Robert Heindel

1938-2005 
米国オハイオ州生まれ、 60年代より「サタデーイブニングポスト」「タイム」誌等に作品を提供。1978よりバレエを描いた個展を開く、1982 ダラスバレエ団を題材にした作品が、コマーシャルアーティストの最高賞ハミルトンキング賞に輝く。1986 ミュージカル「キャッツ」「オペラ座の怪人」を描き話題となる。
 
 
 
 
1963初めてみたバレエに魅了され、愛妻ローズ「あなたはいずれバレエにかかわることになる」との予言通り、バレエを描くことを生涯のライフワークとした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
人間は生きている限り未完成です ある意味で一人の人間の完成とは死のことでしょう
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ロバート・ハインデル 
(Robert Heindel、1938-2005) アメリカ合衆国オハイオ州生まれの画家。1960年代よりバレエやミュージカルを主題とした作品を描く。1978年、ダラスバレエ団をモチーフとした作品が、ハミルトンキング賞を受賞した。
1938年、オハイオ州トレドに生まれる。1962年、デトロイトへ移住し、アートスタジオに就職、独学で絵画を修学する。1963年、偶然手に入れたチケットで観賞したイギリスロイヤル・バレエ団のショーに感銘を受け、ダンスおよびダンサーの躍動感を表現するために筆を取ることを決意。
1968年にコネチカット州に移住、『TIME』や『PLAYBOY』などの雑誌へイラストを寄稿。1978年にダンスをモチーフとした初の個展を開催した。1982年、ダラスバレエ団を題材にした作品が、全米イラストレーション協会よりハミルトンキング賞を受賞。名が知られるようになり、全国で個展や展示会を開催したが、その一方で、イラストレーターからファインアーティストへと転身。欧米の著名なバレエ団から公演前のリハーサルに招かれて取材を行うようになり、イギリス・オランダ・日本でも作品を発表。美術専門誌『ギャラリー・インターナショナル』では「現代のドガ」と称された。1986年、ミュージカル『キャッツ (ミュージカル)』『オペラ座の怪人』を描き話題となる。肺気腫が進行した2003年秋以降も自宅アトリエにて創作を続けたが、2005年、コネチカット州の自宅で死去。66歳であった。
 
親交
コレクターとして、ダイアナ、モナコのキャロライン王女(カロリーヌ・ド・モナコ)、高円宮憲仁親王などが知られ、クリント・イーストウッド、ジョージ・ルーカスや、『キャッツ』『オペラ座の怪人』などの作曲家アンドルー・ロイド・ウェバーなどからも敬愛された。草刈民代などとも親交があった。
 
受け継がれた志、そして超克の美
拍手、喝采、讃美−。世界中の名だたるステージに立ち、スポットライトを受けてきた著名なバレリーナやダンサー達。そんな踊り手たちの過酷な練習に励む精神力や伝統芸能に対する姿勢に共感し、その情熱と魂を描き続けることに生涯を捧げた画家、ロバート・ハインデル。そして、彼のDNAを色濃く受け継ぎファインアーティストとして自らのスタイルを確立しようと画面に向かう息子のトッド・ハインデル。今年生誕80年となるロバート・ハインデルの功績を祝して、ハインデル親子二代展を開催いたします。
イラストレーターからファインアーティストに転向したロバートのアトリエで、幼少の頃から絵を描くことに興味を覚え、父の描いた作品を手直しして周囲を驚かせたという少年時代。トッドはロバートの影響で沢山の映画作品に触れたことから、大学卒業後はジョージ・ルーカスのIndustrial & Magic(ILM)に入り、ハリウッドで活躍。1997年、『Godzilla』の仕事を最後にハリウッドから離れると、家族の反対を押し切り、画家としての活動を始め、ニューヨーク、アムステルダムなどで個展を開催。それは、偉大な父を持った息子の宿命ではなく、彼自身が選んだ表現の手段だったのです。
ロバート・ハインデル生誕80年の記念すべき本展では、ハインデルの原画・版画25点の秀作に加えて、特別に1988年青山バレエフェスティバルのポスターとして使用され、ハインデル作品が日本初上陸した時に使用された作品「Hidden Thought(秘めた思い)」と、故ダイアナ妃所蔵の作品「Pas de Deux 1987」の2作品を遺族の許可のもとに版画化して発表します。また、近年父を魅了したバレエを数多く取材し、父とは違うバレエ絵画を追求するトッドの新作約10点もご紹介いたします。
父より子へ受け継がれた美の真髄に共鳴する精神性と豊かな表現力。息子が超克した新たな人間讃歌。バックグラウンドを共有した2人のファインアーティストのそれぞれの個性をその目で感じてください。
 
「メシアを待ちながら」
今日の1枚は、ダンスとダンサーを描くことに身を捧げ、現代のドガと称された画家の作品。ロバート・ハインデル作『メシアを待ちながら』です。そこに描かれているのは、傷だらけの白いフロアと、どこまでも続くような青い壁のバレエスタジオ。一体となって天を仰ぐ男と女。床には、ダンサーがどのタイミングでどこに動けばいいのかを確認するための、フロアマークと呼ばれるテープが貼られています。しかし、本来道しるべの役割であるフロアマークが、今日の1枚ではむしろダンサーを混乱させるかの如く、縦横無尽に描かれているのです。画家は華やかな本番ではなく、練習場で孤独に自分自身と向き合うダンサーを描き続けました。しかし今日の1枚は、練習場にしてはあまりにも異質な雰囲気を漂わせています。
1960年代、アメリカ自動車産業の本拠地であるデトロイト。ロバート・ハインデルは、自動車とファッションを中心とする広告のイラストレーターとして名を挙げました。そんな彼に転機が訪れたのは、24歳の時に見た英国ロイヤル・バレエ団のダンスでした。 幕が開いた瞬間、彼は心を奪われました。その後彼は、躍動するダンサーを1枚の絵に表現し続けることに生涯を捧げました。商才のあった彼は、売れる絵を描いていくことで画家としても成功します。しかしその一方、「動き」を捉えることはできても、バレエが持つ「感情の深み」を捉えられないと、もがき苦しむ日々が続きました。ハインデルは、自分だけが描ける絵は何かを自問するのです。
新たなモチーフを求めてスコットランドのグラスゴーへと立ち寄ったハインデルでしたが、彼の人生を揺るがす出来事が起こりました。 息子トビーが進行の早い癌に侵されていたのです。家族を愛していた彼は息子を思い、絵の創作に打ち込めなくなります。そんな時に、バレエ『メシアを待ちながら』と出会います。
その演目の中の、一体となって天を仰ぐ2人のポーズに、彼は心動かされます。支えられてより高く飛び立とうとするひとりと、支えながらも地上に戻るよう懇願するもうひとり。 支えるほうは、最期の時までも見逃さないようじっと相手を見つめています。天と地の、互いに逆向きの力を見せることで、常に動きを生み出すフォルムとなっています。ハインデルは、このポーズに混沌とするフロアの乱れを描き、その中に息子トビーのイニシャル「T」を描き込みました。 重力に反して、天に届かんと踏ん張る姿。稽古場でもがくダンサーたちは、人が生きる美しさと悲しさを漂わせています。初めて自らの感情をキャンバスにぶつけたハインデル。 その絵に込められた思いとは……。  

  
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