「ややこしい質問受けます」

安倍天皇 本音がポロリ

朝廷に平伏し 順番待てば
大臣になれます
派閥 ただの寄合い所帯になりました

派閥の道祖神 出番なし
暇な毎日 お昼寝眠り込む
 


派閥道祖神
 
 
 

 

自民党
それぞれの派閥の主張 切磋琢磨
良くも悪くも 自浄作用
実力を国民が認めました
 
 

 

野党 バラバラ
長期の一党独裁
唯我独尊
国民もなめられたものです

 

●安倍政権"移民法"の危うさ 11/2
外国人労働者の受け入れを拡大する「入国管理法改正」
臨時国会が10月24日に召集された。
その24日には安倍晋三首相が衆参両院の本会議で所信表明演説に臨んだ。翌週の29日からは3日間、所信表明演説に対する代表質問が与野党の議員によって行われた。
今国会の審議の焦点は、「憲法改正」と外国人労働者の受け入れを拡大する「入国管理法改正」だ。会期は12月10日までの48日間。この短い会期中にどこまで踏み込んだ審議ができるのか。安倍首相にそこまでの力量があるのだろうか。
与党議員も「移民施策とどこが違うのか」と批判
所信表明演説で、安倍首相は憲法改正について「憲法審査会に政党が改正案を示すことで国民の理解を深める」と述べ、この国会で自民党案を提示する意向を示した。
一方、入国管理法改正案に対しては、企業の人手不足に対応するため、外国の人材を活用する必要性を強調したが、憲法改正と同様に日本の国の根幹を大きく変える可能性のある重要な審議案件だ。外国人労働者をどう扱うのかなど具体的に詰める必要がある。
今回はこの入国管理法改正を中心に話を進めていきたい
安倍首相は入国管理法改正案について補正予算案の成立後すぐに審議入りする意向だが、野党議員や一部の与党議員からは「移民施策とどこが違うのか」といった疑問の声が多く出ており、安倍首相の思惑通りにはならず、国会の会期延長は避けられない。
これまで自民党は移民受け入れを否定してきた
入国管理法改正案のポイントは次の4点である。
(1)「特定技能」という在留資格を設ける
(2)その枠内で技能と日本語の能力のある外国人を受け入れる
(3)在留期間は最長5年で、家族の帯同は認めない
(4)ただし熟練した技能があると判断されれば家族を呼んで労働を継続できる
このうち(4)はどう考えても永住につながり、移民そのものだ。そこで沙鴎一歩は言いたい。
これまで自民党は「入国する時点で永住を許可されているごく一部の外国人のみを『移民』と呼ぶ」と移民を独自に定義し、移民受け入れを否定してきた。
だからと言って正面から移民政策を議論することを避け、入国管理法の安易な改正で外国人労働者の枠の拡大を目指すのは、小手先の対応で根本的解決には至らない。
日本社会にとって人手不足対策が大きな社会問題になっているのは事実だ。安倍首相はこの臨時国会で入国管理法改正案の早急な成立を目指すのではなく、時間をかけて根底にある移民受け入れの是非をじっくり議論し、世論に問うべきだ。そのうえで法の改正や新たな法の成立を目指してほしい。
「入管政策の抜本的な転換であることは間違いない」
「今国会では日本社会のありようを変える可能性のある重要法案が審議される。外国人労働者の受け入れを拡大する入国管理法改正案だ」
冒頭部分からこう指摘するのは、10月25日付の毎日新聞の社説である。見出しは「臨時国会スタート 首相が議論の土台作りを」だ。
ちなみにこの25日付で新聞各紙はどこも、安倍首相の所信表明演説に対する社説を掲載している。
毎日社説は「深刻な人手不足への対策であり、移民の受け入れではないというのが政府の説明だが、入管政策の抜本的な転換であることは間違いない」と指摘する。
さらに毎日社説は論を展開する。
「事実上の移民政策につながるとの指摘がある一方で、家族の帯同を5年間認めないなどの制限に対しては人道上の問題も懸念される」
「首相は『世界から尊敬される日本、世界中から優秀な人材が集まる日本を創り上げていく』と強調した」
「そうであるならば、人手不足対策に矮小化するのでなく、移民の受け入れも含めた社会政策として真正面から論じるべきだ。与野党で徹底した議論をしてもらいたい」
「真正面」からの議論には大賛成だ。やはり時間をかけて議論する必要がある。
「自民党内を刺激したくない」という思惑がうかがえる
10月25日付の朝日新聞の社説もその中盤で出入国管理法改正案について触れ、次のように指摘する。
「首相は国内の深刻な人手不足を理由に、外国人材の必要性を強調した。だが、言及は総じてあっさりしており、この国のかたちや社会のありように関わる重大テーマだという認識はうかがえなかった。自民党内に根強い異論を刺激したくない――。そんな思惑から深入りを避けたのなら、本末転倒だろう」
どう見ても「国のかたちや社会のありように関わる重大テーマ」なのだ。朝日社説が指摘するように自民党内の反対論を気にするあまり、正面からの論議を避けているのだとしたら実に情けない話である。
さらに朝日社説は主張する。
「首相が演説の中で繰り返し使ったのが『国民の皆様と共に』という言葉だ。『国民』という以上、政権与党を支持しない人を含め、多種多様な人々に向き合う覚悟が必要である」
安倍首相は自民党総裁である前に日本という国の首相なのだ。自民党1党のことを慮って本筋から外れるような発言は許されない。
政府が「来年4月から運用を始める」と急ぐ背景
10月25日付の社説だけでは主張しきれないと判断したのだろう。朝日新聞は大きな1本社説(29日付)で「外国人労働者 『人』として受け入れよう」との見出しを立てて出入国管理法改正案を「虫のいい政府案」だと批判している。
その社説を少しのぞいてみよう。
「政府は、是が非でも会期中に成立させ、来年4月から運用を始めるとしている。あまりに性急ではないか。法案の中身も生煮えの感が強く、疑問は尽きない。制定ありきで突き進むようなことをすれば、将来に禍根を残す」
多数派の論理だけで法案を通せば、この先、痛い目に遭うのは私たち国民だ。そこを安倍首相には真剣に考えてほしい。
朝日社説は「これまで日本は、外国人の単純労働者を認めない立場をとってきた。だが現実は、知識や技能を習得して母国に持ち帰ることが目的の『技能実習生』や留学生アルバイトが、単純作業を含むさまざまな現場で働く。外国人労働者は128万人と、この5年間で倍増した」と現状を分析したうえで、次のように訴える。
決められた期間だけ働かせる「虫のいい法案」
「外国人に頼らなければ、もはやこの国は成り立たない。その認識の下、同じ社会でともに生活する仲間として外国人を受け入れ、遇するべきだ。朝日新聞の社説はそう主張してきた」
ちょっと待ってもらいたい。本当に日本は外国人に頼らなければ成り立たないのか。たとえば労働力が不足していくなかで、IT(情報技術)やAI(人工知能)、それにロボット技術を駆使していくなどさまざまな方法もあるではないか。
朝日新聞のカラーを考えれば、外国人労働者を大切にしようとするスタンスは分からないでもない。だが、沙鴎一歩はまだ「仲間」としての意識を持つ気までにはなれない。
さらに朝日社説は指摘する。
「国際基準に照らせば移民に他ならない。だが安倍首相は、外国人受け入れに消極的な自民党内の声に配慮してか、『移民政策はとらない』と繰り返す。つまり思い描く労働者像は『単身で来日し、決められた期間だけ働き、そのまま帰国してくれる人』ということになる。ずいぶん虫のいい話ではないか」
産経さえも「急ぐのは極めて危うい」と主張
産経新聞も10月25日付の社説(主張)で入国管理法改正案に対し、慎重な判断を安倍首相に求めている。安倍首相を支持する産経社説としては珍しい。
産経社説はまず「だが、日本の国の形を大きく変え得る政策転換だ。これまで認めてこなかった単純労働に道を開く。高度な試験に合格すれば家族の帯同を含む永住を可能にする。移民政策ではないといわれても納得することは難しい」と書く。
さらに「少子高齢化に伴う人手不足が背景にあるが、外国人の大規模受け入れに世論は分かれている」とも指摘した後、こう主張する。
「永住外国人については社会保障や家族の就労などの問題が必ず起こる。詳細な制度が詰め切れていない。野党はもとより自民党からも慎重論が出ている。法案提出ありきで急ぐのは極めて危うい」
沙鴎一歩も同感である。
安倍政権の緩みと驕りが見える
ところで各党の代表質問に対する安倍首相の答弁を聞いていると、長期政権の緩みや驕りが透けて見える。
たとえば立憲民主党代表の枝野幸男氏の代表質問(29日)に対する受け答えだ。枝野氏の改憲を巡る指摘には一切答えず、続く自民党筆頭副幹事長(総裁特別補佐)の稲田朋美氏の憲法9条に自衛隊を明記する改憲案についての質問には「首相としてこの場で答えることは差し控える」と言いながら「自民党総裁として一石を投じた考えの一端」として「命を賭して任務を遂行する隊員の正当性を明文化することは国防の根幹にかかわる」と強調していた。
野党議員の質問に真っ当に答えず、重用する与党議員の質問には雄弁に語る。しかも首相から総裁へと立場を変えて答弁する。いかがなものか。国会の代表質問の場である。あくまでも首相として答弁に立っていることを忘れてもらっては困る。
安倍首相の態度は慢心さにあふれ、謙虚さがない。そこを反省し、入国管理法改正も憲法改正も、私たち国民の懸念にしっかり答えられるようじっくり議論を重ねてほしい。 
 
 

 

票田を大事にします

 

●安倍晋三首相「ややこしい質問受ける」 参院法務委出席へ 12/5
安倍晋三首相は5日、東京都内で開かれたエコノミストらの会合であいさつし、6日の参院法務委員会への出席について「(南米訪問から4日に帰国して)時差が激しく残っている中、2時間出て、ややこしい質問を受ける」と述べた。
委員会では外国人労働者の受け入れ拡大に向けて新たな在留資格を創設する出入国管理法改正案の質疑が行われる見通し。首相の出席は野党側が強く求めていた経緯がある。
首相はあいさつで、米国と中国の貿易戦争に関し、「(米国が関税の引き上げを延期して)90日間は停戦状況になったが来年、90日(の期限)が切れる」としたうえで、「国際経済の状況に左右されない強い経済をつくっていきたい」と述べた。 

 

●安倍首相「ややこしい質問を受ける」 野党は激しく反発 12/6
外国人労働者の受け入れを拡大する法案の審議をめぐって、安倍首相が5日夜、「あすは委員会に出て、ややこしい質問を受ける」と発言したことに対し、野党は激しく反発し、幹部から内閣不信任案の提出を示唆する声も上がっている。
安倍首相は、「時差が激しく残っている中、あすは法務委員会に2時間出て、ややこしい質問を受ける」と述べた。
安倍首相は5日夜、東京都内のイベントで、出入国管理法改正案の6日の国会審議に出席することについて、「ややこしい質問を受ける」などと発言した。
この国会では、外遊を理由に安倍首相の出席が少なかったこともあり、野党からは、「ふざけるな。冗談じゃない」、「国会を下に見ている。おごっているとしか思えない」などと、怒りの声が出ている。
立憲民主党の辻元国対委員長は、「ややこしい質問を受けたくないなら、ややこしい法案を出さなければいい」、「この一言をもっても、不信任に値すると言いたい」などと述べた。
出入国管理法改正案について与党は6日、参議院法務委員会で採決し、7日に成立させたい考えだが、野党側は、安倍首相の発言も理由として、衆議院で内閣不信任案を提出することも視野に徹底抗戦する構え。 

 

●首相「明日は委員会、2時間出てややこしい質問受ける」 12/5
安倍晋三首相は5日、都内で開かれたエコノミストらの懇親会であいさつし、「(G20から帰国した)時差が激しく残っているなかにおいて、明日は(参院)法務委員会、2時間出てややこしい質問を受ける」と述べた。
6日の参院法務委では、外国人労働者受け入れ拡大に向けた出入国管理法(入管法)改正案について、首相が出席して質疑を行うことで与野党が合意している。
野党側は、法務省による失踪した外国人技能実習生の調査結果について「発表が実態と異なる」などと追及。議論の前提が崩れているとして今国会での成立に反対している。  
 
 

 

権力維持 最優先

 

●立憲「ややこしい質問ですが」 首相はゼロ回答 12/6
共産・志位氏、首相発言に「ややこしい質問というより、単純明快なところで法案の土台が崩壊」
共産党の志位和夫委員長は国会内で記者会見し、安倍晋三首相が5日に入管法をめぐる野党の質問を指して「委員会に2時間出て、ややこしい質問を受ける」と述べたことについて、「ややこしい質問というよりも、非常に単純明快なところで法案の土台が崩壊している」と述べた。技能実習生への聞き取り調査の「聴取票」を野党が独自に分析し、法律違反である最低賃金割れが全体の67%を占めることがわかったことを挙げ、志位氏は「政府は最初は0・8%、22人と言っていた。これは改ざん・捏造だと白日の下になった。山下法相は『調査をする』と言ったが、だったら調査結果を待たずに先に進めないではないか」と述べ、廃案を求めた。
技能実習制度って? /  いま日本では、約128万人の外国人が働いています。その2割にあたる約26万人は、「外国人技能実習制度」によって来日した実習生です。1993年に始まったこの制度は、実習生が日本で専門的な技術を学んで母国に持ち帰るという、技術移転を目的とした「国際貢献」がうたい文句です。ところが、実際には渡航前に仲介業者への手数料や保証金として多額の借金を背負い、さらに実習の受け入れ先では、低賃金や長時間労働、パワハラ、セクハラなどの人権侵害にさらされるケースが相次いで報告されています。新たな在留資格の「特定技能」の1号には、技能実習を3年経験した外国人は無試験で移行できます。政府は、「特定技能」のうち、1号は半数程度を技能実習からの移行が占めると試算しています。
国民・舟山氏、首相に「お疲れがとれてから審議に」
国民民主党の舟山康江・参院国対委員長は国会内で記者会見し、外遊から帰国したばかりの安倍晋三首相が、入管法の審議をめぐる野党の質問を「ややこしい」と発言したことについて、「たしかに外交日程でお疲れかもしれないが、面倒くさいと思っているのだったら急がなくてもいい。しっかりお疲れがとれてから(国会)審議に臨んでいただければ」と述べた。そのうえで、舟山氏は「ややこしいととられるのは、まだ法案のなかで様々な解釈の余地があったりとか、今後の課題として積み残っているとか、そういったことの表れだ。問題発言でないか」と批判。「いいですよ、今日慌ててやらなくても」とあきれ顔だった。
首相が委員会に出席 野党の切り口に注目
外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法(入管法)改正案を審議する参院法務委員会に、安倍晋三首相が出席している。入管法改正案の審議に首相が応じるのは、衆参あわせて3回目。野党側は午後3時半ごろから、立憲民主党の有田芳生氏や国民民主党の桜井充氏らが質問に立つ。改正案について、与党は6日中に参院法務委で採決し、あす7日には参院本会議で成立させたい考えだが、野党側は「審議が不十分」だとして反発しており、流動的だ。改正案は、外国人労働者の受け入れ見込み数や対象業種など重要な内容を、成立後に定めるとしている。「中身がスカスカだ」と批判する野党がどのような切り口で攻めるのかが注目される。
自民・長谷川法務部会長、まずは山下法相に質問
参院法務委員会で安倍晋三首相が出席しての審議が始まった。質問者のトップバッターは、自民党の長谷川岳氏。北海道の「YOSAKOIソーラン祭り」の仕掛け人として知られる長谷川氏だが、自民党の法務部会長として改正法案の党内論議をまとめ、国会提出に道筋を付けた人物でもある。ただ、質問の冒頭では安倍首相を指名せず、まず山下貴司法相に対して技能実習制度について「適正化が問題になっている」と質問。山下法相はこれまでの答弁を繰り返すかたちで、「しっかり対応するために省内にプロジェクトチームを設置し、制度を検討している」と答えた。
立憲・有田氏「総理に聞いている」 法相が答弁
野党の質問のトップバッターは、立憲民主党の有田芳生氏。かつてはジャーナリストとしてテレビ番組にも出演していたが、2010年に参院議員に初当選して、現在は2期目。有田氏は、受け入れ先で亡くなった技能実習生が多数いる点について安倍晋三首相にただした。しかし、答弁に立ったのは山下貴司法相。有田氏は「総理に聞いている」「総理に聞いている」と繰り返し声を張り上げたが、山下法相は“弁慶”よろしく答弁を強行した。山下法相を引き継ぐ形で安倍首相が答弁に立ったが、議場はヤジで騒然としたまま。「静かな環境で議論すべきだ。いかがなものか」と首相が不満を漏らしたうえで、「(受け入れ先で亡くなった技能実習生については)初めておうかがいする。答えようがない」と答えた。
野党、首相の「ややこしい質問」発言を批判か / 公明党の質問が終わり、ここからは野党の質問です。野党は、法務省による失踪した外国人技能実習生への調査を独自に分析した結果をもとに政府を追及しています。午前中の審議では、立憲民主党の有田芳生氏が、新たに、国内で亡くなった技能実習生に関するデータを突きつけて、技能実習制度の実態を検証するように法相らに求めました。この点についても、安倍晋三首相の認識をただすものとみられます。首相は5日に都内で開かれたエコノミストらの懇親会で、「明日は(参院)法務委員会、2時間出てややこしい質問を受ける」と述べました。こうした発言も野党の批判材料になりそうです。
物足りない自民法務部会長の質問 / 自民党の長谷川岳氏は、5つめの質問でようやく安倍晋三首相を指名しました。「大島理森衆院議長が、政省令で定めたら全体像を国会に示すようにと指摘した。どう受け止めるか」と尋ねました。安倍晋三首相は「(議長の)指摘は重く受け止める」と答えました。長谷川氏の質問は約10分。法案の核心部分にはまったく触れずじまいでした。長谷川氏が部会長として党内議論をリードした自民党法務部会では改正案について、「事実上の移民政策だ」との批判が噴出。日程を延長し、最後は山下貴司法相が部会に出席し、法案について理解を求めることでやっと決着したという経緯があります。法務部会長の長谷川氏だからこそ、これまで浮かび上がった論点について議論を深めてほしかったのですが、わずか10分。物足りなさを禁じ得ません。
入管法改正案とは? / 入管法改正案は、新しい在留資格「特定技能」の創設や、いまの法務省入国管理局を「出入国在留管理庁」に格上げする内容が盛り込まれています。この特定技能の資格には、「相当程度の知識や経験」を必要とする1号と、「熟練した技能」の持ち主に与えられる2号の2種類があります。それぞれ試験などで技能水準を測ることにしていますが、どんな試験を課すのかは改正法が成立後に決める方針です。政府は受け入れ対象の候補に建設や介護など14業種を挙げ、最大で初年度は約4万7千人、5年間の合計で約34万5千人を受け入れると試算しています。受け入れた外国人労働者の在留管理のほか、日本語教育や生活面の支援など、共生施策を出入国在留管理庁が担うとしています。
どれぐらいの外国人が来るの? / 入管法改正案を巡る国会審議では、実際にどれぐらいの外国人労働者を受け入れるのかが大きな焦点となっています。もし、想定よりも多く受け入れた場合は、日本人の職が奪われたり賃金が下がったりするとの懸念があるからです。政府は初年度から5年間で最大34万5千人を受け入れると試算しています。しかし、その積算根拠は、業界をまたいで似たデータを引用した例が目立ったり、数的根拠がなかったりと精度が疑問視され、野党の批判にさらされています。では、この受け入れ数の上限が何万人になるのか。それは今回の法案に書かれてはいません。政府は、改正法の成立後に決める「分野別運用方針」に盛り込む、と答弁しています。つまり、明日にも成立すると見込まれる入管法改正案は、その詳細を決めないままの「白紙委任法案」だと批判されているのです。先日の国会審議で野党議員がこう批判しました。「弁当箱だけ国会でつくり、中身は法務省が勝手に決める」。そんな弁当が売れるでしょうか。中身がわからない弁当なんて。私は怖くて買えません。
立憲・有田氏「ややこしい質問ですが…」 首相はゼロ回答
立憲民主党の有田芳生氏は追及を続け、「ややこしい質問ですが……」と質問を切り出した。これは、5日に安倍晋三首相がエコノミストの懇親会の場で「明日は(参院)法務委員会、2時間出てややこしい質問を受ける」と述べたことへの当てつけだ。有田氏は「凍死や溺死(できし)した実習生がいるのに、法務省はなぜ調べないのか」とただした。だが、答弁に立ったのは、またも山下貴司法相。「なんでよ」「総理だよ」とごうごうのヤジが飛ぶなか、山下法相は「人の死亡というプライバシーにかかわる問題なので、すべてつまびらかにできていないというのが前提だ」と、そっけない答弁でかわした。その後、答弁に立った首相も事実関係について「存じ上げませんので、お答えのしようがない」とゼロ回答だった。
これって移民政策? / 新しい在留資格「特定技能」のうち、熟練した技能の持ち主に与えられる2号では、家族を呼び寄せることができます。在留期間の上限がなく、定期的な審査をパスすれば、長期間の滞在ができるのです。永住権を得るために必要な「就労資格」にもあてはまるため、「事実上の移民政策だ」と指摘する専門家もいます。では、安倍晋三首相はどう考えているのでしょうか。これまでの審議で、首相は今回の外国人労働者の受け入れ拡大はあくまで「人手不足への対応」であり、「移民政策ではない」と強調し、2号の資格は「ハードルはかなり高い」とも答弁してきました。2号が事実上の永住資格だと警戒する与党内や自身を支持する保守層の「空気」に配慮しての答弁と受け止めました。結局、2号を設けるのは、受け入れ候補の14業種のうち、建設業と造船・舶用工業の2業種だけ。しかも両業種とも当面は設置を見送る方向で検討しています。「移民」にあたるのかどうか、その見きわめにはまだ時間がかかりそうです。
立憲・小川氏「非常に熱意のない答弁に失望」
続いて立憲民主党の小川敏夫氏が質問に立った。安倍晋三首相に質問しても、やはり山下貴司法相が答弁に立つ場面が続いた。裁判官や検事など法曹界での経験が豊富で、いつもは冷静に質問する小川氏が顔を赤らめて激高。外国人との共生施策について、「総理に聞いてるんですよ」「総理、ひと言で答えて」とたたみかける。しかし、横山信一法務委員長による答弁者の指名は「山下法務大臣」。山下法相が露払いするかのように答えたあと、安倍首相が登壇したが、答弁に新味はなかった。小川氏は「非常に熱意のない答弁に失望した」と言い残して質問を終えた。
失踪実習生、野党は独自に分析「法務省の集計と大きく食い違う」 / 技能実習生の中には、低賃金や長時間労働などの過酷な労働環境を強いられた末に、実習先から姿を消す人もいます。法務省は、のちに居場所が確認できた実習生から失踪した動機などを聞き取り調査しており、昨年は2870人を調べました。この集計結果として、法務省は当初、約87%が「より高い賃金を求めて」失踪した、と国会で説明しました。ところが、実は67%だったと集計の誤りが判明。野党の求めに応じて、調査の元資料である「聴取票」を開示しました。野党はすべての元資料を書き写して独自に分析。法律違反である最低賃金割れが全体の67%を占めるなど、「法務省の集計と大きく食い違う」と主張し、反発を強めています。
「移民政策に賛成か反対か」 直球の質問に首相は…
野党から3番手で質問に立ったのは、国民民主党の桜井充氏。横山信一法務委員長から「桜井としお君」と名前を間違われても、まったく表情を変えずに厳しい口調で質問を始めた。尋ねたのは、入管法改正案の大きな焦点である「移民政策」について。「総理は、今回の法案と離れて、移民政策そのものには賛成か、反対か」。直球の質問をぶつけた。かねて「移民政策はとらない」と強調してきた安倍晋三首相。「移民、あるいは移民政策は多義的で、一様にお答えしようがない。さまざまな文脈で用いられている」と論点を広げたうえで、「安倍政権としては、国民の人口に比して一定程度の規模の外国人、および家族を期限を設けることなく受け入れることによって、国家を維持しようとする、いわゆる移民政策をとる考えはないと申し上げている」。今国会で幾度も繰り返してきた政府の公式見解を、そのままなぞるだけだった。
国民・桜井氏、首相に「卓球の張本選手、テニスの大坂選手は、どう評価?」
国民民主党の桜井充氏からは、こんな質問も出た。「卓球の張本(智和)選手、テニスの大坂(なおみ)選手とかは、どう評価しているのか」。親が外国籍でありながら、両選手が日本代表としてプレーしていることを念頭に置いた質問だ。これに対し、安倍晋三首相は「素晴らしい活躍をしていただいて、同じ日本人として誇りに思います」と評価。その上で、「お父様、お母様が日本で生まれていないとはいえ、『自分の将来を日本でずっと頑張るんだ』という決意をして日本に来られた。海外で活躍され、日本を代表して頑張ってくれるのは、本当にうれしいことだと思っている」と語った。ただ、地方での外国人の定住について問われると、「たくさん外国人が入ってくると、いままでの習慣や生活の伝統が崩されてしまうのではないかと心配している方もいる」とし、「難しい課題だ」とかわした。
共産・仁比氏「どうして大臣が答弁」
共産党の仁比聡平氏がただしたのは、低賃金や長時間労働などが横行している、いまの「技能実習制度」についての安倍晋三首相の認識だ。「総理は『9割の方がうまく行っている』と答弁した。撤回すべきだ」と迫った。しかし、やはりここでも横山信一法務委員長は「山下法務大臣」。「どうして。どうして大臣が答弁するんですか。委員長おかしいでしょ!」。仁比氏の怒声も馬耳東風の様子で、山下貴司法相は「失踪した実習生は全体の数%だ」と説明した。失踪者の統計は「氷山の一角だ」と、なおも食い下がる仁比氏に、首相は「失踪は重く受け止めている」と答えつつも「失踪者は全体の数%。多くは実習をまっとうしている」と突き放した。
官僚が長く答弁、論戦低調 維新・石井氏の質問に
維新の石井苗子氏は、「在留管理に在留カードが使われているが、マイナンバーカードを活用すべきだ」と指摘。石井氏は11月28日の参院本会議でも同様の質問をしており、こだわりのあるテーマのようだ。石井氏は首相が本会議では「在留カードで就労可能か否かを容易に確認でき、有効だ」と答弁したことについて、「在留カードで容易に判断できるなら不法就労はなくなるはずだ」と指摘。首相は「不法滞在は複合的な対策を取ることが必要だ」と述べるだけで、議論はかみ合わなかった。さらに石井氏が「簡単に」説明を求めた内閣官房のマイナンバー担当者が、2分近くにわたってマイナンバーに関する制度を詳細に説明。首相出席の委員会だが、低調な論戦と言わざるを得ない内容だった。
糸数氏「最低賃金の不都合な真実を隠した。廃案だ」
「安倍政権の強権的な手法で、三権分立が形骸化している」。参院会派「沖縄の風」の糸数慶子氏は、質問をこう切り出した。地元の沖縄県で、米軍普天間飛行場の移設工事にともない、一時中断していた辺野古沿岸部の埋め立て用土砂の搬出作業が5日に再開されたことを挙げ、怒りをあらわにした。糸数氏の怒りは、いまの技能実習制度をめぐる政府の対応にも及んだ。失踪した実習生への法務省の聞き取り調査について、野党が元資料の「聴取票」を独自に分析した結果は「7割が最低賃金以下」だった、と指摘。「不都合な真実を隠して衆院では強行採決した。いったん廃案にすべきだ」と訴えた。山下貴司法相は、失踪した実習生の調査内容は「法務省内のプロジェクトチームで徹底調査している」と答えた。ただ、調査は法案審議とは切り離して行い、政権は7日に法案を成立させる構えを崩していない。4日の参院法務委では、野党の分析結果に対して「重く受け止める」と神妙に語った山下法相だったが、この日は一切言及しなかった。
「外国人と共生めざす」 首相、ペーパーを早口で
最後に質問に立ったのは無所属の山口和之氏。理学療法士としての顔も持ち合わせる山口氏は、「入管法改正によって外国人労働者とその家族が不幸になることがあってはいけない」と述べ、共生施策の拡充を求めた。政府は、日本語教育や外国人が受診できる医療態勢の確保などからなる「総合的対応策」を年内にも取りまとめる方針だ。答弁に立った安倍晋三首相は、手元のペーパーに目を落として早口で読み上げながら、この総合的対応策の概要を説明。「外国人を迎え入れて、互いに尊重できる共生社会の実現をめざす」と語った。
首相が退出、委員会は休会に
午後5時9分、最後の質問者の山口和之氏(無所属)の持ち時間が終了。横山信一法務委員長が「安倍内閣総理大臣はご退席いただいて結構です」と告げ、首相は一礼して委員会室を後にした。委員会はそのまま休憩になった。
与党が採決提案、野党は反発、委員長解任決議案を提出
休憩となっていた参院法務委員会は理事会に移り、与党側が採決を提案。野党は激しく反発し、横山信一委員長(公明)の解任決議案を参院に提出した。委員会は再開されないまま散会になった。これで解任決議案が参院本会議で否決されるまで、法務委員会での採決はできなくなった。参院本会議は7日午前に予定されており、入管法改正案の委員会採決はそれ以降にずれ込みそうだ。野党はさらに山下貴司法相の問責決議案も提出して抵抗することを検討している。 

 

●これが歴史的な政策転換の論戦か 記者が見た入管法審議 12/6
安倍晋三首相が出席した6日の参院法務委員会。政府はこれまでの答弁を繰り返すばかりで、野党も攻め手を欠いたまま。およそ2時間の審議は、新味に欠けるやりとりばかりで埋め尽くされました。
なんでこれほど空疎な論戦が続くのでしょうか。実は、入管法改正案の条文には、雇用契約や受け入れ機関の基準など外国人労働者の受け入れにかかわる根幹の部分が書き込まれていません。成立後に、役所が裁量で決めることができる「省令」で定めるからです。受け入れる外国人の「上限値」となる業種別の見込み数についても、改正法の成立後に定める「分野別運用方針」に盛り込まれます。
入管法はこれまでも、すべての在留資格の詳細な運用方針は、法律ではなく省令で定めてきました。ただ、今回は訳が違います。改正案は外国人を「労働者」として正面から受け入れます。「国際貢献」という建前の裏で、30年近く技能実習生や留学生を低賃金で働く人材、いわば「単純労働者」として使ってきた政策を大きく転換するのです。にもかかわらず、法案の詳細が決まっていないことを受けて、政府は国会審議で「検討中」を繰り返してきました。
中身が生煮えのままですが、政府・与党は、あす7日に法務委員長の解任決議案などを否決したうえで、同日中に参院本会議で改正法を成立させる考えです。
そうなればあと半年もしないうちに、新しい在留資格の外国人労働者がやってくることになります。政府は、どうしてこれほどまでに急ぐのでしょうか。
その理由をたどると、人手不足の解消を求めて首相官邸に「早期の成立」を要望する経済界の存在に行き着きます。10月の自民党法務部会では、来年4月の制度導入をめざす理由を問われた法務省幹部が「総理や官房長官の指示」と答えて、失笑を誘う場面もありました。
今国会中の成立を確実にするため、法案の詳細にはあえて踏み込まない。議論の深入りは避ける。野党が「白紙委任しろというのか」と批判しても、最後は数の力で採決を強行する。これが、担当記者として見た、歴史的な政策転換に対する審議の実態です。
首相官邸には、もしかしたら来年の統一地方選や参院選が念頭にあるのかもしれません。「カネ」を握る経済界に大きな「貸し」ができるのだから、さぞ心強いことでしょう。でも、これは人にまつわる法案です。やってくるのも、迎え入れるのも人間です。「失敗したらやめる」とは簡単にいきません。
その覚悟が、政府・与党にはどれほどあるのでしょうか。今国会の審議をずっとウォッチしていますが、空しさばかりが募ります。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 



2018/12
 

 

派閥 (political faction) 1
1 政党内部の行動単位であるが、広くは集団内に発生する相互作用の単位。自民党の派閥は特別な意味をもち、結党以来一貫して政権を担当しているが、その強さの秘訣は派閥連合体としての柔軟な組織体質に求められるかもしれない。もともとはポストとカネ、義理と人情、相互扶助と連帯感を契機にして結成されているのであるが、政策研究・人材育成機能が発揮され、結果として環境からの挑戦に対応できる柔軟な組織構造を党に持込んでいる。派閥政治の弊害としては、特に人事の不明朗、すなわち政府・党・議会内のポストが適材適所主義ではなく派閥順送りで決定されてしまうことと「見えざる政治」を指摘しておきたい。政権交代の実質や重要法案の運命までもが密室で決まってしまい、開かれた政治は期待できない。
2 出身・縁故・利害・政治的意見などで結びついた人々が形成する排他的な小集団。特に、自民党などで特定の政治家のもとに結集している議員の集団。「派閥の領袖(りょうしゅう)」「派閥争い」
自民党の主な派閥(2017年3月現在) / 宏池(こうち)会(岸田派) / 清和政策研究会(細田派) / 平成研究会(額賀派) / 近未来政治研究会(石原派) / 志公(しこう)会(麻生派) / 志帥(しすい)会(二階派) / 水月会(石破派)
3 一般に、出身や政党政派や特殊な利益などを中心にして結びついた仲間を意味する。この意味での派閥は、およそ人の集団において、宗教や学問や芸術の領域にいたるまで形成されるが、とくに政治的集団でその特異な属性は顕著となる。それは、〈公的公式集団の中に形成された私的非公式集団で、閉鎖的な同調性をもち〉(石田雄)、〈権力を私的に把握し、あるいは把握せんとして、他者あるいは他集団と対立抗争し、集団成員に対しては私的な庇護の恩恵を与える〉(安田三郎)ものである。
4 集団の内部において、出身や縁故、特殊な利権などによって結びついた排他的な集まり。 「 −争い」
5 ある集団のなかで、出身、資格、利害、主張、好悪などを共通にする者が、集団全体の動向に影響を与えるために形成した小集団。とくに政党内の私的な人的結合を、党の合理的な意思決定、実際行動、人材配置を阻害するものとして、派閥とよぶのが一般的である。政党の派閥は、一つの党の枠内における資金や役職などの利得の配分をおもな機能としており、その点で分派とは違う。分派は一定の主張のもとに全体の路線を改変することをねらい、場合によっては分裂をも辞さない小集団をさしている。日本の政党や企業における派閥については、前近代的な病理現象としてとらえる見解が有力であるが、管理社会に普遍的な小集団として位置づけ直し、集団全体の活力向上に資する機能を期待する見方もある。政党の派閥としては、自由民主党のそれがよく知られている。自民党の派閥は当初八つのグループ(いわゆる8個師団)から出発し、その後整理されて五大派閥となったが、実力者と政局の変化に応じて増減している。小選挙区制の導入という選挙制度の変更によって派閥はなくなるという見方もあったが、ポスト配分機関としての機能は維持され、凝集力の低下と流動化を強めながらも存続し続けた。
6 ある家から分かれ出た家柄。家系、縁故、出身校、利害関係などによって結ばれ、他と対抗する傾向をもつ人々のつながり。
7 自由民主党 …そうした経緯と体質が、その後の自民党の歩みにさまざまな影響を及ぼすことになった。さらに党結成の際導入された総裁公選制が、衆院の中選挙区単記制と相まって、激烈な総裁争いと派閥政治を生み出したことも指摘しておく。 党綱領は次の3項から成る。…
8 閥 …閥には、生得的な出身家族、出身地によって形成されるもの(門閥、閨閥、藩閥、県人閥)、出身学校によって形成されるもの(学閥)、社会的・職業的な権力集団が形成するもの(財閥、軍閥、官僚閥)などがある。また、一人のボスのもとに閥を形成する派閥もあるが、この場合、派閥を形成することによってボスも閥によって拘束される、という集団優位の機能が作用する。閥の形成は第三世界において集約的にみられる。…  

 

派閥 2
組織内において利害で結びついた人々によって形成する集団。
政党の場合
政党の派閥は、その政党で統一されているもの以外の政策や主張に共通点のある者同士が集まって、意見の集約と統一された政策の形成を図り、政策の実現に向けての活動として、その政党の執行部を担当もしくは目標とし、政党の交流におけるコミュニケーションの場となる組織または団体を指す。
2人集まると、意見の相違が存在する。3人集まると、切り捨て・妥協を強いられる細かい意見が存在する。共通な者同士が集まり、別の細かい意見に替わって政党の採用する政策にしようとするのが派閥である。政党内の政党とも言える。
一方、本来個人の集まりである政党を理解するとき、政党より小さな集団の集まりとして派閥を扱う方法がある。このような分析手法を用いた研究者が勝手に党員を分類したものが、派閥と呼ばれることもある。
なお、共産党においては民主集中制の原則により、派閥(分派)活動は禁止されている。日本共産党においても例外ではなく、旧所感派関係者は日本共産党第6回全国協議会(6全協)の方針に従わなければ全て離党・あるいは除名となり、「日本共産党(行動派)」など別団体を構成している。新日和見主義事件、原水協事件など、「分派」、あるいは党の方針に反する言動を理由とした除名事件も多い。新左翼が四分五裂したのも同様の理由である。
連立政権と派閥
政党は定義上は個人の集合体であるが、ある程度の規模を持つ政党をこの定義で分析するのは非常に困難である。したがって政党をより小さな集団(派閥)の集合体とみなせば、連立政権と政党との間には違いがなくなり、連立政権における政党は、政党における派閥と同様の働きをする。
いくつかの研究者は、自由民主党を「1つの政党」ではなく「派閥と呼ばれる政党が複数集まった、長期連立政権」との見方を採っている。
派閥政治
仕組みと現状
単記非移譲式投票(中選挙区制など)では、1つの選挙区に2人以上の候補を立てるほど大きな政党は、票の分配に失敗すると議席を失うため、自らを適当な大きさの中政党に分割して選挙を戦う方が多くの議席を得られる。日本の55年体制の派閥はこの仕組みで成り立っていた。しかし選挙制度が小選挙区比例代表並立制になり、小選挙区では2人以上の候補を立てる意味が無くなり、比例代表では票の分配を気にしなくても良いため、中政党に分かれて戦う必要がなくなった。このため派閥政治は現在、選挙制度に合わせて大きく変化しようとしている。
弊害
派閥政治は時折有効な政治ができなくなる恐れがある。派閥力学によって党や国会の役職や閣僚などが割りふられ、適任とはいえない人が大きな役職につく恐れがある。
党内に多様な価値観を形成することに繋がり、寄り合い所帯化しやすい。そのため、党のアイデンティティーが国民に伝わりにくくなる。
党首が別の派閥の領袖(リーダー、ボス)に代わっただけで、政権は変わらず同一政党に握られているのに、恰も政権交代が成ったかのような錯覚を国民に起こさせる。これによりヘゲモニー政党制とも見紛う、政権の長期寡占が起きる。
しばしば派閥同士の行きがかりをテーマに政争が展開し、政策課題に対する政治の関与がなおざりにされる。
逆に各派閥の首脳同士が結束すると、寡頭制的な支配が可能となる。
功績
派閥政治は連立政権と同等であり、単一の政党に多様性をもたらす。これにより、幾多の政治変動にも対応でき、一枚岩の政党では本来成し得ない広大な支持基盤を持つ安定した政党が出来る。
価値観の多様化が進む現代社会では、政党制も支持基盤の多様化に合わせて多党化しないと問題が生じ、小党乱立を受け入れざるを得ない。その時でも実効性のある政権を運営するのに、連立政権=派閥政治の経験は大きく役立つだろう。
党執行部の独走を掣肘するバランサーとなる。
勉強会の機能も果たしている。
若い議員を育成する機能も果たしている。
会社における派閥
会社における派閥は、大別すれば「フォーマル(公的)な派閥」と「インフォーマル(非公式)な派閥」に分けることができる。
フォーマルな派閥 - 会社の組織という単位を元にした派閥。
基本的には部署や事業所などといった所属ごとのグループとなる。グループ内での分社化などがされている場合、グループ内で社内派閥と同様の様態となることもある。
インフォーマルな派閥 - 会社の組織以外の繋がりを元にした派閥(以下例)。
同好会や、OB会などを母体にしたもの
幹部社員などのプライベートな人脈によるもの
出身大学などの学閥
地縁、血縁
なお、実業団スポーツの活動やその試合で会社が動員する応援の活動などに由来するものの様に、人脈にはフォーマルかインフォーマルかの線引きが難しいものもある。
仕事との関連
仕事を進める上で、「派閥は悪」「自分の力で切り開く」と派閥を忌避するのも一つの考え方だが、反面派閥とは人と人との繋がりであり、部署の垣根を超えた人との繋がりは、情報の共有や人材の確保、仕事依頼などの面で大きなメリットとなることもある。
仕事をする上で人との繋がりは重要な資産の一つであり、それを手に入れるために派閥に入るのも、一つの選択肢としてあり得る。
これらのメリットがある一方で、社内で派閥間による人事抗争が激化することは、企業内部での人間関係の支障要因になる他、さらには互いの派閥の人間の足を引っ張り合う行動に至った場合、生産性の低下や短期離職者の増加、ひいては業績の悪化などにまで繋がりかねない要因にも成り得る。
その他の派閥例
「人間が3人いれば2つの派閥が生まれる可能性がある」と言われ、派閥は政治の世界以外でも生まれる。病院、学校、果ては学生同士のサークルなど、人間が集まる場にはどこにでも派閥が発生する可能性があるとも言える。
軍隊
軍隊における派閥は、軍閥と呼ばれる。戦前の陸軍における統制派と皇道派、海軍における艦隊派・条約派などが代表例としてあげられる。
外務省
学閥が形成されやすいその他の省庁とは異なり、日本の外務省においてはそれぞれが研修した語学により「スクール」と呼ばれる語学閥が存在する。「チャイナ・スクール」「アメリカン・スクール」などと呼ばれるものがそれである。また、業務によって「マフィア」と呼ばれる別系統の派閥も形成され、法務畑の「条約局マフィア」、経済協力を担当する「経協マフィア」などが存在する。
病院
日本においては医局と呼ばれる一種の学閥が良く知られている。医師、看護師といった職掌ごとの派閥化も良く見られる。
相撲界
相撲界では、一門と呼ばれる相撲部屋の集団があり、これは古くは江戸時代以来の師弟関係等で結ばれているが(かつては巡業も一門単位で行っていたほか、年寄株や付き人の融通も一門内で行うことが多い)、日本相撲協会の理事選挙に際しては派閥として機能している。1980年代の相撲協会で春日野理事長(元横綱栃錦清隆、出羽海一門)と二子山理事(元横綱初代若乃花幹士、二所ノ関一門)が現役時代のライバルということから来る盟友関係で角界主流派を占めた例のように、現役時代の人間関係等で合従連衡が起こることもある。
なお、相撲界では行司や呼び出しなども含めて全員が部屋に所属するため部屋単位での結束のほうが強く、「行司閥」「床山閥」というようなものは存在しない。
学生サークル
大学のサークルにおける派閥は、大人の世界のそれとは違い、同じ利権や考え方を共有する集団であるというよりは、仲良しグループの集団である場合が多い。
しかし、サークルの運営方針を巡っての対立や、役員人事などがからんでくると、サークル内でも派閥争いが起こる可能性がある。それがサークル運営に支障をきたす場合もある。  

 

派閥政治でいいじゃないか 2018/10
「あなたのところとケンカになることだってある。覚悟しておいてよ」
“参院のドン”と呼ばれた自民党の青木幹雄元参院議員会長は9月の総裁選をめぐり、森喜朗元首相にそう伝えていた。投開票の半年以上も前のことだった。
青木氏は政界引退後も党内第3勢力の竹下派に隠然たる影響力を持つ。「あなたのところ」とは森氏がかつて率いた細田派のこと。最大勢力で、安倍晋三首相の出身派閥でもある。2人のやり取りは派閥抗争を予感させるものだった。
青木氏は言葉通り、森氏が支える首相の対抗馬、石破茂元幹事長を推す。そして、竹下派幹部に「石破氏支持」でまとめるよう要請した。
だが、細田派をはじめ、麻生派や岸田派など党内7派閥のうち5派閥が首相支持で結束した。逆に「鉄の団結」を誇った竹下派は衆参で足並みが乱れて分裂。大半が首相支持に回った衆院竹下派からは青木氏に対し「古い派閥政治だ」などの声が上がった。
推薦人が集まらず出馬を断念した野田聖子前総務相も「私を支持したいという議員もいる。そのボス(派閥領袖(りょうしゅう))に頼むが、みんなかたくなだ…」と漏らしたことがあった。
そもそも「3人寄れば派閥ができる」といわれる。かつて自民党の派閥政治は「金権政治の温床」「国民不在の権力闘争」などの弊害が指摘された。幾度となく「派閥解消」が叫ばれたが、解消されていない。今後もなくならないだろう。
もっとも派閥に全盛期の面影はない。小選挙区制度導入などで弊害とされた部分は目立たなくなった。
一方で、自民党の原動力だった派内で議員同士が切磋琢磨(せっさたくま)するリーダー育成機能まで失われている。領袖に必要とされた集金力や情報収集力だけでなく、調整力、発信力も落ちたように映る。議員が小粒になったといわれる一因だろう。
実際、「領袖=総裁候補」という派閥は現在、岸田派と石破派くらいだ。安倍首相も6年前の総裁選では所属していた町村派(当時)の領袖、町村信孝元外相が立候補しているのに、派閥横断グループを支持基盤に出馬し、決選投票の末に総裁に返り咲いている。
リーダーが育っていれば長老らの言動に関係なく、求心力が働く。青木氏もそうした事情は分かっているようで「うち(竹下派)には総裁候補がいないのだから、対応が割れても仕方ない」と何度も語っていた。
派閥が持っていた若手議員の教育機関としての役割まで低下している。無派閥議員が増え、“魔の2回生”といわれたように「国会議員としての作法」がなかなか身についていない。
首相や石破氏の次の世代は小選挙区しか経験していない議員ばかり。次の日本のリーダーを決める「ポスト安倍」選びは派閥、グループのあり方が問われる。
派閥の功罪を見極め、単なる数合わせ、単なる「選挙の顔」選びにならないためにも、中選挙区時代の派閥政治を体現した「長老」たちには意気軒高でいてほしい。反面教師にもなるのだから。
派閥政治だって、いいじゃないか。  

 

優秀な人こそ社内で孤立する!? 「脱派閥が正義」と考えることの危険性 2014
増加する「中立派ビジネスマン」
「派閥」という言葉にはネガティブな印象がつきまとっています。なかには、派閥を「悪の権化」のように捉えている人もいます。たしかに、派閥活動がエスカレートすると、社長のポストをめぐって派閥抗争を繰り広げたり、既存事業の存在を脅かす新規事業を妨害する裏工作を行うなど、組織全体の利益を損なうような事態を招くこともあります。その一面だけを取り上げれば、「派閥は百害あって一利なし」と考えるのも無理はないかもしれません。
そのせいもあって、近年は、若手を中心に、派閥と距離を置く「中立派」や、派閥にかかわらない「孤高の存在」をめざすビジネスマンが増えているようです。派閥内の人間関係に縛られることを煩わしく感じているのも、その一因となっているでしょう。高度経済成長期には「派閥に入るのが当たり前」だったことを思えば、隔世の感がします。
この変化に大きな影響を与えた人物がいます。
1983年に連載が始まった青年漫画の主人公、島耕作です。当時、課長だった彼は、「出世したいなら○○部長の派閥に入れ」と初芝電器産業の役員に誘われたにもかかわらず、「私はどんな派閥にも属さない主義なのでお断りします」と明言。その後、派閥争いの間でもまれながら、理不尽な異動にも負けず、一貫して「中立派」として戦い抜きました。そして、2008年には『社長・島耕作』の連載がスタート。ついに、社長にまで登りつめたのです。
この間、国政の世界でも「派閥解消」が強く叫ばれました。小泉政権や民主党政権が成立した一因には、彼らが「脱派閥」を唱えたこともあったといわれています。いわば、「脱派閥」は時代の"正義"だったのです。おそらく、この風潮も派閥から距離を置くビジネスマンの増加に影響を与えたのではないかと、私は考えています。
派閥が生まれるのは「自然現象」である
私は、人の生き方は多様であったほうがいいという考えです。ですから、中立派を貫くのもいいし、孤高の存在をめざす人がいてもいい。島耕作の生き方も大好きです。
ただし、「脱派閥」を"正義"と捉えるのは、いささか危険ではないかと考えています。なぜなら、「3人集まれば派閥が生まれる」と言われるように、人の集まりである会社に派閥が生れるのはごく自然なことだからです。
ピラミッド型の組織では、上層部にいけばいくほどポストは減りますから、ポスト争いは、制度上避けられない現象です。そして、あるポストに2人の候補がいれば、それぞれを支持する人々が派閥をつくるのは自然なことです。自分を重用してくれる人物を押し上げることによって、自らの利益を図るのは人間として自然な感情だからです。
あるいは、どんな会社でも部署ごとに緊張関係があります。開発部門は売れ行きのはかばかしくない商品でも、営業部門に粘り強く売ってもらいたいと考えます。しかし、営業部門にすれば、売れ筋の商品を売り伸ばすほうがよほど営業効率がいい。営業部門は接待費をかけて取引先と関係を強化したいが、経理部門は経費削減を求めます。立場によって「正論」は異なるのです。そして、「正論」を共有する者どうしが仲間意識を強め、派閥化していくのは、ごくごく自然なことなのです。
そもそも、人間は「群れる生き物」です。親近感のある人とのつながりを深めたい。仲間を増やして、集団内での「居場所」を確保したい。力の強い者の庇護下に入って、身の安全を確保したい。このような人間の本能に根差して生れるのが派閥です。いわば、派閥は自然現象なのです。
つまり、「脱派閥=正義」と考えるのは、自然を否定するに等しいということです。これが危ない。自然に逆らっては、何事もうまくいかないからです。
なぜ、優秀なビジネスパーソンが、社内で孤立するのか?
あるメーカーの経営企画室長を務める千葉さん(仮名、56歳)に、こんな話を聞いたことがあります。部下のAさん(42歳、係長)についての愚痴でした。
Aさんは、頭の切れる人物だそうです。勉強熱心で経営戦略に関する広く深い知識をもち、ビジネススクールなどで築いた社外人脈も豊富。ときには、外部から勉強会に招かれることもあるそうです。
ところが、手を焼いているといいます。事あるごとに、社内でトラブルを生んでしまうからです。いまでは、すっかり社内で孤立しているそうです。
「各部門にはそれぞれ思惑もあるし、他部署との力関係もありますよね? いわゆる、派閥の論理があるわけです。だから、少し組織をいじろうとするだけでも、いろいろな反発が出てくる。そのへんの事情もくみ取りながら、うまく部門間のすり合わせをするのも僕たちの大事な仕事なんです。ところが、彼はなまじ知識があるでしょ? なんでも理論どおり、プランどおりに事を進めようとしすぎる。困ったもんですよ」
他部署との会議でも、反発を受けるとよくこんなことを口にするそうです。
「それは、あなたの部署の都合ですよね? 部分最適をいくら積み上げても、全体最適は生まれません。経営の教科書に書いてあるとおりです」
「まだ、そんなことを言ってるんですか? B社の改革はご存知ないんですか? このままじゃ、差をつけられるだけですよ」
当然、反発は強まるだけ。「なんだよ、あいつは……」「そんなにB社がいいんなら、さっさとそっちに転職しろよ」となるわけです。「少しは部署ごとの気持ちも考えて発言しろよ」と注意すると、「そういう"派閥的"な発想をするから、会社はダメになるんですよ」と反論されたそうです。
「いつも尻拭いするのは室長の僕。手間がかかってしょうがない。他部署との飲み会に誘っても、一回も来ないしね。社外で評価されてても、あれじゃ使い物にならないですよ。だから、もう彼には他部署との折衝は任せてません。もっぱら資料づくりに使っているだけ。後輩が課長に昇進してるのに、わかんないのかな? 正直、異動させたいけど、引き受ける部署なんかないしね……」
まさしく、Aさんは「孤高の存在」タイプ。おそらく、彼は「脱派閥」を"正義"と考えているはずです。しかし、このように派閥に背を向けて、派閥を否定するような仕事の仕方をしている限り、彼の学んできた戦略知識が生かされる日は来ないでしょう。
「派閥の存在」を認めて、それを活用する
派閥をつくるのは人間の本質---。
これは、松下幸之助さんの言葉です。ご著作である『指導者の条件』(PHPビジネス新書)から、少し長くなりますが引用しましょう。
「たしかに、人間の集まるところ、大小の別はあっても、必ずグループ、党派があるといっていい。そういうものがしぜんにできてくるわけである。けれども、そうしたグループ、党派というものが全体の運営の上で弊害をなす場合が少なくない。特に今"派閥"と呼ばれるものにはその傾向が強い。そういうところから、"派閥解消"ということがさかんにいわれ、いろいろと努力もされているが、そのわりにあまり効果があがらないのが実情のようである。これは結局、派閥をつくるのは人間の本質であり、派閥をなくすことは不可能だからではないだろうか。つまり、派閥というものはなくせるものではなく、その存在をみとめた上で、活用、善用すべきものだと思う」
「その存在をみとめた上で、活用、善用すべきものだと思う」
松下さんは経営者として、この言葉を書いていらっしゃいます。社内に生まれる派閥を解消しようとするのではなく、それが存在することを前提に「和」を生み出すリーダーシップを発揮するのが「指導者の条件」と考えているのです。
もちろん、一社員としては、そのようなリーダーシップを発揮することはできません。しかし、「派閥という存在をみとめる」ことが、会社で働く者の大前提であることに変わりないはずです。
中立派をめざそうが、孤高の存在をめざそうが、まずは、派閥の存在を認めなければならないのです。いえ、派閥の存在を認めたうえで、それにどのように対峙していくかを意識しながら行動しなければ、会社のなかではどのような「生き方」も成立しないと考えるべきなのです。
そもそも、派閥には大きな長所もあります。派閥に入ることによって、上層部とのコネクションもつくりやすくなりますし、部門横断的な人脈も手に入れられるでしょう。上層部や他部署の実情を耳にすることによって、会社全体の状況をより深く理解できるはずです。何か困ったことがあれば、気軽に相談できる人がいろんなポジションにいることは、仕事を進めるうえでも非常に有効です。
あるいは、派閥が健全な緊張関係にあれば、派閥間で議論を戦わせることで、より高次な問題解決の方法を生みだすことも期待できます。派閥が互いに牽制し合うことによって、組織全体が極端な方向に走らず、バランスのとれた経営を実現しやすくなるという側面もあるでしょう。
もちろん、派閥同士が足の引っ張り合いをするような、非建設的で敵対的な関係になると大きな問題を引き起こします。しかし、だからといって派閥の存在そのものが「悪」という捉え方をするべきではありません。
問題なのは「派閥」ではなく、「派閥のあり方」なのです。 

 

 

道祖神
路傍の神である。集落の境や村の中心、村内と村外の境界や道の辻、三叉路などに主に石碑や石像の形態で祀られる神で、村の守り神、子孫繁栄、近世では旅や交通安全の神として信仰されている。
道祖神は、厄災の侵入防止や子孫繁栄等を祈願するために村の守り神として主に道の辻に祀られている民間信仰の石仏であると考えられており、自然石・五輪塔もしくは石碑・石像等の形状である。中国では紀元前から祀られていた道の神「道祖」と、日本古来の邪悪をさえぎる「みちの神」が融合したものといわれる。全国的に広い分布をしているが、出雲神話の故郷である島根県には少ない。甲信越地方や関東地方に多く、中世まで遡り本小松石の産業が盛んな神奈川県真鶴町や、とりわけ道祖神が多いとされる安曇野市では、文字碑と双体像に大別され、庚申塔・二十三夜塔とともに祀られている場合が多い(真鶴町と安曇野市は友好親善提携が結ばれている)。
各地で様々な呼び名が存在する。道陸神(どうろくじん)、賽の神、障の神、幸の神(さいのかみ、さえのかみ)、タムケノカミなど。秋田県湯沢市付近では仁王さん(におうさん)の名で呼ばれる。
道祖神の起源は不明であるが、『平安遺文』に収録される8世紀半ばの文書には地名・姓としての「道祖」が見られ、『続日本紀』天平勝宝8年(756年)条には人名としての「道祖王」が見られる。
神名としての初見史料は10世紀半ばに編纂された『和名類聚抄』で、11世紀に編纂された『本朝法華験記』には「紀伊国美奈倍道祖神」(訓は不詳)の説話が記されていおり、『今昔物語集』にも同じ内容の説話が記され、「サイノカミ」と読ませている。平安時代の『和名抄』にも「道祖」という言葉が出てきており、そこでは「さへのかみ(塞の神)」という音があてられ、外部からの侵入者を防ぐ神であると考えられている。13世紀の『宇治拾遺物語』に至り「道祖神」を「だうそじん」と訓じている。後に松尾芭蕉の『奥の細道』の序文で書かれることで有名になる。しかし、芭蕉自身は道祖神のルーツには、何ら興味を示してはいない。
道祖神が数多く作られるようになったのは18世紀から19世紀で、新田開発や水路整備が活発に行われていた時期である。 神奈川県真鶴町では特産の本小松石を江戸に運ぶために村の男性たちが海にくり出しており、皆が祈りをこめて道祖神が作られている。
初期は百太夫信仰や陰陽石信仰となり、民間信仰の神である岐の神と習合した。ほか、岐の神と同神とされる猿田彦神と習合したり、猿田彦神および彼の妻といわれる天宇受売命と男女一対の形で習合したりもし、神仏混合で、地蔵信仰とも習合したりしている。集落から村外へ出ていく人の安全を願ったり、悪疫の進入を防ぎ、村人を守る神として信仰されてきたが、五穀豊穣のほか、夫婦和合・子孫繁栄・縁結びなど「性の神」としても信仰を集めた。また、ときに風邪の神、足の神などとして子供を守る役割をしてきたことから、道祖神のお祭りは、どの地域でも子供が中心となってきた。
道祖神はまた、集落と神域(常世や黄泉の国)を分かち、過って迷い込まない、禍を招き入れないための結界とされている。
種類・形状
道祖神は様々な役割を持った神であり、決まった形はない。材質は石で作られたものが多いが、石で作られたものであっても自然石や加工されたもの、玉石など形状は様々である。像の種類も、男神と女神の祝事像や、握手・抱擁・接吻などが描写された像などの双体像、酒気の像、男根石、文字碑など個性的でバラエティに富む。
   単体道祖神
   単体二神道祖神
   球状道祖神
   文字型道祖神
   男根型道祖神
   自然石道祖神
   題目道祖神
   双体道祖神
双体道祖神は一組の人像を並列させた道祖神。「双立道祖神」の呼称も用いられたが、座像や臥像の像も見られることから、「双体道祖神」の呼称が用いられる。双体道祖神は中部・関東地方の長野県・山梨県・群馬県・静岡県・神奈川県に多く分布し、東北地方においても見られる。山間部において濃密に分布する一方で平野・海浜地域では希薄になり、地域的な流行も存在することが指摘される。伊藤堅吉は1961年時点で全国に約3000基を報告しており、紀年銘が確認される中で最古の像は江戸時代初期のものとしている。
   餅つき道祖神
   丸石道祖神
   多重塔道祖神
これらは、石、金属、木、藁、紙などで造られている。
道祖神信仰
道祖神は日本各地に残されており、なかでも長野県や群馬県で多く見られ、特に長野県の安曇野は道祖神が多い土地でよく知られている。 長野県安曇野市には約400体の石像道祖神があり、市町村単位での数が日本一である。同じく長野県松本市でも旧農村部に約370体の石像道祖神があるが、対して旧城下は木像道祖神が中心であった。ほか、長野県辰野町沢底地区には日本最古のものとされる道祖神がある(異説あり)。奈良県明日香村にある飛鳥の石造物(石人像)は飛鳥時代の石造物であるが、道祖神とも呼ばれており、国の重要文化財となっている。
道祖神を祭神としている神社としては、愛知県名古屋市にある洲崎神社が挙げられる。小正月の道祖神祭礼には、かつて甲斐国(現在の山梨県に相当)で行われていた甲府道祖神祭礼や、現在も行われている神奈川県真鶴町(道祖神 (真鶴町))、長野県野沢温泉村の道祖神祭り(国の重要無形民俗文化財に指定されている日本三大火祭りのひとつ)などがある。  

 

道祖神 (どうそしん) < 塞の神 (さいのかみ) 
 各地の塞神社、また村の出入り口、村の境界の守り神 
天孫降臨の際に出会った天宇受売神と猿田彦神はこれが縁で結婚し、二人は一緒に道祖神になったと言われる。道祖神は塞の神(さいのかみ)とも言れ、一般に村の外れにあって外部から村に悪い霊が侵入するのを防いでいる。この神は天宇受売神・猿田彦神と結び付けられていない場合でも、しばしば男女神であるようで(伊邪那岐神・伊邪那美神という説もある)、そのいわれは、男女の仲の良い神様が守っていてくれると、そこを通り抜けようとした霊は「邪魔するな」とばかりに突き飛ばされるからとされる。男女神であるが故に、安産と子供の守り神ともされた。ここから道祖神と地蔵との混合も生れた。また道祖神は男女神であることから、しばしば神社には立派な陰陽石が祀られている。道祖神へのお供え物には、紙或は野菜で作った男女の性器の形のものが好まれ、安産祈願・子宝祈願に関わる 。 
天宇受売神・猿田彦神が道祖神であるとされた理由は、猿田彦神が天孫降臨のときに、天と地の境で一行を待っていたためだ。この二人については、猿田彦神は天狗に、天宇受売神はお多福になったという説もある。 

 

道祖神は庚申待ち・庚申講とも結び付けられた。庚申待ちは道教由来の風習で、庚申の日の晩に人間の体の中に住む上尸の虫・中尸の虫・下尸の虫という三尸の虫が天に登って、その人の行状を神様に報告し、悪いことをした分寿命を減らすという言い伝えに基づ く。この虫たちは人が寝ている間に天に登るため、庚申待ちではみんなで猿田彦神社に集まって酒を飲んで徹夜をし、眠らないようにする。庚申の日の次は辛酉の日で、庚・辛・申・酉というのが全て五行の金にあたる。そこで金気が強すぎることを嫌ったものであるとされる。猿田彦神が出てくるのは、申−猿の連想によるものか。地域によっては猿田彦神の代わりに青面金剛を祀る場合もある。青面金剛咒法という秘法があり、これが伝尸病を取り除く効果があるとされ、伝尸と三尸が結びついてなったもの。青面金剛像の下には、しばしば「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿が彫られている。これは三尸の虫に悪いところを見られても「見ざる・言わざる・聞かざる」になって、神様には報告しないでくださいとの願いが込められたもの。 
三尸の虫の普段の住処は、上尸の虫は頭に住み目を悪くし皺を増やし髪を白くし、中尸の虫は腸に住み内臓を悪くして悪夢を見させ、下尸の虫は足に住み命を奪い精を悩ますという。三尸の虫が天の登る日が申の日になった背景は、天の神が帝釈天とみなされ、帝釈天のお使いが猿であるためか。 
道祖神の変形で、おんば様・うば様・しょうづか婆さん・味噌嘗め婆さんなどと呼ばれる神様があり、一般に村と山との境に居る。