新時代の大政翼賛会を創ります

入管法改正案 中身のない 入れ物法案
中身は省令で定めるとのこと
省令 お役人が作って担当大臣が認証

大手を振って 政権に都合の良い省令が創れます
経済界は大喜び
経済界のお礼 新時代の大政翼賛会
 


出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法
 
 
 

 

安倍総理の思うがまま
「面倒な法案は入れ物だけにして 詳細は省令で定める」法案が 今後は続出か
こんな法律の作り方 大問題 大禍根
 
 
 

 

 2018/11

 

 
●医療保険、国内居住に限定案=政府・自民、来年法改正へ 11/7
政府・自民党は、公的医療保険制度が使える対象を制限する方向で検討に入った。外国人による不適切な利用の懸念が出ていることなどから、保険を使える扶養家族を日本国内に居住する人に絞る案が浮上している。年内にも成案を取りまとめ、2019年の通常国会に健康保険法改正案を提出する。
企業で働く会社員らは国籍を問わず、大企業の健康保険組合や中小企業向けの「協会けんぽ」に加入し保険料を払う。その配偶者や両親、祖父母、子ども、孫らについては、仮に日本に住んでいなくても条件を満たせば医療保険が適用される。
これまで自民党内からは、在留外国人による公的医療保険利用で、家族関係があいまいな海外在住者らにも保険が使われる可能性があるなどの指摘が出ており、ワーキンググループで制度見直し作業を進めている。
政府は外国人労働者受け入れ拡大に向けて、新たな在留資格の導入を盛り込んだ出入国管理法改正案を臨時国会に提出。在留外国人がさらに増加するとみられることから、自民党は年末までに議論の取りまとめを目指す。
焦点となるのは海外に住む被保険者の家族の扱いだ。社会保障制度は保険料を納めている限り、国籍による差別を受けないことが大原則。このため、厚生労働省では医療保険の適用対象を制限する場合、日本人を含めて「国内での居住者」を要件とするべきだとの意見が強い。
ただその場合、従来は対象だった日本人が医療保険のサービスを受けられなくなる可能性もある。このため自民党内には、外国人労働者の家族のみ制限を設けるべきだとの声もあり、線引きをめぐり今後議論となりそうだ。 
 
●健康保険、外国人への適用厳格化案が浮上 悪用に対処 11/6
政府内で外国人による公的医療保険の不適切利用を防ぐため健康保険法を改正し、適用条件を厳格化する案が浮上していることが6日、分かった。加入者の被扶養親族が適用を受けるためには、日本国内に居住していることを要件とする方向で検討している。
政府は外国人労働者の受け入れ拡大に向け今国会で出入国管理法改正案の成立を期す考え。同時に近年外国人による公的医療保険の不適切利用が問題化していることから、対応を急ぐ。
会社員が対象の健康保険は、加入者本人に扶養される3親等内の親族にも適用されるが、国内に住んでいる必要がないため、訪日経験のない海外の親族らが母国や日本で医療を受けて健保を利用する事例が相次いでいる。健保法改正案は来年の通常国会提出も視野に入るが、適用条件の線引きをめぐる課題も多く、さらに検討を進める方針だ。 
 
●入管法改正案「人手不足対策の一つ」 中経連会長が期待 11/6
中部経済連合会の豊田鐵郎会長は5日の定例記者会見で、政府が外国人労働者の受け入れ拡大に向け出入国管理法改正案を今国会に提出したことを巡り、「会員企業からは人材確保に苦慮しているという声が多く寄せられている。人手不足対策の一つとして期待している」と述べた。
中部3県の人手不足は深刻だ。9月の有効求人倍率は岐阜県と愛知県が2倍前後となるなど、いずれも全国平均を上回る。企業は人の作業をロボットなどに置き換える設備投資を急ぐが、人手不足感は依然として高い。
豊田会長は「政府の考え方は移民の受け入れではない」との認識を示した。その上で外国人労働者の受け入れ拡大には「帯同家族も含めて、生活環境の整備も同じように検討してもらわないといけないと思う」と述べた。
一方で、「在留資格を得るための手続きや審査が煩雑」とも指摘。審査官の増員などによる手続き期間の短縮も含め、「使いやすくすべきではないかと思う」と注文した。 
 
●不安だらけの「入管法改正案」と新在留資格の創設 11/6
11月2日、「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。現時点で私は法案全文を入手できていませんが、骨子を見る限り不安材料が満載です。
不安材料その1 受入れ企業・雇用主任せの受入れ態勢
今般閣議決定された法律案の骨子によると、外国人材受入れ後の種々の支援は「受入れ機関」または「受入れ機関から委託を受けた登録支援機関」が責任を持つことが想定されています。この受入れ機関とは端的に言えば受入れ企業であり、今般想定されている14業種(例えば介護、建設、造船、宿泊、農業、漁業、外食など)における雇用主です。そのような事業主・雇用主が「外国人に対する日常生活、職業生活、社会生活上の支援を実施する」となっているのですが、どれだけ現実的でしょう?
事業主・雇用主は慈善団体ではなく企業ですので、一義的にはどれだけ安く労働力を酷使し利益を最大化できるかに基づいて活動します。今までも外国人労働者の「社会保険の加入手続きを行っていない事業所等も存在する」ことは、日本政府自身が策定した「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」でも指摘されています。事業主・雇用主主導の受入れ態勢は、とりわけ労災などの際に外国人労働者に対する著しい人権侵害に繋がっていることは周知の通りです。
恐らく現政権としては「今般の外国人受入れ策は安価な労働力不足を訴えた企業側の要請に基づいたものなのだから、受入れ企業が従業員の面倒を見るべき」というロジックなのかもしれませんが、根本的に利益追求型の企業が、従業員となる外国人に対して「生活支援を施す」などというシナリオは、理想論としては美しいですが、実現性・実効性に乏しいと言わざるをえません。
また、骨子で示されている「企業から委託を受ける登録支援機関」が具体的にどのような団体を想定しているのか明らかではありませんが、例えばNPO法人や地域の国際交流協会等であれば、確かに一般企業や事業主よりはずっと外国人支援において造詣の深い団体は数多く存在します。しかし、それら「登録支援機関」の活動費はどこから賄われるのか、骨子からだけは明らかではありません。もし出資元が外国人を受入れる企業側であれば、当然費用をできるだけ安価に抑えようという強い圧力が働くでしょうし、中央政府ないしは地方自治体だとすると、どこの省庁・部局がどういう根拠に基づいてどのような予算額・費用項目を計上しているのか、既に来年度の予算折衝は実質的に終わっている時期ですが、興味のあるところです。
いずれにせよ、労働者の権利保障より利益追求が大前提となる受入れ企業が外国人労働者の生活支援の責任を持つというシナリオは、1990年以来の日本における外国人受入れの経験に基づくと、様々な問題を引き起こしそうだということは容易に想像がつきます。
不安材料その2 国境管理を管轄する法務省入管局が受入れ体制の司令塔となるという矛盾
次に気になるのが、今回の新たな外国人受入れ政策において、法務省が外国人受入れ環境整備の統合調整と司令塔になると想定されていることです(7月24日閣議決定「外国人の受入れ環境の整備に関する業務の基本方針について」)。確かに今回の閣議決定は「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案」ですので、法務省入国管理局の出入国在留管理庁への格上げとその任務の規定が中心となるのは不思議ではありません。また過去5年間の外国人入国者数の加速度的増加や国境管理の重要性に基づき、入国管理局を出入国在留管理庁に格上げすること自体については、私は個人的に賛成です。
しかし、以前のブログでも述べた通り、法務省入管局は本来、外国人(移民)受入れ政策において「線」である国境管理・在留資格管理を専門とする部局であって、「面」である入国後の受入れ体制(つまり社会統合政策)についての責任や知見を有している部局ではありません。ここで言う「社会統合政策」とは具体的には、日本語教育、日本社会のルールや文化・社会制度に関する相談体制の整備、労働環境整備、住環境整備、医療保健福祉サービス、子どもの就学、年金や保険などの社会保障制度の整理などです。これらは国境管理の範疇を完全に超えており、日本では厚生労働省、文科省、総務省などが主管当局となってきている分野です。少なくとも歴史的には法務省入管局には殆ど経験も責任もない分野で、かつ他省庁が主管である分野において、司令塔として「統合調整機能」を負うのは、実務上様々な矛盾・軋轢・隙間が生まれることが懸念されます。
日本の今までの外国人受入れの経験(例えばインドシナ難民や日系ブラジル人・ペルー人等)および諸外国の失敗と好事例に基づけば、外国人受入れ体制は、内閣府内に司令塔となる「統合調整および実施機能」を備えた部局(例えば「移民庁」など)を置き、包括的な受入れ体制整備と司令塔としての実施機能に必要となる予算措置を講じるのが理想的です(例えばドイツで言うBAMF)。そうでなければ、内閣府部局はあくまでも統合調整機能のみとして、実働部隊となる厚生労働省、総務省、文科省、法務省、外務省などがそれぞれの管轄内で予算措置をとり、生活者としての外国人支援や受入れ促進を行っていくのも次善策として考えられるでしょう。今回閣議決定された法務省設置法一部改正案は、そのいずれでもない「いびつな構造」になっており、外国人受入れ体制だけでなく(以下で述べる理由から)日本社会全体に大きな禍根を残す結果になるのではないかと懸念します。
不安材料その3 後手後手スカスカに見える受入れ態勢
上で述べたことと関連して、今回の閣議決定からでは、日本への外国人受入れをスムースに進めるために絶対不可欠な「社会統合政策」がどのように進められるのか、完全に後手後手スカスカに見えることが不安材料その3です。社会統合政策とは、日本語教育の充実、相談体制の整備、医療・保健・福祉サービスの整備と提供、住環境の整備、子供の就学問題、労働環境整備、社会保障制度の整理、受入れ企業への支援・監督、語学・技術水準確認のための試験体制の設置などなど、列挙しきれないほどの項目があります。
これらの重要事項が既に政府内で討議され始めていることは、法務省の「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(検討の方向性)」などから見て取れます。しかし、それら一つ一つの項目について、どの程度日本自身の外国人受入れの成功と失敗から学び考え抜けているのか、よくわかりません。これらは単に「外国人支援」という意味だけでなく、「日本社会の根幹と一体性を保持する」という観点から死活問題となる点を多々含んでいます。
例えば日本語能力。一体どのくらいの程度を「生活・就労に必要」と見なし、どの段階までに習得していれば良いとするのでしょう?日本語教育の費用は誰が持つのでしょう?既に以前のブログでも述べた通り、諸外国では語学能力と在留資格の付与・変更・更新をリンクさせている国が増えています。一部の西欧諸国では、自国民の配偶者として入国・在留しようとする外国人にでさえ、一定の語学能力の証明を義務付けている国さえあります。また、既に入国した外国人に600時間超の語学研修を無料で提供したり、費用の一部を外国人に負担させたり、語学試験に受かれば授業料全額無料としてみたり、諸外国でも外国人に自国語を学ばせようと試行錯誤しています。
これは、長年の外国人受入れにおける大失敗という苦い経験から諸外国が絞りだしてきた知恵でしょう。私自身、日本語で意思疎通のできない外国人が大量に日本に増えることは社会的軋轢を生む大きな不安定材料になると感じます。受け入れる地元の日本人住民も不安でしょうし、来日した外国人も自分達の権利や義務を守る上で日本語が分からなければ充実した社会生活を送ることは困難です。どこまでの日本語能力を外国人に求め、どこまでを受入れ側で負担するのか、中央政府なのか、自治体なのか、受入れ企業なのか、どの程度政府内で真剣な議論が行われているのでしょうか?
次に健康保険。「不安材料その1」で述べた通り、一部の受入れ企業では費用削減の観点から、外国人従業員の社会保険加入を渋る傾向があることが明らかになっています。また出身国での保険制度の不整備や日本の諸保険制度が複雑なことから、国民健康保険にも入っておらず高額医療費を払えなくなってしまった外国人も実際にいます。中には実質的にやむを得ない「医療費踏み倒し」に繋がってしまうケースも少数ながらあり、放置すれば大きな社会問題に発展するでしょう。
また日本社会としても、日本の公的健康保険制度は高齢者医療のための莫大な負担増から危機的状態にあり、より多くの外国人の若者が健康保険制度に加入してくれることは日本の危機を救うことになり、日本の国益に繋がります。この点、長年多くの外国人を受け入れていて社会保障制度が整備されている西欧諸国は様々な措置を講じています。例えばイギリスでは、本来は全額無料である国民健康保険(National Health Service)に年間150〜200ポンドを前払いしないとビザが下りない仕組みになっています。この新制度には様々な批判もありますが、これも長年の失敗の経験を踏まえた苦肉の策でしょう。今後「特定技能1号・2号」で来日する外国人や受入れ企業にどのように医療保険制度加入を義務付けるのか、日本政府はどこまで考え抜けているのでしょうか?
そして年金。以前のブログでも述べた通り、日本の年金制度は完全に火だるま状態・破綻寸前状態にあり、1人でも多くの外国人の若者が日本の年金制度に加入してくれることは、確実に日本の国益に繋がります。特に今般新設される「特定技能2号」は永住の可能性が前提となっており、入国当初からの年金加入が本人にとっても日本国にとっても合理的になるでしょう。他方で、特定技能1号から途中で2号に変更する人にとってはどうでしょう?どの段階で年金加入するのか、5年で帰国するなら最低10年の加入が前提となる年金制度への加入を義務付けるのは「搾取」となる可能性があります。2号に変更になった段階で1号での滞在期間を遡って年金加入するのでしょうか、何を基本としどこまで義務付けるのか、政府部内での検討でどこまで考え抜けているのでしょう?
これ以外にも上で列挙した通り多岐に亘る社会統合政策の一つ一つについて、日本社会としての国益追究、外国人側の権利義務、諸外国での経験、そして日本独特の社会制度と文化・歴史を全て掛け合わせて合理的な「解」を出すのは、決して容易な作業ではありません。これら全てを来年4月までに行えるのでしょうか?大いに不安です。
不安材料その4 事実に基づかない妄想・誇張・フェイクニュースへの固執
そして最後の不安が、例えば「外国人が増えると治安が悪化する」とか「外国人による国民健康保険制度の乱用」などといった妄想・誇張・フェイクニュースへの固執と、それに基づく政策立案です。
既に以前のブログで統計資料を交えて詳しく述べましたのでここで再度繰り返しませんが、日本の警察庁や法務省が発表している統計資料に基づけば、「外国人が増えると犯罪が増える」とか「外国人は凶悪犯罪を犯しやすい」ということを裏付ける証拠は存在しません。むしろ来日外国人はここ数年で莫大に増え続けているのに、いわゆる「外国人犯罪」は減少し続けているのです。更に言えば、極右的・人種差別的極端な思想を持つ日本人による外国人に対する殺傷事件が散見され、それらの増加の方がずっと不安です。そのような犯罪対策に必要なのは、日本人に対する啓蒙活動・矯正措置でしょう。外国人受入れ反対派・人種差別的な方々にとっては「不都合な真実」ですが、一部報道が好んで使う「外国人が増えると治安が悪化する」という言説は完全なる妄想・フェイクニュースでしかありません。
そして最近出てきた新しいフェイクニュースが、「外国人による国民健康保険制度の濫用が横行している」という誇張です。そもそも国民健康保険は加入して保険料を支払わないと利用できませんので「ただ乗り」という表現自体が完全にお門違いなのですが、百歩譲って「国民健康保険制度の濫用」と仮定したとしても、厚生労働省自体が在留外国人による国民健康保険利用に関する実態調査を行った結果、「在留外国人不適正事案の実態把握を行ったところ、その蓋然性があると考えられる事例は、ほぼ確認されなかった」とその通知で結論付けています。健康保険の外国人レセプト総数約1500万件のうち不正が疑われる事案が2件あったからといって、そのような事案が横行しているかのように報道するのは、誇張にもほどがあるフェイクニュースではでしょうか。
むしろ日本で生活する外国人の方々には一人でも多く健康保険制度に加入して頂いて、日本人の高齢者医療のために危機的状況にある医療保険制度を救うことが日本の国益に繋がるということは上で述べた通りです。外国人問題となると、得てして感情論や印象論に基づく妄想や誇張、フェイクニュースが流布され、何が真の意味での日本の国益に繋がるのか、合理的な判断が出来なくなる人が「知識層」とされる人々の間にでさえ増えるのは、私にとっては不思議でなりません。
おわりに
日本は今までは外国人受入れ政策において「高度人材は歓迎するが、単純労働者については受け入れない」という原則を少なくとも建前上では固持してきました。今回、「特定技能2号」で永住の道が開かれたことで、その大前提が崩されたと言えるでしょう。また世界全体を見回しても、いわゆる「単純労働」と見なされる分野で最初から永住前提で外国人を受け入れるという公的方針は、(域内での移動の自由が保障されているEU諸国以外では)珍しい移民政策と言えます。実際にどの規模の外国人が日本に永住することになるのか現時点では未知数ですが、日本は自国の歴史と言う意味でも、世界的な移民政策という意味でも「未知との遭遇」の範疇に入ったと言っても過言ではありません。
特に日本は外国人受入れ政策において「後進国」でありつつ、それら単純労働に従事する外国人の永住を許可する方向性に舵を切ったことで、今までの日本社会の根幹を揺るがしかねない、西欧諸国の移民受け入れ政策の失敗の二の舞を踏みかねない(あるいはそれ以上の大失態となりかねない)、極めて重要な政策転換を行おうとしているのです。それなのに、重要な政策立案と実施が「企業任せ」「民間任せ」「国境管理局任せ」「フェイクニュース任せ」では、やってくる外国人だけでなく、中長期的に日本社会の礎となる諸制度や日本社会全体の一体性に、中長期的に深刻な問題を引き起こすのはないでしょうか?
20年後、50年後に私のこの記事が完全に的外れとなっていることを切に願っています。 
 
●入管難民法改正案、13日審議入りを与党受け入れ 11/5
自民、公明の与党は、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入管難民法改正案について、当初、今週8日の審議入りを目指していましたが、野党側の合意が得られたとして、13日からの審議入りを受け入れる方針を固めました。
今の国会の焦点となっている外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入管難民法改正案をめぐり、与党側は当初、今週8日からの審議入りを目指していましたが、立憲民主党などの野党側は拙速だなどとして、これを拒否していました。
複数の与党関係者によりますと、安倍総理出席のもと、来週13日に衆議院本会議を開いて法案についての審議をスタートさせることで野党側との合意が得られたということです。これにより、与党側は、当初描いてきた8日からの審議入りを事実上、先延ばしすることを決めました。 
 
●入管法改正案で安倍首相、新在留資格の永住は「ハードルはかなり高い」 11/5
参院予算委員会は5日午前、安倍晋三首相と全閣僚が出席し、平成30年度第1次補正予算案の総括質疑を実施した。首相は外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案をめぐり、条件を満たせば永住の道が開ける在留資格「特定技能2号」について「ハードルはかなり高い」との認識を示した。その上で「移民政策を採ることは考えていない」と重ねて強調した。
改正案では一定の知識・経験を必要とする「特定技能1号」と熟練した技能が必要な「2号」の在留資格を新設。2号には家族の帯同が認められる。
首相は、外国人材が永住を許可されるためには「素行善良で独立した生計を営める資産または技能があるなど、厳しい条件が課される」と説明し、「在留資格を得れば、わが国での永住が認められるというものではない」と述べた。
また、山下貴司法相は「日本人の雇用に影響しないような制度設計にする」と指摘。来年度に新たな在留資格で受け入れる外国人数の規模について「政府として、なるべく近日中に示したい」とした。立憲民主党の蓮舫参院幹事長への答弁。
総括質疑は5日午後と7日にも実施。与党は7日中に補正予算案を採決し、参院本会議で成立させる方針だ。 
 
●入管法改正をめぐる安倍政権のデタラメ… 11/5
 外国人の奴隷労働拡大を狙う一方で官邸が法務省の外国人共生対策を潰していた!
こんな状態で、一体どうやって法案審議ができるというのか──。臨時国会では、外国人労働者の受け入れを拡大させる出入国管理及び難民認定法改正案(以下、入管法改正案)についての質問が相次いでいるが、きょうの参院予算委員会でも、安倍政権の無責任ぶりが露わになった。
そもそも、今回の入管法改正案は、人手不足の分野において「相当程度の知識または経験を要する技能」をもつ外国人には「特定技能1号」、「熟練した技能」をもつ外国人には「特例技能2号」(在留期間は無制限で更新可能、家族)という在留資格を新たに設けるもの。「1号」は通算5年の在留期間で家族の帯同は認めないが、「2号」は在留期間の更新が可能で、家族の帯同も認められる。
しかし、入管法改正案には、どのような業種で受け入れるのか、一体どのくらいの人数を受け入れるのかといったことは明記されておらず、法案成立後に省令で決めるとしている。その上、受け入れた外国人たちの生活支援や日本語教育などをどうするかといった受け入れのための整備さえおざなりになったままなのだ。
そんな中、きょうの参院予算委で立憲民主党の蓮舫議員は、特定技能1号の「相当程度の知識または経験」という要件について、「『相当程度』とはどのレベルか」と質問。だが、山下貴司法相の回答は「所管省庁と緊密に連携連絡を取り合った上で今後決めていく」と、実質上のゼロ回答。
さらに蓮舫議員は、外国人労働者の受け入れを検討している業種14種のなかに含まれている宿泊業を管轄する石井啓一国交相に「宿泊業の『相当程度の技能水準』とは?」と尋ねたが、石井国交相の回答は「ただいま検討しているところではないかというふうに思う」というもの。「ベットメイキングは該当するか」「食事の配膳は該当するか」という質問にも、「全体的に検討している状況」としか答えられなかった。
法案の肝心な部分を所管大臣が「検討しているところだと思う」と平然と言い放つ法案を、あと数日で審議入りさせようとする……。まったく暴挙にもほどがあるが、最大の問題点は、安倍政権が外国人を「安く買いたたける労働力」としか見ず、「人」だと思っていないことだ。
今回の入管法改正案は「事実上の移民政策」などと呼ばれているが、この国の外国人労働者は約130万人にものぼり、このうち約55万人が外国人技能実習生と留学生のアルバイトだ。しかし、外国人技能実習生に対する長時間労働や賃金未払いといった労働関係法違反は常習化しており、厚労省が昨年実施した5966事業所への調査では約7割の事業所で法令違反を確認。雇用者側からの暴力やセクハラ、パスポート取り上げ、差別行為などに関する報告が後を絶たないという現状がある。
こうした劣悪な労働環境からか、昨年の一年間で失踪した外国人技能実習生は過去最多の7089人だったが、さらに今年は1〜6月の半年間だけで計4279人と、昨年の人数を更新する勢いであることが1日の衆院予算委であきらかになったばかり。この数字だけでも異常と言わざるを得ず、深刻な人権侵害として国際的に問題になってもおかしくはない。
つまり、これまでも日本は「実習生制度」という名の「奴隷労働」「強制労働」の移民政策をとりつづけてきたのだが、それでも労働力不足を解消できないために、今回、法改正に乗り出した。だが、いの一番に取り組むべき外国人労働者の人権保護や法的支援といった問題を放置させたままなのだ。
いや、放置しているどころか、安倍政権は法改正にともなって、人権保護より治安目的の「監視の強化」しか考えていないといったほうがいいだろう。
実際、今回の入管法改正案によって、政府は2019年4月から「入国在留管理局」を格上げし、法務省の外局「入国在留管理庁」(仮称)として設置する方針だが、読売新聞9月27日付記事によると、「入国在留管理庁」への格上げにあたり、法務省は「入国在留管理部」とともに「外国人共生部」による2本柱での運用を提案していた。〈外国人を「管理」する発想だけでなく、外国人との「共生」に力点を置くことが、これからの日本社会の活力を維持するカギと見たため〉だという。だが、これに安倍官邸が噛みつき、「日本は移民政策はとらないとの立場を明確にすべきだ」「治安の悪化や、日本人の雇用が脅かされるのではないかとの不安に応えられない」と主張。結果、「外国人共生部」は幻と消えたのだ。
外国人労働者に対する労働関係法違反や差別行為が横行するなか、より外国人の働き手を受け入れたいと言うのなら、まずは生活しやすい環境の整備をおこなうのは当たり前の話だ。しかし、安倍首相は1日の衆院予算委でも、立憲民主党の長妻昭議員から「拡大の哲学は、多文化共生なのか、それとも『日本人になってもらう』という同化政策なのか」と質問されても、ただただ「移民として受け入れる政策ではない」とがなり立てた。「共生」する気などさらさらなく、むしろ「徹底管理する」ことをアピールしてなんとか右派を抑え込むことしか頭にないのである。
そのことの象徴的な事例が、最近相次いで放送された「入管PR番組」だ。10月6日、フジテレビが『密着24時! タイキョの瞬間 出て行ってもらいます!』というタイトルで法務省・入国管理局の入国警備官などに密着した番組を放送。技能実習生として来日していたベトナム人女性について、なぜ不法滞在に至ったのかといった事情やバックグラウンドにまったく触れることはなく、「技能実習生の無許可の資格外活動は不法就労」だとして断罪。番組ではナレーションで何度も「追い出す」「出て行ってもらいます」と繰り返した。さらに、同月10日にもテレビ東京が入管警備官たちの捜査などに密着した『密着! ガサ入れ』なる番組を放送したが、これらの番組はともに放送前から東京入管の公式Twitterアカウントが「現場で奮闘する入国警備官と入国審査官の姿をぜひご覧下さい!」などと番組を紹介、番組ホームページのURLを貼り付けてPRまでおこなっていた。
入管をめぐっては深刻な人権侵害が指摘されつづけ、近年は収容期間が長期化しており、問題が急増。なかでも自殺・病死が相次ぐ事態が起こっているが、こうした入管の問題は棚に上げたままPR番組を連続して垂れ流すことで、今回の入管法改正案に対して「外国人の監視強化のアピールをはかったのは明白だ。
共生のための政策をまったくとらず、外国人を犯罪者と見なすような差別感情、排外主義を助長するような姿勢を保ちながら、ただ「移民政策ではない」と意味のない言葉を繰り返す安倍政権。外国人労働者の受け入れ拡大は、来年の参院選を睨み、経団連をはじめとする産業界からの強い要望を聞くための法案なのはミエミエだが、こんな「人権を保障する必要もない、ただの安い労働力」としか見ない国に、ほんとうに人材は集まるのか。
実際、昨年にスイスのビジネススクールIMDが昨年発表した「世界人材ランキング2017年版」によると、高度な技術をもつ外国人材が魅力を感じる国・地域は、1位がスイス、2位UAE、3位シンガポールとなっているが、一方、日本は63ヶ国中51位。近隣国の中国(34位)や韓国(48位)にも負け、日本は調査対象のアジア11カ国の中で最下位となっている。
すでに、世界中に日本は「魅力のない国」と認知されているのに、その上、「人権もない、差別が蔓延るひどい国」という印象を押し広げる法案を通そうという──。まったく正気の沙汰とは思えないだろう。 
 

 

 
●"移民"じゃないからOK?「改正入管法」の不安 11/4
安倍内閣は、外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正法案を11月2日、閣議決定した。政府は今国会で同法案を成立させ、2019年4月から施行させたい方向だ。
安倍晋三首相は「労働力の受け入れであって、移民政策ではない」と言い切り、反発の声をいなそうとしている。しかし、そもそも移民として定義しようとも、移民とせずに単なる労働力の受け入れであると定義しようとも、社会へ与える影響には大差ない。今後、より丁寧な議論が必要になるだろう。
外国人労働者の受け入れ問題については、今後とも多面的な角度から取り上げていくが、本稿ではまず改正法案の背景と課題をみていく。
労働力不足がますます深刻化
日本の労働力不足がますます深刻化しているのは事実。厚生労働省が10月30日に発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.64倍で、1974年1月以来の高水準となっている。正社員の有効求人倍率(同)は1.14倍で、こちらも過去最高だ。
就業者数も6715万人と調査が開始された1953年以来で最高記録を更新した。8月の女性の就業率は69.9%で、比較可能な1968年以来で最高値になっている。人口減少だけが原因ではない、社会構造自体の人手不足感が慢性化している。
こうした状況に対処すべく、政府は2017年6月9日に閣議決定した「未来投資戦略2017」で、移民と解されないような仕組みや国民的コンセンサス形成などを進めていくことを決め、2018年6月15日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2018」で「従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを作る必要がある」と枠組みの拡大を宣言した。
日本において就労が認められていたのは、外交官や大学教授、医師や芸術家の他、高度専門的な能力を有する人材として法務省令で定められたものなどと職種に限定が加えられていた。
それをこの度の入管法改正では「特定技能1種」と「特定技能2種」の2つの資格に再構築。旧来認められてきた高度な専門性を必要とする在留要件をおおむね「特定技能2種」にあてはめるとともに、新たに人材不足の産業分野における「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」として「特定技能1種」を位置付けた。
「特定技能2種」は家族の帯同も可能で、在留期間の上限はない。よって永住権取得に必要な「10年間の滞在」も満たすことができる。「特定技能1種」の滞在期間は通算で5年を限度とし、家族の帯同は基本的に認められず、受け入れ機関や登録支援機関による支援の対象となる。具体的には人材が特に不足している介護、農業、建設など14種の分野だ。
OECDの定義では「1年以上外国に居住する人」が移民
法律の構成としては、高度な専門性を有する外国人には長期滞在を許し、そこまで高度ではない労働者には短期で帰国してもらうことを前提とする。安倍首相が「移民政策ではない」と主張するのは、これゆえだろう。
では本当に流入してくる外国人たちは移民ではないのか。OECD(経済協力開発機構)の定義によると、移民とは「1年以上外国に居住する人」を意味し、国連の機関であるIOM(国際移住機関)は「本来の居住地を離れて、国境を越えるか、一国内で移動している、または移動したあらゆる人」と定義しており、国際的に定説があるわけではない。
一方で自民党の労働力確保に関する特命委員会が2016年5月24日に発表した「『共生の時代』に向けた外国人労働者受入れの基本的考え方」によれば、移民とは「入国の時点で永住権を有する者」を意味し、「就労目的の在留資格による受入れは『移民』に当たらない」として、かなり限定的な解釈をしている。
しかし自民党は初めから移民に否定的だったわけではない。
小泉政権時の2005年に中川秀直元幹事長が「外国人人材交流推進議員連盟」を設立。将来深刻化する人手不足を予想して今後50年で1000万人の移民を受け入れるとともに、移民庁を設置することなども検討。2008年6月には永住権取得に必要な居住期間を7年に短縮することや、帰化制度を簡略化して入国後10年で日本国籍を取得できることなども盛り込んだ案を福田康夫首相(当時)に提出している。
もっとも中川氏の移民政策には反対論が強く、自民党内で主流となるに至らなかった。リーマンショックによる景気停滞や民主党政権の誕生も、中川氏の案を埋もれさせる原因になった。
ふたたび移民についての議論が活発化したのは、2014年3月に第2次安倍政権が毎年20万人の外国人労働力受入れを本格的に検討し始めた時。その背景に安価な労働力を確保したい経済界の後押しがあったのは言うまでもない。
例えば日本経団連の米倉弘昌会長(当時)は2010年11月8日の定例会見で、「(人口減少の)補強のためには移民しかない。長期的な安定のために日本に忠誠を誓う移住者をどんどん奨励すべきだ」と積極的に移民政策を推進していくべきとする自論を展開し、その後継の榊原定征会長(当時)も2017年4月10日に「移民について経団連として長期的な課題として検討を続けていく必要がある」と語っている。
「移民」でも「労働力」でも同じこと
すでに日本には2017年10月末現在で128万人の外国人労働者が存在しており、2007年に届け出が義務化されて以来の最多数を記録した。これを「移民」と定義しようとも、「単なる労働力の受け入れ」であると定義しようとも、社会に与えるインパクトが変わるわけではない。
「『移民じゃないから大丈夫』というマジックワードだけではよくない。総理は先頭に立って説明すべきだ」
国民民主党の奥野総一郎衆議院議員は11月2日の衆議院予算委員会で安倍首相に対し、本法案を総理大臣が出席して質疑に応じる重要法案議案に指定することを求めたが、安倍首相はそれを受け容れなかった。
移民にしろ労働力の受け入れにしろ、国民生活に大きく影響するのは必至だが、今回のこの改正案では国民の不安をいまひとつ解消できないというのが現実だ。至急に補完する法制度を整え、期限を超えて滞在できないようにする組織的な対応をできるようにしなければならないだろう。しかしながら外国人労働者の人権も尊重しなければならない。外国人労働者を増やす今回の枠組みが、社会の変化に十分に対応できるものなのかどうかも、慎重に検討しなければならないだろう。 
 
●入管法改正案の最大の問題 11/4
 「事実上の移民政策であること」ではなく、政府がそれを認めないことである
11月2日、政府は出入国管理法の改正案を閣議決定し、条件によっては永住権の取得に道を開く外国人の単純労働者の受け入れを認めたが、今回の決定の最大の問題は事実上移民の受け入れに舵を切ったことではなく、「労働力の受け入れであり移民政策ではない」とタテマエで実態を覆い隠そうとする政府の姿勢そのものにある。
「移民政策ではない」
今回の入管法改正に関して安倍首相は「深刻な人手不足に対応するため、即戦力を期限付きで受け入れる」と重要性を強調しているが、野党から「そもそも人手不足がどの程度あるのか不明確」、「人数の上限が定められていない」といった批判が出ているだけでなく、自民党や保守派からも批判が噴出している。後者の批判は主に「事実上の移民政策ではないか」に集中している。
これに対して、首相は「いわゆる移民政策ではない」と力説しているが、今回の決定が外国人定住者を増やす方針に転じたものであることは間違いない。
今回の入管法改正の閣議決定では、これまで法的に制限されていた農業や建設業をはじめ14業種での受け入れが検討されている。
これまで「単純労働者としての外国人は受け入れない」という方針だったことからすれば、これだけでも大きな変化だが、さらに重要なことは「一時滞在ではない外国人労働者」を増やす点だ。
今回の決定では新たな在留資格として、「相当程度の知識または経験を要する技能」をもつ特定技能1号と、これを上回る「熟練した技能」をもつ特定技能2号の2段階を導入しており、滞在期間にも差が設けられている。1号の滞在期間は最長で通算5年、家族同伴を認められないのに対して、2号の滞在期間に上限はなく、家族同伴も認められる。
このうち、2号の場合、10年滞在すれば永住権の取得要件の一つを満たすことになる。
薄弱な論理
国際移住機関(IOM)によると、「移民(migration)」とは「本人の(1)法的地位、(2)移動が自発的か非自発的か、(3)移動の理由、(4)滞在期間に関わらず、本来の居住国を離れて、国境を超えた、あるいは一国内で移動している、あるいは移動した、あらゆる人」を指す。この基準に照らせば、今回の入管法改正で想定される外国人労働者は立派な「移民」である。
それにもかかわらず、安倍首相は「移民政策ではない」と抗弁する。なぜなら、日本政府はIOMの定義を受け入れていないからである。なぜ受け入れないのかの説明はない。
その代わり、自民党政務調査会の労働力確保に関する特命委員会は2016年、「『移民』とは入国の時点でいわゆる永住権を持つ者であり、就労目的の在留資格による受け入れは『移民』には当たらない」と定義しているが、入国段階で永住権を取得している者など、欧米諸国でもほとんどいない。ハードルを限りなく引き上げた定義は、「日本人が作らなければ日本食でない(フレンチでもイタリアンでも構わない)」というのと同じで、願望であって現実を反映したものではない。
さすがにはばかったのか、国会答弁で安倍首相はこの定義を用いていない。その代わり、移民の定義に関して「一概には答えられない」としたうえで、「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人やその家族を期限を設けることなく受け入れ、国家を維持していこうとする政策は考えていない」と答弁している。
しかし、これとて問題は多い。「一概に答えられない」と述べ、「移民」とは何者かを示さずに「移民政策はとらない」というのは、「自分は独裁者ではない。独裁者がどんなものかハッキリ知らないけど」といっているのと、空虚という意味では同じで、学生のレポートなら落第ものである(少なくとも筆者の授業なら)。そのうえ「国民の人口に比して、一定程度の規模」とはどの程度なのかも定かでない。
これらは要するに、少子高齢化や人手不足などで外国人労働者の必要性に直面しながらも、「日本らしさが損なわれる」といった理由からそもそも外国人の受け入れに慎重な保守派に忖度し、あくまで「移民政策でない」ことにしようとするなかでひねり出された主張といえる。
外国人ぬきに成り立たない日本
念のために補足すれば、今回の入管法改正の主旨そのものは、労働力の不足に直面する産業界から歓迎の声があがっているように、日本社会のニーズにマッチしたものと評価してよい。
単純労働を担う外国人ぬきに日本社会がもはや成り立たないと筆者が実感したのは、20年以上前の学生時代、「ものは試し」で肉体労働のアルバイトをした時のことだった。作業内容は吉祥寺のあるデパートで深夜にトイレの改装工事をすることで、工事を受注した大手建設会社の他、子会社、孫会社の人間も多く働いていた。
このうち、筆者が登録していた横浜の孫会社から派遣された人間をみると、当時の筆者のような物好きな大学生の他は中国や東南アジア出身の外国人しかおらず、しかも彼らは監督から「山本」、「田中」といった日本名で呼ばれていた。不法就労だったのだろう。
不法就労は犯罪だが、その彼らがいなければ、トイレの改装工事さえできない現実がそこにはあった。あれから20数年たって、この状況はさらに加速しているとみてよい。
つまり、たとえ日本政府が現実を直視せず、「移民政策を考えていない」としても、既に日本という国家を維持するうえで外国人は欠かせないのだ。実際、(就学ビザで来日しながら学校にほとんど通わず働く者さえいる)留学生アルバイトや(「技能を学ばせる」という名目のもとに労働基準法の対象外に置かれてきた)技能実習生を含む外国人労働者に単純労働の多くを依存している現状に鑑みれば、今回の入管法改正は法的にグレーだったものを正式に認めるもので、その意味では矛盾が正されたともいえる。
「移民政策ではない」ことの問題
しかし、今回の入管法改正の最大の問題は、日本政府がこれを「移民政策ではない」と抗弁するところにある。タテマエで実態を覆い隠し、国民に移民に関する理解や覚悟を持たせないことが、後世に禍根を残しかねないからである。
移民受け入れに関しては、一般的に以下の各点がよく問題視されやすい。
治安の悪化 / 雇用の奪い合い / 財政負担 / 文化摩擦
ただし、これらのなかには、誤解や誇張もある。
治安に関して述べると、欧米諸国での多くの統計的調査は「移民の増加で治安が悪化した」という説に疑問を呈している。
例えば、イギリス警察によると、2017年度に「反社会的行為を行った」白人が3万977人だったのに対して、ハーフを含む移民系のそれは3647人で、全体の約10パーセントだった。これに対して、OECDの統計によると、イギリスの定住外国人の人口(2014)は515万4000人で、全人口(6365万人)の8パーセントだった。つまり、移民の犯罪率はやや高いものの、白人と大差ないレベルにとどまっている。
低所得層の移民は確かに固まって暮らすことが多く、結果的に犯罪多発地域(つまり地価の安い土地)に移民が集中しやすくなる。ただし、それは所得水準や偏見などに促されるもので、「外国人が増えたら犯罪が起こりやすくなる」というのは乱暴な言い方である。
また、「雇用の奪い合い」もよくいわれるが、そもそも先進国の人間が単純労働をやりたがらないなか、外国人がその穴埋めのために招かれるのであり、多分に誇張が含まれている。
さらに、由緒ある寺社仏閣が立ち並ぶ京都や鎌倉で場違いなカフェやレストランを開業している経営者も、ハロウィンに渋谷で暴れまわった若者も、その大半が日本人で、多くの日本人自身が「日本らしさ」を放置していることに鑑みれば、「日本らしさを損なうから外国人の受け入れに反対」という主張は説得力を欠く。
もちろん、実質的に移民を受け入れるとなれば、例えば母語が日本語でない子どもの就学の問題など、相応のコスト負担が必要になる。
したがって、日本政府に求められるべきは、むしろ移民にまつわる誤解や誇張を打ち消し、受け入れのコストを差し引いても利益が大きい、あるいは必要である、という覚悟を国民に広く求めることであろう。
負のレガシーの恐れ
この理解や覚悟を欠いたまま移民を受け入れたことが、現在のヨーロッパの移民問題の根底にある。
ヨーロッパ諸国は1940年代後半、戦後復興を行う人材の不足を海外から調達したが、彼らは「移民」ではなく「一時的な労働力」とみなされやすかった。当時、西ドイツでトルコ系が「ガストアルバイター(英語でいうゲストワーカー)」と呼ばれたことは、その象徴である。
ところが、多くの移民は「一時滞在」の前提を共有しておらず、戦後復興が終了した後も増え続けたため、認識のギャップが拡大した。「想定と違った」ことはその後、受け入れ国市民の間に反移民感情が生まれやすい土壌になった。
日本政府が「移民政策ではない」と抗弁して国民に「移民は来ない」と思わせようとしているなら、将来的に永住者が増えた際に「想定と違った」という不満を生まれやすくする。しかも、その頃には現在政権を担っている政治家や官僚は引退しており、憎悪や不満の矛先は、その時代の移民たちに向けられる。その場合、今回の入管法改正は、日本にとって負のレガシーになり得る。
言い換えるなら、この問題は安倍首相のお気に入りの慣用句「結果責任」や「責任政党」のあり方を問うているといえるだろう。  
 
●日本を守るために必要な移民政策の「鉄則」 10/4
日本の外国人政策が、歴史的な転換点を迎えていることをご存じだろうか。政府は2019年4月から、一定の業種で外国人の単純労働者を正面から受け入れることを決定した。
検討されている受け入れ業種は以下の通りだ。
農業 介護 飲食料品製造業 建設 造船・舶用工業 宿泊 外食 漁業 ビルクリーニング 素形材産業 産業機械製造 電子・電気機器関連産業 自動車整備 航空
これらの業種で、2025年までに50万人超の受け入れを想定している。そのための新たな在留資格「特定技能」を設ける入管法改正案を今秋の臨時国会に提出する。これまで単純労働者を正面からは受け入れてこなかった日本では、大きな政策転換であり、本格的な移民社会を迎えつつある。
期待されるプラスの効果は?
政府が、少子高齢化(生産年齢人口の減少)による人手不足や社会保障財政の逼迫などに向き合い、裏口ではなく正面から就労資格を設けて外国人労働者を受け入れる姿勢を示したことは高く評価できる。
この新在留資格「特定技能」の制度がうまく運用されれば、「本音」(単純労働力の確保)と「建前」(技能移転による国際貢献)が食い違っている技能実習制度や、勉学ではなくアルバイト目的の偽装留学といった「裏口」制度が結果的に縮小していき、さまざまな歪みが解消される可能性がある。
外国人労働者の受け入れは、社会に極めて重大な影響を与えるため、国民による十分な議論が必要である。しかし、移民政策に関して世界で確立された「常識」が日本では共有されておらず、そのため議論に混乱がみられる。
また、受け入れを急ぐあまり、法制度も不十分なものとなる可能性がある。移民の受け入れは社会の分断、混乱、治安悪化を生みやすく、決して「きれいごと」だけではすまない。慎重のうえにも慎重を期して検討する必要があるのだ。
そもそも、人類の歴史上、移民政策を完全に成功させた国は1つもないと言っていい。
上の表(略)は諸外国における外国人単純労働者受け入れ制度を比較したものである。これを見れば明らかなとおり、単純労働者の受け入れについては、「期間限定かつ家族帯同を認めない」のが、世界の移民政策の常識である。この点は、「特定技能」に係る政府案も同じであり、妥当である。
移民と難民は異なる
家族帯同を認めないということについては、人権侵害であると批判する人がいるだろう。心情的にはよくわかるものの、法的にはその批判は成り立たない。移民は難民とは異なり、どの国家も受け入れ義務を負わず、外国人に他国への入国や在留を求める権利はないからである。
これについては最高裁判所の判例があり、各国政府は、政策目的達成の観点から、合理的な受け入れ要件を裁量的に設定することができる。家族帯同を認めた場合、法で認められた滞在期間が過ぎても、子どもの学校などの関係で帰国させることが実際上できなくなり、定住化に直結する。現在の日本のように、教育や相談体制を含め、外国人に係る社会統合政策が不十分なままで、しかも単純労働であるがゆえに経済基盤が安定しない状態で家族まで受け入れることは、当該家族自身にとっても不幸な事態となる可能性が高い。
もっとも、日本在留中に一定以上の技能レベルを習得した外国人については、一定期間後に帰国させなくても、生活保護などの公的負担になる可能性が低く、日本への定住を認めることにメリットがある。優秀な人材については帰国させなくてよく、雇用し続けられるとしたほうが、企業の人材教育への投資意欲が高まり、生産性向上にもつながるだろう。「特定技能」に係る政府案も、この考え方をとっている。
なお、「家族帯同を認めない」というのは、本国での家族と一緒での在留を認めないということを意味する。したがって、「特定技能」で来日してから知り合った日本人や適法に滞在する外国人と結婚したり出産したりして、日本でともに暮らすことは当然に認められる。そのほか、日本に受け入れた以上は、可能な限り、人権を保障しなければならない。
日本の労働市場との需給調整のための仕組みが不十分であれば、単純就労分野でなし崩し的に外国人労働者の受け入れが拡大し続け、深刻な問題が発生する。不況時における需給調整も十分に図れない可能性がある。
入管法上単純就労が認められている日系人(日本にルーツを持つ外国人)が、リーマンショック時に大量失業したため、政府は2009年度に日系人失職者に対して多額の公的給付を行うことによる帰国支援事業を実施せざるをえなかった。本人1人当たり30万円、扶養家族1人当たり20万円の帰国支援金を給付し、その結果、当該事業によって総額68億円を給付し、2万1675人もの日系人が日本を離れたことは記憶に新しい。
政府は、既存の就労資格に係る受け入れ基準の緩和も決定している。たとえば、外国人留学生が日本の大学を卒業し、年収300万円以上の日本語を使う仕事(日本語による円滑な意思疎通が必要な業務)に就けば、職種を問わず、就労資格を認めることなどを決定している。
今後、日本人が外国人と労働市場において広く競合し、労働需給バランスが崩れることがありえ、外国人に職を奪われているとの不満が発生し、社会統合政策の不備ともあいまって、日本社会において分断や混乱が生ずるおそれがある。また、企業が現業的分野において安易に外国人労働者に依存することによって、生産性向上や就労環境向上のための企業努力が妨げられ、産業構造改革も進まなくなる懸念がある。
なし崩し的な事態を防ぎ、秩序だった受け入れを行い、深刻な問題の発生を防ぐためには、まず、政府が「自国民雇用優先の原則」(厳密には、外国人永住者や定住者を含む国内労働市場を優先することを意味する)を政策ポリシーとして明示し、主権者たる日本国民の職が奪われないことを表明するべきである。
「自国民優先」の具体的な方法とは?
「自国民雇用優先の原則」を実現するために用いられるのが、労働市場テストである。労働市場テストとは、企業が外国人労働者を雇用したい場合、一定期間求人をしてみてなお自国民を採用できない場合に限り、外国人労働者の雇用を認める制度である。
この労働市場テストの実施に加えて、公正で客観的な指標に基づく受け入れ要件を設定する必要がある。具体的には、クオータ(総量規制、職種別規制、地域別規制による受け入れ人数枠の割り当て)の範囲内であること、職種別・地域別の有効求人倍率が一定値以上であること、外国人雇用上限率(受け入れ企業の従業員数規模などに応じた受け入れ人数枠)の制限範囲内であることなどを要件とするべきである。
上の表(略)を見ても明らかなとおり、少なくとも単純労働者については、自国民雇用優先原則を明示し、労働市場テストの実施に加えて、客観的な指標に基づく受け入れ規制を行うのが世界の移民政策の「常識」である。「特定技能」に係る政府案はこの点が明らかでない。今秋の臨時国会に提出される改正法案の最重要ポイントである。
禁じられるべきはあくまでも外国人に対する不合理な差別である。日本が主権国家である以上、日本人と外国人との違いは違いとして認めたうえで、政策目的達成の観点(出入国の公正な管理や日本の労働市場との調整など)から合理的な措置を取るべきなのは当然である。いわゆる「地球市民」観を取らないかぎりは、国家として採用すべき移民政策が、人類愛的な優しさが一歩後退した、ある種冷徹なものとなることはやむをえない。その本質を押さえ、覚悟をもって議論する必要がある。  
 
●「移民政策ではないか」新在留資格、与党内からも疑問 11/3
外国人労働者の受け入れ拡大に向けて、新在留資格「特定技能」を盛り込んだ出入国管理法改正案が2日、閣議決定された。「人手不足」を理由に、大きな政策転換をする法案は、国会に議論の舞台を移す。ただ、肝心の受け入れ業種や人数は法案で示されず、制度全体は見えてこない。野党だけでなく、与党からも不満の声が上がっている。
政府・与党は8日の衆院本会議で改正案を審議入りさせる予定だ。しかし、国会では既に「生煮えだ」との批判が相次いでいる。
まず野党がただしているのが、受け入れ人数の見通しだ。2日の衆院予算委員会では国民民主党の奥野総一郎氏が「健康保険への影響もあり得る。どれぐらい増えるかあらかじめ示してほしい」と質問した。政府内には「初年度で4万人」という試算もあるが、山下貴司法相は「関係省庁と精査している。法案の審議に資するように説明したい」と述べるにとどめた。
受け入れ業種や人数を改正案に明記せず、法成立後に省令で定めるという政府の姿勢にも批判が出ている。立憲民主党の長妻昭代表代行は記者団に「業種は増えるのか、来年4月以降のサポート支援はどうなのか、一切分からないがらんどうの法律だ」と指摘。参院の国民民主党の舟山康江国会対策委員長も2日の会見で、「基本が決まってからきちんと法案提出をして、中身を詰めていくのが当たり前だ」と述べた。
改正法施行後に、実施状況の検証などを求める見直し条項を盛り込むことで、法案の国会提出にゴーサインを出した与党内にも「移民政策ではないか」「受け入れが青天井になる」との疑問がくすぶる。1日に衆院予算委で自民党の岸田文雄政調会長は「政府は移民政策ではないとしているが、もう少しわかりやすい丁寧な説明をお願いする」と要望した。
来日する人材像も見えない。政府は改正法の成立後に、在外公館などを通じて新制度の説明や、人材確保のための働きかけを始める方針だが、それでは新制度スタートまで時間も少ない。このため、当面は技能実習生から移行して働く外国人が多くなりそうだ。改正案では技能実習生としての経験が3年間あれば、試験を受けずに特定技能に移行できるとしている。
1993年から始まった技能実… 
 
●「特定技能」の外国人受け入れ、初年度4万人 省庁試算 11/3
政府が外国人労働者の受け入れ拡大のため、来年4月の導入を目指している新在留資格「特定技能」をめぐり、各省庁が初年度に合計で約4万人の受け入れを試算していることが関係者の話で分かった。新たな来日者のほか、技能実習生から移行する人も含まれる。政府は今後、必要性を精査しながら受け入れ人数を調整するという。
政府は2日、特定技能の創設を盛り込んだ出入国管理法の改正案を閣議決定し、衆院に提出した。来週にも審議入りし、臨時国会での成立を目指す。ただ、受け入れの業種や人数は法案で明示されず、成立後に省令などで決める。野党が「全体像が見えない」と批判をする一方、与党からも「移民政策につながる」などと慎重意見が出ている。
政府関係者によると、各省庁が概算要求時点で、所管する業界について初年度の受け入れ人数を試算した結果、合計で約4万人だった。厚生労働省によると、昨年10月末で国内の外国人労働者は約128万人。
政府は現在、新在留資格の受け… 
 
●外国人就労「詳細は省令」 来年4月施行を最優先 入管法改正案閣議決定 11/3
政府は2日閣議決定した入管難民法改正案に新たな在留資格の創設を盛り込んだが、制度設計の詳細は成立後に定める法務省令などに先送りした。来年4月施行を急ぐ「見切り発車」の背景には、人手不足にあえぐ産業界の要請に応え、来年夏の参院選で実績をアピールしたい思惑がある。だが十分な国会審議もないまま政府が制度運用の自由裁量を握れば、外国人労働者が安易な雇用の調整弁になりかねない。
「人手不足が成長を阻害する大きな要因になり始めている。しっかり制度をつくる」。安倍晋三首相は2日の衆院予算委員会でこう強調した。「来年4月に間に合わせるため、骨格で通してほしい」(政府高官)というのが本音で、法案は首相が本会議の質疑に応じる必要が出てくる「重要広範議案」にもなっていない。
急ぐ要因には産業界の突き上げもある。経団連は2016年と今年10月の2回、企業ニーズを前提に外国人労働者の受け入れ促進を提言。中西宏明会長は10月24日の記者会見で「経団連の意見を相当反映した方向で決めてもらっている」と改正案の成立に期待を込めた。
政治的な思惑も見え隠れする。来年は統一地方選と参院選が重なる12年に1度の「選挙イヤー」。地方の中小企業や農林水産業などでは人手不足を訴える声が強く、手を打たないと影響が出かねないからだ。九州選出の自民党参院議員は「地元に帰ると、早くどうにかしてくれと言われる。この状態が続けば選挙を戦えない」と訴える。

今回、新たに創設する在留資格をどの分野に適用するかなど、制度の詳細は省令に委ねられる。受け入れの条件となる人手不足を判定する基準、在留資格に必要な技能を測る手法なども明らかになっていない。
省令は与党との協議は必要になるものの、国会の議決は必要ない。国会のチェックが働かないため、政府は制度運用のフリーハンドを握りやすい。
改正案によると、政府は人手不足が解消された場合は受け入れを停止するとしており、雇用情勢によって受け入れ数を広げたり狭めたりしやすい制度設計が想定される。山下貴司法相は1日の衆院予算委員会で、受け入れる外国人労働者数について「数値として上限を設けることは考えていない」と述べている。
だが透明性を確保しなければ、日本人労働者の賃金低下や治安悪化など世論の反発で受け入れ基準を「開け閉め」する運用になりかねない。野党からは「景気が悪化すれば本国に帰ってもらうような受け入れ方は問題だ」との声が上がる。
法案が成立、施行されればこれまで以上に多くの外国人が日本で生活するようになる。自民党重鎮の伊吹文明元衆院議長は「日本の国柄を変えるだけの決意を持たないといけない。いいとこ取りはできない」と話す。 
 2018/10

 

 
 2018/ 9

 

 
●安倍政権の移民政策で日本の年金が狙われる? 9/27
 「移民大国」化の裏に潜む危機
本連載前回記事で、政府の「移民政策」と危惧される点についてお伝えしました。安倍晋三政権は実質的に「移民」の受け入れに舵を切っていますが、急増する外国人労働者によって、日本の健康保険が不正に利用される恐れが高まります。
そして、不安があるのは健康保険だけではありません。年金も、すでに財政難ですが、さらに財政が悪化していく状況をはらんでいます。「日本の社会保障制度に加入するには日本国籍が必要なのでは」と思っている方もいるかもしれませんが、健康保険も年金も、加入するのに日本の国籍は必要ありません。基本的に国内に住所があれば誰でも加入でき、社会保障を受ける権利が発生します。
年金については、これまで25年以上の加入期間がなくては受給することができませんでしたが、2017年8月1日からは、25年ではなく10年以上加入していれば65歳から公的年金がもらえることになりました。
ただ、外国人労働者の場合は、これまでは最長5年までしか働けなかったので、年金の受給条件を満たすのは難しい状態でした。ところが、政府が「移民政策」に大きく舵を切ったことで、来年4月からは外国人労働者が最長10年働けることになりそうです。年金は加入期間を通算できるので、1回の入国で年金受給条件の加入10年を満たせなくても、再度入国して働くことで10年に達すれば受給資格を得ることができます。
自国に年金の制度がない外国人などは、65歳から死ぬまで日本の公的年金を海外の自分の口座に送金してもらうことができます。10年の加入でもらえる年金額は、国民年金で年間20万円ほど。厚生年金は収入にもよりますが、年収500万円の場合は年間50万円近くになります。
さらに、社会保障制度が完備されていない国から来る外国人労働者にとって、国民年金には、もうひとつの大きなメリットがあります。それは、遺族年金です。
遺族年金目当ての偽装結婚ビジネスも横行
遺族年金は、国民年金または厚生年金の被保険者が亡くなったとき、その被保険者によって生計を維持していた遺族が受けることができるものです。たとえば、18歳未満の子どもがいるご家庭の場合、被保険者であったご主人が亡くなると、残された奥さんと子どもには、子どもが18歳になるまで(18歳になった年度の3月31日まで)遺族年金が支給されます。
これは、日本人だけでなく年金に加入している外国人労働者も同じです。奥さんと2人の子どもが残された場合の遺族年金額は、国民年金で月約10万円、厚生年金は年収にもよりますが、月約15万円です。
この受給額は、日本人でも外国人でも変わりません。そのため、奥さん、1歳と2歳の子どもを母国に残して日本に出稼ぎに来た人が国民年金に加入して亡くなった場合、子どもが18歳になるまで月々約10万円、総額で約2000万円の遺族年金を海外送金してもらえます。
自国にしっかりとした社会保障がある場合は少し状況が変わってきますが、安い労働力としてアジアなどから日本に出稼ぎに来る人の場合、自国の社会制度が充実してない可能性があり、国によっては月10万円はかなりの大金になるかもしれません。それだけに、怪しいビジネスなどが横行する不安もあります。
すでに、海外女性との偽装結婚ビジネスは日本で横行しています。偽装結婚ビジネスでは、年金をもらっている65歳以上の独身日本人男性に対して、「日本に憧れる若い海外の女性がいます」というような話を持ちかけて結婚させます。そして、日本人男性の死後には、相手の女性が財産だけでなく遺族年金をもらうというケースが増えているようです。
悪質なビジネスによって、私たちが汗水流して払っている年金保険料や税金が海外に流出していくのは腹立たしいですが、もはや止めようのない流れになっています。
日本の社会保障が崩壊する可能性も
厚生労働省によると、安倍政権発足当時の外国人労働者数は約68万人でしたが、現在は約128万人と2倍近くになっています。そして、今回の「移民政策」の強化で、日本の外国人労働者数は200万人近くになることが予想されています。
現在の日本の就労者数は6531万人(2017年12月末時点)なので、外国人労働者は約2%、つまり働く人の50人に1人が外国人ということになります。一方で、外国人労働者たちに日本人の私たちと同じ権利(参政権など)や保障を確保していくための議論は、あまり積極的にはなされてこなかったのが現状です。
「移民」については、すでに大量に受け入れている国で、さまざまな問題が起きています。移民政策に寛容だったヨーロッパ連合(EU)も内向きになり、ドイツなども移民政策の閣内対立で政治危機に直面しました。
イギリスでは、EU離脱派が「移民政策の悪影響」を強調し、「移民に職を奪われる」「なぜ移民に自国民同様の手厚い社会保障をしなくてはならないのか」といった不満が吹き出し、ついにはEU離脱という方向に向かいました。
移民問題は、この国の未来の形を左右するような大きな問題です。プラス面だけでなくマイナス面も世界中で噴出しているなかで、すでに世界第4位の“移民大国”の日本は、さらに大量の「移民」を受け入れる方針を打ち出したわけです。
それにもかかわらず、いまだ大量の「移民」確保を「移民政策とは異なるもの」などと寝ぼけたことを言って、論争を避けようとしています。こんな状況のなかで、私たちの大切な社会保障が雪崩のように崩壊していく可能性があります。
この国を動かす政治家の頭には「選挙」のことしかないようですが、「移民問題は日本の形を変える大問題なのだ」ということを自覚してほしいものです。 
 
●安倍政権下で「移民」が倍増… 9/26
 日本の健康保険制度の危機がひっそり進行
6月に発表された政府の「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太の方針)のなかで、中小・小規模事業者の人手不足の深刻化を理由に外国人を幅広く受けて入れていく仕組みを構築することが明記され、安倍晋三政権は実質的な「移民政策」に大きく舵を切りました。
「移民」について、安倍首相はこれまで「日本が移民政策をとることは断じてない」と言い続けてきましたが、実際には、安倍政権は発足以来、国際的にも「移民」と認められる外国人労働者の雇用を促進してきました。外国人労働者数は政権発足時には約68万人でしたが、厚生労働省の2017年10月末の集計では約128万人と約2倍に急増しています。しかも、建設から家事支援、農業まで、ありとあらゆるところで働いています。
政府は、表向きは「外国人材の活用」として「高度専門職ビザ」や「技能実習ビザ」などで働く「能力の高い外国人材の日本への招き入れ」と言っていますが、現在の日本で働く外国人労働者は、国際的には「移民」と認知されています。そして、約128万人もの大量の「移民」を受け入れている日本は、すでに15年の時点で、ドイツ、アメリカ、イギリスに次ぐ世界第4位の“移民大国”と認知されているのです。
こうした状況がありながら、なぜ安倍政権が「日本は移民政策をとることは断じてない」と言い続けてきたかといえば、政権の強力な支持者のなかに「日本の伝統文化を守れ」「外国人犯罪を撲滅せよ」と言う人が多く、なかには外国人労働者を差別視する人などもいて、移民政策が不人気だったからです。そのため、表向きは否定しておかないと、選挙でコア層の支持を確実なものにできないという事情がありました。
では、なぜ安倍首相は前言を翻し、ここにきて移民政策に大きく舵を切ったのでしょうか。
安倍政権が移民政策に舵を切ったワケ
政府は、これまで外国人の就労が禁止されていた「単純労働」とされる分野に新たな在留資格を創設し、積極的に移民政策を進める方向を打ち出しました。外国人労働者に対する扱いが180度変わったのは、自民党総裁選挙を意識したからでしょう。
前述の「骨太の方針」では、外国人就労について、中小・小規模事業者の人手不足の深刻化を意識しているということがつづられています。安倍首相は、国会議員票を固める一方で、地方票が弱みといわれていました。かつての自民党総裁選では、大量の地方票が石破茂陣営に流れたこともありました。
その地方票を取り込むために、移民政策は必要だということでしょう。自民党員には、中小・小規模事業者も多くいます。地方票を1票でも多く獲りたい安倍陣営としては、こうした人たちに「移民を大量に入れて、深刻な問題である人手不足を解消します」とアピールすれば票につながると読んだのでしょう。
ただ、困ったことに、これまで安倍首相が「日本が移民政策をとることは断じてない」と言い続けてきたことで、この国には「移民問題」はないことになっています。そのため、日本における「移民」の定義すらあやふやなままで、「移民」を受け入れることに対する、確たる指針さえもできていません。
さらに、移民政策に大きく舵を切ったにもかかわらず、「骨太の方針」では、わざわざ「移民政策とは異なるものとして、外国人材の受け入れを拡大する」と書いています。50万人もの「単純労働者」を含む「移民」を入れるというのに、この期に及んで「移民ではない」と強調するというのは、わけがわかりません。これは単に、これまで「断じて入れない」などという強気発言をしてしまっているので、その辻褄合わせなのでしょう。
こうした政府の曖昧なスタンスも、移民問題を正面切って論じにくい状況にしています。実は、こうした状況が、私たちの将来をゆがめ、大きな禍根を残すことになるかもしれません。特に、日本の社会保障を揺るがす大きな要因になるのではないかと、個人的には危惧しています。
外国人による国民健康保険の不正利用事件が多発
私は、「移民」を入れないほうがいいとは思っていません。日本がグローバル化するなかで、海外人材の受け入れや交流は避けられないことだからです。
そして、外国人労働者と共存していくのであれば、その人格を認め、日本人と同じような保障も与えていかなくてはならないと思っています。彼らは、一緒に働いて、一緒に暮らしていく隣人なのですから。一方で、日本の社会保障制度は、ただでさえ財政難で危機的な状況です。
今、外国人による国民健康保険の不正利用事件が多発しています。日本には、海外に比べて手厚い医療制度があります。自営業者は国民健康保険に、会社員は社会保険に加入して、病気になれば多くの人が自己負担3割で治療してもらえます。70歳以上では自己負担1割という人が主流です。
たとえば、年収約370万円から770万円の人の場合、3割負担なので100万円の治療を受けても病院の窓口で支払うのは30万円となります。さらに、医療費が1カ月で上限額を超えた場合は超過分が払い戻される「高額療養費制度」があります。同制度を使うと、図のように窓口での30万円の支払いから約21万円が払い戻され、自己負担は最終的に約9万円で済みます(あらかじめ手続きをしておくと、窓口で一括処理してくれる病院もあります)。 
ここでかかった医療費100万円のうち、自己負担が約9万円で、残り約91万円はどうなるのかといえば、みなさんが支払っている健康保険料や税金でまかなわれます。
しかも、夫婦でそれぞれ100万円の治療を受けても、加入している保険が同じなら合算できるので、2人で約9万円の自己負担となり、約191万円はみなさんが支払った健康保険料や税金でまかなわれることになります。
そして、この自己負担額は入院4カ月目からはさらに下がり、4万4400円になります。夫婦でそれぞれ100万円の治療を受けても、同じ保険に加入していれば、あわせて4万4400円の自己負担で済むのです。
実は、日本の医療保険制度は、みなさんが考える以上に素晴らしい制度です。たとえば、すべて自己負担なら700万〜1200万円かかるといわれる肝移植も、高額療養費制度が適用されるので自己負担は10万円以内で済みます。
さらに、最新の医療技術も、多くの人が使うようになるとともに健康保険が順次適用されていきます。これまでは全額自己負担で約300万円もかかる前立腺がんなどの「粒子線治療」も、4月から保険適用になりました。さらに、最先端の手術支援ロボット「ダヴィンチ」も保険適用なので約9万円の自己負担で済み、1年間の投薬で約1300万円かかるといわれているがん治療薬「オプジーボ」も、一部の治療で保険の対象になっています。
海外の悪徳業者が日本の健康保険を食い物に?
このように、日本の公的保険は安くて素晴らしいのですが、その恩恵を受けようと、日本に就労ビザで入国して病院に入院する外国人が急増しています。日本は国民皆保険で、外国人労働者は全国健康保険協会が運営する中小企業向けの健康保険に加入しなくてはなりません。それ以外の留学などで来ている外国人も、滞在が3カ月を超える場合は国民健康保険に加入する必要があります。
そのため、日本で高度な医療を安く受ける目的で、労働者を装って来るケースが後を絶ちません。実際、ベトナム人が2年以上で総額1000万円の治療を受けていたケースもありました。
国民健康保険の赤字は16年度には約1468億円でしたが、これは税金で補っているのが現状です。もし、大量に「移民」を受け入れるようになると、なかには「日本で働く」という名目で入国しながら、「病気になった」と入院し、安い費用で治療を受けて帰国してしまう人も増えるのではないかと危惧されています。
実際に、海外の業者が日本の制度を悪用して患者を集める悪徳ビジネスで、日本の健康保険が食い物になっている実態も報告されています。 
 2018/ 8

 

 
 2018/ 7

 

 
●移民の受け入れには社会保障の改革が必要だ 7/30
日本でも、移民問題が議論になってきた。安倍首相は先週の関係閣僚会議で、来年4月から「新在留資格」を認める方向で、制度を整備するよう指示した。従来は専門知識をもつ労働者に限定していた移民を単純労働者にも認め、技能実習のあと5年まで在留を認める方針だ。業種もこれまで検討していた介護・農業・建設・宿泊・造船の5業種から拡大する。
こういう政策には経済界だけでなく、マスコミも「開かれた日本」や「多文化の共生」などといって賛成し、それに反対する人は「閉鎖的だ」と批判されることが多い。しかし日本より先に移民が大量に流入したヨーロッパでは、各国で移民排斥を求める極右政党が台頭し、イギリスはEU離脱を決めた。トランプ大統領を生んだのも移民問題である。日本もそうなる前に、冷静に費用対効果を考える必要がある。
第一の問題は、どういう立場で移民を考えるかである。あなたが人類の一員として世界の貧しい人を一人でも多く救済したい博愛主義者なら、移民を無制限に「歓待」すべきだ。労働人口が世界に移動すると労働需給のミスマッチが解消され、すべての国で所得が上がって所得分配は平等化する。その効果は、全世界で50兆円以上と推定されている。
しかし日本国民として考えるなら、移民のメリットだけでなく、そのコストを検討する必要がある。メリットとしてよくあげられるのが「人手不足の解消」だが、これは奇妙な話だ。人手が不足する原因は賃金が安すぎるからであり、需要と供給が一致するまで賃金を上げればよい。
「賃金を上げたら経営が成り立たない」というのは経営者のわがままだ。そういう企業は、今は労働者を囲い込んで低賃金で酷使しているので、市場から退場すべきだ。そういう企業の新陳代謝が機能していないことが人手不足の根底にある。介護の場合は、低賃金を設定している介護制度に問題がある。
もう一つは、機械化の遅れである。事務労働はコンピュータで代替でき、外食やコンビニでは機械化が進んでいるので、そういう分野で余った労働者が労働集約的な分野に移ってくればいいのだが、労働市場の流動性が低いため、雇用の新陳代謝も進まない。
自民党の一部でいわれた「毎年20万人の移民受け入れで成長する」というのは錯覚である。人口が増えると成長するのは当たり前だが、豊かさの尺度は一人あたりGDPであり、それは移民で単純労働者が増えると低下するだろう。労働人口が減ると社会保障の負担が重くなるが、これは移民によって悪化するおそれが強い。
ミルトン・フリードマンは「自由な移民と福祉国家は両立しない」と述べた。労働者が全世界に移動できれば、社会保険料を負担しないで生活保護を受給し、健康保険を食い逃げできるからだ。これは移民を否定しているのではなく、政府に依存した社会保障は自由経済と両立しないという意味だ。移民を大量に受け入れる前に、社会保障の改革が必要である。
最大の問題は日本語である。特に深刻な問題は、日本語のわからない人々が母国語だけのコミュニティをつくることだ。アメリカで問題になっているヒスパニック(メキシコ系移民)も、英語を使わないため、学校で多国語教育をするなど、社会的コストが大きい。
今回の新在留資格では、日本語能力試験4級(N4レベル)が条件とされ、建設・農業ではそれ以下でもいいとされているが、これは「基本的な日本語を理解することができる」カタコトのレベルであり、文化的衝突を起こすおそれが強い。長期的な在留を認めるなら「より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる」N2レベルを必須にすべきだ。
日本にはすでに128万人の外国人労働者がいるが、今後の労働人口の減少を移民だけで埋めようとすると、その20倍以上の外国人労働者が必要になる。長期的には移民の増加は避けられないが、政府はヨーロッパの失敗に学び、文化的コストを最小化する方針を立てるべきだ。 
 
●外国人労働者/建設分野受け入れ拡大へ制度設計検討 7/25
政府は24日、一定以上の技能を持つ外国人労働者の受け入れ拡大に向け、首相官邸で新たな在留資格の制度設計などを話し合う関係閣僚会議の初会合を開いた。国土交通省は建設分野などで人手不足に対応する必要があるとし、新制度を活用した外国人の受け入れ拡大について検討する方針を示した。関連する法律の改正、対象業種の選定などを経て19年4月からの新制度導入を目指す。
同日の初会合で安倍晋三首相は「即戦力となる外国人材を受け入れていく仕組みを構築することが急務だ」と述べた。最短で今年の臨時国会に新在留資格の創設に必要な入国管理法改正案を提出する。今後、建設など対象業種の選定や、各業界を所管する関係省庁による対象業種別の受け入れ拡大方針も検討する。
新しい在留資格の創設による外国人労働者の受け入れ拡大は、6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太の方針)」などで打ち出した。骨太の方針では対象業種を「生産性向上や国内人材を確保のための取り組みを行ってもなお、当該業種の存続・発展のために外国人材の受け入れが必要と認められる業種」と記述。明確な対象業種は示していなかった。国交省は建設を対象業種として検討する方針を同日の初会合で初めて表明した。
最長5年間の就労を認める方向。専門分野での一定の技能と日本語能力があることを条件に、関係省庁が対象業種別に技能や日本語能力の試験を作る。技能実習を3年修了すれば試験を免除する。
現在、建設分野で外国人労働者を受け入れるための枠組みは、厚生労働省の外国人技能実習制度と国交省の外国人建設就労者受け入れ事業がある。二つを組み合わせると、本国への帰国期間を除き最長8年間の日本での就労が可能になる。
国交省によると、新在留資格創設による建設分野での外国人受け入れ拡大では、単純に現行の二つの制度に新在留資格制度を組み合わせ、最長13年間の就労を認めるかは今後の検討課題の一つになるという。 
 
●介護人材不足 外国人の受け入れ拡大へ環境整備に注力 7/25
政府は24日、今後の外国人労働者の受け入れ拡大に向けた関係閣僚会議の初会合を首相官邸で開いた。
安倍晋三首相は席上、「新たな制度による外国人材の受け入れは来年4月を目指して準備を進めていく」と改めて表明。出席した閣僚に速やかな対応を指示した。秋の臨時国会にも出入国管理法などの改正案を提出する。
政府は今後、外国人のスムーズな受け入れや彼らのサポートの充実、共生社会の実現などを図る総合対策を年内にも策定する計画。この日の会合で示された「検討の方向性」には、日本語教育の充実や行政・生活情報の多言語化、相談体制の構築、社会保険の加入促進、医療機関の体制整備などに努めていく考えが盛り込まれた。安倍首相は、「日本で働き、学び、生活する外国人を社会の一員として受け入れ、円滑に生活できる環境を整備することは重要な課題」と前向きな姿勢をとっている。
政府は今年6月、就労を目的とした新たな在留資格を創設する方針を閣議決定した。介護など人手不足が深刻な分野が対象。試験の合格など一定の条件をクリアした外国人に、5年間にわたって日本で働くことを認めるという。技能実習制度と組み合わせることなどで、より長く滞在していける仕組みとする構想も併せて打ち出した。求める日本語能力のレベルなど詳細なルールは、分野ごとにそれぞれ議論していくと説明している。
諸外国との連携が深まっていく可能性もある。日本経済新聞は25日、2020年夏までに1万人の介護人材が技能実習制度を通じて日本で働けるように足並みを揃えることについて、政府とベトナム政府が既に合意したと報道。共同通信も25日にこれを伝え、「ベトナム側も人材の送り出しに協力する意向」と報じた。政府はインドネシアやラオス、カンボジアなどからの受け入れを推進することも検討していくという。介護の現場では外国人の労働者が今より大幅に増加していく、という観測が以前より強まっている。
政府は24日の関係閣僚会議で、受け入れの円滑化に向けて関係省庁と様々な調整を行う司令塔の役割を法務省が担っていくことも確認。安倍首相は上川陽子法相に対し、「在留外国人の増加に的確に対応するため、組織体制を抜本的に見直して欲しい」と注文した。 
 
●介護現場への外国人の受け入れ、要件設定を誤れば現場はパニックに陥る 7/10
介護サービスの現場で働く外国人を増やしていく −− 。そんな流れを政府が作ろうとしている。6月に閣議決定した今年度の「骨太方針」に、就労を目的とした新たな在留資格を創設すると明記。昨年11月に解禁した技能実習制度などとあわせ、受け入れを一段と加速させていく構えをみせている。今後さらに深刻化する人手不足の緩和につなげる狙いだ。この動きをどうみているか、淑徳大学・総合福祉学部の結城康博教授に語ってもらった。2回に分けて伝えていく。
−− 就労目的の新たな在留資格を設ける方針が決められました。
一定の評価をしています。技能実習制度を使って多くの外国人を受け入れていく、という手法よりはずっとましでしょう。日本で働きたいと希望する人に対し、実際に仕事をしていくために必要なビザを出す −− 。そんなシンプルな仕組みを適用するわけですから、今よりだいぶスッキリしますよね。5年間の在留期間のうちに一定の専門性を身につけた人に、この国で長く生活していける道を開く考えも示されました。外国人にとっても選択肢の多いベターな制度と言えるのではないでしょうか。
−− 技能実習制度による受け入れも引き続き可能です。
私はそれにどうしても賛成できません。本音と建前が全く異なる曖昧な制度を運用していくって、やっぱりあまり良いこととは言えないでしょう。サービスの質を担保する、という観点からも問題があると言わざるを得ません。日本の介護のことを学ぶトレーニング期間があまりにも短すぎます。また、受け入れに伴うコストについても熟慮すべきではないでしょうか。1人の実習生に来て頂くためにかかる経費は決して安くありません。斡旋業者に支払う仲介手数料、日本語教育のサポート、相応の環境の整備…。何かとお金がかかります。私も色々な施設を取材しましたが、外国人1人あたり50万円から100万円を投資しているケースがほとんどでした。
−− 確かに少額とは言えません。
施設はコスパの問題を真剣に検討すべきではないでしょうか。技能実習制度やEPA(経済連携協定)の枠組みでは、最低でも1人50万円は必要になります。その投資が本当にベストと言えるのか? 新人職員の賃金に振り向けるなど、働く条件を他より良くすることに使う道だってあり得るはずです。多くの外国人に来てもらうとなると、日本語の教育も含めて何かと苦労も増えてくるでしょう。施設の経営方針が問われるところですよね。国全体の視点から言うと、数千人、数万人の外国人を受け入れればその分だけ経費がかかってきます。例えば年間1万人の場合。施設が1人あたり50万円を支払うとすると、総額は50億円にのぼります。その原資の大半を介護報酬が占めるわけですから、できるだけ建設的に使われるようにする配慮が欠かせません。新たな在留資格による受け入れでも、実際に現場がどれくらいの費用を投じているか注視していくべきです。
−− 新しい在留資格による受け入れについては、介護独自の要件をこれから検討していくことになっています。
あまりハードルを上げ過ぎないように注意しつつ、しっかりしたルールを定めなければいけません。コミュニケーションは特に大事ですから、日本語能力試験のN4程度は最低限必要でしょう。もちろん介護に関する一定の知識・技術も欠かせません。日本語ではなくその人の母国語を使ってで構わないので、初任者研修に準ずる研修を全員に受けて頂くべきです。政府は入国の際に試験を行うと言っているようですが、私は研修の方がずっと重要で不可欠だと指摘しておきたい。これらは絶対に譲ってはいけない要件です。そうでないと現場はパニックに陥るでしょう。介護のことをほとんど知らないままで日本語も分からない −− 。そういう方に来て頂いても、サポートにあたる職員がオーバーワークになって対応しきれません。労働環境がさらに悪化して辞める人も増えてしまい、本末転倒の結果を招くことになるでしょう。 
 
●インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて 7/1
日・インドネシア経済連携協定(平成20年7月1日発効)に基づき平成20年度から、日・フィリピン経済連携協定(平成20年12月11日発効)に基づき平成21年度から、日・ベトナム経済連携協定に基づく交換公文(平成24年6月17日発効)に基づき平成26年度から、年度ごとに、外国人看護師・介護福祉士候補者(以下「外国人候補者」という。)の受入れを実施してきており、累計受入れ人数は3国併せて4,700人を超えました。(平成29年9月1日時点)
これら3国からの受入れは、看護・介護分野の労働力不足への対応として行うものではなく、相手国からの強い要望に基づき交渉した結果、経済活動の連携の強化の観点から実施するものです。
受入れの概要
一人でも多く送り出し、日本の国家資格を取得して欲しいとの3国の期待が高い中、経済連携協定全体の円滑な実施のため、日本政府はこれまで、協定上の6ヶ月間の日本語研修の実施のみならず、受入れの運営について改善を行ってきており、厚生労働省では、受入れ施設における候補者の学習への支援の強化、国家試験の用語等の見直し、再チャレンジ支援、介護職員の配置基準の見直しなどを実施してきています。
3国からの受入れの概要は次の通りです。
1. 経済連携協定に基づく受入れは、二国間の協定に基づき公的な枠組みで特例的に行うものです。公正かつ中立にあっせんを行うとともに適正な受入れを実施する観点から、我が国においては国際厚生事業団(JICWELS)が唯一の受入れ調整機関として位置づけられ、これ以外の職業紹介事業者や労働者派遣事業者に外国人候補者のあっせんを依頼することはできません。
2. 国内労働市場への影響や制度の適正な運用の確保の観点から、年度ごとの受入れに際して、外国人候補者の年間の受入れ最大人数を設定してきています。
3. 経済連携協定に基づき国家資格を取得することを目的とした就労を行う外国人候補者は、受入れ施設で就労しながら国家試験の合格を目指した研修に従事します。外国人候補者と受入れ機関との契約は雇用契約であり、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上の報酬を支払う必要があるほか、日本の労働関係法令や社会・労働保険が適用されます。
4. 経済連携協定に基づく外国人候補者は、看護師・介護福祉士の国家資格を取得することを目的として、協定で認められる滞在の間(看護3年間、介護4年間)に就労・研修することになっています。
5. 資格取得後は、看護師・介護福祉士として滞在・就労が可能です(在留期間の更新回数に制限無し)。
受入れ枠組みの趣旨(受入れ希望機関の方などへ)
この受入れ枠組みは、候補者本人が国家資格の取得を目指すことを要件の1つとして、研修など一定の要件を満たす病院や介護施設での就労を特例的に認めるものであり、一人でも多くの外国人候補者が看護師や介護福祉士の国家試験に合格し、その後、継続して日本に滞在することが期待されています。そして、この受入れ枠組みは、単なる単純労働者を雇用するためのものではありません。国としては専門的・技術的分野の外国人労働者の就業を積極的に推進する一方、いわゆる単純労働者の受入れなど、外国人労働者の受入れ範囲の拡大は、国内労働力、特に若者、女性、高齢者等の雇用など、労働市場への影響などを考慮する必要があります。また、医療・介護サービスの安全性の確保・質の向上には、日本の国家資格の取得は必要・重要です。
そのため、候補者が資格取得に必要な知識・技術の修得に精励するのはもちろん、受入れ機関(施設)は国家資格の取得を目標とした適切な研修を実施することが責務とされており、国としても受入れ機関(施設)での円滑な就労・研修を支援する各種取組を進めています。
それぞれの受入れ機関(施設)の受入れの目的は、「国際貢献・国際交流のため」、「職場活性化のため」、「将来の外国人受入れのテストケースとして」など様々と思いますが、こうした受入れの枠組みの趣旨をご理解いただき、国家資格取得前は受入れ施設において、国家資格の取得を目標とした国家試験対策、日本語学習等の適切な研修を実施することが何よりも重要です。
なお、実際に外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れを希望される場合のご相談は、国内唯一の受入れ調整機関である国際厚生事業団(JICWELS)までお問い合わせください。  
 2018/ 6

 

 
●「移民政策は取らない」の建前を維持 就労拡大「骨太方針」閣議決定 政策支持の保守層に配慮 2018/6/18
政府は15日、骨太方針に新たな在留資格の創設を盛り込み、これまでタブー視されてきた外国人労働者の受け入れ拡大にかじを切った。人手不足の深刻化を受け、ようやく政策を転換させた形だ。安倍政権を支持する保守層に配慮し、「移民政策は取らない」との建前を維持しているものの、実態としては、多数の外国人が長期間、国内に滞在することが可能になるため、教育や福祉面などの受け入れ環境整備が求められる。
菅義偉官房長官は記者会見で「即戦力となる外国人材を幅広く受け入れる仕組みを構築する必要がある」と語り、早期の関連法案提出を目指す考えを示した。
全都道府県で有効求人倍率が1倍を超えるなど、人手不足は急速に進行。にもかかわらず、政府が外国人受け入れに及び腰だったのは、「保守層の支持を受ける首相が、外国人受け入れをやりたくないだろうという忖度(そんたく)があった」(官邸関係者)からだという。
転機は首相と側近との会話だったという。側近が「外国人受け入れを進めるべきでは」と探りを入れると、首相から「やった方がいいね」と意外な答えが返ってきた。これを機に、昨年暮れごろから政府内で検討を開始。今年2月の経済財政諮問会議で、首相は「外国人受け入れについて、早急に検討を進める必要がある」と明言した。
一方で、自民党の保守系議員は「なし崩し的に外国人が入ってくる仕組みは認められない」と強調。こうした声にも配慮し、新たな制度では、在留期間を最長5年に限定し、家族の帯同も認めない仕組みにした。
しかし、現行の技能実習と合わせれば計10年は国内で働けるようになる上、高度な専門性を身に付ければ長期滞在や家族の帯同も可能とする制度も検討。自民の会合では「移民政策と何が違うのか」との意見も出た。政府は「移民にはいろんな定義がある」と明確な立場を示さず、「移民政策を取る考えはない」と主張し続けている。
移民政策とは、海外からの移住者と共生していくための政策だ。政府が安価な労働力としてだけ捉えて受け入れれば、外国人の孤立や社会の分断にもつながりかねない。いかに生活者としての外国人に向き合うかが問われている。 
 
●日本政府が「本格的な移民政策」に踏み出したと言える理由 2018/6/12
時代遅れの外国人受け入れ政策
人手不足を背景に外国人労働者が急増している。2017年12月の厚生労働省の発表では128万人を数え、過去最大となった。しかし、日本政府は「移民政策をとらない」と明言してきた。
政府のこの主張は外国人の定住を認めないということではない。実は大卒者、ホワイトカラーの分野について日本の外国人労働者の受け入れはアメリカよりもはるかに開かれている。
日本人がアメリカの大学に留学し卒業してもアメリカの企業で働く労働ビザが出ないことはきわめてよく聞く話である。アメリカの就労はトランプ政権以前からも厳しく規制されていた。
一方、日本の場合はどうか?
日本の大学を卒業した外国人が国内で働こうとした場合、ほぼ問題なく就労可能なビザが発行される。
日本の大学の卒業生ばかりではない。海外の大学の卒業者であっても、受け入れ先の企業が決まっており、求める職能にふさわしい学部の卒業生であれば日本では働くことが可能である。
東京のビジネス街には、現実に何万人ものホワイトカラーの外国人が働いている。そして彼らは日本で10年間、継続して働けば永住権を得る資格を申請することもできる。
それは、大卒者以外の外国人労働者の雇用を原則として認めず、またその結果、定住を認めないことを意味する。現場労働、いわゆる単純労働の分野の外国人の就労を認めないということである。
しかし、現在、人手不足が最も厳しいのはこうした分野、例えば、農林水産業や製造業、サービス業、建設業である。
日本では毎年公立の小中高校が500校を越える勢いで廃校となるほど若者の減少は続いている。今後、さらに少子化が進むことが想定されており、現場労働の分野で今後、日本人の就業者が増える可能性はゼロに近い。
ではなぜ単純労働の分野で外国人の雇用が認められてこなかったのか?
それは時代認識のギャップがあるためと考えられる。
日本の人口が増加していた時代には、いわゆる単純労働の分野は人手が余り、日本人の間で職の奪い合いが起こっていた。
一方、大卒者の数は限られ、産業の高度化を達成するためにも海外からの人材が必要とされていた。
しかし、時代は様変わりした。
少子化が進んだ現代では若者の大学進学率が上昇するとともに、過酷な現場で働くことを忌避する青年が増え、その結果、いわゆる単純労働といわれる分野の多くは継続的な人手不足が発生している。
政府はそうした分野はロボットやAIの導入で人手不足を目指すとするが、実際に起こっているのは人手不足による倒産である。帝国データバンクによれば、2017年度の人手不足倒産は初めて100件を越え、2013年度比で2.5倍に増加した。
5月に放送されたNHKの「縮小ニッポンの衝撃」では、幼稚園の児童の送迎バスを運転する70をはるかに超えた高齢者が、運転に自信がなくなり引退したくても代わりが見つからない現実が明らかにされたが、人手不足は高齢者の過重労働を引き起こしている。
雪下ろしもそうである。高齢化が進んだ集落で屋根の雪下ろしをするために毎年、高齢者が犠牲になる事故が全国で頻発している。
しかし、考えてみれば、高齢化した日本人がリスクのある仕事をしなくても済む方法がある。海外から若者を招き入れ雇用すればよいことであるが、それを日本は拒否してきた。
たとえてみれば、金持ちの家で、他人を雇うお金はあるにもかかわらず、他人を家に入れるのは嫌だという家長の命令の下で、家族全員が身体を悪くするまで疲労困憊して働いているようなものといえるだろう。
モラルハザード化する現場
さて、政府の主張する「移民政策をとらない」は実態としては底が抜けつつあった。
現実には外国人労働者は急増しており、日本に在留する外国人もうなぎ上りに増加し、2017年末には256万人と過去最高に達した。
では移民政策がないなかでなぜ外国人労働者が増え続けてきたのだろうか?
一つは政府が従来から認めている大卒者、ホワイトカラーの労働者が増えているからである。さらに大きな理由は本来、働くことができないはずの単純労働の分野で働く外国人が増加していることによる。
彼らは正面切って働くことができないため、さまざまな手段を使って入国し、実質的に就労している。その主要な方法は「技能実習生」といわゆる「デカセギ留学生」である。
人手不足と今後、加速する人口減少の下で外国人労働者の継続的な増加が予想されるが、この技能実習生やデカセギ留学生による「労働人口の自動調節弁」に任せておいてよいのだろうか?
技能実習制度は1993年に開始され、当初より途上国の人々が日本の進んだ技術を学んで自国の産業の発展に役立てることを目的としている。
しかし、この制度の下で、外国人を安い労働力として活用する例も多発し、さらに賃金未払いや過酷な労働を強いるなど数多くの労働法違反の事例が発生した結果、制度の厳格化のための技能実習法が2017年に制定された。
この法の第三条には技能実習制度は国内の労働力の調整のためではないと明確に謳われている。
ところが、技能実習生の数は昨年、過去最大となり、実態としては人手不足のために労働者を求めて日本企業はこの制度を利用している。
さらに、技能実習生で来日した外国人は年間6千人程度が失踪している。これは母国で聞いたほどの給与が得られないなどの理由によるもので日本の闇の世界に入っていく。将来の社会の不安定化につながりかねない憂慮すべき事態といえる。
一方、デカセギ留学生も急増している。母国でブローカーの口車に乗せられ日本では留学生ビザで働けると聞かされて来日するケースが増加している。
日本に来るためにブローカーに100万円近いあっせん費を支払うケースもあるといわれるが、本来、留学生は資格外労働として週28時間以内でしか働けない。
月に稼げるのはせいぜい10万円程度に過ぎず、であれば学費はおろか生活費を稼ぎだすこともできないはずだ。
しかし、ブローカーが暗躍するように一部の留学生は28時間を越えて働き、また人手不足の危機に陥った日本の企業は彼らが28時間を超えて働く違法状態であることを知りながら、留学生を雇用せざるを得ないという悪循環、モラルハザード状態に陥ろうとしている。
アベノミクスによって経済がよくなった結果、深刻な人手不足が発生し、そのため不法就労の外国人を雇わざる得なくなるという皮肉な結果が引き起こされている。
そもそも、留学生の労働力を当てにすること事態、日本特有の異常な現象である。他の国で労働力として留学生に依存しようと考えている国はない。留学生はあくまで勉学が目的であり、労働目的であれば労働者として受け入れるのが筋だからだ。
日本では「移民政策をとらない」という大前提のために、深刻な人手不足に陥りながら、外国人労働者を正面から受け入れることができず、そのため極めていびつな形での実質的な外国人労働者の増加が続いている。
このままでは、制度の矛盾が拡大するとともに違法行為が横行する可能性が高まるばかりだった。
新たな政策のゆくえ
移民政策をとらないとする政府に対して、自民党ではその政策の見直しの動きが開始された。
4月27日に発表された自民党の経済構造改革に関する特命委員会による「経済構造改革戦略:Target 4」では極めて注目すべき内容が盛り込まれた。
外国人材の活用について、「いわゆる移民政策をとらないことを前提に、技術や技能を有する外国人材をこれまで以上に活用していく。具体的には、技能実習の修了者等が、わが国で働く道を開き、わが国で就労することができるよう新たな就労資格を創設する等の方向で制度の創設を図る」とした。
これを受けて6月5日に政府は経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案を公表した。
ここでは(1)在留期間の上限を5年とする就労を目的とした新たな在留資格を創生すること、(2)滞在中に行う試験の合格者には家族帯同と定住を認めること、(3)すでに定住している外国人に対して生活者としての総合的な対応策をとる、という画期的な方針を示した。
「移民政策とは異なる」との文面が残ったもののこれは保守派への配慮であり、海外からは日本は本格的な移民政策へ踏み出したととらえられるだろう。
さてこの方針転換は英断といえるが、いくつかの疑問点、また今後検討すべき余地も残されている。
一つは従来の「技能実習制度」との関係である。
労働を目的とする受入れ制度ができるのであれば、技能実習制度は廃止してもよさそうではあるが、二つの制度が並行して存続することになるようだ。
今後は技能実習制度は本来の目的である技術移転を目的とした人々のみを受け入れ、就労目的の外国人は新制度へ移行すべきであるがその道筋は現在では不透明である。
現状で30万人近い技能実習生の処遇を含め、しっかりした移行を考える必要があり、また新たな制度の中身も他国に引けを取らないものにしていく必要がある。
韓国では労働者として単純労働の分野で外国人労働者を受け入れる「雇用許可制」をとっている。この制度では16ヵ国から30万人近い労働者を受け入れており、個別的な課題はあるが全体的には極めて評価が高い。
筆者は5月に外国人受け入れ政策について学ぶため韓国を訪問し、雇用許可制に関する多数の関係者から意見を聞く機会を得た。
雇用許可制は日本の技能実習制度をまねて、研修生として受け入れた産業研修制度が労働法違反などの深刻な問題が多発したことを受けて創設された政府が直接管理する制度である。
韓国政府は雇用許可制の下で働く外国人労働者が抱えるさまざまな課題に対応するため、全国43ヵ所に相談窓口を設けている。
筆者はソウル市北部のウィジョンブ市の施設を訪れたが、6階建ての建物すべてが相談施設で、12ヵ国の言語による雇用許可制による労働者の相談対応に当たるほか、多言語の図書館、集会所、さらには彼らの趣味を支援するための活動まで政府によって行われていることに驚いた。
雇用許可制度によって韓国で働きたいとする海外の希望者は極めて多い。韓国で働くベトナム人やネパール人の話では、両国では希望者が殺到し、その倍率は10倍超えており、その結果、極めて質の高い人材が韓国で働いている。
一方、日本の技能実習制度は人気がなく、高校中退者などの若者も技能時実習生で日本に来日しているという。「良い制度には良い人材が集まる」という事実を認識する必要がある。
後戻りできない歴史的な変化
二つ目の新制度の課題は、定住の可能性が開かれたが、試験の内容を含めその具体的な仕組みを早急に明確化する必要があることだ。
定住が可能になれば、デカセギではなく、最初から定住目的で優秀な人材が日本を目指すことになる。定住を目指す人々は日本での家族との生活や仕事の成功を夢見て、日本語の学習や日本の文化や社会の仕組みについても熱心に学ぶことになるだろう。
政府は新制度での定住のための要件や道筋を明らかにすべきである。
最後は生活者としての定住外国人の対応である。
すでに260万人近い在住外国人の間にはこれまでの政府の対応についての不満は高かった。
日本政府は外国人を歓迎しているのかどうかが不透明で、その結果、彼らの生活やあるいは彼らの子どもの教育も中途半端な状態に置かれてきた。
増加する外国人住民に対して自治体、NPO任せで、移民政策とらないという立場上、政府は等閑視してきたといってよいだろう。
今後、その政策が大きく変わることが予想される。従来はボランティア任せだった日本語教育もドイツや韓国のように政府が責任をもって当たることになるだろう。
今回の方針転換は、外国人の本格的な受け入れの姿勢を政府が示したものであり、単一民族的な色彩の強かった日本が多様な文化を持った人たちとともにこれからの日本を支えるという方向に舵をきったことを意味する。
それは後戻りできない歴史的な変化でもある。単なる経済的な側面の変化だけでなく、閉塞感を打破し、日本の持続可能な未来に向けて新たなステップを踏み出したことを意味する。
今回の政策転換は日本の歴史に新たなページが開かれた出来事と将来、解釈されることになるだろう。  
 
●外国人労働者の新たな在留資格を政府が検討へ! 6/11
政府、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた基本構想を明らかに
新たな在留資格を設けることを明記
政府が、今月5日に決定した外国人労働者の流入拡大を認める方針は、大きなニュースとしてマスコミやインターネットで報じられました。「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)の原案であり、新たな在留資格を設けることを明記したこの提言は、対象を実質的に単純労働者の領域にも拡大し、50万人超の受け入れ増を見込むもの。特に人手の確保が難しい業種を対象として新たな在留資格を検討する方針です。我が国では現在、約128万人の外国人労働者が働いており(厚生労働省調べ、2017年10月末時点)、この提言では、人手の確保が難しい業種を対象として新たな在留資格について検討することが謳われています。現在、農業、介護、建設、宿泊、造船の5業種が想定、5分野で2025年頃までに50万人超の受け入れを見込んでいると言われています。経済界の強い要望に答える形で、安倍政権が2012年末の発足当初から、検討を重ねてきた外国人労働者の受け入れ。今回の原案では、不法残留者数が4年連続の増加を記録したという今年最初の法務省発表などを受けてか、「在留管理、雇用管理を実施する入国管理局などの体制の充実・強化」を掲げるなど、それなりに外堀は固めてはいるもののさまざまな議論を呼び起こしそうです。
技能実習を3年以上行った外国人には、新たな在留資格を試験なし?
現在、介護の現場に外国人を受け入れるルートは3つあります。具体的には…
   経済連携協定(EPA)の枠組み
   技能実習制度
   介護福祉士の養成校への留学・資格取得
ということになるのですが、今回の提言によって在留資格が創設されることで、4つ目のルートができることに。実現に際しては、出入国管理法の改正が必要であり、現在、政府が準備しているのは、技能実習制度と連結できるような仕組みだと言われています。今回の原案では、技能実習を3年以上行った外国人には、新たな在留資格を試験なしで与えてはどうか、との提案もなされています。現在技能実習は最長でも5年と期限が短く、これが外国人技能実習生のモチベーション低下に繋がり、ひいては職場からの失踪などの問題に繋がっているのではないかという問題提起は、これまでも複数の介護事業者から指摘されてきたところ。原案のまま通れば、2つの制度を合わせて計10年働けることとなり、技能実習生にとっても介護事業者にとっても大きなメリットとなります。この原案には、さらに「1年目の日本語要件(N3以上)を満たさなかった場合も引き続き在留を可能とする仕組みを検討する」という技能実習制度に関する記載もみられ、審査が厳しすぎる割に技能実習生にとっては利益が少ないとも言われてきた現行の技能実習制度が一歩前進したことを感じさせます。ちなみに今回の原案には、日本人と同等以上の報酬や生活環境の整備、人権の擁護なども謳われており、これらの徹底によって、国際的に批判されている外国人労働者に対する賃金未払い問題などへ一石が投じられることが期待されています。
介護人材を外国から募集する理由
高齢化を支える介護人材の不足が深刻さを増している
厚生労働省によると、2016年度の有効求人倍率は、介護職で3.02倍、その他職業で1.36倍と上昇傾向にあります。このニーズは今後も増すと考えられており、厚労省は16年度に190万人だった介護人材を25年度までに55万人増やす必要があると試算しています。国家資格である介護福祉士の受験者数は、2017年度には9万人と2015年度の6割にまで落ち込みをみせました。介護業界が、他職種に比べ離職率が高い職種というのは、いまや定説となっています。その原因についてはこれまでもさまざまな公的機関が統計を取り分析してきましたが、超高齢社会といわれる現在、社会から必要とされながらも適正な評価が得られないという現場の不満は近年盛んにマスコミなどで報じられるところであり、業界では、ここ数年キャリアアップ制度の導入が試みられてきました。また、今年公表された6年ぶりの報酬率プラス改定も、介護業界の人材不足を改善に導くための苦しまぎれの一策に他なりません。プラス改定が、今後の介護人材にどのような影響を及ぼすかはまだわかりませんが、これまで行われた介護分野における政府の人材確保策を見る限り、残念ながらことごとく失敗に終わっています。たとえば、先ほど述べた介護福祉士の受験者数が2015年度から2017年度にかけて大きく落ち込みを見せたのは、受験資格に長時間の研修を課したことが大きな原因と言われています。今回の外国人労働者受け入れ拡大の背景には、こうした人材政策の失敗が影を落としているとみる声も少なくありません。
介護業界に外国人労働者の受け入れは今のところ順調
さまざまな議論を巻き起こしつつも、こと介護現場における外国人労働者の評判は上々のようです。公益社団法人国際厚生事業団が、全国の291施設を対象に「外国人労働者の受け入れによって、職場環境にどのような影響があったか」についてのアンケート調査を行ったところ、「職場環境に良い影響があった」もしくは「どちらかというと良い影響があった」と回答した施設は全体の78.7%、また、日本人の職員に対して「良い影響があった」あるいは「どちらかというと良い影響があった」と回答した施設は、全体の85.6%にも上りました。職場環境と日本人職員というどちらの項目に対しても、全体の約8割の施設がプラスの影響があったと認めており、介護現場における外国人労働者は、概ね好印象を持って受け入れられていることがわかります。もちろん、働く側の外国人労働者にとっては、日本の介護現場で働くに際して多くの困難があるようで、前掲の国際厚生事業団調査の統計でも、「日誌、介護記録、事故報告書、ケアプランなどの作成」や、「業務上の専門用語の理解」といった言葉に関わる課題を挙げる声が、介護そのものに関する課題よりも多くなっています。また、「利用者・家族への対応」など日常生活・価値観に関わる問題も挙がっています。日本語(介護の専門用語)を含めた日本の生活習慣に対する理解度をいかにして高めていくか、受け入れ側である私たち自身の対応が今後の課題だと言えそうです。
外国人労働者が増加することのデメリット
治安の悪化を懸念する声も
今回の原案に「在留管理、雇用管理を実施する入国管理局などの体制の充実・強化」の一文が添えられた遠因のひとつには、もしかしたら技能実習生の失踪問題があるかもしれません。法務省によると、2016年失踪した技能実習生は5,803人で、これまで最も多かった2015年の4,847人を約1,000人上回ったといいます。失踪者数は2011年に1,534人でしたが年々増加しており、5年間で4倍弱となったと言います。失踪者が増加した背景の一つとしては、劣悪な労働条件を挙げる現場関係者も少なくありません。これまでも技能実習制度を巡っては、賃金の未払い問題、外国人技能実習生が最低賃金水準で働かされるなどといった問題が決して珍しくなく、外国人の労働力を安く買い叩く制度だ”という批判もたびたびなされてきました。その反面、法務省によって、外国人の犯罪が横ばい状態で、ここ数年は微増傾向という内容の統計が公表されているにもかかわらず、外国人犯罪が「増加している」という声がインターネットを中心に広まっています。今回の外国人労働者の流入拡大を巡って、労働、産業政策を所管する関係省庁間では治安の悪化を懸念する声が挙がったようです。こうした不安や懸念は、問題の大本の部分を改善しない限り、現実のものとなることは免れないでしょう。
制度で介護人材の不足の解消を目指すのは非現実的
昨年10月末時点で、日本国内で雇用されて働く外国人労働者は、厚労省の統計によると127.8万人、外国人を雇用する事業所は19.4万事業所にのぼり、いずれも過去最高を記録。三菱UFJリサーチが、総務省と厚生労働省のデータをもとに、全就業者に占める外国人労働者の割合を試算した「産業別 外国人依存度試算」をみても、医療・福祉においては2009年から2017年で実に3.4倍にも増えています。そんな状況の中、今回の政府が示した原案が実現することで、介護人材の不足解消に繋がることを期待する声が業界の内外から高まるのも無理はありません。しかし、それに関しては、実はこの政策を推進してきた厚労省関係者そのものがかなり醒めた見方をしていることは知っておいても良いでしょう。「この制度で介護人材の不足の解消を目指すのは現実的ではない」というのは、外国人労働者受け入れの強力な推進者として知られる元厚労相社会・援護局福祉人材確保対策室の武内和久氏が2015年に日本介護ベンチャー協会主宰のセミナーを務めた弁。武内氏はこう述べています。「技能の海外移転を目的としている以上、大量の人材が海外からやって来ることは考えられず」筆者が立ち会った2年前の月刊老施協における河内孝全国老人福祉施協議会理事との対談においても同じことを述べた上で「働いている方の刺激になるかもしれませんし、海外に日本の介護を伝えていくそのための媒介と言いますか伝道者になっていただく」という趣旨のことを強調していました。たしかに、人手の集まらない職業は集まらないなりの理由があるわけで、技能実習制度では到底解消し得ないことは、政府も先刻承知というわけなのです。介護人材の不足は国内の大きな問題であり、外国人材の増員とは別に、我々日本人の手で引き続き解決の道を模索しなくてはなりません。 
 
●外国人労働者受け入れ拡大/適切な環境整備求める声 6/7
政府が示した単純労働での外国人労働者の受け入れ拡大方針に、建設業界からは適切な受け入れ環境整備を求める声が挙がっている。現時点で具体的な対象業種は未定だが、中長期視点で技能労働者の大幅な減少が見込まれる建設業が指定される可能性は高い。ある建設関係団体の幹部は業界を挙げて取り組んでいる処遇改善への影響などに考慮し、単純労働の定義付けなどで慎重な対応を求めている。
政府方針は、5日の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)で提示し近く閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太の方針)」の原案に、新しい在留資格の創設などを盛り込んだ。
安倍首相は会議で「地方の中小・小規模事業者をはじめ人手不足が深刻化している。一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を幅広く受け入れる仕組みを早急に構築する必要がある。移民政策とは異なる」と述べた。
政府は安倍首相が外国人労働者の受け入れ拡大を指示した2月、内閣官房や警察庁、法務、国土交通、厚生労働、外務、農林水産、経済産業の各省で構成する連絡会議「専門的・技術的分野における外国人材の受け入れに関するタスクフォース」を設置し、具体策を話し合っている。3月に行った会合では国交省の担当者を招き、建設業での外国人労働者の活用状況を聞き取り調査している。
骨太の方針原案では、創設する在留資格の対象業種や導入時期を示していない。指定業種には今後の人手不足が見込まれる建設、農業、宿泊、介護、造船の5業種を想定。新在留資格の対象となる外国人労働者は現行の技能実習制度(最長5年間)を修了するか、新たに指定業種の所管省庁が行う試験を合格するかいずれかを求め、一定の知識や技能があると確認できた人材を指定する考えを骨太の方針原案で示した。
新在留資格の対象業種は基本方針として閣議決定する。業種ごとに所管省庁が外国人労働者の受け入れ方針を決定する。
政府の方針に対し、経済財政諮問会議の民間議員は「外国人材を安い労働力として考えるのではなく、人として受け入れることがとても大切だ」と指摘。ある建設関係団体の幹部は「単純労働とは何かという整理が必要だ。安価な労働力を求める動きが加速し過ぎると、業界を挙げて取り組んでいる処遇改善が滞りかねない」と述べ、慎重な対応を求めている。 
 2018/ 5

 

 
 2018/ 4

 

 
 2018/ 3

 

 
 2018/ 2

 

 
●介護職を希望する外国人労働者の受け入れ拡大へ 2/26
介護の外国人労働者について、受け入れ拡大を検討へ
介護職員と要介護認定者の数には大きな乖離が
2015年度における介護職員数は全サービス総計で183万1,000人。これは介護保険制度が始まった2000年度と比較すると約3.3倍の数であり、介護人材そのものは15年間のうちに着々と増え続けています。一方で介護職員とほぼ並行して増えているのが要介護認定者の数です。2000年度時点では218万人でしたが、2015年度には608万人にまで増加。介護職員の数は年々増えてはいるものの、要介護認定者数も同じレベルで増え続けているため、現状では介護人材は充足されていないのです。団塊の世代が75歳以上となる2025年には、介護職の不足はさらに深刻になるとみられています。「生命保険文化センター」の調査によると、60代までは要介護認定者の割合は3%未満にとどまりますが、75歳〜79歳で12.9%、80〜84歳で28.2%、そして85歳以上では60.0%にまで増加する推計。これに伴い、2025年には介護人材が約38万人も不足するというのが厚労省の試算。このままだと、介護を受けたくても受けられない「介護難民」の大量発生は避けられない状況になるといわれています。
外国人労働者の受け入れで治安は大丈夫?
2月20日の経済財政諮問会議において、専門技能を有する外国人労働者受け入れ体制の拡大に向けて具体的な検討を始めるよう、安倍晋三首相は関係閣僚に指示しました。受け入れを拡大する対象分野として考えられているのは人手不足が顕著な「農業、運輸、建設、介護」などの業種。即戦力として働ける人材を海外から招き、それぞれの分野における生産性の向上を図るのが狙いです。外国人労働者の数は2017年において127万8,670人に達しており、2008年時の48万6,398人から80万人近くも増えています。受け入れを増やすのは一定の技能を持つ外国人のみであり、家族の帯同を許可しないこと、在留期限に上限を設定することなども明言し、「移民政策」ではないことを安倍首相は強調しました。また、昨年11月から外国人の技能実習分野に「介護」が追加。それに伴い、政府は技能実習生が介護福祉士資格を取得した場合も在留資格を認めるという方針を打ち出しました。今後焦点となるのは、規制緩和の進展によって外国人の介護職に就く道筋がさらに増えるかどうかという点です。介護分野に関しては、現状では介護福祉士の養成学校を卒業して国家資格を取得し、介護の仕事に就いた外国人労働者の場合にのみ、在留資格が付与されています。しかし、外国人の労働者を急増させていくことは将来的に単純労働者を増加させ、治安の悪化を招くのではないかと不安視する声も多いようです。
外国人労働者の受け入れのゴールは介護離職の阻止
介護離職と介護職員不足は表裏一体
家族の介護をするために勤めている会社を退職する介護離職は2011年10月から2012年9月までの1年間で10万1,000人に上ることが厚労省の調査でわかっています。介護離職によって貴重な人材を失った企業は組織としてのパフォーマンスを大きく低下させることになり、そうした企業の増加は日本経済全体の停滞化につながりかねません。離職した本人も収入がなくなることで経済的な問題を抱えるので、老後の年金額の低下など、多くのデメリットに直面することとなります。政府としても「介護離職ゼロ」を掲げ、その解消に向けて全力を注いでいるという状況です。こうした介護離職を引き起こす要因の一つとして考えられているのが、冒頭でも取り上げた介護職員の不足です介護離職は仕事と在宅介護の両立に限界が来ることで直面する事態。それを避けるためには、家族になり代わって介護を負担してくれる介護サービスの利用が不可欠となります。ところが、各種介護サービス事業所や介護施設などにおいて人材が不足すれば、サービスの提供量は低下し、需要に対する供給が追いつかない状況を生むのです。介護保険サービスが提供しきれない分は、家族の介護者が対応するしかありませんが、介護職員の不足するほど介護サービスの提供量は減少。そのことが在宅介護の介護者の負担を増やし、介護離職を増加させることにつながってしまうわけです。
「賃金が安い!」「賃金が上がらない!」という現場の声
介護離職を減らすには、その引き金となる介護職員の不足を解消することが大きなポイントとなります。介護職の人材不足をもたらしている原因の1つが介護職員の離職率の高さ。「介護労働安定センター」の調査によれば、2015年10月〜2016年9月にかけて、全国の介護職の16.7%が離職しています。2015年の全産業平均は15.0%ですから、介護職の離職率はそれを大きく上回る状況です。では、介護職員が離職を決断する理由とは何でしょうか。「日本介護クラフトユニオン」が行った調査では、月給制で勤務する介護施設職員の約8割が労働内容に不満を感じており、その理由として最も多かったのが“賃金が安い”の56.3%でした。さらに“何年たっても賃金が上がらない”も30.6%となっており、待遇に不満を持つ人は合計で9割近くに上っているのです。介護職員の不満を無くし、離職者を減らすためには、まず給与面での待遇改善が必要だと言えます。そして、「社会福祉士・介護福祉士就労状況調査(2012年)」によると、介護福祉士が過去働いていた職場を辞めた理由として多かったのが、職場の人間関係(全体の24.7%)です。現場における上司との関係、先輩や同僚との関係に悩む人は多いようで、そのことが離職の大きな要因となっています。離職者を減らすためには、各事業所・施設において職場内におけるコミュニケーションを増やし、職員同士の関係を良好なものにしていくための努力・工夫を重ねていくことも重要だと言えそうです。
外国人労働者と共に働くということ
外国人労働者と働けると助かります
公益社団法人国際厚生事業団は全国の291施設を対象に「外国人労働者の受け入れによって、職場環境にどのような影響があったか」についてのアンケート調査を行いました。その結果、「職場環境に良い影響があった」もしくは「どちらかというと良い影響があった」と回答した施設は全体の78.7%、また、日本人の職員に対して「良い影響があった」あるいは「どちらかというとよい影響があった」と回答した施設は、全体の85.6%にも上りました。職場環境と日本人職員というどちらの項目に対しても、全体の約8割の施設がプラスの影響があったと認めており、介護現場における外国人労働者は概ね好印象を持って受け入れられていることがわかります。ただ、外国人の介護士の受け入れにあたって、やはり問題となるのは言語、価値観の違いです。国際厚生事業団の調査によれば、外国人の介護福祉士が感じる業務上の課題は「介護技術」よりも「日誌、介護記録、事故報告書、ケアプラン等の作成」や、「業務上の専門用語の理解」といった言葉に関わる課題が多くなっています。また、「利用者・家族への対応」など日常生活・価値観に関わる問題にも難色を示しており、日本語(介護の専門用語)を含めた日本の生活習慣に対する理解度をいかにして高めていくかが今後の課題だと言えそうです。
良い面ばかりではないのが外国人労働者の現実で…
外国人労働者の問題を考える上で避けて通れないのが、外国人による犯罪数の増加です。警察庁「来日外国人犯罪の検挙状況」によれば、2015年における来日外国人の検挙人数は1万42人。最も多い中国人3,637以下はベトナム人で1,967人、フィリピン人で833人、韓国人で696人と続きます。外国人による犯罪が起こる原因として、文化や習慣の違いによる周囲との摩擦、あるいは外国人労働者を受け入れる地域社会の体制不備などを専門家は指摘。また、勤務先の経営状態が悪化して退職し、そのまま不法就労や刑法犯罪に走るという事例も少なくありません。もう一つ、外国人労働者の大きな問題として浮上しつつあるのが、職場から失踪する技能実習生の増加です。なんと、2014年までの10年間で約2万5,000人が急に仕事を辞め、そのまま連絡が取れなくなっているのです。失踪者が増えている背景の一つには、外国人実習生が最低賃金水準で働かされるなど、労働条件の悪さが影響しているようです。今回は“介護分野を含む外国人労働者の受け入れ体制拡大”のニュースを取り上げ、その周辺について考察してきました。介護職員不足を解消するには、介護分野における労働環境を根本的に変えなければ、真の解決には至らないというのが一般的な認識です。しかし、急速に高齢化が進む中、外国人労働者の力を借りることが人材の補完につながるのも確かなこと。介護分野に外国人労働者をどのように迎え入れていくのかについては、今後も議論を呼びそうです。 
 
●介護の外国人労働者、受け入れ拡大を検討へ 安倍首相が指示 6月に方向性 2018/2/21
安倍晋三首相は20日の経済財政諮問会議で、外国人労働者の受け入れのさらなる拡大に向けた具体的な検討を始める方針を表明した。さらにエスカレートしていくとみられる人手不足に対応する狙い。農業や建設業、サービス業などに加え、介護も重要な対象分野の1つに位置づけている。菅義偉官房長官や上川陽子法務相ら関係閣僚を中心に調整を重ね、6月にまとめる「骨太の方針」に基本構想を盛り込む考えだ。
「中小・小規模事業者を始め深刻な人手不足が生じている。専門的・技術的な外国人受け入れの制度のあり方について、早急に検討を進める必要がある」
安倍首相はこう指示した。いわゆる「移民政策」はとらない、とのスタンスを改めて強調。原則として家族の帯同を認めないことや、在留期間に上限を設けることなどを前提にすると明言した。
入国管理法の改正を視野に協議を進めていく方針。研究や法律、経営、医療、介護といった「専門的・技術的分野」の在留資格について、職種の追加や要件の緩和を俎上に載せるという。介護の在留資格は現在、介護福祉士の養成校に通った留学生が卒業して国家資格を取得し、実際に介護の仕事に就くケースのみ付与される。
政府はすでに、昨年11月に受け入れが解禁された技能実習生が介護福祉士を取った場合も在留資格を認める、との方向性を打ち出している。今後の焦点は、追加の緩和によって外国人が介護の現場に入るルートが増えるかどうかだ。内閣府の担当者は、「これから詳細な協議を行っていく。一定の条件をおいて、日本で働きたいと考えている人が就労目的の在留資格を得られるようにできないか検討する」と説明。これが実現すれば、技能実習制度が持つ実質的な意味合いも変わっていく可能性がある。
日本人も含めた職員の処遇改善が最重要の課題。国際的な人材の争奪戦が激しくなるなか、多くの外国人に選んでもらえる環境の整備が欠かせないという指摘も多い。 
 2018/ 1

 

 
 2017

 

 
●移民政策における「ジャパニーズ・ソルーション(日本型解決法)」 2017/12/5
私が所属している英国サセックス大学「移住問題研究所」では毎年11月末に国際シンポジウムを開催していて、今年の最終スピーカーは世界的に著名な人口学者ロナルド・スケルドン教授でした。
彼は西ヨーロッパ諸国がどれほど移民の労働力に頼っているのか、地元民の間での出生率は低いけれど移民(外国生まれの人)が生む子どもによって何とか人口バランスが保たれているのかを力説した上で、最後に、「さて、ヨーロッパ諸国はこの事実を正面から受け止められるか、あるいは「ジャパニーズ・ソルーション」つまりロボット依存型に陥るのか・・・」 と苦笑いしながら話を締めくくりました。
実はスケルドン教授が日本の人口政策に警鐘を鳴らすのはこれが初めてではなく、2年前の学内セミナーでも、日本の人口ピラミッドがどれほど危機的なものか30分ほどかけて説明されました。
そのセミナーの様子は毛受敏弘氏の『限界国家:人口減少で日本が迫られる最終選択』(朝日新書)の冒頭部分にも引用して頂いているのですが、「本当にロボット開発で日本の人口危機が解決するのか」と教授が問われたのに対して、会場で唯一の日本人であった私が「短期的な労働力不足にはロボットで一定程度対応できるけれども、ロボットは税金も保険の掛け金も払わないので、遅かれ早かれ社会保障制度の破綻は避けられない」と発言したところ、「その通り!」と言われて議論が即刻終わってしまいました。
よく日本への移民を受け入れるか否かが議論される際に、「日本はそもそも人口過多だし、労働力不足はロボットやAI開発で対応できるので、外国人なんていらない」、という意見を目にします。
確かに、絶対数としての人口減少は環境問題に良い影響を与えるかもしれませんし、人間がやらなくてよい仕事はどんどんロボットにもAIにも頼ったら良いでしょう。
日本人は働き過ぎの傾向があるので、労働時間が短縮されて日本人の「生活の質」も高まるかもしれません。良いことです。
でも、真の問題は労働力不足では全くありません。
人口学では15歳から64歳のことを「労働力人口」とか「生産年齢人口」と呼び、彼等の数のことを議論するので、あたかも移民問題=労働力問題と勘違いする人がいます。
でも日本のように一定の社会保障制度の存在が前提となっている国で、15歳から64歳の人に期待されているのは、労働や出産・子育てだけでなく、収入を得ることで税金を納め、健康保険や年金などといった社会保障費を負担することもあるのです。
労働力だけで言うのであれば、日本の老人はみなお元気ですので、定年を引き上げて80歳まででも90歳まででも働きたい方にはご活躍頂けば良いでしょう。
本当の問題は、15歳から64歳の社会保障費の負担人口よりも65歳以上の社会保障の受益者人口の方がずっと多くなってしまい、その傾向に歯止めがかからなくなった時に、警鐘が鳴りやまなくなるのです。
そして日本は既に10年以上前からその警鐘の真っただ中にいます。
ものすごく話を単純化して年金制度で例えると、年金を支払う人よりも年金を受け取る人の方が多い傾向が長期間続く場合、自分が年金に支払う金額よりも、後々受け取りうる年金額が低くなることが明らかなので、年金に加入する魅力は消滅します。
そこで、一定の資金がある人は公的年金への義務的支払いを極力抑えた上で、投資と保険を兼ねた「個人年金」を始めますし、語学力と一定のスキルのある日本人は、自分の老後と子ども達に将来的にかかる過剰な負担を懸念して、既に海外移住し始めます。
日本からの頭脳流出です。
この傾向が更に進むとどうなるのか。
近年の若年層に見られる不安定な雇用形態の増加や頭脳流出により、少ない金額の税金や社会保障の掛け金しか払えない日本人が、多くの高齢者を支えなければならない状況が生まれます。
数年後には消費税が再度引き上げられるようですが、生産年齢人口の方々で健康保険支払額や年金支払額、介護保険料などの引き上げを感じ、高齢者の方々で年金受け取り額の減少を感じていらっしゃる方がいるとすれば、それは正に日本の人口政策・移民政策の失敗を肌で感じているのであり、近い将来の社会保障制度の破綻の予兆以外に他なりません。
繰り返しになりますが、日本における人口総数はあまり問題ではないのです。
日本がどのくらいの規模の国でありたいかはイデオロギーや価値観の問題で、正しい答えも間違った答えもありません。
そうではなく、最も重要かつ危機的で答えが白黒ハッキリしているのは、人口ピラミッドがどういう形を描いているのか、安定した末広がり型なのか、あるいは高齢者ばかりが多い頭でっかちの逆三角形型なのか。
15歳から64歳の生産年齢人口で、税金、健康保険、年金、介護保険などの掛け金を十分に負担できる人々の割合がどれくらいなのか、日本の社会保障制度が破綻するのか維持できるのか、なのです。
日本政府は2020年オリンピック・パラリンピックへ向けた短期的な施策に一生懸命です。
インバウンドの外国人観光客呼び込みも大いに結構です。ぜひ美しい日本の景観や素晴らしい日本の伝統や文化、美味しい日本食を外国人の方々に味わってもらいましょう。
私は子どもの頃から茶道を習っているのですが、茶道の素晴らしさ・奥深さを分かって下さる外国人が増えたら個人的にも嬉しいです。
でも、外国人観光客の増加は、日本社会が既に薄々感じ始めていて、かなり近い将来に直面する社会保障制度の破綻の回避には、残念ながらほとんど寄与しません。
また、短期的な視野での労働力不足の解消という観点から、技能実習制度の対象分野を従来の農林水産業だけでなく、建設さらには介護・家事労働にまで拡大していますが、最大5年の滞在が想定される技能実習生の増加では、中長期の滞在が前提となる年金制度を危機から救うことはできません。
その意味で、外国人留学生制度を充実させ、大学・大学院卒業後も定住や永住を前提に日本に残ってくれる若者を増やす政策は、ある意味で「筋が通った」政策と言えるでしょう。
しかし最近とても残念な統計を目にしました。今年10月にTimes Higher Educationが発表した調査によると、「世界の学生が留学したい国トップ20位」に日本は入らなかったそうなのです(ちなみに中国は9位、韓国は16位)。
この結果は、以前のブログでも書いた通り、法務省が平成24年から導入しているポイント制度で、日本に移住してくれる外国人高度人材者の数がいつまで経っても増えない、という現実とも軌を一にしていると言えます。
要するに、せっかく意を決して門戸を開いても、世界中どこからも引く手数多である優秀な留学生や高度人材は頼んでも日本には来てくれない状況が、もはや現実のものになってきているのかもしれません。
「既に手遅れなのかもしれない」という怖い声が聞こえてきそうですが、日本の社会保障制度を一刻も早く破綻への急降下から救い、日本人の頭脳流出を直ちに食い止めるために、どうやったら若くて優秀な外国人たちに日本に来てもらえるのか、本当の意味での「Yokoso! Japan」施策を真剣に考え可及的速やかに実施し始めるべきです。
今、考えるべき本当の問題は、「日本が移民を受け入れるかどうか」ではなく、「移民によって受け入れられる日本にどうなるか」なのではないでしょうか。 
 
●"移民”増加の加速度は増すばかり… 2017/5/17
 超高齢社会における労働力の確保では「移民政策」がカギに!?
移民の増加は、もはや不可避な状況にある!?
今、移民の増加が顕著です。とりわけ著しいのは、外国人労働者の増加。これは労働者人口(生産年齢人口)が減少していることに起因しています。そして、労働者人口の減少には、やはり「高齢化社会」という構造が影を潜めています。
2015年の国勢調査において、総人口は1億2711万人、前回の統計より0.7%の減少であると中国メディアが調査しています。人口の着実な減少。これは以前から予想されていたものですが、これからも日本の人口は減り続けます。
こうした事実を背景に、日本の外国人受け入れ拡大が進んでいます。2015年10月から2016年9月において、日本に3ヶ月以上滞在する外国人の数は240万人を突破。これは前年同期比で13万6000人もの増加です。また、過去5年間においては50万人もの外国人労働者が増加。日本人の数が減る一方、外国から人々が流れ込んでいるという状態です。
少子高齢化が進み、生産年齢人口の減少に歯止めがきいていないという、現在の日本が抱える現状。この事実を受け、国は永住権取得のハードルを引き下げる方針です。 日本に滞在する外国人のうち、国籍別では中国が最多です。人口減少を解決できない以上、記録的なスピードで外国人が流れ込むのは必然かもしれません。
国籍や永住権を取得する必要はなく、定住国を変更すれば、滞在期間に比例して「短期的移民」「長期的移民」に分類できます。移民受け入れには賛否両論がありますが、日本では長期間に渡って労働に従事する外国人労働者が増えています。
厚生労働省の調査によると、2012年には68万人だった外国人労働者数が、2016年には108万人に増加しています。この5年間で実に40万人も増加しており、男女ともに、増加の一途をたどっています。人手不足を背景に、彼らを受け入れる事業所も増加しており、2012年には11.9万ヶ所だった外国人雇用事業所が、2016年には17.2万ヶ所に増加しています。
産業別に見てみると、2016年には製造業が最も多く4万人、次いで卸売業・小売業が2.9万人、宿泊・飲食サービス業で2.4万人の雇用がなされています。
外国人労働者の増加はいかにして起きているのか
では、どういった理由で外国人労働者が増加傾向にあるのか。それはとりもなおさず「生産年齢人口の減少」に起因しているわけです。
内閣府が2016年に発表した資料は、2015年からの総人口減少ターンを示しているのと同時に、15歳から64歳の生産年齢人口の減少も表しています。高齢化率も進行していき、社会に占める高齢者の割合が一気に爆発していきます。2050年には、総人口が1億人を割り込み、生産年齢人口は5000万人となる見込みです。約半分が働けない人々で構成され、高齢化率は約40%に到達することが予測されています。
社会が将来的にどうなるか、それは誰にも正確な予測が出来るものではありません。しかし、人口の減少はその中にあってより正しく予測できる数少ないデータの一つです。それは出生率という根拠から明白で、現在から35年後のデータをも算出することが可能です。
そして、高齢化社会という構造が立ちはだかる
そしてなにより重大な問題。それは生産年齢人口の低下が「人口の減少と高齢化社会の渦中で起きている」ということです。高齢化社会には前掲した図にもあるように、人口がはじめて1億人を割り込む2050年に、2,385万人もの後期高齢者が存在する予測となります。65歳から74歳を含めると、3,768万人となり、約4割近い人口が高齢者となってしまうのです。
外国人労働者の受け入れ環境はどのようになっているのか
しかし、増える一方の外国人労働者の就労環境は決して良いものとはいえません。働き手として日本人労働者と平等に扱われていないこと、本人や家族が十分な日本語教育を受けられなかったりすること等の問題が指摘されています。社会からドロップ・アウトして犯罪に走ったり、生活保護を受給されたりしてしまっては日本社会に大きな負担としてのしかかります。
国は「単純労働の外国人を受け入れない」方針としているため、定住政策の必要性が議論されず、広められることがないままの受け入れ拡大が問題でした。
外国人労働者は、1980年頃から話題となっています。経済成長の一方で、農村においての働き手が減少し、観光ビザで入国した外国人の不法就労が目立つようになってきました。移民は果たして必要なのかどうか、議論はつねに紛糾しています。欧米の移民受け入れ国において、社会が分断された現状などを鑑みるに、慎重論が依然根強く、国は外国人労働者の受け入れに消極的でした。
しかし、1990年の出入国管理法改正で日系人を受け入れただけでなく、途上国への技術移転を目的として、就業を禁じたまま「研修生」という名目で仕事ができるようになりました。 また、1993年には在留期間が2年に伸ばされ、「技能実習制度」が誕生しました。産業界では多くの単純労働者を必要としている一方で、国は単純労働者を受け入れたがらないという「せめぎあい」が続いています。研修生制度や技能実習制度はその合間の政策として登場したのです。
以前は、最低賃金に満たない金額での労働も存在していたわけですが、2010年には最低賃金が適用されるようになり、外国人労働者の保護が進みました。その一方で賃金に見合った働きを激しく求められるなど、その関係に変化が見えつつあります。
日本においてはまだまだ外国人労働者に対しての風当たりが強く、働きやすさとは程遠いというのが現状です。母国で借金して来ている人も少ないようで、辞めるにやめられないというのが現状のようです。
移民問題は高齢化社会に招かれる…
移民の問題は、高齢化社会という隠れた要因が影響しています。高齢化社会が移民という大きな問題の領域まで足を踏み込まざるを得なくなっているのです。日本国内の生産力を保っていくためには、移民政策がカギを握っているのは間違いありません。出生数は減少を続け、2050年には55万人になると推計されていることも、それに拍車をかけています。
働き手の減少は、介護の労働者不足にも直結します。現状、介護労働者の外国人労働の環境は決して良いものとは言えず、安かろう悪かろうの典型となっています。待遇が非常に悪いのです。しかし、約7割が違法な就労状態というデータもあり、早急な整備を求める声も高まっています。日本は国民に対する海外移民の割合が約1.6%となっています。世界では151番目、非常に閉じた国であることがわかります。また、移民法、難民法などもありません。
移民が増えると犯罪が増えるというイメージも先行しています。ですが、実際のデータを見てみると、2002年頃と比較して現在は外国人による犯罪率が1/4程度に減っています。
介護業界の側も、制度を見直すことで正しい市場原理が働くようにする必要があります。しかし、規制の影響で市場原理がうまく機能していないという現状です。高齢化率が進んでいる地域ほど外国人労働者の割合が少なく、問題の根本となっています。
日本は平均寿命も伸び続けており、2060年には男性84.19歳、女性90.93歳となります。超高齢化社会の中で、移民問題を考えるタイミングが来ているのではないでしょうか。  
 
●日本国の移民政策を推進しているのは誰? 2017/4/12
報道によりますと、厚生労働省は、2017年度から外国人技能実習の受け入れについて、優良な団体に限り受け入れ期間を従来の3年から5年に延ばすそうです。この他にも、政府は、国家戦略特区に限定しているとはいえ、外国人の就農を解禁する方針と報じられております。外国人専門家の就農については、将来的には地域の指導者となることを想定しているというのですから驚きです。
ゆくゆく先は、外国人実習生の滞在期間を国籍法における帰化要件を充たす5年まで延長する案もあるそうですが、一体、日本国の移民政策を推進しているのは誰なのでしょうか。日本国民の大半は、移民政策には反対しておりますので、推進者が国民ではないことだけは確かです。
そこで、政府の手法を見ておりますと、(1)省令やガイドライン等の改正といった省内手続きを用いることで、国会でのオープンな議論や立法措置を回避する、(2)複数の関連する法律を順次に改正し、これらの連鎖的効果の結果として外国人労働者や移民受け入れを拡大する、(3)民間事業者に対して受け入れを奨励し、かつ、受け入れ制度の拡充を図る、(4)政府が率先して外国人受け入れを既定路線として敷くことで、国民の抵抗感を軽減させる…など、できる限り国民に悟られないよう、“裏口”的な手法が目立ちます。言い換えますと、国民の反対を百も承知の上で、政府は、巧妙な手口で移民受け入れを秘かに推進しているのです。
イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ大統領の当選に際しては、日本国のマスコミは移民反対の国民世論の強さに対して意外性を強調し、批判的に報じておりましたが、日本国民もまた、移民反対においては両国国民と変わりはありません。目下、マスコミは、“日本国も移民受け入れに対して正面から向き合うべき時期に来ている”、と訴えておりますが、既に結論は出ているのです。日本国政府は、海外と連携する新自由主義や共産主義勢力、あるいは、移民ビジネス事業者といった一部の人々の要望に応えるのではなく、国民の意向に沿った政策を実施すべきと思うのです。  
 2016

 

 
●わが国の移民政策を考える 2016/4/7
世界では近年人の移動が一段と激しくなり、2015年の移民人口総数は2.4億人(2010年比約10%増)、総人口の3.3%を占めるに至っている。その中にあって、わが国の移民人口は約2百万人、うち半数の1百万人が外国人労働者として働いているに過ぎない。
このように、わが国は総人口では世界第10位の大国ながら、移民人口順位は22位と低く、外国からの移民を極端に嫌っている国となっている。総人口比の移民比率も全世界平均の半分に満たない(図表参照)。
しかしながら、少子高齢化が急速に進み人口減少が加速する中、これからの日本経済は外国からの移民の働き手なくしては成り立たない。出生率が急回復したとしても、長期にわたって労働力が極端に不足することは目に見えている。現に外国人労働者の数は過去5年で1.4倍となり、「卸売・小売業」では過去5年で外国人依存度が1.8倍に、「建設業」では2.1倍となっている。
このような状況下で、将来の移民政策を議論するに当たっては、世界の趨勢と切り離せず、移民増に成功している先進国に見習う要がある。
移民大国の中で、米国やカナダは歴史的に元々移民で成り立っている国であり、ロシアは旧ソ連圏からの移民、サウジアラビアやUAEは産油資産に依存した特殊な国である。そこで、民族の純血や文化の独自性を保ちながら移民も積極的に受け入れてきた欧州の独・仏・英の先例を検討することが重要となる。
独・仏・英の3ヵ国移民政策を比較検証した結果では、フランスが抜群に勝れ、次いで英国がよく、ドイツには問題点が多いと判断される。移民を含む人口政策全般についても、一貫して出生率向上策に注力し出生率2を維持しているフランスには学ぶべき点が多い。
移民受入れの考え方はドイツと仏・英では大きく異なっている。ドイツは移民を自国民に同化させる政策はとらず、長期滞在者として隔離して遇しているのに対し、仏・英では移民の包摂・統合政策を採ってきた。両国とも包摂主義と言っても、英国は移民の文化もできるだけ尊重する多文化主義を掲げているのに対し、フランスは自国民への同化を基本とする統合主義に徹するといったニュアンスの違いはある。
ドイツでは1950年代に始まった奇跡的な経済復興が深刻な労働者不足を引き起こした。これを補うために「ガストアルバイター(Gastarbeiter)と呼ばれる外国人労働者を募集し、トルコ人を中心とする外国人労働者の大量流入が始まった。ドイツ語のGustは客人を意味するところから、彼らを本格的な移民とは看做さず、中短期滞在の出稼ぎ労働者と認識していた。1973年のオイルショックで一旦募集停止となっが、その後も家族呼び寄せを含む流入超過が続き、EU成立後は東欧諸国からの流入が加わって、移民人口は増加の一途を辿っている。ドイツの出生率は1.38(旧東独地域では1を割っている)と低く、労働力不足は慢性化しているので、今後とも大幅な流入超が避けられない。もっとも、労働市場は完全雇用に近く、失業率は非移民も移民も5%程度と低い。
ドイツでも移民に対する対応は徐々に変わってきている。たとえば、11999年にはドイツ国内で出生した子供は両親のいずれかが8年以上合法的にドイツ国内に居住する場合には国籍を与える出生地主義に転換、2滞在許可と就労許可の一体化、3高度な技術などを有する移民には永住権を与える、といった施策が打ち出されている。
しかしながら、単純労働者については依然として期限付きの滞在を例外的に認めるという姿勢で抑制的対応を基本としている。ただし、これらのガストアルバイターについてもドイツ社会に統合していく行く必要はあるとの認識は高まり、2005年にはドイツ語の習得を義務付ける制度の導入を試みているが、これらの施策によっても統合の成果は見られないといった批判的な見方が多い。
一方、フランスでは1974年以来就労を目的とする移民の受け入れを抑制する方針に転換、正規滞在移民のフランス社会への統合を柱とした同化政策を積極的に進めている。フランスは1804年に世界初の出生地主義を採り、同国で生まれた外国人の子供は16歳から21歳の間に自らの意思でフランス国籍を申請することが義務付けられている。
フランスの抱える移民問題は旧植民地のアルジェリアをはじめ中東地域からの低学歴のイスラム系が500万人を占め、経済の低迷下で失業率が20%近くと非移民の2倍に上っているため、社会保障給付費が政府の大きな負担となっている点である。
ロンドンやパリでのイスラム系によるテロの勃発を機に、欧州全域で中東地域からの移民に対する風当たりが強まっているが、テロと移民とを混同するのは間違っている。大きなテロ事件は9.11や1972年にパレスチナ武装組織が人質をとって立てこもったミュンヘン・オリンピック事件のように外国人によってよって起こされており、最近起こったベルギー国籍のイスラム系若者によるテロは例外的と言える。
このように見てくると、移民を積極的に増やすべきか否かの議論に入る前に、移民人口が増えても犯罪が増加したり社会的な不安が高まったりしないような社会基盤作りの移民受け入れ政策を確立することが肝要である。この際、手本とすべき国はやはりフランスの採ってきた包摂・同化政策であろう。
具体的には、1血統主義を廃し、日本で生まれた外国人に原則として日本国籍を与える出生地主義に国籍法を改める、2移民には費用雇用者負担で一定レベルの日本語教育の実施を義務付け、公的支援も行う、3移民と非移民間の扱いに差別を設けない労働法制や社会保障給付の体制を整備すること、が最低限必須である。 
 -2015

 

 
●ゼネコンが自らの手で招いた「建設業の衰退」 2015/1/27
職人不足が常態化している建設業で、4月から日本での研修経験のある外国人技能労働者の受け入れが始まる。公共事業を中心に労務単価の見直しも進み、一時期ほど「職人不足が深刻化している」との声も聞かれなくなった。
ただ、これもゼネコン(総合建設会社)の生産調整と消費税増税による住宅着工の落ち込みが主な要因で、根本的な問題が解消されたわけではない。今後は「若年層の人材を確保・育成するための環境を業界全体で構築しないかぎり、建設業の衰退が避けられない」との声も建設業界内で聞かれる。はたして建設業は産業構造を変革し危機を乗り越えることができるのか。
日本人並みの給料を払えるか
「ベトナムなどを中心に、再び日本で働きたいという外国人技能者はかなりいる。『日本人並みの給料を払ってでも受け入れたい』という日本側のニーズが今後どれだけ増えるかだ」
技能実習生の受け入れ事業を行なっている、東京都内の協同組合の幹部は外国人就労者の拡大に期待する。
東京五輪が開催される2020年度までの緊急措置として、政府が導入を決めた外国人建設就労者の受け入れ事業は、2015年1月から日本側で受け入れる特定監理団体の申請受付が始まり、国土交通省では専任デスクを設置。2週間で数件の申請を受け付けたほか、申請準備のための問い合わせが相次いでいる。
現行の技能実習制度は、期間が最大3年。相手国の人材送り出し機関と業務提携した、日本の事業協同組合などが監理団体となり、技能実習生を紹介した受け入れ企業を指導・監査する仕組みだ。こうした監理団体は、全国に2000以上あり、うち建設関連は約400団体。過去に毎年約5000人の実習生を受け入れてきた。
今回の緊急措置では、在留中または帰国して1年未満の実習生は2年間、帰国して1年以上経過した実習生については3年間の特定活動との名目で期間を延長できる。実習生への給与は、都道府県ごとに定められている最低賃金でよかったが、実習経験者には入社4年目の日本人技能者と同等の待遇が求められる。それだけの給与を払って来てほしい外国人であれば、即戦力になるだろう。
「過去に建設技能実習の研修で来日した外国人の9割は中国人。再来日する外国人は限られるのではないか。やはり国内で人材をいかに確保するかが重要だ」。
建設専門工事業の全国組織、建設産業専門団体連合会の才賀清二郎会長は、外国人就業者への過度な期待に釘を刺す。まずは、待遇改善によって日本人の雇用を増やすことが先決というわけだ。
生産調整でひっ迫感薄れる
2008年のリーマンション後の2年間で建設技能労働者は27万人減の331万人まで落ち込んだ。その後、公共工事労務単価の引き上げや高齢者の活用で7万人ほど増え、国土交通省の建設労働需給調査でも今年度に入って不足率は低下傾向にある。一時期ほどのひっ迫感が薄れているのは、ゼネコンが職人を確保できる範囲内で出来高(施工高)を管理する、いわゆる生産調整が行われているからだ。
「施工体制を確保できる見通しが立たなければ、受注はしない。お断りしている案件もある」(準大手ゼネコン幹部)というのが実態。ゼネコン各社が今年度の受注計画を軒並み前年割れと予想しているのも「前年度に受注を取り過ぎた。手持ち工事が積み上がっており、今年度は無理に受注しなくてもいいという社内向けメッセージの意味もある」(大手ゼネコン首脳)と打ち明ける。
本来なら、若年層を中心に日本人の技能労働者を確保したいのだが、「都会で育った若者は建設現場では働いてくれない」のが悩みのタネ。建設産業専門団体連合会が傘下の14業界団体に昨年初めて行なった「雇用状況等に関するアンケート調査」では、回答のあった903社での2013年通期の若年層(10〜30代)採用人数は2430人。うち新卒採用は4割にとどまった。
これから2020年に向けて、新国立競技場や選手村などの五輪関連施設、さらに品川操車場跡地、渋谷駅周辺、虎ノ門・赤坂地区、羽田空港跡地などの大型工事が続々と動き出す。
「現状では65歳を過ぎた団塊世代の技能労働者を呼び戻し、外国人を活用して『何とかしのごう』と考えている企業がほとんどだ。2020年が過ぎれば、反動減で建設需要が大きく落ち込むのを心配しているのだろうが、その時は団塊世代が完全にリタイアし、外国人もいない。ますます業界からヒトがいなくなる」
国土交通省幹部は、さらなる人手不足の可能性を否定しない。
「下請け叩き」が自らの首を絞めた
建設業の職人不足は1990年代後半から始まった処遇悪化が原因だ。それを招いたのは、重層下請け構造によるゼネコンの下請けたたき。かつては3K職場でも高い給料が稼げるのが魅力だった、建設現場への若年層の入職率が一気に低下し、高齢化が加速していた。
こうした建設業の産業構造は、前回の東京オリンピックが開催された1960年代の高度経済成長期、急増する建設需要に応じて労働者を効率的に確保するために確立された。10年ほど前にある準大手ゼネコン社長からはこんなエピソードを聞いたことがある。
「自分が入社した当時はからくりもんもん(刺青)を背負った社員もいて、トラブルがあるとツルハシ片手にトラックの荷台に乗り込んで現場に駆け付けたもんだ」
それから50年、技能労働者を正社員として抱えているゼネコンはない。1次下請け業者ですら抱えないようになっており、技能労働者を雇用しているのは2次下請け以下の中小零細業者。「受注量が大きく変動するなかで、ゼネコンみずからが技能労働者を社員として抱えるのは困難だ」(大手ゼネコン首脳)と直接雇用には相変わらず後ろ向きだ。
「製造業なら、工場労働者がトヨタ自動車の正社員になれるが、建設業では名前も聞いたことのない下請け業者にしか入社できない。しかも給与が製造業より1割以上も安い。若者が建設業に就職しないのは当然。業界に危機感が足りない」。国交省のある幹部も警鐘を鳴らす。
日本建設業連合会(日建連)は、3月にも人口減少社会に対応した未来型の産業構造への転換を目指す、「日建連中長期ビジョン」を策定する。2014年12月に公表した中間とりまとめでは、「担い手(とくに若年技能労働者)の確保・育成」を最重要課題に挙げるが、本当に産業構造の転換にまで踏み込めるのか。残された時間はわずかだ。 
 
●建設業での外国人労働者 2014/3
「型枠あげろ」と現場責任者の指示が飛ぶとベトナム人実習生のダオ・ティエン・タン(31)は素早く型枠を動かした。2月18日、埼玉県朝霞市にある朝霞浄水場。戸田建設などが受注した浄水設備の現場で、向井建設(東京・千代田)のベトナム人実習生4人が働いていた。
タンはリーダー格。「日本語は難しい」と苦笑いするが、現場の用語には体がすぐに反応する。向井建設がベトナムにつくった建設職人の職業訓練校で半年間、日本語と実技の訓練を受けた。既に180人余りが修了し、60人近くが日本で働く。
建設業などの人手不足を解消するため、政府は外国人労働者の受け入れ拡大に動き始めた。1月末には、官房長官の菅義偉(65)が外国人の活用について「年度内をめどに時限的な緊急措置の決定を」と踏み込んだ。
建設業で特に足りないのが型枠や鉄筋などの職人。この分野で実習生を育てる向井建設の取り組みは注目の的だ。ただ会長の向井敏雄(69)は違和感も抱く。「狙いは日本の建設会社がアジアで事業を広げるため。人手不足解消が目的ではない」
「何て読むの?」。浜松市の人材派遣会社、伸栄総合サービスで面接中、文書を読む17歳の日系ブラジル人少年が「返事」の文字を前に詰まった。「この子も読めないのか」。日系ブラジル人面接官の仲本サユリ(36)は心の中でため息をついた。少年は中学を中退していた。
同社には職を求めて多くの外国人が訪れる。「日本育ちで会話は流ちょうだが、読み書きは小学生以下」。最近はそんな若者が増えた。教育熱心な親の下で育ち正社員になれた仲本のような人は少数。「勉強へのやる気も将来の夢もない子が多い」
浜松は多くの日系人を受け入れてきた移民先進地。だが一時は2万人いたブラジル人はリーマン・ショックを境に帰国し、9千人台まで落ち込んだ。残った人は教育にまで気が回らない。「国も企業も単なる労働力としてしか扱わず、教育や社会保障を与えてこなかった」と社長の加藤和代(57)は憤る。
2000年代には製造業がブラジル人を多用し、今度は建設現場で実習生に頼む日本。静岡文化芸術大学の教授の池上重弘(51)はこんなリスクを指摘する。「いずれ帰るからと外国人を酷使すれば、将来はどこからも来なくなる」  
 

 

 
●建設業の現場作業員として外国人を雇用したい
建設現場作業員として、外国人は原則就労できません。
まず確認いただきたいのは「ビザ(在留資格)」です。
外国人従業員の雇用には、日本の法律上(入管法)の就労内容の制限があります。特に建設業、製造業、飲食業などの現場作業を伴ういわゆる単純労働については、外国人の就労は一般に認められていません。もし、安易に考えて「建設現場で働けない外国人」を雇用していると法律に違反していることになります。外国人本人はもとより、雇用している会社・経営者も法律違反、場合によっては犯罪者としての責任を問われます。
では、どのようなビザをもっていれば、建設作業現場でも雇用できる可能性があるのでしょうか。
まずは、「技能実習」の場合です。現在日本では多くの技能実習生と呼ばれる若い外国人が建設業で仕事についています。人手不足の業界を救う手段として人数は今も増えています。また、建設現場であっても単純労働ではなく管理監督あるいは高度な技術的知識や技術を必要とする「技術者」として勤務する場合には認められるケースがあります(ただし、現場の作業は基本できません)。さらに、アルバイトやワーキングホリデー、日本人の夫や日系人など一定の身分のもとで職業制限が緩いもしくは制限がない外国人を雇用するということもありえます。
ただ、いずれも制度上の注意点がありますので、以下で詳しくみていきます。
外国人技能実習生を雇う
外国人技能実習の制度は、若い外国人に日本で「技術・知識」を身につけてもらい、母国に帰ってから生かしてもらおうという国際支援を趣旨として例外的に認められているものです。そこで、実習生の雇用にあたっては、年数の制限(通常3年まで)、業種の制限(対象職種・作業リスト)、人数の制限(事業所ごとの最大人数)など多くの制限があり、協同組合などの管理団体を通した特別の手続(自社で行う企業単独型は別)が必要となります。
「外国人であっても低賃金で働いてくれる若い労働力なら誰でも欲しい」とお考えの建設業事業者の方も中にはいらっしゃいますが、安易に考えると大きな失敗を招く場合もあります。技能実習生制度はあくまで「実習・研修」を行う制度であって、人材不足の業界の労働力の確保のためではありません。各業種ごとに決められた研修内容や研修作業を計画して実施しなければなりません。また、ある程度日本語を勉強しているとはいえ、言語・文化の違いから行き違いやトラブル(場合によっては逃走や不法就労犯罪)を招く場合もあります。特に、入管法や労働法などの法令遵守の徹底には十分に注意する必要があります。
技能実習生を雇用する形には、管理団体型と企業単独型の2つのパターンがあるのですが、以下で見ていきます。比較的経営規模の小さな中小零細企業で現地に子会社などをもっていない会社の場合は、費用や手続を考慮して「管理団体型」を取ることが多いです。
技能実習生を雇用する仕組み(管理団体型)
管理団体型は、一般に中小零細企業などが外国人技能実習生を雇用するための方法です。(ちなみに、在留資格にはイロハの「ロ」がついています)
技能実習生を雇用するには1現地(ベトナム、フィリピン、中国など)の雇用主・日本に送り出すための送出機関、2日本での手続・研修・監理をする協同組合(管理団体)、3実際に就労をしながら研修をおこなう各事業者の3つの団体が関わります。また、1監理団体の許可、2技能実習計画の認定、3在留資格の許可などのためにそれぞれに契約書などの書類作成と手続が必要となります。
これらの多くの手続を一つの事業者がすべて行うのはかなり大変な作業です。複数の事業者の外国人技能実習生にかかわる申請手続や適法な実施体制の監理を行うのが、管理団体である協同組合です。ですので、技能実習生を雇用したいと検討する場合には、技能実習生の受入業務を扱っている協同組合を探してもらうのが便宜です。インターネットで検索すると複数の協同組合が挙がってきます。中には法外な金額や違法な運営を行っている協同組合もあるように聞きます。これまでの実績や経営規模、違法歴の有無などをしっかりと検討して選ぶことをお勧めします。
なお、ちなみに、実際に実習が始まるまでに必要は手続は下記のようになります。
• 管理団体の許可申請・許可証(外国人技能実習機構)
• 技能実習計画の認定申請・認定通知書(外国人技能実習機構)
• 在留資格認定証明書の交付申請・認定証明書(入国管理局)
• 査証発給申請・査証(在外日本大使館・領事館)
• 入国・在留カード(入国管理局)
• 日本での日本語・生活・法令研修(管理団体)
• 実習開始(各実施機関・事業所)
管理団体型の技能実習生を雇用する仕組みの詳細については、別頁「技能実習生を雇用するための手続(管理団体型)」にて説明します。
技能実習生を雇用する仕組み(企業単独型)
一方、企業単独型の技能実習は、監理団体(協同組合)を通さずに、文字通り自社ですべての手続を行って技能実習生を呼び寄せて日本で雇用する形をいいます。(在留資格にはイロハの「イ」がついています)
企業単独型の技能実習制度は、基本的には、現地に子会社や工場などをもつ日本の会社が現地従業員を日本によびよせて実習をさせるための制度です。これとよく似た形で一般の就労ビザの種類の1つに「企業内転勤」のビザがありますが、これはあくまで高度な知識・技術を要する仕事をする外国人のためのビザなので単純労働はできません。また、「研修」というビザもありますが座学などの非実務研修などに限られます。そこで、現地の事業所や工場から現地従業員の外国人を日本に呼んで、日本で技術や知識を覚えさせ、また現地に返したあとに現地のリーダーとして活躍してもらうことを目的として企業単独型の技能実習がよく利用されています。
ちなみに、現地の小会社・工場との関係については、以下のような場合が認められています。
• 親子会社
• 子会社同士
• 本店・支店関係
• 関連会社(議決権20%以上)
また、親子会社関係などがなくても国際取引実績や提携関係で認められる場合もあります。
• 継続1年以上の国際取引実績
• 過去1年間に10億円以上の国際取引実績
• 提携関係にあって大臣が認めるもの
技術者を雇う
建設現場での労働であっても、その外国人が高度な技術や知識をもっており「単純労働」にあたらない場合は、一般の就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)での就労が認められるケースもあります。建築設計に関わる業務や現場監督・指導、高度な建築用機械の保守などの仕事が考えられます。
この場合は、まず外国人自身が高度な技術・知識をもっているかが重要です。通常は大学・大学院などで建築学や工学などの学位をもっているか、高度な技術・知識を要する業務についての10年以上の経験がなければなりません(卒業証明書や学位証明書、在職証明書などで証明が必要です)。
また、雇用する会社のほうも、雇用契約のなかで高度な技術・知識を要する仕事をさせ(単純労働や作業には従事させない)、給与・待遇面でも他の単純労働者や作業員とは明確に区別しておくことが必要です(雇用契約書、業務内容説明書、給与明細書などで証明が必要です)。
「技術」ビザ(在留資格)で外国人を雇用する場合の手続については、別頁にて説明します。
アルバイト・ワーホリ外国人を雇う
アルバイト・ワーホリの外国人は、一定の時間制限や活動内容の制限があるものの、業種にかかわらず単純労働にも就くことができます。また、すでに日本に滞在している人を雇用するので手続がスムーズに進みやすいというメリットもあります。ただし、あくまで活動の本分(学校への通学、家族との生活、文化交流)があるため、限られた範囲内だけの雇用ということになります。
留学生アルバイトの場合
日本の大学や専門学校に通っている留学生は、「資格外活動許可」という特別な許可をとっていればアルバイトができます。この留学生のアルバイトについては厳しい業種の制限はありませんので建設業の現場作業の仕事でも就くことができます。
ただし、留学生の本分は勉強なので、留学生の資格外活動許可には週28時間という時間制限が付いてますので注意が必要です(夏休みなどの学休期間は別)。この時間制限は非常に厳格です。また、学業成績や学校への出席状況が悪い場合にはアルバイトが許可されない場合もありえますので注意してください。
外国人家族アルバイトの場合
日本で働いている外国人の家族(夫・妻・子)が日本で一緒に暮らす場合に与えられる「家族滞在」のビザも、留学生の場合と同じく、「資格外活動許可」の特別な許可をとっていればアルバイトが可能です。こちらも業種制限は厳しくないため「建設現場作業」にもつくことができます。
ただし、資格外活動許可には時間制限がありますので、この時間を越えることはできません。
ワーキングホリデー外国人の場合
そもそもの認めらている国・人数があまり多くないので実際にはあまりないと思いますが、ワーキングホリデーという制度を使って日本にやってきた若い外国人(ただし、認められている国のみ可)も業務内容制限がゆるいので、建設業作業員として働くことも可能です。
ワーキングホリデー(通称:ワーホリ)は、若者の国際交流を進めるために、原則1年間の旅行や文化交流の滞在期間中に滞在費をまかなうための就労を認めている制度です。ただし、ワーキングホリデーが認められている国は多くなく、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、フランス、ドイツ、イギリスなどの欧米先進国、韓国、台湾、香港などのアジア先進国のほか、最近ではポーランド、スロバキア、ハンガリー、オーストリアなどの欧州非英語圏、アルゼンチン・チリなどの南米国のみです。
最近では農業や飲食店接客(農業、飲食店接客は単純労働のため就労ビザでは原則就労不可)で働くワーホリ外国人が増えていますが、あくまで日本文化体験や旅行のために来ている外国人がほとんどですので、さすがに建設業作業員や製造業工員で働く外国人は多いないと思います。
就労制限のない外国人を雇う
すでに日本に住んでいる外国人の中には、業種・職種に関係なく日本人とほとんど同じように働くことができる人もいます。いわゆる「身分系」のビザ(在留資格)をもっている外国人の人たちです。
身分系ビザには、永住者、定住、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等などがあります。
永住の外国人
日本に長く住んでおり「永住」のビザ(在留資格)をもっている外国人は、業種に関係なく日本人とほぼ同等の職業につくことができます(一部公務員などは除く)。当然、建設業の現場作業に就くことも問題ありません。永住者の外国人は、ビザの更新手続も不要です。
定住者の外国人
「定住者」のビザをもっている外国人も業種の制限をうけず、建設業現場の作業員として働くことに問題ありません。定住者のビザは、日系人(祖父母、曾祖父母が日本人など)の方、以前に日本人と結婚したいたなどいくつかの身分的な事情から与えられるものです。1年・3年・5年ごとに更新手続が必要なビザで、場合によっては更新が認められず帰国する場合もありえます。
日本人の配偶者等・永住者の配偶者等の外国人
これは、文字通り、日本人と結婚している外国人夫・外国人妻、そして永住資格をもっている外国人の夫・妻の方です。業種の制限を受けないため、建設業現場の作業員として働くことに問題ありません。ただし、離婚・死別するなどして「日本人の配偶者等」でなくなった場合にはこの資格のままで日本に滞在することはできません。また、定住者と同様に更新手続を行う必要があります。
労務管理・税務手続には特に注意
外国人を雇用する際も、労務・税務の手続や義務については原則として日本人と同等以上だと考えてください。労務としては最低賃金、労働時間、安全衛生や雇用保険や社会保険について「外国人のほうが緩い・安い」と考えておられる事業者・経営者の方も中にはいらっしゃるようです。しかし、日本人も外国人も労働法上の最低基準は同じです。また、税務についても所得税・住民税の納税義務、源泉徴収などの手続もほぼ同じです。
外国人だからといって、法外な低賃金、劣悪な労働条件のもとで雇用すれば労働法違法に、税務申告・源泉税の未納などがあれば税法違反になります。加えて、入管法や技能実習法がよく厳しい基準、煩雑な手続を求めていますので、外国人の雇用を行う場合には特に法令遵守(コンプライアンス)に注意することが必要です。

2017年11月からスタートした外国人技能実習生にかかわる新しい法律が、「外国人の技能実習の適正な実施及び義の実習生の保護に関する法律」(「技能実習法」)です。  
 
●建設業における外国人技能実習生活用の実態
建設業では高齢化や若手入職者の減少が進み、人手不足が深刻化しております。その中で、業界ではベトナムやカンボジアなどといった開発途上国からの外国人技能実習生を建設現場で活用する動きが徐々に出てきており注目されてきています。建設業における外国人技能実習生活用の実態をシリーズとしてご紹介していきたいと思います。
建設業における外国人技能実習生活用の背景
下図1(略)は建設業における就業者数と、全産業に占める建設業就業者数の割合を示しています。また、建設業における就業者数は1997年のピークであった685(万人)から2016年現在の492万人まで、20年間で約28%減と大きく減少しています。また、建設業就業者数が全産業における就業者数に占める割合を見てみると1997年に10.4%であったのが2016年では7.6%と大きく減っているのです。つまり、若い働き手にとって、建設業は他産業と比較して就労先として選択されないケースが年々増加しているのが現状なのです。
実際に、下図2(略)における建設業における年齢別の就業者数割合を見てもわかるように、1997年にはほとんど同じあった29歳以下の就業者が占める割合と55歳以上の就業者が占める割合が、2016年現在では11.4%と33.9%と約3倍の開きとなり、業界における高齢化が加速していることが読み取れます。培われてきたノウハウや技術を継承する後継者としての若者世代が減っていることも業界における人手不足に影響を与えているのです。
このように、建設業で就業者数そのものが減少しているだけでなく、就業者の高齢化が加速している現状を背景として、求人を出してもなかなか人が募集に集まらないとか、一部では、働く側の希望する給与等の条件が合っていないなど、建設現場における人手不足を解消する有効な手段の一つとして、国外からの労働力、つまり外国人技能実習生の活用が注目されているのであります。
外国人技能実習制度とは!?
皆さんは「外国人技能実習制度」という言葉を耳にしたことはありますでしょか?開発途上国には、経済発展・産業振興の担い手となる人材の育成を行うために、先進国の進んだ技能・技術・知識を習得させたいというニーズがあります。日本では、このニーズに応えるため、諸外国の青壮年労働者を一定期間産業界に受け入れて、産業上の技能等を習得してもらう「外国人技能実習制度」という仕組みがあるのです。
具体的に外国人技能実習制度とはどのようなものかと言いますと、最長3年の期間において、実習生が雇用関係の下、日本の産業・職業上の技能等の習得・習熟をするものです。(一部、期間が3年以上の職種もあります。)実習生は、一年ごとに技能習得の成果が一定水準以上に達していると認められた場合に限り翌年の技能実習が認められるものです。
外国人技能実習生の特徴としては「実習生自身の職業生活向上や産業・企業の発展、母国でノウハウを発揮し、品質管理、労働慣行、コスト意識等の事業活動の改善や生産向上に貢献すること」を目標にしているので、一般的に仕事に取り組む姿勢も真面目で真剣であることが挙げられます。また、外国人技能実習生が日本で採用されている間は、実習生を採用した会社が円滑な業務活動を行えるように「送り出し機関」と呼ばれる実習生母国の職業訓練機関日本駐在所と、「組合」と言われる日本における実習生の受け入れ監理団体が協力しながらサポートしています。
建設業における外国人技能実習制度の対象職種は!?
この外国人技能実習制度、建設関係では建設現場で必要となる「さく井」「建築板金」「冷凍空気調和機器施工」「建具製作」「建築大工」「型枠施工」「鉄筋施工」「コンクリート圧送施工」「とび」「石材施工」「タイル張り」「かわらぶき」「左官」「配管」「熱絶縁施工」「内装仕上げ施工」「サッシ施工」「防水施工」「ウェルポイント施工」「表装」「建設機械施工」「塗装」など多くの職種が対象となっており、現場における様々なシーンで技能実習生の活用が可能となっております。
なお、これら外国人技能実習制度が対象とする職種の詳細(対象作業等)については「公益財団法人 国際研修協力機構-企業部-建設班」による「建設関係「技能実習2号」移行対象職種」に細かく記載されておりますのでここで紹介いたします。
今後ますます期待される外国人技能実習生の建設現場における活用
人手不足解消の解決策として有効な手段が見つからない建設業、外国人技能実習制度を活用している建設会社も徐々に出始めてきており、今後、この制度を活用する建設業関連企業がますます増えていくであろうと考えられます。
また、日本企業が外国人技能実習制度を利用することは、実習生が帰国した後に習得した技能やノウハウを通して能力を発揮し、母国における事業活動の改善や生産向上に貢献することに役立つことになります。それだけでなく、実習生を受け入れた企業にとっても、外国企業との関係強化(海外進出時の足掛かり)、経営の国際化などに繋がっていきます。
このように、外国人技能実習生を召致して活用するということは、単に労働者不足を補うだけでなく、発展途上国の人材に技能を習得してもらうという国際貢献にもなり、将来的にノウハウや技術を継承した人材を活用し、市場の急成長が見込まれる海外展開への足掛かりにもなるのではないでしょうか? 
  
 
 
 
 
 


2018/11
 
●出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案 [骨子]
1 在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」の創設
(1) 特定技能1号:不足する人材の確保を図るべき産業上の分野に属する相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
(2) 特定技能2号:同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
2 受入れのプロセス等に関する規定の整備
(1) 分野横断的な方針を明らかにするための「基本方針」(閣議決定)に関する規定
(2) 受入れ分野ごとの方針を明らかにするための「分野別運用方針」に関する規定
(3) 具体的な分野名等を法務省令で定めるための規定
(4) 特定技能外国人が入国する際や受入れ機関等を変更する際に審査を経る旨の規定
(5) 受入れの一時停止が必要となった場合の規定
3 外国人に対する支援に関する規定の整備
(1) 受入れ機関に対し、支援計画を作成し、支援計画に基づいて、特定技能1号外国人に対する日常生活上、職業生活上又は社会生活上の支援を実施することを求める。
(2) 支援計画は、所要の基準に適合することを求める。
4 受入れ機関に関する規定の整備
(1) 特定技能外国人の報酬額が日本人と同等以上であることなどを確保するため、特定技能外国人と受入れ機関との間の雇用契約は、所要の基準に適合することを求める。
(2) 1雇用契約の適正な履行や2支援計画の適正な実施が確保されるための所要の基準に適合することを求める。
5 登録支援機関に関する規定の整備
(1) 受入れ機関は、特定技能1号外国人に対する支援を登録支援機関に委託すれば、4⑵2の基準に適合するものとみなされる。
(2) 委託を受けて特定技能1号外国人に対する支援を行う者は、出入国在留管理庁長官の登録を受けることができる。
(3) その他登録に関する諸規定
6 届出、指導・助言、報告等に関する規定の整備
(1) 外国人、受入れ機関及び登録支援機関による出入国在留管理庁長官に対する届出規定
(2) 出入国在留管理庁長官による受入れ機関及び登録支援機関に対する指導・助言規定、報告徴収規定等
(3) 出入国在留管理庁長官による受入れ機関に対する改善命令規定
7 特定技能2号外国人の配偶者及び子に対し在留資格を付与することを可能とする規定の整備
8 その他関連する手続・罰則等の整備
(注) 特定技能1号外国人:特定技能1号の在留資格を持つ外国人、特定技能2号外国人:特定技能2号の在留資格を持つ外国人、特定技能外国人:これらの外国人の総称
法務省の任務の改正
法務省の任務のうち、出入国管理に関する部分を「出入国の公正な管理」から「出入国及び在留の公正な管理」に変更する。
出入国在留管理庁の設置
(1) 法務省の外局として「出入国在留管理庁」を設置し、同庁の長を出入国在留管理庁長官とする。
(2) 出入国在留管理庁の任務
ア 出入国及び在留の公正な管理を図ること
イ アの任務に関連する特定の内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けること
(3) 地方出入国在留管理局等の設置
法務省の地方支分部局である地方入国管理局を地方出入国在留管理局とし、出入国在留管理庁の地方支分部局として設置する。
その他
○法務大臣と出入国在留管理庁長官の権限に関する規定の整備
○関係行政機関との情報交換等連絡協力に関する規定の整備
○その他所要の語句の修正等 
●省令 
各省の大臣が制定する当該省の命令をいう。
現行法上は、国家行政組織法第12条第1項に基づき、各省大臣が、主任の行政事務について、法律もしくは政令を施行するため、または法律もしくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として発する。かつての総理府令および法務府令も、名称および制定権者が異なるのみで、法制上の位置づけは根拠法も含め同じであった。内閣府令および復興庁令も、名称・制定権者および根拠法は異なるものの省令と同等の位置づけである(内閣府設置法第7条第3項および第4項、復興庁設置法第7条第3項および第4項)。
沿革
公文式(明治19年勅令第1号)第4条においては、各省大臣は、法律・勅令の範囲内において、その職権もしくは特別の委任により、法律・勅令を施行し、または安寧秩序を維持するために省令を発することができるものとされていた。なお、公文式は、公式令(明治40年勅令第6号)附則第2項により、公式令の公布・施行と同時に廃止され、省令の形式についての規定はあるものの、省令を発することができるという規定は置かれていない。
公文式の3日後に制定された各省官制通則(明治19年勅令第2号)第6条においても、各省大臣は、その主任の事務につきその職権もしくは特別の委任により、法律・勅令の範囲内において、法律・勅令を施行しまたは安寧秩序を保持するために省令を発することができるものとされており、これは、全部改正後の各省官制通則(明治23年勅令第50号)第4条においても引き継がれていた。さらにこれを全部改正した後の各省官制通則(明治26年勅令第122号)第4条では、各省大臣は、主任の事務につきその職権もしくは特別の委任により省令を発することができるものとされた。
日本国憲法施行に伴って、各省官制通則が廃止された後は、行政官庁法第6条第1項により、各省大臣は、主任の事務について法律もしくは政令を執行するために、または法律もしくは政令の特別の委任に基いて省令を発することができるものとされ、同条2項により、法律の委任がなければ、罰則を設け、または義務を課し、もしくは権利を制限する規定を設けることができないものとされた。
同法は国家行政組織法の施行に伴って廃止され、現在の国家行政組織法12条に至る。
制定過程
省令は、各省大臣(主任の大臣)が個別に制定する。法律・政令などが天皇の名で公布されるのに対して、省令は制定した各省大臣の名で公布される。
省令の内容が複数の各省大臣の所管にわたる場合には、関係する各省大臣の連名で、共同省令が制定される(共同省令の節を参照)。内閣総理大臣の所管にもわたる場合には内閣府令や復興庁令との共同命令として定められる。
種別
講学上、政令や省令などの「命令」は、憲法・法律の規定を実施するために制定される執行命令と、法律の委任に基づいて制定される委任命令に大別される。
名称
省令は、制定した各省大臣が「主任の大臣」として分担管理する省の名を冠して総称し、各省が所管する。すなわち、省令を制定・所管する各省大臣・省は、総務省令は総務大臣・総務省、法務省令は法務大臣・法務省、外務省令は外務大臣・外務省、財務省令は財務大臣・財務省、文部科学省令は文部科学大臣・文部科学省、厚生労働省令は厚生労働大臣・厚生労働省、農林水産省令は農林水産大臣・農林水産省、経済産業省令は経済産業大臣・経済産業省、国土交通省令は国土交通大臣・国土交通省、環境省令は環境大臣・環境省、防衛省令は防衛大臣・防衛省である。
効力
○優劣関係 / 省令は、日本国憲法・条約・法律・政令に劣後し、内閣府令、復興庁令および人事院規則と同等の効力を有する。憲法 >条約 > 法律 > 政令 > 内閣官房令 = 内閣府令 = 復興庁令 = 省令 = 外局の規則(規則・庁令)
○制限 / 省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない(国家行政組織法第12条第3項)。  
●出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律
  可決成立日   平成26年6月11日 
第一条出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)の一部を次のように改正する。
目次中「第二十六条の二」を「第二十六条の三」に改める。
第二条の二第一項中「在留資格(」の下に「高度専門職の在留資格にあつては別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄に掲げる第一号イからハまで又は第二号の区分を含み、」を加え、「、別表第一の二の表」を「同表」に改め、同条第二項中「(技能実習」を「(高度専門職の在留資格にあつては二の表の高度専門職の項の下欄に掲げる第一号イからハまで又は第二号の区分を含み、技能実習」に、「、二の表」を「同表」に改め、同条第三項中「公用」の下に「、高度専門職」を、「永住者の在留資格」の下に「(高度専門職の在留資格にあつては、別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第二号に係るものに限る。)」を加える。
第六条第一項ただし書中「第二十六条の二第一項」の下に「又は第二十六条の三第一項」を加える。
第七条第一項第二号中「二の表の」の下に「高度専門職の項の下欄第二号及び」を加え、「(ニに係る部分に限る。)」及び「並びに五の表の下欄(ロに係る部分に限る。)」を削り、同条第二項中「別表第一の五の表の下欄(イからハまでに係る部分に限る。)」を「別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第一号イからハまで」に、「同項第二号」を「前項第二号」に改める。
第十四条の次に次の一条を加える。
(船舶観光上陸の許可)
第十四条の二入国審査官は、指定旅客船(本邦と本邦外の地域との間の航路に就航する旅客船であつて、乗客の本人確認の措置が的確に行われていることその他の事情を勘案して法務大臣が指定するものをいう。以下同じ。)に乗つている外国人(乗員を除く。)が、当該指定旅客船が本邦にある間、観光のため、当該指定旅客船が寄港する本邦の出入国港において下船する都度当該出入国港から当該指定旅客船が出港するまでの間に帰船することを条件として、出国するまでの間三十日(本邦内の寄港地の数が一である航路に就航する指定旅客船に乗つている外国人にあつては、七日)を超えない範囲内で上陸することを希望する場合において、法務省令で定める手続により、その者につき、当該指定旅客船の船長又は当該指定旅客船を運航する運送業者の申請があつたときは、当該外国人に対し船舶観光上陸を許可することができる。
2 入国審査官は、指定旅客船に乗つている外国人(乗員を除く。)が、三十日を超えない期間内において、数次にわたり、当該指定旅客船が本邦にある間、観光のため、当該指定旅客船が寄港する本邦の出入国港において下船する都度当該出入国港から当該指定旅客船が出港するまでの間に帰船することを条件として上陸することを希望する場合において、法務省令で定める手続により、その者につき、当該指定旅客船の船長又は当該指定旅客船を運航する運送業者の申請があつたときであつて、相当と認めるときは、当該外国人に対しその旨の船舶観光上陸の許可をすることができる。
3 入国審査官は、前二項の許可に係る審査のために必要があると認めるときは、法務省令で定めるところにより、当該外国人に対し、電磁的方式によつて個人識別情報を提供させることができる。
4 第一項又は第二項の許可を与える場合には、入国審査官は、当該外国人に船舶観光上陸許可書を交付しなければならない。
5 第一項又は第二項の許可を与える場合には、入国審査官は、法務省令で定めるところにより、当該外国人に対し、上陸期間、行動範囲その他必要と認める制限を付することができる。
6 前条第一項ただし書の規定は、第一項及び第二項の場合に準用する。
7 入国審査官は、第二項の許可を受けている外国人が当該許可に基づいて上陸しようとする場合において、必要があると認めるときは、法務省令で定めるところにより、当該外国人に対し、電磁的方式によつて個人識別情報を提供させることができる。
8 入国審査官は、第二項の許可を受けている外国人が当該許可に基づいて上陸しようとする場合において、当該外国人が第五条第一項各号のいずれかに該当する者であることを知つたときは、直ちに当該許可を取り消すものとする。
9 前項に定める場合を除き、入国審査官は、第二項の許可を受けている外国人に対し、引き続き当該許可を与えておくことが適当でないと認める場合には、法務省令で定める手続により、当該許可を取り消すことができる。この場合において、当該外国人が本邦にあるときは、当該外国人が出国するために必要な期間を指定するものとする。
第十五条第六項中「前条第一項ただし書」を「第十四条第一項ただし書」に改める。
第十九条の五第一項第一号中「除く。)」の下に「又は高度専門職の在留資格(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第二号に係るものに限る。)をもつて在留する者」を加え、同項第三号中「永住者」を「前二号に掲げる者」に改め、同項第四号中「永住者」を「第一号又は第二号に掲げる者」に改める。
第十九条の十六第一号中「投資・経営」を「高度専門職(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第一号ハ又は第二号(同号ハに掲げる活動に従事する場合に限る。)に係るものに限る。)、経営・管理」に改め、同条第二号中「研究、技術、人文知識・国際業務」を「高度専門職(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第一号イ若しくはロ又は第二号(同号イ又はロに掲げる活動に従事する場合に限る。)に係るものに限る。)、研究、技術・人文知識・国際業務」に、「機関の名称」を「機関(高度専門職の在留資格(同表の高度専門職の項の下欄第一号イに係るものに限る。)にあつては、法務大臣が指定する本邦の公私の機関)の名称」に改め、同条第三号中「、特定活動(別表第一の五の表の下欄ハに掲げる配偶者として行う日常的な活動を行うことができる者に係るものに限る。)」を削る。
第二十条第一項中「変更(」の下に「高度専門職の在留資格(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第一号イからハまでに係るものに限る。)又は」を加え、「別表第一の二の表」を「同表」に改める。
第二十条の二の見出し中「技能実習の」を削り、同条第一項を次のように改める。
次の各号に掲げる在留資格への変更は、前条第一項の規定にかかわらず、当該各号に定める者でなければ受けることができない。 
一 高度専門職の在留資格(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第二号に係るものに限る。)高度専門職の在留資格(同表の高度専門職の項の下欄第一号イからハまでに係るものに限る。)をもつて本邦に在留していた外国人
二 技能実習の在留資格(別表第一の二の表の技能実習の項の下欄第二号イ又はロに係るものに限る。) 技能実習の在留資格(同表の技能実習の項の下欄第一号イ又はロに係るものに限る。)をもつて本邦に在留していた外国人
第二十条の二第二項中「技能実習の在留資格(別表第一の二の表の技能実習の項の下欄第二号イ又はロに係るものに限る。)」を「前項各号に掲げる在留資格」に改める。
第二十二条の四第一項第六号中「三月」の下に「(高度専門職の在留資格(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第二号に係るものに限る。)をもつて在留する者にあつては、六月)」を加える。
第二十三条第一項中第六号を第七号とし、第二号から第五号までを一号ずつ繰り下げ、第一号の次に次の一号を加える。
二 船舶観光上陸の許可を受けた者船舶観光上陸許可書
第二十四条第三号の四イ中「、第七号の二」を「から第七号の三まで」に改め、同条第四号中「寄港地上陸の許可」の下に「、船舶観光上陸の許可」を加え、同号ロ中「第二十六条の二第二項」の下に「(第二十六条の三第二項において準用する場合を含む。)」を加え、同条第六号中「寄港地上陸の許可」の下に「、船舶観光上陸の許可」を加え、同条第六号の二を同条第六号の四とし、同条第六号の次に次の二号を加える。
六の二船舶観光上陸の許可を受けた者で、当該許可に係る指定旅客船が寄港する本邦の出入国港において下船した後当該出入国港から当該指定旅客船が出港するまでの間に帰船することなく逃亡したもの
六の三第十四条の二第九項の規定により期間の指定を受けた者で、当該期間内に出国しないもの
第四章第四節中第二十六条の二の次に次の一条を加える。
(短期滞在に係るみなし再入国許可)
第二十六条の三本邦に短期滞在の在留資格をもつて在留する外国人で有効な旅券を所持するものが、法務省令で定めるところにより、入国審査官に対し、指定旅客船で再び入国する意図を表明して当該指定旅客船で出国するときは、第二十六条第一項の規定にかかわらず、同項の再入国の許可を受けたものとみなす。ただし、出入国の公正な管理のため再入国の許可を要する者として法務省令で定めるものに該当する者については、この限りでない。
2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の規定により外国人が受けたものとみなされる再入国の許可について準用する。この場合において、同条第二項中「一年」とあるのは、「十五日」と読み替えるものとする。
第五十二条に次の一項を加える。
7 入国警備官は、退去強制令書の執行に関し必要がある場合には、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
第五十七条第五項を同条第七項とし、同条第四項を同条第五項とし、同項の次に次の一項を加える。
6 本邦の出入国港から出発する指定旅客船の船長は、当該出入国港の入国審査官の要求があつたときは、第十四条の二第一項又は第二項の許可を受けた者がその指定旅客船に帰船しているかどうかを報告しなければならない。
第五十七条第三項の次に次の一項を加える。
4 本邦に入る指定旅客船の船長は、当該指定旅客船に第十四条の二第二項の許可を受けている者が乗つているときは、当該指定旅客船が出入国港に到着する都度、直ちに、その者の氏名その他法務省令で定める事項をその出入国港の入国審査官に報告しなければならない。
第五十七条に次の二項を加える。
8 入国審査官は、第七条第一項その他の出入国管理及び難民認定法の規定の実施を確保するため必要があると認めるときは、本邦に入る航空機を運航する運送業者その他の法務省令で定める者に対し、当該航空機が出入国港に到着する前に、当該航空機に係る予約者(航空券の予約をした者をいう。以下この項において同じ。)、当該予約者に係る予約の内容、当該予約者の携帯品及び当該予約者が当該航空機に搭乗するための手続に関する事項で法務省令で定めるものを報告することを求めることができる。
9 前項の規定により報告を求められた者は、法務省令で定めるところにより、当該報告をしなければならない。この場合において、当該者が、当該報告に代えて、入国審査官が電磁的記録(電磁的方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)を利用してその情報を閲覧することができる状態に置く措置であつて法務省令で定めるものを講じたときは、当該報告をしたものとみなす。
第五十九条第一項中「次の各号の一に」を「次の各号のいずれかに」に改め、同項第二号中「第六号の二」を「第六号の四」に改め、同項第三号中「一に」を「いずれかに」に改める。
第五十九条の二第一項中「第五十条第一項」を「第二十六条第一項、第五十条第一項」に改める。
第六十一条の二の四第一項第二号中「寄港地上陸の許可」の下に「、船舶観光上陸の許可」を加える。
第七十条第一項中「禁錮」を「禁錮」に改め、同項第七号中「寄港地上陸の許可」の下に「、船舶観光上陸の許可」を加え、同項第七号の二を同項第七号の三とし、同項第七号の次に次の一号を加える。
七の二第十四条の二第九項の規定により期間の指定を受けた者で当該期間内に出国しないもの第七十二条第二号を次のように改める。
二 船舶観光上陸の許可を受けた者で、当該許可に係る指定旅客船が寄港する本邦の出入国港において下船した後当該出入国港から当該指定旅客船が出港するまでの間に帰船することなく逃亡したもの第七十二条中第五号を第八号とし、第四号を第七号とし、第三号の三を第六号とし、第三号の二を第五号とし、第三号の次に次の一号を加える。
四 第五十二条第六項の規定により放免された者で、同項の規定に基づき付された条件に違反して、逃亡し、又は正当な理由がなくて呼出しに応じないもの
第七十三条の二第二項第三号中「、第七号の二」を「から第七号の三まで」に改める。
第七十七条第二号中「若しくは第五項」を「から第七項まで若しくは第九項前段」に改める。
・・・・・以下略・・・・・