保護主義に振り回される
G20
面倒なこと 不協和音
言いたい放題
議長国記者会見・評価・トランプ・裏読み・6/30・7/1・7/2・7/3・7/4・7/5- ■G20・G7・G20大阪サミット概要・G20大阪首脳宣言・・・ |
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●G20大阪サミット議長国記者会見 6/29
●安倍総理冒頭発言 大阪の地に世界中からリーダーをお迎えし、我が国が初めて議長国を務めるG20(金融・世界経済に関する首脳会合)サミットを開催できたことを大変うれしく思います。 世界は結束できる、そう信じて、精一杯、議長役を務めてまいりました。様々な課題について一気に解決策を見いだすことは難しい。それでも、本年のサミットは多くの分野でG20諸国の強い意思を世界に発信することができたと思っています。どの国にとってもウィン・ウィン、そして未来に向けて持続可能な成長軌道をつくる。その思いはその一点でありました。私の思いはその一点でありました。 今、世界経済には、貿易をめぐる緊張から、依然として下振れのリスクがあります。こうした状況に注意しながら、更なる行動をとり、G20は力強い経済成長をけん引していく決意で一致しました。 グローバル化が進む中で、急速な変化への不安や不満が、国と国の間に対立をも生み出しています。戦後の自由貿易体制の揺らぎへの懸念に対し、私たちに必要なことは、これからの世界経済を導く原則をしっかりと打ち立てることであります。自由、公正、無差別、開かれた市場、公平な競争条件、こうした自由貿易の基本的原則を、今回のG20では、明確に確認することができました。 他方で、WTO(世界貿易機関)の改革は避けられません。グローバル化、デジタル化といった近年の動きに、WTOは必ずしも対応できていない現実があります。ビッグデータ、AI、第4次産業革命が急速に進む時代にあって、付加価値の源泉であるデータについて、新たなルールづくりが必要であり、今回のサミットの重要なテーマでありました。 今回、トランプ大統領、習近平国家主席、ユンカー欧州委員長を始め、多くの首脳たちと共に、データ・フリー・フロー・ウィズ・トラストの考え方の下に、新しいルールづくりを目指す、大阪トラックの開始を宣言いたしました。プライバシーやセキュリティを保護しながら、国境を越えたデータの自由な流通を確保するための国際的なルールづくりを、スピード感をもって進めてまいります。これは、WTO改革の流れにも新風を吹き込むに違いありません。 世界経済の8割を占めるG20は、持続的な成長のために、大きな責任を有しています。地球環境問題は一部の国々の取組だけでは対応することが困難な課題であり、世界が共に取り組んでいかなければなりません。一昨年のハンブルク、昨年のブエノスアイレスでのG20サミットにおける努力の上に、環境と成長の好循環の実現に向けて世界が共に行動していくことが重要である。今回、こうした認識でG20として一致できた意義は大きいと考えています。 海洋プラスチックごみも、一部の国だけでは解決できない課題です。そうした中で、G20が結束して、新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを共有できたことは、この問題の解決に向けた大きな一歩であると考えています。その実現に向けた具体的実施の枠組みでも合意しました。 我が国は、これまでの技術や経験をフル活用し、途上国の廃棄物管理や人材育成支援を行い、世界の取組に日本らしい貢献をしてまいります。国際社会の様々な課題に首脳たちが直接話し合うことで解決策を見いだすことができる、国と国の間の問題もその解決に向けて歩みを進めていくことができる。 このサミットの機会をいかして、私も20名を超えるリーダーと会談を行います。本日もこの後、ロシアのプーチン大統領と首脳会談を行う予定です。EU(欧州連合)との首脳会談では、東北の安全な農産物、水産物について、規制緩和への大きな動きがありました。被災地の復興に協力してくださる多くの国々に、改めて感謝申し上げます。 世界の大きな関心である米中貿易摩擦について、一昨日、習近平国家主席と、昨日はトランプ大統領とそれぞれ話をしました。私からは、世界第1位、第2位の経済大国が建設的な議論を通じて、安定した経済関係を構築していくことが極めて重要であると申し上げました。こうした貿易摩擦や地域情勢について、このG20の機会をいかして、首脳同士が直接会って、胸襟を開いて話すことで歩み寄っていける。日本としてできる限りの役割を果たしていく考えです。 グローバル化は、経済の成長を後押しする一方、そこから生じる格差の拡大にもG20はしっかりと向き合い、成長の果実を社会の隅々にまで浸透させなければなりません。教育の充実は、持続可能な経済成長への最大の鍵です。全ての女の子が、少なくとも12年間の質の高い教育にアクセスできる、そうした世界を目指していく。その決意をG20の首脳たちと確認しました。日本はこれからも途上国における女子教育の拡大に役割を果たしていく考えです。2020年までの3年間で少なくとも400万人に上る途上国の女性たちに、質の高い教育、人材教育の機会を提供していきます。 世界では対立ばかりが強調されがちな中にあって、共通点や一致点を見いだしていく。日本ならではのアプローチで、この大阪サミットでは、世界の様々な課題に対し、G20が一致団結して力強いメッセージを出す。そして、具体的な行動へと移していく大きなきっかけにすることができました。 最後となりましたが、今回のサミット開催に当たり多大な御協力を頂きました御地元の皆様、人情の町・大阪らしい温かいおもてなしで迎えていただいたことを、心から感謝申し上げます。 私からは以上であります。 ●質疑応答 ●内閣広報官 これからは皆様方からの質問をお受けいたします。最初は日本のプレスの皆様からの御質問です。御希望される方は挙手をお願いいたします。私が指名いたしますので、指名された方は近くのスタンドマイクの前に進み出て、所属とお名前を明らかにされた上で御質問をお願いいたします。どうぞ。 ●記者 読売新聞の池田と申します。G20全体について伺います。G20は参加国が多いことから意思決定が難しく、国際協調の枠組みとしての限界を指摘する声もあります。取り分け、米中の貿易摩擦が続き、今回の首脳宣言でも、保護主義と闘うという文言は盛り込まれない方向だと言われています。本日は、アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席が貿易摩擦の解消に向けて会談をしましたが、総理はG20議長として、世界経済のリスクを緩和するために有効な処方箋を示すことができたとお考えでしょうか。また、G20の枠組みを改善していく必要があるとお考えであれば、どう改善すべきか、お考えをお聞かせください。また、今回のサミットで議題になったWTO改革については、どのようなスケジュール感で進めていくお考えでしょうか。よろしくお願いします。 ●安倍総理 G20について、世界を取り巻く主要な課題について、意見の対立ばかりが強調されがちと言ってもいいと思います。言わば、意見の違いが強調されることによって、それは政治的な意味を持ってくる。ある主張をしていると、その主張が通らなければ、政治的に負けたのではないか、実質とはだんだんかけ離れて、言わば、例えばいろいろな言葉、とった、とらないという結果になってしまうわけでありまして、その結果、共通の解決策が得られにくい状況になっているとの指摘もあります。しかし、例えば貿易や地球環境や防災といった課題については、一部の国だけで対応することは困難であります。世界がダイナミックに動く中で、世界経済の約8割を占めるG20の国々が一堂に会して、共に課題解決に取り組んでいくということは、大変意義が大きいと思っています。そのため、今回のG20サミットでは、日本は議長として、G20の持つ力を最大限に発揮するためには、各国間の対立を際立たせるのではなくて、共通点、一致点に光を当てていく。粘り強く共通点を見いだすアプローチをしていく。そして、世界をよりよい世界にしていくための結果を出していくということに力を入れました。多くの国々は、このアプローチに賛同していただいたと思っています。同時に、この2日間を通じて、議長国としての責任の大きさを改めて痛感もしたところであります。貿易については、戦後の自由貿易体制が揺らいでいるのではないかとの懸念がある中で、これからの世界経済を導く原則をしっかりと打ち立てることです。今回のサミットでは、自由、公正、無差別、そして、開かれたマーケット、公平な競争条件といった自由貿易体制を支える基本的原則につき、一致することができたと思います。そもそも、私たちが求めていたのは、この原則のはずであります。ですから、今回のサミットにおいては、本来、では、私たちは何を求めていたのか、との原点に立ち返って、今まで意見の違いばかりがあおられてきた。その結果、何も原則も確認できなくなってしまわないように、今回はしっかりと原則に立ち戻り、かつ大切な原則を確認することができたと思います。また、AIやビッグデータが急速に進歩する時代にあって、デジタルデータが付加価値の大きな源泉となっています。私がダボス会議で提唱した、信頼性の下に自由なデータ流通を確保するための新たなルールづくりを米国、中国、EUを始め、多くの国々の首脳らと共に、大阪トラックとしてスタートすることができました。現在のWTOは、グローバルなデジタル化に十分対応できていません。こうした中での今回の成果は、WTO改革に新風を吹き込むものとなりました。来月にも大阪トラックの最初の会合を開催します。来年には実質的な進展を得られるよう、スピード感を持って進めていきます。また、今回のG20では、海洋プラスチックごみ対策も大きなテーマとなりました。新興国、途上国を含む世界の主要国が、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを共有したことは、世界全体で海洋プラスチックごみ対策を進めるに当たって大きな意義があります。また、その実現に向けた具体的な実施枠組みにも合意できました。我が国は海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、引き続きリーダーシップを発揮をし、積極的に貢献をしてまいります。 ●広報 それでは、次は外国系、日本ではないメディアの皆様からの御質問をお受けいたしますので、挙手をお願いいたします。それでは、一番前列手前の女性の記者の方、マイクロホンまでお進みください。 ●記者 先ほど言及のあった大阪ブルー・オーシャン・ビジョンについてお伺いします。日本はテクノロジーおよび経験を提供すると言及されましたが、日本自身、プラスチック製品の巨大な消費国であり、欧州諸国に比しても、海洋プラスチックごみへの対処が後れをとっており、更に海洋プラスチックごみを発展途上国に輸出しています。総理御自身、国際社会に海洋プラスチックごみ問題への対処を呼びかける前に、日本の国内事情にどのように対処されるお考えでしょうか。 ●総理 大阪ブルー・オーシャン・ビジョンですが、海は世界共通の財産であります。海洋プラスチックごみによる汚染から私たちの美しい海を守るためには世界全体での取組、もちろん、日本も含む世界全体での取組が必要であります。新興国、途上国を含む世界の主要国から成るG20が大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを共有したことは、世界全体で海洋プラスチックごみ対策を進める上で大きな意義があると考えています。加えて、今回のG20では、その実現に向けた具体的な実施枠組みにも合意できました。各国が継続的に情報を共有、更新しながら対策を実施することを通じ、G20としての、更には世界全体での実効的な対策を着実に進めていきます。日本としては先般、海洋プラスチックごみゼロを実現するためのアクションプランを決定しました。重要なことは、いかにプラスチックごみの海洋流出を防ぐかであり、規制が唯一の方法ではありません。日本から大量の海洋プラスチックごみが海に出ているというのは、これは誤解であります。もちろん、プラスチック製品は日本はたくさんつくっておりますが、日本から大量のプラスチックごみが出ているのではなくて、漁具等、かなり一部に日本から出ているものは限られていると思います。適正な廃棄物管理、海洋ごみの回収、海で分解されるバイオプラスチックごみ、バイオプラスチックのイノベーションなど、あらゆる手段を尽くしていく考えであります。また、これまでの日本の経験と技術をフルに活用し、途上国、そして途上国の能力構築等の国際貢献にも取り組んでいきます。例えば廃棄物管理の人材を、世界で2025年までに1万人育成します。今回のG20大阪サミットでは、プラスチック汚染から私たちの美しい海を守るため、世界が一致して、大きな一歩を踏み出すことができたと思っています。我が国は、この問題の解決に向けて、引き続き、今回の議長国としてふさわしい貢献をしてまいります。 ●広報 それでは、再び日本のメディアの方からの御質問。では、2列目の女性の記者の方。 ●記者 日本テレビの菅原です。よろしくお願いいたします。総理はエネルギー安全保障の問題についても、G20各国で重要性について共有したいというふうにおっしゃっておられましたけれども、アメリカとイランの緊張の高まりについて、この期間を通じてどのような議論があったでしょうか。また、G20として、その緊張緩和に向けて何ができるとお考えか。また、日本としての役割というのを改めてどうお考えか、お聞かせください。 ●総理 今回のサミットにおいては、イラン情勢に関し、各国が強い関心を示していました。私も各国首脳との会談の中で、先日のイラン訪問の話を紹介し、各国からは、ホルムズ海峡付近における船舶への攻撃事案や、あるいは、イランによる米国の無人機撃墜事案など、地域の緊張が高まっていることを懸念する声が相次ぎました。中東における緊張感が高まる中で、各国が緊張緩和に向けた取組を続けているわけでございますが、先般も私自身がイランを訪問し、大統領、そしてハメネイ最高指導者と会談を行ったところでございます。私の訪問については、例えばフランスのマクロン大統領を始め、また、サウジアラビアの皇太子など、多くの方々から緊張緩和への努力についての強い支持があったわけでございまして、今後とも、国際社会と連携をしながら、この緊張緩和に向けて努力をしていきたい。そして、やはりこの地域の緊張緩和が世界の繁栄、平和に極めて重要であるということは、認識が一致しているわけでありまして、それぞれがそれぞれの役割を果たしていく。日本は伝統的にイランと友好関係があるわけでありますし、米国との同盟関係もあります。欧州との信頼関係もある中で、日本の役割を果たしていきたいと。そう簡単なことではもちろんありませんが、日本は日本の役割を果たしていきたいと、こう思っています。 ●広報 それでは、外国のメディアの方も含めまして、もう1問、おとりしたいと思います。それでは、2列目の眼鏡をかけた男性の方、お願いします。 ●記者 今回のG20サミットが成功裏に開催されたことに祝意を表します。来年の議長国はサウジアラビアですが、議長国のサウジアラビアに期待することは何ですか。様々な課題があるかと思いますが、お考えをお聞かせください。さらには、サウジアラビアの指導者に対し、今回の教訓等も踏まえ、助言があればお聞かせください。 ●総理 日本は今回、議長国として、G20において意見の違いよりも共通点を見いだすことができるように努力を重ねてまいりました。特に、例えば今回も、気候変動の問題については意見の大きな違いがありました。しかし、違いがあるわけではありますが、より良い地球を次の世代に残していこうという基本的な認識においては、どこも、もちろん米国もEUも日本も途上国も同じ認識を持っている。そして、実際に結果を出していくことが大切です。まず、この共通認識の下に、対立ではなくて、G20でしっかりと共通のメッセージを発しなければ、これは本当に私たちは責任を果たしているとは言えないという危機感を共有することができました。最後の局面において、トランプ大統領を始め米国にも、あるいはマクロン大統領やメルケル首相を始めEU側にも、また、中国やブラジルや多くの国々も大変な協力を頂きました。首脳間でのやりとりも行いながら、最後は一致点を見いだすことができた。つまり、努力をしていけば、私たちは団結することができる。より良い世界をつくっていくために、私たちは団結することができる。このことを、次の議長国であるサウジアラビアにも引き継いでいただきたいと、こう思っています。大阪首脳宣言を採択する上において、大変な困難もありましたが、多くの国の協力によって乗り越えることができたということであります。それは、やはりG20の国々は、経済においても大きな力を持っておりますが、それは同時に大きな責任を担っているということであり、この責任をかみしめながら最後の瞬間まで努力を重ねるということではないかと思います。ぜひ、サウジアラビアにも強いリーダーシップを発揮していただきたいと思いますし、大阪首脳宣言を土台として議論を発展させていただきたいと思います。日本も11月末まで議長国として、また、その後も来年のリヤド・サミットの成功に向けて全面的に協力をしていきます。また、サウジアラビアはサウジ・ビジョン2030を打ち出し、これまでにない改革に精力的に取り組んでおられると承知をしておりますが、G20の議長国は、世界が直面する様々な課題に対処するためのメッセージを発出する上で大きな役割を果たします。リヤド・サミットの成功を心からお祈りしております。 ●広報 それでは、予定いたしました時間を超過いたしましたので、以上をもちまして、安倍総理大臣の議長国記者会見を終了させていただきます。プレスの皆様には、大変な御協力を頂きまして、ありがとうございました。総理が退場されるまで、そのままでしばらくお待ちいただきたいと思います。 ●総理 ありがとうございました。 |
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●「大阪宣言」の要点
G20大阪サミットで採択された「大阪宣言」。調整が難航していた貿易・投資について「自由・公平・無差別で透明性があり安定した貿易と投資環境を実現するよう努力する」としたうえで、WTO・世界貿易機関の改革への支持を盛り込む一方、「保護主義と闘う」という文言は去年に続いて盛り込まれませんでした。貿易だけでなく、データの流通や海洋プラスチックごみの削減でも、具体論に入ると各国の思惑は必ずしも一致していません。日本を含むG20各国は、今回の首脳宣言をいわば「絵に描いた餅」にしないために、実効性ある取り組みが求められています。 ●世界経済の現状 「世界経済の成長は足元で安定化の兆しを示しており、ことし後半から来年に向けて緩やかに上向くとみられている。しかしながら、成長率は依然として低く、リスクは依然として下方に傾いている」として、世界経済を下押しする圧力が増しているという見方を示しています。 そのうえで、「何より、貿易と地政学をめぐる緊張が増大してきた。われわれはこれらのリスクに対処し続けるとともに、さらなる行動をとる用意がある」としています。 さらに「強固で持続可能性があり、均衡のとれた成長を達成するため、すべての政策的な手段を使い対話と行動をもって下方リスクに対応するコミットメントを再確認する」とし、G20各国が結束してリスクに対処し世界経済を支えていく姿勢を強調しています。 ●貿易・投資 米中の貿易摩擦を背景に調整が難航していた貿易・投資について、「国際的な貿易と投資は、成長・生産性・イノベーション・雇用創出、開発の重要なけん引力だ」としたうえで、「自由・公平・無差別で、透明性があり、予測可能で、安定した貿易と投資環境を実現し、市場を開放的に保つよう努力する」と原則を明記しています。一方、「保護主義と闘う」という文言は、去年に続いて盛り込まれませんでした。 ●WTO=世界貿易機関改革 「必要な改革への支持を再確認しほかの加盟国と建設的に取り組む」としたうえで、貿易をめぐる紛争解決の機能についても加盟国の交渉に基づいた見直しが必要だと指摘しています。 ●地球環境問題 海洋汚染の原因となっているプラスチックごみについては、「すべての国や関係者の協力のもとで、国内的・国際的に対処する必要があり、海洋プラスチックごみなどの流出の抑制や大幅な削減のために適切な行動を速やかにとる決意だ」として、新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」への賛同を、G20以外の国にも呼びかけるとしています。 また国際的な枠組み「パリ協定」について、「2020年までに、更なる世界的な努力が必要であることを考慮する。パリ協定に従って、緩和と適応の双方に関して開発途上国を支援するための財源を提供することの重要性を強調する」としています。 また、アメリカのパリ協定から脱退するとした決定を再確認し、「アメリカは引き続き、エネルギー関連の二酸化炭素排出量を減らし、よりクリーンな環境を提供し続けるため、先進技術の開発と配備にコミットする」としています。 ●デジタル経済 「データの自由な流通はプライバシーやデータ保護、知的財産権、セキュリティーに関する一定の課題を提起している」とし、現状のデータのやり取りではプライバシーや知的財産権などの面で課題があると指摘しています。 そのうえで、データの自由な流通を促進するためには、「国内的および、国際的な法的枠組みの双方が尊重されることが必要である」として、こうしたルールを作る新しい枠組み「大阪トラック」の交渉を後押ししています。 このほか、国境をこえたデータなどのやり取りで利益を上げる巨大IT企業への新たな課税ルールについても触れています。 世界のおよそ130か国が国際的な枠組みを作り、新たな課税のルールについて来年・2020年中に具体案を取りまとめる予定で、「世界的に公正かつ持続可能で、現代的な国際税制のための協力を継続し、国際的な協力を歓迎する」とし国際的なルール作りを後押ししています。 |
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●G20大阪サミット首脳宣言のポイント 6/29
20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は29日、自由で無差別な貿易環境の実現に向けた首脳宣言を採択し、閉幕した。首脳宣言の要旨は以下の通り。 ・世界経済は足元で安定化の兆しを示し、本年後半及び2020年に向けて緩やかに上向く見通し。 ・成長は低位であり続けており、リスクは依然として下方に傾いている。貿易と地政を巡る緊張は増大してきた。 ・これらのリスクに対処し続けるとともに、さらなる行動をとる用意がある。 ・強固で持続性があり均衡のとれた包摂的な成長を実現するため、下方リスクから守るために全ての政策手段を用いるとのコミットメントを再確認する。 ・必要に応じて財政バッファーを再構築し、財政政策は機動的に実施し、成長に配慮したものとすべきである。 ・金融政策は引き続き、経済活動を支え、中央銀行のマンデートと整合的な形で物価の安定を確保する。 ・グローバルインバランス(経常収支不均衡)は世界金融危機の後、新興国及び開発途上国において減少しており、次第に先進国に集中してきた。 ・対外収支を評価するに当たっては、サービス貿易・所得収支を含む経常収支の全ての構成要素に着目する必要性に留意する。 ・高齢化を含む人口動態の変化は全てのG20構成国に対して課題と機会をもたらし、こうした変化は財政・金融政策、金融セクター政策、労働市場政策及びその他の構造政策にわたる政策行動を必要とする。 ・自由、公平、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易及び投資環境を実現し、市場を開放的に保つよう努力する。 ・国際的な貿易及び投資は、成長、生産性、イノベーション、雇用創出及び開発の重要なけん引力である。 ・WTO加盟国によって交渉されたルールに整合的な紛争解決制度の機能に関して、行動が必要であることに合意する。 ・WTO協定と整合的な二国間及び地域の自由貿易協定の補完的役割を認識する。 ・イノベーションは経済成長の重要な原動力であり,持続可能な開発目標への前進及び包摂性向上にも寄与し得る。 ・デジタル化及び新興技術の適用の促進を通じ、包摂的で持続可能な、安全で、信頼できる革新的な社会の実現に向けて取り組む。 ・データの潜在力を最大限活用するため、国際的な政策討議を促進することを目指す。 ・インフラは経済の成長と繁栄の原動力である。共通の戦略的方向性と高い志として「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を承認する。 ・クォータを基礎とし、十分な資金基盤を有する国際通貨基金(IMF)を中心としたグローバル金融セーフティネットをさらに強化するとのコミットメントを再確認する。 ・第15次クォータ一般見直しを遅くとも2019年の年次総会までに完了することに引き続きコミットしており、最優先事項として迅速に進めることIMFに求める。 ・ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントは、持続可能で包摂的な経済成長に不可欠である。 ・紛争の予防及び解決において女性を認識することにコミットする。 ・エネルギーミックスにおけるあらゆるエネルギー源及び技術の役割、よりクリーンなエネルギーシステムを達成するために国によって異なる道筋が存在することを認識する。 ・広範囲のエネルギー関連問題における国際協力の重要性を認識する。 ・2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す。 |
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●G20大阪サミットの開催結果に対する三村会頭コメント 6/29
このたびのG20大阪サミットは、わが国が議長国として開催する初の会合であり、まずもって議長としてリーダーシップを発揮し、首脳宣言をとりまとめた安倍総理のご尽力に敬意を表したい。 今回のサミットでは、渦中の米中貿易戦争に端を発した保護主義化の流れに対し、G20がどこまで結束できるか、米中首脳会談他、二国間外交の行方を含めて注目された。首脳宣言には「反保護主義」といった強い表現こそ盛り込まれなかったが、自由で公正かつ無差別な貿易体制の推進という基本原則で一致できたことは評価したい。 あわせて、米中が二国間会談で貿易交渉の再開に合意し、新たな追加関税の発動が当面見送られることになったことを歓迎したい。両国の協議が進み、早期に何らかの妥協点が見いだされることを期待したい。 また、今回のサミットでは世界の持続可能で包摂的な成長の拡大に向けて、多くの分野で議論の進展が見られたと思う。とりわけ世界で加速化するデジタル経済への対応では、わが国が主導するデータ流通の国際的なルールづくりにおいて「大阪トラック」の創設が採択されたことを評価したい。また、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、その重要性が認識され、2050年までに新たな汚染をゼロにする地球規模での具体的取り組みの枠組みに合意できたのも大きな前進である。今後実効性のある取組が進展していくことを期待する。 |
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評価 |
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●安倍首相は「みんなのお気に入り」=調停役として評価−G20 6/28
独紙ツァイト(電子版)は27日、20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に際して安倍晋三首相についての論評を掲載し、「国際政治の場で、みんなのお気に入りのようになっている」として、対立が深まる大国間の調停役に適任と評価した。 論評は、「現在、各大国の調停役を担う首脳が必要とされるのなら、それはおそらく安倍(首相)だ」と指摘し、安倍氏はナショナリストとされるが、同時に多国間主義者でもあると解説。具体例として、米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)の妥結にこぎ着けたことや、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)締結を挙げた。 このほか、トランプ米大統領、習近平中国国家主席の双方との関係を構築している点に言及。両首脳がG20で会談するのを決めたことで「安倍氏は一定の成果を挙げた」と強調した。 |
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●安倍外交、海外メディアの評価は? 6/29
大阪市で28、29両日開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)には、海外から大勢のメディア関係者が訪れた。議長国・日本の安倍晋三首相の外交手腕は外国人記者たちの目にどう映り、関心を寄せる外交テーマは何か。さらに「大阪の食」の印象は――。メイン会場のインテックス大阪(同市住之江区)で聞いた。 6年半の安倍政権が実績として誇るのが外交だが、評価は割れた。 デンマークのテレビリポーター、スヴェニング・ダルガードさん(73)は、安倍首相が今月中旬、米国と対立するイランを訪問したことに触れ、「情勢に何の変化ももたらさなかった。トランプ米大統領は(首相訪問後も)イランに対して戦争をちらつかせるような言動を続けている」と指摘。ロシアのタス通信社の記者で東京支局長のヴァシリー・ゴロヴニンさん(64)は「北方領土問題や北朝鮮による日本人拉致問題などで、ほとんど成果は上げられていない」と語った。 韓国紙・東亜日報で東京支局長を務める朴炯準(パクヒョンジュン)さん(45)は多くの国々を訪問してきた実績を認めつつ、今回のG20サミットで韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領との首脳会談が予定されていない点に「ホスト国としてどうか。国際社会の評価を下げる」と疑問を示した。 ログイン前の続き一方、インドの政府系メディアのラジャサバTVのアキレシュ・スマンさん(52)は「安倍首相は世界情勢にコミットする真の政治家だ」と述べ、首相のイラン訪問を評価。米国の政治ニュースサイト「ポリティコ」の記者のダグ・パーマ―さん(62)は「相手を脅しながら、予測できない交渉をするトランプ氏とうまくやっている数少ない人物」と話した。 G20サミットで海外メディアが注目しているのが、二国間会談が予定されている米中両首脳による貿易摩擦への向き合い方だ。米中対立の影響は世界中に及ぶため、不安の声が聞かれた。 チリのADNラジオ局の記者ガブリエル・アレグリアさん(29)は、チリの主要産業である銅の輸出に触れ、「経済戦争に世界中が巻き込まれ、銅の価格にも影響がある。今回のサミットで(激しい対立は)終わらせなければならない」と強調。エジプト・アハラム紙の記者のシャディ・ザラタさん(37)は「今後も米中の関係は悪化していくと思う。中国製品があふれるエジプトにも影響があるかもしれない」と心配した。 また今回、「ホスト都市」となった大阪府と大阪市。力を入れたのが食文化のアピールだった。 多くの外国人記者が「おいしかった」と答えたのが「たこ焼き」。会場内で振る舞われたことも大きかったようだ。インドのインディアン・エクスプレス紙記者のシュブハジット・ロイさん(41)は「たこ焼きも良かったが、牛肉やカキを食べてどれもおいしかった」と満足そう。中国のネットメディア「澎湃新聞」記者の廖婧雯(リョウセイブン)さんは仕事が忙しく、会場外での食事はできていないという。「和食の中でも、特におすしが好きなので食べたいです」 サウジアラビア政府の報道担当のノーラ・アルカナンさん(26)は大阪・難波に宿泊。「24時間眠らない街で活気にあふれていた」と驚いた様子。「日本の伝統文化も体験したい」と言い、京都観光をしてから帰国する予定という。 |
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●安倍首相のリーダーシップは? 一定の評価 課題も... 6/29
今回のG20(20カ国・地域)サミットでは、各国の複雑な利害がからむ中、安倍首相はリーダーシップを発揮できたのか。 政府関係者は、安倍首相が、「対立ではなく、共通点を見いだす」と繰り返し強調したことで、「各国首脳の耳にも届いた」と、一定の評価をしている。 貿易問題への対応が注目された米中首脳会談で、両首脳は「対話を通じた問題解決の重要性を訴え続けたことが功を奏した」と語る政府関係者もいる。 一方、課題も残された。 採択された首脳宣言では、貿易問題で、自由や公正といった原則をあらためて確認したものの、保護主義的な経済政策に今後、どう向きあうのかという方針は示されなかった。 安倍首相はこのあと、日ロ首脳会談に臨む。 平和条約交渉が停滞する中、トップ会談で進展の糸口をつかめるかが焦点になる。 |
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●「反保護主義」盛らず「自由貿易の原則確認」 G20閉幕 6/29
日本が初めて議長国を務めた主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は29日、「自由、公平、無差別で安定した貿易の実現」を目指すとする首脳宣言を採択し、閉幕した。米中貿易戦争などで世界経済の下振れリスクが高まっていることを受けて、自由貿易の重要性を強調した。環境問題では、G20各国が2050年までにプラスチックごみによる新たな海洋汚染ゼロを目指すとする共通目標「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を盛り込んだ。 首脳宣言は世界経済の現状について、「成長は低位で、リスクは依然として下方に傾いている」と分析。「貿易と地政を巡る緊張は増大してきた」として、リスクに対応するために「更なる行動をとる用意がある」との姿勢を示した。 貿易問題を巡っては、「自由、公平、無差別で透明性があり、予測可能な安定した貿易及び投資環境を実現するよう努力する」と明記。世界貿易機関(WTO)改革を後押しする方針を確認した。だが、米国の反発が予想される「保護主義への対抗」などの文言は、昨年のサミットに続き宣言に盛り込むことを見送った。 議長を務めた安倍晋三首相はサミット閉幕後の記者会見で「自由貿易の基本的原則を明確に確認できた。下振れリスクに注意しながら、G20は力強い経済成長をけん引する決意で一致した」と意義を強調した。 環境面では、海洋プラごみや砕けて5ミリ以下になったマイクロプラスチックの対策の重要性を明記し、各国が海洋流出の防止策や削減策を速やかに実施することを確認した。各国の対策や海洋流出量などを共有する枠組みを進めるとした。安倍首相はプラごみ問題に対するビジョンを各国が共有したことについて「問題解決に向けた大きな一歩。世界の取り組みに日本らしい貢献をしていく」と述べた。 一方、地球温暖化問題では、来年始まる国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱を表明している米国以外の19カ国・地域が、協定の完全実施の約束を再確認し、来年までに各国が温室効果ガス削減目標の更新を目指すことで合意した。 |
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トランプ | |
●G20閉幕、米中決裂回避も解消みえず トランプ氏は日米同盟に言及 6/29
20カ国・地域(G20)首脳会議は29日、自由で無差別な貿易環境の実現に向けた首脳宣言を採択し、閉幕した。懸案だった米中首脳会談の決裂も回避され、貿易協議を今後再開する。もっとも制裁関税そのものは残ったままで、解消の道筋は見えない。トランプ米大統領は日米同盟の見直しにも言及しており、参院選を控える中で安倍政権は新たな課題を突き付けられたかたちだ。 首脳宣言でG20は、世界経済の現状について「安定化の兆しがあり、年後半から2020年にかけ緩やかに回復する」との見通しをあらためて示した。 一方、米中貿易摩擦やイラン情勢を念頭とする貿易・地政学的リスクに対処するため、「さらなる行動をとる用意がある」と表明した。貿易分野では「自由で公平、無差別、予測可能で安定した貿易・投資環境を実現するため努力し、市場が開かれた状態であることを維持する」との認識を共有し、世界貿易機関(WTO)改革を巡って「建設的に取り組む」ことも併せて明記した。 安倍晋三首相は、閉幕後の記者会見で「世界は結束できると信じて議長国を務めた。自由貿易の基本原則をG20で明確に確認できた」と述べた。 懸案だった米中貿易協議の決裂は回避された。G20宣言に先立つ米中首脳会談で、両国は貿易協議を再開することで合意し、米国がスマートフォンやパソコンなども含めた3250億ドル相当を新たに課税対象にする制裁関税の発動は先送りする。 トランプ大統領は「われわれは軌道に戻った」と述べ、中国との交渉を継続するとの認識を示した。新華社通信によると、中国の習近平国家主席は会談で、中国企業を公平に扱うことを望むと表明した。 G20閉幕後の会見では、トランプ大統領が日米同盟の見直しに言及し、「破棄することはまったく考えていない。不平等な合意だと言っている」と語った。「条約は見直す必要があると安倍首相に伝えた」ことも明らかにした。 日米同盟のベースとなる日米安保条約に米大統領が疑念を示すのはきわめて異例で、トランプ大統領の発言は、茂木敏充経済再生相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表との間で協議を重ねている貿易交渉に影響する可能性もある。 <IMF専務理事、貿易障壁引き下げを訴え> 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は29日、サミット閉幕にあたり声明を発表し、関税などの貿易障壁引き下げを訴えた。 専務理事は通商摩擦により投資や貿易が鈍化するなど世界経済が困難な局面にあるとし、「米中の協議再開を歓迎する一方、すでに発動された関税は世界経済を抑制しており、未解決の問題は今後の大きな不透明感につながっている」と指摘した。 今後の世界経済についてIMFは一定の成長の強まりを予測しているが、見通しへのリスクは引き続き深刻とし、各国中銀は今後の指標をみながら政策調整する必要があるとの認識も併せて示した。 |
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●トランプ大統領、Huaweiと米企業の取り引き容認へ〜G20の記者会見で 6/29
ドナルド・トランプ米大統領は29日、Huaweiに対する禁輸措置を解除すると発表しました。G20大阪サミット閉幕後の記者会見で明らかにしました。 日本経済新聞によると、ドナルド・トランプ米大統領は「アメリカ製品をこれからも売ることを認めていきたい」と述べ、米企業がHuaweiに対して自社製品を販売することを容認する意向を示しました。 Huaweiとその関連企業は5月、米政府の輸出規制リストに追加されたことで米企業との取り引きができなくなり、事実上の海外市場からの締め出しを受けていました。これによって、Android OSを提供するGoogleや、チップのアーキテクチャを提供するARMといった企業が相次いでHuaweiとの取り引き停止を宣言しました。 しかし、世界スマートフォン市場で2位につけるHuaweiに部品が供給できなくなることは、サプライヤーにとっても大きな痛手です。こうした事情を汲み取ったのか、トランプ大統領は「大量の米国製品がHuaweiのさまざまな製品に使われており、取引を続けてもかまわないと思っている」とし、安全保障上の問題がなければ、販売を認めていく方針を採っていくとしました。 また、中国の習近平国家主席との会談でも「しばらくの期間は追加関税は行わない」と述べ、新たな分野で関税を上乗せする考えは当分ないとの考えを明らかにしました。これによって、iPhoneに課される可能性のあった25%の関税はしばらく見送られることになります。 先日、IntelとMicronが輸出規制をかいくぐってHuaweiへの製品供給を再開したのに続き、AppleもMac Proの組み立て工場を米国から中国へ移転していたことが判明するなど、トランプ大統領の意向とは相反するような行動が複数の米企業に見られましたが、大統領のこうした方針転換を事前に察知していた可能性があります。 |
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裏読み | |
●トランプが「安倍に“日米安保条約見直し”を伝えた」 6/29 「安倍は理解を示した」と衝撃発言! 安倍首相がまた、不都合な事実をトランプ大統領にバラされてしまった。きょう、G20閉幕後の会見でトランプ大統領が“日米安保条約を破棄するつもりなのか”と問われ、「破棄することはまったく考えていない」としたものの、「不平等な合意だ」と持論をぶった後、「条約は見直す必要があると安倍首相に伝えた」と述べたのだ(ロイター通信)。 しかも、朝日新聞によると、〈トランプ氏は、安倍首相はこうした考えを理解しているとの認識も示した〉という。 トランプの「不公平」主張のインチキについては後述するとして、これは安倍政権のこの間の説明がすべて嘘だったということではないか。 周知のように、トランプ大統領が日米安保条約を不公平だと主張していることは、すでにG20前から報道されていた。 6月24日、米通信社・ブルームバーグが、「トランプ氏が日本との安全保障条約を破棄する可能性についての考えを側近に漏らしていたことが分かった」と報道。また、26日には、トランプ大統領自身が米テレビ局・FOXビジネスネットワークのインタビューのなかで、日米安保条約についてこう述べていた。 「日本が攻撃されれば、米国は第3次世界大戦を戦う。我々は命と財産をかけて戦い、彼らを守る」 「でも、我々が攻撃されても、日本は我々を助ける必要はない。彼らができるのは攻撃をソニーのテレビで見ることだ」(朝日新聞デジタル27日付) ところが、これに対して、安倍政権は一貫して完全否定していた。複数の外務省幹部は「ありえない」と一斉に否定し、菅義偉官房長官も25日の会見で「報道にあるような話はまったくない。米大統領府からも政府の立場と相いれないと確認を受けた」と、事実関係そのものを否定。 トランプの発言後も、やはり菅官房長官が27日、「(日米安保条約は)片務的ではなく、お互いにバランスがとれている条約だと思う」としたうえで、「(日米の)政府間では日米安保条約の見直しといった話、これは一切なく、米大統領府との間でもその旨は確認している」とコメントするなど、問題をなかったことにしつづけた。 さらに、昨日午前に開かれた安倍首相とトランプ大統領の首脳会談でも、メディアは一斉に「日米安保条約見直しは話題に上らなかった」「日米安保の話はなかった」と報じた。これは、会談に同席した西村康稔官房副長官が記者団に「話はなかった」と明言し、「日ごろから安保条約を前提とする日米同盟がアジア太平洋の平和と安定の基礎だと確認している。あえてそういうことをする必要はない」と語ったためだった。 しかも、この会談では、トランプの“日米安保発言”隠しの報道統制まで行っていた。会談の冒頭は当初、公開とされていたのだが、記者がトランプに質問しようとすると、日本の外務省職員がそれを「退室願います。サンキュー」と遮ったのだ。トランプは答えようとしたが、安倍首相は手を振り、記者に退室を促したという(毎日新聞デジタル版6月28日付) ようするに、安倍首相と安倍政権はトランプから「安保見直し」を伝えられていたにもかかわらず、こんな重大な事実を国民に知らせず、なかったことにしようとしていたのである。 まあ、たしかに、安倍政権がこの事実をひた隠しにしたくなる理由はわからなくはない。なにしろ、これまで安倍首相は歴代の総理大臣が誰も見せたことのないくらい露骨な“トランプのポチぶり”を発揮してきたのだ。 トランプに言われるがままに、イージス・アショアやステルス戦闘機を大量購入、爆買いによって、アメリカからの有償軍事援助(FMS)による兵器購入契約の額は安倍政権下でどんどんと膨らみつづけ、2018年度は従来の5倍もの6917億円にまで増加。昨年末に閣議決定された「中期防衛力整備計画」では、2019から2023年度に調達する防衛装備品などの総額は、なんと約27兆4700億円程度と過去最高水準に達した。 ほかにも、2017年には、公的年金数兆円をアメリカのインフラ事業に投資する方針が報じられた。日本企業が400億ドル(約4兆4600億円)を米国の自動車工場に投資することも表明した。 さらには、トランプのご機嫌取りのために、安倍首相はトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦までした。 ところが、安倍首相はこれだけトランプに尻尾を振り、あらゆる要求を飲んできたにもかかわらず、さらに「日米安保見直し」という、これまで日本の総理大臣が経験したことのないような理不尽な要求を突きつけられてしまったのである。 この事態は“安倍外交”の完全失敗を意味するもので、“不都合な真実”を次々なかったことにしてきた安倍政権としては、到底、認めるわけにはいかなかったのだろう。 しかし、日米安保条約の見直しを要求されるというのは、日本の平和や安全保障を根幹から揺るがす問題だ。こんな重大な事実を国民に隠していていいはずがない。 しかも、前述したように朝日の報道では、トランプは今日の会見で「条約見直しを伝えた」ことだけでなく、〈安倍首相はこうした考えを理解している〉との認識まで示しているというのだ。 日米安保条約と付随する日米地位協定は、米国最大の海外戦略拠点を日本に提供させている上、基地負担や米軍の特権的地位を押し付ける、むしろ日本側にとって著しく不公平なものだ。しかも、日本が攻撃されたとき、米国が本当に日本を守ろうとするかどうかについては、多くの国際政治学者や軍事の専門家が疑問を投げかけている。 いずれにしても、ここまで理不尽な要求を突きつけられたら、「だったら、こちらが日米安保条約や日米地位協定の見直しを要求する!」と、むしろ日本に平等な見直しを突きつけ返すというのが、本来の外交交渉というものだろう。ところが、トランプ大統領に安倍首相はこんな無茶苦茶な要求に唯々諾々と「理解を示した」というのだ。 実際、政府関係者の間では、安倍首相がトランプ大統領に「日米安保見直し」を突きつけつけられて、さらなる妥協をしたのではないかという見方が有力になっている。 「安倍総理が今回の会談で、農産物の輸入関税を米国の主張通り大幅引き下げを約束した、あるいは、先月の首脳会談で約束したものよりもさらに大量の武器購入を提案したのではないかという話が流れています。西村康稔官房副長官は日米安保条約見直しだけでなく、防衛装備品購入についても『議論はなかった』と言っていましたが、額面通りには受け止められません。安倍首相は先月の首脳会談でも、参院選後の大幅関税引き下げを約束したことをトランプにバラされましたが、まったく同じパターンなのかもしれない」(全国紙政治部記者) さらに、安倍首相が参院選後、トランプ大統領の要求に応じて、本当に「日米安保条約のアメリカの見直し」に踏み込む可能性もある。 「安倍首相は、いまは参院選を意識して、日米安保見直しの話題をひた隠しにしていますが、参院選後は姿勢を変えるでしょう。いまの情勢では、改憲勢力が3分の2を占めるのは難しくなっていますから、米国の日米安保条約の見直し要求を大義名分にして、自衛隊が海外で武力行使できるよう解釈改憲をさらに進めていく可能性が非常に高い」(政治部デスク) トランプ大統領は24日のTwitterでも、ホルムズ海峡のタンカーについて〈中国は91%、日本は62%、ほかの国も同じようなものだが、あの海峡から原油を運んでいる。なぜ、われわれアメリカがそれらの国のために航路を無償で(何年にもわたって)守っているのか。そうした国々はみな、危険な旅をしている自国の船を自国で守るべきだ〉(編集部訳)と投稿している。 日本政府は、岩屋毅防衛相が「現時点でホルムズ海峡付近に部隊を派遣することは考えていない」(25日会見)と述べるなど、いまのところ否定してはいるが、参院選後にさっそく、自衛隊がホルムズ海峡に派遣されるかもしれない。 わたしたちが警戒しなければならないのは、トランプの“ディール”発言よりも、安倍首相の国民に対する裏切りのほうなのである。 |
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●大阪G20記念撮影 各国首脳の“ガン無視”に安倍議長オロオロ 6/29
世界中の孤独を独り占めしたような光景だった。28日大阪G20サミットの開幕時、安倍首相は各国首脳を1人ずつ出迎えた後、集合写真の撮影までの間、ほとんど誰にも相手にされなかったのだ。 議長の安倍首相はひな壇中央に陣取ったが、バラバラに集まった各国首脳は誰も話し掛けない。並んで現れたトランプ、プーチン両大統領は会話に夢中で安倍首相など眼中になし。安倍首相は習近平国家主席とトランプとの握手をボーッと見つめるだけ。 アチコチで談笑が始まる中、安倍首相はその輪に加われず、愛想笑いを浮かべ、周囲をオロオロと見渡すのみ。撮影が終わると、居心地の悪い空間から逃げ出すように我先に次の会場へ向かった。 「国際会議の場では安倍総理と話そうとする各国首脳が列をつくる」――。昨年の臨時国会で稲田朋美元防衛相はそう言ったが、いくら出迎え時にあいさつを交わしたとはいえ、各国首脳にガン無視される状況は稲田氏のヨイショとは程遠い。 同じ光景は昨年12月、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスG20でも見られた。各国首脳夫妻の記念撮影時、安倍首相と昭恵夫人には誰ひとり近寄らない。語学に自信がないのか、自ら話し掛けもせず最後までポツン。その様子は今もユーチューブで公開されている。 稲田氏は安倍政権の外交成果により、「世界における日本のプレゼンスは向上した」と言ってのけたが、笑止千万。日本の首脳がシカトされる中、大阪G20で「プレゼンス」向上の手段は物量作戦頼みだ。 「プレスを含め、出席者全員に日本の扇子や箸を無料配布。ビュッフェの入り口では着物姿の複数の女性が出迎え、席までエスコート。豪華メニューは朝・昼・晩と変わり、大阪名物のたこ焼きや串カツも食べ放題。世界では珍しい升も持ち帰り自由で、日替わりで常時150種類が揃う日本酒、国産ウイスキーとワインも飲み放題。畳敷きの部屋で芸者遊びを楽しめるブースもあります」(現地で取材中の記者) 日本文化が世界に誤解されなければいいが……。 |
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●「自由貿易の促進」消えたG20首脳宣言 協調の難しさ 6/30
29日に閉幕した大阪市での主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の首脳宣言は、米中貿易摩擦や気候変動での米国の孤立などを受け、各国協調の難しさが随所ににじむ内容となった。 米中貿易摩擦が激化する中、貿易については「自由、公平、無差別な貿易及び投資環境を実現するよう努力する」との表現を盛り込んだ。中国が求める「無差別」、米国が求める「公平」がいずれも入り、各国への配慮をにじませた。政府関係者は米国を念頭に「この表現ですら、反対する国があった」と話す。 保護主義的な動きを強める米国の反対で、昨年初めて削られて注目を集めた「反保護主義」への言及は、対立を避けるために今年も見送られた。さらに、朝日新聞が入手した宣言の原案段階で序文にあった「自由貿易の促進」との言葉も、最終の宣言からは抜け落ちていた。米国などの反対があった可能性がある。 世界貿易機関(WTO)についても多くを割いた。日米欧が問題視する紛争解決制度の改革について、「行動が必要であることに合意する」。電子商取引のルール作りの交渉についても重要性の確認を盛り込んだ。米国などがWTOに失望する状態が続けば、貿易問題の解決がいっそう困難になるとの危機感がある。 世界経済の認識については「成長は低位であり続けており、リスクは依然として下方に傾いている」と警告。「何よりも貿易と地政(学)をめぐる緊張は増大してきた。これらのリスクに対処し続けるとともに、さらなる行動をとる用意がある」とアピールした。 ●パリ協定 「米国と米国以外」、立場鮮明に 首脳宣言づくりで「最後の最後まで紛糾した」(交渉筋)のは環境分野での地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の扱いだった。宣言では協定離脱を表明している米国と、それ以外の19の参加メンバーの姿勢の違いが鮮明になった。 昨年のアルゼンチンでのG20サミットの首脳宣言では、米国の離脱表明を明記する形で、ほかの国・地域とわけた。今回日本政府は米国を孤立させず、全参加メンバーが合意できる内容を模索した。 だが前回宣言からの「後退は受け入れられない」などと欧州勢が反発。仏中両外相と国連事務総長の3者で、気候変動に取り組む緊急性を訴える共同声明も出した。 今回の首脳宣言は、米国以外のメンバーについては「パリ協定は不可逆で、完全実施の約束を再確認する」と前回の表現をほぼ踏襲した。一方、米国が離脱を決めた理由を「パリ協定は自国の労働者と納税者に不利だからだ」と記述。「米国は(温室効果ガスの)排出量削減の世界のリーダーだ」とも記し、米国とほかのメンバーとの立場の隔たりが際立った。 安倍晋三首相は閉幕後の会見で「意見の違いよりも共通点を見いだすことができるように努力を重ねた」と述べた一方で「意見の大きな違いがあった」と認めた。 「米国の態度は残念というしかない。それ以上に私ができることは何もない」。仏マクロン大統領は会見で失望を隠さなかった。英国のメイ首相は「19カ国が集まってパリ協定の不可逆性と我々の関与を再確認できた」と一定の評価をした。(田中誠士、桜井林太郎、疋田多揚) ●明暗 「海洋プラ、女子教育」と「データ流通」 焦点の一つだった海洋プラスチックごみの対策については、ごみの適正処理を進めて2050年までに新たな汚染をゼロにすることをめざすなどとした「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有すると明記。付属文書として、具体策の実施枠組みをまとめた。 また、質の高い初等・中等教育の提供など「女児・女性教育及び訓練への支援を継続する」ことも盛り込まれた。首相は閉幕後の会見で、「全ての女の子が少なくとも12年間、質の高い教育にアクセスできる世界をめざしていく」と強調した。 デジタルデータ流通のルール作りについては、28日に米国や中国、欧州連合(EU)も参加して議論の枠組み「大阪トラック」の開始を宣言するところまでこぎ着けた。ただ、インドや南アフリカが宣言文に署名しなかったため、首脳宣言には入らなかった。(小野甲太郎) ●視点「避け続ける対立、失われる求心力」 世界のリーダーたちが大阪に集った2日間。国際社会へ最も大きく報じられたのは、G20サミット自体ではなかった。米国のトランプ大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席による首脳会談だ。 両大国の貿易摩擦が激しくなれば、世界経済に急ブレーキがかかる。けれど、両氏を首脳らが足並みをそろえて説得しようとした場面は見られなかった。議長国の日本が選んだのも対立には深入りせず、一致できる所に焦点を当てる手法だった。 こうして積み上げた成果には、行動の「計画」や長期の「ビジョン」がずらりと並ぶ。いま合意できる範囲を絞りこんだ日本の手腕は精緻(せいち)だったが、具体化に向けて待ち受ける対立まで避け続ければ、成果は絵に描いた餅で終わる。 G20が「決める力」を失う中、ある財務官経験者は「二国間会談などの機会を提供する意味はまだある」と話す。ただ、現実にはG20前、トランプ氏が訪日するかどうかを日本側が気をもむ局面まであった。 サミット開始のきっかけとなったリーマン・ショックから10年がすぎた。あの年、手を組んで危機に立ち向かった首脳らが今、お互いの反目に立ちすくむ。世界経済に次の暗雲が近づく中、G20の前途はかつてなく見えなくなっている。(斎藤徳彦) ●G20首脳宣言のポイント 【貿易と投資】「自由、公平、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易を実現」と明記。「反保護主義」は断念 【世界貿易機関(WTO)】機能改善に必要な改革への支持を再確認 【海洋プラスチックごみ対策】2050年までに新たな汚染ゼロをめざす「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有 【気候変動】パリ協定をめぐり、米国とそれ以外のメンバーとの意見の相違が埋まらず、両者の立場を併記 【データ流通】「信頼性のある自由なデータ流通」の文言を明記。ルール作りの枠組み議論「大阪トラック」の開始は有志国のみの合意で、宣言の外枠に 【デジタル課税】巨大IT企業への課税方法を20年までに合意する方針を承認 【エネルギー】安全な流通が懸念される最近の出来事を考慮し、エネルギー安全保障の重要性を認識 |
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●G20大阪サミット閉幕 米中摩擦の緩和に至らず 6/30
大阪を舞台に日本初の主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が開かれ、2日間の日程を終えた。世界経済や地球環境を巡る多くの課題に直面する中、日本は議長国としてかじ取りを問われた。 最大の焦点となったのは米中貿易戦争への対応だ。だが米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席の会談は休戦に合意する程度にとどまり、G20として摩擦緩和に向けた協調態勢を築くには至らなかった。 両首脳の会談は世界経済の行方を左右するものとして、世界から注目された。トランプ氏は不調に終われば中国からの全輸入品に制裁関税を課す方針を示していたが、会談後に発動を当面見送ると表明した。 全面対決に発展すれば、世界経済が深刻な打撃を被るのは必至だった。高関税で負担の増す米国企業の反発も強く、トランプ氏も考慮せざるをえなかったのだろう。 とはいえ打開のめどは立っていない。貿易不均衡の是正というレベルを超え、安全保障に直結するハイテク覇権争いに発展しているからだ。 心配なのは、米中が自国に有利な経済圏を作るブロック化を進め、グローバル経済が分断されることだ。 米国は、次世代通信技術5Gで世界をリードする中国ファーウェイ(華為技術)の排除に乗り出し、同盟国にも同調を迫っている。対抗して習氏はサミット前、ロシアのプーチン大統領と会談しファーウェイとロシア通信大手の提携に合意した。 トランプ氏は習氏との会談後、米国からのファーウェイ向け部品販売は容認する意向を示した。だが、中国との取引の一環で、米国などからファーウェイ製品を締め出す基本姿勢は変えていないとみられる。 米国は、中国政府がハイテク産業に過度な補助金を出していると批判する。だが官民一体の産業育成は中国特有の国家資本主義の根幹だ。習指導部には譲れない一線である。 今年は冷戦終結から30年に当たる。中国の台頭に象徴される経済のグローバル化が進んだ。米国企業が日韓の部品も使って中国で生産し、高性能で割安なスマートフォンなどが世界に出回るようになった。米中対立が長引くと、冷戦後の発展を支えた国際分業が寸断されかねない。 本来、世界経済の安定に協調するのがG20だ。だが「米国第一」を掲げるトランプ政権の発足で空洞化し今回も役割を果たせなかった。 象徴的なのは、保護主義に反対する文言を首脳宣言に盛り込めなかったことだ。トランプ政権の意向で消えた昨年の宣言に続くものだ。 2008年のリーマン・ショック後に始まったG20サミットは「反保護主義」を宣言に明記していた。G20は体制が違う国の集まりだ。それでも経済のグローバル化で協調の必要性が高まり、最低限の共通認識としたのが「反保護主義」だった。 今回も米中対立に懸念の声が相次ぎ、宣言は「貿易を巡る緊張は世界経済のリスク」と明記した。だが米中が意に介した形跡はない。休戦も米中の駆け引きの産物だ。 かつて米国と国際協調を担った欧州でも協調重視派は退潮傾向にある。米中のパワーゲームに世界が振り回されているのが実態だ。 議長国の日本は協調立て直しに努めた。世界貿易機関(WTO)の改革を首脳宣言に盛ることを主導したのは日本だ。中国に補助金是正などを促す仕組みを目指し、米国を多国間の枠組みにとどめる狙いだ。 経済のデジタル化に応じた国際的なルール作りや、プラスチックごみによる海洋汚染対策でも一定の成果をあげたと言えよう。 もっとも日本の役割は限られた。政府はそもそも「反保護主義」の文言は困難とみていた。安倍晋三首相は会議で「貿易制限の応酬はどの国の利益にもならない」と呼びかけたが、それ以上踏み込まなかった。貿易交渉中の米国を刺激したくないとの思惑が働いたのではないか。 何より必要なのは、米中が今後の協議で共存を探ることだ。大国として世界経済の安定に責任がある。 トランプ氏には、対中強硬姿勢を保てば大統領選に有利、との計算もあるのだろう。選挙目当てで世界を混乱に巻き込むのは許されない。 中国の国家資本主義も国際的に異質な体制だ。補助金に依存する体質から抜け出すことは中国の安定成長に役立つはずだ。中国が自主的に取り組むべき課題である。 |
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●安倍外交、停滞感浮き彫り=参院選効果は不透明−G20 6/30
20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)が29日閉幕し、安倍晋三首相は2日間の議長役を終えた。首相は議事を総括する記者会見で「力強いメッセージを出せた」と宣言し、7月4日公示の参院選に向けて成果をアピールした。しかし、安倍外交の停滞ぶりも浮き彫りになり、選挙向けの実績となったかは不透明だ。 「昨年の首脳宣言を踏まえ、さらに踏み込んだ合意ができた。国際社会にG20の結束を示せた」。首相は29日の閉会セッションでこう述べ、首脳間で採択した大阪宣言の内容に胸を張った。 大阪宣言の新機軸は、プラスチックごみの海洋流出を2050年までにゼロにする目標などを打ち出した点。だが、焦点の貿易では「保護主義と闘う」との文言を盛り込めず、「自由・公正・無差別な貿易・投資環境の実現に努める」と記すにとどまった。 反保護主義の文言は、08年のG20創設以来、毎年の首脳宣言でうたわれてきた「結成の精神」。保護主義に傾くトランプ米政権の反対で、昨年の首脳会議で初めて宣言から抜け落ちた。G20の根幹を揺るがす事態だが、日本政府がこの文言を復活させようと本気で取り組んだ形跡はうかがえない。 G20サミットの合間に、首相は個別の首脳会談も精力的にこなした。27日の中国の習近平国家主席との会談では習氏を来春に国賓として招くことで合意。28日の日米首脳会談では、対日貿易赤字に不満を募らせるトランプ米大統領をひとまず抑えることはできた。 とはいえ、中国が沖縄県の尖閣諸島周辺での挑発行為をやめる兆しはない。トランプ氏も、参院選が終われば日米安全保障条約への不満と絡めて対日圧力を強めかねない。29日の記者会見では、日米安保条約の片務性を変える必要があると首相に伝えていることを明かした。 29日の閉幕後、首相はロシアのプーチン大統領との会談に臨んだ。この会談で北方領土交渉の大筋合意を宣言するシナリオを描いた時期もあったが、交渉継続を確認するにとどまった。 日ロ首脳は昨年11月の会談で領土交渉加速で合意。首相は2島返還に事実上かじを切り、スピード決着に持ち込みたい考えだった。誤算だったのはロシア政府が世論の反発を受けて強硬姿勢に出たことだ。日本政府内からは「安倍政権での解決は困難」との声も漏れる。 G20サミットは先進7カ国首脳会議(G7サミット)の後に開かれるのが通例だが、今年は順序が逆転した。背景には外交成果を掲げて参院選に臨みたい首相の思惑があったとの見方もある。来月21日投開票の参院選では、安倍外交の是非をめぐる与野党の舌戦も熱を帯びそうだ。 |
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●G20大阪サミット、巨費投じた日本は何を得たのか―中国メディア 7/1
6月29日、第14回主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が大阪で閉幕した。日本はサミットに巨額の費用を投入し、非常に大きな収穫を上げたと言える。日本はサミットを主催するのに一体いくら使ったのだろうか。詳しい統計をまとめるのは難しいが、一連の公開されたデータから、大きな金額であることはうかがえる。中国青年報が伝えた。 日本は昨年9月21日に、サミットの準備費として2018年度予算の予備費から約75億円を拠出することを閣議決定した。 今年1月28日、サミット開催地の大阪府はサミットの準備状況についての報告書の中で、大阪府と大阪市が2018-2019年度に合計51億3800万円の予算を計上したことを明らかにした。日本政府の主な関係省庁の予算をみると、合計約484億5000万円に上り、外務省が339億8000万元、警視庁が124億2000万元、消防庁が9億5000万円、厚生労働省が11億円となっている。 以上の予算データは18年度と19年度にそれぞれ拠出された。このほかにも大阪府と大阪市は多くの資金を集め、日本企業からの協賛金もある。地方政府と企業からの協賛金にははっきりしないところがあり、政府も触れないでいる。 サミットの開催状況をみると、日本の各方面が実際に投入した資金はこれより多いとみられ、公式の決算報告を待つしかない。資金の中には統計が難しいものもあり、たとえば各会場へサービスや物品を提供した事業者の投資、開催期間に大阪市や大阪港などで多くの事業所が一時休業したことによる経済的損失などだ。国際展示場のインテックス大阪はサミットのメーン会場になったため、総面積約13万平方メートル、6つの大型展示ホールをもつこの場所が、サミット近くなると貸し切りになって全面的に営業を停止した。また会期中は、メーン会場の周辺、大阪市内の「関連施設」周辺の事業者は一時休業か移転を余儀なくされ、近くの大阪港をはじめ多くのふ頭が稼働停止になった。このうち大阪港は年間貨物処理能力が約8600万トンに達する。 サミットの現段階での成果をみると、日本は大きな利益とリターンを得たと言える。リターンには少なくとも次のことがある。日中関係を増進・強化した。「予測不能」な米国のトランプ大統領に「予測不能」な動きをさせなかった。データ流通の国際ルール策定の交渉枠組を促進した。参加したG20メンバー、招待を受けた非メンバー、国際機関が緊密な二国間・多国間・全方位的外交を展開した。安倍政権は外交で成果を上げ、参議院選挙を有利に戦えるようになった。サミット自体と各国のメディアを通じて、国際社会に向けて日本文化を着実にアピール・発信した。こうしたことから、G20大阪サミットを通じ、日本の国際的影響力と国際的イメージがアップすることが予想される。 |
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●トランプ・金正恩会談で大恥! 安倍首相は会談開催も知らなかった 7/1
…「蚊帳の外」は韓国でなく日本 これぞ安倍外交の真髄と言っていいだろう。大阪で開かれたG20のことじゃない。トランプ大統領と北朝鮮・金正恩委員長の電撃会談のことだ。ふだんあれだけ、「トランプ大統領と完全に一致している」とその絆の強さを語り、日朝首脳会談については「私自身が金正恩委員長と向き合う」などと大見得を切っていたのに、安倍首相はトランプの北朝鮮外交で完全に“蚊帳の外”に置かれてしまったのだ。 しかも、トランプ大統領が今回、北朝鮮外交で強力なタッグを組んだのは、安倍首相が関係修復を拒否し、安倍応援団メディアが「トランプから嫌われ、国際社会で孤立」などと攻撃している韓国の文在寅大統領だった。 大阪でのG20後、トランプ大統領と文大統領は韓国・ソウルで会談後、ヘリコプターでパンムンジョム(板門店)へ向かい、トランプ大統領は軍事境界線で金委員長と電撃再会。しかも、境界線を超え現職のアメリカ大統領として初めて北朝鮮側に足を踏み入れた。さらに、金委員長とともに韓国側に戻り、文大統領と3人で、韓国側施設「自由の家」へ移動し、シンガポールハノイに続き、3回目の米朝首脳会談が行われ、その後文大統領も加わり米中韓3カ国会談まで行われた。 非核化・朝鮮半島和平に向けどれほど進展に繋がるかはもちろん未知数だが、米朝の交渉チームの協議再開が決まるなど、ハノイでの米朝会談決裂以降の停滞していた北朝鮮情勢に一定の動きがあったことは間違いなく、少なくとも当面北朝鮮を孤立化させ暴発に追い込まないためには、大きな意味があっただろう。 しかし、問題は日本政府と安倍首相だ。会談になんのコミットもできなかったばかりか、会談をやること自体を知らされていなかったのである。 トランプ大統領が板門店を訪れ北朝鮮問題に動きがあるという噂は数日前から流れており、29日にはトランプがツイッターで〈日本を離れ文在寅大統領とともに韓国に向かう。その間に、もし金正恩委員長がこのツイートを見たら、軍事境界線・DMZ(非武装地帯)で会って、握手して、ハロー(?)って言うよ〉と投稿していた。しかし、それでも日本の官邸や外務省はとりあわず、取材にも「ありえない」と言い続けていた。 外務省が会談を知ったのは、ニュースがとびこんできた後だったという情報もある。実際、第一報直後、NHKの取材に対し外務省幹部が「事前にアメリカ側から連絡はなく、情報の確認に追われている。アメリカ大使館や国務省にも問い合わせているが、詳細は不明」と答えている。 いや、それどころじゃない。会談が終わった17時すぎの段階でも、外務省幹部は「まだ映像を見ただけで詳しい情報は入ってきていないが、まさにトランプ外交という感じだ」という新人記者のような感想を述べるだけだった。さらに、19時の段階で、NHKニュースが報じた外務省幹部のコメントは「アメリカから今回の会談についてまだ報告は受けていない」「まずは電話会談で把握したい」などというものだった。 河野太郎外相も、“何も知らない間抜け”ぶりをさらした。会談に向け事態が進行している30日午前、河野外相が何をやっていたかというと、ツイッターにG20の会議風景を撮った“思い出写真”を次々アップして、「タローを探せ。」なるお遊びツイートに興じることだった。 会談の数時間後に、ようやく記者団の取材に応じたものの、拉致問題が扱われたのかなど会談内容について問われると、「会談内容についていま日本側から申し上げることは差し控えたい」とコメントするのみ。「差し控えたい」って、何も知らされてないから、語ることができなかっただけだと思うが……。 しかしもっとも間抜けだったのはやはり安倍首相だ。G20サミットでは、韓国の文在寅大統領が日韓首脳会談に意欲を見せたのに、安倍首相は徴用工裁判問題を理由に拒否。議長国としてはありえないネトウヨ的行動に出たわけだが、文大統領は前述したように、今回、トランプ大統領と板門店に同行し、金委員長と会い、電撃米朝会談のキーマンになった。ようするに安倍首相はネトウヨ脳で対北朝鮮外交へのコミットのチャンスをふいにしてしまったのだ。 いずれにしても、安倍首相と日本政府は、事前も、会談が終わってからも、何にも知らされていなかったということは間違いない。 しかし、だとしたら、いったい安倍首相のこれまでのあの勇ましい言動はなんだったのか。 たとえば安倍首相は5月19日の「全拉致被害者の即時一括帰国を実現せよ!国民大集会」でこう宣言していた。 「私自身が金正恩委員長と直接向き合わなければならないと、こう決意をいたしております。条件を付けずに金正恩委員長と会って、そして率直にまた虚心坦懐に話をしたいと考えています。」 「拉致問題は安倍内閣で解決する」 また、5月28日の日米首脳会談後の共同記者会見でも、こう胸を張っていた。 「最新の情勢を踏まえ、方針の綿密なすり合わせをした。日米の立場は完全に一致している。拉致問題の一日も早い解決に向け、次は私自身が条件をつけずに金正恩朝鮮労働党委員長と会い、率直に虚心坦懐に話をしたい。トランプ大統領からも「全面的に支持する」「あらゆる支援を惜しまない」との力強い支持をいただいた」 それが、たったひとり蚊帳の外状態。ようするに、これまでの安倍首相の発言はすべてインチキ、中身のない“やってる感演出”にすぎなかったというわけである。 インチキがばれたのは、安倍サマのやることはなんでも正しいと叫ぶ安倍応援団メディアも同じだ。何しろ、連中はこの間、日米が連携して対北朝鮮交渉を行い、韓国がいかに蚊帳の外に置かれているかを喧伝してきたのだ。 たとえば、5月、安倍首相が北朝鮮との交渉について「前提条件なし」と方針転換を表明した際、御用記者のNHK岩田明子記者はこのように解説していた。 「今回の発言は、根本的な方針を変えたのではなく、『今後は北朝鮮外交で日本が一歩踏み込む』という姿勢を示したということではないでしょうか。この対北朝鮮外交の姿勢については、実は安倍総理大臣は、2月の米朝首脳会談後のトランプ大統領との電話会談や、先月(4月)にワシントンで行った日米首脳会談で、『今まで以上に日本が積極的な役割を果たしたい』と伝えていました」 また、「夕刊フジ」は4月の米韓首脳会談の際、「『実質2分』見限られた文大統領 米は裏切り許さず…『いい加減にしろ』文氏を恫喝」と言うタイトルの記事を出し、〈文氏がどのような誘い水をかけようと、トランプ氏には3回目の米朝首脳会談を行うメリットはない。〉〈米国が、韓国を見放しつつあるのは明らかである。〉などと断定ていた。 さらに、フジテレビ系のFNNはつい3日前、28日に「韓国の外交孤立浮き彫りに」と題し、最近の韓国はアメリカとも北朝鮮ともギクシャクしていると分析、北朝鮮外務省のアメリカ担当局長「韓国との水面下のやり取りは「一つもない」と完全否定」という談話を紹介、「韓国の努力を「お節介」と切って捨て、仲介を頼むことは「絶対に無い」と突き放した」などと報じていた。 他にも安倍応援団メディアは、「安倍首相とトランプ大統領の協力を得て、いよいよ拉致が動く」「日米の強固な絆で、韓国の存在はどんどん薄くなっている」などと書き立ててきた。その結果がこの有様なのである。 もっとも、安倍首相は、この期に及んでなお、必死でインチキをふりまいて対面を取り繕っている。 本日30日夜、参院選に向け行われた「ニコ生」での党首討論でも拉致問題解決に向け日朝会談は実現するのかという国民からの質問に、安倍首相はこう答えた。 「今日も米朝首脳会談がございました。トランプ大統領からも私の考え方を金正恩に伝えていただき、また習近平主席もこの問題においてたいへんな協力をしていただいております。被害者のご家族もだんだんお年を召され、時間が残ってないという気持ちで、私もあらゆるチャンスを逃さない決意で、この問題全面解決に向けて全力を尽くしていきたいと思っております。最後は金正恩委員長と向き合って解決しなければいけない、そう思っております」 ただ、伝言をお願いしたのを手柄話のように語ったうえ、なんと厚顔にも「あらゆるチャンスを逃さない決意」と述べたのだ。G20での日韓首脳会談を韓国側からの呼びかけを無視して見送り、せっかくのこの大チャンスを逃したばかりでよくそんなことが言えたものではないか。 安倍応援団メディアもこの安倍首相の失態をごまかそうと必死だ。NHKは30日夜の『これでわかった!世界のいま』で、国際部の記者が「トランプ大統領が幻想を振りまいているだけで、核合意は進まない」と日朝首脳会談の意義を否定。 産経新聞にいたっては今回の米朝首脳会談を受けてなお、〈文在寅政権の対北融和政策は行き詰まり、北朝鮮側からも「仲介役」であることを否定された。国際社会で相手にされない韓国では“韓国孤立論”という言葉さえ普通に飛び交っていた。〉と文大統領ディスを展開した後、会談についても〈歴史的な場面を見せる効果はあるものの「成果」は別のものだ。これまで米朝と南北は「平和のための握手」(文氏)とその光景の発信を繰り返してきたが、目立った成果はない。〉とこきおろすなど、涙ぐましいまでの、“無理やり”記事を掲載している。 もっとも、こうした手法はそろそろ限界にきているかもしれない あれだけトランプ大統領に言いなりになって、国益をすべて差し出してきたのに、対北朝鮮外交で外されただけでなく、「日米安保条約を見直せ」と要求され、数カ月前には参院選までに北方領土2島返還に道筋をつけると息巻いていたが、昨日の日露首脳会談では全く進展なし、ロシアにもお金をむしりとられただけだったことが明らかになった。 安倍応援団メディアの協力を得て、“外交の安倍”をアピールし安倍首相だったが、それがインチキであることがどんどんばれてきているのだ。参院選向けアピールのためにG20の日程を前倒しまでした安倍首相だったが、このG20が“終わりの始まり”になるかもしれない。 |
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●G20で日本が韓国・文大統領を冷遇… 7/1
半導体材料の輸出規制を強化、韓国通貨危機の懸念も 6月28、29日に大阪でG20サミット(20カ国・地域首脳会議)が行われ、無事に終了した。さまざまな分野で各国の利害が対立するなか、どのような声明が出されるかに注目が集まったが、ひとまず無難に決着したといえる。 米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席による米中首脳会談では、通商協議の再開および華為技術(ファーウェイ)への禁輸の一部緩和が決まるなど、貿易摩擦は一時休戦の様相を見せた。また、トランプ大統領のツイッターに端を発した北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談が実現し、史上初めて現職の米国大統領が南北軍事境界線を越えて訪朝したことも大きな注目を集めた。 一方で、この事実上3回目の米朝首脳会談が実現する前の段階で、北朝鮮は韓国の文在寅大統領を非難していた。米朝が水面下で接触していることを匂わせる文大統領の発言を外務省幹部が否定し、「米朝間の調停役かのように公に振る舞って自らのイメージ刷新を試みている」などと批判、さらに米国との連絡については「韓国を通して進めるようなことはまったくない」と突き放したのだ。 これは、北朝鮮の「米国とのホットラインを利用するので韓国はいらない」「仲介役のふりをするな」というメッセージだろう。前回の米朝会談が失敗に終わった原因が韓国の介入にあるとの見方を踏まえての動きと思われる。実際、米朝間では事前に親書のやり取りが行われており、韓国の手を借りずとも会談の下地は整っていたといえる。 また、G20においては文大統領の冷遇も話題になった。日韓間で首脳会談が見送られたばかりか略式会談さえ開かれず、安倍晋三首相は出迎えの際に文大統領とほとんど目も合わさずに数秒握手しただけで終わったのだ。これについて、韓国メディアは「8秒間」と伝えているが、共同通信は「約5秒」としており、いずれにしても異例の短さであることに変わりはない。4月、文大統領はわざわざ渡米したにもかかわらず、トランプ大統領との会談が約2分で終了したことが話題となったが、それを超える冷遇ぶりといえる。 そして、日本の経済産業省は半導体材料の対韓輸出を規制する方針であることが明らかになった。対象となるのは、テレビやスマートフォンの有機ELディスプレイに使われるフッ化ポリイミド、半導体の製造に使用されるレジストとエッチングガスの3品目だ。 これまでは手続き簡略化などの優遇措置を取っていたが、7月4日からは契約ごとに審査・許可する体制に切り替えるといい、輸出手続きには90日間ほど要することになるという。許可が下りるかどうかは用途や使用先次第であり、米国のように不許可を前提とした運用も可能となる。今後は、韓国側の出方や対応を見極めながら段階的に締め付けていくのではないだろうか。 フッ化ポリイミドとレジストは日本が世界の全生産量の約9割を占めており、エッチングガスも約7割を日本が占めるとされる。そのため、韓国のみならず、世界の半導体企業は急に代替先を確保するのは難しい。規制強化により、サムスン電子やLGエレクトロニクスなど韓国の電機産業に悪影響が出ることは必至だ。韓国はサムスングループだけで国内総生産(GDP)の約2割を稼いでいるともいわれており、半導体は輸出産業の中核をなしている。日本からの材料供給が停止されれば、韓国の経済全体が壊滅的なダメージを受けることになるだろう。 また、同時に韓国は外国為替及び外国貿易法(外為法)の優遇制度「ホワイト国」から除外される見込みだ。これは、軍事転用されると安全保障の脅威となる先端技術などの輸出について許可申請が免除される制度で、除外後は個別の出荷ごとに国の輸出許可の取得が義務づけられる。これについては、7月1日からパブリックコメントが実施され、8月1日をめどに運用が開始されるという。 ホワイト国から外れることで、韓国は金融面での信用悪化も想定される。韓国の金融は日本が裏支えしてきた側面が強く、日本市場へのアクセスが困難になれば、韓国企業の調達金利の上昇や通貨暴落の要因にもなり得る。今回の輸出規制を定める外為法では日本からの送金を規制することも可能であり、仮に実施されれば韓国の金融産業が大打撃を受け、長期化すれば通貨危機に発展する可能性もあるだろう。 日本としては、送金規制のほかに、ノービザ渡航の廃止、外国人労働者受け入れ国からの排除、留学生や就労ビザの不許可運用など、まだ多くのカードを持っている。半導体材料の輸出規制は、1枚目のカードを切っただけにすぎないのだ。 また、これらの対応はG20で米国をはじめとする関係国とすり合わせをした上でのものと思われる。トランプ大統領がツイッターで直接北朝鮮に呼びかけ、実際に金委員長と再会するに至った。ほぼ時を同じくして、日本は韓国に異例の制裁を科すことを決めた。G20の裏で、韓国は政治的にも経済的にも厳しい立場に追い込まれたことが明白である。 |
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●G20「完璧だった」=トランプ氏、安倍首相を称賛 7/2
トランプ米大統領は1日、大阪市で開催された20カ国・地域首脳会議(G20サミット)について、ツイッターへの投稿で「完璧だった!」と称賛した。 トランプ氏は「不足していたものも、失敗も何一つなかった」と強調。「このように素晴らしく、よく運営されたG20を主催した安倍(晋三)首相をお祝いする」と述べた。 G20後に訪問した韓国の文在寅大統領に対しても、「北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談でき、大きく報じられたのは素晴らしかった」と謝意を示した。 |
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●G20が閉幕 海洋プラスチックへの対策は結局どうなったの? 7/2
大阪市で開催されていたG20サミットが、6月29日に閉幕した。近年問題視されている海洋プラスチック問題も、主要テーマの1つとして話し合われた。 会議での成果をまとめ発表された首脳宣言では、対策として、新たな海洋プラスチック汚染を2050年までにゼロにする事を目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有。プラスチックの重要性を認識しつつも、管理を誤ったプラスチックごみの流出を減らすなど、包括的なアプローチによって海洋プラスチックごみによる汚染の削減を目指す。 また、日本政府としては、廃棄物管理、海洋ゴミの回収などの技術推進の為に途上国における能力強化を支援する「マリーン(MARINE)・イニシアティブ」も発表。 G20大阪サミット前に長野県で行われた「G20エネルギー・環境関係閣僚会合」では、各国が海洋プラスチックごみの削減に向けた行動計画の進捗状況を定期的に報告・共有する「G20 海洋プラスチックごみ対策実施枠組」が決められた。 一見多くの進展があったように見えるが、G20大阪サミットが閉幕した同日、「それでは不十分」と「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」のメンバー及び賛同24団体が共同声明を発表した。 声明文では、G20大阪サミットで共有されたビジョンや枠組みの内容を歓迎するとした上で、それでは対策として不十分であり、法的拘束力のある国際協定の早期発足や、2030年までの意欲的なプラスチック使用量削減目標を日本が率先して設定することなどを求めた。 この共同声明文を発表したネットワークのメンバー団体であるWWFジャパンで、プラスチック政策マネージャーを務める三沢行弘さんは、「今回の宣言は一定の評価はできますが、早急に止める必要のあるプラスチックごみの海洋汚染の達成目標が2050年というのは遅すぎます」と話す。 「少なくとも2030年までの流出ゼロに合意し、廃棄処理や回収だけでなく、根本となる生産と使用の削減目標が必要です。そしてそれは努力目標ではなく、拘束力のある協定が求められます」と語った。 |
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●G20・米中首脳会談の着地は「前向きなサプライズ」 7/2
20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)が閉幕した。もとよりG20は何かを決める場所ではなく、あくまで首脳同士で問題意識のすり合わせを行う場所という性格が色濃いものであり、金融市場の取引材料を期待するイベントではない。 だが、今回は通商協議の行方が注目される米中首脳会談が重ねて行われるということもあり、トランプ米大統領および習近平・中国国家主席の言動を中心として、その行方が平時以上に注目されていた。 結論から言えば、「どうせ何も材料は出ない」という市場予想を前提とすれば、かなり前向きな結果に着地したと言える。 ●得るものが多かったのは中国 閉幕後に開催されたトランプ大統領の記者会見のポイントを金融市場の観点からまとめると、主に4つある。 (1)中国への追加関税(3000億ドル分の中国製品に対する25%)を当座は見送り、協議を再開 (2)米企業と中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)との取引を再開(同社に対する禁輸措置の解除) (3)日米安保条約の破棄は考えていないが不公平 (4)G20終了後に北朝鮮の金正恩委員長と面会する予定(そして実際に面会) このうち(1)は想定通り、(3)も事前報道と大きく乖離するものではない。サプライズは(2)と(4)であり、どちらも市場心理の改善に寄与している。 とりわけ(2)については、ファーウェイに対するアメリカ側の厳しい対応が米中貿易戦争のバロメーターのように解釈されてきたことを思えば、トランプ大統領が「安全保障上の問題がなければ米企業と同社の取引を容認する」と述べたことは大きな材料と言える。 (1)と(2)を見る限り、今回の会談は中国側が得るものが多かったように見受けられる。 ●対米貿易交渉の「大義名分」を手に入れた日本 議長国の日本については総じて「上手くやった」との評価が目立つが、今後を見据えた上で目を引く課題も残った。 もちろん、シンボリックには上述した(3)であり、参院選(7月21日投開票)を前に日米同盟の見直しを提起されたことは、政府・与党にとって想定外だったかもしれない。金融市場の観点からすれば、今後、日米貿易交渉を進める上で「為替」に加えて「安全保障」まで取引カードに乗ってきてしまうのかという不安を抱かざるを得ない。 日米貿易交渉に絡めて気になったのは、首脳宣言の「世界経済」部分において「グローバル・インバランス(経常収支不均衡)は依然として高水準かつ持続的。サービス貿易・所得収支を含む経常収支の全ての構成要素に着目する必要性に留意」との表現が入ったことだろうか。 G20開催前、浅川雅嗣財務官がこの論点を強調する報道が見られたので、日本からアメリカへのメッセージ性が強い表現ではないかと察するが、程度の差こそあれ、アメリカと相対する多くの経常黒字国ないし貿易黒字国と認識を共有するものであろう。 経常黒字と、海外への直接投資や証券投資から得る黒字を示す「第1次所得収支黒字」の水準がほとんど同額の日本からすれば、「黒字」と貿易摩擦は全くリンクしない。 首脳宣言に記載したこうした正論が、直感的なトランプ交渉術にどこまで有効なのか知る由もないが、交渉を進める上での公的な大義名分を手に入れられたことは、開催国として挙げた1つの「武功」と言えるのかもしれない。 今後はこうした正論を盾に「為替」や「安全保障」といった破壊力のあるカードを持つアメリカと相対していくことになる。交渉は簡単なものにはならないのだろうが、アプローチとしては至極真っ当なものであり、好ましいものであるように思える。 ●「米中」は問題蒸し返しも想定内 総じて好材料が目立ったG20だったが、米中貿易協議について言えば、既存の追加関税(「2000億ドルに対し25%」など)が消えるわけではなく、座礁していた協議がリスタートしただけである。 協議が「解決」せずに「継続」している以上、トランプ大統領が唐突にツイッターで「やはり3000億ドルについても25%を課税することにした」と表明するリスクは消えない。解決間近と噂されながら、「2000億ドルに関し10%から25%に関税を引き上げることにした」と唐突に交渉決裂を宣言したのはわずか2カ月前(5月5日)の出来事である。 トランプ大統領は今回、「少なくとも当座は中国に対する関税を引き上げることはしない」と述べているが、企業や市場参加者の不安は尽きないだろう。 「引き上げることはしない」とは言ったが、「当座」が何を意味するかまでは明言していない以上、例えば1月後にいきなり問題が蒸し返されてももはや驚きではない。いや、これまでの経緯を踏まえれば、そうならないと思っている参加者の方が少ないくらいではないのか。 ファーウェイに対する禁輸措置も同様であり、早速、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長から「これは恩赦ではない」とのコメントが見られ、同社について「いわゆるエンティティー・リスト(安全保障上の脅威である外国企業のリスト)に残り、厳しい輸出管理が適用される」という状況は変わらないことが確認されている。一連の動きはポジティブに違いないが、依然として可変的であることは念頭に置きたい。 ●「サプライズ」だが「ゲームチェンジャー」とまでは言えない そもそも米10年金利が一時2%を割り込み、ドル/円相場が一時106円台をのぞきに行く展開となった背景には何があったのかを今一度、振り返るべきだろう。 米中貿易協議への不透明感もさることながら、アメリカの国内外の経済・金融情勢を踏まえて米連邦準備制度理事会(FRB)が「もう利上げは難しい」と判断し、「次の一手は利下げである」という地ならしを始めたからであったはずだ。 この雰囲気が本格化したのは、米10年金利が2.40%を割り込み始めた5月半ば以降である。 ドル/円相場の週間変化率に関し、米10年金利とNYダウ平均株価のそれとの相関係数(関係の強弱をはかる指標)を取って比較したものが【図表】である。 6月のNYダウ平均株価は約7.2%上がり、同月としては81年ぶりの高い上昇率となったことが話題だが、これに連れてドル/円相場が値を上げたわけではなく、むしろ水準は切り下がった。過去2カ月間でドル/円相場は株価よりも米金利と安定的な関係を持つようになっており、それだけFRBの政策姿勢の転換が重視されるようになってきていると解釈すべきだろう。 「米金利が下がる」という大前提が生まれた今、いくら緩和期待で株価が押し上げられても、積極的に円売り・ドル買いをする向きは限られるというのが筆者の基本認識である。上述した(1)、(2)、(4)は市場心理を明るくするものではあるが、金融市場のゲームチェンジャーとまで言えるものではない。 FRBの政策転換とともに「過去5年のドル高が修正される」という為替市場におけるメインシナリオは、「継続」と見て問題ないだろう。 |
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●文在寅大統領、G20での影の薄さは米朝会談で挽回できたか? 7/2
G20首脳会合は、韓国・文在寅大統領の影が薄い会合となった。同時に、G20での文大統領の動向は、過去2年間の政治の失敗を反映する出来事となった。 G20の席上での経済に関する発言内容は、韓国政府の経済運営に関する疑念を深めたのではないだろうか。また、中ロとの会談でも文大統領の期待する北朝鮮問題への協調を促進する契機とはならなかったのではないか。 ただ、トランプ大統領が南北軍事境界線にある非武装地帯訪問の際に、金正恩国務委長と面会する可能性があるとの報道が流れていたため、韓国内では世間の関心が北朝鮮に向き、国内のメディアにおいて文在寅大統領の外交的無策が目立たなかったのが、文大統領にとっては幸いであったであろう。 文大統領とホスト国の安倍晋三首相との会談は、立ち話さえも行われなかった。会談前に安倍総理が各国の首脳を出迎えた際に、8秒間ぎこちない握手をしただけだった。各国首脳を招いた夕食会も、日韓の首脳は別のテーブルに席があった。 安倍首相がこれほど文大統領との会談を避けたのは、同政権が徴用工問題で出してきた答えが、日韓両国の企業が資金を出し合って、判決の出ている徴用工に賠償しようというものであったためである。この策はもともと青瓦台も否定していたし、日本にとっては元徴用工に対する個人請求権は消滅しているとの大原則を否定する案である。日韓の外相が20分間元徴用工の問題を話し合ったというが、平行線に終わった。 一般的に、多国間会議で開かれる首脳会談は、事前に大きな成果を準備しなくても比較的気軽に会える場である。それにもかかわらず、日韓間では立ち話もなかったということは、日韓関係の異常な冷え込みを象徴するだろう。今後とも当分の間、実りある首脳会談は期待できず、日韓の政治関係は文政権が続く限り立て直しは困難であろう。 ただ、日本側のこうした対応に対する韓国の反応は、これまでよく見られていた日本の非礼を追及するもの一辺倒ではなく、日韓関係の異常なまでの冷え込みを懸念する声も多く聞かれた。それだけ、日本の韓国バッシングの姿勢が韓国にも知られるようになったということであろう。文政権はこうした変化に気付いてほしいものである。 G20が終了した直後の7月1日、日本政府は有機ELに使うフッ化ポリイミド、半導体製造で使うレジスト、エッチングガスの3品目で、韓国に認めていた簡略な輸出手続きを改め、契約ごとに輸出を審査・許可する方法に切り替える方針であると報じられている。そのうちの2品目は日本のシェアが9割に達する品目であり、韓国経済に大きな影響を与えることは間違いなさそうだ。これに対し、韓国は「戦前日本が軍事力で韓国を支配した、戦後は経済力で韓国をたたこうとするのか」と再び反日になる懸念がある。しかし、日本政府は、元徴用工を巡り韓国政府に行動を促すことを重視したのであろう。 また朝鮮日報は、G20の機会に日、米、インドの会合が開かれ、「インド太平洋構想」のビジョンを共有したことに懸念を表明している。これまで多国間会議があるたびに、日米韓会合が開催されていたが、今回は話題にも上らなかった。米国は新たなアジア太平洋戦略を組むに当たり、日本、インドを選択し、ここに韓国はなかった、としている。これが今、韓国が置かれている外交の立ち位置である。文在寅氏は米韓首脳会談で米国のこの戦略に協調すると述べたが、一歩遅れているとの感は否めない。 ちなみに、日韓首脳が8秒間の握手をした日、ソウル市で開かれた「日本企業採用博覧会」には志願者だけで1600人が集まり、大盛況だったという。文在寅政権と韓国市民一般が見る日本との間には距離があることの象徴である。 文在寅大統領は、G20の「世界経済と貿易投資」をテーマとしたセッションで発言し、「低賃金労働者の割合が過去最低水準に下がり、労働者間の賃金格差も緩和されている。G30諸国は世界経済の下降リスクにも先回りして対応すべきだ。韓国政府も拡張的財政運用のために努力している」と述べた。 相変わらず、所得主導成長が国民生活を疲弊させていることに反省がなく、無謀な財政支出で政府債務を際限なく増大させていることを顧みない発言である。IMFをはじめ、欧米の主要な格付け機関が韓国の経済状況を下方修正している時に、経済停滞の原因となっている経済政策を誇示するようでは韓国経済に対する信頼を失わせるばかりである。そうした危惧を持たず、独善的な見解を示したことを世界はどう判断するであろうか。 2日間にわたって開かれたG20では、韓国の存在感はかつてないほど薄いものだった。だが、文大統領なりに、各国との外交活動は行っていた。主なものを検証してみたい。 まずは中韓首脳会談である。経済や安全保障において関係が深く、韓国にとって極めて重要な隣国であるが、会談後の中韓の発表を聞くと、両国は足並みが揃っていないようだ。 韓国側の説明によれば、習主席は、中朝首脳会談の際に、金委員長が「対話を通じ問題を解決したい」との立場を示し、「非核化の意思は不変」と述べた由であり、中国も「朝鮮半島情勢を進展させるため、建設的な役割を続けていく」と述べたようである。 しかし、中国側の説明によれば、会談で習近平主席が真っ先に取り上げたのは、THAAD(高高度防衛ミサイル)の在韓米軍配備問題であり、「解決にむけた方策が検討されることを望む」と述べたそうである。 韓国は、この問題について「THAADの追加配備はしない」「米国によるミサイル防衛システムには入らない」「韓米同盟には加わらない」といういわば「三不」を約束することで決着がついたと述べていた。だが、そもそもこの三不などは主権国家として他国と約束すべき事項ではない。だが、それでも中国は韓国を責め立てた。中国のような国との外交では、一度原則なしに譲歩してしまえば、それが終わりとはならず、その後も責め立てられるということである。 中韓首脳会談は、韓国が説明しているような、北朝鮮の非核化で中韓の協力を誇示する会合ではなかったようである。 韓ロ首脳会談は、プーチン大統領が2時間遅れて到着したようである。プーチン大統領は遅刻の常習犯であることは有名だが、始まったのは午前0時半過ぎであり、遅れたことに対する謝罪はまったくなかったようである。韓ロでは「北朝鮮に対する安全保障が核心であり、非核化に対する相応の措置が必要だ」とする金正恩氏のメッセージを中心に議論したようでる。これ以外のテーマも話したとあるので、南北ロ協力についても話し合ったとみられる。ただ、韓国ではプーチン大統領の遅刻に話題が集中し、会談の中身に関する関心がそがれてしまった。 米国トランプ大統領はG20首脳会談の後、韓国を訪問した。29日歓迎夕食会、そして30日午前に少人数の米朝首脳会談が開催され、その後昼食会を兼ねた拡大会合が開催された。ただ、その会談内容については、韓国の新聞にもあまり報じられていない。 同日午後に予定されていた非武装地帯訪問と、その際のトランプ大統領と金正恩委員長との会談に関心が集中していたからである。 米韓会談の主要関心事も、来る金正恩委員長との会談だったのであろう。トランプ大統領は「経済的なバランス、貿易、軍事などを巡る話があった」と述べた。在韓米軍防衛費分担金の増額、貿易の不均衡問題、米中の覇権争いの問題で、米国は韓国にプレッシャーをかけたとみられている。 そして30日午後、トランプ大統領は南北の軍事境界線に接する非武装地帯を訪問。文在寅大統領が同行した。まず、哨戒所に立ち寄って北朝鮮を一望した後、米韓両軍兵士を慰問した。 米朝首脳は、お互いの領内を行き来し、その後、文大統領も加わって韓国側の施設「自由の家」に入った後、米朝首脳だけの会談が1時間ほど行われた。それには文在寅大統領は加わっていないが、再び「自由の家」を出てきた時には文在寅大統領も一緒にいた。 会談後のぶら下がり会見でトランプ大統領は、今後米朝で実務者チームを立ち上げる。米国はポンぺオチーム、ビーガンチームで交渉に臨んでいくことを明らかにした。北朝鮮は板門店に李容浩外相、崔善姫第一外務次官を同行させており、彼らが交渉の中心となるのだろう。実務者チームは今後2〜3週間で何ができるか模索することになる。さらにトランプ大統領は、スピードは求めておらず、包括的な合意を目指すと述べた。 トランプ大統領が金正恩委員長との会談を思いついたのは、前日であり、24時間という短期間で金正恩委員長が会談に応じたことに感謝の意を伝え、また、金正恩委員長をホワイトハウスにも招待し、金正恩氏もトランプ氏を平壌に招待した由である。 トランプ大統領は選挙モードに入っている。その一例が米中首脳会談である。トランプ氏が、強硬姿勢を引っ込め、当分交渉を再開すると言ったのも、第4弾の関税引き上げが国内の消費者物価に及ぼす影響、景気に与える影響を懸念しているからだろう。それは再選を目指すトランプ大統領にとって大きな痛手となりかねない。 同様に北朝鮮問題についても、2月のベトナムでの会合以来、膠着状態になっており、実務者協議を開けるような状態にはなっていなかった。そこで金委員長と面会し、実務者協議を再開することを目指したというわけだ。トランプ大統領はぶら下がり会見で、再三、自身が大統領に就任した時には北朝鮮の核問題はひどい状況にあり緊張が高まっていたが、現在は関係が改善した点を強調している。米朝の緊張関係の緩和はトランプ大統領の功績であり、これを維持したいということを誇示していた。その意味で、トランプ大統領にとっては今回の会談には成果があった。 トランプ大統領は交渉に臨む方針として、早く交渉をまとめるよりも包括的で良い合意を目指すと述べている。しかしこの点について、金正恩委員長とどこまで話しあっているかは定かでない。北朝鮮は、シンガポールの首脳会談では、包括的でなく、段階的非核化について合意があったと主張しており、その立場は崩していない。したがって、実務者会談を再開しても認識の違いがあれば、実質的な進展が見込めるのか、今後見極めていく必要があるだろう。 金正恩氏は、トランプ大統領のツイッターを見て今回の面会を決意したと述べた。僅か24時間で首脳会談が実現するのは異例。それは同時に、金正恩氏がどれだけ米朝首脳会談を欲していたか端的に物語っている。 金正恩氏にとって、今年の北朝鮮の干ばつは深刻であり、1000万人が食糧不足に陥るといわれている。加えて、金正恩氏が軍部や党の忠誠を促す統治資金も枯渇に近いようである。 トランプ氏は米朝関係の改善を「急いでいない」という態度だ。その半面、北朝鮮は交渉による制裁緩和を急いでいる。トランプ氏は制裁について、「制裁は外すことを楽しみにしているが、科したままだ」と述べた。今は、しっかりとした実務協議を行い、北朝鮮の譲歩を促す時だとみているのだ。 一方で文大統領は、今回の会談に加わり南北プラス米国という形式の首脳会談とすることは出来なかった。米朝の仲介者役を自認していた文大統領としては、メンツをなくしたともいえる。しかし、トランプ大統領の訪韓をアレンジし、それが米朝の面会につながったことで、国内的には仲裁役を果たしたということで、一応の格好はついた。それ以上に、文大統領は米朝の交渉が進めば、北朝鮮と経済協力に道が開けると期待している。 ただ、そううまくいくかどうかは北朝鮮の出方が鍵である。北朝鮮の対南宣伝メディアは、米朝の面会、会談があった30日、「南朝鮮当局が対米追従姿勢を捨てないならば南北関係は今日の状態から抜け出すことはできない」と非難している。朝鮮半島を巡る構図は、米、南北、中ロの利害を巡ってますます複雑になってきていることが、G20会合で改めて確認できたというところであろう。 |
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●G20に出席したイヴァンカ・トランプ、世界中で大ひんしゅく 7/2
先日、大阪で開催されたG20サミット。その中でもひときわ浮いている場違いな人がいた。娘ということを理由に会議に出席させた、イヴァンカ・トランプだ。世界各国のリーダーたちがイヴァンカ・トランプに対して、うわべだけ礼儀正しく接しながらもいらだちを隠せぬ様子を捉えた動画が、ソーシャルメディア上に投稿され、世界中からひんしゅくの声が絶えない。 2019年6月29日夜、フランス政府がInstagram上に公開した動画には、ドナルド・トランプ米大統領の娘イヴァンカがG20サミットの会場で世界各国のリーダーたちとの会話に加わる姿が写されている。イヴァンカは父親に同行してG20サミットに参加し、女性の経済的エンパワーメントをテーマに講演を行った。 投稿された動画は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領による社会正義についてのコメントから始まる。続いて英国のテリーザ・メイ首相が会話に加わり、経済的な見地から問題に取り組めば人々の関心がより高まる、と発言。「問題の経済的側面を取り上げればすぐに、それまで無関心だった多くの人々も耳を貸すようになるでしょう」とメイ首相は述べた。 その時イヴァンカがここぞとばかりに口を開き、国防部門はいかに男性が多数を占めているか、などという的外れな意見を述べ始めた。「さらにその状況は国防の分野だけに限りません」とイヴァンカは言う。「あらゆるビジネスの場面で完全に男性優位な状態が続いています。」 大統領の子女による発言に、IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事は軽蔑の色を隠せず、明らかないらだちの表情を浮かべた。 イヴァンカがサミットに関わることは、米民主党からの批判を招いた。アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(民主党、ニューヨーク州)はフランス政府の動画を共有しつつ、大統領の娘によるG20サミットへの同行を批判した。「耳の痛い人もいるでしょうが、誰かの娘だからといってキャリアの資格が与えられる訳では全くありません」と彼女はTwitterに投稿した。「大統領がいい加減な対応をし、それで世界が動くとすれば、米国の外交姿勢が問われます。米国はG20を主導する大統領を必要としているのです。正規の外交官を同行していれば何の問題もなかったでしょう」 テッド・リュー下院議員(民主党、カリフォルニア州)もまた、同動画をTwitterで共有し、「この動画に対するイヴァンカ・トランプの説明を聞いてみたいですね。でもそういえば、ホワイトハウスの上級顧問を務める彼女のアカウント@IvankaTrumpから私はブロックされているのでした。誰か以下の動画を彼女へ転送し、彼女にコメントを求めてもらえませんか?」とツイートしている。 イヴァンカ・トランプがG20サミットで場違いな役を演じたのは、これが初めてではない。2017年のサミット時、中国国家主席、トルコ大統領、ロシア大統領、英国首相、ドイツ首相らによる会議中に、彼女は席を外した父親に代わってテーブルに着き、その行動は批判を呼んだ。マキシン・ウォーターズ下院議員(民主党、カリフォルニア州)は当時、「彼女が席に着くのは筋違い。G20サミットには合衆国大統領が自由主義諸国のリーダーとして参加しているのです。彼は政治の場を利用して自分の娘を公の場に引き出し、何の知識もない彼女を重要な会議に参加させようとしています。彼女は、参加している国々の代表といかなる交渉もできません。彼女は話し合われる問題に関して全く理解していないのです」と述べている。 共有された動画を見る限り、ウォーターズ議員による当時のコメントは今なお通用するようだ。 |
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●米中首脳会談に注目集まる、G20大阪サミット 7/3
米国主要メディアは、6月28、29日に開催されたG20大阪サミット(首脳会議)について、トランプ大統領がこの機会に行った各国首脳との会談内容を中心に報道した。中でも、追加関税の発動の有無が注目されていた米中首脳会談に関する報道が目立った。いずれのメディアも、貿易摩擦の一時停戦を評価する姿勢を示しつつも、根本的な解決は当面先になるとみている。 「ウォールストリート・ジャーナル」(WSJ)紙は6月30日付の記事で、トランプ大統領と習近平国家主席は貿易交渉の再開にこぎつけたが、多くの課題を残したと報じた。トランプ政権に政策的な助言を与えているとされるハドソン研究所のマイケル・ピルズベリー氏による「習氏とトランプ氏ともに、支持を取り付ける必要のある基盤を抱えている対称的な状況にある」とのコメントを引用し、習氏は中国共産党内の対米強硬派を、トランプ氏は超党派となっている議会の対中強硬派に加えて、2020年の大統領選挙を見据えてビジネス界や農業州を無視できないと指摘している。 ●米中間ではファーウェイ問題が議論の焦点 また、いずれのメディアも、トランプ大統領が発表した華為技術(ファーウェイ)に対する輸出規制の緩和について、今後も賛否の議論が続くとしている。経済誌「ブルームバーグ」のコラムニストであるティム・カプラン氏は7月1日付の記事で、規制緩和に踏み切ったトランプ氏の判断は「水面下で起きている技術面での冷戦を止めることはない上に、ファーウェイは政治的な人質以上の存在だとしてきた米国のスタンスを弱めてしまう」と指摘した。 ●北朝鮮、サウジアラビア、ロシアの首脳との会談にも着目 米中関係以外では、各紙によって着目する案件が若干異なるものの、トランプ大統領と(1)北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長、(2)サウジアラビアのムハンマド皇太子、(3)ロシアのプーチン大統領との会談に関する報道が集中した。 (1)は板門店で6月30日に行われ、2月にベトナムのハノイで開催された第2回米朝首脳会談が不調に終わって以降、初の会談として各メディアがトップ記事で取り上げた。「ニューヨーク・タイムズ」紙は30日付の記事で、「任期を半分以上終えた中で、トランプ氏は(北朝鮮との)長年の紛争を解決し自らのレガシーにすることで、来年の選挙の弾みにする考えだ」と評している。 (2)については、トランプ大統領が、2018年10月にトルコで発生したサウジアラビア人記者カショギ氏の殺害を指示した証拠があるとして厳しい立場に立たされているムハンマド皇太子を積極的に擁護する姿勢を見せたことに関して、政治紙「ポリティコ」は6月29日付記事で、「トランプ氏はカショギ氏殺害に関する記者の質問を無視して、皇太子を称賛し続けた」としている。 (3)では、2016年の米国大統領選挙にロシアが介入したとされる点に関して、トランプ大統領がプーチン大統領に対して、「選挙に介入しないように」と伝えたことが大きく報道された。その発言が記者からの質問が相次ぐ騒々しい中で軽快に出たことを批判的にみる向きもある。「USAトゥデー」紙は6月28日付の記事で、「トランプ氏は相変わらず、米国の安全保障を犠牲にしてプーチン氏を満たしている」と評したオバマ政権時の駐ロシア米国大使のマイケル・マクフォール氏のツイッターでの発言を紹介している。 |
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●米中首脳会談、経済貿易交渉の継続を合意 7/3
習近平国家主席は6月29日、G20大阪サミット(首脳会議)のため訪問中の大阪で、トランプ大統領と首脳会談を行った。 中国外交部の発表によると、両首脳は、米中関係の発展に関する根本的な問題や現在の米中経済貿易摩擦、共通の関心事項である国際問題や地域の問題について深く意見交換を行った。 さらに両首脳は、米国が中国産製品に新たな追加関税を課さず、平等と相互尊重に基づき、経済貿易交渉を再開することで合意した。 会談で習国家主席は、中国は米国との交渉について誠意をもって継続し、対立事項を管理・コントロールする意思があると述べつつ、交渉は平等であるべきで、中国の主権と尊厳に関わる問題においては、自国の核心的利益を必ず守るとの従来の主張を強調した。 一方、トランプ大統領は、両国企業に公正な待遇を提供するために、米国は交渉を通して両国の貿易均衡の問題を適切に解決すると述べ、米国は中国からの輸入品に対して新たな追加関税を課さないとした。 首脳会談での合意を受けた中国国内の報道では、合意を歓迎する論調が目立つ一方、米国内でも意見の相違が見られることなどから、今後の交渉妥結には長期間を要するといった慎重な見方が出ている。 「環球時報」7月2日付記事は、首脳会談後に米国、日本、英国、ドイツなどの株式指標が上昇したことを挙げ、「米中交渉が正常な軌道に戻ったことに対する歓迎と期待を反映している」と評価した一方、これまでの交渉で明らかになった両国の主張の隔たりから、「最終的な貿易協議の合意は容易ではなく、長期間を要する」と指摘した 「人民日報」7月2日付記事は、ホワイトハウスのクドロー米国家経済会議委員長がメディアの取材に対し、トランプ大統領が華為技術(ファーウェイ)への米国製品販売を認める考えを示したことについて、「恩赦ではない」と発言し、知的財産権の侵害や強制的な技術移転、サイバーセフトなどの問題を再び指摘したことについて、「彼が発信したシグナルは両首脳が会談で合意した内容と異なる」と批判した。 |
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●日本、世界競争力30位で“タイ以下”に… 7/3
日本のモノづくり力を疑うべき 世界的に著名なスイスのビジネススクール「IMD」は、1989年から「世界競争力ランキング」を発表している。今年は5月28日に発表され、これを踏まえ翌29日にフィリピン・マカティにあるビジネススクール「AIM」で、「フィリピンの競争力」に関するカンファレンスが開催され、筆者も出席した。発表の翌日にカンファレンスが開催されるという驚異的なスピード感は、アジア屈指のビジネススクールであるAIMとIMDとの良好な関係により実現している。 世界競争力ランキングは、どのように決定されるのか。まず、使用されるデータは61%が統計データ、残りの39%はグローバル企業の経営陣への意識調査となっている。今年は6100人のエグゼクティブを対象に調査が実施されている。 評価項目は大きく「経済のパフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」という4つのポイントから構成されている。 2019年のフィリピンの世界競争力は46位という結果であった。今回調査対象になっている国は63カ国ゆえ、深刻に捉えるべき事態と思われるが、和やかな雰囲気で始まった。昨年の50位よりランクアップしていることに加え、楽天的なフィリピン人の特性が影響しているのかもしれない。 評価内容に注目すると、労働市場(10位)、国内経済(12位)、税制(14位)などは上位にあるものの、基礎的インフラ(61位)、教育(58位)、貿易(54位)などは極めて深刻な事態となっている。 確かに、道路などの交通事情は極めて悪く、たとえばグーグルマップで目的地までの到着時間を調べると「45分〜2時間30分」などと表示され、まったく時間が読めない状況である。マニラでは、「1日に2つのアポイントメントを入れてはいけない」と、よく言われている。 しかしながら、教育に関しては、マニラの街中には大学が数多く点在し、筆者の知り合いでも、富裕層ではないものの必死に子供を大学に通わせようとしている人が多く、もっと上位に位置していると思っていた。ちなみに、フィリピンの大学進学率は35%程度である。 ASEAN(東南アジア諸国連合)の他国の状況として、マレーシア(22位)、タイ(25位)、インドネシア(32位)といった国々の結果も報告された。とりわけ、インドネシアに関して、17年には共に40位程度であったものの、その差が大きく開いていることには危機感のようなものが流れた。 カンファレンスには実業界、さらには政府関係者も出席しており、こうしたデータを真摯に捉え、今後の方策について活発な議論が繰り広げられた。 それでは、日本の世界競争力は何位なのだろうか。結果は30位となっている。こうした数字に、恐らく多くの日本人は嫌悪感や不信感のようなものを抱くことだろう。「馬鹿にするな」と怒る人もいるかもしれない。確かに、世の中には多くのデータが散乱しており、日本が上位にきているデータもある。また、IMDのデータはすでに述べたとおり、統計データだけではなく、経営陣への意識調査といった主観的なものも含まれており、経営陣一人ひとりがどれほど国際情勢などを正しく理解しているのかについては議論の余地もあるだろう。 しかしながら、こうした耳の痛いデータに対して真摯に向き合うことも大事なのではないだろうか。たとえば、多くの日本人が信じている“日本のモノづくり力”についても、疑う必要があるかもしれない。そもそも“モノづくり力”とは何なのか。日本では一般に“低コストで高品質のモノをつくる力”を意味している。一方で、グローバル化する高競争時代の現代の市場環境においては、“超低コストながら中品質のモノをつくる力”もしくは“高コストではあるが、超高品質のモノをつくる力”などが競争優位性のある“モノづくり力”になるのかもしれない。こういう視点でとらえると、日本のモノづくり力はどのように評価されるのだろうか。 ちなみに、世界トップテンは以下の通りである。1位・シンガポール、2位・香港、3位・アメリカ、4位・スイス、5位・アラブ首長国連邦、6位・オランダ、7位・アイルランド、8位・デンマーク、9位・スウェーデン、10位・カタール。 |
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●中国、板門店での米朝首脳会談の意義を評価、支持を表明 7/4
米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は6月30日、朝鮮半島の南北非武装地帯(DMZ)にある板門店で3回目の首脳会談を行った。中国外交部の耿爽報道官は7月1日の定例記者会見で、「米朝韓首脳が友好的に会ったことは歓迎に値する」と評価し、「会談は建設的で、前向きな成果を収めた。特に、米朝双方が近く実務者協議を再開すると決定したことには重要な意義がある。中国側はこれを支持する」と表明した。 耿報道官はさらに、「朝鮮半島における非核化の実現、半島の平和と安定の擁護、対話を通じた問題解決を堅持する」という中国側の「3つの堅持」原則を強調した上で、「中国は、関係各国との意思疎通や調整を強化し、半島の非核化と政治的解決のプロセスを不断に推進することで、新たな進展が得られるよう望む」と述べた。 王毅国務委員兼外交部長は7月2日、大阪で6月29日に行われた米中首脳会談で習近平国家主席がトランプ大統領に対し、朝鮮半島問題に関する中国側の原則的な立場を説明し、米国側が対北朝鮮経済制裁の緩和も含め柔軟な姿勢を示すよう働き掛けたことを明らかにした。また、王部長は会談について、「正しい方向に向かう重要な一歩であり、中国はこれを歓迎し、支持する」と述べたほか、6月20、21日の習国家主席の訪朝(2019年6月27日記事参照)について、朝鮮半島問題をめぐる最近の各国によるポジティブな動きとして挙げた(「環球網」7月2日)。 中国社会科学院アジア太平洋・世界戦略研究院の王俊生研究員は、今回の米朝首脳会談について、「トランプ大統領としては、前回のハノイ会談の成果が乏しく、米国内で対話による北朝鮮の核問題解決に対して疑問の声が上がる中で、今回、金氏と再度会談し、依然として朝鮮半島問題を対話で解決するとの希望を表明することで、2020年の大統領選挙での再選へ向けてポイントを稼ぎたい考えがあった。北朝鮮側としては、米国との対話を通じて自国にとって有利な国際環境を築くことができ、経済発展という戦略目標の実現にも資する」と、米朝双方の思惑を分析した(「新華網」6月30日)。 同時に、王研究員は、今回の会談について、「米朝の対話に新たな活力を注入したという点で意義がある。今回の首脳会談は時間こそ短かったものの、ハノイ会談の悲観的なムードをある程度払拭(ふっしょく)したことで、対話を引き続き正しい方向に進ませることができる」と指摘した。 |
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