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■人の噂・諸話 噂や陰口・噂話をしてもいい相手・噂話に悩んだ時・噂話をする人の心理・噂話を打ち消す法・噂話が好きな人の心理・自分の噂話への対処法・うわさ好きな人・社内ゴシップ・社内の噂への対処法・[梅暦餘興]春色辰巳園・・・ |
【噂】物事や人の身の上について陰で話をする。風説。風聞。世評。 噂を言わば目代(めしろ)置け 噂をする時には見張り人を置いたほうがよい。 噂をすれば影 人の噂をすると当人がそこへ偶然やってくるものだ。 人の噂も七十五日 世間がいろいろと噂をするのも一時で、やがて世間は忘れてしまう。 |
【人の噂も七十五日】 悪い噂も良い噂も75日も経てば忘れ去られてしまう。だから、悪い噂で負けそうになっている時もじっと踏ん張って時が経つのを待つのだぞという言葉。 あるいは人の気持ちは移ろいやすい物だという事を表した言葉。 この75日と言う言葉を使った物では同義のことばには「良きも悪きも75日」「世のとりざたも75日」などがあり、それ以外にも「初物を食えば75日長生きできる」などと言う物がある。 昔の文献をひもとくと、14世紀の前半に書かれた「源平盛衰記」の中に「人の上は百日こそ申すなれ」と書かれており、この時代には人の身に起こった出来事など100日あれば忘れられてしまうと言う諸行無常を言われていた。 これが75日として出てくるのが江戸時代、19世紀の1830年に書かれた「人情本・春色辰巳園」の中には「人の噂も七十五日、過ぎたむかしは兎も角も、今じゃあ実の兄弟どうぜん」と言う記述が出てくる。 さらに1886年作の歌舞伎「盲長屋梅加賀鳶」の五幕には「たとへ世間でとやかうとおまえの事を言はうとも、人の噂も七十五日、僅か一月か二月だ」と言うセリフがある。 この「75日」にはこれといって深い意味がないとも言われているが、1つの説として、野菜?などの種をまいて収穫するまで約75日かかると言う事で、ひとつの区切りとして75日になったといわれています。 日本には細かい季節の分け方に二十四節季がありますが、これは一節季がほぼ15日で、五節季(75日)も過ぎる頃には季節もまったく違う物になっていると言う意味もあるとも言われています。 あるいは中国の陰陽道の影響で、七や五はめでたい数字とされて(七五三などもその関係)、その噂はそのめでたい7や5がつく日には消えているだろうとも言う説もある。 海外にも同様のことばが存在するが、その忘れられる日数が違っています。 お隣の韓国では「人の噂は90日」と少し長くなっているが、季節が変わると言う意味ではちょうど3ヶ月なのでこちらの方が正しいとも思える。 英語のことわざには「世間の噂もたった7日」と言うものがあり(9日と言う場合もある)これは聖書で決められた「七日間」と言うくぎりが元になっているのではないかと思われる。 The public memory is a short one. A wonder lasts but nine day. It will be a nine day’s wonder. |
「75日」 野菜などの種を撒いてから収穫するまでにはおよそ75日かかるため、これが一つの区切りになっているという説が有力とされている。 また、日本には二十四節気という季節の区切り方がある。365日を24等分しているので、一節気はおよそ15日。昔から五節気経てば新しい季節になると言われていたから、15×5=75日となる。75日たてばまったく新しい季節がはじまるため、そのころには噂も忘れられているというのだ。 |
「75日」と五行思想 どんな噂もひとつの季節が終われば人々は忘れ去るものだ・・・ではひとつの季節が何故75日か。昔のカレンダーは年によって春夏秋冬の期間が70〜75日あります。さらに現在夏の土用として知られている土用が各季節の始めに18日間ありました。18X4=年間73日ここから昔の人は体験的に季節は75日ぐらいで移り変わるものだと知っていたようです。つまり、今のように一年を4季節で考えるのではなく、5季節で考えていたという説です。 昔の人は一年を5日ごとに区切り72侯と見たり24季節(15日ごと)といってもう少し大きな区切りをしたり、現在とかなり違う季節感を持っていたので、上記の説も説得力があります。いずれにしても噂は3ヶ月も続かず忘れ去られるということです。 |
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【風説】うわさ。風評。 【噂町】京都島原遊郭の「出口の茶屋町」の別称。水茶屋であるが、昼間、端傾城を揚げて遊ばせもした。 【沙汰】物事の是非や善悪などをとりさばくこと。裁判。訴訟。公事。問題として論議すること。検討。評議。情報を与えること。決裁されたことについての指令。指図。命令。下知。報知。報告。通知。消息。たより。話題にすること。評判。うわさ。 【物議】世間の議論。世間の取りざた。世人の批評。うわさ。論議。紛争。もめごと。 物議を醸(かも)す 世間の論議を引き起こす。 【世評】世間の評判。世上のとりざた。 |
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【面目】世人に対する体面や名誉。世間からの評価。 面目が立つ 名誉が保たれる。顔が立つ。 面目丸潰れ 非常に面目を傷つける。ひどく名誉をそこなってしまう。 面目を失う 名誉を傷つけられる。自分の不手際によって世評を悪くする。体面をそこなう。 【衆評】多くの人の批評。世間の評判。世評。多くの人による話し合い。衆人の評定。大衆の評議。 【虚像】あるものの実態とは異なるイメージ。 【街談】世間のうわさ。世評。風説。 【風聞】ほのかに伝え聞くこと。うわさ。さまざまにとりざたすること。 【風評】世間であれこれ取り沙汰すること。評判。うわさ。風説。 【評判】世間で取りざたすること。世評。うわさ。 【虚説】事実無根であるさま。そらごと。浮説。つくりごと。 |
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【伝】(つて)人の話。ひとづて。うわさ。仲立ち。とりなし。媒介。てびき。ついで。もののついで。折り。縁故。てづる。 【俗言】俗間の風説。世間の取りざた、うわさ。 【新聞辞令】 噂だけで実際に辞令が出なかったときなどにいう。 【虚声】事実に基づかない評判。まったく根拠のない噂。 【悪評】悪い評判、うわさ。悪く批評すること。 【醜聞】よくない評判、うわさ。不品行の評判。聞くに耐えない風評。スキャンダル。 |
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【世間】仏語。生きもの(有情世間)とその生きものを住まわせる山河大地(器世間)、あるいはこれら二つを構成する要素としての五蘊(五蘊世間)の総称。人が生活し構成する現世社会。この世の中。この世。日々生活する自分の回りの社会やその状況。人々とのまじわり。世間づきあい。 世間が狭い 交際範囲が狭い。つき合いが狭い。世間に関する知識が狭い。肩身が狭い。 世間が立つ 世間への義理が立つ。世間に対して申しわけが立つ。多く打消の形で用いられる。 世間が詰まる 世の中が不景気である。不景気で金のやりくりがつかなくなる。 世間が張る 世間づきあいが広くなったり、みえをはったりするために出費が増す。 世間が広い 交際範囲が広い。つき合いが広い。世間に知れ渡っている。世間に関する知識が広い。 世間する 世間に出て交際する。世間づきあいをする。 世間に鬼はなし 世の中には悪い人ばかりでなく、よい人も存外に多いもの。慈悲、人情はどこにもあるものである。渡る世間に鬼はなし。 世間の口に戸は立てられぬ 世人の噂を防ぎとめることはできない。 世間は張り物 世渡りをするにはみえをはるのがふつうである。 世間は広いようで狭い 世の中は広いようで案外狭いものである。 世間晴れて 公然と。大っぴらに。天下晴れて。 世間を狭くする 世間に対する信用を失い、交際の範囲を狭くする。肩身を狭くする。 世間を張る 広くつきあったり、世間に対してみえをはったりする。 世間をやめる 世間づきあいをやめて、出家や隠居をする。 |
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【喉・咽・吭】大事なところ。急所。 【喉元・咽元】咽喉(いんこう)部、食道と気管とに通じるあたり。のどのあたり。のどのところ。 【喉元思案】 きわめてあさはかな考え。 喉元過ぎれば熱さを忘れる 苦しいこともれが過ぎると簡単に忘れてしまうたとえ。 喉が渇く ほしいものを見てうらやむ。人の美しい衣装や持ち物などをうらやみ欲しがる。 喉が鳴る うまそうなものなどを見て食べたくてうずうずする。はなはだしく欲求が起こる。 喉から手が出る ほしくてたまらないたとえ。 喉の鎖 (人の命のつなぎとなる鎖の意)のど。 喉の下へはいる 人を扇動して自分が利を占める。うまく取り入る。こびへつらう。 喉を(やく)して背(せ)を拊(う)つ 前後から急所を攻めて、避ける道がないようにする。 |
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【耳】聞くこと。聞こえること。聞く能力。聞く気持。聞いた話。聞こえてきた事柄。うわさ。聞こえ。 耳驚(おどろ)く 耳にして驚く。聞いて驚く。めずらしいと聞く。 耳が痛い 他人のいうことが自分の弱点をついていて、聞くのがつらい。 耳が肥える 音楽・話芸などを聞き味わう能力が豊かになる。 耳が遠い 耳がよく聞こえない。聴覚がにぶい。 耳が早い 噂などを聞きつけるのが早い。すばやく物事を聞き知る。耳ざとい。 耳順(したが)う年 (「論語‐為政」の「六十而耳順」による)60歳。耳順(じじゅん)。 耳留まる 耳ざわりに聞こえる。耳にはっきり聞こえる。耳立つ。耳にとまる。注意を向けて聞く。聞いて注意が向く。聞いて納得がいく。耳にとまる。 |
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耳に入る 聞こえる。他人のいうことや音、情報などがおのずと聞こえる。聞いて知る。聞いて理解する。 耳に入れる はなしを聞かせる。告げ知らせる。聞いて知る。 耳に逆らう 聞いて不愉快に思われる。耳に障る。 耳に障る 聞いて不愉快に思う。耳に当たる。耳に逆らう。聞いて注意が向く。耳にとまる。 耳にする 聞く。 耳に胼胝(たこ)ができる 同じことを何度も聞かされること。耳たぼに胼胝。 耳に立つ 聞いて心にとまる。聞いてそのものに注意がひかれる。 耳に付く 物音や声などが耳にとまって、いつまでも忘れられなくなる。同じことを何度も聞かされ聞き飽きている。 耳に挟(はさ)む ちらっと聞く。ふと耳にはいる。小耳に聞き挟む。 |
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耳の穴を広げる 注意して聞く。 耳の障子 鼓膜(こまく)の俗称。 耳の間(ま) 物音の聞こえない間。耳の休んでいる間。 耳の役に聞く 耳があるのでしかたなく聞く。いやいやながら聞く。 耳を洗う 世俗の栄達をきびしく避ける。 耳を疑う 聞いたことが信じられない。 耳を掩(おお)うて鐘を盗む 自分では悪事をうまく隠しおおせたと思っても世間は皆知っている。 耳を貸す 人のいうことを聞く。相手の相談にのってやる。 耳を傾ける 注意して聞く。熱心にじっと聞く。傾聴する。 耳を聞く 話を耳にする。噂、評判などが耳にはいる。 |
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耳を信じて目を疑う 人のいうことは信じるが、自分で実際に見たものを信じない。遠くのことをありがたがって、近くのことを軽んじる。 耳を澄ます 聞こうとして注意を集中する。注意して聞く。 耳を揃(そろ)える 金額を不足なく整える。 耳を立てる 聞こうとして注意を集中する。耳を澄ます。 耳を潰す 聞いても聞かないふりをする。知っていても知らないふりをする。しらばくれる。 耳を塞ぐ 聞こえないようにする。また、しいて聞かないようにする。 |
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【物忘】物事を忘れること。失念。悲しみや苦痛を忘れる。 【面忘】他人の顔を見忘れる。 【空忘】(そらわすれ)すっかり忘れてしまうこと。うっかり忘れること。忘れたふりをすること。 【忘形見】忘れないようにと遺しておく記念の品。父が死んだとき母の胎内にあった子。一般に親の死後に遺された子や子孫をいう。遺児。 【忘勝】よく忘れるさま。忘れることがしばしばであるさま。 【度忘】それまでは知っていたことを何かの拍子にふと忘れてしまい、努力してもいっこう思い出さないこと。 【忘咲】(わすれざき)小春日和の頃、時節はずれに花が咲くこと。 【忘花】(わすればな)忘れ咲きの花。時節を過ぎて咲く花。 寝覚めが悪い ある事が気になったり重荷になったりして気が安まらない。良心がいたむ。心が安まらない。 |
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【手形】信用の根拠となるもの。身の保証となるもの。表向きの理由。口実。だし。 【二百十日】立春から数えて210日目に当たる日。9月1日頃がそれに当たり台風の襲来が最も多い時期で、稲の開花期にあたる農家は厄日として警戒する。 【遣り過ごす】なすがままにしておく。相手のするままにして何もしないでいる。「見て見ぬふりでやり過ごす」 【透かす・空かす】(すかす)身をかわす。やりすごす。 【違える】そむいて裏切る。約束や言いつけを破る。反故にする。まちがえる。 |
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出典「マルチメディア統合辞典」マイクロソフト社
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出典不明 / 引用を含む文責はすべて当HPにあります。
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■人の噂・諸話 | |
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■噂や陰口 | |
あなたの周りに他人の噂ばかり言っている人はいませんか? 噂話のほとんどは陰口であり、つまり悪口です。そんな噂や陰口にどう対応したらいいのでしょうか?
■噂や陰口とは 噂というのは、本人のいないところで、その人のことについて話をすることです。 「上司からこんなことを言われた」 「あの人からこんなことを言われた」 日頃の人間関係でストレスを受けますので、その人がいないところで悪く言います。 また、変わったことをしている人がいると、「あの人この間、こんなことをやっていたんだけど、信じられないよね」とお茶のついでに話題にし、笑いものにしてストレスを解消しようとします。 他にも、噂をしている人がいると、「あの人があなたのことをこう言っていたよ」と本人に教えてあげて、反応を見て楽しみます。 ですから噂話のほとんどは悪口です。これを陰口といいます。 そして、噂話のほとんどは、本当かどうかも分かりません。 ウソであることもよくありますし、最初は事実であったことも、聞いた話に尾ひれをつけて伝えるため、本人に伝わる頃には、相当脚色され、誇張された大げさな話になっていることも、ままあります。 このような噂話について、お経には、このような話が伝えられています。 ■噂に一喜一憂する親子 農業を営む父と子が一日の仕事を終えて家に帰る途中、通りすがりの人がささやくのが聞こえます。 「馬鹿な親子だな、二人で馬を引いて行くより、だれか一人、乗ってゆけば疲れないのに……」 それを聞いた息子はなるほどと思い、父親を馬に乗せて手綱を引きます。すると向こうから来た二人がすれ違いに、「かわいそうに、子供も疲れているだろう」とヒソヒソ話をしています。 それが聞こえた父親は、あわてて馬を下りて、遠慮する息子を馬に乗せて馬を引きます。 すると、今度は数名の人ががやがや話をしながらやってきて「あの息子は年老いた親父に馬を引かせて、自分が気楽に乗っている。何と親不孝な奴だろう」とあきれたように話しています。 それを聞いた2人は相談して、誰からも非難されないように、2人とも仲良く馬にまたがります。ところが次の旅人から、「ひどい親子もあるものだ。あんな小さな馬に大の男が二人も乗って、何という無茶な奴らだろう」という声を耳にします。 そして相談の末、最後は2人で馬をかついで歩き、周りの人々から大笑いされた、と伝えられています。 ■噂にならないためには? 同じことをブッダは『法句経』にこう説かれています。 「人は黙して坐するをそしり、多く語るをそしり、また少し語るをそしる。およそこの世にそしりを受けざるはなし」 (『法句経』227) 黙っていれば「何黙ってるんだ」とののしられ、たくさんしゃべれば「しゃべりすぎだ」とうるさがられ、少ししか話さないと「思ったより無口ですね」と悪く言われます。結局、何をしてもそしられるということです。 他人の意見に、静かに耳を傾ける心の広さも必要ですが、他人の噂や陰口に一喜一憂していては、何もできないということです。 逆に、噂話や陰口にまったく動じなかった僧侶の逸話も伝えられています。 ■白隠と酒屋の娘 江戸時代、白隠という禅宗の僧侶がいました。あるとき、門前の酒屋の看板娘と評判の美少女が、未婚なのに子供ができたのです。封建時代の当時、そんなことをしては大変です。だんだん目立ってくるにつれて、噂はたちまち世間に広まり、父親は娘を強く責めました。 本当の事を告白すれば大変だと思った娘は、生き仏といわれている白隠さんの子供だと言えば、なんとか事は穏便に収まるだろうと、苦し紛れに、そっと母親に 「実は、白隠さんのお種です」と打ち明けたました。 それを聞いた父親は激昂して、「やいやいやい、白隠いるか!」 土足のまま寺へ暴れ込み、悪口の限りを尽くします。 それでも怒りは収まらず、慰謝料と子供の養育費を請求しました。 ところが白隠は、「ああ、そうであったか」といいながら、若干のお金を渡したのです。 まさか白隠さんにそんなことはあるまいと、それまで信じていた人たちも、とんでもないニセ坊主であったかと、「白隠が慰謝料を払った」という噂はパッとそこら中に広まります。 ところが白隠は、聞くに耐えない世間の悪い噂にも、「謗る者をして謗らしめよ、言う者をして言わしめよ。言うことは他のことである。受ける受けざるは我のことである」と、少しも心にとどめません。この考え方は、後のアドラー心理学に通じるところがあります。 思いもよらぬ展開と世間の反響に苦しくなった酒屋の娘は、ついに本当のことを親に白状せずにいられなくなりました。 真相を知った親は二度びっくり。「白隠さん白隠さん、申し訳ない……」 娘を引きずって寺へ行き、平身低頭、土下座して、重ね重ねの無礼をわびました。 白隠は、その時も「ああ、そうであったか」とうなづいただけだったといいます。 真面目に平和に暮らしていても、時として、根も葉もない噂や悪口に驚き、悩み、苦しみ、腹が立つことがあります。 しかしそんなことに一喜一憂する必要はありません。お釈迦さまは、このように説かれています。「花の香は風に逆らっては流れない。しかし、善き人の香は、風に逆らっても世に流れる」 (『法句経』54) 事実は、時間はかかっても世の中にだんだん伝わっていきます。そして、やがて時の流れが洗い出す事実は、名人の打つ太鼓のように遠く世に響くのです。 ところが問題は、自分が誰かの噂話をしていないかということです。 ■噂や陰口を仏教では両舌という 噂や陰口を、仏教では「両舌(りょうぜつ)」といいます。人間の色々な悪を10にまとめられた十悪の一つに数えられます。 「両舌」とは、「離間語」ともいわれて、仲のいい2人の間をさいて、仲が悪くなるようなことを言うことです。 『雑阿含経』にはこのように教えられています。 「これを伝えて彼に向かい、彼を伝えてこれに向かう、遞(たがい)に相破壊し、和合する者を離れしめ、離れば歓喜す。これを両舌と名づく」(『雑阿含経』) AさんとBさんが大変仲良しだと、あれを一つ仲悪くさせてやりたい、間へ水をさして離れさせてやりたいという心が出てきます。 他人が仲良くしているとねたましく嫉妬の心が起きるのです。 あの人たちの仲を悪くさせたいと思ってAさんに、「ちょっとちょっと、Bさんあなたのことね、ここだけの秘密と言って、こんなこと言ってたよ」 「え?Bさんそんなこと言ってたの?人は分からないものだね。私仲良くしていたのに」 次の日、Bさんの所へ行って、「びっくりしたよ。あなたAさんと仲良くしてるでしょ、あなたのことひどいこと言ってたよ」 「えーAさんそんなこといってたの?人というのは分からないものだね」こうして二人の仲にひびが入ります。 次の日、AさんとBさんが会ってみると、確かに今までと様子が違います。こうしてだんたん疎遠になってAとBは仲違いします。それを高台から眺めて、「しめしめうまくいった」と思います。これを「両舌」といいます。 仲のいいAさんとBさんに、まるきり違ったことを言って仲を裂きますから「離間語(りかんご)」ともいいます。「二枚舌」ともいいます。 ここで気をつけないといけないのは、たいていの噂話は、悪口なので、両舌が始まっているということです。その場にいない人の話題を出すときは気をつけなければなりません。 ではどうすればいいのでしょうか? ■必ず人から好かれる方法 何かひどいことをされたからといって、「あんなことをされた、こんなことをされた」と言いふらして歩くと、必ず嫌われます。 嫌われたいと思ったら、噂話をすれば、嫌われます。 逆に、できるだけ他人の長所を発見してほめるようにすると好かれます。 本人のいないところでも、その人のいいところを言うと、やはり本人の耳に入って好かれます。 例えば姑さんなら、お隣の姑さんの所へ行きます。そして、「うちの嫁はいい嫁で、掃除洗濯、何でも私の言うことははいはい言ってくれるんですよ」とお嫁さんのことほめます。 これは、必ずまわりまわってお嫁さんの耳に入ります。するとお嫁さんは、1回で好きになります。 「私は一回もそんなことしてないのに、おかあさんが、私のことほめてほめてほめまくっている。お母さんがほめてくれる半分でもしなかったら申し訳ない」と家庭内の人間関係もひっくり返ります。 これは誰でもわかる簡単なことですが、問題は、実行するかどうかです。 そして、今までのような噂話をしないように、できるだけ他人をほめるように心がけると、自分が普段どれだけ陰で悪口ばかり言っているか、今まで気づかなかった自分の姿が知らされて来ます。 自分が幸せになるには、自分自身を知らなければなりません。仏教を聞き、本当の自分の姿が知らされたとき、本当の幸せになれるのです。 それでお釈迦さまは、このように悪い行いを戒めて、善い行いを勧められ、導いておられるのです。 |
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■人の悪口、噂話をしてもいい相手、いけない相手 | |
悪口や噂話は、人と仲良くなるための「必要悪」です。悪口なんて言わないという人もいますが、まわりから「面白くない人」「得体が知れない不気味な人」「悪口のひとつも言えない小心者」……と、マイナスの評価を与えられかねません。
心理学的見地に立つと、悪口は攻撃行動です。人間を含む動物はすべて、自己防衛のための攻撃本能を持っています。しかし、通常の社会生活では、肉体的な暴力に訴えることはルール違反。だから、言葉による“口撃”によって欲求不満を解消するのです。 ただし、誰にでも悪口や噂話をしていいというわけではありません。話す相手をわきまえる必要があります。 話し相手としてもっとも避けるべきは、上司でしょう。その上の部長や役員、社長は論外です。 たとえば飲み会の席で、できの悪い部下の文句を言ってしまったとします。それを聞いた上司は「オレのこともこんなふうに言いふらしているんじゃないか」という印象を抱くかもしれません。職場でおとなしい人ほど、要注意。酒の席で人のことをペラペラしゃべっていると、「こいつは調子がいいやつだ」と思われてしまいます。 本人に直接進言するのはもってのほかです。よく、飲み屋などで「オレに言いたいことがあれば何でも言ってくれ」と言う上司がいますが、その手に乗ってはダメ。腹を探られているだけです。ビジネスシーンに無礼講などありません。上司が悪口や噂話をしかけてきたら、それに軽くのる程度にとどめておくのが正解です。 よく学生時代の友人や家族に愚痴をこぼす人がいます。しかし、それではあまりストレスを解消できません。 悪口を言うとすっきりするのは、「カタルシス効果」が働くためです。カタルシスとは、古代ギリシャの劇場に集まった観客を精神分析学者のフロイトが説明した理論。人は演劇や芝居を見るとき、登場人物と自分の経験を重ね合わせて泣いたり憤ったりします。このように抑圧された感情を外に出し、精神を浄化することをカタルシス効果といいます。 カタルシスを得るための鍵は共鳴です。上司や部下の悪口を言う場合、その人物のことを知っているか想像できる相手でなければ、話が先に進まないはずです。不満を十分に表出できなければ、すっきり感を味わうことはできません。 同僚ならば似た不満を抱えている可能性が高く話は盛り上がりそうですが、ライバル関係にある相手だったら危険です。上司に密告されたら、目も当てられません。悪口の対象は上司ではなく部下にとどめましょう。 相手として一番ふさわしいのは、異動や転職で今は直接的な利害関係のない元同僚でしょう。業務内容が近い他部署の同期も、共鳴してくれるかもしれません。 評価に対する上司への不満がたまっているのならば、部下に話すのもいい。自分より下の者と比較して優位性を確認することを、心理学では下方比較といいます。 ただし、部下や利害関係のない同僚でも気をつけなければいけないポイントがあります。“悪口の相性”です。自分ばかりが悪口を言って、相手はうなずくだけ。これでは、人としての評判を落としかねません。対象者をほめたりけなしたり、また相手の不満も聞いたりしながら、許容範囲を探りましょう。相性のいい相手を常に2、3人確保しておけば、いざストレスを吐き出したいときも安心です。 最後に悪口を言う際の注意を3つほど。1つ目は、学歴や身体的特徴にふれないこと。第三者を話題にしているつもりでも、話し相手がそのテーマについてナーバスになっている可能性があります。 2つ目は、話し相手との関わりが深い人の話はしないこと。対象者を相手が慕っていたら、相手をけなしていることになります。 3つ目は、適度なところでやめること。悪口は楽しいものですから、ついしゃべりすぎてしまう。しかし、ある段階からお互いに不愉快な気持ちになってしまう。一方的な攻撃だけでなく、ところどころで「まあ、自分にも悪いところはあるけれど」といったエクスキューズをいれてバランスを取りたいですね。 |
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■噂話や陰口に悩んだ時は? | |
「心ない悪口を言われて傷ついたり悲しくなってしまっている人ってたくさんいる」
「もっとも前向きなだけの人間なんていないし、後ろ向きなだけの人間もいない。誰だって、時に前を見ながら、時に後ろを振り返りながら、もちろん左右や上下を確認しながら生きている。」 ■彼を知り己を知れば百戦殆うからず 敵についても味方についても情勢をしっかり把握していれば、幾度戦っても敗れることはなくなります。 ■噂話や悪口を言う心理。 噂話とは、世間で言いふらされている話、つまり世間話です。人と人との繋がりのある社会に生きていれば避けては通れない事象です。好んで噂話を漁っている人も居ます。自分の思惑がそこにないつもりでも加担する側に回っていることだってあります。 「何かにケチをつける喜び。それを味わうと、何か良いものに心動かされる喜びが私たちから、奪われてしまう。」 「幸せでもそうでなくても悪口言う人は居る。そういう人は弱い人間なんですよ。」 「相手を貶めて自分が安心するためにグチを言う」 「悪口言う時は、さも自慢げに自分が正しいのだと人を見下したり裁いたりする」 「あまりに自己評価が低いと人が褒められる事で自分が責められているように想う場合もあります。だから誰かの褒め言葉が気に食わず思わずその誰かの悪口を言います。」 「人間関係の本質は芸能界もサラリーマンもみんな一緒。7割はねたみ・ひがみ・そねみでできています。それを知っているだけでスイスイ泳いでいけるようになりますよ」 「他の人と一緒に他人の悪口を言ってないと仲間外れにされてしまうと思っているのなら、それはいじめっ子に与する取り巻きとやっている事は同じ」 「一番手軽な会話のネタになるから。自分を優位において、誰かの話をする、というのが、話を盛り上げるには手っ取り早い」 ■逆に、噂話や悪口を言わない人の心理。 世の中全ての人が噂好きな訳ではありません。自分が嫌な思いをした時がいい機会。自分がどちらか側に所属しているか改めて自分を省みてはどうでしょう。 「「幸せ」だから、じゃない。人権意識の高さと人としての成熟度の高さは別物で本物の教養。それを少し後押ししているのが経済面や生活面や家族面での幸福度かも。」 「賢い人は、マイナスな事を口にする人間にプラスな事は返って来ないって知っている」 「悪口を言わないのは単なる習慣」 ■自分への噂話や批判、不快を感じる原因は何? 自分の心の奥底。自分自身で探って何に気持ちが引っ掛かっているのか見つけてみて下さい。 ■自分を理解されたい欲求があるから(甘え) 「人は誰しも、自分のことをわかってほしい生き物。」 「そもそも、「非難」に対し、いちいち腹を立てたり傷ついたりするのは、「自分はこれだけしっかりやっているのだから非難されないはず」と、期待や幻想があるからであります。しかし、この期待も幻想も、しょせんは甘え。」 ■自分が相手と同じレベルだから(同属嫌悪) 悩みがピークの時に言われるとカチンとくる言葉でもあるので、他人に発言する際には気をつけた方がいいです。 「相手の言葉に傷ついてしまうのは、あなたが相手と同じレベルだからです。怒ってしまうのは、あなたが相手と同じレベルだからです。」 「嫌いな人と、あなたはどこか似ていたりするのです。だから嫌いになったりするのです。少しづつで構わないから嫌いな人を理解してあげたらどうでしょう。自分を大事にするみたいに。」 ■他人の目が気になる(自己肯定感の低さ) 「批判されると、自分が生きていても仕方がないかのように考えてしまう人さえいます」 「自分で自分のことを肯定する「自己肯定感」「自己信頼」が弱いために、他人にそれを補って貰おうとしています。それが、褒めてほしい、認めてほしいという渇望になります。」 ■うわさ話の実態 「相手が頭の中で勝手につくりだした幻想というのは、自分自身のあり方とは無関係にいくらでも相手の好き勝手につくりだせてしまうもの」 「自分が人格を否定されたと感じる必要などなく、全部ただその悪口を言っている人の頭の中のことでしかない」 「相手がどう思っているだろうと気にしていても相手はさして気にしてない事が多い」 「他人のスキャンダルが解決されるのを真剣に望む人などいやしません。」 ■世間のうわさ話は防ぎようがない。 「人の口に戸は立てられぬ」昔から世の中の人というのはこういうものだと諦めるより仕方ありません。 「悪口を言うこと」そのものは、どんな人でも止めることはできません。 ■噂話なんてどうせ長続きしない、一瞬のもの。 人の噂も七十五日。芸能人のゴシップ記事のように噂話も鮮度が肝心、立てられた噂もあっという間に干からびてしまうものです。放っておけばどうせ自然消滅するような実態のないものに呑まれて自分が傷つかないこと。 「噂なんて、新しい種がどんどん湧いてでてくるものです」 「うわさなんていつか消える。そんなものに負けるんじゃないぞ。」 「人の噂なんて何年も続くものではないし、次のターゲットがみつかればその人の噂でもちきりになる。噂なんて無責任なものだから。」 「気にしない 気にしない 百年たったら みんな この世にいないんだから。」 ■他人の評価は千差万別、振り回されていたらキリがない 「人間はいつだってだれかにとってはいいやつで、だれかにとっては悪いやつです。」 「何かをしようとすると、必ずそれをほめる人とけなす人がいる。それは人によって大事な物が違うからだ。」 「人間の常識というものは、ふしぎな力で人を迷わすものだった。」 「自分がどういう人間であるかと、自分がどう見られているかは、必ずしも一致しない。」 「みんながただ賛成してくれる会話ほど、退屈なものはないよ。」 「人間が集まってかたちづくる世界には、必ず善と悪とのせめぎあいがあり、善だけに統一することも、悪だけに占められることもない。」 「ひとは思い通りに何もかもできるわけではございません。それでも進み続けなければなりませぬ。それができる者を信じるほかないと存じます。」 「世の中の評価は移ろいやすく、褒めてくれていた人が手のひらを返したように冷たくなったり、貶しめていた人がいつのまにか持ち上げてくれていたりと、自分ではコントロールできない。だからこそ、自分の中に軸を持つことが大事なのだ。」 「自分の心の中で正しいと信じている事をすればよろしい。どちらにしても非難を逃れることはできない。」 「君の言うことが事実なら、事実に反する噂など無視すればいいじゃないか。… 自分の心に問うて、やましくなければ、弁明などして廻る必要はない。」 「私は私が知っている最良を、私がなしうる最善を実行している。それを最後までやり続ける決心だ。そして最後の結果が良ければ、私に浴びせられた非難などは問題ではない。」 「世の人は我を何とも言わば言え 我が成す事は我のみぞ知る」 「君たちの時間は限られている。だから、他人の人生を生きるような無駄なことはするな。他人の考えにしばられたドグマ(教義)に惑わされてはいけない。他人の意見ではなく、自分の中の声を耳を澄ませなさい。そして、最も大切なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことです。自分の本当になりたい姿を知っているのは、自分の心と直感なのだから」 ■噂されるうちが花 「不当な非難は、しばしば偽装された賛辞であることを忘れてはならない。死んだ犬を蹴飛ばすものはいない。」 「噂されるうちが華」「嫉妬されるうちが華」ぐらいに日ごろから思う。”どうでもいい人”と思われるうちは嫉妬や噂の対象にもならない。 ■お互い様の精神か、抜け出すか。 「自分は人の悪口を言っているけれど、他人には何も言われたくないなんてのは虫が良い考え方です。自分だって時には人の悪口を言う事があるのだから、他人も自分の事を何か言っていたとしてもそれは当然の事と考えた方が良いですね。こう言う事はお互い様だよ。」 「日本ではふつう、子供に「他人に迷惑をかけるな」と教えるが、インドでは「他人に迷惑かけていることを自覚しろ」と教えるそうだ。たとえ、どんなに慎ましやかに生きていても、誰の世話にもならずに生きていける人などいない。他人に迷惑をかけないように注意するのも大事だが、迷惑をかけながら「生かされている自分」に感謝することを忘れてはいけない。」 「噂を気にする人は、自分が悪口を言って噂をつくる方か、自分が悪口を言われてひどく傷付いている方です。噂や批判を気にしたくないのであれば、まず、自分が人の批判や悪口を言うのをやめたら良いのです。まず、自分が人の批判や悪口を聞くのをやめたら良いのです。 ■流言は知者に止まる 根も葉もない噂は、愚かな者の間では広まるが、知恵のある者は真に受けないので、そこで止まってしまうということ。出典は「荀子」。 「賢明であるコツとは、何に目をつぶるかを知るコツ。」 「噂とはいい加減なものだ。たいてい噂のほうがよくできている。」 「批評家のいうことに決して耳を傾けてはいけない。これまでに、批評家の銅像が建てられたためしはないのだから。」 「人というのはミカンと同じだ。全部が食べられるわけではなく、皮やタネもある。お前は、ミカンの実の部分だけを見るような人間になりなさい。」 「自分が自分の耳で聞き、目でみたことだけ信用する、と決めています。ひとが「○○さんって○○なんだって」と伝聞でつたわってきたことは、話半分できいておく。そうすると、もしかして自分の悪口を・・・という気持ちも「面と向かって言われた事しか信じない」と思えばすこし被害妄想から抜けられるかも。」 ■気にしない。気になっていても堂々とした態度を貫くこと。 「陰口を言われても、嫌われても、 あなたが気にすることはない。 「相手があなたをどう感じるか」は 相手の課題なのだから。」 「自分の道に確信を抱くために、他人の道が誤っていることを証明する必要などない。そのようなことをする人は、自分自身の歩みに自信を持てない人なのだ。」 「気にしちゃいけないって思うこと自体が気にしていることで、どうせ堂々巡りなのよ。」 「気にしてよそよそしくしたり、おどおどした行動を取ったりすれば噂を作った人の思うツボ。それこそ喜ばせてあげるようなもの。」 「そんなこと言われても全く気にならない」という風に、(無理にでも)振舞うのがいい 「表面上は誰とでもそつなく仲良くする姿勢は大事。挨拶を欠かさないだけでも、十分礼を尽くすことになる。」 「内心すごく気になっていても、平気なふりをする練習をしましょう。それが出来れば、相手の立場に立って考える事が出来るという素晴らしい面になるので、自分自身で下す評価はともかく他者からの評価が高い方が多い。」 「噂をしても面白くない」「この人を敵に回したらやりづらくなる」と思わせるような行動を取る。そうすれば、だれも何も言わなくなる。 「幸せだから笑うのではない。笑うから幸せなのだ。」 「生きる技術とは、トラブルを排除することよりは、それとともに成長することにある。」 |
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■職場の噂話をする人の心理と対処法 | |
■職場の噂話の発生理由。噂をする人の心理とは?
職場で噂話は、もちろんいい噂なら問題ないですよね。噂をする方もされる方も幸せな気分になれる噂話なら何か悪い影響を及ぼすこともないはずです。問題は悪い噂話。職場で人の悪い噂話をしてしまう人はどんな気持ちなのでしょうか?ここでは、職場で噂話をする人の心理を解説します。 ■優位性を確認して安心を得ている 職場の人の悪い噂話をする人は、自分に自信がない、不安を感じているなどして何らかの悩みを持っています。本当は自分の悩みを素直に受け止めて解決策を考えていくのが適切な方法ですが、自分自身のコンプレックスと向き合うのは簡単ではありません。他の人が自分より劣っている、大変な思いをしていることを確認して、「自分は大丈夫」だと安心したいのです。つまり保身のために人の噂をするということ。反対に、自分自身が人の悪い噂話をしたくなったときは、噂話の対象が悪いわけではなく、自分自身に何か悩みを抱えているということが多いのですよ。 ■注目を集めたい 注目を集めたい、常に話題の中心にいたいという理由で噂話が大好きな人もいます。自分にしか持っていない情報を披露することで、周囲の人は興味をもって集まってくるでしょう。とにかく自分の話を聞いてもらいたい、寂しがり屋なのかもしれませんね。このタイプの人は噂話の対象にだけ興味があるわけでなく、とにかくいろいろな話が好きなので、時間が経過すれば興味が違う方向に行きます。 ■単なるストレス解消 お昼のワイドショーなどでよく見られる芸能人ネタは、一種の娯楽的な要素があります。本当のファンの人にとっては、自分の家族か友人のことのようにその人の話題だけが気になるということもありますが、ワイドショー全般が好きな人は完全な娯楽でしょう。 話題にされる芸能人の方からすればたまったものではないのでしょうが、世間は他人のプライベートにいろいろ言うことで、ある種のストレス発散をしているのです。職場の噂話好きな人も同じです。対象が芸能人だろうと、職場の人だろうと、人の噂話をすることでストレス解消しているのです。やっていることは幼稚ですが、悪意はそこまでないことも多いものです。 ■正義感が強いタイプも噂話をする 正義感が強いのは一般的にいいこととされますが、自分の正義感を信じ過ぎて他人を裁く癖がある人もいます。自分がいつも真面目にやっている、信じてやっていることを、他人はやってくれないとき、「どうしてあの人ばっかり!」と思うのです。自分自身が本当はしたいことを、他人がやっていることに対する嫉妬の場合もありますよ。正義感はあくまでも自分自身の信念。それを他人に押し付けようとするときに、噂話につながってしまうのです。 ■悪意をもって攻撃している もっとも問題があるのは悪意ある噂話で、特定の人を攻撃しようとして噂話を広める人もいます。このケースの場合は事実を歪曲することもあるので、身に覚えのない話がいつのまにか広がっていて嫌な思いをする人もいるでしょう。特定の人に対して嫉妬、恨み、劣等感を持つ場合などに攻撃するようになります。 |
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■職場で噂話の対象になってしまったときの対処法とは?
人の噂話には一定の距離を置くことで対処できますが、自分自身が噂話の対象になってしまった場合はどうすればいいのでしょうか。ここでは、噂話をされたときの対策を紹介します。 ■重要なのは悪意があるかどうかを見極めること 噂話は基本的に気にしないのが一番です。単に「おしゃべり好き」「ゴシップ好き」な人が言う話など、周りも特に気にしません。1〜2ヶ月も放置しておけば違う噂話が話題の中心になっていますから、下手に反撃しない方がいいでしょう。ただ、噂話をする人に悪意がある場合は様子を見極め、明らかに名誉棄損に該当する噂話をされたら上司などに相談します。そういう人は普段の自分への接し方などを見るとわかることも多いですが、とにかくビジネスライクに付き合いましょう。仕事上の話はしっかり行いにこやかに挨拶もすることで、「どちらが大人の対応をしているか」周囲も気づき始めますよ。 ■情報を与えることで満足させる 噂話をする人は憶測でものを言うので、ときにははっきりと事実を伝えると黙ります。例えば職場で異性の社員と普通に話していただけなのに、恋愛関係にあると噂された場合。「〇〇さんと仕事の話をしていたら噂されて困っているんですよね。私、学生時代から付き合っている人いるのに。」など言ってしまうのも手。噂をしていた人が「なーんだ。」となり、忘れてくれます。芸能人などの場合でも、スクープがでた後に会見を開くと大体マスコミ熱も冷めますよね。情報をある程度与えることで満足してもらい、興味をなくしてもらいましょう。 ■違う情報源から相殺してもらう 悪意ある噂話が流れてしまった場合、信頼できる人に頼んで別の噂を流してもらうのも一つの手です。簡単に例を挙げると「〇〇さんって嫌な人」という噂をされたら「〇〇さんは実はいい人」という噂をしてもらい相殺させるのです。「嫌な人」「いい人」という相反する2つの情報が流れたら、事実がよくわからないですよね。単なる噂話として気にしないか、自分自身の目で判断しようという気持ちになります。事実と異なる情報を鵜呑みにされることが避けられるというわけです。 |
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■職場で噂されないためのコツとは?
どんなにいい人でも噂話をされてしまうことはありますが、日々気をつけておくことで、ある程度は予防できます。ここでは、職場で噂話をされないためのコツを紹介します。 ■挨拶は完璧に 基本の挨拶ができない、いつもむすっとしている人は、そもそも好感度が低いです。好感度が低い相手に対し、何か噂の根拠が発生すると「ほらみたことか!」とばかりに攻撃してくる人がいます。挨拶がしっかりできて人あたりがいい人に対して、むやみに攻撃してくる大人は少ないでしょう。それこそ自分の稚拙さが際立ってしまいますよね。おかしな噂話をされないために、まずは社会人としてあるべき姿を心がけましょう。 ■壁を作り過ぎないこと 職場の人にプライベートな話をしたくないという人もいますし、その気持ちはよく分かります。ただ、あまりに壁を作り過ぎる人に対して他人はよく思わないもの。 「私はあなたのことを信頼していません。」と言っているようなものだからです。込み入った話をする必要はありませんが、自分の趣味や好きなものの話など、少しは自分の話題を提供するといいですよ。情報が何もない相手に対しては詮索したがる人もいるので、壁は適度な高さ設定が大事です。 ■寂しがり屋の人はたまにかまってあげる 噂話大好きなタイプの相手は、休憩時間などにこちらから話しかけるようにしましょう。流行りのグルメや話題のお店など、当たり障りのない話で十分。悪意なく噂話をしてしまうタイプには、好意的な姿勢で接すれば向こうも好意を持ってくれるので、あまり害はありません。おかしな噂がでたときにかばってくれることもあるので、最初から味方につけてしまいましょう。 |
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■職場の噂話に耐えられない!そんな人は転職も視野に入れよう
どんなに対策をして、気にしないようにしてても噂話が耳に入ってしまうこともあります。それが原因で仕事に集中できなかったり、ストレスが溜まって職場に行きたくなくなってしまうのはよくないです。そこで、本当に耐えられなくなった場合は、心を傷つける前に転職することも視野に入れましょう。 |
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■ヤバイ噂話、悪口、デマを打ち消す法 | |
■巷の会社には、どんなトンデモナイ噂が流れているのか
「社長と経理のAさんがデキているんだってさ。この前、営業のBさんが銀座で飲んでいたら、帰りがけに2人が仲良く歩いているのを見たんだって。それに打ち合わせと称して、2人はよく社長室にこもっているじゃない。どう見たってあやしいよね」 これは大手電機メーカーの系列IT会社で、誰1人知らぬ社員はいないというくらい有名になっている噂である。 Aさんはアラフォーの独身女性。前髪に紫色のメッシュを入れ、いつも柄物のハデなワンピースを着込み、会社勤めには不釣合いなケバイ雰囲気を漂わせている。一方、40代後半の社長は、現在の会社を本体から独立させた誰もが認めるヤリ手で、Aさんに対する寵愛ぶりを他の役員連中はとがめようともしない。だからなのか、当の2人は平然としている。 噂は人が集まるところに必ずといっていいほど立つもの。それも悪い噂やヤバイ噂ほど人の関心を呼んで、瞬く間に広まっていく。 ある不動産仲介会社の全国各支店の支店長には女性秘書がいて、必ず支店長の“お手つき”になると噂されている。「どうやら会社のトップが秘書との不倫を容認しているみたいだ。きっと自分も支店長時代に同じようなことをしてきたからなんだろう」と中堅の営業マンは顔をしかめながら話す。 一方、マンションを1室仲介すると、3000万、4000万円の仕事になり、それに見合ったインセンティブがつくので、ハデに遊んでしまう営業マンが少なくない。そこで出てくるヤバイ噂が借金に関するもの。キャバクラ通いをしているうちに、お気に入りの女の子ができて、バッグや宝石を貢ぐようになる。やがて自分のサラリーでは間に合わなくなって、サラ金に手を出してしまう……。 「ついこないだまでトップクラスの営業成績を表彰されていたのに、借金でクビが回らなくなったという噂がよく出る。なかには顧客から預かったお金に手をつけたっていうトンデモナイ噂も飛び出したりする。不動産仲介は顧客との信頼関係が大切で、そんな噂が立っただけでも左遷ものだ」と先の営業マンは話す。 どうやらこうした「不倫」と「借金」に関する噂はヤバイ噂の“双璧”のようだ。だが、それに限らない。某外資系システム会社では「あの子って頑固で、一緒に仕事をしていても協調性がなくって本当に困るわ。会議でも人の話を聞いていないでしょう」といった、どこにでもありそうな話が会社人生を左右するヤバイ噂に化けていく。 外資系の企業は、評価ポイントの下位10%の層の社員を入れ替えるような人事システムを採用していることが多い。そのクラスに入れられたら「クビ」ということだ。営業マンなら売り上げの数字が明確で公平な評価がしやすい。逆にシステム会社のようにチームでプロジェクトを担当するような場合だと、個々人を公平に評価するのは難しくなる。 そこで頭をもたげてくるのが「他人を蹴落としてでも自分が生き残ろう」というよからぬ気持ち。「何の協力もせず、仕事の手を抜いている」といったあらぬ噂をわざと広めて、評価者である上司の耳に伝わるようにする。協調性のなさを際立たせるために、ランチに誘わないことすらあるそうだ。こうなってくると、もうイジメというほかない。 また、こうした社内の裏事情をマスメディアなどの外部の人間に話したりすると、犯人探しを徹底的に行うという有名企業もある。犯人とおぼしき社員が浮かび上がってくると、確たる証拠がないにもかかわらず、閑職に左遷するなど人事で報復するという。何とも恐ろしい話である。しかし、なぜ人はヤバイ噂を口にしてしまうのだろうか。 ■人が好き好んで噂を口にする深層心理って何 私たちは「噂」という言葉を耳にすると、「悪口」「誹謗」「中傷」といったネガティブな印象を抱いてしまう。しかし、マスメディアが存在していなかった中世において、噂は重要な情報の伝達手段だったのだ。 「噂の語源は『浮沙汰(うわさた)』です。中世の裁判で物事の是非を判断する際には、世間を流れる『沙汰』がその判断材料になっていました。近代になってマスメディアが発達し、信頼できる情報源として認知されていくなかで、情報伝達手段としての噂の相対的な地位が下がり、負のイメージが強くなったのでしょう」と、社会心理を研究する成城大学文芸学部の川上善郎教授は語る。 そんな噂をタイプ別に示したものが図1である。「社会情報としての噂」の最たる例は原発事故による風評だ。科学的なデータの裏付けがないのに、日本の農産物や工業製品が放射能に汚染されているという流言が世界中に広まった。2番目の「おしゃべりとしての噂」が、今回問題としている会社の上司や同僚、そして部下に関するゴシップやヤバイ噂なのだ。最後の「楽しみとしての噂」はいわゆる都市伝説であり、話し手も聞き手も真実ではないだろうとわかっていながら楽しむ怪談話もここに含まれる。 では、問題のヤバイ噂が口伝で広まってしまう仕組みについて見ていくことにしよう。図2は川上教授が自著『うわさが走る 情報伝播の社会心理』のなかで示した心理学者のエドナーとエンキの研究による「ゴシップ・エピソードの基本的な構造」である。 注目すべき点は、ゴシップ話を始める際には慎重な手続きが必要だということ。すぐには具体的な話を切り出さず、「いうのを忘れていたんだけれどもね」「ここだけの話なんだけれどもね」などと始める。相手が「えっ何」と関心を示したら、「実は社長が経理のAさんとデキているって……」というように話をつなぐ。この一連の過程で、社長とAさんというターゲットの“確認”を行い、そのターゲットに「不倫=ふしだら」という“評価”を与えて準備完了というわけだ。 そして、「2人が仲良く歩いているとこを見た」といった“説明”が加えられたり、「実は私もそう思っていた」というような“支持”が与えられる。また、「そういえば、よく2人だけで打ち合わせをしているじゃないか」と“拡張”させてみたり、「あんなケバイ格好で会社に来るAさんの感覚が信じられない。それを許している社長もおかしい」と“誇張された感情”を示したりすることで真実味が増幅されていく。 ここで図2の参加者の反応に“挑戦”が含まれている点に注意してほしい。「これはターゲットの評価に対する『私はそうは思わない』という反対意見の表明のことです。評価の段階でこの反応が返ってきたら、『そうなんだ』となって噂話は中断されます。最初に話を切り出した側は、相手が自分に同調してくれる仲間内の人間かどうかを準備の段階で確認しているのです。いい換えると、相手が自分の仲間のなかに入ってくれるかどうかで、『内集団』『外集団』が形成されるわけです」と川上教授は指摘する。 とくに「女性は噂好き」といわれるが、もしかしてこの“仲間づくりの機能”が関係しているのかもしれない。代表的な“女の園”である銀座のクラブでナンバーワンホステスも務める心理カウンセラーの塚越友子さんは次のようにいう。 「1つのクラブのなかにも、指名上位を競う『売り上げさん』を中心に複数の『ヘルプ』から構成されるホステスのグループがいくつもできています。そして『別グループのあの子はお客からお金を巻き上げる』『プレゼントをねだる』といった噂が常に店内を飛び交っている。グループをまとめる『集団の凝縮性』の要素には『保護』『安全』などとともに『共通の敵』があって、そうしたヤバイ噂をささやき合うことで共通の敵をつくり、お互いに仲間意識を高めているのです」 ことわざに「人の噂をいうは鴨の味がする」とあるように、噂、それもヤバイ噂ほど口にするのは楽しいものなのだろう。それで仲間内の結束を固められるのならなおさらだ。ビジネスマンが仕事帰りに、社内の噂話を肴にしながら楽しそうに1杯やるのも、そんな深層心理が働いているのかもしれない。 ■どうしてヤバイ噂ほど広まってしまうのか 「そもそも人は、自分の関心のない領域のことで噂など立てないものです」と指摘するのは、企業の危機管理のコンサルティングに携わっているエイレックスの江良俊郎社長だ。そして、危機に直面した企業の実態をつぶさに見てきた江良社長が、自らの経験を踏まえながら話す。 「コミュニケーションがうまく取れていない風通しの悪い組織ほど、不満が溜まって危機に陥りやすくなります。その不満と表裏一体の関係にあるのが、社内のヤバイ噂なのではないでしょうか。たとえば、総合職、一般職、派遣社員など同じ職場にいくつもの階層がある組織だと仕事の内容や処遇で不満が鬱積していることが多く、社内の不祥事などの噂が広まりやすいようです」 ブログをはじめソーシャルメディアが普及したうえに、雇用の流動化で社員の愛社精神が希薄化したことで、不祥事など社内の噂話をネットに書き込もうとする際のハードルはひと昔前より低くなっている。それで一大スキャンダルに発展し、会社の社会的信用を大きく傷つけてしまうこともありえる。ただし、面白半分で書き込みをするわけでもなさそうだ。 実は噂が本来持っている機能の1つに「制裁機能」がある。前出の川上教授は「居酒屋でビジネスマンが『あいつは始業時間の朝9時になっても新聞を読んでいて仕事をしない。ちょっと営業成績がいいからといって、部長のお目こぼしを受けているんじゃないか』といった噂話をしていることがあります。自分たちはルールを守っているのに公平に扱われていないといった不満から、制裁を加えているわけです」という。 冒頭のIT企業の不倫にまつわるヤバイ噂の場合、「社長は経理の女性を寵愛し、1人だけ依怙贔屓している。それはズルイことだし、とても許すことなどできない」という潜在意識が社員の間に徐々に芽生えていたのかもしれない。それで全社員が知るヤバイ噂へと広がっていったのではないか。不祥事の噂をネットに書き込もうとするのも、会社に対する制裁の意味合いがあるのだろう。 そして、ここで紹介したいのが「R=i×a」という“噂の基本公式”である。噂の流布量(Rumour)は、当事者に対する問題の重要性(importance)と、その問題に関する証拠の曖昧さ(ambiguity)との積に比例することを示したもので、心理学者のオルポートとポストマンによって公式化された。 社会的に責任のある立場にいる会社の社長が不倫というスキャンダルを起こせば、その影響は大きくなり、事の重要性は否応なしに増す。しかし、本当に不倫をしているかどうか、いくら状況証拠を集めたところで、本当のところは当事者にしかわからない。その結果、噂の基本公式に則り、不倫というヤバイ噂の流布量がどっと増える。 一方、経済の成熟化に伴って生産・開発主導からマネジメント主導の企業組織に移行するなかで、人間関係が変化している点に注目しているのが塚越さんだ。 「いま、管理する側の人間に自分がどう見られているか異常に気にする人が増えています。自分のポジションを守ろうとするからなのですが、それが次第に高じていくと攻撃は最大の防御とばかりに『人を蹴落としてでも、自分のポジションを確保しよう』となってきます。そうした社会のことを社会学者のヤングは『排除型社会』と呼んでおり、そこで人を蹴落とすために頻繁に使われるのがヤバイ噂なのではないでしょうか」 先に紹介した外資系システム会社のケースは、排除型社会の典型例といえるだろう。排除のターゲットに据えられて噂の対象になっているのは、自分たちの内集団に属していない孤立無援の人間。しかし、内集団に入っているからといっても、安心はできない。何かの拍子で集団から弾き出されてしまったら、同じようなつらい目にあうかもしれないからである。それゆえヤバイ噂話のボルテージをアップさせ、内集団への帰属意識をアピールするとともに、さらに仲間を増やして集団の強化を図ろうとするのだ。 よく「出る杭は打たれる」といわれるが、いくら仕事の成績がよくても組織のなかで一匹狼的な存在であると、排除の槍玉にあげられやすいのかもしれない。なぜなら、何かヤバイ噂が持ち上がったとき、「そんなことないだろう」とカバーしてくれる仲間がいないためだ。ちなみに銀座のホステスの世界では突出して売り上げ実績が高いと、「枕営業をしている」などとやっかみ半分のヤバイ噂を流されることが多いそうだ。 ■身に覚えのない噂をやりすごすベストの方法とは 川上教授は「自分の身に覚えのない、たわいもない噂でしたら、『人の噂も75日』ではありませんが、そのまま黙ってやりすごすことも手でしょう」という。ナンバーワンホステスで、根も葉もない噂をいくつも流されてきた塚越さんは、そうした川上教授のオススメの方法を実践してきた1人でもある。「ポイントは自分のセルフモニタリングの機能をわざと低くすることです」と塚越さんは話す。 セルフモニタリングとは、自分の行動や感情を自分自身で客観的に評価して調整しようとする機能のこと。セルフモニタリングを高めると、周囲の人の目が気になり、それに自分の行動を合わせようとして神経過敏になってしまう。身に覚えのない噂にいちいち反論していると、心身ともに疲れ切って、仕事をやめざるをえなくなるかもしれない。そうなったら噂を流している相手の思う壺だ。 そこで自分が何か行動を起こす際に、「人の目を気にしてなのか」、それとも「自分の本心からなのか」をチェックし、前者の割合を減らしていく。すると周りの視線や雑音が気にならなくなっていく。 「そうでもしないと、銀座のホステスは務まりません。なにしろホステスが2人顔を合わせれば、口をついて出てくるのは人の悪口やヤバイ噂ばかりなのですから」と塚越さんは笑いながら話す。 しかし、まったく身に覚えがない不倫、セクシャルハラスメント、金銭トラブル、不正行為などで故意に自分を貶めるような噂を流された場合は話が別。 前出の江良社長は「そうした噂が社内に広まっていることを掴んだ段階で、会社サイドはその真偽の調査に必ず入ります。もし、事前に自分に関する放置できない噂が流れていることに気がついたら、信頼できる上司などにすぐ相談することが大切です。でないと、一方的な人事評価のダウンや左遷・降格などの“冤罪”をこうむることもあります」と警告する。 コンプライアンス(法令遵守)の重要性が高まり、企業は社内の不祥事に敏感になっている。ひと昔前までは見て見ぬふりをしていたきらいのあるセクハラの問題1つとっても、いまでは懲罰の対象になる。噂の内容によっては、瞬時に対応しなくてはならなくなっているのだ。 ただし、ケースバイケースで相談相手を見極める必要もある。それが先の外資系システム会社のイジメに似たヤバイ噂の場合である。いくら直属の上司に相談しても、「仕事の手を抜いている」といった噂を吹き込まれて上司がマイナスの先入観を抱いていたら、「君が悪いんじゃないのか」と突き放されることもありえる。 「組織のなかには上司よりも力を持って、皆をコントロールしている人が必ずいます。それは“お局さん”かもしれません。そのキーマンに近づいて自分自身を理解してもらい、『そんな子じゃないわよ』といってもらったほうが問題解決の近道になる可能性が高いのです。もし、キーマンに直接いいにくければ、キーマンにいつもくっついているナンバーツーの人から間接的にいってもらう手もあります」と塚越さんはアドバイスする。 1つ忘れてはいけないのは、ヤバイ噂が交わされているその場に、槍玉にあげられている当の本人はいないということだ。だから気づいたときには、ヤバイ噂が燎原の火のごとく燃え上がってしまっていることが多い。「個人的な危機管理の観点からいえば、ヤバイ噂のような自分のマイナス情報を耳に入れてくれる信頼できるチャンネルを常に持っておくことが大切です」と江良社長はいう。 また「火のないところに煙は立たぬ」ともいう。身に覚えのない噂であっても、「部下の女性と外のレストランで食事をしながら相談にのってあげた」「頻繁にキャバクラに通っている」など、何かきっかけになることがあったのかもしれない。ヤバイ噂を立てられたら、自分の身を律するいい機会と考えよう。 |
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■噂話が好きな人や噂を流す人の心理 対処法 | |
変な噂を流されると気になりますよね。会社や学校で周りの人たちにヒソヒソと噂されるのは、かなりのストレスになります。それが根も葉もない話や悪質な嘘だった場合は、とても迷惑です。いくら無視しようとがんばっても、噂を立てられることはムカつくし怖いと思います。現代ではSNSなどのネット上で、あることないこと噂されるなんてこともあります。あらぬ噂を流されたらどうすればいいのでしょう。悪い噂を消す方法はあるのでしょうか。今回は、噂話が好きな人や噂を流す人の心理について考えてみました。他人の話ばかりする男女には、自意識過剰という共通点があるのです。人から聞いた噂を鵜呑みにする人たちの理由や、悪い噂を流されたときの対処法を知りたい方も必見の記事です。 | |
■人の噂が好きな人の心理
■とにかく他人のことが気になる 他人の噂をする人たちは、人のことが気になって仕方ないのです。そんなにも人を気にする原因は、自分のことを気にしているからです。自分がみんなと同じかどうかを、過剰に気にかけています。その人自身が、他人にどう見られているかを気にしているわけです。そして自分がほかの人と違う行動をすることを、とても恐れています。だから他人に少し変わったところがあると、すぐに反応するのです。 いつも噂話をしているような人は、自分がみんなの輪からはみ出ていないかどうかが、とても気になる性格なのです。 そのため、人がはみ出ていないかどうかも気になります。こういった人は、自信がないことや劣等感が強いことが原因で他人の目を気にします。 人の噂話をすることにも聞くことにも疲れた、もうやめたいという人は、他人と違っていてもかまわないと思えるくらい自尊心を高めましょう。 ■悪い噂を流す人の特徴 ■噂を広めることが攻撃手段 嫌いな人と直接言い争うとトラブルになります。けれど噂を立てることでなら、ターゲットに知られる危険はなく、遠回しに攻撃できます。また噂話ならあからさまな悪口にはならないので、職場の人や同級生に相手のことをいじめていると思われにくいです。他人の評判が落ちる噂を言いふらす人は、噂話が攻撃方法になっているのです。標的を陥れるために、誇張した話や作り話を拡散するパターンもあります。 ■嘘の噂を流す人の心理とは なんでも人のせいにする気持ちから、被害者ぶる人たちです。実際は自分が先に嫌なことをしたのに、肝心の部分は伏せて、ターゲットを私を嫌っているひどい奴と言います。自分に非があったとしても、相手が怒ってきて私は嫌な思いをしたと吹聴します。自身にとって都合のいい内容の話だけを周囲にするのです。本人は自分が見えていないため、嘘をついている自覚がないことも多いです。自分がその集団の中心人物になりたいので、グループの不和を招くような嘘を吹き込むといったケースもあります。 嫉妬や意地悪から噂を広める人も存在します。周りの人に標的のことを嫌いになってほしいので、悪意を持って噂話を流すタイプです。 気に食わないという理由で相手の不利になる噂をばらまく人は、単純でわかりやすいです。まれに、その人物に特に恨みもないのに、まったくのデタラメを触れ回る人もいます。 自分がもてはやされないのが悔しかったり、みんなが仲よくしているのが妬ましくて(自分が得られなかった幸せだから)、人間関係をめちゃくちゃにしたくなるのです。 ■ゴシップが好きな理由 ■反応がほしい 噂話をすれば、話し相手が興味を持ってくれる可能性が大きいです。おもしろい会話ができなくても、他者の反応を得ることができます。よく噂話をする人は、一種の承認欲求からゴシップが大好きなのです。中には、周囲が騒ぐ(みんなが自分に注目してくれる)のが楽しくて、ありもしない作り事を流布させる人もいます。 ■世間話の一環 多くの人は、特に意味もなく井戸端会議をすることがあります。深く考えずに、暇つぶしになる話題として他人の話をします。人の噂をすることが、コミュニケーションを円滑にするための習慣になってしまっているのです。自信がなく、自分のことをあまり話したがらない人も、雑談のときに人の話ばかりしがちです。 自分が話題の中心でいたい人は、簡単に他人の注目を浴びることができるため、噂好きの傾向にあります。そして世間では、悪意なく噂話をする人も多いです。スキャンダラスな話題は、人間の興味をかき立てるからです。 人間は他人のことが気になる生き物だから、噂話に花を咲かせるのもある程度は仕方がないと割り切るのが、ゴシップを聞かせてくる人との付き合い方の一つです。 また、人の噂は自分には関係のない話だと思うことで、噂話を聞かされる際にネガティブな影響を受けないようにもしましょう。 ■噂を信じる人の心理 ■自分が信じたいから 人間には、自分の信じたいものを信じようとするところがあります。例えば、嫌いな人のよくない噂にすぐに飛びつく人は多いです。なぜなら、相手のことを悪い奴だと思いたいからです。憶測でものを言う人の場合は、自分がこうであってほしいと望んでいることを他人に語っているのです。また、自分の人生に不満を抱えているような人も、悪口や噂話を鵜呑みにしやすいです。誰かを批判してストレスを発散できるのが好都合だからです。 ■伝言ゲーム 世の中には、「〜なんじゃないの?」と言った人の話を、「〜らしいよ」「〜なんだって!」と別の人に伝えてしまう人がいます。「〜かもしれないね」と口にした人の言葉を、「きっとそうに違いない」と思い込んでしまう人もいます。伝言ゲームや思い込みの激しさによって無責任に尾ひれがつき、噂がひとり歩きします。こうして、身に覚えのないデマが流されるわけです。 ■想像力がない 私たちは普段、人の話を聞くときに、それが真実かどうかを疑ってかかる意識があまりありません。身近にデマを吹聴する人なんていないと思い込んでいるためです。自分自身が根も葉もない噂をでっちあげるようなことはしないのだから、他人もまかさそんな行動をするはずがないと思ってしまいます。この人は堂々と話しているから、この話は本当に違いないと、一方的な話だけで物事を判断してしまうこともあります。 心理学の用語に、ハロー効果(後光効果・ハローエラー)というものがあります。対象者や対象物が持つある特徴によって、その他の評価にバイアスがかかってしまう現象のことです。 容姿の優れている人なら、きっと性格もいいに違いないと決めつけてしまうのが、わかりやすい例でしょう。口コミによってお店や商品の評価を決めるのも、ハロー効果の一種です。 このハロー効果によって、人間には親しい人物や権威のある者の話すことなら間違っていないと信じ込みやすいところがあるのです。 噂話を簡単に信じないようにするには、「思い込みをなくす」「想像力を働かせる」「一方の話だけでなく、もう一方の話も聞くようにする」といった心がけが大事です。 |
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■嘘の噂を広められたときの対応の仕方
■周りの人に説明する もし根も葉もない噂を立てられたら、つらいでしょうがその話が間違っていることを周りにちゃんと説明してください。そして自分がデマを流されて困っていること、事実無根の噂を言いふらされた被害者であることをアピールしましょう。嘘の噂話を打ち消すための対策は、誤解を解くことです。信頼できる人に相談して、理解者を作るのです。たくさんの人が噂を信じていたとしても、本当のことをわかってくれる人が一人いるだけで安心できます。 一度流れた噂を完全に止めるのは難しいです。けれど話を聞いてくれて、あなたのことを信じてくれる人もいます。噂が嘘の話だとわかってくれている人の存在は心強いです。 大勢の前で真相を伝えるのは勇気がいるでしょうから、まずは家族や友達・仲のいい同僚・信頼できる上司などに相談しましょう。 また、おしゃべりな人に自分に関する話はデタラメだと説明しておけば、勝手に本当のことを広めてくれる場合があります。 ■醜聞を吹聴するのをやめさせるには ■嫌な噂を広めている張本人に相談する これは、変則的な撃退法です。あなたの悪口を言いふらしている人に、「最近、変な噂を流されてるみたいで困っている」と相談します。すると相手は、罪悪感を刺激されてばつが悪くなります。また、頼りにされたので、あなたに対してなんとかしてあげなきゃという感情がわき起こります。その結果、あなたの評判を下げる話を口にすることに、無意識にストップがかかるというからくりです。 後ろめたさを喚起させることによって、間接的に噂を触れ回るのをやめさせる方法です。直接対決するよりも、リスクが少なくてすみます。 自分の悪評の相談をするときは、その人が首謀者だと知っていることは伏せて会話してください。そうしないと相手は防衛的になって、聞く耳を持たなくなります。 もちろん、相手の性格によってはシメシメと思うだけなので、絶対に成功するというわけではないことも、肝に銘じておいてください。 ■噂話に負けない方法 ■堂々とする 変な噂を流されても、噂を流している人のほうがおかしいと思ってください。コソコソ陰口を叩かれても、噂を信じ込んでいる人のほうが間違っているのだと思いましょう。自分は何も悪くないと強く思い、誰かに噂されても気にしないようにするのです。堂々としていれば、噂どおりの人物ではないと、周りの見る目も変わってくるでしょう。たとえ周囲の人があなたの言葉を信じてくれなかったとしても、あなた自身が何も間違っていないと思えることが、他人がどう思うかより重要です。 広まった話が事実でも同じです。誰だって失敗や間違いはあります。叩けばほこりの一つや二つ出るものです。聞こえない場所でならまだしも、他人の恥ずかしい話を本人に聞こえるかもしれない所でするのは失礼です。 また、人の噂ばかりしている人を嫌う男性や女性もいます。自分の目で確かめるまで、他人に聞いたことは信じないという人や、噂話には興味がないという人もいます。 人格を貶めるような噂を流されて苦しいときは、わかってくれる人や安易に噂を信じない人が存在することを思い出し、自分を勇気づけましょう。 ■陰で噂されているかもしれないことに思い悩むときは 人間は、常に新鮮なニュースを求めています。人の噂も七十五日ということわざがあるように、時間がたつことで噂が消える場合があります。 今はあれこれ言っている人たちも、やがてはあなたの話に興味をなくす可能性があるのです。他人に自分の噂話をされることは嫌でしょうが、気にしすぎないようにしましょう。 |
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■自分の噂話が流れている!真実の場合、嘘の場合の対処法 | |
噂は人の集まるところに立ちやすいもの。「火のないところに煙は立たぬ」という諺のように、噂が真実であるケースもありますが、話し仲間を作るために根も葉もない噂を立てるような人もいます。噂話や悪口を言う人は、自分と同じようなおしゃべり仲間を作って群れることで安心しようとする傾向があるのです。
しかし、陰口を言われた側はたまったものじゃありませんよね。たとえば、場所がオフィス内ならば根拠のない噂のおかげで仕事に行きづらくなってしまい、最悪退社に追い込まれることもあるからです。今回は、自分の噂話が流れた時の対処法をお伝えします。 ■自分への噂が真っ赤な嘘の場合は? 「〇〇ちゃんって、上司に最近呼ばれること多いよね。仕事も〇〇ちゃんばかりお願いされているみたいだし、もしかしてデキてるんじゃないの?」 オフィス内に噂好きな女性がいると、ちょっとしたことで変な因縁をつけようとします。噂好きな女性は、人の仕事ぶりを観察するのが趣味です。人によっては、わざとコソコソ話している姿を見せて嫌がらせをします。わざわざムキになって「そんなことありません!」と対処する必要はありません。 むしろ、このようなタイプの女性達はあなたがムキになる姿を見て喜びます。「やっぱり、ムキになってきた。怪しいよね」と、更に噂の話を拡大されるだけです。こんな時、本当は聞き流すのが一番なのですが、あまりにひどい場合は聞き流し続けてはダメです。 噂話で嫌がらせをするタイプの女性達には、屈託のない明るい笑顔で「いや、私が仕事できないから何度も呼ばれて怒られているだけですよ〜」と返してみましょう。自虐するにしても、堂々と応対するにしても明るくハキハキした声で切り返すのがポイントです。とくに女性は、自ら自虐で笑いを取るタイプの女性には優しいです。また、堂々と笑顔で切り返されることで、噂話をする人達自体が気まずくなります。噂話をストップさせるためにも、凛とした態度で振る舞いましょう。 ■自分への噂が本当だった場合は? 自分への噂が本当だった場合は、「そんなことないですよ」とも言えないものです。とくに噂の内容が浮気や不倫などの色恋沙汰の場合は、噂の内容によっては左遷する企業もあります。さらに上司との不倫の場合は、「バレちゃった?」と笑ってすませば終わるような話でもありません。社内不倫は、企業によっては上司の出世に影響を及ぼすだけでなく、あなたの立場も悪くなる可能性があります。 自分への噂が本当だったとしても、証拠を握られないかぎりははぐらかしましょう。「ふぅん、そんな噂があるんだね」「へぇ、上司と私がねぇ……そんな風に見えるの?」と、何事もなかったかのように笑いながら対処しましょう。 くれぐれも、「ごめんなさい。私のせいで上司の家庭を壊してしまうかもしれないんです……」など悲劇のヒロインぶるのはやめましょう。正直、噂した当本人たちもあなたへの対処に困ってしまい、今後も一緒に仕事がやりづらくなってしまいます。 噂がたとえ本当だとしても、証拠写真でも撮られていなければいくらでも逃げられます。どんな噂が立っても、毅然とした態度で明るくふるまいましょう。 ■対処法 噂話や悪口を言う人は、そもそも自分自身が噂されたくない人が多いです。そのため、陰口仲間を作って群れることで自分たちを守っています。噂がたとえ本当でも嘘でも、毅然とした態度で振る舞いましょう。オロオロすればするほど、噂好きな人達の恰好の餌食になります。 「えっ、そんな風に言われてるんだ〜。私と上司、付き合ってるように見えるかなぁ?」とケラケラ笑いながら堂々と切り返せば、噂好きの人達も何も言い返せなくなるでしょう。噂は聞き流すのが一番と言いますが、いじめっ子の原理は「何もやり返さない人」にどんどんエスカレートします。一度でいいから、冗談っぽく受け流すように対処するといいでしょう。その時は、なるべく明るく笑顔で対処するのがポイントです。ただ、あまりにも噂話の被害が酷い時は上司に直接相談しましょう。 噂が本当の場合は、証拠写真でも撮られていないかぎりは「ふぅん」と笑って誤魔化しましょう。週刊誌のように証拠写真を撮られていなければ、たとえ不倫しようが噂の範疇におさまります。 芸能人も、記者会見で「そのような事実はありません」「彼とは、友人の関係です。仕事の打ち合わせをしていました」と釈明会見を開いていますよね?毅然とした態度でふるまえばいいのです。逆に、何も話さずにノーコメントで進めてしまった人の方がかえってネット上で噂話が展開されてしまうケースも多いです。 噂話への対処は「そんなことないですよ〜」と、何事もないように冗談っぽく話せば、噂話も言いづらくなります。噂話は、たとえ真実でも嘘でも明るく対処しましょう。 |
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■人間関係の地雷原!うわさ好きな人 | |
突然キレてくる人、怖いパワハラ、遠回しに悪口ばかり言ってくる人……。人間関係は思い通りにいかないとわかっていても、困った人に遭遇するとうんざりしてしまいますよね。あーうまく言い返してスッキリしたい! と思う気持ちに、心理カウンセラー・五百田達成さんは「こちらの気持ちのおもむくまま、がーっとイライラをぶつけたり、がむしゃらに反論したりしてしまうのはNG」と話します。じゃあ、私たちはどうすればいいの? 今回は「うわさ話をしてくる人」です。
■「バカのフリ」ですっとぼける 「課長の〇〇さん、こんど□□部に左遷になるんだって。あの一件で。あの一件、知らない? いや、ここだけの話なんだけどさ、あくまでうわさだよ、実はさ……」 「知ってる? △△さん、結婚するんだって。びっくりでしょ? しかも授かり婚。△△さんがパパになるんだよ? 想像できる? だいじょうぶかな?」 「〇〇さんって、旦那さんとうまくいってないらしいよ。ほら、あのおうちって下の子が病気がちで学校休んでるっていうじゃない?」 うわさ話が大好きで、始終そればっかり話している人、いますよね。芸能人のゴシップとか、そういう他愛のない話であれば、面白がって聞いていることもできますが、同じコミュニティの人のうわさ話だと困ってしまいます。 適当にうなずいておけばいいかというと、そうでもありません。のちのち、あなたに大変な被害が及ぶことになります。ならば、と、「いない人の話はよしましょうよ」とたしなめると、その場がおさまるどころか、もっと怖ろしい結果に。 「人間関係の地雷原」ともいうべきうわさ話、どう渡り歩けばいいのでしょうか? ■「自慢」「中傷」「共犯」が三大要素 うわさ話をする人の目的は三つ。「自慢」と「中傷」と「共犯」です。 まず「自慢」。「ねえ、知ってる?」と切り出されるうわさ話ですが、そこで「うん、知ってる」と答えると話が先に進みません。この人たちは「知らなかった」「そうなの?」と羨望の視線を浴びたい。だからこそ、日々の情報収集に余念がないわけです。 次に「中傷」。うわさ話はたいていが悪口です。人の不幸は蜜の味。その人をおとしめて、けなすことで、自分が幸せだと確認したい。病的な心理です。 最後に「共犯」。誰かの悪口を言うのは、よくないこと。そのよくないことを、一緒にやる共犯関係の提案をしてきてるわけです。裏切るなよ、一緒に悪者になろうよ、と。 つまり、うわさ話ばかりしてくる人は、あなたに対して「私の情報をすごいとほめろ」「あの人の悪口を言え」「私と仲間であると誓え」という三つを、強いてくるわけです。 ですから、あなたがそれに対して適当にうなずこうものなら「悪口に加わった」ということになります。そういう人は、必ずよそでもうわさ話をしていますから、あなたの名前を出して「〇〇さんも、そう言ってたよ」と尾ひれをつけて拡めることに。 逆に「うわさ話なんてよしましょうよ」とたしなめたりしたら、今度はあなたが仲間はずれにされます。それは共犯関係を断ったことにほかならないからです。無理に話題を変えようとしても、結局、すぐその話に戻ってくるはず。まさに地獄。何重にも張り巡らされたワナ。絶体絶命です。 そこから抜け出すための秘策が、たったひとつだけあります。 ■「話しがいのないバカ」に勝るものなし うわさ話のトラップから逃れる方法、それは「バカを演じてすっとぼける」です。話しがいのないつまらない人間になりきるしかありません。 「ねえ、知ってる? 課長の〇〇さん、こんど□□部に左遷になるんだって」 「はぁ」 「あの一件で。あの一件、知らない?」 「えー、なんのことですかー?」 「いや、ここだけの話なんだけどさ、あくまでうわさだよ、実はさ……」 「へー、そんなうわさがあるんですねー、おもしろーい」 「どう思う?」 「どうでしょうねー」 話に食いつかない、リアクションもぼんやりさせる、語尾を伸ばしてバカっぽくしゃべる、決して自分の意見は言わない。「なんだろう」「どうでしょう」「よくわかんないです」を繰り返します。 そうすれば、せっかくうわさ話で盛り上がろうと思った相手としては、がっかり。「もっとリアクションのいい人と話したい」と、もう二度と、あなたにうわさ話を持ちかけようとは思いません。 これは、派閥争いや足の引っ張り合いに巻き込まれたくないときにも、応用できるテクニックです。 うわさ話という地雷原において、好リアクションは地獄への近道。そう、バカこそが最強なのです! ■ うわさ話ばかりするヤツは 〇実は… 自慢したい、おとしめたい、共犯になりたい 〇NG… 同調してもたしなめても地獄行き 〇OK… バカなフリをして諦めてもらうしかない |
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■社内ゴシップに「敗れる人」「勝つ人」 | |
仕事での付き合い、学校での付き合い、あるいは近所付き合いや親戚付き合いでもなんでもいいですが、こうした人付き合いの中で流されると厄介なのが「悪い噂」。
「あの人、課長と不倫してるらしいよ」 「アイツ、他の会社でウチの部長の悪口、言って回ってるらしいぞ」 「近所の○○さんって、家賃滞納してるんですって。生活苦しいのかしら」 「いとこの○○君のお嫁さん。結婚したのも、遺産が目当てだったんじゃないかしら」 こういうゴシップというのはくだらないようでいて、1回対処を間違えると大変です。会社で大事な仕事を任されるかどうか、仕事の難しい場面で部下がついてくるかどうか、近所と仲良くやれるかどうか、親族会議で自分の言い分を聞いてもらえるかどうか、といったさまざまな場面に悪影響を与えてきます。 だからこそ、自分にまつわる悪い噂というのは正しい方法で否定し、早い段階で打ち消しておかなければなりません。そうしないと信用がどんどん失われ、誰も話を聞いてくれなくなってしまうのです。そこで今回は、ギリシャ・ローマ式弁論術のテクニックの中から、「悪い噂」への対処法を解説します。 ■「争点」を作ることが最重要 結論から言えば、自分への悪い噂に対しては、有利な「争点」を作ってそこで反論することが最も大事です。どういうことか? 例えば、「他社で部長の悪口言った」という噂を流されて、これを否定しなければいけないとしましょう。 これがまったくの事実無根で、部長の話自体を他社でまったくしたことがないのなら、当然、 「事実無根です。ウソだと思うのなら、他社の人に聞いてください」 などと全否定すべきです。やってもいないことを認める必要はありません。しかし問題なのは、部分的に事実である場合、あるいはまったく事実である場合です。 こうした際には、「確かに○○したけど、××はしていない」といったように、事実にあたる部分については、先手を打って認めたうえで反論しましょう。例えば、悪口は言っていないにせよ、実際に他社で部長の話をしていたとします。そうした際には、 「他社で部長の話をしたのは本当ですが、悪口などいっさい言っていません」 と「他社で部長の話をした」という点は認めたうえで、「話したのは悪口ではない」という争点で反論するようにするのです。 このような場面でいちばんまずいのが、反射的に「それは、まったくのデマです」などと雑な言い方で全否定すること。 それをやってしまうと、あとで周囲から「先方に聞いたら、やっぱり部長の話をしてたらしいじゃないか」といった事実が出てきたときに、「アイツ、隠してた」となって話を聞いてもらえなくなってしまいます。だからこそ、事実にあたる部分は先手を打って認める。これが大切なのです。 ■噂が事実だった場合どうするか では、さらに一歩進んで、悪い噂がまったくの事実であった場合はどうするのか? 例で言えば、実際に他社で部長の悪口を言っていた場合はどうすればいいのか? 謝罪で済めばいいのですが、現実問題「認めたら終わりだ」という場合だってあるでしょう。 こうした場合でも、まだ争点を作る方法はあります。 その1つが、次のように「主観」を利用して反論する方法。 「確かに部長について冗談を言ったのですが、それが先方には悪口に聞こえてしまったのかもしれません」 つまり、こちらの不利な事実について、「そう見えたかもしれない」「そう聞こえたかもしれない」と、周囲の主観の問題にすり替えるのです。 こうした主観を利用した反論は、昨年よく目にしたパワハラの謝罪会見などでも利用されています。いわく、「パワハラだと“思われた”のなら謝罪する」といった具合に。 見方によっては見苦しい対応に思われるかもしれませんが、「意図してやったわけではない」と主張するための弁明としては確かに有効な面があり、だからこそ私たちもよく耳にするのです。 ■聞き手が納得する「正義」を打ち出す まったくの事実である悪い噂に対して争点をつくるには、もう1つ代表的な方法があります。それが前回も解説した「正義」を持ち出す方法。例えば次のように。 「確かに部長について軽口はたたきましたが、場を和ませようとしてのことです。先方との話をまとめるために必死だったんです」 これは、「部長の悪口は言った」を認めつつも、「話をまとめるためだった」という正義を持ち出して弁明する方法です。 このような、「私の小さな悪は、より大きな正義のためだった」という論法もまた、日常よく見られるものでしょう。 この正義を持ち出しての弁明の1つの注意点としては、持ち出す正義は当然、聞き手が認める正義でなければならないということ。例で言えば、「この交渉をまとめるためだった」という正義も、聞き手にとっての正義でなければ「そんなことのために」と思われて終わりなのです。 噂に対する「身の潔白度別」弁明術 最後に、また別のテクニックとして、弁論術の開祖・アリストテレスの著書『弁論術』を参考に、ギリシャ・ローマ時代から受け継がれている「噂・中傷・非難などに対する対処法」の一部を解説しておきましょう。 これは最も潔白な人間向けのレベル1から、ちょっと腹黒いレベル4まで「争点のつくり方」のテンプレートを紹介したもので、幅広いケースに当てはめて使える便利なものです。 ここでは、「総務の金子さんと付き合ってる」という噂を流された状況で考えてみましょう。まずは事実じゃない場合、次に事実だがやましいことはない場合。 ■レベル1 「事実ではない」(全否定) ex「それはデマだよ。だって、金子さんには別に恋人がいるんだから」 ■レベル2 「事実だが、実害はない」 ex「確かに付き合ってるけど、それで誰かに迷惑をかけたわけじゃないだろ」 レベル2では、付き合ってること自体は認めたうえで「実害」という争点を持ち出し、批判をかわしています。このようにレベルに応じて争点を提示し、「噂・中傷・非難」を封じ込めていくのが、このテクニックのキモとなります。 では、実際に金子さんと付き合っているのを黙っていたことで誰かに迷惑をかけてしまった場合はどうすればいいのか。そうしたケースで非難をかわすのが次のレベルです。 ■レベル3 「実害はあるが、聞き手に対してではない」 ex「確かに付き合ってるし、知らずに金子さんに告白した木村君には悪いと思ってるけど、無関係のオマエにそこまで言われる筋合いはないだろ?」 ■レベル4 「聞き手に実害はあるが、甚大ではない」 ex「知らずに告白したオマエには悪かったけど、そこまで言われなくちゃいけないほどのことをしたか?」 レベル3、4では実害があることを認めたうえで、「実害の対象」「実害の大きさ」に争点をずらしています。 この4段階が頭に入っていれば、「レベル1で弁明できなければ、レベル2に進んでそこで改めて反論する」というふうに粘っていくこともできるでしょう。 ■ピンチのときのお守り このように、やましいにもかかわらず反論を積み重ねていくというのは、われわれ日本人の感覚からすると抵抗感があるかもしれません。しかし、マイナスを抱えながらも自らの正しさを丁寧に主張していく発想は、グローバルな現場のシビアな交渉などでも現実問題として必要になってくるものです。 もちろん、今回ご紹介したような技術は使う場面がないに越したことはありません。越したことはありませんが、そもそも、噂、中傷、非難というのは自分の行いとは関係なく出てきたりするもの。それならば、一種のお守りとして、こうした技術を頭に入れておくのも悪くないのでは、と今回ご紹介した次第です。 |
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■「社内の噂」への対処法 | |
他愛のないものから深刻な内容のものまで、社内の噂にもいろいろある。こうした噂の対象者になってしまったら、どのように対処すべきか。適切な方法を考えてみたい。
■噂には「出所」と「目的」が必ずある ある程度以上の大きさの会社組織で仕事をしていると、社内の「噂」に悩まされることが、しばしばある。例えば、「○○は、隣の部の××さんと恋愛関係にあるらしい」といった他愛のないものもあれば、「○○は、上司の××さんを飛ばそうと画策しているらしい」、「○○は、社内の反対派閥と裏で手を握ろうとしているらしい」、「○○は、業務上の秘密を他社に横流ししているらしい」といった内容が深刻なものもある。 迷惑なことに、こうした噂の対象者になることは、どのような仕事の誰にでも起こり得る。エンジニア読者も社内の噂で悩む場合があるはずだ。エンジニアであって社内の派閥争いに巻き込まれることはあるだろうし、一般に専門家は同業の専門家に対して嫉妬深いので(学者同士の嫉妬などが典型的だ)、同僚に不満を持ったり、ライバル心を持ったりすることがあるはずなので、エンジニアはむしろ噂が発生しやすい職種かも知れない。 噂は、困ったことに、最初に対象とされる本人の下に届くのではなく、他人同士の間を駆け巡り、そのうちに本人が気付く場合が多い。しかも、通常は、本人が関係者全てに対して噂の内容を話題にしてこれを否定することは、そもそも不自然であり、しばしば逆効果でもある。社内の噂にどう対処したらいいかは、あらかじめ知っておく方がいい。 噂への対策を立てる上で、先ず知っておきたいのは、噂には、必ず噂の「出所」になっている人物がいて、その人物には噂を流す「目的」が存在することだ。そして、目的は、大きく「悪意」と「単なる愉快」とに大別できる。これらのどちらであるのか、また、誰が噂の出所なのかを、静かに観察し推測することが、噂への対策の第一歩だ。 通常、単なる愉快が目的である場合は、噂の当事者となった自分が、噂の発生源である人物の面白がるような反応を示さなければ、時間と共に噂は沈静化する。余程困る内容でない限りは、放置が正解になることが多い。 一方、悪意から発生した噂の場合は、周到に計算された、第二弾、第三弾の噂が流れてくることがあるので、厄介だ。 ■噂の力学三原則 噂とは、大凡は紙ヒコーキのようなもので、その振る舞いには、三つの原則がある。 第一の原則は、「噂は、裏付けになる事実が無いと活力が低下して行く」ということだ。誤解に基づく噂話の場合、当初は、これを面白いと思う人の間を巡るとしても、その噂の信憑性が一向に強化されない場合、噂としての面白みが無くなるので、やがて話されなくなる。無風の中の紙ヒコーキは、徐々に高度が下がり、やがては地面に落ちる。 事実を伴わない社内恋愛の噂のようなものの場合、現実に何も起きずに、噂に対しては、本人がつまらなそうに淡々と否定していれば、やがて噂は消える。 第二の原則は、「噂は、当人の反応があると活力を増す」ということだ。他愛の無い話でも、人事などが絡む深刻な話でも、噂の対処となっている人物が大きな反応を見せると、噂の発生源となっている人物だけでなく、聞いた話を別のメンバーに話しているだけの人々にとっても、俄然やる気が出てしまう。紙ヒコーキも、風によって舞い上がることがある。 また、過剰な反応それ自体が、噂の信憑性を強化する場合があるので、気をつけたい。反応に対する心構えを一言で言うなら「つまらなそうな顔をして、明確に否定する」ということだ。否定と肯定の区別が曖昧だと、「否定しなかったということは、肯定したのと同じだ」と解釈される場合がある。 一方、噂の内容が真実である場合、同様に「つまらなそうに、否定」で押し通せるかどうかが問われる場合もあるし、どこかで真実を認めるタイミングを探さなければならない場合もある。 テレビ・タレントや政治家の不祥事報道などを見るとよく分かるが、人の関心が最も高まるのは、「事実らしいのに、事実を認めない相手が、事実を認めざるを得なくなる瞬間」である。噂を否定しつつも、時間経過と共に噂の信憑性が増し、最後に噂の事実の肯定に転じるような展開が、悪い意味での注目を最大化する。はじめに後から露見する嘘をついたり、肯定・否定を曖昧にしたりすると、「真実をはっきりさせたい」という動機を刺激してしまう。どこまで認めるのか、どこを認めないのかを、はじめの段階から決めておき、途中で対応を変えないことが大事だ。 そして、第三の原則は、「噂は、拡がりはじめに活力を増し、十分拡がると活力が低下する」ということだ。紙ヒコーキも最初は勢いがあり、やがて高度が下がる。話の後半は、「人の噂も七十五日」という諺に対応する原理でもあるが、噂を語る人にとっては、より多くの他人が知らない話の方が張り合いがあることを思うと、ご理解頂ける原則だろう。 三原則を表面的に眺めると、噂は、放っておくと、いずれ沈静化するので、放っておくのがいいと考えそうになるが、「拡がりはじめに活力を増す」部分が思わぬ大きな効果をもたらす場合があるし、もともとが「悪意」に基づく噂の場合、その対象者に決定的な悪影響(例えば人事上の実害)を与える場合もあるので、噂の当人になってしまった場合、無関心を装いつつも、状況の観察を怠ってはいけない。 ■先ず、静観して様子を見て、次に「悪意」の出所と戦うかどうかを決める たとえば、「○○は、上司の足を引っ張ろうとしている」、あるいは「○○は、不正を働いている」というような、自分にとって、身に覚えがない不都合な内容の噂が聞こえてきた時に、どうしたらいいだろうか。 はじめの対応は、「静観」でいい。但し、噂の「出所」と「目的」は、全力で探るべきだ。 また、「そういう事実はあるのか?」と他人から訊かれた場合に、どう答えるかは、予め準備しておくべきだ。つまらなそうな顔をして、「ありません。なぜ、そのようなことをお聞きになるのですか?」と答えるのでいいだろう。怒ったり、曖昧に答えたり、噂が出る原因を自分で推測して説明したり、といった「余計な反応」を返してはいけない。 多くの場合、これで収まるので、気にする必要は無いが、「出所」に「悪意」がある場合は、噂が執拗に続く場合がある。また、些か情けないことだが、仕事で関わる人が噂に影響されることは現実にある。個人的な好き嫌いの感情や、時には人事評価・処遇などに影響する場合があることが無いとは言えない。 「実害がありそうだ」と思った時には、自分の処遇に影響力を持つ人に「...という噂を社内で聞きましたが、私には全く身に覚えがありません。事実ではないことを申し上げて置きます。尚、私は噂自体を相手にするつもりはありませんので、この事について申し上げるのは、あなたと、××さん(例えば人事部長)の二人だけです」と言っておくといいだろう。 直接話をする相手は、できれば二人作る方がいい。これは、一人にだけ話すと、話を握り潰されたり、無視されたりすることが起こりやすいからだ。事実を知っている人がもう一人いることを意識させておく方がいい。 それでも、悪意のある噂の出所が、噂を止めない場合、その相手と直接戦う事にならざるを得ない場合がある。戦い方は様々であり、戦う以外に逃げるという選択肢もあるが、本稿で扱う範囲を越える。但し、いざという時の覚悟も持っておく方がいい。 |
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■[梅暦餘興]春色辰巳園 巻拾一 | |
(うめごよみよきょうしゅんしょくたつみのその) 江戸 狂訓亭主人著 | |
■第九条
同(おな)じ流(なが)れの川竹(かはたけ)も北(きた)の世界(せかい)の山谷堀(さんやぼり)舟宿(ふなやど)多(おほ)きその中に名も高橋屋(たかはしや)と聞(きこ)へたる家(いへ)の内義(ないぎ)にお染(そめ)とて女(をんな)ながらも意(い)地つよく情(なさけ)も深(ふか)き信切者(しんせつもの)。妹(いもと)となせし延津賀(のぶつが)の頼によつて手軽(てがる)くもわか桟(さん)ばしより乗出(のりだ)してこゝに小舟(こぶね)は和哥町(わかてう)の河岸よりあがりて仇吉(あだきち)が家(いへ)をたづねて病気(びやうき)ともしらねば表(おもて)の格(かう)子戸明【染】「ハイチツト御免(ごめん)なさいまし。仇吉(あだきち)さんの御宅(おうち)は此方かへ。」トいへども宅(うち)には仇吉(あたきち)が声さへ弱(よは)る大病(たいびやう)のなか〳〵返事(へんじ)もあらざればしばらくしてもこたえなし。お染(そめ)はさすか不|遠慮(ゑんりよ)と思ひながらも詮方(せんかた)なく障子(せうじ)をあけてさし覗(のぞ)き【染】「どなたもお留守(るす)かへ。」ト言ながら奥(おく)の方(かた)を見れば床(とこ)に伏(ふし)たる女(をんな)の様子(やうす)それと察(さつ)して上にあがり【染】「御免(ごめん)なさいト。モシ仇吉(あだきち)さんとはおまへかへ。」トいはれてやう〳〵仇吉(あたきち)が重(おも)き枕(まくら)をすこしあげ【仇】「ヲヤお出(いで)なさいまし。さつぱりぞんじませなんだ。」トいひつゝお染(そめ)が㒵見れど見なれぬ人(ひと)ゆゑすこし考(かんがへ)る。お染(そめ)はそれと心付(こゝろづき)【染】「はじめて参(まい)つてなれ〳〵しいとお思(おも)ひだらうが私(わたし)やア堀(ほり)の延津賀(のぶつが)が姉(あね)で有(あり)ますよ。」【仇】「ヲヤ。」トすこしおきかへる。【染】「アレサそふしてお出(いで)ヨ。誠(ま〔こと〕)にたいそう塩梅(あんばい)かわるいのだネヘ。」【仇】「ハイモウ〳〵久(ひさ)しく斯(かう)して居(をり)ますからこまりきります。」トいひながら片手(かたて)をついて【仇】「マヅはじめておめに。」【染】「ハイお心(こゝろ)やすく。お津賀(つが)もよろしく。トキニマアどうしてそんなにおなりだへ。此様(こん)なことゝは知らず。アノ子が此頃中(このごろうち)おまへの事を夢(ゆめ)に見て何(なん)だか気(き)になるから行て様子を見て来(き)たいと言(いつ)ているが手まへでもひさしくすぐれずに居(ゐ)てやう〳〵起(おき)ると毎日(まいにち)〳〵月(つき)ざらひだの床開(ゆかびらき)だの名弘(なびろめ)だのトすこしも日間(ひま)がないゆへどうぞ私(わたし)が|他所行(でたついで)におたづね申てくれろといふゆへ今日(けふ)は此方(こつち)の弁天(べんてん)さまへお参(まいり)申ながら参(まい)つたがそしてマア看病(かんびやう)は母御(おつかア)でもしなさるのかヘ。」トいはれて仇吉(あだきち)は泣(なき)ながら母(はゝ)の死去(なくなり)しより親類(しんるい)も病人(びやうにん)のみにて来(きた)らず日に二三度(にさんど)近所(きんしよ)隣家(となり)の者(もの)が来(きた)りて薬(くすり)の世|話(わ)などしてくれる事|哀(あは)れに不自由(ふじゆう)のことをくわしくはなしければお染(そめ)も不便(ふびん)と涙(なみだ)を催(もよふ)しける。 因(ちなみ)にいふ彼(かの)増吉(ますきち)など居(ゐ)たらんには仇吉(あだきち)を介抱(かいほう)すべき信切者(しんせつもの)なれどこれも今(いま)は嫁入(よめいり)して芝崎(しばさき)の方(かた)へ母(はゝ)もろともにいたりしゆへ問来(とひく)る事(〔こと〕)もなかりしとぞ。そも〳〵人(ひと)の身(み)のうへほど哀(あは)れにはかなき者(もの)はなし。何事(なに〔ごと〕)も定(さだ)めなきが不断(つね)なれば若(わか)き時(とき)に老人(としとる)ことを思ひ花(はな)あるときに下枯(しもがれ)の野(の)を思(おも)ふべし。いつも盛(さかり)といふ事は天地(てんち)の間(あいだ)になきものぞ。欲(よく)より人(ひと)にだまされやすく跡(あと)にて悔(くや)しきこと多(おほ)し。何事(なに〔ごと〕)も慎(つゝ)しみて身(み)を守(まも)る〔こと〕城(しろ)の〔ごと〕くになし給へ。 ○世(よ)の中(なか)は今日(けふ)ばかりこそ同(おな)じけれ 昨日(きのふ)は過(すぎ)つ明日(あす)は知(し)られず。 かくてお染(そめ)は達引(たてひき)ある女(をんな)なれば仇吉(あだきち)が不都合(ふつがう)なるを察(さつ)して金子(きんす)など小遣(こづかひ)にとて与(あた)へつゝ山谷(さんや)に帰(かへ)りて仇吉(あだきち)が難義(なんぎ)の様子(やうす)をはなしける所(ところ)へ久(ひさ)しぶりにて米八(よねはち)が延津賀(のぶつが)の方(かた)へ来(きた)り仇吉(あだきち)の病気(びやうき)難渋(なんぢふ)の噂(うわさ)を聞(きい)て帰(かへ)りしとぞ。また婦多川(ふたがは)には仇吉(あだきち)が次第(しだい)につまる困窮(こんきう)は一人身(ひとりみ)ながら病気(びやうき)ゆへ只(たゞ)何事(なに〔ごと〕)も人頼(ひとだの)み薬取(くすりとり)から勝手元(かつてもと)信切(しんせつ)らしく片手間(かたてま)に見舞(みま)ふ裏家(うらや)の姥(うば)かゝも喰(くひ)かせぎとかすり取(とり)為(ため)になる人(ひと)まれなれば物入(ものいり)多(おほ)く此程(このほど)は家内(かない)の雑作(ぞうさく)道具(どうぐ)まで書入(かきいれ)たりし利付(りつき)の金(かね)借(かり)たる者(もの)は兼(かね)てより此(この)仇吉(あだきち)に執心(しうしん)にて其(その)癖(くせ)強欲(ごうよく)非道(ひどう)の曲者(くせもの)|森羅殿橋(ゑんまどうばし)の鬼九郎(おにくらう)今日(けふ)も見舞(みまひ)と催促(さいそく)を兼(かね)て恋路(こひぢ)のいやらしくすはり込(こん)だる床(とこ)の側(そば)【鬼】「どうだ仇(あだ)さん今日(けふ)は大分(だいぶ)顔色(がんしよく)がいゝの。」【仇】「ハイありがたふ。ナニどふもいゝかと思(おも)ふと折節(とき〴〵)さし込(こむ)からどふもいけないヨ。」【鬼】「イヤ〳〵それでも今(いま)はとんだ顔(かほ)いろがいゝ。そしてマア髪化粧(かみけしよう)していつも座敷(ざしき)へ出(で)かける時(とき)より美(うつ)くしい。しかしおまへのその病気(びやうき)は始終(みんな)男(をとこ)の思(おも)ひだぜ。マアさしあたつて|他人(ひと)よりはおれが思(おも)ひばかりでも出来(でき)不出来(ふでき)が有(ある)はづだ。」トいひながら仇吉(あだきち)の手(て)をとらへ【鬼】「誠(ま〔こと〕)にきれいな手(て)だナア。チツトモ病人(びやうにん)らしかアねへぜ。ヘヽどふもたまらねへ。コレサ仇(あだ)さん此間中(こないだぢう)から言(いふ)とふりどふぞおれが頼(たの)みをムヽと言(い)つてくんねへ。 そうすりやア是(これ)までの借(かし)た金(かね)も返(かへ)すには及(およ)ばず毎日(まいにち)の入用(いりよう)も不残(のこらず)おれが見継(みつい)で昼夜(ちうや)の看病(かんびやう)もおれがするぜ。ヱ仇(あだ)さんヱコウ。」ト言(いひ)つゝ夜着(よぎ)をそろ〳〵とまくりあげ横(よこ)になるを仇吉(あだきち)は夜着(よぎ)を押(おさ)へて身(み)を縮(ちゞ)め【仇】「アレサおよしヨ。おぼしめしは嬉(うれ)しいがこんなに久(ひさ)しく煩(わづら)つて体(からだ)がよごれきつてモウ〳〵〳〵私(わちき)が身(み)で私(わちき)があいそのつきる様(やう)に穢(よご)れて居(ゐ)るものをおまへも少(すこ)しは何(なん)とか思(おも)つておくれでも直(ぢき)にあいそのつきる金(かね)をはたりて鬼九郎(おにくろう)仇(あだ)吉をいどむ種(たね)だはネ。」【鬼】「イヤ〳〵〳〵|他人(ひと)はしらずおいらはモウ〳〵今(いま)言(いふ)ことを聞(きい)てくれりやア死(しぬ)まで愛想(あいそ)はつかさねへ。」ト抱(だき)つくをおし退(のけ)【仇】「アレサマアアレ。」ト着物(きもの)の前(まへ)をしつかり合(あはせ)【仇】「マアお聞(きゝ)よ。 こんなに煩(わづ)らつて居(ゐ)るのをおまへかわひそふだとおもつておくれならどふでもなるけれど私(わちき)が死(し)んでもかまはねへといふ様(やう)な気(き)じやアいやだヨ。」【鬼】「ナニどふしておまへを殺(ころ)していゝものか。 いふ事(〔こと〕)さへ聞(きい)てくれりやア医者(いしや)を幾人(いくたり)かけても物入(ものいり)がいくらかゝつても構(かま)はねへ。是非(ぜひ)|全快(よく)しねへじやアおかねへはな。」【仇】「サアそふ思(おも)つておくれなら私(わちき)が全快(ほんとうに)よくなつて座敷(ざしき)へでも出(で)られるまで気長(きなが)に何(なに)もかも待(まつ)ておくれな。」ト言(いふ)をかまはず夜着(よぎ)の中(なか)へ入(い)るを押(おし)出し手(て)を払(はらふ)をはらはせじとする鬼九郎(おにくらう)が指(ゆび)をポツキリ逆(ぎやく)におれば鬼九郎(おにくらう)は【鬼】「アイタヽヽヽヽ。ヱヽいてへひどひことをするぜ。コウ仇吉(あだきち)さんいゝかげんにしねへな。面白(おもしろ)くもねへ。小児(こども)をだますやうにこゝまでござれ甘酒(あまざけ)しんじよか其手(そのて)をばマア喰(くふ)めへ。おめへがぴん〳〵達者(たつしや)になつて座敷(ざしき)へ出(で)るやうになつて見(み)ねへお客(きやく)が来(く)るやら旦那(だんな)が出来(でき)るやらおゐら達(たち)が側(そば)へも寄(よら)れるものか。そのとき金(かね)をおれに返(かへ)してよろしくお断(〔こと〕はり)だらう。それじやアおめへはよからうがおれがあんまりばか〳〵しい。どうで始終(しゞう)抱(だい)て寝(ねる)ことはならねへ合点(がつてん)で病気(びやうき)の中(うち)を見継(みづく)といふおれが*「見継(みづく)」の濁点位置ママ 信切(しんせつ)をむそくにして追払(おひはら)ふ了簡(りやうけん)なら此方(こつち)もその気(き)でよしやせう。よす日(ひ)になりやア用立(ようだつ)た金(かね)の日数(ひかず)も先月限(せんげつぎり)だア。日限(ひぎり)が切(き)れりやア道具(どうぐ)やを呼(よん)でとりこわすといふことは大家(おほや)さんへも断(〔こと〕は)つてあらア。人(ひと)に怪我(けが)をさせるほどいやがるものを無理(むり)に彼是(かれこれ)いふよりか借(かし)たものを取(とる)方(ほう)が勘定(かんぢやう)がよからう。六両三歩(ろくりやうさんぶ)といふ金(かね)を出(だ)したら抱(だい)て寝(ね)る女(をんな)もあるだらう。とうで女郎(ぢようろ)も同(どう)ぜんに男(をとこ)の数(かず)をおぼへた女(をんな)を箱入娘(はこいれむすめ)かなんぞのやうにしたふといふが我(われ)ながら狐(きつね)にばかされたとおなじ〔こと〕だ。嫌(きら)はれたのが身(み)の仕合(しあはせ)。傾城(けいせい)にふられて帰(かへ)る福(ふく)の神(かみ)眼(め)が覚(さめ)て見(み)りやア有難(ありがて)へ。イヤ仇吉(あだきつ)さ゜んお気(き)の毒(どく)だが今(いま)から直(すぐ)に古道具(ふるどうぐ)やを連(つれ)て来(き)てこの造作(ざうさく)を引(ひき)はらひやすヨ。ヤレ〳〵〳〵機嫌(きげん)よく抱(だか)れて寝(ね)て見(み)たがいゝ。六両三歩(ろくりやうさんぶ)たて投(なげ)にする所(ところ)だつけ。ドレ〳〵障子(せうじ)隔紙(からかみ)の手軽(てがる)いやつは道具(どうぐ)やをよびに行(いく)足(あし)でつゐでだから持(もつ)て行(いか)う。」と中(なか)じきりを外(はづ)しにかゝれば仇吉(あだきち)はくやしくも世間(せけん)の手前(てまへ)恥(はづ)かしければ口惜(くちをし)ながら手(て)を合(あは)せ【仇】「どうぞ拝(おが)むから道具(どうぐ)を売(うる)ことは最(もう)ちつと待(まつ)ておくれな。後生(ごしやう)だから。」【鬼】「後生(ごしやう)も情(なさけ)もおめへしだいサ。其方(そつち)に情(なさけ)がなけりやア此方(こつち)もその気(き)サ。いつまで待(まつ)てゐられるものか。最(もう)今月(こんげつ)も半月(はんつき)過(たつ)たア。」トいひながらかたひし外(はづ)す邪見(じやけん)の鬼(おに)這起(はひおき)すり寄(より)仇吉(あだきち)が鬼九郎(おにくらう)の裾(すそ)にとりつき【仇】「どふぞマア了簡(りやうけん)してせめて最(もう)二三日(にさんち)待(まつ)ておくれな。急度(きつと)どふかするから。」【鬼】「ヱヽはなしねへ。」ト手(て)をはらひ行(ゆく)をやらじと引止(ひきとめ)れば【鬼】「そんなら心(こゝろ)にしたがうか金(かね)を返(かへ)すかどつちでも。」【仇】「サア両方(りやうほう)ともにいやではないが何(なに)をいふにも私(わたし)が病気(びやうき)|全快(よくなり)さへすりやアおまへの心(こゝろ)に。」【鬼】「コウ〳〵おなじせりふでやらずとも少(すこ)し新手(しんて)なあいさつがありそふなものじやアねへか。そのやさしひなりかたちが煩(わづら)つたゆへ猶(なほ)の事(〔こと〕)かわいらしいと思(おも)ひの外(ほか)欲(よく)にかゝると病人(びやうにん)には似(に)てもつかねへその力(ちから)裾(すそ)をとらへて引寄(ひきよせ)る同(おな)じ力(ちから)を肩(かた)へかけて引寄(ひきよせ)られりやア忽(たちまち)にこの鬼九郎(おにくらう)は節分(せつぶん)同前(どうぜん)仏心(ほとけごゝろ)になるものを鬼(おに)にするのは心(こゝろ)がらモウ〳〵色気(いろけ)はやめにする。 サア造作(ぞうさく)を取払(とりはらは)ふか金(かね)をわたすかどふするのだ。」ト取(とり)すがりたる仇吉(あだきち)を突倒(つきたほ)して表(おもて)のかたへ隔紙(からかみ)かゝへて立(たち)いづる後(うしろ)のかたの裏口(うらぐち)より障子(せうじ)も明(あけ)ず声高(こへたか)く「その金(かね)はたツた今(いま)私(わちき)が返(かへ)すヨ。マアお待(まち)。」といはれてびツくり鬼九郎(おにくらう)おもひがけねば仇吉(あだきち)も倶(とも)に驚(おどろく)斗(ばか)りなり。 |
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■第十条
時(とき)に障子(せうじ)をおし明(あけ)て静(しづか)に入来(いりく)るその女(をんな)は恋(こひ)の敵(かたき)と仇吉(あたきち)が常(つね)に妬(ねたみ)し米八(よねはち)なり。|衣類(なり)も容(かたち)も立派(りつぱ)なれど[上着(うはぎ)はわざと目(め)たゝぬやうにつやなし結城(ゆふき)の五(ご)ほんてじま花色(はないろ)うらのふきさへもたんとはださぬおとなし仕立(したて)素人(しろうと)めかす風俗(ふうぞく)はなを温厚(かうとう)に意気(いき)なりけり]まづ仇吉(あだきち)にあいさつしながら蒲団(ふとん)の上(うへ)に伴(とも)なひ介抱(かいほう)して【米】「仇(あた)さんお気(き)にいるまいがマア此処(こゝ)をば私(わちき)にまかしておくれナ。 今(いま)に後(あと)でいろ〳〵はなすから。」トなだめながら鬼九郎(おにくらう)に向(むか)ひ【米】「アイモシおまへが仇吉(あだきち)さんに借(かし)た金(かね)は何程(いくら)だへ。」【鬼】「おまへはたしか仇吉さんとは色(いろ)の意気地(いきぢ)で敵同士(かたきどし)と噂(うわさ)にきいて折節(おり〳〵)は㒵(かほ)も見知(みし)つた米八(よねはつ)さん。」【米】「アイ人(ひと)の噂も七十五日|過(すぎ)たむかしは兎(と)も角(かく)も今(いま)じやア実(じつ)の兄弟(きやうだい)同前(どうぜん)。其様(そん)なことは打捨(うつちやつ)ておゐてマア其(その)金(かね)はいくらだへ。」【鬼】「ヱハイ何(なに)少(すこ)しでこせへます。 たつた六七両(ろくしちりやう)サ。」ト鼻(はな)であしらふあいさつはこれ米八(よねはち)をあなどりて大金(たいきん)ゆへに出来(でき)まじと思(おも)ひてかくは言(いひ)けるを米八(よねはち)は懐中(くわいちう)より金子(きんす)とり出し紙(かみ)に載(のせ)小判(こばん)をならべて七両を鬼九郎(おにくらう)へさしつけ【米】「証文(しようもん)があるならお返(かへ)し無(なか)ア請取(うけとり)をおくれ。」トいはれてびつくり鬼九郎(おにくらう)【鬼】「ヱそんならおまへが立代(たてかへ)てこの大金(たいきん)を私(わたくし)へ。」【米】「アイ仇吉(あだきつ)さんでも私(わちき)でもはかなひ活業(しようばい)したかはり勿体(もつたい)ないほど銭金(ぜにかね)を遣(つか)つた事もありますのサ。病人(びやうにん)を付(つけ)こんでいぢめなさるおまへの腹(はら)とは違(ちが)ひます。サア請取(うけとり)をよこしてはやくお帰(かへ)り。」【仇】「イヱそれではどうも私(わちき)の心(こゝろ)が済(すま)ないから。」【米】「アレサ仇(あだ)さん何ごとも跡(あと)でお言(いひ)よ。マアこゝは私(わちき)にまかしてお置(おき)といふのに。」ト眼交(めまぜ)でをしゆる米八(よねはち)が心(こゝろ)の底(そこ)はしらねども気(き)をもみしゆへ今(いま)さらにまたもさしこむ胸前(むなさき)をおさへて床(とこ)に伏沈(ふししづ)む。【鬼】「アイそんならこれが証文(しようもん)サ。」ト不承(ふせう)〴〵にさし出せば米八(よねはち)はおしひらきて【米】「ヲヤこりやア六|両(りやう)三歩(さんぶ)だネ。」【鬼】「ヱイ左様(さやう)サ。利(り)は初手(しよて)におもらひ申しましたから七両では壱歩(いちぶ)お返(かへ)し申ます。」トいへば米八(よねはち)莞爾(につこり)わらひ【米】「よひヨ煩(わづら)つて居(ゐ)る仇(あだ)さんをくどひたお礼(れい)におまへにあげるヨ。サア〳〵早(はや)くお帰(かへ)り。」と追出(おいいだ)されて鬼九郎(おにくらう)恥(はぢ)をしらざる強欲者(ごうよくもの)かなはぬ恋(こひ)の不首尾(ぶしゆび)には壱歩(いちぶ)の金(かね)も取徳(とりどく)と彼(かの)七両(しちりやう)を懐(ふところ)へいれてこそ〳〵逃帰(にげかへ)る。跡(あと)には静(しづか)に米八(よねはち)が仇吉(あだきち)の側(そば)へすり寄(より)【米】「仇(あだ)さんさぞ私(わちき)か今(いま)のしうちを出過(ですぎ)た仕方(しかた)とお思(おも)ひだらふが堪忍(かんに)してマアお聞(きゝ)。ヨ。そして。たんとせつないかへ。」トそろ〳〵と背中(せなか)を*「聞(きゝ)。」の句点位置ママ 撫(なで)て「ヲヽ〳〵誠(ま〔こと〕)にやせたねへ。」仇吉(あだきち)は心(こゝろ)のうち今日(けふ)米八(よねはち)が此所(こゝ)へ来(き)しその善悪(よしあし)はしらねともさしかゝりたる手詰(てづめ)の難(なん)をすくひし上(うへ)に此(この)介抱(かいほう)いぶかしながらも嬉(うれ)しくて【仇】「米八(よねはつ)さん誠(ま〔こと〕)にマアどふして来(き)ておくれだ。これも夢(ゆめ)じやアないかねヘ。」ト涙(なみだ)はら〳〵米八(よねはち)が㒵(かほ)をながめてありければ米八(よねはち)も仇吉(あだきち)かまけぬ気性(きしやう)を知(し)るゆへに心(こゝろ)の中(うち)を察(さつ)しやり眼(め)をうるまして㒵(かほ)さし寄(よせ)【米】「アレサ仇(あだ)さん其様(そんな)に気(き)をおもみでないよ。何(なに)ことも*「何(なに)こと」の「こ」は部分欠損 縁(えん)づくだはネ。定(さだ)めておまへの心(こゝろ)じやア私(わちき)をにくいとお思ひだらうがわる気(ぎ)で来(こ)ない私(わちき)が心(こゝろ)どふぞ是(これ)までの事は水(みづ)にして心置(こゝろおき)なくおもつておくれな。全体(ぜんたい)私(わちき)が来(く)るよりは丹(たん)さんを見舞(みまひ)にと思(おも)つて今日(けふ)まで延(のば)したけれどまだなか〳〵に帰(かへ)る沙汰(さた)もなし。おまへの病気(びやうき)は重(おも)いといふしことに母御(おつかあ)も死去(なくなつ)たといふ噂(うわさ)なんでも大(たい)そう難義(なんぎ)して御在(おいで)だといふ〔こと〕を聞(きい)たからぶしつけだけれどかわいそうで〳〵ならないゆへ今日(けふ)はモウ〳〵案(あん)じられてたまらないから来(き)たんだアね。」トさもうちとけしあいさつに仇吉(あだきち)は手(て)を合(あはせ)【仇】「米八(よねはつ)さんどふぞ今(いま)までのことをば実正(ほんとう)に堪忍(かんにん)しておくれな。そして丹(たん)さんは遠国(とうく)へでもお出(いで)のかへ。」【米】「ほんに急(いそ)ぎの旅(たび)だから此方(こつちら)へ賢女(けんぢよ)仇(あだ)を恩(おん)にて伏(ふく)すしらせる間(ま)がなかつたらうねへ。アノ丹(たん)さんはネ親御(おとつ)さ゜んが道中(どうちう)で大病(だいびやう)だといふしらせが来(き)たもんだから俄(にはか)に旅支度(たびじたく)をして京都(かみかた)へ立(たつ)てお出(いで)だヨ。それからまた日数(ひかず)が過(すぎ)て飛脚(ひきやく)が来(き)て病気(びやうき)はいゝが御用筋(ごようすぢ)が手間(てま)どれるから丹次郎(たんじらう)は済(すみ)しだい同道(どう〳〵)して帰(かへ)るから案(あん)じるなと手紙(てがみ)がきたから何日(いつ)帰(かへ)るか知(し)れないよ。」【仇】「ヲヤ〳〵そふかへ。どふりでさつぱり便(たよ)りがないと思(おも)つて実(じつ)はお長(ちやう)さんとやらとおまへを恨(うら)んで居(ゐ)たが罪(つみ)だツけねへ。そのばちで此様(こんな)に塩梅(あんばい)がわるいと思(おも)ひますは。」【米】「ナニ〳〵決(けつ)してそふではないヨ。おまへの間(ま)のわるいのだヨ。また能(いゝ)ことも来(く)るはネ。今日(けふ)は私(わちき)も覚語(かくご)をしておまへがうち解(とけ)ておくれなら一晩(ひとばん)止宿(とまつ)てゆる〳〵といろ〳〵の咄(はな)しもしようし看病(かんびやう)もしてあげる気(き)だからお長(ちやう)さんによくのみ込(こま)せて来(き)たからその気(き)でおいでな。」トあたりを片付(かたづけ)る。【仇】「アレサ米(よね)さんおよしヨ。おまへの着物(きもの)がよごれるはネ。私(わちき)やア宅(うち)をはき出(だ)してきれゐにするのが好(すき)だけれど斯(かう)して寝(ね)ているからモウ〳〵何(なに)かゞごみだらけでいけないヨ。そしてマア私(わちき)が第一(だいち)冥利(みやうり)がわるひはネ。其様(そんな)にやさしいおまへとも知(し)らずに迷(まよ)つた横恋慕(よこれんほ)是非(ぜひ)丹(たん)さんを自由(じゆう)にしよふと無理(むり)がこふじておまへと喧嘩(けんくは)なか直(なほ)りはしたけれど今(いま)さらおまへに㒵向(かほむけ)もならぬ私(わちき)が無法(むほう)なしかたおもひ出(だ)しても勿体(もつたい)ない。他(ひと)の噂(うわさ)の草履打(ざうりうち)それを根葉(ねは)にも思(おも)はずに斯(かう)して見舞(みまひ)に来(き)ておくれのお志(こゝろざし)に対(たい)しては恥(はづ)かしくつて死(しに)たいヨ。」トいひつゝあとはむせかへりわつと泣出(なきだ)す仇吉(あだきち)が涙(なみだ)の雨(あめ)かばら〳〵と降出(ふりいだ)したる空(そら)ながめ引窓(ひきまど)しめる米八(よねはち)が【米】「ヲヤ此(この)ひぼはどふしたか誠(ま〔こと〕)にかたいねへ。」【仇】「アヽどふかして工合(ぐあい)がわるくなつたヨ。今(いま)裏(うら)のおばさんが来(き)たらしめてもらふからマアそうしておいておくれ。」【米】「板(いた)の間(ま)だから濡(ぬれ)てもよいねヘ。」トまた仇吉(あだきち)が側(そば)に居(すは)り煙草(たばこ)をつけてやり【米】「仇(あだ)さん誠(ま〔こと〕)に不躾(ぶしつけ)だが延津賀(のぶつが)さん所(とこ)で噂(うわさ)を聞(きい)てさぞ困(こま)つてお出(いで)だらうと思つて出(で)て来(き)たから今(いま)のお金(かね)もはじめツからおまへの小遣(こづか)ひにするつもりまだ持(もつ)て来(き)たのがあるヨ。マア当時(とうぶん)入用(いりよう)の物(もの)を私(わちき)が居(ゐ)るうち不残(のこらず)お買(かひ)な。宅(うち)へ帰(かへ)ると亦(また)追(おひ)〳〵によこしておまへの|全快(よく)なるまではどんな事(〔こと〕)をしても見継(みつぐ)から必(かならす)〳〵気(き)を丈夫(じやうぶ)に持(もつ)ておいでよ。」ト紙(かみ)に包(つゝみ)しその儘(まゝ)仇吉(あだきち)が手にわたす。[これもおよそ三四両あり仇吉はいたゞいて米八にかへし]【仇】「誠(ま〔こと〕)に|難有(ありがたい)がこんなに沢山(たんと)はいらないはネ。そして寝(ね)てばかり居(ゐ)るから何(なに)もそんなに入(いる)ことはなひヨ。」【米】「それでもおまへ|他人(ひと)を頼(たの)んで何(なに)かの用(よう)をたしてもらふに金銭(おあし)がないと自由(じゆう)が出来(でき)ないはネ。マア取(とつ)てお置(おき)ヨ。」トいゝながら表(おもて)の障子(せうじ)を明(あけ)て外(そと)を見(み)る。これは知人(しりひと)でも通(とほ)らば用事(ようじ)を頼(たの)まん心(こゝろ)なり。 所(ところ)へ丁度(てうど)貸本(かしほん)の荷(に)を背負(しよひ)たりし若者(わかいもの)これ桜川(さくらかは)の甚吉(ぢんきち)なり。【米】「ヲヤ甚吉さん久(ひさ)しぶりだの。何(なん)ぞ新板(しんぱん)が有(ある)なら貸(かり)ようじやアねへか。」【甚】「ヘイそれは難有(ありがたふ)。」ト格子(かうし)をあけて荷(に)を下(おろ)し【甚】「おまへさんどふして此宅(こゝ)においでなさひますへ。今日(けふ)も親方(おやかた)が[さくら川ぜんかうをさしていふなり]はやく場所(ばしよ)を廻(まは)つてしまつて仇吉(あだきつ)さん所(とこ)を気(き)をつけて用(よう)をたして上(あげ)ろと言付(いひつけ)ましたつけがお塩梅(あんばい)はどふでございますか。」【米】「ヲヤそふかへ。今日(けふ)は少(すこ)しよひヨ。おまへ宅(うち)へ行(いつ)たら私(わちき)がよろしくとそふ言(いつ)ておくれヨ。由(よし)さんにも。」【甚】「ハイ〳〵。」トいひながら貞操婦女八賢誌(ていさうをんなはつけんし)といふ絵入読本(ゑいりよみほん)をいだし「これが評判(ひやうばん)のいゝ新板(しんはん)でございます。」【米】「そふかへだれが作(さく)だへ。」ト[作者(さくや)の名(な)をよみ㒵をしかめ]「イヤ〳〵私(わちき)やアこの*「作者(さくや)。」(ママ)狂訓亭(きやうくんてい)といふ作者(さくしや)はどふも嫌(きら)ひたヨ。楚満人(そまひと)と|名号(いつた)時分(じぶん)から見るけれどどふも面白(おもしろ)いのはすくないものヲ。」【甚】「イヱ〳〵それはみんな弟子(でし)や素人(しろうと)の作(つくつ)たのへ楚満人が名ばかり書(かい)たのでございます。この八賢誌(はつけんし)をマア御覧(こらうじ)まし。」[米八はこれをかり外にもいろ〳〵かりて]【米】「仇(あだ)さん夜伽(よとぎ)をしながら本(ほん)を読(よん)で聞(きか)せるヨ。」【仇】「嬉(うれ)しいねへ。 甚(ぢん)さん善孝(ぜんかう)さんに昨日(きのふ)は難有(ありがたふ)と言(いつ)ておくれヨ。」【甚】「ハイ〳〵今日(こんち)も御用(ごよう)があるならばそふおつしやいまし。」ト[いへば米八(よねはち)は米(こめ)薪(まき)炭(すみ)すべて世帯(しよたい)について入用(いりよう)のものをたくさんにいひつけもらはんと金(かね)をわたしたのむ]【甚】「ハイ〳〵それじやア直(ぢき)に行(いつ)て言付(いひつけ)ましてまた晩程(ばんほど)参(まい)ります。」ト荷物(にもつ)をしよつて帰(かへ)りゆく。【米】「仇(あだ)さんちツとお見(み)な。」トいへど仇吉(あだきち)こたへなく枕(まくら)にもたれてうち伏居(ふしゐ)る。【米】「仇(あだ)さんたんとわるくなツたかへ。」【仇】「イヽヱ。」【米】「私(わちき)が何(なに)かに出過(ですぎ)ると思つて腹(はら)をお立(たち)か。」トいへば涙(なみだ)の顔(かほ)をあげ【仇】「イヱ〳〵どふして勿体(もつたい)ない。実(じつ)は藤兵衛(とうべゑ)さんや善孝(ぜんかう)さんのお世|話(わ)で一旦(いつたん)丹(たん)さんときれいに別(わか)れたつもりだけれど何(なん)の因果(いんぐわ)かわすられずに泣(ない)てばツかりくらして居(ゐ)れどまた丹(たん)さんも相(あい)かはらず逢(あひ)こそしないが文(ふみ)のつてかわらずくらすか無事(ぶじ)でゐるかと問音信(とひおとづれ)のやさしいのがあの人(ひと)さんの不断(ふだん)の気性(きしやう)どふぞ死(し)ぬまで縁(えん)をきらずに居(ゐ)たいと思(おも)つて居たけれどおまへの今日(けふ)の御信切(ごしんせつ)思(おも)つて見(み)るほど私(わちき)が罪(つみ)空恐(そらおそろ)しひ心(こゝろ)の底(そこ)お祖師(そし)さまでも神(かみ)さんでもにくひと思(おぼ)しめさないお方(かた)はひろい世界(せかい)に有(あり)ますまい。是(これ)から急度(きつと)気(き)をいれかへて丹(たん)さんのことゝいつたら夢(ゆめ)にも見(み)まいと思(おも)ふからどふぞ米(よね)さんそふ思(おも)つて今(いま)までの事をば堪忍(かんにん)して其(その)かわりには此(この)病気(びやうき)でどうで死(し)ぬからその時(とき)は未練(みれん)なやうだが臨終(しにめ)にはおまへと丹(たん)さんと一同(いつしよ)に来(き)ていとま乞(こひ)をしておくれな。 さつぱり思(おも)ひきるといふ言葉(〔こと〕ば)の露(つゆ)の干(ひ)ない中(うち)やツぱり愚痴(ぐち)な執心(しうしん)とお思(おも)ひだらうがよく〳〵な願(ねが)ひとおもつて丹(たん)さんにもどふぞ頼(たの)んで来(き)ておくれな。」ト身(み)も浮(うく)ばかり涙(なみだ)の滝(たき)ながれの里(さと)の洒落(しやれ)た気(き)も実(じつ)に迷(まよ)へば素人(しろと)よりまさる思(おも)ひは米八(よねはち)も苦労人(くらうにん)だけ仇吉(あだきち)が心(こゝろ)の中(うち)をおもひやりこれも涙(なみだ)に伏沈(ふししづ)みしばしこたえはなかりけり。 [梅暦餘興]春色辰巳の園巻之十一了 |
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