「日露間に領土問題はない」 プーチン大統領

国際政治力学の優等生 大変判りやすい

オバマ大統領の経済制裁 プーチン大統領に大打撃
領土問題ダシに プーチン大統領 安倍首相と握手

トランプ次期大統領出現 米露関係の危機脱出
領土問題はない プーチン大統領 安倍首相と距離をとる

日本の利用価値  風向きが変わる 
日露会談 内容は経済協力だけで終わりか
 


 
 
 
 
会談直前の発言
「日露間に 領土問題はない」
トランプ次期大統領出現で日本の利用価値低下
物と金 経済協力だけなら いくらでも受入れるらしい
領土も勝手に編入する国 日本は利用されるだけで終わるのだろう
トランプ出現は 安倍首相にとって不運でした
 
 
 
2014年 ロシアによるクリミア・セヴァストポリの編入
欧米諸国の指導者らの非難にもかかわらず、ロシアはクリミアを返還しないと表明。米国と欧州連合(EU)はそれぞれ、クリミアがウクライナの支配下に戻されない限り、ロシアに対する経済制裁は止めないと述べた。
日本 / 安倍首相は参議院予算委員会において、ロシアによるクリミア編入はウクライナの主権・領土の一体性を侵害するものとして非難。G7と連携し追加の制裁を行うと表明。ビザ発給簡素化に向けた協議、投資や宇宙、軍事活動などに関連した締結交渉の開始を凍結するといった制裁措置を発表した。 
 
トランプ当選で「プーチン」がほくそ笑む理由
 似たもの同士は世界をどう変えていくのか
ロシアによる米大統領選への干渉は、米国史上で前例のないものだった。 ロシアの介入がトランプ当選の助けになったかどうかは不明だが、トランプ勝利と、それに対するロシアの熱意は、第二次世界大戦後の時代が過ぎ去り、何百万人もの米国の有権者が、米国は世界的な統合から手を引くべきだと考えている証なのだ。
トランプとロシアのプーチン大統領は14日の電話会議で「建設的な協力関係」構築を目指すことで合意した。 トランプが1月の大統領就任前にプーチンに会う予定がないことは、ロシアによる政治的陰謀の後退を意味しない。 米民主党のシステムがハッキングされて機密情報を記した電子メールが流出した事件にロシアが関与していたことは、大統領選に影響した。
トランプとプーチンが組むのは自然
プーチンはシリアの反政府勢力に対する爆撃を通じて虐殺を行い、ウクライナ東部で殺傷行為の支援を続け、欧州全域の右翼団体に資金も提供している。これらはすべて、西側が直面する問題の解決を妨げるのが目的だ。
そして、トランプ当選は、プーチンがこうした一連の行為を世界全体に広げ、ロシアの偉大さを取り戻した者として同国での権威を強化することに寄与するだろう。
ロシア政府は、同国を孤立させて長期的な発展を妨げている行動が英雄的であるなどとする政治的宣伝を国内に振りまき、プーチン人気を高めている。これに対抗する最も確実な方法は、虚構を否定して、プーチンがロシアに破局をもたらす事実を暴露することだ。それには、プーチンとの対立を辞さなかった前国務長官のヒラリー・クリントンが最も適任だった。
トランプは逆に、KGB出身のプーチンを強力な指導者として賞賛し、その神話を補強した。普通の人々を犠牲にすることで個人的な力と豊かさを追求する両氏が手を組むのは、自然の成り行きではあった。
ロシアの報道官はトランプ当選後に、外交に関する「両氏の概念的なアプローチが酷似しているのは驚くべきことだ」と述べた。世界的な統合や民主化から距離を置き、国家主義や権威主義を志向する点において、トランプとプーチンの利害は今のところ、一致している。
米国にとって、ロシアは大西洋の向こうの脅威の1つに過ぎない。弱体化して激しい態度に出てきたロシアとは異なり、米国経済に深く投資している中国は、南シナ海での行動を通じて、米国が構築した安全保障上の防波堤を切り崩そうとしている。
「パクス・アメリカーナ」の退潮
米国最大の戦略パートナーである欧州連合(EU)は、英国の離脱決定で大打撃を受けた。欧州大陸でもハンガリーとポーランドで権威主義が高まり分裂の度が強まっている。米国のみならず「パクス・アメリカーナ(米国による平和)」の退潮は、極めて現実的になりつつある。
トランプの外交政策の先行きは不透明だ。確固としたイデオロギーや公職の経験がない、素人のテレビスターがした公約は、人気取りが主な目的だった。新国務長官として、ブッシュ政権で国連大使を務めた強硬派のジョン・ボルトンが候補に挙げられている点からしても、米国の対欧関係は再燃しそうだ。
トランプは当選前から、北大西洋条約機構(NATO)に対する米国の軍事的支援の今後は、加盟国の資金負担次第だと語り、西側の安保関係者を震撼させた。太平洋地域でも日本と韓国に対して、同様のことをした。
トランプ批判論者の一部は、米国の市民社会は強じんであり、米国憲法には多数派による横暴を抑える機能が備わっているとして、トランプが大統領になっても大惨事にはつながらないと信じている。
確かに、米国の道徳は、冷戦期に起きたマッカーシズムやベトナム戦争などの大惨事に対抗してきた。だが、 トランプほどに民主主義制度と理想を軽蔑した大統領は、現代に入って見当たらなかったのも事実だ。
トランプの行動見守るプーチン
プーチンがロシアや隣国で民主的改革を押しとどめ、19世紀当時のような勢力圏の構築に努めているのに対し、トランプがどう出るかは不透明なままだ。だが、プーチンにしてみれば、米国が世界に対する唯一の超大国としての立場を放棄してくれるのであれば、トランプとの親密な関係を保つことには、十分すぎる価値がある。
ローマ帝国衰退からオスマン帝国に至るまで、歴史には、起きてみなければどうなるかわからなかった例が数多くある。米国の衰退は不可避ではないものの、将来の歴史家は、米国を再び偉大にすると唱えた億万長者による選挙が、国家主義や外国人嫌悪に加え、経済の大変動で揺れ動いた社会に向けた公約の乱発に彩られていたことを思い返すかもしれない。
今後4年間で何が起こるにせよ、トランプ当選は地政学的な光景を、根本的に変えてしまったのだ。 
 
トランプはなぜプーチンを称賛するのか 2016/7
<バルト三国やウクライナ、日本といった同盟国のことは歯牙にもかけないトランプが、ロシアにだけは気安く、甘いのはどういうことか? 様々な疑問が出てきている>
米民主党全国大会の開幕直前に民主党全国委員会(DNC)のサーバーから盗まれたメールが公開された。同党のバーニー・サンダース候補の足を引っ張る画策をしていたとして、デビー・ワッサーマンシュルツDNC委員長は辞任に追い込まれた。
ヒラリー・クリントンの大統領候補指名を目前にこのドタバタ劇を仕組んだのは、ロシア政府系のハッカー集団と見られている。共和党の大統領候補ドナルド・トランプはロシアのウラジーミル・プーチン大統領と政商たちに借りがあるのではないか、という噂と状況証拠も出てきている。いったいロシアはどこまで米大統領選とアメリカ政治に影響力を行使しているのか。
大統領候補にあるまじき行為
トランプは、こともあろうにそのロシア政府系ハッカーにもっとクリントンの秘密をリークして欲しいと呼び掛けた。クリントンが国務長官時代に私用のメールアカウントを使って公務のメールのやりとりをしていたことが発覚した後、クリントンが個人的なメールだとしてサーバーから削除した約3万通のメールのことだ。
昨日の記者会見でトランプは、こう言った。「あのハッカーたちは例の3万3000件の電子メールも持っているはずだ。クリントンが削除し失われたメールだ。そこにどんなおいしいネタが隠されているか、大いに楽しみだ」
大統領候補が前国務長官の秘密を探るようロシアに依頼するなど常識では考えられない。安全保障に関わる問題だ。そうでなくても、ロシアはトランプを勝たせるために米大統領選に介入しているという疑いがある。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はトランプを褒めそやし、トランプもプーチンに賛辞を惜しまない。
一方でトランプはロシアの隣でNATOに加盟しているバルト3国に対し、ロシア軍が侵攻しても米軍の支援を当てにするな、とまで言ってきた。
トランプは以前、プーチンを「非常によく」知っているとうそぶいていたが、27日の記者会見では前言を撤回し、「プーチンとは会ったことがない。どんな人間か知らない」と言った。
トランプはこうも言った。「彼は1つだけ私を褒めてくれた。私が天才だと言ってくれたんだ。それを報じた新聞には感謝したが、プーチンとの関係はそれだけだ」
これは、前日にNBCが放映したバラク・オバマ米大統領のインタビューを受けた発言のようだ。オバマはロシアが大統領選に介入しているという驚くべき可能性を淡々と認めた。「分かっているのは、ロシアが我々のシステムをハッキングしていること、それも政府だけでなく、民間のシステムもハッキングしているということだ。リークの動機が何かは言えない。私が知っているのは、ドナルド・トランプが繰り返しウラジーミル・プーチンを褒めたたえているということだ」
ロシアで不動産ビジネスを成功させることは、トランプの長年の悲願だった。息子のドナルド・トランプJr.は以前、「ロシア・マネーは我々が保有する資産全体のなかで不釣り合いに大きな割合を占めている」と明かした。
27日の記者会見ではトランプは、クリミア半島をロシアの領土と認め、ロシアのウクライナ介入に対する制裁を解除することを「検討する」とも語った。クリミア半島は長年、ウクライナの一部だったが、14年3月にプーチンが一方的に併合した。 
 
トランプとプーチンの露米関係 2016/11
トランプ外交はどうなる
専門家の間でトランプ勝利を真面目に予想した者はわずかだったから、彼らの関心は主に、元米国務長官である民主党候補者、ヒラリー・クリントン氏の外交スタッフに向いていた。トランプ氏に関しては、選挙戦中は、外交がよく分かっていないとか、外交分野の顧問は無名の連中だとか言われていただけだった。
とはいえ、有能な顧問を探し出す課題は、かなり短期間で解決されるかもしれない。米国は、有能な専門家には事欠かないし、勝利者の陣営に鞍替えしたい、あるいははせ参じたいと思っている者は、今やたくさんいるだろうから。トランプ氏は、戦後の米国史で、最もドラマティックで先が読めない大統領選で、思いがけず勝利した。
と同時に、米国の大統領は伝統的に、外交に個性の大きな痕跡を残すのが常である。というのも、内政より外交における権限のほうが大きいからだ。その意味で、トランプ外交は、あらゆる意味でかなり目立ったものになると予想される。
もっともそれは、トランプ氏の奇矯な発言から考えられるほど「派手」なものではないだろう。こうした発言は、選挙民を意識してなされたものだったから。例えば、氏が明日にも、メキシコとの国境に、不法入国を防ぐ「壁」を建設し始めるなどということはあるまい。だいたい、こんな大規模な建設は、相当な出費が必要になるし、あらゆる国庫支出の権限は、もっぱら上下両院にあり、他にはないのだから。
とはいえ、トランプ氏は、出入国管理の厳格化を図るだろう。オバマ大統領は、既に米国内にいる約700万人の不法入国者に恩赦を与える計画をもっているが、トランプ氏がそれを進めることはもう決してあるまい。
また氏が、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)のような類の、グローバルな貿易統合のありとあらゆる計画を推進するということもないだろう。逆に、既に現れている傾向――つまり、米企業が創出した雇用を徐々に米国内に戻していく傾向――を定着させようとするだろう。トランプ氏は、中国に通商戦争をしかけようなどとせず、ある面では妥協し譲歩しようとするだろう。
露米関係
さて、露米関係であるが、クリントン氏が大統領に選ばれていたら、少なくとも低迷、悪くするとさらに悪化を続けたことは必至で、危険なほどにエスカレートすることさえあり得た。その点、トランプ氏選出は、こういう先鋭化を避けるチャンスを与えてくれる。
心理学的なタイプとしては、エキセントリックで外向的なトランプ氏は、内向的で「閉鎖的な」プーチン大統領とはまったく対照的だ。だが、こういう開けっぴろげで率直なタイプのほうが(仮にその人物が、まったく自分と正反対の意見を口にするとしても)、元KGB中佐であるプーチン大統領としては、ヒラリー・クリントン氏のようなタイプよりもずっと付き合いやすいだろう。
クリントン氏のことは、米国内だけでなくロシア指導部でも、多くの人が、「誠実でなく」(控えめに言っても)、偽善者だと考えている。おまけに、モスクワで2011年秋〜2012年春に起きた抗議行動は、当時国務長官であった氏が陰で糸を引き「金を出した」と疑う者もいる。
クリントン氏はまた、選挙戦では、ロシアとプーチン大統領個人に対し、極めて激しい非難を浴びせ、クレムリンが「選挙を妨害しようとしている」とか「ホワイトハウスにトランプという操り人形を据えようとしている」などと言いがかりをつけた。こういう言動の後で、プーチン大統領とクリントン氏が落ち着いて、互いに苛立つことなく付き合えるものかどうか、まったく分からない。その点、トランプ氏との間には、こういう「負債の前歴」がないので、少なくとも白紙の状態からスタートすることができる。
その意味でトランプ氏は、かつて「欧州におけるロシアの主な友」だったシルヴィオ・ベルルスコーニ元イタリア首相をある程度思わせる面がある。トランプ氏は、衝動的で外交経験はない。もしかすると、何か「奇妙奇天烈」な言動をなし、その中にはロシア大統領に向けられるものも出てくるかもしれない。すると、ロシア側はそれに対して「憤慨する」かもしれない。概して、露米関係は、あまりにも首脳間の個人的人間関係と結びついているので、状況が瞬く間に悪化することもないとは言えない。基本的に、「愛から憎しみまでは一歩」である。
プーチン大統領は、米大統領選勝利を祝う電話を最初にかけた首脳の一人だが、思い起こせば、2001年9月11日に当時のブッシュ米大統領に、テロ犠牲者を悼み、テロとの戦いの連帯を表明する電話を最初にかけた最初の首脳がまたプーチン大統領だった。ところがその後は、2007年に、プーチン大統領が米国の政策を厳しく批判した有名なミュンヘン演説があり、欧米、とくに後者との関係には、完全な失望感が広がった。
という訳で、トランプ氏は今「アメリカを再び偉大な国にする」というスローガンを掲げているものの、それがどういうことになるか、今のところ不明だ。氏は、「新孤立主義」と世界各地への介入行動の縮小を目指していると推測されるが、もしこの傾向が定着するならば、これは露米関係にプラスに影響し得る。
もしトランプ氏が選挙公約に忠実であるなら――公約はあまりはっきりしたものではなかったが、氏は、米国はウクライナに介入する必要はないし、クリミアの運命など関心がないとすら言った――、それは露米関係を新たに「再起動」させるうえで格好の材料になるだろう。欧州に対し、対露制裁を止めないように圧力をかけなくなるだけでも、かなり意味がある。
とはいえトランプ氏は、米国の対露制裁を緩和あるいは解除しようと望んだところで、そう簡単にはできない。その途上には、上下両院において、彼と所属を同じくしながら、あまり彼に従順でない共和党員の大多数が立ちはだかるし、民主党については言うまでもない。
しかし、ウクライナ政府への支援を減らす「代わりに」、ロシアがシリア問題で米国に譲歩するといったこともあり得よう。もっともそれは、シリア問題がトランプ外交の「レーダー」上で重要な位置を占め続けるとすれば、であるが。
またトランプ氏は、NATO(北大西洋条約機構)における軍事、財政上の責任を欧州の同盟国に担わせる意向について、以前口にしていたが、これもロシアには気に入らないわけがない。だが氏は、ロシアを非常な不安に陥れているグローバルなMD(ミサイル防衛)を撤回することはよもやあるまい。これは氏の「新孤立主義的なレトリック」によく合致するのだから。その代わり、氏のアラスカ原油の採掘再開に関する計画は、ロシア経済に破壊的な影響を及ぼしかねない。エネルギーは、ロシアの主な輸出収入の財源なのに、これは、世界のエネルギー価格の下落を引き起こすだろうから。
このようにトランプ氏は、多くの点で「正体不明」ではあるが、それでも、露米関係の新たな「再起動」の希望はあると言えよう。いずれにせよ、同氏のもとでのアメリカは、オバマ時代とも、その前のブッシュ時代とも、国際舞台ではまったく違った様相を呈するだろう。 
 
プーチン氏、トランプ氏勝利「米と関係改善のチャンス」 2016/11
ロシアのプーチン大統領が30日、モスクワで講演し、米大統領選でのトランプ氏の勝利について「ロ米関係改善のチャンスが生まれると信じたい。両国の国民にとってだけでなく、世界の安定と安全のために重要なことだ」と述べて、対米関係立て直しへの強い意欲を示した。
プーチン氏は講演で、トランプ氏と11月14日に電話した際に「ロ米関係の不満足な現状は正常化しなければならないという考えで一致した」ことを明らかにした。その上で「我々の側はそのための道を行く用意がある」と表明した。シリアやウクライナなど、米ロの意見や利害が対立する問題で、トランプ氏とは折り合いを付けられそうだという期待感がにじむ発言だ。
プーチン氏が2012年に4年ぶりに大統領に復帰した後、米ロ関係はウクライナ危機やシリア内戦を巡って極度に悪化。オバマ米大統領とは、国際会議などで同席した際に比較的短時間会談するだけで、じっくり意見交換する機会が持てない状況が続いている。 
 
プーチン大統領「米ロ関係の危機に終止符を」―トランプ氏に祝電 2016/11
ロシアのプーチン大統領は9日、次期米大統領に選ばれたドナルド・トランプ氏に祝電を送った。ロシア大統領府によると、プーチン氏は米ロ関係の危機に終止符を打つとともに、世界の安全保障や国際問題で協力できるよう期待しているとの見解を示した。
大統領府は「プーチン大統領はさらに、対等な地位、相互の尊重、互いの立場の現実的考慮という原則に基づき、モスクワとワシントン間で建設的な対話を行うことが、両国の人々や全世界のコミュニティーの利益に相当するとの確信を表明した」と明らかにした。
トランプ氏はプーチン氏を公に称賛し、ロシア政府とより密接に連携できるとの考えを示していたことから、ロシアは期せずして米大統領選の中心的なテーマの一つとなった。
米当局によれば、ロシアは選挙を妨害する目的で米民主党全国委員会のシステムをハッキングし、電子メールを流出させた疑いも持たれているが、ロシア政府は疑惑を否定している。 
 
 
 
 
 
付き合いにくいか  距離をおくしかない中露関係
 
日本人が知らない「トランプ熱狂支持」の真因
 200年続く「伝統的思考」が何度も甦らせた
テレビカメラの注目を集める
その夜、テレビに横顔を映されたドナルド・トランプは、タキシードを着たおんどりにしか見えなかった。「ヘルメット」の呼び名で知られる彼の金髪が額からうなじにかけて曲線を描き、鶏のとさかを思い起こさせる。
本物のおんどりなら、とさかには雌の目を引き、敵を威嚇する働きがある。2011年のホワイトハウス記者クラブ主催の晩餐会で、支持者や批判者たちとともに席に着いていたトランプの場合は、テレビカメラの注目を集める働きがあった。おかげで、コメディアンのセス・マイヤーズと現職のアメリカ大統領の両方が「余興」の名の下にトランプをさんざんネタにする間、彼の反応がカメラにとらえられたのだった。
トランプが苦痛を感じている様子がうかがえたのは、マイヤーズがたっぷり2分半、彼をバカにしている間だけだった。出席者たちが笑い声を上げ、背伸びをしてトランプの姿を見ようとしているときに、彼は人を殺せそうな視線をマイヤーズに向けていた。同じテーブルの出席者たちが笑いをこらえ切れなくなっても表情を変えず、にらみつけたままだった。
そして、「オバマ大統領がアメリカ生まれだと確信している人が国民の38%しかいない」との調査結果にマイヤーズが触れたところで、トランプがネタにされていた理由が明らかになる。アメリカには、「大統領はアメリカ生まれでなければならない」という憲法規定がある。そのため陰謀論者たちは、大統領の出生地に関する調査の結果を捏造し、「オバマは大統領になる権利のないよそ者だ」と主張していた。
トランプは、長い間、熱心にこの「バーサー主義(birtherism)」を広めようとしてきた。そのため彼は、「バーサー論は非建設的で、人種差別的ですらある」と考える人々の批判の的になっていた。トランプはそうした批判に対し、自分は偏見にとらわれているわけではなく、重大な疑問を提起しているだけだと反論し、「私は人種差別から最も遠い人間だ」と主張していた。
そうこうしている間に晩餐会は佳境を迎える。オバマ大統領は自分の出番になると、バーサー論者に正面から、しかし見事なユーモアを交えて立ち向かい、「私の公式誕生ビデオだ」と言ってアニメ映画『ライオン・キング』の一場面を流した。それからトランプを名指しし、彼がテレビのバラエティ番組『アプレンティス』の司会者として「私なら夜も眠れなくなるような決断」を下していると称賛した。さらに、バーサー問題が解決されれば、トランプは「大事な問題に集中できるようになる……たとえば、われわれが月面着陸を捏造した件とか」と笑いを加えた。
自分より社会的地位が高い人間からの挑発を前に、トランプが殺意の視線を向けることはなかった。代わりに彼は、ごくわずかながら口角を引き上げ、大統領に手を振った。冗談を受け入れたのだ。そして夕食会の後、平静を装いながら、「非常に丁重に扱われた。冗談のネタにされ、からかわれたが、自分が話題になったのだし、それは多分、悪いことではない」と大統領の関心を引いたことが成功だったかのように語っている。
「みんなの味方のお金持ち」を演出するイメージ戦略
トランプは40年近く、アメリカで何かと話題にされてきた。彼ほど、長きにわたり有名であり続けている財界人はほかにいない。ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、ウォーレン・バフェットでさえ彼には及ばない。1970年代に派手な不動産開発業者として認知され、ほどなく、その名はカネで測ることのできる「成功」の代名詞になった。
彼は高層ビルやカジノ、ビジネスジェット機に(通常、金色の大文字で)「TRUMP」と書いて自らをブランド化し、ドナルド・トランプという一個人を、数え切れないほど多くの商品・サービスと結びつけた。ホテルの部屋や家具、ネクタイ、肉……とにかく「高品質・高価・高級」な品として売れそうなものなら、何にでも自分の名前をつけた。
トランプは、自分自身が実はアメリカの最富裕層の家庭の生まれであることをうまく隠しながら、上流階級に生まれついた人々を「ラッキー精液クラブ」と呼んで遠ざけ、新興の富裕層や成功を志す人々の需要を満たした。「上流階級を相手にしない、みんなの味方のお金持ち」というイメージをつくり出したのだ。
高いマンションを売るために「お高くとまった連中を嫌うドナルド」を演じるのをやめることもあったが、それでも、本当の彼の心はアメリカ中産階級とともにあるのだと信じる人間も多かった。そういった人たちこそ、彼が出るテレビ番組に好んでチャンネルを合わせ、選挙に打って出れば彼に投票するという層だ。
手元のデータによれば、アメリカ国民の96%がドナルド・トランプの名前を知っているが、その大多数が彼を嫌っている。2014年にドナルドの地元ニューヨーク市で行われた調査では、彼を快く思わない回答者が61%いた。
それでも、トランプの考えや振る舞いを熱狂的に支持する人々がいる。アメリカン・ドリームをはじめ、さまざまな理想をトランプが体現していると信じる人々だ。そうしたイメージは、彼がテレビ番組の司会を務め、ツイッターで頻繁にコメントを発信するうちに強まった。今や彼はツイッターで1200万以上の人々からフォローされ、多くの人から「大統領になってほしい」と懇願された。
以前から、トランプは自分に大統領選への立候補を求める多くの声があることにたびたび触れ、ときには本当に立候補したかのように振る舞うこともあった。冷戦の緊張が特に高まっていた時期に、自分が核兵器削減条約の交渉人になると名乗り出たこともある。「高額の不動産契約をまとめられる人間なら、アメリカとソビエト連邦の間で合意を取り付ける能力があるはずだ」というのがその理由だった。
アメリカで「教養」より「カネ」が尊敬される理由とは
なぜトランプのような人間が、多くの人々から嫌われながらも一定の支持を受けるのか? その理由は、アメリカの「金持ちの歴史」を少し振り返ってみることでわかる。トランプは、独特で、どこを取っても現代的な存在に見えるだろうが、実際のところアメリカには、彼のような、「金持ちでありながら粗野な成功者」の長い系譜があるのだ。
19世紀フランスを代表する政治家・歴史家で『アメリカの民主政治』を著したアレクシ・ド・トクヴィルは、1831年にすでにこの特徴を見抜き、「カネへの愛情は、アメリカ人の行動の根底にある第一の、さもなければ第二の動機である」と書いている。
その後、19世紀末までにアメリカの富裕層は非常に豊かになり、その権勢と影響力はヨーロッパの貴族に匹敵するほどになる。そして、発行部数の多い新聞が現れたことで、カーネギー家やロックフェラー家などの暮らしぶりが紙面を賑わせ、多くの人に「大金持ちへのあこがれ」が芽生える。作家のマーク・トウェインはのちに、この時代に「金ぴか時代」という呼び名をつけた。
当時の産業界や金融界のリーダーたちは、教養の追求や教育を軽視していた。大学を卒業したら実践的な話をすべきであり、芸術やら本やらは実業界での激しい競争に耐えられない連中にやらせておくのが一番いいと考えられていた。こうした考えが、アメリカ人の間の公平意識や、「教養ではなく富の蓄積こそが人生の成功につながる」という発想を支えていくのである。
この時代は、金儲けの方法を教える本も無数に出版され、一部の最富裕層は、自分たちは「神のおぼしめしによって」あるいは「道徳的に優れているために」成功したのだと語るようになる。ジョン・D・ロックフェラーは「神が私にカネをお与えになった」と言い、J・P・モルガンは、主に株の操作で築き上げた自分の帝国も、その源にあるのは「人間性」だと答えていた。
第1次「金ぴか時代」は、1929年の株価大暴落により終焉を迎える。そして、続く大恐慌の後に残った瓦礫の中から、より安全な金融システム、より先進的な社会保障制度が生まれる。すると、その後の数十年、前例のないペースで中間層が拡大する。
新たな繁栄の時代の始まりは、ドナルド・トランプが生まれた1946年だった。第二次世界大戦直後のこの時期、アメリカの競争相手となる国々は廃墟と化していたうえ、1000万人のアメリカ兵が帰国して市民生活を再開した。輸出需要は旺盛で、国内の消費需要も爆発的に高まった。
男たちが戦争から戻り、新たな家庭生活を始めるために数百万世帯が住宅を求めると、ドナルドの父、フレッド・トランプのような不動産開発業者は、そうした需要に応じることで富を築いた。フレッドは1975年に70歳になるまでに、実に推定1億ドル相当の資産を手にしたのだ。
この戦後の黄金期は、過去に類を見ないほど公平な時代だった。富裕層・中間層・低所得層のそれぞれが、経済成長の恩恵をそれなりに受け、各層を分ける格差が広がることはなかった。こうした幸せな状況は、1973〜75年の景気後退期まで続いた。
その後、長年にわたる経済の停滞と危機の時代が訪れ、保守的な政治機運が育まれていく。1980年に共和党のロナルド・レーガンが大統領に選ばれると、レーガン政権は社会保障費の削減に狙いを定め、富裕層への減税を実施し、各産業と金融機関への規制緩和を始めたのだ。こうして、アメリカの第2次「金ぴか時代」が始まった。
大学1年生の8割が挙げた人生の第一目標は…
そして、今世紀の最初の10年間、中間層の実質所得は下がり、上位1%の富裕層が下位90%より多くの富を支配するようになった。ちなみに、2014年に世界で最も裕福な500人が持っていた資産は4兆4000億ドル。この額は、インド(人口12億人)とブラジル(同2億人)の1年間の経済活動の合計金額を上回っている。
民間調査団体ピュー・リサーチ・センターが2006年に行った調査によれば、この新たな「金ぴか時代」において、大学1年生の81%が「人生の第一の目標は金持ちになることだ」と考えている。1960年代の約2倍だ。また、同年の調査では、半数以上が、人生の大きな目標の一つは有名になることだとも答えている。一方、「困っている人を助けたい」という回答者は3分の1に満たなかった。
トランプは自家用ヘリや自家用ジェットであちこち飛び回り、政治からセックスまで何にでも意見を言い、自分はあらゆることに優れた人間なのだと、いつも声高らかに語る。カネと名声の両方を手に入れた者は、ただの金持ちよりずっと注目される。そして、彼ほどの規模でカネと名声の両方を手に入れた者はほかにいないのだ。
『熱狂の王 ドナルド・トランプ』(クロスメディア・パブリッシング)。画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします
トランプは成人後の人生を通じて不動産事業を営んできたが、ほかにも、スポーツから美人コンテストに至るまで、あらゆることに手を出した。こうした興味のすべてに共通する要素が、「メディアに露出する価値」だった。名声こそが力となることや、記者たちがしばしばインタビュー内容の「裏取り」を怠ること、そしてイメージが現実を凌駕できることを熟知していたドナルドは、それを利用してメディアに取り上げられようとしてきた。
実際のところ彼は、行き過ぎな面が多々あったとしても、その時代、その時代に完全に適応しながら生きてきた。そして、前述のテレビ番組『アプレンティス』への出演により、トランプの長い職務経歴書に「テレビ・スター」という肩書きが加わる。こうして、若い世代にもドナルド・トランプの名が広まった。
それ以後、メディアはしばしば、カネや富、贅沢さを象徴する「記号」としてドナルド・トランプを使い始めた。また、「トランプ」という単語は、ためらうことなく成功するという意味や、節操なく自分を売り込むという意味にもなった。アメリカでは「ドナルド・トランプ的な」という表現もよく使われるが、これは褒め言葉であると同時に、嫌味でもあるのだ。  
  
 
 
 
 
 
 
 

 
2016/12