カレーライス

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雑学の世界・補考   

カレーの歴史

( 「食雑題 油 酒 中華料理店 カレー」 からの転載 )
カレーは誰もが知っているとおり、インドの伝統的な料理です。しかしインドには元々、料理の名前としてのカレー(curry)という言葉は存在していませんでした。
「curry」という言葉の語源にはいくつかの説があります。特に有名な説は次の2つです。
1つめは、タミール語で「ご飯にかけるタレ状のもの」という意味の「カリ(kari)」という言葉を、西洋人が料理の名前と勘違いしたという説。
2つめは、ヒンディー語で「香りの良いもの」「美味しいもの」という意味の「ターカリー(turcarri)」という言葉を、これもやはり西洋人が料理の名前と勘違いしたという説です。
他にも様々な説がありますが、どの説が正しいのか、はっきりしたことはまだ分かっていません。しかし、料理の名前としての「curry」という言葉は、西洋人が初めて使い始めたのは間違いないようです。
「curry」と名付けられた料理は、現在ではインドだけでなく、東南アジア、日本、ヨーロッパ、アメリカなど世界各地で食べられるようになりました。
日本では明治時代以降に広まった、比較的歴史の浅い食べ物であるにもかかわらず、既に日本人の食生活にはなくてはならない「日本料理」として定着しました。  
カレーの誕生

 

インドで後に「カレー」と呼ばれるようになった料理がいつ頃誕生したのか、はっきりとしたことは分かりません。しかし、カレーに使われているスパイスのうちインド原産のものは、既にインダス文明時代から栽培されていたようです。
インダス文明は新石器時代に西アジアからインド北西部へ移住してきたドラヴィダ人という民族によって興されました。インダス文明は紀元前2300年頃に始まりました。
ドラヴィダ人はメソポタミアやエジプトなどと交易を行っており、中東で栽培されていたスパイスもインドへ持ち込まれていました。スパイスをたくさん使ったインド料理の原型は、この頃既に形作られていました。これが現在のカレーの原点、原始的なカレーの誕生といえるかもしれません。
紀元前1700年頃になるとインダス文明は衰退しました。紀元前1500年頃になると中央アジアの遊牧民族だったアーリア人という民族がインド北西部へ移住してきました。
ドラヴィダ人はアーリア人によって征服され、一部はインド南部へ逃れていきました。現在のインド人が地方によって民族や言語が違うのは、この一件の名残です。
アーリア人はインドに移住すると遊牧を止め、農耕を始めて定住するようになりました。そしてアーリア人によって、インダス文明とは違う新しい文化が興りました。原始的なカレーにはアーリア人の食文化も取り入れられ、インド各地で地域ごとに特色のあるカレーが発展し ていきました。
紀元前 300年頃になると、インド人は東南アジアと交易を行うようになり、インドへ東南アジア産のスパイスが持ち込まれると同時に、東南アジアへはインドの食文化が伝わりました。このことにより、インドのカレーはさらに多くの種類のスパイスが使われるようになり、東南アジアでもカレーが作られるようになりました。
一方、タイ人の先祖はこの頃、華南地方で稲作をしながら暮らしていました。しかし漢民族などの北方諸民族の南下に伴い、タイ人の先祖は周辺の各地へと移住を始めました。
彼らの一部は、9世紀頃までに現在のタイ王国のある、インドシナ半島まで移住してきました。ここでタイ人はインドから伝わったカレーに出会いました。そしてカレーはタイ人の食生活に取り入れられていきました。
こうしてインドで生まれたカレーは東南アジア各地に広まっていき、それぞれの地域の伝統的な食文化と融合して独自の発展を遂げていきました。
しかし、15世紀ごろまではアジアのどの国でも、現在のカレーには大抵入っているチリペッパー(唐辛子)は使われていませんでした。
実はチリペッパーは熱帯アメリカ原産で、この頃にはまだアジアには伝わっていなかったのです。チリペッパーが伝えられるまでは、ペッパー(胡椒)やロングペッパー(長胡椒)などで辛味を出していました。  
大航海時代とスパイス貿易

 

ヨーロッパでは紀元前からアジア産のスパイスが使われていました。東南アジア産のスパイスは海路でインドに集められ、インド産のスパイスとともにアラビア商人の手によって、シルクロード経由でヨーロッパに運ばれていました。
ヨーロッパではアジア産のスパイスは高値で取引されるため、アラビア商人はこのスパイス貿易で莫大な利益を上げていました。
西洋人はスパイスをアジアから直接仕入れることができるようになれば、自分たちもスパイス貿易で大きな利益を上げることができると考えました。
しかし、シルクロードはアラビア商人に支配されていたので使えません。そこで、海路アジアへ行くための航路開拓が求められるようになりました。そして15世紀中頃、大航海時代が始まりました。
イタリアのジェノヴァ出身の航海家で商人でもあったクリストファー・コロンブスは、当時最新の仮説だった地球球体説に基づき、ヨーロッパから西回りでアジアへ到達することを考えました。
コロンブスはスペイン・カスティーリャ王国の女王イザベル1世の援助を受け、1492年8月3日に西に向かって航海を始めました。そして同年10月11日に島を発見し上陸しました。
コロンブスはこのとき上陸したのはインドの近辺の島だと考えていましたが、実際はアメリカのカリブ海に浮かぶ島でした。1493年3月15日、コロンブスはスペインに帰還 しました。
コロンブスはアメリカから様々な品物を持ち帰りましたが、その中のひとつがチリペッパー(唐辛子)でした。これは西洋人が初めて体験する、強烈な辛味を持ったスパイスでした。
実際のアジア航路はポルトガル人の航海家ヴァスコ・ダ・ガマによって開拓されました。
ヴァスコ・ダ・ガマはアフリカ南端を経由してインドにたどり着くことを考えました。1497年7月8日にリスボンを出航し、翌年5月20日にインド南部のカリカットに到達しました。
これ以降、西洋人はアジアから直接スパイスを仕入れることができるようになりました。
アジア航路が開拓されると、西洋人はアジア各地からスパイスを仕入れると同時に、アメリカから持ち帰ったチリペッパーをアジア各地へ伝えました。
インドや東南アジアでは元々辛いものを好む食文化があったので、チリペッパーが伝えられると瞬く間に普及し、各地の食文化に劇的な変化をもたらしました。
そして、インドや東南アジア各地のカレーにはチリペッパーが用いられるようになり、これまでよりも辛いものになりました。
同時にこれまで代表的な辛味性スパイスのひとつだった、ロングペッパー(長胡椒)はあまり生産されなくなりました。
西洋人とカレーの出会い

 

16世紀以降、ヨーロッパ各国はアジアとの貿易で独占的な利益を上げるため、アジアの植民地化を始めました。
インドに最初の植民地を築いたのはポルトガルでした。ポルトガルはインド南西部のコーチン、ゴアとセイロン島(現スリランカ)を占領し、アジア貿易の拠点にしました。
17世紀になると、オランダ、フランス、イギリスがインドに侵出してきました。
オランダはポルトガルからセイロンを奪い、フランスは東海岸のポンディシェリに、イギリスはインド東部ベンガル地方のカルカッタ(現コルカタ)、東海岸のマドラス(現チェンナイ)、西海岸のボンベイ(現ムンバイ)に拠点を築きました。
この三国はそれぞれ東インド会社を設立し、植民地経営を行わせました。最終的にインド全域を支配したのはイギリスでした。
イギリスは1756年〜1763年の7年戦争でフランスをインドから追い払いました。その後、イギリスはインド東部のベンガル地方全域を占領すると、1773年に東インド会社の社員だったイギリス人ウォーレン・ヘースティングズを総督に任命して統治させました。
以後は、東インド会社に代わってイギリス政府が直接総督を派遣して統治する体制が作られました。
イギリスはベンガル地方から徐々に支配地域を拡大し、19世紀中頃までに現在のインド、スリランカ、パキスタン、バングラディシュ、ミャンマーの全域を占領しました。1877年にはイギリス女王がインド皇帝を兼任する「イギリス領インド帝国」を成立させました。
16世紀初期、西洋人は植民地支配していたインドで初めて、後に「カレー」と呼ばれるようになる料理を目にしました。この頃からヨーロッパでもインド人の食文化が紹介されるようになりました。
料理の名称としての「カレー(curry)」、またはそれに似た言葉は、16世紀後期〜17世紀初期ごろから使われていたことが、当時のヨーロッパの書物で確認されています。
18世紀中頃までの西洋人は、カレーをインド人が食べているものとしては知っていても、同じものを作って食べることはありませんでした。しかし、18世紀後期になるとイギリスでカレーが作られるようになりました。
カレーのレシピが初めてイギリスに紹介されたのは1772年頃のことでした。紹介したのは1773年に初代ベンガル総督になるヘースティングズでした。
ヘースティングズの紹介したレシピは、稲作が盛んで米が主食のベンガル地方のものだったので、イギリスではカレーは米とともに食べるようになりました。
また、ヘースティングズはガラムマサラもイギリスへ持ち帰り、これが後のカレー粉の原点になったとも言われています。
「明解簡易料理法」(1774年)という書物には、現存するイギリスで最古のカレーのレシピが載っています。それは「みじん切りにしたタマネギとぶつ切りにした鶏肉をバターで炒め、ターメリック、ジンジャー、ペッパー、クリーム、レモン汁を入れて煮る」というものです。
このレシピでは、インドで作られているカレーよりスパイスの種類が極端に少ないのが分かります。イギリス人にはたくさんの種類のスパイスを組み合わせて使うことは慣れていないため難しかったようです。このことがイギリスでカレー粉が考案された理由と考えられます。
初めてのカレー粉は18世紀末〜19世紀初期頃にイギリスのC&B(クロス・アンド・ブラックウェル)社から発売されたと言われています。
カレー粉が作られてからイギリスのカレーは、シチューなどのヨーロッパの伝統的な料理の調理法を取り入れ、独自の発展を遂げていきました。
日本人とカレーの出会い

 

日本人がカレーと出会ったのは江戸時代末期、ペリーの黒船来航後に日本が開国し、尊皇攘夷運動が盛んになった混乱した時代でした。
日本人でカレーについてのもっとも古い記録を残しているのは福沢諭吉です。福沢は1860年(安政7/万延元年)に「増訂華英通語」という辞書を出版しました。これは福沢がアメリカで購入した英中辞典を元に、発音をカタカナで表記したもでした。この中で、英語の「curry」に「コルリ」という発音が記されれています。
但し、これは多くの英単語の内のひとつとして紹介されているだけなので、当時の福沢が実際にカレーを見たり食べたりしたことがあったかどうかはは分かりません。
日本人で実際にカレーを目撃したもっとも古い記録を残しているのは、1863年(文久3年)幕府遣欧使節の一人だった三宅秀です。幕府遣欧使節一行はフランスの船でヨーロッパに向かっていました。その船にはインド人も同乗しており、その食事を目撃したのです。
三宅は日記に次のように書いています。
「飯の上ヘ唐辛子細味に致し、芋のドロドロのような物をかけ、これを手にて掻きまわして手づかみで食す。至って汚なき人物の物なり」
また、幕末の日本では横浜などの貿易港に外国人居留地が作られており、そこで暮らすイギリス人を通して、ヨーロッパ風のカレーが日本人に紹介されていました。
但し、この頃カレーを知っていた日本人は、外国人に接する機会があった一部の人だけでした。カレーが一般の日本人にも知られるようになるのは明治時代になってからでした。
日本人で実際にカレーを食べたというもっとも古い記録を残しているのは、1971年(明治4年)国費留学生としてアメリカに向かっていた山川健次郎です。
アメリカへ向かう船の中で山川は、船酔いで苦しんでいた上、食堂で出される西洋料理が口に合わず、食欲不振になり体調を崩していました。しかし何も食べないわけにはいかず、食堂のメニューから何とかして食べられそうなものを探しました。そして見つけたのがカレーライスでした。日本人である山川は、米を使った料理ならなんとか食べることができたのです。
日本で初めてのカレーのレシピは1873年(明治5年)に発売された「西洋料理通」(仮名垣魯文著)と「西洋料理指南」(敬学堂主人著)の2冊の本に記載されています。
この両書の共通の特徴は、カレー粉で味付けし、小麦粉でとろみを出すことと、野菜はネギのみを使用し、タマネギ、ニンジン、ジャガイモ等は使われていないことです。肉については「西洋料理通」では牛、鳥、羊を、「西洋料理指南」では鶏、エビ、タイ、カキ、赤カエルを使っています。
カレー粉と小麦粉が使われていることから、カレーがインド料理としてではなく、西洋料理として日本に伝わったことが分かります。また野菜はネギしか使われていませんが、現在のカレーでは定番のタマネギ、ニンジン、ジャガイモなどは、当時の日本ではあまり栽培されていなかったこともあり、まだカレーの具としては用いられてはいなかったようです。
1876年(明治9年)には札幌農学校(現北海道大学)が設立され、「少年よ、大志をいだけ」で有名なクラーク博士が赴任してきました。クラーク博士は寮に住む学生の栄養状態改善のため西洋料理を推奨し、「生徒は米飯を食すべからず、但し、らいすかれいはこの限りにあらず」という規則を作りました。「ライスカレー」の語源はこの一件にあるとする説もあります。
1877年(明治10年)以降はカレーライスをはじめステーキ、カツレツなどの西洋料理を扱う飲食店も増えてきました。しかし庶民的な和食の数倍の価格だったので、まだ高級料理として扱われていました。カレーが庶民の身近な料理になるのは明治時代後期になってからでした。
日本でのカレーの普及

 

明治時代後半になるとカレーは庶民的な洋食店でも扱われるようになりました。また、比較的裕福な家庭でも作られるようになりました。
カレーが一般庶民の家庭でも作られるようになったのは、日露戦争がきっかけでした。
朝鮮半島と満州の支配権を巡って対立していた日本とロシアは1904年(明治37年)2月8日に戦争を始めました。これが日露戦争です。二〇三高地の激戦や日本海海戦を経て1905年(明治38年)9月5日ポーツマス条約が締結され、日本は勝利しました。
戦争を行うためには兵士に食べさせる食料が必要です。そしてそれは、日持ちがする食材で一度に大量に簡単に調理できるものでなくてはなりません。そこで白羽の矢が立ったのがカレーでした。
カレーは軍用食品として最適だったので、陸海軍ともに採用されました。海軍でのカレーを食べる習慣は、現在の海上自衛隊にも引き継がれており、毎週金曜日が「カレーの日」になっています。
日本軍の兵士達は軍隊でカレーの作り方を覚えました。そして戦争が終わると兵士達は国へ帰り、家族にカレーの作り方を教えました。これ以降、一般家庭でもカレーが作られるようになりました。
明治後期から昭和初期にかけてカレーが一般化するにつれて、様々な新製品が続々と作られました。
1902〜03年(明治35〜6)頃、日本郵船の客船の一等食堂で、福神漬けがカレーのつけ合わせとして採用されました。(福神 漬けそのものは1886年(明治19年)に 東京池の端・酒悦によって製品化されています)
1904年(明治37)頃、東京早稲田の三朝庵がカレーうどんを考案しました。
1906年(明治39年)東京神田の一貫堂から日本初のインスタントカレー「ライスカレーのたね」が発売されました。これはカレー粉と肉を混ぜて乾燥させたもので、お湯をかけるだけで食べられるというものでした。
1909年(明治42年)頃、東京目黒の朝松庵がカレー南蛮蕎麦を考案しました。
1910年(明治43年)大阪難波で自由軒が開店。カレーとライスをあらかじめ混ぜ合わせ、生玉子をのせているのが特徴でした。
1911年(明治44年)頃、日本郵船の客船・三島丸の食堂のシェフがドライカレーを考案しました。これは、白飯の上に汁気の少ない挽肉カレーをのせたものでした。
大正時代になるとタマネギ、ニンジン、ジャガイモといった野菜も一般的になり、カレーに使われることも多くなりました。現代の日本のカレーの基本的な形態はこの頃確立されました。
1914年(大正3年)東京日本橋の岡本商店がインスタントカレー「ロンドン土産即席カレー」を発売しました。これはお湯で溶いて肉や野菜を入れて作るものでした。
1918年(大正7年)東京浅草の洋食店・河金がカツカレーを考案しました。
1926年(大正15/昭和元年)「ホームカレー」の商標を持つ稲田商店を吸収していた大阪の薬種問屋・浦上商店(現ハウス食品)が、粉末タイプの即席カレールー「即席ホームカレー」を発売しました。その後、1928年(昭和3年)に「ホームカレー」は「ハウスカレー」と改名されました。
1927年(昭和2年)東京深川の菓子店・名花堂(現カトレア洋菓子店/江東区森下)がカレーパンを考案し「洋食パン」の名で実用新案登録しました。
1927年(昭和2年)東京新宿の中村屋は、日本の飲食店としては初めて本格的なインド風カレーをメニューに取り入れました。中村屋の創業者の相馬愛蔵は、日本に亡命中だったインド独立運動家ラス・ビハリ・ボースを保護していました。ボースは日本のカレーが安い食材を用いた経済料理になっている現状を憂い、相馬に本格的な高級インド風カレーを作るよう進言しました。相馬はボースの意見を採用し、最高の食材を使ったインド式「カリー・ライス」を完成させました。
このように、カレーは日本人の食生活に定着していきましたが、カレー粉は昭和初期頃までイギリスのC&B(クロス・アンド・ブラックウェル)社製のものでほぼ独占されていました。
当時のC&B社はカレー粉の製法を公表しておらず、製品のパッケージにも「このカレー粉は東洋の神秘的な方法によって製造された」としか書かれていませんでした。
このため、国産品でC&B社製と同等以上の品質のカレー粉を作ることは困難でした。明治時代末期頃から国産のカレー粉も作られてはいましたが、これは輸入品にスパイスを添加しただけのもので、完全な国産品ではありませんでした。
初めて純国産の高品質なカレー粉を作ることに成功したのは、東京浅草の日賀志屋(現ヱスビー食品)でした。創業者の山崎峯次郎は日賀志屋設立当初からカレー粉の研究を始め、1923年(大正12年)にC&B社製に負けない品質のカレー粉を完成させました。これ以降、いくつかの他メーカーからも純国産のカレー粉が発売されました。
しかし、国産のカレー粉はしばらくの間あまり売れませんでした。それは、長い間C&B社製のカレー粉が独占的に使われていたため、多くの飲食店が「カレー粉は C&B社製でなくてはならない」と考えていたためでした。しかし、ひとつの事件をきっかけに、国産のカレー粉は急速に普及していきました。
1931年(昭和6年)C&B社製のカレー粉の容器に安い国産のカレー粉を入れて売っていた悪徳業者が摘発されました。このとき既に多くの偽造カレー粉が販売され、使用されていました。
しかし、長い間カレー粉の偽造には誰も気付きませんでした。この当時の国産のカレー粉はC&B社製に負けないくらい高品質になっていたため、実際食べ比べてみても違いが分からなかったのです。この一件が国産のカレー粉の評価を高める結果になりました。これ以降、国産のカレー粉が普及していきました。
戦争の時代

 

1931年(昭和6年)9月18日、柳条湖事件をきっかけに満州事変が始まりました。日本は中国東北部を占領し「満州国」を成立させましたが国際的には認められず、1933年(昭和8年)に日本は国際連盟を脱退しました。この頃からカレーの原料として欠かせないスパイスの輸入量が減り始めました。
1937年(昭和12年)7月7日、盧溝橋事件がおこって日中両軍が衝突し、日中戦争が始まりました。
日本政府は国民の戦争への協力を促進するために1938年(昭和13年)国家総動員法を制定し、経済統制を始めました。これによりスパイスの輸入が制限され、カレー粉の生産に支障を来すようになりました。
1939年(昭和14年)になると、様々な生活必需品が切符制になり、国民の生活水準は低下しました。
1941年(昭和16年)12月8日、日本軍はハワイの真珠湾を攻撃し、マレー半島のコタバルに上陸しました。これにより日本はアメリカ、イギリスと戦闘状態に入り、太平洋戦争が始まりました。
戦争は東南アジア全域に拡大し、東南アジアのスパイス産業は大打撃を受けました。カレー粉の生産量も著しく低下し、一般の国民がカレーを食べることは不可能になりました。
しかし、カレーは軍用食品として必要だったので、軍に納入するために、わずかながらカレー粉の生産は行われていました。
やがて、そのわずかなカレー粉を作るために必要なスパイスも手に入らなくなると、ヨモギの粉などの増量剤が使われるようになりました。カレーを黄色 く着色するために必要なターメリックが手に入らなくなると、黄色くないカレー粉も試作されましたが採用されませんでした。
この当時の陸軍では英語が敵性語と見なされ、使用が禁止されていました。このためカレーは「辛味入汁掛飯(からみいりしるかけめし)」と呼ばれていました。しかしこの名称は一般には普及せず、海軍では普通に「カレー」と呼ばれていました。
太平洋戦争末期になると日本は補給を絶たれました。日本軍は多くの戦線でカレーどころか満足に食事もできない状況に陥り、多くの兵士が餓死しました。また、日本本土も空爆によって多くの死者が出ました。
そして、沖縄占領、広島・長崎の原爆投下を経て1945年(昭和20年)8月15日、日本は連合国に対し無条件降伏しました。
日本は戦争には負けましたが、ようやく平和な時代が訪れました。戦後の闇市では、あり合わせの材料で作られたカレーが売られていました。当時のカレーメーカーは原料の不足に悩まされながらも、戦後の早い時期からカレー産業復興のため精力的に取り組みました。
1948年(昭和23年)には学校給食が始まり、カレーがメニューに取り入れられました。この頃からGHQの放出したスパイスにより、カレー粉の生産量も回復していきました。
1950年(昭和25年)になると朝鮮戦争による特需景気により日本の経済は急成長しました。
1951年(昭和26年)にはサンフランシスコ講和条約が締結され、翌年に日本は主権を回復しました。この頃になるとスパイスの輸入も再開され、カレー粉の原料が安定して供給されるようになりました。そして多くのカレーメーカーが乱立し、新製品が次々に作られ競争が激化していきました。
戦後-80年代

 

戦後から1950年代に掛けて、固形や粉末の即席カレーが各社から発売されました。この頃は即席カレーの試行錯誤の時代で、現代では見られないユニークな製品がありました。
1945年(昭和20年)にオリエンタルから発売された「オリエンタル即席カレー」は、炒めた小麦粉にカレー粉を加えたものでした。当時は終戦直後で娯楽の少ない時代でしたが、オリエンタルは踊り、演奏、声帯模写、奇術、腹話術などを行なう芸人達を宣伝カーに乗せ、全国を回りながらカレーを売っていました。
1950年(昭和25年)キンケイから発売された固形ルー「キンケイミルクカレー」は、石鹸に似た形状だったので、石鹸と間違えて使った人もいたそうです。現在と同じような板状の固形ルーは、同年にベルから発売された「ベルカレールウ」が初めてでした。
1954年(昭和29年) ヱスビーから発売された「ヱスビーモナカカレー」は、粉末タイプのカレールーを最中の中に入れたもので、最中ごとそのまま鍋に投入するというユニークな製品でした。
1960年代になると、即席カレーは固形タイプが一般的になりました。家庭でも、カレー粉と小麦粉から作るより、固形ルーを使って作ることが多くなりました。1960〜70年代には各社から多くの固形ルーが発売され、その中のいくつかの製品は現在でも販売されています。また、この時代にはレトルトカレーも考案され、徐々に普及していきました。
1960年(昭和35年)ハウスから「ハウス印度 カレー」が発売されました。
1960年(昭和35年)グリコから「グリコワンタッチカレー」が発売されました。これまでの固形カレールーが非常に堅く、使用するときに削る必要があったのに対し、ワンタッチカレーは現在のものと同じように、柔らかく溶かしやすい画期的な製品でした。
1963年(昭和38年)ハウスから「ハウスバーモントカレー」が発売されました。リンゴとハチミツを使った子供でも食べられるマイルドな味が特徴で、現在まで続く大ヒット商品になりました。
1964年(昭和38年)ヱスビーから「特製ヱスビーカレー」が発売されました。「インド人もびっくり!」と言うテレビCMで話題になりました。
1966年(昭和41年)ヱスビーから「ゴールデンカレー」が発売されました。これは今までの製品とは違い、スパイスの風味を効かせた本格派のカレーで、値段も他の製品の倍くらいしました。
1968年(昭和43年)ハウスから「ジャワカレー」が発売されました。
1968年(昭和43年)大塚食品から世界初のレトルトカレー「ボンカレー」が発売されました。「3分間待つのだぞ」と言うテレビCMで話題になりました。沖縄では現在でも当時とほぼ同じパッケージのボンカレーが販売されています。
1971年(昭和46年)ハウスからもレトルトカレー「ククレカレー」が発売されました。
1978年(昭和53年)後に日本最大のカレーチェーンになるCoCo壱番屋の1号店が、名古屋でオープンしました。
1980年代は空前のバブル景気のため、贅沢な風潮の時代でした。この時代はグルメブームの時代でもありました。和食やフランス料理などの高級料理店が、テレビや雑誌にたびたび取り上げられるようになり、「美味しんぼ(雁屋哲原作、花咲アキラ作画)」などの料理漫画の連載が始まりました。
これまでの日本のカレーは庶民的で家庭的な料理と言うイメージがあったのですが、この頃には高級化したカレーも作られるようになりました。本格的なインド料理やタイ料理などのエスニック料理店も一般的になりました。固形ルーやレトルトでも高級志向、本格志向のものが次々に発売されました。
グルメブームの一方で、この時代には激辛ブームもありました。今までにない非常に辛いカレーを出す店が増えたほか、レトルトなどでも激辛志向の新しい商品が作られました。
1980年(昭和55年)ヱスビーから高級カレー「フォン・ド・ボー・ディナーカレー」が発売されました。当初は缶詰でしたが、1982年(昭和57年)にはレトルトも発売されました。
1982年(昭和57年)全国学校栄養士協議会で1月22日の給食のメニューをカレーにすることが決定され、全国の小中学校で一斉にカレー給食が出されました。これを記念して1月22日は「カレーの日」に定められました。
1983(昭和58)ハウスから高級カレー「ザ・カリー」が発売されました。固形ルーとペーストがセットになった製品でした。
1983年(昭和58年)ヱスビーから固型ルー「カレーの王子様」が発売されました。日本初の幼児向けカレーでした。1985年(昭和60年)にはレトルトも発売されました。
1986年(昭和61年)ヱスビーから「ムツゴロウの味覚王国」シリーズが発売されました。これはカレールーの他にいくつかのスパイスをセットにしたもので、本格的なインドカレーの調理を手軽に楽しめる製品でした。現在も同じ ような構成の「スパイスフェスタ」シ リーズが販売されています。
1986年(昭和61年)グリコから激辛志向のレトルトカレー「LEE」が発売されました。いくつかの辛さのレベルから選べるようになっていましたが、基本的に全て辛口なので「甘口」「辛口」ではなく、「辛さ×10倍」「辛さ×20倍」というように表記されていました。
90年代-現代

 

1991年、日本はバブル崩壊によって景気が悪化しました。この頃からカレーの多様化が始まりました。単純に本格志向で高級なのではなく、その店ならではの独自性のあるカレーを出す店が増えました。レトルトでも消費者の嗜好に合わせた個性的な製品が作られるようになりました。
1992年(平成4年)日本人宇宙飛行士・毛利衛さんが、地球周回軌道上のスペースシャトル・エンデバーでレトルトカレーを食べました。カレーが宇宙食として用いられたのはこれが初めてでした。レトルトカレーは他の宇宙飛行士にも好評で、これ以降たびたびスペースシャトルに持ち込まれるようになりました。
1996年(平成8年)ハウスから「こくまろカレー」が発売されました。「コクのカレー」と「まろやかなカレー」の二つをブレンドした家庭的な味が特徴のヒット商品でした。
1998年(平成10年)和歌山県で、夏祭りの会場でカレーに毒物が混入され、4人が死亡するという痛ましい事件が起こりました。(和歌山毒物カレー事件)
2000年(平成12年)グリコから「LEE・辛さX30倍 期間限定 辛さ増強ソースつき」が発売されました。辛さ増強ソースを使うことでX40倍の辛さにすることができ、激辛ファンの間で話題になりました。これ以降、辛さ増強ソースつきのLEEは期間限定で何度も発売されるようになりました。
2001年(平成13年)横浜市中区に「横濱カレーミュージアム」がオープンしました。カレー専門としては日本初のフードテーマパークで、様々な個性的なカレーを出す店が軒を連ねていました。たくさんのカレーで楽しませてくれた「横濱カレーミュージアム」でしたが、2007年3月、多くのカレーファンに惜しまれつつ閉館しました。
2001年(平成13年)ヱスビーから「とろけるカレー」が発売されました。野菜をじっくり煮込んだまろやかな味わいが特徴のヒット商品でした。発売当初、ハウスの「こくまろカレー」とパッケージが酷似していたため、裁判沙汰になりました。
2001年(平成13年)集英社の漫画雑誌「週刊ヤングジャンプ」誌上において、カレー漫画「華麗なる食卓(ふなつ一輝著、森枝卓士監修)」の連載が始まりました。これまでにも料理漫画でカレーが取り上げられることはありましたが、カレー専門の漫画はおそらくこれが初めてだと思われます。この漫画の主人公・高円寺マキトは世界中で修業を積んだカレー料理人です。彼の周りで展開されるドラマの中で、世界中の様々なカレーが紹介されます。レシピもついているので実用性もあります。
2000年代には札幌のスープカレーが全国的に大ヒットしました。スープカレーは1970年頃に初めて作られたと言われています。1990年代頃から扱う店が増え始め、現在は札幌以外の地域でも扱う店があります。スープカレーは一般的な日本のカレーと違い、小麦粉を使用しておらず、スパイスと出汁を重視した味付けが特徴です。
1990年代に始まったカレー多様化の流れは現代も続いています。札幌スープカレー以外にも横須賀の海軍カレーなど、各地で地域特産のカレーが作られています。これからも様々な新しいカレーが創り出されていくことでしょう。
 
中村ハル自伝より 新宿中村屋の印度式カレーライス (大正10年頃)

 

いろいろと食べあるきして最もびっくりさせられ、また思い出の深いのは新宿駅の近くの中村屋というパン屋の特殊料理である純印度式カレーライスについてであります。俗にインデアンカレーライスといっていました。
ここのカレーライスは日本一だという評判ですから、料理研究を志していた私としては、何としてでもこのインデアンカレーライスの全貌をつかまねぱ腹の虫がおさまりません。ある日曜日の朝、この中村屋を訪づれて、まずパン屋の奥の間のカレーライスの店に入り注文いたしました。
普通、日本式のカレーライスはメリケン粉でドベリをつけている加減か、御飯の上にかけた姿を見ると、まるで猫のタバキ(吐き物)のかかった感じで、私なんか口をつける気持ちが起こりません。ところが、皆さんはこのタバキのようなカレー煮をスプーンで御飯にまぜてさもおいしそうに飯べておられます。
本式の印度式カレーライスは、そんなドベドべしたものではありません。
給仕人が持って来た中村屋のを見ますと、飯一人前と別にカレー煮の方は綺麗なカレー鉢に盛って盆の上に飯皿と並べておき、スプーン一本そえているのです。
なるほどな一と、第一番に感心しました。聞けば、カレーライスそのものは実は印度人の食べる雑炊だそうで、印度や南方方面の酷暑の地ではカレー粉を炊き込んで舌が切れるくらい辛味をつけて食べねば辛抱ができないところがら、印度や印度シナ方面ではこの料理が好まれているとのことです。
そこで、まずカレー煮の方を調べてみました。姿はドベドべしないでサラサラしていて、日本の吸物にちょっと粘り気のある程度。一口味わってびっくり、辛くて辛くて目の玉が飛び出るとはこのこと。いかな私も閉口しましたが、その辛味のなかにいうにいわれぬ旨味を含んでいます。
中の具を調べてみますと、(1)鶏の骨付き身二切れで、これはちょうど日本の水炊きのときの鶏肉くらいの大きさで、□に入れると簡単に身と骨がはぐれます。(2)大切りの馬鈴薯二切れ一これも形は大きいが、フワフワと煮えて口に入れるとすぐとろけるほど臼あとは玉葱五、六切れです。
汁の方は何かミジン切りみたいなものが少々混っているだけで、サラサラと黄褐色ですが、
その辛味とうま味の配合は何ともいえません。
さすがに日本一といわれるほどのことはあると感服いたしました。
一人前食べ終っていろいろ考えました。このカレーライスの味は何からとった味だろうか?
まさか鶏肉や玉葱だけであれだけの味は出るものではない。私の探求心からこのままですむはずもなく、思い切って帳場に行き調理場の見学を願い出たのであります。ところが、キッパリと断わられました。
しかし、何としても諦め切れません。横浜に帰って、日夜このことを考えているうちに一計を考えついたのです。1それはこの中村屋が本来パン屋であるのにカレーライスを営業して天下に名をなしているのは、中村屋の一人娘の養子婿にビハリ・ボースという印度独立の志士がいるからであろう。このピハリ・.ボースならば、印度の独立運動に身を投じて英国の官憲の目を逃がれている身です。日本に上陸して以後、困っているときに、私と同じ郷里西新町出身の頭山満翁がかくまってやり、その後この中村屋に婿入りさせたと聞いている。よし、ここは一つ頭山満先生の御力添えを願おうと―――。
これはよいところに気がついたというわけで、早速頭山満先生の屋敷をたずねて行きました。カレーライスの話をして、その調理法を教わりたいので、是非調理場に入れるよう取り計らってくださいと訴えました。頭山先生も感銘されてか、それほど熱心ならば、郷土の後輩としてビハリ・ボースに頼んであげようといわれ、紹介状を書いてくださいました。ビハリ・ボースにとっては、頭山先生は命の恩人。おかげで一も二もなく、調理場に入ることを許可されたのです。
さて、調理場に入ってびっくり仰天。鶏の臓物といっても大腸、小腸が、山のように積んであるのです。そのころの日本では、肝臓とか砂ずりなどはともかく、その他の臓物は捨てていた時代です。それなのに腸の山積みを見せられたものですから、年若い私が肝をつぶすのも無理からぬこと。そこで、いったいこの腸はどうするんですかと尋ねて二度びっくり。この腸が中村屋のカレーの素ということで、腸のミジン切りがカレーのドベリのもとをなしていたのでした。
次にカレー粉が特別辛くて、しかも高尚な風味のあるのは何故かと質問しました。
「ここの店ではカレー粉は一種でなく、印度産のほかにシャム産、.フィリッピン産等々三種類も四種類も混用しています。そのほか、いろいろの香辛料を混合して、このように強い、良い香気と辛味を出しているんです」
ということで、それぞれ実物を見せていただきました。
つまり、カレー煮はスープとカレー粉、その他の香辛料とほどよいドベリに鶏の腸のミジン切りのカレーの素が主で、中の具はたいして大切なものでなく、何はおいても味と辛味、香気に重点を置いて調理すべきものと聞いて大いに啓蒙されました。
中村式カレーライスの考案
中村屋のカレーライスは汁があまりサラサラして澄し汁のようで、これでは日本人の好みにどうかな一と考えました。帝国ホテルのやり方を見学いたしましたところ、ここではドベリを出すのにメリケン粉は使わず、中華料理によく出てくる餡の考えを入れております。すなわち最後に片栗粉の水溶きしたものを流し込んで、艶とドベリを出す方式です。
私がよく言っている中村式(中村屋ではありません)のそれは、以上の中村屋のインデアンカレーライスを基本に、それに帝国ホテル式および私独自の考案を加味して作り上げたものです。
少しくだいていいますと、中村式というのは、中村屋のカレーライス方式を基として、これに玉葱、人参などの野菜の切り屑を鶏の腸にまぜてドベリとし、甘味には砂糖のかわりにトマトケチャップを少々使用したこと。また、ドベリには帝国ホテル式の片栗粉を用いる中華料理館の考えを入れたことなどであります。
御飯の炊き方も、白米だけにしないで美観を添えるため、グリンピースや小さく細の目に切った人参を入れるなど、見て美しく、食べておいしく、そして栄養の点を考えております。
およそ、料理の研究を志す者は、先輩の人々が研究し遺された美点を謙虚に学びとり、さらにこれに満足しないで自分でもなおそのうえに風味の上から、あるいは栄養の点から、さらに考案を重ねてより以上のものを創作していく心掛けが肝要と思います。
現に、わが中村料理学院で教えていますカレーライスは、印度人ビハリ・ボースの印度式カレーライスを基として、これに工夫、考案を加えて改良し風味の点でも日本人向きに、栄養的にも理想に近づけており、その苦心の結晶をみていただきたいと思います。
 
世界のカレー

 

インドで誕生したカレーは、現在では世界中の様々な国々で食べられています。そしてその国ごとに違った特徴があります。
世界のカレーを大雑把に分類すると、 「インド風」「東南アジア風」「ヨーロッパ風」「日本風」の4種類に分類できます。そしてインドや東南アジアでは、地方や国によってさらに細かく分類できます。このコーナーでは、「インド風」の中から「北インド」「南インド」の2種類、 「東南アジア風」の中で、日本人に比較的なじみ深い「タイ」、そして「ヨーロッパ」「日本」の、合計5種類を紹介します。
「味付け」「食材」「主食」「調理法の例」の項目があります。「味付け」では、味付けの特徴や、よく使われる調味料について説明します。「食材」では、よく使われる具について説明します。「主食」では、カレーといっしょに食べる、米、パン類、麺類について説明します。「調理法の例」では、一般的な調理法の一例を紹介します。あくまでもひとつの例なので、必ずこの通りに作らなくてはいけない、というわけではありません。 
北インド

 

インドは南部と北部とでは、気候も住んでいる民族も違います。このためカレーについてもそれぞれ違った特徴を持っています。北インドの住民はインダス文明以降にインドに移住してきたアーリア系の民族が多数派です。また、中世にはイスラム勢力の支配を長く受けていました。このため、北インドの料理は中央アジアや中東の料理の影響を強く受けています。パキスタンやネパールも北インドに近い食文化を持っています。
北インドのカレーは日本のカレーと違い、カレー粉は使いません。多くの種類のスパイスを調理する都度、必要なものを組み合わせて使用します。このため、カレーの種類によって違った風味になります。北インドのカレーは肉のカレー、野菜のカレー、豆のカレーというように、一度に何種類かのカレーを作り、一緒に食べるのが一般的です。日本のインド料理店では、この北インド料理を扱っている店が多数派です。
味付け
北インドのカレーはスパイスの風味は強めですが、南インドに比べて辛さは控えめです。それでも、一般的な日本のカレーよりは辛いものが大半です。よく使われるスパイスはクミン、ターメリック、ブラックペッパー、コリアンダー、ガーリック、ジンジャー、シナモン、クローブなどです。乳製品もよく使われています。南インドや東南アジアでよく使われているココナッツミルクはあまり使いません。
食材
肉は羊肉と 鶏肉が一般的です。牛はヒン ドゥー教で神聖な動物とされているので、ヒンドゥー教徒は牛肉を食べません。豚はイスラム教で不浄な動物とされているので、イスラム教徒は豚肉を食べません。肉以外では、豆類がよく使われます。
主食
主食は小麦粉で作られたパン類が主流です。インドのパン類といえば日本ではナンが有名ですが、インドの一般家庭ではナンを焼くために必要なタンドールがない場合が多いため、鉄板やフライパンで手軽に焼けるチャパティのほうが一般的です。
調理法の例
まずクミンを油で炒めます。次にみじん切りにしたタマネギとガーリック、ジンジャー、その他のスパイス類を加えてさらに炒めます。その後具を入れて煮込みます。十分煮えたら、最後にガラムマサラで風味を整えてできあがりです。煮込むときにヨーグルトを入れることもあります。高級なカレーでは具とは別にストック(出汁)を取る場合もあります。 
南インド

 

南インドの住民はインダス文明以前にインドに移住してきたドラヴィダ系の民族が多数派です。南インドの料理は中央アジアや中東の影響は少なく、東南アジアの料理に近い感じです。インド東部やバングラディシュも南インドに似た食文化を持っています。
南インドのカレーも北インドと同じくカレー粉や小麦粉のルーは使いません。多くの種類のスパイスを調理する都度に組み合わせて使用します。一度に何種類かのカレーを作って一緒に食べるのも、北インドと同様です。
日本のインド料理店では、この南インド料理を扱っている店は少数派です。日本人にはあまりなじみがないかもしれません。
味付け
南インドのカレーは北インドと同様にスパイスの風味が強めですが、北インドよりも辛味が強調されています。但し、タイのカレーのようにチリペッパーの辛味が突出しているような感じでなく、スパイス全体の辛味が強い感じです。よく使われるスパイスはターメリック、ブラックペッパー、ブラウンマスタード、ガーリック、ジンジャーなどです。東南アジアでも使われているココナッツミルクやタマリンドなどもよく使われます。
食材
肉は北インド同様、羊肉と鶏肉が一般的です。海に近い地域では、魚介類もよく使われます。また、南インドにはベジタリアンが多いため、野菜や豆類を使ったメニューも豊富です。
主食
主食はインディカ種の米が主流です。パン類は小麦粉を使ったもののほか、米の粉や豆の粉で作られたものもあります。
調理法の例
まずブラウンマスタードを油で炒めます。次にみじん切りにしたタマネギとガーリック、ジンジャー、その他のスパイス類を加えてさらに炒めます。その後具を入れてココナッツミルクで煮込みます。
十分煮えたらできあがりです。日本やヨーロッパのカレーのように何時間もかけて出汁を取ることはせず、比較的短時間で仕上げます。 
タイ

 

タイのカレーは古い時代から独自の発展を遂げてきました。このため、インドやヨーロッパなどのカレーとは違った特徴を持っています。タイのカレーもインドのカレー同様カレー粉は使いません。というより、タイのカレーの風味はカレー粉の風味とはかなり違うので使えません。インド同様、一度に何種類かのカレーを作って一緒に食べます。
味付け
タイのカレーはチリペッパーの使用量が多く、非常に辛いのが特徴です。タイ料理が辛いのはカレーに限ったことではなく、様々な料理でチリペッパーをふんだんに使用するため、世界でもっとも辛い料理とも言われています。
インドのカレーが多くの種類のスパイスを組み合わせた風味であるのに対して、タイのカレーは新鮮な生のハーブ類を使って風味を出し、その中でチリペッパーの辛味が突出しているといった感じです。
チリペッパーは通常、乾燥していない生のものが使われます。通常の赤いチリペッパーの他に、緑色や黄色のものも使われます。インドのカレーにはよく使われるターメリックは使わない場合が多いので、赤いチリペッパーを使った場合は真っ赤なカレーに、緑色のグリーンチリを使った場合は緑色のカレーになります。
タイのカレーは南インドのカレーと同様にココナッツミルクやタマリンドなどがよく使われます。また、カピ、ナムプラー、バイ・マックルートなどの、インドでは使われない調味料もよく使われます。 柑橘類も調味料としてよく使われています。
食材
タイでは一般的に、インドのような宗教的な食べ物の禁忌はありません。肉は豚肉、鶏肉がよく使われます。魚介類もよく使われます。野菜も多くの種類があります。
主食
主食はインディカ種の米が主流です。タイには「香り米」という独特の良い風味がある米の品種がありますが、これは高級品で主に輸出に回されています。また、麺類もよく食べられています。
調理法の例
まずキャラウェイとコリアンダーを煎ってすりつぶします。これにカピ、オニオン、ガーリック、ジンジャー、生のチリペッパー、その他のスパイス・ハーブ類を入れてさらにすりつぶしてペースト状にします。次にこのペーストに具とココナッツミルクを入れて煮込みます。適度に煮込んだらできあがりです。調理で使うペーストは市販されているので、これを使うと簡単に調理できます。これも赤いものや緑のものがあります。日本でも輸入食品を扱っている店で入手できます。 
ヨーロッパ

 

ヨーロッパのカレーはインドのカレーを元に、シチューなどのヨーロッパの伝統的な料理の調理法を取り入れて作られました。また、調理するたびに毎回スパイスをつぶさなくても済むように、カレー粉が考案されました。イギリスのC&B(クロス・アンド・ブラックウェル)社のカレー粉は世界で初めて作られたカレー粉として知られ、 日本でも主に業務用として広く使われています。
インドでは具の種類ごとに別々に作るのが一般的ですが、ヨーロッパでは肉と野菜が一緒に入っています。また、ご飯の上に直接かけて盛りつけるのが一般的です。現在ヨーロッパでもっともカレーが普及しているのはイギリスですが、それでも日本ほど一般的にはなっていないようです。
味付け
ヨーロッパのカレーはカレー粉で味付けします。日本同様、スパイスの風味は控えめで、辛さも控えめです。元々シチューやスープなどで使われていたフォン、ブイヨンなどのストック(出汁)も取り入れられました。肉、骨、野菜、ハーブなどを長時間かけて煮込んだ出汁は、上品で深い味わいがあります。
食材
肉は牛肉または鶏肉を使うのが一般的です。野菜は様々なものが使われます。
主食
ヨーロッパ諸国ではパンが主食ですが、カレーは米と一緒に食べます。日本と違い米はインディカ種で、豆類を入れたりピラフのよう に味付けしたりもします。
調理法の例
最初に肉、骨、野菜、ハーブなどを煮込んでストックを作っておきます。次に、みじん切りにしたタマネギを弱火で炒めます。タマネギがあめ色になったら、カレー粉と小麦粉を加えてさらに炒め、これにストックを加えてソースを作ります。肉や野菜などの具を炒めた後、ソースをからめてオーブンで焼きます。十分火が通ったらできあがりです。  
日本

 

日本のカレーは明治時代以降に広まった比較的歴史の浅い食べ物ですが、現在では日本人の食生活にはなくてはならない料理として定着しています。日本のカレーはヨーロッパのカレーが元になっています。カレー粉を使用し、小麦粉でとろみをつけてあるのが特徴です。通常は一種類のカレーをご飯の上に直接かけて食べます。韓国や台湾でもほぼ同様のものが食べられていますが、日本ほど一般的ではないようです。
味付け
日本のカレーはカレー粉で味付けします。家庭で調理するときは、固形ルーを使うのが一般的です。スパイスの風味は控えめで、辛さもおおむね控えめですが、辛い物好きな一部の人のために、とんでもなく辛いものも作られています。日本では具とは別に出汁を取るのが一般的です。西洋料理で使うフォン、ブイヨンなどのほか、鰹節などの日本独自のものもよく使われます。隠し味として、味噌、醤油、ウスターソース、ヨーグルト、チョコレートなどが使われることもあります。
食材
具は豚肉または牛肉、タマネギ、ニンジン、ジャガイモがよく使われます。肉は一般的に関東では豚肉、関西では牛肉が使われることが多いようです。トンカツやハンバーグなどをのせることもあります。つけ合わせは福神漬けとらっきょうが一般的です。
主食
主食はジャポニカ種の米を炊いたご飯です。白飯の上にカレーを直接かけて食べるカ レーライスが一般的です。ご飯以 外にはうどんなどの麺類も食べられています。また、スナック菓子にもカレー粉で味付けしたものが少なくありません。
調理法の例
最初に肉と野菜を油で炒めます。次に水を入れて煮込みます。具が煮えたらカレールーを溶かし、全体に味が馴染むまで軽く煮込んでできあがりです。
 
チキンカレーライス

 

チキンカレーライス 1 
材料 (2人分)
鶏もも肉(一口大) 150g
ポテト(4等分) 1個
キャロット(乱切り) 1/2本
オニオン(短冊) 1/2個
福神漬け 適宜
調味料(煮汁)
   水 7cup
   鶏ガラスープの素(顆粒) 大2
   コンソメ(固形) 2個
   マンゴチャツネ 大2
   辛さ自在 2袋
   ガラムマサラ 小1本
カレールー
   バーモンドカレー(固形) 3かけ
   オリエンタルカレー(粉) 大3
1 鍋に水を入れ、ポテト、キャロット、オニオンを煮込む。(15分位)
2 別の鍋で、鶏肉を湯通しする。
3 鶏肉を加え、煮込む。(5分位)
4 鶏ガラスープの素、コンソメ、マンゴチャツネ、辛さ自在、ガラムマサラを加え、煮込む。
5 カレールーを加え、弱火で、混ぜながら、煮込む。(5〜10分位・とろみが付くまで)
6 ライスを盛ったお皿に盛る。 
チキンカレーライス 2 (カレー粉で作る) 

 

材料 (2人分)
玉ねぎ 3/4個
とり肉 1枚
カレー粉(S&B) 大さじ1強
トマト 2個
人参 中1/2本
じゃがいも 1個
ピーマン 1個
パプリカ 1/2個
ヨーグルト 大さじ2〜3杯
料理酒 適量
塩こしょう 少々
サラダ油(炒め用) 少々  
1 玉ねぎはざっくり切り、とり肉は小さめに切ってフライパンで炒める。
2 1にカレー粉を入れて、さらに炒める。
3 トマトを湯せんして皮をむき、ザクザク切って2に入れる。
4 人参、ジャガイモは薄く切り、ピーマンは乱切りにする。3に入れ、炒める。
5 弱火にして、お酒を鍋1周回し入れ、10〜15分くらい煮る。
6 ヨーグルト、塩こしょうで味を整える。 
チキンカレーライス 3 (タモリ流) 

 

1. 鶏肉にスパイスを揉み込んで焼く
カレー粉(大さじ1杯)とターメリック(小さじ1杯弱)、そしてクミン(小さじ1杯弱)を混ぜ合わせ、それを鶏モモ肉(約500グラム)に揉み込みます。味が浸透するようにしっかりと、でも優しく揉み込みます。それらスパイスを揉み込んだあと、フライパンを熱してサラダ油(大さじ1杯)で炒めます。ちなみに市販の固形カレールーはこの料理に適さないので、パウダー状になっているカレー粉を使いましょう。
インターネットユーザーのなかには、ターメリックとクミンが入っているカレー粉を使っている人もいました。ターメリックとクミンをそろえるのが面倒なときはそれでも良いと思います。
2. 鶏肉やホールトマト等を鍋で煮込む
大きめの鍋で1リットルのお湯を沸かし、さきほど炒めた鶏モモ肉を入れます。そこにマンゴーチャツネ(大さじ1/2)と赤ワイン(75cc)、そしてミキサーにかけたホールトマト(75グラム)も鍋に入れます。
インターネットユーザーのなかには、ミキサーがないのでホールトマトをつぶして液状にしている人や、無塩のトマトジュースを使っている人もいるようです。フタをしないで中火でじっくり煮込みます。
3. スパイスや食材を炒めてペーストを作る
煮込んでいる鍋をチェックしつつ、スパイスや食材を混ぜたペーストを作ります。フライパンに市販の炒めタマネギ(1/4瓶)とすりおろしニンニク(小さじ2杯)、しりおろしショウガ(小さじ2杯)を入れ、弱火でよく炒めます。炒めたら、そこにカレー粉(大さじ1杯)とターメリック(小さじ1杯)、クミン(小さじ1杯)、牛乳(1/4カップ)、ヨーグルト(大さじ1杯強)を入れてよく混ぜ合わせます。
インターネットユーザーのなかには、市販の炒め玉葱を使わずにあらかじめ炒めておいたみじん切りの玉葱を使っている人もいるようです。より濃厚になるように、牛乳は特濃を使い、ヨーグルトは粘力のあるカスピ海ヨーグルトを使っている人もいました。
4. 鍋にペーストを入れて2時間ほど煮込む
煮込んでいる鍋にさっき作ったペーストを入れ、そこに醤油(少々)と砂糖(ひとつまみ)、とろけるチーズ(30グラム)、塩(小さじ1杯)を入れて半ブタで2時間強ほど弱火か中火で煮込みます。インターネットユーザーのなかには、とろけるチーズ以外のチーズを使っている人もいました。そのあたりは好みで調節可能ですね。
5. 塩で仕上げをして完成
煮込んだら、最後に味見をしつつ塩をくわえて味を調整します。いい感じな味になったら完成です。今までにない美味しいタモリ流カレーライスをお召し上がれ!
6. 食べ方: ご飯やマッシュポテトにかけて混ぜる
ご飯やマッシュポテトにタモリ流カレールーをかけてグチャグチャにかき混ぜて食べます。混ぜるのが重要なポイントのようです。マッシュポテトの作り方は簡単で、洗ったじゃがいも(2個)をラップに包んでホカホカになるまで電子レンジでチンします。7〜8分ほどで熱々になるようです。そのじゃがいもをつぶしてカレー粉(小さじ2杯)と塩(少々)、牛乳(25cc)を混ぜてマッシュポテトの完成です。
タモリさんを疑うわけでないのですが、実際に作ってみないと本当に美味しいかどうかワカラナイ! ということで、当編集部では実際にタモリ流カレーライスを作ってみました。鶏モモ肉に脂身が少ない鶏ムネ肉をプラスしてヘルシーにし、水は食材に味がよく浸透するように軟水を使いました。
その結、非常に美味しーーーーいカレーが完成! 2時間じっくりと煮込んでいるのでスパイスが鶏肉に浸透していて、とっても味わい深いのです。チャツネやクミン、ターメリックなどのスパイス、そしてヨーグルトやチーズの美味しさがギューッと濃縮されているので、カレーを食べる一口一口が、幸せを食べているかのようです。スプーンでカレーを口に運ぶたびに感動に襲われます。 
[アドバイス]
酸味を強くしたい人はホールトマトの量をやや増やすと良いでしょう(水分が多くなるので煮込む時間はやや増やしたほうがいいかもしれません)。使用している水の量が1リットルと少ないので、鍋を強火にするとすぐに蒸発して焦げてしまうのでご注意ください。ニンニクのニオイはさほど気になりませんが、どうしてもニンニクを使いたくない人は使わなくても美味しくなります(その場合は、ややショウガの量を増やすと良いでしょう)。また、お好みでチリペッパーなどのスパイスや調味料を追加するのもよいと思います。 
チキンカレーライス 4 (トマト) 

 

材料 (6人分)
鶏もも肉 2枚(500g) (粗塩小さじ1 こしょう少々)
トマト 6〜7個(1.2kg)
玉ねぎ 3個(600g)
にんにく 2かけ
カレー粉 大さじ3〜4
おろししょうが (大)1かけ分(15g)
トマトケチャップ 大さじ3
ウスターソース 大さじ3
スープの素 1個
酒 大さじ4
しょうゆ 小さじ2
粗塩、こしょう 各少々
ごはん(温かいもの) 茶碗6杯(900g)
・小麦粉、油 
1 鶏肉は一口大に切り、粗塩、こしょうをもみ込む。
2 トマトはヘタをとってざく切りにする。玉ねぎは縦半分に切って薄切りにする。にんにくは薄切りにする。
3 鍋に油大さじ2、にんにくを入れて中火にかけ、香りが出たら玉ねぎの薄切りを加えて炒める。玉ねぎの水分が飛び、薄く色づいたら、カレー粉の半量を加えてさっと炒め合わせる。トマト、おろししょうが、トマトケチャップ、ウスターソース、スープの素を加えてひと混ぜし、15分煮る。
4 この間に、(1)の鶏肉に小麦粉大さじ3をまぶし、フライパンに油大さじ1を熱して両面を焼きつけ、(3)に加えて20分煮る。
5 さらに酒、しょうゆ、粗塩、こしょう、残りのカレー粉を加えてひと煮し、味を見てととのえる。
6 器に温かいごはんを盛り、トマトカレーをかける。 
[アドバイス]
・トマトの水分がカギとなるカレーです、完熟を選び、重量もきちんと計りましょう。
・トマトの皮が気になる方は、煮込み途中に浮いてきたものを取り除くとよい。
・作った翌日は味がなじんで、より美味しくなるカレーです。 
チキンカレーライス 5 (インド風) 

 

材料(4人分)
鶏肉(ぶつ切り) 600g
トマト(大) 2個
サラダ油 大さじ1
ブイヨン 2カップ
しょうが(大) 1片
にんにく 1片
にんじん 150g
玉ねぎ 100g
パセリ(みじん切り) 少々
(A) [鶏肉の下味]
   カレー粉 小さじ1
   塩 小さじ 1/2
   こしょう 少々
(B) 赤唐辛子 2本
   ローリエ 1枚
   カレー粉 大さじ2
   チャツネ 大さじ1
   キッコーマンデリシャスソースウスター 大さじ1
   キッコーマン特選丸大豆しょうゆ 大さじ1/2
   塩 小さじ 1/3
   こしょう 少々 
1 鶏肉に(A)の下味をまぶし、手でよくもみこむ。
2 トマトは湯むきし、1〜2cm角に刻む。
3 フライパンにサラダ油熱し、(1)に焼き色をつける。鍋に移し、ブイヨンを加えて火にかけておく。
4 (3)にしょうが、にんにく、にんじん、玉ねぎをそれぞれすりおろし、(2)とともに加える。
5 鍋に(B)を加えてひと煮立ちさせる。弱火にして30分煮込む。パセリを散らす。 
チキンカレーライス 6 (イタリアン) 

 

材料 (4人分)
鶏もも肉 2枚
玉ねぎ 1個
にんじん 1本
ブロッコリー 1株
ご飯 4皿分
塩 少々
こしょう 少々
オリーブオイル 大さじ2
カレールウ 1/2箱(約100g)
デルモンテ・有機トマトピューレー 1袋  
1 鶏肉はひと口大に切り、塩、こしょうをする。玉ねぎはくし形に、にんじんは乱切りにする。
2 ブロッコリーは小房に分け、かために塩ゆでする。
3 鍋にオリーブオイルを熱し(1)を順に入れて炒める。
4 水3カップを加えて10分くらい煮込む。
5 カレールウを加えてさらに10分煮る。トマトピューレーと(2)も加えてさっと煮る。
6 お皿にご飯を盛りつけ、(5)をかける。 
チキンカレーライス 7 (トマト) 

 

材料 (6人分)
鶏もも肉 1/2枚
玉ねぎ 1個
じゃがいも 150g
にんじん 100g
サラダ油 大さじ2
ご飯 6杯分
(A) デルモンテ・基本の完熟トマトソース 1袋
   カレールウ 70g 
1 鶏肉はひと口大に切る。玉ねぎはくし切り、じゃがいもは6〜8等分、にんじんは乱切りに切る。
2 鍋に油を熱し、鶏肉、玉ねぎ、じゃがいも、にんじんの順に炒める。
3 水3カップを加えて中火で10分ほど煮、(A)を加えてさらに10分ほど煮込む。
4 皿にご飯をよそい、(3)をかける。 
 
ポークカレーライス

 

ポークカレーライス 1 
材料 (4人分)
豚角切り肉(カレー用) 350g
じゃがいも 3個
にんじん 1本
玉ねぎ(大) 1個
にんにくのすりおろし 1かけ分
しょうがのすりおろし 1かけ分
カレー粉 適宜
バター 大さじ5
小麦粉 大さじ5
サラダ油 大さじ2
トマトケチャップ 大さじ2
固形スープの素 2個
砂糖 小さじ2
塩 適宜
こしょう 適宜
ご飯 800g
らっきょう 適宜
福神漬け 適宜 
1 豚肉は塩、こしょう、カレー粉各少々をまぶしつけておく。玉ねぎはくし形、にんじん、じゃがいもは皮をむいて乱切りにする。湯6カップに固形スープの素を溶かしてスープを作っておく。
2 鍋にサラダ油を熱して豚肉を炒め、きつね色になったら、玉ねぎ、にんじんと加えて全体に油が回るまで、さらに炒める。
3 1.のスープを加えて、最初は強火で、煮立ったら弱火にして、アクをこまめにすくいながら約10分煮る。
4 じゃがいもと、塩、砂糖各小さじ2弱、こしょう少々、トマトケチャップを加え、さらに5分くらい煮込む。
5 ルーを作る。フライパンにバターを溶かして小麦粉を入れ、木べらで混ぜながら弱火でゆっくりと炒めていく。
6 しばらく炒めるとざらついた状態になり、さらに炒めるとさらっとなめらかな状態に。この状態になるまでが15分くらい。焦げつかないように根気よく炒める。
7 カレー粉大さじ2と1/3を入れて香りが出るまで5〜6分炒め、にんにく、しょうがを加えて炒める。
8 鍋で煮込んだ4.の煮汁1/2カップほどを、少しずつ加えてルーを溶きのばし、なめらかになるまでよく混ぜ合わせる。
9 4.の鍋にルーを入れてよく混ぜ合わせ、じゃがいもが柔らかくなるまで10〜15分煮る。皿にご飯を盛り、カレーをかけ、好みで福神漬けや、らっきょうを添えていただく。 
ポークカレーライス 2 (普遍的なカレー)

 

材料 (9-10皿)
ルー 市販の一箱
肉 好きなだけ
玉ねぎ 2個ぐらい
ジャガイモ 中2個
にんじん 中1本
油 大さじ2
水 1200〜1300  
1 炒めまーす/大きめの鍋に油を熱し1口大に切った具を炒める/玉ねぎがしんなりしてくるまで…/中火で…
2 水をいれて…/アクを取り具が柔らかくなるまで煮込む沸騰して15分ほど弱火〜中火
3 火を止めてルウを割り入れて溶かす
4 煮込みます/とろみがつくまで再び煮込む約10分ほど/弱火でお願いします 
ポークカレーライス 3

 

材料 (25皿分位)
カレールウ(市販の物) 350g
豚バラブロック 500g
新ジャガ(大) 8〜10個
玉葱(中) 5個
人参 3本
水 2.5L
酒 1合  
1 豚バラはさいの目状にカットして塩コショウしておく
2 フライパンで焼く。焼くことで旨みがにげない。少し焦げ目がつく位まで焼いたら鍋から外しておく。
3 ジャガイモは、新ジャガなので皮付きのまま8等分にカットして油で揚げる。そのついでに、人参も1cm幅位に切り油で揚げる
4 玉葱は立て8等分にカットして準備
5 大きめの鍋に水、焼いた肉、揚げた新ジャガ、人参を入れ20分位にる。途中経過でアクを取る。この時酒も入れておく
6 煮てる間は、アルミ箔で落し蓋をして火加減は弱火にして煮る
7 最後にカレールウを入れ木べらなどで静かに溶かしながら10分位煮て、出来上がり 
ポークカレーライス 4

 

材料 (2人分)
玉ねぎ 1ヶ
にんじん 50gくらい
じゃがいも 2ヶ
豚肉 100g
カレールウ 3ヶ
水 3cup
ローリエ 1枚
サラダ油 小さじ1 
1 玉ねぎは薄切りにする。にんじんは2mmくらいの半月きりにする。じゃがいもは一口大に切る。豚肉は1.5cmくらい切る。
2 鍋にサラダ油と豚肉を入れて、3分くらい炒める。そこに玉ねぎを入れフタをして弱火で15分くらい加熱する。
3 (2)に、にんじんとじゃがいもを入れてさっと炒めて水とローリエを入れ、沸騰したら弱火にして15分ほど煮込む。
4 じゃがいもに火が通ったら、火を止めてルウを入れてとかしてできあがり! 
ポークカレーライス 5

 

材料 (12皿分)
カレールー 1はこ(250g)
すきな肉またはシーフード 500gくらい
たまねぎ 3コ〜4コ
じゃがいも 3コ〜4コ
にんじん 1本
バター(サラダ油) 大さじ3
水 7カップ
かくし味 / 牛乳(ぎゅうにゅう)ヨーグルトソースケチャップ など 
1 野菜(やさい)と肉を食べやすい大きさに切ります。(シーフードの場合/エビを使うときは、殻(から)を取って、せわた(せなかの黒いスジのところ)を取ります。)
2 なべにバター(サラダ油)を入れて、野菜と肉を入れて、肉の色がかわるまで、いためます。(シーフードの場合/エビやホタテ などが、白くなるまでいためます。)
3 水を入れて強火で煮ます。
4 ふっとうしたら、アクを取って、中火にして15分くらい煮ます。
5 野菜におはしが通るようになったら、火を止めて、カレールーをわって入れます。
6 とろみがつくまで、弱火で10分くらい煮ます。(ポイント/おこのみで、かくし味を入れてもいいね。味見しながら少しずつ入れよう。) 
ポークカレーライス 6

 

材料 (6人分)
豚肉(こま切れ) 200g (塩 小さじ1/2 胡椒 少々)
玉葱 2個(400〜450g)
ジャガイモ 中2個(200〜250g)
人参 1本(100g)
ニンニク 1片(10g)
生姜(しょうが) 1片(5g)
サラダ油(炒め用) 大さじ2
水(スープの素1個) 5カップ
リンゴ 中1/4個
カレーのルー
   バター 大さじ3(40g)
   小麦粉 大さじ9(70g)
   塩 小さじ2
   ソース 大さじ1
   醤油 大さじ1
   カレー粉 大さじ1〜1 1/2
ライス 6人前(1人200g) 
1 豚肉…塩・胡椒をしてから、小麦粉(大さじ1:ルーからの分)をまぶしておく。玉葱…みじん切り。ジャガイモ・人参…銀杏(いちょう)切り。ニンニク・生姜…みじん切り。
2 鍋に油を熱し、玉葱・ニンニク・生姜を加えて、茶色になるまでよく炒める。
3 2に豚肉を加え、鍋底に薄く茶色の膜が張るまでさらに炒める。
4 3にジャガイモ・人参・水(スープの素1個)を加えて、野菜が柔らかくなるまで煮る。
5 フライパンにバターをとかし、小麦粉が薄い茶色になるまでよく炒め、塩・ソース・醤油を加えてさらに炒め、均一になったら火を止めて、カレー粉を加える。
6 5のルーを4の煮汁でのばして鍋にもどし、皮付きのまますりおろしたリンゴを加え、弱火で煮込む。
7 皿にライスを盛り、カレーを添える。 
[ポイント]
・「カレー」は、10人が作ると10種類の味になる、といっても過言ではないくらい、作る人の個性が出ます。ここに掲載した「カレーライス」は、母から習った調理法に私の工夫を加えたもので、我が家の人気メニュー(?!)の一つです。「あなたのカレー」の味作りの参考になれば幸いです。
・「カレー」は、肉類・魚介類・野菜などを主にして作ることができます。いろいろな組み合わせが可能です。新しい発見もあるでしょう。基本は、それぞれに合った下準備、下味付けを忘れないことです。
・私はまず、みじん切りの玉葱・ニンニク・生姜をゆっくりと炒めます。炒めあがりの目安は、濃い茶色で玉葱が最初の1/5 位になるまでです。この炒め方が足りないと、味に深みが出ません。
・肉もよく炒めます。鍋底に肉にまぶした小麦粉の膜ができるまで、丁寧に炒めます(ジャガイモ・人参は、炒めても炒めなくても味に変わりはありません)。
・ジャガイモはほくほくおいしく煮るために、厚さ1a以上の銀杏切り、人参は柔らかく煮るには2〜3_厚さの銀杏切りにしてください。
・仕上げとして、煮込んでいる汁(1カップ分)を2回に分けて、ルー(下述)のフライパンに加え、よく練って一塊(ひとかたまり:下の右端の写真を参照)にして煮込み、鍋にもどします。
・隠し味程度に、甘味と酸味を加えるために「リンゴ」をすりおろして加えます。酸味のある「紅玉」「つがる」などが向いています。酸味のある「トマト」を加えてもおいしいです。
・ルーを加えて煮込むときは弱火で、ときどき鍋底をかき混ぜながら、焦がさないように!
[私のカレーライス「ルー」の作り方]
1 直径24aのフライパンにバターを入れ、火にかけてとかします。
2 完全にとけたら弱火にして、小麦粉を一度に加え、バターをよく混ぜてから、常に木杓子を動かして茶色になるまで炒めていきます(くれぐれも手を休めず、均一に茶色になるように頑張ってください)。
3 塩・ソース・醤油を加えて均一になり、サラサラになるまでさらにゆっくりと炒めます。
4 最後に火を止めて、カレー粉を加え、混ぜ合わせます。
[ちょっと一言]
・数年前のカレーライスの授業の折、あるグループが玉葱を炒めていてちょっと油断、焦げる寸前くらいになってしまいました。でもやり直す時間がないので、そのまま仕上げました。ところが、うっすら上品に玉葱を炒めたグループより、この焦げる寸前グループの方がおいしいではありませんか! そこで次の日の授業では、作り方の説明の前に、まずみんなで玉葱のみじん切りをして炒めはじめました。弱火にのせておき、作り方の講義の間中ときどきかき混ぜ、濃い茶色に玉葱を炒めました。それ以来、当学園のカレーの授業は、生徒さんが全員そろうのを待たず、到着順に玉葱のみじん切りをするのが定着しています。みなさんも弱火にかけて、ときどきかき混ぜれば大丈夫ですから、他の家事をしながらでも「玉葱炒め」に挑戦してみてください。
・現在、カレーの「ルー」を、バターと小麦粉で作っている人はどのくらいいるかな、と思うことがあります。限りなくゼロに近い?? 私は、たった一人になっても「ルー」は自分で作ろうと思います。もう20年以上前でしょうか、カレーを習って家で作ったところ、「きょうのカレーはおいしい。ルーを変えたの? それなら、次からこの会社のを買っておいで」とお父さんに言われたという生徒さんがいました。そういう人が、今もそしてこれからもいると信じて…  
ポークカレーライス 7 (レストラン)

 

材料 (5人分)
オリーブ油 大さじ2
トウガラシ(種をとったもの) 2本
ニンニク(スライス) 10グラム
タマネギ(スライスしたもの) 300グラム
水 650ミリリットル
ニンジン(いちょう切り) 100グラム
ジャガイモ(8等分) 大1個
カレールウ 5皿分の半分量(=2.5皿分)
バター 10グラム
砂糖 小さじ1
牛肉かポークソテー用の豚肉(厚さ1.5cmのものを筋切りし、塩、胡椒をふったもの) 1枚
温かいご飯(1人分180g) 5人分 
[カレーソースの作り方]
1 フライパンにオリーブ油と唐辛子を入れ、弱火で炒める。
2 香りが出てきたら、ニンニクを加えキツネ色になるまで炒める。
3 タマネギを入れ、あめ色になるまで強火で7分〜10分炒める。
4 水650mlを加えてフライパンにくっついた玉ねぎをこそげ落とす。
5 唐辛子を取り出し、人肌くらいに冷ます。
6 ミキサーに [5] とニンジンを入れペースト状にする。※このとき必ず40℃以下まで下げてからミキサーにかけないとフタがとんで危険!
7 フライパンにソースと唐辛子を戻す。
8 ジャガイモを入れ、弱火で20分間煮る。
9 ジャガイモと唐辛子を取り出す。
10 残った材料を金ザルに移ししっかりと濾(こ)す。※ここでしっかり漉さないと、全体の量が減ってしまいます。
11 濾した材料をフライパンに戻し、カレールウ、バター、砂糖を入れとかす。 ※温度が下がりすぎていたら加熱して溶かす。
12 カレールウが溶けたら弱火で3〜5分とろみが出るまでかき混ぜながら煮込。
13 完成間際にジャガイモとトウガラシを戻しカレーソースの完成。 ※お好みにより、塩で味をととのえてください。 
[ポークソテーの作り方]
14 フライパンを強火で1分予熱する。
15 肉を入れ、15秒加熱したら中弱火にし1分加熱する。このレシピでは牛肉を使用しています。脂身がある場合は、筋切りをして焼き縮みを防ぎます。脂身と赤身の境目のすじを、包丁の刃先を使って数か所切っておきます。
16 裏返してフタをして1分30秒加熱する。
17 フライパンから取り出し、まな板の上で3分放置する。
18 食べやすい大きさに切る。 
[仕上げ]
19 お皿にご飯をよそう。
20 肉をのせる。
21 ジャガイモを崩さずにソースをかけて、絶品カレーライスの完成。※牛肉、豚肉どちらでも同じようにできます。ポークソテーをのせればポークカレー、牛ステーキをのせればビーフカレーになります。 
[ためしてガッテンの極上カレー情報]
カレーライスの好みは千差万別であるにもかかわらず、一流レストランの高級カレーは、万人がおいしいと感じています。そこで2007年01月31日放送のNHKためしてガッテンでは、ホテルやレストランのような高級カレーを、市販のルウを使って自宅で簡単に作る方法を紹介しました。
高級感あふれるカレーとはどんなカレーなの?
高級カレーには次の3つの特徴があります。
 1 カレーソース自体にコクがあっておいしい。
 2 カレーソースにはメインの具以外は見あたらず、トロリとなめらかなこと。
 3 肉にうま味がしっかり閉じこめられておいしい。
ソースをなめらかにする方法は?
ソースをなめらかにするコツは次の2点あります。シチューを作る時と同じ方法です。
 1 最初から弱火で野菜を煮込む。(野菜に含まれるペクチンがゆっくり加熱されることで、しっかりと固まり煮くずれしにくくなる。)
 2 粗熱をとってからルウを入れる。(鍋を火にかけたままルウを入れると、表面が急激に糊化してバリアを作り、中まで水分が浸透しなくなりダマになってしまう。)
プロがカレーソースをなめらかにする方法は?
 1 野菜や鶏ガラなどを煮込んだスープを漉す方法。素材のうま味がたっぷり詰まっていて、よけいな物を含まないソースになる。
 2 野菜や果物をミキサーにかけて細かく砕いて煮込むという方法。
市販のルーは隠し味を入れたらいけないの?
市販のカレールウは「万人好みの味」になるように開発されています。完成された味なので、隠し味のつもりでチョコレートやケチャップ、料理酒、コンソメ、牛乳を入れてもおいしくなりません。濃いすぎ、しょっぱい、甘すぎなど、くどさなど味のバランスが崩れてしまいます。番組では、主婦にチョコレートやケチャップ等を入れたカレーを作ってもらい、専門家に評価してもらってこのことを検証しました。隠し味を入れたいときは、ルウを少なめにします。
ルーを少なめに入れる?
ルーの量を減らせば、他の味つけが可能になります。ためしてガッテンではカレールーを半分に減らしました。5人分を作るのに2.5皿分のルーを使用します。
ルーを減らしてどんな味付けをすればおいしいの?
カレーをおいしくする四種の神器といわれる、バター、唐辛子、ニンニク、砂糖です。
 1 バター(コクと風味)
 2 トウガラシ(スパイシーな辛さ)
 3 にんにく(香り)
 4 砂糖(甘さ)
砂糖がカレーをおいしくする理由は?
甘さはおいしさの根源だそうです。最初に甘さを感じ、ワンテンポ遅れて、旨みや苦み、もう少し遅れて唐辛子の辛さを感じるのだそうです。
おいしさの時間差攻撃 甘み→旨み→油→辛さ
砂糖の甘みを感じると、甘みは脳の重要な栄養源なので、食べる価値のあるおいしい食べ物と脳が判断します。その状態で旨みや油、辛さを感じると、時間差でおいしさがステップアップします。最初に甘さを感じるからこそ、「後からくる辛さがたまらない」「この苦みがまた…」といった感覚が生じるのだそうです。
レストラン方式の肉はなぜやわらかい?
あるレストランでは、肉の表面だけを焼き、ブイヨンスープで2時間煮込み、一晩放置します。一晩かけてゆっくり冷ますことで、スープが肉に吸いこまれてふわふわの柔らかい肉になります。
ホテル方式の肉もなぜやわらかい?
あるホテルは、バターで表面をさっと焼き、ブランデーで香りをつけ、食べる直前にカレーソースにからめるという方法を用います。ステーキのように中まで火が通らないので、柔らかい肉を楽しめます。
豚肉は寄生虫がいるんじゃないの?
一般に「豚肉には寄生虫がいるから中までしっかりと火を通す必要がある」といわれています。しかし専門家は「日本に流通している豚肉に寄生虫はいない」といいます。牛肉と同じ感覚で調理をすればOKだそうです。しかし、菌による食中毒を防ぐためにも加熱は必ず必要です。
1930年代にアメリカで豚肉に「トリヒナ」という寄生虫が発生しました。公衆衛生局などにより、「豚肉は灰色になるまでしっかり加熱しましょう」という教育活動が徹底して行われました。 しかし国立感染症研究所によると、日本の場合は、出荷前に厳しい検査を行っており、寄生虫がいる豚肉は全て廃棄されているため心配する必要はないとのことです。輸入豚肉も同等の検査を行っており、寄生虫はいないとのことです。
ただし、寄生虫はいなくても、食中毒対策などのため、必ず加熱は必要です。特に表面はしっかり加熱しましょう。
豚肉はブランド豚でないといけない?
ガッテン流ポークソテーならスーパーのロース肉で大丈夫です。高級豚肉を使わないでもおいしく焼けます
さらに詳しくポークソテーを知りたい?
 [下ごしらえ]
 1 すじ切りをする(脂身と赤身の境目のすじを切る)
 2 フォークを4回刺し、穴をあける(下まで貫通させる)
 [調理]
 1 フライパンを強火で1分予熱
 2 肉を入れ、15秒加熱したら中弱火に
 3 穴から肉汁が出てくるタイミングを見逃さない
 ・厚さ1センチの肉の場合:1、2か所から出たら
 ・厚さ1.5センチの肉の場合:8割から出たら
 4 裏返してフタをし、さらに焼く
 ・厚さ1センチの肉の場合:1分
 ・厚さ1.5センチの肉の場合:1分半
 5 余熱3分 余熱3分で、肉全体が白っぽい色に変わります 。
ガッテン流で豚肉を焼くとどうしておいしいの?
豚肉を焼く温度が高すぎたり、長く焼きすぎると、肉の繊維が縮み、繊維の間に含まれている旨み成分たっぷりの肉汁が抜け出てしまいます。パサパサになって旨みが半減してしまいます。肉が急速に固くなるのは中心温度が68℃を超えてからなので、肉の中心温度を68℃に保つことができれば、ジューシーな肉に焼き上がります。ガッテン流ソテーの秘密は、ジューシーライン=68℃(中心温度)を守っていたことにありました。
中心温度が68℃になっているかどうかを調べるには、フォークを使います。フォークであらかじめ豚肉に穴を開けて焼くと、中から肉汁が出てきます。これが、下半分が焼けた(繊維が縮んで水分子を放出し始めた)合図です。このタイミングで裏返すわけです。 
[レストランカレーを食べた感想]
5人分は少ないんじゃないの?
5人が満足できる量ではないかもしれません。3 人分と考えた方がよいでしょう。がっつりいくカレーではなく、少量を香りや舌で味わう上品なカレーだからです。トロトロでじゃがいもと肉以外食べ応えがないので、いつものカレーライスに比べてもの足りないと感じるかもしれませんが、それとは全くジャンルの違うカレーです。手間ひまかけた分絶品ですので、舌の上で転がすようにしっかり味わってみて下さい。家庭でホテルやレストランのカレーが味わえるのですから、至福です。たまに食べるならこのレストランカレーです。いつもの野菜がゴロゴロしたカレーライスでは絶対味わえません。低カロリーで食感のある副菜や野菜サラダを準備して満腹感を出して下さい。
今回使用したカレールーは?
ハウスのジャワカレー、辛口を使用しました。4〜5皿分とあったので、最初は6個のうち半分の3個を使ったのですが、サラサラと薄く感じられました。ルウ6個で4皿分と考えた方がよいようです。4個使ってみたところ、味もとろみ加減もしっかり決まりました。たぶん、他メーカーの場合も、少し多めにルーを使った方がいいかもしれません。4〜5皿分とあった時は、それは4皿分と考えた方がよいでしょう。
カレールウのカロリーは?
ハウスのジャワカレーのルー1個が17.25gで、4個使用しました。69gです。メーカーのカロリーは、1皿分23gが124kcalとあったので、372kcalです。メーカーによって多少カロリーは異なりますが、一般的なカレールーのカロリーは、100gが512kcalのようです。これに基づいてカロリーを計算すると、今回使用したルーのカロリーは353kcalです。
レストランカレーのカロリーは?
このレシピのカレーライスのカロリーは、1人分が560kcalです。カレールーのカロリーは、一般的なルウ100g、512kcalに基づいて計算しました。肉は牛肉の脂肉の少ないもも肉150gとしました。バターはガッテンのレシピの半分の10gを使用しました。5人分だとカレーソース1人分が258kcal。ご飯は少し少なめの180g、302kcalです。ものたりないといって3人分にすると、1人分が732kcalになってしまいます。さらにご飯や肉の量を増やすと1人前1000kcal位になるので、注意して下さい。
バターが気になる?
ためしてガッテンのレシピでは、バターは20g入れるようになっていますが、このレシピはダイエットの為、半分の10gに減らしてあります。でも十分なコクがあります。重要な隠し味なので、欠かすわけにはいきません。お好みで増やして下さい。
肉の焼き加減は?
今回は牛肉2枚で150gを使用しました。厚さも1cm位と薄いので、裏返してからは、加熱時間を1分少々と短くしました。時間がたってもやわらかくておいしかったです。そのまま食べてもおいしいステーキ状態です。豚肉もジューシーで大変おいしいです。お好みでどうぞ。
あめ色玉ねぎをもっと簡単に作る方法は?
玉ねぎを短時間であめ色に炒める方法が、はなまるマーケットで紹介されました。玉ねぎを冷凍してから炒めると、炒め時間10分で済みます。焦がす心配もなく、炒め油も少量で済みます。玉ねぎをみじんにして凍らせると細胞組織が壊れるので、水分が出やすくなり、糖分やアミノ酸が反応しやすくなるのだそうです。
あめ色玉ねぎのレシピ
 材料(2個分)
 玉ねぎ…2個
 サラダ油…少量
 作り方
 1 玉ねぎは粗みじん切りにして冷凍保存袋に入れて空気を抜く。(スライスの場合は、繊維と垂直に切る。)
 2 冷凍保存用袋に入れ、空気を抜いて冷凍する。
 3 フライパンにサラダ油、凍ったままの玉ねぎを入れ、強火で10分炒める。
  ※オニオンスープ、カレーなどに応用可能。冷凍保存もできます。冷蔵庫で3〜4日、冷凍庫で1ヶ月保存できます。
カレーライスの付け合せは?
定番の福神漬けやらっきょうの他にも、野菜サラダなども付け合せるとよいでしょう。ピクルスもあいます。 
ポークカレーライス 8

 

材料 (10人分)
じゃがいも 4個
玉ねぎ 3個
にんじん 2本
豚肉 400g
にんにく 6かけ
サラダ油 大さじ4
塩 大さじ1/3
日本酒 大さじ2
水 1.8リットル
カレールー 2パック
牛乳 50cc 
1 じゃがいも、玉ねき、にんじんの皮を剥いて、適当な大きさに切ります。
2 豚肉を適当な大きさに切って、にんにくを薄切りにします。
3 鍋にサラダ油をひいて、にんにくを炒めます。
4 豚肉、塩を加えて炒めます。
5 じゃがいも、玉ねぎ、にんじん、日本酒を加えて炒めます。
6 水を加えて煮立てます。
7 丁寧にあくを取り、約30分煮込みます。
8 カレールーと牛乳を加えて煮込んだら出来上がり。 
[料理のコツ]
にんにくはよく炒めて香りを出しましょう。あくは丁寧に数回に分けて取りましょう。隠し味は牛乳を入れること。
このレシピがあれば、豚肉の代わりに牛肉を入れても、魚介類を入れても美味しいカレーを作ることができます。 
 

 

 
ビーフカレーライス

 

ビーフカレーライス 1 
材料 (4人分)
牛肉(ブロック) 350g
にんじん 150g
じゃがいも 350g
玉ねぎ 200g
塩 小さじ 1/2
こしょう 少々
グリーンピース(冷凍) 50g
ご飯 800g
バター 大さじ2
(A) バター 大さじ2と1/2
   小麦粉 大さじ4と1/2
   カレー粉 大さじ4
   ローリエ 1枚
   ブイヨン 5カップ
   しょうが 1片
   にんにく 1片
(B) デルモンテ・有機トマトピューレー 1/3カップ
   デルモンテ・トマトケチャップ 大さじ3
   キッコーマンデリシャスソースウスター 大さじ3
(C) [牛肉の下味]
   塩 小さじ 1/2
   こしょう 少々
   カレー粉 小さじ1
   サラダ油 小さじ2と大さじ1/2
   マンズワイン(赤) 1/4カップ  
1 カレーソースを作る。厚手の鍋に(A)のバターを溶かし、小麦粉を加え、鍋底から混ぜながら弱火で30〜40分、こげ茶色になるまでよく炒める。カレー粉大さじ2とローリエを加え、軽く炒める。香りがでたら、ブイヨンを加えて溶きのばす。おろしたしょうがとにんにく、(B)を加え混ぜ、ひと煮立ちさせる。
2 牛肉を3cm角に切り、(C)をふり、手でよくもみこんで下味をつける。フライパンにサラダ油小さじ2を熱して牛肉の表面を焼き、赤ワインとともに(1)のカレーソースに加えて20〜30分、軽く煮立つくらいの火加減で煮込む。
3 にんじんは乱切りにし、サラダ油大さじ1/2でかるく炒めてカレーソースに加える。じゃがいもは一口大、玉ねぎは2cm幅のくし型に切り、同様に炒めて加える。
4 肉と野菜に十分火が通ったら、残りのカレー粉を加える。塩、こしょうで味を調え、グリーンピースを加えてひと煮し、でき上がり。炊きたてのご飯にバターを加え、むらなく混ぜてバターライスを作る。器に盛り、ビーフカレーを添える。 
ビーフカレーライス 2 (ひき肉) 

 

材料
ひき肉 300g
玉ねぎ 1個
スナップエンド 1袋
ニンニク 1かけ
ケチャップ 大さじ3
カレー粉 小さじ1
カレールー 2かけ
お水 500ccぐらい
コンソメ 1個  
1 玉ねぎとスナップエンドとニンニクを粗みじん切りにする
2 フライパンに油をひきニンニクを香りが出るまで炒め次に玉ねぎを透明になるまで炒めたらひき肉を入れる
3 ひき肉の色が変わったらお水とコンソメを入れて煮込む
4 スナップエンドを入れて 軽く火を通して カレールーとケチャップを入れて 味見て カレー粉を足して出来上がり
5 野菜室ある物で作ったので 人参とかジャガイモとかを足しても勿論オッケー 
ビーフカレーライス 3 (玉葱たっぷり)

 

材料 (11皿分)
牛肉 350〜500g
じゃがいも 3個
人参 一本
玉ねぎ 2個
ニンニク 2個
ローリエ 1枚
片栗粉 適量
バターorオリーブオイル 適量
塩コショウ 適量
カレールー 一箱
ケチャップ・とんかつソース・ウスターソース 各大2  
1 じゃがいも・人参を乱切りにする。玉葱一個は大きめに切り、もう一個は薄くスライスする。ニンニクはみじんに切りしておく。
2 鍋にバターorオリーブオイルを入れ、じゃがいも・人参を炒める。大きめに切った玉葱も入れ炒める。
3 全体に油が回ったら、水1400ml・ローリエを入れてしばらく煮込む。
4 牛肉を食べやすい大きさに切り、塩コショウして片栗粉をまぶしておく。(炒めた時に肉の旨みを逃がさないようにする為)
5 フライパンに油をひき、牛肉を炒める。色が変わったら、3の鍋に投入する。
6 5で使用したフライパンを洗わず、そのまま使い薄くスライスした玉葱をあめ色になるまで炒める。焦げそうになったら水を加える。
7 しんなりしてあめ色になった玉葱を鍋の中に投入し、蓋をしたら弱めの中火で、20分ほど煮込む。
8 一旦火を止め、カレールーを溶かし、再び10分ほど煮込む。時々混ぜてください。お好みでケチャップ・ウスターソースを入れる。 
ビーフカレーライス 4

 

材料 (3〜4人分)
ザ・カリーの中辛or辛口 1箱 (玉ネギをちゃんと炒めると、かなり甘みが出るので最近はもっぱら辛口です。全然辛くないです。)
牛薄切り肉 300g
玉ねぎ 中2コ
人参(お好みで) 中1/2コ
じゃが芋(お好みで) 中1コ
水 600cc
バター 大さじ1
サラダ油 大さじ1
砂糖 小さじ2 
1 玉ねぎは粗いみじん切り(もしくは薄くスライス)にし、牛薄切りにくは細かく切っておく。人参とじゃが芋はお好みで。なくても大丈夫です。
2 玉ねぎを平たい耐熱皿に移し砂糖小さじ2を振りかけラップをし、レンジ強で約5分加熱、そのまま蒸らす。
3 厚手の鍋にサラダ油とバターを熱し、玉ねぎをじっくり炒める。私は最低30分は炒めます。※忙しく炒めるというよりは、玉ねぎを寄せ集めて蒸す感じ。焦げないようたまに炒めてやる。
4 あめ色になったら牛肉を入れ炒め、水600ccを加え煮込む。沸騰したらアクをとる
5 これがカレールゥ。中に固形のルゥと煮込み用ブイヨンペーストが入ってます。
6 同梱の「煮込み用ブイヨンペースト」を加え、弱火で15分ほど煮込む。
7 いったん火を止め、ルゥを割り入れ溶かす。再び弱火でとろみがつくまで10分ほど煮込んだら出来上がり♪ 
ビーフカレーライス 5 (護衛艦「ひゅうが」)

 

材料 (4人分)
牛肉 150g
たまねぎ 300g
人参 120g
じゃがいも 120g
にんにく 20g
[調味料]
   カレールー(市販) 適量
   カレーパウダー 好みで
   ガラムマサラ(パウダー) 大さじ2/3
   ワイン 適量
   ブランディー、タバスコ、ケチャップ、ドミグラスソース、唐辛子、牛乳、ウスターソース、トンカツソーズ、醤油、鶏ガラスープ、インスタントコーヒー、バター 適量 
1 牛肉を適当な大きさに切り、ワインを振りかけ揉み込んでおき一晩寝かせておく。
2 野菜はお好みの大きさに切り込んでおく。
3 にんにくは、スライス又はみじん切りにする。
4 鍋にサラダ油、バターをひき 切り置きのニンニクの半分を入れ香りが出てきたらあらかじめ切ったたまねぎの半分を入れ、たまねぎが飴色になるまで炒める。 炒め終わったら一旦皿に移して冷ましておく。
5 たまねぎを炒めた鍋で肉、野菜を炒める。油をひいて、残ったニンニク、唐辛子を入れ香りが出てきたら肉を入れてブランディーを少しふりかけ炒める。
+ タバスコ少々にんじん、残ったたまねぎを入れ肉の表面の色が変わったら、鶏がらスープを入れ丁寧にアクを取りながら煮込む。 アクがだいたい出切ったところで、カレーパウダー・ガラムマサラ・ケチャップ・醤油・ウスターソース・ドミグラスソース・飴色に炒めたたまねぎを入れてさらに煮込む。
6 カレーパウダー・ガラムマサラはフライパンで煙が出るまで炒っておく。ただし、あまり炒りすぎると出来上がったカレーが苦くなってしまうのでご注意する。
7 煮込み中に、フライパンにサラダ油又はバターを入れ、ジャガイモを炒める。フライパンである程度食べられるぐらいまで火を通す。(ジャガイモが溶ける位が良い場合、肉を炒める時に一緒にジャガイモも炒め煮込むと良い。)
8 煮込んでる鍋の火を止めルーを投入し、しばらく置いておく。
9 1分程置いたらかき混ぜて固さを調節する。ユルイようなら少しルーを入れ、固いようだったらお湯で溶いた鶏がらスープを足す。
10 ルーの固さが決まったら、炒めたジャガイモ、牛乳、トンカツソースを少しづつ入れ、味を調える。味をはっきりさせるなら、お湯で溶いたインスタントコーヒーを少し入れ混ぜ、できあがり。 
ビーフカレーライス 6

 

材料 (2人分)
牛肉(ブロック) 200g (塩コショウ・少々)
玉ネギ 1個
ジャガイモ 2個
ニンジン 1/2本
サラダ油 大さじ2
バター 10g
水 450〜500ml
カレールウ(市販品) 3皿分
しょうゆ 大さじ1
チョコレート(板チョコレート) 10g
<バターライス>
ご飯(炊きたて) 茶碗3杯分
バター 10g
ドライパセリ 小さじ1
レーズン 適量
ピクルス(薬味用) 適量  
1 牛肉に塩コショウをもみ込む。玉ネギは薄切りにする。ジャガイモは皮をむき、4〜6つに切る。ニンジンは皮をむき、すりおろす。
2 フライパンにサラダ油(半量)、バターを入れて中火で熱し、玉ネギを炒める。ジャガイモを加えてサッと炒め合わせ、鍋に入れる。(ポイント)全体に油がまわるようにフライパンを大きく振って、手前に引いて!
3 (2)のフライパンに残りのサラダ油を熱し、牛肉を強火で炒める。焼き色がついたら、鍋に入れる。
4 フライパンに水を加えて木ベラで混ぜ、鍋に加えて強火にかける。アクを取り、蓋をして弱めの中火で約12〜15分煮込む。
5 いったん火を止め、ニンジン、しょうゆ、カレールウを加えてルウを溶かす。弱めの中火で7〜8分煮込む。さらにチョコレートを加え、1〜2分煮て火を止める。
6 ご飯にバター、ドライパセリを加え、混ぜ合わせる。
7 器にバターライスを型抜きしてのせ、ビーフカレーを盛る。レーズンを散らし、ピクルスを添える。(ヒント)型がない場合はお茶碗等で代用して下さい! 
ドライパセリ
パセリ(大)・1束(137g) (摘み取った葉先・83g)
[作り方]
パセリは軽く水洗いし、葉先だけを摘み取ってたっぷりの水に放つ。軽く洗って水気をきり、きれいなタオルで包んで水気をしっかり絞る。
電子レンジの丸天板にキッチンペーパーを5〜6枚重ねてのせ、半量を全体に広げる。中央は少し少なめに、縁側は少し多めに広げて下さい。
電子レンジに入れて(ここでは回転しながら加熱しています)4分加熱する。電子レンジの扉に付いた水分を拭き取る。少し量が減っているが、まだ湿っているのでさらに3〜4分加熱する。レンジからキッチンペーパーごと取り出し、粗熱が取れるまで置いておく。冷めるとパリパリになっています。まだ湿っているようなら加減しながら加熱して下さい。同様に残りのパセリも水分を飛ばして下さい。
きれいなビニール袋に入れ、お好みの細かさになるまで崩す。きれいな保存瓶に入れ、冷凍庫で保存して下さい。必要分ずつ取り出して下さい。 
ビーフカレーライス 7

 

材料 (5皿分)
カレールウ 100g
牛肉 200g
玉ねぎ中 1.5個
にんじん 小1本
じゃがいも 大1個
サラダ油 大さじ2
水 700ml 
1 厚手の鍋にサラダ油を熱し、適当な大きさに切った肉、野菜をよく炒めます。
2 水を加え、沸騰したらアクを取り、材料がやわらかくなるまで弱火〜中火で煮込みます。(約20分間)
3 いったん火を止めてルウを割り入れ、充分に溶かし再び弱火で煮込んでください。
[ひと手間加えるなら]
・玉ねぎはみじん切りにして、こがさないようにきつね色になるまで充分に炒めていただくと、よりいっそうおいしく召し上がれます。
・じゃがいもの煮くずれが気になる方は、炒めた後いったん取り出し、煮込み10分経過後に加えるか、または炒めずに別ゆでにして最後に加えてください。 
ビーフカレーライス 8

 

材料 (2人前)
牛薄切り肉 200g
玉ネギ 1個
ニンジン(中) 1本
じゃがいも 2個
ニンニク(みじん切り) 小さじ1
ショウガ(みじん切り) 小さじ2
赤ワイン 100cc
コンソメ 1、2リットル
カレールー 一箱(220g)
塩 少々
こしょう 少々
砂糖 少々
サラダ油 適量
カレー粉 小さじ1
ウスターソース 大さじ1/2
ケチャップ 大さじ1
[外編](ニンジン嫌いでも食べられる究極のサイドメニュー)
ニンジン 1本 ・塩 適量 ・こしょう 適量 ・バター 適量 
[具材の下処理]
1 じゃがいも(1個)は一口大に切り、灰汁を取るため水に浸す。
2 ニンジン(中・1本)は乱切りに、牛薄切り肉(200g)は大きめに切る。
[具材を炒め ベースを仕上げる]
1 鍋にサラダ油を熱し、玉ネギ、ニンジンを炒め、カレールーを分量の半分加え、焦がさないよう炒め、みじん切りにしたニンニク(小さじ1)、みじん切りにしたショウガ(小さじ2)を加え、炒める。
2 (1)の鍋にコンソメを加え、沸けば灰汁を取り、中火にして5〜10分炊く。
3 牛薄切り肉に塩こしょう(各少々)、やわらかく仕上げるため砂糖(少々)をまぶす。
4 フライパンにサラダ油を熱し、牛肉をさっと炒め、取り出し、皿に乗せ、肉汁につからないように、傾けておく。
5 (4)のフライパンの油を拭き、赤ワイン(100cc)を沸かして3分の1くらいになるまで煮詰める。
6 (2)に(5)を加え、(4)の肉と、肉汁を戻し、じゃがいもを加え、カレールーの残りを加えて約30〜40分、じゃがいもがやわらかくなるまで炊く。
7 仕上げにカレー粉(小さじ1)をお好みでふる。ケチャップ(大さじ1)、ウスターソース(大さじ1/2)で味をととのえる。
[番外編](ニンジン嫌いでも食べられる究極のサイドメニュー)
1 ニンジンは5ミリ幅に切り、低温の油でゆっくりやわらかくする。炒めず、揚げず、煮るような感じで温度が上がれば、常に火力を弱くし、低温を保つ。
2 ニンジンがやわらかくなれば、(試食して確認する) 余分な油を取り除き、中火で両面が色づくまで炒める。
3 ニンジンが色づいたら塩こしょう(各適量)で味をととのえ、バター(適量)を加え、仕上げる。 
ビーフカレーライス 9

 

材料(2人分)
牛肉(カレー用) 150g
玉ねぎ 中1.5個
しめじ 1房
にんじん 中1/2個
にんにく 1片
しょうが 1片
ケッチャップ 大さじ1
オイスターソース 大さじ1
塩 少々
こしょう 少々
サラダ油 大さじ2
水 800t
月桂樹 1枚
お好みのカレーのルウ 中辛70g 甘口30g 
1 牛肉は食べやすい大きさに切り、塩、こしょうをして下味を付ける。
2 玉ねぎは薄切り、にんじんは5oのサイコロ状に、にんにくとしょうがはみじん切りにしておく。しめじは石づきを取り裂いておく。
3 フライパンに大さじ1の油を熱し、牛肉の両面に焼き色が付くまで焼く。
4 鍋に残りの油を熱し、にんにくとしょうがを炒め、香りがしたら玉ねぎを加え弱火できつね色になるまで炒める。
5 (4)に牛肉としめじを加え軽く炒めたら水と月桂樹を入れてアクを取りながら煮込む。
6 20分ほど煮たらカレーのルウを入れ、ケッチャップ、ウイスターソースを加えれば出来上がり。 
ビーフカレーライス 10

 

材料 (4人分)
牛もも肉(カレー用)  600g (粗塩小さじ1/2 カレー粉小さじ2)
にんじん (大) 1本(200g)
セロリ 1本(120g)
トマト (大) 2個(520g)
水 4カップ
スープの素 1個
おろししょうが(大) 1かけ分
ローリエ 2枚
にんにく 3かけ
玉ねぎ(大) 2個(400g)
カレー粉 大さじ3
はちみつ 大さじ1
しょうゆ 大さじ1
粗塩、こしょう 各少々
バター さじ1
ごはん(温かいもの) 茶碗4杯(600g)
・油  
1 牛肉は粗塩、カレー粉をまぶしておく。
2 にんじんは皮をむいて薄切りにし、セロリも薄切りにする。トマトは皮を湯むきしてざく切りにする。
3 煮込み鍋に(2)、分量の水、スープの素、おろししょうが、ローリエを入れて火にかける。
4 フライパンに油大さじ1を熱し、(1)の牛肉を焼き色がつくまで炒め焼き、油を残して(3)の鍋に移し、煮込み始める。
5 にんにくは薄切りにし、玉ねぎは縦半分に切って横に薄切りにする。
6 フライパンに油大さじ1とにんにくを入れて弱火にかけ、香りが立ったら玉ねぎを強火で炒め、水分が飛んだら火を弱めて色づくまでしっかりと炒める。カレー粉の2/3量をふって香りが出るまで炒め、(4)の鍋に移してさらに煮込む。
7 (6)のフライパンにはちみつを加え、中火でこんがりと焦がし、(6)の煮汁少々で溶きのばして鍋に加える。ふたをして弱火にし、肉がやわらかくなるまで40分以上煮込む。
8 鍋から肉とローリエをとり出し、煮汁は粗熱をとってからミキサーにかける(熱いままキサーにかけると吹き上がることがあるので注意)。これを鍋に戻し、肉も戻して弱火で煮立て、残りのカレー粉、しょうゆ、粗塩、こしょうで味をととのえる。火を止め、バターを溶かし込んで仕上げる。
9 器にごはんを盛り、(8)をかける。 
[アドバイス]
・市販のルーや小麦粉を使わずに作るカレーです。
・野菜の玉ねぎとにんにくは炒めてから煮込み鍋に加えます(ここが美味しくするポイント)。
・牛肉は煮込み鍋が煮立ったところに入れること。
・はちみつを焦がしてキャラメル状(泡が大きくなるまで)にして加えることと色とコクを出します。
・仕上げにカレー粉を加えて辛みと香りを出します(あれば、ガラムマサラを加えてもよいでしょう)。 
ビーフカレーライス 11 (ひき肉)

 

材料 (2人分)
玉ねぎ 1個
デルモンテ・完熟ホールトマト(400g缶) 1/2缶
しょうが 1片
にんにく 1片
牛ひき肉 100g
サラダ油 大さじ2
キッコーマン特選丸大豆しょうゆ 小さじ2
カレー粉 小さじ1
塩 少々 
1 玉ねぎはみじん切りにし、電子レンジ(500W)で3分ほど加熱する。ホールトマトは粗みじんに切る。しょうが、にんにくは皮をむき、すりおろす。
2 厚手の鍋にサラダ油大さじ1を入れ、玉ねぎを2〜3分炒める。ホールトマトも加え、さらに炒める。
3 フライパンにサラダ油大さじ1、しょうが、にんにくを入れて炒め、香りを出し、牛ひき肉を炒め合わせ、しょうゆを加えて(2)の鍋に加える。
4 水1カップを入れ強火にする。煮立ったら火を弱くし、10分くらい煮込む。
5 カレー粉を加え、塩少々をで味を調える。
・好みでクミンシードなどの香辛料を加えてもよい。
・バターライスなどを添えるとよい。 
ビーフカレーライス 12 (ひき肉とたっぷり野菜)

 

材料 (2人分)
牛ひき肉 100g
たまねぎ(小) 1コ(100g)
なす 2コ(140g)
ピーマン 2コ(60g)
にんじん(小) 1/4コ(30g)
(A) サラダ油 大さじ1.5
   にんにく(すりおろす) 小さじ1/2
   しょうが(すりおろす) 小さじ1/2
カレー粉 大さじ1
トマトジュース (食塩無添加) カップ1
固形スープの素 (洋風) 1/2コ
ローリエ 1枚
カレールー 20g
ご飯 2杯分
パセリ(みじん切り) 適宜
スライスアーモンド(軽くいる) 適宜
塩 少々
こしょう 少々  
1 たまねぎは5mm厚さの薄切り、なすは1cm厚さの輪切り、ピーマンは1cm角に切る。にんじんはすりおろす。
2 鍋に(A)を入れて中火にかけ、香りがたったらたまねぎを加えていためる。薄いきつね色になったら、牛ひき肉を加えてパラパラになるまでいため、カレー粉をふり入れる(カレールーとカレー粉を併用することで、あっさりヘルシーに仕上がる)。
3 ピーマン、なす、にんじん、トマトジュース、スープの素、ローリエを加えてふたをし、約15分間煮込む。カレールーを加えて溶けたら、塩・こしょう各少々で味を調える。
4 ご飯を器に盛ってパセリとスライスアーモンドを散らし、3を添える。  
 
えび入りカレーライス (タイ風)

 

材料 (4人分)
えび 12尾
たけのこ 150g
ねぎ 1本
ピーマン(赤) 2個
じゃがいも 100g
赤唐辛子 3〜4本
しょうが 30g
にんにく 2片
サラダ油 大さじ1/2
カレー粉 大さじ2
だし汁(煮干し) 3カップ
(A) キッコーマン特選丸大豆しょうゆ 大さじ3
   砂糖 大さじ2
   酢 大さじ2
   レモン(しぼり汁) 大さじ2
   塩 小さじ1/2  
1 赤唐辛子はぬるま湯につけてもどす。
2 えびは殻をむき、背に切り込みを入れて背ワタを取る。
3 たけのこはいちょう切りにして熱湯をかける。ねぎは3cm長さに切る。赤ピーマンは短冊に切る。
4 しょうが、にんにくは3〜4等分してそれぞれつぶす。
5 鍋にサラダ油を熱し、(1)の水気をきり、種ごとはさみで刻み入れる。(4)、カレー粉を加えてこんがりするまでよく炒める。
6 だし汁を注ぎ入れてひと煮たちさせ、(3)と(A)を加え、4〜5分煮る。(2)を入れ、じゃがいもをすりおろして加え混ぜながら煮立てる。とろみがつけばでき上がり。好みで香菜を添える。 
 
ドライカレー

 

日本のカレーライスのバリエーションのひとつ。
現在、以下のスタイルのカレーライスが、ドライカレーと呼ばれている。
1.挽肉とみじん切りにした野菜を炒め、カレー粉で風味をつけ、スープストックで味付けをして煮詰め、平皿に盛った白飯に載せた料理。インド料理のキーマカレーに似ているが、汁気はずっと少ない(挽肉タイプ)。
2.カレー風味の炒飯(炒飯タイプ)。家庭で簡単に作れる「ドライカレーの素」や、冷凍食品が各社から発売されている。「カレーチャーハン」とも呼ばれる。
3.生の米とカレー粉を具材と一緒に炒め、炊き上げたもの(ピラフタイプ)。
インド料理を原型として、日本で独特の発展をしたカレーライスのバリエーションのひとつである。日本のインド料理店において、汁気の少ない香辛料を使った煮物を、ドライカレーと称している例もある。
1910年ごろ、日本郵船の外国航路船「三島丸」の食堂が、はじめてドライカレー(挽肉タイプ)を出したといわれている。

ドライカレーは、その名のとおりルーが半液状ではなくドライ(乾燥)な状態に近いカレーのことですが、 ひとくちにドライカレーといっても、カレー同様さまざまな種類があります。 僕が作るドライカレーは、全ての食材が細かくなっているタイプのもので、 作り方も食感も、ミートソースに近いものがあります。通常、ドライカレーはライスと一緒に食べることがほとんどなわけですが、実はパスタともなかなか相性がよいです。 普通の半液状のカレーは、ドロッとしたその食感がパスタとはミスマッチなのですが、ドライカレーであれば問題ありません。ドライカレーを多めに作れば、ライスとパスタで二度楽しめます。  
ドライカレー 1
材料 (4〜6人分)
あいびき肉 300グラム
玉ねぎ 大1個
にんじん 1/2本
にんにく 1かけ
油 大さじ1
[調味料]
   カレー粉 大さじ1
   中濃ソース 大さじ2
   ケチャップ 大さじ2
   しょうゆ 大さじ2
   塩 少々
   コンソメ 小さじ1  
1 にんにく、玉ねぎ、にんじんをみじん切りにし、油を入れた鍋で炒める
2 合いびき肉を入れ、さらに炒める
3 肉に火が通ったら調味料を入れ、よく混ぜて10分煮る →出来上がり  
ドライカレー 2
材料 (4人分)
高野豆腐 4個
玉ねぎ 1/2個
人参 1本
いんげん 5本くらい
ピーマン 1個
コーン お好みで
しめじ 1/2パック
[調味料]
   コンソメ(顆粒) 小1
   ケチャップ 大さじ4
   ウスターソース 大さじ1
   酒 20cc
にんにく 少々
カレー粉 大さじ2
チーズ お好みの量  
1 野菜ときのこはみじん切りか1cmの角切りに。人参はすりおろしておく。(みじん切りでもOK)
2 高野豆腐をぬるま湯で戻し,軽く水を切ってすりおろしておく。円をえがくようにすると簡単。フードプロセッサだと一発で完成!
3 フライパンに油を熱し,にんにくを炒めて香りがでたら玉ねぎ,人参と上から順に炒めていく。最後に2を加えて炒める。
4 3に調味料を加えて煮込む。水分は様子をみて,足りなければ水を追加する。最後にカレー粉を加えて完成。
5 とろけるチーズや粉チーズをかけて食べるとさらにおいしい!  
ドライカレー 3
材料 (4人分)
合挽き肉 400g
玉ねぎ 中2個
にんじん 1本
オイスターソース 大さじ2
カレールー 4ブロック(1/2箱)
水 2カップ
塩・こしょう 少々  
1 玉ねぎ、にんじんをみじん切りにし、油をひいたフライパンで炒める。
2 野菜がしんなりしたらひき肉を入れ、塩・こしょうして、肉がパラパラになるまでよく炒める。
3 水とカレールーを入れ、ルーが溶けたらオイスターソースを入れる。
4 混ぜながら少し煮込んだら完成です♪  
ドライカレー 4
材料 (約4人分)
合いびき肉 400g
たまねぎ 1コ
ピーマン 2コ
カレールー(市販) 60g
カレー粉 大さじ1
コリアンダー(シード) 大さじ1
(A) バジル(生) 3枝
   イタリアンパセリ 生) 3枝
   ローズマリー(生) 3本
(B) トマトケチャップ 大さじ1
   ウスターソース 小さじ1
   塩 少々
   こしょう 少々
サラダ油  
1 たまねぎは粗みじん切りにする。ピーマンはヘタと種を除いて粗みじん切りにする。
2 カレールーは粗く刻んでおく。コリアンダーはすり鉢などですりつぶす。【A】のハーブは堅い軸を除き、みじん切りにする。
3 フライパンにサラダ油大さじ1を中火で熱し、ひき肉をざっとほぐしながら炒める。
[ポイント ] ひき肉はパラパラにせず、粗めにほぐしたほうが食べごたえが出ます。
4 肉の色が変わったら、たまねぎを加えて炒める。
[ポイント] たまねぎは炒めすぎない!フレッシュな味と歯ざわりを残しましょう。
5 カレールー、カレー粉、コリアンダーを順に加えて混ぜ合わせる。ルーが溶けたら、(B)の調味料を加えて味を調える。
[ポイント] 調味料は好みで加減を。ケチャップで味を落ち着かせ、ウスターソースでキリッとしめます。
6 ピーマンを加えて炒め合わせ、(A)のハーブを加え、ざっと混ぜて火を止める。  
ドライカレー 5 (なすと鶏肉)
材料 (1人分)
なす 1コ
鶏もも肉 150g
ピーマン 1コ
にんにく 1かけ
しょうが 1かけ
カレー粉 大さじ1/2
オイスターソース 小さじ1
ご飯(温かいもの) 茶碗1杯分

サラダ油

しょうゆ
黒こしょう(粗びき)  
1 なすはヘタを取って2cm角に切り、塩少々を入れた水に3分間さらす。ピーマンはヘタと種を取って1cm角に切る。にんにく、しょうがはみじん切りにする。鶏肉は一口大に切る。
2 フライパンを熱してサラダ油大さじ1をひき、水けをふいたなすを加えて強火でいためる。少し焼き色がついて、しんなりしたら取り出す。
3 2のフライパンにサラダ油少々を足して熱し、鶏肉を入れて強めの中火でいためる。全体に焼き色がついたら、にんにく、しょうがを加えていためる。香りが出てきたら2のなすを戻し入れ、続いてピーマンを加え、いため合わせる。
4 3に酒大さじ1を加えてざっといため、カレー粉、オイスターソース、しょうゆ小さじ1を加えていためる。味をみて足りなければ塩・黒こしょう(粗びき)各少々で調える。
5 器にご飯をよそい、4のドライカレーをのせる。  
ドライカレー 6 (なすと挽肉)
材料 (4人分)
なす 6本
玉ねぎ 1個
ピーマン 3個
合いびき肉 300g
塩・こしょう 各適宜
サラダ油 大さじ3
カレー粉 大さじ3
[A]  にんにく・しょうがのみじん切り 各大さじ1
[B]  顆粒コンソメ 小さじ2
   トマトケチャップ 大さじ1
   中濃ソース 大さじ1
   コリアンダーシード 小さじ1
ごはん 適宜  
1 なすはヘタを切り落とし、2cmの厚さに輪切りにして水にさらし、水気をきってよく拭く。玉ねぎはみじん切り、ピーマンはヘタと種を取り、1〜2cm角に切る。
2 深めのフライパンに油大さじ1を熱し、[A]の香味野菜を炒める。香りが出たら[1]のなすを入れ、残りの油を足しながら軽く焼きつけ、途中で軽く塩、こしょうをふって取り出す。
3 同じフライパンにひき肉を入れ、焼きつけるように炒め、玉ねぎも加えて炒め合わせる。
4 [3]にカレー粉をふり入れてさらに炒め、[B]で調味する。
5 [4]に[2]のなすを戻し入れて炒め合わせ、ピーマンも加える。コリアンダーシードをすりつぶして加え、塩、こしょうで調味する。
6 温かいごはんに[5]をのせ、好みの漬けものを添えていただく。  
ドライカレー 7
材料 (2人分)
牛ひき肉 150g
玉ネギ 1個
ニンジン(小) 1/2本
ピーマン 1個
ニンニク(みじん切り) 1片分
レーズン 大さじ2
バター 10g
カレー粉 大さじ1
[調味料]
   ケチャップ 大さじ2
   チリソース 大さじ1/2
   顆粒スープの素 小さじ1
   ローリエ 1枚
   赤ワイン 50ml
   水 50ml
塩コショウ 少々
ご飯(炊きたて) 茶碗2〜3杯分
薬味(お好みのもの) 適量  
[下準備]
玉ネギは、みじん切りにする。ニンジンは皮をむき、みじん切りにする。ピーマンは縦半分に切ってヘタと種を取り、みじん切りにする。
1 フライパンにバターを熱して玉ネギ、ニンニクを炒め、玉ネギに少し色がついてきたら、時々混ぜながら弱めの中火で10分位炒める。
2 ニンジンを加えて炒め合わせ、さらにピーマンを加えて炒める。
3 牛ひき肉を加えて色が変わるまでよく炒め、カレー粉を加えてさらに炒め合わせる。香りがたってきたらレーズン、<調味料>の材料を加えてひと混ぜする。
4 フライパンに蓋をして弱火にし、15〜20分蒸し煮にする。最後に塩コショウで味を調える。ご飯を盛った器にかけ、薬味を添える。  
ドライカレー 8
材料 (5-7食分)
牛ひき肉 300g
ホールトマト缶 200g
みじん切りしたタマネギ 200g
みじん切りしたニンジン 100g
みじん切りしたセロリの茎 80g
みじん切りしたピーマン 100g
ニンニク 1かけ
ローリエ(月桂樹の葉) 1枚
カレーフレークorカレーのルー 適量
固形スープorフォン・ド・ボー 5g
オリーブオイル(or油) 30cc
塩 適量
胡椒 適量  
1 材料の処理
ニンニクは包丁の腹でつぶしておき、タマネギ、ニンジン、セロリ、ピーマンはみじん切りにしておきます。 フードプロセッサー(フードカッター)があればそれを使うとよいです。
ホールトマト缶はボールなどにあけて、皮やヘタが残っていたら取り除き、 トマトはつぶして軽くくずしておきます。トマトの汁もそのまま使います。 種は、旨みになるのでとらないという方もいますが、僕は苦味のもとになるようなので取り除いてしまっています。
2 ニンニクをいためる
オリーブオイル、ニンニク、ローリエを鍋にいれて、とろ火でニンニクをいためます。
ポイントとなるのは、オイルが冷たいうちからニンニクをいれて、ゆっくりといためていくことです。 じっくりと炒めれば炒めるほど、それだけニンニクの旨みがオイルに伝わるからです。
3 野菜とひき肉をいためる
ニンニクが色づき始めたらニンニクを取り除き、、タマネギ、ニンジン、セロリを加えて中火でいため、 しっとりしてきたら弱火にしてじっくり7-8分いためます。  十分火が通ったらひき肉とピーマンを加えて、ほぐしながら強火でいためます。野菜を一度鍋の端にどけておいていためるとよいです。 火がとおったらすぐに次に進みます。
4 カレーフレークとトマト缶を加えて煮詰める
水500cc、カレーフレーク、固形スープ、トマト缶(汁ごと)を加えて弱〜中火にかけます。 カレーフレークは使いやすいので愛用していますが、バー状になっているカレーのルーでもかまいません。 カレーフレークの量は、味を見ながら好きな辛さに調整します。
アクはこまめに取り除き、時々かきまぜるようにし、数十分〜1時間ほどじっくり煮詰みます。 左写真のように、へらにのるくらいまでになったらローリエをとりのぞき、塩と胡椒で調味をします。 
[アドバイス]
カレーはねかしたほうが美味しいとよく言われているように、このドライカレーも、一晩ねかせばより美味しくいただけます。
もっと簡単にドライカレーを作る裏技(?)として、ミートソースをベースにする方法があります。 ミートソースとドライカレーは、使用する食材と過程がほとんど同じであるため、ミートソースにカレーフレークを加えて煮込みなおせば、ドライカレーとしていただけます。市販のミートソースを使う場合は少し手を加えます。包丁の腹でつぶしたニンニクと唐辛子1本をオイルでいためて、(ニンニクと唐辛子を取り除いたあと)牛のひき肉をいため、そこに市販のミートソースとカレーフレークを加えて煮込めば、それなりにいい感じのドライカレーになります。  
ドライカレー 9
材料 (2人分)
豚ひき肉 150g
玉ねぎ 1/2個
ピーマン 1個
にんにく 1/2片
にんじん 1/3本
ご飯(固めに炊いたもの) 300g
グリーンピース 適量
バター 大さじ1
(A)
   カレー粉 大さじ1
   デルモンテ・トマトケチャップ 大さじ3
   キッコーマン特選丸大豆しょうゆ 大さじ1と1/2
   マンズワイン(白) 大さじ1
   塩 少々  
1 玉ねぎ、ピーマン、にんにくはみじん切り、にんじんはすりおろす。
2 バターを溶かし、にんにく、玉ねぎをよく炒め、豚ひき肉を加え、さらに炒める。
3 にんじん、ピーマンも加えて炒め、(A)で調味し、汁気がなくなるまで炒める。
4 器にご飯と(3)をよそい、グリーンピースをちらす。  
 
カレーライスをマズくしてる作り方の誤解

 

1 具材は多ければ多いほどよい?
「よかれと思って具材をたくさん入れすぎると、味のバランスが崩れることがあります。ごはんとともに口に運んで、トータルでちょうど良いくらいに具材の量を調整しましょう。特にじゃがいもは、ごはんと同じでんぷん質なので、入れすぎるとバランスが崩れやすいです」
2 じゃがいもはカレーに欠かせない具材だ
「好きな具材アンケートでも上位にランキングする“じゃがいも”ですが、個人的にはじゃがいもはカレーに入れません。炭水化物はごはんだけでいいように思いますし、また、冷凍保存する際には取り出さないとスカスカでまずくなります。じゃがいもはなかなか扱いが面倒なので、省略してもいいかもしれません。
どうしてもじゃがいもを入れたい場合は、煮くずれを防ぐために、だんしゃく(丸くてゴツゴツしたほう)ではなくメークイン(細長くて比較的ツルッとしたほう)を使用しましょう」
3 火にかけたままルーを入れる
「ルーを入れる際には、火はいったん止めましょう。市販のカレールーの作り方手順でも、火を止めるよう指示がありますが、これは、カレールーに含まれている小麦粉を均一に溶かし、なめらかに粘化させるためです。
“まあいいや”って火を止めずに沸騰したところにルーを入れると、ダマになってしまうことがあるので、一手間を惜しまないようにしましょう」
4 具材を全部入れたまま冷凍する
「残ったカレーを冷凍保存して数日後に食べる場合は、上で述べたじゃがいもだけでなく、にんじんも入れないほうがいいです。どちらも冷凍すると食感がスッカスカになって、おいしくなくなります。じゃがいもやにんじんは取り除いて冷凍しましょう」

料理初心者でも作りやすいイメージのあるカレーライスですが、意外と落とし穴があるものですね。最後に、ワンポイントアドバイスを。
「じゃがいもやにんじんのかわりに、オクラや長いもを使ってみるのもこの時期にはおいしいと思います。たとえば、オクラと長いものジンジャーカレーは、秋バテ解消にぴったりです」
 
カレーの話

 

カレーが先か、カレーが後か、それが問題だ
カレーって、いったい、なんなんでしょう? 難しい……。“カレー”のことが僕にはよくわかっていません。
“カレーライス”と聞けば、ご飯の上にカレーがかかっているオーソドックスなものをイメージしますね。ま、これはよしとしましょう。じゃ、“ライスカレー”とどう違うの? と聞かれたら、答えに困ってしまう。
自宅で食べる大衆的なカレーがライスカレー、レストランで食べる高級なカレーがカレーライス。そう認識されていた時代もあるようですが、この違いについては諸説あって、正解がわかりません。いずれにしてもご飯にカレーをかけて食べるものであることは間違いないのかな。
“ハンバーグカレー”はどうでしょう? チキンカレーやビーフカレーと並んでハンバーグカレーがあると想像すれば、「ああ、カレーの具にハンバーグが入ったものなんだろうな」と察しがつくと思います。子供に人気がでそうなメニューですね。
じゃ、“カレーハンバーグ”は? カレーとハンバーグをひっくり返しただけですが、まるで別の食べ物になってしまいます。カレーハンバーグがなんなのかについて考えてみてください。
カレーが脇役、ハンバーグが主役
ハンバーグカレーは、カレーの具にハンバーグが入っている料理のことだとお話ししました。具がなんであろうとカレーライスなわけですから、ご飯にかけて食べる料理だということになりますね。
問題は、カレーハンバーグ。これは、カレーライスではなくて、ハンバーグです。どんなハンバーグなのかというと、カレーの風味がするハンバーグ。見た目は、普通のハンバーグと変わりません。でも、食べるとカレーの香りがふわっと立ち上る。
おそらく炒め玉ねぎや挽き肉をこねるときにカレー粉を一緒に入れてるんでしょうね。この場合は、ライスにかけるわけにいきません。ライスやパンと一緒に食べることになるのでしょう。
カレーとハンバーグ。ふたつの言葉をひっくり返しただけで全く別の料理になる。不思議だと思いませんか? どっちが主役かによって意味が変わってくるのです。この場合、後に来る言葉が主役、前に来る言葉は主役を形容するための脇役となります。
ちょっとややこしいかな。たとえば、“カレースープ”は、スープの仲間です。“スープカレー”はカレーの仲間です。ちょっとイメージがついてきましたか? 
たこ焼きはカレーの具になるのか?
ハンバーグカレーとカレーハンバーグの違いについては理解してもらったと思います。だったら“カレーたこ焼き”と“たこ焼きカレー”が違うことも、もう一目瞭然ですね。
カレーたこ焼きは、いかにもおいしそう。カレーの風味を楽しめるたこ焼き。中に入っているたこにカレー粉をまぶしておくだけでOK。夜店にあったら買っちゃいそうです。
ただ、たこ焼きカレーは、イメージ的にいただけない。だって、カレーの具にたこ焼きが入ってるんですよ。ハンバーグカレーはいいけどたこ焼きカレーはなんとなく許せない。
でも、実際にあるんです。大阪で販売されているレトルトカレーが……。
買ってみたことがあります。紙箱を開けるとレトルトパウチが入ってます。ここまでは普通のレトルトカレーと同じ。でも、そのレトルトパウチがモコモコしてるんです。外側から手で触ってみると、ラクダのようにこぶがふたつ。そう、レトルトカレーの中に立派なたこ焼きがふたつ入ってたんです。ビックリしました。
たこ焼きってカレーの具にしていいんですね。 
ハンバーグカレーに新たな刺客が……
ハンバーグカレーの話、まだまだ終わりません。
たまたま訪れたレストランにこんなメニューがあったとします。“ハンバーグのカレーソース”。これを注文してみることにしました。さて、どんな料理が運ばれてくると想像しますか?
ハンバーグカレーでもカレーハンバーグでもありません。
ハンバーグのカレーソース。
ハンバーグはハンバーグなんです。この場合は、問題となるのはソースの中身。デミグラスソースでもなく和風ソースでもなく、カレーソース。そう考えると料理のイメージがつきますね。そう、ハンバーグの上からとろりと舌触りのよいカレーソースがかかっているんです。
この場合、ハンバーグにかかっているカレーソースは、僕たちが普通にカレーライスとして食べているカレーよりも濃厚なソースであることも想像がつくと思います。ナイフを入れるとその切れ目から肉汁があふれ出し、カレーソースと混ざり合う。おいしそう。
僕は大学時代、「はんばあぐはうす ぐずぐず」という店の“はんばあぐカレーソース”というメニューが好きでした。大ぶりのハンバーグの上からどす黒いカレーソースがたらりとかかっている。唐辛子としょうがをたっぷり使った脳天を指すような辛さのカレーソースをはんばあぐと混ぜ、ライスの上に乗せて食べるんです。おいしかったなぁ。
ん? 待てよ。ということは、カレーソースがどんな味なのかによっても表現が変わってくるということになりますね。
欧風ハンバーグのインド風カレーソース
カレーハンバーグとハンバーグカレーと、ハンバーグのカレーソース。この3種類の異なる料理が、仮にすべてインド風だったとしましょう。
インド風カレーハンバーグ(A)。スパイシーな感じがしますね。
インド風ハンバーグカレー(B)。あれ? この場合、インド風がどちらにかかるのかがちょっとややこしい。“インド風ハンバーグ”が具として入ったカレーなのか、ただのハンバーグが具として入った“インド風カレー”なのか。おそらく後者の方が有利な解釈なんでしょう。
では、ハンバーグのカレーソースをインド風にしたいときはどうすればいいのでしょうか。
インド風ハンバーグのカレーソース(C-1)。もしくは、ハンバーグのインド風カレーソース(C-2)。これはどちらも成立しそう。
遊びついでにCには欧風を加えてみましょうか。
インド風ハンバーグの欧風カレーソース(D-1)。もしくは、欧風ハンバーグのインド風カレーソース(C-2)。
どっちも混乱します。インド風なのか欧風なのか、どっちかにしてくれよ! と……。
ハンバーグとカレーというふたつの言葉を組み合わせるだけで色んな食べ物が姿を現すんですね。非常に面白い(……と僕は思います)。しかも、この面白さを味わえるのは、カレーという正体不明の料理だけなんです。
話を少し戻して、カレーハンバーグとハンバーグカレーの2種にしましょう。
たとえばこの2種類の料理のカレーの部分をラーメンに変えてみてください。
カレーはラーメンよりも強いのだ
ハンバーグカレーはそろそろ食べ飽きたから、次はハンバーグラーメンでも食べようかな。
もし、どこかの誰かがそうつぶやいたとします。ん!? 一瞬、頭が混乱しますが、納得できる人もいるでしょう。きっと日本のどこかのラーメン屋には、チャーシューの代わりにハンバーグを浮かべているラーメンがあるんだろう、と。
カレーハンバーグはそろそろ食べ飽きたから、次はラーメンハンバーグでも食べようかな。
もし、どこかの誰かがそうつぶやいたとしたら。この人、頭は大丈夫かしら……と思ってしまうかもしれません。日本のどこかのハンバーグ屋には、挽き肉の代わりにラーメンの麺をこねたハンバーグがあるんだろう、とは誰も思いませんよね。
そう、カレーでは成立するはずのものが、ラーメンでは成立しないんです。
なぜなのか。ひと言でいえば、「カレーは味のするものではなく、香りのするものだから」です。この点は次回くわしく。
いずれにしても、カレーがラーメンに勝ったような気がして、なんだか気分がいいですね。
「でもさ、カレーラーメンというラーメンは成立するが、ラーメンカレーというカレーは成立しないじゃないか! どうだ、まいったか!」と異議を唱える人が出てくるかもしれません。そんな意地悪言わないでくださいね。ちょっとそれには反論ができません。 
“カレー味”という勘違い
カレーはあらゆる食べ物と仲良く寄り添える不思議な食べ物です。
カレーハンバーグ、ハンバーグカレー、カレーたこ焼き、たこ焼きカレーなどの話はしました。
カレーラーメンの話もでました。ほかにもいくらでもあります。カレースパゲティ、カレーパン、カレーせんべい。
カレーならなんでもいけます。
ほかの料理どうしではちょっと考えにくい組合せと言うのが出てくるんですよね。
たとえば、ハンバーグたこ焼き、ラーメンスパゲティ、せんべいパン。意味が分からない。
いったい何が違うというんでしょうか?
カレーという料理は、主役にも脇役にもなれる。だからいろんな料理と融合できる。
その他の料理は、主役にはなれるが脇役にはなりにくい。だからいろんな料理と融合しにくい。
なぜなら、カレーは味がするものではなく、香りがするものだからなんです。
味がハッキリする料理は主役は演じられるけれど、他の味がする料理とは一緒になりにくい。舞台に二人の主役は要らないですよね。味と味がぶつかりあってしまったら料理として成立しないんです。
でもカレーは味ではなく香りです。香りはどんな味のものとも一緒になれる。だから舞台にいても邪魔にならないんです。
たとえば、ラーメンを主役、カレーを脇役とした配役を考えてみてください。 
カレーラーメンの不思議
カレーラーメンというものを食べたことありますか?
香りはカレーで、味がラーメン。普通においしくいただける料理です。
味はラーメン、と言いましたが、ラーメンにはいろんな味がありますよね。
醤油ラーメン、みそラーメン、塩ラーメン。これらすべてにカレーをつけてみてください。
醤油カレーラーメン、みそカレーラーメン、塩カレーラーメン。どれもイメージがつくと思います。カレーは香りをつけるものだから、どんな味のものともバッティングしない。
ところが、味どうしを掛け合わせたら、おかしなことになりますよ。
醤油みそラーメン、みそ塩ラーメン、塩醤油ラーメン。どれも食べたくないですよね。味のイメージもわきにくい。しょっぱそう。
カレーが様々な味の料理と相性がいい理由がなんとなくイメージがついたのではないでしょうか。
ちなみにとんこつラーメンとか、魚介だしラーメンとかいったものもありますね。あれは、味は味でも出汁の味で表現しているものです。だから、“とんこつ醤油ラーメン”は、成立します。「出汁」×「味」ですから。
“とんこつ醤油カレーラーメン”も大丈夫。「出汁」×「味」×「香り」だからです。
味を邪魔しない、というのはすごいことですね。世界中の料理をカレー風味に変えてしまいかねない。カレーの香りって、すごい力を持ってるんです。 
カレーをカレーにしているもの
カレーは味ではなく、香りである。
ということはお話ししました。でも、そもそもその点について、「なぜ?」と思う人もいるかもしれません。
何かしらの料理を食べたときに、それをカレーだと思うか、カレーじゃないと思うかの線引きには個人差があります。
たとえば、ビーフシチューとビーフカレーがあったとします。これはおそらくほとんどの人が、片方はシチューで、片方はカレーだと言うでしょう。
ところが、ビーフシチューに少量のカレー粉を混ぜ合わせて食べたらどうでしょう。
「ビーフカレーになった!」と思う人、「このビーフシチュー、ちょっとカレーの香りがするな」と混乱する人、「いやいや、ビーフシチューのままだ」と思う人。意見が分かれると思います。
どれが正解は問題ではありません。この場合、着目したいのは、カレーをカレーにしているアイテムはカレー粉である、ということです。
では、カレー粉とはなんなのか。カレー粉は、複数種のスパイスの集合体です。商品によって十数種のものもあれば、三十種以上が混合したものもありますが、いずれにしても原材料は、スパイス(もしくは香辛料)のみです。
スパイスには、3つの作用(役割)があると言われています。
香りづけ、辛味づけ、色づけ、です。
お気づきですか? スパイスには、味つけという作用がないんです。無味だということではありません。いくつかのスパイスをかじってみたことはありますが、味はします。ほとんどは苦味ですが……。ともかく科学的に裏付けられている作用として、味つけの作用はないのです。
すなわち、僕たちが何かを食べてカレーだと思うときには、そこにカレーの味があるのではなく、カレーの香りがあるというわけなんです。 
 

 

カレー粉とカレールウはどこが違う?
カレーの香りがすることを一般的には「カレー味の……」と表現します。
本当はカレーの味がしているわけではないから、「カレー風味の……」くらいの表現の方が言葉としては正しいのかもしれません。
ビーフシチューにカレー粉をどっさり入れたらビーフカレーになる。
この場合、「味=シチュー」、「香り=カレー」のはずですが、混ざり合って完成した料理を食べて僕たちはカレーの味がする、と感じる(もしくは表現する)わけです。
味のつかないカレー粉を加えただけで、その料理がカレーの味になると錯覚する。不思議なことですよね。これもカレーの面白い点です。
よく、「カレー粉でカレーを作ると味気ない仕上がりになってしまう」と相談を受けることがあります。これはカレー粉が悪いわけではありません。カレー粉を使う以外のプロセスで、味を十分につけていないことに問題があるんです。
もし、全く同じ材料を使ったカレーで、カレー粉のかわりにカレールウを使ったら、きっと「味気ない」なんて表現は出てこないでしょう。なぜでしょうか。
カレールウには、「味つけ」の作用があるからです。
カレールウのパッケージの裏側に書かれた原材料表記を見てみてください。カレー粉(もしくは香辛料)のほかに、旨みを生むためのありとあらゆる材料がずらりと顔を揃えています。カレー粉を使ってカレールウで作ったのと同じような味わいを作ろうとしたら、それだけの原材料に相当するものを何かしらのタイミングでプロセスに加えていかなければならないんですね。
カレー粉とカレールウは、似ているようで全く性格の異なるアイテムなんです。 
カレー粉を使ってカレーを作る
カレールウを使ってカレーを作るときのオーソドックスな作り方は、おおざっぱにはこんな感じです。
1. 鍋に油を熱し、玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、肉をさっと炒める。
2. 水を加えて煮立て、具がやわらかくなるまで煮込む。
3. カレールウを溶かし混ぜる。
この最後の部分をカレー粉に変えたとしましょう。料理に慣れている人であれば、味の想像がつくんじゃないかと思います。しゃばしゃばで粉っぽく、味気ない仕上がりになりそう。
塩も入ってませんから、ちょっと食べられる代物じゃないかもしれません。じゃあ、どう改良すればいいのでしょう? たとえば、こんな感じかな。
1. 鍋に油を熱し、玉ねぎをきつね色になるまで炒める。
2. にんにく、しょうがのペーストを加えて炒める。
3. カレー粉と小麦粉、バター、塩を加えて粉っぽさがなくなるまでよく炒める。
4. チキンブイヨンを加えて煮立て、にんじん、じゃがいも、肉を加えて煮立てる。
5. はちみつを加えて具がやわらかくなるまで煮込む。
ちょっと手間がかかるレシピになってしまいました。
でも、カレー粉はカレールウと違って味がつかないアイテムですから、最低限、このくらいのことはしないとおいしいカレーにはならないと思います。
カレールウがなかった時代、全国の各家庭でこれだけの手間をカレーにかけていたとは思えません。出来上がったカレーに醤油やソースをドボドボかけて食べていたという話をよく聞くのは、頷ける話だなと思います。 
カレーを作ろうと思ったら
カレーを作ろうと思った時に、私たちは作りたいカレーによって、いくつかのアイテムを選択することができます。
欧風カレーを作るなら、カレールウが一番簡単です。
もう少し本格的な欧風カレーにしたければ、カレー粉を使うのもありです。
その場合は、ブイヨンを別鍋で取ったり、小麦粉のとろみを加えたり、といった手間をかけなければなりませんが。
タイカレーを作るなら、タイカレーペースト。
インドカレーを作るなら、インドカレーペースト。
いずれも具と水分と一緒に加えて煮込めばそれらしい味ができる便利なアイテムです。
ただ、本当にそのカレーの仕上がりを完全に自分の思い通りにコントロールしたいと思えば、どのカレーを作るにしてもスパイスから作るのがいい。腕に自信のある人なら、それが一番おいしく作れることも分かっているでしょう。
カレー粉もカレーペーストもカレールウも、すべて調理プロセスを簡略化するために存在するアイテムなわけですから。
すなわち、各アイテムがどのように作られ、どのような構成要素になっているかを把握すれば、それらに頼らなくてもスパイスからあらゆるカレーが作れるようになるというわけです。 
すべての根底にはスパイスがある
カレー粉が複数のスパイスの集合体だという話はしました。
主に乾燥させたスパイスを焙煎して粉砕し、ブレンドして熟成させる。それぞれのスパイスの個性は適度に互いに打ち消しあって、全体としてはカレー粉という誰もが親しみやすい香りが生まれるんです。
大量生産されるカレー粉づくりというのは、最大公約数を探す作業なのかもしれません。
タイカレーペーストはどうでしょう。
唐辛子をはじめとする生のスパイス(ハーブとも言います)や乾燥スパイスのほかに、玉ねぎ、にんにく、しょうがなどの野菜やカピと言われる海老の発酵調味料をミキサーでペーストにし、油で炒めたもの。
そこまでのプロセスが終わっているものだから、あとは具とココナッツミルクを加え、ナムプラーで味を調えればあっという間にタイカレーが出来上がる。
インドカレーペーストはどうでしょう。
玉ねぎ、にんにく、しょうがを炒めたところにパウダースパイスを混ぜ合わせ、塩で調味したものが瓶詰めされて売られています。
こちらもさまざまな手間を省けるよう、料理を途中まで進めてくれている商品なんですね。
どのアイテムもすべてはスパイスがなければ始まりません。スパイスがカレーのすべてを握っているわけです。スパイスってすごいなぁ……、と思いませんか? 
ガラムマサラ+塩=カツオのふりかけ!?
スパイスにはスパイスの味はしない。
カレー粉にはカレー粉の味はしない。
するのは、味ではなく香りです。
では、最も手早くスパイスの味、カレーの味を味わうためにはどうしたらいいか。それは、塩を混ぜることです。実際にカレー粉に塩を混ぜ合わせてみてください。少々粉っぽさが残りましますが、そのままご飯にかければカレーふりかけのできあがり。
最もシンプルな味ですが、塩味が入ることによって、カレー粉の香りが引き立つんです。これによって多くの人がカレー粉の香りを楽しめるようになると言ってもいいかもしれません。
僕は実際、ガラムマサラに塩を混ぜてご飯にかけて食べたことがあります。MDHというインドのメーカーがオリジナルに調合して日本に卸しているガラムマサラが好きなのですが、そのガラムマサラはなぜか、かつおぶしの香りがするんです。もちろん原材料にカツオは入ってません。なぜなのか、いまだに理由はわかりません。
そのまま食べてみました。もちろん、カツオの味はしません。スパイスには味がないのだから。ところが、塩を混ぜてご飯にかけてみたら、不思議なことにカツオのふりかけを食べてるような錯覚を感じたんです。味が入ると香りが引き立つ。味と香りの関係は非常に密接でありながら、どことなく謎めいてもいます。 
食べるラー油は、なぜ流行ったのか?
カレー粉に塩をまぜるとカレーの味がする。
ガラムマサラに塩を混ぜるとカツオのふりかけの味がした。
塩味が入った途端になかったはずの味が顔を覗かせる。これは不思議な現象です。
この現象の持つパワーを強く感じたのは、何年か前に“食べるラー油”が流行ったときのことです。
私は昔から四川料理が好きで、気に入っている四川料理店のシェフにラー油の作り方を取材したこともあります。ところが、流行りの“食べるラー油”をいくつか食べてみたときに、ある違和感があったのです。それは、“味がする”ことでした。原材料を見ると、なんと塩が入っている!
本来、四川料理のラー油は香りと辛味を持った油です。味はしないものなんです。ところが、“食べるラー油”には塩味がする。だから、「ご飯にかけても冷奴にかけてもおいしい」なんて不思議な意見が飛び交うことになるんですね。
味がしなかったラー油に味がするわけですから、日本全国を席巻する人気商品に成長するのも納得がいきます。一方で「あんなものはラー油と言わない!」と最後まで納得しなかった中国料理ファンも多かったはずですが……。 
スパイス油、カレー油の可能性
カレー粉に塩を混ぜるという手法から、もうひと段階先に進んでみましょう。
スパイスが持つ揮発性のエッセンシャルオイルは、温かい油と合わせることで抽出されるケースが多いと言われています。そこで、フライパンで油を弱火で温めて、カレー粉を加えて炒め合わせる。焦がさないよう早めに火を止めれば、このひと手間でカレーの香りは予想以上に引き立つはずです。これをカレー油とでも呼びましょうか。
ラー油の作り方もこれの発展系です。ラー油の場合、にんにく、しょうが、ねぎなどなどのスパイスを油で十分に熱し、熱々になって香りが立ち上ったところで、唐辛子の粉にドバっと混ぜ合わせる。
バチバチバチッ! とものすごい音がした後、目の前にラー油が現れます。熱した油でスパイスの香りが立つ顕著な例です
中国料理には、ラー油以外にも、ネギ油、山椒油など、さまざまな香り油が存在します。料理を簡便にする以外に、加えたい香りを効率よく手際よく料理に加えることができます。ところが、インド料理には、スパイス油やカレー油というものは存在しません。もちろん、日本のカレーの世界でもカレー油を調理に使うという例はほとんど見たことがありません。
カレー油が普及すれば、ぽとりと数滴たらすだけで料理にあっという間にカレーの香りをつけることができるわけですから、強烈なアイテムであることは間違いないのですが……。 
豆板醤はあるのにカレー醤はない
中国料理の話が出たついでに、“ジャン”の話をしたいと思います。
唐辛子を使った香り油がラー油であることは話しました。
同じく唐辛子を使ったジャンは何かおわかりですよね? 豆板醤です。
では、ラー油と豆板醤は何が違うのかも、もうおわかりですよね? ラー油は香り、豆板醤は味。
単純に行ってしまえば、豆板醤には、ラー油にはない何種類かの“味”が原材料として加わっているのです。
ならば、カレーの世界にも“カレー油”があって“カレー醤”があってもいいんじゃないかと思っています。さまざまな料理にカレーの香りを加えるカレー油、さまざまな料理をカレー味に変えてしまうカレー醤。
何年か前から私は自著や雑誌などで何度かカレー醤のレシピを公開したことがあります。
たとえば、ざっとこんな感じです。
1.油を熱し、にんにく、しょうが、玉ねぎを加えて炒める。
2.カレー粉を加えて炒める。
3.塩や味噌、醤油などをお好みで加えて混ぜ合わせる。
できあがったカレー醤をたとえば、スプーン一杯、寄せ鍋に加えたら、寄せ鍋はあっという間にカレー鍋に変身するんです。ラーメンに加えればカレーラーメンです。 
インドには、カレー醤があった!
カレー醤のレシピで行われていることを整理すると、こうなります。
1.油を熱し、にんにく、しょうが、玉ねぎを加えて炒める。【ベースの風味を作る】
2.カレー粉を加えて炒める。【香りを加える】
3.塩や味噌、醤油などをお好みで加えて混ぜ合わせる。【味をつける】
【ベースの風味を作る】→【香りを加える】→【味をつける】
要するに、油を使ってさまざまな味と香りを重ねていくんですね。
実は、インド料理の世界には、カレー醤のようなものがあります。
そういう名前の商品があるわけではありません。
インド料理を作るプロセスで、カレー醤のようなものを作るんです。そして、そこまで作った段階のことをインドでは“マサラ”と呼んだりします。
オーソドックスなインド料理を作るときのマサラのレシピは、たとえばこんな感じです。
1.油を熱し、クミンシードを炒める。
2.にんにく、しょうが、玉ねぎを加えて炒める。
3.トマトを加えて炒める。
4.パウダースパイスと塩を加えて炒める。
カレー醤と同様、インドのマサラは油をベースに味と香りを重ねていっているのがわかると思います。 
インド料理のマサラは万能の調味料
インド料理というのは、不思議な食べ物です。
酒もだしも発酵調味料も使わない。油とスパイスと素材だけで味を作っていくんですから。これは、日本酒もみりんもかつおだしも醤油も使わずに和食を作るようなもので、そう考えると至難の業だと思いませんか?
じゃ、インド料理はどうやっておいしい味を作り出しているのか。そこで活躍するのが、マサラなんです。油をベースに色んな味と香りを重ねていった、いわゆる“インド料理の素”、もしくは、“カレーの素”とでも言えるものです。
このマサラがあれば、たとえば水を加えて煮立て、鶏肉を加えて煮ればチキンカレーになる。野菜を加えれば野菜カレー、魚を加えればフィッシュカレーができあがる。
インド料理における“マサラ”は万能の調味料なんです。
中国料理における“ジャン”のようなものですね。
インド料理の世界では驚くほどオーソドックスな手法でカレーが作られています。すなわち、マサラを炒めて作って、具と水を加えて煮る。ということは、スパイスを使って作るカレーには、黄金律とも呼ぶべきルールがあるはずなんです。 
ゴールデンルールの発見
スパイスで作るカレーに黄金律とも呼ぶべきルールがあることを発見したのは、インド料理を分析したことがキッカケでした。
これを僕は、ゴールデンルールと呼ぶことにしました。黄金律だから、ゴールデンルール。略して、GR。そのまんまですね。正確な英語ではないような気がしますが……。
たとえばこんな感じ。
   GR@ 油を熱し、ホールスパイスを炒める
   GRA 玉ねぎ、にんにく、しょうがを炒める
   GRB トマトを炒める
   GRC パウダースパイスと塩を炒める
   GRD 水を加えて煮立てる
   GRE 具を加えて煮込む
   GRF フレッシュスパイスを混ぜ合わせる
これを目的別に整理するとこうなります。
   GR@ はじめの香り
   GRA ベースの風味
   GRB うま味
   GRC 中心の香り
   GRD 水分
   GRE 具・隠し味
   GRF 仕上げの香り
さて、この先は、GRの各プロセスに沿って、あれこれと書き連ねていきたいと思います。 
 

 

なにはともあれ、クミンシード
カレーをスパイスから本格的に作ろうと思った時に、ほとんどの人が初めて手にするホールスパイスは、おそらくクミンシードでしょう。
ホールスパイスというのは、丸のままのスパイス。すなわち、粉状に挽いていない、スパイス本来の形を残した状態のスパイスのことを言います。ホールスパイスがはじめの香りによく使われる理由は簡単です。粉状のスパイスよりも火が通りにくいから。
クミンシードは、一説には「単体でカレーに一番近い香りを作ることのできるスパイス」と言われていますが、確かに私もその意見には賛成です。
加熱した油にクミンシードを加えるとシュワシュワと泡立ちながら、油の中を泳ぎ始めます。くすんだ明るめの茶色だったクミンシードは次第に濃い茶色から焦げ茶色へと色を変えながら、力強い香りを放ち始めます。
このプロセスに関してよく質問を受けるのが、「どこまで炒めたらいいんですか?」というものです。僕がいつも回答する最適な炒め具合は、「焦げる直前まで」。インド人シェフによってはまっ黒くなるまで火を入れる人もいますから、大船に乗ったつもりで炒めてOK。
いずれにしても、クミンシードを炒めることは、油に香りを移すことの効果を存分に実感できる行為になると思います。 
ホールガラムと呼ばれるスパイス
誰にでも通用する言葉ではありませんが、ホールガラムという言葉があります。僕の経験上、インド人シェフであれば、たいていはなんのことを指している言葉なのかは想像できると思います。
ホールは、ホールスパイスのホール。ガラムはガラムマサラのガラムです。ということは、ガラムマサラというミックススパイスを作るための原料となるホールスパイス群のことを指すのだと予測がつくでしょう。
インドの市場に行くとスパイス屋さんが軒を連ねていて、中にはその場でガラムマサラを調合し、機械で挽いている店もあります。5種類から7〜8種類程度のホールスパイスを大量にブレンドし、業務用のブレンダーでガリガリと挽いていく。この挽く前の状態がホールガラムです。
はじめのスパイスで油を炒めるとき、特に肉料理などの場合は、このホールガラムを先に炒める手法がよく用いられます。最低限のラインナップなら、カルダモン、シナモン、クローブの3つ。さらにアイテムを増やすならベイリーフ、ブラックペッパーといったところでしょうか。これらは肉料理と非常に相性がいい。
経験上、カルダモン、クローブ、シナモンは、煮込むとじわじわ香りが出ていきますので、控えめの量を使った方がいい。ブラックペッパーは多めに使っても味が壊れる心配は少ない。そして、困ってしまうのが、ベイリーフ。ベイリーフはほかのスパイスに比べて香りの効果がわかりにくいんです(ここでいうベイリーフは、ブイヨンなどの煮込みに使われるローリエとは違い、インド料理でよく使われるベイリーフのこと)。
私自身、よく使うスパイスではありますが、いまひとつ腑に落ちてません。どなたか教えてください。 
食べるスパイス、食べないスパイス
ホールスパイスは、油に香りを移し、その後煮込みも含めてじわじわとカレー全体に香りを行き届かせていくのが一般的な利用方法です。そのため、料理の最後まで鍋の中にいてもらわないと困る。ところが、食べる段階になって、予期せぬ問題が顔をのぞかせます。
カレーの中に残っているホールスパイスは食べていいのか? 食べない方がいいのか?
これはよく聞かれる質問でもあります。答えは、「食べるスパイスと食べないスパイスがある」です。さらに「食べるか食べないかはその人次第」とも付け加えたくなります。無責任な発言のようでもありますが。
私の場合、食べるホールスパイスは、クミンシード、マスタードシード、フェンネルシードなどのシード(種)類。このほか、ブラックペッパーも食べます。煮込まれて柔らかくなったブラックペッパーは噛むと優しい辛味や香りを感じられていいものです。同じく赤唐辛子も食べてしまいます。中にはギッシリと詰まっている種がまだ強烈に辛味を持っている場合もありますが、ご愛嬌。クローブも食べます。
食べないスパイスは、カルダモン、シナモン、ベイリーフあたりでしょうか。単純に食べにくいということもありますし、特にカルダモンは殻の中に残っている種に強烈な香りがしますから、ガリッと噛んでしまった瞬間に、「あああ〜〜〜」と後悔してしまう。「あるある!」と思う人も多いんじゃないでしょうか。
食べないスパイスを調理過程のどこかで取り除くのは至難の業ですし、最後まで鍋中にいてもらうことを前提に料理をしますから、やはり食べる段階で除くほかありません。
ちょっと難しい話になるので割愛しますが、カレーを作るときにホールスパイスを使う場合は、それが食べるスパイスか食べないスパイスかも計算に入れた上で使用種類や量を考慮してレシピ設計するのが理想だと私は考えています。 
ホールスパイスの順序の謎
複数のホールスパイスを油で炒める場合、どのスパイスをどの順序で加熱していけばいいのですか?
この質問は、実際に聞かれたことはほとんどありませんが、昔から私自身の中で大きな悩みの種となっています。
一般的に最も早い段階で投入するホールスパイスは、マスタードシードです。理由は単純。他のスパイスに比べて火が通りにくいから。スパイスでも素材でも火が通りにくいものから火の通りやすいものへと鍋に加えていくのが、カレー作りの鉄則です。
マスタードシードはたいてい、最も早く油に加えてパチパチパチとはじける音がおさまるまで加熱し、それからほかのホールスパイスを加えていきます。他のスパイスを加える段階では油はかなりの高温になってますから、加えた直後にすべてのホールスパイスに火が入り、次の段階へ進むことになります。
では、次に加えるホールスパイスは何か。作るカレーの種類にもよりますが、私がよくやるのは、赤唐辛子を早い段階で加える手法です。場合によっては、マスタードシードと同じタイミングで加えることもあります。鮮やかな赤色をしていた唐辛子がまっ黒くなるまで加熱する。そうすると、唐辛子の独特の香りが立ち上るのです。表面は完全に焦げてますが、唐辛子に関しては真っ黒くしても焦げ臭や焦げ味はカレーに残りません。むしろ香りがよくなる。不思議です。
ちょっとマニアックですが、フェヌグリークシードもほかのスパイスよりも先に加えて焦がす要領で火を入れます。そうすると甘い香りが立ち上る。でも入れすぎると苦くなる。とっても不思議なスパイスです。
さて、残りのスパイスに関しては、たいていの場合、一緒にざらざらと入れてしまいますが、おそらく厳密に言えば、ここにも順序はあるべきだと思います。ただ、この順序については、これまでの経験上、あまり納得のいく答えが見つかっていません。
インド人シェフに聞いても、そもそもそんなに細かいところまで気にしている人がいませんから、質問に答える前に「???」と首を傾げられるのがオチです。
でも私はいつかすべてのホールスパイスに関して、明確な順序をつけたいと思っています。ま、誰も望んでいないことかもしれませんが。 
玉ねぎ投入直前に炒めるスパイス
はじめのスパイスとして、調理の一番最初に鍋に投入するスパイスの話をしてきましたが、これまでホールスパイスしか登場してません。しかも、乾燥したホールスパイスのみ。
本当はほかの形状のスパイスでもはじめのスパイスとして使われるものがあるんです。
たとえば、粉のスパイスでいえば、ヒングと呼ばれるスパイス。木の樹液を乾燥させて粉状にしたもので、異臭とも呼べる強烈な香りがありますが、油で炒めてから素材と一緒に煮こむとなぜかうま味が出る特殊なスパイスです。
フレッシュのスパイスもあります。青唐辛子やカレーリーフなどがそれに当たります。にんにくやしょうがもフレッシュなスパイスだと捉えればこの仲間にはいりますが、ゴールデンルール上は、次のプロセスである“ベースの風味”に入れてますので、ここでは割愛します。
パウダースパイスにしてもフレッシュスパイスにしても共通なのは、ドライのホールスパイスよりも火の通りが早いことです。だから、ドライのホールスパイスよりも先に加えることは滅多にありません。たいていは、はじめのスパイスのプロセスの一番最後。すなわち、ゴールデンルールのステップAで玉ねぎを炒める直前に加えることになります。
これらを使いこなせるようになるとカレーの腕前はグンと上がります。 
油自体にも香りがあった!
そうそう、そういえば……という話です。
ホールスパイスの香りを油に移す話をずっとしてきましたが、そういえば、油自体にも香りがあるんですよね。
カレーに使う油はサラダ油が一般的ですが、ゴマ油やオリーブ油を使えば、スパイスを炒める以前にその油の香りがカレーに影響します。
インドにはご当地油とも呼べるものがあって、その土地の料理に明確な個性を与えています。たとえば、タミル・ナドゥ州ではごま油、ケララ州ではココナッツ油、ウェストベンガル州からバングラデシュにかけてはマスタード油などなど。ピーナッツ油を使う場所もあります。
インド人は香りに対する執着心が尋常じゃないんだなぁ、と感心してしまいます。
いつか、インド料理で使われる油に限らず、世界各国のさまざまな油をかき集めて、油ごとに相性のいいカレーのレシピを開発してみたいなぁと妄想しています。
中国料理で使われる香り油などもかなり興味深いアイテムですね。想像しただけでワクワクしてきます。 
油は加熱しすぎても焦げない?
ときどき欧風カレーのレシピを見ているとバターで細かくみじん切りした玉ねぎを弱火で長時間、丁寧に炒めるようなものを見かけることがあります。玉ねぎ炒めに関するあれこれについては、次回以降に話を持ち越しますが、バターで炒めるという点は素通りできません。
バターは油の中でもかなり焦げやすいタイプのものです。欧風カレーで始めにバターを使う場合があるのは、焦げにくい調理プロセスを採用しているからです。
具体的に言えば、ホールスパイスを使わないレシピが多い。ホールスパイスを使わないということは、火の通りにくいスパイスが登場しないので、油の温度を上げながら加熱する必要がない。
もうひとつは、弱火で長時間玉ねぎを炒めることがよしとされている。これについても次回以降にしますが、火が強くないからやはり焦げる心配が少なくて済むのです。
ただ、このような作り方をする場合でなければ最初の油にバターを使うのは危険です。バターを沸かして精製させ、水分を蒸発させて上澄みを救って作るインドのギーと呼ばれるバターはある程度高温で熱しても焦げることがないため、重宝されます。
要するに油の温度があがりすぎて煙が出始める温度を知っておけば、油を焦がしたり劣化させたりすることなくカレーが作れるからです。
正確な温度については製造状況などによっても細かく違ってくるはずですが、私が好んで利用している紅花油は、かなりスモークポイントの高い油でした。
油はカレーを作る上で魔法のようなアイテムです。香りを引き出したりうま味を作ったり、それ自体がパンチ力のあるおいしさも持っています。おいしいカレーを作るためには油のことをもっともっと勉強しなければ、と思っています。 
玉ねぎ炒めが最も大事!?
カレーを作る人がおそらく最も関心の高い調理プロセスは、玉ねぎ炒めだと思います。スパイスで作る人なら、その次にスパイスの配合とかが来るのかもしれませんね。
私は昔から、疑問に思います。
玉ねぎ炒めって、そんなに大事ですか?
ゴールデンルール上のプロセスでは、GRAの“ベースの風味”を作ると解釈しています。玉ねぎはスパイスでもあり、野菜でもある。生だと香りと辛味が強く、加熱すると香りがやわらいで甘味とコクが増す。不思議なアイテムですね。だから、ベースの風味になるのです。
玉ねぎ炒めに命をかけるような気持ちで挑む人がいますが、そこまで特別扱いしなくても……、と思ってしまいます。ある老舗インド料理店の料理長は、かつて料理教室で「玉ねぎの炒め方で、カレーの味の80%は決まる」とおっしゃってました。そういうカレーもあるとは思います。すべてのカレーがそうではありません。
何人かのインド料理シェフに「玉ねぎ炒めの重要度は何%くらいですか?」と質問したことがあります。回答は、50%〜80%の間という感じでしたが、一人のシェフが、「何%かは判断できないが、他のすべての調理プロセスと同等に大事だ」とおっしゃってました。
僕はこの回答に賛成です。要するに玉ねぎ炒めだけが特別なわけではない、ということです。 
玉ねぎのキツネ色って何色ですか?
玉ねぎを炒める、とレシピに書くときには、どの程度になるまで炒めるのかを書かないと、読む人にとっては目安がわかりにくい。古くから最も頻繁に使われてきた言葉が、キツネ色とアメ色です。
あるとき、私はふと疑問を感じました。
キツネ色って、みんなわかるんだろうか? 
自分のキツネを見た記憶を手繰り寄せてみます。見たことがあるかどうか、定かではありません。もし、見たことがあるとすれば、小学校の頃とかでしょうか。学校の遠足で、もしくは家族と一緒に動物園に行ったときにキツネがいた、かもしれません。
あとは、テレビや図鑑の写真で見たことがあるような、ないような。ともかくキツネに関する記憶があいまいなんです。これは私だけのことではないと思います。
だったら、雑誌でも本でも私がレシピで「キツネ色になるまで玉ねぎを炒める」と書くときには、横にキツネの写真を載せるべきだ! と思ったんです。
今のところ、それが実現していないのが残念ですが。
ともかく、キツネはこの色です。というのを見せてあげたい。
玉ねぎのアメ色って何色ですか?
キツネ色と並んで玉ねぎの炒め具合を示す言葉に「アメ色」があります。
これも実はちょっと疑問です。
アメ色って何色ですか?
この質問をしたときに、すべての人が統一した色味をイメージできるのでしょうか? アメ色のアメとは、言うまでもなく「飴」のことですね。試しにインターネットで「アメ」を画像検索してみました。「飴」の検索でも構いません。時間のある方はしてみてください。
画面に表示されるアメは、目がチカチカするほどカラフルでかわいらしいものばかりです。玉ねぎをどんな風に加熱してもこの色になることはありません。
当然のことですが、玉ねぎ炒めのアメ色とは、濃いこげ茶色のことです。なんと表現すればいいのでしょう。たとえば、ビール瓶の底のあたりの濃い色、という感じ。昔のアメはそんな色をしているのが一般的だったのでしょうが、今のアメはカラフルなんですよね。
だから、料理教室で「玉ねぎをアメ色になるまで炒めましょう」と言っても、「先生、それってどんな色ですか?」なんて質問される日はそう遠くないと思ってます。
だから、アメ色は別の言い方にした方がいい。そう思って僕は新しい表現を考えました。
ヒグマ色です。なぜ、ヒグマなのか。それは、その手前の色がキツネ色だからです。動物で括った方がわかりやすい。そう思いませんか? 
玉ねぎのタヌキ色はイメージ沸きます
玉ねぎの炒め色についての話が続いたので、そのついでに全部話してしまいます。キツネ色まで炒めた玉ねぎをもっともっと炒めればヒグマ色になる。ここまではお話しました。
さて、どうせ動物しばりで表現をするのなら、玉ねぎが加熱されて色の変わっていく様を段階を踏んで色んな動物でたとえられないだろうか、と考えたんです。
生の玉ねぎは、白いです。だったら「ウサギ色」がいい。炒めていくとほんのり色づいてきます。キツネ色の手前の色。これは「イタチ色」としましょう。キツネ色よりは色が薄い感じが想像できると思います。
では、キツネ色からヒグマ色に行くまでの間はどうしましょう? これを私は、タヌキ色と呼ぶことにしました。キツネよりは色が濃い。ヒグマほど濃くはない。ちょうどいい! と思ったんです。
この話を大阪でトークショーをしたときに話したことがあります。イベント終了後にある女性が近づいてきてこう話してくれました。「玉ねぎの色、すごくわかりやすかったです! 特に私たち関西人はたぬきそばをよく食べるので、タヌキ色はイメージ沸きます」。嬉しかったです。
そうか、たしかに蕎麦の世界もキツネとタヌキですね。 
 

 

玉ねぎがゴリラ色になったら失敗
さて、前回の記事で玉ねぎ炒めの色が出そろいました。時間経過とともにこうです。
「ウサギ色」→「イタチ色」→「キツネ色」→「タヌキ色」→「ヒグマ色」。
素晴らしい! と自画自賛。
玉ねぎ炒めに関していただく質問のなかに意外と多いのが、「どうしても炒めている途中で焦がしてしまいます。いい方法はありませんか?」というものです。
お、確かにそういうケースがあったな。私が思ったのは、色のことです。ヒグマ色をもっと炒めたら、さらに濃くなって、しまいには焦げてしまう。真黒く焦げてしまった状態は、「ゴリラ色」と表現するのがいい。そうしよう。
ゴリラ色になってしまったら、それはさすがに失敗です。想像するに最大の原因は、鍋の厚さじゃないかと思います。よくレシピでは「厚手の鍋に……」などと表記があるのですが、あれはすごく大事なことなんです。
鍋やフライパンが薄いとどうしても玉ねぎは焦げやすくなってしまう。あとは、火力の問題もありますね。ただ、僕はいつも「玉ねぎは「焦げてもいい」くらいの気持ちで強めの火加減で炒めてください」と言っているので、弱火で長時間炒めるという手法はあまり薦めてません。
強火で炒め始めて徐々に火を弱めていくのが最もオーソドックスな炒め方。このやり方だと甘味やコクだけでなく、香ばしさも生まれるから弱火でじっくりよりも私は好きなんです。 
その玉ねぎは、焦げているのかいないのか。
玉ねぎ炒めをしていてゴリラ色になってしまったら失敗だ、と前回お話ししました。ただ、ゴリラ色にも2種類ある、ということを書いておきたいと思います。ただ、これはちょっとレベルの高いお話です。
玉ねぎを炒めたときに焦げてしまった。そんな経験のある人は多いと思います。でもそのときにこう考えた人はほとんどいないと思います。
この玉ねぎ、本当に焦げてるんだろうか……?
焦げてしまったという判断は、何を元にしてますか? ゴリラ色だけですか? だとしたらその玉ねぎは焦げてはいないかもしれません。鍋の中を全体的に焦げ臭さが支配してたら、さすがにそれは失敗です。味見をしてみたら確実に苦かった。これも失敗でしょう。
でも色が黒っぽいだけで焦げているという判断は早とちりかもしれません。
このときに私がオススメしたいのは、少量の水を加えてみることです。鍋を回して全体に水を行き届かせた瞬間、ジュワッと音がした直後に蒸気が立ち上り、まもなく鍋中の水分は飛びます。
残った玉ねぎを確認してください。ゴリラ色だと思った玉ねぎは、ヒグマ色に戻っている場合がある。マジックではありません。加えた水が鍋中の温度を下げ、焦げが進行している部分の色素を溶かして全体に回し、玉ねぎが一瞬水分を含んでしんなりするからその後に加熱が進む。
結果、苦みもなく焦げ臭もなかったらこれはリカバーできたという合図なんです。
要するに玉ねぎ炒めには失敗のゴリラと失敗でないゴリラがある。この見極めにはある程度の訓練が必要ですが、腕のいいインド人シェフの中にはわざと焦がして水を加えて過熱を促進させ、時間短縮で玉ねぎを炒める人もいるほどです。私もこの手はよく使っています。 
合言葉は、G&G。
玉ねぎのことばかり話してしまいました。
ゴールデンルールのAベースの風味で欠かせないのは、玉ねぎの次に、にんにくとしょうがです。これらもスパイスといえばスパイス、野菜といえば野菜。加熱したときに生まれる風味はカレーを本当においしくしてくれます。
オーソドックスな手法としては、玉ねぎを炒めた後にすりおろしたにんにくとしょうがを加えて炒めるのですが、私は適量の水であらかじめ溶いておくのをオススメしてます。その方がにんにくとしょうがが全体にまんべんなく行きわたるし、炒めるうえでも焦げの進行を防止できるからむらが出にくい。
インド料理店の調理場では、しばしばこの水で溶いたにんにく、しょうがが「G&G」と呼ばれています。ジンジャー(Ginger)&ガーリック(Garlic)だから、「G&G」。これをあらかじめ大量に準備しておいて使うのです。
合言葉は、「G&G」。キツネ色やタヌキ色はインド人には通じませんが、G&Gはインド人シェフには通じます。ちょっとこの言葉、使ってみたくなりませんか? 
トマトのうま味はカレーの強力な武器
鍋に油を熱し、ホールスパイスを炒めると香りが立ってきます。そこで、玉ねぎ、にんにく、しょうがを炒めました。キツネ色なのかタヌキ色なのか、はたまたヒグマ色になるまで炒めるのか、それは作りたいカレーによって変わります。
さて、そこで、ゴールデンルール3番目のプロセス。風味のベースにうま味を加えていきます。ここで最もオーソドックスな手法はトマトを加えて炒めることです。
カレールウで作る日本のカレーに慣れている方にとっては、カレーを作るのにトマトを使うということ自体がちょっと違和感があるのかもしれません。ただ、スパイスでシンプルなカレーを作ろうと思ったときにトマトのうま味はとっても大事なのです。トマトは脱水しながら加熱を続け、ねっとりするまで炒めると酸味が和らいでうま味が強まります。表面にうっすらと油が浮いてきたとき、ゴールデンルールの4番、パウダースパイスを加える準備が整った合図です。
このトマトに関しては、私はこれまで長いこといくつかの疑問を抱えてきました。それらについて次回からお話ししていきたいと思います。
トマトにもいろいろある
トマトに関する悩み、の前にトマトについてのお話。トマトにはいろいろな種類があります。
産地や品種、ブランドの違いなどで分類すると数えきれないくらいの種類がありますが、それについてはここでは割愛するとして、「いろいろな種類」というのは、トマト加工品についてです。
トマトを使って作られた加工品には、以下のようなものがあります。
A.ホールトマト
B.カットトマト
C.トマトジュース
D.トマトピューレ
E.トマトペースト
F.トマトケチャップ
生のトマト以外にもあれこれとありますね。これら、すべてカレーを作るのに有効です。使うにはそれぞれがどんなものなのかを知る必要がある。
ホールトマトはおわかりですね。カットトマトはホールトマトよりも小さくカットされているもの。トマトジュースはジュース状ですから、トマトの形が残っていません。それを濃縮させているのがトマトピューレさらに濃縮させるとトマトペーストになります。
これらはたいていの場合、原材料はトマト100%(場合によっては塩など)。ちょっとだけ毛色が違いますが、様々なものが入って調理&調味されたものがトマトケチャップです。
これらの加工品の形状がカレーを作るときには非常に大事になってくるんですね。そして、同時にいくつかの悩みを生み出したり解決したりしてくれるんです。 
生のトマトを炒めるのが本当においしい?
トマトにはいろいろあるとは言うものの、やっぱり生のトマトのおいしさには勝てません。
と、思いますよね? 僕はそう思います。そして、カレーの世界でも一般的にはそう言われています。
ところが、ここでひとつめの悩みが出てきます。
私のこれまでの経験上、生のトマトを炒めるよりもホールトマトを炒めたほうがおいしくなることが多かったんです。なぜだろう。
理由はいくつか考えられます。
○旬のトマトでなければ味もイマイチ
確かにそれはあります。ハウス栽培があるので一概には言えませんが、トマトの旬は主に夏ですから、夏場はいいかもしれない。ただ、とある農家さんに取材をしたときに、「よくトマトは夏がうまいと言われているけれど、旬は夏だけれど、収穫して熟成させて秋に出回るトマトが本当は一番おいしいんだ」と聞いたことがあります。品種や栽培方法にもよるのでしょう。
○ホールトマトは品種が違う
一般的に私たちがスーパーで買うトマトは国産のラウンド型のトマト。ホールトマトに使われているのは、イタリア産のトマト。だから、味わいが違います。でも、イタリアントマトを生で買って調理したことがありますが、それでもホールトマトの方がおいしくできるときもある。謎です。
さて、困りました。この悩みを抱えて長い間、調理をし続けてきましたが、あるとき、とってもシンプルなことが原因だと気が付いたんです。 
トマトの加熱に必要な熱量と時間
生のトマトを炒めるよりもホールトマトを炒めたときのほうが、仕上がりのカレーがおいしくなるのはなぜか?
この悩みを抱えながら何度も調理場でカレーを作っていました。トマトを投入してからの鍋中の変化を見つめながら考える。
生のトマトを加えたときは、ざく切りにしてもみじん切りにしてもトマト自体がそこそこ硬さがありますから、木べらで崩しながら水分を出してそれを飛ばすように炒めていきます。ところが、トマトの炒め具合にムラが出てしまう。
ホールトマトを加えたときは、ジュース分が多く、トマト自体がジュクジュクとしてやわらかいですから鍋中全体にまんべんなく行きわたり、玉ねぎと相まってバランスよく水分が飛んでいきます。炒め終わりの状態は、いい感じのペースト状です。
これを繰り返していて、はたと気づきました。
そうか! そういえば、ホールトマトは加熱済みの加工品だったんだ! と。要するに生のトマトがつぶれて脱水されるまでにかかる熱量や時間を考えると、その手前で炒めた玉ねぎなどが焦げそうになってしまったりするんです。だから、あとで加えるトマトは加熱調理済みのもののほうがバランスよく炒めることができるんです。
これは盲点でした。ただ、このお話、うまく伝わっているかどうか不安です。図解して説明したいくらい。ともかく、玉ねぎ、にんにく、しょうが、トマトを加熱するのにそれぞれ最適な時間や熱量がある。それらがすべて足並みをそろえてゴールできることを計算して炒める必要があるのです。そのためには生のトマトを使うよりもホールトマトなどを使った方が調理しやすいということです。
やっぱり複雑でわかりにくいですね……。 
カットトマトに関する大きな誤解
カレーにおけるホールトマトの魅力は、加熱済みの加工品であることでした。
だからもし、トマトのうま味に最大限にこだわるのであれば、おいしい生のトマトを別鍋でボイルして柔らかくしたり煮詰めたりして、それを加えて炒めるのが一番いい方法だということになります。
それはさておき、私がホールトマトびいきになったことは言うまでもありません。一年通して全国一律どこで買っても味のぶれがないのも魅力。レシピ本には、「ホールトマト」と表記すれば全国の読者の再現性も高まるのです。
そして、さらに目を付けたのは、カットトマト。カットトマトはホールトマトよりもトマトが細かくカットされているから、さらに火が通りやすい。おのずとカットトマトを使ってカレーを作る機会が増えてきました。
さて、ここでふたつめの悩みが生まれます。カットトマトで作ると、ホールトマトで作ったときほどおいしくならないんです。なぜだろう?
ここにも簡単な落とし穴がありました。実は、ホールトマトとカットトマトでは、原料となっているトマトの品種が違うんです。簡単に言えば、ホールトマトの原料はペア型のうま味が強いもの。カットトマトの原料はラウンド型で酸味が強いもの。イタリア料理の世界では常識中の常識ですが、カレーをつくるときにそこまで意識していないのが誤算でした。
インドの調理場で見たトマト煮の記憶
カレーを作る上で材料をよく知るということはとっても大事なんですね。
私がトマトを炒めるときに最も好んで使っているのは、トマトピューレです。たとえばカゴメのトマトピューレなら3倍濃縮で原材料はトマト100%。塩もその他の物も使ってません。
濃縮されてる分だけ味が濃く、簡単に水分が飛ぶので調理も手軽です。
もっと味を濃くしたかったらトマトピューレの量を増やすのもいいし、トマトペーストを使うのもいい。前出のカゴメのトマトペーストなら6倍濃縮ですから単純計算でトマトピューレの半分の量で同じ味が生まれることになります。
トマトについて思いを巡らせていて、ふと思い出したことがあります。インド・オールドデリーにある「モティマハール」というレストランを取材したことがあります。タンドーリチキン発祥の店として知られています。この調理場では、大きな寸胴鍋に大量のトマトがグツグツと煮込まれてました。
聞けば「トマトを煮詰めたスープを仕込んでいる」とのこと。
思えばあれは、さまざまなカレーに応用される万能のトマトスープだったんですね。
日本でバターチキンを流行させたと言われる六本木「モティ」では、かつて活躍したシェフ、デュワンさんがかなりじっくりと煮詰めたトマトペーストを使ってバターチキンに濃厚なうま味を作っていました。
トマトを濃縮するという行為はおいしいカレーを作る上で重要なポイントになるんですね。
濃縮トマトとは少し違いますが、トマトケチャップも加熱調味された加工品。少しジャンクな味になりますが、濃厚なうま味を加えたい時には適度に使うのもありだと思います。 
トマトの代わりにヨーグルト
トマトの話ばかりしてしまいました。
カレーのベースにうま味を加えるのは、トマトだけではありません。インド料理ではトマトに次いでメジャーなアイテムがヨーグルトです。
たとえば、トマトを加えたチキンカレーとヨーグルトを加えたチキンカレーを全く同じ材料とプロセスで作った場合、その2種類のカレーは、「トマトベースのチキンカレー」、「ヨーグルトベースのチキンカレー」と大別されます。
ベースのうま味を作るアイテムですから、味の方向性にかなり大きく影響するんですね。
ヨーグルトは加える前によくかき混ぜておくとムラがなくていいです。濃厚な味にしたければ、面倒ですが水切りをしてから加えるとさらにいい。油脂分が分離しやすいからサッと炒め合わせて水分が飛べばOKとしてますが、これについては、正解がまだ私にはわかりません。
どこまでどのように加熱をするのが最適なのか。どんなタイプのヨーグルトがおいしいのか。まだまだ調べなければ……。
そして、トマト、ヨーグルト以外にこのタイミングで炒めてうま味を出すアイテムはあるはずですが、それに関してもまだ「これ!」といったアイテムが浮かびません。挽き肉をさらに叩いて炒めたりすると肉の強烈なうま味が出ますが、野菜などでなにかもっと他にありそうな気がします。 
香りの暴力、パウダースパイス
カレーをカレーにしている張本人は、なんといってもパウダースパイスでしょう。
パウダースパイスがなかったら、カレーは極めて作りにくい。パウダースパイスを一切使わないで作るカレーもそこそこありますが……。
パウダースパイスとは、英語表記上、本来は「Powdered Spice」とするのが正しいのかもしれません。それとも、Spiceは単数形だから、「Powdered Spices」? なんか変ですね。一粒のクミンシードを挽いて無数の粉にしたら、複数形になる? それとも、複数種類のスパイスがミックスされたら複数形に? 全くわかりません。正解を誰か教えてください。
いきなり脱線しました。パウダースパイスが強い香りを持っているのは事実で、これがカレーに大事だということも事実。その理由は、粉状に挽いているからです。スパイスは形をつぶさない丸のままのホールスパイスの状態よりも粉にした方が香りが立ちます。エッセンシャルオイル(精油成分)が揮発する度合いが高まるからなんだろうと推測されます。
さらに、粉状のスパイスは、カレーソース全体にまんべんなく行きわたるから、加えたそばからカレー全体を支配する香りとなる。それはもう暴力的だと言っていいと思います。だから、使う量には少し気を遣います。たとえば、ホールスパイスなら間違えて多めに入れすぎてしまってもなんとか風味はまとまりますが、パウダースパイスはそうもいかない。入れすぎたらリカバーは困難です。逆に足りないと風味が決まらない。
粉状になっているということがすごく大切なんです。だから、パウダースパイスを加えることは、カレーの中心の香りをつかさどる行為と言っていいと僕は思います。 
 

 

塩とスパイスの蜜月
“中心の香り”の主な構成要素は、パウダースパイスと塩です。
「塩?」と不思議に思う人もいるかもしれませんね。和食を中心とした家庭料理などでは、調理プロセスの最後に「塩で味を調える」というのが一般的です。でも、ゴールデンルールで作るカレーでは、全7プロセスあるうちの4番目のプロセス、すなわち調理のど真ん中のタイミングで9割方の塩を入れるんです。
これには大きくふたつの理由があります。
@このタイミングでカレーのベースができあがる(この後は水分と具を入れて煮込む)ため、塩味が入っていた方が正確に味見できる
Aパウダースパイスと同じタイミングで塩を加えるとスパイスの香りや辛味を際立たせる効果がある
@はなんとなく、納得してもらえるんじゃないかな、と思います。家庭料理なら最後に味見をして塩を調整すればいいかもしれません。たとえば和食ならしょう油のように塩気のあるものを途中で加えることも多いから、味見はしやすいんです。でも、カレーの場合、それに代わるものがあまりない。塩が入っていればこのタイミングでほぼ完成の味をイメージできます。
さて、問題は、Aのほう。Aを読んで、「本当に?」と思った人もいるでしょう。私も実は、「本当かな?」とちょっと思っています。唐辛子の辛みのようなものは、塩を一緒に加えることでより辛さを感じやすくなるのは経験上、納得しています。でも、香りのほうは、実はまだちょっと疑わしいと思っています。
少なくともインド料理を作るインド人シェフは。このタイミングで塩を加える人が多いんです。彼らに理由を聞いてもあまりピンとくる答えが返ってきたことはありませんが、現時点では、そういう理解をしているという感じです。
スパイスには本来、味つけの作用はなく、その香りが何かしらの味を引き立てることに効果があるわけですから、塩が一緒に入れば相乗効果が出るというのは、間違ってないんじゃないかなと思います。
パウダースパイス四天王
パウダースパイスの話をしていると、必ずと言っていいほどこの質問が飛んできます。
スパイスは何から買いそろえればいいんですか?
これには、シンプルではっきりとした答えがあります。私は必ず「まずはこの4種類をそろえてください」と答えます。
・ターメリック
・カイエンペッパー
・クミン
・コリアンダー
スパイスからカレーを作るために重要度の高いパウダースパイス、ベスト4です。ターメリックはウコンとして知られていますね。しょうがの仲間です。ほんのり土臭い独特の香りと鮮やかな黄色が特徴。カイエンペッパーは唐辛子の粉です。レッドチリパウダーと呼ばれることもあります。赤い色と香ばしい香りと鋭い辛味が特徴。
クミンは、単体で最もカレーを連想させやすい香りを持っているスパイスです。コリアンダーは、香菜とかパクチーの名で知られている植物の種を乾燥させたもの。すがすがしい香りがあります。
整理してみると、この4種には、スパイスが持つ3つの役割である、「香りづけ」、「色味づけ」、「辛味づけ」がバランスよく網羅されていることがわかると思います。
カレーにある程度精通している人やカレーシェフであれば、これら4つのラインナップがベスト4であることに対して、異論のある人はほとんどいないと言い切れます。
逆に、みなさんは、この4種を頭に入れておいて、カレーに一過言ある人に出会ったら、「カレーを作るのに重要なスパイスを5つ教えてください」と話してみてください。その返事にこの4種が入っていなかったら、そしてそこに明確な理由付けがなかったら、その人のスパイスに対する知識は疑わしいな、と判断していいと思います。
……なあんて、そこまで言っちゃって大丈夫かな。いや、大丈夫なはずです!
カレー通リトマス試験紙。このパウダースパイス四天王をぜひ覚えておいてください。 
コリアンダーはまとめ役?
パウダースパイス四天王は、ターメリック、カイエンペッパー、クミン、コリアンダーだというお話はしました。
この中で、私が特に好きなスパイスが、コリアンダー(香菜)です。単純にあのすっとしていて深みのある香りが好きなのですが、種の部分を乾燥させた香りと根や茎、葉をフレッシュなまま刻んだりした時の香りと、同じ植物なのにそれぞれ個性のある別の香りを持っている点にも惹かれます。
勉強もできるし、足も速い。クラスに必ず一人はいた、文武両道の優秀なやつ、という感じ。
そして、このコリアンダーが好きな最大の理由は、私が過去のカレー作りで幾度となく助けてもらったスパイスだからです。スパイス初心者だった時代、あれこれと試行錯誤をしながらカレーを作るのですが、仕上がりのカレーが「なんでこんな味になるの?」ということがよくありました。いわゆる失敗作が出来上がるんですね。そんなとき、理由はわからないのですが、コリアンダーを追加増量すると味がまとまるということが何度かあったんです。
いまでもそれがなぜなのか、わかりません。あるインド人シェフは、「コリアンダーは調和のスパイスだ」と言っているそうです。そのシェフは、失敗しないスパイスの配合についても語っています。それは「1:1:1:1:4」だ、と。
すなわち使用する全てのスパイスの比率を1とした場合、その4倍の量のコリアンダーを使えばたいてい失敗はないということです。かなり大雑把な意見ですが、なんとなくわかる気がします。
好みにもよりますが、コリアンダーパウダーだけは、多めに買っておいてもいいのかもしれません。 
カレー粉とは、なんだ?
ゴールデンルールで“中心の香り”を作るために使用するのは、なにも単体のパウダースパイスだけではありません。たとえばカレー粉だって有効です。
カレー粉とは、ミックスパイスです。複数種類のスパイスが「焙煎・粉砕」されて、「混合」されている。では、何種類くらいのスパイスがミックスされているんでしょうか?
これはカレー粉のブランドによってかなり差があります。一番多いものでエスビーの通称赤缶は、30種類以上。少ないものだとインド系のカレー粉で十数種類といった感じです。
ではカレー粉に欠かせないスパイスは?
日本で手に入るさまざまなカレー粉を購入し、その原材料を調べて統計を取ったことがあります。その結果は、以下がベスト10です。
@ターメリック
Aレッドチリ
Bクミン
Cコリアンダー
Dフェンネル
Eフェヌグリーク
Fシナモン
Gジンジャー
Hクローブ
Iカルダモン
上位4種類は、パウダースパイス四天王と同じラインアップ。その他の6種類についてもカレーやインド料理に精通した人が見れば納得の顔ぶれです。興味深いのは、上位4種類をある配合比で混ぜ合わせただけでカレーの香りは作れるということです。
つい先日、講演会でアンケートを取ったことがあります。4種類のスパイスで作った自家製カレー粉と34種類ほどが配合されたエスビー赤缶を持参し、ブラインドで参加者に香りをチェックしてもらいました。
どちらの香りが好きですか? 勝ったのは、4種類をブレンドしたカレー粉でした。別に国民的な人気を誇る赤缶に対して喧嘩を売りたかったわけではありませんよ。
ただ、使用するスパイスの種類が多ければ多いほど本格的で質が高い、というわけではないようです。 
ガラムマサラとは、なんだ?
カレー粉がミックスパウダースパイスなら、ガラムマサラもミックスパウダースパイスです。ガラムマサラは、カレーを本格的な味にする強力なアイテムとして、その名を聞いたことがある人は多いと思います。
インドでは星の数ほどのガラムマサラが存在するとかしないとか。ま、インド料理のシェフの数以上は確実に存在します。家庭の場合は、市販のガラムマサラを買ってきて使うケースが多いと思いますが。
ともかく、このひとふりでカレーに本格的な風味を加えることができる、ということは確かですから、大事なアイテムです。
ただ、ゴールデンルール上は、どちらかというと、ステップCの“中心の香り”で使うことよりも、ステップFの“仕上げの香り”で使うことのほうが多いです。
ガラムマサラを構成するスパイスで、重要なものはなにか?
数々の洋書のインド料理本を調べ、20種類のガラムマサラの配合レシピをチェックし、そのベスト10はこちら。
@ブラックペッパー
Aシナモン
Bクローブ
Cグリーンカルダモン
Dクミン
Eビッグカルダモン
Fコリアンダー
Gベイリーフ
Hナツメグ
Iメース
カレー粉のベスト10と同じようなラインナップになっているな、とお気づきの人も多いでしょう。でも、実は肝心なところで、大きな違いがあるんです、それはなにか 次回に。
ターメリックのチカラ
ターメリックがパウダースパイス四天王の中でも筆頭に名前のあがるスパイスであることはすでにお話しました。カレー粉の原材料としてもターメリックが重要度ナンバーワンの存在です。ターメリックの使われていないカレー粉に私は出会ったことがありません。
そういう意味では、カレーに最も重要なスパイスと言えるのかもしれません。
ところが……。ところが、です。私は長い間、カレーにターメリックを使うことの実質的な効果をちゃんと実感できないままでした。なければいけないはずなのに、なくてもよさそうなくらい、仕上がりのカレーにターメリックの存在を感じたことがないのです。ターメリックがあってよかった、と思うのは、黄色いカレーや鮮やかなレモン色のカレーを作りたいと思った時くらいでしょうか。
なくてもよさそうなら、使わないでおこうかな、と思い、ターメリックを使わないカレーを作ったこともあります。なんとかなる。でも、仕上がりの味がなんとなくしっくりこない。不思議だなと思っていろいろ考えたときに、はっと気づいたことがあります。
それは、カレー粉とガラムマサラの違いについてです。それぞれの配合で重要なスパイスのベスト10を比較してみてください。
実は、カレー粉のベスト10にあって、ガラムマサラのベスト10にないものがあるんです。それは、ターメリックとカイエンペッパーです。カイエンペッパーは辛味の元になるスパイスですから、カレー粉にもそれほど多くは入ってません。ただ、ターメリックはカレー粉の中で最も多い量が使われているにも関わらず、ガラムマサラの原料として使われている例は、一度も見たことがありません。
そうか。以前、講演会の参加者から質問を受けたことがあります。「ガラムマサラだけでカレーは作れますか?」。私の答えは、「はい、でも……」です。作れないことはないけれど、おいしく作るのは難しい。その理由は、ターメリックが含まれてないからなんです。だって、クミンやコリアンダーはガラムマサラにも使われているし、カルダモン、シナモン、クローブといった薫り高いスパイスも入っているんですから。
カレー粉でカレーを作るのは簡単なのにガラムマサラでカレーを作るのは難しい。その原因はターメリックだったと私は認識しています。では、ターメリックのどこにどんな作用があってカレーに欠かせないのか。これは、正直、まだ私にはわかりません。あの土臭い香りが必要なんだろう、ということくらいしか。
長くなりましたが、今回で、ゴールデンルールCのお話は終わりです。 
いよいよ“炒める”から“煮る”へ
7つのプロセスで構成されるゴールデンルールですが、STEP5の「水分を加えて煮る」段階に入ります。カレーは、前半で炒めてから後半で煮る料理ですから、ゴールデンルールでも、STEP1〜4が炒める、5〜7は煮る、と理解してもらえればと思います。
さて、煮るのに必要なのは、水分です。そして、最もオーソドックスな材料が、水です。水を加えて煮立て、それから煮たり煮込んだりする。
水っていうのは、すごいんですよね。すごくいい仕事をしてくれる。カレーの場合、ゴールデンルールのSTEP4までで、カレーの素ともいうべきペーストができあがります。香りや風味やうま味がぎゅっと詰まった濃厚なペーストです。この味をこの後に加える具と絡めていくのに水が活躍します。
絵の具をパレットに出して、水を少し加え、絵筆で溶いていく行為を想像してください。ベトッとしていた絵の具とサラサラの水が混ざり合い、全体がトロリとした形状に変わっていきます。水で溶くことによって色もムラなく均一になるんです。カレー作りに水を加えることも同じだと思ってください。
カレーの素(ペースト)の状態ではまだ味や香りにばらつきがあります。よく混ぜ合わせながら炒めたつもりでも、部分的にスパイスが濃いところと薄いところは出てしまう。だから水を加えて全体をなじませることが大事なんです。
油と水の仲介役
前半の炒めるプロセスで最も活躍するのは、油。
後半の煮るプロセスで最も活躍するのは、水。
そう、カレーは、油で炒めて水で煮込む料理です。この間にスパイスが入り込む。
「〇〇と◇◇は、水と油だ」なんて言葉がある通り、水と油は一般的に仲が悪い。カレーをおいしく作るためにはこの中の悪い2人を仲介しなくてはならないのだと私は思います。これを料理業界では、“乳化”と呼んでいます。これをすることによって、カレー全体の味がなじみ、うま味を増幅して感じられます。
ところが、油と水はほうっておいても勝手に仲良くなってはくれません。だから作り手がテクニックを使って、もしくはなにか道具や材料を使うことによって乳化を促進させなければならないのです。これが非常に大きな悩みの種となります。
カレールウの箱の裏にある原材料を見たことはありますか? よく見ると、乳化剤と書かれています。カレールウには乳化を強制的に促進させるエッセンスがすでに入っている。でもみなさんのキッチンに乳化剤はありませんよね。
フランス料理で、仕上げにバターを加えることをモンテと呼びますが、これは、乳化を促進させる効果があります。材料を使わずに乳化をさせるにはどうしたらいいか。一般的には適度に温かい状態の温度下でよくかき混ぜるという手法があります。ドレッシングを作る時などがその例です。でもこれはカレーに応用するのは、難しい。
さらに悩ましいのは、インド料理に置いては煮込み完了の目安として、インド人シェフがよく言うのはこんな言葉です。「オイルがセパレートしたらオッケーよ」。油脂が水分と分離したら完成だという。これは乳化の考え方と真逆です。たしかにインド料理を作っているとオイルがセパレートするまで煮たカレーは、おいしいのです。不思議。
今のところ、私にはカレーにおける乳化の正解がわかりません。インド料理とフランス料理のいいとこどりをしていったんの正解を導き出すとしたら、こうでしょうか。
「オイルがセパレートしたら、オッケーよ。でもそのあとバターでモンテして仲直りさせておいてね」。
乳化というのは本当に厄介なテーマです。 
大は小を兼ねない
カレーのレシピを見ていると、【作り方】の途中でこんな表記に出会うことがあると思います。
「水を加えて煮立て、弱火にして30分ほど煮込む」
私もよくこんな書き方をします。【材料】の表記には、こんな風に書いてあったりする。
「水 300ml」
要するに、300mlの水を加えて30分煮るということですが、おいしいカレーを作ろうと思ったら、これら表記を全面的に信じてはいけません。これはすべてのレシピについて言えることですが、レシピに書かれている内容は、あくまでも“目安”であり、“正解”ではありません。
できるだけ失敗しないで作れるよう考慮されていはいますが、万能ではない。なぜなら作る人の使う鍋の材質や厚み、底面積の広さ、火加減などによって必ず誤差が生まれてしまうからです。レシピを提案する立場の私がこんなことを言ってしまっては失格と言われてしまうかもしれませんが……。
では水を加えて煮込むときにおいしく作るコツはどこにあるのか。最も重要なのは、水の量です。単純に言えば、水の量は多ければ味がぼやけ、少なければ味が締まる。もちろん、理想はそのどちらでもない適量の状態です。ここで肝心なのは、一度入れてしまった水を取り除くことはできないということです。逆に足りないときに水を足すことは可能です。
ならば、水は気持ち控えめに加え、煮ていく過程で足りないと思ったら適宜足していくのが上手な作り方です。
実は、この考え方は塩を加える時と全く同じです。塩も入れすぎてしまったらもとには元には戻せません。でも足りないと思えば後から足せばいい。
大は小を兼ねると言いますが、水の量に関しては、大は小を兼ねません。だから水を加えるときにはいつもよりも慎重になることをお勧めします。 
プラスマイナスがゼロにならない
前回、水の量は多いよりも少ない方が味が締まっておいしい、というお話をしました。
今回、それを否定するかのようなお話をします。
すなわち、水の量が少ないよりも多い方がおいしくなるという考え方についてです。
たとえば、5人前のカレーを作るとします。一般的にカレーの世界では、1人前あたりのカレーの量は平均200mlと言われていますから、5人前なら1000ml(1リットル)を作ることになります。
さて、炒めてから煮るのがカレーのゴールデンルール。玉ねぎやトマト、スパイスを炒めたGRCまでのプロセスを終えて出来上がった、いわゆる“カレーの素”の容量が150mlだったとします。具として加える鶏肉の容量が350ml(この場合、重さよりもわかりやすい容量で計算します)だったとした場合、1000mlを作るためには、単純計算で500mlの水を加えて煮ればいい、ということになります。
ちょっとややこしいですね。整理します。
A. カレーの素(150ml)+鶏肉(350ml)+水(500ml)=出来上がりのカレー(1000ml)
ここからが問題です。GRCまでの炒め方が足りなかった場合、要するに火の入れ方が弱かった場合、水分が十分に飛んでいないため、カレーの素は200mlになってしまったりすることがある。この場合、同じ量の鶏肉を加えるならば、1000mlにするためには水の量を減らせばいい。これも以下に整理します。
B. カレーの素(200ml)+鶏肉(350ml)+水(450ml)=出来上がりのカレー(1000ml)
AとBを比較した場合、Bの方がAよりも50ml水の量が少ないということになります。さて、ではおいしいのはどちらでしょうか?
水の量が少ないほうがうまいんだから、Bの方がおいしく作れると思いますか?
正解は、Aの方がおいしいカレーになります。不思議ですね……。
なぜなのかをキッチリと理論武装して語ることは今の私にはまだできません。ただこれまでの経験値から、炒めるプロセスでしっかり脱水して味を引き締めてから水を加えて煮た方がおいしくなることは間違いありません。
結果が同じ量になればいいわけではないんです。プラスマイナスがゼロにならない。不思議だなぁと思います。 
 

 

水を使わないカレーは偉いのか?
当店のカレーは、水を一切使わないカレーです。
……みたいな売り文句を聞いたことはありませんか? たいてい、野菜の水分だけで作るから贅沢でうまい、みたいな理由づけがついていたりします。
私は、昔からこのことに疑問があります。水を使わないで作るのって、そんなに偉いんだろうか、と。水を使わないで作るカレーは水を使って作るカレーよりもおいしくなるんだろうか、と。経験上、その言い分には諸手を挙げて賛成するわけにはいきません。
野菜に含まれる水分は、おいしいような気はします。たぶん、ただの水よりもおいしいんだと思います。野菜のだし成分も含まれているはずですから。でも水を使わないのであれば、専用の鍋を使ってなべ底の焦げ付きを防ぎつつ圧力をかけるような煮込み方をするか、もしくはかなりの量の野菜を加えて弱火でじっくり煮込むか、はたまたトマトのように水分をたっぷり含んでいる野菜を使うか……。
いくつかの方法は考えられますが、野菜を煮ることにそこまで注力するよりも炒めてベースの味にするべき野菜はきっちり火を入れて炒めた上で、煮るときは割り切って水を加えたほうがメリハリのきいたカレーになると思います。
技術的に可能であれば、一度やってみたい方法があります。
GR@〜Cの炒めるプロセスに置いて野菜から脱水された水分を蒸気として外に逃がさず、しかも鍋中には戻さず、何かしらの方法で空中でキャッチする。特製のベジタブルウォーターとして保存しておくんです。きっちり炒め終わった後にGRDのプロセスで水を加える代わりにそのベジタブルウォーターを加えて煮込む。
これなら炒めるべく野菜は炒めた上で、水を使わず煮込みに十分な水分量も確保してカレー作りができるのかもしれません。あくまでも空想レシピですが。
ま、そこまでやらないにしても、たとえばインド料理のサブジのようなものは、最低限、野菜に火を通すのに必要な水を少量加えることで、蒸し煮や蒸し焼きのようにして作りますから、“水なしカレー”と言えなくもありません。サブジはおいしい料理ですから、やりようによるのかもしれませんね。 
スープとカレーの幸せな関係
水で煮込むことばかり追求してきましたが、GRDは、「水で煮る」ではなく、「水分で煮る」です。水の代わりによく使うのは、チキンブイヨンなどに代表されるスープ類(だし類)。だしには独特のうま味が含まれていて、私たち日本人の大好きな味です。
鶏ガラと香味野菜を2時間ほど煮込むだけで、オーソドックスでおいしいスープができますから、このスープで煮込めばカレーがおいしくなることはお墨付き。欧風カレーやホテルのカレー、洋食屋さんのカレーなどに共通するおいしさのエッセンスは、このスープのうま味です。
一方、インド料理では、スープのうま味がそれほど重視されていません。水の代わりにブイヨンで煮込むというプロセスはほとんど見られませんし、ブイヨンをひくということ自体がマイナーなんです。インド料理ではだしのうま味よりもスパイスの香りや素材そのものの味わいの方が大事にされているから。
それでも骨付きチキンやマトンのかたまりなどを長時間煮込んだカレーには自ずと肉のだしは抽出され、濃厚なうま味を感じるカレーに仕上がりますが。
インド人の好きなスパイスの香りと日本人の好きなだしのうま味のいいとこどりをしたカレーは、日本のカレー専門店では王道の味わいです。この方向を追求し、かなり独自の進化を遂げているカレーが北海道で親しまれているスープカレーです。ラーメンのようなうま味たっぷりのスープにスパイスの刺激的な香りが融合したスープカレーは、アレンジ上手な日本人の真骨頂と言えるのかもしれません。 
煮込みは時間が解決してくれる
何か問題があったとき、「時間が解決してくれる」なんて考えたことありませんか?
私はあります。そう考えるだけでなんとなく気休めになりますし、本当に解決してくれることもあります。時間が経つということには、色んなことを丸くおさめてくれる効果があるのかもしれません。
だからといって、カレー作りにも同じことが言えるんじゃないかということについては、あまり深く考えたことはありませんでした。煮込み時間が長くなれば、その分、素材の味わいがソースに抽出されておいしくなることは経験上わかっていたし、塊の肉や骨付きの肉などであれば、やわらかく食べやすくするためにも時間をかける必要があることもわかっていました。
ただ長時間煮込むことに関してちょっと拒否反応があったんです。世の中には煮込み時間の長さを標榜しているカレーがあまりに多いから。天邪鬼な私は、「長く煮るのが偉いみたいな感覚は安易じゃないか」と反発心を持っていたんです。
カレーの煮込みは時間が解決してくれることは、事実です。理由はいくつかあります。
・素材の味がだしとしてソースに溶け出す
・素材がやわらかく口当たりがよくなる
・素材のだしとソースの味がなじむ
・水分が飛んで煮詰まり、味が深まる
・角が取れて味がまるくなる
これらは実際に時間をかけて煮て、味の変化を実感してもらうのが一番です。たとえばチキンカレーを作るとき、10分煮ても15分煮ても「もうひと味たりない」と思っていたものが、20分煮た段階で突然「うまい! これでよし!」となる、みたいな瞬間があるんです。
これを一度経験すると、時間ってすごいなと思います。
逆にその瞬間をとらえることができたら、そこがそのカレーのベストな煮込み時間ですから、それ以上長く煮込むのはお勧めできません。
時間が解決してくれる。でも長ければ長いほどいいわけではない。水分を加えて煮るというのは、なかなか手ごわいプロセスです。 
豚肉か、牛肉か、それとも鶏肉か
カレーを作るとき、いつも具に使う食材はなんですか?
昔から一般的に言われているのは、肉と玉ねぎ、にんじん、じゃがいも。これらが日本のカレーの具としてはメジャーです。
野菜についてはあまり意見は分かれないと思いますが、肉については人によってかなり意見がわかれるのではないでしょうか。私の実家では、角切りの豚肉でした。関東圏ではカレーに豚肉、関西圏ではカレーに牛肉、と言われることがあります。
水野家は静岡県浜松市で、食文化的にはどちらかといえば関東圏に属するため、豚肉を使っていたというのは頷けます。確かに関西ではカレーに限らず豚肉よりも牛肉の方が一般的なようですし、関東はその逆です。ただそれが直接の原因なのかはわかりません。
鶏肉をカレーに入れるという家は、それほど多くないような気がします。日本の家カレーのスタンダードはやはり、豚肉か牛肉なんでしょうか。ただ、外食となるとチキンカレーもかなりメジャー化します。またインドではチキンかマトンがメインです。
日本の家庭でも母親が独自にアレンジを加えたり、どこかでカレーの作り方を学んだりした場合、鶏肉がカレーに入る可能性が出てくるのかもしれません。実際、私の実家では、私が中学生ごろからたまにカレーの具に鶏手羽中や鶏手羽元など骨付きの鶏肉が使われるようになりました。
「具を加えて煮込む」がゴールデンルールEのプロセスですが、肉を加えて煮込む上での素朴な疑問について次回、お話したいと思います。 
カレー用の肉とカレールウのレシピ
今夜はビーフカレーにしよう。あなたは、そう決めました。
スーパーに材料を買いに行きます。玉ねぎ、にんじん、じゃがいもをかごに入れ、市販のカレールウを手に取った後、精肉コーナーへ。すると、便利なことに「カレー・シチュー用」と書かれた牛肉がパックになって売っている。
値札シールにはこう書いてあります。モモ、バラ、スジ。要するにさまざまな部位の塊肉をひと口大に切って寄せ集めたものです。たいていのスーパーには売ってます。ものによっては一緒に煮こむ用にローリエが1枚入ってたりもする。
さて、帰宅したあなたはカレーを作り始めます。
市販のカレールウは、箱の裏にレシピが書いてありますから、その通りにやってみることにしました。
たとえば、ハウスの「こくまろ」の箱の裏にはこんな表記があります。
@厚手のなべにサラダ油を熱し、一口大に切った肉、野菜をよくいためます。
A水を加え、沸騰したらあくを取り、材料が柔らかくなるまで弱火〜中火で約15分煮込みます。
Bいったん火を止め、ルウを割り入れて溶かします。
C再び弱火でとろみがつくまで約10分煮込みます。
オーソドックスな作り方です。ほかのブランドもほぼ同じようなことが書かれてますね。
あなたは、書いてある通りに作り、特に疑問もなく、「おいしいな」と出来上がったカレーを食べるのかもしれません。でも、私は昔からそこに疑問を感じていました。
肉の加熱に関する部分です。スーパーで通常売られているカレー用の肉は様々な部位をひと口大に切った寄せ集め。一方、カレールウの箱に書かれたレシピは、肉の加熱の部分だけを抜き出すと、こんな感じ。「よく炒め、弱火〜中火で約15分煮込み、さらに弱火で約10分煮込む」。煮込み時間で言えば、合計25分ということになります。
私の経験上、塊肉は、最初の加熱から時間が経てば経つほど肉の中の水分が外に逃げて肉質が徐々に硬くなっていき、ある時から繊維がほぐれて突然やわらかくなり始める。部位によってそのタイミングも違います。だから牛肉を柔らかくするためには少なくとも30分〜45分以上は煮込む必要があるんですね。
でも実際にスーパーで売られたカレー用の肉と市販のルウのレシピとの関係には、そこに弱点がある。
これを鵜呑みにしてしまったら、硬くなった肉の入ったカレーを食べる結果になるんです。それはそれで歯ごたえがあっておいしい、という意見もありますが、肉の部位や形による特徴を把握して加熱することが大事だと思います。
どこかで気の利いたスーパーが、部位ごとに最適な煮込み時間を表示して市販のルウとセット販売するなどしてくれたら、日本全国の家庭でおいしいビーフカレーやポークカレーを作ることができるのになぁ、なんて考えたりします。 
具は主役か、脇役か
カレーに入っている肉や野菜のことを具(ぐ)と呼びます。具以外の構成要素はソース、またはカレーソースなどと呼ばれています。
その昔、ハウスのレトルトカレーで、「“ぐ”が大きい」を売りにTVCMなどをしていた商品がありました。当時のレトルトカレーにしては大きな肉やじゃがいもがごろごろと入っていて、好きでした。
それにしても具という言葉は改めて考えるとなんだか不思議な響きです。カレーの具。器具、工具、遊具、絵の具みたいな言葉に使われる“具”と同じ意味合いなんだと思いますが、料理に使われるとちょっと変な感じ。
大辞泉で調べてみると、具の意味はこう書かれています。
○料理で、汁、まぜ御飯などに入れたり付け添えたりする魚・貝・肉・野菜などの副材料
副材料、とあるんですね。使用例には、「みそ汁の具」とある。みそ汁は汁物料理だから、汁が主役で具が脇役(副材料)ということでしょうか。なんとなくわかる気がします。
では、カレーの具は、脇役(副材料)なんでしょうか? 主役なんでしょうか? カレーを“具”と“ソース”に分けたときに、どちらが主役化脇役かは意見の分かれるところだと思います。
フランス料理の場合、たとえば、ブッフ・ブルギニヨン。牛肉の赤ワイン煮込み ・ブルゴーニュ風ですが、主役は牛肉だと思います。具(牛肉)をおいしく味わうためにソースの存在がある、というイメージ。フランス料理のソースの概念は多くの場合、主役の味を引き立てる脇役的存在です。(これは、かのミシェル・トロワグロ氏もそう語ってます)
では、カレーはどうか。私の答えは、こうです。日本のカレーは具が脇役。インドのカレーは具が主役。そのココロは……。
日本の具とインドの具
日本のカレーは具が脇役。インドのカレーは具が主役。
そのココロは……、というお話です。
日本のカレーの場合、感覚としてはカレーソースをおいしくするために具が煮込まれます。だから私たちは、具のうま味が抽出されて混然一体となったソースをご飯にかけておいしくいただいているんです。
その証拠にたいていの家庭では具に何を選ぼうと使用するカレールウは決まってますよね。この行為の裏側には具よりソースが大事だということが顕著に現れています。「いやいや我が家では、豚肉にはジャワカレー、牛肉にはディナーカレー、野菜がバーモントで魚介類ならZEPPINと決めてます」なんて話は聞いたことがありません。
一方、インドのカレーは、肉や野菜、魚、豆をおいしく食べるために油とスパイスを使いこなす。主役はあくまでも具なんですね。料理の内容にもよりますが、たとえばマトンやビーフなら、カルダモン、クローブ、シナモン。野菜にはクミン、魚介類にはフェンネルを効かせるといい、なんて感覚がなんとなくインド料理の世界には存在します。
具をおいしく味わうためにスパイスを駆使しようという感覚があるからです。 
具とソースは持ちつ持たれつ (その1)
具が脇役の日本のカレー、具が主役のインドのカレー。
どちらもそれぞれ個性的でいいと思います。ただ、こう考えると欲の深い私は、よからぬこと(?)を考えてしまいます。
具もソースもどちらも主役、というカレーを作ればいいじゃないか。
実はそういうカレーは存在します。欲深いのは私だけではないんですね。
たとえば、ホテルのビーフカレーは「どちらも主役」を実践しているケースをときどき見かけます。
具体的に何をしているかというと、ソースを作るためにスープストックを取るのですが、このスープに使う肉や香味野菜はスープが完成した後にすべて捨ててしまうんです。そのままカレーの具にすることはしない。カレーソースが完成したら、改めて具にする牛肉を別でソテーしたり煮込んだりして合わせるんです。
そうすることでカレーソースも具もどちらも主役級という贅沢なカレーができるんです。
私が過去に取材したことのあるホテルで言えば、箱根富士屋ホテルやホテルオークラなどはその方式を取っていました。富士屋ホテルは具にする牛肉を別で煮込むパターン。オークラは、かつては注文を受けてからステーキ肉をソテーしてカレーソースに合わせるパターン、いま現在は、富士屋ホテルと同じく具にする牛肉を別で煮込み調理しておくパターンを採用しています。どちらもさすが、という感じです。 
具とソースは持ちつ持たれつ (その2)
主役だの脇役だのと考えていると、具とソースとどっちが偉いのか? みたいなことが頭をちらつき始めますが、一方で、カレーを作るときはどうせ一緒に煮込んでいるんだから、そんなこと気にしなくたっていいじゃないか、という気持ちも湧いてきます。
人類みな平等。具もソースも平等。優劣の問題ではない、のかもしれません。
カレーの具を煮込むプロセスを改めて思い起こしてみると、“平等説”が説得力を増してきます。煮込んでいる間に鍋の中では何が起こっているのか。
前にも触れたとおり、煮込むことによって具の味が抽出され、ソースに溶け出していく。だから、煮込み時間が長くなればなるほど、具の味は少しずつ薄くなり、その分、ソースの味は少しずつ濃くなっていくんですね。
「1×1=1」というのか、「プラスマイナスゼロ」というのか。
もちろん上手に煮込めば「1×1=1.2」だったり「プラスマイナスでちょっとプラス」だったりという効果は引き出せます。以前、煮込みのお話で触れたとおり、その効果がカレーのおいしさを作っているわけですが、前提となる考え方として「味がどっちにあるのか」はやはり重要です。
具の味わいを具に残したいのか、ソースに加えたいのか。
ホテルのように贅沢な作り方ができない場合、具がおいしいカレーを作るか、ソースがおいしいカレーを作るか、どこかで線を引かなければなりません。
これがカレーを設計する上では結構重要になってくるんです。
「線引きや妥協はしたくない! 具もソースもおいしいカレーにしたい。でもホテルのような贅沢はできない」
そういう人が必ず出てきます。私もそのひとりです。これには裏ワザがあります。具を長く煮込んでソースをおいしくしておいて、そのソースの味わいを具に戻すというカレー作りです。  
「五目」という反則ワザ
ソースの味を具に戻す“裏ワザ”が存在するなんてことに触れましたが、具に関する“裏ワザ”ならぬ“反則ワザ”と私が思っていることについてのお話です。
それは、中国料理でよく見かける「五目」というものです。肉も野菜も魚介類もすべてが一堂に会している料理。おそらく5品目だから「五目」という呼び名がついたんだと思いますが、5品目が具体的に何をさすのかは知りません。
ともかく、豪華な組み合わせであることは間違いない。
陸上の世界にも「五種競技」というものがあります。「走り幅跳び・槍投げ・円盤投げ・短距離走・長距離走」をすべてこなす。トライアスロンは、「三種競技」ですね。「水泳(スイム)・自転車ロードレース(バイク)・長距離走(ラン)」の3種。
突然、陸上の話が始まって変だと思うかもしれません。
中国料理の五目が陸上の五種競技だとすれば、日本のカレーはトライアスロンなんです。具の定番は、肉と野菜(玉ねぎ、にんじん、じゃがいも)。シーフードは入らない。
そして、インドのカレーは、短距離走であり、槍投げでありといった単一種の競技です。
インド料理の場合、チキンカレーなら具は鶏肉のみ、オクラのカレーはオクラのみ、豆のカレーは豆のみ、というのが一般的。ミックスベジタブルカレーは別として、あれやこれやの具がひとつのカレーに混ざり合うというケースが極めて少ないんです。100メートルをダッと走って、はい、できあがり。シンプルで潔い。
具を煮込むことで具の味がソースに出るわけですから、使う具がシンプルならシンプルな味わいのソース、たくさんの具を煮込めば複雑な味わいのソースができあがります。さらに肉、野菜、魚介類という性格の違う具が混ざるとその傾向はより強まる。
そこで、「五目」です。あろうことか、肉も野菜も魚介類も全部一緒に煮込んでしまうなんて。そりゃうまいに決まってます。恐るべき中国料理。長崎ちゃんぽんなんかも同じですね。ズルい。要するに“反則ワザ”なんです。
じゃあ、カレーの世界にも応用すればいいじゃないか、と私は思います。が、「五目カレー」というメニューは実際にはほとんど存在しません。おいしくないからではない。たぶん、そういう発想はカレーの世界にはなかっただけなんだと思います。
誰かがやってくれないかなぁ、五目カレー専門店。誰がやってくれるかわかりませんが、期待しています。 
 

 

仕上げの香りでTKO?
カレーは、“香りを楽しむ料理”だと僕は思います。あんなに香りの強い食べ物はほかになかなかありませんから、それを楽しまない手はない。
踏み込んで言えば、“香りによって引き立つ味を楽しむ料理”と言えるかもしれません。とにかく調理プロセス上は徹底的に香りを加えていく。
だから、ゴールデンルールでも香りを加えるタイミングは3回もあるんです。はじめの香り、中心の香り、そして、今回からのテーマとなる仕上げの香りです。
正直言って、はじめの香りと中心の香りを加えながらカレーを作っていくと、煮込みがほぼ完了したころにはこんな風に思うかもしれません。
「もう香りは十分だ。これ以上、新たな香りを加える必要はない」と。確かにこの時点でカレーとして十分おいしく食べられる香りは鍋の中からは漂っているはずです。そこにさらに仕上げの香りを加えるなんて……。
ダウンを繰り返しているボクサーに容赦なく連打を繰り広げるようなものでしょうか。カレー作りにレフェリーがいたら、割って入るかもしれません。テクニカルノックアウト?
いや、そういうわけではありません。仕上げの香りづけは、ダメ押しの香りづけではない。じゃあ、なんのために仕上げの香りを加えるのか。それを考えていきたいと思います。 
仕上げの香りは引き立て役
仕上げの香りを加えて自分が作っているカレーをノックアウトしてしまってはなりません。仕上げの香りですから、文字通り、カレーを仕上げなければならない。
最もシンプルな材料で作る基本のカレーで使われる仕上げの香りは、生の香菜(コリアンダー)の葉と茎をみじん切りにしたものです。
ちなみにはじめの香りはクミンシード。中心の香りは、ターメリックパウダー、レッドチリパウダー、コリアンダーパウダーです。ここで重要なのは、仕上げの香りに加える香菜は、それまでに加えているスパイスとは違った趣きの香りを持っているという点です。
「いやいや、中心の香りで使うコリアンダーと重複してるじゃないか」と思う人がいるかもしれません。ただ、パウダースパイスのコリアンダーは、コリアンダーの種を乾燥させ、焙煎して挽いたもの。生の香菜の茎や葉はそれとは全く異なる香りを持っています。
生の香菜を仕上げに加えることで、カレーにフレッシュでツンとする爽やかな香りが加わります。カレーの風味が引き締まったり、奥行きが出たり、と言った効果が期待できるんです。
はじめの香りや中心の香りとは違う香りを加えてそのカレーの風味を引き立てる。これが仕上げの香りの最もオーソドックスな手法です。だから、インド料理でも生の香菜は仕上げに多用されるスパイスのひとつなんですね。 
ガラムマサラという常套手段
仕上げの香りがそれまでに使っていない方向の香りを加えることだ、と聞いて異論を唱えたくなった人は、インド料理に対する知識が深い人かもしません。
おそらくこんな疑問が沸くでしょう。「ガラムマサラはどうなんだ?」。おっしゃる通り。たとえば、インドのマトンカレーによく使われるはじめの香りとして、カルダモン、シナモン、クローブなどがあります。これらの組み合わせは香りの強い肉料理と相性がいい。だからセットで使われることが多いのですが、これって、ガラムマサラを作るときの重要な構成要素なんですね。
はじめの香りと仕上げの香りでほとんど同じスパイスを加えることとなる。なぜそんなことをするんでしょうか。それは、薄まった香りを増量したいからです。マトンカレーを作るとき、塊肉なら1時間ほど煮込む必要があります。1時間煮込んだ鍋中は、はじめの香りがだいぶ逃げてしまっている。
でもその香りはマトンと相性がいい香りだから、食べる時にもちゃんといてほしい。だから、同じような香りを仕上げに加えるんです。
ガラムマサラを最後に加える効果は、そればかりではありません。前出した香菜同様、ない香りを加えるやり方もあるんです。その典型的な例は、実は、日本のカレーで実行されてます。 
日本のカレーをインドの味に
いつごろからなのか具体的に把握できてませんが、カレーの世界でこんなことをよく聞くようになりました。
「ガラムマサラを最後にパラリと振れば、たちまち本格的なカレーができあがります」。
インドで古くから定番として活躍してきたガラムマサラというミックススパイスは、日本のカレーを“たったひと振りで本格的なインドの味”に変えてしまう魔法のアイテムとして一躍有名になったのです。
最後にパラリとやるわけですから、ゴールデンルール的にいえば、紛れもなく仕上げの香りということになります。
この場合、ガラムマサラはマトンを煮込んで薄まった香りを増強する役割とは違います。日本のカレーはたいていの場合、カレー粉かカレールウで作られています。カレー粉やカレールウというアイテムは、スパイスの苦手な日本人ができるだけ個別のスパイスの香りや刺激を感じないようにブレンドし、凡庸とした香りにたどり着いたものです。そもそも日本のカレーにガラムマサラの香りは極めて希薄なんですね。だからこそ、最後のひと振りが影響力を発揮する。
こう考えると脇役とはいえ、仕上げの香りの効果は絶大ですね。 
ハーブも薬味も生野菜も
仕上げの香りには具体的にどんなアイテムがあるんですか?
こう聞かれることがあります。今まで例として出てきたのは、香菜とガラムマサラです。香りが加わればいいわけですから、そのバラエティはかなりのものです。
たとえば、ハーブ類。ミント、バジル、ローズマリーなどなど、特にフレッシュのハーブはカレーに想像以上の奥行きを生み出します。カレーの種類にもよりますが、僕は特にバジルが好きです。
それから、日本料理における薬味も。長ネギ、青ネギ、ミョウガなど、蕎麦の薬味として親しまれているものも仕上げの香りに適しています。
生の野菜の中にもあります。しょうがの千切り、玉ねぎのスライス、ししとうの輪切り、ピーマンのみじん切り……。作ったカレーの仕上げに加えて混ぜ合わせてみてください。意外な効果を実感できると思います。
香菜を含め、すべてに共通することは、フレッシュ(生)の状態だということです。生の植物はそれ自体が独特な香りを持っています。長時間加熱しなくてもすぐに香りが立ちますから、調理の最後に加える仕上げのスパイスには適しているんです。 
秘技・テンパリング!
加熱時間が短くても香りの立ちやすいものは、仕上げの香りに適しているという話はしました。だからフレッシュなハーブや野菜、粉状になっているスパイスなどは火を止めた後に混ぜ合わせる程度でも十分に活躍してくれます。
ところが、火の通りにくいものを仕上げのスパイスに使う場合もあるんです。たとえば、クミンシードの香りを仕上げに加えたいと思ったら……。「同じクミンなんだから、パウダー状のクミンを使えばいいじゃないか」と思う人もいるかもしれません。たしかにローストして香りを深めたクミンパウダーを仕上げに加えるのは効果的です。
ただ、クミンシードをあえて加えたい理由は、口の中でプチッとはじけたときに刺激的な香りを楽しめる余地を残したいと思ったら、ソースになじんでしまうパウダーのクミンではうまくいかない。
とはいえ、クミンシードはつぶれていない種の状態ですから、ただ鍋に加えてざっと混ぜれば香りが立つわけではないんです。さて、困りました。
そんなときに有効なのが、テンパリングというテクニックです。
テンパリングというとスイーツ好きの方ならチョコレートを加熱するプロセスをすぐに頭を浮かべるかもしれませんが、インド料理の世界でテンパリングというと全く別の手法を指します。
煮込んでいる鍋とは別にフライパンなどを用意し、そこに油を熱してクミンシードを炒めるんです。こんがりと色づいて香りが立ってきたら油ごと鍋にジャーッと開けて混ぜ合わせる。これがテンパリングです。
要するに火の通りにくいスパイスは別に加熱して香りを立てておいて加えればいいのです。このテンパリング、覚えるとクセになりますよ。 
香りがするものを見つけよう
カレーは香りを楽しむ料理だと書きました。
仕上げの香りにはいろんな種類と狙いがあることも書きました。
そして、例としてさまざまなスパイスやハーブなど、何かしらの植物について触れてきました。
……が、実はまだまだあるんです、仕上げに香りを加えられるアイテムが。何か思いつきますか? たとえばココナッツミルク。たとえばワインやウィスキー。たとえば挽いたコーヒーの豆。どうでしょう? すべて特徴的な香りがすぐに想像できます。
ゴールデンルールでいえば、ココナッツミルクやアルコール類は、Dの水分のアレンジとして使われることがあるものです。
コーヒーの豆は、Eの具と隠し味の部分で使われることがあるかもしれません。ただ強い香りを持っているという点を重視してカレーに使うなら、Fの仕上げに加えることによって、よりその香りを楽しめるカレーにするというやり方も有効です。
たとえば、レモンやオレンジの皮を薄切りにしてどっさり加え、ざっと混ぜ合わせたりしたらどうでしょう。これも柑橘系の爽やかな香りをカレーに添えることができます。要するに仕上げの香りは、香りがするものならなんでもかんでも有効活用できるんですね。
既成概念にとらわれず、スパイスの範囲を超えて香りのするものを見つけ出し、カレーに活用してみましょう。思わぬオリジナルカレーの開発につながるのかもしれません。 
予習と実践と復習と
ゴールデンルールの@〜Fの各プロセスごとにお話をしてきましたが、ひと段落したので、ここら辺で少し脱線。ちょっとバカみたいな話ですが、おいしいカレーを作るためにはどうしたらいいか? について考えてみたいと思います。
あまり頻繁にはありませんが、ときどき、依頼を受けて料理教室をすることがあります。参加者の方々は忙しい中、時間を割いておいしいカレーの作り方を習得するために2時間〜3時間の教室に足を運んでくれる。これって、大変なことだと思います。
だから、私はいつも教室の冒頭に必ず同じ話をするんです。
「みなさんが、忙しい中、2時間も3時間も貴重な時間を割いて、たった3種類、4種類のおいしいカレーの作り方を学ぶだけでは、もったいないと思います」と。3種類のカレーのデモンストレーションを見たら、30種類のおいしいカレーを作れるようになってほしい。
あるカレーのレシピ(材料・作り方)を覚えるのではなく、あるカレーのレシピに潜むテクニックを覚えてほしいんです。そのために私が最も大切だと思うことは、作る前にできあがりのカレーをイメージすることです。どんな味なのか、どんな香りなのか、色はどうか、とろみはどうか……。これがあるかどうかで上達のスピードが全く違ってきます。
それがなぜなのかはうまく説明ができないのですが、一回の料理で三回料理したくらいの効果があるんです。簡単に言えば、予習と実践と復習。それを同時にできる。その一回の料理が狙い通りに作れたとしても失敗したとしても、効果があるんです。ちょっと意識してみてください。 
おいしいインド料理をつくるために
おいしいインド料理を作るために、最も大切にしている“秘訣”はなんですか?
この質問を懇意にしている10人以上の日本人インド料理シェフに投げかけたことがあります。回答者の名前と回答の全文を紹介するのは控えさせていただきますが、抜粋で紹介したいと思います。
・油が大事。常に味も香りもこなれている状態を目指すこと。
・身も心もインド人になりきること。
・奇をてらわないこと。
・「よりおいしいカレーを作りたい、食べたい」という強い気持ちを持ち続けること。
・基本が大事。まず教えられたことを忠実に実践すること。
・インド人に食べてもらって喜ばれる味を目指したい。
・新鮮なスパイスと新鮮な食材を使うこと。
・指先に魂を宿すこと。自分の振れたものを最終的にお客さんが食べることになるから。
・西洋料理のテクニックには頼らない。
・スパイス使いが大切。
・素材とスパイスのバランスが大事。
・強気に攻める! こと。自信を持って作る料理は絶対においしいはず。
・作る前にできあがりの味のイメージをハッキリと持つこと。
錚々たるインド料理シェフたちの言葉です。含蓄がありますね。ちなみに最後の言葉は、私の言葉ではありません。あるシェフの発言ですが、前回お話した内容と全く同じセリフが出て驚きました。 
プロ向けのインド料理教室
数年前から日本人のインド料理シェフが定期的に集まる研究会を開催しています。前回ご紹介した「おいしいインド料理を作るコツ」は、その研究会の参加シェフたちの言葉です。
普段は日本人シェフが集まってインド料理に関する熱い議論を交わしたり、お互いに料理を作りあったりしているのですが、最近、新しい試みを始めました。
腕利きのインド人シェフによる料理教室を依頼することにしたのです。受講者はプロの日本人シェフたちですから、いわゆる一般的な料理教室とは少し中身が違います。インド人シェフが決めた何品かのインド料理をひたすらみんなの前で作るだけ。
レシピを記した手元の資料はありませんし、写真を撮ったりビデオカメラを回したりする人もいません。日本人シェフたちは、目の前で繰り広げられる料理を目にするだけでそこから多くのことを習得できる人たちですから、調理中にそれほど質問も飛び交いません。静かに見守る。ちょっと異様な空間です。
私は司会進行という役割上、何か少しでもインド人シェフから引き出せるものがあれば、と思ってバカみたいな質問も含めてあれこれと言葉を投げかけたりしてますが……。これはとても勉強になります。感覚的に料理をするインド人シェフと、どちらかと言えば体系的に整理して納得したい日本人シェフとの交流はエキサイティングで、「次はどのシェフに声をかけようかな」と考えるだけでワクワクしています。 
 

 

答えに困るふたつの質問
インド人シェフによる料理デモンストレーションを不定期で開催しているというお話をしました。プロの日本人シェフ向けに行っているものですが、その内容は、「Labo India」としてページ数の少ないブックレットのような形で書籍化し、一般のインド料理ファン、カレーファンの方に向けて販売もしています。
そこで、私は、ゲストに招いたインド人シェフに毎度、同じ質問を投げかけてみることにしました。アンケートのようなものです。
質問はふたつ。回答は選択形式です。
@おいしいインド料理を作るために最も大切なテクニックはなんですか?
A.スパイスの使い方
B.火のコントロール
C.タイミングの見極め
D.食材のチョイス
E.スパイスと食材のバランス
F.その他
A優れたインド料理シェフになるために最も欠かせない要素はなんですか?
A.技術
B.経験
C.情熱
D.センス
E.知識
F.その他
回答項目はもう少し練る必要がある気もします。そして何より、回答するシェフからすれば、非常に答えにくい質問だと思います。「どれかひとつなんて選べない」と言われるかもしれません。
私は熟練のインド人シェフではありませんが、私自身がこの質問を投げかけられたら「勘弁してください……」と言いたくなる内容です。
だからこそ、インド人シェフたちがどうこたえるのか、楽しみにしています。 
加熱による水分コントロール
おいしいカレーを作るために……、というテーマで今週は、ずいぶん抽象的な話に終始してしまっています。
もし、私がおいしいカレーを作るために最も大切なテクニックをひとつ、具体的に挙げろと言われたら、現時点での答えは決まっています。
それは、「加熱による水分コントロール」です。
たとえば、ゴールデンルール(GR)によるベーシックなチキンカレーを作るとします。
GRAで玉ねぎ、にんにく、しょうがを炒めるとき、GRBでトマトを炒めるときには、それぞれの素材に含まれる水分をできるだけ抜くことで、風味を凝縮させることが大切です。
GRCでパウダースパイスを炒めるときも、その手前で水分をキッチリ飛ばし、油を滲み出せていればスパイスの香りが自ずと引き立ちます。
GRDで加える水分量をどうするか、GREで加える素材(具)に含まれる水分はどの程度抜き、どの程度残すべきか。
要するにどのプロセスをとっても水分コントロールは大切なポイントとなるのです。炒めて脱水、煮て脱水。ときには加水もあります。玉ねぎを強火で炒めるときに、パウダースパイスを炒めるときに鍋中の温度上昇を下げるため、スパイスや素材の焦げ付きを棒しるすために水を加えることがありますが、この場合は、加えた水には役割を果たしたら消えてなくなってほしい。加水した水の脱水がやはり大切になるわけですね。
ちょっと難しい話になっているかもしれません。ただ水分コントロールができるかどうかは、作り手の実力に差が出るポイントですし、何より仕上がりの味にかなり影響すると思います。
この大切さが文章や写真ではなかなか伝えられない。そこをなんとかしたい。この点がレシピ本を何冊も出していながら私自身の中では最も解決するのが難しい課題です。 
我慢と勇気がカレーの味を変える
カレー作りに最も大切だと私が考える水分コントロールを上手にするためにはどうしたらいいのでしょうか?
鍋中を見極める力を身に着けることだと思います。鍋中にあるスパイスや油、素材の状態の変化をよく観察すること。耳を澄まして音の変化をよく聞くこと。嗅覚を研ぎ澄ませて香りの変化をよく感じること。これができるようになると木べらや菜箸で鍋中を触る時間を必要最低限にすることができる。これは経験上、すごく大事なポイントです。
なぜそれが大事なのかをうまく説明することはできませんが、私のイメージでは、カレーの世界に限らず、どのジャンルの料理であっても腕のいいシェフほど鍋中をあまり触らないような気がします。
かつて、“音速の貴公子”と呼ばれたF1レーサーのアイルトン・セナは、「なぜあなただけがあんなに速く走れるんですか?」と質問を受け、こう答えました。「ブレーキングをギリギリまで我慢できるからだ」。
カーブを曲がる時、誰もが壁に衝突する恐怖と瞬時に対面します。ブレーキを踏み、速度を落とすことでその危険を回避し、スムーズなドライビングができますが、そのタイミングが早ければ早いほど、スピードは落ちる。見極める能力と、ギリギリまで我慢できる勇気が差を生むのです。
このインタビューを聞いたとき、「料理(カレー作り)の世界も同じだ!」と私は思いました。たとえば、玉ねぎを炒める時、その玉ねぎが焦げる恐怖と対面し、確かな判断力を持ってギリギリまで触らず我慢できる勇気があるかどうか。これが水分コントロールと大きく関わってくるんですよね。
正直、今の私自身にその力が完全に備わっているわけではありません。これからまだまだ精進しなければなりません。 
ゴールデンルールはゴールデンルーツ
ゴールデンルールに話を戻しましょう。カレーの構造は、すべてゴールデンルールで説明ができる。
すべて、という限りは、日本でカレーと呼ばれているあらゆるジャンルを網羅していなければなりません。すなわち、インドカレーにはじまり、欧風カレーもタイカレーも蕎麦屋のカレー丼も北海道のスープカレーも……。
一見ルーツがバラバラなカレーをひとつのルールで理解しようとするのは無理があると思うかもしれません。ただ、長い歴史をたどればすべてのカレーのルーツはひとつです。長くなるので詳しい説明は省きますが、ルーツはインドにあります。
インドのカレーがイギリスに渡り、洋食文化のひとつとして日本に伝わって欧風カレーが生まれました。日本に伝わったカレーは独自のアレンジを加えられ、和風カレーやスープカレーに進化。一方、インド人がイギリスとは逆方向の東南アジアに移り住み、タイカレーを生みました。
だから、ゴールデンルールで作るカレーの最もシンプルなレシピとして紹介しているのは、インド料理をベースにしています。
ゴールデンルールはゴールデンルーツと呼んでもいいのかもしれません。ちょっと紛らわしいでしょうか。 
ゴールデンルールの応用編
カレーのルーツであるインド料理をベースにルール化したのがゴールデンルールだとして、そこから派生したさまざまなカレーをひとつのルールで語ることに何の意味があるんでしょうか?
私にもそれはよくわかりませんでした。というよりも、ひとくくりにしようとしてルールを作ったわけではないんです。インド料理(特に家庭料理)が極めてワンパターンな調理方法で作られていることに気が付いた私は、それらに共通するプロセスをルール化しました。せっかくルールができたんだから、他のジャンルのカレーにも当てはめてみようか。
それがキッカケだったんです。
実際にやってみると、見事に基本的なルールのアレンジで、タイカレーも欧風カレーも和風カレーもスープカレーも説明がつく。そうだったのか! ここにたどり着いたときの興奮は今でも思い出すとドキドキします。
カレー全体の構造を整理することができた上で改めて、このゴールデンルール化に何の意味があるのかを考えてみました。
そもそもアレンジ(応用)や進化にはルールがありません。自由なやり方で姿を変えたカレーが、次のカレーを生み出すルーツとなる。だから、すべてのカレーが、最も深いところに存在するインドカレーを応用させているわけではないんですね。そして、私たちはアレンジや進化の果てにある姿を見て食べて作って楽しんでいる。
そうすると、さもそのカレーは、何もない土地に突然芽が出て育ち、気になって多くの葉をつけたり実をならせたりしているかのように見えてしまう。「元祖スープカレー」とか「元祖カレー丼」なんていう言葉が出回ったりするから本当の根っこの先の根っこは、深いところでひとつにつながっていることは関係なくなってしまうんですね。
そこで、ゴールデンルール。ルールがあることで、それぞれのカレーのアレンジや進化のプロセスを飛び越えてそのカレーの構造を理解することができるんです。最もベーシックでシンプルなインドカレーに何をどう足したら、何をどう変えたらスープカレーになり、欧風カレーになるのかがわかる。すなわちそれぞれのカレーを特徴づけている材料や調理プロセスが浮き彫りになるんですね。
ゴールデンルールで作る欧風カレー
欧風カレーは、日本で最も親しまれているカレーのジャンルかもしれません。コクがあってマイルドで食べやすい。欧風カレーと聞いてイメージするカレーの味は人によって違うかもしれませんが、大きく3タイプあります。
@ホテルのカレー
A洋食屋のカレー
B専門店のカレー
ホテルのカレーは、じっくり炒めた玉ねぎをベースに時間をかけてとったスープストックのうま味を重ねています。洋食屋のカレーは、カレー粉と小麦粉をバターで炒めて作るルウがベース。専門店のカレーは、それらの特徴に加えてさらにさまざまな隠し味を駆使したものです。
3種3様の味わいを持っていますが、すべてに共通しているのは、小麦粉のとろみとスープストックのうま味です。これらはインドカレーやタイカレーでは使われないアイテム。逆に市販のカレールウで作る家カレーには使われていますから、家カレーもジャンルで言うならほとんどの場合、欧風カレーということになります。
ゴールデンルールをアレンジして欧風カレーを作りたいと思ったら、アレンジポイントは2つ。STEP4で“中心の香り”を加えるときに、カレー粉と一緒に小麦粉を炒めること。STEP5で水を加えて煮込む代わりにスープストックを加えること。
これが前提になります。あとは、フルーツの甘味やお酒などの風味を隠し味に入れたり、油の代わりにバターを使ってみると濃厚な欧風カレーが出来上がります。 
ゴールデンルールで作るタイカレー
タイにはそもそもカレーはありませんでした。ゲーンと呼ばれる汁物料理のバリエーションが無数にあるのですが、そこにインドのエッセンスが入ることでカレーっぽいゲーンが出来上がったんです。これらがレッドカレーであり、グリーンカレー、イエローカレーと呼ばれて親しまれるようになりました。
インド人の移民がタイ料理に影響を与えて出来上がったものなんですね。だから、レッドカレーの現地での呼び名は、“ゲーンペッ”、グリーンカレーは“ゲーンキョワーン”、イエローカレーは“ゲーンカリー”。要するにタイ人にとっては、あくまでもゲーンのバリエーションの一部なんですね。
タイカレーの最大の特徴は、独特の風味にあります。辛くてマイルドで香り高い。しかもうま味がしっかりきいている。これらはいくつかのアイテムの組み合わせで作られます。重要なものは以下です。
@生のスパイス(ハーブ)
Aココナッツミルク
Bナンプラー
ゴールデンルールでこれらを活用する場合、アレンジポイントはこんな感じです。STEP1〜4に加える様々な香りや風味のする材料をまとめてすりつぶしてペーストを作ります。これを油で炒める。STEP5で水を加える代わりにココナッツミルクを加え、STEP6で具を加えて煮込むタイミングでナンプラーを加えて味を決める。
タイカレーをタイカレーたらしてめているものの正体は実に明快ですので、タイカレー風にしたかったら上記の3種をうまく使うのがオススメです。 
ゴールデンルールで作る和風カレー
和風カレーというとあまり耳慣れないかもしれませんが、いわゆる蕎麦屋のカレー丼です。カレー南蛮やカレーうどんも同じだと思ってください。この和風カレーは、タイカレー以上にその味の決め手となるアイテムが分かりやすい。
たったひとつのアイテムでたちまち和風の味わいが生まれます。それは、かつおだし。カレーにかつおだしを最初に入れた人はえらいと思います。これがよく合うんですよね。
和風カレーを作る際に重要なのは以下です。
@かつおだし
Aめんつゆ(しょう油)
B片栗粉(小麦粉)
いわゆるだしとかえしがあればいいわけです。めんつゆは簡易的な手法ですが、この部分は、みりんや砂糖、酒、しょうゆなどを使えばもう少し自分好みの味が作れます。これらをゴールデンルールのアレンジに当てはめる場合は、STEP5の水を加える部分でかつおだしを加え、STEP6の具を加えて煮込む部分でめんつゆを隠し味的に加える。
もしくは、STEP4でカレー粉と塩を加えるタイミングで塩の代わりにみりんとしょう油を加える。
これで和風カレーが出来上がります。ただ、最後に一つ、意外と大事なのは、とろみです。蕎麦屋のカレー丼は、とろみを2種類のアイテムで加えます。小麦粉か片栗粉。その両方を使うという店もまれにあります。
僕は片栗粉を使ってとろみをつける手法のほうが好きです。以前、蕎麦屋でカレー南蛮を食べるたびにその店で小麦粉を使っているか片栗粉を使っているかを取材してまわっていた頃がありました。 
ゴールデンルールで作るスープカレー
スープカレーといえば、札幌で生まれた北海道のご当地カレーとして有名です。名の通り、スープ状のカレーににんじん、じゃがいも、骨付き鶏肉などの具がごろりと浮かぶカレー。その味わいの特徴は、だしのうま味とスパイスの香りのいいとこ取りにあります。
だしのうま味と言っても、和風カレーのようなかつおだしではありません。どちらかというとチキンブイヨン的なだし。
スパイスの香りは、インド料理のそれとは少し趣が違いますが、スパイスを独自にブレンドした刺激的な香りを加えているスープカレーが多いです。
ということで、スープカレーに欠かせないポイントは以下になります。
@ブイヨン
Aスパイス
こう聞くと、「なあんだ、普通のカレーと変わらないじゃないか」と思うかもしれません。ところが少し違うんですね。ブイヨンのうま味もスパイスの香りも大げさなくらい強く聞かせているんです。通常のカレーよりもうま味や香りが強い分、さらさらとしたスープ状でもしっかりとした食べごたえを楽しめる。これがスープカレーの魅力です。
これらをゴールデンルールでアレンジする場合、STEP1、4、7のスパイスの香りを利かせるタイミングで量的にも種類的にもかなり多めの量を加えます。あとはSTEP5で水を加えて煮込むタイミングでブイヨンを使う。
あとは、STEP6で具として加える肉や野菜は、別の鍋で加熱調理しておくケースが多いです。これらをアレンジポイントとして調理すればスープカレーが出来上がります。
ちなみに私はこのスープカレー、大好きです。見た目のインパクト、味わい、どちらに置いても従来の日本のカレーの概念を覆すヒーロー的存在のカレーだと思っています。 
カレーを作ろうと思ったときに考えること
夕暮れ時、帰り道。どこからともなくカレーの香りが漂ってくる。お、どこの家だろう? おいしそう。お腹が空いた。うちも今夜はカレーにしようかな。
カレーの香りは暴力的です。一度頭の中にカレーの姿がちらつくと、そこから逃れることはなかなかできません。カレーを食べたい! カレーを作りたい! さて……。こんな風になったとき、みなさんはこの後どう頭を巡らせますか? 
いろんなタイプの人がいることでしょう。自分だったらどのタイプか、考えてみてください。
A.まず具を何にするか、考える。最近、ポークカレーが続いてるから、たまには骨付きチキンでも使ってみようか、とか。
B.キッチンにカレールウのストックがあるかどうかを確認し、あまり具体的なことは考えないでスーパーに行き、食材を見ながら具にするものを考える。
C.真っ先に本棚に手を伸ばし、カレーのレシピ本をパラパラとめくって、おいしそうなカレーを探し出し、材料を確認して買い物に出かける。
D.冷蔵庫にあるものでカレーになりそうなものをとりあえず放り込み、それから、どう調理していくかを考える。
E.外食や旅で食べたカレーを再現してみようと実験気分で鍋を準備し、あれこれと試行錯誤する。
F.なにはともあれスパイスの調合から取り掛かる。
今夜のカレーをめぐる思考回路はほかにもあるはずです。どれもありだと思います。 
 

 

いったいなんのためにカレーを作るの?
カレーを作る時に最も大事なことはなんだと思いますか?
真っ先に考えるべきことは、誰のために作るのか、です。
あ〜あ、言っちゃった。こういう情緒的なことを大義名分のように振りかざすのは個人的にすごく苦手な行為です。が、これからお話することに関わってくる大事なことなのです。
自分が食べたいカレーを作るのであれば、前回紹介したようにさまざまなアプローチがあっていいと思います。でも、私はかなりの頻度でカレーを作りますが、自分のためにカレーを作ることはほとんどありません。これは本当に残念なことだと思ってます。
レシピ本の撮影、開発のための試作、ホームパーティで出すカレー、イベントで提供する大量のカレー……。これらを年間かなりの数こなしているため、自分の食べたいカレーを自分で作る余裕はほとんどありません。ま、それは諦めるしかないですね。2年に1回くらいでいいから、誰のためでもなく、自分のために食べたいカレーを作る日を作りたいなぁと思います。
それはそうと、誰かのために作るカレーには、当たり前ですが、すべて自分以外に食べる人がいます。その人たちのために作る。だから一番初めに考えるのは、このカレーを食べるのは誰か? その人にどんなカレーを食べてもらいたいか。そこからレシピの設計はスタートするのです。 
誰かのためにカレーを作るのだ
誰かのために作るカレーには、様々な要素が出てきます。スパイシーなのがいいか、こってりかあっさりか、インド系か欧風系か、具は何にするか。私はそれら味の方向性に関する要素に加えて、とろみはどうか、色はどうか、なども考えます。それらが決まったあと、レシピの設計に入る。
ゴールのイメージを初めに設定することの大切さは、以前にもこの場で書いたことがあります。問題は「そのゴールにたどり着くためにレシピをどう設計すればよいか」です。これはハッキリ言って相当難しい。
出張料理を続ける東京カリ〜番長には、少々面倒くさいポリシーがあります。
二度と同じカレーは作らない。
出張料理イベントというのは、お店を営むのと違って、行き先、場所、イベントの内容によって食べてくれるお客さんは目まぐるしく変わります。だからその都度、そのイベントに最適なカレーを開発するのが私たちの楽しみなんです。
「全く同じカレーを作れないからでしょ?」と意地悪を言われることがありますが、「確かにそうなのかも……」と思ったりもします。ま、それはそれとして。
レシピ本を1冊制作するときにも、何十種類ものレシピを開発しなければなりません。しかもそのレシピたちは、マイナーアレンジではいけない。ひとつとして同じようなカレーがあってはならないんです。読者は30品のカレーが載っている本を買ったら、30種類全く違うカレーのレシピを知りたいわけですからね。
そう考えると、私のカレー人生のほとんどは、新しいカレーの設計に費やしていることになります。結果、カレーを設計するのに有効なひとつのルールを編み出しました。それが“システムカレー学”です。 
狙い通りにカレーを作るためのシステム
システムカレー学について、ここでお話しするべきかどうかは悩むところです。写真があって図があって、説明をつけられればいいのですが、文字だけでシステムカレー学の“システム”を伝えるのは難しいんです……。
んんん……、困ったな。やめときましょう(笑)! カレーの完成形をイメージしつつ、それに必要な調理テクニックを用いる手法を紹介します。
完成形のイメージは、以下の4つ。
・とろみが強いか弱いか
・味が重いか軽いか
・色が深いか淡いか
・香りがきついか柔らかいか
そのための調理テクニックは、以下の4つ。
・食材やスパイスの形がをつぶすか、残すか
・投入タイミングが早いか遅いか
・火加減は強いか弱いか
・加熱時間は長いか短いか
これらを意識しながら狙い通りのカレーを作りましょうと言うのが、システムカレー学なんですね。これだけの説明じゃほとんど意味がわかりませんね。 
美しいカレーは美味しい
美味しいカレーには共通点があります。
文字をみたらわかりますね。美しい味。そう、見た目に美しいカレーは、味もおいしいんです。
カレーの見た目にはさまざまな要素がありますが、たとえば、私はトッピングには騙されません。カレーソースの上にカラフルな素揚げの野菜がトッピングされているカレーがあったとします。色とりどりの野菜の美しさは確かに大事ですが、それなら温野菜でもいい。
カレーの本質はそこにはありません。おいしいカレーかどうかを見極めるためには、カレーソースの見た目が判断材料になるんです。
たとえば、うっすらときれいなオレンジ色の油脂が表面に浮いているカレーは、「なかなかのもんだぞ!」と期待が高まります。見た目の判断材料は色々ありますが、ひとつだけ、皆さんに興味を持ってもらえそうなポイントについて話したいと思います。それは、カレーの色です。
いろんな色のカレーがあった方が見た目にも美しくおいしい。世の中にはレッドカレー、グリーンカレーがあるし、ブラックカレー、ホワイトカレーなんてのもある。インド料理のバターチキンという人気メニューは、店によっては、きれいなピンク色をしてたりします。カレーソースの色にもっと注目が集まるといいなぁと思います。 
虹色のカレーは作ることができるのか?
カレーと言えば大抵は茶色い色をしているイメージがあると思います。カレー粉は黄色と茶色の中間ですし、カレールウは茶色と焦げ茶色の中間くらいになる。玉ねぎはあめ色(ヒグマ色)になるまで炒めるべきだなんて言われているから、それらを混ぜ合わせてカレーにしていけば、たいていのカレーは茶色っぽくなりますよね。
でも、それじゃつまらない、と私は思います。
いっそのこと、虹色のカレーがあってもいいじゃないか、と思ったりします。ひとつのカレーでソースがマーブル模様になっているわけではありませんよ。そんなカレーがあったらさすがに気持ち悪い。7色7種のカレーをつくる、ということです。
できるんでしょうか。
そのためにはカレーの出来上がりの色を自由自在にコントロールできるようにならないといけないんですね。それを可能にするのが、“システムカレー学”です。
たとえば「白〜レモン色=黄色〜オレンジ〜赤色〜茶色〜焦げ茶色〜黒」というグラデーションの中でピンポイントに狙った色のカレーを作ることができる。具体的な手法はここでは書きませんが、緑色のカレーや黄緑色のカレーもできる。ただ、虹色となると、ブルーや紫色がちょっと難しい、かな……。
いつか、カラーチャートを表示して、その色に仕上がったカレーの写真とレシピ、そして、そのためのシステムカレー学を紹介できるような本が出したいなぁと思います。
この話、これ以上踏み込むとエンドレスになるので終わりにします。 
カレーをシステム化しちゃっていいの!?
システムカレー学を支配している原理原則のひとつは、とっても単純なことです。それは、「火の通りにくいものから順に入れる」ということ。これはほかの料理でも語られていることです。ただ、システムカレー学の場合、その中身がちょっと複雑になります。
たとえば、にんにくやしょうがは、みじん切りよりすりおろしのほうが火が通りやすい。トマトを炒めるときには、フレッシュトマトをきざんだものが最も火が通りにくい。逆にホールトマト、カットトマトなどは加熱処理されている。トマトピューレになれば、さらに煮詰めて形状がとろりとしているからもっと火が通りやすい。スパイスも同じです。形がつぶれている(パウダー)か丸のまま(ホール)かによってタイミングが変わります。
例えばカレーの色でいえば、素材の形状はつぶれていればいるほど色が濁って深くなります。形をつぶさず残したまま使えば色はすっきりと淡い色になります。玉ねぎはさっと炒めたくらいなら薄く色づく程度(ウサギ色とかイタチ色とか)。でもきっちり炒めると色は深くなります(タヌキ色とかヒグマ色とか)。これがカレーの仕上がりの色に影響してくるんですね。
これはごく一部の考え方ですが、このようにいくつかの原理原則を頭に入れ、ゴールとするカレーの姿をイメージしながらシステマチックにカレーを作ることができるのです。
カレーをシステム化するなんて、そんなことしていいの? そう思う方も多いかもしれません。確かにシステムカレーなんていうと文字通り味気ない印象が強まってしまいます。カレーはもっと情緒的で謎めいたイメージの強い料理だから。でもこんなことした人が今までいなかったわけですから、一人くらい変なのがいてもいいじゃないか、と私は思ってます。 
おいしく炒め、おいしく煮る
カレーは炒めて煮る料理です。
従来は、カレーは煮込み料理だと言われてきました。長時間煮込むイメージがあるからだと思います。カレールウを使ってカレーを作る場合などは、具となる肉や野菜をささっと炒めてすぐに水を注いであとはひたすら煮込むわけですから、煮込み料理という印象が強まるのもよくわかります。
ただ、カレールウなんていう飛び道具がなかった時代、もしくは、カレー粉やスパイスからカレーを作りたいと思った時には炒めることの大切さを痛感します。
前半に炒めて、後半に煮るとして、どちらがどのくらい重要なのかは判断が難しいところですが、それぞれに特徴があります。
カレーの種類にもよりますが、炒める時間は、煮込む時間に比べればそれほど長くはかかりません。その代り、せわしない。鍋中の状態が変わりやすいから、こまめに様子を見張って、手を動かさなければ思うように加熱が進みません。
一方、煮込む場合は、炒める場合に比べて時間は長くかかりますが、基本的には放置しておけばよく、静かにじっと待つこととなります。
おいしく炒めて、おいしく煮こめば、おいしいカレーは出来上がる。どちらも大切ですが、プロセスがせわしない分、炒めるポイントのほうがカレーの世界では重視されているような気がします。私自身も炒めているときが「カレーを作ってるなぁ」と実感が強まり、心が躍ります。煮込み始めたら、あとは仕上がりを待つだけ、という印象です。だから炒めるプロセスがあまりないカレー作りは、ちょっと退屈といえば退屈です。 
加熱による玉ねぎの糖度
カレーにおける「炒める」の代表格は、なんといっても玉ねぎ炒めですね。
「あめ色玉ねぎ」に対して多くの人が憧れを持っています。理由は甘味が増すから、だと思います。炒めれば炒めるほど偉い、みたいなところもあるような気がします。
玉ねぎを炒めれば炒めるほど玉ねぎが甘くなる。
これは、本当でしょうか? 実は、ウソなんです。
実は、玉ねぎ炒めによる甘味の変化について、私は以前本に記したことがあります。合羽橋道具街に行って糖度計を買ってきて、玉ねぎを炒めては計測しを繰り返す。買ったばかりの機械は順調に反応し、炒めが深まるごとに液晶版に表示される糖度の数値は上がっていきました。やっぱり炒めれば炒めるほど玉ねぎの糖度が上がるんだ! あのときの興奮は忘れられません。
ところが……。あれから何年か経った後、私は信じられない言葉を耳にすることとなります。 
玉ねぎは炒めても糖度は変わらない
「玉ねぎの糖度は、加熱しても変化しないらしいですよ」
たしか、野菜の雑誌を作っている編集者からぽろっと聞いた言葉です。それは、当時の私にとって、信じられない言葉でした。
玉ねぎの炒め方についてあの手この手で実験を繰り返しましたから、これはいいチャンスとばかりに持っている糖度計を使って糖度を計測しました。ところが、思ったように数値が出ません。炒め油が邪魔をして正確な計測ができないからです。大学の先生に取材した結果、真相は、あっけないものでした。
玉ねぎの糖度は、加熱しても変わらない。
そう、変わらないんだそうです。ただ加熱によって糖の種類が変化することと、辛みが和らぐことによって甘味を感じやすくなることは間違いない、とのことでした。
要するに簡単に言ってしまえば、「甘くなる」のではなく、「甘味は変わらないが甘く感じやすくなる」ということなんですね。
まさに目からうろこが落ちるとはこのことでした。いずれにしてもカレーに玉ねぎの甘味を加えておいしくしようと思ったら、炒めたほうがいいのは確かです。それにしてもかつて私の糖度計が出した甘味の数値はいったいなんだったのだろう、といまだに不思議でなりませんが……。 
辛い・甘い・酸っぱい・苦い
玉ねぎは加熱することにより味わいに変化が起こる。
それは、単に甘味が増すということではないのです。
炒める前の生の状態の玉ねぎは、強烈な辛さを持っています。
それが炒めることによって甘味が際立ってくる。
炒めれば炒めるほど甘味は感じやすくなります。ところが、炒め続けていくとある瞬間からほんのりと酸味を感じるようにもなるんです。これは不思議な現象です。
そしてさらに炒めると苦味が出てきます。こうなってしまうとカレーにもあまりよくない影響が出そうです。
さらに炒め方によって味わいの印象も変わります。たとえば、弱火でじっくり炒める場合は、甘味ばかりが残る状態になりますが、強火で炒めれば甘味の他に香ばしさも感じやすくなる。玉ねぎのどんな要素を導き出してカレーにしたいのかによって加熱の方法は変わるんですね。 
 

 

玉ねぎ炒め至上主義は、いつから?
カレー作りに置いて、玉ねぎを炒める、という行為が大きな顔をし始めたのは、いったいいつごろからなんでしょうか?
最近、私はそんな疑問を抱えて日々、悶々としています。それはあることがキッカケでした。老舗の洋食店を取材したときのことです。そのお店にはカレーのメニューがあって、私は個人的にすごく好きなのですが、その店のカレーは、玉ねぎ炒めをしてないんです。
その代わりにしていることは、カレー粉と小麦粉をオーブンで4時間かけて焼くことでした。
シェフの話によれば、「玉ねぎをあめ色に炒めるなんていうのは、カレー粉をオーブンで焼く手間をかけたくない怠け者のやることだ」と。
この発言には驚きました。世の中ほとんどの人は、玉ねぎをあめ色になるまで炒めることこそがカレーにおける手間を惜しまない人のやることだと思っているはずです。それなのにあめ色玉ねぎが手抜きだなんて……。
そこで、あれこれと考えを巡らせた私は、ひとつの仮説にたどりついたんです。日本のカレーはもともと玉ねぎを炒めてなかったんじゃないだろうか。日本のカレーはイギリスから伝わっています。イギリスでカレーが生まれた経緯を考えると、玉ねぎ炒めはなかった可能性があります。
まだ詳しくは語れませんが、僕の仮説では、おそらく玉ねぎ炒めは、フランス料理のテクニックか、インド式のカレーの作り方が日本に入ってくることによって、後発で注目されたプロセスなんじゃないかと思っています。 
カレーの煮込みは謎だらけ
炒めるのあとは、煮るについてです。
短時間なら煮る、長時間になれば煮込むという表現になります。煮ることの目的は、第一に素材に火を通すことです。野菜を煮る場合、火が通るまで煮るにはそれほど時間がかかりませんし、火が通った後も煮続けると形が崩れてしまってあまりいいことはありません。
魚介類の場合も火は短時間で通ります。さらに煮ると独特の磯臭さがカレーソースに出てしまいますから、魚介類のカレーの場合は、煮込み過ぎないのが鉄則です。
問題となるのは、肉を煮る場合です。しかも細切れやスライスではなく、塊の肉や骨付きの肉を長時間煮込むときが悩ましい。そこそこの塊肉であっても、中心まで火が通るにはそれほど時間はかかりません。
でも、肉の煮込み始めは肉質が徐々に硬くなっていきますから、鶏肉ならまだしも豚肉や牛肉、マトンなどの場合は、中心に火が通った瞬間は、予想以上に歯ごたえがあったりします。
肉は加熱を続けていくとある時点で繊維が壊れるのか、柔らかくなり始めます。だからそのタイミングがくるまで煮込み続ければいい。1時間でも2時間でも3時間でも……。
ここで疑問が生まれます。肉を使ったカレーは、煮込めば煮込むほど、おいしくなるんでしょうか? これ、気になるテーマじゃありませんか? 
煮込みのメリット&デメリット
ときどき、カレー店で、「5時間煮込んだ」とか「10時間煮込んだ」とか、煮込み時間の長さを標榜しているのを目にすることがあります。
煮込みに10時間もかけるのは、素人のなせる業ではないけれど、でも、そうすることが本当にすごいことなんだろうか? 昔からその点については疑問を持っていました。ビーフの塊肉が口の中でほろほろと崩れていくようなあの感触は心地よいものですが、それでカレーがおいしくなっている、という確信は持てなかったんですね。
だから、肉を煮込むことによって、どういう鍋の中に効果や変化があるのかを考えるようになりました。その結果、煮込みにはメリットとデメリットがあるような気がしています。
肉を煮込むと素材に火が通って、最終的にはやわらかくなる。これは煮込むことのメリットです。もうひとつ、メリットを挙げるとすれば、肉の味がソースに溶け出し、ソースがおいしくなる点もあります。
ただ、ここにひとつ、疑問があります。肉の味がソースに溶け出すということは、裏返せば、ソースがおいしくなる分、肉の味が落ちるということを意味しませんか?
文章では説明しきれませんが、図をイメージしてもらいながら説明するとこうなります。左から右へ時間軸があったときに、煮込み始めは、ソースに肉の味は出てません。肉の中に100%、肉の味がある状態。そこから煮込むことによって(時間軸が左から右へ進むことによって)、肉の味は90%、80%、70%と落ちていく。代わりにソースの味は肉の味が溶け出す分、10%増し、20%増し、30%増しと変化していく。
要するに煮込めば煮込むほど、ソースはおいしくなるけれど、素材はおいしくなくなっていくんですね。理論上はそうなると私は考えてます。 
いいとこどりのカレー作り
煮込めば煮込むほど、肉の味は落ち、ソースの味はおいしくなる。
理論上、そうだというお話はしましたが、経験上も私はそう感じてます。だから、10時間肉を煮込んだカレーは、ソースはとびきりおいしいが、具となる肉は食べなくてもいいくらいおいしくなくなってしまう。だから煮込めば煮込むほどカレーがおいしくなるとは言い切れないんです。
ソースをおいしく食べたいか、具をおいしく食べたいか。そのバランスを考えてどの程度の時間、加熱するかを決めるのが大事だと考えてます。
どっちを取るか。いや、どっちも取りたい。ソースも具も両方ともおいしくすることはできないの? 欲張りな人ならそう考えるでしょう。方法はあります。それは、素材を煮込んでソースをおいしくしたうえで、煮込みに使った素材は捨てて、新しい素材を具として加えてカレーにすることです。ちょっと贅沢ですが、それを実践しているカレーもあります。
かつて、ホテルオークラのビーフカレーはその手法でした。長時間ビーフを煮込んで濃厚なソースを作っておき、オーダーが入ると新しくステーキ用のビーフをフライパンで焼いて、カレーソースをからめて提供する。いいとこどりのカレーなんですよね。
手間をかけてるなぁ、と感動したカレーのひとつです。 
煮込みは時間が解決してくれる
長い時間煮こむことによるデメリットの話をしていると、なんだか、煮込むことはあまりよくないことだ、というような印象を持たれてしまうかもしれません。
そんなことはないんです。矛盾するような話かもしれませんが、煮込み時間が解決してくれるという経験を何度もしているからです。
途中の味見の段階で、イメージ通りの味が出ていない。イマイチだなぁ、と思いながら煮込み始める。10分して味見。イマイチ。20分して味見。イマイチ。30分して味見。イマイチ。40分して味見をしたら、突然、「うまい!」となる。こんな魔法のようなことがあるんです。
30分と40分の間に何が起こったのかは解明することはできていません。でも、肉の味がソースに溶け込んで味の印象がガラリと変わるようなことが実際にあるんです。
インド料理では、よくインド人シェフが、煮込みが完了した目安として、「オイルがセパレートしたらオーケーね」という場合があります。このオイルがセパレート、という現象は、30分でイマイチだったカレーが40分でうまい!に変わるタイミングの見極め方のひとつの目安を言っているんだと思っています。
私がカレーを作るときに考えるのは、どういうカレーにしたいのかです。それによって煮込みの時間は変わってきますから。どのタイミングで煮込みを終えるのかについて、私にはまだ正解が完全にわかっているわけではありません。
「オイルがセパレート」以外にいくつか別の判断基準を持てるようになりたいなと考えています。 
カレー調理技術の最新型とは
私が書いてきたことは、私自身がよりおいしいカレーを作りたい、という気持ちからカレー調理技術について、試行錯誤してきた内容をまとめたものです。
おもに現在、カレーの世界でまことしやかに言われているテクニックやコツについて、疑ってかかり、納得するまで何度も検証し、実感できたものを整理して体系化してきました。だから、現時点では、ある見かたにおいては、最も精度の高い教科書であると自負してはいます。
日本のカレーの最新型について、手を尽くして分析したわけだから、それくらいのものであってくれなければ寂しい。ただ、だからといって、日本のカレーの最新型が最良の姿であるかどうかは別問題。ここがとっても悩ましいことだなと思うのです。
日本におけるカレーは、長い歴史の中で、足し算と引き算を繰り返してきました。愚直な作業に効率化のメスが入り、技術が洗練され、数々の失敗が積み上がってできた山の上に立って、今、我々はカレーを作っています。でもそこには進化している点もあるし、同時に退化している点もあるんじゃないのか、と思うのです。
時代が変わると味の嗜好は変わり、求められる料理の形も変わります。それに応じてカレーは色々と姿を変えてきたし、これからも変わっていくんだと思います。だから、結局、カレーに正解はない、という話になってしまう。でも私は、カレーに正解を出したい。 
カレー調理技術の歴史
日本人がカレーに初めて出会ってから100年が経っています。
100年間、数限りない人々が試行錯誤を繰り返して今のカレーがあるわけだから、現時点でのカレーが一番うまい、という前提に立っていままでやってきましたが、そのことに少し疑問が沸きつつあります。
たとえば、老舗のカレー店のおいしさについて考えたとき、その疑問はさらに深まってしまう。40年前、50年前に生み出されたカレーが今もなお、愛され続けている。最近できた流行りの店のカレーを食べても、「やっぱりあの味には及ばないあなぁ」なんて思ってしまったりします。どうしてあんな味を考えられたんだろう? と不思議に思うことが多々あるんです。
やっぱり新しければいいとは限らないんですね。じゃ、カレー調理技術の正解をつきとめるためにはどうしたらいいんでしょう?
いま、私が考えていることは、日本のカレー調理技術の歴史、変遷を整理することが大事なんじゃないかと思うんです。色んな時代を経て、日本のカレー作りは徐々に変わってきました。それは進化なのかもしれないし、退化なのかもしれない。判断はつきません。ただ、どんな狙いからどのようなことをするようになったのかを整理した人は誰もいません。
一度、それをしてみたい。なぜスパイスを何十種類も調合するようになったのか、玉ねぎをあめ色に炒めるべきだという主張はどこから来たのか。隠し味という考え方はいつ、どのような経緯から生まれたのか。 
日本のカレーのルーツが知りたい
カレーのルーツは、インド料理です。このことは、日本人のほとんどが認識している事実ですね。でも、皆さんが知るインド料理と、家庭や学校の給食で食べているカレーとは全く違う食べ物ですよね。あのインド料理が家のカレーになったとしたら、その間にどんな変化があったのか、想像つきますか?
普通の人は、全く想像がつかないと思います。
なぜなら、日本のカレーのおおもとのルーツはインドにありますが、実際にはその手前にイギリスという国の存在があるんです。このことは、信じられないくらい日本では知られていません。いや、日本のカレーがイギリスから伝わったこと自体は、「聞いたことある」という人が結構いるかもしれません。
でも、そのイギリスのカレーはどんなカレーだったのか? 日本でどのように成長していったのか? たぶん、誰も知らないんです。私は、それが知りたい。
だから、2014年の1月から3月まで、ロンドンに滞在してカレーの取材をすることにしました。昔ながらの英国式カレーは、どんなものだったのか? いま、イギリスのどこにそれが残っているのか? そして、インド料理から直接影響を受けたイギリスでは、どういう経緯でその味が生まれたのか? いろんな関連書物を読み漁りましたが、どこにも私の知りたい内容は書いてありませんでした。
日本で初めて紹介されたカレーのレシピは赤蛙のカレーだった、とかそういうトリビア的な情報ではなく、もっとカレーの調理技術に踏み込んだ日本のカレーのルーツをたどる旅をしてきたいと思います。
日本のカレーにとって、インド料理はおじいさんにあたります。イギリスのカレーがお父さん。我々は、おじいさんについては割とよく知っているのに、お父さんについては何も知らないんです。不思議な現象ですね。 
 

 

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