憲法改正 私の夢にお付き合いください

安倍首相の夢

改憲期限は東京オリンピック開催の2020年
またも ダシにされました

戦争放棄の9条に 自衛隊条項を追加
拡大解釈は得意技 米軍と一緒に世界へ

高等教育までの教育無償化
印象稼ぎのおまけ

美辞麗句 詭弁
やはり 「憲法9条」の実質放棄が目標
 


 
 
 
 
 
安倍首相「2020年改憲」
安倍晋三首相「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」
フランス大統領選、韓国大統領選と国外での政治の動きが多かった週だが、安倍首相の改憲発言が内外で物議を醸している。憲法記念日からの一連の発言、反応をここで振り返ってみたい
5月3日、安倍首相は日本会議が主導する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が開催した憲法改正を求めるイベントにビデオメッセージを寄せた。ちなみにビデオメッセージは毎年恒例のもの。安倍首相のメッセージ内容は、主に次の3点に集約される。
・改正憲法の施行目標は東京オリンピック開催の2020年
・戦争放棄の9条は維持し、自衛隊に関する条項を追加する
・高等教育までの教育無償化も改憲の優先事項
なかでも強調していたのが、2020年に施行目標を置くことだ。安倍首相は東京オリンピックを「日本人共通の大きな目標」として、「新しく生まれ変わった日本がしっかりと動き出す年、2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っている」とビデオメッセージの中で発言した。
石破茂に伊吹文明……自民党内からも多くのツッコミ
ここで、東京オリンピックと憲法改正って何か関係があるの? という素朴な疑問がわく。
答えは簡単だ。安倍首相が来年秋に予定されている自民党総裁選で再選を果たせば、任期は2021年9月までとなる。すでに今年3月、総裁任期をこれまでの「連続2期6年」から「連続3期9年」とする党則改正を行っているからだ。歴代最長政権を視野に入れた安倍首相のもとで東京オリンピックが開催され、同時に憲法改正も行われる……という青写真である。非常にわかりやすい。
ところが、自民党内からも安倍首相に対する批判が相次いだ。安倍首相が提案した案が、2012年に党として正式に決めた憲法改正草案とまったく違うものだったからだ。
9条で「国防軍の保持」を明記した憲法改正草案を強く推す石破茂元幹事長は、「自民党でされてきた議論とは違う」と疑問を呈し、その後も「あれ(憲法改正草案)をどう取り扱うかが一番大事」「勢いで憲法を改正していいはずは全くない」と改めて主張した。
船田元衆院議員は「行政の長たる首相には、もう少し慎重であっていただきたかった」と批判。ベテラン・伊吹文明元衆院議長も「組織政党として党に話をしておくべきで少し残念だ。総裁であればこそ党のルールは守らなければならない」と苦言を呈している。森友学園問題で「首相に対する侮辱」と激昂していた竹下亘国対委員長でさえ、「首相が思ったような日程感で『とんとん』といくとは考えづらい」と首相の想定通りに進めるのは難しいとコメントした。
自衛隊は「合憲化」しなくちゃいけない存在なのか、一度高校授業料無償化を廃止した安倍政権がどうして教育無償化を憲法改正の目的の中に入れているのかなど、あちこちで議論を巻き起こし、ツッコミと批判を浴びた安倍首相の改憲メッセージだが、連休明けの次の発言がさらなる激しいツッコミを浴びたのであった。
首相の「読売読んで」発言の波紋はどんなものだったか?
安倍晋三首相「自民党総裁としての考え方は、相当詳しく読売新聞に書いてあり、ぜひそれを熟読して頂いてもいいのだろう」
5月8日の衆院予算委員会でのもの。民進党の長妻昭氏がビデオメッセージについて「唐突感があった。真意を教えて頂ければ」と説明を求めたが、安倍首相は「この場は、内閣総理大臣としての責任における答弁に限定している」と説明を避け続けた。
さらに食い下がる長妻氏に対して、なぜか安倍首相は「自民党総裁としての考え方は、相当詳しく読売新聞に書いてあり、ぜひそれを熟読して頂いてもいいのだろう」と発言、委員会室は騒然となった。国会も国会議員もいらないと言っているようなものだから、そりゃそうなるだろう。たまらず、自民党の浜田靖一委員長が首相に「この場では不適切なので、今後気をつけて頂きたい」と注意する一幕もあった。ちなみに「自民党総裁として」答えたという読売新聞の記事(5月3日)の見出しは「首相インタビュー」だった。
鈴木秀美慶応大教授(憲法・メディア法)は「重要な問題であるにもかかわらず、首相が一方的に意向を表明しているだけだ。批判的な質問を受けずに済む方法を選んでおり、メディアを選別した非民主的な手法だ」と指摘する。
また、『週刊文春』5月18日号のコラム「新聞不信」は「報道機関の使命を忘れたのか」というタイトかつストレートなタイトルで読売新聞を痛烈に批判。「読売はルビコン川を渡ってしまった」「“官邸の広報紙”と揶揄されても文句は言えまい」などと痛罵した。
メディアを選別して独占取材をさせる手法は、ドナルド・トランプ米大統領とよく似ている。トランプ大統領は保守系のFOXニュースを重視し、政権に批判的なメディアを「フェイクニュースだ」と切り捨てている。そういえば、安倍首相とトランプ大統領は「朝日新聞に勝った!」「俺も(ニューヨークタイムズに)勝った!」と親指を突き上げた同士という仲だった。
安倍晋三首相「いかに苦しくても(党を)まとめあげる決意だ」
9日に行われた参院予算委員会でのもの。安倍首相は12年の憲法改正草案を「我が党にとってベスト」としつつも、「今までの自民の改憲草案と大きく違うことを考えなければ、(改憲の発議要件の)国会議員の3分の2の賛成を得るのは難しい」と発言。そのために今回の案を出したというわけで、党内からの批判を受け止めつつも「まとめあげる決意」を示した。
なお、「自衛隊の存在をしっかりと位置づける」と表明した安倍首相に対して、岸田文雄外相は11日、「(憲法)9条で今すぐに改正することは考えない」と考えを示し、安倍首相との憲法観の違いを明らかにした。さっそく党内の大物が反旗を翻した格好だ。衆議院の憲法審査会も「行政府の長による立法府への介入で安倍首相の発言の真意を明らかにする必要がある」という民進党の反発で、11日の質疑が取りやめになっている。
到底、2020年までに憲法改正などできなさそうな雲行きだが、安倍首相は本気なんだろうか? 日刊スポーツのコラム「政界地獄耳」は「安倍改憲論は森友そらし」と言い切っている。そういう見方もあるのだろう。
ともあれ、安倍首相は野党時代の2012年、現行憲法について「みっともない憲法ですよ、はっきり言って」と言い放っている。憲法を首相在任中に自分の手で変えたい、そのためならどんな手段でも使うというのが本音だろう。
今週の「忖度」発言と、おなじみ法相の珍答弁
籠池泰典森友学園前理事長「しっかりした方が後ろ盾にいらっしゃるなとお役人がわかってたんじゃないですか」
まだまだ続く森友学園問題。「まだ続くの?」とウンザリしている向きも多いと思うが、何もかも一向に明らかにならないのだから仕方ない。
新証拠と新証言は続々と出てきている。森友学園前理事長の籠池氏は朝日新聞のインタビューに答え、「安倍晋三記念小学校」との校名を記した設立趣意書を2013年に財務省近畿財務局に出したと明らかにした。安倍昭恵首相夫人と建設予定地で撮影した写真も示し、支援を受けていると説明したという。
籠池氏はTBS『NEWS 23』のインタビューにも応じており、昭恵夫人とのやりとりを逐一財務省側に伝えていたと語っている。また、籠池氏は昭恵夫人や安倍首相らの携帯番号を示しながら国有地取得のための交渉を行い、昭恵夫人との写真を見た近畿財務局の担当者はコピーを取って「上司に見せる」と発言したとのこと。
これらのことについて質問された財務省の佐川宣寿理財局長は、国会で「私ども国有財産の管理処分を行うにあたって学校側にどういう方がいるかは関係なく、法令に基づいて適切に管理処分を行っているということでございます」と回答。まさに“忖度に証拠は残らない”を地で行っている。
怪人・籠池氏の語っていることがすべて事実とは限らない。元TBS政治部長の龍崎孝氏も「これは一方の当事者の言葉」と断りを入れている。ならば、もう一方の当事者が事実を語らねばならない。安倍首相は8日の衆院予算委員会で、昭恵夫人の国会招致について改めて拒否する姿勢を見せた。昭恵さん、ゴールデンウィーク中はずっとゴルフしていたっていうのに……。事実が明らかになる日はあるのだろうか?
金田勝年法相「一般人は刑事告発をされても捜査の対象にならない」
「共謀罪」についての審議も続いている。「共謀罪」の趣旨を含む組織的犯罪処罰法の改正案について、自民、公明両党は18日の衆院本会議で採決する方針を固めた。審議の継続を求める野党の反対を押し切ってでも採決を強行する構えだ。そんな中、審議中に「私の頭脳で対応できなくて申し訳ありません」と答弁して話題になった金田法相から、8日の衆院予算委員会でまたよくわからない答弁が飛び出した。
「一般人が捜査対象になるかどうか」は「共謀罪」法案をめぐる審議での最大の焦点だが、政府は一貫して「一般人は捜査の対象外」と強調してきた。しかし、民進党の逢坂誠二氏に一般人が刑事告発された場合に捜査対象になるかどうか質問された金田法相は、政府見解に引きずられて捜査実務と矛盾する答弁となった。
ここで言われている「一般人」については、保坂展人世田谷区長の解説がわかりやすい。金田法相は「一般の人は、組織的犯罪集団との関わりがあることは考えがたい」と言ってきた。言い換えると「組織的犯罪集団との関わりがある人は、一般の人ではない」ということになる。つまり、「一般人」でも「組織的犯罪集団との関与」が疑われた時点で「非・一般人」となるので、「一般人」が捜査対象になることは100%ないと言い切れるのだ。はっきり言って詭弁である。野党は金田法相の不信任決議案を出すことも検討している。  
 
読売新聞「憲法改正報道は使命」 2017/5/14
安倍晋三首相が憲法改正について国会で問われた際、「読売新聞を熟読して」と答弁したことなどが波紋を広げるなか、読売新聞は13日付朝刊に「憲法改正報道は重要な使命」と題した溝口烈・東京本社編集局長名の見解を掲載した。
冒頭、「本紙3日朝刊の自民党総裁である安倍首相のインタビュー記事が、首相の国会発言をきっかけに議論を呼んでいるが、本紙の報道姿勢について説明しておきたい」と言明。憲法施行70年の節目に「(首相の考えを)取材し、広く伝えることは、国民の関心に応えることであり、本紙の大きな使命であると考えた」とした。
取材の経緯については「数か月前から申し込み、粘り強く交渉した結果、実現した」と説明。憲法9条の1項、2項を維持した上で自衛隊を合憲の存在として明文化したい、施行は2020年を目標にしたいとの首相の考えの表明が、「極めてニュース価値の高いことは誰の目にも明らかであり、憲法記念日に合わせて詳細に報道することを決定した」としている。
首相は単独インタビューではなく、記者会見の場で語るべきだとの意見があることに対しては「取材は単独で行うことが原則」と反論した。  
 
憲法改正・首相メッセージ 2017/5/3
ご来場のみなさま、こんにちは。自由民主党総裁の安倍晋三です。憲法施行70年の節目の年に、「第19回 公開憲法フォーラム」が盛大に開催されましたことに、まずもってお喜び申し上げます。憲法改正の早期実現に向けて、それぞれのお立場で精力的に活動されているみなさまに心から敬意を表します。
憲法改正は、自由民主党の立党以来の党是です。自民党結党者の悲願であり、歴代の総裁が受け継いでまいりました。私が首相・総裁であった10年前、施行60年の年に国民投票法が成立し、改正に向けての一歩を踏み出すことができましたが、憲法はたった1字も変わることなく、施行70年の節目を迎えるに至りました。
憲法を改正するか否かは、最終的には国民投票によって、国民が決めるものですが、その発議は国会にしかできません。私たち国会議員は、その大きな責任をかみしめるべきであると思います。
次なる70年に向かって、日本がどういう国を目指すのか。今を生きる私たちは、少子高齢化、人口減少、経済再生、安全保障環境の悪化など、我が国が直面する困難な課題に対し、真正面から立ち向かい、未来への責任を果たさなければなりません。
憲法は、国の未来、理想の姿を語るものです。私たち国会議員は、この国の未来像について、憲法改正の発議案を国民に提示するための「具体的な議論」を始めなければならない、その時期にきていると思います。
わが党、自由民主党は未来に、国民に責任を持つ政党として、憲法審査会における「具体的な議論」をリードし、その歴史的使命を果たしてまいりたいと思います。
例えば、憲法9条です。今日、災害救助を含め、命懸けで24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、今なお存在しています。「自衛隊は違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任です。
私は少なくとも、私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきである、と考えます。
もちろん、9条の平和主義の理念については、未来に向けて、しっかりと堅持していかなければなりません。そこで「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方、これは国民的な議論に値するのだろうと思います。
教育の問題。子どもたちこそ我が国の未来であり、憲法において国の未来の姿を議論する際、教育は極めて重要なテーマだと思います。誰もが生きがいを持って、その能力を存分に発揮できる一億総活躍社会を実現するうえで、教育が果たすべき役割は極めて大きい。
世代を超えた貧困の連鎖を断ち切り、経済状況にかかわらず、子どもたちがそれぞれの夢に向かって頑張ることができる、そうした日本でありたいと思っています。70年前、現行憲法の下で制度化された、小中学校9年間の義務教育制度、普通教育の無償化は、まさに、戦後の発展の大きな原動力となりました。
70年の時を経て、社会も経済も大きく変化した現在、子どもたちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育についても、全ての国民に真に開かれたものとしなければならないと思います。これは個人の問題にとどまりません。人材を育てることは、社会・経済の発展に確実につながっていくものであります。
これらの議論の他にも、この国の未来を見据えて議論していくべき課題は多々あるでしょう。
私はかねがね、半世紀ぶりに夏期の五輪・パラリンピックが開催される2020年を、未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきました、かつて、1964年の東京五輪を目指して、日本は大きく生まれ変わりました、その際に得た自信が、その後、先進国へと急成長を遂げる原動力となりました。
2020年もまた、日本人共通の大きな目標となっています。新しく生まれ変わった日本が、しっかりと動き出す年、2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っています。私は、こうした形で国の未来を切りひらいていきたいと考えています。
本日は、自由民主党総裁として、憲法改正に向けた基本的な考え方を述べました。これを契機に、国民的な議論が深まっていくことを切に願います。自由民主党としても、その歴史的使命をしっかりと果たしていく決意であることを改めて申し上げます。
最後になりましたが、国民的な議論と理解を深めていくためには、みなさまがた「民間憲法臨調」、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」のこうした取り組みが不可欠であり、大変心強く感じております。憲法改正に向けて、ともにがんばりましょう。 
 
緊急事態条項で隔たり 改憲巡り与野党討論 NHKで
自民党の保岡興治憲法改正推進本部長は憲法施行70年に当たる3日放送のNHK番組で、大災害時を想定した緊急事態条項を憲法に創設する必要性を訴えた。民進党の武正公一憲法調査会事務局長は現時点で関連法がかなり整備されていると反論し、立場の隔たりが改めて明確になった。
保岡氏は、緊急事態時に内閣が政令などを出せるとした2012年の党改憲草案の条項を念頭に「平時に準備しておらず、穴があっても対応する仕組みが必要だ」と主張。同時に、国会議員の任期延長も検討すべきだとの認識を示した。
武正氏は「国会議員の任期延長については検討が必要だが、単純に結論は出せない」とした。
公明党の北側一雄憲法調査会長は、首相に権限を集中する内容については憲法に書き込む必要はないと指摘。国会議員の任期延長に関しては「多くのハードルがあるが、しっかり論議したい」と述べた。  
 
自民党、保守色強めた「24年改憲草案」を棚上げ
 野党との協調路線を優先し、党内に不満も
3日で施行から70年を迎えた日本国憲法は、改正されていない成文憲法の中では世界最古の憲法となっている。国会での改憲議論は停滞しているが、過去には政党や政治家、民間団体、メディアがさまざまな改憲案を提起し、機運が盛り上がったこともあった。それらを見ると、自衛隊を「軍隊」と明確に位置づけることや、緊急事態条項が必要との見解が目立ち、現行憲法の問題点を多くの政党、政治家らが認識していたことがうかがえる。

自民党は平成17年と24年の2度、条文の形でまとめた憲法改正案を発表している。
「日本国民は、自らの意思と決意に基づき、主権者として、ここに新しい憲法を制定する」
17年10月公表の新憲法草案は前文の冒頭、こう表明した。現行憲法が施行された70年前は占領下にあった。国のかたちを示す憲法を連合国軍総司令部(GHQ)に押しつけられた経緯を踏まえ、日本国民の主体性を強調した。
前文を担当したのは中曽根康弘元首相だった。自民党が長く憲法改正を放置した時代にあって改憲を唱えてきた中曽根氏による原案は「日本国民はアジアの東、太平洋と日本海の波洗う美しい島々に…」と日本の歴史や伝統、風土をうたっていた。
当時幹事長代理だった安倍晋三首相も前文の作成に関わった。しかし、小泉純一郎首相や起草委員長の森喜朗元首相、舛添要一事務局次長(いずれも当時)らの判断で削除され、保守色が意識的に薄められた。
現行憲法の象徴天皇は維持した一方、戦力不保持・交戦権否認の9条2項を削除し、「自衛軍」の保持を明記した。国防や国際協力などを任務とし、実態に即した内容といえる。ただ、大規模災害時の首相権限の強化といった緊急事態条項は明確には規定しなかった。
自民党は昭和30年の結党時から憲法改正を党是とする。初代総裁の鳩山一郎政権時代の31年4月、党憲法調査会が中間報告をまとめ、自衛のための軍備保持の必要性など論点を示した。しかし、岸信介政権の日米安全保障条約改定と退陣を経て35年に発足した池田勇人政権以降は経済成長優先の路線を邁進。条文化の形とした草案の発表は平成17年が初めてで、立党から半世紀を要した。
初の草案の発表から6年半余り経過した24年4月。野党に転落していた自民党は谷垣禎一総裁の下、新たに「憲法改正草案」を発表した。政権奪還に向け当時の民主党政権との対立軸を鮮明にする狙いから、17年草案をベースに保守色を強めた。
前文は17年草案を全面的に書き換え、「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家」とするなど、「歴史」をうたった。
1条では天皇について、17年草案になかった「日本国の元首」との位置づけを加えた。「日本国民は、国旗および国歌を尊重しなければならない」との条項も追加した。
9条は、17年草案では「自衛軍」を保持としていたが、24年草案は国を守る組織であることを明確にするため「国防軍」に改めた。9条では新たに「領土、領海、領空の保全と資源確保」を国の義務と定めた。
家族を社会の基礎的な単位とし、「家族は互いに助け合わなければならない」という24条を新設したのも特徴だ。また、17年草案にはなかった「緊急事態」を章として設け、武力攻撃や大規模自然災害時の内閣の権限強化を規定した。
24年草案は、民進党や共産党の批判の的になっている。与野党の協調路線を最優先する党憲法改正推進本部の保岡興治本部長は、草案を「党の公式文書の中の一つ」と事実上棚上げした。具体的な案を棚上げするという分かりにくい対応には、党内でも「明文化した党の案は掲げておくべきだ」との不満が出ている。 
 
反改憲傾向強まる民進、「加憲」も消極的な公明 改正原案作成の維新
3日で施行から70年を迎えた日本国憲法は、改正されていない成文憲法の中では世界最古の憲法となっている。国会での改憲議論は停滞しているが、過去には政党や政治家、民間団体、メディアがさまざまな改憲案を提起し、機運が盛り上がったこともあった。それらを見ると、自衛隊を「軍隊」と明確に位置づけることや、緊急事態条項が必要との見解が目立ち、現行憲法の問題点を多くの政党、政治家らが認識していたことがうかがえる。
○ 安倍政権下の改憲反対
民進党の前身の民主党は平成17年10月、条文化はせず、テーマごとに問題点と提案を並べた「憲法提言」をまとめた。新たな人権の規定を重視し、環境権や「外国人の人権および庇護権」を憲法上明確にするよう提起した。一方、保守と革新が結集した同党の内情を示すかのように、天皇の位置づけには言及せず、安全保障の分野でも結論を先送りした部分が目立つ。
「日本国憲法に『制約された自衛権』を明確にする」「何らかの形で、国連が主導する集団安全保障活動への参加を位置づけ、曖昧で恣意的な解釈を排除する。9条に関してはこう記載した。具体性に欠けるが、自衛権が明記されていない現行9条は改めるべきだとの認識は示した。
ところが、現在の民進党は「平和主義を脅かす憲法9条の改正には反対」「安倍政権下での憲法改正は反対」との方針で、反改憲勢力の様相を呈している。
○ 自衛隊明記も慎重
「加憲」を掲げる公明党も神崎武法代表時代の16年6月、論点整理を発表した。9条は「これまでの姿勢を覆す議論にはいたっていない」と記すにとどめた一方、環境権などの必要性を強調した。17年衆院選以降の公約は、一時期をのぞき自衛隊の存在を9条に明記することを「慎重に検討する」としたが、昨年7月の参院選は憲法関連の記述が消え、議論の対象にもしない消極姿勢に転じている。
○ 道州制など3本柱
日本維新の会は28年3月に憲法改正原案を作成。教育無償化、道州制を含む統治機構改革、憲法裁判所設置の3項目を打ち出した。
○ 9条反対の過去も
共産党は現行憲法を「先駆的な内容」「9条は世界に誇る宝」と高く評価している。だが、その「宝」である9条に反対する“改憲派”だった過去がある。昭和21年8月、現行憲法案を審議する衆院本会議で、共産党の野坂参三衆院議員(後の党議長、最晩年に除名)は9条を「空文」と批判し、こう訴えた。
「わが国の自衛権を放棄して民族の独立を危うくする危険がある。それゆえにわが党は民族独立のためにこの憲法に反対しなければならない。(中略)わが民族の独立を保障しない憲法だ」
自民党も顔負けの正論で、共産党は採決でも現行憲法に政党として唯一反対した。共産党は当時、「日本人民共和国憲法草案」も発表した。「天皇制廃止」をうたう斬新な内容だったが、現在は「歴史的文書」として棚上げしている。 
 
中曽根康弘元首相36年ぶり改正案を公表
 鳩山由紀夫元首相は「自衛軍保持」明記
3日で施行から70年を迎えた日本国憲法は、改正されていない成文憲法の中では世界最古の憲法となっている。国会での改憲議論は停滞しているが、過去には政党や政治家、民間団体、メディアがさまざまな改憲案を提起し、機運が盛り上がったこともあった。それらを見ると、自衛隊を「軍隊」と明確に位置づけることや、緊急事態条項が必要との見解が目立ち、現行憲法の問題点を多くの政党、政治家らが認識していたことがうかがえる。
改憲派の政治家はこれまでさまざまな改憲案を示してきた。「憲法改正の歌」を作詞したこともある中曽根康弘元首相は42歳だった昭和36年1月、「高度民主主義民定憲法草案」との私案をまとめた。首相と副首相を任期4年とする公選制導入が柱だった。
国会閉会中の自衛軍出動の承認権限を「憲法評議会」に与える条項も盛り込んだ斬新な案だったが、当時の自民党の非改憲路線への転換もあって発表の機会がなく、平成9年に36年ぶりに公表された。
中曽根氏は17年1月にも自身が主宰する世界平和研究所で試案を公表した。防衛軍の保持を明記し、非常時に必要最小限の範囲で国民の権利の制限を認める緊急事態条項を設けた。
16年5月には、中曽根氏の薫陶を受けた自民党の山崎拓元副総裁が改憲試案を発表。前文に積極的平和主義を掲げ、自衛と国際貢献のための陸海空軍の保持を規定した。17年2月に民主党(当時)の鳩山由紀夫元首相も試案を公表した。
改憲派の急先鋒だった祖父・一郎元首相の遺志を継いだ鳩山氏の試案は、現行憲法や旧民主党の方針と大きく異なった。「現行憲法のもっとも欺瞞的な部分」として9条2項を削除し、「自衛軍を保持する」と明記した。天皇については、自民党の17年草案さえ見送った「元首」とした。女性天皇の皇位継承権を盛り込み、緊急事態時の国会議員任期延長なども規定した。
“反改憲派”の様相を呈している民進党で憲法調査会長を務める枝野幸男前幹事長も旧民主党時代の25年、月刊誌で「憲法九条、私ならこう変える」と題した改憲案を示した。日本の安全を守るために活動している他国の部隊に「急迫不正の武力攻撃」が行われ、「これを排除するために他に適当な手段がない」場合などの制約を付した上で、必要最小限の範囲での集団的自衛権を容認した。
民進党の細野豪志元環境相は4月10日に改憲私案を発表。高校までの教育無償化や緊急時の国会の機能確保など改憲勢力との合意が得やすい項目を柱とした。改憲への意欲を鮮明にした細野氏は3日後に党代表代行を辞任した。  
 
憲法改正の手続きは… 
 国会発議後、国民投票は未体験の「賛否」運動が展開される?
憲法改正の手続きは、国会が改正案を示し、最終的には国民が投票で決める。政府や国会議員が提案し、国会議員が賛否を決める通常の法律の制定手続きとは大きく異なる。
憲法改正の手続きは、衆参両院の憲法審査会に国会議員が憲法改正原案(どの項目をどう変えるかの条文案)を提出するところから始まる。提出には衆院ならば100人以上、参院ならば50人以上の賛成署名が必要となる。
仮に衆院の審査会に提出されたとする。本会議で趣旨説明・質疑を行った後、審査会で本格的な審議に入る。過半数の賛成で可決した場合、本会議で総議員の3分の2以上の賛成を得られれば可決される。出席議員の過半数でよい通常の法案に比べ、条件は厳しい。
その後、参院でも審査会の審議、採決、本会議採決と同じ手続きを踏んで改正原案が成立すれば、改正案の発議(国民への提案)となる。参院で否決された場合、両院協議会で協議し、修正がまとまれば再び衆参両院の本会議で採決。それぞれ3分の2以上の賛成で改正原案修正案の発議となる。両院協議会で修正を合意できなければ廃案だ。
発議後、60〜180日の間に国民投票を行う。投票日までが賛成や反対を呼びかける「運動期間」だ。公職選挙法で細かく制約される通常の選挙と異なり、運動は原則自由。文書・チラシの配布や新聞・テレビの広告(一部規制あり)、自動車・拡声機の使用などが自由に認められる。日本国民が体験したことのない運動が展開されそうだ。ただ一部公務員らの運動や組織的買収は禁止されている。
投票用紙には項目ごとに新たな条文が掲載され、それぞれに賛否の印をつける。総投票数の過半数が賛成すれば改憲が実現し、天皇が30日以内に公布する。  
 
 
 
 

 
2017/5