いやつぎつぎの無駄遣い

出して通す通ればまた出す景気対策 いやつぎつぎの無駄遣いかな 

 


景気対策諸話
 
 
 
定額給付金
 
高速1000円乗り放題
 
環境対応車(エコカー)の購入促進
 
地デジ対応テレビの購入「ポイント」で補助
 
住宅購入時に限り、贈与税の非課税枠を拡大
 
公立小中学校3万7000校への太陽光発電の設置
 
「緊急人材育成・就職支援基金(仮称)」による職業訓練など総合的支援
 
派遣切り防止など派遣労働者保護の強化
 
整備新幹線の完成前倒し及び羽田空港の滑走路延伸
 
就学前3年間の幼児を対象に第1子から1人当たり年3万6000円を支給
 
 
 
 
ドサクサ紛れに真打登場 
楽しい箱もの作り 
次に待っているのが天下り箱もの管理の指定席 
箱ものに意義は関係ありません 
ただただ存続させることにのみに意義があります
 
 
 
咲けば散り散れば咲きぬる山桜 いやつぎつぎの花さかりかな

 
2009/4  
 
●フィアット 自社の自動車部門とGMの欧州部門の合併検討 2009/5/4 
伊フィアットは3日、同社の自動車部門と、米ゼネラル・モーターズの欧州部門を合併させる計画を検討していると発表した。GMの欧州部門には独オペルも含まれる。合併後に分社化し、株式上場させたい考え。 フィアットの試算では、合併後の会社の年間売上高は約800億ユーロ(1063億ドル)。 連邦破産法11条の適用を申請した米クライスラーとこのほど提携で合意したばかりのフィアットのマルキオンネ最高経営責任者(CEO)は4日ベルリンを訪れ、グッテンベルク独経済技術相、シュタインマイヤー独外相らと会談する予定。 フィアットが発表した声明によると、クライスラーとの提携内容を精査するとともに、クライスラーの利益を考慮したうえで、フィアットの自動車部門とGMの欧州部門の合併を検討するマルキオンネCEOを支持するために、3日に取締役会が開かれた。 同声明でフィアットは「フィアット・グループ・オートモビルズの分社化、およびゼネラル・モーターズ・ヨーロッパの事業統合を経た上での株式上場など、いくつかの選択肢を検討する」とした。 ただ声明では、ゼネラル・モーターズ・ヨーロッパの売上高の約80%を稼ぎ出す独オペルについては言及されなかった。GMのリストラ計画によると、オペルは傘下の英ヴォクスホールと共に分社化される予定。 フィアットのマルキオンネCEOが会談予定のシュタインマイヤー独外相は、現政権のオペル存続に向けた動きの先頭に立っており、今年9月の連邦選挙での社会民主党(SPD)の首相候補と目されている。  
●景気対策の愚 2009/4/19 
小沢民主党代表の資金問題以来、国内政局は膠着状態が続いている。人々の関心は、北朝鮮によるミサイル発射と金融サミットに向けられ、国際社会における日本の政策能力が問われる場面となった。 
北朝鮮ミサイルについては、日本政府とメディアの大騒ぎが目立つ結果となった。私は、三月末にソウル大学に招かれて講演を行った。その時、同大学の研究者と議論した中で、ミサイルも話題に上った。韓国の政府、メディアの受け止め方は至って平静であった。北朝鮮の行動様式を熟知している人々にとっては、またかという感想である。北朝鮮の行動は確かに挑発的であるが、挑発に対して、「これは挑発だ」と大騒ぎすれば、北朝鮮の意図は達成されたことになる。ミサイル発射の誤報というおまけはついたものの、落ち目の麻生政権にとってミサイル危機は干天の慈雨になったことは間違いない。しかし、対外危機の強調によって国内世論を統一することは、為政者にとっての禁断の果実であることを忘れてはならない。 
ロンドンで行われた金融サミットでは、世界的な協調による経済刺激策の展開が合意された。日本でも、補正予算の編成による経済対策が準備されている。世界的な経済危機を乗り越えるために政府が積極的な政策を取ることには異議はない。しかし、今回の日本政府の対応を見ていると、既視感に襲われる。 
私は二月中旬、アメリカに行った。ちょうどオバマ政権の最初の政策である経済対策法案が議会で審議されているところだった。その論議の過程で、オバマ大統領も、野党共和党も日本を引き合いに出して自説を正当化していた。オバマ大統領は、.90年代の日本の景気対策は小出しの政策を遅れながら出したため、効果がなかった。自分の政策は迅速、大規模だと主張した。共和党は、バブル崩壊以後の日本の景気対策は財政赤字を増やしただけで効果がなかったのであり、オバマの政策もその轍を踏むだろうと反論した。いずれにしても、日本は悪いお手本である。 
肝心の日本の政治家や官僚がそのことをどれだけまじめに受け止めているのだろうか。.90年代の景気対策を作った人々は既に引退しているので、みんな他人事だと思っているのだろう。しかし、経済政策を作る手順、仕組みは相変わらずである。.90年代の景気対策が投入に見合う効果を生まなかったのは、次のようなからくりがあったからである。 
当時の大蔵省は表面的な健全財政主義に固執し、景気が悪いにもかかわらず、当初予算の規模を過小に押さえ込む。年度の途中になって追加的景気対策が必要という雰囲気が強まると、政治の側から総額○○兆円の景気対策という指示が出され、補正予算の編成が始まる。しかし、年度途中で時間的余裕もないため、当初予算編成で落とされた筋の悪い案件に金がつけられ、予算消化が自己目的化する。こうして、バブル崩壊以後、総計140兆円もの追加景気対策が実行されたが、穴の空いた水道管に水を通した結果となった。 
ここから引き出すべき教訓は単純である。大規模な景気対策を行う際には、各省からアイディアを上げさせてはだめである。そうすれば、必ず官僚組織の保身だけに役立つような事業にちまちまと予算が付く結果になり、金を使い切った時に目に見える効果が上がらない。また、そのような政策は、全国、全国民を対象とする事業ではなく、条件を満たす特定の地域や団体を対象とした事業であるため、予算を受ける自治体の側で手間ばかりが増える結果となる。 
緊急の景気対策は、平時にはなかなかできないような思い切った政策に、数兆円単位の予算を塊として投入することが必要である。また、将来の日本に向けた戦略的投資こそが求められている。こうした政策を展開するためにこそ、政治主導が必要である。政策の世界では、量が質に転化するのであり、数兆円の金も各省に割れば、単なるばらまきに終わる。各省の縦割りを超えた発想ができる政治的リーダーシップこそ、大規模経済対策の成功の鍵である。 
整備新幹線や高速道路網の早期完成という公共投資系の事業に一気に予算をつぎ込むことを考えてもよい。これらの事業は地域の疲弊を止めるために、ある程度の効果を生むことが予想される。ただし、そのためにはこれらのインフラ整備が、収益性を度外視した公共事業であるという合意を作らなければならない。 
今の日本で真っ先に必要なのは、医療、介護、教育など、人に関わる公共サービスの再建である。小泉時代の「改革」の最大の誤りは、これらの政策について「量入制出」のアプローチを取ったことである。社会保障支出をあれだけ削減すれば、医療や介護の供給体制が崩壊するのは当然であり、サービスを受けられる者と受けられない者との間に巨大な格差が生じる。すべての国民に対して憲法が謳う最低限度の生活を保障するためには、これらの公共サービスの需要を計算した上で、それに見合う供給体制を構築するという、「量出制入」のアプローチに転換することが必要である。 
お手本はある。イギリスの労働政権は、21世紀に入ってから毎年医療支出を一割ずつ増やし、保守党政権時代に荒廃した医療を立て直した。そのせいで、日本はイギリスに追い越され、GDPに対する医療予算の比率は先進国中最低になった。 
もちろん、借金による臨時の支出には限界があり、社会経済の混乱が収まった後には、今後の国民負担のあり方についてまじめに議論する必要がある。政府が将来の日本社会について明確なビジョンを持って政策を提起すれば、国民も議論に参加するはずである。 
逆に、政府が思考停止のまま景気対策の数字を大きくすることだけに腐心するならば、.90年代の愚を繰り返すことになる。今は重大な分かれ道である。
●「過去最大」でも効果乏しい麻生流景気対策 プラス成長には程遠く 2009/4/14 
民間の景況感が過去最悪となる中で、麻生太郎首相が打ち出す景気対策に注目が集まっている。与謝野馨財務・金融・経済財政相に対して、「GDP(国内総生産)比2%を上回る対策に」と指示。2009年度補正予算の金額は10兆円を超え、金融危機に直面した1998年に小渕恵三政権が打ち出した8.5兆円の補正予算を上回る「過去最大」となる。だが、その効果となると、何か心もとない。  
10年前の水準に戻る程度「予算をふんだんに使う施策を打ち出さなければ、他の役所と比べて埋没してしまう」。 補正予算に向けた作業に追われる霞が関の官僚たちの間には奇妙な危機感が漂っていた。各省の担当者に伝わった首相官邸の意向は「インフラ整備につながる施策を出すように」。現政権として大きな補正をぶち上げて、解散総選挙を有利に運ぶためだという解説が、まことしやかに流された。公共事業のネタ探しに各省庁は奔走した。  
そんな官僚たちの努力の甲斐あって、世紀の大盤振る舞いは補正予算案として結実しそうだ。麻生政権が「3段ロケット」と称した昨年からの対策が、当初は中小企業の資金繰り支援など緊急避難的な内容だったのに対し、今回の対策は需要創出につながるインフラ整備が柱だ。 
「過去最大」の景気対策の効果はどんなものか。三菱総合研究所の協力を得て試算してみた。 2009年度中に追加で10兆円の財政出動を行い、半分が公共事業だった場合、GDPを押し上げる効果はわずか1.5%との結果になった。公共事業は財政出動分がそのままGDPを押し上げるが、残り半分の減税や補助金は押し上げ効果が目減りするケースが多い、というのが試算の根拠だ。 民間調査機関20社による2009年度の実質GDP予測は平均で前年度比4.4%減。つまり、10兆円を超える補正予算を組んだとしても、2009年度にプラス成長を回復するには程遠い、ということになる。 物価が持続的に下落するデフレの懸念もぬぐえない。今の日本経済が持つ設備や労働力を平均的に使い、持続的に達成できるとされる潜在GDPと比べると、三菱総研の試算では急激な生産縮小が進んだ今年1-3月期はGDP比で年率7%(約38兆円)もの需要不足になったようだ。10兆円の財政支出に踏み切ったとしても、需要不足は2009年度末で5.6%、約30兆円に縮小するだけだ。  
これは、金融危機が深刻化した1999年1-3月期と比べても、さらに需要が足りない計算だ。麻生流の大型補正を打ってもなお、日本長期信用銀行など大手銀行の経営破綻、国有化が相次いだ10年前の水準に戻す程度の効果しか期待できないのだ。 
「100年に1度」と言われる経済危機は、「単に財政出動したというだけでは解決しない」と野村証券金融経済研究所の木内登英チーフエコノミストは言う。日本を本格的な成長軌道に戻すには、与謝野氏の口癖である「賢明な投資」が必要、ということ。言ってみれば投資の質が問われるわけだ。来年度以降も効果を持続させるには、電機や自動車などの業績回復を下支えするような投資が不可欠だろう。 
経済対策の具体的な項目には、太陽光発電の普及促進が含まれている。太陽光発電の導入量を2020年頃までに現在の20倍にするという目標を打ち出した。これを実現するために、全国で約3万7000の公立小中学校に発電設備を導入する、という。一方で太陽光で発電した電力を、電力会社に買い取らせる際の単価を引き上げる案も検討中だ。実現すれば太陽光発電が普及し、発電システムのメーカーの業績や技術の底上げにつながりそうだ。 
また、環境配慮型の自動車を普及させるための施策なども盛り込まれているが、「将来の成長」につながるような具体的な項目はその程度。そうした内容に経済界の視線は厳しい。 
「麻生政権は日本をどんな国にしたいかのビジョンが感じられない。そのうえ、短期間で政策をまとめたせいか、一貫性ある内容になっていない」と経済同友会代表幹事の桜井正光リコー会長は指摘する。いきおい経済官庁幹部から「経済対策は政権の支持率回復の道具でしかない」との愚痴も出る。 
財政出動の規模、内容ともに問題をはらむ政府の景気対策。その財源はあまり議論になっていない。 既に、国と地方を合わせた長期債務残高はGDPの1.5倍まで膨らんでいる。先進国では最悪の水準だ。このうえ、財政出動しようという動きに対して財政の番人であるはずの財務省の動きは鈍い。 
「財務省がしぶったせいで自民党は下野した。そんな責任転嫁が怖いんです」と話すのは首相官邸関係者。次の総選挙で仮に自民党が負けたとしても、そう遠くない時期に再び自民党が政権の座を奪い返す可能性もある。そうなった時の自民党からの意趣返しを財務省は恐れている、というのだ。 
「かつての小沢一郎(現・民主党代表)ー齋藤次郎(現・東京金融取引所社長)ラインを巡る事件は、随分尾を引きましたから」と前出の官邸関係者。 
1993年に自民党が下野した時、大蔵省は細川護煕政権に寄り添った。当時、大蔵次官だった齋藤氏は、自民党を飛び出て新生党の代表幹事となった小沢氏と組み、翌年2月には「国民福祉税」構想をぶち上げた。 
ところが、そのわずか4カ月後には早くも自民党は与党に返り咲いた。自民党内に流れた空気は、「大蔵省、許すまじ」。10年に1人の大物次官と言われた齋藤氏ですらあえなく定期異動前の退任となった。その3年後の98年に金融監督庁(現金融庁)が創設され、財政と金融の分離という形で大蔵省解体が進んだ流れとも無縁ではない。 
与野党が逆転しそうな時には目立ったことをしない。そんな不文律が現在の財務省にも生きている。だからこそ財務省は財政規律という言葉を封印している、というのだ。 
ただし今回の大型補正に続き、第2次補正が必要になる可能性すらあるため、財政規律とのバランスはこれから与野党の間で議論になりそう。積み上がる債務残高は、いつ長期金利の上昇という事態を招いてもおかしくないからだ。年初の消費増税を巡る自民党内の議論に続き、民主党も4月8日に公表した資料で財政規律を再び声高にうたい始めた。 
「金融危機対策が一段落した後には、各国の財政健全性が注視される局面を迎える。国内の財政出動は直接的には輸出回復にはつながらないことを念頭に、経済効果の高い財政出動に注力することが重要だ」との指摘が民主党内から聞かれる。与野党を巡る政策論争の対立軸は、財政出動の中身、そして財政規律をどう保っていくかになりそうだ。
●自民党 追加景気対策を了承 予算額史上初の100兆円突破 2009/4/10 
「環境対応車への買い替え・省エネ家電普及に補助金約6700億円」 
対策全体の事業規模は約56兆8000億円になり、2009年度補正予算案に盛り込む実質的な財政支出額は15兆4000億円で過去最大となっています。 これで年度予算と合わせた一般会計予算額は単年度として史上初めて、100兆円を突破することが確実になりました。 
財源については、財政投融資特別会計の積立金(3兆円程度)や経済緊急対応予備費(1兆円)、建設国債を充てるとし、「なお不足する場合には、赤字国債を発行する」と明記しており、国際発行規模は10-11兆円、赤字国債は7-8兆円となる見通しです。  
「国費及び事業費 (単位:兆円)」 
緊急的な対策 [ 国費4.9/事業費44.4 ] 
  (雇用対策/金融対策) 
成長戦略 [ 国費6.2/事業費8.8 ] 
  (低炭素革命/健康・長寿/底力発揮・21世紀型インフラ整備) 
「安心と活力」の実現 [ 国費4.3/事業費5.0 ] 
  (地域活性化等/安全・安心確保等/地方公共団体への配慮) 
税制改正 [ 国費0.1/事業費0.15 ] 
[ 合計 国費15.4/事業費 56.8 ](注)9年度財投追加7.8兆円による事業費の増を含む。このほか、株式市場への対応に係る政府保証50兆円。 
追加景気対策の主なもの 
・環境対応車(エコカー)の購入促進に最大25万円を補助 
・地デジ対応テレビの購入額の13%、最大3万9000円相当を「ポイント」で補助 
・住宅購入時に限り、贈与税の非課税枠を現行の年110万円とは別枠で500万円拡大  
・公立小中学校3万7000校への太陽光発電の設置 
・「緊急人材育成・就職支援基金(仮称)」による職業訓練など総合的支援  
・派遣切り防止など派遣労働者保護の強化  
・整備新幹線の完成前倒し及び羽田空港の滑走路延伸  
・就学前3年間の幼児を対象に第1子から1人当たり年3万6000円を支給  
贈与税は現在、年110万円まで非課税ですが、今年1月から来年末まで2年間の限定で、住宅購入資金に限り別枠で500万円まで非課税扱いとなります。 贈与税減税は、高齢者の金融資産を若い世代に移転し、景気刺激につなげるのが狙いのようです。 この政策を巡っては、「金持ち優遇の批判を受けかねない」との批判もありましたが、対象を居住用住宅に限ることで合意にいたっています。 また、今回の経済対策追加案では、住宅ローンの円滑な借入れ支援として、フラット35の融資率(現在は90%が上限)の引き上げなどが挙げられています。 その他、減税対策としては、企業の研究開発費を法人税から控除できる範囲を、現在の20%から30%に拡大。中小企業の交際費を損金として算入できる範囲は、現在、年400万円までの交際費のうち90%ですが、今年度に限って年600万円のうち90%に拡大。 という計3点が盛り込まれています。 
また、公明党が主張していた社会保障関連政策では、乳がんと子宮頸(けい)がんの検診費用を一定の年齢に達した女性に対し1回に限り無料にすることも盛り込まれています。  
その他、株式市場への対策として、株価が大暴落するなどの株式市場の異常事態に備え、政府の関係機関が株式などを買い取る仕組みを整備する方針を固めています。 
買い取りに使用できる資金として50兆円の政府保証枠を用意し、株式の大量取得を可能にすることで、株価の下支えを図る意向です。 
市場から株式等を買い取る政府関係機関については、銀行等保有株式取得機構や日本政策金融公庫、日本政策投資銀行などが浮上しています。  
●予算額史上初の100兆円突破、自民が追加景気対策を了承 2009/4/10 
自民党は9日午前の政調審議会と総務会などで、政府・与党の追加景気対策を了承した。 
同日示された対策の最終案では、対策全体の事業規模は約56兆8000億円になり、2009年度補正予算案に盛り込む実質的な財政支出額は15兆4000億円に上った。年度予算と合わせた一般会計予算額は単年度として史上初めて、100兆円を突破することが確実になった。公明党も同日午後の政調全体会議で了承し、10日に正式決定する。 対策は雇用、健康・子育て、地方、税制改正などからなる。 
医療対策で、難病患者への支援として11の疾患を新たに医療費助成の対象に追加。また、「高齢化の進展を内需拡大、雇用創出にいかす」などとして、健康増進の観点から、新薬の承認期間を全体で2年半、新医療機器の承認期間も1年半短縮する。新型インフルエンザワクチンの開発・生産体制の抜本強化も盛り込んだ。 
地方対策として、地球温暖化や少子高齢化などに関する事業を実施する自治体に「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」(仮称)の創設を盛り込んだ。09年度当初予算に盛り込んだ公共事業について、上半期に8割契約することを目指す。 
小学校就学前3年間の子どもに、年3万6000円を第1子から支給する手当を09年度に限り実施する。 
住宅購入・改修時に限り、時限的に年610万円まで非課税とする贈与税軽減は、補正予算案と同時に国会に提出される税制改正関連法案が成立すれば実施される。その場合、今年1月にさかのぼって来年12月末まで適用される。 
これに関連し、内閣府は9日の自民党政調全体会議で、今回の追加景気対策による雇用創出効果について、対策を実施しなければ完全失業率が7%台に突入する恐れがあり、実施すれば過去最悪水準(5・5%)以下に抑えられるとの見通しを明らかにした。 
子育て手当3万6千円 追加対策56・5兆円規模 
政府、与党は8日、深刻な景気後退に対応する追加経済対策を固めた。財源の裏付けとなる2009年度補正予算の財政支出は約15兆円、事業規模は総額56兆5000億円程度に達する。与党は「子どもと家族応援手当」を1年に限って創設、小学校入学前3年間の子どもを対象に年3万6000円を支給することで合意。贈与税の非課税枠拡大など税制面の措置も盛り込んだ。 財政支出、事業規模とも過去最大の大型対策となり、雇用や資金繰り支援、環境などの成長分野に重点配分、不況脱却を目指す。政府、与党は10日に正式決定する方針。追加の国債発行は10兆円超となり、補正後の一般会計総額は100兆円規模に膨らむ見通し。財政は一段と悪化するが、当面は景気対策を優先させる。 贈与税では、住宅購入などを対象に10年末までの時限措置として非課税枠を500万円上乗せし、年最大610万円とすることで与党が合意。研究開発減税を拡充、交際費課税を軽減する。 
対策では雇用や企業の資金繰り支援などの緊急対応に4兆9000億円の国費を投入。財政支出をてこに日本政策投資銀行の融資枠を15兆円に広げるほか、中小企業向けの緊急保証枠も30兆円に拡大することなどから事業規模は44兆5000億円に膨らむ。 
民主が独自の追加景気対策、2年間で総額21兆円  
民主党は8日の「次の内閣」の会合で、2010年度から2年間で総額約21兆円に及ぶ独自の追加景気対策を正式決定した。 政府・与党に先んじて公表し、小沢代表の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件で傷ついた党勢を立て直したい考えだ。 小沢氏は会合の冒頭であいさつし、「政府・与党(の対策)は景気が悪いから当面こうしますという考え方で泥縄式に作られたものだが、我々(の対策)は国民の安定した生活を将来にわたって確保できる」とアピールした。 
対策は各世帯の可処分所得を増やすことに重点が置かれ〈1〉月額2万6000円の「子ども手当」支給〈2〉高速道路無料化〈3〉ガソリン税の暫定税率廃止〈4〉太陽光パネル設置や低燃費車の買い替え補助〈5〉中学生までの医療費無料化――などを盛り込んだ。 
財源は特別会計の余剰金である「埋蔵金」のほか、国家公務員の天下り廃止など「税金の無駄遣い」の見直しで捻出(ねんしゅつ)する。ただ、それだけですべて賄うのは困難との見方があり、直嶋政調会長も会合後の記者会見で、「若干の(赤字)国債発行もやむを得ないのかなと思う」との認識を示した。 
う-ん。予算が100兆円を突破しただの、数値だけを聞いていると、「お-!」と思うのですが、この子供手当て3万6000円一つとっても今年度限りの措置なんですよね(汗あれだけ児童手当の拡充に抵抗を示していた自民党の長老達がいきなり「子育て家庭に3万6000円の一時金を支給する」と言い出した時も、その変貌振りには驚かされたのですが、ポイントはこの手当。実は毎月支給されるわけではなく、一回ぽっきりというところにあります。 
子育て世代が経済的理由を挙げて欲しいだけの子供を持たない理由の1つには、この「国や自治体の経済的支援が充てにならない」というのがありますし、こと育児支援に関しては、私は多少税金投入が多くなっても、民主党案のように、毎月の補助を実感できる水準に充実させることが、ひいては合計特殊出生率の長期低落をストップさせることにもつながるのではないかと思いますね。
●追加経済対策 / エコノミスト3人に聞く 2009/04/10 
第一生命経済研究所 / 国内総生産(GDP)の3%分の15兆円の財政支出による実質経済成長率の押し上げ効果は、1・5-2・0%程度あるとみている。平成21年度は4-5%減のマイナス成長が予測されており、追加対策の実施で、一定のマイナス幅圧縮が期待できる。 
国家財政が厳しい中、政府が過去最大規模の対策を打ち出し、景気浮揚に取り組む明確な姿勢を示したことは、評価できる。 外需依存型の日本経済にとって、米国や中国の生産活動に底入れの動きが出てきたことは明るい材料だ。これに追加対策の効果が加われば、今年後半には国内景気が回復に向かうことも期待できそうだ。 また環境に配慮した製品の消費を誘発することにより、結果的に地球温暖化対策が進展すると同時に、中長期的にみて、日本が得意とする産業分野を強くすことにもつながる。 
大和総研 / これまでの経済対策とは異なり、重要課題である環境問題に配慮し、地球温暖化対策の推進につながる点で、前向きに評価することができる。しかし、予算規模は、もっと増やすべきだった。 雇用対策は、痛み止めとしては一定の効果があるが、単純な雇用創出で終わる可能性があり、職業訓練などにもっと手厚く助成すべきだ。子育て応援手当は、平成21年度限りの支給となっており、経済効果に疑問が残る。減税も規模が小さく、法人税率の引き下げや証券税制の抜本改正に踏み込むべきだ。少子化対策や年金不安の解消などの手当ても必要だ。 景気の底入れは今年後半と考えるが、本格的な回復は来年後半にずれ込む。米国や中国経済は最悪の時期は脱してきた。特に、米国は、今年後半に成長率がプラスになる可能性もあるとみている。 
JPモルガン証券 / 追加経済対策の効果を踏まえると、短期的には、日本経済が今年7-9月期には底打ちしそうだ。ただ、その後、本格的な成長路線に入れるかどうかは、不透明だ。 日本の景気底打ちは、海外経済の回復が前提となり、日本だけで立ち直るのは難しい。とくに製造業を中心に広がっている雇用削減の動きは、輸出が増えないと、止まらない。そうした意味で、今回の対策で雇用不安が緩和する効果は期待できる。 エコポイント制度やエコカー購入補助は、一時的な消費の押し上げ効果はありそうだが、消費支出を前倒しさせるだけで、その後、反動が出る懸念もある。一方、企業にとっては、積み上がった在庫の削減につながり、楽になる。在庫調整が進めば、今後、需要が回復してきた段階で、すぐに増産態勢に入ることができる。  
●中国の大規模な景気対策の行く末  2009/4/10 
中国は世界経済の機関車になり得るか 
前回、中国の景気対策によって、日本の景気は深いながらも底を打ったのではないか、というお話をしました。確かに、日本の最大輸出国である中国が動き始めると、日本の輸出産業は伸びる可能性があります。しかし、私には心配している点がいくつかあります。今回は、中国経済の実態をアジアの指標から解説すると共に、今後の経済の流れを読み解いていきたいと思います。 
中国の大規模な景気対策とは 
日本経済新聞(以下、日経新聞)の景気指標の面に、3週間に一度、アジアの指標が載っています。今回はその指標を見ながら、アジア、特に中国の経済を読み解いていきます。 
     
まず、上にあるアジアの「国内・域内総生産」のデータを見てください。 
中国を除いて、2008年10-12月期のGDPは落ち込み、成長率がマイナスになっています。それもマイナス幅が大きく、特に台湾はマイナス8.4%となっていて、2四半期連続のマイナスになっています。 それから、香港はマイナス2.5%でマイナス幅が小さいのですが、韓国はマイナス3.4%、シンガポールもマイナス4.2%とういう、大きなマイナス幅になっています。 日本の2008年10-12月期の成長率(実質)がマイナス12.1%になっていることと比べると、マイナス幅はかなり小さいのですが、普段の景気後退期に比べても結構なマイナスとなっています。 アメリカも2四半期連続マイナスで、ヨーロッパもほとんどの地域で3四半期連続マイナスという状況になっています。日本も3四半期連続マイナスになっていますね。 もう、世界同時不況ということは間違いないのです。 ただ、前回もご説明しましたが、内外商品相場という欄を見ると、一部の商品の価格が上がり始めているのです。 例えば、「銅 地金」の価格は、2008年12月に底を打って、2009年3月、4月と上がっています。亜鉛、鉛、すず、アルミニウムも上がっています。 一番分かりやすいのは、原油です。原油は、一時1バレル40ドルぐらいまで下がったのですが、今は52ドルぐらいまで上がっています。 このように、全部ではありませんが、特に鉱物資源の一部の価格が底を打ち始めています。この理由は、中国が大規模な景気対策を始めたことが挙げられます。これは4兆元とも言われていて、日本円に換算すると、約58兆円にもなるんです! 中国の景気対策とは、内需拡大策です。新聞にも出ていますが、一つは、テレビや自動車やバイクを買う時に補助金を出すというものです。ヨーロッパでも同じことをやり始めた国がありますが、中国はこれを大々的にやり始めました。 それから、新幹線網の整備、急ピッチで進んでいる上海万博の整備、道路や橋などのインフラ整備も始めています。 中国は社会主義国なので、動きが早いのです。これらの対策によって中国経済が回復するかどうかは分かりませんが、少し動き始めているという点では間違いないでしょう。 それが、先程ご説明した鉱物資源の価格が上がっていることにつながっているのです。 
中国の貿易黒字が増えていた理由 
前からお話ししているように、日本経済は、外需依存型の経済です。 右にある日本の貿易収支のデータを見てください。2009年2月は若干の黒字に転じていますが、2008年の8月頃から貿易赤字の傾向が強く出ています。 外需依存型の日本経済にとって、これは大きな打撃です。 貿易が回復しない限り、もっと厳密に言うと輸出が回復しない限り、日本経済は回復しにくいのです。特に、主な輸出相手国である北米や中国が回復しないと景気回復は難しいのです。 今の日本の最大の輸出相手国はアメリカではなくて中国です。つまり、中国の経済が活性化しない限り、日本の貿易が活性化することはありません。日本の景気も回復が遅れるでしょう。 では、中国経済はどうなっているのでしょうか。 ご説明した通り、中国政府が強力な内需刺激策を取っているということは、すごく評価できることです。しかし、ここでもう一度、中国の国内総生産のデータを見てください。 2006年は11.6%、2007年は13.0%というように、中国は2ケタ成長をしていました。 しかし、2008年の10-12月期が6.8%に落ち込んでいます。 日本や他のアジア諸国の成長率がマイナスであることを考えると、中国は6.8%に落ち込んだとはいえ、まだいい数字なのではないかと思われるかもしれません。しかし、中国は今も労働人口が増え続けている国なので、成長率が7%はないと雇用を維持することができないと第5回でお話ししました。 それを差し引いたとしても、まだいい数字なんじゃないかと思われるかもしれません。しかし、中国には懸念材料があるのです。 それは、中国経済も外需依存型だということです。 中国の貿易黒字は、2006年が1774.8億ドル、2007年が2626.9億ドル、2008年が2954.5億ドルとなっています。非常に大きな貿易黒字を抱えているのです。 ちなみに日本は、よくて年間10兆円前後つまり、1000億ドルぐらいですから、中国がいかに大きな貿易黒字を持っているかが分かります。 また、中国も、アメリカ相手に約2000億ドルの貿易黒字を持っています。アメリカの景気が悪化しているから、中国の貿易黒字も減少するのでは? と思いますよね。 実は、そうじゃないんです。 例えば、2008年の4月の数字を見てください。163億ドルほどでしたが、たどっていくと、どんどん増えていることが分かります。2009年1月には400億ドル前後まで増えていますね。これは年間5000億ドルぐらいの貿易黒字になるペースです。 この理由は何だと思いますか? 理由は簡単です。 実情は、輸出・輸入ともに減っています。減っているのですが、まず、輸入を絞ったのです。中国政府は、自国の経済を統制しているので、輸入を絞ることができるのです。 だから、急激に貿易黒字が増えたのです。しかし、この当時、多くの人は「中国はこの先、輸出が激減するのではないか」と言っていました。 当たり前ですよね。輸入した原材料を使って、それを加工して、輸出しているわけですから。輸入が減った後は、輸出減が来るのです。 そして、ついに輸出額が一気に減りました。2009年2月の数字を見てください。48.4億ドルとなっています。これは、ピークの9分の1です。 
内需が拡大するか、貿易が激減するかの綱引き 
さて、ここでちょっと復習です。GDPを支えている3つの要素を覚えていますか? 1つ目は民需、2つ目は公共セクター、3つ目は輸出と輸入の差、つまり貿易黒字でした。 中国は、これだけ貿易黒字が増えたのに、10-12月期のGDPが激減しています。輸入を絞っても、経済成長が6.8%しかないんです。 それは、つまり、貿易要因以外ところが激減しているということです。 そして心配しないといけないことは、この上に輸出減が一気に来たということです。先程ご説明した通り、輸入を絞った後、輸出が激減したので貿易が落ち込み始めました。 中国政府は、景気対策として、大規模な内需拡大策を打ち出していますが、今度は貿易が激減し始めているので、経済が成長を維持できるかそれとも後退するかは、綱引きのようにどっちに引きずられてしまうのかは分からない状況です。 今、世界中の経済が縮小しています。その中で、中国経済が世界を牽引する機関車の一つになるのではという期待はありますが、個人的には分かりません。 中国政府は今、景気対策でお金をたくさん使おうとしています。ただ、そのお金の源も、輸出で稼いだものです。その輸出自体が激減し始めました。 中国は、4兆元使うと言ったからには、もちろん4兆元持っています。中国政府は、外貨準備高だけでも2兆ドル(約200兆円)ありますから、使おうと思えば使えます。ただ、国としての収入が激減していく中で、内需拡大策をどこまでやり続けられるか、というのが問題です。 だから、2009年1-3月期の成長率がどれぐらい保てるのか。ここに注目する必要があるのです。 
中国が恐れているインフレ 
中国経済を読み解く上で重要な数字の一つに「消費者物価」があります。 例えば、2008年4月は8.5%、5月は7.7%となっています。これは、インフレです。中国にとって、インフレというのは怖いものなのです。 なぜかというと、中国は、ご存じのように、貧富の差がものすごく激しいんです。上海に行くと、BMWやベンツなどの高級車がガンガン走っている一方で、ホームレスのような人もたくさんいます。 元々中国というのは、社会主義国です。「働いている人は皆平等」という理念の下の社会主義国なんですが、社会主義を維持するために資本主義という劇薬を飲んだんです。 というのは、70年代後半、トウ小平が共産党総書記だった時代に、中国は市場経済を導入しました。トウ小平は市場経済を導入しないと、共産主義体制が維持できないと考えたのでしょう。トウ小平は天才と言われていますが、彼の考えは大当たりだったのです。 市場経済を導入しなかった社会主義国は、みんな崩壊してしまいました。中国は市場経済を導入したおかげで、社会主義体制は守ることができたわけです。でも、市場主義経済というのは、資本主義でしょう。矛盾しているわけです。そして、その矛盾の中にある資本主義体制が、効きすぎてしまったのです。 だから中国は、政権として共産主義体制を維持しながらも、経済自体は行き過ぎた資本主義とほぼ同じです。すると、何が起こるかというと、二極分化です。 例えばアメリカや日本だったら、収入に格差ができても、「資本主義だから仕方ない。ただ、行き過ぎたものは税金などを高くして調整しましょう」という所得の再分配を行います。 しかし、中国における二極分化は、そもそも、共産主義の理念に反するわけです。働いている人は平等だという共産主義の中に、資本主義という劇薬を飲み込んだがために、二極分化が一気に進んでしまったのです。 
貧しい人々を直撃するインフレ 
2008年にチベット動乱が起こりました。新疆ウイグル自治区でも動乱が起こりました。私は、その原因にはインフレがすごく影響していると思っています。 なぜなら、インフレというのは、貧しい人たちを直撃します。基本的な物資である、食料の値段などが上がるからです。 チベット自治区は元々貧しい地域です。皆が貧しければ均衡が保てていたのですが、沿岸部がすごく発達してしまいました。そして、漢民族がチベット自治区にやってきて、商売を始めたのです。 漢民族というのは、商売がとても上手です。すると、金持ちの漢民族と貧しいチベット民族という構図が出来上がります。 そこに、インフレが起こって一気に格差が広がりました。貧しい人たちは、食料を買えないので食べられません。そして、暴動が勃発したんだと思います。 このように、中国政府にとってインフレというのは、実は非常に厄介なものなんです。 それが、2008年の4月頃から消費者物価(前年比)が8%を超える状況だったのです。しかし、このところ、インフレが終息しています。 格差是正という意味では、ある意味望ましい傾向です。ただ、消費者物価を見ると、2009年2月の数字はマイナスになっています。 これは、デフレです。中国経済がデフレに陥ると、デフレスパイラルになる可能性があるのです。 
なおかつ、先程もご説明したとおり、輸出が振るいません。貿易黒字も稼げない中で、デフレスパイラルに入ると、さらに経済が停滞します。 デフレスパイラルに入ると、物価が下がります。物価が下がると、売上げが減ってしまうので、もうけが減り、その結果、給料が減ります。給料が下がると、物が売れなくなり、余計に物価が下がります。悪循環が続くのです。 
日本が2000年前後に経験したデフレスパイラルに、中国も陥る可能性があるのです。 
中国が行う4兆元規模の景気刺激策が、デフレスパイラルを抑えられるのか。そして消費者物価を、適正水準である1-2%のインフレに戻せるのかどうか。ここが、今最も注目したい数字です。  
●自民党・公明党vs民主党 追加景気対策 2009/4/9 
4月8日 自民/公明 両党・民主党が 追加景気対策を発表しました。 
自民/公明 両党の追加景気対策 
・就学前 3年間の幼児を対象に 年 36,000円支給する。 
・贈与税を 2010年までの時限措置で 住宅購入 ・ 改修時に限って年 610万円まで 非課税とする。 
・エコカーへの買い替えに 最大 25万円の補助金を支給する。 
・省エネ家電の買い替え支援として 購入額の最大 13%を 次回の製品購入にあてることができる「エコポイント」で与える。 
民主党の追加景気対策 
・中学卒業までの子供 1人あたり 月額 26,000円の「子ども手当」を支給する。 
・首都高速 阪神高速を除く高速道路料金を原則無料化する。 
・ガソリン税の暫定税率を廃止する。 
・太陽光パネル設置や 低燃費車の買い替えを補助する。 
・高校実質無償化や 中学生までの医療費を無料化する。 
・中小企業向けの法人税率を 11%に引き下げる。 
自民/公明 両党の追加景気対策は どうも 納得できない部分があり本当に景気対策になるのかなと思います。 僕のような 弱者側の立場から 言わしていただくと やっぱり 民主党の追加景気対策の方が 納得できる部分がありました。 ただ 民主党の追加景気対策は 例えば 選挙に勝ったとして 本当に実現できるのかなとも思いますし。 小沢代表も こんなところで 不祥事が発覚したので 民主党が 選挙に勝てるのか 疑問ですが 願わくは 選挙に勝って この追加景気対策を実現して 生活を助けて欲しいと思っております。
●予算額100兆円突破 / 史上初 自民が追加景気対策を了承 2009/4/9 
自民党は9日午前の政調審議会と総務会などで、政府・与党の追加景気対策を了承した。同日示された対策の最終案では、対策全体の事業規模は約56兆8000億円になり、2009年度補正予算案に盛り込む実質的な財政支出額は15兆4000億円に上った。 09年度予算と合わせた一般会計予算額は単年度として史上初めて、100兆円を突破することが確実になった。公明党も同日午後の政調全体会議で了承し、10日に正式決定する。 対策は雇用、健康・子育て、地方、税制改正などからなる。 
医療対策で、難病患者への支援として11の疾患を新たに医療費助成の対象に追加。また、「高齢化の進展を内需拡大、雇用創出にいかす」などとして、健康増進の観点から、新薬の承認期間を全体で2年半、新医療機器の承認期間も1年半短縮する。新型インフルエンザワクチンの開発・生産体制の抜本強化も盛り込んだ。 
地方対策として、地球温暖化や少子高齢化などに関する事業を実施する自治体に「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」(仮称)の創設を盛り込んだ。09年度当初予算に盛り込んだ公共事業について、上半期に8割契約することを目指す。 
小学校就学前3年間の子どもに、年3万6000円を第1子から支給する手当を09年度に限り実施する。 
住宅購入・改修時に限り、時限的に年610万円まで非課税とする贈与税軽減は、補正予算案と同時に国会に提出される税制改正関連法案が成立すれば実施される。その場合、今年1月にさかのぼって来年12月末まで適用される。 
これに関連し、内閣府は9日の自民党政調全体会議で、今回の追加景気対策による雇用創出効果について、対策を実施しなければ完全失業率が7%台に突入する恐れがあり、実施すれば過去最悪水準(5・5%)以下に抑えられるとの見通しを明らかにした。  
●追加経済対策は国費15.4兆円、国債増発10-11兆円程度に 2009/4/9 
自民党は9日、追加の経済対策となる「経済危機対策」を取りまとめた。対策の国費は15.4兆円程度で、事業費は56兆8000億円程度となる。経済対策に伴う補正予算としては過去最大規模となる見通し。財源には財政投融資特別会計の金利変動準備金3兆円程度や経済緊急対応予備費1兆円や建設国債などを充て、「なお不足する場合には赤字国債を発行する」とした。河村官房長官によると、建設国債と赤字国債をあわせた国債の増発は10-11兆円程度になる見通し。 同日中に党内手続きを行い、公明党との調整を経て、10日に政府与党として正式決定する。 
具体策では、09年度後半ごろまでを「景気底割れ回避を最優先する局面」と位置づけ、非正規労働者に対する新たなセーフティーネットの構築等の緊急雇用対策の拡充・強化を行うとともに、企業の資金繰り対策など金融面の対策などを講じることを盛り込んだ。 
株式市場への対応として、公的資金を活用し市場から株式等を買い取る仕組みを整備する臨時・異例の措置も正式に盛り込んだ。買い取りを行う主体となる政府関係機関の借り入れに対する政府保証枠を50兆円とすることも明記。 
資金繰り支援では、中小企業向けには緊急保証枠を10兆円追加するほか、中堅・大企業向けには日本政策投資銀行などによる長期資金貸付枠を8兆円追加し、このための財務基盤強化のために政投銀へに追加出資する。 
銀行等保有株式取得機構の買い取り対象を金融機関が保有する優先株、ETFやJ-REIT、事業法人が保有する金融機関の優先株を追加する。 
金融政策については、日銀に「金融市場の安定確保に取り組む」とともに、「適切かつ機動的な金融政策運営により経済を下支えする」ことを期待するとした。 
一方、中長期的な成長促進策として緊急に実施すべき施策を選別。環境対応車やグリーン家電の普及促進など低炭素社会の実現を目指す内容を盛り込んだ。  
●追加景気対策 財源確保が頭痛の種 赤字国債すでに25兆円 2009/4/1 
麻生首相が31日、追加景気対策を指示、与党も株価対策をまとめ、政府・与党による経済対策の検討は大詰めを迎えた。だが、追加対策の財源の一部は赤字国債で賄う方針だけに財政規律の悪化は避けられず、対策の柱となる贈与税減免などの政策減税では「金持ち優遇」批判に火が付けば、年度途中の税制改正の実現は困難になる。株価対策も具体的な発動条件など積み残した課題も多い。 
20兆-30兆円 
追加景気対策については、内閣府が年間で約20兆円と試算した需要不足を埋めるため、事業規模で20兆-30兆円との「相場観」が固まりつつある。「真水」と呼ばれる直接的な財政支出では、補正予算による過去最大の景気対策となった1998年度第3次補正予算(7兆6380億円)を上回る規模が必要との声が政府・与党内で高まっている。 
麻生首相は31日の与党幹部らとの会談で、「赤字国債の発行も辞さない」と語り、巨額の財源を賄うため赤字国債の追加発行に踏み切る考えを表明した。 
しかし、景気悪化に伴う大幅な税収減で、赤字国債の発行額はすでに膨らんでいる。09年度当初予算の発行額は25兆7150億円で08年度当初比27・7%増まで拡大した。追加対策で増額すれば、財政はさらに苦しくなる。長期金利の上昇などを招き、かえって景気の足を引っ張りかねない恐れもある。 
与党内には特別会計の余剰金である「埋蔵金」の活用を求める声もある。ただ、政府は09年度当初予算で財政投融資特別会計の積立金を約4・2兆円取り崩すなど多額の埋蔵金を使っており、新たに埋蔵金を発掘できる余地は乏しい。 
自民党の「政府紙幣・無利子国債発行を検討する議員連盟」は、利子が付かない代わりに相続税がかからない無利子非課税国債の発行を提案しており、財源確保に向けて大胆な政策判断も必要となりそうだ。 
贈与税減免 
追加対策では政策減税も焦点だ。麻生首相は「高齢者の金融資産をどう活用し、需要の創出につなげるかを検討することは重要だ」と強調し、特に生前贈与にかかる贈与税減免の検討に力を入れる構えだ。 
贈与に税金がかからない基礎控除は年間110万円。これを期間限定で500万円程度に引き上げる案が政府内に浮上している。自民党の無利子国債発行検討議連は3年限定で基礎控除を2500万円まで拡大したうえで贈与税率を引き下げる案を提唱した。消費刺激策として有力との見方もある贈与税減免だが、野党などから「富裕層が恩恵を受ける政策」と批判を受ける可能性があり、一筋縄ではいきそうもない。減免を実現するうえで必要な年度途中の税制改正が「ねじれ国会」で暗礁に乗り上げる懸念も指摘されている。 
株価対策 
「対策は、あくまでセーフティーネット(安全網)。抜かずの宝刀だ」。株価対策をまとめた与党プロジェクトチームの柳沢伯夫座長は31日、公的資金による株の買い支え制度を整備しても実際に発動する可能性は低いと強調した。 
政府が株式市場に過度に介入すれば「市場の健全性をゆがめかねない」との意見が与党内で大勢を占めたためだ。さらに、7000円割れ寸前まで急落した日経平均株価(225種)が8000円台を回復して一時の株安警戒感が後退する中で、株価対策の必要性が薄れてきた印象は否めない。このため、株価対策に対しては「株価が再び異常な値下がりを示す非常事態に陥らなければ、政府は詳細を詰めないだろう」(自民党幹部)との見方が広がりつつある。  
●オバマ政権の景気対策法案 その実態 2009/3/17 
景気対策法案の内容 
7870億ドル(約77兆円)という金額は、これだけで日本の国家予算に匹敵する途方もない金額です。主な内容は日本が1990年代や今の不況時に打ち出した景気対策と、基本的には似たようなものです。 
個人減税 / 景気対策法案の中で金額的に最も大きな内容は、消費を刺激する狙いの個人に対する減税です。日本政府は「定額給付金」として日本人1人あたりに12,000円ずつ配布しようとしていますが、それと基本的に同じですね。 アメリカ政府は、2009年と2010年にかけてアメリカ人1人あたりに対して最大400ドル(約40,000円)の定額減税を与えます。ただし年間の所得が75,000ドル(約735万円)以上の人は対象外です。 現在アメリカには約3億人が住んでいると言われているので、単純に計算しても400ドル×3億=1200億ドルがこの定額減税に振り当てられることになります。これは景気対策法案全体の約15%に相当します。 
減税は他にもあり、子供を持っている人、住宅を買う人、失業者など、全ての個人減税を合わせると2370億ドル(約23兆円)規模になり、全体の約30%を占めています。 
医療補助 / アメリカにはメディケイドという低所得者が対象の医療費補助制度があります。景気対策法案ではメディケイドに約900億ドル(約8兆8000億円)を使い、低所得者が病気になった場合にかかるお金を補助します。 この他に、医療関連のIT技術開発に190億ドル(約1兆9000億円)、米軍人の医療関連に13億ドル(約1300億円)などがつぎこまれます。 
教育 / 教育関連投資として900億ドル(約8兆8000億円)が用意され、全米の各州の学校が教員を解雇しないように財政的に補助したり、低所得家庭の子女の学費補助などに使われます。 
失業者対策 / 不況が深刻化することによって失業率が上がり、2009年2月の失業率は8.1%にまで上昇しました。景気対策法案では失業者対策費に約820億ドル(約8兆円)充てています。その約半分、400億ドルは2009年中の失業保険の給付金額拡大に使われます。 
この他に、フードスタンプの費用、職業訓練の実施、障害者対象の職業訓練などが含まれています。 
公共事業 / 日本も1990年代の不況時によく景気対策として公共事業を打ち出してきましたが、アメリカの景気対策法案でも大規模な公共事業案が含まれています。公共事業に向けられるお金は、約800億ドル(約7兆8000億円)です。 
これだけの規模なので内容は多岐に渡っていますが、主な内容としては高速道路や橋などの建設事業に275億ドル(約2兆7000億円)、鉄道建設に80億ドル(約7800億円)、国防総省の施設建設・修繕に42億ドル(約4100億円)、米軍人用の住宅整備に8億9000万ドル(約870億円)、などがあります。 
景気対策法案では、全体として「350万人の雇用創出を目指す」と謳っています。法案の内容で雇用が創出されるのは、主に公共事業だと思われます。 
一体どこまで効果があるのか? 
本当に問題なのは、景気対策法案が一体どこまでアメリカ経済の回復に効果があるのかという点です。これは現時点でわかる人は誰もいなく、これから実行してみて最低1-2年は待たなくてはいけない話です。 ただ言えることは、景気対策法案の中で「これなら景気の回復間違いなし!」と言えるような決定的な内容はないということです。減税、公共事業、失業者対策、どれを取っても日本が1990年代に、あるいは他の国が不況時にやってきたことであり、それらが決定的な効果を発揮したことはありません。 ハーバード大のエコノミストであるマーチン・フェルドシュタイン教授は、もっと失業や個人消費に対して思い切った対策が必要であると主張しています。また1986年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者であるジェームズ・ブキャナン氏は、景気対策法案によって財政赤字が膨らんでいくことを懸念しています。 日本も1990年代の不況のために、政府は景気対策を次々と打ち出し、それでも景気は回復せずに政府の財政赤字だけが膨らんでいきました。ブキャナン氏などは、アメリカが同様の道を辿って行くのではないかと予想しているのでしょう。 
法案の裏で行われた活発なロビー活動 
ところで、景気対策法案が成立するにあたって、その裏では活発なロビー活動が行われていたのは面白い事実です。ロビー活動、そしてそれを実行する職業であるロビイストについては、こちらの記事でどうぞ。 上の記事でも書いたように、オバマ大統領はロビイストを規制する方針で大統領に就任しました。しかしそのオバマ大統領が打ち出した景気対策法案が、かえってロビー活動を活発にさせてしまったのは皮肉な結果です。 例えば「ベタープレイス」という電気自動車の開発をする企業は、景気対策法案のロビー活動のために、初めてロビイストを雇いました。そのロビイストの活動の結果、景気対策法案には電気自動車関連の予算が含まれるようになったとされます。 またアメリカのメディア大手・タイム・ワーナー社は、景気対策法案のためにロビイストを増員させました。その結果、ブロードバンド関連の公共事業の項目が追加されたと言われます。 
景気対策法案はあまりにも内容が膨大なので、アメリカ人でも全てを把握している人はほとんどいないと言われています。そしてメディアでは連日「景気対策法案でアナタの生活はこう変わる」という解説が行われるほど、複雑な内容です。 一体アメリカ経済の回復にどれだけの効果があるのか、それは時間だけが教えてくれることでしょう。  
●解散「景気対策の実行後」首相 / 争点に消費増税 2009/3/13 
麻生太郎首相は13日、共同通信のインタビューで、衆院解散時期について「予算や経済対策が実行に移される条件が整わないと、景気は良くならない。景気対策がきちんと実行された段階だ」と述べた。与党に追加経済対策策定を指示したことも踏まえ、今月下旬の2009年度予算成立後の解散に慎重な姿勢を示したとみられる。 
その上で「(任期満了まで)どのみちあと半年しかない。総合的に判断して私が決めたい」と述べ、自ら解散権を行使する決意を強調した。 
次期衆院選の争点に関しては「消費税を含む税制抜本改革を第一に言わないといけない」と述べ、景気回復後の消費税率引き上げを掲げる意向をあらためて示した。追加経済対策の財源を確保する09年度補正予算編成は「いま具体的に考えていない」と述べるにとどめた。 
西松建設の巨額献金事件で小沢一郎民主党代表の公設秘書が逮捕されたことに関し「政治資金の取り扱いは政治不信につながる大きな要素だ。それぞれの政治家がしっかり説明しないといけない」と述べた。 
また在日米軍再編をめぐり、小沢氏が「極東におけるプレゼンス(存在)は第7艦隊で十分」と発言したことについて「第7艦隊がいれば日本の安全保障は大丈夫という考え方には、全くくみしない」と批判した。 
経済対策(2009年4月10日)政府が景気浮揚のために実施する政策。公共事業の追加や減税、政府系金融機関の融資拡大などが代表例で、補正予算を組んで財源を確保する。バブル崩壊後の1990年代には大規模な対策をたびたび実施した。これまでの経済対策で財政支出が最大だったのは、小渕政権が98年11月に決定した「緊急経済対策」に伴う約7・6兆円。 
衆院解散(2008年10月28日)衆院議員の4年の任期満了前にその地位を失わせること。内閣不信任決議案の可決または信任決議案の否決を受けた解散と、内閣が重要な政策課題で国民の信を問う解散がある。解散日から40日以内に衆院選を実施。憲法7条は解散を天皇の「国事行為」と規定しているものの、実質的には内閣に解散時期決定の権限がある。現行憲法下の解散は計20回で、内閣不信任決議案可決を受けた解散は計4回。 
追加経済対策(2009年3月22日)世界経済の落ち込みによる景気の急激な悪化を抑えるため、政府、与党が検討している財政や金融の対策。減少した輸出の代わりとなるよう国内需要を拡大、雇用を創出するのが狙い。対策にはそれぞれの数値目標を盛り込む。財源として2009年度補正予算案を編成する見通しで、経済界からは30兆円規模の財政出動を求める声が相次いでいた。
●景気対策、次から次 党内批判を沈静化 2009/1/14 
政府・与党は13日、野党の反対を押し切って2008年度第2次補正予算案を衆院通過させた。19日には09年度予算案を提出する予定で、その先には09年度補正予算案の編成も視野に入れている。切れ目なく景気対策を打ち出すことは、麻生首相に対する自民党内の批判が沈静する効果も生んでいる。 
第1関門突破 
「経済対策に与党も野党もない。速やかに成立するよう期待している。確実に実行するのが焦眉の急だ」 麻生首相は13日夜、第2次補正予算案の衆院通過を受け、首相官邸で記者団にこう述べ、景気対策の必要性を強調した。 与党としては、定額給付金を柱とする第2次補正予算案と関連法案の「1月中旬衆院通過」は譲れない線だった。関連法案は、衆院通過後60日を過ぎても参院が採決しなければ否決とみなす憲法の「60日ルール」を使った場合、衆院再可決できるのは3月中旬となる。定額給付金の年度内支給を実現するにはギリギリのタイミングだ。また、2次補正でまごつくと09年度予算の年度内成立も危うくなる。 2次補正の衆院通過で、自民党内からは「まず、第1関門突破だ」と安堵の声が漏れた。 今後、与党は補正予算の成立を待たずに、09年度予算案の審議に入りたい考えだ。さらに、09年度予算案の成立が4月以降にずれ込む場合に備えるため、関税の軽減措置などを延長する「つなぎ法案」も準備している。1月末までに衆院通過させれば、民主党が審議を引き延ばしても、60日ルールで3月末には衆院で再可決できる。 首相周辺は13日、「国民生活を最優先して、そのためには何でもやる。つなぎは安全網だ」と語った。 
解散圧力に対抗 
政府・与党は、これからの景気鈍化を見越して、09年度予算の1次補正の検討にも入った。政府筋は「これから春にかけて企業業績が悪化し、金融機関の貸し渋りも進む恐れがある。資金繰りや雇用対策をまとめて、補正を編成する可能性がある」と語った。 4月2日にロンドンで開かれる金融サミットでは、国際協調と各国の対応が話し合われる。首相はその前後で補正予算案の編成を指示するのではないか、との見方が出ている。09年度補正予算案には、政局的な思惑も見え隠れする。首相は、景気最優先と主張し、民主党の衆院解散要求をはねつけている。09年度予算の成立で一区切り付けば、解散圧力は一層強まりかねない。この点、09年度補正の構えを見せることは、解散時期に幅を持たせることにもなる。切れ目ない景気対策は、麻生首相に批判的な自民党の中堅・若手議員の動きを鈍らせる効果もある。 
今回の2次補正予算案の衆院通過では、自民党の造反は松浪健太内閣府政務官一人にとどまった。「定額給付金の評判は芳しくないとはいえ、これだけ景気が悪いと、「ないよりはまし」ということで、反対はしづらい」(若手)という意見が少なくない。自民党内からは「麻生政権は、超低空ながらそれなりに安定飛行」(参院幹部)という指摘も出ている。 
「勝負はまだ先」民主、早期審議復帰も 
民主党は定額給付金を盛り込んだ2008年度第2次補正予算案の採決に反発し、当面、参院での審議に応じない構えだ。ただ、「審議拒否が長引けば、批判の矛先がこちらに向きかねない」として、早期の審議復帰も視野に入れている。 小沢代表は13日夜、国会内で記者団に「なぜ強行採決しないといけないのか理解に苦しむ。雇用や景気対策にも役に立たない」と政府・与党の姿勢を批判。これに先立つ衆院予算委員会の採決では、民主党議員が「給付金ダメ 介護を充実」などと書いたカードを掲げて反対をアピールした。 ただ、ガソリン税の暫定税率を復活させる租税特別措置法改正案をめぐり、議長室を取り囲むなど徹底抗戦した昨年4月の通常国会に比べ、民主党の対応はソフトだ。 2次補正の関連法案が衆院で再可決される3月中旬がヤマ場と見ているためで、同党幹部は「今回は与党の横暴ぶりをあぶり出せただけで十分だ。勝負はまだ先にある」と話す。 
渡辺喜美・元行革相が13日、自民党を離党したことで、衆院再可決を阻止するために必要な与党からの造反者は16人となった。民主党内では「渡辺氏の離党で浮足立つ自民党議員もいるはずだ」と期待する向きもあったが、今のところ当てが外れた形となっている。 
民主党は15日にも、2次補正から定額給付金の関連部分を削除する修正案を社民、国民新両党と共同で参院へ提出。政府が19日の施政方針演説など政府4演説の実施を見送る場合は、同日から審議に復帰することを検討している。 
参院では、2次補正の採決の前提として「政治と宗教」と雇用に関する集中審議の開催を求めている。創価学会を提訴した矢野絢也・元公明党委員長の参考人招致を求める構えも見せ、与党を揺さぶる考えだ。
●総額23兆円の政府の追加景気対策「財源の根拠もない絵に描いた餅」 2008/12/13 
鳩山由紀夫幹事長は13日午後、伊勢崎市内で会見を行い、記者団の質問に答えた。会見には石関たかし衆議院議員が同席し、司会進行を務めた。 はじめに、同日昼に前橋市内で開催された地元農業7団体代表との農政懇談会での所感について、「このような試みは初めてではないか」との声が先方から上がったと紹介、民主党の戸別所得補償制度の考えをしっかり伝え、一定の理解を得られたとして、「民主党の農政に関する基本的な方針は間違ってないと実感した」と手ごたえを示した。 
これまで歴代総理大臣を何人も誕生させてきた群馬県については、「保守基盤の大変強い地域」との認識を明示。自民党が圧倒的に強い選挙区ではあるが、それだけに、若い候補者を擁立し、国民の皆さんが抱いている、自民党の体質、今のような日本を作ってきた閣僚に対して鬱積している不平・不満を受け止める必要性を強調。政治を変えるためにはその体質を改めなければならないことから、自民党の役職や官僚に就いていることが必ずしも有利とは限らないとの見方を示し、民主党への支持の結集を図ることが必要であると同時に、保守基盤の方々に協力を求められるような選挙を行っていくことが重要であるとした。 
八ツ場ダムへの反対を表明しているにも関わらず、社民党との選挙協力のためにその建設現場である5区で候補者擁立を見送ったことについては、それにより反対表明への熱意が冷めるわけではないとの見解を示し、「5つのマニフェストの中でも反対を謳っていく方針」を明示。地元の皆さんの気持ちを尊重しながら、今後もしっかり活動していく予定であると語った。 
続いて、麻生首相が補正予算案およびその関連法案に関して、党首会談での小沢代表の発言を都合よく解釈し、審議に応じるよう要求、抵抗した場合に民主党批判を強めるのではないかとの問いかけには、「補正予算案を上げることが最大の仕事」としたうえで、小沢代表の発言は、今国会での第2次補正予算案の提出を前提としたものであると説明。再三にわたって訴えてきたにも係わらず提出を見送っておきながら、協力を求めることに対して「何を考えているんだ」と怒りをあらわにした。 
そのうえで、補正予算案については「まだ対応を決めているわけではない」と述べ、その中には国民からも不支持を突きつけられている定額給付金も含まれていると指摘。昨日12日に発表された新たな雇用対策などを盛り込んだ23兆円規模の「生活防衛のための緊急対策」についても、財源が明らかになっておらず、これでは「絵に描いた餅」であり、年末年始の厳しい雇用情勢に向けては何の対策になっていないとして、それよりも民主党をはじめ野党が提案する雇用対策法案に理解を示すことが筋ではないかと話した。 
また、麻生首相が3年後の消費税引き上げを明言したことについても、「世界経済が金融危機の中、何故、消費税の増税を謳う必要があったのか」と疑問を呈し、国民の皆さんの政治への信頼を取り戻すことが先決であると主張。国民のための景気対策も、天下りにも税金のムダ遣いにも何らメスも入れぬままに消費税の増税だけを求めるのは筋違いだと批判した。国民の皆さんの信頼が回復されたうえで、どうしても財源が足りないという状況になった場合には必要に応じて増税論議もしていくべきだとの考えを明かした。 
最後に、通常国会に向けた常任委員長ならび「次の内閣」の人事に関して問われると、委員長人事を先に議論したうえで「次の内閣」の人事に関しても議論するとの考えを示し、「変更を余儀なくされることはあると思う」と述べ、どこまで根本的に変えていくことに関しては、代表の思いを反映し、選挙の時期をにらみながら選んでいくとした。  
●景気対策の議論に科学的な効果分析を 2008/11/12 
10月30日に「生活対策」と名づけられた追加景気対策が発表されました。「世界の金融資本市場は100年に一度と言われる混乱」との現状認識の下に作られたものです。その最優先課題は「金融資本市場の安定確保」。さらには、3つの重点分野として「生活者の暮らしの安心」、「金融・経済の安定強化」、「地方の底力の発揮」を挙げ、「一過性の需要創出対策ではなく、「自律的な内需主導型経済成長」へ移行する」としています。 
私もこの政府の基本方針は正しいと思いますが、具体的な政策を見ると、ややがっかりしてしまいます。今までの景気対策の延長にすぎないと感じてしまうからです。 
景気対策の政府の説明会 
景気対策が発表されてから、民主党として政府から景気対策の説明をいただきました。そのときの感想としては以下のようなものでした。 
1.各省庁がばらばらに作った景気対策であること 
2.詳細をほとんど組み立てていないこと 
3.国土交通省の権益防衛の影が透けて見えること 
全体を説明できる人がいない 
会議の様子(矢印の先は筆者。手前のテーブルにおられるのが政府の方々です。) 各省庁がばらばらとの印象は、「説明するのは各担当の省庁であり、内閣府や財務省が一括して説明しない」ことに起因します。実際、各省庁3分間ずつ説明したので、8省庁で約30分もかかりました。例えば、福祉関係は厚生労働省、中小企業関係は経済産業省(中小企業庁)、公共事業は国土交通省、金融関係は金融庁といったかたちです。財務省は一切説明していません。 例えば、中小企業への減税措置の説明は、税制を担当する財務省ではなく中小企業庁が行うのです。「生活支援定額給付金(仮称)の実施」の予算手当てなどについても予算を担当する財務省ではなくなぜか内閣府が説明するというかたちです。「さすが役所の中の役所である財務省はどんと構えている」と一瞬思いましたが、真相はおそらく、説明するだけの知識が財務省になかったのではないでしょうか。それだけ急ごしらえということです。 
詳細が決まっていない 
その証拠に、質疑で政策の詳細を聞いても答えがありませんでした。例えば、注目が高い「生活支援定額給付金(仮称)」については、総額2兆円を限度として実施するとありましたが、誰を対象に、どのくらいの金額を、どのように給付するか、具体的な内容は全く決まっていないのです。 ちなみに私は、この制度に関しては景気刺激効果が小さいとみています。平成11年度に実施された地域振興券によって喚起された消費の純増分は、地域振興券使用額の32%程度であったと経済企画庁が分析しています。今回も、「支給はしたがあまり使ってもらえず、結局、消費は拡大しなかった」ということになるのではとの不安が残るのです。このほか、「介護従事者の処遇改善と人材確保等<介護人材等の10万人増強>」というものもあります。これは私も重要な政策と考えますが、介護報酬改定(プラス3.0%)の財源はまだ決まっていませんでした。多くの新規性がある政策はすべてこのような感じ。詳細はこれから、という状況です。 
役所の権益防衛の動き 
それより気になったのが、役所の権益防衛の雰囲気です。 例えば、「高速道路料金の大幅引き下げ」がありますが、値引きの対象は休日だけで、それもETCを装着した普通車だけとなっています。ちなみにETC装置の購入費の一部は国土交通省の関係団体に流れていると聞きました。「天下りしているかもしれない組織にお金をもっと流そうとしているのか」と勘ぐりたくもなります。現在、財団法人道路システム高度化推進機構の常勤の役員5名のうち3名の方が役所のOBとなっているのです。さらに、「道路特定財源の一般財源化に際し、1兆円を地方の実情に応じて使用する新たな仕組みを作る」とあります。道路建設にしか使えない資金を、本当に必要な用途に振り向けようとのねらいでしょう。しかし、それがうまくいくのでしょうか。一般財源化された1兆円が、インフラ整備などを進めるため「地域活性化・生活対策臨時交付金(仮称)」に使われてしまうのではないかとの懸念が残るのです。これではせっかく道路特定財源から地方に1兆円を移しても、結局は地方のインフラ=道路・橋を作ることに使われてしまうことになりかねません。 
国会は何をすべきか 
政策をお役所まかせにすれば、当然、そこには役所の思惑がからんできます。政府は政府で、別の思惑があるでしょう。けれど、そんな「思惑争い」をしている状況ではないのです。 
私の主張は、金融安定化や中小企業対策など緊急に対応すべきところは役所や政府にまかせ切ってしまうのではなく、党派を超えて国会が、真摯に対応すべきということです。その後に、「生活支援定額給付金(仮称)」や「高速道路の値引き」、「地方への財源移譲」などについても検討を加えていかねばなりません。 
その際に必要なのは、政策の景気浮揚効果をきちんと分析した上で議論するということでしょう。例えば、高速道路を無料化するとトラック運輸効率が12%程度は改善されるのではと思います。運送企業の高速道路関連支出(高速道回避に係る追加燃料費、時間外手当、宿泊費等)が10-15%にものぼるからです。こうした視点から政策を立案し、その効果を検証する必要があります。 
定額給付に関しても、同様に分析すべきでしょう。前述のように、過去の事例からすれば効果が薄いと考えられます。けれども、10年前と現在では状況が違います。給付方法も違います。再度、科学的な分析を加え、その結果を踏まえて「費用対効果」を正確に予測できるようにしなければなりません。 企業の方からすれば、「新たな施策を実行に移す前には、必要となるコストを見積もり、同時に期待できる効果の大きさ、さらにはリスクをシミュレーションし、それらを総合してその有効性と妥当性を判断する」などということは、基本中の基本でしょう。ところが、国の景気対策に関しては、「国民に歓迎されるか」「役所の権益を損なわないか」という論理ばかりが目立ち、科学的、客観的な効果測定ということがどうも軽視されているような気がしてなりません。政府与党の政策もそう、民主党の政策もそうです。 
政策を科学的に分析する中立の組織を 
新聞で、経済学の博士号を持っている人が役所や日銀には少ないとの記事を読みました。別に博士号が必ず必要とは思いませんが、分析能力を備えた専門家の存在は必要です。そのような方がいないと、効果を予測することはできません。 ただ、専門家集団を抱えたとしても、組織の一員となれば、結局は組織の論理に呪縛されてしまうかもしれません。それを防ぐためには、中立の立場で冷静に、政策を分析検討する組織が必要でしょう。その存在が、今ほど求められているときはないのではと思うのです。  
●景気対策 大企業応援から家計応援へ 2008/11/3 
米国発の金融危機への対応と、日本経済の立て直しが国政の最重要課題となるなか、日本共産党の志位和夫委員長と市田忠義書記局長は二日、それぞれ東京と大阪を駆け巡り、街頭から訴えました。 「麻生内閣は、国民の批判に追い詰められて解散をずるずると先延ばしにしてきましたが、先に延ばしてもいよいよ展望がなくなる。これからの政局は解散の可能性をはらみながらの展開となるでしょう」と指摘。「日本共産党は、景気悪化から国民の暮らしを守るたたかいに力をつくすとともに、論戦と運動で自公政権を追い詰め、いつ解散・総選挙になっても勝利できるよう力をつくします」と表明しました。 そのうえで志位氏は、アメリカ発の金融危機と景気悪化のもとで、「政治の責任が問われている」として、三つの点を強調しました。 
バクチ失敗のツケまわすな / 「バクチ経済」の失敗のツケを国民に回してはならないということです。トヨタをはじめとする巨大企業がいっせいに「派遣切り」をはじめていること、三大メガバンク(巨大銀行)が中小企業の貸しはがしの先頭に立っていることを厳しく批判し、「大企業と大銀行に、雇用と中小企業を守る社会的責任を果たさせる政治の責任が強く求められている」とのべました。 
雇用と社会保障の安心こそ / 外需頼みから内需主導に、大企業応援から家計応援に、経済政策の軸足を転換し、日本経済の体質を土台から改革していくことです。 
「外需頼みから内需主導に」ということは、いまではどの党もいうが、日本の経済をここまで「外需頼み」のもろい経済にしてしまった責任は、大企業応援の「構造改革」路線にあります。その転換こそ求められていると強調。そのために、(1)派遣労働などの「使い捨て」労働をなくし安定した雇用を保障する、(2)後期高齢者医療制度、二千二百億円の社会保障費削減路線を中止し、安心できる社会保障を築くことなどが大きな柱になると訴えました。 
消費税増税にストップの審判を / 麻生内閣が打ち出した「追加経済対策」についてです。志位氏は、「この「対策」には、景気悪化から国民の暮らしを守る実効ある施策も、雇用と社会保障の不安を解消する施策も、何も打ち出されていない」と批判。「最大の「目玉」とされているのが、一年かぎりの「二兆円の給付金」のばらまきだが、三年後に消費税の大増税が待っていて、どうして景気がよくなるか」「大企業・大資産家には追加の減税のばらまき、大銀行には十兆円もの公的資金で応援、庶民には消費税の大増税。この「逆立ち」した姿勢を根本から改めよという審判を」と訴えました。  
●「景気対策」は有害無益である 2008/9/3 
福田首相の後継として麻生太郎氏が本命らしいが、私は彼が首相になることには反対だ。その理由は、彼が地底人を経済顧問にしているからだ。リチャード・クー氏は「不況のときは、戦艦大和でも何でもいいから巨額のバラマキをやれ」という、半世紀以上前の素朴ケインズ主義をいまだにとなえている。こんな政策をとったら、日本経済も財政も破綻することは明らかだ。 
同じ理由で、いま政府がやろうとしている「総合経済対策」も税金の浪費である。今週の「週刊東洋経済」の「不確実性の経済学」特集(私も原稿を2本書いた)で、小島寛之氏も書いているように、こうした時間非整合的な政策は、消費者の期待形成や企業の戦略を混乱させ、結果的には何もしないのと同じことになる(インフレだけが残る)。最近の経済学が明らかにしたように、消費者や企業の行動を決めるもっとも重要な要因は心理だから、それを勘案しないで物量だけで経済が動くと考えるのは時代錯誤である。 
金融政策の有効性も限られている。1930年代のように、銀行が大量に破綻しているときに中央銀行が金融を引き締めるといった誤った金融政策は絶大な効果を発揮するが、逆は真ではない。企業の投資意欲がないとき、いくら通貨を供給しても意欲を作り出すことはできない。つまり金融政策には非対称性があるので、インフレ目標でデフレを脱出できるなどという議論はナンセンスである。クルーグマン自身が認めるように、中央銀行は人々の期待に働きかける手段をもたないからだ。 
人々が単純な「合理性」にもとづいて行動しないことが明らかになった以上、期待効用最大化などという公準を捨て、実証に耐える意思決定の理論を確立する必要がある。人々の心理についての実証データなしにメカニカルな最適化行動を想定するマクロ経済学は、現在のようなグローバルな危機を説明できない。同じ特集で斎藤誠氏もいうように、金融・資本市場では「規制か自由か」という従来の図式は無意味で、人々の非合理的な心理を計算に入れた政策が必要だ。 
もう一つの問題は、財政・金融による「景気対策」は、基本的に資金繰り(現金制約)を緩和して企業の淘汰を阻害する政策だということである。ハイエクはサイバネティックスの概念を援用して、企業の破綻はシステムが正常な状態から逸脱したとき、それを知らせる負のフィードバックだと考えた。ケインズ的な景気対策は、企業の破綻を阻止することによって、こうした発見過程としての競争の機能を破壊するのである。 
日本が「失われた10年」のトンネルを抜けても成長軌道に乗れない最大の原因は、バラマキ政策で市場のフィードバック機能が破壊され、生産性の低い古い企業が生き残って新しい企業をcrowd outしていることにある。「ロスジェネ」が中高年のノンワーキング・リッチの犠牲になっている原因も同じだ。景気対策は効果がないばかりでなく、インカンバントを守ってイノベーションを阻害し、日本経済の衰退を早める点で有害である。
●景気後退は来年度中まで続く公算 財政による景気対策は「愚の骨頂」 2008/8/25 
政府、日本銀行が相次いで景気後退を認めた。資源価格高騰が企業・家計の所得を奪い、いざなぎ景気を超える戦後最長の景気拡大は終わった。米国経済回復が遅れれば来年度いっぱい後退局面が続く公算もある。政府は総合経済対策を策定中だが、赤字を拡大させるだけの安易な財政出動は将来に禍根を残す。 
中小企業が悲鳴を上げ始めたのは、昨年の秋口からだった。彼らを追い込んでいたのは原材料高だ。製品価格への転嫁ができず、苦境に陥る会社が目立ち始めた。こうした中小企業の業況悪化は振り返れば景気の転換点を意味していた。 
2002年1月から始まった今回の景気拡大の期間は、「いざなぎ景気」の57ヵ月を抜いて戦後最長を記録していたが、その景気拡大もついに終焉を迎えた。 
8月7日に、政府は月例経済報告で景気が弱含みであるとの現状認識を示し、実質的に景気が後退局面に入ったことを認めた。同月19日の日本銀行の金融政策決定会合でも、景気は停滞しているとの声明を発表した。日銀が景気認識に停滞という言葉を使うのは、なんと10年ぶりである。 
景気はいつ後退局面に入ったのか。「景気動向指数に採用されている11の指標のうち過半数の6つがピークアウトした07年11月が景気の山となる可能性が高い」(矢野和彦・みずほ総合研究所経済調査部長)。今回の景気拡大期間は71ヵ月という計算になる。 
「戦後最長の景気拡大」がついに終焉 / 悪要因は資源価格の高騰 
今回の景気の腰を折ったのは、原油、穀物をはじめとする資源価格高騰である。 資源価格高騰は原材料価格を押し上げ、中小企業の業績を直撃した。日本銀行短期経済観測調査(日銀短観)によれば、中小企業の07年度経常利益は前年度比4.9%減。6期ぶりの減益となった。また、原材料高騰は大企業の収益も圧迫する。今年6月調査の日銀短観によると、08年度の大企業の経常利益は前年度比7.0%減となり、7期ぶりの減益となる見通しだ。企業収益悪化を受けて07年度の設備投資は前年度比0.1%減となった。 
原材料高に苦しみながらも価格転嫁を我慢していた企業も、昨年後半からは音を上げ始め、食料品を中心とした値上げが相次いだ。一方で、業績悪化に対応して企業は賃上げを抑制し続けた。この結果、家計の購買力が低下し、今年4-6月期の個人消費は前期比年率換算で1.9%減となった。 
資源価格高騰などによる輸入物価上昇で、産油国や穀物輸出国への所得流出額(交易損失)は大きくふくらんだ(下のグラフ参照)。これは、原材料高や値上げに苦しむ企業、家計の所得がそのぶん目減りしたことを意味する。 
こうした交易損失の拡大を補ってきたのが、輸出である。しかし、純輸出(輸出―輸入)と海外からの純受取(海外からの利子・配当などの受取額―海外への利子・配当などの支払額)の合計額から交易損失額を引いた“海外からの稼ぎ”の対実質GDP比率は、昨年の第2四半期をピークに下落に転じた。交易損失の拡大ペースが加速したためである。 
純輸出額の対実質GDP比率自体も今年第2四半期には下落に転じた。資源高で非資源国の新興国の景気も減速したことで、新興国向け輸出が鈍化したのだ。 
こうして、戦後最長の景気拡大は幕を閉じた。では、今回の景気後退局面はいつまで続くのか。その行方を占うポイントは2つある。後退をもたらす要因となった資源価格の動向と輸出だ。 現在のところ、エコノミストのあいだでは、来年半ばには景気が回復に向かうとする見方が多い。そのシナリオは次のようなものだ。 
原油価格の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は7月にいったん1バレル当たり140ドル台でピークを付け、現在110ドル台で推移している。世界経済減速を受けて今後も緩やかに原油価格の下落基調が続き、来年の夏前には交易損失の拡大に歯止めがかかる。米国経済も来年半ばには上向き、1%台後半の成長軌道に復帰し、日本の輸出も上向くという筋書きである。 しかし、このシナリオが下振れする可能性は小さくない。サブプライム危機に端を発した米国の金融機関の巨額損失計上は、自己資本を毀損させ、貸し渋りを激化させている。 
11月に大統領選挙を迎える米国において、年内そして来年初頭まで政策対応は期待できない。となれば、貸し渋りが設備投資、個人消費をいっそう冷え込ませ、住宅価格下落にも拍車がかかり、来年いっぱいまで景気減速が長引く公算は十分にある。 
また、景気減速と金融不安が続くことはドル安を誘う。ドル安が進めば、今年前半のような資源価格高騰が継続する可能性は高くなる。「このリスクシナリオが現実のものとなれば、日本の景気も来年度いっぱい後退局面が続く」(枩村秀樹・日本総合研究所調査部主任研究員)ことになる。 
実質的な景気後退宣言と前後して、浮上してきたのが景気刺激のための総合経済対策だ。対策の詳細はまだ固まってはいないが、骨子は示されている。 
燃料費補填や金融支援は急場しのぎ / 「市場の機能不全」への諸対策が急務 
具体策を見ていこう。まず中小・零細企業に対する金融支援と、燃料費高騰分の補填などを含めた燃料負担の大きい業種への省エネ支援だ。両対策とも資源価格高騰で窮地に追い込まれた企業・業種を救済するためのものとされている。 
確かに、原油価格は下がったとはいえ、高騰する前の水準(1バレル当たり20-30ドル)と比べれば、はるかに高水準にある。だが、一時的に資金繰りや燃料費を補填したとしても、それは急場しのぎにすぎない。「本来、新たな価格水準へ対応できる体質への変革が必要なのであり、補助金などで支援すべきではない」(河野龍太郎・BNPパリバ証券経済調査本部長)。 
高速道路の料金引き下げという声もあるが、これとて旧道路公団の債務返済を遅らせてしまうだけである。 
規模について自民党からは3兆-4兆円との声も上がる。この規模となれば国債増発は不可避だろう。“典型的なバラマキ”と揶揄された1990年代の景気対策が復活したかのようだ。 
じつは、80年代以降、景気対策として減税以外の財政出動策を講じた先進国は日本のみ。旧来型の公共事業増額など、時代遅れの謗りを免れない。ならば、所得税減税はどうか。定率減税を廃止したばかりで消費税増税の議論を始めようかというこの時期に一時的減税を実施しても、個人消費に回る比率は小さくなるのは確実だ。 
そもそも、国の財政状態は90年代よりさらに悪化している。国の債務がGDPの160%前後に上る現状で、財政支出拡大で景気対策を採ろうということ自体に疑問を抱かざるをえない。 
目先の景気刺激にとらわれた財政政策は、決して講じるべきではない。必要なのは、非正規雇用者の雇用安定化といった市場の機能不全への諸対策だ。財政出動の費用対効果が決してよくないことは90年代の景気対策の結果が証明ずみである。
●絶好の景気対策、暫定税率の廃止 2008/1/28 
道路特定財源の暫定税率廃止問題が、通常国会における与野党の最大の争点となっている。ご存じのように、民主党は廃止を掲げているが、自民党は断固維持を主張している。 
この問題について検討する前に、まず暫定税率の内容を整理しておこう。ガソリン1リットルには、揮発油税48.6円と地方道路税5.2円の合計53.6円の税金がかかっている。このうち25.1円が、道路整備を加速するために上乗せされた暫定税率だ。  
暫定税率がかかっているのはガソリンだけではない。軽油や自動車重量税にもかかっており、総額は2兆7000億円にのぼると言われている。この暫定税率が今年3月末で期限を迎えるため、民主党がこれを延長せず、廃止することを政策の目玉に据えてきたわけだ。  
自民党によれば、暫定税率を廃止して道路特定財源が半減すれば、地方の道路建設が滞るだけでなく、開かずの踏切対策や除雪までもができなくなるという。さらには、建設業の仕事が激減して大変なことになるとも脅しをかけている。 だが、それは本当なのだろうか。 
暫定税率を廃止しても道路は造れる 
自民党は暫定税率を廃止すると、まったく道路が造れなくなるようなことを言っているが、それは無茶な論理である。 たしかに、道路特定財源は道路関連予算に使わなくてはいけないという決まりがある。しかし、その逆として、一般財源で道路を造ってはいけないという法律はどこにもないからだ。  
民主党が主張しているのは、道路予算を減らせということではない。ただ、暫定予算を減らせと言っているだけである。暫定税率を廃止しても、必要な道路は必要なだけ造ればよいではないか。  
どうも、そのあたりの議論が、与党の中でもかみあっていない面があるように思える。福田総理は、「暫定税率廃止では道路を造れない」と警告しているが、その一方で、自民党の伊吹幹事長は「暫定税率を廃止すれば大幅な歳入欠陥が生じる」と発言している。  
幹事長の発言から想像するに、税率がどうこう言う以前に、そもそも道路予算を減らそうという考えが、どこにもないことが分かる。  
いずれにしても、暫定税率を廃止しても道路は造れる。必要な道路だけを造っていけばいいではないか。それでどこがいけないのか。 そもそも、現在の日本は景気が後退局面を迎えている。減税効果のある暫定税率廃止は、ここでこそうってつけの手段ではないか。このまま景気低迷に対して手をこまぬいていたら大変なことになる。それこそ、道路がどうのと言っている場合ではなくなるのだ。 そう、暫定税率を廃止するかどうかは、道路建設の問題ではなく、景気対策として考えるべきだとわたしは言いたいのだ。  
誰も景気対策を言い出せないのが現状 
現在の日本の景気が深刻な状況であり、黄信号から赤信号に変わりつつあることは、専門家ならずとも誰もが感じていることだ。 日経平均株価の落ち込みは広く報道されているが、それだけではない。昨年11月には有効求人倍率は1倍を割ってしまった。また、11月の景気動向指数の一致指数(改訂値)は30.0%となり、景気判断の基準となる50%を8カ月ぶりに下回っている。  
さらに、半年後の景気を示すとされる先行指数(改訂値)は18.2%で、11指標中二つがブラスとなったに過ぎない。こちらは、50.0%を4カ月連続で下回っている。プラスとなった指標のうちの一つは「新設住宅着工床面積」だが、これは建築基準法改正のあおりで、これまで建築確認手続きが停滞していたことが理由である。その落ち込みの反動でプラスに転じたに過ぎない。 こうしたことを考え合わせると、どうみても日本の景気の現況は赤信号に近い。  
ところが、こんな現状を前にしても、誰もが景気対策を言い出さないのだ。その一つの理由は、衆参両院で与野党のねじれ現象が起きているためである。こうした現状では、強いリーダーシップをともなった本格的な景気対策は期待できない。  
そもそも、政府与党も日銀も、「景気は着実に回復軌道に乗っている」という、とんでもない景気判断のミスをしている。これでは、まともな景気対策など無理な相談である。 だが、景気対策は今のうちに実施できれば、かなりの効果が期待できるのだ。なぜなら、景気が悪化を始めた初期に対策を打てば、最低限のコストで、景気後退は最小限に抑えられるからである。  
暫定税率廃止が減税効果を生み出す 
こうした状況において、唯一実行可能な景気対策がある。それが、暫定税率の廃止なのである。 では、さきほども述べたように、暫定税率の廃止問題を、道路建設の問題ではなく、景気対策として考えてみたらどうなるか。 暫定税率の廃止には、二つのメリットがある。  
一つは、暫定税率廃止をしたときの減税規模である。興味深いことに、2兆7000億円という金額は、既に廃止された定率減税の減税規模2兆6000億円とほぼ等しい。つまり、定率減税復活とほぼ同じインパクトを国民生活に与えることになるわけだ。  
わたしは去年一年間、景気回復のために定率減税復活をずっと唱えてきたのだが、残念ながら誰にも相手にされなかった。ぜひ、その代替手段として暫定税率を廃止してほしいものである。  
さて、もう一つのメリットは、経済が疲弊している地方に大きな効果を与えるという点だ。 5年に1回行われる「全国消費実態調査」によると、1世帯当たりの月間のガソリン代は、東京都区部が1972円に対して、町村部は9774円と5倍にもなる。病院通いも買い物にも車が不可欠となっている地方では、ガソリン代が家計の大きな負担になっていることが、はっきりとした数字となって表されているわけだ。  
逆にいえば、5倍ガソリン代を使っている地方にとって、暫定税率の廃止は減税効果も5倍となる。そして、これは都市から地方への所得移転にもなる。一番苦しんでいる地方の住民や中小企業にとって、大きな景気対策となると同時に、地域格差縮小にも貢献するのである。  
税率維持では地域格差が拡大するだけ 
以上の二つのメリットを考え合わせてみれば、暫定税率の廃止は政府・与党にとっても絶好のチャンスだと思うのだ。 与党や日銀にとっては、景気対策を言わずに(つまり、景気判断のミスを認めることなく)、実質的な景気対策をとることができる。しかも、それが格差縮小にもなるわけだ。こんなおいしい解決策は、そうそうないのではないか。  
与党は廃止を絶対に認めないと言うが、国民の意見は廃止に傾いている。最近の世論調査では、3分の2から4分の3が廃止賛成という結果が出ているが、これは、単に税金が安くなればいいという安易な考えからではない。自動車がなくては買い物もできず、病院にも行けない地方在住の人にとっては、まさに生活と生命がかかっているのである。  
そこで与党の対応なのだが、もしかすると最後に大逆転があるのではないかと、秘かにわたしは期待している。そのヒントが、テレビ朝日の「テレビタックル」に出演する与党の国会議員の態度である。  
これまでも与野党対決となるテーマが何度も話題にのぼったが、徹頭徹尾「何がなんでも反対」と言うケースと、陰でこっそり「いや、個人的には」と本音をおっしゃるケースがあるのだ。そして、今回の話題では圧倒的に後者の雰囲気なのだ。 同様のケースは薬害C型肝炎のときにもあった。福田総理が救済の政治決断を下す前から、「個人的には救済したほうがいいんですが」と多くの自民党国会議員が言っていたものだった。  
民主党にとって、ここはまさに攻めどころだろう。もし、衆議院可決、参議院で否決したのちに、与党が3分の2を使って衆議院で再可決したら国民は黙っていないだろう。そうなったら、解散に追い込んでもいいと思う。さもないと、景気低迷と格差拡大はますます進行して、日本は大変な状況に陥るに違いない。
 
●なぜGM は破綻したのか / リーダーシップ論
はじめに  
リーダーシップ論の先行研究として、本論文ではシュムペーター1)を第一に取り上げる。なお、経営者論的な視点からの先行研究としては、1940 年代後半以降のリーダー特性論的アプローチ、ミシガン州立大学やオハイオ州立大学を中心に研究されたリーダー行動理論的アプローチ、状況要因がリーダー行動に影響を与えるとするコンティンジェンシー(条件適合)理論的アプローチ、更にはリーダーとフォロワーの関係性をも視野に入れた2 者間の交換理論的アプローチ(Jung.& Avolio、1999)等、様々な方法でリーダーシップ現象の解明が研究されてきたと言える。また、冷戦が終焉し経済のグローバル化が進む中で、リーダーシップ研究にも国際比較が試みられるようになった他、Hofstede(1980)の異文化比較研究を応用したMartinson &Davison(2007)のように、個人主義と集団主義という枠組みでマクロ的視点から変革に関わるリーダー行動の研究も行われるようになっている。  
アメリカのリーダーシップ研究では、組織やプロジェクトに変革(change)をもたらすリーダーシップの発揮という点が強調される傾向がみられる(Hackman & Johnson、 2004)。これはフォロワーとの相互作用を含めた変革型リーダー行動(Bass、1985)理論を根拠にしている。  
Kotter(1990)も複雑な事態に対応するのは「マネジメント」であり、大きな変化に対応するのが「リーダーシップ」であると述べている2)。このように多くの「リーダーシップ論」が展開されているが、多くはリーダーシップを発揮する為のノウハウを概説した内容に留まっている。しかし、リーダーシップとは本来理念であり、理念は「結果」として実現されることによって意味を持つ。いわゆる経営に関する知識とか才能などの資質は総合的に形成されるものであり、個々の要素を積み上げていけば完成するものではない。その意味でリーダーシップとはテキストによって学ぶことが出来るものではなく、結果によって存在が確認される仮象にすぎない。従って、リーダーシップという幻影を追うのではなくその本質を見抜くことが重要な課題となる。これまでのリーダーシップ論とは発想が逆だが、シュムペーターの言葉を借りるならば「新結合」に成功するのはどのような人かではなく、「新結合」に成功した人こそリーダーと呼べるのである3)。  
米国企業第二位の規模を誇ったゼネラル・モーターズ(以下GM という)は創業100 年目という歴史的節目に経営破綻に陥り、新たな企業として再スタートすることになった。GM 破綻の背景には経営者個人の資質だけではなく、米国の社会システムと経済システムがリーダーシップの実現を阻んでいた可能性もある。米国のシステムでは株主の利益を重視し、株主にとって利益になるなら自動車メーカーであっても積極的に金融事業を展開するのは当然とみられてきた。実際、GMにおける2004 年の最終利益に占める金融事業の割合は78%にも達していた4)。  
GM 破綻時のCEO、リチャード・ワゴナー(Richard J. Wagoner、以下ワゴナーと呼ぶ)は米国のシステムという制約の下で自動車メーカーとして技術開発に努めるよりも、自動車販売を梃子とした金融による利益を目指したのである。その結果GM の金融子会社であるGMACの格付けは2000 年に親会社のGM よりも上になったが、肝心の自動車事業では2004 年から赤字が続き、GMAC の高収益で連結決算の帳尻を合わせる経営が破綻するまで続けられた。創業時から破綻に至るまでGM のリーダーは時代の変化に応じた製造業としての変革を成し遂げることが出来なかったのである。その意味で、GM の破綻については経営者個人の能力だけではなく、米国のシステムに内在する問題にも焦点を当てて考える必要がある。本論文では上記の視点から2009 年6 月に連邦破産法11 条を申請し破綻したGM をケース・スタディとして取り上げ、アメリカの利益主義に内在するリーダーシップの問題について考察を試みる。 
1−1 破綻に至る経緯  
2008 年9 月15 日のリーマン・ブラザーズ破綻に端を発した金融危機は、アメリカ自動車産業の運命までも大きく狂わせた。1908 年創業のGM は2009 年3 月末の連結ベース決算で負債総額が1728 億ドルに上り、同年6 月1 日には連邦破産法11 条(日本の民事再生法に相当)5)を申請して、再建に向け法的整理に入ることになった。破綻に至った旧GM の病巣は3 つに分類出来る。「効率性の悪い過剰な生産設備や負債による財務基盤の破綻」、「変革を拒んできた企業体質、いわゆるレガシーコストの存在」、そして「短期収益優先を背景とする小型トラックに偏重した車種構成」の3 つである6)。複雑に絡んだこれらの病巣を自力で治すのは困難という判断の下に、GM は自力再建を断念して連邦破産裁判所の手に再建を委ねることになった。  
GM の破綻劇はアメリカの社会システムと経済システムが抱える矛盾の象徴でもあった。アメリカの経済システムは株主価値の最大化を重視し、利益が期待出来るなら自動車メーカーであっても金融事業の拡大に走る。GM の破綻時のCEO、ワゴナーは新型車を車名ではなく、「プロダクト」と普通名詞で呼び、技術開発に裏打ちされたモノづくりよりも金融による利益獲得に奔走した。ワゴナーが47 歳の若さでCEO に就任した2000 年には金融会社であるGMACの格付けは親会社のGM よりも上になる一方、肝心の自動車事業は2004 年から破綻に至るまで赤字が続き、GMAC の高収益で連結決算の帳尻を合わせ続けてきた。このことは既述した通りである。その意味で、GM 破綻の責めを自動車会社としての経営問題に帰すだけでは不十分であり、アメリカの抱える社会と経済システムの両面に焦点を当てて考える必要がある。  
日本の自動車会社が部品製造メーカー(サプライヤー)を巻き込んで共同開発する「摺り合わせ型」7)と異なり、アメリカは機能が画一で規格化された部品をコスト本位で組み合わせる「モジュラー型」8)のモノ作りが得意であり、GM はその典型と見なされてきた。そう考えると、多様な抵当を担保として組成された証券化商品もモジュラー型の金融商品に他ならない。自動車販売による多様な債権や証券を集めて組成することにより、規格化された大量の証券化商品が造り出されたからだ。貸し手が借り手をモニターし回収までリスクを取る日本の間接金融とは異なり、モジュラー型は大量の金融商品を短期間で回転させ、利益を上げられる点では優れているが、抵当証券等のパーツが規格化されているため、新規参入が容易で競争が激化し易く、品質よりも価格を重視するために単位当たりの利潤率は低下する傾向にある。  
自動車の世界でも同じ現象が起きてGM は追い込まれたのではないか。モジュラー型モノ作りシステムは、多文化・他民族社会のアメリカ故に誕生したシステムであり、そのアメリカ文化の上に発展を遂げた企業経営がGM を崩壊へ導いた可能性がある。アメリカのモノづくり文化は、技術開発を軸にしたクラフトマンシップ(craftsmanship)9)とは異なり、より多くの貨幣を入手した者が勝者という「利益原理主義」であり、GM にとって自動車は利益を得る手段に過ぎなかったと言える。ヨーロッパや日本の伝統でもあるクラフトマンシップが、アメリカ的なビジネスにおいても必要だったのではないか。GM の破綻時の売上高は前年比17%減の1489 億8000 万ドル、年度通期の世界販売は前年比11%減の836 万台にまで落ち込んだ。最終損益は308 億6000 万ドルの赤字となり、2008 年には販売台数でトヨタ自動車に抜かれていた10)。その後、GM は前述した通り、連邦破産法11 条を2009 年6 月1 日に申請し事実上破産、新生GM は米政府が60.8%の株式を持つ「オバマ・カンパニー」となった。再建の柱は優良事業部門を旧GM と分離し、米政府はGM への融資債権を出資に切り替えて、新GM の6 割強の筆頭株主になったのである。 
1−2 創立時より2008 年までのGM の足跡  
章末の図表2 に示したように、1908 年、デュラント(Billy Durant)が創業したGM は、一企業の枠を超えて第二次世界大戦後には「アメリカのシンボル」とも言える存在となった。  
デュラントは、多種多様な組み立てメーカーや部品メーカーの整理統合を通じて生産設備を拡充するとともに、全国的なディーラー網を確立して市場の独占的支配を目指した。しかし、一連の買収に際しては企業間のシナジー効果についても、また企業結合の経済性・効率性を高める役割についても関心が払われなかった。「デユラントは自社工場の拡張を進めながら、既存諸企業の吸収・合併による拡大政策を推進し20 余社を買収したが、そのうち11 社は自動車メーカー、2 社は照明器具、残りは部品・付属品メーカーであったという」11)。この顛末は「デユラントのGM の崩壊を意味し銀行シンジケートに経営の支配権を握られる結果になった」12)。  
デュラントの失敗から脱却するために、1923 年にGM の初代CEO に就任したアルフレッド・スローン(Alfred Slone) は「事業部制」を導入し、巨大企業を効率的に運営するモデルを開発・採用した13)。フォードが「フォーディズム」と呼ばれる大量生産ラインシステムで成長したのに対し、GM は事業部制に基づく大量販売の仕組み、いわゆる「スローニズム」を開発して成長したと言える。企業年金や株式連動報酬など過去に例のない新しいシステムをGMは考案し、他の企業に広がった仕組みも少なくない。この姿勢がアメリカ的「利益主義」という文化に根ざしたGM の全歴史を貫いており、日本や欧州の企業による技術開発を重視したクラフトマンシップ的経営とは好対照をなしていると言える。  
既存の生産・販売施設を集中・結合し、大量生産、大量販売、大量消費に依存する政策を伝統的に継承してきたGM は、2009 年2 月17 日に、再建計画を政府に提出し166 億ドルの追加支援を求めた。それは「雇用や景気を人質に政府を脅迫したに等しい内容であり、最後は政府が救ってくれるとの姿勢がありありと浮かんだ」14)ものだった。オバマ大統領は「現実味に乏しい」と計画承認を拒否し15)、当時CEO であったワゴナーは2009 年3 月末に辞任した。世界屈指の巨大企業のトップが実質的にオバマ政権によって解任されたのである。それはアメリカで生まれた利益主義の経営システムが破綻した瞬間でもあった。  
ワゴナーの後任にはワゴナーの下でNo.2 の役割を演じてきたフレデリック・ヘンダーソン(Frederick A. Henderson)が就き、2009 年6 月1 日、米連邦破産法11 条(日本の民事再生法に相当)適用をニューヨーク市の破産裁判所に申請した。GM は2009 年8 月末を目標に新会社への資産譲渡など破産法手続きを完了し、販売規模を破産法11 条申請当時の約7 割にあたる600 万台程度に縮小、「新生GM」として再起をはかり(図表3 参照)、6 〜 18 ヶ月で再上場を目指す計画を立てたのである16)。 
1−3 原油高の進行と小型トラックの販売減速  
燃費の悪い小型トラックの販売を陰で支えてきた1 ガロン(3.8 リットル)1.5 〜 2 ドルというガソリン価格は2005 年以降上昇に転じ、2008 年6 月、7 月に1 ガロン4 ドル超にまで上昇(図表4 参照)、これを契機にアメリカ自動車市場は一気に小型乗用車、低燃費車志向にシフトした。  
この結果、2005 年―2008 年のGM の累計最終赤字は820 億ドルにまで達した。燃費を軽視した結果、販売不振により利益も失う結果となり、シェア低下はGM の金融力並びに本来投資すべきであった技術開発のための資金力にも影響を与えた。このように金融危機と自動車販売減というショックはGM に致命的な影響を与えたと言える。  
GM の設計思想は基本的に「小型トラック型」すなわち車台(シャーシー)と車体(ボディ)が明確に機能分担するモジュラー型であり、フルライン政策やモデルチェンジ政策もトラック型が前提であった。車台を共通化しつつ車体を多様化させ、製品変化と部品量産を両立させるというGM 型「儲かるビジネスモデル」はアメリカ自動車産業にとっても共通するものだった。  
「小型トラックのアメリカ市場に占める割合は、1991 年の33・6%から1997 年には45・3%に拡大し、さらに2002 年には乗用車の販売台数を追い抜き、2004 年には54・3% 、 2007 年には61%に達した」17)。小型トラックはまさにアメリカ自動車市場拡大のけん引役であった。しかも、小型トラックは販売価格が高いため、GM だけでなく販売ディーラーの収益性も高く、アメリカにおける小型トラックビジネスは多数の業界関係者から歓迎された。しかし高付加価値の小型トラックがヒットした結果、価格競争が激しく利幅が小さい小型車分野の基礎技術開発や燃費低減、排ガス浄化に関する投資が停滞し、GM や部品メーカーが世界の先進技術開発競争から遅れを取る遠因を作った。  
小型車開発力の停滞がGM にとって最大の弱点だという認識が経営陣に欠けており、小型車販売に関しては日本、韓国、欧米の提携企業の小型車を投入する方策でしのいだ(図表1 参照)。  
この方策を採用した理由として、「経営陣の中枢には当時のCEO であったリチャード・ワグナーを初め財務畑出身者が多くその戦略的意思決定は短期的収益性重視で、欧米型の生産システムや部品調達システムの優位性はある程度理解していても、それらを取り入れる緊急性を必ずしも理解していなかったことが挙げられる」18)。このような理由からGM は三元触媒や電子制御燃料噴射装置EFI(Electronic Fuel Injection)の技術や特許等、必要な技術は日欧のメーカーやサプライヤーが完成させたものを購入するという戦略を続けてきたが、稼ぎ頭であった小型トラックの販売減による営業利益減少に伴い日欧メーカーからの技術購入に要する資金力も徐々に低下した。「収益を燃費改善や原価低減に再投資してきた外国メーカーとの差は開くばかり」19)であり、燃料価格が上昇した2008 年前半から中盤に小型トラック販売が不調になった結果、GM 全体の販売不振と稼働率低下、そして収益悪化と事業資金不足をもたらし、GMが外部からの資金調達なしに経営を持続できないという、深刻な経営危機に直面することになったのである。 
1−4 アメリカ金融危機の影響  
2007 年、アメリカのサブプライム問題は既に深刻化していた。もともとこの金融危機は、リスクを承知で高収益を追求した投資家の行動が原因だった。一般に好況は本来の問題を隠すことが多く、不況になると隠されていた問題が見えてくることが多い。GMの場合も金融危機によって技術ではなく金融業に傾き過ぎた企業運営の問題があぶりだされたと言えるのではないか。  
GM は、販売低下をカバーする為にサブプライム住宅ローンと同じ仕組みで組成されたリスクの高いローンを活用して、「残価設定ローンシステム20)」を高級乗用車にまで適用した。[図表1. GM のプラットフォーム開発体制]  
年代後半に1700 万台という水準に拡大したアメリカ自動車市場であったが、これは与信枠の少ない消費者にまで販売先を広げることで利益水準の高い小型トラック21)販売によって実現されたものだった。その頂点でバブルが崩壊し、アメリカの自動車市場も急速に冷却することになった」22)。値上がりした住宅を担保に追加貸し出しを行って過剰な消費をさせるホームエクイティローン23)など、バブルをあおる金融機関の経営によって収入以上に消費するアメリカ人のライフスタイルは金融危機を契機に、収入以下に消費を抑える生活へと変わらざるを得ず、新車販売の落ち込みにも結び付いていったと言える。  
こうした状況の中で、GM は販売不振で手元資金の流出が加速し、資本市場からの資金調達も難しくなったことから資金繰りが逼迫し、政府に緊急融資を申請した。2008 年末にはブッシュ大統領政権下でGM とクライスラーは174 億ドルの緊急資金援助を受けたが、そのうち134 億ドルがGM に配分された。さらに2009 年2 月17 日にGM は最大166 億ドルの追加融資を政府に申請した24)が、前述した通りオバマ政権に拒否され、破綻に至った。ワゴナーは、申請書の中で「アメリカ政府が緊急支援を行わなければGM のみならず、サプライヤーやディーラー等を含む自動車関連業界全体の失業救済などで政府負担額は最終的に1000 億ドルに達する」と述べたが25)、これは政府を脅迫したに等しいと当時の財務長官であったポールソンは激怒した26)。GM の再建計画の提出と緊急融資要請を受けて、アメリカ政府はオバマ大統領直属の自動車産業作業部会(Auto task force)を結成し、対応策を検討した。その結果、GM に対して60 日間のつなぎ融資を提供する一方で、GM が申請した計画では再建できないとして、一段と厳しい競争力再生計画の提出を2009 年3 月30 日に指示したのである27)。「GM 経営破綻の危機を招いたのは我々の新車でもなく経営計画でもなく、世界金融危機である」とGM のワゴナー前会長と役員達は主張した28)が、その実態は安全・環境・燃費の改善等、統合的な技術開発、組織能力の構築を怠るなどの経営問題が金融危機によってあぶりだされたにすぎない29)。 
1−5 GM 救済をめぐる動き(2008 年以降)  
GM は既に134 億ドルのつなぎ融資を受けているにも拘わらず、2009 年2 月にSEC(米証券取引委員会)に対して再建計画で最大166 億ドルの追加支援を求めた。しかし、自動車作業部会はGM の現状と提出されている再建計画を評価した結果、再建計画は20%販売成長を基礎に算出するなど楽観的過ぎること、利幅が大きいトラックやSUV に相変わらず依存していること、電気自動車「シボレー・ボルト」で利益を上げるには大幅な製造コスト削減が必要なこと、そして退職者向け医療費・年金負担の為に2013 年〜 14 年には最大年間60 億ドルの現金が必要であり、UAW からの更なる妥協が必要なこと等を指摘した。この報告を受けてオバマ大統領は「経営悪化の責任は経営陣にあること、政府は経営再建を支援するが、提出されている再建計画は手ぬるいもので、政府に支援を求める相応の痛みを利害関係者である経営陣、債権者、労働組合が分かち合うべきだ」という声明を発表した30)。  
[図表2. GM の歴史概略]  
1908 年デュラント(William Durant)が「ビュイック」を母体に設立(New Jersey)  
1919 年金融会社GMAC 設立  
1923 年アルフレッド・スローンが初代CEO に就任。この年以降毎年新型車発表=計画的陳腐化政策。  
1953 年アイゼンハワー政権の国防長官にウィルソン前社長が就任。「我が国にとって良いことはGM にも良いことであり、逆もまた真なり」と発言。  
1984 年トヨタとの米生産合併NUMMI が生産開始。  
1992 年削減計画遂行が遅れたステンペル会長、「業績不振を打開出来ない」と解任される。  
2000 年6 月リチャード・ワゴナー、社長兼最高執行責任者(COO)から社長兼最高経営責任者(CEO)に47 歳の若さで就任  
2005 年元GM 部品事業部門の米デルファイが米連邦破産法第11 条を申請。  
2006 年米金融子会社GMAC の過半数株式をサーべラスに売却決定。  
2007 年07 年度決算で、過去最大の約390 億ドルの最終赤字に  
2008 年12 月当時のブッシュ政権が134 億ドルのつなぎ融資策決定。  
2009 年2 月米政府に最大166 億ドルの追加融資を要請  
2009 年3 月・リチャード・ワゴナー辞任、後任にGM プレジデントのフレデリック・ヘンダーソン就任。  
・オバマ大統領、向こう60 日間のリストラに必要な50 億ドルのつなぎ融資を決定。経営陣刷新を前提に60 日間で新たな再建計画を提示するよう要求。  
5 月21 日米財務省はGM の金融関連会社GMAC に対し、75 億ドル(約7000 億円)の追加資本注入実施を発表。  
6 月1 日連邦破産法11 条を申請  
[図表3. 新生GM の姿] 
2−1 株主優先、短期収益優先のアメリカ型経済システム  
アメリカ型ビジネスの特徴は株主第一主義にある。投資家からは高収益と高利回り、より良い配当性向が求められ、それを実現するためにGM も自動車製造事業より自動車販売金融商品の開発・販売を強化してきた。その一方で、自動車の商品としての性能と魅力に決定的な影響を及ぼすエンジンやトランスミッション、サスペンションやステアリング、ブレーキなどの機械部品への投資が抑制され、そのことがアメリカにおける基本製品に関連した製造・開発上の足腰を弱めることに繋がった。まさにクラフトマンシップの喪失である。  
2005 年以降、GM はグローバル体制の一環として小型トラックと大型乗用車以外の分野における開発を日本、韓国、欧州に移管した結果、GM 及びアメリカ資本自動車部品メーカーの製品開発能力・部品開発能力が衰えることになった。それは、より優れた製品を提供するために技術開発を行うのではなく、株主の利益を優先し、より収益を上げることに優先順位を置いた企業経営とそれに基づく事業再編を行った結果でもある。このことが、GM の製品競争力のさらなる低下をもたらすことになった31)。[図表4. 米国ガソリン価格推移表(2000 年〜 2010 年)]  
また、ブッシュ政権下でCAFE 規制32)の強化が先送りされたことを背景に、環境対応のための新技術採用に対するGM の意識は低いままで、部品調達政策は新技術開発よりコストを下げる政策が重視され一般化した。まさに「株主から四半期ごとに収益の結果を出すことを義務付けられ、配当性向を上げ株価を上げることが厳しく求められる経営の中では、投資効果が見えない省資源型、環境技術対応型技術等に投資が回らない状況が出来上がっている33)」結果といえる。  
自動車技術のめざましい発達とグローバルな品質競争のもとでは、それを支える部品の品質や部品メーカーの潜在能力評価が不可欠であるにも拘わらず、GM のグローバル・ソーシングの基本的発想は低コスト、大量購買が基本であった。このように、一面的な規模の経済性にとらわれた発想故に、表面的なコストダウン効果と裏腹に、長期的な観点から部品の品質やメーカーの開発能力に対する技術評価が疎かになり、品質に対する信頼が失われたことが金融収益にも影響を与えるような販売失速の大きな原因の一つになったのではないか。 
2−2 保護政策と既得権益維持  
1987 年の日米包括協議、1992 年の日米構造協議、1995 年のスーパー301 条34)を盾にした日米交渉では、日米自動車貿易不均衡の是正が大きなテーマだった。そして、1994 年に成立した自動車ラベリング法案35)等の措置を受けて、日本自動車メーカーは北米現地化を促進させ、現地部品調達を通じてコスト競争力を高めた。その結果、米国市場でのシェアが一気に拡大し、結果としてGM は販売シェアを低下させることになった。このようにクリントン大統領が自動車産業に関連して打ち出した政策は、いずれもアメリカ自動車産業の競争力を強化するものとはならず、却って自動車産業の弱体化を招く結果となった。  
また、GM が競争力を低下させた原因の一つに既得権益の保護が揚げられる。事業拡大が続いたGM は労組に福利厚生で譲歩を繰り返し、従業員に莫大な年金給付と健康保険給付を保証した。1973 年、UAW(全米自動車労組)は早期退職者に対する完全年金を勝ち取った。これは民間による企業福祉を途方もなく拡大した結果であり、会社は年金を30 年働いた退職者に対して早期退職しても62 歳になるまで支払うことに同意した。また、レイオフされた従業員には契約が続く間基本給を全額支給する「ジョブ・バンク」保証プログラム36)まで用意した。  
これは事実上の生涯保証であり、GM の年金を最終的に支払っていたのは企業ではなく、実際はGM の自動車の購入者だったと言える。更に工場作業者クラスの時間給は、日系企業の40〜 50 ドルに対しGM は70 ドル前後37)、2006 年のアメリカ製造業の平均賃金時給17 ドルと比較すると4 〜 5 倍であり、製造業としては全米の最高水準にあった。アメリカ自動車産業がその強さ故に獲得した高収益と高収入が逆に新たな事業環境の変化に対する対応を遅らせる原因となった。政府への破産法申請に当たり自動車産業作業部会が俎上に上げたのは、労働者側の賃金見直しに留まらず、管理職手当てや役員報酬にまで及んだ38)。 
2−3 製品力の低下、部品の外注による開発能力の低下  
GM の安全性、低燃費、環境対応に集約される競争力低下を招いた大きな原因の一つは、図表1 に見られるように、プラットフォームの開発を韓国、ドイツ、オーストラリア等アメリカ外に委託し、自らは収益性が高く、アメリカ市場特有の小型トラックと大型乗用車とに集中した開発体制を採用してきたことである。GM はグローバルな開発分業と並行して、部品分野でも内製部品事業部門の外部移管を進め、品質よりも価格を重視してコスト削減を図った。サスペンション、ブレーキ、ステアリング、トランスミッション、駆伝動系部品等の総称であるパワートレインの開発体制を世界分業した結果、自動車製品開発に占める北米部品メーカーの役割が低下し、技術分野における生産性、製造品質、新規開発力、開発スピード、製造現場における従業員の多能的能力等、将来の競争に必要な要素を自ら切り離してしまう要因にもなった。  
インターネット時代になぜ迅速な対応能力が低下したのかという疑問もあろうが、それはIT 技術が発達し、バーチャルな設計図を活用出来る状況にあっても、要求機能や制約条件が厳しくなればなるほど、製品設計と生産ラインとのface to face による摺り合わせが必要になってくるからである。GM はIT 技術を積極的に活用したが、デジタル設計や部品におけるネット調達、販売流通やサービス事業などにおいてIT 技術の可能性を過大評価していた。「IT は明確な戦略のもとで始めて有効なツールとして活用出来るものであり、それ自体で戦略や意思決定を行うものではない」39)。図表1 に示した通り、GM は世界的な小型乗用車メーカーの買収と資本提携により、小型乗用車事業拡大の選択肢を拡大し、海外子会社に小型車開発を全面的に依存する体制を構築したが、あまりにも選択肢が多く、それぞれの子会社・関連会社間の分業と分担、選択と集中によるヒット商品の創出に失敗した。そして、韓国・大宇や独・オペル等の海外子会社に小型車開発を全面的に依存する方針を貫き、独自で小型車開発を進める動きが破綻に至るまで見られなかった。  
その理由として、提携や子会社化等の再編によるシナジー効果を単純な規模の経済性だけで判断したこと、それぞれの国やアメリカの事業において、工場改革や開発システムから部品調達に至るまでの徹底したリストラによる改革が先送りされてしまったこと、これらの改革とシナジー効果にIT 技術の効果を期待し過ぎたこと、さらに異なるブランドと企業風土の融合という問題を安易に考えていたこと等があげられる。これらの状況は、GM にとって自動車という製品はより多くの貨幣を得る手段にすぎなかったことを現している。前CEO のワゴナーが車名ではなく金儲けのための製品にすぎないという意味で「プロダクト(product)」と呼んだことにも象徴されるように、製品に対する技術的信頼を追及することのないGM の企業文化の露呈と言える。 
2−4 販売金融優先で疲弊した顧客サービス  
GM は販売が減速傾向を示し始めた2007 年中旬頃から所得の低い層に対するサブプライム・ローンや低利ローン販売を拡大し始めた。販売・マーケティング方法を、自動車本来の性能をアピールするより販売金融の案内を重視する方向に発展させた。この結果、販売店は顧客ニーズに合った製品を探し提案するよりも、製品そのものの販売に必要なローンの提供、ローン設定を優先することになった。  
このように所得の低い層に対しても与信水準を引き下げて低利ローンを供与することで販売実績を拡大したが、その結果、ディーラーはローン設定を優先して高価格の車の販売に力を入れるようになった。また、「GMAC のような本来は自動車の販売金融会社までが、本業だけでなく住宅金融やサブプライム・ローン、その他各種の信用リスクヘッジ商品にまで拡大していった」40)。価格競争は市場の停滞からローン金利やリースアップ時の当初残価設定という形が中心になり、消費者はディーラーが提案する販売金融提案のままに製品を値引き交渉なしで購入するようになった41)。こうした状況下では、小型車や低燃費車の需要予測に必要な販売現場からの情報のフィードバックが遅れ、GM の製品開発企画が市場の変化に対応できないのは当然だったといえる。 
結論  
ワゴナーは2008 年11 月の議会証言で、「破綻の危機を招いたのは、我々の新車でも経営計画でもなく、世界金融危機であり、石油価格高騰であり、円安による輸入増加、そしてUAWである」42)と述べた。確かに構造的要因としては、株主のための四半期ごとの業績発表による短期利益重視の姿勢、全米自動車労組(UAW)との関係改善を図った賃金・手当て増額や退職者年金などのレガシーコストといった財務圧迫要因があったことは間違いない。  
しかし結局、GM の衰退、破綻は経営学者の野中郁次郎が指摘するように二つの要因に帰着出来るのではないか。「一つは企業としての社会的存在意義の視点を喪失した近視眼的経営、もう一つはそれに伴う価値創造力の低下により客の支持を喪失したことである」43)。GM は環境意識の高まりなど、変化した価値感を読み新たな価値を持つ車を作るのではなく、販売奨励金やリース契約、車のローン金利優遇など、金融手段によって当面の利潤を確保しようとした。  
別な表現をすれば、日欧のクラフトマンシップとアメリカの利益主義の違いがはっきりと現れた現象でもあった。  
シュムペーター(1977)は指導者活動を以下のように述べている。「事態がまだ確立されていない瞬間において、その後明らかになるような仕方で事態を見通す能力であり、人々が行動の基準となる根本原則について何の成算も持ちえていない場合においてこそ、本質的なものを確実に把握し、非本質的なものを除外するような仕方で事態を見通す能力である」44)。つまりGM の指導者は、シュムペーターの表現を借りれば、事態を見通す能力が欠落していたことになる。現状の変化や課題を洞察し、自らも主体的に変化し続けるという経営が出来なかったということである。GM 崩壊の根本的原因はワゴナーのみならず、歴代の経営者が自動車製造業をビジネスの根幹とせず収益の源泉を金融業に求めた結果でもあり、その意味ではワゴナー前CEO の「GM の経営破綻の原因は世界金融危機である」という主張は皮肉にも的を得ていたと言える。 
注  
1)シュムペーター、220 − 230 頁  
2)John P.Kotter、(1990).104 頁  
3)シュムペーター、229 頁  
4)「経営の視点」、日本経済新聞朝刊、2009 年5 月11 日を参照  
5)連邦破産法11 条:米連邦破産法による法的整理にはいくつかの種類があり、11 条は法的管理下での企業再建を促すもので、日本の民事再生法に相当する。11 条の活用で、裁判所の管理下で迅速な再建を目指すことが可能になる。一方、同法7 条は日本の破産手続きと同様、企業の消滅を意味する。  
6)「ロバート・クランドール(ブルッキングス研究所上級フェロー)インタビュー」、日本経済新聞朝刊、2009 年9 月24 日を参照  
7)「摺り合わせ型」或いは「インテグラル型」「モノコック型」とも言い、日本・欧州メーカーが得意とする。この生産方式では車のシャーシ(車台)とボディを一体型にして開発・生産する為、開発・設計・生産担当者は何度も「擦り合わせ」をして、全体部品と全体機能を一体化することで生産システムを構築していく。土屋勉男、大鹿隆、井上隆一郎、298 − 300 頁  
8)「モジュラー型」は「トラック型」とも表現され、アメリカのメーカーが得意とする。この生産方式は、自社で保有しているシャーシの上に様々なタイプのボディ(ピックアップトラック、SUV、ミニバン、セダン等)を乗せることにより開発・生産する。この場合、フレームとボディは別々の組織・生産担当者により開発・生産される為その「組み合わせ」が車の機能・性能を決定することになる。同上、298 − 300 頁  
9)Craftsmanship。職人気質、職人技能、と一般に訳される。ここでは、アメリカの分業重視型・大量生産型組織能力ではなく、設計と生産現場の統一重視の多能工のチームワークによる統合型組織能力を意味する。  
10)「株式市場と経済ニュース(2009 年3 月1 日)」  
11)井上昭一、68 頁  
12)同上、67 頁  
13)それまでは「各事業部の調整と目的の統一を欠いた雑居的組織であったが、スローンの開発した組織案は、GM を中央集権化された政策と分権化された執行、つまり会社の活動を構成する各事業部の組織を、各事業部間の相互関係だけでなく、中心的組織との関係において明確に規定することであった。このようにして全社統一的「政策」と各事業部の「執行」との間に明確な一線が画され、経営管理上の専門家を基礎にした分業関係・事業部制、いわゆる経営陣の責任と権限を明確にする「事業部制」という近代経営の雛形が確立した」。同上112 頁  
14)Rattner、 S.(2010)、58 頁  
15)These cautions apply to all GM forward-looking statements. GM cannot provide assurance that the results or developments that the Company anticipates will happen or、 even if they do happen、that they will have the anticipated effects on GM and the Company‘s subsidiaries or the Company‘s businesses or operations. In particular、 financial projections are necessarily speculative、 and it is likely that one or more of the assumptions and estimates that are the basis of GM‘s financial projections will not be accurate. Accordingly、 GM expects that the Company‘s actual financial condition and results of operations will differ、 perhaps materially、 from what the Company describes in the Plan. Obama Administration Auto Restructuring Initiative、 General Motors Restructuring、(March 30、 2009)”.  
16)新聞報道(日本経済新聞・2010 年11 月18 日他)によると、GM は2010 年11 月18 日、ニューヨークとカナダ・トロントの両証券取引所への再上場を果たした。初日の終値は34.19 ドルと売り出し価格(33 ドル)を3.6%上回り、普通株と新規発行する優先株を併せて、再上場に伴う総調達額は231億ドルになったと発表、IPO に伴う調達額では世界最大規模となった。2009 年6 月の法的整理を経てアメリカで最大規模の株式公開にまで復活したことになるが、その要因としては年金・医療費の負担軽減、工場閉鎖などのリストラの進展など借入金を462 億ドル圧縮し、財務指標が急激に改善したことにある。そしてアメリカ、中国での販売回復、さらには政治のリーダーシップ、加えて政府の指名で2009 年7 月に就任したウィッテカーCEO(2010 年9 月1 日、アカーソンCEO に交代)の強力なリーダーシップにあったと評価されている。アメリカ政府はGM のIPO に合わせて約3 億5855 万株の保有株式を売却し、その結果政府の出資比率は60.8%から36.9%に下がり、118 億ドル強の公的資金を回収することになった。GM の救済に政府が投じた公的資金は約500 億ドル、全額回収の道筋は今後の株価が左右するものの、まだ不透明感が強いという。再上場を果たしたGM だが環境対策車等に関する技術の空白、未だにピックアップトラックや中大型セダンなど過去の収益モデルから脱し切れていないなど、成長の持続に向けた課題は少なくないと言われている。  
17)久保鉄男、62 頁  
18)下川浩一、20 頁  
19)日本経済新聞朝刊、2009 年4 月1 日を参照  
20)車両購入時に車両価格からローン終了時(3 年から5 年)の残価設定価格を差し引いた金額を分割払いするローン。  
21)アメリカ市場で販売される小型トラック(Light Truck)とは、日本でイメージされるトラックとは全く異なり、日本で一般的にカテゴライズされるRV、ミニバン/ 多目的バン/MPV、オフロードカー/スポーツ・ユーティリティ・ビークルなどを含む小型多目的車のこと。  
22)久保鉄男、31 頁  
23)所有する住宅の正味価値(ホームエクイティ:住宅の市場価値から、ローンの残債など負債を差し引いた価値)を担保にし、この正味価値を融資限度にして組まれたローン。アメリカで個人がリフォーム費用や医療費、教育費などを調達する際に利用される。アメリカでは2006 年まで堅調だった不動産市場の支えもあって好景気の要因となるキャッシュフローを生み出していたとされる。低金利状態で不動産価値が上昇する局面において有効な資金調達方法である。アメリカの住宅バブル崩壊以降、サブプライム・ローンとほぼ同じ意味に使われている。  
24)日本経済新聞朝刊、2009 年3 月28 日を参照  
25)ちなみに、GM 崩壊の雇用・産業への影響は米自動車研究センター(Center for Automotive Researchの調査(2008 年10 月5 日)によると、GM とクライスラーの合計で14 万5000 人の従業員と68 万人2000 人の退職者とその家族が路頭に迷うことになると言える。仮にビッグ3 が破綻した場合の失業者数は関連業界を含めて250 万人になると推定されている。その内訳は、自動車メーカーが24 万人、自動車部品メーカーで80 万人、自動車業界以外の消費関連で140 万人である。この結果、政府の税収は1000 億ドル減の見込みと予想されている。さらに、民間の経済予測機関、HIS グローバル・インサイトのチーフ・エコノミストのNariman Behravesh は、GM が破綻すれば政府は1000 億ドル〜 2000 億ドルの歳出増を招き、失業率も破綻なしの場合の8.5%から9.5%に跳ね上がると述べている。  
26)Rattner、S. 前掲書、24 頁  
27)Rattner.S、 “The auto bailout: How we did it. October 21、 2009”  
28)Wagoner summed up GM’s problems as not of its making、 as he had at Treasury “Mr. Chairman、 I don’t agree with those who say we are not doing enough to position GM for success. What exposes us to failure now is not our product line up、 is not our business plan、 and is not our employees and their willingness to work hard. It is not our long term strategy. What exposes us to failure now is the global finance crisis、 which has severely restricted credit availability and reduced industry sales to the lowest per-capita level since World War U”.Rattner、S. 前掲書、26-27 頁  
29)The gaps we found reflected the two companies’ weakness and personalities. Lacking robust selection of new designs and unable to meet tightening fuel economy standards without appealing small. cars、 Chrysler pinned its hopes on a positive alliance with the Italian automaker Fiat. GM still relied heavily on a imaginary rebound in demand. 同上、64-65 頁  
30)The White House was ready with a concise statement supporting the bailout. It emphasized the need for shared sacrifice: “Going forward more will be required from everyone involved- creditors、suppliers、 dealers、 labor and auto executives themselves to ensure the validity of these companies. Rattner、S. 前掲書.64 頁  
31)久保鉄男(2009)100 頁  
32)Corporate Automobile Fuel Efficiency の略。アメリカ内で販売される乗用車とトラックについて燃費基準を定めたもの。自動車メーカーはそれぞれ自社製の平均燃費を算出し、基準を達成できなければ罰金が科される。現行基準は07 年モデルの乗用車が1 ガロン当たり27.5 マイル(1 リットル当たり約11.7キロ)。70 年代の石油危機をきっかけに、78 年モデルから導入された。米議会ではたびたび規制強化が検討されてきたが、ビッグ3 など自動車業界が反発し、乗用車の基準は90 年モデル以降、据え置かれている。改正が実現すれば乗用車では約20 年ぶりになる。朝日新聞朝刊、2007 年9 月22 日参照。  
33)久保鉄男(2009)、104 頁  
34)アメリカの包括通商・競争力強化法(1998 年成立)に盛り込まれている対外との一つ。通商法301 条を強化したもので、不公正な貿易・慣行・障壁を有すると思われる国に対し、アメリカ通商代表部(USTR)が交渉しても3 年以内に改められない場合には報復措置を取るという条項。不公正な貿易慣行を持つ国をはっきりさせ、交渉期限も定めて、USTR に積極的に交渉させるのが目的。関税貿易一般協定(GATT)精神に反するルールとして諸外国から批判を浴び、90 年には日本は対象除外となった。しかし、米国内の保護主義圧力の高まりに伴い、クリントン政権は94 年3 月、同条項を復活。97 年に期限切れになった後、99 年春にも再復活させた。  
35)8500 ポンド以下の車両全てに対して年式、車両毎に米国・カナダ製部品比率等の内容を含んだラベルの添付の義務づけを求める法案。  
36)工場の閉鎖等でレイオフされたUAW の組合員に賃金や手当ての大半を支払う制度。本来の目的は、レイオフされた労働者に対する再教育と再就職の援助であったが、経営不振により人員削減や工場閉鎖が相次ぐGM では、ジョブ・バンクに属する組合員に十分な職を供給できず、結果として自宅待機者に多額の人件費を支払わざるを得ない状況にある。  
37)アメリカにおける製造業の時間給の平均は約15.5 ドル(2004 年、アメリカ労働統計局)。一方、UAWの組合員の平均時給は27 ドルである。また年金や医療保険の会社負担分も含めて時給換算すると67ドル相当となる。  
38)Rattner S. 前掲URL.(検索日:2010 年7 月5 日)4 頁  
39)下川浩一(2009)、45 頁  
40)前掲書、18 頁  
41)久保鉄男〈2009〉、140 頁  
42)“Everyone knew Detroit’s reputation for insular、 slow-moving cultures. Even by that low standard、 I was shocked by the stunningly poor management that we found、 particularly at GM、 where we encountered、 among other things、 perhaps the weakest finance operation any of us had ever seen in a major company. Certainly Rick and his team seemed to believe that virtually all of their problems could be laid at the feet of some combination of the financial crisis、 oil prices、 the yen-dollar exchange rates、 and the UAW. Equally important、 GM’s February viability plan was more “business as usual” and not the aggressive new approach that we felt was essential. Rattner S. 前掲URL.  
43)野中郁次郎「経済教室」、日本経済新聞朝刊、2009 年5 月20 日を参照  
44)シュムペーター(1977)、222 頁