「もんじゅ」 文殊の知恵

自然界に存在しない 金属ナトリウム
自然の法則 何十億年の地球の歴史
その制御  人知で超えることなどできません

「もんじゅ」廃炉 当然の帰結
 


もんじゅ高速増殖炉諸説
 
 
自然の法則に 逆らえば
文殊菩薩も  神の御叱りを受けます
 
文科省 
ノーヘル賞もの  自然の法則にチャレンジ失敗 
お役人の面子料  一兆円 
お昼寝つづき 国民の税金で放置してきました
 
福島原発 凍土壁
太陽エネルギーにチャレンジ
( 温暖化か ロシアの永久凍土域 融けて縮小中 )
 
 
原発 既に御叱りを受けています
始まる廃炉 40-60年 コスト全て電気代に上乗せ 
全国民 平伏すしかありません
電力会社 気楽な稼業です
 
原発導入時の売り 「安い電力供給」 ( 廃炉コストには忘れたふり )
おまけは 地球温暖化防止の一助
廃炉コストと 化石燃料の温暖化防止・付加装置コストを 比較検証してみませんか
もんじゅ廃炉へ 政府、年内に結論 核燃サイクルは維持 9/22
政府は二十一日、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について関係閣僚会議を開き、「廃炉を含め抜本的な見直しをする」とした。一方で核燃料サイクルは維持し、新設の「高速炉開発会議」で、年末までに今後の方針を出す。もんじゅにはこれまで国費一兆円以上をつぎこんだ。再稼働には数千億円の追加費用が必要。成果を得られないまま幕引きとなる。
菅義偉官房長官は閣僚会議で「高速炉開発は、原発の新基準の策定など大きな情勢変化がある。本年中に、高速炉開発会議で、廃炉を含めて抜本的な見直しを行う」と述べた。
核燃料サイクルは、原発の使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、再利用する。プルトニウムを燃やすもんじゅはサイクルの柱だ。もんじゅに代わるものとして、フランスとの共同開発や、実験炉「常陽」(茨城県大洗町、停止中)の再稼働が検討される。
廃炉も容易ではない。もんじゅを運営する日本原子力研究開発機構の試算によると、三十年の期間と三千億円の費用がかかる。地元の福井県には、松野博一文部科学相が陳謝し、直接出向いて事情を説明した。
もんじゅは、消費した以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」とされた。半面、危険なナトリウムを冷却材に用いる必要があり、構造も複雑。一九九四年に本格稼働したものの九五年にナトリウム漏れ事故を起こして停止した。その後もトラブルが相次ぎ、稼働日数は二百五十日にとどまる。停止状態でも一日あたり約五千万円の維持費が必要だ。
原子力規制委員会は昨年十一月、約一万点の機器点検漏れなどを受け、所管する文部科学省に新しい運営組織を示すよう勧告した。運営主体は、動力炉・核燃料開発事業団に始まり、すでに二回変更されている。文科省は新しい受け皿を探したが、電力会社は難色を示し、引き受け手はなかった。
核燃、既に12兆円 本紙調べ
高速増殖原型炉「もんじゅ」を中心とした核燃料サイクルには、少なくとも十二兆円以上が費やされてきたことが本紙の調べで判明している。施設の維持・運営費で年間約千六百億円が新たにかかる。
本紙は一九六六年度から二〇一五年度までのもんじゅや再処理工場、取り出したプルトニウムを再利用する混合酸化物(MOX)燃料工場、高レベル廃棄物の管理施設の建設費や運営費、必要になる廃炉・解体費などを積算した。立地自治体への交付金も足しているが、通常の原発向けと判別が難しい場合は、全額を除外している。
その結果、判明しただけで総額は計約十二兆二千二百七十七億円。主なものでは、もんじゅは関連施設なども含めると約一兆二千億円。青森県六ケ所村にある再処理工場はトラブル続きで稼働していないが、七兆三千億円かかった。
核燃サイクルのコストを巡っては、電力会社などでつくる電気事業連合会が〇三年、建設から最終処分までの総額は約十九兆円と試算している。
<もんじゅと核燃料サイクル> 普通の原発は、主な燃料に「燃えるウラン」を使う。それに中性子をぶつけて、核分裂の連鎖反応を起こし、生じた熱を取り出し、タービンを回して発電する。
もんじゅでは、主な燃料がプルトニウム。中性子を高速でぶつけ、燃料周囲に置いた「燃えないウラン」をプルトニウムに変える。燃料が増えるので、「高速増殖炉」の名がある。
中性子を減速させないよう、炉内は水ではなく、高温の液体金属(ナトリウム)で満たされている。ナトリウムは水などと激しく反応し危険だ。
核燃料サイクルは、原発で燃やした使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、もう一度高速炉で燃やそうという試み。青森県六ケ所村に、巨費を投じて再処理工場が建設されている。だが高速炉がいつまでもできないので、普通の原発にプルトニウムを含む燃料を装填(そうてん)する「プルサーマル」が行われている。 
もんじゅ廃炉 サイクルの破綻認めよ 9/23
日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、政府の原子力関係閣僚会議は、廃炉を前提に抜本的に見直すことを決めた。関係自治体と協議の上、年内に最終決定する。
もんじゅには1兆円を超す国費が投入されたが、相次ぐ事故や不祥事で、この20年間余り、ほとんど稼働していない。再稼働には数千億円規模の追加投資が必要だという。それでも、成果が見通せない施設である。廃炉は当然だ。これまで決断を先送りしてきた政府の責任も、厳しく問われなければならない。
決断遅れた政府に責任
原発の使用済み核燃料を再処理し、抽出したプルトニウムをウランと混ぜた混合酸化物(MOX)燃料に加工して、原発で再び燃やす。これが核燃料サイクルで、日本は国策としてきた。消費した以上のプルトニウムを生み出す高速増殖炉は、使用済み核燃料の再処理工場とともに、サイクルの中核施設となる。
閣僚会議の決定で首をひねらざるを得ないのは、もんじゅを廃炉にするにもかかわらず、核燃料サイクル政策や高速炉の研究開発は維持する方針を示していることだ。
核燃料サイクルの実現には、技術面や経済性、安全保障の観点からいくつもの課題がある。青森県六ケ所村に建設中の再処理工場も、トラブルなどで完成時期の延期を繰り返してきた。そこで目くらましとして中核施設のもんじゅを廃炉にし、破綻しているサイクル政策の延命を図るのが本当の狙いではないのか。
政府は、核燃料サイクルで取り出したプルトニウムは準国産エネルギーで、エネルギー安全保障に資するという。だが、サイクルを維持することは、エネルギー政策で原発に依存し続けることを意味する。
東京電力福島第1原発事故の教訓の一つが、地震国日本で原発に依存するリスクは高いということだ。いずれ、やめる必要がある。政府はもんじゅ廃炉を機に、核燃料サイクル政策の幕引きに踏み切るべきだ。
もんじゅは、原子炉の熱を取り出す冷却材に、空気や水に触れると燃える性質を持つ液体ナトリウムを使う。水を冷却材に使う通常の原発に比べ、高度な技術が必要だ。1995年12月にナトリウム漏れ事故を起こして停止して以来、ほとんど稼働していない。維持管理費だけで年間約200億円かかっている。
多数の機器点検漏れなど安全管理上の不備が相次ぎ、原子力規制委員会は昨年11月、所管の文部科学省に運営主体の変更を勧告していた。
文科省は、電力会社など民間の協力を得て新法人をつくる案を模索した。しかし、電力自由化で競争環境が厳しさを増す中、電力会社に運営主体となる選択肢はなかった。
再稼働には、規制委の新規制基準にも合格しなければならない。政府の試算では、耐震補強工事などで約5800億円が必要となる。追加費用の多額さも、廃炉論を加速した。
もんじゅ廃炉後の焦点は、再処理で抽出したプルトニウムをどのように消費するかだ。英仏に委託した使用済み核燃料の再処理などで、日本は既に国内外で約48トンの余剰プルトニウムを抱える。テロや核兵器への転用の懸念を解消するため、政府は「余剰プルトニウムは持たない」と国際社会に繰り返し訴えてきた。
安全保障上の懸念も
電力会社でつくる電気事業連合会はMOX燃料を通常の原発で使う計画を立て、全国で16〜18基の原発に導入する予定だったが、福島第1原発事故の影響で崩れた。国内で稼働中の原発でMOX燃料を使っているのは、現時点で四国電力伊方原発3号機(愛媛県)だけだ。プルトニウムの消費は進んでいない。
政府は、フランスが建設予定の新型高速炉計画「ASTRID(アストリッド)」での共同研究などにより、高速炉の研究開発に引き続き取り組むという。だが、ASTRIDが順調に進む保証はない。
そもそも、福島第1原発事故後に政府の原子力委員会が実施した核燃料サイクル政策の評価によれば、経済面からは、使用済み核燃料を再処理するより、直接処分する方が有利との結果が出ている。
非核保有国の日本が再処理できるのは、88年に発効した日米原子力協定で認められているからだ。協定は2年後に改定時期を迎える。11月の米大統領選で選ばれる新政権がどう対応するかは分からない。
国内の政治家や外交当局には、将来の核保有を選択肢として残しておくべきだという意見もあるが、日本が核保有を選択すれば、世界から孤立する。現実的議論ではない。
核燃料サイクルを見直す上で、最大の課題は、関連施設を受け入れてきた地元への対応だろう。
もんじゅの関係自治体は、存続を要望している。再処理工場が立地する青森県は、核燃料サイクルを前提に、工場への使用済み核燃料受け入れを了承してきた。サイクル断念となれば、青森県は核のごみ捨て場になりかねない。電力会社も容易には使用済み燃料を引き取れない。
政府は、核燃料サイクルの継続にこだわるよりも、こうした問題の解決策にこそ知恵を絞るべきだ。  
もんじゅ廃炉へ プルトニウム利用きっぱり放棄せよ 10/5
政府の原子力関係閣僚会議は9月21日、高速増殖炉「もんじゅ」について「本年中に廃炉を含めて抜本的見直しを行なう」との方針を決定した。しかし、「核燃料サイクル」の推進と「高速炉」の研究開発の計画は維持するのだという。
おかしな話だ。核燃サイクルの中心的コンセプトは、使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを燃料にして高速増殖炉で発電を行ない、消費した以上のプルトニウムを生産することであり、「準国産エネルギー」と言われたゆえんだ。増殖しない高速炉(高速の中性子による核分裂反応が起きることからそう呼ばれる)でプルトニウムを燃やすだけでよいとするのは政策的位置付けの本質的変更に当たり、しかも、新炉を国内に設置する現実的なあてはないに等しい。
他方、プルトニウムをウランと混ぜて普通の原発で燃やす「プルサーマル」も、現状国内だけでプロセスが回らないのに加え、プルトニウムの消費量は限られる。プルトニウム増殖を断念し、消費を目的に据えても、余剰プルトニウム問題は解決できず、プルトニウム抽出・利用政策の破綻は隠しようがない。核燃サイクルの看板を掲げ続ける意味など、もう失われているのだ。
もんじゅをめぐってはこの間、「運転継続には10年間で6000億円必要」との情報がリークされるとともに、田中規制委員長も既存施設では新規制基準の適合性審査に合格する見通しはないとの認識を示すなど、廃炉に向けた包囲網は明らかに狭まりつつあった。だが、年末までに廃炉が決まりさえすれば、それでよいというわけではない。もともと規制委は昨年11月の対文科相勧告で、新たな運転主体の具体的特定が困難ならば「もんじゅが有する安全上のリスクを明確に減少させるよう」もんじゅのあり方を抜本的に見直すべきだとしており、もんじゅが現在抱えている危険性を低減する必要があるのだ。
ところが、新主体探しの迷走ぶりばかりが注目される中、安全確保の問題はなおざりにされた。だから原水禁や原子力資料情報室、原子力発電に反対する福井県民会議など6団体は9月7日、もんじゅの核燃料と冷却材ナトリウムを取り出し、別の安全なところに保管するよう命じることを、規制委に申し入れている。
六ヶ所再処理工場を含め核燃サイクルはきっぱり断念、放棄し、もんじゅの安全な廃炉プロセスに入る。これが最も合理的政策だ。 
もんじゅ廃炉でも50億円 文科省、存続時と変えず 10/14
自民党行政改革推進本部(本部長・河野太郎前行革担当相)は十三日、二〇一七年度予算編成に向け、文部科学省や経済産業省が要求している原子力関係予算の無駄を洗い出す会合を開いた。文科省は高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)に関し、存廃にかかわらず、新規制基準に対応する準備費五十億円の要求を取り下げない方針を示した。行革本部側は「廃炉はほぼ決まっており、不必要だ」と見直しを求めた。
政府は九月、もんじゅに関し、廃炉を含め抜本的に見直す方針を決定。新設の高速炉開発会議が、もんじゅの最終的な扱いやもんじゅに代わる高速炉開発方針の検討を始めており、年末までに結論を出す。文科省は八月、一七年度予算の概算要求で、もんじゅの新規制基準策定に備え、地震や津波、噴火に対する安全性を解析・評価する費用五十億円を計上していた。
文科省の担当者は行革本部の会合で「得られるデータは廃炉になった場合も有効だ」と述べ、仮に廃炉が決まった場合でも五十億円の要求を見直さない姿勢を示した。これに対し、秋本真利本部長補佐は「項目だけ要求し、本当に必要になったら補正予算で要求すればよい」と批判した。
会合では、使用済み核燃料運搬船「開栄丸」の本年度の関連経費六億円が支出できずにいる問題も取り上げた。文科省の担当者は「事業主体の日本原子力研究開発機構と船を所有する運送会社『原燃輸送』との協議が整っていない。早期に協議を終了できるように調整したい」と説明した。 
もんじゅ廃炉へ:政府、年内に正式決定 10/19
 核燃料サイクル推進は「堅持」 科学技術
政府は9月21日開いた原子力関係閣僚会議で、日本原子力研究開発機構が運営する高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)に代わる新たな高速炉の研究開発方針を、年内に策定することを決めた。新方針が決まり次第、もんじゅの廃炉を正式決定する。核燃料サイクル推進の政府方針は堅持し、新方針は経済産業相を中心とした官民の「高速炉開発会議」を設置して検討を進める。
国内の大手メディアによると、新方針を巡る議論はフランスが計画している新型高速炉「ASTRID(アストリッド)」の共同研究を軸に進む見通しという。もんじゅはこれまで1兆円を超える巨費が投入されたが、トラブル続きでほとんど稼働しなかった。廃炉は日本のエネルギー政策の転換点とも位置付けられる。
事故・トラブル相次ぎ、22年間で運転わずか250日
核燃料サイクルでは、原子力発電所の使用済み核燃料を再処理し、取り出したウランやプルトニウムを再び原発の燃料として利用することを想定。発電しながら消費量以上の燃料(プルトニウム)を生み出す高速増殖炉は政府の核燃料サイクル政策の中核施設で、「夢の原子炉」と呼ばれて1960年代から研究開発が推進された。
もんじゅは実験炉「常陽」(1970年着工、77年臨界、現在停止中)に続く第2段階の「原型炉」で、1980年に着工。研究開発が順調なら、第3段階の「実証炉」、第4段階の「実用炉」と進むはずだった。
もんじゅは95年8月に発電を開始したが、わずか4カ月で冷却材のナトリウム漏れ事故が発生。2010年には14年ぶりに運転再開にこぎ着けたものの、再度の事故で運転を停止した。その後もトラブルが相次ぎ、これまでの運転実績は22年間でわずか250日にとどまっている。
耐震補強に膨大なコスト、存続は困難に
今回「廃炉もやむなし」と決まった背景には、2つの大きな要因がある。安全管理の組織的な不備と、存続させた場合には膨大なコストがかかることだ。
もんじゅでは2012年、保安規定に基づく機器の点検漏れが9679個もあったことが発覚。13年に原子力規制委員会が施設を立ち入り検査したところ、安全上最も重要とされる機器について、さらなる点検漏れがあったことが確認された。14年には、施設内の監視カメラが50台以上も故障したまま放置されていたことも判明。規制委は15年11月、運営主体の変更を文部科学省に勧告したが、同省は具体策を打ち出せなかった。
また、東日本大震災(2011年3月)の東京電力福島第1原発事故を踏まえた新規制基準が導入された結果、もんじゅ再稼働には耐震補強など大幅な改修工事が必要となった。政府の試算では約5800億円の追加費用が必要で、再稼働までには10年はかかる。施設の維持費だけでも年200億円が必要で、政府・与党内では廃炉を求める声が高まっていた。  
もんじゅ廃炉検討に地元の意見反映を 敦賀市原子力懇 10/19
敦賀市の区長連合会や漁業協同組合などでつくる市原子力発電所懇談会の百十三回会合が十八日、同市の敦賀美方消防組合消防本部講堂であった。政府が廃炉を含めた抜本的な見直しを決めた高速増殖原型炉もんじゅを巡り、所管の文部科学省に対して、委員から地元の意見を反映するよう求める声が上がった。
文科省の高谷浩樹研究開発戦略官は、地元説明が遅れたことを陳謝。政府の高速炉開発会議の初会合の概要を説明した。
質疑で、委員からはもんじゅの方針決定に対し「一方的に地元の説明なしになされ、大きな不信感を抱かざるを得ない」などと批判した。高谷戦略官が「(地元の意見を)高速炉開発会議に出る大臣にフィードバックしていく」と答えると、座長の渕上隆信市長は「高速炉開発会議は技術的な話。もんじゅの扱いは原子力関係閣僚会議で決める。地元の意見をどうやって吸い上げるのかをきちんと明示してほしい」と迫った。
このほか、委員を務める福井大付属国際原子力工学研究所の竹田敏一特任教授が、もんじゅの利活用について提案。実証炉に不可欠となる安全性のデータを取得できると主張。京大や名大の研究者へのヒアリングから、もんじゅに幅広い研究課題があることを示し、研究開発炉としての必要性を説いた。 
ポスト「もんじゅ」/夢のばらまきはたくさんだ 10/20
事の正否は別にして、転んでもただでは起きないとはまさにこのことかと、いささか感心してしまう。
鳴かず飛ばずのありさまだった高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉がほぼ確定的になったと思ったら、国はまたも高速炉の開発に乗り出すという。
今月立ち上げた「高速炉開発会議」で年内に方針を決める予定だが、フランスとの共同研究や高速増殖炉の実験炉「常陽」(茨城県)の再活用という案が浮かんでいる。
「もんじゅ」は廃炉でも核燃料サイクル政策は堅持というのが国の考えだが、それがそもそも無理がある。無理を押し通そうとすれば原子力の在り方をさらにゆがめ、解決が迫られている課題を先延ばしにするだけだ。
「もんじゅ」に代わって唐突に浮上したのが、フランスが計画している「アストリッド(ASTRID)」と呼ばれる原子炉。資源エネルギー庁によれば、「放射性廃棄物の減容や有害度低減に向けた研究開発」のための実証炉で、2019年に建設するかどうか決まるという。
発電だけでなく放射性元素の分離や変換も目指すらしいが、技術的にはそう簡単でないはず。高いエネルギーの中性子を用いる「高速炉」になるが、「もんじゅ」のような核燃料の増殖は目的にしていないようだ。
実用化できたとしても原子炉だけでは役に立たない。専用の再処理工場や核燃料製造工場が必要になる可能性が高い。これまでとは別の核燃料サイクルになるわけだから、費用は膨大だろう。
新型高速炉の技術開発と言えば聞こえはいいが、全体のコストや必要性、本当に実現できるのかどうかを厳しく見極めないと、とんでもないことになりかねない。
本来であれば「もんじゅ」の廃炉と共に核燃料サイクル政策を断念すべきだった。それができない一因は、再処理工場などが集中立地する青森県との関わりにある。
核燃サイクル政策をやめれば、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理工場の存在意義が宙に浮く。青森県はおそらく、全国の原発から運ばれた使用済み核燃料の搬出を求めるだろう。
そうなったら各原発は窮地に陥る。使用済み核燃料を敷地内に保管するしかないが、いずれ満杯になって運転継続が不可能になってしまう。
核燃サイクルは今や、原発の運転を可能にする方便のようになってしまった。それなのにまた、実現が不明確な核燃サイクルに乗り出すことなどあり得ない。
国民の側から見れば、原子力の最優先課題は核燃サイクルでも高速炉でもなく、福島第1原発事故の後始末だろう。気が遠くなるような費用と年月がかかる。新型原子炉にうつつを抜かしている場合ではないのだ。 
もんじゅ「死刑宣告」で核燃料サイクルはどうなる 10/21
 原子力の未来をビジネスライクに考える
高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉が実質的に決まったのを受けて、10月7日に政府の「高速炉開発会議」の初会合が開かれた。世耕弘成経済産業相は「高速炉の開発は必要不可欠だ」と述べ、従来の高速増殖炉(FBR)に限らず広く高速炉(FR)を開発することを示唆した。
しかし現実に検討されているのは、フランスの開発している「ASTRID」と呼ばれる高速増殖炉だ。それをあえて「増殖炉」と呼ばないところに、原子力産業の窮状があらわれている。かつて「燃やせば燃やすほど燃料が増える夢のエネルギー」といわれた高速増殖炉の夢は幻に終わったのだ。
高速増殖炉は死んだ
高速増殖炉とは「高速の中性子を使って燃料を増殖させる原子炉」という意味で、燃料にはウランを再処理してつくったプルトニウムを使う。FBRでウランに中性子を当てるとプルトニウムに変わり、プルトニウムが燃料より「増殖」するのが売り物だ。
この反応を起こすのに必要な「高速」の中性子を使う原子炉を広く「高速炉」と呼ぶ。普通の原子炉(軽水炉)と違う特徴は、原子炉を冷やすのに液体のナトリウムを使うことだが、ナトリウムは配管から漏れると、酸素や水と反応すると燃え上がる厄介な性質がある。
これは軽水炉で水が漏れるのと同じで、重大な事故に発展するおそれはないが、火災が起こるとマスコミが騒ぎ、地元が心配する。もんじゅも1995年にナトリウムが漏れて火災が発生し、その後も20年以上、止まったままだ。FBRで「増殖」するプルトニウムの効率は悪く、核燃料サイクルへの巨額の投資に見合わない。
原子力規制委員会もさじを投げ、「運営主体を変更すべきだ」と提言したが、今からもんじゅを引き受ける電力会社はなく、政府も否定的だ。こうして20年たってやっと撤退が決まったのだが、再処理工場はFBRでプルトニウムが増殖することを前提にして建設されたので、その挫折で核燃料サイクルは宙に浮いてしまった。
これは「ダイヤモンドをつくる工場」を前提にしてその関連施設を数兆円かけてつくったら、肝心のダイヤモンドがつくれなかったような話だ。本当にFBRが実用化できるのかどうか確認しないで、先に再処理工場をつくったのが失敗だった。
ウランは9000年分ある
原子力の先進国であるフランスでも、「増殖」を目指したFBR「スーパーフェニックス」は断念した。その代わりに開発されているのが、使用済み核燃料からつくるMOX燃料(ウランとプルトニウムの混合燃料)を燃料にしてプルトニウムを効率的に使うASTRIDだ。
しかしASTRIDを本当に建設するかどうかはまだ決まっていない。フランス政府は2019年に判断するとしているが、実用化の見通しははっきりしない。その開発・建設にかかる巨額の経費の半分を日本に負担してほしいという打診もあったという。
もちろん原発をやめる必要はない。気候変動のリスクを考えると、化石燃料の消費をこれから増やすことには問題がある。軽水炉は安定した技術なので、安全施設を多重化すれば、火力発電よりリスクは小さい。
ただ核燃料サイクルを維持すべきかどうかは別の問題だ。仮にASTRIDが実用化しても、それはプルトニウムを再利用して長持ちさせるだけの技術だから、これはその再利用による節約のメリットが巨額の投資に見合うかという経済問題である。
根本的な疑問は、政府が核燃料サイクル計画の前提にしている天然ウランの埋蔵量が正しいのかということだ。
文部科学省の参照したOECDの推定によれば、在来型資源総量は1670万トンで、世界の需要の100年分以上ある。さらに非在来型ウランが2200万トンあり、合計すると図のように3870万トンで、少なくとも230年分ある。非在来型の価格は在来型より高いが、その85%以上はモロッコの燐灰土に場所が特定されているので採掘可能だ。
さらに海水ウランの資源量はほぼ無尽蔵(9000年分)であり、それを精製する膜技術は急速に進歩している。この分野では日本が最先進国で、在来型ウランの2倍まで価格は下がっている。これも技術や価格の不確実性はあるが、これから(もっと不確実な)核燃料サイクルに莫大な投資をするよりましだろう。
「全量再処理」は危険なギャンブル
要するに核燃料サイクルは、安全性以前に不要になるリスクが大きいのだ。高速炉以外の(トリウム炉や進行波炉などの)技術ではプルトニウムは必要ないので、軍事転用できる危険物質を日本が生産する積極的な理由はない(核武装するとしても今ある量で十分)。
だからウランを全量再処理することは危険なギャンブルであり、なるべく多様なポートフォリオをもったほうがよい。軽水炉を更新すれば、あと50年はもつので、それまでに実用化のめどを立てれば十分だ。
では使用済み核燃料はどう処理するのか。それは多くの関係者が(密かに)合意しているように、現在の再処理工場のある青森県六ヶ所村に燃料棒のまま保管すればいい。そのコストは再処理するより8兆円ぐらい安く、テロリストが核兵器に転用することも不可能だ。
今でも青森県むつ市には中間貯蔵施設がある。ここに貯蔵されている使用済み核燃料は「乾式処理」と呼ばれる空冷の施設で、技術は確立している。これは学術会議などの反原発派が主張する「暫定保管」と同じで、六ヶ所村には300年分の使用済み核燃料を安全に保管できる土地がある。
だからビジネスライクに考えれば、答は1つしかない。全量再処理をやめ、六ヶ所村を中間貯蔵に転用できるように青森県との覚書を修正することだ。もちろん青森県にも六ヶ所村にも、新たな名目の交付金を出せばいい。迷惑施設に迷惑料を払うのは当たり前で、それ以外の解決法はない。
最後に残る問題は、今まで核燃料サイクルの開発に取り組んできた技術者の処遇だが、原子力工学の基礎知識は原子炉も再処理も同じだ。これからまたゴミ処理の技術を開発するより、第4世代の新しい原子炉技術に取り組むほうが、若者も集まるだろう。
重量あたりのエネルギーが石炭の300万倍もある原子力の可能性は大きく、まだ日本が世界のトップに立っている数少ない技術だ。今までイノベーションを妨げてきた国策民営の不透明な運営をやめ、ビル・ゲイツのような投資家の資金も募って民間ベースで基礎技術を開発し、実用化も電力会社に任せるガバナンスの改革が必要だ。 
政府、高速炉開発案に「もんじゅ」廃炉方針を明記 12/19
 近く関係閣僚会議で正式決定
政府は19日、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)に代わる高速炉の方向性を議論する「高速炉開発会議」で、今後の開発方針案を示した。研究開発の継続に必要な知見は「もんじゅ再開によらない新たな方策によって獲得を図る」と明記し、廃炉の方針を明確にした。近く原子力関係閣僚会議で正式に決定する。
また、文部科学省は会議でもんじゅ廃止措置の行程表を示した。5年半で使用済み燃料を取り出し、30年で廃炉にする。施設の解体費や工事中の維持管理費などで総額約3750億円超のコストがかかるという。
高速炉開発会議には、世耕弘成経済産業相、松野博一文科相、電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)らが参加した。
世耕弘成経産相は、「高速炉開発会議の議論はこれで一区切り。今後はより技術的な具体論に議論を落とし込む」と述べた。
政府は核燃料サイクル政策の推進を堅持するとともに、もんじゅの代替高速炉の開発に向け、作業部会を設置。年明けから工程表の策定を始め、2018年をめどに取りまとめる。
フランスの実証炉「ASTRID(アストリッド)」との共同研究や、もんじゅの前段階の高速実験炉「常陽」(茨城県)などを活用し、原型炉であるもんじゅの次段階に位置する実証炉を国内に建設するとしている。 
「もんじゅの失敗を繰り返さないために」 12/19
高速増殖炉もんじゅについて、政府はきょう、正式に廃炉にする方針を表明。その一方で高速炉開発と核燃料サイクルは続け、もんじゅの後継として実用化手前の実証炉の開発を目指す方針も。もんじゅをなくすのに、政策を見直すこともなく高速炉開発にこだわって、この先失敗を繰り返すことにならないのか。
政府の高速炉開発会議がまとめた開発案のポイントは
○ 高速炉は放射性廃棄物を減らせ、エネルギーも有効利用できることから意義がある
○ もんじゅがなくてもほかの設備で実証炉開発は可能で、2018年までに工程表を作成する。
あくまで高速炉開発にこだわり、核燃料サイクルを堅持するとしている。
もんじゅについては正式に廃炉にする方針を表明。しかし福井県知事は立地に協力してきたのに、地元への説明も不十分で拙速すぎるなどと反発。政府はあらためて協議の場を設けるものの、廃炉の方針自体は変えないという。
この一連の方針は多くの問題を抱えている。
日本は、原発の使用済み燃料を再処理工場に運んでプルトニウムを取り出し、もんじゅのようにプルトニウムを増やすことができる高速増殖炉で繰り返し使う「核燃料サイクル」を基本。しかし要となるもんじゅはトラブルが相次ぎ、ほとんど運転できなかった。もんじゅ廃炉は当然の流れで、プロジェクトとしては失敗に終わったと見るべき。
要がなくなるから、当然核燃料サイクル全体の見直しが必要。ところが見直すどころか、さらに先を目指すと言う。これは原発開発の大原則を破るもの。小型の実験炉で基本性能を確認、原型炉で安全性や発電能力を検証。さらにコスト的に見合うか確認する実証炉を経て、商業炉を建設する。政府はそのように説明してきた。もんじゅは原型炉だがフルパワーで運転したことはなく、日本として高速炉の安全性や発電性能を確認できたわけではない。今、その先の実証炉が可能とは言えないはず。
ただ政府は国内の実験炉やフランスの実証炉計画に参加することで、十分知見が得られるという。本当にそうなのか。このうち40年近く前日本で初めて運転を始めた実験炉「常陽」を取材。格納容器中央部の床下に原子炉。中にはプルトニウムの燃料と冷却材のナトリウム。周りの機器を含め、全体に古さは否めないが、手入れは行き届いている印象。これまでプルトニウムが増えるか、燃料の組成がどう変化するのかなど基礎的な研究。ただ出力はもんじゅの5分の1と小型で、発電設備がない。中でも発電に必要な蒸気を作る蒸気発生器は海外でナトリウムが漏れて激しく反応する事故も報告され、安全性の高い機器の開発が必要だが、常陽ではできない。これについて政府は、フランスが計画する実証炉で確認できるというがまだ設計段階で建設されるかどうかも決まっておらず、発電設備の確認ができる保証はない。
日本のエネルギー事情からどうしても必要と言うのであれば、もんじゅの失敗を教訓に、基盤研究からやり直し、運営主体も改善して出直す、というならわからないでもないが、背伸びして一つ上に行こうとすれば、失敗を繰り返すことになりかねない。
決め方にも問題。高速炉開発会議は経済産業大臣に文部科学大臣、それに原子力機構と電力業界、三菱重工業と、これまでもんじゅを推進してきたメンバーだけで構成。しかも議論は多くが非公開。毎回数十分の会議を4回開いただけ。これでは最初から高速炉開発ありきかと。もんじゅ関係者ではない、第3者の有識者による委員会を設置し、開かれた場でもんじゅ問題の総括と政策の見直しをしなければ。政府の意思決定のどこに問題があったのかなど、政策面からももんじゅ失敗の教訓を明らかにしなければ。
その上で核燃料サイクルの見直し。ポイントとなるのは使用済み燃料の扱い。政府が核燃料サイクルを堅持しようとする大きな理由の一つが、一般の原発の再稼働。再稼働すれば使用済み燃料が出るが原発のプールは満杯に近いところもあり、運転停止に追い込まれる可能性。再処理工場持つ青森県も核燃料サイクル続けることを受け入れの条件、やめるのであれば使用済み燃料を元の原発に返すと。政府としては、高速炉開発の意思表明はしておかなければならない事情。
しかしこれでは本末転倒。使用済み燃料をすべて資源と言うのではなく放射性廃棄物として処分できるようにする必要。そしてそのための中間貯蔵と最終処分に向けた選定作業を急がなければならない。 
“1兆円”の教訓は もんじゅ廃炉が残したもの 12/27
1兆円を超える巨費が投じられた高速増殖炉「もんじゅ」。政府は、今月21日、廃炉にすることを正式に決定しました。運転開始から22年で、稼働していたのはわずか250日。それにもかかわらず、政府は、もんじゅの次の「実証炉」というステップに向け、高速炉開発を進める考えを示しました。
もんじゅが残した教訓は、今後の原子力政策に生かされるのでしょうか。
政策の要だったもんじゅ
原子力の基本政策となる「核燃料サイクル」。福井県にある研究開発段階の高速増殖炉もんじゅは、その要となる施設でした。
エネルギー資源に乏しい日本は、原発で出る使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、高速炉で再び利用する核燃料サイクルを推進してきました。
目指したのは高速炉の中でも、使った以上の燃料を生み出す高速増殖炉で、当初は昭和60年代に実用化する計画でした。
しかし、もんじゅの運転開始は当初の計画より遅れて平成6年。翌年にはナトリウムが漏れる事故が起き、長期停止を余儀なくされます。
その後もトラブルや安全管理上の問題が相次ぎ、政府は、今月21日、もんじゅを廃炉にすることを正式に決定。
稼働実績はわずか250日で、この間の最大の出力も40%と、役割を十分に果たせないまま、1兆円を超える巨費が投じられた巨大国家プロジェクトに幕が下ろされたのです。
政府判断の背景は
発端は、もんじゅで相次いだ安全管理上の問題でした。
事態を重く見た原子力規制委員会は去年11月、監督官庁の文部科学省に、日本原子力研究開発機構に代わる新たな運営主体を求める異例の勧告を出します。これに対し文部科学省は、もんじゅの存続を前提に議論し、ことし5月の時点では、「関係省庁と調整し、電力会社やメーカーの協力を得て、新しい運営主体を設立する」としていました。
しかし9月、政府は「廃炉を含めて抜本的に見直す」と、方針を転換。背景に何があったのでしょうか。もんじゅを所管する文部科学省と、原子力政策を担当する経済産業省との間で、何度か協議が行われました。
経済産業省は、「電力会社やメーカーは原発再稼働で余裕がなく、規制委員会から重い課題を突きつけられたもんじゅに協力するとは考えにくい」「もんじゅを動かさなくても実証炉の開発は可能で、もんじゅに多額の投資をするのであれば、高速炉開発のための別の投資をした方ほうがよい」もんじゅにこだわらなくても、核燃料サイクルの柱となる高速炉開発はできるという考えを示したのです。
文部科学省内の検討でも、もんじゅの運転を続けるには、新しい規制基準の審査や対策に長期間を要し、5400億円以上の追加費用がかかることがわかり、運転再開は難しいとする見方が強まっていきました。
こうした議論を踏まえ、政府は、時間的・経済的コストが増大しているとして、廃炉を決めました。その一方で、核燃料サイクルを堅持するため、もんじゅの次のステップにあたる「実証炉」、つまり実用化一歩手前の高速炉の開発を続けるとしたのです。
地元に走った衝撃
地元・福井県敦賀市には大きな衝撃が走りました。
もんじゅを中核施設として、国、電力事業者、それに地元企業などが参画する「エネルギー研究開発拠点化計画」を策定するなど、原子力やエネルギーの研究を進めるまちづくりに力を入れてきたからです。
こうした状況を踏まえ政府は、もんじゅを廃炉にしたあとも、周辺を原子力の研究や人材育成の拠点となるようもんじゅの敷地内に研究炉を新たに設置するなど、地域経済に影響が出ないよう、最大限努力するとしました。
一方、福井県の西川知事は、別の理由をあげて、廃炉の方針を「容認できない」という姿勢を示しました。廃炉作業を引き続き、原子力機構に任せるとした点です。廃炉作業に高い安全性が求められることに変わりはなく、規制委員会から、「もんじゅの運転を安全に行う資質がない」と指摘された原子力機構に任せていいのかと、疑問を呈したのです。そのうえで、廃炉の作業に入るには県が原子力機構と結んだ安全協定をもとに、政府が丁寧に説明し、地元の納得を得なければ、進めることはできないと注文をつけました。
政府は地元の理解を得るための対応を具体化していくと応じ、来年以降も議論を続けることになりました。
廃炉作業の課題
もんじゅの廃炉作業は、およそ30年にわたって行われ、費用は少なくとも3750億円かかるとされています。
規制委員会は、今後、原子炉からの核燃料の取り出しと廃炉の計画の申請を早期に行うよう原子力機構に求める方針ですが、さまざまな課題があります。
まず、原子炉に入っている核燃料は、一般の原発と異なり、簡単には取り出せません。370体あるもんじゅの核燃料は互いが支え合うように炉内に入っているため、崩れないよう、核燃料を取り出すごとに模擬燃料を入れる必要があり、この模擬燃料を新たに作るのにおよそ2年はかかるということです。
さらに、核燃料を取り出すための機器や装置の点検などにも時間がかかり、すべての核燃料を取り出すには5年半もの時間を要するとしているのです。
原子炉を冷やすために使われていたナトリウムも課題の1つです。もんじゅでは、すべての燃料を取り除いたあとに回収することにしていますが、ナトリウムを保管する機器を新たに設置しなくてはなりません。処分方法なども決まっておらず、海外のケースを参考にしながら、進めていく必要があります。国内で高速増殖炉の廃炉の経験はなく、より長い期間に及ぶ可能性があります。
規制委員会は、廃炉が安全に進むよう規制を強化するため、作業が妥当かどうかを議論する専門の監視チームの設立や廃炉に関わる法令の改正などを検討する方針です。
次の高速炉開発 課題は
廃炉となるもんじゅの代わりとして、政府は、次の実証炉の開発を目指し、年明けから開発作業の工程表の策定に入ることにしています。
開発は、フランスが建設を目指す高速炉「アストリッド」への協力などを通じ、新しい知見を得ながら進めるとしていますが、課題もあります。
平成26年からアストリッド計画に参加してきた「三菱FBRシステムズ」は、国内で唯一、高速炉の設計を専門としていますが、もんじゅを設計したベテランが次々と退職し、技術力の維持が大きな課題となっていて、アストリッドの開発協力を通じて技術力を高めようと考えています。
しかし、将来の高速炉の開発につながる海外の中核技術の設計にどこまで関われるかは、まだわかっていないといいます。
また、アストリッドは日本が進めてきた高速炉とは構造が異なるため、耐震などの問題からデータや経験をどこまでいかせるのか、専門家の中では疑問視する声もあります。
さらに、アストリッドの建設コストが日本円にして数千億円に上るとされている中、日本の政府関係者によると、建設にあたり、フランス側から費用の半分の負担を求めていると受け取れる考え方も示されたということです。
こうした状況から、アストリッドへの開発協力で、日本が費用に見あった技術やノウハウを本当に得られるのか不透明だという懸念があるのです。
十分な検証と幅広い議論を
もんじゅの廃炉を決めた日、松野文部科学大臣は、記者会見で、「必ずしも、当初期待された成果まで至らなかったことは事実だが、私自身は一定の成果だったと判断している」と述べました。
確かにもんじゅを設計・建設して、最大40%の出力で運転したデータが取れたというのは事実ですが、運転を長期間続けて、安全を維持するための技術が確立されたかというと、部分的と言わざるを得ません。
国は、必要最低限の知見を得るためには、100%の出力で5年前後、運転を行う必要があるとしていました。それができずに廃炉が決まったのでは、「失敗だった」と評価されても、しかたありません。そのような状況で、政府は、一足飛びに実証炉に進もうとしています。
国の原子力委員会の委員長代理を務めた長崎大学の鈴木達治郎教授は、「高速炉開発の途上にあるもんじゅが十分な成果をあげられずに廃炉になった今、もんじゅの教訓を十分に検証し、その次のステップに進むのが妥当かどうか、根本的な政策の見直しの議論をさまざまな立場の人が参画する開かれた場で行うべきだ」と指摘しています。
福島第一原発の廃炉や事故の賠償などの費用が21兆円以上に膨らむ見通しが示されている中、高速炉の開発や核燃料サイクルの確立は、今後も多額の費用を投じようという大きな問題です。
もんじゅが残した教訓を十分に踏まえ、幅広い議論を行った上で、地元や国民に丁寧に説明することが求められています。 
「高速炉」議事録なし 開発議題 06〜14年の官民会議 2017/1/4
経済産業省と文部科学省、電気事業連合会の幹部らが、二〇〇六〜一四年に高速増殖炉の実用化に向けて話し合った「五者協議会」の議事録が作成されていないことが、本紙が経産省に行った情報公開請求で分かった。協議会は開発体制や費用の分担のあり方などを原子力委員会に報告し、実証炉開発で重要な役割を担ってきた。会合は非公開で議事録もないため、核燃料サイクル政策の意思決定過程の一部が検証不可能な「ブラックボックス」になっていた。
協議会は、日本原子力研究開発機構が高速増殖原型炉「もんじゅ」と並行し、後継となる実証炉の研究を実用化につなげるため〇六年七月に設置された。経産、文科両省と電事連、日本電機工業会、原子力機構の幹部が出席し、事務局は資源エネルギー庁原子力政策課が務めた。
エネ庁によると、一四年までに八回の会合が開かれ、高速増殖炉のほか、サイクルに必要な新しい再処理工場のあり方なども話し合われた。エネ庁の担当者は「(法定の)審議会とは違い、半分私的な研究会のような位置付け。なぜ議事録が作られなかったのかは分からない」と話す。
当初から原子力機構の副理事長として出席した岡崎俊雄氏は「新型転換炉ふげんは原型炉で成功したのに、電力会社の反対で実証炉へ進めなかった。協議会はその教訓から、着実に実用化につなげるためにできた」と説明。非公開の理由は「率直に議論する場。実効性ある議論を第一に考えた」と話す。
協議会は〇六年十二月には、実証炉の設計開発を中核企業一社に集中させることを決め、報告を受けた原子力委がこれを了承している。翌年には一カ月間の公募の結果、原子力機構幹部や学識者による選定委員会で、原発事業を手掛ける三菱重工業が中核企業に選ばれた。だが、原子力機構は入札した企業名や数などを明らかにせず、選考過程には不透明さも残る。
政府は昨年十二月、ほとんど動かせなかった原型炉もんじゅの再稼働を諦めて廃炉としつつ、一段階先の実証炉の開発を再開させることを決めた。政府方針の検討会議には三菱重工社長も出席し「中核メーカーとして取り組んでいきたい」と発言。五者協議会など従来の枠組みがある程度踏襲されるとみられる。
NPO法人原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「たとえ公的な位置付けでなくとも議事録を残していくことで、後々の判断材料になる。今後の実証炉開発で五者協議会がどんな役割を果たすのかは不明だが、公開のもとに進めるべきだ」と指摘する。
<実証炉開発> 高速増殖炉は、使う以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」と呼ばれ、国は基礎研究の実験炉(常陽)、発電技術を確認する原型炉(もんじゅ)、経済性を検証する実証炉の段階を踏んで実用化を目指してきた。実証炉は、もんじゅの建設が始まった1980年代に電力業界中心の開発が動きだしたが、95年のもんじゅナトリウム漏れ事故をきっかけに白紙化。99年に当時の核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構)を中心とした研究が再び始まったものの、2011年の東京電力福島第一原発事故で凍結されていた。 
原子力委員会 “高速炉開発 急がず柔軟に” 1/13
政府が福井県にある高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉を決め、高速炉開発を今後も進めるとしたことについて、13日に開かれた国の原子力委員会の会合で、委員からは、高速炉の商業化は現状では経済性がなく、原子力を取り巻く環境が大きく変わる中、急がず柔軟に進めるべきだといった慎重な意見が出されました。
原子力委員会は、国の原子力政策に専門的な立場から意見を述べるのが役割で、政府が先月、もんじゅの廃炉を決め、高速炉開発を今後も進める方針を示したことについて、13日に見解を取りまとめました。
それによりますと、高速炉開発はこれまで商業化が重視されていたとは言い難いと指摘したうえで、原発事故をへて電力自由化が進む中、今後は一般の原発よりもコストを抑えるといった目標を決めるなど、高速炉がビジネスとして成立するための条件を検討すべきだとしています。
見解の取りまとめにあたって、委員からは、「原発の燃料のウランがふんだんにある現状では経済性がないと思う」という意見が出されたほか、岡芳明委員長も「コストが高いものは使えず、ほかの電力に負けてしまう。原子力を取り巻く環境は大きく変わっており、高速炉開発は急ぐ必要はない」などと述べ、柔軟に対応すべきだという考えを示しました。
高速炉開発をめぐって、政府は、今後、工程表の策定を始めることにしていて、原子力委員会は今回の見解も参考にしてほしいとしています。
高速炉開発「商業利用を念頭に」 原子力委員会が見解 1/13
国の原子力委員会は13日、高速炉開発について、政府が昨年末に廃炉を決めた高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)の反省を踏まえ、商業利用を念頭に研究開発を進めるべきだとの見解をまとめた。原発事故や電力自由化で電力事業の競争環境は変化しており、商業化の条件や目標を検討しながら、開発や建設コストの低減に努めることなどを求めた。
岡芳明委員長は「高速炉開発は急ぐ必要はなく、今はよく考える時期だ」と強調した。同委員会はこうした見解をもとに今春以降、原子力利用に関する基本的な考え方をまとめる方針だ。 

 
2016/9
 
 
●もんじゅ
日本の福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の高速増殖炉である。研究用原子炉との位置付けから、商用原子炉と異なり、文部科学省の所管となる。
MOX燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物)を使用し、消費した量以上の燃料を生み出すことのできる高速増殖炉の実用化のための原型炉であり、高速実験炉常陽でのデータをもとに建設された日本で2番目の高速増殖炉である。核燃料サイクルの計画の一環であり、新型転換炉ふげんと共に開発が進んでいた。日本は高速炉開発を国家プロジェクトと位置付けており、国際的にも高速炉を始めとした第4世代原子炉の研究開発において主導的な役割を果たしているとされた。もんじゅはその中心となる施設である。2011年現在、常陽及びもんじゅによって得られたデータをもとにして高速増殖炉開発の次の段階となる実証炉の設計が行われている。
もんじゅは1995年に、冷却材の金属ナトリウム漏洩とそれによる火災事故を起こし、さらにそれが一時隠ぺいされたことから、物議を醸した。その後、運転再開のための本体工事が2007年に完了し、2010年5月6日に2年後の本格運転を目指して運転を再開した。しかし、2010年8月の炉内中継装置落下事故により再び稼働ができなくなった。2012年に再稼働する予定であったが、2015年夏時点は未定である。
もんじゅの目的は、高速増殖炉の実用化(商用化)に向けた技術を原型炉(もんじゅ)によって開発し、その設計や建設、そして稼働の経験を通じて高速増殖炉の発電性能および信頼性・安全性の実証、また高速増殖炉の経済性が将来の実用炉の段階において既存の発電炉に対抗できる目安を得ることであり、高速増殖炉の研究開発の場として今後の利用が予定されている。
もんじゅは日本原子力発電株式会社敦賀発電所と関西電力株式会社美浜発電所の2つの発電所と接続されている。
   
名称の由来
「もんじゅ」の名は仏教の文殊菩薩に由来する。若狭湾に面する天橋立南側にある天橋山智恩寺の本尊から来ているといわれる。新型転換炉「ふげん」ともに「文殊、普賢の両菩薩は、知慧と慈悲を象徴する菩薩で、獅子と象に乗っている。それは巨獣の強大なパワーもこのように制御され、人類の幸福に役立つのでなければならない」と願いを込めて命名された。「もんじゅ」の命名は、他の新型動力炉「常陽」「ふげん」とともに動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の副理事長・清成迪(きよなり・すすむ)が発案したものであるが、その発案に当たっては、当時の仏教学界や国文学界の首脳とも相談したということが当時の広報室長・関根瑛應の証言で判明している。仏教学界では宮本正尊、国文学では土岐善麿の名前が挙げられている。巷間でよく言われる曹洞宗の大本山永平寺の貫首(住職)が名付け親という話、清成に助言したというのは誤情報である。永平寺の機関誌『傘松』第630号(1996年3月)では、貫首命名説を訂正・謝罪しており、命名の時期が1970年(昭和45年)ということからも成り立たない。
    
歴史
1967年(昭和42年)10月2日:動力炉・核燃料開発事業団(動燃)設立。
1968年(昭和43年)9月26日:高速増殖炉の実験炉「常陽」の次の段階として、原型炉
     の予備設計開始。
1970年(昭和45年)4月:建設候補地に、福井県敦賀市白木を選定。立地自治体の敦
     賀市の了承、福井県の内諾。地質等調査開始。
1975年(昭和50年)9月17日:原子力委員会によるチェックアンドレビュー開始。
1976年(昭和51年)2月20日:福井県および敦賀市と安全協定を締結。
1978年(昭和53年):環境審査開始。
1980年(昭和55年) 安全審査開始。
   4月1日:原子炉産業4社(東芝、日立製作所、富士電機システムズ、三菱重工業)
     が出資して高速炉エンジニアリングを資本金3億円で設立。
1983年(昭和58年)1月25日:建設準備工事着手。
1985年(昭和60年):本体工事着工。
1990年(平成2年)7月20日:動燃アトムプラザ開館。
1991年(平成3年) 3月22日:ナトリウム現地受入れ(国内輸送)開始。
   5月18日:機器据付け完了式典・試運転開始。
1992年(平成4年)12月:性能試験開始。
1994年(平成6年)4月5日:10時01分臨界達成。
1995年(平成7年) 8月29日:発電開始。
   12月8日:ナトリウム漏洩事故発生。
1998年(平成10年)10月1日:動燃解体 - 核燃料サイクル開発機構発足。
2005年(平成17年) 3月3日:ナトリウム漏洩対策の準備工事を開始。
   9月1日:ナトリウム漏洩対策の本体工事着手。
   10月1日:独立行政法人日本原子力研究開発機構発足。
2007年(平成19年) 5月23日:本体工事終了。
   8月31日:運転再開に向けての原子炉の確認試験開始。
2008年(平成20年) 5月15日:新燃料(初装荷燃料)の1回目の輸送。
   7月18日:新燃料(初装荷燃料)の2回目の輸送。
2010年(平成22年) 5月6日:10時36分運転再開。
   5月6日・7日:放射性ガスの検知器が誤作動。
   5月8日:10時36分臨界確認。試験として約1時間後、19本の制御棒のうち2本を
     挿入し未臨界とした。
   8月26日:原子炉容器内に筒型の炉内中継装置(重さ3.3トン)が落下。長期の運
     転休止となる(炉内中継装置の引き抜きは2011年6月24日に完了)。
   12月28日:非常用ディーゼル発電機(発電出力:4250Kw)3台のうち1台(C号機)の
     故障が判明。
2011年(平成23年) 3月23日:東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、福井県
     はもんじゅの安全性確保について、文部科学省に申し入れをした。
   4月5日:福島第一原子力発電所の事故を受け、全電源喪失時対応訓練を実施
     した(なお、4月26日の共同通信の報道によると、4月現在の装備では、もんじ
     ゅを含めた多くの原子炉で電源車では十分な冷却が不可能とされた。日本原
     子力研究開発機構や各電力会社では電源車の追加配備を計画している)。
   4月20日:経済産業省からの緊急安全対策の指示を受けて、日本原子力研究開
     発機構はもんじゅに電源車の配置、緊急時の使用済燃料貯蔵槽の冷却確保
     などの安全対策を施し、またすべての電源喪失を想定した訓練を行ったなどと
     する報告書を経済産業大臣に提出した。
2012年(平成24年)11月、保安規定に基づく機器の点検漏れが9679個あったと原子力
     規制委員会が公表。
2013年(平成25年) 2〜3月:原子力規制委員会の立ち入り・保安検査により、非常用
     発電機などの重要機器で13の点検漏れ、虚偽報告が発覚。
   5月29日:原子力規制委員会は日本原子力研究開発機構に対し、原子炉等規制
     法に基づき、再発防止に向けた安全管理体制の再構築ができるまでもんじゅ
     の無期限の運転禁止を命じた。
2015年(平成27年) 2月:運転禁止の命令解除に向けた報告書に誤りが見つかり未点
     検機器の数が約400点増え6891点に増加した。日本原子力研究開発機構が
     改善を指示した21項目のうち、13項目の改善がいまだに確認されていないと
     の検査結果を原子力規制委員会は公表した。
   11月:原子力規制委員会は、日本原子力研究開発機構に運転を任せるのは不
     適当だとして、日本原子力研究開発機構に代わる運営主体を明示するよう文
     部科学大臣に勧告した。
2016年(平成28年):政府はもんじゅ廃炉へ向けた最終調整に入り9月20日には首相官
     邸と福井県敦賀市などの立地自治体との間で意見交換をおこなっている。
     2016年内に結論を出す予定。 
 
●高速増殖炉
高速中性子による核分裂連鎖反応を用いた増殖炉のことをいう。簡単に言うと、「増殖炉」とは消費する核燃料よりも新たに生成する核燃料の方が多くなる原子炉のことであり、「高速」の中性子を利用してプルトニウムを増殖するので高速増殖炉という。
現行の商用発電用原子炉として一般的な軽水炉と比較した場合の高速増殖炉の特徴を述べる。
1. 増殖比(核反応において消費される核分裂性核種の消滅数に対する生成数の割合)が1.0を超えること
2. 核燃料の主体がウラン238/プルトニウム239となること(他に核反応起動用のウラン235が若干必要)
3. 減速材を使用しないこと(熱中性子を利用せず、高速中性子をそのまま利用するため)
4. 減速材が不要であり、従来と比べ核燃料(核反応断面積がウラン235と比べ格段に小さい)の高密度配置が必要となるため、炉心単位体積あたりのエネルギー量の大きさが飛躍的に向上する。また冷却材の高能率化が必須となる。
現在開発が進められている主な形式としては以下のようになる。
1. 冷却材に軽水(つまり普通の純水)を使わずに、代わりに溶融金属(主に金属ナトリウム)を使用する
2. 燃料には天然ウランまたはウラン/プルトニウム混合燃料(Mixed oxide: MOX燃料)を使用する
MOX燃料の元となるプルトニウム239とウラン238は通常の軽水炉で燃料として使うこともできるが、高速増殖炉の炉心で燃やすことで、さらに不要なウラン238から次の高速増殖炉用の核燃料であるプルトニウム239を作り出すことで核燃料を循環させる「核燃料サイクル」を実現するための要となる装置である。高速増殖炉は、核燃料サイクルのウラン−プルトニウム系列を実施する。
ウラン238(天然・非核分裂性)+中性子 → ウラン239 → ネプツニウム239 → プルトニウム239(核燃料)
こういった意欲的な構想の下に先進工業国で研究開発が進められて来たが、軽水炉にはない様々な問題を含んでいるため、実験炉から原型炉までは数か国でいくつか完成しつつも、実証炉の完成までは時間がかかっていた。いくつかの国が研究開発を挫折する中、ついに2014年6月27日にはロシアで実証炉BN-800が臨界に達し、実用化の目処がついた。
核燃料サイクル計画
アメリカ合衆国は2006年2月から核燃料サイクル計画 "GNEP: Global Nuclear Energy Partnership" によって、核燃料サイクルとともに高速増殖炉の技術開発推進の立場に転じた。このプロジェクトには2008年1月1日時点で、日本を含む19か国が参加を決定している。またこのプロジェクトによる高速増殖炉の実験炉と核燃料再処理施設建設の発注予定先として交渉相手に選ばれているのは三菱重工、日本原燃、アレバの3社である。
特徴
○ 核分裂を起こしやすいウラン235は天然に存在するウランの0.7%程度にしか過ぎず、約99.3%は核分裂をほとんど起こさないウラン238であるため、軽水炉のエネルギー源として利用できるウランは、ウラン資源の1%にも満たないことになる。しかし高速増殖炉によってウラン238をプルトニウムに転換できれば、核燃料サイクルが実現し、理論上ウラン資源の約60%をエネルギーとして使用出来るため、ウランの利用効率を飛躍的に高くできると考えられる。
○ MOX燃料を使える。
  ○ プルトニウムが使用できるため、使用済み核燃料由来のものや核兵器解体後のプルトニウムも有効利用できる。
  ○ ウランの濃縮が必要ない。
○ 冷却材として使用される金属ナトリウムは沸点が高いため、軽水のように高圧を掛ける必要が無く、常圧で運転可能である。このことは、冷却材の減圧による沸騰を原因とする冷却材喪失事故 (LOCA: Loss Of Coolant Accident) がほぼ起きないことを意味しており、同時にその事故に関しては非常用炉心冷却装置 (ECCS: Emergency Core Cooling System) も必要ないことを意味している。
○ 炉心が小型にでき、出力密度が高い。
増殖
通常、軽水炉では燃料棒中のウラン235を熱中性子により核分裂させ、エネルギーを生成する。このとき消費したウラン235以上にプルトニウムが生成されることはなく、燃料棒中の核燃料は減少する。これは、熱中性子は高速中性子よりもウラン235やプルトニウムの核分裂を誘起しやすいが、燃料棒中のウラン238に捕獲されてプルトニウム239を生成する確率が低いためである。逆に高速中性子はウラン235やプルトニウムの核分裂を誘起しにくいが、ウラン238に捕獲されてプルトニウム239を生成する確率が高い。この性質を利用して、消費した燃料以上のプルトニウムを生成するように設計されたものが高速増殖炉である。
高速増殖炉の「高速」は、利用する中性子が高速中性子であることに由来する。高速増殖炉では、ウラン238をプルトニウムに転換させるため、ウラン資源を事実上数十倍にできる。このため「夢の原子炉」と言われ、日本、フランス、中国など国内でのエネルギー使用量に比べ資源が少なく、エネルギー使用量の多い国で開発が推進されている。
高速増殖炉の燃料転換率は、理論的には1.24から1.29程度と考えられており、もんじゅの場合は約1.2である。
プルサーマル方式に対する優位性
プルサーマル方式においてもほぼ同じMOX燃料を使用するが、MOX燃料にはプルトニウムより原子番号の大きい原子が含まれ、これらの元素の同位体による割合が増えていくことを「高次化」と呼ぶ。MOX燃料は再処理を繰り返すごとにアメリシウム241などのマイナーアクチノイドの割合が増えていくのだが、これらの原子核は中性子吸収断面積が非常に大きく、熱中性子を吸収しても核分裂せず、中性子を放出しないため、核分裂連鎖を媒介する中性子が減って原子核分裂反応が成立しなくなってしまう。この核種は化学/物理処理で分離が不可能な大変厄介な物質であり、アメリシウム241等のMAを分裂させられる高速増殖炉、または加速器駆動未臨界炉は長期的に見ると核燃料サイクル計画には必須の要素である。
問題点
技術的課題
○ ボイド係数
炉心を冷却する液体に含まれる気体の割合の変化により、炉心の反応度は影響を受ける。この現象を係数化したものをボイド係数と呼ぶ。ボイド係数が正の場合、冷媒に占める気体の割合が増えると冷媒としての性能が低下すると共に反応度が増大し、炉心の異常な発熱につながる。軽水炉において、減速材と冷却材を兼ねる軽水は炉心付近で常に沸騰が発生しており、理論的には気泡混じりで本来の水よりも密度が低下した流体として扱われる。ボイドの割合が増えると減速材としての性能が低下するため、反応度は低下する。(ボイド係数は負)一方、ナトリウム高速増殖炉で用いられる液体金属は通常の運用では沸騰しないが、万一発生した場合はボイド係数は正となる。このため、ボイド係数が負となるような炉心設計が強く求められる。高速増殖炉もんじゅの場合、炉心の一部の領域についてボイド係数が正になっていると分析されている。一方で沸騰によるボイド係数は正となった場合でも、炉心の外へ漏れだす中性子の増加(中性子が逃げるため核分裂連鎖反応が起こしづらくなる)や、核燃料の熱膨張による密度の低下など、ボイド係数以外の反応度効果があるため、原子炉全体としての反応度は負となるように設計されている。これは原子炉設計における重要な基本であり、これにより異常な反応度が原子炉に加わらないようになっている。鉛ビスマス高速増殖炉の場合、鉛は原子番号が大きく断面積が大きい上、中性子を吸収せず反射するために、気泡が発生すると中性子が炉内から洩れる確率があがるため、ボイド効果は負に設計しやすい。
○ 金属ナトリウム
技術的な最大の問題は、冷却材である金属ナトリウムの管理が難しいことである。金属ナトリウムは水や酸素に触れると高温を放って激しく酸化される。従って、その取り扱いには極めて難度の高い技術と、その技術を維持管理する持続可能な運用システムが必要不可欠となる。軽水は透明だが金属ナトリウムは不透明であり、これを用いると内部状態の計測が難しくなる。「もんじゅ」の停止は、配管からの金属ナトリウム漏出事故による。また、特に蒸気タービンに繋がる二次冷却系との間は、熱を伝えるための多数の薄い金属管を隔てて軽水と対向しているため、わずかな漏れでも大事故につながると考えられている。このような冷却系の取り扱いの難しさから、同型炉での事故例が多い。ナトリウムの代わりに鉛・ビスマスを使用した方式では発火性はない。
○ 燃料
日本での高速増殖炉用のMOX燃料は、六ヶ所再処理工場での製造が予定されているが、アクティブ試験が3年間継続したままであり本格稼働の開始予定は遅れている。ここでMOX燃料が生産できなければ、他国から輸入するか原子炉の稼動を見合わせることになる。
○ プルトニウムの挙動
プルトニウムの炉内での挙動に未解明な点がある。フランスのフェニックス (Phénix) では、原因不明の出力低下があり、その原因は未だに解明されていない。これがフランスがスーパーフェニックスから撤退する理由の一つであった。
○ 緊急炉心冷却装置の欠如
ナトリウムと水の反応性のために、ナトリウム高速増殖炉には、緊急炉心冷却装置 (ECCS) を付けられない。「軽水炉の様に一次系が高圧でないから、「スリーマイル原子力発電所事故のような減圧によるLOCAが起きない事」から、ECCSは不要と説明されてきたが、「高速増殖炉で冷却材喪失事故は起きないと言えるのか?」と、批判者は指摘する。内圧が低くとも、腐食性の強いナトリウムの作用や、500℃を超える高温での連続運転、更には、構造材への放射線損傷が、配管破断を招く事は無いのか?と言う懸念が指摘されている。(高木仁三郎『プルトニウムの恐怖』(岩波新書・1981年)159〜160頁参照)。尚、鉛ビスマス炉であれば、水と接触しても水素を出して燃えないので、LOCAに備えてECCSを取り付けることは可能である。原子炉容器や一次冷却系の破損にそなえた対策として、ガードベッセルと呼ばれる設備が設けられている。これは原子炉容器や一次冷却系の機器を覆うようにカバーが取り付けられ、ナトリウムが漏れた場合でもここで止まるようになっている。そのため万が一原子炉容器や一次冷却系の破損が生じてもナトリウムの流失を防ぎ、ナトリウムの液面から炉心が露出することによるメルトダウン事故を防ぐよう工夫されている。なお、高速増殖炉が苛酷事故として全炉心溶融事故(Bethe-Tait型事故)を起こすと、軽水炉の場合とは異なり、炉心のプルトニウム燃料が一箇所に集まることで即発臨界が発生する可能性は当初から指摘されている。
○ その他の技術問題
1970年代に旧ソ連がアルファ型原子力潜水艦等に鉛ビスマス原子炉を搭載した。原子炉自体は小型軽量大出力で優れた性能を示したものの、多くの問題を経験した。
1.【腐食問題】鉛ビスマスは鉄よりイオン化傾向が小さいために腐食性が強く、蒸気発生器や配管の腐食による冷却材漏れに悩まされた。
2.【スラグによる流路閉塞】空気と長期接触したため、酸化鉛スラグが発生。圧力容器・配管・被覆管の腐食と相俟って、酸化鉛・マグネシウム酸化物・鉄などのスラグが冷却材流路を閉塞する事故を起こした。
3.【ポロニウム210】鉛やビスマスが中性子捕獲で半減期138日のポロニウム210に変化して炉内部に付着してアルファ線でメンテナンスに支障をもたらしたほか、そのまま運転したので蓄積し、冷却材漏洩時に高線量を招いた。なお、スラグ発生はナトリウムにも共通する問題である。
東工大の研究結果報告では、
1.【腐食問題】ではクロム系耐熱鋼を使い、鉄よりイオン化傾向が高く腐食しやすいアルミ系合金を表面に蒸着して、亜鉛めっき鋼板などと同じ「犠牲防食」で腐食問題解決の目処が立った。
2.【スラグによる流路閉鎖】は不活性ガスの封入で空気との接触を遮断して、コールドトラップで液体金属を一度冷却して不純物を析出除去するほか、タンク型設計にして(トラップ系以外)流路ボトルネックをなくし、万一原子炉/配管破損でスラグが発生しても冷却系閉塞しないようにする。
3.【ポロニウム210】メンテナンスに先立ち、原子炉容器を4Pa500℃に減圧加熱してベーキングを行うことで付着したポロニウム化鉛を気化除去すれば良いこと、(トラップ系で)石英ガラス/ステンレスなどで吸着も可能なこと。等、(特に鉛ビスマスで)今まで問題とされてきた事が近年大きく改善が進んでいる。
なお、もんじゅ事故後、フィジビリティスタディからやり直して、冷却材として鉛ビスマス、ヘリウム、軽水、ナトリウム等の検討が進められた事実があり、その上で実績や国際協力の可能性(鉛ビスマスは実績が少ないのが否めない)が評価されてもんじゅの再起動、そして次期ナトリウム冷却高速増殖炉の開発へ進んでいるのが実情である。
社会的課題
○ 核兵器の材料
核兵器の材料となるプルトニウムを大量に加工・保有することに対して、国際的な懸念や批判がある。標準的な核兵器を作るには純度の高いウラン235か、プルトニウム239が必要とされ、21世紀現在ではウラン濃縮を行うよりも、黒鉛炉、重水炉、高速増殖炉のいずれかでプルトニウム239を生産する方法が最も現実的な手段となっている。ウラン238に対する中性子照射期間が長いほど「ウラン238が中性子を吸収してプルトニウム239になる反応」だけでなく「プルトニウム239が再度中性子を吸収してプルトニウム240に変化してしまう反応」が進んでしまう。商業用原子炉で一般的な軽水炉は、運転しながら燃料交換できないため、照射時間が長くなり、プルトニウム239の純度の高い「兵器級プルトニウム」を生産できず、兵器性能を著しく低下させるプルトニウム240の割合が高い「原子炉級プルトニウム」しか生産できない。(つまり日本の保有する大量の原子炉級プルトニウムは核兵器を作るのに適さない)一方高速増殖炉は、原子炉が中性子を発生して、それを原子炉を覆うブランケットで受けて、ブランケットの中に入っている元素に中性子を浴びせて、別な元素に変化させる「核種変換炉」であり、ブランケットに核分裂性でないウラン238をいれて、核分裂性のプルトニウム239にすることができる。また、「ブランケットの内容物は、次々と早期交換したほうが、核燃料が沢山得られて得」である。そのためIAEAは、炉からの燃料棒の早期抜出しを「核武装準備行為」として厳しく監視している。発電目的ならば、燃料は長く発熱させたほうが得であり、「燃焼途中での燃料取り出し」は核兵器生産以外に理由が説明できないが、そのようなことはしていないためIAEAは「フランスや日本の増殖実験」に関しては認めてきた。例えば、日本の「もんじゅ」は停止するまでの1年半の間に濃縮度96%以上のプルトニウム239がおよそ60kg程度生じていたと考えられ、プルトニウム240などの不純物を混ぜることで軍事転用への懸念を回避したかどうか、明らかにはなっていない。
○ 輸送時の警備
プルトニウムを含むMOX燃料の輸送問題がある。プルトニウムは核兵器の原料であるため、輸送時にはテロリストやその支援国家などに核ジャックされる可能性があり、常にこれに備える必要がある。海上輸送が必要となる日本では、その脅威に備えるため新たに世界最大の巡視船であるしきしまを建造しなければならなかった。ウラン燃料は、ウラン235の半減期が約7億年と長いことから通常状態において殆ど放射線を出さないのに対し、プルトニウムを含む燃料は、プルトニウム239の半減期が約2万4千年とウラン235と比較して短いため強い放射能を持ち、プルトニウムの使用やその輸送に対する反発の声が高まっている。
経済的課題
○ 費用
高速増殖炉建設は通常の軽水炉型の原子炉よりも多額の費用が掛かる。1970年代初め、ローマクラブレポートが出た頃までは、石油は1バーレル2ドルのまま急速に掘りつくされると考えられていたし、風力や太陽は当時非効率で到底20-30年で大電力を供給できるようには思われておらず、核融合は50年先と思われていて、海水からのウラン吸着の研究など存在しなかった。当時はすべて右肩上がりの時代で、中国・インドの経済成長も直ぐに始まり、化石エネルギー枯渇で急速に危機に直面すると思われていた。現実には、予想に反して産油国は米英から資源を取り戻して値上げするのに成功したために、値上がりによる甚大な経済打撃(オイルショック)と引き換えに、石油の採掘寿命は延びた。現在の掘削技術の向上で推定埋蔵量は毎年上がっている。学者の中には埋蔵量はあと10万年分は最低でもあると予測する者も居る。(中部大学、武田教授など)また、中国・インドの経済成長による化石燃料の減耗加速は2000年代までずれ込んだ。そうしているうちに太陽発電は2030年には、軽水炉原子力発電に追いつけるコストになると看做されるようになったし、核融合も実証炉ITERの建設まで具体的道程が描ける所まで進化した。そして核融合炉さえできれば、高速増殖炉より効率よくウラン238をプルトニウム239に変える事ができる。加えて、陸上ウランの1000倍、シェールガスの600倍の熱量資源がある、海水ウラン吸着の研究が進み、2007年のウラン価格ピーク135ドル/ポンドならコストが回収できる所までコストダウン研究が進捗している。また、リン鉱石等に含まれるウランの回収等も計画されており利用可能なウランの量が増える可能性がある。原子力はその登場当初「唯一の火力に代わり得るエネルギー」と言われていた。原子力はそのエネルギー量の膨大さ故に、世界的な政治経済情勢を大きく変える要素である。政治経済が絡むため、賛成派、反対派が様々な活動を行っており、そういった活動の中、原子力は「電力用としては」「再生可能エネルギー時代」までの数十年間の「過渡期エネルギー」と主張する向きもある。(ただし、化石燃料が尽きれば、製鉄・セメント・ガラス製造熱源や航空・船舶燃料や、使用済み太陽電池や風力タービンの溶解リサイクル熱源で問題が起きるので、「一般工業/輸送燃料生産工業の熱源としては」超高温原子炉は地熱では不可能な高温部分を受け持つと見られている。)大量に資源消費する「電力用としては」過渡期エネルギーになったため、陸上ウランは70年持てばよく、枯渇してきても170ドル/ポンドまで値上がりをすれば海水ウランが採算に合いだすので、増殖に対する社会的、経済的ニーズは1970年代初頭当時より優先度が低下した。核融合炉建設の遅延、シェールガス・シェールオイルの採掘方法である「フラッキング(水圧破砕法)」に最大生産国である米国で規制がかかる等新規エネルギーの見通しが不透明となる懸念が生まれ、政策等で二転三転する状況が続いている。現在、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの発電コストが急激に低下しており原子炉の経済性がさほど有利でなくなっている。平成27年の資源エネルギー庁発電コストワーキンググループの「長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告」 によれば、風力発電、太陽光発電のコストは原子力発電の2倍程度であり、今後さらにその差は縮小すると考えられる。現時点で、太陽光パネルは設備1kwあたり2000ドル以下であり、100万kwの発電設備ではパワーコントローラーや土地賃貸代などを含めても20億円程度ですむ。太陽光発電の稼働率は設備kwに対して約13%にすぎないが、原子力発電所の稼働率も40-50%と決して高く無い。100万kw級原子力発電所の建設に7000億円以上かかり、寿命が30-40年間のメンテや廃炉に1000億円以上が見込まれることから、すでに原子炉の経済性は無いとする議論も多い。
世界の高速増殖炉
高速増殖炉は約20年前まで、ウラン燃料の有効利用促進のため米国、フランス、ロシア、イギリス、ドイツ、日本などで積極的な開発が進められてきた。
しかし1990年代前半に米国の実験炉FFTFとEBR-IIの運転停止、1991年ドイツの原型炉SNR-300の建設中止、1994年英国の原型炉PFR運転中止、1998年にはフランス実証炉スーパーフェニックスの運転中止などが相次ぎ、日本でも「もんじゅ」のナトリウムもれ火災で運転が中止される。1990年代には高速増殖炉の開発は停止状態となり、フランスを除く欧州各国は高速増殖炉の開発を中止した。今なお、日本、ロシア、中国、インドが開発を行っているが、ロシアを除く国では実用化は大幅に先送りされている。ロシアでは、2014年6月に実証炉の臨界が行われた。商用炉の運転は2020年を予定していたが、核燃料の設計を改善する必要があり、また経済性に疑問があるために無期限に延期された。  
 
●諸説
      
もんじゅ廃炉で誰が一番得をしたか?
 弱すぎる日本のエネルギー政治
今年9月中旬以降、「政府は高速増殖炉『もんじゅ』を廃炉する方向で最終調整に入った」といった趣旨の報道が急にマスコミを賑わせた。私の記憶が正しければ、一番初めは9月13日付けの多くの地方紙朝刊。記事を見ると「政府関係者が明らかにした」とある。いったい誰がリークしたのかは不明だが、「政府関係者」と書いてあるのだから、もんじゅの主管官庁である文部科学省系の官僚か、エネルギー政策全体を所掌する経済産業省系の官僚であろう。閣僚や与党幹部とは思えない。
もんじゅは、日本原子力研究開発機構(JAEA)が運営する高速増殖炉で出力28万kW。プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使い、高速の中性子で核分裂を起こし、発電しながら消費した以上のプルトニウムを産み出す。1994年に初めて臨界に達したが、1995年にナトリウム漏洩事故を起こした。以来、運転実績は殆どない。2012年に大量の機器点検漏れが発覚し、2013年5月には原子力規制委員会が事実上の運転禁止を命令。原子力規制委は昨年11月から、運営組織をJAEAから変更するよう文部科学省に求めていた。
私が多くの国会関係者や官庁関係者、マスコミ関係者から聞いたところでは、経産省資源エネルギー庁幹部が「もんじゅ廃炉は決定。フランスが推進する高速炉『アストリッド』計画に乗れば、もんじゅは不要」と各方面で語っているそうだ。こうしたエネ庁幹部の発言が真だとすると、冒頭のような報道が横行するのも仕方ないことかもしれない。ただ、アストリッドには心配な点がある。これは、フランスで2030年以降に開発される予定のタンク型高速炉だが、耐震性に乏しい。地震国の日本で本当に利用できるのかという安全性に係る根拠がしっかりと示される必要がある。そうした技術的裏付けが未だ一切示されていない状況で、十分な検討も準備もなく、資源小国である日本がもんじゅ廃炉などと拙速にエネルギー源の選択肢を自縛して良いものだろうか。
東京の築地市場を新・豊洲市場に移転させるかどうかという話が今、大揉めに揉めていることは周知のこと。新市場の地下に空洞を作って活用すれば、工期短縮ができるし、安く上がるなどという技術的裏付けもなく、単なる思いつきのような案をわずか数カ月で採用して建物・設備を作ってしまった。その結果、東京都庁の計画からは、土壌の安全性確保の視点が抜け落ちてしまった。「アストリッドを採用するので、もんじゅを廃止しても構わない」という経産省の姿勢に、東京都の新豊洲市場への姿勢に近い響きを感じるのは、私だけだろうか。主管官庁の文科省は確たる見解を早期に示すとともに、経産省とともに改めて熟考していくべきだ。
ただ、問題はそれだけではない。もんじゅは、高速炉の核燃料サイクルにおける基幹的技術の一つだが、その廃止論は、既に商用化されている軽水炉の核燃料サイクルまでも否定したい人々に対して、根拠無き勇気を再び与えてしまうだろう。そして、現在の原子力発電の主流である軽水炉そのものまでも否定し、非常に乱暴な反原発・反サイクルの空気がまたぞろ醸成されるかもしれない。数名の元首相たちが「原発即ゼロ」を盲目的に唱えているような状況でもある。
だからと言って、エネルギーという一国の経済・生活・文化・安全・環境保全の全てを左右する基幹インフラの在り方を「空気」で決めて良いはずはない。現実を直視しながら、将来も見据えた賢察が切に求められている。今の原子力発電の主流は軽水炉。昨年末のパリ協定で、日本は2030年度に2013年比で温室効果ガスを26%削減すると約束した。そこでは、電源構成の20〜22%を原子力(軽水炉)で賄うことが大前提となっている。福島第一原発事故当時に46基を数えていた国内の商用原子炉のうち、6基の廃炉が決定し、26基について原子力規制委へ『再稼動の申請』がなされている。現在までのところ、川内原発1・2号機、高浜原発3・4号機、伊方原発3号機の計5基が新規制基準に適合するなど原子力規制委の審査に合格している。
「原発がなくても大停電は起こっていない。電力供給の安定は保たれている。だから、原発は電力の安定供給には必要ない!」 ——— 脱原発・反原発を叫ぶ勢力には、こういう論調は歴然とある。だが、それが大きな誤解であることを証明する事態が最近起きた。9月8日正午過ぎ、愛知県西三河方面、岐阜県岐阜、西濃、中濃方面で大規模な停電が起きた。東海地域で発生した落雷により、中部電力の送電網に障害が発生したのだ。落雷の被害を受けたのは幸田碧南線。中部電力の大型石炭火力発電所である碧南火力発電所で発電した電力を東海地域へ供給する役割を担っている27.5万Vの超高圧送電線だ。
幸田碧南線の回線は2つだが、どちらも落雷で機能が損傷。それに伴って碧南火力発電所1〜5号機の総出力410万kWも瞬時に停止した。その影響で中部地方では電力供給力が不足し、需給バランスが崩れて周波数が低下し、大規模な停電が発生した。愛知県内22万世帯、岐阜県内14万世帯の合計36万世帯が約35分間も停電。周波数が低下した影響で、北陸新幹線に信号トラブルが発生し、多くの列車の運行が遅延。落雷による停電は、その後も三重県内などで続いた。停電それ自体は同日中に全て解消したが、電力供給安定面での不安はしばらく拭い切れなかった。
震災による福島第一原発事故後、明快な安全上の理由はなく、また、法的な根拠もなく、菅直人首相(当時)の要請だけで停止を強制され、それが今も続く中部電力・浜岡原発電所3〜5号機の計362万kW。加えて、今回の碧南火力発電所410万kWというたった1カ所の石炭火力発電所の停止。これらにより、電力供給力は大きく損なわれ、大停電が発生する危険性が高まったため、他の大手電力会社に大量の応援融通を求めた。不測の事態が起これば電力供給がすぐ綱渡り状態になってしまうことが、現実に起こったのだ。「原発は電力の安定供給には必要ない!」という脱原発・反原発を叫ぶ勢力の主張が大嘘であることが示された。
9月8日午後2時、全国的な電力需給調整を行う「広域的運営推進機関」は、東京電力パワーグリッド、北陸電力、関西電力、中国電力の4社に対し、同日夜遅くまで3回に分けて数百万kWに及ぶ電力の応援融通を指示した。翌日、碧南火力発電所では全基の運転が再開したので、一応無事な結果となった。この間、中部地方では、運転開始から40年超の「老朽火力発電所」が400万kWにも上り、それらを酷使して安定供給を確保していた。つまりこうした綱渡り状態は、送電網の障害と大型火力発電所の停止が発生すると電力需給に大きな悪影響が生じることを改めて浮き彫りにした。同時に、大型の安定電源でもある原発が停止し続けていることで、電力需給面での脆弱性を招いていることが図らずも明らかになった。
こうした実情は、中部地方だけのことでない。原子力規制委の新規性基準適合性審査の長期化や、地方裁判所の民事訴訟・仮処分決定などによる悪影響で、原発の再稼動はなかなか進んでいない今の日本。一方で、そのために電力需給上のリスクに直面しているという事実を直視していくことが不可欠である。どうであれ、既設の原発(軽水炉)をフルに活用していくことは、現に必須である。
その更なる活用を進め、資源として再利用できるという核燃料の利点を現在の技術水準で実現させる仕組みが「軽水炉サイクル」。これは、軽水炉で利用した使用済燃料をそのまま廃棄するのではなく、1再利用可能な資源(プルトニウムとウラン)と廃棄物に選別する「再処理」を施し、2プルトニウムとウランの混合燃料(MOX燃料)を「再利用」するとともに、3廃棄物だけを安定的な状態にして「最終処分」するという仕組み。海外にも数多くの先行例がある。
軽水炉サイクルの利点は大きく3つある。第一に、ウラン資源の節約である。使用済燃料を再処理してできたMOX燃料に加工して利用するとともに、再処理して取り出された回収ウランを濃縮して低濃縮ウランとして再利用すると、ウラン資源全体として約26%を再利用できることになる。石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料と同様、ウランも限られた資源であり、その点でも軽水炉サイクルには大きな意義がある。
第二に、高レベル放射性廃棄物の減容と安定化だ。使用済燃料を再処理すると、直接処分する場合に比べて、廃棄する体積が1/3〜1/4にまで小さくなる。また、廃棄物に含まれる放射性物質の毒性がより早く低減するので、天然ウランの毒性と同じ程度に減衰するまでの時間が1万年以下と、直接処分に比べて1/10くらいに早くなる。しかも、高レベル放射性廃液を『ガラス固化体』という安定した状態に加工するため、以後長期間に亘って安定的に保管できる。即ち、高レベル放射性廃棄物の最終処分が格段に施されやすくなるわけだ。
第三に、核燃料のリサイクル利用による化石燃料消費量の削減。その分だけCO2排出量を抑制できるので、地球環境保全に寄与できる。
軽水炉サイクルでは、高レベル放射性廃棄物の最終処分地は未定だが、原子力発電環境整備機構(NUMO)が科学的有望地を近々選定する予定。NUMOは、原発事業に伴って発生する放射性廃棄物の地層処分事業を実施する国内唯一の公的機関。他の軽水炉システムに係る施設・設備は、六ヶ所再処理工場(青森県六ヶ所村)を始めとして、殆どが既に国内に立地している。
高速炉サイクルとは、ウランを高速炉で利用することによって、消費した燃料以上の燃料を生み出すことができるもの。軽水炉でのウラン利用効率は0.6〜1.1%だが、高速炉でのウラン利用効率はその約100倍に高まり、数千年分のエネルギーとして使うことができる。軽水炉サイクルでのウラン資源の寿命は、石油など化石燃料と同等でしかない。使用済燃料に含まれるネプツニウム、アメリシウム、キュリウムなどのマイナーアクチニドと呼ばれる半減期の長い廃棄物を高速炉で再利用・燃焼させることによって、高レベル放射性廃棄物を大幅に低減することができるし、天然ウランの毒性と同じ程度に減衰するまでの時間が約300年と大幅に短縮化できる。その分、環境負荷を低減させる利点が大きい。
こうした数多くのメリットが期待できる次世代技術である高速炉サイクルについて、世界では資源小国のフランスや韓国が研究開発を進めている。ロシアやインド、中国では、より早期の実用化を目指して、既存技術をベースに積極的な技術開発を行っており、2010年代に原型炉・実証炉を建設し、2020年代には商用炉を導入する計画となっている。
日本では、原型炉であるもんじゅを1983年に旧動力炉・核燃料開発事業団が開発し始めた。1994年に初めて臨界を達成。世界で唯一のループ型というタイプで耐震性に優れ、西側諸国で現存する唯一の『ナトリウム冷却炉』として、世界中から注目を集めていた。翌1995年には初発電に至ったのだが、年末に二次主冷却系配管からのナトリウム漏洩事故が発生した。この配管に取り付けられていた温度計の鞘管からナトリウムが漏れたのだ。
原因は、温度計の鞘管の形状に係る重電メーカーによる設計ミス。ナトリウム漏洩量は640kgで、このうち410kgは屋内で回収され、残りの230kgは屋外に放出された。もちろん、環境への影響は認められなかった。この過程で、ナトリウムの温度はそれほど上昇しなかったので、ナトリウムを迅速に回収し、適切に処理することは、本来は可能であった。
しかし、当時の規制当局であった旧科学技術庁や原子力安全委員会は、『現場の保全』を指示した。このため、ナトリウム回収と処理に関する所要の対応が遅れに遅れた。しかも、二次系のナトリウム漏れ程度のことを重大事故と決め付けた上に、いわゆる「ビデオ隠し」が二度も起こってしまった。もんじゅ運営を正常に戻す機会が失われたのは、こうした規制当局の後手後手の対応や、マスコミによる煽動といった外的な複合要因による。
その後、旧動燃事業団は別の原子力事業を行う特殊法人と統合され、JAEAへ改組された。JAEAは複数の原子炉を保有することになり、型の異なる新型炉の開発や放射性廃棄物の処理など幅広い研究を手掛けるようになった。その結果、もんじゅはJAEAが擁する数多ある研究部門の一つとして、JAEAの中で埋没した形になってしまった。こうした情勢変化の中で、もんじゅの運営責任の所在も曖昧となり、そんな状況が今にまで至っている。
原子力規制委は昨年11月、JAEAにはもんじゅを運転する能力がないとして、所管する文科省に対して、もんじゅの新たな運営主体を決めるよう勧告をした。これを受けて文科省は、昨年12月から広くヒアリングや現地調査を行った上で、もんじゅの運営主体が備えるべき要件を抽出した報告書を今年5月末に取りまとめた。そうした混沌とした状況の中で、冒頭に紹介したような早計な報道が多発。ぜひとも拙速な結論だけは避け、じっくりと時間をかけて検討すべきである。
ある代議士が先日、「もんじゅを今やめたら、喜ぶのは中国だ。日本の国力低下を手放しに喜ぶに違いない」と語っていた。理解している人には、焦眉の急が呑み込めている。政府は9月21日、原子力関係閣僚会議を開き、もんじゅについて『廃炉を含め抜本的な見直し』を表明した。そこでは、高速炉開発会議という会議を立ち上げ、具体策を年内にまとめていくことが決定された。
しかし、先ずは、将来技術である高速炉サイクルと、既存技術である軽水炉サイクルを混同せず、明確に切り分けて考えることが必要不可欠だ。それができていない今の日本の『エネルギー政治』は、あまりにも弱すぎやしないだろうか。