加計学園 岡山理科大学・獣医学部新設史

加計学園 / 加計学園1加計学園2加計勉加計晃太郎・・・
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転機 / 「行政がゆがめられた」官房副長官発言の文書見つかる前川前文科次官会見「首相案件」文書柳瀬参考人招致・・・
国家戦略特区制度 / 国家戦略特区1特区2特区3特区4特区5特区6特区7・・・規制改革メニュー国家戦略特区基本方針・・・
国家戦略特区諮問会議 / 第18回会議第21回会議第24回会議第27回会議第29回会議第30回会議第34回会議・・
秋池玲子坂根正弘坂村健竹中平蔵八田達夫
 

雑学の世界・補考

加計学園

加計学園 1
挨拶 加計晃太郎
学校法人加計学園は、現在、岡山理科大学、倉敷芸術科学大学、千葉科学大学、岡山理科大学附属高等学校、岡山理科大学附属中学校、岡山理科大学専門学校、玉野総合医療専門学校、御影インターナショナルこども園の3大学、1高等学校、1中学校、2専門学校、1こども園を設置しております。
いずれの学校におきましても、創立者 加計 勉の提唱する「ひとりひとりの若人が持つ能力を最大限に引き出し技術者として社会人として社会に貢献できる人材を養成する」ことを建学の理念とし、時代の流れを見据えながら、社会のニーズを先取りした特色ある教育研究事業を展開しております。
時代は21世紀となり、私たちを取り巻く社会は、より複雑なものになって来ております。これに伴い、学校教育も、社会に適応できる教育指導、カリキュラム編成をし、さらには教育環境をも考慮し、あらゆる面で改善を重ねていかなければならないのは当然の成り行きであり、常に努力を怠らないようにしております。
また、加計学園のみならず、学園グループ傘下の各法人が相互に協力、交流し合って学生・生徒の教育指導にあたるバックアップ体制は、他学園には類のないユニークな特色であると自負しております。本学園といたしましては、私学ならではの特色ある教育を十二分に活かし、真価を問うことが可能であると確信しております。 
建学の理念
ひとりひとりの 若人が持つ能力を
最大限に引き出し 技術者として 社会人として
社会に貢献できる 人材を養成する 
創立者・加計勉の足跡
加計学園創立者の加計勉は大正12年3月27日、広島県賀茂郡三津町(現・東広島市)で、10人きょうだいの末っ子として誕生しました。親族には教育者が多く、加計勉も広島文理科大学(現・広島大学)広島臨時教員養成所・数学科を出て教員の道を歩みました。そんな加計勉に大きな影響を与えたのは戦争でした。特に原爆で焦土と化した広島を目の当たりにした時に「日本の復興は教育しかない」と考え、一念発起して広島文理科大学に入学します。そこで直面したのは国立大学の「融通が利かない縦割り」の体質でした。加計勉は次第に「本当の教育は私立でなければできない」「自分が理想とする大学をつくりたい」と考えるようになっていきました。
教育事業で最初に手掛けたのは教育出版事業でした。ところが手ひどい失敗を喫します。無一文となった加計勉に救いの手を差し伸べたのは大学時代の恩師でした。その紹介で、相互銀行から融資を受け、昭和30年に開校した進学予備校・広島英数学館が大成功を収めてからは急展開します。昭和35年に岡山予備校を開校。翌年、水島コンビナートの開発に合わせて学校法人加計学園を設立し、現在地の半田山に岡山電機工業高等学校(後の岡山理科大学附属高等学校)を開校しました。昭和39年、念願の岡山理科大学を開学しました。41歳でした。西日本で初の理学部単科大学で、1期生は応用数学科71人、化学科72人でした。
新設する大学の学部・学科構成には加計の強いこだわりがありました。まず「日本の高度工業社会を支えていくには技術者の養成が急務である」とし、「当時の国立大学に設けられているような理学部ではなく、できれば応用理学部というようなものにしたいと思っていた」。既存の枠を越えた教育研究に取り組む「学際領域」。この領域こそが加計の考えた「リベラルでアカデミックな大学」の真骨頂でした。理学部にこだわったのは、自身が理学部出身で事情が分かっているフィールドから「学際」で領域を広げていこうと考えたためでした。
背景には広島英数学館設立当初から掲げていた「ひとりひとりの可能性を積極的に肯定して、その持つ能力を最大限に引き出す」という教育方針があり、その「建学の理念」は今でも変わっていません。
大学運営にもこだわりがありました。「校舎はどうでもいいんだ。いい先生といい実験道具さえあれば」。加計の口癖でした。その言葉通り、国内でもトップクラスの電子計算機や電子顕微鏡などを、惜しげもなく次々に購入しました。「出来立ての小さな大学だけど、自由に研究させてもらえるぞ」という評判は研究者の間で、またたく間に広がっていきました。
昭和49年には大学院理学研究科修士課程、その4年後には博士課程(後期)を設置しました。昭和61年に工学部、平成9年には初の文系を含む総合情報学部と、フィールドを拡大していきます。この間、昭和42年には学校法人高梁学園(現・順正学園)を設立し、順正短期大学、順正高等看護専門学院を開校するなど、学園はグループとして大きく発展していきました。
また、「教育」とともに加計勉が大切にしたのは「国際交流」でした。「世界各国と仲良くしていかなきゃならない、それが世界平和につながる」と考えたからです。昭和54年に米国ライト大学と教育交流協定を締結したのを皮切りに現在では19カ国・地域の69校、3研究機関にまで増えています。毎年夏期・春期には海外研修を行っているほか、英語研修プログラムも実施。米国とブラジルからは毎年、研修団が来日しています。
数多くの夢を実現して、加計勉は平成20年4月30日、85歳で永眠しました。 
沿革
昭和30年4月
加計学園の出発点ともなった広島英数学館を、加計勉が創立
昭和36年9月
学校法人加計学園設置認可、理事長に加計勉就任、岡山電機工業高等学校設置認可
昭和36年10月
広島英数学館設置者変更認可
昭和37年4月
岡山電機工業高等学校開校(全日制、電気科・電子工業科) 初代校長に神崎栄一郎就任
昭和39年1月
岡山理科大学設置認可
昭和39年2月
岡山理科大学設置認可にともない、岡山電機工業高等学校を岡山理科大学附属高等学校に名称変更
昭和39年4月
岡山理科大学開学(理学部応用数学科、化学科) 初代学長に加計勉就任
昭和40年1月
福山英数学館設置認可
昭和41年4月
岡山理科大学理学部に応用化学科、応用物理学科を増設
昭和42年4月
岡山理科大学附属高等学校第2代校長に内藤一人就任
昭和44年2月
学校法人加計学園から広島英数学館並びに福山英数学館を分離
昭和44年4月
岡山理科大学理学部に機械理学科、電子理学科を増設
昭和46年4月
岡山理科大学理学専攻科を設置
昭和46年11月
学校法人加計学園創立十周年記念式典を挙行
昭和48年10月
学校法人加計学園の所在地が岡山市の住居表示の変更により、岡山市理大町と町名変更
昭和49年4月
岡山理科大学大学院理学研究科修士課程を設置
岡山理科大学附属高等学校第3代校長に中尾寿夫就任
昭和50年4月
岡山理科大学理学部に基礎理学科を増設
岡山高等建築専門学院設置認可
昭和50年5月
岡山高等建築専門学院開校(建築学科夜間部定時制) 初代院長に中尾寿夫就任
昭和51年4月
岡山高等建築専門学院、専修学校法施行により岡山高等建築専門学校に名称変更
昭和53年4月
岡山理科大学大学院理学研究科に博士課程(後期)を設置
昭和55年4月
岡山理科大学第2代学長に、奥田毅就任
岡山理科大学附属高等学校第4代校長に松本卓三就任
岡山高等建築専門学校昼間部を増設、第2代校長に片山誠二就任
昭和55年7月
寄附行為変更により総長制度認可、初代総長に加計勉就任
昭和57年11月
学校法人加計学園創立20周年記念式典挙行
昭和59年4月
岡山理科大学第3代学長に、黒谷寿雄就任
昭和60年4月
岡山理科大学附属高等学校普通科体育コースを笹ヶ瀬に移し、笹ヶ瀬校舎とする
昭和61年4月
岡山理科大学工学部設置
岡山理科大学附属高等学校第5代校長に三宅寛就任
岡山高等建築専門学校を岡山理科大学専門学校に名称変更
岡山理科大学専門学校商業実務専門課程を増設
昭和63年4月
岡山理科大学理学部に生物化学科を増設
平成2年4月
岡山理科大学第4代学長に、加計勉就任
岡山理科大学大学院の理学研究科を改組し、工学研究科を設置
岡山理科大学に教職特別課程を設置
平成4年1月
岡山理科大学附属高等学校第6代校長に加計晃太郎就任
平成4年4月
岡山理科大学工学部に情報工学科を増設
岡山理科大学附属高等学校第7代校長に渡辺己巳生就任
平成4年10月
学校法人加計学園創立30周年記念式典挙行
平成4年12月
岡山理科大学理学部応用化学科、機械理学科、電子理学科を廃止
平成6年12月
倉敷芸術科学大学設置認可 初代学長に谷口澄夫就任
平成7年4月
倉敷芸術科学大学開学(芸術学部、産業科学技術学部、教養学部)
平成9年4月
岡山理科大学総合情報学部を増設
平成9年12月
玉野看護福祉総合専門学校設置認可
平成10年4月
玉野看護福祉総合専門学校を開校(保健看護学科、介護福祉学科) 初代校長に金政泰弘就任
岡山理科大学附属高等学校第8代校長に三木輝知就任
岡山理科大学専門学校第3代校長に村上侑就任
平成11年4月
倉敷芸術科学大学第2代学長に土井章就任
倉敷芸術科学大学大学院開設(芸術研究科、産業科学技術研究科、人間文化研究科)
平成12年4月
倉敷芸術科学大学教養学部を国際教養学部に名称変更
倉敷芸術科学大学国際教養学部起業学科を増設
岡山理科大学附属高等学校通信制課程普通科を設置
平成13年1月
学校法人加計学園第2代理事長・総長に加計晃太郎就任
平成13年4月
岡山理科大学工学部福祉システム工学科設置
岡山理科大学総合情報学部数理情報学科を、情報科学科に名称変更
岡山理科大学大学院修士課程に総合情報研究科設置
岡山理科大学工学部機械工学科を機械システム工学科に名称変更
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部機能物質化学科を、生命化学科に名称変更
倉敷芸術科学大学大学院博士(後期)課程(芸術研究科、産業科学技術研究科)設置
倉敷芸術科学大学留学生別科設置
玉野看護福祉総合専門学校を、玉野総合医療専門学校に名称変更
岡山理科大学第5代学長として、山村泰道就任
平成13年9月
岡山理科大学附属中学校設置認可
平成14年4月
岡山理科大学総合情報学部シミュレーション物理学科をコンピュータシミュレーション学科に名称変更
倉敷芸術科学大学大学院(通信制)設置
岡山理科大学附属高等学校第9代校長に北尾正幸就任
岡山理科大学附属高等学校笹ヶ瀬校舎普通科募集停止
岡山理科大学専門学校第4代校長に逢坂一正就任
岡山理科大学専門学校文化・教養専門課程、文化・教養一般課程設置
岡山理科大学附属中学校開校
岡山理科大学附属中学校初代校長に善木道雄就任
平成15年3月
岡山理科大学附属高等学校笹ヶ瀬校舎を廃止
平成15年4月
岡山理科大学大学院総合情報研究科博士課程(後期)を設置
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部コンピュータ情報学科(通信教育課程)、国際教養学部起業学科(通信教育課程)を設置
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部ソフトウエア学科をコンピュータ情報学科に名称変更
平成15年11月
千葉科学大学設置認可
平成16年3月
倉敷芸術科学大学専門学校設置認可
平成16年4月
岡山理科大学理学部臨床生命科学科を設置
岡山理科大学第6代学長に宮垣嘉也就任
倉敷芸術科学大学芸術学部映像・デザイン学科を設置
倉敷芸術科学大学芸術学部工芸学科を工芸・デザイン学科に名称変更
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部起業学科を設置
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部起業学科(通信教育課程)を設置
倉敷芸術科学大学生命科学部生命科学科、健康科学科を設置
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部生命化学科募集停止
倉敷芸術科学大学国際教養学部教養学科及び起業学科募集停止
倉敷芸術科学大学国際教養学部起業学科(通信教育課程)募集停止
千葉科学大学開学
千葉科学大学初代学長に平野敏右就任
倉敷芸術科学大学専門学校開校
倉敷芸術科学大学専門学校初代校長に岡本繁通就任
平成17年4月
岡山理科大学工学部知能機械工学科を設置
岡山理科大学工学部福祉システム工学科募集停止
倉敷芸術科学大学第3代学長に添田喬就任
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部起業学科(通信教育課程)募集停止
岡山理科大学附属高等学校第10代校長に橋爪道彦就任
岡山理科大学附属中学校第2代校長に新倉正和就任
岡山理科大学専門学校第5代校長に圓堂稔就任
玉野総合医療専門学校第2代校長に岡田茂就任
平成18年4月
岡山理科大学工学部応用化学科をバイオ・応用化学科に名称変更
倉敷芸術科学大学生命科学部生命動物科学科を設置
千葉科学大学薬学部薬学科を4年制から6年制に変更及び薬科学科を設置
平成18年5月
学園出資会社、株式会社K2ライフラボ設立
平成19年4月
岡山理科大学工学部生体医工学科を設置
岡山理科大学総合情報学部建築学科を設置
岡山理科大学工学部電子工学科を電気電子システム学科に名称変更
岡山理科大学総合情報学部コンピュータシミュレーション学科募集停止
倉敷芸術科学大学専門学校第2代校長に伊藤敏夫就任
平成20年4月
岡山理科大学理学部動物学科設置
倉敷芸術科学大学芸術学部美術工芸学科設置
倉敷芸術科学大学映像・デザイン学科をメディア映像学科に名称変更
倉敷芸術科学大学芸術学部デザイン学科設置
倉敷芸術科学大学芸術学部美術学科、工芸・デザイン学科募集停止
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部コンピュータ情報学科をIT科学科に名称変更
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部起業学科を起業経営学科に名称変更
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部観光学科設置
倉敷芸術科学大学生命科学部生命医科学科設置
千葉科学大学大学院薬科学研究科、危機管理学研究科設置
千葉科学大学薬学部動物生命薬科学科設置
倉敷芸術科学大学専門学校を倉敷 食と器 専門学校に名称変更
岡山理科大学第7代学長に波田善夫就任
平成20年4月
創立者加計勉逝去
平成21年4月
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部コンピュータ情報学科(通信教育課程)をIT科学科(通信教育課程)に名称変更
倉敷芸術科学大学留学生別科に神戸留学生別科を設置
千葉科学大学危機管理学部動物・環境システム学科、医療危機管理学科設置
千葉科学大学危機管理学部防災システム学科、環境安全システム学科募集停止
岡山理科大学専門学校第6代校長に小林正文就任
平成21年8月
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部IT科学科(通信教育課程)募集停止
平成22年3月
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部生命化学科、起業学科(通信教育課程)を廃止
倉敷芸術科学大学国際教養学部(教養学科、起業学科、起業学科(通信教育課程))を廃止
平成22年4月
千葉科学大学薬学部生命薬科学科設置
千葉科学大学危機管理学部航空・輸送安全学科設置
千葉科学大学薬学部薬科学科、動物生命薬科学科募集停止
千葉科学大学大学院薬科学研究科博士課程(後期)、危機管理学研究科博士課程(後期)設置
岡山理科大学と千葉科学大学に留学生別科設置
千葉科学大学第2代学長に赤木靖春就任
玉野総合医療専門学校第3代校長に高井研一就任
倉敷 食と器 専門学校第3代校長に川上雅之就任
平成22年11月
ヘルスピア倉敷(倉敷芸術科学大学総合医療健康センター)オープン
平成23年3月
岡山理科大学工学部福祉システム工学科を廃止
平成23年4月
倉敷 食と器 専門学校第4代校長に亀井秀人就任
岡山理科大学総合情報学部建築学科を募集停止
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部IT科学科募集停止
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部起業経営学科募集停止
岡山理科大学工学部建築学科設置
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部経営情報学科設置
倉敷芸術科学大学生命科学部健康医療学科設置
平成23年10月
倉敷芸術科学大学第4代学長に唐木英明就任
平成23年11月
学校法人加計学園創立50周年記念式典挙行
平成23年12月
学園出資会社、株式会社SID創研設立
平成24年4月
岡山理科大学生物地球学部設置
岡山理科大学総合情報学部生物地球システム学科募集停止
千葉科学大学大学院薬科学研究科を薬学研究科に名称変更、薬学科(6年制)を基礎とした薬学専攻博士課程(4年制一貫)を設置
千葉科学大学危機管理学部に環境危機管理学科及び動物危機管理学科を設置
千葉科学大学危機管理学部動物・環境システム学科募集停止
岡山理科大学附属高等学校第11代校長に宮垣嘉也就任
岡山理科大学附属中学校第3代校長に位田隆久就任
岡山理科大学専門学校第7代校長に村岡正就任
倉敷 食と器 専門学校募集停止
倉敷芸術科学大学別科に調理師別科、製菓衛生師別科設置
平成25年3月
倉敷芸術科学大学芸術学部工芸・デザイン学科を廃止
岡山理科大学附属高等学校全日制課程電気科及び情報科を廃止
倉敷 食と器 専門学校閉校
平成25年4月
千葉科学大学危機管理学部航空・輸送安全学科を工学技術危機管理学科に名称変更
岡山理科大学総合情報学部コンピュータシミュレーション学科を廃止
千葉科学大学危機管理学部環境安全システム学科を廃止
平成25年10月
倉敷芸術科学大学芸術学部美術学科を廃止
平成26年3月
千葉科学大学危機管理学部防災システム学科を廃止
岡山理科大学専門学校文化・教養一般課程を廃止
倉敷芸術科学大学神戸留学生別科を廃止
平成26年4月
倉敷芸術科学大学芸術学部デザイン学科をデザイン芸術学科に名称変更
倉敷芸術科学大学生命科学部生命動物科学科を動物生命科学科に名称変更
倉敷芸術科学大学芸術学部美術工芸学科、産業科学技術学部観光学科、生命科学部健康医療学科募集停止
倉敷芸術科学大学別科 調理師別科、製菓衛生師別科募集停止
千葉科学大学看護学部設置
認可外保育所 御影インターナショナルこども園 開園
倉敷芸術科学大学第5代学長に土井章就任
平成27年3月
倉敷芸術科学大学別科 調理師別科、製菓衛生師別科を廃止
千葉科学大学薬学部動物生命薬科学科を廃止
平成27年4月
岡山理科大学工学部生体医工学科を生命医療工学科に名称変更
倉敷芸術科学大学第6代学長に河野伊一郎就任
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部IT科学科、起業経営学科を廃止
岡山理科大学附属校等学校全日制課程教育学科設置
岡山理科大学附属中学校第4代校長に河村定彦就任
玉野総合医療専門学校第4代校長に平井義一就任
平成28年3月
岡山理科大学総合情報学部建築学科を廃止
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部IT科学科(通信制課程)を廃止
平成28年4月
岡山理科大学第8代学長に柳澤康信就任
岡山理科大学教育学部初等教育学科、中等教育学科を設置
岡山理科大学大学院生物地球科学研究科を設置
千葉科学大学第3代学長に木曽功就任
岡山理科大学附属高等学校第12代校長に洲脇史朗就任
平成29年3月
倉敷芸術科学大学芸術学部美術工芸学科を廃止
千葉科学大学危機管理学部動物・環境システム学科を廃止
平成29年4月
岡山理科大学経営学部経営学科設置
倉敷芸術科学大学危機管理学部危機管理学科設置
千葉科学大学危機管理学部工学技術危機管理学科を航空技術危機管理学科に名称変更
岡山理科大学専門学校第8代校長に奥田宏健就任
岡山理科大学総合情報学部生物地球システム学科を廃止
岡山理科大学大学院総合情報研究科修士課程生物地球システム専攻を廃止
平成30年3月
岡山理科大学理学部理学専攻科を廃止
倉敷芸術科学大学産業科学技術学部観光学科を廃止
倉敷芸術科学大学生命科学部健康医療学科を廃止
千葉科学大学薬学部薬科学科を廃止
平成30年4月
岡山理科大学獣医学部獣医学科、獣医保健看護学科設置
千葉科学大学大学院看護学研究科修士課程看護学専攻設置
岡山理科大学附属中学校第5代校長に洲脇史朗就任 
 
加計学園 2

■1 学園創立者・加計勉という男
加計学園(かけがくえん)の獣医学部新設に関する疑惑をめぐり、ついに安倍総理が自ら国会の閉会中審議で説明する意向を明かした。いまや加計学園の名前、そして理事長の加計 晃太郎氏の顔は、メディアで連日報じられている。
しかし、「加計学園問題」ではいったい何が「疑惑」とされているのか、今ひとつわかりづらい。また、約2万人の学生が通う「西日本有数の私学」である加計学園がどのような学校法人で、理事長の加計 晃太郎氏がどのような人物なのか、その全貌を知る人は少ない。
全三部構成の本レポートでは、加計学園が過去にまとめた資料をひもとき、さらに関係者に取材を行って、学園の知られざる前史から現在の「疑惑」に至るまでの歴史を追う。視点を変え、学園の過去を明らかにすることで、ことの本質を浮き彫りにするためだ。
第一部は、加計学園創立者で晃太郎氏の父である加計勉(つとむ)氏の前半生と、その人脈、学園創設に至るまでの経緯をたどる。
加計という名の町
岡山城のふもとにある、日本三名園の一つ・後楽園。岡山県岡山市北区に位置し、総面積が東京ドームの約3倍もある名勝地のほど近くに鎮座しているのが、今年、創立53年を迎えた岡山理科大学だ。所在住所は「理大町1丁目1番地」。この大学が地域とともに発展してきたことが住所からもうかがえるが、この「理大町1丁目1番地」の岡山理科大学内に、加計学園の本部は置かれている。
3つの大学を擁し、いまや岡山県のみならず、西日本を代表する巨大私立学校法人となった加計学園。しかし、実は加計一族の源流が、岡山県ではなく広島県にあることは知られていない。
瀬戸内海に面した穏やかな港町、広島県東広島市安芸津町(あきつちょう)。加計学園の創設者である加計勉氏は、この地で1923年(大正12年)3月に生まれた。
安芸津町の北部、山間の一帯には現在も「加計(かけ)」という地名が残っている。加計家は地元でも有名な大地主で、勉氏は分家筋の生まれ。大正期には、本家から郡会議員も輩出したという(当時、安芸津町は豊田郡に属していた)。地元の歴史に詳しい古老が証言する。
「加計家は商家というわけではなく、近隣の水路工事や土地開発を行い、財をなして地主になりました。ところが戦後の農地改革で、所有していた土地のほとんどを手放した。現在は本家も分家も取り壊され、この辺りに加計家の人は住んでいません。勉さんのご実家の跡地は、加計学園の研修所になっています。加計家の源流は広島県北部の安芸太田町加計にあるという説もありますが、定かではありません」
勉氏は広島県立忠海(ただのうみ)中学校(旧制中学。現在の広島県立忠海高校)を卒業後、教員を志し、1941年に広島文理科大学(戦後に広島大学に吸収)附置・広島高等師範学校へ進んだ。旧制中学進学率が1割前後の時代である。勉氏が将来の日本を支えるエリート候補生だったことがわかる。当時の勉氏の様子を、学友がこう証言している。
〈「同級生に顔が長くて顔色がすぐれず、筋骨薄弱でいかにも陰の薄いのがいた。誰いうともなく、”うらなり”のあだ名がついた」〉(鶴蒔靖夫『加計学園グループの挑戦』IN通信社、2011年より)
高等師範学校を修了した勉氏は、一時は兵庫県立姫路工業学校の教諭も務めたが、教育召集がかかり従軍を余儀なくされた。病弱だった勉氏は、前線ではなく福岡県小倉の航空機工場での勤務を命じられた。
囲碁が趣味だったというおとなしい青年が、一変したきっかけは終戦である。
太平洋戦争末期、米軍の原子爆弾によって、故郷・広島が蹂躙された。さらに前述の通り、実家の加計家も農地改革によって土地を取り上げられることとなった。広島に帰った勉氏が受けた衝撃は、想像にかたくない。
大学生が「大学を作りたい」
終戦後まもない1946年、勉氏は広島文理科大学の数学科に入り直すことを決意する。一念発起が実って、同年春に合格。再び母校へ戻った頃には、勉氏はすでに、大学の創始者になることを夢見るようになっていたという。
氏が自ら記した回顧録(『加計学園創立二十周年記念誌』1985年に収録)にはこうある。
〈私は広島文理科大学の数学科を卒業しましたが、在学当時、すなわち終戦後まもなくの頃ですが、大学で講義を受けながら大学のあり方について考え、また友人たちともこの事についていろいろと話し合ったりしたものです。
国立型の大学は非常に画一的と言いますか、(中略)もう少しリベラルな大学、言いかえれば、アカデミックな志向と高遠な理想を目指す雰囲気があっても良いのではないかと考えておりました。
何分にも学生時代の事ですから、そういう大学を自分自身の手で作ることができるとは考えてもおりませんでしたが、将来、機会に恵まれれば、そのような学校をぜひ作ってみたいと思っておりましたし、自分で作るとすれば、私学でないとできないような大学というものに一種の憧憬を抱いてもおりました〉
広島文理科大学を卒業後、勉氏は1年間だけ、広島大学東雲分校中学校 (現・広島大学附属東雲中学校)の教壇に立った。しかしすぐに教職を辞して会社を興し、〈三、四年の間教育出版事業に専念しておりました〉(前掲の回顧録より)という。おそらくはこの起業のとき、勉氏の胸には20代半ばにして、すでに大学設立への道筋がぼんやりと浮かんでいたのではないだろうか。
そもそも、何が問題なのか?
さて、ここで視線を現在の加計学園に戻してみたい。いまや野党やマスコミが「加計学園問題」と呼ぶようになった一連の騒動だが、いったい「何が問題なのか」は判然としない。そもそも、「どこにも問題はない」という見方もある。自民党や政府、安倍晋三総理はこうした立場だ。
あえて細部を省いて、経緯をなるべくシンプルに整理してみよう。
加計学園の現理事長で、勉氏の長男である加計晃太郎氏は、安倍総理と30年以上親交をもつ友人である。この点は、安倍総理も自ら認めている。2人は1970年代、留学先のアメリカで知り合って親しくなり、現在もときには安倍昭恵夫人を交えて会食やゴルフに出かける間柄だ。
その晃太郎氏率いる加計学園が、2018年春開学予定で、愛媛県今治市に新たに「岡山理科大学獣医学部」を開設する。開設にあたっては愛媛県と今治市が総工費の半額、計96億円を上限として、校舎建設費や施設整備費を負担する予定になっている。
加計学園は、かねて獣医学部開設を希望していた。愛媛県や今治市にとっても、地域の活性化を狙った大学誘致が長年の希望だった。獣医師の増えすぎを防ぐため、獣医学部の新設は制限されているが、この規制は2016年に今治市が国家戦略特区に指定されたことで撤廃された。
ひと言でまとめれば、特定の政治家=総理と親しい学校経営者が、巨額の税金が投入される事業を進めるお墨付きを得た、ということになる。
手続きに瑕疵はない。法的にも問題はない。しかし倫理的にはどうなのか。不公平ではないのか。加計学園「問題」が存在するという立場の野党・マスコミ・そして国民は、こうした疑念を抱き、憤っている。
だが、加計学園の歩んできた軌跡を丹念に追っていくと、学園創立者の加計勉氏もまた、中央政界や行政とのかかわりをきわめて重視していたことがうかがえる。
半世紀以上にわたる学園の歴史から見えてくるのは、今も昔も、巨大な私学を作り上げるためには、行政との関係構築や根回しが欠かせないという事実だ。この点を明らかにするのも、本稿の大きな目的である。
池田勇人・宮沢喜一とのコネクション
話を若き加計勉氏に戻そう。実は勉氏が通った忠海中学校は、第58〜60代内閣総理大臣を務めた池田勇人氏の母校でもあった。池田氏は勉氏とは親子ほど年の離れた大先輩にあたるが、勉氏は池田氏の自宅や事務所をたびたび訪れていたようだ。
そうした中で、当時蔵相だった池田氏のもとで秘書官を務めていた、4歳年上のエリート大蔵官僚と親しくなる。
のちに蔵相、総理などを歴任した宮澤喜一氏である。
宮澤氏は政治家として大成してから、加計学園の周年記念式典に必ず参加するようになった。前掲の『二十周年記念誌』にも、祝辞が掲載されている。その中で宮澤氏は、勉氏との親交についてこう語った。
〈(勉氏は)広島県出身でなくなられました池田勇人元総理大臣が卒業されました中学の後輩になられるわけでございます。
そんなことから、終戦後まもなくよく池田さんのお家にお越しになっておられまして、私がちょうど秘書官をしておりましたが、たぶん加計理事長が広島の高等師範をご卒業になり、広島文理科大学をお出になって数年のことだと思います。
今から二三年前(注・33年前の誤りと思われる)でございますけれども、その頃からお近付きをいただくようになりました。(中略)お宅でご馳走になったり、東京にお出でになればご一緒したり、大事なお友達として三十年間過ごしてきました〉
二人の関係は「大事なお友達」にとどまらず、勉氏は宮澤氏の後援会会長も務めた。しかし、勉氏も宮澤氏もすでに世を去って約10年になる。今となっては、両者の実際の交わりを知る者はほぼいないが、おそらくは宮澤氏を通じて、勉氏は当時の永田町の最重要人物である池田氏とも交流を保っていた。
勉氏自らこうした人脈を喧伝しているわけではないものの、当時を知る同僚が興味深い記述を残している。時系列が前後するが、勉氏がのちに岡山電機工業高校(岡山理科大学附属高校の母体)を設立した際の、開学式典でのひと幕だ。
〈式典の途中、学園の将来計画に大学の存すること(注・勉氏が挨拶でそれに言及した)、忠海中学の大先輩池田勇人総理大臣の祝電披露に際し、生徒の中より自嘲にも似たどよめきが起こり、将来を祝うべき席で関係者一同大いに気を沈めた〉(河口通「創造の学園『加計学園』」、前掲『二十周年記念誌』特別寄稿文より)
岡山電機工業高校が開学したのは、池田氏が総理在任中の1962年春。晴れの舞台に、かねて親交のある総理から祝電が届けば、それを新入生たちに読み聞かせてやりたいと思うのも人情であろう。
しかしどうやら、あまりに現実感がなかったのか、生徒たちは「自嘲にも似たどよめき」でそれに応えた。具体的に生徒が何を口にしたのかについて記録は残されていないが、勉氏はこのさまを目の当たりにして、大いに落ち込んだという。
教員を辞した当初、教育出版事業を興した勉氏だが、前述のように数年でその事業をたたみ、今度は大学受験予備校設立のために動き始めた。現在も加計学園グループの学校法人にその名を残している「広島英数学館」を広島市中心部に設立したのが、1955年春のことだ。
なお、このとき設立認可を下ろした広島県でカウンターパートを務めた県職員・細川昇氏は、のちに加計学園常務理事に迎えられた。広島英数学館の建物は現存しており、現在は加計学園系列校の並木学院高校の校舎として利用されている。
当時、西日本の大学受験予備校といえば、大阪に本拠を持つ大阪YMCAの独擅場だった。だが勉氏が述懐するところによると、広島英数学館は数年で県下トップクラスの進学実績と評判を得るほどに成長したという。勉氏は、広島大学の教員を務めていた知人たちを、予備校の講師として頼ったことを明かしている。
「学校新設は難しい」と言われて…
勉氏が「岡山予備校」を設立し、ついに隣県の岡山県へ進出したのは1960年春。先にも触れた加計学園最初の一条校(注・学校教育法第一条で定められている狭義の「学校」)である岡山電機工業高校が開校したのはわずか2年後の1962年春だから、岡山予備校の設立時点で、勉氏はすでに念願の私学設立に向けたロードマップを描いていたとみて間違いない。
もしかすると勉氏にとっては、当初から、予備校経営も私学設立に向けて資金やノウハウを得るための「ステップ」という位置付けだったのかもしれない。
現在、今治市での岡山理科大学獣医学部の設立にあたっては、加計晃太郎・現理事長が、文科省や関係閣僚のもとを何度か訪れていたことが判明している。ただし私学の設立を実現するため、私学側のトップが行政の担当者詣でをすること自体は、決して不自然な話ではない。1961年の勉氏もまた、岡山県の学校新設担当者のもとに通い説得に励んだ。
その時の貴重な証言が残されている。当時、岡山県庁の私学担当係長を務めていた畑忠雄氏という人物が、前掲の『二十周年記念誌』に以下のように記しているのだ。重要な記述なので、少し長くなるが、畑氏と勉氏のやりとりを引用する。
〈昭和36年(1961年)のある日、加計学園理事長と名乗るひとりの紳士の来訪を受けました。お会いしてみると、岡山市内に電気関係の工業高校を新設したいというお話でしたが、この頃、岡山県は高校進学生徒数減少期にあって既設高校の充実や入学定員のことなど多くの問題点を抱えていた時期であったので、高校新設は難しい旨を説明しました〉
やんわりと新設申請を退けようとした畑氏に、勉氏は「日本はいま工業立国をめざしている。私は立派な人材を産業界に送り出したいのだ」と意気込みを滔々と語りつつも、いったん引き下がった。
時をおかずして、勉氏が再び岡山県庁を訪れた際にも、畑氏は「お考えはわかりました。しかし、資金的裏付けが十分でなければ絵に描いた餅になってしまう」と、やはりすげない答えを返した。
これに対して、勉氏は驚くべき言葉を返す。
〈「私の理想とする学校を作り上げ、軌道にのせるためには一切の私財を投げ出す決心をしておりますので、十分運営できると確信があります」〉
わずか数ヵ月で「逆転認可」
畑氏によれば、このひと言が県庁を動かし、ゴーサインを出させるきっかけになった。事実、前年の1960年夏に勉氏は私費で岡山市街地北側の小高い丘、半田山の頂上付近およそ5万平方メートルを購入している。戦前戦中は旧陸軍練兵場が、戦後には自衛隊駐屯地が置かれたこの一帯は、当時は木々が鬱蒼と生い茂り、水はけの悪い原野だったという。
1961年9月、岡山県私学審議会会長の高畑浅次郎氏が広島の英数学館本部を訪れた。ちなみに高畑氏は岡山一中(現・岡山朝日高校)校長も務めた人物で、スタジオジブリ所属の世界的アニメ作家・高畑勲氏の父である。
すでに予備校の経営状況と資金繰りの調査、勉氏の身辺調査は済んでおり、高畑氏も「大局的見地から検討してみたらどうか」との積極的見解を示した。しかし、私学審議会での議論は紛糾する。再び畑氏の証言。
〈予想されたように委員の間からは入学定員のからみや申請内容の実現性などの問題点について意見が続出しました。しかし設立者(注・勉氏)のよりよい私学創設への情熱に加えて周到な開設計画と、その実現性などが認められ「可」の結論が出されました〉
「学校法人加計学園」が生まれた瞬間だった。
加計学園本部のある岡山理科大学全景(Photo by Tatsushin/CC BY-SA 3.0)
勉氏が私財を投じて買い取ったという丘の上には現在、岡山理科大学とその附属高校・中学、そして加計学園の本部がおかれている。その言葉通り、予備校経営で得た莫大な資産をほぼ全て費やし、勉氏は私学創設に人生を賭けたのである。のちの加計学園の威容を見れば、その賭けは成功したと言えるだろう。
勉氏が県庁を初めて訪れてから、学校設立認可が下りるまでの期間はわずか数ヵ月。その間に、県庁と私学審議会でどのような調査・検討がなされたか、また水面下でどのような根回しが行われたのか、今となっては知る術がない。
ただ、「審議会では議論が紛糾したものの、最終的には『スピード認可』が下されて学校設立が実現した」という経緯は、現在「問題」とされている、森友学園の小学校開設や、加計学園の獣医学部設置の決定プロセスに通底するものがないとは言えない。勉氏をはじめとする加計学園の関係者らの間で、このときの「成功体験」が、彼らのその後の方針や動き方に、大きく影響したのではないだろうか。
■2 加計学園「重要機関」の顧問に名前を連ねていた大物政治家

安倍総理と加計晃太郎理事長の深い関係が、行政の判断を左右したのではないか——加計学園の獣医学部新設をめぐる「疑惑」は、いまだ晴れない。
視点を変えて、加計学園の歴史を明らかにすることで、問題のありかを浮き彫りにする本レポート。第二部では、いかにして加計学園が初の大学新設に成功し、学校経営を「家業」として確立したかを追う。
億単位の私財をつぎ込んだ
その日は最高気温34度を超える、うだるような暑さだった。岡山市街地を一望できる小高い丘の上で、加計学園創設者の加計勉氏は蝉の声を聴きながら頭を垂れていた。
1961年8月27日、のちに岡山理科大学とその附属中高、そして加計学園本部が置かれることになる岡山市街地北側の半田山。ここに備中国一宮である吉備津神社から宮司を招き、学校法人加計学園が設立する最初の学校、岡山電機工業高校の地鎮祭と起工式が行われた。
勉氏と岡山県庁私学担当者とのやりとりは第一部にて詳述したが、氏が県に高校設置の申請書を提出したのは同年9月6日、県から認可が下りたのはその2週間後の同20日のことだ。学園による記録や、各種資料の中の関係者証言が正しければ、勉氏は申請書を提出する直前に工事を始めたことになる。
戦前は旧陸軍が所有していた半田山は、まだ草木が鬱蒼と生い茂る山林だった。この時の列席者は勉氏をはじめ、少数の学園関係者に限られ、式はごくひっそりと進んだ。
当時38歳の勉氏は、予備校経営で手にした数億円もの財をなげうってこの山を買った。のちに学園理事長となる長男・晃太郎氏は、このとき小学生。加計家は決して貧しいわけではなく、むしろ予備校事業の大成功によってかなり富裕だった。にもかかわらず、勉氏の事業計画を叶えるため、子供たちのおやつを買うのにも苦労するような耐乏生活を強いられていたという。
目指す開校期日は8ヵ月後の翌1962年4月に迫る。建設用地の造成と校舎建設は急ピッチで進められたが、生徒が集まらなければ話にならない。
勉氏の経営する予備校・広島英数学館から職員が応援に出て、岡山県下のみならず香川県や兵庫県でも説明会に奔走、入学試験は丘のふもとにある市立岡北中学校の校舎を借りて実施するという突貫工事ぶりだった。
地元ゼネコンとのつながり
明治期から倉敷紡績(現・クラボウ。クラレの母体となった企業)などの繊維産業を中心に発展してきた岡山県南部地域は、戦後は鉄鋼・石油化学などの重工業が急速に盛んになり、人口も急増していた。日本が高度成長期のとば口に立っていた当時、勉氏には「理系の学校は、これから必ず必要とされるようになる」という確信があった。
岡山電機工業高校の第1期入学者は247名。受験者数は定員の約7倍だったというから、かなりの高倍率だ。しかし勉氏にとって、工業高校の設立は「通過点」にすぎなかった。氏があらかじめ買い取った土地は約5万平方メートルだが、そのうち高校の用地に使われたのは2万2000平方メートルあまり。残りの土地は、宿願だった岡山理科大学建設のためにとっておいたのだ。
事実、高校の開学式典の席上で、勉氏は「この高校の運営が軌道に乗ったあかつきは、この地に大学設立を実現したい」と話し、列席者を驚かせている。その言葉通り、氏は高校開校の直後から大学設立に向けて動き始める。『加計学園創立二十周年記念誌』(1985年)より、本人の述懐をひこう。
〈高等学校よりもむしろ大学を設立するということが当初からの狙いでした。本来ならば、高等学校が三年生まで在籍するようになってから大学を作るというのが普通のやり方なのですが、今述べた理由により、大学も同時に作りたいと思っておりました。
一言で大学を作ると申しましても、教授陣容を整えないといけませんし、また、ばく大な資産の投下も必要です。その当時、私の所有していた約一万坪の土地全部の他に、いろいろなものを含め、完成までに五億円を要すると言われておりました〉
大学校舎の建設については、1963年9月に地元の建設会社大本組と契約を交わした。この大本組は現在、愛媛県今治市に建設中の岡山理科大学獣医学部の校舎建設も請け負っている、岡山県を代表するゼネコンである。真新しい高校の校舎の横で、トラックと重機が山腹を行き来する中、1期生たちは勉学に励まねばならなかった。
県知事への「根回し」
岡山理科大学の設立費用5億円を現在の貨幣価値に換算すると、大まかに言って10億円以上になる。だが勉氏の回顧録を見る限り、かなりの部分を私費でまかなったにもかかわらず、金銭面で苦労した形跡はほとんど記されていない。むしろ行政への認可申請、そして教員確保に走り回ったことが強調されている。
〈当時、皆さんから「なぜ理学部を作るのか、金ばかりかかって損益の合わないものをなぜ作るのか」とよく言われました。私自身の出身が(広島)文理科大学の数学科ですので、頭の中ではそういうものをめざしていましたが、 (中略)文部省の方では新しい学部を作るというのは、認可が非常にむずかしいとの話もありました。そこで理学部の中に応用的な学科を作ろうと考えました〉(『二十周年記念誌』より)
現在の「加計学園問題」にいったん話を戻すと、今治市で新設予定の岡山理科大学獣医学部が、2015年6月に閣議決定された「日本再興戦略改訂2015」にある、いわゆる「石破4条件」を満たしていないのではないか、という指摘が野党などから上がっている。これは、当時の国家戦略特区担当大臣・石破茂氏の下で決められた、「獣医師養成系大学・学部の新設」についての縛りだ。
その中に、「既存の大学・学部では対応困難な場合」という条件がある。要するに、「大学を新設したいなら、今ある大学とは違った新味を出せ」というわけだ。約半世紀前の岡山理科大学開設に際しても、文部省は加計勉氏に、同じような要求をしたといえる。
勉氏は手始めに設置を決めた理学部内に、化学科と「応用数学科」の2学科を設けることで、大学新設のための審査を切り抜けようと考えた。当時の働きぶりは、部下・同僚たちから「昼夜を分かたない阿修羅の如き活動」と評される猛烈なものだったという。
ただ、加計学園のまとめた当時の記録には、大学開設に至る経緯そのものは、さほど詳しく述べられていない。特筆すべきものがあるとすれば、広島大学名誉教授(当時)で、勉氏の広島文理科大学数学科在籍時の恩師だった戸田清氏の回想である。戸田氏は、加計氏の相談に応じ、県知事に話を伝えた——そう明かしているのだ。
〈加計氏から大学創設の考えを耳にした。広島で既設の大学と競合することの不利。京阪神、四国、山陰に近く、水島臨海工業地帯に政治生命をかけている知事のいる岡山。こちらを選ぶべきではないかと述べた記憶がある。加計氏の参考になったかも知れない。(岡山県)知事にも、大学設置の計画のあること(を伝え)、もし、そうときまれば、何分の援助協力を要請した記憶もある〉(『二十周年記念誌』より)
行政に対する勉氏の根回しと、政治的嗅覚の一端が垣間見える記述といえるだろう。
あの大物議員が顧問に
岡山理科大学は、文部省への申請からわずか1年半後、東京五輪開催を控えた1964年春に開学した。それに伴い、先行して開校していた岡山電機工業高校は「岡山理科大学附属高校」に改称された。岡山理科大学の初年度の入学者は143名と多くはなかったが、翌年以降は新学科を続々と増設し、学生数も右肩上がりに増えていった。
勉氏はのちに、「僕は教育者ではない。教育実業家だ」と述べたという(鶴蒔靖夫『加計学園グループの挑戦』より)。予備校経営から教育事業に参入し、資金を確保して、ついに学生時代から夢見た大学開設までこぎつけた。重化学工業の発展という時代の要請に応え、学生を確保するために、学部は需要の見込まれる理科系に絞りこんだ。確かに勉氏は、単なる教育者にとどまらない「ビジネスセンス」を持ち合わせていた。
1970年代以降、成長期に入った加計学園・岡山理科大学には、現在の報道でも名前の出てくる人物がちらほらと見え始める。以下は、加計家の人々と学園関係者の「人名録」である。
現在、加計学園理事を務め、2016年まで系列校の千葉科学大学学長を務める赤木靖春氏は、当時は学園の一職員だった。氏は1980年代、岡山県北の蒜山(ひるぜん)高原に開設された附属研究施設「蒜山研究所・学舎」の所長を務めている。
一方、注目したいのは1970年代以降に学園が力を入れ始めた海外交流事業だ。本稿でもたびたび引用している、1985年刊行の『加計学園二十周年記念誌』には、当時の学園本部の陣容が掲載されている。中でもひときわ目を引くのが「国際交流局」。局長は、現在は学園理事長を務める加計 晃太郎氏(当時は「晃太郎」と名乗っていた)、そして顧問には、衆院議員の逢沢一郎氏の名前がある。
逢沢氏といえば、従兄が経営する岡山県の建設会社「アイサワ工業」が、今治市の獣医学部建設工事を前出の大本組とともに受注したことが報じられている。1985年当時、逢沢氏は松下政経塾を卒塾したばかりで、衆議院選挙で初当選したのは翌1986年のことだ。逢沢氏と加計 晃太郎氏はほぼ同世代。少なくとも30年あまり前には、両者はそれなりの親交を持っていたはずだ。
30代から40歳ごろの晃太郎氏は、国際交流局長と副理事長を兼任していた。学園の公式刊行物には、当時から必ずと言っていいほど寄稿文を寄せ、国際交流事業がいかに大切かを説いている。
〈 (当時の)外務大臣、安倍晋太郎氏も言っておられますが、日本はアメリカの袖の下に隠れていれば、平和と安全と守ることができ、世界の中で発展して行くことができたという受身の形から、言いたいことははっきり言い、世界の中で日本の役割を積極的に果たして行くという形に展開して行かなければと思います。
国際的な舞台で何らかの決定を迫られ、例えば、拒否したい場合、Yes, but……,という表現から、No. Because……, という表現に変えて行くべきであると思います〉(『二十周年記念誌』所収の 晃太郎氏の寄稿文「広い視野にたった交流を」より)
2017年のいま、晃太郎氏の長男・加計役(まもる)氏は加計学園の副理事長や広島加計学園の理事長を務め、次男・加計悟氏は学園系列校の倉敷芸術科学大学副学長と、同大学の獣医学系学科である動物生命科学科の講師を兼任している。
父の晃太郎氏がかつて岡山理科大学などの系列校で教鞭をとっていた形跡はないが、40代にさしかかっていた1992年の時点で、晃太郎氏も加計学園副理事長・国際交流局長のほかに、学校法人広島加計学園理事長、広島英数学館・福山英数学館館長のポストを得ていた。
当時からすでに、加計学園は現在と同じく「家族経営」の様相を呈しつつあったのだ。
■3 加計学園の急成長を支えた「特異なビジネス」と「政界人脈」

加計学園をめぐる「疑惑」は、衆参両院の閉会中審議を経ても決着をみることはなかった。学園の成り立ちを追った第一部、第二部に続き、第三部では「教育実業家」を自認した加計勉氏、そしてその跡を継いだ 晃太郎氏らの「ビジネス」を読み解く。
5人の親族たち
戦後まもなく定められた私立学校法には、次のような規定がある。
〈役員のうちには、各役員について、その配偶者又は三親等以内の親族が一人を超えて含まれることになってはならない〉
つまり、ひとつの学校法人につき、理事以上の役職に就ける親族は最大2人まで、ということである。「同族経営化」を未然に防ぐための決まりだ。もっとも、帝京大学グループ(冲永家)や近畿大学グループ(世耕家)など、創業家の親族が代々要職を占める大手私学法人は少なからず存在する。
現在の加計学園とそのグループ学校法人・社会福祉法人の役員には、加計晃太郎理事長、その息子である役(まもる)氏と悟氏、晃太郎氏の姉である美也子氏、その息子である勇樹(勇輝)氏と、少なくとも5人の「三親等以内の親族」の名前がある。彼らは各人がそれぞれ別々の学校法人の理事長や役員を務めているため、そこに法的な問題はない。
とはいえ、創立者の加計勉氏が一代で築き上げた加計学園グループは、各法人がまるで「相続」されるかのようにして、今日まで歩んできた。例えば現在、加計学園が運営する倉敷芸術科学大学で副学長の要職を務める悟氏は、すでに報じられているように、同大学で獣医学系学科の講師を兼任している。
7月24・25日に行われた国会の閉会中審査では、「加計学園が今治市に獣医学部を新設することを、安倍総理がいつ知ったのか」さらに言えば「安倍総理が加計学園に何らかの便宜を図ったのか否か」という点のみがクローズアップされた。
だが一方で、こうした「同族経営」の私学に、国・自治体が多額の補助金を注ぎ込むことの是非は別に問われなければならないだろう。
「頼まれるから、後に引けない」
さて、加計勉氏から、長男・加計晃太郎氏への代替わりが見えてきた1990年代、加計学園はさらなる拡大路線を歩み始めた。平成になってグループが新設した学校・関連施設新設を列挙してみよう。
加計学園本体が運営する学校に(加計)、姉妹法人の高梁学園(2010年に順正学園に改称)が運営する学校・施設に(高梁)、関連法人の英数学館が運営する学校に(英数)、その他には(その他)と付記した。
学園創立者で晃太郎氏の父・加計勉氏は理事長を務めていた1996年、日本経済新聞によるインタビューで、記者の「なぜ、こんなに(学校新設に)積極的なのか」という率直な質問に答えている。
周知の通り、このころ日本の景気は下り坂にさしかかっていた。にもかかわらず、加計学園グループがわずか5年の間に吉備国際大学、倉敷芸術科学大学という2つの大学を新設したことを、世間は驚きとともに受け止めていたのだ。
〈無理をして拡大しているわけではない。県や市から要請があり、地元がなん十億円という資金を投じて用地買収、整備などの準備もしてくれるから後に引けなくなる。私も頼まれると『ひと肌脱がなくては』というタイプではある〉
さらにこの時、勉氏は大学新設の「戦略」や「勘どころ」についても明かしている。
〈(記者)ーー(大学に)個性があれば文部省も認めてくれる?
個性に加えて、時代に対応できているかどうかだ。コンピューター関連の学部にしても、一時は関心が高まったが、もうこの学部、学科はそろった感じだ。いまの人気は『看護』『療法』などで、宮崎でもこうした学科を設ける(注・その後の宮崎での経緯は後述)。
ーー学校経営のマーケティングが不可欠ということ?
そう。時代、社会のニーズから、地域の進学率、大学数、学部の性格などを綿密にみていけば見通しはつく。それでこそ時代に合った人材を養成できる〉
勉氏が自ら語っているように、1990年代以降、加計学園は時流に乗って看護系・福祉系の学校・学部学科を増やすなどの施策を打ち、急拡大を遂げていった。もちろん、誘致する自治体側の希望に学園側が応えようとしていたこと、また学園が打ち出す「ニーズに合わせた教育の提供」が、学園自身の興隆に寄与しただけでなく、地域や社会に対する貢献にもなったことを疑う余地はないだろう。
ただ、その事業の中には少なからぬ額の税金がなし崩し的に投じられた事例や、あるいはその是非が地元で激しい論争を招いた事例もある。
県知事が理事長の「吉備高原学園」
加計学園が本拠地を置く岡山県の行政を語るうえで決して無視できないのが、1972年から1996年、6期の長きにわたって県知事を務めた長野士郎氏だ。元内務官僚・自治官僚の長野氏は、戦後のいわゆる「昭和の大合併」を主導し、「地方自治の神様」の異名をとる辣腕官僚だった。
その長野氏が、岡山県知事就任直後にぶち上げた目玉政策が「吉備高原都市構想」である。岡山県中部に横たわる吉備高原の山中に、当時注目されていたバイオ関連企業などを誘致、「テクノポリス」と呼ばれる一大都市圏を作り上げるという壮大な計画で、構想委員会には、SF作家の小松左京氏など著名な識者が名を連ねた。
計画区域とされた土地は1800ヘクタール(東京ドーム385個分)、その中に「産業区」「居住区」「農用区」「センター区」など7つの区画を設ける。最終的な見込み人口は3万人、総事業費は745億円で、1980年代半ばから断続的に開発が始まった。
この吉備高原都市は「人工都市」である以上、そこには学校も必要になる。構想の中の教育部門を担当したのが加計学園だった。
区画北側の山腹に、全寮制の「吉備高原学園高校」が開校したのは1991年。運営は岡山県などの地元自治体と加計学園が共同出資する第三セクター方式で、理事長に長野知事、学園長に勉氏が就任するという、全国を見渡しても前例のない「知事肝いり」の事業だった。
約50億円の学校建設費用は全額岡山県がもち、法人設立費用は県が2750万円、加計学園が2000万円を負担したという。もちろん、学校職員は大半が加計学園からやってきている。
全寮制・単位制という珍しいシステムを採用した吉備高原学園高校には、当初から意図していたわけではなかったが、他の学校に馴染めなかった不登校の生徒、中退経験者といった生徒がやがて全国から集まるようになった。
吉備高原都市構想には、中国銀行やバイオ企業の林原など、地元岡山を代表する企業も参画・出資していた。そうした中で、系列校でも唯一となる全寮制高校を開くことは、加計学園にとってもチャレンジングな事業であったことは間違いない。しかし——。
バブル崩壊で、公共事業費の大盤振る舞いを続けた長野知事の県政はあっという間に行き詰まった。気がつけば岡山県は全国最悪の財政難に悩まされるようになり、歳出を削らなければ「財政再建団体」転落、つまり破綻も避けられない情勢となった。県民は「野放図なハコモノ投資を行った長野知事の責任だ」と追及の声をあげた。
吉備高原都市構想も頓挫した。町の建設開始から10年が経っても、住宅区画はほとんどが売れ残り、人口はわずか2000人にしか増えない。大企業や大手商業施設が進出してくるはずもなく、町の中心に建つ商業ビル「きびプラザ」はテナントが埋まらず歯抜け状態となった。1996年に長野氏が知事を引退するとともに、計画は根本から見直され、翌97年の県行政改革大綱で事実上凍結された。
現在も、同地にある吉備高原学園は加計晃太郎氏の次男・役氏が学園長、岡山県知事で元天満屋社長の伊原木隆太(いばらぎりゅうた)氏が理事長に就いて運営されている。2007年6月には、鈴木宗男元衆院議員の元秘書で、現在は加計学園系列校の千葉科学大学危機管理学部教授を務めるムウェテ・ムルアカ氏が訪れて講演を行った。
「地方移住」「田舎暮らし」が注目を浴びるようになった現在、かつてと比べ格安で土地が売り出されていることもあり、吉備高原都市には再び少しずつ移住者が増え始めているという。だが、依然として住宅区画には広大な空き地が広がっており、巨大な公共施設にも人の姿はまばらだ。
現在も吉備高原学園高校には300人あまりの生徒が在籍し、勉学やさまざまな活動に励んでいる。その教育的意義は確かにあるだろう。しかし同学園を包括し、加計勉氏もまたその夢を賭けた、壮大な未来都市構想そのものは多額の税金を呑み込んだすえ、未完に終わった。
市民を二分した「幻の大学構想」
加計学園グループの大学が地元の反対運動に直面し、開学を断念した前例もある。
加計学園が千葉県銚子市に千葉科学大学を開学した翌年の2005年春、晃太郎氏の姉・美也子氏が理事長を務めるグループ法人のひとつ高梁学園(現・順正学園)が、宮崎県日向市で4年制大学の新設計画を突如明らかにした。開学予定は2年後の2007年4月に設定された(注・今年に入り、美也子氏は「加計学園と順正学園は勉氏の没後、決裂した」と証言している)。
前述したインタビューで勉氏が語ったように、加計学園グループにとって、宮崎県は本拠地の岡山県・広島県以外で初進出を遂げた地である。美也子氏と、当時の日向市長の黒木健二氏は4月25日に合同記者会見を行った。
黒木氏は「大学の誘致を望む住民の声もあり、昨年(2004年)10月からアプローチしてきた。地域経済の起爆剤になる」(2005年4月26日、宮崎日日新聞)と、あくまで「大学誘致は地元の強い要望に応えるものだ」と強調した。
しかし、日向市の近隣自治体である延岡市には、すでに1999年に同じ高梁学園が運営する九州保健福祉大学が設けられていた。同大学が新設された際には、総事業費114億円のうち、79億9000万円を県と市が持っている。決して軽くはない負担である。
さらなる大学新設に対し、同年夏の日向市議会では議員たちから疑問が噴出。黒木市長は「校舎建設費や運営費用への補助については、合併特例債の活用も検討しており、すでに国と協議も始めた」と説明している。
現在議論されている愛媛県今治市での岡山理科大学獣医学部新設においても、愛媛県と今治市が96億円を上限に建設費用を負担する予定になっており、この点も「加計学園問題」の一環をなしている。2005年当時に日向市が模索したという「合併特例債を大学建設費用に使う」とのプランは、要するに「市の名義で借金をしてまで大学を作る」ようなものだ。控えめに言っても異例の対応である。
およそ6万人の市民は、賛成派と反対派に割れた。反対派は市民団体「日向市まちづくり100人委員会」を結成し、「大学誘致の発表に至る経過を具体的に示すべき」という趣旨の質問書を市に提出。さらに、10月には4581人の署名を集め、大学設置の是非を問う住民投票の実施を要求した。
一方の賛成派陣営も、当時の市商工会議所会頭を代表に据えた「日向市の発展を考える会」を設け、1万人強の誘致賛成署名を集めた。
だが、高梁学園は反対派からの批判というよりも、こうした騒動が巻き起こったことそのものを重く見て、自ら計画を取り下げた。2005年11月末、加計美也子理事長と黒木市長は大学設置を断念すると発表。当時の美也子氏の説明はこう記録されている。
〈6万人の市で5000人近くが”反対”している中では、先生も学生も快適と言えない。設置にふさわしくない環境と判断した〉(2005年11月30日、読売新聞)
政治は誰のためにあるのか
今治市の岡山理科大学獣医学部新設について、それを推進する側の政府関係者、また前愛媛県知事の加戸守行氏は「獣医不足に悩む四国において、獣医学部の誘致は地元の悲願だった」との証言を国会で行った。ただ、それがどのような水準における「悲願」なのかーー行政関係者だけでなく、一般の市民も誘致を望んでいるのかーーは判然としない。
少なくとも、昨年11月に募集された獣医学部新設に関するパブリックコメントでは、寄せられた意見のうち約75%が獣医学部新設に反対するものだったという事実がある(なおパブリックコメントの関連資料は、今年1月18日に行われた国家戦略特区特別委員会で配布されている)。
このとき積極的に意見を寄せた中に、日本獣医師会関係者などの新設反対派が多かったおそれはある。とはいえ、その可能性を差し引いても、多額の税金を加計学園に提供することに慎重な一般の今治市民が、無視できるほど少ないとは思えない。
老境にさしかかった学園創立者・加計勉氏が、学校経営の一線を退き、長男・晃太郎氏に加計学園の、長女・美也子氏に高梁学園の理事長の座を譲ったのは2001年初めのことだった。そのおよそ7年後の2008年4月30日、勉氏は心不全でこの世を去った。享年85、1961年の加計学園誕生からまもなく半世紀が経とうとしていた。
5月3日に岡山市内で行われた葬儀には密葬にもかかわらず約1400人が参列し、安倍総理(当時は衆院議員)のほか、塩崎恭久・現厚労大臣ら、政財界の要人が全国から駆けつけている。
そして2010年11月、現理事長・加計晃太郎氏のもとで、加計学園50周年記念行事が盛大に執り行われた。創立の地である岡山市内の岡山理科大学で行われたセレモニーには、かねて学園と関係の深い毎日新聞社大阪本社からヘリコプターが飛来し、花束と祝辞を投下するパフォーマンスで会場を沸かせたという。
第二次政権に返り咲く前の安倍総理は、このときも式に列席し、以下のような祝辞を寄せた。
〈理事長の晃太郎先生とは、30数年前にお会いして以来ずっと家族ぐるみで親しくしていただいております。毎年毎年新しいことに挑戦され、その名声を高めておられることに改めて敬意を評したいと思います〉(「加計学園創立50周年記念誌」2011年)
生前の勉氏は、2001年に名誉理事長に退いてからも学園への影響力を保っていたが、2008年の勉氏の死後は晃太郎氏が学園全体を統括する立場となった。
同年に千葉科学大学に新設された危機管理学研究科では、翌2009年から萩生田光一官房副長官が客員教授を務めていたことがすでに報じられている。また、2011年9月にタイの泰日工業大学と加計学園が教育交流協定を結んだ際には、安倍総理が自ら調印式に出席し、 晃太郎氏とともに写真に収まった。
第一部では、勉氏が池田勇人元総理、宮沢喜一元総理ら政界の要人とのコネクションを重視していたことを記した。晃太郎氏と安倍総理の付き合いもまた、総理が自ら語っている通り、公私にわたる長く深いものだ。
もちろん勉氏にしろ晃太郎氏にしろ、宮澤氏や安倍総理と初めて知り合った時から、「この人は将来、総理大臣になる」と確信していたはずもないだろう。晃太郎氏は父・勉氏の「人を見る眼」を受け継いだのかもしれない。
現在、加計学園の運営する学校には約2万人の学生・生徒・児童が通い、1000人を超える教職員が働いている。「大企業」ともいえる規模の私立学校法人の円滑な運営に、政界や行政との連携が欠かせないことそれ自体は、致し方ないことだろう。その一方で、加計学園が半世紀以上にわたって展開してきた数々の教育事業には、すでに決して少なくない額の税金が費やされている。
今回の「加計学園問題」はわれわれ国民に、「政治とは、教育とは、いったい誰のためにあるのか」という根本的な問いを投げかけている。  
 
加計勉

 

[ 1923 - 2008 ] 日本の教育者であり実業家、学校の設置者。広島県出身。本人は実業の立場および現場教員への配慮から自らを教育者とする事をよしとせず「教育実業家」を名乗った。
加計学園グループの創始者。同学園および関連学園の設立した各学校の初代理事長・初代学長・初代総長。学校法人加計学園および学校法人順正学園の名誉理事長、名誉総長。学校法人英数学館の名誉理事長。
1923年、広島県豊田郡安芸津町三津(現在の東広島市安芸津町)に、父・喜一、母・ミネの間に、2人の兄と7人の姉を上に持つ10人兄姉弟の末っ子の三男として生まれる。一族の出自が同県の加計町であるが故に「加計」の苗字を持つ。安芸津町立豊田尋常小学校から広島県立忠海中学校を経て、広島高等師範学校(現在の広島大学教育学部)を1943年10月卒業。忠海中学の大先輩である池田勇人と付き合いがあったとされ、この関係で後に宮澤喜一の後援会会長も務めた。兵庫県立姫路工業学校に教諭として赴任(9月より着任。師範学校卒業前1ヶ月・試用期間扱い)]。1944年9月、教育招集により陸軍へ。福岡県小倉市(現・北九州市)の戦闘機工場で生徒たちの引率責任者の任に就く。生徒たちの待遇の改善を求め、時に軍側責任者との対立も起こしたと言われる。
終戦後、原子爆弾によって廃墟と化した広島の町を前に絶望するも、教育による日本の復興を誓う。1946年、広島文理科大学理学科数学(現在の広島大学理学部)に入学。在学中に結婚。1949年卒業後、広島大学東雲分校中学校(現・広島大学附属東雲中学校)に教諭として赴任。1955年4月、広島市小町(現在の同市中区)に予備校・広島英数学館を設立(現在の並木学院高等学校)、館長に就任。同校が加計学園グループのルーツ。同校は大手予備校が広島に進出するまでは広島有数の予備校であったが、大学受験生を奪われたため、後に通信制高校に転換した。
1961年、英数学館で得た運営のノウハウを活かして隣県の岡山県岡山市半田山の山麓(現在の岡山市北区理大町)に年来の夢であった学校法人「加計学園」を設立、理事長に就任し学校経営に乗り出す。学園及び、自身にとって最初の一条校となる岡山電機工業専門学校(現・岡山理科大学附属中学校・高等学校)を設置。「国公立や伝統私学の硬直した体制ではできない学問を行える場所を」という理念のもと、よりリベラルかつ真にアカデミックな(実用的かつ学際的にして時代の要請に応える)特徴を持つ「私学でしかできない」柔軟な私学運営を目指したとされる。自らの座右の銘として「道」の一文字を掲げた。これは高村光太郎の詩『道程』の序節に由来すると言われ、自ら教育の道を切り開くとともに、子どもたちの行く道を造り、また自らの設した道を通った子どもたちが自身の道を切り開けるように、との思いから掲げていたとされる。
1964年 岡山理科大学学長に就任。
1967年 高梁市より要請と支援を受け学校法人高梁学園(現・順正学園)を設立。理事長・順正短期大学(現・吉備国際大学短期大学部)学長に就任。
1969年 予備校グループとなっていた英数学館を改組。学校法人英数学館とし理事長に就任。
1972年 ゆうき学園を設立。理事長に就任。
1979年 広島加計学園を設立。理事長・学園長に就任。(同年に順正福祉会を設立)
1980年 加計学園総長に就任。
1985年 藍綬褒章を受章。
1989年 高梁学園総長に就任。
1990年 岡山県三木記念賞(国際親善部門)を受賞。
1990年 吉備高原学園副理事長に就任。
1991年 吉備高原学園学園長に就任。
1995年 倉敷芸術科学大学総長に就任。
同年2月 岡山県文化賞を受賞。
1996年 高梁市の名誉市民に推戴される。
2001年 加計学園、高梁学園の名誉理事長・名誉総長および英数学館名誉理事長に就任。
2001年11月 秋の叙勲・勲二等瑞宝章を授与される。
2008年4月30日 心不全のため死去、85歳。
娘(第一子)は順正学園・ゆうき学園、現理事長の加計美也子。息子(第二子)は加計学園・英数学館、現理事長の加計晃太郎。

加計勉は戦時中、福岡県旧小倉市の航空機工場に勤務したことになっているが、当時の旧小倉市の曽根町にあった曽根飛行場に戦闘機工場や航空機工場の併設は無く、曽根町には学徒も動員され、満州(満州第七三一部隊)に送る毒ガス弾を製造した曽根毒ガス工場(東京第二陸軍造兵廠 曽根製造所)があった。
福西志計子 / 明治時代、岡山県高梁市に順正女学校を設立させた女教師。加計勉が高梁市に高梁学園を設置するに至った、その源流および契機となった人物。
加計美術館 / 岡山県倉敷市にある加計学園グループの美術ギャラリー。加計勉の業績にまつわる展示を常設展としている。
 
加計晃太郎

 

[ 1951- ] 日本の教育者。学校法人加計学園理事長・総長、日本私立大学協会理事。
学校法人加計学園の理事長、および、総長を務めている。また、広島加計学園の学園長や、フィンドレー大学の理事も兼任している。そのほか、日本私立大学協会の理事、岡山県国際交流協会の理事、岡山県郷土文化財団の理事、岡山県日中教育交流協議会の参与など、教育・文化関連の各団体にて役職を務めている。さらに、特定非営利活動法人「日本・ミャンマー医療人育成支援協会」では顧問を務め、岡山北ゴルフ倶楽部では理事を務める。
広島県出身。立教大学文学部卒業。カリフォルニア州立大学ロングビーチ校(州立大を構成する多数の校舎の一つ)に語学留学。語学留学中にアメリカで安倍晋三と知り合い、以来、交友がある。2001年、父親の跡を継いで加計学園理事長に就任。拡大路線を展開し、西日本有数の学校法人グループを築き上げていった。
人物
○ 父は加計学園グループ創始者加計勉。広島県豊田郡安芸津町(現東広島市)の旧家の分家筋の生まれであったが、生家は農地改革で土地の大半を失い、自身は教諭の道を志した。
○ 姉は順正学園理事長の加計美也子。経営方針が合わず2010年から絶縁状態といわれる。
○ 自由民主党の岡山県自治振興支部代表を務める。
現在の加計晃太郎さんは父親の加計勉さんが創立した加計学園の跡を継ぎ、学校法人加計学園の理事長に。加計学園にはグループ校があり、合計で6つも学校法人があります。
○ 学校法人加計学園
○ 学校法人広島加計学園
○ 学校法人順正学園
○ 学校法人ゆうき学園
○ 学校法人英数学館
○ 学校法人吉備高原学園
そのほかには、グループ全体で培った学術ノウハウや技術を提供し、社会に還元することを目的とした株式会社SID創研も設立しています。他にも順正学園の系列もあるようなのですが、こちらの学園は加計 晃太郎氏の姉「加計美也子氏」が運営されている学園で、加計晃太郎氏と加計美也子氏とは方針が合わず疎遠になっていると言われています。
学歴
ここまで著名な人ですし、学校運営をしているので出身中や出身高校がご自身のプロフィールで出てくるのかと思いきや、全くわかりませんでした。出身地が広島県という事でおそらくは広島県内の中学高校を過ごされたのではないかと思います。大学の方は、上京しており立教大学出身という事が判明しています。安倍首相とは出会ったのは立教大学を卒業した頃で、出会いの場所はアメリカのカリフォルニアと言われています。安倍首相は1977年にカルフォルニア州に語学留学をしています。加計 晃太郎氏は、同じカリフォルニア州のカルフォルニア州立大学ロングビーチ校に語学留学。お互いアメリカ留学中に出会い、それから40年来の親友『腹心の友』と言われています
腹心の友
「腹心の友」って安倍首相が加計晃太郎氏との関係を表した言葉です。ですが、相当仲が良いんだろうと思いますが、正直本当の意味ってのは分からないって方が多いのではないかと思います。そこで、腹心の友の本当に理由について紹介してみます。
腹心の友とは?
腹心の意味なのですが、腹(お腹)心(胸)の部分を指し、「体の中心」のことを言い、「心の奥底」を意味した言葉。そのことから「心から信頼」できるという事です。ですが、腹心という言葉に対して、「友」をつけるのは、本来違和感があって、そもそも心から信頼し合っているからこその「友・親友」なので腹心の友とは言わないようです。腹心につけるとすれば、「腹心の部下」といった場合に使うの普通のようです。  
理事長挨拶 [平成29年度]
学校法人 加計学園 / 理事長・総長 加計晃太郎
本学園は「ひとりひとりの 若人が持つ能力を 最大限に引き出し 技術者として 社会人として 社会に貢献できる 人材を養成する」という建学の理念のもと、これまでさまざまな分野での教育研究、学際領域の研究、高大連携教育、イマージョン教育の導入、海外の大学をはじめとした教育機関との交流協定に基づく教職員、学生生徒の相互研修による国際感覚の養成等による人材養成を行っております。
政府が、経済再生と並ぶ日本国の最重要課題として、21世紀の日本にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を実行に移すとことを目標に、「人づくりは、国づくり」と位置づけた教育再生実行会議で教育問題に取り組む中、私ども私学関係者もこの取り組みと連動し、来たるべき新時代に活躍できる人材養成に努めて行かなければなりません。
本学園におきましても、その一環として、平成28年度に岡山理科大学に教育学部を開設し、さらに本年は経営学部を4月に開設し、永年にわたって培って参りました教育研究のノウハウを活かして「マーケティングとデータサイエンス」双方に強い人材育成を目指して参ります。
また、倉敷芸術科学大学におきましても本年4月に西日本初の危機管理学部を開設し、経済・経営学をベースとして現代社会で発生している、あるいは発生するであろう、金融、経済、産業、自然等々の問題に対応できる危機管理のエキスパートを養成して参ります。
このほかにも、各設置校におきまして、来たるべき新時代に対応できる人材育成のために、短期的な計画のみならず中・長期のビジョンを持って既存の学部・学科における教育研究体制・施設を充実して参ります。また、学部・学科の改組、新コースの設置、地元地域と連携することでの開かれた大学をめざす等々の取り組みを積極的に推進することにより、地域貢献、社会貢献、引いては平和社会への実現に向けての尽力等々に取り組んで行きたいと思っております。
新年度も学園並びに各設置校におきまして、さらなる教育事業を展開しつつ、魅力ある学園づくりに努めて参りたいと考えております。  
加計学園理事長・加計晃太郎「優しい独裁者」
内閣改造してもV字回復しない安倍総理の支持率。その大きな原因となっているのが、“腹心の友”加計 晃太郎氏率いる加計学園の問題が不透明決着したからにほかならない。国会の追及を逃れるように姿を消した渦中の人物は、地元では「優しい独裁者」と呼ばれ、大物理事長として君臨していた。その正体とは──。
「食事代は私がごちそうすることもあるし、先方(加計氏)が持つ場合もある」
7月24日の衆院予算委員会で安倍晋三総理(62)は、疑惑の渦中にある「腹心の友」、学校法人「加計学園」(岡山市)の理事長・加計晃太郎氏(66)との公私にわたる深い関係について、公然と認めた。そのうえで、両者の関係は、利益供与ではなく接待を禁じる大臣規範には抵触しないとの考えを示している。
安倍総理が成蹊大を卒業後に留学した米国で出会い、親交が始まったのは有名な話だ。総理の座に返り咲いてからも、全国紙の首相動静にはたびたび加計氏の名前が載り、時には昭恵夫人(55)も交えて、ゴルフや食事をしていることが確認できる。
「13年5月に安倍総理がミャンマーを訪問した際、政府専用機で外遊に同行していたことも『加計問題』が取りざたされて明らかになっています」(政治部記者)
いわゆる「加計学園問題」では、「加計学園」の獣医学部新設を巡って安倍総理からの「天の声」があったのではないかと疑問が呈されたが、国会での集中審議では、具体的な“証拠”は提出されず、灰色決着を迎えようとしている。
しかし、安倍総理と加計氏のズブズブの関係は、第二次安倍内閣が誕生した2012年12月以降、急接近。これまでの4年半余りの間に、実に16回も面会していることが明らかになっている。ジャーナリストが語る。
「一部報道では、加計氏は安倍総理に関して『年に1億円は使っている』『旅費は全部出している』と吹聴していると言われているほどで、完全に安倍総理とはパトロン的関係です。その親しい関係を通じて、加計氏は政治家や閣僚とも交際の幅を広げてきた。実際、第一次内閣では面会の回数はゼロですが、ここ数年で急激に増えています」
その内訳も、赤坂の日本料理店をはじめ、渋谷の焼き肉店や東京駅に程近いエグゼクティブラウンジなど、セレブそのもの。さらには、ゴルフ接待やゴルフ場近くの居酒屋での会食など、いかに親しい間柄か、わかるというものだろう。
にもかかわらず、安倍総理が加計氏の計画による「獣医学部新設」を、今年の1月20日まで知らなかったというのは常識的には考えづらい。加計氏の父・勉氏(故人)の代から加計家と長いつきあいを続ける、参院岡山選挙区だった江田五月元参院議長はこう話す。
「10年以上前に晃太郎さんから、(加計学園グループの)岡山理科大か、別の大学に作るかは決まっていませんが、獣医学部の新設に向けて動きだしているのは聞いたことがあります」
これまで52年間も新設がなく、「岩盤規制」と揶揄される獣医学部開設にまでこぎつけようとした“執念”にこそ、加計問題の本質が隠されているのだ。

瀬戸内海沿いに位置するJR呉線「安芸津駅」。ここから3キロほど北上した広島県内のとある町が、加計家のルーツである。現在の晃太郎氏は二代目で、加計グループの創始者である父親の勉氏もここで育った。
「有名な旧家で大地主。教育関係の仕事ではなく、土地開発をしたり、役所で会計の名誉職と言われた『収入役』を加計の方が任されていました。勉さんは分家筋の生まれですね」(地元住民)
本家と分家は隣同士に軒を連ねていた。それでも戦後の農地解放で大半の土地を失い、親族もしだいに減っていったという。
「60年ほど前、町に住んでいた加計の方が亡くなり、葬儀後に地域の人たちが集められました。そこで親族から、『ここに住む者がおらず、この土地で加計の名を継ぐ者はいなくなる』と報告があったんです」(前出・地元住民)
勉氏は広島の中学校を卒業後、教諭の道を志して広島高等師範学校に進学。55年に大学予備校の広島英数学館を開くと、64年には新設した岡山理科大の学長に就任した。岡山で夢をかなえても郷里を忘れることはなかったようだ。
「現在、本家跡地は『加計ふれあい記念公園』として整備され、分家跡地には『加計研修所』が建ち、夏になると学校の先生が宿泊しに来ています」(前出・地元住民)
01年に晃太郎氏が加計学園の理事長を継ぐと、千葉科学大学などを開学。拡大路線で加計学園は岡山理科大学を筆頭に、小中高などを幅広く運営する西日本有数の学校法人を築き上げていく。
「晃太郎さんから教育論を聞いたことはありませんが、経営者として才覚にたけた人。勉さんが種をまいて、晃太郎さんが大きく育てたのは間違いないでしょう」(江田氏)
晃太郎氏の剛腕ぶりもつとに知られたところで、
「『優しい独裁者』と呼ばれていて、職員をどなる姿は見たことがありません。反面、今治の獣医学部の件もそうですが、内部から反対の声が出ても耳を貸さない。建設費だって世間から補助金が出て厚遇されていると批判されますが、回収するのも難しいと見られています。それでも一度決めたら曲げないから‥‥」(加計学園グループ関係者)
いわば採算度外視で獣医学部開設に奔走していたことになる。系列の千葉科学大学など定員割れで運営に苦慮しているとも伝えられているが、実情はどうなのか。
「経営が厳しいと報道するメディアもありますが、財務状況はメチャクチャいいはず。拡大路線を展開していますが、経営難という話は聞いたことがありません」(前出・加計学園グループ関係者)
地元では「悲願の獣医学部開設は息子さんが獣医学部出身だからというのがもっぱらの見方です」(別の加計学園グループ関係者)というが、案外、このあたりが加計氏の本音なのかもしれない。

一方、加計氏が加計学園の理事長に就任した頃、実姉の美也子氏もまた、吉備国際大学(高梁市)などを経営する学校法人「順正学園」の理事長に就任。“形見分け”をした父親の願いもむなしく、程なく姉弟の関係はぎくしゃくしてしまう。
「二人で話し合っても会話がかみ合わず、晃太郎氏が姉について『話にならない!』と愚痴をこぼすこともあったようです」(加計学園グループ関係者)
関係者によれば、姉の美也子氏は、貴族のような、世間離れしたタイプだという。服装も全身黒ずくめの服を着ることが多く、ウエストがキュッと細くて、独特の雰囲気を醸し出しているだけに、叩き上げの加計氏とは反りが合わなかったようなのだ。
「経営方針が合わずに7年前から絶縁。実家にも晃太郎さんが顔を出すことはなくなったそうです」(加計学園グループOB)
そうした家族内の不協和音を打ち消すかのように、加計氏の評判は「夜の街」で広く知れ渡っている。加計学園グループOBが続けてこう証言する。
「サケコウタロウとあだ名が付くほどの酒豪。居酒屋で職員と会った時は、いつの間にか晃太郎さんが会計を済ませてくれます。過去には理事長の邸宅で職員や近所の子供が招かれ、ガーデンパーティが開かれた。わたあめや金魚すくいなど出店が用意されていたのには驚きましたね」
私生活では、米国留学時代に出会った前妻とは8年前に離婚。その後、20歳近く年下の女性と再婚した。以来、岡山の繁華街で羽を伸ばすことも多く、ひいきにしているクラブに頻繁に顔を出すようになる。地元記者はこう話す。
「特別にかわいい子が働いている店でもないのですが、ママのことがお気に入りで職員や知り合いを連れて通っているようです。ママは口が堅いので、マスコミが来た時には“忖度”して追い払ってくれます」
羽振りがよく、岡山の夜の街を闊歩していた加計氏。しかし、「加計学園問題」がマスコミをにぎわわせるようになってからほとんど姿を見せなくなった。「週刊新潮」が岡山市のスーパーで買い物しているところや、銚子市(千葉県)で自身の誕生日会に参加した様子を報じただけだ。加計学園の職員はこう話す。
「岡山市内の高級マンションに住んでいますが、マスコミが自宅前で張り込みしているので転々とすることもあるとか。ほとんどの職員も数カ月間、見かけていないのですが、秘書に聞くと岡山理科大に出勤したりして、ちゃんと業務をこなしているそうです」
加計氏の“雲隠れ”をよそに“親友”の安倍総理の支持率は危険水域に入ってきた。7月28日にはジャーナリストの田原総一朗氏(83)が総理側の希望で官邸を訪問。支持率回復のため、「政治生命をかけた冒険をしないか」と切り出して“秘策”を提言したようだ。
「会談内容は明かしていませんが、もっぱら年内の電撃訪朝だと言われています。ミサイル連発で北朝鮮と米国の緊張状態が続く中、安倍総理が訪朝して“仲裁役”となり、米朝首脳会談を実現させる。それを政権浮揚の足がかりにする狙いがあると見られています」(政治部記者)
お友達内閣に続き、本当の親友からも足を引っ張られた安倍総理。起死回生の一手は功を奏するのだろうか。  
 

 

 
加計学園報道

 

〜2016
■改正国家戦略特区法と規制改革の提案募集に関する説明会を開催 2016
2016年7月4日、改正国家戦略特区法と規制改革の提案募集に関する説明会を開催しました。国家戦略特区法は本年5月に改正案が成立しましたが、今回はこの制度の政府内での直接の担当者である藤原豊・内閣府地方創生推進事務局審議官に講師としてお越しいただき、制度の概要や改正案の内容についてお話しいただきました。
国家戦略特区は産業の国際競争力強化の観点から規制改革等の施策を推進するために設けられたものであり、政府は、民間事業者や自治体からの具体的な提案を募集した上で、これまでに東京圏、関西圏、沖縄県など10の地域を国家戦略特区に指定しています。(概要はこちら) 国家戦略特区ではこれまでに68の事項が実現しており、その中には、企業の立ち上げに係る手続きを一ヶ所に集めた開業ワンストップセンターの開設(東京都:アーク森ビルJETRO本部内)、いわゆる「民泊」の解禁(大田区、大阪府)、ハウスキーパー等、家事支援外国人の受け入れ(神奈川県、大阪市)、公設民営学校の解禁(愛知県)、ベンチャーや外資企業などが事前に労働問題の相談に乗ってもらえる「雇用労働相談センター」の設置(福岡市等)などがあります。今回の改正では、新たに、過疎地域等での自家用自動車の活用拡大(いわゆるライドシェア)、企業による農地取得、テレビ電話による服薬指導などが認められました。
藤原審議官は、今後も政府は、「外国人材の受け入れ」「インバウンド推進」「シェアリングエコノミーの推進」「事業主体間のイコールフッティングの実現」「多様な働き方の推進」「第一次産業・観光分野の改革」の重点6分野をはじめ、この特区制度を突破口として、残された岩盤規制の改革に取り組んでいく覚悟であることを強調され、現在「集中受付期間」として募集している民間からの追加提案にぜひアイデアを寄せてもらいたい旨述べられました。ました。
■第2次安倍内閣における安倍総理と加計氏の接触記録
○ 2013年11月18日 午後6時33分、東京・赤坂の日本料理店Sで加計氏と食事。
○ 2014年6月17日 午後6時30分、東京・芝公園のフランス料理店CでA氏、加計氏らと食事。
○ 2014年12月18日 午後7時4分、東京・銀座の中国料理店H。A氏、加計氏と食事。
○ 2014年12月21日 午後6時55分、東京・赤坂の飲食店K。昭恵夫人、加計氏らと食事。
○ 2015年8月15日 午後5時40分、(山梨県鳴沢村の別荘)A氏、加計氏、本田悦朗内閣官房参与らと食事。
○ 2015年8月16日 午前7時、山梨県富士河口湖町のゴルフ場Fカントリー倶楽部。A氏、加計氏、本田内閣官房参与とゴルフ。
○ 2015年9月21日 午前7時57分、山梨県鳴沢村のNゴルフ倶楽部。加計氏、友人、秘書官とゴルフ。
○ 2016年3月18日 午後6時36分、東京・赤坂の日本料理店S。A氏、加計氏と食事。
○ 2016年7月21日 午後6時25分、山梨県富士河口湖町の焼き肉店T。B氏、加計氏と食事。
○ 2016年7月22日 午前7時19分、山梨県山中湖村のゴルフ場Fゴルフコース。B氏、加計氏らとゴルフ。
○ 2016年8月10日 午後6時21分、山梨県富士河口湖町の居酒屋R。加計氏、秘書官らと食事。
○ 2016年8月11日 午前6時42分、山梨県山中湖村のゴルフ場Fゴルフコース。A氏、加計氏らとゴルフ。
○ 2016年10月2日 午後6時、東京・宇田川町の焼き肉店Y。A氏、C氏、加計氏らと食事。昭恵夫人同席。
○ 2016年12月24日 午後6時2分、東京・丸の内の鉄鋼ビルディング。同館内のエグゼクティブラウンジでA氏、加計氏、昭恵夫人らと食事。 
 
2017/ 1

 

■規制改革メニュー / 教育
獣医学部の新設
「国家戦略特区における追加の規制改革事項について(平成28年11月9日国家戦略特別区域諮問会議決定)」に従い、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応するための獣医学部を、一校に限り特例的に設置認可の対象と出来る。
2017年1月告示 今治市  
 
2017/ 3

 

■加計学園問題の原点 / 安倍首相の3月13日参院予算委での答弁 
今国会で、加計学園が今治市に獣医学部を新設する件についの最初の質問は3月13日の参院予算委員会での福島みずほ議員のものと思われ、安倍首相が直接答弁に立っていますが、現在まで、議事録が公開されていません。そこで該当部分を文字起こしして、分析しました。以下、パートごとに区切って文字起こしした後、筆者の考えを記します。なお、該当部分は、参議院インターネット中継のホームページの3月13日予算委員会の動画のうち、6:35:24〜で確認することができます。文中※印の部分は後でコメントします。
質問1
福島 / 次にですね、加計学園についてお聞きを致します。えー、加計学園理事長加計晃太郎さんが今治市で岡山理科大学獣医学部を作りたいと思っているのを知っていましたか。
安倍 / お答えする前にですね、えー、私や家内(※1)がバックにいれば、役所が何でも言うことを聞くんだったらですね、福島先生ね、長門市とね、私の地元、予算全部通ってますよ。<笑い声あり>誰が考えたってね、私の地元でしょ、そこから要望する予算が全部通ってますか。通ってませんよ。様々な要望をしているけど、全部通ってませんよ。通ってるのもあれば、通ってないのもありますよ。そんな簡単なものではない、そういうのをいわば、い、印象操作というんですよ。そんな、そんなですね、いわば、安倍政権のみならず、政府、あるいは行政の判断を侮辱するような判断は、あ、侮辱するような言辞はですね、止めて頂きたいと思いますよ。(※2)しっかりとですね、皆さん真面目に業務にですね、えーこの、精励している訳でありまして、それがですね、それがあー、まるで私の名前がついていれば全部ですね、物事が進んでいくがごとくのですね、えー、この、えー、誹謗中傷は止めて頂きたい、とこう思う次第でございます。えー、それと、今ですね、加計学園について、えー、その、おー、いわば、えー、私が、この、おー、えー、獣医学部をですね、獣医学部を、おー、えー、最終的に、えー、知っていましたか、というのは、最終的にですね、これは、あー、今治とこれは広島でしたっけ、の、特区がですね、えー、え、決定された中によって、えー、この加計学園が、この、おー、獣医学部をですね、開設をするということが決定したことは、もちろん私は承知しております。政府の決定でございますから。(※3)
質問2
福島 / 全く答えてないじゃないですか。加計学園の理事長と、理事長が、ここで獣医学部を作りたいと思っているかどうかを、あなたが知っていたかどうか、総理が知っていたかどうかを聞いた訳です。2016年、7回、ゴルフや食事をしています。その前、2014年6月から2016年12月まで2年半の中で13回食事などをしています。永年の友人じゃないですか。極めて永年の友人です。だからお聞きをしてるんです。政策が歪められてるんじゃないかっていう質問です。えー、平成28年、2016年11月9日、獣医学部の新設を国家戦略特区が決めます。そこで、このため、かねてより準備を進め具体的提案を行ってきた自治体を中心に、具体的プロジェクトとして、実際の獣医学部の立ち上げを急ぐ必要があり、そのための規制改革、すなわち関係告示の改正を直ちに行うべきであるという、えー、国家戦略特区の決定です。で、この具体的提案を行ってきた自治体っていうのは今治市ってことでよろしいですか。
安倍 / これ、担当大臣を呼んで頂けますか。あの−、山本さんがですね、担当大臣なんですよ。で、山本さんを呼んで頂かなければ、私、それ、お答えのしようがありませんよ。詳しく、私、存じ上げませんから。これ、所管外ですから私、お答えできませんよ。
質問3
福島 / はい、でも加計学園の理事長と非常に懇意にしていて、11月9日の日に今治市なんですよ。そしてですね、てか獣医学科を決める、そして構造改革特区に、ずっと、愛媛県と今治市は獣医学部の選定、やってくれってことを言っています。だから2010年、日本の獣医学会は、これに反対の声明を出しています。それはこういう中身です。日本獣医師会。2010年8月5日付け声明。えー、特区提案による大学獣医学部の新設について批判をしています。高度専門職、えー、高度専門職、ぎょ、養成の責を担う獣医学教育課程が、特区に名を借りた地域興しや特定の一法人による大学ビジネス拡大の手段と化すことが無いように、事があってはならない、ていうふうに言ってるんですね。そして、ここの中身は、もう今治市、えー、加計学園、というふうに名前がもうすでに出続けているんですよ。総理、何故急転直下、国家戦略特区によって、獣医学部新設、そして、この大臣告示を規制緩和する、まさにそこで発言をされているからこそ、聞いてるんです。特区の理事長じゃないか・・議長じゃないですか。はい。
安倍 / <原稿を答弁席に放り出す>福島さんね・・、特定の人物の名前を出して、あるいは、学校の名前を出している以上ですね、何か、政治によって歪められた確証がなければですね、その人物に対して極めて、私は、失礼ですよ。そしてこの学校でですね、学校で学んでいる子どもたちも傷つけることになるんですよ。まるで私が友人であるからですね、何か、えー、この、特区あるいは様々な手続についてですね、何か政治的な力を加えたかのごとく、の今、質問の仕方ですよね。それあなた責任取れるんですか。これ全く関係なかったら。(※4)まず申し上げましょう。今、恐らく週刊誌を元に言ってるかもしれませんからね、えー、言ってますけれども、例えばですね、これが、今治市が、ただで提供されたていうことについて、これおかしいだろう、という週刊誌でありますが、二十年の間にですね、二五例あるんですよ。二十年の間に二五例あってですね、で、これは、ただでいわば土地が譲渡された例ですね。で、土地がただでですね、いわば、貸与された例、これは以外にもっとあるんですよ。つまり、なかなかですね、遊休地があって、地方自治体が困っているときはですね、一番良いのはですね、学校法人がくることなんですよ。これは若い人たちも来ますし、研究者も来るし、街が形成されるんですよね。でもね、なかなかこれね、そう簡単に来ませんよ。で、ただで提供すると言ったって、中々来ないんですから。今、子どもの数が減ってますから、ただで提供すると言っても中々ずっと・・、学校法人は来ないのは事実であります。で、さらにですね、これ今治市が、今治市がですね、決めたことでしょ。これ、市ですから。国有地ですらない訳でありますから。私が影響、影響のしようがないじゃありませんか。それとですね、いまそこまでですね、あなたがですね、疑惑があるかのごとく、私人に対して、えー、質問をしている訳であります。名前を出してるじゃありませんか。名前を出している。しかも学園の名前も出してますよね。これ、生徒の募集等々にもですね、大きな影響を与えますよ。これ、あなた、責任取れるんですか。・・私はそれを問いたい。もうね、いまNHKで放送されて、ぜ、全国放送で、されてるんですよ、これ私、おどろ、驚くべきこと、であります。<原稿目を落とす>で、申し上げますとですね、今治市はですね、今治市はですね、獣医学部設置のみならず、これ、しまなみ海道のサイクリングブームを後押しする構造改革人材の積極的受入や、活力ある地域作りのための道の駅の民間参入など、大胆な規制緩和を提案し、特区ワーキンググループなどの有識者委員より極めて高い評価を得た訳であります。ま、最終的にはですね、平成27年12月に特区担当大臣から特区諮問会議に諮り、指定を決定した訳でございます。この指定決定する、いわば大臣が、委員会に諮問をした訳でありまして、そこで、しっかりと議論をしてるんですよ。その際、有識者より、しまなみ海道で、え、繋がる広島と連携して指定することにより、一層の効果が期待できるとの意見があり、これを踏まえて、広島県と今治市を一体の特区としました。具体的には、国際的なサイクリング大会が開催されるなど、外国人観光客の多いしまなみ海道における観光サービスの担い手として、外国人の受入を促進するための、特例措置の活用などが共同で、え、計画されている訳であります。で、そして、それに合わして、えー、獣医学部新設の、えー、措置でありますが、獣医学部の新設については、獣医師養成学部各科の定員の制限、えー、文部科学省の告示があり、今治市は平成19年以降、15回にわたりですね、15回にわたり愛媛県と共同で、構造改革特区を活用した、え、獣医学部設置を提案きたが、実現には至らなかった訳であります。<原稿から目を上げる>もちろんそれはあなたが今紹介されたような様々な反対があるからであります。であるからこそ、業界団体の反対があるからこそ、だから特区でやるんですよ。だいたい、特区はそういう事になってるんですから。<原稿に目を落とす>そこで、安倍政権の下では、鳥インフルエンザ、エボラ出血熱など、動物由来の感染症の国際的拡大に対する危機意識が高まったことから、日本再興戦略改定2015においてですね、獣医学部設置を検討することとなった訳でありまして、その中で、えー、昨年11月の特区諮問会議において、鳥インフルエンザなどの人獣共通感染症が家畜等を通じて国際的に拡大していく中で、地域での水際対策の強化や、新薬の開発などの、先端ライフサイエンスの研究など、獣医師が新たに取り組むべき分野・・の具体的需要が高まっていることから、これに対応する特例措置として、獣医学部の設置を、国家戦略特区のメニューとして、追加することとした訳であります。ちなみに、四国には獣医学部がない訳でありまして、四国全体からのニーズがあったのも事実であります。その際、全体の獣医師の需要も踏まえ、また、永年実現できなかった岩盤規制の改革に対して、慎重な議論もあったことからですね、平成27年に新設が認められた医学部と同様、一校に限る。これは、あー、成田で新設された医学部でありますが、これも一校に限るということになっている訳でありまして、一校に限る制度改正となった訳でございまして、<原稿から顔を上げる>これ、今申し上げたことは、一々、週刊誌の指摘に反論している訳でありますが、恐らく、そ、それを元に、元に、元に、質問をされてるんだろうと思いますよ。(※5)<原稿に顔を落とす>ただし、国家戦略特区はですね、規制改革の突破口であり、今後、特段の問題が生じなければ、更なる規制改革として、2校目、3校目を認めていくこともですね、え、検討に値すると考えている訳でございます。
質問4
福島 / 政府の政策が合理的になされているかどうかを正すのが国会です。政府の審査をするのが国会議員の仕事で、野党じゃないですか。その質問に対して、何で総理はそう恫喝するんですか。総理は、総理はですね、10月2日と、12月24日、まさにその2017年、あ、2016年その11月9日に国家戦略特区で一つだけ獣医学科を規制する、規制緩和する、まさにここで、ということを、総理自身が議長で決めたときの前後にですね、10月2日、12月24日、え、この方と食事をしています。え、こういう話を、えーしたんですか。
安倍 / これね、私、そもそもね、そもそもですよ。何かですね、これ、不正があったんですか。だから私が言ったんですよ。何か確証を掴んでるんですか、ということですよ。週刊誌の記事以外に。何か確証もつかずにですね、この国会の場において、何か問題があったかのごとく、私と彼が会食、彼は私の友人ですよ。ですから会食もします。ゴルフもします。でも、彼から私、頼まれたことはありませんよ。この問題について。ですから働きかけてはいません。これははっきりと申し上げておきます。働きかけていると言うんであれば、何か、確証を示してくださいよ。で、私はね、私はもし、働きかけて決めてるんであれば、これは私責任取りますよ。当たり前じゃないですか。(※6)で、国家戦略特区の諮問委員会はですね、そんな、すいません森さん、五月蠅すぎますよ後ろで。これ、委員でもないんですから・・、委員でもないんですから、い、い、傍聴、<委員長に>ちょっと、あの、注意してください。<委員長:あの、静粛に願います。総理、ご答弁続けてください。静粛に願います。>はい。で、そこでですね、そこで、いわば、そこでですね、それを出すってんであればですね、これ、大きな被害が被るんですから、マスコミが殺到して、で、学生たちにもマスコミ殺到しますよ。こういう事をするというんであれば、よっぽどの確信がない限り、ただ、安倍政権のイメージを落とそう、安倍晋三を貶めようということで、答弁するのは止めた方がいいですよ。実名を挙げて答弁するのは。(※7)
質問5
福島 / これが余りに急スピードで展開しているので、そのことについて、思っているのです。2016年の11月9日に、国家戦略特区でこれを決めます。そして、そして1月4日に告示があります。ここで文科省、文科省の大臣告示を変えて、えー、獣医科を今まで作らなないとしていたのを、規制緩和をするわけです。そして1月、1月4日から11日、わずか一週間の間、公募をやります。ここに手を挙げるのは、そこの加計学園以外にはありません。もの凄く速いじゃないですか。1月、なんと11月に国家戦略特区で規制緩和を決めて、告示を変えるのが1月4日ですよ。で、告示を変えた直後、1月4日から11日の間、わずか一週間の間しか、この今治の獣医学部をやる人がいますか、という公募はここでやるですよ。そんなの手を挙げられる所って、もう本当に、元々準備をしている所以外にないじゃないですか。そして、2017年1月20日、国家戦略特区諮問会議で、総理はこう仰っています。「1年前に国家戦略特区に規定した今治市で画期的な事業が実現します。獣医学部が来年にも52年ぶりに新設され、医師を育成します。」。もの凄く速いですよね。そもそも、決めて、告示をやって、それから、わずか同じ日ですよ、1月4日、まだお正月のときですね。それから一週間、11日までしか公募しないんですよ。だとしたら、手を挙げられるところは、もともと予測できるじゃないですか。何故この質問をしているか、国家戦略特区の議長がえ−、総理であり、11月9日、そして1月20日、その間、もの凄く急スピードなんですよ。これはやはり、この今治市で獣医学部をやって、この学園ってことを、総理がやっぱり、予測してたんじゃないですか。
安倍 / もうね、えー・・この質問自体ですね、先ほど申し上げましたように、固有名詞出したんですから、そうした人たちを傷つけるってことを考えて質問されなければダメですよ。まず、十五年間ですね、特区は申請され続けてきたんですよ。その間、そうであればですね、他の大学だって、じゃあ取り組もうと思えば、取り組めたわけですよ。しかし、諦め続けずにやってきたところがあったのは事実。それ、加計学園であったわけでありますが、そこでですね、<原稿に目を落とす>民間、民間事業者の選定はですね、国家戦略特区法の、これ国家戦略特区法の原則に従いですね、公募手続が取られ、学校法人加計学園より応募があったわけであります。で、公募期間は8日間としたが、この期間は、<原稿から顔を上げる>他の事業と同程度であります。これだけ速かったわけではないんですよ。だいたいですね、まず、特区ってのは、そんな長い、この戦略特区でありますから、その前にこれは、だいたいやるということはだいたい決まっていて、多くの人たちが知っているんですよ。関係者はみんな知っているんです。知ってる中においてですね、もうこれは、そういう方向で進んでいるということは、多くの人たちが知って、知っているんです。その中で8日間、で、ほかと比べてですね、特別短ければ別ですよ。これだいたい他と同じですから。<原稿に目を落とす>で、その後ですね、え、6日間の追加申し出の手続を行いましたが、他の事業者から応募はなかった訳でありまして、応募の内容については分科会や、区域会議、諮問会議において、新設に必要な要件を十分に満たしていることを適切に確認をしております。なお、獣医学部の新設に関心を持つ事業者や自治体に対しては、特区で取り上げられるに至る前段階から、内閣府が随時、提案や相談を受け付ける体制を整えています。<原稿から目を上げる>急に8日間でやったんではない。もうちょっと勉強してから質問してくださいよ。(※8)しかしながらですね、しかしながらこの数年間で、しかしながらですね、しかしながら、や、これはあなたがですね、こういう問題で、疑惑があるかのごとくですね、疑惑のあるかのごとく、固有名詞や学園の名前を出せば、これは多くの人たちが傷つく訳であります。最初に申し上げましたように、これ、学校や何かにね、また、生徒や親の所にマスコミが殺到したらどうするんですか。責任とるんですかそれは。(※9)<原稿に目を落とす>で、しかしながらですね、この数年間、熟度の高い具体的提案は、平成19年から出されているこの今治市の事業のみだったと、こう承知をしているわけでございます。
結語
福島 / この、獣医学部に関して、もう需要がきっちりあってですね、新たに獣医学部を作る必要は無いというのが、文科省、農水省、そして獣医学会が、あ、獣医師会が言っていたことなんですよ。それを今治市で、え、そしてまた新たに獣医学部を作ると。で、これはやはり何故質問しているかと言えば、国家戦略特区の議長が総理であり、そしてその決定をしているからです。私は逆にですね、友達やいろんな近しい人が関与している可能性があるんだったら、むしろそれは、ま、注意深くやる。慎重にやる、あるいはやらない、そういう配慮も実は必要だと思いますよ。だって正に、正に、永年の友人。だって、総理が国家戦略特区で規制緩和をしたことで、総理の永年の友人はこれで利益を受けるわけじゃないですか。利益をこれで受けるんですよ。だから、そのことが大きいというふうに思います。えー、森友学園のことについても、今後も追及をします。
安倍 / <委員長:総理、短くお願いいたします。短くお願いいたします。>あのね、今、疑惑を掛けたまま終えられますから、ひと言付け加えたいと思いますけどもね、一校、そりゃ反対しますよ。医学部だって、成田の医学部だって、反対しましたよ。医師会は。当然なんですよ、それはね。それ、それを同じ理由であの、それを同じ理由で反対しましたからね、で、そこで、一校のみということを、が、で、一校のみというのが決まったのが成田における医科医大学でありましたね、医大でありますよ。で、同じ事がこっちでも起こっているわけで、そこで私が知っているんであればね、それを止めるべきだ、<指を指しながら>そこで私は、裁量、裁量行使していいんですか。裁量行使して良い訳ないじゃないですか。ということをはっきり申し上げて、えー、答弁を終えさせて頂きたいと思います。 
講評
質問1
福島議員の質問の趣旨は「加計学園理事長の加計晃太郎氏が今治市に岡山理科大学獣医学部を作りたいと思っているのを知っていましたか。」ですが、安倍首相は、聞かれていないことを散々言い散らした上、「最終的には」知っていたと述べるだけで、いつ知ったのか、あるいは最初から知っていたのではないか、という疑惑に何も答えてません。
(※1)安倍首相は、国会で答弁する際、昭恵氏のことを「妻」と呼びますが、焦っているように見えるときは「家内」という傾向があるように思います。これは普段どう呼んでいるかの問題で、安倍首相は普段、周囲には「家内」と言っているところ、国会では、政治的な適正さを意識して「妻」と言い換えている可能性があります。
(※2)福島議員は安倍首相が知っていたか否かの事実を聞いているだけなのに、印象操作、政府の判断を侮辱など、全く関係ないことを答えています。
(※3)自分が最終的に知っていた、という単純な事実を認めるのに、えー、おー、この、そのなどかなり言い淀んでいます。その事実を認めるのがそんなにまずいことなのでしょうか。
質問2
安倍首相は国家戦略特区諮問会議の議長で、今治市における獣医学部設置に関する規制緩和の議論に関与してきた立場です。獣医学部の規制緩和について具体的提案を行ってきた自治体を確認されただけで、それを「所管外」と逃げて答えないのは、誠実な国会答弁ではないと思われます。なお、その後、安倍首相は今治市について何度も言及しており、山本規制改革大臣の名前を出して逃げるのは、この点からも、ためにする言辞と思われます。
質問3
福島議員の質問の趣旨は、獣医師会が反対する中で、国家戦略特区諮問会議の議長である安倍首相がそこで発言をしているのに、答弁を回避するのはおかしい、というものだと思われます。これに対して、安倍首相は全く答えていません。「確証」がなければ国会で質問知るのが失礼だ、というような、議員の質問権を否定するような答弁に終始しています。福島議員が一切言及していない週刊誌報道について、聞かれてもいないのに一々反論するのも、国会答弁の範疇を逸脱していると思われます。後半は、官僚が用意した原稿を読み上げて答弁していますが、しまなみ海道の観光振興と鳥インフルエンザ・ライフサイエンス研究は直接関係ないはずで、まさに官僚答弁と言えるでしょう。
(※4)「確証」がないのに野党が国会で質問をすれば加計学園に失礼で、学生を傷つけるので、責任取れるのか、という趣旨のようですが、質問に対する答えになっていません。
(※5)福島議員は週刊誌のことを何も言っていないのに、※4の部分以降、安倍首相が長々と原稿を読み上げて週刊誌報道に対する反論をするのは国会の審議時間の浪費でしょう。
質問4
福島議員の質問の趣旨は、2016年11月9日に国家戦略特区諮問会議(安倍晋三議長)で、今治市での獣医学部設置に関する規制緩和が決定された前後の10月2日、12月24日に安倍首相が加計 晃太郎氏と会食しているなかで、獣医学部設置に関する会話をしたのではないか、ということですが、安倍首相は質問に直接答えず、「この問題について頼まれていない」と限定して答弁しています。これは、会食の時に獣医学部設置計画の話自体はあったと認めているのでしょうか・・・。
(※6)福島議員が、安倍首相に責任があるとも何とも言わず、事実を確認しようとしているのに、それには答えず、自分が働きかけて決めているのであれば責任を取る、と勝手に前のめりな発言をしています。これによって、今日に至るまで、あるはずの関与を認められず、国会が振り回されています。
(※7)安倍首相は、※4に続き、再度、加計学園や学生にマスコミが殺到して大きな被害を受ける、などと言いますが、大問題になっている今日に至るまで、少なくとも学生や父母に取材が殺到した例は無いように思われ、加計 晃太郎氏が公式に何かを述べたことも無いように思われます。なお、安倍首相は「答弁」と「質問」を取り違えており、焦っているのでしょうか。
質問5
福島議員は2016年11月9日に国家戦略特区諮問会議(安倍晋三議長)で、今治市での獣医学部の規制緩和が決まった後、2017年(今年)の1月20日の同会議で加計学園が事業者となる獣医学部設置が決定されるまでが急スピードであることから、安倍首相は、加計学園が事業者となる獣医学部の新設を事前に知っていたのではないか、と改めて質問していますが、安倍首相は、官僚が作った原稿に目を落として、国家戦略特区法における手続の進捗状況を述べるだけで、自身が事前に知っていたか否か、という肝心の質問に答えてません。
(※8)質問者の質問に答えてないのに、質問者に対して「もうちょっと勉強してから質問してくださいよ。」は、それこそ、質問者に対する侮辱と思われます。
(※9)これも※4、※7と同様のことを繰り返しています。
結語
国会質問では、質問した側が最後に自らのまとめをして質問時間を締めくくることはよくあるのですが、安倍首相は答弁を求められていないのに、これに答弁に立っています。聞かれたことに答えないのに、言いたいことは言うのも、やはり、行政府の長として、非常に行儀が悪いと考えます。
今日から見た意義
まずは、国会審議から2ヶ月半も経つのに、議事録がホームページに掲載されていないこと自体、非常に不当でしょう。安倍政権がこの国会質問について、何かを隠したがっていると疑念を持たれても仕方ないのではないでしょうか。
そして、3月13日の段階では、安倍首相は、確証もなしに国会質問をすべきでない、などと述べていました。しかし、その後、この件について「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」等と書かれた文部科学省の内部文書が流出しました。それが本物であり、また、2016年9月から11月にかけてその旨の報告があったことや、安倍政権の首相補佐官の和泉洋人氏や、内閣官房参で、同時に加計学園理事でもあった与木曽功氏から繰り返し働きかけがあった旨、前川喜平・前文部科学次官(1月18日に天下り問題で引責辞任)が何度も証言しています。前川氏は和泉氏が「総理は自分の口からは言えないから私が代わりに言う」と言ったとまで証言しています。自民党の元国会議員である佐藤静雄氏はツイッターで「前川前次官は私が党の文教部会長をやっていた時に多少の付き合いがあった方だが正直で真面目な人だ。出所の分からないペーパーをでっち上げるような人ではない。」と発言しました(5月29日)。自民党の元国会議員である北村直人氏も文科省の内部文書について「ほぼ正確なものだ」と証言しています(5月25日 FNN「北村氏「首相の意向」内容認める」)そして、先週末には文科省のパソコンにも文書が保管されている事実が判明しました。
ところが、これだけ証拠が揃った今日、松野文部科学大臣は、今度は「入手経路が明らかにされておらず、改めて調査を行うことは考えていない」と答弁したようです。具体的な証拠があるのに、入手経路を明らかでなければ答えない、というのは、違法・不当な業務執行を内部者が曝露する、公益通報や、ジャーナリズムを全否定するものであり、また、国民の疑問に対して全く答えになっていないでしょう。安倍首相が「確証」に基づいて追及しろ、と散々言ったところ、これだけの証拠が出てきた以上、事態の核心を知る和泉洋人首相補佐官、木曽功内閣官房参与(加計学園理事)、前川喜平前文科事務次官、加計 晃太郎(加計学園理事長)の証人喚問が必要な段階に至っていると思われます。
そして、安倍首相自身、自ら「腹心の友」と呼ぶ友人が代表者を務める学校法人、すなわち利害関係者に対して利益誘導する政治を自らの名で行っており、最低でも深刻な利益相反を引き起こしているはずです。利益相反は、実際に不正が行われたか否かとは関係がありません。「李下に冠を正さず」の言葉の通り、客観的に政治家が利害関係者の利益になる政治を行うこと自体が大きな問題なのです。本来、安倍首相も、国会での証人喚問を免れない立場と思われます。
行政は、国民に対して、適法・適正な業務執行をしている旨説明する責任がどこまでもあります。行政府の長である安倍首相以下、質問に答えず、言いたいことだけ言い続けるモラルハザードの状態を、もういい加減、止めて頂きたいと思います。 
 
2017/ 3 報道

 

■36億円公用地を無償譲渡 “第2の森友”スピード着工の奇怪 3/10
日を追うごとに怪しさが増す「アッキード事件」の陰に隠れる形で、こちらの疑惑プロジェクトは密かに進行していた。愛媛県今治市が所有する約36億円相当の土地が、安倍首相の“お友だち”に無償譲渡された「第2の森友事件」のことだ。
今治市議会は今月3日、学校法人「加計学園」(岡山市)に大学獣医学部の校舎建設用地として、16.8ヘクタールの土地の無償譲渡を可決した。学園の加計孝太郎理事長は、安倍首相とは40年来の旧友として知られる。
異例とも言える「開会初日採決」の強行から、わずか5日。本紙記者が8日、渦中の今治市の現場を訪れると、ビックリ仰天だ。すでに2、3台のショベルカーが土を掘り返すなどして、基礎工事に着手していた。採決強行から1週間足らずのスピード着工とは聞いたことがない。まるでハナから「工事ありき」で進んでいたとしか思えない素早さだ。ある市議もこう驚いた。
「ナニ? もう工事始まってんの? 初めて聞いたよ。さっき、会派の仲間と『今度、いつ現場を視察しようか』と相談したばかりだよ」
大学設置の事業費負担は今治市だけではない。計画では現時点で、愛媛県も32億円の負担を求められることが判明している。ところが、県議会がこの議案を本格審議するのは6月議会の予定だ。つまり、県議会の「OK」を得ないまま、勝手に工事だけが進んでいるわけだ。
「まだ多くの議員が資料を精査している途中ですよ。議会が開かれていない段階で、可決を前提に大学新設の工事がどんどん進んでいるなんて前代未聞です。明らかにおかしいし、許せませんよ。県民に説明できません」(県議のひとり)
どうやら森友も真っ青の怪しい展開になってきた。 
■「悪魔の証明」迫られた安倍首相 対抗策は次々裏目に… 3/24
学校法人「森友学園」をめぐる疑惑で国会が大揺れの中、安倍首相は狐につままれたような気持ちなのではないか。それでも昭恵夫人の「口利き」疑惑も、「100万円寄付」疑惑も、「ない」と証明するのは「悪魔の証明」と言われるほど難しい。このまま野党のペースにはまり、ズルズルと「森友国会」を続ければ政権のダメージははかり知れない。首相に起死回生の一手はあるのか−。
首相は24日の参院予算委員会で、私信である籠池泰典氏の妻と昭恵夫人のメール内容まで公開に応じた。水掛け論を防ぎたいとの思いからだった。23日の証人喚問での籠池氏の証言について首相はこう言い放った。
「悪意に満ちたものであるということは申し上げておきたい」
これで疑惑が晴れるかと思ったが、野党の追及はやまない。福島瑞穂氏(社民)に至っては「(寄付してないなら)メールが『祈ります』から始まるわけないじゃないですか」と独自解釈を披露し、首相を責め立てた。どんな抗弁も受け付けないならば、国会は「魔女狩り」に等しい。
首相は「問題の本質」という言葉を繰り返し、森友学園の国有地払い下げをめぐる疑惑が、違法でもない「100万円寄付」問題に焦点がずれたことに疑義を唱えたが、野党側は聞き入れる様子はない。
そもそも2月中旬に森友学園の疑惑が浮上した際、首相はさほど気にとめていなかった。籠池氏夫妻と面識はなく、疑惑の中身さえ知らない。「昭恵夫人が何度か講演に行った幼稚園」という程度の認識だった。
首相も首相側近も「それほど打撃はない」と余裕綽々だった。それが2月17日の衆院予算委での「私や妻が関係していたということになれば首相も国会議員も辞める」という強気発言につながった。
ところが、籠池氏夫妻の特異なキャラクターもあり、ニュースは森友学園一色になる。さらに3月16日には籠池氏から「小学校建設費に首相の寄付金が入っている」という爆弾発言が飛び出した。
「ええっ!」。寝耳に水の一報に首相は執務室で驚きの声を上げた。すぐに昭恵夫人や同行した夫人付の政府職員らに確認したが、そんな事実はないという。「籠池氏の発言にこれ以上翻弄されるわけにはいかない」と考えた首相サイドは、籠池氏の証人喚問にもゴーサインを出した。
だが、これは逆効果だった。証人喚問は「籠池劇場」の様相を呈し、逆風はますます強まった。
「ない」ことを証明するのはこの上なく難しい。
このままでは内閣・自民党の高支持率を背景に7月の東京都議選を乗り切り、来年9月の総裁選で3選を果たすというシナリオも崩れかねない。都議選に自民党が大敗すれば党内のムードは一変し、「安倍降ろし」がじわりと広がる可能性もある。
首相が取り得る対抗策は何があるのか。「最強のカード」である衆院解散もその選択肢の一つとなる。 
■安倍首相批判逃れ?「悪魔の証明」辻元議員に要求 3/29
安倍晋三首相は28日の参院決算委員会で、学校法人「森友学園」の問題に関連し、籠池泰典氏の妻諄子氏が首相の昭恵夫人に送ったメールに名前が登場した民進党の辻元清美衆院議員に対し、事実関係を説明するよう求めた。
メールは今年3月1日付で、辻元氏が学園の系列幼稚園を視察した際、「幼稚園に侵入しかけ 私達を怒らせようとした」などと書かれている。辻元氏も党も、全面否定。首相は、否定する以上、辻元氏に立証責任を果たすよう求めたかったようだが、問題の「すり替え」にも受け取れる発言になってしまった。
首相発言は民進党の斉藤嘉隆議員の質問が発端。籠池氏が昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けたと主張していることに関し、首相が否定するなら根拠を示すよう要求。これに対し、首相は「御党の辻元議員にも同じことが起きている。新聞に『3つの疑惑』と出ていましたね」と、いらだった様子で答えた。
さらに、自身と籠池氏サイドの間で意見が対立していることに関し、「『ない』と言う人より、『ある』と言う人の方が証明しないといけない」と指摘。「(辻元氏と)一緒にするなというが、辻元議員は(メールを)真っ向から否定しており、証明しないといけない」と主張した。
首相の論理では、「ない」としている辻元氏より、「ある」とメールに記した諄子氏に説明責任が生じることになり、指摘は矛盾する。寄付金の授受を一貫して否定しているのに、疑惑が晴れないことへのいらだちが、にじみ出た。
首相は、「2人きりの時に渡した、渡さないとなれば、こちらは渡していないことを証明しようがない。悪魔の証明だ。彼らが出してきたものが本当かどうか、検証されるべきだ」と述べ、籠池氏への寄付をあらためて否定。菅義偉官房長官は、籠池氏の発言が事実と異なれば偽証罪で告発するかと問われ、「そのようになる」とけん制した。 
■安倍首相が主張する「悪魔の証明」 3/31
学校法人「森友学園」の国有地売却問題で、証人喚問された籠池泰典氏の「昭恵夫人から100万円の寄付を受けた」とする証言について、安倍首相は3月28日の参院決算委員会で、首相側が「寄付していないこと」と証明することは困難という認識を示した。
首相は、「渡していないのは証明しようがない。いわば悪魔の証明だ。籠池氏らが出したものが検証されるべきだ」と指摘。「『ある』と言っている人が証明しないといけない」として、「100万円を寄付したこと」の立証責任は籠池氏側にあるという考えを示した。
この日の答弁では、菅義偉官房長官も「ないことを証明することは難しい」と述べているが、「ないこと」の証明が難しいというのはどういうことなのか。なぜ「悪魔の証明」なのか。M門俊也弁護士に聞いた。
「悪魔の証明」とは?
「そもそも悪魔の証明とは『所有権を有している』ということの証明が困難であることを比喩的に表現した言葉です。
この表現は、ラテン語の 『probatio diabolica』 に由来しています(英語では『devil’s proof』と表現されますので、英語のほうがわかりやすいでしょう)。
古くは中世ヨーロッパにおいて、土地の所有権の帰属を証明する際に、その所有権の由来を遡って逐一立証することは不可能であることを指して用いられました。わが国の民法学においても、物権法の分野ではそのような意味で現在でも使われています。
国会での答弁は、こうしたもともとの概念が転用された『消極的事実=ないこと』の証明の難しさを指して、比喩的に用いられる例として使われたのです。『悪魔の証明』という言葉は、もともとは法律学において使用されていましたが、現在ではディベート等のテクニックとしても知られています」
なぜ、「ないこと」の証明はなぜ難しいのか。
「それはこういうことです。『ある(あることや存在する)』ことを証明するためには、一例を挙げさえすれば証明できたこととなります。
ところが、『ない(ないこと、存在しない)』ことを証明するためには、世の中の森羅万象を調べ尽くさなければなりません。
たとえば、『白いカラスが存在する』ということを証明するためには、(見つかるかどうかは別にして)『白いカラス』を一匹でも捕まえてくれば証明できます。
しかし、『白いカラスは存在しない』ということを証明するためには、この世界に存在する全てのカラスを捕まえて、それが『白』でないことを明らかにしなければ、『白いカラスは存在しない』ということを証明できたとはいえないのです。
おそらく、それは不可能に近いでしょう。
そのため、議論の一般的ルールとして、『ある』と主張した者が、それを先に証明しなければならないという暗黙の了解があります。このような考えは、民事訴訟や刑事訴訟における証明責任の考えにも現れています。
端的にいえば、『あなたが先に<ない>ことを証明せよ、さもなくば<ある>のだ』とする詭弁を『悪魔の証明』と呼ぶわけです。
野党の追及に対して、安倍首相や政府側答弁が『悪魔の証明』と述べているのも、そのような趣旨だと思います。
それでは、今回の件で『100万円の授受』の証明責任がどちらにあるのでしょうか。これまでみてきたとおり、『100万円の授受』があったと主張した者(今回の件では籠池氏側)に証明責任があります。
その意味において、安倍首相や政府側答弁が正しいこととなりますし、籠池氏側で『100万円の授受』を根拠づける何かしらの客観的証拠が提出されない以上、国会では無駄な議論に時間を浪費しているといえます」 
■悪魔の証明 1
中世ヨーロッパの法学者によるローマ法解釈において、所有権帰属の証明の困難性を比喩的に表現した言葉である。
ローマ法以来、悪魔の証明とは、「所有権の証明責任を負う当事者が、無限に連鎖する継承取得のいきさつを証明することの不能性および困難性によって必ずや敗訴する」という理屈を意味していた。
ローマ法での所有物返還訴権は、以下の1から3へと次第に発展した。
 1 神聖賭金訴訟
 2 古典期の誓約による訴訟
 3 所有物返還請求に関する方式書での訴訟
1の神聖賭金訴訟では、両当事者がそれぞれ所有権者だ、との主張を行った。被告は原告の主張を否認するだけで済まず、自身が所有権を有することを証明しなければならなかった。この神聖賭金訴訟では、裁判官は、当事者のいずれが《より良い権利》を有しているかを相対的証明に基づいて判断したとされているという。
これに対して、2・3の訴訟では、原告のみが自己の所有権を証明し、被告のほうは原則的にそれを否認すれば足りる、とされた。だが、この状況では、市民法上の所有権の取得のために必要な方式によって、問題となっている物(係争物)を取得したと証明したとするだけで十分と見なされたか、それとも、前の持ち主、前の前の持ち主…と遡ってそれを証明しなければならなかったか、という点については、大いに議論がある。現代では学者の多くは後者の、遡って証明する方式だったと推定する見解のほうを採用している。それでアルブレヒト・メンデルスゾーンは、以下のように述べた。
「原告は自己が係争物を市民法の規定する方法で取得したことを証明しなければならないのみならず、更に、彼の前の持ち主が所有権者であったことを証明しなければならない。つまり原告は a non domino(=無権利者)から取得した者ではないことを証明しなければならない。これは理論的に言えば、前の持主から前の持主へと、最初の占有者まで遡ることを必要とする。これだから、後にこの証明は「悪魔の証明」と呼ばれることになったのだ!」
このように、所有権の帰属を証明するためには、ある人の過去の時点における所有権の帰属と、その後に当該人から所有権を取得した原因を証明する必要がある。所有権取得原因について権利自白が成立する場合や、原始取得が成立する場合を除き、前の所有者から所有権が移転されたことを証明する必要がある。
もっとも、ローマ法では、rei vindicatio とは別の interdictum possessionis という占有訴権制度があり、事実上の支配そのものを保護することにより、悪魔の証明を免れることが可能だったとされる。
現在では権利外観理論や権利公示制度の発達により、ローマ法での悪魔の証明という事態は起きなくなっている。
フランク・ゲルマン法におけるゲヴェーレの推定力
フランク・ゲルマン法の不動産訴訟では、原告が占有を侵奪された場合にのみ提起され、被告が所有権の証明責任を負っていたが、被告(現在の占有者)が侵奪でないことを宣誓することで所有権が推定される場合、勝訴できた。また、原告(過去の占有者)が取得権限が被告よりも古い場合は、被告に優先し、これらの証明原則をゲヴェーレの推定力という。
イギリス法
イギリス法では被告が原告に「神の証明」を要求することを「悪魔の証明」として表現することもあった。
法律上の権利推定における反証の困難
権利の存在を推定する規定、いわゆる「法律上の権利推定」の場合、権利の不存在を否定するためには、あらゆる原因による権利の発生原因たる事実が不存在であること、発生した権利が消滅した場合であっても、その後さらにあらゆる原因による権利の発生原因事実が発生していないことを証明しなければならないことになり、権利推定に対する反対の証明について「悪魔の証明」という。
民事訴訟法における推定には事実上の推定と、法律上の推定があるが、このうち法律上の推定とは、ある事実の証明に関して、証明が容易な別個の事実の証明がなされたときに事実が証明されたと認めるべき場合のことである。そして権利の推定に関して、権利推定に対する反証が困難な様子を「悪魔の証明」とする。
不動産登記に関して、民法では占有の推定力よりも登記の推定力が優先されるが、この登記の推定力が法律上の推定である場合、推定を覆すには相手方は本証を要し、事実上の推定である場合は、事実の不存在を証明するという反証によって推定を覆すことができる。しかし、過去の権利状態を捨象した現在の権利状態のみが推定されるとされる場合に、相手方が推定を覆すためには、現在にいたるまでいかなる権利取得原因事実も存在しないことを立証せねばならなくなり、仮にある権利消滅原因事実を立証しても、権利喪失後ふたたび権利取得するいかなる原因事実の不存在を証明せねばならなくなり、推定を覆すことが不可能に近くなり、これをいわゆる「悪魔の証明」と呼ぶ。なお、日本の民法学では登記に対して、「悪魔の証明」のような要求をすることになる法律上の権利推定でなく、単に事実上の推定がはたらくにすぎないとする学説もあるが、この学説が適当か考慮を要するとする指摘もある。
物権法の分野でも立証の困難という意味で使われている。
消極的事実の証明
消極的事実の証明(ないことの証明)を、「悪魔の証明」とする使われ方もある。また、証明が困難でないことを「悪魔の証明」には当たらないと反論で使うこともある。なお、欧米でも同様の用法が存在する。
関連する諺
○ 消極的事実の証明に関連する法律諺として、「否定する者には、立証責任はない」がある。
○ パウルスは「主張する者は証明を要し、否定する者は要しない」とした。
○ ディオクレティヌスとマクシミアヌスは「事実を否認する者には、立証義務はない」とした。
現在では、法律要件分類説が通説となっている。 
■悪魔の証明 2
1. 法律用語で、所有権の証明が困難であることをいうための比喩。なぜ困難かは由来を参照。
2. 法律用語で、困難な証明全般を比喩的に表す言葉。消極的事実の証明を指すこともあるが、消極的事実の証明だから立証責任を免れるというわけではなく、立証責任の配分において考慮すべき一要素でしかない。また消極的事実の証明だからといって、必ずしも困難とはみなされていない。
3. (ここから先は、本来の意味を誤用したものである)2から「消極的事実の証明は一般に困難である」という誤解が広まり、議論のルールとして広く使われるようになってしまったもの。科学や論理学とは関係がないし、一般論として用いるのは誤りであるが、科学者はエッセイやブログで疑似科学を否定する際などにわりと使ってしまうようだ。論理学者は、このような曖昧な概念を嫌う。
4. 3から「あると証明できないなら、(悪魔の証明は無理なのだから)無いと決めつけていい」と主張するために用いられることもある。これは「無知に訴える論証」(根拠無く新しい主張をすること)で、誤りである。ただし一般的に無いと思われているものの場合は、「無い」説は新しい主張でないので論理は通っているが、紛らわしい。
5. 3からの派生と思われるが、無知に訴える論証のうち「無いと証明できないならあると言っていい」というタイプの主張を批判する意味で悪魔の証明と呼ぶ人もいる。これは論理は通っているが、やはり紛らわしい。
このように、非常にややこしい状況となっている。法律用語ではあるのだが、法律上の意味は違うものだし、一般に流布している意味は元が誤用であるため人によって意味が違ううえに、間違った概念も混じっている。科学者などの論理的であるべき者が言葉の定義に無頓着であることは、最も戒められるべきことだろう。
悪魔の証明を認めたらオカルトでも何でもありになってしまう!という人がいるが、3などの誤った論理は論外だし、4の正しい場合や5の場合を言いたければ「無知に訴える論証」を使えばすむ。こちらは正真正銘の論理学者が用いている言葉で、学術的に意味が規定されているので人によって意味がバラバラになったりはしにくい。
概要
一般的に「ないこと」を証明するより「あること」を証明する方が簡単な場合が多い…という誤解がある。「無い(いない)ことを証明しろ!」は無茶振りである、というわけである。例えるならば
「全てのカラスは黒い」というだけの話であっても
「この世のどこかには白いカラスだっているかもしれないじゃないか!全てのカラスを見てきたわけじゃないんだろ?」
と反論されてしまい、もし仮に
「全部のカラスを見てきました!もう全部真っ黒!白いカラスは一羽もいませんでした!」
と言っても
「いやいや、それは今いるカラス限定だろ?過去に居なかったという証拠は?これから未来に白いカラスが生まれないという証拠は?この全宇宙に絶対に白いカラスが存在しないという証拠は?」
と、過去及び未来、はては全宇宙に対する無限の可能性を示されては「全てのカラスは黒い」事を証明するのは原理的に不可能である、となる。
(因みに白いカラスはいた)
因みに・・・論理学でも数学でも科学でも、「無い」ことの証明は普通に要求される。アインシュタインはエーテルの存在の否定から、光速度不変の原理を確立した。N線や永久機関はどこにもないとした。
法律はどうかといえば、訴訟法においても、冒頭で述べたとおり消極的事実を主張する側にも立証責任がある。消極的事実の証明だからといって一般的に困難だとは考えられていない。アリバイ証明のように、積極的事実を証明することがそのまま消極的事実の証明になる場合もある。これは例外と言えるほど希少なケースではない。さらに、本来の意味での悪魔の証明は、積極的事実の証明であるのにほぼ不可能な証明である。積極的事実の証明が簡単とは限らない。
もし経験則的にいくらかの合理性があり、将来論理学的根拠が明らかにされると仮定しても、現状では例外がいくらでもあって毎回適するか否かやどれくらい寄与するかを判断せねばならないようなものは、原則とは言わない。
それなら余計な概念をもてあそぶ前に事実に即して普通に検討すればいいだけの話である。裁判もそのようになっている。そういう話についていけない人を無理やり黙らせるための言葉ならば、疑似科学のやり口と変わらない。
お化けでもUFOでも超能力でも、既存の科学知識と矛盾する上に実証に散々失敗してきたのだから、理論でも実験でも新しい根拠が無いのなら当面は「無い」と見るのが当たり前の理屈である。科学者が肯定的な意味ではそれらにあまり興味を示さないのもそのためである。
そこで「無いと証明できないのならあるかもしれない」と反論されても「それは根拠なく新たな主張を認めさせようという無知論証だ。現状では無いとしか考えられない」で終わる。それでも納得しないような相手と議論を続けても意見は変わらないだろう。
なお、お化けはともかく、霊魂の存在などについては古くからの信仰心に根ざすものがあり、むやみに否定するものではない。
由来
所有権を証明するためには、A:前の持ち主から適法に所有権を譲り受けたこと、B:前の持ち主が所有権を持っていたこと、この二つを証明しなければならない。
ところが、Aは簡単だろうが、Bを証明するためには、前の持ち主がさらに前の持ち主から適法に所有権を譲り受けたことを証明しなければならなくなる。以下、他の要素で証明が不要になるまで、無限に前の持ち主をさかのぼって証明しなければならなくなってしまう。これが悪魔の証明と呼ばれるものである。
中世欧州の法学者が、古代ローマ法ではこの問題を考慮していくつかの法制度が生み出されたという解釈を論じており、この時に「悪魔の証明」という言葉を初めて使ったとされる。
その後、この言葉が転用された末、現在一般に知られる用法も生じた。このあたりは冒頭に記したとおりである。
なぜ「悪魔の」なのか
中世の法学者がなぜ「悪魔の証明」という表現を作り出したのかは定かではない。何となく意味合いが伝わってきて覚えやすくもある、というところかもしれない。
ある説によれば、中世の宗教劇では、魂を奪った悪魔に対して聖人などが論争を仕掛け、悪魔が魂の所有権を証明できずに退散するというものがあったからだという。
物理学などでは、ラプラスの悪魔、マクスウェルの悪魔など、普通ではありえないことを起こすいたずら者を思考実験で仮定するときに「悪魔」という言葉を用いる事がある。これらの「悪魔」は、「ある瞬間における宇宙の全物質の力学的状態と力を知ることができ、かつそれらのデータを解析できる」などの超越的な能力を与えられている。「悪魔の証明」というのはこのような超越的な能力のある悪魔でないと不可能という意味があるのかもしれない。
ただし繰り返すが、消極的事実の証明がこんな印象的な表現をされるほどつねに難しいということはない。
検証と反証の非対称性
まれに混同されることがあるが、「検証と反証の非対称性」についてのたとえは、帰納法の検証というしらみつぶしでしか確認できないことを取り上げて論じているものであり、別の話である。
論理以前の問題
議論の上で役に立つ概念などを知るのはけっこうだが、実際の議論というものはそこまでまともなものではない。ぶっちゃけると、論理どうこう以前に根拠となるデータがまともでない主張は、科学論文ですら少なくないと言ってもいいのである。Natureという世界でもトップクラスの権威ある科学雑誌が騙されることですら、珍しいことではない。なおシステマティック・レビュー(SR)ではそうしたことも含めて検討し、科学者個人や特定の論文の主張などよりも信頼性が高い結論を導く。
ましてや、政治経済など社会についての議論においては、心理的バイアスやステークホルダーの思惑が入り乱れることもあり、カオスとしか言いようがなく、まともな議論をする土壌を醸成したり、まともな根拠を探すのが最初に取り組むべき仕事である。経済学者ピケティが脚光を浴びたのは、それまで感覚や印象や個人的思想を根拠に論理や数式をこね回していた経済学者と違い、あくまでも実証的なデータを積み上げて簡潔な結論をまとめたとされているからである。
例えば現代日本の青少年の心の闇を語るのがなぜ滑稽なのかといえば、こういう事実があるからである。こうした基礎的データも知らずに印象で社会問題を語っても間違いしか生まれない。論理的であっても前提が間違っていては、とんでもない結論が導かれかねない。数式で論じることができないような文系分野でも、根拠をきちんとするだけで議論の質は跳ね上がる。それは地味な作業になるが、きわめて価値のある仕事である。
筑波山とアゲハチョウ
悪魔の証明という言葉こそ使っていないが、養老孟司氏はよく筑波山にアゲハチョウがいるかいないかを例にあげ、いないことの証明には山全体を区画分けして「いない」ことを確認せねばならないと言っている。しかしこれは比較的長距離を飛べ、広い範囲で生育できるありふれた種であるから成り立つ例えである。そのアゲハチョウですら、南極にはいないと断定されている。まさか南極を区画分けしてすべて確認したわけではないだろう。 

未知論証・悪魔の証明・立証責任の転嫁風の詭弁
「○○でないという証拠がないから ○○である」
「霊が存在しないという証拠は無い。ゆえに、霊は存在する」
「宇宙人が存在しないという証拠は無い。ゆえに、宇宙人は存在する」
「超能力が存在しないという証拠は無い。ゆえに、超能力は存在する」
「神が存在しないという証拠は無い。ゆえに、神は存在する」
「サンタクロースが存在しないという証拠は無い。ゆえに、サンタクロースは存在する」
「前世が存在しないという証拠は無い。ゆえに、前世は存在する」
「占いが当たらないという証拠は無い。ゆえに、占いは当たる」
「空飛ぶ犬が存在しないという証拠は無い。ゆえに、空飛ぶ犬は存在する」

「○○が存在しないという証拠は無い。ゆえに、○○は存在するかもしれないし、存在しないかもしれない。」
 
2017/ 4

 

 
2017/ 4 報道

 

 
2017/ 5

 

■民進 国会で「総理の意向」文書の存在指摘(5月17日)
衆議院文部科学委員会で、愛媛県今治市での大学の獣医学部の新設をめぐって、民進党の議員が「文部科学省が、内閣府から『総理の意向だと聞いている』と伝えられたなどとする文書を作成しているのではないか」と指摘しました。松野文部科学大臣は、事実関係を確認する考えを示すとともに、安倍総理大臣から指示は受けていないと強調しました。
国家戦略特区に指定された愛媛県今治市に、学校法人「加計学園」の運営する大学が新設する方針の獣医学部をめぐっては、文部科学省の審議会が、実際に設置を認めるかどうか4月から審査を行っています。
これに関連して、5月17日の衆議院文部科学委員会で、民進党の玉木幹事長代理は「文部科学省が内閣府から『総理の意向だと聞いている』などと言われたことを記した文書を作成したと報じられている。私も手元に持っており、かなりのことが書かれているが、こうした文書が現に存在するのか」と質しました。
これに対し、松野文部科学大臣は「国家戦略特区への対応に向けた文書が作成された可能性はある。具体的にどういった趣旨で、どういった経緯のものか確認したい」と述べ、事実関係を確認する考えを示しました。
また、松野大臣は「官邸や総理から直接の指示があったのかといえば、指示はまったくなく、内閣府を通して官邸等の意向があると私の方に報告があったこともない」と述べました。  
■文科相「該当する文書の存在 確認できず」(5月19日)
松野文部科学大臣は、きょう夕方、記者会見し、国家戦略特区での獣医学部の新設をめぐり、民進党が「総理の意向だ」などと書かれた文書の存在を指摘したことを受けて、省内で調査を行った結果、該当する文書の存在は確認できなかったことを明らかにしました。
国家戦略特区に指定された愛媛県今治市で計画されている学校法人「加計学園」が運営する(かけ)大学の獣医学部の新設をめぐり、民進党は、「文部科学省が内閣府から『総理の意向だと聞いている』と伝えられたなどとする文書を作成しているのではないか」と指摘しています。
これについて、松野文部科学大臣は、きょう夕方、記者会見し、民進党側から提示された文書の存在について、省内で調査した結果を公表しました。この中で、松野大臣は、担当の高等教育局長や専門教育課長ら7人を対象に、該当の文書を作成したことがあるかどうかや、ほかの職員との間で共有したかどうかにつ いて、聞き取り調査を行った結果、文書の存在は確認できなかったとしています。
また、担当部局が共有している、パソコンのファイルやフォルダーなどからも、文書は確認されなかったということです。
今回の調査結果について、松野大臣は「該当する文書の存在は確認できなかった。現状、民進党から要請があったものに関しての結論は、この調査で出た。調査は尽くしたと考えている」と述べました。 
 
文科省前次官「行政がゆがめられた」
■文科省前次官「文書は確実に存在していた」(5月25日)
学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に設置する計画の獣医学部をめぐり文部科学省の前川前事務次官が記者会見を開き、「総理の意向だ」などと記された一連の文書について、「確実に存在していた。あったものをなかったことにできない」と述べた上で、「極めて薄弱な根拠で規制緩和が行われた。公平、公正であるべき行政のあり方がゆがめられた」と訴えました。
国家戦略特区により、学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に来年4月に設置する計画の獣医学部をめぐり、先週、国会でその選考の途中に内閣府が文部科学省に対して「総理の意向だ」などと発言したとする複数の文書の存在が指摘されました。文部科学省は調査した結果、「該当する文書は確認できなかった」と説明しています。
これについて、当時の文部科学省の事務次官だった前川喜平氏が記者会見を開きました。
この中で、前川前次官は一連の文書について、「私が在職中に専門教育課で作成されて、受け取り、共有していた文書であり、確実に存在していたものだ」と述べて、文部科学省で作成された文書だと主張しました。そして「私が発言をすることで文部科学省に混乱が生じることは大変申し訳ないが、あったものをな かったことにはできない」と述べました。そのうえで「官邸、内閣官房、内閣府という政権中枢からの要請に逆らえない状況があると思う。実際にあった文書をなかったことにする、黒を白にしろと言われるようなことがずっと続いていて、職員は本当に気の毒だ」と話しました。
また、特区制度のもと、今治市と加計学園が選考されたいきさつについては、「結局押し切られ、事務次官だった私自身が負わねばならない責任は大きい」と発言した上で、「極めて薄弱な根拠で規制緩和が行われた。公平、公正であるべき行政のあり方がゆがめられたと思っている」と述べました。
さらに、「証人喚問があれば参ります」と述べ、国会でも一連の経緯について証言する意向を示しました。
会見は、弁護士が同席して1時間以上続き、前川前次官は、時折、汗をぬぐいながら、質問に答えていました。
前川前次官は、文部科学省の天下り問題の責任をとり、ことし1月、辞任しています。 
■文科省前次官「首相補佐官が手続き急ぐよう要求」(5月30日)
学校法人「加計学園」が国家戦略特区により設置を計画している獣医学部をめぐり、文部科学省の前川前事務次官はきょう午後、報道各社にコメントを出し、選考の途中で総理大臣補佐官から「総理は自分の口からは言えないから私が代わりに言う」などと告げられ、手続きを急ぐよう要求されたと主張しました。
学校法人「加計学園」が国家戦略特区により、愛媛県今治市に設置する計画の獣医学部をめぐり、文部科学省の前の事務次官だった前川喜平氏は先週、記者会見を開き、内閣府の幹部が「総理の意向だ」などと発言したとする一連の文書について「確実に存在した」と主張したうえで、「公平、公正であるべき、行政のあり方がゆがめられた」と訴えました。
前川氏はきょう午後、内容を補充する点があるとして弁護士を通じて、新たにコメントを発表し、特区の選考途中だった去年9月上旬と10月半ばに和泉洋人総理大臣補佐官から複数回、官邸に呼ばれて、文部科学省として獣医学部の設置に向けた手続きを急ぐよう要求されたと主張しました。
前川氏はコメントの中で、総理大臣補佐官から「総理は自分の口からは言えないから、私が代わって言う」などと告げられたとしています。
面会の趣旨については担当する専門教育課に伝え、松野文部科学大臣には報告しなかったということです。
前川氏はコメントの最後に「以上のことは間違いのない事実です」と結んでいます。
当時の次官が特区の選考が行われている最中に総理大臣補佐官から獣医学部の設置について繰り返し要求されたとしていることについて、文部科学省は「官邸からの直接の指示はなかった」とコメントしています。
また、前川氏は、和泉総理大臣補佐官以外にも当時の内閣官房参与で、加計学園の理事を務めている文部科学省OBの木曽功氏からも去年8月下旬に面会を求められ、獣医学部の設置を進めるよう要求されたと主張しています。
これについて木曽氏は「私人として前川氏に何度か面会したことはあり、獣医学部の話もしたかもしれないが、少なくとも圧力をかけた覚えはない」と話しています。
文部科学省 前川前事務次官が報道各社に出したコメント(全文)
国家戦略特区における獣医学部設置の特例に関する和泉洋人総理補佐官から私への要請についての経緯は次のとおりです。
昨年9月上旬、私は和泉洋人総理補佐官に呼ばれ、総理官邸の同補佐官執務室において、国家戦略特区における獣医学部設置の特例について、文部科学省の対応を早くしてほしいと求められました。
その際、同補佐官から『総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う』との趣旨の発言がありました。
これに対して私は、承った旨を伝えましたが、担当の専門教育課には面会の趣旨だけを伝え、松野博一文部科学大臣への報告は必要ないと判断し、行いませんでした。
その後、10月半ばにも和泉補佐官から呼ばれ、同補佐官執務室で面談しました。
補佐官からは、国家戦略特区における獣医学部設置の特例に向けた状況について質問があり、私からは引き続き検討中である旨、答えました。
以上のことは間違いのない事実です。    前川喜平  
 
2017/ 5 報道

 

■官邸VS前川前次官 「加計文書告発」で全面戦争突入 5/26
 内偵でバレた!出会い系バー通い常連「捜査当局すべて把握」
文部科学省の前川喜平前事務次官(62)が、25日発売の「朝日新聞」や「週刊文春」のインタビューに応じた。安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)が、国家戦略特区に獣医学部を新設する計画をめぐる「文書」について、「本物」「行政がゆがめられた」と語った。菅義偉官房長官はこれを完全否定し、激怒した。今後、官邸と前川氏側は全面戦争に突入しそうだ。こうしたなか、東京・歌舞伎町での「管理売春」(売春防止法違反容疑)を内偵していた捜査当局が、前川氏らによる「出会い系バー」(連れ出しバー)での動向を確認していたことが分かった。
「内閣府と文科省に確認したが、『文書に書かれた事実はない』『総理からも指示はない』との説明だ。私について書かれた部分もあったが、説明を受けた覚えはない。国家戦略特区は、規制の岩盤にドリルで風穴を開ける制度だ。行政がゆがめられたことはない」
菅氏は25日午前の記者会見で、前川氏の発言を否定した。「(前川氏は)地位に連綿としがみついた」と言い放つなど、怒り心頭に発しているようだ。
前川氏は、朝日新聞が同日報じたインタビューで、内閣府と文科省のやりとりを記録したとされる「文書」について、「(担当職員から)自分が説明を受けた際に示された」といい、本物と認めた。文書には「官邸の最高レベルが言っている」「総理の意向だ」と記されていた。
これまで、菅氏は「怪文書みたいな文書」と発言。松野博一文科相も「該当文書の存在は確認できなかった」と調査結果を発表していた。
つまり、前川氏は、安倍政権の天敵である朝日新聞とタッグを組んでケンカを仕掛けたわけだ。
告白理由について、前川氏は「あるもの(文書)が、ないことにされてはならないと思った」といい、獣医学部新設について「むだな大学をつくったとの批判が文科省に回ってくると心配した」「『総理のご意向』『最高レベル』という言葉は誰だって気にする」などと語っている。
安倍首相はこれまで、「働きかけて決めているなら、私、責任を取りますよ」などと、国会で反論している。
今後、(1)文書の真偽(2)本物ならば文書を流出させた犯人(3)官邸や内閣府による圧力の有無(4)獣医学部新設の違法性の有無(5)獣医学部が過去50年間新設されなかった岩盤規制の実態(6)政治団体「日本獣医師連盟」から野党議員への献金問題−などが追及されそうだ。
一方で、前川氏の告白には、「教育行政のトップ」として見逃せない部分がある。読売新聞が22日報じた歌舞伎町の「出会い系バー」に出入りしていたことについて、次のように語っている。
「その店に行っていたのは事実ですが、もちろん法に触れることは一切していません」(週刊文春)
「不適切な行為はしていない」(朝日新聞)
前出の読売新聞には、店に出入りする女性の「(前川氏は)しょっちゅう来ていた時期もあった。値段の交渉をしていた女の子もいるし、私も誘われたこともある」という証言や、《同席した女性と交渉し、連れ立って店外に出たこともあった》との記述がある。
夕刊フジも同店を取材した。
同店関係者は「前川氏は数年前から店に来ていた。多いときで週に1回」「午後9時台にスーツ姿で来ることが多かった。(気に入った)女性とは店を出ていくことはあった」と語った。
こうした形態の店は、客同士のやりとりに店は関わらないとされるが、売春や援助交際の温床になっているとの指摘もある。教育行政に携わるものとして、とても国民の理解は得られない。
ところで、前川氏の「出会い系バー」通いが、どうして発覚したのか。
捜査事情に詳しい関係者は「捜査当局は、歌舞伎町での管理売春について内偵していた」といい、続けた。
「歌舞伎町の同形態の店などを監視していたところ、前川氏をはじめ、複数の文科省幹部(OBを含む)が頻繁に出入りしていることをつかんだ。当然、捜査当局はすべてを把握している。朝日や文春での告白内容にも関心があるだろう」
前川氏は、文科省の「天下り」問題で今年1月に引責辞任した。加えて、「出会い系バー」への出入りをめぐって官邸幹部に厳重注意を受けている。今回の告白も「安倍政権への逆恨み」との指摘があるが、前川氏は「逆恨みする理由がない」と朝日新聞に語っている。
この件をどう見るか。
「文書」問題を調査している無所属の和田政宗参院議員は「マスコミ各社に『文書』を持ち込んだのが前川氏であることは周知の事実だ。だが、朝日新聞などは、そのことを示さず、前川氏に第三者的なコメントをさせている。ジャーナリズムとして信用できない。前川氏も『文書』は自らが持ち込んだものであることを明らかにしたうえで、対外的な発信を行うべきだ」と語った。 
■加計学園疑惑
岡山県に本拠を置く加計学園グループ。複数の大学、幼稚園、保育園、小中高、専門学校など様々な教育事業を配下に収める一大教育グループで、現理事長の加計晃太郎氏は、安倍首相の30年来の親友だ。
首相は加計氏のことを「どんな時も心の奥でつながっている友人、腹心の友だ」と、昭恵夫人は加計学園が運営する認可外保育施設の「名誉園長」を務めていた。
親友が経営する大学を、政府が国家戦略特区に定めて規制緩和。本来、認可されるはずのない新学部の設置を認め、約37億円の市有地がこの大学に無償譲渡されることになった。
経緯
加計学園はもともと、10年前から今治市に岡山理科大獣医学部キャンパスの新設を申請していたのだが、文科省は獣医師の質の確保を理由に獣医師養成学部・学科の入学定員を制限しており、今治市による獣医学部誘致のための構造改革特区申請を15回もはねつけてきた。ところが、第二次安倍政権が発足すると一転、首相は2015年12月、今治市を全国10番目の国家戦略特区にすると決め、16年11月には獣医学部の新設に向けた制度見直しを表明するなど、開校に向けた制度設計を急激に進めた。
今年1月4日、国が今治市と広島県の国家戦略特区で獣医師養成学部の新設を認める特例措置を告示、公募を開始した。募集期間は僅か1週間。案の定、応募したのは加計学園だけ。首相を議長とする国家戦略特区諮問会議は、1月20日、同学園を事業者として認可し、今治市はこれを受け、市有地約17万m2(約37億円)を加計学園に無償譲渡することを決定した。
周辺
首相の側近的役割を務めた官僚の加計学園天下り。
行政による隠蔽疑惑。[「(文部科学省)国家戦略特区等提案検討要請回答」、その内容及び省庁の回答などすべて「非公表」とされている。]
感想
直接的な金銭授受はなくとも、経緯の本質は「収賄」「あっせん収賄」と同じ。
官邸は「事実ではない」と根拠も示さず切り抜けようとしている。政権が事実認定する、「政権が言うことが事実であり、正しい」というやり方は、大昔の独裁政治の論法では。
前川発言の背景
2014年発足の内閣人事局が、霞が関の幹部人事権の全てを握るようになり、全省庁が完全屈服の状態になった。  
■官邸語録
「怪文書のたぐい」 (菅義偉官房長官)
「文書の存在が確認できない」 (松野博一文科相)
「そもそも獣医学部新設については自民党政権では認めなかったのに民主党政権で認める方向になった。安倍政権はそれを引き継いで今回の動きとなった」 (首相)
前川氏の証人喚問「明確に必要ない」 (竹下亘国対委員長)
「会議録を処分したからわからない」「調べたが確認できない」 (政府与党)
「和泉氏から『そのような発言をしたことはなく首相から指示を受けたこともない』と聞いている」 (萩生田官房副長官)
「(文科省からは)該当する文書の存在は確認できなかったと聞いている」
「(文書は)出所不明で信憑性も欠けている」
「文書に書かれたような事実はない」
「法律に基づいて行っていることで、ゆがめられたということはまったくない」
「作成日時だとか作成部局だとか、そんなものが明確になってない」
「何を根拠に。まったく怪文書みたいな文書。出所も明確になっていない」
「この国家戦略特区の会議、その議論を得て策定しているわけです。それについてはみなさんご存じの通りオープンにされるわけで、お友だち人脈だとか、そういう批判はまったくあたらない」
不自然な経緯「批判はまったくあたらない」常套句でシャットアウト
「出所不明で信憑性も定かでない」「文書の存在は確認できなかった」「そういう事実はない」「指摘はあたらない」を連発
「1回調査したが文書の存在は確認できなかったと大臣も言っているから、それ以上でもそれ以下のことでもない」
「文部省として大臣のもとで調査をしたと。その結果、確認できなかったから、ないということ。それに尽きるんじゃないですか?」
前川文書「文科省が行った調査で存在が確認できなかった」
安倍首相の関与「指示は一切なかった」

「地位に恋々としがみつき、世論の批判にさらされて、最終的に辞任を承知した」
出会い系バー通い「さすがに強い違和感を覚えた。多くの方もそうだったのでは」「常識的に言って教育行政の最高の責任者がそうした店に出入りして小遣いを渡すようなことは、到底考えられない」
「文科省を辞めた経緯について、記事には『自分に責任があるので自ら考えて辞任を申し出た』とあったが、私の認識とはまったく異なる」「前川氏は当初は責任者として自ら辞める意向をまったく示さず、地位に恋々としがみついていた。その後、天下り問題に対する世論の極めて厳しい批判に晒されて、最終的に辞任した人物」
「当初は責任者として自ら辞める意向を全く示さず、その後に世論からの極めて厳しい批判などにさらされて、最終的に辞任された方だ」
「天下りの調査に対し問題を隠蔽した文科省の事務方の責任者で、本人も再就職のあっせんに直接関与していた」
「自身が責任者の時に、そういう事実があったら堂々と言うべきではなかったか」

「前川前次官が出会い系バー通い」5/22 読売新聞朝刊1面
■加計学園問題の新展開「前川前次官発言」はここに注目
前川喜平 前文部科学事務次官
「『総理のご意向』などと記された一連の文書は、私の手元にあるものとまったく同じ。間違いなく本物です」 『週刊文春』6月1日号
学校法人「加計(かけ)学園」をめぐる問題が新展開を迎えた。加計学園が愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画について、安倍晋三首相の「腹心の友」加計学園理事長、加計 晃太郎氏に便宜が図られたのではないかという疑惑が巻き起こっている。獣医学部新設にあたり、37億円の市有地が無償譲渡され、総事業費の半分の96億円を愛媛県と今治市が負担する。さらに開学すれば助成金など多額の公金が加計学園に流れることになる。
関与を強く否定した安倍首相は「働きかけがあれば、責任を取る」と明言していたが、内閣府から文部科学省に対して「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」と圧力をかけるような言葉が記録されている文書の存在が発覚した(朝日新聞 5月17日)。
これに対して即座に記者会見を開いた菅義偉官房長官は「怪文書みたいなものじゃないか」と全面否定。文科省も調査を実施したが、5月19日に「行政文書としても、個人の文書としても、今回の調査を通して確認が取れなかった」という結論を発表した。ただし、調査はわずか半日しか行われず、しかもヒアリングと共有フォルダ・ファイルのみにとどまったため、「調査は不十分」という批判の声も上がっていた(BuzzFeed NEWS 5月24日)。
「前次官独占告白」の衝撃
しかし、今年1月まで文部科学事務次官、つまり大学認可の権限を持つ文科省の事務方トップだった前川喜平氏が『週刊文春』6月1日号の独占取材に応えて、件の文書を「間違いなく本物」と証言したのだ。
さらに前川氏は5月25日に記者会見を開き、文書に関して「私が在職中に作成され共有された文書で間違いない。文科省の幹部に共有された文書で、自分も受け取った。ちゃんと捜索をすれば出てくるはずだ。あったものはなかったことにできない」と述べている(AbemaTIMES 5月25日)。
なお、件の文書以外にも、記録文書や新たな証言が続々と示されている。
5月22日、共産党の小池晃書記局長は新資料を公開した。「政府関係者から入手した」(小池氏)という資料には、「今後のスケジュール」と題されて昨年10月から来年4月の開学予定に至る政府内の大まかな段取りが掲載されていた(時事通信 5月22日)。
また、5月24日には民進党の桜井充参院議員によって昨年11月に文科省内でやり取りされたとされるメールのコピーが公開されている。国家戦略特区諮問会議は2016年11月9日に、52年ぶりに獣医学部の新設を認める方針を決定しているが、その前日の8日に文科省内で取り交わされたメールでは「現時点の構想では不十分だと考えている」などと書かれており、文科省が獣医学部の新設に直前まで反対していたことが窺える(TBS NEWS 5月24日)。
同じく24日、当事者の一人である愛媛県の中村時広知事は記者会見で、内閣府から助言を受けていたことについて発言。「構造改革特区と国家戦略特区の窓口が一体化するので、そこに申請をしたらどうかと言われ、助言と受け止めた」(中村氏)。助言通りに申請したところ、国家戦略特区として認められたという。なお、23日に内閣府の藤原豊審議官は参院農林水産委員会で「そういった事実はない」と否定している(共同通信 5月25日)。
今後も新たな証拠は出てくるだろう。「加計学園ありき」の疑念は深まる一方だ。
前川喜平 前文部科学事務次官
「『赤信号を青信号にしろ』と迫られた時に『これは赤です。青に見えません』と言い続けるべきだった」 『週刊文春』6月1日号
今治市と加計学園はこれまで15回にわたって獣医学部設置の申請を行い、すべて却下されてきた。しかし、2016年8月、地方創生相に山本幸三氏が就任してから一転して、内閣府は獣医学部新設に前のめりになっていく。山本氏は「首相のイエスマンのような存在」。先日、「学芸員はがん。一掃しないと」という問題発言で注目を集めた人物だ。『週刊文春』ではこのときの経緯について、前川氏の証言をもとに詳細に明らかにされている。
2018年4月開学については、松野博一文科相をはじめ文科省側から「必要な準備が整わないのではないか」と懸念が示されていたが、強気の内閣府は引き下がらなかった。理由は「総理のご意向だと聞いている」。これに対して前川氏は「ここまで強い言葉はこれまで見たことがなかった。プレッシャーを感じなかったと言えばそれは嘘になります」と述べている(『週刊文春』6月1日号)。
内閣府は時間のかかる手続きを省き、一気呵成に進めよと文科省に迫り続けた。「赤信号を青信号にしろ」と迫られたのだ。記者会見で前川氏は、「極めて薄弱な基準で特区が制定された。公平公正な審査がなされなかった。文科省として負いかねる責任を押し付けられた。最終的には内閣府に押し切られた」と述べている(AbemaTIMES 5月25日)。結局、加計学園側の希望通り、異例のスピード認可となった。
「証人喚問に出てもいい」
ならば、前川氏を国会に招致して、これまでのことを明らかにしてもらったほうがいいのではないだろうか。前川氏本人は記者会見で「証人喚問に出てもいい」と明言している。
民進党が参考人招致を要求したが、与党は拒否。その後、共産党の小池晃書記局長が証人喚問を要求した(時事通信 5月25日)。5月26日にも民進党の山井和則国対委員長から前川氏の証人喚問が要求されたが、自民党の竹下亘国対委員長は前川氏が民間人であることから「現職の時になぜ言わなかったのか」「受け入れられない」とあらためて拒否した。山井氏は「民間人の(森友学園の)籠池泰典氏を喚問したのは自民党だ。ご都合主義としか言えない」と批判している(時事通信 5月26日)。たしかに「(前川氏が)民間人だから」という理由は筋が通らない。
そういえば、籠池氏の証人喚問が決定した際、竹下氏は「総理に対する侮辱だ。(籠池氏に直接)たださなきゃいけない」(朝日新聞 3月16日)と激怒していた。ということは、前川氏が安倍首相を侮辱すれば証人喚問は実現する……?
前川氏は今年1月に文科省を辞任した際、全職員にメールを送っている。その中で、「特に、弱い立場、つらい境遇にある人たちに手を差し伸べることは、行政官の第一の使命だと思います」「気は優しくて力持ち、そんな文部科学省をつくっていってください」と記していた(朝日新聞 1月20日)。一体、文科省は誰を見て仕事をしているのか? そのことが強く問われる数日間になりそうだ。
共謀罪法案通過への、強烈な批判発言
ジョセフ・ケナタッチ 国連特別報告者、マルタ大教授
「日本政府のこのような振る舞いと、深刻な欠陥のある法律を性急に成立させようとしていることは、断じて正当化できません」 BuzzFeed NEWS 5月23日
加計学園問題で霞んでしまった感のある「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案、いわゆる「共謀罪」法案。5月23日午後、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で衆議院本会議を通過した。
この法案をめぐる日本政府の対応を、国連特別報告者であるジョセフ・ケナタッチ氏(マルタ大教授)が批判、5月18日付で書簡を安倍首相宛に送付した。国連特別報告者とは、国連人権理事会から任命され、特定の国やテーマ別に人権侵害の状況を調査したり、監視したりする専門家のこと。
書簡でケナタッチ氏は、同法案がプライバシーや表現の自由を制限するおそれがあると指摘。法案にある「計画」と「準備行為」の定義があいまいであることと、対象となる277の犯罪にはテロや組織犯罪と無関係なものがあることから、法律が恣意的に適用される危険性が高いと懸念を示した。
菅官房長官はケナタッチ氏の書簡に強い不快感を表明し、記者会見では外務省を通じて「抗議を行った」と語気を強めて繰り返した。しかし、日本側の抗議を見たケナタッチ氏は「中身のないただの怒り」と批判。内容は本質的な反論になっておらず「プライバシーや他の欠陥など、私が多々挙げた懸念に一つも言及がなかった」と指摘した(中日新聞 5月23日)。
政府側は以前からこの法案について、2020年の東京オリンピックに向けて国連越境組織犯罪防止条約を批准するために必要だと説明してきたが、ケナタッチ氏は「このことは、プライバシーの権利に対する十分な保護もないこの法案を成立することを何ら正当化するものではありません」と一刀両断。さらに「私は、安倍晋三首相に向けて書いた書簡における、すべての単語、ピリオド、コンマに至るまで維持し続けます」と強い調子で再反論を行った(産経新聞 5月23日)。菅官房長官は再度不快感を表明しており、両者の会話はまったく噛み合っていない。
それにしても最近の安倍政権は、次から次へと問題が起こり、ナチュラルな目くらましになっている感がある。加計学園問題とともに、「共謀罪」法案にも注視が必要だ。
「共謀罪」「がん発言」 笑えない失言のレジェンドたち 
金田勝年法相 「誠意を持って話せば伝わるもんだね」 『週刊新潮』6月1日号
こちらは「共謀罪」法案が衆院を通過した後の金田法相の一言。伝わってないっての! 
大西英男自民党衆院議員 「(がん患者は)働かなくていい」NHK NEWS WEB 5月22日

加計学園問題があり、森友学園問題も終わっておらず、「共謀罪」法案では国連特別報告者も巻き込んで紛糾しているというのに、この期に及んで呑気に失言を放つ与党議員がいた。それが大西英男衆院議員だ。
大西氏は今月15日に開かれた自民党の厚生労働部会で、受動喫煙対策の議論が行われた際、三原じゅん子参院議員が職場でたばこの煙に苦しむがん患者の立場を訴えたのに対し、「働かなくていいのではないか」とヤジを飛ばした。激怒した三原氏は自らのブログで大西氏の名を伏せたまま発言を公開。結局、大西氏は22日、「患者の気持ちを深く傷つけた。おわびする」と謝罪した。大西氏は自民党たばこ議連に所属している。
大西氏は2016年3月に、所属する派閥の会合で、選挙の応援で神社を訪れたことを紹介した際に「『巫女(みこ)さんのくせに何だ』と思った」などと発言し、謝罪。また、2015年6月には党の勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのがいちばんだ」と発言し、党から厳重注意を受けている(NHK NEWS WEB 5月22日)。まさに「失言のデパート」だ。
大西氏は今回の失言の責任を取り、都連副会長を辞任。事実上の更迭である。自民党では、過去2回の衆院選で当選した2回生に不祥事が相次いでいる。大西氏も「魔の2回生」の一人。自民党幹部は「大西氏は同期の中で年長者のためリーダー的存在だ。問題児ぶりでも筆頭格だ」と頭を抱えたという(産経新聞 5月23日)。うまいことを言っている場合ではない。弱い立場、つらい立場の人たちのことを一ミリも考えずに切り捨てる政治理念が発言に現れてしまっているのだろう。このままで日本は大丈夫? 
■前川前次官問題で“官邸の謀略丸乗り”の事実が満天下に
 読売新聞の“政権広報紙”ぶりを徹底検証
安倍首相主導の不当な働きかけが疑われる加計学園問題。例の「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」などと記載された文科省の内部文書を巡り、昨日夕方、前事務次官の前川喜平氏が記者会見を開いた。
「これらの文書については、私が実際に在職中に共有していた文書でございますから、確実に存在していた。見つけるつもりがあれば、すぐ見つかると思う。複雑な調査方法を用いる必要はない」
「極めて薄弱な根拠のもとで規制緩和が行われた。また、そのことによって公正公平であるべき行政のあり方が歪められたと私は認識しています」
「証人喚問があれば参ります」
各マスコミは一斉に“前川証言”を報じ始めた。昨夜はほとんどのテレビ局がこの記者会見を大きく取り上げたし、今日の新聞朝刊も多くの社が1面トップ、もしくはそれに準ずる扱いで、〈文科前次官「総理のご意向文書は確実に存在」「証人喚問応じる」〉と打った。
こうなってみると、改めてそのみっともなさが浮き彫りになったのが、“伝説級の謀略記事”をやらかした読売新聞だろう。周知のように、読売新聞はこの前川氏の実名証言を止めようとした官邸のリークに丸乗りし、22日朝刊で〈前川前次官出会い系バー通い〉と打っていた。大手全国紙が刑事事件にもなっていない、現役でもない官僚のただの風俗通いを社会面でデカデカと記事にするなんていうのは前代未聞。報道関係者の間でも「いくら政権べったりといっても、こんな記事を出して読売は恥ずかしくないのか」と大きな話題になっていた。
しかも、この読売の官邸丸乗りは当初、本サイトだけが追及していたが、そのあと「週刊新潮」(新潮社)もこの事実を暴露した。こんな感じだ。
〈安倍官邸は警察当局などに前川前次官の醜聞情報を集めさせ、友好的なメディアを使って取材させ、彼に報復するとともに口封じに動いたという。事実、前川前次官を貶めようと、取材を進めるメディアがあった。
「あなたが来る2日前から、読売新聞の2人組がここに来ていた。(略)」〉
さらに昨日のテレビでも、『羽鳥慎一モーニングショー』『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日)、『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)などが「週刊新潮」の記事を引用しつつ、読売の記事が「官邸の証言潰しのイメージ操作」であることを指摘した。地上波のテレビ番組で、全国紙の記事が官邸の謀略だと指摘されるのは、おそらくはじめてではないだろうか。
赤っ恥、読売は前川会見をどう報じたのか? ちりばめられた官邸擁護
官邸に“いい子いい子”をしてもらおうとしっぽをふりすぎて、満天下に恥をさらしてしまった読売新聞。いったいどのツラ下げてこの会見を報じるのか。今朝の同紙朝刊を読んでみたら、まったく反省なし。記事にはしていたものの、あいかわらず、官邸側に立っているのがミエミエだったのだ。
まず、一面の見出しからして〈総理の意向文書「存在」文科前次官加計学園巡り〉のあとに〈政府は否定〉と付け加える気の使いよう。3面では〈政府「法的な問題なし」〉としたうえ、〈文科省「忖度の余地なし」〉の見出しをつけ、官邸の圧力を否定にかかったのである。
もっとも、その根拠というのは、学部新設の認可審査は〈議事録も非公表で、不正が入り込む余地は少ない〉などと、なんの反論にもなってないもの。この間、前川前次官が証言した加計文書だけでなく、森友学園問題などでも、圧力を物語る証拠がどんどん出てきていることを無視しているのである。
さらに、社会面では、自分たちが報じたことを一行も触れず、会見の中身を使うかたちで、例の「出会い系バー」通いに言及した。
悪あがきとしか言いようがないが、こうした態度は読売だけではない。読売系のテレビ番組も“前川証言”には消極的で、露骨なまでに安倍政権の顔色をうかがう姿勢を示していた。
それは昨日から始まっていた。他局は「週刊文春」の前川氏独占インタビューを受け、一斉にこの問題を報道。インタビュー済みだったTBSもこの時点で前川氏のインタビュー映像を放送していた。
ところが、日本テレビは、午前の情報番組『ZIP!』『スッキリ!!』では加計学園の話題を一切無視、かろうじて『NNNストレイトニュース』が国会での民進党と松野一博文科相のやりとりをベタで触れたのみ。
午後になっても、やはりストレイトニュースのコーナーで『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)が国会質疑を受けてアリバイ的にやっただけで、夕方の『news every.』でようやく他局も中継した前川氏の会見の模様を報じるという体たらく。夜の『NEWS ZERO』も、テレビ朝日の『報道ステーション』やTBSの『NEWS23』よりも明らかに見劣りする内容で、政治部の富田徹記者が前川氏が会見を開いた理由について「安倍政権への怒りこそが大きな理由と見られます」と解説するなど“私怨”を強調すらした。
もはや、読売はグループをあげて“安倍政権の広報機関”と化していると断言してもいいだろう。いったいいつのまに、こんなことになってしまったのか。
会食を繰り返す渡邉恒雄主筆と安倍首相、蜜月はピークに達す
「自民党総裁としての(改憲の)考え方は、相当詳しく読売新聞に書いてありますから、是非それを熟読してもらってもいい」
2020年の新憲法施行を宣言した安倍首相が、今国会でこんなトンデモ発言をしたのは記憶に新しい。周知の通り、憲法記念日の5月3日、読売新聞はトップで安倍首相の単独インタビューを公開。まさに安倍首相の“代弁者”として振る舞った。
しかも、インタビューを収録した4月26日の2日前には、読売グループのドン・渡邉恒雄主筆が、安倍首相と都内の高級日本料理店で会食しており、そこで二人は改憲について詳細に相談したとみられている。つい最近も、今月15日に催された中曽根康弘元首相の白寿を祝う会合で顔を合わせ、肩を寄せあうように仲良く談話している姿を「フライデー」(講談社)が撮影。このように、第二次安倍政権発足以降、安倍首相と渡邉氏の相思相愛ぶりはすさまじい。実際、安倍首相と渡邉氏の会食回数は傑出している。数年前から渡邉氏が読売本社にマスコミ幹部を招いて“安倍首相を囲む会”を開催しだしたことは有名だが、さらに昨年11月16日には、渡邉氏が見守るなか、安倍首相が読売本社で講演まで行っているのだ。
こうした安倍首相の“ナベツネ詣で”は、重要な節目の前後にあり、重要法案などについてわざわざお伺いを立てていると言われる。事実、2013年には特定秘密保護法案を強行採決した12月6日前後にあたる同月2日と19日、14年には7月1日の集団的自衛権行使容認の閣議決定に向けて動いていた6月13日、15年は安保法案を国会に提出した4日後の5月18日、昨年ではロシア訪問の前日である9月1日などがこれにあたる。
そして今年の“2020年新憲法施行宣言”の読売単独インタビューと、国会での安倍首相の「読売新聞を読め」発言に続く、前川証言ツブシのための「出会い系バー通い」報道の謀略……。もはや、そのベッタリぶりは報道機関の体さえなしていないが、これは単に安倍首相と渡邉氏の蜜月ぶりだけが問題ではない。現在、読売新聞では四半世紀にわたりトップに君臨する渡邉氏を“忖度”するあまり、政治部は当然として社会部や世論調査までもが、安倍政権の後方支援一色となっているのだ。
池上彰も「これがはたしてきちんとした報道なのか」と苦言
たとえば昨年では、「今世紀最大級の金融スキャンダル」といわれたパナマ文書問題で、読売新聞は文書に登場する日本の企業名や著名人の名前を伏せて報じた。また、沖縄で起きた米軍属による女性殺害事件も他紙が詳細を報じているにもかかわらず、米軍関係者の関与については容疑者が逮捕されるまでは一行も触れていなかった。いずれも、政権にとってマイナスにならないようにとの配慮ではないかとみられている。
まだまだある。安保報道における読売の明白な「偏向」ぶりは、あの池上彰氏をして、「安保法制賛成の新聞は反対意見をほとんど取り上げない。そこが反対派の新聞と大きく違う点です。読売は反対の議論を載せません。そうなると、これがはたしてきちんとした報道なのかってことになる」(「週刊東洋経済」15年9月5日号/東洋経済新報社)と言わしめたほどだ。
事実、15年5〜9月の間の朝日、毎日、読売、産経においてデモ関連の記事に出てくるコメント数を比較すると、朝日214、毎日178に対して、なんと読売はたったの10。産経の11より少なかったという(一般社団法人日本報道検証機構調べ)。ちなみに、安保関連の細かいところでは、安倍首相が蓮舫議員に対し「まあいいじゃん、そんなこと」というヤジを飛ばしたことがあったが、読売新聞はこのヤジ問題を全国紙で唯一報じなかった。
さらには世論調査までもが、“安倍首相に捧げる”世論操作の様相を呈している。たとえば15年7月24〜26日実施の読売全国調査では、〈安全保障関連法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。こうした法律の整備に、賛成ですか、反対ですか〉などと、安倍政権の主張をそのまま質問文に盛り込んだ誘導質問を展開。集団的自衛権閣議決定の14年には、〈集団的自衛権71%容認 本社世論調〉なる記事を出したが、これも調査で人々が心理的に選びがちな「中間的選択肢」をあえて置き、回答を誘導したとしか思えないものだった。
森友学園問題でも官邸擁護、“忖度新聞”は民主主義の敵だ
森友学園報道を露骨に避けていたことも忘れてはならない。実際、朝日新聞(東京版)が森友学園をめぐる国有地問題を初めて紙面で取り上げたのは今年の2月9日だったが、一方の読売(東京版)は同月18日で、実に1週間以上もの開きがある。しかも、この読売の記事のタイトルは「国有地売却に首相関与否定」というもので、これまた安倍政権側に立ち、文字数わずか200字弱のベタ記事だった。
また、初めて社説で森友問題を扱ったのは、朝日が2月22日、毎日が同月23日に対して、読売は同月28日とかなり遅い。傑作なのが3月の籠池泰典理事長(当時)証人喚問翌日の社説のタイトル。全国各紙を比較してみるとこんな感じだ。
   朝日「籠池氏の喚問 昭恵氏の招致が必要だ」
   毎日「籠池氏喚問 関係者の説明が必要だ」
   日経「真相解明にはさらなる国会招致がいる」
   産経「籠池氏喚問 国有地売却の疑問とけぬ」
   読売「籠池氏証人喚問 信憑性を慎重に見極めたい」
何をか言わんや、である。現在の読売が、いかにかつての“中道右派のエスタブリッシュメント”的な紙面づくりを放棄しているか、よくわかるというものだ。なぜ、こんなことになってしまったのか。数々のスクープを手がけた元読売新聞記者・加藤隆則氏は、スタジジブリが無料で配布している小冊子「熱風」2016年4月号でのジャーナリスト・青木理氏との対談で、最近の読売をこのように分析している。
「だんだん官僚的になって、事なかれ主義になっている。今の政権にくっついていればいいんだと。それ以外のことは冒険する必要はなく、余計なことはやめてくれと。これは事実だからいいますけど、読売のある中堅幹部は、部下に向かって『特ダネは書かなくていい』と平気で言ったんです。これはもう新聞社じゃない。みんなが知らない事実を見つけようという気持ちがなくなった新聞社はもう新聞社じゃないと僕は思います」
「この新聞社にいても書きたいことは書けなくなってしまった。そういう新聞社になってしまったということです。社内の人間は多くが息苦しさを感じている。(略)でも辞められない。生活もありますから。だからみんな泣く泣く、やむなく指示に従っている」
森友学園、加計学園問題でバズワードとなっている“忖度”が、読売新聞社内でも疫病のように流行っている。暗澹たる気持ちになるのは、安倍首相と独裁的トップのほうばかりを向き、政権擁護を垂れ流して、さらには謀略にまで加担してしまうこの新聞が、いまだ発行部数第1位であるという事実。民主主義にとって、極めて有害としか言いようがない。 
■前川前次官会見で田崎スシローがアクロバティック安倍官邸擁護
 「菅さんが言ってるから文書は嘘」「読売記事はスクープ」
「(加計学園問題の)“総理の意向”文書は確実に本物」
当時、文科省の官僚トップの地位にあった前川喜平前文科事務次官の会見で飛び出した決定的な証言。ワイドショーもさすがに黙殺はできなくなり、26日は各局とも会見の中身を大々的に報じた。そんななか、もはや笑うしかないくらいの露骨な安倍政権擁護を繰り広げていたのが、“田崎スシロー”こと田崎史郎時事通信特別解説委員である。
森友問題のときは手分けして官邸擁護を展開していた山口敬之がいなくなってしまったので、ひとりで大忙しだ。朝は『とくダネ!』(フジテレビ)、昼は『ひるおび!』(TBS)とハシゴして、前川前次官の人格攻撃とお得意のアクロバティック官邸擁護を開陳したのである。
まず『とくダネ!』。MCの小倉智昭もさすがに「前川さんは知的な感じでお話にも説得力というものがある」「前川さんの告白の時期に合わせて新聞社がこの件をドンと書いてきたっていう、やっぱり、なんかあれ?って、思う部分はあるんですよね」と感想をもらしたのだが、しかし、田崎はことごとく話をスリカエ、前川攻撃、官邸擁護に終始した。
会見映像を受けMCの小倉が「これを官邸はつっぱねることができるのか」と言うと、田崎は「新しい事実は何もない」と言い張り、こんな官邸の代弁を始めた。
「菅長官が信憑性がないって言われているのは、文書のなかで、菅官房長官や萩生田官房副長官の言葉が引用されているんですね。それが自分の言った覚えのない言葉であると。文部科学省が勝手になにかつくった文書なのではないか、という主張なんです」
どうしてなんの客観的証拠も示さないまま、菅義偉官房長官や萩生田光一官房副長官が「言ってない」というのは本当で、前川氏の証言がウソという前提になるのか。あげく、文科省が勝手につくった文書とは……。これにはさすがの小倉も「これだけ重要な問題で、文科省ってそんな勝手に文書つくるものなのかなあ?」と素朴な疑問を呈した。すると田崎は今度はこんな陰謀論を語り始めたのだった。
『ひるおび!』でも「官邸が言っているのは本当」と言い張るスシロー
「前川さんは、おそらく自分の主張をそのまま載っけてくれるメディアを選んだんじゃないかと思いますね。集中的に、新聞、テレビ、雑誌と選んでやってらっしゃるんで、だからある意味で見事なメディア戦術だと思うんです」
自分の主張をそのまま載っけてくれるメディアを選ぶって、それ、あんたのご主人様である安倍首相とあんたら安倍応援団の関係そのものだろうと思わずツッコんでしまったが、そもそも、前川氏がメディアを選んだというのはまったくの言いがかり、真っ赤な嘘だ。
前川氏は、会見どころか朝日新聞のインタビューよりも前に、安倍さまのNHKや、当のフジテレビのインタビューだって受けている。しかし、官邸の恫喝に負けてお蔵入りにしてしまったのは局のほうだ。ようするに前川氏が特定のメディアを選んだのではなく、前川証言を公にする勇気のあるメディアとなかったメディアがあっただけというのが実情である。だいたい前日すでにフルオープンの記者会見を開いて正々堂々と語ったあとに、特定のメディアを選んでいるなどよく言えたものだ。
相手方が世論をつかんでいると見ると、自分たちのことを棚に上げて、デマと陰謀論をわめきたてるその手口は安倍政権そのまま。まったく悪質としかいいようがない。
しかし、もっとヒドかったのが、『ひるおび!』だった。この番組でも、総理のご意向文書は、「行政文書ではない、ただの文科省内のメモ書き。官邸が「ない」っていうのは本当」「仮にメモがあったとしても、文科省が書いただけ」「菅さんたちは言った覚えがないから怪文書」などと強弁する田崎スシロー。しかし、これにはほかのコメンテーターが一斉に反論をした。元読売新聞大阪社会部記者の大谷昭宏は「前川さんはレク資料っておっしゃっていた。そこで部下が一番偉い人に嘘のレクチャーしたらえらいことになる。だから真実性がある」、毎日新聞の福本容子論説委員も「官僚の人たちってメモ魔なんですよ、なんでもメモする。私たちが取材するときもそれをあげてるわけですから、後からどうこうって話ではなく、そのまま起きたことを書いてる」と説得力のある主張を展開した。
するとMCの恵俊彰が「ICレコーダーは回さないんですか」と助け舟を出し、田崎も「隠し撮りしているときはありますね」と、まるでICレコーダーもないと証拠にはならないようなことを言い出したのである。籠池氏が財務省とのやりとりを録音していたときは盗人扱いしていたくせに、何を言っているのか。これには福本がすかさず「いちいち全部ICレコーダーで録音してたら膨大になる。それまた起こさなきゃいけないし、すぐ聞いたものを上司にもっていくっていう意味ではメモがいちばん」と現実的な反論をした。
また特区指定にいたる行政プロセスが歪められたという前川氏の主張についても、「前川さんはやりたくなかったんでしょ。規制緩和は官僚の人たちの抵抗によって進まなかった」などと前川氏が抵抗勢力だと攻撃し始め、「官僚主導から政治主導か。小泉政権以降、官邸が強い権限をもつようになっている。政治主導でやっていこうとすればこういうことになるんです」などと、官邸主導の規制緩和のためには仕方ないと正当化。
ここでも大谷が「官邸が権力を握った結果、官邸が私物化してたんじゃないかっていうのが問題。加計さんの問題も籠池さんの問題も。官僚から権限を取り上げて、本当に公正にやっていたのか、それが問題」、福本が「規制緩和をするのはいい。もっと正々堂々と。なんでこの学校が選ばれたのか、ほかにもライバルいたわけですから」と反論すると、また恵が「言ってること全然ちがうんで、後からまた見ていきます」などと助け舟を出して議論を終わらせた。
読売擁護までしていた田崎「一生懸命取材していた」
さらに田崎の前川攻撃はつづく。今度は菅の生き写しのように、なぜ現役のときに言わなかったのかと責め立て始めたのだ。
「事務次官が会いたいって言えば官邸の方は自動的にオーケーですよ。前川さんがそのとき問題だと思われるならば、総理なり官房長官に会って、これはどうなんですか?なぜこういうことをやるんですか?って問い詰めていなかったんですかね。なんでそれを辞めた後言われるんですかね」
「行政を推進する立場にいるわけですから、トップとして。そりゃ(在任中に)言わなきゃいけませんよ。なんで今になって言うんだろうと。その間に天下り問題で自分がクビになった。腹いせでやってるんじゃないかって見られちゃいますよ」
こいつはいったい何を中学生みたいな話のスリカエをしているのか。安倍政権の恐怖支配が敷かれているなかで、官僚がそんなことできるはずがないだろう。しかも、この点については、前川氏自身が非を認め「当事者として真っ当な行政に戻すことができなかった。事務次官として十分な仕事ができずお詫びしたい」と反省の弁を語っているのに……と唖然としていたら、これにもすぐさま、大谷と福本が反論した。
「今になってなんであの時言わないんだ!というのは問題のスリカエ。そのとき言えなかったのはいろいろな事情があったんでしょう、でもその話はその話。事実が何なのかが問題」と、田崎の卑劣な論点ずらしをただしたのだ。
しかしこれにも恵が助け舟を出して、田崎に反論の機会を与え、この話題も結局、田崎が「強い思いをもたれているならば、その場で、総理なり官房長官に会って聞けばいいことですから」と繰り返してシメられてしまったのだった。田崎のトンデモ解説もひどいが、常にそれを主軸に番組を進めるMCの恵も相当にタチが悪い。
さらに、驚いたのは読売の官邸謀略に乗っかった“出会い系バー”記事への評価だった。田崎はなんと「読売新聞が独自に取材したスクープ記事」と称賛したのだ。
これに対し、読売新聞出身である大谷が「私も読売の事件記者やってたからわかりますが、(東京本社、大阪本社、西部本社の)3社がすべて同じ位置、同じ大きさ、同じ見出しで記事をやるというのは、ひとつの合意形成がないとできない。今回の記事は、同じ場所に、同じ大きさで、同じ見出しがついているんですね。これは、新聞でいうところの“ワケあり”なんですね。どうして“ワケあり”が生まれるか、誰かの思惑があるから。そういう記事がどこから出てるのか。読売は否定するでしょうけど、我々からみれば、この扱いは明らかに“ワケあり”ですよ」と新聞の現場を知っているからこそのリアリティのある解説をした。
福本も「記事が出たタイミングは本当に不思議。前川さんが証言するのか注目されていた時期ですよね。記事は「教育行政のトップとして不適切な行動に対して批判があがりそうだ」って、勝手に批判があがるとこまでコミコミで丁寧に書いてる」と指摘、大谷は「これ事件記事じゃないんですよね。しかも前川さんは(杉田官房副長官から)1月に注意されたって言ってる。それがなんでいま「出会い系」という見出しで5月に載るんですか」とこのタイミングでの報道にも疑問を呈した。
ところが田崎は「読売新聞は読売新聞で一生懸命取材して書かれたわけで。自分で事実が確認できなければ出すはずがない、と同業者としては思いますね」と、強弁を始めたのだ。
「同業者として」って、ただの官邸の宣伝係が何を新聞記者気取りになっているのか、むしろ、同業者といえば毎日新聞記者の福本のほうだし、大谷なんて元読売新聞の先輩記者の目線で内情もふまえて、この記事は「ワケあり」だと言っているのに……と思ったが、よく考えたら、読売と田崎は“安倍御用”の同業者。もしかしたらそういう意味なのか。
メディアに広がる「安倍政権のいうことはすべて正しい」という世界
とにかく万事この調子で、傍目から見てどんなムチャクチャに見えても、とみかく田崎は徹底的に「文書に信憑性はない」「前川はおかしい」と言い張り続けたのだった。
きわめつきは、今後の展開についての解説だった。田崎に負けず劣らずの安倍応援団である八代英輝弁護士ですら「少なくとも証人喚問をしたほうが国民としては(いい)。これに政権側が抵抗を示すのが、余計変に見える」「やはり前川さんを証人喚問していただいて、実態というのを知りたい」とコメントしていた。
ところが、田崎は「(そういう流れには)ならないでしょ。政権側の考え方は黙殺」と、言い切ったのだった。ここまでくると、安倍応援団どころか、菅官房長官の生霊でも乗り移ったんじゃないかと思えてくるが、しかし、これは田崎一人の問題ではない。
26日の『とくダネ』では、「文書に信憑性はない」と強弁する田崎の言葉に、小倉はこう漏らしていた。
「これどちらの言い分が正しいのかっていうのは、私たちには100%はわからない。想像の世界なんですね。そうすると、安倍政権を支持するか支持しないかによって受け止め方って変わりますよ」
たしかに、当時の事務次官の実名証言という超ド級の証拠を前に、「文書はない」と言える根拠など「だって安倍政権がすべて正しいから」以外何もない。しかし、そのムチャクチャが通用する国になりはてているのだ。安倍政権の言うことはすべて正しい。たてつく者は報復されて当然————。
前川氏は「赤信号を青と言えと迫られた。「これは赤です、青ではありません」と言い続けるべきだった」と語ったが、これは官僚だけの話じゃない。安倍政権に屈して青だと言ってしまうのか、これは赤だと戦うのか、メディアの姿勢もいま、問われている。 
■加計学園問題 前川前次官が会見で暴露した「疑惑の核心」
「黒を白にしろと言われる」――。加計学園をめぐる問題で、すべてを知る立場にあった文科省の前川喜平前次官が、政権中枢からの“圧力”を暴露した。およそ1時間にわたる記者会見で語られたのは、「総理のご意向」によって「公平公正であるべき行政が歪められた」ことへの怒りと反省だった。
安倍首相の「腹心の友」が理事長を務める加計学園の獣医学部新設が「総理の意向」で進められたことを示す文科省の内部文書を官邸は怪文書扱い。
この文書について「本物だ」と断言する前川氏がメディアの取材に応じると、安倍官邸はスキャンダル情報を読売新聞にリークして、潰しにかかったとも報じられている。
さらには、菅官房長官は会見で「地位に恋々としがみつき、最終的にお辞めになった方」と前川氏をおとしめる人格攻撃まで。官邸がここまでエゲツないことをしなければ、前川氏も大々的に記者会見まで開いて洗いざらいブチまけることはなかったのではないか。
「後輩たちや、お世話になった大臣、副大臣にこの件でご迷惑をおかけすることになる。その点では大変に申し訳ないと思うが、あったことをなかったことにすることはできない」
冷静な口調ではあったが、腹をくくった覚悟が伝わってきた。会見で前川氏が強調したのは、「行政が歪められた」という点だ。それは公僕の矜持として、どうしても看過できなかった。すべてを明らかにすれば、国民の理解を得られると確信して、会見を開いたのだろう。
前川氏によれば、国家戦略特区の制度を使って、加計学園の悲願だった獣医学部の新設が認められたプロセスには重大な疑義があるという。本来のルールをねじ曲げて、加計学園に特別な便宜が図られたとしか見えないのだ。
国家戦略特区で獣医学部の新設を認めるにあたり、2015年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略改訂2015」では4つの条件が示されていた。
1 既存の獣医師養成ではない構想が具体化すること
2 ライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになること
3 それらの需要について、既存の大学学部では対応が困難であること
4 近年の獣医師の需給の動向を考慮しつつ全国的な見地から検討すること
要するに、既存の獣医学部では対応できないニーズに応える獣医師を養成する場合にかぎり、新設を認めるということだ。ところが、加計学園の獣医学部は「需要の根拠が薄弱で、既存の大学でできないのか検証されていない。条件すべてに合致していない」(前川氏)という。
政府が決めた4つの条件をまったく満たしていないのに、昨年8月に国家戦略特区を担当する大臣が石破茂氏から山本幸三氏に交代した途端、一気に獣医学部の新設が動き始めた。問題の「総理のご意向」文書が作成されたのも、昨年9月から10月だ。
「石破氏は4条件を厳しくチェックしようとしてたし、獣医師会に近い麻生大臣も獣医学部の新設に反対していた。それを覆し、自分たちが閣議決定したルールさえ無視して進めることができるのは、安倍首相の強い意向だとしか思えません。4条件から逸脱していること自体が、友人のために特別な便宜を図った証拠と言える。加計学園は特区事業者に認定される前の昨年10月に、新設予定地のボーリング調査も行っています。すべて『加計学園ありき』で動いていたのです」(ジャーナリストの横田一氏)
ここまで状況証拠がそろい、国民の間にも「行政が歪められた」ことへの疑念が広がっている。前川氏自身も「応じる」と言っている以上、証人喚問ですべてを明らかにするしかない。
■「出会い系バー」に出入り 厳重注意認める 
菅義偉官房長官は26日の記者会見で、文部科学省の前川喜平前事務次官が「出会い系バー」に出入りしたことを巡り、杉田和博官房副長官が在職中の前川氏に厳重注意していたことを認めた。前川氏は25日の会見で当時注意を受けたと説明していた。その後に杉田氏から菅氏に対し「確認したところ(出入りが)事実だったので、厳しく注意した」と報告があったという。
菅氏は「教育行政の最高責任者がそういう店に出入りして、(女性に)小遣いを渡すようなことは到底考えられない」と前日に続いて前川氏を強く批判。「貧困問題の実態調査だった」という前川氏の説明にも「強い違和感を覚えた」と突き放した。官邸幹部は「注意された時の説明と違う」と話した。官邸側は前川氏個人の資質を問うことで、前川氏の証言の信ぴょう性を低下させる狙いもあるとみられる。 
■文部科学省前次官が会見「文書なかったことにできない」
学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に設置する計画の獣医学部をめぐり文部科学省の前川前事務次官が記者会見を開き、「総理の意向だ」などと記された一連の文書について、「確実に存在していた。あったものをなかったことにできない」と述べたうえで、「極めて薄弱な根拠で規制緩和が行われた。公平、公正であるべき行政の在り方がゆがめられた」と訴えました。
国家戦略特区により、学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に来年4月に設置する計画の獣医学部をめぐり、先週、国会でその選考の途中に内閣府が文部科学省に対して「総理の意向だ」などと発言したとする複数の文書の存在が指摘されました。文部科学省は調査した結果、「該当する文書は確認できなかった」と説明しています。
これについて、当時の文部科学省の事務次官だった前川喜平氏が記者会見を開きました。この中で、前川前次官は一連の文書について「私が在職中に専門教育課で作成されて受け取り、共有していた文書であり、確実に存在していたものだ」と述べて、文部科学省で作成された文書だと主張しました。そして、「私が発言をすることで文部科学省に混乱が生じることは大変申し訳ないが、あったものをなかったことにはできない」と述べました。
そのうえで、「官邸、内閣官房、内閣府という政権中枢からの要請に逆らえない状況があると思う。実際にあった文書をなかったことにする、黒を白にしろと言われるようなことがずっと続いていて、職員は本当に気の毒だ」と話しました。
また、特区制度のもと、今治市と加計学園が選考されたいきさつについては、「結局押し切られ、事務次官だった私自身が負わねばならない責任は大きい」と発言したうえで、「極めて薄弱な根拠で規制緩和が行われた。公平、公正であるべき行政の在り方がゆがめられたと思っている」と述べました。
さらに、「証人喚問があれば参ります」と述べ、国会でも一連の経緯について証言する意向を示しました。
会見は、弁護士が同席して1時間以上続き、前川前次官は、時折、汗を拭いながら、質問に答えていました。前川前次官は、文部科学省の天下り問題の責任をとり、ことし1月、辞任しています。
官房長官 怪文書の認識変わりない
菅官房長官は、午後の記者会見で、学校法人「加計学園」が運営する大学の獣医学部の新設をめぐり、民進党が指摘している「総理の意向だ」などと書かれた文書の存在について、記者団が、「以前の会見で『怪文書のような文書だ』と言っていたが、前川氏の証言を聞いても認識は変わらないか」と質問したのに対し、「出どころが不明で信ぴょう性も定かではない文書だ。全く変わりはない」と述べました。また、菅官房長官は、文部科学省による再調査の必要性について、「文部科学省で1回調査し、『文書の存在は確認できなかった』と松野大臣が言っているので、それ以上でもそれ以下でもない」と述べました。さらに、菅官房長官は、記者団が、「政府としては、文書の存在は無かったということか」と質問したのに対し、「そういうことではないか」と述べました。
松野文科相「会見の様子知らない」
松野文部科学大臣は、25日夕方、総理大臣官邸で記者団に対し、「前川前事務次官の記者会見の様子を、会議に出ていて全く存知あげておらず、自分が把握していない内容について無責任に発言することはできない」と述べました。
自民 小此木国対委員長代理「国会招致 必要性感じない」
自民党の小此木国会対策委員長代理は、NHKの取材に対し、「文書については政府も国会で『確認できない』と答えており、不確定要素のある文書から話が始まっている。野党側から正式な要求が来ているわけではないが、現段階で前川前次官の国会招致の必要性は感じていない」と述べました。
公明 大口国対委員長「何らかの意図感じる」
公明党の大口国会対策委員長は記者団に対し、「事務次官だった時は何ら発言していないのに、辞めてから、なぜ今、こうした発言をするのか分からず、何らかの意図が感じられる。問いただすべきは、文部科学大臣や文部科学省の責任ある現職の方々であり、説明を求めれば責任を持って答えると思う。前川前次官は、文部科学省を辞めていて、文部科学省を代表する方ではないので、前川氏を呼んで何かを解明するということは違う」と述べました。
民進の調査チームに文科省「文書は確認できず」
文部科学省の前川前事務次官の記者会見を受けて、民進党は、調査チームの会合を開き、文部科学省に、文書の存在などの事実関係を改めてただしました。これに対し、文部科学省の担当者は、「前川氏の発言は確認していない。すでに調査したが、文書は確認できなかった。われわれとしては調査したので、それに尽きる」と述べました。調査チームは今後、前川氏から直接、事実関係について話を聞きたい考えで、会合への出席を求めていくことにしています。
民進 山井国対委員長「政府の隠蔽明らかに」
民進党の山井国会対策委員長は記者団に対し、「当時の文部科学省の事務方のトップが、文書を本物と認め、『行政がゆがめられた』と発言したことは、極めて重大だ。政府が一体となって真実を隠蔽していることが明確になり、言語道断だ。前川前次官は、『証人喚問に応じる』と言ったので、与党は、拒む理由は無く、早急に前川氏の証人喚問を実施すべきだ。また、安倍総理大臣の今までの発言が正しかったのかも問われるので、早急に予算委員会の集中審議を開くべきだ。安倍総理大臣が、身の潔白を証明したいのであれば、正々堂々と、国会の場で説明してほしい」と述べました。
共産 穀田国対委員長「文書の信ぴょう性高まった」
共産党の穀田国会対策委員長は、記者会見で、「『総理のご意向』と記された文書の信ぴょう性が、いよいよ高まってきた。真相究明が国会の責務であり、前川前事務次官は『証人喚問には応じる』と述べているので、国会として証人喚問を行うべきだ。森友学園の疑惑の際には、自民党が、わざわざ証人喚問を要求したのだから、今回も当然、応じるべきだ。また、『総理のご意向』という問題が取り沙汰されているわけで、安倍総理大臣に対して真相究明を求めるため、予算委員会の集中審議も当然必要だ」と述べました。
維新 遠藤国対委員長「証人喚問か参考人招致必要」
日本維新の会の遠藤国会対策委員長は、記者会見で「記者会見の内容を見ると、はぐらかしている部分もあるので、明確にするために、与野党ともに合意形成が図れれば、証人喚問なり参考人招致も必要ではないか。一方で、きょうの段階では、完全に一方通行の話なので、本当に真実がどこにあるか確認したうえでないと、何でもかんでも証人喚問すればいいというものでもない。文部科学省自体の自浄作用も、この機会に働かせてもらう必要がある」と述べました。
問題となった文書とは
会見で指摘された文書は獣医学部の選考が続いていた去年9月から10月にかけて、文部科学省と内閣府の担当者などとのやり取りを記したとされる複数の記録です。
「内閣府の回答〜総理のご意向」
このうち、「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と書かれた文書は、今治市に獣医学部を設置する時期について、「最短距離で規制改革を前提としたプロセスを踏んでいる状況で、これは総理のご意向だと聞いている」と書かれています。
「内閣府からの伝達事項」
別の文書では、内閣府側が、平成30年4月にこの学部を開学するのを前提に文部科学省側に最短のスケジュールを作成するよう求めたと記されています。さらに、内閣府側が「これは官邸の最高レベルが言っていること。山本大臣も『きちんとやりたい』と言っている」などと述べたと書かれています。
「内閣幹部メモ」
さらに、内閣官房の幹部からの指示をまとめたとする10月7日の日付のメモには、「四国には獣医学部がないので、その点では必要性に説明がつく」という発言のほか、「加計(かけ)学園が誰も文句が言えないようなよい提案をできるかどうかだ」という発言が記されていました。
「9/26メモ」
去年9月下旬の日付が書かれた文書には、内閣府と文部科学省との打ち合わせとされる内容が記されていて、このなかで内閣府の幹部は「平成30年4月にこの学部を開学するのを大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」と文部科学省側に要請しています。これに対し、文部科学省側が、「今治市の構想を実現するのは簡単ではない」と答えると、内閣府側は「できない選択肢はない。やることを早くやらないと責任をとることになる」と述べたと記されています。
「11/8のメール」
メールの画面を印刷したと見られる文書には、文部科学省の担当者が加計学園について省内の関係する部署に一斉にメールを送信したとされる内容が書かれています。この中では、獣医学部の設置場所が決まる前に、担当課の職員が大臣や局長から、「加計学園に対して、文科省としては現時点の構想では不十分だと考えている旨、早急に厳しく伝えるべき」と、特定の学校法人の申請内容について指示を受けたと記されています。
これらの文書やメールについて、松野文部科学大臣はいずれも「調査の結果、確認できなかった」としています。 
■官邸幹部が加計問題実名告発ツブシの謀略を認めた
 文科省前次官の風俗通い報じた読売記事を「マスコミと当人への警告」と
読売新聞が22日の朝刊で突如、報じた文部科学省の前川喜平・前事務次官の“出会い系バー通い”記事。刑事事件にもなっていない官僚の下半身ネタを、大手新聞がなんの物証も提示せずに報じるのは前代未聞だが、当サイトはこの読売記事が官邸による加計学園問題の実名告発ツブシの謀略だったと22日に断じた。
前川氏はいま、大きな問題になっている加計学園問題に関する文科省の「総理のご意向」文書について、マスコミのインタビューに応じ、「本物だ」と証言する準備を進めていた。
「文科省がこの文書を作成した昨年9月〜10月は、前川さんは事務次官在任中で、文書の内容はもちろん、内閣府からの圧力や会議についても把握していた。前川さんは天下りあっせん問題で辞職に追い込まれたことで、官邸に恨みを持っていたこともあり、実名で文書が文科省で作成されたもので、内容も事実であると証言する決意をしたようです。前川さんはすでにNHKとフジテレビのインタビューに応じ、『NEWS23』(TBS)と『報道ステーション』(テレビ朝日)にも出演する予定でした」
当時の最高幹部がこの文書を事実だと認めれば、安倍首相や菅官房長官の言い分は完全にくつがえり、安倍政権は決定的に追い詰められることになる。
そこで、官邸は「週刊文春」「週刊新潮」の2誌にこの“出会い系バー通い”をリーク。さらに、御用新聞、政権広報紙化をエスカレートさせている読売新聞に、前代未聞の実話雑誌のような記事を書かせたのである。
断っておくが、これはけっして陰謀論などではない。マスコミはこうした裏側を一切報道していないが、実は、一昨日夜から昨日夜にかけての官邸記者クラブのオフレコ取材では、この読売記事についての話題が出ていた。そのなかで、読売に情報を流したといわれている安倍首相側近の官邸幹部は、「官邸が流したのか」という記者の質問にこう言い放ったという。
「読売の記事にはふたつの警告の意味がある。ひとつは、こんな人物の言い分に乗っかったら恥をかくぞというマスコミへの警告、もうひとつは、これ以上、しゃべったらもっとひどい目にあうぞ、という当人への警告だ」
ようするに、悪びれもせずに謀略を認め、マスコミに対してさらなる恫喝をかけたというのだ。官邸はここまで増長しているのかと唖然とするが、しかし、マスコミは、この謀略にいとも簡単に屈して、前川氏の実名証言を報じる動きをぴたりと止めてしまった。すでにインタビューをすませているNHKもフジテレビも放映はしないことに決めたという。
政権に逆らうものはすべて謀略を仕掛けられ、口封じされてしまう——この国はいつのまにかロシア並みの謀略恐怖支配国家になってしまったらしい。
ただ、救いはある。「週刊新潮」「週刊文春」が官邸のリークに乗っかって前川氏の“出会い系バー通い”を取材していたことは前述したが、そのどちらかの週刊誌が、逆に前川氏の言い分を全面的に掲載し、この間の官邸の謀略の動きを暴く可能性がでてきたらしいのだ。
「前川前次官の下半身スキャンダル自体は書いているようですが、返す刀で官邸の謀略の動きも指摘するみたいですね。読売の記事があまりに露骨でしたから、さすがに、そのまま官邸に乗っかるわけにはいかないと判断したんでしょう。海千山千の週刊誌は政権広報紙の読売のようにはコントロールできない」(週刊誌関係者)
この週刊誌の報道を受けて、テレビや新聞はどう動くのか。「総理のご意向」文書の信憑性を裏付ける文科省前事務次官の証言と、それを潰そうとした官邸の卑劣な謀略が国民に広く知られることを祈りたい。 
■官邸の前川証言潰し恫喝に屈したメディア、踏ん張ったメディアが鮮明に
 日テレ、とくダネは無視、田崎はトンデモ解説
元文科省事務次官である前川喜平氏のインタビューを、本日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が掲載したことを受けて、今朝の朝日新聞朝刊も前川氏のインタビューを一面トップほか大々的に掲載。毎日新聞も社会面で大きく取り上げ、そのなかで「文書は本物」とする前川証言を紹介した。また、昨晩の『NEWS23』(TBS)は、前川氏のインタビューを今晩放送することを予告した。
本サイトは昨日、前川氏の自宅前にマスコミが殺到している一方で、官邸が上層部から官邸記者にいたるまで恫喝をかけまくっていることを伝えたが、その圧力をこれらのメディアは撥ね返したといえよう。
だが、今回の前川証言に対する安倍首相はじめ官邸の焦りと怒りは凄まじいものだ。安倍首相は昨晩、赤坂の日本料理店「古母里」でテレビ朝日の早河洋会長と篠塚浩報道局長と会食。報道局長まで呼びつけていることからも、報道に対する牽制があったことはあきらかだ。
剥き出しの圧力をかけられたテレ朝だが、しかし、今朝の『羽鳥慎一モーニングショー』では、「週刊文春」に掲載された前川証言と、「週刊新潮」の報道を取り上げた。
番組ではまず、前川氏の「出会い系バー通い」を紹介した上で、「週刊新潮」による「官邸は前川前次官の醜聞情報を集めさせ、友好的なメディアを使って取材させた」「“報復”するとともに口封じに動いた」という内容に踏み込んだ。司会の羽鳥が「これはどうなんですか?」と尋ねると、ゲスト出演したテレ朝の細川隆三・政治部デスクは歯切れ悪くこのように述べた。
「官邸にはいろんな人がいて、この問題にふれるととにかくカリカリしちゃって、興奮する方もいらっしゃるし、逆にこの問題は触ってはいかんと、触らないようにシカトしようとする人もいますし、とにかくこれは内閣の問題じゃなくて個人の問題、とんでもない人がやっているんですよとさらけ出すのがいいんじゃないかっていう人もいるんです」
「官邸による報復なのか?」という羽鳥の問いに対する答えにまったくなっていないが、いかに官邸が記者にプレッシャーをかけているのかが垣間見えるコメントではあるだろう。
だが、ここでレギュラーコメンテーターの玉川徹が、読売新聞の報道に言及。「現役の官僚でもない前の事務次官の、違法でもない話を一面にもってくるバリューが、加計学園にかかわらないんだとしたらどこにあるのか」「ものすごく疑問」と言い、こう畳みかけた。
「安倍総理は自分が語る代わりに『読売新聞を熟読してくれ』っていう関係ですしね。やっぱり権力に対して批判的な目を向けるっていうのがジャーナリズムだと私はずっと思っていままで仕事してきたんですけど、こういう一連の読売新聞のあり方って、政治部的な感覚から見て、細川さん、これどうなんですかね?」
ごくごく真っ当な指摘だが、これに細川政治部デスクは「いや、だから、(読売の今回の報道は)めずらしいですよね」と返すのが精一杯。だが、テレ朝は『モーニングショー』だけではなく、『ワイド!スクランブル』でも番組トップと第2部で報道し、前川氏の下半身スキャンダルについて“官邸のイメージ操作では”と言及。前川証言と下半身スキャンダルという“両論併記”の報道ながら、しかも総理直々に“圧力”がくわえられたなかで、官邸の読売を使った報復と、読売の姿勢に論及した点は、勇気あるものだったと言えるだろう。
また、朝の『とくダネ!』と昼の『バイキング』では前川証言を無視したフジテレビも、『直撃LIVE グッディ!』ではしっかり取り上げた。
しかも、菅義偉官房長官が会見で「(前川氏は)地位に恋々としがみついていた」などと人格攻撃したことに対し、ゲストの「尾木ママ」こと尾木直樹は「ぼくら教育関係者はみなさん信頼しているし、絶大な人気者。気さくで威張らないし、官僚的ではない。慕っている人も多いですね」と反論。元文科省官僚である寺脇研も「(菅官房長官の言葉とは)全然別の話を省内で聞いている。『みんな残って下さい』と下の者は思っていたけど、(前川氏は)『自分は最高責任者として全責任は自分にあるんだから辞めなくちゃいけない』と言っていた」「(前川氏が)辞めた日、省内には涙を流した者も相当数いたみたいですね」と、菅義偉官房の発言は官邸お得意の印象操作である見方を示した。
さらに、『グッディ!』でも、一連の文書の出所が前川氏だと官邸が睨み、出会い系バー通い報道をリークしたとする「週刊新潮」の記事にふれ、問題の出会い系バーを取材。だが、コメンテーターの編集者・軍地彩弓は「(前川氏は)脇が甘いと言われてもしょうがないけど、人格否定と今回のことを一緒にするのはやめてほしい。わたしたちが見てても、この話がくることによって撹乱されているように思っちゃうので、分けて話をしたい」と指摘。尾木も「(出会い系バー通いは)まずかった」としながらも、「このことで文書の問題をチャラにしてほしくない。分けて考えないと」と語った。MCの安藤優子も「前川さんの人間性と証言の信憑性を混同させようという動きがあるが、別の話」と番組冒頭から、何度も繰り返していた。
このように、官邸から恫喝を受けながら踏ん張ったメディアがある一方、露骨に避けた番組もある。たとえば、すでに前川氏にインタビューを行い、本日夜の『NEWS23』でその模様を流す予定のTBSは、朝の『あさチャン!』や昼前の『JNNニュース』で「怪文書じゃない」という前川氏の証言映像を大きく取り上げたが、『ビビット』ではほんのわずかでスタジオ受けもなく終了。『ひるおび!』でも11時台の新聞チェックのコーナーで扱っただけだった。
また、NHKと日本テレビも露骨だ。朝のニュース・情報番組では前述したTBSの『あさチャン』のほか、『グッド!モーニング』(テレ朝)『めざましテレビ』(フジテレビ)も朝日新聞を紹介するかたちで前川氏の証言を取り上げたが、NHK『おはよう日本』と日テレの『ZIP!』は一切ふれず。NHKは12時からのニュースで、国会で松野博一文科相が「すでに辞職した方の発言なので、コメントする立場にない」と答弁したことをさらっと伝えたのみで、日テレも『スッキリ!!』では無視、昼前の『NNNストレイトニュース』と『情報ライブ ミヤネ屋』のニュース枠で少しふれただけだ。
いや、露骨といえば、ご存じ“安倍政権応援団”である田崎史郎の解説だろう。昨晩の『ユアタイム』(フジ)に出演した田崎は、前川氏について「“ミスター文科省”と表現するけど官邸の見方はまったく違っていて、“最悪の次官だった”っていう認識なんですよ」と前川氏をバッシング。挙げ句、「文書を持ち出したとしたら、これ自体が国家公務員違法になるんじゃないかと言う方もいて。当面無視していくスタンスですね」と、またも官邸の方針を垂れ流した。この詭弁には、番組キャスターの市川紗椰も呆れ果てたように「え、無視って後ろ向きの態度を取られると、やっぱり何かあるんじゃないかなと思いますし、政府から調査するべきだと思うんですけどね」とコメント。田崎はやや狼狽えつつも、「文科省の役人が勝手につくったメモ」と断言したのだった。
官邸の恫喝に負けなかったメディアと、官邸の言いなりになったメディアが鮮明になった、今回の前川証言。しかし、きょうの報道だけで、加計学園問題は終わりではない。本日夕方16時より前川氏が記者会見を行い、証人喚問の要請があれば応じる意志を表明した。安倍政権の「行政文書じゃない」などというごまかしで済まされる話ではない。政権の下部組織と化したNHKと読売系以外のマスコミには、官邸の圧力に負けることなくさらなる追及を期待したい。 
■加計学園問題まとめ 「要注意発言」で振り返る
 蠢く「官邸の最高レベル」と権力の構図
内閣府「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」朝日新聞 5/17
今週、もっともインパクトのあった言葉はこれ。学校法人加計(かけ)学園が獣医学部を新設する計画について、文部科学省が内閣府からこのようなことを言われたとする記録を文書として残していたと5月17日の朝日新聞が報じた。
「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」と題された文書には「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」「これは官邸の最高レベルが言っていること」と早期の開学を促す記述があった。「(文科)大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と題する文書には「設置の時期については(中略)『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている」と書かれていた(毎日新聞 5月17日)。また、文科省が内閣府から「『できない』という選択肢はない」と言われていたことも記載されていたという(朝日新聞 5月18日)。かなり強い言い回しだ。
安倍首相の「腹心の友」、昭恵夫人との接点
加計学園の一体何が問題になっているのか? 日本中を騒がせている森友学園問題との共通点は何か?『週刊文春』4月27日号が詳しく報じている。
加計学園が経営する岡山理科大学の獣医学部は、安倍政権が2015年に国家戦略特区として指定した愛媛県今治市に開設される予定。時期は2018年4月。37億円相当の市有地が無償譲渡され、事業費192億円の半額、96億円を県と市が負担する。また、過去50年以上認められていなかった獣医学部の新設が、官邸主導で進められた経緯も問題視されている。
加計学園は、安倍晋三首相の長年の友人で「腹心の友」と呼ぶ加計晃太郎氏が理事長を務める学園。2人の出会いは安倍首相が米国に留学していた時代にまで遡る。それ以降、ゴルフや会食などの付き合いが続いており、別荘もすぐ近く。かつて安倍首相は関係者に「加計さんは俺のビッグスポンサーなんだよ。学校経営者では一番の資産家だ」と語っていたという。
安倍昭恵首相夫人も加計晃太郎氏とは関係が深い。2人はたびたびワシントンやロサンゼルスを訪問して現地の学校法人などを視察している。昭恵夫人が力を注ぐミャンマー支援も加計氏が現地まで同行してサポートした。
昭恵夫人は加計学園が神戸市で運営する認可外保育施設「御影インターナショナルこども園」の名誉園長を務めており、15年9月には政府職員2人を連れて施設のイベントに参加している(朝日新聞 5月17日)。同園のことを森友学園の籠池泰典氏と妻の諄子氏に「すごく良い教育をしている学校があるから見学に行ってみてはどうですか」と紹介したこともあった。
あまりにも関係が深い安倍首相夫妻と加計学園。その関係の深さは、もはや森友学園の比ではないだろう。
「不思議ですよね。なぜ大臣が代わることでこんなに進むのか」
加計学園から獣医学部を新設したいという申し出を受けた今治市と愛媛県は07年から8年間で15回も認可を申請したが、日本獣医師会の抵抗もあって申請は却下され続けてきた。ところが第二次安倍政権が発足した12年12月以降、明らかに対応が変わる。
14年には官邸が主導する国家戦略特区の会合で獣医学部の新設が具体的な議論になり、15年6月4日に今治市と愛媛県は国家戦略特区制度を利用して獣医学部の新設を提案、6月末には「獣医学教育特区」の設置が閣議決定された。翌年12月には新設を「一校限り」で認めることが決定、同様の提案を行った京都府と京都産業大学の申請は却下された。
16年8月まで国家戦略特区担当大臣だった石破茂氏は、「不思議ですよね。なぜ大臣が代わることでこんなに進むのか。(中略)世間で言われるように、総理の大親友であれば認められ、そうじゃなければ認められないというのであれば、行政の公平性という観点からおかしい」と疑問を呈している。
これまで野党から「首相の友人が利益を受けている」と追及されてきた安倍首相は、今年3月の参院予算委員会で「私はもし、働きかけて決めているんであれば、やっぱりそれは私、責任取りますよ、当たり前じゃないですか」と関与を強く否定してきた(FNNニュース 5月19日)。しかし、今回、報じられた書類の内容が事実であれば、内閣府が大学設置権限を持つ文部科学省に対して「官邸の最高レベルが言っていること」「総理のご意向だと聞いている」と圧力をかけたことになる。
問題の文書に官邸側はどう反応したか?
菅義偉官房長官 「出所も明確になっていない怪文書みたいな文書だ」テレ朝news 5/17
朝日新聞の報道を受けて同日に記者会見を開いた菅義偉官房長官は、文書の内容を否定して「怪文書みたい」と切り捨てた。
「どういう文書か。作成日時だとか、作成部局だとか明確になってないんじゃないか。通常、役所の文書はそういう文書じゃないと思う」などと述べ(朝日新聞 5月18日)、「こんな意味不明のものについて、いちいち政府が答えることはない」とも回答している(信毎web 5月17日)。
松野博一文科相は「特区に関する対応に向けた文書は作成された可能性はあると思う」と述べ(信毎web 5月18日)、すでに担当部局の職員に対して文書を作成したことがあるかなどの聞き取り調査を始めたことを明らかにした(NHK NEWS WEB 5月19日)。
文書には複数の首相官邸幹部やある省の副大臣の名前が記され、具体的な日付があるものもあれば、ないものもある。文書の中に実名が登場する北村直人日本獣医師会顧問(元自民党衆院議員)は「文書に書かれていることは事実だ」と語った。文書には「(北村氏が)政治パーティーで山本(幸三)国家戦略特区担当大臣と会って話をした」などと書かれているが、これも事実だという(朝日新聞 5月18日)。
「第二の『永田メール事件』になりはしないだろうか?」
自民党の和田政宗参院議員は自らのブログで「仮に文科省内の人物が作ったとしてもメモ程度のもので、記憶違いもあるし、付け加えたり改ざんがいくらでも出来る」として、「第二の『永田メール事件』になりはしないだろうか?」と警告している(5月17日)。
新藤宗幸千葉大名誉教授(行政学)は「(役所では)今回のように内部で情報を共有するためのメモ的な文書は頻繁に作られ、情報公開法の対象でもある。他の省庁とのやり取りを記録に残すのは役人の普通の行動だ」と指摘。国の「行政文書の管理に関するガイドライン」では、個人的な資料や下書き段階のメモであっても「国政上の重要な事項に係る意思決定が記録されている場合、行政文書として適切に保存すべき」と定められている(朝日新聞 5月18日)。
重要人物の萩生田官房副長官と義家文科副大臣の発言は?
萩生田光一官房副長官 「本件について、ここまで詳しいやりとりをしたという記憶は私はございません」FNNニュース 5/19
問題の文書の中に登場する重要人物が、学部設置の認可を判断する文部科学省の義家弘介副大臣と、萩生田光一官房副長官だ。
5月18日、日刊ゲンダイが計8枚に及ぶ文書を全文公開している。文書によると、松野博一文科相からの「ご指示事項」には「教員確保や施設設備等の設置認可に必要な準備が整わない」として懸念が示され、「31年4月開学を目指した対応をすべき」と記されている。松野文科相は早期開学に否定的だったのだ。
「義家副大臣レク概要」と題された文書には、「平成30年4月開学で早くやれ、と言われても、手続きはちゃんと踏まないといけない」「やれと言うならやるが、閣内不一致(麻生財務大臣反対)をどうにかしてくれないと文科省が悪者になってしまう」と記されている。義家副大臣も松野文科相と同じく、早期開学には否定的だった。
「腹心の友」という首相発言が生まれたイベント
ただし、義家氏と萩生田氏はここから事態を動かしていく。「10/4義家副大臣レク概要」と題された文書には、義家氏の言葉として「私が萩生田副長官のところに『ちゃんと調整してくれ』と言いに行く。アポ取りして正式に行こう。シナリオを書いてくれ」という一文が記されている。また、「10/7萩生田副長官ご発言概要」と題された文書には「平成30年4月は早い。無理だと思う。要するに、加計学園が誰も文句が言えないような良い提案をできるかどうかだな。構想をブラッシュアップしないといけない」と萩生田氏が語ったという一文が記されている。
当初は誰しも否定的だった早期開学だったが、実現に向けて徐々に動き出していく様子が文書から窺える。そして、昨年11月に国家戦略特区の諮問会議で獣医学部の新設が52年ぶりに認められ、今年1月に加計学園によって今治市に新設される方針が正式に決定したという流れだ。
18日、衆議院・農林水産委員会で野党からの追及を受けた義家氏、萩生田氏は文書の信ぴょう性が疑わしいと口を揃え、内容についても否定した。
なお、加計学園が04年に開校した千葉科学大学の客員教授には、当時落選中だった萩生田氏や第一次安倍政権で首相秘書官を務めた井上義行氏らが名を連ねていた。この大学の開設にあたっても、今回の獣医学部と同様、銚子市から市有地を無償貸与された上、約78億円もの助成金を提供されている。先の「腹心の友」という言葉は、この大学の開学10周年式典の式辞で安倍首相が述べたものだ。
麻生副総理発言に見る「権力の構図」
麻生太郎副総理兼財務大臣 「だから認可しなきゃよかった。俺は反対だったんだ」 『週刊文春』 4/27
こちらは少し前の発言。文書の中には「閣内不一致(麻生財務大臣反対)」と記されていたが、国会で加計学園問題が追及されるようになってから、麻生副総理がこのように発言していたと『週刊文春』にて報じられている。安倍首相は麻生氏の発言に対して「あの人は分かっていないよ」と不満を露わにしていたという。
麻生副総理が獣医学部新設に反対しているのは、獣医師の定員の問題がかかわっている。日本獣医師会が50年以上にわたって獣医学部新設に反対してきたのは、国内の獣医師は不足していないという見解に基づくものだ。そして、麻生氏は日本獣医師会とかかわりが深い。2013年に開催された日本獣医師会の蔵内勇夫会長就任記念祝賀会では、麻生氏が発起人を務めている。
東洋経済オンラインでジャーナリストの安積明子氏は、加計学園問題の背後には「麻生vs.菅」の構図が見え隠れしていると指摘している。文書の中で松野文科相と萩生田副長官は、2016年10月23日の衆議院福岡6区補欠選挙の後で加計学園問題を処理するべきだと主張していた。このときは、鳩山邦夫衆議院議員の次男・二郎氏をかつて邦夫氏と交流があった菅義偉官房長官が応援し、麻生氏は対立候補の蔵内謙氏を応援していた。麻生氏は選対本部長に就任するほどの力の入れぶりだったが、蔵内謙氏の父が、県議を8期務めた蔵内勇夫県連会長である。先にも触れたとおり、蔵内氏は日本獣医師会の会長でもあるのだ。
加計学園の獣医学部を新設したい安倍首相と菅官房長官、それに反対する麻生副総理と日本獣医師会という構図は確実だろう。文書の流出もそのあたりの文脈から発生しているのかもしれない。折しも麻生副総理は7月にも党内第2の規模となる新派閥を結成すると発表したばかり(産経新聞 5月15日)。「ポスト安倍」を見据えて影響力を拡大したい考えを持つ麻生氏が加計問題の鍵を握っている――? 
■「出会い系バー」報道波紋 
朝日新聞2017年6月13日 / 読売新聞掲載「公共の関心事」と説明 
読売新聞が、前川喜平・前文部科学事務次官が「出会い系バー」に通っていたと報じた5月の記事が、波紋を呼んでいる。「不公正な報道」などと批判が出ていることに対し、同紙は今月、「公共の関心事であり、公益目的にもかなう」と説明する記事を掲載した。
3日、読売新聞社会面に東京本社の原口隆則社会部長名の記事が掲載された。5月22日付けの「前川前事務次官 出会い系バー通い」という記事に対して「不公平な報道であるかのような批判が出ている」ことに対し「批判は全く当たらない」との見解を示した。
22日の記事は、前川氏が在職中、平日夜に東京・歌舞伎町の出会い系バーに出入りしていたことを報じた。店について「売春や援助交際の交渉に場になっている」とし、店の関係者への取材をもとに、前川氏が女性と店外に出たこともあったと伝えた。
前川氏については、学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐり、5月25日付け朝日新聞や同時発売の週刊文春が「行政がゆがめられた」などと証言するインタビューを掲載した。
読売新聞の記事掲載のタイミングや内容について、山井和則・民進党国会対策委員長は同日、国会内で記者団に「前川氏のスキャンダル的なものが首相官邸からリークされ、口封じを官邸がしようとしたのではないかという疑惑が出ている。背筋が凍るような思いがする」と述べた。
前川氏は25日の記者会見で、出会い系バーについて「女性の貧困を扱う報道番組を見て、話しを聞いてみたくなった」と理由を説明。読売新聞の報道について、権力からの脅しかと問われると「そんな国だとは思いたくない」と語った。
一方、菅義偉官房長官は26日の会見で、「教育行政の最高の責任者が、そうした店に出入りして、小遣いを渡すようなことは到底考えられない」と批判。荻生田光一官房副長官は31日の衆院農水委員会で「政府として情報をリークしたという事実はない」と否定した。
3日付読売新聞の社会部長名の記事は「独自の取材で(略)つかみ、裏付け取材を行った」「次官在職中の職務に関わる不適切な行動についての報道は、公共の関心事であり、公益目的にもかなうもの」「本紙報道が(略)前川氏の『告発』と絡めて議論されているが、これは全く別の問題」とした。
「中途半端で甘い記事」「権力監視の役割は」 逢坂巌・駒沢大准教授(政治コミュニケーション)は「私的な行為は報じる価値がないと、読売新聞を批判するのは拙速だ」と言う。「次官は立派な権力者で、その私的行動も権力監視の対象になることがある」。その上で、今回の記事について「読売は権力監視の一環だと言いたいのかもしれないが、前次官の買春を批判しているようにも読める裏付けするファクトは示していない。中途半端で甘い記事だ」と話す。
元読売新聞記者でジーナリストの大谷昭宏さんは出会い系バーの記事が東京、大阪、西部(福岡)の各本社の紙面で同じ扱いだったことに注目する。ほかの記事は各紙面で見出しや扱いが異なる部分がある。大谷さんは「会社の上層部から指示が出た可能性が高い」との見方を示した。
読売新聞をめぐっては5月3日付朝刊で、安倍晋三首相の憲法改正についての単独インタビューを掲載。国会で安倍首相が「読売新聞に書いてある。ぜひ熟読していただいてもいい」と発言し、物議を醸した。同紙はこの報道についても13日付朝刊で東京本社編集局長名の記事を載せ、憲法改正について首相の考えを報道することは「国民の関心に応えることであり、本紙の大きな使命」と説明した。
岩渕美克・日大教授(政治学)は「インタビューと首相の発言で政治とメディアの距離に目が向けられる中、出会い系バーの記事が出たことでさらに疑いを招いている。メディアの本来の役割は、一定の距離をとって権力を監視することだ」と話す。社会部長名の記事について「『読者に誤解を与えている』と思ったからこそ出したのだろうが、出会い系バー報道がなぜこのタイミングだったのかなど、読者の疑問に必ずしも明確に答えていない」と話す。読売新聞グループ本社広報部は、出会い系バーの記事が3本社で同じ扱いだったことについて「扱いや見出しが同じになるのは日常的に起きています」と文章で回答。記事の反響については「一部報道等の誤った情報に基づいたご批判の声も寄せられていますが、本紙の報道を支持する声は数多く届いています」とした。
 
2017/ 6

 

■文科相 文書あるか追加調査表明(6月9日)
学校法人「加計学園」の獣医学部の新設をめぐり、「官邸の最高レベルが言っている」などと記された文書について、松野文部科学大臣は、きょう、記者会見で、あらためて文書が省内に存在するのかどうか追加の調査を行うことを明らかにしました。
学校法人「加計学園」が国家戦略特区に指定された愛媛県今治市に計画している大学の獣医学部の新設をめぐり、「官邸の最高レベルが言っている」などと記された文書について、文部科学省は、先月、調査の結果、「該当の文書は確認できなかった」と発表しましたが、当時の事務次官だった前川喜平氏は、文部科学省で作成し、共有していたなどと主張しています。
こうした中、松野文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で「文書の存在などについて追加調査を行う必要があるという国民の声が多く寄せられている。こういった状況を総合的に判断し、きょうの閣議の後、安倍総理大臣に対して、追加調査を実施したい旨を伝えた」と述べ、あらためて文書が省内に存在するのかどうか追加の調査を行うことを明らか にしました。
そして、松野大臣は、「安倍総理大臣からは『徹底した調査を速やかに実施するように』という指示があった。総理の指示のもと、国民の声に真摯に向き合い、改めて徹底した追加調査を行い、結果がまとまり次第、発表したい」述べ、調査の対象範囲を広げる考えを示しました。  
■文科相「追加調査で14文書確認」(6月15日)
松野文部科学大臣は、きょう午後記者会見し、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる文書の追加調査の結果について、民進党などから提示された19の文書のうち、14の文書の存在が確認できたとして、「大変申し訳ない」と陳謝しました。また、「官邸の最高レベルが言っている」と記された文書について、担当の職員は、「こうした趣旨の発言はあったと思うが真意は分からない」と話していることを明らかにしました。
学校法人「加計学園」が国家戦略特区に指定された愛媛県今治市に計画している大学の獣医学部の新設をめぐり、「総理のご意向」や「官邸の最高レベルが言っている」などと記された文書について、文部科学省は先月「確認できない」とする調査結果を発表しました。
しかしその後、前川・前事務次官が文書が存在すると証言したことなどを受けて、今月9日から調査範囲を拡大し、追加の調査を行っていました。
松野文部科学大臣は、きょう午後1時半すぎから記者会見を開いて追加調査の結果を公表し、民進党などが存在を指摘していた19の文書のうち、同趣旨の記述がある3つの文書を含め、14の文書が文部科学省内の共有フォルダや職員の個人フォルダなどに存在していたことを明らかにしました。
一方で、2つの文書は確認できず、残りの3つの文書については、法人の利益に関わるものであり、慎重な対応が必要なことから、現在のところ、存否を含めて明らかにできないとしています。
今回の追加調査は、前回の7人に、新たに19人の職員を加えた、あわせて26人を対象に、聞き取りなどを行ったということです。
追加調査の結果について、松野大臣は「前回の調査は合理的な調査であったと考えるものの、結果として、前回調査の対象以外の共有フォルダにおいて、文書の存在が確認されるなど、前回確認できなかった文書の存在が明らかになったことは大変申し訳なく、この結果を真摯に(しんし)受け止めている」と述べ、陳謝しました。
一方、松野大臣は、文書に記された「官邸の最高レベルが言っている」という事実があったのかどうかについて、「ヒアリングを行った結果、内閣府の職員から、この種の発言があったと文部科学省の職員は考えている。メモが作成された以上は、その場において、そういった発言があったのだろう。具体的な話があったわけではないので、真意についてはわからないという結果を得ている」と述べました。
また、松野大臣は、前川・前事務次官が「行政がゆがめられた」などと指摘していることについて「プロセスや行政の過程がねじ曲げられたとは考えていない」と、これまでの主張を改めて強調しました。
今回の調査結果について現役の文部科学省の職員からは「特区選定の過程についても徹底して説明されるべきだ」という声が出ています。公表された文書について、見たことがあるという職員は「調査の結果に不安があったが、ようやく認められて少し安堵している。
しかし、国民の信頼は大きく損なったと感じている。今後は特区選定の過程について説明されるべきだ」と話しています。また、別の職員は「前回の調査ですでに文書があったと何人かの職員は答えていたので幹部は文書の存在を意図的に認めたくなかったと受け取られてもしかたがない。今後は獣医学部の選定が本当に公正公平だったのか検証がなされ るべきだ」と話しています。 
 
官房副長官発言の文書見つかる
■文科相「官房副長官の発言とされる文書見つかる」(6月20日)
松野文部科学大臣は、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会した際の発言をまとめたとされる文書が、省内で新たに見つかったことを明らかにしました。
学校法人「加計学園」の獣医学部の新設をめぐって、文部科学省は今月15日、追加調査の結果、「総理のご意向」などと記された14の文書の存在が確認できたことを明らかにしています。
こうした中、松野文部科学大臣はきょう、閣議の後の記者会見で、これらの文書とは別に、加計学園が獣医学部新設の事業者に選定される3か月前の去年10月に、萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会し、官邸や内閣府の考えを伝えた際の発言をまとめたとされる文書が省内で見つかったことを明らかにしました。
文書に記された内容について、松野大臣は「10月21日に高等教育局長が萩生田官房副長官に対し、国家戦略特区における獣医学部の新設問題の課題や調整状況について説明し、相談をしていた」と述べ、面会の事実を認めました。そのうえで、松野大臣は「確認された文書は、専門教育課の担当官が高等教育局長から説明を受けて萩生田副長官の発言や高等教育局長が行った説明内容に関係者から聴取した周辺情報等を補足してとりまとめた。高等教育局長の確認を受けておらず、萩生田副長官の発言ではないことも含まれているとの報告を受けている」と述べました。
さらに、松野大臣は「萩生田副長官に確認したところ、総理が具体的な開学の時期を示したなどとする発言はしていないということだった。また、高等教育局長からも、副長官から指示があったということではないとの報告を受けている」と述べました。
「10/21萩生田副長官ご発言概要」(全文)
文部科学省がきょう公表した新たな文書の全文は以下の通りです。
10/21萩生田副長官ご発言概要
○ (11月にも国家戦略特区諮問会議で獣医学部新設を含む規制改革事項の決定がなされ る可能性をお伝えし、)そう聞いている。
○ 内閣府や和泉総理補佐官と話した。
(和泉補佐官が)農水省とも話し、以下3点で、畜産やペットの獣医師養成とは差別化 できると判断した。
1ライフサイエンスの観点で、ハイレベルな伝染病実験ができる研究施設を備えること。また、国際機関(国際獣疫事務局(OIE)?)が四国に設置することを評価している 、と聞いたので、その評価していることを示すものを出してもらおうと思っている。
2既存大学を上回る教授数(72名)とカリキュラムの中身を増やすこと。また、愛媛大学の応用生物化学と連携するとのこと。
3四国は水産業が盛んであるので、魚病に特化した研究を行うとのこと。
○ 一方で、愛媛県は、ハイレベルな獣医師を養成されてもうれしくない、既存の獣医師も 育成してほしい、と言っているので、2層構造にする。
○ 和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が 問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。
官邸は絶対やると言っている。
○ 総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた。
工期は24ヶ月でやる。
今年11月には方針を決めたいとのことだった。
○ そうなると平成29年3月に設置申請をする必要がある。
「ハイレベルな教授陣」とはどういう人がいるのか、普通の獣医師しか育成できません でした、となると問題。特区でやるべきと納得されるような光るものでないと。できな かったではすまない。ただ、そこは自信ありそうだった。
○ 何が問題なのか、書き出して欲しい。
その上で、渡邊加計学園事務局長を浅野課長のところにいかせる。
○ 農水省が獣医師会押さえないとね。
萩生田官房副長官「強い憤り」
「萩生田官房副長官は、学校法人「加計学園」の獣医学部の新設をめぐり、みずからの関与をうかがわせる新たな文書が確認されたことを受けてコメントを発表し、文部科学省から不確かな情報を混在させた個人メモだという説明があったとした上で、不正確なものが外部に流出したことに強い憤りを感じるとしています。」
学校法人「加計学園」の獣医学部の新設をめぐって、文部科学省は、追加調査で確認された文書とは別に、萩生田官房副長官から新設を容認するよう求められたなどととした内容が記載された新たな文書が省内で見つかったことを明らかにしました。これを受けて、萩生田副長官はきょう午後、コメントを発表し、文部科学省から「文書は一担当者が伝聞など不確かな情報を混在させて作った個人メモであり、直属の上司である高等教育局長のチェックを受けていないなど著しく正確性を欠いたものだ」とする説明と謝罪があったことを明らかにしました。そのうえで、獣医学部の新設について、文部科学省などから報告を受け、気づいた点を指摘することはあったが具体的な指示や調整を行ったことはないとしています。また「総理は平成30年4月開学とおしりを切っていた」などと発言したと記されていることについて「安倍総理大臣からいかなる指示も受けたことはなく、具体的に開学時期の指示をしていない」と事実関係を否定しています。さらに「加計学園の渡邊事務局長を文部科学省に行かせる」という記述があることについて「渡邊事務局長という方とやり取りしたことはないし、名前も存じ上げていない」として事実関係を否定しています。そして「このような不正確なものが作成され、意図的に外部に流されたことについて非常に理解に苦しむとともに強い憤りを感じている。全く心当たりのない発言を『私の発言』とする文書やメールが、文部科学省の職員により作成されている意図はわからないが、私の名前が難しい政策課題について省内の調整を進めるために使われているとすれば極めて遺憾だ」としています。 
 
■首相 獣医学部新設「全国展開目指す」(6月24日)
安倍総理大臣は神戸市で講演し、国家戦略特区での獣医学部の新設について、獣医師会からの要望を踏まえ、まずは1校だけに限定して特区を認めたことが国民の疑念を招く一因となったとして、獣医学部の新設をさらに認める方向で検討を進める考えを示しました。
この中で、安倍総理大臣は、国家戦略特区での学校法人「加計学園」の獣医学部新設について、「決定プロセスは適正でなければならない。『私の友人だから認めてくれ』などという訳の分からない意向がまかり通る余地など全くない」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は「半世紀以上守られてきた硬い岩盤に風穴をあけることを優先し、獣医師会からの強い要望を踏まえ、まずは1校だけに限定して特区を認めたが、中途半端な妥協が国民的な疑念を招く一因となった。改革推進の立場からは限定する必要は全くない。速やかに全国展開を目指したい」と述べ、獣医学部の新設をさらに認める方向で検討を進める考えを示しました。
そして、安倍総理大臣は「国民の不信を招く結果となったことは率直に認めなければならない。『築城3年、落城1日』。おごりや緩みがあれば国民の信頼は一瞬で失われてしまう。今後も疑念が示されれば、担当大臣を筆頭に積極的に情報を公開し、しっかりと説明する」と述べました。  
■首相発言に獣医学会が反対声明(6月30日)
学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、安倍総理大臣が全国での獣医学部の新設を認める方向で検討を進める考えを示したことに対し、獣医学系大学の研究者らが記者会見を開き、「根拠を欠く規制緩和で深刻な教育の質の低下が危惧される」と反対する声明を出しました。
声明を出したのは、獣医学部のある16の大学で作る協議会と、獣医学の専門家で作る日本獣医学会です。
獣医学部の新設は、国家戦略特区制度のもとで、52年ぶりに学校法人「加計学園」に認められましたが、安倍総理大臣は今月24日、新設を1校だけに限定したことが国民の疑念を招く一因となったとして、全国での獣医学部の新設を認める方向で検討を進める考えを示しました。
声明では、安倍総理大臣の発言について「日本の獣医学教育の現状を理解しないまま発せられたもので、大学教育・研究を崩壊に導きかねない、驚がくすべき発言だ」と批判しています。その上で「獣医師の需要の検討なしに進められた根拠を欠く規制緩和で、深刻な教育の質の低下が危惧される」と指摘しています。
稲葉睦会長は「大学が乱立すると限られた教員の奪い合いが起きて、全体的な質の低下につながるおそれがある。政府は獣医学教育の現状を理解し、適切な判断をすべきだ」と話しています。  
 
2017/ 6 報道

 

■加計学園「獣医特区」は妥当? 農水省、需要減指摘 6/4
学校法人「加計学園」が国家戦略特区で新設を計画する獣医学部を巡り、実は獣医師を所管する農林水産省が、特区の協議で獣医療の需要が低下する可能性を繰り返し指摘していた。実際、ペット数が急減しているとの統計もある。獣医学部特区の認定で獣医師の需給予測は十分に検討されたのか。
◇ペットは減少傾向? 高齢犬合計数の推移
農水省によると、獣医師資格保有者は全国約3万9000人で、内訳は(1)犬猫などのペット獣医約1万5200人(2)牛などの産業動物獣医約4300人(3)食肉検査などを行う公務員獣医約9500人。残りは製薬企業勤務や研究職など(2014年12月時点)。
獣医業界の複数の関係者は「産業動物獣医や公務員獣医は多くの地域で不足しているが、ペット獣医は余り気味」と証言。全体として数は足りているとみる。一方、国が示した獣医師需給予測は農水省の07年推計のみで、獣医師の需給がトータルでどうかの結論は明確にしていない。国家戦略特区での獣医学部新設方針を固めたワーキンググループ(WG)の議事要旨によると、農水省は14年8月に獣医師需給見通しのデータを求められたが、新たな推計は出さなかった。だが15年1月のWGでは一転、上昇傾向にあった犬猫の数が08年をピークに減少に転じたとする社団法人「ペットフード協会」の調査結果を強調し、家畜や畜産農家戸数も減ると主張。16年9月にも慎重姿勢をにじませた。
同省畜水産安全管理課は取材に「犬猫の数の把握は困難で新たな推計はしなかった。近年、ペットは急激に減少しているとみられ、獣医師の需要が増すとは考えていない」としている。
ある獣医系大学の教授は加計学園の計画について困惑をあらわにした。「定員160人というのは、天文学的な数字ですよ」
◇加計新学部 過大な規模 定員、全獣医系の2割
獣医師需要が低下するという農林水産省の主張を踏まえず、愛媛県今治市の国家戦略特区で浮上した新設獣医学部。その規模が獣医業界に衝撃を与えた。
獣医系学部・学科は現在全国に16あり、定員は最多でも120人、定員の合計は930人だ。加計(かけ)学園が来年春の開学を目指す岡山理科大獣医学部は定員160人で、既存の国公立大4〜5校分に相当。総定員を一気に2割近く増やす。
それ以上に問題視されているのは、70人という教員数だ。定員160人を「天文学的」と表現した獣医系大学の教授は言う。「教員は今も足りない。まともな人材を集められるのか」
日本獣医師会によると、16の獣医系学部・学科の専任教員数は合計でも約700人。文部科学省の認証機関「大学基準協会」が獣医系で定める専任教員数の基準「68〜77人以上が望ましい」を満たしているところは一つもなく、どこも教員確保に苦労している。大学認可の権限を持つ文科省が新設や定員増を長年認めてこなかった背景には、この教員不足もある。52年ぶりの獣医学部新設を目指す岡山理科大は、全国の専任教員の1割に当たる人数をそろえようとしている。

加計学園が教員スカウトに奔走している−−。そんなうわさが、獣医業界を昨年から駆け巡っていた。同学園が特区事業者に決まったのは今年1月。見切り発車のような動きに「やはり加計ありきだったのか」と疑念が広がった。
獣医系の大学関係者によると、西日本のある国立大の准教授は昨年冬、同学園に「教授で迎えたい」と誘われた。提示された給与は1年目1200万円、2年目以降800万円。獣医系の教授の年収は700万〜800万円ほど。「教授」の肩書も含め好条件だった。しかし、学生の教育に専念することを求められ、准教授は研究を続けたいとして断ったという。
同学園の教員について、新設の可否を審査する文科省大学設置・学校法人審議会の委員から「定年退職した65歳以上の教授と、大学を卒業したばかりの若手が多い」と年齢の偏りを指摘する声があるという。開学する来年春に定年を迎える教員に声をかけている、との獣医関係者の証言もある。審議会の元委員は取材に言った。「そんな大学は本来なら認可されない。『総理の意向』ということで、ウルトラCで通すのか」

将来のペット獣医過剰を暗示するショッキングな推計がある。犬の血統書を発行するジャパンケネルクラブ(JKC)の調査などを基に獣医コンサルタント西川芳彦氏が試算したところ、10〜15歳の高齢犬の数が今年をピークに右肩下がりとなり、10年後に6割を切るという。西川氏は「病気になりやすい高齢犬が減れば獣医はどんどん余っていく」と指摘する。
特区認定に向けた加計学園の資料によると、新設学部は「先端ライフサイエンス研究」を強調するが、ペット獣医も養成する。西川氏は「学生が卒業するころにはペット獣医で食べていけなくなる。学部新設は最悪のタイミングだ」と話す。
北海道大人獣共通感染症リサーチセンター統括の喜田宏教授も「獣医師の数が足りている現状では、むしろ既存の獣医学部の統合再編で教育の中身を充実させるべきだ。新設は本当に必要なのか」と疑問を呈している。
◇全国の獣医系学部・学科の定員数
【国立大】北海道40 / 帯広畜産40 / 岩手30 / 東京30 / 東京農工35 / 岐阜30 / 鳥取35 / 山口30 / 宮崎30 / 鹿児島 30
【公立大】大阪府立40
【私立大】酪農学園120 / 北里120 / 日本120 / 日本獣医  / 生命科学80 /  麻布120 
[ 合計 930 ]
【岡山理科】(予定)160 < 岡山理科大は加計学園が運営  
■15回断られても…加計学園はなぜ獣医学部に執着したのか 2017/6/6
獣医学部新設を巡って大揺れの加計学園。安倍首相との“ただならぬ関係”が取り沙汰されているが、驚くのは、安倍首相に限らず政界、官界に深く食い込んでいることだ。
加計学園(加計晃太郎理事長=岡山市)は、小、中、高、大学、専門学校など傘下に26の学校や施設があり、生徒数は2万人を超える。岡山理科大を中心に、広島、兵庫、福岡と全国に拠点を持ち、2004年には千葉科学大も開学している。もともと予備校からスタートしたが、いまや教育をビジネスにする“コングロマリット”のような学校法人である。ちなみに、岡山理科大の偏差値は42〜48、千葉科学大の偏差値は44〜45だ。
加計学園の特徴は、なにが目的なのか、傘下の学校に文科官僚を天下りさせ、政治家を教員などとして抱えていることだ。
前川喜平前文科次官に、「獣医学部新設をよろしく」と圧力をかけた文科省OBの木曽功氏は、加計学園の理事兼千葉科学大の学長に就任。
文科OBで天下りあっせんの調整役だった豊田三郎氏は今年1月まで加計学園の理事だった。
官房副長官の萩生田光一は、客員教授をいまも務め、第1次安倍内閣の首相秘書官を務めた井上義行参院議員も、08年に千葉科学大の客員教授に就任している。岡山選出の逢沢一郎衆院議員とも近く、先代で設立者の加計勉氏は、宮沢喜一元首相の後援会長だった。
加計学園が過去、15回も却下されても獣医学部の新設に執着したのには、理由があるという。加計学園傘下の学校を見るとある特徴に気づく。
<岡山理科大―動物学科>
<倉敷芸術科学大―動物生命科学科>
<千葉科学大―動物危機管理学科>
3大学すべてに動物関連の学科がある上、「広島アニマルケア専門学校」など動物の専門学校も2つある。
最新号の「週刊新潮」によると、加計氏は獣医学部は簡単に経営できるうえ、学生を集められると踏んでいるという。
「自前で獣医を育成できるようになれば、いまある既存の学科や専門学校と相乗効果があり、一貫した動物関連の教育ができると考えているようです。獣医学部は学園のウリになると考えているのでしょう」(文科省関係者)
日刊ゲンダイは、加計学園に官僚の天下りや政治家への講師依頼の実態を書面で問い合わせたが、期限までに回答はなかった。
なぜ、加計学園は政治家や官僚を次々と受け入れているのか。学校法人の拡大と関係あるのか。  
■今治市職員、官邸訪問か 獣医学部新設の提案直前に 6/7
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設をめぐり、新設予定地である愛媛県今治市の職員が2015年4月、首相官邸を訪問した可能性を示す文書が6日、明らかになった。同市が国家戦略特区での獣医学部新設を提案する直前の時期にあたり、野党は「事前の調整があったのではないか」と指摘している。
自由党の森ゆうこ氏が、情報公開請求で明らかになった市の行政文書として、参院農水委員会に示した。
文書は、出張日程や旅費の変更を申請した稟議(りんぎ)書で、作成日は15年4月1日。同2日に内閣府などの訪問を予定していた市の企画課長らの出張日程が急きょ変更となり、2日午後3時〜4時半に首相官邸の訪問が入ったことが書かれている。目的は「獣医師養成系大学の設置に関する協議」とあるが、黒塗りの部分もあり、面会相手などは分からない。
今治市は15年6月上旬に特区での獣医学部新設を提案。同6月末には安倍政権が「獣医学部新設を検討する」と表明したが、その時点で対象地域や事業者は絞り込まれておらず、今治市に正式に決まったのは17年1月だった。森氏は、官邸での面会相手などの調査を政府に求めた。朝日新聞は今治市に事実関係の確認を求めたが、6日夕時点で回答はない。
一方、今治市と同様、特区での京都産業大による獣医学部新設を提案していた京都府の担当者は「職員が官邸を訪問したことは一度もない」としている。 
■加計学園問題“忖度行政” 藤原豊の説明責任 6/7
首相・安倍晋三の友人である加計晃太郎が理事長を務める学校法人『加計学園』(岡山市)を巡る疑惑。獣医学部新設計画に関する記録文書を巡り、国家戦略特区を担当した内閣府地方創生推進室次長・藤原豊(※右画像)への風当たりが強まっている。問題の文書には、内閣府側が文部科学省に対して「(早期の開学は)総理のご意向だと聞いている」等と語ったという記述があったが、この発言の主こそ、当時、内閣府の担当審議官だった藤原だ。疑惑の渦中にある藤原は、衆議院農林水産委員会で「内閣府として『総理のご意向だと聞いている』等と申し上げたことは一切ない」と、内容を真っ向から否定している。この文書で藤原が名指しされ、現在、針の筵に座らされた理由は、「獣医学部特区認可の過程で、藤原の強引なやり方に対して文部科学省側の反発が大きかったからだ」(政治部記者)という。藤原が事務局を務めた国家戦略特区ワーキンググループの議論では、文科省は完全に抵抗勢力扱いとされ、官僚はWG委員の格好のサンドバッグになった。
昨年9月16日の獣医学部設置を巡るヒアリングでは、座長を務めた『アジア成長研究所』所長の八田達夫が「(獣医師の)需要があるないということに関する結論が遅きに失している」と、文科省や農林水産省への苛立ちを露わにした。他の有識者も口々に、「特区を認可する」という方向の意見を述べ、慎重論は僅かだった。議論の方向性は、事務方トップの藤原の描いた絵の通りになったのだ。また、「藤原は文科省から加計学園に天下りし、現在は同学園の千葉科学大学学長を務めている木曽功とも通じていた」(全国紙社会部記者)という。まさに、“加計学園特区”の為に奔走したA級戦犯なのだ。1963年生まれの藤原は、東京大学経済学部を卒業後、1987年に旧通商産業省に入省した。これまでに大臣官房参事官や技術振興課長等を歴任しているが、2000年以降、度々、内閣府や内閣官房に“出向”している。その間、規制改革や特区制度立案等に携わってきた。内閣府は、本省では使えない官僚の吹き溜まりのような役所だ。藤原は「経済産業省内でも評価が低い」(文科省関係者)といい、特区設置で成果を上げたかった思惑は透けて見える。本来は小物官僚である藤原が、文科役人から忌み嫌われるほど大きな態度に出たのは、「忖度したのではなく、明確に官邸の意向を背負っていたから」(政治部ベテラン記者)と見るのが自然だ。首相補佐官(特区担当)で、国土交通省出身の和泉洋人等から官邸、つまり安倍の要望が伝えられたからこそ、文科省の省を挙げた抵抗を押し切ることができたのだ。前出の政治部記者が語る。「政策論で説得できない無能な官僚ほど、“上の意向”等と言い出すのが常だ」。藤原は単純に、安倍の威光をちらつかせて文科省の役人を恫喝したに過ぎない。ここにきて、「官邸は、いざとなれば藤原に詰め腹を切らせて収束を図るという見方が広がっている」(別の全国紙記者)。森友問題と同様に“忖度問題”に矮小化し、藤原に責任を被せる腹積もりだろう。一学校法人への露骨な利益誘導に加担した藤原の責任が重いことは言うまでもない。このまま国民に説明することなく、“逃げ得”が許される筈もない。  
■6月8日 菅官房長官会見 午前
記者「あ、東京新聞の望月です。すいません、話題変わるんですけど。今日の週刊文春にも出ているんですが、まあ取材によりますと、前川前事務次官の告発の問題でですね、えー、読売新聞が出会い系バーを報じた前日に、現役の文科省の初等中等、えー、初等中等教育局長の藤原さん(藤原誠)から、えーと、お電話で、和泉さんから、秘書官の和泉さん(和泉洋人)が、会いたがっているお話があり、ま、そのことを、えっと、ちょっと考えたってください、という回答をしていた・・・ま、同じタイミングで読売新聞さんの取材も入った、と。で、翌日に、えー、出会い系バーの報道が出たというのがありました。ま、このことについて、和泉・・・えー、和泉補佐官は、え、文春の取材には否定をしているんですが、菅さんは、何かご存知でしょうか。」
菅官房長官「まあ、本人が否定しているんですから、その通りじゃないですか。」
記者「藤原さんからの・・・」
菅「名前言ってください。」
記者「すいません。東京新聞です。望月です。藤原さんからの働きかけは・・・、えー、藤原さんに、和泉さんがお願いをして、えー、会いたいという働きかけはしていないという。」
菅「私は承知してませんけれども、本人が否定しているんであれば、そうだと思います。」
記者「すいません、東京新聞、望月です。えーと、そもそもですね、この出会い系バー通いについての、杉田副長官が昨年の秋に注意をしているということですが。これ、前回*1、そのこと、えーっと調べさせたのかということについて、『承知はしていない』というご回答だったと思いますが。え、杉田さんは、こういう記者会見がないので、えっと、その時期になぜ前川さんの、そういう行動が把握できたのか。えー、これあの、官邸は基本的に、今の全省庁の事務次官の行動確認等を行っているのかどうか。またこれ、たまたまだと思うんですが、あの、同時期に、読売新聞社さんの社会部も取材しているということで。これ、何か、そこ、読売新聞さんの取材との関連性があるのか。えー、について、これ、承知してないということなんですけれども。えー、杉田、杉田副長官に確認して、えっと、実際なぜこの時期にそういうことを知りえたのかをお聞き願いたいのですけども。」
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*1「6月6日 菅官房長官会見」。恐らく以下のやり取りを指す。
記者「東京新聞、望月です。えーと、前川さんのバー通いについてですね、昨日も国会で、あるまじき行為だというような指摘でのお話、出ていたと思います。これ、あの、もともと杉田副長官から、前川を呼び出してそのことを注意したというお話だということですが。これ、杉田副長官は、通常ですね、こういう前川事務次官級の方たちの、身辺調査、行動確認をしているということなのでしょうか。」 / 菅「私は承知していません」
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菅「あの、まったく今言われていることは、あー、私は失礼な話だというふうに思います。報道、報道社に対してもですね。そこは、直接、そちらに取材されたらどうですか。私が答える立場でありません。」
記者「すいません。東京新聞、望月です。で、ちょっと話が、あっ。公文書管理についてですね、この文春さんにでているんですが。福田康夫元首相もですね、『今回、安倍、安倍政権の公文書の管理というのはなっていない』と。『森友の件も加計の件もそうだ、で、保存のために作った法律を廃棄のための根拠にしている』と。『官僚もどこを向いて仕事をしているのか、国民のことを、えー、ないがしろにしているんではないか』と、ゆうふうに出ておりますが、この公文書管理の取り扱いについての、ま、要は加計文書の告発が相次いでいるんですが、この、まあ、も、もし、今や前川さんだけでじゃなく複数の方からの告発が報道等でいっぱいでております。現状ですねこのことについて、もう一度真摯にお考えになって、文書の公開、第三者による調査というのは、お考えじゃないですか。」
菅「あのー、そこについてですね、我が国、法治国家ですから、その法律にもとづいて、えー、適切に対応している。こういう風に思います。」
記者「東京新聞です。望月です。すいません。えーと、昨日、民進党の質問等でも出てますが、匿名で出所がはっきりしないことについては、調べられないとご回答でておりますが、これ、公益通報者保護法のガイドライン*2を見てます、見てみてもですね、『匿名による通報人についても、可能な限り、実名による通報と同様の取り扱いを行うよう努める』と、出ております。ま、法治国家ということであれば、この保護法のガイドラインにそって、えー、この文書があるのかないのかを、やはり真摯に、あの政府のほうで調べるということをやっていただけないかと思うんですが、どうでしょう。」
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*2 「公益通報者保護法を踏まえた国の行政機関の通報対応に関するガイドライン(内部職員等からの通報)」より抜粋
8) 匿名による通報の取扱い / 各行政機関は、通報に関する秘密保持及び個人情報保護の徹底を図るとともに、通報対応の実効性を確保するため、匿名による通報についても、可能な限り、実名による通報と同様の取扱いを行うよう努める。この場合、各行政機関は、通報者と通報窓口担当者との間で、適切に情報の伝達を行い得る仕組みを整備するよう努める。
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菅「まずですね、あのー、民進党のほうから、文書の提示があって、それについて文部科学省の方で調査をした結果、文書は確認されていない、という報告があります。それと、その上で、えー、さまざまな指摘をふまえて文部科学省において検討した結果、出所や、入手経路が明らかにされない文書についてはその存否や内容などの確認の調査を行う必要ないと判断したと、こういうようにも承知をしておりますと。これ、二回目のやつですよね。で、現在もそうした状況には変わらないものと考えておりますが、いずれにしろ文部科学省において、これは、考えらるものだと、いうふうに思います。」
記者「はい、すいません。東京新聞、望月です。その、共有ホルダーになかったというご回答が、えー、政府から出て、その後に、共有ホルダーにあって、現在でも複数の文科省の職員が、これを持っているという匿名の告発が出てるんですね。それなので、それ以降ももう一歩踏み込んで、本当に共有ホルダーがあったかないかを、文科省や政府ではなくですね、第三者によって適切に調べていただきたいと思っているんですが、これはどうでしょう。」
菅「あの、そこはですね。あのー、文部科学省のほうでですね、えー、その、いろんなことがあった、後に、その指摘を踏まえて、えー、検討した結果ですね、えー、そ、その存否や内容などの確認の調査を行う必要はないと判断をしたと。そういう風に報告を受けています。」
記者「東京新聞、望月です。判断したのは文科省ということだという、お話をしておりますが、これ、松野文科大臣には、質問、集中してますが、基本的にですね、取材をしている限りでは、もう、文科省の判断というよりも、やはり、官邸の最高レベルである、安倍総理であり、官房長官の、菅さんの判断がなければ、ここに踏み切れないのではないかと。っていうので、私、文科省が、そう判断したというよりも、まあ安倍総理、菅さんたちが、このように判断しているということじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。」
菅「そこはありえません。それは、それぞれ、役所、において判断をすると。それにつきます。」
記者「えっともう一つ。加計学園に絡んで、前事務次官が1月5日に、松野大臣に、辞意を、天下りの関連で表明をしたと話しております。そこで松野大臣が、えー、に、杉田官房副長官に、そのことを伝える許可を頂いて、杉田副長官にその趣旨を伝えに行ったということです。えー、前回の質問では、杉田副長官が、その時に、えー、つまり、3月の定年までいさせてくれと言って、それ以外の複数の証言を得ていると、いうことを官房長官ご自身お話したと思うんですが。えーと、多分、松野大臣と杉田さん以外に関係者、いらっしゃらないと思うんですが、複数という方、公人であるならば、どなたがそのように言ったか、教えていただけませんか。」
菅「あの、複数であることは、あのー、勿論承知しております。」
記者「望月です。すいません、あの、ど・な・た・が、あの、杉田さん以外に。松野さんは、松野大臣はこのことについてはノーコメントと言っておりまして、えー、菅さんの、えー、お話も、えー、前川さんのお話もどちらについてもいえないという板ばさみなのかなと状況・・・」
菅「いやいや。」
記者「では、じゃ、松野大臣は、えっと、官房長官には、その辞意を表明したのではなく、三月までいさせてくれと、前川さんが言っていたという風にお伝えしているんですか。」
菅「あの、この件について、大臣と直接話してません。ただ、いずれにせよ、そうした人事については、あの、前裁きを、おー、事務の副長官、で、人事局・・・のところで行なっていますので、そういう中で、えー、私に報告があったということです。」
記者「すいません、望月です。そうすると、杉田さん以外にどなたが、そのような前川さんが辞意を伝えていたかの名前を出すことはできないということですか。」
菅「もちろん、私、承知してますけども。まずですね、あの、定年延長について、あの、1月上旬に、文部科学省の方から打診があったことは事実です。これ1月上旬です。さらに言えば、定年延長も話があった後に、前川氏本人から副長官に対して、『せめて3月まで次官を続けさせてほしい』という話はあったと。このことは昨日の国会で、聞かれたもんですから申し上げております。」
記者「東京新聞望月です。文科省の方から打診があったということですが、これはどなたからそのような打診が・・・」
菅「それは前川さんがよく知ってらっしゃると思います。」
記者「加計・・・関係。ちょっと。ま、関連。あのー。昨日、二、三日見ただけでも、FNNさん・・・間違ってたら申し訳ないんですけど。FNNさん、テレ朝さん、NHK、朝日、文春さん、それぞれですね、現役の文科省職員の、ま、証言を聞いてですね、文書あったという報道を今までしていると思うんですけど、長官、これらですねー、大手・・・1、2、3、4・・・4つ5つあると思うんですけども、全て嘘だと、信用できないという風にお考えでしょうか。」
菅「私は嘘だとは言っておりません。このことについてはですね、えー、様々なご指摘を受けて、文部科学省において検討した結果、出所や入手経緯が明らかにされていない文章についてはその存否や内容なども確認の調査をおこなう必要がない。そのように判断をしたということです。そして現在もその条件に変わりないものと考えておりますが、いずれにしろ文部科学省において考えられるものだという風に承知しております。」
記者「ジャパンタイムスです。あの、このやりとり、ずっとやっているんですけども、その、なぜそう考えるのかっていう理由が全然説明がないんですよね。で、所謂、証拠がないと、まあ、水掛け論になると思うんですけど、(聴取困難)ですと。そうすると物証の調査ということでコンピューターの調査しかないと思うんですけども、で、やらないよりはやったほうがいいと誰でもわかるんですけども、そこを拘わられるのは、どうにも不可解なんですが。その要するに、もうやりたくないとしか聞こえないんですけど。」
菅「あのー、その後のご指摘をふまえて、文部科学省において検討した結果ですよ、出所や入手経緯が明らかにされてない文書については、その存否や内容などの確認の調査を行う必要はない。このように文科省で判断した。で現在もそうした条件には変わりないという風に考えてます。いずれにしても、文科省が、あー、考えられるものであると、こういう風に承知しています。」
記者「同じことしかおっしゃっていないんですけども。それは、FNN、テレ朝さん、NHK、朝日、文春の報道が信用できないと。調査に値しないということだと思・・・」
菅「っていうのは、申し上げたとおりですよ。『存否や内容などの確認の調査を行う必要はない』という判断を下したということです。」
記者「(聴取困難)をおっしゃっていないんですよ。なぜ、そう判断されるのかって、理由付けがゼロなんですよ、おっしゃっているのは。存否は確認したとしかおっしゃってなくて、結論になぜそうなんですかと、やらないよりはやったほうがいいでしょうと。物証がないと水掛け論になるんでコンピューターの調査をされたらどうですかと。」
菅「いずれにせよ、文部科学省において、えー、そこは考えられるものと、承知しております。そういうことです。」
記者「えっと、今、関連です。先ほどから何回も聞いておりますけれど、これ、政府が作ったですね、公益・・・公益者、通報制度の保護の法の精神に、つまり匿名・・・などのものは、出所不明は扱えないというお話は、その精神に反するのではないかと。このことについて、的確なご回答を頂けていないと思うので、お答えいただけますか。」
菅「今、私が申し上げた通りです。」
記者「えー、それから・・・東京新聞です。えーと、先ほど、嘘だとは、文書について嘘だとは言っていないという・・・(菅「はい?」(尋ねるように))嘘だとは言っていないという、文書についてですね、今、加計ででている。という、発言・・・今、私、はじめて聞いたと思うんですが。これ、一番はじめに出たときに、えー、『怪文書』という風に厳しくご指摘されておりました。これ、あの、広辞苑でひきますと、『無責任で、中傷的、暴露的、出所不明な文書』と、まあ非常に強い、まあ、つまり、本物ではないというような言い方をされていたと思うんですが。現在、この文書について、嘘だとは思わないということですか。」
菅「ちょっと分けてください。私が嘘だと・・・嘘じゃないと言ったのは、この間、メール文書などの証言をされましたよね、あのー、告発というんですか。皆さん方、言ってますよね。で、それについて、文部科学省で検討した結果、出所・入手経緯が明らかにされてない文書については、その存否や内容などの確認の調査を行う必要はない、と判断をしたと、こういう風に私は申し上げています。で現在もそうした条件には変わりないと。」
記者「繰り返しですけども。まあ、文春の調査でも、この、現在、『前川の証人喚問を必要だ』に賛成が86、まあ、内閣の支持率が22%というところまで、これ、確か、日経のオンライン調査でも、このくらいの数値が出ております。つまりこの、調査の必要がないということ、あの、ジャパンタイムスさんのお話と同じですけれど。この政府の姿勢がですね、やはり、国民の理解を得られていないと。そこが、まあ、一番、最大のポイントだと思うんですが。これ、今、政府側の、その今、えっと、文科省側の回答がですね、つまり国民にとってまったく納得・理解ができないものになっている、と。このことについて、菅官房長官はどうお考えですか。」
菅「ですから、それは法律に基づいて、適切に対応すると。」
記者「すいません。東京新聞です。加計に戻ります。石破4条件*3について、充たされているとご回答・・・二日前の、えーっと、質問の際にいただいていますが、当の石破さん自身は、この4条件がが適切に充たされていないんじゃないのか、という回答を、各種報道に、取材にこたえております。ここ、意見の相違があるんですが、どう思われてますか。」
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*3 石破四要件
獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討 / 1 現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、2 ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、3 既存の大学・学部では対応が困難な場合には、4 近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。(「平成27年6月30日 日本再興戦略改訂2015 −未来への投資・生産性革命−」)
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菅「それはその、4条件を充たされるということ・・・それは国家戦略諮問会議で認めている。えー、当然、3大臣が、大臣の中で最終的に決定(検討?)しているわけですから、それに尽きるんだろうと思います。」
記者「東京新聞です。ということは、まあ、当時この4条件を設定された石破さんが充たされていないと言っても現在の大臣である山本大臣が充たされいていると。えっと、需要についても『神の見えざる手というのがある』と、ちょっと不可解なことをお話をしておりますが。その山本さんが充たされているという理解だからこそが、これが充たされていると。」
菅「いや、山本大臣の他に、文科大臣も農林水産大臣も、この3大臣でこの決定されたことですよ。」
記者「はい、すいません。東京新聞、望月です。また出会い系バーなんですけども。前回、この教育者としてあるまじき行為としてあるまじき文書、これ、ちょっと私、文書を読み上げているように見えたんですが、この文書は、菅官房ちゃん・・・官房長官の個人的なご見解ということでしたが、文書に、文書にしたためていらっしゃるんですか。」
菅「いや、私自身が、あのー、心から思っていることを申し上げたにすぎない。」
記者「えっと、文章・・・あっ、東京新聞です。文書を読み上げたように見えたんですが、何かその、文書にしたためられたのは、官房長官ご自身が、そういう・・・」
菅「私、あなたに、それを答える必要はないと思いますよ。」
記者「ジャパンタイムスです。ちょっと確認だけ。先ほど、FNNさん、あのー、テレ朝、NHK、朝日、文春さん、『嘘ではない』と、まあ、そうおっしゃったと思うんですけど。信憑性はない、っていう具合に考えてるんですか。それ、ですから、理由を教えていただけますか。」
菅「いや、ですから、あのー。調査を・・・先ほどの中で・・・(文書をさがしながら)文科省において、検討した結果、出所や入手経緯が明らかにされていない文章については、その存否や内容なども確認の調査をおこなう必要はないと判断をしたと。そういう風に承知してます。」
記者「あ、え、ジャパンタイムスです。要するに、大手の報道でも。こうやって複数揃っても、あのー、情報源が匿名なら、信用性がないと、こういうことで・・・」
菅「いや、それと、その存否や内容なども確認の調査を、あのー、おー、そういう必要・・・おー、ないと判断をしたと。まあ、そういうことです。」
記者「ですから、その、そういう判断をした理由を教えていただきたいんですけど。あのー、いろいろ、その判断は、調査は、コンピューター調査をやった後に出てきているわけですよね?しかも、係長なんかは聞き取り調査に入ってなかったんですよね、生方(生方寛昭)さんという方は。それを、なぜそれで、あのー、必要はないという政治的な判断をされたのか、よくわからないんですけども・・・」
菅「えー、まずですね。えー、まず最初、おー、文書ありましたですよね。民主党(民進党)のほうから8枚紙。これについて文部科学省で調査をした結果、文章は確認されない、という風に結果出ています。その上で、えー、その今言われた、 あー、文書ですけども。その後の、さまざまな指摘をふまえて文部科学省に、えー、検討した結果、現在も、出所等が不明な状況で・・・あるという中においてですね、存否や内容などの確認の調査を行う必要ないと判断したと、文部省(文科省)が判断をし、状況は変わりないと、こういうように考えていますが、いずれにせよ、文部科学省で考えられるものである、というふうに思います。」
記者「あの、もう1点だけ。記憶ですと、国会の審議では、民主党(民進党)の出してきたメールですね、共有したっていうメールの。まあ、係長が生方(生方寛昭)さんという方で、その方、ヒアリング入ってなかった、ということだと思うんですけど。そうすると、また状況が違ってきているんじゃないでしょうか。」
菅「いや、どなたに、あのー、調査したかは知りません。いずれにせよ、そういうこと、で、あります。」
記者「はい、東京新聞です。 (「同趣旨のご質問は、お控えください」)出所不明を繰り返えされていますけども、じゃ、現役の職員の方ですね。自分の身の危険を冒しても、えー、告発に出ていると思うんですが。しかも、複数です。で、これを、もし、じゃあ、どなたかが、実名での告発に踏み切った場合、適正な処理をしていただけますか。それから、その方の、えー、公益通報者保護制度の精神に基づいて、えー、きちんと保護された上で、その実名の方の意見というのを聞き入れてもらえるんでしょうか。」
菅「あの、仮定のことについて、えー、答えることは控えたいと思いますけども。いずれにしろ、文部科学省で、そこは判断をする。こういう風に思っております。」
記者「はい、東京新聞の望月・・・。えっとー、仮定とかではなくて、出所不明だから調べられないということを繰り返えされていますけども、じゃ、出所を明らかにして、『私が現役の職員であり、このメールはありました』と、いうことをどなたかがですね、勇気をもって告発を、実際、された場合に、それはその方のお話をもとに、きちんとした調査を行っていただけるかどうか、なんですが。」
菅「ですから、仮定のことに、答えることは控えたいと思いますが、そうしたことを、今、あー、申し上げておりますから、文部科学省において、そこは判断をするということ。そういうことに尽きるんじゃないでしょうか。」
「同趣旨のご質問はお控えいただけるようにお願いいたします。」
記者「すいません」
「同趣旨のご質問を繰り返し行うのは、やめて頂きたいと思いますので、お願いします。」
記者「きちんとした回答を頂けていると思わないので、繰り返し聞いています。すいません。つまり・・・すいません、東京新聞です。つまり、出所が明らかに、どなたかが、告発に至っても、今のご回答だと、政府として、それを真摯に汲んで、それを調べるかどうかは、えー、回答を保留というか、回答できないという、ご回答ですね。そういう理解で・・・(いいですね)」
菅「仮定の質問に、答える立場にはありません。いずれにしろ、その時点で、文部科学省が、おいて考えられる。こういう風に思います。」  
■菅長官と応酬・・・再調査は? 加計学園問題 6/8
8日、菅官房長官の記者会見で激しい応酬がありました。そのワケは、加計学園による獣医学部の新設計画をめぐって民進党などが公表した文書。文書の信ぴょう性が高まる中、果たして再調査は行われないのでしょうか。
「的確な回答を頂いていないのですが」(記者)
「今、私が申し上げたとおりです」(菅長官)
記者との激しいやり取りが展開されました。焦点となったのは、「官邸の最高レベルが言っている」などと記された文書。文部科学省の現役職員はJNNの取材に対し、文書が複数の職員にメールで送られ、共有されていたことを認めています。同様の証言は、ほかのメディアも報じています。
会見で、メディアが報じた職員の証言はうそだと思うか?と問われた菅長官は・・・
「全てうそだと、信用できないと思う?」(記者)
「私はうそだとは言っていません。文科省において検討した結果、出所や入手経緯が明らかにされていない文書については、その存否や内容などの確認の調査を行う必要がない」(菅長官)
加計学園の獣医学部新設をめぐって、民進党などが公表した文書。その信ぴょう性は日を追うごとに高まっています。
「受け取った文書に間違いありません」(前川喜平文科省前事務次官 先月25日)
「(メールと)同姓同名の職員は実際におります」(文科省の担当者 今月5日)
それでも菅長官は・・・
「情報源が匿名だと信ぴょう性がないと?」(記者)
「いや、(文書の)存否や内容など確認を・・・必要ないと判断した」(菅長官)
「判断した理由を教えてほしい」(記者)
「いや・・・」(菅長官)
再調査の必要はないと繰り返し述べました。与党内からは・・・
「なぜ怪文書みたいなのか、なぜ再調査しなくてもいいのか、ここは官房長官の口から、国民にわかるように説明することが望ましい」(公明党 漆原良夫中央幹事会会長)
8日はテロ等準備罪を新設する法案の審議も再開されました。野党4党は党首会談を開き、内閣不信任案の提出も視野に協力することで一致。
「加計学園に対する政府の姿勢を見ても不信任に値する」(民進党 蓮舫代表)
国会の会期末は10日後に迫っていますが、国民が納得しての閉会となるのでしょうか。
■菅官房長官を追及した東京新聞記者
5日の衆院決算行政監視委員会で、またも菅義偉官房長官が“前川攻撃”を繰り広げた。今度は「天下りを隠蔽していた責任者」「自らの進退は示さなかった」「世論が厳しい状況になってはじめて自ら辞めた」「今年3月末の定年まで、事務次官を続けたいと打診があり、私はそんなことは駄目だと(言った)」などと国会で一方的に述べ、暗に“役職にしがみついた卑しい人物”を印象付けたのだ。
これに対して前川氏は「次官を続けたいと申したことはありません」と完全否定したのはもちろん、辞職申し出が天下り問題が初めて報道されたのより2週間も早かったこと、3月は国会会期中であり次官が国会会期中の交代を想定することはそもそもあり得ないことなど、具体的な根拠と日付を示して、完膚なきまでに反論。スガ語で「ご指摘は当たりません」と締め括った。
まさしく、菅官房長官の謀略デマ情報を使った印象操作の手口が明らかになったかたちだが、しかし、毅然と反論した前川前次官の気骨ある対応と対照的に、だらしないのがマスコミだ。
とくに官邸記者クラブに属する新聞・テレビはこの官房長官にはまったく逆らえず、会見でも、例のスガ語で「批判には当たらない」「まったく問題ない」と返されると、そのまま沈黙。デタラメな言い分をただ垂れ流すということを繰り返している。
だが、昨日午前の定例記者会見で、1人の記者がその菅官房長官に屈することなく、徹底追及を試みた。その記者とは、東京新聞社会部で、権力の不正に対して鋭い調査報道に取り組み、『武器輸出と日本企業』(角川書店)の著者としても知られる望月衣塑子氏だ。
望月記者は、前川前次官に対する人格攻撃、国家戦略特区による加計学園獣医学部新設のプロセスの矛盾、、政権の説明不足、さらには山口敬之氏のレイプ事件捜査問題までを俎上にあげ、菅官房長官が木で鼻をくくったような返答をしても、まったく怯むことなく、手を変え品を変え質問を続けたのだ。
ところが、このやりとりを御用新聞の産経新聞が、山口氏のレイプ事件ツブシの部分だけを削除するかたちで報道。ネトウヨやネトサポたちが中心になって、望月記者を攻撃し始めた。望月記者の追及を「執拗な嫌がらせ質問」「失礼だ」などと罵り、途中、「菅官房長官自身が直接、バーに行って話を聞くつもりはないか」と質問したことをあげつらって、「この女記者、頭がおかしい」「マスゴミ女のキチガイ率は異常」「こんなバカの対応とか、菅さんが可哀想すぎるわ」「さすがは国賊・頭狂新聞の記者だわ」などとわめき立てているのだ。
しかし、望月記者の追及は記者として当然の行為だし、その質問におかしいところは何もない。異常でおかしいことを言っているのはいったいどっちなのか。改めて、菅官房長官と望月記者のやりとりを紹介しよう。
東京新聞・望月記者が菅に前川前次官、加計問題を徹底追及
望月記者がまず追及したのは、まさに冒頭で紹介した、前川前次官に完膚なきまでに反論された菅官房長官のインチキ答弁についてだった。
この会見で、菅官房長官はあいかわらず、前川氏からの反論について「報道で見たのみで、詳細は承知しておりません。いずれにしろ、辞任の経緯について私の承知する事実に基づいて発言した」などといつものパターンで返し、ほとんどの記者たちもいつものようにそれでスルーしようとしていた。
そんななか、望月記者は辞任の経緯について、前川氏の話と菅官房長官、杉田和博官房副長官の話が「かなり食い違っている」と指摘。「松野大臣含めてきちんと確認していただきたいと思うんですが」と問いただした。
菅官房長官は「私は自らの承知している事実に基づいて発言している。それ以上でもそれ以下でもない」と、同じ返答を繰り返すだけだったが、望月記者は、「その事実というのはあくまでも副長官のお話を聞いたなかでのご判断ということですか」と食い下がる。すると、菅官房長官は「副長官以外にもあります」と返したが、具体的にどういう根拠なのかを説明することはできなかった。
このあと読売新聞の記者が質問をして別の話題にそらしたが、望月記者は再度、質問。今度は、官邸の圧力を明らかにした文科省内の文書やメールを公開しようとしないことを問題にした。
「行政文書の管理扱いを決めている公文書管理法には、意思決定に至る過程を検証できるよう文書を作成しなければならないと記載がなされている」とし、「民進党が指摘している文書やメールの写しが本物であれば、公開が必要な行政文書になる可能性がありますが、現状でも、もう一度調査して公開するお考えはありませんか」と迫ったのだ。
「文科省は確認できないと言ってるから、それまで」とする菅官房長官の主張はあまりに杜撰であり、これは当然の質問だが、菅官房長官はやはり相変わらず「文科省で大臣の下で決定をしているから、それが当然」「確認の調査を行う必要はない、そういう判断をした」と繰り返すだけ。質問にあった公文書管理法の問題などまるで取り合わない。だが、望月記者も引き下がらない。
「入手経路がはっきりしないものはいずれも調べられないということですと、いまNHKさんも報道されましたし、民進党も出したような匿名での告発の内容や告発文書がうやむやなままに闇に葬られてしまうようにも見えてしまいます。20日と21日の共同通信の調査では国民の77%が文書の開示と政府の対応について納得していないというふうに意見をされております。このアンケート調査の結果も含めて、もう少し開かれた対応をしていただきたいと感じておりますが」
まさに国民が抱いている不信感を代弁したこの質問に、菅官房長官はそれでも「委員会でも文科大臣は丁寧に説明している」と回答になっていない回答を言い張っていたが、このあたりになると、明らかにウソを強弁するしかなくなっているというのが誰の目にもありありになっていた。
さらに、菅官房長官を動揺させたのは、望月記者の次の質問だった。
「審議会の人事に関しても官房長官等が政権を批判するような記事や投稿をされているものについては、それを見せながら人事を差し替えるように要望されることもあるというふうにお聞きしました」
「自分が出会い系バーに行く」話は先に菅長官がオフレコで話していた
審議会の人事にも官邸が介入している──。このことを追及されると、菅官房長官は食い気味に「100%ないです」「そんな簡単なものじゃない」と怒気を含んだ声で返した。
それでも望月記者は怯まない。つづいて質問したのは山口敬之氏の準強姦罪の問題。しかも「当時の刑事部長の中村(格)さんが電話をして執行を取りやめたという話が出ております。このことについて、菅官房長官は事前にお話等は訊いていますか」とぶち込んだのだ。
ここで菅官房長官はイライラを隠さなくなり、「まったく承知してない」とシャットアウト。しかし、そのあとも、望月記者は「京都産業大学ではなくなぜ加計学園だったのか」「閣議決定時に示された4条件をクリアしているようには思えない。なぜ4条件を無視したのか」と加計学園問題の焦点を質問し続けた。
正直、菅官房長官の会見で新聞記者がここまで徹底的に追及し、食い下がったケースはほとんど見たことがない。もちろん、菅は結局、「問題ない」「必要ない」という姿勢を崩さなかったし、なにか新事実が出てきたわけでもない。しかし、記者が執拗に食い下がった結果、菅が明らかにウソを強弁しているだけだというのがどんどん明らかになり、その模様が今日のワイドショーなどでも取り上げられた。そういう意味では、望月氏は権力のチェックをするという新聞記者としての責務を十分果たしたといえるし、その姿勢はよくやったと褒めるべきものだろう。
これは、もちろん、ネトウヨたちが「キチガイ」「頭おかしい」「失礼」などとヒステリーを起こしている「菅官房長官がバーに行くつもりはないか」という質問についても同様だ。
望月記者は、前川氏がバーに通っていたのは「いまの制度からはぐれている、教育が十分に受けられない女性たちの話」を聞きに行くのが目的だったと主張していること、実際にボランティアなども行っていることなどを紹介し、「こういう姿勢はある意味、行政のトップの方がやることで非常にすごく大きな影響を与えるんじゃないか」と指摘。そして、「たとえば菅官房長官がこういうバーに行って、バーに通う女の子たちからその背景事情、教育の実態を聞くといった対応を逆に考えることはないか」と質問したのだが、これのどこがおかしいのか。
ああいう木で鼻をくくったような回答しかしない取材相手に対して、いろんな角度から質問をし、時に挑発的なことを聞いてみるというのは、ジャーナリストの基本だろう。しかも、あの質問は、現場も見ないまま公安からの情報だけで謀略情報を流し、「買春目的」と決めつけて前川氏を攻撃する菅官房長官、教育格差の実態を一顧だにせず、新自由主義的な教育政策と自分のお仲間への利益誘導を図る安倍政権への批判の意味が込められたものだ。
しかも、「失礼」どころか、菅自身が先にオフレコ会見でこんな前川攻撃を口にしていたのだ。
「(前川発言が世間に受け入れられるのであれば)私も出会い系バーに『実地視察調査』に行っていいことになるね」(「週刊新潮」6月8日号より)
望月記者はおそらく、この発言を念頭に、オンレコの会見でも同じような発言を引き出そうとしたのだろう。
いずれにしても、おかしくて異常で失礼なのは、望月記者でなく、明らかに菅官房長官のほうなのだ。これだけの証拠が出揃って、文科部官僚のトップまでが認めている重大疑惑を「問題ない」の一言で済ませ、きちんと国民に説明しようとしない。こんな官房長官がかつていたか。
政権の報復と炎上に怯えて厳しい質問をしなくなった記者たち
いや、おかしいのは菅官房長官だけではない。その菅のデタラメ強弁に何も言い返さず、嘘の言い分をそのまま垂れ流しているマスコミも同じだ。実際、この会見でも、望月記者以外に加計問題に強く切り込んだのは、菅官房長官の“出会い系バー通い”攻撃に、「前川さんが(出会い系バーに)行っているかどうかということと加計学園の文書は全然関係がない」と反論したジャパンタイムズの吉田玲滋記者だけだった。他の記者たちは、望月記者の奮闘をそのまま黙って見ているだけで、援護射撃になるような質問ひとつしなかった。
おそらく、彼らは首相や官房長官などに厳しい質問をすることで、政権に睨まれたり、ネトウヨに攻撃をされることが怖くてしようがないのだろう。
実際、今村雅弘復興相から「自主避難は自己責任」発言を引き出したフリー記者・西中誠一郎氏にネトウヨたちが噛みついたことは記憶に新しいが、先日のG7サミットの安倍首相の記者会見でも、共同通信の記者が共謀罪や加計問題を踏まえて国会の会期延長について質問した際も「サミットで何聞いてるんだ、空気読め」「恥さらし」「サミットに加計関係ないだろ」と非難が集中した。
こうしたことが繰り返されて、記者たちはひたすら「空気を読む」ことばかりを覚え、権力の監視を放棄してしまうようになった。しかし、これが、民主主義国家におけるジャーナリズムの姿なのか。
たとえば、米国のメディアを見てみればいい。トランプ政権のホワイトハウス報道官であるショーン・スパイサー氏も菅官房長官と同様にまともに質問に答えず、批判的なメディアには強権的な姿勢を見せているが、それでも記者たちは食い下がって何度も質問を繰り返し、スパイサー氏が詭弁を振りかざした際には露骨にシラけた表情を向け、紙面や番組ではっきりと「嘘つき」「バカ」「大バカ」「最悪の返答」と批判を浴びせている。これこそが不誠実な政権担当者へのジャーナリズムの本来のあり方だろう。
繰り返すが、今回、望月記者が菅官房長官と対峙し、詰め寄ったことは「ジャーナリズム本来の当たり前の姿」を実践しただけだ。しかし、その「当たり前」を記者ができていないことが安倍政権を支え、現在の森友・加計学園問題をなかったことにしようとする政権に手を貸している。新聞やテレビの記者たちはそのことをもっと自覚すべきだろう。  
■加計学園の文科省文書に安倍政権が大激怒! 6/8
相次いで文科省側から加計学園の新設を巡る資料が流出している問題で、安倍政権が大激怒しています。政権側からは文科省解体や文科省完全掌握案も浮上しているようで、その手始めとして夏の人事で粛清(一斉首切り)が行われる可能性もあると報じられていました。
実は加計学園以外の学校新設を巡っても政権側から色々と要望があったと言われ、安倍首相は森友学園のような政権寄りの学校新設を各地に作ろうとしていた疑惑があるのです。
これは第一次安倍政権の頃から推進されている「教育基本法改正」にも示されている事実で、最近でも幼稚園で国旗や国歌を重んじるように方針を変えています。
つまり、教育制度を自分たちに都合良く作り変えようとしていたところ、教育を管轄している文科省から強い反発を受けたということです。
今回の加計学園問題で安倍政権は文科省を敵として認識した可能性があり、このまま安倍政権が長期化すると文科省はかなり不味い状態になるかもしれません。
正に今の国会こそが最大のチャンスだと言え、ここで政権に歯止めを掛けないと文科省が潰されかねないです。

安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)による獣医学部新設をめぐり、文部科学省が内閣府から「官邸の最高レベルが言っている」などと言われたと記録された文書について、文科省の現役職員が朝日新聞の取材に対し、文書が省内の複数の部署で「共有されていた」と証言した。文科省は文書は確認できなかったと結論づけたが、これについて現役職員は「おかしいと思っている」と語った。

文科省の前川前次官の捨て身の告発に、心ある官僚が続くことを期待したいが、現役職員は今回の騒動の“とばっちり”を恐れて逃げ腰だ。
「もちろん、心情的には前川前次官に共感するところはあります。でも、官邸に牙をむくなんて、そんな恐ろしいこと、できるわけがない。この夏の人事でどんな報復が待っているか、分かったものじゃありませんから」(文科省関係者)
実際、官邸は文科省にカンカンだ。審議官や局長クラスに息のかかった経産官僚を送り込み、文科省を解体するプランも浮上しているという。「加計文書」共有の実名入りEメールを民進党に流出させた犯人捜しにも血眼になっている。
■加計ありきの動かぬ証拠 今治市職員は官邸に呼ばれていた 6/9
安倍首相の「腹心の友」、加計晃太郎氏が理事長を務める「加計学園」(岡山市)が愛媛・今治市で進めている獣医学部新設。
今治市の情報公開で、同市が新設提案する以前に、職員2人が首相官邸を訪問していたことを示す文書が明らかになっているが、8日、野党議員2人がそれぞれ別の委員会で事実関係を質問したところ、政権からはフザけた答弁が返ってきた。
「官邸訪問者の記録が保存されておらず、確認できない」というのだ。最高機密を扱う官邸の訪問者が「確認できない」なんて、そんなズサンな危機管理はあり得ない。これぞ、加計決定が官邸主導のデキレースだったことの証左だ。
今治市が公開した文書によれば、企画課長と課長補佐の2人は「獣医師養成系大学の設置に関する協議」のため、2015年4月2日に都内の都道府県会館と内閣府を訪問。
内閣府での打ち合わせは午後2時までで、午後5時15分発のANA便で帰る予定だった。
ところが上京前日、急遽、午後3時の首相官邸訪問が決まり、復路便を変更。今治市はこの時の旅費変更申請の決裁書も公開していて、それには、午後3時〜4時30分まで官邸で打ち合わせと明記されている。
今治市は日刊ゲンダイの取材に「市職員2人が、官邸を訪問していることは事実です。相手方、内容等についてはお答えできません」と官邸訪問を認めた。
では、首相官邸で誰が対応したのか。今治市の職員が官邸にいた時間、首相動静には、〈3時5分 河村建夫自民党衆院議員。35分 下村博文文科相、山中伸一文科事務次官〉とある。安倍首相も官邸にいて、文科族の河村氏や文科行政の両トップと面談していたわけだ。
今治市職員の官邸訪問は、前日に「急遽決まった」。これは、2人の訪問が官邸サイドの意向であることを示している。つまり、今治市職員は官邸に呼ばれ、安倍首相や文科大臣らに獣医学部新設に関する説明をしていた可能性が極めて高い。
「通常、課長や課長補佐レベルの自治体職員を官邸に呼ぶことはありません。よほど強い私的な関係があるということでしょう。しかも、今治市が獣医学部新設を提案する2カ月前です。呼びつけているところを見ると、当初から官邸主導で進めていたことをうかがわせます」(政治評論家・森田実氏)
今治市が認めた職員の官邸訪問について、8日の参院内閣委員会での山本幸三地方創生担当相と参院農水委員会での萩生田光一官房副長官の答弁は、「官邸訪問者の記録が保存されておらず、確認できない」と、揃って全く同じセリフだった。答弁を統一させたのだろう。やましい時によく使う手だ。
では、首相官邸への人の出入りを本当に管理、保存していないのか。問い合わせると、「訪問を受ける官邸側が予約届を書く。当人が入場する時、予約届と本人確認をするが、予約届はすみやかに廃棄する。予約届とは別に、官邸の訪問者履歴を記録しているかどうかはわからない」(首相官邸事務所)、「報道関係者以外の訪問者についてはわからない」(官邸報道室)と頼りない答えが返ってきた。
「国のトップがいるところです。首相官邸の訪問記録がないなんてことはありません。“確認できない”とするのは明らかに逃げている。やましいからでしょう。今後、決定的な証拠が出てくる可能性がある。これまで官邸は何とか逃げてきたが、もはやギリギリのところまで追い込まれています」(森田実氏)
加計疑惑、主犯・安倍首相は間違いない。 
■今治市職員が決定前に官邸などを訪問? 6/9
学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題。予定地の今治市職員が、学園が新設の申請をする直前だった2015年4月に首相官邸を訪問した可能性があることが新たに明らかになり、野党が国会で追及を続けている。
この問題は、自由党の森ゆうこ議員が6月6日に国会で明らかにしたもの。出張日程などを申請した今治市の行政文書から、市の企画課長と課長補佐が、2015年4月2日、内閣府などに加え、官邸を訪れていたことが判明したという。
今治市が特区による獣医学部新設を申請したのは、2015年6月のこと。正式決定は2017年1月のことだ。そのため、野党側は「今治市と政府の事前調整があったのでは」と指摘している。
朝日新聞によると、同じように特区による獣医学部新設を提案していた京都府の担当者は、「職員が官邸を訪問したことは一度もない」と証言しているという。
6月8日、参議院農林水産委員会で森議員の質問に答えた萩生田光一官房副長官は「訪問者の記録が保存されていないために確認できない」と応じた。
一方、内閣府の藤原豊審議官も、同様に「訪問があったのか、誰が対応したのか、訪問者の記録もなく、確認できておりません」と答えた。
藤原審議官は、内閣府で国家戦略特区を取り仕切る事務方の実質トップ。「総理のご意向」「官邸の最高レベル」などと文科省の職員に伝えた、前川喜平・文科前事務次官に名指しされた人物だ。
このやり取りをめぐるとされる別の文書にも、「藤原内閣府審議官との打合わせ」と明記されているが、本人は「申し上げたことは一切ない」と反論している。
森ゆう子議員はこの日の委員会で、「あなたが会ったのではないか」と指摘。「会ったのか、会ってないか、YESかNOかで答えてください」と聞かれると、藤原審議官はこう応じた。
「自分がお会いしたことも含めて、今治市の面談は確認できておりません」
この発言には森委員含め野党側が紛糾。委員会は一時中断し、その後、藤原審議官は再びこう語った。
「私につきましては、記憶がございません。担当者は何名かおりましたが、すでに異動しているものも多く、特定の面談の有無については、確認が難しい状況」
さらに森議員は、入手した今治市の行政文書をもとに、「2016年10月28日に、今治市の課長らが内閣府を訪れ、今後のスケジュール案や論点、イメージを示している」ことを指摘した。
政府の国家戦略特区諮問会議が獣医学部新設を決めたのは、2016年11月9日だ。森議員は、決定直前に「今治市が内閣府を訪れた」意味について、「それ以前に今治と決定した=加計学園に決定していたのではないか」と質問した。
藤原審議官はこの点について、こう答弁した。まず、面会についてはこうだ。
「担当者は何名もおり、面会や電話のやりとりなどもあって、一つ一つ、特定の日時についての状況は確認できない」
そして資料提供についても、こう答えた。
「初めてお聞きしたこともあって、大変申し訳ないのですが、当方からスケジュールや論点など、少なくともそういう資料について提供したことはないと思います」
森議員は今治市に行政文書として訪問の記録が残っていたことを引き合いに出しながら、「記録の残ってない役所、行政なんてありませんよ」などと詰め寄ったが、時間の問題もあり、最終的に藤原審議官は応じなかった。  
■加計問題で翻弄された“信念の官僚”、前川氏と藤原氏の悲哀 6/9
“政”と“官”のあり方が、今、再び問われている。
加計学園への獣医学部認可問題でぐらつく安倍政権に、文部科学省の元事務次官、前川喜平(54年入省)が、「行政のステップを踏まなかった。極めて無責任な行政と思わざるを得ない」「公正、公平であるべき行政のあり方が(政治的介入により)歪められた」などと強烈な矢を放ち続けている。
森友学園問題でも、認可について「官僚の忖度」が俎上に上げられたが、正直、告発者のキャラクターなどが影響し、国民の印象では「疑惑の域」を出なかったと言わざるを得ない。そういう意味で、森友問題では官邸の“印象操作”が功を奏した形だった。
しかし今回の加計学園問題では、「総理の意向」を印籠に官僚が動き、便宜が図られたことは明白だ。なにしろ、認可が降りた後に、所管省庁となる文科省の元事務次官が、「総理のご意向と書かれた文書は確実に存在した。あったものをなかったことにできない」と、記者会見で明確に証言しているからだ。
官房長官の菅義偉は、前川の言う「総理の意向」と記された文書について、“怪文書”と切って捨てたが、5月22日には、「藤原(豊)内閣審議官との打ち合わせ概要」(獣医学部新設)」という題名の添付文書が明るみに出た。
そもそも、仮にも文科省のトップだった行政官が、実名も顔もさらした上で「怪文書」など出すだろうか。ネット上では、「前川元次官の爆弾発言は、天下り問題で任期半ばにして詰め腹を切らされた腹いせだ」といった、明らかに官邸周辺から発信されたと思われる情報がもっともらしく流布されているが、これも印象操作の一つと考えざるを得ない。
実際、「280926 藤原内閣審議官との打合」というファイルも発覚しており、「総理の圧力」の裏付けこそ取れていないが、内閣府と文科省の担当者間での協議において、「総理のご意向」が働いたことは間違いないといっていいだろう。
○突然出番が回ってきた国家戦略特区の中心人物
ファイル名にもなってしまった内閣府審議官、藤原豊(62年入省)は、経産省からの出向者で、霞が関では「国家戦略特区」の中心的人物として知られる。
戦略特区は、小泉政権時代の規制緩和策として採用された「構造改革特区」にその原点を見ることができる。ちなみに初代特区担当相は、鴻池祥肇参議院議員(麻生派)だ。
「当時、藤原さんは特区の中心人物で、竹中平蔵・現国家戦略特区諮問会議議員や、三木谷浩史・楽天会長との太いパイプはこの時にできたものです」(当時の特区室担当者)
その後の自民党の凋落とともに、特区ブームも衰退。藤原を除く特区室のメンバーは、次々と霞が関を去った。民間企業に転職した者もいる。民進党の後藤祐一や福島伸亨など、政界に転出したメンバーも珍しくない。
彼らは、「構造改革特区組」と特区室の中でも区別されていて、考え方も行動も他のメンバーより急進的だった。それがために、役所を去らざるを得なかったと見られている。一方、藤原のように残留したメンバーは、冷や飯食いが続いた。それが、民主党政権を経て、安倍政権の誕生をきっかけに、突然、出番が回ってきたのだ。
○血を吐くまでやれと命じられ無理をせざるを得なかった藤原
しかも今回は、究極的には大蔵族だった元首相の小泉純一郎の指揮下ではなく、経産省びいきである首相の安倍晋三が、成長戦略の一つとして掲げるほどの力の入れようだ。首相の政務秘書官である今井尚哉(57年入省)、第一次政権からの側近である長谷川栄一広報官(51年入省)の強力なバックアップに加え、応援も見込めるという追い風的環境だ。
だが、それが逆に、「必要以上に無理をせざるを得なかった要因ではないか」と、藤原と交流のある内閣府の官僚は指摘する。
「藤原さんは、前川さんとは別の意味で毀誉褒貶のある人だが、信念の官僚。特区を活用して岩盤規制に斬り込みたいと真剣に思い、実行した。だが、安倍首相主導という政策ゆえに、かかる期待もまた大きかったのだろう。上司から、“血を吐くまでやれ”と檄を飛ばされていたほどだ。加計の獣医学部の背景は別として、藤原さんは、獣医学部の新設は必要と考えていたし、10年近く検討課題にされ続けていた案件を、機に乗じてまとめたいと考えるのは、仕事ができる官僚なら当然のことだ」(内閣府の官僚)
今回の過程で起きた、獣医師会の意を受けた農水省と文科省、そして厚労省の引け腰も、役所の縦割り行政を否定する藤原にとっては、許しがたいことだったのかもしれない。
○財務省の最強チームを相手に徹底抗戦した前川
しかし、前川もまた“信念の官僚”だった。二人は育ったバックグラウンドや手法こそ異なるが、タイプとしてはよく似ている。永田町に広い人脈を持ち、政治家への説明も上手ければ、“寝技”もできる。時流を見極める感覚があり、国民の声を反映した政策に官僚生命までも賭そうとする…。少々褒めすぎかもしれないが、前川はそんな官僚だった。
筆者が、前川元次官の名前を知ったのは、小泉政権の時代である。“聖域なき構造改革”をスローガンとし、「三位一体の改革」を推し進めた。これは国と地方公共団体の行財政システムを改革するという壮大なものだった。柱は(1)国庫補助負担金の廃止・縮減、(2)税財源の移譲、(3)地方交付税の一体的な見直しの大きく三つだった。
この過程で、存廃の対象となったのが、文科省の「義務教育国庫負担制度」だった。小泉元首相の意を受けた財務省は、「財源を地方公共団体に移譲した上での一般財源化」を主張し、地方6団体の同意を取り付けた。
この時の財務省側のメンバーがすごかった。当時、主計局次長で後に次官を務めた勝栄二郎(50年入省)を中心に、やはり後に次官となる香川俊介(54年入省)らが脇を固めるという最強のチーム。この時点で、義務教育国庫負担金は廃止が決定したようなものだった。
ところが、そこに立ちはだかったのが、前川を始めとした「チーム前川」とも呼べる中堅文部官僚の一派だ。
当時の前川は、初等中等教育局初等中等教育課長で、省内に理念と志を同一にする「奇兵隊」を組織し、財務省とそのバックにいる小泉、当時の懐刀だった幹事長の安倍(05年より内閣官房長官)に対して徹底抗戦を見せたのだった。
この頃、前川らの動向に対して官邸周辺からはこんな情報が発信されていた。
「文科省予算約4.5兆円のうち、ざっくり3兆円が文部省予算で、その半分が義務教育国庫負担金だ。つまり、旧文部官僚のパワーの源泉であり、彼らがどうしても守りたい既得権益なのだ」
それに対して前川は、「奇兵隊、前へ」というブログを開設し、さらには「月刊現代」に寄稿して、義務教育費の削減は道理が通らないということを声高く主張した。現役官僚が、時の総理が推進する政策に真っ向から盾突くのは、霞が関の常識ではあり得ないことで、相当な物議を醸した。
だが、旧文部官僚のほとんどが陰に日向に前川を支持していたこと、また当時の文教族の力が小泉・安倍が所属する清和会の中でも圧倒的だったことなどから、一時は「廃止」が確定していた義務教育国庫負担金は、3分の1にまで戻す形で決着したのだった。
ちなみに、当時の文教族議員と言えば、元総理の森喜朗を筆頭に、「文科(旧文部)大臣経験者でなければ族議員でない」と言われるほど人材が豊富だった。町村信孝、故鳩山邦夫、伊吹文明など、そうそうたる顔ぶれだ。彼らの後押しを受けて政策が揺り戻されたことは容易に想像がつく。
興味深いのは、元総理の中曽根康弘の子で、前川の義弟にあたる参議院議員の中曽根弘文が1999〜2000年にかけて文部大臣の職にあり、やはり文教族の重鎮だったということだ。
少々、話は脱線するが、前川を理解するために、彼の出自を見ていこう。前川の家がかなりの名家だということは、霞が関内では知る人ぞ知る情報だ。
出身は奈良県で、前川家は旧家だった。祖父の代に上京し、総合機械製造業の前川製作所を設立。現在は叔父が3代目を継いでいる。もう一人の妹はレストランチェーンを中核事業とする一部上場企業の会長夫人。元文部大臣である弘文の娘は、日本交通の3代目社長に嫁いでいて、前川を「キヘイ叔父」と呼び慕っている。縁戚は、鹿島建設の鹿島家とも繋がる。
そうした出自の前川が、記者会見で首相補佐官の和泉洋人が「総理は自分の口から言えないから私が代わって言うと言った」と証言し、再び政権の掲げる政策のあり方に真っ向から異を唱えた。
その姿は、文教族の内部闘争の延長のようにも感じられる。現在、文教族の世界では、下村博文を始めとする清和会系で安倍のお友達や、親衛隊の台頭が著しいからだ。
○“前川の乱”に追い詰められる首相
そうした中、突如、読売新聞が報じた、前川の「出会い系バー」出入りの報道は、“前川の乱”ともいうべき行動に、安倍が思いの外、追い詰められていることの裏返しである印象を受ける。前川は、自らの立場を考えればもう少し慎重になるべきであったが、貧困女子の実態を調査していたという「出会い系バー」で、彼と性的関係を持ったという女性は一人も出ていないからだ。
また、安倍が参議院本会議という公の場で、「プロセスは関係法令に基づき適切に実施しており、圧力が働いたことは一切ない」と弁明せざるを得なかった。これもまた、安倍自身、そしてその周辺が追い詰められている証左なのではないだろうか。
加計学園にまつわる問題は未だ謎に包まれており、もしかしたら全容が解明される日など来ないかもしれない。しかし、いずれの官僚も、自らの信念の元に政策を推し進めようと奔走した。にもかかわらず、官僚に本来の姿を失わせ、事態を複雑化させたのは政治家たちであり、諸悪の根源は安倍、その人にあるのではないか。
前川と藤原──。加計学園問題で登場した、似た者同士の二人を見るとき、政治に翻弄された“官僚の悲哀”を感じずにはいられない。 
■木曽功内閣官房参与の行動 6/9
学校法人加計学園の獣医学部新設をめぐる木曽功内閣官房参与(当時)の行動に関する質問主意書
平成二十九年六月一日提出 質問第三五五号 宮崎岳志
元文部科学省幹部で、昨年九月まで内閣官房参与を務めていた木曽功氏は、参与在職中の昨年四月から学校法人加計学園の理事と同学園が運営する千葉科学大学の学長に就任し、同年四月から九月にかけて内閣官房参与と千葉科学大学長兼加計学園理事を兼務していたと承知している。
一 木曽功氏は参与在職中の昨年四月から九月までの間に、前川喜平文部科学事務次官(当時)と面会し、国家戦略特区で獣医学部新設を可能とする規制改革事項について話したことはあったか。あったとすれば面会の趣旨、日時、場所及び具体的な話の内容を示されたい。
二 木曽功氏は参与在職中の昨年四月から九月までの間に、国家戦略特区担当の事務方トップである藤原豊内閣府地方創生推進事務局審議官と面会し、国家戦略特区で獣医学部新設を可能とする規制改革事項について話したことはあったか。あったとすれば面会の趣旨、日時、場所及び具体的な話の内容を示されたい。右質問する。
衆議院議員宮崎岳志君提出学校法人加計学園の獣医学部新設をめぐる木曽功内閣官房参与(当時)の行動に関する質問に対する答弁書
平成二十九年六月九日 内閣総理大臣 安倍晋三
一及び二について
お尋ねの「国家戦略特区で獣医学部新設を可能とする規制改革事項」の意味するところが必ずしも明らかではないが、木曽内閣官房参与(当時)が、平成二十八年四月から九月までの間に、前川文部科学審議官(平成二十六年七月二十五日から平成二十八年六月二十日まで)又は前川文部科学事務次官(平成二十八年六月二十一日から平成二十九年一月二十日まで)と面会して、「「日本再興戦略」改訂二〇一五」(平成二十七年六月三十日閣議決定)において示された方針を前提として検討が続けられていた獣医学部の新設について話した事実は確認できない。
また、同参与(当時)が平成二十八年四月から九月までの間に藤原内閣府地方創生推進事務局審議官と面会したか否か等については、同審議官が平成二十九年四月二十一日の衆議院地方創生に関する特別委員会等において答弁したとおりである。 
■政府が「確認」できなかった今治市の首相官邸訪問 6/9
学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題。予定地の今治市職員が、学園が新設の申請をする直前の2015年4月に首相官邸を訪問したとされることについて、政府が「確認ができない」と答弁し、「説明責任を果たしていない」との批判があがっている。
これについて、今治市の担当者が首相官邸の訪問を認め、目的が「獣医学部新設を含んだ特区提案について、陳情や要望活動」の一環だったと、6月9日、BuzzFeed Newsの取材に答えた。
この問題は、野党が国会で追及しているもの。出張日程などを申請した今治市の行政文書から、市の企画課長と課長補佐が、2015年4月2日、内閣府などに加え、官邸を訪れていたことが判明したという。
今治市が特区による獣医学部新設を申請したのは、2015年6月のこと。正式決定は2017年1月のことだ。
そのため野党側は「事前の調整があったのでは」としているが、政府はこれまでの国会答弁で「訪問者の記録が保存されていない」「確認できない」との立場を貫いており、批判があがっていた。
○今治市は「事実です」
一方、今治市の担当者は6月9日、BuzzFeed Newsの取材に対し、2015年4月9日に官邸を訪問した事実を認めた。
市企画課の課長補佐はこう語った。
「獣医学部を含んだ特区提案について、国に向いて陳情や要望活動をしているので、その一環としてその職員2名が官邸を訪問したことは事実です」
首相と会ったのだろうか。その点については、こう回答を控えた。
「相手方や内容については今治市情報公開条例の趣旨により、お答えは差し控えさせていただいている」
この2年間、同様の目的で官邸を訪問したことはないという。
○「スケジュール案が示されていた」という指摘には…
また、2016年10月28日にも今治市の課長らが内閣府を訪れ、今後のスケジュール案や論点などを話し合っていた、との指摘もされていた。
政府の国家戦略特区諮問会議(議長・安倍晋三首相)が獣医学部新設を認めたのは、2016年11月9日。その直前に、「すでに今治ありきだったのではないか」という指摘だ。
この目的は内閣府との「協議」だったという。また、資料についても内閣府ではなく、「今治市が用意したもの」と説明した。
「成田市の特区による医学部新設のスケジュールを参考にし、市長が2016年3月議会で獣医学部新設のスケジュール案を表明しました。協議では、その想定スケジュールを内閣府側に示したのです」
○今治市は問題をどう見ているのか
渦中にある今治市の担当者として、国会で日々議論されているこの問題をどう見ているのか。
「今治市は2007年から規制緩和の提案をしてきた経緯があります。足掛け10年にわたって提案をしてきたその成果がまさに出ようとしている段階です」
「国レベルの話ですので、私らが関与する余地がございません。とにかく、文科省における獣医学部の設置認可審査がしっかりと、厳正に行われることを見守りたい」
今治市として、「行政が歪められたり、忖度が働いたりした」との疑惑があることについて、どう捉えているのか。そう聞くと、課長補佐は少し間を置いて、こう語った。
「まったく予期していないことです。私らは関知しておりませんので、国会で検証されるものと思っております」 
■菅官房長官、加計文書存在しても政権に影響「ない」 6/10
安倍政権は9日、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる「総理のご意向」などの文書について、これまで拒否してきた再調査に一転、踏み切る方針を決めた。
安倍政権が再調査を決めたのは8日夜。それに先立つ菅官房長官の会見が「炎上」したのが大きな決め手になったとする見方もある。菅氏は調査の必要なしとの認識を示したが、30以上の関連質問を浴びせられた。菅氏が質疑で追い込まれるのは珍しく「文科省の自主判断」としていた官邸も再調査にかじを切った。菅氏は9日、文書について「信ぴょう性がよく分からない」とあらためて表明。再調査で文書の存在が明らかになった場合の政権への影響は「ないと思う」と述べた。一方、萩生田光一官房副長官は「資料が実在したとしてもその紙(の内容)自体が正しいかどうかは、その次の話」と、けん制した。
 

 

■安倍官邸と文科省が全面戦争に突入 6/16
ゲスの極みとはまさにこのことだろう。本日、内閣府が徹夜で調査したという結果を公表したが、それは鬼畜の所業というべきものだった。
昨日、文科省は昨年11月1日に内閣府から送られたメールをあきらかにしたが、添付書類には獣医学部新設の条件についての原案に「現在、【広域的に】獣医師系養成大学等の【存在し】ない地域に【限り】」と、【】内の文言が手書きで書きくわえられていた。この文言によって、事実上、京都産業大学はふるい落とされたわけだが、メール本文では〈添付PDFの文案(手書き部分)で直すように指示がありました。指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです。〉と書かれていたのだ。
萩生田光一官房副長官が内閣府に指示をし、加計学園しか選ばれない条件を出した──。これは加計学園ありきを官邸が主導し内閣府が実働していたことの決定的な証拠だが、本日の参院内閣委員会で山本幸三地方創生相は、「『広域的に限る』ということは、私の指示で内閣府において入れた」と答弁し、内閣府の藤原豊審議官も「追記するようにという指示を受けて、私が手書きで文案に修正を加えた」と言い出したのだ。
「大臣の指示」を、どうやったら無関係の官房副長官からの指示だと書く必要があるのか。そんなことを間違える官僚などいるわけがない。
ようするに、安倍首相の側近中の側近である萩生田官房副長官の指示だったとなると「イコール安倍首相の意向・指示」ということになるため、担当大臣である山本地方創生相と藤原審議官に詰め腹を切らせるというシナリオをつくったのだろう。
「山本地方創生相は、事後的につくられたとの疑惑がある獣医学部新設をめぐる3大臣合意文書の件でもそうでしたが、基本的に官邸の言いなりです。しかも金銭スキャンダルもあって弱みも握られている。官邸としては、萩生田副長官は首相の側近中の側近で官邸の司令塔だから変えるわけにはいかないが、山本地方創生相は内閣改造などいいタイミングで首を挿げ替えれば済むと考えているのでしょう」(大手紙官邸記者)
しかも、山本地方創生相が責任を引き受けたわけではまったくない。内閣府の調査では、この萩生田指示メールについて、「(メールを作成した職員が)担当者から伝え聞いた曖昧な内容であって、事実関係を確認しないままメールを発信」と一官僚に責任を押し付け。まったくバカバカしいにも程がある言い訳だが、さらに山本地方創生相はあからさまな個人攻撃をはじめた。本日の記者からの取材や参院予算委員会の集中審議で、山本地方創生相はこんなことを口走ったのである。
「メールを作成した職員は文科省からの出向者で、陰に隠れて本省にご注進した」
「職員は課内で飛び交っている話を聞き、確認しないまま書いた」
文科省から出向してきた“スパイ”が嘘の情報を流した──。出向者とはいえ、メール送信者は立派な内閣府の職員であり、山本地方創生相の部下だ。それを「諜報員」扱いして、メールを否定する材料にするとは。森友学園問題では安倍昭恵夫人付きだった秘書の谷査恵子氏が「勝手にやったこと」として責任を押し付けられたが、これはそれ以上の攻撃だ。
そして、これは、官邸および内閣府から文科省に対する「報復宣言」でもある。大手紙官邸記者は、「いま、文科省と官邸・内閣府は全面戦争に突入している」と言う。
「文科省の職員たちのあいだでは“違うものは違うとはっきり言おう”という気運が高まっていて、萩生田官房副長官の関与を裏付ける証拠となるメールと文書を出したのも、もはや文科省幹部もそうした職員たちを抑えきれないから。もともと文科省は加計学園問題に限らず教育改革などもあり、宮内庁とならび安倍政権のもっとも強い圧力に晒されてきた省庁で、相当フラストレーションが溜まっている。天下り問題で狙い撃ちされ、さらに人望のある前川氏を官邸が個人攻撃したことで不満が爆発、一気に流れができたんです」
再調査で出てきたメールを調査結果として出さなければ、「握り潰された」と職員たちはマスコミに証言する。そのほうがはるかにダメージは大きい。……そうした判断で文科省は爆弾メールをあきらかにしたが、一方の官邸はこれに大激怒した。
「当初、官邸が描いていたシナリオでは、文科省の再調査結果の公表を受けて、ほとんどの内部文書を作成した高等教育局の課長補佐の女性に責任を押し付けるつもりだった。それが、文科省は内閣府職員が送信した萩生田官房副長官の関与を示すメールを出してきた。そこで官邸と内閣府は、『広域的に』『限る』という文言を追加したのは萩生田官房副長官ではなく山本大臣が指示したものだと発表することに決め、さらには『文科省からの出向者の策略』として、文科省を徹底攻撃することにしたんです」(同前・大手紙官邸記者)
事実を公表した文科省に対し、敵意を剥き出しにする内閣府と官邸。これまでも省庁同士が水面下で暗闘を繰り広げることはあったが、一省庁が内閣に反旗を翻す政府内不一致がここまで表沙汰になったのは前代未聞のことだ。安倍政権お得意の情報操作や謀略で、文科省を抑え込むことは難しいだろう。
いずれにせよ、官僚ひとりを槍玉にあげて収束をはかろうとするとは極悪非道としか言いようがないが、しかし、そのような説明で納得できるはずがない。
実際、すでに内閣府側や安倍首相の答弁は、まったく整合性がとれていない。そもそも、萩生田官房副長官の関与を示すメールについて、山本地方創生相は「課内で飛び交っている真偽不十分な情報を送信した」などと言うが、なぜ内閣府の課内で、官邸の人間の名前が飛び交ってなどいるのか。また、内閣府の藤原審議官は、内部文書が作成された時期に文科省との会合に出たことは認めながらも「この時期の記録は内閣府にはない」と強弁するが、今回のメールは内閣府から送信されたものであって、内閣府に記録が何も残っていないはずなどないのだ。
しかも、山本地方創生相は本日午前に行われた参院内閣委員会で、民進党の櫻井充議員から「なぜ『広域的に』という文言をわざわざ入れたんですか?」と質問された際、こんなことまで口にしている。
「もともと獣医師系の大学のないところで限定しようという意図でやっているわけでありますが、文科省等の意見のあいだでですね、それだけではまだほかにもですね、ほかにもいろんなところででき得る可能性も出てくるじゃないかと。そういう意味からですね、『広域的』ということで、少し広げて制限しようと考えたわけであります」
加計学園以外の“ほかの大学”でもいろいろ獣医学部新設ができてしまうのはまずいから、「広域的に」という文言を入れて「制限した」──。ようするに山本地方創生相は、「ほかを制限するために『広域的に』という文言を追加した」と答弁したのだ。これは「加計学園ありき」であることを認めてしまったようなものだ。
さらに醜いのは安倍首相だ。安倍首相はきょうの集中審議で、「『広域的』といっても、京都産業大学も残る可能性があるということを念頭に置いていた」などと噴飯ものの苦しい答弁を行ったのだ。繰り返すが、京産大は獣医学系の学部をもつ大阪府立大学が近県にあるため、「広域的」「限る」という文言に阻まれて事実上、断念せざるを得なかったのではないか。だいたい、今治市が公開した資料からは、加計学園の獣医学部新設を前提にしていた事実しか浮かび上がってこない。いまさらこんなことを言っても、何の説得力もないのだ。
これだけの証拠が出揃いながら、官僚を責め立てることで逃げ切ろうとするなど、もってのほか。文書を「怪文書」扱いしてきた菅義偉官房長官の責任問題だってある。国会を閉会させたあとは問題を有耶無耶にし、内閣改造でこっそり山本地方創生相の首を切れば収束させられるとでも考えているのだろうが、国会が終わっても追及をつづけ、安倍首相にはきっちり落とし前をつけてもらおうではないか。
■山本地方創生相が官僚に責任なすりつけ? 6/17
国会会期末直前の6月16日、参院予算委員会では学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐる問題の集中審議が開かれた。
この日の審議では、萩生田官房副長官が加計学園に有利になるような条件を指示したとする内閣府から文科省に送られたメールについて、山本幸三・地方創生相が「(送信したのは)文科省から出向してきた人で、陰で隠れて本省の方にご注進したようなメール」と、官僚を非難するような発言をし、議場が紛糾する場面があった。
○「総理のご意向」文書、文科省と内閣府で見解食い違う
内閣府が「総理のご意向」「官邸の最高レベル」などとして、文科省に対し早期開学を促していたとされる文書をめぐり、文科省と内閣府の見解が食い違っていることを受けて、野党側は山本幸三地方創生相や、萩生田光一・官房副長官を追及した。
文科省は15日、加計学園をめぐる文書が存在するか再調査した結果の結果、「総理のご意向」などと記された文書など14の文書を確認したと公表。「内閣府からそのような発言があった」と文科省職員が認識していたことを明らかにした。
さらに文科省は、国家戦略特区での獣医学部新設の事業者選定の要件について、萩生田光一・官房副長官が内閣府に対し、実質的に加計学園しか応募できなくなる要件を指示したとされるメールも公表した。
メールは2016年11月1日、内閣府の地方創生推進事務局から文科省の行政改革推進室に送信されたものだとされる。文面には「添付PDFの文案(手書き部分)で(選定要件を)直すように指示がありました。指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです」と記されている。このメールから8日後、安倍政権の「国家戦略特区諮問会議」は、52年ぶりの獣医学部新設を可能とする決定を下した。
「藤原審議官」とは、内閣府で規制改革を担当する藤原豊審議官を指すものだとされる。「総理のご意向」「官邸の最高レベル」と発言したとされる人物だ。また、萩生田官房副長官は、落選中に加計学園系列の大学で客員教授を務め、報酬を得ていた。また、現在も系列大の「名誉客員教授」の肩書を持っている。
これに対し、山本地方創生相は、16日午前の記者会見で内閣府の調査結果を公表。関連する文書は「8種類あった」と明らかにした一方、「内閣府から文科省に、個別の項目や個別のプロジェクトについて『官邸の最高レベルが言っている』とか『総理のご意向』などと伝えた認識はなく、また総理からもそうした指示などは一切なかった」と話した。
○藤原審議官「『総理のご意向』『官邸の最高レベル』と伝えていない」
文科省と内閣府、それぞれの調査結果に差異が見られることから、16日の参院予算委員会では野党が批判を強めた。質問に立った民進党の福山哲郎氏は、予算委員会に呼ばれた藤原審議官に対し「『総理のご意向』『官邸の最高レベル』と発言した記憶はあるか」と問うた。
藤原審議官は「文書やメールの有無にかかわらず、文科省の管理職との面談において、獣医学部新設という個別項目について、『官邸の最高レベルが言っている』『総理の意向と聞いている』と伝えた認識はない。総理からもそうした指示は一切ない」と、文科省の調査結果と食い違う証言をした。
○萩生田・官房副長官「獣医学部新設要件の指示していない」
また福山氏は、萩生田官房副長官が内閣府に対し、実質的に加計学園しか応募できなくなる要件を指示したとされるメールについても追及した。
文科省が公表したメール文書では、「藤原審議官曰く、萩生田副長官の指示」などと記されていたことから、福山氏は藤原審議官に「要件の文案に手書きで手を加えてくれと萩生田副長官からの指示として、文科省にお願いしたことはあるか」と質問。
これに対し藤原審議官は「山本大臣が、文科省意見で指摘された日本獣医師会等の理解を得やすくする観点から、対象地域をより限定するご判断をされた。『広域的に限る』と追記するよう指示を受け、私が手書きで文案に修正を加えた」と説明し、萩生田副長官からの指示ではなかったとした。
その上で、「こうした一連の情報は直属の部下にしか伝えていない。本件メールの作成者、送信者は直接の部下ではなく、一切伝えていない」と、自身の関連を否定した。
福山氏は萩生田副長官にも「副長官からの指示と書かれているが、指示を出したのか」と質問したが、萩生田副長官は「とりまとめ文案に私が修正の指示をしたことはまったくない。昨日文科省が公表したメールにはたいへん戸惑いを感じている」と自らの関与を否定。文科省の再調査結果に疑問を呈した。
○山本地方創生相「陰で隠れてご注進したメール」⇒野党は猛反発
萩生田副長官が指示したとされるメールについては、山本地方創生相も答弁に立った。ところが、「(メールの作成者は)文科省から出向してきた人で、まあ不適切なことでありますが、陰で隠れて本省の方にご注進したようなメールだ」と、職員を非難する発言をした。これには野党側が反発し、「えー!?」という声が一斉に上がり、議場が紛糾した。
福山氏は「安倍政権は何か起きると、必ず役人のせいにして責任を押し付ける。森友のときの財務省も気の毒だったが、文科省も内閣府も気の毒だ」と強く批判した。 
■波紋広がる“特区選定” 〜独占入手 加計学園“新文書”〜 2017/6/19
学校法人「加計学園」が計画している獣医学部の新設。地域を限定して大胆な規制緩和を行う国家戦略特区制度を活用し、52年ぶりに認められた。今回の選定について政府は「すべて適切に行われた」としているが、一方で「行政がゆがめられた」との声も上がっている。選定の過程で公平性や透明性は保たれていたのか?経済成長をめざす特区制度はどうあるべきか?独占入手の資料や証言などをもとに特区制度をめぐる問題の深層に迫る。
独占入手・加計学園 “新文書”とは
── 学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関する新たな文書を入手しました。
文部科学省の追加調査で存在が確認された、加計学園の獣医学部新設をめぐる14の文書。NHKは今回それらとは別の新たな文書を入手しました。事業者が選定される前から政権幹部が加計学園の名前を出して指示していたと記されています。
文部科学相 現役職員 「これは安倍総理の関係する総理マターである。十分な議論がないままに結論まで行ってしまった。」
公平性、透明性の確保が求められている「国家戦略特区」の選定。
菅官房長官 「圧力が働いたり、行政がゆがめられたことは一切ない。」
── 選定は適切に進められていたのか。検証します。
鎌倉 / そもそも獣医学部の新設は、52年間、認められてきませんでした。獣医師の数は足りているとして、新設に規制が設けられていたからです。
それが4年前、第2次安倍政権の成長戦略の柱として、国家戦略特区の制度が始まります。地方自治体などからの提案に基づいて、内閣府に設置された総理大臣を議長とする諮問会議が、トップダウンで大胆な規制緩和を進めるのが、そのねらいです。
去年(2016年)の1月、まず国家戦略特区の対象の地域として、愛媛県今治市が新たに指定されました。その年の11月、国家戦略特区で扱える事業として、獣医学部の新設が加わります。そして今年(2017年)の1月、加計学園が、その事業者に選ばれました。先週、「総理のご意向」などと書かれた文書の存在が確認されましたが、そのほとんどは、獣医学部新設が決まる前の時期のものです。そしてこのころ、すでに加計学園に言及したものがあったことから、野党からは加計ありきだったのではないかという疑問の声が上がっています。
── 今回、私たちは、この時期に書かれたとされる新たな文書を入手しました。萩生田官房副長官が文部科学省の担当者に対して指示したとする内容をまとめたものです。「文科省だけが怖じ気づいている」「官邸は絶対やると言っている」などと記されています。NHKの取材に対し、文部科学省の複数の現役職員が、この文書は省内で共有されていたことを証言しています。
国家戦略特区では、特定の自治体や事業者にだけ規制を緩和することになるため、選定にあたっては公平性や透明性が極めて重要になります。加計学園の獣医学部新設をめぐるプロセスは、適切だったのでしょうか。
加計学園“新文書” 特区選定で何が?
今治市にある、獣医学部の建設予定地の映像です。3か月前、加計孝太郎理事長をはじめ学園の関係者が一堂に会して起工式が行われました。来年(2018年)4月の開学を目指し、急ピッチで工事を進める加計学園。
獣医学部の新設は長年の悲願でした。加計学園は10年前から今治市などの提案の中で新設を希望してきましたが認められませんでした。
状況が大きく変わったのが、国家戦略特区制度が出来た平成25年。
この制度は、いわゆる「岩盤規制」を突破するため、内閣府に設置された総理大臣を議長とする諮問会議がトップダウンで、どの地域で、どの規制を外すかを決めるものです。
安倍総理大臣と40年来の友人である加計理事長に便宜が図られたのではないか。安倍総理大臣は再三、否定してきました。
民進党 斎藤参院議員 「加計理事長は心の奥でつながっている腹心の友ということをおっしゃっていますが。」
安倍首相 「加計学園から私に相談があったことや、圧力が働いたことは一切ない。」
特区の指定を行う諮問会議の議員は、会議でのプロセスは適切だったと語りました。
国家戦略特区諮問会議 竹中平蔵民間議員 「これまでの準備の状況から、今治が適切だと全員一致で判断した。一点の曇りもないプロセスであったと理解しています。」
今回の取材で、ある人物が安倍総理大臣の名前を使って加計学園を売り込んでいたとするメールの文書が見つかりました。文部科学省のOBで、後に加計学園の理事となる豊田三郎氏。豊田氏は、今治市が特区に認定されるより前の平成27年文部科学省の職員と会い、新設に向けた意気込みを語ったとされています。職員が書いたメールには「安倍総理大臣と親しい」としたうえで学部新設に力を入れていくと豊田氏が伝えた様子が記されています。
“安倍総理の留学時代のご学友である現理事長と安倍総理と食事をする仲になった。いざ総理が進めたときに『お友だち内閣ですね』と週刊誌などに書かれないように、中身をしっかりしたものにしないと総理に恥をかかせることになるから、ちゃんと学園として構想をしっかりしたものにするよう、私からは(理事長に)言っている。”
このメールの内容を共有していた、文部科学省の現役職員です。加計学園は獣医学部の新設で無視できない存在として省内で認識されるようになっていったといいます。
文部科学相 現役職員 「政治家が関係する案件を“マル政”案件と言ったりしますけれど、政治的に事が進められる可能性が高い案件という意識を持っていた職員は多いと思います。」
特区選定の背景には、獣医学部の新設を長年にわたり認めてこなかった文部科学省と、特区を進める内閣府とのせめぎ合いがありました。諮問会議は獣医学部新設の地域について新潟市や京都府なども手を挙げる中、今治市を選び、今年1月、事業者は加計学園に決まりました。そのプロセスは公平だったのか。加計学園に決まる3か月前の去年11月、ある条件が加えられていたことについて、一部に疑問の声が上がりました。
先週、文部科学省の追加調査で公表された文書。新設の条件に「広域的に」や「限り」などの文言が手書きで挿入され、獣医学部がない空白地域に限定されることになったのです。
これは、獣医学部がない四国での新設を目指す加計学園を念頭に置いたものではなかったか、修正を指示したのではないかと、野党から追及を受けたのが萩生田官房副長官です。
民進党 福山参院議員 「萩生田副長官から指示が出て、これを修正しろと言われたと。」
萩生田官房副長官は全面的に否定しました。
萩生田官房副長官 「わたしは修正の指示をしたことはありません。」
国家戦略特区を担当する山本地方創生担当大臣は、文言の修正をしたのは自分の判断だとしたうえで、次のように説明しました。
山本地方創生相 「広域的とか、わたしが決めたのですから、わたしに聞いていただきたい。最終的に広域的に限られていることは、獣医師会等の議論を踏まえてわたしが最終的に決断して(去年)11月9日の特区諮問会議の結論になったわけであります。」
山本大臣は修正の理由について、「諮問会議の有識者の意見を受けたことに加え、獣医師の増加を懸念する獣医師会の要請に配慮したもので、他の地域を排除する意図はなかったとしています。
しかし、同じく手を挙げていた京都府と京都産業大学の中には、異なる受け止めをした人もいました。
京都府 畜産センター 上村浩一所長 「この辺一帯を、獣医学部を設置する予定地と当時は考えておりました。」
新設に向けた提案を中心となって作成した京都府の職員、上村浩一さんです。上村さんは、提案を採用してもらおうと入念に準備を進めてきました。
内閣府に出した提案書です。iPS細胞を使った再生医療など、最新技術を持った獣医師を育てるとしていました。
そこに立ちはだかったのが、新たに追加された条件だったといいます。同じ関西地域には、すでに別の獣医系の学科がありました。
京都府 畜産センター 上村浩一所長 「新たな規制を出したということ、それに対する条件が合わないというのが京都府であると。」
京都府と共同で新設を目指していた京都産業大学。提案の作成に関わった松本耕三元教授は、選考のプロセスに納得できないといいます。
京都産業大学 松本耕三元教授 「広域的にないところ、まさに後出しジャンケンでそういうことされたら、それは負けますわね。(京都は選定の)テーブルには乗っていないでしょうね。」
加計学園の選定は公平に進められたのか。NHKは新たな文書を入手しました。
去年10月21日、萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会し、官邸や内閣府の考えを伝えた発言をまとめたとするものです。「広域的に」という文言が手書きで加えられたのと同じ時期です。
この文書はNHKの取材で、文部科学省の少なくとも3つの部署のおよそ10人の職員が共有していたことが分かっています。この時期は、事業者が加計学園に決まる3か月前。まだ獣医学部の新設さえ決まっていないころでした。しかし、文書にはこのときすでに「加計学園」という名前が挙げられていました。そして、開学の時期まで区切り、文部科学省に早く進めるよう迫る内容が記述されていました。
“内閣府や総理補佐官と話した。総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた。工期は24か月でやる。今年11月には方針を決めたいとのことだった。”
“補佐官からは、農水省は了解しているのに文科省だけがおじけづいている。何が問題なのか、整理してよく話を聞いてほしいと言われた。官邸は絶対やると言っている。”
獣医学部の新設には、生命科学など新たな分野に対応できる獣医師の養成など、4つの条件が閣議決定されていました。文部科学省は、加計学園がこの条件を満たしていないと見ていました。
文書には、萩生田官房副長官が今治市のある四国で条件をクリアするための具体的なアドバイスをしたと記されていました。そして、萩生田官房副長官は加計学園の事務局長を文部科学省の課長に会いに行かせると伝えたと記されています。
文部科学省は文書に書かれていたとおりの動きをします。6日後、担当者が加計学園の事務局長と省内で会っていたことが取材で分かりました。
NHKが入手した別の文書です。加計学園に対して文部科学省が、獣医学部の新設が決まる直前に、条件をクリアするための課題について具体的に伝えていたことも分かりました。
文書を保管していた文部科学省の職員は、加計学園ありきの指示だと受け止め、本来、文部科学省として慎重に精査すべき手続きが行われなかったと語りました。
文部科学省 現役職員 「おかしいというふうに思っていても、それに従わざるを得ないところがありますし。本来決めるべき(条件の審査の)ステップを踏まないで押し切ったというところはやっぱりあるんじゃないかと思います。」
萩生田官房副長官 “新文書”への回答
── 今回明らかになった、萩生田官房副長官の発言をまとめたとされる新たな文書について、萩生田官房副長官はNHKの取材に対し、先ほど文書で次のように回答しました。
“加計学園に関連して、総理からいかなる指示も受けたことはありません。具体的に総理から開学時期について指示があったとは聞いていませんし、私のほうからも、文部科学省に対して指示をしていません。官房副長官という立場上、この時期に開催されていた国家戦略特区諮問会議の関連で、文部科学省を含む各省からさまざまな説明を受け、そのつど気付きの点をコメントすることはありますが、私は基本的に報告を受ける立場であり、私のほうから具体的な指示や調整を行うことはありません。加計学園に力を貸すために、和泉補佐官や関係省庁と具体的な調整を行うとか、指示を出すことはありえません。”
(加計学園の事務局長を文部科学省に行かせるとする記述について)
“事務局長という方と、本件やほかの件でもやり取りしたことはございませんし、お名前も存じ上げておりません。したがって、私から文部科学省へ行かせると発言した事実はありません。なお、今回の件では、心当たりのない内容が、私の発言・指示として文書・メールに記載されていることについて、非常に理解に苦しむとともに、強い憤りを感じています。”
加計学園“新文書” 意味するものは
── 今回の文書は、獣医学部新設が決まる前のやり取りをまとめたと見られる。萩生田官房副長官は内容については心当たりがないとしているが、どんな経緯で記されたものなのか?
大河内記者 / この文書ですが、去年10月21日、萩生田官房副長官が文科省の局長と会ったときに、文科省の職員がその発言を記録したというものなんです。NHKの取材では、この文書は少なくとも3つの部署で、10人近くがパソコンなどで保管していたことが分かっています。
── 文部科学省は先週、追加調査で14の文書の存在を確認しているが、なぜ新たにこうした文書が見つかった?
大河内記者 / この追加調査ですが、個人のパソコンについては任意の調査だったんです。提出するかどうかは職員の判断に任されていました。このため、まだ公開されていない文書が残されていたわけです。
── もう1つNHKが入手したメールでは、文部科学省のOBが獣医学部の新設に向けた発言をしたと記載されていた。実際にそうした発言をしていたのか?
大河内記者 / 文部科学省OBの豊田氏ですが、取材に対して「詳しい内容は覚えていない」としていましたが、面会した事実は認めています。このメールについても複数の職員で共有され、保管されていました。
── 国家戦略特区での加計学園の獣医学部新設について、内閣府・文部科学省・今治市とさまざまな機関が出てくるが、どんな構図で特区の選定に関わっている?
原記者 / かなり分かりにくいと思うので、ちょっと大胆に説明します。
民事訴訟を想像していただきたいんですが、今回、今治市、規制緩和を求める自治体、これはいわば訴えを起こす原告になるんですね。その弁護士役を務めるのが内閣府になります。内閣府のもとには全国各地からいろんな規制緩和の要望があり、その中で勝てそうなものを内閣府が選ぶんです。今回であれば、今治が勝てると内閣府は判断したわけです。その場合に、訴えられる側、これは規制官庁、今回の場合では文部科学省になるわけです。その両方のやり取りを聞いて、最終的に決定を下すのが国家戦略特区諮問会議、ここで安倍総理大臣が議長を務めているわけなんですね。
通常の裁判とちょっと違うのは、ここで多くの場合、諮問会議が決定を下すというよりも、この前段階、内閣府と規制官庁の間で和解が成立するんです。今回の場合でも、例えば「広域的に」という文言を入れることで、双方が折り合って、この文言だったら獣医学部設置してもいいということが、国家戦略特区の会議で内閣府の山本大臣と松野大臣を含んだ3大臣が出席した中で決まっているんです。
獣医学部新設 選定は適切だったか
── 諮問会議のメンバーからは、選定のプロセスについて一点の曇りもないという発言が出ているが、これはどういうこと?
原記者 / すべての決定の過程が議事録が残っている上に、オープンにインターネット上でされていると。すべての場所に必要な人が出席して、意思決定をしている中において、間違いが起きるはずがないということなんですね。
さらに先ほど「広域的」という文言もありましたが、有識者の方々は記者会見で、われわれが獣医師会や、規制を緩和したくない文科省に譲歩してなんとか認めてもらうために入れた文言であって、なんらかの変な形で入ったわけではなく、われわれのサジェスチョンで山本大臣が決定したのだと。ですからそこに違法性はない、政府もこうしたプロセスを踏んでることから、手続きが適正に行われていて違法性もないと強調しているわけなんです。
大河内記者 / 今の議論、この透明性というのは確保されていると思います。ただ今回の獣医学部をめぐっては、内閣府と文科省は水面下で交渉を繰り返していました。今回の文書は、先週存在が確認された文書と同様に、そうした水面下での交渉が記録された文書の1つなんです。選定にあたっては、公平性・透明性が保たれたかどうかということは、こうした省庁間の交渉も含めて、検証する必要があるのではないでしょうか。
── この加計学園の獣医学部新設について、安倍総理大臣は先ほど記者会見で、次のように述べました。
波紋広がる特区制度 安倍首相は?
安倍首相 「専門家の育成、公務員獣医師の確保は喫緊の課題であります。そうした時代のニーズに応える規制改革は、『行政をゆがめる』のではなく『ゆがんだ行政をただす』ものです。岩盤規制改革を全体としてスピード感を持って進めることは、まさに総理大臣としての私の意志であります。文書の問題をめぐって対応は二転三転し、国民の皆様の政府に対する不信を招いたことについては率直に反省しなければならないと考えています。国会の開会・閉会にかかわらず、政府としては今後ともわかりやすく説明していく、その努力を積み重ねていく考えであります。」
加計学園“新文書” 政権への影響は?
── この問題、今後の政権運営にはどんな影響がある?
原記者 / 少なからず影響はあると思います。安倍総理大臣は「安倍一強」ともいわれ、高い内閣支持率に支えられて、さまざまな政策を推進してきてるんですね。今日(19日)、安倍総理大臣がみずからの国会答弁にも言及しながら反省のことばを述べたのは、各種世論調査で、内閣支持率が急落していることに対する危機感の表れだと思います。
今週23日には東京都議会議員選挙も告示されますので、そうしたことへの影響を懸念する声も政府・与党内に出ているんです。内閣支持率が回復しなければ、政策の推進力、政権の勢いというものも影響が出ることが予想されますので、安倍総理大臣としては今後、いかに政権の浮揚を図っていくのか、これが課題になると思います。
一方、野党側は、今回の問題をめぐって、証人喚問や閉会中審査を求めています。このとき与党側は、世論の動向なども見極めながら今後の対応を慎重に検討していくものと見られます。
波紋広がる特区選定 専門家の見解は?
鎌倉 / 改めて、規制緩和を大胆に進めるという国家戦略特区、現在、全国10の地域が指定されていて、医療や農業など、さまざまな分野で規制緩和が進められています。そうした中で、公平性や透明性への疑問を生じさせている今回の事態。立場の異なる2人の専門家に、特区選定のプロセスと、制度の意義について聞きました。
まず、国家戦略特区の選定などに当たる諮問会議の民間議員の八田達夫さん。諮問会議での議論においては、公平性や透明性に問題はなかったとしています。
(今回のプロセスは?)
アジア成長研究所 八田達夫所長(諮問会議 民間議員) 「(諮問会議の)議事録をご覧になれば明らか。どこを選ぶか、ひいきするなんてない。公平性は完全に保たれていると思います。」
(どう見る? 国家戦略特区)
「理由のない規制が山ほどある。そして規制の多くが参入規制なんです。国家戦略特区の特質は、総理が議長をする(諮問)会議で、毎月一度開かれて方向性を示す。各省庁に対してリーダーシップを発揮できる制度。私はこれは業界と結びついた各省庁の抵抗を打ち破るには唯一の方法だと思う。これからもこういう機能を強めていかなければいけないと思います。」
鎌倉 / 一方で、国家戦略特区の制度に慎重な立場を取る、立命館大学教授の高橋伸彰さんは、特区選定のプロセスには、検証すべき点は多いと指摘しています。
(今回のプロセスは?)
立命館大学 高橋伸彰教授 「今の政策の進め方は、どうしても実現したいということが前のめりになっていて、効果だけを強調しがちで、本来の政策が持っているさまざまな弊害についてはなんら議論がされていない。」
(どう見る? 国家戦略特区)
「規制を撤廃するならば、規制がどういう効果を生むかだけではなくて、その規制を撤廃することによって、どういう弊害が出てくるかをあわせて議論しなければいけない。単にそこに規制があるから、そこに穴を開ければそれによって経済成長が実現するという見方は短絡的な見方だと思います。」
波紋広がる特区選定 その課題は?
── 特区制度による規制緩和、どうあるべき?
原記者 / 国家戦略特区を利用した規制緩和、これは少子高齢化が進んで過疎化が進む地方の活性化に向けた切り札と、安倍政権は位置づけているんです。スピーディーに規制緩和を進めることで、地方自治体が生き生きとできることをやっていけるようにしたいという思いからなんです。ただ、今回の加計学園の問題で、国民から疑念を持たれてしまったわけです。
安倍総理大臣自身、今日の記者会見で、国家戦略特区の重要性を強調する一方、「信なくば立たず」ということばも述べています。国民の疑念が払拭できなければ、非常にたけている政策も傷ついてしまいますので、まずこの公平・公正なプロセスというのをより高めていく努力、より国民の疑念を招かれないような努力というのが必要だと思います。
さらに、一連の今回の国会審議では、公文書の有無や、捨ててしまったりということも問題になり、多くの時間が国会審議の中で費やされました。ですから公文書の管理の在り方、これは行政をスピーディーに進めるためには、なんでもかんでも残すということになると、遅滞や、話したいことも話せなくなるという問題も当然あるんですけれども、そういう中で、国民に疑念を持たれない公文書管理の在り方、これはやはり政府は模索していく必要があるのではと思います。
── 今後のこの問題についての焦点は?
大河内記者 / 今回の問題の本質ですが、選定のプロセス、これが恣意的に行われていたかどうかということです。文科省と内閣府の水面下の交渉の経緯を示す文書について、これは2つの省庁の間で見解が食い違ったままなんです。専門家からは、真相解明するためには第三者による調査を求める意見も出ています。
もう1つ注目したいのは、加計学園の獣医学部が実際に開学できるかどうかです。特区では確かに新設が認められましたが、開学には文部科学省の諮問会議で認可される必要があるんです。教員の数や学生の定員、それに教育内容というのが新しい獣医学部にふさわしいものなのかどうか審査が続いていて、8月末に結論が出されます。引き続き取材したいと思います。
── 長年続いた規制や制度を一気に変えるためには、国民の政治への信頼が欠かせません。公平性、透明性が求められるのはもちろん、疑念が生じたのであれば、政府には納得のいく説明を尽くしてほしいと思います。 
 

 

前川前文科次官の会見 2017/6/23
前川前文科次官の会見 1
前川喜平前文部科学省事務次官は23日夕、東京都内の日本記者クラブで記者会見し、学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設を巡る問題に関し「第三者性の高い組織で検証される必要がある」との認識を示した。安倍晋三首相が丁寧に説明すると19日の記者会見で表明していることを踏まえ、首相に「先頭に立って説明責任を果たしてほしい」と訴えた。
文科省が20日に公表した萩生田光一官房副長官の「発言概要」とされる文書に関しては「ほぼ事実だと思う」と表明。萩生田氏に関しては「何らかの関与があった可能性が高い」との見方を示した。獣医学部新設のキーパーソンは誰かとの問いには、和泉洋人首相補佐官ではないかと答えた。
文科省が獣医学部新設を巡る規制緩和に抵抗していたとの批判があることについては「文科省は設置認可をする立場で、責任を自覚していた」と述べた。 
前川前文科次官の会見 2
 早期開学促す一連の文書「ほぼ100%間違いない」
学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画を巡り、前川喜平・前文部科学省事務次官が23日、日本記者クラブで会見した。前川氏は文科省の追加調査で明らかになった、内閣府が同省に早期開学を促したとされる文書について「ほぼ100%間違いないもの」と断言した。前川前事務次官の冒頭発言は以下の通り。

前回、私が記者会見したのは1カ月ほど前ですが、国家戦略特区における獣医学部の新設の問題を巡りましてはその後もさまざまな動きがあった。日本記者クラブのご依頼というのもいい機会と捉えまして、会見させていただくことにした。
私には、何ら政治的な意図はない。また、いかなる政治勢力とのつながりもない。「安倍政権を打倒しよう」などという大それた目的を持っているわけでなく、その点についてはぜひご理解をたまわりたいと思っている。都議選の告示日とたまたま今日は重なってしまいましたが、これは単にスケジュール調整の結果であって、政局であるとか選挙に何らかの影響を与えるというつもりは全くない。
また、文科省における再就職規制違反問題があった。私はその責めを負って辞任したという経緯があるが、この問題との関係を臆測する方もいる。あるいは新国立競技場の整備計画、その白紙撤回や再検討といった問題、これとの関係があるのではないかと臆測される向きもある。あるいは私の親族が関与する企業とか、そういったところとの関係もあるんじゃないかと、このような臆測もあるわけですが、これは全て全く関係はございませんのでその点ははっきりさせておきたいと思う。
(前回は)5月25日に会見させていただいたが、その際に私が考えたのは獣医学部新設を巡って、私は行政がゆがめられたという意識を持っており、これにつきましてはやはり国民に知る権利があると思った、ということ。またその事実が隠ぺいされたままでは日本の民主主義は機能しなくなってしまうのではないか、という危機感を持っていたということです。
一部の者のために国の権力が使われるということがもしあるのであれば、それは国民の手によって正されなければならないと、そのためにはその事実を知らなければならないと、そこに私の問題意識がある。
文科省は最初、問題となっている文書について存在が確認できないという調査結果を発表したわけだけれども、その後、追加調査で文書の存在についても認めた。これによって文科省は一定の説明責任を果たしたと思うし、私は出身者として、追加調査を行うことによって隠ぺいのそしりを免れたということはうれしく思う。
松野(博一)文科相も大変苦しいお立場だと思っていて、その苦しいお立場の中で精いっぱい誠実な姿勢を取られたのではないかと思っている。その点については敬意を表したいと思う。
文科省が存在を認めたさまざまな文書の中には私が在職中に実際に目にしたもの手に取ったものもあるし、私自身は目にしたことのないものもある。しかし、いずれも私が見る限り、その作成の時点で文科省の職員が実際に聞いたこと、あるいは実際に触れた事実、そういったものを記載しているというふうに考えていて、ほぼ100%、その記載の内容については間違いのないものだと評価している。
◇職員による文書のリーク「勇気を評価したい」 官邸や内閣府は「不誠実」
こういった文書をそれぞれ、現職の職員も行政のゆがみを告発したいという思いから外部に提供する行為が相次いでいるが、勇気は評価したい。こういった文書が次々と出てくることによって国民の中にも、この問題を巡る疑惑というのはさらに深まっているのではないかなと思う。
文科省が100%の説明責任を果たしたかと言えば、それはまだ100%とは言えないかもしれないが。一定の説明責任は果たしつつあると思う。一方、記載されている事実は多くの場合、内閣府との関係、総理官邸との関係を巡るものだ。これらは官邸、内閣府はさまざまな理由をつけて、認めようとしていないという状況にある。そういった姿勢は私から見れば、不誠実と言わざるをえない。真相の解明から逃げようとしている。
特に文科省の文書の中に出てくる「官邸の最高レベルが言っていること」という文言や「総理のご意向」という文言がある。内閣府が自分の口から発した言葉を、いわば自ら否定しているという状況で、これはありえない話だ。
それから、規制改革全般をスピード感を持って進めるという総理の意思を反映したものという説明は、これはかなり無理がある説明と思っている。そうした指示があったとして、それをこの文書に書いてあるような、記載事項のように取り違えるはずがないと思っている。
素直に読めば、「官邸の最高レベルが言っていること」「総理のご意向」であるという発言が何を指すかと言えば、「(愛媛県)今治市における獣医学部の開設時期を平成30年4月にしてほしい」という1点だ。それが加計学園のことというのは関係者の間では、公然の共通理解だったと言える。
こういった状況を踏まえ、官邸あるいは内閣府は、この加計学園に獣医学部新設を認めるに至ったプロセスを、国民に対して説明責任を果たす必要があると思っている。そのために必要があれば、第三者性が高い組織がプロセスを検証してもいいのではないかと思う。
私は、文科省時代に政策を検証するプロセスに携わったことがあって、新国立競技場の建設計画を巡って最初の計画が白紙に戻った後、「どうして経費が3000億円に達するようなものになってしまったのか」の経緯を検証し、その責任の所在を明確化する検証委員会を設けたときのその事務局長を務めていた。アドホック(目的が限定された)な組織を作り、政策決定を検証することはできる。その際に諮問会議の議員や、内閣府の幹部職員からヒアリングすることもできる。
月曜日の記者会見で総理が「指摘があれば、その都度、真摯(しんし)に説明していく」と話し、「国民から信頼が得られるよう、冷静に一つ一つ、丁寧に説明を積み重ねる努力をしなければならない」とも話した。総理が先頭に立って説明責任を果たしていただきたいと思っている次第です。 
前川前文科次官の会見 3
 前川前文科次官「第三者組織で検証を」 日本記者クラブで会見
前川喜平前文部科学省事務次官は23日夕、東京都内の日本記者クラブで記者会見し、学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設を巡る問題に関し「第三者性の高い組織で検証される必要がある」との認識を示した。安倍晋三首相が丁寧に説明すると19日の記者会見で表明していることを踏まえ、首相に「先頭に立って説明責任を果たしてほしい」と訴えた。
文科省が20日に公表した萩生田光一官房副長官の「発言概要」とされる文書に関しては「ほぼ事実だと思う」と表明。萩生田氏に関しては「何らかの関与があった可能性が高い」との見方を示した。獣医学部新設のキーパーソンは誰かとの問いには、和泉洋人首相補佐官ではないかと答えた。
文科省が獣医学部新設を巡る規制緩和に抵抗していたとの批判があることについては「文科省は設置認可をする立場で、責任を自覚していた」と述べた。
忖度テレビの怪
市川海老蔵の妻・麻央さん逝く
海老蔵の会見 PM2時半 各局それぞれのニュース番組で中継放送
ところが PM5時 テレビ「全局」 海老蔵会見の再放送
同じ時間帯 PM5時 から  前川前文科次官 日本記者クラブで会見 
(新聞のTV番組欄 3局が放送予定となっていた)
何処のニュース番組も PM5時半以降で
ちょこっと  「前川前文科次官の会見がありました」 中身の報道なし
TBS
( PM5時ちょっと前か 前川会見を楽しみにテレビをつける )
ニュースは  前川前文科次官の会見 開始直前の中継映像
コメンテーター 岸井成格が中継の解説を始めようとした その瞬間
「次のニュースに移ります」と割り込み 海老蔵会見の再放送に切り替わる
 
2017/ 7

 

■衆参両院で閉会中審査(7月10日)
国家戦略特区での学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、国会では衆・参両院で文部科学省の前川 前事務次官らを参考に招致して閉会中審査が行われました。
衆議院
「国家戦略特区での獣医学部新設をめぐって、衆議院の閉会中審査が開かれ、参考人として出席した文部科学省の前川・前事務次官は、新設のプロセスが不透明であり、初めから学校法人「加計学園」ありきで、背景に総理大臣官邸の動きがあったと指摘しました。これに対し、山本地方創生担当大臣は、獣医学部の新設は、岩盤規制を突破するものだと意義を強調した上で、新設を検討するプロセスは政府が設けた4つの条件に合致しており、適正だったと反論しました。」
国家戦略特区での獣医学部新設をめぐって、衆議院では、閉会中審査となる、文部科学委員会と内閣委員会の連合審査会が開かれ、文部科学省の前川・前事務次官らが参考人として出席しました。
この中で、前川氏は、獣医学部の新設の経緯をめぐって「決定のプロセスが非常に不公平で、不透明な部分がある。新設の条件が次々と付く中で、『加計学園』だけが残ることになっており、初めから『加計学園』に決まっていて、プロセスを進めてきたというふうに見える」と指摘しました。さらに、前川氏は「文部科学省は、『新設のための4条件を満たしていない』と主張していたが有効な反論がないまま決定された。『広域的に』という条件によって、京都産業大学が排除されたのは明らかで、『加計学園』しか残らない形にしたのはなぜか。非常に不透明で文部科学省からうかがい知れない部分がある」と述べました。そして、前川氏は、去年、和泉総理大臣補佐官や、当時内閣官房参与だった木曽功氏から獣医学部新設について働きかけを受けたとした上で、「仕事を進めるにあたっては背景に総理大臣官邸の動きがあったと思う。中でも、和泉補佐官がさまざまな動きをしていたのは明らかだ」と述べました。
また、前川氏は「なぜ事務次官在職時に、こうした発言をしなかったのか」と問われたのに対し、「じくじたる思いもあるし、反省もしている。ただ、国民が知らなければ行政のゆがみを是正することもできないという考え方から発言するようになった」と述べました。
前川氏は、安倍総理大臣が獣医学部の新設をさらに認める方向で検討を進める考えを示したことについて、「まずは今治市での成果を評価することが必要で、少なくとも10年ほどはかかるのではないか。いますぐ2校目、3校目を作ることは論理的にできない」と指摘しました。
これに対し、山本地方創生担当大臣は「国家戦略特区は、地元が提案してやるもので、国が勝手に決めるわけではない。岩盤規制を突破するには、まず、地域を限定したところでやるしかない」と述べました。その上で、山本大臣は「獣医師を増やすことは必要なことだが、獣医学部の新設は52年間もできておらず、地域を限定することによって何とか突破口を開こうとしているわけであり、国家戦略特区の趣旨に沿う」と述べ、国家戦略特区での獣医学部新設の意義を強調しました。そして、山本大臣は、新設の決定にあたっては、具体的な需要など、新設を検討する4つの条件に合致していることを、文部科学省や農林水産省との間でも確認しており、決定のプロセスは適正だったと反論しました。
一方、前川氏は、文部科学省が調査で確認できなかったとしている、萩生田官房副長官の関与を示す文書について、「私が事務次官在職中に、担当課からの説明を受けた際に受け取り、目にした文書に間違いない」と述べ、改めて実在する文書だと主張しました。
これに対し、萩生田副長官は、文部科学省の常盤高等教育局長と面会したことは認めた上で、「文書のような発言をした記憶はない」と述べ、常盤局長も「やりとりについて具体的な記憶はない」と述べました。
さらに、萩生田副長官は「私が、安倍総理大臣から指示を受けたり、文部科学省や内閣府に対して指示を出したりすることはない。文部科学省から『獣医師の過不足についての判断は農林水産省でやってほしい』という話があったので、農林水産省に伝えたことはあるが、それ以外に能動的に関わったことはない」と説明しました。そして「文部科学政務官を長くやり、自民党の中で文教政策に携わってきて、文部科学省側にも、私が総理大臣官邸との特別なパイプ役であるという、誤った、甘えの認識を抱かせてしまったという点では反省すべき点があるのではないかと思う」と述べました。
このほか、前川氏は、一連の文書について「前川氏が文書の流出元ではないか」と質問されたのに対し、「文書の提供者が誰であるかについては、答えを差し控える。さまざまな文書が世の中に出てきており、誰が、どういう経路で、誰に提供したか、さまざまな憶測はあると思うが、私が明確な答えをすべきではない」と述べました。
また、参考人として出席した、国家戦略特区のワーキンググループの委員を務める原英史氏は「『加計学園』ありきなどという指摘は全くの虚構であることは、公開されている議事録を見ればすぐに分かることだ。根本的な問題は、獣医学部の新設禁止という規制が正しいかであり、従来のゆがみをただすための取り組みを進めたものだ」と述べました。
参議院
「また参議院でも閉会中審査が開かれ、参考人として出席した文部科学省の前川・前事務次官は新設の決定に総理大臣官邸の関与があったのは明らかで、行政のプロセスがゆがめられたと改めて主張しました。これに対し、山本地方創生担当大臣はプロセスには一点の曇りもなく、ルールに基づいており、総理大臣官邸の意向が入る余地はないと反論しました。」
国家戦略特区での獣医学部新設をめぐって、参議院では、衆議院に続いて、閉会中審査となる、文教科学委員会と内閣委員会の連合審査会が開かれました。
この中で、参考人として出席した文部科学省の前川 前事務次官は、獣医学部新設の経緯について「和泉総理大臣補佐官から直接の働きかけがあり、和泉補佐官を中心として、総理大臣官邸の関与があることは明らかに推測される。また、京都産業大学の提案との比較、検討がきちんと行われたのかどうかも明らかでなく、不明朗なところが多い」と指摘しました。その上で、前川氏は「私が『ゆがめられた』と思う部分は、規制緩和の結果として、『加計学園』だけに獣医学部の新設が認められたプロセスであり、不公平・不透明な部分があるのではないか」と述べました。
これに対し、山本地方創生担当大臣は「一点の曇りもなく、ルールに基づいてやってきた。規制緩和は、個人の意見が入ってくるような話ではなく、私ども内閣府と規制監督省庁とがギリギリやり合って、民間議員と意見交換しながら決めていくわけで、個別の案件について、官邸などが入る余地はない。私もまったく官邸を気にしたことはない」と述べました。その上で、山本大臣は「『4条件がなっていない』などと言うが、『なっていない』と証明するのは文部科学省だ。それができなくて獣医学部の新設が決まったわけであり、まったく問題ないと考えている」と述べました。
また、参考人として出席した前の愛媛県知事の加戸守行氏は「10年前に愛媛県民と今治地域の夢と希望を託してチャレンジしたが厚い岩盤規制で跳ね返され、やっと国家戦略特区の枠で認められ本当に喜んでいる。岩盤規制にドリルで穴をあけてもらい、ゆがめられた行政がただされたというのが正しい」と述べました。さらに、加戸氏は「今治選出の県議会議員と加計学園の事務局長が『お友達』だったからこの話がつながった。『加計学園ありき』と言われるが、声をかけてくれたのは加計学園だけで、愛媛県は12年間『加計ありき』で来た」と述べました。
一方、質疑では、獣医学部の新設をめぐる一連の文書などの信ぴょう性についても議論となりました。
このうち、文部科学省が調査で確認できなかったとしている、萩生田官房副長官の関与を示す文書について、前川氏は「事務次官在職当時、担当課から説明を受けた際に受け取った資料と同じものだ。探せば出てくる文書だ」と述べました。
これに対し、萩生田副長官は「メモに書いてあるような言葉で回答した記憶はない」と述べ、松野文部科学大臣は「十分に信頼性のある調査が行われた結果、文書が存在しなかったと認識している」と説明しました。
また、萩生田副長官が獣医学部新設の条件の修正を指示したと指摘するメールについて、前川氏が「私は在職時に見ていないが、書かれている内容からすると、極めて信憑性は高いと思っている」と述べたのに対し、萩生田副長官は「そのような指示をした事実はない」と否定しました。 
■事業者決定前「加計学園に決定」と伝えたとする記録(7月20日)
国家戦略特区に基づく獣医学部新設をめぐり、学校法人「加計学園」が事業者に決まる2か月前の去年11月、山本地方創生担当大臣が日本獣医師会の幹部に対して、加計学園の獣医学部新設を決めたことを伝えたとする内容の面会記録が日本獣医師会に残されていることが分かりました。
日本獣医師会が作成した文書によりますと、去年11月17日に日本獣医師会の本部で山本大臣が藏内勇夫会長ら4人の幹部と面会したということです。
この中で、山本大臣は「獣医師が不足している地域に限って獣医学部を新設することになった。今治市が土地で36億円のほか積立金から50億円、愛媛県が25億円を負担し、残りは加計学園の負担となった。四国は感染症に係る水際対策ができていなかったので新設することになった」と述べたと記されています。
これに対して、藏内会長は「獣医師の数は国も含めて調査してきたが足りている。今、大学を作ることは流れに逆行する。大学を作ることには賛成はできない」と述べたと記されています。
獣医師会の幹部によりますと、この面会は山本大臣側からの申し入れで行われ、冒頭に山本大臣は「誠に申し訳ない」と陳謝したうえで新設を認めた経緯を説明したということです。
この面会が行われたのはことし1月に加計学園に獣医学部新設が決まる2か月前のことでした。
この面会記録は昨夜、地方組織に対してメールで伝えられたということです。
日本獣医師会の幹部は「この文書は面会に同席した幹部が直後に作成したもので、出席者全員で内容を確認している」と話しています。
山本大臣「内容は正確でなく設置場所など特定していない」
これについて、山本地方創生担当大臣は、内容は正確ではなく、その段階で設置場所などは特定していなかったという認識を示しました。山本大臣はけさ記者団に対し「わたくしから『広域的に獣医学部が存在しない地域に限り新設を認めることとなり、国民から広く意見を求めるパブリックコメントを始めることとなった』と。申し訳ないがご理解いただきたい旨を発言した」と面会の趣旨を説明しました。その上で、山本大臣は「獣医師会側は、『当然、四国の今治となった』と決めつけたいいぶりで対応していた。私からは『京都もあり得る』と述べた。会合の概要は、獣医師会側の思い込みと私の発言を混同したもので、正確ではない。あくまでも公募が大前提であるため、加計学園と特定していたことは全くない」と述べました。山本大臣は、先の国会審議の中で、獣医学部の設置場所などを決定したのはことし1月の段階だと繰り返し述べていました。 
■衆議院予算委員会で閉会中審査(7月24日午前)
安倍総理大臣は衆議院予算委員会の閉会中審査で、国家戦略特区での獣医学部新設をめぐり、国民の疑念はもっともで、これまではその観点が欠けていたとして、今後も丁寧な説明に努める考えを示しました。一方、安倍総理大臣は、学校法人「加計学園」が獣医学部の新設を申請していることを知ったのは、ことし1月になってからだとした上で、加計理事長から便宜を図るよう頼まれたことはないと強調しました。
衆議院予算委員会は、国家戦略特区での学校法人「加計学園」の獣医学部新設などをめぐり、きょう閉会中審査となる集中審議を行いました。
この中で、自民党の小野寺 元防衛大臣は「国民が大きな疑念を持って安倍政権を見つめている。獣医学部をつくる過程に政治的な圧力があり、安倍総理大臣の意向で公正な行政がゆがめられたという疑惑がいまだに消えないからだ。1度でも加計学園に便宜を図るように指示したことはあるのか」とただしました。
これに対して、安倍総理大臣は「『李下に冠を正さず』という言葉があり、私の友人が関わることであり、国民から疑念の目が向けられることはもっともなことだ。私のいままでの答弁ではその観点が欠けており、足らざる点があったことは率直に認めなければならない。常に国民目線に立ち、丁寧な上にも丁寧に説明を重ねる努力を続けていきたい」と述べました。その上で、安倍総理大臣は「私は国家戦略特区諮問会議の議長として、岩盤規制改革を全体としてスピード感を持って進めていくよう常々指示してきたが、個別の案件について私が指示をすることは全くなく、一度もそうした個別の案件についての指示を行ったことはない。一点の曇りもない」と述べました。
これに関連して、山本地方創生担当大臣と松野文部科学大臣、それに萩生田官房副長官は、いずれも獣医学部の新設をめぐり安倍総理大臣から個別に指示されたことはないと答弁しました。
また、内閣府の藤原 前審議官は「文部科学省に『官邸の最高レベル』や『総理のご意向』と伝えたことはない。仮に私の発言が私の趣旨と異なる受け止めを文部科学省に与えたとすれば残念だ」と述べました。
安倍首相「加計学園の申請知ったのは1月20日」
民進党の大串 政務調査会長は「疑念を持たれているのは、加計学園が安倍総理大臣と特別な関係にあったのではないかということだ。食事やゴルフで接触しているのに1度も加計理事長が獣医学部新設を願い出たことが話題にならなかったのか。加計学園が獣医学部の新設を目指していることを知った時期はいつか」とただしました。これに対して、安倍総理大臣は「加計氏とは政治家になるずっと前からの友人関係だが、彼が私の地位や立場を利用して何かを成し遂げようとしたことは一度もない。『時代のニーズにあわせて新しい学部や学科の新設に挑戦していきたい』という趣旨の話は聞いたことがあるが、『獣医学部をつくりたい』、さらには『今治市に』といった話は一切なかった」と述べました。その上で、安倍総理大臣は「加計学園」が獣医学部の新設を申請していることを知った時期について、「ことしの1月20日に加計学園の申請が正式に決定した国家戦略特区諮問会議で私が知るところに至った」と述べました。一方、安倍総理大臣は、加計氏とのゴルフや食事について「ゴルフの私のプレー代はすべて私が払っているし、何か頼まれてごちそうされたことは一切ない。気のおけない友人関係であり、食事代については、私がごちそうすることもあるし、先方が持つ場合もある」と述べました。
前川氏と和泉氏 食い違う主張
また、参考人として出席した文部科学省の前川 前事務次官は「去年9月9日と記憶しているが、和泉総理大臣補佐官から『総理は自分の口から言えないから代わって私が言う』と言われた。安倍総理大臣と加計理事長とが友人であることは認識しており、これは加計学園のことだと確信した」と主張しました。これに対し、和泉総理大臣補佐官は「前川氏と何度か会い、『事務次官としてしっかりフォローしてほしい』、『スピード感を持つことは大事だ』と申し上げたかもしれないが、『総理は自分の口では言えないから私が代わりに言う』という極端な話をした記憶は全くないし、言っていない」と反論しました。このやり取りをめぐって、安倍総理大臣は「証言が食い違っており証人喚問が必要ではないか」と指摘されたのに対し、「国会の運営は国会が決めることだ。今回、委員会から要請があり、松野大臣も山本大臣も私も出席し、誠意を持って真実を述べている」と述べるにとどめました。さらに、愛媛県の加戸 前知事は、鳥インフルエンザなどの問題が続き『愛媛県に獣医学部がほしい』と思い、県議会議員と加計学園の事務局長がたまたま友達でつながった話だ。文部科学省はけんもほろろで絶望的な思いの時に国家戦略特区法でやっと指定されて 喜んでいたところ、このような騒ぎになり、大変心を痛めている」と述べました。 
■衆議院予算委員会で閉会中審査(7月24日午後)
安倍総理大臣は衆議院予算委員会の閉会中審査で、国家戦略特区での獣医学部新設は、内閣府や文部科学省などが合意して決定したものだと重ねて強調した上で、関係省庁のやりとりをめぐる主張が食い違い、疑念を持たれたことを反省し、政府内の意思決定のプロセスの透明化を進める考えを示しました。
衆議院予算委員会は、国家戦略特区での学校法人「加計学園」の獣医学部新設などをめぐり、きょう閉会中審査となる集中審議を行いました。
衆議院予算委員会は、国家戦略特区での学校法人「加計学園」の獣医学部新設などをめぐり、きょう閉会中審査となる集中審議を行いました。
午後の質疑で、共産党の宮本徹 衆議院議員は「平成30年4月の開設という条件が出されたとたんに京都産業大学は断念に追い込まれることになった。パブリックコメントでも『加計学園以外は間に合わない』という意見が寄せられていたのに、文字通り『加計ありき』だ」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は「私が指示や働きかけを行ったことはないが、岩盤規制改革を全体としてスピード感を持って行うよう常々指示しており、山本地方創生担当大臣が松野文部科学大臣と合意の上で条件を作った。なお、京都産業大学も先般の記者会見で、『京都産業大学外しとは考えていない』、『納得できない部分は特にない』と述べていると承知している」と述べました。
また、山本地方創生担当大臣は、新たな獣医学部を平成30年4月に開設することについてのパブリックコメントではさまざまな意見が寄せられたものの最終的に公募を経て決めたもので、「加計学園ありき」ではないと説明しました。
日本維新の会の浦野靖人 衆議院議員は「法的な問題はなかったとしても行政への疑念はいまだに払拭されていない。安倍総理大臣自身が信頼を失うと憲法改正などへの信頼性も下がってしまうと危惧している。誰もが疑念を持たないような仕組みづくりをしてもらいたい」と指摘しました。
これに対し、安倍総理大臣は「国家戦略特区は、民間人の入った諮問会議の議論など、オープンで適切な仕組みだ。ただ、省庁間の交渉は第三者を交えずに行っており、議事録も正確に取っていない中で、省と省の主張が食い違って大きな疑念を持たれたことは反省しなければならない」と述べました。その上で、安倍総理大臣は「獣医学部の新設についても、私の友人が関わっていて疑惑の目が向けられる点も踏まえ、何ができるかを考えなければならない」と述べ、行政文書の取り扱いなど、政府内の意思決定のプロセスの透明化を進める考えを示しました。
また、安倍総理大臣は、加計学園の獣医学部新設をいったん白紙に戻すべきだと指摘されたのに対し「白紙にすることは考えていないが、国民の疑念を晴らしていく上において何ができるかということは、真剣に考えていきたい」と述べました。
一方、安倍総理大臣は「加計学園」が獣医学部の新設を申請していることを知ったのは、ことし1月20日だとしたみずからの答弁をめぐって、「加計理事長が『特区で獣医学部をつくりたい』という意図を持っていたことも知らなかったということか」と問われ、「その通りだ」と述べました。さらに、「虚偽答弁であれば責任をとって辞任するか」と追及されたのに対し、「常に総理大臣として責任を持って答弁しており、事実に基づいて正直に話している。ただ、先に、軽々に職を辞すかどうか言及すべきではないという批判を受けた」と述べました。
安倍総理大臣は、各種の世論調査で内閣支持率が下落していることについて、「国民の声であると 真摯に受け止めたい。獣医学部の新設の問題などについての私の説明の姿勢にご批判もあるのだろうと考えており、率直にそれは認めなければならない」と述べました。
今治市職員の官邸訪問 記録・記憶なし
また、安倍総理大臣は、おととし4月に、愛媛県今治市の職員が総理大臣官邸を訪れ、総理大臣秘書官と面会したのか問われたのに対し、「入館記録は保存されておらず確認できなかった」と述べました。これについて、当時、秘書官を務めていた柳瀬経済産業審議官は「面談記録は取っておらず、今治市の方にお会いしたという記憶はない」と述べました。さらに、山本地方創生担当大臣は、みずからが日本獣医師会に対し獣医学部の設置場所が決まる前に、愛媛県今治市での新設を伝えていたなどとする記録が獣医師会側に残っていたことについて、「対象としては 京都もあり得るということをはっきり申し上げた。獣医師会の関係者も今治市以外もあり得ると明確に認識したからこそ、その後、1校に限る要請活動を行ったのではないか」と述べました。このほか、松野文部科学大臣は、文部科学省が「存否について明らかにできない」としていた、文部科学省が加計学園に既存の獣医学部との差別化を図るよう求めたとする文書について、加計学園側から了解が得られたとして存在を認めました。一方、安倍総理大臣は、学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる問題などで、夫人の昭恵氏の参考人招致を求められたのに対し、「妻が名誉校長を一時期務めたのは事実であり、国民から疑いの目が向けられることはもっともで、その観点が私の答弁でも至らない点があったのは、率直に認めないとならない。国会の場で誠意を持って何回も説明している通りだが、国会で決まったら従うのは当然だ」と述べました。  
■衆議院閉会中審査 明らかになった事実と解明されなかった事実(7月24日)
きょうの衆議院の予算委員会で行われた加計学園の獣医学部新設をめぐる質疑で、新たに明らかにされた事実と解明されなかった事実をそれぞれまとめました。
前川氏と和泉氏は3度面会
新たに明らかになったことの1つは、文部科学省の前川前事務次官が獣医学部新設をめぐり和泉洋人総理大臣補佐官と去年9月9日と29日、さらに10月17日の3回にわたって面会したことです。これまで2人が面会した事実は明らかになっていましたが、具体的な回数や日付は不明でした。前川氏は、最初に和泉氏に呼び出しを受けた去年9月9日に「総理は自分の口から言えないから私が代わりに言う」と告げられ獣医学部新設の手続きを早く進めるよう求められたと答弁しました。そのうえで「安倍総理大臣と加計理事長とが友人であることは認識しており獣医学部の問題といえば加計学園のことだと確信した」と主張しました。これに対し、和泉氏は獣医学部新設をめぐり前川氏と複数回面会したことは認めました。一方で、前川氏が手続きを早く進めるよう求められたと発言したことに対しては「事務次官としてしっかりフォローしてほしいと申し上げたことはあったが、『総理は自分の口では言えないから私が代わりに言う』などと極端な話をした記憶は全くなく、言っていない」と反論しました。
新たな加計文書の存在確認
また、国家戦略特区の選定過程において文部科学省が作成した新たな内部文書の存在も確認されました。これは「加計学園への伝達事項」と題された文書で、加計学園が獣医学部新設の事業者に決まる2か月前に文部科学省から学園側に懸念する内容を伝えるためにまとめたものです。四国における具体的な需要や学園の資金など獣医学部新設の条件をクリアするための課題が具体的に記されています。この文書について、文部科学省は先月の調査で「法人の利益を害するおそれがあるとして、存否を明らかにできない」と説明していましたが、きょうの予算委員会で松野文部科学大臣が初めてその存在を認めました。しかし、これについて加計ありきを裏付ける資料なのではと聞かれると、「学部新設の相談を個別の学校法人がすることは特区で認められる前でも可能だ」と否定しました。
加計ありきだったのか
一方、きょうの予算委員会では解明されない事実も多く残されました。その1つが、国家戦略特区による獣医学部新設が加計ありきだったかどうかです。野党は獣医学部の事業者が加計学園に決まることし1月より前に新たな獣医学部の条件が平成30年4月の開学であることを知っていたのは今治市だけで、同じく獣医学部新設を計画していた京都府と京都産業大学にはこの条件が知らされておらず不公平でないかと指摘しました。これに対し、山本地方創生担当大臣は「京都府と連絡をとっていた」と答弁し、こうした見方を否定しました。
今治市担当者と会ったのは?
また、野党からは今治市が国家戦略特区となる前の平成27年4月2日に今治市の担当者が官邸を訪れ、当時の柳瀬唯夫総理大臣秘書官と面会したのではないかと質問がありました。これに対し、参考人として出席していた柳瀬元総理大臣秘書官は「記憶がありません」と繰り返し答弁し、事実は明らかにされませんでした。
“友人関係”影響したか?
さらに、安倍総理大臣が加計学園の理事長と長年の友人だったことが加計学園の事業者決定に影響したのではないかという質問も出されました。野党は、選定途中だった去年、安倍総理大臣と理事長が確認できるだけでも7回会って、食事などをともにしていたことを明らかにし、この中で、獣医学部新設が話題に上ったことはないのかとただしました。これに対し、安倍総理大臣は加計学園の獣医学部新設について知ったのは、加計学園が事業者に決まったことし1月20日が初めてだと答えました。その上で「加計さんから時代のニーズにあわせた新しい学部や学科を作りたいと聞いたことはあるが、今治市とか獣医学部について聞いたことは一切ない」と述べこれまで通り、便宜を図ったことはないと否定しました。  
■参議院予算委員会で閉会中審査(7月25日午前)
参議院予算委員会の閉会中審査が開かれ、民進党の蓮舫代表は「加計学園」が獣医学部の新設を申請していることを知ったのは、ことし1月20日だったとする安倍総理大臣の答弁は、これまでの国会答弁と矛盾していると追及しました。これに対して、安倍総理大臣は、答弁に混同があったことはおわびするとした上で、今治市での事業者が加計学園だという報告は受けていなかったと改めて説明しました。
午前中は、安倍総理大臣が、きのうの衆議院予算委員会の閉会中審査で、学校法人「加計学園」が獣医学部の新設を申請していることを知ったのは、新設が決定したことし1月20日だったと答弁したことをめぐって質問が相次ぎました。
このうち、自民党の青山繁晴参議院議員は「関係者の証言をたどると、加計理事長とは政治家の利害に関わる話はしない習慣になっていて、獣医学部の話があることは知っていたが加計学園が申請していることは知らなかったということだ。この経緯で正しいのか」と質問しました。
これに対し、安倍総理大臣は「2年前の11月から、私が議長を務める国家戦略特区諮問会議で、今治市が獣医学部新設を提案していることを知った。しかし、事業主体が誰かという点について説明はなく加計学園の計画は承知していなかった。最終的には加計学園から応募があり、1月20日に諮問会議で認定することになるが、その際、初めて承知したところだ」と説明しました。その上で、安倍総理大臣は「私と加計理事長との間で、立場を利用して何かを成し遂げようとしたことはただの一度もなく、『獣医学部をつくりたい』とか、『今治市に』という話は一切なかった。まさにそういう関係であるからこそ、お互いに長い付き合いをすることができた」と述べました。
民進党の蓮舫代表は「安倍総理大臣は、先月の参議院予算委員会で『構造改革特区で申請されたことは知っていた』などと全部知っていたと答弁している。1月20日ではないのではないか。記憶を呼び戻してほしい」と追及しました。
これに対し、安倍総理大臣は「厳密さに欠いていたが、申請を決定する段階で、諮問会議の議長として加計学園の計画を承知したということだ。加計学園と今治市とで、少し混同があったことはお詫びしなければならないが、今、私が答弁したことが事実だ」と述べました。
さらに、蓮舫代表は「口調だけ丁寧にするのはやめてほしい。国民が疑惑を持っているのは、記録がなくなり、記憶がなくなり、政権側にいる人はみんな口をつぐみ、政権外の人が証言をしたら個人攻撃し、言ったことは言っていないと上書きするからだ」と迫りました。
これに対し、安倍総理大臣は「私の友人に関わることなので、国民が疑惑の目を向けるのはもっともであり、国民目線に立って、事実に基づいて丁寧な上にも丁寧に説明しなければならないと考えている」と述べました。また、安倍総理大臣は、さらなる審議が必要だとして臨時国会の早期召集を求められたのに対し、「臨時国会の召集の要求は、内閣として適切に対応したい。来年度予算案の編成作業が本格的にスタートし、現在準備中の働き方改革のための法案など、国民生活に関わる諸課題を整理したうえで召集時期を決定したい」と述べました。
一方、参考人として出席した文部科学省の前川 前事務次官は、学部新設が「加計ありき」で進められてきたとするみずからの主張をめぐって、「思い込みであり、自身の印象を根拠に発言しているのではないか」と問われたのに対し、「和泉総理大臣補佐官に呼ばれた際に、『総理は自分の口から言えないから私が言っている』という話があったが、一般的に規制改革をスピード感を持って進めろという趣旨であれば、このようなせりふは出てこない。親友である加計 晃太郎理事長の学校のことを早くしなさいという趣旨であると明確に理解した」と述べました。
このほか、愛媛県の加戸 前知事は「平成13年の『えひめ丸』事故の時、安倍総理大臣が官房副長官として危機管理を担当され、それ以来、安倍総理大臣との何十回にわたるさまざまな会合を通じて、加計の『か』の字も聞いたことはないし、私自身も申し上げたことはない」と述べました。さらに加戸氏は、獣医学部新設について「今治市民、愛媛県民が夢と希望と未来を託してチャレンジしてきた。悲願10年の手前で『白紙に戻せ』という議論が出て、あと10年待たされることは、日本国家として恥だ」と述べました。
一方、総理大臣秘書官を務めていた柳瀬経済産業審議官は、おととし4月に総理大臣官邸で今治市の職員と面会したのかを問われ、「私の記憶をたどる限り、今治市の方と会ったことはない。当時は、獣医学部新設の制度論が議論され、制度を具体的にどこに適用するかという段階ではなかった」と説明しました。
このほか、委員会では、山本地方創生担当大臣が獣医学部新設に向けた手続きをめぐり「細かいことを安倍総理大臣に尋ねても無理だ」と述べたのに対して、野党側が「看過できない」などと反発し、審議がたびたび中断しました。 
■参議院予算委員会で閉会中審査(7月25日午後)
安倍総理大臣は、参議院予算委員会の閉会中審査で「加計学園」が獣医学部の新設を申請していることを知ったのは、ことし1月20日だったとするみずからの答弁をめぐって、過去の国会答弁は混乱していたと謝罪し訂正する一方、新設のプロセスは適切だったと重ねて強調しました。
午後の質疑で、共産党の小池書記局長は「加計学園」が獣医学部の新設を申請していることを知ったのは、ことし1月20日だったとする安倍総理大臣の答弁について「これまでの国会答弁では『今治市の申請の段階で当然、総理大臣として知り得た』と述べている。 1月20日まで知らなかったというのは、明らかな虚偽答弁ではないか」と追及しました。
これに対し、安倍総理大臣は「加計学園と今治市、構造改革特区と国家戦略特区の2つがあり、少し混乱して答弁したのは事実で、そこはお詫びして訂正させていただきたい」と述べました。その上で、安倍総理大臣は「構造改革特区のときは、数十ある提案の中の1つであり、私は認識、承知していなかったし、国家戦略特区においては『今治市』については知っていたということだ」と説明しました。
さらに、小池氏は「『知りうる立場だが実際には知らなかった』といった話をされたら、国会審議は成り立たたず、こんなデタラメな話はダメだ。『一点の曇りもない』という発言は撤回すべきだ」と迫りました。
これに対し、安倍総理大臣は「『一点の曇りもない』ということは、国家戦略特区諮問会議の民間議員が言っていることだ。議事録はすべて公開されており、プロセスをしっかりと経た適切なものだと考えている」と反論しました。
一方、山本農林水産大臣と松野文部科学大臣、それに山本地方創生担当大臣の3人は、それぞれ、去年8月から9月にかけて加計理事長と面会したとした上で、松野大臣以外の2人は、その際に獣医学部新設の話も聞いたと答弁しました。
これに関連して、安倍総理大臣は「獣医学部の新設が安倍総理大臣にだけ伝えられなかったことを国民は信じられるのか」と問われたのに対し、「陳情を受けることは一切ない関係で来た。私が各大臣に会うように言ったということでは全くない」と述べました。
日本維新の会の浅田政務調査会長は、獣医学部の新設や定員の増加を認めないとする文部科学省の告示をめぐり、「規制官庁が自由を制限する場合は、根拠を説明できなければならないという挙証責任がある。獣医学部の新設を禁じる根拠を示す挙証責任はどこにあるのか」とただしました。
これに対して、安倍総理大臣は「閣議決定している特区基本方針では、規制所管府省庁が、改革が困難と判断する場合には、正当な理由の説明を適切に行うことが定められている。この基本方針に従って、内閣府や文部科学省などの関係省庁が、調整を行うものと考えている」と述べました。
さらに、参考人として出席した国家戦略特区のワーキンググループの委員を務める原英史氏は「ワーキンググループでは、文部科学省に根拠を示すよう求めてきたが、結果として示されておらず本来は告示の規定を廃止するのが筋だ。しかし、文部科学省がさまざまな難しい事情があって動かない中、特例措置という形でなんとか前進を図ってきた」と述べました。
一方、文部科学省の前川 前事務次官は、和泉総理大臣補佐官との面会について「『総理は自分の口からは言えないので、私が代わりに言う』という言葉があったので、安倍総理大臣が言えないことを代わりに言っているという意味だと思った。和泉補佐官は総理大臣を補佐する立場で言ったのではないか。あとになってからの感想では、内閣府の藤原 前審議官の実質的な上司だったのではないか」と主張しました。
これに対し、和泉総理大臣補佐官は「安倍総理大臣は、かねがね、岩盤規制改革を全体としてスピードが持ってやるように指示しており、前川氏は、当時、この話をよく知らないようだったので、私は前川さんに対してアドバイスとして、『事務次官としてしっかりフォローして欲しい』と言い、もう一つは『一般論としてスピードが大事だ』と言った」と改めて説明しました。
このほか、安倍総理大臣は「加計理事長が自民党の支部の代表者を務めていると知っていたか」と問われ、「今月10日の参議院の連合審査会で質問されるまで承知していなかった。また、自民党の政党活動の支援を頼んだことはない」と述べました。さらに、松野文部科学大臣は、学校関係者が政治活動を行うことなどが教育基本法に抵触しないのかを問われたのに対し、「所轄庁である広島県が現地調査を含め調査したところ、生徒に影響を与えるような政治活動は行われておらず、教育基本法に反する状態にないと判断したということだ」と述べました。
また、松野文部科学大臣は「文部科学省が加計学園にアドバイスしたとも取れる文書が残る一方、京都産業大学の相談には応じておらず、対応に差があるのではないか」と指摘されたのに対し、「仮に京都産業大学から事前相談があったとすれば、文部科学省として適切に対応していると考えているが、指摘があった点は確認したい」と述べました。 
■閉会中審査 真相解明は道半ば(7月25日)
2日間にわたり行われた衆参両院の予算委員会。加計学園の獣医学部新設をめぐる問題の真相はどこまで明らかにされたのでしょうか。
「加計ありき」だったのか
最も注目されたのが獣医学部新設の選定過程が「加計ありき」でなかったかどうかという点です。政府側は今回の予算委員会でも、獣医学部新設の選定は第三者の民間委員が入った国家戦略特区諮問会議が「一点の曇りなく行った」とその適切さを改めて強調しました。安倍総理大臣もみずからが加計学園の獣医学部新設について知ったのは加計学園が事業者に決定したことし1月20日だったと答弁しました。これに対し、野党からは一斉に反発の声が上がりました。特に指摘されたのは過去の総理自身の答弁との整合性についてです。例えば先月16日の参議院の予算委員会で、安倍総理大臣は社民党の福島みずほ議員から加計学園が獣医学部新設を目指しているのを知ったのはいつかと問われた時、構造改革特区において、加計学園が申請していたことは知っていたとした上で、「国家戦略特区に申請すれば私の知り得るところになる」と答弁していました。しかし、構造改革特区の時点から知っていたとすれば平成19年度。また、国家戦略特区に加計学園が事業者として申請した時点であれば知ったのはことし1月10日ということになり、いずれも24日の答弁とは食い違います。結局、安倍総理大臣は「加計学園と今治市とで、少し混同があった」と述べて、過去の答弁を修正するとともに陳謝しました。また、国家戦略特区の選定過程において文部科学省が作成した「加計ありき」ともとれる新たな内部文書も注目されました。これは「加計学園への伝達事項」と題された文書で、加計学園が獣医学部新設の事業者に決まる2か月前に文部科学省から学園側に懸念する内容を伝えるためにまとめたものです。野党は松野文部科学大臣に対して「加計ありき」を裏付ける資料ではないかとただしましたが、松野大臣は「学部新設の相談を個別の学校法人がすることは特区で認められる前でも可能だ」と述べて「加計ありき」ではないと主張しました。
「総理のご意向」は
また、文部科学省の内部文書に記載されていた「総理のご意向」が実際にあったかどうかについても焦点となりました。政府側は参考人として出席した和泉総理大臣補佐官や愛媛県の加戸元知事に加え、この問題が「加計ありき」だったと証言している文部科学省の前川 前事務次官も安倍総理大臣から獣医学部新設について直接指示は受けていなかったとして、「総理のご意向」はなかったと主張しました。これに対し野党は、前川 前事務次官が「総理が自分の口で言えないから私が代わって言っている」などと獣医学部新設を認めるよう求められたとしていた和泉総理大臣補佐官を参考人として呼び、直接、事実関係をただしました。和泉総理大臣補佐官は前川氏と面会した事実は認めましたが、あくまで国家戦略特区の一般論としてスピード感を持って取り組むように求めただけで、加計学園のことは一切口にしていないと答弁しました。
真相解明は
2日間にわたる予算委員会の質疑で、安倍総理大臣は「丁寧な説明」に心がけ、これまでの説明に反省の言葉を口にする場面もありました。しかし、全体として新たに明らかになった事実は少なく、政府側の答弁においては新たな物証は示されず、相変わらず「記憶がない」「記録がない」という答弁が繰り返される結果となりました。野党側はさらに集中審議を行うよう求めるとともに、「加計学園」の加計 晃太郎理事長、文部科学省の前川前事務次官、和泉総理大臣補佐官、それに安倍総理大臣の夫人の昭恵氏の合わせて4人の証人喚問を要求しました。獣医学部新設が「加計ありき」だったのか、また、「総理のご意向」はあったかどうか、いずれの焦点についても真相の解明は道半ばといった状況です。政府には国民が納得できる説明がいっそう求められることになります。  
 
2017/ 7 報道

 

■藤原豊審議官が経産省復帰、「総理の意向」文書で国会答弁 2017/7/5
政府は4日、国家戦略特区を担当していた内閣府の藤原豊地方創生推進事務局審議官の併任を解除し、経済産業省大臣官房付とする人事を5日付で決定した。藤原氏は、学校法人「加計学園」の獣医学部設置計画をめぐり、文部科学省の文書で「官邸の最高レベルが言っている」と記された部分の発言者と指摘されているが、同氏は否定していた。
■特区担当を外れる 加計で取りざた藤原氏 7/5
政府は5日付で、学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画を巡り、文部科学省に早期開学を迫った当事者と指摘された内閣府の藤原豊審議官(国家戦略特区担当)について、審議官の併任を解き、経済産業省官房付とする人事を発令した。藤原氏は特区担当から外れた。文科省が内閣府とのやり取りを記録した「藤原内閣府審議官との打合せ概要」という文書には、藤原氏ら内閣府側が「官邸の最高レベルが言っている」と発言したと記されている。藤原氏は発言や、首相の関与を否定している。  
 

 

■今治市、一転非開示 官邸訪問記録や開学スケジュール 7/15
学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設に絡み、愛媛県今治市が、昨年は開示していた市職員の首相官邸訪問記録などを全面非開示にしたことが分かった。開示文書を基に野党が国会で追及した後、本紙が改めて市に情報公開請求して判明した。「加計ありきで行政がゆがめられた」との批判が高まる中、情報公開の流れに逆行するような市の対応に専門家からは疑問の声が上がっている。
今治市は開示の判断を変えた理由を「市の情報公開条例に照らし、再度精査した結果」と説明した。
市が一転、全面非開示としたのは、獣医学部新設における官邸や内閣府の関与をうかがわせる文書。市が国家戦略特区に申請する直前の二〇一五年四月二日、特区担当の市職員が首相官邸を訪問した出張記録や、開学時期の方針が公表される三カ月前の昨年八月四日に市が作成した「一八年四月開学」とするスケジュール表など九件だ。
いずれも昨年十一月に市民が情報公開請求したときは一部黒塗りで開示していた。野党議員は、国が加計学園を前提に検討を進めていたことを裏付ける資料として、市民の開示文書を基に六月の国会審議で政府側を追及していた。
本紙は国会閉会後の六月二十一日、獣医学部設置に関し、内閣府との協議で出張した記録などを市に情報公開請求。市は今月五日付で、該当する文書四十一件のうち、この九件を全面非開示とした。
市は非開示の理由について、「国家戦略特区の事業を進める上で、率直な意見交換が不当に害される恐れがあり、今後の事業の適正な執行に支障が生じる」「国家戦略特区の事業は、関係機関との綿密な協議・調整があって執行できるものなので、事業の方針決定に至る途中段階にある情報を公開することで、関係機関の協力や信頼関係を著しく損なう恐れがある」などとしている。非開示決定に当たり、国の関与は否定した。
内閣府や官邸にも、市に指示や助言を与えたかどうか質問したが、十四日までに回答はなかった。
公開文書を一転して全面非開示にした愛媛県今治市の対応について、NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「役所が短期間で情報公開の開示決定を変えること自体まれだ」と話す。
三木氏は一般的な情報公開のあり方を「時間の経過とともに事務事業への影響は小さくなるので、外交文書のように開示の範囲は広がる」と説明する。
今治市の対応については「国会で取り上げられ、これ以上問題を大きくしたくないから開示範囲を狭めたのでは」と推測。「これだけ疑念が出ているのに、非開示にすれば、かえって多くの人の不信感を招くのに」と疑問を投げかける。
「誰が請求しても同じ判断をするのが情報公開の原則」と話すのは早川和宏・東洋大学教授(行政法)。「今治市は前回の開示決定が間違いだったと言いたいのだろう。しかし、出張記録の開示が特区の業務に支障を来すとは考えにくく、非開示決定の妥当性には疑問符が付く」と批判する。
○今治市が全面非開示にした獣医学部関連の文書
(1)首相官邸訪問など2015年4月2〜3日の東京出張の記録
(2)同年4月2〜3日の東京出張の報告書
(3)16年6月2日に関係先と協議した東京出張の記録
(4)同年10月11日に内閣府との協議のため東京出張した報告書
(5)同年10月28日に内閣府との協議のため東京出張した報告書
(6)内閣府との協議のため同年11月8日に出張した報告書。事前入手した翌日の諮問会議の資料を添付。この会議で特区認定の方針決定
(7)内閣府が情報共有のため特区のスケジュール表の作成を求めた同年8月3日付メール文書と、翌4日に市が作成した「H30.4月開学予定」と書かれた獣医学部新設のスケジュール表
(8)同年10月20日起案の獣医学部新設のスケジュール表
(9)同年10月25日起案の獣医学部新設のスケジュール表 
 

 

■加計疑惑 官邸で今治市と密会した“真犯人”は安倍首相の懐刀 7/23
安倍晋三首相が出席し、7月24、25日に行われる国会の閉会中審査。
これまでの審議では、加計学園問題について多くの疑惑が未解明のままになっている。その一つが、2015年4月2日、愛媛県今治市の企画課長と課長補佐が首相官邸を訪れていたことを示す今治市側の記録があることだ。
市町村の課長クラスが首相官邸を直接訪問していること自体も目を引くが、その時期は今治市が国に国家戦略特区での獣医学部新設を提案する2カ月も前のこと。いったい、誰と何が話し合われたのか。「加計ありき」のレールが、この時期から敷かれていたのではないのか。
だが、肝心の訪問相手は今治市側が公開した資料では黒塗り。7月10日の閉会中審査で自由党の森ゆうこ議員が質問したが、萩生田光一官房副長官は「訪問者の記録が保存されていないため確認できなかった」と煙に巻いた。たかだか2年前のことなのに、面会相手が誰だったかすらわからないというのだ。
そんな中、本誌はこのときの面会者について重要な証言を得た。事情を知る今治市関係者がこう語る。
「実は、このとき面会したのは経産省出身の柳瀬唯夫首相秘書官(当時)。柳瀬氏は今治市の担当者ら少なくとも3人と会い、『希望に沿えるような方向で進んでいます』という趣旨の話をしたと伝わっています」
名前が挙がった柳瀬氏は、以前から経産省の次官候補と言われてきたエース。麻生太郎政権でも首相秘書官を務め、その仕事ぶりが評価されて安倍政権でも秘書官に起用されたという。経産省では原子力政策課長だった06年に原発の増設や輸出を進める「原子力立国計画」をまとめたことでも知られる。同じ経産省出身の今井尚哉首相秘書官とともに、安倍首相と経産省との“蜜月”関係を象徴する人物でもある。
安倍首相の懐刀である柳瀬氏が直接、今治市の担当者を官邸に招いて面会していたとすれば、やはり“特別扱い”という疑念を抱かざるを得ない。前出の関係者もこう語る。
「面会の後、今治市では『ついにやった』とお祝いムードでした。普通、陳情など相手にしてもらえず、下の担当者レベルに会えればいいほう。国会議員が同行しても、課長にすら会えない。それが『官邸に来てくれ』と言われ、安倍首相の名代である秘書官に会えた。びっくりですよ。『絶対に誘致できる』『さすがは加計さんだ、総理にも話ができるんだ』と盛り上がったというのは有名な話です」
柳瀬氏は15年8月に経産省に復帰し、現在は事務次官に次ぐ地位の経済産業審議官に就いている。面会の事実を確認すると、
「まったく記憶がないんですよね。ちょっと曖昧なんだけど。いろいろな人の出入りがあり、どれだけの人と会ったかわからないので。成長戦略の担当ではあったので特区の話にはいろいろかかわっていたが、ちゃんとした記憶がないのでなんとも言いようがない」
と、電話で答えた。こうした真相も含め国会で明らかにしない限り、支持率が回復することはないだろう。 
■“記憶ない”7連発で次官昇格の目 柳瀬審議官の素性と評判 7/25
24日行われた衆院での閉会中審査。異様だったのが「加計疑惑」のキーパーソンの一人、経産省の柳瀬唯夫審議官(55)だ。「加計疑惑」から安倍首相を守るために「記憶にございません」を7回も連発してみせた。霞が関からは「これで次官昇格だな」の声が飛んでいる。
「加計ありき」を証明するひとつが、2015年4月2日、今治市の企画課長と課長補佐が首相官邸を訪れていたことだ。市町村の課長クラスが官邸を訪問することは通常あり得ないことだ。だが、今治市の公式文書にハッキリと記録されている。この時期は、今治市が獣医学部新設を提案する2カ月も前のこと。すでにこの頃から「加計ありき」で進められていたということだ。
今治市サイドは官邸で誰と会ったのか、公開した資料では訪問相手を「黒塗り」にしているが、24日の閉会中審査で、民進党の今井雅人議員が、訪問相手は当時、首相秘書官だった柳瀬唯夫審議官だと明らかにした。
しかも、柳瀬秘書官は「希望に沿えるような方向で進んでいます」という趣旨を今治市に伝えたという。お墨付きをもらった今治市は、「ついにやった」とお祝いムードになり、「さすがは加計さんだ、総理にも話ができるんだ」と盛り上がったという。
いくら秘書官でも、勝手にモノを決められない。安倍首相と打ち合わせていたのは間違いないだろう。
ところが、柳瀬審議官は、今治市の職員と会ったのか、なにを話したのか、なにを聞かれても「記憶にございません」の一点張り。さすがに、異様な答弁に委員会室は騒然となり、審議がストップしたほどだ。柳瀬審議官はどういう人物なのか。
「柳瀬さんは次官候補の経産省のエースです。麻生政権の時、首相秘書官をしていたこともあって、もともとは麻生さんに近い。原子力政策課長だった時には、原発の増設や輸出を進める“原子力立国計画”をまとめている。原子力推進派の中核です。フットワークが軽く、思ったことをズバズバ口にし、裏で暗躍するタイプではありません。ただ、次官ポストがかかっているだけに安倍政権を守るとハラを固めたようです」(霞が関事情通)
安倍首相を守るために「森友疑惑」で平然と嘘をついた財務省の佐川局長が国税庁長官に栄転したように、柳瀬審議官も次官に昇格するのか。絶対に許してはダメだ。
■今治市職員との面会疑惑、首相秘書官だった柳瀬唯夫氏が否定 7/26
加計学園(岡山市)による獣医学部新設をめぐる問題で、学部の開設が予定されている今治市の職員が、新設を申請する前の2015年4月に安倍晋三首相の秘書官だった柳瀬唯夫・経済産業審議官と面会したという疑惑について、柳瀬氏は7月25日、「私の記憶をたどる限り、今治市の方とお会いしたことはございません」などと否定した。
朝日新聞などによると、今治市は、同市職員が首相官邸を訪れたことを記載した文書を保管。訪問が愛媛県と今治市が学部新設を国家戦略特区に申請する2カ月前だったことから、一連の手続きが「加計ありき」で進んだとする疑惑を持たれてきた。
アエラドットは、面会した官邸側の人物は柳瀬氏だったと報道。柳瀬氏は閉会中審査でも疑惑を追及されることとなった。
柳瀬氏は25日、民進党の桜井充・参院議員から今治市職員との面会の有無を問われると、面会を否定した上で、「私が秘書官をしていた平成27年の前半までは、そもそも50年あまり認められてこなかった獣医学部の新設をどうするのかという制度論が議論されてまして、制度を具体的にどこに適用するかという段階ではなかった。従ってこの段階でどなたにお会いしても今治市がいいとか悪いとか言うことはあり得ない」と付け加えた。
桜井氏が今治市職員との面会を明確に否定するよう求めると、柳瀬氏は「お会いしていない」と答えたものの、「私の記憶のある限りでは」と何度も前置きした。 
 
2017/ 8

 

■首相の説明「納得できない」が78% NHK世論調査(8月7日)
NHKの世論調査によりますと、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題で、安倍総理大臣のこれまでの説明に「納得できない」と答えた人が78%にのぼりました。
NHKは、8月4日から3日間、全国の18歳以上の男女を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行いました。調査の対象となったのは2233人で、59%にあたる1309人から回答を得ました。
学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題で、安倍総理大臣は、先月の閉会中審査で、ことし1月20日に学部新設の申請を初めて知ったなどと説明しました。
安倍総理大臣のこれまでの説明に納得できるか聞いたところ、「大いに納得できる」が3%、「ある程度納得できる」が12%、「あまり納得できない」が33%、「まったく納得できない」が45%でした。  
■認可の判断「保留」へ 文科省審議会(8月9日)
学校法人「加計学園」の来年4月の獣医学部新設について審査する文部科学省の審議会がきょう開かれ、実習計画などが不十分で課題があるとして、認可の判断を保留する方針が決まり今月末に予定されていた大臣への答申は延期される見通しとなりました。
「加計学園」が来年4月に愛媛県今治市に新設を計画している獣医学部をめぐり、文部科学省の大学設置審議会は、ことし4月から審査を行い、今月末に結論をまとめて大臣に答申する予定でした。
これまでに審議会は、教員の数や学生の定員について見直すよう求め、学園は、定員を当初より20人少ない140人としたほか、教員を増やす案を提出していました。
関係者によりますと、きょう非公開で審議会が開かれた結果、認可の判断を保留する方針が決まり、今月末に予定されていた大臣への答申は延期される見通しとなりました。
保留となった理由としては、学生に対する実習計画が不十分でライフサイエンスの獣医師などを養成するうえで教育環境が整っておらず、課題があるとされたということです。
審議会は今後、学園に修正案の提出を求めた上で、来月以降、改めて来年4月の新設について審議を行い、認可の判断を行う見通しです。  
■文科省 認可判断を保留 10月末に結論(8月25日)
学校法人「加計学園」の獣医学部新設について文部科学省の審議会は実習計画などが不十分で課題があるとして、きょう認可の判断を保留し、10月末に改めて結論を出すことを明らかにしました。
加計学園が、来年4月、愛媛県今治市に新設を計画している獣医学部をめぐり、文部科学省の大学設置審議会は、学園が提出した教員の数や学生の定員、さらに教育内容などが適切か、審査を行ってきました。
この学園の計画について審議会は認可の判断を保留し、今後も審査を継続するとしたことをきょう明らかにしました。保留とした理由については、実習の時間がおよそ1か月で既存の獣医学部がおよそ4か月間実施しているのと比べて短いため学園が目指している生命科学などの分野を専門とする獣医師を養成する教育環境が整っていないことなどが指摘されました。文部科学省はこの結果を学園に伝えました。
大学設置審議会は今後、学園に修正案の提出を求めて来月以降、改めて審査を行い、10月末に認可の判断について結論を出すことにしています。
加計学園「コメント差し控える」
学校法人「加計学園」は「設置審議会の審議継続中ということもあり、保留についてのコメントは差し控えさせて頂きます。学園、大学としては認可に向けて粛々と事に当たって参ります」というコメントを出しました。加計学園が運営する千葉科学大学の副学長で、新たな獣医学部の学部長に就任予定の吉川泰弘氏は「計画の足りない部分について審議会から非常に細かく意見を出してもらったと思っている。認可が保留されたことで開学のスケジュールに全く影響が出ないわけではないが、できるだけ早く認可を受けたい。今後、最大限の努力をしていく」と話しています。
保留の理由は「実習の計画」
加計学園の申請内容に対して、文部科学省の審議会が課題があると指摘したのは学生に対する実習の計画です。学園では、140人の学生を2つのグループに分けた上で、1つの実習科目をおよそ1か月間で履修する時間割を組んでいました。これについて審議会では既存の獣医学部の場合、実習はおよそ4か月間実施していると指摘され、「学園の計画は短期集中型で学生が予習や復習も含めて知識や技術が身につけられない」として計画を見直すよう求めました。また、学外の実習施設の中には、大学から移動するのに車で3時間以上かかるものもあるとして、学生の負担にならないよう見直しを求めています。このほか、全国で最も多い140人の学生に対し、教員の指導体制が不十分であることや、学生が研究を進めるうえで十分なスペースが確保されていないのではないかといった指摘がされています。
「実習」は極めて重要
獣医学部では講義形式でなく、実地や実物で知識や技術を身につける「実習」の時間は極めて重要とされています。青森県にある北里大学獣医学部は、現在の獣医学部の中では最も多い、1学年およそ120人の学生が在籍しています。大学は必修となっている実験動物学や解剖学など19の実習科目に加えて、独自に10の実習を行っています。担当教員が指導にあたるだけでなく、研究生など10人ほどが支援しています。実習は1科目を履修するのにおよそ4か月かかるということで女子学生の1人は「実習はためになりますが、ついていくのは結構大変です」と話していました。北里大学の高井伸二獣医学部長は「獣医師となるには基礎から臨床までさまざまな分野を学ぶ必要がある。多くのスキルを身につけた実践的な獣医師を養成するためこれだけの実習を組んでいる」と話しています。
獣医学部目指す生徒は…
獣医学部を目指す生徒からは定員が国内最大となる予定の獣医学部の認可が先送りされたことに戸惑いの声があがっています。大阪・淀川区にある予備校「大阪医歯学院」では、現在47人の生徒が獣医学部への進学を目指しています。予備校によりますと、7月に開かれた入試説明会には、加計学園の担当者も参加し、推薦入試を11月、一般入試を2月にそれぞれ実施する予定だと説明したということです。生徒の1人は「倍率が高い獣医学部の選択肢が広がると期待しているので保留となったのは残念です」と話していました。また、別の生徒は「不安な要素を残すよりはしっかりと検討したうえで開校するかどうか決めて欲しいです」と話していました。この予備校の北原裕司理事長は「新たな獣医学部ができるという期待とともに、教育内容の説明が少なくて不安だという声も聞く。判断が先送りされる分、しっかりとした教育内容を確保して欲しい」と話しています。
今後は…
文部科学省によりますと、今回と同じく、大学設置審議会が一時、認可の判断を「保留」したケースは、過去10年間で110件に上ります。このうち、大学が計画を修正し最終的に認可されたケースが89件、大学が申請自体を取り下げたケースが19件、そして、不認可となったケースが2件となっています。今後、審議会は加計学園が来月、提出する予定の修正案をもとに再び審理を行い、10月末に結論を出す方針です。
政界の反応
林文部科学大臣は、京都市で記者団に対し「審議会で、教育課程、教員組織、施設設備、財務状況などが法令に適合しているか、引き続き審査が行われ、10月下旬ごろをめどに審査結果が答申される予定になっている。専門的、学問的立場から審査していただいており、静かな環境でしっかりと審査してほしい」と述べました。自民党の岸田政務調査会長は、秋田市で記者団に対し「有識者の審議会が中立の立場で示した判断であり保留されたものがどうなるのか、今後に注目していかなければならない。引き続きしっかり議論が行われて、判断が下されることを待ちたい。一方で、国民の中に、まだ『加計問題』に対し、さまざまな意見や疑問の声があるのも事実だと思うので、政府与党一体となって国民のさまざまな声にこたえていく努力が大事だ」と述べました。民進党の山井国会対策委員長は国会内で記者団に対し「安倍総理大臣の肝いりの『加計学園』の獣医学部新設が保留になったことで、ますます『問題が多いのではないか』という疑念が深まった。臨時国会の大きなテーマの1つになると同時に、10月の衆議院補欠選挙の争点になるかもしれない。早急に梶山地方創生担当大臣や林文部科学大臣に加えて、安倍総理大臣も、正々堂々と国会に来て、なぜ保留になったのか、国民に説明する責任がある」と述べました。愛媛県の中村知事は「長年に渡る今治市と愛媛県の思いがようやく扉をこじ開けたのに、結果として『保留』は残念に思う。指摘や問題があるのであれば、事業者の加計学園が真摯(しんし)に対応することに尽きると思う」と述べました。愛媛県今治市の菅良二市長は記者会見し「獣医学部が52年ぶりの新設ということで、審議会も慎重を期した判断だと思っている。もちろん無駄なことは絶対に許さないし、市として補助金を出すのはこれからなので、しっかりと精査したい。学生たちがここに来てよかったと思える大学を作り上げられるよう最大限協力したい」と述べました。  
 
2017/ 8 報道

 

■愛媛県職員も官邸に同行 今治市職員の依頼受け 2017/8/2
学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画で、愛媛県今治市が国家戦略特区の申請をする前の2015年4月2日に市職員が首相官邸を訪問したとされる問題で、同県の中村時広知事は2日、県の当時の担当課長ら職員3人が市職員に同行していたと明らかにした。
市職員の官邸訪問を巡っては、7月の衆参両院の閉会中審査で、当時の首相秘書官だった柳瀬唯夫・経済産業審議官が面会したのではないかと野党側が追及。柳瀬審議官は「会った記憶はない」と答弁している。
中村知事は、今治市から依頼を受けて同行したと説明。面会の相手や内容については「国に問い合わせてほしい」として、明らかにしなかった。また、時期は適切だったかという質問には「うちはいつでも、数十回と行っている。要請があれば行くのが誠意」と答えた。 
■「加計学園幹部、首相秘書官、今治市の”謀議” 官邸で特区申請前に」 8/6
いまだ真相究明に程遠い状況の加計学園問題。中でも最大の謎の一つが、2015年4月2日、愛媛県今治市の職員2人が「獣医師養成系大学の設置に関する協議」のために首相官邸を訪問していることだ。・・・(略)・・・
今治市の関係者がこう明かす。
「実は、問題となっている訪問には、複数の加計学園幹部が同行していたのです。加計学園側から今治市に連絡が行き、官邸訪問が実現したようだ。当時はまだ国家戦略特区の枠組みがどうなるかもわからない段階。首相秘書官から『準備、計画はどうなのか』『しっかりやってもらわないと困る』という趣旨の話があった。最初から『加計ありき』を疑わせるような訪問で、萩生田(光一前官房副長官)、柳瀬両氏が国会で頑なに資料、記憶がないと言い張ったのは、詳細を明かせば、それが一目瞭然でバレてしまうからではないのか」
獣医学部の新設は官邸主導で最初から「加計ありき」で進められたのではないか──。
異例のメンバーによる官邸訪問は、そんな想像を抱かせるに十分な状況証拠だ。
だが、話はこれで終わらない。この日、官邸には意外な人物もいたのだ。前出の今治市関係者がこう続ける。
「面会のため一行が官邸内に入ると、下村博文文部科学相(当時)もやってきて言葉を交わしたそうです。『やあ、加計さん。しっかりやってくれよ』というような話も出たと聞いています」
当日の首相動静を確認すると、下村氏は15時35分から57分まで、山中伸一文科事務次官(当時)とともに官邸で安倍首相と面会している。一方、今治市の記録では職員らが官邸を訪問したのは15時から16時半までで、確かに官邸内にいた時間は重なる。・・・(略)・・・
15年4月2日の官邸訪問について下村氏に取材すると、事務所を通じ、「(今治市職員や加計学園幹部らと)首相官邸で会話を交わした事実はございません。また、私が今治市職員らと柳瀬唯夫首相秘書官との面談をセッティングしたという事実もございません」と回答した。
政府はこれまで、官邸の入館記録が破棄されたなどとして面会の詳細について答えていない。国会では、菅義偉官房長官が「今治市に聞かれたらいかがでしょう」(7月10日)と答弁したので、今治市企画課にも取材を申し込んだが、「(訪問の)相手方や内容等については、今後の今治市の業務に支障が生じるおそれがあるため、今治市情報公開条例の趣旨にのっとり、お答えを差し控えさせていただいております」
加計学園に幹部が官邸を訪問したか、柳瀬氏や下村氏と面会したかなどの事実関係を複数回、問い合わせたが、「取材も多く、バタバタしている」とのことで、期限までに回答はなかった。柳瀬元首相秘書官は「これ以上お伝えすることはありません」とのことだった。 
■加計問題 加計学園幹部も官邸を訪問していた 8/7
まずは疑惑の2015年4月2日の問題点をおさらいしよう。
今治市が公開した出張記録によると、今治市が国家戦略特区に獣医学部新設を申請する約2カ月前にあたるこの日、今治市の企画課長と課長補佐が「獣医師養成系大学の設置に関する協議」のために内閣府などを訪問。その後、急遽「官邸訪問」が決まり、15時から16時30分まで官邸で打ち合わせをおこなったという。7月25日発売の「週刊朝日」は、このとき今治市職員と面会したのは柳瀬唯夫首相秘書官(当時)だと関係者が告白していた。
そして、明日発売号では、この官邸訪問に「複数の加計学園幹部が同行」していたという新証言を掲載していると「週刊朝日」はウェブ版の速報で報道。なぜ一地方の市職員が官邸を訪問することができたのかと以前より疑問が出ていたが、それについても「加計学園側から今治市に連絡が行き、官邸訪問が実現したようだ」といい、柳瀬首相秘書官からは「準備、計画はどうなのか」「しっかりやってもらわないと困る」などという趣旨の話があったというのだ。
繰り返すが、これは今治市が国家戦略特区に獣医学部新設を申請する前の出来事だ。つまり、特区申請前から官邸と加計学園は、獣医学部新設に向けて認識を共有し、計画実現に向けて動き出していたのである。
しかも、同記事では、加計問題のキーマンのひとりである、あの人物の名前も登場する。加計学園から200万円のヤミ献金疑惑が取り沙汰されている下村博文・元文部科学相だ。
加計学園幹部と今治市職員が柳瀬首相秘書官と官邸で面会した日、下村文科相がやってきて、このような言葉を発したというのだ。
「やあ、加計さん。しっかりやってくれよ」
周知のように、下村文科相をめぐっては、加計学園からのヤミ献金が発覚した際、同時に下村事務所の日報の存在も報じられ、そこには加計学園の秘書室長の名が頻繁に登場。2014年には加計学園の依頼に応えて文科省の担当部署に口利きしたり、加計 晃太郎理事長と下村氏、塩崎恭久前厚労相、山本順三参院議員が会合を開いていたことが判明している。
だとすると、今治市職員と加計学園を官邸に招き、柳瀬首相秘書官を引き合わせたのも下村文科相なのか。しかし、文科相の権限で官邸に誰かを招いたり、首相秘書官を動かしたりするのは不可能だ。
本サイトでも指摘してきたように、この今治市職員の官邸訪問は15時から16時30分までだったと記録には示されているが、同日の首相動静を確認すると、安倍首相は15時35分から、ほかでもない下村文科相と面談をおこなっていた。
こんな偶然があり得るだろうか。こうなると、可能性は2つしかないのではないか。
ひとつめは、まず加計学園から下村文科相に話がいき、下村文科相が安倍首相に報告。安倍首相が加計学園幹部と今治市職員を官邸に招き、柳瀬首相秘書官に面会させた。ふたつめは、加計理事長から安倍首相に依頼が来て、安倍首相が下村文科相を呼び寄せて、柳瀬首相秘書官ともども、加計学園幹部と今治市職員に引き合わせた。
いずれにしても、安倍首相がなんらかのかたちで動いていたのは間違いないだろう。柳瀬首相秘書官が独断で「準備、計画はどうなのか」「しっかりやってもらわないと困る」などと発破をかけることはありえないからだ。安倍首相に意向を示されていたからこそ、柳瀬首相秘書官は加計学園と今治市職員と打ち合わせをおこない、進捗を確認しているのだ。安倍首相の「加計ありき」の計画はこの時点ですでに固まっており、安倍首相と昵懇の下村元文科相もその計画を知っていたということだろう。
しかも、加計問題では、もうひとつ重要な事実があきらかになった。2016年6月、国家戦略特区ワーキンググループが愛媛県と今治市からヒアリングをおこなった際、やはり加計学園の幹部3名が同席していたにもかかわらず、公開されている議事要旨にはそのことが伏せられていたのだ。
ワーキンググループの八田達夫座長は「提案者から説明補助者の参加・発言について記載してほしいなどの特段の要望があった場合は、記載している」「通常の取り扱い通り」と見解を述べているが、これまで八田氏と同様に安倍首相は「国家戦略特区は、ワーキンググループでオープンな議論をし、議事録もちゃんと残している」と、その透明性を強弁してきた。
しかも、山本幸三・前地方創生相にいたっては、「議事要旨ではなく議事録の提出を」という声に対し「議事要旨はほぼ議事録に近いかたち」と言い張ってきたほどだ。だが、真相は、不都合な事実は残さなくても済む、まったくオープンではない"不透明な"議事要旨でしかなかったのだ。
こうした証拠や証言が出れば出るほど、安倍首相の「加計学園の獣医学部新設計画を知ったのは今年1月20日」という国会答弁が、いかに人を食った論外の大嘘だったかがよくわかるというものだが、ここでもう一度、重要な指摘をしておきたい。それは、「文藝春秋」5月号に掲載されたノンフィクション作家・森功氏のレポートに記された、加計 晃太郎理事長の「発言」についてだ。
この記事では、2014年3月13日に加計理事長が日本獣医師会を訪問し、同会の蔵内勇夫会長と元衆議院議員・北村直人顧問と対面したときの様子についてレポートしているのだが、このなかで森氏はこう綴っている。
〈実はこのとき「首相が後ろ盾になっているので獣医学部新設は大丈夫だ」と加計が胸を叩いたという話がある。実際、その議事録が存在するという説もある〉
これが事実であれば、「加計ありき」は遅くとも2014年には始動していたことになるのだ。
はたして、そこからいまにいたるまで、どのような工作や根回しがおこなわれたのか。今回の「週刊朝日」のスクープのように、今後もどんどん事実があきらかになることが期待されるが、当然、「国民への丁寧な説明」を約束した安倍首相には、まずは官邸への訪問記録(破棄したというのなら今治市への出張記録の開示の請求)、そして国家戦略特区における完全な議事録の公開が求められる。この程度のことを実行できないのであれば、総理の資格はない。とっとと辞するべきだろう。 
 
2017/ 9

 

■加計学園 今治市議会でおわび(9月6日)
学校法人「加計学園」が愛媛県今治市で計画している獣医学部の新設をめぐる問題が浮上して以来初めて学園の幹部が出席して今治市議会の特別委員会が開かれ幹部は「情報が錯そうして迷惑をかけ、おわびする」とした理事長のメッセージを代読した上で、来年4月の開学に向けて協力を求めました。
加計学園が国家戦略特区の愛媛県今治市で計画している獣医学部の新設について、先月、文部科学省の大学設置審議会は認可の判断を保留し、今後も審査を継続することになりました。
これを受けてきょう、獣医学部の新設をめぐる問題が浮上して以来初めて、加計学園の幹部が出席して今治市議会の特別委員会が開かれました。この中でまず、岡山理科大学の柳澤康信学長は「情報が錯そうして今治市の皆さんに迷惑をかけていることをおわびする」とした加計 晃太郎理事長のメッセージを代読した上で、来年4月の開学に向けて協力を求めました。
そして、学園側は、国の審査が継続しているため、詳細な説明は差し控えたいとしたうえで「是正や改善の意見に必死で対応している。今月末をめどに補正した申請書を再度提出し、来月の審査で認可されるよう、努力したい」と述べました。
一方で、学園側は認可の判断が保留になった影響について「入試広報の全面的な展開には制約がある。1年目は影響がないとは言えない状況だ」と述べ、来年度の学生の入試などに一定の影響が出る恐れがあるという認識を示しました。 
■衆議院解散か 「疑惑隠し」と批判(9月19日)
衆議院は9月28日に召集される予定の臨時国会の冒頭にも解散される見通しになりました。民進党や共産党は「疑惑隠し」の解散だと批判しています。一方、政府・与党側は「批判はあたらない」と反論しています。
民進党の前原代表は9月18日、東京都内で記者団に対し「仮に臨時国会の冒頭に解散するのであれば、『森友学園』や『加計学園』の問題から逃げ、答弁する責務から逃れた、 『疑惑隠し、敵前逃亡の解散だ』 と言われても仕方がない」と批判しました。
また、民進党は9月19日、衆議院選挙への対応について前原代表や大島幹事長らが協議し、候補者の擁立を急ぐことや、森友学園や加計学園をめぐる問題で政府・与党の説明責任を追及していくことなどを確認しました。
共産党の志位委員長は9月18日、党本部で記者会見し「臨時国会冒頭での解散は『森友・加計問題』の疑惑隠しが狙いで、絶対に容認できず、究極の党利党略、権力の私物化、憲法違反の暴挙だと言わなければならない」と批判しました。
こうした野党側の批判に対し、菅官房長官は19日午後の記者会見で「森友学園や加計学園の問題は、国会閉会中も予算委員会などをやってきており、これからも必要であれば審議する。全くそういう考えはあたらない」と反論しました。
また、自民党の二階幹事長は「野党がおっしゃるのは野党の自由だから結構だが、われわれは問題を隠したりということは考えていない」と述べました。 
■民進 国会審議を要求(9月21日)
自民党と民進党の幹事長らが会談し、民進党は、来週28日に召集される臨時国会の冒頭に衆議院が解散される見通しとなっていることを受けて、国会の議論を封殺するもので、断固、抗議するとした上で、国会で、森友学園や加計学園をめぐる問題などを審議するよう求めました。
この中で、民進党の大島幹事長は「政権による権力の私物化、乱用の極みだ。国会の議論を封殺するものであり、断固、抗議する」と述べました。その上で、大島氏は、きのうの民進党、共産党など野党4党の幹事長・書記局長らによる会談を踏まえて、安倍総理大臣の所信表明演説に対する各党の代表質問や予算委員会などを行い、森友学園や加計学園をめぐる問題などを審議するよう求めました。
これに対し、自民党の二階幹事長は「承った」と述べました。
このあと、会談に同席した自民党の森山国会対策委員長は記者団に対し「臨時国会が始まれば、所信表明演説や代表質問、予算委員会などを行うのは当然の流れだが、衆議院の解散がもしあるとすれば、それが最も優先されるべきことだ」と述べました。
一方、大島氏は記者団に対し「安倍政権になってから、議会運営がものすごく雑になっている。冒頭解散は、国権の最高機関としての国会の議論を封じることになり行政府に対し、立法府として権力を抑え込む機能がなくなっている」と述べました。 
■衆議院解散 選挙戦へ(9月28日)
衆議院は28日正午から開かれた本会議で解散されました。民進党や共産党などは、臨時国会の冒頭で衆議院を解散するのは認められないとして、本会議を欠席しました。衆議院選挙は「来月10日公示、22日投票」と決まりました。
今回の解散について、民進党の大島幹事長は『森友学園』や『加計学園』の問題に、安倍総理大臣が説明責任を果たせない、『自己保身の解散』だ」と述べました。また、共産党の志位委員長は「こんなに道理のない、無法な解散は戦後初めてだ。解散の理由は『森友・加計疑惑隠し』の1点だ」と批判しました。
一方、自民党の二階幹事長は「北朝鮮情勢などわが国に迫ってくる大変厳しい課題について、国民の意思を問うと同時に、確固たる決意を国内外に示していかなければならない。安倍総理大臣の不退転の決意は立派なものだ。私は多くの国民の理解を得て、必ず勝利することができるという確信を持っている」と述べました。
今回の選挙では、さ来年10月に予定される消費税率の10%への引き上げの是非に加えて、引き上げた際の増収分の使い道の見直し、憲法改正、さらに臨時国会冒頭での解散に踏み切った安倍総理大臣の政治姿勢などをめぐって論戦が行われる見通しで、各党とも事実上の選挙戦に入ります。 
 
2017/ 9 報道

 

 
2017/10

 

■衆議院選挙 与党圧勝(10月22日)
衆議院選挙は自民党が単独で選挙前議席と同じ284議席を獲得するとともに公明党と合わせて全議席の3分の2を上回る313議席を獲得して圧勝しました。
安倍総理大臣はNHKの開票速報番組で森友学園や加計学園をめぐる問題について、「これまでも予算委員会や閉会中審査で丁寧に説明してきており、誰も私が関与しているということを 述べた方はいない。また、国家戦略特区諮問会議の民間議員も一点の曇りもないと明確に証言している。報道されていない部分も含めて審議をすべてご覧になった方の多くが理解していると思うが、今後も求められれば誠意を持って丁寧に説明していきたい」と述べました。 
■文科相 しっかり説明していく(10月24日)
林文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で、衆議院選挙で加計学園をめぐる問題について国民から理解を得られたと考えるかと問われたのに対し、「衆議院選挙では自公連立政権に対する信任をいただいたが、説明への努力がいささかも緩むことがあってはならない。文部科学省の審議会で認可するかどうか結論が出た際には、最終的な審査意見に加えて、審査の過程で指摘された意見も公表することにしており、しっかりと説明していく」と述べました。 
■官房長官 丁寧に説明続ける(10月24日)
菅官房長官は記者会見で、森友学園や加計学園をめぐる問題について、安倍総理大臣が国会での閉会中審査や今回の衆議院選挙に伴う討論会などで説明してきたと強調した上で、求めがあれば丁寧に説明を続ける考えを示しました。
この中で菅官房長官は、記者団が、野党側が森友学園や加計学園の問題をめぐって国会での審議を求めた場合の対応について質問したのに対し、「政府は、閉会中審査を含めて衆議院と参議院で40時間を超える審議に対応している」と述べました。
その上で菅官房長官は「選挙期間中も安倍総理大臣が党首討論会などで丁寧に説明していた。こうした議論を通じて明らかになったことは、安倍総理大臣が指示したり、関与したという方は誰もいなかったということだ」と述べました。
そして、菅官房長官は「今後、求められれば誠意を尽くして丁寧に説明する姿勢には変わりはない。当然、国会でも質問いただければ丁寧に説明させていただく」と述べました。 
■認可の判断は11月10日(10月27日)
学校法人「加計学園」の獣医学部新設について、有識者からなる文部科学省の大学設置審議会は、来月10日に、認可するかどうかを判断し、林文部科学大臣に答申する方針を固めました。
学校法人「加計学園」が、来年4月に計画している愛媛県今治市での獣医学部新設をめぐり、文部科学省の大学設置審議会は、学園が提出した教員の数や学生の定員、教育内容などが適切かどうか審査を行っていて、ことし8月の審議会では「十分な教育環境が整っていない」などとして、認可の判断を保留していました。
こうした中、審議会は、加計学園側から提出された修正案などの審査を進めたうえで、来月10日に、認可するかどうかを判断し、林文部科学大臣に答申する方針を固めました。
これについて、林文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で、「52年ぶりの獣医学部新設の案件であり、より慎重な審議を行うため必要な審査日程を確保した。審査スケジュールに関する様々な報道がなされる中、静かな環境で審査を行うために必要な日程調整を行った。引き続き、静かな環境で審査を行っていただきたい」と述べました。 
 
2017/10 報道

 

■加計問題、安倍首相の贈収賄事件に発展か… 10/7
 設置認可前に133億円補助金、建設着工
9月6日に今治市の「今治加計獣医学部問題を考える会」(黒川敦彦共同代表)の市民が、加計学園に違法に市有地を譲渡し、補助金の支給を決めた菅良二市長を相手取り、その撤回を求めて住民訴訟を提訴した。山場を迎える加計問題が、安倍首相による衆議院解散・総選挙の引き金になった点を追跡し、現状の課題を整理したい。
9月19日、安倍晋三首相は自民党の二階俊博幹事長に対して衆院解散を通知し、9月28日の臨時国会冒頭での解散を行った。「もり・かけ(森友・加計)問題」隠しとの指摘が相次いでいる。この「もり・かけ問題」は、安倍首相による縁故者への便宜供与、国家の私物化が共通した問題である。公金を不正に流用し、便宜を図っていたのだが、この問題は安倍首相による大義なき解散にどのように影響を与えたのか。
森友問題については、すでに本サイトで報じたように、9月15日に東京地検特捜部が2つの市民団体の告発状(それぞれ背任罪と公用文書毀棄罪)を受理し、大阪地検特捜部に移送し、財務省などへの捜査が不可避となった。いよいよ森友問題の核心である2万トンの埋設ごみを仮装して8億円を値引き、国有財産に損害を与えた背任罪とそれを隠そうとした公用文書毀棄罪に捜査が入り、その最大のターゲットが佐川宣寿国税長官(前財務省理財局長)である。もちろん、便宜供与した安倍首相への捜査に進展する可能性もある。
加計問題が安倍首相を衆院解散に追いやった要因として、次の3点が挙げられる。
(1)衆議院予算委員会閉会中審査における質疑での安倍首相の答弁
食事とゴルフを何度も共にした安倍首相と加計孝太郎加計学園理事長。料金負担は「私の時も先方の時もある」と利害関係者からの接待(賄賂)を認め、関連して「加計学園の特区申請を知ったのは、今年(2017年)1月20日」と、これまでの発言と異なる内容を述べた。
(2)新設を認めるかどうかを審議する文部科学省の大学設置・学校法人審議会(設置審)の「認可保留」決定と継続審査の上で、10月下旬に答えるとした。
(3)今治市での住民監査と行政訴訟の動き、そして建設設計図からわかってきた獣医学部の実態解明の進展。
7月24日に開かれた閉会中審査における加計学園問題への集中審議質疑のなかで、民進党の大串博志議員の質問を受け、安倍首相は、加計氏から接待を受けていた事実を認めた発言は決定的であった。その後の「今年の1月20日に加計学園の特区申請を知った」という発言は、これまでの答弁と違える発言だった。
参議院予算委員会(5月9日)や同決算委員会(6月5日)での答弁では、「国家戦略特区に、その申請を今治市とともに出された段階で承知した」と答え、今治市が獣医学部新設を提案した15年6月に知っていたと答えていた。質問主意書での同様の質問への回答とも内容が異なっており、以前から加計学園の特区申請の話を聞いていたという話になれば、賄賂―贈収賄の構図が成り立ってしまうため、それを避けるための発言だったと考えられる。
8月25日、文部科学省の設置審は、加計学園の認可申請を「認可保留」として審査継続にし、結論を10月下旬に持ち越した。この審査継続によって、当初予定されていた衆院選3補選(新潟、愛媛、青森)は重要な意味を持つことになり、補選の行方次第によっては安倍首相の政治力が低下し、継続審査の結果にも影響することが考えられた。そこで安倍首相は、総選挙ならば議席数は減っても影響力は継続できると考え解散に至ったとみられる。
9月6日の住民訴訟では、学園への市有地(評価額36億7500万円)の無償譲渡、および建設費に対する最大96億円の補助金の撤回を求めていた。「今治加計獣医学部問題を考える会」は、加計学園建築物の設計図を入手し、この補助金によって建設される施設単価が通常の2倍以上に見積もられていたことを知り、安倍首相による便宜供与の実態を各種メディアを通して明らかにしていた。結局、加計学園は単価を倍額以上に水増しした建設費の「半額」の補助金を受け取ることにより、実質1銭も使わずに学園建設できる供与を受けていたことになる。
この住民訴訟は、加計問題での「便宜供与」の実態に直接触れる訴訟であり、いよいよこの問題が裁判・行政訴訟で争われることになった。しかも、この便宜供与の開始のボタンを押したのは安倍首相であり、これまで国が隠してきた内閣府や官邸と今治市との事前の打ち合わせの内容が明らかになってくれば、利害関係者への便宜供与が贈収賄事件へと発展する裁判にもなってくる。
安倍首相は国家戦略特区によって岩盤規制に穴を空けたというが、実態は腹心の友である加計氏が理事長を務める加計学園に巨額の公金をつぎ込むという、国家・行政の私物化でしかなく、だからこそ解散・総選挙に入ったといえる。 
 
2017/11

 

■来年4月の開学 認可される見通し(11月2日)
学校法人「加計学園」の獣医学部に対して、来年4月に開学を認めるかどうか審査する文部科学省の審議会の専門委員会が2日に開かれ、課題とされていた学生たちの実習計画などに改善が見られると評価する意見をまとめました。審議会は10日に最終的な結論を大臣に答申する予定ですが、この結果により、加計学園の来年4月の開学は認可される見通しとなりました。
「加計学園」が愛媛県今治市に建設中の獣医学部をめぐり、文部科学省の大学設置審議会は来年4月の開学を認めるかどうか審査を行ってきました。
当初は、ことし8月に結論が出される予定でしたが、教育内容のうち学生に対する実習時間が不十分だなどとして認可の判断が保留されました。
関係者によりますと、学園から再度提出された修正案について、2日、非公開で審議会の専門委員会が行われた結果、依然として一部のカリキュラムに課題があると指摘をうけたということですが、全体的には学生たちの実習時間などに改善が見られると評価する意見でまとまったということです。
審議会は今月10日に最終的な結論を大臣に答申する予定ですが、この結果により、加計学園の来年4月の開学は認可される見通しとなりました。 
■立民「民主主義の根幹揺るがす」(11月6日)
立憲民主党は、森友学園や加計学園をめぐる問題の調査チームの初会合を開き、「民主主義の根幹を揺るがす大きな問題だ」として、国会で政府を追及していく方針を確認しました。
国会内で開かれた初会合には党所属の国会議員10人余りが出席しました。この中で、座長を務める逢坂誠二衆議院議員は「森友学園や加計学園の問題は単なるスキャンダルではなく、民主主義の根幹を揺るがす、大きな問題だ。しっかり解明して、『行政が私物化されていない』という政治状況を作りたい」と述べました。
そして、会合では、国会で政府を追及していく方針を確認しました。
このあと、加計学園の獣医学部の来年4月の開学が認可される見通しとなったことについて、出席者から質問が相次ぎましたが文部科学省の担当者は、「審議会の答申が出るまで日程などは非公開だ」と述べるにとどめました。 
■希望 徹底した情報公開求める(11月7日)
希望の党は、森友学園や加計学園をめぐる問題の調査チームの初会合を開き、国会審議で徹底した情報公開などを求めていく方針を確認しました。
希望の党は、森友学園や加計学園をめぐる問題の調査チームを設け、きょう午後、国会内で初会合を開きました。
この中で、大島幹事長は「国民1人1人が日本のオーナーで、役所の情報は基本的に国民の情報だ。情報をしっかり公開することが民主主義の基本だ」と述べ、国会審議で徹底した情報公開などを求めていく方針を確認しました。
また、会合では「加計学園の獣医学部の開学が認可される前に、政府は、説明責任を果たすべきだ」、「開学を認めるかどうかを審査する審議会などの議事録を公開すべきだ」といった指摘が出され、文部科学省の担当者は持ち帰って検討する考えを示しました。 
■野党5党など 衆院文科委で審議を(11月8日)
立憲民主党や希望の党など野党5党と衆議院の会派「無所属の会」の国会対策委員長らが会談し、学校法人「加計学園」の獣医学部の、来年4月の開学が認可される見通しとなったことを受けて、衆議院の文部科学委員会などで審議を行うよう求めていくことで一致しました。
立憲民主党や希望の党など野党5党と衆議院の会派「無所属の会」の国会対策委員長らは、きょう午前、国会内で会談しました。
この中では、学校法人「加計学園」の獣医学部の、来年4月の開学が認可される見通しとなったことを受けて、安倍総理大臣の所信表明演説が行われる今月17日までに、衆議院の文部科学委員会や内閣委員会などで審議を行うよう求めていくことで一致しました。 
■自民国対委員長 認可後速やかに審議したい(11月8日)
自民党の森山国会対策委員長は、記者団に対し、学校法人「加計学園」の獣医学部の、来年4月の開学が認可される見通しになっていることを受けて、認可後、すみやかに衆議院文部科学委員会などで審議を行いたいという考えを示しました。
学校法人「加計学園」の獣医学部の新設をめぐって、文部科学省の審議会は、あさって、来年4月の開学を認めるかどうか最終的な結論を林文部科学大臣に答申する予定で、認可される見通しとなっています。
これについて、自民党の森山国会対策委員長は、国会内で記者団に対し、「答申に基づいて、林文部科学大臣が一定の判断をしたら、スピーディーに所管する委員会を開いて議論するのは大事なことだ。与野党であまり考え方は変わらない」と述べ、認可後すみやかに衆議院文部科学委員会などで審議を行いたいという考えを示しました。
また、公明党の大口国会対策委員長も「林文部科学大臣が丁寧に説明し、説明責任を果たすことは大事だ。野党に言われたかどうかではなく、しっかり説明していくことになる」と述べました。 
■文科省審議会 来年4月の開学を認める答申(11月10日)
学校法人「加計学園」の獣医学部について、文部科学省の大学設置審議会は、課題となっていた学生の実習計画などは改善されたとして、来年4月の開学を認めるとする結論をまとめ、林文部科学大臣に答申しました。
国家戦略特区により、52年ぶりに愛媛県今治市に新設が決まった加計学園の獣医学部について、文部科学省の大学設置審議会は来年4月の開学を認めるかどうか審議を続けてきました。
当初は、ことし8月に結論を出す予定でしたが教育内容のうち学生に対する実習計画が不十分だったことなどから認可の判断を保留し、学園側に再度、修正案を提出するよう求めました。
設置審では、今月、この修正案について審査を行った結果、定員の140人に対して、実習の体制が十分整っていないなど、依然として課題があるとして修正を求める意見が出ました。しかし、全体の実習計画としては改善され設置基準は満たしているとして、来年4月の開学を認めるとする結論をまとめ林文部科学大臣に答申しました。
大臣は来週中にも最終的な結論を出すと見られますが、過去に大臣が審議会の答申と異なる判断をしたことはなく、このまま加計学園の獣医学部は認可される見通しです。関係者によりますと、学園の推薦入試や一般入試は現時点では予定通り、実施される見込みだということです。
答申を受けて、林文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で、「審査は、有識者に参画いただいて、慎重に進められた。申請された計画が『大学設置基準等の法令に適合している』と判断されたものと認識しており、答申結果を尊重し、速やかに判断を行いたい」と述べ、週明けにも認可する意向を示しました。
そして、林大臣は「いろいろな疑念について、国会などでも指摘を受けたが、それに対してお答えしてきたと承知している。今後も指摘が出てくれば、それに対してひとつひとつ丁寧にお答えしていく」と述べました。
立民 福山幹事長「疑念払拭されず」
立憲民主党の福山幹事長は、国会内で記者団に対し「国民の理解を得られず、許すことができない。総理大臣官邸の関与などの疑惑がまったく払拭されず、解明されていないし、国会審議もなされない中で答申が出されたことで、文部科学行政全体に対する国民の不信感が広がると考えており、到底認めるわけにはいかない。安倍総理大臣をはじめとした、各閣僚の説明を強く求めていきたいし、答申を差し戻して再検討することを求めていきたい」と述べました。希望の党の玉木共同代表は記者会見で、「わが党として大切なのは、行政改革と情報公開を徹底的に進めることであり、大学設置審議会の議事録の全面公開を求めていきたい。これまでも国会で説明を求めてきたが十分な答えをもらっていないところも多いので、この国会で、しっかりとした説明を求めていきたい」と述べました。共産党の笠井政策委員長は記者会見で、「国会で何の丁寧な説明もなく、疑惑の解明もされないままに認可するのは、とんでもない加計隠しで、林文部科学大臣は、認可すべきでない。国会では、加計 晃太郎理事長らの証人喚問や、安倍総理大臣が出席する質疑が不可欠だ」と述べました。社民党の又市幹事長は「今回の答申は、政治的に無理やり認可に持っていこうとする苦しさがうかがえるもので、多くの疑念や課題があるため、林文部科学大臣は、答申通りに、ただちに認可すべきではない。安倍総理大臣が、『丁寧に説明していく』と宣言した以上、論戦を堂々と受けて立ち、説明責任を果たすよう強く求めていく」などとする談話を出しました。
自民 二階幹事長「疑問点の審議 結構なこと」
自民党の二階幹事長は、記者会見で「申請された計画が、大学設置基準などの法令に適合していると判断されたものと認識している。今後は、この結果を、文部科学大臣が、十分に尊重して最終的な判断をするものと思うが、これだけ、世の中を騒がせ、国会審議にも渋滞を来したわけだから、大臣や、それに匹敵するような者が説明に来るのは当然のことで、国会でもしっかり疑問点について審議いただくことは結構なことだ」と述べました。
前次官 国家戦略特区の目的に適うものか
文部科学省の前川前事務次官は「獣医学部の選定プロセスの疑念に具体的な説明がなされないなか認可されるのであれば、国民に真摯に向き合っていないことになるのではないか。設置審は最低基準に照らして学部設置の可否を判断するだけなので、改めて特区諮問会議を開き、具体化した内容が国家戦略特区の目的に適うものなのか、再確認する必要がある」というコメントを発表しました。
加計理事長「万感胸に迫る」
「加計学園」の加計晃太郎理事長は「10数年前から学園では、動物関連の学部・学科を設置してきた。こうした歴史を積み上げてきた結果が今回の答申につながったものと深く感謝している。ようやくたどり着き、万感胸に迫る思いだが、ここまできた以上は認可を得たうえで世界に冠たる獣医学部を目指して、努力に努力を重ねていきたい」などとするコメントを出しました。
松山市民は…
松山市民からは開学が地元の振興につながると期待する声の一方、安倍総理大臣のさらなる説明を求める声が聞かれました。このうち、19歳の男子大学生は「獣医学部ができれば多くの若い人がきて、地域の活性化につながるのでいいことだと思います」と話していました。また、40代の女性は「雇用の創出などにつながるので獣医学部ができることは賛成です。国会では、安倍総理大臣がお友達を優遇したとかで議論になっていましたが、もっとほかに議論すべきことはあるし、獣医学部をさらによくしようと前向きな議論をするべきだ」と話していました。一方、81歳の男性は「安倍総理大臣が疑惑に対して納得のいく説明をしないまま学校ができることは反対です。安倍総理大臣にはこれからの国会できちんとした説明をして欲しい」と話していました。
今治市長「大きな夢が実現へ」
今治市の菅良二市長は「最終的には大臣が認可の判断をするが、審議会で公平で公正な審査が行われたことにこの場を借りて感謝申し上げたい。いよいよ大きな夢が実現しようとしている」と述べました。その上で、「全学年で1000人を超える若者が今治に住んでもらえることになる。学生の受け入れ体制をしっかり官民一体で取り組みたい。現在、獣医師を目指し、勉強に励んでいる志の高い受験生の皆さんに一流のスタッフと設備を備えた世界に冠たる大学ができるので是非受験して欲しいと期待している」と述べました。 
■衆院文科委の質疑で合意(11月10日)
民党と立憲民主党の国会対策委員長が会談し、文部科学省の審議会が、学校法人「加計学園」の獣医学部の来年4月の開学を認めると答申したことを受けて、来週14日にも、衆議院文部科学委員会を開き、質疑を行うことで合意しました。
この中で、立憲民主党の辻元国会対策委員長は、文部科学省の大学設置審議会が、学校法人「加計学園」の獣医学部の来年4月の開学を認めると林文部科学大臣に答申したことを受け、「速やかに、関係する委員会を開いて質疑を行ってほしい」と求めました。
これに対し自民党の森山国会対策委員長は「国民の関心も高く、スピーディーに委員会を開くことは大事だ」と応じ、来週14日にも衆議院文部科学委員会を開き、質疑を行うことで合意しました。 
■文科省審議会 緊迫したやりとり(11月10日)
加計学園の獣医学部の開学を認めるべきかどうか、実質的に審査したのは文部科学省の大学設置審議会の専門委員会です。獣医学などの専門家、14人で構成され、専門的な見地から学園から申請された教員の数や定員、教育内容に法令違反がないか審査にあたりました。通常の学部の場合、設置審では最終的に8割以上の開学が認められるなどそのハードルは低いとされています。しかし、国家戦略特区で認められた獣医学部の審査は今回が初めてでした。設置審は非公開で行われますが、最終的な答申をまとめるまでに委員の間、さらに文部科学省との間で緊迫したやりとりがあったことがNHKの取材で分かりました。
厳しい指摘続いた申請内容
まず、問題となったのは学園が提出した申請内容でした。ことし5月に行われた専門委員会の審査では、抜本的な見直しが必要な場合にのみ付けられる「警告」が出されました。 その理由として、国家戦略特区の構想にある新たな獣医学部の必要性について「具体的な需要が不明だ」と指摘しているほか、国内最大の160人の学生規模について、「実習を円滑に実施できるか不明」と記されるなど、厳しい意見が相次ぎました。委員のひとりは「学園が当初提出した計画は、教員の年齢層が偏っていたりとか、研究施設が狭く、既存の大学に比べても非常に劣ったりしているものだった」と振り返りました。これに対し、学園側は、定員を20人少ない140人に減らしたり、専任教員を増やしたりして修正案を出しました。しかし、設置審は8月、学生の実習計画などが不十分だなどとして、認可の判断を保留しました。
4条件満たしているか
また、審査では、政府が国家戦略特区の中で、獣医学部新設を決めるにあたって閣議決定したいわゆる「4条件」をどう扱うべきかについても焦点となりました。4条件とは、既存の大学や学部にない、とかライフサイエンスなど、新たに対応すべき分野で具体的な需要があることなど、政府が獣医学部新設の根拠としたものです。政府は学園の獣医学部はこの4条件に合致していると説明したのに対し、野党などは議論はほとんどされていないと反論していました。今回の設置審でも、委員の間から「学園の申請内容はいわゆる4条件を満たしていない」という意見が出されたということです。これに対して、文部科学省の担当者は「4条件は特区での検討事項であり、この審議会では審査しない」と繰り返し説明したということです。委員のひとりは「特区の中では加計学園の獣医学部は4条件を満たしているというが学園から提出された計画をみる限りそうは思わなかった」と話しています。
「訴訟という言葉聞かされ…」
設置審の専門委員会が認可を認める結論を出したのは今月2日です。この日の議論では、「依然として、実習体制が十分でない」などとして、認可に向けた結論を出すことに異論を口にする委員もいました。こうした中、取りまとめ役を務めた委員から「設置審として、これ以上、認可を先延ばしにすれば、学園側と訴訟を含めたトラブルになる可能性がある」という発言もあったということです。これについては「訴訟という言葉を聞かされ、何も言えなくなった」と話す委員もいました。最終的に設置審は、実習計画全体としては改善され、最低限の設置基準は満たしているという結論に至りました。 
■林文科相 来年4月開学 正式に認可(11月14日)
林文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で、学校法人「加計学園」の獣医学部について、文部科学省の大学設置審議会の答申を踏まえ、来年4月の開学を、きょう正式に認可したことを明らかにしました。
学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に新設を計画している獣医学部について、文部科学省の大学設置審議会は「課題とされていた学生の実習計画などは改善された」などとして、来年4月の開学を認めるとする結論をまとめ、先週、林文部科学大臣に答申しました。
これを受けて、林文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で、「申請された計画は、大学設置基準等の法令に適合していると判断されたものであり、審議会の答申結果を尊重して、認可することを判断した。審議会での審査とは別に、文部科学省として、最終的な申請内容が、国家戦略特区のプロセスの中で認められた加計学園の構想に沿っていることも確認している」と述べ、きょう正式に認可したことを明らかにしました。
そして、林大臣は、加計学園に対し「開設以降は、認可した計画を確実に履行して適切な教育環境を提供していただきたい」と述べました。
さらに、林大臣は「審議会で出されたすべての審査意見や申請書類を公表することで、審査の透明性の確保は図られていると考えているが、国会等においてもプロセスや手続きの説明を含めしっかり対応して参りたい」と述べました。
菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、記者団が「文部科学省の大学設置審議会では、獣医学部の需要などについて疑義が出たが、一点の曇りもない認可と受け止めているのか」と質問したのに対し、「第三者でつくる大学設置審議会の答申を受けて林文部科学大臣が判断したと思うのでまったく指摘されるようなことはないと思っている」と述べました。
自民党の竹下総務会長は記者会見で「審議会で設置を認めるという方向が出たことを受けて、政府がどう判断するかという問題なので、林文部科学大臣の判断を尊重したいし、何ら異議はない。ただ、加計学園をめぐって、『十分な説明がなされていない』という声が出ているのは事実なので、国会の場で、しっかり話をすることが非常に大事だ」と述べました。
立憲民主党の長妻代表代行は記者団に対し「いろんな疑惑が晴れていない中で、野党が、『認可は留保して欲しい』と言ってきたにもかかわらず、林文部科学大臣の判断で認可したということは、厳重に抗議したい。認可を撤回して、きちんとした説明をしてもらわないといけない」と述べました。
共産党の小池書記局長は記者会見し、「まさか認可するとは思わなかったし、国民は、誰も納得しない。『選挙が終われば何でもありなのか』という安倍政権の姿勢に心から驚き、あきれ、怒りを覚える。総理大臣のお友達ということで、特権が付与されることがあれば、国家の根本にかかわる重大問題だ。きちんと解明していくことが、この特別国会の最重要課題のひとつだ」と述べました。 
■衆院文科委 あす質疑 質問時間は与党1対野党2(11月14日)
学校法人「加計学園」の獣医学部の来年4月の開学が認可されたことを受け、衆議院文部科学委員会は理事懇談会で、あす委員会を開き、与党が1時間20分、野党が2時間40分の1対2の割合で、合わせて4時間質疑を行うことで与野党が合意しました。
学校法人「加計学園」の獣医学部について、林文部科学大臣はきょう、文部科学省の大学設置審議会の答申を踏まえ、来年4月の開学を正式に認可しました。
これを受けて、衆議院文部科学委員会はきょう、断続的に理事懇談会を開き、与党側は、あす委員会を開いて、与党と野党が1時間半ずつ質疑を行うことを提案しましたが、野党側は、「議員数が少ない党の質問時間も確保すべきだ」と主張しました。
これを受けて、与党側は、与党が1時間20分、野党が2時間40分の1対2の割合で、合わせて4時間質疑を行うことを提案し、野党側もこれを受け入れて与野党が合意しました。
そのうえで、与野党は、今回の衆議院文部科学委員会での質問時間の配分を、今後のほかの委員会での先例にはしないことも申し合わせました。 
■文科相 認可までの手続きは適正(11月15日)
学校法人「加計学園」の獣医学部の開学が認可されたことを受けて、衆議院文部科学委員会が開かれ、林文部科学大臣は「学部設置の構想は先端的な研究など新たなニーズに対応すると確認されたものだ」などと述べ、認可までの手続きは適正に進められたという認識を示しました。
衆議院文部科学委員会は、林文部科学大臣がきのう、学校法人「加計学園」の獣医学部の、来年4月の開学を正式に認可したことを受け、きょう、焦点となっていた質問時間を与党1、野党2の割合として質疑を行いました。
この中で、自民党の橘慶一郎氏は「設置認可となったが、国家戦略特区なので、地域に貢献していくことも大事だ。文部科学省として、大学を地域の拠点としていくためにどう対処していくのか」と質問しました。
これに対し、林大臣は「今回の獣医学部設置の構想は、国家戦略特区のプロセスの中で先端ライフサイエンス研究の推進、地域の水際対策など新たなニーズに対応するものだと確認され、申請された。教育と研究活動が申請内容通りに確実に実施され地域の学術的拠点となることを期待している」と述べました。
立憲民主党の逢坂誠二氏は「新設を検討する4条件がクリアされたとは全く思えない。加計学園の問題で、安倍総理大臣や総理大臣官邸が何らかの肩入れや関与をしたのではないかと言われているが、適切だと思うか。それとも不適切と理解しているのか」とただしました。
これに対し、林大臣は「そういうことがあったとすれば、適切ではないと認識しているが、獣医学部の設置に関して、安倍総理大臣から文部科学省に対して指示はなかったと承知している」と述べました。
さらに、林大臣は「『加計学園ありき』の選定を経た認可は取り消すべきだ」と追及されたのに対し、「プロセスを踏んで申請され、文部科学省の大学設置審議会でしっかり審査して『可』とする答申が出ており、それにもとづいて認可した」と述べ、認可の取り消しを否定しました。
一方、林大臣は、大学設置審議会の議事録の公開を求められたのに対し、「個々の委員の発言や見解を明らかにすることで、公平な議論が妨げられる恐れがあると考え、個別の議事録は作成していない。議事要旨や審査意見、答申の公開で審査過程の透明性は図られている」と述べました。
立民 辻元国対委員長
立憲民主党の辻元国会対策委員長は、党の会合で、衆議院文部科学委員会で、質問時間を与党1、野党2の割合で質疑が行われたことについて「与党側は、政府の言い分を補強し、さらに疑念を深めるような質問や、内部から『おかしい』と声を上げた人をおとしめるような質問をしており、『そういうことをするために質問時間がほしかったのか』と言わざるを得ない中身だった。質問時間という量の問題だけでなく、行政府をチェックしていく質の問題も問われかねない」と述べました。
共産 国対委員長
共産党の穀田国会対策委員長は、記者会見で「国家戦略特区において、獣医学部を作ることが、もともと誤りだったということが明確になった。引き続き追及が必要で、肝心要の加計学園の加計 晃太郎理事長と安倍総理大臣の2人のキーパーソンを国会に呼ぶ必要がある」と述べました。 
■首相「指示したことはない」衆院代表質問(11月21日)
安倍総理大臣は、衆議院本会議の代表質問で、森友学園や加計学園の問題を引き続き、丁寧に説明する考えを示すとともに、加計学園の獣医学部の開学に向けて指示したことはないと重ねて強調し、手続きは適正に行われたという認識を示しました。
共産党の志位委員長は「森友・加計問題の疑惑は、公正公平であるべき行政が、時の権力者によってゆがめられ、国政が私物化されたのではないかという重大疑惑であり、選挙で多数を得たからといって絶対にあいまいにされてはならない」と追及しました。
これに対し、安倍総理大臣は「森友学園については、妻が一時期、名誉校長を務めていたこともあり、国民から疑念の目を向けられたとしてももっともだろう。国会で丁寧な説明を積み重ねてきたし、今後もその考えに変わりはない」と述べました。
そのうえで安倍総理大臣は、先に認可された「加計学園」の獣医学部の開学をめぐり、「先般の閉会中審査で、関係大臣はじめ誰1人として、私から獣医学部新設の指示を受けなかったことが明らかになった。そのことが今回の行政プロセスを評価するにあたり、もっとも重要なポイントだ」と述べ、手続きは適正に行われたという認識を示しました。 
 
2017/11 報道

 

 
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2018/ 2

 

 
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2018/ 3

 

 
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■加計でも「文書改ざん」指摘 3/16
 内閣府が今治市に指示?「確認のコンタクトだけ」と反論
森友学園に続いて、加計学園をめぐる文書でも改ざん疑惑だ。森友学園の問題では財務省の文書が改ざんされたが、今回改ざんが疑われているのは、加計学園が獣医学部を設置する今治市の文書。
書き換えたのは今治市だとみられるが、背景には内閣府の指示があったと見る向きもあり、野党は「安倍総理のお友達案件」(希望の党・今井雅人衆院議員)だとして追及する構えだ。
改ざんが疑われているのは、今治市職員が内閣府で行われた獣医学部設置に関するヒアリングに出席した際の出張報告書にあたる15年6月8日付の「復命書」。開示請求で16年12月に開示された内容と17年8月に開示された内容とで差分があることが、3月9日発売の日刊ゲンダイ(10日付)や3月15日発売の週刊文春(22日号)の報道で問題化した。
16年12月開示のバージョンは、別添資料を除くと全4ページ。そのうちヒアリングの出席者や議事要旨などが「のり弁」と呼ばれる黒塗りの状態だ。17年8月開示バージョンでは、黒塗りの部分こそないものの、全体で2ページしかない。副市長以下の決裁印の位置や数も異なっている。
内閣府は、このヒアリングの内容を議事要旨として作成し、内容に誤りがないかを今治市を含む出席者に確認している。
文春記事では、今治市が
「内閣府からの確認作業に基づき、過去に部分開示決定を行った復命書について内容を精査し、聞き取り間違いやニュアンス間違いを正し、古いものとセットで、同日(編注:確認作業が行われた17年3月6日)付で書類作成し、保管していたものです」
と回答したとして、「事実上書き換えを認めた」と報じていた。
この件は18年3月15日に野党6党が行ったヒアリングでも問題化。内閣府の塩見英之・地方創生推進事務局参事官は
「そういう報告用の文書に対して、国の立場から何か申し上げる、指示するということは一切ない」
と反論。梶山弘志地方創生相も3月16日の記者会見で、問題の復命書は
「今治の条例、規則にのっとって今治市が作成した」
とした上で、内閣府から今治市への指示の有無について
「その(議事要旨の)確認を行うためのコンタクトだけだったとうかがっている」
と述べた。  
 
2018/ 4

 

■加計学園運営の岡山理科大獣医学部で入学式(2018年4月3日)
獣医学部の新設をめぐって国会で問題が指摘される中、学校法人「加計学園」が運営し、今月、愛媛県今治市に新設した岡山理科大学獣医学部の入学式が行われ、加計 晃太郎理事長は「予想を上回る志願者数であり、プロジェクトが評価された」とあいさつしました。
愛媛県今治市にある岡山理科大学の獣医学部で行われた入学式には、獣医学科147人、獣医保健看護学科39人の新入生と、その保護者らが出席しました。
この中で、加計理事長は「獣医学部の新設ではいろいろとご心配をかけたが、予想を上回る志願者数であり、私たちのプロジェクトが評価された。新設が待ち望まれていたことを如実に示している」とあいさつしました。
また、今治市の菅良二市長は「岩盤規制を突破するため、愛媛県や加計学園と連携して国に要望を続け、規制が緩和された」などと祝辞を述べました。
獣医学部の新設を国に求め、来賓として招かれた愛媛県の加戸前知事は「国家戦略特区諮問会議民間有識者委員の魔法の発言で岩盤規制を突破して認められたのだから、ある意味では魔法の学校の入学式かもしれない」と話しました。
新入生の代表は「受験の時期は波乱の連続だったが、乗り越えることができた。獣医学部をすばらしい学部にできると確信している」などと決意を語りました。
加計学園の獣医学部は、国家戦略特区制度を活用して52年ぶりに新設が認められましたが、安倍総理大臣が加計学園の理事長と友人であることや、愛媛県や今治市の職員が特区の指定を受ける前に官邸を訪れたことなどが明らかとなり、国会で野党から「選考が加計学園ありきだったのではないか」という指摘も出ました。
これに対し、安倍総理大臣は繰り返し関わりを否定していました。
岡山理科大学の吉川泰弘 獣医学部長は、入学式の後、記者団から「国の政策決定の過程に疑念の声も残っている」などと問われたのに対して「国家戦略特区のワーキンググループの議事録を見ても、整然と論理的に進められてきたし、岩盤規制を解いてくれたことは感謝しているが、政治に巻き込まれたという点はじくじたるところがある。ただ、入学式を見れば、学生も関係者も十分に趣旨を理解してくれたと思う」と述べました。
一方、国の政策決定の過程が不透明だとして、今治市が獣医学部に補助金を支出することに反対している地元の市民団体は、入学式の後、大学周辺で、新入生らに対しビラを配って行政が情報公開を進めるべきだなどと訴えていました。今治市民ネットワークの村上治共同代表は「国、愛媛県、今治市でのやり取りはまさにブラックボックスで、疑惑のまま新設を迎えた。入学式で来ているという加計理事長はきちんと公の前でこの問題について説明すべきだ」と話していました。 
■「ない」と説明の面会記録 残されていた 愛媛県調査(2018年4月9日)
公文書の管理のあり方が問題となる中、愛媛県がこれまでないと説明してきた学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関連する文書が残されていることがわかったとして、県は詳しい事実関係について調査していることがわかりました。
公文書をめぐっては、森友学園についての財務省の決裁文書が改ざんされたり、保存されていないとされてきた自衛隊のイラク派遣の日報が相次いで見つかったりするなど管理のあり方が問題となっています。
こうした中、愛媛県がこれまでないと説明してきた学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関連する文書が残されていることがわかったとして、県は詳しい事実関係について調査していることがわかりました。
文書には愛媛県や獣医学部が新設された今治市、それに学園の関係者が国家戦略特区に提案する2か月前の平成27年4月2日に官邸と内閣府を訪れた際、一行が面会した幹部らの名前とともに具体的なやりとりが記されているということです。
この文書は国家戦略特区の説明資料として愛媛県が内閣府や文部科学省、それに農林水産省に配ったということです。
この文書について県は去年7月、市民団体の情報公開に対して「存在しない」と回答していました。
愛媛県はNHKの取材に対し「文書の管理について県民から疑念が持たれないよう対応したいと考えている」と話しています。 
■愛媛県 中村知事 調査結果まとまり次第公表へ(2018年4月10日)
愛媛県は、これまでないと説明してきた学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関連する文書が残されていることがわかったとして、事実関係の調査を進めています。これについて中村知事は調査結果がまとまり次第、速やかに公表する考えを示しました。
加計学園の獣医学部新設をめぐって、国家戦略特区に提案される2か月前の平成27年4月2日に愛媛県や学部が新設された今治市、それに学園の関係者が、官邸と内閣府を訪れた際の文書について愛媛県は「残されていることがわかった」として詳しい調査を進めています。
関係者によりますと、文書には一行が面会した幹部らの名前や獣医学部新設をめぐる具体的なやりとりが記されていて、当時、総理大臣秘書官を務めていた柳瀬唯夫経済産業審議官の名前も記載されているということです。
この文書について県は去年7月、市民団体の情報公開請求に対して「存在しない」と回答していました。
愛媛県の中村知事はきょう午前、「担当部署に調査するよう指示した。わかり次第、発表する」と述べ調査結果がまとまり次第、速やかに公表する考えを示しました。
県は早ければきょうにも中村知事が記者会見を開いて事実関係について説明することにしています。 
■政府・与野党からは…(4月10日)
愛媛県が、これまで「存在しない」と説明してきた学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関連する文書が残されていることがわかったことに対する政府・与野党の反応です。
菅官房長官「文書あるか確認させる」
菅官房長官は「政府として、そのような文書は承知していない。柳瀬元総理大臣秘書官自身が『そうした発言をすることはあり得ない』というコメントを出したと承知している」と述べました。そのうえで、菅官房長官は、関係府省庁に対し、そうした文書が保存されているか確認させる考えを示しました。一方、菅官房長官は、記者団が「獣医学部新設は適切だったという考えに変わりはないか」と質問したのに対し、「そう思っている」と述べ、適切な対応だったという認識を示しました。また、菅官房長官は午後の記者会見で、「事務の副長官から内閣府、文部科学省、農林水産省、厚生労働省の事務次官に確認するよう指示した。現在、関係府省において、速やかに確認を進めていると理解している。『速やかに』と指示しているので速やかに報告があがってくるだろう」と述べました。また、野党6党が、総理大臣秘書官だった柳瀬経済産業審議官の証人喚問を求めていることについて、「国会のことは国会でお決めになる。政府としてはコメントを控えるが、事実関係はすでに国会の場で柳瀬元秘書官が答弁している。そして本日もコメントを出していると承知しており、それに尽きる」と述べました。
林文科相「今の段階でコメント差し控える」
林文部科学大臣は「報道されている文書について探索したが、文部科学省内では確認できていない。報道されている内容については国家戦略特区制度を所管する内閣府において、まずは確認されるものだと考えている。文部科学省としては、今の段階でコメントは差し控えたい」と述べました。
世耕経産相「答える立場になくコメント控える」
経済産業省の柳瀬経済産業審議官が総理大臣秘書官当時に「首相案件」と発言したと一部で報じられたことについて、世耕経済産業大臣は、記者団から「経済産業省として事実関係を確認する考えはないか」と問われたのに対して、「柳瀬氏本人がコメントを出すということについては連絡を受けた。いずれにしても総理大臣秘書官時代の話しである以上、経済産業省はお答えする立場になくコメントは控える」と述べました。また、世耕大臣は、経済産業省の藤原審議官が内閣府で地方創生推進室を担当していた際に、自治体や学園側に対して「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」などとみずから提案したと一部で報じられたことに関して「藤原氏からは特に報告は受けていない。内閣府の話である以上経済産業大臣としてはお答えする立場にはない」と述べるにとどめました。一方、世耕大臣は当時官房副長官を務めていたことに関連して、「官房副長官としての業務上私はこのことは全く認識しておりませんでした」と述べました。
齋藤農相「事実関係きちんと確認したい」
齋藤農林水産大臣は「報道で初めて知った。去年夏に農林水産大臣に就任する前の副大臣だった時代なども含め、一貫してそのようなものを目にしたことがなければ認識したこともない」と述べました。その上で齋藤大臣は「初めて知ったことなので、事実関係をきちんと確認したい。確認の方法などもこれから考えていかないといけない」と述べ、農林水産省としても事実関係を調査する考えを示しました。
梶山地方創生相「内閣府にないか確認指示した」
梶山地方創生担当大臣は「昨年夏の閉会中審査で、誰1人、総理大臣から獣医学部新設について指示を受けていないことが明らかになっている。文書は愛媛県の中で使われたものと推測されるが、私どもは見たことがない。公文書管理を担当する役所でもあるので、報道のあった文書が内閣府に保存されていないか確認するよう指示を出した」と述べました。
自民 二階幹事長「当事者が明確に説明すべき」
自民党の二階幹事長は「事実関係は、われわれには分からないので、分からないことを適当にコメントするのはいかがかと思う。当事者が明確に説明すべきだ」と述べました。また、二階氏は柳瀬氏が国会で説明すべきかどうかについて「国会で決めることだから、私からとやかく指示することではない」と述べました。一方、二階氏は、この問題に加え、自衛隊のイラク部隊の日報問題や財務省の決裁文書の改ざん問題をめぐり、国会で審議が続いていることについて、「国民のために、もっと重要な案件で議論させてほしいと思っているが、明けても暮れても、このようなことに終始するのは国民もうんざりしていると思うし、われわれも実際うんざりしている。まことに残念でならず、早く明確にし、解決していくことが大事だ」と述べました。
自民 森山国対委員長「証人喚問は委員会で議論を」
自民党の森山国会対策委員長は、記者会見で「愛媛県の備忘録に書いてあるようなことが本当にあったのかはよく分からない」と指摘しました。その上で、森山氏は、野党側が柳瀬氏の証人喚問を求めていることについて、「委員会の現場で議論してもらうことだが、柳瀬氏は『記憶の限りでは会ったことはない』としており、今までの国会答弁と一致している」と述べました。
自民 石破元幹事長「『首相案件』の認識はない」
3年前の当時、国家戦略特区を担当する地方創生担当大臣を務めていた、自民党の石破元幹事長は記者団に対し、「『首相案件』だという認識はないし、そういう資料を見た記憶もない。国家戦略特区に認定するかしないかも、きちんとした基準に基づかなければならないものであり、具体的な名前があがったことはない」と述べました。その上で、石破氏は「行政は、公平・公正に執行されたか、のちの検証にも耐えうるように文書として残すので、政府には、その文書があったのかなかったのか可能な限り探索し、今まで言ってきたことが正しいと証明する責任がある」と述べました。
公明党 山口代表「国民に説明責任を尽くすべき」
公明党の山口代表は「疑いがかけられているのであれば、そうした文書があるのかないのかきちんと確認して、まず明確にするところから始めるべきだ。いずれにしても、関係した部署できちんと国民に説明責任を尽くすこと大切だ」と述べました。
立憲民主党など野党6党「柳瀬らの証人喚問を」
立憲民主党など野党6党の国会対策委員長が会談し、総理大臣秘書官だった経済産業省の柳瀬経済産業審議官と内閣府で地方創生推進室を担当していた経済産業省の藤原審議官の証人喚問を求めていくことで一致しました。
立民 辻元国対委員長「うみの源は総理自身では」
立憲民主党の辻元国会対策委員長は国会内で記者団に対し「『安倍総理大臣の意向というよりも、主導だったのではないか』という疑惑が濃厚になった。『うみを出している病の源は、安倍総理大臣自身ではないか』という疑いが国民から向けられている。総理大臣官邸は疑惑の館になってしまった。衆議院予算委員会で、安倍総理大臣が事実を認め、どう責任を取るのかを見て、今後の国会運営を考えていく。総理大臣秘書官だった柳瀬経済産業審議官も証人喚問せざるを得ない」と述べました。
希望の党 玉木代表「安倍政権の退陣を求める」
希望の党の玉木代表は記者会見で、「報道されている文書が本当であれば、かなり初期の段階から『加計ありき』で進んできた事案と思われるので、総理大臣秘書官だった柳瀬氏の証人喚問を野党一致して求めたい。『記録もない、記憶もない、モラルもない』ということで行政組織が非常に危機的な状況にあり、安倍政権の政治責任は厳しく問われるべきで、退陣を求めたい」と述べました。
希望の党 泉国対委員長「与党の政権運営は断末魔」
希望の党の泉国会対策委員長は「与党の政権運営は断末魔という状況だ。総理大臣秘書官だった柳瀬経済産業審議官のこれまでの答弁と真っ向から反する文書が出てきているので、真相を明らかにしないといけない。きょうの衆議院の経済産業委員会に、柳瀬氏を呼んで問いただしたい。『首相案件』と明確に書かれているわけで、この文書がねつ造されたものなら別だが、かなり重たいと考えている」と述べました。
民進党 羽田参院幹事長「安倍内閣は早く退陣を」
民進党の羽田参議院幹事長は「『首相案件』という文書が残っているという報道があり、しっかりと確認しなければならない。ここまでひどい状況を考えると安倍内閣は早く退陣したほうがいい」と述べました。
民進党 岡田元代表「事実なら総理の話が疑わしくなる」
衆議院の会派「無所属の会」の代表を務める民進党の岡田元代表は記者会見で、「総理大臣秘書官が『首相案件だ』と述べたことが事実なら、『去年1月の国家戦略特区諮問会議で初めて加計学園だと知った』という安倍総理大臣の話が極めて疑わしくなる。総理大臣秘書官だった柳瀬氏は、証人喚問に呼ばなければならない重要な1人になっている」と述べました。一方、岡田氏は「公文書のあり方や事実関係の解明について、安倍総理大臣にも出席してもらえる形の特別委員会の設置が、1つの方向性ではないか」と述べました。
共産党 小池書記局長「総理の進退に関わる重大な疑惑」
共産党の小池書記局長は記者団に対し、「総理大臣秘書官だった経済産業省の柳瀬経済産業審議官と内閣府で地方創生推進室を担当していた経済産業省の藤原審議官は、参考人としての答弁が虚偽だった疑いが出てきており証人喚問で問いただす必要がある。安倍総理大臣は、進退に関わる重大な疑惑になってきており、一刻も早く責任を認めて辞めるべきではないか」と述べました。
日本維新の会 馬場幹事長「特別委員会で議論すべき」
日本維新の会の馬場幹事長は、記者会見で「『森友問題』や『加計問題』、防衛省の日報など、集中的に原因を究明しないといけない課題については、特別委員会などを設置して議論していくことを求めていく。霞が関の統治機構も改革していかないといけないので、省庁再編も積極的に調査し、提言していきたい」と述べました。
自由党 小沢代表「本当にひどい内閣の実態」
自由党の小沢代表は記者会見で、「『安倍総理大臣による権力の私物化』という言葉は、聞き飽きているくらいだが、本当にひどい内閣の実態がどんどん明るみに出てきている。国会で委員会を開いても、うそっぱちだけ言われていたのでは、何の意味もないので、安倍内閣の総辞職を一刻も早く実現することが国民のためだ」と述べました。
経済同友会 小林代表幹事「国民の疑念は晴れない」
経済同友会の小林代表幹事は記者会見で「何で今ごろ出てきたのかというのが正直なところで、防衛省の問題なども含めガバナンスに対する国民の疑念は晴れない。かつてより忖度が増えてきているのは明らかだし、人事を握られていることで官僚が敏感になっているのも事実だ。司法・立法・行政三権それぞれのガバナンスをもう一回見直すべきではないか」と述べました。 
■柳瀬経済産業審議官「記憶の限り会っていない」(2018年4月10日)
経済産業省の柳瀬経済産業審議官は学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり愛媛県の職員らが総理大臣官邸を訪れた際の文書に面会相手として名前が記載されているということについて「記憶の限りではお会いしたことはありません」などと否定するコメントを出しました。
愛媛県がこれまでないと説明してきた学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関連する文書が残されていることがわかり、関係者によりますとこの中に当時、安倍総理大臣の秘書官を務めていた柳瀬経済産業審議官の名前も記載されているということです。
これに関連して柳瀬審議官はきょうコメントを出しました。それによりますと、「国会でも答弁していますとおり当時私は、総理秘書官として、日々多くの方々にお会いしていましたが、自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」として面会したことはないと否定しています。
その上で、「自分の総理秘書官時代には、50年余り認められていなかった獣医学部の新設がどうなるかという制度論が議論されており、制度を具体的にどこに適用するかという段階ではありませんでした。具体的な地点の選定手続きは、私が総理秘書官の職を離れてかなり時間が経ってから始まり今治市が特区を活用して、獣医学部新設を行う規制改革が決まったのが平成29年1月だったと認識しています」としています。
一方、一部報道で平成27年4月に愛媛県や今治市の職員らと面会した際に「本件は、首相案件になっている」などと発言したと伝えられたことについては「私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」として否定しました。
柳瀬審議官のコメント全文
平成30年4月10日 経済産業審議官 柳瀬唯夫
朝日新聞等の報道に関しまして、以下のコメントをさせていただきます。
国会でも答弁していますとおり、当時私は、総理秘書官として、日々多くの方々にお会いしていましたが、自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません。
自分の総理秘書官時代には、国会でも答弁していますとおり、50年余り認められていなかった獣医学部の新設がどうなるかという制度論が議論されており、制度を具体的にどこに適用するかという段階ではありませんでした。
実際、その後、獣医学部新設を追加規制改革項目として、取り上げるかどうかについては、いわゆる「石破四原則」の決定により、検討が開始されることになり、翌年の平成28年11月に、獣医学部新設が国家戦略特区の追加規制改革事項として、決定されたと認識しています。
具体的な地点の選定手続きは、私が総理秘書官の職を離れてかなり時間が経ってから始まり、今治市が特区を活用して、獣医学部新設を行う規制改革が決まったのが平成29年1月だったと認識しています。
したがって、報道にありますように、私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません。
柳瀬審議官 平成29年7月の国会答弁
柳瀬氏は、7月24日の衆議院予算委員会で、平成27年4月2日に、愛媛県今治市の職員が総理大臣官邸を訪れた際に面会したか、という質問に対し、「この関連で、内閣府の担当部局と何度か打ち合わせをした記憶はある。私の記憶のある限りでは、今治市の方にお会いしたという記憶はない。秘書官時代に、自分の面談記録とか、誰に会ったとかという記録は特にとっていなかった。手帳も含めて、どなたにお会いしたとかというのは、一切、全く書いたことはない」と述べています。さらに、面会を安倍総理大臣に報告した記憶があるかと問われたのに対して、柳瀬氏は「報告をした記憶はまったくない」と述べています。翌日の7月25日、参議院予算委員会でも今治市の担当者と面会したかという質問に対し、柳瀬氏は「会った覚えがないということなので、それでご判断をいただくということだと思う」と答弁しています。柳瀬氏は、これに関連して、7月24日の衆議院予算委員会で「当時、私は総理秘書官として国家戦略特区や成長戦略などを担当していた。私が秘書官をしていたのは平成27年前半までだが、そのころは、そもそも獣医学部の新設をどうするかという制度論が議論されていて、制度を具体的にどこに適用するかという話はまだなかったと記憶をしている」と答弁しています。 
■「文書は県職員が報告のため作成」愛媛県知事(2018年4月10日)
学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、愛媛県や学園の関係者らが官邸を訪問した際に記された文書が残されていたことについて愛媛県の中村知事はきょう夕方、会見を開き、「文書は会議に出席した県の職員が報告のために作成したものだ」と述べて文書は県が作成したものであることを認めました。
加計学園の獣医学部新設をめぐって、国家戦略特区に提案される2か月前の平成27年4月2日に愛媛県や今治市それに学園の関係者が、官邸などを訪れた際の文書が残されていることがわかり、県は詳しい調査を進めています。
NHKが入手した文書には当時、総理大臣秘書官だった柳瀬唯夫経済産業審議官との面談結果についてという表題で、獣医学部新設に向けたアドバイスを受けたことなどが記されています。
この中で柳瀬氏は「本件は首相案件となっている。自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」などと発言したと記されています。
愛媛県の中村知事はこれまでの調査結果についてきょう夕方、記者会見を開き、公表しました。この中で、文書については「この会議に出席した県の職員が報告するための備忘録として書いたものと判明した」と述べて県が作成したものであることを認めました。
一方、柳瀬氏の名前が記されていることについて、「面会の相手先のことはコメントできない」とした上で、内容については「職員の報告を全面的に信じている」と述べました。
そして、文書は報告のためのメモであり、保管義務はなかったとして、現時点では見つかっていないと述べるとともに、引き続き調査する考えを示しました。 
■「首相案件」発言はありえない 元秘書官を信頼と強調 安倍首相(4月11日)
「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、愛媛県や学園の関係者らが総理大臣官邸を訪問した際に記されたとする文書について、安倍総理大臣は、記載のある柳瀬元総理大臣秘書官の「首相案件だ」などとする発言はありえないとしたうえで、柳瀬氏を信頼していると強調しました。
「加計学園」の獣医学部新設をめぐっては、3年前に、愛媛県や学園の関係者らが総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとする文書が残されていたことがわかり、この中では、当時、総理大臣秘書官だった柳瀬経済産業審議官が「この件は、首相案件だ」などと発言したと記載されています。
これについて安倍総理大臣は衆議院予算委員会で、「柳瀬元秘書官自身が『そうした発言をしたことはありえない』とコメントしている。私が意図していないことや私的なことについて、私の秘書官が『総理の意向だ』ということで、振り回す状況はありえない」と述べました。
これを受け、立憲民主党の枝野代表は「愛媛県が文書にうそや間違っていることを書いているのか、柳瀬氏がうそをついているのか、どちらか1つだ」と追及しました。
これに対し安倍総理大臣は、「愛媛県の文書について、コメントする立場にはない。私は部下を信頼して仕事をしており、秘書官在任中もそうだったが、柳瀬元秘書官の発言を元上司として信頼している」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は、「私が、『自治体や事業者にアドバイスをせよ』と言ったことはない」と述べ関与を否定したほか、「各省庁に愛媛県が作成した備忘録が渡ったという指摘もある。いまだ確認中だが、引き続き関係省庁でしっかりと確認させたい」と述べました。
さらに安倍総理大臣は、「昨年も、獣医学部新設をめぐる省庁間のやり取りが『言った』『言わない』と水掛け論におちいり、国民的な疑念を招く大きな要因となった。政府としては今後とも国民の疑念を招くことのないよう文書の正確性を確保するために努力する」と述べました。
一方、安倍総理大臣は、文書の中に、安倍総理大臣や学園の加計理事長らが会食した場で、獣医学部新設が話題にのぼったことが記載されていることに関連し、「当時の下村文部科学大臣から『加計学園が文部科学省の要請に対応していない』と聞いたこともないし、それを加計氏に伝えたこともない」と述べました。
このほか、内閣府の河村地方創生推進事務局長は、文書で、愛媛県や今治市などの関係者が内閣府を訪れたと記載された3年前の4月2日に、そうした事実があったかを問われ、「今治市には問い合わせたが、返事は『行った』ということだ」と述べました。
また、安倍総理大臣は、愛媛県などの関係者が総理大臣官邸を訪れたのかを改めて調べるよう求められたのに対し、「来客が膨大で記録は破棄することになっているが、もう1度確認する」と述べました。
一方、質疑では、希望の党の玉木代表が「安倍総理大臣の答弁はうそだ」などと追及し、安倍総理大臣が「『うそつき』と言う以上は、証拠を示してもらいたい。わきまえてもらいたい」と強く反論する場面がありました。
立民 枝野代表「首相のうそは国民が気付いている」
日本維新の会の代表を務める大阪府の松井知事は記者会見で、「大阪での民泊を特区で実現するために、自分は絶えず総理大臣官邸に要望していた。特区について官邸に要望してはいけないという話はない。加計学園の何が問題なのかわからない。規制緩和を目指す特区はアベノミクスの3本の矢の1つであり、むしろ、政府は『首相案件』だと認めればよいと思う」と述べました。また松井知事は、当時、総理大臣秘書官だった柳瀬経済産業審議官について、「疑惑だと言われているのであれば、国会に出て、忘れているならば、『忘れた』とはっきり言えばいい」と述べ、国会で説明すべきだという考えを示しました。 
■小泉氏「記憶の限りでは会っていない」は理解できない(4月11日)
加計学園の獣医学部新設で愛媛県が作成を認めた文書をめぐって、きょうも様々な発言がありました。
加計学園の獣医学部新設をめぐって、愛媛県が作成を認めた文書に、県の職員らが当時、総理大臣秘書官だった柳瀬経済産業審議官と面会した記載があることについて、柳瀬氏は「記憶の限りお会いしていない」とするコメントを出しています。
自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長は東京都内で行った講演の中で、「柳瀬経済産業審議官が、『記憶の限りでは会っていない』というコメントを出したが、理解できない。『記憶の限りでは』という注釈をつけなければいけないんだったら、『会っていない』と言い切れるはずがない。ちょっと考えられない」と批判しました。
自民 石破氏 「"友達だから便宜"ではないと証明を」
自民党の石破元幹事長は、東京都内で開かれた党所属議員のパーティーで、「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題を念頭に、「行政は公平で公正でなければならず、『お友達だから』と便宜をはかってもらうとしたら誰もばからしくて行政を信頼しない。政府には『そうではない』と証明する責任があり、その責任を痛感しながら信頼を取り戻していくべきだ」と指摘しました。
自民 岸田氏「政府の調査見守りたい」
自民党の岸田政務調査会長は記者会見で、「少なくとも、事実を確認し真実を明らかするのは、当事者でなければできず、まずは政府の調査、確認作業を見守りたい。そのうえで、国民の疑念を払拭(ふっしょく)するために何が必要なのか考えていく」と述べました。
維新 松井代表 「政府は首相案件と認めればよい」
日本維新の会の代表を務める大阪府の松井知事は記者会見で、「大阪での民泊を特区で実現するために、自分は絶えず総理大臣官邸に要望していた。特区について官邸に要望してはいけないという話はない。加計学園の何が問題なのかわからない。規制緩和を目指す特区はアベノミクスの3本の矢の1つであり、むしろ、政府は『首相案件』だと認めればよいと思う」と述べました。また松井知事は、当時、総理大臣秘書官だった柳瀬経済産業審議官について、「疑惑だと言われているのであれば、国会に出て、忘れているならば、『忘れた』とはっきり言えばいい」と述べ、国会で説明すべきだという考えを示しました。
下村氏 「非常に迷惑」と否定
愛媛県や学園の関係者らが総理大臣官邸を訪問した際に記されたとする文書では、安倍総理大臣や学園の加計理事長らが会食した場で、当時の下村文部科学大臣の発言が話題にのぼったことが記載されています。これについて下村氏は、自民党本部で記者団に対し、「安倍総理大臣にも加計理事長にも『加計学園の課題が、きちんと対処されておらず、けしからん』という話は全くしたことがない。加計学園のどなたかが、愛媛県の職員に話して、備忘録のような形で書いたという伝聞の伝聞だ。名前が出たことに対して、非常に迷惑に思っている」と述べ、否定しました。
愛媛県知事「記憶の限り」はどうなのか
愛媛県が作成を認めた文書に、県の職員らが当時、総理大臣秘書官だった柳瀬経済産業審議官と面会した記載があることについて、柳瀬氏は「記憶の限りお会いしていない」と述べました。これに対して中村氏はきょうの会見で中村知事は、改めて文書は県職員が作成したものであり、内容は信用している考えを示したうえで、柳瀬氏のコメントについては「『記憶の限り』という言葉が気になる。どうなのかなと聞いたほうは感じてしまう」と感想を述べました。そして、「国のほうで丁寧に説明してもらいたい。正直に、丁寧にということに尽きる」と述べ、関係する省庁が情報を公開して説明するよう重ねて求めました。 
■農相 省内に残されていた加計文書を公開(4月13日)
齋藤農林水産大臣は閣議のあとの記者会見で、加計学園の獣医学部新設をめぐり、愛媛県の担当者が3年前に総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとする文書が省内に残されていたとして、文書を公表しました。
公表された文書は平成27年4月3日付けで、加計学園の獣医学部新設をめぐり、文書作成の前日、4月2日に愛媛県や学園の関係者らが総理大臣官邸を訪問した際のやり取りが記されています。
この中では、当時、総理大臣秘書官だった柳瀬経済産業審議官が「本件は、首相案件」などと発言したと記載されています。
また、文書には、総理大臣官邸の訪問に先立ち、当時、内閣府で地方創生推進室を担当していた経済産業省の藤原審議官とも面談し、要請の内容は総理大臣官邸から聞いているという発言などがあったことも記されています。
齋藤農林水産大臣の会見によりますと、この文書は、平成27年5月に獣医師法などを担当する部局に異動した職員が、前任者から引き継ぎましたが、担当業務とは直接関係ないと考えて、行政文書としては管理せずに保有していたということです。
また、文書を引き継いで保有していた職員の前任者は、聞き取りに対し、「このような文書を見た記憶はないが、異動の際に渡した資料の中に含まれていたかもしれない」と話したということです。
一方、今回、農林水産省の調査の対象となった36人の職員のうち、この文書について「見たり聞いたりしたことがある」と答えた職員はほかにはいなかったということです。
齋藤大臣は会見で、「文書が省内にあったことは事実だが、農林水産省が作成したものではなく、内容も所管外の獣医学部の新設に関するものであり、特にコメントすることはない」と述べました。
また、齋藤大臣は、「当時、農林水産省と柳瀬氏の間で何らかのやり取りはあったのか」という質問に対しては、「ありえない」と述べました。
柳瀬元首相秘書官「わかりません」
元総理大臣秘書官の柳瀬経済産業審議官は13日午前、安倍総理大臣の訪米に向けた準備のため各省の幹部とともに総理大臣官邸を訪れました。官邸を後にする際、記者団から、愛媛県の担当者が3年前に総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとする文書を農林水産省が公表したことについて問われたのに対し、柳瀬元総理大臣秘書官は「わかりません」と答えました。また、柳瀬元総理大臣秘書官は、「記憶の限り、会っていないことで変わりないか」と問われると、「変わっていません」と答えました。さらに、「愛媛県と柳瀬氏とどちらが真実か」と問われたのに対して、柳瀬元総理大臣秘書官は「コメントしたとおりです」と述べました。今回公表された文書をめぐり、柳瀬元総理大臣秘書官は今月10日、「記憶の限りでは、お会いしたことはない。私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ない」などとするコメントを出しています。
藤原審議官「内閣府に尋ねて」
加計学園の獣医学部新設をめぐって、3年前に愛媛県の担当者が総理大臣官邸などを訪問した際のやり取りを記した文書で県側と面会していたとされる、当時、内閣府の地方創生推進室の次長を務めていた経済産業省の藤原豊審議官は、農林水産省が文書を公表したことについて「報道は拝見したが、必要なことは内閣府に伝えておりますので、そちらにお尋ねいただければと思います」と述べました。加計学園の獣医学部新設をめぐって、3年前に愛媛県の担当者が総理大臣官邸などを訪問した際のやり取りを記した文書が13日に農林水産省から公表されました。これについて、当時、内閣府の地方創生推進室の次長で、文書の中で県側と面会したとされる経済産業省の藤原審議官は、記者団に対し、「報道は拝見したが、必要なことは内閣府に伝えておりますので、そちらにお尋ねいただければと思います」と述べました。この文書では、藤原氏が「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」などと発言したという内容が記されています。
官房長官「疑念招くことないよう努力すること必要」
菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、記者団が、愛媛県の担当者が3年前に総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとする文書の内容と柳瀬元総理大臣秘書官の説明が食い違っているとして、どちらが事実だと思うかと質問したのに対し、「政府として答える立場ではないが、柳瀬元秘書官は『そういうことを言うわけがない』と述べているのも事実だ。そういう中にあって、今後、国民の疑念を招くことがないように努力することが必要だ」と述べました。また、菅官房長官は、政府内での文書の調査について「内閣府、文部科学省、厚生労働省でも引き続き調査を行っているが、今のところ、『見つかっていない』という報告を受けている」と述べました。 
■野党 柳瀬元首相秘書官らの証人喚問を改めて要求(4月13日)
加計学園の獣医学部新設をめぐり、愛媛県の担当者が記したとする文書が農林水産省に残されていたことを受けて、野党側は、衆議院予算委員会で柳瀬元総理大臣秘書官らの証人喚問を早期に行うよう与党側に改めて求めました。
加計学園の獣医学部新設をめぐり、愛媛県の担当者が3年前に総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとする文書が農林水産省に残されていたことを受けて、衆議院予算委員会の与野党の筆頭理事が電話で会談しました。
この中で、立憲民主党の逢坂誠二氏は、文書に記載のある柳瀬元総理大臣秘書官らの証人喚問を早期に行うよう改めて求めたのに対し、自民党の菅原一秀氏は「党の国会対策委員会と相談したい」と述べたということです。
このあと、逢坂氏は記者団に対し、「愛媛県の主張の正しさが、さらに一歩、確実に裏付けられた。政府側が認めていないので、当事者である柳瀬氏らの証人喚問を確実にやらなければならない」と述べました。
参院 民進 証人喚問重ねて要求
自民党と民進党の参議院国会対策委員長が会談し、民進党は、愛媛県の担当者が記したとする文書が農林水産省に残されていたことを受けて、柳瀬元総理大臣秘書官らの証人喚問を重ねて求めました。これに対し、自民党は「衆議院側の状況を見ながら検討したい」として、引き続き協議することになりました。
立民 福山幹事長「政権担う資格はない」
立憲民主党の福山幹事長は党の参議院議員総会で、「農林水産省が文書があったと認めたが、『記憶にない』と言って説得力のない反論をしているのは、安倍総理大臣と柳瀬元総理大臣秘書官だけだ。次から次へと国会答弁を覆すような新しい事実が出て、官僚の不祥事も相次いでおり、もはや政権を維持できる状況ではない。追及を緩めることなく、『安倍政権には政権を担う資格はない』と国民にしっかり訴えていきたい」と述べました。
民進 大塚代表「首相答弁は全くの虚偽」
民進党の大塚代表は党の参議院議員総会で、「安倍総理大臣は、3年前の平成27年の段階で加計学園の案件を知っていて、『なんとかしろ』と部下に伝えたからこそ、『首相案件』と文書に書かれたと推量される。だとすれば、『加計学園の事業を知ったのは、去年になってからだ』という答弁は全くの虚偽だったことになる。虚偽答弁をする総理大臣に国政を委ねるわけにはいかない」と述べました。 
■「柳瀬元首相秘書官の国会招致 検討すべき」自民 岸田政調会長(4月14日)
野党側が柳瀬元総理大臣秘書官の証人喚問を求めていることに関連して、自民党の岸田政務調査会長は真相の解明に必要であれば柳瀬氏の国会招致を検討すべきだという考えを示しました。
自民党の岸田政務調査会長は記者団に対し「国民は真実を知りたいという強い思いを持っており、厳しい目が注がれている。事実を明らかにするためには、まず当事者が説明責任を果たさなければならず、『国会で当事者の話を聞きたい』という考え方はあってよい議論だ」と指摘しました。
そのうえで「真相解明に必要だというのであれば、国会招致も検討すべきではないか。参考人招致なのか証人喚問なのかは国会の現場の判断を尊重しなければならない」と述べ、真相の解明に必要であれば、柳瀬氏の国会招致を検討すべきだという考えを示しました。
立民 枝野代表「証人喚問でなければ意味ない」
立憲民主党の枝野代表は記者団に対し、「文書という証拠書類と矛盾している証言について尋ねるのだから証人喚問でなければ意味がない。参考人招致では意味がないということは各党とも共通しているのではないか。実現できなければ、ここまで隠蔽が問題になっている中で『さらに臭いものにふたをしようとしている』と受け止めざるをえない」と述べました。
共産 志位委員長「愛媛県側からも聞くべき」
共産党の志位委員長は記者団に対し「柳瀬元総理大臣秘書官は参考人招致ではなく、偽証や証言拒否をすれば罰せられる証人喚問での国会招致が必要だ。事実を明らかにするためには愛媛県側の関係者からも事実を聴く必要があり、こちらは参考人招致でもいいし、国会として愛媛県に議員を派遣して聴くやり方でもいい」と述べました。 
■真相解明求め国会前で大規模デモ(4月14日)
森友学園をめぐる決裁文書の改ざん問題に加え、今週、加計学園の獣医学部新設をめぐっても新たな文書が見つかったことを受け、14日、国会議事堂の前で真相解明を求める大規模な抗議デモが行われました。
午後2時から国会議事堂前で行われた抗議デモには正門前の車道が埋め尽くされるほど大勢の人が参加しました。
抗議デモに集まった人々は「全部明らかにしてください」とか「まともな政治を」などと書かれたプラカードを掲げ、真相解明に向けて情報開示を徹底することなどを訴えていました。
参加した40代の女性は「次々と文書の改ざんや新たな資料が見つかり、このままじゃいけないと思い参加しました。柳瀬氏の証人喚問を行って真相を解明してほしい」と話していました。茨城県から参加した60代の男性は「文書の改ざんや隠蔽が相次げば民主主義の根幹が揺らぎます。安倍政権は責任を取ってほしい」と話していました。 
■柳瀬氏国会招致応じる方向 自民 森山国対委員長(4月15日)
自民党の森山国会対策委員長は、野党側が求める衆議院予算委員会の集中審議を来週行うとともに、柳瀬元総理大臣秘書官の国会招致に応じる方向で、今後、形式などを協議したいという考えを示しました。
自民党の森山国会対策委員長は、鹿児島県中種子町で記者団に対し「集中審議は、安倍総理大臣があさってから訪米し、1週間いないので、23日の週でどうするのかが、1つの具体的な課題だ」と述べ、安倍総理大臣が帰国したあとの来週、集中審議を行うことで調整を進める意向を明らかにしました。
そのうえで「参考人招致なのか、証人喚問なのか、また、誰を呼ぶのかが1つの焦点だ。柳瀬氏の国会招致は非常に強い要請なので、そのことをわきまえて対応する」と述べ、柳瀬氏の国会招致に応じる方向で、今後、その形式などを野党側と協議したいという考えを示しました。
公明 山口代表「きちんと説明責任尽くして」
公明党の山口代表は青森市で開かれた党の会合で講演し、「『首相案件』などという言葉も出てくる文書が現に出てきたわけで、そのまま見過ごすわけにはいかない。残されていた備忘録が、どういう性質のもので、書かれていることが本当に事実を表しているのかどうか、国会で解明しなければならない」と指摘しました。そのうえで、山口氏は、野党側が文書に記載されている柳瀬元総理大臣秘書官の証人喚問を求めていることに関して、「国会に来てもらい、文書の内容や経緯について、きちんと説明責任を尽くしてもらいたい。政府に説明責任を尽くさせるために、リードしていきたい」と述べ、柳瀬氏を国会招致すべきだという考えを示しました。
立民 長妻氏「証人喚問以外にない」
立憲民主党の長妻代表代行は、東京都内で記者団に対し、「柳瀬氏はすでに国会で『記憶の限りでは会っていない』という非常に不可解な話をしており、うその証言をした場合に罰せられる証人喚問でなければ、また同じことになって時間のむだになる。あすの与党側からの回答が『参考人招致でどうか』ということであれば、絶対に認めることはできず、証人喚問でやる以外にない」と述べました。 
■今治市長 職員の官邸訪問は認める 具体的内容は明かさず(4月16日)
「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、今治市の菅良二市長は記者団の取材に応じ、職員が官邸を訪問したことは認めたものの、具体的な内容については、国や県に迷惑がかかるとして明らかにしませんでした。
16日午前、今治市役所で記者団の取材に応じた今治市の菅市長は、加計学園の獣医学部をめぐって、3年前の4月2日に職員が総理大臣官邸を訪問したことは認めました。そのうえで、文書が見つかった後に、職員に聞き取り調査をしたことを明らかにし、このうち「首相案件」という文言については「職員からは聞いていない」と答えました。
しかし、それ以上の具体的な内容については、「国と県は一緒に取り組んできた仲間なので、迷惑をかけることができない」として、明らかにしませんでした。 
■与党「柳瀬氏 参考人招致で」 野党「証人喚問を」(4月16日)
「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、与党側は来週23日に衆・参両院の予算委員会で集中審議を開き、柳瀬元総理大臣秘書官らを参考人招致する方針なのに対し、野党側は、あくまでも柳瀬氏らを証人喚問するよう求めました。
自民党の森山国会対策委員長は、立憲民主党の辻元国会対策委員長と会談し、「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、来週23日の午前に衆議院で、午後に参議院で、それぞれ予算委員会の集中審議を行うとする与党の方針を伝えました。
そのうえで森山氏は、愛媛県の担当者が3年前に総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとする文書に記載のある柳瀬元総理大臣秘書官と内閣府で地方創生推進室を担当していた経済産業省の藤原審議官らを発言の内容で罰せられない参考人として招致することを提案しました。
これに対して辻元氏は、真実を明らかにするため、あくまでも柳瀬氏らを証人喚問するよう求めました。
このあと野党側の国会対策委員長らが会談し、柳瀬氏らはこれまでに参考人として国会で答弁しており、真相究明には証人喚問が必要だとして、引き続き与党側に迫っていく方針で一致しました。
柳瀬氏「国会の判断に従う」
柳瀬氏は16日午前、経済産業省で記者団が国会招致について質問したのに対し、「当然、国会のご判断に従わせていただきます」と述べました。
愛媛県知事「国が対応すればケリがつく話」
愛媛県の中村知事は16日取材に応じ、「国がしっかりと対応すればケリがつく話だ。国には正直に丁寧に言ってほしい」と述べました。また、県職員への国会招致があった場合は「自分が説明の矢面に立つ」として、改めて知事自身が応じる考えを示しました。さらに、今治市の菅市長が、官邸を訪問した職員に行った聞き取り調査の結果を公表しない考えを示したことについては、「それぞれの機関が決めることだ。県の場合は、自分の文書の問題だったので正直に公表した」と述べました。 
■愛媛県などの官邸訪問 文科省に内閣府がメール(4月17日)
「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、3年前に愛媛県などの職員が総理大臣官邸を訪問した当日に、文部科学省の担当者が県などの訪問の予定について内閣府側から伝えられたメールが見つかっていたことが文部科学省の調査でわかりました。官邸の訪問について国の省庁の担当者の間でも情報が共有されていた可能性があります。
媛県の担当者が3年前に総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとする文書について、文部科学省は調査の結果、省内に残されていないことを確認しましたが、訪問の当日に文部科学省の獣医学部新設の担当者が県などの訪問の予定について内閣府側から伝えられたメールが見つかっていたことがわかりました。
メールには「本日15時に今治市などが官邸を訪れる」などと記されていたということです。愛媛県と今治市は官邸の訪問を認めていますが国の省庁の担当者の間でも情報が共有されていた可能性があります。
県が作成した文書には、当時、総理大臣秘書官だった柳瀬経済産業審議官が面会相手と記載されていますが、柳瀬氏は「記憶の限り、お会いしたことがない」として面会したことを認めていません。 
■内閣府 厚労省 文科省 省内に文書存在せず(4月17日)
「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、愛媛県の担当者が、3年前に総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとする文書について、梶山地方創生担当大臣は、調査の結果、内閣府内に文書が存在しなかったことを明らかにしました。また、加藤厚生労働大臣と林文部科学大臣も、調査の結果、省内に文書が存在しなかったことを明らかにしました。 
■藤原審議官「文書の表現 使った覚えはない」(4月17日)
内閣府は、当時、地方創生推進室を担当していた経済産業省の藤原審議官が、文書に記された発言内容に対して、「そういった表現を使った覚えはない」と話していることを明らかにしました。
内閣府の村上審議官は17日の参議院の農林水産委員会で、藤原審議官が内閣府の調査に対して、愛媛県の担当者が総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとされる文書に記された「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」などと発言したという内容について、「そういった表現を使った覚えはない」と話していると述べました。
さらに村上審議官は、藤原審議官が「当時、愛媛県と今治市の担当者に会って、特区制度を紹介する機会はあった」とした一方、「日付は特定できない」と答えていると述べました。
この文書について、藤原審議官は、これまで「必要なことは内閣府に伝えている」などと述べていました。 
■柳瀬元首相秘書官と面会予定メール公表 文科省(4月20日)
林文部科学大臣は、3年前に愛媛県の職員らが総理大臣官邸を訪問し、柳瀬元総理大臣秘書官と面会する予定を伝えた内閣府からのメールが文部科学省内で見つかったことを公表しました。
メールには、愛媛県や今治市の職員と加計学園の関係者が、当時、内閣府で地方創生推進室を担当していた経済産業省の藤原審議官と面会した際の様子が記されているほか、「本日15時から柳瀬総理大臣秘書官とも面会するようです」などと記載されています。
また林大臣は、愛媛県の職員らが総理大臣官邸を訪問することについて、当時官邸に出向していた文部科学省の職員から「陳情がくるので省のスタンスを教えてほしい」などと、事前に連絡を受けた記憶のある職員がいたことも明らかにしました。
林大臣は、「われわれはしっかりと確認作業を行い、こういうものが出てきた。それぞれの方々がしっかりと説明責任を果たしていかれると思っている」と述べました。
愛媛県の職員らとの面会について、柳瀬氏は、「記憶の限り、お会いしたことがない」として否定しています。
梶山地方創生相 担当者「送信したと思われる」
梶山地方創生担当大臣は、文部科学省からメールの提供を受けて、送信した可能性のある当時の担当者に確認したところ、担当者は、「当時の記憶は残っていないが、写しがある以上、自分が内閣府での面会に同席して、作成し、送信したものと思われる」と話したことを明らかにしました。また、総理大臣官邸への訪問予定については、「面会の場でそのような話題が出て、それをそのまま自分がメモしたのだろう」と話しているということです。一方、内閣府での面会に同席したとされる、当時、内閣府で地方創生を担当していた経済産業省の藤原審議官は、「記憶はないが、メールを読む限り、先方が言ったのではないか」などと話し、総理大臣官邸での面会の調整などは行っていないと説明しているということです。
メールは愛媛県の文書と内容酷似
このメールは平成27年4月2日に愛媛県などの関係者が内閣府への訪問を終えた直後の午後0時48分にその場に同席したとみられる内閣府の担当者から文部科学省の国家戦略特区の担当者に対して送信されています。メールには内閣府で午前11時半から1時間愛媛県と今治市、さらに加計学園の関係者が当時、内閣府の地方創生推進室次長だった経済産業省の藤原豊審議官らと面会したと書かれていて、藤原氏が発言したとする内容が短く記されています。具体的には「制度改正の実現は首長のやる気次第。熱量をどれだけ示せるか」「今月、または大型連休明けに予定する国家戦略・構造特区の共通提案に出してみては」「反対派の同意を得るため、構想の内容(コンセプト、カリキュラム、自治体の取り組み)を検討いただき、 ご相談いただきたい」という説明があったとしています。そして、本日15時から柳瀬総理大臣秘書官とも面会するようだ、と記されています。メールの最後は「概要は後で まとめて送ります」と結ばれています。藤原氏が発言したとする内容と、今月、愛媛県が作成を認めた文書に記された内容を比べると、訪問した日時や場所、さらに訪問したメンバーや面会相手などは一致しています。また、国家戦略特区への提案に言及したり、提案書や具体的なカリキュラムを作り、内閣府に早く相談するよう求めたりしている点も共通しています。そして、この面会の直後、総理大臣官邸を午後3時から訪問し、当時の柳瀬総理大臣秘書官と面会する予定であることも愛媛県が作成した文書に書かれた内容と一致しています。
「3月に官邸訪問予定」を知る
今回、文部科学省は加計学園の獣医学部新設に関わる担当部局に在籍した合わせて12人の職員を対象に調査し、紙に印刷された状態のメールが省内の国家戦略特区の担当室から見つかりました。さらに、当時の担当者に聞き取ったところ、この訪問前の平成27年3月に官邸に出向していた職員から愛媛県と今治市、さらに加計学園の関係者が総理大臣官邸を訪問する予定があると事前に連絡を受けていたことがわかったということです。調査に対して当時、メールを受け取った職員は「詳細なやりとりについては覚えていない」と話しているということです。 
 
2018/ 4 報道

 

 
「首相案件」文書
■「首相案件」文書の内容 4/10
愛媛県の中村時広知事が10日の記者会見で「職員が作成したメモ」と認めた

獣医師養成系大学の設置に係る内閣府藤原次長・柳瀬首相秘書官との面談結果について   27.4.13   地域政策課
4/2(木)、獣医師養成系大学の設置について、県地域政策課長・今治市企画課長・加計学園事務局長らが内閣府藤原次長及び柳瀬首相秘書官らとそれぞれ面談した結果は、次のとおり。
藤原地方創生推進室次長の主な発言(内閣府)11:30
○要請の内容は総理官邸から聞いており、県・今治市がこれまで構造改革特区申請をされてきたことも承知。
○政府としてきちんと対応していかなければならないと考えており、県・市・学園と国が知恵を出し合って進めていきたい。
○そのため、これまでの事務的な構造改革特区とは異なり、国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい。
○国家戦略特区は、自治体等から全国レベルの制度改革提案を受けて国が地域を指定するものであるが、風穴を開けた自治体が有利。仮にその指定を受けられなくても構造改革特区などの別の規制緩和により、要望を実現可能。
○今年度から構造改革特区と国家戦略特区を一体的に取り扱うこととし、年2回の募集を予定しており、遅くとも5月の連休明けには1回目の募集を開始。
○ついては、ポイントを絞ってインパクトのある形で、2、3枚程度の提案書案を作成いただき、早い段階で相談されたい。
○提案内容は、獣医大学だけでいくか、関連分野も含めるかは、県・市の判断によるが、幅広い方が熱意を感じる。
○獣医師会等と真っ向勝負にならないよう、既存の獣医学部と異なる特徴、例えば公務員獣医師や産業獣医師の養成などのカリキュラムの工夫や、養殖魚病対応に加え、ペット獣医師を増やさないような卒後の見通しなどもしっかり書きこんでほしい。
○かなりチャンスがあると思っていただいてよい。
○新潟市の国家戦略特区の獣医学部の現状は、トーンが少し下がってきており、具体性に欠けていると感じている。
柳瀬首相秘書官の主な発言(総理官邸)15:00
○本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい。
○国家戦略特区でいくか、構造改革特区でいくかはテクニカルな問題であり、要望が実現するのであればどちらでもいいと思う。現在、国家戦略特区の方が勢いがある。
○いずれにしても、自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件。
○四国の獣医大学の空白地帯が解消されることは、鳥インフル対策や公衆衛生獣医師確保の観点から、農水省・厚労省も歓迎する方向。
○文科省についても、いい大学を作るのであれば反対しないはず。
○獣医師会には、直接対決を避けるよう、既存の獣医大学との差別化を図った特徴を出すことや卒後の見通しなどを明らかにするとともに、自治体等が熱意を見せて仕方がないと思わせるようにするのがいい。 
 
■加計文書 「ゼロ回答」にいら立ち 愛媛知事明言避ける 4/10
加計学園が愛媛県今治市に岡山理科大獣医学部を新設した計画を巡る政府と地元自治体のやりとりを記録した文書の存在について、中村時広知事は10日、記者会見で、内容の詳細については「コメントできない」と明言を避けながらも、「職員の書類は信頼している」と暗に認めた。国に対しては「県は県の立場で自分たちのことはオープンにする。(国は)国の方で丁寧に説明してほしい」と要請した。一方、今月に開学した同学部の1期生や地元市民からは憤りや不安の声が聞かれた。
午後5時、記者会見場となった愛媛県庁本館3階の知事会議室。集まった約50人の報道陣の前に現れた中村知事は会見冒頭、硬い表情で獣医学部の設置の経緯を語り始めた。「大学の誘致は今治市にとって長年の悲願だった」と強調した上で、文書については「職員が備忘録のために作った」と明かした。会見中、知事はメモなどを見ずに終始顔を上げて質問に応じた。
柳瀬唯夫首相秘書官(2015年4月当時)が「首相案件」と述べたことに質問が集中したが、それを記した文書に関しては「中身についてはコメントできない」などと答えるにとどめた。ただ「県庁の職員は本当に真面目で、上げてきた書類は全面的に信頼している」と強調。「報告のために記述したのは間違いない」と断言した。
文書について国から非公表を求める働きかけや調整があったかと問われると、「ない。全くない」と語気を強めた。
地元今治では、文書の存在や知事の説明に憤りの声も上がっている。これまで県に同学部誘致関連の公文書を情報公開請求してきた市民団体「今治市民ネットワーク」の村上治共同代表(71)=同市=は「僕たちがうそをつかれていたということだ」。情報の開示に際し、同県の担当者から3月末、「(15年4月2日の出張復命書は)軽易なものなので廃棄した」と説明を受けたといい、「隠れていたものがいよいよ姿を現した。ほとんどのことはちゃんと記録されているはずで、もはや公開しない理由は何もない」と改めて情報公開を求める考えだ。
獣医学部のある今治キャンパスでも、女子学生(19)は「ツイッターでいろいろ書かれると思うと怖い。こうして騒がれると浪人した方がよかったのかなとも思ってしまう」と動揺を隠せないでいた。一方、神奈川から来た女子学生(18)は「小学生の時から獣医になることを目指してきたので自分の意志を貫きたい」と力強く話した。
市民の受け止め方も複雑だ。元教師の女性(77)は「忖度(そんたく)のある、なしは推測でしか言えないが、責任を取るべき人が口を開かないと決着しないのでは」と話す一方で「獣医学部は開学しているので、学生に影響のないことを願う」と話していた。
文部科学省も対応に追われた。専門教育課はコンピューターの同課の共有フォルダーを調査したが、見つからなかった。さらに当時の課長と課長補佐から聞き取りをしたが、「記憶にない」との回答だったという。松永賢誕課長は報道陣に「当面は共有フォルダーを調べ、必要に応じて(調査対象を)広げたい」と話した。
省内には困惑した空気が広がる。ある幹部は「今さら「首相案件」と言われても、大学の認可は覆らない。特区のプロセスで何があったのかは内閣府が検証すべきだ」。別の中堅職員は「文書の文言は(文科省内で発見された文書の)「総理のご意向」と符合している。文科省と愛媛県が似たような記録を残したのは、単なる偶然では説明がつかない」と憤る。
野党6党は午後5時から国会に内閣府や文科省などの担当者を呼んでヒアリングし、「安倍晋三首相の主導だったことは明らか」「官邸を守らず、真実を明らかにして」と厳しく批判。愛媛県の中村時広知事が文書の存在を認めたと伝わると、野党側は「(首相秘書官だった)柳瀬唯夫氏との面会があったことは間違いない」「反論できないなら事実と等しい」などと攻勢を強めた。希望の党の今井雅人衆院議員が「11日の衆院予算委員会では「確認中」との答弁は許されない」と詰め寄ると、内閣府の塩見英之参事官は「精いっぱい確認作業を進めたい」と言葉少なだった。
元文部官僚で京都造形芸術大の寺脇研教授は「秘書官が面会を認めなかったのは首相の関与を隠すため。一般的に首相が関与していなければ面会するはずがない。秘書官が獣医学部新設を後押ししていたことを昨年からごまかし続けてきたことになり、獣医学部の正当性が揺らぐ。今の状況に官僚たちはうんざりしている。安倍首相は総辞職を選択するか、首相を支える今の体制を抜本的に見直さなければ、官僚機構は崩壊するだろう」と憤った。 
■加計文書 「首相案件」愛媛県側認める 面会の秘書官発言 4/10
愛媛県の中村時広知事は10日、県庁で記者会見し、学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)による国家戦略特区を利用した獣医学部新設について、2015年4月2日に柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面会した同県職員が、柳瀬氏から「首相案件」と説明を受けていたことを認めた。職員は会談内容を備忘録として記録していたが、現在は残っていないという。安倍晋三首相はこれまで計画への関与を否定してきたが、国会で再び問題になるのは確実だ。
加計学園の加計晃太郎理事長は首相の親友。同学園による愛媛県今治市での獣医学部新設について、内閣府が文部科学省に「総理の意向」と早期開学を促した文書が昨年5月に判明するなど、首相と計画との関連が国会で問題になってきた。
政府が国家戦略特区に選定する過程で、愛媛県、今治市の職員と加計学園幹部が15年4月、首相官邸で柳瀬氏と面会していた可能性が浮上。柳瀬氏は昨年7月、国会で面会を否定した経緯がある。
しかし、朝日新聞は10日朝刊で、柳瀬氏が県職員らに「本件は、首相案件」などと発言したことを記した文書を写真付きで報道。これを受けて中村氏が庁内を調べたところ、職員が「間違いなく自分で書いたものだ」と認めた。会議に参加し、口頭報告のため内容を記録したという。
共同通信が入手した文書によると、柳瀬氏との面会より前に、首相と加計氏が会食した際、下村博文文科相(当時)が「加計学園は課題への回答もなくけしからん」と述べたことが話題になった。学園幹部はこのことに言及し、対策について柳瀬氏に意見を求めた。柳瀬氏からは「国家戦略特区の提案書とあわせて課題への取り組み状況を整理して、文科省に説明するのがよい」との助言を得たという。
また、同じ15年4月2日、内閣府の藤原豊地方創生推進室次長(当時)との面会では、藤原氏から「要請の内容は総理官邸から聞いている」「政府としてきちんと対応しなければならない」などの発言があった。
中村氏は会見で、職員は既にメモを破棄しており、データも残っていないと説明した。文書が報じられたことについては、備忘録を基に文科、農林水産両省や内閣府を訪問した際に「置いてきた可能性は否定できない」と述べた。文書の内容には「真面目な職員が書いた」と自信をにじませた。
これに対し、現経済産業審議官の柳瀬氏は10日、「国会でも答弁している通り、当時、首相秘書官として日々、多くの方々にお会いしてきたが、自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはない」とのコメントを発表した。中村氏の記者会見後も、経産省内で「テレビを確認したが、朝のコメントの通り」と記者団に語った。
首相は昨年7月24日の衆院予算委員会で、計画を知った時期について「17年1月20日」と説明した。しかし、今回判明した文書が事実なら、首相は15年4月以前に計画を認知していたことになる。野党は真相解明のため、柳瀬氏らの国会招致を求めている。 
■「首相案件」文書、愛媛知事「備忘録」と存在認める 4/10
学校法人「加計(かけ)学園」の愛媛県今治市への獣医学部新設計画で、同県の中村時広知事は10日、県や市の職員が2015年4月に首相官邸で柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面会したとする文書について、県職員が報告のための備忘録として作成したものと認めた。文書には柳瀬氏が「本件は、首相案件」と述べたと記されている。11日の衆院予算委員会の集中審議で野党側は追及する方針。
中村知事は朝日新聞の報道などを受けて10日、15年4月2日に首相官邸を訪問した職員ら計4人から聞き取り調査を実施。うち1人が文書について「自分が書いたもの」と認めた。「(知事への)口頭報告のために作ったメモ」という。
記述の真実性については「職員が文書をいじる必然性はまったくない。全面的に信頼している」と強調。柳瀬氏が10日、「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはない」などと文書で発表したことについては「コメントできない」と述べた。
知事自身が報告を受けた際、職員の文書に「首相案件」の記述があったかは「覚えていない」としたが、「国全体が岩盤規制を崩す動きをしていると受け止めた」と振り返った。
一方、中村知事は文書自体は報告用に作ったメモで公文書ではないとし、庁内には現時点で存在を確認できないとした。「何かが決まればきっちり公文書として残す」としつつ、今回の文書は「メモで保存義務がない。不必要と判断したら廃棄する」と説明。調査は続けるという。ただ、文部科学、農林水産両省や内閣府への説明の際に文書を示して配布した可能性は「否定できない」と話した。 
■加計学園文書「県職員が報告のため作成」愛媛県知事 4/10
学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、愛媛県や学園の関係者らが官邸を訪問した際に記された文書が残されていたことについて、愛媛県の中村知事は10日夕方、会見を開き、「文書は会議に出席した県の職員が報告のために作成したものだ」と述べて文書は県が作成したものであることを認めました。
加計学園の獣医学部新設をめぐって、国家戦略特区に提案される2か月前の平成27年4月2日に愛媛県や今治市、それに学園の関係者が、官邸などを訪れた際の文書が残されていることがわかり、県は詳しい調査を進めています。
NHKが入手した文書には当時、総理大臣秘書官だった柳瀬唯夫経済産業審議官との面談結果についてという表題で、獣医学部新設に向けたアドバイスを受けたことなどが記されています。
この中で柳瀬氏は「本件は首相案件となっている。自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」などと発言したと記されています。
愛媛県の中村知事はこれまでの調査結果について、10日夕方記者会見を開き、公表しました。
この中で、文書については、「この会議に出席した県の職員が報告するための備忘録として書いたものと判明した」と述べて、県が作成したものであることを認めました。
一方、柳瀬氏の名前が記されていることについて、「面会の相手先のことはコメントできない」としたうえで、内容については「職員の報告を全面的に信じている」と述べました。
そして、文書は、報告のためのメモであり、保管義務はなかったとして、現時点では見つかっていないと述べるとともに、引き続き調査する考えを示しました。
学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関連する文書をめぐり愛媛県の中村知事が会見したあと、柳瀬経済産業審議官は記者団の取材に対し、「さきほど会見を見ましたが、けさの私のコメントのとおりです」と答え、愛媛県の職員らとの面会を改めて否定しました。 
■「首相案件」文書存在していた、愛媛知事認める 4/10
学校法人「加計学園」が新設した獣医学部をめぐり、新たな展開だ。愛媛県や今治市、学園幹部らが2015年4月に柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面会した際、愛媛県が作成したとされる面会記録の存在を朝日新聞が報じ、愛媛県の中村時広知事が、その存在を認めたからだ。
面会記録では、柳瀬氏が「本件は、首相案件」だと発言したとされ、野党側は安倍晋三首相「加計ありき」の意向を示す傍証だとして攻勢を強めたい考え。柳瀬氏は面会の事実自体を否定する半面、中村氏は「出席したものの報告のために記述したというのは間違いない」と話しており、発言内容以前の、面会の有無の段階で主張が対立している。
朝日新聞は18年4月10日朝刊の1面トップ(東京本社最終版)で面会記録の存在を「政府関係者に渡っていた文書を朝日新聞が確認した」などと文書の写真つきで報じた。写真から判別できる範囲だけでも、文書には柳瀬氏の発言として
「本件は首相案件となっており、内閣府藤原次長(編注:当時、地方創生推進室次長だった藤原豊氏)の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」
「いずれにしても、自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」
といった記述が確認できる。
この文書をめぐり、中村知事は4月10日17時から会見。文書の現物は、電子ファイルを含めて確認できなかったとした。
「当時、この会議に出席した職員が、まさにその口頭報告のために作ったメモが、この文書の実態。この文書は保管義務がなく、今日の担当部局の調査でも、文書そのものは愛媛県庁内には、この段階では確認できていない。「ない」ということだ」
一方で、面会した職員がヒアリングに対して、文書を「備忘録」として作成したことを明かしたという。
「しかし、ひとりひとりの担当職員に、わたしも直接聞いた。「新聞に出ているこの文書はどうなのか」という確認をしたところ、当時担当した職員が出席した会議の口頭説明のための備忘録として書いた文章であるということが判明した」
中村氏は
「言えることは、県庁の職員は本当に真面目で、しっかりと出席したものの報告のために記述したというのは間違いない」
とも話し、県職員が柳瀬氏と面会したことを確信している様子だ。
一方の柳瀬氏は、今回の朝日新聞の報道を受けてコメントを発表。
「自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」
などと、17年7月の参院予算委員会での答弁と同様、面会の事実自体を否定した。
4月11日には、森友学園をめぐる文書改ざんの問題で衆院予算委員会で集中審議が予定されている。今回の「首相案件」問題もクローズアップされるのは確実だ。ただ、中村氏は
「私どもの立場としては長年の悲願であった今治市の願いがかなったということで、獣医学部がオープンしたことは歓迎している」
などとして獣医学部開設を歓迎する立場だ。安倍首相の意向が影響したか否かについても、
「分からない、コメントのしようがない。審査、それから認可の決定、ここは我々は全く関与していない。これはお願いする立場で、それが認められて新設したら、「さあどうしようか」「今回認められて良かったな」「悩みがひとつ解決するかもしれないね」という受け止め方。国の状況については、私はうかがい知ることはできない」
とするにとどめている。「首相案件」発言が仮にあったとすれば、柳瀬氏の「忖度」だったのか、それとも「総理の関与」だったのか。野党側がこのあたりを追及できるかは不透明だ。 
■「柳瀬秘書官発言」文書に安倍首相と加計理事長が会食の記述 4/10
加計学園の獣医学部新設を巡り、愛媛県が作成した柳瀬唯夫首相秘書官(当時)との面会記録に、安倍晋三首相が加計晃太郎・加計学園理事長と会食した際の記述があることが、「週刊文春」の取材でわかった。
記録によれば、2015年4月2日、柳瀬秘書官は首相官邸で、愛媛県地域政策課長や今治市企画課長、加計学園事務局長らと面談し、次のように発言したという。
<加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、その対応策について意見を求めたところ、今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった>
安倍首相は、昨年夏、国会で次のように答弁していた。
「(加計理事長からは)『獣医学部を作りたい』、さらには『今治市に』といった話は一切ございませんでした。(学部新設の計画は2017年)1月20日の国家戦略特区諮問会議で私が知るにいたった」
面会記録に記載された内容が事実とすれば、安倍首相は加計学園の獣医学部新設計画について、2015年4月以前の段階で既に知っており、国会答弁は虚偽だったことになる。
柳瀬氏は面談自体を否定するコメントを出しているが、愛媛県の中村時広知事は、記者会見で記録を県職員が作ったことを認めている。
記録に名前が登場する下村博文文科相(当時)を電話で直撃すると「(文書を)読んでいないので、コメントできません」とし、改めて文書でも確認を求めたが、締切までに回答はなかった。 
■「『首相案件』ってのを、私も長く国会議員をやったり政府に入ったりしていますが、めったに聞かない言葉だ」 4/10
石破茂自民党・元幹事長
これは国会内で石破氏が記者団に語ったもの。さらに「愛媛県はそんなことやったって何にも得るものはない」「愛媛県としてみれば、知事も県職員も、行政はきちんと公平、公正に執行されるものであり、きちんと記録は残しているのだということで言っている」と愛媛県の立場を擁護し、「『そんなことは言っていない』ということは、当然、検証責任は政府にある」と突きつけた。 
■「要請の内容は総理官邸から聞いている」 4/10
藤原豊経済産業審議官・元内閣府地方創生推進室次長
東京新聞も朝日新聞と同日にスクープ記事を発表している。2015年4月の面会に同席した藤原豊氏が「要請の内容は総理官邸から聞いている」と発言し、「国家戦略特区の手法を使いたい」と持ちかけていたことが判明した。藤原氏の発言は、朝日新聞がスクープした面会記録にも掲載されている。特区事業を所管する内閣府から自治体に申請を持ちかけることは極めて異例のことだ。
安倍晋三首相は、昨年の7月24日、衆院予算委員会で加計学園の加計晃太郎理事長からは「獣医学部を作りたい」といった話は一切聞いたことがなく、学部新設の計画は2017年1月の国家戦略特区諮問会議で初めて知ったと断言していた。しかし、2015年4月に作成された文書に「首相案件」「総理官邸から聞いている」「安倍総理と同学園理事長が会食した際に〜」などと記されていた。
面会記録に記載された内容が事実であれば、安倍首相は加計学園の獣医学部新設計画について、2015年4月の段階で既に知っていたことになり、国会答弁は虚偽だったことになる。 
■「本件は、首相案件」 4/10
柳瀬唯夫経済産業審議官・元首相秘書官
学校法人加計学園が愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画について、2015年4月、愛媛県や今治市の職員、学園幹部が当時の柳瀬唯夫首相秘書官らと面会した際に愛媛県が作成したとされる記録文書が存在することが明らかになった。文書には柳瀬氏が面会で「本件は、首相案件」と発言したと記されている。
また、文書には「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があった」とも記されていた。
柳瀬氏は昨年7月25日の参院予算委員会で、この面会について「私の記憶する限りはお会いしていない」と繰り返し答弁していた。今回も「自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」(産経ニュース 4月10日)とあらためて面会を否定するコメントを発表し、朝日新聞が報じた文書の内容を完全否定した。 
■加計文書 柳瀬唯夫元秘書官の否定コメント 4/10
学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)による国家戦略特区を利用した獣医学部新設を巡り、2015年4月2日に当時首相秘書官だった柳瀬唯夫経済産業審議官が愛媛県の担当者らに「首相案件」と述べたと記載された文書が存在するとの一部報道を受け、柳瀬氏は10日、否定するコメントを発表した。

平成30年4月10日 
経済産業審議官 柳瀬唯夫
朝日新聞等の報道に関しまして、以下のコメントをさせていただきます。
国会でも答弁していますとおり、当時私は、総理秘書官として、日々多くの方々にお会いしていましたが、自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません。
自分の総理秘書官時代には、国会でも答弁していますとおり、50年余り認められていなかった獣医学部の新設がどうなるかという制度論が議論されており、制度を具体的にどこに適用するかという段階ではありませんでした。実際、その後、獣医学部新設を追加規制改革項目として、取り上げるかどうかについては、いわゆる「石破四原則」の決定により、検討が開始されることになり、翌年の平成28年11月に、獣医学部新設が国家戦略特区の追加規制改革事項として、決定されたと認識しています。
具体的な地点の選定手続きは、私が総理秘書官の職を離れてかなり時間がたってから始まり、今治市が特区を活用して、獣医学部新設を行う規制改革が決まったのが平成29年1月だったと認識しています。
したがって、報道にありますように、私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません。 (以上)  
■面会時に「首相案件」 加計幹部らに首相秘書官 4/10
学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が愛媛県今治市に国家戦略特区で開設した獣医学部をめぐり、県と市が特区を申請する前の二〇一五年四月二日、自治体や学園の幹部ら一行が首相官邸で柳瀬唯夫首相秘書官(当時、現経済産業審議官)と面会した際、柳瀬氏が「本件は首相案件」と発言していたことが政府関係者への取材で分かった。
一行はこの日、内閣府で藤原豊・地方創生推進室次長(当時、現経済産業省貿易経済協力局審議官)とも面会し、藤原氏から「要請内容は総理官邸から聞いている」と伝えられたことが明らかになっている。学部新設計画は当初から「首相案件」とされ、実現に向け、首相周辺や内閣府が積極的に関与した疑いが強まった。
政府関係者によると、県や市の担当課長と学園の事務局長らは藤原氏と面会した後、柳瀬氏を官邸に訪ねた。柳瀬氏はまず、「本件は首相案件になっており、内閣府の藤原次長のヒアリングを受ける形で進めてほしい」と伝えたという。柳瀬氏はその手法として「国家戦略特区か構造改革特区か要望が実現するのであればどちらでもいいが、国家戦略特区のほうが勢いがある」と活用を勧めた。安倍政権が一三年に導入した国家戦略特区は、構造改革特区に比べ、事業を決定する諮問会議の議長を務める首相の意向が反映されやすい。
内閣府の藤原氏も面会で「国家戦略特区で突破口を開きたい」と一行に伝えたとされ、首相官邸の意向を受けていた可能性がある。
また柳瀬氏は面会で「日本獣医師会と直接対決を避けるよう、既存の獣医大学との差別化や卒業後の見通しなどを明らかにするのがいい」と助言。「自治体が熱意を見せて仕方ないと思わせるようにするのがいい」と述べ、学部新設を念頭に突っ込んだアドバイスをしたとされる。
政府関係者によると、柳瀬氏と藤原氏の主な発言は愛媛県の担当者が作成した文書に記載されていた。
内閣府のある職員は「自治体の側が特区を申請する前に、国から『国家戦略特区で申請して』と指示することはない」と証言する。
安倍晋三首相は昨年、獣医学部新設計画を知った時期について「(加計学園が国家戦略特区の事業者に決まった)一七年一月二十日」と国会で答弁した。首相が学園の加計 晃太郎理事長と四十年来の親友で、頻繁にゴルフや会食をしていることなどから、野党は「もっと以前に知っていたはず」と一斉に批判している。
「本件は首相案件」との発言について、柳瀬氏は二月下旬以降、本紙の二度の取材に「そんなことを言うとは思えない。当時、内閣府の特区の事務局とは何度も話をしていたが、今治市の方と会った覚えもない。今治市が獣医学部をつくろうということは知っていたが、加計学園が獣医学部をやろうとしている話は聞いていなかった」と話した。 
■内閣府が戦略特区提案 加計側に「官邸から聞いている」 4/10
学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が愛媛県今治市に国家戦略特区で開設した獣医学部を巡り、県と市が特区を申請する前の二〇一五年四月、自治体や学園の担当者らと面会した内閣府の幹部が「国家戦略特区の手法を使いたい」と持ちかけていたことが政府関係者への取材で分かった。特区事業を所管する内閣府から自治体に申請を持ちかけることは極めて異例とされ、獣医学部の新設計画は当初から「加計学園ありき」で進められた疑いが鮮明になった。
政府関係者によると、この幹部は藤原豊・内閣府地方創生推進室次長(現経済産業審議官)。藤原氏は当時、内閣府で特区事業を事実上取り仕切っており、面会の際、「要請の内容は総理官邸から聞いている」と発言したとされる。官邸側が内閣府に加計学園の獣医学部開設を働きかけた可能性が出てきた。
大学誘致を目指していた県と市は〇七年から一四年まで計十五回、小泉政権が導入した構造改革特区で獣医学部開設を申請してきたが、毎回却下されていた。
藤原氏は一五年四月二日に内閣府で県と市の担当課長、学園の事務局長らと面会した際、「政府として、きちんと対応しなければならない。知恵を出しあって進めていきたい」と述べ、国も獣医学部の新設を支援する方針を伝えたという。
具体的な方策として「これまでの事務的な構造改革特区とは異なり、国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と自ら提案。「インパクトのある形で、二、三枚程度の提案書を作成していただき、早い段階で相談してほしい」と助言したとされる。
また、新設に反対する日本獣医師会を念頭に「獣医師会との真っ向勝負にならないよう、既存の獣医学部と異なる特徴を書き込んでほしい」と助言。具体例として「公務員獣医師や産業獣医師の養成などカリキュラムの工夫」を挙げたという。二カ月後、県と市は国家戦略特区での学部開設を内閣府に申請。提案書には「これまでの国立大学、私立大学と異なり、公共獣医事を担う第三極の獣医学部を新設する」との記載があり、助言に沿った内容になっていた。
内閣府のある職員は「こちらから自治体に特区の申請を指示することは、通常はない。提案書の内容をこちらが指示することもあり得ない」と証言している。
藤原氏は本紙の取材に「役所のルール上、内閣府に聞いてほしい」と答えた。
内閣府地方創生推進事務局は「事務局からどちらか(の特区)に切り替えるといったアドバイスは行っていないと認識している。当時の担当者に確認したところ、『要請の中身は首相官邸から聞いている』との発言はしていないと聞いている」とコメントしている。
<国家戦略特区> 国が指定した地域に限り規制を緩和する制度。第2次安倍政権の目玉政策として2013年に創設され、これまでに「東京圏」「関西圏」など全国で10地域が指定されている。自治体からの提案を国が認証する流れの構造改革特区と異なり、事業を所管する官庁の関与を少なくし、国主導でテーマや地域を決めるのが特徴。
<加計学園問題> 学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り、「(早期開学は)総理のご意向」などとする文書が昨年5月、文部科学省から流出した。学園の加計 晃太郎理事長は安倍晋三首相の四十年来の友人。国家戦略特区を活用して学部新設を認める過程で、首相周辺や内閣府が働き掛けた疑いが浮上し、「行政手続きがゆがめられたのではないか」と指摘されている。 
 

 

■「職員が文書をいじる必然性はまったくない。全面的に信頼している」 4/11
中村時広愛媛県知事
愛媛県の中村知事は朝日新聞の報道を受けて、10日、愛媛県の職員4人から聞き取り調査を実施。うち1人が文書について「自分が書いたもの」「(知事への)口頭報告のために作ったメモ」と認めた。記述の真実性について中村知事は「全面的に信頼している」と強調した。
安倍首相や政府に近いとされる読売新聞も、面会について、出席者の一人が「間違いない」と証言したことを報じている。この出席者によると、2015年4月2日に首相官邸で行われた面会には、県と今治市の職員、加計学園の職員らが参加し、柳瀬氏からは「首相案件」の発言があったという。 
■「とにかく全部正直に出す。今治だって国だって、それをやれば全部明らかになる」
中村時広愛媛県知事
『週刊文春』の取材に応えた中村知事は、「とにかく全部正直に出す」と決意を述べた。11日の会見では「国のほうで丁寧に説明してもらいたい。正直に、丁寧にということに尽きる」と述べていたが、まずは愛媛県側が「正直に、丁寧に」説明しようということだろう。
安倍昭恵首相夫人言うところの「男たちの悪巧み」は白日のもとにさらされるのだろうか? 今後の安倍首相の出方が注目される。  
■「私が意図していないこと、私的なことについて、私の秘書官が首相の意向を振り回すということはあり得ない」 4/11
安倍晋三首相
安倍首相は11日の衆院予算委員会で、朝日新聞が報じた文書の内容を全面的に否定。柳瀬氏が「首相案件」と発言したとされる記述を否定したことに関しても、柳瀬氏を支持した。これで愛媛県側と首相側の主張が真っ向から対立する異常事態となった。 
■加計学園疑惑再燃 / 一連の経緯再検証すべき 4/11
財務省や防衛省・自衛隊などの公文書に関する不祥事が相次ぐ中、今度は加計(かけ)学園疑惑が再燃した。
学園が愛媛県今治市に獣医学部を新設した計画が国家戦略特区制度の認定を受けたのは昨年1月。その2年近く前の2015年4月に、当時安倍晋三首相の秘書官だった柳瀬唯夫現経済産業審議官が「首相案件」と述べたと記す文書が存在していたと一部で報じられた。
愛媛県の中村時広知事は「備忘録」とする一方、県や今治市の職員が官邸で柳瀬氏と面会したことを事実上認めた。備忘録とはいえ「間違いなく担当者が作成した」とも述べている。文書は特区制度の審議前の段階で「加計学園ありき」の筋書きがあったことをうかがわせる。
学園の加計晃太郎理事長は、首相の数十年来の「腹心の友」で、度々ゴルフや会食を共にする間柄。学園と愛媛県、今治市は2007年から14年まで計15回、構造改革特区で新設を申請してきたが、全て却下されてきた。文書の存在で、首相が関与していたのか、それとも官僚が首相に忖度(そんたく)してのことなのかが再び問われる。
報道によれば、文書は15年4月2日に県や市、学園の関係者らが官邸を訪れ、面会した柳瀬氏の発言を県職員が記録したとされる。柳瀬氏の「主な発言」の書き出しに問題の「本件は首相案件」とある。
さらには「国家戦略特区でいくか、構造改革特区でいくかはテクニカルな問題であり、要望が実現するのであればどちらでもいいと思う」「現在、国家戦略特区の方が勢いがある」と記載している。新設計画は戦略特区諮問会議の認定、文部科学省の大学設置審の答申を受け今春開学した。とりわけ特区審議では、文書が示すような流れで進められたとの疑いを持たざるを得ない。
文書は保管義務がなく、県庁内では確認できなかったという。柳瀬氏はこの日の面会に関し、昨年7月の参院予算委員会で「会った記憶はない」などと答弁。報道を受けたコメントでも改めて否定した。
加計学園問題では、特区担当の内閣府が「総理のご意向」などと文科省に早期対応を迫った文書が見つかり、前川喜平前文科次官が首相側近からの働きかけなどで「行政がゆがめられた」と証言。安倍首相が学園の特区事業者認定をするまで、学部の新設計画を知らなかったと答弁したことにも疑問符がついたままだ。そうした疑問に対して政府は何ら根拠も示さず、「記憶にない」「記録がない」とことごとく否定し、解明にも背を向けてきた。
15年4月の官邸訪問もその一つだった。文書は大学誘致を進めたい一心の愛媛県職員の手によるもの。柳瀬氏の発言を聞き逃すまいと書き残したはずだ。一連の経緯を再検証する必要がある。ただ、国会や国民を欺いてきた政府の調査では無理がある。全容解明に向け国会に特別委員会などを設けるべきだ。 
■加計学園疑惑 隠蔽の果てに「首相案件」文書 4/11
学校法人「森友学園」の国有地払い下げに関する疑惑が再燃したとたん、今度は加計学園の獣医学部新設を巡って安倍首相本人の関与をうかがわせる文書の存在が明るみになった。愛媛県職員が作成した文書に記されていたのは、加計学園問題で重大な意味を持つ「首相案件」という文言。“やっぱり”というのが正直な感想である。
新設された獣医学部の関係自治体である愛媛県と今治市は、保有する加計学園絡みの文書を隠蔽し疑惑に蓋をしてきた。だが、問われているのは首相が関与したかもしれない“便宜供与”の有無。関係機関は、速やかに情報公開を行うべきである。
○安倍首相答弁に虚偽の疑い
朝日新聞が10日の朝刊やデジタル版で報じたのは、2015年(平成27年)4月に愛媛県や今治市の職員などが首相官邸を訪れ、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)及び藤原豊内閣府地方創生推進室次長(同)と面会した際の記録文書の内容。それによると、柳瀬氏が面会で「本件(加計学園の獣医学部新設)は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言、藤原氏も「要請の内容は総理官邸から聞いており」などと安倍首相の意向で進める特別な事業であることを示唆していた。
その後、同様の内容について報道各社が報じており、新たな加計文書が存在するのは確か。一連の報道を受け、愛媛県の中村時弘知事が10日午後に緊急会見を開き、県職員が作成した文書であることを認めている。
問題の文書には、「先日安倍総理と学園理事長が会食した際、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があった」とも記されており、安倍首相が2015年4月2日以前に“腹心の友”である加計 晃太郎学園理事長と獣医学部新設について話し合っていたことを示す内容だ。首相は、国会答弁で獣医学部新設計画を把握したのは「2017年1月20日以降」と明言しており、文書の記述が事実ならば虚偽答弁が証明されることになる。「(加計学園の獣医学部新設に)関わっていれば、辞める」と言った首相の喉元に、匕首(あいくち)が突き付けられた格好だ。
○隠蔽の実態
「首相案件」発言があったとされるのは2015年4月2日。この日、愛媛県と今治市の職員、加計学園の関係者が首相官邸を訪れていたことが同市が保有する旅行命令書などから明らかになっていたが、主な内容などは「非開示」とされていたため、官邸側の面談相手や会話の中身については分かっていなかった。
都合の悪い情報を意図的に隠してきた愛媛県と今治市――。今年2月、HUNTERの記者が愛媛県と今治市に加計学園に関する公文書の開示請求を行ったが、県は関連文書の種類や分量さえ明らかにせず「隠蔽」。一方、保有文書を明示した今治市は大半の書類を「非開示」にして、説明責任を放棄している。今治市による隠蔽の実態は、下の通りである。(*赤い矢印とアンダーラインで示したのが、同市や県の担当者が柳瀬秘書官らと面談した日の復命書・・・略・・・)
森友に続いて昨年5月に浮上したのが、国家戦略特区を悪用した学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題だ。その後の解散総選挙でうやむやにされた形となっていたが、学部新設のため加計学園に評価額36億7,500万円の土地を無償譲渡した上に96億円もの補助金を愛媛県と分担支出する今治市は、この問題に関する情報公開請求に対し、意図的な引き延ばしで開示決定時期を遅らせるなど後ろ向きの姿勢を露わにしていた。
財務省の文書改ざんが明らかになったことで森友問題に関する情報開示は進みつつあるが、加計絡みの公文書は眠ったまま。愛媛県と今治市は悪質な隠蔽を続けており、真相解明に必要な文書は一切開示されていない。昨日会見した中村時広愛媛県知事は、問題の文書を「備忘録」と位置付けたが、「備忘録」は役所が内部文書を開示対象となる「公文書」から外す時に使う常套文句。公文書を破棄していれば公文書毀棄に問われることもあって、予防線を張った可能性が高い。
加計学園の獣医学部は今年4月に開学して新入生を迎え入れており、開学認可が取り消されることはない。ならば、政府や愛媛県、今治市は保有する加計学園関連の公文書をすべて公開し、すっきりした形の教育環境を整えるべきではないのか。それでも国民への説明責任を果たせないというのなら、首相も知事も市長も、即刻辞任するしかあるまい。 
■愛媛知事「文書、全面的に信頼」 加計問題会見 「職員の備忘録」 4/11
学校法人「加計(かけ)学園」が愛媛県今治市で今月開設した獣医学部を巡り、本紙などが報じた県職員と柳瀬唯夫・首相秘書官(当時)らとの面会記録について、中村時広知事は十日、県庁で記者会見を開き、「現時点で文書そのものは確認できないが、県職員が書いたメモだ」と内容の信ぴょう性を認めた。柳瀬氏は「首相案件」との発言を否定しているが、知事は「職員の書類は全面的に信頼している」と言い切り、発言があったとの認識を示した。獣医学部の新設計画が「加計学園ありき」で進められていた疑いは、より強まった。
十日午後五時、知事会議室を埋めた約五十人の報道陣からフラッシュを浴びる中、紺色のスーツ姿の中村知事が厳しい表情で切り出した。
「本日聞き取り調査をしたところ、この文書は職員が私への報告のために作った備忘録だと判明した。(東京での)会議に出席した職員が書いたものだと確認できたが、メモには保存義務がなく、現時点で文書そのものは確認できてない」
愛媛県の地域政策課長らが今治市や加計学園の担当者と上京し、首相官邸で柳瀬氏と、内閣府で藤原豊・地方創生推進室次長(当時)と面会したのは、県と市が国家戦略特区を申請する前の二〇一五年四月二日だ。
本紙が入手した文書では柳瀬氏は「本件は首相案件」と切り出し、「国家戦略特区の方が勢いがある」と活用を勧めていた。藤原氏も「要請の内容は総理官邸から聞いている」とした上で、「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と述べたと記されていた。
中村知事は職員から当時、文書とともにどのような報告を受けたか「覚えてない」としたが、「内閣府から「国家戦略特区を活用したらどうか」と助言を受け、申請に至った。このときの報告を「可能性が見えた」と前向きにとらえた覚えがある」と振り返った。文書が流出した経緯については、「私や職員は当時、文部科学省や農林水産省、内閣府に説明にうかがっていた。その際、「四月の会議ではこのような状況だったので、ぜひよろしく」と、熱意を伝えるための資料として渡したと思う」と述べ、国側から流出した可能性を示唆した。
知事は「職員が文書をいじる必要性はない」「職員はしっかり仕事をしているので書類は全面的に信頼している」と文書の信ぴょう性の高さを強調するが、柳瀬、藤原両氏は否定している。政府高官らも否定していることを問われると、険しい表情になり語気を強めた。
「中身についてコメントすべきではないと思う。それぞれの機関の発言については、それぞれが正直にお話しすべきではないか」
知事会見 一問一答
【冒頭発言】 調査の結果、文書は、職員が会議に出席して口頭報告のために作ったメモと分かった。現時点では県庁内にはないが、当時の担当職員が備忘録として書いたものと判明した。
【一問一答】
−文書の内容は。
「報道されている部分は担当職員が書いた」
−担当職員は「首相案件」と記載したのか。
「中身については情報公開条例もあり、内容へのコメントは差し控えるが出席したものを報告のために記述したことに間違いない」
−職員からの当時の報告は。
「三年前なので覚えていないが、国が積極的、前向きに動いている感触はあった」
−「首相案件」という言葉はあったか。
「気にもしていなかった。(加計学園の)獣医学部新設は、省庁をまたがった案件だから、思いを伝えるために僕も担当者もいろいろな機関に説明に行き、このメモを活用してきた可能性は否定できない」
−改めて、文書に「首相案件」の記載は。
「覚えていない。その言葉を目にしたかどうかは記憶にない」
−安倍首相の関与については。
「分からない。国の状況について、うかがい知ることはできない」
−市民団体が、県から「文書は破棄した」と回答を受けたというが。
「メモ関係は保存義務がない。不要と判断したものは廃棄する」
−文書の渡り先は。
「文部科学省、農林水産省、内閣府に行った記憶がある。そこは間違いない」
−データが残されている可能性は。
「(調査から)まだ一日しかたっていない。現時点で、ないだけ。引き続き調査し、何か出たらお知らせする」 
■加計新設へ官邸指南 “要請は総理官邸から聞いている” 4/11
学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設をめぐり、愛媛県、今治市の担当者と学園事務局長らは2015年4月2日午前に、内閣府の藤原豊・地方創生推進室次長(当時)と会い「要請の内容は総理官邸から聞いており」「政府としてきちんと対応していかなければならない」と言われていたことが、本紙が入手した面会記録で分かりました。同日午後には、首相官邸で柳瀬唯夫首相秘書官(当時)から「本件は、首相案件」と伝えられており、同じ日に官邸側が強力な後押しをした形です。
藤原氏との面会記録は柳瀬氏の記録と同じく愛媛県が作成し、内閣府など複数の政府関係者に配布したもの。
面会した日は、今治市が国家戦略特区で獣医学部新設の規制緩和を申請する2カ月ほど前です。今治市はそれまで構造改革特区による規制緩和を15回にわたり申請していましたが、獣医師の需要が足りていることから実現していませんでした。
記録によると藤原氏は「要請の内容は総理官邸から聞いており、県・今治市がこれまで構造改革特区申請をされてきたことも承知」と説明。「政府としてきちんと対応していかなければならない」「県・市・学園と国が知恵を出し合って進めていきたい」と語ったとされています。
記録には「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と藤原氏が述べるなど、政府側が獣医学部新設を実現する方法を、詳しく指南していたことも記載されています。
藤原氏は「ポイントを絞ってインパクトのある形で、2、3枚程度の提案書案を作成いただき、早い段階で相談されたい」と提案。獣医学部新設に反対していた日本獣医師会と「真っ向勝負にならないよう、既存の獣医学部と異なる特徴」を出すように勧めていました。
実際に、今治市は、15年6月5日に開かれた国家戦略特区ワーキンググループのヒアリングで3枚のカラー資料を提示。「国際水準の獣医学教育特区」などとして、従来の獣医学教育との違いを強調していました。
藤原氏は「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」とも説明。構造改革特区で何度も却下された規制緩和提案を、一官僚が太鼓判を押してすすめるのは異様で、官邸の意向をうかがわせる内容となっています。
安倍晋三首相はじめ内閣府は、“加計ありき”で獣医学部新設が進んできたことを否定してきました。しかし、面会記録のやりとりには、加計学園が大前提だったことが明確に記されています。
文部科学省の前川喜平前事務次官は、「加計学園」の獣医学部新設で2015年4月に柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が「本件は、首相案件」と述べたとされる問題で10日、参院議員会館内で記者団の取材に応じ、次のように述べました。

かなり決定的な内容です。2015年4月2日の時点で、すでに“加計ありき”で“加計隠し”が始まっていることを示す資料です。4月2日の会合で政府側は、構造改革特区はあきらめて国家戦略特区に切り替えましょうと提案しています。国家戦略特区ではじめから加計学園の獣医学部をつくらせるためにすべてのお膳立てをしていたことが分かります。
また首相の意思表示がなければ「本件は、首相案件」などと絶対に言わない。首相秘書官は、事前に首相の了解や指示がなければ官邸で客と会いません。首相秘書官が官邸で会うということは首相の名代ということです。後で首相に報告もします。
これまで政府はどんな文書が出てきても「記載の内容は事実ではない」と答弁してきました。今回も事実ではないと政府がいうのであれば、証人喚問しか方法はないでしょう。柳瀬氏や内閣府の藤原豊・地方創生推進室次長(当時)、加計 晃太郎・加計学園理事長など事情を知っている人はたくさんいます。 
■「(疑惑を)数えるだけで時間がかかってしまう」 4/12
岸田文雄自民党・政調会長
自民党内からも安倍首相に対する厳しい批判が相次いでいる。秋の総裁選で「ポスト安倍」候補とされている岸田文雄氏は「行政、政治の信頼が問われる事態だ。政府はしっかりと説明責任を果たしてほしい」と強調した。つまり、現時点では説明責任を果たしていないということだ。
ある閣僚経験者は「政権の末期的症状だ。どこから立て直していいのか、手の着けようがない」と話すなど、危機感は高まっている。政府与党内からは「柳瀬氏の証人喚問もやむを得ない」という声も出てきているという。 
■農水省内に加計文書 柳瀬氏とのやりとりか 4/12
学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画に関連する文書が農林水産省内で見つかったことが12日、分かった。関係者によると、愛媛県職員が作成した柳瀬唯夫首相秘書官(当時)との面会のやりとりを記した文書という。出席者の一人は12日、共同通信の取材で、面会の事実や、その場で柳瀬氏から「首相案件」との発言があったことを認めた。
農水省は獣医師の国家試験や資格の付与などを所管している。愛媛県の中村時広知事は10日の記者会見で、県側が柳瀬氏と面会したやりとりの文書が文部科学省、農水省、内閣府に渡った可能性を示唆していた。 
■柳瀬氏との面会文書、農水省にも…県から渡る? 4/12
学校法人「加計かけ学園」の獣医学部新設を巡り、愛媛県や同県今治市の職員が2015年4月に柳瀬唯夫首相秘書官(現経済産業審議官)と面会したとする記録文書が、農林水産省内にも残されていたことが12日、分かった。
愛媛県は面会の際、柳瀬氏から「首相案件」との発言があったことなどを備忘録として文書に記録していたとされる。同県から関係省庁の一つである農水省に渡された文書とみられる。
農水省は、獣医師の国家試験などを所管している。中村時広知事は10日の記者会見で、同県の担当者が作成した記録文書が、農水省や文部科学省、内閣府に渡っている可能性に言及していた。菅官房長官は記者会見で、「関係省庁に確認させたい」と述べ、調査を指示する考えを示していた。 
■当時の首相秘書官 改めて面会否定 4/12
加計学園の獣医学部新設をめぐり、愛媛県などと安倍総理の当時の秘書官だった柳瀬・経済産業審議官が面会したとされる問題で、柳瀬氏は面会の事実を改めて否定しました。
この問題は加計学園の獣医学部の新設をめぐって、2015年の4月2日に当時の安倍総理の秘書官だった柳瀬・経済産業審議官と愛媛県の担当者らが総理官邸で面会したというものです。
これについて、面会に出席した愛媛県側の関係者の1人はJNNの取材に対し、柳瀬氏がこの面会に出席していたことを認めました。さらに、備忘録として残された文書に柳瀬氏が「本件は首相案件」などと発言したと記されていたことについても、「文書に書いてあることは正しい」と述べました。
Q.愛媛県側の関係者が当時、柳瀬さんがその場に出席されていたと証言していますが?
「コメントした通りです」(柳瀬唯夫 経済産業審議官、12日)
一方で、柳瀬氏はこのように述べ、面会の事実を改めて否定しました。面会したかどうかについて、愛媛県側と柳瀬氏の主張が真っ向から対立していることが改めて鮮明となりました。
■「面会に秘書官出席」愛媛県関係者が認める 4/12
加計学園の獣医学部新設をめぐり、愛媛県などと安倍総理の当時の秘書官とが面会したとされる問題。愛媛県関係者が12日、JNNの取材に対し、面会に当時の柳瀬秘書官が出席していたことを認めました。
総理官邸で一斉に走り出す記者たち。その先にいたのは、元総理秘書官の柳瀬経済産業審議官です。安倍総理のアメリカ訪問の勉強会のため訪れたもので、焦点となっている自らの国会招致については話さなかったと短く答えました。
問題となっている総理官邸で15年4月2日に行われたという当時秘書官だった柳瀬氏と愛媛県などとの面会。JNNの取材に対し、この面会に出席した愛媛県側の関係者の1人は、柳瀬氏がこの面会に出席していたことを認めました。さらに、備忘録として残された文書には柳瀬氏が「本件は首相案件」などと発言したと記されていたことについても「文書に書いてあることは正しい」と述べました。
「柳瀬元秘書官の問題がひとつの焦点ですから、まず、この柳瀬さんの証人喚問をどうするのかということが優先順位高いのではないか」(立憲民主党 辻元清美 国対委員長)
立憲民主党の辻元国対委員長は12日、自民党の森山国対委員長と会談し、柳瀬氏らの証人喚問を正式に要求。森山氏は来週月曜日(16日)に回答すると語りましたが、与党内にも「柳瀬氏の国会招致は避けられない」という認識が広がっています。
「通常国会は働き方改革国会であります」(安倍首相、1月)
安倍総理自身が「働き方改革国会」と名付けた今国会。政府・与党の思惑通りに審議は進んでいません。最重要法案の「働き方改革関連法案」は不適切なデータが見つかった問題で先週ようやく閣議決定。さらに審議の舞台、衆院・厚生労働委員会は東京労働局の前局長が報道機関に「是正勧告してもいい」と発言したことをきっかけに野党側が猛反発し、審議入りのめどすら立っていないのです。
「イエローラインだよ。何とかできるよう道筋を作る努力をするしかない」(自民党幹部)
会期末の6月20日までに法案を成立させるために、与党は今月中の審議入りを目指しています。さらに遅れる場合は会期延長、あるいは採決の強行という選択を迫られますが、会期延長については与党内で否定的な意見が強まっています。
「今のまま国会を開いていても意味がない。法案審議なんてできる状況じゃない。1日でも早く国会を閉じるほうが絶対に良い」(自民・中堅議員)
ただ総理自身が最重要法案と位置づけた働き方改革関連法案を断念するような事態になれば、安倍政権の求心力低下は必至で、安倍総理は厳しい判断を迫られています。 
■「調査の結果、職員1名が文書を保有していました」 4/13
斎藤健農林水産相
面会について否定を続ける柳瀬氏だが、愛媛県の職員が備忘録として作成した面会の記録文書が農林水産省でも見つかった。13日、斎藤農水相が正式に明らかにした。このことについて問われた柳瀬氏は無言だったという。 なお、安倍首相は12日夜の時点で「中央官庁で見つかったとしても新しい内容はない。たまたま残っていたということだ」として、問題ないとの認識を示しているが、文書の内容が事実だったら大問題だ。 
■「特区は全て議長案件で(文書の)『首相案件』発言のどこが問題なのか」 4/13
加戸守行前愛媛県知事
加計学園の獣医学部誘致に尽力した加戸守行前愛媛県知事は「首相案件」報道について一蹴した。「国家戦略特区諮問会議の議長は安倍首相」であり、特区に関することはすべて「首相案件」というわけだ。
このように安倍首相を擁護する論調はネット上にあふれており、東京新聞論説委員の長谷川幸洋氏も「特区を『首相案件』というのはその通りであって、何の問題もない」と記している(現代ビジネス 4月13日)。しかし、問題ないのなら、なぜ柳瀬氏は頑なに面会した事実を否定し続けるのだろう? また、安倍首相が加計学園の獣医学部新設について知らなかったと答弁したことは虚偽だったことになる。
なお、加戸氏は4月3日に行われた新設された岡山理科大獣医学部の入学宣誓式に加計晃太郎理事長らと並んで出席。「魔法にかけられることで出産した獣医学部」と発言した(朝日新聞デジタル 4月3日)。なお、入学宣誓式には同大学の客員教授に就任したケント・ギルバート氏も出席。「モリカケは朝日案件」「国会に朝日の社長を呼んで真相解明だ!!」というツイート(4月12日)が話題になった経済評論家の上念司氏も同校の客員教授に就任したことが明らかになっている。 
■柳瀬元首相秘書官「これまでのコメントのとおり」 4/13
元総理大臣秘書官の柳瀬経済産業審議官は13日午前、経済産業省で記者団から「農林水産省で文書が見つかったが」と問われたのに対して、「報道は拝見しましたが、これまでのコメントのとおりです」と述べるにとどまりました。
加計学園の獣医学部新設をめぐっては、3年前に愛媛県の担当者が総理大臣官邸を訪問し、当時、総理大臣秘書官だった柳瀬経済産業審議官が「本件は、首相案件」などと発言したと記された文書を、13日に農林水産省が公表しました。
これについて、柳瀬氏は今月10日に「記憶の限りでは、お会いしたことはない。私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ない」などとするコメントを出して否定しています。 
■加計学園“首相案件”文書、農水相が「発見」認める 4/13
加計学園の獣医学部新設をめぐり、愛媛県の職員が作成した、当時、総理秘書官だった柳瀬経済産業審議官と面会したと記録した文書が、農林水産省でも見つかったと斎藤農水大臣が正式に明らかにしました。
「調査の結果、職員1名が文書を保有していました」(斎藤健農水相)
斎藤農水大臣はこのように述べ、愛媛県の職員が備忘録として作成した面会の記録文書が、農林水産省でも見つかったことを正式に明らかにしました。政府関係者は「面会が事実かどうかは確認できない」と指摘しています。ただ、JNNの取材に対しこの面会に出席した愛媛県側の関係者の1人は、柳瀬氏がこの面会に出席していたことを認めています。
Q.農水省でも記録した文書が出たという報道がありますが?(記者)
「・・・」(元首相秘書官 柳瀬唯夫経済産業審議官)
一方、柳瀬氏は13日朝、記者の問いかけには答えませんでした。柳瀬氏はこれまで「記憶の限りでは」との条件付きで面会したことを否定しています。 
■藤井元財務相、柳瀬氏や佐川氏を痛烈に批判 4/13
藤井元財務大臣は、TBS番組「時事放談」の収録で、加計学園問題での柳瀬元総理秘書官や森友問題での佐川前理財局長について、「全くうそを言っている。世の中の人は分かっている」と批判しました。
「守る方の安倍グループは全くうそ言っているというのは、世の中の人はみんなわかっている」(藤井裕久元財務相)
藤井氏はこのように述べ、加計問題で愛媛県職員との面会を「記憶の限りでは会っていない」などと否定している柳瀬氏や、森友学園問題で「適切に払い下げた」としている佐川氏について、このように痛烈に批判しました。
さらに藤井氏は、「宗教心を持って謙虚になれば本当のことを言えるはずだ」などと述べました。 
■加計問題 愛媛県文書と農水省文書 内容は同じもの 4/13
愛媛県が今月10日に作成を認めた文書と13日に農林水産省が公表した文書を見比べると、当時、内閣府で地方創生推進室次長だった経済産業省の藤原豊審議官と当時の総理大臣秘書官だった柳瀬唯夫経済産業審議官の主な発言を記した部分は、2か所細かい言い回しが違う以外、同じ内容が記載されています。
異なっているのは文書1枚目に記された日付です。愛媛県のものが4月13日で、農林水産省のものは4月3日となっています。これは県の職員らが官邸を訪問した翌日です。
さらに、2人の主な発言のあとに、県の方針が書かれた部分に違いがあります。愛媛県のものは「県としては今治市や加計学園と十分協議を行い、内閣府とも相談しながら、国家戦略特区の申請に向けた準備を進めることとしたい。また、これと併行して、加計学園が想定する事業費や地元自治体への支援要請額を見極めるとともに、今治新都市への中核施設整備の経緯も踏まえながら、経費負担のあり方について十分に検討を行うこととしたい」と記されています。
一方、農林水産省のものは「県としては国家戦略特区申請のための提案書(案)について、今治市の意向を踏まえて、加計学園とも協議をしながら、連携して策定を進め、内閣府と相談させていただきたい」となっていて、文章の表現が少し異なるほか、県の経費負担には言及していません。
このように2つの文書は細部で異なる箇所がありますが、内容は同じものとなっています。
○農水省が公開した文書 主な内容
13日に農林水産省が公表した愛媛県が作成した文書には「平成27年4月3日」という日付が書かれ、表題は『獣医師養成系大学の設置に係る内閣府の藤原次長と柳瀬首相秘書官との面談結果について』となっています。
県と今治市の担当課長と加計学園の事務局長らが平成27年4月2日の午前11時半に内閣府を訪問し、当時、地方創生推進室次長だった経済産業省の藤原豊審議官と面談した、と記載されています。
『藤原次長の主な発言』とタイトルが書かれ、その発言が10の項目に分けて記載されています。
まず、「要請の内容は総理官邸から聞いており、県・今治市がこれまで構造改革特区申請をされてきたことも承知。政府としてきちんと対応していかなければならないと考えており、県・市・学園と国が知恵を出し合って進めていきたい」と発言したと記されています。
続いて、「そのため、これまでの事務的な構造改革特区とは異なり、国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい。国家戦略特区は、自治体等から全国レベルの制度改革提案を受けて国が地域を指定するものであるが、風穴を開けた自治体が有利。仮にその指定を受けられなくても構造改革特区などの別の規制緩和により、要望を実現可能」と述べたとしています。
さらに、「今年度から構造改革特区と国家戦略特区を一体的に取り扱うこととし、年2回の募集を予定しており、遅くとも5月の連休明けには1回目の募集を開始」と今後のスケジュールについて説明したとしています。
そのうえで、「ついては、ポイントを絞ってインパクトのある形で、2、3枚程度の提案書案を作成いただき、早い段階で相談されたい」「提案内容は、獣医大学だけでいくか、関連分野を含めるかは、県・市の判断によるが、幅広いほうが熱意を感じる」「獣医師会等と真っ向勝負にならないよう、既存の獣医学部と異なる特徴、例えば、公務員獣医師や産業獣医師の養成などのカリキュラムの工夫や、養殖魚病対応に加え、ペット獣医師を増やさないような卒後の見通しなどもしっかり書き込んでほしい」とアドバイスを受けたように記されています。
そして、「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」「新潟市の国家戦略特区の獣医学部の現状は、トーンが少し下がってきており具体性に欠けていると感じている」と発言したとしています。
○「愛媛県庁職員が持ってきたのではないか」
磯崎陽輔農林水産副大臣は、衆議院の文部科学委員会で「文書を受けたであろうと思われる担当者も、『全く記憶に無い』と言っているわけで、誰が持ってきたかよく分からない。外形上は愛媛県の文書のように思うので、愛媛県庁職員が持ってきたのではないかと推定はできる」と述べました。
そのうえで、愛媛県に対し、文書をどの係に渡したのかなどを確認しないのかと問われ「愛媛県のほうには確認してみたいと思う」と述べました。
○柳瀬経済産業審議官とは
「加計学園」の獣医学部新設をめぐって3年前に愛媛県の担当者が総理大臣官邸を訪問したとされる当時、柳瀬唯夫(やなせただお)氏は、総理大臣秘書官でした。
柳瀬氏は昭和59年、旧通商産業省に入省して要職を歴任したあと、去年7月からは、経済産業省で通商政策を担う事務次官に次ぐポストの経済産業審議官を務めています。
この間、平成20年9月から麻生総理大臣の秘書官を務め、平成24年12月からは安倍総理大臣の秘書官を務めました。
「加計学園」をめぐり、柳瀬氏は去年7月の参議院予算委員会で、安倍総理大臣の秘書官だった当時の、平成27年に今治市の職員と面会したのか問われ、「私の記憶をたどる限り、今治市のかたと会ったことはない。当時は、獣医学部新設の制度論が議論され、制度を具体的にどこに適用するかという段階ではなかった」と説明していました。
さらに13日、農林水産省が公表した文書では愛媛県の担当者などが平成27年4月2日に当時、総理大臣秘書官だった柳瀬氏と面談した際に「本件は、首相案件」などと発言したと記されています。
こうした内容について、柳瀬氏は今月10日に「私が外部のかたに対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはありえません」などとするコメントを発表しています。
○藤原審議官とは
藤原豊氏は「加計学園」の獣医学部新設をめぐって、3年前に愛媛県の担当者が総理大臣官邸を訪問したとされる当時、内閣府の地方創生推進室の次長を務めていました。
藤原氏は昭和62年、当時の通商産業省に入省し、現在は経済産業省の貿易経済協力局の審議官を務めています。また藤原氏は、平成27年から29年まで内閣府で地方創生推進室の次長や地方創生推進事務局の審議官を務めていて、国家戦略特区も担当していました。
「加計学園」の獣医学部新設をめぐっては去年6月、文部科学省の調査で、「藤原内閣府審議官との打ち合わせ概要」という題名の文書で、「官邸の最高レベルが言っている」などという発言が文部科学省の担当者に伝えられたという内容が確認されています。
これについて、藤原氏は去年7月の衆議院予算委員会で「文部科学省に『官邸の最高レベル』や『総理のご意向』と伝えたことはない。仮に、私の発言が私の趣旨と異なる受け止めを文部科学省に与えたとすれば残念だ」と答弁しています。
さらに13日に農林水産省が公表した文書には、愛媛県の担当者が平成27年4月2日に当時、内閣府の地方創生推進室の次長だった藤原氏と面談し、「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」などと発言したと記されています。
この文書について藤原氏は13日、記者団に対し、「報道は拝見したが必要なことは内閣府に伝えておりますのでそちらにお尋ねいただければと思います」と述べています。 
■愛媛県作成「加計」関連文書 農水省に残されていたこと判明 4/13
「加計学園」の獣医学部新設をめぐって、愛媛県の担当者が3年前に、学園の関係者らとともに総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとする文書が農林水産省に残されていたことがわかりました。
加計学園の獣医学部新設をめぐっては、3年前に愛媛県や学園の関係者らが総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとする文書が残されていたことがわかり、この中では、当時、総理大臣秘書官だった柳瀬経済産業審議官が「この件は、首相案件だ」などと発言したと記載されています。
また、この文書について愛媛県の中村知事は10日の会見で、加計学園の獣医学部新設を国家戦略特区に提案するのにあたって県の職員が説明資料として、内閣府や文部科学省、それに農林水産省に説明するために使った可能性があるとしていました。
こうしたことを受けて農林水産省が省内を調査したところ、文書が残されているのがわかったということで、愛媛県の中村知事が、文書は農林水産省などに説明するために使った可能性があるとした説明を裏付ける形になりました。
この文書をめぐって菅官房長官は、10日の閣議後の記者会見で、「政府として、そのような文書は承知していない」と述べて、関係府省庁に対し確認させる考えを示していました。
農林水産省は近く、文書が残されていたことを発表する方向で関係省庁との調整を進めています。 
■狭まる包囲網 安倍政権が恐れる柳瀬氏の名刺とスマホ写真 4/13
「総理が言えないから私が言う」「官邸の最高レベルが言っている」「総理は30年4月開設とお尻を切っている」「本件は、首相案件」。
すべての道は安倍首相に通じる――。
状況証拠は真っ黒。刑事事件なら間違いなく有罪判決だろう。愛媛・今治市の加計学園獣医学部新設をめぐる安倍官邸関与の疑惑。愛媛県職員が2015年4月に官邸で安倍首相の首相秘書官(当時)だった柳瀬唯夫経済産業審議官らと面会した際のメモの存在が発覚し、いよいよ徳俵に足がかかった安倍政権。いまだに愛媛県、今治市の職員と「会っていない」とシラを切る姿はヤクザ顔負けだが、逃げられると思ったら大間違いだ。
安倍官邸がどうトボケてもウソは明らか。例えば、昨年9月の今治市議会では、議員が〈平成27年4月2日に今治市の職員が内閣府、首相官邸に行った件であります。(略)訪問した先で誰と面談し、どのような話し合いがあったのか〉と質問すると、片山司企画財政部長は〈平成27年度は国家戦略特区の指定を目指していたため、幅広く情報収集、ご相談をするべく、日ごろの電話やメールでのやりとりに加えて、内閣府等を訪問しての打ち合わせなどを行っていたところでございます〉とフツーに面会を認めている。
「会っていない」と言い続けているのは柳瀬氏や安倍官邸だけ。もはや、誰がウソをついているのかは明らかだが、そんな安倍官邸にトドメを刺す「新たなスクープ」の話が永田町で急浮上している。
「愛媛県や今治市で取材中の記者が狙っているのはズバリ、柳瀬氏の『名刺』と『スマホ写真』。何かと言えば、県や市職員にとって、官邸で総理秘書官や内閣府幹部に会うのは『一生に一度』あるかないかの出来事。当然、官邸で柳瀬氏と名刺交換しただろうし、復命書を作成するための証拠や記念としてスマホで写真も撮ったでしょう。記者たちはこれらを入手しようと懸命に地取り取材を続けているのです」(地元記者)
仮に県や市職員と柳瀬氏が一緒に写っていたら即アウトで、柳瀬氏を「信用している」という安倍首相もオシマイ。安倍包囲網はどんどん狭まっている。 
■加計文書 藤原審議官「内閣府に尋ねて」 4/13
加計学園の獣医学部新設をめぐって、3年前に愛媛県の担当者が総理大臣官邸などを訪問した際のやり取りを記した文書で県側と面会していたとされる、当時、内閣府の地方創生推進室の次長を務めていた経済産業省の藤原豊審議官は、農林水産省が文書を公表したことについて「報道は拝見したが、必要なことは内閣府に伝えておりますので、そちらにお尋ねいただければと思います」と述べました。
加計学園の獣医学部新設をめぐって、3年前に愛媛県の担当者が総理大臣官邸などを訪問した際のやり取りを記した文書が13日に農林水産省から公表されました。
これについて、当時、内閣府の地方創生推進室の次長で、文書の中で県側と面会したとされる経済産業省の藤原審議官は、記者団に対し、「報道は拝見したが、必要なことは内閣府に伝えておりますので、そちらにお尋ねいただければと思います」と述べました。
この文書では、藤原氏が「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」などと発言したという内容が記されています。 
■柳瀬唯夫首相秘書官の参考人招致 「記憶の限り」を連発する? 4/14
愛媛県、今治市の職員と面会したのか否か、そして「首相案件」と言ったのか否か、柳瀬唯夫首相秘書官に問われている問題です。
柳瀬氏は昨年国会では会っていないと言い切り、しかし、愛媛県から職員が面談し、首相案件と言われたことを記す文書が開示されたときは、「記憶の限り」では面会していないと「コメント」していますが、誰もが、「あ〜、会っていたのね」と思ったはずです。
もう会っていたことを否定しきれないから「記憶の限り」などという言い訳をしているということです。
その柳瀬氏の参考人招致に与党自民党が応じるそうです。自民党側も真っ黒なコメントのままでは、この政局を乗り切れないからです。

「首相案件」柳瀬氏を国会招致へ 与党が受け入れ方針」(朝日新聞2018年4月13日)
「斎藤健農林水産相は13日、当時の柳瀬唯夫首相秘書官(現・経済産業審議官)と愛媛県職員らとの面会記録を記した同県の文書が省内で見つかったと発表した。これを受け、与党は柳瀬氏の国会招致を受け入れる方針を固め、野党側と日程調整に入る。」

こんな真っ黒な柳瀬氏に対して国会として疑惑解明のために証人喚問を実施することは当然なのですが、与党自民党側は「参考人招致」でお茶を濁そうというのですから、自民党としては政権に向けられた疑惑に自ら積極的に解明しようというのではありません。もう逃げ切れないという状況に追い込まれてしまったということでしかありません。
会ったのか否か、会って「首相案件」と言ったのかどうかですが、柳瀬氏がこれを認めしてしまったら、もう安倍氏はおしまいです。
京都産業大学では、官邸に招かれていないと言っています。

「京産大、官邸に呼ばれず 獣医学部新設「フェアでない」」(朝日新聞2018年4月13日)
「国家戦略特区での獣医学部新設を目指して加計学園と事実上、競合していた京都産業大の教授を今年3月末で退職した大槻公一氏(76)が朝日新聞の取材に応じ、特区の選考過程で京産大が首相官邸に呼ばれる機会はなかったと明らかにした。」

「お友達」の優遇があからさまです。
さて、そのような中で柳瀬氏はどのように証言するのでしょうか。やはり国会でも「記憶の限り」を連発するのでしょうか。
佐川氏は、自己負罪拒絶特権を根拠に証言拒否を連発しました。
柳瀬氏の場合には同じような証言拒否ができません。だから「記憶の限り」と逃げるしかないわけです。
昨年は言い切りで今年はグレーなのはと問われれば、こんな答えになるでしょうか。
「私は、面会していない。しかし、愛媛県から面会したという文書が出てきたため私の記憶と違う事実が出てきて困惑している。その文書が間違っていると断言できるだけの記憶として明確に言えるものではなかった。だから「記憶の限り」とコメントした。だから現時点で会ったかどうかと問われれば、「記憶の限り」としかお答えのしようがない」
では「首相案件」については?
「会ったかどうかについても私の記憶の限りでは会っていない。従って、「首相案件」などと言っていない。」
では、仮に会っていたとしたら?
「仮定の質問には答えられない」
とにかく逃げを打つということで下打ち合わせは済んでいるのでしょう。
○疑惑の人たちへの喚問はなかなか近づかない
参考人招致では甘いとしかい言いようがなく、与党自民党のスタンスが見え見え意です。これで逃げ切れると思ったら大間違いです。
森友学園疑惑で佐川氏に対して、丸川珠代氏は提灯質問に徹していました。あまりに恥ずかしいレベルでしたが、自民党は柳瀬氏にはどういうスタンスで臨むのでしょうか。
それとも質問に立つことを放棄しますか。
安倍氏は、かつての部下に対して真偽を調査するのではなく「信頼している」と言っておしまいなのですから、与党自民党だけでなく、安倍政権にはこうした疑惑を解明する意思なしです。他方で安倍氏は膿を出し切るとまで言っていますが、安倍氏が言うべきセリフではありません。
「膿はあなたでしょう」って誰もが思ったはずです。安倍政権に疑惑の解明はできません。総辞職あるのみ、安倍氏は議員辞職あるのみです。 
■安倍首相が全幅の信頼を寄せる柳瀬唯夫氏は「究極のヒラメ社員」 4/14
加計学園の「首相案件」文書で、主役のひとりは当時首相秘書官の柳瀬唯夫氏。「将来の次官候補」まで順調に出世を重ねた半面、厳しい評価もある。
柳瀬唯夫首相秘書官(当時)は2015年4月、愛媛県や今治市の職員、加計学園幹部らと面会したのか、しなかったのか。
愛媛県の中村時広知事が「職員が作成した」と認めた文書では、柳瀬氏が面会の際に「本件は、首相案件」と述べたとされる。柳瀬氏が「獣医師会には、直接対決を避けるよう、既存の獣医大学との差別化を図った特徴を出すことや卒後の見通しなどを明らかにするとともに、自治体等が熱意を見せて仕方がないと思わせるようにするのがいい」などとアドバイスしたことも文書に記されていた。
ただ、柳瀬氏は「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはない」と否定した。野党側はいっせいに反発し、柳瀬氏らの証人喚問を要求している。
「柳瀬秘書官の発言を私は信頼している」
安倍晋三首相は、柳瀬氏が県職員らに会った記憶はないという発言を支持する。安倍首相から全幅の信頼を受ける柳瀬氏とはいったい、どういう人物なのか。
柳瀬氏は1984年に東京大学法学部を卒業し、通商産業省(現経済産業省)に入省。資源エネルギー庁原子力政策課長、麻生太郎元首相の秘書官、安倍晋三首相秘書官、経済産業政策局長などを歴任し、現在は経産省で上から2番目のポストに当たる経済産業審議官だ。
永田町関係者は言う。
「経産省の出世コースであるエネ庁の原子力政策で功績をあげ、『次官待ちポスト』と言われる経済産業政策局長にも就任。将来の次官候補でもあった」
その半面、経産省OBの評価は手厳しい。柳瀬氏を「典型的な東大法学部を出た人」と称する。
「通産省、経産省という役所は、ほかの省庁と違って、言われたことをやる人材よりも、新しいことを生み出す人材が評価される。その点、柳瀬は言われたことはできるが、国家論や政策を聞いたことがない」
別の経産省OBの評価はさらに辛口だ。
「柳瀬を一言で説明すれば上司の顔色ばかりをうかがう『究極のヒラメ官僚』。私たちが電話すると普通に『柳瀬です』と出るが、それが上司からだと『はい、柳瀬でございます!』と声が2オクターブ上がる。その様子が面白くて、柳瀬がいないときにそれをまねする人も多かった」
柳瀬氏は、安倍首相の側近中の側近で経産省の先輩にあたる今井尚哉首相秘書官が官邸に招き入れたとされる。
「合コンの法則と同じ。自分より優秀な人間は招き入れず、イエスマンを集めている」(同前)
安倍政権は今井秘書官を筆頭に、「経産省主導政権」とも言われる。政治ジャーナリストの角谷浩一さんはこう懸念する。
「霞が関のなかでも経済産業省の官僚はフットワークが軽く、一種のいいかげんさも持ち合わせている。エリートから見れば民間企業のノリに近い異色の存在だが、経産省主導政権でそれが霞が関の常識になり、文書管理などにも、ある種いいかげんな部分が出てきているのではないか」
愛媛県の文書は農林水産省でも見つかり、疑惑は深まるばかり。柳瀬氏の記憶はどうなるのか。 
■デマ拡散の安倍応援団 上念司もケントと同様、加計学園の客員教授に! 4/14
安倍首相が絶体絶命だ。安倍首相が「熟読」を薦める読売新聞までもが、「本件は、首相案件」と書かれた面会記録文書について、その場に出席した人物が柳瀬唯夫首相秘書官と面会したことを「間違いない」と証言。「首相案件」という発言があったと認めたことを報道。さらに、この文書が農水省からも見つかった。
安倍首相は、麻生派のパーティや出張先の大阪で「膿を出し切る」などと語っているが、ほかならぬ膿である張本人が何をほざいているのか、笑止千万だ。今後の世論調査でも国民から厳しい意見が叩きつけられることは必至だが、そんななか、死に体の安倍首相と同様、見苦しい悪あがきをつづける者たちがいる。安倍応援団のみなさまだ。
なかでも失笑を買ったのが、報道圧力団体「放送法遵守を求める視聴者の会」の事務局長を務める経済評論家・上念司氏のツイートだ。
上念氏は朝日新聞が面会記録の中身をスクープした翌日11日の朝、〈詠み人知らずのメモでも疑惑が深まるんですね。私もこんなメモを発見してしまいました〉と述べて、稚拙な文字のこんな文面を貼り付けた。
「モリカケは朝日案件」
そして、こうつづけたのである。
〈朝日新聞のロジックを使うなら、モリカケ報道は「朝日の捏造である疑惑が深まった!」ということになりますね。国会に朝日の社長を呼んで真相解明だ!!〉
前述した読売報道や農水省でも記録を発見されたいまでは滑稽さがさらに浮き彫りになるようだが、この期に及んでまだ「モリカケは朝日案件」などと叫んでいたのである。これこそ馬鹿のひとつ覚えというものだ。
だが、上念氏がここまで必死になっていたのには理由があった。なんと、上念氏は獣医学部を新設した加計学園の岡山理科大学の客員教授に就任していたのだ。
これをあきらかにしたのは、やはり加計問題で安倍首相を徹底擁護し、本サイトが先日、岡山理科大の客員教授に就任していたことを伝えたばかりのケント・ギルバート氏。ケント氏は11日放送の『真相深入り!虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)で、こう述べたのだ。
「秘密をここで明かしていいですか? 上念司さんも客員教授になったんです」
「(入学式に)上念さんと一緒に行こうと思ったんですが、前の夜の仕事がすごく遅くて(予定が)合わないということで行けなかった」
上念氏と言えば、“加戸守行・前愛媛県知事の証言が真実”“加戸証言が全然報じられていない、偏向報道だ!”などと主張し、一方で「前川は嘘つき」と断言。さらに「総理のご意向」と書かれた文書を作成した文科省の高等教育局長専門教育課長補佐にかんするあきらかなデマを垂れ流したネトウヨバイラルメディア「netgeek」の記事を拡散した上、出演したラジオ番組『おはよう寺ちゃん 活動中』(文化放送)でも同様のデマを垂れ流し、課長補佐の実名を挙げて個人攻撃をおこなった。
そんな上念氏が、加計学園を擁護してきた活動に対する“ご褒美”人事でちゃっかり客員教授の座を手にしていた──。しかし、加計学園と利害関係にある人間がいくら「モリカケは朝日案件」などと叫んでも、そこには何の説得力もないばかりか、疑念は深まるばかりである。
いや、醜態を晒しつづけている上念氏だけではない。やはり加計問題で一貫して「挙証責任は文科省にある!」などと主張してきた高橋洋一氏は、“官僚は「首相案件」ではなく「総理案件」と言うはず”と主張し、同じように政権を擁護してきた長谷川幸洋氏も“首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても、それで何か問題があるのか”“国家戦略特区諮問会議の議長は安倍首相なのだから「首相案件」なのは当たり前”などと言い出しているのだ。
まったく相手にするのも馬鹿馬鹿しいほど次元の低い話だ。まず“「首相案件」ではなく「総理案件」と言うはずだから信憑性は低い”という指摘は、下村博文元文科相や『プライムニュース イブニング』(フジテレビ)キャスターの反町理氏や田崎史郎氏も同様に語っているが、明らかなインチキ。元文部官僚の寺脇研氏なども指摘していたが、むしろ「総理」は口語として使われる言葉で、文書化の際には「首相」とするのが一般的なのだ。だから、愛媛県の文書に「首相」と書いてあるのは何の不思議もない。これは下村氏はもちろん、高橋氏や田崎氏らだって知っているはずだが、全員そろってこんなことを言い出したというのは、「これででいけ」とどこからか指令があったのだろう。
さらに“国家戦略特区は首相が議長なのだから「首相案件」と語るのは当たり前”という主張になると、もはや「お前は小学生か」とつっこみたくなるレベルだ。
首相を議長とする機関の決定がすべて「首相案件」になるというなら、加計以外の国家戦略特区指定や経済財政諮問会議はじめその他の首相を議長とする会議、さらには閣議決定までがすべて首相案件ということになるが、いったい誰がそんな呼び方をしているというのか。「首相案件」が首相を議長とする機関の決定という意味でなく、その機関の決定のなかでも、特別に首相の意向が強い、首相と深い関係のある案件のことを指しているというのは、普通に日本語を理解できる人間なら誰でもわかることだ。いくら安倍政権を擁護したいとはいえ、元官僚やジャーナリストがこんな小学生並みの言いがかりをつけて恥ずかしくないのだろうか。
しかも、“国家戦略特区は首相が議長だから”という主張については、もっと決定的な嘘がある。それは、この首相案件文書が、“首相が議長の国家戦略特区”への申請を決める前の段階の文書だということだ。公開された面会記録のなかの柳瀬首相秘書官の発言録では、いちばん最初に「本件は、首相案件となっており」と記され、そのあとに「国家戦略特区でいくか、構造改革特区でいくかはテクニカルな問題であり、要望が実現するのであればどちらでもいいと思う」と記されている。つまり、まだ特区で申請する可能性もあったわけだ。
ちなみに、構造改革特区は首相が構造改革特別区域推進本部の本部長ではあるが、地方自治体が主体になって提案し、国は認定するかどうかの判断をするだけ。首相は会議の議長でもない。
ようするに、この時点で首相秘書官が「国家戦略特区だから」という意味で「首相案件」と発していないことは明白なのだ。
そもそも、この文書の問題は「首相案件」という言葉だけではない。加計学園と愛媛県だけが首相官邸から特別扱いを受けていることが問題なのだ。まず、特区申請者が官邸にまで招かれ、首相秘書官と面会をすることなど普通ありえない。実際、その国家戦略特区で獣医学部新設を申請した京都産業大学は、官邸を訪問したことなどない。それどころか、加計学園に対して文科省は新設が認められるようにアドバイスまでおこなっているが、京産大は文科省との事前協議さえ拒否されている。こうした加計学園に対する依怙贔屓こそ、「首相案件=腹心の友への優遇」の証拠ではないか。
とはいえ、もはや安倍応援団たちがいくら擁護を繰り返しても、それが無理筋であることは多くの国民が見抜くだろう。そして、それでも引くに引けない安倍首相は嘘に嘘を重ね、モリカケ国会はつづかざるを得ない。問題を長引かせているのは安倍首相にほかならないのだ。
本日14日、問題の真相究明と安倍内閣の総辞職を求める抗議デモが国会前をはじめ全国20カ所以上でおこなわれる。国民の手によって、地位に恋々としがみつく首相を引きずり下ろすしかない。 
■柳瀬唯夫氏招致不可避に 自民・森山裕国対委員長「来週にも」 4/15
自民党の森山裕国対委員長は15日、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり野党が求める元首相秘書官の柳瀬唯夫経済産業審議官の国会招致について「非常に強い要請であることをわきまえて対応する」と前向きな姿勢を示した。
公明党の山口那津男代表は青森市での講演で「見過ごすわけにはいかない」と述べ、柳瀬氏の招致は避けられないとの認識を示した。
森山氏は鹿児島県中種子町で記者団に「23日の週で集中審議をどうするか、そこに誰を呼ぶのかが焦点だ」とも述べた。安倍晋三首相訪米後に衆院予算委員会集中審議を開き、柳瀬氏を参考人招致する方向だ。
愛媛県職員らが作成した文書には、柳瀬氏が平成27年4月に面会した際に「首相案件」と発言したと記されていた。野党は偽証罪で告発できる証人喚問を要求しているが、与党は参考人招致にとどめる方針だ。 
■「首相案件」だけ優遇、加計問題の深すぎる闇 4/15
加計学園の獣医師学部新設は、果たして公正に行われたものなのか――。この問題で国会が大揺れに揺れている。
それまで愛媛県が「ない」としていた獣医学部新設を巡る政府関係者とのやりとりを記した「愛媛県文書」の存在が、4月9日に明らかになった。翌10日には中村時広愛媛県知事が当時の関係者にヒアリングを行い、「職員が作成したメモ」と確認した。
その内容は、13日に齋藤健農水相が会見で「農水省内で見つかった」と発表した文書の内容とほぼ同じだ。いずれも2015年4月2日に愛媛県地域政策課長と今治市企画課長、そして加計学園事務局長らが藤原豊地方創生推進室次長(当時)と柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面談し、獣医学部設置について積極的なアドバイスを受けていたことが記されている。
○加計学園と京都産業大学への対応に大差
また朝日新聞は4月13日、獣医学部新設について加計学園と競合していた京都産業大学元教授の大槻公一氏のインタビューを掲載。大槻氏は2016年1月に内閣府で藤原氏に会ったものの、積極的なアドバイスを受けられず、官邸にも呼ばれなかったことを明らかにした。
「愛媛県文書」によると藤原氏が加計学園の構想に対して以下のようなアドバイスを与えている。これと比較すれば、京都産業大学に対する対応との間に顕著な差があることがよくわかるだろう。

藤原地方創生推進室次長の主な発言(内閣府)11:30 (愛媛県文書の要約)
・要請の内容は総理官邸から聞いている。
・政府としてきちんと対応していかねればならないと考えており、互いに知恵を出し合いたい。
・国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい。風穴を開けた自治体が有利。仮に指定を受けられなくても、別の規制緩和により要望を実現可能。

このように藤原氏は加計学園獣医学部新設には積極的かつ好意的な意向を示すほか、「遅くとも5月連休明けには1回目の募集を開始する」といった加計学園にとって有利な事前情報を提供し、「提案内容は既存の獣医学部とは異なる特徴や卒後の見通しなどをしっかり書き込んでほしい」と具体的なアドバイスも行っている。
さらには加計学園側が喜びそうな「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」というリップサービスまで述べているのだ。
その一方で、京都産業大学への対応は冷淡だったといっていい。
藤原氏は加計学園には「2、3枚程度の提案書を作成いただき、早い段階で相談されたい」と簡素な提案でいいからと急がせたが、1989年から獣医学部新設に向けて計画し、20ページ以上の資料を準備して2016年10月17日に国家戦略特区ワーキンググループによるヒアリングに挑んだ京都産業大学は政府に斬り捨てられる結果となっている。
もっとも京都産業大学も決して無策だったわけではない。
○京都産業大学は消極的な省庁に前途を阻まれた
文科省には何度か事前協議を申し入れていたが、「門戸は開かれていないので、具体的協議はできない」と断られ、農水省などからも「獣医師の数は充足しているので、これ以上獣医学部を作る必要はない」と拒否されていた。要するに京都産業大学は農水省や文科省といった獣医学部新設に消極的な省庁にその前途を阻まれ、加計学園は内閣府や官邸といった“助っ人”に恵まれた。
そして2016年11月9日に開かれた安倍晋三首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議は、獣医学部新設は獣医学部空白区に限ること、そして2018年度開学することという条件を付すことを決定。これにより、同じ近畿地方に獣医学類をもつ大阪府立大学が存在すること、および時間的なスケジュールが間に合わないことで、京都産業大学は獣医学部新設を諦めざるを得なくなった。
なお獣医学部新設に消極的だった文科省からは、後に「総理のご意向」や「官邸の最高レベルが言っている」などという「官邸サイドの指示」を示すメールが暴露され、内閣府が主導して意図的に加計学園に有利な状況を作ろうとしていたことが明らかにされている。
その中に11月9日の国家戦略特区諮問会議が決定した獣医学部設置基準に影響を与えた「広域的に獣医師系要請大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする」という文書が見つかり、萩生田光一官房副長官(当時)の指示によるものとされたが、萩生田氏はこれを否定した。ではいったい誰が指示したのか。加計学園獣医学部新設を巡って、いまだ多くが明らかにされていない。
このたび公にされた「愛媛県文書」と農水省で見つかったメモにも謎はある。
○なぜ違いがあるのか
まずは文書の作成日だが、「愛媛県文書」は4月13日とされているのに対し、農水省のメモは4月3日になっている。また内容については「1」に記載された藤原氏と柳瀬氏との面会メモは共通しているが、「2」が以下のように異なっているからだ。
<愛媛県文書> ついては、県としては、今治市や加計学園と十分協議を行い、内閣府とも相談しながら、国家戦略特区の申請に向けた準備を進めることとしたい。また、これと併行して、加計学園が想定する事業費や地元自治体への支援要請額を見極めるとともに、今治新都市への中核施設整備の経緯も踏まえながら、経費負担のあり方について十分に検討を行うこととしたい。
<農水省のメモ> ついては、県としては、国家戦略特区申請のための提言書(案)について、今治市の意向を踏まえて、加計学園とも協議しながら、連携して策定を進め、内閣府と相談させていただきたい。
もっとも中村知事によれば、これは公文書ではなく「備忘録」。よって何度か書き換えられたのだろう。その仕事ぶりの丁寧さから、担当者の熱意も感じられる。
だが、岩盤規制を突破するための国家戦略特区が不公正なプロセスを経て行われていいはずがない。身贔屓(みびいき)特権という名のより強固な岩盤を作ったのだとしたら、まさしく本末転倒といえるだろう。 
■前川氏、首相案件と「安倍さんは言っていると思う」 4/15
前川喜平・前文科事務次官(63)は14日、北九州市で講演し、加計学園の獣医学部新設計画に関し「首相案件」と書かれた「愛媛文書」が表面化したことについて、安倍晋三首相は計画を了承していたはずとの認識を示した。かねて「加計ありき」との認識を示しており「安倍さんは(首相案件と)言っていると思う。明白な意思表示がないと(役人は)ああいう文書はつくれない」と指摘した。
前川氏はこれに先立ち、首相の地元、山口県下関市でも講演したが、市教育委員会が「前川氏への応援ととられかねない」として後援を断り、臆測を呼んでいる。前川氏は終了後の取材に、財務省の文書改ざんなどに触れ「すべて公務員が責任をかぶる。公務員をここまでおとしめる政治のあり方には非常に疑問を感じる」と、現在のゆがんだ「政と官」の姿を批判した。
下関市教委が後援を断ったことには「市教委の判断」と述べたが、北九州の講演は、同市教委が後援。首相の地元とそうではない北九州市で、対応が割れた。前川氏は北九州の講演で、将来の少子化に触れて「必要な職業は何か考え、大学をつくらないといけない」と、獣医学部新設も批判。「愚かな政府は愚かな国民がつくる。賢い主権者でないと賢い政府はできない」と、約2000人の聴衆に呼び掛けた。 
■「首相案件」は他の愛媛県メモにも 訪米で柳瀬氏国会招致の引き伸ばし図る安倍官邸 4/15
農林水産省が加計学園の獣医学部新設計画を巡り、「首相案件」と記された文書が省内で見つかったと発表したのを受け、自民党は16日にも当時、首相秘書官だった柳瀬唯夫経済産業審議官の国会への参考人招致を野党側に提案するという。
しかし、肝心の柳瀬氏は安倍晋三首相の訪米に随行する予定で17〜20日までは不在だ。
「柳瀬氏の国会招致は早くても23日以降となり、野党は随行を認めるべきではないと主張しています。だが、官邸は強引に連れていき、少しでも時間稼ぎをする。シリアの空爆やゴールデンウイークなどで世間が森友、加計疑惑を忘れるのを待つ作戦です」(政府関係者)
対する愛媛県の中村時広知事は、官邸へ行った県の職員らが国会に招致されたら、「私が矢面に立つ」と自らが応じる考えを示した。
「4月2日の備忘録は、知事ら幹部の机の上に連絡メモとして置いていたもののようだ。首相案件と似た文言は他の連絡メモにも記されていた。中村知事は加計学園の件で官邸まで行き、首相案件になっているのを知り、『大丈夫なのか』と正直、計画には乗り気ではなかった。ただ、今治市が前のめりで県が却下なんてできるわけがない。柳瀬氏と会ったとき今治市の担当者2人は最敬礼みたいに頭を下げ、『安倍首相と加計さんの関係があり、国家戦略特区はうちのためにやってくれている』と話していました」(愛媛県幹部)
今回の備忘録は自民党内から出たという噂がまことしやかに飛び交っている。
「安倍さんに退場を突きつけるために出したんじゃないか。自民党内ではもう安倍首相の3選は無理だろうという流れになりつつある。連日、派閥の幹部クラスが情報交換で会食。青木幹雄、山崎拓、古賀誠ら長老クラスも後継について話し合っている。安倍さんと共倒れしそうな麻生(太郎)財務相は福田淳一事務次官のセクハラ問題まで勃発し、『やってられんよ』とぼやいていた」(自民党議員)
3選に危機感を募らせる安倍首相は13、14日と大阪府を訪れ、中小企業の視察や府連主催の臨時党員大会に出席するなど精力的に動き回った。
「3月の自民党大会で大阪府連から首相批判の声が出て慌てて大阪へ入った。維新の松井一郎大阪府知事や橋下徹氏びいきの安倍さんを府連幹部は快く思っていない。2月にライバルの石破茂元幹事長が大阪で集会を開き、約1千人を集め、大盛況となったため、地方票をごっそり取られると危機感があるようだ。安倍さんは3選をまだ諦めていないが、党内は白けムード。だが、総裁閥の細田派がまとまったところで、他の派閥の支援がないと安倍さんは勝てない。二階(俊博)幹事長は、森友、加計疑惑にうんざりしており、言葉通り、支持に回るか、不透明です。安倍さんは最近、イライラし『どうなっているんだ』と周囲に声を荒げて話すこともあるほどご機嫌斜めですよ」(府連関係者)
柳瀬元首相秘書官の国会招致が政局の山場になりそうだ。 
■「加計」愛媛県文書 農水省が提出求める 柳瀬氏面会情報を把握 4/16
学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部開設を巡り、農林水産省で見つかった愛媛県職員作成による柳瀬唯夫首相秘書官(当時)らとの面会を記した文書は、県が農水省の要請で、二〇一五年四月の面会直後に同省へ提出したものだったことが政府関係者への取材で分かった。柳瀬氏らと面会する情報をつかんだ農水省から「どんなやり取りがあったのかを至急確認したい」と連絡があったという。
農水省は当時、獣医学部の開設に慎重で、政府関係者は「農水省が県に面会記録の提出を求めたのは、学部開設を進めようとする官邸側や学園などの動向を探るためだった」と証言している。県の担当者が国への提出文書に虚偽を書く可能性は考えにくく、内容の信ぴょう性が高まった。
柳瀬氏は「記憶の限りでは会っていない」と面会を否定している。
農水省で見つかった文書は、県や今治市、学園の幹部らが柳瀬氏や藤原豊・内閣府地方創生推進室次長(当時)と面会した翌日の一五年四月三日付となっている。県職員が作成し、直後に同省に提出した。
四月三日付の文書は面会直後に作成し、十三日付の文書は知事報告のために一部内容を補ったもので、ほぼ同じ内容になっている。中村時広知事はこれまでに、二つの文書とも県が作成したと認めている。
二つの文書には、柳瀬氏の「本件は首相案件」「国家戦略特区の方が勢いがある」などの発言や、藤原氏の「総理官邸から聞いている」「かなりチャンスがあると思ってよい」という助言などが記してあった。
農水省は「文書を受け取った当時の職員から引き継いだ後任者が個人用ファイルに保管していた。入手経路は分からない」と説明している。中村知事は、文書が文部科学省、農水省、内閣府に渡った可能性を会見で述べたが、農水省以外では見つかっていない。
文科省は面会前の一五年三月、首相官邸からの連絡で、県幹部らの来訪を事前に把握したことが本紙の取材で明らかになっている。
面会当時、国は獣医師が増えすぎないように獣医大学・学部の新設を規制しており、学部新設には獣医師が不足しているかどうかが焦点の一つだった。獣医師の育成や確保に関わる農水省は「獣医師は足りている」と主張していた。 
■国会招致に応じる考え 元首相秘書官の柳瀬唯夫氏 4/16
学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り、当時首相秘書官だった柳瀬唯夫経済産業審議官は16日、国会招致を求められた場合に「当然、国会の判断に従う」と述べ、招致に応じる考えを示した。経産省内で記者団の取材に答えた。
立憲民主党の辻元清美国対委員長は16日、柳瀬氏の証人喚問を重ねて求めた。与党が応じない場合の審議拒否にも言及し「立法府の責任として必要だ」と語った。
柳瀬氏を巡っては、首相秘書官だった平成27年4月に愛媛県職員らと官邸で面会し「本件は、首相案件」と発言したとする記録文書について、愛媛県が作成したことを認めた。ほぼ同じ内容の文書が農林水産省内でも見つかった。
柳瀬氏は「自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」とのコメントを発表し、面会や発言を否定している。 
■「首相案件」に今治市長「報道で目にした」 4/16
愛媛県今治市への加計(かけ)学園の獣医学部新設計画をめぐり、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)らと面会したとの記述がある県職員作成の文書が見つかった問題で、今治市の菅良二(かんりょうじ)市長が16日、報道各社の取材に応じた。面会には市職員が同席したとされるが、菅市長は「首相案件」という言葉について「今回の報道で目にした」と述べ、自身は「聞いていない」と否定した。
菅市長は担当職員から聞き取ったとし、県職員作成の文書に記されている内容や面会相手は「市情報公開条例に基づき、非開示としておりコメントを控える」と述べ、真偽に言及しなかった。理由については「国や県に迷惑がかかってはいけない。マイナスのイメージがあってもいけないから」と説明した。
県職員が作成した文書には、柳瀬氏が2015年4月2日に首相官邸で県や今治市の職員らと面会し、「本件は、首相案件」と述べたと記されている。朝日新聞が10日に報道し、中村時広知事が県職員が作成したと認めた。13日には獣医師行政を所管している農林水産省でほぼ同じ内容の文書が見つかった。 
■加計「首相案件」発言 愛媛県庁で録音データ探しの内部証言 4/16
役所側が「記録は廃棄した」と説明していた“ないはずの記録”が次々に湧いて出てくる。森友学園問題での財務省の決裁文書改竄や口裏合わせの指示メールから、防衛省の日報隠蔽へと広がったかと思うと、ついに加計学園の獣医学部認可問題で官邸中枢に火が回った。
〈本件は、首相案件〉という、柳瀬唯夫・元首相秘書官(現在は経済産業審議官)の発言を記録した愛媛県庁職員のメモの存在が明らかになったからだ。
朝日新聞がスクープした“加計メモ”には生々しい記述がある。2015年4月2日、獣医学部新設の陳情のために首相官邸を訪ねた愛媛県職員に同行した加計学園事務局長は、当時の柳瀬秘書官にこんな話を打ち明けてアドバイスを求めていた。
〈加計学園から、「先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、『下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっている』との発言があった」とのことであり、その対応策について意見を求めた〉(カギ括弧は編集部による補足)
安倍晋三首相は「加計氏、下村氏との3人で食事をしたことがない」とメモの内容を否定してみせたが、文面からは、首相が「腹心の友」である加計晃太郎氏(加計学園理事長)と会食した際、“(獣医学部設立の認可権を持つ)下村大臣がへそを曲げているようだから、手を打った方がいいぞ”と耳打ちした光景が目に浮かぶ。
その経緯を加計理事長から聞かされていたからこそ、事務局長はわざわざ県庁職員の陳情に同行し、柳瀬秘書官に対応策の知恵を借りたのだろう。メモには柳瀬氏の答えも記述されている。 
■「会っていないと言えない」柳瀬氏、愛媛職員と 4/17
学校法人「加計(かけ)学園」(加計晃太郎理事長)の獣医学部新設を巡り、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が愛媛県職員らと面会した際に「首相案件」と語ったとされる同県作成の文書がみつかった問題で、面会が国会で審議された昨年7月、柳瀬氏が周辺に職員らと面会した可能性を認めていたことが、政府関係者への取材で明らかになった。柳瀬氏はこの問題が報道された今月10日、愛媛県職員との面会について「記憶の限り会っていない」とのコメントを出しているが、説明が揺らぐ可能性がある。
文書には2015年4月2日、愛媛県と同県今治市の職員が首相官邸で柳瀬氏と面会したと記されている。政府関係者によると、柳瀬氏は、参考人として出席した昨年7月25日の参院予算委員会の集中審議前後、周辺に15年4月2日の面会について説明した。同日は官邸内の会議室で、国家戦略特区の担当だった内閣府の藤原豊地方創生推進室次長(当時)と加計学園関係者と面会。藤原氏が同伴した4〜5人の関係者が同席していたという。
柳瀬氏は「藤原氏が加計学園の関係者を連れてきたという認識。名刺交換をした記憶もなく、同席者が誰かは確認しなかった」とし、「職員と会っていないとは言えない」との趣旨の説明をしたという。柳瀬氏は参院予算委では「私の記憶をたどる限りお会いしていない」と答弁したが、実際には面会の可能性を認識した上での発言だったとみられる。
文書には、柳瀬氏の発言として「自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」と記載されていた。一方、藤原氏は昨年6月15日の参院農水委員会で「私や内閣府の担当職員が4月2日に今治市の職員を官邸に紹介、案内したことはない」と答弁している。柳瀬氏との面会に同席したとされる愛媛県職員は取材に「コメントできない」としている。
自民党の伊吹文明元衆院議長は16日夜、BS11の番組で「いろいろな情報を聞いていると、柳瀬氏は『やっぱり会っている』と言わざるを得ないのではないか」と指摘した。 
■柳瀬唯夫元首相秘書官、23日参考人招致 予算委集中で自民方針 4/17
自民党は17日、学校法人「加計学園」の獣医学部新設などを巡って23日に衆院予算委員会の集中審議を開き、柳瀬唯夫元首相秘書官らを参考人として招致する方針を決めた。自民党の菅原一秀与党筆頭理事が、野党が欠席しても開催する方針を立憲民主党の逢坂誠二野党筆頭理事に伝えた。野党側は虚偽証言をした場合に罰則がある証人喚問の実施を求めている。
自民党は、柳瀬氏のほか国家戦略特区の利用を助言したとされる藤原豊経済産業省官房審議官、学部新設の経緯を知る加戸守行前愛媛県知事らの招致も調整している。
柳瀬氏らを招致しての集中審議開催は、与党が16日に提案した。野党は証人喚問に加え、複数日の集中審議開催を要求している。 
■「首相案件」文書、内閣府など3府省では確認できず 4/17
学校法人「加計(かけ)学園」の愛媛県今治市への獣医学部新設計画をめぐり、当時の柳瀬唯夫首相秘書官(現・経済産業審議官)が「首相案件」と発言したとされる県作成の文書について、内閣府、文部科学省、厚生労働省は17日、調査では確認できなかったと発表した。各府省の大臣が閣議後会見で明らかにした。
内閣府で国家戦略特区を担当する梶山弘志・地方創生相は、担当者らへの聞き取りを実施したことを明らかにした上で「当該文書の有無について事務局内部全体をくまなく検索したが確認できなかった」と述べた。文書に「内容は総理官邸から聞いている」「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」といった発言が記されている藤原豊・地方創生推進室次長(現・経済産業省貿易経済協力局審議官)からも聞き取ったが、「(発言について)承知をしていない」と答えたという。
林芳正文科相は、関係部署の共有フォルダーなどを調べたほか、関係職員らに聞き取りをしたが文書は見つからなかったとした。加藤勝信厚労相も「調査したが、そういった文書は見つからなかった」と語った。その上で「調べることは調べた」とし、厚労省に文書は存在しないと結論づけた。
文書は、柳瀬氏が2015年4月に愛媛県職員らと首相官邸で面会したときの様子を記録したとされる。農林水産省が13日にほぼ同じ内容の文書を見つけたと公表。首相官邸が、関係する内閣府、文科省、厚労省に調査を指示していた。
また、県職員らが官邸を訪れた日に内閣府が文科省に訪問予定を伝えたメールが見つかったとするNHKの報道に対し、菅義偉官房長官は会見で「文科省で関係者に事実関係を確認している」と述べた。 
■「首相案件」文書確認できず 文科、厚労省 4/17
学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設を巡り、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が愛媛県職員らと面会した際に「首相案件」と発言したとされる文書について、林芳正文部科学相は17日の閣議後記者会見で、文科省内で存在が確認できなかったとする調査結果を発表した。
また、愛媛県の職員らが官邸を訪問した2015年4月2日に、内閣府から文科省の担当者に訪問予定を伝えるメールが省内で見つかったとするNHKの報道があり、林氏は現時点で確認できていないとした上で、省内で調査することを明らかにした。
文書の調査は、文書の存在が報じられた9日夜に開始。獣医学部を担当する専門教育課などで使用するコンピューターの共有フォルダーや紙のファイルなどを確認したが、文書は確認できなかったという。
一方、加藤勝信厚生労働相も17日の閣議後記者会見で「執務室の書類や電子ファイルを確認したが(文書は)見つからなかった」と述べた。 
■「首相案件」文書 内閣府からは見つからず 梶山弘志地方創生担当相が発表 4/17
梶山弘志地方創生担当相は17日の記者会見で、加計学園に関連し、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が「首相案件」と語ったとされる内容が記された愛媛県作成の文書を調査した結果、内閣府では「対象文書は確認できなかった」と発表した。
内閣府は獣医学部新設に関する規制改革事項を担当する現職の職員と、同文書が作成されたとみられる平成27年4月ごろに担当していた当時の職員計33人を対象に、ヒアリングや電子ファイルの探索などを行っていた。
調査対象には、愛媛県職員らと面会したとされる内閣府の藤原豊地方創生推進室次長(当時)も含まれていた。藤原氏は調査に対し、藤原氏の発言として文書に記された「かなりチャンスがあると思ってよい」などとする内容を「承知していない」と話しているという。
また、愛媛県職員らが首相官邸を訪問した当日、内閣府側が文部科学省の担当者に、県などの訪問予定を伝えたメールが見つかったとの一部報道に、梶山氏は「コメントできる状況ではない」と述べた。 
■首相案件 4/17
東日本大震災では多くの犠牲者を出した一方で、約1万9千人の命が救われました。その7割を救助したのが自衛隊でした。これらの活躍等で、自衛隊に対する信頼と期待は高まりをみせていました。
ところが、防衛省・自衛隊はせっかく築き上げてきた信頼を、大きく失いかねない事態を招いています。これまで「存在しない」としてきたイラク派遣時の日報(活動報告)が相次いで発見されています。隠蔽なのか凡ミスなのかわかりませんが、お粗末極まりません。
戦国時代の甲斐の名将・武田信玄の戦功を中心にまとめられた「甲陽軍鑑」(全20巻)は、陣営や諸道具などを詳述し、甲州武士の思考や行動も生々しい迫力で記しています。古代ローマの政治家・カエサルも長期にわたる遠征戦の経緯を「ガリア戦記」(全8巻)としてまとめています。多少事実と異なる点があったり文学的誇張があったとしても、古今東西の別なく真の勇者は歴史の検証に耐える文書を残してきました。
わが国の自衛隊海外派遣部隊もイラクや南スーダンで、命懸けで任務を遂行してきたはずです。その汗と泥にまみれた活動を記録し、しっかり管理し、求められれば堂々と公開(インテリジェンスに関わる部分を除く)するということがなぜできないのでしょうか。
防衛大臣は連日謝罪し、頭を下げています。しかし、約25万人の自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣です。残念ながら、安倍総理が「日報問題」を自らの案件だと強く自覚しているようには思えません。
「加計学園」の獣医学部新設をめぐる疑惑も再燃してきました。愛媛県職員らが2015年4月に当時の柳瀬唯夫総理秘書官と面会した記録が見つかりました。そこには柳瀬氏が、「本件は、首相案件となっており…」と発言したとの記載がありました。柳瀬氏は「自分の記憶の限りでは、お会いしたことはありません」と逃げています。が、記録と記憶とではどちらが説得力があるのか、火を見るよりも明らかでしょう。
「森友学園」への国有地売却問題にいたっては、公文書改ざんだけでも十分に衝撃的でしたが、口裏合わせやごみ増量依頼など驚天動地の事実が次々と明らかになってきました。もはや焦点は財務省が何をやったのかではなく、どのような理由でこんな信じ難い愚行を積み重ねたのかに移りました。
事の発端は、総理夫人が森友学園の名誉校長を引き受けたことから始まります。昭恵氏が務めていた名誉職は計55件。その中には、加計学園の認可外保育施設も含まれています。安倍総理は国会で、「妻が名誉校長を務めているところはあまたあるが、行政に影響を及ぼしたことはない」と、答弁しています。果たして真実なのでしょうか。
突きつめると、今日の政治・行政への国民の不信は、すべて「首相案件」です。 
■「首相案件」の加計文書、内閣官房でも調査 菅官房長官 4/18
学校法人「加計学園」の愛媛県今治市への獣医学部新設計画をめぐり、柳瀬唯夫首相秘書官(現・経済産業審議官)が「首相案件」と発言したとされる県作成の文書について、菅義偉官房長官は18日午前の会見で、内閣官房にも文書の有無について調査するよう指示したと明らかにした。
会見に先立つ衆院内閣委員会で、共産党の塩川鉄也議員が調査を求めた。菅氏は内閣委で、内閣官房の調査を実施しなかった理由について「(愛媛県)知事の会見の中で、(文書を)届けたという省庁の中に内閣官房がなかった」と説明した。
政府はこれまでに内閣府、文部科学省、厚生労働省、農林水産省で調査を実施。農水省以外では文書は見つからなかったと発表している。 
 

 

■加計学園 柳瀬元首相秘書官と面会予定メール公表 文科省 4/20
「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、林文部科学大臣は、3年前に愛媛県の職員らが総理大臣官邸を訪問し、柳瀬元総理大臣秘書官と面会する予定を伝えた内閣府からのメールが、文部科学省内で見つかったことを公表しました。
「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、愛媛県の職員が3年前に総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとする文書を作成していたと明らかにしたことを受けて、文部科学省は、省内で調査した結果、文書そのものは確認できなかったとしましたが、その後、関連するメールなどがないか調査を行っていました。
林文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で調査結果を公表し、愛媛県の職員らが総理大臣官邸などを訪問したとされる平成27年4月2日の当日に、内閣府から文部科学省宛てに送信されたメールが省内で見つかったことを明らかにしました。
メールには、愛媛県や今治市の職員と加計学園の関係者が、当時、内閣府で地方創生推進室を担当していた経済産業省の藤原審議官と面会した際の様子が記されているほか、「本日15時から柳瀬総理大臣秘書官とも面会するようです」などと記載されています。
また林大臣は、愛媛県の職員らが総理大臣官邸を訪問することについて、当時官邸に出向していた文部科学省の職員から「陳情がくるので省のスタンスを教えてほしい」などと、事前に連絡を受けた記憶のある職員がいたことも明らかにしました。
林大臣は、「われわれはしっかりと確認作業を行い、こういうものが出てきた。それぞれの方々がしっかりと説明責任を果たしていかれると思っている」と述べました。愛媛県の職員らとの面会について、柳瀬氏は、「記憶の限り、お会いしたことがない」として否定しています。
○梶山地方創生相 担当者「送信したと思われる」
梶山地方創生担当大臣は、閣議のあと記者団に対し、文部科学省からメールの提供を受けて、送信した可能性のある当時の担当者に確認したところ、担当者は、「当時の記憶は残っていないが、写しがある以上、自分が内閣府での面会に同席して、作成し、送信したものと思われる」と話したことを明らかにしました。
また、総理大臣官邸への訪問予定については、「面会の場でそのような話題が出て、それをそのまま自分がメモしたのだろう」と話しているということです。
一方、内閣府での面会に同席したとされる、当時、内閣府で地方創生を担当していた経済産業省の藤原審議官は、「記憶はないが、メールを読む限り、先方が言ったのではないか」などと話し、総理大臣官邸での面会の調整などは行っていないと説明しているということです。
○メールは愛媛県の文書と内容酷似
このメールには平成27年4月2日の午前11時半から1時間、内閣府で、愛媛県と今治市、さらに加計学園の関係者が当時、内閣府の地方創生推進室次長だった経済産業省の藤原豊審議官らと面会したことや藤原氏が発言したとする内容が記されています。
藤原氏は、「制度改正の実現は首長のやる気次第。熱意をどれだけ示せるか」「今月、または大型連休明けに予定する国家戦略・構造特区の共通提案に出してみては」さらに、「反対派の同意を得るため、構想の内容(コンセプト、カリキュラム、自治体の取り組み)を検討いただき、ご相談いただきたい」と発言したと記載されています。
藤原氏が発言したとする内容と、今月、愛媛県が作成を認めた文書に記された内容を比べると、訪問した日時や場所、さらに訪問したメンバーや面会相手などは一致しています。
また、国家戦略特区への提案に言及したり、提案書や具体的なカリキュラムを作り、内閣府に早く相談するよう求めたりしている点も共通しています。
そして、この面会の直後、総理大臣官邸を午後3時から訪問し、当時の柳瀬総理大臣秘書官と面会する予定であることも愛媛県が作成した文書に書かれた内容と一致しています。
○「3月に官邸訪問予定」を知る
今回、文部科学省は加計学園の獣医学部新設に関わる担当部局に在籍した合わせて12人の職員を対象に調査したということです。
その結果、平成27年4月2日に愛媛県の関係者らが内閣府に訪問した直後に内閣府と文部科学省の担当者でやり取りしたメールが紙に印刷された状態で省内の国家戦略特区の担当室から見つかりました。
さらに、当時の担当者に聞き取ったところ、この訪問前の平成27年3月に官邸に出向していた職員から愛媛県と今治市、さらに加計学園の関係者が総理大臣官邸を訪問する予定があると事前に連絡を受けていたことがわかったということです。
調査に対して当時、メールを受け取った職員は「詳細なやり取りについては覚えていない」と話しているということです。
○愛媛県知事「県は間違いない」
文部科学省内で内閣府からのメールが見つかったことについて、愛媛県の中村知事は、記者団に対し、「私たちが本当に真正直に言っているということはお分かり頂けるのではないか。『愛媛県の言っていることは間違いないね』という話なので、あとは、それぞれの機関が正直に説明すればいい」と述べました。
そのうえで、柳瀬氏が面会を否定していることについて、「正直に記憶をたどってお話頂ければ、どうということではないと思う。『首相案件』という言葉がどういう意図で使われたかはわからないが、特区によって新たなアクションを進めるのは首相案件だと思うし、そのあたりも含め、ストレートに言われたらいいのではないか」と述べました。
○野党6党「首相案件は明らかだ」
「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、3年前に愛媛県の職員らが総理大臣官邸を訪問し、柳瀬・元総理大臣秘書官と面会する予定を伝えた内閣府からのメールが文部科学省内で見つかったことを受けて、野党6党は関係府省からヒアリングを行い、「メールを見ると『首相案件』というのは明らかで、柳瀬氏は、国会で虚偽答弁をしてきたのではないか」などと指摘しました。
○立民 「証人喚問で白黒を」
立憲民主党の辻元国会対策委員長は、記者団に対し、「柳瀬元総理大臣秘書官が、『加計学園』や愛媛県、今治市の関係者と会っていたことが裏付けられた。柳瀬氏がうそをついている疑いが濃厚になったので、証人喚問をして、白黒はっきりさせないといけない。安倍政権はうそで塗り固められた政権であり、虚構の上に成り立った『フェーク政権』に見えてくる」と述べました。
○共産 「ど真ん中の証拠だ」
共産党の笠井政策委員長は、記者会見で「『加計疑惑』のど真ん中の証拠で、愛媛県の文書の信ぴょう性を示している。いよいよ柳瀬・元総理大臣秘書官らの証人喚問が必須で、何よりも安倍総理大臣自身の関与や、『首相案件』と言ったことが焦点だということがはっきりしてきており、真相究明が大事だ」と述べました。
柳瀬唯夫氏
「加計学園」の獣医学部新設をめぐって3年前に愛媛県の担当者が総理大臣官邸を訪問したとされる当時、柳瀬唯夫氏は総理大臣秘書官でした。
柳瀬氏は、昭和59年、旧・通商産業省に入省して要職を歴任したあと、平成29年7月からは経済産業省で通商政策を担う事務次官に次ぐポストの経済産業審議官を務めています。この間、平成20年9月から麻生総理大臣の秘書官を務め、平成24年12月からは安倍総理大臣の秘書官を務めました。
「加計学園」をめぐり、柳瀬氏は、去年7月の参議院予算委員会で、安倍総理大臣の秘書官だった当時の、平成27年に今治市の職員と面会したのか問われ、「私の記憶をたどる限り、今治市の方と会ったことはない。当時は、獣医学部新設の制度論が議論され、制度を具体的にどこに適用するかという段階ではなかった」と説明していました。
さらに4月13日、農林水産省が公表した文書では、愛媛県の担当者などが平成27年4月2日に当時、総理大臣秘書官だった柳瀬氏と面談した際に、「本件は、首相案件」などと発言したと記されています。
こうした内容について、柳瀬氏は今月10日に、「私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」などとするコメントを発表しています。
藤原豊氏
藤原豊氏は「加計学園」の獣医学部新設をめぐって、3年前に愛媛県の担当者が総理大臣官邸を訪問したとされる当時、内閣府の地方創生推進室の次長を務めていました。
藤原氏は昭和62年、当時の通商産業省に入省し、現在は、経済産業省の貿易経済協力局の審議官を務めています。また藤原氏は、平成27年から29年まで、内閣府で地方創生推進室の次長や地方創生推進事務局の審議官を務めていて、国家戦略特区も担当していました。
「加計学園」の獣医学部新設をめぐっては、去年6月、文部科学省の調査で、「藤原内閣府審議官との打ち合わせ概要」という題名の文書で、「官邸の最高レベルが言っている」などという発言が文部科学省の担当者に伝えられたという内容が確認されています。これについて、藤原氏は、平成29年7月の衆議院予算委員会で、「文部科学省に『官邸の最高レベル』や『総理のご意向』と伝えたことはない。仮に、私の発言が 私の趣旨と異なる受け止めを 文部科学省に 与えたとすれば残念だ」と答弁しています。
さらに、4月13日、農林水産省が公表した文書には、愛媛県の担当者が平成27年4月2日に当時、内閣府の地方創生推進室の次長だった藤原氏と面談し、「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」などと発言したと記されています。
この文書について藤原氏は記者団に対し、「報道は拝見したが必要なことは内閣府に伝えておりますので そちらにお尋ねいただければと思います」と述べています。  
■文科省でも証拠メール発見で、もう嘘は無理 4/20
 柳瀬唯夫首相秘書官が「官邸の“安倍さん命”の空気についていけない」とグチ
安倍首相の嘘を実証する証拠が、また新たに出てきた。本日、林芳正文科相は、加計学園幹部と愛媛県・今治市職員らが2015年4月2日に官邸で柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面会する予定であることを記したメールが見つかったと公表したからだ。
これは面会当日に内閣府から文科省宛てに送信されたメールで、送信された時間は12時48分。送信者である内閣府の地方創生推進室の職員は、11時30分から1時間にわたって内閣府でおこなわれた藤原豊・地方創生推進室次長(当時)と加計幹部らの〈面会の結果〉を報告し、その上で〈本日15時から柳瀬総理秘書官とも面会するようです〉と書いているのだ。
柳瀬氏は「記憶の限り会っていない」と言い張ってきたが、愛媛県が作成した面会記録文書以外にもこのメールが発見されたことによって、「会っていた」ことは確定的になったと言える。
しかも、だ。このメールでは前述したように内閣府での〈面会の結果〉が報告されているのだが、その内容は、すでに公表されている愛媛県の面会記録文書に記された〈藤原地方創生推進室次長の主な発言(内閣府)11時30分〉とほぼ同じ内容が記載されているのだ。重要な問題なので、以下、比較しよう。
【内閣府→文科省宛てメール】
〈・今月(又はGW明け?)に予定する国家戦略・構造特区の共通提案に出してみては。
・反対派の同意を得るためにも、構想の内容(コンセプト、カリキュラム、自治体の取組等)を検討いただき、ご相談いただきたい。〉
【愛媛県作成の面会記録文書】
〈・今年度から構造改革特区と国家戦略特区を一体的に取り扱うこととし、年2回の募集を予定しており、遅くとも5月の連休明けには1回目の募集を開始。
・ついては、ポイントを絞ってインパクトのある形で、2、3枚程度の提案書案を作成いただき、早い段階で相談されたい。〉
〈・獣医師会等と真っ向勝負にならないよう、既存の獣医学部と異なる特徴、例えば、公務員獣医師や産業獣医師の養成などのカリキュラムの工夫や、養殖魚病対応に加え、ペット獣医師を増やさないような卒後の見通しなどもしっかり書きこんでほしい。〉
このように、今回、発見されたメールの記載と愛媛県の面会記録文書の記載に齟齬がないということは、愛媛県の面会記録文書は面会時の発言をきちんと残した文書であるということを裏付ける。
つまり、「本件は、首相案件」という柳瀬氏の発言や、安倍首相と加計晃太郎理事長が会食時に獣医学部新設について話し合っていたとする発言も、その信憑性はさらに高まり、信頼に値する文書だとあらためて実証されたことになるのだ。
しかも、じつは柳瀬氏は首相秘書官時代、こんな言葉を漏らしていたということが、昨日発売の「週刊文春」(文藝春秋)18年4月26日号に掲載された。
「どうも官邸の“安倍さん命”という空気には私はついていけません」
「今井さんが首相に近い企業を押し込んでくる」
この「今井さん」とは、言うまでもなく安倍首相の懐刀として知られる今井尚哉首相秘書官のこと。森友学園問題では、土地取引から文書改ざんまで関与し、官邸の司令塔となってきたのではないかと目されている人物だ(詳しくは過去記事参照)。
柳瀬氏が言う「今井さんが首相に近い企業を押し込んでくる」というのは、安倍首相の外遊についてのこと。安倍首相は外遊の際に財界人を同伴させて原発や新幹線などのセールスを展開してきたが、そうした人選を担当していたのが柳瀬氏だった。だが、その際に今井首相秘書官が「首相に近い企業を押し込んでくる」ことに、柳瀬氏は嫌気がさしていたらしい。
そして、じつはこの「首相に近い企業」には、加計学園も含まれている。実際、2013年5月24〜26日におこなわれたミャンマー訪問には加計理事長が同行。なんと政府専用機にまで加計理事長を搭乗させていたことがわかっている。
本サイトでは、このミャンマー訪問直前の2013年5月6日、安倍首相と加計理事長がゴルフに興じた際に柳瀬氏も一緒にプレイしていたことを伝えたが、この時期から柳瀬氏は加計学園が「首相案件」であることを、あらゆる面で認知していた。そして、加計理事長のミャンマー訪問同行も、今井首相秘書官がねじ込んでいた可能性が出てきたのだ。
柳瀬氏にとって今井首相秘書官は、経産省の2期上の先輩。そんな今井氏による首相中心のゴリ押しや、官邸に流れる「安倍さん命」の空気に馴染めないでいた柳瀬氏を、どうやら今井首相秘書官は感じ取っていた。「週刊文春」によれば、今井氏は「柳瀬はこっち側の人間じゃない」として、2013年11月、それまで歴代の経産省出身秘書官が担当していたマスコミ対応の仕事から柳瀬氏を外したのだという。
この“パワハラ”が功を奏したのだろう。柳瀬氏は経産省に早く戻りたい一心で、安倍首相に尽くすべく、2015年4月の官邸での加計幹部らの訪問対応などを担当。無事、同年夏に経済政策局長という次官コースのポストを用意され念願の経産省に戻った、というわけだ。
しかし、ここにきて焦点となる面会記録文書が出てきたことで、再び矢面に立たされることになった柳瀬氏。もはや、柳瀬氏の「記憶にない」という言葉を信用する国民は安倍応援団くらいしかいないだろうが、柳瀬氏がそんな見え透いた嘘を吐きつづけているのも、すべては安倍首相の国会答弁との整合性をとるため。さらに、今井首相秘書官との関係を考えれば、相当なプレッシャーをかけられていることは火を見るよりあきらかだ。──ようするに、森友問題における佐川宣寿・前理財局長と同じ立場にあるのだ。
完全に安倍首相の下僕と化した佐川氏とは違い、首相秘書官時代から“面従腹背”の状態だった柳瀬氏。望みはかなり薄いが、すでにばれている嘘をつきつづけるよりも、ここは前川喜平・前文部科学事務次官のように反旗を翻してほしいもの。最後に、前川氏が佐川氏の国会招致前に送ったメッセージを、柳瀬氏にも送りたい。
「知っておられることをありのままにお話しいただきたいなと思います。これから20年、30年と生きる人生のなかで、ほんとうのことを話したほうがこれからの人生が生きやすいのではないかと思いますけどね」 
■柳瀬氏と面会「強まった」 加計メール公表で内閣府幹部が言及 4/21
林芳正文部科学相は20日、学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画を巡り、愛媛県や同県今治市の職員らが2015年4月に首相官邸を訪問し、当時の柳瀬唯夫首相秘書官とも面会する予定だと明記したメールを公表した。内閣府から文科省の担当者に送信したもので、省内の調査で見つかった。県職員らとの面会を否定している柳瀬氏の説明への疑義が深まった形で、野党側は証人喚問要求を強めた。
内閣府も20日、調査結果を公表。メール自体は確認できなかったが、送信者とされる当時の職員は「自分が作成、送信したと思われる」と証言。笹川武総務課長は野党の合同会合で、柳瀬氏と県職員らの面会について「(事実だとの)見方が強まった」と述べた。 
 
2018/ 5

 

■柳瀬元秘書官 加計学園関係者との面会 認める方向で調整(5月2日)
柳瀬元総理大臣秘書官は3年前に、加計学園の関係者と総理大臣官邸で面会したことを国会で認める方向で調整していることがわかりました。
この問題では、3年前に愛媛県の担当者が加計学園の関係者らとともに総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとされる文書が残されていて、当時、総理大臣秘書官だった柳瀬経済産業審議官が「本件は、首相案件」などと発言したと記載されています。
これに対し、柳瀬元総理大臣秘書官は、先月10日に「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」「私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはありえません」などとするコメントを出していました。
関係者によりますと、これについて柳瀬元秘書官は、加計学園の関係者とは、総理大臣官邸で面会していたことを今後、国会で認める方向で調整を進めているということです。
愛媛県幹部「柳瀬氏は正直に説明を」
愛媛県の幹部はNHKの取材に対し、「県としては文書のとおりの認識であり、国側としてどう対応するかはそれぞれの機関の問題だが、柳瀬氏が国会で話すのであれば、『会った』とか、『会わなかった』とかではなく、説明できる内容はきちんと正直に丁寧に説明してほしい」と述べました。また、別の幹部は「柳瀬氏は早く事実を認めてほしいし、国会で真相が解明されることが望ましいと思う」と述べました。
立民 辻元氏「加計学園ありき」裏付けられた
立憲民主党の辻元国会対策委員長は記者団に対し、「3年前から『加計学園ありき』でシナリオが作られていたことが裏付けられた。安倍総理大臣の関与も含めて、疑惑はますます深まった。柳瀬元総理大臣秘書官には、早期に国会に来て真実を話してもらう必要がある。早く追及した方がいいという気持ちもあるので、どこで折り合えるのか、ほかの野党とも相談したい」と述べました。 
■衆院予算委 柳瀬元秘書官「今治が首相案件とは言っていない」(5月10日午前)
柳瀬唯夫 元総理大臣秘書官は、10日午前、衆議院予算委員会の参考人質疑で、3年前(平成27年)の4月に総理大臣官邸で、学園側の関係者と面会したことを認めたうえで、愛媛県や今治市の関係者が同席したかもしれないという認識を示しました。また面会の際に「この件は首相案件だ」と発言したかどうかについて、「今治市の案件が首相案件とは言っていない」と否定しました。さらに、面会などを安倍総理大臣に報告しておらず、学園を特別扱いしたこともないと強調しました。
この中で、愛媛県の担当者が3年前に、総理大臣官邸を訪問した際のやり取りを記したとする文書に関連して、自民党の後藤茂之氏は「平成27年4月2日に、愛媛県や今治市、それに加計学園関係者と会っていないのか」と質問しました。
これに対し、柳瀬氏は「4月ごろに加計学園関係者と面会した。面会の記録は残っていないが、その後の一連の報道や関係省庁による調査結果をみると、10人近くの随行者の中に愛媛県や今治市関係者たちがいたのかもしれない。ただ、私が保存している名刺の中に今治市や愛媛県の方の名刺はなかった」と述べました。
そして、面会した学園関係者の中には、新設された獣医学部の学部長に就任した吉川泰弘氏がいたとしたうえで、政府側からも、文部科学省と農林水産省から出向していた内閣参事官が同席したと説明しました。
そのうえで、学園関係者との面会の際に、「この件は首相案件だ」と発言したかどうかについて、柳瀬氏は「安倍総理大臣が『獣医学部新設を早急に検討している』と述べていることは紹介したが、今治市の個別案件が首相案件とは言っていない」と否定しました。さらに、柳瀬氏は「私はふだん、『首相』という言葉は使わない。文書に記載された内容には違和感がある」と述べました。
また、柳瀬氏は、学園の関係者と総理大臣官邸で面会したのは、文書に記載された3年前の4月のほか、同じ3年前の2月から3月ごろと、6月に今治市などが国家戦略特区に提案した前後の、合わせて3回だとしたほか、山梨県にある安倍総理大臣の別荘に秘書官として同行した際に、学園の加計理事長や事務局の関係者と面会したことがあると説明しました。
そして、学園が獣医学部新設を目指していることを初めて認識したのは、3年前の2月から3月ごろに面会した際だと述べました。
一方、柳瀬氏は、安倍総理大臣の関与をめぐって、「この件について、安倍総理大臣に報告したことも、指示を受けたこともない。加計理事長と友人関係だろうということは認識していたが、特別扱いをしたことはない」と述べました。
また、柳瀬氏は、政務担当の今井総理大臣秘書官からも指示を受けたことはないとしたうえで、去年、みずからが国会に出席する前に問い合わせを受けた際に、3年前の4月に学園関係者と面会したと説明していたことを明らかにしました。
さらに、柳瀬氏は、国家戦略特区に提案した事業者と面会したのは、申し出があった加計学園の関係者だけだったとする一方、みずからの対応について、「国家戦略特区の事務局から特区制度の現状についてレクを受ける機会などはあったが、個別の自治体や事業者について、各省に何か指示をしたり、お願いをしたりしたことはない。私から内閣府に連絡した記憶はないし、各省との間でも本件をやり取りした覚えはない」と述べました。
そして、「私が、総理大臣秘書官を離れたあとも獣医学部新設の制度設計の検討が1年以上も続き、事業者の選定はさらに先に始まったと聞いている。私が具体的な事業者の選定に関与する余地は全くなかった」と述べ、みずからの関与を否定しました。
立憲民主党の長妻代表代行は「加計学園の獣医学部新設の計画について、安倍総理大臣は、去年の1月20日に初めて知ったと述べているが、柳瀬氏は相当前から知っていたことになり、2年近くの空白がある。総理大臣と秘書官は一心同体なはずだが、一切報告しなかったのか」とただしました。
これに対し、柳瀬氏は「安倍総理大臣に対して、『こういう市町村の人と会った』といちいち報告をしたことはない。私は、3年前の平成27年8月に秘書官を退官しているので、その後、安倍総理大臣がどう認識していたかはわからない」と述べました。
また、学園との面会の際に国家戦略特区への提案をアドバイスしたかについて、「当時は、安倍政権ができて看板政策として国家戦略特区制度がスタートした直後だったので、アドバイスと呼ぶかどうかは別として、看板政策なのでと説明はした」と述べました。
一方、政府の国家戦略特区諮問会議ワーキンググループの八田達夫座長は、「安倍総理大臣からも総理大臣秘書官からも何ら働きかけを受けたことはない」と述べ、新設のプロセスは適正だったという認識を改めて示しました。 
■参院予算委 柳瀬元秘書官『加計学園ありき』否定(5月10日午後)
柳瀬唯夫元総理大臣秘書官は、午後の参議院予算委員会の参考人質疑で、国家戦略特区の諮問会議で、学部新設が決まるまでの手続きは公正だったと強調し、「加計学園ありき」との指摘を否定しました。
自民党の塚田一郎氏は「加計学園の方と平成27年4月2日に加計学園と面会した際に、愛媛県・今治市の方が同席していた可能性があると認識しなかったのか」と質問しました。これに対し柳瀬氏は、「10人近くが来て、そこにいたかどうか分からなかったので、国会では『今治市の方が来たかどうかは記憶にない』と答弁していた」と述べました。
また、柳瀬氏は、今まで学園関係者との面会を明らかにしなかったことについて、「質問があったことに一つ一つ答えた結果、全体像が見えなくなって混乱を招き、国会審議に迷惑をかけた」と釈明しました。
さらに、「今治市などの関係者と面会していないと強弁してきたのは安倍総理大臣を守るためだったのではないか」と指摘されたのに対し、柳瀬氏は、「全く違う」と否定しました。
また、柳瀬氏は、安倍総理大臣と一緒に加計理事長ら学園の関係者と面会したのは、記憶の限りでは、平成25年5月に山梨県にある安倍総理大臣の別荘で会った1回だけだとしたうえで、「安倍総理大臣と学園関係者が一緒にいるときに、獣医学部新設の話が出たことはない」と述べました。
さらに、柳瀬氏は、面会で「この件は首相案件だ」と発言したのかどうかについて、安倍総理大臣が公式な場で「獣医学部新設を含む規制緩和を早急に検討したい」という趣旨の発言をしたと紹介した可能性はあるとしたうえで、「それを向こう側がどう受け止めたかはわからない。愛媛県のメモを拝見したが、私の理解している趣旨とは違う印象だ」と述べました。
国民民主党の川合孝典氏は、愛媛県が作成した文書をめぐり、「国家戦略特区の申請について、具体的にどうやればいいのか優しく事細かにアドバイスしており、『加計学園ありき』と言われる理由になっている」とただしました。これに対し、柳瀬氏は、「公開されている特区の指定基準では自治体の熱意が条件になっているので、それを説明した。地方の人は、国の手続きをするときにどこに行ったらいいかよく分からないと思うので、できるだけ丁寧に説明するように心がけている」と述べました。
さらに、柳瀬氏は、「加計学園ありきだったのではないか」と重ねて追及されたのに対し、「今治市はそうだったのかもしれないが、国家戦略特区は公正な手続きで決まった」と述べ、獣医学部新設が決まるまでの手続きは公正だったと強調し否定したほか、学園の関係者と総理大臣官邸で面会した際、学園側から、安倍総理大臣と加計理事長の関係についての話はなかったと説明しました。
また、柳瀬氏は、午前の質疑で、総理大臣官邸で面会した関係者の中には、新設された獣医学部の学部長に就任した吉川泰弘氏がいたと説明したことに関連し、時期は、3年前の2月から3月か4月だったのかは定かではないと述べました。
一方、同じく参考人として招かれた愛媛県の加戸守行 前知事は、愛媛県作成の文書に記された「首相案件」などの文言について、「アバウトな流れ、雰囲気は伝えているが、一言一句正確であるということはないと思う」と述べました。
また、加戸氏は、先月行われた、加計学園の獣医学部の入学式で、「魔法の発言で岩盤規制を突破して認められた」と述べたことについて、「11年前からはね返されてきた獣医学部新設という頑強な砦がやっと崩れたという思いで言った。道が開いたという意味で申し上げた」と述べました。 
■柳瀬元秘書官 参考人招致 与野党の反応(5月10日)
安倍首相「すべてを明らかにしてもらいたい」
安倍総理大臣は、10日午前11時すぎ、総理大臣官邸で記者団に対し「国家戦略特区の獣医学部の問題については、八田座長をはじめ国家戦略特区の民間議員の皆さんは全員、『プロセスには一点の曇りもない』と述べているというのは、私が国会で答弁してきたところだ。けさの予算委員会は、日米電話首脳会談や、その準備、分析などもあり、見ていないが、柳瀬元秘書官は誠実に答えると思うし、すべてを明らかにしてもらいたいと思う」と述べました。
官房長官「ひとつひとつ丁寧に答えていた」
菅官房長官は午後の記者会見で、記者団が「安倍総理大臣は『全容を解明し、うみを出し切る』と述べているがそうした目的は果たせたか」と質問したのに対し、「柳瀬参考人はひとつひとつの質問に丁寧に答えていたのでないか」と述べました。また菅官房長官は、記者団が「柳瀬氏の答弁は、官房長官として納得のいく答弁だったか」と質問したのに対し、「参考人の質疑の内容について政府としてはコメントは控えたい。ただひとつひとつ丁寧に答えていたのではないかということだ」と述べました。
自民 石破氏「疑問払拭されず さらに努力を」
自民党の石破元幹事長は、記者団に対し「『加計学園が特別扱いされたのではないか』という疑問が、完全に払拭(ふしょく)されたかというと、私はそうは思わなかった。秘書官が総理大臣に面会などの報告をしないことは、普通考えられず、違和感を持った。疑念を払拭するための努力を、さらにすべきで、今後は、愛媛県の関係者など、他にも参考人を呼ぶことも必要なのかもしれない」と述べました。
自民 森山氏「疑問に答える大きな一助 一定の区切り」
自民党の森山国会対策委員長は、記者会見で、「柳瀬氏が率直な姿勢で、可能な限り詳しく話をしてくれたという印象で、一定の評価ができる。国民の疑問に答える大きな一助になり、与党としては一定の区切りがついたのではないかと考えている」と述べました。
自民 菅原氏「説明はあうが対応に疑問」
衆議院予算委員会の与党側の筆頭理事を務める、自民党の菅原一秀氏は、記者団に対し、「加計学園の事務方らと会った際、愛媛県や今治市の職員が同席していたかもしれないということが明らかになったが、名刺交換はしていなかったとのことで、『記憶に無い』という説明とひょうそくはあった。ただ、加計学園の関係者と総理大臣官邸で会っていたこと自体は事実であり、その対応がどうだったのかという指摘はあり、今後、そういう問題がないように慎重な緊張感を持った対応をすべきだ」と述べました。
公明 山口氏「不正や違法性 なにも出ず」
公明党の山口代表は、記者団に対し、「獣医学部新設の手続きに、何らかの不正や違法性があったということは、なにも出てこなかったという印象だ。野党側は、事実関係を問うのが何のためなのか、もっと明確にしなければ、限られた国会の会期の生かし方として、かえって姿勢を問われるのではないか」と述べました。
公明 北側氏「総理の不当な関与示す話はない」
公明党の北側 中央幹事会会長は、記者会見で「獣医学部新設の認可について、安倍総理大臣なり、総理大臣官邸なりの不当な関与があったのかどうかが最大のポイントだ。少なくとも、柳瀬元総理大臣秘書官の答弁では、そういうことを示す話は全く無いと思っている。柳瀬氏が、加計学園の関係者と何回会ったかというのは、あまり関係無いのではないか」と述べました。
立民 長妻氏「えこひいきではない理由探すほうが難しい」
立憲民主党の長妻代表代行は、質疑の後、記者団に対し「3回も加計学園側と総理大臣官邸で会い、えこひいきではない理由を探すほうが難しい。国会として、さらに追及し、全容解明しないといけないし、『疑惑が深まった』という単純な表現ではなく、非常に深刻な問題だ。柳瀬氏の証人喚問のほか、加計学園の加計 晃太郎理事長など、いろんな方の話を聞きたいので、徹底的に腰を据えてやらなければいけない」と述べました。
国民 大塚氏「『総理に報告せず』は信じがたい」
国民民主党の大塚共同代表は、記者会見で、「『上司である総理大臣に一切、なにも伝えていない』ということなら、組織人として相当センスが悪いか、何か抜けているが、優秀な柳瀬氏がそのような対応をするとは信じがたい。安倍総理大臣の発言の信ぴょう性がますます疑われてきた。『正直な政治』が民主主義の基本で、しっかりと対応してもらえない総理大臣であれば、一刻も早くお辞め頂いたほうがいい」と述べました。
国民 今井氏「加計ありきの確信深めた」
国民民主党の今井国会対策委員長代理は、質疑の後、記者団に対し「差し障りのないところは認め、安倍総理大臣が関与していると思われる発言に関しては『記憶にない』とごまかしており、最初からそういうシナリオで来ていると感じた。加計学園の関係者が3回、総理大臣官邸に来て、『国家戦略特区で行きます』と説明しており、主体は加計学園だ。『加計ありき』という確信をますます深めた」と述べました。
共産 志位氏「真相究明通じ総辞職に追い込む」
共産党の志位委員長は、記者会見で「総理大臣の分身である秘書官が、重要な会談を3回もやっていながら、一切、指示も仰がず、報告もしないのはありえない。柳瀬氏の証人喚問を強く求めると同時に、加計学園の関係者などにも国会に来ていただき、真相を究明していく必要がある。一連の疑惑や不祥事の中心にいるのは、安倍総理大臣自身なので、真相究明を通じて総辞職に追い込んでいく」と述べました。
維新 片山氏「もっときちんと話したほうがいい」
日本維新の会の片山大介参議院議員は、質疑の後、記者団に対し、「加計学園の関係者と3回も会って、安倍総理大臣にも報告がないことについて、『普通だ』というような言い方をされたが、『どうなのかな』と思った。『うみを出す』と安倍総理大臣が言っているなら、もっと、きちんと話したほうがいい」と述べました。
社民 吉川氏「疑念は全く晴れず」
社民党の吉川幹事長は、記者会見で「加計学園以外も手をあげていた中で、加計学園と3回にわたって面談していたことは、明らかに何らかの意志が働いていたと思わざるをえない。今回の参考人招致でも疑念は全く晴れず、当時、内閣府で地方創生を担当していた経済産業省の藤原審議官や加計学園の加計 晃太郎理事長、今井総理大臣秘書官のほか、場合によっては愛媛県の中村知事にも来ていただいて、双方から話を聞くことも必要ではないか。うみはたまったままだ」と述べました。
無所属の会 江田氏「秘書官の仕事の常識に反する」
衆議院の会派「無所属の会」の江田憲司衆議院議員は、質疑の後、記者団に対し「『安倍総理大臣からの指示もなければ、報告もしなかった』という答弁だったが、『総理大臣秘書官の仕事の常識に反する』と言うしかない。秘書官が個別の許認可案件の対象事業者と会うこと自体、大変リスクを伴うことであり、安倍総理大臣との間で、面会について、ひと言も話が出ないというのは、柳瀬氏が、口にばんそうこうでもしてこない限り、ありえない」と述べました。 
■柳瀬元秘書官 発言のポイント 学園関係者と面会は? 首相案件は?(5月10日)
柳瀬元総理大臣秘書官の参考人質疑では、3年前に学園の関係者らと総理大臣官邸で面会したのかや、その際「首相案件だ」と発言したのかどうかなどが焦点となりました。発言のポイントをまとめました。
学園関係者との面会 認める
学園の関係者らとの面会をめぐっては、先月、愛媛県の担当者が3年前に、学園の関係者らと総理大臣官邸を訪問した際の柳瀬氏とのやり取りを記したとする文書が明らかになる一方、柳瀬氏はこれまで、国会答弁やコメントで、「記憶の限り」と断ったうえで、「愛媛県や今治市の方に会ったことはない」としていました。これについて、柳瀬氏は、文書のとおり、3年前に学園の関係者と面会したことを認めたうえで、愛媛県や今治市の関係者が同席していたかもしれないという認識を示しました。さらに、総理大臣官邸で学園関係者と面会したのは、合わせて3回だったことを明らかにしたほか、この間の面会相手には、加計学園の獣医学部の学部長に就任した吉川泰弘氏が含まれると説明しました。
加計学園案件を「首相案件」と言っていない
また、愛媛県が作成した文書に、柳瀬氏が「首相案件だ」と発言したと記されていたことをめぐって、先に柳瀬氏は、「私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはありえません」というコメントを出していました。これについて、柳瀬氏は、安倍総理大臣が公式な場で獣医学部新設を含む規制緩和の検討に言及したことを紹介した可能性はあるとする一方、加計学園の案件を「首相案件」とは言っていないと否定しました。
加計学園を特別扱いしたことない
そして、文書に、愛媛県の担当者らが獣医学部新設に向けたアドバイスを受けたなどと記されていたことについて、柳瀬氏は、公開されている制度や基準などを丁寧に説明したとしたうえで、「加計学園を特別扱いしたことはない」と述べ、「加計学園ありき」とする野党側の指摘を否定しました。
総理に報告したことも指示受けたこともない
さらに、安倍総理大臣の関与をめぐって、柳瀬氏は、みずからが加計学園の獣医学部新設の計画を認識したのは、3年前の2月から3月ごろに、学園関係者と面会した時だとする一方、この件について、安倍総理大臣に報告したことも、指示を受けたこともないと否定しました。 
■愛媛県知事 柳瀬元秘書官の発言を批判「県職員の書いたこと間違いない」(5月10日)
愛媛県の中村知事は、10日夕方、愛媛県庁で記者団の取材に応じ、「愛媛県の信頼を損ねるような発言があったのは非常に残念だ。誠心誠意にすべての真実を語らないという印象だ」と述べ柳瀬氏の発言を批判しました。
また、中村知事は柳瀬氏の愛媛県の文書についての発言を取り上げて、「どうしてすべて正直に言われないか分からないが、県職員など人間には誇りやプライドがある。そういうものに、なぜ思いをはせられないのか。愛媛県の文書は改ざんする余地がない。県の職員はありのまま書いたと思っている。『首相案件』発言について、細かく分析できていないが、私は県職員の書いたことは間違いないと思う」と述べました。
柳瀬元秘書官「私としては誠心誠意お答えした」
国会での参考人質疑を終えた元総理大臣秘書官の柳瀬経済産業審議官は記者団から「国会での説明に野党から不満の声があがっているが」と問われたのに対して、「私としては、誠心誠意、一生懸命お答えしたつもりです」と述べました。また、加計学園関係者との面会を安倍総理大臣に報告していないのかと問われたのに対して、柳瀬元秘書官は「総理にはこの件を報告したことはございません。これは国会でも答弁で申し上げたとおりでございます」と重ねて否定しました。さらに柳瀬元秘書官は記者団からの「国民の理解は得られたと考えるか」という質問に対しては「私としては最大限、誠心誠意、一生懸命、答弁したつもりです。皆様がどう受け止めたかは私はコメントすべきではないと思います。ただ、私の国会答弁をきっかけに国民の皆様に分かりづらくなって、国会審議に大変ご迷惑をかけましたことをおわびを申し上げたいと思います」と述べました。 
■愛媛県知事「職員は柳瀬氏と名刺交換」名刺と発言メモ公表(5月11日)
柳瀬元総理大臣秘書官の参考人質疑を受けて、愛媛県の中村知事は11日の記者会見で、3年前に県職員が総理大臣官邸を訪問した時、「県職員はメインテーブルに座り柳瀬氏と名刺も交換し、しっかりと県の立場を発言した」と述べて柳瀬氏の発言を批判しました。そして、柳瀬氏から受け取った名刺と、職員が発言した内容のメモを公表しました。
10日の衆参両院の参考人質疑で柳瀬元総理大臣秘書官は、愛媛県今治市が国家戦略特区に提案する2か月前の平成27年4月2日に官邸で加計学園の関係者と面会したことを認めましたが、愛媛県と今治市の職員については「記録は残っておらず、県の方がいたのかどうかは今でもわからない」と述べるにとどまりました。
これについて、愛媛県の中村知事は11日の記者会見で、「県職員が柳瀬氏に会った、会わないということについては、終止符を打ちたい」としたうえで、「県職員3人はメインテーブルに柳瀬氏側の3人と向かい合って座った。柳瀬氏と名刺も交換し、しっかりと県の立場を発言している」と述べて、10日の柳瀬氏の発言を批判しました。
そして、柳瀬氏から受け取った名刺と、総理大臣官邸で職員が県の取り組みについて発言した内容のメモを公表しました。
メモには愛媛県と今治市が獣医学部新設にむけて、平成19年から15回にわたり、構造改革特区に提案したことや、公務員獣医師を確保するため、獣医学部の新設が必要なこと、さらに、獣医師会の強い反対を踏まえて、今後は賛同が得られるよう、粘り強く働きかけていくなどと発言したと記されています。
また、柳瀬氏が県が作成した文書に記載されていた「首相案件」という発言を否定したことついては、「県の文書はありのままのことを書いたものだ」という認識を示しました。 
■NHK世論調査 柳瀬元秘書官の説明に納得できたか(5月14日)
NHKは2018年5月11日から3日間、全国の18歳以上の男女を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行いました。調査の対象となったのは2187人で、61%にあたる1330人から回答を得ました。
加計学園の獣医学部新設をめぐって、柳瀬元総理大臣秘書官は国会の参考人招致で、「学園の関係者と面会したが、愛媛県や今治市の職員が同席したかもしれない。首相案件とは言っておらず、安倍総理大臣に報告していない」と説明しました。柳瀬氏の説明に納得できたか聞いたところ、「大いに納得できた」が2%、「ある程度納得できた」が9%、「あまり納得できなかった」が30%、「まったく納得できなかった」が49%でした。
柳瀬元総理大臣秘書官の参考人招致について、与党側は一定の区切りがついたとしていますが、野党側は、疑惑が深まったとして関係者の国会招致を求めています。招致が必要だと思うか聞いたところ、「必要だ」が47%、「必要ではない」が18%、「どちらともいえない」が26%でした。 
■内閣府が出張で加計学園の車利用 法令違反か調査(5月19日)
加計学園の獣医学部新設が決まる1年3か月前に、当時の内閣府の担当者が愛媛県今治市などを出張で訪れた際、学園の用意した車を利用していたことから、内閣府は、法令に違反する疑いがないか慎重に確認作業を進めています。
地域を限って規制緩和を行う国家戦略特区を活用して獣医学部を新設することが決まる1年3か月前の平成27年8月、当時、内閣府で地方創生を担当していた経済産業省の藤原審議官が出張で愛媛県今治市などを訪れた際、加計学園の用意した車を利用していたことが明らかになっています。
しかし、当時の藤原氏の出張記録では、加計学園の車ではなく、国や地方の行政機関の車を使った場合に用いる「官用車」を使用したと記載されていることから、野党側は、虚偽記載や関係業者からの便宜供与にあたるのではないかと追及しています。
内閣府によりますと、出張記録に「官用車」を使用と記載した場合、交通費は支払われないことになっていて、藤原氏にも交通費は支給されていないということですが、内閣府は、出張記録の記載が実際と異なることから、藤原氏や同行した職員から話を聞くなどして法令に違反する疑いがないか慎重に確認作業を進めています。 
■「加計氏が総理に獣医学部構想説明」愛媛県 新文書を国会に提出(5月21日)
愛媛県は、3年前に柳瀬元総理大臣秘書官が官邸で学園側と面会したことに関連する県の新たな文書を21日に国会に提出しました。文書には、学園側からの報告内容として「3年前の2月末、加計理事長が安倍総理大臣と面談し、獣医学部の構想を説明した」などと記載されています。
柳瀬元総理大臣秘書官は、5月10日に行われた衆参両院の参考人質疑で、愛媛県今治市が国家戦略特区に提案する2か月前の平成27年4月2日に官邸で学園側と面会したことを認めました。
愛媛県は、担当者がこの面会に同行したと説明していて、参考人質疑を行った参議院予算委員会が、県に対して、面会の内容や経緯が把握できる文書を提出するよう求めていました。
これを受けて、愛媛県は、当時の資料を調べ直した結果、平成27年2月から3月にかけて作成した新たな文書が見つかったとして、21日午後、参議院事務局に提出しました。
愛媛県は内容を明らかにしていませんが、NHKが入手した文書には、当時、県が学園側から受けた報告の内容として、「平成27年2月25日、理事長が首相と15分程度面談。理事長から獣医師養成系大学空白地帯の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは『そういう新しい獣医大学の考えはいいね』とのコメントあり」と記載されています。
さらに、同じ年の3月に、学園と今治市が協議した結果の報告として「加計理事長と安倍総理大臣の面談を受けて柳瀬氏から資料を提出するよう指示があった」と記載されています。
このほか、4月2日に総理大臣官邸で面会した際の柳瀬氏の発言をまとめたとするメモには、柳瀬氏が「獣医学部新設の話は総理案件になっている。なんとか実現を、と考えているので、今回内閣府にも話を聞きに行ってもらった」と発言したと記載されています。
今回、新たな文書を提出したことについて、中村知事は午後5時半すぎに取材に応じ、「国権の最高機関の国会から、与野党合意のうえ、関連文書を出してほしいと要請があったので提出した」と述べ、文書の今後の扱いは国会に委ねる考えを示しました。
安倍首相のこれまでの説明
安倍総理大臣は、加計学園の獣医学部新設の計画について初めて知ったのは、学園が国家戦略特区の事業者に選定された去年1月20日だと国会で繰り返し説明してきました。また、去年7月の衆議院の予算委員会で、加計学園の理事長が長年の友人であることを問われると、安倍総理大臣は「『時代のニーズにあわせて新しい学部や学科の新設に挑戦していきたい』という趣旨の話は聞いたことがあるが、『獣医学部をつくりたい』、さらには『今治市に』といった話は一切無かった」と述べました。さらに、今月14日の衆参両院の予算委員会で、柳瀬氏が獣医学部新設をめぐり3年前に学園側と3回面会したことを問われると、「柳瀬氏から報告は受けていない」と述べました。
柳瀬元秘書官のこれまでの説明
柳瀬元総理大臣秘書官は、今月10日に行われた衆参両院の参考人質疑で、3年前の4月2日に総理大臣官邸で加計学園の関係者と面会したことを認めました。しかし、面会した一行の中に愛媛県と今治市の担当者がいたかについては、「会った記憶はない」、「10人近くの随行者の中にいたのかもしれない」と述べていました。一方で、学園の関係者とは、詳しい日付は覚えていないとしたうえで、3年前の4月2日以外にも同じ年の2月か3月に1回と、今治市が国家戦略特区に提案する6月4日の前後に1回の合わせて3回、総理大臣官邸で面会したことを明らかにしました。
自民 二階幹事長「疑念残らないよう対応を」
自民党の二階幹事長は記者会見で、「機会を得て、報告を聞いてみたいと思っており、これからの国会審議でも、疑問や疑念が残らないようにしっかり対応していきたい。疑問があれば、しかるべき時に尋ねてもらえれば、安倍総理大臣が納得のいく答弁をすると思う」と述べました。また、二階氏は、愛媛県の中村知事の国会招致について「それぞれの委員会が判断して、お越しを願いたい時には、そういう意見を言ってもらえばいい。われわれの側から直接、意見を申し述べるべきではない」と述べました。
■自民 森山国対委員長「重要法案犠牲にしてはならない」
自民党の森山国会対策委員長は、記者団に対し「出てきた資料をまだ読み込んでいないので、 そのことについて答えるのは遠慮したい。『加計、森友だけではなくて、重要法案や外交問題をしっかりやって欲しい』という世論の声は非常に強い。『加計問題』や『森友問題』も、しっかりやらないといけないが、それで重要法案が犠牲になったり、成立が危うくなったりしてはならない。法案審議とは全く別だ」と述べました。
立民 辻元国対委員長「柳瀬氏の証言がうその濃厚な証拠」
立憲民主党の辻元国会対策委員長は国会内で記者団に対し、「『柳瀬元総理大臣秘書官の証言がうそだった』という濃厚な証拠が出てきたと思うし、『1国の総理大臣が国会や国民に対し、うそをつき通してきたのではないか』ということにつながると思う。『うそをうそで上書きして、書き直そうとしても無理だ』ということだ」と述べました。
立民 蓮舫参院幹事長「国会の在り方が愚弄されている」
立憲民主党の蓮舫参議院幹事長は、国会内で記者団に対し、「驚きの衝撃的な内容だ。『国会のあり方があまりにも愚弄されている』という怒りを覚える。『首相案件』が『加計学園ありき』で進んでいくという、驚くべき資料が愛媛県から真摯に提供されたもので、事実なのかどうか、学園の加計 晃太郎理事長に証人の形で国会に来てもらわないと国会は一歩も前に進めない。愛媛県の中村知事と加計理事長にそろって国会に来てもらう必要が高まった」と述べました。
国民 玉木共同代表「核心的な疑惑出てきた」
国民民主党の玉木共同代表は国会内でNHKの取材に対し、「『加計ありき』がより鮮明になったし、『一連のストーリーは安倍総理大臣の指示から始まったのではないか』という極めて核心的な疑惑が出てきた。この疑惑を明らかにすることなく、ほかの重要法案の審議は到底できない。安倍総理大臣、加計理事長、愛媛県の中村知事ら関係者に一堂に予算委員会の集中審議に集まってもらい、真実をしっかり話してもらわなければならない」と述べました。
公明 石田政調会長「国会審議の中で議論に」
公明党の石田政務調査会長は記者団に対し、「詳しく把握していないので、これから精査をしないといけない。文書自体が、どういうものなのか、よくわからないので、国会審議の中で議論をしっかりしていくことになるのではないか。国民の中ではふに落ちていないと思うので、国会でしっかり説明していかなければならない」と述べました。
共産 小池書記局長「総理の進退に関わる重大な文書」
共産党の小池書記局長は国会内で記者団に対し、「安倍総理大臣の進退に関わる重大な文書だ。文書を見ると、安倍総理大臣と学園の加計晃太郎理事長の会談がすべてのスタート台で、安倍総理大臣が『いいね』と答えたことで、すべての話が始まった。『加計ありき』どころか『安倍ありき』だ。国会で虚偽答弁を続けてきた安倍総理大臣の責任は極めて重大で、解明なしでは何も進まない」と述べました。
維新 馬場幹事長「特別委で集中審議を」
日本維新の会の馬場幹事長は国会内でNHKの取材に対し、「資料の事実関係は確認していないが、事実であれば、今までの安倍総理大臣の説明が違っていることになる。説明の場を作り、きちんと真相究明していくことが必要で、国会に特別委員会を設置して集中的に審議すべきだ」と述べました。
加計学園 首相との面会否定
加計学園は「一部報道で伝えられているような、理事長が2015年2月に総理とお会いしたことはございません。今治市の国家戦略特区申請にかかる手続き及び、本学園の獣医学部開設設置認可手続きが適正に行われ、その結果、昨年11月14日に設置が認可され、今年4月3日に晴れて入学式を迎えることができました」とするコメントを出しました。 
■安倍首相 愛媛県文書の内容否定「聞いたことない」(5月22日)
愛媛県が国会に提出した新たな内部文書について、安倍総理大臣は記者団に対し、文書に記載された平成27年2月25日に加計理事長とは面会しておらず、事前に話を聞いたこともないと述べ、文書の内容を否定しました。
安倍総理大臣は22日午前、総理大臣官邸に入る際、記者団に対し、「ご指摘の日に加計晃太郎理事長と会ったことはない。念のためきのう官邸の記録を調べたが、確認できなかった」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は、「獣医学部新設について、今まで国会等で話してきたように、加計氏から話をされたこともないし、私から話をしたこともない」と述べ、文書に記載された平成27年2月25日に加計理事長とは面会しておらず、事前に話を聞いたこともないとして、文書の内容を否定しました。
柳瀬元秘書官「面談も指示も覚えがない」
元総理大臣秘書官の柳瀬経済産業審議官は22日正午すぎ、経済産業省で記者団の取材に応じました。この中で柳瀬元秘書官は「新しい文書が国会に提出されたが」という質問に対し「先日の国会で記憶の限り誠心誠意答えたつもりです。それがすべてです」と述べました。そのうえで、この文書に県が学園側から受けた報告の内容として「平成27年2月25日、理事長が首相と15分程度面談」と記載されていることについて「私が同席した覚えもないし、その話をうかがった覚えもありません」と述べました。さらに「私が、総理と理事長の面談を踏まえ資料の提示をお願いするといった覚えもありません」と述べ、面談を踏まえて指示したという記載についても否定しました。 
■安倍首相「文書記載日の前後も加計氏と面会していない」(5月23日)
安倍総理大臣は、愛媛県が国会に提出した新たな内部文書で学園の加計理事長と面談したと記載された日の前後の時期も含めて、みずからの動静を確認したところ、この時期に加計氏とは会っていないと説明しました。
23日の衆議院厚生労働委員会で、安倍総理大臣は、野党側から愛媛県の内部文書に記載された平成27年2月25日の前後の時期も含めて加計氏と会っていないかと問われ、「首相動静などで調べるしかないが、それを見るかぎりお目にかかっていない」と述べました。
そのうえで、「それまでも何回か加計氏との食事は首相動静にも載っており、ことさら隠す必要はない。私のところに単独で会いに来たら載るのだろうと思う」と述べました。
また、この時期に加計氏と電話で話したかについて、安倍総理大臣は「3年前で記録が残っているわけでもないので、確たることは申し上げられない。いずれにせよ、獣医学部の新設についてのやり取りは一切していない」と述べました。
一方、安倍総理大臣は、第2次安倍内閣の発足後に加計氏と会った回数について、首相動静やフェイスブックなどで確認できた範囲では合計19回だと説明しました。 
■愛媛県知事 「何事も正直と真実を覆すことはできない」(5月25日)
愛媛県の中村知事は、愛媛県が国会に提出した新たな内部文書について、25日の定例会見で、やり取りを可能なかぎり正確に書き取ったものだとしたうえで、「文書が事実だと困る人がいるのか。何事も正直と真実を覆すことはできない」と述べました。
愛媛県は5月21日、新たな内部文書を国会に提出し、この中には、学園側からの報告として、今治市が国家戦略特区に提案する以前の平成27年2月25日に、加計理事長が安倍総理大臣と面談し、獣医学部の構想を説明したなどと記載されていて、安倍総理大臣は、文書に記載された日に面会していないとして、文書の内容を否定しています。
愛媛県の中村知事は25日の定例会見で、「愛媛県の文書はやり取りを可能なかぎり正確に書き取り、ありのままを書いている」と述べました。
そのうえで、インターネット上などの一部で「県の文書は、一部の字体が異なり、ねつ造ではないか」という指摘があることに対し、「当初から言うように文書は職員の口頭報告用の備忘録だ。間違ってはいけないという職員の気持ちが強いから、強調すべきところの字体を変えるのは当たり前のことだ」と述べ、ねつ造について否定しました。
そのうえで、中村知事は「この文書が事実だと困る人がいるのか。何事も正直、真実というものを覆すことはできない」と述べました。
さらに、柳瀬元総理大臣秘書官のこれまでの対応について、「記録がない、記憶がないとしているのに、安倍総理大臣に報告しなかったということだけは明確に覚えているのは、一般の常識では無理があるのではないか」と重ねて批判しました。
今治市長 加計理事長と首相の面談「担当者から報告受けた」
今治市の菅市長は25日夕方、記者団の取材に応じ、平成27年2月25日の面談について質問されたのに対し、「当時、『理事長と安倍総理が会った』という話を学園側から担当者が説明を受け、担当者からの報告に対し、『あ、そうなの』と答えたと思う」と述べました。一方で「あくまで伝聞ではっきりとした記憶ではない。私どもが、2人がお会いしているのを見ているわけではない。官邸の記録なども無いようなので、白紙の中で考えないといけないなと思っている」と説明しました。 
■加計学園 3年前の理事長と首相の面談を否定(5月26日)
愛媛県が国会に提出した新たな内部文書で3年前の2月に加計理事長と安倍総理大臣が面談したとされることについて、26日、加計学園は関係者に記憶の範囲で確認した結果として「実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と今治市に誤った情報を与えてしまったようだ」と、面談を否定しました。
愛媛県が国会に提出した新たな内部文書に関して、26日、加計学園は当時の関係者に記憶の範囲で確認できたことをコメントとして発表しました。
それによりますと「当時は、獣医学部設置の動きが一時、停滞していた時期であり、何らかの打開策を探していた。そのような状況の中で、構造改革特区から国家戦略特区を用いた申請に切りかえれば活路が見いだせるのではないかとの考えから、当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と今治市に誤った情報を与えてしまったように思うとのことだった」として、面談を否定しました。
愛媛県「加計学園に事実関係の確認求めていく」
愛媛県の幹部は、NHKの取材に対し「県には何の連絡もなく、非常に驚いている」と話していて、愛媛県は、今後、加計学園に対し事実関係の確認を求めていくことにしています。
自民 森山国対委員長「首相発言 信じるのが正しいのではないか」
自民党の森山国会対策委員長は、鹿児島県屋久島町で記者団に対し、「加計学園のコメントが正しいのかどうか、われわれが決めることはできないと思う。ただ、指摘された日に、安倍総理大臣と学園の加計理事長が会っていないことは、記録にもないことから、はっきりしている。安倍総理大臣が言っていることを信じるのが正しいのではないか」と述べました。また森山氏は、野党側が求めている加計理事長の証人喚問について「その必要はないと思う」と述べました。
立民 枝野代表「むちゃな言い訳」
立憲民主党の枝野代表は、沖縄県宮古島市で記者団に対し「常識的にありえない、むちゃな言い訳を始めたとしか言いようがない。安倍総理大臣の名前を使って、愛媛県や今治市をだましたという犯罪的な話なので、本当であれば、加計学園が重大な責任を負わなければならない問題だ。加計学園の理事長と担当者に、証人喚問で、われわれの質問を受けて釈明してもらわないと、とても信じられるような話ではない」と述べました。
国民 玉木共同代表「加計理事長の証人喚問求める考え」
国民民主党の玉木共同代表は、大阪市で記者団に対し「加計学園のコメントは、職員の記憶に基づくもので、うその上塗りのような気がしてならない。唯一、正式に文書で残っている愛媛県の言い分が信ぴょう性が高いと思われる」と述べました。 そのうえで「ここまでして、安倍総理大臣を守り、総理大臣の発言とつじつまを合わせなければならないのか、正直、悲しくなる事態だ。なぜ、トップが堂々と出てきて証言しないのか不思議でならない。改めて加計理事長の証人喚問を求めたい」と述べました。 
■愛媛県知事「偽りの説明なら謝罪が常識だ」(5月27日)
学園側が3年前の2月の総理大臣と理事長の面会は実際にはなかったとするコメントを出したことについて、愛媛県の中村知事は、「偽りの説明をしたとすれば、愛媛県や今治市に謝罪するのが常識だ」と批判しました。
愛媛県の中村知事は、27日に記者団の取材に対し、学園側からまだ詳しい説明はないとしたうえで、「公的機関に偽りの説明をしたとすれば、県や市に説明と謝罪をして、責任者が記者会見を開くのが常識だ」と学園の対応を批判しました。
そのうえで、「県庁職員は、出席した会議の各参加者の発言をメモしてありのままに書いていて、文書自体に偽りはない。ただ、中身の事実がどうだったかは、当事者の話だ」と述べました。
自民 石破元幹事長「早期収束へ加計学園理事長の国会招致も」
自民党の石破元幹事長は、東京・昭島市で記者団に対し、加計学園が、愛媛県の内部文書に記載されている、安倍総理大臣と加計理事長の面談を否定したことについて、「いやしくも一国の総理大臣に会ってもいないのに会ったことにしたのであれば、ものすごく重大なことだ。最高権力者たる『総理大臣』を利用するとは、あるまじきことだ」と学園の対応を批判しました。
そのうえで、石破氏は「加計理事長が、国会に出て、『安倍総理大臣に1度も頼んだことはないし、会ったこともない』と言ってもらえたら、かなりスッキリするのではないか。国民のモヤモヤした思いを払拭するために、できることはなんでもやるべきだ。この問題を、これ以上、引きずってはいけない」と述べ、早期に事態の収束を図るために、加計理事長の国会招致も検討すべきだという考えを示しました。 また、石破氏はこれに先立つ講演で、「自民党は、力強く実力があり、ほかの政党よりも、はるかに優れた政党だが、それに、『誠実で』、『謙虚で』、『正直で』、『丁寧』を加えたい」と述べ、謙虚な政権運営が必要だという認識を示しました。
自民 岸田政調会長「集中審議で説明責任を」
自民党の岸田政務調査会長は、津市で記者団に対し、「加計学園が、『安倍総理大臣と加計理事長が会った事実は無い』と公表したが、何よりも、事実は、どちらなのかが最も大事なことだ。28日の衆参両院の予算委員会の集中審議で、政府として、しっかり説明責任を果たしてもらわなければならない」と述べました。
立民 辻元氏「理事長の証人喚問 必ずやらなければならない」
立憲民主党の辻元国会対策委員長は、新潟県長岡市で記者団に対し、「加計学園みずからが『うその泥沼』にさらに深く踏み込んだ。安倍総理大臣を守るために、うそをついたとしたら、教育機関としてあるまじき行為だ。学園の加計理事長の証人喚問は、立法府として必ずやらなければならないし、与党も拒否できないだろう」と述べました。 
■加計学園の事務局長 愛媛県に謝罪(5月31日)
加計学園が、愛媛県の内部文書に記載されていた安倍総理大臣と理事長の面会を否定するコメントを出したことについて、学園の事務局長が31日午前、愛媛県庁を訪れて実際にはなかった面会を持ち出したのは自分だとしたうえで、「多大な迷惑をかけ申し訳ない」と謝罪しました。
愛媛県が国会に提出した内部文書には、学園側からの報告として、今治市が国家戦略特区に提案する以前の平成27年2月25日に、加計理事長が安倍総理大臣と面会し、獣医学部の構想を説明したなどと記載されています。
愛媛県の中村知事は、学園側が実際にはなかった面会を引き合いに出して愛媛県と今治市に誤った情報を与えたとするコメントを出したことについて「説明と謝罪をすべきだ」と学園の対応を批判していました。
これを受け手31日午前、加計学園の渡邉事務局長らが愛媛県庁を訪れて「多大なご迷惑をおかけし、申し訳なく思っている。おわびを申し上げる」と謝罪しました。
これに対し、海外出張中の中村知事に代わり、面会した西本企画振興部長は「公的機関の県に誤った情報を伝えた重大なことだと受け止めている。事前に連絡がなかったことは誠に残念だ」と答えました。そのうえで、県が3年間で31億円の補助金を学園に出すことに触れて、「多額の公金を支出する以上、県民にしっかりと説明責任を果たす必要がある」と述べました。
加計学園事務局長「逆算すると僕しかいない」
学園の渡邉事務局長は記者団に対し、「愛媛県が何もないのに、ああいう文書を書くことはありえないということから逆算すると、僕しかああいうことを言う人間はいない。私が、なんとかしたいと思いがあったので、ああいう誤解を招く形になった」と述べて、みずからが実際にはなかった面会を持ち出したと話しました。
愛媛県 企画振興部長「非常に残念で誠に遺憾」
県の西本企画振興部長は「うそがあったのは、非常に残念で誠に遺憾だ。上司に報告し、補助金のことなど今後の対応を決めたい」と述べました。
中村知事「つじつまが合わなくなる可能性ある」
愛媛県の中村知事は出張先の台湾で31日夕方、NHKの単独取材に応じ、31日の加計学園の説明について「非常に残念だ。前後でつじつまが合わなくなる可能性もあり、クリアにする必要がある」と述べました。そして、学園に対して、「うそは一度ついたらさらにうそを重ねていく悪循環に入っていくことから、しっかりとした真実を語ることが大事だ。初動対応を誤ったような気がするので、最高責任者が出て早く対応されたほうがよい」と述べて、加計理事長みずからが会見して説明すべきだという考えを示しました。 
 
2018/ 5 報道

 

■柳瀬元首相秘書官「面会認める」へ方針転換の裏 5/4
柳瀬唯夫・元首相秘書官が面会を認める意向を固めた──。5月2日、メディアが報じたように、柳瀬元首相秘書官が「記憶にない」と繰り返してきた加計学園幹部らとの面会の事実を認めるのだという。毎日新聞によれば、〈否定し続けるのは難しいと判断〉したらしい。
まったく、国民を舐めきっているとしか言いようがない。そもそも、「本件は、首相案件」という官邸面会文書を朝日新聞がスクープし、翌日に愛媛県の中村時広知事がその存在を認めてから約3週間も経っているのだ。しかも、その後も農水省から同様の文書が発見されたり、内閣府から文科省に送られていた柳瀬首相秘書官と加計学園、愛媛県、今治市職員らとの面会スケジュールを記したメールが見つかるなど、どんどんと外堀は埋められていったのに、「記憶にない」の一点張りだったのだ。
だが、さらに唖然とさせられたのは、「意向を固めた」とか「面会を認める方向」「認める方向で政府与党調整」という表現だ。念のため繰り返すが、これまで柳瀬首相秘書官は「記憶にない」と言っていたのだ。どうして「与党との調整」や「方針転換」で事実が変わったり、記憶がよみがえったりするのか。ようは、「嘘をついていた」と自白しているに等しい。
だいたい、「否定し続けるのは難しいと判断」したのは柳瀬氏本人ではもちろんなく、安倍官邸であることは間違いない。佐川宣寿・前理財局長と同様、柳瀬氏に無理のある嘘をつかせ、野党の証人喚問要求も受け入れずに国会を空転させてきた、その責任は安倍首相にあるのだ。
しかし、セクハラ問題でも露呈したように、往生際の悪さにかけては右に出る者はいない安倍政権は、この期に及んで、まだ柳瀬元首相秘書官の嘘を嘘とは認めないつもりらしい。
というのも、与党関係者は毎日新聞の取材で、こう話しているのだ。
「愛媛県や今治市の職員は加計学園関係者の後ろにいたから、記憶に残っていないのだろう。学園関係者との面会を認めても、うそをついたことにはならない」
つまり、2015年4月2日の官邸での面談は加計学園関係者が相手との認識で、愛媛県や今治市の職員は記憶に薄いのも当然──。いまさら何を言っているのだろうかと思うが、なぜこれで「嘘をついたことにならない」と主張できると考えているのか。まずはあらためて一連の動きを振り返ろう。

最初に2015年4月2日の官邸訪問問題が浮上したきっかけは、今治市から職員の出張記録だった。この出張記録は2016年に情報公開請求で開示されたもので、訪問相手などは黒塗りにされていた。そんななか、昨年7月に「週刊朝日」(朝日新聞出版)が「今治市職員が面会した相手は柳瀬首相秘書官」という今治市関係者の証言をスクープしたのだ。
そして、この報道について昨年7月24・25日におこなわれた閉会中審査で問われた柳瀬元首相秘書官は、このような答弁に終始したのだった。
「お会いした記憶はまったくございません」
「記憶にほんとうにございません」
「覚えておりませんので、これ以上のことは申し上げようがございません」
「覚えてございませんので、会っていたとも会っていないとも申し上げようがございません」
ようするに、このとき問われたのは「今治市職員と面談したかどうか」であって、一方、今回、柳瀬氏が認める方向だというのは、加計学園関係者と会ったということ。今治市や愛媛県の職員は「加計学園関係者の後ろにいたから、記憶に残っていない」と言い張ることで、嘘はついていない、ということにするらしい。
だが、この方向で柳瀬氏が言い訳しても、これもまた「嘘」を重ねることになる。官邸訪問の際、加計学園事務局長が同行していたことは昨年8月10日の朝日新聞の報道であきらかになるのだが、このとき、柳瀬氏は朝日の取材に対し、加計学園事務局長の同席についても「記憶にない」と答えているのである。「学園関係者との面会を認めても、うそをついたことにはならない」ということにはならないのだ。
しかも、百歩譲って柳瀬元首相秘書官に愛媛県や今治市職員と面談した記憶がなく「あれは加計学園関係者との面談だった」と認識しているとしても、そのほうがなおさら大問題だ。
なぜなら、安倍首相の答弁では、加計学園が獣医学部新設の計画をもっていることを知ったのは「2017年1月20日」であるにもかかわらず、その約2年も前に、右腕たる首相秘書官が獣医学部新設の話し合いのために加計学園関係者と面談していたのは事実となるからだ。首相の秘書官がわざわざ官邸で面談する、それはすなわち「加計学園は首相案件」ということではないか。
どのような手に出ようとも逃げ道はもう塞がれているのに、まだ悪あがきをしようとする安倍首相および官邸。さらに、どうやら官邸はこの「加計関係者とは会ったが愛媛県や今治市の職員と会った記憶はない」という言い訳以外に、もうひとつ逃げ道を考えているようだ。

それは、柳瀬氏が「指摘を受けて先方の名刺を探したが見つからなかった」と答えている件だ。「名刺がないから記憶にない」とは、これまた杜撰な釈明だが、これをアシストするようなコメントをおこなった者がすでにいる。安倍応援団として日々露骨な政権擁護と野党批判でめざましい活躍を見せている八代英輝弁護士だ。
八代弁護士は5月2日放送の『ひるおび!』(TBS)で、柳瀬元首相秘書官が面会を認める意向だというニュースが取り上げられた際、こんなことを言い出した。
「ひとつ思ったのは、愛媛県から文書が出たじゃないですか。愛媛県の職員の方々が柳瀬さんの名刺を一緒に出せば、もう決まりなのになって思っていたんですよ。なんで柳瀬さんの名刺を愛媛県も今治市も出さないんだろう。ここでちょっとなるほどと思ったのは、柳瀬さんとそのときほんとうに名刺交換していないのかもしれないなと、いまちょっと思いました」
歴然とした面会記録や訪問を裏付けるメールが出てきているのに名刺交換をしたか否かを問題にするとは、なんとか正当化しようという必死さが見て取れるが、しかし、これも言い訳としては通用しない。すでに愛媛県の関係者は「県庁から柳瀬氏の名刺が見つかった」と、TBSの取材に証言しているからだ。
普通にその立場関係を考えれば、柳瀬氏が名刺を渡さないということはあり得るだろうが、愛媛県や今治市の職員がわざわざ官邸まで出かけて行って「名刺を忘れました」「名刺を切らしておりまして」などという言動に出られるはずがない。愛媛県には柳瀬氏の名刺があるのであれば、それは名刺交換はおこなわれたと見るべきで、柳瀬氏は名刺を捨ててしまったのか、あるいは“隠蔽”しているのだろう。無論、名刺が見つかったというのが事実であれば、今後の展開によっては愛媛県側から柳瀬氏の名刺が出てくる可能性も十分考えられる。
このように、いまさら何を主張しようが、柳瀬元首相秘書官が嘘をついていたことは隠しようのない真実だ。そして、なぜこんなすぐにバレるような嘘をついたかといえば、加計学園が「首相案件」であったことを絶対に認めるわけにはいかない安倍首相を守るため、それだけだ。
森友学園問題と合わせれば、安倍首相の保身のために、国民も国会も、もう1年以上も欺かれつづけているのである。与党側は相変わらず柳瀬氏を参考人としての国会招致を主張しているが、こんなことを承服できるはずがあるまい。証人喚問は当然だ。 
 

 

■柳瀬元首相秘書官の国会招致 5/10
加計疑惑のキーマンだった柳瀬唯夫元首相秘書官が10日午前、衆院予算委員会に参考人として出席し、冒頭で「国会審議に大変なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません」と謝罪した。
そして加計学園、愛媛県、今治市の職員と2015年4月2日に首相官邸で面会したこと、さらにその直前の同年3月頃と6月前後の計3回、加計学園と面会したことを明かした。
さらに加計側の出席者の1人が今春、開学した獣医学部の吉川泰弘学部長だったことも認めた。
柳瀬氏は加計学園関係者と知り合ったきっかけは、2013年に安倍晋三首相が河口湖の別荘でバーベキューとゴルフ会を開いた時だと説明。安倍首相が「腹心の友」と呼ぶ加計 晃太郎理事長もバーベキューの席にいたことを認めた。
さらに「お庭でバーベキューをして秘書官も十数人いますし、総理のご友人、親族もおられ、加計さんもおられた」などと状況を説明した。
自らが安倍首相らとゴルフをしたことも認めたが、緊急時の要員として後方にいたとし、「総理と加計理事長が、どういうお話をしていたかわからない」と、安倍首相と加計理事長との間で交わされた会話について自らはあずかり知らない立場にいたことを重ねて強調した。
午後に行われた参院予算委員会では立憲民主党の蓮舫議員が存在感を発揮した。

蓮舫:最初の面会は3月24日と聞いているんですが、なぜ加計学園関係者と会ったんでしょうか?
柳瀬:アポイントの申し入れがあって、今度上京するのでお会いしたいと。
蓮舫:具体的な案件がわからないけれど、上京したのでお会いしたい。つまり首相秘書官である柳瀬さんと学園関係者はそれくらい密接な関係ということでしょうか。
柳瀬:元々総理の別荘のバーベキューでお会いし、面識はありましたので…
蓮舫:加計関係者とバーベキューでお会いし、どなたから紹介されたんですか。
柳瀬:総理は河口湖の別荘でご親族やご友人を集めてバーベキューをよくやっておられました。ご紹介いただくとかそういう場ではございません。何十人も人がいる中でお会いしたというわけで、特に誰かに紹介されたわけではございません。
蓮舫:全く紹介されていなくて、何十人も人がいる中で、お会いをした。その人から連絡がきて、案件もわからないでお会いをする間柄なんですか?さらに3月24日の面会で、あなたから加計学園に「国家戦略特区でいこう」と助言していませんか。
柳瀬:記憶がクリアではありませんけど、3月の最初にお会いしたときも構造改革特区で何度もやっているけれどうまくいかないという話がありまして、その時にもう国家戦略特区制度をスタートしていましたし、安倍政権として大事な柱でございましたので、えぇ、その時に国家戦略特区の話になったと思います。

柳瀬氏は焦点になっている安倍首相の関与の有無については一貫して否定。
だが、柳瀬氏が否定すれば、するほど疑惑はますます深まったといえる。
柳瀬氏は愛媛県職員や加計学園関係者と面会した際の記録の存在について立憲民主党の長妻昭議員から問われても「メモは取っておりません」と答弁。安倍首相への報告については「いちいち報告したことはない」と述べると議場からは「エーッ」という声があがった。
長妻氏は記者団の取材に「首相経験者は秘書官経験者に私が話を聞いた限りでは、『そんなことはありえない』と言っている。信用できない」と話した。
この発言には与党議員からも驚きの声があがった。自民党の閣僚経験者は「秘書官がメモを取らないなんてありえない。こんなのウソに決まっているじゃないか」と憤る。
実は、官邸が細かい過去の記録をキチンと保存していることについて、安倍首相自身が語っていたこともある。2014年3月21日、フジテレビ系の「笑っていいとも!」のテレフォンショッキングに、安倍首相は現役の首相としてはじめて出演した。このとき、司会のタモリとのトークで、安倍首相は番組5千回記念で当時の小泉純一郎首相が電話で生出演したことを紹介し、「そういう記録は全部残っているんですよ。やっぱり官邸には」と自慢げに語っていたのだ。
ところが、加計学園問題が国会で取り上げられ、愛媛県や今治市の職員らが官邸を訪問していた事実が問題になった昨年7月には見解が一変。萩生田光一官房副長官は(当時)は、官邸の記録について「官邸訪問者の記録が保存されておらず、確認できない」と説明した。
経産省出身で首相秘書官の経験もある江田憲司衆院議員も、柳瀬氏を厳しく追及した。
「総理秘書官として常識外れのことばかり。(秘書は)首相の政策補佐。許認可や補助金の対象となる可能性のある事業者に会うことは常識に外れている。総理か政策秘書官から指示があったとしか思えない」
今後、国会で加計問題はさらなる火種を残すことになった。前出の閣僚経験者は、怒りをあらわにした。
「天下国家のために働く官僚たちが、なぜ安倍さんの友達の私的な利益のためにウソをつかなければならないのか。自浄能力を失った組織は崩壊するしかない」  
 
柳瀬唯夫元首相秘書官 参考人招致 1
柳瀬氏、加計学園獣医学部新設の面会
  「愛媛県や今治市の職員がいたかわからない」
衆院予算委員会は10日午前、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐって、柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)の参考人招致を行った。柳瀬氏は「加計学園の件について安倍晋三首相に報告したことも、指示を受けたことも一切ない。首相と加計学園関係者が一緒にいたとき、獣医学部新設の話が出た覚えもまったくない」と述べ、獣医学部新設をめぐる首相関与を改めて否定した。自民党の後藤茂之衆院議員の質問に答えた。やり取りの詳報は以下の通り。
−−自由民主党の後藤茂之でございます。さまざまな問題が続発する現在の状況については、野党もうんざりというご発言があるが、与党もうんざりだ。しかし、一番うんざりしているのは国民ではないかと思う。国民の視点から見て、政治の信頼回復を図るためには、真相を解明して疑念に答えていくしかないと思う。加計学園の理事長とは利害関係がないからこそ、長年続いている友人関係であると、首相は言うが、友人だからこそ特別扱いを受けていたのではないか、国民の多くは、そういう疑念を持っている。
今日、こそは何が真実なのか。本当のことを全て正直に話していただきたいと思う。
平成27年4月2日に愛媛県、同県今治市が官邸を訪問したことについて、愛媛県のメモが公表され、農水省も愛媛県の文書を保有するなどの事実が明らかになっている。4月10日、柳瀬唯夫元首相秘書官は自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方とお会いしたことはないとコメントを出しているが、国民の中で事実関係についての疑念は拭えていない。
4月2日に柳瀬氏は愛媛県、今治市、加計学園関係者と会っていないのか。最初にしっかりと説明してほしい。
柳瀬唯夫元首相秘書官「まず冒頭、私の答弁をきっかけに、国会審議に大変なご迷惑をおかけしましたことを誠に申し訳ございませんでした。その上で、ご質問の点だが、加計学園の事務局の方から面会の申し入れがあり、4月頃、その後の報道などを拝見すると恐らく、これが4月2日だったのではないかと思うが、加計学園の方、その関係者の方と面会した。その面会のときには、相手方10人近くのずいぶん大勢で来た。そのうち、加計学園の事務局に同行していた獣医学部の、獣医学の専門家の元東大教授とおっしゃっている方が、『世界の獣医学教育の趨勢(すうせい)は感染症対策にシフトしているのに、日本は全く付いていっていない』という獣医学教育に関する話を情熱的に、とうとうとされた覚えがある。あわせて、加計学園の事務局の方から『国家戦略特区制度を活用する方向で検討している』という話があった」
「面会では、メーンテーブルの真ん中にいらっしゃいました、その元東大教授の方がほとんどお話になっていて、それと加計学園の事務局の方がお話になっていた。そのために、その随行されていた方の中に、愛媛県の方や今治市の方がいらしたかどうかという記録は残っていない。ただ、その後、一連の報道や関係省庁による調査結果を拝見すると、私は今でも愛媛県や今治市の職員の方が同席者の中にいたかどうかはわかりませんが、10人近くの同席者の中でメーンスピーカーでない方にも、随行者の中に愛媛県や今治市の方たちがいたのかもしれないなというふうに思う」
−−4月2日に関する面会がどのようなものであったかということはわかったが、愛媛県や今治市の方がいたのかどうか。本当に確認しなかったのか。名刺を交換しなかったのか。
柳瀬氏「先ほど申し上げましたが、ほとんどお話になっていたのはこのメーンテーブルの真ん中にいらっしゃった元東大教授の方と、加計学園の事務局の方であり、随行者の中に愛媛県の方、今治市の方がいらっしゃったかどうかは私にはわかりません。そのため、昨年の国会では『今治市職員に会ったか』というご質問に対し、私からは『お会いした記憶がございません』『私の記憶をたどる限りお会いしていません』『覚えていないので会っていたとも会っていないとも申し上げようがございません』というふうなお答えをした」
「私としましては、今治市や愛媛県の方とお会いしたかお会いしていないかの定かな記憶がないのに、『必ずお会いしました』とか、『絶対にお会いしてません』とか申し上げるのは、いずれの場合も嘘になる可能性があると思ったので、このように申し上げた。なお、随行者の方々全員と名刺交換をしたかどうかは分からない。私はふだんから失礼にならないように自分から名を名乗って、名刺交換をするように心がけているが、多くの方とお会いするために、交換した名刺の中で保存するのはごく一部だ。今回の件で、私が保存している名刺の中に今治市や愛媛県の方の名刺はなかった」
−−「加計学園の関係者の方と会った」という認識だったということだが、では、なぜ柳瀬氏は加計学園関係者の方と知り合いになったのか。知り合ったときから、4月の面会までの経緯を教えてください。
柳瀬氏「以前、総理とご一緒した際に加計学園の関係者の方とお会いしたことがあった。その後、平成27年2月から3月頃だったと思うが、加計学園事務局の方から上京する際に『お伺いしたい』という申し入れがあり、官邸で会った。その際、獣医学部が過去50年余り新設されていないこと。四国(地方)には、鳥インフルエンザなどの感染症対応の獣医師が不足していること。過去、構造改革特区で今治市から何度も獣医学部新設を申請してきているが、実現していないことというふうなお話があったと思う」
「その際に、従来の構造改革特区と別に新たに国家戦略特区制度が始まったという話も出たようにも思うが、その時には、特に具体的な話にはならなかったように思う。このときに、50年以上も獣医学部が新設されていないというお話を伺い、強く違和感を覚えた。しかし、私自身、獣医学部新設については、詳しくなかったので基本的に聞きおいたということだったと思う。その後、加計学園事務局の方から面会に申入れがあり、先ほど申しましたように4月頃、これも多分4月2日だったと思うが、加計学園の関係者にお会いした。その後、加計学園の方が一度今治市が正式に国家戦略特区の提案を行うことになったという話をしに、1回官邸に顔を出されたという記憶もある」
−−総理からの指示ではなく、個人的に面識があり、あったということだと承ったが、加計学園関係者との最初の面会で50年以上も獣医学部が新設されていないことを聞いたとのことだが、だとすれば、4月に2回目に会うまでに事前に何か調べたり、あるいは指示をしたりしたことがあったのではないか。
柳瀬氏「最初にお会いしました2月から3月頃の面会後、4月に面会する前の間に、まず特区事務局、戦略特区の事務局から特区制度の現状について、ドローンあるいは自動走行など近未来技術実証とか、次の成長戦略にも折り込むような検討課題について、ちょうどその頃、レクチャーを受ける機会があった」
「こうしたレクチャーは担当している部局の方から、今どうなっていて、今後、どうしていくつもりだというのは、随時、聞いたので、そういう一環で伺った覚えがある。その際に、その前の年の平成26年9月の国家戦略特区諮問会議で民間議員から、獣医学部の新設の解禁というものも含まれた、追加の規制改革項目というのは、重点項目という提案があり、それを受けて、首相がカメラもプレスの方もみんな入った場で『早急に検討して、民間議員からご提案があった提案については早急に検討していきたい』とおっしゃっていた。その獣医学部新設の解禁について、今どうなってますかということを聞いた覚えがある。その際には『新潟市から国家戦略特区の提案が出ている』『今治市から構造改革特区の提案が出ているけれど、今のところ通っていない』というふうなお話を伺った覚えがある。また、それと並行して、官邸に各省から出向してきている職員に獣医学部新設に関する状況という方について伺った記憶がある。学部新設ということで、文部科学省なのか、獣医ということで農水省なのか、感染症対策ということで厚労省なのか、ちょっとどこなのかわからなかったので、3省からの出向者に聞いたと思う。そのお答えは詳しくは覚えてませんが、ざくっと『獣医学部は長年にわたって新設されていないこと。鳥インフルエンザの感染症対策の対応は地域によってはとっても苦労しているということ。それから獣医が不足しているというデータが重要であること』というふうなお話を伺った覚えがあります」
「『なぜ何年にも渡って長年にわたって獣医学部の新設が認められてこなかったか』という肝心の点については、『よくわからないな』という印象を持った記憶がある。その際に、個別の自治体とか事業者について各省に何か指示をしたり、お願いしたことはない」
後藤氏「『首相案件』と発言したのか」 
  柳瀬氏「私は『首相』という言葉を使わない。違和感がある」
後藤茂之氏の質問が続く。
後藤氏「4月の面会当日以降、担当省庁との間でやりとりはされましたか」
柳瀬唯夫元首相秘書官「4月の面会のときに加計学園から内閣府の特区事務局とはすでに面会したというお話でございましたので、私から特に内閣府の方に連絡した記憶はございません。また具体的な指示もしてございません。また各省との間でも、本件をやりとりした覚えはございません」
「その後、内閣府からは、平成27年6月末に、成長戦略全体を閣議決定する際に、14項目の国家戦略特区関連の閣議決定事項という説明を受けました。その際、14項目のうちの一つとして、獣医学部新設の制度論の検討を年度内に行うという、いわゆる『石破4条件』を記載するというご説明を受けました。総理にはこの成長戦略の取りまとめに際しまして、この14項目の国家戦略特区関連の決定事項について、内閣府からご説明いただきましたけれども、個別具体的なお話はございませんでした」
後藤氏「4月の面会後は、加計学園の関係者と会っていないのでしょうか。加計学園ありきでプロセスが進んだのではないか。伺いたいと思います」
柳瀬氏「私が総理秘書官に在籍していた当時、50年余り認められていなかった獣医学部の新設に道を開くのかどうか、道を開くのであれば、どういう場合がありうるのかという、そういう制度設計について検討している段階でした。制度ができたら具体的にどのプロジェクトに適用するのかというのは関心の外でございました。もちろん制度設計を議論する際には机上の空論になってはいけませんので、ある程度ニーズがあるかどうかを資料に入れるのは当然でございますけども、国家戦略特区法上も、自治体あるいは事業者の提案を受けて、特例措置の制度を検討することになっていますが、特例措置の制度ができたら具体的にどのプロジェクトに適用するのかというのは、法律上も、後で公募が条件になっているということでございますので、選定の手続きは後日別途の手続きが進められるものと理解しておりました」
「実際、私は『石破4条件』ができて間を置かずに平成27年8月に総理秘書官のポストを離れましたが、私が離任した後も、『石破4条件』を踏まえた制度設計の検討が1年以上も続きまして、獣医学部新設の制度が決まったのは翌年の平成28年11月でございます。制度を適用する具体的な事業者の選定はさらに先の翌々年の平成29年になってから始まったと聞いております。従いまして、私が具体的な地点や、事業者の選定に関与するような余地は全くございませんでした」
後藤氏「ここから最も重要な総理との関係について確認をさせていただきます。柳瀬元秘書官は加計理事長と総理との関係をどのように認識しておられましたか。また、総理と友人関係を認識していたので、特別扱いをして面会したものではないというふうに言い切れますか」
柳瀬氏「総理ご自身がご答弁されている通り、友人関係であろうということは認識をしてございました。この私の面会でございますけれども、政府の外の方からアポイントの申し出に対しては、時間が許す限りお受けするように心がけておりましたので、特別扱いをしたことはございません。実際、私は総理秘書官時代、物理的に日本にいないとか、物理的に時間がないということあったかもしれませんが、私が総理秘書官時代、私が覚えている限りはアポイントの申し入れをお断りしたことはございません」
後藤氏「愛媛県の個人メモには、本件は首相案件という発言があったとも記載されております。首相案件というふうに言われましたか。相手は必死になって獣医学部の新設を実現したいと、そのために総理秘書官の言質を取りたいと思っていたはずであります。相手にそうとられかねないような発言は本当にされなかったんでしょうか」
柳瀬氏「私の方からは国家戦略特区制度は、安倍政権の成長戦略の看板政策として創設した制度であるということはご説明いたしました。その前年、平成26年9月の特区諮問会議におきまして、民間有識者議員から、当面の重要課題の追加の規制改革分野事項についてというものが提案されまして、そのうちの1項目に、獣医系大学学部新設の解禁というものが入っておりました。この民間議員の提案に対しまして、総理からは、民間議員の皆さまから提示された追加の規制改革の提案について石破国家戦略特区担当大臣を中心に早急に検討していきたいというご発言が、そのメディアもいる前でございました」
「そのため、面談の中でも獣医学部新設の解禁は、総理は早急に検討していくと述べている案件であるという趣旨はご紹介したように思います。しかしながら、この今治市の個別プロジェクトが首相案件になるという旨を申し上げるとは思いません。そもそも言葉といたしまして私は普段から首相という言葉は使わないので、私の発言としてはややちょっと違和感がございます。そういう意味で報道されております愛媛県の職員の方のメモですけども、ちょっと趣旨として私が伝えた形とは違う形で伝わっているのかなという気がいたします」
後藤氏「加計学園と面会したことや、やりとりについて総理に報告したり、総理から何らかの指示を受けたことはありますか」
柳瀬氏「加計学園の件につきまして、総理に対し報告したことも指示を受けたことも一切ありません。総理と加計学園の関係者がいらっしゃるときに、獣医学部新設の話が出た覚えは全くございません」
後藤氏「今日の一連のやりとりを通じて、いろいろなことが新たに分かりました。今回伺ったような話はもっと早くお話いただければよかったと思いますが、どうして今まで話をされなかったのか、その点についてご説明をしていただきたいと思います」
柳瀬氏「これまでいただきました個々のご質問に対して一つ一つお答えしてまいりました。昨年の閉会中審査の際には今治市との関係についてご質問多数いただきまして、今治市の方との面談についてもご質問でございましたので、今治市の方との面談についてお答えをいたしました。また、先月愛媛県の文書について報道がありましたので、今治市に加え、愛媛県の方との面談についてもコメントさせていただきました。しかしながら、ご質問をいただいたことに一つ一つお答えした結果、全体像が見えなくなり、国民の皆様に大変わかりづらくなり、ひいては国会の審議に大変ご迷惑おかけしましたことを深くおわび申し上げます」
柳瀬氏「いろんな方とお会いしたが、いちいち総理に報告したことはない」 
  立民・長妻氏は「バーベキュー・ゴルフ費用」を追及
衆院予算委員会は、自民党の後藤茂之氏、公明党の竹内譲氏の後、質問が野党に移った。野党のトップは立憲民主党の長妻昭氏。
長妻氏「平成27年の4月2日の面会以降、加計学園関係者に会ったことはあるか」
柳瀬唯夫元首相秘書官「(安倍晋三)総理にご一緒した際、お会いした。27年2月から3月ごろ、首相官邸にアポイントを取ってこられ、話を伺った。そして27年4月、面会した。その後、今治市が国会戦略特区の提案を出すということをお話に一度来られた記憶がある。官邸でお会いした3回は覚えているが、それ以外は覚えはない」
長妻氏「官邸以外で(加計学園の)加計晃太郎理事長を含めて学園関係者と会ったのは何回か」
柳瀬氏「1度、(25年5月の)ゴールデンウイークに総理の河口湖の別荘にお供をしたとき、総理の親族や友人がたくさん集まってバーベキューをやり、加計学園の理事長と事務局の方がいた記憶がある」
長妻氏「加計学園関係者と会ったのは官邸で3回、官邸以外で1回しかないと。(河口湖で)ゴルフはしたか」
柳瀬氏「していたと思う」
長妻氏「ゴルフの代金は誰が支払ったか」
柳瀬氏「総理の関係で処理されていると思う。私はわかりません」
長妻氏「バーベキューやゴルフの費用を誰が払ったのか、加計学園のおごりなのか、調べて後日委員会に提出いただけるか。加計学園関係者と官邸で3回会われているが、総理の親友でなければ会わなかったか」
柳瀬氏「私は首相秘書官になって違和感を覚えたのは、外の話が聞けなくなった。だんだん自分は世の中からずれているんじゃないかと強く思い、できるだけ外の方からアポイントがあれば時間が許す限りお会いするようにしていた。別に、総理の親友だからではない。時間の都合がつく限り、どなたであってもアポイントがあればお会いした」
長妻氏「それならば、獣医学部新設を希望していた京都産業大、京都府、新潟市とは会ったか」
柳瀬氏「アポイントの申し出がなかったので、お会いしていないし、京都産業大は私が(首相秘書官として官邸に)いたときには全くなかったと思う」
長妻氏「普通、首相秘書官にアポイントを入れるという発想はそもそもないと思う。獣医学部以外にも国家戦略特区の案件はあるが、事業者や、首相秘書官として会ったことはあるか」
柳瀬氏「特に、特区の提案当事者ということでお会いしたことはないと思う」
長妻氏「そうすると(官邸で面会した事業者は)加計学園だけではないか。あまたある国家戦略特区の関連では」
柳瀬氏「私はお会いするとき、特区の案件だからということでお会いしていない。アポイントの申し入れが外の方からあれば、広くお会いするようにした」
長妻氏「誰でも会うと言っているが、結局、国家戦略特区関連では加計だけではないか。安倍首相は昨年の1月20日に加計学園の獣医学部新設計画を知ったと答弁しているが、今の話聞いてると、柳瀬氏は相当前に知っている。加計学園の獣医学部新設の計画を初めて知ったのはいつか」
柳瀬氏「平成27年2月から3月に、官邸にお越しになったときに、獣医学部の話をされた」
長妻氏「首相と首相秘書官は一心同体で、目となり耳となり報告をマメにしている。総理が去年に知るまで2年弱という空白期間がある。その間、加計学園と会ったことすら何にも総理に報告しなかったということか」
柳瀬氏「私はいろんな方とお会いしたが、いちいち総理に報告したことは、これに限らずありません。私は(加計学園との面会後)半年足らずで首相官邸を出ている」
長妻氏「加計理事長と携帯電話で話したことはあるか」
柳瀬氏「ない。お互い携帯番号も知らない」
長妻氏「愛媛県の記録にあるように『首相案件』と言った記憶はあるか」
柳瀬氏「当時、国家戦略特区制度が安倍晋三政権の成長戦略の一丁目一番地、目玉政策だとは申し上げた。3年前にどう言ったか、一言一句覚えているわけではないが、総理が『獣医学部新設の解禁を政府として早急に検討していきたい』と言った案件であるという趣旨のことは申し上げた」
長妻氏「首相秘書官として加計学園と官邸で3回も会ったことは、今考えると軽率だったと思わないか」
柳瀬氏「具体的に(設置自治体や事業者を)どこにするのかというのはずっと後の話で、当時はまずこの制度をどうするかという議論だった。何回お会いしたからといって、特別扱いするとか配慮することは全くない。私自身、総理と話したことはないし、各省に指示したことも全くない」
長妻氏「質問は終わるが、首相秘書官が加計学園とだけ会い、懇切丁寧にアドバイスしたということだ。予算委員会での(柳瀬氏の)証人喚問、あるいは加計晃太郎氏の参考人招致をしていただきたい」
柳瀬氏、3度目の面会は平成27年6月ごろ 「加計ありき」というのは…
柳瀬唯夫元首相秘書官を参考人招致した衆院予算委員会は、国民民主党の今井雅人氏の質問に移った。
今井氏「(加計学園関係者と面会したことは)報道も出ているのだからご存じだったんですね」
柳瀬氏「もちろん全部見るわけでございませけども一部は見てますし、そういう報道があったのも承知しております」
今井氏「そうしたら、われわれがこういう質疑をしているのをご存じだと思いますから、その件に関しては加計には会っていたということをなぜしっかりと説明をされないんですか」
柳瀬氏「国会でそのようなやりとりがあったのは申し訳ございませんが、それは承知してございませんでした」
今井氏「ご自分のところがいろいろ話題になっているのに非常に無関心だということで、ちょっとびっくりしましたけれども、柳瀬さんが悪いのか安倍総理が悪いのか。照会を本人にしてないということですから、これ総理にも後日ちゃんとお伺いしないといけないと思います。膿を出すといいながら全然本人に確認しなかったということですから、それはちょっとやっぱり行政府としてはあってはいけないということだということはよくわかりました。2月、3月にお会いしたときは加計学園の方だけで、どなたとお会いになったかは覚えていらっしゃいますか」
柳瀬氏「4月はすごい大人数で来られたので、いっぱいできたなっていう印象はありますけど、2月、3月に来られたときはそういう記憶はございませんので、多分、少ない人数で来られたと思いますので、多分加計学園の事務局の方だけでこられたんじゃないかと思います。ちょっと具体的にどなたっていうのはないですけど、事務局長の方はおられたという気がいたします」
今井氏「事務局長はおられたと。それで吉川さん(泰弘・元東大教授=現獣医学部長)は4月の2日に初めていらっしゃって、その3回のうちその1回だけ来られているということですか」
柳瀬氏「多分そうだと思います」
今井氏「2月、3月のところでは、先方からその獣医学部が50年余り新設されていないこととか、四国の感染症対応の獣医師が不足していること、それから構造特区改革で申請を何度も出してるが実現していない、そして新たに国家戦略特区制度が始まった、っていうのが会話をされたということですけれども、先方から国家戦略特区どうしたいとか、そういうようなお話があったんでしょうか」
柳瀬氏「詳しく覚えているわけでございませんが、国家戦略特区制度でギュッと行くというふうな話になった記憶はございません。むしろ、獣医学部を考えているんだ。でも50年来認められてないんだと、そういうことをおっしゃって、話題の中に国家戦略特区制度も最近できた流行の新しい政策でございましたんで、話題には出たような気がいたしますけれども、特にそこに特化した話だったんではなかったというふうに思います」
今井氏「そうすると4月2日のときは加計学園の方から国家戦略特区で申請をしたいというお話がありましたか」
柳瀬氏「最初に(吉川)元東大教授の方がバーッと世界の獣医学教育の話をパーッとお話しになって、その後事務局の方から国家戦略特区制度を活用したいんだけどもというふうな話があったように思います」
今井氏「事務局の方というのは加計学園の方ですか」
柳瀬氏「そのとおりでございます」
今井氏「2月、3月に、最初に加計学園の方が来られて、獣医学部の新設をしたいと。それで加計学園の事務局の方から国家戦略特区でいきたいという説明があったというのが、4月ですか。加計学園の方が国家戦略特区を活用したいとおっしゃったということでよろしいですか」
柳瀬氏「ご説明されてましたのは、加計学園の事務局の方でございますので、そうだと思います」
今井氏「4月2日のときは今治市の職員の方も愛媛県の職員の方もご発言をされておられないということですか」
柳瀬氏「私に今治市の方や愛媛県の方がご発言されたという記憶はございませんが、あそこはよくわかりません」
今井氏「先ほど愛媛県、農水省で見つかったペーパー、その中にいろいろとアドバイスを、獣医師会のこととか、自治体はこういうふうにやってほしいとか、こういうことを発言したと先程お話をされておられましたけれども、これは加計学園の皆さんに対してこういう発言されたということですね」
柳瀬氏「メーンにしゃべられた方に向かってお答えしたと思います」
今井氏「本来であれば、今治がこれ国家戦略特区を申請しますって言わなきゃいけないんですけど、加計学園が申請をしたいとおっしゃったってことですよね。やっぱり加計ありきだったってことですね。加計と今治がセットになって申請するということで前提に始まってるってことですよね」
柳瀬氏「まずですね、この前に構造改革特区の申請を今治市が加計学園を実施者として申請をしている。そのときから今治市と加計学園が、自治体が今治市、実施者は加計学園ということでずっとやってこられたんだというふうに認識しておりまして、それからちょっと全体の構図に誤解があると思いますが、私はむしろ今治市とかその個別の提案者の善しあしを言っているわけではなくて、実際にそのニーズがあるのかとか、そういうところに関心があって、その制度としてこういうのはどうなのかと、獣医学部の新設っていうのはどうなのかというところに関心があって、具体的に提案があって、それを採択するのはもっとずっと先の話でそこは当時、関心の外でございましたので、別に提案者であろうが、実施者があろうが、実際はどういうふうになっているのかと聞くことにそこに差はないということで、むしろ、提案者以外から聞くのは極めて自然なことだと思う」
今井氏「国家戦略特区に関しては、今治市が提案して、それを公募でやるので加計学園は関係ありませんと、こういう説明をしてきたんです。今おっしゃってることはちょっとその話と矛盾するんですね。今の一連の発言で言うと、加計学園は構造改革特区で一緒に出してたけどだめだから、今度国家戦略特区で今治市と一緒にやりますと、そういう発言されてるわけでしょ。やっぱり最初から今治市は加計学園をパートナーとしてやろうと。そういうことで始まっているということじゃないですか」
柳瀬氏「今、今井先生おっしゃってる加計ありきっていうのはちょっと混乱があると思いますけれども、今治市が将来申請するときに加計学園をパートナーとしようとしているかどうかっていうのは今治市の判断でございまして、我々の判断ではございません。私が関心を持ったのは別に学校の人だろうが、自治体だろうが、獣医学部の新設について具体的なニーズがあるのかとか、四国の地域でどうなのか、そういうニーズがあるんだったらこの制度論を議論するのは意味があるのかなというところに関心がありましたので、今の加計ありきという話と今治市と加計学園がくっついているかどうかっていうのも、今治市がだれをパートナーにするかという今治市の話であって私の関心事項でございません」
今井氏「今治市にこういうアドバイスをしたことはないんですよね」
柳瀬氏「私は『自治体の熱意』とかっていうのがメモにありますけども、この閣議決定しましたこの特区の指定の基準をご説明したということでございまして、それは別に誰に対しても閣議で堂々と出ている指定基準ですからそう堂々とご説明をするということでございます」
今井氏「今治市には説明をされたことはないですね」
柳瀬氏「今治市の方が同席されたかどうかは私にはわかりませんが、アポイントとってこられた方に公表されてる閣議決定の指定基準のご説明をして何か問題があると全く思いません」
今井氏「その後にもう一度来られたって言いましたおっしゃいましたね。それも加計学園の方だけでどなたか覚えてらっしゃいますか。時期も含めて」
柳瀬氏「今治市から国家戦略特区の提案を出すことになりましたと言うお話に来られてましたので、多分後で調べますと今治市が国家戦略特区提案出された6月の4日とか5日とかその辺でございますので、多分その前後、だったと思います」
今井氏「加計学園の方だけですか、今治市の方はそこには来られなかったですか」
柳瀬氏「加計学園の方だと思います。そこに今治市の方が同席されたかどうかちょっと記憶にございません」
今井氏「もう一度確認しますが、先日安倍総理と加計理事長が会食した際に加計学園の方からこういう話があったという記録があるんですけれども、これは他のところは結構鮮明に覚えておられたんですけど、これは本当にこういう発言というのは全く聞かれなかったですか」
柳瀬氏「全く覚えてございません」
江田氏「面会の報告を総理にしたはずだ」 
  柳瀬氏「お耳に入れるほどの話ではないので」
衆院予算委員会での柳瀬唯夫元首相秘書官の参考人招致は、衆院会派「無所属の会」の江田憲司氏の質問に移った。江田氏は元通産官僚で首相秘書官経験者。柳瀬氏の先輩にあたる。
江田氏「ご答弁を聞いていますと、私の総理秘書官としての常識に反することばかりで正直驚いています。柳瀬氏が加計学園関係者と面会したのは、総理大臣か政務の首席秘書官からの指示があったとしか考えられない」
柳瀬氏「総理からも政務の秘書官からも指示は全くございませんでした」
江田氏「他の案件でも、地方自治体の職員とか事業者と会うことがあるのか」
柳瀬氏「私単独ということでございませんけれども、総理のお供をして、大阪や福岡などいろいろな所で具体的な特区の話は伺っておりました」
江田氏「総理官邸の密室で、あなたが当事者になってヒアリングした例は他にあるんですか」
柳瀬氏「特区の関係で、アポイントの申し入れがあったのは加計でございますので、加計学園の方とお会いしたということです」
江田氏「あなたが総理秘書官として、民間の外部の方に会う会わないという基準は何ですか」
柳瀬氏「反社会的勢力などを別にすれば、アポイントの申し入れがあれば、お会いするようにしていました」
江田氏「平成27年4月2日の面談を経た後、同年4月7日に総理は(加計学園理事長の)加計晃太郎さんとお会いになっている。前日には翌日の総理の日程調整を総理を囲んでやりますよね。『総理、明日夜に(加計氏と)お会いになるようですけれど、数日前に私は加計学園の皆さんとお会いしてこんな意見交換したんですよ』と、耳打ちをするのは総理秘書官の職責じゃないんですか」
柳瀬氏「特に総理にお話をしたことはございません」
江田氏「加計晃太郎さんが(4月7日に)総理に『この前は秘書官に会っていただきました。ありがとう』ぐらいのことは言うだろうという予想はつきますよね。総理が立ち往生したり、ポカンとならないように事前に言うのは当たり前の総理秘書官の職責ですよ」
柳瀬氏「(加計氏は)総理の長年のご友人ということでございましたので、総理が立ち往生するとか、ポカンとするとか、なかなかあり得ないことでございます。あえて総理のお耳に入れるほどの話とは思いませんでした」
江田氏「全く理解できませんね。ランチとかそういう総理を囲む場でも、一切この話を雑談しなかったんですか」
柳瀬氏「一切お話したことはございません」
江田氏「最後に「森友学園」問題について聞きます。(安倍昭恵首相夫人付の政府職員だった)谷査恵子さんとあなたは(経済産業省)原子力政策課長のときに課が一緒でしたよね。谷さんをめぐっては、森友問題のいろいろな疑念が出ている。旧知の谷さんから報告を受けたり、知ったことはありませんか」
柳瀬氏「根本的な事実誤認だと思いますけれども、原子力政策課時代に谷さんがいたという覚えはありません。たぶん時期がずれているんだと思います。(秘書官時代には)谷さんを存じ上げませんでした。谷さんが総理夫人付に来られて初めて、谷さんを知りました。森友について谷さんから聞いたことは全くありません」
宮本氏「(メモは)ねつ造の可能性がある?」 
  柳瀬氏「(発言したかどうか)覚えていないということ」
柳瀬唯夫元首相秘書官を参考人招致した衆院予算委員会は終盤に。共産党の宮本岳志、日本維新の会の井上英孝の両氏が質問した。
宮本氏「(平成27年4月2日の面会に関する)農水省から出てきた文書の最後の部分、下村大臣(博文文部科学相。当時)の名前が出てくる部分以外はおおむねお認めになりました。その場に自治体がいることは特段意識なかった興味なかったということだった。ところが、中身を見ますと、自治体がどれだけ熱意を、死ぬ気でやるか、自治体等が熱意を見せて、獣医師会に仕方がないと思わせるようにすることが必要があるとか、自治体向けのことを語っているが、なぜ加計学園だけを相手にそんな自治体のことを語ったのか」
柳瀬氏「戦略特区の特徴として、地域の独自性、先端性を前面に出すというのは制度の趣旨でございますのでそういう趣旨をご説明しました。それから自治体が一生懸命やらないといけないと、これは別に誰であろうが基準として、それは指定するための基準としてそれは書いてありますので、別に自治体であろうが個人であろうが、事業者であろうが、公表されている基準をご説明すると、全く違和感がないと思います」
宮本氏「全体としては認めながら、この最後の加計学園から先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に下村大臣からこういう話があったと。これについてどう対処するかという意見を求めて助言を得たと、このことだけは全く全く記憶にないと断言されるわけですね。なぜそれ以外のところは記憶をたどりたどりなのに、これは全くなかったと断言できるんですか」
 柳瀬氏「拝見すると、他のところはこの制度の趣旨のところでございますので、その制度の趣旨がちょっと表現のこういう表現だったとは思いませんけれども、その制度の趣旨について、そんなずれてなければそれはそういうことを申し上げたのかなということでございます。ここの所は制度の趣旨ではございませんで、事実としてあったのかということでございますので、そこはちょっと記憶にないので覚えてませんということを申し上げてございます」
宮本氏「こういうものは捏造(ねつぞう)する意味が全くないと思うんですね、自治体には。もし全く記憶がないということはこれは捏造された可能性があるということをおっしゃっている訳か」
柳瀬氏「私が申し上げられることは、私としてはちょっと何かこの覚えてないなということで、捏造したかどうかそれは全く私はわかりません」
宮本氏「他はおおむね認めているのに、これだけはなかったというのは、よっぽどこれはなかったという確証があるんですね」
柳瀬氏「そうでございません。それ以外のところについては、制度論として、例えば自治体が一生懸命やらなきゃいけないとか、構造改革特区と戦略特区は両方有効な制度であるとか、それは制度としてはそうだということで、制度の趣旨としては合ってるなということでございます。それは最後のところとの違いでございます」
井上氏「岩盤規制の緩和をどんどんどんどん進めていく、また新たな分野を開拓していって経済成長に結びつけていくという考え方は、われわれ会派として当然のことだと思ってるんです。そういう意味では岩盤規制に穴を開けたというふうにいえる大きな一歩であったというふうには評価しております。ただ、結果的に見ればですね、1年間の特例期間という間にやるということで、アリの一穴じゃないですけれども、非常に小さい穴だったんではないかなというふうに思うんですね。その穴も結果的には今はもう塞がっているということなんですけれども。できれば京都産業大学も含めてですね続いていってほしいということをおっしゃっておられましたが、京都産業大学は将来的に獣医学部を新設するということは断念するというふうに発表された部分もあるんですね。ですから、結果的にはまだまだ岩盤規制というのがですね私は中途半端だというふうに私は言わざるを得ないと思っています。今は経産省に戻られて、岩盤規制の突破というのは完全なものであったと思われるかどうか」
柳瀬氏「安倍政権になって、安倍総理ご自身でできるはずがないと思っていた規制にチャレンジすると。自らドリルの刃となって岩盤規制に穴を開けるんだと。これはやはり秘書官からすると衝撃的な総理のご発言でございまして、当時秘書官としてそれは一生懸命やんなきゃいけないなと、総理がそこまでおっしゃってるんだ、という思いも強く持ってございまして。実際その後、電力ですとか農業ですとか、医療ですとか、この分野、獣医ですとか、ずいぶん大きく動いたと思いますが、ただやはり現実的には、全部100点ではないことはいっぱいあると思います。期間が1年だとか1つに限るとかは私が官邸を出た後の制度設計の議論の中でそうなったと思いますので、ちょっとそこのところは私は議論に参加してございませんので、ちょっとコメントしようがないということでございます」
井上氏「認可の過程において、やはり私は個人的に外形的公平性ってのがやっぱり担保されてなかったんじゃないかな。そのために国民に不信感、大きな不信感というのを抱かせてしまったというふうに思いますし、これがやはり一番非常に残念な点だと私は思うんですね。それはやはり総理と加計理事長が腹心の友、非常に強い絆の友情関係だったとか。要件で、獣医学部の新設に関して空白地域に限るだとかですね。ですから近隣にあったらもうそれだけでだめだとかですね。さらには今年度の4月から開学できないとだめだとか。1校に限る…。そういった要件もさまざまについていてですね、さらにこの外形的な公平性というのが担保されなかったんじゃないかなというふうに思うんですけれども」
柳瀬氏「私が在籍してたときには先ほど27年6月のいわゆる石破4条件と言われたとこまででございまして、先生がおっしゃった空白地帯に限るとか1校に限るとか、1年以内とか、それは後に出てきた制度設計でございまして、ちょっと私はそこの経緯とか、なんでそうなったのかとかちょっとよくわかりません。申し訳ございません」
井上氏「京都産業大学なんかも名乗りを上げたときには、参考人は秘書官をもう辞めておられることになってるんですね。もし首相秘書官であったときにですね京都産業大学からはアポイントのオファーがあったらお会いになってたでしょうか」
柳瀬氏「もちろん時間があれば、お会いしたと思います」
井上氏「公平性というのはやっぱりきちっと担保していただかないとだめなんですね。細心の注意を払ってこのことに当たるべきではあったんじゃないかなというふうに私は個人的には思ってます」
柳瀬氏「私が(秘書官に)おりましたときは、それよりもだいぶ手前でございまして、そもそもこういう制度を獣医学部新設の解禁をするのかどうか。するのであればどういう条件にするのかとかいう時期でございましたので、具体的なニーズがあるのかなという意味でお話を伺ってございましたけど、当然選定プロセスになって競争が始まってればですね、それは配慮が必要だったんじゃないかというふうに思います」 
柳瀬氏「アポ断らない」 危機管理大丈夫?
○寸評 / 柳瀬唯夫・元首相秘書官は2015年4月2日に加計学園幹部と首相官邸で面会したことを認めた際、「政府の外(そと)の方からのアポイントの申し入れに対しては、時間が許す限りお受けするように心がけていました」などと説明しました。
柳瀬氏は「よっぽど反社会的勢力であるとかそういうことを別にすれば」とも述べましたが、これではかなり広範囲の人と面会ができてしまうことになります。私が官邸クラブに所属して取材していたとき、ドローンが許可なく官邸の屋上に飛来したことがありましたが、通常、人の出入りについて官邸の警備は厳重です。記者であっても入廷には特別な登録カードが必要。柳瀬氏とならば誰もが面会ができるようでは、首相官邸としての危機管理が心配になってしまいます。
また、陳情のために面会した場合、柳瀬氏側はメモや入廷記録を取らず、来訪者側だけがメモを取るような状態で、柳瀬氏や安倍首相はトラブルに巻き込まれないのでしょうか。お願いする側のこちらが心配になってしまいます。
「実際、私は総理秘書官時代、物理的に日本にいないとか、物理的に時間がないということはあったかもしれませんが、私が動いている限りはアポイントの申し入れをお断りしたことはございません」とまで言い切った柳瀬氏。ある野党幹部は「全国の自治体に、首相秘書官に会いたければ会ってくれるそうですよって呼びかけたいね」と皮肉りました。公務員としての危機管理意識は大丈夫でしょうか。
愛媛文書の誤解指摘するなら、現知事招致を
○寸評 / 午後の参院予算委員会では、愛媛県の加戸守行・前知事と委員との間で、加計学園の獣医学部新設をめぐる愛媛県文書の信用性について質疑が交わされました。首相官邸での面会時、柳瀬唯夫・首相秘書官(当時)が「首相案件」と述べたと県職員が記録した文書です。
自民党の塚田一郎氏は「総理の看板政策としての重要案件だ、という発言を仮に柳瀬さんがされた場合、『首相案件』という言葉に置き換わってメモが取られたと言うことはありうるか」との問いに対し、加戸氏は「その可能性は高い」と言い切りました。その上で「総理がさばくことになるというようなニュアンスのご発言を受け止めたのが、『首相案件』という言葉になったのかな」と、自身の見立てを披露しました。
愛媛県側が記録した文書に誤解があったのではないかという指摘ですが、直後の立憲民主党の蓮舫氏による質問に対し、当事者である柳瀬氏も「口頭説明用の個人の備忘録と言うことでしたが、それがあちこちに配られ、マスコミに出て、信用力が高まるというのはとっても変な話だ。片方はメモをとって、片方がメモをとらなければ、メモをとった方が常にこうだと後で言えるのは、さすがにおかしい」と疑問符を付けました。
これにはすかさず蓮舫氏が、「さすがにおかしいのは、あなたの記録と記憶が全部ないことですよ。愛媛県の中村時広知事は職員が文章をいじる必要性は全くないと会見で言っている。愛媛県がウソを書いているのですか」と一喝。柳瀬氏は「私が申し上げているのは、私が記憶がないということを申し上げて、愛媛県がどうかということを申し上げているつもりは毛頭ございません」と慌てて否定しました。
加戸氏の参考人招致は与党側の要求で実現しました。今治市が特区に選定された時の愛媛知事は現職の中村時広氏です。当事者の一人である中村知事が、県職員が国会に招致された場合は自らが応じる考えを示しているにもかかわらず、なぜ与党側はわざわざ前知事を呼んだのか。加戸氏や柳瀬氏が愛媛県側の文書に誤解があるというのであれば、中村知事を国会招致してその認識を問う必要があると思います。 
■柳瀬唯夫元首相秘書官 参考人招致 2
柳瀬氏、自宅出る 問いかけに無言
学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、国会に参考人として招致される柳瀬唯夫・元首相秘書官(現経済産業審議官)は10日午前6時40分、東京都杉並区の自宅を出た。報道陣からの「愛媛県関係者との面会は認められるんですか」「いまの気持ちは」との問いかけには答えず、無言のまま車に乗り込んだ。
柳瀬氏らの参考人招致、衆院予算委員会でスタート
加計学園の獣医学部新設をめぐり、「首相案件」と当事者らに伝えたと愛媛県の文書に記されている柳瀬唯夫・元首相秘書官らを参考人招致する衆院予算委員会が午前9時、始まった。文書は2015年、愛媛県と今治市の職員、加計学園幹部らが首相官邸で柳瀬氏に面会した際に県が作成した記録。柳瀬氏が文書の内容をどこまで認めるかが焦点となる。
与党幹部によると、柳瀬氏は県市職員との面会を「記憶にない」と従来の主張を維持しつつ、学園側との面会については認める意向とされる。野党はうそをついた場合に偽証罪に問える証人喚問を要求してきたが、柳瀬氏の軌道修正を糸口に追及を強められると判断、与党が提案する参考人招致に応じた。
柳瀬氏のほか、衆院で八田達夫・国家戦略特区ワーキンググループ座長、午後の参院予算委では加戸守行・前愛媛県知事が参考人招致される。2人はともに獣医学部新設の正当性を主張しており、与党が招致を要求した。
衆院は午前11時15分まで、参院は午後1時から3時15分までの予定。
柳瀬氏、加計学園と面会 「愛媛県や今治の方 記録ない」
柳瀬唯夫・元首相秘書官(現経済産業審議官)は衆院予算委員会で、加計学園の獣医学部新設をめぐり、2015年4月に首相官邸で学園幹部と面会したことを認めた。愛媛県や今治市の職員の同席については「10人近くの随行者の中にいたかもしれない」と述べた。柳瀬氏はこれまで、面会自体を「記憶にない」と否定してきた。自民党の後藤茂之氏への答弁。
柳瀬氏は「加計学園事務局から面会の申し入れがあった。おそらく4月2日だと思うが面会し、獣医学教育に関し国家戦略特区制度の活用を検討しているという話があった」と答弁。「随行の中に愛媛県、今治市の方がいたのかの記録は残っていない」と述べた。
柳瀬氏、首相案件「違う形で伝わったのでは」 
柳瀬唯夫・元首相秘書官(現経済産業審議官)は衆院予算委員会で、加計学園の獣医学部新設をめぐり自らが学園幹部や愛媛県職員らに「首相案件」と発言したとされる愛媛県の文書について、「そもそも私は首相という言葉を使わないので違和感がある。違う形で伝わったのではないか」と否定した。自民党の後藤茂之氏への答弁。
柳瀬氏は学園幹部らとの面会について「(安倍晋三)総理に報告したこともない。話が出た覚えもない」と強調。民間有識者から獣医学部新設の解禁について提案があったことを踏まえ、「解禁は総理が『早急に検討』と述べている案件として(面会で)伝えた」と説明した。
八田氏「総理からも秘書官からも働きかけない」
政府の国家戦略特区ワーキンググループの八田達夫座長は衆院予算委員会で、加計学園の獣医学部新設の特区認定について「(安倍晋三)総理からも(当時の柳瀬唯夫首相)秘書官からも何の働きかけも受けたことはない。獣医学部新設は岩盤規制の中でも最重要案件と考えていた」と述べた。自民党の後藤茂之氏への答弁。
八田氏は緊張からかペーパーを声を震わせながら読み上げ、後藤氏の質問の持ち時間が迫っても答弁を続けた。河村建夫・予算委員長(自民)に答弁を終えるよう指示され、早口で特区認定に関する首相による特別な関与を否定した。
野党の質問始まる 審議拒否から「疑惑解明」に転換 
加計学園問題をめぐる衆院予算委員会での柳瀬唯夫・元首相秘書官の参考人招致は午前9時47分、野党議員による質問時間に移った。大型連休明けに国会での審議拒否戦術を解除し、論戦による政権追及に転じた野党にとって、この質疑が「疑惑解明月間」(立憲民主党の辻元清美・国会対策委員長)の幕開けとなる。自民、公明両党の質疑に比べ、厳しいやりとりが展開されそうだ。
野党のトップバッターはちみつな追及に定評がある立憲の長妻昭氏。橋本内閣で首相秘書官を務めた無所属の江田憲司氏、加計問題をフィールドワークにしてきた国民民主党の今井雅人氏や共産党の宮本岳志氏のほか、日本維新の会の井上英孝氏が質問に立つ。
柳瀬氏、加計学園側との面会「官邸で3回、覚えている」バーベキューも
柳瀬唯夫・元首相秘書官(現経済産業審議官)は衆院予算委員会で、加計学園の獣医学部新設をめぐり、2015年4月のほか、その前と後の計3回、加計学園側と首相官邸で面会したことを認めた。「官邸で会った3回は覚えている。それ以外は覚えていない」と述べた。立憲民主党の長妻昭氏への答弁。
さらに柳瀬氏は、官邸以外で会ったことはあるかと聞かれると、安倍晋三首相が自らの別荘に友人らを招いたバーベキューの際に加計学園の理事長と事務局長に会ったことも認めた。「それ以外に会ったかどうかは覚えていない」と答弁した。
「ゴルフを一緒にしたか」と聞かれた柳瀬氏は、「総理がやっておられるパーティーの後ろのほうで、秘書官たちでついていった」。かかった費用については「総理側のご負担だと理解している」とも述べた。
また、柳瀬氏は「私の(関係者との面会を否定した過去の)答弁をきっかけに(国会審議に)迷惑をおかけし、与野党におわび申し上げたい」と陳謝した。
「国会のやりとり承知せず」柳瀬氏発言に、野党ヤジ
柳瀬唯夫・元首相秘書官(現経済産業審議官)は衆院予算委員会で、加計学園の獣医学部新設をめぐる2015年4月の学園側との面会をこの日まで認めてこなかった自らの対応について、「国会のやりとりは承知していなかった」と述べた。昨年来、面会の事実確認を政府・与党側に求め続けてきた野党議員たちからは一斉にヤジが飛んだ。
国民民主党の今井雅人氏が「なぜ『会っていた』と政府に説明しなかったのか」と質問。柳瀬氏は昨年7月に面会を否定した自らの国会答弁について「(加計学園ではなく)今治市職員と会ったかを聞かれ、記憶にないと答えた」と強調した。その後、野党は事実解明のため、学園関係者と面会したかどうかの確認を求めてきたが、柳瀬氏は「国会から答弁するようにという要請はいただかなかった」と述べた。
秘書官の仕事「首相の目や耳」だが…面会報告否定
○寸評 / 柳瀬唯夫・現経済産業審議官は、加計学園幹部が官邸を訪れたとされる2015年4月2日当時、首相秘書官を務めていました。昨年7月の衆院予算委員会では「今治市の方にお会いしたという記憶はございません」と答弁。加計学園幹部が同席していたかどうかについても翌8月、朝日新聞の取材に「記憶にない」と答えていました。
きょうの衆院予算委では一転、加計学園幹部との面会を認めた形です。今年4月に明らかになった愛媛県文書に「首相案件」と発言したと記されたことについては、「そもそも私は首相という言葉を使わないので違和感がある。違う形で伝わったのではないか」と述べ、首相からの指示を否定しました。
では、なぜ、なんのために加計学園幹部と官邸で面会したのでしょうか。柳瀬氏は「政府の外の方からのアポイントの申し入れに対しては、時間が許す限り、お受けするように心がけておりました」と説明しましたが、国家戦略特区関係の事業者で面会したのは加計学園だけだったことがわかりました。
そもそも一私学関係者と首相秘書官が官邸で面会することは異例なことです。しかも相手は特区制度を利用した獣医学部新設を目指す利害関係者でもあります。さらに、今治市と愛媛県が国家戦略特区に正式に手を上げる約2カ月前というタイミングです。
首相秘書官は、首相の目や耳、手や足となって、多忙極まる首相の執務を補佐するのが役目です。仮に首相の指示がなかったとしても、面会の事実を伝えるのも大事な仕事のはず。安倍晋三首相はこの面会のわずか5日後の4月7日、都内ホテルで加計学園の加計 晃太郎理事長が主催する花見の会への出席が予定されていました。ましてや首相の40年来の親友が理事長を務める学園が相手。柳瀬氏はきょうの答弁で首相への報告を否定しましたが、これでは秘書官の仕事を全うしたとは言えません。「(首相に)全く報告していない」という説明には違和感を覚えます。
また、きょうの質疑ではもう一つ大きな疑問が生じました。今治市が市民の情報開示請求に応じて公開した公文書で、今治市職員は面会前日の4月1日になって急きょ予定が変更し、官邸訪問の日程が追加されたことがわかっています。柳瀬氏は「加計学園側から事前に面会の申し入れがあった」と説明しましたが、同行予定の今治市には誰も事前に連絡をしなかったのでしょうか。
野党側の追及でどこまで真相に迫れるか。今後の質疑からも目が離せません。
江田氏、後輩柳瀬氏に「あなたは1年生の時、青雲の志持っていた」
「柳瀬さん、ごぶさたしています。あなたが1年生で入ってきた時、青雲の志を持っていた」――。衆院予算委員会で、旧通産省(現経産省)出身の江田憲司氏(無所属)が「後輩」の柳瀬唯夫・元首相秘書官(現経済産業審議官)をたしなめる一幕があった。
江田氏が「国民の利益を考えて答弁してください」と呼びかけると、柳瀬氏は首を数回縦に振って応じた。だが、江田氏が自らの役人経験を踏まえて「許認可や補助金の対象となる事業者(加計学園側)と会うのがいかに異例か。その常識を覆して会ったのは、首相や首相秘書官の指示があったとしか考えられない」と断じたのに対し、柳瀬氏は「指示はまったくない」と努めて短く反論した。
加計側との面会について「総理には報告していない」と繰り返す柳瀬氏に対し、江田氏は「口にばんそうこうでも貼らない限り(ないこと)」とあきれたように応じた。
国民民主・今井氏「最初からシナリオできてるな」 
国民民主党の今井雅人氏は、柳瀬唯夫・元首相秘書官への質問を終えた後、国会内で記者団に「差し障りのないところは認めて、(安倍晋三)総理が関与していると思われるようなところに関しては記憶がないとか言ってごまかしている。最初からそういうシナリオできてるな、と感じた」と述べた。
柳瀬氏は、加計学園側と首相官邸で3回にわたり面会したことを認めたが、「事業の主体は加計学園なんですよ。今治市はついていっているだけ。これはもう加計学園ありきと思わざるを得ないと、ますます確信を深めた」と述べ、加計 晃太郎理事長の国会招致を要求するなど、引き続き問題を追及していく姿勢を強調した。
八田氏の答弁、朝日新聞のインタビューと食い違い
○寸評 / 与党の質問に対して答弁した八田(はった)達夫氏は、政府の国家戦略特区のワーキンググループ(WG)座長を務めています。WGは民間人から選ばれた委員で構成され、具体的な提案について特区にふさわしいかどうかを最初に検証、判断する機関です。その結果が各区域ごとの「国家戦略特別区域会議」や、首相が議長を務める「国家戦略特区諮問会議」などの上部組織に持ち込まれ、最終決定されます。提案者がプレゼンテーションできる場でもあり、特区認定の最初の関門にして、詳細な検討が行われる数少ない場です。
さて、そのトップである八田氏は、手元に用意した文章を長々と読み上げたため、自民党議員との質問時間5分の中でやりとりは1回しかありませんでした。ヤジも飛ぶ中、声が震え、聞き取りにくいところもあった答弁では、「総理からも、また秘書官からも何の働きかけも受けたことがありません」と述べました。
また、八田氏は獣医学部新設を一校に限定した理由について、「(日本)獣医師会が政治家に圧力をかけて、何も通らないよりは1校でも通ればやむを得ないだろうという判断」と説明しました。朝日新聞が昨年3月、八田氏にインタビューした際は「両方とも推したら、具体的に京都とここ(愛媛県今治市)だけども、今の政治的状況ではぽしゃるかもしれんという風な判断を聞いて……」と説明していました。「両方とも推したらぽしゃる」という判断を誰から聞いたのか尋ねると、八田氏は同席していた内閣府の藤原豊審議官(当時)を指して「彼から聞いた」と答え、藤原氏は「政府内での議論です」と応じました。当時のインタビューでの八田氏の発言と、今日の国会答弁には食い違いがみられます。
柳瀬氏、朝日新聞の昨年8月の取材「よく覚えていない」
柳瀬唯夫・元首相秘書官は衆院予算委員会で、昨年8月の朝日新聞の取材に対し、加計学園幹部との面会を「記憶にない」と答えていたことについて、「よく覚えていない」と釈明した。朝日新聞はこのコメントを紙面で報じた。柳瀬氏は「(取材は)歩きながらで、向こうの話もよく聞き取れなかった」と述べ、「国会で話した枠で話すのが筋だと思った」と当時の思いを説明した。共産党の宮本岳志氏への答弁。
野党は柳瀬氏の面会の事実を認めるよう政府・与党に迫ってきた。宮本氏に「なぜ放置したのか」と問い詰められ、柳瀬氏は「国会で呼ばれれば説明しようと思った」と述べた。
安倍首相「柳瀬氏は誠実に答え、全てを明らかにしてもらいたい」
安倍晋三首相は午前11時15分、加計学園の獣医学部新設をめぐる衆院予算委員会の質疑について「予算委員会については私は見てはいないが、柳瀬(唯夫)元秘書官は誠実に答え、全てを明らかにしてもらいたいと思う」と述べた。トランプ米大統領との電話協議を受けて首相官邸で記者団の質問に応じた際、答えた。
首相は「獣医学部の問題は国家戦略特区の民間議員のみなさんが『一点の曇りもない』と言っている。『曇りもない』と既に私も言っている」とも述べ、手続きに問題ないとの認識を重ねて強調した。
問題の時期は「決定のプロセス」前 八田氏は当事者なのか
○寸評 / 政府の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)座長の八田達夫氏は今日の答弁で、国家戦略特区について「各省庁や業界の権益と結びついた規制の改革を目的としている」とし、岩盤規制を突破するとの姿勢を強調することで、獣医学部新設の正当性を主張しました。
ただ、いま問題になっているのは獣医学部新設の是非ではありません。その規制改革を行う事業者選定の手続きがゆがめられていなかったか、が焦点です。
八田氏はその事業者選定の経緯について、これまでの国会答弁では一貫して「決定のプロセスには一点の曇りもない」と強く主張してきました。ここはよく考えてみないといけません。問題になっている2015年4月2日の加計学園幹部による首相官邸訪問というのは、今治市や愛媛県が国家戦略特区に正式に手をあげる約2カ月前になります。WGや諮問会議など「決定のプロセス」に乗せる前の話です。つまり八田氏はこの時点では直接の当事者とは言えず、面会の正当性を評価できる立場ではないのではないでしょうか。
衆院の参考人招致終わる 午後は参院 
加計学園の獣医学部新設をめぐり柳瀬唯夫・元首相秘書官らを参考人招致した衆院予算委員会は午前11時21分、散会した。
柳瀬氏は2015年4月の学園幹部との首相官邸での面会を初めて認めた。愛媛県や今治市の職員の同席は「いたのかもしれない」と述べるにとどめた。面会で「首相案件」と述べたかについては「獣医学部新設の解禁は、総理が早急に検討していくと述べている案件である、という趣旨は紹介したように思う」と説明。野党議員は「加計ありき」で計画が進んできた可能性を追及した。
午後1時からは参院予算委でも柳瀬氏らの参考人招致が始まる。
共産・志位氏「柳瀬氏の行為自体が『首相案件』」 
共産党の志位和夫委員長は記者会見で、加計学園の獣医学部新設をめぐり柳瀬唯夫・元首相秘書官が首相官邸で学園側との3回にわたる面会を認めたことについて、「柳瀬氏は『首相案件』と言ったことは認めなかったが、行為自体は『首相案件』として取り扱われ、『加計ありき』だったと示された」と指摘した。
志位氏は「総理の分身である秘書官が3回も(安倍晋三首相に)一切指示も仰がず、報告もしないことはありえない」と強調。「柳瀬氏は証人(喚問)で国会に来ていただく必要がある。加計、愛媛県の関係者も来ていただき、真相を究明する必要がある」と述べた。
石破氏「疑問が完全に払拭されたとは思わない」(11:25)
加計学園の獣医学部新設について質疑が交わされた衆院予算委員会が終わり、自民党の石破茂元幹事長は「加計学園だけが特別扱いされたのではないのかという疑問が完全に払拭(ふっしょく)されたかというと、あまりそういう思いはしなかった」と記者団に述べた。
委員の一人として与党席でやりとりを聞いた石破氏は「疑念を完全に払拭することは(安倍晋三)総理の指示であったわけだから、なかなかその目的は完全には達せられなかったのではないか」とも述べた。
石破氏はその後、自らの派閥の会合で「世の中の感覚からすると、『ホントかな』と思われるようなやりとりもあった」とも指摘した。
午後の参院予算委スタート 蓮舫氏らが質問へ 
加計学園問題をめぐり柳瀬唯夫・元首相秘書官らを参考人招致する参院予算委員会は午後1時、開会した。獣医学部誘致を推進してきた加戸守行・前愛媛県知事も与党の要求で招致されたが、野党側は柳瀬氏に絞って追及する。
午前の衆院予算委の質疑で柳瀬氏は「首相案件」と述べたことを否定しつつ、学園側と首相官邸で3回にわたり面会していたことを認めた。野党は「加計ありき」で計画が進んでいたとみて、柳瀬氏を問いただす構えだ。
1時半ごろ、民進党で疑惑解明を担ってきた国民民主党の川合孝典氏が質問に立つ。1時50分から立憲民主党の蓮舫氏、2時55分からは社民党の福島瑞穂氏と、厳しい追及を持ち味とする女性弁士2人も登場する予定。
柳瀬氏、加計幹部との面会時「全くメモ取ってない」
○寸評 / 柳瀬唯夫・元首相秘書官(現経済産業審議官)は午前の衆院予算委員会で、加計学園の獣医学部新設をめぐり、2015年4月2日に加計学園幹部らと面会した際、「全くメモを取っていません」と述べました。立憲民主党の長妻昭氏への答弁。
また、自民党の後藤茂之氏から「名刺交換したのか」と問われると、「多くの方とお会いするために交換した名刺の中で保存するのは、まあ、ごく一部でございます」と答弁しました。
一般の社会では大事な商談の場合、メモを取ることもあると思います。いただいた名刺は、いつまた連絡を取る必要が生じるのかわからないので、しばらく保存している方も多いと思います。
柳瀬氏は首相の代理を務めることもある「首相秘書官」です。メモを取らずにいて、首相に正確な報告ができなかった場合には国益を損なうことにもなりかねません。「普段から失礼にならないように、自分から名を名乗って名刺交換するように心がけています」と話していましたが、それほどこまやかな心遣いをする方が、相手を選んで名刺をふるいにかけるようなことをするのでしょうか。
橋本龍太郎首相の秘書官を務めた経験がある江田憲司衆院議員(無所属)は、質疑を終えた後、記者団に対し「総理に累が及ばないように、一切指示もなければ報告もしなかったという答弁だったが、全く首相秘書官の仕事の常識に反する」と指摘。「首相秘書官は奥の院の黒衣。側近中の側近で一心同体だ。黒衣は普通、外部の人と会わない」と自らの経験を交えて述べました。秘書官の先輩として、柳瀬氏の説明が秘書官の振る舞いにそぐわないとの認識を示しましたが、柳瀬氏の答弁が変わることはありませんでした。
首相と加計理事長は親友と認識 一方で報告はせず 
柳瀬唯夫・元首相秘書官は参院予算委員会で、獣医学部新設をめぐる加計学園関係者との首相官邸での面会について、「優遇してくれとかいう話はないし、そんなことを(自分が)したこともない」と述べた。自民党の塚田一郎氏への答弁。
柳瀬氏は「私は役人の机上の空論にならないよう、外の人と会うように努めてきた。その一環として加計学園からお話を伺った」と釈明。安倍晋三首相と学園理事長が親友だとの認識はあったとした上で、自らの面会について「総理に報告し、指示を受けたことはない」と述べた。
加計学園側の発言、議事録から消えたのは不自然
○寸評 / 八田達夫・国家戦略特区ワーキンググループ(WG)座長の答弁については、もう一つ疑問があります。
柳瀬唯夫・元首相秘書官が加計学園関係者と面会した約2カ月後の2015年6月5日、八田氏が座長を務めるWGによるヒアリングが行われました。内閣府が発表した議事要旨や議事録によると、ヒアリングに参加したのは今治市や愛媛県の担当者のみとなっていますが、実は加計学園関係者が出席しており、教員確保の見通しなどについて発言していたことも明らかになっています。
加計学園関係者の同席について、八田氏は「説明補助者」と位置づけ、「説明補助者は参加者と扱っておらず、説明補助者名を議事要旨に記載したり、公式な発言を認めたりしたことはない」と説明しています。
柳瀬氏はきょう午前の質疑で、加計学園関係者と会ったことを認める一方、愛媛県や今治市の職員については「同席していたかも」とあいまいに。しかしWGによるヒアリングの議事要旨や議事録には愛媛県の発言だけが残り、加計学園の発言が消えているのです。今治市は一言も発していないことになっています。事業を提案した関係者が現れたり消えたり。どこか不自然な印象が残ります。
WGの運用は誰がどのような権限で決めたのでしょうか。内閣府は、八田氏が座長権限で決めたと説明しているのですが、それでは八田氏の一存で恣意(しい)的に運用することも可能になってしまいます。加えて、諮問会議やWGの民間議員、委員らの起用過程や理由も明らかにされていません。このような運用で特区選定の公平性と透明性は十分に確保できるのでしょうか。
加戸前知事「柳瀬氏会合でのアドバイス、認可につながり感謝」 
愛媛県の加戸守行・前知事は参院予算委員会で、同県今治市への獣医学部新設をめぐる2015年4月2日の柳瀬唯夫・元首相秘書官と加計学園関係者らとの面会について、「この会合でアドバイスをいただいたことが獣医学部の認可に結果的につながった点で、私は感謝申し上げたい」と述べた。自民党の塚田一郎氏への答弁。
面会には同県職員も同席し、柳瀬氏が「首相案件」と述べたとする文書を県が作成した。柳瀬氏自身はこの発言を否定しており、塚田氏がこの食い違いについて尋ねたところ、加戸氏は「総理がさばくというニュアンスの発言を受け止め、『首相案件』という言葉になったのではないか」との見方を示した。ただ、加戸氏は面会前の10年に知事を引退している。
蓮舫氏、柳瀬氏に「あなたの記憶は自在になくし、思い出すのか」 
加計学園問題をめぐる参院予算委員会で、立憲民主党の蓮舫氏が柳瀬唯夫・元首相秘書官に鋭く切り込んだ。蓮舫氏は冒頭、「あなたの記憶は自在になくしたり思い出したりするものなのですか」と挑発。柳瀬氏が「私が記憶を調整していることは全くない。一貫して今治市や愛媛県の方とお会いした記憶はないし、加計学園やその関係者とお会いした記憶はある」とぶぜんとした表情で反論。すると、蓮舫氏は「違う」と一喝した。
昨年7月、柳瀬氏は国会質疑で今治市職員と面会したかを問われた際、「記憶にない」と繰り返した。学園関係者との面会についても、朝日新聞の取材に「記憶にない」と答えていた。蓮舫氏の指摘の通り、「一貫」はしていない。
蓮舫氏は「(国会で)聞かれていないから言っていないというだけだ。不誠実ではないか」と断じられ、柳瀬氏は「一つひとつに答え、結果的に全体像が見えにくくなった。国会の議論を混乱させ、深くおわび申し上げたい」と陳謝せざるを得なくなった。
参院の参考人招致終わる 野党は引き続き追及へ
加計学園の獣医学部新設をめぐり、柳瀬唯夫・元首相秘書官らを参考人招致した参院予算委員会は午後3時25分、散会した。柳瀬氏は2015年に学園側と首相官邸で3回にわたり面会したと明かした一方、「優遇したことはない」と繰り返した。
野党は「加計ありき」で計画が進められたのではないかと柳瀬氏を追及したが、柳瀬氏は全面的に否定。首相の指示も認めなかった。野党議員たちは安倍晋三首相の友人である加計 晃太郎・加計学園理事長の証人喚問を要求。愛媛県の文書に柳瀬氏が「首相案件」と述べたと記されていることから、中村時広知事ら愛媛県関係者の参考人招致を求める意見も出た。
14日には安倍晋三首相が出席する衆参予算委員会の集中審議が開かれる見通し。この日の質疑を踏まえ、野党は首相への追及を強める構えだ。
恩恵受ける側の正当性主張、客観性に乏しい
○寸評 / 愛媛県の加戸守行・前知事は、今治市への獣医学部誘致の旗振り役でした。今治市商工会議所の特別顧問として2016年9月、国家戦略特区に関する分科会のヒアリングで獣医学部の必要性について訴えたほか、昨年の国会答弁では「愛媛県にとっては加計ありきで来た」と述べていました。
今年4月、岡山理科大獣医学部の入学式では「岩盤規制を突破して(新設が)認められた。そんな意味では、魔法にかけられることで出産した獣医学部。昔から難産の子は立派に育つと言われる」とあいさつし、加計学園による獣医学部新設の正当性を主張しました。
きょうの質疑では、自民党の塚田一郎参院議員が、この「魔法」発言の意味を尋ねました。すると加戸氏はこんなふうに答えました。「四角の帽子とマントを着せられたものですから、(映画)『ハリー・ポッター』の魔法の学校に出ているような気がして、連想で魔法という言葉を思いついた。(特区ワーキンググループの議事録で見た)民間委員の魔法の発言で、やっと困難な道が開いて今日につながったという意味だった」。改めて、獣医学部誘致の正当性を主張した形です。
確認しますが、今回の焦点は国家戦略特区の事業者選定が正当なプロセスで行われたか、にあります。加戸氏はワーキンググループの委員でも諮問会議の議員でもなく、特区を選定する立場にもなく、あくまでも「選定される」側。選定する側の人間から特別に教えてもらわない限り、そのプロセスを詳しく知ったり証言したりすることはできません。
また、規制緩和の恩恵を受ける立場の人が正当性を主張するのは当然です。午前中の八田氏と同様、与党が参考人として人選した加戸氏ですが、その証言は客観性に乏しいと言わざるを得ないのではないでしょうか。 
■「愛媛県のメモは雰囲気を伝えているが、一言一句その通りであるはずがない」 
10日午後の参院予算委員会には、学校法人「加計学園」の獣医学部新設までの経緯を知る加戸守行前愛媛県知事が、柳瀬唯夫元首相秘書官とともに参考人として招致された。加戸氏は国家戦略特区の意義を強調した。

塚田一郎氏(自民)「『首相案件』発言で、愛媛県のメモと柳瀬唯夫元首相秘書官の認識が食い違っている」
加戸守行前愛媛県知事「私の知事経験からすれば、愛媛県のメモは、職員が当日官邸を引き上げ、おそらく県の東京事務所で『秘書官はこう言ったよね』と、東京事務所と愛媛県から来た職員とが協議しながら作ったのではないか。およそアバウトな流れとして雰囲気は伝えているが、一言一句その通りであるはずがない」
「私は(文部省の)官房総務課長、官房長として官邸に数十回行っているが、一度も『首相』という言葉は聞いたことがない。必ずみな『総理』と言う。一言一句正確ではないが、雰囲気は伝えているのかな、と思う。ただ、職員の気持ちとしてせっかく東京まで出張したのだから、こういう戦果はありましたと(言いたい)。例えば駆逐艦を撃沈しても『戦艦を撃沈しました』と。それに近いことはあるのかなと。その辺の微妙なニュアンスの差はあると思う」
塚田氏「『獣医学部新設は総理の重要案件』という言葉が、メモで『首相案件』に変わった可能性は」
加戸氏「その可能性は高い。『国家戦略特区の諮問会議の議長は総理だから、総理が裁くことになる』というニュアンスを受け止めて『首相案件』になったのではないか。国家戦略特区に関するアドバイスをいただいたことが今治市での獣医学部の認可に結果としてつながった点で、私は感謝申し上げたい」
塚田氏「加計学園の入学式で、加戸氏は『魔法で生まれた学部』と発言したが、その意図は」
加戸氏「安倍晋三政権の下、(獣医学部新設の認可が)はね返されてきた頑強な砦(とりで)がやっと崩れたという思いが一つ。そして、たまたま入学式の来賓として四角の帽子と黒マントを着せられたものですから、なんか『ハリー・ポッター』の魔法の学校に出ているような気がしたので、連想で魔法という言葉を思いついた」
塚田氏「国家戦略特区(適用)の決定は公明正大に行われたとの認識か」
「(今治市の岡山理科大学獣医学部は)教授陣容や教員組織の質量ともに、従来の大学の1・何倍もの形で作り上げているだけに、日本一だと私も思う。だが、入学式で大変残念だったのは、入り口で反対派が入学生にビラを配り、誹謗中傷していた。本当に悲しいことだった。一日も早く、全国民がこの素晴らしい大学で学ぼうとしている人に元気を与えてほしい。風評被害にもめげずに入学し、これからの獣医学を背負う人材だ」
秋野公造氏(公明)「総理もしくは柳瀬元首相秘書官から、獣医学部新設について直接のアプローチはあったか」
加戸氏「一切ない。ただ、総理の前で私から獣医学部の件を切々と訴えたことはある。それは知事退任後、教育再生実行会議の委員を拝命し、たまたま大学入試改革の議論があったから。援護射撃になるかな、と思い、『獣医学部の入学定員が一切増えないのは大変困っている。何とか獣医学部を作りたいと思ったけれど、岩盤規制に阻まれてきた』と発言した。私はその時、今治とも加計とも一切言っていないから、総理は『愛媛県は獣医学部を作りたいんだな、でもダメなんだな』と認識されたと思う。私はその後、安倍総理とは会合で数十回会っているが、この件は話題に出ていない」
秋野氏「国家戦略特区制度を活用した側として制度をどう感じているか」
加戸氏「諮問会議の民間委員が強力な発言をし、いやがる役所の尻をたたき、議論の積み重ねの後で今日があると考えている。すばらしく有効な制度だ。願わくば、もっと幅を広げてもらいたい。正直、私が愛媛県知事の時には誠にくだらない規制に悩まされました。木造校舎は3階建てはダメ、福祉施設は2階はダメ…。一番ひどいのは、ミカンを学校給食に使う際は5回洗わないといけない。なぜかと調べたら、O157(腸管出血性大腸菌)でカイワレダイコンに懲り、学校給食では皮のあるものは5回洗って出すという規制がある。こういうことは国会でおおいに議論し、皆さんの力で無駄な規制を直してもらいたい」  
■柳瀬元秘書官を追及の野党に批判続出
 「その話ばかりしているほうが深刻」「騒いだ結果これ?」
5月10日、衆参の予算委員会に柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)が参考人として招致され、大きな関心を集めている。
今回の参考人招致は、「加計学園問題」をめぐって行われた。加計学園問題とは、“国家戦略特別区域”に指定された愛媛県今治市にある、加計学園グループの岡山理科大学獣医学部新設計画をめぐり湧き上がった疑惑のことだ。
加計学園の理事長が、安倍晋三首相が「腹心の友」と呼ぶ加計晃太郎氏であることから、野党は「特区で総理の長年の友人が利益を受けている」と指摘。安倍首相は「彼(加計氏)から、この問題について頼まれたことはない」と疑惑を否定したが、2016年9〜10月に文部科学省が作成した文書に、加計学園の計画について「総理のご意向」との一文が明記されていたことが判明し、野党が激しく追及している。
さらに今年4月、首相秘書官を務めていた柳瀬氏が、愛媛県職員などに対して「本件は首相案件」と伝えていた文書の存在が明らかになった。これについて柳瀬氏は「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはない」とコメントを発表。国会は、この問題などをキッカケにゴールデンウィーク前から野党が審議に応じない状態が続いていたが、柳瀬氏の参考人質疑などを条件に、今月8日から正常化した。
そして、10日午前に行われた参考人招致で柳瀬氏は、「加計学園関係者の方と面会しました」と認めた。しかし、自民党の後藤茂之衆議院議員から“首相案件”発言について追求されると、「今治市の個別プロジェクトが首相案件になるという旨を申し上げるとは思えません」と回答し、獣医学部新設に関しても「安倍首相に報告したことも、指示を受けたことも一切ない」と否定した。
今回の証人喚問や加計学園問題をめぐる問題について、インターネット上では「安倍首相の親友と知りながら、加計側と何度か会っていることを『2年間、一切報告もしていない。話題にすらしていない』なんてありえない」「政権側は毎回、毎回、言葉遊びのような答弁。ノラリクラリかわしていけば、いずれ落ち着くと踏んでいるのだろうか。ずっと馬鹿にされている気がする」「こんな子ども騙しのウソを通すような国家運営では、日本はいずれ沈没するぞ」といった批判が上がっている。
日本共産党の宮本徹氏は、ツイッターで「加計学園側が総理及び官邸との個人的関係を生かしものごとをすすめようとしていったということ」「公募で選ばれる側の加計学園側が、今治市が国家戦略特区に申請することになったことを報告にいった。まさによろしくということではないか」と指摘している。
一方で、ネット上には「野党側は『加計学園問題は非常に深刻な問題』というが、国会でその話ばかりしているほうが深刻な問題なのでは?」「これじゃ『騒いで審議拒否した結果がこれ』って感じだし、野党の失策じゃないかな」「黒でも白でも無駄な税金。国際情勢が緊迫するなかで、もっとやるべきことがあるだろ」など、長い間にわたって同問題を追及し続けている野党側の対応を批判する声も多い。
東京・大田区議会議員のいぬぶし秀一氏はツイッターで、「日本の国会はお花畑ですね。中国、韓国の首脳が来日して対北を議論している時に、獣医師会の反対と忖度の争いなんかどうでもいい話です」と苦言を呈している。
注目される加計学園問題は、どのような着地点をみせるのだろうか。 
■柳瀬唯夫・元秘書官の参考人招致は官邸のシナリオ通り 
 嘘と詭弁のくり返しで、国民を麻痺させるウンザリ作戦
連発される凄まじい詭弁の数々……。本日、衆参の予算委員会で参考人として招致された柳瀬唯夫・元首相秘書官の答弁は、呆れるばかりの道理に合わない言い訳に終始した。
まず、柳瀬氏は2015年4月2日の官邸でおこなわれた面会について、「総理とご一緒した際に加計学園の関係者と会ったことがあり、その後、学園の事務局から面会の申し出があった」とし、随行者が10人近い大勢だったため、愛媛県と今治市の職員らが同席していたことは「いたのかもしれないなと思う」と答弁。首相秘書官という立場にある人間が、随行者が誰なのかも気にもせず面談に応じること自体が一般常識的に考えられないのだが、これまでは愛媛県あるいは今治市の職員と面会したのかと問われてきたため「記憶にない」と回答しただけで、嘘はついていない、という姿勢を崩さなかった。
だが、柳瀬氏は先日本サイトでも言及したように、加計学園との面会についても、昨年8月10日の朝日新聞の取材に対して「記憶にない」と回答していた。つまり、どのみち柳瀬氏は嘘をついてきたのだ。この点を共産党の宮本岳志衆院議員に追及されると、柳瀬氏は「よく覚えていない」「向こう(記者)の話もよく聞き取れなかった」と言い訳ばかりを口にした。
「いたかもしれない」「よく覚えていない」──。そう答える一方、柳瀬氏はその加計との面会時の様子を、以下のように語った。
「獣医学の専門家の元東大教授とおっしゃっている方がですね、世界の獣医学教育の趨勢は感染症対策にシフトしているのに、日本はまったくついていっていないという獣医学教育にかんする話を情熱的に滔々とされた覚えがあります」
きっと、国会中継を観ていた誰しもが「鮮明に記憶してるじゃないか!」とツッコミを入れたことだろう。このように柳瀬氏は記憶を自由自在に“使い分け”てみせたのだ。
さらに、噴飯モノだったのが、なぜ加計関係者と面談したのかという質問への答弁だ。柳瀬氏は“世間とズレないように”と心がけていたと言い、「アポイントの申し入れに対しては、時間が許すかぎりお受けするように心がけていました」と発言。事実ならば殊勝な心がけであるが、しかし、国家戦略特区にかかわる事業者と面会したのは加計学園だけだったことが判明した。
よくもここまで詭弁を連発できるものだと呆れるが、さらに「首相案件」という文言をめぐっても、「そもそも私は首相という言葉を使わないので違和感がある」と強弁。だが、何度も指摘してきたように、「総理」は口語として使われる言葉で、文書化の際には「首相」とするのが一般的だ。にもかかわらず、田崎史郎氏をはじめとする御用ジャーナリストたちはこの些末な話をもち出して愛媛県文書の内容に疑義を呈してきた。こうした対抗案は官邸が流してきたと言われているが、ようするにきょうの柳瀬氏の答弁も、官邸のシナリオどおりのものだということだ。
そして、柳瀬氏はこの「首相案件」発言問題について、「獣医学部新設の解禁は総理が早急に検討していくと述べている案件である、という趣旨は紹介したように思う」などと言い、それを愛媛県職員は「首相案件」と受け止めたのではないかと主張をおこなった。
しかし、ほかの事業者ではけっして叶わない、首相秘書官直々に官邸で面会をおこなっているという事実こそが、「加計ありきの首相案件」であることを指し示しているではないか。しかも、きょうの答弁で判明したことだが、柳瀬氏はこの2015年4月2日以外にも、加計学園関係者と2月か3月に1回、さらに6月にも1回、面会したといい、短期間のあいだに計3回も話し合いの場をもってきたというのだ。
本サイトでは2013年5月6日におこなわれた安倍首相主催のゴルフコンペに加計晃太郎理事長と柳瀬氏が参加していたことを伝えたが、柳瀬氏によれば、2015年2〜3月におこなった第1回目の加計関係者との面談は、このゴルフ前日のバーベキューパーティで会った加計学園事務局長から「上京するので会いたい」と打診を受け、おこなわれたものだと説明。挙げ句、柳瀬氏は計3回の加計関係者との面会について「個別の案件を総理に報告する必要はない」と言い張り、安倍首相に一度も報告していないと宣ったのである。
約2年も前に1回会っただけの人物と「上京するから」などと理由もなく官邸で面会するなど常識的に考えられない上、ほかならぬ安倍首相の別荘で会った「安倍首相の友人」が理事長を務める学校関係者と官邸で会うのに、一切報告をしなかったという話が通用するはずがないのだ。
このように、納得できるような説明がただのひとつもおこなわれなかった、柳瀬氏の答弁。与党が頑なに偽証罪に問われる証人喚問を拒んだ理由もよくわかるというものだが、安倍首相はこんな内容でも「真実が語られた」と胸を張るのだろう。
まさに国民を舐め切った、安倍政権の常套手段だ。どんなその場しのぎのデタラメや嘘でも、強弁を続けていればそのうち国民が批判することに疲れてきて、問題がうやむやになり、批判が収束すると踏んでいる。政権は、消耗戦に持ち込めばいいだけ。それを繰り返して、そのうち「もううんざりだ」「何を言っても無駄」と人びとの感覚を麻痺させていく。しかし、「もううんざりだ」と目を背け、こんな居直り作戦を許してはいけない。
明日11日の18時30分からは、全国各地の自民党本部前で一斉に抗議活動がおこなわれる予定だ。一体どこまで国民を馬鹿にする気なのか、その声を大きくしていくと同時に、加計学園問題はまだまだ追及が必要だ。 
■柳瀬唯夫 (やなせただお、1961-)
静岡県出身。1984年、東京大学法学部卒業、通商産業省入省。イェール大学大学院国際開発経済学科修了。
2004年6月 資源エネルギー庁原子力政策課長
2007年7月 経済産業省経済産業政策局企業行動課長
2008年9月 麻生内閣の内閣総理大臣秘書官
2009年12月 経済産業政策局産業再生課長
2010年7月 経済産業省大臣官房総務課長
2011年7月 経済産業政策局審議官
2012年12月 第2次安倍内閣の内閣総理大臣秘書官
2015年8月 経済産業政策局長
2017年7月 経済産業審議官

経済産業省は4日、菅原郁郎事務次官(60)が退任し、後任に嶋田隆通商政策局長(57)を起用する人事を発表した。片瀬裕文経済産業審議官(58)の後任に柳瀬唯夫経済産業政策局長(55)を充て、後任の局長に糟谷敏秀製造産業局長(55)が就任する。5日付で、柳瀬氏のみ14日付となる。嶋田氏は東京電力福島第1原発事故後に、東電の取締役執行役に就いて再建を主導した。柳瀬氏は安倍晋三首相の秘書官などを歴任した。特許庁長官には宗像直子首相秘書官(55)、中小企業庁長官には安藤久佳商務情報政策局長(57)が就く。
柳瀬元秘書官に焦りなし 政権守って余裕の“億ション”生活 4/14
「本件は首相案件」――。加計学園の獣医学部開設をめぐって、2015年4月に官邸で面会した愛媛県や今治市職員らに対し、そう発言したという柳瀬唯夫首相秘書官(当時)。「自分の記憶の限りでは」と、微妙な言い回しで事実関係を否定したが、野党は納得せず。証人喚問については与党も容認姿勢を示し、不可避の状況だ。それでも柳瀬氏に焦りは見られない。証人喚問など屁でもないと思っているのかは知らないが、悠々と「億ション」ライフを満喫している。
面会した発言の真偽をめぐってすっかり「渦中の人」の柳瀬氏だが、12日、来週予定されている安倍首相訪米の勉強会出席のため、午前と午後の計2回にわたり首相官邸を訪問。会合後、大挙した報道陣に「国会招致の話題は出たか」と問われても、「しないよ」「(話題は)アメリカの話」と妙に余裕しゃくしゃくだった。
現在、経産省ナンバー2の審議官を務める柳瀬氏は、このまま安倍政権を守り切れば、夏の人事で事務次官に出世できる可能性が高い。昨年7月の閉会中審査で官邸での面会について質問された際も「記憶にない」を7連発してノラリクラリだったから、おそらく“次のポスト”を見据えた振る舞いだったのだろう。
そんな柳瀬氏が住むのは東京都内 ・・・ マンションは築15年と決して新しくはないものの、現在の中古価格でも1億円は下らない「億ション」だ。親族から相続したとみられる。
柳瀬氏と学生時代からの友人はこう話す。
「柳瀬くんは、自ら悪に手を染めるような人間ではありません。真面目な性格なだけに、秘書官として総理を守るという使命感を強く持っているのでしょう。それ以上に、官邸の意に反した行動を取れば、手痛いしっぺ返しを食らうことが分かっている。だから、曖昧な発言に終始せざるを得ないのでしょう。彼は本音では『苦しい』と思っているのではないか」
 

 

■加計問題で新文書、首相「獣医大学、いいね」 5/21
学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画を巡り、愛媛県が21日に国会に提出した文書。安倍晋三首相や側近の国会答弁と食い違う記録が新たに示された。何が真実なのか。矛盾がまた広がった。
愛媛県の新文書は政府関係者らとの面談のため、東京出張を命じる「旅行命令(依頼)簿」4枚、出張を報告する「復命書」3枚、「面談結果概要メモ」2枚、首相秘書官だった柳瀬唯夫・経済産業審議官への「説明内容を書き起こしたメモ」1枚、「個人メモ」6枚など。加計学園、愛媛県の動きが詳しく書かれている。
これまでの政府側説明と最も食い違うのは、安倍首相が同学園の獣医学部新設計画を知った時期。首相は「2017年1月20日」との国会答弁を繰り返してきた。これに対し、新文書は加計学園関係者からの報告内容として、「15年2月25日」に同学園理事長と安倍首相が面談。首相が「新しい獣医大学の考えはいいね」と発言したとしている。
新文書の内容が事実なら、国会答弁より2年近く前に計画を把握していたことになる。
柳瀬氏は「(計画は)首相案件」と発言したことを再三にわたって否定。今月10日の参考人招致でも、同県職員が作成した文書に記載されていた「本件は、首相案件」との発言について「伝えたかった趣旨と違っている」「『首相』という言葉を使わないので、私の発言として、やや違和感がある」と説明していた。
ところが、新文書では形式の異なる複数のメモに柳瀬氏の発言として「獣医学部新設の話は総理案件」「本件は、首相案件」などと記載がある。
また柳瀬氏は15年4月2日の面会で加計学園関係者が主に話しており、約10人の随行者に愛媛県や今治市の職員が含まれていた可能性があるなどとしていた。ただ、新文書には部屋の大きさの都合で6人しか入れなかったとの記載があり、やりとりを記したメモは愛媛県職員の発言内容も記録している。 
■柳瀬氏「獣医学部新設の話は総理案件」 5/21
学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り、愛媛県が21日に国会に提出した、政府側との面会に関する新たな内部文書。県関係者が2015年4月2日に柳瀬唯夫首相秘書官(当時)や内閣府の藤原豊・地方創生推進室次長(当時)と面会した際のやり取りが記録されている。
内閣府藤原次長と柳瀬総理秘書官との面談について
4月2日(木)の面談結果について下記のとおり概要メモを報告します。
【内閣府 藤原次長】
愛媛県と今治市からこれまでの取組を簡単に説明した後、今後の特区提案について下記のような話があった。
・構造改革特区として提出されているが、突破口を開くという意味では国家戦略特区で申請することも考えられる。
・今年度から構造改革特区と国家戦略特区を一体的に取り扱うことになった。国家戦略特区では広く全国レベルの制度改革提案というものであり、一般的な話にはなるものの、やはり風穴をあけた自治体を特区として指定するというのは十分に考えられる。
・今後4月末から5月の連休明けには提案を募集するので、それにぜひ応募を。
・総理は一次産業にも熱心である。申請の軸として獣医学部のみならず水産、養殖といった他産業についても盛り込むことも考えられるが、そのあたりは自治体に任せる。
・事前相談も対応する。むしろ熱心な自治体ほどもってきているといった感じがある。言い換えると自治体にどれくらいの熱意があるか、というところが重要になってくる。
・公衆衛生の観点、公務員獣医の確保といったこれまでの獣医学部ではなかったようなものを提示することも重要である。加計学園の名前は公式なペーパーには出ていないそうだが、実際の事業者と具体的な話ができている、といった点でかなりプラスであると思う。
・申請するにあたっては、2、3枚の分量で具体的かつインパクトがあるものを。資料を作成されたら、早めに相談してもらいたい。
(現在26次特区申請を行っているところだが(今治市))
・特区申請を一体化するという理由から現在審議を止めているところ。
(新潟市から国家戦略特区で追加申請があったかと思うが(愛媛県))
・一時期は打診があったが、現在はそうでもない。具体性があるかどうかでいえば、今治市のほうが上だと思われる。
【官邸 柳瀬秘書官】
・獣医学部新設の話は総理案件になっている。なんとか実現を、と考えているので、今回内閣府にも話を聞きに行ってもらった。
・こういった非公開の場でなく、ちゃんとした公開でのヒアリングを行い、「民」の評価を得る必要がある。そのためには魅力的な提案であること(を)示す必要がある。
・獣医師会の反対がある、という点については、これから新設する獣医学部は既存の学部と競合しない分野であることを主張するほうが良い。進路が競合するのではないか、という心配を払しょくするものができれば。
・役所としても厚生省・農水省は獣医学部の空白地帯である四国に学部ができることは、鳥インフル対策等の観点からも望ましいと思っているはず。文科省もいい大学ができるのであれば反対はしないだろう。
・ただし、正面をきるのは得策ではない。こういう特徴があり、これまでとはこういった点を差別化している、という情報をクリアにする必要がある。
・まずは企画書を。その後に応援団、こういうものを地域は望んでいた、という後押しをしてくれるところを味方につけること。四国全体の要望として出すのであればベスト。
・特区担当(内閣府)は調整をするところである。官邸にも内閣参事官として農水省と文科省から出向している者がいるので必要に応じて相談してはどうか。構造改革特区でやるか国家戦略特区でやるかはテクニカルな問題である。
・公開ヒアリングの日程を決めること、そしていい中身をつくることがマスト。(さきほど内閣府で藤原次長とも話をしたが、まずは国策として国家戦略特区で申請する、という話がでた(愛媛県))
・国家戦略特区のほうが、政治的に勢いがある。地方創生特区はあまり数が増やせないということもある。四国はまだないから、香川が打診中だったと思うが、申請する意味はあるだろう。
・確認だが、愛媛県・今治市の両首長がやる気である、ということで間違いないか。
→間違いない。県からは重要要望として毎年提出させていただいているし、今治市は土地の準備まで行っている。
・四国全体の要望としてはどうか。
→四国各県も公衆衛生に携わる者、公務員獣医は不足しているという共通認識がある。四国知事会でも、今治地域で、との文言はないが、要望としてあげている。
・そのスタンスであれば獣医師会の反対は要件ではないように思うが。
(懸案として、安倍総理が文科省からの宿題を返せていないという話があり、そのことを心配されていたと聞いたが(加計学園))
・その話は下村大臣のところにもっていったのか?
(百点満点の答えがでているわけではないが、その点については県・市からも説明してもらいたい(加計学園))
(昨年12月に専門教育課にはご説明に伺っている。獣医師会について一度説明はしているものの、それから面会すらできないといった状況であり、こちらとしてもなんとかしたいと思っているところである。(愛媛県))
(中央(獣医師会)からの引き留めが強いが、「うちに作るなら」という話があるのも事実(加計学園))
・それならば企画書をつくって特区担当者に説明するがてら下村大臣の耳にも入るようにすればよい。文科省でいうと高等教育局の吉田局長にしかるべきときに提案を。
・文科省からの宿題(獣医師会の賛同を得ること)については個別に対応するのではなく、企画書として全体を見られる形でつくるべき。
・文科省の中では求めたものに対応していない、という認識があり、県や市が行っているという認識とにずれがあるように思う。(角田参事官)
・状況は常に本省にも説明している。企画書ができれば農水省にも説明を。(青山参事官)
(特区関連は直接藤原次長に行ったのでいいか)
・構わない。とにかくいいものを作ること。 
■安倍首相が「獣医大学はいいね」 5/21
学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設をめぐり、2015年2月に学園の加計晃太郎理事長が安倍晋三首相と面会した、と学園側から報告を受けたとする内容を、愛媛県職員が文書に記録していたことがわかった。加計氏が学部新設を目指すことを説明し、首相が「新しい獣医大学の考えはいいね」と応じたとの報告内容も記されている。愛媛県は21日、この文書を含む関連の文書計27枚を参院予算委員会に提出した。
これまで安倍首相は、加計氏について「私の地位を利用して何かをなし遂げようとしたことは一度もなく、獣医学部の新設について相談や依頼があったことは一切ない」と答弁している。また、学園の学部新設計画を知ったのは、国家戦略特区諮問会議で学園が学部設置の事業者に決まった17年1月20日、とも説明していた。15年2月の段階で加計氏が話をしたとする文書の内容と、安倍首相の説明は矛盾しており、あらためて説明を求められそうだ。
首相の発言が記録されている愛媛県の文書は「報告 獣医師養成系大学の設置に係る加計学園関係者との打合せ会等について」との題名で、「27.3.」と書かれている。15年3月に作成されたとみられる。
文書では、学園側の報告として「2/25に理事長が首相と面談(15分程度)」し、加計氏が首相に「今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明」と記載。「首相からは『そういう新しい獣医大学の考えはいいね』とのコメントあり」と記されていた。
別の文書には、今治市からの報告として、加計氏が安倍首相と会う前の15年2月に、学園側が加藤勝信・元内閣官房副長官(現・厚生労働相)と面会した、との記述もあった。獣医師養成系大学の設置は「厳しい状況にある」とし、学園の動向として、国家戦略特区で獣医学部新設を目指す新潟市への危機感から「理事長が安倍総理と面談する動きもある」と書かれていた。
当時の柳瀬唯夫・首相秘書官(現・経済産業審議官)に関して記述された文書もあった。今治市からの報告として、同年3月24日に柳瀬氏と学園側が面会した際、柳瀬氏が「獣医師会の反対が強い」と述べ、「この反対を乗り越えるため」として、「内閣府の藤原地方創生推進室次長に相談されたい」と述べた、と記載されていた。
文書は参院予算委の要請に応じて県が再調査した結果、見つかったといい、今治市、加計学園の職員らと首相官邸などを訪れた15年4月2日の面会内容や、この面会に至るまでの経緯が主に記されている。愛媛県は公表していないが、朝日新聞は国会関係者から入手した。

加計学園は「理事長が2015年2月に総理とお会いしたことはございません。既に多くの新入生が大学で勉学をスタートしており、新学期の学務運営、また在学生の対応でとても取材等受けられる状態ではありません」などとするコメントを出した。 
■「首相と加計理事長が会食、大学設置の話」 5/21
学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り、愛媛県が21日に国会に提出した、政府側との面会に関する新たな内部文書。学園の加計晃太郎理事長が2015年2月に安倍晋三首相と面会し、獣医学部設置の予定を説明したところ、安倍首相から「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」とのコメントがあったという記述がある。

報告
獣医師養成系大学の設置に係る加計学園関係者との打合せ会等について 27.3.
地域政策課
1 加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告したいとの申出があり、3月3日、同学園関係者と県との間で打合せ会を行った。
2 加計学園からの報告等は、次のとおり。
12/25に理事長が首相と面談(15分程度)。理事長から、獣医師養成系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは「そういう新しい獣医大学の考えはいいね。」とのコメントあり。
また、柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示があったので、早急に資料を調整し、提出する予定。
2下村文科大臣が一歩引いたスタンスになっており、県においても、官邸への働きかけを非公式で実施いただけないかとの要望があったが、政治的な動きは難しい旨回答。
3検討中の大学附置施設(高度総合検査センター等)の設置には多額の費用が必要であるが、施設設置に伴う国からの補助がない中、一私学では困難であるので、国の支援が可能となる方策の検討を含め、県・市の財政支援をお願いしたい。
なお、3月4日には、同学園と今治市長が面会し、ほぼ同内容の説明があった。
3 おって、3/3に開催された国家戦略特区諮問会議では、特区法改正案に盛り込む追加規制緩和案が決定されたが、新潟市の国家戦略特区(獣医学部設置に係る規制緩和)は、含まれていない。今後、26年度末までに出される構造改革特区提案(愛媛県・今治市)に対する回答と合わせて、国家戦略特区の結論も出される模様。
4 ついては、加計学園の具体的な大学構想が示されたことから、特区提案の動向を踏まえ、今後の対応方針について、今治市としっかりと協議を進めていきたい。

報告
獣医師養成系大学の設置に係る今治市と加計学園との協議結果について 27.3.
地域政策課
1 今治市と加計学園関係者との獣医師養成系大学の設置に係る協議(3/15、同市役所で実施)結果概要について、次のとおり報告があった。
(1)柳瀬首相秘書官と加計学園の協議日程について(2/25の学園理事長と総理との面会を受け、同秘書官から資料提出の指示あり)
(学園)3/24(火)で最終調整中である。
(2)柳瀬首相秘書官への提出資料について
(学園)今後、資料の最終調整を行う。資料が出来次第、連絡する。
資料としては、1学園作成の概要版資料(アベノミクス支援プログラムの企画提案)、2県・市の資料、3参考資料として「海外の動き」、「特区提案の経緯」及び「全国の獣医大学分布図」などを添付予定。
(市)県・市作成資料(25年12月副知事と市長の文科省訪問時の資料)と学園作成の大学構想資料とを区分して提出願いたい。
26.12.17 東京圏国家戦略特別区域会議「成田市分科会」(医学部の新設を検討)における成田市及び国際医療福祉大学の資料を例に構成すること。(別紙p.3)
学園作成の概要版資料の表紙(別紙p.4)は、写真及び県と市のマークやキャッチフレーズは削除し、学園名を明記。
(3)大学構想について
(学園)日本獣医師会の反対意見から考えて、今回提案したレベルのものでなければ難しいと思う。
(市)今回の構想の実現に関しては非常に巨額の資金が必要とのことであるが、今治市としては、50億円の支援と用地の無償提供が限界である。その中で資金計画を練ってほしい。
また、県からも協力をいただけると思っているが、県としても厳しいとの話は受けている。《加計学園からの反応なし》
(学園)構想実現のために、愛媛大学との共同大学院の開設や愛媛県の研究機関との連携を検討しているので、協力願いたい。
(4)文部科学省の動向について
(学園)文科省から獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議委員に対する意見照会を実施している模様。
2/25に学園理事長と総理との面会時の学園提供資料のうち、「新しい教育戦略」(別紙p.5−6)に記載の目指すべき大学の姿に関する部分を抜粋したアンケート形式の資料を示して、短期間での回答を求めている。アンケート結果は、柳瀬首相秘書官との面会時に、学園に対し、情報提供されるものと推測。
なお、委員からの評判は概(おおむ)ね良いとの情報を得ている。
2 ついては、引き続き、今治市と連携しながら、柳瀬首相秘書官に提出する資料確認や面会結果及び文科省の動向等について、情報収集に努めて参りたい。
(参考) 加計学園の直近の動向・今後の予定
2/25 理事長と安倍総理が面談
3/3 県との打合せ会
3/4 今治市長と面談
3/8 山本順三参議院議員を励ます会に出席した下村文科大臣と面談
3/15 今治市と協議
(市:企画財政部長、企画課長)
(学園:事務局長、次長、参事)
3/24又は3/26(調整中) 柳瀬首相秘書官に資料提出

報告
獣医師養成系大学の設置に係る内閣府及び首相秘書官訪問について 27.3.
地域政策課
1 3/24(火)、首相官邸において、柳瀬首相秘書官らと加計学園関係者との間で、獣医師養成系大学の設置について協議した結果について、次のとおり今治市から報告があった。
《柳瀬首相秘書官の主なコメント》
・獣医師会の反対が強い。
・この反対を乗り越えるためには、地方創生特区の活用が考えられるので、県や今治市と一緒に内閣府の藤原地方創生推進室次長に相談されたい。
2 また、加計学園から内閣府の藤原次長との相談日程が4月2日11時30分に調整できたとの連絡があったと今治市から報告があった。
さらに、安倍総理と加計学園理事長が先日会食した際に、獣医師養成系大学の設置について地元の動きが鈍いとの話が出たとのことであり、同学園としては柳瀬首相秘書官に4月2日午後3時から説明したいので、県と今治市にも同行願いたいとの要請があったと今治市から連絡があった。
3 ついては、柳瀬首相秘書官に対し、県・今治市の獣医師系養成大学の設置に向けた取組状況を丁寧に説明するとともに、内閣府藤原次長から地方創生特区等について、情報収集をいたしたい。
(参考)加計学園の直近の動向・今後の予定
2/25 理事長と安倍総理が面談
3/3 県との打合せ会
3/4 今治市長と面談
3/8 山本順三参議院議員を励ます会に出席した下村文科大臣と面談
3/15 今治市と協議
3/24 柳瀬首相秘書官との面談 
■加計側「藤原氏紹介、柳瀬氏に礼述べたい」 5/21
学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り、愛媛県が21日に国会に提出した、政府側との面会に関する新たな内部文書。県関係者が2015年4月2日に首相官邸で、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)らと面会した際の詳しいやり取りが記録されている。

復命書
命により、平成27年4月2日限り
内閣府地方推進室次長及び総理秘書官との面談のため、東京都に出張したので、復命します。
平成27年4月3日
愛媛県知事 中村時広様
出張者職氏名 課長 主幹

1 日時及び場所
平成27年4月2日(木)11時30分〜12時30分 内閣府
15時〜15時40分   総理官邸
2 用務
今治新都市への獣医師系養成大学の設置に係る内閣府地方推進室及び総理秘書官との協議
3 内容
別紙のとおり。
別紙
【訪問者】
愛媛県      地域政策課長○ 主幹○
愛媛県東京事務所 行政課主任○
今治市      企画課長○ 課長補佐 
加計学園     相談役○ 事務局長○ 次長 参事 
注 総理官邸への訪問者は、部屋の大きさの関係で6名に制限されたため、○のある者が訪問
【相手方】
○内閣府地方創生推進室次長国家戦略特別区域等担当 藤原豊(経済産業省)
近畿圏地方連絡室 杉浦あおい
○内閣総理大臣秘書官 柳瀬唯夫(経済産業省)
内閣参事官 角田喜彦(文部科学省)
内閣参事官 青山豊久(農林水産省)
《県 市と加計学園との事前打合せにおける事務局長の主な発言》
・柳瀬秘書官に対しては、内閣府藤原次長を紹介いただいたことに対してお礼を述べたい。
・先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったことに対し、理事長から柳瀬秘書官にちゃんと説明しておくように言われている。同秘書官からも、本日、その点を質問される可能性があり、県・今治市から、100%の回答にはなっていないが、ちゃんと昨年12月26日にペーパーにより文部科学省に直接説明している旨を回答してほしい。
《藤原地方創生推進室次長の主な発言(内閣府)11:30》
・加計学園からは3月24日に1度話は聞いているとして、県・今治市から、獣医学部へ取り組む目的や姿勢、今治市が既に大学用地を準備していること、日本獣医師会や既存の獣医大学の反対がネックになっていることなどを説明。
・要請の内容は総理官邸から聞いており、県・市がこれまで構造改革特区申請をされ、実現に至っていないことも承知。
・政府としてきちんと対応していかなければならないと考えており、県・市・学園と国が知恵を出し合って進めていきたい。
・そのため、これまでの構造改革特区のように事務的に対応されて終わりということではなく、国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい。
・国家戦略特区は、地方自治体に限らず、事業者や個人からでも全国レベルの制度改革の提案を受け付けるが、制度改革の実現のためには地方自治体の強力なバックアップが必要。言い換えると、知事や市長など自治体にどれくらいの熱意があるかというところが重要になってくる。
・国家戦略特区は、自治体等から提案を受けて、国の判断により地域を指定するものであるが、風穴を開けた自治体(提案をした自治体)が有利。仮に国家戦略特区申請を行ってその指定を受けられない場合でも、出口は、構造改革特区の指定や別の規制緩和により、要望を実現可能。
・(現在26次特区申請を行っているところであり、その最終結果が公表されていないが、その点はどうなるのかとの質問に対して)最終結果の公表は保留している。
・今年度から構造改革特区と国家戦略特区を一体的に取り扱うこととし、年2回の募集を予定しており、遅くとも5月の連休明けには1回目の募集を開始。
・ついては、ポイントを絞ってインパクトのある形で、2、3枚程度の提案書案を作成いただき、早い段階で相談されたい。
・総理は第一次産業にも熱心であり、提案内容は、獣医大学だけでいくか、水産、養殖といった他産業などの関連分野も含めるかは、県・市の判断によるが、幅広い方が熱意を感じる。
・事前相談も対応する。むしろ熱心な自治体ほど持ってきているといった感じがある。
・獣医師会等とは真っ向勝負にならないよう、摩擦を少なくして、既存の獣医学部と異なる特徴、例えば、公衆衛生の観点や公務員獣医師や産業獣医師の養成などのカリキュラムの工夫や、養殖魚病対応、アジアの拠点・四国の拠点にする、鳥インフル対策、人獣共通感染症対策、地域の人材育成などに加え、ペット獣医師を増やさないような卒業生の進路の見通しなどもしっかり書きこんでほしい。
・かなりチャンスがあると思っていただいてよい。
・(本件は地方創生特区にならないのかとの質問に対して)地方創生特区は、現在3件指定しているが、地域に限定したものであり、その数をどんどん増やしていくものではないと考えている。本件は、四国という地域に限定したもので、地方創生になじむ面もあるものの、地方創生特区としては考えていない。
・獣医学部の設置について、愛媛県だけでなく、四国4県で応援している形がほしい。
(四国知事会では、四国に獣医学部が必要であるとして要望しているが、今治市に設置ということになると、他の3県も同意していないとの回答に対して)
四国他県の対応として、それは理解できるし、そこまでは、求めない。
・(新潟市の国家戦略特区の獣医学部の現状はどうかとの質問に対して)愛媛県・今治市としても気になることだと理解できるし、ここだけの話であるが、新潟市の国家戦略特区の獣医学部の現状は、当初よりもトーンが少し下がってきており、大学用地を用意している今治市と比べても、具体性に欠けていると感じている。
《柳瀬首相秘書官の主な発言(総理官邸)15:00》
・本日は、地方創生関連の一部改正法の議員説明が予定されており、多忙を極める内閣府藤原次長に面会できたのは良かった。
・本件は、首相案件となっており、何とか実現したいと考えているので、今回、内閣府にも話を聞きに行ってもらった。今後は、こういった非公式の場ではなく、藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい。魅力的なものを持って行って相談してほしい。
・国家戦略特区でいくか、構造改革特区でいくかはテクニカルな問題であり、要望が実現するのであればどちらでもいいと思う。通しやすい方でいい。現在、国家戦略特区の方が政治的に勢いがある。地方創生特区がピッタリではあるが、そう数は増やせない。四国は国家戦略特区の指定がないという点もいい。香川が打診中だったと思うが、申請する意味はある。
・いずれにしても、自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件。
・県も市も首長がやる気になっているのかとの質問に対し〈積極的に取り組む姿勢であると回答〉
・四国に獣医大学がないのは有利。まずは企画書を提出いただきたい。その後に四国の獣医師会などの応援団、こういうものを作ってほしいという後押しをしてくれるところを味方に付けること。鳥インフル対策や水産物の輸出の関係で人がほしいとか、県だけでなく、四国全体の要望として出てくるのであればベスト。日本獣医師会が反対している中で、愛媛県獣医師会が賛成しているのは評価できる。
・四国全体の要望としてはどうかとの問いに対して〈四国各県も公衆衛生に携わる者、公務員獣医は不足しているという共通認識がある。四国知事会でも、「今治地域で」との文言はないが、要望として上げている旨回答〉。
・四国の獣医大学の空白地帯が解消されることは、鳥インフル対策や公衆衛生獣医師確保の視点から、農水省・厚労省も歓迎する方向。
・文科省についても、いい大学を作るのであれば反対しないはず。
・獣医師会には、直接対決を避けるよう、あまり心配しなくていいんですよといったような、既存の獣医大学との差別化を図った特徴を出すことや卒後の見通しなどを明らかにすること。自治体等が熱意を見せて仕方がないと思わせるようにするのがいい。
・要望が出てくれば、政府の中は、内閣府が説明していくことになる。藤原次長は、多少強引な所もあり、軋轢(あつれき)が生じている点もあるが、突破力はある。
・〈加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、その対応策について意見を求めたところ〉今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよい。
〈挨拶(あいさつ)回り〉
・文部科学省専門教育課を訪問したが、 北山課長、牧野課長補佐の両名が不在。
・文化庁記念物課 高橋課長を訪問し、四国遍路の世界遺産化、日本遺産認定を要望。 
■加藤氏と加計側の面会後、今治市「厳しい」 5/21
学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り、愛媛県が21日に国会に提出した、政府側との面会やそれに至る経緯に関する新たな内部文書。新設に向け、加計学園側による加藤勝信内閣官房副長官(当時)との面会や、下村博文文部科学相(当時)のスタンスの変化に関する記述がある。

報告
獣医師養成系大学の設置に係る加計学園関係者との意見交換会等について 27.2.
地域政策課
1 2月12日(木)、加計学園関係者と県・今治市との間で意見交換会を行った。
2 加計学園からは、
1イスラム国問題等で多忙を極める安倍首相と同学園理事長との面会が実現しない中で、官邸への働きかけを進めるため、2月中旬に加藤内閣官房副長官(衆・岡山5区、当選4回)との面会を予定していること
2文科省の事務レベルでは獣医学部新設の方向性は出されているが、下村文部科学大臣が、自由民主党獣医師問題議員連盟会長(日本獣医師会と協力関係)である麻生副総理との関係から、一歩引いたスタンスに変化していること
等の説明があった。
また、副学長からは、アベノミクス・成長戦略に対応した獣医学部の提案や具体的な獣医学部構想等についての説明もあった。
3 なお、新潟市の国家戦略特区の獣医学部設置構想を巡る審議の中で、委員から、獣医学部の定員制限は既得権の保護ではないのかとの厳しい意見が出されるとともに、愛媛県・今治市の構造改革特区申請についても言及があった。
4 今後とも、加計学園からの情報を参考にしながら、引き続き今治市と連携して対応してまいりたい。

報告
獣医師養成系大学の設置に係る現在の情勢について 27.2.
地域政策課
1 今治市から、加計学園と加藤内閣官房副長官との面会の状況は次のとおりであり、今治市への設置は厳しい状況にあるとの連絡があった。
《加藤内閣官房副長官のコメント》
1 獣医師養成系大学・学部の新設については、日本獣医師会の強力な反対運動がある。
2 加えて、既存大学からの反発も大きく、文科大臣の対応にも影響か。
3 県・今治市の構造改革特区への取り組みは評価。ただし、関係団体からの反発が極めて大きい。
4 新潟市の国家戦略特区については、詳細を承知していない。
2 そのような中、国では、国家戦略特区申請の積み残し分について、地方創生特区の名のもとに追加承認を行う模様であり、加計学園では、新潟市の国家戦略特区の中で提案されている獣医学部の設置が政治主導により決まるかもしれないとの危機感を抱いており、同学園理事長が安倍総理と面談する動きもある。
3 今後とも、加計学園からの情報提供を踏まえながら、今治市と連携して対応してまいりたい。
【参考】新潟市の国家戦略特区について
○新潟市は、大規模農業改革拠点を目指して、平成26年12月19日に国家戦略特区「新潟市 革新的農業実践特区」の認定を受け、農地法等の特例措置により、ローソンによる農業生産法人の設立や農地での農家レストラン設置などに加え、獣医師養成系大学の設置や、一体的な保税地域の設置等の追加の規制改革を求め、現在、関係省庁等と協議が継続中。
○本県からは国家戦略特区での提案は行っていない。 
■安倍首相の「虚偽答弁」裏づける愛媛県の官邸訪問記録 5/21
「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題で、愛媛県が21日、2015年4月2日に首相官邸で行われた柳瀬唯夫・元首相秘書官と同県職員らの面会に関連する新たな記録文書を参院予算委員会に提出し、本誌はその全文を入手した。
すでに判明している愛媛県の”備忘録”とは別のもので、”首相案件”を明確に裏付けるかなり踏み込んだ内容となっている。
愛媛県は15年4月、官邸に行く前の3月に加計学園からの次のような報告を受けていたと記されていた。
<2/25 に理事長が首相と面談(15分程度)。理事長から、獣医学部系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では国際水準の獣医学教育を目指すと説明。首相からは「そういう新しい獣医大学はいいね」とのコメントあり>
これは<獣医師養成系大学の設置に係る加計学園関係者との打ち合わせ等について>というタイトルのメモだが、つまり、官邸での”謀議”の前、加計晃太郎理事長が安倍首相と直接、面会して獣医学部新設について話し合い「お墨付き」を得たと愛媛県と今治市に学園が説明していたのだ。
安倍首相はこれまで国会で一貫して「加計学園が国家戦略特区で獣医学部新設を求めていると知ったのは2017年1月」と説明。
その答弁の信ぴょう性が根底から崩れ、”虚偽答弁”の疑惑がまたも浮上した。
今回、愛媛県が提出したのは、職員が東京に出張した「復命書」や2015年4月2日に首相官邸で面会した柳瀬らの名刺のコピー、面会時の会話の記録メモなど計29枚からなる。
2015年2月に愛媛県と今治市で「意見交換」したというメモには興味深い記述があった。
<加計学園からは、イスラム国問題等で多忙を極める安倍首相と同学園理事長との面会が実現しない中で官邸への働きかけを進めるため、2月中旬に加藤官房副長官と面会を予定している>
<(加計学園が)新潟市の国家戦略特区の中で提案されている獣医学部の新設が政治主導で決まるかもしれないとの危機感を抱いていており、同学園理事長が安倍首相と面談する動きがある>
その流れで前述した2月25日の加計理事長と安倍首相の面談があったようだ。
さらに昨年7月、週刊朝日のスクープで明らかになった2015年4月の加計学園、愛媛県と今治市と柳瀬氏との面会について、柳瀬氏は国会で頑なに、「加計学園とは面会した」と述べ、愛媛県と今治市の存在については「よく覚えていない」などととぼけていた。
しかし、明らかになった文書によれば、そのメンバーは愛媛県は2人、今治市は1人、加計学園の2名で面会していた。添付されている名刺のコピーによると、面談したのは柳瀬氏に加え、内閣参事官2名が同席していた。
文書には<総理官邸への訪問者は、部屋の大きさの関係で6名に制限>とまで記されていた。
その際、加計学園の渡辺事務局長が柳瀬秘書官に対して、<内閣府の藤原次長を紹介いただいたことに対してお礼を述べたい>と発言。柳瀬氏が加計学園にわざわざ担当の藤原氏を事前に紹介していたというのだ。
そして加計学園側は<先日安倍首相と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答がなきけしからんといっているとの発言があったことに対し、理事長から柳瀬秘書官に説明しておくように言われている>と発言したと記されている。
安倍首相と加計理事長が会食した時に、文科省が出した課題について、加計側が回答をしていないとの話題が出たため、官邸で柳瀬氏らにキチンと説明するために出向いたというのだ。
つまり、この時点で加計学園の獣医学部新設に関して、安倍首相から柳瀬氏へ何らかの指示があったことを裏付ける”文章”が発掘されたのである。
そして、柳瀬氏はその場で、<本件は、首相案件となっており、何とか実現したいと考えているので内閣府にも話を聞きに行ってもらった>、<獣医学部案件は総理案件になっている。なんとか実現を、と考えている>などと発言。
安倍首相主導で加計学園の獣医学部新設が進行していることをうかがわせる発言を連発していた。
一方、担当者である内閣府の藤原氏は面会で、<事前相談にも対応する><政府としてきちんと対応していかなければならない。県・市・学園と国が知恵を出し合って進めていきたい>と発言したという記録がある。要するに、国が加計学園をバックアップして、獣医学部の新設を手助けすると官邸で約束していたのだ。
自民党幹部がこう頭を抱える。
「愛媛県からまた、新たな文書が出て、官邸は大変な騒ぎだ。『もう安倍首相は言い逃れできない』とも声があがっている」
一方、安倍首相周辺や加計学園側は2015年2月25日の面談については否定しているという。  
■「3年前 加計氏が安倍首相に獣医学部構想説明」 5/21
加計学園の獣医学部新設をめぐる問題で、愛媛県は、3年前に柳瀬元総理大臣秘書官が官邸で学園側と面会したことに関連する県の新たな文書を21日に国会に提出しました。文書には、学園側からの報告内容として「3年前の2月末、加計理事長が安倍総理大臣と面談し、獣医学部の構想を説明した」などと記載されています。
加計学園の獣医学部新設をめぐる問題で、柳瀬元総理大臣秘書官は、今月行われた衆参両院の参考人質疑で、愛媛県今治市が国家戦略特区に提案する2か月前の平成27年4月2日に官邸で学園側と面会したことを認めました。
愛媛県は、担当者がこの面会に同行したと説明していて、参考人質疑を行った参議院予算委員会が、県に対して、面会の内容や経緯が把握できる文書を提出するよう求めていました。
これを受けて、愛媛県は、当時の資料を調べ直した結果、平成27年2月から3月にかけて作成した新たな文書が見つかったとして、21日午後、参議院事務局に提出しました。
愛媛県は内容を明らかにしていませんが、NHKが入手した文書には、当時、県が学園側から受けた報告の内容として、「平成27年2月25日、理事長が首相と15分程度面談。理事長から獣医師養成系大学空白地帯の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは『そういう新しい獣医大学の考えはいいね』とのコメントあり」と記載されています。
さらに、同じ年の3月に、学園と今治市が協議した結果の報告として「加計理事長と安倍総理大臣の面談を受けて柳瀬氏から資料を提出するよう指示があった」と記載されています。
このほか、4月2日に総理大臣官邸で面会した際の柳瀬氏の発言をまとめたとするメモには、柳瀬氏が「獣医学部新設の話は総理案件になっている。なんとか実現を、と考えているので、今回内閣府にも話を聞きに行ってもらった」と発言したと記載されています。
今回、新たな文書を提出したことについて、中村知事は午後5時半すぎに取材に応じ、「国権の最高機関の国会から、与野党合意のうえ、関連文書を出してほしいと要請があったので提出した」と述べ、文書の今後の扱いは国会に委ねる考えを示しました。
○安倍首相の説明
安倍総理大臣は、加計学園の獣医学部新設の計画について初めて知ったのは、学園が国家戦略特区の事業者に選定された去年1月20日だと国会で繰り返し説明してきました。
また、去年7月の衆議院の予算委員会で、加計学園の理事長が長年の友人であることを問われると、安倍総理大臣は「『時代のニーズにあわせて新しい学部や学科の新設に挑戦していきたい』という趣旨の話は聞いたことがあるが、『獣医学部をつくりたい』、さらには『今治市に』といった話は一切無かった」と述べました。
さらに、今月14日の衆参両院の予算委員会で、柳瀬氏が獣医学部新設をめぐり3年前に学園側と3回面会したことを問われると、「柳瀬氏から報告は受けていない」と述べました。
○柳瀬元秘書官の説明
柳瀬元総理大臣秘書官は、今月10日に行われた衆参両院の参考人質疑で、3年前の4月2日に総理大臣官邸で加計学園の関係者と面会したことを認めました。
しかし、面会した一行の中に愛媛県と今治市の担当者がいたかについては、「会った記憶はない」、「10人近くの随行者の中にいたのかもしれない」と述べていました。
一方で、学園の関係者とは、詳しい日付は覚えていないとしたうえで、3年前の4月2日以外にも同じ年の2月か3月に1回と、今治市が国家戦略特区に提案する6月4日の前後に1回の合わせて3回、総理大臣官邸で面会したことを明らかにしました。
○自民 二階幹事長「疑念残らないよう対応を」
自民党の二階幹事長は記者会見で、「機会を得て、報告を聞いてみたいと思っており、これからの国会審議でも、疑問や疑念が残らないようにしっかり対応していきたい。疑問があれば、しかるべき時に尋ねてもらえれば、安倍総理大臣が納得のいく答弁をすると思う」と述べました。
また、二階氏は、愛媛県の中村知事の国会招致について「それぞれの委員会が判断して、お越しを願いたい時には、そういう意見を言ってもらえばいい。われわれの側から直接、意見を申し述べるべきではない」と述べました。
○立民 辻元国対委員長「柳瀬氏の証言がうその濃厚な証拠」
立憲民主党の辻元国会対策委員長は国会内で記者団に対し、「『柳瀬元総理大臣秘書官の証言がうそだった』という濃厚な証拠が出てきたと思うし、『1国の総理大臣が国会や国民に対し、うそをつき通してきたのではないか』ということにつながると思う。『うそをうそで上書きして、書き直そうとしても無理だ』ということだ」と述べました。
○国民 玉木共同代表「核心的な疑惑出てきた」
国民民主党の玉木共同代表は国会内でNHKの取材に対し、「『加計ありき』がより鮮明になったし、『一連のストーリーは安倍総理大臣の指示から始まったのではないか』という極めて核心的な疑惑が出てきた。この疑惑を明らかにすることなく、ほかの重要法案の審議は到底できない。安倍総理大臣、加計理事長、愛媛県の中村知事ら関係者に一堂に予算委員会の集中審議に集まってもらい、真実をしっかり話してもらわなければならない」と述べました。
○公明 石田政調会長「国会審議の中で議論に」
公明党の石田政務調査会長は記者団に対し、「詳しく把握していないので、これから精査をしないといけない。文書自体が、どういうものなのか、よくわからないので、国会審議の中で議論をしっかりしていくことになるのではないか。国民の中ではふに落ちていないと思うので、国会でしっかり説明していかなければならない」と述べました。
○共産 小池書記局長「総理の進退に関わる重大な文書」
共産党の小池書記局長は国会内で記者団に対し、「安倍総理大臣の進退に関わる重大な文書だ。文書を見ると、安倍総理大臣と学園の加計晃太郎理事長の会談がすべてのスタート台で、安倍総理大臣が『いいね』と答えたことで、すべての話が始まった。『加計ありき』どころか『安倍ありき』だ。国会で虚偽答弁を続けてきた安倍総理大臣の責任は極めて重大で、解明なしでは何も進まない」と述べました。
○維新 馬場幹事長「特別委で集中審議を」
日本維新の会の馬場幹事長は国会内でNHKの取材に対し、「資料の事実関係は確認していないが、事実であれば、今までの安倍総理大臣の説明が違っていることになる。説明の場を作り、きちんと真相究明していくことが必要で、国会に特別委員会を設置して集中的に審議すべきだ」と述べました。
○加計学園 首相との面会否定
加計学園は「一部報道で伝えられているような、理事長が2015年2月に総理とお会いしたことはございません。今治市の国家戦略特区申請にかかる手続き及び、本学園の獣医学部開設設置認可手続きが適正に行われ、その結果、昨年11月14日に設置が認可され、今年4月3日に晴れて入学式を迎えることができました」とするコメントを出しました。 
■愛媛県新文書は「また聞きのまた聞き」公明党・山口那津男代表 5/22
公明党の山口那津男代表は22日午前の記者会見で、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、安倍晋三首相が平成27年2月に加計晃太郎理事長と面談し、説明を受けたとする愛媛県の内部文書が国会に提出された件に関し、「当事者である首相も、加計氏も面談を否定している。一方、出された文書はまた聞きのまた聞きというような伝聞を重ねている要素もある」と語った。
野党側が愛媛県の中村時広知事の国会招致を求めている状況については、「自分の直接経験したことに基づいて表現するのが真実に近づく大事な要素だ。中村氏はまったく自身の経験ではない。それで事実の解明が大きく進むとはあまり期待できない」と述べ、否定的な考えを示した。 
■柳瀬唯夫氏「同席した覚えない」「総理からの指示はない」 5/22
きのう愛媛県が国会に提出した、安倍総理大臣が3年前に加計学園の理事長と面会し、獣医学部の新設について話したとされる新たな文書について22日、柳瀬唯夫元総理秘書官が記者団の取材に応じた。
――愛媛県から新たな文書が公開されましたが、受け止めをお願いします。
「先日の国会におきまして、私の記憶の限りをつくして、誠心誠意お応えしたところであります。それが全てでございます。ご指摘の安倍総理と加計理事長の面会について、私はもちろん同席した覚えはございませんし、その話を伺った覚えも全くございません。総理から本件について指示を受けた覚えもありません。したがいまして、私が安倍総理と加計理事長の面談を踏まえて、資料の提示をお願いするといった覚えもありません」
なお、この文書について安倍総理は今朝「ご指摘の日に加計晃太郎理事長と会ったことはございません」と否定している。 
■安倍総理「ご指摘の日に加計理事長と会ったことはございません」 5/22
きのう愛媛県が国会に提出した、安倍総理大臣が3年前に加計学園の理事長と面会し、獣医学部の新設について話したとされる文書について、22日朝、記者団に安倍総理が回答した。
ーー総理は2015年2月25日に、加計晃太郎理事長と面会されましたでしょうか。またその際に、獣医学部の設置計画について「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」という風な話をされましたでしょうか。
安倍総理 / ご指摘の日に加計晃太郎理事長と会ったことはございまん。念のために昨日、官邸の記録を調べたがところでございますが、確認できませんでした。加計 晃太郎氏とは獣医学部新設について、今まで国会等でお話をさせていただいてきたように、そういう事柄について加計晃太郎氏から話を聞かれたこともございませんし、私から話をしたこともございません。 
■加計新文書 愛媛県知事「改ざんの必要なくありのまま」 5/22
加計学園の獣医学部新設をめぐり愛媛県が21日国会に提出した新たな内部文書について、愛媛県の中村知事は記者団に対し「愛媛県が文書を改ざんする必要はなく、ありのままの報告だ」と主張しました。
愛媛県が21日国会に提出した資料の中には、学園側からの報告として、平成27年2月25日に加計理事長が安倍総理大臣と会い、獣医学部の構想を説明したなどと記載された文書もありました。
これについて安倍総理大臣は22日午前、記者団に対し「ご指摘の日に加計氏と会ったことはない。念のため記録を調べたが確認できなかった。獣医学部について加計さんから話を聞いたこともないし、私から話したこともない」と述べ、文書の内容を否定しました。
愛媛県の中村知事は22日午後、記者団に対し「愛媛県としてはこれまでも、当時のやり取りについては間違っていることは言っていない。今回、国会に提出した文書についても、なにも改ざんする必要はなく、ありのままに報告書類として出されたものだ」と主張しました。 
■菅氏「入邸記録破棄」 加計氏と首相の面会、確認できず 5/22
愛媛県の文書に安倍晋三首相と「加計(かけ)学園」の加計晃太郎理事長が2015年2月に面会していたと記されていることについて、菅義偉官房長官は22日午前の記者会見で、当時の首相官邸への入邸記録が破棄されているため、面会は確認できなかったと説明した。
菅氏は「入邸記録は業務終了後速やかに廃棄される取り扱いとなっており、残っているか調査を行ったが、確認できなかった。残っていなかった」と述べた。面会記録やスケジュール表も「ない」とした。
菅氏の会見に先立ち、首相は「ご指摘の日に加計理事長と会ったことはない。念のため、昨日、官邸の記録を調べたが、確認できなかった」と記者団に説明していたが、入邸記録はそもそも破棄されていたことになる。菅氏は、記者から「首相の記憶としても面会していないと確認しているのか」と問われ、「それは確認している」と述べた。 
■新文書、首相ら答弁との食い違い検証 浮かぶ官邸主導 5/22
加計学園の獣医学部新設をめぐり、愛媛県が21日、新たな文書を参院予算委員会に提出した。その内容からは、安倍晋三首相を含む首相官邸幹部らが早い段階から何度も学園側とやり取りを重ねていた経緯が読み取れる。野党は早くも、獣医学部新設計画への関与を否定してきた首相の答弁の整合性について追及を始めた。
愛媛県の文書に記された内容は、安倍首相の過去の発言と矛盾する。
首相は長年の友人の加計氏について昨年7月の衆院予算委で「彼が私の地位や立場を利用して何かをなし遂げようとすることは一度もなかった」と答弁。「時代のニーズに合わせて新しい学部や学科の新設に挑戦していきたい」という趣旨の話は聞いたことがあるものの、「獣医学部をつくりたい、さらには今治市にといった話は一切ございません」と述べた。
しかし文書によると、加計学園は愛媛県に、「2015年2月25日に加計氏が獣医学部新設計画を安倍首相に説明した」と報告。さらに、首相が「新しい獣医大学の考えはいいね」とコメントしたとされる。また、安倍首相は獣医学部の新設計画を知った時期を「17年1月20日」と繰り返し答弁しており、この発言との整合性も問われる。
安倍首相と加計氏の面会や会食の有無も改めて焦点となる。すでに明らかになっている愛媛県作成の文書では、15年4月2日に県職員と柳瀬氏らが面会した際の内容として「先日安倍総理と同学園理事長が会食」という記載がある。首相は今年5月14日の参院予算委で「その年の4月以前は会食はしていない」と答えた。ただ、15年2月25日に会ったかどうかは聞かれておらず、答えていない。朝日新聞の「首相動静」ではその日に安倍氏と加計氏が会ったという記載はない。 
■安倍首相、加計理事長との面会否定 5/22
加計学園の獣医学部新設をめぐり、3年前に加計理事長が安倍総理と面会し、計画を説明したとされる文書が愛媛県側から国会に提出された問題で、安倍総理が22日午前、記者団の取材に応じ、面会自体を明確に否定しました。国会記者会館からの報告です。
安倍総理は22日朝、総理官邸で「加計氏と会ったことはない」と文書の内容を否定しました。
「ご指摘の日に加計晃太郎理事長と会ったことはございません。念のために昨日(21日)、官邸の記録を調べたところですが、確認できませんでした」(安倍首相)
愛媛県が国会に提出した文書には、3年前の2月25日、加計理事長が安倍総理と面会し、獣医学部新設について説明した際に、安倍総理は「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と発言したと記載されていますが、安倍総理は面会したこと自体を否定しました。
また、安倍総理は獣医学部新設について「国会答弁で話したように、そういう事柄について加計氏から話があったこともないし、私から話をしたこともない」と強調しました。
Q.新しい文書では、加計学園側が当時の内閣官房副長官の加藤厚生労働大臣とも3年前に面会したことが記載されていますが、加藤大臣はどのように答えているのでしょうか。
加藤大臣は閣議後の会見で、3年前の2月に地元・岡山で面会したことを認めました。
「地元の事務所に、加計学園の、たしか事務局長の方がおいでになられて、獣医学部の件について、これまでいろいろ努力してきているけれども、いまだ実現にいたっていないといった旨のお話をされた」(加藤勝信 厚労相)
加藤大臣は、こう述べた上で、「加計学園は岡山だから、いろいろなおつきあいがあるなかで話を聞いた」と説明しました。
一方、柳瀬元秘書官は22日午前、報道陣の質問に無言でした。
Q.新しい文書が提出されました、受け止めを−−−
「・・・」(柳瀬唯夫 元首相秘書官)
Q.今までの答弁は全て、うそだったということですか?
「・・・」(柳瀬唯夫 元首相秘書官)
柳瀬氏は内閣府のヒアリングに対して、先日の参考人質疑で自分では言ったとおりだと思っていると答えているということです。 
■官邸の面会は「全部残ってる」と発言した安倍首相 5/22
安倍晋三首相が2015年2月に加計学園の加計晃太郎理事長と面会し獣医学部新設計画を知らされていたとの記述が愛媛県の文書にあった問題で、安倍氏は18年5月22日朝、「ご指摘の日に、加計 晃太郎理事長と会ったことはない」と事実関係を否定した。
その根拠のひとつが、官邸への入館記録が廃棄されており「確認できなかった」ことだ。ただ、過去には安倍氏自身が、「そういう記録は全部残っている」と発言している。
「訪問予定者の入邸確認後」に「遅滞なく廃棄する取扱い」
政府は、愛媛県や加計学園関係者が柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)と面談した件でも、「記録はない」とする答弁を繰り返してきた。
政府によると、首相官邸に入るためには、事前に「訪問予約届」を提出し、入邸時に身分証明書と照合する。その後の「訪問予約届」の扱いは、「遅滞なく廃棄」すると説明している。
廃棄理由は、使用目的が終わったこと、全て保存すれば個人情報を含んだ膨大な量を抱えるためだ。
今回の愛媛県が出した文書についても、安倍氏は「ご指摘の日に、加計晃太郎理事長と会ったことはない。念のために昨日官邸の記録を調べたところだが、確認できなかった」と主張。
直後の菅義偉官房長官の会見では、「入邸記録は用務終了後速やかに廃棄される取り扱いになっており、残っているか調査を行ったが、確認できなかった。残ってなかった、ということ」と補足された。
ただ、数年前の記録が残っていないことには、疑念の声も多い。過去に安倍氏自身が、10年以上の前の出来事について「そういう記録は全部残ってるんですね、官邸には」と述べていたことがあるからだ。
それは、安倍氏が14年3月21日にバラエティー番組「笑っていいとも」に出演した際のやり取りだ。安倍氏は03年1月15日に小泉純一郎首相(当時)が電話出演したことについて「あの時、私副長官やってまして」「あの時、小泉、当時の総理が『官邸来ませんか』って言ったんですよね」と発言。
司会のタモリさんが「そうそう、来てくれるかな!って言ったから『いいとも!』って言ったの、覚えてます」と応じて官邸訪問の約束が果たされていないことを明かすと、安倍氏が「そういう記録は全部残ってるんですね、官邸には」と突っ込んでスタジオからは笑いが起こった。
「こんなことまで残っているのに、なんで他の面会記録はなくなるのか」
このやり取りは、18年4月17日の参院農水委員会で桜井充参院議員(民進)が「こんなことまで残っているのに、なんで他の面会記録はなくなるのか」と問題視。望月明雄・内閣官房内閣参事官は、入邸記録については「破棄した」などと説明をしながら、「一般論として申し上げると、個々の業務遂行上の必要性に応じて、まさに適宜判断されると承知している」と述べた。
仮に愛媛県の文書が正確だとすれば、(1)本当に「入邸記録」は破棄されたのか(2)「入邸記録」以外の面会記録は存在するのか、などが今後の焦点になりそうだ。(2)については、菅氏は5月22日午後の記者会見で、「それはありません」と主張している。 
■加戸守行前愛媛県知事「新文書は連絡・報告用のメモで、伝聞の伝聞」 5/23
愛媛県から新たに文書が出たが、これもメモです。県庁職員は何でもメモして記録をとる。まじめといえばまじめ。ただ、公文書でなく、連絡、報告用のメモだ。要するに加計学園側が今治市に話したことを県が今治市から聞いて、メモにしている。漫画みたいな話で、伝言ゲームだ。
(平成27年2月25日に安倍晋三首相と学園の加計晃太郎理事長が面談したことは)首相も否定した。首相は理事長と会う時間はないと思う。首相官邸で会えば首相日程に出る。官邸以外ならホテルで密会だが、それはないだろう。だから、2月25日に会ったという話は学園側の作り話か、想像をつなげてああいう話になったのではないか。信憑性は疑わしい。
愛媛県の中村時広知事は県内の自民党主流派と衝突している状態だ。(文書の公開には)そういうこともバックグラウンドにあったのかもしれない。ただ、伝聞の伝聞の話を参院に出してどうするのか。聞いた話をメモにして外に出すなんて、常識ではありえない。
メモはあらゆるものをきちょうめんにとるから、当たらずといえども遠からずのものだ。今度の場合は、首相に会ったら好反応だったと聞いたら、県にとってビッグニュースだから、それは書き立てる。あくまで私の推理だが、首相がきっぱり否定したのだから学園側の作り話だったと思う。
岡山理科大獣医学部は首相の忖度のかけらもなく国家戦略特区を突破してできた。私学の獣医師らが日本獣医師会の意向を受けて、県をたたいてきたにもかかわらずだ。
それにしても、獣医師会に一切メスを入れないというのは、不思議な国会だ。徹底的な「悪」は、既得権益を死守するために獣医学部の新設をつぶしてきた獣医師会なのだが。 
■愛媛県職員の記録に逆らう安倍首相 惨めな態度、もう見たくない 5/22
愛媛県の職員が書いた、官邸での面談の詳細報告書が公表された。中村愛媛県知事が記者団に語るように、愛媛県職員は嘘を書く必要もないし、初めての官邸訪問である。 忠実な県職員として上司に報告するために、当時の面談内容を一字一句も漏らさぬように、書きとめたことだろう。
当たり前の事だが、安倍首相と加計理事長が面談して獣医学部を新設することに、「良いね」と言ったという話を、県職員が直接聞いたわけではない。
面談した柳瀬総理秘書官から聞いた話を書きとめたのだろう。
当時の安倍首相と柳瀬秘書官との間では、加計学園の獣医学部新設は、至極当然の既成事実のような内容であっただろうから、愛媛県職員にも安心するように、柳瀬氏が話したのだろう。
ところが、22日朝の安倍首相は、記録に書かれた日にちには、加計氏と会っていないという。
なんという往生際の悪さだ。 刎頚の友である二人の間柄だぞ。そういう話は、とっくの昔に合意した話ではないか。 
明らかに安倍首相は、今までの国会答弁で、嘘を滔々と何回も述べていたのだ。
信頼を失った安倍首相に、国民から支持されると本気で思っているのだろうか? これはあまりにも国民を舐めきった態度だ。
ここまでくると、安倍首相に近い読売新聞にしても、メディアがこぞって安倍首相の退陣を主張する矜持が欲しいものだ。 
■加計問題、今度の「新文書」がヤバすぎるワケ 5/23
愛媛県が5月21日午後、加計学園問題について新たな文書を公表した。参議院予算委員会理事会が与野党合意に基づく国政調査権行使による問い合わせに応じたもの。この文書のインパクトは極めて大きく、事態は底なし沼のような様相を呈し始めている。
愛媛県が提出した文書は2015年4月2日に東京に出張した同県地域政策課長と主幹の2名分の旅行命令簿と復命書、精算請求書のほか、面会者の名刺や発言メモ、そして同年2月と3月の愛媛県、今治市、加計学園関係者との会合に関するメモである。
2月25日に加計理事長と安倍首相が面談、との記録
これによれば、加計学園は安倍晋三首相と加計晃太郎理事長との面談を模索したが、安倍首相が多忙でかなわず、代わりに加藤勝信官房副長官(当時、現在は厚労相)と2月に面会したという。加藤氏は2月14日夕方に岡山の事務所で加計学園の渡邊良人事務局長と面会した事実を認めたものの、「安倍首相には報告していない」と答えている。
しかしながら加藤氏と渡邊事務局長が面会した後から、話は急展開したようだ。愛媛県が提出したメモによると、3月3日の会合で加計学園から2月25日に加計理事長が安倍首相と15分程度面談したことが愛媛県に報告され、国際水準の獣医学部新設を説明する加計理事長に安倍首相が「そういう新しい獣医学部の考えはいいね」とコメントしたと記されている。
要するにこれらのメモからは、安倍首相は2015年2月25日に加計理事長から獣医学部新設について陳情を受け、これに同意したと読むことができるのだ。
だが安倍首相は加計学園の獣医学部新設の意図について、「(加計学園が今治市の国家戦略特区の事業者に決定した)2017年1月20日の国家戦略特区諮問会議まで知らなかった」と繰り返し述べてきた。
新たな愛媛県文書が公表された翌日朝も、記者団に「獣医学部新設について加計氏から話されたことも、私から聞いたこともない」と強調。2月25日の面会については「官邸の記録を調べたが、(面会の有無は)確認できなかった」と否定した。
なお同日の定例会見で菅義偉官房長官は「(加計氏の)入邸記録は残っていない」と説明した。確かに当時の各紙の首相動静などでも、入邸記録に加計氏の名前はない。
本当に面談をしていないのか?
しかし記録がないからといって、加計氏が2015年2月25日に安倍首相と会っていないとの証明にはならない。官邸への来訪者は入口でチェックを受け、大手新聞社の番記者がその名前を記録する。名前が不明な場合は、官邸に聞いて把握する。
ただし必ずその名前が紙面に載るとは限らず、記者が「重要ではない訪問者」と判断する場合は略される。また大手通信社は深夜まで首相の動向をチェックするが、首相が帰宅してもう来客などがないと判断すると撤退する。すなわちすべての訪問を把握しているわけではないのだ。
例えば2013年5月5日の動静には、安倍首相は夕方から昭恵夫人や萩生田光一総裁特別補佐(当時)らと山梨県鳴沢村の別荘で過ごしたことが記されている。この時にBBQを楽しんだ写真が萩生田氏のブログにアップされ、安倍首相の隣には加計氏の姿も写っているが、この日の各紙の動静には加計氏の名前はなかった。
2月25日の安倍・加計面談については、新たな愛媛県文書で記載されているのは1カ所にとどまらない。
4月2日に愛媛県と今治市と加計学園が柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面談する前の打ち合わせ(別紙)でも、加計学園の渡邊事務局長が「安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村(博文)文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったことに対し、理事長から柳瀬秘書官にちゃんと説明していくように言われている」と述べたという記録がある。
見解がここまで割れてしまっているわけだが、真実はどうなのか。それを確認するには、愛媛県や今治市、そして加計学園から話を聞くほかはないだろう。立憲民主党など野党5党と1会派は22日午前に院内で幹事長・書記局長会談を行い、柳瀬元総理秘書官と加計理事長の証人喚問および愛媛県の中村時広知事の参考人招致を求めることを決定した。
これに意欲を示すのは中村知事だ。愛媛県が提出した文書について「改ざんする必要がない。ありのままに報告書類として出されたものが提出された」と述べ、安倍首相と真正面からの対決もいとわない姿勢を見せる。
「何が本当かわからない」
自民党の中では意見が分かれた。二階俊博幹事長が「安倍首相の発言を信頼し支持する」と述べる一方で、アンチ安倍の急先鋒である愛媛県第2区の村上誠一郎衆議院議員は、「国民を愚弄するというか、国会軽視」「愛媛県の職員がなぜ嘘をついてまで書く必要があるのか。忠実だから嘘は書いていない」と野党以上に激しい批判を展開。安倍首相を支えるべき竹下亘総務会長でさえ、「何が本当かわからない」と困惑している様子だ。
閣内も一枚岩とはいえない。野田聖子総務相は「国会で当事者が説明責任を果たすことが一番大事」と述べ、安倍首相から距離を置いている。
その野田総務相を含む安倍首相ら13名の衆議院議員は5月22日、永年在職25年で衆議院から表彰された。さらに同日夜、安倍首相が所属する清和政策研究会のパーティーが都内のホテルで開かれた。
そのクライマックスたる安倍首相の挨拶は、当初は午後6時7分に始まる予定だったが、大きく遅れて午後7時4分にスタートした。
「新卒の大学生の就職率が98%になり、(1997年の調査開始以来)最高を記録した。夏のボーナスも4%上がるらしい。来年はもっと良くしていきたい」。開口一番に安倍首相が強調したのがアベノミクスの成果だった。そして9月に予定される総裁選3選への意欲をもにじませたが、加計学園問題についてはまるで封印したかのように、一言も述べなかった。
さて6月20日の会期末まで残り1カ月を切った。国会ではIR実施法案、働き方改革関連法案などが山積みで、外交面では米朝首脳会談の開催が危ぶまれている。24日から訪ロする予定の安倍首相だが、こうした数々の国難をどう乗り越えるのか。 
■国会・与野党攻防激化、加計学園の車問題で野党追及 5/24
国会では、加計学園問題をめぐり、内閣府の担当者が出張の際に、学園側の用意した車を使っていた問題で野党が追及を強めていますが、政府は「調査中」と繰り返しました。
「誰の車で行ったかぐらいを、なんでこんなにかかるんですか。おかしいですよ、それは。もうこれ以上議論できませんよ。そんなこと言うんだったら、今確認してください」(立憲民主党 白眞勲参院議員)
「移動手段の一部に民間事業者が管理運用する車両を用いた可能性を推認するに至ったと、そしてそれに関して、国家公務員の倫理審査会に相談をし、今、調査を続けているところ」(梶山弘志地方創生相)
国家戦略特区を担当していた当時の藤原地方創生推進室次長は、3年前、後に獣医学部が開設される愛媛県今治市などに出張した際、加計学園の車を使用していましたが、梶山大臣は24日、「国家公務員の倫理審査会に相談し、調査している」などと述べるにとどめ、車の使用を明確に認めませんでした。
一方、国会では、与党側は「働き方改革関連法案」をめぐり、野党側が23日提出した衆議院厚生労働委員長の解任決議案を、午後の衆院本会議で否決します。与党側は、25日の厚労委員会で法案を採決し、今月中に衆院を通過させたい考えですが、国民民主党の泉国対委員長は、その場合、加藤厚生労働大臣の不信任案提出の可能性も「考えざるを得ない」としていて、対立は一層激しくなる見通しです。 
 

 

■加計学園「自治体騙し」自認文書で、「安倍政権側ストーリー」崩壊の危険 5/29
5月21日に愛媛県が公開した、2015年2月から4月にかけての加計学園獣医学部設置をめぐる動きに関する文書(以下「愛媛県文書」という)の中に、加計学園側の話として、「2/25に理事長と首相との面談(15分程度)」の記載があったことから、その日に、安倍首相と加計 晃太郎理事長とが面談し、獣医学部新設に関する話をした疑いが生じた。安倍首相は、その日に加計理事長と会った事実を否定し、政府与党側からは、その記載について、「伝聞の伝聞」だとして、証拠価値を疑問視する声が上がっていた。
そうした中、5月26日、「当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えた」と記載した加計学園名義の文書が、「報道機関」宛にファックス送付されたのである。
このファックス文書に書かれているとおりだとすると、加計理事長と会ったことを否定する安倍首相の主張には沿うものとなる。しかし、その一方でこれまで安倍政権側が、加計学園問題について組み立ててきた「ストーリー」が次々と崩壊していくことになりかねない。
愛媛県文書の信ぴょう性の高さ
愛媛県職員が作成した2015年4月2日の首相官邸での柳瀬唯夫首相秘書官(当時)との面談記録について、文書の信ぴょう性が極めて高いことは、【柳瀬氏、「参考人招致」ではなく「証人喚問」が不可欠な理由】で述べたとおりだ。その後に公開された愛媛県側の文書についても、県職員が加計学園関係者や今治市職員から実際に聞いた話をそのまま書いていると考えられ、基本的に、信ぴょう性は高い。
ただ、「2/25の理事長と首相との面談」の事実は、愛媛県担当者が加計学園関係者から聞いた「伝聞」に過ぎず、加計学園関係者の発言した内容が真実である確証はないので、愛媛県の文書の記載だけで、面談があったと決めつけるわけにはいかない。私も、この点について、マスコミの取材を受けた際、「加計理事長⇒加計学園担当者⇒愛媛県担当者」の伝聞なので、そのまま鵜呑みにはできない旨コメントしていた。
しかし、愛媛県が公開した文書全体の内容を見ると、加計学園関係者が虚偽の事実を述べたとは思えないものであり、「伝聞」ではあっても、面談があった可能性は相応に高いように思えた。
奇しくも、加計学園側は、このファックス文書で、愛媛県文書に記載された加計学園関係者の発言自体は認め、その他の内容についても、愛媛県文書の内容について発言内容と異なるとは一切言っていない。このことからも、加計学園関係者の発言内容について愛媛県文書の信ぴょう性は一層高まったといえる。
愛媛県文書の中での「2/25理事長と首相との面談」の記述
愛媛県が公開した獣医学部新設に関する面談記録等の中には、多数の箇所に、「2/25理事長と首相との面談」の記載がある。
まず、「(平成)27.2」の「加計学園と加藤内閣官房副長官との面会の状況」を加計学園関係者が愛媛県に報告した際の面談記録の中に、「獣医学会や既存大学の反発のため今治市への設置は厳しい状況にある」との報告の後に、
「国では、国家戦略特区申請の積み残し分について、地方創生特区の名のもとに追加承認を行う模様であり、加計学園では、新潟市の国家戦略特区の中で提案されている獣医学部の設置が政治主導により決まるかもしれないとの危機感を抱いており、同学園理事長が安倍総理と面談する動きもある。」という記述がある。
加計学園側は、愛媛県に対して、獣医学部の新設に関して獣医学会等の反発があって厳しい状況の下、新潟市での獣医学部設置だけが「政治主導」で決まること(そうなると、今治市での設置はさらに絶望的となる)への危機感から、「加計理事長が安倍総理と面談する動き」があると説明しているのである。
つまり、加計理事長と安倍総理との面談というのは、突然出てきた話ではなく、上記のような背景の下に、今治市での加計学園の獣医学部設置を「政治的に」進めるために、加計理事長⇒安倍首相という働きかけをしようとしていることが報告されているのである。
そして、次の「27.3」の加計学園側と愛媛県との面談記録で、冒頭に、
「2/25に理事長が首相と面談(15分程度)」
という記載があり、その面談の模様について
「理事長から、獣医師養成系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは「そういう新しい獣医大学の考えはいいね。」とのコメントあり」と書かれている。
注目すべきは、その後の、
「検討中の大学附置施設(高度総合検査センター等)の設置には多額の費用が必要であるが、施設設置に伴う国からの補助がない中、一私学では困難であるので、国の支援が可能となる方策の検討を含め、県・市の財政支援をお願いしたい。」との記述だ。
加計学園側は、今治市での獣医学部設置について、加計理事長と安倍首相が面談し、安倍首相が前向きの反応を示したと述べた後に、国からは補助がないので、「県・市の財政支援」を求めているのである。
そして、次の3/15の今治市役所での今治市と加計学園との協議結果についての報告文書では、
「柳瀬首相秘書官と加計学園の協議日程について、2/25の学園理事長と総理との面会を受け、同秘書官から資料提出の指示あり」と書かれており、「柳瀬秘書官からの資料提出の指示」は、学園理事長と総理との面会を受けてのものだとされている。
秘書官から求められている「資料」の具体的内容が記載されているが、注目されるのは、
「学園作成の概要版資料の表紙(別紙p.4)は、写真及び県と市のマークやキャッチフレーズは削除し、学園名を明記」との記載だ。
本来、国家戦略特区の申請者は「地方自治体」であり、自治体が主体となって特区申請を行い、それが認められた場合に、事業者を選定するということになっているのに、加計学園作成の資料について、なぜ県と市のマークやキャッチフレーズを削除する必要があるのか。「加計学園の申請」であることが一見してわかるようにしておくためだと思える。
そして、「文部科学省の動向」の項目では、
「2/25に学園理事長と総理との面会時の学園提供資料のうち、「新しい教育戦略」(別紙p.5-6)に記載の目指すべき大学の姿に関する部分を抜粋したアンケート形式の資料を示して、短期間での回答を求めている。」と書かれており、「2/25の学園理事長と総理との面会の際に加計学園が提供した資料」についての言及がある。ページ数が記載されていることからも、この「提出資料」は愛媛県にも渡っていると考えられる。
文書の末尾には、「(参考)加計学園の直近の動向・今後の予定」が付記されており、その最初に「2/25 理事長と安倍総理が面談」と書かれている。
そして、「獣医師養成系大学の設置に係る内閣府及び首相秘書官訪問について」と題する書面では、
「安倍総理と加計学園理事長が先日会食した際に、獣医師養成系大学の設置について地元の動きが鈍いとの話が出たとのことであり、同学園としては柳瀬首相秘書官に4月2日午後3時から説明したいので、県と今治市にも同行願いたいとの要請があったと今治市から連絡があった。」と書かれている。
「2/25の学園理事長と総理との面会」以外に、「安倍総理と加計学園理事長との会食」の機会にも、獣医学部新設の話が出て、その際に、「地元の動きが鈍い」との話が出たことを理由に、加計学園が、首相官邸での柳瀬秘書官との面談に赴くにあたって、愛媛県と今治市にも同行するよう求めたことがわかるのである。
「2/25理事長と首相との面談」は特区申請・補助金交付の大前提
愛媛県の文書によると、加計学園は、理事長と首相の面談が行われる前に、「面談の動き」があることの説明をし、実際に面談があったとされた後には、面談の際に理事長から首相に渡った資料も示し、それを前提に、愛媛県・今治市に対して補助金を要請している。
これらの記載からすれば、愛媛県にとって、「2/25理事長と首相との面談」の事実が、加計学園の獣医学部新設に向けて、国家戦略特区の申請を行うこと、加計学園に補助金を交付することの大前提だったことは明らかだ。
しかも、「2/25理事長と首相との面談」は、柳瀬秘書官からの資料提出の指示に関連づけられ、面談時に理事長から首相に提供した資料にも言及するなど、この時期の加計学園と愛媛県との交渉全般にわたって、頻繁に持ち出されている事柄であり、もし、その面談の事実がなかったとすると、獣医学部新設に向けての話が根底から覆されかねない。
伝聞部分についても、加計学園関係者が意図的に事実と異なる発言をすることなど通常はあり得ないことなので、愛媛県は、獣医学部の新設について極めて重要な事実を含むこの書面を公開したと考えられる。
ところが、その「2/25理事長と首相との面談」ついて、加計学園側は、担当者がその発言をしたことを認めた上で、「実際にはなかったのに虚偽の事実を伝えた」として、愛媛県側に何の断りもなく、一方的に「報道機関」宛にファックス送付した。
もし、本当に、加計学園側が、「2/25理事長と首相との面談」が実際にはなかったのに、虚偽の事実を伝えたということであれば、獣医学部の立地自治体として国家戦略特区の申請を行い、多額の補助金を交付している愛媛県・今治市に対する重大な背信行為だ。そのような事実を把握したのであれば、まず、当事者の愛媛県・今治市に対して、十分な説明と謝罪をするのが当然だ。
ところが、5月28日に国会で集中審議が行われる2日前の26日に、いきなり、マスコミ宛のファックス文書で、そのような事実を公表したのである。
このような対応の方法からしても、安倍首相が追及されることが予想される5月28日の国会の集中審議に向けて、安倍首相の答弁に合わせるために、ファックスで文書を送付したことが強く疑われる(安倍政権側の指示であった可能性も否定できない)。
しかし、加計学園側も、「報道機関」宛にファックス送付した以上、今後、その内容を自ら否定することはできないだろう。
そうなると、少なくとも、加計学園としては、このファックス文書に書かれていることが真実であることを前提に今後の対応を行わざる得ない。それは、安倍政権側にとって、かえって不利な展開となる可能性が高い。
「加戸前知事ストーリー」の崩壊
加計学園のファックス文書では、
「当時は、獣医学部設置の動きが一時停滞していた時期であり、何らかの打開策を探しておりました。そのような状況の中で、構造改革特区から国家戦略特区を用いた申請にきりかえれば、活路が見いだせるのではないかとの考えから、当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えてしまったように思うとの事でした。」とされている。
もし、その通りであったとすると、これまで、加計学園の獣医学部新設と安倍首相との関係をめぐる疑惑を否定するために、自民党側が再三にわたって国会に参考人招致してきた加戸前愛媛県知事の供述に重大な疑問が生じることになる。
昨年7月の衆議院予算委員会での閉会中審査で、加戸氏は、今治市に加計学園の獣医学部を誘致しようと考えた理由について
「私、鳥インフルエンザにめぐり会いまして、その後、狂牛病の問題、口蹄疫の問題が続きますが、いずれにいたしましても、四国への上陸は許さないという前提での取り組みをしながら、県庁の獣医師、大動物獣医師の不足に悲鳴を上げながら、みんなに頑張ってもらい、あるいは学者のお話も聞きながら、国際的にこの問題は大きくなるという中で、愛媛に獣医学部が欲しいと思いました。それは、研究機関としてと同時に、今治の学園都市、それと、愛媛県の公務員獣医師の不足も補うし、しかも、国際的に胸を張れる、アメリカに伍して先端的に勉強ができるような場を持って、今治を国際的な拠点都市にする、そんな夢でおりまして、ちょうど、県会議員と加計学園の事務局長がたまたまお友達という関係でつながった話ででき上がりましたから、飛びつきました。」と述べた上、愛媛県、今治市と加計学園の関係について以下のように述べている。
「平成十七年の一月から話がスタートして、二年後に獣医学部をやってみましょうという話になってまいりましたので、それ以来は正直申し上げて加計一筋でありますけれども、その間、ほかのところにも当たりましたが、(中略)その後、獣医学部ということでいろいろなところへ当たってみましたけれども、反応はありません (中略) 好き嫌いは別として、話に乗っていただいたのが加計学園でありますから、私どもにとって、今、正直な言葉を申し上げたら、言葉がいいかどうかわかりませんけれども、愛媛県にとって、今治市にとって、黒い猫でも白い猫でも、獣医学部をつくっていただく猫が一番いい猫でありまして、・・・ 」
要するに、加戸氏によれば、獣医学部の新設は、愛媛県の公務員獣医師不足の解消や今治を国際的な拠点都市にする構想などから、愛媛県・今治市側が主導して、獣医学部誘致に積極的に取り組んできたもので、それに応じてくれた大学が加計学園しかなかったから「加計一筋」だったということである。
今回、加計学園がファックス文書で認めているように、当時「獣医学部設置の動きが一時停滞していた時期であり、何らかの打開策を探していた」という事情から、加計学園側が、国家戦略特区に切り替えて活路を見出そうとして、加計理事長と安倍首相との面談の事実をでっち上げて、愛媛県・今治市側を騙していたのだとすると、加計学園は、そのような背信的なやり方まで用いて、なりふり構わず獣医学部新設を実現しようとしていたということになり、「加戸ストーリー」は根底から崩れることになる。
「安倍ストーリー」「加計ストーリー」の崩壊
崩壊するのは「加戸ストーリー」だけではない。
加計学園がファックス文書で公表したことが事実だとすると、今後、愛媛県や今治市が、加計学園獣医学部に交付する予定の補助金に影響を生じることは必至だ。補助金は、住民の血税によって賄われているのであり、国家戦略特区申請・補助金交付に関して、加計学園が説明してきた重要な前提事実が嘘だったとすれば、そのような嘘をつくような学校法人に対して補助金を出し続けてよいのかどうかが問題になる。
いずれにせよ、そのような重大な背信行為を、加計学園側の誰がどのような理由で行ったのか、加計学園側が納得できる説明を行わなければ、住民の理解が得られるはずがない。
また、愛媛県文書によれば、加計学園側で中心となって動いていたのは、「渡邊事務局長」であり、学園事務局のトップであり、法人のトップである加計理事長から直接指示を受けて動く立場だ。そのような人物が、加計理事長と安倍首相との面談の事実をでっち上げて、愛媛県・今治市側を騙していたのだとすれば、それを加計理事長が知らないことはあり得ない。
安倍首相は、国会で、加計晃太郎氏について「彼が私に対して私の地位や立場を利用して何かを成し遂げようとしたことはただの一度もない。獣医学部新設について働きかけや依頼は全くなかった。」と繰り返し答弁してきた。今回、安倍首相との面談をネタにして愛媛県・今治市を騙すという工作に加計 晃太郎氏が関わっていたとすると、そのような「安倍首相のストーリー」も根底から崩れることになる。
しかも、自治体に対する重大な背信行為を行ったのが、私学助成という公費を支給されている学校法人だというのも、極めて深刻である。そのような学校法人に多額の学費を支払っている学生もその親も、学園が健全な教育活動を行っていると信頼して良いのかどうか疑問を感じるだろう。ところが、加計学園は、国家戦略特区によって、一校だけ獣医学部の新設が認められ、様々な問題を指摘されながらも文科省の認可を取得し、今年の春に開学した。それが、加計学園に「既に開学し学生を受け入れている以上、今更潰せない。」という「加計ストーリー」の主張を行うことを可能にした。
しかし、県・市に対する今回のような重大な背信行為を自ら明らかにし、しかも、補助金を交付している愛媛県・今治市に対しても非礼極まりない対応を行っている加計学園は、今後、県・市の住民からも強い不信感をもたれることになりかねない。それは、「開学したもの勝ち」という「加計ストーリー」すら危うくしかねない。
5月28日の国会での集中審議の中で、安倍首相は、福山哲郎参議院議員の質問に対して、「委員が作ったストーリー」と答弁して、審議が紛糾した。
しかし、今回の、加計学園の愛媛県・今治市を騙していたことを認めるファックス文書と「ストーリー」の関係について言えば、むしろ、「加戸ストーリー」「安倍ストーリー」「加計ストーリー」という、安倍政権側のストーリーが崩壊する危険を考えるべきであろう。 
■安倍首相「焼肉くらいで」発言のまやかし! 5/30
 加計理事長の接待は焼肉だけじゃない、年間1億円の報道、昭恵夫人支援も
「(2015年2月25日に)お会いしたことはない」。一昨日おこなわれた集中審議で、安倍首相は「獣医大学いいね」と言ったという加計晃太郎理事長との面談を、加計学園から出された仰天コメントを使って否定した。
加計学園のコメントはいわば“安倍首相の名前を使って愛媛県と今治市を騙した”という詐欺行為を告白した内容だ。普通に考えれば、「加計は詐欺師だ!」と激昂しても不思議はないのに、しかし安倍首相は「抗議する理由がない」と知らん顔……。これまでも佐川&柳瀬の総理護衛コンビによる茶番劇が国会で繰り広げられてきたが、そのなかでも今回の“加計コメントを受けた安倍首相の一人芝居”は群を抜いて酷いシナリオとしか言いようがない。一体こんな穴だらけの下手な嘘を、どうやって信じろというのだろう。
だが、安倍首相は一昨日、もうひとつ噴飯モノの話をはじめた。それは、加計理事長と繰り返し会食やゴルフに興じてきた“接待疑惑”を指摘されたときのことだ。
安倍首相は、「(加計氏は)私が国会議員になる前からのずっとの付き合い」だと主張すると、「こちら側も相当ごちそうしている」「ゴルフは費用がかかるから、それはこちら側ですべてもっている」「焼肉屋の場合はこちらが払ってる場合もありますし」と、いつもの通り証拠も何もないままざっくりした記憶を並べ立て、「贈収賄になるとはとても考えられない」と強弁。何をトチ狂ったのか、ついには「(会食の)その後も、家でもう1回食べるってことも(ある)」などと言い出した。
接待を受けたあとに家でシメのお茶漬けをかき込めば贈収賄にならないって、それはどんな理屈なのだろうか。もうさっぱり意味がわからないが、さらに安倍首相は、“利害関係者である加計理事長が、安倍首相や首相秘書官と会食したり食事代を支払うのは問題ではないのか”と追及した立憲民主党の長妻衆院昭議員に対して、「食事の見返りに特区に入れたかのごとくの言い方だ」「みんなそういう印象をもっているんですよ!」などと逆ギレ。そして、こうまくし立てたのだ。
「私が食事をごちそうしてもらいたいから国家戦略特区で特別にやるって、たとえば焼肉をごちそうしてもらいたいからそんなことするって、これ、考えられないですよ!」
いやいや、「焼肉をゴチになったから、そのお返しに」というかたちで特区が決まったなんて誰も言っていないし、思うわけがない。むしろ、「加計さんは長年の友人だ」と強調し、あたかも学生同士のカジュアルな付き合いのなかでおごってもらったかのように「印象操作」しているのは、安倍首相のほうではないか。
そして、安倍首相と加計理事長の仲は、そんな「焼肉をおごる・おごられる」というような庶民的なものではけっしてない。「腹心の友」という言葉がもつ清いイメージとは裏腹な、「ズブズブの関係」と表現すべき間柄だ。
そもそも、安倍首相より3歳年上の加計理事長が出会ったのは、留学先である南カリフォルニア大学のキャンパスだったことは周知の通りだが、当時はそれほど仲が良かったわけではないという。
加計問題を追いかけるジャーナリスト・森功氏の『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(文藝春秋)によれば、ふたりが接近したのは帰国後、安倍が神戸製鋼に就職して以降。昭恵夫人がFacebookに投稿した、2015年のクリスマスイブに撮られた“男たちの悪だくみ”写真にも写っている三井住友銀行・元副頭取で現在、金融庁参与である高橋精一郎氏と週末に大阪で遊ぶようになった際、そこに加計氏も加わるようになってからだという。当時、すでに学園の副理事長という立場にあった加計氏は、羽振りも良かったらしい。
〈いきおい彼らの遊びは、もっぱら時間と資金力のある加計任せだ。加計が安倍に声をかけ、それに応じるかっこうで、盟友関係がのちのちまで続く〉(『悪だくみ』より引用)
実際、その後のふたりの関係を赤裸々に物語るかのような報道がなされたこともある。「週刊新潮」(新潮社)や「週刊文春」(文藝春秋)では、加計理事長が口にしていたという、こんな発言が紹介されている。
「彼とゴルフに行くのは楽しいけど、おカネがかかるんだよな。年間いくら使って面倒を見ていると思う?」(「週刊新潮」2017年3月16日号)
「(安倍氏に)年間一億くらい出しているんだよ。あっち遊びに行こう、飯を食べに行こうってさ」(「週刊文春」2017年4月27日号)
さらに、「安倍に近い関係者」もまた、かつて安倍がこのように話していたと証言しているのだ。
「加計さんは俺のビッグスポンサーなんだよ。学校経営者では一番の資産家だ」
これらの発言が事実ならば、安倍首相が強調する“長年の友人関係なのだからおごられることもある”という関係とはまったく違い、加計理事長は意識的に「年間一億」もかけて安倍首相の「面倒を見て」おり、一方の安倍首相も加計理事長のことを「スポンサー」として認識していることになるだろう。「焼肉をおごられた」なんて次元の話ではまったくないのだ。
だいたい、安倍首相と加計理事長は、わかっているだけで年に数十回、会食したりゴルフをする「お友だち」以上の関係であることは間違いない。現にこれまでにも、2009年の総選挙では安倍のために加計学園が職員に“出張命令”を出して選挙活動に動員していたことが発覚。また、加計理事長は「自由民主党岡山県自治振興支部」の代表者として政治資金収支報告書に名を連ね、同支部の所在地も加計学園グループの予備校である英数学館岡山校の住所が記載されていた。
しかも、その関係は安倍本人だけにとどまらない。安倍が結婚してからは、加計理事長は昭恵夫人とも仲を深め、昭恵夫人が取り組むミャンマーの教育支援を加計学園が協力している。つまり、安倍の政治活動や妻である昭恵氏の活動まで、加計理事長はバックアップしてきたのだ。
会食やゴルフというのは、それこそ首相動静にも出ている「オフィシャル」の情報にすぎない。実際には、このように加計理事長は安倍夫妻にとって公私ともに多大な「面倒」を見てくれている相手なのだ。その「見返り」として国家戦略特区での獣医学部新設を動かしたのではないか。そういう疑いの目を、いま安倍首相は向けられているのだ。
そもそも、会食やゴルフにしても、けっして見逃がせない問題だ。大臣規範には〈関係業者との接触に当たっては、供応接待を受けること、職務に関連して贈物や便宜供与を受けること等であって国民の疑惑を招くような行為をしてはならない〉とある。だからこそ安倍首相は、加計学園の獣医学部新設計画をはじめて知った時期を、当初は「構造改革特区で申請されたことは承知をしていた」「私は議長だから国家戦略特区に申請をすれば私の知り得るところになる」と答弁していたのに、「2017年1月20日の特区諮問会議」だと前言撤回したのだ。
野党はずっと加計理事長の証人喚問を要求しており、一昨日の集中審議で要求が出されたが、与党はこれを拒否した。いくら安倍首相が潔白を叫んでも、これでは「やましい関係」であることを証明づけているようなものである。 
■加計・渡辺良人事務局長、愛媛県県庁訪問 謝罪 5/31
■加計事務局長、首相との面会発言「その場の雰囲気で」 5/31
愛媛県今治市への獣医学部新設をめぐり学校法人「加計(かけ)学園」の加計晃太郎理事長が安倍晋三首相と面会したと県の文書に記されている問題で、学園の渡辺良人事務局長が31日、松山市の県庁を訪れ、「県と市に誤った情報を与えた」とのコメントを出したことについて謝罪した。記者団の取材にも応じ、面会の発言は「たぶん自分が言ったのだろうと思う」と話した。
中村時広知事が台湾出張のため、西本牧史・企画振興部長が対応した。面談は冒頭だけ報道陣に公開され、渡辺事務局長は「愛媛県に対し多大なご迷惑をおかけした」と謝罪。西本部長は「非常に重大な内容で、事前に県に連絡がなかったのは残念」と述べた。
県は、学園に約93億円を補助する市に、約30億円を支援する。西本部長は「多額の公金を支出する以上、県民や県議会に説明を果たす必要がある。加計学園もしっかりと説明責任を果たされることが信頼確保につながる」と指摘した。
渡辺氏は記者団に、首相と加計氏が面会したという県との打ち合わせ時の発言について「(参加した)あのメンバーならぼくしかいない」と説明。「その場の雰囲気で、ふと思ったことを言った」「十数年来煮詰めてきた獣医学部がなくなるのは、しのびがたい思いがあった」と話した。「うそというか、そういう思いをもって説明したんだと思う」とも述べ、15分ほどで質問を打ち切り、退室した。
学園は26日、面会発言についてコメントを報道各社にファクス送信。「実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出した」と釈明した。中村知事は「一般論として、偽りなら謝罪、説明し、責任者が記者会見するのが世の中の常識」と学園の対応を疑問視していた。
愛媛県は、2015年2月25日に加計理事長が首相と面会し、獣医学部の計画について説明した、という学園の報告内容が記された文書を参議院に提出。学園と首相はともに面会を否定している。 
 
2018/ 6

 

 
2018/ 6 報道

 

■加計学園 理事長の説明「必要ない」愛媛訪問の事務局長 6/1
愛媛県今治市への獣医学部新設を巡り、加計学園の加計晃太郎理事長が安倍晋三首相と面会したとの学園の報告が県の文書に記載されている問題で31日、学園関係者が県への謝罪訪問後、口頭での報道陣の取材に初めて応じた。中村時広知事が「最高責任者がオープンな場で説明すべきだ」と加計理事長による記者会見を求めていたが、この日、対応したのは渡辺良人事務局長。質疑も15分ほどで打ち切って立ち去り、十分な説明はなされなかった。
この日は、学園関係者が初めて口を開くとあって記者約40人、テレビカメラ約10台が集まった。県に謝罪した会場だった会議室の一角に立って取材に応じた。
渡辺事務局長は、理事長が首相と面会したとの虚偽の報告をしたのは自身だとしたものの、報告したかどうかの記憶はなく、発言したとする根拠は「県の文書に記載されていることから逆算したら自分しかいない」と述べるにとどまった。理事長と首相との面会がなかったという根拠も示せず、真相は闇に包まれたままだ。
質疑途中で突然「次があるようなので」と歩き出し、報道陣が質問を重ねたが質問には答えないままエレベーターに逃げるように乗り込んだ。今治市役所でも取材に応じたが、ここでも十分な説明はなかった。
学園から謝罪と説明を受けた県企画振興部の西本牧史部長は面談後、報道陣の取材に対し、学園側のこの日の県への説明については「真摯(しんし)にされた」としたが、渡辺事務局長が取材を途中で打ち切り、報道陣ともみ合いになりながら退出したことには「あれを見て県民が納得するかといえば疑問だ」と対外的な説明は不十分との認識を示した。
県側はこの日、改めて「最高責任者がオープンな場で説明すべきだ」とする知事の意向を伝えており、渡辺事務局長は「説明する必要はない」としながらも「(知事の意向は)持ち帰って報告したい」と話した。
○加計学園の渡辺良人事務局長と報道陣との主なやりとり
記者 県にどんな説明をしたか
−−構造改革特区(の申請)で何回も蹴られていて、なんとかひとつの形にしたいと(理事長が首相と面会したことを)私が言ったんだろうと思う。そのことをおわびした。(県の文書が出たとき)3年前のことで面会をしたかは覚えてなかった。だが、県が文書を(根拠も)何もなく書くことはないので、あの時、たぶん自分が言っただろうと思う
記者 安倍首相と加計理事長の面会はなかったと考えているか
−−はい
記者 どのように確認したか
−−(県の文書の存在から)逆算して、当時のメンバーからは僕しか言う人はいない
記者 首相の名前を使ったという認識はあるか
−─3年前のことだから、どう言ったか内容は全く覚えていないが、県の文書を見ると僕がそういう表現をしたのだと思う
記者 面会について理事長から聞いたことはないか
−−ない
記者 説明責任を果たすべきだという意見もあるが対応は
−−説明をする必要もないと思う
記者 当時うそをついたということでいいか
−−うそというか、そういう思いで説明したんじゃないかと思う
記者 自身の判断で
−−そう、その場の雰囲気で
記者 うそを基に公金が支出された
−−うそで認可されたとは思っていない
記者 加計理事長が取材に応じないのはなぜ
−−県の方からもそういう話を聞いた。持ち帰って報告したい  
■加計学園事務局長渡邉良人の愛媛県謝罪に見る足りないもの 6/1
加計学園事務局長渡邉良人が5月31日(2018年)午前、愛媛県庁を訪れて安倍晋三と加計学園理事長加計晃太郎とのニセ面談情報を(本人はそうは言っていないが)愛媛県と今治市に流したのは自分だと謝罪したことを5月31日付でマスコミが伝えていた。
5月21日(2018年)、中村時広愛媛県知事が参議院から要請のあった加計学園獣医学部新設に関わる文書を提出。2015年3月の「獣医師養成系大学の設置に係る加計学園関係者等との打ち合わせ会について」と題した文書に、〈加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告したいとの申し出があり、3月3日、同学園関係者と県との間で打ち合わせ会を行った。〉とあり、加計学園からの報告の一つとして、〈2/25に理事長が首相と面談(15分程度)。理事長から、獣医師養成系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは「そういう新しい獣医学大学の考えはいいね。」とのコメントあり。〉と出ている。
中村愛媛県知事が参議院に愛媛県の新文書を提出した5月21日から4日後の5月26日に加計学園は上記面談を否定するコメントを発表している。
そこには、〈当時は、獣医学部設置の動きが一時停滞していた時期であり、何らかの打開策を探しておりました。そのような状況の中で、構造改革特区から国家戦略特区を用いた申請に切り替えれば、活路が見いだせるのではないかとの考えから、当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と(今治)市に誤った情報を与えてしまったように思うとのことでした。〉と、ニセ面談情報考案の理由と目的が書かれている。
そして5月31日の加計学園事務局長渡邉良人の愛媛県庁謝罪訪問。2018年5月31日付「朝日デジタル」記事が謝罪の動画を載せていたから、文字に起こした。
渡邉良人「このたびは愛媛県に対し多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳なく思っております。お詫びを申し上げます。(一礼)
あの、実際、総理と理事長が面会をしたということについてはですね、これはこちらの方で、えー、そういうことを言ったのかなと、いうことで、覚えてなかったんですね。3年前のことですから。
それで、ちょっと、あの、ま、県の方がですね、ああいう文章を、何もなく書くということはないということで自分が思い出す限りはですね、あのときに、多分、自分が言ったんだろうというふうに思います。
県の方がですね、何もないところで書くいうことはあり得ないと、いうふうなことから逆算しましてですね、もしあのとおりのメンバーから言えば、もう僕しか言うのはおらないだろうということで――」
記者(テロップ)「国会で説明責任を果たすべきだとの意見があるが?」
渡邉良人「そうですね。何もそういうふうなことがないもんですから、説明をする必要もないんじゃないかなと思うんですけども、結局そういう思いで以ってですね、説明したんじゃないかなと思います」
記者(テロップ)「渡邉事務局長自身が嘘をついた?」
渡邉良人「えー、まあ、ウソ、ウソをついたと言いましょうか、あのー、結局そういう思いで以ってですね、説明、県に説明したんじゃないかと思います」
記者(テロップ)「ウソを元に公金が出された」
渡邉良人「ウソで以ってですね、認可になっているとは思ってませんで」(聞き取れない箇所あり)
「3年前のこと」だから、「そういうことを言ったのかな」、「県の方がああいう文章を何もなく書くということはないから、多分、自分が言ったんだろうというふうに思う」、あるいは「あのとおりのメンバーから言えば、もう僕しか言うのはいない」等々、安倍晋三と加計 晃太郎が2015年2月25日に面談したこと、その会話の一部を紹介したこと自体は覚えていないが、あくまでも県の文書の記載から「逆算」した結果、ニセの面談を報告したのは自分の仕業に違いないと推測しているに過ぎない。
いくら加計学園獣医学部認可を実現させるためとは言え、いや、実現させる一助とするために一国の首相である安倍晋三を相手に自分のところの理事長とのありもしなかった面談の事実をデッチ上げたことの大それたことをしたという深刻な思いも罪の意識からの反省も発言からは窺うことはできない。
このことは発言中の顔の表情にも見えた。深刻に受け止めている様子は探すことはできなかった。
いくら覚えていなくても、愛媛県文書の記載から「逆算」して、一国の首相との面談をデッチ上げ、ニセの面談情報で獣医学部新設認可を有利に運ぶべく不当利益を意図したのが自分である可能性が否定できない以上、大それたことをしたことの反省くらいは示していいはずだが、僅かでも示してはいなかった。
この誤魔化しでいけば、十分に誤魔化せると高を括っているのかもしれない。
渡邉良人は面談を否定するコメントを出すについても、自身が愛媛阿県庁に赴いてニセ面談情報の提供を謝罪するについても、愛媛県の新文書の大方を読んでいなければならない。なぜなら、文書の大方を読んでいなければ、否定も謝罪も、文書全体に書いてある事実それぞれと整合性が取れていなければ、否定コメントが否定とならず、謝罪が謝罪とならない可能性が生じる恐れが出るからなのは言うまでもない。
昨日のブログにも書いたが、《県・市と加計学園との事情打合せにおける渡邉事務局長主な発言》と題する愛媛県新文書No.7の中に2015年4月2日の首相秘書官柳瀬唯夫との首相官邸面会当日の面会直前なのか、当日以前なのか分からないが、加計学園事務局長渡邉良人の発言として、〈先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったことに対し、理事長から柳瀬秘書官にちゃんと説明しておくように言われている。同秘書官からも、本日、その点を質問される可能性があり、県・今治市から、100%の回答にはなっていないが、ちゃんと昨年12月26日にペーパーにより文部科学省に直接説明している旨を回答してほしい。〉と記載されている。
この発言の主意を解くと、下村博文が加計学園に対して文科省として望む獣医学部の形態に添う課題を出したが、何の回答もないと言って、自身も同席していた安倍晋三と会食していた加計 晃太郎に「けしからん」と伝えた。伝えられた加計晃太郎は自身の学園の事務局長である渡邉事務局長に対して会食後、2015年4月2日の首相官邸での面会が決まってからだろう、このことを柳瀬唯夫との面会の際に「柳瀬秘書官にちゃんと説明しておくように」と指示したということになる。
と言うことは、この指示自体が安倍晋三と加計晃太郎とが下村博文を加えて会食し、獣医学部について話し合ったことを事実中の事実とする渡邉良人による間接的証言ということになる。
首相秘書官の柳瀬唯夫は2015年4月2日の愛媛県・今治市、加計学園関係者との首相官邸面会時に、〈加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、その対応策について意見を求めたところ〉今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよい。〉と、愛媛県新文書は柳瀬唯夫の発言を記している。
いわば渡邉良人は首相官邸でも、安倍晋三と加計晃太郎とが下村博文を加えて会食し、獣医学部について話し合ったことを事実とする発言を行った。
2015年2月25日の安倍晋三と加計晃太郎の面談はデッチ上げ情報だといくら否定したとしても、愛媛県と今治市職員、さらに渡邉良人とその他が首相官邸を訪問した2015年4月2日から遡って「先日」という近い過去に安倍晋三と加計 晃太郎が下村博文を交えて会食し、獣医学部について話をしていた事実までも否定しないことには安倍晋三が今治市新設獣医学部の事業主体が加計学園であることは2017年1月20日になるまで知らなかったとしていることに対して前者の否定は意味を失うことになる。
渡邉良人は愛媛県文書の大方を読んでいるはずだから、両方の面会を否定しなければならなかったはずだが、片方の面会しか否定していない。それとも2015年4月2日から指した「先日」が2015年2月25日だとしたら、2015年2月25日の面会の否定だけで足りることになる。
但し否定を完璧とするためには、いわば面会がニセ情報であることを証明するためには、渡邉良人は2015年2月25日の面会と2015年4月2日から指した「先日」の面会が同じだったと証明しなければならない。
勿論と言うべきか、首相秘書官柳瀬唯夫は2018年5月10日の参考人招致で下村博文「けしからん」発言の対応策を4月2日の首相官邸で渡邉良人から求められたことを「全く記憶にない」と答弁し、安倍晋三も「加計理事長とそしてまた下村大臣と、三人で会食したことはございません」と会食否定の国会答弁をしているが、愛媛県職員が柳瀬唯夫と同じテーブルに座って、直接耳にした発言をメモに取り、あとで纏めて文書にしたであろう事実性に基づいて記録した内容である。
柳瀬唯夫の記憶にない答弁、さらには安倍晋三の会食否定の国会答弁に対して愛媛県職員が加計学園理事長渡邉良人と首相秘書官柳瀬唯夫が交わした発言をそのまま記録した事実性と比較してどちらにより信憑性が高いと言うことができるだろうか。
と言うことなら、渡邉良人は2015年2月25日の面会と2015年4月2日から指した「先日」の面会が同じ面会であったことを証明するだけではなく、《県・市と加計学園との事情打合せにおける渡邉事務局長主な発言》の中に記載されている自身の発言を愛媛県側が文書に記録することで示した事実性を打ち砕く方法で否定して初めて面会の事実の否定も愛媛県に対する謝罪も不足のないものとなる。
いわば単に自分はそのような発言はした記憶はありませんと記憶頼りの否定をするだけではなく、愛媛県職員が柳瀬唯夫と同じテーブルに座って直接耳にした事実性自体を合理的な言葉遣いで打ち砕かなければならない。
例えば、「絶対に言っていないことは確信を持って言うことができる。言っていないことを書いた愛媛県職員はどうかしていたのだ。精神鑑定に回すべきだ」ぐらいは言うべきだが、それでも言葉遣いの合理的は不足する。 
■加計学園“首相と架空面談”、幹部が愛媛県に謝罪 6/1
獣医学部の新設をめぐり、加計学園が実際にはなかった安倍総理と理事長の面談を愛媛県に伝えていたと発表した問題で、学園の幹部が31日、県と今治市を訪れ、謝罪しました。
訪問したのは、加計学園の渡邉良人事務局長らです。
「おわび申し上げます」(加計学園 渡邉良人 事務局長)
学園は先月26日、愛媛県作成の文書に記されていた総理と理事長の面会について、県に事前説明のないまま「実際はなかった」とするコメントを報道機関にファックスしていました。
会合を終えた渡邉事務局長は、うその面談を伝えたのは自分だったと明らかにしました。
「その場の雰囲気で、ふと思ったことを言ったのでは」(加計学園 渡邉良人 事務局長)
しかし、会見は、およそ15分で一方的に切り上げられました。
Q.今ので説明責任を果たしたと思うのか?
「説明責任は果たした」(加計学園 渡邉良人 事務局長)
この後、渡邉事務局長らは今治市を訪問しました。
県と市は加計学園に総額93億円の補助金を支払う方針ですが、「今後の対応は今回の説明を踏まえ、検討したい」と話しています。  
■加計問題 「面会」否定ぶり突出 「学園」の不自然さ露呈 6/1
加計学園の獣医学部新設をめぐり、国や学園との交渉経過をつづった愛媛県文書の余波が収まらない。国会質疑や関係者の発言などから分析すると、一連の経過と多くの点で合致している。信頼性を否定する材料が見当たらないなか、安倍晋三首相と加計 晃太郎理事長の「面会」に関する両者の否定ぶりが突出しており、逆に学園の説明の不自然さが露呈する状態になっている。
安倍首相と加計学園は強く否定
「加計氏とお会いしたことはない」。首相は5月28日の参院予算委員会で、文書に記された「2015年2月25日に理事長が首相に面談(15分程度)」との記述を強く否定した。学園側もその2日前の26日、「当時の担当者が県と今治市に誤った情報を与えた」とのコメントを公表。渡辺良人事務局長が31日に県や市を訪れて謝罪し、取材に対して「自分が言ったと思う。その場の雰囲気で」と釈明した。
それでも文書の記載は明確だ。「学園から、理事長と首相の面談結果について報告したいとの申し出があり、3月3日に打ち合わせ会を行った」と説明。その後に面会の概要として「首相からは『そういう新しい獣医大学の考えはいいね』とのコメントあり」「柳瀬(唯夫首相秘書官・当時、現経済産業審議官)氏から改めて資料を提出するよう指示。早急に調整」などと記されている。
文書の内容否定、でも報告は事実
面会は架空のものだったとする学園の説明が事実ならば、地元自治体に対する報告内容が「虚偽」だったことになる。その半面、文書は学園側の説明を正しく記録していたことを示し、その正確性を裏付けることになる。
ただ、これまでの説明に照らせば、にわかに納得できない点が少なくない。学園のコメントは面会を持ち出した理由について、当時、獣医学部の新設計画が行き詰まったため、「何らかの打開策を探していた」と説明。「首相と友人である理事長の面会」を錦の御旗(みはた)に、県や市からより積極的な関与を引き出そうとしたように受け取れる。
首相「地位を利用しない人物」に疑問符
「昔からの友人なので会うことはあるが、(首相の)地位を利用して彼が何かを成し遂げようとしたことはなかった」。首相は昨年7月の国会答弁で加計氏についてこう語り、個人的に獣医学部の話をしたことはないと強調してきた。行政トップとの面会を「打開策」と位置づけた学園のコメントは、これまでの首相の説明と明らかに矛盾する。
元検事の郷原信郎弁護士は「学園が本当に地元自治体をだましたとしても、首相との面会を偽る以上、理事長である加計氏が知らなかったとは考えにくい」と指摘する。
学園のコメントが事実ならば、県や市の積極的な関与を引き出すため、学園が主導して架空の首相面会まで持ち出したことになる。県や市は学園の獣医学部新設に当たって多額の補助金を交付している。郷原氏は「あり得ないストーリーだ。学園側は今後、どのように説明するつもりなのか」と疑問視する。
柳瀬氏「死ぬほど実現したい」発言には理解
文書にはその後の15年4月2日、県と市、学園の3者が首相官邸で柳瀬氏と面会した際、柳瀬氏が県と市に対し、「首相案件になっている。自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」と発破をかけた様子が生々しく記録されている。首相はこの点について28日、「『死ぬほどがんばれ』は精神論。特区というのは大変なので、それぐらいの覚悟を持ってほしいというのは普通だ」として、文書の記述を自然なものとして説明した。
加藤厚労相は面会認める
文書の信ぴょう性を裏付ける点は他にもある。15年2月の県、市、学園3者の意見交換で、学園側が「官邸への働きかけを進めるため、2月中旬に加藤(勝信官房副長官・当時、現厚生労働相)氏との面会を予定」と発言。その後、今治市を通じて県に伝えた面会結果として、加藤氏が「日本獣医師会の強力な反対運動がある」などと慎重な姿勢を示したことが記されている。
加藤氏はこれに対し、文書が明るみに出た翌日の5月22日、15年2月14日に岡山県にある自身の地元事務所で面会したことを認めた。さらに国会答弁でも、学園側から「こういう状況でなかなか実現できず困っている」と相談されたと発言。面会の時期や、学園側にとって国との交渉が難航していた状況と合致する。
面会の否定は最後の防衛線?
柳瀬氏も5月10日の参考人招致で、15年4月2日以外にも2月か3月から6月ごろの計3回、官邸で学園関係者と面会したと説明した。文書には3月24日の今治市からの報告として、渡辺事務局長が柳瀬氏から「日本獣医師会の反対が強い。内閣府と相談を」と指示されたことが記されており、状況は合致する。
それでも、柳瀬氏は首相の関与にまつわる部分を強く否定している。文書では、4月2日の県など3者との面会で、学園側が「首相と加計氏が会食した際、下村博文文部科学相(当時)が『加計学園はけしからん』と言っているとの発言があった」と報告してアドバイスを求めたことになっている。柳瀬氏は複数回の面会の事実は認めたが、この点については「このような話が出た覚えはない」と強く否定している。
「首相と加計氏の面会を認めれば、これまでの首相答弁の全てがひっくり返る」。政治アナリストの伊藤惇夫さんはこう指摘する。「加計ありき、あるいは首相の意向が何らかの形で働いたことが証明され、首相答弁も虚偽になる」と政権はのっぴきならない状況に追い込まれていると分析する。郷原氏も首相の関与について「将棋で言えばずっと前から『詰んでいる』状態だ。もはや国会答弁が説明になっておらず、『王将を取られるまで指し続けるのか』と言いたい」と結んだ。  
■加計学園がのめり込んだ「総理ビジネス」 6/1
加計学園の獣医学部新設をめぐり、事前に加計孝太郎・加計学園理事長と安倍晋三総理が面会していたとされる問題が迷走を重ねています。「実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、(愛媛)県と(今治)市に誤った情報を与えてしまった」と主張している加計学園の渡辺良人事務局長が、愛媛県庁を訪れて謝罪しました。
すでに加計側の言い分を信じる人はほとんど存在しないでしょうが、それにしてもあまりにお粗末。前回のコメント発表時には”騙した相手“の県と市に事前連絡もせず、記者会見もせずに、いきなり報道機関にFAXを送りつけて中村県知事の怒りを買っています。その後、アポなしで県庁を訪れ、さらに怒りを買いました。さらに今回は知事の海外出張中を狙っての謝罪訪問。何を考えているのやら…。
「総理と理事長の面会は実在しなかった」という学園の説明は信用に値しません。たぶん会っているのでしょう。ですが面会が本当に学園による捏造だったら、それはそれで大変な問題に発展します。加計学園が、県や市からの補助金を吊り上げるため、理事長と総理との面会をでっち上げたことになるからです。
愛媛県の文書を振り返ってみましょう。2015年3月3日、「加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告したいと申出があり」県と学園が打ち合わせを行いました。その際の文書に、安倍総理の「いいね」という発言や、「柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示があった」という報告が載っています。
同時に、学園は県に対して、多額の費用負担は一私学では困難だとして「県・市の財政支援をお願いしたい」という要請を行っています。一定の財政支援は構造改革特区提案の当時から織り込み済みでしたが、その費用の大幅な拡大が懸念されていたようで、県側にはやや腰が引けた様子がみられます。
同年3月15日には、学園は今治市に対しても同様の報告を行いました。県はその内容について、市からの報告に基づいて文書をまとめています。そこには、より生々しいやり取りが残されていました。
「(市)今回の構想の実現に関しては非常に巨額の資金が必要とのことであるが、今治市としては、50億円の支援と用地の無償提供が限界である。その中で資金計画を練ってほしい。また、県からも協力をいただけると思っているが、県としても厳しいとの話は受けている。≪加計学園からの反応なし≫」
市の補助金は50億円以内という従来の合意を超えて、学園側はさらなる上積みを求めています。そのための“撒き餌”が総理との面会だったことになります。のちに、学園に市から93億円(うち31億円が県負担)の補助金が提供されることになりました。市が「限界」と明言した50億円を大きく上回っており、虚言の動機は補助金を吊り上げるためだったと言われても仕方ないでしょう。
ここまで読んで、「あれ?」と思う人がいるかもしれません。だって、安倍総理との面会は、実際に存在した可能性が高いのです。その場合は、どういうことになるのか。でっち上げではないので、不正行為による補助金吊り上げとは言えません。しかし、総理の威光を使って、補助金の吊り上げ交渉をしていたという事実は変わりません。実はそれこそが加計問題の本質なのです。
柳瀬首相秘書官は県と市の職員に向かってこう言っています。「本件は、首相案件となっており、何とか実現したい」「自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」「確認だが、愛媛県・今治市の両首長がやる気である、ということで間違いないか」―。まるで、学園を代弁して、県と市にねじこんでいるように聞こえないでしょうか。
この問題以前から、加計学園グループは自治体等から巨額の補助金を引き出すことで拡大を繰り返してきました。加計学園は一種の政商であり、補助金はそのビジネスモデルの根幹です。92億円の補助金を受けて開設された加計傘下の千葉科学大学10周年記念式典には、安倍総理本人が出席しました。現職総理としては、異例中の異例です。2011年には「元首相」として加計学園50周年式典で挨拶しています。
また、安倍昭恵総理夫人は加計問題の発覚まで、加計学園系列の認可外こども園の名誉園長を務めていました。15年にはオバマ大統領夫人(当時)を連れて、加計学園の米国姉妹校を訪問しています。13年には加計学園とフィリピンの日本語学校との提携調印式に出席しています。同年、加計系列の小学校が行った教育説明会のチラシには「功労者」としてコメントを寄せています。
加計学園は安倍夫妻との蜜月ぶりを随所で誇示してきました。総理夫妻との関係は、入学希望者や保護者へのアピールのみならず、行政に対する圧力の道具にも使われてきたと言わざるを得ません。その事実を白日のもとにさらしたのが、今回の愛媛文書でした。交渉を有利に進めるため、昭恵夫人との写真を近畿財務局の職員に見せつけた籠池泰典理事長と、やっていることは同じです。
「加計氏が私の地位や立場を利用して何かを成し遂げようとしたことは、ただの一度もない」。そんな総理の答弁は、むなしく響くばかりです。加計学園は明らかに安倍総理の地位や立場を利用していたし、安倍総理本人がそれを容認していたと考えざるを得ないのですから。 
■県庁で謝罪もニタニタ 渡辺事務局長は加計の“陰の実力者” 6/2
「何とかしたいという思いがあって、誤解を招く形になってしまった」 
こう話したのは、愛媛県今治市に新設された獣医学部の問題を巡り、31日、県庁へ謝罪に訪れた「加計学園」の渡辺良人事務局長だ。 発端となったのは、安倍首相と加計 晃太郎理事長が2015年2月25日に面会した際のやりとりなどを記した愛媛県の公文書が公開されたことだ。その面会の報告者として名指しされた加計は後日、マスコミにあてたファクスで<当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えてしまった>と信じられない弁明をして問題となっていた。
この日の渡辺事務局長は、出張中の中村時広知事に代わって応対した県の企画振興部長らに対し、「多大なご迷惑をおかけし、申し訳ない」と陳謝したものの、なぜか表情は終始ニタニタ。さらに「ありもしない面会」を県に報告したことについて「(県が)ああいう文書を書くことはあり得ないことから逆算すると、僕しかああいうことを言う人間はいない」「その場の雰囲気で思ったことを言った」などと悪びれる様子もなく平然と言ってのけたのだ。どうやら愛媛県や今治市にウソをついて多額の税金を引っ張り出し、国会質疑を空転させた社会的責任はみじんも感じていないらしい。
「今治加計獣医学部問題を考える会」共同代表の武田宙大氏がこう言う。
「渡辺氏は、加計学園の実務を取り仕切る事務方のトップ。加計理事長に代わって、政財界との交渉を取り仕切る『陰の実力者』なのです。加計学園から下村元文科相への不正献金疑惑など、学園の全てを知る人物だといわれています。愛媛県議と組んで今治市に獣医学部新設の話を持ってきた張本人で、獣医学部新設によって、どのように補助金を得るか絵を描いたとウワサされています」
獣医学部新設の補助金を巡っては、市が学園側に支払う約93億円のうち、3分の1の約31億円を県が負担することになっている。しかし、加計学園がウソの報告をしていたことが判明し、支援を見直す動きが出てきている。
学園の通信によると、渡辺事務局長は2014年の加計学園新採用研修会で、「もうダメだというときが仕事の始まり」について話したという。まさに今がもうダメなとき。洗いざらいぶちまけて「仕事」をするべきだ。 
■「ふと思った」から安倍・加計面会を捏造? 6/3
安倍首相を守るためのアクロバティックな嘘が繰り広げられている加計学園問題だが、またも呆気にとられるような嘘が飛び出した。今度の嘘つきは、加計学園の渡邉良人事務局長だ。
あらためておさらいすると、いま問題となっているのは、愛媛県新文書に書かれていた、加計晃太郎理事長に安倍首相が「獣医大学いいね」と述べたという2015年2月25日の面談が実際にあったのかどうかという点。先月26日、加計学園はFAXでこの面談の事実を否定し、担当者の“でっち上げ”であったと報告した。このでっち上げ話をした張本人が、渡邉事務局長なのだという。
そして、渡邉事務局長が先月31日に愛媛県庁を訪問してはじめて直接の謝罪をおこなったのだが、この場で渡邉事務局長は、度肝を抜くような言い訳を連発したのである。
まず、加計学園側の言い分がほんとうなら、安倍首相の名前を使って愛媛県と今治市を騙し、結果として合計約186億4000万円もの補助金を引き出すという“詐欺行為”をはたらいたことになる。こんな重大な虚偽を明らかにするのであれば、愛媛県と今治市、そして安倍首相にすぐさま謝罪をおこなうのが筋だが、なのに加計学園はそうした当事者には報告もせず、先月26日、一方的にFAX1枚のコメントを出しただけ。当然、“被害者”である愛媛県の中村時広知事は「嘘をついたのがもしほんとうなら、県と市に対して謝罪・説明をして、それから責任者が記者会見して発表するという手順を踏まなければおかしい。あり得ない」と批判していた。
すると、加計学園側は28日に愛媛県庁へ“アポなし”訪問。中村知事はこの非常識な行動に「アポイントは取って来たほうがいい」と不快感を示したのだが、渡邉事務局長が謝罪に訪れた31日は、中村知事が台湾出張中というタイミングだった。記者からは「なぜ中村知事がいないときに謝罪・説明に来たのか」という質問が飛んだのだが、渡邊事務局長は「中村知事はおられないんですか? それは県のアレですからわかりません」などと返答したのだ。
中村知事が31日に台湾へ出張することは、この前日からテレビやネットニュースでも伝えられていたこと。その上、アポイントをとって訪問しているのだから、当然、渡邉事務局長は承知していたはず。それを「中村知事はおられないんですか?」とはあまりに白々しいし、挙句、「県のアレだから」と謝罪に来ているのに県のせいにするとは……。
渡邉事務局長の言い訳「ふと思ったことを言った」は完全に破綻している
だが、記者の質問が本題に移ると、さらにその言い訳は酷さを増した。渡邉事務局長は「『総理と加計理事長が会った』と嘘をついたのか?」と問われると、なぜかヘラヘラと笑みを浮かべながら、こう答えた。
「総理と理事長が面会をしたということについては、これはこちらのほうで、そういうことを言ったのかなということで、覚えてなかったんですね。県の方がああいう文書を、何もなく書くことはないということで、自分が思い出す範囲では、あのときにたぶん自分が言ったんだろうというふうに思います」
「その場の雰囲気というか、ふと思ったことをそのときに言ったんじゃないかなと思います」
何度でも言うが、渡邉事務局長が嘘をついたと言うのがほんとうなら、これは詐欺行為であって、ニヤニヤ・ヘラヘラと笑って話すようなことではない。しかも、「そういうことを言ったのか覚えてなかった」「自分が思い出す範囲」という、安倍首相や柳瀬唯夫・元首相秘書官と同様、証拠も何もない“あやふやな記憶”しかないのだ。
というか、それ以前にこの渡邉事務局長の言い訳は破綻している。安倍首相が「獣医大学いいね」と言ったと加計学園側が愛媛県に報告した2015年3月3日の打ち合せは、〈加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告したいとの申出があり〉(愛媛県新文書より)おこなわれたものなのだ。
つまり、面談がなかったとするなら、「ありもしない面談の報告をしたい」と加計学園側は申し入れたことになり、3月3日の打ち合わせは設定理由からして虚偽だったことになる。しかも渡邊事務局長は、理事長と安倍首相の面談を「その場の雰囲気で、ふと思ったこと」などと説明しているが、「その場でふと思ったこと」を一体どうやって事前に申し入れるというのか。もはや整合性をとる気があるのかすら疑わしい、「ご飯論法」以前のお粗末な言い訳だ。
しかも、この矛盾を記者に指摘されると、渡邉事務局長は「3年前のことなのでよくわからない」と言い出し、「それ以外にもいろいろな話し合いを結構している」と、またも回答をはぐらかしたのだ。
さらに、3月15日に加計学園側と今治市がおこなった協議の内容を記した愛媛県文書には、〈柳瀬首相秘書官と加計学園の協議日程について(2/25の学園理事長と総理との面会を受け、同秘書官から資料提出の指示あり)(学園)3/24(火)で最終調整中である〉と書いてある。2月25日に安倍首相と加計理事長が面談をおこなっていないとなれば、加計学園側はどうやって官邸での柳瀬首相秘書官との協議に漕ぎ着けたというのか。
しかし、やはりこの問題についても、渡邉事務局長は「柳瀬秘書官につきましても、どういうことを言って、どういうふうにアレしたかということは、まったく覚えておりません」としか返答できなかった。またしても、都合の悪い部分は記憶がないのだ。
記憶が曖昧な渡邊事務局長が「加計理事長からの指示は一切ない」だけは断言
こうやって肝心なことについては、記憶のせいにしてごまかし続けた渡邉事務局長だが、たったひとつ、明確すぎるほど明確に答えた質問がある。それは、加計理事長からの指示があったのかという質問だ。
渡邊事務局長は、これに「(指示は)一切ない」「自分が言った」と断言。挙げ句、柳瀬唯夫首相秘書官と協議をおこなった件についても、「ある程度、自分で判断して自分で今回、立ち上げて行った」「(加計理事長に)細かい話はしていない」と言い、官邸で協議をおこなったことすら加計理事長には報告していなかったと言い張ったのだ。
獣医学部新設は加計学園にとって長年の悲願であり、その指揮は理事長である加計晃太郎氏が執ってきたことは間違いない。事実、加計理事長と渡邉事務局長は、2016年8月と2017年2月に山本有二農水相(当時)と面談をおこなっていたことがわかっている。なのに、官邸で首相秘書官と直接協議をおこなったことを加計理事長に一切報告していないなど、まずもって考えられない。
この渡邉事務局長は、「官邸は絶対やると言っている」と記されていた萩生田光一・内閣官房副長官(当時)の「発言概要」でも、「渡邉加計学園事務局長を浅野課長のところにいかせる」と書かれていた人物であり、獣医学部新設に向けた直接の担当者として実働してきた。その上、渡邉氏は、加計学園の常任理事でもあり、一時は獣医学部の施設設計を請け負った加計学園グループのSID創研の代表取締役を務めていたこともあるほどの人物だ(ちなみに加計学園資料や登記では常任理事およびSID創研の代取は「北村良人」と明記されているが、加計学園に問い合わせたところ、これは渡邉氏と同一人物で、数年前結婚し養子となり、正式には「北村」姓となったが普段は旧姓の「渡邉」を使用しているとの回答を得た)。
このように、陰に陽に加計理事長を補佐してきた側近中の側近が、加計理事長に柳瀬首相秘書官との協議さえ報告せず、さらには加計理事長の「腹心の友」である安倍首相の名前を勝手にもち出して詐欺行為をおこなったとは、あまりに無理のあるシナリオだろう。
日大アメフト問題とは対照的に、加計理事長を追及しないマスコミ
実際、加計学園内部からも、この渡邉事務局長の説明を否定する声があがっている。31日放送の『報道ステーション』(テレビ朝日)では、加計学園関係者がこう証言したのだ。
「一職員が『想像したこと』を言ったなんて、あり得ない」
「必ず理事長が、大きい行事とか『こういうことをするんだ』というのを、ひとりで決めるようなところがあるから。ナンバー2とかナンバー3が勝手にやったということは、まずあり得ない」
「トップ(加計理事長)が言って、命を受けて『行って、こういう話をしてこい』、向こうに行ったらどうだったのか、必ず帰って報告は当たり前」
さらに、この関係者は、渡邉事務局長について、こう評した。
「実直よね。言われたことをこなすだけ。自分で考えて、どうこういう考え方の人ではない。それがずっと染みついている」
すべては、安倍首相と加計理事長のふたりを守るため。その目的のために、一体どれだけ彼らの部下たちに嘘をつかせ、国民に茶番劇を見せつければ気が済むのだろう。しかも、渡邉事務局長は、「面会にしろ、会食にしろ、加計理事長本人に伺いたい」という記者からの質問に対し、「ちょっと、理事長がどう考えられているのかということは、いまは自分はわからないですね」と言い、事実上、加計理事長が会見する予定がないことを示した。
この期に及んで、これだけ世間を騒がせている責任者が、表に出てくる気配さえ見せないとは……。安倍首相からも加計理事長からも、国民は完全に見くびられているのである。
だが、これだけ馬鹿にされながら、メディアは、安倍首相や加計学園の部下を人身御供にする冷酷さやあからさまな嘘にはツッコミを入れようとしない。日大アメフト部問題で田中英壽理事長ら上層部を厳しく追及しているのとは対照的だ。いま、嘘に嘘が積み重なっているこの状況をつくり出しているのは、それを黙認するメディアの責任とも言えるだろう。 
■もりかけ疑惑にこだわる野党はバカなのか 6/5
党首討論は「時間の無駄」なのか
5月30日、およそ1年半ぶりに国会で「党首討論」が行われた。安倍晋三首相に対し、野党4党首が交代で議論を展開し、その多くは、森友学園の国有地売却問題と加計学園の獣医学部新設問題を取り上げた。
そんな野党に対し、「これまでに国会で何度も取り上げられており、その繰り返しでは党首討論を行う意味がない。時間の無駄だ」という批判の声があがっている。こうした批判は妥当なのだろうか。
党首討論で安倍首相は「同じことを聞かれれば、同じことを答える」と開き直り、野党の追及にこれまでと同じ説明を繰り返した。さらには「私や妻の問題に持っていこうとするから本質からそれていく」とまで言い放った。
野党がいわゆる「もりかけ疑惑」について繰り返し質問するのは、安倍首相の答弁があいまいだからだ。むしろ「はぐらかし」の答弁により、疑惑を深めてきたという経緯がある。
改竄、隠蔽、廃棄、虚偽答弁
45分間の党首討論でトップバッターに立ったのは、立憲民主党の枝野幸男代表だった。
森友学園の問題で枝野氏が「首相は昨年2月の衆院予算委員会で『私や妻が関係したなら首相も国会議員も辞める』といった。ところが5月28日には『贈収賄にあたらないから問題がない』とも受け取れる答弁をした。急に限定するのはひきょうだ」とただすと、安倍首相は「急に新しい定義を定めたわけではない」と答弁した。
さらに加計学園の問題で枝野氏が「加計学園は、加計孝太郎理事長が首相と面会した愛媛県の内部文書を『虚偽だ』と発表した。
首相の名を勝手に使ったことになる」と指摘すると、安倍首相は「政府としてコメントする立場にない」とかわした。
共産党の志位和夫委員長も「1年以上たっても国民の疑惑が解消されるどころか、ますます深まっている。改竄、隠蔽、廃棄、虚偽答弁。あなたの政権の下でなぜこのような行為が引き起こされるのか」と詰め寄った。
これに対し、安倍首相は「森友学園問題では、私の妻が名誉校長を引き受けていた。加計学園問題は友人が獣医学部を新設しようとしていた。国民から疑念の目が向けられても当然だ」と反省の色も見せたが、それもここまでだった。
読売は「もりかけ疑惑」の幕引きを主張したいのか
こうした党首討論について、各紙の社説はどう書いているのか。
安倍政権を擁護する姿勢が強い読売新聞の社説(5月31日付)は、野党の追及するもりかけ疑惑に「いずれも何度も国会で取り上げられた論点である」と言い切り、「首相は『同じことを聞かれれば同じことを答える』と応じ、自らと夫人の関わりを否定した」と書く。
そのうえで「党首討論がこれまでの委員会審議の繰り返しでは意味がない。両氏(枝野氏と安倍首相)のやり取りは物足りなかったと言わざるを得ない」と指摘する。
もりかけ問題を取り上げる野党を「幕引きにすべき問題だ」と批判したいのだろう。
毎日新聞の社説(5月31日付)は読売社説とは違う。
「本質そらしは首相の方だ」との強い見出しを付けてこう主張していく。
「相変わらず首相は聞かれたことにまともに答えず、時間を空費する場面が目立った」
「森友・加計問題に対する国民の疑念が晴れないのはなぜか。首相はなお、分からないのかもしれない」
「首相の姿勢を端的に表していたのが、枝野氏に対して語った『同じことを聞かれれば、同じことを答える(しかない)』との答弁だ」
「財務省の文書改ざんなど一連の重大問題は、すべて首相を守るためではなかったか。共産党の志位和夫委員長が指摘したように、多くの国民がそれが本質と見ているはずだ」
「にもかかわらず首相は文書改ざんは『最終的には私の責任』と言う一方で、文書保存のシステムに問題があったと強調した。問題をすり替えているのはやはり首相である」
社説を読み比べると、新聞社の主義・主張の違いがよくわかる。今回の読売社説と毎日社説は、そのいい例だろう。
党首討論終了後に「笑顔で握手」した野党の党首
再び読売社説に戻る。
読売社説はその中盤で「国民民主党の玉木(雄一郎)共同代表は、米政権が検討する輸入車への新たな関税措置を問題視し、『言うべきことは言い、やるべきことをやらないと、自由で開かれた貿易体制が壊れる』と指摘した」と書き、「首相は『同盟国の日本に課すのは理解し難い』と語った。国益を確保する観点から『戦略を持って対応している』とも強調した」と指摘する。
自国第1主義を唱えるトランプ米大統領の対米通商問題だ。これに安倍首相がどう対応していくのか。
外交問題に強いといわれる安倍首相の腕の見せどころだが、日本の重要課題であることに間違いない。
さらに読売社説は日露の北方領土交渉を取り上げた玉木氏の質問も取り上げる。
「日露の北方領土交渉に関して玉木氏は、4島返還時には米軍を島に駐留させないと、トランプ米大統領から確約をとるよう求めた。首相は、交渉の詳細は明らかにできないと答えた」
「停滞気味の領土問題を打開する展望や決意を首相が示さなかったのは残念である」
こう書いた後で読売社説は「発足から間もない党の代表として、玉木氏が意欲的に論戦を挑んだのは評価できる」と玉木氏を褒める。
なるほど読売社説が主張する通りかもしれない。日本の政策課題を論議するのが党首討論の目的だからだ。
しかしながら玉木氏と安倍首相の間で最初からある程度話が出来上がっていたのかもしれない。玉木氏がもりかけ疑惑に触れなかったり、党首討論終了後に2人が笑顔で握手していたりする場面を見ると、そう考えてしまう。
朝日と安倍首相は交わることのない平行線だ
最後に5月31日付の朝日新聞の社説を読む。
「質問に正面から答えず、一方的に自説を述べる。論点をすり替え、時間を空費させる――。1年半ぶりにようやく開かれた党首討論は、そんな『安倍論法』のおかげで、議論の体を成さない空しい45分となった」
毎日社説と同じく、安倍首相を批判する。朝日は安倍首相が大嫌いなのだ。朝日と安倍首相は、どこまでも決して交わることがない平行線のようだ。
さらに朝日社説は「野党党首の多くが取り上げたのは、やはり森友・加計問題だった。首相は骨太な政策論議を期待すると語ったが、政治や行政に対する信頼を揺るがす問題は避けて通れない」と指摘する。
朝日社説が指摘するように、もりかけ疑惑は解明すべき大きな課題なのである。解明が中途半端なままでは、国民の信頼は得られない。そこを安倍首相に自覚してもらいたい。
公務員倫理や政治倫理の問題は消えない
党首討論の翌日の5月31日、今度は大阪地検が森友学園をめぐる一連の問題で、前財務省理財局長の佐川宣寿氏ら38人全員を不起訴処分にすると発表した。
文書の改竄や廃棄、国有地の大幅値引き売却など、そのどれもが刑事罰には当たらないという内容で、国民は釈然としないだろう。なぜなら1強の安倍政権が法務省を通じて検察に圧力をかけることもあり得る、と考えられるからだ。
財務省は「待ってました」とばかり6月4日に調査結果を公表した。安倍政権は一連の問題に区切りを付けて幕引きにしたいのだ。
不起訴とはいえ、公務員倫理や政治倫理の面で問題がないとはいえない。早くも4日、検察審査会に対して申し立てがあった。検察審査会は不起訴事件について審査し、起訴を求める議決が2度続けば強制的に起訴されることになる。 
■中村愛媛知事がまた一撃 加計理事長に「会見を開くべき」 6/5
安倍政権にダメージを与え続けている愛媛県の中村時広知事が、また一撃を繰り出した。いっこうに姿を現さない加計学園の加計孝太郎理事長に対し「記者会見を開くべきだ」と注文をつけたのだ。
4日、加計理事長が記者会見を開くよう、学園サイドに伝えたと記者団に明らかにした。「コンプライアンスとガバナンスの問題は最高責任者の範囲だ。トップとして対外的に説明する方に重きを置いて欲しい」と語った。
さすがに、加計理事長に会見を求める声は、自民党からも上がっている。田村憲久政調会長代理は、NHKの討論番組で「加計さんが会見するのもひとつではないか」と発言している。
はたして加計理事長は会見を開くのか。日刊ゲンダイが加計学園に質問状を送ると、「貴紙からのご質問には対応できません」との回答だった。
しかし、加計理事長は、中村知事の要請を「やらねーよ」と無視できるのかどうか。加計学園の獣医学部は、事実上、愛媛県から3年間で31億円の支援を受けることになっているからだ。場合によっては、愛媛県が補助金を支出しない可能性もある。
すでに中村知事は「見直しもあり得る」と記者団に答え、最新号の「週刊現代」では「愛媛県は黙ってカネを差し出すほど、お人好しではありません」とコメントしている。ただでさえ、入学者が減っている加計学園は、愛媛県からの補助金を切られたら経営が傾く可能性がある。
このまま会見を開かなければ、中村知事だけでなく、愛媛県議会も黙っていないだろう。
加計問題に詳しい福田剛県議がこう言う。
「獣医学部には、今治市が3年間で93億円を補助し、県は今治市に31億円を補助することになっています。県と市に支援を求めるのなら、トップである加計理事長が県民と市民に説明するのは当たり前です。トップの説明のないまま巨額の税金を支出することは、有権者も納得しないはずです」
はたして加計理事長は、会見を選ぶのか、補助金を選ぶのか。よく考えるべきだ。それとも“腹心の友”に泣きつけば、なんとかなるのか。 
■加計理事長会見 6/19

 

■加計理事長会見 疑惑打ち消しに躍起 語気強め 6/19
学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部を巡る問題で、加計孝太郎理事長(66)は19日、初の記者会見を緊急で開き、学部新設に絡んで“親友”の安倍晋三首相と面会したことは「一切ない」と否定した。会見を通じて、首相の意向が働いたとされる一連の疑惑の打ち消しに躍起になった。
加計理事長は会見冒頭、メモに目を落としたまま「関係者に迷惑と心配をおかけし、おわびする」と頭を下げた。終始、冷静な対応に努めているように見えたが、質疑応答では質問を遮るそぶりもあり、首相と獣医学部のやりとりがあったのではと問われると「ありません!」と語気を強める場面もあった。
加計理事長は学生時代に留学先で安倍首相と知り合い、「腹心の友」とも呼ばれた。先代の後を受けて2001年に理事長に就任、3大学と中学高校などを設置するまでになった巨大な学園グループを率いてきた。
2人は13〜16年だけで20回近くゴルフや会食を重ね、学部新設までの過程に疑念の目が向けられている。だが加計理事長は、会食などで仕事の話を持ち出さないとし、「リラックスするため会っている。(首相は)こちらの話は興味はないと思う」と説明した。
獣医学部新設で、理事長と面会した首相が賛意を示したとする学園の報告を受けていた愛媛県が記録文書を公表。学園は「面会は架空」と謝罪したため、中村時広知事が理事長の説明会見を求めていた。しかし学園は会見実施を当日朝、愛媛県今治市を通じて県に通告しただけで、さらに予定の30分間より早く切り上げ、加計理事長は会場を足早に立ち去った。学園によると、「校務」があったという。獣医学部が立地する愛媛県今治市の市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦共同代表は「いきなり会見をしたのはアリバイ作りにしか思えない。国会に証人喚問されるべきだ」と批判した。
■加計理事長、首相との面会否定 獣医学部新設巡り初会見 6/19
愛媛県今治市での獣医学部新設をめぐり、学校法人「加計(かけ)学園」の加計孝太郎理事長が19日、岡山市の学園内で記者会見した。県の文書に書かれている加計氏と安倍晋三首相の面会は「ありません」と否定した。
加計氏が、獣医学部新設をめぐり会見するのは初めて。会見への出席は地元の記者に限定され、30分足らずで打ち切られた。
加計氏は、文書の記載は学園の渡辺良人事務局長の不適切な言動によるものとして減給(月額10%を6カ月)の懲戒処分にしたと発表。自身は監督責任を明らかにするとし、給与の月額10%を12カ月分、自主返納する。「愛媛県、今治市の関係者のみなさまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことを代表者として深くおわび申し上げる。大学生、保護者、学園関係者、多大な心配をおかけして本当に申し訳ございませんでした」と話した。
そのうえで、県文書に記載された面会について「記録を調べたところ、3年前だったので、記憶にも記録にもなかった」と説明。「我々は何十年来の友達。仕事のことは話すのはもうやめようというスタンスでやっている。リラックスするためにお会いしてますから。政治の話は色々聞いたことはあるが、こちらの話は興味はないと思う」と話した。
県の文書には2015年2月に首相と加計氏が面会したと学園から報告があった、と記載されている。学園は今年5月、「実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出した」とし、渡辺事務局長が県に謝罪。面会の発言は「たぶん自分が言ったのだろうと思う」と話した。
会見での学園の説明によると、19日に緊急の理事会を開き、一連の問題を常務理事でもある渡辺事務局長の不適切な言動による「重大なコンプライアンス違反」にあたるとした。
学園側の対応をめぐっては、中村時広・愛媛県知事は「最高責任者が公に説明するのが当然」などと求めていた。18日にも、加計氏が記者会見を開いていないことについて、「早くされた方がいい」と苦言を呈していた。
■加計理事長会見、野党が遅過ぎると反発=大阪北部地震直後「なぜ今か」 6/19
学校法人「加計学園」の加計孝太郎理事長が19日に記者会見したことについて、立憲民主党など主要野党からは「今頃何なのか。遅過ぎる」などと批判する声が相次いだ。会見内容も安倍晋三首相との面会を否定するなど問題の疑惑解明には程遠く、野党側は加計氏の証人喚問要求を強めた。
「災害の時に合わせて会見したとは言いたくないが、今までなぜしてこなかったのか」。立憲の辻元清美国対委員長は党会合で、震度6弱を観測した大阪北部地震の翌日とあって、こう憤った。
学園の獣医学部新設をめぐる問題が国会で表面化したのは昨年3月。それ以降、加計氏は公の場で説明してこなかった。にもかかわらず、19日の会見は約25分で打ち切られ、野党からは「地震直後でサッカーのワールドカップ(W杯)もあり、会見したというアリバイづくりにしか思えない」(国民民主党幹部)との批判の声が上がった。
加計氏は会見で、長年の友人である首相に獣医学部の話をしたことがないか問われると、「何十年来の友達だが、仕事のことを話すのはやめようというスタンスでやっている」と述べた。立憲の枝野幸男代表は党会合で「到底、納得できるものではなかった」と切り捨て、社民党の又市征治党首も会見で同様の考えを示した。
野党側は加計氏が国会招致の要請を「お待ちしている」と語った点に着目している。国民の泉健太国対委員長は「われわれもお待ちしている」と与党側にボールを投げた。野党国対委員長会談では加計氏ら関係者の喚問要求を確認。辻元氏が自民党に伝えた。
■加計理事長、一連の問題で初会見 首相と面会「記憶、記録ない」 6/19
学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に新設した獣医学部を巡り、加計孝太郎理事長は19日、岡山市の学園本部で記者会見し、学園側の報告に基づいて愛媛県文書に記載された安倍晋三首相と自らの2015年2月の面会について「記憶にもないし、記録にもなかった」と述べ、否定した。愛媛県などに対する虚偽の報告については自らの指示ではなく、当時の担当者の判断で行われたとの認識を示した。一連の問題で加計氏が会見するのは初めて。
岡山理科大獣医学部は、学園が政府の国家戦略特区を活用して計画し、昨年11月、認可された。加計氏は獣医学部について首相と話した時期に関して「それこそ決まってからだったのではないか。(内容も)覚えていない」と説明。首相との関係については「何十年来の友人で、仕事のことを話すのはやめようというスタンス」と答えた。
愛媛県は今年5月21日、獣医学部新設に関し、学園からの報告として首相と理事長の面会があり、加計氏の説明に首相が「いいね」と評価したと記載された新文書を国会に提出。学園は同26日、面会について「実際にはなかった。県などに誤った情報を与えてしまった」とするコメントを発表し、その後、県などに謝罪していた。
会見冒頭、加計氏は「文書を巡り、学園職員が起こした不適切な言動について多大な迷惑、心配を掛け、深くおわび申し上げる」とする文書を読み上げ、愛媛県や今治市に陳謝。愛媛県などへの直接の謝罪は「許されれば行く。(時期は)分からない」とした。
加計氏は会見に先立つ緊急理事会で決まった一連の問題に対する処分内容も発表し、県などに誤った情報を伝えたとして、渡辺良人学園事務局長を6カ月間の月給10%カットとした。加計氏は監督責任で1年間、月給の10%を自主返納することを明らかにするとともに、理事長職を続投する考えを示した。
一方、19日の加計氏の会見について、愛媛県の中村時広知事は訪問先の同県鬼北町で記者団の取材に応じ「もっと早くやれたのではないか」と対応を批判。今治市の菅良二市長は会見を評価するとともに、加計氏が首相との面会を否定したことには「信じる。それに尽きる」と述べた。
■尾木氏、加計理事長の会見に怒り「バカにしてる」 6/20
尾木ママこと教育評論家の尾木直樹氏(71)が、学校法人「加計学園」の加計孝太郎理事長が19日に行った会見について、「完全にバカにしてる」と厳しく批判した。
尾木氏は同日、「加計学園もいい加減で『笑い者』大学なのかしら?」のタイトルでブログを更新。加計理事長が、獣医学部新設をめぐり15年2月25日の安倍晋三首相との面会が「愛媛県文書」に記載されたのは、虚偽の発言をした事務局長の判断だったとの認識を繰り返すなどしたことに「はっきり言ってとても恥ずかしくなりました! これが大学の記者会見??って激しく動揺しました!」と不信感をあらわにし、「これで説明責任果たしたとでも考えているのでしょうか?」と疑問を呈した。
さらに翌20日のブログでは、問題が発覚して以来、沈黙してきた加計理事長が急きょ、大阪の地震やサッカーワールドカップ等に世間の関心が集まっている最中に会見を行ったことに「ワンチャンスだとばかりに[幕引き]会見に打って出た」と疑いの目を向け、「国語の教師として、言葉と表情をよく見聞きすると 完全にバカにしてる 記者たちを見下している ってとても残念!! 教育機関の大学がやってはいけない会見です」と批判した。
■姑息を超えて卑劣な加計会見 6/20
姑息という言葉では足りません。もはや卑劣というべきです。加計学園の加計孝太郎理事長が緊急会見を開きました。大阪で震度6弱の地震が起きた翌朝、かつ4年に一度のサッカーW杯日本代表の初戦の当日です。会見の連絡をしたのは2時間前。私は新聞記者出身ですが、ここまで卑怯な記者会見は経験がありません。これほど大きな問題では初めてではないでしょうか。
大阪で大きな地震があった翌日です。在阪メディアの記者はもちろん、加計問題の取材の中心を担っていた社会部の遊軍記者も多くが地震の取材に投入されており、会見が開かれた岡山に行くのはほとんど不可能です。もちろん、文科省担当など東京の記者は間に合いません。獣医学部が開設された愛媛県内の記者もほぼ間に合いません。
1年3ヶ月もの間、雲隠れを決め込んでマスコミから逃げ回り、国会議員の面会要請も断り続けてきたのに、この期に及んでマスコミに当日連絡して午前中に緊急会見とは。「ドサクサに紛れてうやむやにしよう」という悪意しか感じません。
これまで加計学園はこの問題でまともに取材を受けておらず、地元岡山にはこの件を集中的に取材していた記者はほとんどいないはず。それなのに、会見に出席を認めたのは岡山の記者クラブ加盟社のみ。東京・大阪・愛媛の記者が来るのが、それほど嫌だったのでしょうか。
しかも、サッカーW杯の日本代表の初戦です。民放各社の主力ニュース番組が、一般ニュースを放送するのは、午後10時から11時半ごろまで。この時間、NHKではまさに日本―コロンビア戦を中継しています。その番組終了が午後11時半というわけです。
もとより、会見時間もたった25分で、まともな質疑応答には足りません。正面から質問を受ける気さえない。日大アメフト部の内田正人前監督や、日本レスリング協会の栄和人前強化本部長は、記者会見について強く批判されましたが、今回の加計理事長のやり方に比べれば、よっぽど潔く感じます。
地震の当日に、全閣僚出席の参議院決算委員会を野党の反対を押し切って開催した政府与党のやり方もずいぶん酷いと思いましたが、今回の加計学園はそれどころではない不誠実さです。これで先祖代々、子々孫々に顔向けできるんですかね?
会見での説明も、到底信用に値しません。「我々は何十年来の友達。仕事のことは話すのはもうやめようというスタンスでやっています」。へえー。だったら安倍総理が千葉科学大10周年式典に出席したのは何故? 加計学園50周年式典に出席したのは何故? タイの大学と加計学園の教育交流協定調印式に出席したのは何故? 昭恵夫人が加計系列のこども園の名誉園長に就任したのは何故? 全部、仕事じゃありませんか。
■太田光、地震翌日に会見した加計理事長「罪深い」 6/20
爆笑問題の太田光(53)が、学校法人「加計学園」の加計孝太郎理事長(66)が大阪で地震が発生した翌日に会見を行ったことについて、「罪深い」と批判した。
太田は19日深夜放送のTBSラジオ「爆笑問題カーボーイ」に出演。加計学園の獣医学部新設をめぐる問題が発覚して以降、初めて同理事長が会見に応じたのが大阪の地震翌日というタイミングだったことに疑問を示した。
地震の混乱に乗じて“どさくさ紛れ”を狙ったのではないかと疑う声に触れ、「自分たちの混乱を利用された怒りっていうのが、すごく大阪の人たちにあるんだっていうことがすごい伝わってきた」と太田。
「そういう意味で言うと、罪深いなって思ったね。加計理事長ってのもね。本来だったらこの時期、避けてもいいよね。大阪人はみんな怒ってるって」と述べた。
■加計氏の会見、説明不十分なまま打ち切り 「校務が…」 6/20
愛媛県今治市への獣医学部新設をめぐり、加計(かけ)学園の加計孝太郎理事長が19日、初めて会見に臨んだ。「総理のご意向」の文書の存在が明らかになって1年あまり。今も国会で審議され続け、多くの国民が疑念を抱いている問題への説明は、25分で打ち切られた。
岡山市郊外の丘陵地帯にある加計学園。19日午前11時、会議室に50人以上の報道陣が集まった。
会見を知らせるファクスが地元の報道各社に届いたのはその2時間ほど前。参加できるのは地元の記者に限られ、会見時間も30分ほどと設定された。
会場は、机やいすが端に寄せられたまま。加計氏も報道陣も立ったままで会見は始まった。1年以上に及ぶ国会審議を経て、初めての会見。加計氏が前日にあった大阪北部の地震へのお見舞いを述べた後で処分を発表すると、記者からはほどなく質問が飛んだ。
「国民の関心が非常に高い問題。なぜこのタイミングで緊急会見なのか」
加計氏は「理事会の報告をするということで、開かせていただいた」と説明。会見が決まったのは「今朝です」と話し、「きちんとした形で会見を」と求められると、「それはまた、じゃあ検討させていただきます」と答えた。
淡々と首相との面会を否定し続けた加計氏。これまで会見しなかった理由は「申請をして、それを受ける方なので、謙虚な態度でやりたいと思っていた」とし、国会に招致されたら応じるかは「私が決めることではない。お待ちしております」と述べた。獣医学部の新設が問題になった理由を問われると、「不徳のいたすところではあったと思うが、たまたま総理と仲が良かったということ。申し訳ないと思う」と語った。
20分ほどたったころ、学園側は「校務があるため、質問はあと三つ」とアナウンスし、結局、会見は25分間で打ち切られた。「後悔していることはありますか」と質問が飛ぶなか、加計氏は会見場を後にした。
会見では、説明が不十分な部分も目立った。
会見のきっかけは、2015年3月の学園との打ち合わせを記した県文書が明るみに出たことだ。加計氏と安倍首相が面会し、首相が新しい獣医学部を「いいね」と言った――。政権の説明と食い違う内容に、学園は「誤った情報を与えた」とし、渡辺良人事務局長が「自分が言ったのだろう」と県に謝罪した。中村時広・県知事が加計氏の公の場での説明を求めた。
加計氏は事務局長が面会を持ち出した理由について、「事を前に進めようとして言ったとの報告を受けている」と説明。ただ、報告を受けた時期については「記憶にない。だいぶん前のこと」と言葉を濁した。
県文書には、県が打ち合わせを開いたのは「理事長と首相の面談結果等について報告したい」と学園から申し出があったためと記されている。面会がなければ、申し出の理由が虚偽になる。加計氏は会見で、こうした矛盾には触れなかった。
加計氏は首相との面会について「記憶にも記録にもなかった」と否定した。首相は学園が事業者に認められた昨年1月に、学園の獣医学部新設を知ったと答弁している。加計氏は、首相に初めて獣医学部の話をした時期は「それこそ決まってからだったんではないか」とする一方、「ちょっと覚えていません」とも付け加えた。
首相答弁とのずれもあった。加計氏は「我々は何十年来の友達。仕事のことは話すのはやめようというスタンスでやっている」と語った。一方、首相は昨年7月、「時代のニーズに合わせて新しい学部や学科の新設に挑戦していきたいという趣旨のお話は聞いたことがある」と言及している。
■「加計学園」理事長の記者会見 不信感しか残らなかった原因とは?
さすが学校法人「加計学園」を西日本有数の学校法人グループへと成長させた人物と皮肉のひとつも言いたくなる。問題が報じられて以降、自分が初めて公の場に姿を現すには、今が絶好のタイミングだと読んだのだ。
取材できたのは地元メディアのみ
理事長である加計孝太郎氏が緊急会見を開いたのは、岡山にある加計学園本部。6月18日の朝に起きた大阪の地震にメディアはどこもかかりきり。せっかく大手メディアが駆けつけても、取材できたのは地元のメディアのみ。その会見も「校務があるから」と25分で切り上げられた。
内容はというと、愛媛県や今治市に虚偽の報告をした件について、当該職員と理事長について処分が決まったという報告。担当者が虚偽報告をしたと学園側が発表したのは5月26日。それから数週間経っているのに、今になってわざわざ緊急理事会を開き、緊急会見を行った。
どんなことでも、自分にプラスになるように利用する。このタイミングの緊急会見に誰もが、保身のためというより、これで問題に区切りをつけ、次へと進めるための策士的な計算を感じたのではないだろうか。それだけに、会見中の態度を見ても、真実を話そうという意識が感じられなかったのだ。
書面をもつ手が震えている
冒頭、やや緊張した面持ちで用意してきた書面を淡々と読み上げた加計理事長。続けて一緒に会見に立った岡山理科大学の柳澤康信学長が、獣医学部の今後の役割について書面を読み上げた。人前で話すことなど馴れていると思うのだが、書面をもつ手が震えている。なぜそこまで学長が緊張しているのだろうと、少々訝しくなる。
もとより、これまでの経過から、加計理事長に対しては疑念や不信感を持っていた。そこにこのタイミングでの会見だ。いいイメージを持てるはずもない。なのに質疑応答が始まると、加計理事長は記者に向って、やや斜に構えて顎を上げて立っていた。この姿勢は、相手を見下しているような印象を与える。理事長の立ち方の癖かもしれないが、いかにも尊大な権力者のイメージが強くなった。
質疑応答が始まると、加計理事長の顔には汗が吹き出し、瞬きが増えていく。見ている側は、そこに欺瞞のサインが表れていると感じるだろう。
嫌な質問には、答えながらもすっと視線を質問者から外していく。答える度に身体が大きく前後左右に揺れるのも、不安や動揺と捉えられやすい。
動揺すればそれだけ揺れは大きくなるが、人は嘘をつこうとする時、ついている時は、身体の動きは逆に小さく、少なくなると言われている。「事務局長が勝手にやったという認識か」と聞かれ、「はい、そうです」と答えた時は、逆に身体がほとんど揺れなかった。その後も問題の核心に触れるような質問に答えている時は、身体の揺れが小さくなる。動きが多くなる方に目が向きがちだが、見ている側はそんな動きの変化を敏感に感じ取り、はっきりはわからないが何かがおかしいと思うものだ。
人は真実とは違うことを言おうとすると……
話し方や言葉使いからも、真実を話しているようには感じられない。
愛媛県への誤った情報について「担当者に伝えるよう何ら指示があったのか」と聞かれた加計理事長は、目を瞬かせると「担当者が」と言い、そのまま「あ〜う〜」と言い淀み、「そのような誤解を生むようなことを言ったことに」とさらに間を空けながら説明した。
このタイミングで記者会見を開いた理由について聞かれた時も同様だった。
人は真実とは違うことを言おうとすると、頭の中にある真実を抑制する必要がある。すると言い淀んだり、言い間違ったり、話の途中に不自然な間が空いたりする傾向が多くなるのだ。
「総理に対して獣医学部の話はしなかったか」など、答えたくない質問には、「はい」と短く返答をした加計理事長。真実を話そうとする人は、それを証明しようと詳しく細かく説明をしようとするものだ。同じ質問を繰り返されれば、前とは違う情報をそこに少しでも加えていこうとする。だがそうでなければ、同じ質問をしても、短く答えるか、同じことを繰り返すだけだ。「覚えていません」「ありません」「思いませんでした」など、短く同じ答えを繰り返している様子は、下手に説明して辻褄が合わないことを言わないようにしたとしか、聞こえない。
「獣医学部新設も加計ありきだったのでは」と問われると、淡々とした表情で国家戦略特区へと話をすり替えていく。自分たちを、虚偽の報告を行って国会を停滞させた側ではなく、「申請者側」と答えた時も、自分たちを弱い立場へ方向づけ、そうせざるを得なかった的なイメージへとすり替えてしまう。この論法も、真実を話していないのではと思わせる要因だ。
国会を停滞させたことについて「申し訳ない」と言いながら、表情は変わらない。この会見中、何度も申し訳ないという言葉を口にしたが、声の調子も変わらず抑揚がないため、その発言に感情がこもっていないことがわかる。だから言葉に合わせて、きっちり頭を下げることがない。冒頭、頭を下げた時も表情を変えることもなく、口先だけの実にあっさりしたもの。頭を下げながら記者たちを見続け、その反応をうかがっている形だけの謝罪でしかない。
左目だけ一瞬、微妙に引きつったように瞬き
だが、そんな加計理事長の表情がひときわ強張ったのは、「安倍首相に獣医学部の話をしたのはいつ?」と聞かれた時だ。目の表情が暗くなり、口元にも力が入る。さらに突っ込まれて、仲の良さを質問されると、左目だけ一瞬、微妙に引きつったように瞬きをした。疑われていると感じたのか、何度も視線をそらす。安倍首相との関係については、やはり気を使っているのだ。
それなのに、部下が首相の名前を使って虚偽報告をしても「虚偽発言と言えば虚偽の発言なんだろうが、前に進めるために」と悪びれる様子もなく平然と答えていた。やったもの勝ちの不遜さとでもいおうか、巧妙な経営者のイメージがついてくる。
安倍首相の「(虚偽報告をした加計学園に)抗議する必要がない」という参院予算委員会での答弁を聞いていても、虚偽報告をしたという加計学園の事務局長が、今治市に1人で謝罪に行き、「つい言った」「言ったんだと思う」とへらへらしながら説明していたのを見ても、安倍首相と加計理事長、二人の間に何もなかったと言われて、それを鵜呑みにするのは難しい。
会見を早く終わらせようと、最後にはいい加減な生返事を繰り返し、「もう、もう」と何度も司会の方を向いていた加計理事長。虚偽報告について「指示はしていない」と言うが、タイミングを計ったかのように記者会見した経営者が、首相の名前を利用しない訳がないと思うのは、果たして私だけだろうか。 
 
2018/ 7

 

 
 
 
2018/ 7 報道

 

 
 
 
2018/ 8

 

 
 
 
2018/ 8 報道

 

 
 
 
2018/ 9

 

 
 
 
2018/ 9 報道

 

 
 
 
 

 


■国家戦略特別区域制度 

 

国家戦略特別区域 1
日本経済再生本部からの提案を受け、第2次安倍内閣が成長戦略の柱の一つとして掲げ、国家戦略特別区域法2条で地域振興と国際競争力向上を目的に規定された経済特区である。国家戦略特区(こっかせんりゃくとっく)と略される。
あらゆる岩盤規制を打ち抜く突破口とするために、内閣総理大臣が主導して、地域を絞ってエリア内に限り従来の規制を大幅に緩めることを目的とする。また、この区域は「解雇ルール」、「労働時間法制」、「有期雇用制度」の3点の見直しを対象としている。
経緯
○ 2013年(平成25年)10月21日、午前の衆院予算委員会で、雇用分野を所管する厚生労働相など、関係分野の大臣を、国家戦略特区ごとに設ける統合推進本部から、外す考えを表明。この件に関して安倍晋三総理は、「意見を述べる機会を与えることとするが、大切なのは意思決定。意思決定には加えない方向で検討している」と語った。
○ 産業競争力会議の竹中平蔵は、総理の主導により「地方から国にお願いして国が上の立場から許可するというもの」ではなく、「国を代表して特区担当大臣、地方を代表して知事や市長、民間を代表して企業の社長という国、地方、企業の3者統合本部でミニ独立政府の様に決められる主体性を持った新しい特区」であると語り、「特区を活用して岩盤規制に切り込みたいと思っている」と語っている。
○ 特区の今後の方針について、竹中平蔵は、「(2014年)1月24日に召集される通常国会で国家戦略特区法をさらに磨き上げる」、「臨時国会で措置した特例措置は、あくまで暫定的な初期メニュー」、「さらに(規制改革の)項目を追加していかなければならない」、「更なる措置に向けて、早急な調整を進めるべき」というコラムを掲載しており、対象範囲を広げていく予定。
論評
○ アメリカ通商代表部(USTR)のウェンディ・カトラー次席代表代行は、アベノミクスの3本目の矢である「成長戦略」に謳われている規制緩和や透明性の確保などについて、「TPP交渉のうち1つの焦点となっている非関税分野で、アメリカが目指すゴールと方向性が完全に一致している」、「(TPP交渉の非関税分野の議論は)ほとんどすべて安倍首相の3本目の矢の構造改革プログラムに入っている」と語り、歓迎している。
○ 経済ジャーナリストの東谷暁は、「(国家)戦略特区は間違いなくTPPの受け皿」、「安倍政権の成長戦略は、『アメリカがTPPやそれと並行して行われている二国間交渉で要求していること』をほとんど全て満たしています」、「規制緩和に反対する人たちを「お白洲」に引っ張り出してみんなで批判し、規制緩和を進める」と述べている。
○ NPOフローレンス代表理事で駒崎弘樹全国小規模保育協議会理事長は安倍政権の保育政策を批判してきたと述べているが、国家戦略特区は「これまで変えたくても変えられなかった、時代遅れや陳腐化してしまっている制度を、一部の地域で実験的に変えてみようよ」と出来る制度だとして評価している。駒崎は国家戦略特区担当者と共に 「夏休み中の年1回じゃないと会場が安くレンタル出来ない」などという理由で抵抗する厚労省に協議して、国家戦略特区として「地域限定保育士」という名前で複数の特区地域で試験を2回開催することが決まった。自身のような一科目でも落とすと1年後の試験まで待たされた経験を活かして、年に2回にすることで同じような境遇だった受験者らを半年で再受験出来るようにすることで試験のレベルをそのままに保育士資格合格者を増加させた。特区導入以後に全国で年2回保育士の試験が受けられるようになり、1度に10科目合格出来なかった志望者が半年後に試験を受けられるようになった。更に駒崎は「規制の理由が制定が古くて確認出来なかった」など厚労省担当者に抵抗されていた規制目的が不明なままだった往診の16km規制を廃止して首都圏全域で往診可能すること、小規模保育の全年齢化、小規模保育に現場で不要な国による成人の障害者向けトイレ設置義務の緩和などで成果を示した自負から全国でその規制が緩和されるなど特区制度の存在は日本の社会にとって良かったのは明白だと述べている。 駒崎は官僚の世界で省庁間でナワバリを犯すことはタブーとされてきたが、国家戦略特区は省庁の縄張りに入っていて、大臣レベルほその省以外の他の省庁所にモノを言う権利がないのと違う内閣総理大臣の権威で「これおかしくない?」「意味あるの、これ?」と特区による各省庁の既得権益や制度に穴を開けていくことになるので、総理の権限や内閣府側として期限を設けるのは必須だと理解を示している。特区制度をさらに官僚的に硬直している規制に対して、「そもそもこれは何で規制してるの?」と改めて問える『道具』だと定義している。全国でやる前に特区指定した一部の地域で既に意味を失ったと判断された規制を緩和・廃止して影響をみる実験が可能だとして、この地域で成果が出来たので全国に同じことを広げようとすることを可能にする制度としている。
指定内容
2014年(平成26年)3月28日発表、2014年(平成26年)5月1日指定
○ 東京圏(東京都・神奈川県の全域または一部、および千葉県成田市) - 国際ビジネス・イノベーションの拠点
○ 関西圏(京都府・大阪府・兵庫県の全域または一部) - 医療等イノベーション拠点、およびチャレンジ人材支援
○ 沖縄県 - 国際観光拠点
○ 新潟県新潟市 - 大規模農業の改革拠点
○ 兵庫県養父市 - 中山間地農業の改革拠点
○ 福岡県福岡市 - 創業のための雇用改革拠点
2015年(平成27年)3月19日発表、2015年8月28日指定
○ 秋田県仙北市 - 農林・医療ツーリズムの改革拠点
○ 宮城県仙台市 - 女性活躍・社会起業の改革拠点
○ 愛知県 - 産業の担い手のための教育・雇用・農業等の総合改革拠点
○ 東京圏において、東京都の区域を全域に拡大
2015年(平成27年)12月15日発表
○ 広島県・愛媛県今治市 - 観光・教育・創業などの国際交流・ビッグデータ活用特区
○ 東京圏に千葉市を、福岡県に北九州市を追加
主な成果
○ 神奈川県、大阪府、沖縄県と千葉県成田市では地域限定保育士が創設。
○ 東京都や神奈川県、大阪市では家事代行サービスの外国人活用が解禁。
○ 千葉県成田市では国際医療福祉大学が国内で38年ぶりに医学部を新設。
○ 52年ぶりの獣医学部新設
民進党による特区停止法案
2017年6月7日に、民進党は、加計学園問題への追及を強める中で「国家戦略特区法停止・見直し法案」を参議院に提出したが、廃案となっている。  
 
国家戦略特区 2

 

国家戦略特区とは?
国家戦略特区とは、国や地方公共団体と民間の企業がひとつとなって、あるプロジェクトに取り組むというシステムのことです。
主導するのは国になりますが、地方公共団体と企業が一緒にプロジェクトを動かしていくことで、専門性豊かに、地域に根づいた発展が期待できます。
これまでも地方公共団体が「特区」を申請し、国が認可するという国家戦略特区はありましたが、アベノミクスの成長戦略に掲げられたこともあり、規制を緩和することになりました。
国家戦略特区の認定方法は上図の通りです。国家戦略特別区域会議を特区ごとに設置し、担当大臣や市長や知事などの自治体の長、また、内閣総理大臣が選定する民間事業者らの協力や同意で国家戦略特別区域計画を作成します。
作成した計画書は、内閣総理大臣を議長とし、議員に内閣官房長官や国家戦略特区大臣などで構成された、内閣府に設置した国家戦略特別区域諮問会議を通して、最終的には内閣総理大臣の認定を求めることになります。認定を受けた後は、国家戦略特別区域基本方針の策定を閣議決定し、政令として国家戦略特別区域の指定、内閣総理大臣の命で区域方針の決定がなされます。
これまでの違いとしては、国家戦略特別区域計画の作成の時点で、規制の特例措置が適用されるのが大きな特徴です。ベンチャー企業などが取り掛かる事業の場合には金融支援をしたり、その他にも、設備投資、固定資産税、研究開発などの分野で減税するなどの特例が適用されます。
国家戦略特区を指定する意義やメリットについて
国家戦略特区の大きなメリットは、改革がしやすくなるところにあります。すでに特区として認定を得ている東京圏では、「国際ビジネス・イノベーションの拠点」という改革方針が出されていますが、中でも「カジノ特区」というのがこの特区の有効性を説明するうえで最も分かりやすい例です。
日本では、公営のギャンブル以外が禁止されています。もし、この法律を改正するとしたら、法案を提出し、審議し、閣議で決定を待たなければいけません。与党審査などもあるので、実際に法律として認められて施行されるまでには、長い時間を要します。関連法案を策定しなければいけないこともあるので、ひとつの法律を改正するのは、とても大変なことなのです。
しかし、これが国家戦略特区を設け、その中で「カジノ特区を設ける」ということであれば、法律を変えずにカジノの設置が認められます。ごく地域を限定して特例の改革を行うのであれば、この国家戦略特区は、時間も手間もかかりません。今必要とする事業に、早急に取り掛かれるという点で、国家戦略特区は有効なのです。
国家戦略特区の利点のひとつとしては、民間も巻き込んだ改革ができることが挙げられます。そのため、国だけが、地方公共団体だけがプロジェクトを動かすわけではありません。
財政面でも余裕を持ってプロジェクトを進めることができるので、国や地方公共団体にもメリットが大きいです。地域の活性化や、経済的な成長も見込めるため、その地域に暮らす人達にとっても、景気上昇の恩恵を受けられるメリットになります。
また、あまり大掛かりな法改正をすると、それに対する国民の抵抗感が生まれやすくなります。すると、政権を揺るがす事態になりかねないため、できるだけ穏便に、確実に改革をするために、政府は国家戦略特区を推進する傾向があります。政権にとっても、国家戦略特区の指定はメリットが大きいのです。
国家戦略特区によるさまざまな影響
国家戦略特区は、民間事業者と一緒に取り組むとは言え、税金を投入する公共事業でもあります。本当に必要な事業であればいいですが、そうでない場合、税金の無駄遣いになってしまう可能性もあります。
規制緩和をして改革をしやすくする性質の国家戦略特区の指定は、「税金の無駄遣いをしやすくする」といったデメリットもはらんでいます。きちんとした計画をもとに進められていれば問題はありませんが、これが計画倒れになった場合には、税金の無駄遣いという代償を負います。
また、特区に限って法律の規制緩和を認める国家戦略特区の仕組みについては、法治国家としてのあり方を問う声も上がっています。平等で安全な暮らしを担保する法律が緩和されることで、一部の人や企業が損をしたり、悪影響を受けるのではないかという声もあります。

経済情勢を回復させることは、アベノミクスの中でも注目されている取り組みです。
国家戦略特区は、確かにスピーディーに経済を動かすきっかけになるかもしれませんが、そこにも税金が投入されていることを忘れてはいけません。
そのため、どういった計画がされているのかや、税金がいくら投入されているのかなど、国民一人ひとりが、国家戦略特区の取り組みに興味を持つことが大切と言えるでしょう。  
 
国家戦略特区制度 3

 

特定地域で集中的に規制緩和や税制優遇を行い、経済の活性化に取り組む仕組み。正式名称は国家戦略特別区域制度。第二次安倍晋三(あべしんぞう)政権が2013年(平成25)、成長戦略の一環として創設を決めた。医療、農業、雇用、教育、都市開発などの規制を緩和し、ビジネス環境を整え、内外から人、企業、資金、情報を集め、国際的な経済活動の拠点形成を目的とする。省庁や業界団体などの抵抗が強い「岩盤規制」を崩し、国際競争に負けない都市づくりを目ざす。国、自治体、民間企業などが参加する区域会議で活性化の具体策を盛り込んだ計画をつくり、内閣総理大臣が認定する。2013年に成立した国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号)に基づき、2014年3月に第1弾として東京圏、関西圏、沖縄県、新潟市、福岡市、兵庫県養父(やぶ)市の6か所を、2015年3月に第2弾として愛知県、仙台市、秋田県仙北(せんぼく)市の3か所を、2016年1月には第3弾として広島県・愛媛県今治(いまばり)市、千葉市(東京圏の拡大)、北九州市(福岡市の追加拡大)の3か所をそれぞれ指定。合計10区域で253事業の取組みが行われている。なお第2、第3弾の特区は地方創生特区ともよばれる。おもな取組みは、38年ぶりの医学部の新設、家事代行サービスの外国人活用、公立学校運営の民間開放、外国人観光客の住宅宿泊「民泊(みんぱく)」を認める旅館業法の規制緩和、実質的な企業の農地保有の解禁などがある。2017年には構造改革特区法が改正され、特区内で現行法の規制を一時的に停止し、ドローンや自動走行など革新的技術・サービスを事業化するするサンドボックス制度が導入された。
日本の特区制度には、国家戦略特区制度のほか、2002年に小泉純一郎政権が創設した構造改革特区制度、2011年に民主党の菅直人(かんなおと)政権が創設した総合特区制度、東日本大震災の被災地で雇用、住宅、街づくりなどに特例措置を設ける復興特区制度などがある。以上の特区制度は、規制緩和で地域それぞれの得意な産業を伸ばすという側面が強いが、国家戦略特区は、日本の人口減少・高齢化を踏まえ、政府主導で国際競争に負けない都市づくりに取り組むという特徴をもつ。  
 
国家戦略特区 4

 

「国家戦略特区」って何?――規制改革で強い分野をより強く 2013/12
アベノミクスの成長戦略の大きな柱が「国家戦略特区」だって聞いたわ。でもこれまでも「特区」はあったでしょ。従来の特区とは一体、何が違うのかしら。
アベノミクスの成長戦略の柱と位置づけられる国家戦略特区。これまでも特区制度はあったが、今回の特区構想は経済効果への期待がより高いとみられている。浅田葉子さん(37)と坂野上かをるさん(41)が経済部の大林尚編集委員に、その背景などを聞いた。
そもそも特区って何ですか。
「特別区域の略です。指定された地域で規制や税制を改革したりしてその効果を調べる社会実験の場と位置づけられるでしょう。特区の先進国は意外にも中国です。1980年代から深圳経済特区などに大胆な市場経済を取りいれてきました。ひとつの国に全く異なる規制や制度を併存させるため一国二制度を実現させたわけです」
「日本の場合、中国ほど大胆ではありません。最初は地域限定ですが、特区で効果があるとわかったら全国に広げようという姿勢がこれまでは強かったといえます。小泉政権時代の2003年に構造改革特区がスタートしました。このときは地方自治体などから要望を受けつけて霞が関の関係省庁が認めるかどうかを実質的に判断していました。群馬県太田市は小学校から高校まで12年間、英語の一貫教育ができる特区の認定を受けました。勝手につくると違法となるお酒をつくれる、どぶろく特区も各地に登場しました」
「構造改革特区は約1200件が認められ、うち1割に当たる120件前後がその後、全国に広がりました」
今回の特区は小泉政権時代のものとは何が違うのですか。
「これまでは地方の要望をもとに特区を指定してきましたが、今回は政府、つまり国家が主導して特区の内容や地域を選びます。指定される地域は、大都市圏が中心となる見通しです。強い分野をより強くしていこうとの政府の意向があるからです。従来の日本の特区よりは踏み込んだ規制改革が実現する公算が大きいとみていいでしょう」
「霞が関の中央官庁や規制に守られている業界団体などは、既得権益を守ろうと規制を改革することには一般に消極的です。安倍政権は国家戦略特区を突破口に規制改革による成長路線への回帰を狙っています」
具体的にはどんな取り組みが検討されているのですか。
「『医療』『都市再生・まちづくり』『農業』『歴史的建築物の活用』『教育』『雇用』の6分野の規制改革を想定しています。都市再生は建物の容積率や土地利用の規制緩和でオフィス街に高層マンションを建てやすくし、都心部の夜間の人口を増やす効果を期待しています。日本はこれから人口減少が加速します。分散して住むより中心部に集中して住んだ方が便利だし、公共サービスのコストも抑えられます」
「国内で医療行為ができるのは原則として日本の医師免許を持った人だけですが、医療特区では、海外の医師の診療行為を認める案などが浮上しています。海外から人間ドックなどを目当てに観光客を呼び込む医療ツーリズムも盛んになる可能性があるでしょう」
いつ頃、どの地域が特区に指定されるのですか。
「特区の第1弾の中身や指定される地域が決まるのは年明けになる予定です。その例外は雇用分野です。現在、期間の定めがある雇用者は5年で無期雇用に移れることになっていますが、雇っている側がたとえば4年で雇い止めしてしまう例が後を絶ちません。安倍政権は国家戦略特区にこの有期雇用の特例を盛り込もうとしましたが、厚生労働省は一部の地域に限定した特例は困ると考え、全国規模での見直しに着手すると表明しました。特区で大幅な規制緩和するぞと表明するアナウンスメント効果で、既存の制度が全国一律に改善される好例でしょう」
「特区には海外から投資や観光客を呼び込む狙いもあります。歴史的建築物の活用は寺や神社などに、ホテルや旅館のようなフロント設備がなくても宿泊業を認めるものです。日本は海外への直接投資は多いが海外からの投資受け入れが少ない。出も入りも活発になるよう知恵を絞れば経済は活性化します」
医学部新設、再開の兆しも
政府が最初の国家戦略特区を認定するのは来年早々とみられる。そのなかで認められる可能性が出てきたのが、大学医学部の新設だ。1981年に第1期生を受け入れた琉球大を最後に、文部科学省は「文科相告示」という手法で大学が医学部を設けるのを阻んできたが、三十数年ぶりに再開への道筋がみえてくることになる。
通常は、教員の確保や建物・教育施設の整備などについて要件をみたせば、同省は大学や学部の新設について具体的な審査をはじめる。しかし医学部は門前払いをつづけてきた。その根拠は82年の閣議決定だ。医師の数が増えすぎないようにすると、政府として意思決定した。もっとも新設の凍結は文科省だけの意向ではない。医師が増えることを心配する日本医師会などの意を受けた厚生労働省が、門前払いを後押ししてきた。
私立大の医学部は一般に学費が高い。学費が安い国公立大は入試の偏差値がほかの学部よりも総じて高い。このため私立大を受けるのには開業医などの子弟が有利だという指摘もある。文科省が私立大に配る補助金(私学助成)のあり方も制度改革のテーマになろう。 

国家戦略特区 5

 

国家戦略特区とは / 目的・取り組みを地域・分野ごとに見る
国家戦略特区とは、規制緩和や税制優遇で民間投資を促し、経済活動を促進させていく目的を持つ経済特別区域構想です。その地域を限定した取り組みを解説していきます。
国家戦略特区とは
国家戦略特区とは、アベノミクスで掲げられた成長戦略の中核となる取り組みのことで、地域を限定した規制緩和/税制優遇で民間投資を促し、経済の活性化を目指す経済特別区域構想です。
2013年12月に国家戦略特別区域法が成立し、医療・雇用・教育など6分野の特区設置が認められました。
以後、2014年5月1日に指定された
○ 東京圏(東京・神奈川・千葉)
○ 関西圏(大阪・京都・兵庫)
○ 沖縄県
○ 新潟県新潟市
○ 兵庫県養父市
○ 福岡県福岡市
を皮切りに、以下の地域も順次国家戦略特区に指定されました。
○ 秋田県仙北市
○ 宮城県仙台市
○ 愛知県
○ 広島県
○ 愛媛県今治市
東京圏での国家戦略特区の取り組み
東京都、神奈川県、千葉県千葉市と成田市からなる東京圏国家戦略特区は、以下の目的のため国家戦略特区として指定されています。
•ビジネスのしやすい環境整備して世界中から資金・人材・企業が集中する国際ビジネス拠点の形成
•創薬分野などにおける起業・イノベーションを通じ国際的に競争力を持つ新事業の創出。
そして、これらの目的を達成するために様々な取り組みが行われています。
都市再生
東京都心各駅の整備を含めた「交通網の強化」および「国際ビジネス拠点の整備」、「道路占有許可の規制緩和」による都内の道路を使用したイベントなどが東京都で進行中です。また、千葉市では幕張メッセ周辺の道路をコンベンション開催と連動したイベントに使用しています。
医療
二国間協定により、医療行為に制限があった外国医師の規制を特区内で緩和する特例や、医薬品、病院の開設・増床に関する規制緩和も東京圏の特例として認められています。また、千葉市では粒子線治療の研修にかかわる在留期間の規制緩和を、成田市では国際医療福祉大学が医学部を新設することを決定しています。
女性の活躍推進
女性が社会で活躍できる環境を整えるため、東京都では都市公園内に保育所などの設置を可能とする都市公園法が制定されました。これは荒川区・世田谷区・品川区などで施行されています。また、特区内において家事支援サービスのための外国人の入国・在留を可能とする特例も実施されています。
雇用・創業
東京開業ワンストップセンター/東京圏雇用労働相談センターの設置や、日本での創業計画を持つ外国人に対する規制緩和である創業人材受入促進事業の創業などが実施されています。また神奈川県では、横浜市と川崎市の共同で、健康・未病産業と最先端医療産業の創出による経済成長プランを計画しています。
観光
旅館業法により、1か月未満の宿泊施設ではフロント設置などの義務が生じますが、特区内の認定を受ける事業者にはこの適用を除外した民泊を可能としています。東京都では大田区が2015年末に条例を制定したことに続き、幕張新都心内でもマンションを活用した民泊を計画しています。
自動走行
2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据え、羽田空港周辺での自動走行技術を活用した実証実験「サンドボックス」特区制度の構築を計画しているほか、千葉市でのドローンによる宅配サービス・セキュリティ計画、自律走行ロボット実証実験・パーソナルモビリティ試乗体験が行われています。
その他の地域での国家戦略特区の取り組み
東京圏以外の国家戦略特区についても、指定された目的は東京圏と同様ですが、取り組みについては特区独自の事情を反映して行われている物もあります。
以下では、東京圏以外の国家戦略特区での取り組みをご紹介します。
福岡市・愛知県「都市再生」に向けた整備
福岡市では、地区計画の検討・承認を迅速に進めるため、航空法の制限による高さ制限の規制緩和を通知が行われています。愛知県では、地方道路公社が公社管理の有料道路運営を民間事業者に委託することを可能とする特区法が制定されました。
福岡市・仙台市「創業」のための人材確保・育成へ向けて
福岡市では、人材流動化センターを設置、労働市場での流動性とスタートアップ起業への優秀な人材確保を援助する特区法が制定されました。仙台市では、NPO特定非営利活動法人の設立を促進するため、手続きを大幅に迅速化する特区法が制定されました。
福岡市クールジャパンに関わる「外国人材」の活動推進のため
東京圏と同様、福岡市でも日本での創業計画を持つ外国人に対する規制緩和である創業人材受入促進事業に関する特区法が制定されました。また、クリエイターや和食料理人など、クールジャパンに関わる外国人の活動を促進するための特区法も成立しました。
兵庫県・秋田県「観光」促進のための一手
兵庫県養父市では、歴史的建築物への旅館業法適用除外することで観光事業を促進する特例が制定されました。秋田県仙北市では、旅行業務取扱管理者試験の一部免除により、農家民泊事業者などに対する規制緩和を行う特例がされました。
大阪・京都府「医療」活性化の手段として
大阪・京都府では、東京圏と同様、条件付き医薬品を適用外しようする際の評価迅速化を狙う保険外併用療養の拡充の通知が行われています。京都府では、医薬品の研究開発などの国際競争力を高めるため、血液を使用したiPS細胞から試験用細胞の製造を可能とする特区法が制定されました。
北九州市「介護」におけるロボット活用
北九州市では、ユニット型指定介護老人福祉施設施設基準に関する特例を制定したことにより、2016年10月下旬より、選定された対象2施設においての介護ロボット実証実験を実施しました。
神奈川県・成田市・大阪府・沖縄県・仙台市「保育士不足解消」
神奈川県・成田市・大阪府・沖縄県・仙台市では、保育士不足解消に向け、3年間該当区域のみで通用する保育士資格を付与するため、地域限定保育士試験を通常の試験に追加して実施する特例が制定されました。
北九州市「雇用」促進のために
北九州市では、50歳以上の就職支援を重点的に行う職業相談窓口シニア・ハローワークの設置を可能とする通達が行われています。福岡市では、雇用条件明確化のため雇用労働相談センターを設置する特例法が制定されました。
愛知県・愛媛県今治市「教育」制度の拡充
愛知県では、個性に応じた教育などの実施に向け、教育委員会の関与を前提とした公立学校の運営を民間に開放する特区法が制定されました。愛媛県今治市では、獣医学部の設置認可を一校に限り行う特例の告示が行われています。
新潟市・兵庫県養父市「農林水産業」
新潟市では、農業従事者が自身の生産する農産物を材料とする場合、それを提供する農家レストランを農用地区域内に設置できる省令が制定されました。兵庫県養父市では、農業委員会の農地権利移動許可関係事務を、市町村が行うことを可能とする特区法が制定されました。
秋田県仙北市「近未来技術」の確立へ
秋田県仙北市では、電波を使用した実験を促進させるため、特定実験試験局制度を円滑に調整、免許の申請から発給まで原則即日という短縮化を実現させる通達が行われています。
経済活動を促進させる動き
国家戦略特区では様々な取り組みが行われ、実際のプロジェクトも動き出していますが、グローバル企業や起業者の受け入れ、それに伴う都市開発は特に経済活動を促進させる効果を持っているといえるでしょう。それには以下のようなプロジェクトがあります。
容積率・都市計画ワンストップ
競争力のある国際都市形成のために、開発・再生事業計画の認可等をワンストップ化を、コンベンション施設などの迅速な整備のために行っています。また、建築基準法上の大臣承認の廃止することによって、グローバル起業などのオフィスに隣接する住宅整備のための容積率の緩和等を実現しています。
開業ワンストップ
外国人を含む、起業・開業に伴う登記・税務・年金・定款認証などの各種申請窓口を一本化し、創業に関する相談を含めた総合的な支援を実施しています。
創業外国人材受入
外国籍の人材が日本において創業の意志を持つ場合、地方自治体の審査を要件に、経営・管理の在留資格基準の緩和を実施しています。
国家戦略特区の取り組みを経済活性化につなげる
経済特区として規制緩和や税制優遇を行う実験的な試みは、日本だけでなく、世界的に行われています。国が主導する公共事業など、従来からの景気刺激策が効果を発揮しなくなっている現在、様々なプロジェクトをスピーディーに進めることができるのは国家戦略特区の大きなメリットといえます。特に、国際ビジネス拠点の形成を目的とした都市再生計画は、資金・人材・企業を世界から集中させるという意味で、日本経済を活性化させ、世界的な競争力を持たせるために非常に重要です。また、取り組んでいるプロジェクトが成功した場合、特区法として認可された規制緩和などがどのように成功に作用したのかを分析・精査し、より幅広い範囲で適用を広げていくなど、国としての柔軟な法整備が期待されます。 
 
国家戦略特区 6

 

国家戦略特区問題 「国家戦略特区」制度は廃止します 2017/10
「加計問題」―国家戦略特区を使った「国政私物化」疑惑という重大問題
安倍首相の「腹心の友」が理事長を務める加計学園による獣医学部新設計画(愛媛県今治市)が安倍首相の働きかけで有利に進められたのではないか――安倍政権の「国政私物化」が問われる、かつてない重大な疑惑です。
安倍首相は、国会でまともな説明ができず、真相究明に背を向けつづけてきました。臨時国会冒頭の解散・総選挙は、こうした「森友・加計疑惑」を覆い隠すものです。
この「加計学園」問題での国政私物化に使われたのが国家戦略特区の仕組みです。
国家戦略特区―首相のトップダウンで財界が要求する規制緩和を押し付ける
国家戦略特区は、2012年12月に発足した第2次安倍内閣が鳴り物入りで導入(2013年12月国家戦略特区法施行)したものです。
2013年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略」は、国家戦略特区について「地域の発意に基づく従来の特区制度とは異なり、国が主体的にコミットをし、(中略)国家戦略の観点から内閣総理大臣主導の下、大胆な規制改革を実行するための強力な体制を構築して取り組む」と位置付けました。
内閣府に設置される「国家戦略特別区域諮問会議」(議長は内閣総理大臣)は、首相が指定する国務大臣や首相が任命する財界人らのメンバーで構成され、規制緩和を実行するため、きわめて強い権限が与えられています。規制緩和に係る分野を所管する関係大臣も、影響を受ける地域の住民も意思決定にかかわれない仕組みとなっています。
つまり、国家戦略特区は、農業、医療、教育、労働などの分野の国民生活や安全にかかわる規制を「岩盤」と称し、「岩盤規制」に穴をあける「ドリル」として、徹底した首相主導の仕組みによって、財界が求める規制緩和を「国家意思」として上から一方的に押し付け、実現する仕組みとなっています。日本共産党は、財界が求める規制緩和を首相のトップダウンで推進するこの仕組みを当初から厳しく批判してきました。
2017年4月1日現在、全国各地に計10の国家戦略特区が指定・運用されています(仙北市、仙台市、新潟市、東京圏、愛知県、関西圏、養父市、広島県・今治市、福岡市・北九州市、沖縄県)。これらの地域の人口の合計は、日本全体の過半数に及びます。
日本共産党は、財界の利益優先のための規制緩和を、地域住民や主権者国民の声を排除してひたすらに推進する国家戦略特区の廃止を求めます。 
 
国家戦略特区 7 

 

日本の成長戦略!特色出る国家戦略特区6区域の注目産業 2014/6
5月1日、政府は「国家戦略特別区域及び区域方針」を決定しました。東京圏、関西圏、新潟県新潟市、兵庫県養父市、福岡県福岡市、沖縄県の6区域を国家戦略特区として指定しました。国家戦略特区の概要と注目産業について、ご紹介します。
国家戦略特区の概要
2014年5月1日、政府は「国家戦略特別区域及び区域方針」を決定しました。決定した区域は、次の6区域です。
1 東京圏:東京都23区のうち9つの区、神奈川県、千葉県成田市
2 関西圏:大阪府、兵庫県、京都府
3 新潟県新潟市
4 兵庫県養父市
5 福岡県福岡市
6 沖縄県
国家戦略特区は、日本経済社会の風景を変える大胆な規制・制度改革を実行していくための突破口として、「居住環境を含め、世界と戦える国家都市の形成」、「医療等の国際的イノベーション拠点整備」といった観点から、特例的な措置を組み合わせて講じ、世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出することを目的としています。 1東京圏は国際ビジネス、イノベーション拠点、2関西圏は医療等イノベーション拠点、チャレンジ人材支援、3新潟県新潟市は大規模農業の改革拠点、4兵庫県養父市は中山間地農業の改革拠点、5福岡県福岡市は創業のための雇用改革拠点、6沖縄県は国際観光拠点と位置付けられています。
以下、国家戦略特区に関連する注目産業について、見ていきます。東京圏の土地再生・まちづくり、関西圏の医療、沖縄県の観光、新潟市および養父市の農業を取り上げます。
注目産業 1:都市再生・まちづくり
東京圏は都市再生・まちづくりに関連して、「2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックを視野に、世界で一番ビジネスのしやすい環境を整備することにより、世界から資金・人材・企業等を集める国際的ビジネス拠点を形成する。」と、目標を掲げています。政策課題として、外国人居住者向けを含め、ビジネスを支える生活環境の整備や、オリンピック・パラリンピックを視野に入れた国際都市にふさわしい都市・交通機能の強化が挙げられています。容積率を緩和し、大規模な都市再開発を促し、「職住近接」や国際ビジネスの促進につなげようとしています。道路空間のエリアマネジメントの民間開放や道路の占有基準の緩和もおこなわれます。また、7日以上の滞在を条件に、旅館業法の適用を外して、アパートやマンションの空き部屋を外国人観光客向けの宿泊施設として使えるようにします。外国人観光客が安い宿泊費で長く日本に滞在できるようにするのが狙いです。
注目産業 2:医療
関西圏の目標は、健康・医療分野における国際的イノベーション拠点の形成を通じ、再生医療を始めとする先端的な医薬品・医療機器等の研究開発・事業化を推進するとともに、チャレンジングな人材の集まるビジネス環境を整えた国際都市を形成することです。政策課題として、高度医療の提供のための医療機関、研究機関、メーカー等の集積及び連携強化、および、先端的な医薬品、医療機器等の研究開発に関する阻害要因の撤廃、シーズの円滑な事業化・海外展開が挙げられています。iPS細胞を利用した再生医療の実用化、日本の技術力を生かした産学連携による病気の克服につながる創薬や医療機器の開発が期待されています。この他、高度な医療技術をもつ外国人医師の受入れ、病床の新設・増床の容認、保険外併用療法の拡充、医学部の新設などが検討されています。
注目産業 3:観光
沖縄県の目標は、世界水準の観光リゾート地を整備し、ダイビング、空手等の地域の強みを活かした観光ビジネスを振興するとともに、沖縄科学技術大学院大学を中心とした国際的なイノベーション拠点の形成を図ることにより、新たなビジネスモデルを創出し、外国人観光客等の飛躍的な増大を図ることです。観光ビジネスの強化や国際的環境の整ったイノベーション拠点の整備が政策課題となっています。ビザ要件の緩和による外国人観光客の入国の容易化、入管手続きの迅速化・民間委託等、潜水士試験の外国語対応による外国人ダイバーの受入れなどが検討されています。
注目産業 4:農業
新潟市の目標は、地域の高品質な農産物及び高い生産力を活かし革新的な農業を実践するとともに、食品関連産業も含めた産学官の連携を通じ、農業の生産性向上及び農産物・食品の高付加価値化を実現し、農業の国際競争力強化のための拠点を形成する、あわせて、農業分野の創業、雇用拡大を支援することです。政策課題は、農地の集積・集約、企業参入の拡大等による経営基盤の強化とされています。養父市の目標は、高齢化の進展、耕作放棄地の増大等の課題を抱える中山間地域において、高齢者を積極的に活用するとともに民間事業者との連携による農業の構造改革を進めることにより、耕作放棄地の再生、農産物・食品の高付加価値化等の革新的農業を実践し、輸出も可能となる新たな農業のモデルを構築することです。政策課題は、耕作放棄地等の生産農地への再生とされています。農業に関しては、農業者の経営基盤の強化(農業生産法人、信用保証)、農業地でのレストラン開業など6次産業化の推進などが検討されています。
国家戦略特区のまとめ
以上、国家戦略特区に関連して、注目産業として、都市再生・まちづくり、医療、観光、農業を見てきました。都市再生・まちづくりは不動産業が中心となって推進され、世界から資本・人材を呼び込み、国際ビジネスが活発化することが期待されます。医療は、日本が医療の国際的なイノベーション拠点となることが期待されます。観光は、訪日外国人観光客が増え、日本の観光立国へと後押しします。農業は、輸出競争力のある農業経営が期待されます。  
 

 

 
国家戦略特区 / 規制改革メニュー

 

都市再生 
容積率・都市計画ワンストップ
都心居住促進のための容積率・用途等土地利用規制の見直し(8)
○ 居住環境を含め、世界と戦える国際都市の形成を図るために必要な施設の立地を促進するため、以下の認可等をワンストップ化。
(1)民間都市再生事業計画の認定(国家戦略民間都市再生事業)
(2)土地区画整理事業の認可(国家戦略土地区画整理事業)
(3)都市計画の決定又は変更(国家戦略都市計画建築物等整備事業)
(4)開発行為の許可(国家戦略開発事業)
(5)都市計画事業の認可又は承認(国家戦略都市計画施設整備事業)
(6)市街地再開発事業の認可(国家戦略市街地再開発事業)
○特別用途地区内において、コンベンション施設などの迅速な整備を促進するため、条例により用途制限の緩和を行う際に必要となる建築基準法上の大臣承認の手続き不要(用途緩和のワンストップ)。(国家戦略建築物整備事業)
○グローバル企業等のオフィスに近接した住宅の整備を促進するため、区域計画に定めた住宅の容積率の最高限度の範囲内で、都市計画で定めた容積率を緩和。(国家戦略住宅整備事業)
2013年12月特区法成立 東京都
エリアマネジメント
エリアマネジメントの民間開放(道路の占用基準の緩和)
国際的な活動拠点の形成に資する多言語看板、ベンチ、上屋、オープンカフェ等の占用許可に係る余地要件の適用を除外。
2013年12月特区法成立 福岡市
航空法
航空法の高さ制限に係る特例
建物ごとの個別審査となっている航空法に基づく高さ制限について、一定の高さをエリア一体の目安として提示した上で、具体的な地区計画の検討と並行して迅速に承認に向けた手続きを進めることとする。
2014年11月通知 福岡市
汚染土壌
汚染土壌搬出時認定調査の調査対象項目を限定
国家戦略特区内において自然由来特例区域内から区域外へ土壌を搬出する際に行う認定調査の調査対象項目は、区域指定対象物質に限る。
2015年12月省令 東京都/大阪府
公社管理道路(構造改革特区)
民間事業者による公社管理有料道路の運営を可能化
地方道路公社がPFI法の規定により公社管理道路運営権を設定する場合には、民間事業者に料金を収受させることとし、民間事業者による公社管理有料道路の運営を可能とする。
2015年7月構造改革特区法 愛知県  
創業 

 

開業ワンストップ
外国人を含めた起業・開業促進のための各種申請ワンストップセンターの設置
外国人を含めた起業・開業促進のため、登記、税務、年金、定款認証等の創業時に必要な各種申請のための窓口を集約。相談を含めた総合的な支援を実施。
2015年7月特区法成立 東京都
公証人
公証人の公証役場外における定款認証
公証人は公証役場において職務を行う必要があるが、役場外の「ワンストップセンター」における定款認証が可能であることを明確化。
2015年7月特区法成立 東京都
空港アクセス
空港アクセスの改善に向けたバス関連規制の緩和
ニーズに迅速かつ柔軟に対応した空港アクセスの充実を図る観点から、国家戦略特区内の空港を発着する空港アクセスバスについては、運賃設定の際の上限認可を届出とし、運行計画設定の際の届出期間を(30→7日前)短縮。
2014年12月省令/2016年7月通知 福岡市
官民人材
官民の垣根を越えた人材移動の柔軟化
○スタートアップ企業における優秀な人材確保のため、国の行政機関の職員がスタートアップ企業で働き、一定期間内に再び国の職員になった場合の退職手当の算定について前後の期間を通算。
○国、自治体、大企業に勤務する人材をスタートアップ企業で働きやすくするため、「人材流動化センター(仮称)」を設置し、労働市場の流動性向上、スタートアップ企業における優秀な人材の確保に資する援助を行う。
2015年7月特区法成立 福岡市
NPO
NPO法人の設立手続きの迅速化
ソーシャルビジネスの重要な担い手でもある特定非営利活動法人の設立を促進するため、その設立認証手続における申請書類の縦覧期間(現行1か月)を大幅に短縮。
2015年7月特区法成立 仙台市
信用保証 (一般社団等)
一般社団法人等への信用保証制度の適用
一般社団法人及び一般財団法人に関して、金融機関からより円滑に資金調達出来るようにするため、都道府県の応分の負担を前提に、信用保証協会が保証を付与することを可能とする。
2017年5月要綱 仙台市
テレワーク
多様な働き方推進のための「テレワーク推進センター」の設置
テレワーク等多様な働き方を普及させることにより、企業の働き方改革を推進し優秀な人材を確保するとともに、生産性を高め、企業の国際競争力を強化するため、国と地方公共団体が連携し、テレワークを導入しようとする企業等に対する各種相談支援をワンストップで行う「テレワーク推進センター」を設置する。
2017年6月特区法成立 東京都  
外国人材 

 

家事支援外国人材
外国人家事支援人材の活用
女性の活躍推進等のため、地方自治体等による一定の管理体制の下、家事支援サービスを提供する企業に雇用される外国人の入国・在留を可能化。
2015年7月特区法成立 神奈川県
創業外国人材
創業人材等の多様な外国人の受入れ促進
創業人材について、地方自治体による事業計画の審査等を要件に、「経営・管理」の在留資格の基準(当初から「2人以上の常勤職員の雇用」又は「最低限(500万円)の投資額」等)を緩和。
2015年7月特区法成立 東京都/福岡市
クールジャパン外国人材
クールジャパン外国人材の受入れ促進
アニメ・ゲーム等のクリエーターや和食料理人材など、クールジャパンに関わる外国人の活動を促進するための施策の推進、情報提供等を行う。
クールジャパン・インバウンド外国人材の受入れ・就労促進
クールジャパン・インバウンド対応分野の外国人材に係る受入れ要望がなされた場合に、区域会議において、関係府省及び関係自治体が一体となって協議・検討し、現行の上陸許可基準の代替措置を設けることにより、専門的・技術的分野の外国人材がより柔軟かつ適切に入国・在留・就労する機会の拡大を図る。
2015年7月特区法成立/2016年5月特区法成立/2017年6月特区法成立
外国人雇用相談
外国人を雇用しようとする事業主への援助(相談センターの設置)
国家戦略特別区域会議の下に、専門の弁護士・行政書士などで構成される相談センターを設置し、企業等に対し各種相談や情報提供等を行うとともに、在留資格の許可・不許可に係る具体的事例の整理・分析を行う。
2017年6月特区法成立
農業支援外国人材
農業支援外国人材の受入れ
産地での多様な作物の生産等を推進し、経営規模の拡大などによる「強い農業」を実現するため、外国人の人権にも配慮した適切な管理体制の下、日本人の労働条件及び新規就農に与える影響などにも十分配慮した上で、一定水準以上の技能等を有する外国人材の入国・在留を可能とする。
2017年6月特区法成立 京都府/新潟市/愛知県  
観光 

 

旅館業法
滞在施設の旅館業法の適用除外
国内外旅行客の滞在に適した施設を賃貸借契約に基づき3日から10日間以上使用させ、滞在に必要な役務を提供する事業を行おうとする者が、都道府県知事の認定を受けた場合は、旅館業法を適用しない。
2013年12月特区法措置/2016年10月省令 東京都 (大田区)
旅館業法(宅建法)
旅館業法の特例対象施設における重要事項説明義務がないことの明確化
国家戦略特区における旅館業法の特例の対象となる滞在施設には宅地建物取引業法の適用はなく、滞在者への重要事項説明が不要であることを明確化。
2014年12月通知
古民家(旅館)
古民家等の歴史的建築物に関する旅館業法の適用除外
地方自治体の条例に基づき選定される歴史的建築物について、施設基準の適用を一部除外し、ビデオカメラが設置され、緊急時の対応の体制が整備されている場合はフロントなしで認める。
2014年3月省令 養父市
自家用自動車
過疎地等での自家用自動車の活用拡大
過疎地域等での主として観光客のための制度として、市町村、運送実施予定者及び交通事業者が相互の連携について協議した上で、特区の区域会議が、運送の区域等を迅速に決定できるようにする。
2016年5月特区法成立 養父市
出入国手続き
民間と連携した出入国手続き等の迅速化
外国人観光客に対する空港等での手続を迅速・快適なものにするため、出入国に際して必要な手続について、民間事業者等との十分な連携の下、必要な施策を講ずる。
2016年5月特区法成立
道の駅
道の駅の設置者の民間拡大
国家戦略特区においては、「道の駅」の設置主体を、市町村又はそれに代わり得る公的主体に限らず、市町村との協定の締結等を前提に、民間事業者に拡大する。
2017年1月通知 今治市
旅行業務取扱管理者試験
農家民宿等の宿泊事業者による旅行商品の企画・提供の解除
観光庁長官が実施する研修を終了した者について、地域のニーズに応じて国内旅行業務取扱管理者試験の試験科目を一部免除する。
2017年3月省令 仙北市  
医療 

 

外国医師
国際医療拠点における外国医師の診察・外国看護師の業務解禁
二国間協定に基づく外国人医師については、従来、自国民のみを診療することに限る取扱いと整理されていたところ、自国民に限らず外国人一般に対して診療を行うことを認める。
2015年1月通知 東京都
臨床修練
外国医師診療所
臨床修練制度を活用し、医療分野における国際交流の進展に資する観点から、外国医師の受入れを、現在の「指定病院との間で緊密な連携体制が確保された診療所」から、指導医による指導監督体制を確保し、国際交流の推進に主体的に取り組むものであれば、「単独の診療所」にも拡充。
2015年7月特区法成立
病床
病床規制の特例による病床の新設・増床の容認
都道府県は、世界最高水準の高度の医療を提供する事業を実施する医療機関から病院の開設・増床の許可申請があった場合、当該事業に必要な病床数を既存の基準病床数に加えて許可することが可能。
2013年12月特区法成立 兵庫県
保険外併用
保険外併用療養の拡充
臨床研究中核病院等と同水準の国際医療拠点において、医療水準の高い国で承認されている医薬品等であって国内未承認のもの又は海外承認済みか否かに関わらず国内承認済みの医薬品等を適用外使用するものについて、保険外併用の希望がある場合に、速やかに評価を行う。
2014年5月通知 大阪府/京都府
医学部
医学部の新設
「国家戦略特別区域における医学部新設に関する方針(平成27年7月31日内閣府・文部科学省・厚生労働省決定)」に従い、国際的な医療人材の育成を目的とする医学部を、一校に限り特例的に設置認可の対象と出来る。
2015年11月告示 成田市
医療法人
医療法人の理事長要件の見直し
医療法人のガバナンス強化の観点から、都道府県知事が、医師以外の者を医療法人の理事長として選出する際の基準について、法令上明記した上で見直し、当該基準を満たす場合は迅速に認可。
2015年7月特区法成立
粒子線
粒子線治療の研修に係る出入国管理及び難民認定法施行規則の特例
海外への粒子線治療の普及と日本製診療用粒子線照射装置の輸出促進を図る観点から、粒子線の治療に係る研修を目的として、外国の医師・看護師又は診療放射線技師や、上記と共に放射線物理工学の専門家が入国する場合、在留期間を最長2年とする。
2015年11月省令 兵庫県
iPS
iPS細胞から製造する試験用細胞等への血液使用の解禁
採取した血液を原料として製造できる物は血液製剤等に限定されているが、再生医療技術を活用し、医薬品の研究開発等に係る国際競争力を強化するため、血液を使用して、業として、iPS細胞から試験用細胞等を製造することを可能化。
2015年7月特区法成立 京都府
遠隔服薬指導
テレビ電話を活用した薬剤師による服薬指導の対面原則の特例
特区内の薬局の薬剤師は、特区内の一定の地域に居住する者に対し、遠隔診療が行われた場合に、対面ではなく、テレビ電話を活用した服薬指導を行うことができる。
2016年5月特区法成立
医療機器相談
特区薬事戦略相談制度の創設等による革新的医療機器の開発迅速化
国家戦略特別区域内の臨床研究中核病院における革新的医療機器の開発案件を対象に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の担当者が相談者の所属する臨床研究中核病院に必要に応じて出張して特区事前面談及び特区フォローアップ面談を実施する。
2015年11月通知/2016年5月特区法成立 大阪府
医薬品相談
革新的な医薬品の迅速かつ効率的な開発等を促進するための医療関係者に対する援助(革新的な医薬品の開発迅速化)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)内に、臨床研究中核病院等担当のコーディネーター(拠点担当コーディネーター)を必要に応じて設置し、臨床研究中核病院等における医薬品の研究開発を支援する。
2017年6月特区法成立 大阪府/仙台市
可搬型PET
可搬型PET装置のMRI室での使用
PET検査薬を用いた可搬型PET装置による撮影を、適切な防護措置及び汚染防止措置を講じた上で、MRI室において行うことを可能とする。
2017年11月省令 京都府
臨床試験専用病床(構造改革特区)
臨床試験専用病床の施設基準の緩和
治験その他の臨床試験であって、健康な者(患者以外の者)を被験者として入院期間が概ね10日以内で実施されるものを行うための病床について、病室面積、廊下幅の基準を緩和する。
2016年8月省令 神奈川県  
介護 

 

ユニット型指定介護
ユニット型指定介護老人福祉施設設備基準に関する特例
国家戦略特別区域内のユニット型指定介護老人福祉施設において、介護ロボットを導入し実証実験を行う場合には、共同生活室について、隣接する2つのユニットの入居者が交流し、共同で日常生活を営むための場所としてふさわしい形状を有するものとして、条例において定めることとしても差し支えないこととする。
2016年3月事務連絡 北九州市  
保育 

 

地域限定保育士
「地域限定保育士」の創設(政令市による当該保育士試験の実施を含む)
保育士不足解消等に向け、都道府県が保育士試験を年間2回行うことを促すため、2回目の保育士試験の合格者に、3年間は当該区域内のみで保育士として通用する資格を付与。地域限定保育士試験を政令指定都市市長が実施することを可能とする。
2015年7月特区法成立 神奈川県/成田市/大阪府/沖縄県/仙台市
地域限定保育士(実施主体)
多様な主体による地域限定保育士試験の実施
地域限定保育士試験の指定試験機関について、公正、適正かつ確実な試験の実施を担保した上で、株式会社を含む多様な法人を活用可能とする。
2017年6月特区法成立 神奈川県
小規模認可保育所(対象年齢)
小規模認可保育所における対象年齢の拡大
待機児童の多い特区において、現在、原則として0〜2歳を対象としている小規模認可保育所における対象年齢を拡大し、小規模保育事業者が自らの判断で、0歳から5歳までの一貫した保育や、3〜5歳のみの保育等を行うことを可能とする。
2017年6月特区法成立  
雇用 

 

雇用条件
雇用条件の明確化のための雇用労働相談センターの設置
グローバル企業やベンチャー企業等を支援するため、これらの企業の抱える課題を熟知する者が、雇用ルールの周知徹底と紛争の未然防止を図るための高度な個別相談対応等を行う。
2013年12月特区法成立 福岡市
障がい者雇用
障がい者雇用に係る雇用率算定の特例拡充
障がい者雇用率の通算が可能となる組合について、有限責任事業組合(LLP)を対象に追加することで、特に異業種の中小企業による障がい者雇用を推進する。
2016年5月特区法成立
シニア・ハローワーク(構造改革特区)
高年齢者等に対する重点的な就職支援
50歳以上の中高年齢層等の就職支援を重点的に行う職業相談窓口である「シニア・ハローワーク」の設置を可能とする。
2016年3月通達 北九州市  
教育 

 

公設民営学校
公立学校運営の民間への開放(公設民営学校の設置)
グローバル人材の育成や個性に応じた教育等のため、教育委員会の一定の関与を前提に、公立学校の運営を民間に開放。
2015年7月特区法成立 愛知県
獣医学部
獣医学部の新設
「国家戦略特区における追加の規制改革事項について(平成28年11月9日国家戦略特別区域諮問会議決定)」に従い、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応するための獣医学部を、一校に限り特例的に設置認可の対象と出来る。
2017年1月告示 今治市  
農林水産業 

 

農業委員会
農業委員会と市町村の事務分担
農地の流動化を促進する観点から、市町村長と農業委員会との合意の範囲内で、農業委員会の農地の権利移動の許可関係事務を市町村が行うことを可能化。
2013年12月特区法成立 養父市
企業農地取得
企業による農地取得の特例
喫緊の課題である担い手不足や耕作放棄地等の解消を図ろうとする国家戦略特区において、農地を取得して農業経営を行おうとする「農地所有適格法人以外の法人」について、地方自治体を通じた農地の取得や不適正な利用の際の当該自治体への移転など、一定の要件を満たす場合には、農地の取得を認める特例を、今後5年間の時限措置として設ける。
2016年5月特区法成立 養父市
信用保証(農業)
農業への信用保証制度の適用
農業について、商工業とともに行うものに関しては、金融機関からより円滑に資金調達出来るようにするため、都道府県の応分の負担を前提に、信用保証協会が保証を付与することを可能とする。
2014年6月要綱 新潟市
農家レストラン
農家レストランの農用地区域内設置の容認
農業者が自己の生産する農畜産物や農業振興地域内で生産される農畜産物を主たる材料として調理して提供する場合は、農家レストランを農用地区域内に設置することを可能化。
2014年3月省令 新潟市
国有林野(面積)
国有林野の貸付面積の拡大
国有林野の活用を促進するため、貸付等の面積(現行5ha)を拡大。
2015年7月特区法成立 仙北市
国有林野(貸付対象)
国有林野の貸付等に関する対象者の拡大
国家戦略特区において民有林と国有林を一体的に活用する場合、地元市町村在住者に加え、民有林と国有林を一体的に活用して経営を効率化しようとする者を追加する。
2015年2月通知
漁業生産組合
漁業生産組合の設立要件の緩和
漁業者の法人化・協業化により競争力の向上や6次産業化の促進を図り、浜の活性化に資するため、漁業生産組合の設立要件(現行7人以上)を緩和。
2015年7月特区法成立
特産品焼酎(構造改革特区)
単式蒸留焼酎等の製造免許要件の緩和
地域の特産物を原料とした「単式蒸留焼酎」又は「原料用アルコール」を少量からでも製造可能とすることにより、「焼酎特区」による地方創生を推進するため、一定の要件の下、これらの酒類に係る製造免許には、最低製造数量基準を適用しないこととする。
2017年6月構造改革特区法 東京都/愛知県  
近未来技術 

 

特定実験試験局
電波に係る免許発給までの手続きを大幅に短縮
電波を使用した実験に係る簡易な免許手続きである「特定実験試験局制度」について、特区内では、区域会議の下で、更に円滑な調整を可能にし、免許の申請から発給についても原則「即日」で行う。
2016年1月通達 仙北市
近未来技術実証ワンストップ
自動走行や小型無人機等の実証実験を促進するための近未来技術実証に関するワンストップセンターの設置
自動走行やドローン(小型無人機)等の「近未来技術」 の実証実験等を行うものに対する、関係法令の規定に基づく手続きに関する情報の提供、相談、助言、その他の援助を行う。
2017年6月特区法成立 東京都(自動走行)/愛知県(自動走行)/千葉市(ドローン)  
全国で実現となった規制改革メニュー 

 

随意契約
地方公共団体による新規性等のあるサービスに係る随意契約要件の緩和
創業期の企業を支援するため、地方公共団体が締結する契約については、新規性等のある物品に加え、役務に対しても、当該役務の新規性等を確認する措置を担保した上で、随意契約によることを可能とする。
2015年12月自治法施行令及び地方公営企業法施行令
留学生就職支援
卒業後の就職活動期間の延長
大学等を卒業した留学生が、地方公共団体が実施する留学生就職支援事業に参加する場合、就職活動のための在留を、現行の1年間から、最長で2年間認める。
2016年12月通知
旅館業(消防法)
民泊に係る消防用設備等の基準に関する適用除外条件の明確化
・共同住宅の一部を民泊として活用する場合に、消防法施行令第32条に基づく特例を適用して民泊が存しない階における誘導灯の設置を免除できる条件を例示。
・平成17年総務省令第40号の適用を受けて共同住宅用自動火災報知設備などの設備が設置されている共同住宅につき、通常用いられる消防用設備等に切り替えることなく、当該住宅の一部を民泊に活用できる条件を例示。
2016年5月通知
古民家(建築)
古民家等の歴史的建築物の活用のための建築基準法の適用除外
地方公共団体が、あらかじめ建築審査会の同意を得て建築基準法を適用除外とするための包括的な同意基準を定めた場合、専門の委員会等により同意基準に適合すると認められた歴史的建築物については、建築審査会の個別の審査を経ずに建築基準法の適用除外とすることが可能。
2014年4月通知
古民家(消防)
古民家等の歴史建築物の活用のための消防用設備等の基準の適用除外事例の情報共有
消防長又は消防署長が令第32条に定める消防用設備等の基準の適用除外に該当するかどうかの判断をより円滑に行えるよう、積極的に関連する事例を情報共有するとともに、各地域からの相談を受け付ける仕組みを構築する。
2014年4月通知
臨床修練
臨床修練制度の拡充
教授・臨床研究を目的として来日する外国医師について、当該外国医師や受入病院が一定の要件を満たす場合には、診療を行うことを容認する。さらに、臨床修練制度の有効期間は最長2年間であるが、一定の場合には更新を認める。また、受入病院や指導医に関する手続の簡素化・要件の緩和を行う。
2014年6月臨床修練等特例法
遠隔診療
遠隔診療に係る要件の明確化
直接の対面診療に代替し得る程度に、患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合においては、初診及び急性期の疾患に対しても遠隔診療をなし得ることを明確にする。また、別表に記載された遠隔診療の対象は例示列挙であることをより明確にする。
2015年8月事務連絡
在宅医療(16kmルール)
在宅医療に係る保険適用の柔軟化
例えば訪問型病児保育と併せて行う往診・訪問診療など、子供に対する往診・訪問診療であって対応できる医療機関の確保が困難なものについては、医療機関と患者の所在地との距離が16キロメートルを超える場合であっても保険給付の対象となることを明確化する。
2015年6月事務連絡
予防医療ビジネス
予防医療ビジネスの推進(検体測定室における採血行為での医行為の明確化)
医療機関ではない検体測定室における利用者自身による一連の採血行為について、看護師等が利用者に対し、医行為に該当しないものとして介助することができる部分を明確化する。
2015年8月事務連絡
医療機器品質保証責任者
医療機器製造販売業における品質保証責任者の資格要件の緩和
第二種及び第三種医療機器製造販売業並びに体外診断用医薬品製造販売業に係る国内品質業務運営責任者の従事経験として認めうる業務の範囲について、ISO9001又はISO13485の認証を受けた事業者等(製品の製造販売又は製造を行うものに限る)の事業所における管理責任者その他の品質マネジメントシステムの継続的改善又は維持に関する業務経験も認める。
2015年9月通知
都市公園保育所
都市公園内における保育所等設置の解禁
保育等の福祉サービスの需要の増加に対応するため、保育所等の社会福祉施設について、一定の基準を満たす場合には、都市公園の管理者は占用を許可。当初、特区法措置(活用自治体:東京都他)
2015年7月特区法/2017年5月都市公園法
小規模認可保育所
小規模認可保育所に対するバリアフリー法の適合免除の明確化
自治体がバリアフリー法の規定に基づき、条例により、保育所等を同法の基準の適合対象にしようとする場合に、共同住宅の用途変更により設置しようとする小規模認可保育所については、同基準を満たさなくてもよい旨を自治体が明確化できるよう、同法の合理的な運用を促すための措置を講じた。
2016年6月通知
営業制限地域(保育所設置)
風俗営業の許可に係る営業制限地域の指定に関する柔軟化
風営法上の営業制限地域の指定に関し、保全対象施設として定める施設を地域の実情に応じて条例等で規定している事例(保育所等を規定していない例)や、保全対象施設の周囲であっても一部の地域を除外する旨条例等で規定している事例を紹介するなどして、営業制限地域の指定等の際には、地域の実情に応じて条例等で柔軟に設定できること等を踏まえて適切に対応するよう都道府県警察に対して指示。
2016年6月通知
保育士配置
保育所等における保育士配置の特例
保育所等における保育士配置について、都道府県知事が保育士と同等の知識及び経験を有すると認める者を置くことにより、保育士の数を1名とすることを可能とする。
2016年4月省令
保育所整備(採光規定)
保育所の円滑な整備等に向けた採光規定の緩和
都市部における保育所の円滑な整備を後押しするため、既存のオフィスビル等の用途を変更し保育所が設置できるよう、建築基準法の採光のための窓に関する規定を見直す。
2018年3月告示
有期雇用
有期雇用の特例
高収入、かつ高度な専門的知識・技術・経験を持つ有期雇用労働者や、定年後引き続き雇用される有期雇用労働者については、事業主が対象労働者の特性に応じた適切な雇用管理の措置に関する計画について厚生労働大臣の認定を受けた場合、無期転換申込権の発生時期に関する特例を設ける。
2014年11月有期雇用特措法
シルバー人材
農業等に従事する高齢者の就業時間の柔軟化
労働力の確保が必要な地域において、高年齢退職者の就業機会の確保に資する業種及び職種で、民業圧迫の恐れがないものを都道府県知事が市町村ごとに指定し、シルバー人材センターが、当該業種及び職種に係る週40時間の就業についても、派遣事業及び職業紹介事業を行うことを可能化。当初、特区法措置(活用自治体:養父市)
2015年7月特区法措置/2016年3月高年齢者雇用安定法
農業生産法人
農業生産法人6次産業化推進等のための要件緩和
農地所有適格法人の役員要件について、その法人の行う農業に必要な農作業に従事する役員又は重要な使用人(農場長等)が1人いればよいこととする。 なお、議決権・構成員要件については、農業関係者の議決権が総議決権の2分の1以上であればよいこととするとともに、法人と継続的取引関係がない者も構成員となることを可能化。当初、特区法措置(活用自治体:新潟市)
2013年12月特区法措置/2015年8月農地法
インターネット酒類販売
通信販売酒類小売業に係る販売酒類の要件緩和
地方の特産品等を原料として、委託により製造された酒類については、受託製造者において前年度の出荷数量が3,000キロリットル以上の品目があっても、インターネットによる通信販売を可能とする。
2015年3月通達
有害鳥獣捕獲許可
有害鳥獣捕獲許可権限の市町村への移管
兵庫県の「第11次鳥獣保護管理事業計画」の有害鳥獣捕獲許可基準の許可期間を「原則3カ月」から「必要かつ適切な期間」等と変更し、実質的に養父市が被害対策の期間を1年間とすることが可能となった。
2015年4月その他
中山間地域等補助金
中山間地域等直接支払交付金の返還免除
中山間地域等直接支払制度に係る協定期間内の農地転用等については、6次産業化など農業振興や地域振興に資する用途への転用等については補助金の返還を免除する。
2015年4月通知
農地中間管理
農地中間管理事業に関する事務手続の円滑化
・農地中間管理機構は、市町村から機構に対して農用地利用配分計画案の作成事務を行いたい旨の要望があった場合、当該市町村に計画案の作成を依頼し、当該計画案が適切なものになるよう助言する。
・農用地利用配分計画の事務手続きについては、管内市町村・農業委員会と十分連携の上、短縮化に努める。
2015年12月通知
補助財産
農林水産省における補助対象財産の処分に係る承認事例の明確化
近年の急速な少子高齢化の進展、産業構造の変化等、「社会経済情勢の変化への対応」とした補助事業者の責に帰さない情勢変化に起因して、補助金等の交付の目的に沿った使用が困難になり、かつ現状のままでは補助対象財産の維持が困難となった場合における財産処分を承認した事例を類型化。
2016年3月通知
農地交換分合
農地集約化促進のための交換分合事業に係る基準緩和
農地の集約化を促進する観点から、交換分合実施に係る交付金の交付要件(農用地面積がおおむね5ha以上、集団化率がおおむね40%以上、移動率おおむね20%以上)を緩和し、交換分合による移動率(10%以上を目標)を満たせば良いことに見直し。
2016年4月通知
農薬散布
ドローンによる農薬散布時の手続き要件の明確化
登録農薬を従来と同じ濃度等でドローン等でも使用する際、登録申請時のデータ提出が不要であることを明確化する。
2015年11月通知  
 
国家戦略特別区域基本方針

 

[ 平成26年2月25日閣議決定 / 一部変更 平成26年10月/27年9月/29年7月/30年3月 ]
国が定めた国家戦略特別区域(以下「国家戦略特区」という。)において、経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、我が国を取り巻く国際経済環境の変化その他の経済社会情勢の変化に対応して、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図るため、国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号。以下「法」という。)第5条第1項に基づき、国家戦略特別区域における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関する施策の総合的かつ集中的な推進を図るための基本的な方針として、国家戦略特別区域基本方針(以下「基本方針」という。)を定める。 
第一 国家戦略特別区域における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進の意義及び目標に関する事項 

 

1.背景及び経緯
20年以上続いた日本経済の低迷は、少子高齢化の到来とあいまって、我が国経済社会にデフレの長期化等の深刻な影響をもたらした。こうした状況を打破するためには、成長分野への投資や人材の移動を加速させることで好循環を生み出し、民間の力を最大限引き出して、日本経済を停滞から再生へ導くことが重要である。
民間の投資を引き出す際に重要となるのが、投資先で民間の創意と工夫が十分に発揮できるのか、これまで規制で縛られていた分野がこれからどう変わるのかという点であり、日本経済を再興するためには、スピード感をもって大胆な規制・制度改革を実現していくことが必要である。
こうした背景の下、日本経済の再生に向けた第三の矢としての成長戦略である「日本再興戦略−JAPAN is BACK−」(平成25年6月14日閣議決定)においては、内閣総理大臣主導で、国の成長戦略を実現するため、大胆な規制改革等を実行するための突破口として、国家戦略特区を創設することとされた。
2.国家戦略特別区域における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進の意義及び目標
(国家戦略特区制度の目的・意義)
国家戦略特区は、日本の経済社会の風景を変える大胆な規制・制度改革の突破口である。大胆な規制・制度改革を通して経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力の強化とともに、国際的な経済活動の拠点の形成を図り、もって国民経済の発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。
具体的には、国家戦略特区において、「居住環境を含め、世界と戦える国際都市の形成」、「医療等の国際的イノベーション拠点の整備」といった観点から、規制の特例措置(法第2条第3項に規定する規制の特例措置をいう。以下同じ。)の整備その他必要な施策(以下「規制の特例措置等」という。)を、国民の安全の確保等に配慮し、関連する諸制度の改革を推進しつつ総合的かつ集中的に講ずることにより、国内のみならず、世界から資本と人を惹きつけられる、日本の固有の魅力をもったプロジェクト(国家戦略特区の目標の達成のために実施される特定事業(法第2条第2項に規定する特定事業をいう。以下同じ。)及び当該区域における規制改革等の関連事業(以下「特定事業等」という。)のパッケージをいう。以下同じ。)を推進していくものである。これにより、「世界で一番ビジネスのしやすい環境」を創出し、民間投資が喚起されることで、日本経済を停滞から再生へとつなげていく。
これまでの地域の発意に基づくボトムアップ型の特区に対し、民間有識者の知見等を活用しつつ、国が自ら主導し国と地域の双方が有機的連携を図ることにより、国・地方・民間が一体となって取り組むべき、国家戦略として日本経済の再生に資するプロジェクトを推進することとしている。このように、国家戦略特区内においては、国も含めて地方・民間の三者が一体となって連携を図っていくことが重要であり、地域間や、特定事業等及び実施主体間等において、相互に密接な連携を図るための共通基盤として機能させていくべきである。
国家戦略特区におけるプロジェクトの推進に当たっては、ビジネスや投資を行う側に立った視点やベンチャー企業等による新産業の創出といった視点、さらには大学・研究機関と連携した人材育成の視点などを欠いてはならず、また、全国的な視点に立って、地方を含めた日本全体の発展につなげていくことが必要である。
(国家戦略特区制度の目標)
「国家戦略特区」については、平成25年12月に成立した国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号)に基づき、平成27年度末までの2年間を「集中取組期間」とし、いわゆる「岩盤規制」全般について突破口を開いてきた。
国家戦略特区の「第二ステージ」を加速的に推進するため、東京オリンピック・パラリンピック競技大会も視野に平成32年(2020年)をにらみつつ、また、「戦後最大の名目GDP600兆円」を達成するため、平成29年度末までの2年間を「集中改革強化期間」として、以下の取組を「新たな目標」として設定することにより、民間の能力が十分に発揮できる、世界で一番ビジネスのしやすい環境を整備し、経済成長につなげる。
ア)残された「岩盤規制」の改革
経済社会情勢の変化の中で民間が創意工夫を発揮する上での障害となってきているにもかかわらず永年にわたり改革ができていないような、いわゆる「岩盤規制」について、国家戦略特区による規制・制度改革の突破口を開く。
具体的には、当面、例えば以下を重点的に取り組むべき分野・事項として、規制改革事項の追加や深掘りに加え、必要な指定区域の追加や、改革事項を活用した具体的事業の「可視化」などについて、一層の加速的推進を図る。
・幅広い分野における「外国人材」の受入れ促進
・公共施設等運営権方式の活用等による「インバウンド」の推進
・幅広い分野における「シェアリングエコノミー」の推進
・幅広い分野における事業主体間の「イコールフッティング」の実現
・特にグローバル・新規企業等における「多様な働き方」の推進
・地方創生に寄与する「第一次産業」や「観光」分野等の改革
など
イ)事業実現のための「窓口」機能の強化
また、全国各地の民間事業者や地方自治体が直面している制度面での阻害要因について、結果として国家戦略特区における措置とならないもの(全国的措置や構造改革特区における措置に加え、現行制度において実現が可能であることの確認等)を含め、一つ一つの具体的なニーズに常時・網羅的に対応し、あらゆる事業の実現を図るための「窓口(ゲートウェイ)」としての機能について、経済団体等とのより密接な連携のもと、一層の強化を図る。
(国家戦略特区制度の運用の原則)
国家戦略特区制度については、次の3点を運用の原則とする。
ア)情報公開の徹底を図り、透明性を十分に確保すること。
イ)スピードを重視し、法第29条に基づく国家戦略特別区域諮問会議(以下「諮問会議」という。)、法第7条に基づく国家戦略特別区域会議(以下「区域会議」という。)及び国家戦略特別区域担当大臣の下に設置する国家戦略特区ワーキンググループ(以下「WG」という。)の相互間の連携、国家戦略特別区域諮問会議令(平成25年政令第342号)で定める専門調査会の活用等により機動的運営を行っていくこと。
ウ)PDCAサイクルに基づく評価を行い、評価に基づき国家戦略特区の指定の解除も含めた措置を適切に講ずること等により、国家戦略特区間の競争を促進すること。
(留意すべき点)
国家戦略特区の運用に当たっては、日本の経済成長に対して、国家戦略特区として指定された地域だけが努力するのではなく、日本全体で知恵を出す競争が促されるようにするとともに、各種制度との連携を図ること等により国家戦略特区の成果を日本全体に行き渡らせていくことが重要であり、また、地域の自主性や創意工夫が尊重され、地域が活性化されるよう留意する必要がある。
あわせて、国家戦略特区の取組に当たっては、民間活力を引き出すことが重要であり、事業や投資の推進役となるのは民間事業者であることに留意が必要である。 
第二 国家戦略特別区域における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進のために政府が実施すべき規制改革その他の施策に関する基本的な方針 

 

1.規制改革等の施策の推進に関する基本的考え方
(規制改革の推進)
特区制度は、全国的には実現が困難な規制改革であっても、特定の要件を満たす区域を限定することにより、規制改革を実現してきた制度であるが、従来の特区制度によっても十分に実現できなかった規制改革、いわゆる「岩盤規制」について、その規制改革を実行するための突破口として、国家戦略特区を創設したものである。
その際、実効性を確保するために規制の特例措置について過度な要件を付さないことはもちろんのこと、スピード感と実行力をもって取り組むことが特に重要である。規制改革の突破口という位置付けから、国家戦略特区において措置された規制の特例措置は、その実施状況等について適切な評価を行い、当該評価に基づき、その成果を全国に広げていくことが必要である。このため、PDCAサイクルに基づく評価において、規制の特例措置についての評価に基づき、特区ごとの改革競争を通じて全国展開が促進されるような仕組みを構築する。
経済社会情勢が変化していく中、規制改革には終わりはなく、常に、地方公共団体、民間事業者等からの現場のニーズを把握し、必要な規制改革を強力に進めていくことが必要である。
(施策の総合的かつ集中的な推進)
国家戦略特区における取組の推進に当たっては、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成を図るという目的に沿って、戦略的な継続性を持って、必要な規制の特例措置を複合的に活用するなど、国及び地方公共団体の政策資源を総合的かつ集中的に講ずることが重要である。
2.規制・制度改革等の施策の推進体制
1 内閣総理大臣主導の下、迅速で簡潔に実行できる体制の構築
日本経済の再興が喫緊の課題となっている中、国家戦略特区における取組をスピード感をもって強力に進めるため、内閣総理大臣主導の下、迅速で簡潔に実行できる体制を構築することが必要であり、こうした考え方から、諮問会議及び区域会議の構成員は、必要最低限の構成としているものである。
2 内閣府及び関係府省庁の役割及び連携
国家戦略特区制度の推進に当たっては、内閣府において、基本方針の案の作成(変更を含む。)、国家戦略特区を指定する政令案の作成、諮問会議の庶務、規制の特例措置等の提案の受付、法第6条に基づく国家戦略特別区域における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関する方針(以下「区域方針」という。)の策定、区域会議の庶務、法第8条に基づく国家戦略特区における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成を図るための計画(以下「区域計画」という。)の認定その他の法に基づき内閣総理大臣又は国家戦略特別区域担当大臣が行うこととされている事項に関する事務を行う。
また、内閣府は、政府の関係行政機関(以下「関係府省庁」という。)の施策間の総合的な調整を図るものとする。その際、国家戦略特別区域担当大臣は、内閣府設置法(平成11年法律第89号)第12条に基づき、関係府省庁の長に対し、必要な資料の提出及び説明を求めることができるほか、勧告し、当該勧告に基づいて講じた措置について報告を求めること等ができることとされている。
国家戦略特区を政府一体となって推進する体制の構築が重要であることから、関係府省庁は、所掌事務の縦割りの弊害に陥ることなく、内閣府と緊密に連携し、国家戦略特区における法第6条第2項第1号の目標の達成に向け、必要な施策を集中的に講ずるなど最大限努力するものとする。
また、関係府省庁の長については、迅速で簡潔に実行できる体制を構築する観点から諮問会議及び区域会議の必須の構成員とされていないが、事業及び規制の特例措置を所管している専門的な立場から、法第7条第3項又は第33条第2項の規定により必要に応じて諮問会議又は区域会議への参加を求めることとしているほか、法第8条第9項の規定により内閣総理大臣による区域計画の認定の際同意を求めることとしている。
3 国家戦略特別区域諮問会議及び国家戦略特別区域会議
(1)国家戦略特別区域諮問会議
(諮問会議の役割)
諮問会議は、国家戦略特区に関する重要事項について調査審議する役割を担うものとして、法第5章に規定されるとともに、内閣府設置法第18条第2項の「別に法律の定めるところにより内閣府に置かれる重要政策に関する会議で本府に置かれるもの」として位置付けられるものである。
諮問会議の所掌事務は、法第30条の規定により、以下のとおりである。
ア)国家戦略特区の指定に関し、内閣総理大臣に対して意見を述べること。
イ)基本方針に関し、内閣総理大臣に対して意見を述べること。
ウ)区域方針に関し、内閣総理大臣に対して意見を述べること。
エ)区域計画の認定に関し、内閣総理大臣の求めに応じて意見を述べること。
オ)法第16条の4第3項に規定する指針の作成に関し、意見を述べること。
カ)法第37条第2項に規定する雇用指針の作成に関し、意見を述べること。
キ)ア)からカ)に掲げる事項のほか、内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、国家戦略特区における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進に関する重要事項について調査審議すること。
(構成員の基本的考え方)
諮問会議の構成員については、こうした諮問会議の役割に鑑み、経済社会の構造改革の推進による産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に関し優れた専門的知識と経験を有する民間有識者を加えることとし、内閣総理大臣主導の下、迅速で簡潔に実行できる体制を構築する観点から、諮問会議の議長を内閣総理大臣とした上で、議員を法第33条に掲げる者に限定しているものである。
また、議員である国務大臣以外の国務大臣については、当該国務大臣が所管する行政分野に関する議案について調査審議する場合をはじめとして必要なときには、議長である内閣総理大臣が適切に判断し、当該国務大臣を、議案を限って、議員として、臨時に会議に参加させることができることとしており、専門的な立場から意見を述べる機会を確保するものとする。
(運営に係る基本的な事項)
諮問会議の運営に当たっては、調査審議の公平性・中立性を確保することが極めて重要である。このため、諮問会議に付議される調査審議事項について直接の利害関係を有する議員については、当該事項の審議及び議決に参加させないことができることとするなど、諮問会議における調査審議が公平かつ中立的に行われるよう留意する。
併せて、調査審議の公平性・中立性を確保するため、諮問会議における審議の内容及び資料は、原則として公表することとし、議事要旨の公表及び一定期間経過後の議事録の公表を行い、透明性を高めることが必要である。
専門的な事項について調査をする必要がある場合には、国家戦略特別区域諮問会議令で定めるところにより、専門委員又は専門調査会を置き、当該事項の調査をさせることにより、各分野の専門的知見を反映するとともに、機動性を発揮することが、スピードと実行力を確保する上で有効であることから、これらを積極的に活用することとする。
(2)国家戦略特別区域会議
(区域会議の役割)
区域会議は、法第7条第1項に基づき、政令で指定された国家戦略特区ごとに設けられ、
ア)区域計画の作成
イ)法第11条第1項に規定する認定区域計画(以下「認定区域計画」という。)の実施に係る連絡調整
ウ)国家戦略特区における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関し必要な協議
を行うことを任務としている。
(構成員の基本的考え方)
国家戦略特区は、国・地方・民間が一体となって取り組むべきプロジェクトを推進するものであることから、区域会議の構成員は、
ア)国家戦略特別区域担当大臣
イ)関係地方公共団体の長
ウ)国家戦略特区における産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に特に資すると認める特定事業を実施すると見込まれる者として、内閣総理大臣が選定した者
により組織することを必須としている。
国家戦略特別区域担当大臣は、国家戦略特区の推進に関する国の行政を所管する立場から、地方公共団体の長は、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を担う立場から、民間事業者は、国家戦略特区において事業を実施する立場から参画するものである。
区域会議の構成員となる関係地方公共団体の長とは、その全部又は一部が指定された国家戦略特区に含まれる都道府県及び市区町村の長である。
また、国家戦略特別区域担当大臣及び関係地方公共団体の長が必要と認めるときは、協議して、国の関係行政機関の長(当該行政機関が合議制の機関である場合にあっては、当該行政機関)並びに区域計画又は認定区域計画及びその実施に関し密接な関係を有する者を構成員として加えることができることとしている。この場合の「区域計画に密接な関係を有する者」とは、例えば、地域の経済団体や金融機関等が地域を代表する者として想定されるが、具体の計画内容に照らして判断されるものであり、特にこれらの者に限定されるものではない。
(運営に係る基本的な事項)
区域会議の運営に当たっては、議論への参加者をできるだけ絞り込むこと等により、国家戦略特別区域担当大臣も交えた、トップ同士による実質的な議論を通して区域計画の作成及び推進が迅速かつ強力に行われるように運営することが必要である。
このため、区域会議の構成員である国家戦略特別区域担当大臣、関係地方公共団体の長及び民間事業者の三者が対等な立場に立って合意形成を行えるように、区域会議における協議に基づき、例えば、協議会の活用や代表者の選出等により関係地方公共団体の意見を集約することや、関係地方公共団体の範囲を区域会議の議事に合わせて運用することなど、区域会議における迅速かつ適切な意思決定がなされるための運用上の工夫が求められる。
民間事業者については、法第7条第2項に基づき、公募その他の方法により選定されるが、国家戦略特区において特定事業を実施すると見込まれる者が多数に及ぶ場合等には、公正・中立・透明な方法により代表者を選定するとともに、下部組織等の設置により特定事業を実施しようとする民間事業者の意見を反映する方策を講じるなど、区域会議における迅速かつ適切な意思決定がなされるための運用上の工夫が求められる。
区域会議における議事については、内閣府のホームページにおいて速やかに公開し、公平性及び透明性を確保することが重要である。
3.区域方針に関する基本的な事項
1 区域方針の意義
国家戦略特区の指定に際しては、法第6条に基づき、内閣総理大臣は、区域方針を定めることとされている。区域方針は、基本方針に即して、政令で指定されたそれぞれの国家戦略特区について性格付けを行い、国・地方・民間の三者が、当該区域のあるべき将来像やそれに向けた政策課題及びその解決に向けた方向性等を共有することを目的とするものである。
区域会議において作成する区域計画は、区域方針に即して作成することとなる。
2 区域方針の策定手続
区域方針は、法第6条第3項に基づき、内閣総理大臣が、諮問会議及び関係地方公共団体の意見を聴いた上で決定する。その際、意見聴取の方法については、迅速かつ効率的に行うよう努めるものとする。区域方針を決定したときは、同条第4項に基づき、その内容を遅滞なく公表するとともに、関係地方公共団体に送付する。なお、区域方針は、国家戦略特区として指定される区域の性格付けや取組の方向性を示すものであることから、区域指定と一体的に決定することとする。
経済社会情勢が大きく変化する等情勢の推移により必要が生じたときは、内閣総理大臣は、区域方針を変更しなければならない。この場合の手続についても区域方針の決定の際と同様である。
3 区域方針の記載事項
区域方針は、法第6条第2項に掲げる事項を定める。具体的には、以下の事項を定めるものとする。
ア)各国家戦略特区において目指すべき産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関する目標並びにその達成のために取り組むべき政策課題を定める。当該目標及び政策課題は、当該国家戦略特区の特性を踏まえつつ、当該区域のあるべき将来像の実現に向け、国・地方・民間の三者が共有できる指針となるように設定する。
イ)ア)で定めた当該国家戦略特区における目標を達成するために当該国家戦略特区において実施が見込まれる特定事業等の方向性及び概要等の基本的な事項を定める。
ウ)ア)及びイ)における事項以外に、当該国家戦略特区における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関し必要な事項を定める。
4.国家戦略特別区域の評価に関する基本的な事項
1 区域計画における定量的な目標の設定
国家戦略特区において実施されるプロジェクトについて、その効果を最大限発揮するためには、成果目標の設定及びPDCAサイクルによる進捗管理を適切に行うことが重要であることから、法第12条において、区域会議は、認定区域計画の進捗状況について、定期的に評価を行うこととされている。
その際の評価について、客観的・定量的に評価を行うことができるようにするため、区域計画の作成に当たっては、当該区域計画の実施が当該国家戦略特区内外に及ぼす経済的社会的効果について、数値化や目標期間等も含め、できる限り具体的なものとして定めるものとする。
その際、「日本再興戦略」に記載されている成果目標(以下「再興戦略KPI」という。)のどの項目の達成に、どの程度貢献できるかを、できる限り設定することとする。
2 評価項目
区域会議が実施する評価に際しては、次に掲げる項目について、総合的に評価を行うものとする。
ア)国家戦略特区において実施し又はその実施を促進しようとする特定事業の進捗状況
イ)認定区域計画の実施により実現した経済的社会的効果
ウ)区域計画において設定した目標の達成状況。この場合において、再興戦略KPIを踏まえて目標を設定した場合には、再興戦略KPIへの寄与度についても、評価する。
エ)規制の特例措置の活用状況及びその効果(法第10 条第1項第1号の特定事業(以下「構造改革特区法の特定事業」という。)に係る構造改革特別区域法(平成14 年法律第189 号)第4章の規定による規制の特例措置(以下「構造改革特区の規制の特例措置」という。)の活用状況及びその効果を含む。以下同じ。)。併せて、これらの規制の特例措置の活用によって弊害が生じている場合には、弊害の内容及び対策の実施状況についても、評価する。
オ)金融上の支援措置及び課税の特例措置の活用状況並びにその効果
カ)その他目標の達成に向けた取組の実施状況
キ)その他国家戦略特区の評価に資する事項
3 評価の実施主体及び方法、手続
ア)実施主体及び方法
法第12条に基づき、国家戦略特区の評価は、区域会議が行う。
具体的な手順としては、当該区域会議の構成員である関係地方公共団体並びに当該区域計画に基づく特定事業等を実施する者が2に掲げる項目について評価を行い、それらの評価結果を基に、区域会議において認定区域計画全体の進捗状況を評価し、評価書として取りまとめることを基本とする。
イ)評価結果の内閣総理大臣への報告及び公表等
法第12条に基づき、区域会議は、認定区域計画の進捗状況について評価を行ったときは、速やかに、内閣総理大臣に当該評価結果を取りまとめた評価書を提出し、報告するものとする。これを受け、内閣総理大臣は、報告のあった評価結果について、速やかに公表するものとする。
公表に当たっては、特区間の健全な競争を促進させるため、各区域計画の評価結果について相対的かつ客観的に比較が可能なように整理することとする。
また、内閣府は、国会に対し、法第12条に基づく評価結果等を踏まえ、法の施行状況等について、定期的に周知するものとする。
ウ)諮問会議による調査審議
内閣総理大臣は、イ)に定めるところにより区域会議から評価結果の報告を受けたときは、当該区域会議から提出された評価書を諮問会議に提出し、諮問会議の意見を聴取するものとする。諮問会議は、当該評価結果について調査審議した上で内閣総理大臣に必要な意見を述べることとし、特に、国家戦略特区における規制の特例措置についての調査審議に当たっては、当該規制の特例措置を所管する府省庁(以下「規制所管府省庁」という。)からの意見を聴き、当該規制の特例措置について、全国展開の可否、要件の見直し(拡充、是正又は廃止)の必要性等も含め検討する。
規制の特例措置の全国展開とは、規制の特例措置について、区域計画の認定制度によらず、当該規制が本来規定されている法律、政令又は主務省令(告示を含む。以下同じ。)(以下「法令」という。)の改正等を行うことにより、全国規模で規制改革の成果を享受できるよう措置することである。
なお、構造改革特区の規制の特例措置に係る要件の見直し等については、別途、法第10条第5項の規定により適用される構造改革特別区域法第47条の規定に基づき、構造改革特別区域基本方針(平成15 年1月24 日閣議決定)に定めるところにより評価を行うものとする。
4 評価の時期
原則として、当該国家戦略特区に係る最初の区域計画が認定されてから1年を経過した時点の年度末までの状況について最初の評価を行い、以降、1年ごとに評価を行うこととする。
5 評価結果の反映
これらの評価結果及び諮問会議の意見を受け、区域会議は、国家戦略特区において実施する特定事業及び認定区域計画に適切に反映するほか、規制の特例措置について全国展開等の措置を講ずることとされた場合には、期限を設けて、内閣府及び規制所管府省庁は当該措置を講ずるものとする。この場合において、区域計画の変更が必要となった場合には、区域会議は、法第9条に定めるところにより、速やかに、変更の手続をとるものとする。
6 認定の取消し及び区域指定の解除
@)区域計画の認定の取消しに関する基本的な事項
内閣総理大臣は、認定区域計画の評価結果等を踏まえ、認定区域計画が法第8条第7項各号に定める認定基準のいずれかに適合しなくなったと認めるときは、法第11条に基づき、その認定を取り消すことができることとされている。
この場合において、内閣総理大臣は、認定の取消しが当該区域計画に定められた特定事業の実施や当該事業に係る規制の特例措置の適用に影響を及ぼし得るものであることから、法第11条第1項の規定により、あらかじめその旨を関係府省庁の長へ通知する必要がある。
また、法第11条第2項に基づき、関係府省庁の長は、内閣総理大臣に対し、区域計画の認定の取消しに関し必要と認める意見を申し出ることができることとされている。これは、特定事業の適正な実施のために必要な措置が講じられない場合等には、関係府省庁の長から内閣総理大臣に意見の申出を行うこととすることにより、内閣総理大臣は認定の取消しに関し、より適切な判断をすることができるようにするものである。
A)区域指定の解除等に関する基本的な事項
ア)指定の解除等の手続
内閣総理大臣は、認定区域計画の評価結果を踏まえ、国家戦略特区の全部又は一部が第三の1に示す指定基準に適合しなくなったと認めるときは、法第2条第5項の規定により諮問会議及び関係地方公共団体の意見を聴取した上で、当該国家戦略特区における状況を総合的に勘案の上、その指定を解除し、又はその区域を変更することができるものとする。
イ)国家戦略特区の指定解除等の基準
ア)の場合において、以下の事項を指定解除又は区域の変更の基準として判断することとする。
a)各年度における定量的な目標の達成状況及び当該状況を踏まえた今後の取組に係る検討状況から、当該国家戦略特区における目標の達成が困難であると認めるとき。
b)規制の特例措置、構造改革特区の規制の特例措置、金融上の支援措置又は課税の特例措置の活用が適切に行われていないと認めるとき。
c)a)及びb)に掲げる事項のほか、当該区域において産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に資する事業の実施が困難であり、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展に相当程度寄与する見込みがないと認めるとき。
5.関連する施策との連携に関する基本的な事項
1 構造改革特区制度との連携
区域会議は、国家戦略特区における産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成を図るために必要と認めるときは、区域計画に、構造改革特区法の特定事業、構造改革特区の規制の特例措置の内容等を記載することができ、内閣総理大臣の認定を受けることにより、構造改革特別区域法に規定する認定とみなされて、国家戦略特区において、構造改革特区の規制の特例措置を活用することが可能となっている。
また、国家戦略特区において政府が講ずべき新たな措置に係る提案の募集に応じて行われた提案であって、経済社会の構造改革の推進及び地域の活性化に資すると認めるものについては、構造改革特別区域法第3条第4項に規定する提案とみなして、その実現に向け、同法及び構造改革特別区域基本方針に基づき、必要な対応をするものとする。
こうした対応により構造改革特区で実施される事業については、日本経済の再生を図る観点から、国家戦略特区における取組とあいまってより効果を上げるよう、内閣総理大臣及び関係府省庁の長は、その円滑かつ確実な実施に関し、必要な助言等の措置を講じるように努めなければならない。
2 全国規模及び企業単位の規制改革との連携
国家戦略特区は、全国的な見地から国が定めた戦略地域単位で、大胆な規制改革を実行するものであり、規制改革会議で取り組む全国規模の規制改革及び産業競争力強化法(平成25年法律第98号)に基づく企業実証特例制度による企業単位の規制改革と、三層構造で密接な連携を図っていく。その際、国家戦略特区制度においては、全国に先駆けて、限られた区域で規制・制度改革を行うという趣旨に則って進めていく必要がある。
3 総合特別区域制度及びその他の地域活性化施策との連携
一定の区域について、国家戦略特区と総合特別区域が重複して指定されることがあり得るが、この場合においては、国家戦略特区と総合特別区域のそれぞれの制度趣旨に応じて措置されている規制の特例措置等について、それぞれの特区における取組に応じて必要なものを適用することとし、相互の取組があいまってより大きな効果が得られるよう、積極的な連携を図ることとする。
また、国家戦略特区による成長の成果を全国の隅々に行き渡らせる観点から、その他の地域活性化施策との連携を図ることとする。
なお、従来の総合特別区域、構造改革特区等の特区制度等についても、今後とも継続して着実に進めていくこととする。 
第三 国家戦略特別区域を指定する政令の立案に関する基準その他基本的な事項  

 

1.国家戦略特別区域の指定基準
1 国家戦略特区の指定の基本的考え方
国家戦略特区は、規制の特例措置等の適用を受けて産業の国際競争力の強化に資する事業又は国際的な経済活動の拠点の形成に資する事業を実施することにより、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展に相当程度寄与することが見込まれる区域を、法第2条第1項に基づき政令で指定するものである。
国家戦略特区の指定は、国家戦略特区における取組をリーディングプロジェクトとして、日本経済全体の再生を図ろうとする観点から行われるものであり、必ずしも大都市に限定されるものではなく、地方も含め全国的な視点に立って行われるものである。
2 国家戦略特区の指定範囲の考え方
国家戦略特区の区域については、大胆な規制・制度改革により民間の力を引き出すという制度趣旨を踏まえつつ、日本経済に大きな効果をもたらすプロジェクトを実施するために合理的な範囲において指定することとする。基本的には、以下の二類型によるものとする。
ア)都道府県又は一体となって広域的な都市圏を形成する区域を指定する「比較的広域的な指定」
イ)一定の分野において、地域以外の視点も含めた明確な条件を設定した上で、国家戦略として革新的な事業を連携して強力に推進する市町村を絞り込んで特定し、地理的な連担性にとらわれずに区域を指定する「革新的事業連携型指定」
3 国家戦略特区の指定の基準
国家戦略特区の指定に当たっては、恣意的な指定とならないよう、その検討過程の透明性を確保するととともに、可能な限り定量的な指標も活用しつつ、客観的な評価に基づいて検討を行うこととする。その際、国家戦略特区を指定する政令の立案に当たっては、以下の事項を基準とするものとする。
【指定基準】
ア)区域内における経済的社会的効果
当該区域において実施されるプロジェクトにより当該区域内において大きな経済的社会的効果が生じること。
イ)国家戦略特区を超えた波及効果
当該区域においてプロジェクトを実施することにより、産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成を通じて、全国的な社会的経済的効果も含め、広く波及効果を及ぼすものであること。
ウ)プロジェクトの先進性・革新性等
当該区域において実施されるプロジェクトが、先進性・革新性を有するもの(従来なかった取組を新しく行う場合を含む。)であり、日本の経済社会の風景を変えるような取組と認められること(国内外に発信する価値のある日本の魅力や日本で培われた制度等を活かした取組を含む。)。
エ)地方公共団体の意欲・実行力
区域内の地方公共団体が、産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成のために、地域独自の取組を進め、又は進めようとしているなど課題に取り組む意欲が高く、規制・制度改革をスピード感をもって、継続的に遂行する実行力があると認められること。
オ)プロジェクトの実現可能性
区域内の地方公共団体並びに特定事業等を実施すると見込まれる者において、プロジェクトを推進する体制が構築されており、関係者間の必要な合意形成が進んでいるなど国家戦略特区におけるプロジェクトの実現可能性が高いこと。
カ)インフラや環境の整備状況
産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成を図る上で、それに必要な産業、都市機能等の相当程度の集積があるなど、目的の実現に必要なインフラや環境が整っていること。
特に、2の類型に応じて、以下の事項を考慮することとする。
a)「比較的広域的な指定」の場合には、当該区域において実施されるプロジェクトが、分野横断的な広がりを持っている等の包括性・総合性を有すること。
b)「革新的事業連携型指定」の場合には、当該区域において実施されるプロジェクトが、高い価値を有し、当該区域でしか実現できないほどの革新性を有すること。
なお、区域指定に当たっては、規制の特例措置をできるだけ全て活用できるよう努めるものとする。
4 国家戦略特区の指定数の考え方
国家戦略特区の指定数については、「日本再興戦略」において定められた「特区の数は国家戦略として必要な範囲に限定する」という趣旨に従い、厳選することとする。国家戦略特区制度の円滑な導入を図るため、国家戦略特区は必要に応じ指定することとする。
2.国家戦略特別区域の指定手続に関する基本的な事項
国家戦略特区の指定に当たっては、法第2条第5項に基づき、内閣総理大臣は、あらかじめ諮問会議の意見を聴かなければならないとされている。諮問会議は、13に定める国家戦略特区の指定基準に従い、区域指定に係る調査審議を実施し、国家戦略特区として指定すべき区域案について意見具申することとする。この際、第二の32による区域方針の調査審議も一体として行うこととし、内閣総理大臣に併せて意見具申することとする。
国家戦略特区の指定は、当該区域内に存する地方公共団体の事務に大きな影響を及ぼすことから、内閣総理大臣は、法第2条第5項の規定に基づき、関係地方公共団体の意見を聴取することとされており、諮問会議からの意見具申のあった区域案をもとに、これを行うこととする。
政府は、これらを踏まえ、国家戦略特区を政令で定める。
内閣総理大臣が諮問会議の意見を聴くのに先立ち、WGを活用して、段階的に検討を進めることとする。具体的には、WGにおいて、地方公共団体、民間事業者等から提出のあった提案(以下「提案募集による提案」という。)等を参考に、13に定める国家戦略特区の指定基準に従い、広域的な都道府県単位での絞り込みを行い、実施の見込まれる具体的なプロジェクトを総合的に検討する中で、区域の案を具体化していくこととする。 
第四 第8条第1項に規定する区域計画の同条第7項の認定に関する基本的事項 

 

1.区域計画の作成に関する基本的な事項
1 区域計画作成に当たっての基本的考え方
区域会議は、法第8条に基づき、基本方針及び区域方針に即して、区域計画を作成し、内閣総理大臣の認定を申請するものとされている。
区域計画は、国家戦略特区において、
ア)法第2条第3項の規制の特例措置
イ)構造改革特区の規制の特例措置
ウ)法第28条に基づく利子補給金(以下「国家戦略特区支援利子補給金」という。)の支給
エ)課税の特例措置
を実際に適用するために必要な事項を示すものである。
区域計画は、特区において実施する具体的な特定事業等を定める、いわば実施計画であり、区域会議の構成員である国家戦略特別区域担当大臣、関係地方公共団体の長及び民間事業者の三者により、相互に密接な連携の下に協議した上で、これら三者の全員の合意により作成しなければならないものである。
区域計画の作成に当たり、地域の実情や住民の声は、関係地方公共団体の長の参画を通じて適切に反映するよう努めるものとする。また、国家戦略特別区域担当大臣は、自ら計画を推進する立場に立って積極的に関与することで、意思決定の迅速化に努めるものとする。また、実施しようとする特定事業に係る手続について、できる限り合理化及び迅速化に努めるものとする。なお、区域計画は、必要に応じ、法第9条の規定に基づき変更を行うものとする。
2 区域計画の記載事項
法第8条第2項に基づき、区域計画には、以下の事項を定めるものとする。
ア)国家戦略特区の名称
イ)区域方針に定める目標を達成するために国家戦略特区において実施し又はその実施を促進しようとする特定事業の内容及び実施主体
ウ)特定事業ごとの規制の特例措置の内容
エ)その他特定事業に関する事項
オ)区域計画の実施が国家戦略特区に及ぼす経済的社会的効果
カ)その他必要な事項
国家戦略特区において区域方針に定める目標を達成するために必要な事業であって、特定事業以外のものについては、必要に応じ、カ)に記載することとする。
法第10条第1項に基づき、区域計画には、以下の事項を定めることができる。
ア)国家戦略特区において実施し又はその実施を促進しようとする構造改革特区法の特定事業の内容、実施主体及び開始の日
イ)構造改革特区法の特定事業ごとの構造改革特区の規制の特例措置の内容
ウ)構造改革特区法の特定事業を実施し又はその実施を促進しようとする区域の範囲
3 特定事業の実施主体に関する申出制度の趣旨及び手続
法第8条に基づき、区域会議において区域計画を作成する際、特定事業の実施主体として特定の者を定めようとするときは、あらかじめ、これについて公表することとしている。この公表があった場合に、当該特定事業を実施しようとする者(当該公表がされた者を除く。)は、区域会議に対して、実施主体として加えるよう申し出ることができることとし、区域会議は、この申出に係る特定事業が国家戦略特区における産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に資すると認めるときは、この申出に応じるものとしている。
これは、区域計画を作成する際に、先に特定事業の実施主体として区域計画に位置付けられた者の既得権益とすることなく、国家戦略特区の目的に合致する事業を行おうとする事業者に対し、広く公平な参加の機会を設け、区域計画の目標達成を図ろうとするものである。
特定事業の実施主体に関する公表については、インターネットの利用等により広く周知を図ることとする。また、申出については、特定事業の実施主体として実施しようとする内容や実施主体として加わることによる効果等を記載した申出書及び必要な添付書類を、区域会議の定める日までに、区域会議に提出するものとする。
2.区域計画の認定に関する基本的な事項
1 内閣総理大臣による認定の意義及び効果
区域計画については、基本方針及び区域方針との適合性等を担保する必要があることから、内閣総理大臣の認定を受けることが必要である。
内閣総理大臣は、法第8条第7項各号に掲げる基準に適合すると認めるときは、その認定をするものとする。当該認定を受けることにより、区域計画に定められた特定事業について規制の特例措置や国家戦略特区支援利子補給金等の適用を受けることが可能となる。
2 認定基準
法第8条第7項各号に定める基準について、具体的な判断基準は、以下のとおりとする。
ア)基本方針及び当該国家戦略特区に係る区域方針に適合するものであること。
区域計画に定められた内容が、当該国家戦略特区に係る区域方針に合致していること、個別の規制の特例措置等の実施に係る要件、手続等が満たされていることなどをもって判断する。
イ)区域計画の実施が当該国家戦略特区における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に相当程度寄与するものであると認められること。
産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に資する目標が設定されており、目標を達成するために必要な事業が特定事業、構造改革特区法の特定事業等として定められていることをもって判断する。
ウ)円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること。
特定事業、構造改革特区法の特定事業等について、区域計画が認定された場合に、事業が具体化されていること、事業の実施スケジュールが明確であることなどをもって判断する。
3 迅速な処理
国家戦略特区制度においては、スピード感が重要であり、区域会議において作成された区域計画の実行が、内閣総理大臣の認定手続により遅れることがあってはならない。このため、内閣総理大臣の区域計画の認定手続は、できる限り迅速に行う。
また、関係府省庁の長は、内閣総理大臣が区域計画の認定を迅速に行うことができるよう、速やかに、法第8条第9項に基づく同意についての判断を行い、通知するものとする。
4 法第8条第9項の趣旨
法第8条第9項に基づく区域計画に対する関係府省庁の長の同意は、専門的な立場から、区域計画に定められた特定事業の内容が当該特定事業について定めた法令の規定に合致しているか否かの判断を求めるものである。
内閣総理大臣が区域計画を認定すべきであると判断した場合は、法第8条第9項に基づき、区域計画に記載された特定事業又は構造改革特区法の特定事業に関する事項について関係府省庁の長に対して文書にて同意を求めるものとする。
その際、関係府省庁の長は、区域計画に定められた特定事業の内容が、同意のための要件等に関して第五の内容に合致するよう作成された法令に適合していれば、同意するものとする。
また、構造改革特区の規制の特例措置については、関係府省庁の長は、区域計画に定められた構造改革特区の規制の特例措置の内容が構造改革特別区域基本方針別表1に定める「同意の要件」及びこれについて規定した同表の内容に合致するように定められる法令に適合していれば、同意するものとする。
5 関係府省庁の長が不同意の判断をする場合の取扱い
関係府省庁の長が不同意と回答する場合には、どの部分が法令の規定に適合しないのかについて、具体的な理由を付して説明するものとする。
内閣総理大臣は、区域計画の認定を行うに際し必要と認めるときは、法第8条第8項に基づき、諮問会議に対し意見を求めることができることとされており、関係府省庁の長が区域計画に対する同意に支障がある旨提起した場合には、当該区域計画の認定について諮問会議の意見を聴くこととし、諮問会議においては、当該府省庁の長の意見聴取を行い、調査審議することとする。
6 規制の特例措置が全国展開、廃止等される場合の手続等
規制の特例措置又は構造改革特区の規制の特例措置が全国展開されるか、廃止される場合、規制の特例措置又は構造改革特区の規制の特例措置の対象となる規制が存在しなくなる場合など、国家戦略特区に適用される規制の特例措置又は構造改革特区の規制の特例措置がなくなる場合には、次の対応によるものとする。
ア)規制の特例措置又は構造改革特区の規制の特例措置がなくなることが予定される場合には、関係府省庁は内閣府に時間的余裕を持ってその旨を通知し、内閣府はそれを受けて、速やかに、その旨を、当該規制の特例措置が定められている認定区域計画に係る区域会議に通知するとともに、ホームページ上において公表するものとする。
イ)規制の特例措置又は構造改革特区の規制の特例措置がなくなることに伴い、区域計画の変更が必要となる場合、区域会議は、速やかに区域計画の変更の手続をとるものとする。 
第五 国家戦略特別区域における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進に関し政府が講ずべき措置についての計画 

 

1.規制の特例措置
1 規制の特例措置の着実な実行
国家戦略特区において活用することができる規制の特例措置は、区域会議や全国の地方公共団体・産業界からの提案を踏まえ、大胆な規制・制度改革について検討し、関係府省庁と調整を進め、決定したものである。これを受けた必要な措置については、次のとおり着実に実行する。
ア)法律事項として法において規定された規制の特例措置については、内閣府及び当該規制の特例措置の所管府省庁が、必要な政省令等を整備する。
イ)政省令(告示を含む。)又は訓令・通達により措置が必要な規制の特例措置については、当該規制の特例措置の所管府省庁が、内閣府と調整しつつ、必要な規定を整備する。
ウ)法附則の規定により必要な措置を講ずるものとするとされた事項については、当該事項を所管する府省庁は、それぞれ当該規定に定められたところに従い、必要な措置を講ずるものとし、その検討状況について、適宜、内閣府の求めに応じ報告する。
2 規制の特例措置の追加に関する基本的考え方
(新たな規制の特例措置の追加)
以下に定めるところによって、追加の規制の特例措置の検討をスピード感をもって進め、確実に実現につなげていくものとする。当該検討に際しては、国家戦略特区における規制の特例措置として検討すべきもののほか、法第38条第1項の規定に準じて構造改革特区制度の提案として検討すべきもの、また、全国規模の規制・制度改革として規制改革会議等との連携により検討すべきもの等の分類も併せて実施することで、規制・制度改革の実現に向けた選択肢を広げ、実現の可能性を高めていく。
ア)提案募集による提案について、洗い出し等による検討を進め、必要な規制・制度改革の実現に向け、積極的に取り組んでいくこととする。
イ)国家戦略特区を指定し、区域会議において国家戦略特区における取組が具体化していく過程においては、地方公共団体、民間事業者等から新たな規制・制度改革の課題が提起されることが想定される。このため、区域会議において、随時、追加的な規制・制度改革について民間事業者等から意見聴取を行い、必要な規制・制度改革を確実に実現していくものとする。
ウ)第六に定めるところによる提案の募集を活用して広く追加的な規制・制度改革の提案を求め、それらの実現に向け、積極的に取り組んでいくこととする。
(新たな規制の特例措置の実現手続)
新たな規制の特例措置の実現に向けた規制所管府省庁との調整は、諮問会議の実施する調査審議の中で、当該規制所管府省庁の長の出席を求めた上で実施する。その調整に当たり、規制所管府省庁がこれらの規制・制度改革が困難と判断する場合には、当該規制所管府省庁において正当な理由の説明を適切に行うこととし、諮問会議においても、必要に応じて、その適否を調査審議することとする。
諮問会議及びWG以外の場において内閣府及び規制所管府省庁が調整を行った場合であって、当該調整により規制の特例措置の実現に向けた議論に係る重要な変更等が生じ、当該調整の結果を明らかにしなければ意思決定に至る過程の検証が困難になると認められるときは、内閣府又は規制所管府省庁のいずれかが当該調整を行った相手方へ申し出ることにより合意議事録を作成することとし、この申出を受けた相手方は、誠実に対応しなければならないものとする。
これらの調査審議等の結果、講ずることとされた規制の特例措置については、この章(第五)に適宜反映していくものとし、速やかに措置することとする。
内閣府は、この章に基づき、規制の特例措置を定める法令の案を作成するに当たっては、この章に定める内容に合致するように作成するとともに、当該規制所管府省庁と所要の調整を行うものとする。法律改正が必要な規制の特例措置については、国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案等として、できる限り早期に国会へ提出するものとし、政令又は主務省令に係る規制の特例措置については、それぞれ施行令の一部改正又は内閣府令・主務省令の制定若しくは一部改正として、できる限り早い時期に公布し、施行するものとする。
国家戦略特区において講ずることとなった規制の特例措置の内容、関係府省庁の長の同意の要件、規制の特例措置に伴い必要となる手続等については、以上の手続を通じて、法令において明確に定められることとなるが、別途、一覧性を確保するため、内閣府において参考資料として適宜整理した上で、ホームページで公表する。
なお、当該規制所管府省庁は、この章に即して定められる法令で規定する条件以上のものを、通知等により付加しないものとする。
3 拡充、是正又は廃止する規制の特例措置
規制の特例措置を拡充、是正又は廃止するとしたものについては、この章を改定し、これに即した必要な法令の改正等を行うものとする。
4 構造改革特区の規制の特例措置
法第10条に基づき、国家戦略特区において活用することができる構造改革特区の規制の特例措置は、構造改革特別区域基本方針の別表1に示されているとおりである。
また、構造改革特区の規制の特例措置の前提となる制度自体が廃止又は抜本的に変更される場合には、内閣府は、必要に応じて、規制所管府省庁とともに、当該構造改革特区の規制の特例措置が定められている認定区域計画に係る区域会議に通知し、所要の対応を行うものとする。
2.金融上の支援措置
1 国家戦略特区支援利子補給金の趣旨及び概要
我が国の経済成長のためには、新たな成長分野を切り開く先駆的な研究開発や革新的な事業が必要である。国家戦略特区支援利子補給金制度は、このような事業を行うものの資金調達が容易ではないベンチャー企業又は中小事業者を支援することで、イノベーションの連鎖を促し、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成を図ることを目的としたものである。
法第28条第1項により、政府は、認定区域計画に定められている法第2条第2項第2号に規定する事業を行うベンチャー企業等が、当該事業を内閣総理大臣が指定する金融機関(以下「指定金融機関」という。)からの資金の借入れを受けて実施する場合に、当該指定金融機関と国家戦略特区支援利子補給金を支給する契約を結ぶことができることとし、予算の範囲内で、国家戦略特区支援利子補給金を支給することとする。
国家戦略特区支援利子補給金の支給率は、貸付残高に対して、内閣総理大臣の定める利率とし、支給期間は認定区域計画に記載された事業に対して、指定金融機関が資金の貸付を最初に行った日から起算して5年間とする。
なお、国家戦略特区支援利子補給金の対象事業は、地方公共団体の関与等により、真に必要な事業に絞り込むこととし、その事業内容については、毎年、国家戦略特区支援利子補給金の活用及び法第2条第2項第2号に規定する事業の実施の状況について検討を加え、その結果に基づき、法施行後3年以内に必要な措置を講ずる。
2 区域計画への記載事項
国家戦略特区支援利子補給金を活用しようとする場合には、区域計画に、活用しようとする特定事業ごとに、第四の12イ)に掲げる事項として次のア)に掲げる事項を、第四の12エ)に掲げる事項として次のイ)及びウ)に掲げる事項を定めることが必要である。
ア)国家戦略特区支援利子補給金の支給の対象としようとする特定事業の内容及び実施主体
イ)法第2条第2項第2号の内閣府令に規定する該当事業種別
ウ)当該特定事業について、区域計画に定めた目標を達成するための位置付け及び必要性
3 区域計画の認定条件
国家戦略特区支援利子補給金に係る区域計画の認定に当たっては、当該特定事業が法第2条第2項第2号の内閣府令に規定する事業に該当することを確認するとともに、第四の22に定めるところにより、判断するものとする。
3.税制上の支援措置
1 国家戦略特区における課税の特例措置の趣旨及び概要
国家戦略特区において、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点の形成を図るため、以下の課税の特例措置を講じる。
ア)特別償却・投資税額控除
認定区域計画に定められた実施法人が、平成26年4月1日から平成30年3月31日までの期間内に、国家戦略特別区域法施行規則(平成26年内閣府令第20号。以下「施行規則」という。)第1条第1号又は第2号に規定する事業(注1)を行うために設備等を取得等して当該事業の用に供した場合には、租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第42条の10又は第68条の14及び地方税法(昭和25年法律第226号)に基づき、特別償却又は税額控除(法人住民税及び事業税については特別償却)を認める特例措置を適用できる。
(注1)法第2条第2項第1号に掲げる事業(規制の特例措置の適用を受けるもの)又は同項第2号に掲げる事業(法第28条第1項に規定する指定金融機関から当該事業を行うのに必要な資金の貸付けを受けて行われるもの)に限る。
イ)研究開発税制の特例
施行規則第1条第2号に掲げる事業(注2)(以下「特定中核事業」という。)の用に供された開発研究用資産(一定の機械及び装置並びに開発研究用器具及び備品に限る。)の減価償却費は、租税特別措置法第42条の10第3項又は第68条の14第3項に基づき、研究開発税制の特例を適用できる。
(注2)先端的技術を活用した医療等の医療分野又は一定の農業分野の研究開発が対象。
ウ)固定資産税の課税標準の特例
特定中核事業のうち医療分野における研究開発事業で基礎的なものその他の収益性の低いものを行うために開発研究用資産(ア)の特別償却の適用を受ける一定の機械及び装置並びに開発研究用器具及び備品のうち、先端的技術を活用した医療等医療分野に限る。)を取得等してその事業の用に供した場合には、地方税法附則第15条第41項に基づき、固定資産税の課税標準の特例を適用できる。
エ)法人の所得に対する課税の特例
国家戦略特区の指定の日以後に設立され、同区域内に本店又は主たる事務所を有し、専ら施行規則第11条の2に規定する特定事業を営む法人であって、平成28年9月1日から平成30年3月31日までの間に国家戦略特別区域担当大臣の指定(当該法人設立の日から5年を超えない範囲内で有効期間を付するものとする。)を受けたものについては、その有効期間内に終了する事業年度において、租税特別措置法第61条又は第68条の63の2及び地方税法に基づき、法人所得についての課税の特例を適用できる。
オ)土地等の長期譲渡所得に対する課税の特例
施行規則第12条に規定する事業に係る一定の公益的施設の整備事業の用に供するため、土地等を譲渡した場合には、租税特別措置法及び地方税法に基づき課税の特例を適用できる。
カ)特定事業を行う一定の株式会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例
施行規則第13条に規定する事業を行う一定の株式会社により発行される株式を払込みにより個人が取得した場合には、租税特別措置法に基づき課税の特例を適用できる。
キ)国家戦略民間都市再生事業に対する課税の特例
法第25条第1項に規定する国家戦略民間都市再生事業を定めた区域計画について内閣総理大臣の認定を受けたことにより、当該事業の実施主体に対して都市再生特別措置法(平成14年法律第22号)第21条第1項の民間都市再生事業計画の認定があったものとみなされた場合には、租税特別措置法及び地方税法に基づき課税の特例を適用できる。
2 事業実施計画への記載事項
上記1の課税の特例措置(1キ)を除く。)を活用しようとする場合には、区域計画の課税の特例措置に必要な基礎資料として、活用しようとする課税の特例措置ごとに、施行規則第3条第1項から第3項までの各項(1エ)を活用しようとする場合においては施行規則第3条の2第1項)に定める事業実施計画を作成するとともに、当該事業実施計画において、活用しようとする課税の特例措置、設備等の取得等に関する計画等が記載されていることが必要である。
3 区域計画への記載事項
課税の特例措置を活用しようとする場合には、区域計画に、活用しようとする課税の特例措置ごとに、第四の12イ)に掲げる事項として次のイ)及びオ)に掲げる事項を、第四の12エ)に掲げる事項として次のア)、ウ)及びエ)に掲げる事項を定めることが必要である。ただし、活用しようとする課税の特例措置が上記1ア)、イ)又はウ)の場合であり、かつ、対象となる設備等が一致する場合には、該当する課税の特例措置を列記すれば、活用しようとする課税の特例措置ごとにこれらの記載事項を区域計画に定める必要はない。
ア)活用しようとする課税の特例措置
イ)課税の特例措置の対象としようとする事業の内容
a)当該事業の概要
b)当該事業が行われる区域
c)当該事業の実施期間
d)当該事業により取得等される設備等の概要(1エ)又はカ)の場合を除く。)
ウ)課税の特例措置(1キ)を除く。)の対象としようとする事業が該当する施行規則第1条(1エ)の課税の特例措置を活用しようとする場合においては、施行規則第11条の2第2号)の条項
エ)課税の特例措置の対象としようとする事業について、法第6条第2項第1号の目標を達成するための位置付け及び必要性
オ)課税の特例措置の対象としようとする事業の実施主体
4 区域計画の認定条件
国家戦略特区における課税の特例措置に係る区域計画は、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成を図るという国家戦略特区の目的に沿って、これを戦略的観点から推進するものであって、以下のア)及びイ)の条件並びに第四の22イ)に掲げる認定基準の判断に当たっては以下のウ)の条件を満たすものとする。
ア)(a)1ア)、イ)又はウ)の課税の特例措置の場合には、当該課税の特例措置の対象としようとする事業が、施行規則第1条第1号又は第2号に規定する事業に該当し、当該事業の用に供する設備等が、区域計画に係る当該国家戦略特区内に新設等されるものであること。
(b)1エ)の課税の特例措置の場合には、当該課税の特例措置の対象としようとする事業が、施行規則第11条の2の要件を全て満たすものであり、当該事業を行う法人が、施行規則第11条の3の要件を全て満たすものであること。
(c)1オ)の課税の特例措置の場合には、当該課税の特例措置の対象としようとする事業が、施行規則第12条の要件を、1のカ)の課税の特例措置の場合には、当該課税の特例措置の対象としようとする事業が、施行規則第13条の要件を満たすものであり、当該事業を行う株式会社が、施行規則第14条の要件を全て満たすものであること。
イ)事業実施計画が、当該事業を行うことについての適切かつ確実な計画であることを、国家戦略特区担当大臣が確認していること。
ウ)当該事業が、その事業内容、行われる場所、当該国家戦略特区で行われる他の事業との関係等を考慮して、当該国家戦略特区における目標達成のために相当程度寄与することが認められること。 
第六 国家戦略特別区域における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進に関し政府が講ずべき新たな措置に係る提案の募集に関する基本的な事項 

 

1 提案募集の趣旨及び概要
国家戦略特区制度においては、現場の声をより重視して規制・制度改革を進めるため、あらゆる分野の国の規制・制度について、広く提案を集める機会を設けることが重要である。また、国家戦略特区における取組が具体化していく中で民間事業者や地方公共団体からの新たな問題提起を通じて、更なる規制・制度改革の課題が浮かび上がってくると想定される。
経済社会情勢の変化に対応して、求められる必要な規制・制度改革も変化していくものであることから、これらの状況を踏まえつつ、新たなニーズに応えられるよう、政府が講ずべき措置に係る提案の募集を必要に応じて行うものとする。
2 提案主体
提案は、広く現場から衆知を集めるという観点から、事業の実施主体となる民間事業者又は地方公共団体等から幅広く募集する。
提案の主体は、単独による提案だけでなく、複数の主体による共同での提案や、海外からの提案も可能とする。
3 提案募集の時期
提案募集の時期については、経済社会情勢の変化や、国家戦略特区における取組が具体化していく中で生じる更なる規制・制度改革の課題の状況を見極めて、適切な時期に実施する。
提案の機会についてタイミングを逸しない程度に確保するため、少なくとも年に2回は提案募集を実施する。
4 提案募集の周知
内閣府のホームページへの掲載の他、内閣府の発行するメールマガジンの配信や内閣府が参加する会議における情報提供など、様々な機会を捉えて周知を行う。
また、余裕を持った募集期間を設定することで、提案募集の周知に触れる機会を十分に確保するとともに、提案のための検討期間も確保できるよう配慮する。
5 提案を受けた政府の対応
受け付けた提案については、諮問会議における調査審議を通じて、実現に向けた検討を進める。
なお、国家戦略特区における規制の特例措置としては実現しなかった提案については、法第38条の規定を活用した構造改革特区制度との連携や、全国規模での規制・制度改革に係る規制改革会議との連携等を通じて、実現の可能性を検討するものとする。
関係府省庁は、これらを通じて実現することとなった規制の特例措置について、内閣府と連携し、第五の12のとおり必要な措置を講ずるものとする。 
第七その他国家戦略特別区域における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進に関し必要な事項 

 

(透明性の確保)
第一の2の運用の原則のとおり、国家戦略特区制度の運用に当たっては、徹底的に透明性を確保するものとし、各プロセスにおいて、第三者の目を通じた客観的な評価を可能とするため、ホームページ等を活用し、関係資料をできるだけ公開することとする。
(国家戦略特区制度の周知)
国家戦略特区制度については、制度を活用する側の視点に立って、本制度の特徴や、その他の規制・制度改革に関する制度との相違等を含め、分かりやすい周知に努めることとする。 
 
   
 
国家戦略特区諮問会議

 

国家戦略特別区域諮問会議の内閣総理大臣が指定する国務大臣及び有識者議員の内定について
平成25年12月20日 内閣府
1.国家戦略特別区域諮問会議は、国家戦略特別区域法の規定に基づき、内閣総理大臣を議長とし、議員として、内閣官房長官、国家戦略特別区域担当大臣のほか、内閣総理大臣が指定する国務大臣及び内閣総理大臣が任命する有識者で組織することとされています。
2.内閣総理大臣が指定する国務大臣としては、以下の3名を予定しております。
 麻生太郎  財務大臣兼副総理
 甘利明   内閣府特命担当大臣(経済財政政策)兼経済再生担当大臣
 稲田朋美   内閣府特命担当大臣(規制改革)兼 行政改革担当大臣
3.また、内閣総理大臣が任命する有識者議員として、経済界と学界から優れた識見をお持ちである以下の5名の方々を内定しました。今後、所要の手続きを経て、近日中に正式に諮問会議議員として任命する予定です。
 秋池玲子 (ボストンコンサルティンググループパートナー&マネージング・ディレクター)
 坂根正弘 (株式会社小松製作所相談役)
 坂村健   (東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授)
 竹中平蔵 (慶應義塾大学総合政策学部教授)
 八田達夫 (大阪大学社会経済研究所招聘教授)

○秋池玲子(あきいけ・れいこ)
生年月日:昭和39 年7月8日(49 歳)
現職   :ボストンコンサルティンググループパートナー&マネージング・ディレクター
学歴   :早稲田大学理工学部大学院修士課程修了
       マサチューセッツ工科大学経営学大学院修了
○坂根正弘(さかね・まさひろ)
生年月日:昭和16 年1月7日(72 歳)
現職   :株式会社小松製作所相談役
学歴   :大阪市立大学工学部卒業
○坂村健(さかむら・けん)
生年月日:昭和26 年7月25 日(62 歳)
現職   :東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授
学歴   :慶應義塾大学大学院工学研究科電気工学専攻
       博士課程修了
○竹中平蔵(たけなか・へいぞう)
生年月日:昭和26 年3月3日(62 歳)
現職   :慶應義塾大学総合政策学部教授
学歴   :一橋大学経済学部卒業
○八田達夫(はった・たつお)
生年月日:昭和18 年3月23 日(70 歳)
現職   :大阪大学社会経済研究所招聘教授
学歴   :国際基督教大学教養学部社会科学科卒業
       ジョンズ・ホプキンス大学大学院経済学研究科
       経済学専攻博士課程修了 
 
国家戦略特区、選定議員に竹中平蔵教授ら 雇用規制の緩和は進むか 2014/1/10
竹中平蔵氏が労働規制の緩和について「岩盤規制を崩していく」と述べた――。
政府は、地域を限って大胆な規制緩和などを行う「国家戦略特区」について、具体的な特区の対象地域を決める「国家戦略特区諮問会議」の民間議員に、慶応大学の竹中平蔵教授ら5名を選出した。12月20日の菅義偉官房長官の記者会見で発表した。MSN産経ニュースが報じた。
「竹中氏は政府の産業競争力会議の民間議員を務め、規制緩和推進を強く主張している。戦略特区の作業部会の座長を務めた八田達夫大阪大招聘教授、坂根正弘コマツ相談役、坂村健東大大学院教授、秋池玲子ボストンコンサルティンググループ・パートナー&マネージングディレクターも起用する。」
竹中平蔵氏が規制緩和を進める理由
竹中氏は、小泉内閣でも構造改革を唱え、特区を推進してきた。しかし、第2次安倍内閣になった今、過去の特区がうまく機能していないと竹中氏は指摘。これまでの特区制度に足りない部分を補い、さらなる規制緩和を進めたいとしている。
「自治体側から話を聞くと、やはり今の特区では使い勝手がよくなくて困っている。東京都のヘッドクオーター特区というものがあり、法人税も減免されるような措置はあるが、ヘッドクオーターとしての会社が来てくれない。それは、例えば外国人が来てもその子供を英語で教育する小学校がないなど、仕組みがあっても現実がワークしない状況となっているため。大阪もイノベーションの特区を持っているが、同じようなことに悩んでいる。」
国家戦略特区で規制が緩和される分野は
安倍首相は「世界で一番ビジネスをしやすい環境をつくる」という目標を掲げ、国家戦略特区を設立することを決めた。7日には、国家戦略特別区域法が成立。雇用や教育、農業、医療などの分野で、規制緩和を進める。安倍首相は19日、都内で講演し、来年3月を目途に国家戦略特区具体的な地域を指定すると話した。
特区の案としては、民間企業による公立学校の運営(公設民営学校の設置)や、医学部の新設などが出ている。
「解雇特区」と反対された労働規制の緩和
一方、これまで大きな反対の声が上がっていたのが、雇用に関する規制緩和だ。これはもともと、特区内の基準を満たした事業所について、解雇の要件・手続きを契約条項で明確化したり、休日や深夜労働の労働条件の緩和するというものだった。
報道などで「解雇特区」との指摘を受けたこともあり、批判が殺到。議論をしない状況が続き、成長戦略の柱となる「国家戦略特区」の規制緩和概要には「労働時間法制」と「解雇ルール緩和」を含めることが見送られている。
竹中氏は「解雇の自由化」ではなく、「雇用条件の明確化」であると指摘し、能力の低い経営者が社長に居座れないような制度作りをしたいと反論。理解を求めていた。
「竹中: 「解雇の自由化」なんて誰も言っていないですよ。さっきの新自由主義と同じですよ、誰も言っていないのに、さも言ったかのような幻想をでっち上げて、それでけしからんけしからんと言うんですよ。それでもう1つけしからんのは、それで政治がビビってしまったんですよ。
私たちは「解雇のルールを法文で明確に定めよう」と言ったんです。いまは判例なんですよ。しかも古い判例で、たとえば大きな企業は、「もしもここでリストラをしたら訴えられるかもしれない」という訴訟リスクを感じるんですよ。
田原: それで、訴えられたら負けるんですよ、判例では。
竹中: 負けるかどうかはやってみなければわからないんですが、そもそも訴訟リスクを感じるから、そんなのはイヤだからできないわけですね。ところが一方ではこの判例は曖昧だから、「うちなんかは訴訟なんかされるわけがない」と思っている弱小の企業なんかは、平気でクビを切るわけですよ。訴訟リスクを感じない企業は、平気でクビを切っているんです。むしろそういう場合は、労働者の権利は守られていないんです。
だからそれを明確にしようと言っただけなんです。それを「解雇の自由化をしようとしている」と言って、それでもう、会議全体でそういう議論をするのは避けようということになったんです。」
竹中氏はウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューに答え、今後の労働分野の規制緩和について次のように話している。
「戦略特区法では、労働規制について過去の判例にのっとったガイドラインを設置することになったが、エコノミストらはもっと明確に、できれば法律で担保するよう求めている。竹中氏も同様の見方を示すとともに、「雇用のルールについて、条件付きでできるようになったので半歩くらい前進した。重要なのは特区の枠組みをフルに使って岩盤規制を崩していくこと。いろんな分野でいろんな人に可能性与えてイノベーションにチャレンジしてもらわないといけない。幅広い分野で、ニーズがある部分に緩和をしていく」と語った。」
なお、規制改革会議は12月5日、世界でトップレベルの働き方を実現するためとして、労働時間規制の見直しに関する意見をまとめており、そのなかで、労働時間法制の適用除外制度の基本的な枠組みについて、議論を避けるのではなく、議論を進めるべきと提言している。 
安倍政権はグローバル企業の奴隷か 2014/8/26
〈安倍政権の成長戦略に盛り込まれた法人税減税、「残業代ゼロ」制度、農業改革、混合診療拡大、水道などの公共サービスの民営化加速──などは、いずれもグローバル企業の利益拡大に結び付くものばかりだ。
雇用、健康、安全など生命に深く関わる分野で国民を保護してきた法律を破壊して、新たな市場を形成し、グローバル企業の利益を拡大しようとしている。
こうした新自由主義政策の旗を振っているのが、産業競争力会議、国家戦略特区諮問会議、規制改革会議などだ。こうした会議には、グローバル企業の代弁者やそれに連なる財界人たちが多数送り込まれている。
産業競争力会議には、秋山咲恵(サキコーポレーション)、岡素之(住友商事)、榊原定征(東レ)、坂根正弘(コマツ)、竹中平蔵(パソナグループ)、新浪剛史(ローソン)、長谷川閑史(武田薬品工業)、三木谷浩史(楽天)が民間議員として名を連ねている。
国家戦略特区諮問会議には、秋池玲子(ボストンコンサルティンググループ)、坂根正弘(小松製作所)、竹中平蔵が民間議員として参加。同会議は、「日本破壊」の尖兵とも批判される、モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社チーフエコノミストのロバート・アラン・フェルドマン氏からもヒアリングしている。
そして、規制改革会議委員には、岡素之、浦野光人(ニチレイ)、金丸恭文(フューチャーアーキテクト)、佐久間総一郎(新日鐵住金)、佐々木かをり(イー・ウーマン)、滝久雄(ぐるなび)が委員として、滝口進(日本メディカルビジネス)、松山幸弘(キヤノングローバル戦略研究所)、小林三喜雄(花王)、圓尾雅則(SMBC日興証券)、北村歩(六星)、田中進(サラダボウル)、松本武(ファーム・アライアンス・マネジメント)、渡邉美衡(カゴメ)が専門委員として名を連ねる。
自社の利益拡大のために、国民を無視して法律を変えようというこの流れに対して、政治家たちは抵抗できないでいる。与野党問わず、新自由主義に毒された国会議員が増殖しているからだ。
ここで注目したいのが、外資系企業出身議員の動きである。
もちろん、彼らがすべて新自由主義路線の推進役を演じているわけではないが、大半の議員が安倍政権の「第三の矢」推進に呼応した政策を掲げている。
外資出身の衆議院議員では、モルガンスタンレー証券出身の小田原潔議員(自民)が「世界で一番企業が活動しやすい国へ」と、仏ソシエテジェネラル信託銀行出身の山田賢司議員(自民)が「世界を相手に稼げる日本を取り戻す」と、さらにボストンコンサルティンググループ・エルメスジャポン出身の山田美樹議員(自民)が「グローバル競争に不利な日本」の克服を訴えている。まさに、「第三の矢」礼賛だ。
日本金融財政研究所所長の菊池英博氏は、マッキンゼー社出身で、現在経済産業相を務める茂木敏充氏(自民)もまた、筋金入りの新自由主義者だと見る。
一方、ゴールドマンサックス証券出身の岡本三成議員(公明)は「TPP参加を見据え、世界に勝てる農業を実現するため、農地制度の緩和や技術革新を積極的に推進します」と、バンクオブアメリカ出身の大熊利昭議員(みんな)は、郵政の完全民営化、電力の完全自由化などを主張している。
外資出身の参議院議員にも、外資の利益に沿った動きが目につく。外資系証券会社を渡り歩いてきた佐藤ゆかり議員(自民)は、郵政解散を受けた2005年の総選挙で、郵政民営化法案造反組の野田聖子氏の「刺客」として出馬した人物。
モルガン・スタンレー証券出身の大久保勉議員(民主)は、フェルドマン氏の元同僚でもあり、日本の金融機関から外資系金融機関に転じた人物が集まる勉強会を開催し、ビジネスに関連する情報を提供していたという。菊池英博氏は次のように指摘する。
「驚いたことに、大久保氏は2007年10月に郵政公社が民営化されるときに、公社が保有している物件のうち、売りに出す物件のリストを持ち歩き、勉強会の参加者に配布していた」
みんなの党は、新自由主義路線を鮮明にしているが、特に外資系企業出身者の主張ははっきりしている。JPモルガン証券出身の中西健治議員(みんな)が、「企業の活力を引き出すために……医療、介護、保育、さらに農業ほか様々な分野での規制緩和を政府がリーダーシップを強力に発揮して速やかに実行するべき」と主張し、アンダーセンコンサルティング出身の山田太郎議員(みんな)が「経済成長の足を引っ張る制度や法律の改廃」を掲げる。
菊池氏は中西議員は郵政民営化に執心していると指摘する。中西議員は3月4日の参院予算委員会で日本郵政前社長の坂篤郎氏が顧問として残っていることを問題視し、坂氏は菅義偉官房長官によって事実上解任された。
政治家と外資系企業の橋渡しも、こうした外資出身議員によって進められていると推測される。
一方、日本の大企業はアメリカ系グローバル企業と利害を共有するようになっている。TPP推進の旗を振るのも、グローバル企業、日米の大企業である。この日米財界一体化の構造は、新自由主義イデオロギーの共有と同時に、資本関係によってより強固なものとなってきた。
年次改革要望書が出されるようになった1994年、対日投資会議が設置され、1996年4月には対日M&Aを歓迎する声明が発表されたのである。本誌8月号で佐々木実氏が指摘したように、2001年にはアメリカの有力シンクタンク外交問題評議会が提言を出し、「アメリカ企業が、日本における企業活動を通じて、構造的な変革を進めるトリガーとなる」と唱えた。
2007年には三角合併が解禁され、シティグループによる日興コーディアルグループの買収など、日本企業の買収が進んだ。
日本企業の外国人持株比率は、1990年代前半には10%に満たなかったが、それから20年を経た今年3月末には約30%にまで拡大しているのである。外国人が株式の過半数を保有している「日本企業」も拡大している。
安倍政権は、「日本の『稼ぐ力』を取り戻す」などと言っているが、日本の大企業の稼ぎは、国民に還元されることなく、外国人株主を潤すことにしかならない。もはや、安倍政権はわが国の国民資産を略奪しようとするグローバル企業の奴隷と化したと言わねばならない。〉
 
第18回国家戦略特別区域諮問会議

 

 日時 平成27年12月15日(火)10:18〜10:45
議長 安倍晋三 内閣総理大臣
議員 麻生太郎 財務大臣兼副総理
   石破茂  内閣府特命担当大臣(国家戦略特別区域)兼地方創生担当大臣
   菅義偉  内閣官房長官
   甘利明  内閣府特命担当大臣(経済財政政策)兼経済再生担当大臣
   河野太郎 内閣府特命担当大臣(規制改革)兼行政改革担当大臣
有識者議員
   秋池玲子 ボストンコンサルティンググループ
   坂根正弘 株式会社小松製作所相談役
   坂村健  東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授
   竹中平蔵 慶應義塾大学総合政策学部教授
   八田達夫 アジア成長研究所所長 大阪大学社会経済研究所招聘教授
・・・
○石破議員 ありがとうございました。
ほかの議員各位からも御意見があれば、お願い申し上げます。よろしゅうございますか。ありがとうございました。
それでは、引き続きまして、評価に係る作業を進めてまいりたいと存じます。
次に、国家戦略特区の3次指定について、A3横長の資料2−1と2−2を御覧いただきたいと存じます。
資料2−1について申し上げます。
法第30条第1号及び第3号の規定により、国家戦略特区の指定及び区域方針について御審議をいただきますが、前回の諮問会議やワーキンググループの議論を踏まえた案をお示しいたしております。国家戦略特区の第3次指定の対象となる区域といたしまして、広島県及び愛媛県今治市、千葉県千葉市、福岡県北九州市の3地域を考えております。
しまなみ海道でつながっております広島県と今治市を連携して指定したいと考えます。雇用ルールを明確化し、グローバル企業や家事支援人材を積極的に受け入れます。また、ビッグデータを活用し、民間主導の道の駅の設置や、ライフサイエンスなどの新たに対応すべき分野における獣医師系の国際教育拠点の整備については、6月の改訂成長戦略に即して行います。
また、千葉市は、幕張新都心において医薬品などの宅配の実証をドローンにより行います。国内外からの多様な人材の集積を図るため、民泊の推進や地域限定保育士制度を導入します。
さらに北九州市は、高齢化社会に対応するため、シニア向けハローワークの設置や介護施設へのロボット導入のための各種制度を改正いたします。
なお、千葉市と北九州市の指定は、現在の東京圏と福岡市の特区の区域拡大により対応いたします。
本件につき、資料3に基づいて、八田議員から御意見をいただきたいと存じます。お願いいたします。
・・・
○竹中議員 ありがとうございます。
今回、新たな地域を指定するということに関しては、いくつかの点を考慮したつもりです。1つは改革の革新性があるかということ。それと、革新性が幾らあっても実現可能性がなければいませんので、実現可能性を考えなければいけない。これはどちらかというと、トレード・オフの関係がどうしても出てきますけれども、その最適、両方を満たしているということを考慮して今回大臣が提案をしてくださったわけです。私たちもそれを強くサポートしているところであります。
もう一つ考えなくてはいけない問題として、地理的分布、ジオグラフィック・ディストリビューション。今まで中国・四国に特区はなかったわけでありますので、その点についても今回新たに入るということは意味があること。広島、今治が入るということだと思います。
今回、その中でとりわけ獣医学部等々を含むライフサイエンス系の問題にこの地域が取り組もうとしているところは、私は高く評価すべきであろうかと思います。この問題は成田で38年ぶりに医学部ができる。これは大変大きな話題、アベノミクスが進捗している象徴になったわけですけれども、獣医学部に関しては、それを上回る47年間新しいものがない。かつ、昭和50年、つまり約40年前から定員がふえていない。これは驚くべきことだと思います。そういう意味で、ここにぜひ獣医学部の問題も含めて、ライフサイエンスで頑張っていただきたいという思いがあります。
北九州に関しては、実は福岡市といい意味で競争してもらいたい。この競争と協調、特区間の競争が実は非常に大きな促進力になっていると思います。
そして、空港の問題等々で協調できる面もたくさんあると思っております。その点をぜひ強調したい。
最後に、今、八田議員が言われたことですけれども、これからシェアエコノミーの話はどうしても避けて通れない。今、既に民泊、海外の企業が入っております。そして、お互いの輸送の機関が入っております。両方とも1兆円、5兆円、8兆円というクラスの企業に成長していて、それが日本に入ってこられないということになると、これはオリンピック・パラリンピックのときに世界に通じないと思います。その突破口を日本的なやり方で特区でぜひ突破したいというのが、民間議員の思いでありまして、その第一歩が八田議員が説明してくださったことでありますので、この姿勢をぜひ貫きたいと思っております。以上であります。
・・・
○坂根議員 北九州について一言つけ加えたいと思います。
11月の終わりに福岡市長から、スタートアップシンポジウムをやるから講演に来てくれと頼まれて、行って話をしてきました。
その後で、市長といろいろ雑談している中で気がついたことなのですが、福岡は札幌と同じように支店経済。余りものづくりの大きな工場がない。おかげでサービス関係の雇用も少し増えて、若い女性が増えてきた。北九州市は減っていますけれども、福岡は人口が増えております。ただ、人口が増えていても結婚率は低いし、出生率も低いという悩みがあるということなのです。
私は、北九州というのはTOTOや安川電機など大企業の本社もあるし、工場もいろいろあって、北九州と一緒になってお互いにシナジー効果を出すようなものはないのですかと申し上げたのですが、今回これで北九州が認定されますと、新幹線で17分。私が調べると距離は70キロなのですが、市の境界の距離はちょうど半分の30キロくらいなのです。
ですから、私は働き場所として北九州は結構人口が多くなると思うのですが、先ほど竹中さんがおっしゃいましたけれども、うまく中間の地域も含めて、広域として発展しないかと。もっと言えば、関門海峡を挟んで下関まで広域で発展するような特区になってもらったらいいと思います。
広島・今治もそういう意味では、中国と四国で地域は違いますけれども、橋を渡って1つですから、これも同じような考えが適用できるのではないでしょうか。
最後に一言、第1次指定地域の中で今、八田さんは東京と養父が比較的うまくいっていると仰いました。私は共通要素があると思っていまして、東京の場合は何か規制を緩和すると、民はすぐ手を挙げるところがたくさんあるのです。
ところが、養父の場合は、民は外から引っ張ってこないとだめで、市長が本当に努力されて、民間をいろいろ連れてこられました。
はっきり言って、私は東京、養父とほかの地域の違いは民間を巻き込む力が足らないということだと思っています。以上です。
・・・
○安倍議長 本日も、国家戦略特区で大きな成果が上がりました。
家事を支援する外国人が、来年3月から神奈川県の各家庭で活動を始めます。これにより家事を担っている方々の負担が軽減され、活躍の幅が広がります。特に仕事を持つ家庭人には、大きな支えとなることと思います。
全国で10番目となる国家戦略特区を、新たに決定しました。瀬戸内のしまなみ海道でつながった、広島県と愛媛県今治市です。
例えば、しまなみ海道の『道の駅』の民間による設置、ライフサイエンスなどの新たに対応すべき分野における獣医師系の国際教育拠点の整備など、観光、教育、創業などの分野で、国際的な交流人口の流れを呼び込み、地方創生を実現します。
医薬品などのドローンによる宅配を実証する千葉市や、福岡市と連携しながら高齢者の雇用を進める北九州市を、新たに特区の対象にします。
安倍政権の国家戦略特区に、終わりはありません。自治体や事業者の方から経済効果の高い規制改革提案があれば、これからもスピーディに対応してまいります。
1つ1つの具体的事業を実現し、そのために必要であれば、新たな区域を指定してまいります。 
・・・
 
第21回国家戦略特別区域諮問会議

 

 日時 平成28年4月13日(水)17:15〜17:47
議長 安倍晋三 内閣総理大臣
議員 麻生太郎 財務大臣兼副総理
   石破茂  内閣府特命担当大臣(地方創生)
   菅義偉  内閣官房長官
   石原伸晃 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)兼経済再生担当大臣
   河野太郎 内閣府特命担当大臣(規制改革)兼行政改革担当大臣
有識者議員
   秋池玲子 ボストンコンサルティンググループ
   坂根正弘 株式会社小松製作所相談役
   坂村健  東京大学大学院情報学環教授
   竹中平蔵 東洋大学教授 慶應義塾大学名誉教授
   八田達夫 アジア成長研究所所長 大阪大学社会経済研究所招聘教授
   福岡資麿 内閣府副大臣

○石破議員 只今より、「第21回 国家戦略特別区域諮問会議」を開催いたします。
まず、1点御報告であります。前回の会合で御了承いただきました、国家戦略特区における追加規制改革事項等のうち、法改正を要するものについては、国家戦略特区法改正案に盛り込み、3月11日に閣議決定の上、国会に提出したところであります。
御尽力に感謝申し上げますとともに、法案成立に向け、全力で取り組んでまいります。
議事に入ります。初めに、区域計画の認定についてでありますが、資料1−1でございます。
3月24日に、3次指定の千葉市及び北九州市を含めた東京圏など7区域の合同区域会議を開催し、30日には、広島県・今治市の区域会議を立ち上げ、合計36事業の申請がございました。
このうち、関西圏の旅館業法の特例につきましては、大田区、大阪府に続き、大阪市も本特例を活用し、10月をめどに事業を実施するものであります。
また、外国人家事支援人材の受入れにつきましては、神奈川県に続き、大阪府が6月をめどに事業を実施するものです。
このほか、東京圏及び関西圏の、汚染土壌搬出時の認定調査の特例は「『日本再興戦略』改訂2015」に基づき、昨年末に新たに措置したものであります。
以上、6つの区域からの計画案につきましては、必要に応じ、関係大臣の御同意をいただいております。
これらにつき、法第8条第8項に基づき、本会議の意見を聞くことといたします。御意見等ありましたら、お願い申し上げます。
よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○石破議員 それでは、ありがとうございました。速やかに認定の手続を行います。
続きまして、議題(2)の「1次指定6区域の評価などについて」の御審議をいただきます。資料2−1でございます。
国家戦略特区におきましては、PDCAサイクルによる進捗管理を適切に行うとの観点から、法第12条及び基本方針に基づき、区域会議が事業の進捗状況を定期的に評価し、総理に報告することとなっております。
今回初めてとなる特区の評価につきましては、一昨年に1次指定をいたしました6区域の合計113事業を対象としております。基本方針に則り、個別認定事業の進捗状況、規制改革事項の活用及び見込み状況、追加規制改革事項の提案状況、以上、3つの視点から、総合的な評価を行いました。
詳細は、福岡副大臣から御説明申し上げます。
・・・
○福岡内閣府副大臣 それでは、資料2−1に基づき、1次指定6区域の評価について、御説明いたします。
まず、東京都・神奈川県・成田市から成る東京圏につきましては、15事項42事業を認定しております。
東京圏の評価すべき点としましては、まず、2兆4,500億円という大きな経済波及効果が見込まれる、東京都の都市再生関係プロジェクトが認定手続のワンストップ化によりスピーディーに進捗していることが挙げられます。また、インパクトのある規制改革事項、すなわち、大田区の民泊、成田市の医学部新設、神奈川県の家事支援外国人材の受け入れなどが、この東京圏で全国で初めて実現したことも評価すべき点であります。
また、神奈川県と成田市において、昨年度に初めて行いました年2回目の保育士試験、すなわち地域限定保育士につきましては、合格者数が通常の試験を3割以上も上回り、保育士候補の掘り起こしに大きく貢献いたしました。
この地域限定保育士につきましては、大阪府や沖縄県でも同様の効果が見られ、昨年度に特区の4カ所で合格した地域限定保育士の合計の数は約2,400名と、昨年の日本全国の保育士合格者数約2万3,000名の1割以上となりました。
他方、東京圏の課題についてですが、港区内に併設されている雇用労働相談センターと東京開業ワンストップセンターへの来訪者数が伸び悩んでいることや、家事支援外国人材の最大のニーズのある東京都が改革メニューを活用していないことなどが挙げられます。
続きまして、大阪府・兵庫県、京都府から成る関西圏でございます。関西圏につきましては、医療分野を中心に、12事項16事業を認定しております。
評価すべき点といたしましては、大阪府が、通常は旅館営業のできない住宅専用地域も含めた民泊事業を実施していること、特区薬事戦略相談や保険外併用療養といった改革メニューの活用により、先進的な医療機器や医薬品の承認までの期間を大幅に短縮していることなどが挙げられます。
他方、関西圏の課題としましては、医療イノベーション特区としての期待が高いにもかかわらず、外国医師の受け入れなど、医療分野における規制改革メニューの活用がいまだに不十分であることなどが挙げられます。
続きまして、新潟市につきましては、農業分野を中心に、8事項19事業を認定しております。
評価すべき点といたしましては、農業生産法人の役員要件の緩和や、全国初の農家レストランの設置、信用保証の農業への適用など、農業分野の改革メニューが全般的に活用されており、農地の流動化や雇用拡大に一定の貢献を果たしていることが挙げられます。
他方、課題といたしましては、農業分野以外の改革メニューの活用が不十分であることが挙げられます。
続きましては、養父市です。養父市につきましても、農業分野を中心に、6事項16事業を認定しております。
評価すべき点といたしましては、農業委員会の事務分担の見直しや、農業生産法人の役員要件の緩和により、これまでにないほど、他の地域からの企業進出が進んでいること。全国初の古民家を活用した旅館が設置され、地域の雇用を生んでいること。さらには、今国会への提出法案にも盛り込んだ、企業の農地取得の特例や、過疎地等での自家用車の活用拡大など、養父市が大胆な規制改革事項を積極的に提案していることなどが挙げられます。
続きまして、福岡市につきましては、創業・雇用分野など、8事項17事業を認定しております。
評価すべき点といたしましては、ベンチャー企業等の直面する雇用問題を事前に解決するための雇用労働相談センターにつきまして、来訪者による相談件数が他区域よりも相対的に高いことなどが挙げられます。
他方、民泊や医療・教育分野など、より幅広い分野での改革メニューの活用が課題となっております。
最後に、沖縄県につきまして、2事項3事業を認定しております。
地域限定保育士につきましては、先ほど申し上げましたとおり、昨年度の2回目の試験の受験者数が通常試験の8割近くに上るなど、他の区域と同様、極めて大きな効果が見られました。
他方で、沖縄県は他の区域と比べ、改革メニューの活用が著しく少ないことなどが課題となっております。
以上でございます。
○石破議員 ただいま御説明申し上げました6区域以外の区域も含め、資料2−3、資料2−4、大きなものでございますが、これにありますように、国家戦略特区は、この2年間の集中取組期間に、合計35項目の規制改革メニューを活用した171の事業を各地で迅速に展開してまいりました。この2年間の成果を踏まえ、今後の新たな目標についても御議論いただきたいと思います。
民間有識者の先生方より御意見を賜ります。
八田議員より、資料3について御発言をいただきます。
○八田議員 ありがとうございます。
それでは、資料3に基づいて民間議員ペーパーを御説明申し上げます。
まず、先月終了した2年間の集中取組期間の成果の評価です。この期間に、幅広い分野において、岩盤規制を中心に50項目を超える規制改革を実現できました。みずからを「岩盤を突破するドリル」に例えて、戦略特区制度を積極的に主導された安倍総理に改めて感謝申し上げます。
1次指定6特区において、昨年度までに認定された113の事業について、福岡副大臣から御説明がありましたように、初めての評価を行いました。総じて養父市や東京圏などを中心に、各事業がスピーディーに進捗していると評価できます。
ただし、資料3の表が示すように、各特区において本来活用すべきメニューの幾つかが未活用になっております。本諮問会議として各自治体に対して、このようなメニューを速やかに活用するよう、引き続き促していくべきだと考えます。
次は、特区の新たな目標です。我が国を「世界で一番ビジネスのしやすい国」にするためには、改革をさらに強化すべきであります。そのために、集中取組期間に代わる、本年度からの新たな目標を設定する必要があると考えます。その際、以下の2点に注目すべきではないかと思います。
1番目に、まずは残された岩盤規制を打破する必要があります。ここに、その重要課題を6つほど挙げました。特に読み上げませんが、「2 各種インフラの『コンセッション』推進等も含めた『インバウンド』の推進」というのは、例えば港湾とか空港の民営化をさらに推進するということを含めたインバウンドの推進という意味です。
2番目。全国各地からの規制改革要望の受付窓口の明確化が必要なのではないかと思います。規制改革要望について、結果として特区を出口としないものも含めて、改革要望に対する駆け込み寺の一元化が必要なのではないかと思います。例えば改革要望の集中受付を特区と規制改革会議で同じ時期に連名で行うなど、関連機関との連携をさらに強化すべきであると考えております。
したがいまして、今度の新しい目標を達成すべき期間は、「改革強化期間」あるいは「改革強化・可視化期間」などとして位置づけるべきではないかと考えます。
最後に、国家戦略特区の中期的課題として、かなり大きな改革を検討すべきであると考えております。
第1は、国家戦略特区内のペイアズユーゴーを前提とした、自治体主導の柔軟な税制措置です。ペイアズユーゴーというのは、全体で財政収支がとんとんになるように、併せて別な税の増税するのならば、自治体内で何らかの減税をしてもいいというものです。
第2は、諸外国の特区制度との連携強化による、諸外国との一層の貿易・投資の促進というものです。これは、外国で我々の国家戦略特区のような規制改革中心の特区をやっていただくと、日本が投資したり、貿易をするのに非常に役に立つ場合があります。したがって例えば、ODAと組み合わせて国家戦略特区型の特区を外国にも作ってもらい連携する方策を考えようというものです。
3番目は道州制における分権は、広域的な特区で実験してみるということが可能なのではないか。
こういうかなり大きな提案なのですが、こういうものについても検討を行い、可能なものから具体策を講じていくことが必要ではないかと考えております。
以上でございます。
○石破議員 ありがとうございました。
竹中先生、お願いいたします。
○竹中議員 ありがとうございます。
私たちの考えは、今の八田議員のペーパーの要約にも尽きていますので、重複しない範囲で幾つか申し上げたいと思います。
きょう、私たちが一番申し上げたいことは、第1ステージはかなり大きな成果を上げたということだと思います。集中取組期間として、総理がダボスでお話しになった、ドリルの芯になる。それはかなりの程度できたということだと思います。そして、今、まさにそこから第2ステージに行かなければいけないということで、私たちは暫定的に、それは改革を強化して、可視化する期間である。見えるようにする期間であるというふうに位置づけています。
それで、第1ステージの成果について、先ほど福岡副大臣が要約をしてくださいましたけれども、要するに改革メニューを活用しているか、していないかというのは自治体によって随分、差があるということなのでございます。私たちのペーパーの中に書いていますが、その意味では、この6指定区域の中では養父市というものが圧倒的に頑張ってくれていて、他の地域はメニューの活用をさらに頑張ってやってほしいということだと思います。
第1ステージの成果として、もう一つ、隠れた成果として申し上げなければいけないのは、例えば特区で45項目、法律30項目というふうに述べましたけれども、実は特区で交渉し始めて、わかった、特区でやるのだったら、もう全国でやるというふうにいきなり全国に行ったものが、このほかに15項目の規制項目があったということです。それで、特区で一応やったけれども、すぐにそれが全国に広がった。保育士の試験のように、そういうものもあったということで、ここの数字にあらわれている以外に大きな波及効果があった。
それで、伊勢志摩サミットで今回、世界の経済が動揺する中で、日本がマクロ政策の面、構造改革の面でいろいろな成果を上げているということを総理からぜひ御発言いただく必要があると思うのですけれども、その中でぜひ、特区というものは特区ではあるけれども、GDPベースで見ると実は東京、大阪、名古屋が入っているので、6割のカバレッジを、GDPの6割をカバーしている。そういう点もぜひ強調していただいてよろしいのではないかなと思います。
その点で最後に、自治体に未活用のメニューを大いに活用してほしいということを申し上げましたが、実は振り返れば国にも未活用なところがある。それはどういうことかと申し上げますと、この特区というものは規制改革を進めると同時に、経済を強化するために
総合的な政策を講じるということが法律に書かれています。その総合的な政策というものは、法律の段階で議論したのはやはり税制の活用なのでございます。その点が民間議員ペーパーの一番最後に書かれているわけです。
例えば先般、総理のもとで観光ビジョン構想会議でビジョンをまとめられましたけれども、その中に出てくるおもしろい例として、カリフォルニア州のナパ郡の例があります。安定的な自主財源を確保するために、宿泊税を率で取って、その宿泊税を例えば地方のさらにツーリズムを高めるために使う。これは要するに、ペイアズユーゴーの原則の中だったら、特区にはそういうことも認めようということなのではないか。別の言い方をしますと、お金の地産地消を認めようということなのだと思います。そういう特区の枠組みそのものもさらに広げていくということを、この第2ステージの一つのテーマにする必要があるのではないかと思っております。
以上です。
○石破議員 坂村先生、お願いいたします。
○坂村議員 私も、第2ステージをどう行くのかというのが今、最も大事なことだと思っております。
国家戦略特区で何をやるのかというのが大事だと思うのですけれども、その中でも最近よく、ハイテクノロジーとかICTに関連した提案がふえてきたのはイノベーションや経済成長につながるので、これは非常にいいことだと思っております。
例えば、自動運転自動車の話も特区でも重点を置いているのですが、ただ、実験段階を超えて真に実用化するということになってきますと多数の省庁にまたがってきて、それで人命もかかわる話で、完成まではやはり一筋縄ではいかないということがあります。そういう意味で、実用化にこぎつけて完成させるにはいよいよ政治の役割が非常に大きいのではないか。なかなか、ただ淡々と進めていけばできる状況にはないと思います。
そういったときに、制度の問題とか法律とかいろいろ出てきます。技術開発も非常に重要ですがそれだけではない。今、例えばIT戦略会議の中でITSの戦略が立てられて、その中にも自動運転自動車の話が出てきます。既にIT戦略会議では今、政府CIOの方は非常によくやっていて、政府の情報システムのコストカットに関しては非常に大きな成果を上げられたと思うのですが、自動運転自動車の社会への出口のような話になってきますと、もうちょっと別の枠組みでやらないとだめなのではないかと思いました。
そういうことで、これは前も私が言ったのですけれども、米国のNISTが参考になります。NISTは御存じのように、3,000人も科学者、工学者、技術者がいて、ノーベル賞を取った人が3人も入っているような非常に大きな組織です。予算も10億ドルぐらい使って、大統領直轄で非常に強い権限で技術標準という形で、民間から軍まで広く影響して、いろいろなことを方向付けているわけです。標準というのは、いわば技術の世界の法律のようなものですから。国立標準技術研究所なのですけれども、そういうことをやっているわけです。
先進国でこのNISTに当たる機関を持たないのは日本ぐらいなので、やはりそういうものをつくるべきではないかと。国家戦略特区をさらに強力に進めるには新しい組織が要るのではないかと思いました。
2番目に、経済産業省が最近やっている企業実証特例制度というものを、私は高く評価したいと思います。これは国家戦略でも検討したバーチャル特区に近いイメージで、こういうものがうまくいくのはすばらしいと思います。多分、国家戦略特区を参考にされて経済産業省がやったのではないかと思うのですが、やはり国家戦略特区とも連携して、こういうものを進めるべきではないかと思います。
また、最後に言いたいのですけれども、きょうの新聞に「ヤミ民泊扱わないで」という記事がありました。これはいわゆるシェアリングエコノミーで、民泊をスマートフォンで予約して泊まることをふやそうということに対して、例えばAirbnbというものが、これはUBERと似たようなもので、世界的にも大きな成長を遂げているのですが、そういうところに対して厚労省が、政府認可のないところは載せないでくれとお願いしたという記事だったのです。しかし、これは今のインターネットの時代には適したやり方と言えないと思います。そういう政府が認可していないものは載せるなみたいな言い方はうまくないと思います。
また、実際問題として、アメリカとか外国のサイトが、日本の政府がお願いしたからといって、では、載せるのをやめましょうなどとはならないでしょう。これはどうやったらいいかといいますと、政府認可のあるところには、この認可アイコンをつけろとか、何かそういう方法で持っていかないと、インターネットの時代は動かないのです。情報を抑えろというのではなく、ユーザーの判断の情報がふえるというようにいった方がいい。情報がたくさん出るということは海外のサイトは喜ぶのです。それで利用者が判断するというのが今の情報の時代であると私は思います。
そういう意味で、前回も言いましたけれども、重要なのは「情報の非対称性」を減らすことであって、要するに透明化です。従来の経済原則であった「情報の非対称性」ではないのです。やるほうも使うほうも、情報を公開することによってお互いの信頼度を評価するという情報通信をベースにした新しい経済の考え方で戦略特区でもこの考えを採用していただければと思います。
以上です。
○石破議員 坂根先生、お願いします。
○坂根議員 八田議員、竹中議員も強調されましたけれども、今後2年間を可視化、見える化に集中したらどうかということについて、私、ちょっと補足したいのです。
特区とか地方創生の中の重要なテーマについては、各地方自治体単位の実態と成果の見える化、これが物すごく大事だと思います。私は、企業経営もそうなのですが、人というものは物事がはっきり見えてきますと、おのずから競争心を出したり知恵を出すものです。そうならないのが今のこの国の問題で、負担とか犠牲がどうしても要る部分についても、地方単位で見える化ができてくると、納得性が出てくる。ここが物すごく大事だと思います。中央集権ですと、地方レベルの話ではなくて、つい全国一律の話になってしまうわけです。
私も最近、国会中継をよく見ていますが、保育の話が頻繁に出てきます。以前にも触れたのですが、私どもはスウェーデンの田舎町に子会社を持っていますから、スウェーデンの社会保障の話をよく聞くのですが、国が現金給付の年金を扱い、県が医療費を扱い、市が高齢者と子育てを扱う。現物給付です。これは極めて合理的で、市では何が起こっているかといいますと、高齢者対策が不十分でも子育てへのお金の使い方が充実していることがはっきりと見える化できているので、みんな我慢せざるを得ないというところがあります。なので、コマツから駐在でスウェーデンに行っている社員は、定年退職後にスウェーデンにとても住みたいとは思わないと言っています。例えば、人間ドック一つをとっても、なかなか簡単には入れないと言っています。要はバランスの問題で、我が国は高齢者と子育てとのバランスが余りにもひどいなと私も思います。
このように、各地方単位の議論になったら、この不利益の分担という部分がおのずから出てきますし、一方で、うまくいっているところもいっぱいあるのだと思います。きょうの資料2−1にありますように、35のメニューがありながら、特区ですらこれを活用しているのはほんの一部であるということも早く見える化して、みんなに知らしめるということが不可欠だと思います。
ですから、何かがうまくいっていないという指摘があったときに、いつも国ばかりが受けて立つやり方を続けている間はやはり本物ではないのではないか。地方レベルで見える化し、そうではない、こういううまくいっているところもあるし、ここは問題なのだ、と議論できることが重要なのです。高齢者と子育ての話というものも実際に地方がいろいろ具体的にやっているわけですから、ぜひ多くの具体的テーマについても国単位の話で終始しないような状況に早く持っていっていただきたいなと思います。
○石破議員 秋池先生、お願いします。
○秋池議員 国家戦略特区で、ドリルで岩盤規制に穴をあけてきたこと、今後はそれが広がっていくことが重要なのだと思っています。広げていくという言葉の意味合いは、1つは活用をふやすということ。もう一つは、地域を広げるということ。それと、その岩盤規制の周辺の規制も緩和することによって、ある領域で事業が非常にしやすくなるという、この3つが重要なのだと思っておるのです。
最初の2つは、例えば活用をふやすということでは東京圏で事業がふえていることとか、地域を広げるということでは地域限定保育士の活用がふえているということがあります。今後はぜひ、周辺の規制も緩和することによって、その領域の事業がやりやすくなる状態をつくることも重要だと思います。
そのためには、ペーパーの中にもあるのですが、どこに規制改革の相談を持ちかけたらいいかということが企業や自治体が分らないということもあるかもしれないので、国家戦略特区と規制改革会議が共同で募集をしていくなどがあると、使いやすくなるのではないかと考えています。
もう一つですけれども、この岩盤規制の打破がなぜ経済に効果があるのかということももっと伝わるべきかと思っております。自治体が多く主導して進んでいますが、民間の事業者が活用することも非常に重要ですので、認知をより徹底して、この第2期をより充実したものにできればと考えます。
○石破議員 ありがとうございました。
6区域の評価書につきましては、本日をもって公表させていただきます。
いただきました御意見を今後の制度の運営に十分に反映させてまいりますとともに、新たな目標についても引き続き議論を進めてまいります。
本日予定された議事は以上であります。
最後に、安倍議長から御発言をいただきます。報道を入室させます。
(報道関係者入室)
○石破議員 それでは、総理お願いします。
○安倍議長 国家戦略特区は、これまで10箇所指定され、171の事業が大きな成果を上げています。
東京都の高層ビル開発は、都市計画の認可手続をワンストップ化し、終期を決めたことで、計画決定までの過程が数年単位で短縮されました。
大阪大学による先進医療サービスは、申請後、通常より4か月間も短い、わずか2か月で提供され、保険を併用することで患者さんの費用負担は3分の1になりました。
農地を転用して建てられた初の「農家レストラン」が、先月新潟市で開店し、予約も取れないほどの賑わいを見せています。
養父市の養蚕住宅は、フロントの代わりに監視カメラを設置した「日本初の古民家旅館」に生まれ変わり、地元の若者5名が運営しています。
福岡市の「雇用労働相談センター」には、人事部が手薄なベンチャー企業が、全国各地から雇用ルールの正確な理解を求めてやって来ます。
神奈川県や大阪府、沖縄県などで昨年初めて行った「年内二度目の保育士試験」には、昨年度の全国合格者の1割以上、約2,400名が合格しました。
「時間をかけて満点を狙うのではなく、スピード第一に、まずは突破口を開いていく」というアプローチは、間違っていなかったと考えています。「戦後最大の経済GDP600兆円」を実現するためには、合理性に乏しいのに残っている「20世紀型の規制」をまだまだ打ち破っていかなければなりません。国家戦略特区の役割は、今後も大きいと考えています。
本日、民間有識者の皆様からいただいた提案を参考に、今後2年間の「新たな目標」を次回の会議で決定します。石破大臣と民間有識者の皆様には、志の高い目標を設定できるよう、引き続き検討を深めていただきますようにお願いを申し上げます。
○石破議員 総理、ありがとうございました。
報道の皆様、ありがとうございました。
(報道関係者退室)
○石破議員 以上で会議を終了いたします。
次回の日程につきましては、後日御連絡いたします。
まことにありがとうございました。 
 
第24回国家戦略特別区域諮問会議

 

 日時 平成28年10月4日(火)17:30〜18:03
議長 安倍晋三 内閣総理大臣
議員 麻生太郎 財務大臣兼副総理
   山本幸三 内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革)
   菅義偉  内閣官房長官
   石原伸晃 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)兼経済再生担当大臣
有識者議員
   秋池玲子 ボストンコンサルティンググループ
   坂根正弘 株式会社小松製作所相談役
   坂村健  東京大学大学院情報学環教授
   竹中平蔵 東洋大学教授 慶應義塾大学名誉教授
   八田達夫 アジア成長研究所所長 大阪大学社会経済研究所招聘教授
   門脇光浩 秋田県仙北市長
   橋浩人 秋田県大潟村長
   駒崎弘樹 認定NPO法人フローレンス代表理事
   鈴木亘  東京都都政改革本部特別顧問
・・・
○山本議員 ありがとうございました。
このほか、先月21日に、今治市の特区の分科会を開催し、「獣医師養成系大学・学部の新設」などについても議論いたしました。
これまでの報告等について、有識者議員より御意見ございますでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○山本議員 ありがとうございました。
それでは、速やかに認定の手続きを行います。また、共同事務局についても、有効に活動させていただきたいと思います。
続きまして、規制改革事項の追加について審議いたします。
前回の会議で、有識者議員から提案いただき、総理から御指示をいただいた「重点課題」につきましては、本日の会議を皮切りに、関係の自治体や事業者の方にも会議に参加いただき、集中的・連続的に審議してまいります。
今回は、「農家民宿等による、地域主導の旅行企画」と「農業分野での外国人材の活用」につきまして、秋田県の門脇仙北市長、橋大潟村長より御意見をいただきます。
また、待機児童対策として、前回の会議でも話題になりました「小規模保育所の対象年齢拡大」につきましては、認定NPO法人フローレンスの駒崎代表理事より、御意見をいただきます。
なお、これらの課題につきましては、参考資料の「日本再興戦略2016」にも位置付けられております。
まずは、門脇市長より、お願いいたします。
・・・
○八田議員 ありがとうございます。
民間議員ペーパーについて御説明をいたします。
第1は、追加の規制改革事項についてです。ワーキンググループにおけますたび重なる議論にもかかわらず、進捗が芳しくない事項が幾つかございます。その第1は、今、大潟村から御説明のあった高い技能水準を持つ外国人材を農業分野に受け入れることです。これは、可能な限り早期に結論を得ることが本年6月に閣議決定されております。それにもかかわらず、法務省は引き続き検討中であるという旨を繰り返すのみで、議論の入り口にすら入っていない状況が現状です。
第2に、今、駒崎さんが御説明になった小規模保育所の対象年齢の拡大です。これは、前回の諮問会議で小池都知事が提案されました。しかし厚生労働省は、小規模保育所では少人数の児童としか遊べないので、3〜5歳の児童に必要な社会性が育たない。だから、2歳までしかだめだという理由で反対し続けています。しかし、小規模保育所と同程度の規模の企業内保育所に5歳まで一貫して受け入れているわけです。したがって、この一貫の受け入れに問題があることは考えられません。特区において、早急に実現すべきだと思います。
次に、東京特区推進協同事務局についてです。前回の諮問会議において小池東京都知事が御提案になって、1カ月もたたないうちに実現しました。鈴木亘教授が共同事務所のヘッドを務められています。今回のように、民間有識者が特区のプロモーターとしてトップとなる共同事務局を他の特区自治体でつくっていきたいと思っています。
最後に、先ほど今治市の分科会での話が出ましたので、ちょっとそれについて、この民間人ペーパーから離れますが、私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。今治市は、獣医系の学部の新設を要望しています。「動物のみを対象にするのではなくてヒトをゴールにした創薬」の先端研究が日本では非常に弱い、という状況下でこの新設学部は、この研究を日本でも本格的に行うということを目指しています。さらに、獣医系の学部が四国には全くないのです。このため、人畜共通感染症の水際対策にかかわる獣医系人材の四国における育成も必要です。
したがって、獣医系学部の新設のために必要な関係告示の改正を直ちに行うべきではないかと考えております。ありがとうございました。  
・・・
 
第27回国家戦略特別区域諮問会議

 

 日時 平成29年1月20日(金)11:02〜11:21
議長 安倍晋三 内閣総理大臣
議員 麻生太郎 財務大臣兼副総理
   山本幸三 内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革)
   石原伸晃 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)兼経済再生担当大臣
有識者議員
   秋池玲子 ボストンコンサルティンググループ
   坂根正弘 株式会社小松製作所相談役
   坂村健  東京大学大学院情報学環教授
   八田達夫 アジア成長研究所所長 大阪大学社会経済研究所招聘教授
   堺屋太一 内閣官房参与 一般社団法人外国人雇用協議会会長
   原英史  国家戦略特区ワーキンググループ委員 規制改革推進会議委員

○山本議員 ただいまより、第27回「国家戦略特区諮問会議」を開催いたします。
本日は、内閣官房参与で、「外国人雇用協議会」会長の堺屋参与と、特区ワーキンググループ・規制改革推進会議の原委員にも御出席をいただいております。
八田議員は、テレビ会議での御参加となります。
なお、菅議員と竹中議員は御欠席です。
それでは、議事に入ります。
初めに、「区域計画の認定」について審議いたします。資料1−1と、A3横長の資料1−2を御覧ください。
本日の朝、「合同区域会議」を開催し、8つの事業の認定申請について審議しました。
このうち、今治市の「道の駅の設置者に係る特例」は、今月11日に制定した要綱に基づく事業です。
また、「獣医学部の新設」についても、今月4日に制定した告示に基づくものでありますが、本事業が認められれば、昭和41年の北里大学以来、我が国では52年ぶりの「獣医学部の新設」が実現します。
全ての項目について、関係大臣の同意を得ております。
これらにつき、御意見等はございますでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○山本議員 ありがとうございました。それでは、速やかに認定の手続きを行いたいと思います。
続きまして、議題2の「重点分野・課題に係る規制改革事項の追加など」について、審議いたします。資料2を御覧ください。
全国の自治体や事業者からの提案を受け、できるだけ多くの規制改革を実現するため、現在、特区ワーキンググループで、集中的に規制担当省庁との折衝を行っているところです。
その点を中心に、ワーキンググループ座長である八田議員より、資料3の御説明をいただきます。八田議員、よろしくお願いします。
・・・
○坂村議員 先ほどまで愛知県と広島県と今治市の区域会議に参加していましたが、今回ちょっと感じましたことは、国内初のマークのついた案件が少なくなってきているのではないかということです。そのことを悪いと言っているのではなくて、むしろ既にやり方のポイントなども見えて安定感のある特区メニューをみんなが使えるようになってきたのだということだと私は思います。ある意味、特区も安定期に入ってきたわけです。
しかし、やはり安定してきて、こういうことをやりたいという情熱とか、できなかったことができるようになったというわくわく感というものは少し少なくなっているのではないかと思います。日本人は安定志向といいますか、安心志向で、ともするとほかの人がうまくいったことだけをやりたがる傾向があるのではないかと思います。特区が実績あるメニューばかり使うようになると、ドリルの先端として新しいことにチャレンジして、新しいことが起こせる。そのために特区というツールが使えるということを日本のほかの地域にアピールする先兵がいなくなってしまうのではないかということです。
民間ペーパーにある普遍性のあるメニューはどんどん全国展開するという、特区のドリルであけた穴を広げる仕組みというものは非常に大事だと思います。ただ、同時に何か新しい、ほかにない提案を持ってくると評価上有利になるとか、何かチャレンジのインセンティブを与える仕組みも考えてもいいということを先ほどの会議に出ていて感じました。以上です。
○山本議員 ありがとうございました。
坂根議員、お願いします。
○坂根議員 私は獣医学部と、先ほどの規制改革での議論での規制当局の主張の部分の2点についてちょっとコメントしたいと思います。
まず獣医学部に関してですが、我々、この日本が過去に大きく遅れを取ってきたのが、創薬・新薬の分野における高分子化学、これは日本が低分子化学中心だったからですが、それと、もう一つとても重要なのが、最近の動物研究による新薬の分野です。これが非常に大きく遅れをとって、日本の企業はM&Aでそれをカバーしようとしていますが、これは医学と獣医学のちょうど中間分野ですので、52年ぶりの貴重な機会でもありますことから、ぜひ、この今治の獣医学部はそういう新しい特色を出すものにしていただきたいなと思います。そのためにはおそらく、外部からの研究者をどうやって集めるかということがキーになるだろうと思います。
それから、規制改革事項に関する議論の中の規制当局の主張の一覧表が別紙にまとめられておりますが、前回もお願いしましたけれども、私からしますと、とても大臣や次官レベルが実態を把握した上でこのような回答をしているとは思えません。ぜひ大臣・次官クラスが現場レベルでどんな議論が行われているのか、よく把握していただいて、責任ある回答をいただきたい。それでなければ、時間ばかり費やすだけで、本当に無駄だと思います。
○山本議員 ありがとうございました。
秋池議員、お願いします。
○秋池議員 私は国家戦略特区が開始されて3年の評価について申し上げたいと思います。
民間議員ペーパーにもお示ししましたが、遅れているものに対してはやはり厳格に、この国家戦略特区諮問会議から意見を具申する必要があると思っています。その遅れの原因、あるいは改革が進んでいない原因が、地域はやる気があるのに人手不足であるとか、規制緩和という特別なことをやるに当たって、中央とのつながりが十分ないということによるものであれば、それは積極的に事務局に申し入れていただいて、さまざまな支援の体制があるわけですから、それを受けてほしいと思います。逆に言えば、そういうことは理由にならないということだと考えています。
国家戦略特区に選定された地域は、手を挙げた多数の自治体から選ばれたという責任感を持って取り組んでいただきたいですし、それから、それに取り組むことで日本経済が活性化するのだということを国内の別の地域に示すことも責任の一部なのだという、そこまでを考えて取り組んでいただきたいと考えております。
○山本議員 ありがとうございました。
いただいた御意見も含めて、今通常国会に提出する「改正特区法案」にできるだけ多くの改革事項を盛り込むため、引き続き議論を進めてまいりたいと思います。
以上で、本日予定された議事は全て終了いたしました。最後に、安倍議長から御発言をいただきます。
ここでプレスが入ります。
(報道関係者入室)
○山本議員 それでは、安倍議長、よろしくお願いします。
○安倍議長 1年前に国家戦略特区に指定した今治市で、画期的な事業が実現します。
しまなみ海道にある3つの道の駅が、民間によって総合的に運営され、サイクリスト向けの休憩所など、新たなサービスを提供します。
獣医学部が、来年にも52年ぶりに新設され、新たな感染症対策や先端ライフサイエンス研究を行う獣医師を育成します。新しいカリキュラムなどを通じて、各大学や教育制度全般に良い影響を与えることを期待します。皆様の御尽力に改めて敬意を表します。
堺屋参与と原委員からは、ファッション、飲食や流通、旅館などの消費者向けサービス分野での外国人受け入れについて、お話を伺いました。
私は先週、フィリピンなどの東南アジア諸国を訪れ、クールな日本が大好きで、日本語を熱心に勉強している若者たちに出会いました。彼らは、まさに日本とそれぞれの国のかけ橋となる人材であろうと思います。彼らが日本で職につき、母国から来た観光客に日本の魅力を直接伝えることは、両国にとって経済を超えた大きな価値を生み出す。このように確信をしております。彼らは日本の文化が大好きで、日本語を学んで、これからも人生において日本と関わっていたいという彼らの期待に私たちは応えていかなければならないと、そう強く感じたところでもあります。
こうした志の高いアジアの若者を積極的に受け入れられるようにしていきたいと思います。
今国会に提出する改正特区法案に、多くの改革事項を盛り込んでいきます。
○山本議員 安倍議長、ありがとうございました。
それでは、プレスは退室を願います。
(報道関係者退室)
○山本議員 それでは時間になりましたので、会議を終了いたします。次回の日程については、事務局より後日連絡いたします。
本日は、ありがとうございました。 
 
第29回国家戦略特別区域諮問会議

 

 日時 平成29年3月6日(月)18:05〜18:23
議長 安倍晋三 内閣総理大臣
議員 麻生太郎 財務大臣兼副総理
   山本幸三 内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革)
   菅義偉  内閣官房長官
有識者議員 
   秋池玲子 ボストンコンサルティンググループ
   坂村健  東京大学大学院情報学環教授
   竹中平蔵 東洋大学教授 慶應義塾大学名誉教授
   八田達夫 アジア成長研究所所長 大阪大学社会経済研究所招聘教授
   松本洋平 内閣府副大臣
   武村展英 内閣府大臣政務官
   秋山咲恵 国家戦略特区ワーキンググループ委員
   磯山友幸 経済ジャーナリスト
・・・
○松本副大臣 それでは、私から御説明をさせていただきます。
まず、資料2−1を御覧ください。
年度別に特区ごとの「活用メニュー数」と「認定事業数」を示しております。今回の新たな「評価の範囲」は赤枠で囲った部分になります。ただし、「1次指定」の区域につきましては、前年度までの認定分も継続事業として評価いたします。
特区ごとの「認定事業数」を見てみますと、最多は東京圏の34事業、全体の3分の1強を占めております。最少は新潟市、沖縄県の1事業です。このような格差が相当見られ、これは毎年広がっているところであります。
続きまして、「各区域の状況」を御説明します。資料2−2を御覧ください。各特区の評価すべき点と課題を御説明いたします。
初めに、東京圏ですけれども、評価すべき点は、大田区の「特区民泊」や神奈川県と東京都の「家事支援外国人材」の活用です。一方、大田区以外で「特区民泊」がいまだに活用されていないなどの課題もございます。千葉市は、「ドローンの実証実験」に積極的ですが、「特区民泊」などが未活用のままになっております。
次に、関西圏ですけれども、評価すべき点は、大阪府が「特区民泊」の日数を2泊3日に短縮して実施していることであります。京都府、兵庫県の活用メニューがそれぞれ1件にとどまっているとの課題もあります。
1つ飛ばしまして、養父市ですけれども、評価すべき点は、「企業による農地取得」の活用です。昨年9月の改正法施行後、既に4件を認定しております。また、「自家用自動車の活用拡大」なども養父市の提案です。全国初の活用に向け、精力的に取り組む姿勢は高く評価できるものと思います。
続きまして、福岡市・北九州市ですけれども、福岡市の評価すべき点は、「雇用センター」の来所相談件数が多いことであります。また、北九州市におきましては、2泊3日の「特区民泊」が評価できます。
新潟市と沖縄県ですけれども、先ほど述べたよう、新たな取り組みが進んでおらず、メニューの活用が急務となっております。
続きまして、2次指定、3次指定の区域でありますけれども、仙北市につきましては「国際ドローン競技会」の開催や「公道での無人バス走行実験」の実施などが、仙台市につきましては「NPO法人の設立迅速化」などが、愛知県につきましては「公社管理道路の民間運営」や「公設民営学校」などが、広島県・今治市につきましては今治市の「民間による道の駅の設置」や「獣医学部の新設」などが評価できます。ただし、全体に共通いたしまして、一部の事業は進捗が遅れております。今後、これらのスピードアップが求められております。各区域の状況の説明は、以上であります。 
・・・
 
第30回国家戦略特別区域諮問会議

 

 日時 平成29年5月22日(月)11:20〜11:41
議長 安倍晋三 内閣総理大臣
議員 石原伸晃 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)兼経済再生担当大臣
有識者議員 
   秋池玲子 ボストンコンサルティンググループ
   坂根正弘 株式会社小松製作所相談役
   坂村健  東洋大学情報連携学部INIAD学部長
   竹中平蔵 東洋大学教授 慶應義塾大学名誉教授
   八田達夫 アジア成長研究所所長 大阪大学名誉教授
   松本洋平 内閣府副大臣
   三木亨  財務大臣政務官
・・・
○坂根議員 私は「日本再興戦略2017(仮称)」の指定区域の追加について話をするつもりだったのですが、今治市の獣医学部の件について、私自身区域会議のときからずっと出席して話を聞いてきましたので、今起こっているあの批判というのは、私自身が批判されているような思いで、非常に憤懣やる方ないという思いです。
どういう意味かといいますと、参入規制で52年間守られたというのですが、永年規制で守られた業界というのは本当に世界に遅れをとるのです。医学というものは、お医者さんの技量は日本のレベルは高いのでしょうが、医学と工学の結びつきの医療機器、それから医学と薬学の結びつきの創薬、新薬ですね。それから医学と獣医学の関係の、動物由来の感染症。ことごとく、欧米に比べて遅れをとってきたという思いが強くて、私はこの特区の場でも、最後の審査のときに、今度の獣医学部は、ぜひ、動物由来の部分をしっかりやっていただきたい、と強く要望させていただきました。
私はたまたま今日、地方大学振興及び若者雇用等に関する有識者会議の中間報告を山本大臣に手交するのですが、その中でも、実は、その都道府県の高校卒業生の進学希望者数に対する大学定員数というものは、東京都と京都府が約200%で圧倒的に飛び抜けて高くて、続く大阪府と愛知県、福岡県あたりが約100%で、全体の約半数近くの県は50%以下なのです。すなわち、東京都と京都府のこの集中具合というのは、むちゃくちゃなパーセントになっていまして、今日、東京23区の大学の定員数は今後基本的に増やさないという内容で中間報告を上げる予定ですが、この今治市については、既に審議の過程で愛媛県との間で長い間話し合いを継続されてきたという経緯と、東京都と京都府は学生の流入がむちゃくちゃ集中している、こうした背景が頭にあって、納得してきたつもりです。したがって、何とか、理不尽な指摘を乗り越えていただきたいと思います。
それから「日本再興戦略2017(仮称)」のほうですが、これは今まで私は特区指定というのは、当該自治体の首長の本気度にかかっており、その本気度を評価することが全てだというような言い方をしてきましたが、被災地の場合は例外だと考えます。なぜなら、被災地の行政能力は必ずしも十分ではありませんし、どこかの特定の地域を指定するというのも無理がありますので、福島県と他の被災地の区別をどうするかという問題はありますが、ぜひ、この特区だけは広域指定にしていただいて、それから復興庁の責任と権限をあわせて考えていただきたいと思います。以上です。 
・・・
○八田議員 ありがとうございます。
資料4の最初の項目は、10の特区指定区域に対する評価についてです。3番目のポツを御覧ください。先ほど松本副大臣が御指摘されたように、特区自治体ごとのパフォーマンスには大きな差がございます。推進状況の不十分な自治体について、期限を切って特区指定の解除を行うべき時期であります。特に沖縄県及び新潟市については今後の特区事業の推進について計画を至急まとめて御提出いただきたいと考えております。
次のページからは、更なる特区規制改革の項目を掲げております。現在、私共は、最初のポツにリストしました重点6分野を中心に、残された岩盤規制に取り組んでおります。これら6分野に加えて、新項目についても取り組みたいと考えております。それらを、2番目のポツにリストいたしました。
リストの最後の項目である3ページの5番は、指定区域の見直しについてです。既存の区域の解除を検討するとともに、被災地を含めて革新的な取組を行おうとしている地域の4次指定も速やかに検討すべきだと考えております。
次に、特区における獣医学部新設の審議の経緯について、個人的な考えを申し述べさせていただきたいと思います。本件は52年間にわたって学部新設を認めてこなかった岩盤規制に取り組んだものでございます。
獣医学部の新設が認められなかったことが、なぜ岩盤規制なのでしょうか。新設の薬局は既存の薬局から100メートル以上離して立地すべしという薬事法における距離制限は違憲であるという最高裁の判決が1975年にありました。薬局の新設は需給関係を崩し、既存の薬局に不利益になります。したがって、既存の薬局が新設を嫌がることは当然であります。しかし、憲法が保障する営業の自由に鑑みると、新設が需給関係を崩すことは薬局の新設を制限する理由にはならないということをこの違憲判決は示しております。
同様に、獣医学部の新設が需給関係を崩し、既存の大学や獣医に不利益をもたらすことは、学部の新設を制限する理由にはなりません。教育及び研究の質を担保するものであれば、大学や学部の新設は認められるべきものです。しかし、日本では、獣医学部、医学部、薬学部の新設は、需給調整を目的とした文科省の告示で、認められていません。これら3学部に限っては、大学設置審議会で教育や研究の質を審査することすら認めていないのです。営業の自由を保障する観点、および競争によって利用者の利益を最大化するという観点からは、この文科省告示は明らかに撤廃すべき岩盤規制であります。
今回の獣医学部の新設は、せめて特区ではこの告示に例外を作ろうという試みです。しかし獣医学部の新設に当たっては、既得権益側が激しく抵抗し、新設するとしても2つ以上は認められないと主張するので、突破口として、まずは一地域に限定せざるを得ませんでした。そうである以上、地域的に獣医学部の必要性が極めて高く、しかも福田内閣以来、永年要求し続けた地域に新設を認めたのは当然であります。この選択が不透明だなどという指摘は全く的外れであります。むしろこれまでこの岩盤規制が維持されてきた政治的背景こそ、メディアは、究明すべきです。
しかし、突破口を作ったことには、大きな意義があります。今後、続けて第二、第三の獣医学部が認められるべきです。
最後に、明治4年に前島密が国際標準の郵政事業を開設しようとしたときに、飛脚業界が猛反対いたしました。前島は、大変な苦労を強いられました。長い目で見て必要な岩盤規制改革には、摩擦はつきものです。既得権者は必死に抵抗します。今起きていることもそういうことだと思います。しかし、こうしたことで改革のスピードが鈍ることがないよう、国家戦略特区における更なる改革を果敢に断行していきたいと考えます。そのために官邸のサポートを引き続きお願いしたいと思います。
・・・
 
第34回国家戦略特別区域諮問会議

 

 日時 平成30年3月26日(月)18:08〜18:31
議長 安倍晋三 内閣総理大臣
議員 麻生太郎 財務大臣兼副総理
   梶山弘志 内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革)
   菅義偉  内閣官房長官
有識者議員
   秋池玲子 ボストンコンサルティンググループ
   坂根正弘 株式会社小松製作所相談役
   坂村健  東洋大学情報連携学部INIAD学部長
   竹中平蔵 東洋大学教授 慶應義塾大学名誉教授
   八田達夫 アジア成長研究所所長 大阪大学名誉教授
   松井一郎 大阪府知事
   越智隆雄 内閣府副大臣
   西村康稔 内閣官房副長官
   野上浩太郎内閣官房副長官
   杉田和博 内閣官房副長官

○梶山議員 ただいまより、第34回「国家戦略特別区域諮問会議」を開催いたします。
本日は、松井大阪府知事に御出席いただく予定ですが、飛行機の遅延により遅れて御出席となる予定です。
また、茂木議員が欠席のため、越智副大臣に出席いただいております。
それでは、議事に入ります。
最初の議題は「指定区域の評価などについて」です。初めに本年度の国家戦略特区関連事業の概況について、簡単に御報告申し上げます。
資料1−1を御覧ください。本年度の特区措置の活用メニュー数と事業数を区域ごとにまとめました。赤枠で囲ってございますが、全国的に見ますと、29年度に新たに活用の進んだ特例措置はおおよそ例年並みとなる12件でありました。実施された事業数はほぼ初年度並みの50件でありました。地域別に見ますと、広島県・今治市において新たに活用された規制改革メニュー及び事業がないのが気になるところではありますが、他の地域は例年並みか、やや減少気味という状況であります。
これを具体的な特例措置名で整理したのが次の資料1−2でございます。赤文字のものが本年度新たに活用した特例措置、青文字のものが本年度事業を追加した特例措置であります。例えば特例措置の全国初活用となる事業としては、関西圏、愛知県及び新潟市の外国人農業支援人材の活用事業、養父市の観光客向け自家用有償運送事業、関西圏及び仙台市の革新的な医薬品の開発迅速化などがございます。
また、活用の広がりを見せている事業としては、東京圏、愛知県などでサンドボックス制度の導入を控え、自動走行やドローンの実証ワンストップセンターの設置が進んでいるほか、養父市における企業による農地取得特例の活用事例の追加、関西圏や沖縄県による農家レストランの新規活用といった農業関連の特例措置の活用、都市再生特別措置法等都市再生関連の特例の活用などが挙げられます。
さらに、まだ実現には至っていませんが、本年度の区域会議で御提案いただいた新規の御提案としては、農業、家事支援に加え、増え続ける観光インバウンド事業対応やクールジャパン対応などでの外国人関連の取組み、本日も大阪府知事からお話がありますが、保育士関連の取組み、先般特例措置の導入を決定いたしましたサンドボックス制度の活用要望などが目立っております。
このように導入された特例措置の活用は着実に進みつつありますが、本年度新たに決定した法令改正を要する特例措置は、サンドボックス制度の導入のみとなっております。今後、特区自治体や先般行いました集中提案募集の結果なども踏まえつつ、今後さらに積極的に新規の岩盤規制改革事項の発掘と提案に取り組んでまいりたいと思います。
続きまして、国家戦略特別区域基本方針の一部変更について、御説明いたします。資料2−1を御覧ください。国家戦略特区制度のさらなる透明化の確保、機能強化に向け、昨年12月15日に開催された特区諮問会議における決定を踏まえ、特区諮問会議を実質的な折衝の場として積極的に活用すること、特区諮問会議、特区ワーキンググループ以外の第三者を介さない省庁間の調整を行う場合においても、一定の要件を満たすときは、意見の相違点も含めた合意議事録を作成することを特区基本方針に規定いたします。詳細は資料2−2を御参照ください。
本件についての審議に入りたいと思います。まず、資料3に基づき、八田議員より御発言をお願いいたします。
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○竹中議員 まず、サンドボックス。国会はこれからいろいろ大変だと思いますが、ぜひとも早期の成立をお願いしたいと思います。
一昨日、ドバイから帰ってまいりました。1年前にここで議論して、総理にサンドボックスを決断いただいたときは、イギリスとシンガポールでやっていると申し上げたのですが、今はドバイもアブダビも、そして台湾もやろうとしている。非常にこの改革が求められていると思います。
そして国内でも、実は例の今治の獣医学部が、受験者が16倍だったと。これは官房長官も記者会見でお話ししてくださっていますけれども、いかに岩盤規制が若い人の進路を阻んでいたか。本当に改革を加速させなければいけない。にもかかわらず、残念ながら特区に関しては、今、八田議員からありましたように、事業化から見ると減速しているように見えるわけです。そして、その重大な問題がやはり事務局体制にある。このことは、事務局にずっとお願いしてきたのですが、いまだ解決しておりません。
これは総理、官房長官、梶山大臣の御指導で、ぜひ、ここをきちんと御認識いただいて、御指導いただきたいと思います。
それから、減速をさせてはいけないわけで、6月の成長戦略まで目玉が必要なわけですけれども、今日の大阪府の提案、保育支援員の話も美容師・調理師の話も、間違いなくこれは目玉になる話だと思います。いまだに反対している省庁があるわけですが、総理の御指導で、ぜひ、実現していただくようお願いいたします。以上です。
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秋池玲子

 

1
早稲田大学理工学部、同大学院修士課程修了、マサチューセッツ工科大学スローン経営学大学院修了。
キリンビール株式会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2003年から株式会社産業再生機構で事業再生の実務にあたる。
機構在職中に九州産業交通取締役、カネボウ化粧品社外取締役、関東自動車取締役を兼任。
2006年11月より現職。
製造業、ハイテク産業、インフラ産業を中心に、クライアント企業の戦略作成、戦略実行支援、組織改革、買収後の統合推進、事業再生支援等を手掛ける。
政府系委員などを歴任。
2018年度経済同友会副代表幹事。
2
キリンビール株式会社、マッキンゼー・アンド・カンパニー、産業再生機構を経て2006年にBCGに入社。産業再生機構では、支援先の経営者として事業再生の実務に当たる。政府系委員も歴任。
広域な業界の企業に対して、事業戦略、シナリオプランニング、事業再生、トランスフォーメーション、組織変革などさまざまな支援を行っている。大量のデータや統計を用いての市場の将来像解析や、シナリオを組み合わせての設備投資計画や戦略作成の実績が豊富。
3
ボストンコンサルティンググループ パートナー&マネージング・ディレクター
早稲田大学理工学部、同大学院修士課程修了、マサチューセッツ工科大学スローン経営学大学院修了。
キリンビール株式会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2003年から株式会社産業再生機構で事業再生の実務にあたる。機構在職中に九州産業交通取締役、カネボウ化粧品社外取締役、関東自動車取締役を兼任。
2006年11月より現職。製造業、ハイテク産業、インフラ産業を中心に、クライアント企業の戦略作成、戦略実行支援、組織改革、買収後の統合推進、事業再生支援等を手掛ける。政府系委員などを歴任。 
経済同友会の新任副代表幹事にBCGの秋池氏が内定 2017/11
11月17日、経済同友会は、2018年度の正副代表幹事の体制について内定候補者を発表した。
新任の副代表幹事にはボストンコンサルティンググループ シニア・パートナー&マネージング・ディレクターの秋池 玲子氏(53)の就任が発表された。副代表幹事の任期は2年となっている。ボストンコンサルティンググループからは前日本代表の御立 尚資氏が、2013年度から2016年度まで2期4年の間、副代表幹事を務めていた。
秋池玲子氏はキリンビール株式会社、マッキンゼー・アンド・カンパニー、産業再生機構を経て2006年にBCGに入社。「BCGパブリックセクターグループの日本リーダー。エネルギーグループのコア・メンバー」ということだ。
経済同友会役員として、コンサルティングファームからは他にも、経営共創基盤 代表取締役CEOの冨山和彦氏(58)が2013年度から副代表幹事を務めており3期目で6年目を迎え、またアクセンチュア前社長で現在は取締役相談役の程近智氏(57)は1期目の2年目の副代表幹事を務めることとなる予定だ。
代表幹事イニシアティブ
今年の9月1日には経済同友会における「2017年度代表幹事イニシアティブ」が発表されていた。
具体的にその役割を見ると、アクセンチュアの程氏は「Japan 2.0最適化社会に向けて」の深化を検討する「Japan 2.0検討PT」を担当。
またボストコンサルティンググループの秋池玲子氏は経済同友会の組織運営改革として「みんなで描くみんなの未来プロジェクト」の全体企画・調整と一部事業の企画・実施する「経済同友会2.0を実践推進するPT」を担当。
さらに経営共創基盤の冨山和彦氏は「改革推進プラットフォーム」を担っており、政府の「経済財政運営と改革の基本方針」「日本再興戦略」および諸改革に関する進捗状況の把握と、各委員会との連携・協力によるタイムリーかつ機動的な意見発信を担っている。
そもそも経済同友会とは?
日本経済団体連合会(経団連)、日本商工会議所(日商)と経済同友会を合わせて、「経済3団体」と言われるが、コンサルティング会社の代表等が団体の役員を務めるのは経済同友会のみ。
中でも経済同友会は「企業経営者が個人として参加し、自由社会における経済社会の牽引役であるという自覚と連帯の下に、一企業や特定業種の利害を超えた幅広い先見的な視野から、変転きわまりない国内外の諸問題について考え、議論し政策提言を行うところが、経済同友会最大の特色」とされている。 
 
諸話

 

リーダーを育てる 秋池玲子
 (ボストン コンサルティング グループ パートナー&マネージングディレクター)
経営者にふさわしい人材がなかなかいない、という意見をあちらこちらで聞く。例えば地方で。例えば再生されなくてはならない企業で。しかし、実は東京の優良企業にだって、同じような悩みはあるだろう。どういう企業でも成長を目指していくからには、前の世代よりも更に優れた人材、より優れた経営手腕を経営者に求めてしまうものだからだ。従ってこの渇望感には永遠に終わりがないだろう。
それでも、優れた経営者を育て、次の世代に社長の椅子をみごとに引き継いでいる企業もある。何によってそれを実現しているのだろうか。
リーダーになった時の緊張感はどこから来ているのか。当然様々な要素があるが、最大のものは、自分が最終決定者として決断をし、その責任を取らなくてはならない、ということではないか。
経営者になるほどの方であれば、その責任を取る心構えはきっと出来ていることだろう。しかし、不確実、不確定な状況の中で、多くの人生を左右する決断をするのはたやすいことではない。この精神的圧力に打ち勝ったり、そういう精神状態の中でも正しい判断を下せる強さを持つことが、最も難しいことではないだろうか。
経営者を育てるために、早くから次世代経営者研修で経営の知識を身につけさせたり、リーダーシップ、すなわち、人を動かすことの訓練をしたり、コミュニケーションやIRの練習をしたり、ということをしている企業が多くなった。10年前には考えられなかったことで、非常に優れた取り組みである。
しかし、これをやってもなお、意思決定をする精神的圧力は消えない。結局はこの圧力に打ち勝つには「慣れる」ことしかない。そのためのひとつの手段として、次世代経営者候補をグループ会社の社長にし、経営者になると何をするのか、どういう思いを味わうのかを、まだ時間的余裕があるうちに考えさせたり、精神的圧力に慣れさせたりすることが非常に効果的だ。将来の経営者候補に傷をつけないよう、優良部門やスタッフ部門で大切に育てている企業は今でもある。それで堂々たる経営者になる方もおられるだろう。だが多くの人は、順行運転の時よりも修羅場をくぐった時により多くを学んでいる。また、腹心の部下や仲間に出会ったりしている。
もちろん、修羅場の経験がなくても優れた経営者になった方もいらっしゃる。しかしそれは元々よほどの人材だった、という偶然の産物だろう。過去の多くの優れた経営者は、グループ会社の社長をやっていなかったにしても、新事業を責任者として立ち上げたとか、後には引けない全社横断プロジェクトのリーダーをしたなど、育ってくる過程のどこかで修羅場をかいくぐって来ているようだ。そしてそれは、経営者の方ご自身にとって、貴重な経験と豊かな知恵を蓄える貴重なお時間だったと、知る限りすべての方から伺っている。 
 
坂根正弘

 

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坂根正弘(1941 - )
日本の実業家。小松製作所相談役特別顧問。広島県広島市生まれ、島根県浜田市育ち。
広島市生まれ、1945年原爆投下の2ヵ月前に島根県浜田市に疎開しその後は同市で育つ。島根県立浜田高校を経て1963年、大阪市立大学工学部卒業。ブルドーザーの設計技術者として小松製作所入社。1989年取締役、1990年小松ドレッサーカンパニー(現コマツアメリカ)社長、1994年常務取締役 1997年専務取締役、1999年代表取締役副社長を経て2001年、同社代表取締役社長兼CEO就任、2007年同社代表取締役会長就任、2010年同社取締役会長就任、2013年同社取締役相談役就任。2013年同社相談役特別顧問。2009年度から義務付けられた役員報酬開示制度では、報酬額1億2000万円であることが公表された。
コマツ創立以来初の赤字800億円計上という厳しい時期の就任であったが、構造改革の断行により2003年3月期には約330億円の営業黒字というV字回復を達成。欧米はもちろん、中国、東南アジア、インド、アフリカなどの新興国にグローバル展開を進め、2007年度は1700億円の経常利益を記録、2009年3月期には売上高2兆円、世界第2位の建設機械メーカーに導く。日本経済新聞の企業評価ランキング「PRISM(多角的企業評価システム)」で、2001年231位だったコマツを2007年、2008年連続1位とした。2008年デミング賞本賞受賞。2009年には米ハーバードビジネスレビュー誌の「在任中に実績をあげた実行力のある最高経営責任者(CEO)」のトップ100に、日本人トップの17位に選出された。
日本経済団体連合会(経団連)評議員会副議長、環境安全委員会委員長、日本ロシア経済委員会副委員長、公益財団法人日印協会理事・副会長。日中経済協会副会長などの要職を務め、経団連サブサハラ(サハラ以南)地域委員会委員長として対人地雷除去活動なども行っている。2010年5月、経団連副会長就任。2013年、産業競争力会議議員。2014年7月、経済産業省総合資源エネルギー調査会会長。
2014年11月、旭日大綬章。
またコマツと縁の深い松井秀喜と2003年キャラクター契約を結び、現在も継続してサポートを続ける。
週1回はどこかで講演をおこなう。 
名言
ライバルに負けてもいいところ、あるいはライバルと同じぐらいでいいところをあらかじめ決めておき、その分、強みに磨きをかける。
まず何よりビジネスモデルを作るのだというトップの強い意志が必要。その上で独自で持っていない技術が必要なら、買収も検討すればいい。
国や企業でトップダウンがなければイノベーションは実現できない。
私が言いたいことは、物事には必ず本質があり、これを徹底して考え、どこから取組みの行動を起こすか、そしてどう実行するか。
学びの成果を「できない理由、ダメな理由」を考え発信するのではなく、「本質に向かって何ができるか」を考え行動する人になってほしい。
ビジネスモデルで先行するということは、トップダウンが非常に重要。事業を全て整理してでも、「このビジネスに賭けよう」という思いがあって初めて、ビジネスモデルができる。
日本企業が勝つ秘訣は、ビジネスモデルで先行して現場力勝負に持ち込むこと。
トップダウンとボトムアップがうまく噛み合ったところほど強い。
日本企業は、モノづくりやサービス面において非常に大きな力を持っている。問題なのは、自信を失って自らの力に気付いていないこと。
もっと経営者が自らリスクを取る気概が必要。リスクを取らなければ好機をつかむことはできない。
問題があった時には、物事の本質を見抜くことが重要。そして、問題点を整理して改革を実行していく。
経営力と現場力が結びついてこそ、日本企業の強さが発揮できる。
自分の強みが見つかったら、そこを伸ばしていくこと。何をやってもすべて平均点というだけでは、高い評価はできない。
大事なのは、現場に立脚していることです。現場を知っていれば、「何を言えば現場が動くか」が分かるはず。
多言をもって語るよりも、客観的な数字を示して伝えた方が、相手にすぐ伝わる。
相手が何を求めているのかをよく理解して、話す内容をしっかり考えないと、相手を説得できない。
何ごとも自らの弱点を補おうとするのではなく、強みを伸ばすために限られた資源を集中させるべき。
評論家であれば「実行」は必要ないが、経営者にとっては「実行」が不可欠だ。
若いころの経験は、あとで必ず役に立つ。だから、若いときには、自分で仕事の範囲を限定せず、与えられた仕事は何でも一所懸命にやることが必要だ。
リーダーには言葉の力が必要。口に出さなければ下の人には伝わらない。
企業経営者は自社の弱みばかりを憂慮するのでなく、強みを見つけ、磨いて日本の国際競争力にもっと自信を持ち、攻める姿勢を忘れないでほしい。
約束を誠実に果たし続けてきたことが、結局、自分のその後のキャリアにつながってきました。
言ったことは行動に移す、つまり約束は守るということ。私はこれこそが、若いビジネスマンが必ず習慣化すべきことだと思っています。
私の好きな言葉のひとつに「誠」があります。最近は色紙にサインを頼まれると、必ずこの一字を大きく書き「“言”うを“成”すなり」と付記しています。
本質を見抜く目は一朝一夕に身につけられるものではありません。日々の仕事において現場を見たり、自分の考えを実行していく中で、徐々に磨いていくしかないでしょう。
事実やデータをベースに考える習慣は、人に何かを伝えるときだけでなく、仕事全般において重要です。
会社を良くするのには時間と労力がかかるが、悪いリーダーシップによって会社が傾くのはあっという間だ。
私たちのやり方は、ハンター(狩人)よりファーマー(農業経営者)です。狩ったら終わりじゃなく、ファーマーはすぐに商売に結びつかないところにも地道に種をまいて育てるわけです。
自分の置かれた状況が見える化され、ほかと比較されると、自然と競争心が生まれる。何とかしようと知恵を出し、汗を流す。それが人間だ。
データに基づく本質的な指摘をすれば、犠牲を伴う決断でも現場はついてくる。
我々の強さは現場力にありますから、それを失ったら絶対に米国企業に勝てません。現場力を磨いた上で、米国よりもビジネスモデルで先行できれば「鬼に金棒」です。
製造コストが国際競争力を失って収益が悪化したわけではない。競争力は持っているのだから、固定費を抑え、もう一度やるべきことに集中すれば日本でモノづくりを続けられる。
日本には競争力があります。その自信を取り戻さない限り、大きな国内投資をしないでしょうし、事業の整理や雇用に手をつけるような一大決心はできないでしょう。
私の好きな言葉に、「知行合一」という言葉があります。行動を通じて身につくのが本当の知識。英語も使わなければ身につきません。
後継者を育て、引き継ぐべきものをしっかり作っておくことが大事だということに反論する人はいないだろう。「いい後継者がいない」というトップは、自分の責任を放棄していることになる。
ビジネスの世界で勝ち抜くには、ビジネスモデルで先行して現場力勝負に持ち込む、これが日本企業の勝ち残る道だと思う。
どんなに規制改革をしても、経営者の意識が変わらなければ、何の成果も生まれない。
見える化をすれば、知恵が出てくる。
私には、いい友人がいた。時代の流れや、そのほか自分だけではわからないことを教えてくれた。そのお陰でなんとかここまで来ることができた。
ミドル層が自分の考えをもって能力を発揮するには、組織全体の連帯感が欠かせない。
従業員をうまく使いこなすのが経営者や管理職の役割。
危険を冒しても業績拡大や経営回復が果たせると見込めるのなら、大胆な決断をすべき。
日本が従来苦手とするビジネスモデルの構築で先行し、日本が得意とする現場力勝負に持ち込めれば、我々は負けない。
人は人に選ばれて、上に上がっていく。最後は、その人の専門性、そして、人として信頼を得ていることが決め手になる。それが、企業で働く基本。
「ダントツ」とは、ライバルの追随を許さない、圧倒的に強い技術や商品、サービスといった「絶対的な強み」を指す。
会社が悪くなるときは、あっという間。それを防ぐため、コマツウェイを浸透させようとしています。
成果が伴ってくると、みんなも「これならいけそうだ」と手ごたえを感じて、さらに頑張ってくれます。
リーダーはやれることをすべてやるべきです。コスト削減だけして嵐が過ぎるのを待つとか、逆に成長を目指すからにはコストは温存しておいてもいいとか、甘いことを言っているとすぐ手遅れになります。会社を改善したければ、コストも成長も考えられることはすべてやる。それがリーダーに課せられた使命です。
リーダーには、ビジョンを示すことも求められます。コスト削減を押し付けるだけでは、誰もついてきてくれません。コストはコストで削りますが、一方で成長への夢を語って初めて社員はモチベート(動機付け)されます。
リーダーの責任は重大です。ただし、本当に大事なのはリーダー個人の経営能力より、「見える化」かもしれません。市場や社内で起きていることをタイムリーにつかめるなら、よほどおかしな経営者でない限り、誰でもそれなりの手を打ちます。これは技術の世界でも同じで、問題がはっきり見えているなら天才も凡人も出す知恵はそう変わらない。つまり個人の能力差より、「手にとるようにわかる」ことの方が結果に大きな影響を与えるのです。
危機を抜け出すためには、みんなが傍観者ではなく当事者となって、知恵を出し合わなきゃいけない。それをわかってもらうためには、しっかりと説明する必要があります。
見える化の重要性は、みなさんもよくご存じなはずです。ただ、大事だ大事だと念仏を唱えているだけでは何も変わりません。どうすればお題目で終わらせずに済むのかと、手順を含めて魂を込めて真剣に考え、実行に移していく。それによって「見える化」勝負の明暗がわかれるのです。
誰もが当たり前と思っていることを「本当にそうか」と問い直し、本質を見抜くと、そこに問題を解くカギや宝の山が隠されています。これをファクトファインディングと呼び、コマツ社員の行動規範のひとつに入れています。
知行合一で学べる者が最後は勝ち抜く。みんなが当たり前と思っているところから問い直してみることです。
21世紀に入って以降、我々は「企業価値=株主価値」とする米国流を問い直し、企業価値とは「ステークホルダー(利害関係者)から得られる信頼度の総和」と考えました。信頼度とはいわば「コマツでないと困る度合い」です。これがブランドになります。
事実を的確に把握するには見える化のための武器や方法も必要です。リーマンショック後、販売が落ち込む中で、コマツはどの代理店にどれほど在庫があるか、コムトラックスを通じてデータ化し、リアルタイムでつかみました。そこで生産を控えながら代理店間の在庫調整を行い、いち早く黒字転換しました。現状を見える化したことで、業績の回復法を見つけたのです。事実を把握すれば、どう行動すべきかが見えてきます。
私がデータ経営を「見える化」したのも、「日本はコスト高でものづくりに適さない」といわれるが、本当にそうなのかと思ったのがきっかけでした。問題は製造コストではなく、固定費でした。
見える化は、個人レベルでもそれぞれの競争力に結びつきます。とくに上司の場合、部下の信頼を得ていくには有言実行が基本になります。その際、自分の考えをきちっと見える化して示すことは重要なプロセスです。
私が社長に就任したとき、コマツは800億円の最終赤字に陥っていました。現状を分析し、強みと弱みをデータ化して明示する作業を徹底的に行いました。すると同じ機種を欧米、ブラジル、アジアの8か国で製造している中で、製造コストは日本が一番低かった。赤字の原因は非製造部門の膨大な固定費や建機以外の不採算事業にあるとわかりました。どん底の状態で構造改革に着手し、一転、翌期には黒字回復を果たしました。
天才的な人は目に見えない問題の本質をすぐ見抜き、「ここはこうなっているはずだから、こうしたらいい」と仮説を立てて解決します。ただ、そのメカニズムが見えるようになりさえすれば、誰でもアイデアが出せます。どこにどんな問題があるのか、見える化して事実をつかむことが仕事の成否を分けることだと知りました。
現実や現状を見ないままにして、ああでもないこうでもないと勝手な仮定で議論することほど不毛なことはありません。
天才は、その場で頭の中からアイデアを引き出すひらめき的な発想ができます。一方、凡才であっても、思いついたアイデアを常に見える化しておけば、発想が途切れず、天才とのギャップを埋めることができます。見える化は仕事の質を格段にアップさせる極めて効果的な方法です。
私の場合、複数の事業を抱え、グループ全体で連結対象200社以上、総従業員数4万人の組織のトップという立場上、思考の範囲は多岐にわたります。思いついたそばから前の記憶が消えてしまう可能性があるので、発想がわいたらすぐに手帳を開き、実行日の欄に短いキーワードで書き込んでいきます。
最終的には、お客さんの仕事を「見える化」してあげて、一緒になって生産性を高めます。そこまでやらないと、ダントツにはならないと思います。
大事なのは守るばかりではなく、攻めに転じることです。私がコマツに入社したころ、外資系企業の国内参入という事件が起きました。コマツはこれで終わりだと言われました。当時のコマツの社長、河合良成さんは「もう守りは一切しない、攻撃あるのみだ」と宣言しました。攻撃は最大の防御なりという彼の言葉を今でも覚えています。結局、その戦いにコマツは勝ちました。
「ダントツ経営」は一言でいうと顧客にとって「コマツでないと困る度合いを高めよう」という言葉に集約されます。まさしくダントツ商品を出し続けていれば、コマツでないと困る度合いが高まるという意味です。競合が追いついてきても、ダントツなサービスを提供すれば、やはりコマツでないと困る度合いが高まります。
ひとつ心がけていることがあります。社員の待遇は常にトップレベルを維持することです。できるだけコストをかけないといけないと考えています。
競争相手から社員を引き抜かれる会社が、社員を引き抜く会社に負けるわけがない。こうしたことは、どこかで止まります。この3から4年、何人もの社員がうちを辞めて競争相手に行きました。しかし、辞めた社員が「行った先の仕事は面白くない」とか「自分の能力向上にはこの会社は駄目。コマツにいたほうがよかった」という声が返ってくるようになりました。そうして辞めていく社員が少なくなってきたのです。どの会社も一度はたどる道だと思います。
東京から地方にいろいろな機能をシフトしなければなりません。東京が廃れることと、地方が活性化することの双方の影響を勘案すると、圧倒的にプラス面が大きくなります。一般企業も工場だけではなく、本社機能の一部を移すのです。そうした動きが起きたときに初めて、この国は変わっていくのだと思います。
何でもかんでもユーザーの言いなりになって作っていては、利益を生みだすことはできません。この際、標準化を進めて製品の数を減らして、生産性を高める必要があります。
コマツは本社機能の一部を石川県に移しています。最初に移したのは購買部門で、数年ほど前のことです。これだけITが進歩しているので、どこにいても情報は自由に手に入れることができます。むしろ購買部門は工場にあった方がいいのです。
社長に就任した年、建機需要の低迷とITバブル崩壊で806億円の最終赤字を計上しました。そこで私は、経営の抜本的な構造改革に踏み出す決意をしました。最初に、いくつかのキーワードを練り上げました。まずは、「経営を見える化する」などの4点を打ち出し、問題点の指摘と今後の方向性を示し、そのうえで「ダントツ商品をつくろう」と呼びかけました。ダントツ商品。いまひとつ洗練には遠い言葉かもしれませんが、そのためにかえって力強く、印象的でもあります。
日本と中国のように開発と生産の距離が離れてもやれるような商品があったとしたら、そういう商品について日本に勝ち目はないです。たしかに、米国のデルみたいに、開発と生産の密着度がなくてもやっていける商売はあります。でも、その商売には日本は長けていないんです。
うちの会社では、開発部門と生産部門が同居している工場を「マザー工場」と呼んでいます。ちなみに、アセンブリ(最終的な組み立て)だけをやっている工場はチャイルド工場です。栃木県小山市にエンジンや油圧のコンポーネント(個別部品)の工場があり、そこから車で30分ほどの真岡市に車両生産工場があります。小山に開発部隊を置いていたのですが、この30分の距離が大きかった。ほかの工場に比べアクションが遅いんです。だからすぐに開発部隊を真岡に移しました。
日本が強いのは開発力と生産力の組み合わせです。開発と生産が一体になってコンスタントに改善を積み重ねることによって、製品の特長を作ってきた。その意味で、開発は日本でやるけれど、作るのはコストが安いところでというのはおかしいわけです。本当にそうなったら、果たして日本に勝ち目はあるのか。
副社長時代は「常に下方修正のコマツ」だったわけです。屈辱を味わいました。私は絶対に下方修正はしたくありませんでした。対外公表値は社長が自分の責任で決める数値です。部下が集計した結果を見て「ああこういう数字か」と確認して、そのまま公表する会社もある。でも、私は自分で数値を理解して、この辺りまでだったら多少リスクが出たとしても大丈夫だなということを織り込みながら数値目標を公開するようにしています。
社長にはいろいろなスタイルがあると思います。私がコマツアメリカで社長をしていた時は、アメリカ人とやり取りするうえでコミュニケーションが非常に大事でした。本当の問題点は何か、自信を持っていいのはどこかを極めて合理的に、全社員に説明するように努力しました。そうすると自分たちの進むべき方向がわかってきます。だから私は全社員、協力企業の皆さん、販売員の人、投資家に対してどういう方向をめざし、どんな数値目標を目指してやっていきたいかを説明してきました。
何かを犠牲にしてでも、競争相手が5年は追いつけないような特色を織り込めと開発に言ったのです。原価を10%下げそのコストの余裕を商品価値アップに使うようにとも言いました。環境、安全、IT、それからコスト。4つのキーワードを挙げて、そのなかで何か特色を持った商品を作るようチャレンジさせる。そして出来上がったものがダントツ商品なのです。
プロダクトアウトは駄目だ、マーケットインだと言われます。つまりお客様の声を聞くということです。そしてお客様の声を代弁しているのは「営業」ということになります。新商品を作って評価会を実施すると、参加している営業の連中が「競争相手にここが負けている。ここを改善しなければいけない」と指摘するわけです。そのような意見に従うと、なんとなく優等生な新商品が出来上がるんです。ところが、1・2年もたつと、もう競争相手はその上を作ってしまいます。こんな競争をしてはいけないと感じました。
社内にダントツ委員会というのを作っています。ダントツ商品を認定する機関で、委員会と書くのですが実は私一人でダントツ申請を受けているんです。全く私の独断と偏見で認定基準を定めています。お客様のところに行って半年間、一年見てちゃんと予定通りの実績を上げていないと認定しないとか、10%コストを下げるといっても、商品によってはそれでは夢物語みたいなところがありますから、5%下げただけでも認定してやろうとか、この権限だけは誰にも渡していません。
この15年間、日米欧の経済規模はお互いを経済圏として膨らむだけ膨らんできました。こういった日米欧中心の経済循環だけでは成長できないところまで来ました。自国の経済規模の拡大にお金が全部行ったものだから、その他の世界にお金が行かなくなったということもあります。
この15年間、貧富の差も開いてしまったし、日米欧が経済規模を拡大するためには周辺マーケットを入れないとどうにもならないということになって、アメリカは中南米を、ヨーロッパは拡大EUに政治のリーダーシップで取り組んでいますが、日本はアジアとの共栄をもっと政治のリーダーシップで進めていくことが重要だと思います。
再建の目途を区切るとすれば、二年だと思います。三年というのは長い。一年では結果が出ません。丸二年で結果が出なければ、会社全体が疲弊してしまいます。本当のところ、三年くらいはほしいのですが、三年は結構長いんです。それだけの時間は、なかなか待てません。再建は二年だと思います。
事業というのは必ず苦しい時があるわけです。経営者の判断能力を問われるのは「一時耐えることで再び上昇に向かうのか?」の判断です。「3年で雇用を増やせたのだったら、頑張って人数を減らさずにしておけばよかったじゃないか」とおっしゃる人がいると思うんです。でもそれでは危機感が生まれないんです。危機感を持ったから、会社が再スタートして、雇用を増やせるところまで来たんです。危機感がなければ再生はあり得なかったんです。
日本の建設機械市場はバブルのころと比べると3分の1になってしまいましたが、それでも必死になって多角化を目指したり、雇用を維持してきたわけです。でも、それでは結果が出ず危機感も生まれずジリ貧状態でした。そこで私は早期退職者を募ったのです。
厳しいことを言う社外取締役の存在は、平穏無事に過ごしたい社長にはうるさい存在だが、強い意志を持った改革派のトップには力強い味方になる。
現経営者の大きな役割は後継者を育て、選び、自分の代より次がさらに強くなるようにすることだ。
正しい方向で機能したリーダーシップが、いつしか間違った方向に進み始めることがある。名経営者の任期があまりにも長くなり、後継者問題が最大の経営リスクになるケースも少なくない。
私は社外取締役の是非だけを論じていては、コーポレートガバナンスの議論を矮小化しかねないと危惧している。まず企業と経営者が「何のためのガバナンスか」を自分の頭で考え、明確にしておかなければどんな制度も形骸化するからだ。
物事にはいろいろな見方がありますが、ビジネスにおいては、「長期最適」と「全体最適」を考えることで物事の本質に辿り着くことができます。逆にいえば、短期最適や部分最適で考えても、本質をつかむことはできません。
仕事が自分に向いているか向いていないかを決めるのは、自分ではなくて上司や周りの人です。自分で自分の能力を決めてしまわずに、与えられた仕事は何でもやってやろうと飛び込むことから、道は拓けてくるはずです。
とくに難しい仕事を任せられたときはチャンスです。難しい仕事を与えられるということは、期待されている証拠です。重要な仕事を、期待していない部下には任せません。
人を使う立場になるとよくわかりますが、信頼を得るには、単純な仕事ほど手を抜かないことが重要です。単純な仕事など誰がやってもいいと思うかもしれませんが、単純な仕事を丁寧にやり遂げる人ほど高い評価を得られるものです。人によって差が出やすいからです。
私の座右の銘のひとつに、「知行合一」という言葉があります。これは「知識は、行動や経験を通じて初めて身につく」という意味の中国・明代の王陽明の言葉です。自分の頭で考えたことを実行に移し、試行錯誤するなかで本質がみえてくるし、そうやって得られるものこそが本物の知識だと私は思っています。
全体最適を貫こうとすると、必ず、部分最適論をもち出して反対する人が出てきます。しかし、成果を出すためには、本質の部分を譲らない覚悟をもつことが必要なのです。
最近は考える前にインターネットで調べてしまう人が多いようですが、考える前に調べてしまえば、調べた内容に囚われてしまい、自分のオリジナリティを生み出せなくなります。まずは自分の頭で考え、その考えを確認したり、補足したりするために調べる。そうすることで知識が身についていきます。
私は学生時代はあまり勉強しませんでした(笑)。会社に入ってから、仕事で壁にぶつかるたびに、猛勉強して乗り越えてきました。必要に迫られているうえに、実際に仕事で使うので、知識が身につくのが早かったですね。
米国駐在時代、どうすれば相手を動かせるのか実践のなかで学んだのが、本質をつかむことの大切さでした。合理的に、端的に、問題の本質を伝えることができれば、たいていの相手は動いてくれるのです。
伝統市場の中だけでいくら物事を考えても成長機会はない。
建設機械の需要の動向を見ると、いまどこにお金が集まっていて、これからどこに流れるのかということがよくわかります。たとえばリーマンショック後の半年間は、世界中で一回、お金の動きが止まりました。ただ、すべて止まるのは例外的で、どこかの地域が悪くても、お金は必ず他のどこかで動いています。その視点で言うと、日本も成熟の時代に入りましたが、成長のチャンスがないわけでもない。
非正規の仕組みに頼らざるをえないからこそ、正規と非正規との格差を縮めていかなきゃいけない。うちは契約が終わったときには慰労金を出したり、「再就職のための支援金・休暇」を付与しています。
終身雇用は最後まできちんと面倒を見るという前提で、ある意味では個人の自由度を捧げてもらっている部分がある。そうなると「この人にはこの仕事よりあっちのほうが向いている」と適性を見極めて仕事を振り、「将来のことを考えて、この仕事を経験させよう」と長期的に能力開発をすることが可能になる。社員のほうも、雇用に関して会社と信頼関係があるから、もともと希望していない仕事の担当になっても頑張ろうと思える。それが日本の雇用の強みであり、そこは何とか維持していきたいのです。
いま盛んに観光と言っていますが、公共交通機関の利用者数は市に知らされていません。空き家率もそう。多くの大事なデータが国や県のほうは把握できるのだけれど、そのデータが市のほうに自動的に入る仕組みになっていないそうです。これでは観光やまちづくりの知恵も出てこないし、みんなで競争して汗を流そうという気持ちも湧いてこない。地方はまずそこから始めないとダメですね。
うちは石川県小松市が発祥の地なので、小松市を元気にするための取り組みも行っています。
小泉改革のときに構造改革特別区域が全国に約600つくられました。私も聞いてびっくりしました。みんなすっかり忘れているのだから、はっきりいって失敗です。じゃあ、なぜうまくいかなかったのかというと、当時は特区をつくることが目的になっていた部分があったんじゃないかと。本当なら国から言われてつくるのではなく、自治体のほうから「うちの県はこうやって成長したいが、規制かあって難しいから特区にしてくれ」という戦略が必要ですよね。しかし小泉改革のときは、そうしたトップダウンとボトムアップのつながりがないまま特区をつくってしまった。
私が社長になる前の98年頃に、建設機械を盗んでATMを壊す事件が続発していたことを覚えていますか。あれを見ていて、どうにもいたたまれない気分でした。私はブルドーザーの設計者からスタートしているし、アメリカと日本で、販売後のサービスを担当する部署の部長をやっていたこともある。自分たちが苦労して売った機械が盗まれ犯罪に使用されるなんて、悔しいことじゃないですか。これを何とかしたいと考えたのが建設機械遠隔管理システムKOMTRAX開発のきっかけです。
現地法人に権限委譲するには、我々が大事にしている価値観を共有してもらわないといけません。過去には能力の高い人を落下傘で持ってきて失敗したこともあります。だから能力が少々高いことよりも、価値観を共有できているほうがいい。いまの現地のトップはほとんど15年から20年選手です。
コマツは長年の海外展開の経験から、ローカルの人をトップに据えて、日本人は補佐役に徹したほうがいいという結論に達しました。だから、中国だけではなく、いま世界の大きな拠点11カ所のうち、9カ所が現地人トップです。
社長に就任し、もう二度とこういうこと(人員削減)をしなくていいように、一回だけやらせてほしいということで踏み切りました。バランスシートは悪くはなく健康体に戻れる状態のときに手をつけたので。その後は市場環境の好転と日本のモノづくり競争力に自信を取り戻し、日本に新工場をつくったり、古い工場を建て直したりして、社員数2万人が一度、1万8500人になって、いまは2万2000人に増えています。
私が社長になったときに、世界1位、2位になれそうな商品・事業以外はやめると宣言して整理しました。300社あった子会社は2年間で統廃合し110社減らしました。
日本人は細かく仕事すればするほどいいと考える傾向があって、人事や経理のITシステムも自前でつくりこもうとします。一方、アメリカの会社は、人事や経理みたいにどこの会社にもある仕事については自前でつくらず、既製のシステムを使う。その差は社会全体で考えると人材の流動性が容易になったり非常に大きいものがあります。
社長就任当時、アメリカの競合相手と数字を比較したら、興味深いことがわかりました。うちは固定費の比率が24%で、彼らは18%。一方、営業利益はうちが6%少ない。営業利益に固定費を加えると粗利ですから、要するに稼いでいる粗利は同じ割合なのに、うちは固定費を6%たくさん使っているため利益が少なかったのです。
見える化の威力は私自身が会社経営で経験した。社長になったとき、まず会社の問題を見える化することから始めた。たとえば、当時は「日本のものづくりは高コスト」という固定観念が広がっていたが、実際に世界中の工場、商品ごとのコスト構造を分析してみると、日本の工場は変動費部分では十分競争力があった。一方で、固定費部分が非常に重いことがわかり、「1回の大手術」と宣言して構造改革を実施した。
コマツの「スマートコンストラクション」は、現経営陣がまさに世界に先駆けてビジネスモデルを開発したものです。今後建設業の就労者数の大幅な不足が見込まれる中、日本の建設業を強くしなければいけないという思いで始めています。
日本が陥りやすい欠点は「技術を持っているから何でもできる」と自前主義になってしまうことです。当社は自前の部分は主にハードのモノづくり技術に限定していて、ICT(情報通信技術)の部分は日本だけではなく米国、ロシアなどから様々な最先端技術を結集しています。
早くグローバルスタンダード、デファクトスタンダードにするという動きをする必要があります。そうしなければ、せっかく作ってもグローバルスタンダードは誰かに取られてしまいます。
まず「自分は何を伝えたいのか」をよく考え、日本語で整理してみること。日本語で要領よく説明できないことは、英語にしたところで伝わるはずがありません。
コマツでは会長と社長が1対1で話す機会を多く設け、社内の人事や人材育成について話し合っている。トップの育成は文章で残せない分、考え方を共有しておくのだ。私が野路(國夫)さんに渡した後継者候補リストにも、現社長の大橋(徹二)さんが入ってた。
よくあるのが、「自分が改革してやろう」という意識が強い人物がトップに立ち、前任者否定に走ること。これは、本当に危機的な時を除き、会社が混乱することが多い。
コマツでは社長の任期は「原則6年」がほぼ内規になっている。上限がないとあと1年、あと1年と先延ばししがちになる。そのうちに取り巻きが生まれ、「社長がこう言っているから」という論理で組織が動くようになる。それではトップが現場と遊離してしまう。
実績を上げて、「周りの人が認めてくれている」という絶対的な自信を持つことが重要である。そうした自信があれば、大半のことには耐えられるし、乗り越えていける。
現場に興味を持たないトップは致命的だ。しかし、現場にばかり興味を持つトップでは、多くのことをなし遂げることはできない。両者のバランスが重要だ。
よく「経営者はアナリストになるな」と言う人がいるが、私は、経営者は自分がアナリストになって自分で考えろと主張している。トップが現状を分析できなければ、的確な指示を出すことなどできないし、責任もとれない。
若いうちは「自分の得意分野はこれだ」といった決めつけをせずに、与えられたことは何でもやることだ。仕事を進めていくうちに、自分の取り柄が分かってくる場合もあるし、自分では気がつかなかった点を他人が評価して認めてくれることもある。そういう経験の積み重ねが、将来経営者になったときに生きてくる。
経営者としての人間力は、一朝一夕に身につくものではない。若いころからの一つひとつの積み上げである。まずは、社員としての人間力を高めていくことが大切だ。
世間が見る「経営者の人間力」とは、会社の業績次第で変わる。経営者個人がどれだけ能力や魅力を持っていても、会社の業績がついてこなければ、外部の人からは評価されない。結果を出していない経営者は、人間力があるとは見てもらえない。つまり、経営者の人間力とは、結果が伴わなければならないものである。
コマツでは、「サクセションプラン(後継者育成プラン)」というものを導入し、役員や主要部署の部長、工場長などが「自分の次」「自分の次の次」の後任者のリストを提出して社長と意見交換をしている。
自分に人間力があるかどうかは自分自身では分からないものだ。「私は人間力がある」と思っていても、他人はそのように評価していないかもしれない。反対に、自分では気がつかない点を他人が高く評価してくれていることもあるだろう。人間力は、他人の評価によって決まるものである。
社長が何年かおきに交代する会社であれば、我慢さえしていれば、いつか状況は変わってチャンスが来る。
以前はお客さんのニーズを聞いて、それに合ったものを作れと言われたものですが、今はいい意味でのプロダクトアウト時代、メーカー側がビジネスモデルを考える時代に来ています。ビジネスモデルで先行して現場力勝負に持ち込むには、雇用関係というのはすごく大事なんですよ。
今までの日本は、モノ作りの現場力だけで勝負してきたのだろう。だから今度こそビジネスモデル作りで先行しなければいけない。ビジネスモデル作りをトップが引っ張り、労使の一体感を基盤にした現場力で新たなモデルをさらに強くしていくことが大事だ。
今回の円安で、日本企業は恐らく自信を取り戻すのだろう。ただ、企業内の負け組事業まで一息ついたということではダメだ。この機会に負け組は整理して勝ち組にシフトすべきだ。そのためには、経営者自身も変わることが必要不可欠。
事業の再構築を実行するためにも、日本国内にモノ作りのコストでは海外に負けない体制を作ることが必要だ。そういうこともしないで、規制のせいばかりにしてはならない。
300社あった子会社を110社に減らした際に言ったのは、特定の人だけを肩たたきはしないということと、希望退職を募るならば全員を対象にするということだった。金銭解決で乗ってくれる人にはそれでお願いしてね。一方、どうしてもコマツで働きたい人には残ってもらうようにした。そうやって、労使間で散々話をして人員を減らし、事業を整理した。事業のスリム化はやればできるはず。
社長になった時に真剣に考えたことのひとつは、次の疑問だった。「日本は本当にモノ作りのコスト競争で負けて、海外に逃げ出したのか」と。私の答えはこうだ。雇用が大事だからといろいろな子会社を作り、その後に景気が悪くなると本体で人が余るから、また子会社を作る。こういったことを繰り返して高コスト構造を温存していたのではないか、と。そこで、「もうこんなことはやっていられない」と思い、事業も子会社も整理した。300社あった子会社については110社を減らした。
中国が政治的、軍事的にどう変わるかという恐れはあるが、それを過度に気にしていたら経営はできない。コマツの場合は、中国を輸出拠点にはしていない。輸出のための生産拠点ではないから、これまで投資した金額も大きな規模ではない。しかも、それは既に回収を済ませている。それも含めて考えれば、中国経済が今後停滞する恐れがあるとしても、中国に対して消極的になる理由はない。
モノづくり日本を支えてきたのは現場からの改善のための提案力。日本企業のボトムアップ力はすごい。要は、それをいかに経営に反映させていくかという意味でマネジメント力、経営力が問われる。
攻撃とは、自らの強みを見つけ、磨くことだ。対して防御は、ひたすら自分の弱点を探し、何とかしようとする。前向きな議論になるか萎縮するか。この差は極めて大きい。
多少の弱点には目をつむる代わりに、「ここだけは絶対に負けない」という姿勢を持たなければ、特徴がない総花的な製品ばかりになって、価格でしか競争できなくなる。
東京がこれ以上の発展をしていくためにも、地方が元気にならなかったら東京も元気になりませんよ。地方創生が何も東京からゼロサムで何かを持っていくという話ではなくて、地方が元気になれば、東京も元気になる。そういう考えで、それぞれができることから始めていけばいいと思います。
特に企業という立場から見た場合、日本企業が価格よりシェアの競争に陥ったのは大きな誤りです。本来、企業は従来にはない製品を作り、新しい価値を生み出し、そこからリターンを得てステークホルダー間で分配をする存在であるべきですが、こうした好循環を失ってしまった。
グローバル人材なんて言葉は空虚です。約40年前、弊社も海外展開のために外国語大学の卒業者をたくさん採用したことがあります。ところが、英語をぺラベラ話せても、話の中身が何もない人も多かった。世界で活躍するために必要なのは専門性です。たとえばコマツには製造現場に関するノウハウがある。そうした専門性を持っていれば、多少言葉ができなくても現地の人に受け入れられ、リスペクトしてもらえます。最近はグローバル人材という言葉が独り歩きして、英語を話せることが大前提のように言われていますが、それは間違い。英会話の勉強も大事ですが、まずは自分の専門性を磨くことが先決。それが世界で戦うための最低条件です。
自分個人の価値観や習慣にこだわりすぎないことも重要。どんな会社にも目指す価値観や、それを実現させるための行動様式があるものです。それと自分の価値観や習慣が結びついたときにこそ、最大の成果が出るはずです。
人や会社から与えられた仕事は何でもトライしたほうがいい。私は設計者でしたが、自分の専門性にこだわって「お客様対応は自分の仕事ではない」と考えていたら、それ以上の道は拓けなかったはずです。
私は「知行合一」という王陽明の言葉を座右の銘の一つにしています。知識は行動を通して身につくという意味です。頭で考えたことは、まず行動に移して確かめないといけない。それを心がけていないと、いつか大けがをする恐れがあります。仕事に取りかかる前に、この仕事の本質はどこにあるかと自問自答する。そして実行に移して、また検証する。その習慣を続けることで、本質を見抜く力は備わっていくはずです。
私は基本的に怠け者なんです。小さな努力で大きな成果を得たい。無駄な努力はなるべくしたくないというタイプ。だからこそ、まずは事実を確かめて、そこから仕事をスタートさせることを習慣づけているのです。
自分の言葉に説得力を持たせるという意味で心がけているのは、「事実やデータを提示すること」です。たとえ正論でも、抽象的なことばかり言っていては、人は動きません。だから何か主張するときには、必ずそれを裏づけるデータや事例を示すようにしています。
考えを進化させるときの習慣として心がけているのが「メモ」です。何かアイデアが浮かんだら、その場ですぐにメモに残す。わざわざメモしなくても、本当に必要なことならあとで思い出すはず、という考え方もあります。でも、それができるのは、目の前の仕事に集中していればいい若いうちだけ。立場が上がれば上がるほど、たくさんの仕事を同時進行でこなさなくてはならなくなる。そうなると、とてもメモなしでは対応できなくなりますよ。
話に説得力を持たせるためには、自分の考えを絶えず進化させることも大切です。その意味で役に立ったのが、講演会。今は2週間に1度程度ですが、会長時代は1週間に2回、年に100回は講演をしていました。講演では質疑応答の時間があり、さまざまな角度から質問が飛んできますよね。それに答えていくうちに、自分の意見がさらに磨かれたり、バッと新しいことが思い浮かんだりするのです。そうして自分の考えをさらに発展させて、次の講演の中に入れ込んでいくわけです。
企業の場合、立場が上がるにつれ下の人に用意してもらった原稿を読んで話すようになりがちです。でも、それではどんなにいい内容でも説得力がなくなってしまう。私は若いころはもちろん、社長、会長になってからもずっと、必ず自分の言葉で話すようにしてきました。
役員や事業部長、関係会社の代表者などに毎月提出してもらうレポートの書き方を改めました。従来は「当事者の業績」を1番目に書いている人がほとんどでしたが、「コンプライアンスや環境、安全に関すること」「品質に関すること」「お客様に届ける補給部品の達成状況」、それからようやく「業績」という順序にしました。報告内容を順位付けすることで何を重視しているのかわかるようにしたのです。
私が社長時代、社内に徳政令を出し、今回は不問にするという条件で、過去のバッドニュースをすべて吐き出してもらいました。悪い報告を躊躇するのは、「いま不正やミスを報告すれば、過去のこともバレるかも」という心配があるからです。
コマツの行動基準書に、私が社長時代に「最も行ってはならないのは、不正やミスを隠すことである」という一文を加えました。以前は「不正やミスをなくそう」と書かれていましたが、時代が変われば、昔はよかったことでも認められなくなることも出てくるからです。ですから、不正やミスを起こすことよりも隠すことを厳しく罰すると宣言したのです。
なかでも重要なのはバッドニュースの見える化です。悪い報告が上にあがってこないと、問題が見えにくくなり変化が遅れます。その意味でバッドニュースの可視化は、会社の変革に欠かせない条件といえるでしょう。ただし、掛け声だけで悪い知らせが上がってくるようにはなりません。仕組みづくりが必要です。
リーダーがビジョンを語るときに問われるのは、本質的な変化を見抜く力です。的外れなビジョンを描いてみせても、社員は半信半疑でついてきてくれません。リーダーが見識をもって時代の変化を的確にとらえ、「これからはここにチャンスがあるぞ」と明確に示してこそ、社員はその気になってくれるのです。
社長になって希望退職を募ったとき、募った理由を社長自ら全員に説明しました。その結果会社がどう変わっていったのか、あるいはコマツの業績が今どうなっているのか、問題点は何か、コマツをどういう方向に進めようとしているのかなどなど、会社の状況についてその後も年2回の決算公表の度に説明し続けました。
よく「日本は技術で勝って、ビジネスで負ける」といわれますが、まさしくそのとおりです。日本企業では、トップがあれこれいわなくても、現場が積極的にいろいろ研究してくれるので、ときにピカッと光る技術が誕生します。それをビジネスにつなげるためには、「この技術を世界のデファクトスタンダードにするには、こういうビジネスモデルを構築する必要がある」とか、「足りない部分を補うために、いまのうちから企業買収を進めておこう」といった経営トップの戦略が必要になってきます。ところが、日本はこの部分が弱く、結局はビジネスで負けてしまうのです。
日本流はすべてダメだと言っているように受け取られるかもしれませんが、決してそんなことはありません。アメリカには8年いましたが、外から日本を見たことで改めて、やっぱり日本はすごいなと感じ入る部分が多々あります。たとえばみんなで一緒に仕事をしていくときの連携や、ひとつのことをきめ細かく追求していく姿勢は本当に素晴らしい。いわば農耕民族的な強さですね。ただ、そうした強みが活きるのは、ものづくりをはじめとした現場です。本社のような管理部門や行政組織がきめ細かくやるのは、コストばかりかかってしまい最悪です。
日本企業が駄目になっていくときのパターンは共通しています。経済には波がつきものですが、多くの経営者は苦しいときも雇用に手をつけず、新しい事業をつくったり子会社に社員を送り込んだりして人を抱え込んでしまう。それを延々と続けるうちに、企業として体力が奪われて弱っていくのです。
アメリカでレイオフを行ったとき、私は各工場に経緯を説明して回りました。「レイオフは経営者の判断なのだから、いちいち説明の必要はない」という人もいましたが、いままで一緒にやってきた仲間なのだから、それでは無責任です。そこはアメリカ流でやるのではなく、精一杯言葉を尽くしたかった。
日本には、ボトムアップの力を持った企業がたくさんあります。リーダーがそれをしっかりと活かせば、日本企業は必ず勝てる。私はそう思います。
「日本経済はもうダメだ」などという悲観論が蔓延していますが、冷静にみればまだまだ競争力を失っていません。国を挙げてやるべきことをやれば日本企業は今後も十分発展できます。
正直言って日本企業の得意な原価改善活動は、経営者が意思決定しなくてもできます。人に手を付ける、事業を中止する、子会社を畳む、値上げ戦略を取るといった判断はトップにしかできないのです。安全策ばかり取っている姿勢がデフレ経済の大きな要因のようにも思えます。
農業にとっての課題を一言で言えば高齢者にとってより楽になることと、若者にとって魅力あるものかどうかということ。コマツは農業をビジネスにしようとは考えていません。でも、調べてみたら我々の知恵を出す場所がたくさんある。
改革に伴って一時的な悪影響も出るかもしれないけど、そうはいっても肝心な改革を避けるわけにはいかない。リーダーにはそういう強い確信と決断、そして実行力が必要。
競合他社にモノづくりのコストで負けていないことをデータで示し、贅肉を削いでいけば我々は復活できるんだ、ということを皆に訴え続けた。犠牲となる社員への配慮は必要ですが、物事の本質論に照らせば、この工場を存続させることはありえない。それだけの確信があるのであれば、後は地道に説得していくしかない。
自社の事業を成長性の有無などで整理することから始めることが必要です。私も社長になった時、コマツには3つの過剰がありました。それは「雇用、設備、債務」の過剰です。そこで私は事業や商品の集中と選択とともに、一度だけの大手術ということで社員全員を対象に希望退職を募りました。
評価された人すべてが、社長になれるわけではありません。運も必要です。トップリーダーになれるかなれないかに執着するのではなく、定年を迎えても、周囲から「残ってほしい」と言われる人材を目指してはいかがでしょうか。そういう人は、人の神輿に乗って管理職として仕事をしてきた人ではなく、自ら汗をかき、知恵を絞って働いてきた人です。自分で考え実行する。そんな人こそ、企業に最も必要な人材だと思います。
会社に入っても、自分にピッタリ合った仕事なんてそうありません。だからこそ、何でもやってやるという気持ちが大事。そうやって仕事に真剣に取り組んでいけば、そのうち誰かが評価してくれて、「彼にはこんな仕事をさせた方がいい」と、仕事をくれるようになる。その仕事をしっかりこなせば、「もっと経験を積んでほしいから、海外も経験させよう」となっていく。
新入社員時代、寮に帰って同期の仲間と明細を見せ合うと、私の給料が一番低かった。だから、評価は相当低かったと思います。そんな私でも、トップになりました。だから若い人には、「何でもやってやる」という気持ちを持てと、いつも言っています。
過去に隠していたバッドニュースはなかなか上がってきません。ですから、「今回は許すから、すべて話してくれ」と言って、バッドニュースを吸い上げるようにした。今では、取締役会でもバッドニュースを最初に報告することが徹底されています。それは何より、隠蔽がダメなのだということを徹底させるためなのです。
私は「バッドニュースファースト(悪いニュースを最初に)」と常に言ってきました。きました。月例の報告書についても、「最初に悪いニュース。次いで品質問題と補給部品の達成状況。最後に業績を書く」ことを、ルールとして守るように定めました。
小刻みにリストラをするのは最悪です。最後に、全体でダメになってしまうからです。私は1度だけ大手術をしました。世界で1位、2位になれそうにないものはすべてやめることを明言し、国内2万人の従業員に手紙を書き、希望退職を募りました。結果、従業員数は一時1万8500人まで減りましたが、今は国内投資も増え、会社全体の収益性も大幅に改善し、2万人台を回復しました。
かつて多くの業界で各企業はそれぞれ特色あるテーマの研究開発をしてきましたが、今はどの会社も同じことをやっています。その結果、価格競争に陥り、付加価値の高い商品を出しても、価格が上がらないようになった。だから、従業員や取引先への分配も増えないのです。この状況を打破するためにも、民間が率先して「ダントツ」を掲げ、選択と集中を徹底しないといけない。
「諦めること」を明確にしないと、集中できない。私は「世界の1位、2位になれない事業や商品は全部やめる」と宣言しました。実際、現在の売上高に占める「1〜2位商品」の割合は、全体の9割近くに上ります。
「ダントツ」になるために大事なことは、「何かを諦めること・断念すること」。「弱みを克服して平均点を高めよう」とするよりも、「他者の追随を許さない、圧倒的な強みを作る」ことに注力する。こうした「選択と集中」が大切。
私が社長に就任した時に最初に言ったことの1つが、最初に犠牲にするものを決めること。競合に負けてもいい部分を最初に決めておけば、負けが見えてきた「見切りをつけるべき商品やサービス」に、ムダにお金を投じることはなくなる。この浮いた経営資源を重点分野に投入した。
課長として最初に任されたのが、商品企画課でした。商品企画課長は、営業や開発から上がる様々な意見を調整するのが仕事の1つです。しかし、商品企画会議で様々な意見を集約しようとすると、最後には「平均点より少し上の、面白みに欠ける商品」に決まってしまう、ということが、たびたびありました。この経験から、「最初に犠牲にするものを決める」ことの大切さを学びました。
「強みを伸ばす」という発想は、大学受験の時に身についたのかもしれません。高校時代の私は、嫌いな学科は全く勉強する気が起きなかった半面、得意だった理数系の科目は非常に面白いと思い、よく勉強しました。超難関大学に行くつもりなら「苦手科目を克服する」という勉強方法を取るのが普通なんでしょうが、私は「得意科目を伸ばして、行けるところに行くのが一番」と思っていた。結果、大阪市立大学工学部に入学しました。
コマツの場合、競争相手は世界一の建設機械メーカーである米キャタピラー社である。アメリカという国に存在している彼らの強さ、弱さを見たときに、少なくともものづくりの部分で、我々が彼らに負ける要素は少ない。だが、その一方で、いわゆるトップダウンのリーダーシップという点やホワイトカラーの生産性では負ける恐れがある、というのが私の分析だ。逆に、そこさえしっかりすれば鬼に金棒である。 
 
諸話

 

資源を残すことが先進国の責任 コマツ・坂根正弘相談役
エネルギーを巡る議論は複雑さを増している。経済性や安全性、安定供給といったように、複数の要素が絡み合い、解きほぐすのが難しい。地球温暖化対策という世界規模の課題にも応えなければならない。この中で国民の生活や産業活動を支えるエネルギーの将来の姿をどう描いていけばいいのか。小松製作所(コマツ)相談役で、2014年に策定されたエネルギー基本計画の見直しを検討する総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の分科会⻑を務める坂根正弘さんに持論を語ってもらった。
化石燃料は枯渇する
―温室効果ガス排出削減のための新たな国際枠組み「パリ協定」が発効しました。それを踏まえ、2016年に策定された地球温暖化対策計画では、2050年までに温室効果ガス排出80%削減という高い目標を掲げています。環境問題とエネルギー問題を両立するにはどのような考え方が必要になりますか。
「私はエネルギーと地球温暖化問題の両方の議論を経験しています。経団連の環境・安全委員長として、原発比率50%を掲げた鳩山由紀夫政権時代の2009年から5回連続でCOPに参加しました。また2014年からは政府の総合資源エネルギー調査会会長を引き受けました。そして問題の本質が見えてきました。いずれも『化石燃料は枯渇する』という視点で考えなければなりません。化石燃料が無くなった時、代替エネルギーがないと経済や国民生活に多大な影響を及ぼします。先進国が大量消費することで、石油は50〜100年後には無くなるかもしれない。最後まで頼らざるを得ないのは石炭です。投資余力の乏しい途上国が発展するには石炭の利用が不可欠。先進国は石炭を途上国に残さねばなりません。私はこの信念を絶対に曲げません」
「太陽光や風力など再生可能エネルギーですべてを賄うことが最終ゴールの理想型です。ただし、課題は多く残されています。再生可能エネルギー100%でカバーするのが現実的かどうか、しっかり見極めることが大切です。政府は現在、エネルギーと地球環境問題に対して2050年を念頭に置いた議論を進めています。この4月以降は経済産業省と環境省がそれぞれ主催してきた審議会の議論を合体し、方向性を探っていかねばなりません」
原子力は安全性の技術開発を
―再生可能エネルギーだけでは難しいとなると、どのような選択肢を持つべきなのでしょうか。
「化石燃料枯渇後は再生可能エネルギー以外には原子力の使用済み燃料の再利用しか残されていないというのが私の結論です。いかに再生可能エネルギーの比率を高められるか、それとともに原子力技術を向上できるかを世界は考えるべきでしょう。原子力にしてもウランは枯渇性資源であり、だからこそ高速増殖炉の実用化が期待されたわけです。将来的には核融合炉発電というコンセプトにたどり着くのかもしれませんが、その前段階ではより安全性の高い原子炉を追求しなければなりません。我が国こそ小型モジュール炉や高温ガス炉などあらゆる可能性を追求し、原子力の安全性についての技術開発の可能性を探り続けなければなりません」
「日本が自給できるエネルギーは、再生可能エネルギーと原子力しかありません。これら非化石資源による発電の比率は、東日本大震災以前は合計35%にのぼりましたが、現在は17%に落ちています。政府は2030年に合計44%という目標を掲げていますが、現時点では達成はかなり困難な状況にあります。エネルギーそのものを自給できないのであれば、せめて技術力くらいは自給しなければなりません。日本は発送電技術まで外国から買う余裕はありません。しかし発送電技術自給率について、東日本大震災以前はほぼ100%でしたが、2030年、2050年はどうなるのか。その心配が顕在化しようとしています」
技術の自給率維持に危機感
―発送電技術の自給率が下がっているということですか。
「太陽光発電を考えてみてください。コマツは太陽光パネルに使用するシリコンを薄くスライスする装置の世界的メーカーで、富山県で製造していますが、出荷先の大半は中国です。ほかの日本企業が強い製造装置やガラスなどにしても、その多くは生産を中国に移管しています。もともと国産技術の固まりだった太陽光発電も、中国シフトにより日本から失われつつあるのが現状です。実はドイツはこのことに早く気がついて、太陽光から風力やバイオマスなどに投資を移しているのです。風力発電技術は欧州が大きく先行しています。日本がリードしているのは石炭火力発電と原子力発電技術ですが、今のような状況で原子力発電技術を若い人が勉強しようと考えるでしょうか。石炭火力発電にしても、こんなに目の敵にされては力を入れにくい。発送電技術自給率も極めて心配です」
―エネルギー政策を巡り、世界各国が熾烈な競争を繰り広げています。日本はどのようなポジションを取るべきでしょうか。
「2014年に策定したエネルギー基本計画でエネルギーミックスを決めたように、当分は『S+3E(安全性を前提にエネルギーの安定供給、経済効率性の向上、環境への適合)』のバランスで考えるしかありません。エネルギー、CO2(二酸化炭素)削減とともに、国の国際競争力と経済力を維持できた上で、初めてバランスを議論できる。経済力を失うという、大きなリスクを取ることはできません。国がじり貧になっては元も子もありません」
ベンチマークはイギリスとドイツ
―日本がベンチマークするべき国はどこでしょうか。
「二つあります。日本と同じ島国であるイギリスと、製造業中心の産業構造を有するドイツです。2050年の温室効果ガス8割減という目標に対し、イギリスは原発を諦めてはいません。一方、ドイツは脱原発を達成すると言っています。ただ、私は地球温暖化会議でも議論しましたが、ドイツはある時はEU全体で、ある時は自国でというように、極めて自分たちに都合良く喋っています。ドイツは北部で風力などの再生可能エネルギーを用いて発電し、南部の工業地帯でかなりの電力を消費しているのですが、南北送電網が環境問題で実現しないものだから、北部の電力を隣国に売電し、南部で必要な電力はチェコやフランスの原子力発電による電力を買っています。ドイツ国内単独での発電量とCO2排出量を厳密に精査し、彼らがもし原発無しでも温室効果ガス削減目標を実現できるというなら(私個人は極めて懐疑的ですが)、日本にだってできますよね。イギリス、ドイツが純粋に国内ベースで達成するレベルをしっかりと把握し、これと比べて、日本はその同等以上を目指すべきです」
―途上国の温室効果ガス削減に貢献することも重要な役割です。
「日本は世界最高水準の発送電技術自給率を100%維持した上でエネルギー自給率をできる限り高め、二国間クレジット制度(JCM)などにより、世界レベルでのCO2削減に貢献していくしかありません。JCMは途上国への温室効果ガス削減技術、製品、システム、サービス、インフラの普及や対策を通じて実現した温室効果ガス排出削減への日本の貢献を定量的に評価し、日本の温室効果ガス削減目標の達成に活用するものです。すでにパートナー国は十数カ国に膨らんでいます。また、ドイツも長期目標に北アフリカ等の太陽光発電所で発電した電力を調達することを謳っています。海外の原発で発電した電気で電気分解した水素を日本に運んでくるスキームなど将来は可能になるかもしれません」
―エネルギー問題に対する国民の意識向上も欠かせません。
「化石燃料が枯渇するという現実を遠い将来と思うか、近い将来と考えるか。私の孫の時代ですよ。地球の長い歴史の中で蓄えてきた化石燃料をあっという間に使い尽くしてしまう。地球の歴史を1年のカレンダーにして考えてみてください。46億年前を1月1日午前零時とすると、化石燃料を使ってきたこの100年はどんな長さでしょうか。明治維新からの150年でも結構です。100年は大晦日の除夜の鐘の108つ目で、わずか0・7秒。たった0・7秒の間でエネルギーを使いまくってきたんです。150年前からなら1秒。あと1秒後には化石燃料を使い終えるかもしれない。ものすごい長い歴史の中でほんの瞬きする時間軸の中で我々は生きている。それをまだまだあるというのか。私の祖父の時代から私の孫の時代までですよ。地球温暖化問題にも後世に化石燃料を残す視点が必要です。途上国に貴重な石炭資源を残さねば先進国の責任は果たせないと考えています」
―2050年を考える上で、原発議論は避けて通れません。
「日本は福島第一原子力発電所事故を経験しています。だからこそ安全性を追求していかねばなりません。原理的に安全な原発を考え出さない限り、原発比率をどんどん下げていこうという説しか出てこない。この国は原発技術をギブアップするわけにはいきません。再生可能エネルギーが今のようなレベルの技術ではなく、画期的な可能性のものが実用化でき、全人類がこれで全てやっていける確信ができて初めて原子力に対する答えが出せます」
新増設の議論も必要
「原発の議論になると、この国はいつもゼロか100かの話に陥りがちです。私は2015年エネルギーミックス策定の議論の中で、新増設・リプレースの議論をその時点で始めることに反対しました。理由は2030年のエネルギーミックスを決める前にその議論を持ち出すと、新しい原発しか安全でないという話に転じて、議論が混乱してしまいます。私は島根県出身なのですが、(中国電力の)島根原子力発電所の3号機はいまだに停止しています。すぐにでも動かせる最新鋭の新設原発がありながら、新増設の議論をするのは一体何なんだろうかと考えています。既存原発の再稼働がどういう理由で進まないか、進めるにはどうすべきかを現実論として議論しなければなりません。ただし、2050年に向けての議論の中では新増設の議論が必要です」
―産業界はどのように貢献していけば良いでしょうか。
「再生可能エネルギーは日本が世界一とは言えませんが、原子力と石炭火力の技術は日本が技術をリードしてきました。とりわけ石炭火力は世界一であり、自ら放棄することはありえません。私がCOPに出席している時、(地球温暖化対策に消極的な国を皮肉る)『化石賞』をもらったことがあります。私は胸を張ってもらおうと言いました。石炭は世界中に埋蔵しており、日本も石炭を使うことで発展しました。これからは途上国にいかに石炭を残してあげられるか。だからこそ我々は石炭火力発電の比率を下げなければなりませんが、技術は日本が最後まで残さねばなりません」
―産業界の省エネルギー化の推進も大きなテーマです。
「これは地産地消の考え方が重要になります。コマツは粟津工場(石川県小松市)で生産量当たりの購入電力9割削減を実現しました。そのために、全く新しいコンセプトの新工場を立ち上げました。冷暖房に地下水の熱利用を実現した上でバイオマス発電を導入し、さらに排熱を利用することで熱利用効率70%を達成しました。また、工場刷新と合わせて組立ラインの生産性を大幅に高めました。機械一台一台の電力使用量を見える化しました。バイオマス発電には地元の未利用間伐材からつくられた木質チップを活用します。森林を守り、再生させる一挙両得のアイデアと自負しています。発電コストは多少高くなりますが、日本はそれを負担するべきでしょう。再生可能エネルギーの導入も必要ですが、第一に考えるべきは省エネルギー技術で世界一になることです。日本は課題先進国。世界一になれる要素は十分です。地産地消アイデアを普及させれば、企業の設備投資にもつながり、国内経済にも好影響を与えるはずです」
国の発電状況で異なるEVの効果
―電気自動車(EV)の普及など大口需要家サイドの環境変化も無視できません。
「電気自動車(EV)の議論にも注意が必要です。燃料を自動車に入れるまでに排出するCO2(Well・to・Tank)と、自動車に入れた燃料の燃焼で排出するCO2(Tank・to・Wheel)を組み合わせた1キロメートル走行当たりのCO2排出量をコマツ独自で分析しました。通常のガソリンエンジン車が排出するCO2の量は同一燃料・同一走行条件の下では世界共通です。そのガソリン車を100とすると、ハイブリッド車(HV)の指数は58になります。HVの改良が進んでいきますから50を切る水準になるかもしれません。一方、EVはそれぞれの国の発電状況によって大きく異なります。東日本大震災以前の日本ではEVの指数は31でしたが、今は再エネ+原子力の比率が3.11前の35%が17%まで落ちているため、52まで上昇しています。つまりHV58に対してEV52という状況です。これが中国になるとHV58に対しEV74。これは非効率な石炭火力発電を多く活用しているからです。皮肉なことにEV化を進めるほどにCO2が増えていくわけです。(勿論、中国には走行時の排ガスを減らしたいとか、自動車製造がより容易になって先進国との競争力の差をつめることが出来るなどのEV化への別の戦略がありますが)。一方、フランスは原発中心なのでEV指数はわずか3。EVでダントツにCO2を削減できます」
「いずれにしてもエネルギーとCO2、そして原発の必要性あるいはHVとEVの議論などは、部分最適論では全体最適の答えは出せないということです。我々はこの地球と人類の将来をしっかり見据えた議論で答えを出したいものです」  
現場に興味がないトップが会社をダメにする 2015/10/26
経営観につながる三つの出来事
――坂根さんの経営観を形づくるきっかけとなったのは、どのような出来事だったのでしょうか。
坂根 自分の経営観につながっているものをあげるとすれば3つの出来事です。まず、初任時の製図の仕事が嫌で、クレーム対応に自ら進んで出かけることで品質管理やサービスの重要性を体感したこと。2つ目が、ワンマン社長体制の下、上司であった役員と私の会社人生で最初で最後の大喧嘩をして組織のあり方について考えるようになったこと。そして3つ目が、二度目のアメリカ赴任で現地企業との合弁会社である小松ドレッサー(KDC)の再建を通じてアメリカ式の経営を知り、日本経営の強さと弱さを客観的に理解できたことですね。
――初任時の仕事は、そんなに嫌だったのですか。
坂根 本当に嫌でしたよ。開発担当と言えば聞こえはいいですが、要するに先輩たちが考えた新車の構想案・設計図から必要な部品一つひとつ図面に起こす作業。当時はコンピューターを使ったCADのようなシステムは無いので、設計図は鉛筆と定規を使って手で描くのが当たり前。私は大学では機械工学が専攻ですが、実はこの作業が大の苦手でした。当然の結果「坂根は仕事が遅い」と言われ、人事評価も最低ランク。当時のコマツでは、入社3年目くらいから評価が給料に少しずつ反映されるようになっていたのですが、同期と給与明細を見せ合うと私がいつも一番少なかった。
製図から逃げたい一心で、サービス部門からお客様のクレームに関する情報が届くと自ら手を上げて現場に行き始めました。お客様の現場で初めて製品の全体的な構造や実際の使われ方を知ることができたりして、これが後々、品質管理やサービスを軸にしたビジネスのあり方や「ダントツ経営」を模索するきっかけになっていきました。
――二つ目の上司との大喧嘩とは、どんなものだったのですか。
坂根 私がアメリカ駐在中の82年にコマツでは18年ぶりの社長交代がありました。かつて私も部下として仕えた期待の人でした。だが、社長として会社を根本から変えようとする意識が強すぎたのか、会社はあっという間にワンマン体制に変わってしまった。
実はこの時のアメリカ赴任から帰国してからの15ヵ月で、当時の会社のゴタゴタのしわ寄せを受け、6回もポストを変えられているのです。仕事はコマツにとって初めてとなる米国工場の準備室長や他社との提携といった大事な任務でしたが、私の会社人生で最も辛かった時期で、真剣に転職を考えたほどです。
この時のいきさつはこれまでどこでも話したことのない内容ですが、若い読者の人に将来何かのヒントになるかもと思い、あえてお話しします。
そういう社長の下には必ず虎の威を借りる人が出てきます。5回目に移った職場の役員だった上司もそうで、とにかく理不尽なことを押しつけてくる。ついに喧嘩になって「お前を他の職場に出す」と言われました。それで当時の人事担当役員に、「会社での喧嘩も両成敗でしょう。彼(上司)が何の責を受けず、私のみ転出するのは我慢ならないし、もし転出するなら国内のサービス部長を希望したい」と談判した。
結局、上司は子会社に転任し、私は希望どおり国内サービス部長になりました。サービスは私が米国駐在時代に経験した非常に大事な仕事ですが、日々の地道なオペレーションが主たる仕事で、経営とは距離が遠い。「坂根もついに飛ばされた」と見る向きもあったかもしれませんが、私としてはむしろ清々した気持ちでした。
ただ、この時の経験から、経営が暴走すれば先人が営々と築いてきた会社の強みや基盤があっという間に破壊されるという怖さを知り、その後組織づくりを考える基本的な発想になっていたように思います。
――KDCの再建を通じ、アメリカ式経営と日本式経営の両方の功罪を体験された。
坂根 KDCには社長兼COOとしての赴任でしたが、ここで経営の基礎を学ぶことができました。本当に貴重な機会でした。変動費の扱いをはじめアメリカ式経営の優れた手法を知る一方で、アメリカ式にはない日本式経営の現場力の強さの秘密も理解できるようになりました。その結果としてハイブリッド経営を考えるようになりましたが、KDCでの社長経験がなければ、こうした考え方をすることはなかったでしょう。  
東京一極集中の是正を 坂根正弘 2017/7
――現在の日本が抱える解決すべき問題は何か。
「デフレからの脱却と人口減少に対応するための地方創生だ。そのためには、中央集権と東京一極集中を、できるところから是正していく必要がある。大企業の本社機能の一部を地方の事業所に移転したり、新卒学生を採用する際に地方枠を設けたりして、『東京にいる方が何でも有利』という世の中の仕組みを変えていくことから始めていくべきだ」
――コマツの対応は。
「東京の本社にあった教育部門や(部品調達の)購買部門を石川県小松市に順次移転し、研修センターも新設した。学生の採用にも地方枠を設けている」
――移転の効果は。
「2014年の試算では、会議や研修などで世界中から年間約3万人が小松市を訪れ、地元のホテルや飲食業への経済波及効果は7億円に上った。また、30歳以上の女性社員の既婚率を調べたところ、東京の社員が50%だったのに対し、石川は80%。既婚の女性社員が産んだ子どもの数も、東京の0・9人に対し、石川は1・9人となっており、東京一極集中が人口減につながっていることが分かる」
――コマツのような動きは広がっていくと思うか。
「大企業の経営者が『東京にばかり集積していて良いのか』という問題意識を持てば、東京での一括採用などはすぐに変えられるはずだ。東京は全国からヒト・モノ・カネを集めて地方を疲弊させるのではなく、海外から集めることで国際都市として発展すべきだ」
――人材育成も課題だ。
「私は政府の『地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議』の座長をしているが、例えば、山口県は大企業の工場が多く、所得が高い。山口の特色の一つは工業高校が多い点で、九州では佐賀県や鹿児島県も同じ傾向だ。こういった各県の特色を把握した上での議論が必要で、大学だけでなく工業高校や高専のレベルをさらに上げれば、優秀な人材が生まれる」
――大学の役割は。
「地域の産業の特色を踏まえた『大学発ベンチャー(起業)』を九州でも盛んにすることだ。米国のように大学で起業して成功しようという人が増えれば、日本人に根強い『大企業志向』も変わりうる。官民ファンドの支援も必要だ」
――九州の未来に向け、他に求められることは。
「一つにまとまりやすい地理的特長と比較的大きな経済規模がある。どうデザインするかの全体構想を官民で合意し、具体的な行動を起こすことだ。福岡は九州全体をリードし、各県はそれぞれの特徴を踏まえた役割を果たして九州全域を振興していくべきだ」  
 
坂村健 

 

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坂村健 [ 1951 - ]
日本のコンピュータ科学者、コンピュータ・アーキテクト。工学博士(慶應義塾大学、1979年)、東京大学名誉教授、東洋大学教授・情報連携学部長。専攻での研究内容はダイナミックアーキテクチャだが、自ら提唱したTRONプロジェクトにてリーダー、またアーキテクトとして多種多様な仕様を策定している。東京都出身。
1971年 慶應義塾高等学校卒業
1974年 慶應義塾大学工学部電気工学科卒業
1979年 慶應義塾大学大学院工学研究科電気工学専攻博士課程修了(相磯研究室)工学博士。論文名は「問題適応型可変構造計算機の研究 」
1979年 東京大学理学部情報科学科助手
1986年 東京大学理学部情報科学科講師
1987年 東京大学理学部情報科学科助教授
1996年 東京大学総合研究博物館教授(研究部・博物情報メディア研究系、大学院理学系研究科情報科学専攻教授併任)
2000年 東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授
2017年3月 東京大学を退職、名誉教授
2017年4月〜 東洋大学教授(同大学 情報連携学部 情報連携学科、及び 情報連携学研究科)
その他
YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長(2001年1月より)
TRONプロジェクトリーダー(1984年より)

相磯研究室ではコンピュータ・アーキテクチャ、特にダイナミック・アーキテクチャ(LISPマシンに代表される高水準言語マシンなど、ハードウェアに限らない広い視野を持ったコンピュータ・アーキテクチャと言える。また当時、超LSI(VLSI)・超々LSI(ULSI)と呼ばれた集積度の向上及び Mead & Conway revolution(en:Mead & Conway revolution)も意識していた節がある)を専攻、その後コンピュータ科学的にはそういった方面の延長とも言える第五世代コンピュータプロジェクトの立ち上がり期(1980年代初頭)に関与しかけたが、それとは袂を分かつ恰好で、一般消費者の世界でブームとなったりしていたマイクロコンピュータに注目、特に(現代で言うところの)マイクロコントローラによる組込みシステムにより身の回りのあらゆるものがインテリジェントになるであろうというヴィジョンを持つようになり、1982年、依頼を得た「未来のオフィス」という30分のスライドショーにまとめ日本電子工業振興協会に提出した。
その後1983年頃にどのような経緯があったかは不明であるが、1984年6月に、前述のヴィジョンのためのコンピュータ・アーキテクチャなどを実現する目的を持ち、TRONプロジェクトを開始。TRONの名は「The Realtime Operating system Nucleus」の頭字語から。「Todaini itatokini tukutta Realtime Operating system Nucleus」とも、また、映画『TRON』を見た後の命名ではある、とも書いている。 
 
諸話

 

IoTの権威 坂村健が語る、オープンIoTと次世代の情報論 2017/1
坂村 健(さかむら けん) 東京大学大学院 情報学環 教授、工学博士
コンピュータアーキテクト(電脳建築家)。IoTの原型となるオープンなコンピュータアーキテクチャ構築のための「TRONプロジェクト」を1984年に開始。カメラ、モバイル端末、家電などの組込みOSとして世界中で多数利用されている。さらに家具、住宅、ミュージアム、ビル、都市などへの広範囲なデザイン展開を行っている。2002年よりYRPユビキタス・ネットワーキング研究所長を兼任。2009年より東京大学大学院情報学環 ユビキタス情報社会基盤研究センター センター長を兼任。2017年4月から東洋大学情報連携学部「INIAD」学部長就任。IEEE Life Fellow, IEEE CS Golden Core Member。2003年 紫綬褒章、2006年日本学士院賞、2015年 ITU150周年賞受賞。
○ 異なるメーカの製品がクラウドでつながる「オープンIoT」
1980年代から「TRONプロジェクト」をはじめ、IoT領域を最先端で研究し続けてきた坂村 健氏。2015年にはビル・ゲイツ氏らとともに「ITU(国際電気通信連合)150周年賞」を受賞するなど、世界のIT化に最も影響を与えた人物の一人と評されている。今回はその第一人者に、IoTの今と未来を聞いた。
- IoTという言葉はテレビなどでも少しずつ目にするようになりましたが、30年前を振り返ってみて現状をどのようにお考えですか。
坂村:IoTの構想自体は1980年代からスタートしていて、当時私は「HFDS(Highly Functionally Distributed System)」と呼んでいましたが、他にも「ユビキタスコンピューティング」や「サイバーフィジカルシステム」だったり、色々な呼び方があって、それが今すべてIoTという言葉に集約しつつあります。最先端の研究というものは、世の中に広まるまでに10年、20年単位の時間がかかる。理論上可能なものを実用化するためには、技術をはじめさまざまな環境の整備が必要になる。それがIoTでいうと通信環境です。ようやく30年経ってどこでも手軽に高速かつ大容量の通信が可能になってきた。しかも低価格で。そのようなインフラ面の充足とともに、IoTも研究フェーズを越えて、モノの中にコンピュータが入るようになり、それがインターネットにつながる時代になってきたということです。20年ぐらい前からアナログ電話を使って外出先から自宅の暖房のスイッチを入れるなんていう実験はしていましたから、考え方自体は新しいものではないんですが。今、さらに注目を集めているのは「オープンIoT」ですね。
- 「オープンIoT」とはどのような技術なのでしょうか。
坂村:今、市場に出てきているインターネットにつながる家電のほとんどは、そのメーカの家電と、そのメーカのアプリで完結している場合が多い。少し前にスマートハウスやインテリジェントハウスと呼ばれる商品が鳴り物入りで登場しましたが、すべての家電を同じメーカの製品で固めることが前提になっていた。でも実際そんな人っていないですよね。テレビはA社、エアコンはB社で、冷蔵庫と洗濯機はC社となると、それぞれが横でつながらないから、それぞれのアプリが必要になるわけです。だからマーケットは広がらなかった。それを受けて、今は単に機器がネットワークにつながっているだけではなくて、クラウドを経由させて、その中でそれぞれの機器をつなげよう、という動きが出ている。それを「オープンIoT」と呼んでいます。
異なるメーカの製品をそれぞれ直接つなげるというのは、規格の標準化などの必要があって非常に難しい。だからすべてをクラウドにつなげて、その中であらゆる処理を行えばいいという考え方なんです。クラウドの中ならあとはソフトウェアの問題だけになるので。これは通信速度がものすごく速くなった今の時代だからこそ現実になってきた話であって、しかもそういった通信も含めて、機器の制御が小さなマイコン1チップでできる時代なので、そういった環境面の進化は非常に大きい。今の家電って、情報処理系のOSやタッチパネルを組み込んだりしていて、どんどん豪華なものにしようとしていますね。でもそれでは値段が上がってしまうので普及しない。ネット時代の家電はそのような作り方ではダメ。高機能なものはぜんぶクラウドで処理して、家電としては最低限の機能だけにする。メーカ側もそのあたりの考え方を変える必要があるのではないかと思いますね。
- 今後「オープンIoT」はどのような領域への展開が考えられますか。
坂村:家電IoTの他というと医療の領域での応用が注目されていて、例えばもうすでに「バイタルメーター」というものがありますね。心拍数や歩数とか消費カロリーなどの情報を腕時計ぐらいの小さなデバイスからとることができる。その情報が健康診断の結果などのデータと一緒になって、先ほどのオープンの考え方でクラウドに蓄積されるとビッグデータになる。それを解析することによって、他の人とのデータと比較ができるようになって、例えば心筋梗塞になった人はどういう傾向かが分かったり、逆に統計データから似たようなパターンの人に警告を出すことが可能になります。ただ今の日本は、制度が追いついていない。IT時代の制度になっていないんです。それはプライバシーに対する考え方ももちろんありますが、例えば病院が違ったらカルテは渡さないし、住民票データの移動も簡単にはできない。市町村ごとにシステムが違うから紙ベースで非常にアナログで手間のかかる手続きが必要になる。世界がどんどん進んでいるのに、未だにハンコを使っているような日本は置いていかれるでしょうね。
- 他の先進国における「IoT」を活用した事例を教えてください。
坂村:北欧などでは、いわゆるマイナンバーを国民に付与して、それをさまざまな行政サービスに活かしています。例えば入院するときなどは、ナンバーを渡してしまえば書類に名前や住所や過去の病歴などを書く必要がないし、子供が産まれたら、医者が政府のクラウドサーバにアクセスして自動的にナンバーを割り振ります。日本は出産時や結婚時もいまだに書類の提出が必要ですよね。向こうではそんな煩わしい手続きはもうやっていないんです。そして子供が義務教育を受ける年齢になったら、自動的に学校案内のメールが来るようになっている。日本においてこういったシステムが浸透しないのは、テクノロジーというより制度の問題が何よりも大きいんです。
ドイツでは「IoT」を応用したインダストリー4.0というプロジェクトが進んでいます。簡単に言うとトヨタのカンバン方式を、国を挙げてやる、ということなんですが、無駄な輸送をやめるために、組立工場で組み立てを始めるときにジャストインタイムで部品を積んだトラックが到着する。そうすれば倉庫が不要となります。そのような計画を進めていて、これは国家規模の話だから、やっぱりキーワードは「オープン」ということになる。日本企業はまだまだクローズで、自分たちだけのためのシステムというのは分かるんだけど、ある意味共存していくためには“つながること”が重要だと思います。連携していくことで、生産性も上がっていくし、社会も変わっていきます。
- IoTは人工知能(AI)の領域とも深い関わりがあるかと思いますが、そのあたりについてお聞かせください。
坂村: 「オープンIoT」の考え方ではクラウドにものすごい量のデータが集まってくる。それがビッグデータになるわけですが、その解析は人間にはもう無理。だからコンピュータを使うしかないわけで、今注目されているのがAI、ディープラーニングや機械学習というものですね。AIの研究はとても歴史が長いんですが、今までなかなかブレイクできなかった。でも3年ぐらい前に畳み込みニューラルネットワークっていうのが出てきて、これは膨大な量のデータがあることが前提だったので、ちょうど「オープンIoT」でビッグデータが取れるようになりつつある今の状況とすごくタイミングがよかったんです。そのような意味で今、AIは世界中の研究者が競い合っている領域で、これまで限界と言われていたことを最前線でチャレンジするっていう姿勢がAIの研究者としては正しいと思います。AIには限界があるなんてことを言う人は、全員怪しいと思ったほうがいいぐらいです(笑)。
- 坂村教授が今取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。
坂村: AIの領域もそうですが、今、日本は世界からどんどん置いていかれつつある。そもそもこのIT時代において、そのスピード感に付いていけるような人材が全国的に不足しているということで、2017年4月に、東洋大学に新しい学部として情報連携学部「INIAD(Information Networking for Innovation and Design)」を設立します。私が学部長となるわけですが、赤羽に2,000人弱を収容できるIoT化された次世代型のキャンパスをつくって、そこでプログラミングをはじめとしたコンピュータ・サイエンスの教育をベースに、ビジネス、デザイン、エンジニアリング、シビルシステムといったことを学ぶ環境を整えています。一般的な大学における一般教養とは異なって、1年次ではコンピュータとコミュニケーションスキルを教育し、その後も文・芸・理が一体となった教育で、イノベーションを創出できるような人材の育成を目指しています。その他にも、国と進めているプロジェクトがありまして、「OPaaS.io おもてなしプラットホーム」というものをつくろうとしています。個人情報をどう使うかっていう考え方は、日本は未だに「CRM(Customer Relationship Management)」といって、メーカや販売店が顧客情報として管理しているのが一般的ですね。
一方で世界がどうなっているかっていうと「VRM(Vendor Relationship Management)」を目指してきていて、これはユーザが自身の情報の提供先を選択する考え方。情報の管理自体は消費者主導で行う。これを日本でもやろうとしていて、総務省とともにプロジェクトを進めています。2020年のオリンピックを見据えて、国民はもちろん海外からの観光者にとっても有益なものを目指しています。人材面もそうですが、日本をIoT先進国にするために、今後もいろいろなプロジェクトに関わっていくつもりです。 
IoT技術開発で出遅れる日本 「TRON」の坂村氏に聞く 2018/1/15
「IoT」という言葉が誕生してから20年近くたつ。日本では次世代高速通信「5G」などを通じIoT社会の実現が近づくが、世界との開発競争は激しさを増している。1980年代にIoTの先駆けとなる国産基本ソフト「TRON」を開発した坂村健・東洋大学情報連携学部長にIoTの現状と日本が進むべき方向性を聞いた。
――IoTとは何か、改めて教えてください。
「直訳すればあらゆるものがインターネットにつながるということ。世界的にはインターネットのようにつながるというのが正しい認識だろう。つまり、インターネットはオープンで、TCP/IPという通信手順に乗せればパソコンもスマートフォン(スマホ)もつながる。このオープンというコンセプトが重要だ」
「ものをつなぐ研究は20〜30年前からやっていた。『TRONプロジェクト』は80年代からで、2000年代になるとあらゆる人たちが『ユビキタス・コンピューティング』『パーベイシブ・コンピューティング』『M2M』などいろいろな名前で挑戦した。そうしたなかで方式を統一するのではなく、名前は同じほうがいいということでIoTという言葉が生まれた」
――IoTは日本と米国との差が広がっています。
「日本企業はインターネットへの対応を間違えたからだ。家電をつなぐ『ホームオートメーション』がはやったが事業的にはうまく立ち上がらなかった。一番大きな理由は自社製品しかつながらなかったからだ」
「世界の関心が(外部事業者がシステムに接続できるように仕様を公開する)『オープンAPI』に集まるなか、製品の性能がいくら良くても囲い込んだらダメだ。一番問題なのはインターネット時代の開発に対する理解が技術者にはあるだろうが、経営者にはないことだ。囲い込みによる過去の成功体験が頭にあるからだ」
――IoTに限らず、日本で生まれた技術の事業化で出遅れる例が多いです。
「米国は最先端の研究が受け入れられ、10年かけてやるしぶとさがある。日本はすぐにものにならないと納得せず、長期計画を立てるのがうまくない」
「日本は勉強しないのにものを言う人も多い。(人工知能が人間を上回る技術的特異点)『シンギュラリティ』について米国では哲学的な論争をしてきた時に、そんなことが起こるわけがないとバカにした。これではついていけない。全世界でクラウドで戦えるのはアマゾンやグーグル、マイクロソフト、IBMで日本企業は入っていない」
――IoTは中国との差も縮まってきています。
「中国はモバイル決済やシェアリング経済の新興企業がどんどん生まれている。アリペイとウィーチャットペイが台頭し、故宮博物院が現金でチケットを買えなくしたり、ホームレスがスマホでお金を受け取ったりしている。モバイクは全地球測位システム(GPS)を搭載したシェア自転車を開発し、好きな場所で乗り捨てできる。これこそまさにIoTだ」
――日本は今後どうすべきでしょうか。
「日本の法律は大陸法で、やっていいことが書かれているので変えるのに時間がかかる。インターネット時代に対応できていない。かなり厳しい環境だ。新たな技術を実証実験する戦略特区の重要度は高い。競争して成果を出した人に成功報酬を出す『Xプライズ方式』の開発も大事だ」

総務省がまとめた主要10カ国・地域のIoT製品・サービスのシェアなどから算出した「IoT国際競争力指標」(2016年実績)で日本は2位だった。首位の米国との差は開く一方、3位の中国とは僅差だった。日本は多くの製品・サービスでシェアが低下傾向だ。研究開発費の国別シェアも日本は20%と、中国の8%を上回るが、米国の44%との差は大きい。両国のIoTを巡る動きは、坂村氏の周辺を見ても活発だ。米電気電子学会(IEEE)はTRONを世界標準規格とすべく坂村氏と著作権譲渡契約を結び、中国政府は青島市で「TRON×IoTショールーム」を開設した。電子情報技術産業協会(JEITA)がIoTの世界市場規模は30年に404兆円と倍増すると予測するなか、IoTの先駆けとなる技術を生み出した日本が好機をとらえきれるか。現状は迫力不足が否めない。 
 
竹中平蔵

 

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竹中平蔵 [ 1951 ‐ ]
日本の経済学者、政治家、実業家。東洋大学教授、慶應義塾大学名誉教授。専門は経済政策。参議院議員(1期)、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、内閣府特命担当大臣(金融)、総務大臣(第6代)、郵政民営化担当大臣、東京財団理事長等を歴任。
2016年4月から2017年3月まで東洋大学国際地域学部国際地域学科教授、2017年4月から東洋大学国際学部グローバル・イノベーション学科教授 兼 グローバル・イノベーション学研究センター長、関西大学会計専門職大学院客員教授。パソナグループ取締役会長、オリックス社外取締役、SBIホールディングス社外取締役、森ビルアカデミーヒルズ理事長、日本経済研究センター研究顧問、外為どっとコム総合研究所主席研究理事、特定非営利活動法人万年野党アドバイザリーボードメンバー、一般社団法人外国人雇用協議会顧問、一般財団法人教育支援ローバル基金(BEYOND Tomorrow)アドバイザー、新生ホームサービス株式会社特別顧問、内閣日本経済再生本部産業競争力会議(民間)議員、内閣府国家戦略特別区域諮問会議(有識者)議員、RIZAPグループ経営諮問委員会委員等を務める。
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1951年 和歌山県和歌山市生まれ
1969年 和歌山県立桐蔭高等学校卒業
1973年 一橋大学経済学部卒業
 〃  日本開発銀行入行
1977年 同設備投資研究所
1981年 ハーバード大学、ペンシルバニア大学 客員研究員
1982年 大蔵省財政金融研究室 主任研究官(〜87年6月)
1987年 大阪大学経済学部 助教授(〜89年1月)
1989年 ハーバード大学 客員准教授
 〃 国際経済研究所客員フェロー
1990年 慶應義塾大学総合政策学部 助教授
1996年 同 教授
1998年「経済戦略会議」(小渕首相諮問会議)メンバー
2000年「IT戦略会議」(森首相諮問機関)メンバー
2001年「IT戦略本部」メンバー
 〃 経済財政政策担当大臣
2002年 金融担当大臣・経済財政政策担当大臣
2004年 参議院議員当選
 〃 経済財政政策・郵政民営化担当大臣
2005年 総務大臣・郵政民営化担当大臣
2006年 慶應義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長
 〃 社団法人日本経済研究センター研究顧問
 〃 アカデミーヒルズ理事長
2009年 株式会社パソナグループ 取締役会長
2010年 慶應義塾大学総合政策学部 教授
2013年 産業競争力会議 メンバー
2014年 国家戦略特別区域諮問会議 メンバー
2015年 オリックス株式会社 社外取締役
2016年 東洋大学国際学部教授・慶応大学名誉教授
2016年 SBIホールディングス株式会社 社外取締役
2016年 未来投資会議 メンバー
経歴
生い立ち
和歌山県和歌山市小松原通りにある商店街の小さな履物小売商の次男として、1951年(昭和26年)に生まれる。実家は近所では比較的裕福な家庭で、おじは和歌山で小さなメガネ屋を経営していた。ミサワホーム社長の竹中宣雄は実兄。和歌山市立吹上小学校、和歌山市立西和中学校、和歌山県立桐蔭高等学校に進む。1973年(昭和48年)に一橋大学経済学部を卒業。大学では国際経済学の山澤逸平ゼミに所属。また、大学のマンドリンクラブで指揮者を務めながら、プロの奏者から打楽器を習ったり、編曲を行い、音楽家を目指したが断念。仁坂吉伸和歌山県知事とは高校の同級生である。
日本開発銀行設備投資研究所で初代所長を務めていた下村治にあこがれ、大学を卒業し同行に入行。1977年(昭和52年)、同所勤務、1981年(昭和56年)、ハーバード大学、ペンシルベニア大学客員研究員。ハーバード大学留学中は設備投資に関する合理的期待の実証研究を行った。1982年(昭和57年)、大蔵省財政金融研究室(後、独立機関「―財政金融研究所」となる)に出向し、次席主任研究官となる。当初2年の予定だったが、行動力がありローレンス・サマーズやジェフリー・サックスの知り合いだった竹中を気に入った長富祐一郎次長(のちに大蔵省関税局長)の希望で、5年間研究官を務めた。長富からは研究所への移籍をすすめられたが、これを断っている。ちなみにこの時の部下の一人が高橋洋一であった。研究所在籍中の1984年(昭和59年)には留学中の研究成果をまとめた『開発研究と設備投資の経済学』(東洋経済新報社 1984年7月)と題す著作でサントリー学芸賞を受賞(ただし佐々木実『竹中平蔵 仮面の野望(前編)』(月刊現代2005年12月号)では当時の設備投資銀行の同僚の鈴木和志(現在明治大教授)や日本開発銀行での同僚高橋伸彰(現在立命館大教授)の実証分析の結果を無断で使用していた事実が指摘されている)。当時の同研究所には、次長の長富祐一郎や筆頭主任研究官の吉田和男がおり、同僚として植田和男、高橋洋一がいた。大阪大学経済学部教授を務めていた本間正明の誘いで、1987年、大阪大学経済学部助教授に就任。以降研究者としての道を歩む。しかし、母校の一橋大学に前述した論文『開発研究と設備投資の経済学』を提出し経済学博士の取得を試みたものの、「あまりに初歩的すぎる」などとの意見が出て教授会での審査に不合格となる。この教授会の決定について、竹中の指導教官だった山澤逸平は、一橋大の失態であると後年述べている。1994年、大阪大学にて博士(経済学)を取得(論文名『日本経済の国際化と企業投資』)。
1989年(平成元年)、日本開発銀行を退職、ハーバード大学教授を務めていたジェフリー・サックスの誘いでハーバード大学客員准教授及び国際経済研究所客員フェローに就任。1990年(平成2年)に慶應義塾大学総合政策学部教授を務めていた加藤寛に誘われ、慶應義塾大学総合政策学部助教授に就任。1993年(平成5年)にアメリカ合衆国に移住。この年に出版された小沢一郎の日本改造計画の執筆に参加。コロンビア大学ビジネススクールにある「日本経営研究センター」(所長はパトリック・ヒュー教授)の客員研究員になる。1994年(平成6年)に大阪大学より博士号を取得。1996年(平成8年)に帰国、同年、慶應義塾大学教授に就任。日本船舶振興会(現日本財団)の交付金で設立された基本財産397億円のシンクタンク「国際研究奨学財団(1999年から東京財団に改組)」の理事に1997年(平成9年)に就任、1998年(平成10年)に同常務理事、1999年(平成11年)に東京財団理事長。1998年(平成10年)に同財団内に設けられた「インテレクチュアル・キャビネット政策会議」では、(影の)総理に香西泰(後に政府税制調査会会長)、官房長官に島田晴雄(慶應大教授)と竹中、財政担当大臣に本間正明(大阪大教授、後に政府税制調査会会長)と吉田和男(京都大教授)、金融担当大臣に池尾和人(慶應大教授)と岩田一政(東京大教授、後に日本銀行副総裁)らが名を連ねた。これは実質竹中による政策会議で、自民党議員との交流会も頻繁に開かれ、竹中の紹介で小泉純一郎と会ったメンバーも多くいた。また日本興業銀行経営アドバイザーや、フジタ未来経営研究所(日本マクドナルドのシンクタンク)理事長、アサヒビール社外取締役等も務めた。
小渕政権
1998年(平成10年)7月、小渕内閣の経済戦略会議(議長:樋口廣太郎)の委員に就任。議長代理の中谷巌を中心とした学者グループの一員として、戦略会議の理論的支柱を形成した。この経験が、のちに竹中が経済財政諮問会議を切り回す土台となったとする説もある。会議の結論としては、日本の短期経済政策には金融健全化と大胆な財政出動を伴う追加的景気政策が必要とし、内閣総理大臣小渕恵三に対し「10兆円を大きく上回る規模の追加的財政出動」などを提言した。その後、「日本経済再生への戦略」と題した答申を発表した。
森政権
森内閣発足により設置されたIT戦略会議にて委員を務める。森内閣が推進するe-Japan構想に対しさまざまな提言を行った。
小泉政権
2001年(平成13年)の第1次小泉内閣で経済財政政策担当大臣とIT担当大臣。2002年(平成14年)の第1次小泉第1次改造内閣では経済財政政策担当大臣として留任し、また、金融担当大臣も兼任する。2003年(平成15年)、第1次小泉第2次改造内閣においても留任、内閣府特命担当大臣として金融、経済財政政策を担当。2004年(平成16年)7月、第20回参議院議員通常選挙に自民党比例代表で立候補し70万票を獲得しトップ当選(史上唯一人の現職民間人閣僚たる新人参院候補)。同年9月、第2次小泉改造内閣において、参議院議員として内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、郵政民営化担当大臣に就任。小泉内閣の経済閣僚として、日本経済の「聖域なき構造改革」の断行を標榜する。日本振興銀行に異例の速さで銀行業免許付与。2005年(平成17年)9月、第3次小泉内閣においても役職はそのままで再任。同年10月、第3次小泉改造内閣においては総務大臣兼郵政民営化担当大臣に就任。NHKの完全民営化にも乗り出したが、首相の小泉純一郎が民営化に否定的な見解を示した為、頓挫する。2006年(平成18年)9月15日、任期を4年近く残し政界引退を表明。同年9月28日、参議院本会議で辞職許可(これに伴い神取忍が比例繰上当選)。同年11月1日、自民党党紀委員会において9月29日に提出していた離党届が了承された。さらに同日、慶應義塾大学に復帰することが明らかにされた。 国務大臣の在任期間1980日(2001年4月26日 - 2006年9月26日)は戦後の連続最長在任記録である。
小泉政権後
小泉政権後は、慶應義塾大学総合政策学部の教授のほか、同大学グローバルセキュリティ研究所所長、日本経済研究センター特別顧問、同センター研究顧問、森ビルのアカデミーヒルズ理事長、関西大学会計専門職大学院の客員教授を務めている。河野太郎、山本一太、世耕弘成らが結成した勉強会「プロジェクト日本復活」では顧問に就任している。また、人材派遣業のパソナにて特別顧問を務めたのち、同社の親会社であるパソナグループの特別顧問を経て取締役会長に就任した。
顧問団
2008年には韓国政府のアドバイザーとして顧問団に迎えられ、李明博という人物の颯爽と物事に対応する姿勢や前向きな政策論など、李明博が持つ並外れた強さに大いに感銘を受けたと語っている。
公募委員
2012年9月、日本維新の会が、2012年衆院選の候補者を、選定するための「公募委員会」委員長に起用された。
安倍政権
第2次安倍内閣では、2013年1月8日、日本経済再生本部の「産業競争力会議」メンバーに内定。現在は、民間議員という立場にある。2014年1月からは、内閣府に置かれた、国家戦略特区の特区諮問会議メンバーとしても、活動をしている。2014年1月6日、田原総一朗、宮内義彦ら共に、NPO法人の万年野党を設立。5月31日、国家戦略特区のシンポジウムを東京・六本木で開催した。2015年には、オリックス社外取締役及び新生ホームサービス株式会社特別顧問に就任した。2016年、慶應義塾大学を定年退職し、東洋大学国際地域学部教授及び同大学グローバル・イノベーション学研究センター長、SBIホールディングス社外取締役。また、藤田勉一橋大学特任教授の誘いで、RIZAPグループ経営諮問委員会委員に就任。
政治家として
金融再生プログラム
金融再生プログラムは通称「竹中プラン」と呼ばれ、不良債権処理を推進すると就任時に演説した小泉総理の命を受け、経済財政政策担当大臣に着任、その後の内閣改造では金融担当大臣を兼務した。竹中の手により不良債権処理プログラムが作成され、銀行の資産査定についてDCF法を採用し厳格化すること、繰延税金資産の計上を適正化すること、自己資本比率の劣る銀行は公的資金を注入することなどの方針が定められた。資産査定を厳格化した結果、りそな銀行の自己資本比率は基準を下回り、足利銀行は債務超過であることが判明した。これらの銀行は預金保険機構により公的資金注入を受け、また粉飾会計を行っていた経営陣は後に刑事告発され有罪判決を受けた。
研究開発費の一律費用処理
会計基準の見直しにより、繰延資産の「試験研究費」を廃止し、研究開発費の一律費用処理を求めた。これについて、田淵隆明はSAPジャパンのコラムや衆議院の消費税の公聴会などで、我が国の製造業の弱体化と人材の流出の元凶であるとして早期の是正を求めている。研究開発投資は設備投資よりリスクが高いとみるのが一般的である。しかし、研究開発投資と同様、設備投資も失敗に終わることは珍しくなく、そうした場合は未償却部分を減損損失として処理し、最悪の場合には埋没費用として処分のための新たな費用を計上する。これらのことを鑑みれば、設備投資に準じて扱うべき研究開発投資が多々存在することもまた事実である。ところが、日本では単年度ベースでの一律費用処理を求めることとなったため、製造業の弱体化と人材の流出の元凶となっているというのが田淵の主張の主旨である。田淵によれば、G7では日本を除く英・仏・独・伊はもちろんのこと、米・加でも償却資産として資産計上することが可能となっている。実務的には、多くの研究開発案件を抱える大企業は研究開発費用を経年で平準化させ得るが、対外的に収益性を重視せざるを得ない中小企業(近々の株式公開を目指していたり銀行融資に対する旺盛な資金需要を有する伸び盛りの企業等)では、研究開発費の一律費用処理はむしろ悩みの種となる。このためこの問題は現在でも論議を呼び起こしている。
郵政民営化
郵政解散後の第3次小泉内閣にて総務大臣兼郵政民営化担当大臣に登用され、法案作成に携わった。これは郵貯・簡保の資金を外資に売り渡すためであったと批判されている。 三ヶ月間の政府与党協議では特に徹底して罵詈雑言を浴びせられ、 前任の総務大臣である麻生太郎とは激しく対立し麻生からは「あんたは霞ヶ関に嫌われている。あんたが言うから、皆反対に回る」、また官邸閣議では参加者から「いつか仕返ししてやる」と吐き捨てられた。当初、野党民主党は欠席戦術を敷いていたが、郵政解散後は審議に参加するようになった。
税制
戦後日本の極端な累進課税制は“悪しき結果平等”の価値観を普及させたとして、資本・労働など生産要素に対する課税を大幅に低下させ、かつ税率をフラット化する「フロンティア型の税制」を推奨しており、各労働の潜在能力を積極的に発揮させる意味で、所得税の最高税率を引き下げることが緊急の課題であるとしている。 サラリーマンのうち30%は所得税を一銭も払っておらず、勤労意欲を失うような税制にすべきではない、価値を産みだしている人を罰するつもりでないのなら、税にあまり差を付けない方がいいとしている。また、将来的には、収入に関係なく一律に課税する人頭税へ切り替えることを視野に入れた議論を行うことも必要だとしている。
格差問題
「改革で格差が広がったということはない」と発言している。OECDの統計では、構造改革期に格差が縮小したことが示されている。「金持ちを貧乏人にしたところで、貧乏人が金持ちになるわけではない」というマーガレット・サッチャーの言葉を引用して、高い所得を得ている人がいること自体は解決すべき問題ではなく、努力しても貧しい人たちに社会的救済が必要であると述べた。ゆえに格差論ではなく、貧困論を政策の対象にすべきとしている。また、「格差ではなく、貧困の議論をすべきです。貧困が一定程度広がったら政策で対応しないといけませんが、社会的に解決しないといけない大問題としての貧困はこの国にはないと思います」と述べた。ただし、政府として貧困調査をきちんとすべきであると発言している。労働政策については、今日本に一番求められているのは積極的労働市場政策だとし、「団塊の世代の中間管理職が失業すると仕事はない理由は簡単で、役に立たないからです」としている。非正規雇用については、正社員と非正社員の区別自体が妥当でない、オランダのように全員を正社員にするべきであると述べた。また、「問題は、今の正規雇用に関して、経営側に厳しすぎる解雇制約があることだ」と主張し、「解雇規制を緩和する、新たな法律を制定することが必要だ」と述べている。「安倍晋三内閣で同一労働同一賃金の法制化を行おうとしたが(労働ビッグバン)、既得権益を失う労働組合や、保険や年金の負担増を嫌う財界の反対で頓挫した」と述べ、経済的不平等の改善には改革が急務であると主張している。「格差が拡大する、それほど激しい競争は日本社会にはない」とし、「ほとんどが制度的な格差ですよ」と述べている。
「アメリカ追従」批判
郵政民営化など、竹中が進めた経済政策について、「アメリカのいいなりの経済政策を行っている」(対米従属)という批判に対し、竹中は「民間でできることは民間でやることが国民や国全体のためになるという思いでやっている」(官から民へ)、「アメリカのためにやるなどと考えたこともない」などと答弁した。また、「規制緩和で既得権を失う人たちが、私のことを憎いと思って、そういう感情的なレッテルを無理矢理貼っている。これは抵抗勢力の常套手段です」とも発言している。ノーベル賞経済学者ジョセフ・E・スティグリッツから寄せられた批判では、ワシントン・コンセンサスの実現によって「格差社会」が世界中に広がっているとされ、その中で竹中の経済政策も槍玉に挙げられた。郵政民営化は小泉就任前の持論であっただが、野党は米国政府からの「年次改革要望書」などで示されるアメリカの要望に基づいたものではないかと批判し、これに竹中は「だれがどうこう言ったからということではなくて、国民の経済厚生を高めるために改革を行うという点に基づいて私は改革を進めている」、「郵政の問題について外国の方から直接要望を受けたことは一度もない」「報告書の内容をこれまで読んだことはなかった」と言明した。民主党の櫻井充は、米国通商代表ロバート・ゼーリックから竹中へ宛てた再任祝いの手紙を公表し、それに絡めて民営化された郵政会社がアメリカに買収される可能性を指摘し「拙速にこういう民営化など必要ない」と主張したが、竹中が個人私信であるレターのコピーを何故持っているのかと切り返したところこれは撤回された。また「新自由主義者」と呼ばれる事に対し、「郵政事業の民営化はオランダでもドイツでもイタリアでも実行されたが、だから新自由主義だなどと評された例はない。私のどこが新自由主義者なのか」「新自由主義だからウンヌンではなく、各論を論議すべき」と発言している。
発言
「賃金も下がらなければならない。」
自著『竹中平蔵の「日本が生きる」経済学』(106頁)において、次のように述べている。「物価が下がることはよいことであるが、本来ならそれに応じて賃金も下がらなければならない。ところが、現実は賃金は下げられない。売り上げが下がっても賃金は下げられないため、企業収益に対する労働分配率が上がってしまった」また、竹中は「グローバリゼーション・技術革新によって、相対的にモノが安くなること(相対価格の下落)はよいことである。ただし、物価全体(一般物価)が下がり続けるという状況は避けなければならない」と述べている。
「ETFは絶対儲かる」発言
2003年(平成15年)2月7日、閣僚懇談会において、各閣僚に上場投資信託(ETF)を積極的に購入するよう要請した同日の記者会見において、記者からETFを買いますかと問われた際、絶対もうかると思うから買うという趣旨の発言をした。この竹中の発言は、金融市場を監督する内閣府特命担当大臣(金融担当)であるにもかかわらず特定の金融商品の有利性を喧伝している、ETFは元本が保証されない金融商品であるのに「絶対儲かると思うので買う」と発言するのは問題があるなどと批判された。第156回国会では野党を中心に批判が強まり、仮に証券外務員が顧客に対してこのような発言をすれば違法行為になる、金融のトップがお墨付きを与えたと受け取られるような発言が悪用される恐れがある、などと批判がなされた。まず衆議院財務金融委員会では、五十嵐文彦から「証券会社の営業マンが、絶対もうかるから買いなさいと言ったら、これは言ってはいけないこと」と指摘がなされたうえで、証券会社の従業員が自ら発言せずとも竹中の発言を援用して金融商品を販売した場合、問題になるのではないかと質された。同様に、衆議院本会議において、山花郁夫から「金融担当大臣としてこうした発言をすれば、どこかで悪用されることは十分にあり得る」と批判され「仮に、証券会社の営業マンが、ホームページに掲げられていた旨を告げ、あるいは、そのホームページのコピーを示してETFの勧誘を行った、こういうケースの場合、証券取引法四十二条その他関係法律に違反する」と指摘された。竹中は当初、「絶対もうかるから買いなさいというような趣旨で言ったのではなく、(記者に)買いますかというふうに聞かれて、投資家として絶対もうかると思っており、買うと言ったのだから訂正云々という問題ではない」としていた。同年2月14日の国会審議にて「誤解されかねない部分があったという面においては、必ずしも適切ではなかった」と自身の発言に問題があったことを認めた。また、証券会社が竹中の発言を引用した場合の是非についても、竹中は「証券会社の外務員等が顧客にETF購入を勧誘する際、私の発言を引用し、悪用して、ETFの価格について断定的判断を提供して勧誘していると認められるような場合には、証券取引法に違反する」と認め、誤解を招く可能性があったとして謝罪した。一連の騒動について、内閣官房長官福田康夫は、「公の場での発言としては多少問題があった」との見解を示した。同日、竹中は金融庁のウェブサイトから該当発言を削除した。なお、ETFの価格はこの発言から竹中が政界を引退する2006年までに概ね2倍以上に値上がりした。
「民営化された日本郵政はアメリカに出資せよ」発言
BS朝日・朝日ニュースター放送の番組『竹中平蔵・上田晋也のニッポンの作り方』にて「民営化した日本郵政はアメリカに出資せよ」との見解を語った。米国のバブル経済が崩壊し、サブプライムローンに端を発した問題が顕在化し始めていたさなかの2008年4月の番組にて提案している。竹中は一連の問題を「サブプライムローンそのものが悪いわけではない、リスク管理が甘く慎重に審査して貸しつけていなかった、一義的には金融機関が経営に失敗したということ、銀行としては証券化してリスク分散したはずが、結果的にリスクが社会中に広がってリスク拡散になってしまった。それが今回のサブプライム問題の本質。」「一番の責任者をグリーンスパン前FRB議長が行ったことに問題があったという穿った見方も強いが、誰かに責任を着せるのではなく前向きに対処を考えていかなければいけない。問題は誰にも予想できなかったこと。」と一連の問題を評した上で「民営化した郵政はアメリカに出資せよ」との見解を語った。「そこで今回ニッポンの作り方として『民営化された日本郵政はアメリカに出資せよ』と申し上げたい。ある国が政治的な意図をもってアメリカの金融機関を乗っ取ってしまったら、アメリカ経済が影響を受けるのではという懸念も出てきている。日本郵政は民営化したので、今はSWFではない。だからアメリカから見ると安心して受け入れられる民間の資金。アメリカに対しても貢献できるし、アメリカの金融機関に出資することで新たなビジネスへの基礎もできる。」として郵政マネーをアメリカへ出資すべきとの見解を語った。
「too big to fail」発言
ニューズウィーク2002年10月16日号で「四大銀行であっても、“too big to fail”(潰すには大き過ぎ)の考えはとらない」と発言し、日経平均株価を暴落させた。マスコミも「金融システムの安定に責任を持つ金融相の発言としては、軽率極まりない。片岡直温蔵相の失言が引き金になった昭和二年の金融恐慌を想起させる(読売新聞社説)」と批判し、国会で追及された。「誤解を招いたとしたら不徳の致すところだ」と陳謝しつつ、「そんな発言はしていない」と弁解。その後、メガバンクを含む金融機関の再編が進み、竹中が政界を引退する2006年までに金融システムは安定化した。
日本経済は余命3年
書籍『日本経済 余命3年』の中で竹中は「日本経済は余命3年」との見解を示した。著書は池田信夫、土居丈朗、鈴木亘との共著で、2010年11月にPHP研究所により出版された。この中で「2012年-2013年までが最後のチャンスとし、政府の債務残高は今後2、3年で約1100兆円に達する見込みで、このまま家計の純資産1100兆円を上回る国債発行がなされると、国内貯蓄で政府債務を吸収できなくなり、債券安・株安・円安のトリプル安になり日本は財政破綻へ向かうであろう」との見解を語っている。
不良債権は1.5倍に増え、失業率も急騰するけれども、その後に成長できる
2012年7月8日の投資家向けセミナー(当時は2007年7月の半値に日経平均株価が低迷していた)において、次のように発言。「(雇用調整給付金を止めれば)不良債権は1.5倍に増え、失業率も急騰するけれども、その後に成長できる。」
若者には貧しくなる自由がある。そのときに頑張って成功した人の足を引っ張るな
東洋経済でのインタビューで次のように述べた。「(若い人に1つだけ言いたいのは)みなさんには貧しくなる自由がある」「何もしたくないなら、何もしなくて大いに結構。その代わりに貧しくなるので、貧しさをエンジョイしたらいい。ただ1つだけ、そのときに頑張って成功した人の足を引っ張るな。」
将来の大きな痛みを回避するため、いま(増税という)若干の痛みを我慢する
2014年9月17日、岐阜信用金庫の取引先若手経営者が主催した講演会の中で、消費税増税の経済への打撃は若干あるとの認識を示しつつも次のように語った。「将来の大きな痛みを回避するため、いま若干の痛みを我慢する。影響を打ち消すような改革を実行し、経済を筋肉質にすべき」
正社員をなくせばいい
2015年1月1日テレビ朝日の‪朝まで生テレビ!‬に出演した際に「正社員をなくせばいい」と発言したことが話題になっている。 非正規社員であっても正社員と同じ賃金や待遇を得られる「同一労働・同一賃金」の制度が必要だと主張している。
トラブル
木村剛との関係
金融担当大臣時代に、自ら木村剛を選び金融庁顧問にした。その為、木村と深い連携関係にあり、互いを擁護する発言を続けていた。小泉・竹中・木村剛ラインと言われた。竹中が2004年(平成16年)の第20回参議院議員通常選挙に立候補した際は新橋で応援演説を行った。木村が理事長を務める『フィナンシャルクラブ』の最高顧問を竹中が務めていた。木村が立ち上げた日本振興銀行を推したのも竹中。
高杉良の経済小説には、竹中・木村と竹中の側近であった岸博幸の3人が、日本の経済政策を誤った方向に導く人物として仮名でたびたび登場している。
住民税脱税疑惑
1993年から1996年の4年間にわたって住民票を米国に移動させることにより日本の住民税を免れていた(フリーライド)のは脱税ではないかとの疑惑を写真週刊誌『フライデー』が2002年に報じた。この疑惑は国会で追及され、竹中はその期間に関しては米国に住居を所有し、一年のうち日本で活動する4月から7月までを除いて米国で家族とともに生活していたこと、主な所得は慶應義塾大学の助教授としての給与から得ていたことなどを明らかにした。また、米国での所得は原則として得ていないものの、同国の地方税(住民税)は支払っていると主張したが、納税証明の提出については拒否した。2003年、竹中は疑惑を報じた『フライデー』を発行する講談社に対し、名誉毀損を理由に損害賠償等請求訴訟を東京地方裁判所に起こした。裁判は2004年9月に「登録移転は脱税目的ではない」として講談社に200万円の賠償を命じる判決が出され、竹中が勝訴する。これに対し、講談社は直ちに東京高等裁判所に控訴するが、高裁は「脱税の事実が証明されていない」として地裁判決を支持したうえで、賠償額を120万円に減額して控訴を棄却した。講談社はさらに最高裁判所に上告するが、2006年2月23日、最高裁は上告を退け講談社側の敗訴が確定した。これらの判決によって、疑惑報道が十分な裏付けのないものであったことが認められたが、主に構造改革路線に反対する立場の格好の標的となり、様々な批判が浴びせられている。
郵政民営化広報チラシ問題
内閣府政府広報室が頒布した郵政民営化を広報する新聞折り込み広告について、野党は以下の点を追求した。
○竹中の政策秘書の『知り合いの人物が経営する会社』に発注したこと
○その契約が随意契約であること
○竹中もしくは秘書官が『圧力』をかけたのではないかということ
また、契約も配布先も決まっていない段階で仕事が進められていたことや、登記簿を調べないで契約していたことなどが明らかにされた。また、広報の作成並びに契約等々の経緯についての政府参考人の答弁や説明において意図的な資料の改ざんがあったのではという指摘をうけたことに対し、政府広報室を管轄する内閣官房長官の細田博之が遺憾の意を示した。竹中も大臣として謝罪を求められたが、個別の契約行為は自分の所管外だと答弁している。竹中は会社社長と名刺交換したことはあるが、食事をしたこともなく特別な関係はないとしている。また、「随意契約の場合、契約書の締結が必要」との会計法の定めを発注担当者が順守していないため同法違反だという指摘に対しても、内閣府政府広報室の業務については所管外であり「答弁する資格がない」と回答している。また、契約についての想定問答集やIQ(知能指数)の低い層にターゲットを絞った広報戦略を示した同社の資料についても承知していないと述べた。
ミサワホーム売却問題
ミサワホームが産業再生機構を経てトヨタ自動車に売却される過程で、竹中らによる「公権濫用」があったとミサワホーム元会長が告訴(訴追には至らず)。2004年(平成16年)12月28日、ミサワホームが経営不振から産業再生機構の管理下におかれ、翌年3月31日、トヨタ自動車がミサワホームのスポンサーになることが決定した。このミサワホーム売却を巡り、ミサワホーム創業者の三澤千代治側が竹中を警視庁に刑事告発した。2002年(平成14年)5月、兄・宣雄(当時ミサワホーム東京社長)が「弟の平蔵と話しているのだが、(産業)再生機構を活用したらどうか」と三澤(当時ミサワホーム会長)に提案した。三澤はその提案を拒否したが、その後ミサワホームの経営状況は悪化の一途を辿り、不良債権化の懸念が強まった。2003年(平成15年)10月、竹中宣雄が「弟から電話があった。トヨタの奥田会長と会ってほしい」と三澤に再度要請した。くわえて、会談の前日には平蔵自らが三澤に日時の確認を行っていた。これらの行為に対し、三澤は「国務大臣としての職務を逸脱した一企業への圧力であり、職権濫用にあたる」と主張し、刑法193条に基づき「公務員職権濫用罪」容疑で警視庁に刑事告発した。竹中側は「適正な職務執行であり、職権濫用ではない」と反論し、三澤の主張を否定している。国会審議でも竹中の言動について取り上げられたが、竹中自身は指摘された事実はないとして、三澤側の主張に反論している。結局、訴追には至っていない。
マクドナルド未公開株問題
日本マクドナルドの株式を未公開当時から1500株保有。2001年7月の店頭公開で巨万の富を手にした。「濡れ手に粟だ」と批判されている。佐高信は揶揄を込めて「マック竹中」と呼んだ。
共同研究の無断販売
2005年(平成17年)、『月刊現代』は竹中の処女作『開発研究と設備投資の経済学』(東洋経済新報社 1984年7月)の内容は「設備投資研究所」時代の同僚・鈴木和志(現在明治大教授)や日本開発銀行での同僚高橋伸彰(現在立命館大教授)との共同研究の成果であり、その同僚は自分単独の名前で発表したいとの竹中からの申し出を断っていたのに、勝手に竹中の単独の著書として出版されたことにショックを受けたことなどを報じた。
業務停止命令の金融会社の広告塔
2013年10月、金融商品取引法違反で業務停止命令を受けたアブラハム・プライベートバンクの関連メディアのゆかしメディアにたびたび出演し、日銀副総裁に就任する前の岩田規久男とともに広告塔として活躍していた。なお、岩田は自身については「謝礼などは一切受け取っていない」「インタビュー以外の関係はない」と説明している。
サクセス・コーチの広告塔
成功哲学とコーチングの要素も持つ自己啓発セミナー「サクセス・コーチ」の第一人者、アンソニー・ロビンズの2014年4月の初来日セミナーの際、主催したラーニングエッジ株式会社のオファーでセミナー講師陣のひとりとして講演を行った。
パソナ取締役会長としての利益相反問題
竹中は小泉政権時代に国公立大学・大学院の教職にあるものの兼業規定を廃止することを主張。現在では政策研究大学院大学(規制改革会議の大田弘子が一例)や一橋大学などが兼業規定を事実上撤廃もしくは緩和している。したがって、政府の民間議員や有識者委員になる学者が、民業の要職に就任しているというケースが生じる。
このような背景から、政府の政策決定における利益相反を深刻化させてしまう問題が指摘されている。竹中はテレビ愛知の討論番組「激論!コロシアム 〜これでいいのか?ニッポン〜」の中で、三橋貴明の批判に対して成功した者の足を引っ張っているだけとして「根拠のない言いがかりだ。失礼だ! 無礼だ!」と反論したが、利益相反が起きることについては認めた。
加計学園問題については、竹中は他の民間議員らとともに「一点の曇りもない」と釈明している。
ASKAとパソナ子会社の女性社員が逮捕されたことで知られるようになったパソナの迎賓館「仁風林」で、女性芸能人やパソナ子会社のコンパニオンたちが政界・財界の男たちを接待していた疑惑について竹中は、「いろいろな企業の方を集めてセミナーをしています。はっきり言って真面目なパーティですよ。」とコメントしている。
大宅壮一ノンフィクション賞受賞ジャーナリストの佐々木実は、「利害関係のある人物が雇用規制の緩和に関与するのは、政治が生む利益を追い求める『レントシーカー(利権あさり)』だ。」それが、竹中氏の正体だと言っている。経済小説作家の高杉良の作品には自分の利益をむさぼる政治家・政商として仮名でたびたび登場する。  
 
諸話

 

竹中平蔵発言集 2016/5
○ トリクルダウンなんてあり得ない
○ そもそも日本人は、社会保障に対して誤解をもっています。自分が90歳まで生きると思ったら、90歳まで生きる分のお金を自分で貯めておかないとダメなんですよ。(中略)今の日本の問題は、年を取ったら国が支えてくれると思い込んでいることです。そんなことあり得ないんですよ。
○ ある方との対談で、「いちばんいい税制は何だと思いますか?」と聞かれて、「人頭税でしょう」と答えたことがあります。これほど公平な税制はありません。
○ 正社員をなくしましょう
○ 私は就職の相談に来るゼミの学生に、「就職出来ないのか。そんなの簡単だ、社長になれ」と言っています。
○ 「正規雇用という人たちが非正規雇用者を搾取しているわけです」
○ 正規(社員)は守られすぎている
○ 「アーティストは残業代ゼロなんですよ」
○ 「私の学生、とくに女子学生なんかに「いちばん欲しいものは何か」と聞くと、ほとんどの人がメイドさんだって言いますね。」
○ 「若い人には貧しくなる自由がある、貧しさをエンジョイしたらいい」
○ 「民営化された日本郵政はアメリカに出資せよ」(サブプライムローン危機の最中での発言)
○ 「グローバルは止められません。グローバルを止めるのは、豊かになりつつある中国やインドネシアの人に、『お前たちは豊かになるな』と言ってることに等しいんですよ。そんな権利は日本にもアメリカにもないんですよ。」
○ 「あらゆる分野を規制緩和しないといけない」
○ 「よく日本経済は『全治3年』などという人がいますが、私は『余命3年』と考えたほうがいいと思います。」(2010年の発言)  
日本経済を破壊する「民間議員」竹中平蔵氏が犯した罪 2017/6
一民間人が自社の利益最大化を狙い、日本の政策を決定する異常性
パソナグループ取締役会長の竹中平蔵氏
本日は、ザ・レントシーカー、政商の中の政商、偉大なる竹中平蔵氏のお話。財務省という組織を除くと、竹中氏ほど日本のデフレ長期化に「貢献」した人物はいません。
特に、決定的だったのは、竹中氏が、小泉政権期に、
◾プライマリーバランス黒字化
◾平均概念の潜在GDP
◾発展途上国型マクロ経済モデル(IMFモデル)
と、デフレを長期化させざるを得ない三つの「指標変更」を行ったことです。
そもそも、財政健全化の定義は「政府の負債対GDP比率の引き下げ」であるにも関わらず、政府の負債対GDP比率の決定要因の一つに過ぎないPBを目標に設定。結果、我が国は、「(国債関係費以外の)歳出を増やすためには、他の予算を削るか、増税するしかない」という状況に追い込まれ、デフレ脱却の財政出動が不可能になってしまいます。
さらに、高齢化で社会保障支出が増えることを受け、そもそもデフレ化を引き起こした元凶である消費税増税を、2014年に再び断行。案の定、2016年以降、日本は再デフレ化の道をたどっています。
また、最大概念の潜在GDPを平均概念に変えたことで、デフレギャップが「小さく見える」状況になりました。加えて、インフレギャップが「視える」という奇妙な状況になります。
   日本の需給ギャップの推移(対GDP比%)
図の通り、バブル期やリーマンショック前など、日本の需給ギャップがプラス化しています。インフレギャップが数値で測定できる。つまりは、「日本経済は潜在GDPを超す生産を行い、需要された」という話になってしまうのです。
潜在GDPは、「日本経済に可能な最大の生産」ですから、インフレギャップが視えるということは、「生産されないものが、需要された」ことを意味します。
生産されないモノやサービスに、消費や投資として支出がされるとは、これいかに?
要するに、平均概念の潜在GDPは、実際には「潜在」GDPでも何でもないという話です。
潜在GDPの定義が最大概念から平均概念に変えられたことで、需給ギャップのマイナス(デフレギャップ)が小さく見えるようになり、デフレ対策が打たれにくくなりました。ついでに、完全雇用の失業率も上昇。日銀の定義では、完全雇用失業率は何と3.5%。今は、完全雇用を超える完全雇用という話になってしまいます。なんのこっちゃ。
PB目標、平均概念潜在GDPに加え、マクロ経済モデルを需要牽引型ではなく、発展途上国向けのIMFモデルに変更され、我が国のデフレは長期化することになりました。
政商の中の政商「民間議員」の竹中氏はデフレでビジネスを拡大
デフレ経済下では、竹中氏のような政商の「ビジネス」は拡大しやすいです。企業の人件費削減需要をつかみ、派遣労働の拡大。財政悪化を受け、インフラ整備をコンセッション方式に。デフレでルサンチマンが溜まった国民を煽り、「既得権益の農協を潰せ!」などと叫び、農協改革に代表される構造改革を断行。公務員ルサンチマンを煽り、行政窓口の派遣社員化。
結果、竹中氏に代表されるレント・シーカーたちのビジネスが拡大し、国民が貧困化する反対側で、彼らは儲かる。

「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画で、実現までに中心的な役割を果たした「国家戦略特区諮問会議」。特区の認定に「総理のご意向」があったとされることから野党は追及を強めている。実は、会議を巡って、特定企業の利益になるように議論が誘導されているのではないかとの疑惑が、以前からあった。
「昨年7月、神奈川県の特区で規制緩和された家事支援外国人受入事業について、大手人材派遣会社のパソナが事業者として認定された。諮問会議の民間議員の一人である竹中平蔵氏(東洋大教授)はパソナグループの会長。審査する側が仕事を受注したわけだから、審議の公平性が保てない」(野党議員)
これだけではない。農業分野で特区に指定された兵庫県養父(やぶ)市では、竹中氏が社外取締役を務めるオリックスの子会社「オリックス農業」が参入した。自民党議員からも「学者の肩書を使って特区でビジネスをしている」と批判の声がある。
農林水産委員会などに所属する宮崎岳志衆院議員(民進党)は、竹中氏が主張する農業分野での外国人労働者の受け入れが、人材派遣業界の利益につながりかねないと指摘する。
「民間議員はインサイダー情報に接することができるのに、資産公開の義務はなく、業界との利害関係が不透明だ」
批判が相次いだことで、国会も異例の対応を迫られる事態となった。<後略>

5月16日の衆院地方創生特別委員会で採択された国家戦略特区法改正案では、付帯決議として、「民間議員等が私的な利益の実現を図って議論を誘導し、又は利益相反行為に当たる発言を行うことを防止する」と明記されました。もっとも、付帯決議ですので、どれほど効力があるか未定ですが。
そもそも、「民間議員」ではなく、単なる民間人です。単なる民間人が、自社の利益最大化を狙い、○○会議に「民間議員で〜す」と言って入り込み、政策を決定し、総理に提言。○○会議の提言が閣議決定され、国会を通るという、民主主義を無視する連中が暗躍しているのが(暗躍、ではないかも知れませんが)、現在の安倍政権です。
日本国が真の民主主義国であるならば、竹中氏に代表されるレント・シーカーたちを退場させなければなりません。全ての国会議員には、「民主主義とは何なのか?」を改めて自らに問いなおして欲しいのです。 
竹中平蔵会長のパソナ、株主が企業統治欠如を猛批判 2018/1
香港に拠点を置く「物言う株主」(アクティビスト)のオアシス・マネジメント・カンパニーが、人材派遣大手のパソナグループに経営改善の提案書を突き付けた。
オアシスは2017年11月9日に開設した特設サイトで、パソナの発行済み株式の5%弱を保有していることや、提案書をパソナ側に送ったことを公表した。経営陣との面談を求め続けているが、拒否されていることにも言及した。
オアシスの創設者で最高投資責任者(CIO)のセス・フィッシャー氏は、11月10日付日本経済新聞のインタビューで、パソナに経営改善の提案書を提出した理由をこう述べている。
「良いビジネスを持っているのに、経営資源の配分やコスト管理体制、コーポレート・ガバナンス(企業統治)に欠ける。我々の提案が実現すれば、営業利益率は(業界平均を下回る)1.6%から5.9%へ劇的に改善するとみている。(略)南部靖之グループ代表は東京都心に牧場をつくったり、豪華な迎賓館をつくったり、周りに何もない地方にテーマパークをつくったりしている。個人のアイデアとしてはいいが、上場会社の施策として適当ではない。会社を個人の貯金箱のように使うのはやめるべきだ」
オアシスが槍玉に挙げたのは17年8月、東京・大手町のパソナ本社に開設した牧場のことだ。山羊、牛、豚、フラミンゴ、フクロウを飼っている。同年7月には体験型テーマパーク「ニジゲンノモリ」を兵庫県淡路島にオープンした。
また、迎賓館とは東京・元麻布の「仁風林」を指す。14年、ミュージシャンのASKAが覚醒剤取締法違反容疑で逮捕されたとき、仁風林がスポットライトを浴びた。パソナが政治家や官僚を接待するために設けた迎賓館で、美女たちが“おもてなし”をしていた。ASKAは迎賓館の常連で、一緒に逮捕された女性は“おもてなし組”のひとりだった。
オアシスは南部氏に対して、「道楽とビジネスを混同するな」と警告したわけだ。
これに対し、パソナには弱みがあった。すなわち、赤字経営だったため抗弁のしようがない状態だった。そこでパソナは18年1月12日、17年6〜11月期の連結最終損益を4億7000万円の黒字(前年同期は8億1600万円の赤字)へと業績を上方修正した。従来予想は5億円の赤字だったので、9億7000万円収支が改善した。売上高は前年同期比10%増の1506億円で、従来予想を40億円下回る。
派遣する社員が派遣先で直接雇用されたことから、派遣人員の数が減った。営業利益は3.3倍の26億円と従来予想から13億円引き上げた。企業から請け負う事務作業で、IT(情報技術)を使って効率化に取り組み、利益率が改善した。
一方、18年5月期通期の業績予想は据え置いた。売上高は前期比15%増の3233億円、営業利益は26%増の56億円、最終損益は10億円の黒字(前期は1億2900万円の赤字)を見込む。17年8月にNTTグループの人材派遣会社2社を54億円で買収したが、負ののれん代を特別利益として計上し、黒字転換する。市場関係者は「働き方改革」による業績の上振れに期待しているようだ。
オアシスは日本で売り出し中のアクティビストだ。任天堂に対しスマートフォン向けに「スーパーマリオ」などのソフトを供給するよう戦略転換を求めた。また、京セラには保有するKDDI全株の売却と売却額の半分に当たる5000億円を株主に還元するよう要求した。
さらに、パナソニックによるパナホームの完全子会社化のスキームについても変更を求めた。パナソニックは要望を受け入れ、株式交換方式からTOB(株式公開買い付け)に変更した。同様に、アルプス電気によるアルパインの完全子会社化計画でも、株式交換ではなく現金による買収に切り替えることや買収価格の引き上げを求めている。
東芝の第三者割当増資の引受先には、名高い“ハゲタカファンド”が名前を連ねたが、オアシスも1.7%出資した。
極めつけが、パソナへの経営改善提案書である。南部氏の存在がコーポレート・ガバナンスの欠如につながっていると指摘した。
株式市場はオアシスの提案を好感した。株価は11月8日の終値1628円から翌9日には年初来高値の1838円を記録。その後も株価は上昇し、12月27日には2418円の年初来高値を更新した。大納会の12月29日の終値は2287円だった。オアシスの提案以前に比べると、40%も株価が上昇したことになる。オアシスの経営改善策が実を上げることへの期待値が高い証拠だ。
その後も、1月12日の業績上方修正を受けて株価は上昇した。週明けの15日には、一時、前週末比16%(353円)高の2622円まで跳ねた。株式分割を考慮すると、実質的に上場来高値である。
予想PER(株価収益率)は94倍。業界最大手のリクルートホールディングス(38倍)などと比べると割高である。株価が右肩上がりのうちはいいが、下降局面に入ると“オアシスの提言”が重石になる。
収益力回復への圧力は、確実に高まっている。しかし、南部氏は自己流の経営手法を改めるつもりはなさそうだ。南部氏は直接分39.59%、間接分11.68%を合わせると51.27%を保有する支配株主だ(17年5月末時点)。他の株主が束になっても敵わない。
そうすると、オアシスは具体的にどんな手を打つだろうか。17年12月21日、パソナのグループ会社の取締役会議事録の閲覧許可を東京地裁に申し立てた。「グループ内取引の実態を明らかにし、ガバナンスに関する重大な問題点を把握する」のが狙いだ。
南部氏は、政界に太いパイプを持つ“平成の政商”と呼ばれる人物だ。小泉純一郎政権で経済産業相を務め、人材派遣業界の規制緩和を主導した竹中平蔵氏を09年に会長に迎え入れた。
オアシスがターゲットに定めたのは、この竹中氏だ。同氏は現在、慶應義塾大学名誉教授、東洋大学教授を務める経済学者で、コーポレート・ガバナンス強化の推進論者として知られている。フィッシャー氏は、前出・日経新聞のインタビューで、竹中氏の存在と、今回の提案との関係を問われ、こう答えている。
「パソナは南部代表が約4割の株式を保有しており、我々が十分な議決権を得るのは難しい。竹中会長はじめ取締役会メンバーはコーポレート・ガバナンス・コード(企業統治指針)に従って会社の統治構造を改善する義務がある」
オアシスからボールは竹中氏に向けて投げられた。果たして、竹中氏は南部氏に忠誠を尽くすのか、それとも経済学者としてコーポレート・ガバナンスの必要性を貫くのか。 
竹中平蔵、NHK番組で高度プロフェッショナル制度の拡大を力説 2018/6
5月30日放送の報道番組『クローズアップ現代+』(NHK)に出演した東洋大学教授の竹中平蔵氏の言動がインターネット上で炎上している。
同番組では、「議論白熱!働き方改革法案〜最大の焦点“高プロ制度”の行方〜」というテーマで働き方改革関連法案を取り上げ、同法案のなかで最大の焦点になっている「高度プロフェッショナル制度」(以下、高プロ)について議論が行われた。
高プロとは、労働規制を緩和する新たな仕組みのことで、一部の高年収の専門職は労働時間規制の対象から外され、残業や深夜・休日労働をしても割増賃金が支払われなくなる。厚生労働省は「自分で働く時間を調整できる人は、労働時間に縛られず柔軟に働くことができる」と説明しているが、野党は「残業代ゼロ法案」と批判している。
同番組では、労災認定された過労死の件数を示すなどして、「労働生産性を高めていくこと」と「労働者の健康を守ること」の両立について、有識者が議論を交わした。賛成派には、竹中氏とクラウドワークス社長の吉田浩一郎氏。反対派には、法政大学教授の上西充子氏と、弁護士で日本労働弁護団幹事長の棗(なつめ)一郎氏。
棗氏は「労働時間を短くすれば生産性は上がっていく」「世界共通のルール内で戦っていけばいいのであって、日本だけ規制を外して、こういうものを取り入れていけばいいという議論は間違っている」と反対の根拠を示した。
一方、竹中氏は「規制を外すのではなく、規制の仕方を変えるんです」「労働者の権利を守るのは大事です、命は大事です。でもその範囲で、しっかりと変えるべきところは変えていかなければならない」「これを入れていかないと、日本の明日はない」「適用する人が1%じゃなくて、もっともっと増えていかないと日本の経済は強くなっていかない」と必要性を訴えた。
高プロでは、健康を確保するために4週間で4日以上かつ年間104日の休日を取得することが定められている。これについて、竹中氏は「ほとんど完全週休2日制」「4週間で必ず4日取るというのはものすごく厳しい規制」と持論を述べ、棗氏は「これで労働者の健康が守れる保証はない」「4週間28日のうち4日間をまとめて休ませれば、残りは24時間24日間働けという業務命令も合法になるので、ブラック企業が利用しないとも限らない」と警鐘を鳴らした。
ネット上では「竹中マジでヤバい。派遣法のときと同様に高プロが拡大することで得する側の人間だからなぁ」「『高プロ対象をもっと増やしたい』って口を滑らせましたね」「結局、死人が出ようと経済成長すればいいってことか」といった声があがっている。
竹中氏といえば、小泉純一郎政権下で閣僚を務め、自身が推進した労働者派遣法の規制緩和によって非正規労働者が増え、経済格差が拡大したという経緯がある。そのため、「竹中のせいで派遣切りやらワープア(ワーキングプア)やら、どれだけの悲劇が生まれたか」「二度と騙されない」といった意見も見られる。
また、竹中氏はその後、大手派遣会社であるパソナグループの取締役会長を務めているが、同番組では「東洋大学教授」という肩書で出演していた。そのため、「NHKは、なぜパソナの会長であることを出さないのか」「正しくは日本最大の派遣会社の会長でしょ。自分だけ儲かればいいのか」といった指摘もある。
日本共産党の小池晃参議院議員は、ツイッターで竹中氏の「適用する人が1%じゃなくて〜」という発言に「ホンネきました」とツッコミ。NPO法人・ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏は、「また竹中平蔵氏らが鬼畜ぶりを発揮している」「労働者の幸せが最優先ではなく、経済成長至上主義で、労働者はその歯車。経済成長のためなら犠牲を強いても構わない、と。まだ騙され続けるか否か正念場」とツイートしている。
高プロについては、全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表が「定額働かせ放題」「これ以上過労死を増やさないでください」と真っ向から反対しており、ネット上では「竹中が賛成している時点で危険な制度だとわかった」という声もある。
高プロを含めた働き方改革関連法案は31日の衆議院本会議で可決され、今国会で成立する見通しだ。 
 
八田達夫

 

1
八田達夫 [ 1943 - ]
日本の経済学者。東京都生まれ。福岡県育ち。Ph.D.(ジョンズ・ホプキンス大学、1973年)。専門は応用ミクロ経済学、公共経済学、都市経済学、法と経済学など。アジア成長研究所所長、経済同友会政策分析センター所長、前政策研究大学院大学学長、経済産業研究所ファカルティフェロー、大阪大学名誉教授、電力取引監視等委員会委員長。
1961年 - 福岡県立小倉高等学校卒業
1966年 - 国際基督教大学教養学部社会科学科卒業
1971年 - ジョンズ・ホプキンス大学大学院経済学研究科経済学専攻博士課程修了
1972年 - オハイオ州立大学経済学部助教授
1973年 - 埼玉大学教養学部講師
1975年 - 埼玉大学教養学部助教授
1978年 - ジョンズ・ホプキンス大学経済学部助教授
1980年 - ジョンズ・ホプキンス大学経済学部准教授(1981年、コロンビア大学経済学部客員準教授)
1985年 - ジョンズホプキンス大学経済学部教授
1986年 - 大阪大学社会経済研究所教授(1990年、ハーバード大学経済学部客員研究員、1991年、コロンビア大学経済学部客員教授)
1997年 - 大阪大学社会経済研究所所長(1999年3月まで)
1999年 - 東京大学空間情報科学研究センター教授
2004年 - 国際基督教大学教養学部国際関係学科教授
2007年 - 政策研究大学院大学学長、国際基督教大学教養学部客員教授
2011年 - 大阪大学招聘教授、学習院大学客員研究員・特別客員教授
2013年 - 経済同友会政策分析センター所長、アジア成長研究所所長
2015年 - 電力取引監視等委員会委員長(2016年、電力・ガス取引監視等委員会に改組)
学外における役職
日本経済学会会長 / 法と経済学会会長 / 国際財政学会理事 / 日本財政学会理事
政府関係委員等
内閣府総合規制改革会議委員 / 内閣府規制改革・民間開放推進会議委員 / 内閣府規制改革会議議長代理 / 内閣府国家戦略特別区域諮問会議有識者議員 / 内閣府国家戦略特別区域ワーキンググループ座長
主張
日本の電力自由化議論を先導し、発送電分離と電力リアルタイム市場創設の必要性を主張している。
規制緩和について「日本経済の問題は権益集団がいたるところに存在し、さまざま産業に参入障壁を設けていることである」と述べている。
原子力発電所政策について「原発はそれ自体、使用済み燃料処分の社会的コストや事故発生の危険性など大きな外部不経済を発生させる。それら全ての外部不経済が発生させる費用に課税(原発公害に対するピグー税)し、電源の利用者にその外部費用を負担させた上で、発電事業者に電源の一つとして原子力を選択するか否か決めさせればよい。原発を稼働させるには、フィルタードベントの欠如等の明らかな欠陥を全てなくすことは大前提である」「事業者が原発事業の採否に関する判断を、政府による救済補助への期待無しに出来るように、政府は使用済み核燃料の処分費用と具体的処分プロセスの提示をすべきである」と述べている。 
 
諸話

 

再稼働説を支える3つの神話と1つの真実 2014/3
 八田達夫・大阪大学招聘教授
原発が生む国益と危険性との比較
原発が再稼働されなければ、国益が損なわれると指摘されてきた。この指摘は、多少安全を犠牲にしても、それらの国益を守る為に再稼働を認めるべきだという無言の圧力を政治にかけてきた。
事実、原子炉の安全性さえ確認されれば、原発事故後の安全を担保する避難計画はなくとも、原発は再稼働されることになっている。しかし日本の原発の物理的安全性に関する規制水準は世界最高水準だといわれながら、柏崎原発で設置されるフィルターベントは有機ヨウ素も希ガスも除去できない(ただし大飯3号4号では有機ヨウ素は除去できる)。さらにはフランスで建設中の原発に設置されているメルトダウン燃料の受け皿の設置義務は日本の原発にはない。
一方、避難計画の策定は原発から30キロ圏内の市町村に任されているが、一定時間内に全住民の避難を義務づける規制はない。このため、全電源喪失した際には、放射能汚染が、30キロ地点に汚染が到達するのに数時間もかからない可能性があるにもかかわらず、たとえば柏崎原発では、すべての道路が使えたとしても道路が混雑するため30キロ圏内全住民の避難には30時間かかると指摘されている。
大地震が道路を破壊するのを我々は何度も見てきたが、そのような場合に避難にかかる時間は想像を超える。事故が起きたときに、汚染地域にどの行政担当者を誰が命じて行かせるかについての法律もシステムもない。
明らかに、国益を守るために、安全性はある程度は犠牲にされているのだ。
多くの識者は、もし再稼働されなければ、以下のように国益が損なわれると指摘してきた。
1 夏の電力不足を招く
2 温暖化対策に十分に貢献が出来ない
3 電力料金が法外にあがり、日本の産業がつぶれる
4 ホルムズ海峡封鎖のようなエネルギー安全保障の危機に対応ができない
本稿では、これらのうち、最初の3つは神話であり、最後の1つは真実であることを示す。すなわち、適切な対策を講じれば、再稼働しなくても、最初の3つの国益は損ねずに済む。だが、当分の間、エネルギー安全保障は、世界最高の安全性を達成するに至る途中でも、必要であれば原発を再稼働して、守るべき国益だと論ずる。
再稼働で守るべき国益がこのように定まると、むしろ十分に時間をかけて徹底的に原発の避難を含めた安全性を確保すべきことが明らかになる。さらに、この目的のためには、原発を国有化する必要も明らかになる。
停電対策としては、原発再稼働よりもインバランス清算制度の設立を
「夏の電力不足のために、原子力発電を再稼動すべきだ」と言われている。
しかしピーク時対策の根本は、不足するピーク時だけ価格を大幅に上げ、需要を抑制する仕組みを作ることである。
欧州では、時間帯ごとに販売電力量や購入量の計画値と価格を決めて契約する。その上で、実績値が計画値からのずれ(インバランス)が生じた場合には、給電指令所がインバランスを精算する制度になっている。
この精算では、その時点における電力システム全体での需給逼迫度に応じて、時々刻々変化する価格を用いる。全体で電力が不足しているときには、精算価格は高騰するから、それに応えて発電所は発電量を増やしたり、工場は需要量を計画値より削減したりする動機が生まれる。こうして、需給の過不足を市場が調整してくれる。
ところが日本の各地の発電指令所は、時々刻々の需給逼迫度を反映した価格によるインバランス精算メカニズムを持っていない。このため日本の新電力を含めた電力供給会社は、価格を固定した上で需要家に好きなだけ使わせる契約をせざるを得ない。
結果的に需要家の電力需要量の増大に追従して、いくらでも発電してきた。このため、新電力を含めた電力供給会社は、電力需要が急増する夏の一定時間だけのために、膨大な発電予備力を用意してきた。
原発がすべて止まっている現在でも、既存の発電の能力でまかなえているのは、このためである。
しかし、この体制のもとでは、3.11の直後のように、多くの発電所が脱落するなどして発電予備力に不足が生じると、対応のしようがない。価格が固定されたままだから、計画停電や電力統制令によって、必要度の違いを無視して強制的に需要削減を命じざるをえないのである。
つまり、平時には多額の資金をかけて停電を防止しているが、非常時には強制手段以外、対応策が一切なくなるシステムである。我々が、毎夏電力危機に直面させられている根本理由は、インバランス精算制度の欠如である。
しかし、ヨーロッパで活用されているようなインバランス精算制度が整備されていれば、3.11直後の計画停電を避けることができた。また今後も、夏の数時間のために膨大な原発を用意しておく必要はなくなる。その時間帯だけ精算料金を上げれば済むからである。
また、高いピーク時価格に対応するための省エネ投資や、その為の研究投資、設備投資が自動的に行われるようになるだろう。
現行の固定価格の下での追従発電の仕組みを業界が改めようとしない理由は、2つある。
第1に、この仕組みは、大量取引をすることによって取引量あたり必要な発電予備力を少なくできる電力会社を、競争上きわめて有利にしているからである。第2に、この仕組みは、毎夏に電力危機を作り出してくれる。電力危機がなくなれば原発関連産業の存在意義が大きく失われるからである。
再稼働よりはるかに優れた経済的で合理的なピーク時対策がインバランス精算制度の設立である。
CO2対策は原発ではなく費用対効果の高い炭素税で
「原発は地球温暖化対策として不可欠だ。日本の温暖化対策公約を実現するためには、原発を再稼働しなければならない」と言われる。
しかし国内でCO2の排出を抑制するための基本的な対策は、炭素税の導入によって、発電が生み出すCO2がもたらす社会的コスト分を、その発電の追加費用として利用者に負担させることである。
ところが日本政府は、炭素税ではなく、原発や再生エネルギーに対してさまざまな補助を与えるという手段をCO2対策として用いてきた。これらのゼロエミッション発電への補助金は、たしかに化石燃料による発電を一律に不利にし、再生エネルギー発電以外を有利にする。
しかし炭素税は、それだけでなく、輸送用や産業用のエネルギー消費をも抑制し、石炭や石油から天然ガスへの転換をも促進し、火力発電における技術開発を促す。炭素税は、原発補助に比べて費用対効果が高い地球温暖化対策である。
このようなメリットを持つ炭素税に対しては「炭素税の導入がもたらす税負担の増加が、日本の産業を衰退させる」という炭素税批判も根強い。しかし、炭素税率の引き上げがもたらす税収を用いて法人税減税を行えばこの問題はなくなる。これまでCO2をあまり排出してこなかった企業に関しては、法人税減税がむしろ活性化のきっかけを与える。
さらに日本がCO2削減の費用対効果を最大化するためには、途上国企業によるCO2発生の削減に日本が貢献すべきである。世界のCO2の発生のうち日本は4%で、同じGDPの中国は20%だ。途上国は圧倒的に旧式の石炭火力に頼っているからだ。
したがって、CO2の排出抑制のために同じ1億円を使うのならば、日本で使うより中国等の途上国に燃焼効率が良い石炭火力の技術援助をするほうが、はるかに効果的だ。
もし日本の地球温暖化対策の本当の目的が、グローバルなCO2の削減にあるのならば、すなわち国内特定業界への利益供与ではないのならば、日本で金を使うのではなくて、外国で使うべきである。
日本は今まで原子力産業への利益誘導という目的もあって 、国際的に異常に厳しいCO2の追加削減をコミットしてきた。この目標は取り下げて、炭素税の税率を国際水準に引き上げる工程表を明らかにすべきだ。そして、炭素税導入で得られる税収は、法人税減税の財源に用いるべきだ。
上昇した電力価格に合った産業構造のシフトこそ課題
「原発が再稼働できないと、安い原発が使えなくなるから、電力価格が上がることが問題だ」と指摘されることが多い。
原発が再稼働できないと、電力料金はどのくらい上がるのだろうか。原発がない沖縄電力の価格は、原発が稼働していた時の本土より約2割高かった。これが一つの目処だといえよう。
日本では原発の真のコストを将来世代に先送りにしていたために、原発を安く見せかけてきた。もし、原発の事故コストや使用済み燃料の処分費用を算定し、原発で発電された電力を使用した世代に負担させるように価格付けをすると、日本の大半の原発で発電される電力は、化石燃料発電に電力価格競争で打ち勝てなくなる。
世界でもまれに地震が集中している日本では、保険コストがきわめて高い。その上、狭い国土で使用済み燃料を処分することが難しいから、処分の為の費用も結果的には高くつくからである。
安全基準を達成した原発に対しても、相当な保険料と使用済み燃料処分料を課さなければならない。その上で、電力会社が再稼働するかどうかを判断することになる。
その場合、新設の原発は明らかにペイしない。(八田達夫『電力システム改革をどう進めるか』(日経,2012)第2章第7節参照]
すでに設備投資が終わっており、かつ安全性のための投資が少なくて済む比較的最近の原発については、再稼働が採算に乗る場合もあるかもしれないが、大半の原発は採算に乗らないだろう。
したがって、保険料を正しく設定し直せば、仮に一部の原発の再稼働が採算にのるにしても電力料金の上昇は避けられない。このコスト負担は、地震国日本に元来受け入れるべきであった電力価格である。それにふさわしい産業構造を選択することによってもたらされる産業構造の変革は、日本を真の意味で効率化させる。
日本は戦前から資源を輸入しながら、世界にまれなスピードで成長し続けてきた。資源を輸入し続けることは成長の源泉である。むしろ、最も比較優位になる輸出品を市場に選択させることが最重要である。
かつて日本はオイルショックの時、世界的に電気代が大幅に上がったことでアルミニウム精錬業がなくなった。同様に、今後は電力消費量の少ない知識集約型の産業に全体がシフトするだろう。
この産業構造の変化は今までも起きていたことだ。例えば、ロボットなどのIT産業やアニメなどのソフト産業や観光などに、自然に強みを発揮していくだろう。
日本は、現在世代が負担すべきコスト高の原発を、将来世代に負担を押し付けながら使い続けることによって、日本全体を、どの道衰退していく重厚長大産業の道連れにするべきではない。日本の比較優位にしたがって重厚長大産業を縮小していくことは、最も有効な省エネ対策でもある。
一方、原発が再稼働しない為に、化石燃料の輸入が貿易赤字を引き起こしていると言われている。しかし、全国の原発を再稼働しても貿易収支には、7〜8兆円の赤字が残ると試算されている。
資本蓄積が進めば、対外貸し付けが増え、貿易は赤字になり、その代わりに外国からの知財収入や資本所得が増大していくのは当然のことである。将来世代へのつけ回しによって、今、化石燃料の輸入量を人為的に下げるより、サービス輸出や、海外からの直接投資を妨げている要因を取り除くことの方が、はるかに重要である。
原発はエネルギー安保対策が万全になるまで限定的に使うべき
「ホルムズ海峡封鎖に備えるためには、原発が不可欠だ」といわれてきた。
ホルムズ封鎖などの危機のためにまず準備すべきは、需要逼迫に対応して価格が上がるようにインバランスの採算メカニズムを確立することだ。
しかし長期にわたる価格上昇は、低所得者にきつい。これを緩和するために、政府が金をかけてリスクヘッジをする必要がある。まず石炭や石油の備蓄をすることが重要である。つぎに、アメリカやカナダから天然ガスを輸入できる体制を作ったり、サハリンからのガスパイプラインを建設するなどして輸入元を多様化することも有用である。
これらの体制が整えば、原発がなくてもホルムズ封鎖のような事態に対処できる。
しかし、これまでは、エネルギーセキュリティは原発依存であったから、直ちに原発をすべて廃炉にしてしまうと危機に備える態勢は整っていない。したがって、石油や石炭の備蓄やガス輸入の多様化などのエネルギー安保対策が万全になるまでの当分の間は、万が一の事態に備えて原発を稼働できる態勢を作っておく必要があろう。
原発の完全な安全性は確保できなくても、さしせまった国家存続の危機に対処して原発を稼働させることには、十分理がある。
その場合、原発は、3・11以前のように、のべつまくなしに使うのではなく、どうしても切迫した事態が生じた期間だけ使う体制を整えておく必要がある。
このように、原発をしばらくの期間存続させるべき唯一の理由は、ホルムズ海峡が封鎖されたような危機に備えたエネルギー安保である。この事が明確にされると、危機に備えて待機する原発の安全性および周辺の自治体の避難計画の安全性は、焦ることなく徹底し追求することが求められる。
国は原発国有化のオプションを電力会社に示すべき
ただし、これから安全基準をパスした原発には、事故保険料や使用済み燃料処理のために相当な課税をしなくてはいけなくなる。いわば公害税をかけなければならない。このため、発電コストは大半の原発は火力より遙かに高くなるだろう。
それでは原発の再稼働が採算に合わないという電力会社が多数出てくると考えられる。採算に乗らなくなった原発を抱えた電力会社は、自由化されている発電部門では、そのような負担のない発電会社と戦えるわけがない。
元来、高価な公害税を負担させられることは想定しないで始めた原発事業に対して、途中からルールが変わって払わされるというのでは、民間の電力事業者としては間尺に合わない。今後、原発の真の公害費用が見直され、それに対する大幅な費用負担を事業者に求めるルールに変更した時点で、稼働が採算に乗らなくなった原発を、国が購入するオプションを提示すべきだろう。
それによって電力会社は、原子力から自由になった健全な経営形態に戻ることができる。また、国は、国有化した原発の実際の運営は電力会社に委託することもできるが、経営および財政の責任は国が取ることになる。国有化によって原発のいくつかを存続させることによって、国はエネルギー安保を担保できる。
ただし、原発購入の条件として、国は、当該電力会社の送電部門と発電部門の所有分離を求めるべきであろう。国が原発を購入する資源は、料金引き上げと税とのいずれによるべきだろうか。
まずサンク・コストを電力料金として負担させることは非効率性を生む。国有化の原資をまかなう目的で電気料金を上げることは、電力から石炭や石油への、エネルギーの需要シフトを不必要に促してしまう。したがって税で負担すべきである。
しかし、消費税や所得税の基幹税でこれを負担することが無理だとすれば、電力だけでなく、電力と代替的なすべてのエネルギー全体に薄く広くさらに長期に掛ける「エネルギー税」を原発対策として新設すべきである。過去の原発政策の過ちは、薄く広く長期にわたって国民が負担する税で償わなければならない。
国のすべきこと
以上の議論は、原発に関して国が最低限行うべき課題を示した。
第1は、インバランス精算制度の設立により徹底した停電対策をとることである。
第2は、炭素税率の引き上げや途上国への技術援助によって費用対効果の高い地球温暖化対策をすることである。
第3は、原発に対する事故保険料や使用済み燃料処分費用などを公害税として課金することである。
第4は、自由貿易を推進し、比較優位の変化に伴う衰退産業の出現を受け入れることである。
第5は、希望する電力会社に対しては、エネルギー安保の目的で国が原発を購入することとし、その原資を、環境税、エネルギー税、譲渡益税の死亡時課税などでまかなうことである。
現在の状況では、政府は、再稼働をしない場合に電力不足を防ぐ政策手段があることすら明らかにせずに、原子力規制委員会に対して再稼働の判断をさせようとしている。しかし、上の5つの政策手段が採られると、原発停止の状況を続けることによって、重大な国益が犯されることはないことが明確になる。そうして初めて、原子力規制委員会も、安心して元来の仕事を十分することができる。
一方で、電力会社は、現状の制度の下では、原発の再稼働を政治的に強く働きかけざるを得ない状況に置かれている。再稼働されないことが正式に決まると、電力会社の規制料金算定のベースとして、原発の固定費を入れることができなくなり、経営的にきわめて厳しい立場に置かれるからだ。しかし、国が原発を購入するオプションを示せば、電力会社も再稼働のために不必要な政治圧力をかける必要性がなくなる。
「停電対策も、温暖化対策も、経済対策もすべて原発再稼働で達成しよう」という識者は多い。しかし政策目的のそれぞれに対して、ふさわしい政策手段を採用することによって、再稼働より的確にそれらの政策目的を達成できる。国は、原発を当分の間維持する目的をエネルギー安保に絞って、政策体系を作る必要がある。
我が国は、原発の真の費用の負担を将来世代に先送りすることによって、原発を安く見せて、原発産業を含めた重厚長大産業を維持してきた。この政策は日本の真の比較優位に反する産業を温存してきた。費用負担の先送りを続けるわけにはいかない。
ただし、効率的資源配分のためには、今後の電力料金は、実際の発電に要する追加費用に見合った水準に抑える必要がある。それを達成するためには、原発を国有化すべきだ。それには財源が要る。日本における原発関連の最大の政治的課題は、電力料金を不必要に上げることなく過去の原発政策の後始末をするための財源を確保するため新税を創設することである。 
独善的マイルールを行政に持ち込む八田達夫の暴論 2017/6
八田達夫は、まるで安倍独裁が憑依したかの如く、暴君のように振舞っているようだ。いかに国家戦略特区諮問会議とて、一諮問機関の、一民間議員でしかない人間が、こうも官僚機構の頂点にでも立ったかのような言動を見せるというのは、安倍政権の特徴を示している。平たく言えば、「俺たちゃ、何だってできる」、そういう心性を官邸もそれに連なる「おトモダチ」連中も持っているのだ。
本日の読売朝刊に、加計学園問題について、八田達夫の弁が掲載されていたので、一部引用してみよう。
『規制が正当だと証明する責任は規制する側にある』
『だが、文科省は獣医学部新設に関して、獣医師の需給関係を崩すことになる場合は審査することさえ認めていない。この制限は法律ではなく告示に基づく。獣医師会の利権を守るために文科省が作ったと言えるだろう。』
『獣医学部の新設は、国家戦略特区では新潟市が2014年7月に最初に提案しており、WG会議で何度も議論した。文科省は一校も作らせないと主張したが、その規制が正しいという理由を説明できなかった。』
八田達夫の言い分は、全て自己中心的な発想に基づくものである。彼の言い分の大半は、自身の無知に基づくものである。八田は、これまで行政がどのように物事を決めてきたのか、それはどういう手続等を経た結果なのか、それらを一切無視している。何故かと言えば、自分自身が法体系なり、行政の仕組みなりをよく知らないからである。これが大学教授クラスで、しかも政府の重要な会議に呼ばれ、長年審議会等の席を占めてきた人間の発言なのかと思えば、日本の行政機構がいかに杜撰なのかがよく理解できよう。
以下に、いくつかの論点に分けて述べる。
1)官僚個人が現行法体系を変更できるわけがない
最も基本的で大原則なのが、これである。八田の最大の勘違いというか、無知は、この当たり前のことである。仮に、八田の『制限は法律ではなく告示に基づく。獣医師会の利権を守るために文科省が作ったと言える』という主張が正しいとして、文科省が省益最優先とか獣医師会の利権を忖度して、官僚が好き勝手に「規制の告示」を出せたとでも言うのか。
安倍政権の暴走内閣府でもあるまいし、そんなことは不可能である。告示は、いかに文科省の事務次官とか局長が省益第一と考えたとしても、官僚が好き勝手に発出することは不可能である。
2)当該規制の告示は、小泉内閣が出したものである
獣医学部や医学部等の新設を制限した告示とは、「大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準」(平成十五年三月三十一日文部科学省告示第四十五号)である。
言わずと知れた、構造改革を推進し、規制緩和の旗振りを盛んにやっていた小泉政権時代に告示が出されたものである。従って、告示の制定責任は、小泉内閣にあるというべき。文科省が独自に出せるものではない。告示は閣議決定の結果に過ぎず、すなわち制定責任は全て内閣に存するものだ。八田のいう『獣医師会の利権を守るために文科省が作った』説というのは、どこにどのような証拠があるのか出してみよ。
文科省が作ったんじゃないぞ、内閣が作るんだ、八田達夫よ。そんな簡単なことも知らないのかね?
内閣総理大臣以下、閣僚は全員署名したろ。その責任は、全て内閣が負うものだ。文科省の官僚がどんなに頑張っても、事務次官や審議官や局長級がいかに偉くて権勢を誇ったとしても、勝手に告示は出せない。内閣が許さない限りは不可能であり、それが行政の仕組みというものだよ。
3)規制の正当性の立証責任
八田が文科省官僚に「規制した理由を言え」と求めるなら、「閣議決定なので、私は変更できません」と言えば済む話である。
それとも何かね?八田は文科省の事務次官が「告示を撤廃しますね」と言えるとでも思っているのかね?ああ、官僚が勝手に作成して出したものだと信じているような人間なのであれば、そうだろうね。しかし、それは大間違いだ。
会社のあるルールがあるとして、例えば、毎朝社歌を歌うというのがあるとしよう。頭の悪い新入社員が、「どうして社歌を歌わせるなどという規制があるのか、その立証責任は部長にある!」って求めたとして、部長は何と答えるか?「社長が決めました」これで終わりでしょ。部長には、この「社歌を歌う」ルールを覆す権限は与えられておらず、その立証の責を負うべき明確な理由などないでしょうに。そんなことを言うのは、八田の独自ルールに過ぎない。どこの世界に、そんな行政の原則があるのかね?
官僚は、過去に作られた法体系を維持することはできるが、原則として自ら変更はできない。その説明責任なり、変更権限を持つのは、政治家たる大臣とか内閣であり、国会である。
なので、八田がどうしてそんな告示を決めたのか言ってみろ、とどうしても要求したいなら、小泉内閣に説明を求めるべきである。平成15年当時、自民党幹事長の要職にあった安倍に、告示制定の意図なり根拠を聞けばよいのではないか?
文科省官僚が答えられるのは、例えば「医療従事者については、将来の需給バランスを見通しつつ、養成計画の適正化に努める。特に、医師及び歯科医師については、全体として過剰を招かないように配慮し、適正な水準となるよう合理的な養成計画の確立について政府部内において検討を進める。」(昭和57年閣議決定)がありました、と事実を述べることは可能である。
更に、「大学医学部の整理・合理化も視野に入れつつ、引き続き医学部定員の削減に取り組む。あわせて、医師国家試験の合格者数の抑制等で医療提供体制の合理化を図る。」(平成9年閣議決定)がありました、と述べることはできよう。
これらの閣議決定の責任所在は、内閣に決まっており、それを文部省(官僚)が医師会に忖度だか配慮して勝手に決めた、などという理屈は通るわけがなかろうに。政治責任とはそういうものだろ。内閣が決めたんだよ、あくまでも。
政策決定の説明は、原則的に政治家が負うべきものであり、当時の政治家がいない場合には、官僚は制定に至る過程を述べることは可能だが、官僚個人が当時の政策決定(列記の閣議決定等)の意図なり理由を述べるのは、必ずしも適当ではないだろう。そうした過去の経緯を後日に知る為の材料として、各種文書の保管が重要であるのに、現在の安倍政権下では「全部破棄した」のオンパレードでは、あまりに矛盾するだろう。
平成15年告示は、何故決めたんだ、理由を言ってみよ、言えないのなら俺様が「文科省が獣医師会の利権を守る為に決めたんだ」と決めるからな、という感じなのが、八田の理屈だ。八田よ、それはあんたの独自のルール、屁理屈に過ぎないんだよ。
八田の言い分は、自分勝手な単なる決め付けであり、合理的推論でもない床屋談義レベルのものである。
4)行政には中長期的見通しがある
安倍官邸や、八田の言い分に共通するのは、彼ら個人の、ついここ数日とか数年の「思いつき」レベルで、政策決定を好き勝手に行う、という傾向である。これは、共謀罪の取組でもそうだし、戦争法案の際でも同様だった。
これまでの議論の経緯を、全てなかったことにしたり、無視することで、独自の屁理屈でもって押し通そうとする、という姿勢である。そういう輩にとっては、昨日今日で突然の政策や判断の変更がいくらでも可能、ということになるわけだ。
最高裁の判例変更なんて、大陪審などで「変更の根拠」をできるだけ精緻に述べると思うが、突然の思いつきで行動したり言辞を弄することのできる輩というのは、掌を返したように、何の説明も合理的理由も目ぼしい根拠もなしで、いきなり変えてしまうのだ。それを異常と呼ぶのだよ。
獣医学部の設置に関して、平成15年当時の文科省官僚が単なる思いつきで、制限の告示を勝手に作ったわけではない。
昭和46年中教審答申、「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的な施策について」に基づいて、中長期的な方向性が出されたものである。
例えば医学部定員は増加の年代というのがあったが、その後抑制策へと転じたわけである。
しかし、また政策変更を受けて、08年以降には増加となったものである。これらは、文科省官僚が勝手に決定したものではない。
防衛庁・省にも、ずっと以前から「防衛大綱」が閣議決定されてきたが、これも防衛官僚が勝手に政策変更できるわけではない。あくまで大綱に基づく整備計画というのがあるわけで、5年毎程度に見直しされてきた。これは政治的に決まるものであり、官僚の力は若干はあるが、責任所在は政治家にある。
それと同じく、高等教育の中期計画は更新されてきており、第5次の「高等教育の将来構想」(H12〜H16年、五カ年計画)においては、それ以前と同様に「医師や獣医師について拡充予定なし」、というのが政策的に決められていたものである。こうした方針は、現在の官僚たちが、自己の責任において決定権限があったものではあり得ず、当時の政治的な決定過程を経たものである。ここに至る(第4次計画)まで、中期計画で拡充が予定されなければ、政策変更はなされないだろう。これをもって、岩盤規制と呼ぶのは、いかがなものか。
全ては、決定当時の政治家の責任なのだよ。大多数の国民が獣医師の拡充を求めたわけではなかった為に、変更されなかったに過ぎない。医師については、08年以降、拡充へと大きく舵が切られたわけで、それも国民からの「医療崩壊」危機というのが社会問題化し、その対応がとられたものと考えられる。
政策変更には、相応の理由が存在した、ということであって、昨日今日の思いつきで好き勝手に官僚が政策決定できるわけではない。それを実現したのは、安倍官邸と森友学園事件とか、本件獣医学部の設置といった、極めて異常かつ特殊な決定過程を経たものではないのかね。ルールを無視すれば、そういう暴走的な「思いつき政策」を軽々しく実行できるだろうけどね。
5)中長期計画は、平成17年中教審答申に基づく
何度も述べてきた通り、安倍の「好き勝手思いつき内閣」が過去を全部無視してやるのとはワケが違う。審議会の議論や答申というのは、基本的に尊重されるべきものであり、それ故きちんとした議論を重ねる必要がある。中教審は教育への政治介入等を排除しつつ、議論してきたはずのものだったが、昨今ではそうした審議会そのものの信頼性は大きく地に落ちた。八田や竹中のような、それに類する輩が審議会等に蔓延るようになったが為だ。

話を戻すが、中教審答申はこれだ。
第2章 新時代における高等教育の全体像
○ 本章では、中長期的(平成17(2005)年以降、平成27(2015)年〜平成32(2020)年頃まで)に想定される我が国の高等教育の将来像のうち、主として高等教育の全体像に関する事項を示すこととする。
冒頭は、こうなっているでしょう?まさに、今の時期を見通した計画が、これだということです。
で、獣医師に関する計画(見通し)はどうなっているか、といえば、以下の通りである。
○ これまでの高等教育政策においては、昭和50(1975)年度から平成12(2000)年度までの高等教育計画で、大学等の新増設について抑制的に対応しつつ、第2次ベビーブームによる18歳人口の急増期においては受験競争の緩和等を目的として、臨時的定員を措置するなどの政策的な対応が図られてきた。
○ 平成12(2000)年度から平成16(2004)年度においては、基本的に抑制基調が継続される中、臨時的定員の解消が進められる一方で、新分野への対応等の事情により新増設の動きは続いていた。その結果、入学定員の規模としては大きな変化は見られなかった。
○ 平成14(2002)年8月の中央教育審議会答申「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」を踏まえ、平成15(2003)年度以降は、大学が社会のニーズや学問の発展に柔軟に対応でき、また、大学間の自由な競争を促進するため、抑制方針は(医師、歯科医師、獣医師、教員、船舶職員の5分野を除き)基本的には撤廃されている。
従って、文科省官僚が、例えば高等教育局長が、獣医師会の利権を守るべく好き勝手に決めたものではない、というのが明らかでしょう。何故、獣医学部設置はできないのか、と問われれば、
・平成15年文科省告示 第45号が閣議決定されていたから
・「平成17年中教審答申」により、『医師、歯科医師、獣医師、教員、船舶職員の5分野』についての抑制政策は維持の方針と示されたから
と答えることができる。
閣議決定は、官僚の責任範囲であろうはずもなく、また、中教審答申に基づく政策決定や方針策定は、内閣なり大臣の仕事であって、文科省官僚が決定権限を有しているものではない。
ここには、官僚個人の裁量の介入余地はかなり乏しく、政治の負うべき責任が大きいのであり、説明責任を果たすべきなのは、政治家である。時の内閣が、政策決定の説明責任を果たすのが当然なのだよ。
過去の決定経緯について、不明点があれば、当時の資料を探すなり、証言者を見つけ証言してもらう等が必要であろうが、文書隠蔽の安倍内閣では、それも覚束ないだろうね。

八田達夫の出してきた屁理屈は、全くの独自ルールを文科省官僚に投げつけただけに過ぎず、これまでの一般的な行政の仕組みを知っているなら、恥ずかしくてあのような暴言を新聞紙上に発表したりはできないだろう。
そもそも、何の為に審議会の議論があるのか、諮問するのは誰で答申を受ける人は誰なのか、政策決定の権限や責任がある人間とは誰なのか、少々でも頭を働かせれば誰でも直ぐに分かりそうなことなのに、それを知らないという恐るべき人間が政府の諮問会議民間議員として居座っており、官僚を顎で使って独自行政論を展開された日には、どうにも手の施しようがないだろうね。
再度書いておくが、いくら文科省官僚の事務次官や高等教育局長を、はったり紛いの暴論でもって痛めつけたり、凹ませたりできたとして、政策変更の決定権限は官僚にはないし、告示変更もできるわけがないのだよ。
内閣府や国家戦略特区会議・特区諮問会議の連中なら、上記程度の説明はできるだろう?
だから、獣医学部設置の正当性について、お前らが説明責任を果たせよ。大きな政策変更は、最高裁の判例変更と同類の過程なのだから、変更を決定した理由・根拠・正当性について、合理的説明ができなければならないに決まっているだろうが。
少なくとも、「閣議決定された平成17年中教審答申」に反して、抑制方針の維持を変更するだけの理由は、提示できなければならない。規制してるのは、文科省の官僚が独自で好き勝手にやっているのではなく、文科大臣の権限下でやっているのだよ。
一言で言えば、「小泉内閣が決めた、プゲラw」で終わりだろ。どう正しいか言ってみろって、その説明責任も、規制を撤廃する理由の説明も、全部自民党の国会議員に尋ねるべき質問だろうに。
前の記事にも書いたが、八田達夫を国会に呼んで、加計学園の担う予定の、ライフサイエンス分野だの、研究分野だの、研究需要だのを立証させるべき。
11月9日「諮問会議決定」とは、一体全体何なのか、どういう根拠でどういう理由で決まったのか、議長たる安倍が「ぼくちんの所管外だ、答えられないよ、総理は関与できないよ」とほざいたんだから、八田達夫が肩代わりして代弁できるんだろ?
何の為の諮問機関なのか?総理に、「答えを教える、説明の仕方を準備する」為にこそ、あるもんじゃないのか?だったら、諮問会議内で理屈が共有されていなけりゃおかしいし、誰に聞いても、安倍であろうと八田であろうと同じ答えが返ってくるって寸法だろう?
それを答えろよ、八田殿。
できないのかな?
なんだ?ハッタリ野郎なのかね?違うんでしょ?答えてみろ。
八田達夫式の暴論によれば、例えば20年前とか5年前の防衛大綱で「護衛艦は10隻以内」と決められたとして、現代の防衛官僚に対し「お前は、護衛艦10隻が正当である、という立証をしてみろ」とか無謀な要求を行い、防衛大綱を決定したのは過去の政権だと答えたら、「ようし、護衛艦10隻以内の正当性を証明できなかった、よって、制限を解除せよ、来年から30隻にしろ」と言うようなものだ。
そんな屁理屈は、どこにあるのだね?普通に、論理として、明らかにおかしいでしょ。大丈夫か?  
「加計学園の優遇はなかった」内部から見た獣医学部新設の一部始終 2017/7
八田達夫
公益財団アジア成長研究所所長、大阪大学名誉教授、政策研究大学院大学名誉教授。1943生まれ。国際基督教大学教養学士、ジョンズ・ホプキンス大学経済学博士。専門は公共経済学。オハイオ州立大助教授、 ジョンズ・ホプキンス大教授、大阪大学教授、東京大学教授、政策大学院大学学長等を経て現職。内閣府国家戦略特区諮問会議議員、同特区ワーキンググループ座長も務める
DOL特別レポート
内外の政治や経済、産業、社会問題に及ぶ幅広いテーマを斬新な視点で分析する、取材レポートおよび識者・専門家による特別寄稿。
加計学園問題で安倍首相による優遇は本当にあったのか。内閣府国家戦略特区諮問会議の民間議員を務める八田達夫・公益財団アジア成長研究所所長が、自らが見聞きしてきた事実を基に問題の「真相」に迫る。
「安倍首相は、国家戦略特区における獣医学部新設にあたり、加計学園を優遇したのではないか」という疑惑が持たれている。議論が紛糾するなか国会は閉会したが、与野党による閉会中審査が行われるなど、火種は依然として燻っている。
しかし筆者は、国家戦略特区の仕組み、および実際の申請の経緯から見て、そのような優遇はあり得ないと考えている。加計問題の議論を適切な方向へ導きたいという思いから、筆者自身が民間議員を務める内閣府国家戦略特区諮問会議と、座長を務める特区ワーキンググループとで見聞きしてきた事実を紹介しながら、筆者なりの見解を示したい。
獣医学部新設に関する文科省告示は「岩盤規制」の見本
まず、獣医学部の新設を制限している文科省の告示の背景を明らかにし、次に、特区における指定プロセスを説明しよう。
既得権を持つ者は、利権を守るために、新規事業者の参入を阻止しようとして政府に規制をさせる。これが各省・各業界団体による「岩盤規制」だ。参入規制の撤廃は、新しい産業の成長をもたらすことが多い。
たとえばトラック運送事業では、「道路運送法」という規制によって既存企業の利権が守られていたが、1986年にクロネコヤマト(ヤマト運輸)が運輸大臣を訴えて、ルート選択や運賃設定の自由を勝ち取り、宅配便の全国展開を可能にした。その後の宅配ビジネスの拡大ぶりは改めて語るまでもない。これは、参入規制の撤廃が成長をもたらした典型である。
営業の自由の規制は、既得権者による圧力によって、根拠が精査されることなくつくられてしまうことが多い。したがって規制官庁は、営業の自由を制限する場合には、いつでもその根拠を説明できなければならない。
大学や学部が最低限の質と経済的基盤を有しているかは、一般人が調べることは難しいから、薬や食品、建築物と同じように公的な審査が必要だ。大学の学部の新設にあたって、教育・研究の質と財務状況を審査するのは、文科省の大学設置・学校法人審議会(設置審)だ。設置審による質の審査をパスすれば、経済学部や法学部は新設できる。憲法が営業の自由を保障しているお陰である。
しかし文科省は、法律ではなく文科省告示(平成15年3月31日文部科学省告示第45号)によって、獣医学部に関しては、どれほど優れた新設計画であろうと、審査することすら認めていない。新規参入者からは、質の審査を受ける権利さえも一切奪っているのだ。
この参入規制は、競争を抑制し、既存の獣医学部および獣医師に利益をもたらす。実際、獣医師たちは、日本獣医師政治連盟を持ち、この規制の維持のために政治に隠然たる力を発揮してきた。たとえば、北村直人氏(日本獣医師政治連盟委員長)は次のように発言している。
「来年の参議院選挙に向け、われわれの取り組みを理解し、行動を共にしてくれる参議院議員の候補者を選定していかなければならない。一義的には、地方獣医師会においては地元の参議院候補は、責任をもって推薦について協議いただき、また、全国区の候補者についても、地方獣医師会がこれまでの関係等の事情で推薦をせざるを得ない候補者については、日本獣医師政治連盟に推薦いただきたい」(日本獣医師会(2015)「会議報告 平成27年度第2回全国獣医師会会長会議の会議概要」、『日本獣医師会雑誌』第68巻第12号、P.729)。
獣医学部新設を規制する文科省告示の根拠を、文科省は示せていない。この参入規制は、政治力の強い獣医師会の利権を守るために文科省がつくったものだからだ。そのため、すでに2002年の文科省の中央教育審議会答申は、獣医学部等の新設不認可について、「現在の規制を残すことについては、大学の質の保証のために実施するものである設置認可制度の改善の趣旨を徹底する観点からは問題がある」と指摘し、今後の検討課題としていた。それにもかかわらず、文科省はこれまでこの規制を放置し続けてきたのである。
現在、日本にとって獣医学部をつくることは重要な成長戦略だ。現代科学の中心の1つである生命科学の研究や、鳥インフルエンザやエボラ出血熱などの人畜共通病の研究のためにも、また、近年盛んになった獣医学の医学への貢献を増やすためにも、獣医学研究者を大量に育てる必要がある。新設しようとする学部に質の審査さえ受けさせないという獣医学部の新設規制は、国の成長を阻害している。
特区での獣医学部新設の検討開始 岩盤規制を正当化できなかった文科省
安倍首相は就任早々に、経済成長を図るため、すべての分野での岩盤規制に穴を空けることを指示した。岩盤規制をいきなり全国でなくすことが政治的に難しい場合にも、せめて特定の地域で参入制限をなくし岩盤に穴を開けることを目的として、2013年に国家戦略特区制度が設置された。
国家戦略特区の指定プロセスは、事業者や地方自治体の提案を起点に、最終的には総理が決裁する仕組みである。まず、地方自治体や事業者の規制改革提案を受けて、ワーキンググループ(WG)でヒアリングを行う。提案された規制緩和に合理性があると判断されれば、すぐに規制官庁にヒアリングを行い、規制が加えられている合理性を問う。規制緩和に納得しない規制官庁には、WG会議に出て反論してもらう。
獣医学部新設の制限は、株式会社による農地保有の禁止などと並んで有名な岩盤規制だ。だから特区WGは、2013年の特区制度設立時から、「国家戦略特区がこれらの岩盤に穴を開けなかったら、国家戦略特区の存在意義を問われる」と考えていた。
国家戦略特区における獣医学部新設に関しては、新潟市が2014年7月に最初に提案した。これは重大な案件なので、WGは5回にわたり、各省の担当官を招いてヒアリングをした。しかし文科省は新設の道筋を示せず、新設制限が正しいという理由を説明できなかった。
第一に、需給条件が満たされない場合は、獣医学部の新設希望校に大学設置審の審査を受けさせないという文科省告示の正当性を説明できなかった。第二に、百歩譲って需給条件を付けるとしても、獣医学部の定員数が十分だということの説明ができなかった(そのため2015年2月3日のWGでは、筆者が文科省に対して、新潟の2016年度新設を急いで決めるように迫っている)。
この頃、WGとしては、獣医学部新設を特区改革項目とする方向性を決め、その第一歩として、「日本再興戦略(改訂)2015」に盛り込むことを目指すこととした。
獣医学部新設の検討を義務付けた「日本再興戦略」に従わない文科省
その結果、2015年6月末の「日本再興戦略(改訂)2015」に、「2015年度中における獣医学部新設の検討」を成長戦略として入れて閣議決定することができた。これは必ずしも特区でなくてもよいから、何らかの方法での新設の検討を文科省に義務付けたものだ(なお、新設に当たっては、「石破4条件」が付けられた。これは、検討期限を切った上で、検討の際の留意事項を記載したものである)。
「新設の検討」というのは、新設ができるのならば「できる」と言い、新設ができないのならば理由を示す、ということである。
ところが文科省は、2015年度内に獣医学部新設を検討すると約束しておきながら、ずるずると2016年度に入っても検討に決着を付けようとしなかった。閣議決定に従わなかったのである。
特区側としては、2016年度中には告示整備や区域会議認定を行うべきだと考えていたので、業を煮やして、2016年9月16日に特区WGでヒアリングを行ったが、文科省は十分な検討をしていないことが明らかになった。そのため、事務局にはさらなる折衝を依頼し、山本幸三特区担当大臣にはさらなる督促をお願いした。
督促を経て各省協議が行われた結果、2016年11月9日の諮問会議で、「広域的に獣医師養成系大学等の存在しない地域」という条件付きではあるが、特区内では獣医学部が大学設置審にかけられることが正式に決まった。この諮問会議には文部科学大臣と農林水産大臣が出席し、この新設決定への同意を表明した。
「1校に限る」とされた獣医学部新設 背景に日本獣医学会からの圧力
ところが日本獣医学会は、2016年12月8日、山本大臣に対して、獣医学部新設を認める特区を「1ヵ所かつ1校のみに限ってほしい」という要請を行った。この間の状況は、日本獣医師会の藏内勇夫会長自身が次のように発信している。
「この間(筆者注:11月18日から12月17日まで)、私や日本獣医師政治連盟の北村委員長を始めとした本会の役職員は、できれば獣医学部新設決定の撤回、これが不可能な場合でもせめて1校のみとするよう、山本幸三地方創生担当大臣、松野博一文部科学大臣、山本有二農林水産大臣、麻生太郎自民党獣医師問題議員連盟会長、森英介同議員連盟幹事長など多くの国会議員の先生方に、本会の考え方にご理解をいただくよう奔走いたしました。
このような皆様方からの多数の反対意見、大臣及び国会議員の先生方への粘り強い要請活動が実り、関係大臣等のご理解を得て、何とか「1校に限り」と修正された改正告示が、本年1月4日付けで官報に公布・施行されました」(日本獣医師会(2017)「会長短信 春夏秋冬(42)」、2017年1月30日)
11月の諮問会議における条件では、当時までに提案されていた3地域はどこも開設できる文言になっていたことに危機感を感じた獣医師会側が、1校だけを認めさせる圧力をかけたのである。
その結果、山本大臣は、この条件は受け入れざるを得ないという政治判断を行い、2017年1月の内閣府・文科省告示では、1校に限るという文言が入った。以上が、獣医学部新設に関する審議過程の全体像である。
1つの区域で規制改革が認められれば他の区域でも認められるのが原則
次に、個々の自治体からの提案の経緯を見よう。
2014年7月に新潟市が獣医学部新設を提案して以来、特区WGは各省との折衝を続け、2015年の「日本再興戦略」への検討事項として盛り込むべく準備をしてきたことは、先に述べたとおりだ。しかし新潟市からはその後、WGへの具体的な追加提案がなかった。
その状況で、愛媛県と今治市が、2015年6月5日に、提案公募に応じて獣医学部新設を提案してきた。それを受け、2015年12月の諮問会議で、今治市が特区に指定された。指定目的の1つには、獣医学部新設が含まれていた。
その後の分科会において、今治市の説明はさらに明確になった。特に2016年9月21日の「第1回今治市分科会」における、加戸守行・元愛媛県知事による説明は、自身が知事時代の鳥インフル対策で経験した研究機関不足の必要性を訴え、説得的だった。2016年9月30日の広島県・今治市特区会議では、今治市における獣医学部新設に関する詳細な提案を示している。
2015年12月の時点では、特区のなかで今治市だけが、明確な計画を持つ提案者であった。したがって、2016年9月16日の特区WGヒアリングを含め、9月から10月前半にかけての文科省督促でも、我々関係者は今治市での新設を念頭に置いていた。
一方で、2016年10月17日に、京都が具体案をWGに提案してきた。それまでは3月に関西区域会議において概要を1枚の紙で提案していただけだったが、この日、初めて具体的な提案がなされた。
特区では、1つの区域で規制改革が認められれば、それが他の区域でも自動的に認められるのが原則だ。したがってこの段階では、最初にどの区域で獣医学部新設が認められたとしても、当時申請していた3区域すべてで同じように認められるはずだった。
文科省の「逃げの一手」を防ぐべく獣医学部新設を急がせたWG
ただし、1校目にはできるだけ早く新設してもらわなければならない。特区の評価は「速い」という点にある。事業者や自治体は多大なコストをかけて規制改革を提案している以上、スピーディに進めるのは当然のことだ。
現に、2015年2月3日のWGでは、特区ではなく「獣医学部新設を全国規模で検討したい」という文科省高等教育局専門教育課長に対して、これを「遅延させるための逃げの一手」と受け取った筆者は、「タイミングの問題ですよね。もしそれが新潟も含めてすぐ決定されるのならば、特区にすることには特にこだわりません。しかし、そうではなくて決定が何年先などというのなら、新潟に関しては今すぐ決めてしまいましょう。それでまず先駆けにしましょう」と発言している。
2016年11月の諮問会議決定では、「……獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」とされている。これは、2015年度内の検討の約束を文科省が守らなかったことで、特区事業としての獣医学部新設が予定よりも遅れていたため、最初の事業者および自治体には最大限急いでもらうことを意図したものである。
さらに、2016年11月の諮問会議決定に基づき、まず早期にとりあえず獣医学部ができ、その後それに他の大学が続くと予想していた。
しかし「1校に限る」という条件が付けられたために、今治市に続いて他の地域で直ちに新設することは難しくなった。WGとしては、最初の突破口を作れば、1校も新設しない場合と比べて、その後の新設の可能性がはるかに向上すると考えていた。しかし、「1校に限る」という政治的な判断は、あくまで獣医師会の意向に沿ったものであり、「制限せずすべて開放」という立場の特区WGの側や、ましてや首相が主張したためではない。
首相は加計学園を優遇したのか? 報道の前提「3つの疑惑」は事実無根
朝日新聞の6月28日の社説は、「(安倍首相が)親友が経営する加計学園を優遇したのではないか――」という疑惑が深まっているとしている。
この疑惑は、次の3つの前提のいずれかが成り立つ場合には、持たれて当然のものである。
(1)正規の手続きを踏まずに、首相が特定の大学を選考するように仕向けた。
(2)国家戦略特区制度では、1つの特区で認められた改革は、自動的に他の特区でも適用される原則であるにもかかわらず、首相が当該特区以外には適用できないように1校限りとする圧力をかけ、親友が設立する学部以外の新設を妨げた。
(3)新設の申請をこれまでしたこともなかった学校法人が、理事長の親友が首相になったから学部の新設を申請した。
しかし、この3つの疑惑の前提はいずれも成り立っていない。
まず、選考は正規の手続きを踏んで行われており、諮問会議で議論されるまでに首相が選考に介入する余地は一切なかった。次に、これまで述べた経緯から明らかなように、1校に絞ったのは獣医師会側である。
さらに、加計学園(今治市、愛媛県)は、理事長の親友が首相になったから学部の新設を申請したわけではない。第一次安倍内閣の期間には、加計学園は獣医学部の新設を申請しなかった。加計学園が初めて申請したのは、安倍氏が政治的に最も弱かった福田内閣のとき(2007年)だ。その後15回申請し、その度に文科省に理由もなくはね返され続けた。誰も安倍氏が首相に返り咲くとは考えていなかった民主党政権のときにも申請を続け、ついに鳩山政権時代に構造改革特区で新設を検討することが認められていた。
やがて第二次安倍内閣になり、2013年に国家戦略特区ができた時点で、獣医学部の新設をどこかの大学が特区に申請して突破口を開いてくれればよいと我々WGは思っていたが、今治市はなかなか申請してこなかった(なお、日本獣医師政治連盟に立ち向かう今治の学校があるということは、規制改革関係者の間ではよく知られていた。しかし、理事長が安倍首相の親友であるということを私は知らなかったし、知っていた規制改革関係者はほとんどいなかったのではないかと思う。福田政権以来の新設申請の経緯を見ても、安倍首相との近さを示すものは何もなかった)。
特区では、1つの地域で規制緩和が認められれば、それが他の地域でも同様に認められる。それゆえ加計学園は、他地域での新設を待っていたのかもしれない。
新潟市の提案は具体化が進んでいなかったことが明白になっていた2015年の6月初旬になって、今治市は一般提案募集にやっと応募してきたのである。
加計学園が正当な手続きを踏み、参入規制と戦った選択は正しい
さて、新潟が先延ばしとなった段階でも、加計学園は、理事長と首相との友人関係からあらぬ疑いがかけられないように、獣医学部新設を応募すべきではなかったのだろうか。遠慮を貫き続けるべきだったのだろうか。
現在の日本で獣医学部を新設することは重要な成長戦略であるから、どこかの大学が特区の仕組みを活用して、新設の突破口をつくってくれる必要があった。加計学園は、福田内閣以来、何度もはねつけられながらも規制改革提案を続けた。開きかけた岩盤規制の穴がまた閉じられそうになった時点で、加計学園は正当な手続きを踏んで設立申請を行った。永年続けてきた、既得権による参入規制との闘いを続行したのは、正しい選択だったと私は思う。
過去にも、国交省と総務省に規制緩和を要求して勝ち取ってきたヤマト運輸や、厚労省に対して医薬品のネット販売解禁を勝ち取ったケンコーコムといった会社がある。このような勇敢な会社は、彼らの成果にフリーライドした企業に比べて、社会的に大きな賞賛を受けるにふさわしいと思う。加計学園は、官僚の岩盤規制と闘ったヤマト運輸やケンコーコムと同じ社会的役割を果たしたのではないだろうか。
岩盤規制に立ち向かっていく事業者と自治体には、大変なエネルギーと時間と行政資源が必要である。メディアがそのような努力を応援せずに、突破口をつくる努力を潰す方向に加担してしまえば、どの事業者も自治体も規制改革など要望しなくなる。それは、政治に働きかけることによって利権を得続けてきた既得権者たちが、最も望むことであろう。 
 

 

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