にそれぞれの政党のポジションを検討したい。 |
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●2.世界は過去10年でどう変わったのか
リーマンショック後のグローバルなレベルでの経済成長の急落と失業者の増大、成長をけん引した中国の台頭、金融機関の救済とその後の社会格差の拡大、ブルーカラー労働者や中産階級の衰退、ポピュリズム政党の躍進やいくつかの国での権威主義体制の復活など、数多くのことがメディアで報道されている。ハンガリーのオルバン首相の移民排除政策、ポーランドの保守政権の司法への介入、トルコの大統領に就任したエルドアンの自由なメディアや反対派への弾圧など、民主主義のもとで選出された政治家による、権威主義的な政治がその事例である。 しかし日本との関連では、西欧自由主義の中心となる国々での近年の政党政治の変化のほうが大事である。今、ドイツ、オランダ、フランス、イタリア、スウェーデン、イギリスを見てみよう(表1参照)。 単純化していえば、北欧、ドイツなど欧州大陸諸国の比例代表制をとる国では、それまでの中道左派(社会民主主義政党)、あるいは中道右派(キリスト教系保守主義)という「国民政党」が存在しており、安定した政権作りが可能であった。しかし2017年、2018年には、ドイツでも、スウェーデンでも、基軸となる政党が、20〜30%台の得票率となり、選挙後の連立政権樹立がしばしば困難になっている。その背景には、左派社会主義政党や右翼ポピュリズム政党が台頭した結果、この「体制外」の両党を除外した連立政権が困難になっていることがある。 その中でも、フランスとイタリアでは、それまでの政党システム自体が大きく変容した。フランスでは、マクロン大統領の「共和国前進」が、既成政党を解体に近い状態に追い込んだ。イタリアでは、左翼ポピュリズムといわれるEU懐疑派の「5つ星運動」が、32.7%を獲得して第1党に躍り出た。さらに両国では以前から、右翼ポピュリズム政党として、ル・ペン党首の国民連合(旧国民戦線FN)や地域政党の北部同盟などが力も持っており、政権を窺っている。 イギリスは小選挙区制なので一見して、政党政治は安定しているように見える。それは多様で複雑な対立を2大陣営に単純化し、勝者が総取りを行うシステムだからである。デモクラシーの担保は、次回の選挙による政権交代の可能性によって保障されている。しかし強制された民意の集約は、政党内部での亀裂を生んでいる。現在のBrexitをめぐり、与党保守党も、野党労働党も分裂しており、両者とも政権担当能力があるとは思えない。グローバル化のもと社会格差や地域格差が進行し、国民や地域が分裂しているとき、政党による国民統合能力には限界があり、選挙制度は現実を一時的に覆い隠しているに過ぎない。このことは現在の日本政治や、安倍政権を考える場合、重要な視点となる。 要約すると、西欧自由主義諸国において、これまで周辺であった左右のポピュリズム政党が大きく躍進し、これまでの中道多数派政治が大きな挑戦を受けている。国境という境界線(共和国)のなかでは、自由・平等(社会的公正)・連帯が基本的価値となり、多元主義(Pluralism)とは、そうした西欧自由社会の枠組みの中での、多様な価値観を持つ自立した個人や組織の相互承認を意味していた。今問われているのは、多様性(Diversity)であり、階層、年齢、性別、国籍、障害の有無や性的少数派など、様々な「違い」をもつ者の間での共生や共存が課題となっている。その理解には個人差や地域差が大きく、ここにとりわけ右翼ポピュリズム政党は、分断のくさびを打ち込む。 |
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●3.ゾンビ化した安倍政権、ポスト安倍の政党配置は?
小選挙区比例並立制という独特の選挙制度を実施する日本も、この小選挙区制の国々のバリエーションともいえる。自民党政権(ガバメント)は安定しているように見えるが、日本が抱える課題の解決(ガバナンス)能力は貧弱である。日本の大企業と同じで、巨大で堅牢な本社ビルの足元で解体の危機が進行している。 この点では、本誌で何度も登場した金子勝が、早い時期から「衰退国家日本」や経団連の大企業をゾンビ企業と呼んできたことが思い出される。アベノミクスも、その実質的な部分、つまり円安と株高誘導すら限界に達し、ゼロ金利による地方銀行の疲弊と淘汰、日銀の自己資産の食い潰し、公的年金の運用を管理するGPIFの世界的な株安による15兆円損失の可能性、円高への転換など、結局、大企業の内部留保を増加させ、財政規律を緩め、累積赤字を上乗せしただけで終わりそうである。 福島原発事故のあとでも「原発立国」として産業政策の柱の一つに設定したが、東芝、三菱重工、日立とすべてが撤退した。安倍首相は、外交と海外の訪問に膨大な時間とエネルギーを費やしたが、韓国とは最悪の関係に陥り、突破口とした北方2島の変換もプーチンとの交渉は見込み違いであり、とりわけ韓国との関係は安倍首相個人の政治姿勢が、対立を激化させる要因となっている。そして太平洋の「公共財としての日米同盟」といわれた日米安保も、中国との覇権競争や軍事技術の高度化により、その真価が問われる時代が間もなくくるだろう。 先日、ドイツで「Friday for Future(未来のための金曜日行動)」という数千人規模での高校生のデモが放映されていた。アメリカから始まり世界に拡散しているらしいが、金曜日の授業を抜け出して、未来世代に、地球温暖化問題など負の遺産を残さないように訴える街頭デモである。安倍政権の施策や大企業の老人経営者などにより、今のままでは荒涼たる未来が残される日本の高校生こそ、「未来のための金曜日行動」を必要としているだろう。 このようにどの点からみても、日本は安倍政権からの決別を迫られており、安倍首相の退陣がもっともわかりやすい出発点となる。次に誰が政権をとっても、まずアベノミクスの敗戦処理内閣が出発点となるだろう。経済同友会代表幹事の小林喜光も、「平成30年、日本は敗北の時代であった」(「朝日新聞」2019.1.30)といっている。その認識から初めてリーマンショック以後の21世紀の日本政治が問われることになる。 政局を期待するメディアや安倍政権に距離を置く野党のベテラン政治家は、野党一本化により転機を期待しているが、それがどのような意味で転機となるのかだれも答えていない。ここで一つの思考実験として、ポスト安倍政権の政党配置と政策を検討してみよう。ここでは二つの仮定を設定している。一つはポスト安倍自民党であり、もう一つは、ポピュリズム新党の登場である。日韓問題、北方領土2島先行返還論に関しては、まだ各党の原則論しかわからず、沖縄辺野古移転・新基地建設に関して、意外と控えめな表現が多いのでここでは掲げない。また次世代デジタル・テクノロジーやバイオ・テクノロジーの開発、教育・研究投資の拡充、災害に対する「国土強靭化」政策など、どの政党も重点政策としているのでここでは言及しない。 ●(1) 脱アベノミクス 安倍政権の退陣後は、どの政党であれアベノミクスの総決算と、転換のための経済・金融政策を提示する必要がある。与党には厳しい敗戦処理の任務が待っており、野党もアベノミクス批判の段階から、ゼロ金利からの出口戦略や、成長のための経済政策を要求される。大事なことは、だれも責任を取らなかったバブル崩壊時の轍を踏まないことである。 責任の所在は明らかである。安倍政権であり、黒田日銀総裁であり、政府与党、自民党と公明党である。しかしこの6年間で社内留保をため込み、投資を怠った日本の大企業システムにも批判は及ぶだろうから、野党はきちんと問題を整理する必要がある。そのうえで責任を徹底的に追及するか(バブル崩壊後を考えるとこれも建設的である)、あるいは出口論を共に考えるか、二者択一を迫られるだろう。ここが混乱すると、「画期的な」と称する政策を演出するポピュリズム政党が出現して、一過性のブームを作る可能性もある。 ●(2) 脱原発とエネルギー転換 もっとも建設的な分野は、脱原発・再生エネルギーへの転換政策である。「原発立国」が失敗した以上、自民党も含めてこの選択をするしか未来はない。この点で野党はこれまで、運動面でも政策面でも経験を積んでおり、また新たな産業政策や地域活性化政策としても多くの可能性を秘めている。国民民主党が脱原発に関してこれまでの曖昧な立場から決別すれば、新しい展開も期待できる。 ●(3) 徹底した地方分権 また地方分権の徹底も、ポスト安倍時代の政党配置を構成する一つの論争の場となりうる。地方分権や地方再生の意義を軽く見る政党はないが、分散型統治機構の形成や財政の分権化など、中央省庁や巨大利益団体の中央集権型組織の既得権とぶつかるので、現実化においては政党がそれぞれの独自性やリアリティを提示することができる。この点でこそ、日本の「国のありかた」に関して、抜本的な議論が必要とされる。 ●(4) 財政再建 財政再建に関しては、かつて民主党が重要課題の一つに掲げ失敗しただけに、与党も野党も原則論の提起に留まっている。消費税も含めた税制改革や、再分配政策、社会保障政策などの一体的な改革の提起を待って、初めて具体的な政策論が展開されるだろうが、それはおそらく先送りされるだろう。安倍政権ができなかったプライマリーバランス(歳入・歳出から国債費などを除いた基礎的財政収支)の実現が当面の目標となり、人気につながるかどうかは疑問だが、国民民主党が存在感を示せる分野であろう。 ●(5) 憲法9条と日米安保の将来 最大の対立課題は、憲法9条の解釈をめぐる問題と日米同盟の将来像である。ポスト安倍では改憲問題ではなく、2015年の集団的自衛権を事実上認めた、いわゆる安保法制をめぐる対立となる。北朝鮮の核装備の段階では、集団的自衛権をめぐり議論はまだ「リスク回避」の側面もあったが、米中が、通商面で、軍事面で、さらには先端テクノロジーや宇宙の軍事的利用も含めて、覇権競争に突入するこれからの20年は、むしろ「リスク増加」の要因となる。イランの核装備をめぐる中東の緊張の増大は目に見えており、米・ロの軍拡競争も無視できない。 主要政党では、共産党以外は日米同盟の継続が掲げられているが、その場合、憲法9条はこれまで以上に、日本の相対的に独自な安全保障政策を担保する装置となりうる。極端な米軍との一元化(統合)が進行すれば、ポピュリスト政党による核装備も含む自主防衛論という選択肢も登場するかもしれない。この点では、立憲民主党の原点である、憲法9条を立憲主義の原点に戻って安保法制以前の状態に戻し、またドイツやイタリアなどに比べて「不平等条約」となっている、日米地位協定の改定から始めるべきであろう。9条擁護派は新しい論点を得たが、それだけ安全保障の結果責任も重くなる。 ●(6) 多国間経済連携 そして安全保障の問題は、次の多国間通商協定の締結と大きく関連する。 TPP(環太平洋パートナーシップ)、日本とEUの経済連携協定(EPA)、それに、中国やインドなども含めた東アジア地域包括経済連携(RCEP)など多国間経済連携は、とりわけトランプ、アメリカ大統領が保護主義的な通商政策を推進する中、重要な取り組みになっている。 TPPはもともとアメリカ発であり二つの側面があった。アメリカの諸制度をグローバルスタンダードとしてすべての参加国に認めさせること、さらには中国をけん制するために、アジア・太平洋にアメリカが主導する経済圏を作ろうとする、地政学的な要請であった。とりわけ前者の問題は日本では反対論も強く、このため現在でも、立憲民主党は反対であり、国民民主党も明確ではない。 しかしアメリカの不参加で、TPPの性格が変わった。この2月1日に発効したEUとの経済連携協定と、さらには中国、インド、韓国、アセアン諸国を含めたRCEPを、全体として戦略的に進めるなら、日本だけではなく、グローバルな共通財となる。立憲民主も国民民主も、野党の立場から政府を批判してきたが、保護主義が台頭する時代のこうした多国間協定の重要性は認めているので、これから本当の意味での、総合的な政策論争が望ましい。その成功は、米中の覇権競争に対して、それを緩和するもう一つの枠組みを提供することになる。 ●(7) 生活保障のための制度 あと残されたのは、社会経済構造改革や税制度と再分配政策、それに社会的保護立法などの、人々の仕事と生活に関する新しい制度作りである。一つの論点は、現在の安倍政権のように、根拠のあるデータではなく、企業や経営側の要請に立って立法化を進めるのか、それとも働く側にたって改革やさまざま社会的保護立法を進めるのかという対立軸である。この点では、現在の与党と野党の間には明確な分断線があり、これはポスト安倍時代も続くだろう。その場合に、外国人労働者の拡大政策がいい例となるが、経済界の要請にしたがい、なし崩し的に拡大していくのか、それともグローバルなスタンダードとなる法的な保護や制度を準備して、本格的な移民国家に向かうのか、大きな分岐点になる。 多くの外国人労働者が入国し、社会のさまざまなところで軋轢が生まれると、欧州のようにここに特化したポピュリズム政党が生まれる可能性もある。要は、日本社会が新しい価値である多様性Diversity を、グローバルな21世紀を日本が生き抜くために変わらなければならないものとして受け入れることができるかどうかであり、法治国家として制度的にもそれを保障することができるかどうかである。 |
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●4.保守主義ではなくアーカイブに立脚する進歩への構想力
さて21世紀の国際社会における日本の立ち位置に関して、各党の理解はどうなるだろうか。幸いなことに、現段階ではこの点では共通の理解と価値観がある。その原則は簡単であり、グローバルな世界の自由民主主義体制の一翼を、アジアにおいて、周辺諸国と協働して担うということである。 右翼ポピュリズムの台頭や権威主義体制の成立に対して、法の支配と民主主義の危機を訴えるドイツ系アメリカ政治学者、ヤシャ・モンクの言葉を少し変えれば、Democracy with Right and Social Protectionの擁護、日本語に翻訳すれば、法治国家のもとで、人々の生活を保障するデモクラシーということになる。立憲主義を強調する枝野立憲民主党は当然だとしても、自民党も、「自主的憲法改正」を党是に据えても、1955年の結党からこの原則は変えていない。 この確認は非常に大事なことである。自国第一主義や、始まりつつある米中の覇権競争の中で、自らの立ち位置を見失わず、また共通する価値観や制度を持つ国々と協働できるからである。アジアでいえば、韓国、台湾、オーストラリア、ニュージーランド、インド、それにアセアンのいくつかの国々である。またEUとの関係も重要となる。これは、前に述べた地域経済圏、TPP、EUとのEPA、RCEPの総合的な構想と結びつく。 これらは日本の通産省や外務省の構想とも重なるが、政治の役割は官僚のそうした予定調和的な世界像ではなく、現実の利害対立や歴史上の負の遺産を踏まえて、リアルな対応をすることである。冷戦時代と異なり、ヒト、モノ、カネ、サービス、それに情報にはもはや国境はない。中国の「一帯一路」政策の多様な可能性とリスクを見極め、また自由民主主義体制と共産党一党支配国家という違いを確認したうえで、共存・共生の道を探ることになる。 法治国家と生活保障を基本原則として承認したうえで、日本が今直面するのは、「保守主義」が一人歩きをして、人々の思考や支配的な行動様式になっていることである。枝野幸男は昨年7月20日、内閣不信任案提出に際しての有名な長時間演説において、人間の限界を知ったうえで、先人の知恵や歴史的経験を活用することこそ真の保守主義であると、安倍ご都合保守を批判した。 確かに立憲民主党が唱える立憲主義も、歴史的には保守主義の一翼をなす。2015年の安保法制をめぐり、立憲主義の立場から決定的な批判を行ったのは、自民党が期待した京都学派の「保守的な」憲法学を継承する佐藤幸次名誉教授であった。枝野はその後、立憲民主党の有志政治家たちと、伊勢神宮を参拝している。 個人的な思考や行動はもちろん自由であるが、保守を自認する自民党に対して野党第1党の代表が、立憲民主党を「保守本流」として位置付けるのは間違っている。枝野も日本における保守主義の研究において(例えば、宇野重規『保守主義とは何か』中公新書 2016)、エドモンド・バーク以来の、進歩思想を体現するフランス革命への反動から保守主義が生まれたという背景は熟知していると思う。そうであれば宇野の言うように、保守主義は進歩思想と表裏一体であり、進歩思想が衰退している現在、保守思想も混迷していることが忘れられてはならない。 いいかえれば、真の良質な保守を期待するのであれば、大胆な進歩主義の存在が不可欠であるという歴史的事実である。野党第1党の立憲民主党が、この大胆な進歩主義を体現しなければ、日本に良質な保守が生まれることはあり得ない。まさに安倍政権の何でもありの漂流する政治がそれを示している。 平成の30年は、失われた「繁栄の時代=昭和」の影を追ってきた。考えてみれば、日本社会全体がそうした偶像化された自画像、レジェンド伝説で満ち溢れている。しかしクールジャパンの多くは、日本古来のものでも伝統でもない。明治以降の近代化の中で、また戦後のアメリカ文明の流入の中で、そうした近代の進歩主義と結びつく形で再構成されたものである。里山の風景は、明治時代の外国人にとっても美しいものであったが、農村住民の生活は貧しく悲惨であった。高度経済成長の過程でこうした旧い里山は破壊され、現在の美しい里山となった。NHKの「プロジェクトX」は、日本のすさまじい企業活動の時代、進歩と成長への渇望の時代のアーカイブである。 平成の時代では、それは好ましい日本の自画像として消費され、文字通りNHKのアーカイブ映像として収蔵されている。こうして成熟した日本は多くのアーカイブをもち、自らの好む自画像を再生産できるようになった。しかし同時に進歩や変革へのエネルギーも失われてしまった。 もちろんNHKのアーカイブの中には、戦争責任や公害問題など、悲惨な歴史的アーカイブも多く含まれている。しかし日本では戦時の公文書の多くは破棄・焼却され、現在もまた公文書偽造や破棄、データの改ざんが行われている。明治維新や1945年のように、私たちはゼロ地点からの出発ではなく、成熟した社会として多くのアーカイブの上に成立している。その中で、美しいものも悲惨なものも、すべて冷静に見つめることから、良質の保守主義も知性豊かな進歩主義も生まれる。 20世紀後半の進歩主義の一つの象徴であった「68年世代の反乱」は、欧米では旧来の権威を大きく変える文化革命となった。中国の文化革命は、毛沢東の個人崇拝に帰着し、日本の68年世代の学生反乱は、企業社会に吸収され、バブルの崩壊とともに消滅した。いま社会の発展、進歩主義のダイナミズムを日本に再建しようとするなら、多様性Diversityの展開が大きな要因となるだろう。 若者の多様な生き方とそれを保障する公的・社会的支援、女性の活躍する社会、移民労働者が正当な賃金と法治国家のもとで働ける環境、高齢者が第2、第3の人生を発見できる社会、地域の自立した再生など、数多くの政策課題がある。「未来のための金曜日行動」のような、高校生に学校教育とは離れた自由な思考と行動を勧める発想も必要となる。 この1月に逝去された「哲学者」梅原猛が、1980年代半ばに国際日本文化センター設立のために、ドイツの日本学の講座にヒアリング調査に来た折りに、同行したことがある。日本の緻密な文献考証学や個別の研究成果に対して、梅原猛は、日本文化全体を構想する大きな骨組みや論理的な構想力を持っていないと、不満を口にしていた。 アメリカやヨーロッパの日本学の講座を回り、粗削りではあるがそうした大きな研究の骨組みや構想に、彼は感銘を受けたと話していた。仮説や構想を設定し、そのために一貫性のある論理体系や戦略を構築し、検証すること、これこそ近代の進歩主義の思想と行動そのものである。保守・自民党に対して、立憲民主党であれ国民民主党であれ、この意味での進歩主義に立つ政権の構想力が問われている。 |
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●安倍政権—その手法への不安と疑問 | |
安倍政権が取り組む長期的な課題は多岐にわたっている。これらの課題への取り組みによって政治的なカーブが切られた場合、日本の社会は大きく変わるだろう。戦後70年にして、日本のありようが変わる、そのさなかに、我々の「いま」がある。
秘密保護法にしても、集団的自衛権の問題にしても、それぞれ個別の「不安」や「疑問」にとどまらず、トータルの政治、あるいは社会全般に及ぼす影響はきわめて大きく、これからの日本がどのように変容していくか、にかかってくる。多角・多様な論議もなく、安直で特定勢力の思い込みによる方向の設定は、そのカーブの切り方が大きいだけに、日本全体の今後をゆがめてしまうこともありうる。 しかも安倍政権を支える環境は、そうした変革を進めうる好機に恵まれている。「長期間、政権の座にとどまれそうな時間的環境」「衆参両院の多数議席の保持」「一強多弱の与野党の状況」「歴史教育の不足する中での若い世代の台頭」「メディアの二極化と鋭角化」などである。この政治環境を逃せば、彼らの望む変革は当分の間は達成できなくなるからこそ、安倍政権は強気にことを急ぐ。 このような状況にある「いま」の時点で、大まかな変容の行方と、変革をもたらそうとする特徴的な「安倍手法」を見ていきたい。 |
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●「戦後レジームからの脱却」のあとに来るもの
安倍的グループは「戦後レジームの脱却」の旗を掲げる。現状の社会のひずみについて、長期政権を担った彼ら自身の自民党政治を問いただすことも、歴史から学ぶこともせず、ひたすら「過去からの脱却」と「将来の創造」をうたう。そこに求めているものはなにか。 ●1.憲法改定 戦後保守勢力、そして自民党結党以来の念願である。部分改定が主流だが、石原慎太郎グループのように全面的に書き換えて第三の憲法(自主憲法)を求める声もある。改憲を可能にさせる国民投票など、一歩ずつの改革に取り組む。それでも、容易ではないと思われているが、戦争を知る世代が消えていき、「平和ボケ」の批判が一般化するような日本周辺の緊迫状態が強まってくると、改憲が政治日程に浮上してくることは間違いない。現行憲法こそ、戦後の日本社会に蔓延した「マイナス」部分の元凶、と位置付ける立場からは、最終目的は改憲であり、そのための時間との戦いでもある。安倍首相の言う「戦後レジームからの脱却」の核心である。 ●2.集団的自衛権の行使 今まさに論議が進められているこの問題は、本来憲法を改定することで行使に至るべきところ、一内閣による憲法解釈の変更で済ませよう、とする。この狙いは、日本を国際的に通用する戦闘・武力行使できる国にしたい、日米同盟に寄与して米側の期待に応えたい、さらに、いずれは自力で仮想敵国に対抗しうる軍事的体制を持ちたいとの願望がある。ごく一部ながら自民党内の若手らには「核兵器保有」による武闘的思考が出ている。このように、安倍首相の言う「積極的平和主義」の背景には、これまでとは比較にならないほどの武力に裏打ちされた外交に切り替えることで国際関係を維持していこう、との意向が読み取れる。これは、憲法9条による「平和主義」的な、従来の安全保障や外交姿勢を根本から変革させようというものである。戦後の日本外交は不十分な点はあるにせよ、戦争の反省から経済や技術の援助、平和的な民間交流に努めて、長い歳月をかけて「戦前の軍事的日本は変わった」「平和路線は本物」といったイメージをそれなりに定着させてきた。また戦闘回避の姿勢は、相手国民の殺戮も、自衛隊の戦闘による死者も出さないできた。いわば、官民の穏やかな外交を主軸に据えた国際関係に、ひとまず成功してきた、といえよう。こうした路線を、「積極的平和主義」の名のもとに、憲法に基づかずに切り替える。いちど替えれば、国際社会の目も変わる。外交の取り組みの変化は、相手国としても軍事力に配慮した姿勢に変えることになるだろう。緊張、衝突の火種にもなろう。この大きな政治方針の変更は、安倍的な安易な手口に任せていいのだろうか。 ●3.教育改革 この狙いは、ゆとり教育の変更、小中一貫校の創設、大学教育の改革など各般にわたる。たしかに、学力向上などの狙いは、方法論は別とすれば、理解できるし、必要な点も見出せるだろう。ただ、問題は教育委員会の改革にある。自治体の首長に教育権限を移し、首長配下の教育長が教育委員会を統括するかたちで、従来の教育委員会機能を首長寄り、行政寄りに移行させようというのである。つまり、行政の手元に教育の権限をとどめておけば、文科省の、つまり国家の管理下で教育の方向を仕切ることができる。道徳教育をどのように仕向けるか、教科書採択のかじ取りをどのように扱うかなど、国家主導型に切り替えることができる。せっかく持続してきた<教育の中立性・安定性・継続性>を損ねることになりかねない。戦前への回帰、に見える措置だ。一見、迂遠なように見えるが、幼児のころから一定の思考をたたき込み、束ねやすくしていくことが、国家経営にとって上策、ということである。戦後レジームを大きく変えるには、時間をかけることもやむをえない、との認識がある。国民の意識が戦後バラバラになった、それは日本という国家に忠実な国民を育ててこなかったからだ、今後はそのようなことのないよう、慌てず、時間をかけて、徐々に目立つことなく進めよう、ということでもある。要は、物わかりよく、従順な国民作りは、急がばまわれの精神で、といったところだろう。 ●4.歴史認識の改変 安倍首相をはじめ、閣僚たちの一部が靖国神社に出かける。「祖国のために命を落とした英霊への感謝とねぎらいのため」という。さらに「どこの国でもやっていること」という。しかし、侵略され、多数の犠牲者を出した相手国の立場に立てば、一般の兵士と同じように、戦争遂行の責任を問われた国家指導者ともども「感謝・慰労」することには、抵抗感はぬぐえず、またいい気持ちのするわけがない。また、戦犯を英雄視する国はない。無神経に過ぎる。こんな意向もある。暗い印象の歴史的事実を消去、ないし隠ぺいしたいのだ。<戦争は当時の日本としてはやむを得ざる行為だった> <侵略であると認めたくない> <非人道的といわれる南京事件などはマボロシだった> <相手側も日本兵に対して非道を行ったではないか> <慰安婦問題は貧しい志願者あってのことで強制などとんでもない> <軍部の関与などの資料はないのだから事実もなかった> <河野談話など、相手国との談合ででっち上げ、非国民的な処置を許すな>・・・・と言いたいし、開き直りたい。こんな意識が潜在しているし、実感のない若い世代には、そうかな、と迷うところもある。詰まるところ、戦後続いてきた歴史の語り伝えを改めさせ、若干の問題はあったにしても、日本の戦闘は帝国主義以来各国が行ってきたことと同じであり、このあたりで歴史の語り口を変えさせておこう、との思いがある。そうしておかないと、いつまでも際限なく謝ることになる、この歴史認識を変え、子どもたちに日本のとった行動は正当であった、と言えるように育てていきたい・・・・このことは「戦後レジーム」を変えるうえで、極めて重要なことと認識しているのだ。それが、教育自体のありようを必死に変えることにつながっている。大阪や大津での、教育委員会の対応の悪さは、ごく一部の例ではあったが、安倍的教育改革に格好の引き金を提供することになったのだ。 ●5.日米同盟依存から自立した軍事態勢へ アジアに生きざるを得ない日本なのだが、中国や朝鮮半島の動向を見ると、米国の軍事力に頼らざるを得ない。したがって、沖縄の基地の提供をはじめとして、地元よりも米国の求めに応じることを優先させる。しかし、米国の核の傘に隠れているだけでは通らない、オンブにダッコではまずい、日本もそれなりの軍事力を持ち、戦闘可能の準備をしなければ、米国に愛想をつかされる、といったところだろうか。それ以上に、いずれは自立した国家として、それなりに武装した国家として立ち上がらなければなるまい、という意識が潜在しているだろう。そのとき、米国はどう考えるか。日本周辺の国家は、武闘もありうるような日本の変化にどのように対応するだろうか。緊張の持続は、なにをもたらすだろうか。そして、いつまでも米国の言いなりに追随していくことがベストなのだろうか。「戦後レジーム」を脱却したあとの日本の安全保障の方向は、決して平和をもたらす道ばかりではない。 ●6.就労状況の変化 経済の立て直しへの期待で支持を得ている安倍政権である。こうした期待はわかるし、経済全般にうまい手綱捌きであってほしいと思う。ただ、安倍的政策は<まず企業、まず大手>の発想で、この原動力で社会全体を引っ張り上げようとする。法人税率の引き下げがそのいい例である。経済成長、産業育成の立場だけなら、それでもいいのだろうが、国民全体でみると、生産された価値が各方面に穏当な形で配分されるのか、所得格差を拡張して、将来的に貧富の社会問題を残さないか、という懸念がある。 とくに気がかりなのは、非正規労働力を増大させる政策である。たしかに、安い労働力の確保、景気次第での雇用調整など、企業側のメリットは大きい。しかし、正規社員との給料の格差、ボーナスや退職金などの有無とその処遇の開き、解雇後の身分の不安定、結婚や出産、育児の敬遠など、収入の不安定や心身の健康にかかわるような個々人にとっての問題にとどまらず、社会としても少子化への拍車、生活保護の増大、心因的な病気や犯罪の増加、高齢化後の生活保障などに及んでくるに違いない。「個々人の就労希望に対応できる環境」などといって、貧困層を膨張させていいのか。 また、女性の管理職を増やそうという構想は、条件次第では望ましいひとつといえそうだ。ただ、仕事の面だけで女性の労働環境を考えると、禍根を残しかねない。管理職となると、子育ての時間などを犠牲にせざるを得ないこともあるだろう。結婚、出産、育児、学校の送迎など、管理職を目指したくても、家庭の維持を思えば、ままならないことも多い。「雇用」という部分だけで考える女性尊重の思考では、行き詰まるだろう。世襲政治家という特殊家庭、小中高大と同じ学校育ち、子育て経験なし、という安倍首相の発想の原点にはトータライズされない<狭隘さ>というものが付きまとってはいないか。1990年代からの継続的な経済不調から抜け出すという点も、ひとつの「戦後フレームからの脱却」だろうが、そのデメリットに目を向けることを忘れてはならない。 |
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●問題ある安倍的手法
●1.非民主的な手口 最大の問題は、集団的自衛権を行使するにあたって、憲法上の打開策をとらず、一時的に政権を預かる一内閣の解釈のみで、この重要な変更を決めようとしていることである。権力が野放図に動かないように、重要課題は憲法にのっとる、という立憲主義の思考がない。しかも、集団的自衛権行使を容認する人物を、あえて外務省から引き抜いて従来の法的解釈を一貫させようとする内閣法制局長のポストにつけたのである。手口がアンフェアで、姑息である。 もう一点のアンフェアは、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)という、集団的自衛権行使を検討して報告書をまとめた組織の存在である。まず、この組織は法的に設置されたものではなく、安倍首相の私的な諮問機関に過ぎない。しかも、その顔ぶれの14人は、14人とも集団的自衛権の行使に賛成するものばかりだった。それなら、最初から結論は出ている。検討、に値しない。しかも、実質的なまとめ役の北岡伸一座長代理は「安保法制懇は首相の私的懇談会だから、正統性なんてそもそもあるわけがない」「自分と意見の違う人を入れてどうするのか。日本の悪しき平等主義だ」と自民党の会合で言い放った。その運営ぶりも、報告書をまとめるにあたって、原案が配布されることはなく、3時間前にホテルの一室に原案が置かれ、これを手書きでメモを取り、会議が始まると原案は回収された、という。複数の委員が「単なるお飾りだった」「政権の駒だった」といい、実際に仕切っていたのは北岡のほか外務、防衛出身の内閣官房副長官だった。報告書の概要も発表前日の新聞で知った、ともいう。形式は民主主義的な経過をたどったふうだが、実態や中身は独裁的独走的に作られたことがわかる。問題の提起や設定自体が狭く、一方的で、論議の前提に疑義がある。こうした実態からすれば、集団的自衛権の行使という重い問題を自公の与党協議にゆだね、またこの報告書に基づいて国会で論議すること自体、憲法と国民に対する背信行為、といえるのではないか。まして、閣議での決定という扱いでいいのか。 集団的自衛権の国会論議を聞いていても、安倍首相の答弁は自己主張に終始して、批判的質問には正面から答えていない。集団的自衛権の具体的事例として15例を挙げるが、戦闘下や武力行使の必要時をこの程度の想定で済ませられるはずもなく、突発事態や、軍事行動への相手の出方など、議論の枠を超えるさまざまなことが待ち受けるだろう。政権はその難しさから出発すべきで、その認識を欠くことが十分な答弁を妨げていることに気づかなければなるまい。 ●2.身内による「論理」構築 安保法制懇の実態に示されるように、安倍政権は「お仲間」集団に よる、お仲間満足のための方針決定や方向づけがまかり通っている形だ。閣僚の仲の良さはまだしも、ほしいままの人事によって、好みの方向に動かしていく手法は、納得がいかない。形態だけの民主主義に過ぎず、賛否を闘わせる中で、妥協や協調を生み出すという「民主」の姿勢がない。安保法制懇ほどのひどさではないにしても、似たような非民主の手法が目立つ。例えば、NHK会長や経営委員の人選である。身内的な人物を多く起用したものの、そのレベルに達しない人間ぶりがすでにあからさまになっている。原発導入に厳しい規制委員会の委員である島崎邦彦氏に替えて、原発産業に長くかかわってきた人物が据えられる。秘密保護法の具体的運用などを検討する情報保全諮問会議の座長に読売新聞紙上で同法の賛成論を展開した社主や学者、弁護士が就任する。教育再生実行会議も安倍的発想の人物が並ぶ。外観からは「有識者」であっても、結論の出ているような彼らの論議から導き出されるものは、政権の望むものであり、各界からの人材による賛否を闘わせた結果の産物ではない。いわゆる御用学者、提灯持ち著名人、客観性を欠くメディア人たちが活用されたり、器用に立ち回ったりしている。こうした結論は、一定の方向を打ち出し、社会をその方向に引きずり、あるべき姿とは異なる社会を形成させることになる。形式として整えば、反対もしにくく、そのまま定着していく。このような手法がまかり通ること自体、将来をも拘束することになり、とても怖いことである。 ●3.「数」を背景とした強さ 田中角栄の首相時代にも、「数」に頼る政治が行われたが、小選挙区制導入の強引さと金脈の腐敗の前に倒れていった。その政治姿勢には持ち前の陽気さがあったが、安倍首相の「数」の政治には、どこか暗さと説明のごまかし、あいまいさがほの見える。たしかに民主主義の政治は、論議がかみ合わない場合、多数決による決定となる。衆参両院ともに、与党としての公明党の存在もあって、多数支配の実態がある。行政面での官僚を抑え、国会での多数議席を占めれば、内閣としてかなりのことが押し通せる。安倍政権の強さは、その「数」に支えられている。建前としての民主制にのっとれば、妥当性は確保されるだろう。野党には、言いたいだけ言わせておけばよく、最後は自在に決められる、との横着さがある。まして、野党の劣弱な状態からすると、その発言力の強さは足場である自民党内の批判の声も抑えてしまう。加えて、「お仲間」による政治の方向性を固めさえすれば、政権の思い通りに、したいことが可能になる。小選挙区制度は、多数党のメリットが大きい。得票数と議席数の大きなアンバランスがあり、その矛盾によって手に入れた多数党の有利さにすぎないのだが、その自覚や謙虚さはない。国会の追及があろうが、世論の反発があろうが、「有権者の多数の支持」という民主政治の形式を踏まえている限り、思うがままの路線を敷いていけることになる。「数」の背景があって、安倍首相の「お仲間」有識者による方向づけがまかり通る。こうした手法は、社会を将来的に動かしていくうえで間違いやマイナス面が想定されるにしても、建前だけで言えば正当化はできる。そこに、将来生じてくるリスクの種をまいている、という懸念がある。 ●4.「外交」のない「軍事」面の強化 安倍政権は、対立状態にある中国、韓国、北朝鮮に対して「交渉のドアは開いている」と繰り返す。だが、ドアを開けておけば、外交が進められるわけではない。緊張が増したときには、あらゆる手立てで相手側との意思の疎通を図ってこそ、外交が動いていることになる。「ドアが開いているのに、アプローチしない方がおかしい」といった構え方は普通ではない。その一方で、「緊張」状態を理由に、軍事強化に道を開くための集団的自衛権の行使、後方支援活動の緩和、あるいは武器輸出禁止の方針緩和、国家安全保障戦略を決め「国家安全保障会議」の設置などを進める。26年度の防衛予算には、明らかに尖閣列島を軍事的に守れるよう、機動戦闘車99両、オスプレイ17機、無人戦闘機3機、水陸両用車52両などを配備することにしている。 平和的な外交と武力的打開策とのバランスがおかしくなってはいないか。軍事力に裏打ちされた外交を指向しようというのだろうが、それにしても外交努力はどこに行っているのか。国家経営のおかしさがある。野党サイドにも、これでいいのか、という気迫が見えないままに、事態はその方向に向けて進められていく。これが、いわゆる積極的平和主義なのか。しかも、そうした軍事面の強化策を「国際環境の変化」に対応するためだ、と説明する。憲法との原則的なかかわりを超えて、現実主義の路線を行く。内閣の憲法解釈を変えることで集団的自衛権の行使を可能にしようとする路線と軌を一にしている。「環境の変化」を理由とするが、一方で外交努力を示さず、相手国の対応を攻撃すれば、そこに緊張状態が加速される。それをまた奇貨として、軍事面の強化に走る。相手国も同じような愚かな取り組みを進める。このような手法は、これまでの日本の政治では少なかった。安倍政権によるこのカーブの切り方が「戦後レジーム」から抜け出して、新たに進む道だとすれば、国民の間にもっと大きな議論があってしかるべきだろう。 ●5.上部構造の論理 安倍的手法は「まず上から手を付け、下に及ぼす」という、いわば上意下達型である。経済政策で言えば、まず大手の企業の法人税を減らす、それによって儲かれば税収が増えてくるのでバランスが取れる、という考え方だ。だが、大手企業は減税分で儲けを出せるのか、儲かったものを社員に配分するのか、取引先の下請け企業などへの収入増に配慮するのか、などの疑問が残る。大企業は基幹社員にはそれなりに優遇策を講じるが、下積みの非正規労働力については雇用調整程度の扱いしか考えない。社会が上部構造だけで成り立つかの錯覚のようで、これでは社会全体のバランスを損ねてしまう。「上厚下薄」というのは、近代国家ではあってはならないことである。教育改革でも、同じことがいえよう。教育面で学力の向上を考えるにしても、先端的な部分の成績が伸びたとしても、全体的な底上げにつながらなければ、メリットは少ない。ここでも「上厚下薄」という結果は許されない。 安倍的手法には、全体を引き上げようという発想よりも、上方部分に目を掛ければ、下方にも及ぶ、といった安易な考え方が見て取れる。まずはエリートから、という弱肉強食型の手法ではいずれ限界なり、デメリットが生じてこよう。教育水準が上がって、多様な個人、多角的な趣向や思考が生まれてくる現代では、多様な選択肢を必要とするのだが、安倍型手法には国家を軸に置いて国民を一定の方向にまとめ上げ、束ねやすくするような戦前型の戦略が感じられる。戦前はたしかに、エリート優先、上部構造を原動力に動かしやすい社会であった。だが、その手法は古いし、時代にそぐわない。 ●6.不得手にも手を出す政治を アベノミクスをはじめとする経済政策は安倍政権への期待を引き付けてきた。この成果が上がること自体は望ましい。ただ、好条件に恵まれた政権として、経済面をはじめ軍事面、教育面といった好みの分野にとどまりすぎていないか。世論調査では、年金問題の長期的解決が望まれ、高齢者や障害ある人々の福祉対策、雇用や就労条件をはじめ収益の配分問題など、根っこからの具体的な打開策を求める声が強い。1000兆円を超した財政赤字の削減策は、姿勢としては見せようとしているものの、具体的な手立てには言及していない。実態が見えてこないのだ。行政機構の改革など、手すらも付けきれていない課題もある。金融に走り、農業本体に発言力を衰えさせた農協組織(JA)の改革などへの発言が出てきたことは望ましいが、これまた「今後」の課題になったに過ぎない。TPPに応じる様相になった以上、農業の現場をこのまま放置していいはずがない。 つまり好条件下で、力量を示すべき政権としてはまだまだやらなければならない課題が多い。「好み」の方向のみに熱中する手法ではなく、また「戦後レジームからの脱却」「積極的平和主義」など自我流におぼれない政治感覚を持ち直してほしい。野党ばかりではなく、与党内でも、言うべきは言う、といった度胸を示すべきだし、いつものような『下駄の雪』であってほしくない。安倍政権が反省して再出発、といったことは望めまいが、ある日突然の破たんを迎え、そのときやっと民意とのボタンの掛け違いに気づく、といったことのないように願いたい。 |
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●安倍外交を採点したら 今のところ及第点 2019/2 | |
安倍晋三首相がトランプ米大統領をノーベル平和賞に推薦したと報じられた。これについては批判もあるが、外交の手段としてどう評価できるか。推薦をめぐり、国会で質問があったが、安倍首相は否定も肯定もせず真偽を明らかにしていない。ちなみに、誰からの推薦があったかについて、ノーベル賞委員会は推薦者を50年明かさないので、50年間は分からないだろう。トランプ氏への推薦は他国の疑問を招きかねないとの批判もある。立憲民主党会派の小川淳也氏は「ノーベル賞はありえない。日本として恥ずかしい」と非難した。
ただし、外交の観点からは、好き嫌いの感情より国益優先だ。国家間の関係は個人感情よりビジネスライクのほうがよく、そのようなリアルな外交からすると問題はない。各国の外交関係者には、日本はうまくやっていると見えるだろう。実際にトランプ氏から「推薦」について話が出たというのは、米大統領に効果があったわけで、日本の国益という観点で、外交上の意味があったということになる。 いずれにしても、このノーベル賞推薦報道についてのコメントをみると、外交に関する理解度がよく分かる。この推薦に批判的な人の中には、トランプ氏とのゴルフについても「遊んでいる」と批判する人もいるようだ。こうした「理想主義的なお花畑論」は、「リアルな外交論」との対立軸に帰着する。お花畑論の人は「べきだ論」ばかりで、推薦もゴルフも不要であり、ひたすら理想論ばかりを言っていればいいとなる。 しかし、外交は生身の人間が行うことであるので、リアルな外交論からいえば、使えるものは何でもいい。一般のビジネス社会では、昼間の会議だけではなく、夜や休日の接待も「仕事」の一環となることも多い。トータルな「仕事」でビジネスすることを考えれば、リアルな外交論の方に軍配があがる。実際、安倍首相は日本に国益をもたらしている。分かりやすい例が経済関係だ。トランプ氏の大統領選直後の面会、ゴルフ、そして真偽不明だがノーベル賞の推薦を行ったとされ、結果として日本は高関税を免れている。日本のアキレス腱(けん)は自動車関税だが、これまでのところ猶予されている。トランプ氏は新しい天皇に面会するために5月中に来日する。6月末にも20カ国・地域(G20)首脳会議で来日する。このように短期間で米大統領が複数回来日することは異例だが、その頃までは、米国が自動車関税で日本を揺さぶることはないだろう。これは安倍首相が「仕事」をしてきたからだ。 一方、中国の習近平国家主席は、安倍首相のような「仕事」をしていない。そのため、トランプ氏は中国製品に高関税を課し、そのせいで中国経済は大きく減速している。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領も「仕事」をできず、中国とともに経済で苦境である。これまでのところ、中韓と比べて日本はうまくやっているというのが外交関係者の見方だ。 |
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●禍根を残す「やったふり外交」安倍首相の評価は65点止まり 2019/3 | |
第2次安倍晋三政権が発足してから約6年3カ月が過ぎた。その間、政権運営の柱となってきた「安倍外交」を評価するならば「おおむね適切」ということになる。
安倍外交といえば、米国のトランプ大統領やロシアのプーチン大統領など、世界の首脳との「強固な個人的信頼関係」を称えるものや、世界の首脳の中でベテランの域に達した安倍首相が頼りにされているということなどが、巷(ちまた)で言われてきた。ただし、筆者はそのような「高評価」から一線を画すものである。 特に、安倍首相の「個人的な資質」に対する「幻想」が広がっていることには、違和感を持たざるを得ない。2007年9月、第1次安倍政権が発足365日目に崩壊した時のことを思い出してほしい。あのとき、安倍首相は「空気が読めない男」と、政界内やメディアのみならず、街の女子高生にまで言われていた。 テレビカメラを前に記者会見すれば、「ワンフレーズ」でズバリ指摘する小泉純一郎前首相(当時)とは対照的に、長々と説明するが要領を得ないコメントで批判された。国会でも、野党に追及されると感情的な答弁になった。 同じ人が、約5年を経て首相に復帰した時に、世界の首脳という「悪党」たちを相手に、丁々発止の駆け引きをし、国際社会を主導する「スーパーマン」に変貌するということがあり得るのだろうか。そんなことは「幻想」にすぎないと思う。 個人的には、安倍首相は約11年前に退陣した時と何も変わっていないと思う。安倍外交がおおむね適切だったのは、世界の首脳との信頼関係があるからではない。世界の首脳と会い、相手に強く主張することはない一方で、相手の望むこと以上のものを提供し、会談後に日本のメディアを集めて記者会見で大々的に成果を誇る「やったふり外交」がハマってきたからだ。 例えば、トランプ氏の「米国第一主義(アメリカ・ファースト)」によって、ロシアや中国、欧州連合(EU)、イランなどさまざまな国との摩擦が高まる中、「ドナルド・シンゾー」の個人的な信頼の構築によって、「日米関係は過去最高の良好さ」を保ってきたとされる。安倍首相は、他の首脳と違い、トランプ氏の別荘に招かれ、ゴルフに興じながら、サシで話をしてきたという。果ては、トランプ氏に頼まれて、大統領を「ノーベル平和賞」に推薦する文章まで書いたとまで言われている。 トランプ氏が、安倍首相を「いい奴だ」と言っていることに嘘はないだろう。だがそれは、ドイツのメルケル首相やフランスのマクロン大統領が米国の保護貿易や移民政策などに正面から異を唱えるのと対照的に、安倍首相が「耳が痛いこと」をなにも言わないからではないだろうか。 また、アメリカ・ファーストの柱である保護貿易主義では、これまで「米国にモノを売りつけてきた国」が厳しい批判の対象となっているが、一方で「米国のモノを買う国」が必要となる。現在、事実上の「敵対関係」にある中国を除けば、最も米国のモノを買える国は日本であることは明らかだ。その意味で、トランプ氏は少なくとも現時点では、日本のことを悪く言うことはないのだ。 日露関係はどうだろうか。安倍首相とプーチン氏の日露首脳会談は通算25回になる。安倍首相は「私とウラジーミルの間で、北方領土問題を解決し、日露平和友好条約を締結する」とぶち上げたが、実際には進展が見られない。 なにせ安倍首相が再三「ウラジーミル」と呼びかけても、プーチン氏は「安倍首相」と返し、決して「シンゾー」とファーストネームで呼んでくれない。それはともかくとしても、プーチン氏が「両国の間にはまず信頼関係の構築が必要だ」と言い、ロシアの求めに応じて経済協力だけが進んでいる。それは、2014年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合に端を発した、米国やEUなどの「対露経済制裁」に、日本が足並みを揃えずに進められている協力だということが重要だ。 日露交渉において、北方領土問題を日本側が持ち出すと、ロシアのラブロフ外相が「第2次世界大戦の結果を認めていないのは日本だけだ」と激しく非難するなど、ロシア側の強硬な態度が目立ち、交渉難航が伝えられる一方で、経済協力ではロシアだけが着々と利益を得ている状況にみえる。だが「そもそも論」だが、なぜ日本がロシアに対して「下手」に出る必要があるのだろうか。 ロシアは「大国」のイメージを高めているが、それは「幻想」にすぎない。1991年のソ連崩壊以降のロシアは、英米やEUによる旧ソ連圏や東欧諸国の「民主化」の画策によって、影響圏をドイツの東ベルリンからウクライナまで後退させた。 東欧諸国の多くがEUや北大西洋条約機構(NATO)軍に加盟し、ついにウクライナがそれに加わる可能性が出てきていた。20年間にわたり、ロシアは負け続けていたのである。「クリミア半島併合」は防戦一方の中で、辛うじて繰り出した「ジャブ」のようなものにすぎない。 また、ソ連崩壊後、ロシアは幾度となく経済危機に見舞われてきた。かつて高い技術力を誇った宇宙産業や軍需産業、原子力産業などは見る影もない。過度に石油・天然ガスの輸出に依存する経済で、その価格下落が経済危機に直結する脆弱(ぜいじゃく)な構造だ。 「シェールガス・オイル革命」によって世界一の産油・産ガス国になった米国の攻勢で、石油・天然ガス価格は不安定だ。プーチン政権にとって、「脱石油・天然ガス依存」は急務であり、製造業を育成するために日本の支援を切実に望んでいるのだ。 さらに言えば、急拡大してきた中国との関係も微妙だ。ロシアと中国は、極東の天然ガスパイプラインの建設プロジェクトで合意するなど良好な関係にあるとされる。 しかし、ロシアはシベリア・極東地域の開発を中国だけとやりたくはない。アフリカなどへの進出でも分かるように、中国は海外に進出する際、政府高官や建設業者、労働者から家政婦まで乗り込んで、「チャイナタウン」を作ってしまう。現地にカネが落ちず、雇用も増えないと不満が高まることも多い。 要は、元々人口が少ないシベリア・極東地域を中国と一緒に開発すると、「人海戦術」で中国に実効支配されることを、ロシアが恐れている。だから、日本にも参加してもらいたいのだ。 日露協力は、「経済的」にはロシアが切実に望むものであるが、日本側は進展しなくても別に困らない。もちろん「政治的」には北方領土問題があり、安倍首相は「戦後70年以上動かせなかった問題を、自分たちの時代で解決する」と意気込んでいる。 だが、この意気込みを裏返せば、「70年動かなくても、大きな問題とならなかった」ともいえる。なぜ、これだけ日本が有利な状況にある交渉で、「北方四島のうち、2島だけでも先に返してもらえないか」と下手に出て、ロシアの言うままに経済協力を進めないといけないのか、理解できない。 要するに、安倍首相が世界の強烈な個性を持つ首脳たちと何度もサシで話し合い、笑顔で握手する映像を流し、記者会見で長時間成果を語っているが、相手に何を話しているかわからない。繰り返すが、かつて「空気を読めない男」と呼ばれ、現在でも国会で野党に対してすぐ感情的になる政治家が、日本の主張を強く、論理的に訴えて、説得できるのであろうか。 むしろ、「安倍外交」がおおむね適切だったのは、アメリカ・ファーストのトランプ氏をはじめ、プーチン氏や習氏ら権威主義的な指導者が跋扈する国際社会で、あまり積極的に動かず、日本の公的な主張を棒読みしながら、笑顔で相手の主張にもうなずき続けて機嫌を損ねないという、無理のない対応に終始してきたからではないだろうか。 しかし、今後も安倍首相が、無理のない、おおむね適切な外交を続けられるかどうかはわからない。アメリカ・ファーストを掲げたトランプ氏は「北朝鮮の核・ミサイル開発への介入」「エルサレムのイスラエル首都承認」「米国のイラン核合意離脱」「ロシアのサイバー攻撃への制裁」「米中貿易戦争」と世界を振り回し続けた。安倍首相はトランプ氏に徹底的に従う姿勢で「いい奴」と思われてきたが、今後もそれでいいのだろうか。 そもそも、安倍首相自身に焦りが見られるように思う。例えば、「北朝鮮問題」は、トランプ大統領とサシで話し続けていても、「拉致問題」に動く気配がなく、「北朝鮮の完全な非核化」にしても、大統領が本気で取り組んでいるのかよくわからない。 2度目の米朝首脳会談こそ物別れに終わったが、韓国やロシア、中国などが隠れて経済協力を始めておかしくない。日本に向けて中距離核ミサイルがズラッと並んだまま、日本が「蚊帳の外」になりかねない状況だ。 またも繰り返すが、北方領土問題で「北方四島のうち、2島だけでも」と自分からハードルを下げている。困っているのはロシア側なのだから、「4島返還でなければ経済協力は難しい」と構えていればいいのだ。 ラブロフ氏が怒り狂っても、静観していればいい。交渉事は、大体怒っている方がうまくいかず焦っているものだ。 安倍首相は、現実的対応というかもしれないが、今、現実的であっても、30年後に現実的な対応だったと評価されるかどうかはわからない。むしろ、後世に取り返しのつかない禍根を残したと評価される可能性が高い。 日本外交に求められることは、アメリカ・ファーストなど、自国第一主義の魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈する国際社会の中で、焦って動かないことだ。 大事なことは、着実に経済成長を続けることだと考える。前述のように、アメリカ・ファーストには「米国のモノを買う国」が必要だ。日本が経済力を維持し、米国製のモノを買い続けられる限り、米国は日本を守ってくれるだろう。 また、米中貿易戦争が激化する中で、中国が日本に接近し、日中関係が改善してきている。中国の急拡大は脅威だが、日本が強い経済力を維持している限り、中国は日本を潰そうとはしない。 「慰安婦問題」「徴用工問題」「レーダー照射問題」と日本に対して挑発的な態度を取り続ける韓国も、国内経済が悪化し、大学生は日本での就職活動に熱心だという。日本経済が強ければ、いずれ関係は改善していくと考えられる。 さらに、日本は米国が離脱した後の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を、「TPP11」という形でまとめ上げた。日・EU経済連携協定(EPA)も発効した。TPP11には、英国が「EU離脱後」の加盟に強い関心を持っているという。日本は、権威主義的な指導者による保護貿易主義がはびこる中、「自由貿易圏」をつなぐアンカー役になれる。 世界に自国第一主義が広がる中で、日本がわれ先に利益を得ようとすることはない。むしろ、多くの国が自由貿易圏で豊かになれることを、支える役目に徹することだ。それが、日本を守ることになるのである。 |
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●安倍政権はなぜ長続き? 景気が追い風、選挙強く 2019/5 | |
安倍晋三首相の在職期間が歴代最長に近づいていると聞いたわ。最近は短命政権が多く続いて、安倍内閣でもいろいろと問題が起きているようだけど、長続きしている理由は何かしら。安倍政権が7年目に入っても安定している理由について、鈴木正美さん(54)と小川めいこさん(47)が坂本英二編集委員に聞いた。
――安倍首相の在職期間が歴代最長に近づいていると聞きました。上位にはどんな人がいますか。 安倍晋三氏の第1次政権は1年で終わりました。その後首相に返り咲き、現在は第4次政権で通算の在職は2703日(2019年5月20日時点)となっています。戦前を含め最長は明治から大正時代の桂太郎(通算2886日)です。2位は沖縄返還を実現した佐藤栄作(同2798日)、3位は初代首相の伊藤博文(同2720日)。安倍首相はいま4位で、11月19日にトップの桂太郎と並びます。 ――最近は短命政権が続きましたが、長続きしている理由は何でしょうか。 まず選挙に強いことが挙げられます。安倍氏は12年9月に自民党総裁に返り咲き、同年12月の衆院選で民主党から政権を奪還しました。ここまで衆院選で3勝、参院選で2勝です。「国政選挙で5連勝中のトップを代える必要はない」というのが自民党の多くの議員の空気です。 そして政権安定を下支えしてきたのが、景気だと思います。首相は「アベノミクス」で大胆な金融緩和と積極的な財政政策を打ち出しました。日経平均株価が上昇し、為替は円安に振れました。財政規律をゆがめて将来に禍根を残す懸念が指摘されていますが、「日本経済の雰囲気が明るくなった」との評価があるのは事実でしょう。政権はいま「一億総活躍」や「働き方改革」に取り組んでいます。 日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査では、安倍内閣の支持率は今年に入っても50%前後です。発足7年目としてはかなり高く、若年層の支持率が高いのが特徴です。雇用が回復し、就職活動にプラスに働いている要素も影響していると思います。 ――「森友・加計問題」などは野党が厳しく追及していますね。景気回復もあまり実感できません。 長期政権のおごりや緩みの象徴のような不祥事が確かに相次いでいます。財務省の決裁文書の改ざんや自衛隊の日報隠蔽、最近では統計不正問題もありました。行政への信頼を損ないかねない問題ですが、政治家が司法の裁きを受けるような事件には発展していません。野党の国会審議での追及も政権を追い込むまでには至っていません。 与野党の議員からも「景気回復が実感できない」との声はよく聞きます。アベノミクスで大企業の収益や株価は回復しましたが、それが経済成長にまでは結びついていません。米中の貿易戦争や日米の通商交渉の行方といった不安な要素も増えています。安倍政権にとってこれまで追い風だった経済がマイナス要素に転じる恐れもあります。 ――今年は夏に参院選があります。選挙結果はどんな影響がありますか。 4月の統一地方選は保守分裂となった一部の知事選を除けば、全体として与党の堅調ぶりが目立ちました。一方で4月下旬の2つの衆院補欠選挙で、自民候補はいずれも敗れました。選挙区ごとの争点があったとはいえ、直前に安倍内閣の閣僚や副大臣が失言で相次ぎ辞任した影響も出たと思われます。 夏の参院選に臨む首相にとって、最大の敵は「長期政権のおごりや緩み」ではないでしょうか。17年7月の東京都議選では、その前に閣僚や所属議員の失態が相次いだため、自民党は歴史的惨敗を喫しました。 自民党幹部は今年夏の参院選について「大勝した13年選挙の改選となる。10程度の議席減は覚悟のうえだ」と語っています。政権がすぐに追い込まれるような大きな苦戦は想定外ですが、油断すると情勢が一気に変わるのが選挙の怖さでもあります。 歴代1位の長期政権にたどり着くには、堅実な政権運営を続け、景気動向に細心の注意を払うことが最後の関門となりそうです。 ● 長期政権、外交で存在感 長期政権の一つのメリットは、外交舞台での存在感だろう。安倍首相はトランプ米大統領やプーチン・ロシア大統領と太いパイプを築き、国際会議の場で意見交換を求める外国首脳も増えた。首相の党総裁任期は2021年9月末まで。党則改正で4選をめざすなら次期衆院選の時期とも絡む。 安倍政権がもし短期に行き詰まるとすれば、かつての橋本政権のパターンではないか。橋本龍太郎首相は日米同盟の強化や北方領土の対ロ交渉に取り組んだが、1998年の参院選で大敗して退陣した。国内景気の変調が主因とされ、自民党にとっては思い出したくない過去だ。 |
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●参院選2019・「1強」安倍政権で浮上した主な問題 2019/6 | |
参院選(7月4日公示、21日投開票)では6年半を迎えた安倍政権の政治姿勢への評価が下る。安倍晋三首相は2016年参院選や17年衆院選の勝利で「1強」体制を確固とし、内閣人事局を通じて中央省庁を掌握。その結果、官僚には忖度(そんたく)が広がり、国民目線を忘れた不祥事や疑惑が相次いだ。おごりや緩みといった長期政権の弊害をどう排除するかが課題となりそうだ。
●安倍首相、金融庁に激怒 「対案もないまま、ただ不安をあおるような無責任な議論は決してあってはならない」。年金制度に関し、首相は26日の記者会見で、老後資金が2000万円不足すると試算した金融庁審議会の報告書をめぐり政府を批判する野党を当てこすった。 安倍政権は「政府のスタンスと異なる」として報告書の受け取りを拒否。金融庁が野党に攻撃材料を与えたとして「首相は激怒した」(自民党幹部)という。政権中枢の意に沿わない意見や異論を排除する態度に対し、ある野党議員は「ますます忖度が増えるだろう」と嘆息した。 「臭いものにふた」をする対応は、学校法人「森友学園」に国有地が8億円値引きされて売却された問題や、首相の長年の友人である加計孝太郎氏が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設の問題で浮き彫りとなった。 政権を揺るがしたこれらの問題は、自民党が圧勝した16年参院選から半年余りが経過した17年初めに表面化。官僚の忖度が行政の中立・公平性をゆがめた疑いが浮上したが、政府は都合の悪い文書を「怪文書」と断じ、決裁文書を改ざんした。良心の呵責(かしゃく)から財務省近畿財務局職員が自殺した後も、対応を改めるに至らなかった。 与党も国会での真相解明に一貫して消極的だった。国有地値引きへの影響が取り沙汰された安倍昭恵首相夫人について、野党が求める証人喚問を拒否。加計氏の喚問も拒み続け、いずれも幕引きを優先した。 ●劣化する官僚 政府の不手際は止まらない。厚生労働省の毎月勤労統計に端を発した統計不正問題では、56の基幹統計の約4割で不適切な処理が判明。政策立案、遂行の基盤が揺らいだ。 厚労省では働き方改革に関し、裁量労働制の不適切データ問題が発覚。1日の残業時間が1カ月分より長いという、ずさんな処理を見抜けなかった。防衛省は、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備候補地である秋田県への説明資料作成に当たり、見落としや見誤りといった単純ミスを重ね、県の怒りを買った。同省関係者は「各省庁が官邸の言いなりとなり、官僚が劣化した」との認識を示した。 ただ、不祥事が連鎖する中でも内閣支持率は高い水準で推移している。野党が内閣不信任決議案で、安倍政権を「情報を隠蔽(いんぺい)し、予算委員会の審議拒否を続け、国民への説明責任を放棄した」と非難しても、首相の耳には入らない。 |
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●安倍政権はなぜ続く? 2019/10 | |
第一次内閣を含めた安倍晋三首相の通算在職期間が来月、桂太郎首相を超え、歴代内閣で一位となります。二〇一二年に発足した第二次内閣以降、「安倍一強」と呼ばれる「数の力」を背景とした強引な政権、国会運営には厳しい批判はありますが、なぜ安倍政権はこれほど長く続いたのか。神戸大教授の砂原庸介さんと考えます。
<首相の通算在職日数> 歴代最長は明治・大正期の桂太郎首相で2886日。現職の安倍晋三首相は今年8月、第1次内閣との通算で、大叔父である佐藤栄作首相の2798日を超えて歴代2位に。このまま政権を維持し続けた場合、11月19日に桂首相と並び、翌20日には史上最長となる。連続在職日数の最長は佐藤首相の2798日。歴代最短は終戦直後に就任した東久邇宮稔彦首相の54日。 豊田 小泉純一郎首相が退陣した二〇〇六年以降、第一次内閣当時の安倍首相を含めて在職一年程度で首相が交代する短期政権が続いていました。その中で連続七年近い、第一次を含めれば八年近くに及ぶ長期政権は異例です。なぜこれほど長く政権が続いたのでしょう。 砂原 交代圧力の不在が大きな理由です。オルタナティブ(代替勢力)であるべき野党が非常に弱いので、政権交代のプレッシャー(圧力)がほとんどかからない。その結果、政権交代がないだけでなく、独善的と批判される政権運営でさえ可能になっています。 豊田 野党が弱くなり、政権交代の現実味が欠けていることに加えて、派閥の衰退で自民党内の圧力がなくなったことも長期政権につながっています。まず野党の政権交代圧力がなくなった原因をどう考えますか。 砂原 一義的には民主党政権の失敗、と言っても、実は何を失敗と言うのかは難しいのですが、うまくいかなかった記憶が強い。あの人たちに任せていいのかと思う有権者は多いと思いますし、政治家側も、かつてと同じような形で結集しても支持が集まるのか、という感覚がある。加えて、野党の足並みがそろわない原因の一つは、安全保障政策で合意がないことです。自民党はそこを攻撃するので、野党は分裂的になります。 豊田 一方で、自民党内の圧力がなくなった背景には政党・政策本位の政治を目指した平成の選挙制度改革があります。派閥がかつての権勢を失ったのは改革の狙い通りですが、人材育成機能までなくしてしまった。後継者が育たない、競争原理が働かない現状もあります。 砂原 中選挙区制当時、政権交代は基本的に起きないと考えられていたから、自民党内で「今の首相は全然だめだ」と言えました。今、それを言うと、ひょっとしたら政権交代が起きるかもしれないと、皆が理解しています。だから、自民党内で野党的なことを言う人がいなくなって、今の枠組みで昇進するための競争をしています。自民党総裁選は最終的には国会議員が決める規程ですから、議員の中で受ける人たちが再生産されていくわけです。 豊田 平成の政治改革はリクルート、東京佐川急便事件を機に自民党の派閥をなくし、野党を政権交代可能な勢力にすることが狙いでした。派閥の力をそぐことはできましたが、野党の力までそいでしまった。なぜ目指していたものと違ったのか。 砂原 単純に野党のことを考えていなかったからです。政治改革には二つの要請がありました。一つは二つのブロックに分けること、もう一つはリーダーが求心力を強めることです。自民党は人事や選挙での公認などを通じてリーダーの求心力を高めてきましたが、野党側のためにそうした改革をしてこなかった。野党は求心力を高めることができず、都市部を中心に同じような支持層を奪い合う、極めて過当な競争を続けています。 豊田 長期政権になったのはそうした制度的な変化が要因なのか、安倍首相の属人的な問題なのか、どちらでしょう。 砂原 基本的には制度の問題ですが、安倍首相が第一次内閣の教訓を生かして、野党を見ながら自分のポジションを決め、それに成功している面はありますから、制度だけでは説明できない部分はあります。 豊田 長期政権のメリット、デメリットを伺います。海外で規格外の指導者が誕生する中、外交では安定した政権の方が有利という面はあります。 砂原 ある意味、安倍首相がリベラル(自由主義)世界のリーダーのようになっているのは仕方がない。野党支持者には不満でしょうが、そこは受け入れて、安倍首相を利用することを考えた方がいい。リベラルなリーダーならこれくらいはするでしょうと、圧力をかけるとか。安倍首相はリベラルじゃない、と言っても仕方がありません。 豊田 現状を受け入れた上でコントロールした方がいいと。 砂原 そう思います。「集団的自衛権の行使」の問題も同様で、憲法を変えたくない気持ちは理解できるし、私も九条を変更することが他国との関係に影響があるか懸念します。ただ政権側の憲法解釈に強く反対するあまり、状況に関与できなくなるのはよくありません。 豊田 平成の政治改革により当初の目的としていた政権交代は二度ありましたが、野党の弱体化や首相官邸への過度の権力集中というデメリットも顕在化しました。国民にとって望ましい政治を実現するためには、どんな選挙制度とすべきですか。 砂原 一般論としては比例代表制がいいと思います。個人的には衆院をすべて比例にして、参院を廃止してもいいと思いますが現実には難しい。特に衆院の選挙制度は変えにくいので、変えるのなら参院と地方です。その際、女性の代表を増やすなど多様性を拡大するには、明らかに比例代表制が望ましい。 豊田 個人的には比例代表制の方がいいと思いますが、政党の統治機能を強めることが前提です。比例代表選出議員が離党したら、議員を辞めるくらいでないと政党本位にはならない。 砂原 その通りです。地方でも、選ばれた議員は全住民への責任を負わされていますが、選んだ人たちから見ると、自分たち特定地域の代表にすぎなかったりする。そして、その代わりがいないわけですよ。だから、妊娠などによる議員の休職を支持者の側が認めない。(採決での)代理投票など比例の方が融通は利く。責任だけ異常に重く、入れ替えできないのは、個人への投票だから当然です。そのことが相当程度、足を引っ張っていると理解しています。 豊田 民主主義にお金がかかるのは分かりますが、政党交付金制度ができて、各政党は政府からお金をもらうのが当然になってしまった。まるで国営政党です。それが政治の劣化につながっているのではないですか。 砂原 私自身は劣化だとは思いませんし、政党に資金面で責任を負わせると、また野党への負担になる。政治に劣化があるとすれば、選挙制度とは関係なく、どういう人が政界に入ってくるのかです。以前、政治家の仕事には見返りが多いと思われていましたが、政治改革でほとんど切ってしまった。だから、良くも悪くも自分の能力を生かして、ひと山当てようという人が政界に来なくなってしまった。ちゃんとした人に議員になってほしいと思ったら、報酬は上げてもいいと思います。首長の中には身を切るといって報酬を下げる人がいますが、対抗馬をつぶすダンピングという側面も無視できません。 |
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●それでも「安倍政権の支持者」が多いのはなぜか 2019/11 | |
●本当に「国民のための政治」を実行してきたのか
安倍首相の在職日数が11月20日に通算2887日に達し、憲政史上最長となった。歴代最長の政権だ。 これまでの内閣支持率は悪くはない。しかも野党が弱く、自民党内にも有力な「ポスト安倍」が存在しないため、安倍首相の政治的基盤は強固にみえる。 しかし首相の在籍日数が、長ければそれでいいというものではない。問題は首相自身が日本の将来をしっかりと見据え、国民のための政治を着実に実行してきたかどうかである。 その観点から判断すると、「安倍1強」の長期政権には、緩みや驕おごり、歪みがはっきりと見えてくる。 ●わずか1年で総辞職した「第1次安倍内閣」 第1次安倍内閣は2006年9月26日に発足した。当時、安倍首相は51歳。戦後最少年であり、初の戦後生まれの首相だった。だが、2007年夏の参院選で自民党が敗れた後、安倍首相は持病が悪化し、わずか1年で内閣は総辞職した。永田町では「安倍さんの政治生命は消えた」とまでささやかれた。 それでも2012年9月の自民党総裁選で石破茂氏らとの戦いに勝ち、同年12月の民主党政権下で行われた衆院選で自民党は圧勝し、民主党から政権を奪回。12月26日、首相に返り咲いて第2次安倍内閣を発足させた。持病の治療も成功し、奇跡の復活を果たした。その後7年間に亘わたって政権を維持してきた。 ●自民党総裁任期は2021年9月までだが… 女房役として安倍首相を支えてきた菅義偉官房長官は11月19日の記者会見で「やるべきことを明確に掲げ、政治主導で政策に取り組んできた」と述べ、経済再生や外交・安全保障の再構築などを主な成果に挙げた。 安倍首相も、通算在職日数が明治・大正時代の桂太郎首相を抜いて憲政史上最長となった11月20日、政治課題について「デフレからの脱却、少子高齢化への挑戦、戦後日本外交の総決算、その先には憲法改正もある」と首相官邸で記者団の質問に答えた。 さらにこれまでの政権を振り返り、「深い反省の上に政治を安定させるため、日々全力を尽くしてきた」とも話した。 安倍首相の自民党総裁任期は2021年9月までだ。自民党は総裁を首相とする慣例があるため、総裁の任期を終えた場合、首相の任期もそこで終わる。安倍首相は「(その時点まで)薄氷を踏む思いで初心を忘れず、全身全霊をもって政策課題に取り組んでいきたい」とも語った。 ●経済的に豊かになったのは、大企業と一部の富裕層だけ 果たして経済再生や外交・安全保障の再構築が成功したと言えるのか。確かにアベノミクスの「3本の矢」や「1億総活躍社会」といった政策看板を掲げ、実際に株価や有効求人倍率の指標は上がった。しかし、私たち国民の生活は本当に豊かになっただろうか。 経済的に豊かになったのは、大企業と一部の富裕層だけだ。賃金は伸び悩み、大半の国民はアベノミクスの恩恵を受けてはいない。経済格差は広がるばかりである。 外交・安全保障にしても、たとえば日韓関係をギクシャクさせ、北朝鮮や中国、ロシアを喜ばせている。対ロシアの北方領土問題では「4島は日本固有の領土」という主張も消えた。 ●すべて長期政権の緩みや驕り、歪みから起きている 「もり・かけ問題」と批判された森友学園や加計学園の不祥事は、安倍首相と周辺との政治的癒着に注目が集まった。今年9月の内閣改造では、初入閣した2人の主要閣僚が政治とカネの疑惑で辞任した。内閣改造から1カ月半で経産相と法相が相次いで辞任する異例の事態だった。この顚末てんまつについては、11月1日付の記事「なぜ安倍内閣の閣僚たちは次々と辞任するのか」に書いた。 大学入学共通テストで導入を予定していた英語の民間試験をめぐっては、文科相の「身の丈発言」の影響もあり、導入延期に追い込まれた。さらに「桜を見る会」の問題では、地元支援者を多数招待するなど安倍首相の公私混同ぶりが明らかになっている。11月16日付の記事「読売も『襟を正せ』となじる『桜を見る会』の節度」でも書いた。 一連の問題は長期政権の緩みや驕り、歪みが原因だろう。安倍首相はこれをどこまで自覚しているのか、疑問である。安倍首相は「深い反省の上に政治を安定させるため、日々全力を尽くしてきた」と語るが、深い反省があれば緩み、驕ることなどないはずだ。 ●「年を追うごとに弊害の方が際だってきた」 新聞各紙は11月20日付の社説で、長期政権の問題点を指摘しながら安倍首相に反省を求めている。 朝日新聞の社説は「歴代最長政権 『安定』より際立つ弊害」という見出しを付け、冒頭からこう厳しく批判する。 「日本の政治史には、『歴代最長政権』として、その名が残ることは間違いない。しかし、これだけの長期政権に見合う歴史的な成果は心もとなく、年を追うごとに弊害の方が際だってきたと言わざるを得ない」 さらに朝日社説は安倍政権の「弊害」を具体的に挙げる。 「一方で、長期政権がもたらした弊害は明らかだ。平成の政治改革の結果、政党では党首に、政府では首相に、権限が集中したことが拍車をかけた。自民党内からは闊達な議論が失われ、政府内でも官僚による忖度そんたくがはびこるようになった。森友問題での財務省による公文書の改ざん・廃棄がその典型だ」 党首、首相への権限の集中は、官邸主導の政治が生んだ負の面である。「忖度」という言葉がそれを確かに裏付けている。 ●強引な憲法改正があれば、政治の混乱を招くだけ 最後に朝日は訴える。 「首相の自民党総裁の任期は残り2年である。個人的な信条から、長期政権のレガシー(遺産)を、強引に憲法改正に求めるようなことがあれば、政治の混乱を招くだけだろう」 「限られた時間をどう生かすか。国民が今、政治に求めていること、将来を見据え、政治が今、手を打っておくべきことを見極め、優先順位を過たずに、課題に取り組む必要がある」 政治の混乱は、任期まで時間の少なくなった安倍首相にとっても、避けたいところだろう。ここは朝日社説の主張に素直に耳を傾け、政治課題に取り組んでもらいたい。 ●「支持しない人は敵で、支持する人は味方」の発想 毎日新聞の社説は安倍首相の強引な手法と、おごりや緩みを指摘する。 「確かに長期政権は安定的に政策に取り組める利点がある。ただし首相は国論を二分した安全保障法制などを強引な手法で実現させたものの、人口減少問題といった中長期的課題を重視してきたとは言えない」 「逆におごりや緩みが一段と目立ってきているのが実情だ。公金の私物化が指摘される『桜を見る会』が象徴的である」 「首相は自分を支持しない人は敵と見なして批判に耳を傾けず、支持する人は味方扱いで優遇してきたのではないか。公正さを忘れた今回の問題はそれが如実に表れている。衆参予算委員会の場でごまかすことなく丁寧に説明しないと次に進めない」 「支持しない人は敵で、支持する人は味方」とはまさに安倍政治の手法をよく表している。これがまかり通るのも「安倍1強」があるからで、安倍首相には深い反省を求める。 ●「安倍1強」はやがて政治を閉塞させていく 最後に毎日社説は指摘する。 「首相の自民党総裁としての任期は再来年秋までだ。4選は考えていないと語っており、残る任期で憲法改正を実現して政治的遺産を残したいと考えているのかもしれない」 「だが政治への信頼回復が先だ。そして自民党も『ポスト安倍』を考え始める時だ。『他にいない』という1強状況は、むしろ政治の閉塞を招いている」 北朝鮮のような一党独裁国家は、国際社会から批判され、経済的にも衰退し、最後は閉塞状態に陥る。一国の内政も同じだ。「安倍1強」はやがて政治を閉塞させていく。安倍首相や自民党に早く、そこに気付いてもらいたい。 ●読売新聞の社説も、長期政権の問題点を指摘 「長期政権ゆえの惰性に陥ってはならない。足元を見つめ直し、政権運営にあたるべきだ」 安倍政権を擁護することの多い読売新聞の社説も、書き出しから長期政権の問題点を指摘する。 「読売新聞の世論調査では、65%が仕事ぶりを評価している。経済政策や外交の実績が国民の支持につながったのだろう」と評価しながらも、こう書く。 「憂慮されるのは、政権復帰から約7年が経過し、安倍内閣に綻びが目立つことだ」 「9月の内閣改造後、わずか1か月半の間に、2人の重要閣僚が不祥事で辞任した。功労者を慰労する『桜を見る会』の趣旨に反して、首相の事務所は、地元の後援会員らを多数招待していた」 「長期政権の緩みや驕りの表れと言えよう。首相は、緊張感を持って政策に取り組み、一つ一つ結果を出さなければならない」 安倍首相には、読売社説のこうした指摘を謙虚に受け止め、長期政権の緩みや驕りを払拭ふっしょくしてほしい。 |
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●安倍政権の「後継者問題」、政治の安定失えば日本株売りも 2019/11 | |
金融市場で「ポスト安倍」への警戒感が強まり始めた。安倍晋三首相続投の可能性が低下したとの見方が広まる中、次の本命候補が一向に浮上してこないためだ。政治の安定は日本市場の数少ない長所だけに、「後継者問題」がうまく解決されなければ、日本株売りの材料にされかねないと不安視されている。
●「蜜月」の終わりを意識 第2次安倍政権が始まった2012年12月以来、日経平均株価は2.3倍に上昇した。投資家にとって安倍首相は歴代首相のなかでも「最も儲けさせてくれたうちの1人」だ。経済や物価はあまり伸びなかったが、株高を背景に支持率も安定、マーケットとの「蜜月」時代が続いてきた。 そのマーケットポジティブな政権の終わりを市場は意識し始めている。安倍首相の通算在任期間が歴代最長となり「記録」を樹立。念願の憲法改正にめどは立っていないが、来年の東京オリンピック・パラリンピックを終えた後に、引退すれば美しい花道となる。 安倍首相の自民党総裁任期は2021年9月。現在三選中であり、自民党党則では四選は禁止されている。四選を果たすためには、党大会で党則を変える必要があるが、来年3月8日に決まった党大会まで時間は乏しい。早期の解散・総選挙でもない限り、四選は難しいとの見方が強くなっている。 しかし、後継者の本命候補は依然見えない。「日本に詳しいポートフォリオマネージャーほど安倍首相の後に有力な後継者がいないとみている。誰になっても日本株のショートを考えると話す海外勢が多い」と、海外投資家動向に詳しい外資系証券の営業担当者は指摘する。 ●「政治の安定」を失う懸念 アベノミクスへの期待感は後退している。「次の時代を担う産業、企業が育てられなかったのが最大の失敗」(ニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト、矢嶋康次氏)というのが、マーケットの一般的な見方だ。政策継続への期待感が強いわけではない。 市場が警戒するのは、政治の安定が失われることだ。政治が不安定化すれば、政策の予見可能性が低下する。投資家は不透明感を嫌う。アベノミクスの評価が下がりながら、株高を保ってこられたのは、政治が安定していたことが大きい。 安倍政権は第2次から現在の第4次まで12月で7年に及ぶ。世界を見渡しても、先進国で数少ない長期政権だ。日本の首相は毎年変わると言われていたころとは様変わりで、現在の日本株に乗る数少ないプレミアムとなっている。 海外勢の日本株投資は現物と先物を合わせて12年11月のアベノミクス相場スタートから、累計で一時25兆円近く買い越したが、今年8月には売り越しに転じた。足下は買い越しているが、ほぼニュートラルに戻ったとみていいだろう。しかし、政治が不安定化すれば日本株ショートの可能性が強まる。 ●米中の狭間で求められる外交手腕 「ポスト安倍」に求められているのは、ゆがみも目立ってきた国内経済への対応はもちろんだが、外交手腕の重要性がさらに増すとみられている。 BNPパリバ香港・アジア地域機関投資家営業統括責任者の岡澤恭弥氏は「中国が経済圏を広げていくの避けられない。米国との対立は今後も続く。こうした中、地政学的に米中の中間に位置する日本は、米中間をうまく渡っていければ、メリットを受けることができる」と指摘する。 マーケットがみる「ポスト安倍」の筆頭候補は、岸田文雄自民党政調会長と菅義偉官房長官だ。 菅官房長官は、国内向け政治手腕には定評があり、知名度も「令和おじさん」としてアップした。しかし、「外交経験が乏しい」(外資系投信)と市場は懸念する。 その点、外務大臣を務めた岸田政調会長は、外交に一定の経験がある。さらに岸田派の領袖であり、安倍首相との関係からみて「禅譲」の可能性が一番高いとみられている。しかし、こちらは「国内をまとめ切れるか未知数」(シンクタンク系エコノミスト)との不安が市場にはある。 ●「再々登板」のシナリオ そこで、市場でささやかれているのが、安倍首相が一度辞めて、それから復帰するという再々登板のシナリオだ。自民党党則では「1期3年、連続3期まで」となっているので、一度辞めれば、四選禁止を避けられる。 また実際に復帰する必要はない。もしかすると再登板するかもしれないという見方を維持できれば、影響力を保つことが可能だ。安倍首相が「院政」を敷いて、にらみを効かせば、新首相のバックアップになる。アベノミクスが継承されれば、市場との良好な関係も続く。 しかし、長い目で見て日本にとってそれが良いことかは別だ。「安倍政権が若い世代を中心に高い支持率を保ってきたのは、痛みをともなう改革を避けてきたからだ。経済や企業にゆがみも目立ってきた。次期首相にはアベノミクスの後始末が求められる」とピクテ投信投資顧問のシニア・フェロー、市川眞一氏は指摘する。 残された時間はあまりない。何かのきっかけでインフレが進めば、いまの金融・財政政策は立ちいかなくなる。マーケットを味方につけながら、外交で器用に立ち回り、国内の雇用改革や成長戦略を進めることができるか。後継者の担う課題は安倍時代よりもさらに重くなることだけは間違いない。 |
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●安倍政権は、なぜ続くのか 2019/11 | |
安倍総理大臣の在任期間は、11月20日で第1次政権から通算2887日に達し、憲政史上最長となる。支持する人、しない人、様々な立場はあると思うが、なぜ長期政権になったか、世論調査を分析すると見えてくるものがないだろうか。今回、過去のデータを改めてひもといてみた。
●3度のピンチも・・・ 安倍総理大臣の在任期間は2019年11月20日で、憲政史上、最長となる。今回、分析に利用するのはNHKが毎月蓄積してきた世論調査の結果だ。グラフは2012年12月に発足した第2次安倍政権以降の約7年にわたる支持率(2013年1月〜2019年11月)である。(注:現在の電話調査は18歳以上、固定電話と携帯電話を対象に行うRDD方式で行っているが、これまで2度、調査方法を変更している。変更の前後では単純な数字の比較はできないが、過去との大まかな傾向を比較する) 支持率は発足直後に最高66%を記録するが、2015年安保法制の議論のとき、森友・加計問題で急落した2017年、2018年と大きくみて3度の局面で30%台に落ち込み、「不支持」のほうが多くなる事態に陥った。 ただ、支持率が下落するたび盛り返し、2017年7月に記録した最低支持率35%を下回ることはなく、2019年4月以降はおおむね50%近くを維持している。 第1次安倍政権の後、毎年のように変わった自民・民主の歴代政権末期の支持率が20%前後と低かったのと比べると、安定して30%を超える固定支持層が存在していることがみてとれる。 ●似てる?似てない?小泉と安倍 なぜ長い間にわたり政権を維持できたのか。平成時代のもう1つの長期政権、小泉政権の支持率の特徴と比べながら検証を進めたい。 回復のカギは「外交」と「選挙」 発足時の支持率が驚異の80%超、国民的人気を誇った小泉政権も、5年5か月の間には安倍政権同様、浮き沈みを繰り返してきた。 2つの政権には共通点がある。落ちた支持率が上昇に反転するときに、目立った外交の動きや選挙があったことだ。 まず外交でみると、小泉政権では「日朝首脳会談」が行われた後、2002年11月をピークに大きく上昇している。 他方、安倍政権では、2017年2月の58%の山に向かって支持率が上がっている。直近の2016年末から2017年はじめにかけて、日ロ首脳会談、オバマ大統領との真珠湾の慰霊訪問、トランプ大統領との初の日米首脳会談などといった外交イベントが重なり、有権者の期待感が高まったことも考えられる。 もう1つの共通点は衆議院の解散総選挙による回復だ。小泉政権で象徴的なのは2005年の「郵政選挙」である。 支持率は選挙の前後で47%から58%へと急上昇した。 一方、第2次から第4次の安倍政権では約7年で衆参合わせて5回もの国政選挙があり、うち2回が支持率が下がるなか安倍総理大臣が踏み切った2014年と2017年の解散総選挙である。 支持率は、2014年衆院選前後で47%から50%、2017年衆院選前後では37%から46%にアップし、戦略的に解散というカードを切り事態を打開しているのがわかる。 ●幅広い支持の小泉政権、固定支持層の安倍政権 男性と女性で分かれる支持 戦略的に長期政権を維持してきた2人の総理大臣。しかし支持率を詳しくみると、「誰が支持するのか」という点で大きな違いが浮かぶ。いわば幅広く支持を集める小泉政権に対し、特定の固い支持層に支えられる安倍政権だ。 わかりやすいのが男女の差である。小泉政権は男女の線が重なり男女の支持率の差が小さい。 安倍内閣は第2次政権以降一貫して男性が女性を上回る。男女差の平均は8ポイント。男女で好みが分かれる。 年代別でも違いがみられる。小泉政権の年代による支持率の差は一定程度でむしろ政権末期には縮小している。 これに対し、安倍政権では支持率が高い傾向の30代までの若い層と、低い傾向の高年層との差が徐々に広がり、第4次政権では差の平均が10ポイントを超えている。安倍政権では支持する人と支持しない人の特徴が年を追うごとに明確になっている。 自民支持層とそれ以外(支持なし層・野党支持層)で進む「二極化」 有権者の「二極化」がさらに顕著なのが支持政党別の結果だ。 「自民支持層」「野党支持層」、支持する政党を持たない「支持なし層」に分けてみると、小泉政権はこのような状態。 比較すると、安倍政権は、小泉政権に比べ支持なし層の支持率が低い。むしろ野党支持層寄りになり、70%〜90%台で高位安定する自民支持層との隔たりが大きい。 第2次安倍政権以降の支持率の平均で傾向をみると、自民支持層では80%を超えるのに対し、野党支持層と支持なし層はともに20%台と、60ポイント前後もの開きがある。しかも第2次政権と比べ、第3次・第4次政権では差が拡大しているのだ。 第2次安倍政権以降の支持なし層の支持率は40%台でスタートした後、2015年8月の14%で底を打ち2017年2月には39%まで回復する。しかし森友・加計問題で再急落した後、第4次政権ではほぼ20%台に沈んだままだ。 東京大学名誉教授の御厨貴さんは、こう分析する。 「小泉さんは先手を打つんです。これからこういうことにしたいとか、全体の政治の流れをこういうふうに持っていきたいというときに、必ずそれに合うようなワンフレーズの言葉を入れて、みんなが何だろうと思ったところで、またぽんぽんと言っていくから自然とみんなそれについていくわけです」 「安倍さんの場合、既に起こったことや何かについて、必ずそれに立ち戻ってこれはこうだったという説明をするわけです。そして追及されたことに関して最初ははぐらかす。はぐらかしがきかなくなってくるとついに逆襲するわけです。小泉政治というのはちょっとポピュリズム的なところがあって、あまり説明はしなくても『おい、行こうぜ』みたいなところで、みんなついていってしまう。だけど安倍さんの場合そういう風にはならない。絶対安倍さんが嫌だっていう層がいるから。だから安倍政治というのは、ポピュリズムだとは誰も思わない」 ●支持の理由 不支持の理由 「他の内閣よりも良さそうだから」 消極的支持への変質 第4次政権では全体の3割〜4割を占める支持なし層での支持離れは政権にとって大きな痛手であるはず。でもなぜ選挙に勝ち続けられるのか。 「安倍内閣を支持する人の理由」をみると、「他の内閣より良さそうだから」という理由を挙げる人が政権の長期化とともに増え、2017年3月以降は支持する人の40%〜50%に及んでいる。 安倍内閣を支え続ける底堅い支持の動機は、政策への期待でも実行力への期待でもなく、「他の内閣より良さそうだから」といういわば消去法の「消極的な支持」に変質している様子がうかがえた。 一方、「安倍内閣を支持しない人の理由」は、森友・加計問題などで支持率が落ち込む第3次政権末期から第4次にかけて「人柄が信頼できないから」が大きく伸び、「政策に期待が持てないから」をほとんどの月で上回っている。「政策」ではなく「人柄」が不支持のキーワードだ。 個別政策の評価などをみると、安倍政権では固定支持層と支持なし層それぞれを引きつける理由があることがみえてきた。 最も評価された「外交・安全保障」 直近の11月の調査で、これまでの安倍内閣の実績として最も評価していることを6つの政策課題の中から選んでもらった結果、最も多かったのは「外交・安全保障」の23%で、特に自民支持層では33%と3人に1人があげた。 背景の1つに安全保障環境の変化があげられる。北朝鮮が相次いで弾道ミサイル発射した後の2017年7月と9月の調査では8割超が不安を示し、政府が北朝鮮に対する厳しい措置や圧力強化を打ち出すと、「評価する」という人は半数を超え、自民支持層はさらに高い割合だった。 外交の他の項目をみると、たとえば日韓関係が悪化するなかでの「韓国を輸出管理優遇対象国から外す決定」について尋ねた2019年8月調査では「支持する」が55%、自民支持層では66%だった。こうした外交政策では全体でも一定の評価を得つつ固定支持層でさらに高い支持をつかんでいる。 看板の「アベノミクス」 安倍内閣で評価する実績を尋ねた質問で「経済政策」をあげた人の割合は4番目だったが、第2次政権以降、大胆な金融緩和と財政出動、成長戦略を打ち出した「アベノミクス」が自民支持層の結束を固めていると分析する識者もいる。 確かにアベノミクスについて、2016年7月の調査で「期待する」と答えた人は46%だったが、自民支持層では76%と高かった。この差はなんなのか。 一橋大学教授の中北浩爾さんは、「アベノミクス」こそが経済を大きくして成長をめざす自民党の伝統的手法への回帰であり、安倍政権は第1次から第2次政権で、小泉政権時代から受け継いだ「改革」から「成長」にシフトチェンジしていると指摘する。 そのうえで「『成長』というのは自民党の支持基盤にとっては受け入れやすい。特に国土強靭化とか公共事業とかいったことは小泉改革とか2000年代の民主党政権時代ではずっと否定されてきたわけですけど、成長はそういったことも含むわけです。『改革』という言葉は無党派層に届きやすい一方、敵を作る可能性もある。安倍総理は自民党のありかたというものを傷つけない範囲で改革を行い、自民支持層を固めているのが小泉政権との大きな違い」と話す。 安倍政権では消費税率の引き上げを2014年4月に8%へ、2019年10月に10%へと2度行っている。消費税率10%への引き上げの実施前、「どちらともいえない」を含む三択で賛否を聞いた結果、「反対」が半数を超えることはなかった。 過去の政権が苦労した消費税引き上げという課題についても乗り越えているのは、第2次安倍政権以降、日経平均株価が上昇したり、大学生の就職内定率が高い水準で続いていたりするといった状況のなかで、全体としても経済の安定について一定の評価があることが考えられる。 自民党の原点 憲法改正 固定支持層の支持固めとしては安倍総理大臣が意欲を示し続ける憲法改正もあげられるだろう。2019年7月の参院選前の調査では今の憲法を改正することについて「必要がある」、「必要はない」、「どちらともいえない」の3択で尋ねた結果、ともに3割程度で意見が割れた。 しかし自民支持層では「必要がある」が43%と全体に比べ10ポイント以上高い。世論調査の推移をみる限り、憲法改正について、国民全体の改憲機運の盛り上がりはみられない。しかし、それでも自民党結党以来の重要政策を掲げ続けることが、自民党支持基盤を固めているとみられる。 民主党政権の記憶 政権交代前夜で、民主党の存在感が増していた小泉政権時に比べ、安倍政権下では、野党への期待感の低さも特徴的である。 安倍政権下の2019年7月の参院選前の調査で「野党の議席が増えたほうがよい」と答えたのは約3割だった。野党支持層では7割近くに上ったが支持なし層では3割台にとどまった。支持なし層の安倍政権の支持率は低いものの、野党への期待も低いという状態だ。 7月の参院選の選挙戦で安倍総理大臣は「悪夢のような民主党政権」といった刺激的な言葉や「あの暗く低迷した時代」といった言葉を多用し、政権を担えるのは自民党しかないということを強調してきた。 支持なし層の政権に対する支持率が低くても、「民主党時代よりはまし」という暗黙の前提を有権者に醸成し、それが「他の内閣より良さそうだから」という消極的支持を引き出しているのだろう。 御厨さんはこう話す。 「『あの民主党政権』と言われたときに、ああ、あれよりは安倍さんいいよねという気持ちを起こされる。だから、あのときの政権交代というのは本当に安倍さんには有利に働いて、単にそこで政権交代しただけでなく後の選挙に全部効いてくる。だからある時期からもう安倍さんは不戦勝みたいなもので、戦わずして勝っているようなところがある」 中北さんは次のように指摘する。 「『改革』を打ち出すことで熱狂的な支持を獲得してきた小泉総理に対し、安倍総理は、国民の熱狂的支持があるわけではないが、やっぱり消極的支持がある。民主党よりはましだ、経済もいいでしょ、政治も安定しているでしょということが下支えになっている」 「単に政権の力だけでできたわけではなくて、民主党という対抗する最大勢力が失敗したっていう後にこそ出現したという感じでしょうか。それは安倍総理自身、相当意識してやられているし、また、民主党の失敗ということで国民も安倍政権がいいと。政権を戻しちゃいけないということで自民党も結束していくと。そういう中で安倍長期政権が成立したのではないかと」 ●選挙でも二極化 投票意欲が下がる支持なし層 有権者の二極化の進行、支持なし層の野党への失望が最終的にもたらしているのが投票意欲の低下であろう。 安倍政権下で毎年のように行われた国政選挙では、衆院選、参院選ともに投票率の落ち込みが目立ち、2019年7月の参院選の投票率は48.80%と半数を下回った。国政選挙前の調査でも、特に支持なし層で投票意欲や選挙への関心の顕著な低下が確認できる。 「必ず選挙に行く」という人は、支持する政党を持つ人で多い。投票に行く人と行かない人の二極化が進むなか、安倍政権は自らの支持層を固めて選挙に勝ち続け、政権を維持してきたのである。 ●死角は「風」? では、安倍政権に死角はないのだろうか。ポイントの1つは他の選択肢が生まれるかどうかだ。2019年7月の参院選では、選挙直前に発足した「れいわ新選組」は比例代表で得票率4.6%、2議席を獲得し、れいわ旋風とも称された。 2017年の衆院選前、自民党に変わる政権政党を目指す「改革保守」の旗を掲げて発足した「希望の党」の例もある。 小池百合子東京都知事のもとで発足した直後にもかかわらず、衆院選前の調査の支持政党の質問では5%前後の支持を集めた。 希望の党はその後解党し、れいわ新選組の支持の広がりも現時点ではみられない。しかし、自民党に代わる選択肢が出て「風」が吹けば、長く続いた安定に変化が起きる可能性もありうる。 有権者の信頼を損ない、身内の支持まで失ったり、支持なし層のさらなる支持離れが起きたりしても状況は変化するだろう。 2019年10月に改造直後の安倍内閣で2人の大臣が相次いで辞任したのもつかの間、11月に入ると総理大臣主催の「桜を見る会」のありかたが大きな問題となっている。 いずれも政権は即座に大臣を更迭したり、桜を見る会の中止を決定したりして、問題の収拾を図ろうとしているが、長期政権の緩みとの批判は根強い。 こうしたさまざな要素が絡み合い、選挙で変化をもたらす重要な要素となるのが投票率の向上だ。ずっと選挙で勝ち続けてきた安倍政権。しかし、支持なし層の支持は低く選挙での投票率は低い。有権者の4割から5割は投票さえしていない選挙が続いている。 「選挙での選択」について有権者の関心が上向き、残りの有権者が選挙に行くような事態になったら・・・盤石にもみえる政治状況に変化が起きるかもしれない。 |
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●安倍政権2019年 有権者がみくびられている 2019/12 | |
ことしも荒涼たる政治の光景が続いた。歴代最長になった安倍政権の三つの問題点が、はっきりと見えている。
第一に「責任の放棄」、第二は「国会軽視」、第三が「官僚の変質」だ。 いずれも民主主義の基盤を掘り崩している。この一年のできごとをたどれば、事態の深刻さが増しているのがわかる。 ●不都合に背を向ける 「事実関係を確認して説明責任を果たしたい」 秘書が有権者に香典を渡した菅原一秀前経産相は10月、こう言って辞任した。翌週、妻の参院選での公職選挙法違反疑惑で引責した河井克行前法相も同じような発言をした。 だが、2人は何も語らないまま年を越そうとしている。 安倍首相は、ただ「任命責任は私にある」と言っただけだ。 この政権で説明責任が果たされないのは、毎度おなじみである。不都合なことに、ことごとく背を向ける姿勢が、森友学園や加計学園問題でも疑問が残っている事実を思い出させる。 説明から逃げ回るのは、政策論議においても同じだ。 6月、麻生財務・金融相は金融庁審議会の部会報告書の受け取りを拒んだ。「老後に2千万円必要」という内容が参院選に不利だとみて幕引きを急いだ。国民の不安や疑問には何ら答えていない。 首相も変わらない。北方領土問題で2島返還に方針転換をしておきながら「交渉方針について述べることは差し控える」。 沖縄の普天間飛行場の移設問題は「辺野古が唯一の解決策」と繰り返すだけ。2月の県民投票で反対が7割を超えた事実には目もくれない。 政権内では政治責任も軽んじられている。 茂木敏充前経済再生相は、選挙区で秘書が線香を配って批判されたが、外相に起用された。大臣室で現金を受け取って経済再生相を追われた甘利明氏も、自民党税制調査会長に就いた。 未曽有の公文書改ざんでも、麻生氏が続投したのだから、もう怖いものなしということか。 ●国会軽視、極まる 一方で、政権は世論の動向を気にかける。内閣支持率の底堅さが「安倍1強」の力の源泉になっているからだ。 「桜を見る会」の中止を即決したのも世論を見ての判断だ。でも、そこで終わり。数々の疑問には答えない。つまり、いったんやめれば批判は収まる。そのうちに忘れられる。そんな見立てなのだろう。 ずいぶんと、有権者もみくびられたものだ。 政権はこれまで何度も、その場しのぎのほおかむりで事態の沈静化を図り、内閣支持率の続落をしのいできた。 政権が批判される舞台は徹底的に回避する。それで「国会軽視」がどんどん進んでいる。 野党は4月に参院予算委の開催を求めて委員3分の1以上で要求書を提出した。国会規則に従えば「委員長は委員会を開かなければならない」。しかし、予算委は10月の臨時国会まで開かれなかった。 野党の参考人招致要求も、ほとんど無視され続けた。 国会軽視の極め付きが、自衛隊の中東派遣だ。国会を素通りし、年末に閣議決定だけで決めてしまった。 政権の長期化に伴い、官僚も変質した。政治主導の名のもとで、とりわけ官邸の意向に付き従う姿が目につく。 文化庁は9月、慰安婦を表現した少女像などが話題になった「あいちトリエンナーレ」への補助金の不交付を決めた。専門家の審査で採択されたものを、官僚の判断で止めた。菅官房長官らが事実関係を確認すると言い出したあとだ。 ●公僕の矜持はどこへ 桜を見る会での内閣府の対応も目に余る。招待者名簿などの再調査を拒む官房長官に必死で歩調を合わせている。 首相の推薦枠でマルチまがい商法の元会長が招待された可能性を問う野党議員に対し、担当者は「調査の必要はない」。電子データの廃棄についても、実務上は履歴の確認はできるというのに、調査はしないという。 官僚の応答からは、公文書が「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」だという認識がうかがえない。公文書を破棄、隠蔽(いんぺい)、改ざんまでした土壌が、ますます広がっていると懸念せざるをえない。 この政権で発足した内閣人事局が幹部人事を差配し始めてから、官僚の「忖度(そんたく)」が目立つようになった。 裏を返せば、政治による官僚統制が進んだといえる。もはや官僚が社会に貢献するという公僕としての矜持(きょうじ)を失い、政権に貢献する従者になっているかのようだ。 この政権は、民主主義をどこまで壊してゆくのだろう。 答えは第2次安倍政権のこの7年間で明らかだ。 有権者が政治の現状を漫然と放置し続けるのであれば、どこまでも壊されてゆく。 |
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●「毎月勤労統計調査」から「桜を見る会」まで〜安倍政権の危険な状況 2019/12 | |
●ジャーナリスト・鈴木哲夫が見た2019年の安倍政権
12月26日に7年を迎えた安倍政権。2019年は毎月勤労統計の不適切調査に始まり、「桜を見る会」の問題、閣僚の問題、議員の逮捕とさまざまなことがあった。2019年の政治はどうだったのか、鈴木哲夫が2019年の政界を振り返る。 飯田)毎月勤労統計調査、そんなこともありました。 鈴木)参議院選挙前でしたね。そして、2018年になりますが、障害者雇用の水増し問題。霞が関の役所が、障害のある人を採用している数字を出していて、それが嘘だった。そして勤労統計に桜を見る会。安倍政権の問題点を敢えて言えば、三権分立を壊していると思うのです。三権分立は民主国家として基本中の基本です。立法(国会)、行政(政府)、司法。これがお互いに独立して、厳しくチェックし合うことでバランスを取る。これが国の基本です。いま挙げた問題は、全部行政がしでかしたことです。それをチェックするのは、三権分立で言えば、司法と国会です。国会がもっとチェックしなければいけないのに、桜を見る会では国会を閉じてしまいました。この3つのケースはどれもそうですが、行政のなかだけで第三者委員会のようなものをつくって反省し、処分して、行政のなかだけで再発防止を考えて、ハイ終わりと。例えば、何か罪を犯した人が自分で自分の刑を決めて、反省を自分で行い、自分で再発防止策を決めて「これで終わりです」としたら、それで済むと思いますか? 三権分立でチェックすべき国会がきちんと機能しているのか、それを疑問に感じました。 ●安倍一強が続くことによって三権分立が崩れて来ている〜矜持がなくなった自民党 鈴木)桜を見る会も、最後までやらずに国会を閉じてしまった。なぜこういうことが起きるのかと言うと、安倍政権が一強で非常に強いから、どうしてもみんながそっちを向いてしまう。野党は一生懸命に追及していますが、ポイントは国会の第一党である与党の自民党の矜持、プライド、責任なのです。議院内閣制によって、国会の第一党の自民党から、行政トップである総理大臣が出るので、守られるのは当然です。しかし、ここまで行政に酷いことがあれば総理に説明を求め、官僚を呼びつけて「なぜ、このような不正をしたのか?」と追及し、三権分立の矜持を見せなければいけません。これができていない。今回も自民党が国会を閉じてしまいました。安倍一強が続くことによって、三権分立が崩れて来ていることは問題だと思うし、いちばん考えなければいけないことです。それがわかりやすいのが「桜を見る会」でした。 ●異を唱える自民党議員がいない〜国民からも不信感 飯田)臨時国会ではアメリカとの貿易協定が目玉で、これが通った瞬間に閉じてしまいました。野党は野党で、抵抗するとなったら全部止めると。与党は与党で、取り敢えず通したいものは全部通す。これは委員会を立ち上げるなどして、同時並行はできないのでしょうか? 鈴木)何か大きな事件や特別なテーマがあるときは、特別委員会をつくるので、そういう方法もあると思います。そんなこともせず、自民党はやたらと閉じる方向へ走るでしょう。昔の自民党は総理を糾弾する人がいて、それが結果的に自民党政権のバランスにもなっていました。だけど、いまはみんながそっちを向いてしまっています。政治の安定はプラスではあるけれど、緊張感がないと権力は国民の方を向かなくなります。緊張感があるからこそ、選挙を意識して国民の言うことを聞くでしょう。野党が早くまとまることによって緊張感をもたらすし、自民党や安倍さんは、基本的なことが壊れて来ていることを自覚して欲しいと思います。 飯田)かつては反対する人も大義名分として、立法は立法府のプライドや矜持で、「言うべきことは言う」という派閥のトップがいましたよね。 鈴木)それでも最後は自民党で1つになるのです。言うべき人もいるのが自民党のよさでした。12月の時事通信の世論調査で、自民党の政党支持率が大きく落ちています。世論はそういうところを見始めたのではないでしょうか。それが数字に表れている気がします。 |
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●安倍首相主催の「桜を見る会」と堕ちた官僚たち 2020/1 | |
●安倍政権から招待客数が膨れ上がった
「観光バスを連ねて馳せ参じた大勢の地元後援者」や「ホテルニューオータニ前夜祭の有権者買収疑惑」。「招待者名簿という公文書の廃棄」から「年々肥大化する行事支出」。さらには「首相夫人とデリバリー業者との蜜月」や「紛れ込んだ反社会勢力との交友」……。 内閣総理大臣主催の桜を見る会にまつわる醜聞が、年を越してなおとどまるところを知らない。森友加計問題をはじめ、防衛省や厚労省の隠蔽・改ざん問題でさらけ出してきた安倍晋三政権の見苦しさが、極まった感すらある。 たかが花見と侮るなかれ。シンプルなだけに問題がよりいっそう伝わりやすい。野党は攻める手を広げ過ぎて問題の焦点が定まらない、というまさにピントの外れたマスコミの指摘もあるが、むしろここまで緩んだ長期政権の成れの果てに見える。 「公職選挙法や政治資金規正法違反の疑いがあるという前に、17台もバスを仕立てて税金で政治活動をする。普通の感覚で見て、汚職です。総理大臣という職を汚している」 政府のある高級官僚に感想を求めると、そう切って捨てた。大きな焦点の1つが膨れ上がった招待者の数である。 所管官庁である内閣官房と内閣府が作成した2019年1月25日付の〈「桜を見る会」開催要領〉によれば、4月13日開催の〈招待範囲〉は、皇族や元皇族、各国大使、国務大臣、各省庁の事務次官および局長等の一部、都道府県知事および議会の議長等の一部、その他各界の代表者等となっている。人数は〈計約1万人〉だ。しかし集まったのは1万8000人を超える。桜を見る会に関係する別のある官僚は、こう指摘した。 「1万8000人のうち1万人はほぼ毎年人数が決まっています。各省庁から定年を前にした部長級以上の幹部職員を数人ずつ選び、皇族枠や大使枠も同じように、招待人数に変化がありません。したがって問題はそれ以外の8000人。そこが総理推薦など従来にない別枠です」 与党は例によって民主党時代の首相も後援者を招待してきた、と議論をすり替えようとするが、ここまで無節操に招待客が膨らんだのは、安倍政権になってからだ。新宿御苑の一角に2万人近い人数が集まると、混雑ぶりは尋常ではない。実際に2019年の桜を見る会に参加した招待客の1人に聞いてみた。 「8時半からの開門だったので、9時ぐらいに到着すると、もうすごい行列でした。そこにいる人は内閣総理大臣から招待状が届いているので、みな浮かれているような感じ。案内状には『手荷物検査がありますので、所持品はなるべく少なめにしてください。場合によってはボディチェックもあります』と書かれている。だから入場の管理はさぞかし厳重だと想像していたら、拍子抜けしました。内閣府の職員が10人くらい受付に並んでいて、招待状を渡すと、ビニール袋に入った枡をくれるだけ。それで酒を飲むわけですが、ボディチェックはおろか、持ち物検査もない。もの凄い数の人がいましたけど、時間がかからず簡単に会場に入れました」 ●園遊会と並ぶ「桜を見る会」 まさに1強の権勢を見せつけるかのように、地元山口県の後援者たちが新宿御苑に大型バスで乗り付ける。過去40数年、せいぜい1万人だった参加者が、第2次安倍政権の発足した明くる2013年には1万2000人、翌14年には1万4000人、16年1万6000人、そして前回19年が1万8000人、と文字どおり右肩上がりに増え続けてきた。 封筒の裏面に「内閣総理大臣安倍晋三」と書かれた案内状が、「あべ事務所」から地元の支援者に送られていたケースも少なくない。その封筒を受け取った後援者が申込書を別の後援者にファックスし、それをコピーして申し込んだ者までいたという。こうなると、参加者が増えるのはあたり前である。 野党の議員たちは、そこに首相本人の招待した客が相当いるはずだ、と追及してきた。すると、首相もいつものようにはぐらかす。騒ぎになった当初の11月8日の参議院予算委員会で、こう答弁した。 「招待者については、内閣官房および内閣府において最終的に取りまとめをしているものと承知をしております。私は関与していないわけであります」 表向き桜を見る会では、内閣官房と内閣府が招待客の選定をおこない、一括して招待状を発送することになっている。それは、公の行事をおこなう政府として招待客の氏素性を把握し、不審者が紛れ込んでいないか、管理する必要があるからにほかならない。 桜を見る会は、公式行事と呼ばず公的行事と称される。その違いは、法律で細かい形式を定めていないからだろうが、税金を使っておこなうのは同じだ。明治時代、天皇が主催した皇室外交のための観桜会を前身としている。紛れもなく伝統ある公の行事である。それが戦後、皇室行事である赤坂御苑の園遊会と総理大臣主催の新宿御苑の桜を見る会に分かれ、別々におこなわれるようになった。 ●内閣府の関与は小さい ことが発覚すると、安倍政権と入魂(じつこん)の元大阪府知事の橋下徹は露払いのように「園遊会があるのだから、桜を見る会は廃止すべきだ」と威勢よく語り、首相もすぐさま2020年の中止を決めた。だが、明治時代に始まった皇室行事とは別に、行政府の長として各界の功労者を慰労し、懇親を深める意義はある。行事の廃止論があってもいいが、問題はそれがあまりに杜撰に運営されていることにある。 さすがにここまで招待客が膨れ上がると、首相周辺も誤魔化しきれない。あげく当人のみならず昭恵夫人の推薦まで明るみに出て、前言を翻して関与を認めざるを得なくなっていった。 日本共産党議員の田村智子の示した内閣府の資料によれば、オーナー商法で行政処分されたジャパンライフ社長が招待された年の前年の首相招待枠は、3400人だそうだ(14年)。19年の招待枠についても、内閣府は首相推薦が1000人、副総理・官房長官・官房副長官等で1000人と半ば認めた。 それでいてなお、安倍政権になって増えた8000人の詳細については、データがないので不明だと言い張る。そもそも桜を見る会を所管してきた内閣府は、なぜここまで放置してきたのだろうか。 改めて念を押すまでもないが、内閣総理大臣は文字どおり各省庁の国務大臣が集まる内閣のトップに位置付けられ、首相の直轄領として内閣官房という組織がある。内閣官房長官が政権内でナンバー2と呼ばれるのはそのためであり、内閣官房に官房副長官や危機管理監、国家安全保障局長、首相補佐官といった重鎮を配している。 度重なる省庁再編により、ややわかりづらくなっているが、内閣府は旧総理府から改組された。総理大臣は内閣府のトップでもあり、内閣府は内閣官房の事務的な機能を担う。そうして桜を見る会の事務局が内閣府に置かれ、招待客を一括管理している建前になっている。 首相はそれを逆手にとり、あたかも招待者は内閣府が選定するので自らはいっさいかかわっていないかのように答弁した。だが、その内閣府が認めているだけでも首相の選定枠は1000人に上る。むしろ内閣府の事務方はそこにタッチしていない。 各省庁の参加者については、それぞれ大臣官房の人事課や総務課が人選し、内閣府はリストを受け取り、一括管理して名簿を作成するだけだ。与党議員の推薦枠についても同様で、まして首相や官房長官などの推薦招待の選定については、アンタッチャブルである。 つまるところ、内閣府は各省庁や与党、首相から推薦者のリストを受け取り、行政文書として名簿などをとりまとめるだけの役割でしかない。招待客の氏素性を調べ、会の運営費用を精査することもしないからこそ、招待客の中にいかがわしいオーナー商法の経営者が紛れ込んでも気づかないのである。 ●首相秘書官が接待の愚 内閣府は会の予算についても、官邸にいわれるがままに計上している感覚なのだという。税金を使った首相主催の行事なのに、なぜ行政のチェックが入らないのかといえば、まさか総理大臣が花見の会をここまで大っぴらに政治利用すると想定していなかったからだそうだ。もっとも、桜を見る会に関係する先の官僚はこうも指摘した。 「1万8000人の招待者のうち、公務員や駐日大使館関係者など、いつもの1万人はそれぞれの官庁が把握しています。データも残っているので復元できます。しかし、残り8000人については内閣府にしかデータがありません。だから内閣府が消去していると言い張れば、誰が誰を招いたか、永遠にわからなくなる」 桜を見る会では、首相が通る花道に囲いがあり、そこにVIP客が群がる。選挙区の後援者をサポートし、会の運営に目を光らせるのは、内閣府の職員ではなく、秘書官や補佐官たちだ。総理の分身と呼ばれる政務秘書官の今井尚哉はむろん、事務秘書官の佐伯耕三が甲斐甲斐しくVIP客の接待をしてきた。19年の会でも、けっしてスリムとはいえないその身体で、招待客の間を飛びまわる佐伯の姿が際立っていた。 経産省出身の佐伯は、先輩官僚である今井に引き立てられた。戦後70年談話や対ロ外交などにおける首相のスピーチライターとして名を揚げたとされる。17年7月、42歳という史上最年少の事務担当秘書官として抜擢され、モリカケ国会では、野党に野次を飛ばす首相秘書官、と顰蹙を買う。 半面、まさにそうした軽いノリで首相と意気投合したのかもしれない。先頃、筆頭秘書官兼補佐官に昇格した今井を飛び越え、いまや総理に直言できる秘書官として、政府内で恐れられている。先の政府の高級官僚は彼らを酷評する。 「今度の桜の会にしても、彼ら“官邸官僚”の責任が大きいと思います。少なくとも秘書官たちは、地元下関の支援者を大勢呼んでいることを承知の上で世話をしているわけです。さすがに彼らがバスを仕立てて地元から呼び寄せるよう計画したとは思いませんが、本来、総理や事務所がここまで暴走したら止めなければならない。しかし、彼らの頭にはそんな問題意識がまったくありません」 本来、軌道修正しなければならない官僚が首相と同化し、暴走している。それが安倍政権の特徴でもある。・・・ |
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●安倍政権の問題点 | |
●1.立憲民主主義を壊す安保法制
政府の恣意的な憲法解釈の変更により、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を強行し、立憲主義の大原則や法的安定性を著しく損ねました。また民主的なプロセスとしても多くの問題を残したまま、憲法違反の安保法制の整備を強行しました。 ●2.ナチスの手口に学ぶ!? 安倍政権は、さらに憲法の明文改正をめざすとしています。しかし、憲法のどの条文を改正するかはこれから議論すればいい、などと本末転倒な態度を取っています。具体的には緊急事態条項を加える意向を示していますが、その内容はナチスの全権委任法のように立憲主義を不可逆的に破壊しかねないものです。 ●3.アベノミクスで「消えた」年金や賃金 アベノミクスは失敗に終わりました。取って付けたように「同一労働同一賃金」を言い出したりしていますが、これまで格差・貧困の拡大を放置し、雇用の不安定化を加速してきたこととのつじつまが全く合いません。安倍政権で、実質賃金は下がりつづけ、株式市場に注ぎ込まれた年金は消えてなくなりました。 ●4.個人の自由や尊厳を脅かす強権政治 安倍政権はさらに、公約違反のTPP推進や原発の再稼動、沖縄の辺野古新基地建設などを強行しています。また教育現場やマスコミに対する統制を強め、自由な言論の前提を破壊するために、政府への反対を「偏向」と決めつけ、萎縮させようとしています。 ●5.今さえ良ければいい、ではダメ! 安倍政権にブレーキを掛けない限り、あたかも東京オリンピックの開催される2020年で日本は燃え尽きてなくなってしまうかのような近視眼的な政治に陥り、このままでは若者、子や孫の世代まで継承できるような政治、経済、社会を維持、発展させることはできません。 |
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●周辺発言 | |
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●「日米同盟、さらに強化」茂木外相の外交演説要旨 1/21 | |
●総論 / 安全保障面も経済面も新たなルール作りを先導し、国際秩序をより安定したものへと再構築する。安倍晋三首相の「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」をさらに前に進めるため「包容力と力強さを兼ね備えた外交」を展開する。
●米国 / わが国の外交、安全保障の基軸であり、地域の平和と安定に貢献する大きな役割を担う日米同盟をさらに強化する。同盟はかつてないほど盤石だ。本年は日米安全保障条約の署名から60周年に当たる節目の年だ。在日米軍の安定的な駐留のためには地元の理解が不可欠であり、地元の負担軽減に全力を尽くす。 ●北朝鮮 / 弾道ミサイル発射といった挑発行為は全く受け入れられない。日米、日米韓の結束の下、北朝鮮の完全非核化を目指す。 ●中国 / 今春予定される習近平国家主席の国賓来日を見据え、懸案を適切に処理しながら、あらゆる分野で交流、協力を発展させる。東シナ海での一方的な現状変更の試みは断じて認められない。冷静かつ毅然(きぜん)と対応する。南シナ海をめぐる問題についても、国際法に基づく紛争の平和的解決の重要性を強調していく。日本産食品の輸入規制や邦人拘束についても中国側に前向きな対応を強く求める。 ●韓国 / 日韓間の最大課題である旧朝鮮半島出身労働者(いわゆる徴用工)問題については、韓国側の責任で解決策を示すよう引き続き強く要請するとともに、問題解決に向けた外交当局間の協議を継続する。 ●ロシア / 懸案の北方領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、交渉責任者として粘り強く交渉に取り組む。 ●中東 / 世界の主要なエネルギー供給源である中東地域の海域で、航行の安全を確保することは重要だ。情報収集態勢強化のために自衛隊の艦艇、航空機を活用する。外交努力を継続し、中東地域の平和と安定に向け取り組む。 ●経済外交 / 新たな共通ルール作りを日本が主導する経済外交に邁進(まいしん)。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の本年中の署名や、欧州連合(EU)を離脱する英国との速やかな通商交渉開始を目指す。 ●核軍縮 / 核拡散防止条約(NPT)再検討会議で有意義な成果を上げられるよう、国際的な議論に積極的に貢献していく。 ●五輪 / 東京五輪・パラリンピックに、多くの海外要人や外国人観光客の訪日が見込まれる。日本の豊かな文化や食、美しい自然、先進的技術、そして日本人のホスピタリティーといったさまざまな魅力を世界に発信していく絶好の機会だ。 |
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●日銀が金融政策の維持決定、19〜21年度経済成長見通しを上方修正 1/21 | |
日本銀行は21日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的緩和の枠組みによる政策運営方針の維持を賛成多数で決めた。同時に公表した新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、政府が決定した財政支出13兆円規模の大型の経済対策を踏まえ、2019〜21年度の実質経済成長率見通しを全て上方修正した。物価見通しは全ての年度で小幅引き下げた。
金融政策運営は、現行のマイナス0.1%の短期政策金利と「ゼロ%程度」の長期金利目標を維持するとともに、指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J−REIT)の買い入れ方針も据え置いた。政策金利に関するフォワードガイダンス(指針)も維持した。ブルームバーグがエコノミスト42人を対象に事前に実施した調査では、全員が金融政策の現状維持を予想していた。 新たな展望リポートでは、実質国内総生産(GDP)の対前年度比見通しを、19年度0.8%増(昨年10月は0.6%増)、20年度0.9%増(同0.7%増)、21年度1.1%増(同1.0%増)に上方修正。「政府の経済対策の効果を背景に、2020年度を中心に上振れている」と説明した。 一方、消費者物価(除く生鮮食品)の見通しは、19年度0.6%上昇(同0.7%上昇)、20年度1.0%上昇(同1.1%上昇)、21年度1.4%上昇(同1.5%上昇)と、前回から引き下げた。 先行きのリスクバランスについては、経済見通しは「海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい」とし、物価見通しは「経済の下振れリスクに加えて、中長期的な予想物価上昇率の動向の不確実性などから、下振れリスクの方が大きい」と指摘。海外経済の下振れリスクは「ひところよりも幾分低下した」としながらも、「依然として大きいとみられる」としている。 2%の物価安定目標に向けたモメンタム(勢い)は「維持されているが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要がある」との認識を維持。昨年10月の消費税率引き上げの影響に関しては「引き上げ前後の需要変動は、前回増税時と比べて抑制的だった」と分析している。 |
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●日本に実在する「上級国民」という階層… 2019/9 | |
「上級国民」という言葉が一躍注目されている。4月に東京・池袋で死者2人、負傷者8人を出した自動車暴走事故で、車を運転していた旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(88)が現行犯逮捕されず、報道で「容疑者」ではなく「さん」「元院長」などの呼称が使われたのは、元官僚という「上級国民」だからだ、という憶測が広がった。
逮捕されないことや報道上の呼称については、それぞれしかるべき理由があるとして、憶測は否定されているようだ。けれどもこの出来事をきっかけに、一般国民にはない特権を持つ人々(上級国民)の存在がクローズアップされたのは、社会の仕組みを正しく知るために有意義だったといえる。 ネット上の議論を見ていると、上級国民とは根拠のない陰謀論の産物で、現実には存在しないと主張する向きもある。これは明らかに言い過ぎだ。上級国民という呼び名はともかく、国民が一部の特権階級とそれ以外の一般人に分かれることは、あとで詳しく述べるように、古くから学問的にも指摘されてきた事実だからだ。 その意味で、上級国民は本当に存在する。議論を深めるうえで重要なのは、何を基準に上級国民と一般国民を区別するかである。言い換えれば、上級国民の正しい定義とは何かである。 現在、その定義はあいまいだ。ネットの「ニコニコ大百科」では、2015年の東京五輪エンブレム騒動を発端に、権威を振りかざす専門家を皮肉る意味合いで上級国民という言葉が広まった経緯を紹介し、最近では「政治家や役人、資産家などを批判的な意味合いにて指し示すようにも用いられる」と解説するものの、はっきりした定義は述べていない。 ベストセラー作家の橘玲氏が最近出版した『上級国民/下級国民』(小学館新書)は、そのものずばりのタイトルだが、期待外れなことに、上級国民の明確な定義はやはりない。「じゅうぶんな富のある一部の男性」を上級国民と呼ぶ箇所はあるが、あまりに漠然としている。これなら上級国民などという新奇な言葉を使わず、単に「富裕層」と呼べば済むことだ。 学問の世界では、経済において共通の地位を占める人々の集団を「階級」と呼び、階級に関する研究を階級論という。階級論で一番知られているのは、ドイツの共産主義思想家、カール・マルクスによるものだ。資本主義社会は、機械や土地などの生産手段を所有する支配階級である「ブルジョワジー」と、所有しない被支配階級である「プロレタリアート」に分かれ、両者の間には不断の争い(階級闘争)が繰り広げられると説いた。盟友フリードリヒ・エンゲルスとの共著『共産党宣言』で述べた、「これまでのすべての社会の歴史は階級闘争の歴史である」という言葉は有名だ。 ところが、マルクスの階級論には問題があった。規模は小さくても自前の工場や店舗を持つ中小の自営業者はブルジョワジーとして支配階級に属することになるし、一方で、国家権力の一端を担うがサラリーマンにすぎない官僚は被支配階級のプロレタリアートになってしまう。 マルクス自身、この問題に気づいていた。死後の1894年に出版された主著『資本論』最終巻の「諸階級」と題した最終章で「しかしながら、(自分の)この立場からすれば、たとえば医者と役人も二つの階級を形成するであろう」などと述べ、自説への不満をにじませている。けれども『資本論』の原稿はここで中断し、続きが書かれることはなかった。 実は、もっと論理的に整合性のある階級論がマルクス以前に存在した。マルクスの階級論が有名なため、階級論そのものがマルクスによって考案されたと誤解されがちだが、それは違う。むしろマルクスは以前の階級論を参考に、自説を組み立てたのである。 その階級論が生まれたのは、1810年代のフランス。ナポレオンの失脚後、ブルボン朝が一時復権した復古王政の時代だ。自由主義派と呼ばれる知識人によって理論が構築された。中心となったのは法律家シャルル・コント、経済学者シャルル・ディノワイエ、歴史家オーギュスタン・ティエリの3人である。 自由主義派の階級論によれば、社会で人間が自分の欲求を満たす方法は2つある。自分で働いて富を生産するか、他人が生産した富を奪うかである。あらゆる社会において、人は生産によって生きる者と、略奪によって生きる者とに区別される。この2つの集団の利害は対立する。マルクスの言葉をもじって言えば、「これまでのすべての社会の歴史は、略奪階級と生産階級の闘争の歴史である」ということになる。 自由主義派によれば、古代ギリシャやローマでは、戦争を通じた兵士の略奪行為が好まれた。中世には武人出身の貴族が台頭し、農民を搾取した。近代になると、露骨な略奪が難しくなったため、別の巧妙な方法が使われるようになる。税金という名の貢ぎ物である。 つまり近代国家の国民は、税金によって生きる支配階級と、税金を取られる被支配階級の2つの集団に分かれる。前者は最近の言葉で言い換えれば、上級国民ということになる。暴走事故を起こした飯塚元院長は税金を収入源としてきた元官僚だから、上級国民と呼ぶのは間違っていない。 自由主義派の階級論は、マルクスと違い、きわめて明瞭で現実に即した階級の区別といえる。日本共産党はマルクスを信奉する社会主義政党だから、中小の自営業者は従業員を搾取するブルジョワジーとして攻撃しなければならないはずなのに、実際の政策では「日本経済の根幹」と持ち上げ、支援策を打ち出したりしている。マルクスの誤った階級論がもたらしたひずみだ。 政治家は、保守か革新かを問わず、自由主義派の階級論を正しいと認めることは難しいだろう。官僚と並び、税金で生きる上級国民の代表格だからだ。政府の顔色をうかがうメディアや知識人も触れたくない事実に違いない。上級国民の話題を茶化し、突っ込んだ議論を避けるのもうなずける。 しかし税金を取られ、搾取される側の一般国民にとって、上級国民の存在に気づいたことは社会を変える第一歩になる。 自由主義派の一人、ティエリは「課税はつねに悪である」という言葉を残した。消費税率の引き上げを控え、社会保険料という名の税負担にも苦しむ一般国民にとって、希望の言葉に聞こえるはずだ。 |
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●河井氏疑惑、政権に「打撃」 案里氏秘書を聴取 1/17 | |
自民党の河井克行前法相(衆院広島3区)の妻案里氏(参院広島)の陣営を巡る公選法違反(買収)容疑事件は17日、広島地検が公設秘書の任意聴取に踏み切る事態へ発展した。舞台となったのは、自民党が改選2議席の独占を期しながら逃した昨年7月の参院選広島選挙区。案里氏は官邸主導で擁立が決まり、安倍晋三首相や菅義偉官房長官たち政権中枢の度重なる応援を受けて当選した。今回の事件が、安倍首相の政権運営の「打撃」になり得るとの見方も出ている。
広島の地元事務所の家宅捜索を受け、15日深夜に東京都内の別々の場所で取材に応じた克行氏と案里氏。疑惑の発覚から約2カ月半ぶりに公の場へ姿を見せた2人には、官邸や自民党の幹部に経緯を報告したかどうかの質問が飛んだ。「していない」「直接には、していない」…。否定した2人の声は弱々しかった。 この記者会見の動画をインターネットで見た元陣営関係者は、官邸や党に対する「忖度(そんたく)」を感じ取った。「数々の疑惑の火の粉が及ばないように、という思惑が強くうかがえる」。事実、参院選で政権中枢の存在を「後ろ盾」として周囲にアピールしていた2人の強気の姿勢は、消え去っていた。 改選2議席に7人が立候補した広島選挙区は、事実上、自民党の公認を得た新人の案里氏とベテランで現職の溝手顕正氏、野党系の無所属現職の森本真治氏による三つどもえの激戦となった。 自民党が2人を公認したのは、1998年以来21年ぶり。案里氏には閣僚や党幹部が相次ぎ来援し、宮沢洋一会長たち党県連の主流派が推す溝手氏は劣勢を迫られた。投開票の結果、「自民党の2議席独占の阻止」を掲げてトップ当選した森本氏に続き、案里氏が2位で議席を獲得した。 とりわけ、案里氏を強力に後押ししたのが官邸だった。選挙中、両氏の陣営がそれぞれ開いた街頭演説をはしごした安倍首相が、溝手氏の応援を前に「案里さんを一番に」と訴える場面もあった。菅官房長官は前哨戦に引き続き、選挙中にも県内を東奔西走。他陣営が「過去に例がない」と口をそろえる過熱ぶりに、菅官房長官と当選同期で、安倍首相にも近い克行氏の影響力との見方も広がった。 連日の捜査が続く案里氏陣営の公選法違反の疑惑。今後の政治日程を見ると、当面の焦点は、今月20日に召集予定の通常国会に与える影響となる。立憲民主党など野党は夫妻の責任を徹底追及する姿勢を確認。衆参両院の政治倫理審査会に夫妻を呼んで説明を求める方針でいる。 広島地検の家宅捜索が入った15日午前、菅官房長官は記者会見で河井夫妻に対して「説明責任を果たす必要がある」と述べた。一方、この日深夜に記者団の取材に応じた夫妻は、「捜査への支障」を盾に説明責任を先送り。自民党内からの批判も強まった。同党関係者によると、党本部では既に「捜査の行方次第では国会審議に支障が出て、支持率の急落につながる」との懸念も出始めたという。夫妻は離党や議員辞職を否定したが、政治的な決着の行方は見通せない。 |
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●案里氏側への1.5億円、国会に影響 質問開始遅れる 1/24 | |
通常国会の論戦の幕が上がって3日目の24日、与野党対立のあおりで参院本会議の開始時間がずれ込んだ。原因は、河井案里参院議員(自民党)の選挙資金問題。予定されていた代表質問は15分遅れで始まったものの、政権が抱えるスキャンダルが国会運営に影を落とし始めている。
昨年夏の参院選で初当選した河井氏。選挙を前に自民党本部から河井氏側に1億5千万円が支払われたとされる問題が浮上しているが、23日の代表質問で立憲民主党の福山哲郎幹事長から事実関係を問われた安倍晋三首相は、答弁を避けた。こうした首相の態度に対し、野党側は反発を強めている。 24日午前9時半、本会議前に議事進行などを話し合う議院運営委員会の理事会が国会内で開かれた。野党側は立憲・福山氏が前日、河井氏側に流れた資金について「考えられない金額だ。自民党総裁として事実かどうか」とただした質問について、24日の本会議で首相が再答弁するよう要求。だが、与党側は「急な質問で対応できなかった。昨日の質問に今日答えることはしない」(議運幹部)と突っぱねた。 理事会は紛糾し、午前10時開会の予定だった代表質問は15分遅れでスタートした。その後、昼の休憩中に再度開かれた理事会でも平行線をたどり、来週以降に引き続き議論することになった。福山氏は午前の会派会合で「答えをいただきたかった。都合の悪いことはいつも言わない政権だが、こんな状況では国民に信頼いただける国会にはならない。予算委で安倍政権のおかしさをしっかり糾弾したい」と追及を続ける構えを示した。 |
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●JAL破綻の真相 1/20-22 | |
●資金ショート寸前「飛行機が止まる」 JAL破綻10年
日本航空が経営破綻(はたん)して10年がたった。国を代表する「フラッグシップキャリア」として長年日本の航空界に君臨した日航の破綻は、国内外に大きな衝撃を広げた。「明日にも飛行機が止まるかもしれない」というぎりぎりの状況下で、政権交代直後の民主党政権の中枢メンバー、官僚、企業再生の専門家らは何を考え、どう動いたのか。当時の関係者の証言から、日航破綻の内幕に迫る。 「なんだ、これは」 2009年9月16日、民主党政権が発足したその日、首相官邸は政権交代の異様な熱気に包まれていた。新任閣僚が代わる代わる登壇する就任会見は長引き、国土交通相に就いた前原誠司の会見は翌17日未明にずれ込んでいた。 国交省内で日航問題を担当していた審議官の宿利(しゅくり)正史は、省内のテレビで会見の様子を見ていたが、前原が発した言葉に耳を疑った。 「なんだ、これは」 日航の経営改善を検討するため、国交省主導で8月につくったばかりの有識者会議を「白紙にする」と、前原は断言したのだ。 民主党政権は政治家みずからが政策判断する「政治主導」を掲げ、官僚と距離を置いた。宿利ら国交省の幹部たちは、前原に諸施策の現状を伝える「事前レクチャー」すらできないまま、就任会見での「独走」をただ見ているしかなかった。 日航の経営は、すでにダッチロール状態に陥っていた。08年のリーマン・ショック後、国際線などビジネス向け航空需要が激減。不採算の国内地方路線や、燃費の悪いジャンボジェット機を多く抱えていることなども重荷となり、09年3月期は600億円を超える純損失(赤字)を出していた。 「航空局は信用しない」 そこで国交省は政権交代前、官邸や財務省などとも協議して日航の経営を監視する有識者委員会を立ち上げ、抜本的な経営改革を行わせる手はずを整えていた。が、前原は大臣として国交省に乗り込んだその日に、すべてのちゃぶ台をひっくり返した。 「当時の日航社長と国交省航空局は信用しないというスタンスだった」と、前原は当時の心境を明かす。 前原から見れば、それまでの国・・・ ●極秘の「JAL倒産シナリオ」 辻元氏が打ち明けた夜 2009年秋。発足したばかりの民主党政権にとって、日本航空の経営再建問題は最大の懸案の一つになっていた。日本を代表する航空会社でありながら、高コスト体質やリーマン・ショックによる不況が響き、倒産寸前に追い込まれていた日航を、公的資金で助けるのか。助けるとすれば国民の理解をどうやって得るのか――。日航の運転資金が底をついていくなかで、国土交通相の前原誠司ら政権の中枢メンバーは重大な判断を迫られていた。(文中敬称略) 「断ち切る」 前原が09年9月末に招集した企業再生の専門家集団「JAL再生タスクフォース(TF)」が調べたところ、日航の財務状況は見た目よりはるかに悪く、実質債務超過に陥っていた。しかし銀行団は日航支援に後ろ向きで、政権は「公的資金の投入は避けられない」という判断に傾いていった。 そこで白羽の矢が立ったのが、10月14日に発足したばかりの「企業再生支援機構」だ。もともとは地方の中堅・中小企業の再生を支援するための官民ファンドだったが、政権の判断しだいでは日航のような大企業を支援することも可能だった。 支援機構の委員長に選任された弁護士の瀬戸英雄は、前原から日航支援を検討するよう託された。 「いきなりという感じはなかった。政権交代前から持ち込まれると思っていた」と、瀬戸は振り返る。 瀬戸はその時点で、日航に公的資金を投入して再生しようとするなら、会社更生法のような「法的整理」が不可避だと考えていた。瀬戸は前原を説得した。 「公的資金を使うなら、権限を持つ人からの影響を断ち切らないといけません。それには会社更生法が効果的です」 「法的処理は回避しなければ」 前原の本心はどうだったのか。自身肝いりのTFを招集した時・・・ ●大みそかに解雇 V字回復で「JALもうけすぎ」批判 2010年1月19日。国内最大の航空会社だった日本航空は会社更生法の適用を申請し、経営破綻した。 日本の運輸業界史に残る破綻劇は、終わりではなく、始まりだった。日航の株の価値はゼロになり、金融機関には5千億円を超える債権放棄(借金の棒引き)をお願いし、さらに3500億円の公的資金を投入しての経営再建。国民からは厳しい目線が注がれていた。 「お前のせいで俺の株券は紙くずになったんや!」 国土交通相として破綻処理を主導した前原誠司は当時、こんな罵声を浴びせられたという。 日航には当然ながら「身を切る改革」の断行が求められた。 「希望退職に応じなければ…」 10年8月。人件費カットや路線の整理縮小、大型機材の退役といった大リストラを盛り込んだ「更生計画案」がまとまった。その柱の一つが、グループで抱えていた計4万8千人の人員を、3万2千人にしぼり込む大胆な人減らし計画だ。 日航が各職種に希望退職を募ったところ、パイロットと客室乗務員の退職希望者が想定を下回った。そこで検討されたのが、同意がなくても一方的に辞めさせる「整理解雇」だった。 当時58歳でパイロットでつくる労組の幹部だった山口宏弥は「おかしい」と感じていた。9月下旬以降の自分の勤務予定が白紙になっていたのだ。「まさか解雇はないだろう」と思っていたが、9月半ばのアムステルダム発成田便のフライトを最後に、仕事がなくなった。 恐れていた通告は11月半ば。 「希望退職に応じなければ、解雇だ」 その年の大みそかに日航はパイ・・・ |
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