心の旅 大阪なおみ

心の内

心の旅

早く元気になってください
 


5/95/275/285/29・・・5/30・・・5/316/16/26/3・・・
 
 
 
 
 
 
●大坂なおみと母との絆、テニスの原点。「いつだって私を笑わせてくれる」 5/9
"なおみ"の名は、「英語でもフランス語でも通用するし、とくに日本では完璧な日本の名前として、馴染みやすく呼びやすいから」との理由でつけたと、母の環(たまき)さんから聞いたことがある。
父親はフランス語を母語とするアメリカ人で、生誕地は大阪市。生まれながらにして色彩豊かなバックグラウンドを背負った我が子が、いずれの国からも親しまれるようにとの母の願いが、その名には込められていた。
かつて「大阪で生まれた人は、みんなオオサカさんになるのよ」のジョークで笑いを誘ったなおみだが、3歳でアメリカに移った彼女には、誕生地で過ごした記憶はほとんどない。
それでも母が撮影した写真には、大阪市の公営テニスコートで、ラケットを手に姉とたわむれるなおみの姿が多く写っているという。彼女のテニスの原点が、母の苗字と同じ名の町にあるのは間違いない。
なおみにとって、テニスにまつわる最も古い記憶はニューヨークでの出来事。一緒に練習していた子の顔にボールが当たり、「怖くてずっと顔の前にラケットを構えていた」という、いささかトラウマチックなものだった。
そして、テニスコートの記憶には、常に父親と姉のまりがいる。だがそこに、母がいることは稀だった。幼いなおみの記憶に強く焼きつく母は、早朝に起き、働きに出かける姿だ。
「母が、私たちのために払ってくれた犠牲のすべてを覚えている。母は、私の試合を見に来ることすらできなかった。朝4時に起きて、バスや電車に乗って働きに行っていたから」
だから、いつの日か恩返しがしたいの----。
テニスプレーヤーとしての成功を手にした今、彼女が何より望むのは、母の献身に報いることだ。
一方で母のほうも、"ファミリーテニス"の場で最も弱い立場に身を置いた、次女の心境をおもんばかった。
「なおみにとっては、タフな環境だったと思いますよ。自分が一番弱い状態が、毎日続いていたんですから。お姉ちゃんには勝てない。お父さんには怒られる。家に帰れば、ホームワークもしなくてはいけない。子どもなりに、厳しい生活だったと思います」
だから嫌になって、途中であきらめちゃう子たちもいる。そういう子どももいっぱい見てきた......と環さんは続けた。
テニスコートでは、年長で先に上達する姉のほうに、どうしても父親の目は行きがちだろう。だからこそ母は、妹の心中に注意を向けたのかもしれない。
「お姉ちゃんは負けると時々、すごく落ち込んでいたの。そんな時、お父さんは『そんなにシリアスになることはないよ。単なるテニスじゃないか』って言った。そして、お母さんはどんな時にも、私たちをハッピーな気持ちにしてくれる。『そうよ、それでこそ私の娘よ!』ってね。お母さんはいつでも、私たちがやるべきことをやるかぎり、全力でサポートしてくれる」
幼き日から変わらぬ母の姿勢を、なおみはそう回想する。
ちなみに、「お母さんが方向性を決め、お父さんが細かいことを教えてくれるというのが、私の家族のルール」だと、大坂家の次女は規定した。
母が決めた「方向性」を指標としたなおみは、ジュニア大会には出ることなく、14歳から姉とともにプロサーキットを転戦しはじめた。
今でも「人生で最もうれしい勝利」と述懐する、姉からの勝利を下部大会で手にしたのは16歳の時。そのわずか半年後には、カリフォルニア開催のWTAツアー大会で、当時世界19位のサム・ストーサー(オーストラリア)を破り、一気に「次代の旗手候補」と注目されるまでになる。
「大阪で生まれた人は、みんなオオサカさんになるのよ」とジョークを飛ばしたのは、この勝利後の会見でのこと。大坂のユーモラスな性格と同時に、当時16歳の少女がいかにアメリカのテニス関係者の間でも無名だったかを物語るエピソードだ。
それから4年後----。彼女は、幼少期からの「USオープンの決勝で、憧れのセリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)を破り優勝する」という夢を、自らの手で実現する。
勝利を決めたなおみが駆け寄るファミリーボックスには、子どもの頃は「試合を見に来られなかった」母の姿があった。母親は左手で目頭を押さえて涙をぬぐい、右手でなおみの肩を抱く。抱擁の中で小さな子どものように泣きじゃくるなおみの頬を、母は左手で優しくなでた。
そのニューヨークでの初戴冠から、2年半が経った。大坂のグランドスラムコレクションは3つに増えたが、初優勝のトロフィーは母親の手によって、鍵のかかったケースに大事にしまわれているという。
「だから、そこにトロフィーがあるなんて誰も気づかないの」と娘は苦笑いをこぼすが、鍵のかかったケースに込められた母の想いを、なおみは誰よりも知っているだろう。
コロナ禍のなかで再開されたツアーでは、母親が試合会場に来ることは再び困難になった。
それでも、なおみの心をほぐしてくれるのは、母なのは間違いないだろう。今年2月の全豪オープンでも準決勝での勝利後に母親と電話し、その内容の一部を次のように会見で明かした。
「お母さんったら、おかしいのよ。試合後に電話するといつも、『もっとボールを相手のコートに入れなさい』って言うの。お母さんにとって、ボールのスピードとかそんなことは関係ないみたい」
母との会話を思い出したか、彼女の口角から自然と笑みがこぼれ落ちる。きっと母親と話している時、彼女は『世界最高のテニスプレーヤー』でも『新世代のオピニオンリーダー』でもなく、公営コートでボールを追っていた、子どもの頃に戻れるのだろう。
「お母さんは、いつだって私を笑わせてくれるの」
そう言い目じりを下げる笑顔は、欧米風に呼ぶ「ナオーミ」ではなく、日本でも馴染みやすく呼びやすい「なおみちゃん」そのものだった。
 
 
●テニス 大坂なおみ 全仏オープンで会見応じない意向  5/27
テニスの大坂なおみ選手が今月開幕する全仏オープン期間中、すべての記者会見に応じない意向を自身のツイッターで明らかにしました。会見は「アスリートの精神状態のことを考慮していない」としています。
大坂選手は自身のツイッターに英語で投稿し、その中で「私は試合で負けたあと、会見場で気落ちしたアスリートの映像をたくさん見てきた」としています。
そして「私は人々がアスリートの精神状態のことを考慮していないと、しばしば感じてきた。以前に何度も尋ねられた質問を受けたり、私たちの心に疑念をもたらすような質問をされたりしていて、私はただ私を疑う人々に自分をさらすつもりはない」として、今月30日に開幕する四大大会、全仏オープンの期間中、すべての記者会見に応じない意向を明らかにしました。
大坂選手は「トーナメントに対する個人的な不満があるわけではなく、若かったころから、私にインタビューしてきた数人のジャーナリストがいるので、大半と友好的な関係を築いている」ともコメントしています。
テニスのツアー大会では試合の勝ち負けに関係なく、要請が出ても会見に参加しない選手は罰金が科せられる決まりになっていて、大坂選手は「アスリートの精神状態を無視し続けるのであれば、ただ笑ってしまいます。ともかくこれで支払う多額の罰金がメンタルヘルスの慈善団体に向かうことを願っています」とつづっています。
大坂選手の投稿全文
「皆さんお元気であることを願っています。私は全仏オープン(ローランギャロス)で一切取材に応じないつもりであることを伝えるために書いています。
私は人々がアスリートの精神状態のことを 考慮していないと、しばしば感じてきました。
これは記者会見を見たり、会見に出たりするときにいつも実感することです。私たちは会見場に座って、以前に何度も尋ねられた質問を受けたり、私たちの心に疑念をもたらすような質問をされたりしていて、私はただ私を疑う人々に自分をさらすつもりはないのです。
私は試合で負けたあと、会見場で気落ちしたアスリートの映像をたくさん見てきましたし、皆さんもご覧になっているはずです。
私は状況全体が、落ち込んでいる人を傷つけていると信じていて、そうなっている根拠はわかりません。私が記者会見に応じないのはトーナメントに対する個人的な不満があるわけではありませんし、私が若かったころから、私にインタビューしてきた数人のジャーナリストがいるので、大半と友好的な関係を築いています。
しかし運営組織が『記者会見をするか、さもなくば罰金だ』と言い続けることができると考え、協力の要であるアスリートの精神状態を無視し続けるのであれば、ただ笑ってしまいます。ともかくこれで支払う多額の罰金がメンタルヘルスの慈善団体に向かうことを願っています」
投稿に大きな反響 元選手からもコメント
大坂なおみ選手の投稿はこれまでに引用ツイートが3600件を超え、1700件以上のコメントが集まるなど大きな反響を呼んでいます。
このうち、みずからの意見を寄せた人の中には元テニス選手なども含まれていて、大坂選手の主張をめぐってさまざまな声があがっています。
オーストラリア出身の元プロテニス選手で2000年の全仏オープンの女子ダブルスと混合ダブルスで準優勝しているレネ・スタブスさんは「私も現役時代に同じ思いを持っていました。今回の大坂選手の行動は、メディアが選手の声に耳を傾け、多くの選手がどれほど大変な思いをしているのかを理解して、よりよいものにするためのすばらしいきっかけにできる」とコメントして賛意を示しました。
一方で、アメリカ出身の元プロテニス選手でソウルオリンピック、女子ダブルスの金メダリスト、ジーナ・ガリソンさんは「大坂選手の言うことは一理あります。しかし、2つの側面があります。1つは、彼女がほとんどの選手が払えない額の罰金を支払うことができるということです。一方でスポーツにおけるメンタルヘルスへの意識を高めたことは支持します。すべての立場の人が集まって、今すぐ解決策を考えるべきです」と投稿しています。
 
 
●大坂なおみ、年収60億円で長者番付「女子アスリート」世界一・・・ 5/28
2021年の全豪オープンで2年ぶり2度めの優勝を果たし、WTA世界ランキング2位(5月25日現在)の大阪なおみ(23)が、世界の女子スポーツ選手のトップに躍り出た。
スポーツ経済を扱うアメリカのメディア「スポーティコ」は、5月25日に2021年度版のスポーツ選手長者番付を発表。大坂なおみは年収5520万ドル、日本円にして約60億円と女子選手最高額となり、全体でも15位にランクインした。同じテニスの錦織圭は、2660万ドル(約29億円)で88位だった。
大坂の年収の内訳は、賞金が約5億7000万円で、スポンサーとの契約金などが約54億円となっており、いかにコマーシャルやスポンサーからの収入が多いかがわかる。ちなみに、2020年の同時期に発表された年収は約40億円。つまり1年間でプラス20億円、単純計算で1.5倍となったわけだ。ではなぜ、大坂はそんなに収入を増やすことができたのか?
「1年間の試合における賞金額そのものは、前回とほとんど変わらない金額です。その賞金額だけでも日本の女子アスリートではダントツで、全英オープンを制したゴルフの渋野日向子でも、さすがにそこまでは届いていません。大坂の収入増のほとんどは、いわゆるスポンサー料金によるものです」と語るのは、スポーツマネージメントに詳しい関係者。やはりスポンサーからの収入がほとんどを占めるわけだ。
メジャーリーグやNBA、欧州リーグのサッカーなど、世界中で多くの人気選手が活躍しているが、テニスプレイヤーは “稼げるアスリート” として、複数の選手が上位にランクインしている。その理由は?
「テニスの試合は相手と2人だけですよね。それは、テレビ中継で何時間も画面を独占できるというアドバンテージになります。いい例が腕時計です。テニスプレイヤーはウエアのほかに、ラケットを持つ手元がよく映るので、本来は試合に必要ないはずの腕時計をしています。
同じようにアピールができるという理由で、よく見るとゴルフプレイヤーも腕時計をしていますよね。試合中継中に手元が映ると、その商品にも注目度が高まることから、スポンサーが群がるんです」(スポンサーに詳しい大手広告代理店関係者)
では、大坂のスポンサー料の内訳は?
「彼女の場合、いちばんの “得意先” はナイキです。2019年、それまで契約していたアディダスから、電撃的にナイキと契約しました。アディダスの年間契約が9.5億円でしたので、ナイキはそれ以上です。ちなみにアメリカで育った大坂にとって、ナイキは憧れだったんですね。
さらに基本契約のほかに、たとえば優勝した際のボーナスもあります。
腕時計でいえば、初めて全米オープンを制覇したとき(2018年)は、CITIZENの『エコドライブ』のイエローベルトを愛用していて、その時計に人気が殺到しましたが、2021年に入って世界ブランドのタグ・ホイヤーに契約を変更しています。
それだけで5億円以上でしょう。この2つのスポンサーだけで、おそらく20億円にはなろうかと。
ほかの契約スポンサーも横並びとなれば、賞金以外で50億円ということになるのではないでしょうか」(前出・大手広告代理店関係者)
これだけ大手企業がスポンサーに名乗りをあげるということは、彼女にそれだけの “商品価値” があるということだろうか?
「大坂の場合は、全米で論議が沸騰している『Black Lives Matter』の代弁者として、社会運動の一翼を担うアイコンになっています。ナイキを始めとした世界企業は、このムーブメントに賛同していますので、彼女ににとって、この社会運動が年収アップの “上げ潮” になっているんです。もちろんその影響力は、本業であるテニスが強くなければ成立しないんですけどね」(同前)
テニスの実力だけでなく、その発言やファッションにも大きな影響力を持つ大坂。テニス界の新しいミューズとして、全仏オープンでの活躍が期待される。
 
 
●和田アキ子 会見拒否に「我慢して短い時間であってもね、やっぱり」 5/29
歌手でタレントの和田アキ子(71)が29日、パーソナリティーを務めるニッポン放送「ゴッドアフタヌーン アッコのいいかげんに1000回」(土曜前11・00)で、女子テニス世界ランキング2位の大坂なおみ(23=日清食品)が30日からフランス・パリで開幕する四大大会、全仏オープンで記者会見に応じない意向を明らかにしたことにコメントした。
和田は「ちょっとビックリしましたけど…」としたうえで、「うちら芸能人でも何かイベントがあると(報道陣は)必ず同じ質問をせなあかんというのは、確かにありますよね」と言及。過去に経験した記者会見を振り返りつつ、「レコーディングでも終わって会見となると、その時に話題になっている人のことを必ず聞かれるんですよ。ハッピーな話題なら良いですよ。そんなんじゃない時もあって、何か意見を言うとそこだけを生かして(使われて)、ご意見番とか言われてもさ」と回顧した。
「大阪なおみさんは全文で気持ちをおっしゃっているけど。でも…私は言うてなんぼ、書いてもらってなんぼ、というのがあるし」と和田。男子テニスの錦織圭が28日にパリで記者会見し、大坂の会見拒否について「罰金を払ってでも(拒否)しなければいけないことだと判断したのなら尊重すべき」とした一方で、「プロモーションの一環として選手がやらなければいけないことの一つ」とコメントしたことを挙げて、「錦織圭選手のコメント良いと思う。賛否両論あると思いますけど、私はこの通りだと思います。我慢して短い時間であってもね、やっぱり」と私見を述べていた。
●大坂なおみの不意打ちの声明に震撼。全仏OP関係者の反応は 5/29
「今回のローランギャロスの間、一切の記者会見を行なわないと伝えるために、この文章を書いています」
大会開幕を4日後に控えた、現地時間5月26日の深夜近く。
大坂なおみがソーシャルメディアで発信したこの声明は、ローランギャロス(全仏オープン)の関係者たちを慌てふためかせた。
声明文の中で彼女は、「会見拒否は、大会そのものへの個人的感情から行なうわけではないし、私を若いころから取材している数人のジャーナリストとは無関係のものです。現に、ほとんどの記者とは良好な関係を築いています」と断ったうえで、次のように記している。
「人々は、アスリートの精神状態に無頓着すぎると、ほかの選手の会見を見たり、自分が会見を行なうなかで常々感じてきました」
「私はこれまで、多くのアスリートが敗戦後の会見室で打ちのめされる様を見てきたし、多くの人も同様だと思います。これは、打ちひしがれている人を足蹴にするような行為であり、それが許される道理が見当たりません」
それらが、大坂が記した会見拒否の背景だった。
一夜明けた5月27日。
大会の会場で、FFT(フランステニス協会)やITF(国際テニス連盟)、WTA(女子テニス協会)の広報やメディア担当者にこの件について尋ねても、返ってくるのはいずれも「今朝起きて、彼女のソーシャルメディアを見て慌てたところだ」との答え。どうやら大坂は、大会関係者たちにも事前に伝えることなく、声明を出したようだ。
「クレー(赤土)で勝つには、慣れが何より必要だ」
それは、大坂が全仏オープンに挑むにあたり、幾度も繰り返してきた言葉である。赤土のコートは大坂が得意とするハードコートとは異なり、イレギュラーバウンドが起きやすい。ボールが高く弾むため、ウイナーが決まりにくく、ラリーも長引きがちだ。
そして北米育ちの大坂には、欧州の主戦場であるクレーでの試合経験が圧倒的に少ない。自分のなかに確立したセオリーが通じないため、いらだちや焦りを覚えもする。全仏の2週間前に行なわれたローマ大会では初戦で敗れ、「認めたくはないけれど、まだクレーで心地よさを感じることができない」とも認めていた。
フィジカル、戦術、そして精神面......。クレーで自分に足りないものは何かと問われた時、彼女は迷わず「精神面」だと答えている。自分を信じ、そして「自分に厳しくしすぎないこと」......そのような心の在りようが、大切なのだとも言った。
その大坂が、今回の全仏開幕前に「健全な精神状態を保つことが難しい」ことを理由に、会見には出ないと明言した。
本人からの詳細な説明もない現時点では、この宣言の真意を推し測るのは難しい。ただ、この言葉を額面どおりに......つまり、自身の心の安寧を欲していたからと受け止めるのは、いささか無理があるだろう。なぜなら一連の行為により、彼女の周囲はいつも以上に騒がしくなっているからだ。
全仏オープン大会ディレクターのジ・フォルジは、『レキップ』紙の取材に対し「現時点(27日)では、彼女と話し合いの場を持っていない」と断わったうえで、次のように応じている。
「とても驚いている。なんの予兆もなく、不意打ちで起きたことだ。彼女の今回の行為を、我々は認めるわけにはいかない。経済的な観点からも、みんなが協力しあう必要がある。Covidの時代ではなおさらだ。この問題をどう扱っていくか、検討しているところである」
また、FFT会長のジレ・モレトンも、同紙を通じて私見を公にした。
「彼女の行為は、とんでもない過ちだ。我々はルールと法律にのっとり、彼女に罰金を課すだろう。彼女はスポーツを、そしてテニスを傷つけた。それが最大の問題点だ」
フォルジやモレトンが示唆したように、大会サイドは大坂に説明を求め、そのうえで協議を進めることになる。地元メディアも当面は、この話題を報じていくだろう。喧騒と重圧が彼女を取り巻くだろうが、それでもなお、彼女には提起したい問題や貫くべき信念があるようだ。
まだ3回戦より上に進めていない大坂のローランギャロスでのプレーについて、コーチのウィム・フィセッテは「動きやパワーに戦術など、なおみはクレーで勝つ要素を十分持っている」と明言する。
大坂自身も以前に、「クレーだからといって私が突然、守備的な選手になれるわけでも、ネットの1メートル上を越していくボールを打つようになるわけでもない。攻撃力が自分の持ち味なのだから、それを生かしていく」とのビジョンを口にした。
プレー面で、やるべきことは見えている。カードもすでに、手もとにある。
あとは、自ら一石を投じたこの喧騒のなかで、外界と真摯に対峙し、内界に生じた熱をモチベーションに昇華していくだけだ。  
 
 
●テニス全仏 大坂なおみ 1回戦はストレート勝ち 5/30
テニスの四大大会の1つ、全仏オープンが30日、パリで開幕し、世界ランキング2位の大坂なおみ選手が、女子シングルス1回戦で、ルーマニアの選手にストレートで勝って、2回戦に進みました。ことしの全仏オープンは、新型コロナウイルスの影響で1週間延期され、30日に開幕しました。
3大会連続の四大大会優勝を目指す大坂選手は、初日の女子シングルス1回戦で、世界63位でルーマニアのパトリチア マリア・ツィグ選手と対戦しました。
大坂選手は第1セットの第1ゲームで、いきなり相手にブレークポイントを握られましたが、得意のサーブでピンチをしのぐと、直後のゲームで逆に相手のサービスゲームをブレークし、その後はラリーで試合を優位に進めて6-4で取りました。第2セットは相手のスライスショットに苦戦し、タイブレークまでもつれましたが、力強いショットで要所を締めて7-6で取って、セットカウント2対0のストレート勝ちで、2回戦に進みました。
試合後インタビューに応じ「勝てて本当にうれしい」
大会前に全仏オープンの期間中、記者会見に応じない意向を示していた大坂選手は試合後のコート上でのインタビューに応じ「勝てて本当にうれしい。クレーコートで試合を続けていく中でプレーがよくなっていくことを願っている」と話していました。

テニスの全仏オープンが30日開幕し、第2シードの大坂なおみ(23)が1回戦で勝利した。試合後、事前の宣言どおり記者会見には臨まなかったため、主催者側は大坂に罰金を科すとともに、引き続き会見に応じない場合は4大大会(グランドスラム)への出場を認めない可能性もあると警告した。
女子世界ランキング2位の大坂は、同63位のパトリチア・マリア・ツィグ(ルーマニア)を6−4、7−6のストレートで下した。
大坂は26日、メンタルヘルス(心の健康)を守りたいとして、全仏オープンでは記者会見に出席しないと表明していた。
この日は試合後、慣例となっているコート上での勝者インタビューに応じた。大坂は「クレーでの動きを改善中だ。これから試合を重ねていけば、よくなっていくと思う」と述べた。
しかし、会見場での取材は受けなかったため、1万5000ドル(約165万円)の罰金が科された。
4大大会の規則では、選手が規定のメディア取材に応じない場合、2万ドル(約220万円)の罰金が科されうる。女子テニス協会(WTA)は、選手には「テニスとファンに対する責任がある」とし、大会中にメディアと話をするよう求めている。  
●杉村太蔵 会見拒否表明に理解 「失礼な記者いる」 太田光も 5/30
元衆議院議員でタレントの杉村太蔵(41)が30日、TBS系「サンデー・ジャポン」に出演。女子テニスの大坂なおみ選手が、全仏オープンで記者会見を拒否することを表明したことについて、「あまりに失礼な記者もいる」と理解を示した。
杉村は1997年の国体において少年ダブルスで優勝しているテニスプレーヤー。その立場で見解を問われ、「プロだから会見をした方がいいというのは一般論。大坂選手の場合は、政治的や社会的な発言もあったり、プライベートなことでも注目されることもあって、およそテニスプレーヤーとしての質問ではない、彼女に対してあまりにも失礼な記者もいます。大会関係者ももうちょっと配慮してあげた方がいいんじゃないかなと思う」と答えた。
MCの爆笑問題・太田光も「彼女は心の健康を害する(と言っている)ということは、彼女にとって相当深刻なダメージがあるということ」も賛同した。
大坂選手は27日、ツイッターで「記者会見でアスリートの心の健康が無視されていると感じてきた」「私を疑う人たちに自分をさらしたくない」として大会期間中の会見を行わないことを表明している。
グランドスラムのルールブックでは、「選手はケガや身体的な理由がない限り、勝敗に関係なく試合後30分以内に会見を行わなくてはならない」と決まっており、違反した場合は最大2万ドル(約220万円)の罰金が科せられる。
 
 
●大坂なおみ選手会見拒否で罰金 四大大会追放の可能性も… 5/31
世界ランキング2位の大坂なおみ選手が、テニスの四大大会の1つ、全仏オープンの1回戦に登場。大坂選手は5月27日、自身のSNSで「アスリートの心の健康状態が無視されている」などとして、試合後の記者会見に応じないことを表明した。
会見拒否で罰金 四大大会出場停止の可能性も
全仏オープンの1回戦で大坂なおみ選手は、苦手のクレーコートで貫禄のストレート勝ち。
試合後には「試合を重ねるごとにプレーが良くなっていくことを願っています」とコート上でのインタビューには応じたものの、試合後に義務付けられている記者会見には宣言通り出席しなかった。
これを受け、四大大会の主催者側は声明を発表。
四体大会の主催者: 彼女に1万5000ドル(約165万円)の罰金を科すことを決定いたしました。
事前に大坂選手に考えを改めるよう文書で求めたものの、受け入れられなかったという主催者側。今後も会見を拒否し続ければ、全仏の失格処分や四大大会の出場停止処分を科す可能性もあると警告した。
これに対し、大坂選手は自身のツイッターに「怒りは理解不足から来る。変化は受け入れづらいものだ」とつづった。さらにInstagramには、2019年に亡くなった黒人ラッパーのジャケット写真を掲載。そのタイトルは「さよなら せいせいする」。
他の選手たちからさまざまな声
大会前、大坂選手の会見拒否について質問された錦織圭選手。
錦織圭選手(31): 嫌な質問を聞かれることは僕よりも断然多いと思うので、理解はできたりはしますけど、罰金を払ってでもしなきゃいけないことと彼女が判断したなら、それを尊重すべきこと。
また、全仏で13回という最多優勝記録を持つラファエル・ナダル選手は、一定の理解を示しながらもこう述べた。
ラファエル・ナダル選手:ニュースを発信する人たちがいなければ、選手たちは今のような存在ではないだろう。
さらに、ノバク・ジョコビッチ選手も「会見に応じることもテニスの一部」との考えを示した。
2019年ウィンブルドンの初戦で敗退した際には、「もう泣きそう」と会見を切り上げた大坂選手。
ダブルスでの四大大会優勝経験もある杉山愛さんの見方はこうだ。
四大大会優勝を経験 杉山愛さん: 大坂選手の場合は、真面目で繊細で記者の質問も真摯に答えようとするからこそ、これだけ心が傷つけられてしまうことがあるんだと思う。本当に“嫌な質問”を投げかけられたときは、ノーコメントでも良いと思う。
杉山愛さんは、会見に出席した上で質問に答えない選択肢もあるとして、今後「主催者側との話し合いに応じてほしい」と話す。
四体大会優勝を経験 杉山愛さん:お金(罰金)は関係なかったんじゃないかと思います。それよりも自分のメンタルヘルスをテーマに、今回は発信していたと思う。(主催者側と)対立していくことが何のプラスにもならないので、良い方向に行ってもらいたいなと強く望みます。
大坂選手の2回戦は6月2日以降に予定されている。
これを機会に選手とメディアの関係見直しを
加藤綾子キャスター: 杉山さんがおっしゃっていることが全てだなと私も思ったのですが、賛否いろいろな意見があると思うのですけれども、私は単なるわがままとは思わなくて、記者も「何を聞いてもいい」というような姿勢というのは改めるべきだと思いますし、杉山さんがおっしゃっていたように、嫌な質問にはノーコメントというのもこれからはあっていいと思います。
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏: 取材する側からすると、取材に応じてもらえないというのは困ったなという感じがするんです。でも生身の人間ですからね。繊細な気持ちがあって嫌な質問には答えたくないという時もあると思うんですよ。
加藤綾子キャスター: 特に負けた後とかね。
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:ただ考えなきゃいけないのは、大坂選手がこういう形で取材に応じないということになったことを見ていて、例えば政治家が「俺たちもそうなんだ」ということになってくると、ちょっと話は違う。それはまったく別な話で、政治家も確かに1人の人間ですけど、我々取材する側はいろんな質問をして正さなきゃいけない。追及しなきゃいけない。それが仕事なのでそこを混同されると困る。
加藤綾子キャスター:スポーツ選手とはまったく別物のもの。しっかりと分けないといけないですね。
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:でもこれを機会にして、大坂選手が一石を投じたわけだから、取材する側・される側は信頼関係を保ちながら、「どういうふうにこれから先、自分たちは向き合っていけばいいか」ということを徹底的に議論してほしい。
加藤綾子キャスター: 私もそう思いますね。対立で終わってしまったら本当に残念だなと思うので、選手を守る体制も必要だと思いますし、一方で、スポンサーの方含めていろんな方が関わって成り立っているものだと思いますので、選手とメディアの新しい関係を築くためにも、まずは話し合いをしてもらいたいなと思います。
●橋下徹氏、大坂なおみ会見拒否問題で見解 5/31
元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏が31日放送のフジテレビ系「めざまし8」(月〜金曜・午前8時)にリモートで生出演した。
番組では、テニス全仏オープンの女子シングルスで大坂なおみ=日清食品=が試合後の会見を拒否。主催者側は罰金1万5000ドル(約165万円)を科すことを決め、今後も会見拒否を続ける場合、開催中の全仏オープンで失格処分、今後の4大大会で出場停止処分が科される可能性も通告したことを報じた。
この問題に橋下氏は「メディア側が意識を変えないといけない。これまでメディア側は特権意識があったことは間違いないと思う」と指摘。
その上で「二つに分けないといけないのは、公人。政治家に対してはメディアはどんどん嫌な質問をやり続けなければいけません。甘いことをやってはダメで、人格攻撃にならない範囲であればきついことをやっていく」とした。民間人については「あくまで契約なんです。お互い対等で、お互いのルールの範囲で取材をするというのは民間同士の関係」とし、「選手の方もメリットがあればやればいい、嫌な場合は拒絶できるんです」と見解を示した。
そして「今回、大坂さんが拒絶した場合には、試合出場停止というデメリットも併せて考えなければいけない」としつつ、「ただ、大会主催者の方も一方的に出場停止には出来ないと思います。やはりルールをきちんと設定したのか。取材対象者とメディアが良好な会見を行うようようなルールを設定しのかどうかは主催者の責任。主催者がそこの責任を果たさないのに、大坂さんに一方的に出場停止ということをやるのは、これからの時代は通用しないですよね」と意見を述べた。  
●大坂なおみの姉・まりさんが“会見ボイコット”を説明 5/31
女子テニス大坂なおみ(日清食品)の姉で元テニスプレーヤーの大坂まりさんが31日、自身のSNSを更新。記者会見をボイコットをした大坂について記した。すでに投稿は削除されているが、オーストラリアの「nine.com.au」など複数の海外メディアが報じた。
まりさんは大会前に家族の1人が大坂に対して「クレーが苦手だ」と話したこと、さらに記者会見の度に「クレーで好成績を収めていない」という趣旨の質問を受けたことを記し「彼女自身がクレーは苦手だと信じてしまった」と大坂の心情を説明した。
その上で「彼女の解決策はすべてを遮断することだった。彼女に疑念を抱くような人には話しかけられたくなかった」と記した。
その後、まりさんは投稿を削除。「私は失敗しました」「多くの人が『彼女は批判を聞きたくない』と思ってしまった」「状況を悪化させたかもしれない」などと記している。
大坂は大会前に自身のSNSで全仏オープンにおいてすべての記者会見を拒否することを表明。30日は初戦を突破し、コート上のインタビューには応じたが、記者会見については宣言通りに拒否した。
全仏オープンの主催者は選手に義務づけられている記者会見を拒否した大坂に1万5000ドル(164万円)の罰金を科したことを発表している。
●「彼女は自分の心を守っている」大坂なおみの姉・まりが説明 5/31
現在開催中の「全仏オープンテニス」(5月30日〜6月13日/フランス:パリ/クレーコート/グランドスラム)で、試合後の会見拒否を表明した大坂なおみについて、姉で元選手の大坂まりさんが、ソーシャルメディア『Reddit』上に文章を投稿。妹がこのような決断に至った経緯を事細かに説明した。
「ナオミの考えに少しも共感してもらえないのはちょっと辛い」として始まる文章では、「ナオミは大会前に家族の誰かから『クレーが苦手』と言われたことを明かしていました。記者会見のたびに、彼女はクレーでの戦績が悪いと言われます。ローマの1回戦で負けた時、彼女は精神的に問題を抱えてしまいました」と、大坂のメンタルが不安定だったことを告白。さらに、大坂が自信を失っていたと続けた。
「彼女は完全に自信をなくし、みんなの発言や意見のせいで、自分自身でもクレーが苦手だと思い込んでしまったの。でもローランギャロス(全仏オープン)で優勝するためには、自分の力を信じなければならないことは彼女もわかっています。自分を信じること。これはアスリートがすべき最初のステップです」
そんな中で、クレーで少しでも良い戦いをするためにとった大坂の選択が「すべてを遮断して、彼女の心に疑念を抱かせるような人とは話さない」ことだったという。
また、姉のまり自身、記者会見で辛い思いをした経験があったようで、「私がWTAの試合で負けて、記者会見をしなければならなかったとき、不幸にもその場で泣き崩れてしまいました。そしてその姿が(ニュースの)ヘッドラインに並んだわ。恥ずかしいことだけど、それが選手に強いられていること。それに耐えられる人もいれば苦労する人もいます」と、当時を振り返った。
「彼女は自分の心を守っている。それが、彼女が“メンタルヘルスのために”と明かした理由です。今後大会側が反発して何かしらの危機に陥った場合、彼女がどうするのかはわかりませんが、私は妹の行動を全面的に支援します」
なお、この投稿は現在すでに削除されているが、海外ジャーナリストのベン・ローテンバーグ氏が大坂チームに確認したところによると、確かに大坂まり本人が投稿したものであったという。
●大坂なおみのコーチが語った会見拒否の真意=c影響力を使い問題提起 5/31
女子テニスの世界ランキング2位・大坂なおみ(23=日清食品)による4大大会「全仏オープン」の会見ボイコット問題で、コーチを務めるウィム・フィセッテ氏(41)が大坂の真意≠明かした。
大坂の行動が全世界で大きな波紋を呼ぶ中、ドイツ誌「シュピーゲル」が大坂のコーチであるフィセッテ氏の見解を掲載した。
「なおみは報道陣と話すことが重要であることを理解している」とした一方でこう続ける。「いくつかの根本的な問題を懸念している。米国では、スポーツ選手が報道機関とのやりとりにおいて、もっと自由を求めるという問題が今非常に話題になっている。彼らは、一日でも体調が優れない場合には罰を与えると脅かされたくないんだ」。会見は状況によって自由に拒否する権利があっていいという主張があるようだ。
そのうえで同氏は「なおみは自分のステータスを使って問題を特定し、物事を変える能力を持っている」と指摘。大坂が自らの影響力を使って問題提起し、スポーツ界における会見の義務を変えようとしているというわけだ。
大坂の狙い通りに会見ボイコットがスポーツ界に一石を投じることになるのか。今後の展開に注目が集まる。
●大坂なおみの「記者会見拒否」問題、スポーツ界からも賛否 5/31
女子プロテニスプレイヤー大坂なおみ選手の「記者会見拒否」問題が物議を醸しています。第2シードの大坂選手は、現地時間5月30日に開幕した全仏オープンで初戦を突破しましたが、試合後の記者会見を宣言通りに拒否。これに対してグランドスラム委員会側は声明を発表し、規約から罰金、失格、さらにはグランドスラム出場停止につながると大坂選手に警告しました。大坂選手の行動に対しては、スポーツ界からも声が上がっています。
大坂選手は1回戦で世界ランキング63位のパトリチアマリア・ツィグ(ルーマニア)と対戦し、ブレイクを1度許しただけで2-0のストレート勝ちと世界ランキング2位の貫録を見せつけました。
試合後のコート上インタビューには応じたものの、その後の記者会見は宣言通り拒否。5月27日には自身のTwitterで「これまで何度もアスリートの心の健康状態が無視されていると感じていた。何度も同じような質問をされ、疑念を抱く質問も多く、自分を疑うような人の前で話せない」と主張し、30日に開幕した全仏オープンの記者会見に応じない意向を示していました。記者会見を拒否したことで、グランドスラム委員会は大坂選手に1万5000ドル(約165万円)の罰金を科すことに。
これに大坂選手がSNSで反発。31日のTwitterでは「anger is a lack of understanding. change makes people uncomfortable.(怒りは理解の欠如です。変化は人々を不快にさせる)」とコメントし、Instagramストーリーズでは「good bye & Good riddance」(さよなら、せいせいする)と表記されたジャケット写真を掲載しています。
一連の騒動に対して、スポーツ界からもコメントが寄せられています。大坂選手と同じく全仏オープンに出場中の錦織圭選手は記者会見で「理解はできるが、大会のプロモーションの一環として選手がやらなければいけないことの一つだと思う。彼女が本当に(心を)病んでいて、罰金を払ってでも(拒否)しなければいけないことだと判断したのなら尊重すべき」と立場を強調しながらも、大坂選手の体調にも気遣いを見せました。
元テニスプレイヤーの杉山愛さんは、31日放送の日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」にVTR出演。「テニス選手は小さなことからプレスと付き合うことが当たり前になっているので、それを拒否や受け入れないという発想にはびっくりしました。(敗戦後の記者会見について)普通の精神状態ではないので、タフな質問が飛んでくると傷つけられたり。大坂選手は今までの会見でも苦労している部分があるだろうなと思っていました。正直で繊細ですし、真摯(しんし)に記者の質問に答えようという気持ちがあるので、余計つらいです」と話しました。
また、ラグビーワールドカップ2019日本代表SHの流大選手(サントリー)は31日に自身のTwitterで、チームでキャプテンの経験を引き合いに「気持ちはすごく理解できる。知名度の高さやルールがあるにしろアスリートである前に1人の人間。規模は違うにしろキャプテンの時、記者会見やメディア対応、イベントへの参加など正直ストレスに感じることもたくさんあった。アスリートとしての責任もあるし、ルールを遵守するのは大事だから僕自身もしっかり対応してきました。こういう出来事によって選手個人に誹謗中傷などが寄せられることがないように願っています」とつづっています。  
 
 
●大坂なおみの「うつ状態」告白 全仏棄権、東京五輪への影響は 6/1
女子テニスの大坂なおみ選手(23)=日清食品=が5月31日に全仏オープンの棄権と、うつ状態にあることを公表した。関係者によると、金メダルが期待される東京オリンピックへの出場には意欲を見せているという。大坂選手は以前、「東京でプレーすることはとても特別なこと」と話していた。
テニスの五輪出場選手は、全仏終了後の14日付の世界ランキングで決定する。男女のシングルスは1カ国・地域最大4人までで、上位56人が出場権を獲得する。世界ランキング2位の大坂の出場は確実だ。
大坂選手はハイチ出身の父と日本人の母の間に大阪市で生まれ、3歳から米国に移住した。日本と米国の国籍を持っていたが、日本代表としてメダルを目指す意向で、2019年10月に日本国籍を選択する手続きを行った。「東京五輪に出場するため」(関係者)というほど、五輪出場への思いは強い。
大坂選手は5月31日に公表したツイッターで、「しばらくコートから離れますが、時期が来ればツアーと協力し、選手やメディア、ファンにとって(環境を)より良くするための方法を話し合いたい」とつづった。
大坂選手の関係者によると、ロンドンで28日に開幕する4大大会のウィンブルドン選手権の出場については、本人の精神状況などをみて判断するという。ある関係者は「東京五輪は本人の夢でもあるし、絶対に出る」と語った。
●大坂なおみが“うつ病”明かす 7月東京五輪出場に黄色信号 6/1
女子テニス世界ランキング2位の大坂なおみ(23=日清食品)が現在参戦中の4大大会、全仏オープンのシングルス2回戦を棄権することを表明し、大会を主催するフランス連盟も正式に発表した。今大会前から「心の健康」を理由に試合後の記者会見のボイコットを表明して騒動となっていたが、今回更新した自身のツイッターでは「うつ病」に悩まされていたことも告白。しばらくの間、ツアーから離れることも明かしたため、今後控えるグランドスラムや東京五輪の出場にも大きく影響が及びそうだ。
会見ボイコットというテニス界にとって大きな問題提起をしていた大坂は突如、自身のツイッターで幕引きを図った。
「皆さん、これは私が数日前に投稿した時には想像もしていなかった状況です」と投稿。続けて「トーナメントや他の選手、そして私自身にとっても、今は私が撤退してみんながパリで行われているテニスに集中できるようにするのが一番だと思っています」とつづり、大会を棄権することを表明した。
その上で「実際、私は2018年の全米オープン以降、長い間うつ病に悩まされ、その対処に本当に苦労してきました。私は人前で話すのが得意ではなく、世界中のメディアに向かって話す前に大きな不安に襲われて緊張してしまいます。このパリの地で、すでに私は弱気になっており、不安を感じていたので自己管理をして記者会見を欠席したほうがよいと考えました」と自身の“心の病”と会見拒否の理由についても説明。また、大会主催者に謝罪の手紙を書いたことも明かした。
最後にファンらに向けて「皆さんが元気で安全に過ごすことを願っています。皆さん、愛しています。また会いましょう」とメッセージを記した。
大坂は大会前の5月27日に自身のツイッターで「アスリートの心の健康状態が無視されていると感じていた。自分を疑うような人の前には出たくない」と訴え、試合後の記者会見に応じない意向を表明。フランス連盟のモレトン会長が「大いなる過ち」と批判し、選手や関係者、ファンから賛否両論が寄せられていた。30日の1回戦勝利後はコート上でのインタビューには応じたものの、会見には予告通り出席しなかった。
主催者側は罰金1万5000ドル(約165万円)を科し、今後も違反が続けば大会の失格や他の4大大会の出場停止の可能性を通告。これに対し、大坂は「怒りは理解の欠如。変化は人々を不快にさせる」と反論し、インスタグラムには伝説的なラッパー「Juice Wrld」のアルバムジャケット「good bye&Good RIDDANCE」の画像を投稿。「さよなら。これでせいせいする」という意味のタイトルだっただけに、心配の声も上がっていた。
18年全米OPの優勝以来、世界のトップランカーとして君臨していた大坂は、心の病を抱えながら苦しい日々を送ってきた。「少しの間、コートを離れる」とも表明したことで、ウィンブルドン選手権だけでなく、7月開幕の東京五輪への出場も危ぶまれる。だがそれはあくまで目先の話。まずはメンタルケアに専念し、完全復活する姿を待ちたいところだ。
●大坂なおみ 全仏オープン棄権 その真意は  6/1
テニスの大坂なおみ選手が自身のツイッターで全仏オープンを棄権すると表明したコメントの全文です。
これは、数日前に投稿したときに想像も意図もしていなかった状況です。パリでの大会に誰もが再び集中できるように、大会やほかのプレーヤー、そして私自身とって、私が撤退することが最善だと思います。
私は注意をそらすことを望んでいたわけでは決してありません。そしてタイミングが理想的でなかったことや、メッセージをもっと明確にできたかもしれないことは受け入れます。もっと重要なことは、メンタルヘルスを軽視したり、この用語を軽く使用したりすることは決してないということです。
真実としては、2018年の全米オープン以来、長い間、気分が落ち込むことがあってそれに対処するのに本当に苦労しました。
私を知っている人は誰でも私が内向的な人間だと知っているし、トーナメントで私を見た人は誰でも、私が不安を軽減させるためによくヘッドホンを着用していることに気付くでしょう。テニスに関わるメディアはいつも私に親切でしたが、(私が傷つけたかもしれないすべてのクールなジャーナリストに謝罪したいです)私はもともと人前で話せるような人間ではないし、世界中のメディアと話す前には大きな不安の波に襲われます。
本当に緊張していて、いつもインタビューに応えて、ベストな回答ができるようにすることはいつも大きなストレスです。それで、ここパリではすでに傷つきやすい状態で不安を感じていたので、セルフケアをして記者会見をスキップした方がいいと思いました。
ルールが部分的にかなり時代遅れだと感じていてそのことを伝えたかったので先んじて表明しました。私は個人的に大会側に謝罪の手紙を書いて、四大大会というのはハードなので大会のあとで喜んで話しをすると伝えました。
私は今、少しの間コートから離れるつもりですが、しかるべき時が来たら私はツアーと協力して選手や記者、そしてファンのために物事をより良くする方法について話し合いたいと思っています。
とにかく、皆さんが元気で安全であることを願っています。皆さんを愛しています。またお会いしましょう。
●大坂なおみ出演「ナイキ」CMが大炎上! ジェンダー格差テーマも逆効果 6/1
大手スポーツメーカー「ナイキ」のCMが大炎上している。
「New Girl Play New Nike」と題した同CMは5月28日にユーチューブ上で公開。女性の力強さ≠アピールしたかったようだが、その中身が「女性蔑視」「いろいろとひどい」と批判を集めている。
CMは妊婦が病院でエコー検査を受ける場面から始まり、お腹の赤ちゃんの性別が「女の子」と判明。夫とともに喜ぶものの、一瞬「女の子…」と真顔に。赤ちゃんの性別を知った親戚の少年は「女の子…」「えー」と落胆する。
ほかにも、若い女性が男だらけの会議の中で困惑したり、何者かに狙われているのか、女性が夜道を恐る恐る歩くシーン、バースデーケーキの上に飾られた人形が「日本の男女には43・7%の所得格差があるんだって」とアオる映像が続く。まるで女性に生まれるのは損と言わんばかりの内容だ。
動画後半になると一転して、男勝りな女性の映像が連続する。妊婦の出産シーンとともに、国内外で活躍する女性アスリートの映像が差し込まれていく。その中には、この日うつ病≠告白した大坂なおみの姿もあった。
無事出産した妊婦が生まれてきた赤ちゃんに「あなたは何になりたい?」と言葉をかけ、CMは終了。おそらくジェンダー格差がなくなってきていることを伝えたかったのだろうが、動画のコメント欄は「なんでこんな狂ったCMになるのか」「俺たちは心躍るCMが見たいんだけなんだよ」「自分たちが発信したい結末に向けて作るからこんな違和感しかないCMになる」と大荒れだ。
動画は1日午後7時現在で1100万回以上再生され、低評価は高評価の2倍前後で推移している。
なお、ナイキは1日、スポンサー契約を結ぶ大阪に激励メッセージを発表。「私たちはその勇気をたたえ、彼女の回復を祈りつつ支援を続けます」とコメントし、今後も社を挙げてサポートすることを誓った。
●大坂なおみ批判の全仏会長 自分が会見ボイコットで非難の嵐 6/1
女子テニスの大坂なおみ(23=日清食品)が1日、自身のSNSで全仏オープン(パリ)棄権とうつ病を告白。全仏の主催者で、当初大坂の会見拒否を「ひどい間違い」と非難したフランステニス連盟のジル・モレトン会長が声明を発表した。しかし、記者会見に応じなかったことで「なんという皮肉だ」「偽善者」「自分は会見をしないのか!」と、メディアや関係者から非難ごうごうだ。
モレトン会長は大坂の棄権について「残念。一刻も早く良くなり、回復することを祈っている。来年の大会で会えることを楽しみにしている」などと話した。しかし、欧米メディアによると、声明文は事前に用意されたもの。モレトン会長は紙に書かれた文を読みあげた後、記者の質問に応じず、すぐに退席してしまった。
大坂の会見ボイコットに対し「ひどい間違い。到底受け入れられない」と言いながら、自分が窮地に陥ると会見を拒否した格好とあって大ブーイング。テニス記者のベン・ローゼンバーグ氏は「大坂の棄権に対し、フランステニス連盟会長が記者会見を受けないとは何という皮肉」とツイート。米国の政治戦略家エイドリアン・エロッド氏も、モレトン会長の行動を「偽善の最たるもの」と断罪した。オーストラリアの「ニューズドットコム」は、これら関係者が同会長を非難する声を挙げ「モレトン会長が偽善者と総攻撃を食らう」と報じた。
すでに、大坂には初戦勝利後の会見を拒否したことで罰金1万5000ドル(約165万円)が科せられ、4大大会出場停止の可能性が示唆されていた。今回、大坂がうつ病を長く患っていたことが明らかになり、配慮不足を指摘する声も。今後、非難の矛先は一気に全仏、4大大会側へと向きそうだ。
●テニス 大坂なおみ選手 東京五輪は出場の意思示す  6/1
テニスの四大大会、全仏オープンを棄権した大坂なおみ選手が、来月開幕する東京オリンピックについては、体調などを見ながら出場したいとする意思を示していることが関係者への取材でわかりました。
大坂選手は全仏オープンを前に試合後に行われる記者会見に応じない意向を示し、30日の1回戦のあと会見に出席しなかったため、主催者から罰金を科されました。
そして、翌日自身のツイッターで「誰もが大会に再び集中できるようにするため、大会やほかの選手、そして、私自身にとって私が撤退することがベストだと思った」として大会を棄権しました。
関係者によりますと、大坂選手は体調などを考慮したうえで、来月開幕する東京オリンピックについては、出場したいとする意思を示しているということです。
東京オリンピックの出場権は、今回の全仏オープン終了後に発表される女子シングルスの世界ランキングの上位56人に与えられることになっていて、現在、世界ランキング2位の大坂選手は全仏オープンを棄権したものの、ほかの選手の成績にかかわらず、オリンピックの出場権を獲得できる見通しです。
一方、今月末にイギリスで開幕するウィンブルドン選手権については、出場するかどうか、今のところ未定だということです。
●大坂なおみ「私が去ることが1番」勝者も敗者もいない、むなしい結末に 6/1
テニスで世界2位の大坂なおみ(23=日清食品)が日本時間1日未明、自身のSNSで全仏オープン2回戦の棄権を電撃表明した。さらに「2018年の全米オープン以降、長い間うつに悩まされてきた」と告白した。
5月27日に試合後の記者会見の拒否を宣言し、同30日の1回戦勝利後の会見を拒否。1万5000ドル(約165万円)の罰金を科されていた。当分は休養する予定だが、7月24日開幕の東京オリンピック(五輪)テニス競技での復帰を目指す方向だ。
誰もが悲しむ、残念な結末だった。大坂が戦わずにして全仏の舞台と決別した。「誰もがテニスに集中するためには、私が去ることが1番」。31日の予定されていた練習を行わずに、世界最大の赤土のひのき舞台を去った。
SNSで「2018年の全米オープン以降、長い間うつに悩まされてきたことが真実です。対処に本当に苦労してきました」と告白した。「私がいつもヘッドホンをしているのは、社会不安を鈍らせるのに役に立つから」と音を遮断することで、うつに対応しようとしていたという。
会見へ向かう時の心情も記した。「人前で話すのが得意ではなく、世界中のメディアに向かって話すのは大きな不安」。この全仏では「すでに弱気で不安だったので、自身のためにも会見を欠席した方がいいと思った」と、会見拒否の真相を明かした。
棄権を表明した投稿の書き出しは「数日前に投稿した時には、想像していなかった状況になっている」だった。「大会や記者に恨みはない」とも。当初は、これだけの大騒動になるとは思わなかったのだろう。
30日の1回戦に勝った後、宣言通り会見を拒否した。罰金とともに、4大大会の主催者は合同で「規則では、違反を続ければ大会からの追放、4大大会の出場停止もあり得る」と警告した。同日、大坂は自身のSNSに「怒りは無理解から来る。変化することは、人を不愉快にする」と投稿した。インスタグラムのストーリーには「さよなら。せいせいする」を意味する楽曲タイトルを掲載した。
主催者らの対応に、大坂の心は動揺し、折れたのかもしれない。「時期が来たら、ツアーと協力し、選手、ファン、メディアによりよい方法を探したい」。21年全仏で、大坂が残した記録は1勝0敗。2回戦は棄権だけ。勝者も敗者も誰もいない。
健康状態を取り戻すことが先決だ。それには時間がかかるかもしれない。赤土と並び苦手な芝のウィンブルドンは欠場し、大好きなハードコートに焦点を合わせることが濃厚。その復帰戦には、東京五輪が待っている。笑顔を見せ、豪快なショットでプレーする大坂をファンは心待ちにしている。
●「大坂なおみは記者会見の“膿”をさらしてくれた」英スポーツ記者 6/1
テニスの大坂なおみ選手の会見ボイコットと全仏オープン棄権を受け、英紙「ガーディアン」のスポーツジャーナリストが自省も込めて綴る。低俗な質問で若い選手を餌食にする記者会見の問題点、それを直視せずに大坂を非難する旧態依然としたメディアは自滅へと突き進む──。
かつて、まだ世の中で物事がいろいろ起きていた頃のことだ。エミレーツ・スタジアムでのアーセナルの記者会見の常連なら誰でも知る「最初の質問をする男」という謎の人物がいた。略称は「さし男」。
さし男がどこのメディアの人間なのかはついに誰にもわからず、そもそも記者だったのかどうかもあやしかった。その男の唯一の才能は、才能と称していいのかどうかもわからないが、とにかく一番前の席に陣取り、最初の質問を放つことだった。ほかの人がまだ着席しないうちに、質問が大声で切り出されるのが通例だった。
さし男がなぜそんなことをするのかは不明だった。エゴの問題ではなさそうだった。この人の本名を知る人に会ったためしがないからだ。かといって、それは、いわゆる「通の質問」でもなかった。それどころか、質問の大半は事実上の意見表明だった。世界中の記者会見で愛用される、あの陳腐な常套句ばかりを並べたてるのだ。
「アーセン、今日の勝利の喜びの気持ちをお聞かせください」「ウナイ、この勝ち点1は価値ある勝ち点1のように思えます」「ミケル、厳しい試合でした。いまの思いをお聞かせください」
女子テニス世界ランク2位の大坂なおみが全仏オープンでの記者会見ボイコットを発表し、自分のメンタルヘルスを維持しようとしたとき、私の脳裏に自然と浮かんできたのが、このさし男だった。
記者として、幾千ものこの種の中身のないお勤めに同座し、その過程で幾度となくこの世の終わりに思いを馳せた者として言わせてもらうなら、私の最初の反応は共感しかなかった。ところが世間では、意外にも非難と激高の大合唱なのである。どうやら大坂の発表は、強烈な反感を買ったようなのだ。
一部の人にとって記者会見は神聖なる生きがいだったわけだ。たとえ自分たちの命を失っても、アスリートに「今日、あの瞬間はどんな気持ちだったのですか」と質問できる機会だけは絶対に守り抜くぞ、と言わんばかりに。
5月31日夜、大会側から罰金を科され、出場停止処分の可能性を示唆されたあと、大坂は全仏を棄権すると発表した。
この間、プリントメディアは彼女に対して軽蔑的な論調一色である。そう、私たちが伝統的に、世の中の行動の規範を最もよく判断してくれると見なしているメディアのことだ。
ある新聞のコラムニストは大坂を「お高くとまったプリンセス」と書いた。ほかには、より抑えたトーンで、アスリートにとってメディアと向き合うのは仕事の一部であり、それを完全にやめるという大坂は「危険な前例」を作ったと指摘する記者たちもいた。
ここで、いったい何がどういう意味で「危険」だと言っているのか、考えてみるべきだ。
報道の自由はすでに世界中でかつてないほどの危機に瀕している。独裁政権や大手テック企業、ネット上のフェイクニュースからの攻撃にさらされているのだ。多くの国でジャーナリストたちが仕事をしているだけで殺害されている。
一方、今パリにいるテニスジャーナリストたちは、大坂の会見拒否によって、すべて自分の言葉で記事を書かなくてはならない危機に直面した。
さて、いま列挙した危機の中に、一つだけほかと質が異なる危機があるが、それがどれだかわかってもらえるだろうか。
私が思うに、ここで真に問題なのは、大坂でも尊大すぎるメディアでもない。記者会見そのものだ。考えてみれば、それはおかしな発想であるし、もうその機能を果たしていない。記者会見というものが過大評価されているのは、それがアスリートと大衆を直接つなぐ役割を果たしていると見なされ、謙虚な記者たちが人々の忠実な目と耳になっていると思われているからだ。
気づいていない人のために言っておくと、もうかなり前からそれは真実ではなくなっている。今のアスリートたちは、私たちメディアを介さず自ら大衆と直接つながる術を持っている。
信じてもらえないかもしれないが、大坂がエンターテイナーとして、そしてスポンサー企業の顔として果たさなければならないのは、指定された時間にテニスをプレーすることなのだ。窓のない部屋に強制的に着席させられ、その部屋いっぱいの中年男性たちに向かって自分を説明することではない。ゆえに、現代の記者会見はもはや有意義なやり取りの場ではなく、最も低俗なやり取りが行われる場となっている。そこで展開されるのは、記者たちが選手からできうる限りを引き出そうとするシニカルで往々にして搾取的なゲームだ。ほしいのはゴシップ、怒り、ライバルとの確執、涙、悲劇といったところだ。
そんななか、まだ勝利あるいは敗北の感情の波にのまれている状態の若いアスリートが、最も親密な質問に答えるよう要求される。大勢の知らない人たちの前で、後ろにスポンサーのロゴを背負いながらという最も親密ではない場所で。
そこにあるものすべてが奇妙で儀礼的な性質を帯びている。同じ場所に同じ人が座り、使い古された同じ質問が繰り返され、何百もの言葉が無駄にされ、ふたを開けられずに置かれたままのミネラルウォーターのボトル。
ほかにもっといいやり方はないのだろうか? 彼らは選挙で選ばれた政治家ではない。彼らは卓越したラケットさばきと心肺持久力でここまで上り詰めた、普通の人間なのである。そんな人たちに「どうか私たちに話をしてください。さもなくば……」と脅すのか。
この力関係は、とりわけ女子テニス界で悪化する。白人男性が大多数を占めるというだけでなく、「白人男性がタダ飯を食える」世界だ。その貪欲でガツガツすることを許される彼らの特権は、異常なほど気持ち悪い質問となって表出することがよくある。
「あなたがツイッターに投稿した写真に気づきました。あなたの素晴らしい外見からすると、長めのランニングをするだけでセックスシンボルとして見られるようになるかもしれませんが、その準備はできていますか?」(2013年ウィンブルドン、ウージニー・ブシャールに対する質問)
「あなたはいまやグラビアアイドルのような扱いです。とくにイギリスで。どう思います? いい気分ですか?」(2004年ウィンブルドン、当時17歳のマリア・シャラポワに対する質問)
もちろん、まともで好奇心あふれるジャーナリストもたくさんいて、彼らはまっとうな仕事をしている。だがそれはある意味、メディアにおけるこの慢性的な自覚の欠如が、どれだけ自滅的かを物語っていると言えるだろう。
そろそろ空気を読むべきだ。私たちはここで、いい奴らではない。もう私たちに力はない。
世界トップレベルのアスリートが、メディアの前で話すよりもグランドスラムを棄権することを選んだのだ。それが彼女の何を明かすのかについてあれこれ言う前に、それが私たちメディアの何を明かしているのかを自問したほうがいいのかもしれない。
●大坂選手を「傲慢で甘やかされたワガママ」と批判した英司会者、反撃される 6/1
かつて、メンタルヘルスの問題で苦しんだことを明かしたメーガン妃を攻撃し、批判を受けたイギリスの司会者ピアース・モーガン氏。
今度は大坂なおみ選手を「ナルシスト」「傲慢で甘やかされたワガママ」と呼び、反発を招いている。
大坂選手は、5月30日に開幕した全仏オープン前に「メンタルヘルスを守るために同大会では記者会見には出席しない」と発表。
その言葉通り、1回戦で勝利した後にコートでのインタビューには答えたが、記者会見には参加しなかった。
そのため主催者から1万5000ドルの罰金を課され、今後も記者会見に出ないのであれば4大大会の出場停止もあり得ると警告された。
大坂選手はこの1回戦の後に、他の選手や自分のためにも2回戦を棄権すると発表。同時に2018年の全米オープン以来、うつ病を抱えていることを公表した。
大坂選手はTwitterで「パリではすでに、私は自分が無防備だと感じ、不安になっています。だから、自分を守るために記者会見をしない方がいいと思いました」と記者会見を拒否した理由を説明した。
しかしモーガン氏は、メンタルヘルスを守ろうとする大坂選手の決断が気に入らなかったようだ。
同氏は5月31日にTwitterで、「最新のコラムで『世界のスポーツ選手の中で最も怒りっぽい小さなマダム、大坂なおみ』について書いた」と投稿した。
さらに、コラムのタイトルは「メンタルヘルスを悪用してメディアを黙らせるナルシストなおみは、メーガンとハリーがメディアを攻撃しながらそれを利用しているのと同じ」だと述べた。
批判されて退席
モーガン氏はこれまで、メーガン妃のことを「甘やかされたワガママ」と呼び批判し続けてきた。
メーガン妃が3月に「イギリス王室の一員だった時に、精神的に追い込まれ自死を考えたことがある」と語った時には、司会していた朝の番組「グッド・モーニング・ブリテン」で「彼女の言葉を信じない」と一蹴。
これに対し同じ出演者が発言を批判すると、モーガン氏はセットを立ち去り、その後番組を降板した。
この時、メンタルヘルスを考慮しないモーガン氏の発言には多くのクレームが寄せられた。しかしこの経験からモーガン氏は学んでいないようだ。
同氏はデイリーメールに掲載されたコラムで、大坂選手のことを「残念ながらミス大坂は傲慢で甘やかされたワガママであり、名声と富が、彼女のエゴを巨大に膨らませている」と批判した。
メンタルヘルスの問題を無視するようなこのモーガン氏の言動に、ソーシャルメディアではモーガン氏に対する批判が起きている。
「非白人の女性をしつこく攻撃したことを批判され、自分の番組から出ていったピアース・モーガン氏ですが、どうやら非白人の女性に対しては職務上の責任を全うするべきと考えているようです」
「同じ出演者からの穏やかな批判にも耐えられずスタジオから去ったピアース・モーガン。この男性は大坂なおみとは比べようもないくらい小さい」
「大坂なおみのことを、批判に耐えられない短気なワガママと言ったピアース・モーガン氏。そんな彼は批判されてスタジオを出て行った」
「ピアース・モーガンは、大坂なおみとメーガン・マークルのことでなぜこれほど感情的になるのだろう」
「ピアース・モーガンがメールオンラインでまた女性叩きをしているの?今度は何をどう攻撃しようとしているのだろう…」
「メンタルヘルスに対して、偏屈な考えを持っているピアース・モーガン。人種差別の切り札をメンタルヘルスに変えて、それを隠そうとしている。その上、メーガン・マークルと大坂なおみは一緒だと主張して彼らのメンタルヘルスを攻撃し、彼らを黙らせて信用を落とそうとする。とても不快で非難されるべき」
●大坂なおみ 全仏オープン棄権 その真意は  6/1
テニスの大坂なおみ選手が自身のツイッターで全仏オープンを棄権すると表明したコメントの全文です。

これは、数日前に投稿したときに想像も意図もしていなかった状況です。パリでの大会に誰もが再び集中できるように、大会やほかのプレーヤー、そして私自身とって、私が撤退することが最善だと思います。
私は注意をそらすことを望んでいたわけでは決してありません。そしてタイミングが理想的でなかったことや、メッセージをもっと明確にできたかもしれないことは受け入れます。もっと重要なことは、メンタルヘルスを軽視したり、この用語を軽く使用したりすることは決してないということです。
真実としては、2018年の全米オープン以来、長い間、気分が落ち込むことがあってそれに対処するのに本当に苦労しました。
私を知っている人は誰でも私が内向的な人間だと知っているし、トーナメントで私を見た人は誰でも、私が不安を軽減させるためによくヘッドホンを着用していることに気付くでしょう。テニスに関わるメディアはいつも私に親切でしたが、(私が傷つけたかもしれないすべてのクールなジャーナリストに謝罪したいです)私はもともと人前で話せるような人間ではないし、世界中のメディアと話す前には大きな不安の波に襲われます。
本当に緊張していて、いつもインタビューに応えて、ベストな回答ができるようにすることはいつも大きなストレスです。それで、ここパリではすでに傷つきやすい状態で不安を感じていたので、セルフケアをして記者会見をスキップした方がいいと思いました。
ルールが部分的にかなり時代遅れだと感じていてそのことを伝えたかったので先んじて表明しました。私は個人的に大会側に謝罪の手紙を書いて、四大大会というのはハードなので大会のあとで喜んで話しをすると伝えました。
私は今、少しの間コートから離れるつもりですが、しかるべき時が来たら私はツアーと協力して選手や記者、そしてファンのために物事をより良くする方法について話し合いたいと思っています。
とにかく、皆さんが元気で安全であることを願っています。皆さんを愛しています。またお会いしましょう。
●大坂なおみが打ち明けた「全仏撤退の真意」と「闘病に苦しんできた日々」 6/1
「アスリートの精神状態を考慮していない」として、全仏オープンで試合後の記者会見に応じていなかったテニスの大坂なおみ選手が5月31日、大会から撤退することを表明した。
大坂の主張に対して、大会の主催者は1万5000ドルの罰金を科すことや、これからも会見に応じない場合は、グランドスラムへの出場停止処分にするという可能性も示唆していた。
大坂は全仏を撤退することに決めた現在の心境を説明するために、ツイッターに長いメッセージを投稿している。彼女のツイートの全訳をお届けする。

こんにちは、皆さん。私が数日前にツイートしたときには、想像もしていなかったし、意図もしていなかった状況になっています。全仏オープンにみんなが集中できる状況に戻るように、トーナメントや他の選手たち、そして私のウェルビーイングのためにも、私が撤退することが最も良い方法だと思います。
私は邪魔したいと思ったことは一度もなく、またツイートしたタイミングが理想的ではなかったこと、伝えたいことをもっと明確に伝えられたかもしれないことを認めます。さらに重要なのは、メンタルヘルスを矮小化したり、この言葉を軽く使ったりしているわけではないことです。
私は2018年の全米オープン以降、長いあいだ、うつ病に苦しんでいて、それに対処するためにとてもつらい時期を過ごしてきました。
私のことをよく知る人たちはみんな、私が内向的であることを知っています。そして、大会で私を見た人たちはみんな、私が不安をやわらげるために、ヘッドフォンをよく着けていることに気づくでしょう。
テニスの報道陣はいつも私に親切だったけれど(私が傷つけてしまったかもしれない、すべての聡明なジャーナリストに謝りたい)、私はもともと人前で話すのが得意な人間ではないし、世界の報道陣と話すときはとても大きな不安の波に襲われます。
いつも私が答えられる最善の回答を伝えようと努めることによって、私は本当にナーバスになり、大きなストレスを感じています。
このためパリで、私はすでに傷つきやすく、不安を感じていたので、セルフケアに努め、会見を回避したほうがいいと考えました。
私はルールの一部がかなり時代遅れなものだと感じていて、そのことを強調したかったため事前に表明しました。私は個人的にトーナメント主催者側に謝罪を書き、グランドスラムはきつい大会なのでトーナメントが終わった後であれば喜んで話をすると伝えました。
私はいま、少しの期間、コートから離れるつもりです。でも、最適な時がくれば、私はツアーとともに選手たちや報道陣、そしてファンたちのために物事をよりよくする方法を話し合いたいと思っています。
とにかく、皆さんが健やかで、安全であることを願っています。皆さんを愛しています。またいつか、会いましょう。
 
●大坂なおみうつ病告白 全仏OP棄権表明「邪魔になることだけは」 6/1
テニスの全仏オープン(パリ)に出場している世界2位の大坂なおみ(23=日清食品)が、5月31日(日本時間6月1日未明)に大会を棄権することを電撃表明した。
自身のツイッターに英文で「トーナメントにとって最善の方法は、他の選手、そして私自身の健康のためにも、みんながテニスに集中することができるように、私がこの大会を棄権することだと思う。決して、みんなの邪魔になることだけはしたくなかった」とつづった。
さらに、「The truth is that I have suffered long bouts of depression」とも記し、2018年の全米オープン以降、長い間、うつ病(depression)に悩まされていた事実を告白した。
大坂は大会前の5月27日に、選手の精神状態が軽視されていると訴え、自身のSNSで記者会見には出席しないことを宣言。30日の1回戦後に、宣言通り、試合後の会見を拒否した。
この行動が波紋を広げた。主催者は1万5000ドル(約165万円)の罰金を科した上で、4大大会の主催者合同で「違反を続けると大会からの追放、4大大会出場停止もあり得る」と警告。世界的に、大きな騒動になった。
すると、大坂は31日にツイッターに「怒りは無理解から来る。変化することは、人を不愉快にする」と批判とも取れるコメントを投稿。インスタグラムのストーリーには、19年に亡くなった伝説的なラッパー、ジュース・ワールドの音楽アルバム「good bye & Good RIDDANCE」のジャケット写真を掲載し、その楽曲を流した。タイトルの意味は「さよなら。これでせいせいするわ」だった。
そして、現地時間の同日中に2ページにわたる文書(英文)をツイッターに投稿し、大会から去ることを表明した。
第2シードの大坂は、6月2日のシングルス2回戦で世界ランク102位のアナ・ボグダン(ルーマニア)と対戦する予定だった。
●大坂なおみ恋人ラッパー「誰にも謝る必要はない!」と擁護 6/1
テニスの全仏オープン(パリ)を棄権することを自身のSNSで発表した女子テニス世界2位の大坂なおみ(23=日清食品)の恋人で米人気ラッパーのYBNコーデー(23)が、「誰にも謝る必要はない!」と擁護した。
大坂が声明を発表したインスタグラムの投稿にコメントしたもので、2019年から交際している恋人のメンタル面を心配した全面サポートと受け取れる。大坂は大会前の5月27日に記者会見に出席しないことを宣言し、その言葉通り試合後の会見を拒否。その結果、主催者から罰金1万5000ドルが科せられ、4大大会出場停止の可能性もあり得ると警告を受けていた。日本では人気俳優らの自殺が相次いでいたこともあり、長期にわたってうつ病に悩まされていたことも告白した大坂の決断に対し、米国内でも大きな議論を呼んでいる。
大坂のSNSには励ましや支持するコメントが多数寄せられているほか、コーデーのコメントにも2万5000件を超える「いいね!」が付いている一方、英国のテレビ司会者でジャーナリストのピアース・モーガン氏は自身のSNSで英王室を離脱したヘンリー王子とメーガン妃夫妻を引き合いに大坂への批判を展開している。
メディアと対立する夫妻の名前を持ち出し、記者会見を拒否した大坂に対して「自分の仕事をしているだけのメディアを攻撃している」と連投で批判を繰り広げている。メーガン妃への批判や中傷的な発言で知られるモーガン氏は、夫妻が出演した今年3月に放送されたインタビュー番組でメンタルヘルスの問題を告白したメーガン妃を攻撃し、「不適切な発言」だと批判を浴びて番組を降板させられたこともある。
●「メーガン妃のマネしている」 英名物司会者が暴論ブチ上げ非難の嵐 6/1
メーガン妃への批判で知られる名物司会者ピアース・モーガン氏が31日、英「デーリー・メール」で大坂なおみ(23=日清食品)について「メーガン妃とヘンリー王子のメディアを黙らせる戦略をまねている」と猛批判を展開。大坂がうつ病告白後も姿勢を変えず、非難の嵐だ。
モーガン氏は、ヘンリー王子夫妻の王室離脱を酷評する反メーガン妃の急先鋒として知られている。同氏は寄稿文で「大坂なおみは素晴らしいテニス選手だ」としつつ、大坂が開幕前の27日に会見拒否を宣言した声明を「自己愛にみちたたわごと」と批判。「ボイコットを正当化するために、メンタルヘルスを武器にして、正当なメディア取材を避けようとする軽蔑的な試み。商業的な自己宣伝のためにメディアを利用し、一方で批判を沈黙させるためにメンタルヘルスを理由にするという、メーガンとヘンリーの戦略をそっくりまねている」と、メーガン妃、ヘンリー王子を引き合いに出して非難した。
1日に大坂が全仏棄権を表明し、長年うつ病に苦しんできたことをSNS上で告白後も、モーガン氏はまったく姿勢を変えず。自身のツイッターで、フォロワーから大坂の投稿を知らされても「違う。彼女は自分たちの仕事をしているテニスメディアへ攻撃したことに対する反発のために棄権した」と批判を止めず、非難の嵐となっている。
モーガン氏は、妊娠中には自殺を考えるまで追い詰められていたことを告白するなどしたメーガン妃への攻撃で情報番組「グッドモーニング・ブリテン」を降板している。なんとも懲りない男だが、世界に対する大坂の影響度の大きさを表しているとも言えそうだ。 
 
 
●大坂なおみに関する声明を四大大会が連名で発表 6/2
テニスの四大大会である全仏オープン(フランス/パリ、レッドクレー、グランドスラム)、全豪オープン(オーストラリア/メルボルン、ハード、グランドスラム)、ウィンブルドン(イギリス/ロンドン、芝、グランドスラム)、全米オープン(アメリカ/ニューヨーク、ハード、グランドスラム)は1日、女子テニスで世界ランク2位の大坂なおみや選手のメンタルヘルスに関する声明を公表した。
現在行われている全仏オープンの開催前、選手のメンタルヘルスがないがしろにされているとして試合前・試合後の会見を行わないことを表明していた大坂。5月30日には1回戦に勝利したものの、事前に告知していた通り会見は行わなかった。大坂には罰金が科されていたが、同31日に大坂が棄権を発表し全仏オープンを後にした。
また、棄権の発表と同時に、四大大会初優勝を果たした2018年の全米オープンから長い間うつ病に悩んでいたことも明かし、一時的にコートから離れることを示唆した。
全仏オープンは今回の大坂の発表に関して、全豪オープン、ウィンブルドン、全米オープンとともに共同の声明を公表。選手のメンタルヘルスや大坂のうつ病の告白について見解を綴った。
「グランドスラムを代表して、大坂なおみ選手がコートを離れている間、可能な限りのサポートと支援を提供したいと思う。大坂選手は非常に優れたアスリートであり、彼女が適切と考える時期に復帰することを期待している」
「メンタルヘルスは非常に難しい問題であり、私たちが最大限の注意を払うべきもの。これは複雑で個人的な問題であり、ある個人が影響を受けても別の個人が影響を受けるとは限らない。私たちは、なおみが自らの言葉でプレッシャーや不安を語ったことを称賛するとともに、テニスプレーヤーが直面する独特のプレッシャーに共感している。選手の幸せはグランドスラムにとって常に優先事項だが、私たちはWTA、ATP、ITFとともに、メンタルヘルスと幸福を促進するために、さらなる行動を起こしていきたい」
「私たちはコミュニティとして、メディアとの関連性を含め大会でのプレーヤーの体験や経験を改善していく。ランキングやステータスに関係なく公平な競争の場を維持するという観点から、変化を起こすべきだ。スポーツには、選手が他の選手よりも不当に有利にならないようなルールや規制が必要。私たちは、選手、ツアー、メディア、そしてテニス界全体と協力して、意義のある改善を目指す。グランドスラムとして、選手が最高の栄誉を得るための舞台を作ることを目指していく」
●ダルビッシュ うつ病告白の大坂なおみの海外メディア報道に苦言 6/2
米大リーグ・パドレスのダルビッシュ有投手(34)が2日、ツイッターでうつ病を告白したテニスの大坂なおみをめぐる報道について言及。
ダルビッシュはうつ病について海外メディアが「なぜ最初から言わないのか?」という主旨の発言をしていることを疑問視。あるイタリアメディアは「我々ジャーナリストが完璧ではないが、精神科医に行くような質問を聞いたことがない」と報じている。つまり、うつ状態に追い込むような悪質な質問はなかったのではないか、というわけだ。
これについてダルビッシュは「そりゃあうつ病だと言うのも勇気いるでしょう。しかも『精神科に行くような質問はしていない』ってなに?笑」と海外メディアの姿勢にあきれた様子だ。
大坂は精神的な負担が大きいことから、全仏オープンでの記者会見拒否を表明。その後、全仏オープン棄権を発表し、うつ病であることを告白した。

●義務付け会見の“呪い”か 大坂なおみに続きクビトバがドクターストップ 6/2
テニスの全仏オープン(パリ)女子シングルス第11シードのペトラ・クビトバ(チェコ)が1日、自身のツイッターで、試合後の記者会見で転倒し足首を痛めたため、大会を棄権することを明かした。MRI検査を受け「チームとよく話し合い、残念ながら出場は賢明ではないというつらい決断を下した」と記した。
悲劇が起きたのは初戦勝利後の記者会見。クビトバは「requirements」(試合後に義務付けられている記者会見)で、と記している。「信じられないほど運が悪かったが、心を強く保ち、全力を尽くして芝のシーズンに間に合わせたい」と前を向いた。
義務付け会見を巡っては、大坂なおみ(23=日清食品)が大会開幕前に「選手のメンタルヘルスに配慮がない」ことなどを理由にボイコットを表明し大騒動に発展。1日、自身のうつ病告白と全仏棄権を明かしたばかり。欧米メディアは「大坂なおみに続く棄権」と報道。
「これは大坂なおみが心配していた危険とは違うが、義務付け会見でケガ」(米ニューヨーク・ポスト)「大坂なおみが棄権後、記者会見で新たな災害が発生」(オーストラリア・ニューズドットコム)と、試合後の義務付け会見の災い≠指摘している。
●「名声がエゴを巨大なサイズに」大坂なおみを攻撃のモーガン氏に批判の声 6/2
テニスの全仏オープンを棄権することを発表した女子テニス世界2位の大坂なおみ(23=日清食品)を「傲慢で甘やかされた子ども」と攻撃した英国の情報番組「グッドモーニング・ブリテン」を降板したテレビ司会者ピアース・モーガン氏が、世間から大きな批判を受けている。
「出場辞退はテニスメディアに対する攻撃だ」と批判的なコメントをSNSに投稿していたモーガン氏は、「世界のスポーツ界で最も怒りっぽい小さなマダム、大坂なおみについてコラムを執筆した」とツイート。その後、英デイリー・メール紙の電子版に「名声と富が彼女のエゴを巨大なサイズに膨らませたようにみえる」「ナルシスト」と批判的な記事を掲載した。
コラムではうつに悩まされていると告白した大坂に対し、「ボイコットを正当化するために、メンタルヘルスを武器にしている。本当に意味するのは、うまくプレーできなければメディアに顔を向けたくないということ。なぜならいまいましい記者からパフォーマンスを批判されるかもしれないから」と持論を展開。スポーツ界のみならず多くの著名人も「勇気ある決断」と大坂への支持を表明する中で繰り広げた内容に、批判が相次いでいる。
モーガン氏は英王室を離脱したヘンリー王子の妻メーガン妃に対しても同様に「甘やかされたわがまま女性」との主張を繰り返し、「自殺を考えた」とメンタルヘルス問題を告白した際も番組の中で「うそ」呼ばわりして途中降板する騒動に発展していた。それだけに、英国内の世論では「非白人の女性をどれだけ攻撃すれば気が済むの」と人種差別的な態度への抗議も出ている。
また、メンタルヘルス問題を抱える人を一方的に批判する姿勢は多くの読者に不快感を与え、「心の問題を抱える人への尊重がないことが残念」と非難されている。
●米ナイキ、全仏棄権の大坂なおみを支持 他のスポンサーも 6/2
ロンドン(CNN Business) 女子テニスの大坂なおみ選手が心の健康を理由に全仏オープンの棄権を決めたことを受け、米スポーツ用品大手ナイキなどの主要スポンサーが大坂選手への支持を表明した。
ナイキは5月31日の声明で、大坂選手がうつとの闘いを打ち明けたことを称賛。「我々の思いはなおみと共にある。当社は彼女を支援し、心の健康にかかわる自身の経験を共有した彼女の勇気を認める」と述べた。
ナイキは2019年に大坂選手とスポンサー契約を結んでいる。
全仏オープンの大会主催者は大坂選手による棄権の決断に先立ち、30日の1回戦終了後に記者会見を行わなかったとして、同選手に1万5000ドル(約160万円)の罰金を科していた。
大坂選手はツイッターで26日、心の健康を理由に、今大会の記者会見には一切出席しないと発表。31日に棄権の決断を発表した際には、2018年に初の4大大会(グランドスラム)制覇を成し遂げて以来、「長い間うつ」に苦しんできたことを明かした。
これを受け、他のスポンサーも大坂選手への支持を表明した。
米クレジットカード大手はマスターカード声明で「大坂なおみ氏の決断は、個人の健康と幸福を優先することがいかに重要かを改めて示した」と述べ、「当社は彼女を支援し、コート内外で重要な問題に言及する彼女の勇気をたたえる」とした。
スイスの高級時計メーカー、タグ・ホイヤーも、ブランドアンバサダーである大坂選手を「勝利した時だけでなく厳しい時期も」支えると表明した。
即席麺で知られる日清食品も連帯のメッセージを発表。同社広報は声明で、大坂なおみ選手の一刻も早い回復を祈り、引き続きの成功を願うと述べた。
全仏オープンのスポンサーであるスイスのロレックスや仏エンジー、インドのインフォシスはコメントを控えた。
●グランドスラム、「意義ある改善」を約束 大坂なおみ問題で声明 6/2
テニス四大大会(グランドスラム)は1日、全仏オープンテニス(French Open 2021)で大坂なおみ(Naomi Osaka)が経験した問題を防ぐための措置として、大会運営方法の「意義ある改善」を目指す意向を表明した。
女子テニス世界ランキング2位の大坂は全仏オープンで、心の健康を損なうとの理由で試合後の記者会見を拒否したことで罰金を科され、大会からの追放の可能性を警告された。
全仏オープン、全米オープン(US Open Tennis Championships)、全豪オープン(Australian Open Tennis Tournament)とウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon)からなるグランドスラムは共同声明で、「われわれは選手やツアー、メディア、そしてより広範なテニス界と協力し、意義ある改善を生む意向だ」と表明。
「選手が直面する特有のプレッシャーは理解する」とした一方で、「変革はランキングや地位にかかわらず、フェアな競技を維持するという考え方の下で行われるべきだ」と言明した。
●大坂なおみ選手の問題を3つの視点で考えたい 6/2
大坂なおみ選手の件、色々と話が転じて広告代理店界隈がワサワサとしてきている。もっとも、健康に優先する選択肢はないので、個人として先ずは心身の回復を願いたい。
ここで、お金の話をするのはイヤらしいが、年収60億とはいえ、テニスの賞金は5億円ほど。これだけの知名度の選手にしては決して多くないと思う。
税金など諸経費抜けば一般サラリーマンの生涯年収程度だ。それでも高額だと思うかもしれないが、スポーツ選手の旬は本当に短い。50歳、60歳まで今の賞金を稼げぎ続けるわけではない。
彼女は選手としては超一流なので、プロテニスプレイヤーとしての活動については、今後、記者会見のことなど含め、様々な配慮もなされるだろう。そうあるべきだと思う。
一方で、広告業界のワサワサは、もちろん残りの55億のスポンサー関連収入の話についてだ。
これは選手としての活動とは話が変わってくる。55億円の方の業界では、彼女はテニス以外のアスリートや映画スタート等とも並ぶ有力ではあるが一つの「華」に過ぎない。
オンライン上のコメントなどを見る限り思っていたよりも“アンチ”の声が可視化されつつある。これまであまり見えていなかった声だ。
スポンサー企業の投資は、彼女の選手としての「能力」に対してではない。彼女を取り巻く全ての「読者(視聴者)」からの評判(レピュテーション)に投資している。今すぐ「契約破棄」など極端なことにはならないだろうが、今後の世論の流れによっては、契約更新を留保するなど、厳しい判断をするケースも出てくるのだろう。
こういった事象を見る時には、
   1「個人」として
   2「アスリート」として
   3「広告塔」として
3つに分けて考えないと、話がおかしくなるのだ。
1としては、これは言うまでもない。医師のサポートの下で健康最優先にして欲しい。周囲からも十分な配慮が必要となる。
2としては、有力選手として様々な配慮はされるべきだが、他の選手との不公平は許されないだろう。また各大会における根幹となる規約は変えられない。コーチやトレーナーのサポートで判断していくしかない。
3としては、もっと上手い体外コミュニケーションをしないと、このままでは中長期的に彼女が失うものも大きくなる。一度“地雷”を踏んでしまうと次の話は来ない厳しい業界でもある。引退後の活動なども含めてアドバイスできる、心を許せるマネジメント担当が必要だ。
それから、影響力のある人物による「特定の行為」とその人の「病名」が過度に結びついてしまうことで、同じ病名の人が予期せぬ不利益を被ることがある。この点には注意したい。診断名は同じでも症状の重さや特徴は人それぞれだ。
●大坂なおみが投じた一石。外国人記者が会見で感じた違和感とは何か 6/2
困惑----。
それが、全仏オープンのプレスルームに漂っていた感情の主成分だったように思う。
大会開幕を4日前に控えた夜、大坂なおみが「今大会では、会見(プレス)は一切やりません」の声明文を、自らのソーシャルメディアに投稿。その翌朝、プレスルームの話題はもっぱら、"大坂発言"一色だったとも言える。
彼女の発言の真意は何か? その背景にどのような動きがあったのか?
それらを知るべく、関係者や大会のメディア担当者に尋ねても、返ってくるのは「我々もなおみの投稿を見て初めて、彼女が会見拒否することを知った」との言葉。大会やツアー関係者たちに対しても、事前通達はなかったようだ。
会見拒否がなぜ、そこまで大きな話題になったかと言えば、そこにはテニス界の慣例と規約がある。
グランドスラムやATPおよびWTAのツアー大会では、選手の会見は義務づけられており、正当とみなされる理由がないかぎり、拒否すれば罰金が科される。それはロジャー・フェデラー(スイス)やセリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)ら、テニス界の名声と人気を長く牽引してきた選手とて例外ではない。
だから、今や世界で最も知名度のある女性アスリートといえど......いや、それほどの影響力のある選手だからこそ、全仏オープンやテニス界は大坂に対し厳罰を処すだろうというのが、地元フランス報道陣に共通した見解だった。
「下手すれば、失格処分になるかもしれない」
そのような可能性も話題にのぼった。
また、それら意見交換のなかで興味深い視座を与えてくれたのが、カナダ人スポーツジャーナリストの、ステファニー・マイルズ氏だった。
テニスの会見は通常、英語と母国語の両方で行なわれる。ただ、大坂の場合は日本語の質問に対しても英語で応じるため、日本語を解さないマイルズ氏も大坂の返答はわかっていた。
それら大坂の会見を長く聞くなかで、彼女は「日本人記者の質問に答える時と、欧米メディアへの対応では、ナオミはまるで別人のようだ」と感じたという。
「日本の質問に応じている時の彼女のほうが、私は個人的に好き。テニスの技術や戦術、心理面などについてしっかり答え、プロフェッショナルだと感じるから。対して、欧米メディアに対応している時のナオミは、記者たちが求める彼女を演じているように見える。優等生でユーモアがあって、時にちょっと皮肉屋で個性的で......そんな感じの大坂像を」
なるほど、そういう見方もあるのだと、視野が広がったように感じたと同時に、もし大坂がそのように自分を使い分けているのだとすれば、それは相当にストレスだろうなとも思った。
大坂の最初の投稿から日が明けると、会場ではトップ選手たちが"プレトーナメント会見"を行なった。ここでも話題の中心は、やはり「なおみの声明をどう思うか?」だ。
そのテーマについて、ほとんどの選手は「彼女の気持ちはわかる」と一定の理解を示しつつ、「だが、会見は我々の仕事の一部」と回答する。ラファエル・ナダル(スペイン)のように「世界中を飛びまわり記事を書いてくれる人たちがいなければ、我々アスリートは今日の立場ではいられなかった」と、会見やインタビューの重要性に深い理解を示す選手もいた。
ちなみにこの"プレトーナメント会見"も、記者からの要望があれば応じなくてはならないと、大会規約に記されている。
かくしてプレスルームでは、大坂の話題が席捲した。ただ、フランス国内やフランスのテニスファンの間では、大坂の会見拒否はそこまで大きなトピックではなかったという。
フランスのスポーツ専門紙『レキップ』の報道も、基本的には事実関係を客観的に告げる、いわゆる"ストレートニュース"にとどまっていた。
大坂が「事態の収拾をはかる最良の方法」として、今大会からの棄権を自身のソーシャルメディアで表明したのが、現地時間の5月31日夜9時ごろのこと。
『レキップ』紙はそのニュースを6面に急遽差し込み、対向ページには3年前に作成した「テニス選手の会見とメンタリティ」がテーマの記事を編成して再掲載した。ちなみに1面は、初戦で快勝したフェデラー。また、大坂が投稿した日のうちに、電子版にストレートニュースを掲載した。
翌6月1日の朝、『レキップ』紙チーフエディターのルフェーブル氏は、電子版の大坂のニュースに800を超えるコメントがついたのを見て、驚いたという。
「通常、テニスのニュースにここまで多くのコメントがつくことはありません。フェデラー対ナダルなどの試合があると、両選手の熱狂的なファンが書き込みますが、そうでもないかぎりとても珍しいことです」
それらコメントの内容も、多岐にわたっていたという。
記者会見の在り方や存在意義を問うもの、そして、大坂の一連の行動に関する賛否......。
ただ、それら多様な書き込みに通底するのが、アスリートの鬱や精神状態に対する人々の深い関心だった。コメントの数や内容からしても、日ごろテニスをそこまで見ていない人たちもこのテーマについて発言していると、ルフェーブル氏は感じたという。
「テニスを超えて、あらゆるスポーツや、スポーツをとりまく社会全体の出来事として、人々は鬱や情緒不安定について関心を抱いているのだと感じました」
それはもしかしたら、コロナ禍により人々や社会全体が閉塞感に包まれていることも無関係ではないのかも......。そんな私見も、ルフェーブル氏は控え目に口にした。
いずれにしても、これだけ多くの人々が注目するこのテーマをしっかり取り上げるべきだと、同紙のスタッフは判断する。そこで、大坂の棄権発表の翌日にはFFT(フランステニス連盟)やWTAに、選手の精神面をケアする体制がどの程度整っているのか、そして今後いかに改善していくのかなどの取材に着手した。また、ゴルフなどテニスと似た競技性を持つ競技団体に対しても、同様のアプローチを始めたという。それら特集記事は近いうちに、同紙に掲載されるはずだ。
困惑を呼ぶ大坂の意思表明から始まった今回の一連の騒動は、大会やファン、メディア、そして当の大坂の誰もが望まぬ形で終焉を迎え、あとには悲しみが残った。
ただ、彼女の行動と告白が社会に投じた一石は、人々の感情を揺さぶりながら波紋を広げ、ひとつの潮流を生み出そうとしている。
●セリーナ、大坂なおみを「抱きしめてあげたい」…ナブラチロワ「とても悲しい」  6/2
テニスの全仏オープン女子シングルスに出場していた大坂なおみ(日清食品)が5月31日、うつの症状を明かし、大会を棄権した。選手や関係者からは、励ましや、問題の打開策を求める声が相次いだ。
大坂と同様に若くして頂点に立ったセリーナ・ウィリアムズ(米)は、かつて記者会見への出席を不安に感じたことが何度もあったといい、「彼女の心がわかる。抱きしめてあげたい」と語った。また、大会側の選手の精神面に対するサポートについて「前進させる必要がある。(選手には)相談できる場があることが重要」と指摘した。
男子の西岡良仁(ミキハウス)は、コート内外で幅広く活躍する大坂には大きな重圧があり、「僕にはわからない部分がたくさんある」とした上で、「(記者会見では)記者には聞く権利がある。答えるかどうか彼女が判断できれば良かったと思う」と話した。棄権については「すごく悲しい。コロナ禍もあり、多くの人が、苦しい中でも戦っているなおみちゃんの姿を見たかったと思う」と語った。
女子シングルスで四大大会18勝のマルチナ・ナブラチロワさんは、自身のツイッターで「なおみの件はとても悲しい。選手は体のケアについて指導を受けるが、精神面は軽視されている。これは記者会見をする、しない以上の問題」と記した。 ・・・
●「難しい…」渋野日向子が大坂なおみの会見拒否について私見 6/2
渋野日向子が、今週出場するメジャー大会・全米女子オープンの会場で、大坂なおみの会見拒否について「すごく難しい」と前置きしたうえで私見を述べた。
大坂はテニスのグランドスラム・全仏オープンで“会見拒否”の姿勢を打ち出し、賛否の嵐を巻き起こした。罰金1万5000ドル(約165万円)が科され、さらに今後も続けるようならグランドスラムの出場停止となる可能性も示唆されていたなか、結果的に棄権という選択をした。
その一連の状況をみて、競技こそ違えど、同じくその分野のトップを走る渋野は、「半分くらいのアスリートの皆さんは大坂なおみ選手の気持ちが分かると思う。私もどちらかというと分かるかな」と心中をおもんぱかった。さらに「取材拒否で心が楽になるのかと思いきや、色々なメディアや大会関係者などの様々な意見で心を痛めてしまったのかな」と話し、「何が正解か分からない」など慎重に言葉を選んだ。
“アスリートのメンタルヘルス”を大坂が訴え巻き起こった騒動だが、渋野自身も「調子が悪い時、自分の中だけで整理したいことをまた口に出すのは個人的にはすごくつらい部分もある」と話す。そして「自分の言ったことを正確に世間の皆さんに分かってもらうことは難しい。分かってもらえる人に分かってもらえたらいいですし、みんなに伝えるのはすごく難しいことは分かるので、特に何も思わない」という考えも示した。それでも会見などについては「やらないといけない、アスリートの使命」という意識も強い。
最終的にはうつという言葉も発した大坂をはじめ、アスリートの繊細さについては「それは人によりますしね。私みたいに全然ヘラヘラしてたり(笑)」と渋野らしい言葉で個人差を強調。自らのことが書かれた記事については、「全部ではないけど、自分の名前が出てるとやっぱり気になる。“おもしれ〜な〜”って思いながら(読む)」と豪快に笑った。
最近では動画やSNSで自ら情報発信するアスリートも増えている。渋野もYouTubeチャンネルを持ち、そこで大会前などに心境を語ることは多い。これについても「自分が思っていることを言えている。それを発信してもらえているのはすごくうれしいですし、動画になって自分が言っているからこそすごくいい」と話した。
●メンタルトレーナーに聞く 重圧とどう向き合う?<大坂なおみ全仏棄権> 6/2
テニスの四大大会、全仏オープンを5月31日に突如棄権した大坂なおみ(日清食品)は、ここ数年うつ症状に悩まされていると告白した。強い重圧を受けるトップアスリートが、精神面で問題を抱えることは決して珍しくはない。選手や周囲はどう向き合うべきなのか。
アスリートのメンタルヘルスに詳しい近大の西田順一教授(スポーツ心理学)は「テニスは心の格闘技といわれるくらい冷静さを保ちながら闘争心を振り起こして相手に向かっていくスポーツ。心のめりはりを付けるのは難しい」と指摘する。
大坂は近年、急激に世界ランキングを上げてきた。初めて100位以内に入ったのは2016年。そこからわずか4年余りでグランドスラムを計4度制し、ランキングは一桁に。SNSでも積極的に思いを発信する23歳への注目度は、日に日に増していった。
告白の引き金となったのは試合後の記者会見の拒否。西田教授は「完璧主義で感受性が豊か。感情をリセットできない中で会見を行うのは難しく、ストレスを感じたのではないか」とおもんぱかる。
04年からアスリートを心理面で支えてきた日本メンタルトレーナー協会理事の浮世満理子さん(57)も、「気持ちが落ちてしまう質問もある。自分がサポートする選手には、かき乱されないようにシミュレーションするが、そういうトレーニングをしていない場合はしんどいかもしれない」と話す。
大坂はかつて会見を拒否したことや、会見で「泣きそう」と言い残して途中退席したこともある。四大大会では会見出席が義務となっているが、テニス選手もサポートする浮世さんは「選択する自由はあってもいいのでは」と提案。「試合に臨む選手は集中力が極限まで研ぎ澄まされ、過敏な状態。高いパフォーマンスが出せる半面、会場のにおいや客席で誰かが歩く音など、われわれが『そんなこと?』と思うようなことにもストレスを感じる」と明かす。
復調へ必要なのは、自分が何にストレスを感じ、どうしたいのかを確認すること。浮世さんは「独りで抱えると結論が早くなってしまう。ゆっくりと話を聞いてもらい、状況を整理できると、落ち着いてくるはず」と強調する。
●大坂なおみ「長い間うつに苦しみ続けた」…会見拒否の真意明かす 6/2
女子テニスの大坂なおみ(23)=日清食品=が31日(日本時間1日)、自身のツイッターで出場中の4大大会、全仏オープン(OP、パリ)を棄権すると発表した。優勝した2018年全米OP以降「うつに悩まされてきた」と初めて告白。開幕前の記者会見拒否宣言から、4大大会主催者側の厳罰警告という前代未聞の事態は、誰も望まない悲しい結末を迎えた。
大坂が秘めてきた胸の内をさらし、予想以上に発展した事態に終止符を打った。「大会、他の選手、そして私自身の健康のためにも私が辞退するのが一番」と決断。会見拒否に至った理由の説明不足を謝罪し、「18年の全米OP以降、長い間うつに苦しみ続けた」と真実を明らかに。2月の全豪OPに続く4大大会2連勝が懸かっていた戦いから自ら身を引いた。
人見知りで内向的な完璧主義者は、18年3月のBNPパリバOPでのツアー初優勝から重圧と向き合う日々が始まった。セリーナ・ウィリアムズ(39)=米国=の出産・休養で混戦状態の女子テニス界に現れた新星は注目を集めた。同9月の全米OPで幼い頃から憧れたセリーナを決勝で破り優勝。セリーナを応援する観衆からブーイングさえ起きた会場での表彰式で「ごめんなさい」と涙する人柄は、さらにファンの心を引きつけた。
コロナ禍でツアーが中断した20年春に「シャイでいるのはやめた」と宣言。積極的な意見の発信で人種差別に抗議し、2度目の全米制覇で若きオピニオンリーダーとしての地位を確立した。スポンサーはますます増え、米メディア「スポーティコ」は女子スポーツ選手最高額の年収5520万ドル(約60億円)と報じた。
一方で苦しむ心を時折のぞかせた。試合中に自らのミスに怒り、泣き、ラケットを壊す。「遠征が続くとホームシックになる」と大会出場数を絞った。初めて目にする料理はじっくり観察して口にするほど慎重な性格は、多くの視線を集め、容赦ない質問が飛ぶ会見には不向き。コーチら「チームなおみ」の関係は良好でも心までは支えきれない。17年4月から寄り添うマネジャーがコロナ禍で常には帯同できず、今回の厳罰を辞さない態度の主催者と溝が深まる遠因にもなった。
復帰の道筋は「少しコートを離れる」と記した本人にしか分からない。ただ、関係者は「ウィンブルドンはフィフティーフィフティー。でも東京五輪は出るだろう」とみる。自国開催の五輪は一生に一度あるかないかの舞台で、金メダルは「最も欲しいもの」の一つ。日本で試合をする喜びがモチベーションになる可能性は高い。「会うべき時」が来ることを、日本の、世界のファンが待っている。 
 
 
●精神科医が解説する大坂なおみ「うつ告白」の勇気 6/3
大坂なおみ選手が全仏オープンの棄権をSNSで表明した中で、2018年の全米オープン以来「うつ」に悩まされていることを告白した投稿が、波紋を広げています。試合後の「記者会見ボイコット」をはじめとする、大坂選手の突発的な行動や発言を、どのように捉えればいいのでしょうか。
「闘う」か「逃げる」どちらかの反応だけに
大坂選手とは、お会いしたことも診察したこともありませんので、今回の話は、精神医学の一般論としてお伝えします。以下、お伝えする精神医学的な知識、人間の「感情コントロール」の仕組みを知っていると、みなさんの日常生活の感情コントロールにも役立つはずです。
記者会見ボイコットと批判的ツイートのニュースを見たとき、大坂選手が「うつ」であることは明かされていませんでしたが、精神的に非常に疲れた状態にあることはわかりました。それは、大坂選手の言動に「他責(他人を責める)」傾向が認められたからです。
普段は人の悪口を言わない人が、突然、他人を強く責めたりするのは、強い「不安」を抱え、追い詰められた状態にあることを示しているからです。強いストレスを抱え、不安が強まると、脳の「危険の警報装置」である「扁桃体」という部分が興奮します。
「扁桃体」が興奮すると、脳内物質ノルアドレナリンが分泌し、「不安」感情とともに「闘う」か「逃げる」か、どちらかの反応しかとれなくなります。
「闘う」というのは、「他責」傾向を示す。攻撃的になる。他人を責める、批判するといった行動です。例えば、うつ病の患者さんが病初期に、会社や上司を責めるということはよくあります。
しかし、脳が健康な状態であれば、「理性」や「理論」で、扁桃体の興奮を鎮めることができます。例えば、仕事で失敗して上司にこっぴどく叱られたとき、「バカヤロー!」と心の中で叫んだとしても、面と向かって上司に「バカヤロー!」と怒鳴りつける人はまずいません。
なぜならば「そんなことを言ったら大変なことになる」という「理性」「理論」(大脳皮質のコントロール)が働くからです。
しかし、長期的にストレスがかかり、「脳疲労」(脳が疲れた状態)に陥ると、大脳皮質のコントロールが利かなくなる。つまり、言ってはいけないことを、感情にまかせて言ってしまう。わかりやすく言えば、「キレやすい」状態に陥るのです。
うつ状態に陥ると起こること
大坂選手が「うつ状態」であると考えると、「記者会見のボイコット」も、致し方ないことであると思えます。
うつ病の重要な症状として「人と会いたくない」「人と話したくない」というものがあります。うつの患者さんが、人と会う。とくに、自分と親しくない人と会うことは、ものすごい精神エネルギーを消耗します。
もともとコミュニケーションが得意ではなく、記者会見やインタビューが苦手な大坂選手にとって、うつ病によくある「人と会いたくない」症状が強まっていたとするならば、記者会見への出席は尋常でないストレスとしてのしかかったはずです。
思わず、そこから逃げ出してしまったというのも、非常に納得がいきます。人間が追い詰められたときにとる行動は、「闘う」か「逃げる」しかないのですから。
大坂選手が精神科医の診察や治療を受けているのかはわかりませんが、うつ状態に陥ると、自分で冷静で論理的、正しい判断をすることは困難となります。ほとんどのうつ病患者さんは、無理に無理を重ねて仕事を続けてしまいます。
ですから、第三者がストップさせるしかなかったでしょう。それができるのは、医者です。ドクターストップがかかったとすれば、関係者やファンも「しょうがない」と納得せざるをえないでしょうから。
一般的に「うつ病」は、よっぽど重症にならない限り、他人が見てもわからないものです。実際、うつ病で入院する患者さんが、前日まで会社で普通に働いていて、会社の同僚もまったくその人がうつ病だと気づかないことはよくあるのです。
それは、自分が病気であることを他人に知られたくない。「取り繕い」という心理が働くからです。つまり、本当は「元気がない」「もう限界状況」なのに、人前では、それを知られたくないために「陽気に」「明るく」ふるまうのです。そのため、精神的エネルギーが猛烈に消耗して、精神的にさらに疲れ、うつ病を悪化させます。
「うつ」を明かした大坂選手の勇気
今回「うつ」をカミングアウトした、大坂選手の勇気はすごいと思います。逆に、今までそうした「弱音」をはけなかったこと、プレーヤーとして「強い大坂なおみ」を演じ続けてきたのは、ものすごいストレスだったはずです。一般的に、病気のカミングアウトをすることで肩の荷がおりる。精神的に楽になる場合が多いです。
また、世界のマスコミや有名なテニスプレーヤーたちが、今回の「うつ」のカミングアウトについて、共感的なコメントを多く寄せていたのにはホッとしました。メンタルの問題に対しては、まだまだ差別や偏見が強く、さらにバッシングが強まった可能性もありえましたから。
とにかく、今はそっとしておいて、ゆっくり休んでいただきたい。そして、東京五輪のテニスコートで、再び活躍する姿を見せてほしいです。
●会見拒否、うつ病告白 大坂なおみ選手が戦ってきた差別と誹謗中傷 6/3
5月下旬に発表された2021年度版のスポーツ選手長者番付で年収約60億円と女子選手最高額となったのは、テニスの大坂なおみ選手だ。スポーツ選手全体でも世界で15位にランクインした彼女は、プレーヤーとしてはもちろんオピニオンリーダーとしても注目され、順風満帆に見えていたが、2018年の全米オープン優勝以後、じわじわと追い込まれていた──。
すべてはこのSNS投稿から始まった。
《私はローランギャロス(全仏オープン)では記者会見を行わないことを表明します。アスリートの心の健康状態が無視されていると、記者会見を見たり、参加したりするたびに感じていました。何度も同じ質問をされたり、私たちが疑念を抱く質問を受けたりすることが多く、私は自分を疑うような人の前には出たくありません》
現在、フランス・パリで行われているテニスの4大大会(グランドスラム)の1つ「全仏オープン」。その開幕前の5月27日、大坂なおみ選手(23才)が記者会見を拒否すると宣言したことが、世界中を巻き込む大騒動に発展している。
SNSでの言葉通り、大坂選手は30日の1回戦での勝利後、記者会見場に姿を見せず、大会側は規定違反により165万円の罰金を科した。さらに4大大会の主催者は合同で声明文を出し、次のように警告した。
「このままメディアへの義務を無視し続けると、さらに違反につながる。違反を繰り返すと、大会からの追放、多額の罰金、4大大会への出場停止など、より厳しい制裁を受けることになる」
大坂選手に対して理解を示す声がある一方、ノバク・ジョコビッチ選手(34才)や錦織圭選手(31才)らテニス界のスタープレーヤーたちからは疑問の声が上がった。これまで20年近くグランドスラムを取材してきたスポーツライターの山口奈緒美さんも、大坂選手のような「会見拒否」は過去に例がないと話す。
「負けたあと、会見をせずに帰ってしまったり、途中で退席した選手ならいくらでもいます。しかし、最初からやらないというのはおそらく初めてのケースです」
過去にはセリーナ・ウィリアムズ選手(39才)が、記者からの質問を受けて涙ぐんで退出。ロジャー・フェデラー選手(39才)が「バカな質問をしないでくれ」と記者を一喝したこともあった。だが、これらの事件はあくまでも会見中の出来事。大会前から会見に参加しないと決めた選手はいなかった。
あまりに事態が大きくなったため、大坂選手の姉で、この3月にプロテニスプレーヤーを引退したまりさんは、ソーシャルメディア『Reddit』に文章を投稿。
《彼女は自分の心を守っている。それが、彼女が『メンタルヘルスのために』と明かした理由です》と大坂選手を擁護。《私は妹の行動を全面的に支援します》と表明したが、この投稿はすぐに削除されてしまった。
「家族の“火消し”に効果はまったくありませんでした。鎮静化するどころか、日に日に騒動がエスカレートしていく様に驚き、お姉さんは投稿を消さざるを得なかったのでしょう」(テニス関係者)
うつ病を告白した本当の理由
大坂選手の言動がスポーツ界だけでなく世界中から注目を浴びたのは、今回が初めてではない。人種差別抗議運動を象徴する「Black Lives Matter(BLM)」に強い姿勢を示したことがきっかけだった。
昨年8月、米ウィスコンシン州で起きた警察官による黒人男性銃撃事件に抗議するため、大坂選手は出場予定だった「ウエスタン・アンド・サザン・オープン」の準決勝を棄権する意思を表明した。続く全米オープンでは、7名の犠牲者の名前を書いたマスクを毎試合着用したことでも話題を呼び、注目のなか見事に優勝を果たしている。
「一連の抗議活動の際、彼女は『私はアスリートである前に黒人女性』と発言。応援の声が上がる一方で、『スポーツに政治を持ち込むな』や『黒人なら日本人ではない』などの誹謗中傷もありました。
日本からの差別的な声もあったが、彼女は毅然としていた。BLM以降は、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(当時)の女性差別的な発言に関する質問などに対しても“無知から生じた発言だと思う”などと、はっきりと自分の考えを述べています」(山口さん)
だが、彼女のこうした強気な言動は、繊細で内向的な自分を隠すためだったのかもしれない。5月31日、大坂選手は全仏オープンの2回戦の棄権を発表した。そして、自身のTwitterで一連の発言をこう弁明した。
《私は2018年の全米オープン以降、長い間うつ病に悩まされ、その対処に本当に苦労してきました。私は人前で話すのが得意ではなく、世界中のメディアに向かって話す前に大きな不安に襲われて緊張してしまいます。このパリの地で、すでに私は弱気になっており、不安を感じていたので自己管理をして記者会見を欠席したほうがよいと考えました》
さらに、大会主催者に謝罪の手紙を書いたことも明かした。トップアスリートが一転、心の病を告白したことで、再び世間は揺れているが、なぜ彼女はあのような発言をしたのだろうか。
山口さんが注目しているのは、5月が米国の「メンタルヘルス啓発月間」だったことだ。
「過去には雑誌『ELLE』でセレブが過去のうつ経験をカミングアウトしていて、大坂選手が大好きなビヨンセも自身のことを話しています。全仏前にナーバスになっているなか、なんらかのアクションを起こしたかったのかもしれません」(山口さん)
いまでこそ、オピニオンリーダーとしての地位を確立し、女子アスリートとしては60億円という世界一の年収を誇るが、ここまでの道のりは険しかった。ハイチ系アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた大坂選手は米国内でマイノリティーとして育ってきた。
「彼女がテニス選手として頭角を現してきた10代前半頃、インターネットでは『大坂はブラジアン』という書き込みがあふれていました。『ブラジアン』とは、ブラックとアジアンを合わせた差別用語。彼女はずっと『私は黒人で日本人』と言っていましたが、記者会見でも人種や国籍を問われることが多く、やがて『私は私……』と答えるようになっていました。
テニス界は白人中心の世界ですから、彼女がトッププレーヤーでも誹謗中傷の的になり続けた」(別のテニス関係者)
現在、インターネットのSNS上では、アスリートに向けた差別や誹謗中傷があふれている。欧米では社会問題となり、ついに4月30日から5月3日まで、欧州サッカー連盟などが旗振り役となり、他競技の組織や団体にSNSの利用を一時停止するよう呼びかけた。
「国際テニス連盟もこの動きに加わりました。目下、テニス界では大坂選手への誹謗中傷が最も目立っていますから、連盟も彼女のメンタルを守ろうとしていたとは言えます」(スポーツジャーナリスト)
そんな彼女を支えているのが、恋人でラッパーのコーデー(23才)だ。
「彼と行動を共にするようになってから、大坂選手の言動はさらに強いものになっていきました。ただ、恋人でさえも、彼女の本当の不安を取り除くことはできなかったのでしょう」(前出・別のテニス関係者)
大坂選手は今夏開催が予定されている東京五輪に日本代表選手として出場することが確実視されてきた。だが、今回の騒動で出場が危ぶまれ始めている。
「たとえ五輪が開催されてもいまの精神状態で試合をするのは難しいでしょう。2019年に日本国籍を選択したのは、東京五輪に出場するためです。本人は“絶対に出る”と意欲を見せているようですが……」(前出・別のテニス関係者)
これまで大坂選手は、テニスコートで厳しい視線や声に耐えて戦い続けてきた。社会を変え得る力を持ったアスリートとして再び堂々とセンターコートに立ってほしい。
●不調告白「一流プロほど困難」、「後出し」批判戒め―大坂なおみ選手棄権 6/3
うつ症状を公表し、全仏オープンを棄権した女子テニスの大坂なおみ選手。当初は突然の会見拒否が波紋を呼んだが、世界ランク2位の現役選手が精神面の問題を告白したことは、より大きな衝撃をもって受け止められた。メンタルヘルスの専門家らは「精神失調への偏見はいまだ強く、スポンサーを持つトップ選手ほど症状を明かすことは難しい」として、選手が抱える精神的重圧への理解を呼び掛けた。
多くのアスリートを精神面から支えてきた日本メンタルトレーナー協会理事の浮世満理子さんは「自分がメンタルヘルスに課題を持っていると告白するのは、普通の会社員でも非常に勇気がいること」と指摘。一部では、大坂選手が初めからうつ症状を告白していればここまで騒動は大きくならなかったとの意見もあるが、「後出しとの批判こそ、傍観者の後出しじゃんけんだ」と戒めた。
精神疾患の当事者や家族でつくる「全国精神保健福祉会連合会」の小幡恭弘事務局長も「うつ症状に対する偏見は強く、周囲に言わない人は多い」と理解を示す。「大坂選手は会見を受ければ精神状態が悪化すると感じ、やむなく回避したのではないか。予想外に批判を受けたことで、事情を明かさざるを得なくなったのだと思う」と思いやった。
日本スポーツ精神医学会理事で、精神科医の堀正士・早稲田大教授は「トップ選手になるほどスポンサーをはじめとしたさまざまな利害関係が生まれ、完璧な人物像を求められる」と指摘。「選手は負傷したら休養するものだが、精神失調は目に見えず周囲の理解を得にくい。選手も一般の人と同じように不安やうつに悩まされると知ってほしい」と語った。
●大坂なおみ現役引退の恐れも…「うつ病告白」で危ぶまれる東京五輪出場 6/3
大坂なおみの「うつ病告白」で、世界中に波紋が広がっている。
5月30日に開幕したテニスの4大大会、全仏オープンを前に、大坂は大会期間中、すべての記者会見に応じない意向を自身のツイッターで明かしていた。
《アスリートの精神状態のことを考慮していない》
当初、この投稿には批判が殺到。同大会の責任者でもあるフランステニス連盟のジル・モレトン会長は「受け入れられない!」と憤慨し、1万5000ドル(約165万円)の罰金を科した上、大会追放などの警告を出した。
さらに、男子テニス世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチも「会見はツアー生活の一部」と否定的な意見を述べ、OBも含めたテニス選手や他のアスリート、日本のテレビ番組のコメンテーターなどからも大坂は世界的なバッシングにさらされたのだ。
「一時は大坂も態度を硬化。自身のインスタグラムに、『さようなら。これでせいせいする』という意味のタイトルの人気ラッパーのアルバムジャケット写真を掲載するなど、徹底抗戦の構えを見せていましたが、5月31日には、うつ病を告白したのです」(スポーツ紙記者)
これで世論は一転。F1王者のルイス・ハミルトンら世界のトップアスリートらが擁護のコメントを出し、『めざまし8』(フジテレビ系)のMCも谷原章介も前日の放送で批判的な意見を述べたとして謝罪する事態に。
「慌てたのは、東京五輪組織委員会や日本オリンピック委員会の関係者です。全仏を棄権するほどですから、東京五輪も出場できなくなる恐れがある。金メダルに最も近い日本人アスリートの1人ですからね。療養のために不参加となれば、強行開催≠ノ向けての雰囲気作りにも悪影響が出かねない」(同・記者)
東京五輪不参加で済めばいいが、このまま現役引退の恐れもあるという。
「これまで黒人差別問題などにもメッセージを送ってきたが、スポンサーへの配慮もあり、言いたいことを自由に言えないストレスもあったのでしょう。スパッと現役引退して療養。その後は知名度を活かして政治家に転身し、差別問題に取り組むことだってできる。何より昨年、推定5520万ドル(約60億円)の収入があり、最も稼いだ女性アスリートになった大坂は、ここで辞めても一生食っていけますからね」(テニス専門誌の元編集者)
何とか病気を克服し、再びコートでなおみスマイルを見せてもらいたい。
●全仏棄権の大坂なおみ「うつ病告白」に違和感を感じてしまう理由 6/3
女子テニス世界2位の大坂なおみ(23=日清食品)が大会前の宣言どおり、5月30日に行なわれた全仏オープン1回戦後の記者会見を拒否。その後2回戦の棄権し、うつ病に苦しんでいたことも公表した。
大坂選手がうつ病であったと公表してからは、厳しい言葉を残していたコメンテーターなども態度を軟化させているが、それでもやはり大坂選手の姿勢に違和感を感じている人も多いようだ。
うつ病告白で論点がすり替わった
もちろんアスリートが常にプレッシャーと共にあり、否応なき批判にも耐えていることは理解できる。大坂選手の心身の回復を心より望んでいるが、だからこそ彼女が何かを発信すればするほど、彼女のメンタルを追い詰める結果になっていることが皮肉であると思うとともに、哀しくも思う。
筆者は、アスリートの心身に負担をかける会見は義務化しなくてもいいのではないかとも思っていたので、大坂選手の主張も理解はできるし、必要な問題提起でもあると感じていた。
しかし大坂選手が「うつ病であったこと」を公表したことによって当初、彼女が意図していた「選手に会見を義務化させるのは良くない」という論点がすり替わってしまった。それが一番残念に思う。
そもそも大坂選手のスタンスには一切、"対話"というものが存在していない。
決められたルールにのっとり、義務を果たしたうえで"誠実"に変革を求めるのが、社会人、そしてスポーツマンとしてのあり方だと感じる。
会見はしたくないけれど、SNSでは主張はしたい。グランドスラムは棄権はするけれど、五輪には出たい。風向きが変わってきたから、うつ病であることを告白した――。もちろんメンタルヘルスに理解を示していくことは重要だが、今のままだと大坂選手は義務は捨て置き、うつ病を免罪符に自身の権利のみを主張しているように映ってしまいかねない。
そしてそれは、「うつ病って2カ月程度休んだら、五輪に出られるぐらい軽いものなのか?」と、うつ病に対する理解を遠ざけてしまう恐れもある。大坂選手は、来月開幕する東京五輪については、体調などを見ながら出場したいとする意思表示したと報じられている。これが本当だとしたら、実際に今うつ病と戦っている人たちについて誤った印象を与えてしまう懸念すらあるだろう。
必要なのは「主張」ではなく「対話」
ツイッターで大坂選手は、〈現状は私が想像したものではなく、数日前にツイートした際に意図したものではなかった〉と弁明したが、本当に他の選手のことも考えたうえで、プレーしやすい環境づくりのために主張したのであれば、一方的な「主張」ではなく、「対話」の中で自らの言葉を伝えなければ、根本的な問題は何も解決しないだろう。
テニス界のメンタルヘルスに対する理解の向上が目的ならば、大会前に診断書と共にうつ病であることを主催側に明かしたうえで対話をしていたら、今のような大坂選手にとって負担になるような展開にはならなかったのではと思ってしまう。
そもそもファンや企業などに応援してもらうためのチャンスとして会見を"利用する"くらいのメンタルがなければ、アスリートとして長く成功するのは厳しいのかもしれない。
特に繊細さを持つ大坂選手にとって今の風向きは、うつ病を悪化させてしまう恐れもある。
そのためにメンタル面だけでなく、また精力的にテニスに邁進できるよう大坂選手に対する"ポジティブなイメージ"を保つためのサポートも必要だろう。
何の曇りもなく、大坂なおみを心から応援できる日がくることを願ってやまない。
●大坂なおみ「うつ病」告白でもネットでは無神経な批判続くのはなぜか 6/3
テニスプレーヤー・大坂なおみ(23才)が全仏オープンの棄権と「うつ病」を告白したことから、それまで「身勝手だ」「会見も仕事の一つ」「未熟だ」などと批判の声が多数だった空気が変わり、心配する声が多数出た。
大坂が告白した内容は衝撃的だった。5月31日、大坂は長らくうつ病に苦しんでいたことをツイッターで発表。棄権することが他の選手が全仏でテニスに集中できるために必要だったと述べた。
棄権に至った理由を長文で述べるとともに、うつ病であること、人前で喋ることが本当に苦手であることなどを説明すると「そこまで苦しかったんだ……」といった同情論がメディアを中心に噴出し、主催者側も謝罪した。
一方、いまだに厳しい声が出ているのは一部のネットだ。「無責任」「後だしじゃんけん」といった無神経な声が書き込まれているのだ。
大坂はこれまでスポーツ以外の数々の問題に自身の意見を発信してきた、いわばオピニオンリーダー。それゆえ、ここ数年、叩かれやすい状況にあったとネットニュース編集者の中川淳一郎氏は語る。
「大坂さんはBLM(ブラック・ライブズ・マター)運動をはじめとした社会的イシューに積極的に情報発信してきました。それに対して『スポーツに政治を持ち込むな』と批判され続けた。あとは試合中、怒りのあまりラケットを投げたりする行為にも『スポンサーに失礼』『子供たちに悪影響』などと批判されていました。あとは、日本国籍なのに日本語があまりしゃべれないことに対しても批判されていますし、何かと『日本人らしくない』と言われ続けてきました。これは明らかに言いがかりです。
こうした状況が続くうちに、今、5ちゃんねるでは、『彼女は何があろうが叩いても構わない』という暗黙の了解的なものができてしまった。書き込みからすると保守派の男性が大坂さんを良く思っていないのではないでしょうか。いわゆるポリコレに反発する流れは彼らの中ではありましたが、その象徴が大坂さんになり、『叩いてもいい存在』になっている。つまり、自分たちこそ被害者だ、という感情です」
だが、今回は、大坂が長年苦しんできたという、うつ病の告白だ。一線で活躍するスポーツ選手がメンタルの不調を抱えながら、それを明かすことは多くはない。それは、トップレベルで活躍する選手ほど、弱い面を見せてはいけないという意識が働くからと言われる。そんな彼女の告白に、スポーツ選手を含む多くの人たちが「勇気がある」と称えている。
そうした“決意の告白”にも、ネット民が辛辣な声を上げ続けるのはなぜなのか?
「ネットは過去の“何か”を持ち出して絶対に許してくれません。過去にやらかしてしまったりトラブルを起こした人の名前をネットで見ると必ずそのやらかしやトラブルが書き込まれ、批判の題材になる。一度叩かれたら一生忘れない執念深さがあります。大坂さんも、今回のように病気の告白であっても、何をしようが、『ラケット投げ』などと以前の行動をもとに叩かれ続けてしまうのです」(中川氏)
例えば、立憲民主党の蓮舫議員が、スポーツの日本代表などが優勝したときに祝福コメントを出すたびに「2位じゃダメなんですか?」と言われ続けたり、木下優樹菜がSNSで発信するたびに、タピオカ店への恫喝騒動のことが蒸し返されたりするケースも同様だという。ネットは匿名ゆえ、偏ったバッシングが広がりやすく、とにかく執念深いのだ。
そんななか、ネットでは最近、微妙な変化が出てきたという。
不倫騒動を起こしたアンジャッシュ・渡部建に関する報道で、メディアに対して苦言を呈する声が出ているのだ。不倫疑惑がキャッチされた有村昆や清田育宏(千葉ロッテマリーンズを契約解除)に関する記事で、渡部がからめられて報じられた場合「関係ねぇよw こじつけすぎ」「渡部ってなんでもこじつけで記事にされてるなw」「渡部は嫌いだけど、なんでも渡部の復帰の話題に繋げるってのはよくない」などの意見が増えている。
「ネットの人々は、偏っている面はあるものの、『強者』たるメディアが過度に誰かを叩き過ぎると反発する面があり、判官贔屓になる。今や渡部さんは時々『擁護される人』になった。こうした変化は時にあります。ただ、相変わらずネット上は人を叩いてばかり。関係ない他人の人生を叩くのは自分の人生にとっては無駄だと割り切れないのですかね?」(中川氏)
メンタルが傷ついた人への無責任なバッシングは、その人をさらに追い込みかねない。今回、大坂は「(記者会見は)緊張するし、出席して自分にできる限りの答えを出そうとすることが、いつも大きなストレスになっている」と“弱さ”を率直に明かした。まずは一刻も早い回復が待たれる。
●大坂なおみ選手の棄権報道で感じた「うつ病」という言葉を扱う危険性 6/3
テニスの全仏オープンに出場中だった大坂なおみ選手による、自らの精神状態を公表したツイートが全世界で話題となっています。日本のメディアは大坂選手の書き込みに基づき「うつ病に悩まされていた」と伝えましたが、識者はどう見たのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ−河合薫の『社会の窓』』ではストレス研究をメインに行なっている健康社会学者の河合薫さんが、当報道に違和感を抱いた理由を記すとともに、「病気などに関する言葉を扱う際には慎重かつ正確さが必要」と注意を喚起しています。
大坂なおみ選手の発言として報じられた「うつ病」という言葉の危うさ
大坂なおみ選手にまつわる話題が、この数日間飛び交っています。
「会見拒否宣言」には賛否両論いろいろありました。一方、自身のSNSを更新し、全仏オープン2回戦を前に棄権すると発表してからは大坂選手を心配する声が日本だけでなく海外でも広まっています。
しかし、日本のメディアが「『うつ病』に悩まされていたことを告白」と一斉に報道したことには違和感が拭えません。
以下は、大坂選手のツイッターの文言です。
The truth is that I have suffered long bouts of depression since the U.S. Open in 2018 and I have had a really hard time coping with that. — 大坂なおみ May 31, 2021
おそらく「うつ病」と報じたメディアは、depression=うつ病と訳したのでしょうが、depression=うつ病とは限らないし、depressionという単語は、気分が落ち込んだ状態のこと。
私はストレス研究をメインに行なっているので、大学院時代には「抑うつ=depressive symptoms」と「うつ病」は全く違うと厳しく指導されました。「抑うつ」という言葉は一般的には馴染みがないかもしれませんが、抑うつ状態とか、抑うつ症状といった具合に、病名ではなく「気分が落ち込んだ状態」を示す言葉です。
一方、日本語の「うつ病」に相当する言葉は、「major depressive disorder」で、正式には「大うつ病性障害」です。うつ病の診断は極めて難しいとされ精神疾患の診断・統計マニュアル=DSMが、国際的に利用されています。
DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)は、「熟練した臨床家=医師」の「精神疾患の診断を助けること」と「治療計画につながること」のためにあり、アメリカ精神医学会が1952年に第1版を出版して以降、改訂を重ね、現在は2013年(日本語版は2014年)に出版された第5版が使われています。
また、「うつ」という単語も単独ではなく「うつ症状」「うつ状態」「うつ病」など、それぞれ異なるレベルの概念の言葉として用いるのが正しいのです。
「うつ」という言葉が一般化するようになり、メンタルクリニックを受診しやすくなったり、職場などでもメンタル不調を訴えやすくなるなどなりました。
しかし、その反面、「うつ病」の概念が曖昧になり、医師や研究者から「うつ」という言葉の正しい使い方の提案が度々されてきました。
新しい言葉が生まれることで、それまで「仕方がない」と諦めたり、置き去りにされていた問題にスポットがあたり、解決につながることは往々にしてあります。
しかし、言葉だけが一人歩きすると、苦悩する人を量産させたり、差別などにつながることもしばしば。特に、病気などに関する言葉は慎重かつ正確さが必要です。
「言葉」が及ぼす影響力は、想像以上に大きいのです。
いずれにせよ、プロ選手は勝ってなんぼであり、大坂選手がコートで最高・最善のパフォーマンスを発揮するためにはメンタルヘルスを良好に保つ必要があった。depressionを避ける“coping”として、「会見を行わない」ことを望んだとしたなら、大坂選手の代理人が主催者サイドと事前にコミュニケーションできればよかったのでは?と個人的には思います。
だって、勝つことが何よりもスポンサーを喜ばせるころになるし、利益をもたらすわけで。そして、何よりも苦手とするクレーコートで成功体験できればそれが大坂選手のメンタルヘルスを強化するリソースになったはずです。
今回の出来事が大坂選手にとって、さらなるストレスにならないことをファンとしては祈るばかりです。  
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
2021/6