カルロス・ゴーン 独演会

素晴らしい独演会でした
目を見開き 大きな身振り手振り
新生カルロス・ゴーン プレゼンテーション

自画自賛 論点のすり替え  詭弁
日本文化 なめられました
さすが 世界を走り回った経営者 
 


カルロス・ゴーン金融商品取引法違反レバノン逃亡
   1/81/91/101/111/121/131/14・・・
日産自動車歴史沿革日産とゴーン前会長の近況・・・
 
 
 

 

●カルロス・ゴーン
[Carlos Ghosn、1954 - ] ブラジル出身の実業家。2004年に藍綬褒章を受章。ルノー、日産自動車、三菱自動車工業の株式の相互保有を含む戦略的パートナーシップを統括する「ルノー・日産・三菱アライアンス」の社長兼最高経営責任者(CEO)を務めていたが、2018年11月に東京地検特捜部に金融商品取引法違反の容疑で逮捕され、その後解任された。保釈中の2019年12月に日本から密出国によりレバノンに逃亡し、2020年1月2日に国際刑事警察機構により国際手配書(赤手配書)にて国際手配されている逃亡中の刑事被告人。
両親はレバノン人で、ブラジルで誕生。幼少期をブラジルで過ごし、中等教育は父の母国であるレバノンのベイルートで受けた。フランスの工学系グランゼコールの一つであるパリ国立高等鉱業学校を卒業した後、フランス大手タイヤメーカー、ミシュランに入社し18年間在籍。
ミシュラン社での業績が評価され、ルノーに上席副社長としてスカウトされ、同社の再建にも貢献した。
1999年3月、当時経営と財政危機に瀕していた日産がルノーと資本提携を結び、同年6月、ルノーの上席副社長の職にあったゴーンが、ルノーにおけるポジションを維持しつつ、日産自動車の最高執行責任者(COO)に就任。後に日産自動車の社長兼最高経営責任者(CEO)、ルノーの取締役会長兼CEO(PDG)、ルノー・日産アライアンスの会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。
「コストキラー」「ミスター調整(FIX IT)」 などの異名をとるゴーンは、日産再建に向け社員とともに「日産リバイバルプラン」を作成。短期間で日産の経営立て直しを果たし、2003年にフォーチュン誌は、彼を「アメリカ国外にいる10人の最強の事業家の一人」と称している2013年6月から2016年6月には、ロシアの自動車メーカのアフトヴァース会長も務めていた。
レバノンとブラジルとフランスの多重国籍を有する。
2016年10月より、ゴーンはルノー・日産アライアンスに加わった三菱自動車工業の代表取締役会長に就任。2017年2月23日、日産自動車は同年4月1日付で副会長兼共同CEOの西川廣人が代表取締役社長兼CEOに就任することを発表した。ゴーンは引き続き日産の代表取締役会長を務め、アライアンス全体の経営に注力する。
2018年11月、金融商品取引法違反で東京地検特捜部に逮捕され、日産、三菱の会長職を解任される。2019年1月、特別背任罪で追起訴された。
2019年1月、ルノーの会長職を辞職。
2019年4月、日産自動車の取締役を解任される。
2019年12月29日に日本の司法制度への不信からレバノンに逃亡した。この逃亡劇を巡って全世界で議論が巻き起こった。
2020年1月2日には国際刑事警察機構により、本人に対して国際手配が行われたが、日本とレバノンの間で犯罪人引渡し条約が締結されていないため、本人を日本に連れ戻すことは難しい状況にある。
来歴
祖先について
祖父ビシャラ・ゴーンは、レバノンで生まれ13歳でブラジルに移住し、ブラジル北部、ブラジルとボリビア国境近くのロンドニア州の奥地 São Miguel do Guaporé サン・ミゲウ・ド・グアポレ でゴム産業に参入。最終的には農産物を売買する会社のオーナーとなった。レバノン系ブラジル人である父 ジョルジ・ゴーンはロンドニア州の州都ポルト・ヴェーリョに居を構え、同じくナイジェリア生まれのレバノン人の女性と結婚。
誕生から高等教育修了まで
1954年3月9日にカルロス・ゴーンが誕生した。カルロスが2歳くらいの頃、不衛生な水を摂取したことで病気となり、母親とともにリオ・デ・ジャネイロに移転。カルロスが6歳の時、彼の3人の姉妹と母とともに、祖父の母国であるレバノン・ベイルートに転居し、ベイルートのイエズス会系の Collège Notre-Dame de Jamhour(コレージュ・ドゥ・ノートルダム・ドゥ・ジャンブール)で中等教育を受けた。その後、パリ6区にあるプレップスクール Lycée Stanislas(リセ・スタニスラス)、そして、Lycée Saint-Louis(リセ・サン=ルイ)で学ぶ。1974年、エコール・ポリテクニーク(École Polytechnique)(グランゼコールの代表格でエリート養成校の一つ)を卒業し、1978年にパリ国立高等鉱業学校(École des Mines de Paris)で工学博士を取得し卒業。
就職後
パリ国立高等鉱業学校を卒業した後、1978年に欧州最大のタイヤメーカー、ミシュラン Michelin に入社した。フランス国内で工場長、産業用タイヤ部門の研究開発ヘッドを歴任 後1985年、30歳の時に3億ドルの市場を持つ南米ミシュランの最高執行責任者(COO)に任命された。生誕地であるブラジルに戻ったゴーンは、彼に操業の立て直しを命じたフランソワ・ミシュラン(フランス語版)に、ブラジルのハイパーインフレ 下における事業の不採算性と困難について直訴している。しかしその中で、南米事業部におけるフランス、ブラジル、その他多国籍の従業員の間での最良な業務形態を模索し、クロスファンクショナルマネージメントチームを結成。このブラジルでの多文化体制下での経験は、後に彼の経営理念の核となるクロス・カルチャーな経営スタイルと強さの基盤を形成した。「人は多様性から学び、そして共通性に安らぎを感じる。」とゴーンは語っている。1989年、南米事業部を黒字転換させた後、ミシュランの北米事業部の社長兼(COO)に選ばれ、家族を伴い米国サウスカロライナ州グリーンビルへと移転。1990年にミシュランの北米の最高経営責任者(CEO)に昇格する。1996年に、ルノーの上席副社長にヘッドハンティングされ、再びフランスへと居を移したが、1999年にルノーと日産の資本提携が行われた後、ルノーでの役職も維持しながら日産の最高執行責任者(COO)に就任。家族とともに日本に移り住んだ。
米フォーブス誌には「過酷な競合が繰り広げられる世界の自動車業界において最も多忙な男」と呼ばれ、日本のメディアからは「セブンーイレブン(早朝から深夜まで非常にハードに働く)」と称され、パリと東京の両拠点での職務に自らの時間を分割するゴーンの航空移動距離は、一年で約15万マイルにのぼる。
マルチリンガルで、アラビア語とフランス語、英語、スペイン語、ポルトガル語の5言語を流暢に話す。さらに日本語も学んでおり、日産自動車社内で自らの肉声で語る際には、あえて日本語での演説を行うようにしているという。ブラジルとフランス両国の市民権を有し、また少年期10年の間居住し、初等ー中等教育を修了したレバノンとの強い繋がりも維持。レバノン北部海岸沿いの街 Batrounにある環境に配慮したワイン農場で、ワインの輸出も行う「IXSIR」に出資している。
受賞、栄典
2002年にフランス政府から、レジョンドヌール勲章(シュヴァリエ)を授与された。
2004年に外国人経営者として初めて藍綬褒章を受章した。また、同年、法政大学名誉博士になっている。2005年には早稲田大学からも名誉博士号を授与されている。極度の経営不振と経済的危機の状態にあった日産自動車を立て直したということで、他社の社外取締役に招聘されたり、大学の委員なども務めたりもし、更には「企業改革経営者内閣総理大臣表彰」を受けている。また、自らコマーシャルに出演するなど、マスメディアにも積極的に登場。ビッグコミックスペリオールに「カルロス・ゴーン物語 ―企業再生の答がここにある!!―」が掲載されるなど、広く知られる存在となっている。
2006年に、KBE(大英帝国勲章・ナイトコマンダー)を授与された。
東京地検特捜部による逮捕と東京地検による起訴
2018年11月19日、日産において開示されるゴーン自身の役員報酬額を少なくするため、長年にわたり、実際の報酬額よりも少なく見せかけた額を有価証券報告書に記載していたとして、東京地検特捜部により金融商品取引法違反容疑で代表取締役グレッグ・ケリー とともに逮捕された。日産自動車の西川廣人社長は、同年11月22日に招集する取締役会議でゴーンを同社の会長職を解任する方針と説明した。日産は内部通報により、数か月間の内部調査を行ってきたことをプレスリリースで明らかにしている。
逮捕を受け、日産自動車の川口均CSOが総理大臣官邸を訪れ、菅義偉内閣官房長官に謝罪や日仏関係の維持のための協力要請を行った。駐日フランス大使館によると、翌20日には、ローラン・ピック駐日フランス特命全権大使が東京拘置所を訪れ、ゴーン会長と面会を行ったとされる。
11月22日、日産の取締役会において日産の会長職と代表取締役から解任され取締役となり、同月26日には三菱自動車においても会長職と代表取締役から解任され取締役となった。
2018年12月、東京地検はカルロス・ゴーン、グレッグ・ケリー、日産自動車を金融商品取引法違反で起訴した。
2019年1月、東京地検はカルロス・ゴーンを特別背任罪で追起訴した。
3月5日、東京地方裁判所は保釈を許可する決定をし、検察の準抗告も同日深夜に棄却され、翌6日、保釈保証金(金商法違反事件で2億円、特別背任事件で8億円)の納付後に保釈された。東京地裁の決定に対し、東京地検の久木元伸次席検事は「保釈条件に実効性がない」とする異例のコメントを行った。
4月4日、中東オマーンの販売代理店側に支出された日産の資金の一部を不正に流用した疑いが強まったとして、東京地検特捜部は特別背任の容疑で4度目の逮捕をした。検察内部には在宅での追起訴でよいとの慎重論もあったが、いわゆる「オマーンルート」疑惑の捜査のため再逮捕になったと報じられている。
4月23日にパリで開かれた日仏首脳会談でフランスのエマニュエル・マクロン大統領は日本の安倍晋三内閣総理大臣に対してカルロス・ゴーンを適切に処遇するよう求めた。
4月25日、再度保釈された。前回の保釈時は作業着姿に変装していたが、今回はノーネクタイのスーツ姿での保釈となった。今回の保釈に対して検察幹部(氏名不詳)は「明らかに地裁の判断は矛盾しており、『保釈ありき』ではないか」「裁判所は『人質司法』という言葉に完全にひよっている(おじけている)。」との見解を表明している。
その後アメリカの証券取引委員会とは役員報酬の虚偽記載について100万ドルの課徴金を支払うことで和解。日本との裁判に集中する構えで、日本に対しては引き続き無罪を主張していくとする。
日本からの密出国
レバノンの治安当局者によると、ゴーンは日本を秘密裏に出国し、プライベートジェットを用いてトルコを経由しレバノンの首都ベイルートにあるベイルート国際空港に日本時間の2019年12月31日午前6時30分過ぎに到着したという。
レバノンの複数のメディアは「クリスマスディナーの音楽隊を装った民間警備会社のグループが、ゴーンの滞在先に入って楽器のケースに隠して連れ出した」「レバノンに到着して大統領と面会した」などと報じている。また、インデペンデント・アラビーヤによると、この逃亡劇は「軍事関連会社」が実行し、「2,000万ドル(約22億円)以上の費用がかかった」と報じられており、ウォールストリート・ジャーナルによると、米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)出身の男性ら2人の協力で、「音響機器運搬用の黒い箱」の中に隠れて出国したと報じられている。
日本の出入国在留管理庁のデータベースには出国の記録が無い。レバノンのジュレイサティ国務相は、トルコから同国への入国時にはフランスのパスポートとレバノンの身分証明書を所持しており正当に入国したとしており、同国政府関係者によると本名名義のフランスの旅券を用いていたという。国土交通省大阪航空局関西空港事務所は、29日夜に関西国際空港を発ってイスタンブールに向かったプライベートジェットが1機あることを確認している。
プライベートジェットの場合には保安検査(航空機内に積み込む荷物の検査)の「法的な義務」はなく、機長が実施の必要性を判断しており、「X線検査」の有無についても状況によって異なっている。関西国際空港関係者は、「ケースが大きくて照射装置に入りにくかったため、X線検査を行わなかった」と証言している。そのため、ゴーンが大きな箱のようなケースに入った状態で、X線による検査を受けないままプライベートジェットの機内に積み込まれ、正規の出国手続きを受けずに離陸した可能性が浮上している。
なお、日本の裁判所はゴーンを保釈する際に、「海外渡航の禁止」という条件を付しているが、ゴーンはこれに違反したということになる。
2019 年12月31日、ゴーン本人は、この密出国について、「私はレバノンにいる」という内容の声明を発表し、「もはや私は有罪が前提とされ、差別がまん延し、基本的な人権が無視されている不正な日本の司法制度の人質ではない」「私は正義から逃げたわけではない。不公正と政治的迫害から逃れたのだ」と述べている。
本人の初公判は2020年4月21日に開かれる方向で調整が進められていたが、刑事訴訟法に基づくと今回の場合では、本人が日本に帰国しなければ公判は開くことができない規定になっている。日本はレバノンと犯罪人引き渡し条約を締結しておらず、同国の了解を得られなければゴーンの身柄が日本へ引き渡されることはない。帰国が実現しなければ事件の審理に大きな影響を及ぼすことが懸念される。また、東京地方検察庁は、2019年12月31日、東京地方裁判所にゴーン被告の保釈取り消しを請求した。同日夜、東京地方裁判所は保釈を取り消す決定をすると同時に保釈金15億円も没取された。
2020年1月2日、日本政府は、国際刑事警察機構(ICPO)に対し、レバノン政府にゴーンの身柄を拘束するように要請することを求めた。レバノン国営通信社NNAは、「ICPOからの赤手配書をレバノンの検察当局が受領した」という内容の報道を行っている。
ビジネスにおけるキャリア
ミシュラン
大学卒業後、1978年に欧州最大のタイヤメーカー、ミシュランMichelinに入社。3年目の1981年に、27歳でフランス国内のル・ピュイ工場の工場長に抜擢され、1984年に同社の産業用タイヤ部門の研究開発ヘッドを務めた。翌1985年には、ブラジルを拠点とするミシュランの南米事業の最高執行責任者(COO)に任命された。5年後の1990年、35歳でミシュランの北米事業部の社長兼最高経営責任者(CEO)に就任し、ユニロイヤル・グットドリッチタイヤ社を買収後のリストラを主導するなど、18年間のミシュラン在籍期間中、重要な役職を歴任した。
ルノー
1996年、ルノー会長(当時)のルイ・シュバイツァー(フランス語版)からスカウトされ、購買、研究、先進技術のエンジニアリングと開発、製造、および南米ルノーのスーパーバイジング担当の上席副社長として、ルノーに入社。シュバイツァー自身、国営自動車会社ルノーの時代に経営再建の為、請われてフランス予算省の上級官僚から転職した人物。ルノーは過激左派組織のテロなど、フランス国内外での混乱を生じながらも民営化し、民営化後も人員削減を押し進め、いったんは国内集中にシフトしていた事業展開を再び国際化へと方針転換していた最中で、ゴーンの手腕をかったシュバイツァー会長が自らヘッドハンティングを行った。ルノーに入社したゴーンは、ベルギーのビルボールド工場閉鎖など不採算事業所の閉鎖や、調達先の集約などで経費の圧縮を進め、赤字だったルノーの経営を数年で黒字へと転換。これによりゴーンは「コストカッター」「コストキラー」の異名を拝するようになった。
ルノー・日産の資本提携と日産の復活
1999年3月27日にルノーが日産の株式の36.8%を取得し、ルノーと日産の間で資本提携が結ばれ、同年6月、ゴーンはルノーにおける役割を維持したままで、最高執行責任者(COO)として日産に入社した。翌年2000年6月に日産自動車の取締役に就任。さらに2001年6月に日産の最高経営責任者(CEO)に選出された。
ゴーンが入社した当時の日産は約2兆円(200億ドル)の有利子負債を抱え、国内販売でもラインナップされた46モデル中、3モデルだけが収益をあげている状況だった。ルノーからの巨額な資金投入が行われた上で、ゴーンの指揮下、両社の間でプラットフォームやエンジン、トランスミッションなどの部品の共通化、購買の共同化などを通じて両社のコストダウンを行う。
「日産リバイバルプラン」の下、東京都武蔵村山市にあった日産自動車村山工場などの生産拠点の閉鎖や子会社の統廃合、航空宇宙機など余剰資産の売却や21,000人(総従業員の14%)を目標とした早期退職制度による人員の削減など大幅なリストラを行った。同時に新車種の投入、インテリア・エクステリアデザインの刷新やブランドイメージの一新などの計画を次々に敢行。
また、日産自動車社内の公式言語を日本語から英語に変更し、初めてのキー・グローバル戦略会議は、ヨーロッパや北米の幹部も出席して開催された。日本の商慣習にとらわれない過激な手法に、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が「公共の怒りの対象となる」とのコメントを掲載するなど、先行きを危惧する声も少なからずあったが、ゴーンは自らテレビコマーシャル出演し、インタビューに応えるなど、積極的にメディアに登場。
残された日産自動車社員および株主・関係者への配慮を見せ、日産自動車株主総会を日本語で行うなど、全ての利害関係者に向けて社内改革をアピールした。その結果、1998年には約2兆円あった有利子負債を、2003年6月には全額返済(社債を発行して、銀行からの借入金を全部返済している)。1999年度には1.4%であったマージンは2003年度には11.1%へと増加させる成果をあげ、12%前後まで落ちた国内シェアを20%近くまで回復させた。
しかし同時に、2002年にゴーン氏が打ち立てた3か年経営計画「日産180」(全世界での売上台数を100万台増加させ、8%の営業利益率を達成し、自動車関連の実質有利子負債をなくす)における販売台数目標達成のために、計画終了(2005年9月30日)前に集中して新型車投入を行ったことによる、計画終了以降の国内販売台数の深刻な低迷や、「ゴーン以前」に入社した居残り組と、「ゴーン後」に入社した中途採用組の社内闘争など、深刻な問題を残したままの親会社への復帰に疑問の声も上がっている。
2005年5月には、ルノーの取締役会長兼CEO(PDG)にも選ばれ、これによりゴーンはルノーと日産というフォーチュン・グローバル500にリストされる2社を同時に率いる世界で初めてのリーダーとなった。また、ゴーンは両社の株式持ち合いと同等所有権を含む戦略的パートナーシップを統括するルノー・日産アライアンスの社長兼最高経営責任者(CEO)をも兼務している。2010〜2014年の間、ルノー・日産アライアンス(AvtoVAZを含めた)は、全世界自動車市場の約10%のシェアを維持し続けている。2014年の時点でアライアンスは世界第4位の自動車グループとなった。
2006年以降、関連会社の日産と歩調をあわせるようにルノーの業績も悪化していることもあり、ルノーの取締役会長兼CEO(PDG)になった後の2006年2月には、日産に対するリストラのような従業員の解雇を行わずに、2009年の販売台数を2005年の約250万台から80万台多い330万台とし、2009年の売上高に対する営業利益率を6%にするという内容の中期経営計画「ルノー・コミットメント2009」を発表した。
2011年3月11日、大規模自然災害となった東日本大震災が発生した。ゴーンは地震と津波による被害の復旧支援活動を率先して行うに留まらず、震災による打撃とともに、福島第一原子力発電所事故の影響下にあった、福島いわきエンジン工場の操業回復をいち早く決定。再構築を推進、奨励する為、自ら頻繁にテレビ番組などに登場した。さらに、2011年5月にゴーンは、最低100万台の日本国内での自動車およびトラック生産をコミット。
2012年6月に、OAO AvtoVAZの取締役会の副会長に選ばれ、翌2013年6月には会長に任命されたルノーは、2008年に、会社の25%の株式を取得した後、OAO AvtoVAZ との戦略的パートナーシップを始めていたさらに、極度の経営不振の状態にあった日産自動車を立て直したということで、他社の社外取締役に招聘されている。
2013年6月に、ゴーンはロシアの会社アフトワズの会長に任命された。ゴーンは2016年6月まで、この地位を保持した。2018年に、特別背任の疑いで、グレッグ・ケリー氏とともに日産の会長を解雇された。特別背任の容疑があるため4度再逮捕された。
三菱
2016年10月、日産は三菱自動車工業の34%の投資買収を完了した。ゴーンはルノー・日産における地位に加え三菱の会長として就任した。これは燃費データ改竄における長期に渡るスキャンダルとその影響からの利益減収回復を図ることを目的とする。日産三菱パートナーシップは三菱の電気自動車における共同開発開発も含んでいる。ルノー・日産・三菱の提携はトヨタ自動車、フォルクスワーゲン社、ジェネラルモーターズに続く自動車グループとしては世界第四位の地位を確立した。
アドバイザー関連
2015年までは ブラジルの銀行バンコ・イタウの国際諮問委員を務めた、中国の清華大学の経済管理学院顧問委員、ベイルートのアメリカン大、セント・ジョセフ大学の戦略会議メンバーを務めている2014年5月には欧州自動車工業会の会長に選出され。彼は世界経済フォーラムの知事としての役割を果たす。
パーソナリティ
経営陣のトップであるが自らハンドルを握って運転する事を好む。この事は彼が立場を越えてルノーや日産自動車の車種に限定されず、自動車の運転に好意的な事を示した過去の報道からも明らかである。この事は、ゴーン体制下の日産自動車が、2002年の排ガス規制で生産終了が決定していたスカイラインGT-Rの後継車種である日産・GT-Rや、フェアレディZを復活させた大きな要因である(両車ともゴーン自らゴーサインを出し、自ら発表している)。『日経スペシャル カンブリア宮殿』に出演した際に、「ハンドルを握って5分も運転すれば、どんな嫌なことも吹き飛ぶ。車以外にこんな製品がありますか?」と言っている。
しかしながら、日産自動車のセドリック/グロリア、サニーといった伝統的な車名を次々に廃止したことに対しては、ゴーン自身は車名が体現する伝統の大事さを訴え、販売部署が望んだブランド名変更に最後まで反対だったという。また、日産が長年参戦してきたル・マン24時間レースからの完全撤退など、モータースポーツに関しては比較的否定的な立場であり、ルノーF1チームが2005年と2006年の2年連続で世界チャンピオンに輝いたにもかかわらず、同チームの継続的な参戦にはブランドイメージ形成や予算の面から懐疑的だと伝えられている。ただしF1チームの中では予算が少ないと言われているルノーでも、年間予算は100億円を優に超える(ただし、SUPER GTに関しては例外中の例外であり、近年ではGT-RによるFIA GT選手権への参戦も果たしている)。
また、就任1年目の1999年夏に第70回都市対抗野球を視察に訪れた際、スタンドの応援団と観客の盛り上がりに感銘を受け、その直後に記者会見を開いて当時存廃問題が取りざたされていた野球部の存続を明言し、「都市対抗野球こそが日本の企業文化の象徴である」とまで公言した。しかしながら、2009年には金融危機による不況により、日産はゴーン体制初の営業赤字に転落し、その対策として、グローバル人員を2万人削減すると同時に、野球部を含む運動部の休止が発表された。
個人情報
ゴーンは1984年から2010年までリタ(Rita)と結婚していて、子供は女子3人(Caroline、Maya、Nadine)、男子は1人(Anthony)がある。リタは『ゴーン家の家訓』(集英社、2006年)を出版しており、夫を「透徹した批判眼の持ち主であり、最も信頼できるパートナー」といっている。2016年5月、ガールフレンドのキャロル・ナハス(Carole Nahas)と再婚し、同時に彼の60歳の誕生日祝いも兼ねて大結婚披露宴をベルサイユ宮殿の大トリアノン城で行なっている。彼の個人住居は6軒、東京、パリ、ベイルート、リオデジャネイロ、アムステルダム、ニューヨークにあり、購入費用は日産自動車に負担させていると様々なメディアが伝えている。 
 
 
 
 

 

●日産カルロスゴーン会長の金融商品取引法違反 
日産ゴーン会長らを金商法違反容疑で逮捕、社長「権限集中が誘因」 2018/11
東京地検特捜部は19日、日産自動車(7201.T)会長のカルロス・ゴーン容疑者と同社代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者の2人を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕した。同特捜部は、横浜市の同社本社も同容疑で家宅捜査した。
複数の国内メディアによると、ゴーン容疑者は2011年から15年までの5年間に、99億9800万円の報酬を受け取っていたにもかかわらず、有価証券報告書には49億8700万円の報酬があったと虚偽の数字を記載。合計で約50億円の報酬を過少に記載した。
日産の西川廣人社長は同日夜に会見し、今回の2人の行為は、専門家から重大な不正であるとの判断を受けており、22日にゴーン容疑者の解職を提案する臨時取締役会を開催すると述べた。
また、今回の不正行為はガバナンス上、ゴーン容疑者に権限が集中し過ぎていたことが誘因だったと指摘し、ガバナンスの再構築に取り組む意向を示した。
同社が19日に公表した文書では、ゴーン会長とケリー氏が、長年にわたり報酬額を過小に有価証券報告書に記載していたことが判明したと指摘。
ゴーン会長には同社の資金を私的に支出するなど複数の重大な不正行為が認められ、ケリー代表取締役も深く関与していたことが判明していると言及した。
この点に関連し、西川社長は、1)報酬額を減額して有価証券報告書に記載した、2)目的を逸脱し、同社の投資資金を使って投資した、3)同社の経費を不正に使用した──の3点を確認したと述べた。
有価証券報告書の記載は適正でなく、是正がどうなるのか、現状ではわからないが、瑕疵(かし)は認めなければならないと語った。
そのうえで、独立取締役2人を含めた第三者機関を設立し、ガバナンスの回復に強めたいと表明した。
西川社長は、今回の不正発覚と2人の逮捕により、株主や関係者に大変、心配をかける事態となり、深くおわびしたいと述べた。
さらに世界の従業員、販売関係者に大きな動揺を引きこしていると思うが、社内の動揺をできるだけ安定させたいと語った。
一方、ルノー(RENA.PA)、三菱自動車(7211.T)、日産のパートナーシップに何ら影響を与えないと西川社長は断言。今後も三菱自動車の益子修CEOとは、今後も緊密に連携し、コミュニケーションを図っていきたいとした。
今回の逮捕に至った経緯に関連し、昨年来徹底してきたコンプライアンスと内部通報の結果であり、その後、ゴーン容疑者主導による重大な不正であるとの判断にいたったと説明した。
具体的には、内部通報があり、監査役を中心に問題提起の動きがあり、社内調査を進めた結果、2人の不正が発覚したと西川社長は述べた。
今回の逮捕を踏まえ、極端に個人に依存した経営から脱却し、サステナブルな経営体制見直しのよい機会になるとの考えを表明した。
ゴーン容疑者が長年、実力者として君臨してきた弊害は大きいとも指摘。刑事告発について、今日のところは答えられないが当然、告発に値すると述べた。不正がいつからか今は言えないが、長きにわたっていたと語った。
一方、西川社長自身の責任については、猛省するべき点があるとしたうえで、今は社内を沈静化、安定化させ、会社を正常な状態にして前に進めるよう、やることが山積していると表明した。
ゴーン会長は1999年、仏自動車大手ルノー(RENA.PA)副社長から日産の最高執行責任者(COO)に就任し、2001年6月から最高経営責任者(CEO)となった。
11月19日、東京地検特捜部は、日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者(写真)と同社代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者の2人を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕した。パリで10月撮影(2018年 ロイター /Regis Duvignau)
99年当時の日産は約2兆円の有利子負債を抱えていたが、ルノーと日産の部品や購買の共通化を推し進めるとともに、村山工場などの生産拠点閉鎖など大胆なリストラを断行し、コストの大幅カットで収益をV字回復させた。2005年にはルノーの会長権CEOに就任。16年には三菱自動車の会長にも就いた。17年4月に日産社長とCEOを退任し、会長となった。
日産によると、2016年度のゴーン会長の役員報酬は10億9800万円、17年度は7億3000万円だった。  
ゴーンが「虚偽記載」で逮捕された本当の意味 2018/11
ルノー・日産自動車・三菱自動車の会長を兼務し、カリスマ経営者として知られるカルロス・ゴーンが金融商品取引法違反の疑いで逮捕された。
東京地検によれば、2011年3月期から2015年3月期の各連結会計年度におけるゴーンの金銭報酬が合計約99億9800万円であったにもかかわらず、合計約49億8700万円と記載した有価証券報告書を提出した疑いがもたれている。この事実をもって、19日、東京地検特捜部は、ゴーンと日産自動車代表取締役のグレッグ・ケリーを逮捕した。
有価証券報告書の虚偽記載とは
今回、逮捕の原因となったのは、前述のとおり、金融商品取引法に基づく有価証券報告書虚偽記載の罪である。上場企業などは事業年度終了後3カ月以内に所定の書式にしたがって有価証券報告書を金融庁に提出する義務を負う(金融商品取引法24条)。また、2010年より、コーポレート・ガバナンス強化の一貫として、役員報酬の総額などを有価証券報告書に記載することが求められ、さらには、1億円を超える報酬額については役員ごとに記載することが必要となっている。金融商品取引法は、市場の公正と健全を守り、投資家の保護を図ることを目的としている。有価証券報告書を含む企業内容等開示制度はその趣旨に従い、企業の状況を適切に開示することによって、投資家に正しい判断材料を提供し、市場の公正さを守るための制度である。したがって、有価証券報告書における重要事項について虚偽記載を行った場合は、投資家に誤った情報を提供することとなるため、提出者には、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金が科される(同法197条1項1号)。さらには、法人等に対する両罰規定も存在し、この場合は7億円以下の罰金が科される(同法207条)。過去にもカネボウやライブドア、日興コーディアル証券、IHIなどで有価証券報告書の虚偽記載事案は存在し、近年ではオリンパスや東芝の事案が記憶に新しい。しかし、これらの案件はどれも利益水増しや損失隠しなどを行って企業の業績を実態より良く見せようとした粉飾決算事件である。今回、日産自動車が行ったのは、取締役の報酬の過少申告という極めて珍しい事案であり、およそ同社のようなグローバル企業が行うようなものではなく、言ってみれば町の中小企業のオーナー社長が自分の脱税のために行うようなものであり、事案の本質が大きく異なる。言うまでもないことだが、有価証券報告書は、代表取締役2人で作成できるようなものではない。財務や経理担当の役職員や、監査役・監査法人などその他多くの関係者の作業を経て作成されるものである。日産自動車ほどの大企業となれば、その数は少なくとも数十人には及ぶであろう。したがって、被疑者2人以外にも、過少申告の事実を知りながら作成に協力したものが存在する可能性が高い。その場合、関与者も関与の度合いによっては、共犯関係にあると言えるであろうし、また、取締役や監査役については会社法上の善管注意義務違反について、株主などから訴訟を提起され、会社に対して損害賠償を求められる可能性は十分にある。
司法取引でも民事責任は免れない
逮捕の翌朝から、各メディアは一斉に今回の事件について会社が司法取引を適用して捜査に協力したと報じた。いわゆる「日本版・司法取引」は、正式名称を「協議・合意制度」といい、2016年に刑事訴訟法を改正することで導入され、今年6月に施行されたばかりの新しい制度である。この制度は、特定犯罪の他人の犯罪事実について、被疑者・被告人が真実の供述をするなどの協力を行うことと引き換えに、検察官が処分・訴追などでの減免をする内容の協議を行い、両者で合意するというものである(刑事訴訟法350条の2)。合意が成立した場合、協力者である被疑者・被告人は協力する義務を負い、検察官は処分・訴追について減免する義務を負う。今年7月には、三菱日立パワーシステムズの元取締役などが行ったタイの公務員への贈賄事件につき、司法取引を初適用して同社については不起訴としている。日本で導入された司法取引は、自分ではなく、他人の捜査や公判に協力する見返りに、刑の減免を受けるものであり、「捜査公判協力型」といわれる。海外、たとえばアメリカやドイツなどにおいては、自分の罪を認める見返りに刑の減免を受ける「自己負罪型」の司法取引も併せて採用している国もある。もっとも、司法取引によって免責されるのはあくまで刑事責任にすぎない。前述の取締役の善管注意義務違反に基づく責任などは、司法取引によっても免れるわけでない。いかにゴーンに権限が集中していたとはいえ、これだけの報酬差額が生じていたにもかかわらず、不正を見抜けなかった、もしくは見過ごしていたのだとすれば、企業のガバナンスとして大きな支障があることは間違いなく、他の経営陣も何らかの責任追及は免れないのではないだろうか。企業の管理体制としてはあまりにお粗末であると言わざるをえない。11月21日時点では、東京地検特捜部が日産自動車自体に対しても立件することを視野に入れていると一部メディアが報じている。真偽のほどは定かではないが、あくまで不起訴まで合意したわけではなく、罪を軽くするというところまでが合意内容だったのかもしれない。ただ、現時点では明らかではない。
本丸は私的流用・不正支出なのか
日産自動車が出資しているオランダの子会社が、レバノン、リオデジャネイロなどにゴーンのための高級住宅を購入したほか、パリやアムステルダムにある会社名義の住宅について低価格でゴーンが利用していた疑いがあるという報道も出ている。報道によれば、東京地検特捜部は、実際に支払われた報酬が過少申告されていたことに加えて、これらの住宅供与も実質的な報酬に含まれるとして捜査を進めているようだ。というのも、会社法で定める役員報酬とは、金銭に限定されず、たとえば退職年金の受給権・保険金請求権、ストック・オプションの付与、そして低賃料による住宅の提供など現物給付も含まれる。したがって、仮にゴーンが無償ないし相場よりも遥かに低価格で住宅の供給を受けていたとすれば、会社から支払われる役員報酬に該当する。詳細が明らかではないため判然としないが、仮に報酬に当たらないとしても場合によってはこれらの不正行為が、業務上横領罪(刑法253条)や特別背任罪(会社法960条)に当たる可能性もある。前者であれば10年以下の懲役、後者については10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金が法定刑である。法定刑だけを見ると、これらの財産罪も今回の逮捕原因となった有価証券報告書虚偽記載もほぼ同じだが、虚偽記載はあくまで実質的な損害の発生を必要としない形式犯である。また、5年で50億円という金額は一般の役員報酬からするととてつもない金額ではあるが、一方で、前期の売上約12兆円、最終利益約7500億円という日産全体の業績からすると虚偽記載額は巨額とは言えないし、過少申告されているのはあくまでゴーン個人の報酬額であり、株主総会決議が必要となる役員全体の報酬総額に虚偽はないようである。上述のように、有価証券報告書は、投資家に正しい判断材料を提供し、市場の公正さを守るためのものであることを考えたとき、この虚偽記載単体でもって投資家の判断に大きな影響を与える重要事項となるといえるかどうかは議論の余地がある。東芝などの不正会計とは影響度合いが違いすぎる。他方で、個人の財産罪という意味では50億円は巨額であり、同じ金額であっても、報酬として虚偽記載とするか、業務上横領や特別背任という財産罪とするか、何を保護法益とするかによって、重要性が異なるわけである。ゴーンほどの世界的に著名な経営者の身柄を拘束して、最終ゴールを有価証券報告書虚偽記載という形式犯に設定していることは考えにくく、現在あがっている私的流用や不正使用が事案の本質なのだろう(もっともさらなる不正が隠されている可能性もあるが)。まずは形式的に事実を確定させやすい有価証券報告書虚偽記載で身柄を拘束し、より本丸の事案についても捜査を進めて事実を解明していくという算段であろうと推察されるが、仮に特別背任であれば自己の利益を図り、または会社に損害を与える目的や実際の損害額についての立証が必要となる。私的に流用された資金を実質的な報酬であったとして有価証券報告書虚偽記載という形式犯のみで立件するのか、それとも実質犯である財産罪での立件までいけるのか、今後の捜査次第というほかない。
スペクタクルの背景にあるもの
11月19日に行われた日産の記者会見で、西川廣人社長は今回の疑惑については、日産社内の内部通報で発覚し、数カ月間にわたって内部調査を行った結果、被疑者2名が不正行為に深く関与していたと説明した。今回、東京地検特捜部は、ゴーンを乗せたジェット機が降り立った直後に、空港内で同人に同行を求めた上で逮捕。そのまま日産本社などを捜索した。同時並行で、朝日新聞が早い段階から「逮捕へ」という見出しで報道を行っており、まるでスパイ映画か何かを見ているような気持ちになるほど鮮やかでスリリングな展開であった。このように捜査機関、企業、メディアが互いに密に連携をとったうえで、用意周到に準備を進めていく事案は極めて異例である。司法取引が導入されたということがありつつも、日産内部の権力闘争を絡めた複雑な社内事情、さらにはフランス政府をも巻き込んだルノーとの確執など、さまざまな要因が背後にあったうえでの今回の一大スペクタクルであったのだろう。2015年にコーポレートガバナンス・コードが定められ、企業統治に透明性が求められるなか、次々と企業不祥事が明るみに出ているが、世界第2位の販売台数を誇る巨大自動車グループでもこのようなずさんな管理体制であったこと、そして誰もが知るカリスマ経営者が個人のために悪質な不正行為を行っていたかもしれないという事実は非常に大きな衝撃を与えた。今後の真相究明が待たれる。 
日産ゴーン会長ら2人逮捕 東京地検、金商法違反容疑  2018/11
東京地検特捜部は19日、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車の会長を兼務するカルロス・ゴーン容疑者(64)ら2人を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕した。ゴーン会長は自身の報酬を過少に申告した疑いを持たれている。日産は同日、ゴーン氏に「複数の重大な不正行為」が認められたとし、ゴーン氏の会長職などを解くことを取締役会で提案すると発表した。
ゴーン氏が刑事訴追された場合、経営責任を問われるのは必至。販売台数で世界2位を誇るルノー・日産・三菱自連合にとって大打撃となりそうだ。
地検特捜部は19日、関係先として横浜市の日産本社などを家宅捜索した。
関係者によると、自宅の購入代金などを同社側に全額負担させる一方、報酬として計上していない疑いがあるとして地検特捜部に日産の関係者が相談していた。同社側が負担した金額は数十億円に上るとみられる。こうした不正には日産の代表取締役のグレッグ・ケリー氏も関与していたという。
3社の有価証券報告書などによると、ゴーン氏は2017年度、日産から7億3500万円、三菱自から2億2700万円、ルノーから740万ユーロ(約9億5千万円)の役員報酬を受けている。
日産は19日、内部通報を受け、数カ月間にわたって内部調査を進めていたことを明らかにした。開示されるゴーン氏の報酬額を少なくするため、長年にわたり、実際の報酬額よりも少ない金額を有価証券報告書に記載していたことが判明したという。
ゴーン氏については日産の資金を私的に支出するなどの複数の重大な不正行為が認められ、ケリー氏がそれらに深く関与していることも分かったとしている。
日産は「これまで検察当局に情報を提供するとともに、当局の捜査に全面的に協力してまいりましたし、引き続き今後も協力してまいる所存です。株主の皆様をはじめとする関係者に多大なご迷惑とご心配をおかけしますことを、深くおわび申し上げます」などとするコメントを発表した。
カルロス・ゴーン氏は1954年にブラジルで生まれ、78年にミシュランに入社した。85年にブラジルミシュラン社長に就いた後、89年には北米ミシュラン社長に就任。96年にルノーに入社し、副社長に就いた。
99年、販売不振などで経営危機に陥っていた日産の筆頭株主になったルノーから日産に派遣された。同年10月、3年間で1兆円のコスト削減などを柱とする日産リバイバルプランを公表し、その後、日産の業績はV字回復。2000年に日産の社長に就いた。01年に最高経営責任者(CEO)となった。17年にCEOは退任した。
16年には、三菱自の燃費不正問題をきっかけに日産が三菱自に出資し、ゴーン氏は三菱自の会長に就いた。 
ゴーン前会長を再逮捕。起訴された“50億円”に加えて、さらに40億円を過小記載 2018/12
東京地検特捜部は12月10日、日産自動車の有価証券報告書に自らの報酬を約50億円少なく記載したとして、カルロス・ゴーン前会長とグレゴリー・ケリー前代表取締役を金融商品取引法違反の罪で起訴した。
東京地検はまた、昨年度までの3年間でも、自らの報酬を少なく記載した疑いで、ゴーン、ケリー両容疑者を再逮捕した。
共同通信などの各メディアが報じた。
起訴されたのは他に、法人としての日産自動車。
NHKニュースによると、ゴーン容疑者らは2014年度までの5年間、有価証券報告書に自らの報酬を約50億円少なく記載したとして、金融商品取引法違反の罪に問われている。
2人の再逮捕の容疑では、17年度までの3年間で、日産自動車の有価証券報告書に約40億円少なく記載した疑いが持たれている。
起訴された最初の逮捕容疑と合わせると、10〜17年度の8年間の虚偽記載容疑の総額は、約90億円にのぼるとみられる。
朝日新聞デジタルによると、ゴーン前会長とケリー前代表取締役は、いずれも容疑を否認しているという。 
カルロス・ゴーンのもたらした光と影 2018/12
日産自動車の経営再建を託され、仏ルノーから乗り込んだカルロス・ゴーン。業績を急回復させただけでなく、カリスマ経営者として日本の企業風土まで変えた。その男が11月、東京地検に逮捕され、日産会長の座も追われた。ゴーンが日本と関わった19年間の「光と影」を追った。
ゴーンの登場は日産だけでなく、日本の企業風土に広く「変革」をもたらした。
送り込まれた男
約2兆円の有利子負債を抱えて破綻(はたん)寸前の状態に陥った日産自動車は1999年3月、仏自動車大手のルノーと資本提携した。ルノーは、タイヤメーカー・ミシュランの米国法人とルノーで大リストラに辣腕(らつわん)をふるったカルロス・ゴーン(当時はルノー副社長)を、日産の最高執行責任者(COO)として日産に送り込んだ。ゴーンは99年8月の朝日新聞のインタビューで、「5年以内に日産の再建を果たせなければ、失敗ということだ」と強調した。「有利子負債について日本企業は鈍感だった」とも述べ、それまでの日産の経営のあり方を暗に批判。負債の圧縮に最善を尽くす考えを示した。
   日産リバイバルプランの概要
   自社工場5工場閉鎖
   人員2.1万人削減
   部品などの調達先50%削減
   1.4兆円の有利子負債0.7兆円削減
ゴーンはこの年の10月、資本提携後にまとめた大胆なリストラ策「日産リバイバルプラン」を発表。三つの完成車工場と二つの部品工場を閉鎖して生産能力を大幅に縮小し、3年半かけてグループの人員の14%にあたる2万1千人を削減することが計画の柱だった。不動産など資産売却も進めて財務体質を改善し、「日産を完全復活させる」と宣言した。「再建にタブーはない」と打ち出したゴーンのもと、日産は退路を断って再建への一歩を踏み出した。
V字回復
「再建請負人」として送り込まれたゴーンは、「コミットメント」(必達目標)を掲げて改革を進めた。目標の達成を責任を負って約束するという意味だ。2001年3月期に黒字に転換できなければ日産を去る――。自らそう宣言して改革を進めた。「コミットメント」はゴーン流経営の「代名詞」となり、模倣する経営者も相次いだ。日産の00年3月期連結決算は、本業の不振とリストラによる特別損失の計上が響いて、純損益が6844億円の赤字に陥った。ゴーンは「負の遺産を一掃した」「一過性の赤字に過ぎない」と強調し、強気の姿勢を崩さなかった。00年6月には社長兼COOに昇格し、名実ともに日産のかじ取り役となった。瀕死(ひんし)の状態だった日産に「緊急手術」を施したゴーン流改革は、結果となって表れた。01年3月期の純損益は3311億円の黒字に「V字回復」。ゴーンは記者会見で、「最初のコミットメントは達成された」と語った。02年には「リバイバルプラン」の1年前倒しでの達成を宣言。03年には有利子負債を完済した。剛腕経営者・ゴーンの名は国内外にとどろいた。
往年の名車を再び世に出したのもゴーンだった
01年、米デトロイトでのモーターショーで「日産は戻ってきた。Zを復活させる」と「フェアレディZ」の復活を宣言。翌年、13年ぶりにフルモデルチェンジして発売し、日産再生のシンボルとなった。排ガス規制をクリアできず、生産中止に追い込まれていた「スカイラインGT−R」の後継車「GT−R」も07年に発売し、納車まで数カ月待ちの人気となった。
日本の企業風土に風穴
ゴーン流経営の影響は自動車業界を支える関連産業にも及び、日本流の経営を変革する「劇薬」にもなった。日産は1999年、鋼材や部品の調達先を絞って大量発注する代わりに、値下げを求める交渉に乗り出した。調達コストの低減を狙った取引先との冷徹な交渉は「ゴーン・ショック」と呼ばれ、日本の産業界を大きく揺さぶった。自動車用鋼板の値下げを迫られた鉄鋼業界では、2002年に川崎製鉄とNKKが経営統合して、JFEホールディングスが発足。「ゴーン・ショック」がもたらした価格競争が、業界再編の引き金となった。ゴーン流経営は、日本独特の「ケイレツ」にもメスを入れた。ゴーン社長(当時)が率いた日産は、系列企業の多くから出資を引き揚げた。その結果、系列企業では、日産以外の自動車メーカーとの取引を拡大したり、外資の傘下に入ったりする動きが広がった。自動車メーカーを頂点に部品メーカーがピラミッドのように連なり、協力し合って開発や生産を進める「ケイレツ」は、親会社と下請けの密接な関係で成り立つ。閉鎖的な日本市場の象徴として、かねて海外から批判を浴びてきたが、ゴーンの登場によって変化を余儀なくされた。系列の解体以外にも、従来の日本型経営を打破する動きは広がっていった。大手企業で外国人をトップに登用する例は珍しくなくなり、社内の公用語を英語にしたり、賃金に成果主義を取り入れて年功序列型を見直したりした企業も多い。
「ゴーン流」の裏にあった負の側面。ゴーン自身にも捜査の手が迫っていた。
切り捨てられたもの
村山工場(東京)など5工場の閉鎖、2万1千人の人員削減、系列取引の見直し……。ゴーンがCOOとしてまとめた再生計画「日産リバイバルプラン」は、過去に例のないリストラ策だった。徹底した合理化で仏タイヤ大手ミシュランや仏ルノーの業績を改善させて頭角を現し、「コストカッター」の異名をとる。リバイバルプランを発表した1999年10月の記者会見では、たどたどしい日本語でリストラ策への理解を求めた。「どれだけ多くの努力や痛み、犠牲が必要となるか。私にも痛いほどわかっています」日産は95年にも国内有数の完成車工場だった座間工場(神奈川県座間市)を閉鎖したばかりで、社内外に大きな衝撃が広がった。閉鎖された座間工場から村山工場への異動に応じ、2度目の工場閉鎖を通告された社員もいた。当時の労働組合幹部は工場閉鎖の報に、こう言って肩を落とした。「座間工場の閉鎖の時も極めて大きな痛みを伴ったのに、我々は結果的に会社側の求めに応じた。その後もできる限りの協力をしてきた。にもかかわらず……」改革の痛みを引き受けた人々はいま、有価証券報告書に役員報酬を過少記載したとして逮捕されたゴーンに何を思うのか。
いびつな3社連合
19年前にルノーから日産自動車に送り込まれたゴーン。2005年以降はルノーと日産の最高経営責任者(CEO)を兼務するようになり、両社を結びつける「接着剤」の役割を果たしてきた。独自開発の技術や企業風土へのこだわりが強い自動車メーカー同士の再編には「成功例」が少ないと言われるなか、日産とルノーの資本業務提携を維持し、世界的な自動車グループに育てた手腕を評価する声も多かった。だが、ゴーンの失脚を機に、日産・ルノー・三菱自動車の3社連合の主導権を握ってきたルノーに対する日産社内の不満が顕在化してきた。日産はルノーの出資を受け入れて経営難を乗り切ったが、近年のルノーの業績は振るわない。それでも、ルノーが日産に43%を出資して議決権を持つ一方、日産のルノーへの出資は15%にとどまり、議決権もない。売上高も利益も上回る日産が、多くの利益をルノーに配当として納めてきた。こうした「不平等条約の改正」が日産幹部の宿願となっているが、ルノーに15%を出資するフランス政府は、資本関係を見直したい日産に神経をとがらせている。11月30日(日本時間12月1日)にはフランス政府側の要請で、3社連合の関係をめぐってマクロンと安倍晋三の日仏両首脳が会談した。ルノーと日産の関係は外交課題にもなりつつある。
疑われる私物化
「当社の代表取締役会長カルロス・ゴーンについて、社内調査の結果、本人の主導による重大な不正行為、大きく3点を確認いたしました」。ゴーン逮捕直後の記者会見で、日産社長兼CEOの西川広人が語った。3点とは――。1開示される実際の報酬額よりも減額した金額を有価証券報告書に記載していた 2目的を偽って私的な目的で当社の投資資金を支出した 3私的な目的で当社の経費を支出した、の三つだ。会見で詳細は明かされなかったが、関係者への取材から、さまざまな疑惑が浮かび上がってきた。ゴーンは、世界各地に「自宅」を所有していた。レバノン・ベイルートやブラジル・リオデジャネイロで利用していた高級住宅は、日産が海外子会社を通じて購入していたことが判明した。「家の価格は500万ドル(約5億6千万円)はくだらない」。ベイルートの邸宅を記者が訪ねると、地元不動産事情に詳しい人らはそう証言した。日産がゴーンの姉に対し、2002年から、年10万ドル(約1130万円)前後を支出してきたこともわかった。「アドバイザー業務」の契約を結んでいたが、実際には姉に業務の実態はなかったという。ほかにも、不正の疑惑が事件を機に噴出した。株価に連動する報酬の権利(約40億円分)を有価証券報告書に記載していなかった疑い。私的な投資の損失を日産に付け替えた疑惑……。ある日産幹部は漏らした。「圧倒的な存在になりすぎた。公私混同、会社の私物化につながった」
突然の逮捕
容疑
国内外に衝撃を与えたゴーンの逮捕。だが事態は、半年以上前から水面下で進行していた。日産社内で、ゴーンをめぐる不正な資金工作が告発されたのは、今年3月ごろ。情報は検察当局に寄せられ、6月にスタートしたばかりの「司法取引」制度を使った捜査が進められた。東京地検特捜部が着目したのが、巨額の「報酬隠し」の疑いだった。日本では09年度決算から「年収1億円以上」の報酬を得る上場会社の役員について、有価証券報告書に氏名と金額を記載するルールができた。ゴーンの報酬は毎年、「10億円」前後と記載されてきた。ところがゴーンは、年に約10億円をさらに受け取るという合意を日産側と毎年交わしていた疑いが浮上した。「コンサル料」などの名目で、退任後にまとめて受け取る仕組みをつくっていたという。特捜部は、10〜14年度の5年間で、役員報酬を約50億円少なく有価証券報告書に記載したとする金融商品取引法違反容疑で逮捕状をとった。
勾留いつまで
11月19日夕、ビジネスジェット機で羽田空港に到着するのを待ち構え、特捜部はゴーンを逮捕した。特捜部に逮捕されると、計20日間勾留されるのが通例だ。連日のように担当検事の取り調べがある。起訴された場合、ゴーンが否認を続けていると、勾留が長引くケースも考えられる。過去には100日以上勾留された事件も少なくない。ゴーンは、自ら立て直した日産を私物化していたのか――。疑惑の解明は緒に就いたばかりだ。
3社連合の未来は
ゴーンが逮捕された3日後の11月22日。日産社長の西川広人は臨時取締役会を招集。ゴーンの会長職を解き、代表権を外すことを決めた。日産、ルノーと3社連合を組む三菱自動車も26日に臨時取締役会を開いて、同様の対応を決めた。一方、ルノーは11月20日の取締役会でゴーンの会長兼CEO職の解任を見送り、CEOの暫定代行にCOOのティエリー・ボロレを充てる人事を決めた。日産・三菱自とルノーの間で対応は割れている。日産側はゴーンの失脚をルノーの影響力をそぐ好機ととらえているが、思惑通りにことが運ぶかどうかは見通せない。日産にとっては、ゴーンの後任人事が最初の関門になる。日産とルノーは1999年の提携時に、経営面で重要なポストをルノーから出すことを取り決めており、まずはルノーの影響力をそぐ人選ができるかどうかが焦点となる。ゴーンの「完全追放」も関門だ。日産は早期に取締役からも外す方針で、臨時株主総会を開いて取締役の解任を決議する構えだ。だが、日産に43%を出資するルノーが議案に反対する可能性もあり、予断を許さない。最大の難題は、ルノーとの資本関係の見直しだ。ボロレは「ルノーグループの利益と3社連合の持続可能性を守るという使命に集中し続ける」との声明を発表しており、日産側との溝が浮き彫りになってきた。
マクロンと安倍もアルゼンチンで会談し、マクロンは3社の関係が今後も維持されるよう求めた。3社連合の行方は、日仏両政府も巻き込んで混沌(こんとん)としている。 
ゴーン前会長を追起訴 特別背任と金商法違反の罪で 2019/1
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が私的な損失を日産に付け替えたなどとして逮捕された特別背任事件で、東京地検特捜部は11日、前会長を会社法違反(特別背任)の罪で追起訴した。また、前会長と前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪でも追起訴。同法の両罰規定に基づき、法人としての日産も追起訴した。前会長の弁護人は同日、東京地裁に保釈を請求した。
前会長は、1約18億5千万円の評価損が生じた私的な投資契約を2008年に日産に付け替えた2この契約を自分に戻す際に約30億円分の信用保証に協力したサウジアラビアの実業家ハリド・ジュファリ氏に対し、日産子会社から09〜12年に計1470万ドル(約12億8400万円)を不正に送金した――として、特別背任容疑で再逮捕された。
今月8日、勾留理由を開示する手続きに出廷した際は、「容疑はいわれのないもの」と述べた。このうち、1については「日産に損失を負わせない限りで、一時的に日産に担保を提供してもらうように要請した。日産に一切損害を与えていない」と反論。2についても、「ジュファリ氏は日産に対して極めて重要な業務を推進してくれた。関係部署の承認に基づいて、相応の対価を支払った」と主張した。
有価証券報告書の虚偽記載については、10〜17年度の8年間で計約91億円分を記載しなかったとの容疑で、ケリー前代表取締役とともに逮捕され、10〜14年度の5年分は既に起訴されている。15〜17年度の3年分の容疑は、昨年12月20日に東京地裁が検察側の勾留延長の請求を却下したため、処分保留で捜査が続けられていた。
前会長とケリー前代表取締役はそれぞれ、これらの容疑も否認している。前会長は「退任後の報酬の支払いは確定しておらず、記載義務はない」、ケリー前代表取締役は「退任後の支払い方法は検討していたが、役員報酬とは関係ない」と供述しているという。
関係者によると、前会長は高額報酬への批判を避けるため、実際の年間報酬は約20億円だったが、報告書に記載するのは約10億円にとどめ、差額の約10億円は退任後に受領することにしていたという。 
証券取引等監視委員会、報酬の虚偽報告でゴーン元会長らを東京地検に告発 2019/1
金融庁証券取引等監視委員会は、1月10日、金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出)の疑いで、法人としての日産自動車と、カルロス・ゴーン元会長、グレッグ・ケリー元代表取締役の2人を東京地方検察庁に告発したと発表した。
容疑は、ゴーン容疑者とケリー容疑者が共謀して2016年連結会計年度にゴーン容疑者の報酬、賞与その他その職務執行の対価が約22億8200万円だったにもかかわらず、その一部を隠ぺい、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄にゴーン容疑者の総報酬と金銭報酬を10億7100万円と記載した有価証券報告書を提出していた。
同様に、2017年3月期連結会計年度の総報酬などが約24億0200万円だったのに対して総報酬を10億9800万円と記載、2018年3月期の総報酬などが24億9100万円だったのに対して7億3500万円と記載し、それぞれ有価証券報告書を提出していた。
これらの行為は金融商品取引法違反で、法定刑は10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金またはこれを併科、法人としては7億円以下の罰金となる。  
日産カルロスゴーン会長の金融商品取引法違反 2019/3
逮捕容疑となっている金融商品取引法違反とは何か
昨夜行われた日産の記者会見で、社長兼最高経営責任者の西川廣人氏の発表によると、カルロス・ゴーン会長、およびグレッグ・ケリー取締役が、3つの不正行為を行ったということです。
その中の1つは、次のようなものです。
「開示されるカルロス・ゴーンの報酬額を少なくするため、長年にわたり、実際の報酬額よりも減額した金額を有価証券報告書に記載したいう不正行為」
これが、カルロス・ゴーン氏の逮捕容疑である金融商品取引法違反に該当します。
順番に見ていきます。
まず、有価証券報告書とはどのようなものでしょうか?
「有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ)とは、金融商品取引法*で規定されている、事業年度ごとに作成する企業内容の外部への開示資料である。略して有報(ゆうほう)と呼ばれることもある。」
カルロス・ゴーン氏の報酬額が、正しく開示されていなかったのが問題のようです。
さらに、この不正には、カルロス・ゴーン氏の側近とも言われるグレッグ・ケリー代表取締役が関与していたということのようです。具体的には、
「平成23年(2011年)3月期から平成27年(2015年)3月期までの5年間のゴーン会長の報酬の合計額は99億9800万円にも関わらず、有価証券報告書には49億8700万円と記載されていたということが判明したそうです。金融商品取引法(有価証券報告書の虚偽記載)」
つまり、違反とされる対象期間は、2011年から2015年の5年間のようですね。
同罪で逮捕されたグレッグ・ケリー氏は2008年4月に日産の執行役員に昇格、2012年6月から日産の代表取締役を務めていました。
金融商品取引法違反と脱税との違い
たびたび、企業の経営者の逮捕容疑として話題になる脱税との違いも確認してみましょう。
「脱税とは、納税義務があると見なされている人が、その義務の履行を怠り、納税額の一部あるいは全部をのがれることである。」
ざっくりいうと、報酬額を正しく申告せず、納税義務を怠った場合は、脱税。報酬額を定められた手続きに従って開示していないのは、金融商品取引法違反、というイメージです。
カルロス・ゴーン氏の保釈金はどうなるのか
基本的な保釈までの流れは、起訴→保釈の申請→保釈の許可→保釈金の決定となります。
まだ、取り調べが続いているので、しばらく時間がかかりそうですが、保釈金の額が、過去最高と言われているのは、ホリエモンこと堀江貴文氏の6億円です。
ライブドア事件では、有価証券報告書に虚偽の内容を記載、証券取引法違反での逮捕ということですので、今回のケースと似たようなパターンと考えて良いかもしれません。
しかし、具体的な事件の内容については、どのような性質のものであったか、期間、今後のゴーン氏の事件解明への協力など、様々な要因が関係してくるかと思われますので、なんとも言えません。
「金融商品取引法は、有価証券報告書の重要事項について虚偽の記載をした場合、懲役10年以下、もしくは罰金1千万円以下を科すと定めています。さらに、社員が業務に関して違法行為をした場合には、事業主体の法人も罰する両罰規定があり、法人には7億円以下の罰金を科すとしています。」
しかし、ライブドア事件と同等、もしくはそれ以上の可能性もありうると考えても良いのではないでしょうか?
逮捕されたカルロス・ゴーン氏の年収は、今回の金融商品取引法違反の対象期間となった5年間だけでも、1年あたり約20億円。総資産はちょっと想像がつきませんが、2000億以上との噂もあります。
支払い能力があるということで、高額な保釈金の請求もあるかもしれませんね。 
 
 
 
 

 

●レバノン逃亡
日産に課徴金24億円勧告へ 金融商品取引法違反の疑い 12/-
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)が巨額の役員報酬を隠したとされる事件で、証券取引等監視委員会が10日にも、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで、日産に対して課徴金約24億2500万円を科すよう金融庁に勧告することがわかった。
監視委は1月までに、2011年3月期〜18年3月期の8年間で、ゴーン前会長の役員報酬計約91億円分を隠したとして前会長を告発。この8年分を東京地検特捜部が起訴しているが、今回は課徴金勧告の時効(5年)がかからない15年3月期〜18年3月期の4年分が対象となる。
本来の課徴金額は約39億7100万円にのぼったが、自主的に違反を申告すれば減額が認められる制度があるため、日産は監視委が本格検査に入る前の今夏、違反を申告。監視委内では、すでに刑事事件化されているため、減額を認めることには異論もあったが、日産側の検察への申告が事件化の端緒だったことを考慮。約24億2500万円への減額を認める。
ゴーン前会長が起訴された事件の初公判は、来春にも開かれる見通しとなっている。ともに起訴された日産が有罪になれば罰金が科され、課徴金額と相殺されることになる。  
ゴーン被告「私はレバノンにいる」渡航禁止も出国  12/31
金融商品取引法違反などの罪に問われ、ことし4月に保釈された日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告が「私はいまレバノンにいる」とする声明を発表し、海外への渡航を禁じられているにもかかわらず日本を出国したことを明らかにしました。声明では出国の理由を「不公正な日本の司法から逃れるためだ」と主張していて、今後、レバノン政府がどう対応するかが焦点となります。
日産自動車のカルロス・ゴーン被告は、みずからの報酬を有価証券報告書に少なく記載した罪と日産の資金を不正に支出させるなどした特別背任の罪で起訴され、ことし4月に保釈されました。
東京地方裁判所が保釈の際に示した条件では、海外への渡航は禁止されています。
しかし、ゴーン元会長は日本時間の31日正午すぎ、アメリカの広報担当者を通じて声明を発表し、この中で、「私はいまレバノンにいます。もはや私は有罪が前提とされ、差別がまん延し、基本的な人権が無視されている不正な日本の司法制度の人質ではなくなります」と述べ、すでに日本を出国したことを明らかにするとともに日本の司法制度を批判しました。
そして、「私は不公正と政治的迫害から逃れました。ようやくメディアと自由にコミュニケーションできるようになりました。来週から始めるのを楽しみにしています」と述べ、近くメディアなどへの何らかの対応を行うことを示唆しました。
レバノンの治安当局者によりますと、ゴーン元会長と見られる人物はプライベートジェットにのってベイルートに到着したということです。その際の乗客名簿には違う名前が記載されていたということです。
カルロス・ゴーンからの声明。
私はいまレバノンにいます。もはや私は有罪が前提とされ、差別がまん延し、基本的な人権が無視されている不正な日本の司法制度の人質ではなくなります。日本の司法制度は、国際法や条約のもとで守らなくてはいけない法的な義務を目に余るほど無視しています。私は正義から逃げたわけではありません。不公正と政治的迫害から逃れたのです。いま私はようやくメディアと自由にコミュニケーションできるようになりました。来週から始めるのを楽しみにしています。
ゴーン被告とレバノン
レバノンは、ゴーン元会長の祖父の出身国です。ゴーン元会長はブラジルで生まれ幼少期を過ごしましたが、6歳の時にレバノンに移住し、レバノンの高校を卒業しました。ゴーン元会長はフランス、ブラジルのほかにレバノンの国籍も持っています。日産の会長になってからもたびたびレバノンを訪れ、社会奉仕活動に寄付をするなど強い結び付きを保ってきました。東京拘置所に勾留されていた際にはレバノンの大使館の関係者がたびたび面会に訪れました。こうしたことから、レバノンでは、ゴーン元会長はビジネスで大きな成功を収めた人物として尊敬を集めていて、日本の検察に逮捕された際にも、レバノンの人々からは「何かの間違いだ」などとゴーン元会長を擁護する声が多く聞かれました。また、「私たちは皆、カルロス・ゴーンだ」というスローガンとともに、ゴーン元会長への支援を訴えるキャンペーンも行われています。さらにレバノン政府としても去年11月には、レバノンの外相が、ベイルートに駐在する日本の大使を外務省に呼び出し、逮捕について説明を求めたり、政府から弁護士を派遣する考えを示したりするなど、ゴーン元会長を支援する立場を取っています。関係者によりますと、ゴーン元会長が中東のオマーンの販売代理店に日産の資金を支出させ私的に流用したとされる事件では、みずからに資金を還流させる際に使ったとみられるペーパーカンパニーの設立に前会長と親しく同じ学校の出身だったレバノン人の弁護士が関わっていました。また、日産が投資の名目でおよそ60億円を出資したオランダの子会社を通じて前会長のレバノンの高級住宅が購入されていたことも日産の内部調査などで明らかになっています。このほかゴーン元会長がレバノンの3つの大学に対してゴーン前会長の指示で正式の社内手続きを経ずに寄付を行っていた疑いも明らかになり、このうち、1つの大学には5年間で合わせて100万ドル=1億800万円を寄付していたということです。ゴーン前会長は去年11月19日、レバノンから到着したジェット機を降りた直後に羽田空港で逮捕されていました。
レバノン政府の対応が焦点に
レバノン政府は、ゴーン元会長の到着についてこれまでのところ公式な反応を示していませんが、日本政府から入国の経緯についての説明や身柄の引き渡しなどを求められた場合、どのように対応するのかが今後の焦点となります。  
ゴーン被告レバノンへ「日本の司法制度の人質にならない」 12/31
会社法違反(特別背任)などで起訴され保釈中の日産自動車<7201.T>前会長カルロス・ゴーン被告が31日、声明を発表し、レバノンにいることを確認した。「不正に操作された」日本の司法制度の「人質」にはならないと表明した。
ゴーン被告は声明で「私は今レバノンにいる。有罪が前提で、差別がまん延し、基本的人権が認められない、不正に操作された日本の司法制度の人質にはもうならない」と語った。
また「私は不正と政治的迫害から逃れたのであって、正義から逃れたのではない。ようやくメディアと自由にコミュニケーションが取れるようになった」などと述べた。
ゴーン被告はフランス、ブラジル、レバノンの国籍を有している。どのようにして日本を出国できたのかは不明。被告は保釈の際、海外渡航禁止などが条件となっており、保釈中は当局の厳しい監視下にあったほか、パスポートは弁護士に預けていた。
NHKによると、出入国在留管理庁にはゴーン被告が出国した記録はない。NHKはまた、レバノンの治安当局者の話として、ゴーン被告に似た人物が別名で、プライベートジェット機でベイルートの国際空港に到着したと報じた。
ゴーン被告の弁護を担当する弘中惇一郎弁護士は、NHKが中継した記者団の取材で、被告のパスポート3冊は弁護団が現在も保管していると述べた。また、ゴーン被告の出国は31日朝のニュースで初めて知り、非常に驚いているとコメントした。
日本の法務省によると、レバノンは日本と犯罪者引渡条約を結んでおらず、ゴーン被告の身柄が日本に引き渡される可能性は低い。
フランスのパニエ・リュナシェ経済副大臣は仏ラジオ局に対し、ゴーン被告が日本を出てレバノン入りしたというニュースに「非常に驚いている」と述べ、メディアを通じて知ったと明らかにした。また、法を超越する者はいないが、フランス国民としてゴーン被告は領事支援を受けられるとした。
日産の広報担当者はコメントを控えた。在日レバノン大使館は「何の情報も得ていなかった」とした。ブラジル大使館からのコメントは得られていない。
英紙フィナンシャル・タイムズは30日、ゴーン被告は外出を禁じられていなかったとし、被告の側近の情報として、 29日夜にベイルートのラフィク・ハリリ国際空港に到着したと伝えた。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、複数の関係筋の話として、ゴーン被告が日本を出国し、トルコ経由でレバノンに30日到着したと報じた。被告は公正な裁判を受けられないと確信し「業界や政治の人質として捕らわれることに嫌気が差した」とのある関係者の話を紹介した。ゴーン被告は数日中にレバノンで会見を開く予定という。
ある関係筋は、ロイターに対し「(ゴーン被告は)裁判で検察と戦うのをあきらめたのだと思う」と語った。
国内メディアは31日夜、ゴーン被告が許可を得ずに海外に渡航したとして、東京地検が同被告の保釈の取り消しを裁判所に請求したと報じた。NHKによると、東京地裁が請求を認めれば、保釈は取り消され、今後、保釈金15億円は没収される見通し。 
ゴーン被告の弁護士「寝耳に水」 日本を逃れレバノンへ 1/1
日産自動車の前会長で金融商品取引法違反などの罪で起訴され、保釈中のカルロス・ゴーン被告(65)が31日、日本を出国して中東レバノンへ渡航していたことが明らかになった。
レバノンから発表した声明でゴーン被告は、正義から逃げたのではなく「不公平と政治的迫害から逃げた」と説明した。
保釈の条件では、海外への渡航は禁止されている。ゴーン前会長が日本からどのように出国したかは不明だ。レバノンは、日本と犯罪人引渡し条約を結んでいない。
ゴーン被告は容疑を全面的に否定している。
被告の主任弁護人を務める弘中惇一郎弁護士は31日、「報道されている以上のことは知らず、寝耳に水という状況でとてもびっくりしている。今後、情報が入れば裁判所に提供していきたい」と述べた。
弘中弁護士はさらに、「ゴーン元会長のパスポートは弁護士が預かっており、弁護団がパスポートを渡すようなことはありえない」と説明した。
ゴーン被告はブラジルでレバノン系の両親の間に生まれ、レバノンの首都ベイルートで幼少期を過ごした後、フランスへ移住した。そのため、ブラジルのほか、レバノンとフランスの市民権を持つ。
NHKはレバノン治安当局の話として、ゴーン被告とみられる人物がプライベートジェットでベイルートに到着したが、「別の名前で入国した」と伝えた。
さらに、東京地方裁判所は、海外への渡航を禁じたゴーン被告への保釈条件は変更していないと明らかにしたという。
ゴーン被告は31日、レバノン渡航を伝える複数報道の後、短い声明を発表した。
声明では自分がレバノンにいることを認めた上で、「私はもう、有罪が前提とされ、差別がはびこり、基本的人権が否定されている、仕組まれた日本の司法制度の人質ではなくなった」と語った。
「私は正義から逃げたのではなく、不正と政治的迫害を逃れた。これでやっとメディアと自由にやりとりができるし、来週からそれを始めるのを楽しみにしている」 
東京地検が異例の理由公表 ゴーン被告の妻に逮捕状 1/7
中東のレバノンに逃亡した日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告の妻のキャロル・ナハス容疑者について東京地検特捜部は去年4月に裁判所で行われた特別背任事件の証人尋問でうその証言をしたとして偽証の疑いで逮捕状を取ったことを明らかにしました。東京地検特捜部は通常、容疑者の逮捕や起訴以外を報道発表することはなく、逮捕状を取った段階で公表するのは異例です。
その理由について特捜部の担当副部長は、「ゴーン被告は正規の手続きを経ずに出国しわが国の司法制度の運用に大きな問題があると一方的に批判している。妻のキャロル容疑者と自由に面会できないことを非人道的な取り扱いだとする同情的な論調もあり、強く是正する必要があると考えた」と説明しました。
そのうえで「キャロル容疑者は特別背任事件の事件関係者であり、検察はレバノン人を含むほかの重要な事件関係者と多数回、口裏合わせや証拠隠滅行為をしていたことを把握していた。このためキャロル容疑者との面会禁止がゴーン被告の保釈条件になっていたのであり嫌がらせではない」と述べました。
特捜部はキャロル容疑者の逮捕状を取ることで、今回の逃亡への厳しい姿勢を国内外にアピールするほか、国際手配によってキャロル容疑者の国外での動きを制限するねらいもあるものとみられます。
キャロル・ナハス容疑者について東京地検特捜部が偽証の疑いで逮捕状を取ったことについて、ゴーン元会長の広報担当者はロイター通信に対し、保釈中の去年4月、記者会見の開催を発表したあとに元会長本人が再逮捕されたことに触れたうえで「今回は、彼が初めて自由に話そうという記者会見の前日に、妻に対して逮捕状が出された」と指摘しました。
そのうえで、広報担当者は「あわれだ」と述べ、強く非難しました。 
ゴーン被告の保釈金15億円没収 過去最高額か 東京地裁 1/7
日産自動車の元会長のカルロス・ゴーン被告が保釈中に中東のレバノンに逃亡した事件で、東京地方裁判所は、7日までに元会長が納めていた保釈金合わせて15億円を全額没収する決定をしました。没収された保釈金は、過去最高額とみられます。
日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告(65)について、東京地方裁判所は先月31日、ゴーン元会長が海外への渡航を禁じていた保釈の条件を破って中東のレバノンに入国したとして、保釈を取り消す決定をしました。
ゴーン元会長は、去年3月と4月に保釈された際、合わせて15億円の保釈金を納めていましたが、裁判所が7日までに15億円全額を没収する決定をしていたことが分かりました。
没収された保釈金の額は、平成9年に6億円の保釈金を没収されたイトマン事件の許永中氏を上回り、過去最高額とみられます。没収された保釈金は今後、国庫に入ることになります。 
 
  
 
 
 

 

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●ゴーン被告 記者会見 日本の司法制度を批判 逃亡経緯は話さず
保釈中に中東のレバノンに逃亡した日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告は日本時間の8日夜、逃亡後、初めて記者会見を行い、逃亡の経緯は明らかにせずに、日本の司法制度について「基本的な人権の原則に反する」として批判しました。
首都ベイルートで開かれた記者会見には各国のメディア関係者、およそ100人が集まりました。
ゴーン元会長は、会見の冒頭、「私は言葉を奪われて以来、400日以上、この日を待ちわびてきた。私は無実のために闘ってきた」述べました。
そして、起訴された内容については「いずれも根拠がなく日産から支出された資金は正当なものだ」と主張しました。
そして、「私はきょう、最も基本的な人権の原則に反する日本の司法システムに光をあてることができる」と主張し、日本の司法制度を批判しました。
具体的には長期にわたって勾留が続いたことや弁護士を立ち会わせずに検察の取り調べが行われたこと、さらに長い期間、妻との接触が禁じられたことなどを挙げました。
また、「私はみなさんが関心を寄せている、日本からどのように脱出したかについては話すつもりはない。私は正義から逃げたのではなく不正義から逃げたのだ」と述べ、逃亡の経緯は明らかにしない意向を示しました。
またゴーン元会長は、日産とルノーの経営統合を進めようとしたことで排除されたと主張しています。
会見では、みずからの逮捕・起訴の背後にいた人物として、▽日産の西川廣人前社長や▽法務を担当していた外国人の専務、さらに▽経済産業省出身の社外取締役らの名前を挙げました。
そのうえで、「レバノン政府との関係を考慮して、日本政府関係者の名前は出すつもりはない」と述べました。 
●ゴーン被告、世界注目の会見は2時間25分の独演会
金融商品取引法違反の罪などで起訴され、保釈中に中東レバノンに逃亡した前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告(65)は8日、首都ベイルートで記者会見し、「身の潔白を確信している」と主張するとともに、「自身と家族を守るためだった」と日本からの逃亡を正当化した。会見を取り仕切ったPR会社は「親しい記者を招く懇親会的な位置づけ」と説明。ゴーン被告は“身内”だけの会場で自らの出張を一方的にまくし立てた。
多くの日本メディアを閉め出して行われた会見は、ゴーン被告が会見冒頭から約65分間にわたって記者の質問を受けることなく、自らの主張を一方的に話し続けた。
「身の潔白を確信している」
「(逃亡は)自身を守るためだった」
「一日8時間も取り調べを受け、弁護士も同席できなかった」
「日本の司法制度には推定有罪がはびこっている」
「取調官は英語とフランス語が話せないんだ」
紺のスーツ姿、赤のネクタイ姿で会見場に現れたゴーン被告は、話しているうちに興奮してきたのか、身ぶり手ぶりを交えながら自らの行動を正当化し、日本の司法制度を批判した。
会見を取り仕切ったのは、ゴーン被告が雇ったフランスのPR会社だった。「ゴーン氏が知り合いの記者らを招く懇親会的な位置付けだ」と今回の会見を説明。日本メディアの多くは「フェイクニュース」だとして排除され、日本のテレビ局で参加が認められたのはテレビ東京のみだった。ゴーン被告は会見で、大半の日本メディアの参加を拒んだことについて「日本のメディアは日産と検察当局の言い分を垂れ流してきた。客観的でない」と述べた。
会見前ににおわせていた日産社内のクーデターに関与したとする日本政府関係者の名前は「レバノン政府への配慮」で明かさず。日本からの逃亡方法については「関係者に迷惑をかけられない」と明かさない考えを強調した。ただ、逃亡時の心境を尋ねられると「出国したと分かった時、生き返ったような気分だった」と振り返った。
一方で、日産幹部の名前は次々と挙げた。自身の起訴内容について一つ一つ否定し、事件は西川広人前社長兼最高経営責任者(CEO)らがたくらんだとした。専務のハリ・ナダ氏、元副社長の川口均氏、今津英敏氏、社外取締役の豊田正和氏らを名指しし、豊田氏が政府当局と結びついているとの自説を展開した。日本政府を巻き込んだ全面対決の姿勢を示した。
保釈中の逃亡について「違法行為で問題かもしれないが、日本の検察も法を破っている」と強弁したゴーン被告。質疑応答も含め2時間25分の「独演会」に、日本政府関係者は「見せかけばかりで中身がない。いろいろと日本を批判しているが、法に従わないのはあり得ない」と厳しかった。
ゴーン被告の起訴内容 
日産自動車の元代表取締役と共謀し、2010年度〜17年度の自分の役員報酬が計約170億円だったのに、約78億円と記載した有価証券報告書を提出。08年10月、私的な投資で生じた約18億5000万円の評価損を日産に付け替えたほか、この投資を巡る信用保証で協力を得たサウジアラビア人実業家の会社に、子会社「中東日産」から計約12億8400万円を入金した。17年7月〜18年7月には、中東日産からオマーンの販売代理店に計約11億1000万円を支出させ、うち約5億5500万円を実質的に保有するレバノンの投資会社名義の預金口座に送金させ、日産に損害を与えたとされる。  
●ゴーン被告、日産側の調査を非難−記者会見に先立ち声明発表
日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告は日本時間8日朝、逃亡先のレバノンでの記者会見に先立ち声明を発表、フランスのルノーとの統合推進を阻止するため、日産が自分のことをスケープゴートにしたと非難した。
日産が数カ月前に完了した内部調査を「適正かつ公正」に実施されたものだと説明したことを巡っては、ゴーン被告は「真実のひどい曲解」だったと指摘した。
ゴーン被告の弁護団は発表資料で、日産の内部調査は同社の独立維持と特定幹部の保護、同被告の側近排除を目的としたものだったと批判した。弁護団の連絡先はフランス国内となっている。
弁護団は「その調査は事実を解明しようとするものでは全くなかった」とし、「カルロス・ゴーン氏が日産とルノーの統合を推進するのを妨げるため、ゴーン氏を失墜させるというあらかじめ決められた特定の目的に沿って始められ、実行された」と主張した。 
●ゴーン逃亡レバノンに231億円 安倍政権バラマキ外交効かず
今こそ、バラマキ外交の成果を問うべきだ。海外で「ハリウッドエスケープ」と称される日産前会長のカルロス・ゴーン被告の密出国劇。逃亡先のレバノン当局は、日本側への身柄引き渡しを拒否する姿勢を重ねて示している。
逃亡費用は2000万ドル(約22億円)以上とされる。日本政府はこのまま、金満ゴーンの「逃げっぱなし」を許すのか。「いざ」という時に効果ナシとは、無尽蔵な札束外交に意味はない。
そもそも、安倍政権の海外支援は日本自身の「国益確保」が建前だ。第2次政権の発足した2012年以降、海外へのバラマキ総額は実に累計60兆円を突破。特にイスラム過激派組織「IS」の怒りに火を注いだ15年1月の安倍首相のカイロ演説以降、中東諸国の支援に力を入れ、ご多分に漏れずレバノンにもカネをばらまいている。
レバノン国内には、シリア危機の長期化に伴い約150万人もの難民が流入。政情不安と経済低迷も長引き、日本は医療、廃棄物処理、食糧、教育、技能・職業訓練、治安維持など、あらゆる支援を続けてきた。その総額は12年以降、計約2億1000万ドル(約231億円)に及ぶ。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)が言う。
「バラマキも相手国との信頼関係が構築できなければ無意味です。レバノンとの間に犯罪人引き渡し条約が結ばれていないとはいえ、何事にも例外はある。実際にレバノンは昨年、引き渡し条約のない米国の要請を受諾し、レバノンと米国の二重国籍を持つ容疑者をFBIに引き渡した。それだけ日本は軽くあしらわれているのです。安倍首相も“外交のアベ”を自任するなら、この7年間で世界が無視できないカリスマになっていなければ、おかしい。実態は真逆で、単なるキャッシュディスペンサー扱い。ゴーン逃亡もレバノンに対し、日本がにらみを利かせられないことを見越した犯行でしょう。ゴーン被告の見ている風景こそ、世界各国の安倍外交へのまなざし。つまり『チョロい』ということです」
ドヤ顔でカネをばらまいても国益はおろか、ナメられっぱなしだ。 
 
 
 

 

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●ゴーン被告が出国後、初会見 逃亡は人生で最も困難な決断
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)は8日、レバノンの首都ベイルートで記者会見を開き、金銭的な不正行為に問われている日本から逃亡する決断は、人生で最も困難なものだったと述べた。ゴーン被告は自らについて、日本で「人質」になっていたと説明。そこで死ぬか、逃げるかの選択に直面していたと述べた。また、検察官は妻キャロル容疑者との接触を禁止することで、ゴーン被告の精神を打ち砕こうとしたと主張した。
同被告は昨年12月29日にレバノンに逃亡した。
フランスの自動車大手ルノーの前会長でもあるゴーン被告は、日本で受けた扱いは司法の国際基準を満たすものではなかったと、会見場を埋め尽くした各国の記者らに向かって述べた。また、拘置所では小窓のある部屋に収容され、週に2回しかシャワーを浴びることが許されなかったと説明。窓のない独房で130日間過ごしたとも訴えた。
ゴーン被告は、弁護士の同席なしで1日最長8時間の取り調べを受けたとし、「絶望感」は「深刻だった」と語った。そして、「私に言わせれば、仕事と家族、友人たちから残酷に引き離された」と述べた。ゴーン被告が保釈中の日本から逃亡して以来、公の場で発言したのはこれが初めて。劇的な逃亡の詳細は、協力者の安全を脅かすとして明かさなかった。一方で、「家族や愛する人たちと再会できて深く感謝している」と表明した。同被告が察知されずに国外に出た方法については、楽器ケースの中に身を隠したとの報道や憶測が広がっている。
東京地方検察庁はゴーン被告の記者会見後、「自身の犯した事象を度外視して、一方的に我が国の刑事司法制度を非難する被告人ゴーンの主張は、我が国の刑事司法制度を不当におとしめるものであって、到底受け入れられない」とする声明を発表。「逮捕・勾留は被告人ゴーン自身の責任に帰着するものである」とした。検察当局は、ゴーン被告がオマーンの日産の販売会社に対し、数百万ドル規模の不正な支払いをしたとしている。一方、日産は同被告が個人的な利得を目的に、会社の資金を還流させたとして、刑事告訴している。ゴーン被告に対しては、給与の過少申告の疑いもかけられている。同被告は、すべての容疑について無実だと主張している。
ゴーン被告は弁護団から、裁判の判決が出るまでに5年かかるとの見通しを示されたと述べた。また、犯罪容疑について認めるよう検察に圧力をかけられたと主張。「検察官から『自白しないとますます不利になる』と繰り返し言われた」と話した。同被告は、日本の刑事裁判における有罪率は99%だとし、それが公正な裁判を受ける望みはないと考えるようになった原因だったと述べた。その結果、「日本で死ぬか、逃亡するか」のどちらかだとの決意に至ったのは、難しいことではなかったと主張した。
ゴーン被告は自らを、日産と日本の司法の陰謀の犠牲者だと考えている。両者はルノーの影響力が増すことへの不安から、自身を日産の会長職から追放することを狙ったと訴えている。同被告は1999年、ルノーが倒産寸前の日産を救った提携の立役者となった。現在、ルノーは日産の株式の43%を保有。日産はルノーの株式の15%を持っている。この日の会見でゴーン被告は、「日本人の友人には、日産に対するルノーの影響を排除するには、私を排除するしかないと考えていた人もいた」と述べた。ただ、同被告はBBCの質問に答える格好で、その陰謀には安倍晋三首相は関わっていないとの見方を示した。日本の検察は7日、ゴーン被告の妻キャロル氏について、偽証容疑で逮捕状を取った。ゴーン被告は2018年11月に最初の逮捕をされた。のちに保釈されたが、妻との会うことは禁止された。2019年末になり、保釈条件を破ってプライベートジェット機に乗り、トルコ経由で市民権をもつレバノンに移動。妻と再会した。
この日の会見について、BBCでビジネスを担当するテオ・レゲット編集委員は、記者たちを引き付ける「華麗なパフォーマンスだった」と論評。「ゴーン被告は日本の司法制度について、基本的人権の原則に違反すると批判した。また、『復讐心に燃えた恥ずべき人たち』が彼を陥れようとしたと非難した」と伝えた。そのうえで、日産と日本政府は反論するだろうが、ゴーン被告は、劇的な逃亡もあいまって、この問題において独特のスタイルで主導権を握ったと論じた。 
●ゴーン被告 記者会見で逃亡を正当化 出国方法は明かさず
保釈中に中東のレバノンに逃亡した日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告が逃亡後、初めて記者会見を開き、「日本では公正な裁判を受けられる望みがなかった」などと述べ、逃亡を正当化する主張を行いました。
一方、どのように日本を出国したかについては一切、明かしませんでした。
日産自動車の元会長のカルロス・ゴーン被告は8日、逃亡先のレバノンの首都、ベイルートで各国のメディアを集めて記者会見を行いました。
会見でゴーン元会長は日本から逃亡した理由について「公正な裁判を受けられる望みがなかった。正義から逃げたのではなく不正義と迫害から逃げたのだ」と述べ、不正な手段であっても日本を出国したことを正当化する主張を行いました。
一方で、どのように出国し、レバノンに到着したかについては「協力してくれた人を危険にさらしたくない」などとして一切、明かしませんでした。
また、特別背任の罪などで起訴されたことについて「いずれも根拠がなく日産から支出された資金は正当なものだ」と述べて改めて無罪を主張しました。
各国の主要メディアはゴーン元会長が会見で行った発言についてこれまでのところ具体的な論評はしていませんが、捜査にあたった東京地方検察庁が会見を受けて発表した反論の声明を掲載するなど大きく取り扱っていて、世界的な関心の高さをうかがわせています。
記者会見の主な質疑
8日の記者会見では、英語やフランス語など4か国語を交えて1時間余りにわたって各国の記者の質問に答えました。
会見では、日本で特別背任などの罪で起訴されたことへの受け止めについて質問が集中しました。
ゴーン元会長は、日本で初公判を前に争点を整理する手続きを進めていたさなかに逃亡しましたが、記者から今後レバノンで裁判を受けるかと尋ねられると、「公正な裁判が受けられる国ではどこででも裁判を受ける」と答え、公正さが保たれるならば裁判に臨むという考えを示しました。
また、ゴーン元会長には、日本の弁護士がついていますが、事件に関する証拠について、「手元にあるものについてはレバノンの弁護士に渡している。日本とレバノンの弁護士は今後も協力していく」と述べ、引き続き無罪を主張する考えを示しました。
また、会見では日本からどのような方法で逃亡したかについても質問が相次ぎましたが、明らかにしませんでした。
ただ逃亡を決断した理由については「去年の年末、弁護士から裁判の開始まで時間がかかると聞かされた。心の支えである妻にも会えず、日本にとどまる必要はもうないと思った」と説明しました。
また、ゴーン元会長は、ルノーが求める日産との経営統合に関しては「完全な統合を求めるフランス側と自立性を求める日産との間でバランスをとっていた。完全な経営統合を提案していたわけではない」と説明し、日産側が一方的に自分を追い出そうと画策したと主張しました。
今後について問われると、「私はこれまでにもミッション・インポッシブルを何度も実現させてきた。数週間以内に汚名を返上する行動に出る」と説明しましたが具体的にどのような対応にでるのかは明らかにしませんでした。
今回の会見では日本からは一部の報道機関のみが出席を認められましたが、その理由について問われると、「会見に出席できるのは事実に基づいて報じているメディアだ。ほかのメディアは日産や検察側の言い分を分析や批判をせずそのまますべて報じている」と述べて出席を認める報道機関を意図的に選別したことを示唆しました。
ルノーとの経営統合 自主性保った形を目指していた
記者会見では、おととし、日産とルノーの経営統合を進めようとしたことで、これに反対する日産の幹部の策略によって失脚させられたと主張しました。
この経営統合についてゴーン元会長は、「完全な経営統合と言えば2つの会社が何もかも1つになることだが、私はそういう提案はしていない。フランス政府が完全な経営統合を求めているのは知っていたが、私は、自立を求める日産とのバランスの取れた提案をしていた」と述べて、持ち株会社を設立して日産とルノーを傘下に置くなど、自主性を保った形での統合を目指していたと説明しました。
一方、日産は、ゴーン元会長の不正は内部調査で確認されたものだとして、経営統合の検討とは関係なく、コンプライアンス上の問題でゴーン元会長の職を解き、責任を追及するという立場を示しています。
フィアット・クライスラーとの連合を考えていた
また記者会見の中でみずからが職を解かれたあとの日産自動車とルノー、三菱自動車工業の3社の連合について、「利益は落ち込んでおり方向性が見えない」などと批判しました。
ゴーン元会長は、日産のトップだった時期にフィアット・クライスラーを連合に加えて成長を図ることを考えていたとし、「実際にコンタクトをして、よい対話をしていたが、残念ながら結論が出る前に逮捕された。本来は大きなチャンスだった」と話しました。
フィアット・クライスラーは、ゴーン元会長が逮捕されたあとの去年5月、日産と連合を組むルノーに経営統合を提案しましたが、日産の賛成が得られなかったことなどから実現しませんでした。
先月、フィアット・クライスラーはプジョー・シトロエンと経営統合することで合意しました。
メディア関係者の反応は
記者会見には地元レバノンをはじめ欧米など各国から、ゴーン元会長側が選んだメディア関係者およそ100人が参加しました。
このうちドバイの経済誌で働く女性は、「2時間以上の会見で各国のメディアの質問に答えていました。公正な会見だったと思います」と話していました。
またイギリスのプロデューサーの男性は、「彼は自信にあふれていて、みずからの無実を信じていることはよく分かりました。説得力はあったと思います」と話していました。
一方、フランスのテレビ局の女性は、日本からは限られた数のメディアだけが会見への参加を認められたことについて、「日本のメディアは最初に事実関係を知りたいはずなので、もっと大きな部屋をとって、参加を許されるべきだったと思います」と話していました。
航空会社が日本政府に協力申し出
ゴーン元会長は日本からレバノンに逃亡する際、トルコの航空会社「MNG Jet」のプライベートジェットを使用したことが明らかになっています。
「MNG Jet」は8日、NHKの取材に対し、幹部らが首都アンカラでトルコに駐在する宮島昭夫大使に面会し、日本政府への協力を申し出たことを明らかにしました。「MNG Jet」は、ゴーン元会長の逃亡に自社のプライベートジェットが違法に使われたとして、トルコの捜査当局に刑事告訴していますが、ゴーン元会長がどのように逃亡したかを明らかにするためには日本政府に必要な協力を行うとしています。
一方、これについてアンカラにある日本大使館は「コメントを差し控える」としています。 
●「私は雪辱を果たす」 ゴーン元会長の記者会見
逮捕で希望を失った
今日は私にとって極めて重要な日だ。残酷にも私が家族、友人、45万人の社員からなるルノーや日産自動車、三菱自動車などのコミュニティーを含めた外界から隔離されて400日以上、毎日この日を待ちわびていた。この深い、奪われた気持ちを表現することは不可能だろう。家族や友人らと再び会えたことに深く感謝したい。
私は無期限の拘束をされ、クリスマスや新年の休暇は(独房で)一人で過ごした。そして家族とは6週間以上会ったり話したりしていなかった。唯一の連絡手段は弁護士を通じた手紙でのやりとりだった。私がどんな罪で起訴されたのか、私の人権や尊厳に対するこの曲解した証拠をどう正当化するのか理解がない状態で(検察という)怪物に1日に8時間も尋問された。希望を失っていった。
日本からの逃亡は語らず
私は今日どのように日本を抜け出したかを語るつもりはない。あなたがたがそこを知りたがっているのは理解しているが。代わりに、私がなぜ抜け出してきたのかを話すつもりだ。私は自分を擁護でき、自由に話し、質問に答えられる。これはとても簡単なことだ。残念なことに日本ではできない。私は事実やデータ、証拠について話すことができるので、願わくば事実をみつけてほしい。
私は(日本の)基本的な人権を侵害するシステムを明らかにするためにここにきた。私は雪辱を果たす。日本の裁判のシステムの異端さを示したい。そもそも私は逮捕されるべきではなかった。悪意のある人々によって私の名声や人格が影響された。日本の検察や日産の経営層などと組んだ無慈悲なメディアの標的になった。
「政治的迫害から逃れた」
私は正義から逃れたのではない。政治的迫害から逃れた。他に手段もなかった。公平な裁判が受けられないので(逃亡の)リスクを取った。有罪を求めている人たちが考えているのは面目を守ることだけだ。生涯で最も難しい判断だった。有罪率が99.4%という制度で、外国人はもっと高いと思う。
私は日本政府で何が起きたかを話すことができ、名前を出すこともできる。だが、レバノン政府に迷惑をかけたくない。この場では沈黙を守る。
私は2018年11月19日に飛行機内で逮捕された。私は驚いた。まさか裏で日産が関与しているとは思わなかった。検察と日産が事前に準備していたのだった。西川(広人・前最高経営責任者=CEO)氏やハリ・ナダ(専務執行役員)氏など多くの日産幹部が私を追い出すのに関わっていたのだ。私は飛行機内で逮捕されると、そこから車に行き電話などを取られた。電話を使えない環境となり、自分が逮捕されたことがわかった。
私が日本を出たとき、初公判も迎えていなかった。1回目の公判を終えるまでは2回目はできない。私が弁護士に聞いたとき、彼は「あなたは日本に5年いるだろう」と答えた。判決が下るまで5年ということだ。迅速な裁判は人権の一部だ。日本で死ぬか立ち上がるかという決断に至るのは難しくない。
容疑を否定
中東は日本車や韓国車が売れているが、日産は(中東での)利益が少なかった。そのため私は売上高だけでなく利益でも地域のボリュームを高めていこうと話した。トヨタがやっているように、地元ディーラーと組んでイノベーションを生んでいく必要がある。ディーラーにインセンティブを与え、頑張ってもらおうと考えた。
検察は私がサウジアラビアの男性と特別なつながりがあると主張しているが、実際は同じことをオマーン、ドバイ、レバノン、カタールなどとしてきた。支払ったインセンティブを比較すると完全に普通の水準だ。中東のポテンシャルはとても重要だ。私の銀行口座は(逮捕後)すべて移設された。だから疑わしい支払いがあれば公になるはずだ。
私への人格攻撃もあった。ベルサイユ宮殿でお祝い(結婚披露宴)をしたことだ。ベルサイユは最も多くの人が知るシンボルだ。フランスが世界に開かれたグローバリゼーションの証だ。だからベルサイユでやった。日産の幹部がいなかったのは外国のパートナー向けのパーティーだったからだ。
ベイルートの家は日産のものなのに秘密で使っているとも言われた。会社の書類には会社で働いている限り使えると書いてある。暫定的な監査報告書を出している。監査のルールに従っていないと言うが、外部の目も入っており厳しい手順に沿っておこなっている。
日産の企業価値下がる
日産の市場価値は私が去ってから下がった。100億ドル以上だ。1日につき4000万ドル以上失っている。ルノーの価値も下がっている、企業価値を見いだすことが使命だ。CEOはそのためにいる。
17年ではルノーと日産はナンバー1の自動車グループだった。未来のはっきりしたビジョンも大胆な戦略もあった。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)も参加させる準備をしていて、私は交渉していた。現在はどうか。グループは機能していない。シナジーを起こし、人々に必要性を説かなければいけないが、戦略的な方向性も(現在は)なかなかない。
(三菱自を含めた)3社の連携もうまくいっていない。成長はなく利益も落ち込んでおり、戦略もみえない。イノベーションも出ていない。決定的なチャンスを逃した。フィアットをグループに入れるというチャンスを逃した。(仏グループの)PSAに行ってしまった。圧倒的なプレーヤーになれる機会だったのに信じられない。
日本に愛着
日本に言いたい。私は冷酷で強欲だと中傷された。日本はゴーンを嫌っている。私は日本が好きだ。日産を愛していた。財務危機を一緒に乗り越えた。(東日本大震災の)津波のときに日本に戻った最初は私だった。原子力発電所事故が起きたが、サプライヤーに一緒に再建しようと訴えた。(自身の)子供も日本で教育を受けた。日産を大事にし日本を愛している。どうして私が会社に良いことをしたのに私を悪のようにいうのか。信じられない。

――国際的な逃亡者として余生を過ごすことをどう感じているか。
「私は多くのミッションインポッシブル(不可能な任務)を経験した。1999年、フランスから日本に来たとき日本語も話せず、何もできないと思われた。しかし私は多くのことをした。私は今日はここにいることを誇りに思う。なぜなら、私を尊敬する人々、友人に囲まれているからだ」
――フランスに行くつもりはあるか。
「日本政府から国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際逮捕手配書が送付されてきた。弁護士は国際逮捕手配書(の有効性の是非)と戦えると言っていた。私はレバノンにきてとても幸せだ。自身を囚人だと思わずに済むからだ。友人、家族、子供が私を訪ねることもできる。電話やインターネットも使える。レバノンに長期間住む準備をしているが、私は本来あるべきように従ったまでだ。私は捏造(ねつぞう)された物語や事実を受け入れることはできない」
――日産に対して(ルノーとの)合併を提案したことはあるのか。
「提案していない。私はホールディング・カンパニーを提案した。1つの会長席を置くアライアンスだ。日産は日本で、ルノーはフランスで運営している。本社に1つの取締役会を置く必要がある。異なる本社、ブランド、経営委員会に1つの席を置く。これが私の提案だ。合併ではない。日本(日産側)は自治を求め、フランス(ルノー側)は合併を求めた。そしてある日、両者の一方が『なぜ合併が必要なのか。彼(ゴーン氏)を排除しよう』と言った。これが実際に起こったことだ」
――日本のシステムには陰謀があるのは明らかだといっていたが、システムの陰謀に日本のどの程度の上層部が関わっていると思うか。
「個人的には私はトップレベルは関与してないと思う。安倍(晋三首相)さんは関わっていないと思う。私は日本とレバノンの摩擦は避けたいし、私の義務だと思う。弁護士は初公判で弁論し、最終的には最高裁にいく。最高裁までは5年かかると話した。何の保証もないまま5年もの時間がかかると言った。起訴されれば有罪になる確率は99.4%だという。なんと言うことだ。これは迫害だ。不運なことに外部から支援を受けて、私は(逃亡するという)リスクを負うことを決意した。理由は正義を欲していたからだ」
――なぜ(逃亡先に)レバノンを選んだのか。
「私がレバノン人だからだ。ブラジル人なのでブラジルも選べたが、検討した末、物流の観点でレバノンを選んだ」
――日本の検察は身柄の引き渡しを求めている。レバノン政府があなたの身の安全を保障しているのか。
「だれからも保障は与えられていない。だがレバノンの法律はきちんと運用されていると理解している」
――日本で尊敬されていたが法律違反した。日本人に自分の考えを伝えてほしい。
「私はいまでも一部の人たちからはビジネスマンとして尊敬されていると思っている。しかし容疑を晴らさないといけない。しかしどうすれば良かったのか。日本で法律違反をして逃れたことは問題かもしれないが、検察もリークしてはいけないという日本の法律があるのに違反している。私の法律違反が問題なのになぜ検察の法律違反は気にしないのか。間違った制度だ。17年過ごした日本がとても好きで、日本人を傷つけるつもりはない。しかしなぜ日本でテロリストのような扱いを受けるのか」
――ルノーと日産に裁判を起こすのか。
「私の権利を守ろうと思う。権利を主張していく。私は自分の権利を諦めようとはしていない。ルノーや日産への権利は裁判で戦う」
――フランスはこの事件に対して発言が少ないように思う。
「私の立場であれば気持ちがわかるはず。経験したらどう感じるのか。当局に見放されたと私はそう思っていない。私はフランス市民だ」
――大きなリスクを取って日本を出国した。出国できたときにどう感じたのか。
「18年11月19日に逮捕されたときに一回死んだような気持ちになった。残された人生は少ないと思った。理解できないシステムに入ってしまい麻痺している状態だった。出国できたとき、また生き始めた」
――いつあなたは逃げるタイミングだと感じたのか。
「私がすべて望みを失った時だ。(保釈申請を)試みたが、何度も延期された。これが1つ目だ。(もう1つは)私は妻に会いたかった」
――あなたはエマニュエル・マクロン仏大統領と仏政府に何を頼んだのか。
「私が何を頼んだか。何もない」 
●ゴーン被告が会見で日本政府関係者の実名を明かさなかった理由
保釈中にレバノンへ逃亡した日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が8日、現地で記者会見を開いた。自らを正当化する一方、逮捕の背後にいたとされる日本政府関係者の実名など具体的な事実は明かさなかった。これは口止めされていたためだという。
レバノンの首都、ベイルートで午後3時(日本時間午後10時)から開かれた記者会見では、ゴーン氏の口から、日本からの出国方法や、関与があったとされる政府関係者の名前が出るのではないかと思われていた。
だが、2時間半に及んだ会見では触れずじまい。冒頭で「脱出方法についてはお話しない」と述べ、事件に関しては「日本政府関係者も関わった陰謀だ」としながら、実名の公表は「レバノン政府に迷惑がかかるから」として言及を避けた。
レバノン政府に近い人物は、会見当日にレバノン政府からゴーン氏側に詳細を話さないよう約束させる圧力があったと話す。
「会見で日産のことを話すのは構わないが、日本からの出国方法や政府関係者の実名などについては一切触れるなとの要請です。もし、話すようら会見自体を開かせないとの強い求めでした。レバノンは日本と良好な関係を望んでおり、ゴーン氏が会見で世界に向けて日本のマイナスイメージを植え付けることを防ぐのが狙いでした」
会見の前日となる7日、大久保武・駐レバノン日本大使はレバノンのアウン大統領とベイルートで会談して事実関係究明に向けた協力を要請。このときアウン大統領は、政府がゴーン氏の日本出国に関与していないとしたうえで、全面的な協力を約束していている。
レバノンとしては、日本とレバノンの間に犯罪人引き渡し条約が結ばれていない以上、レバノン国籍を持つゴーン氏の日本への引き渡しはできないものの、両国の関係悪化を恐れて日本政府に配慮した形だ。
ゴーン氏が日本を出国したために会社法違反(特別背任)の罪などで起訴された公判の見通しは立っていないが、レバノン側はゴーン氏の裁判をレバノン国内でやる用意もあるという。
「ゴーン氏が日本を出国した理由の一つは、早期に望んだ公判がなかなか始まらない現状に業を煮やしたから。レバノン側は現在、舞台を日本からレバノンへ移して早期の裁判を始める用意があると話しています」(前出のレバノン政府に近い人物)
だが、これを実現するには両国政府間の合意などハードルは高い。 
●ゴーン被告会見、日産経営陣ら名指し批判 政府関係者には触れず
保釈中に不正に日本を出国したカルロス・ゴーン被告は8日、レバノンで記者会見し、自身を追放した人物として日産自動車の経営陣など6人を名指しで批判した。逮捕は検察と日産に仕組まれていたと主張し、自らの潔白をあらためて強調した。日本の政府関係者には具体的に言及しなかった。
同被告が記者会見するのは逮捕後初めて。西川広人前社長のほか、前副社長の川口均氏、前監査役の今津英敏氏、社外取締役の豊田正和氏を批判した。豊田氏については日本の当局とつながっていたとも語り、「検察と日産の共謀が見えていなかったのは日本国民だけだ」と指摘した。
自らの不正を内部告発した元秘書室長の大沼敏明氏、ハリ・ナダ専務執行役員の名前も挙げた。
このうちの1人はロイターに対し、「言うべきことがあるなら、日本を不正に出国する前に裁判で公に言うべきだ。証拠を示さない陰謀説は冗談のように聞こえる」と語った。
<「逃亡は最も困難な決断」>
ゴーン被告は、追放されたのは日産から親会社の仏ルノーの影響を排除するためだったとし、「仏政府が3社連合に介入しようとしたことへの日本の反感もその一因だった」と述べた。逮捕されたことを日本軍が米軍を奇襲した真珠湾攻撃になぞらえた。
予告していた日本政府関係者の名前については「レバノン政府のため」として控えたが、「トップレベルが関わっていたとは思っていない」と語った。
自身の容疑については「根拠がなく、検察は誤った情報をリークして証拠を隠した」として「一連の容疑は事実ではない」とこれまでの主張を繰り返した。その上で、数週間以内に無実の証拠を明らかにする考えを示した。
ゴーン被告は「弁護士の同席なしに1日8時間にわたって尋問を受けた」、日本の有罪率は99%に達する国で、「外国人はおそらくもっと高い」と日本の司法制度を強く批判した。「自白しないと家族を追いかけることになると言われた」という。
弁護士からは判決が出るまで5年間は日本にいることになるだろうと言われたとし、逃亡は「私の人生で最も困難な決断だった」と語った。日本からの出国方法は支援者が明らかになるとして答えなかった。
東京地検の次席検事は会見後にコメントを出し、「わが国の刑事司法制度を不当におとしめるものであって、到底受け入れられない」と反論。「被告人ゴーンにわが国で裁判を受けさせるべく、関係機関と連携して、できる限りの手段を講じる」とした。
<イスラエル入国を謝罪>
ゴーン被告は、不正送金の「財布」とみられている「CEOリザーブ」と呼ばれる予備費にも言及し、複数の責任者が署名した上で最終的に自身が承認するという手続きを経て支出できるものであり、「私が好き勝手にできるものではない」と釈明。日産の会社資金を不正に使用し、仏ベルサイユ宮殿で結婚披露宴を開いたなどとされる疑惑についても違法性を否定した。
また、「レバノン人であることを誇りに思うとし、困難なときに私の味方でいてくれた」と語った。同国と敵対関係にあるイスラエルに過去入国したことをレバノン国民に謝罪した。
<フィアットとの統合失敗は遺憾>
3社連合がフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)との統合に失敗したことは遺憾だったと指摘。「2017年当初、3社連合は自動車グループとして首位にあり、成長していた。われわれはFCAを連合に迎える方向で準備し、エルカン会長と交渉中だった」とし、合意に向け昨年1月に会合を予定していたと明らかにした。さらに「われわれは多くの点で一致しており、対話は非常に良好だった。しかし、残念ながら結論に至る前に私は逮捕されてしまった」と述べた。
FCAはその後、仏プジョー・シトロエンとの合併で合意している。
<仏が見捨てないこと願う>
フランス政府の対応については、自分を見捨てないことを望むと表明。仏政府が自身を見捨てたと思うかとの質問に対し、「そうでないことを願う。わたしはフランス国民だ」と語った。
また金融・経済面で危機が深まるレバノンを巡り、ゴーン被告は自身に政治的な野心は無いとした上で、「私の経験を活かしてレバノンに仕えることを求められるなら、その用意がある」とした。
ゴーン被告は2018年11月、役員報酬を過少申告した金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で、東京地検により初めて逮捕された。
その後も別の金商法違反、会社法違反(特別背任)容疑で計3度逮捕。19年3月、初逮捕から108日目に東京拘置所から保釈された。さらに同年4月、別の会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕され、同月に再保釈。納付した保釈金は計15億円に上る。 
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●記者が目の前で見たゴーン氏会見 日本メディアには笑顔なく
1月8日22時(日本時間)からレバノンで行われた、日産の元会長カルロス・ゴーン氏の記者会見。注目を集めたこの会見には世界から約80媒体のメディアが参加したが、その中で日本メディアは朝日新聞とワールドビジネスサテライト(テレビ東京)、そして本誌・週刊ポストとNEWSポストセブン合同の現地取材班の3媒体のみだった。本誌現地取材班の1人、ジャーナリストの宮下洋一氏は会見をどう見たのか。会見が行われたレバノンの首都・ベイルートからリポートする。

あっという間の2時間半だった。140人にも及ぶ記者たちがゴーン氏に詰め寄り、会場はカオス状態だった。この熱気は半端なかった。とにかく熱く、会見が続くにつれゴーン氏の顔もはっきりわかるほど上気していった。
ゴーン氏が日本の司法をバッシングすることは、最初から予測できていた。会場に詰めかけたフランス、地元レバノン、アメリカ、イギリスをはじめとする海外メディアの報道陣は日本の司法に対して批判的な考えもあるからか、ゴーン氏に同情するような表情を見せる場面もあった。
例えば、レバノンの報道陣はゴーン氏の地元愛を聞くたびに笑顔を作り、時折、拍手をし、日本での検察や司法制度に対して納得していない様子だった。彼らが会見の話を聞きながら寄り添うような姿勢を見せると、ゴーン氏はより強くトーンを上げて、嬉しそうに答えていた。
フランスのメディアも、日本の司法制度の“被害者”だと主張するゴーン氏に同情を込めたような質問をする記者がいた。日本の司法に対しゴーン氏がどう思っているかについて、質問が次から次へと出てくる。そんなフランスメディアの質問が出るたびに、ゴーン氏は笑顔を見せた。
フランスの大手テレビ局の質問が来れば、「オー、LCIか!」とニコリと笑って、長々と答えていた。彼の表情は、まったく疲れていなかった。解放感に溢れるこの状況で、むしろ生き生きとしているように見えた。やっと自らの思いを世界の報道陣を前に話ができるという気持ちが前面に出ていた。
一方で、ゴーン氏が眉毛を歪めるほど険しい表情をする場面もあった。
イギリスの記者が「火のないところに煙はたたない」と、皮肉混じりのトーンで日本を逃れたことについて聞かれたところ、声を大きくして弁明する場面もあった。
もしかしたらゴーン氏は、ここに集まる全員が味方になってくれると思っていたのだろうか。そのために報道陣を選んだのだろうか。質問するメディア側があまり彼の話に乗ってこない場面では、ゴーン氏のジェスチャーは大きくなっていった。そして日本の司法批判を繰り返し、要所要所でキャロル夫人への愛情を口にしていた。
「愛するキャロルに会いたかったんだ……」
最前列に座っていたキャロル夫人の横に移動していた私は、夫の愛情の言葉を聞くたびに、両手の指を絡める反応をしたり、微笑む表情を作ったりしている様子を見ることができた。
質疑応答が進むにつれてヒートアップし、世界中から集った記者たちの側も、もう当てられる順番はどうでも良くなっていた。当てられていないのに立って質問を始める者もいれば、何人も同時に話し出す者もいた。ゴーン氏は「待ちなさい、待ちなさい」と困惑していたが、瞳の奥には笑顔も見えていた。
私も順番が来る前にマイクを渡されたので、わざと立ち上がって質問した。ゴーン氏が私を見ていたことがわかっていたからだ。
「この会見の場に日本のメディアがそれほど多く集っていないことに驚いている。なぜ一部のメディアしか招かなかったのか。それと、独房での生活について少し詳しく教えていただきたい」
私がそう尋ねたとき、ゴーン氏の表情は険しかった。興味深いのは、我々日本のメディアに対しては、ほとんど笑顔を見せなかったことだ。眉間にしわを寄せ、終始、厳しい表情で訴えていた。私の質問には、「私は日本のメディアを差別しているわけではない。また、日本のメディアだけ締め出したわけでもない」「正直に言って、プロパガンダを持って発言する人たちは私にとってプラスにはならない。また、事実を分析して報じられない人たちは私にとってはプラスにならない」と答えた。そして結局、言いたいことはただ一つだった。「私は無実。何もしていない」ということ。
ゴーン氏の会見は、社長時代に日産をV字回復させた時のプレゼンを見ているようだった。自信あふれる彼の姿を見ながら、今後の日本との戦いに恐れなど感じていないだろうと思った。それはキャロル夫人も同じだった。彼ら2人は、このままどこに辿り着くのかは分からない。
会見終了直後、最前列で夫の会見を見守っていたキャロル夫人に「日本で出た逮捕状について、いまの心境を聞かせてください」と聞いた。
キャロル夫人は硬い表情でこう一言だけ答えた。
「日本の司法は残酷よ」──。 
●ゴーン会見に日本人が納得できない4つの理由 
 論点すり替え情報隠し自画自賛で日本を疎外
保釈中にレバノンへ逃亡した日産自動車の元会長カルロス・ゴーン氏が、現地で記者会見を開き、「私にかけられた嫌疑に根拠はなく、日産と検察に仕組まれたもの」などと無実を主張しました。
国外逃亡中に開かれた異例の会見で多くの注目を集めたものの、一夜明けた現在の状況としては「内容がない」「恥の上塗り」などの批判が大半を占め、海外メディアからも「拍子抜け」という論調が散見される始末。
身の潔白を証明し、逃亡を正当化するはずだった会見は、なぜこのような受け止められ方をされてしまったのでしょうか? その理由となった4つのスタンスを挙げていきます。
会見冒頭に表れた論点のすり替え
約2時間半にわたって行われた会見は、まさにゴーン氏の独演会。目を見開き、大きな身振り手振りを交え、汗を拭きながら、まるで新商品のプレゼンテーションをするかのような生き生きとした姿を見せていました。
注目すべきは、ほとんど視線を落とさず話し続けていたこと。これは「自分の意志を伝えよう」という気持ちの表れであり、もし事実に基づいた詳細を語ろうとするのなら間違えないように資料を見ながら話すはず。この時点でカンのいい人は、「この会見は“犯罪者”や“逃亡者”というネガティブなイメージを覆すパフォーマンスの場で、新たな事実は話さないだろう」とがっかりしたでしょう。
ゴーン氏が真っ先に訴えたのは、特別背任などで起訴された自らの罪に関することではなく、日本の司法制度の問題。「家族に会えない」「弁護士なしでの尋問」「シャワーは週2回」「薬の処方は禁止」などの窮状を並べ立て、「人間として扱われなかった。人間と動物の間のような扱いを受けた」と強い口調で語りました。
「日本の司法制度に問題がある。とりわけ外国と比べてひどい」と主張することに問題はないものの、多くの人々が知りたがっているのはゴーン氏の罪について。それらよりも先に語ったことで同情を買うことはなく、「議論のすり替えでは?」という疑念を抱かせてしまいました。記者会見で話す順番として明らかに不自然であり、感情的な自分目線だったのです。
もちろんこれはゴーン氏の狙いであり、実際に欧米メディアが日本の司法制度に疑問の目を向けたことから、一定の成果を得たとも言えるでしょう。しかし、その欧米メディアですら、「日本の司法制度の問題とゴーン氏の罪は別の話」という冷静な論調が出ているように、自身のイメージ回復にはつながっていません。
「すべての情報を開示しない」スタンス
ゴーン氏は日本の司法制度を批判した一方、自らの罪については認めませんでした。
「罪の根拠はなく、日産から支出された資金は正当なもの」「日産と検察が共謀して私を陥れた」などと話したのみで、裏付けとなる証拠は提示されず。当然ながら証言の信憑性はなく、司法制度を批判していたときの冗舌さもありませんでした。
さらに歯切れが悪かったのは、逃亡劇に関する質問。「日本から出た経緯については話しません。それが迷惑をかけることにもつながるからです」「私は『なぜ脱出したのか?』を語るために来た」と語るだけでした。
また、事前に「日本政府内で何が起きていたのか、名前も出せる」と豪語し、海外メディアの焦点ともなっていた政府関係者の実名も語らずじまい。ゴーン氏はその理由に「レバノン政府や国民の不利益になることはしない」を挙げていましたが、「今後の切り札となる情報だから、まだ温めておく」という可能性も多少はあるでしょう。いずれにしても、すべての情報を開示しない姿勢が「この日の会見はもともと疑惑を晴らすためのものではなかった」ことを物語っています。
ゴーン氏はテレビ東京の記者から無断出国の是非を問われ、「私が日本を出国したことは明らかに法律違反でそれは問題ですけれども、日本の検察が10件の法律違反を犯しているのは問題ではないのでしょうか?」と返しました。
自分にとって不都合なことを尋ねられると、あいまいな言葉を並べながら話をずらして誇張し、それを繰り返しながら長話に持ち込むことで「多少の矛盾点はあっても全体としては正しい」と思わせようとする……あなたのまわりにもこういうタイプの人はいないでしょうか。
この日の会見が内容の薄さに反して約2時間30分も行われたように、ゴーン氏の一方的な話が長かったのは明白。聞く側のわかりやすさや理解度を考えるより、自分の主張を正当化するためのパフォーマンスに終始したものの、長すぎたことで思っていたほどの効果は得られなかったのです。
自画自賛とイベント仕様のショーアップ
「日本で尊敬されているCEOだったし、今も一部の人にとってはそうだ」
「好意的ではないメディアも私が日産を復活させたことに異論はないだろう」
「私は『ミスター・インポッシブル』と呼ばれていた。たくさんのミッション・インポッシブルを果たしてきた」
ゴーン氏は自身の功績を繰り返しアピールし、あふれ出る自尊心を隠そうとしませんでした。欧米人には自画自賛する自信満々の姿が支持されるかもしれませんが、日本人にとっては必ずしもそうとも言えません。「こういう状況になったからには少なからず自分の非もあったのではないか?」「それを謙虚に受け止めたうえでアピールしてほしい」と思う人は少なくないでしょう。
また、単独で会見に挑むのではなく、「第三者を同席させて、その口から自身の功績を語ってもらう」という形のほうが聞く側にとっては受け入れやすいもの。そうした聞く側への配慮がなかったため、ゴーン氏の会見に「自己満足」「尊大」という印象を抱いた日本人が多かったのではないでしょうか。
ゴーン氏ほどの著名人ではありませんが、私もときどき経営者とのコンサルを行っていますが、彼らは「押すのは得意だが、引くのは苦手」「攻めはうまいが、守りがへた」と感じることが少なくありません。自分では「うまく引いているつもり」「うまく守っているつもり」なのに、周囲の人々から見たら「ものすごく押している」「猛烈に攻めている」と思われがちで、周囲とのコミュニケーションに難のある人が目立ちます。
そもそもゴーン氏はこの記者会見を「カルロス・ゴーン、メディア・イベント」と題して、参加者に「カルロス・ゴーンの記者会見への出席を認めることを本メールにてお知らせいたします」という通知を送っていました。また、会見場の一部にはゴーン氏の関係者席があり、そこから拍手が上がるシーンもあったそうです。
そんなところも、「逃亡したことをイベント扱いなんてけしからん」「釈明をするための会見なのになぜ上から目線なのか?」と日本人たちが納得できない理由となっているのでしょう。
グローバルなのに当事国の日本を疎外
もう1つ見逃せないのは、質問を国別で受け付け、4カ国語を駆使して返していたように、ゴーン氏がグローバルな視点を意識して臨んでいたこと。ところが、親交のある特定メディアに「マイフレンド」、親しい記者に名指しで呼びかけた一方、日本人の記者で会見場に入れたのは、テレビ東京、朝日新聞、小学館の3社のみでした。
小学館の記者から「なぜ日本のメディアはこんなに少ないのか?」と質問されたゴーン氏は、「日本のメディアを除外しているわけではない。この場所に客観性を持った記者たちに来てほしいと考えている。会場の外にもあなたたちと同職の人たちがいますが、偏った視点を持った記者たちが正しい分析ができるとは思わないので」と語りました。「排除しているわけではない」と言った直後に排除したことを話す矛盾に疑問を抱かざるをえません。
さらにゴーン氏は、「だからといって接点を持たないようにしているわけではありません。BBC、CNNなどのさまざまなグローバルメディアがここにいるし、大きなメディアから追及を受けるかもしれない。ただ私は14カ月間厳しい質問に耐えてきたので、厳しい質問に応じる用意はある。会見場は限られたスペースであり、だから日本のメディアが少ないという印象を受けたのかもしれない」と話しました。
当事国であり、最も身の潔白を示すべき相手の日本メディアを外す理由に「スペース」を挙げたことに納得する日本人はいないでしょう。ゴーン氏が「日本を愛し、日本国民を愛している」「日本のみなさんは大変よくしてくれた。日本を傷つけるつもりはまったくない」と言葉を重ねたところで、素直に受け止められる人はほとんどいないのです。
会見を見ていて、このようなゴーン氏の姿勢を見た海外メディアの熱が徐々に下がっていく様子を感じたのは私だけでしょうか。ゴーン氏は、「今後数週間以内に何か行動を起こすことに期待してほしい。どうやって嫌疑を晴らしていくのか、どのような行動を取っていくのか、すべての証拠についてみなさんに開示していきたいと思っている」と語っていました。しかし、決定的な新事実を出さない限り、この日以上に冷めた反応しか得られないでしょう。
会見でゴーン氏が見せた「論点のすり替え」「すべての情報を開示しない」「自画自賛とイベント仕様のショーアップ」「グローバルから疎外された日本」。この4つのスタンスが日本人の気持ちを逆なでし、思っていたほど世界的な支持を得られなかった理由ではないでしょうか。 
●ゴーン会見「2017年以降、日産の成長は止まった」は詭弁
「2017年以降、株価は下がって、(日産、ルノー、三菱の)3社連合の成長は止まった。私がCEOで居られたのは業績が良かったからだ。2018年以降はトップマネジメントに不安があった」
1月8日午後10時(日本時間)、国外逃亡した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告がレバノンで開いた記者会見にて語った、この言葉が最も印象に残った。なぜならゴーン被告の狡猾さを象徴しているからだ。
筆者は、あるテレビ局のモニターで同時通訳付きの会見を見た。
紺色のスーツに、ピンク色に近いようなネクタイの、ビシッとしたいで立ちでゴーン被告は現れた。
今回はスタイリストが付いていたのだろうかと、ふと思った。ゴーン被告は、日産の経営トップ時代、モーターショーのプレゼンテーションの前には、スタイリストを付けて、念入りに「自分がどう見られるか」をチェックしていたからだ。 
「ゴーン氏は業者に複数のスーツを持ってこさせ、念入りに選びます。気に入ったものを1着選び、残りは会社の経費で買ったものでも自宅に持ち帰っていた」(日産関係者)
この発言でゴーン氏が言いたかったことは、おそらくこうだろう。
「日産と検察が結託して陰謀、クーデターによって私を追い落としたものの、企業にとって肝心の業績は落ち、株価も下がって株主に迷惑をかけている。私が経営トップにいたらこうした事態にはならなかった」
一部の株主らゴーン氏の支持者と見られる人たちからも「ゴーン氏がいればこんな業績にはならなかった」といった声も出ている。果たしてそうなのか。
確かに、日産やルノーの業績は落ち込み、株価も低迷している。その大きな要因は2つある。収益源だった米国で稼げなくなったことと、新興国向けブランド「ダットサン」の不振で、過剰設備を抱えていることだ。
さらに要因を突き詰めていくと、アライアンスを結ぶ日産、ルノー、三菱自動車の3社が世界一の自動車メーカー連合になるべく、販売台数だけを増やしていく無謀な拡大戦略をゴーン氏が推進したからだ。ゴーン氏は2017年9月、パリで記者会見し、3社の合計販売台数を2022年までに世界トップに躍り出る1400万台に拡大させる「アライアンス2022」と呼ばれる中期経営計画を発表した。
この1400万台のうち900万台を共通のアーキテクチャーで生産することで量産効果を生み出し、エンジンも31種類あるうち21種類を共通化することなどによって、開発投資の重複を避けてシナジー効果を生み出すことを狙った。
ゴーン氏は2017年4月、日産社長兼CEOのポストを西川廣人氏に譲り、自身は「アライアンス会長」という名刺を持ち、3社の司令塔、すなわち最高権力者の地位にあった。打ち出したアライアンスの中期経営計画は一見、立派な成長戦略に見えたが、その実態は、新車にかける開発投資を絞り、早く安く、チープなクルマを量産していくことだった。
この結果、日産は主要市場の米国で値引きしないとクルマが売れなくなり、値引きして販売した新車が大量に中古車市場に流れたことで中古車価格も落ち、それがさらに新車価格をも落とす悪循環に陥った。完全にゴーン氏の戦略の誤りと言える。同様に「ダットサン」も商品力が弱く、インドやインドネシアではまったく売れず、失敗プロジェクトに終わった。
失敗が露呈する前に、言い方を変えれば業績が落ち始めるのは分かったうえで、執行のトップである日産社長兼CEOというポストを西川氏に譲ったのである。本質的な原因を追求しない人からすれば、2017年4月以降は西川氏が社長なのだから、業績悪化は西川氏の責任ということになる。こうした点が筆者の指摘するゴーン氏の狡猾さだ。
また、記者会見では、ゴーン氏はこれまで通り、日本の司法制度の「不公正さ」などを指摘。保釈後もキャロル夫人との面会が禁止されたことが人道上問題であることにも言及した。確かに、日本の司法制度は「人質司法」などと指摘され、勾留期間が長いと批判されることもある。この問題は、ゴーン氏の事件だけにあてはまることではない。
司法制度への批判は、ゴーン氏自身がやった不正や不法行為を覆い隠すため、あるいは論点をすり替えるための詭弁に過ぎないと感じた。報酬の虚偽記載や特別背任など刑事事件として立件された経緯についても「陰謀やクーデタ−」であることを強調した。
筆者は、ゴーン氏の事件がクーデターか否かと聞かれれば、「クーデター」と答える。クーデターの解釈はいろいろあるが、ゴーン氏の側近らが不正調査を行い、私的流用を突き止め、司法取引に応じ、検察と協力して立件したことは間違いなく、結果として「部下に刺された」形になるからだ。
特別背任は権力者による犯罪である。こうしたケースでは、内部通報、司法取引、密告などの手段で事件が露呈する。権力者は、不正を覆い隠せるほどの力を持つから、こうした手段が用いられる。司法取引も、トカゲのしっぽ切りにならないようにするための制度だ。
肝心なことは、手段ではなく、犯罪事実があったかどうかだ。ゴーン氏が陰謀やクーデターをことさら強調するのは、事実を覆い隠そうとするためではないかと見えてしまう。事実認定を争う裁判では勝ち目がないと見て、ゴーン氏は逃亡したのではないか。
ゴーン被告のプレゼンの特長の一つは、得意げな表情で身振り手振りを交えながらまくしたてるように、語ることだ。
今回もそれには変わりはなかったが、二つ違うことがあった。まずは、表情が暗かったし、眉間にしわが寄っていたことだ。「私にとって今日は大切な日」と言ったゴーン被告だが、なんだかいら立っているように見えた。その理由は分からない。
続いて、2時間25分もの間多くを語りながら、中身が薄かったことだ。ゴーン被告が経営トップ時代、30分のインタビューで原稿用紙10枚分の原稿が書けるほど中身が濃密なことが多かった。自分への嫌疑について、詭弁と論点すり替えの連続だったからだろう。
一方、相変わらずだったこともあった。ゴーン被告は親しい記者には「Oh! My friend」とか「I know your face」と言うことがある。
昨日の会見でも、「Oh! My friend」、「私はあなたがBBCの記者だと知っている」と言っていた。自分に友好的なメディアを選別したことは分かっていたが、その発言からも感じ取れた。無罪や日本の司法制度の課題を主張するのであれば、オープンな記者会見にすべきだった。不都合なことを聞かれたくないから、ゴーン氏側でメディアを選別したのであろう。
繰り返すが、今回のゴーン氏の記者会見からは、狡猾、詭弁、論点のすり替え、メディアの選別といった悪いイメージしかない。筆者はゴーン氏の経営者としての実績を否定するつもりは毛頭ない。日産を再建した功績も否定しない。しかし、今回の記者会見の内容は、これまでのゴーン氏の「看板」をさらに汚すものになったと筆者は感じる。 
●ゴーン会見で“排除されなかった”朝日新聞、招待理由に朝日自身も困惑? 
8日午後10時(日本時間)からレバノンで行われた日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告の記者会見。ゴーン被告の日本司法への痛烈な批判が展開された一方、日本のマスコミがほぼシャットアウトされたことが注目されている。会見に参加することができた社は、朝日新聞、テレビ東京、「週刊ポスト」・NEWSポストセブン合同取材班(小学館)の3社のみ。他はフランスのメディアを中心にゴーン被告が招待をしたという。
当サイトの調べで、会見に参加した朝日新聞の記者でわかっているのは忠鉢信一記者、石原孝記者、高野遼記者の3人。忠鉢記者は社会部、欧州総局、編集委員、スポーツ部次長などを歴任したベテランだ。サッカー業界などに造詣が深いが、地検特捜部などいわゆる社会部専門記者ではない。石原記者はヨハネスブルク支局長で、アフリカ地域の担当。現地班として会見に臨んだとみられる。高野記者はエルサレム支局長で、東京社会部時代は司法担当記者だった。
今回のメディア選別に関して、朝日新聞の社会部記者は次のように話す。
「ゴーン被告は特捜の取材にどっぷり浸かっているような社は排除したということでしょう。テレビ東京も、ポストもいわゆる番記者を配置してゴリゴリ取材をするスタイルではありません。つまり『特捜の味方』のような記者は会見場に入れなかったということです。会見を見ていても、ずっと勾留のあり方に関する愚痴ばかりでしたし、検察をよっぽど憎んでいるんでしょう。
警察取材、特捜取材に力を入れて取り組んでいる読売や産経の記者らは怒り心頭だったみたいです。ただ、うちも森友学園問題などでは特捜に食い込んでやっていたので、まったくノータッチというわけではありません。正直、なぜ選ばれたのかよくわかりません」
会見から排除された共同通信は8日、『ゴーン被告、日本記者の大半排除 メディア選別「PRの場」』と題して記事を配信。記事では共同通信を含む多くの日本メディアが招待されず参加できなかったと説明。「記者会見はゴーン被告が雇ったフランスのPR会社が取り仕切った。会見について『ゴーン氏が知り合いの記者らを招く懇親会的な位置付けだ』と説明した。ゴーン被告の長年の友人でテレビ司会者のリカルド・カラム氏によると、日本メディアの多くは『フェイクニュース』だとして排除されたという」と痛烈に批判した。
結局、会見でも最も注目度が高かった「どうやって逃げたのか」「日産幹部のクーデターはあったのか」「協力者はいたのか」「特捜部による逮捕が日本政府の意向だったとゴーン被告が主張する根拠は何か」といった疑問については、何も語られなかった。記者側からも、「箱(出国を偽装する時に使った)の中で何を考えていましたか」といった、質の低い質問が多くみられた。ゴーン被告側が主張するように、これは記者会見ではなく「懇親会」だったのだろう。 
●「劇場型より説明を」 ゴーン被告会見で米メディア
9日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告の記者会見について、社説で「劇場型の記者会見より説得力のある説明が必要だ」としつつも、「日本の司法制度も審判を受けることになる」と論評した。
同紙は、日本の司法制度や日産経営陣へのゴーン被告の批判を詳しく伝えたが、「事件が公正な評価に基づくものなのか、ゴーン被告が主張するように日産と日本政府の共謀なのかは明らかでない」と冷静に指摘した。 
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●ゴーン被告会見 米メディアも大きく報じる
保釈中、レバノンに逃亡し、8日に会見を開いたゴーン被告について、アメリカメディアも大きく報じた。
有力紙「ワシントン・ポスト」は「ゴーン被告が逃亡後、初めて公の場で『腐敗した非人道的な』日本の司法制度に不満を示した」との見出しで報じた。
「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、ゴーン被告が「大きな身ぶり手ぶりで、指を鳴らし、逮捕される前の世界を突き進むトップに戻ったように見えた」と伝えた。
また「ニューヨーク・タイムズ」は、ゴーン被告には国際的な逃亡者として不確かな未来が待ち構えていると伝えている。
ゴーン被告は会見のあと複数のメディアの単独インタビューにも応じていて、経済チャンネル「CNBC」には「逃亡費用は大きな額で報じられているが、それほどのお金は必要ない」などと語ったという。 
●ゴーン元会長「自由は甘美」 米メディアで語る
日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告は日本時間8日に逃亡先のレバノンで開いた記者会見の後、米CNNの単独インタビューに応じ「北朝鮮やベトナム、ロシアから逃げる人を、正義から逃げているとは人々は思わない。私は正義から逃げたのではなく、正義を探し求めてきた」と述べた。
「楽器ケースに入っての逃亡はどうだったか」との質問に対し、ゴーン元会長は「ノーコメント」としたが「どのような手段で得たとしても自由はいつでも甘美である」と付け加えた。
米CNBCのインタビューでは「逃亡費用は実態よりも非常に大きく報じられている。それほどの金は必要ない」などと語った。同局のコメンテーターは番組内で「彼はPR活動のように無罪を主張している。メディアが一番知りたがっている脱出方法について話さないのは、自分を守るため」と指摘した。
ゴーン元会長の記者会見について、欧米メディアは一斉にトップ級のニュースとして報じた。日本の司法制度を強く批判する姿を大きく報じており、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「ゴーン元会長『あだで返した』と日本批判」との見出しで伝えた。
各紙はゴーン元会長が記者会見で家族と自由に話すことができず「日本の人質だった」と主張したことについて報じた。米紙ワシントン・ポストは「『腐敗した非人道的な』日本の司法制度について、逃亡後初めて批判」との見出しで報じたほか、米CNNも「日本で死ぬか、逃亡するかの選択だった」との発言を大きく伝えた。
米ブルームバーグ通信は「検察官が弁護士の立ち会いなしに容疑者を繰り返し尋問し、ほぼ100%の有罪率となる日本の司法制度に疑問を投げかけた」と指摘した。
一部報道では、今回の逃亡が自らを窮地に追い込むことになったとの見方もみられた。米紙ニューヨーク・タイムズは「国際逃亡者として、ゴーン元会長の未来は不透明だ。自身の名前を逃亡者リストから消そうとしているが、合法的な手段をとれるかどうかは不明だ」とした。
ゴーン元会長が記者会見で4カ国語を扱い、プレゼンテーション資料を使いながら説明する様子についても細かく報じた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「ダークスーツに赤いネクタイ姿で時折身ぶりや指を鳴らして説明し、日産やルノーで長期間トップを務めたショーマンシップの片りんを見せた」と伝えた。 
●ゴーン被告の会見 海外メディアはどう伝えた?
ゴーン被告の記者会見は海外メディアも大きく報じています。
このうちフランスの公共放送フランス2は「ハリウッド映画のような逃亡劇だったが、逃亡の経緯については何も話さなかった」と指摘しました。
そのうえで「逃亡劇以外のことについては終始、大変じょう舌で、会見に備えてライオンの肉でも食べてきたのではないかと思えるほど、意気込んでいた」などとゴーン元会長の会見の様子を皮肉交じりに伝えました。
またアメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは「カルロス・ゴーンは被害者か悪人か?」というタイトルを付けた記事の中で、「ゴーン氏が汚名を返上したいと真剣に思うのであれば、劇場型の会見よりもっと説得力のある主張を展開する必要がある」と批評しました。
さらにイギリスの公共放送BBCは、ゴーン元会長の記者会見のあと森法務大臣が深夜に記者会見を行ったことについて「ゴーン氏による日本の司法制度に対する一方的な批判は、到底受け入れがたいと怒りをあらわにした」などと日本政府の反応を報じました。 
●国外逃亡費用いくら? 米メディアの個別インタビューでゴーン氏が語ったこと
日本から国外逃亡したカルロス・ゴーン被告が1月8日、レバノンで記者会見を行った。
ゴーン被告は英語、フランス語、アラビア語、ポルトガル語の多言語をたくみに操り、約2時間半にわたって持論をまくし立て、世界中のメディアを前に、日本の司法制度を批判し、身の潔白を主張した。
日本からも多くのメディアが会場前に殺到したが、「公正に報道するであろうメディアだけを厳選した」(ゴーン被告)とし、日本からの3社(朝日新聞社、テレビ東京、小学館)含む自身のお気に入りメディアのみと、ごく限られた報道陣だけが会場内に入ることを許された。
米ニューヨークタイムズ紙は会見後の第一報として、「東京からの逃避行カルロス・ゴーン 長くこじれた防衛からの解放」とする記事を発表。
ただし、世界中の人々がまず知りたかったであろう、「逃亡日の行動」と「どのように国外に脱出したか」についての2大クエスチョンマークについて、せっかくゴーン被告が沈黙を破ったのに、被告は「会見を開いたのは『なぜ』日本を離れたか、について話すためだ」とし、肝心な疑問への答えが見出せなかったことへの困惑が表れる内容だった。
しかしながら同紙は、被告の逃亡日の行動について、自社と各国の複数のニュースメディアの報道から以下のように推測するとした。「12月29日の午後、東京の自宅を徒歩で外出し、新幹線を利用して大阪に移動。コンサートの音響用具ボックスに身を隠し、関西国際空港からコーポレートジェットでトルコのイスタンブール・アタテュルク空港へ飛んだ。そこで別の飛行機に乗り換えベイルートへ、という線でおそらく間違いない」。
また同日、米CNBCは、ゴーン被告の個別インタビューの様子も報じた。被告の服装が合同記者会見の時とまったく同じなので、おそらく会見後に応じた個別インタビューだろう。
そのインタビューで被告は、合同記者会見同様にすべての容疑を否定し、公正な裁判のためには国外逃亡するしか選択がなかったと、保身の姿勢を崩さなかった。
またCNBCのインタビュアーが、改めて「どのように逃亡したか?」と問うと、「他人をトラブルに巻き込まないために、自分だけで実行した」と返答。「数時間も(狭い)ボックス内にうずくまっていた、んですよね?どういう感じだったのか」と聞くと、被告は肯定も否定もせず、このように語った。「それについては話すつもりはないが、移動中はもちろんものすごく不安だった。しかし、レバノンに到着し妻や家族に会うことができ、心配ごとが一気に消えた。まるで、自分が新しく生まれ変わったような気持ちになった。ここにいるのは新しい自分だ」。
「逃亡にどのくらいのお金がかかったか?」とインタビュアーが突っ込んだ質問を投げかけると、被告は具体的な金額については言及しなかったものの「これを実行し成功させるには、とてもとても惜しみないもの」と答え、「多額過ぎるということ?」という問いに「そうだ」と答えた。
また、CNBCの同日の関連ニュースでは、元FBIの特別エージェント、ジェフ・ランザ(Jeff Lanza)氏をゲストスピーカーに迎えた。同氏は「もし日本の監視体制が抜かりないものであったならば、このような飛行機、電車(新幹線)、車両(タクシー)を使った移動、逃亡劇は決して起こりえなかっただろう」と指摘。改めて、日本のセキュリティの甘さが浮き彫りとなった。  
●ゴーン会見、欧米メディアの反応は 「説得力ある主張を」「逃走劇は本題にあらず」
前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告(63)が2020年1月8日に逃亡先のレバノン・ベイルートで開いた記者会見では、朝日新聞、テレビ東京、小学館の3社を除く日本メディアの大半が締め出された。自らに批判的なメディアを排除することで、同情的な世論の形成を狙った可能性もありそうだ。
その結果、ゴーン被告は日本の司法制度をめぐる問題点をアピールするのは一定程度成功したとみられる。ただ、欧米メディアからはゴーン被告の説明不足を指摘する声も相次ぎ、自らの無罪主張は必ずしも浸透しなかったようだ。
日本の司法制度をめぐるゴーン被告の主張に一定の理解を示したのがワシントン・ポストで、「ゴーン被告、日本の司法制度を『腐敗している』『非人道的』と非難」の見出しを掲げた。記事では、起訴が日産と検察の共謀によるものだというゴーン被告の主張に「主張は不合理で事実に反する」などと反論する東京地検の斎藤隆博次席検事によるコメントを紹介した上で、
「それでも多くの法律専門家が、日本の司法制度をめぐるゴーン被告の懸念を共有している。一方で、多くの外国企業の幹部は、実力とコネのある日本のビジネスパーソンが、日本の司法制度で似たような扱いを受けることは考えられない、と話している」 などと指摘した。
BBCはゴーン被告のプレゼンテーションぶりを高く評価。どういった論点に注目が集まるかを含めてゴーン被告側がコントロールに成功していると分析している。
「目を引くパフォーマンスだった。ゴーン被告はもはや自動車業界のスターではないが、真実が何か、容疑の有無にかかわらず、今でも明らかに会見場を引き込む方法をわかっている」
「彼の主張は詳細に調べられるだろうし、間違いなく日産と日本政府は反応するだろう。だが、彼は間違いなく議論の主導権を握っている。ドラマチックな逃走劇と結び付けて、見事にそうしてみせたのだ」
だが、こういった見方は少数派だ。ゴーン被告は2時間30分にわたる記者会見で、無罪を示す具体的な証拠や書面を示すことはなかった。この点を念頭に説明不足を指摘する声も出た。ニューヨーク・タイムズは、「カルロス・ゴーン、犠牲者なのか悪党なのか」と題した論説記事で、
「もしゴーン被告が真剣に潔白を証明したいのであれば、劇場型記者会見で行ったよりも、はるかに説得力のある主張をする必要がある。日本は、司法制度に根本的な再考が必要かどうか、吟味する必要がある」 として、ゴーン被告と日本側双方の説明責任を指摘した。
ブルームバーグは、「公平を期して言うならば、少なくともゴーン被告は、記者会見を司法からの逃走をめぐるドラマチックな詳細を披露する場には使わなかった(おそらく、ネットフリックスの映画のためにとっているのだろう)。なぜならば、それがどんなにエキサイティングなものであろうとも、それが本題ではないからだ」 などとして、記者会見では「本題」にあたる、自らの容疑をめぐる疑問に答えられていないことを指摘。メディアや法廷での説明が必要だとして、次のように記事を結んだ。
「いずれにしても、法の裁きは下されなければならない」 
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●ゴーン被告の会見、東京地検が異例のコメント「到底受け入れられない」
保釈条件に違反して中東のレバノンに逃亡した日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告が1月8日夜(日本時間)、逃亡後初めて、同国首都ベイルートで記者会見を開いた。
ゴーン被告は、長期におよぶ身柄拘束、家族との接触が禁じられたことなどを挙げ、日本の司法制度、特に検察について「基本的人権に反する」と批判した。
東京地検は1月9日午前0時過ぎ、斎藤隆博・次席検事名で日本語と英語による異例のコメントを発表した。
コメントでは「会見内容も自らの行為を不当に正当化するものにすぎない」「我が国の刑事司法制度を不当におとしめるもの」と強い言葉でゴーン被告を批判した。
その上で、「主張は不合理であり、全く事実に反している」「被告人ゴーンに我が国で裁判を受けさせるべく、関係機関と連携して、できる限りの手段を講じる」とした。
全文は以下の通り。 令和2年1月9日 東京地方検察庁 次席検事
被告人カルロス・ゴーン・ビシャラの記者会見について
被告人ゴーンは、犯罪に当たり得る行為をしてまで国外逃亡したものであり、今回の会見内容も自らの行為を不当に正当化するものにすぎない。
被告人ゴーンが約130日間にわたって逮捕・勾留され、また、保釈指定条件において妻らとの接触が制限されたのは、現にその後違法な手段で出国して逃亡したことからも明らかなとおり、被告人ゴーンに高度の逃亡のおそれが認められたことや、妻自身が被告人ゴーンがその任務に違背して日産から取得した資金の還流先の関係者であるとともに、その妻を通じて被告人ゴーンが他の事件関係者に口裏合わせを行うなどの罪証隠滅行為を現に行ってきたことを原因とするもので、被告人ゴーン自身の責任に帰着するものである。
このような自身の犯した事象を度外視して、一方的に我が国の刑事司法制度を非難する被告人ゴーンの主張は、我が国の刑事司法制度を不当におとしめるものであって、到底受け入れられない。
また、当庁は、被告人ゴーンによる本件各犯行につき、適正に端緒を得て我が国の法に従って適法に捜査を進め、訴追に至ったものである。
本件の捜査により、検察は被告人ゴーンの犯した犯行について、有罪判決が得られる高度の蓋然性が認められるだけの証拠を収集し、公訴を提起したものであって、そもそも犯罪が存在しなければ、このような起訴に耐えうる証拠を収集できるはずがなく、日産と検察により仕組まれた訴追であるとの被告人ゴーンの主張は不合理であり、全く事実に反している。
当庁としては、適正な裁判に向けて主張やそれに沿う証拠の開示を行ってきたところ、被告人ゴーンは、我が国の法を無視し、処罰を受けることを嫌い、国外逃亡したものであり、当庁は、被告人ゴーンに我が国で裁判を受けさせるべく、関係機関と連携して、できる限りの手段を講じる所存である。 
●ゴーン会見、海外では報道に続々と「いいね!」
1月8日朝(米東部時間)のアメリカのCBSニュースで、日産自動車の元最高経営責任者(CEO)、カルロス・ゴーン被告の記者会見を報じた人気アンカーがこう言った。
「僕は(逃亡のために)あんな箱に入れない。閉所恐怖症だから」
すると解説者が鋭く切り返した。
「あの箱は、拘置所ではない。日本の裁判の有罪判決率が99%を超えていて、その司法制度が崩壊しているというのであれば、選択肢はない」
ゴーン被告が、レバノンの首都ベイルートで同日開いた会見内容をそのまま繰り返すような口調だった。
会見では拍手喝采も
ゴーン被告は1月8日午後3時(現地時間)、ベイルートで自らが選んだメディア約50社の記者を相手に会見を開いた。日本メディアで出席できたのは、朝日新聞社、テレビ東京、小学館の3社だと報じられている。
会見でゴーン被告は英語、フランス語、アラビア語、ポルトガル語の4カ国語を駆使し、記者からの質問にも間髪おかず答えた。その様子は世界中で報道され、自由奔放に無実を主張する姿に世界中がクギ付けになった。一瞬にして日本の司法制度と企業統治の負の面が、四面楚歌の状態に置かれたような雰囲気だった。
アルジャジーラによると、ゴーン被告が会見冒頭、「レバノン人であることを誇りに思う」とアラビア語で話すと、拍手喝采が起きたという。レバノンでは海外で成功した人物としての人気を示すものだが、日本では、容疑者、のちに被告として「冷酷で貪欲な独裁者だった」(ゴーン被告)とされたのとは対照的だった。
欧米メディアは一斉に、記者会見をストリーミングで生中継。これに刻々とコメントや「いいね!」のハートマークが表示された。
米名門大学からは講演依頼も
会見参加者には、ゴーン被告の友人も含まれていたと見られる。フランスのAFP通信は、友人ジャーナリストの1人が、会見に感銘した様子を報じた。
「家族や子ども、友人のことなど自分のプライベートなことを話すとき、特に冷静だった。彼は強靭だ。真のサムライだ」(友人のリカルド・カラム氏)
ニューヨーク・タイムズはやや皮肉っぽく、会見の様子をこう表した。
「一部は企業のプレゼン、一部は法的な弁護、一部はとりとめもない演説だった(中略)。問題は、(プレゼンに使ったスライドの)字が小さすぎて、部屋にいた誰も読めなかったことだ」
タイムズは、会見直後にゴーン氏を単独インタビューし、その中でゴーン氏は「優良企業に歓迎されるという可能性も含めて、将来について楽観的な見方を示した」という。レバノン入りしてから、アメリカのアイビーリーグと言われる名門大学などが講演の可能性を打診してきたともいう。
欧米メディアが、ゴーン被告の会見内容で共通して注目していたのは、以下の点だ。
「日産幹部と日本の検察当局の陰謀である」(ゴーン被告)→「逮捕・起訴は日産の西川広人前最高経営責任者(CEO)や豊田正和取締役など日産の『心ない、悪意ある』人々のたくらみの結果でもあると主張した」(ウォール・ストリート・ジャーナル)
「日産と日本の地検は、従うことに慣れていない、裕福で権力がある人物に地獄をくぐらせた。彼は今や逃亡したので、地獄をくぐるのは彼らの番だ」(ブルームバーグ)
「私は、正義を回避したのではない。不正義と政治的迫害から逃避したのだ」(ゴーン被告)→「特に辛辣だったのは、孤独感についての説明だ。『新年休みの6日間、一切人との接触がなかった』。妻に会うことができなかった禁令は、『もはや人間ではないような気持ちにさせた』とゴーン氏は言った」(アルジャジーラ)
なぜWSJは特ダネを連発できたのか
年末にゴーン被告が国外脱出して以降、特ダネを連発しているのはウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)だ。密航計画チームが空港の下見をしたことや費用、ゴーン氏が隠れたケースの写真、そしてキャロル夫人が逃亡後にレバノンの教会の聖人にロウソクを灯したことまで伝えている。
欧米メディアは、このWSJの報道を繰り返し伝えた。
なぜWSJは内外の有力メディアを差し置いてスクープをものにできたのか。WSJ日本版の西山誠慈編集長は、こう話した。
「取材の詳細は明らかにできませんが、レバノンをはじめ、トルコやフランス、アメリカといったこの件に関わりのある国々に取材網を持っていることが大きいと考えており、その点は日本メディアに比べて強みがあります」
また、オピニオン欄では「ゴーン氏逃亡が示した日本の課題」とした記事を載せ、論説部門は、こう論じた。
「こうした一連の出来事は日本の不透明な企業統治と法に基づくデュープロセス(適正な手続き)の欠如を白日の下にさらした。報酬や企業統治に関する問題は取締役会で対処するべきだった。ところがどういうわけか。そしてこれが最大の謎でもあるのだが、刑事事件となった。
この事件をめぐっては、1人または複数の個人が不透明な統治ルールを利用して日本企業の権力の座から外国人を追い出そうとした疑いがぬぐえない」
こうしたオピニオンが出た背景として、西山編集長はこう解説する。
「2011年に起きたいわゆる『オリンパス事件』でイギリス人の経営者が解任されたことも海外メディアとしては記憶に新しいところです。欧米に比べて日本企業では外国人のトップが少なく、その原因や背景に、海外メディアは関心を持っていたこともあるかと思います」 
 
 

 

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●怪気炎ゴーンの次なる一手…“逆提訴”民事裁判で勝てるのか
ほとんど独演会だったカルロス・ゴーン被告の記者会見。日本と徹底的に戦うつもりだが、この先、ゴーン被告はどう出てくるのか。
取りざたされているのがゴーン裁判の第2ラウンドだ。彼が日産に損害賠償を要求し、日本政府に国家賠償請求訴訟を起こすのではないかとの声が上がっている。ゴーン被告による“逆提訴”である。ネットには「国際司法裁判所を通じて人質司法の是非を問うべきだ」との書き込みもチラホラ。ゴーン被告の逆襲はどうなるのか。
「国際司法裁判所は国家同士の揉め事を裁く場なので、ゴーン被告個人が提訴することはできません」とは元検事の落合洋司弁護士だ。
「日産を訴えるとしたら、本来受け取ることができたはずの報酬や慰謝料として、10億円単位の金額を要求することになるでしょう。日本政府を訴える場合は長期勾留で精神的な苦痛を受けたとして、1億円とか2億円程度を要求するのではないか。日産との裁判はレバノンの裁判所でも起こすことができるし、日本の弁護士を雇って日本で提訴することも可能です。でも日本政府を訴える場合は、日本国内の裁判所に限られます。ただし、ゴーン被告に出廷の義務はありません」
とはいえ、日本の裁判所に訴えた場合、勝訴の可能性はかなり低い。万に一つの可能性で勝訴しても国家賠償として受け取れる金額は50万〜100万円程度。最大でも300万円という。
一方、レバノンで裁判を開けば、現地の人気が高いゴーン被告に有利に働くとみられている。日産と検察が「一緒にゴーンを陥れよう」などと共謀したことを示す音声テープや文書を法廷で示せば、勝訴の可能性はゼロではない。
「ゴーン被告もバカじゃないでしょうから、裁判はお金と時間の無駄だと判断しているはずです。それよりも、『ウォールストリート・ジャーナル』などの外国メディアと組んで日本の司法制度を批判し、自己の潔白を主張する方法を選ぶと思います」(落合洋司氏)
ゴーン被告は妻との面会禁止がつらかったから逃げたといわれるが、裁判で無罪を勝ち取れないと諦めていたとも考えられる。残りの人生をレバノンで暮らし、日本批判を続けることになりそうだ。 
●ゴーン被告「誇り持ち出国したかった」 日本メディアに対応 
日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(65)は10日、逃亡先のレバノン・ベイルートで日本メディアの代表取材に応じ、「このように日本を出るとは思わなかった。誇りを持って出国すると思っていた」と振り返った。一方で出国の経緯については「コメントするつもりはない」と語り、詳細を明らかにしなかった。
ゴーン被告は約30分間にわたって英語でインタビューに応じた。この中でゴーン被告は「自分がやり遂げたこと、日産やアライアンスに誇りを持って出国すると思っていた。不運なことに現実はとても違っている」と指摘。その上で「私が日本に対して敵意を持っていると思わないでほしい。平和的にまた日本を訪れる可能性があればいいと願っている」と強調した。
ゴーン被告は8日に行った記者会見で、自身に対して批判的な論調を取る社を事前に排除し、多くの日本メディアが出席できなかった。10日の代表取材でゴーン被告は「場所が限られていた。日本メディアはどの社も同じ報道をするので、2、3社を入れれば彼らが伝えるだろうと思った」と弁明した。  
●ゴーン会見「華麗なパフォーマンス」か「残念なプレゼン」か 
日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告がレバノンの首都ベイルートで開いた記者会見を、各国のメディアがトップニュースで報じました。
テレビ局やネットメディアの中継を通じて世界中が注目したこの会見。2時間半にわたってゴーン被告が熱弁を振るいましたが、メディアによってかなり「注目ポイント」が異なったようです。
センセーショナルな見出しが並ぶなか、意外にも「冷めた目」で報じたメディアもあり「ゴーン報道は百花繚乱」の様相です。
ゴーン被告、米CNNに「不正から逃れてきた」と発言
まるでハリウッド映画を彷彿させる「日本脱出劇」の効果もあってか、ゴーン被告の会見には世界中の注目が集まりました。私はBBCの中継映像をウオッチしましたが、記者席にはCNNやBBCのニュース番組で見かけるセレブキャスターたちが陣取っていて、欧米メディアの「力の入れ具合」が画面を通じて伝わってきました。
報道によると、ゴーン被告自身が一人ひとりの記者を選んだとか。では、ゴーン被告に「選はれた」各国のスター記者やキャスターたちは、会見のどの部分に注目したのでしょうか?
まずは、ゴーン被告が「フェアに報じてくれるので会見にはぜひ出席してほしかった」と評していた英国BBCの報道を見てみましょう。
Ghosn: Decision to flee was hardest of my life / (ゴーン氏、「脱出の決断は、私の人生で最も難しいものだった」)
英国BBCは、「ゴーン被告の苦悩」を匂わせる見出しです。記事を読んでみると、長時間にわたるゴーン被告の会見のなかから、刑務所で130日間も窓のない独房に閉じ込められたとか、週に2回しかシャワーを認められなかったとか、1日8時間も弁護士の同席を認められずに尋問を受けたといった「拘留期間中に不当な扱いを受けた」(ゴーン被告)ことに、フォーカスしています。「不当な環境」に置かれたゴーン被告が、やむを得ず「脱出」という難しい決断にいたった、という印象を与えたかったのでしょう。
それでは、会見の評価はどうだったのでしょうか――。BBCのビジネス担当記者は、次のように評していました。
It was a bravura performance. / (大胆で華麗なパフォーマンスだった) (bravura :大胆で華麗な)
Mr Ghosn is no longer the star of the auto industry, but whatever the truth or otherwise of the charges against him, he clearly still knows how to work a room. / (ゴーン氏はもはや自動車産業のスターではない。でも、彼にかけられた容疑の真偽はともかく、明らかに会場を操る術を知っている)
次に、同じくゴーン被告から「指名された」米テレビ局CNNは、日本の司法制度への批判に注目したようです。
Fugitive ex-Nissan boss Carlos Ghosn blasts Japanese justice. It was escape or 'die in Japan' / (逃亡者の日産前会長カルロス・ゴーン氏は、日本の司法を激しく攻撃し、「逃げるか日本で死ぬかの選択だった」と語った) (fugitive:逃亡者)(blasts:激しく攻撃する)
独自に行った単独インタビューでは、「He claims to be open to a trial outside Japan」(彼は日本以外での裁判を受けることを求めている)というゴーン被告の主張を紹介。インタビューのなかでゴーン被告は、「fugitive(逃亡者)」というワードを多用しつつ、「共産党政権下の北朝鮮やベトナム、ロシアから逃げる人を、正義から逃げている人と誰も思わない」「私は正義から逃げたのではなく、不正から逃れてきた」と発言していました。
NYタイムズが指摘「ゴーン氏プレゼンが残念だったワケ」
私が見たなかで一番センセーショナルだと思った見出しは、英紙ガーディアンの記事です。
Carlos Ghosn likens arrest to Pearl Harbor as he faces media / (カルロス・ゴーンは、メディアの前で、自身の逮捕を真珠湾攻撃にたとえた) (likens A to B:AをBにたとえる)
確かに、ゴーン被告は会見で、逮捕がいかに「不意打ち」だったかを強調するために真珠湾攻撃にたとえていましたが、見出しになるとかなりセンセーショナルな印象です。
ガーディアン紙と異なり、意外にも、一歩引いたスタンスで報じていたのが米紙NYタイムズでした。ゴーン被告の発言内容よりも会見の様子にフォーカスしています。
Carlos Ghosn, Mum on Tokyo Escape, Unleashes a Rambling Defense / (カルロス・ゴーンは、東京からの脱出劇には触れなかったが、とりとめのない自己防衛を爆発させた) (mum:何も言わない)(unleash:爆発させる)(rambling:とりとめのない )
It was part corporate presentation, part legal defense, part rambling tirade. / (会見は、企業のプレゼンでもあり、法的防衛でもあり、とりとめのない長演説だった) (tirade:長い演説)
記事を読んで思わず笑ってしまったのが、「ゴーン氏はパワーポイントを使って、まるで企業のプレゼンのように次々と資料やデータを映しながら話した」ものの、「But there was a problem: The text was too small for anyone in the room to read」(でも、問題があった。それは、テキストの字が小さすぎてその場にいた誰も読めなかったことだ)という指摘です。
確かに、BBCの映像ではできるだけアップで映していましたが、文字が小さいうえに光が反射していてよく読めませんでした。NYタイムズの記事からは、必死にプレゼンするゴーン被告の意図とは裏腹に、せっかくのパワーポイントが見えないという「残念ぶり」が伝わってきます。
NYタイムズは単独インタビューも行っていて、そのなかで「世界的な大企業や一流大学から新たな依頼が続々と届いている」というゴーン被告のコメントを紹介しています。
ゴーン被告によると「A lot of people want to get in contact with me」(たくさんの人が私とコンタクトを取りたがっている)そうですから、この先、ゴーン被告の露出が増えて、さらなるドラマが見られそうです。
ゴーン被告の会見をめぐる報道からは、メディアによって「注目ポイント」や「評価」が異なることがよくわかります。「どこを切り取ってどう伝えるか」がメディアの本領だからです。
英語メディアの報道から日本の報道だけでは気づかない視点を知る......。今年も数多くの視点をお伝えしていきたいと思います。 
●ゴーン被告「私には発言力と金がある」 代表取材で語る
昨年末に日本から逃亡した日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)が10日、レバノンの首都ベイルートで日本メディアの代表取材に応じ、逃亡の経緯について「弁護人は知らなかった。家族も誰一人知らなかった。慎重に自分一人で計画した」と述べた。8日の会見と同様に逃亡の詳細は語らなかったが、日本の弁護団に相談せずに逃亡したと説明した。
また、ゴーン前会長は9日にレバノンの捜査当局の事情聴取に応じたとも説明。「彼らはルールにのっとってやっているので、私は尋問に従った」と語り、「私はレバノンの司法を信頼し協力している。私が何か特別な配慮を受けているとは思っていない」と述べた。
国際刑事警察機構(ICPO)を通してゴーン前会長に国際手配書が発行されていることについては、「私と(妻の)キャロルはレバノンを離れられない。国際手配書と戦うことになる」との考えを示した。
一方で、ゴーン前会長は改めて日本の司法制度を強く批判。「(日本の)人質司法を耐えているたくさんの人には、私が持っている特権がない。私には発言力と金がある。他の人にはできないことができる」と語った。
10日のやりとりは、ゴーン前会長側のPR会社が日本メディア各社から質問を募り、一部の社が代表して取材する形で実施。約30分のインタビュー映像と音声が各社に公開された。
ゴーン前会長は8日にもレバノンで2時間20分にわたって会見。自らの無実を主張し、日本の刑事司法制度を「人質司法」などと批判していた。事件は自らを追い落とす「クーデター」だったとも強調し、日産の幹部らの実名を挙げて非難。一方で、日本からの逃亡方法については明かさなかった。 
 
 

 

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●フランスメディアはゴーンをどう見たか
「傷ついた虎の弁論」「社会面の事件」「マンデラ気取り」
フランスでは、地上波デジタルのニュース専門チャンネルが4局ある。1月8日、そのどれもが、カルロス・ゴーン被告の記者会見を午後2時から5時までぶっ通しで中継した。中にはゲストを呼んで、会見の休憩や質問タイムに討論や解説を挟む局もあった。
民放独占インタビューでは「日本にはもう誰も行くな」
午後8時からの2大チャンネルのニュースでは、民放のTF1が、会見後にゴーン被告の事務所での独占インタビューに成功しており、その模様がトップ扱いだった。会見では司法や日産は別にして、日本と日本人は素晴らしいと盛んにゴマをすっていたゴーン被告だが、ここでは「私のように罠にかかるな。日本にはもう誰も行くな」と冷たく言い放った。また「私の『暗殺』計画をしたのは」と名前こそ出さなかったものの、日産と検察に加えて「安倍の行政官」と述べた。
一方、国営放送FR2の取り上げは2番目で、トップは、ドゴール空港でコートジボワールからの飛行機の車輪格納部から、密航しようとして凍死か窒息死したとみられる10歳くらいの男の子の死体が発見されたというニュースであった。まるで、同じ国外脱出でもずいぶん違うものだ、というように。
会見翌日の朝刊一面は、割れた
フランスの新聞の一面はその日の主要ニュースを紹介し、記事は別のページにある。会見翌日の9日朝の紙面は、「ルフィガロ」と「レゼコー」がトップ扱いであったのに対して、「パリジャン」は右上に経済面の記事として紹介、「リベラシオン」に至っては取り上げられていなかった。「ルフィガロ」は中産階級から上の層の読者が多く、「レゼコー」は経済紙である。
ちなみに「パリジャン」のトップは大衆紙らしく「年金改革/外国人から見たストライキ」という少々ほっこりした社会面的なアプローチ。「リベラシオン」は「死の警察検問/不当暴力」でスクーター運転中にスマホをみていた42歳の配達員を警察が力ずくで捕まえて窒息死させてしまったという同紙らしい体制批判のニュースであった。
もっとも、この両紙は8日の朝にゴーン被告の会見を大きく取り上げている。
「リベラシオン」は編集長論説で皮肉たっぷりにゴーン被告を批判している。
ゴーン被告は、「億万長者のドレフュスあるいはマンデラ気取り」で日本での不当な扱いと戦っている。しかし、逃亡は、結果として当局がとった厳しい警戒を正当化してしまった。日本の検察は証拠をもっていないという彼の主張を弱くしてしまった。 なぜなら普通の市民なら逃げたのは有罪だからだと思うものだから。そして、もしこの事件から教訓を得るとしたら、なぜ立派な経営者が贅沢な生活をするのに十分で驚異的な給料をもらっているのにそれに満足しないのか、ということだ、とも。
「夫は真実を暴く」キャロル夫人のインタビュー
一方「パリジャン」の社説では、ゴーン被告が「自由に発言できるようになった今日、強い説得力を持たなければならない。フランスの支配を排除するためには何でもやる日本のマフィアという論だけでは、彼にかけられた非常に重い容疑を晴らすことは出来ない」とする。なおこの日のトップは、「夫は真実を暴く」というキャロル夫人のインタビュー記事である。
9日一面で大きく告知しなかったのは、結局、ゴーン会見にこれらのことを上回るだけの内容がなかった、ということだろう。
「社会面の事件」と切り捨て
一面トップにもってきた「レゼコー」も同じだ。見出しは「傷ついた虎の弁論」で、大きく扱ってはいるもののとくに社説もなく、会見の内容を淡々と報道しただけだった。同紙も8日の朝には社説を出して「すべての陰謀論の愛好者は真実を暴露するために爆弾を投げることを期待しているだろう」と書いた。爆弾は投げられなかったということだ。
この会見前日の社説では、ゴーン被告にとってはこれから始まるメディア法廷が重要だとしても、もはやルノー・日産・三菱にとって「重要なことは別のところにある」という。いかに有能な経営者であっても、一人の手に権力を集中してはならない。大企業の経営者はつねに透明性をもってきちんと報告し、反対者に対しても説明しなければならない。さらに、ゴーン被告が犠牲者であろうと犯罪者であろうとそれは「社会面の事件」でしかない、とはっきり切り捨てた。
同紙は、事件の当初から精力的に取材しており、経済紙という性格から財界や経済界の事情に詳しい。もはやゴーン被告は、フランスでは用済みだと言わんばかりだ。
何百万ドルも払って司法から逃れた男を信頼できるか?
インテリ向けの夕刊紙「ルモンド」の一面には小さく「司法 カルロス・ゴーンの自己弁護」とあるだけだった。そして「ベイルートでの1月8日の記者会見でルノー・日産の元社長はその逃亡について何の要素も与えなかった。そして『彼に対する執拗なキャンペーン』を告発しただけだった」
事実関係の報道などのほか、社説もあるが、「何も新しいものは出てこなかった。他人を非難するだけだった」という。怪しい者たちに何百万ドルも払って司法から逃れた男をどうしたら信頼できるのか、とゴーン会見の説得力のなさを指摘。また「日本の司法の不公正さ」と、「監視の厳しさ」が大きなポイントであったが、確かに客観的に言って日本の司法の不公正は問題であるとしても、逃亡を正当化するものではないし、「監視の厳しさ」も、容易に警察の警戒を欺いて9000キロメートル離れたところに逃げられたのだから大いに割り引いて考えなければならない、と。
「ゴーン反撃」と理解を見せた新聞も
このように、各紙、ゴーン被告に対しては冷めた見方をしているのだが、わずかに理解を見せたのは「ルフィガロ」だった。9日一面の見出しは「ゴーン反撃」である。その下の社説では、ゴーン被告は「特に厳しい扱いをされた」と日本の司法を糾弾し、「今まで聞かせることを拒否されていた彼の真実を表明することができた。公正な裁判のみが最終的に彼の名誉を取り戻すのだ」と締めくくった。ただし、会見の模様を伝える記事では、「暴露も驚きもなかった」としている。
ゴーン被告がフランスで一定の支持を得る理由
ゴーン会見を見ながら、私は、日本の司法のあり方が違っていれば、と残念でならなかった。ゴーン被告の演説の半分は司法への恨み節であった。そのためにずいぶん論理のすり替えが行われてもいた。ゴーン被告がフランスで一定の支持を得ているのは、ひとえに、日本の司法に対する不信ゆえである。
ゴーン被告の容疑に対する反論も、フランスならばこの程度のことはすでにマスコミに流れていたことだろう。弁護士が同席し、捜査資料がすべて公開されるとなれば、検察側はこれ以上の努力をしなければならず、真に問題の中核に迫れることだろう。マスコミももっと深いところを掘り下げるだろう。
そもそも、現代の経済犯罪に対しては、身体拘束して自白を求める司法は合わないと私は考える。何しろ、世界中の英知、腕利きビジネス弁護士などが、法律の穴をさがし、いろいろな国や地域の制度を使い「合法的」にみえるようにしているのだ。犯人も悪事を働いている意識はない。創造的なテクニックを使っただけだと思っている。その穴を突かなければならない。とりあえず一つの罪だけで捕まえてその後で本丸を攻めようとすると何年も拘置しなければならない。かといって証拠固めまでしてから逮捕では、時機を逸してしまう。だからこそ、GPSをつけるなどの方法がとられているのである。
なにも人権だ何だというような大げさなことではない。要するに、自分もいつ冤罪で捕まるかもしれない、そのときにきっちりと間違いをただし、社会的にも名誉を保ち続けられるようにするにはどうしたらいいか、ということだ。これは世界共通のテーマだと思う。
それから今回、ゴーン被告が日本の司法の欠陥告発の旗手のようになってしまったために、日本での議論が歪められ、改善がまた遠のいたのではないかと心配である。 
●瀕死の日産は泣きっ面に蜂…執拗痛烈な「ゴーン砲」が直撃
「法律違反をして国外に出ている人の自作自演におつきあいする暇はありません」――。8日のゴーン会見で名指しで批判された日産自動車の豊田正和社外取締役は9日、平静を装った。しかし、ゴーンの痛烈な批判が、業績悪化が続き立て直しを急ぐ日産を直撃しているのは間違いない。
日産前会長カルロス・ゴーン被告は2018年11月19日に逮捕された。その後、日産の業績はボロボロだ。逮捕後の本業のもうけを示す営業利益を見ると、19年3月期は前期比45%減の3182億円、20年3月期(見込み)は同53%減の1500億円とジリ貧だ。
ゴーンの逮捕日、1005・5円だった株価は、9日は644・3円と4割近くも下落している。
日産は昨年12月1日、内田誠新社長が就任し、新体制が発足したばかり。ゴーン事件の取材を続ける経済ジャーナリストの井上学氏が言う。
「騒動はこの先、数年は続くでしょう。これからもゴーン被告は会見をしたり、メディアに出て、日産の陰謀説や悪質ぶりを繰り返し発信するはずです。日産のイメージ悪化は避けられません。社内の士気は下がり、車の販売や人材確保に悪影響が出るのは必至です」
無実を証明するための映画構想も報じられている。もし、日産が悪役で登場する映画が大ヒットすれば、大きなダメージを受ける。
海外からの“ゴーン砲”を迎え撃つ日産社内は、ただでさえガタガタしている。内田誠社長らとトロイカ体制を築くはずだったナンバースリーの関潤・副最高執行責任者が昨年末、退任を表明し日本電産社長として電撃移籍することになったからだ。
「日産生え抜きの関さんは、社内の事情を熟知し人望があった。ゴーン事件後、社内を何とかまとめてきたのも関さんでした。その関さんまでが、愛想を尽かしたことで、社員の間に動揺が走っています。業績回復のための追加リストラもささやかれている。最近、技術者などの人材が他社に、引き抜かれるのも少なくありません」(日産関係者)
業績ジリ貧、大リストラ、幹部の退任、人材離れ……。この先、しつこい“ゴーン砲”が加われば、日産は泣きっ面に蜂だ。
8日の会見でゴーンは「死んだような会社だった日産を私は立て直した」と自慢したが、今の日産は「死んだような会社」に戻っている。
「売れる車を生み出す体制には、とてもなっていません。ルノーとの統合交渉でも、これまでは、利益を出しているということで発言力がありましたが、ここまで業績が悪化すると、これからは難しくなる。今年3月期の決算で4期連続の減益は確実。ルノーにのみ込まれるどころか、見捨てられるとの見方まで浮上しています」(井上学氏)  
●ゴーン被告逃亡
日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告(65)=会社法違反(特別背任)などの罪で起訴=が保釈中にレバノンへ出国した“大脱走劇”は年末年始の世界の話題をさらった。8日に記者会見したゴーン被告は大半の日本メディアを閉め出し、日本の司法や日産に対する批判を一方的に展開。身の潔白を国際世論に訴えようとしたようだが、その言動には厳しい見方も広がっている。
フランスのメディアは、日本から逃亡したゴーン被告に対し、厳しい目を向けた。一昨年の東京地検による逮捕時は日本の司法制度への批判が強かったが、受け止めは一転した。
ゴーン被告が8日にレバノンで行った記者会見について、保守系紙フィガロは9日付社説で「現代のモンテクリスト伯が世界中を沸かせた」と評した。策略によって収監された主人公が脱獄し、復讐(ふくしゅう)を果たす19世紀の仏小説になぞらえた。世界的な経営者だったゴーン被告が突然逮捕され、監視をかいくぐって外国に逃れるという劇的な展開は「もはや経済記事ではなく、冒険小説」と驚きを示した。
そのうえで、「ゴーン被告は日本政府や東京地検、日産自動車による陰謀で自分が犠牲になったと示そうとした。しかし、彼が名誉を取り戻せるのは、正式な裁判だけだ」と締めくくり、法による裁きを求めた。
左派系紙リベラシオンは3日付社説で、「ゴーン被告が日本脱出を実現できたのは、彼が4月以降、保釈の恩恵を受けていたからだ。非人道的とはいえない。自身の弁護人からも非難されるような突飛(とっぴ)な行為に、いったい何の意味があるのか。有名な億万長者が逃れたいのは、法廷における真実ではないのか」と痛烈に批判した。リベラシオンは記者会見について伝えた9日付記事で、ルノー、日産がオランダに置いた統括会社の支払いをめぐって仏検察が捜査する疑惑については「ほとんど説明がなかった」と辛辣(しんらつ)に伝えた。
仏紙ルモンドは4日付論説でゴーン被告の逃亡はルノー、日産の企業連合にとり「悪いニュース」になると指摘した。両社はゴーン体制から脱皮し、新たな関係構築を進めているのに、被告の動きにとらわれ、足を引っ張られかねないとの懸念だ。
論説はルノーの筆頭株主である仏政府に対し、「火に油を注がないよう慎重にふるまわねばならない」と促した。ゴーン被告の逃走後、パニエリュナシェ仏経済・財務副大臣が「フランスに来たとしても、(日本に)引き渡すことはない」と述べたことに触れ、「拙速で、無益な発言だった。日本の当局に対する侮辱ととらえられかねず、フランスの国益を損なう」と戒めた。
ルモンドはまた、ゴーン被告の逃走を許した日本の警備体制にも警鐘を鳴らす。電子版は7日、保釈中の監視や出国管理の網がすり抜けられ、「今夏の東京五輪を数カ月後に控え、事件は日本の警備体制の信頼性にも疑問を投げかけた」にもかかわらず、日本政府が逃走の報道から約1週間、公式な反応をまったく示さなかったことに触れ、「驚くべき沈黙」と論じた。
東京五輪では5万人以上の警備人員の確保が課題となっているうえ、イラン情勢の緊迫で、海上自衛隊の中東派遣を決めた日本は攻撃やテロの標的となりかねないと指摘。こうした状況の中、日本は危機感が乏しいのではないかと疑問を呈した。
日本に引き渡されることのない“安息地”に逃げ込んだはずのゴーン被告には誤算かもしれない。レバノンの英字紙デーリー・スター(電子版)は3日、「ゴーンへの、レバノンでのさほど温かくない歓迎」と題した記事で、被告に冷たい目を向ける国民が増えていると論じた。
ゴーン被告は生まれこそブラジルながら、両親はレバノン人。自身もレバノン国籍を持ち、中等教育は首都ベイルートで受けた。そんな被告が旧宗主国フランスを代表する企業であるルノーのトップにまで上りつめたことは、レバノン人の「誇り」だった。ベイルートの豪華な邸宅は「成功の象徴」とみなされた。被告の逮捕・起訴に対し、同国では被告を擁護する論調が目立ったのもこのためだ。
しかし、デーリー・スター紙は記事で「一部の人々は、かつての実力者が祖国レバノンに逃げ込んできたことを不愉快に感じている」と指摘する。
背景にあるのは、同国の政財界に根付く汚職体質への怒りだ。昨年10月には、腐敗の一掃を求める反政府デモが全国に広がった。記事に登場するベイルートの学生はいう。ゴーン被告や、彼を擁護してきた人々は「オリガルヒ(政治を牛耳る富裕層)であり、仲間うちで徒党を組む連中で、イカサマ師にして縁故主義者」だ、と。
レバノンでは今月初め、ゴーン被告がかつてルノーや日産自動車の経営幹部としてイスラエルを訪問したことは利敵行為にあたるなどとして、弁護士グループが告訴に踏み切ったと伝えられた。最高刑は禁錮15年だ。
ゴーン被告は事件前もしばしばレバノンに滞在しているのに、なぜこのタイミングで告訴なのか。これも、被告を「英雄」とみる空気が失われつつあることの表れといえそうだ。デーリー・スターは被告が8日の記者会見で、イスラエル訪問を国民にわびたことも伝えた。
くすぶっていた既得権益層への反感が、ここ数カ月で噴出したレバノン。かつての敏腕経営者は、逃亡先を選ぶ際にこの変化を読み誤ったのかもしれない。 
●ゴーン被告妻も聴取へ 偽証容疑で国際手配―レバノン 
レバノンのセルハン暫定法相は10日、日本からレバノンへ逃亡した日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告の妻キャロル・ナハス容疑者(53)=偽証容疑で逮捕状=について、国際刑事警察機構(ICPO)から「国際逮捕手配書」が届き次第、事情聴取を行う方針を明らかにした。
東京地検特捜部は7日、キャロル容疑者が昨年4月に証人尋問でうその証言をした疑いで逮捕状を取得。レバノン国籍を持つ同容疑者はゴーン被告と共に同国に滞在しているとみられ、警察庁を通じてICPOに国際手配を要請した。  
 
 

 

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●ゴーン被告会見に「勝手に記者会見を開くって…これ、やり口は宮迫に似てます」
「ダウンタウン」の松本人志が12日放送のフジテレビ系「ワイドナショー」に出演した。
番組では、金融商品取引法違反の罪などで起訴され、保釈中に中東レバノンに逃亡した前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告が首都ベイルートで記者会見したことを報じた。
会見で同氏は「身の潔白を確信している」と主張するとともに、「自身と家族を守るためだった」と日本からの逃亡を正当化し、身ぶり手ぶりを交えながら日本の司法制度を批判した。
今回の会見に松本は「そもそも自分に非があるわけなんです。それを日本の司法のせいにして、勝手に記者会見を開くって…これ、やり口は宮迫に似てますよね」と笑わせ「『カルロスです』ってやるんかな?」とぼけた。 
その上で「シンプルにこんだけ日本に長いこといて、日本語を一切、しゃべらない、日本語をしゃべろうという気すらない。ここに日本に対するリスペクトみたいなのをそもそも感じなかったんですよね。そこがこの人の本質のような気がする」と指摘していた。  
●ゴーン被告逃亡で裁判の行方不透明に−日産、ケリー被告の公判分離も 1/12
日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告のレバノンへの逃亡で同被告の公判開始が難しくなった。一緒に審理する方針だったグレッグ・ケリー被告(前日産代表取締役)の裁判の先行きも見通せなくなっており、同一の刑事事件に関与した複数の被告人の公判を別々に行う公判分離が現実的な選択肢として浮上している。
ケリー被告はゴーン被告と共に2018年に金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で東京地検特捜部から逮捕、起訴された。刑事訴訟法では、軽微な犯罪を除いて被告人が公判期日に出頭しないときは開廷することはできないと定められている。
元検事の郷原信郎弁護士は今後の公判について、「ゴーン氏の事件と分離してケリー氏の事件を進めることになるだろう」との見方を示す。ケリー被告の公判で重要な証人となるゴーン被告が不在のため、証人尋問ができないことになるが、「裁判自体は行えなくはない」と述べた。
その上で「ケリー氏の裁判が有罪になるか無罪になるかで、ゴーン氏の逮捕が正当だったかについての判断にもなる。そういう意味では注目すべきだ」と話した。
ケリー被告の弁護人を務める喜田村洋一弁護士は、ゴーン被告についてのコメントは控えたが、ケリー被告の初公判は予定通り4月に行われるとの見通しを示した。 
 
 

 

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●逃亡したゴーン被告の主張に「納得できない」が9割との世論調査
保釈中に逃亡した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の主張について、「納得できない」が9割を超えたことが、FNNの実施した世論調査で分かった。
不法に出国しレバノンに逃げたゴーン被告が日本の司法制度を批判したことなどについて、ゴーン被告の主張に「納得できる」は4%、「納得できない」は91%だった。FNNが11日、12日に全国18歳以上の有権者1040人に電話で調査を実施した。
2018年に金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)などの容疑で東京地検特捜部に逮捕、起訴されたゴーン被告は8日、レバノンで逃亡後初となる記者会見を開催した。同被告は会見で「私は最も基本的な人道の原則に反する司法制度を暴くために、ここにいる」と発言。自身に対する「嫌疑は真実ではなく私は決して逮捕されるべきではなかった」などと語った。
8日に行われた同会見について、ブルームバーグが13日までに危機管理の専門家に聞いたところ、共同ピーアールの池田健三郎総合研究所長は「日本で会見を開くべきだった。検察や司法批判を展開し、日本の世論をまず見方につけることが裁判を有利に展開するには必要で、そうなれば名誉を回復する手助けになっただろう」と述べた。
また、山見インテグレーターの山見博康社長は、「起訴内容に無実の証拠がありそれを主張するのであれば、当該国で行うべき。無実の自信があるのであれば何ら問題はないはずだ」とした上で、「しかし、それを違法な方法で逃れたということは、疑惑は本当だとの印象を自ら一層強めた」と指摘した。  
 
 

 

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●日産元幹部ケリー被告、公正な裁判は困難と妻が懸念表明 1/14
日産自動車元会長カルロス・ゴーン被告の報酬を巡り金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴された前代表取締役グレッグ・ケリー被告の家族は、同被告が公正な裁判を受けられるか疑問視している。
先月レバノンに逃亡したゴーン被告の証言なしでは、ケリー被告は検察当局の主張に十分に抗弁できない可能性があると、ケリー被告の妻が電子メールで表明した。
「重要証人が証言できないため、夫が公正な裁判を受けるのは難しいだろう」とケリー被告の妻、ドナ・ケリー氏はブルームバーグ・ニュースに指摘。ケリー被告も13日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)で同様の発言を行っていた。 
 
 

 

 
 
 

 



2020/1
 
 
 
 
 

 

●日産自動車株式会社
神奈川県横浜市に本社を置く日本の大手自動車メーカー。通称とブランド名は日産(Nissan)。北アメリカやヨーロッパなどの50か国では高級車ブランドのインフィニティ(Infiniti)、また新興国向けには低価格ブランドのダットサン(Datsun)を展開する。
日産自動車の筆頭株主はフランスのルノー。(2018年11月時点で)日産自動車の株式の43.4%をルノーが保有している。 そしてルノー、日産自動車、三菱自動車工業の3社は、ルノー・日産・三菱アライアンスを形成している。また三菱自動車工業の筆頭株主でもある。アライアンスの2017年の世界販売台数は約1061万台で世界首位。
本社は横浜市西区高島一丁目1番1号(日産グローバル本社)。芙蓉グループ(旧富士銀行系列)に属する東証一部上場企業である。ルノーが日産自動車の発行済み株式の約44パーセントを所有し日産に対して強い議決権を持ち日産自動車に役員を送り込んでおり、両社はさまざまな経営資源を融通し合うことで競争力を高めるアライアンス関係にある。
日産自動車の関連会社には、委託製造会社である日産車体、モータースポーツ専門のニスモなどがある。また、国外では高級車の「インフィニティ」ブランドおよび新興国向けの低価格車ブランド「ダットサン」での展開も行っている他、ルノーの車種を「日産」ブランドで販売している(ルノー・ジャポンは日産グローバル本社屋内に籍を置く)。
海外では特にSUVと小型車に強みを持っており、日産自動車の2010暦年のグローバル販売台数及び、グローバル生産台数は共に400万台を超える。日本の自動車メーカーとしてはトヨタ自動車に次いで2番目に400万台の大台を突破した。
2017年の上半期には、ルノー、三菱自と合わせた世界販売台数でグループ第1位を獲得した。
2017度の国内登録車台数はトヨタ自動車に次ぐ第2位である。
女性活躍推進に優れている企業を選定・発表している経済産業省と東京証券取引所との共同企画である「なでしこ銘柄」に第一回(平成24年度)から連続して選定されている(平成28年度時点)。
筆頭株主のルノーから派遣されたカルロス・ゴーンが代表取締役会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)を2017年3月まで務めた。同年4月からは会長に専念、また2005年4月よりルノーの取締役会長兼CEO (PDG) も兼任してきたが、2018年11月19日、金融商品取引法違反容疑で逮捕された。日産自動車は同月22日に開かれた臨時取締役会で、同代表取締役のグレッグ・ケリーとゴーンの代表取締役会長職の解任を決議した。
 
 
 
 

 

●日産の歴史
創業 - 1980年代
第二次世界大戦前は日産コンツェルンの一員であった。「日産」という名称は、当時グループの持株会社であった日本産業が由来となっている。
創業期より先進技術の吸収に積極的で、日産自動車は日本フォードや日本ゼネラル・モータースなみの大型乗用車を製造するため、1936年(昭和11年)にアメリカのグラハム・ペイジから設計図や設備などを購入し、また戦時中の技術的空白を埋めるため、1952年(昭和27年)にイギリスのオースチンと技術提携している。
1958年(昭和33年)には、当時世界で最も過酷なオーストラリア大陸一周ラリーに自社開発のダットサン・210型で出場してクラス優勝を飾り、1960年(昭和35年)には業界初のデミング賞を受賞するなど、創業時より技術力の高さから「旗は日の丸、車はダットサン」、「技術の日産」として親しまれ、故障が少なく高速走行を得意としたことで医者の往診に愛用されたことから「医者のダットサン」としても親しまれた。
1966年(昭和41年)8月1日には、経営難に陥ったプリンス自動車工業を通産省主導により合併。スカイライン、グロリアなどの車種と、中島飛行機・立川飛行機の流れを汲む人材を戦列に加えた。またプリンス自動車工業の宇宙開発事業を承継し宇宙航空事業部を発足させた。
1973年(昭和48年)の米国環境庁 (EPA)の燃費テストでサニーは第1位となり、この間、燃費向上のための高張力鋼板およびボディの防錆性の向上のための亜鉛ニッケルメッキ合金を用いた防錆鋼板(同社では「デュラスチール」と命名)、エンジンの燃焼制御技術の開発からCAD/CAM、産業用ロボットの開発まで、「技術の日産」として先端技術分野の先駆的役割を果たしてきた。
しかし、その反面、戦時中に自動車の配給を独占していた「日本自動車配給株式会社」が戦後に解散となった際、日本国内各地の地元の有力ディーラーの大半がトヨタ自動車に組織化されたために販売力でハンデがついてしまい、技術面では「技術の日産」と評されるほどに優位を保っていた反面、販売面ではマーケティングと販売戦略で業界トップとなったトヨタには及ばず、1970年代までトヨタに肉薄していた日産の販売シェアは、特に1980年代以降、トヨタとの差は広がる一方となる。
901活動
1980年代には「90年代までに技術世界一を目指す」という名の下、全車種を対象にエンジンをはじめ、シャーシやサスペンションの設計目標と、走行実験におけるハンドリング評価基準の大幅な底上げなどに力を注いだ「901活動」がおこなわれており、日本車の技術向上に大きく貢献したことでは一定の評価を受けている。
1980年代後半のバブル景気時代には、K10型マーチをベースにしたパイクカーの第一弾として限定1万台で発売され2か月で予約完売となったBe-1や、当時日本唯一の3ナンバー専用の高級車であったY31型シーマや、当時はデートカーとして人気となったS13型シルビアなどをヒットさせ、「Be-1効果」や「シーマ現象」なる流行語まで生みだし、「901活動」のもとで開発されたR32型スカイラインなどのスポーツ系車種をはじめとしてP10型プリメーラなどのセダン系車種なども高い評価を得るなど存在感を示していた。
経営危機
バブル崩壊の影響で、高価格で収益性の高いシーマやセドリック、グロリアなどの高級車の販売が減少した上に、もともと商品企画(いわゆるマーケティング)や販売戦略が不得意な上にヒット車種を数多く出せないこと、さらに過激な組合運動に足を引っ張られ抜本的なコスト削減もままならないまま財務内容はますます悪化の一途を辿り、「901活動」でコスト上昇を招いた走行実験部やデザイン部を中心としたリストラを断行してもなお1998年には約2兆円もの有利子負債を抱え経営危機に陥ってしまう。その中でも、A32型セフィーロ、E50型エルグランド、K11型マーチ、C23型バネットセレナ(のちのセレナ)などがコンスタントに販売台数を記録して経営危機に陥っていた日産を支えていた。
その後、軽自動車市場の拡大を背景に、軽自動車を含めた日本国内シェアで、一時期ではあったがホンダの後塵を拝し、国内シェア第3位に転落してしまった時期があった。
ルノーと資本提携へ
継続的な販売不振により、2兆円あまりの有利子債務を抱え倒産寸前の経営状態となった1999年3月に、フランスの自動車メーカーのルノーと資本提携(ルノー=日産アライアンス)を結び、同社の傘下に入り更生を図る事となった。
提携内容は、ルノーが6430億円(約50億ユーロ/330億フランスフラン/54億USドル)を出資し、日産自動車の株式36.8%、および日産ディーゼル工業の株式22.5%を取得するとともに、日産自動車の欧州における販売金融会社も取得すると言うものだった。
当初は両社の文化的土壌の違いやラインナップの重複、日産自動車の負債の大きさや労働組合の抵抗などを理由に、同業他社やアナリストをはじめとする多くの専門家がその行き先を危惧した。 同年中に日本人社長の塙義一は解任され、ルノーの取締役会長兼CEO (PDG) であったルイ・シュヴァイツァーの指示より同社副社長のカルロス・ゴーンが新たな最高経営責任者に就任した。ゴーンらのチームは、同年10月19日に発表した「日産リバイバルプラン (NRP)」のもとリストラを進めた。
ルノーから資金や人員が注入されると同時に、東京都武蔵村山市にあった日産自動車村山工場や、京都府宇治市の日産車体京都工場などの生産拠点の閉鎖、資産の売却や人員の削減とともに、子会社の統廃合や取引先の統合、原材料の仕入の見直しなどによってコストを削減した。またこれに先立って外国企業の影響を避けるため、宇宙航空事業部が石川島播磨重工業に売却され、IHIエアロスペースが設立された。
更に、車種ラインアップの整理と同時にデザインなどを刷新し、積極的な新車投入を行った結果、販売台数は増加した。国内シェアでは第2位の座を奪回し、2003年6月には当初の予定から前倒しで負債を完済した。
ルノー・日産・三菱アライアンス
ルノー・日産自動車・三菱自動車とも)とは、フランスの大手自動車メーカー ルノー と、日本の大手自動車メーカー 日産自動車、三菱自動車工業が締結したパートナーシップ関係の事である。2016年以前はルノー・日産アライアンスと呼ばれた。
バブル崩壊と901運動の余波により2兆円の有利子負債を抱えて経営破綻寸前であった日産は、1999年にルノーの傘下に入って人的・経済的支援を受けて経営を立て直すことになった。「コストカッター」と呼ばれるルノー社長カルロス・ゴーンが辣腕を振るったことにより、日産は2003年には負債を完済した。
2006年5月よりルノーは日産株の44パーセントを所有し日産を連結子会社としているが、日産もルノー株全体の15パーセントを所有しており一部持合となっている。なおフランスの法律によって日産の保有するルノー株は日産が保有する間は議決権が行使できない。資本関係上は日産がルノーの連結子会社となる。ルノーからは多くが日産の役員として送り込まれているほか、多くの管理職クラスの人員も送り込まれているが、ルノーに日産出身の役員は皆無である(2008年にルノーに日産から副社長が送り込まれている)。株式の時価総額は2018年現在まで子会社の日産本体のほうが多く、「日産に投資するよりもむしろ、親会社のルノー本体に投資するほうが理にかなう」逆転現象が起きている。
ビジネス上では、車台(プラットフォーム)やトランスミッションなどの部品の共通化や購買の共同化によってコストダウンを図っているほか、ルノーの車を日産ブランドで販売、日産車をルノーのブランドで販売するなどの相互のOEM供給も行っている。また、同じルノー傘下である韓国のルノーサムスンにおいてもこのアライアンスを生かし、自社はもちろん、ルノーや日産ブランドでの製造・輸出を行っている。2005年1月には、当時のルノー会長であるルイ・シュヴァイツァーが、「2010年までに日産自動車とともに世界市場の10%のシェアを確保し、年間400万台の生産を達成する」という目標を掲げた。ルノーは傘下の日産を含めて、自社が「フォルクスワーゲングループを上回る欧州最大の自動車メーカーである」と述べている。
2010年4月7日、アライアンスはダイムラーAGと戦略的パートナーシップを締結した。2017年現在、このパートナーシップはその発表以降も関係をより深化させながら継続している。
2012年には日産の高級車ブランドであるインフィニティを、本社機能を香港に移して事実上独立させた。
2014年には、2018年までにルノー・日産の部品共通化を7割まで拡大すると発表した。
2016年4月に三菱自動車の燃費偽装問題が発覚した事に関連し、5月12日に日産が2,370億円で三菱自動車の発行済み株式の34%を取得し筆頭株主となり、戦略的アライアンスを締結すると共に、三菱自動車の再建を支援すると発表した。2016年10月20日に日産が2,370億円で三菱自動車工業の発行済み株式の34%を取得し筆頭株主となり、ルノー・日産アライアンスに加わったことを発表した。
2017年9月15日、アライアンスはそのシナジー効果を年間で100億ユーロへと倍増させる新6か年計画「アライアンス2022(ALLIANCE 2022)」と共に、アライアンスの新ロゴを発表した。新ロゴにはこれまでのルノー・日産に、2016年に日産が筆頭株主となった三菱自動車の意を加えた「RENAULT NISSAN MITSUBISHI」の文字が描かれている。同計画内ではアライアンスにおける三菱自動車の役割が明記されており、プレスリリース内においてもゴーンは「メンバー3社」と表現している為、アライアンスはルノー・日産と同格の主要メンバーとして三菱自動車を加え、新たな関係へ移行した事を窺わせた。さらに同計画では、アライアンス全体のパワートレインの共通化を従来の1/3から3/4に拡大するとしている。
2017年上半期の自動車販売台数は526万8079台で、トヨタ自動車グループやフォルクスワーゲングループを抑え初の世界首位に立った。ただし下半期を含めた一年の売り上げはVWグループに次ぐ2位であった。
2018年11月にカルロス・ゴーンおよびグレッグ・ケリーが金融商品取引法違反で東京地検特捜部に逮捕されて以降、日仏両政府まで巻き込んだ動きが展開されている。なおもアライアンスは存続しているが、将来的な展望は不透明である。
現在
ゴーンは日産自動車の建て直しの手腕が高く評価され、2005年4月からはルノーの取締役会長兼CEO (PDG) も兼任している。2013年11月までは、ゴーンCEOの指揮の下で日産自動車生え抜きの志賀俊之が最高執行責任者(COO)を務めていた(現在は日産社内での最高執行責任者(COO)職は設けていない)。
2008年には、サブプライムローン問題に端を発した金融危機や原油高騰による不況の中、世界販売台数は0.9%増加し、アメリカでは自動車販売台数が18%減少の中、日産は10.9%減にとどまった。
2007年春に、企業誘致に熱心な横浜市の「横浜みなとみらい21 (MM21) 地区」66街区に本社社屋の建設を着工し、2009年8月2日に「横浜グローバル本社」として竣工した。2009年8月7日に、長らく本社のあった東京・東銀座から移転(登記上の本店は、横浜市神奈川区の横浜工場のまま)。当初は、2010年をめどに移転する予定であったが、2009年に横浜開港150周年を迎えるのを機に1年前倒しとなった。この本社立地にあたり、神奈川県から施設整備等助成制度及び横浜市から企業立地等促進特定地域における支援措置を受けることができた。新社屋は建築家谷口吉生の設計によるものとなっている。
なお、東京・東銀座の旧・本社社屋は、読売新聞グループ本社と読売新聞東京本社が建て替えに伴う間の仮本社として2010年9月から2014年1月まで使用していた。この建物は、今後三井不動産が2015年1月の完成を目途に一部改修したうえで、同社の本社機能の一部を移転させるとしている。これは現在の三井不動産本社がある中央区日本橋室町の「三井別館」が、再開発事業により取り壊されるためによるもの。
2014年には、2018年までにルノーとの部品共通化を7割まで拡大すると発表した。
三菱自動車工業との共同開発で軽自動車の販売をしておりミニキャブ→クリッパー、ekワゴン→デイズとして販売している。
2016年4月に三菱自動車の燃費偽装問題が発覚した事に関連し、5月12日に日産が2,370億円で三菱自動車の発行済み株式の34%を取得し筆頭株主となり、戦略的アライアンスを締結すると共に、三菱自動車の再建を支援すると発表した。2016年10月20日に日産が2,370億円で三菱自動車工業の発行済み株式の34%を取得し筆頭株主となり、ルノー・日産アライアンスに加わったことを発表した。2017年9月15日に発表した新6ヶ年計画では三菱を含めてさらにアライアンスを強化し、アライアンス全体のパワートレインの共通化を従来の1/3から3/4に拡大するとしている。
2017年1月、ディー・エヌ・エーと提携し「自動運転タクシー」の開発を進めると発表した。
2017年9月29日まで、同社の日本国内の全6工場で生産した21車種について完成検査の一部を未認定の検査員が行っていたことが明らかになり、新車販売を一時停止する事態となった。10月6日、新車の完成検査を無資格の従業員が行っていた問題を受け、乗用車など38車種、計約116万台のリコール(回収・無償修理)を国土交通省に届け出た。
2018年11月19日、東京地方検察庁特別捜査部はゴーン代表取締役会長とグレゴリー・ケリー代表取締役を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕した。ゴーン会長自身の役員報酬を計約50億円過少に記載した有価証券報告書を提出したというもので、ケリー代表取締役も共謀していたとしている。これを受けて日産は同日、ゴーン会長の報酬の過少申告が判明したほか、同社の資金を私的に支出するなど複数の重大な不正行為もあったと声明した。同月22日に行われた取締役会でゴーン会長・代表取締役およびケリー代表取締役の解任を提案し可決された。
2019年2月3日、イギリス北東部のサンダーランド工場で計画していたスポーツタイプ多目的車(SUV)「エクストレイル」の次期モデル生産を撤回すると発表した。欧州向けを九州の工場で製造するとみられる。  
 
 
 
 

 

●日産の沿革
1910年(明治43年)6月10日 - 鮎川義介が福岡県遠賀郡戸畑町(現在の北九州市戸畑区)に戸畑鋳物株式会社設立。
1911年(明治44年)4月 - 橋本増治郎が東京府東京市麻布区(現在の東京都港区麻布)に「快進社自働車工場」設立。
1918年(大正8年)- 株式会社快進社設立。
1919年(大正8年)12月5日 - 実用自動車製造株式会社設立。
1925年(大正14年)7月21日 - 合資会社ダット自動車商会設立。
11926年(大正15年)
   9月2日 - ダット自動車製造株式会社設立。
   12月7日 - ダット自動車製造株式会社、ダット自動車商会を合併。
1931年(昭和6年)- ダット自動車製造株式会社、戸畑鋳物の傘下に入る。
1933年(昭和8年)
   3月 - 戸畑鋳物株式会社自動車部を創設。
   12月26日 - 日本産業と戸畑鋳物の共同出資により、自動車製造株式会社を神奈川県横浜市に設立。鮎川義介が代表取締役社長に就任。
1934年(昭和9年)6月1日 - 日産自動車株式会社に商号変更。
1937年(昭和12年)
   2月22日 - 日産自動車販売株式会社設立。
   5月29日 - 社章制定。
1942年(昭和17年)11月9日 - 日産自動車販売株式会社を合併。
1943年(昭和18年) - 上海および京城の支店を廃止。
1944年(昭和19年)9月18日 - 本店を東京都日本橋区(現在の東京都中央区)に移転。日産重工業株式会社に商号変更。
1946年(昭和21年)1月14日 - 本店を神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地に移転。
1949年(昭和24年)8月1日 - 日産自動車株式会社に商号変更。
1952年(昭和27年)- イギリスのオースチン社との技術提携を元にしたオースチン・A40サマーセットのノックダウン生産を開始。
1953年(昭和28年)12月 - 民生デイゼル工業に資本参加。
1955年 - 6月、民生デイゼル工業との折半出資による販売会社・日産民生ジーゼル販売を設立。
1960年12月 - 民生デイゼル工業を日産ディーゼル工業に、日産民生ジーゼル販売を日産ディーゼル販売に商号変更。
1966年(昭和41年)8月1日 - スカイライン、グロリアを持つ「プリンス自動車工業株式会社」(富士重工業等と共に分割解体された旧中島飛行機の一部で、冨士精密工業の後身)と合併。
1967年(昭和42年)- 宮内庁に、初の国産御料車「プリンスロイヤル」を謹製・納入
1968年(昭和43年)- 東京都中央区銀座木挽町に本社事務所を移転。
1969年(昭和44年)- 「ダットサン・フェアレディ」の後継車、「日産・フェアレディZ」登場。
1970年(昭和45年)- マリーン事業(プレジャーボート)に進出。
1970年代 - 1990年代 - 第二次世界大戦後からシェアを積み上げ、一時はトヨタ自動車につぐ日本国内第2位のシェアを占めていたが、日本国内の日産車のシェアが年々低下の一途を辿り、経営陣と塩路一郎委員長率いる強固な労働組合との激しい抗争が長期に及び、1980年代後半には901活動による車両性能の向上と共に個性的なエクステリアデザインや商品戦略が各界から高く評価されて日産自動車全体のブランドイメージが向上するも、1990年代に入り、バブル景気の崩壊後は財務が悪化した上、デザインや商品戦略などの相次ぐ失敗で販売不振に陥り、経営危機が深刻化する。
1981年(昭和56年)
   7月 - 国内向けの一部車種と日本国外向けの車種に設けられていた「DATSUN」ブランドを廃止して、順次「NISSAN」ブランドへ変更して統一する方針を発表。
   1月 - 開発拠点をテクニカルセンター(神奈川県厚木市)に集約。
1985年(昭和60年)8月 - 社長が石原俊(事務系出身)から久米豊(技術系出身)になり、今までの官僚経営から技術中心の経営、後の901活動を推進する経営と変えていった。
1987年(昭和62年)6月19日 - Y31型セドリック・グロリア発売。グランツーリスモ系初設定。大ヒットする。このことにより、後のインフィニティ・Q45の発売を決定する。パイクカー・Be-1限定発売。大ヒットする。
1988年(昭和63年) - 日本初の3ナンバー専用車・セドリックシーマ・グロリアシーマを発売。大ヒットとなり、シーマ現象なる言葉ができた。 新ブランドセダン・マキシマ・セフィーロを発売。
1989年(平成元年) - スカイラインGT-Rが復活。フラッグシップセダン・インフィニティ・Q45日米同時発売。アメリカにて高級車専門の「インフィニティ」ブランドを展開。車種は、インフィニティQ45とインフィニティ・M30の2車種であった。
1994年(平成6年) - 三星自動車(現、ルノーサムスン自動車)への技術支援を行う。
1999年(平成11年)3月 - フランスのルノーと資本提携し、ルノー=日産アライアンスを結成しルノーの傘下になる。6月にルノー副社長のカルロス・ゴーン(現CEO)が最高執行責任者(COO)に就任し、経営再建計画である「日産リバイバルプラン」を発表した。
2000年(平成12年) - フェアレディZ生産中止。Zの名前が2年近く消滅する。
2001年(平成13年) - ゴーンが6月に社長兼最高経営責任者(CEO)となる。
2002年(平成14年) - スズキより、軽自動車「MRワゴン」のOEM供給を受け、「モコ」として発売開始。軽自動車市場へ参入を果たし、ゴーンが「日産リバイバルプラン」の目標達成を宣言した。また、フェアレディZが2年ぶりに復活する。
2003年(平成15年)
   2月 - セフィーロを廃止し、前年に廃止となったローレルとの統合後継車としてティアナを投入。
   10月 - 日産ディーゼル工業と小型トラックの合弁会社「日産ライトトラック」を設立。
2004年(平成16年)9月 - サニーを廃止し、ティーダを発売。10月、セドリック・グロリアを廃止し、フーガを発売。12月、リバティを廃止し、ラフェスタを発売。
2005年(平成17年)
   4月より従来の販売会社別での取扱車種を撤廃、全販売会社(レッドステージ&ブルーステージ)ですべての車種の購入が可能となる。
   経営再建中の三菱自動車工業との包括的な事業提携。それに伴い、事業提携の一環として三菱製軽自動車eKワゴンのOEMとしてオッティを投入。
   4月にゴーンが親会社のルノーの取締役会長兼CEO (PDG) に就任、日産の会長兼CEOも兼任する。
   9月に、ゴーンが進めてきた日産180を終了。その後日米市場で販売台数が急落する。
2006年(平成18年)
   6月 - グローバル生産累計台数1億台突破。
   9月 - 日産ディーゼル工業の全ての株式をABボルボへ売却し、資本関係を消滅。
2007年(平成19年)12月 - スカイラインの名前を捨て新たな道を歩む、日産GT-Rを販売開始。
2008年(平成20年) - 環境省の「エコファースト制度」に認定。
2009年(平成21年)8月 - 本社を東京都中央区銀座から神奈川県横浜市西区に移転。登記上の本店は従来通り神奈川県横浜市神奈川区宝町である。
2010年(平成22年)
   10月1日 - 産業機械事業部が独立、日産フォークリフト株式会社(現:ロジスネクストユニキャリア株式会社)となる。
   12月 - 量産型専用車種としては世界初となるEV、リーフを発表・発売開始。
2011年(平成23年)
   3月11日 - 東日本大震災の影響で、いわき工場と栃木工場の被災とサプライヤーの工場の被災により全工場の生産が一時ストップするが順次復旧を果たし、「今こそ、モノづくりの底力を。」のキャッチフレーズが起用される。
   6月1日 - 日産自動車・三菱自動車工業の軽自動車事業に関わる合弁会社、株式会社NMKV設立(資本構成は双方50%ずつ)。
2012年(平成24年)
   4月1日 -「インフィニティ」ブランドの本社機能を香港に移転。
   6月29日 - 三菱ふそうトラック・バスと日本市場向け小型トラックの相互OEM供給で基本合意。
2013年(平成25年)8月29日 - スズキと軽商用車のOEM供給で基本合意。
2016年(平成28年)
   4月20日 - OEM供給先の三菱自動車工業の燃費試験の不正問題を指摘。日産・デイズ、日産・デイズルークスの販売停止。
   5月12日 - 三菱自動車工業の株式34%を取得し同社を事実上傘下に収める事を取締役会で決議。
   10月20日 - 三菱自動車工業の株式34%を取得し同社を傘下に収めたことを発表した。またカルロス・ゴーンが三菱自動車の代表取締役会長を兼任することも発表した。
2017年(平成29年)
   1月27日 - 消費者庁が、三菱自動車工業と日産自動車に対して、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)の優良誤認違反で、日産自動車に対して、三菱自動車の燃費不正発覚後の対応が遅いことを理由に、再発防止を求める措置命令の行政処分が下された。
   2月23日 - 4月1日付でカルロス・ゴーンが社長兼CEOを退任、後任には副会長兼共同CEOの西川廣人が就任する人事を発表した。ゴーンは引き続き会長を務める。
   2月27日 - ロンドンの公道上で自動運転車の走行試験を始めた。日産が欧州で自動運転車を走らせるのはこれが初めてとなる。横浜市と共同で超小型EVでカーシェアを開始。
2018年(平成30年)9月18日 - Googleとパートナーシップを結び、2021年から車両にカスタマイズしたAndroid オペレーティングシステムを搭載することを発表した。新しいシステムではダッシュボードで車両診断に加えてGoogle マップやGoogle アシスタント、Google Playなどを利用でき、iOSデバイスとも互換性がある。 
 
 
 
 

 

●日産とゴーン前会長の近況

 

●ゴーン氏の弁護士を尾行…東京地検特捜部 2019/2
今年1月上旬。都心のホテルのラウンジで奇妙な光景が目撃された。
片隅で密談を交わすふたりの男と、それを遠巻きに、さりげなく監視している一団。一団は、この密会風景をこっそりと撮影している。そしてふたりが別れると、二手に分かれ、それぞれの尾行へと転じた――。
まるでスパイ映画の一幕のようだが、実は勾留中の日産の前会長、カルロス・ゴーン被告に対する継続捜査であった。ふたりの男は、ゴーン被告の弁護団の弁護士とその関係者。後者は東京地検の捜査員の一団だったのである。
「あまり知られていないようだが、東京地検特捜部だけでなく、全国の地検(地方検察庁)には事件捜査に当たる捜査員がいる」と、取材に応じた地検関係者は言う。
「東京・大阪・名古屋地検には、国税局や証券取引等監視委員会、公正取引委員会などの告発を受けて、大型の汚職事件や企業犯罪について独自捜査を行う特捜部(特別捜査本部)が置かれている。それを筆頭に各道府県の地検にも、やはり独自に捜査を行う特別刑事部が置かれ、捜査員が在籍している」
この捜査員たち、そもそもの身分は「地検事務官」であるという。彼らは国家公務員採用一般職試験(旧二種・三種)に合格した者たちで、採用後、捜査・公判部門、検務部門、事務局部門のいずれかに配属される。
それぞれの職務内容は、こんな具合だ。
捜査・公判部門では、おもに検事と組んで、事件の調査や取り調べなどを行ったり、公判において立証等のサポートをするほか、交通事故など軽微な事件については、取り調べを単独で行う。もっとも、最近では窃盗や傷害事件などの刑事事件を担当することも増えてきているという。
検務部門に配属された者は、文字通り、検察事務に当たる。たとえば、警察等から送られてきた事件を受理する事件事務がそうだが、そのほかに、事件の証拠物の受け入れ、保管、処分等を行う事務、罰金等を徴収する事務、犯罪歴の調査や管理をする事務、裁判記録を保管し、閲覧等に対応する事務がある。また、懲役や禁固刑が裁判で確定した後、その執行にかかわる事務も担当している。
そして事務局部門は、一般の会社で言えば、総務、経理に相当するセクションである。職員の福利厚生や庁舎の維持・管理、また事務用品や資器材の手配・管理、歳入歳出の事務などを管轄している。
これらのなかで最も重視されているのは、やはり起訴や公判の行方に深くかかわる捜査部門とされる。
その証拠に、事務官は採用時には一般の国家公務員と同じく行政職の俸給しか支給されないものの、一定の勤務経験を積むと職務の特殊性が考慮され、より報酬の高い公安職の俸給が支給されるようになるのだという。
これは、捜査や治安維持を職務とする警察の捜査員らに合わせるための措置とも言われているが、特捜部の捜査員の働きはその報酬に見合ったものだ、と前出の地検関係者は評価し、こんな内幕を明かした。
「東京地検の場合は、特捜部内の『機動捜査担当』と言われる部署に所属する精鋭の捜査員100人近くが、それこそ警視庁の刑事や公安の捜査官顔負けの捜査を日常的に展開している。尾行もすれば、張り込みもする。必要とあれば、盗聴、盗撮、メール傍受も辞さない。ゴーン事件の捜査でも同様だ」
まさに冒頭のシーンがその一端を示すものであったわけだが、それにしても、こうした彼らの捜査内容が明らかになるのは珍しい。通常は少数の捜査員によって極秘裏に進められるため、まず外部には情報が出ないものだ。
今回それが漏れたのは、東京地検特捜部によるゴーン事件の捜査に大量の捜査員が投入されていたからとみられる。
「事実、多数の捜査員が動員されており、その活動は多岐にわたっている。とくに力が入れられているのが、尾行など関係者の行動確認にあたる捜査だ。
日産や金融庁などから上がってきた資料の調査や、それに付随する国際捜査、さらに電話やメール傍受によって明らかになった重要人物の監視にも、膨大な人員が割かれている」(前出の地検関係者)
そうしたなか、捜査は著しい進展を見せた。
ゴーン被告が資産管理などのために代理を依頼している弁護士事務所と担当者名が判明し、その弁護士とのやり取りの内容も把握できたばかりか、ゴーン被告の個人的な資金運用担当者の氏名、加えて双方が交わしたメールまで確認できたというのである。別の地検関係者も、「もはや、次の逮捕も可能な状況だ。実際にやるかどうかは、さておいて」とさらりと認めた。捜査の中では、予想外の事実も判明したという。
ひとつは弁護団の中に、別の機関の捜査員から行動監視を受けている者がいたことだ、と前出の地検関係者は明かす。
「うちの捜査員がその人物の自宅周辺に張り込んで監視をしていると、近くにうちのではない車両があった。最初はマスコミかと思ったが、どうも我々と同じく24時間体制のようだ。つまりは、捜査員ということだ。
そこで、車両のナンバーを照会してみると、別の機関のものだと確認された。後日、その機関の車両は東京拘置所付近でも見かけられた。弁護士接見に向かった監視対象を追尾してのこととみられる。
気になるのは、かなり本腰を入れていることだ。ゴーンの件以外の容疑で事件化されたりしたら、たまったものではない」 そう言って、捜査や公判への影響を懸念した。
もうひとつは、ホテルのラウンジで密会していた弁護士の「不可解な動き」である。同地検関係者によると、この弁護士はメディアに接触し、ある女性の代理人を務める弁護士の氏名を聞き出そうとしていたという。
以前、ゴーン被告の資産管理会社が新生銀行を介して行ったデリバティブ取引で、約17億円の損失を出した際に、追加担保を求めた中心人物である政井貴子氏のことだ。
政井氏らは当時、日産が取締役会で議決を行うことを条件に、この取引を日産に付け替えようとしたが、証券取引等監視委員会から背任の恐れもあるとの指摘を受けて、撤回した。
にもかかわらず、東京地検はこれをもって特別背任の容疑でゴーン被告を逮捕している。政井氏の証言が出れば、東京地検に不利にはたらきかねない。もっとも、前出の地検関係者はこう言って自信を示す。
「政井氏は現在、日銀政策委員会の審議委員だ。その立場からすると、以前にもまして『あれは正当な取り引きだ』『日産に損害など与えていない』と主張するだろう、大丈夫なのか――。事が明らかになった当初はそんな不安の声も出たが、資産運用の話の裏付けは、ゴーン被告と運用担当者との間のやり取りなどからしっかり押さえられているので、すぐに消えた」(同前)
また、このゴーン氏の弁護士は内閣情報調査室の幹部とコンタクトを取っていたともいう。
「事件が『日産に対する米国の陰謀だ』という説の裏付けを取り、無罪を主張しようとしてのことだったようだが、ナンセンスな話だ」(同前)
要するに、東京地検は弁護側の動きや狙いまで完全に捕捉しているということだ。捜査や公判の懸念材料についても、すでに対応策が講じられているともいう。
膨大な証拠類に加えて、捜査に関連する周辺情報まで押さえ、かつ組織的な守りも固い東京地検特捜部。その捜査の網は容易に破れそうにない。ゴーン被告は、この「スパイ戦」をどう迎え撃つのか。 

 

●ゴーン容疑者4件目起訴 東京地検特捜部 日産に5億円超の損害 2019/4
日産自動車の資金をオマーンの販売代理店に不正に支出し、約5億5500万円の損害を与えたとして、東京地検特捜部は22日、会社法違反(特別背任)の罪で前会長、カルロス・ゴーン容疑者(65)を起訴した。ゴーン被告の起訴は役員報酬を過少に記載した金融商品取引法違反事件2件と、サウジアラビアの友人側に日産資金を不正支出したとされる特別背任事件に続き4件目。昨年11月19日の最初の逮捕から5カ月余りに及んだ一連の捜査は一区切りするとみられる。
弁護側は起訴を受け、東京地裁に保釈を請求した。地裁が再び保釈を認めるかが今後の焦点となる。
今回の事件で、日産はゴーン被告を会社法違反(特別背任)罪で特捜部に告訴した。
起訴状などによると、平成29年7月と30年7月、子会社の中東日産からオマーンの販売代理店、スハイル・バハワン自動車(SBA)に計1000万ドルを支出させ、うち計500万ドル(約5億5500万円)を実質保有するレバノンの投資会社、グッド・フェイス・インベストメンツ(GFI)に送金させたとしている。
GFIからはゴーン被告の妻が代表の会社、ビューティー・ヨットに約9億円が流れ、家族で使う大型クルーザー購入費(約16億円)に充てられたほか、米国にある息子の投資会社にも流れた疑いがある。
ゴーン被告は昨年11月19日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕され、12月に同容疑で再逮捕。さらにサウジアラビア・ルートの会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕、起訴され、今年3月6日、108日間の勾留を経て保釈された。
過去3件の起訴内容については既に東京地裁の保釈決定が確定しており、ゴーン被告は23日から今回の起訴内容について起訴後勾留される。弁護側が保釈を請求したため、地裁は今回の起訴内容について逃亡や証拠隠滅の恐れがないか新たに判断することになる。
ゴーン被告はこれまでの起訴内容は否認し、中東各国への支出については周囲に「報奨金であり、正当な支出」などと主張。今回の起訴内容については特捜部の調べに黙秘していた。
●日産、ゴーン元会長を特別背任罪で刑事告訴…東京地検特捜部が追起訴 2019/4
日産自動車は4月22日、カルロス・ゴーン元会長を会社法違反(特別背任罪)で東京地方検察庁に刑事告訴したと発表した。
今回の刑事告訴は、日産の子会社を通じてオマーンの日産車販売会社に送金した資金が、ゴーン元会長が業務上必要性のない自己の利益を得ることを目的とする不正な支出であったことが判明したためとしている。
同社では「このような行為は、会社として到底容認できるものではなく、厳重な処罰を求める。このような事態に至ったことを大変重く受け止めており、改めて関係者に多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びします」とコメントしている。
一方、東京地検特捜部はゴーン元会長を特別背任罪で追起訴した。これで起訴は4回目。ゴーン元会長は容疑を否認している模様。ゴーン被告の弁護団は同日、保釈を申請した。 
●東京地検がゴーン被告を再逮捕へ、特別背任容疑で−報道 2019/4
特別背任などの罪で逮捕、起訴されている日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告について、東京地検特捜部が同容疑で再逮捕する方針だと3日付の産経新聞が報じた。ゴーン被告は同日、ツイッターで11日の記者会見を実施する考えを表明していたが、朝日新聞はゴーン被告の弁護団がさらに早い段階での会見開催も検討していると伝えた。
産経新聞は、オマーンの友人側に日産資金を不正に支出したなどとして、会社法違反の容疑でゴーン被告を近く再逮捕する方針を固めたことが関係者への取材で分かったとしている。逮捕となれば4回目で、最高検と協議して最終決定するという。
ゴーン被告の弁護を担当する弘中惇一郎弁護士は2日の会見で、「検察が別の事件で追起訴する可能性がないとは思っていない」と発言。仏ルノーが、ゴーン被告によるオマーンへの不審な支出があった可能性について当局に通報したと報じられたことについて、「まだそれについてゴーンさんと話をしたことはない」と述べた。保釈後に検察から任意の事情聴取は受けていないことも明らかにした。
ゴーン被告は会社法違反(特別背任)や金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で起訴されたが、3月6日に東京拘置所から保釈されていた
ゴーン被告は3日、ツイッター上に自身のアカウントを開設。「何が起きているのか真実をお話しする準備をしています」と日本語で投稿し、11日に記者会見を開く考えを明らかにしていた。日産は同被告をすでに会長から解職しており、8日に開催する臨時株主総会では取締役から解任する方針。 
●弁護人「検察、意思を無視し尋問」 ゴーン前会長追起訴 2019/4
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)が22日、東京地検特捜部に追起訴された。最初の逮捕から5カ月。弁護団は「捜査は一区切りした」と述べ、早期の保釈を求めた。
「起訴されたことは想定通り」
22日夕に報道陣の取材に応じた弁護団の弘中惇一郎弁護士は、ゴーン前会長に対する4回目の起訴にも強気な姿勢を崩さなかった。
弘中氏は「一刻も早く無罪を明らかにするためには、保釈を認めてもらい、ディフェンスできるようにしたい」と早期の保釈を目指す考えを明らかにした。23日以降、東京地裁の裁判官と面会し、保釈の必要性を訴えるという。
4回目の逮捕で見送られた前会長の記者会見については、「保釈されたあとで(前会長と)話したい」と述べた。
また、弁護団の高野隆弁護士は自身のブログで、取り調べは逮捕翌日の5日から21日まで17日間連日行われ、計約72時間と説明。「供述拒否の意思を明確に伝えているが、検察官は無視して密室の中で毎日4時間前後の尋問を行っている」と批判した。
一方、22日午後に開かれた東京地検の久木元(くきもと)伸・次席検事の定例会見では、これまでと同様、参加した海外メディアから特捜部の捜査手法に対して疑問が呈された。「取り調べが朝晩、長時間という声もある」と指摘されると、久木元氏は「少なくともご飯を食べさせないとか、寝る時間も与えないとかいうことは絶対ありません」と否定。「そのような配慮はきちんとやっている」と述べた。 

 

●ゴーン元会長の側近2人、司法取引で不起訴 特捜部 2019/5
日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告(65)を巡る一連の事件で、東京地検特捜部は10日までに、日本版「司法取引」で合意した側近幹部2人を不起訴処分とした。関係者への取材で分かった。
特捜部は4月22日、オマーンの販売代理店への支払いに絡み、会社の資金を不正に還流させたとして、ゴーン元会長を会社法違反(特別背任)罪で追起訴した。捜査が事実上終結したタイミングで側近幹部2人の不起訴処分の手続きをとったとみられる。
関係者によると、側近幹部2人は、日産の外国人の専務執行役員と元秘書室長の幹部社員。ゴーン元会長が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕される約3週前の2018年10月31日と11月1日に司法取引で合意した。
ゴーン元会長らの不正に関する一切の資料を提出し、特捜部の事情聴取に全面協力する一方、2人の起訴を見送る取引だった。合意対象の不正は、金商法違反のほか、現時点では立件されていない海外の自宅の無償提供が含まれていた。
特捜部は、司法取引で得た証拠などに基づきゴーン元会長らを金商法違反罪で起訴。会社の資金を不正に引き出し、日産に損害を与えた2件の会社法違反(特別背任)罪については、司法取引の枠外で追起訴した。
司法取引は18年6月に導入され、金商法違反のほか、贈収賄、脱税、談合などの経済犯罪が主な対象。10年に発覚した大阪地検特捜部の証拠改ざん事件をきっかけとした刑事司法改革の中で必要性が議論された。
ゴーン元会長を巡る事件は2件目の適用例とみられる。 

 

●日産VSルノーの新段階 株主総会、真の勝者は? 2019/7
企業が株主に対して1年間を総括し、今後の方向性を諮る場となる定時株主総会。「カリスマ経営者」だった会長(当時)の電撃的な逮捕、筆頭株主である海外勢による度重なる統合圧力、本業の不振......。この1年間、これほど紆余曲折を経た企業は他にないだろう。日産自動車の株主総会が2019年6月25日、本社がある横浜市で開かれた。
開催時間は3時間20分あまりに及び、個人株主からは厳しい質問も飛んだが、会社側の提案はすべて承認された。だが、もっとも激しいバトルは株主総会が始まる前に起きていた。前会長のカルロス・ゴーン被告が起こしたとされる数々の不正を二度と起こさないように、社外取締役の権限を強めて、経営の透明化を図ろうとする日産側の組織再編案に対して、筆頭株主であるフランス自動車大手ルノーが難色を示し、株主総会で棄権も辞さない意向を示したのだ。
ルノー側の主張は、組織再編案には賛成するが、組織再編によって発足する3つの委員会(指名、報酬、監査)のメンバーに入るルノー側の取締役を1人ではなく2人にせよ、というもの。何とも露骨な要求だが、ルノー側にも事情がある。日産が経営危機に陥っていた1999年に救済した経緯があり、ルノーは日産の株式の43%を保有する。一方、日産はルノーの株式の15%を保有するものの、これには議決権がない。資本の論理に基づくと、ルノーは日産が培った技術や販路をもっと活用したいところだが、会社の規模や自動車販売台数は日産がルノーを上回るという「ねじれ」があり、これまでも関係強化を目指すルノーの要求を日産は拒んできた。
この組織再編案は、企業にとって経営の根本に関わる重要な案件であるため、株主総会では議決権をもつ株主の過半数を定足数として、その3分の2以上の賛成によって成立する特別決議として扱われる。ルノーは株主総会で反対しないまでも、棄権すれば、他の全株主が賛成しても3分の2以上の賛成を得られず、組織再編は実現しない。
実際、ルノーは「棄権」を辞さない姿勢を見せて日産をけん制した。こうなると日産が取り得る選択肢は限られてくる。日産は当初、4月に日産の取締役に就任したルノーのスナール会長を指名委員会のメンバーに加えることを想定していたが、これに加えて新たに日産の取締役に就任するルノーのボロレ最高経営責任者(CEO)を監査委員会に加えることを渋々ルノーに伝え、ルノーは議案に賛成に回った。
こうした株主と会社側の対立は一般的には水面下で繰り広げられることが多かったが、今回はルノーが日産に送った書簡を欧州メディアが報道して発覚した。こうしてルノーは日産に対して陰に陽に圧力を加えた結果、今回はルノーの意向で押し切ることに成功したのだ。
日産の株主総会で西川広人社長は、ルノー側と経営の将来像を協議する場を今後設けて「資本関係も含めて突っ込んで議論していく」と説明したうえで、「経営統合が良いとは思っていない」とも述べ、両社の自主性を重要視する意向を強調した。だが、今回の委員会人事で、日産の経営におけるルノーの影響力が増すのは確実で、日産はさらに厳しい立場に置かれることになりそうだ。

 

●日産を襲うゴーン「負の遺産」 大リストラで「希望」は残るか 2019/8
カルロス・ゴーン前会長が去り、筆頭株主でフランス自動車大手のルノーからの人事介入を受けながらも新体制によるスタートを切った日産自動車。ゴーン時代の拡大路線は世界各地で弊害を起こして収益の悪化は止まらず、2019年7月25日に発表した4〜6月期の連結営業利益は、1091億円だった前年同期から99%減少して、わずか16億円だけだった。「カリスマ経営者」が残した「パンドラの箱」が開き、外からは見えにくかったさまざまな問題が飛び出してきたのだ。
「不採算事業により厳しい選択をしていく」。横浜市の日産本社で記者会見を開いた西川広人・社長兼最高経営責任者(CEO)は、4〜6月期決算の発表に合わせて、全世界で1万2500人の人員を削減し、生産能力を1割縮小する構造改革策を明らかにした。人員削減は5月の時点で4800人と打ち出していたが、それを全従業員数の約1割に相当する規模に拡大する。米国やメキシコ、インドなど全世界の14拠点で閉鎖も含めた生産能力の縮小を断行して、日本国内でも栃木県と福岡県の拠点で期間工計880人を採用抑制によって減らす。
収益悪化の震源地は米国だ。世界有数の自動車市場の米国で短期間にシェアを奪おうと販売奨励金を販売店につぎ込み、積極的な値引き販売を展開した。その結果、一時的には販売台数は増えたものの、日産の車は「安物」という印象が定着してブランド価値が低下した。これを食い止めようと販売奨励金を縮小したら、今度は販売台数は急速に落ち込み、悪循環に陥ってしまった。また、ゴーン前会長の思い入れが強かった新興国戦略によって生産能力を増強していたインドなどで思うように販売が伸びず、過剰となった生産体制が収益を悪化させている。
商品戦略も方針転回せざるを得ない。不採算商品は打ち切り、2022年度までに全体の車種を1割削減する。その一方で、電動化車両など20車種を新たに投入して、縮小しながらも競争力を高める目標を掲げた。ガソリンエンジンで発電して、その電気でモーターを動かして前進するシステム「e−POWER」は消費者に支持されており、搭載する車種を増やしている。こうした新たな商品を創出するための研究開発投資は22年度までに10%増やす。
こうした構造改革策がうまく機能すれば、生産体制を縮小しても2018年度に69%だった稼働率を22年度には86%まで上昇させて効率化を図り、車種は減らしても魅力的な商品をそろえて、18年度に約550万台だった全世界の販売台数を22年度に約600万台に増やせると目論む。結果として売上高も約13兆円から約14兆5000億円に増える皮算用だ。もっとも、「100年に一度の変革期」を迎えている自動車業界で、その変革をリードするようなヒット商品を生み出しながらも、リストラを進めることは決して容易ではなく、「ゴーン後」の経営陣の舵取りは困難を極める。
ギリシャ神話では、開いた「パンドラの箱」からあらゆる災いが飛び出した後、最後に希望が残ったとされる。果たして日産は希望を見いだせるだろうか。

 

●ゴーン被告の弁護士が東京地検を非難「公平性に欠ける」 2019/9
現在保釈中で東京都内の制限住居で暮らすカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)被告(65)のフランス人弁護士は、公平性に欠けるとして東京地検を非難し、ゴーン被告が公正な裁判を受けられるのか疑問を呈した。
日産自動車(Nissan Motor)と仏自動車大手ルノー(Renault)の会長を務めていたゴーン被告は、日産での役員報酬の過少記載や、日産が中東の販売代理店に支出した資金の一部を私的流用した罪などで起訴されている。100日以上勾留された後に保釈され、今は日本で公判開始を待っている。
フランソワ・ジムレ(Francois Zimeray)弁護士は仏週刊紙「ジュルナル・デュ・ディマンシュ(Journal du Dimanche)」への寄稿の中で、「東京地検が人権侵害を犯していると非難する時が来た」「日産および日本の政治権力との驚くべき共謀といった、公平性を保つ義務に対する重大な違反がある」と述べた。
さらに、「面目を失わないこと、そして秘密の約束をした日産の現経営陣を守ることによってフランスによる同社への影響力を粉砕することを自らの課題としている検察は、何をしても許されるように見える」と非難した。
ジムレ氏は、メディアへの情報のリークなど、「裁判前にゴーン氏が有罪であるという見方をはびこらせようとあらゆる手が尽くされた」と述べた上で、情報のリーク元が「東京地検」なのは明らかだと断じた。 
●日産・西川社長の辞任決定で、これから注目すべき「2つのこと」 2019/9
日産自動車が2019年9月9日、西川廣人社長兼CEOが同16日付で辞任すると発表した。当面は山内康裕最高執行責任者(COO)が暫定的にCEOを代行し、10月末までに指名委員会が次期社長を選ぶ。
西川社長、ついに辞任へ
西川社長が2013年に日産株の上昇を受けて株価連動型報酬制度であるストック・アプリシエーション権(SAR)の行使日を約1週間遅らせ、本来の行使日よりも4700万円多く報酬を受け取ったことが日産の社内調査で確認された。西川社長もこれを認め「しかるべき金額は返納する」と発言している。しかし、SAR問題は当の西川社長がカルロス・ゴーン前会長を告発した際の「材料」にしたもので、社内外からの批判が噴出。ついには辞任に追い込まれた。が、問題はこの後だ。今後の社長人事で注目すべきことを、2つばかり指摘しておきたい。
1. 辞任を渋った西川社長の影響力は残るか?
西川社長はギリギリまで辞任に抵抗していたという。発表の前週には、日産の監査委員会が「西川社長に不正の意図がなく、法的にも問題がないのに責めるのは酷だ」と残留に向けて調整していたという。それがわずか数日で一転した。水面下での「権力争い」があったことは間違いない。背景には2019年7月から日産の指名委員会で始まった次期社長選びがあったとみられる。西川社長は後継者選びについて「思い切って若返りを図りたいが、それを阻止しようとする役員がいる」と不平をもらしていたとの報道もある。西川社長の言葉通りに受け取れば、若返りを拒む古参役員が抜本的な日産改革にブレーキをかけているということだ。半面、西川社長が退任後も日産社内に影響力を残すためには、若手から後任者を抜擢した方が御しやすかったのではないかとの見方もある。つまり西川社長が主張する「若返り」を「院政への布石」と見た社内勢力が、西川社長を辞任に追い込んだというわけだ。自ら職を辞そうとしない西川社長に業を煮やした取締役会が辞任を要請し、了承させた。今回の辞任劇の「裏側」はまだ見えない。ただ、後継者が誰になるかで、退任後の西川社長の日産社内での「影響力」も決まる。西川社長と3歳も離れていない山内CEO代行がそのまま社長に横滑りすれば、影響力は完全に失われる。一方、西川社長を「切った」経営陣の期待に反して思い切った若返りが実現すれば、わずかながらにせよ影響力が残る可能性はあるだろう。
2. ルノーが社長か会長の席を獲得するのか?
次に注目すべきは仏ルノーの人事介入だ。ルノーは2019年6月の役員人事で日産の会長職を強く求めていたが、日産側の強い抵抗で断念し会長職が空席になった経緯がある。西川社長が退任するとなると、ルノーが社長交代を機に再び会長職を狙ってくる
だろう。前回は日産側がゴーン前会長の不祥事を突きつけて、ルノーの要請を「どの口が言う」とばかりに拒絶した。今回は立場逆転だ。ジャンドミニク・スナール会長は日産指名委員会の委員であり、西川社長の不祥事を理由として日産側に都合の良い社長人事案を退けることも考えられる。ルノーのスナール会長は日産の新社長選びでどう動く?(日産ホームページより)そうなると「妥協案」は、日産から社長をルノーからは会長をそれぞれ選ぶという「たすきがけ」人事だ。当然、経営に対するルノーの発言力は増し、日産との経営統合は一歩前進することになる。あるいは「ルノーの好き勝手にはさせない」を大義名分に、山内CEO代行が会長に就任してルノーが派遣する社長に目を光らせるという「妥協案」もありうるだろう。だが、仮にそれが実現したとしても、ルノー支配の強化を食い止めることはできない。なぜなら、ゴーン前会長の追い落としに加担し、ルノーによる経営統合に猛反発した取締役会のメンバーだった山内CEO代行をあえて会長に就任させるということは、両者の間で「経営統合を進めていく」との合意が交わされているとしか考えられないからだ。そうなれば「ソフトランディング」を望むルノーが受け入れる可能性もゼロではない。
日産、痛恨の「判断ミス」
それにしても西川社長がゴーン前会長追放直後に辞任していれば、ルノーにトップ人事への介入と経営支配強化の「口実」を与えることはなかっただろう。「ルノー憎し」に傾き過ぎたあまり、社内で西川社長の責任追及が甘かったことも「傷口」を広げる結果となった。これから起こる社長交代劇は、日産の自主独立に止(とど)めを刺すことになるかもしれない。日産にとっては痛恨の「判断ミス」だった。

 

●営業利益99%減で1万人超をリストラした日産の今後 2019/10
「日産自動車」は日本を代表する自動車メーカーで「ノート」「セレナ」などの人気車種を有する。近年、元代表取締役であるカルロス・ゴーン氏や次期代表取締役になった西川氏の不正など経営陣の不祥事問題で揺れる同社だが、その知名度は健在だ。実際の平均年収はいくらなのか、最新の有価証券報告書から見ていこう。
2019年3月期の有価証券報告書によれば日産自動車の平均年間給与は、815万4,953円となっている。また平均年齢は41.8歳で平均勤続年数は18.4年だ。(2019年3月31日現在における提出会社単体の数字)同年3月期におけるトヨタ自動車の平均年収851万5,525円、本田技研工業の平均年収819万8,000円とほぼ同水準である。
2019年10月28日時点で日産自動車の時価総額は約2兆8,726億円だ。一方、トヨタ自動車の時価総額は約24兆4,170億円、本田技研工業は約5兆3,437億円と両者に水をあけられている。しかし年収面では拮抗しているといえるだろう。2015年度の平均年間給与は795万212円から2016年度の816万4,762円と少し上昇を見せたものの、以後横ばいが続いている。
子会社を含めた連結ベースの売上高は、2016年3月期12兆1,895億円に対して2019年3月期は11兆5,742億円(前年度は11兆9,511億円)と減少傾向だった。一方、当期純利益では2018年3月期の7,468億円から2019年3月期は約3,191億円と大きくマイナスとなっている。販売台数に関してもアジアでは販売台数を伸ばすも欧州、米州での販売台数は減少している状況だ。
日産自動車の今後の展望は、決して明るいものではない。外部環境、内部環境ともに課題を抱えており大きな転換点にある状態だといえるだろう。外部環境での大きな変化は、CASEと呼ばれる次世代自動車の開発競争が激化していることだ。新しい自動車の開発は、「自動運転」「電気自動車」「シェアリング」など、これまでの自動車業界とはまったく異なるアプローチになってきている。
競争相手もこれまでの自動車メーカーだけではない。IT業界からGoogleやテスラなども加わってきている。日産自動車も「Nissan Intelligent Mobility」をテーマに自動運転技術や新時代のバッテリーなどにおいてさまざまな取り組みを精力的に行っている最中だ。しかし日産自動車は2018年に46億米ドルの研究開発費を投じているが、これは投資している研究開発費用のランキングでは世界で37位。
Googleは2位で162億米ドル、フォルクスワーゲンは3位で158億米ドル、トヨタ自動車が11位で100億米ドルを研究開発に投じている。これらと比較しても決して潤沢に開発費があるとはいえないだろう。もちろん研究開発費だけが今後の自動車業界の命運を握っているわけではないが、楽な競争環境ではないということは理解をしておきたい。
もう1つ課題になるのがコーポレートガバナンスの問題だ。日産自動車のCEOであったカルロス・ゴーン氏、西川氏ともに自身の不正でCEOを辞めざるを得ない状況であった。このことを鑑みると2019年時点で自社のコーポレートガバナンスが適切に機能しているとは言い難いだろう。不正を受けて日産自動車は新しい経営体制を発表した。
同時に指名委員会等設置会社に変更するなどしてコーポレートガバナンスの強化を図っている。外部環境が厳しさを増す中、業績の立て直しおよび内部のガバナンスも求められている日産自動車。彼らの今後の業績に注目したいところだ。

 

●ゴーン被告が起訴された事件の争点 2019/11
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)が東京地検特捜部に逮捕され、19日で1年。日本版「司法取引」で入手した証拠などを基に有罪立証を目指す検察側に対し、一貫して無罪を主張する被告側は「違法捜査だ」と反発を強める。来春にも開かれる初公判に向けた手続きが進むに連れ、全面対決の構図はますます鮮明になってきた。
ゴーン被告の事件は二つに大別される。役員報酬計約91億円を退任後払いにするなどして有価証券報告書に記載しなかったとされる金融商品取引法違反事件と、私的な損失を日産に付け替えたり、日産資金を不正送金し、自身や家族に還流させたりしたとされる特別背任事件だ。
東京地裁では5月以降、争点を絞り込む公判前整理手続きが進行。手続きはそれぞれの事件ごとに行われているが、弁護団は、日産の捜査協力や執行役員らが応じた司法取引を「被告を失脚させることが目的」と非難し、公判で両事件とも「違法捜査で起訴は無効」と訴えることを明確にした。
金商法違反事件では、後で受領することにしたとされる「未払い報酬」はそもそも存在しないと主張。司法取引で検察官に報酬隠しを説明した執行役員らの調書の証拠採用にも反発し、証人尋問を請求するとみられる。
特別背任事件でも対決の構図は明白だ。2008年秋のリーマン・ショックで私的な損失を抱えたゴーン被告が、サウジアラビア人実業家とオマーンの日産販売代理店創業者から資金援助を受けたことが不正送金の背景とみる検察側に対し、弁護団は「送金は業務の対価や販売奨励金。援助と無関係」と反論。損失付け替えについても、「日産に損害はなく、取締役会の決議を得ていた」と訴える。
公判は金商法違反事件が先行し、連日開廷も見込まれる。同事件で共に起訴された法人としての日産は起訴内容を認める方針だが、元代表取締役グレッグ・ケリー被告(63)は、ゴーン被告同様、無罪を主張する。特別背任事件の公判日程は依然見通せない上、検察側は仏自動車大手ルノーの資金還流も立証する方針で、判決までには相当の時間がかかりそうだ。 
●日産の今期純利益、66%減の1100億円 2月に臨時総会 2019/11
日産自動車が12日、2020年3月期の連結純利益が前期比66%減の1100億円になる見通しだと発表した。従来予想(47%減の1700億円)を下回り、10年3月期(423億円)以来、10年ぶりの低水準になる。米国向け販売が低迷している上、次世代技術に向けた開発費の増加なども重荷になる。
会見には、スティーブン・マー常務執行役員(新最高財務責任者=CFO)が出席した。急きょ、予定していた軽部博・現CFOから変更した。また同日19時、来年2月18日に横浜市の「パシフィコ横浜」で臨時株主総会を開くと発表した。取締役選任議案を付議する。
今後の配当方針について、マー氏は「4〜9月期配当の10円は上期利益に基づいたもので配当性向は60%に相当する。過去は30%だった。配当政策を見直すなら新しい経営陣の判断が必要だ。後日説明します」と語った。
米市場の動向について問われ、マー氏は「今の見通しは131万台でわずかに見直した。7〜9月期は米国で販売の質が改善しており、台数は追求していない。長期的な成長を目指しており、米事業のファンダメンタルズを強化している。新型車の販売もあり、今後数カ月で行えると思っている」との方針を示した。
追加のリストラ策について、マー氏は「今日は決算発表だ。構造改革は(12月に始動する)新経営陣からアップデートしてもらいたいと思っている。米国事業の改善策は軌道に乗っている。製品の最適化やその他の改善活動も順調だが、今の経済情勢を考えるといろいろ見直す必要がある。台数も通期では下げている。リストラではそういうことを考慮にいれます」と話し、一段と構造改革を進める可能性を示唆した。
日産の米国での販売奨励金が高いことを問われ、マー氏は「米国市場では一環して販売の質が改善している。月次でアジャストするのではなく、4半期ベースでもっていくイメージだ。新しい『セントラ』など新車を投入していく。奨励金については、新車投入に伴い減少トレンドが続いていくと思っている」と説明した。
マー氏はフリーキャッシュフロー(FCF)の動向について問われ、「上期については下がっているが、4〜6月期が調整局面だった。例えば生産が低かったが7〜9月期はだいたいトントンだ。来年1〜3月期には相当改善するだろう。減配は4〜9月期の進捗を勘案した。通期配当については新しい経営体制で判断する」と話した。
マー氏は20年3月期の業績予想の下方修正の理由について、「2019年度の見通しについては、事業改革と収益力のリカバリーを進めているが、4〜9月期実績の進捗が十分でない。為替が期初に比べて円高に推移していることや全体の需要減少を鑑みた」と説明した。
軽部CFOが会見を予定していたが、会社側は「就任は12月1日付けだが1日でも早く新執行体制にということ」と変更の理由を話した。新たなCFOに就くマー氏は英語で会見を始めた。
日産の今後、3つのポイント
1 業績改善の道筋示せるか
株式市場は今期の業績悪化をある程度は織り込んでおり、来期以降の業績改善につながる施策がで出てくるかに着目している。生産ラインの閉鎖・縮小といった固定費削減プランなど、具体的な構造改革の道筋を早期に示すことが欠かせない。
2 成長シナリオどう描く?
12月に新社長に就任する内田誠専務執行役員はいきなり試練のスタートとなる。足元の業績悪化に加え、現時点の予想ベースで今期の売上高営業利益率見通しは2%程度と、金融危機直後で営業赤字になった09年3月期以来、10年ぶりに低い水準に落ち込む。販売が落ち込む背景には、新型車の開発が遅れて、消費者が欲しくなるような新車が減っていることがある。カルロス・ゴーン元会長の時代は投資資金を主に新興国への拡大戦略に振り向けたためだ。積極投資した新興市場で小型車は想定ほどは売れず、減価償却費が重くのしかかった。国内の新車投入は滞り、2000年3月期からの15年間は平均で年5車種あった新車が、17年3月期からの3年間は合計で3車種にとどまった。デザインなど小幅な改良をしただけの車の魅力は向上せず、値引き販売に頼るようになり、採算が悪化する悪循環に陥った。これらの経営課題を意識し、11月に小型の多目的スポーツ車(SUV)を刷新するなど手を打ち始めているが、実際の販売回復につながるかはまだ手探りの状況だ。短期的な止血策だけでなく、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応や地域戦略の見直しを通じて中期的な「稼ぐ力」を取り戻すシナリオの策定が不可欠になる。
3 仏ルノーとの関係改善動向
経営体制の刷新を機に提携先の仏ルノーとの関係を改善できるかも焦点になる。ルノーは急きょ、元会長のカルロス・ゴーン被告の側近だったティエリー・ボロレ最高経営責任者(CEO)を解任。人事で日産に歩み寄った。ほぼ1年前のカルロス・ゴーン元会長の解任から始まった経営の混乱以降、日産とルノーの両社の業績は急速に悪化した。日産内部での権力闘争やルノーとの主導権争いにエネルギーを注ぐ時間はもはや残されていない。経営体制に加えて、生産や調達、販売面でこれまで以上にスピード感のある具体的な協業効果を出すことが、低迷する株価が底入れする条件となりそうだ。
●日産が新車で反転攻勢へ 成否のカギはラグビー日本代表にあり 2019/11
新車発売の遅れが指摘されてきた日産自動車が令和2年以降、新車攻勢で反撃に打って出る。
前会長であるカルロス・ゴーン被告の会社法違反(特別背任)などの事件で社内が混乱したこともあり、販売不振にもあえいだ。しかし、今後の新車投入は、電動化・自動化を軸に「他社があえてやらないことに取り組んでいる」と、自信たっぷりだ。あっと驚くような革新的な車を世に送り出し、かつての“栄光”を取り戻せるか−。
脱「じり貧」
「(日産車の)モデル年齢(投入してからの期間)は平均4・7年だったが、今後2年以内に2・5〜3年に若返らせる」
「令和4年度までに電気自動車(EV)を8種類発売し、(EVや独自のハイブリッド技術『eパワー』搭載車などを含む)電動車を世界で年間100万台売る」
10月下旬、神奈川県厚木市にある日産の新車開発の拠点「テクニカルセンター」。商品戦略を担うイヴァン・エスピノーサ常務執行役員は、国内外から集まった多くの報道陣にこう宣言した。
日産では過去4〜5年、ゴーン被告が掲げた高い販売ノルマを達成しようと、値引き販売が常態化していた。特に米国市場では、安売りの原資となる小売店向けの「販売奨励金」が積み上がって、採算が悪化するという悪循環に陥っていた。
西川(さいかわ)広人前社長も「販売政策にばかりお金を使い、新車開発がおろそかになっていた」と認める。ゴーン被告の事件も重なってブランド力が低下し、令和元年上期(1〜6月)の世界販売台数はトヨタ自動車などに及ばず、前年同期の首位から陥落。販売はじり貧状態に陥った。
日産はゴーン被告の拡大路線と決別するため、全従業員の約1割に当たる1万2500人の削減と不採算商品の打ち切りで全体の車種数を4年間で10%削減する。このため、販売店や市場からは「売れる新車」を求める声が強まっていた。
スマホと連携、生体認証、手放し運転…
こうした中、テクニカルセンターで開かれた将来の商品計画の説明会。
まず、エスピノーサ氏は電動化について通信機能を備えた「コネクテッドカー(つながる車)」の技術で利用者のスマートフォンと連携し、好みを分析した上で行き先を提案する機能を検討していると明らかにした。
さらに、体温を感知するセンサーや車内カメラを使った生体認証で利用者の体調や感情を把握。空調の温度を最適化したり、気分に合った音楽を自動で流したりすることが可能になるという。
自動化では、9月に発売した高級スポーツセダン「スカイライン」のように、多くの車で高速道路の同一車線内の手放し運転が可能になれば、「リラックスした時間が過ごせるようになる」と強調した。
一方、ブランド戦略担当のルー・ドゥ・ブリース専務執行役員は「テクノロジー(技術)とインテリジェント(知能)で、利用者が自信を持って安心・安全に運転できる車を目指す」と抱負を語った。
デザイン担当のアルフォンソ・アルバイサ専務執行役員は、クールでシャープな「粋」▽変化の美を表す「移ろい」▽普通ならざるものを受け入れる「傾く」−といった日本語を重視していることを明らかにした。
エスピノーサ氏は、新車発売の遅れについて「平成23年の(東日本大震災や円高、沖縄県・尖閣諸島の国有化をめぐる中国の不買運動などの)危機と、電動化への取り組みに注力していたため」と説明した。報道陣からは、「ゴーン被告の事件に伴う経営陣の交代も遅れにつながったのか」という質問も。これに対し、エスピノーサ氏は「答えはノーだ。電動化への取り組みは前もってプログラム(計画)されていた」と力説した。
ラグビーのような「多文化共生」を
新車開発の中核を担う彼ら3人は共に外国出身だが、功成り名を遂げた後にライバル社から引き抜かれたり、企業連合を組む仏自動車大手ルノーから送り込まれたりしたわけではない。大学卒業や経営学修士(MBA)取得と同時に日産の欧米現地法人に入社したり、若い頃に他社から転職したりして日産の門をくぐった。
しかし、日産が、海外の現地法人で採用された多くの優秀な人材を本社部門に登用し始めたのは2000年代に入ってからという。ある幹部は「ゴーンさんの考えだ」と打ち明ける。毀誉褒貶(きよほうへん)の激しいゴーン被告も、優秀な外国人材の登用という面では評価されている。
3人は、説明会で「日産の心は強い」「『フェアレディZ』のDNAをずっと受け継いでいる」「日産(の源流となった快進社)は明治44年(1911)年創立の日本初の自動車メーカー」などと愛社精神を打ち明けていた。
ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会で、日本代表チームは31人中15人の外国出身選手がベスト8入りを支えた。日本人選手を含む「多文化共生」を可能にしたのは、日本代表としての誇りをチーム一丸となってはぐくんだ成果だった。
多文化共生は、日産においても復活の鍵を握っている。
●次世代のクルマづくりコンセプト「ニッサン インテリジェント ファクトリー」 2019/11
日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、代表執行役:山内 康裕)は28日、次世代のクルマづくりコンセプト「ニッサン インテリジェント ファクトリー」を発表しました。同コンセプトに基づく次世代のクルマづくりを支える革新的な生産技術は、今後、国内外の生産工場に導入していきます。
日産は、これまで生産現場における様々な挑戦や改善活動により、生産工程の高品質化と高効率化を進めるとともに、高技能を持つ“匠”の技術により、高精度なクルマづくりを実現してきました。今後、「電動化」、「知能化」など、日産が進めている「ニッサン インテリジェント モビリティ」が加速することに伴い、クルマの機能や構造がより複雑化していき、生産工程も更なる技術革新が不可欠となっていきます。
同社の生産担当副社長である坂本 秀行は、「我々を取り巻く事業環境は、特に日本で顕著な少子高齢化に加えて、『電動化』、『知能化』や『コネクテッド』による次世代モビリティの競争に直面しており、従来の同一品種の大量生産を効率的に進める労働集約型の生産から脱却する時期を迎えています。このように、自動車業界を取り巻く環境が大きく変化していくことが見込まれることから、日産は今後も更なる生産技術の革新に取り組んでまいります。また、日産のモノづくりを支えてきた高い技能を持つ“匠”も、新たな役割にチャレンジしていきます。」と述べました。
「ニッサン インテリジェント ファクトリー」の3つの柱
〇「未来のクルマを作る技術」:クルマは、「電動化」、「知能化」や「コネクテッド」など、より高度で複雑な技術が搭載されていきます。生産ラインを革新することで高度化したクルマの生産に対応していきます。
〇「匠の技で育つロボット」:匠の磨き抜かれた技を数値化して、ロボットに伝承します。匠は、更なる現場改善や、自動化できない感 性品質、複雑化する技術への対応など、最高品質のクルマづくりを支えていきます。
〇「人とロボットの共生」:人には厳しい作業をロボットが助けることで、人が働きやすい環境を作っていきます。女性や高齢者も活躍できる工場にすることで、働き方の多様化を加速させていきます。
主な革新技術
〇パワートレイン一括搭載システム
電気自動車(EV)やe-POWER、ガソリン車のパワートレインユニットの組立を一括搭載するシステムです。従来は、大勢の作業者が負荷の高い姿勢でモーター、エンジン、バッテリー、サスペンションをそれぞれ組付けていましたが、同システムでは、パレットの上に作業者がパワートレインの組立に必要な部品をセットするだけで、ロボットが自動で組付けます。日産の生産技術研究開発センターが独自開発したこのパレットは、モーター、エンジン、バッテリー、サスペンションの27通りの組合せに対応し、お客さまへの幅広い選択肢を提供していきます。また、高速ビジョンシステムによる画像認識によりクルマのボディを瞬時に測定し、0.05mmの精度で組付けます。
〇シーリング塗布の自動化(匠の技の自動化)
これまで、車体パネルの接合箇所の水漏れを防止するシーリングは、施工する部位の形状が複雑なため、自動化が難しく、技能者の熟練した技術に頼っていました。今回、匠がハケやヘラでシーリングの塗布をして仕上げる際の、力加減や動かす角度を数値化して、ロボットに伝承することで、匠の手の動きを忠実に再現することを可能にしました。
〇革新塗装ライン
「ニッサン インテリジェント ファクトリー」は環境にも貢献します。従来、金属製のボティと低温での塗装が不可欠な樹脂製のバンパーとは別々の工程で塗装をしていました。今回、日産で新たに開発した水系塗料は、低温で難しかったボディ塗装における粘性のコントロールに成功し、ボディの低温塗装を実現しました。これにより、ボディとバンパーの同時塗装が可能となり、CO2を25%低減させます。また、従来、塗装工程で空気中に残留した塗料は、水と混合され廃棄物となっていましたが、水を一切使わないドライブースを採用することで、浮遊する残留塗料を100%回収し、鋳造工程にて鉄を生成する際に、不純物除去のために使用されていた補助剤の代替として、リサイクル活用します。

同社は、「ニッサン インテリジェント ファクトリー」を栃木工場に約330億円を投じて導入するのを皮切りに、国内外の工場へ展開し、日産のモノづくりを革新していきます。

 

●内田社長兼CEO就任会見 日産はクルマ界でブレークスルーを狙う!!  2019/12
日産自動車は2019年10月8日に内田誠氏が社長兼最高経営責任者(CEO)に就任するトップ人事を決定したと、発表していたが、12月1日付で正式就任となり、12月1日に社長兼CEO就任記者会見が開催された。
就任あいさつ、質疑応答をもとに、内田氏は日産をどのような手法で改革していくのか? ルノー、三菱とのアライアンスは今後どうなるのか? 低迷する国内市場に何か対策はあるのか? などについて考察していく。 
ゴーン氏逮捕から1年で新体制発足
2018年11月にカルロス・ゴーン氏が突然逮捕されてから早いもので1年が経過。加えてゴーン体制を払拭して日産再建を公言していた西川廣人前社長にも不正が発覚し辞任に追い込まれてしまった。
西川前社長の辞任を受け、山内康裕最高執行責任者(COO)が暫定的に代行したが、1日に発足した新体制は、内田社長兼CEOをルノー出身のアシュワニ・グプタCOOと関潤副COOの両役員がサポートする、いわゆる『三頭体制』となる。
グプタCOOは会社全体、事業を統括、関福COOは商品を統括、そして内田社長兼CEOは会社全体の責任を負う、という形で役割分担するという。3人の合議となると改革にも時間がかかるのではという懸念に対しても、自信を持っていることをアピール。
日産ブランドの信頼回復は急務
内田社長兼CEOは、会見の頭で、「国内検査での不正、経営者の不正によって世間を混乱させたことを重く受け止めている」と謝罪。
検査での不正、経営陣による不正問題により、業績が低下。それは長年にわたり築いてきた日産ブランドの信頼も失ってしまったのは痛い。内田社長兼CEOもまずは信頼の回復を最優先するため、日産が昔から徹底しているお客様ファーストを徹底するという。
内田社長兼CEOは日産の魅力については、「日産の社員一人一人の能力が高い」ことを挙げ、これまで(ゴーン氏、西川氏)の経営戦略、事業戦略は間違っていなかったという考えから、大きく方向転換することはないもよう。
アライアンスは日産の強み
内田社長兼CEOの就任会見で注目を集めたのは、日産、ルノー、三菱のアライアンスは今後どうなるのかということで、当然のように質問も集中した。
西川前社長は、ルノー、三菱とのアライアンスについては見直しを検討していたが、内田社長兼CEOは、現状では見直しは考えていないという。ルノーとの関係についても断言はしていないが、ルノーとの提携解消はまずないだろう。
アライアンスは日産という企業にとっての強みであり、これまでも大きな成果を残していて日産の業績回復のカギを握っていると考えているからだ。そのアライアンスで大事なのは、3社がそれぞれメリットを享受できることが重要だという。
現在は3社とも業績が悪化していて、まずは短期的に売り上げ、利益を伸ばすことに専念していくという。日産、ルノー、三菱の各社が抱える問題を洗い出すことから着手していくことになる。
気になる国内マーケット
業績の回復については、これから短期的、中期的、長期的な戦略の元でいろいろ手を打つことになるが、日産は日本国内市場の落ち込みが顕著でその対策は急務だ。
それに対し内田社長は、まだまだ就任したばかりなので具体的なことは明言できない、と断りながらも、「最も重要なのは新商品だ」、と断言。続けて、「スケジュールどおりしっかりと新車を開発すること」、「魅力を持った新型車を提供し続けること」という2点を加えた。
現在日産が未来へ導くと推進している日産インテリジェントモビリティで開発している最新技術を盛り込んだニューカーを続々登場させる意向も示した。そのために2019年下期は仕込み期間として重要だという。
日産は確かに一連の不正などがあったが、ゴーン氏体制以降、ワクワクする日産車がなくなった、という声をよく耳にするようになった。
内田社長兼CEOも、日産に入社した動機として、日産車はワクワクさせてくれたことを挙げていた。会見中に内田社長は『ブレークスルー』という言葉を多用した。
会見会場に展示していたフェアレディ240Zはスポーツカーでブレークスルー、東京モーターショー2019で世界初公開したアリアコンセプトは、SUVの価値に捕らわれないというブレークスルー車と説明するなど、新たな価値観を重要視しているのがわかる。
アリアコンセプトはこのままではないが、市販を前提としたものだから楽しみだ。
また、日産は数多くのクルマが消滅しようとしているが、これについては、「日本国内で販売している車種はモデルサイクルが長く古くなりすぎている。2020年以降は社長がコメントしていたとおり新車を投入して活性化を図ることになる」(日産関係者談)
ここ数年の日産の問題は新車の少なさにあったが、内田新体制では社長自らコメントしているとおり、日本マーケットのラインナップが刷新されるのは間違いないだろう。

まだスタートしたばかりの日産の新体制については、会見中に何度も口にしていた、「ブレークスルー」をどれだけ見せてくれるのかに注目したい。新車、技術などいろいろな分野でブレークスルーを狙っている日産に期待したい。
●商社育ち、インド出身、生え抜き組... 日産率いる「三頭体制」の前途は 2019/12
カルロス・ゴーン前会長が逮捕された2018年11月以降、経営の混迷が続く日産自動車。2019年12月1日に発足した新たな経営体制は、内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)をアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)と関潤副COOが支える三頭体制で、落ち込んだ販売の立て直しや連合を組むフランス自動車大手ルノーへの対応に臨む。
世界の自動車業界は「100年の一度の変革期」を迎えており、日産の停滞が続けば、ドイツのフォルクスワーゲンに次ぐ世界2位の販売台数を誇るルノー・日産・三菱自動車の3社連合も決して安泰ではない。
「この1年、多くの混乱をもたらし、世間をお騒がせしたことを厳粛に受け止めている」。就任翌日に社長として初めての記者会見に臨んだ内田氏は、冒頭に日産が置かれている厳しい立場を認めた。長年トップを務めたゴーン前会長が特別背任などの疑いで東京地検特捜部に逮捕され、続いてトップに立った西川広人前社長兼CEOも自身の報酬に関わる問題で2019年9月に辞任した。起死回生に向けて、社外取締役を中心メンバーとする日産の指名委員会が内田氏ら新経営陣を選んだ。
内田氏は53歳。同志社大学神学部を卒業して、日商岩井(現双日)に入社。2003年に37歳で日産に移った。商社時代から海外勤務経験が豊富で、社長就任の直前まで中国事業を統括する立場だった。2日の記者会見では「ハードルの高い計画を進めた結果、急激な業績悪化を招いた」と過去の経営を振り返り、高い目標を掲げていたゴーン時代を否定して「脱ゴーン」を進める決意を示した。
インド出身でルノーに勤務した経験があるグプタ氏は三菱自動車COOから日産に移った。生え抜きの関氏は専務執行役員から昇格した。
本業の自動車製造・販売は厳しい立場に置かれている。ゴーン時代の拡大路線が裏目となり、主力市場の北米では販売奨励金による実質的な値引きで日産のブランド力が低下。インドやインドネシアなどの新興国で販売を拡大しようと現地に設けた工場は、販売台数が伸びず稼働率の低下に苦しんでいる。新体制はこうした目の前の課題に早速取り組むが、同時に重要となるのがルノーとの距離感だ。
ルノーは日産株の約43%を保有する筆頭株主だが、経営が混迷する前の日産はルノーを販売台数で上回っていた。この「ねじれ」が、ただでさえ複雑な両社の関係と社員の感情を、一段と複雑にしていた。さらに、両社を結びつける立場だったゴーン前会長が経営から去った後、フランス政府の意向を受けたルノーのスナール会長が日産に経営統合を求めたため、両社の行き違いが表面化していた。そもそも次世代技術の開発には連合内の協力関係が不可欠であり、日産は経営の独立性を維持しながら連携を進めるという難しい舵取りに挑もうとしている。
ルノーとの共同調達を担当したこともある内田氏は会見で、ルノーとの経営統合について「現時点では、スナール会長とまったく話をしていない」と述べたうえで、連合内の協力強化を先行させる意向を強調した。日産の経営立て直しを優先させなければ、連合そのものの先行きが危うくなるとルノー側が認識して、経営統合構想をひとまず棚上げしたとの見方もある。日産の指名委員会にはルノーのスナール会長も加わっており、三頭体制の人選はルノーの意向も反映されていると考える方が自然だろう。
ひとまずはルノーとの「休戦状態」の中で、本業の立て直しと連合内の協力深化に専念することになる日産。その後には、世界の自動車業界で活発化する再編をにらみながらの神経戦が待ち構えている。
●自動車業界の崩壊が近付いている…… 2019/12
〇 2019年、自動車メーカーで働く人々は大きな打撃を受けた。
〇 ブルームバーグがまとめたデータによると、世界全体で今後2、3年以内に約8万人の雇用が失われる見込みだという。
〇 11月下旬には、ドイツの自動車大手ダイムラーとアウディが合計約2万人の人員削減を発表した。売り上げの低迷、電気自動車の生産コストの増大がその理由だという。
〇 電気自動車へのシフト、貿易摩擦、イギリスのEU離脱が売り上げを低迷させ、コストを増大させている。
2019年、自動車メーカーで働く人々は大きな打撃を受けた。
ブルームバーグがまとめたデータによると、世界全体で今後2、3年以内に約8万人の雇用が失われる見込みだという。
11月下旬には、ドイツの自動車大手ダイムラーとアウディが合計約2万人の人員削減を発表した。売り上げの低迷、電気自動車の生産コストの増大がその理由だという。
2019年に入って、日産やフォード、GMも大規模な人員削減を発表している。ブルームバーグによると、中国の電気自動車メーカー、上海蔚来汽車(NIO)も株価が大幅下落したあと、9月に2000人を削減すると発表した。
さまざまな問題が自動車業界を悩ませている。
イギリスのEU離脱(ブレグジット)や米中の貿易摩擦は、自動車部品の価格を上昇させる一方で、需要に打撃を及ぼした。電気自動車の増加やライドシェアリング・アプリの台頭も、売り上げを低迷させた。
ブルームバーグはIHSマークイットの調査を引用し、自動車と軽トラックの生産は前の年よりも6%減ったとしている。
ドイツの自動車業界での生産(世界全体の状況を示すバロメーターの1つ)は、2018年半ばのピークから18%減っている —— ゴールドマン・サックスは11月、この生産減がドイツのGDPの低下に貢献したと述べた。ブレグジット、需要薄、関税が売り上げに影響したという。
自動車メーカーは、電気自動車の生産を増やすよう迫られてもいる。ガーディアンは11月下旬、アウディが「無駄を減らし、未来に適合する」ための一環として、電気自動車に投資するために9500人を削減することで約60億ユーロ(約7200億円)を節約しようとしていると報じた。
野村證券のアナリストは夏前に、「痛みは始まったばかりだ」とし、世界の自動車需要は下がり続けるだろうと述べた。バンク・オブ・アメリカのアナリストは、自動車のサイクルはすでにピークに達し、今後は生産が減り続けると見ていると述べた。
フィッチ・レーティングスは5月、自動車業界の低迷が経済成長に悪影響を及ぼしていると指摘し、2018年の自動車の売り上げの減少が、その年の世界の成長を0.2%削ったと述べた。

 

●日産の「新トロイカ」あっさり瓦解 「人事の不満」とルノーの影 2020/1/8
カルロス・ゴーン前会長の逃亡劇≠ェ話題だが、日産自動車の経営では、上場大企業として考えられない首脳人事のドタバタ劇が演じられている。2019年12月1日に発足した新経営体制が立て直しをいよいよ本格化させる――と思っていたら、ナンバースリーの副最高執行責任者(副COO)に就いたばかりの関潤氏が退社するという、まさかの発表(12月25日)が待っていた。
しかも、モーター製造大手の日本電産に次期社長含みで移るという。これからの日産をリードするはずだった「トロイカ(3頭立ての馬車)体制」が1カ月も経たずに瓦解し、株式市場も失望して年末に年初来安値を更新する散々の年越しになった。
新経営体制のナンバーワンである内田誠・社長兼最高経営責任者(CEO)が就任に合わせて12月2日に開いた記者会見には、ナンバーツーのアシュワニ・グプタCOOと関氏も登壇して、集団指導体制の結束を印象付けようと演出していた。その場で関氏は「現場と経営層との間の大きな隔たりを少しでも詰めるため、内田氏、グプタ氏と努力していく」と述べていたが、皮肉にも関氏の退社によって隔たりが更に拡大しかねない事態となった。
2018年11月にゴーン会長(当時)が東京地検特捜部に逮捕された際、それに次ぐポジションの社長兼CEOは西川広人氏だった。ゴーン被告を会長から解任した後にナンバーワンとなった西川氏も、自身の役員報酬問題のせいで19年9月に社長を辞任していた。この間、本業の自動車販売はブランドイメージの低下もあって不振に陥り、経営の立て直しが急務になっている。
新経営体制のメンバーを選んだのは、社長時代の西川氏がゴーン時代の反省を踏まえて、経営の透明性を高めるために導入した指名委員会だ。社外取締役を中心とした6人で構成され、委員長は社外取締役で経済産業省出身の豊田正和氏が務める。だが、指名委員会で実権を持つのは、日産取締役でルノー会長のスナール氏だということは衆目の一致するところだ。ルノーは日産の株式の約43%を持つ筆頭株主であり、スナール氏はルノーの利益を実現するために日産の取締役会と指名委員会のメンバーに入っていると言ってよいだろう。
西川氏の後任選びを巡っては、日産生え抜きの関氏が最有力と目されていた。しかし、一転して内田氏が選ばれたのは「スナール氏の意向が働いた」という見方が強い。日商岩井(現・双日)から日産に中途入社した内田氏は、ルノーとの共同購買を担当した経験もあり、ルノーに比較的近い立場と目されている。日産とルノーにとって「扇の要」だったゴーン前会長が去った後、ルノーが日産に経営統合を迫って日産社内で反発が高まったこともあった。ルノーにとって収益面でも技術面でも不可欠な存在となった日産との良好な関係を維持するためにも、ルノーに融和的な人物が必要だったのだ。
ナンバースリーに甘んじることになった関氏は58歳。退社が発覚した後のロイターの取材に対して「日産のために働きたいが、サラリーマン人生の最後をCEOとしてチャレンジしたい」と答えている。こうした不満を見逃さなかったのが、日本電産の永守重信会長兼CEOだ。日本電産の現社長も日産出身だが、米中貿易摩擦の狭間で日本電産の業績が急落しており、社長を交代させようと考えていた永守氏は以前から接触していた関氏に声をかけたというわけだ。
日産は関氏に代わる取締役候補として、生産を統括する坂本秀行副社長を選び、2020年2月の臨時株主総会に内田氏と坂本氏を含む取締役選任案を諮る。当面、副COO職は空席になるという。内田氏は声明に「今後の新たな取り組みについては、CEOである私がリードし、COOのアシュワニ・グプタや新たに取締役となる坂本、他のエグゼクティブコミッティメンバーとともに進めていきます」と記し、社内外の不安払拭に心を配った。しかし、経営の透明性を高めようとしたあまり、むしろ権力構造が複雑になった日産で、内田氏が思うように改革を進められるかは見通せない。