平成の大失敗 「アベノミックス」

安倍政権に経済通は不在 
経済識者もマスコミもだんまり 
 
瞬間 金融商品が活況を取り戻しても 
残念ながら実体経済へは延命効果程度で 
設備投資は進まず 給与は上がらず 輸入品の価格上昇効果がせいぜいでしょう 
 
円安になっても 世界中不況で購買力が低下し 拡大が見込める輸出先はありません
 


2006年の安倍総理大臣
 

 

僅かこの20数年の経済政策の効果と失敗を忘れたのでしょうか 
金融をジャブジャブに緩めても 瞬間芸で経済は改善されません 
まして現在のグローバルな不況 
円安で輸出の拡大など夢です 
ただただ国の借金を増やして終わるでしょう
  
  
  
  
  
  
  
  
  
大博打 
公共投資の大盤振る舞い 
負けることがわかっての博打 借金は誰が返済するのでしょうか
  
円安の悪夢 
輸入小麦・農産物価格の上昇で 食品価格が上昇 
石油価格の上昇で すべての工業製品原価を押し上げ製品価格が上昇 
喜ぶのは電力会社くらいでしょう 大義名分堂々の値上げができます 
「2%のインフレ目標」は簡単に達成できるでしょう 
健全な景気のもとでの多少の円安は吸収できますが 
個人収入は増えず消費は増々冷え込むでしょう
  
  
車 
購買力の低下した国内では将来がありません 
工場の海外移転は止まりません
  
  
  
家電 
韓国に学びましょう
  
  
PC・IT関連・スマホ 
ソフトはだめ 物づくりにも後れを取るようになりました
  
  
工業機械 
しばらくは買い手がありません
  
  
物流
  
  
金融 
国内は縮小一方 海外から見ればローカル市場 
海外投資家は これ幸い日本株に投資 買って売り抜けて儲けるでしょう 
外人投資の買い越しには買い 売り越しには売り  
提灯をつけましょう ちょっとだけリスク回避ができるでしょう 
 
早晩 困ったときの「円買いドル売り」のジパング神話も消えるでしょう
  
  
農家農業 
高齢化で大勢は産業の体をなさなくなりつつあります 
規制緩和が真っ先に求められる産業です
  
  
水産
 
 
  
 
観光 
日本の歴史と「おもてなし」 
海外からの旅行者拡大
 
 
 
流通・サービス 
豊かさが実感できるまでお休みでしょう
  
医療・介護 
もっとも有望な市場です 
行政が市場の拡大を邪魔しています 
新しい「終の道」への準備産業にしましょう
  
終の道  
ただただ延命して生かすことが幸せとは思えません 
新しい死生観を日本の文化にしましょう 
新産業が生れます

 


 
2012/12  
 

 

2006年の安倍総理大臣  
2006年9月26日-2007年9月26日(366日)
就任表明では「美しい国」というテーマの下に「戦後レジームからの脱却」「教育バウチャー制度の導入」「ホワイトカラーエグゼンプション」などのカタカナ語を連発し、他の議員からは「分かりにくい」と揶揄された。  
安倍は小泉前首相の靖国参拝問題のために途絶えていた中国、韓国への訪問を表明。2006年10月に中国・北京で胡錦濤国家主席と会談、翌日には、盧武鉉大統領と会談すべく韓国・ソウルに入り、小泉政権下で冷却化していた日中・日韓関係の改善を目指した。  
北朝鮮が核実験を実施したことに対しては「日本の安全保障に対する重大な挑戦である」として非難声明を発するとともに、国連の制裁決議とは別に、より厳しい経済制裁措置を実施した。  
同年9月から11月にかけ、小泉時代の負の遺産とも言える、郵政造反組復党問題が政治問題化する。12月には、懸案だった教育基本法改正と防衛庁の省昇格を実現した。一方で、同月、安倍が肝煎りで任命した本間正明税制会長が公務員宿舎への入居と愛人問題で、佐田玄一郎行改担当大臣が架空事務所費計上問題でそれぞれ辞任。この後、閣内でスキャンダルが相次いだ。  
2007年3月の安倍の慰安婦発言が「二枚舌」と欧米のマスコミから非難されたが、4月下旬には米国を初訪問し、小泉政権に引き続き日米関係が強固なものであることをアピールした。参議院沖縄県選挙区補欠選挙に絡み、日米関係や基地移設問題が複雑に絡む沖縄県特有の問題があったため、多くの側近の反対を退け2回にわたり沖縄県を訪れて自民系無所属候補の島尻安伊子の応援演説を行うなどのバックアップを行い、当選させた(島尻はその後で自民党に入党)。  
5月28日、以前から様々な疑惑のあった松岡利勝農水大臣が議員宿舎内で、首を吊って自殺。官邸で訃報に接した安倍は涙を流し「慙愧に耐えない」と会見し、その晩は公邸で妻の昭恵に「松岡さんにはかわいそうなことをした」と語っている。また年金記録問題が大きく浮上した。  
こうした中、6月当初の内閣支持率は小泉政権以来最低になったことがメディアに大きく報じられた。同月6日-8日には首相就任後初のサミットであるハイリゲンダム・サミットに参加、地球温暖化への対策を諸外国に示した。また、議長総括に北朝鮮による日本人拉致問題の解決を盛り込ませた。7月3日には久間章生防衛大臣の原爆投下を巡る「しょうがない」発言が問題化。安倍は当初続投を支持していたが、批判の高まりを受け久間に厳重注意を行った。久間は直後に辞任し、後任には小池百合子が就任した。  
参議院議員選挙での敗北  
2007年7月29日の第21回参議院議員通常選挙へ向けての与野党の舌戦開始早々、自殺した松岡の後任である赤城徳彦農林水産大臣にもいくつかの事務所費問題が発覚。安倍はこういった閣僚の諸問題への対応が遅いと非難された。選挙中に発生した新潟県中越沖地震では発生当日に遊説を打ち切り現地入りした。2007年の参議院選挙では「年金問題」の早期解決を約束し、「野党に改革はできない、責任政党である自民党にこそ改革の実行力がある」とこれまでの実績を訴えた。選挙前、安倍は「そんなに負けるはずがない」と楽観視していたが、結果は37議席と連立を組む公明党の9議席を合わせても過半数を大きく下回る歴史的大敗を喫した。これまで自民党が強固に議席を守ってきた、東北地方や四国地方で自民党が全滅、勝敗を左右する参議院一人区も、軒並み民主党候補や野党系無所属に議席を奪われた。  
安倍は選挙結果の大勢が判明した時点で総理続投を表明したが、これについては、応援演説において「私か小沢さんか、どちらが首相にふさわしいか」と有権者に「政権選択」を迫るような趣旨の発言をしていたことから内外から続投に対する厳しい批判が出た。また、参院選直後の7月31日の自民党総務会においても、「決断されたほうがいい」などと党内からも退陣を促す声が出た(安倍おろし)。同日、アメリカ下院では慰安婦非難決議が議決されていた。翌8月1日には赤城農相を更迭したが、「遅すぎる」と批判された。この頃から安倍は食欲の衰えなど体調不良を訴え始め、8月19日から8月25日のインドネシア、インド、マレーシア3ヶ国訪問後は下痢が止まらなくなり、症状は次第に悪化し始めた。  
安倍改造内閣  
選挙結果や批判を受け、8月27日に内閣改造、党役員人事に着手した(安倍改造内閣)。ところが組閣直後から再び閣僚の不祥事が続き、求心力を失う。9月9日、オーストラリア・シドニーで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の終了にあたって開かれた記者会見において、テロ特措法の延長問題に関し9月10日からの臨時国会で自衛隊へ給油が継続ができなくなった場合は、内閣総辞職することを公約した。この間も安倍の健康状態は好転せず、体調不良によりAPECの諸行事に出席できない状況となり、晩餐会前の演奏会を欠席した。  
2007年9月10日に第168回臨時国会が開催され、安倍は所信表明演説の中で「職責を全うする」などという趣旨の決意を表明した。なお、この表明では自身の内閣を「政策実行内閣」と名づけ、「美しい国」という言葉は結びに一度使ったのみであった。午後には「(改正案を通すのは)厳しいでしょうか」と辞任を示唆する発言を麻生幹事長に漏らしていたが、麻生から「テロ特措法があがった後でよろしいのではないですか。絶対今じゃないです」と慰留された。9月11日には妻の昭恵に対し「もうこれ以上、続けられないかもしれない」と語ったが、辞任の具体的な日程までは一切明かさなかった。  
辞意表明  
2007年9月12日午後2時(JST)、「内閣総理大臣及び自由民主党総裁を辞する」と退陣を表明する記者会見を行った。これにより同日予定されていた衆議院本会議の代表質問は中止となった。  
安倍は辞任の理由として「テロ特措法の再延長について議論するため民主党の小沢代表との党首会談を打診したが、事実上断られ、このまま自身が首相を続けるより新たな首相のもとで進めた方が良い局面になると判断した」「私が総理であることが障害になっている」などとした(小沢代表は記者会見を開き「打診を受けたことは1回もない」と否定。なお、小沢は党首会談について報じられてからも「意見を変える気はない」と明言している)。一方で、自身の健康に不安があるという理由も与謝野馨内閣官房長官が同日中会見で述べている。24日の記者会見では本人も健康問題が辞任の理由の一つであることを認めた。  
もともと胃腸に持病を抱えているといわれており、辞意表明当日の読売新聞・特別号外でもそのことについて触れられていた。また、辞意表明前日には記者団から体調不良について聞かれ、風邪をひいた旨を返答している。この「胃腸の持病」について、安倍は辞任後の2011年に掲載された『週刊現代』へのインタビューで、特定疾患である「潰瘍性大腸炎」であったことを明かしているが、辞意表明の当時はこの点を報じた者は皆無であり、過去に脳梗塞のために首相を辞任した石橋湛山や小渕恵三などと比較して「命に関わらない程度の健康問題」を理由にした退陣と見られたため、立花隆をはじめとして辞任に追い込まれた実質的原因が(本人が記者会見をこなしていることなどを理由に)健康問題ではないとする見方をする論者も存在するなど、批判にさらされることとなった。  
臨時国会が開幕し内政・外交共に重要課題が山積している中で、かつ所信表明演説を行って僅か2日後での退陣表明は、各界各方面から批判を浴びた。野党側は安倍の辞意表明について「無責任の極み」であるとして次のような批判を行った。  
「40年近くの政治生活でも、過半数を失って辞めず、改造し、所信表明をし、そして代表質問の前に辞職と言う例は初めてで、本当にどうなっているのか、総理の心境・思考方法については良く分かりません」(民主党小沢一郎)  
「参院選の後に辞めていればよかった。こういう形の辞任は国民に失礼」(民主党・鳩山由紀夫幹事長)  
「所信表明直後の辞任は前代未聞」(共産党・志位和夫委員長)  
「タイミングがあまりにひどい、無責任です。『ぼくちゃんの投げ出し内閣』だ。小沢代表との会談が断られただけで辞任するのは子供っぽい理由」(社民党・福島瑞穂党首)  
与党側でも古賀誠元自民党幹事長などから退陣に至る経緯・理由が不透明であるという批判や、その他議員からも「なぜ今日なのか、無責任だ」という批判が出た。かつて安倍派四天王と呼ばれ清和研幹部で引退後は自由国民会議代表務める塩川正十郎も「非常に無責任な辞め方。熱意と努力で乗り切ってもらいたくて支えてきた。支えてきた者から見たらこんな辞め方は無い」と批判した。また、公明党の北側一雄幹事長からも「なぜこの時期に辞意表明なのか、非常に理解しがたい」と批判された。  
麻生太郎自民党幹事長は同日の会見において、記者からの「総理はいつ辞任を決断していたのか」との問いに対し、「2日くらい前といえばそうだし、昨日と言えばそうだし…、この3日間意向は全くかわらなかった」などと述べ、安倍の辞任を2日前(安倍晋三が臨時国会でテロ特措法の延長ができなければ内閣総辞職すると述べた日と同日)にはすでに知っていたことを明らかにした。  
9月13日に朝日新聞社が行った緊急世論調査では、70%の国民が「所信表明すぐ後の辞任は無責任」と回答している。  
安倍の突然の辞意表明は、日本国外のメディアもトップニュースで「日本の安倍首相がサプライズ辞職」、「プレッシャーに耐えきれなかった」(アメリカCNN)などと報じた。欧米諸国の報道では批判的な意見が多かった。  
入院・内閣総辞職  
退陣表明の翌日(9月13日)、慶應義塾大学病院に入院。検査の結果、胃腸機能異常の所見が見られ、かなりの衰弱状態にあると医師団が発表した。これについても海外メディアで報道され、イギリスBBCは「昨日官邸をチェックアウトした安倍首相は、今日は病院にチェックインした」「日本は1週間以上も、精神的に衰弱しきった総理大臣を抱えることになる」と報じた。  
遠藤武彦農相に不正な補助金疑惑が発覚した際、遠藤の辞任の流れを与謝野馨内閣官房長官と麻生幹事長の2人だけで決めて安倍を排除したことから、安倍が「麻生さんに騙された」と発言したと言われる。この内容について9月14日の報道ステーションが麻生にインタビューで問い質したところ、麻生は「(9月14日に安倍氏の見舞いに行った時)『そんなこと言われて与謝野とふたりで困っている』と安倍総理に言ったら、『そんなこと言ってない』と笑っておられました。どなたかが意図的に流したデマでしょう」と反論をしている。同日のNEWSZEROは、番組終盤に安倍の「麻生さんに騙された」という発言を速報という形で伝え、麻生と安倍との間に不穏な空気が流れていたとする報道を行った。  
また、自民党の若手による「麻生-与謝野クーデター説」について与謝野官房長官は、9月18日の閣議後の会見において明確に否定した。さらに麻生幹事長は9月19日に「事前に安倍首相の辞意を知っていたのは自分だけではない」とし、与謝野官房長官も同日「中川(秀直)さんは11日(辞任表明の前日)に安倍さんに会っていて、知っていてもおかしくない」と、中川前幹事長も事前に安倍の辞意を知っていたことを示唆した。  
安倍内閣メールマガジンは9月20日配信分において「国家・国民のためには、今身を引くことが最善と判断した」とのメッセージの下、これをもって最終号を迎えた。  
なお、病院側は、安倍首相の容体は回復軌道には入っているものの退院できる状態ではないとした。病室内では新聞は読まずテレビも基本的には視聴せず、外部の情報をシャットアウトした環境下で治療を行った。9月21日は安倍首相53歳の誕生日だが、病院で誕生日を迎えることになった。このように安倍首相は退陣まで公務復帰できなかった状況だが、与謝野官房長官は「首相の判断力に支障はない」と内閣総理大臣臨時代理は置く予定はないという方針をとっていた。20日の官房長官会見では「首相は辞任と病気の関係を説明するべき」としていた。  
入院中、妻の昭恵から政治家引退を勧められたが、安倍は「いや、それは違う」と答え、議員辞職は拒否した。  
9月23日に行われた自民党総裁選には欠席して前日に不在者投票を行い、前総裁のあいさつは谷川秀善両院議員総会長が代読した。  
9月24日17時、慶應義塾大学病院にて記者会見を行い、自身の健康状態及び退陣に至る経緯について「意志を貫くための基礎体力に限界を感じた」と釈明し、政府・与党、国会関係者並びに日本国民に対して「所信表明演説後の辞意表明という最悪のタイミングで国会を停滞させ、多大な迷惑を掛けたことを深くお詫び申し上げたい」と現在の心境を開陳、謝罪した。また、自民党若手による「麻生クーデター説」については本人の口から改めて否定された。さらに、首相としての公務に支障があったにも関わらず臨時代理を置かなかったことについては「法律にのっとって判断した」としたが、これについては政府内でも批判の声があった。  
9月25日、安倍内閣最後の閣議に出席し、国会へ登院して衆議院本会議での首班指名選挙に出席する意思を明らかにした。9月25日の安倍内閣最後の閣議で閣僚全員の辞職願を取り纏めて内閣総辞職した。安倍前首相は最後の閣議の席上、全閣僚に対して一連の事態に対する謝罪及び閣僚在任に対する謝意を述べた。26日には皇居で行われた福田康夫首相の親任式に出席した後、再び病院へと戻った。なお、安倍内閣の在職日数は1年あまりとなる366日であり、日本国憲法下では歴代7位の短期政権となった。改造内閣はわずか31日の短命に終わった。
2006

 

談話 / 平成18年9月26日  
私は、本日、内閣総理大臣に任命され、公明党との連立政権の下、初の戦後生まれの総理として、国政の重責を担うことになりました。普通の人々の期待に応える政治、みんなが参加する、新しい時代を切り拓く政治の実現を目指し、全力を尽くします。  
我が国は、構造改革の成果があらわれ、未来への明るい展望が開けてきた一方、人口減少、都市と地方の間の不均衡、厳しい財政事情などの課題を抱え、国際社会の平和と安全に対する新たな脅威も生じています。このような状況にあって、私は、活力とチャンスと優しさに満ちあふれ、自律の精神を大事にする、世界に開かれた、「美しい国、日本」を目指すため、「美しい国創り内閣」を組織しました。  
人口減少の局面でも経済成長は、可能です。イノベーションの力とオープンな姿勢で、日本経済に新たな活力を取り入れます。努力した人が報われ、勝ち組と負け組が固定化せず、人生が多様で複線化した「再チャレンジ」可能な社会を構築するため、総合的な支援策を推進します。やる気のある地方が「強い地方」に生まれ変わるよう地方分権を進め、知恵と工夫にあふれた地方の実現のため、頑張る地方を応援します。中小企業支援や農林水産業の再生に取り組みます。  
「成長なくして財政再建なし」の理念の下、歳出削減を徹底し、2011年度にプライマリーバランスを確実に黒字化します。その第一歩である来年度予算編成では、メリハリの効いた配分を行い、新規国債発行額は今年度を下回るようにします。簡素で効率的な「筋肉質の政府」を目指し、抜本的な行政改革を強力に推進します。その上で対応しきれない社会保障の負担増などに対し、安定的な財源を確保するため、抜本的・一体的な税制改革を推進します。  
社会保障制度の一体的な改革、少子化対策の総合的推進による「子育てフレンドリーな社会」の構築、子どもが犠牲となる凶悪事件や規律の緩みを思わせる事故の防止、地球環境問題への対応など、健全で安心できる社会の実現に全力を尽くします。  
家族、地域、国を大事にする、豊かな人間性と創造性を備えた規律ある人間の育成に向け、教育再生に直ちに取り組むこととし、まず、教育基本法案の早期成立を期します。  
「世界とアジアのための日米同盟」をより明確にし、アジアの強固な連帯のために積極的に貢献する「主張する外交」へと転換を図ります。官邸の司令塔機能の強化、情報収集機能の向上を図るとともに、官邸とホワイトハウスが常に意思疎通できる仕組みを整えます。在日米軍再編については、抑止力を維持しつつ、地元の負担軽減や地域振興に全力で取り組みます。未来志向で中国、韓国、ロシアなど隣国との信頼関係を強化します。拉致問題対策本部を設け、専任の事務局を置き、北朝鮮による拉致問題に関する総合的な対策を推進します。イラク復興支援、テロの防止・根絶に力を注ぎます。安保理常任理事国入りを目指し、国連改革に取り組みます。  
我々日本人には、21世紀の日本を、日本人の持つ美徳を保ちながら、魅力あふれる、活力に満ちた国にする力があると、私は信じています。国民の皆様とともに、世界の人々が憧れと尊敬を抱き、子どもたちの世代が自信と誇りを持てる「美しい国、日本」とするため、先頭に立って、全身全霊を傾けて挑戦していく覚悟であります。  
国民の皆様のご理解とご協力を心からお願いいたします  
基本方針  
活力とチャンスと優しさに満ちあふれ、自律の精神を大事にする、世界に開かれた、「美しい国、日本」をつくるため、「美しい国創り内閣」として、官邸主導の政治のリーダーシップを確立し、以下の施策を推進する。  
1.活力に満ちたオープンな経済社会の構築  
人口減少の局面でも経済成長を可能とするため、イノベーションの力とオープンな姿勢により、日本経済に新たな活力を取り入れる。  
努力した人が報われ、勝ち組と負け組が固定化せず、働き方、学び方、暮らし方が多様化、複線化した「再チャレンジ」可能な社会を構築するため、総合的な支援策を推進する。  
地方分権を推進するとともに、知恵と工夫にあふれた地方の実現に向け、「頑張る地方応援プログラム」を来年度から実施する。中小企業支援、農林水産業の再生に取り組む。  
2.財政再建と行政改革の断行  
「成長なくして財政再建なし」の理念の下、諮問会議を活用して、歳出削減を徹底し、ゼロベースの見直しを行う。2011年度のプライマリーバランスの確実な黒字化を目指し、来年度予算編成ではメリハリの効いた配分を行い、新規国債発行額を今年度を下回るようにする。  
公務員定員の純減・総人件費の徹底削減、公務員制度全般の見直し、政策金融機関の統合、政府の資産規模の対GDP比半減、郵政民営化の確実な実施、市場化テストの積極活用、特別会計の大幅見直し等、抜本的行政改革を強力に推進し、簡素で効率的な「筋肉質の政府」を実現する。  
地方行革を進め、自治体再建法制の整備を検討し、地方にも自律を求める。  
社会保障や少子化に伴う負担増に対する安定的財源確保のため、抜本的・一体的な税制改革を推進する。  
行政機構の抜本改革・再編や道州制ビジョンの策定等、行政全体の新たなグランドデザインを描く。  
3.健全で安心できる社会の実現  
社会保障制度の一体的な改革を進めるとともに、社会保険庁の解体的出直しを行う。厚生年金と共済年金の一元化を早急に実現する。医療や介護は政策の重点を予防へと移し、健康寿命を伸ばす政策を推進する。  
出産前後や乳幼児期の経済的負担の軽減を含めた子育て家庭に対する総合的支援、子育て応援の観点からの働き方の改革、子育て・家族の素晴らしさを共有できる意識改革の推進など、少子化対策を総力をあげて推進し、「子育てフレンドリーな社会」を構築する。  
子どもが犠牲になる凶悪事件の防止など、「世界一安全な国、日本」を復活させるとともに、国民の暮らしの安全を脅かす事故の再発防止に取り組む。  
「京都議定書目標達成計画」を着実に推進する。  
4.教育再生  
家族、地域、国を大事にする、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成に向け、教育再生に直ちに取り組む。  
教育基本法案の早期成立を期す。  
公教育を再生し、基礎学力強化プログラムを推進するとともに、教員免許の更新制や学校の外部評価の導入を図る。  
5.主張する外交への転換  
「世界とアジアのための日米同盟」をより明確にし、アジアの強固な連帯のために積極的に貢献する「主張する外交」へと転換を図る。  
官邸における司令塔機能を再編、強化するとともに、情報収集機能の向上を図る。  
官邸とホワイトハウスが常に意思疎通できる枠組みを整える。在日米軍再編については、抑止力を維持しつつ、地元の負担軽減や地域振興に全力で取り組む。  
中国や韓国、ロシアは大事な隣国として、未来志向でお互いに率直に話し合えるよう努力する。  
拉致問題対策本部を設け、専任の事務局を置き、拉致問題に関する総合的な対策を推進する。  
国際社会と協力し、イラク復興支援、テロの防止・根絶に取り組む。  
経済連携をスピーディに推進するとともに、WTOドーハ・ラウンド交渉の早期再開に努める。  
政府開発援助を戦略的に展開するとともに、安定的なエネルギー資源の確保に努める。  
常任理事国入りを目指し、国連改革に取り組む。 
記者会見 / 平成18年9月26日  
第90代内閣総理大臣を拝命いたしました、安倍晋三です。どうぞよろしくお願いいたします。  
私は、自由民主党・公明党連立政権の下、戦後生まれ初の総理大臣として、しっかりと正しい方向にリーダーシップを発揮してまいります。日本を活力とチャンスと優しさに満ちあふれた国にしてまいります。本日より、新しい国づくりに向けてしっかりとスタートしてまいります。  
私は、特定の団体、特定の既得権を持った人たち、あるいはまた特定の考え方を持つ人たちのための政治を行うつもりはありません。毎日、額に汗して働き、家族を愛し、地域をよくしたいと願っている。そして日本の未来を信じたいと考えている普通の人たち、すべての国民の皆様のための政治をしっかりと行ってまいります。そのために、本日、「美しい国創り内閣」を組織いたしました。  
まず初めに、はっきりと申し上げておきたいことは、5年間小泉総理が進めてまいりました構造改革を私もしっかりと引き継ぎ、この構造改革を行ってまいります。構造改革はしばらく休んだ方がいい、あるいは大きく修正をした方がいいという声もあります。私は、この構造改革をむしろ加速させ、そして補強していきたいと考えております。  
頑張った人、汗を流した人、一生懸命切磋琢磨し知恵を出した人が報われる社会をつくっていきたいと考えております。公正でフェアな競争の中で生れてくる活力が日本の経済と国の力を押し上げていきます。しかし、人間ですから失敗をすることもあります。一回失敗したことが人生を決めてはならないと思います。負け組、勝ち組として固定化されてはならない。何度でも人生のいろんな節目にチャンスのある社会をつくっていかなければいけません。  
単線的な人生から、多様な機会のある、そしてまた多様な価値を求めることができる複線的な人生が可能な社会に変えていきたいと思います。そのために、再チャレンジ推進施策をしっかりと実行してまいります。  
また、地域によってはなかなか未来を見つめることができない、頑張っているけれども大変だ、そういう方々や地域があることを私は知っております。地域の活力なくして国の活力なし、この考え方の下に魅力ある地方づくり、魅力ある地域づくりをしっかりと推進してまいります。頑張る地域をしっかりと支援していきたいと考えております。そのためにも、しっかりと地方分権を推進してまいります。また、道州制についても視野に入れながら議論を進めていく考えでございます。  
財政をしっかりと再建していく、これも私の内閣の大きな使命であります。成長なくして財政再建なしとの考え方の下に成長戦略を実施し、そしてまた更に無駄遣いを省き、歳出の改革、削減を進めてまいります。2011年に国と地方を併せてプライマリーバランスを黒字化する、この目標に向けてしっかりと前進してまいります。  
来年度の予算におきまして、新規国債発行額を今年度の発行額以下に下回るようにしてまいります。しっかりと無駄遣いを省いていく。また、その中で隗より始めよとの考え方の下、私の総理の給与を30%カットいたします。また、国務大臣の皆様の給与につきましても10%カットする。まず、私たちが範を示したいと考えています。  
昨年から日本の人口が減少し始めたわけでありますが、減少局面においてもしっかりと成長していく国を目指していきたいと思います。そのためには、やるべきことは3つあります。  
一つは人材の育成であります。もう一つはイノベーション、画期的な新しい技術の革新、新しい取組み、新しい考え方、このイノベーションに力を入れていく、またイノベーションに投資をしていくことで生産性を上げていくことができると思います。減少していく労働力を補って余りある生産性の向上を目指していきたいと思います。  
また、オープン、社会や経済や国を開いていくことであります。そのことによって海外から多くの投資が行われます。また、有為な人材がどんどん日本にやってくる、このことは活力を生み出します。また、国同士がお互いを開いていく、FTA、EPAを進めていくことによって、アジアの成長を日本の成長に取り入れていくことも十分に可能性があると思います。しっかりと人材の育成、そしてイノベーション、オープン、やるべきことをきっちりやって成長していく経済を目指していきたいと思います。今日よりも明日がよくなる、今日よりも明日がより豊かになっていく、そういう国を目指していきたいと考えています。  
また、私の内閣でしっかりと進めていく重要な政策の一つが教育の再生であります。すべての子どもたちに高い水準の学力と、そして規範を身に付ける機会を保障していかなければなりません。そのためには、だれもが通うことができる公立学校をしっかりと再生していきたいと思います。  
まずは、この臨時国会において教育基本法の改正を成立させ、そして叡知を集め、内閣に教育再生会議を発足させたい。そしてしっかりと教育再生改革に取り組んでまいりたいと思います。  
また、このたびの総裁選挙を通じまして、多くの国民の皆様から社会保障制度をよろしくお願いします、もっとわかりやすい制度にしてもらいたい、大丈夫なんでしょうか、こういう声をいただきました。私は国民の安心である社会保障制度をしっかりと守っていきたいと考えています。そのためにも、一体的な改革が必要でしょう。年金、介護、医療、あるいはいざというときのための生活保護といった社会福祉、一体的な改革を行ってまいります。また、やはり社会保障制度においては、公平な制度であることが大切であります。官民格差があると言われている共済年金と厚生年金の一元化を進めてまいります。  
やはり信頼を得るためには、社会保険庁の解体的な手直しが必要であると考えております。また、わかりやすい制度にしていくためにも、例えば年金で今まで幾ら払ったのか、どれぐらいの期間払っていたのか、そして将来は一体幾らもらえるのか、こうした点をわかりやすく国民の皆様に説明をしていく必要があります。  
こうしたことについて、国民の皆様に親切に通知をしていく仕組みを1日も早く構築をし実行してまいりたいと考えております。  
外交について申し上げます。日米の同盟関係はまさに日本の外交、安全保障の基盤であります。この日米同盟をしっかりとお互いの信頼関係を高めていくことによって強化していきたいと思います。そのためにも、お互いが信頼感を増す、双務性を高めていく必要もあると思いますし、またお互いにいつでも話ができる体制も構築していきたいと考えております。  
日本はアジアの国であります。しっかりとアジア外交を重視してまいります。近隣国である中国、韓国、またロシアなどの国々との関係を更に緊密化していくための努力を行っていきたいと思います。  
中国、韓国につきましては、韓国はまさに日本と同じ価値観を持っております。自由、民主主義、基本的な人権、日韓がしっかりと信頼のきずなで結ばれて、互いに将来発展していくことができるように努力をしてまいりたいと思います。また、平和に発展をしていく中国は、日本にとっても大切な、そして重要な国であります。中国の発展は日本にとって大いにプラスであると考えております。日中関係をより発展していくために、私も努力をしていきたいと考えております。  
アジアにおいて、日本と同じ価値観を持つ国々、自由、民主主義、基本的な人権、そして法律の支配、こうした価値観を共有する国々、インドやオーストラリアもそうでありますが、そういう国々との関係を更に強化してまいりたいと思います。  
日本がしっかりと主張していく外交を展開していきたいと思います。それはやみくもに日本の国益を主張することではなくて、地域や世界のために日本は何をすべきか、世界は何を目指すべきかということを主張する外交を展開してまいりたいと考えております。  
日本が国連の場において、しっかりと国連改革に力を発揮し、そしてまた安保理の理事国として、更に国連をすばらしい国連にしていくために、その責任を果たしたい。そのために国連の安保理常任理事国入りを目指していきたいと思います。  
私は、日本が持っているすばらしさ、また日本の目指していく方向を世界に発信していくべきではないかと考えております。そのためにも、日本の外に発信する力、広報していく力を強化していきたいと思います。  
日本が世界の国々から信頼され、そして尊敬され、子どもたちが日本に生まれたことを誇りに思える「美しい国、日本」を創ってまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  
【質疑応答】  
(質問) 美しい国創り内閣ということで、政権構想も美しい国、日本をつくるということですが、国民の間にも具体的なイメージがわきにくいという指摘があります。今日総理になって、日本をどういう国にしたいのか、そのために何をして国民の生活がどうなるのかということを具体的にわかりやすく説明していただきたいと思います。  
(総理) まず、美しい国について申し上げますと、これは立候補したときの記者会見でも申し上げたことでありますが、まず、その姿の一つは、美しい自然や日本の文化や歴史や、そして伝統を大切にする国であると思います。しっかりと環境を守っていく。そして、またそうした要素の中から培われた家族の価値観というものを再認識していく必要があると思います。また、自由な社会を基盤として、しっかりと自立した、凛とした国を目指していかなければならないと考えています。そのためにも教育の改革が必要でしょう。そして規範を守る経済でなければならないと思います。そして、今後力強く成長していく、エネルギーを持ち続ける国でなければならないと思います。冒頭申し上げましたように、今日よりも明日がよくなっていく。みんなが未来に希望を持てる国にしていきたい。しっかりと成長していく経済、強い経済をつくってまいりたい。そのために、イノベーション、オープン、人材の育成が大切であると思います。そして、世界の国々から尊敬され、愛される、リーダーシップを持つ国でなければならないと思います。世界に対して日本の、言わば国柄、カントリー・アイデンティティーをしっかりと発信をしていく国を目指していきたい。そして、多く国々が、また多くの人たちが日本を目指す。そういう方々に日本に来ていただける環境をつくっていくことも重視をしていきたいと思います。  
(質問) 人事についてお尋ねいたします。今回の一連の人事に当たって、どのような点に留意されたかお尋ねします。それと、美しい国創り内閣とおっしゃいましたが、自民党内においては、今回の人事について論功行賞という声も上がっております。総理は、総裁選出馬時点の会見において、党内の意見をよく聞き、最後は自分で決めるとおっしゃいましたが、実際に党内の意見を聞くという局面はあったでしょうか。また、あった場合はどのような形で反映されたのでしょうか。以上、お尋ねします。  
(総理) まず第1点でありますが、やはり適材適所、その分野に精通した方、あるいは、例えばその分野をずっと客観的に見てきて優れた見識を持っている方を配置したと思います。自民党には雲霞のごとく有為な人材がいます。ですから、勿論それぞれのポストに就いて、自分だったら十分に務まるという方は恐らくおられるだろうと思います。そこがなかなか人事の難しいところでありますが、今の時点において私が考えた適材適所ということで配置をさせていただきました。そして、これは論功行賞人事では決してないと思います。政治は結果が大切です。しっかりと結果を出せる、そういう方々を私は選んだと思っております。党内からはいろんな声があります。だれを使ってくれということは、今の時代はもうないわけでございます。私は広く同僚また先輩の議員の皆様を見渡しながら、いろいろな方々からこういう仕事ができる人がいいというお話を伺いながら、その中で最後は自分一人で決定をいたしました。  
(質問) アジア外交についてお尋ねします。中国、韓国との関係ですが、年内にも首脳外交を再開するようなお考えはお持ちでしょうか。その場合、中国、韓国は靖国神社参拝問題、あるいは歴史認識問題等を、なお問題視しているようですけれども、どのように説得され、何を材料に外交を動かしていかれるお考えでしょうか。  
(総理) 小泉内閣時代に、私も官房長官を務めておりました。日本は常にドアを開いております。首脳会談、これは、日本側は決して拒否をしているわけではありません。やはり国同士、お互いに国が違えば利害が対立することもありますし、認識が違うこともありますが、やはりそういうときこそ首脳同士が会って、胸襟を開いて話をしていくことが大切ではないかと思います。そのために、私も努力をしていきたいと考えています。是非とも両国にも一歩前に出てきていただきたいと思います。  
(質問) 人権擁護法案と皇室典範の改正についてですが、これまで総理は、この2つの法案に対して慎重な姿勢を示しておられましたが、今後、政府としてどのように2つの法案を取り扱うお考えなのかお聞かせください。  
(総理) まず、人権擁護法案でありますが、この法案については、党でもいろいろな御意見がございました。法務省において、しっかりと前回の法案の際にあった議論を吟味しながら慎重に議論を進めてまいりたいと思います。また、皇室典範の改正についてでありますが、安定的な皇位の継承は極めて重要な問題であると考えています。また、重要な問題であればあるからこそ、国民の中で納得されるものでなければならない。慎重にしっかりと議論を重ねていく必要があると考えています。  
(質問) 先ほど日米同盟の双務性向上を高めるとおっしゃっておりましたけれども、総裁選で集団的自衛権に関して研究が必要であるとおっしゃっておりました。そこで、首相としてのスケジュール感をお伺いしたいんですけれども、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使、それから御自身がおっしゃっている5年をめどとした自主憲法の制定と、その辺に向けてどのように推し進めるお考えなのかということと、そもそも集団的自衛権の行使を研究することが、どうして双務性を向上することにつながるんでしょうか。  
(総理) まず双務性というのは、考えればすぐわかることだと思いますが、双務性というのはお互いがお互いを助け合っていく、お互いがお互いを必要なときに多用していくことが双務性を高めていくことにつながっていくと思います。それこそが、まさに同盟においては極めて重要ではないかと思います。その観点から、幾つかのケースについて具体的な事例を申し上げました。その中で研究していくべきことは研究していかなければならないのではないかと思います。研究すること自体がいけない、あるいは考えを呈させてはいけないということにはならないと思います。私は、総理大臣として日本の国民の命を守っていかなければならない、そして平和をしっかりと守っていかなければいけないという大きな使命があります。その中で研究すべきは研究し、解釈についてより日本が、地域が平和で安定していくために成すべきことは成していかなければならない。今までも既に政府内において研究をしてきたわけでありますが、更にしっかりと進め、それについて結論を出していきたいと考えております。憲法については、もう既に何回か総裁選挙で述べてきたとおりでありまして、しっかりと政治スケジュールに乗せていくべく、総裁としてリーダーシップを発揮したいと思います。ただ、今後は基本的には党が中心になって、他の党と協議を進めていくことになると思います。 
 

 

●TPPは日本の生き残りをかけた戦い 残り少ないチャンスを生かそう  
中国がTPP参加の希望をアメリカに伝えた。外交的な癖玉に見えるが実は本音。中国が経済でも猛烈にアメリカを追い上げているとはいえ、現状では超大国はアメリカのみであり、その力は圧倒的。日本人は分かっていないが、中国は十分理解している。人口が多いだけの貧乏共産主義国をここまで引き上げるスイッチを押したのは他ならぬアメリカである。  
安倍首相は精力的に各国をまわり中国包囲網を敷きつつあり、中国は苛立っている。そこで、韓国を抱き込むと共に、アメリカに接近して首脳会談などを演出した。日本のTPP参加は日本とアメリカの事務局レベルの接点が日常的に形成されることを意味する。中国は少なくとも同じ条件を得たいわけだ。  
アメリカの顔は一つではない。オバマのように日本に対してクールな顔も有れば、そろそろ日本を信用し、叩き過ぎの補正を入れ経済成長させて、対中国の協力関係を築きたいというネオコンなど白人層の顔も有る。  
TPP参加の戦略的な意味は極めて大きい。TPPに参加しなかったら日本はどうなるか?日本は今以上に孤立し、助け舟も無く、明日は無いだろうね。確かにアメリカはひどいことをしてきたが、ここはアメリカの出してきた救済(壮大な、友達になろう作戦)の手を握るべきだ。  
日本のTPP参加には農業団体や医師会など多くの反対が有る。彼らは鉢巻して税金を奪いとる亡者であり、気勢の大きさや鉢巻の数が懐具合に影響すると考えている。日本の農業は補助金漬けで弱体化し、これ以上税金をばら撒くと高齢者が既得権を手放さないので若者の意欲を完全にそぐことになる。医師会は予防医学を排除し、重病患者を増やしたい。  
TPPはこれら既得権にざっくりメスを入れ、農業企業化によるコスト削減と筋肉質化や輸出促進、予防医学の推進による厚生費の削減や医師の免許制による全国一律高度医療技術の保証などを実現する大きなチャンスになる。勿論、交渉事・戦いだから全て良しとはならないが、ウィンウィンの成果を増やす事が目標。  
今だから明かすが、まだ民主党を支持していた時、菅首相にTPP解散を提案した。74回の提案の一つである。支持率は高かったし、絶好の人気挽回と党内の反対派一掃のチャンスだった。多分大成功しただろうね。民主党は黄金期を迎えられた。しかし、菅首相は実行しなかった。今菅さんは民主党を追われようとしている。歴史とはこんなもんだ。  
●円安はアメリカの対中国 対韓国への対抗策  
1990年代からアメリカが日本を利用し叩く武器の一つとして為替を使ってきたことは分かっていた。何度も何度もこのブログでは繰り返し主張してきたが、世界規模での戦争を展開できない状況では経済は戦略そのものであり、その経済の最もコアな武器が為替なのだ。特に日本に絡んでは有効に機能してきた。  
為替は、実は経済力のある国が制御する。アメリカは戦略的に、あるいはその時の都合によって円高や円安に誘導してきた。日本にとって円高になれば円高の戦略、円安になれば円安の戦略が有り得たが、日本(=馬鹿官僚)は出来なかった。そのため、為替の変動に振り回され、富やノウハウを喪失してきた。その喪失分は主にアメリカ、次いで中国、韓国へ流れた。  
日本の打つべき手段として、例えば80円を割るような超円高では、200兆円ぐらいを用意して海外の資源や有力企業を一気に買収すれば良かった。これをやられたら、アメリカやヨーロッパはたまらない。今回のソフトバンクのスプリント買収(2兆円規模)が円安に向かうきっかけの一つになったと言われているほど。アメリカや中国なら自国通貨が上がれば絶対にやる。日本はやらない。  
一方で、アメリカはソフトバンクの買収を阻止するため様々な手を打ってきている。  
話は変わるが、フォルクスワーゲンが日本勢が優位なハイブリッドや電気自動車などが世界最大の市場で普及しないようあらゆる手を打ったとあからさまに発言している。為替は市場のニーズで決まるなどと、平気で言い放つ官僚はその存在自体が世界の負け組なのだ。  
現在、1ドルが97円から99円のレンジを行き来している。いずれ110円まであって、100〜105円に戻るのかなと思うが、この円安は中国や韓国には打撃になっている。円安はアベノミクス効果と誰もが思っている。ところが、為替制御はアメリカが承認しないと実現しない。ヨーロッパが円安に異を唱えようとして黙った。これはアメリカの戦略に同意したためだ。  
円安は日本経済を活気づかせている。今後の株主総会で史上最高の利益獲得などが相次ぐ。アメリカが自民党政権に期待するのは、日本の経済浮揚と引き換えに尖閣諸島を自分で守ることだ。経済成長をバブルと言う官僚と日銀職員は全員、尖閣諸島の守備隊として島流し。  
また、円安は中国と韓国の経済を叩いている。あれほど中国好きだったアメリカが何故、対中国で方向変換したのか?それは、中国が軍事力をバックに経済を引き上げ(アメリカに干渉させず元をドルとペッグなど)、膨張した経済以上に軍事力を拡大し、やがてアメリカを凌駕する意図が明確になったためだ。中国寄りだったオバマが白人層の支持を失い、方針を変えざるを得なくなった。  
アメリカが中国人を好きだった要因は、日本人嫌いの裏返しと、中国人が2000年の歴史で得た(権力者を誑し込む)ノウハウを駆使したからだ。加えるならば、日本人の理解し難い精神構造や不明確な言動だろう。アメリカも中国も端的に言えばいかさまどうし。プロの世界でお互い騙しあう。意図も目的も分かりやすい。日本人はアマチュアで、何をしたいのか何を考えているのか分からない。  
韓国の李前大統領は歴史に残るビジネスマンだった。世界中どこにでも出かけ、自国のビジネスを優位に展開させた。彼が今後10年大統領を続けていたら、日本と韓国の経済的地位がひっくり返る恐れも有った。その顕著な例がサムソン電子。今でもサムソンは関東に拠点を置いてヘッドハンティングなど日本の技術を吸い上げている。おかげで、日本の全電気企業が束になっても勝てない巨大企業に成長した。  
そのサムソン電子がアップルなどを脅かし始めたのでアメリカの怒りを買っている。ウォン高と円安がアメリカの答え。  
日本を見てきたアメリカの白人リーダー層が、日本を理解し始めた可能性が有る。東日本大震災も一つのきっかけではあった。  
日本人をアマチュアと言い切る根拠は、その交渉下手。営業は交渉の最たるものだが、日本企業は優秀な人材を営業に回さなかったし、営業を軽視してきた。トヨタは今でも多くが自己満足型で、おらの村の自動車を製造している。良い自動車が売れるのは当たり前と、その昔、トヨタが日産やマツダ(技術を誇り、営業が弱かった)を笑っていたその構図が裏返しとなり、世界からトヨタが笑われる立場になった。  
●ジェフリー・サックス・コロンビア大学教授へのインタビュー(2013/5)  
日本経済の問題の“本質”は何だと思いますか?  
日本は驚くほど洗練された社会で偉大なテクノロジーの供給者だと思います。グローバルな観点からも、私は世界中を旅行してきましたが、日本は偉大なサクセスストーリーであり、それは長きに及んでいる。でも、もちろん、人々はそれほど良いと感じてるわけではない。日本経済は数年前の大地震や金融危機によって大きな打撃をこうむった。さまざまな銀行危機や20年前にはバブルもありました。でも、私は、この国が世界最悪と言えるような経済状態だとは思わない。それこそ私が主張したい点です。なぜなら、国際的な新聞では時に、日本を惨憺たるもの、20年に及び失敗してきたと書いてありますから。  
私は定期的に日本に来ている。日本は悲惨には見えない。どう見ても悲惨とは言えないと思う。だが、日本はもっと上手くやることもできた。私は「アベノミクス」がきっと日本経済を前進させると考えている。私がなされるべきだと考えていた重要な政策が現在実行されているのを見てすごく喜んでいる。  
日銀の黒田総裁が進める金融政策をどう評価しますか?  
まず、黒田氏は世界最高の経済政策担当者だと考えています。私は彼を数十年前から、様々な立場の時に知っているので、彼が日本銀行の総裁になった時は興奮しました。彼はずば抜けていると思います。  
二つ目に、私は、彼が経済を再びインフレに持っていくために貨幣供給を増やそうとしているのは正しいアプローチだと考えます。その政策の短期での効果はもちろん円安で、それが日本経済の成長を後押しする。すごく直接的な効果がある。貨幣供給を増やす、円が安くなる、それが輸出と利益を増やし、経済を成長させる。すごく基本的で、すごく標準的。ずっと前にやっておくべきだったんでしょうが。現在、幸運なことに、黒田氏がその政策を採っている。本当のところ、他の中央銀行――FRBやヨーロッパ中央銀行――は数年前にそれとまったく同じ政策を採っていた。一方、日本銀行は手をこまねいているだけだった。それが意味するのは円高であり、日本の輸出産業はさらに窒息させられた。要するに、ずっと前に転換されるべきだったものが今になってようやく転換されたということです。だから私は、黒田氏が正しい方針を取っているものと確信している。  
この政策は持続可能でしょうか?  
間違いなく、持続可能です。日銀が貨幣供給を増やす。それで通貨が安くなり、デフレから抜け出す助けになる。だから、このことが分かっている私からすれば、この政策に対する厳しい批判が何を根拠にしているのか理解できない。特に、株式市場が乱高下し、数日前には大幅に値下がりすると、人々は「これは恐ろしい」「きっと何かが間違ってる」と言い出す。でも、これは適切なアプローチであり、日本が必要としていることなんですよ。短期的に見て最も重要な点は円安です。それは素晴らしく聞こえないかもしれないが、実際には日本にとって良いことであり、日本の輸出産業そして経済成長の加速にとって良いことです。  
先ほど、米FRBとヨーロッパ中央銀行の金融緩和について触れられました。日銀を含めて先進国の緩和マネーは世界経済にどう影響しますか?  
もちろん流動性の緩和に関して注意する必要はある。なぜなら、様々な種類のバブルにつながる可能性がありますから。それはリスクです。私が強調したいのは、金融政策で全ての問題を解決することはできないということです。金融政策はある特定の問題に対処できるものであって、日本の場合には、円を1ドル80円より安くすることができる。私は個人的には110円くらいが適切だと考えている。今はまだそこまで行っていないが、その程度の円安でもこの国にとっては良いことだし、世界全体にとっても素晴らしいことだと思う。それこそ金融政策ができることです。  
それは全ての構造改革を解決するものではない。財政問題を解決するものではないし、高齢化問題を解決するものでないし、為替以外の国際競争力を解決するものでもなければ、エネルギー危機や環境破壊からの救済になるものでもないが、金融政策にはできることがある。そして現在の問題は、中央銀行だけが政策手段になれることです。  
問題の一つは、現在、アメリカでは財政政策が完全に麻痺していることです。ヨーロッパでも、ユーロ危機のため大部分が麻痺している。だから、皆が全ての問題を解決するものとして中央銀行に目を向けるようになっている…そして彼らはそれを実行することができていない。だが、少なくとも適度なリフレ政策は良いことです。バブルを発生させないよう注意しなくてはいけないし、金融部門を規制する必要はありますが。アメリカの規制政策は間違ったモデルです。それは数多く悪用され、時に犯罪にまでつながった。日本銀行は以前よりも金融を緩和しているので、注意をする必要があるし、銀行が無作法なことをしないよう、他人のお金をでたらめなギャンブルに使わせないよう、金融市場が単なる新たなカジノにならないようにする必要がある。それはウォール街で起こったことです。それが日本で起こらないようにしてほしい。  
日本ではむしろ金融機関が「優良な投資先がない」として積極的な融資をせず、日本国債を購入していることが問題ではないでしょうか?  
私はそれがカギとなる問題だと考えている。余剰資金がつみ上がっているが、それはアメリカ企業も同じです。それは大きな問題です――なぜアメリカの企業部門や日本の企業部門はもっと投資しないのか?  
私自身の感覚では、それはもっと深い事象、つまり世界の経済活動の多くが新興国市場に移っていることを反映している。企業はアメリカや日本などの高コスト国であまり投資する魅力を感じなくなっている。彼らは中国に投資したいか、他の新興国で投資したい。だから、我々はもっと複雑な世界環境の中にいると私は感じていて、そこでは単なる短期の金融的・マクロ経済的トレンドを超えた、多くの強力なトレンドが進行している。  
だから、我々はその疑問に答えを見出す必要がある。なぜ日本でもっと多くの企業投資がないのか? それに対して何をすべきなのか? 私が期待しているのは、日本が例えばアフリカなどの新たな市場に繰り出してその魔術的な力を試してみることです。もしくはアジアの低賃金国でもいいのですが、そこでは素晴らしい日本製品があって、これらの貧しい国はそれらの製品を大変必要としている。私はそれらの市場が十分に開発されてるとは思わないし、日本はその他の市場でも十分に競争できている。だから、それは日本が成長し、経済を再起動させるための手段の一つになる。今までずっと伝統的な手段であった単にアメリカやヨーロッパに頼るという手法ではなく。  
その新興国についてお尋ねします。最近、タイ、トルコ、韓国などが通貨高を背景に、利下げに動きました。競うように金融緩和をする状況は健全ですか?  
資金が他の国に流れていることは驚きではない。それらの国の通貨はそれによって高くなる。そこで中央銀行は独自の金融緩和でそれに対応する。そうして世界で流動性が緩和される状況になったわけです。これは世界経済を刺激する助けになる。最近、世界経済の成長率の予測値が上方修正されたが、それは良いことです。でも、我々は1990年代後期、2008年とバブルを経験してきているので、そのことについてすごく心配しています。金融緩和の程度に関しては注意深くなる必要があるし、それだけに頼りすぎてはいけない。それが良質な金融政策管理の技術です。ある点までは良く行っているものが、その点を越えると危険になってしまう。その境界線を見つけるのは簡単ではない。そこに良質な政策決定の妙技がある。確かに、我々は過去20年大失敗してきたし、そのポイントを見失ってしまった。  
その一方で、米FRBが金融緩和を縮小するのではないかという見方が広がっています。どういう影響が考えられますか?  
流動性の緩和が打ち切られれば、利子率は上昇することになり、多くの市場関係者はまだその変化に対しての用意ができていないと人々は感じるでしょう。かなり劇的な調整の可能性もある。私は株式市場の変動を数日単位で解釈するのは好きではないんですが、FRBが量的緩和を縮小するという噂が出ただけで、日本の金融市場にとって大きな衝撃となった。それは単なる噂であって、実際には一年後とかの話だったのに。  
そのことが示しているのは、我々は株式市場の変動をまだ十分にマスターできていないし、残念ながら2008年の後ですら、一般的に、規制された金融システムの下部にある現実に直面できていない。我々は今でも多くの不安定性に対して無防備です。このことは明白で、今でも危険性のある問題であり、特に我が国、アメリカの失敗を示していると私は考えている。なぜならアメリカ人は2008年のリーマンショックの教訓を十分に理解しないままで、何をすべきだったのか語っているからです。  
単純に、銀行は政治的に力を持ちすぎて、ワシントンが銀行を規制するというより、銀行がワシントンを動かすようになった。そのために真の改革ができなかった。  
政府や中央銀行は、市場を制御できるものでしょうか?  
政府や中央銀行は制御できます…政府や中央銀行は銀行を制御できる…すうすべきではある…かつてアメリカの金融機関は規制されていました。銀行は十分な資本を積み立てておく必要があった。アメリカはかつて商業銀行と投資銀行、そしてヘッジファンドを分離していた。現在では、その全てがシティグループなどでは一緒になっている。そして、そのことが現在の危機の重大な要因の一つになっている。だが、その現実と直面するべき時になっても、アメリカ政府はそれらの企業が巨大化していくのを放置するという過ちを犯し、実際問題として金融機関が政府よりも巨大になってしまった。そうして、金融機関は政府に自分たちには手を出すなと言い、政府は「分かってる、分かってる、あなたたちには手出ししないよ」と言うようになった。  
先ほど教授も指摘されましたが、どの国もいわば“金融政策一本足打法”です。どうしてこういうことになったと思いますか?  
一般的に、先進国における経済政策は全て非常に近視眼的であり、非常に短期的だと考えている。日本の政治サイクルはすごく短い。アメリカでは総選挙が2年ごとにあり、4年ごとに大統領選挙があるが、それは重要な構造問題に対処するには短すぎる。我々にはどうすれば中国を世界経済に組み込むことができるのか、どうやって製造業型経済をサービス業型経済に移行することができるのか、どうすれば若年層に21世紀に必要となる教育を受けさせることができるのかといった大きな問題がある。それらは難問であり、もっと重要かもしれない問題…気候変動にどう対処すべきか、どうすれば低炭素のエネルギー源に移行できるのか、具体的に言えば、福島の事故の後に原子力に対してどう取り組んでいくのか?  
それらは普通の政府や普通の政治家にとっては大きすぎる問題です。おそらく安倍総理は違うのでしょうが、政治家たちは多くの場合これらの問題を避けて通る。アメリカでは、これらの問題と深刻に取り組もうとする政治家はいない。アメリカの政治家は常に次の選挙のことだけを見ていて、それはいつでも2年以内にやってくるものなんです。彼らは常に選挙資金を稼ぎ出すことを考えている。だから我々は日本でその答えを見つけようとしている。なぜなら我が国の政府システムはもっと大きな経済問題に対処するのに十分なものではないですから。  
金融政策への依存が高い理由として「財政に依存できなくなったから」的なことを指摘するのかと思いました。  
私が言っているのは、なぜアメリカや日本でこんなに債務が積み上がってしまったかといえば、人々が税金を払いたがらないからですよ。人々は政府が必要とするだけのお金を払いたくない。そうして莫大な借金が積み上がってしまった。でも、それは政府が責任ある態度を取ろうとしない、我々の言い方でいえば中期的な財政の枠組み、5年から10年といったスパンで財政を均衡させる意思がないからだと考えています。アメリカでは、選挙に勝つ唯一の方法は有権者に税金を下げると約束することになっている。そして選挙資金を稼ぐ唯一の方法はお金持ちに税金なんて払う必要がない、そんなことを心配する必要などないと約束することです。そうなると我々の税収は相対的に小さくなってしまう。その後で、我々は政府に退職後のこと、医療のこと、道路や電力のこと、インフラや環境、職業訓練の世話をしてくれと求める。重要なことが数多くあるのに、我々アメリカ人は多くの戦争まで戦っている。  
これらの全てに費用がかかる。それなのに、アメリカの人々は「気にするな、税金なんて払わなくていい」と言われる。そして債務が積み上がっていく。興味深いことに、日本の国民経済に対する総税収の水準はアメリカと同じくらいの国民所得に対して30%くらいで、カナダやイギリスはもとより、ドイツやスカンジナビア諸国のGNPに対して40%、多いところでは45%といった水準と比べると非常に低い。だから日本が莫大な債務、莫大な財政赤字を抱えるようになったのは、単純に、政府が収支を均衡するために必要なだけの税金を徴集できないからだと思います。私の意見では、それをやるべきなんです。  
サックス教授は多くの国の政府のアドバイザーをされていますが、仮に日本政府にアドバイスをするとすれば?  
最優先に取り組むべきカギとなる問題は生活の質のことだとアドバイスします。経済を人々の必要性を満たすものにしたい。それが最初のポイントです。我々はGNPのために生きているのではなく、GNPは我々の必要性と合致したものであるべきです。2番目に、物理的環境に注意する必要がある。そのことをまったく忘れてはいけない。我々は短期的な事柄と戦っていく中で、重要な長期的事柄を忘れがちだからです。でも、重要な気象危機は存在しているし、それはどんどん深刻になっている。このことは、我々が新たな世界的エネルギーシステムを必要としていることを示している。日本はエネルギー効率の改善がすごく得意です。他の国にもそのやり方を教えていくべきでしょう。炭素排出量を減らす計画も維持すべきです。3番目に、真の経済成長はアジアやアフリカの新興国から来ると言っておきたい。日本に関して言えば、日本には偉大なテクノロジーと偉大な企業があり、新たな市場で勝ち抜いていく能力と、発展途上国の経済をより先進的でより技術的に洗練されたものにしていく方法について数多くのことを教える能力がある。だから30人以上のアフリカのリーダーを招待した横浜での第5回アフリカ開発会議に参加できてすごく幸せです。  
日本はそれにふさわしい。先日、安倍首相と会う機会があった時にそのことを話しました。アフリカでの日本の役割について私がどれだけ熱心か強調しておきました。アフリカは巨大な市場だが、日本は発展のための手助けをすることができる。日本にとってもアフリカにとっても関係が緊密になることで両者共に得をすると私は考えている。  
アフリカで中国の存在感が高まっている中で日本の役割が大きいという意味でしょうか?  
それは私のようなずっとアフリカ中を行き来してきた身からすれば非常に驚きです。アメリカ企業は見かけない。日本企業も見かけない。目にするのは中国企業だけです。彼らはそこが我々にとっても未来の市場となることを理解しているんじゃないでしょうか? 我々もアフリカに向かうようになればいいと思います。