失言防止マニュアル

発言は「切り取られる」
報道内容を決めるのは目の前の記者ではない
「強めのワード」に注意
リスクを軽減する対策

大変まじめなマニュアルです
トーンダウン 自己主張抑制
間違えば 無味乾燥 意味不明になりかねません

「発言マニュアル」 作ってあげてください
 


 
 
 
切り取り
言葉の前後関係 矛盾がなければ 大丈夫です
 
 
 
編集
話の一貫性 しっかりしていれば 大丈夫です
 
 
 
キャッチコピー タイトル・フレーズ
話の主題 正しければ 大丈夫です
 
 
 
印象操作
日常・普段の言動 資質を磨けば 大丈夫です
「『失言』や『誤解』を防ぐには」 自民党の"失言防止マニュアル" 
発言は「切り取られる」ことを意識する
報道各社は、放送の尺や記事の文字数など限られた条件の中で取材内容をまとめます。当然、政治家の演説会等での発言や映像を「丸ごと」発信することは、ほぼありません。確実に一部が切り取られ報道されます。わかっているつもりでも、意外と忘れているこのポイント、あらためて意識しましょう。
報道内容を決めるのは目の前の記者ではない
日夜、政治家の動向や発言を追う報道記者。しかし、彼らの取材内寄がそのまま報道されるわけではなく、「編集」という作業が社内で加えられます。これは、取材内容を各社の方針に沿ってまとめたり、記事が多くの読者の目に触れるようにインパクトをつけたりする作業で、現場記者とは別の担当が行っています。ですから目の前の記者を邪険に扱うようなことはせず、自らの発言に注意しながら、丁寧に対応しましょう。また、親しい記者の取材も注意が必要です。説明を端折ったり、言葉遣いが荒くなったりしないよう心掛けましょう。
タイトルに使われやすい「強めのワード」に注意
次の5つのパターンについては表現が強くなる傾向にあります。場所や周囲の状況を諸まえ、自らの発言をコントロールしていくことが大切です。プライベートな会合であっても、近くで取材されている可能性があります。また誰もがスマートフォンで写真や映像を発信できることを意識しましょう。
 パターン1 歴史認識。政治信条に関する個人的見解 → 謝罪もできず長期化の傾向
 パターン2 ジェンダー(性差)・LGBTについての個人的見解
 パターン3 事故や災害に関し配慮に欠ける発言
 パターン4 病気や老いに関する発言
 パターン5 気心知れた身内と話すような、わかりやすく、ウケも狙える雑談口調の表現
リスクを軽減する3つの対策
○対策1 句点(。)を意議して、短い文章を重ねる話法
読点(、)が続くダラダラ喋りは「切り取り」のリスクが増し、「失言」や「誤解」が生まれるもとになります。句点(。)を意識して短い文章を重ねていくことで、余計な表現も減り、主張が誤解されにくくなります。
○対策2 支持者や身内と使っている「危ない表現」を確認
周囲の喝采や同調に引きずられると、つい「公で言うべきことではない」ことを口走る可能性があります。身内の会合や酒席で盛り上がるような「トークテーマ」には要注意。日頃の言葉遣いを、第三者にチェックしてもらいましょう。
○対策3 「弱者」や「被害者」に触れる際は一層の配慮を
親しみやすい語り口、ざっくばらんな表現を使った演説の方が聴衆に届きやすいこともありますが、「弱者」や「被害者」が存在するテーマについては、表現に「プレーキをかけるようにしましょう。 
 
自民党が「失言防止マニュアル」配布
「『失言』や『誤解』を防ぐには」と題された文書。
これまで、たびたび“失言問題”に揺れてきた自民党が作った、いわば“失言防止マニュアル”だ。5月、所属議員らに配られた。
自民党の“失言防止マニュアル”には・・・
マニュアルには、過去の失言を念頭に、注意事項が具体的に記されている。「発言は『切り取られる』ことを意識する」。「タイトルに使われやすい『強めのワード』に注意」。
「セクハラ罪っていう罪はない」麻生財務相発言に批判 / 例えば2018年、事務次官による“セクハラ疑惑”で財務省が大揺れとなった際の麻生財務大臣の発言。「セクハラ罪っていう罪はないですよね」開き直りともとれるこの発言が一斉に報じられ、批判が殺到した。
身内や酒席で盛り上がるような話は要注意、さらにマニュアルには、4月に辞任した2人に通じる指摘もある。「身内の会合や酒席で盛り上がるような『トークテーマ』には要注意」。
桜田義孝議員は、自民党議員のパーティで、震災の被災者の気持ちを逆なでする“失言”をして、五輪相を辞任。また、塚田一郎議員は、麻生財務相の地元・福岡県で開かれた身内の会合で、道路建設を巡る“忖度”発言をして、国交副大臣を辞任した。
選挙惨敗の“悪夢”を再現したくない“苦肉の策”?自民党がこの失言防止の“虎の巻”を作成した背景には、夏に控える参院選がある。第一次安倍政権では、2007年の参院選を前に閣僚の失言などが相次いで“辞任ドミノ”が起き、選挙に惨敗した。
あれから12年… 14日に行われた麻生派のパーティで、安倍首相は「そして、とうとう我々は政権を失い、悪夢のような民主党政権が誕生した」と語った。“悪夢の再現”を阻止したい自民党の“苦肉の策”が、“失言防止マニュアル”だったのだ。
自民党内からも「レベル低いよね」の声も・・・ 自民党内では「よく見ると、とても勉強になる」と評価する意見がある一方、閣僚経験者の一人は「レベル低いよね。政治家の発言は統制するものではないよ」と語った。
街の人に今回の“失言防止マニュアル”について聞いてみると… 「リスクを避けるためには、作らざるを得ないと思う」「議員の質の低下を感じる」「わざわざマニュアルにしないといけないということ自体が、中学生くらいのレベルですよね」などといった声が聞かれた。 
 
自民党失言防止マニュアルの、もの悲しさ
自民党が、夏の参院選を前に作成した「失言防止」のマニュアルを所属議員に配布し、話題になっている。同党では、「魔の3回生」による失言に始まり、最近では桜田義孝前五輪相や塚田一郎前国交政務官が、失言で政務三役の職を追われるなど、失言スキャンダルが多発している。衆参ダブル選の臆測も流れる中、一大決戦となる夏の選挙を前に、ふんどしを締め直すよう求めた格好だ。
でも、マニュアルがないと失言を防ぐことはできないのだろうか。あまりにも至れり尽くせりの対応で、老舗政党・自民党の議員の「言葉の質」が問われる、非常事態のようにも感じた。
マニュアルのうち、1枚のタイトルは「『失言』や『誤解を』防ぐには」だ。報道の内容には制限があるため、自らの発言は「切り取られて」使われることへの注意を促したほか、対応する記者が親しい場合でも「説明をはしょったり、言葉遣いが荒くなったりしないよう」にと、注意を呼びかけている。
注目すべきは、「タイトルに使われやすい『強めのワード』に注意」。 <1> 歴史認識、政治信条に関する個人的見解 <2> ジェンダー(性差)、LGBTについての個人的見解 <3> 事故や災害に関し配慮に欠ける発言 <4> 病気や老いに関する発言 <5> 気心知れた身内と話すような、わかりやすく、ウケも狙える雑談口調の表現を挙げ、これらは「表現が強くなる傾向がある」と指摘。場所や周囲の状況を踏まえ、自らの発言をコントロールしていくことが大切だ、と諭している。
「誰もがスマートフォンで写真や映像を発信できることを意識しましょう」との記述もあり、メディアがいなくても報じられるケースがあることを想定するよう、求めている。
リスク軽減の対策にも3点言及。2点目には「支持者や身内と使っている『危ない表現』を確認」とある。周囲の喝采や同調に引きずられると、「公で言うべきことではない」ことを口走る可能性があるとして、テーマに注意するよう求めている。確かに、最近の失言には、居酒屋で話しているんじゃないんだから〜と、ツッコミをいれたくなる内容が多い。「日頃の言葉遣いを、第三者にチェックしてもらいましょう」と、これまた丁寧なアドバイスも付けられている。
聴衆に「届く」ための演説の心構えに言及したペーパーもあった。「聴衆を引き込む『ラジオパーソナリティー型』演説」を意識するほか、関西のバラエティー番組のやりとりを参考にするよう求めた「聴衆を参加させる『関西準キー局型』演説」など、かなり事細かなアドバイスだっだ。
このペーパーをすべて頭に入れ込めば、完璧な演説ができるだろう。でも、読後感のものさみしさといったら、ない。政治家は「言葉」が命といわれるからだ。人に言われて覚えることがあまりにも多すぎて、自分が本当に思ったことを訴えられるだろうか。少し、心配になってしまった。 
 
強めのワードに注意…自民が"失言防止"マニュアル作成
自民党が「『失言』や『誤解』を防ぐには」と題した“失言防止マニュアル”を作成し、党内に配布した。桜田義孝前五輪担当相や塚田一郎元副国土交通相が失言で相次いで辞任しており、夏の参院選を前に引き締めを図る狙いがありそうだ。
自民党遊説局が2、3月に開いた研修会の要旨が「遊説活動ハンドブック」の号外としてA4判1枚にまとめられ、国会議員や都道府県連、参院選候補予定者に電子データで送付された。
注意書き冒頭は「発言は『切り取られる』ことを意識する」で、回避の具体策も指南。「読点(、)が続くダラダラしゃべりは『切り取り』のリスクが増す。句点(。)を意識して短い文章を重ねることで、余計な表現も減る」としている。
「タイトルに使われやすい『強めのワード』に注意」との部分では(1)歴史認識や政治信条に関する個人的見解(2)ジェンダー、LGBTについての個人的見解(3)事故や災害に関し配慮に欠ける発言(4)病気や老いに関する発言(4)身内と話すようなウケも狙える雑談口調の表現――の5パターンを列挙。「歴史認識」については「謝罪もできず長期化の傾向」との注釈が追記されている。その上で「プライベートな会合でも、誰もがスマートフォンで写真や映像を発信できる」と指摘した。
締めくくりでは「『弱者』や『被害者』に触れる際は一層の配慮を」とし、「表現に『ブレーキ』をかけるようにしましょう」と注意喚起している。
懇切丁寧な内容だが、文面を見た自民党関係者は「情けない」と漏らした。 . 
 
話題の「自民党失言防止マニュアル」の今更感と、経営者も参考にすべき点
政界では議員の失言が続くなか、自民党が「失言防止マニュアル」を作成し配布したとマスコミ各社が伝えています。党内外から様々な声が上がっていますが、私にすると今頃?新人議員の研修会などで配布されたりしていないの?という感じです。
マニュアルや研修会は有って当然
プロ野球界や角界などスポーツの世界でも、ルールやマナーについては新人に対してはもちろん、年に一回程度の全体での研修会なども実施しています。ファーストフードやスーパー、コンビニなどのサービス業では、教育マニュアルを整備し、新入社員やアルバイトには導入研修などをして現場に送り込みます。社内ルールや就業規則などを記した従業員手帖を配布し、就業中は携行させるところもあります。そこまでしても、バイトテロやSNSへの不適切な投稿は無くなりません。
業界ごとに必要なスキルや注意すべき事は変わってきますし、マニュアルに求められる内容も変わります。今回自民党で配布されたマニュアルは、言葉を武器にする政治家にとっては極めて基本的なこと。確かに、地方議員や首長を経て国会議員になった議員も多く、政治家としてはベテランの人も多いでしょう。しかし、過去にも多くの議員が失言で失脚や辞職しているのですから、このようなマニュアルは当然整備され配布されている、もっと言えば毎年改訂されながら更新されているべき物です。
今まで作っていなかった方が不思議なくらいの物ですから、「今更」でも作った自民党は(何もしない他の政党よりも)まだ危機感があるということでしょう。
会見の際には参考になる
政治家にとっての失言マニュアルですが、企業の記者会見、特に謝罪会見をするような際にも参考になります。マニュアルのタイトルも「失言」や「誤解」を防ぐには。報道された画像などから一部をそのまま抜き出してみます。
「 発言は「切り取られる」事を意識する / 報道各社は、放送の尺や記事の文字数など限られた条件の中で取材内容をまとめます。当然、政治家の演説会等での発言や映像を「丸ごと」発信することは、ほぼありません。確実に一部が切り取られ報道されます。わかっているつもりでも、意外と忘れているこのポイント、改めて意識しましょう。 」
「 報道内容を決めるのは目の前の記者ではない / 日夜、政治家の動向や発言を追う報道記者。しかし、彼らの取材内容がそのまま報道されるわけではなく、「編集」という作業が社内で加えられます。これは、取材内容を各社の方針に沿ってまとめたり、記事が多くの読者の目に触れるようにインパクトをつけたりする作業で、現場記者とは別の担当が行っています。ですから目の前の記者を邪険に扱うようなことはせず、自らの発言に注意しながら、丁寧に対応しましょう。また、親しい記者の取材も注意が必要です。説明を端折ったり、言葉遣いが荒くなったりしないよう心がけましょう。 」
これまでもこのブログでも取り上げたり、メディアトレーニングセミナーなどでお伝えしてきましたが、サウンドバイト(SOUND BITE 耳に強く印象に残る言葉)とクォータブルコメント( QUOTABLE COMMENT 引用できるコメント)を取られないようにと注意しています。
謝罪会見で記憶に残るサウンドバイトの例では、「私は寝てないんだ」や「社員は悪くありません」など。クォータブルコメントは最近では明石市泉市長の音声テープの一部切り取りや東京オリンピックの森喜朗組織委員会会長の(真央ちゃんが)「見事にひっくり返った。あの子、大事なときには必ず転ぶ」発言。どちらも、発言全文を読む(聞く)と全然印象が違うのですが、一部だけ切り取られて報道されたために印象を悪くし、ネットで議論になりました。
また、親しい記者との会話や取材前後の雑談でも気をつけなければなりません。猪瀬東京都知事(当時)も取材後の雑談での発言を記事にされて謝罪しています。 名前は出せませんが、過去には旧知の社長が親しい新聞記者と食事をし、信用をして「ここだけの話」をしたら翌日には記事になり、激怒して私に相談(というよりも愚痴ですね)にこられたこともあります。話を聞くと事実であり否定もできない事でした。記者としては自分にだけの「リーク」だと受け取ったのでしょう。
失言マニュアルに話を戻します。後半には「リスクを軽減する3つの対策」があげてありますが、この中でも最後の 「対策3 「弱者」や「被害者」に触れる際は一層の配慮を」 は、謝罪会見でも重要です。 自分(自社)は悪くないという主張が中心となり、被害者や消費者への配慮が欠けた発言で荒れた会見や炎上もたくさんありました。
今回の自民党の「失言防止マニュアル」を参考に、社内に潜むリスクを洗い出し、「○○○防止マニュアル」の作成に取りかかってはいかがでしょうか? 
 
自民党の「失言防止マニュアル」は果たして実用的か 5/21
自民党が作成して所属議員に配布した「失言防止マニュアル」。早速、党内からは「レベルが低い」とか「恥ずかしい」という声さえ出ている。失言する議員が次々と出てくるのだから致し方ないと思うのだが、批判噴出のマニュアルとはどんなものだろう。
はて、誤解なんてあったっけ?
マニュアルは、自民党遊説局が今年2、3月に開いた研修会の要旨をまとめたもの。長年、人にまつわるヒューマンリスクを専門にしてリスク管理の仕事に携わっているが、こんなマニュアルも珍しい。
最初に引っ掛かったのが「『失言』や『誤解』を防ぐには」というタイトル。はて、誤解なんてあったっけ? 誤解というのは、相手の言葉の意味を取り違えたり、間違った解釈や理解をすること。公表されることを前提に題にするなら、「誤解」というより「暴言」ではないのかと思うのだが……。
そうか、これは自民党が所属議員に配布した議員目線のマニュアルだ。たとえ世間が「失言」と捉えても、政治家はあくまで「誤解を招いた言葉」で通してしまうこともある。だから「誤解」が使われたのだ。
自民党には豊富な失言事例が集まっている
マニュアルは、ここ数年の失言や暴言を念頭に作成されている。文中には「リスクを軽減する3つの対策」とあり、要点がコンパクトにうまくまとまっている。プレゼンなどでも伝えたい部分を3点に絞るというのは常套手段で、記憶に残りやすい。良い点は、注意書きや対策のどれに対しても事例がすぐに思い浮かぶことだ。
いくら中身を上手に作成しても、事例がなければピンとこないこともある。その点、このマニュアルはどこを読んでも「あぁ、あの人か」と、その対策まですんなり頭に入りやすい。いまや自民党には豊富な失言事例が集まっている。失言防止マニュアルは、自民党の失言カタログでもあった。
注意書きの1つ目は「発言は『切り取られる』ことを意識する」。桜田義孝前五輪相のように、切り取られるような発言が上手い政治家もいる。だから失言を繰り返すわけだが、その対策は(1)として「句点(。)を意識して短い文章を重ねていくことで、余計な表現も減り、主張が誤解されにくくなります」と説明されている。
「文章は短く、ダラダラ説明しない」は、効果的に話を聞かせるための基本だ。確かに、短い文章が重ねられて余計な表現がなければ、それが失言だったとしても、わかりやすくインパクトは大きい。「そりゃ総理とか副総理がそんなこと言えません。でも私は忖度します」。塚田一郎前国交副大臣の失言は、ある意味では対策(1)を実践した結果だったのだ。
メディア対応の基本を知らない政治家が少なくない
2つ目の注意書きは「報道内容を決めるのは目の前の記者ではない」。メディア対応・対策は政治家として重要項目であるため、発言が丸ごと報じられるわけではなく、視聴者を意識した編集が入ると懇切丁寧に解説。この丁寧すぎるところがこのマニュアルの良い点だ。裏を返せば、それだけメディア対応の基本を知らない、わからない政治家がいるということでもある。
「目の前の記者を邪険に扱わない」「丁寧に対応」「親しい記者の取材も注意」。もっともな注意点が挙げられ、あの大臣やこの大臣の歪んだ顔が浮かんでくる。丁寧なマニュアルに沿って対応していれば、マニュアル作成がもう少し早ければと悔しがっているかもしれない。
注意を促したい党内事情でもあるのだろうか
注目すべきは「タイトルに使われやすい『強めのワード』に注意」。表現が強くなる可能性のあるパターンを具体的にわかりやすく5つに分類している。分類を見れば、このところ自民党で勃発した舌禍事件がおさらいできる。
「歴史認識、政治信条に関する個人的見解」には、「謝罪もできず長期化の傾向」と但し書きがついている。わざわざ但し書きをしたのは、注意してほしい人物に面と向かって言えないけれど、注意を促したいという党内事情でもあるのだろうか。
「ジェンダー(性差)・LGBTについての個人的見解」「事故や災害に関し配慮に欠ける発言」「病気や老いに関する発言」「気心知れた身内と話すような、わかりやすく、ウケも狙える雑談口調の表現」。分類ごとに政治家の顔が浮かび、問題が何なのか、何がどういけなかったのか即座に飲み込める。ここでは、誰もがスマホで写真や映像を発信できることを意識すること、発言をコントロールする大切さも指摘されている。
注意すべき場所として身内の会合や酒席
発言をコントロールするための対策(2)としては「支持者や身内と使っている『危ない表現』を確認」。前述した塚田氏の「忖度します」発言などは、アドバイスにある「日頃の言葉遣いを、第三者にチェックしてもらいましょう」をやっていれば避けられたかもしれない。注意すべき場所として身内の会合や酒席などをあげ、盛り上がる「トークテーマ」や雰囲気に注意を促している。
桜田氏の辞任前にこのマニュアルができていたら、きっと書面を読み続けるだけの大臣になり、あの面白さは印象に残らなかったかもしれない。対策(3)では「『弱者』や『被害者』に触れる際は一層の配慮を」と、弱者や被害者目線を忘れないよう呼び掛けている。
マニュアルを作成すれば「やった感」があるが……
「わざわざマニュアル化するものか」という意見はもっともなのだが、マニュアルにしなければ気がつかないこともある。一方、マニュアルは作って配布が終われば「やった感」があり、そこで終わってしまいがちだ。徹底するには、その後のフォローが必要になる。苦手な質問や反論された時の対応、失言しないための話法のバリエーションなど、まだまだ取り組めることはあるだろう。
そもそも、失言する政治家は言っていいことと悪いことの判断がつかない、言っていいラインが決まっていないのが問題だという意見も聞く。そこは政治家としての「見識」と「資質」の問題である。もう議員になっちゃった先生たちには資質があるというのが大前提であり、マニュアルもそこまで付き合っていられない。
失言を失言として認識できなければマニュアルがあっても意味はないし、自身の失言リスクを客観視していなければマニュアルを読む気は起きないだろう。
そこを少しでもカバーするなら、第三者にチェックしてもらいながら失言の「ネガティブリスト」を作成するのがいいだろう。ネガティブリストとは、「言ってはいけないこと」のリストだ。リストがどれだけ長くなるのか、政治家の先生たちには、そこで自分の失言リスクと資質を振り返ってもらうしかないだろう。
できれば党の垣根を越えて、マニュアル配布をお願いしたいところだ。 
 
野党も羨む!? 自民党の“遊説虎の巻” 5/21
賛否両論の“失言防止マニュアル”は「遊説ハンドブック」の号外だった
自民党の遊説局が5月10日に全ての所属国会議員や、夏の参議院選挙の候補者に配布した、「『失言』や『誤解』を防ぐには」と題したいわゆる“失言防止マニュアル”。FNNも含め様々なメディアが、賛否両論を交え取り上げた。
「発言は切り取られることを意識する」
「タイトルに使われやすい『強めのワード』に注意」
マニュアルは、こうした見出しをつけた上で、「説明を端折ったり、言葉遣いが荒くなったりしないように」「歴史認識、政治信条に関する個人的見解や事故や災害に関し配慮に欠ける発言には特に気をつけるように」などと注意喚起し「誰もがスマートフォンで写真や映像を発信できることを意識しましょう」と呼びかけている。
自民党議員について「復興以上に大事」と発言して更迭された桜田前五輪担当相や、安倍首相と麻生副首相を「忖度した」と発言して辞任した塚田前国交副大臣の舌禍の記憶が残る中で、自民党としては夏の参議院選挙に向け引き締めを図る狙いがあるとみられるが、「よく読むと勉強になる」との声が党内から挙がる一方で、野党はもちろん自民党の閣僚経験者からも「レベルが低い」といった否定的見方も出ている。
このように物議を醸した“失言防止マニュアル”だが、実はこれは「号外」として配られたものであり、これよりも詳細に遊説のコツなどがまとめられた【遊説活動HANDBOOK】が存在しているのをご存じだろうか。これがなかなか面白いのだ。
演説の“ビールケースのステージ”は理想
「歩いた家の数しか、票は出ない。握った手の数しか、票は出ない」
「行動する事は少しも恐れはしない。恐れるのは、ただ無為に時を過ごす事だけだ」
ハンドブックの冒頭には、田中角栄元首相とウィンストン・チャーチル元英国首相の言葉が大きく書き込まれている。そして、「政治に携わろうとする者は昼夜を問わず自らの足で歩き、有権者と言葉を交わし、指が腫れるほどの握手を繰り返す。そこまでして私たちが得なければいけないもの、それは有権者からの『信頼』です」とした上で、ハンドブックには遊説活動のコツが具体的に4つの点にまとめられている。それを1つ1つ見ていきたい。
1 「遊説のスタイルを考える」
1番目の項目では、自民党の様々な遊説の形が紹介されている。北海道では「お茶懇」として、お茶の間を借りて、地元政治家と有権者が語り合う“集会スタイル“がとられていることが紹介され「陣営からの細かいお願いを地域毎に浸透させる際に有用」「意見交換の後は皆で写真撮影としっかり握手」などと指南が書かれている。
また、「商店街の練り歩きとスポット演説」の組み合わせの遊説スタイルが紹介され「地元の商店街という場所柄、お客さんや通行人、またお店で働く皆さんはその地域に居住する有権者の可能性が高く、活動の効果が期待できます」と利点が示されている。
その上で演説の際には「ビールケースなどをステージに使い、聴衆と近い目線で話ができることが理想です。最後に一人ひとりとしっかり握手することをお忘れなく」と、安倍首相がビールケースのステージで演説している写真付きで説明がされている。
他にもこれまでの効果的な取り組みが紹介され、番外編としては、家族で演説会に行けるような環境を整えていくことの必要性が指摘されていた。
筆者としては小泉進次郎議員が「赤ちゃんが泣いてもいい。子どもが走り回ってもいい。」というコンセプトで取り組んでいる「0才からの活動報告会」を取材した際、新しい時代を感じたことを思い出した。
また、「過密スケジュールで握手する時間が十分に取れない」時には「ハイタッチ」がおススメとも説明されている。ちなみに、安倍首相も、演説などの際に聴衆とのハイタッチを多用している。
宣伝車の効果的な使い方も・・・
2 「遊説の場所を考える」
2つ目の項目は演説会の場所選びについての指南だ。
準備がスムーズだからと言って「いつもの場所」になりがちな演説場所について、「『いつもの場所=“有権者のいる場所”』という固定観念を取り払い、本当に効果的な場所であるか見直してみる」と記されている。
さらに参考として期日前投票の利用が増える中で、演説場所を「期日前投票所の直近」にすることで、「演説会後に投票依頼をアナウンスできることはもちろん、演説の中でも投票を促してもらうことが可能」という点が挙げられているほか、「商店街のような有権者の生活に近い場所を選ぶ」「宣伝車の運行ルートの見直し」についても触れている。
3 「遊説のツールを考える」
3つ目の項目は遊説するときの道具の説明だ。
ここで大きく記述が割かれているのは「宣伝車」についてだ。選挙中の宣伝車から候補者の名前が連呼される様子はよく目にするが、「うるさい」という指摘も多く、スピーカーの音が反響し、もはや何を言っているのか聞き取れない演説もある。また車の上からの演説は目線が高くなり、有権者との距離が開くという問題も指摘されているが、ここではそれらへの対処法が指南されている。
例えば「スピーカーを使用せずに、窓から地声であいさつ」する例や、細かい路地がある住宅街では「自転車遊説」を行っていることが紹介されている。音の問題についても、PA(Public Address)システムという美しい音を届けるシステムが勧められているほか、上から目線の演説と言われないように、前にも登場した「ビールケース」を使用することや、「トラックの荷台」を使用した例なども記され「現場にあるものを使うことで、目の前の聴衆にも映像や写真を見た人にも親近感やインパクトを与えることができる」と説明されている。
“その女性は奥様か?”“お父さんお母さんによろしく”の問題点
4 「遊説の言葉を考える」
そして最後の4点目は“失言防止マニュアル”にも通じる注意点だ。
ここでは、「果たして、その女性は『奥様』か!?」として、宗教や文化、性別や容姿などの違いによる偏見・差別を含まない政治・社会的に中立な表現や用語を使おうという「ポリティカル・コレクトネス」という概念が説明されている。そして「昔ながらの概念で固定化されてしまっていませんか?」との注意喚起とともに、「多様性を重んじる自民党にふさわしい言葉づかいになっているか、一度点検してみましょう」と呼びかけている。
例えば、前述の「奥様」という表現については、独身女性に呼び掛けている可能性もあるし、「主夫」として働いている男性がいることも指摘されている。また、具体例として女子学生が「人口減少、少子化時代なんだから子ども産みなさないよ!」と言われたことや、「選挙カーに手を振ったら、『お母さん、ありがとう』と言われた女性が、不妊治療中で悲しい思いをした」という話、子どもに対して「お父さん、お母さんに宜しく伝えてね」と話している候補者を見て、シングルファザーの有権者から「家族の形は様々だと思いますので、『おうちの方にも』と言ったほうが良い」と指摘されたケースなどが挙げられている。
過去に「必ず3人以上の子供を産み育てていただきたい」と結婚披露宴で発言し、その後撤回した国会議員もいた。本人としては「良かれ」と思って言ったことが、誰かを傷つけたり悲しませたりすることもある。
自分の価値観と他人の価値観が同じだと思わないことも重要だろう。もちろん公人であるかないかに関係なく、我々も十分注意して判断しなければいけないことは言うまでもない。それだけ言葉というのは、重みがあるのだ。
野党にも有用?マニュアルを生かすかは候補者次第
“失言防止マニュアル”も含めた、こうしたマニュアルを遊説局が作成したことについて、ある自民党幹部は「ここは幼稚園じゃない。そんなことは言わなくてもわかることだ」と吐き捨てていた。一方で、野党議員には自民党のこうした手厚い“指導”に羨ましさを抱き、マニュアルを有効な実践書として欲しいという人もいた。
政治家の普段の活動の仕方や、発言のスタイル、選挙戦の在り方については様々な形があるだろう。これまでの政治家たちが積み上げてきた効果的な手法もあれば、時代に合わせて変化していくもの、新たに生み出される方法もある。世の中にマニュアルというものが溢れていることは身に染みて感じるところだが、マニュアル化には画一化を招いてしまうという問題点もある。
それだけに、このマニュアルを見た人自身が、いかにこれを有効活用し、自分のものとして生かすことができるかが問われている。そして、その結果は、来る夏の参議院選挙にもつながっていくことになるだろう。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


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