駅名なし 行き先不明
白地図 ロードマップなし
針のない時計 期限なし
お手形 日本側の経済協力3000億円規模で合意
予想されたこととはいえ
日露会談の成果 お金と時間の無駄でした
トランプの出現で 最悪のタイミング 不運な安倍首相 |
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安倍首相の「成果」ばなし むなしく聞こえる |
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人・物・金と時間 すべて無駄づかいの交渉 今後も同じでしょう 高齢の旧島民6000人余 残り時間僅か 平均寿命差引で 多分あと10〜15年 |
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夢物語 北方四島 ロシアへくれてやろう ロシアに縁切り宣言 逝くまで旧島民を 3000億円で手厚くサポート |
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●日ロが共同経済活動へ交渉、領土問題は「困難な道」と安倍首相 12/16
安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は16日、2日間にわたる首脳会談を終え、60以上にわたる経済協力事業を進めることで合意した。一方で、日本が最重要課題に位置付ける領土問題に関連して一致したのは、4島における共同経済活動に向けた交渉の開始のみ。まずは両国の信頼を醸成し、その上で領土問題の解決と平和条約の締結につなげようとするもので、ようやく出発点に立った格好だ。15日に安倍首相の故郷の山口県長門市で、16日に東京の首相官邸で会談した両首脳は、択捉、国後、色丹、歯舞の4島での共同経済活動に向け、交渉を開始することで合意した。漁業や養殖、観光、医療などを想定し、法的立場が侵されないことが前提とする日本、自国の法律に基づき実施するとしているロシア双方の主張に沿う特別な制度を検討する。 16日午後の共同会見で公表した声明には、共同経済活動と平和条約締結を結びつける表現を盛り込んだ。安倍首相は「互いにそれぞれの正義を何度主張しあっても解決できない」としたうえで、「新しいアプローチ、未来志向のアプローチこそが最終的な結果に結びつく道と確信している。平和条約締結に向けた重要な一歩だ」と語った。 プーチン大統領は共同会見で経済協力について多くの時間を割きつつも、平和条約についても言及。「共同経済活動のための特別な制度というメカニズムのもと、最終的な平和条約締結に近づけるようにもっていくことが大事だ」と語った。 しかし、共同経済活動に向けて交渉し、実際に活動を始め、信頼関係を十分に構築した上で領土問題を含む平和条約を締結するには相当の時間を要することが予想される。安倍首相は「領土問題の解決にはまだまだ困難な道は続く」と述べた。 日本が平和条約締結の前提としている4島の帰属についても、両首脳が議論したかどうかは不明だ。安倍首相とプーチン大統領は通訳だけを同席させて1対1で議論する時間があったが、政府高官は「中身については話せない」としている。 国際政治が専門の拓殖大学の川上高司教授は、「まさに入口に立ったというところ。時間はかかるだろう」と指摘。一方で、「それほど時間はない。安倍首相とプーチン大統領がいるうちに解決する必要があるし、(トランプ次期大統領の)米国とロシアが接近する前に話をどんどん進める必要がある」と語った。 両国の経済協力についても議論した両首脳は、地下資源の探査事業など68の事業を進めることで合意した。日本企業からの投資、融資を合わせると総額3000億円の規模になるという。 プーチン大統領は、ロシアは日本との経済協力だけに関心があるのではないかとの見方を否定。「私にとって最も重要なのは平和条約の締結。それがロ日の長期的な協力につながる」と語った。 最大野党・民進党の蓮舫代表はコメントを出し、「経済協力の『食い逃げ』につながるのではないかという懸念が残り、肝心の北方領土問題の解決に向けての具体的な進展が見られなかったことは残念だ」とした。 |
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●日露共同記者会見 / 安倍総理冒頭発言 12/16
プーチン大統領、ウラジーミル。ようこそ、日本へ。日本国民を代表して君を歓迎したいと思います。 私が2013年にモスクワを訪れたとき、できるだけ頻繁に会談を重ねようと君と約束をしました。それから今回の訪日が実現するまで3年間かかりましたが、私のふるさとにお招きをし、落ちついた環境の下でたっぷり時間をかけて話し合うことができ、待ち続けたかいがあったと思っています。 私たちの話合いの進展を70年以上もの長きにわたり待ち続けている人たちがいます。かつて択捉島、国後島、色丹島、そして歯舞諸島に住んでいた元島民の皆さんです。その代表の方々から今週、直接お話を伺う機会を得ました。 元島民の皆さんの平均年齢は既に81歳を超えています。「もう時間がない」。そう語る元島民の皆さんの痛切な思いが胸に突き刺さりました。 島では、終戦直後、つらい出来事もありましたが、日本人とロシアの人々は言葉の壁を越え、共に助け合い、友情を育み、共に暮らしていたそうです。離れ離れになってからも、様々な制約の中で元島民の皆さんと島に住むロシアの人々が交流を深めてきた事実も伺いました。 「最初は恨んでいたが、今は一緒に住むことができると思っている」。 そう語り、北方四島を日本人とロシア人の「友好と共存の島」にしたいという元島民の皆さんの訴えに、私は強く胸を打たれました。 相当高年齢になられた元島民の皆さんが、自由に墓参りをし、かつてのふるさとを訪れることができるようにしてほしい。この切実な願いをかなえるため、今回の首脳会談では、人道上の理由に立脚して、あり得べき案を迅速に検討することで合意しました。 そして、戦後71年を経てもなお、日本とロシアの間には平和条約がない。この異常な状態に私たちの世代で、私たちの手で終止符を打たなければならない。その強い決意を、私とウラジーミルは確認し、そのことを声明の中に明記しました。 領土問題について、私はこれまでの日本の立場の正しさを確信しています。ウラジーミルもロシアの立場の正しさを確信しているに違いないと思います。 しかし、互いにそれぞれの正義を何度主張し合っても、このままではこの問題を解決することはできません。次の世代の若者たちに日本とロシアの新たな時代を切り拓くため、共に努力を積み重ねなければなりません。 過去にばかりとらわれるのではなく、日本人とロシア人が共存し、互いにウィン・ウィンの関係を築くことができる。北方四島の未来像を描き、その中から解決策を探し出すという未来志向の発想が必要です。 この「新たなアプローチ」に基づき、今回、四島において共同経済活動を行うための「特別な制度」について、交渉を開始することで合意しました。 この共同経済活動は、日露両国の平和条約問題に関する立場を害さないという共通認識の下に進められるものであり、この「特別な制度」は、日露両国の間にのみ創設されるものです。 これは平和条約の締結に向けた重要な一歩であります。この認識でもウラジーミルと私は完全に一致しました。 そして、私たちは平和条約問題を解決をする。その真摯な決意を長門の地で示すことができました。 過去70年以上にわたり解決できなかった平和条約の締結は、容易なことではありません。 今、島々には一人の日本人も暮らしていません。たくさんのロシアの人々が暮らし、70年もの時が経ちました。他方、70年もの時を重ねたことで、恩讐を超えて元島民の皆さんと島に住むロシアの人々との交流や理解が進んでいるという事実もあります。 日露両国民の相互の信頼なくして、日露双方が受入れ可能な解決策を見つけ出し、平和条約締結というゴールにたどり着くことはできません。 本日、8項目の経済協力プランに関連し、たくさんの日露の協力プロジェクトが合意されました。日本とロシアの経済関係を更に深めていくことは、双方に大きな大きな利益をもたらし、相互の信頼醸成に寄与するものと確信しています。 私とプーチン大統領は、この後、講道館へと足を運びますが、講道館柔道の創始者である嘉納治五郎師範の言葉を借りるならば、正に「自他共栄」の精神こそが必要です。 ウラジーミル、今回の君と私との合意を「出発点」に、「自他共栄」の新たな日露関係を、本日ここから共に築いていこうではありませんか。 ありがとうございました。私からは以上です。 |
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●日露首脳会談 / 経済活動交渉推進で合意 共同声明 12/16
安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は16日、首相官邸で15日に続いて会談した。会談後、両首脳はそろって記者会見し、北方領土での共同経済活動に関する交渉を進めることで合意したと発表。これに関するプレス向け声明を発表した。 声明は、共同経済活動の調整や実施が「平和条約問題に関する日露の立場を害するものではない」と明記。両首脳は「共同経済活動に関する協議を開始することが、平和条約締結に向けた重要な一歩になり得るとの相互理解に達した」と表明し、漁業、海面養殖、観光、医療、環境などの分野を挙げて、両政府の関係省庁に協議を開始するよう指示した。 両首脳はまた、元島民が査証(ビザ)なしで北方領土に渡航できる「自由往来」の拡充に関するプレス向け声明も発表。「人道上の理由に立脚し、一時的な通過点の設置と現行手続きのさらなる簡素化を含む案を迅速に検討するよう指示した」と説明した。 |
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●狂騒安倍プーチン会談 経済協力だけ食い逃げの亡国結末 12/16
大山鳴動して、とはこのことだ。鳴り物入りで迎えた日ロ首脳会談。15日、安倍首相の地元・山口県長門市の温泉旅館でスタートしたが、領土問題での成果はゼロ。空騒ぎに終わりそうだ。「北方領土解散」だとか盛り上がっていたのは何だったのか。 「もともとロシア側の言い値は『0島』で、経済協力だけ得て北方領土は返さないというのがベストシナリオでした。18年に大統領選があることを考えれば、強いリーダー像を示して高支持率を維持しているプーチン大統領が、領土問題で簡単に譲歩するはずがありません。訪日に先立ち、プーチン大統領は読売新聞のインタビューで、経済協力は『(領土問題解決の)条件ではなく雰囲気づくり』と言っていました。むしろ重要なのは安全保障の問題でしょう。ラブロフ外相が15日夜の会談後、『外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)の再開で合意する』と言っていましたが、2プラス2と同様に中断していた海上自衛隊とロシア海軍による合同捜索救難演習も再開する可能性がある。ただ、これも以前やっていたことを再開させるというだけで、領土問題での大きな進展や、目新しい成果は望めそうにありません」(ロシアの専門家で軍事アナリストの小泉悠氏) 日ロの2プラス2は2013年に1度だけ開かれたものの、ウクライナ危機で中断していた。米国とEUがロシアに対し制裁を科したのに日本も追随した影響だ。安倍首相が議長を務めた今年5月の伊勢志摩サミットでも、ロシアへの制裁が再確認された。 ●安全保障でロシアの土壌に乗る錯誤 経済状況が苦しいロシアが、制裁解除の突破口にしたいのが日本だ。領土交渉を進めたい安倍首相が妥協するとみている。プーチンは読売新聞のインタビューでも、「制裁を受けたまま、経済協力をより高いレベルに引き上げられるのか」と揺さぶりをかけてきていた。 元外交官の天木直人氏が言う。 「プーチン大統領の目的は、日米関係にくさびを打ち込むことにある。安倍首相は完全に足元を見られたのです。日米同盟は戦後の日本外交の根幹で、変えることなどできっこないのに、功を焦った場当たり外交で2プラス2再開を安請け合いして、危険な領域に踏み込もうとしている。2プラス2の再開で、日ロ間の領土問題は安全保障問題になってしまった。いくらトランプ次期大統領が親ロ派だといっても、米ロは経済分野では協力できるかもしれませんが、安全保障では絶対に相いれない。両者にいい顔をする日本は板挟みで、いずれ矛盾の後始末を突きつけられることになるでしょう。ロシアとの軍事的な接近は、G7の結束からも外れることになる。国際的な信用を失いかねない軽挙妄動です。少なくとも、ロシアに厳しい態度で臨んできたオバマ大統領は強い不快感を示すはずです」 次期大統領が決まった途端、トランプに尻尾を振って会いに行った安倍首相はオバマを激怒させ、11月のペルーAPECでの首脳会談は流れてしまった。失地回復で月末の真珠湾訪問を画策し、なんとか最後の首脳会談にこぎつけたのに、舌の根も乾かぬうちにロシアにスリ寄って、また不興を買う。いったい何がしたいのか、サッパリ分からないのだ。米国を怒らせても、領土問題で成果があればいいが、経済協力だけ食い逃げされるんじゃ、目も当てられない。亡国外交もいいところだ。 ●普通ならば交渉打ち切りでもおかしくないナメられ方 今回の交渉は、とにかくプーチンにナメられっぱなしだった。当日も大遅刻で出はなをくじかれた。テレビのワイドショーは現地からの生中継を予定、NHKなんて午後3時40分から特番の枠まで設けていたのに、待てど暮らせどプーチンは来やしない。ロシア出発が2時間以上遅れたとかで、会場の大谷山荘に到着したのは、当初予定より3時間も遅い午後6時ごろ。午後1時前に早々と会場入りしていた安倍首相は、都合5時間も待たされた格好だ。 それでも文句ひとつ言わず、岸田外相や世耕ロシア担当相、山口県選出の議員も総出でプーチンを迎えて歓待したのだが、外相らを交えた少人数会合とサシの会談は合わせて3時間で終わってしまった。 会合の冒頭、安倍首相が「これから行う首脳会談の疲れが、温泉につかることによって完全に取れることをお約束します」と水を向けても、プーチンは「疲れる会談にしないことが重要」と素っ気なく、ハナからやる気のなさが見てとれた。 「安倍首相は歴史に名を残すことしか頭にない。それで功を焦り、甘い見立てで突っ走ってしまう。期待だけさせて、結局は何の進展もなく、いいとこ取りだけされるのは、北朝鮮の拉致問題と一緒です。あれこれ手を出して食い散らかすだけで、かえって解決を遠のかせてしまう。そのトバッチリを受けるのは国民です。絵に描いたような無定見外交で、無理筋と知りながら、夜郎自大で期待をあおるのは、非常に罪作りだと思います」(政治評論家・野上忠興氏) ●共同経済活動にもメリットはない 安倍首相はわざわざロシア経済分野協力担当相までつくり、腹心の世耕を充てて交渉に臨んできたのだが、先月19日のペルーAPECでの首脳会談直前には、世耕のカウンターパートだったウリュカエフ経済発展大臣が収賄容疑で逮捕されるというハプニング。かの国では、プーチンのゴーサインがなければ閣僚逮捕なんてあり得ない。この時点で、今回の日ロ会談ご破算は明白だった。 さらには、ペルー会談直後の11月22日にロシア軍が択捉、国後両島に地対艦ミサイルを配備。同じ日にロシア海軍が尖閣諸島の領空周辺にも対潜哨戒ヘリを飛ばすという強硬姿勢で、もうメチャクチャ。プーチンは「北方領土の帰属問題は存在しない」とか言いたい放題になり、12年に日本政府が犬好きのプーチンにプレゼントした秋田犬の「ゆめ」とつがいになる雄犬の贈呈も断られる始末だ。 「普通は、ここまでコケにされたら、交渉打ち切りでもおかしくない。成果がないことが分かっているのだから、訪日は不要だと突っぱねればいいのです。それなのに温泉で歓待、歴史的会談をブチ上げてしまった安倍首相のメンツのためでしかない。プーチン大統領にとっては、16日の経済フォーラムと柔道界の総本山・講道館訪問の方が大事で、山口県での首脳会談は少しでも短く終わらせたいという態度がアリアリでした。したたかなプーチン大統領に弄ばれ、経済協力だけ持っていかれるのでは、いいツラの皮で、外交的には大失態ですよ。これで、どうやって日ロ会談の成果をアピールするつもりなのか。『領土交渉がスタートラインに立った』とでも言うのでしょうか。スタートどころか、エリツィン時代よりむしろ後退している。60年前の日ソ共同宣言に戻っただけです」(天木直人氏=前出) 今回の会談の「成果」は、北方4島での共同経済活動と、自由な往来の緩和で終わる。世耕は毎日新聞のインタビューで、今後5年もすれば日ロ間の貿易額が「安定的に増える」とか言っていたが、15年の対ロ輸入額が前年比27・3%減、輸出額は36・4%減という現状を見れば、経済的なメリットを期待する方が無理だ。 16日の経済フォーラムには、政府の号令で多数の日本企業が参加するが、安倍首相の顔を立てるためだけに、日ロ会談の成果づくりに付き合わされる民間企業は気の毒というほかない。 |
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●日露共同記者会見をどう見るか 12/16
●ポイントは共同経済活動 本日16日、安倍首相とプーチン大統領による共同記者会見が行われました。安倍首相そこで、次のように述べています(首相官邸のHPより)。 「過去にばかりとらわれるのではなく、日本人とロシア人が共存し、互いにウィン・ウィンの関係を築くことができる。北方四島の未来像を描き、その中から解決策を探し出すという未来志向の発想が必要です。この「新たなアプローチ」に基づき、今回、四島において共同経済活動を行うための「特別な制度」について、交渉を開始することで合意しました。この共同経済活動は、日露両国の平和条約問題に関する立場を害さないという共通認識の下に進められるものであり、この「特別な制度」は、日露両国の間にのみ創設されるものです。」 安倍首相がこれまで強調してきた「新たなアプローチ」とは東京宣言のことでした。しかし、安倍首相がここで言っていることは、東京宣言ではなく、その前段階の話です。安倍首相の狙いはおそらく、日露間で「特別な制度」を創設して共同経済活動を行うことで、東京宣言につなげていくことだと思います。前回のブログで、領土交渉を進展させるためには、東京宣言とは異なる本当の意味での「新たなアプローチ」が必要だと指摘しましたが、共同経済活動はまさに本当の意味での「新たなアプローチ」と言えます。 もっとも、北方領土における共同経済活動について議論されるのは今回が初めてではありません。11月にリマで行われた日露首脳会談の際にも、プーチン大統領から提案されています。しかし、日本側は、現状のまま経済活動を行えばロシアの領有権を認めることにつながりかねないため、これに返答しなかったといいます(11月21日付朝日新聞)。また、12月4日付の読売新聞によれば、5月にソチで首脳会談を行った際には、安倍首相の方から共同経済活動について提案がなされたということです。 なぜ安倍首相は5月にソチで共同経済活動について自ら提案しておきながら、11月にリマでプーチン大統領から共同経済活動の提案があった際にはそれに明確な返答をせず、今回の首脳会談でようやく共同経済活動について合意したのでしょうか。それは、安倍首相が述べているように、「日露両国の平和条約問題に関する立場を害さないという共通認識」が得られたからだと思います。日ロ両国の立場を害さない共同経済活動が具体的にどのようなものになるかはわかりませんが、もしこの共同経済活動がうまくいくならば、日露関係は現在とは違うものになっていくと思います。 ●安倍首相は「ダレスの恫喝」を克服できるか しかし、いくら共同経済活動がうまくいったとしても、それがそのまま領土問題の解決に直結するわけではありません。領土問題を進展させるためには、前回のブログでも指摘したように、どのような方法であれ北方領土に日米安保を適用しないような形にすることが不可欠です。 実際、プーチン大統領は共同記者会見で、いわゆる「ダレスの恫喝」に触れつつ、次のように述べています(12月16日付産経ニュース)。 「日本と米国の特別な関係というものもあります。日米安保条約の中で、このような意味において、どのような展望があるのか、まだ私たちは分かりません。(日露首脳会談で)柔軟性ということを話したときに、私たちは日本のパートナーの友人の皆さんに、このような微妙な部分、またロシアの心配する、懸念の部分を考慮してもらいたいと思います。(中略)もし誰かが、私たち(ロシア側)が経済関係の発展だけに関心があり、平和条約の締結を二次的なものだと考えているというのであれば、それは間違いです。私たちにとって一番大事なのは平和条約の締結なんです。」 ここからも、プーチン大統領にとって大事なのは経済問題よりも政治問題(日米安保問題)であることがわかります。 この点について首脳間でどのような議論がなされたかは明らかになっていません。しかし、おそらく安倍首相は前向きな提案をしたと思います。12月14日付の朝日新聞が、谷内正太郎・国家安全保障局長がロシアのパトルシェフ安全保障会議書記から、日本に2島を引き渡した場合に「島に米軍基地は置かれるのか」と問われた際、「可能性はある」と答えたと報じていますが、もし安倍首相が日露首脳会談で谷内氏と同じような主張をしていれば、共同経済活動についてさえ合意できなかったはずです。 とはいえ、北方領土に日米安保を適用しないような形にすることは、極めて困難な作業です。日本の政治家や官僚たちは未だに「ダレスの恫喝」に縛られているようなところがあり、日米安保に触れようものなら強い反発が起こる可能性があります。また、アメリカのトランプ次期大統領はロシアとの関係改善を図っていますが、だからと言ってこうした日露の動きを追認するとは限りません。 さらに、日本国内には今回の首脳会談について不満の声もあります。安倍首相が対応を誤れば、国内世論が沸騰し、再び交渉が頓挫してしまう恐れもあります。安倍首相には慎重な舵取りと、国民へのしっかりとした説明を行ってほしいと思います。 |
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●日ロ首脳会談 日本側の経済協力3000億円規模で合意へ 12/16
安倍総理大臣は15日、ロシアのプーチン大統領を地元の山口県に招いて首脳会談を行い、北方四島での共同経済活動について、特別な制度のもとで実施する方向で検討するとともに、元島民の自由な往来ができるよう調整を進めることで一致しました。一方、経済協力プランをめぐっては民間を含め、日本側が総額で3000億円規模となる経済協力を進めることで合意する見通しとなりました。 安倍総理大臣とロシアのプーチン大統領との日ロ首脳会談は初日の15日、安倍総理大臣の地元・山口県長門市の温泉旅館で行われました。 首脳会談は全体でおよそ5時間にわたって行われ、関係閣僚も交えた少人数による会談で、安倍総理大臣は「北朝鮮情勢をはじめ、アジア太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、日ロ両国が率直な意見交換を行うことは重要だ」と述べました。そして、両首脳は両国の安全保障会議の間の対話や防衛交流を歓迎し、今後も継続することで一致しました。 また、安倍総理大臣がシリア情勢について「人道状況のさらなる悪化を強く懸念する」と述べ、ロシア側の対応を求めたのに対し、プーチン大統領は「地域の国々や、アメリカとも話し合いながら、解決に向けて努力する用意がある」と応じました。 さらに、安倍総理大臣は北朝鮮情勢について「国連安保理決議は厳格かつ全面的な履行が必要であり、ロシアと連携していきたい」と述べたのに対し、プーチン大統領は「北朝鮮に圧力をかけるとともに、6か国協議の対話の場に引き出すことが必要だ」と述べました。 また、安倍総理大臣が日本のミサイル防衛システムについて、「もっぱら防衛的なものであり、周辺国、地域に脅威を与えるものではない」と説明したのに対し、プーチン大統領はアメリカを中心としたミサイル防衛システムに対して懸念を示しました。 続いて、両首脳は通訳だけを同席させた会談を、1時間半余りにわたって行い、焦点となっていた北方四島での共同経済活動について、特別な制度の下で実施する方向で検討するとともに、北方領土への元島民の自由な往来ができるよう調整を進める方向で一致しました。 安倍総理大臣は「これまでのソチ、ウラジオストク、リマでの議論を踏まえて、元島民の故郷への自由訪問、四島における日ロ両国の特別な制度の下での共同経済活動、そして平和条約の問題について率直かつ非常に突っ込んだ議論を行うことができた」と述べました。 両首脳は、このあと出席者を拡大して夕食を取りながら会談し、8項目の経済協力プランについて、それぞれ調整の進捗(しんちょく)状況を報告したほか、16日、企業側の代表も交えて議論し、具体的な成果を発表することを確認しました。 また、訪問の記念品として、安倍総理大臣が日本とロシアが国交を樹立した「日魯通好条約」交渉の際の友好のエピソードを描いた絵巻物の複製を贈ったのに対し、プーチン大統領からはモスクワ市内の風景を描いた油絵などが贈られました。 安倍総理大臣は16日午前に長門市を出発して東京に戻り、午後から日ロ双方の関係閣僚のほか、企業関係者らも交え、昼食を取りながら、2日目の首脳会談を行うことにしています。 この中では8項目の経済協力プランをめぐって、政府間や企業間で、これまでに合意できた内容を確認することにしています。これまでの調整で、政府間では厚生労働省とロシア保健省による医療・保健分野での協力など13件のほか、企業間では東シベリアにおける共同炭鉱開発や、北極圏のLNG=液化天然ガス開発への融資など、60件余りの合意文書が取り交わされる見通しです。 政府関係者によりますと、民間を含めた日本側の経済協力は、総額で3000億円規模に上るということです。 |
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●共同経済活動、声明へ 「特別な制度」明記 12/16
安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は、北方領土での共同経済活動に関する共同声明を出すことで合意した。声明には活動を日露両国の「特別な制度」のもとで行うと明記する。元島民が査証(ビザ)なしで北方領土に渡航できる「自由往来」の拡充も別の共同声明にまとめる。16日午後、両首脳が首相官邸で会談した後、記者会見して発表する。 ●両首脳、午後再会談 共同経済活動を巡っては、北方領土を実効支配するロシアが同国の主権下で行うよう主張。日本側は「日本の法的立場を害さないことが大前提」だとして、法的な特例措置を求めていた。15日夜に山口県長門市で行われた会談では、両首脳が「主権に関する両国の立場を害さない」ことで合意。「完全なロシアの主権下では経済活動を行うことはできない」という日本側の主張が声明に反映されることになった。両首脳は16日の共同記者会見で、共同経済活動に関する協議内容を発表し、それぞれの担当部局に具体的な交渉に入るよう指示する見通しだ。 日露外交当局間のこれまでの水面下の協議では、北方領土に経済特区を設けて法的課題を整理する案などが検討されてきた。ただ、日本人がトラブルに巻き込まれた際の司法管轄権の問題や進出企業への課税方法など、個々の課題を詰める作業は難航が予想される。 一方、首相は今回の首脳会談に先立つ元島民との面会などを通じて、自由往来の拡充を重視しており、プーチン氏も人道的な見地から同意した。 ●また出発遅れ 両首脳は16日午前、山口県から東京に移動した。プーチン氏は同県出発が予定より約1時間遅れた。 同日午後の首脳会談では、首相が提案した医療やエネルギーなど8項目の経済協力を中心に議論する。 ●日露企業、民間協力60件合意へ 投融資3000億円規模 政府関係者によると、日露の民間企業は、エネルギーや医療分野など60件を上回る経済協力案件で合意し、投融資の総額は3000億円規模になる見通しだ。北極圏にあるヤマル半島での液化天然ガス(LNG)基地開発に国際協力銀行(JBIC)が融資する案件などが含まれる。日露首脳会談に合わせて、16日午後に具体的な案件を盛り込んだ合意文書が確認される。 5月の日露首脳会談で安倍晋三首相が示した8項目の経済協力プランを巡り、日本とロシアの企業幹部らは16日午前、経済協力について議論する「日露ビジネス対話」を東京都内で開いた。 分科会と全体会合の2部構成。午前に開かれた分科会には、日露両国のエネルギー関連企業や商社、メーカー幹部らが数百人規模で参加、「極東振興」「エネルギー」など8項目の協力プラン別に個別企業の方針を示した。 午後からは千代田区の経団連会館で全体会合を開催し、両国の経済団体幹部が、経済関係の深化に向けた課題や展望を議論する。首相とプーチン露大統領も参加する見通しだ。 |
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●自民・二階幹事長「国民の大半がガッカリしている」 12/16
自民党の二階俊博幹事長は16日、安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領との首脳会談について「国民の大半がガッカリしているということを、われわれは心に刻む必要がある」と述べ、成果が不十分との認識を示した。 党本部で記者団に語った。 与野党内には安倍首相が今回の会談結果を受けて衆院解散に踏み切るとの憶測もあったが、二階氏は「首相からその解説を聞いていない。この程度のことは解散のテーマにはならないと思っていたから、なんでもない」と述べた。 北方領土問題を含む平和条約交渉については「解決の見通しがつくかのような報道が続いた。日本国民は『これで解決するんだ』と思った。なんの進歩もなくこのまま終わるなら、一体あの前触れはなんだったのかということを、日本の外交当局は主張しなければならない」と述べ、不満をあらわにした。 そのうえで、「時間を区切った交渉のはずだ。経済問題も大事だが、人間は経済だけで生きているわけではない。もう少し、真摯に向き合ってもらいたい」と述べ、早期の平和条約締結の必要性を訴えた。 日露首脳は元島民らの北方領土への自由訪問拡充で合意したが、二階氏は「この程度のことで喜んでいるのではなくて、真の平和、真の友好のために一層の努力をするきっかけというか、バネにする方向に進んでほしい」と注文を付けた。 一方で、二階氏は「日露首脳が胸襟を開いて会談がなされたということは、成功だった」と述べ、一定の評価も与えた。 |
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●日露首脳会談 密室の95分間で、安倍・プーチンが話し合ったこと 12/17
●1対1の1時間35分 12月15日夜、山口県長門市の温泉旅館「大谷山荘」で行われた安倍晋三首相とウラジーミル・プーチン大統領の日露首脳会談は、第1次安倍内閣時代を含めると16回目である。安倍・プーチン会談の特色は、日本側の担当閣僚や官房副長官(政務)、国家安全保障局長、そしてロシア側の第1副首相、外相、大統領補佐官(外交)らを交えた少人数会談後に必ず両首脳だけの「テ・タテ」(記録係も同席させず通訳のみ)を行うことである。今年になってからだけでも、5月7日のロシア南部ソチ、9月2日の極東ウラジオストク、11月19日のペルーの首都リマでのテ・タテ会談は、それぞれ38分、55分、35分であった。そして山口県長門会談は95分に及んだ。 情報管理に厳しい安倍首相、菅義偉官房長官の意向もあって、首脳会談に同席する(外遊の場合は同行する)官房副長官や外務省の外務審議官(政務)にも会談内容は殆ど知らされない。歴代の官房副長官や外務審議官と懇談する機会が少なくないが、筆者が彼らに質してみて、本当に知らされていないことが分かった。安倍、プーチン両首脳は1時間35分の長時間、いったい何を話し合ったのか。もちろん北方領土返還・平和条約締結問題について、相当突っ込んだ議論を行ったことは、安倍首相のぶら下がり会見でも明らかである。だが、新聞・テレビなどの報道を見る限り、北方4島で「特別な制度のもとでの共同経済活動」を行うことで合意したこと以外、本稿執筆時点(16日午後)では特段の「成果」があったとは伝わってきていない。 ●ロシア側の要望、日本側の青写真 ただ、件のテ・タテ会談で確実に話し合ったことが2つある。一つは、2年前のロシアによるクリミア併合に対する米国主導の対露経済制裁に日本が同調したことに、プーチン大統領が改めて安倍首相に撤回を申し入れたことである。『読売新聞』+日本テレビのプーチン大統領単独インタビューの中で「対露経済制裁が平和条約の締結交渉や経済協力の進展を阻んでいる」(同紙13日付夕刊)と語っていることからも、十分想像できる。 筆者の手元に無題のA3版極秘資料1枚がある。12の日露経済協力プロジェクトの「内容」、日本がロシアと締結する「締結相手」、そして「経済制裁との関係」を記したリストだ。このペーパーを精読すれば、プーチン大統領が求めていることがよく分かる。1同大統領と近い経済界大物ロッテンベルグ氏のナショナル・ケミカル・グループが推進するナホトカの肥料プラント工場建設への融資、2ズベルバンク向け輸出バンクローン契約締結、の2案件がリストに掲載されている。 ところが日本側は土壇場になって、米国の経済制裁「SDN(Specially Designated Nationals)」(特別指定の個人と企業)、「SSI(Sectoral Sanctions Identifications)」(特定制裁国)の対象であるとして、日露経済協力から除外したのだ。こうしたことがプーチン大統領の言う「平和条約締結交渉のための雰囲気作り」を阻害するものと言いたいのだろう。要は、日本は米欧対露経済制裁チームから脱退しろということである。 二つ目は、安倍首相がプーチン大統領に対して2018年主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)からロシアの復帰(G8)実現に努力する意向を示したのではないかということである。来年5月のG7サミットはイタリアのシチリア島で開催される。トランプ米大統領、メイ英首相、ジェンティローニ伊首相は初参加、トルドー加首相は3回目である。古参のメルケル独首相のリーダーシップが低下しているのは否めない事実だ。そうした中で、一昨年のブリュッセルG7サミット以来、安倍首相の国際社会での存在感は急速に高まっている。 安倍首相はプーチン=ロシアとの関係改善に意欲を隠さないトランプ大統領と図ってロシアの主要8ヵ国復帰を実現した上で、同年秋にはプーチン大統領の地元・サンクトペテルブルクを訪れて、19年中の日露平和条約締結と20年の歯舞・色丹両島の返還(return)ではなく引き渡し(hand over)合意の絵図を描いているはずだ。 |
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●安倍−プーチン会談のウラ 対中密約か、トランプ氏含め3国で習氏に圧力 12/17
安倍晋三首相は15日夜、地元・山口県長門市で、ロシアのプーチン大統領と首脳会談を行い、16日には東京に移動して首相官邸で平和条約締結に向けた協議を続けた。今回の会談では、領土問題を含む平和条約締結交渉の進展が注目されているが、同時に、安全保障をめぐる緊密な協議もあったようだ。アジアでの軍事的覇権を目指す中国を牽制(けんせい)する、日米露連携が構築されるのか。 「日露両国が安全保障上の関心事項について率直な意見交換を行うことが重要だ」 安倍首相は15日の首脳会談で、プーチン氏から提案があった外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)の再開について、こう応じた。 日露両国の2プラス2は、2013年11月に1度だけ開催しているが、これを復活させ、安全保障分野で緊密に連携していこうというのだ。また、合同捜索・救助訓練の再開を確認するほか、訓練海域を広げて対テロや海賊対策も実施する方向だ。 東アジアや北極圏でプレゼンスを高める、習近平国家主席率いる中国に対する牽制という意味もありそうだ。 日露2プラス2は、早ければ年明けにも開催し、日本側は岸田文雄外相と稲田朋美防衛相が出席し、ロシア側はラブロフ外相とショイグ国防相が参加する見通し。 今回の首脳会談では、日露間の経済連携を中心に議論され、8項目の対露経済協力プランの内容を具体化した事業などで合意。両首脳は16日午後、共同記者会見に臨んだ。 「領土問題」と「経済協力」がクローズアップされたが、日露の安全保障上の連携は、東アジアの地政学を大きく変えることになる。 ドナルド・トランプ次期米大統領は、世界各国の首脳で真っ先に安倍首相と会談し、選挙中からプーチン氏を評価していた。一方、台湾の蔡英文総統と電撃的な電話協議を行い、米メディアのインタビューで、中国の主張する「1つの中国」政策や南シナ海での軍事的覇権に異議を唱えた。 日米露が安全保障で連携すれば、中国は震え上がる。 国際政治学者の藤井厳喜氏は、日露2プラス2について「非常にメリットがある。日本とロシアの『仮想敵国は中国だ』という共通認識ができた」といい、続けた。 「日露間が安全保障分野で連携することは、『お互いが軍事的に敵対する国ではない』ということを確認でき、両国間の信頼関係を醸成できる。『友好関係を深めてから、領土問題を解決しよう』というロシア側のメッセージではないか。オバマ米政権は日露の接近を警戒してきたが、今回の動きを見ると、安倍首相は事前に根回ししている可能性が高い。トランプ氏は『親露反中』という姿勢を明確に示している。日本が米国とロシアと歩調を合わせることは、中国を押さえ込む戦略上、非常に重要だ」 |
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●「引き分け」より後退したのか プーチン大統領はなぜかニコッと笑い、質問に熱弁を振るった 12/17
16日午後、首相公邸大ホールでの安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領による共同記者会見。 「大統領の平和条約締結に関する主張は、『ヒキワケ』に言及した頃より後退している印象がある。日本側に柔軟な姿勢を求めるのであれば、ロシア側はどんな柔軟性を示すのか」 私が問うと、プーチン氏はなぜかニコッと笑った後、身を乗り出すようにして北方領土の歴史を振り返り、こう熱弁を振るった。 「私たちの考えとしては、領土をめぐる“歴史のピンポン(卓球)”をやめるべきだと考えている」 「もし安倍首相の計画が実現するのであれば、島は反目のリンゴ(果実)ではなく、ロシアと日本を結びつける何かになり得る」 プーチン氏は、平和条約締結後に歯舞、色丹の2島を引き渡すとうたった1956(昭和31)年の日ソ共同宣言には一応言及したものの、やはり領土問題ではかたくなだった。日本が目指す四島返還までの道程は険しく遠そうだ。 ●プーチン氏否定 ただ、それは日本側も織り込み済みの話ではある。政府高官はプーチン氏について「領土とは血で奪い、血で守るものだと考えている。中国との間で40年かけて領土を画定したのも、血で血を洗う国境紛争の末のことだ」と指摘する。 一方、日本はあくまで平和裏に問題を解決しようと試みている。相手を説得し、納得させることが至難の業であることは最初から分かっていることである。 安倍首相は問題解決への近道はないと知り、迂遠なようでも日露間での信頼関係を築き、交流を深めることから始めて一歩一歩前進する道を選んだのか。 「『もう時間がない』。そう語る(北方領土の元)島民の痛切な思いが胸に突き刺さった」 安倍首相は共同記者会見でこう述べた。確かに今回の合意で元島民が、故郷訪問が容易になれば、関係者には朗報だろう。ビザ(査証)なし交流拡大による人的交流の円滑化も、日露の相互理解につながる。 日露両国の8項目の経済協力プランの具体化や、北方領土での共同経済活動も、日本企業にとって新たなビジネスチャンスや資源確保の機会を生むことだろう。両首脳が強調するように、経済的な結びつきの強化は、将来の平和条約締結への「重要な一歩」となるかもしれない。 ただ、日露双方に「ウィン・ウィン」の状況が生まれるかどうかは今後の両国の真摯な努力にかかっている。日本はこれから安易な妥協は避けつつ、北方領土問題の解決に向けてほふく前進していくことになる。 ●防衛協力は前進 そもそも安倍首相が日露関係の深化を目指すのは、北方領土問題だけを考えてのことではないはずだ。 安倍外交は、日米同盟を不動の基軸としつつ、常に膨張する中国にどう向き合い、地域の安定と平和を維持するかを念頭に置いてきた。日露関係の強化も、北方領土問題解決のためだけではなく、中国という要素を含めてみるべきだろう。 今回の一連の首脳会談でも、最初のテーマは安全保障対話であり、外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)の再開で合意するなど防衛協力の前進がみられた。 日本は日米同盟だけに依存するのではなく、オーストラリアやインドなどと防衛協力を進めており、仮にこれにロシアが加わることになれば、東アジアの安保環境は一変する。ロシアは中国と友好関係にあるが、潜在的な不信感も根強い。 今年は5月にオバマ米大統領が被爆地・広島を訪ねて日米同盟の蜜月をアピールし、12月にはプーチン氏が来日して、今度は安倍首相が米ハワイ・真珠湾を訪ねる。こうした一連の安倍外交自体が、中国に対する強いメッセージともなっている。 |
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●プーチンの戦略に完全に振り回された安倍首相 12/17
ロシア側の成果ばかり、すれ違い深刻 安倍晋三首相「夜は温泉にゆっくりつかっていただきたい。首脳会談の疲れが完全に取れることはお約束する」 プーチン露大統領「温泉では疲れが取ることができるが、もっといいのはあまり疲れないことだ」 これは、12月15日に行われた安倍首相とプーチン露大統領の首脳会談の冒頭部分の会話だが、このやり取りに今回の両者の思惑が如実に現れているといってよい。つまり、話がかみ合っていないのだ。まさに今回の首脳会談は「同床異夢」の感が強い。 日本では北方領土の返還に関心が集中し、安倍首相も領土返還解決への意気込みを見せた。対するプーチン大統領は訪日前の読売新聞などとの会見で、「ロシアにはそもそもいかなる領土問題もまったくないと思っている。日本がロシアとの間に領土問題があると考えているのだ」と断言し、日本側の期待をあっさりと裏切ったのである。 冒頭のやり取りから両首脳の心理を読み解くと、安倍首相は「首脳会談で北方領土問題を真剣に話し合い、その疲れは温泉で取りましょう」と言いたかったのだろう。が、プーチン大統領は「温泉につかるのは良いが、最初から領土問題のような疲れる話をしないのに越したことはない。それよりも、ロシアが望むのは経済協力問題だ」と領土問題や平和条約の協議を婉曲に拒絶したのだ。 この「同床異夢」ぶりは、16日午後の両首脳の共同会見でもはっきりと表れた。会見冒頭の両首脳の発言で、安倍首相は元島民の手紙をプーチン大統領に見せたことに触れ、領土問題や平和条約締結について「我々の世代で終止符を打たなければならない」との強い決意を見せた。 一方、プーチン大統領は最初から双方で合意した具体的な経済プロジェクトを挙げて、今回の首脳会談におけるロシア側の成果を誇示したようにみえる。元島民の手紙については、元島民と現在のロシア人島民の往来の自由化で協議すると言及しただけだった。 まさにすれ違いも良いところだろう。 ●「率直」という言葉の意味 これは15日夜の会談後、安倍首相が記者団に語った言葉ですでにわかっていた。 「元島民の故郷への自由訪問、四島における両国の特別な制度のもとでの共同経済活動、平和条約の問題について率直かつ突っ込んだ議論ができた」 このなかで重要なのは、最後の部分の「率直かつ突っ込んだ議論」という表現だ。この「率直」という外交上の言葉の使い方については、安倍首相とトランプ次期米大統領の11月17日の会談についての筆者のコラムでも次のように触れた。 「『率直な』というのは、お互い腹蔵なく自らの意見を述べ合い、意見が対立したという意味だ」 日露首脳会談では「率直」だけでなく、「突っ込んだ議論」と表現していることから、安倍首相が領土問題解決に向けて、しつこく食い下がったと読めるのだが、プーチン大統領は「ロシア側から見れば、領土問題はないに等しい」などと読売新聞の会見と同じように語り、安倍首相の提案に激しく反発したに違いない。 ●プーチン大統領の国内向けの成果ばかりが強調 ところで、プーチン大統領は19日、山口県の会談場所への到着が2時間遅れ、首脳会談もずれ込んだ。さらに、20日午前の出発時間も大幅に遅れて、東京での安倍首相とのワーキングランチ会談もなくなってしまった。このような2日続けてのたび重なる“遅刻”は、安倍首相との会談を最小限にとどめて、実利だけを得ようというプーチン流の外交戦略と疑われても仕方がない。「さすがに、元KGB(旧ソ連国家保安委員会)工作員だったことだけあって、謀略がうまい」と誉めることができるかもしれない。 結局、今回の首脳会談の成果といえば、両首脳の共同会見の前に長々と行われた経済関係を中心とした調印文書の交換だけであり、領土問題の進展はなかったといえよう。北方四島での「共同経済活動」実現に向けた協議開始で合意したとはいえ、すでにロシアメディアは「自国(ロシア)の法律に基づき実施する」としており、協議は難航が予想される。 11年ぶりのロシア大統領の訪問だったが、その割には、領土問題解決を急ぐ日本側は足元を見られて“ホームグランド”の利点を生かせず、ロシア側にいいように振り回され、プーチン大統領の国内向けの成果ばかりが強調される結果となったのではないか。 今回の首脳会談で、日本とロシアの政府や企業が進める経済協力の案件数は60を超え、エネルギー開発や医療などの分野を中心に投融資の総額は3000億円規模になる見通しであることが、それを明確に裏付けている。 |
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