政治のうわさ話

平和な日本
一時(いっとき)とは言え 目の前にやることはなし

政治は誰のもの
建前は「民」 本音は「税金のバラマキ加減」
お役人 応援団体 金持ち 権力者 派閥 政党 

仲間 縁故 身内 世襲
「 政治家」 家業 稼業 職業です

 


 
 
 
 
 

 

●「貯蓄から投資」に秘められた円安マグマ、注目される個人の外貨買い 9/21
9月20日、日銀から4─6月期の資金循環統計が公表された。「資産運用立国」の旗印の下、政府・与党が家計部門の「貯蓄から投資」を後押しする報道が連日見られているが、資金循環統計はその進捗度を測る有力な目安となる。今後、政策運営上の注目度も増してくる可能性があるだろう。
家計の外貨比率、過去20年間で4倍に
家計金融資産に関し、2022年12月末から2023年6月末の半年間の変化を見ると、依然として日本の家計部門における保守的傾向は根強いものの、わずかではあるが変化の胎動も見い出せた。
2023年6月末時点で家計金融資産は約2115兆円にのぼるが、そのうち円貨性資産が約97%(2041兆円)を占め、その中で現預金(除く外貨預金)が約53%(1111兆円)であった。こうしたスナップショットだけを見れば、日本の家計部門の運用傾向が保守的であるという現状はいまだ健在である。
しかし、目に付く動きもあった。例えば、春先以降の株高を背景として円貨性資産における株式・出資金の比率が12.7%まで上昇している。これは金融バブルと言われた2006年1−3月期につけた過去最高水準(12.9%)に肉薄する水準であり、近々にピークを更新するかどうか注目されそうである。
また、筆者の試算によれば、外貨性資産についても3.2%から3.5%へ0.3%ポイントとわずかながら上昇している。2000年1−3月期の外貨性資産の比率は0.9%だったので、過去20年余りで比率が4倍になったことになる。
もちろん、外貨性資産の存在感が小さいことに変わりはないが、徐々に、しかし確実に「貯蓄から投資」は「円から外貨」という形では進んでいるように見受けられる。このような傾向に政策的に後押しが加わることで、さらに現状が変わっていく可能性が想像される。
外貨預金金利の引き上げ報道が持つ意味
また、9月19日には国内大手行の一角において米ドル定期預金の金利が0.01%から5.3%に引き上げられるという事実が大々的に報じられた。既にネット銀行ではかなり前から5%台での提供は始まっているし、条件によっては10%に迫る米ドル定期預金も販売されているため、金融商品に土地勘のある向きからすれば「今までが異様に低かっただけ」という感想がほとんどだろう。
特に、スマートフォン片手にネット銀行経由で金融商品を売買することに抵抗が無い世代からすれば、外貨預金(とそれに類する外貨投資)は「もうやっている」という感覚が強く、それほど新味のあるニュースとして受け止めなかった向きも多いのではないかと想像する。
しかし、日本の人口動態を踏まえれば、上で見たような資金循環統計のすう勢を握るのはそうしたネットリテラシーのある若年世代ではなく「外貨と言えば、窓口で手数料を払って買うもの」という印象を強く持つ高齢者層だろう。
ネット銀行に限らず、そのような高齢者層にリーチするだろう大手行でも金利引き上げが決断され、それが大々的に報じられたことの意味は侮れないように思える。
「安全資産と言えば円の現預金」という発想を根強く持っていた世代の行動が変わる方が、日本の資金循環構造、ひいては円相場への動きに影響を与えやすいはずである。
特に日本人は国際分散投資という理論的な王道を説くよりも、新聞・雑誌・テレビ等のメディアが報道する中で「皆がやっているからやっている」という雰囲気があってこそ、初めて動くと思われる。
この点、変動為替相場制への移行後、これほど長きにわたって円安に伴う「負の側面」がクローズアップされたことはなく、金融商品に詳しくない人々においても「何もしないことのリスク」は徐々に体感するところになっているはずだ。
現実問題としてガソリンを筆頭とする日用品の価格が上がっているのは円安と資源高が併発した結果であり、名目賃金が物価高を相殺するほど上昇しないと見切った向きは、資産運用によってカバーするという発想を持つだろう。
契約通貨建ての輸入物価指数は変化率で見れば危機が去ったように見えるが、水準としては短期間にかなり高い水準へ引き上げられたまま止まっている。現状はこうした輸入物価の高止まりが、少しずつ日常生活に浸透してきている局面と思われる。
ここにきて政府・与党が繰り返し資産運用の必要性を説く背景には、名目賃金上昇に限界を覚える中で「ある程度、自分で何とかして欲しい」という思惑も透ける。
「投資」ではなく「防衛」としての運用
色々な考え方はあるものの、「弱い円」のリスクが外貨を買うことである程度ヘッジできることは事実である。
2022年を例に取れば、円は対ドルで最大30%も下落している。年初来から引きずられている「今の円安は、FRB(米連邦準備理事会)の利下げが遅れているだけで、いずれ円高になる」という広く流布されている見通しに賭けるのであれば、円建て資産中心のポートフォリオを継続しても問題ないだろう。
しかし、少なくともその考え方が完全に外れたのが過去半年である。過去の本コラムへの寄稿でも論じているが、そもそも円安の理由が全て米金利で説明できるという考え方自体に筆者は疑問を覚える。
本稿執筆時点のドル/円相場は1年前の同時期よりもドル高・円安だが、FRBが利上げペースを緩めれば円高になるのではなかったのか。いつから利下げが円高の必要条件になったのか。そのような説は支配的ではなかったように記憶する。最近では、米金利動向と円相場の関係に盲従し過ぎると、つじつまの合わない説明になりやすいように感じる。
もちろん、米金利は今後も円相場の重要なガイドポストになると思うが、東京外国為替市場では「円を売りたい人が多い」という需給環境に景色が変わっており、米金利が低下しても円高余地は限られる(少なくとも今次円安局面が始まった水準には戻らない可能性)という点も、押さえておくべき事実である。
いずれにせよ、ある程度円安相場が持続性を持つ(円高になっても限定的)と考えるのであれば、日本の家計部門が外貨建て資産を保有すること自体は「投資」であると同時に「防衛」とも呼べる行為になる。
これまで貯蓄に固執してきた日本人が初めて投資に積極的になるとしたら、やはり自己資産に対する危機感の芽生えが契機になるのかもしれない。
巨額の金融資産を抱える高齢者層が資産防衛の必要性に目覚めた時、約1100兆円の現預金が相応に動くことになる。仮に外貨建て資産へのシフトが5%ならば約55兆円、10%なら約110兆円の円売りになる。年間10兆円強の経常黒字しか持たない(しかも恐らくそのほとんどが円に回帰してこない)日本からすれば、極めて大きな資金移動であり、円相場の急落を促す可能性は十分考えられる。
問題は、少なくとも152円まで肉薄した2022年はそのような「家計部門の円売り」は本格化していなかったということだ。近い将来、160円や170円に行くと主張するつもりはない。
しかし、「家計部門の円売り」抜きでも150円を突破したという事実は、将来の円安リスクを考える上で重要な示唆を与えるように思う。巨大な円売り余地が家計部門に埋め込まれているのは厳然たる事実だ。
日本経済が抱える最大のテールリスクの一つが「家計部門の円売り」であり、それが現実化した場合のインフレ状況は現在の比ではないということは、各種資産価格の予想を検討する上で留意したい論点である。
●30人に1人が寝たきり。17人に1人が認知症。9人に1人が80歳以上の日本人。 9/21
日本ってどれだけ高齢者ばかりかマジで分かってる?
ココ5年ほどやっと認知されてきて異次元の少子化対策とか言い出しましたが、正直もう日本に残された時間はあまりないと思います。一番の理由が「国民の大半に危機感がない」ってこと。
「投票の結果、全ての社会保険料を消費税で置き換えるが最多得票となりました。2023年度予算ベースでは、保険料77.5兆円(うち被保険者拠出41.0兆円)ですので、一般会計ベースの消費税収は23.4兆円÷10%=2.3兆円とすると、77.5÷2.3≒33%の消費税率と機械的に計算できます。この他に公費分もあります」— 島澤諭 September 20, 2023
左翼は「税金払いたくないけど、国が金を恵んでくれ」を連呼するし、右翼は「まだまだ日本は力があって素晴らしい」を連呼します。
2022年は過去最高の税収71兆円でしたが、出費も過去最高で、特に社会保障費が物凄い勢いで増えています。その額134兆円!!!
いくら税収増えたってその2倍も社会保障に借金で払っていればどんどん借金(国債)は膨らんでいく。円安傾向が止まらないので金利を上げないといけないがそうすると国債の利払いで日銀は債務超過になって日本は信用を失うところまで来ているのです。
残念ながら日本の財政は火の車で世界通貨に対して日本円だけがどんどん下がってるし、給料は先進国で最安。国民の大半には労働意欲がないし、勉強もしたくない。左翼はそれはみんな国の嘘で本当は金持ちで自分たちに死ぬほど恵んでくれるはずだとアホみたいな妄想に浸ってるし、右翼はいまだに日本人の美徳は家族制度と勤勉さだと明治時代の夢を見ているわけです。ヤバいです。
寝たきりの高齢者に税金がいくら使われているか
日本の保険制度のおかげで、超高齢者の数は爆増しています。老人福祉法が制定された1963年には100歳以上の高齢者は全国でたった153人。81年に1000人を突破、98年に1万人を突破し、その後も爆増。
いまや100歳以上が10万人に迫り、90歳以上も265万人。80歳以上は1235万人もいます。恐ろしいのは80歳以上が40万人も増えていることで、これから団塊の世代が80代を超えてくると物凄い勢いでここが増加し、連動して寝たきりも激増する予定です。
ところで日本にはいま、寝たきりの人が200〜300万人いるということです。
ほんとうにざっくりと、寝たきりの方、ひとりあたりの公的負担医療費(高額医療費控除で実際に支払う額の残高)を年間200万円とかなり少なめに見積もりますと、300万人×200万円= 6兆円/年です。この人たちには年金も支払われているので合計では10兆円くらいが使われていると考えられます。
消費税1%が2.4兆円ですので、この金額は消費税なら4%に相当するわけですよ。日本の税収の1/7です。
「こんなんで日本が存続できるわけないでしょう 減税しろとか夢みたいな事ばかりいってるんじゃないよ」と私は思います。最優先で60〜70年も前に団塊の世代以上が自分の世代のみを守るために作った社会保障制度を抜本から時代に合ったシステムに作りなおさないと、減税はおろか社会システムが崩壊するところまで来ているのですよ。なのに経済が分からない馬鹿医師会がいまだに医療費をあげろと気が狂っていることを主張している。
中国、韓国も少子化???
馬鹿言ってるんじゃありません。こんなにいびつな高齢者ばかりの国は世界でも日本だけ。
ぶっちゃけ、高齢化にもほどがあるって感じなのです。見てください。異様でしょう。この異様さが分からないから「金くれ」とか言えるのです。
どうして日本はこんなに超高齢者が激増し、寝たきりもとんでもない数がいるのか
世界各国では看取りをどうしているのか。比較すると驚きます。
家制度がまだ残っている日本では子どもとの同居率が非常に高い。親離れ、子離れしていない。ペットも同じだが実家にいて何年も会っていないワンコが亡くなるのと、毎晩抱いて寝ているワンコが亡くなるのでは喪失感が違う。だから1日でも長く生かしておきたいと「どんなことをしてもいいから生かしておいてくれ」と子どもが頼んだりするわけです。全額自分で払ってくれるならまだしも大半は税金だし、しかも親にとっては虐待気味。家制度の弊害がココにも出ているわけです。
しかし、同居率は高いのに死ぬときは自宅じゃないのが日本!!
長生きしすぎて家族の手に負えなくなって病院に入院させてそこでなくなる。胃瘻で全身管に繋がれて生かさせる。親の年金を当てにして1日も長く生き延びさせてくれという家族も普通にいるらしい。実際には死期が近い人は
このように6割が自宅で死にたいと思っているのに、病院に送り込まれるわけです。うちの父は2年前に老衰で亡くなったが入院を拒んで自宅で亡くなりました。延命も拒否。
日本が破綻しないためには
簡単な事です。
   1 高齢者の医療負担も3割に
1割負担でいけたのは、現役が多くて高齢者が少なかったから。高齢者の方がむしろ多くなり、子孫を増やさなかったことに責任があるわけだからその負担でいけるわけがない。もはや現役の社会保険料負担は限界なのであるから、3割負担して貰うしかない。
   2 85歳を超えたら高額医療制度を対象外とする
高額医療制度とはいくら医療費がかかっても数万円以上は払わなくて良いというものですが、脳梗塞で倒れて治る見込みもないのに胃瘻で何年間も寝たきりになるとか、あり得ないことを平気でやっている病院が普通にあります。コロナの時も85歳以上にECMO装着しているところがありました。高額医療制度が適用外になれば、お金がある人は自費で受ければいいし、とにかく寿命まで生きたのならあとはご自分の資産でとなるのは問題ないと思います。
年金がなくなると困るからなんとか延命してくれという家族は、年金より高額な治療費がくるならその希望は取り下げるでしょう。どうせ金のためですから。
   3 尊厳死を法制化する
いままで政治家がこれを口にすると「老人は死ねというのか」という大合唱が野党を中心として起こり、政治家は失脚するというのが事例としてあるため、政治家も怖くて手が出せない。本当は「老人に死ねというのか」ではなく「老人にも死ぬ権利を」なのです。
わたしは認知症になって自分が誰か分からなくなったり、治る見込みがなくて寝たきりになるなら尊厳死したいし事前にそういう手続きをしたい。しかしその権利が奪われているのです。恥をさらして家族に迷惑を掛けて管に繋がれておしめを替えさせろと言われている。こんな人権侵害が許されていいのかと思います。
●杉田水脈氏の「人権侵犯」認定…国連演説で「人間の尊厳」を唱えた岸田首相 9/21
20日、X(旧ツイッター)で「人権侵犯」がトレンド入りした。ジャニーズ事務所の性加害問題で世界中から日本の「人権」意識が問われているなか、法務省に差別発言が認定された自民党の杉田水脈議員(56)の今後が注目されている。
杉田氏は、7年前の2016年、国連の会議に参加したときのことについて、自身のブログで「国連の会議室では小汚い格好に加え、チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場」「完全に品格に問題があります」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」などとアイヌ民族を差別する投稿を行った。これに対し、今年3月、アイヌの女性が札幌法務局に人権救済を求める申し立てをし、今月7日付で札幌法務局は「人権侵犯の事実があった」と認定した。
だが、当の本人は報道で明るみに出るまで、事実を公表しておらず、報道後もコメントを出していない。
一方、自身のXでは7日以降も"通常運転"。12日には「石ノ森章太郎 テレビヒーロー大全」の写真とともに、「石垣島から山口県を経由して東京の家に帰ってきたら、届いてました!! きゃー! 家にこもってずっと見ていたい…。そんな訳にはいきません。かと言って、移動の飛行機や新幹線のなかで読んでたら隣の人にギョッとされそうで怖い」とお気楽投稿。その後もヒーローに関する投稿や、15日には「阪神優勝!おめでとうございます。…中略…セールに行っている時間は無さそうですが、どこかでお祝いモードに浸りたいです♪」と盛り上がっていた。
また、今回の問題が北海道新聞に報じられた19日には、Xで「文京区で行われた『新しい教科書をつくる会 東京支部』主催の講演会へ。用意した席では足らず、追加した椅子も満杯になるくらい、多くの皆さんがお越しくださいました」と報告。これには《新しい歴史教科書からアイヌを削除するのはやめましょう》《政治家が教科書に介入するな。歴史学者に任せろ》などと批判の声も出ていたが、杉田議員には響いてなさそうだ。
国民の怒りは、人権侵犯が認められた議員を総務大臣政務官に任命していた岸田文雄首相(66)にも向いている。しかも、このタイミングで、ニューヨークの国連本部で開かれている国連総会の一般討論演説でロシアのウクライナ侵攻などに触れつつ「『人間の尊厳』が尊重される国際社会を」と訴えたことから、SNSはツッコミと批判で炎上中。
《杉田水脈議員を政務官にしたり、「政府に記録がない」と逃げたり。言行不一致も甚だしい》《差別発言を繰り返す杉田水脈を政務官に任命した癖に》《国連まで出かけて人間の尊厳を唱える岸田には、法務省に人権侵害を指摘された杉田水脈についての見解を伺いたい》《岸田首相、人間の尊厳を言うなら杉田水脈を最低限自民党から追放しろよ》などと、責任を問う声で溢れている。
●野党の顔となった日本維新の会、令和版「昭和維新」を目指しかねない不安 9/21
大阪と仲が良くない京都で維新議員が誕生した驚き
私は京都人です。1980年から横浜市に住んでいるので、横浜暮らしのほうが長いのですが、いまだに高校野球は京都の高校を応援します。そんな京都人がびっくりしたのが、京都で日本維新の会の国会議員が誕生したことでした。
正直、京都人と大阪人は仲がいいとはいえません。京都人は大阪人を庶民的だと思い、大阪人は京都人をお高くとまっていると考えています。だから、「大阪ナショナリズム」ともいうべき大阪維新の流れを組む日本維新の会の国会議員が京都で誕生するとは、夢にも思っていませんでした。
そして、同時にこうも思いました。京都で当選するなら、日本維新の会は東京も制覇するかもしれない。つまり、政権政党になりうるかもしれないと。
私は大阪維新という政党ができたとき、ちょっと面白いなと思っていました。関西人は東京嫌いです。京都で共産党が強いのも、「反東京=反自民」という心情があるからだと思います。またドイツでは、同じキリスト教系の保守政党でも、キリスト教民主同盟とキリスト教社会同盟というように、仲の悪いプロイセン地域とバイエルン地域で別の二つの政党が生まれ、連合して政権運営をしていたことがありました。あんな風に地域政党の連合体になったほうが、自民党の中央集権的体質が変わる、そんな風に考えたからです。
しかし、大阪維新はともかく、日本の維新を唱えるには、彼らの政策は新味もなく、ただ過激な言葉が並んでいるにすぎないように見えます。
私には彼らが掲げる「維新」という言葉が、日本を西欧の植民地化から救い、徹底的な封建制度の廃止と近代化への道をつくった「明治維新」を目指すものなのか、大陸侵略で行き詰まったあとの愛国主義(ヘイト)に凝り固まった「昭和維新」を目指しているのか、わからなくなってきました。
確かに明治維新には、市民革命などではなく、薩摩や長州など、関ヶ原の合戦に敗れた雄藩による江戸幕府の打倒、武力革命という側面がありました。関西・大阪という地域で、かつての藩主に近い知事や市長中心の政党が東京から政権を奪取するなら、新しい日本をつくる、明治維新に近い「革命」ということになります。
しかし、明治維新との整合性は、これくらいしか見つからないのです。一方、昭和維新との整合性はどうでしょうか。昭和維新といってもピンとこない読者も多いでしょう。日本が満州事変から日中戦争へと大陸に引きずり込まれ、経済は疲弊し、政党政治が混乱している時期、陸軍や海軍の一部の「改革派」が唱えたのが「昭和維新」でした。
維新の会に感じるのは 明治維新ではなく「昭和維新」
日本維新の会を見ていると、この「昭和維新」の空気を感じてしまうのです。それは、かつての党首・橋下徹氏の従軍慰安婦肯定論のような、わかなりやすいタカ派議論からだけではありません。
以下は、政治学者のローレンス・ブリット氏が「ファシズムの14の特徴」について列挙したものです。
   1) 強大で執拗な国家主義の宣伝
   2) 人権の重要性の蔑視
   3) 団結のための敵/スケープゴートづくり
   4) 軍隊の優位性/熱烈な軍国主義
   5) 性差別の蔓延
   6) マスメディアの統制
   7) 国家の治安への執着
   8) 宗教と支配層エリートの癒着
   9) 企業権力の保護
   10) 労働者の力の抑圧もしくは排除
   11) 知性と芸術の軽視と抑圧
   12) 犯罪取り締まりと刑罰への執着
   13) 縁故主義と汚職の蔓延
   14) 不正選挙
1番目の「執拗な国家主義の宣伝」については、読者の皆さんも、彼らの演説やSNSを参照すればわかると思います。2番目の「人権の重要性の蔑視」に関しても、これでも議員かという低レベルな言動が目立ちます。以下は、これまでメディアで報じられた維新関係者の不祥事です。
[梅村みずほ・参議院議員] 入管施設で亡くなったスリランカ人女性をめぐり、「ハンスト(ハンガーストライキ)によって亡くなったのかもしれない」と発言し、「人権感覚を疑う」と炎上。6カ月の党員資格停止処分。
[丸山穂高・元衆議院議員] 北方領土で「戦争で島を取り返す」などと発言。酒席で「おっぱい! おっぱい! おれは女の胸をもみたい」といった発言もあり、除名処分に。
[笹川理・大阪府議(元府議団代表)] 同じ維新の女性市議にパワハラやストーカー行為をしていたと判明。一時は厳重注意だったが、その後に性的関係を迫るLINEも発覚し、最終的に除名処分に。
[藤間隆太・飯塚市議] 福岡県飯塚市議会で市の男女共同参画に関する啓発を巡り、無所属の女性議員を名指しし、「セーラー服を着て、PR動画を投稿すれば再生数を稼げる」と述べた。藤間氏は市議会でただ一人の維新議員で、取材に対して「失言だった。注意したい」と謝罪。
現代表までセクハラ発言 垣間見えるファシズムの特徴
3番目の「団結のための敵/スケープゴートづくり」については、何度も繰り返した大阪都構想選挙がよくわかる例です。
5番目の「性差別の蔓延」については 人権感覚を疑う失言をした議員たちの例を見れば、同じだということもわかります。大体、現在の代表の馬場伸幸氏自身がセクハラ発言をしています。京都タワー前(京都市下京区)の街頭演説で、参院選比例代表に擁立予定の新人女性の名前を間違えた際、「あまりにかわいいので間違えた」と発言しました。
また石井章参院議員は、栃木県日光市で開かれた女性候補の事務所開きで「顔で選んでくれれば1番を取る」と容姿に関する発言をし、厳重注意を受けていたにも関わらず、その後、茨城県牛久市の街頭演説で、参院選茨城選挙区に同党から出馬を予定する新人女性を紹介する際に「あまり顔のことを言うとたたかれるから言えない」と居直る始末。男女差が世界の中でもひどいといわれる日本で、その改革に挑む政党の幹部の発言とは思えない有様です。
6番目の「マスメディアの統制」は、橋下徹氏や吉村洋文・大阪府知事の、会見は開くものの質問にはほとんど答えないか、はぐらかす様子を見ればよくわかります。
すでに14の項目の6番目まで、4番目の「軍隊の優位性」を除けば、すべてファシズムの特徴に合致しています。
8番目以降については、まだ政権に就いたことがないので判断できない点もありますが、10番目の「労働者の抑圧」については、大阪府による保健所のリストラが激し過ぎたため、コロナ禍で犠牲者を増やす原因なったことが思い起こされます。そして11番目の「知性と芸術の軽視」については、文楽への補助金の廃止などが当てはまります。
まるでブリット氏は、日本維新の会を見て「ファシズムの14の特徴」を挙げたとしか思えません。
金銭に関する不正も 呆れた言動の背景とは
そして、この政党に多いのが金銭に関する不正です。これについても、メディアで報じられた維新関係者の不祥事を挙げてみましょう。
[中条きよし・参議院議員] 年金保険料の一部313万円を未納。
[上西小百合・元衆議院議員] 政治資金にまつわる疑惑。国会を病欠したはずが、居酒屋で3軒はしご酒をしており、除名処分に。
[下地幹郎・衆院議員] カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業の汚職事件を巡り、贈賄の疑いが持たれている中国企業側から現金100万円を受領したことを認めたものの、辞職せず。
[光本圭佑・元尼崎市議] 会派の同意を得ずに政活費250万円を引き出し、購入したパソコンなどの納品書を偽造。本人は幹事長を務めるが、250万円の支出について議会事務局が会派に確認したところ、大半の議員は知らなかった。
[松尾翔太・元吹田市議] 会派の口座から政務活動費を13回引き出し、同額を入金する処理を3間繰り返していた。
[池下卓・衆院議員] 地元の大阪府高槻市議だった男性2人を市議の任期中に公設秘書として採用。2人が兼職していた期間はそれぞれ約4カ月〜約1年半で、いずれも税金が原資の秘書給与と議員報酬を二重で受け取っていた。うち1人は2022年中に総額約2000万円の報酬を得ていた。
とにかく公募で急拡大を目指したため、政策立案や勉強より「見た目」を重視した候補者選びが先行していることが、不祥事続発の大きな要因の1つでしょう。しかし、ここで挙げたのは、報じられた問題議員の3分の1程度に過ぎません。あまりにセコい、馬鹿馬鹿しい失言と不正で、これでも議員になれるのかと考えざるをえないほどです。
極めつけは、殺人未遂犯が公設秘書になっていたことでしょう。前出の梅村参院議員の公設第一秘書となっていた人物が、過去が発覚して一度は辞職したものの、党職員として復活就職しているという事実が報じられました。
いやはや、すごい倫理観です。考えてみれば、私は編集局長時代、松井一郎氏の裏口入学疑惑を報じましたが、彼はその記事の正誤については応えずじまい。ただ、文春がいまだに告訴されていないことは事実です。
「ホワイト」に見える吉村洋文氏も、かつて弁護士時代、消費者金融武富士のビジネスを記事にした記者に対して総額2億円の損害賠償を訴える「スラップ訴訟」に参加していたと報じられたことを、忘れてはいけません。巨額の報酬を得たこのスラップ訴訟については、弁護士会から厳しい追及の声が上がりました。
また、元祖維新の橋下徹氏は、弁護士時代、『週刊現代』の連載で、田中真紀子氏の長女の離婚記事の仮処分差し止め(簡単にいうと、発禁)を「当然」であると発言していました。
政治家になってからは、この考えを撤回していますが、橋下・吉村両氏はマスコミを威圧することに対して抵抗感がない人物であることにも注目しておくべきでしょう。
不祥事が報道されても 支持率が上がり続ける懸念
それにしても、なぜこれだけ不祥事が報道されるのに、維新は支持率が上がり、党勢が拡大しているのでしょうか。多くの国民が「維新」「改革」「公務員の削減」といったイメージ先行のスローガンに魅せられているか、自民党のひどさに呆れて「第二自民党」としての期待をかけているからだと思われます。
しかし、維新の会は第二自民党ではありません。自民党はかなり独裁的にはなりましたが、いまだに代議制民主主義の枠の中にある保守政党であり、ファシズム政党、つまりは独裁を肯定するような政党ではないからです。私自身、自民党から一度は政権を剥奪すべきだと考えていますが、その替わりを維新が務められるとは思えないのです。
日本維新の会の勢力拡大が、令和版の「昭和維新」に繋がりかねない不安を感じているのは、私だけでしょうか。
●岸田政権「辞任ドミノ」再来も…加藤鮎子・小渕優子・土屋品子に醜聞続出 9/21
内閣改造・党役員人事から1週間が経過したが、早速、起用された女性3人のスキャンダルが噴出している。岸田首相は「女性登用」をアピールし、低迷する内閣支持率の回復を狙ったが、完全に裏目に出た格好だ。
問題大臣の筆頭は、当選3回で抜擢された加藤鮎子こども政策相だ。日刊ゲンダイの調べで、加藤氏が代表を務める資金管理団体が実母に家賃名目で政治資金計900万円を還流させていた問題が発覚。加藤氏は19日の会見で、実母への家賃拠出は問題ないとの認識を示した上で「あらぬ誤解を受けることのないよう適切な対応を取っていきたい」と語った。
加藤こども政策相に“出所不明金”疑惑浮上
加藤氏の「政治とカネ」を巡って、また新たな疑惑が浮上した。すでに加藤氏の資金管理団体が、関連政治団体「鮎友会」に、法律が定める上限を超える250万円分のパーティー券を購入してもらっていた問題が明らかになっているが、改めて鮎友会の収支報告書を精査すると“出所不明”の資金が浮かび上がった。
2021年の収支報告書によると、鮎友会は10月1日にパー券購入名目で資金管理団体に250万円を拠出(※加藤事務所は「寄付として処理すべきだった」と釈明済み)。
ところが、収支報告書を確認すると、前年からの繰越金約139万円のうち、10月1日までに約104万円を支出しており、250万円も支払う原資が残されていないことが分かる。10月1日時点の残金は約35万円で、250万円の資金の出所が不明なのだ。“裏金”と疑われても仕方ない状態だ。
加藤事務所に問い合わせたが、締め切りまでに回答はなかった。
小渕元経産相と土屋品子復興相にも「政治とカネ」問題が
問題は加藤氏だけじゃない。党の選対委員長に就任した「ドリル優子」こと小渕元経産相にも、また「政治とカネ」が持ち上がっている。
「週刊文春」最新号によると、21年衆院選に伴う小渕氏の選挙運動費用収支報告書に添付された領収書のうち、20枚が宛名欄が空白。金額は計20万円にも及ぶという。これでは、誰が何を買ったのか全く分からず、選挙と無関係な領収書が紛れている可能性も否定できない。他人宛ての領収書を不正使用した疑いも残る。
3人目は土屋品子復興相だ。土屋氏が代表を務める資金管理団体は11、12年には月10万円、13年は月5万円を家賃名目で、選挙区の埼玉から離れた都内の不動産会社に支出している。「週刊新潮」最新号によれば、土屋氏は過去にフラワーアレンジメント教室を都内で主宰。そのための家賃を政治資金で賄っていたというのだ。
この「3女性」は今後、岸田政権の足かせになる可能性が高い。
「総理は、女性閣僚の数を過去最多タイの5人にするために、ロクに“身体検査”せずに入閣させたのではないか、とみられている。このままでは、昨年末に起きた閣僚の『辞任ドミノ』の再来となる可能性もあります。とくに加藤さんの家族への政治資金還流は、辞任に追い込まれた寺田元総務相、秋葉元復興相の2人がやっていたことと全く同じです。放っておくと、岸田政権の火種になりかねません。自民党内はてんやわんやになっているようです」(官邸事情通)
誰が辞任第1号となるのか。
●愚策の嵐。名ばかり経済対策で39兆円をムダにした岸田 税金泥棒政権 9/21
昨年10月、「物価高克服、経済再生実現のための総合経済対策」として39兆円の総合経済対策を閣議決定し、「未来に向けて経済を強くしてまいります」と高らかに宣言した岸田首相。しかし1年近くが経過した今、ほどんどの国民がその効果を感じ取ることができていないのが現状です。そんな岸田政権の政策を「39兆円をドブに捨てたも同然」と一刀両断するのは、人気ブロガーのきっこさん。きっこさんは今回「きっこのメルマガ」で、そのように判断せざるを得ない理由を詳しく解説するとともに、「税金泥棒政権」に国民が実感できる経済対策などできるはずもないと厳しく批判しています。
何をやってもこの有り様。税金泥棒政権がドブに捨てた39兆円の血税
もう息が切れそうなほど続いている値上げラッシュですが、食料品や日用品だけでなく、多くの消費者が苦しんでいるのが、電気代やガス代などの光熱費です。そして、このメルマガでも、2022年11月2日配信の第189号で詳しく取り上げましたが、岸田文雄首相は昨年10月末、「総合経済対策」を閣議決定し、「物価対策と景気対策を一体として行なう」と宣言しました。
当事の岸田首相の説明では、「事業規模72兆円、財政支出39兆円の大型対策によって、GDPを4.6%押し上げ、消費者物価を1.2%以上引き下げる」とのことでした。しかし、約1年が経過した現在、GDPは実質で1.2%、名目でも2.7%しか伸びていません。そして、消費者物価に至っては「1.2%以上の引き下げ」どころか、シャレにならないほどの値上げラッシュが絶賛継続中です。
多くの経済学者が提言していたように、消費税を1年限定で減税していれば、どちらの目標も余裕でクリアしていた上、予算も半分で済んだのに、いかりや長介さんも草葉の陰で「ダメだこりゃ!」と嘆いていることでしょう…なんてのも織り込みつつ、この時に岸田首相が鳴り物入りで発表したのが、「電気・ガス・ガソリンの負担軽減策」で、その内容は「1家庭当たり総額4万5000円の支援をして国民の暮らしを守る」というものでした。具体的には、今年の1月から9月までの電気代とガス代を、全国すべての世帯に対して、1世帯当たり月額5000円、9カ月で計4万5000円ほど補助すると言うものでした。
しかし、その中身を細かくチェキしてみると、毎月5000円の補助の内わけは、電気代が約2100円、ガス代が約900円、ガソリン代が約2000円なのです。そして、これは、たくさん電気やガスを使っている4人世帯を基準としていたのです。そのため、あたしのような母さんとの2人暮らしとか、日本で最も多い単身世帯とかでは、補助額は大幅に低くなってしまうのです。
そして、車を持っていない世帯、持っていてもほとんど乗らない世帯は、毎月約2000円のガソリン代補助はまったく受けられません。しかし、それぞれの使用量に対して補助額が増減するというのは、ま、一応はスジが通っています。でも、あたしがどうしても納得が行かなかったのが、ガス代の補助でした。岸田首相は、ガス代の補助が受けられるのは「都市ガスだけ」と差別をしたのです。
資源エネルギー庁の公式データによると、全国の都市ガスの需要は約2900万世帯で全体の53%、プロパンガスの需要は約2500万世帯で全体の44%です。都市ガスのほうが若干多いとは言え、44%を占めるプロパンガス世帯を丸ごと無視しておきながら、岸田首相は一体どの口で「国民の暮らしを守る」などと抜かしたのでしょうか?
トリガー条項と二重課税の是正で31円も安くなるガソリン価格
ちなみに、あたしの実家は東京23区内にありますが、未だに都市ガスが整備されていないため、ずっとプロパンガスを使って来ました。そして、ここで母さんと2人暮らしをしていた時期は、過去20年に渡って、毎月のガス代はだいたい3000円前後でした。しかし、この2年間で、わが家が契約しているプロパンガス屋さんは3回も値上げをした上、使用しなくても払わなきゃならない基本料金まで2回も値上げしたため、現在は5000円前後になってしまいました。それなのに、都市ガスではないため補助はゼロです。
あたしは、少しでも電気代を節約するために、電気炊飯器は使わず、土鍋をガスに掛けてご飯を炊いています。でも、ここまでガス代が高くなってしまうと、炊飯は毎日のことなので、チリも積もればで、それなりの金額になってしまいます。そこであたしは、愛用のコールマンのツーバーナーを使い、庭先でご飯を炊くことにしました。このツーバーナーは、横に長い2口のガスコンロみたいなもので、土鍋でご飯を炊きながら、もう1つのバーナーでお味噌汁を作ったりできるスグレモノです。
もともとはホワイトガソリンが燃料でしたが、ホワイトガソリンはバカ高い上に手に入りにくいので、普通のレギュラーガソリンも使えるようにノズルを改造して、もう30年も愛用して来ました。でも、このツーバーナーでご飯を炊き始めたあたしを待っていたのが、毎月毎月のガソリンの値上げでした。岸田首相が「ガソリンの負担軽減策」を発表した昨年10月には、1リッター150円前後だったレギュラーガソリンが、今年6月から16週連続で値上がりし、先月にはとうとう185円に達してしまったのです。これじゃあ、プロパンガスを使おうがガソリンを使おうが五十歩百歩で、もはやあたしには手の打ちようがありません。
そして、このシャレにならないガソリン価格の高騰に対して、岸田首相が取った政策と言えば、「ガソリン補助金の延長」という、その場しのぎのショボすぎる愚策。これで10円ほど安くなり、170円台になると言われていますが、どうして岸田首相はトリガー条項を発動しないのでしょうか?トリガー条項とは、ガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた際に、政府が租税特別措置法に基づきガソリン税を引き下げられる特別措置で、発動すれば1リッター当たり25円も安くなります。
さらには、現在のガソリン価格は、ガソリン自体の価格にガソリン税や石油税など複数の税金が課せられた上、そのトータルの金額に消費税が課せられると言う二重課税になっています。正確には二重課税とはちょっと違うのですが、この二重取りのイカサマを是正して、ガソリンの本体価格にだけ消費税を課すようにすれば、1リッター当たり約6円ほど安くなります。つまり、何兆円もの予算を投じなくても、トリガー条項と二重課税の是正で31円も安くなるのです。
あたしは、補助金によるガソリン価格の引き下げには反対で、あくまでも税制による引き下げを行なうべきだと思っています。それは、まったく恩恵を受けられない国民が数多くいるからです。ガソリン価格が引き下げになれば、大排気量の高級車を乗り回しているお金持ちは、毎月何千円もの恩恵を受けますが、自転車しか持っていない庶民には何の恩恵もありません。
何を期待してもムダな岸田「税金泥棒内閣」
細かいことを言えば、ガソリン価格は物流を通して商品価格に反映される場合があるので、「何の恩恵もない」とは言い切れません。でも、こういうのってエコカー減税と同じで、ものすごく不公平だと思うのです。たとえば、軽自動車や小型のEV車とかだけにエコカー減税が適用されているならまだしも、トヨタの最高級車、1台2000万円もするセンチュリーにもエコカー減税が適用されているのですよ。こんな車、庶民は誰も買えません。それなのに、あたしたち庶民から巻き上げられた税金が、こうした高級車をポンと買えるお金持ちの「割引」に使われているのです。ふ・ざ・け・ん・な!と言いたいです。
物価高騰を前提とした消費者への支援策を行なうのであれば、電気代はこうする、ガス代はこうする、ガソリン代はこうする…というような個別の対策ではダメなのです。それは、恩恵を受けられる人と受けられない人が出て来てしまうからです。政府の重要な仕事の1つとして「税の公平な再配分」がありますが、こうした支援策の原資も税金であることを踏まえれば、支援も公平でなければなりません。
そして、それには、「時限的な消費税の減税」という、もっとも効果が見込め、もっとも余計な予算が掛からず、もっとも消費者が実感できる完璧な政策があるのです。累進課税の減税は、貧困家庭から富裕層まで公平に恩恵を受けることができるだけでなく、消費者の購買意欲も刺激します。たとえば、時限的に1年間だけ消費税を10%から5%に引き下げれば、買うことをためらっていた高価な商品も次々と売れて行き、景気自体が上向きになります。
岸田首相は、39兆円もの莫大な予算を投じた「総合経済対策」で、GDPの成長にも消費者物価の引き下げにも失敗し、何の結果も出せませんでした。しかし、1年間だけ消費税を5%に引き下げるという時限的減税政策なら、その4分の1の予算、10兆円で大きな結果を出すことができたのです。
でも、赤ちゃんの紙オムツから女性の生理用品まで、贅沢品と同じ税率の消費税を課している「税金泥棒政権」ですから、消費税の引き下げなど議題にも上げないでしょう。それに、自民党の国会議員の多くが、国民から徴収した税金を「自分たちの海外旅行の費用」くらいにしか思っていないのですから、今の政権に国民が実感できる経済対策など、逆立ちしても無理でしょうね。 

 

●おぞましい発言は男性差別? 副大臣・政務官の女性ゼロ巡る物議 9/20
岸田政権の内閣改造で、副大臣・政務官計54人が全員男性だったことに「女性活躍への逆行だ」などと批判が相次いでいる。朝日新聞の論説兼編集委員の高橋純子氏は民放番組で「おぞましい」と述べた。一方、高橋氏の発言にも「男性差別だ」などと反発する声がインターネット上で多数出ている。なぜ、このような事態になるのか。
高橋氏は17日放送のTBS系報道番組「サンデーモーニング」に出演。副大臣・政務官への女性起用がゼロだったことについて、「54人全員スーツでネクタイの男性だけが並んでるって、非常におぞましいですね」と発言した。
さらに、男性だけが並んだ副大臣と政務官の映像について「あれを世界に流されるっていうことが、日本という国がどれだけ遅れた国なのかということを世界にアピールしてしまったと。非常に責任は大きいと私は思います」と述べ、岸田文雄首相を厳しく批判した。
これに対し、自民党の和田政宗参院議員は自身のX(ツイッター)に「女性が立候補しやすい環境づくりが重要であり、“おぞましい”は本質を見ない差別発言でしかない。極めて恣意(しい)的な発言だ」と投稿。1万7000以上の「いいね」がついた。
他にも「なぜスーツでネクタイ姿の男が並んでいる事が『おぞましい』のか。公共の電波を使ってこんな“差別発言”をしても問題にならないのか。逆ならどうなる? 男は我慢しろって?」などと発言を問題視する書き込みが並んだ。
「女性たたきのハードル、低くなった」
ジェンダー問題に詳しい作家の北原みのりさんに話を聞いた。高橋氏とは同世代という。
「『またか』という思いと、『この程度で?』という驚き。まず感じたのは、この二つです」。今回の事態について、北原さんはまずこう切り出した。
ジェンダー平等を女性が訴えると、それに対するバックラッシュ(反発)がこれまでも起きてきた。今回も同様の構図という意味で「またか」だという。
「でも、これぐらいの発言でも攻撃されるのかと。女性たたきのハードルが低くなっているように思えてならず、非常に恐ろしいと感じます」
「男性差別だ」という主張の裏には、男女間の格差解消やジェンダー平等を求める声を「自分への攻撃」と受け取る男性の存在がある、と指摘する。今回の批判コメントの中には、「女性ばかりになった時には『おぞましい』と言わないはずだ」というものもあった。
だがこうした仮定は「ファンタジーだ」と北原さん。「今、そういうことが起きてないし、起きうる状況でもない。そうした仮定を立てることに全く意味がありません」
「娯楽のように捉える風潮」
高橋氏に対しては、「思い上がりすぎ」「どれだけ自分を偉いと思ってるか知らないけど、偉くも無いのに偉そうに言うやつ大っ嫌い」などとコメンテーターとしての資質を問う批判もあった。
北原さんは「おぞましい」という言葉の選択について、「強い言葉だというのは、言葉尻だけを捉えれば、そうかもしれない」と話す。だが、あくまで男性ばかりが起用されている「状況」を指してのことであり、そうである以上、まっとうな批評だと指摘。そしてそれは文脈を踏まえれば明らかだという。
にもかかわらず、ネガティブなコメントが相次いだ背景には「女性たたき」をある種の娯楽のように捉える風潮があるのではないか、とみる。
例えば、と挙げたのが、高橋氏のコメントを報じたメディアの報じ方だ。あるスポーツ新聞は「嘲笑」という見出しをつけ、記事を配信していた。
「映像を見れば分かることですが、高橋さんはあの時、政府の姿勢にあきれ、悲しみ、怒っていました。しかし、それを『嘲笑』と言い換えることで、『大企業である程度の地位を得た女が意見を言うことへの嫌悪』みたいな空気をメディアも作っていないでしょうか」
また高橋氏が朝日新聞に所属していることも、攻撃的なコメントが多発した要因になっているという。北原さんいわく「『女性でリベラル』というのが一番たたきやすい構造になっている」からだ。
「仮に『おぞましい』と発言したのが男性だったり、あるいは保守的なメディアの人であったりすれば、ここまで攻撃的なコメントが増えることはなかったと思います」
「変わるべきは意識」
政務官・副大臣への女性起用がゼロだった一方、今回の内閣改造では過去最多となる5人の女性閣僚が誕生した。だが岸田首相が「ぜひ女性ならではの感性や共感力を十分発揮していただきながら、仕事をしていただくことを期待したい」と述べると、「時代遅れ」「ステレオタイプな考え方を助長する」などと批判が殺到した。
北原さんによると、ジェンダー平等に向け、制度面の整備は近年進んできた。だが、こうした首相の発言や今回の事態から浮かび上がるのは、人々の意識がまだ追いついていないという現実だという。
「変えなくてはならないのは制度だけではなく、それを運用する人たちの意識もです。ですが意識の方は、やっぱり時間がかかるのだということを改めて突きつけられた思いです」
●中国、日本のEEZ内勝手にブイ$ン置 発見から2カ月、「弱腰」公表遅れ 9/20
習近平国家主席率いる中国が、沖縄県・尖閣諸島周辺の日本のEEZ(排他的経済水域)内に勝手にブイを設置していた。松野博一官房長官が19日の記者会見で、今年7月に確認して中国に抗議したことを明らかにした。中国は2013年と18年にも同様の行動に出て、日本政府は抗議している。過去に見つかったブイは直径、高さとも10メートルと巨大で、アンテナを備えていた。海上自衛隊の潜水艦情報の収集・分析などが目的とみられていたが、今回発見されたブイの目的は何なのか。中国海警局船は連日のように尖閣周辺に侵入しており、黒い野望でも燃やしているのか。岸田文雄首相は13日、第2次岸田再改造内閣を発足させたが、ブイの存在公表が2カ月後だった「対応の遅さ」「弱腰」も批判を集めそうだ。
「わが国のEEZに同意なく、構造物を設置することは国連海洋法条約上の関連規定に反する」「関係省庁で緊密に連携し、警戒監視に万全を期す。毅然(きぜん)かつ冷静に対処していく」
松野氏は記者会見でこう述べた。中国には外交ルートを通じて抗議し、即時撤去を求めたという。
外務省などによると、ブイは尖閣諸島の魚釣島の北西約80キロにあり、日中中間線の日本側に位置している。黄色でライトが付いており「中国海洋観測浮標QF212」との表記があるため、中国が設置したと判断した。
海上保安庁は7月15日、船舶の安全確保のため、航行警報を出して注意を促した。
中国が、東シナ海の日本のEEZ内にブイを設置したのは、今回が初めてではない。13年と18年、尖閣に近い日中中間線付近の日本側に設置されているのが確認されている。
いずれも多数のアンテナを備え、18年に見つかったものは直径、高さとも約10メートルという「巨大ブイ」だった。アンテナの存在から、艦船の航行に影響する気象観測や、海中の音波を測定することで自衛隊の潜水艦を識別する固有のスクリュー音などの収集・分析を進めている可能性もあるとみられてきた。
今回発見されたブイの詳細は公表されていないが、読売新聞は18日、地球観測衛星の画像をもとに「直径10メートル程度のブイとみられる物体が確認できるようになった」と報じている。
中国の新たなブイをどう見るか。
東海大学海洋学部の山田吉彦教授は「ブイを用いて海流など海域の情報収集や、潜水艦情報を収集するソナーを設置することも可能だ。ただ、一番の目的は、ブイを設置することで、その周辺海域を『常時管理』しているという既成事実をつくることではないか。中国は現在、フィリピンやベトナム、台湾など、警戒する領域が増え、尖閣周辺に中国海警局船を満足に入れられていない状態だ。ブイはその代わりの役割を果たしている可能性がある」と話す。
中国は南シナ海の岩礁を軍事基地化するなどして、同海ほぼ全域で自国の権利を主張している。最近では、南シナ海のスプラトリー諸島(南沙諸島)周辺で、領有権を争うフィリピンと、ブイ設置の応酬を繰り広げている。さらに退役軍人らも加わる「海上民兵」を派遣して、周辺国を威圧している。今回の東シナ海での動きを警戒する見方もある。
中国事情に詳しい評論家の石平氏は「日本、米国、インド、オーストラリアによる戦略的枠組み『QUAD(クアッド)』や日米韓の関係強化など、中国包囲網による封じ込めが強まるなか、中国は海洋進出に向けて焦りを感じている。ブイの設置は、中国が権益拡大のため『既成事実をつくる』という一貫した方針の中での一つの動きだろう。『尖閣諸島領有化』の前段階として警戒しておくべきだ」と危険性を指摘する。
気にかかるのは、岸田政権の対応だ。
ブイを発見したのが7月にもかかわらず、公表したのは約2カ月後の9月である。岸田政権は、中国が尖閣諸島の領有権を主張するような新地図(8月28日公表)に抗議しておきながら、夕刊フジが取材をかけた翌日(今月5日)まで「抗議の事実」を公表しなかった。「中国を刺激しない」方針なのか。
山田氏は「今になってブイ設置が浮上したのは疑問だ。設置されたのは日中中間線の絶妙な位置とされ、中国としては日本が行動をとりづらい状態にする思惑もあったのかもしれない。ただ、日本は本来、確認された時点で即時撤去し、何が目的なのか、すみやかに調査すべきだった」と語っている。
●イギリス史上最悪の首相? お馬鹿な「最短命」首相が、表舞台に戻ってきた 9/20
「彼女ほど恥知らずな政治家はいない。あるいは芸術的に自己認識を欠いているとでも言うべきか。史上最低の英国首相という称号で人気者になることを想像してみてほしい。デービッド・キャメロン、テリーザ・メイ、ボリス・ジョンソン、リシ・スナクよりひどい。普通の感覚を持った人間なら永遠に石の下に隠れてしまうところだ」
左派系英紙ガーディアンの議会担当ジョン・クレイス記者は、約1年前の秋に財源の裏付けがない恒久減税策(ミニ予算)をぶち上げ、英国衰退のフタを開けた与党・保守党のリズ・トラス前首相がロンドンのシンクタンクで講演したことを容赦なくこき下ろした。確かに、ここまで自己認識を欠いた政治家は日本にもいまい。
「彼女のミニ予算が経済を破綻させ、国に数十億ポンドの借金、住宅ローンに数千ポンドを上乗せした。自党に屈辱的な辞任を求められるまで英国史上最短の49日間しか首相を続けられなかった彼女は何も後悔していない。すぐにでもすべてをやり直したいと思っている。ナルシシズムは最近の首相に見られる特徴だが、彼女の妄想は膨れ上がる」(クレイス氏)
英国の秋は各党の年次党大会が開かれる「政治の季節」だ。政党支持率で保守党は欧州連合(EU)離脱の悲惨な現実、コロナ後遺症、インフレ、エネルギー危機、ウクライナ戦争による困窮で最大野党・労働党に20ポイント前後の大差をつけられる。それでも賭けに出ず、安全運転を続けるスナク首相に対する保守党内の不満にトラス氏は火を放とうとしている。
「25年にわたる経済的コンセンサスが停滞を招いた」
トラス氏は演壇に立った理由について「自分が首相官邸に戻りたいからではない」と断ったものの、保守党内に再びEU強硬離脱派のマグマが渦巻いていることをうかがわせた。次期総選挙は2025年1月までに行われる。強硬離脱派が「政界の道化師」ジョンソン元首相やトラス氏を担いでスナク氏を引きずり下ろすタイミングはこの秋しか残されていない。
しかし保守党十八番の内輪もめは労働党のキア・スターマー党首を利するだけだ。トラス氏は「成長至上主義」を掲げて首相になり、無謀すぎる予算を組んでアッという間に国債市場から退場させられた。英国の政府債務は国内総生産(GDP)の100%を超える。海外の国債保有者やインフレ連動債(いずれも約25%)が多く、財政は脆弱だ。
英国財政の信認を支える予算責任局(OBR)のリチャード・ヒューズ局長は「政府が現在の政策を続ける場合、300%程度まで上昇する」との警鐘を鳴らし続けている。「インフレ税」による政府債務(対GDP比)の低減という究極の手段が使えない英国には「増税・歳出削減」という茨の道しか残されていない。
その教訓から学べなかった浅はかなトラス氏は「英国の平均的な国民は米国より9100ポンドも貧しい。このような問題を引き起こしたのは25年にわたる経済的コンセンサスが停滞を招いたためだ。将来さらに深刻な問題を避けるためには、経済的コンセンサスを打ち砕く必要がある」との持論を繰り返した。トラス氏の言う経済的コンセンサスとは何なのか。
競争に重きを置く米国は政府支出の割合が低い
「1980年代や90年代に比べて英国はよりコーポラティズム的な(競争より協調を重視する)社会民主主義国家へと移行した。政府支出はGDPの46%を占めるようになった。ギリシャとスペインを除けば、これほど国家支出が伸びた国は欧州にはない。規制の負担も昨年だけで100億ポンドと増大している」などとトラス氏はネオケインズ主義や環境主義を切り捨てる。
先進国では対GDP比の政府支出はフランス58%、イタリア57%、ドイツ50%、日本45%、米国37%(統計会社トレーディング・エコノミクス)。確かに競争に重きを置く米国では政府支出の割合が低く、協調を重視するフランスは高い。「西側が冷戦に勝利した後、私たちはみな楽観的で明るい未来に目を向け、自由市場から目を離した」とトラス氏は言う。
トラス氏が唱える「3つの矢」は(1)減税(2)構造改革(3)福祉の切り詰め、年金受給年齢の引き上げなど公共支出の抑制である。しかし高齢者の割合が大きくなる国が競争力を取り戻すのは難しい。公共サービスの効率性を上げることができない限り、年金・医療・介護の支出は膨らみ続け、教育や研究・開発への投資は抑えられるからだ。
元保守党上院議員の実業家マイケル・アシュクロフト氏が私財で実施している世論調査では72%が「英国は壊れている。人々はより貧しくなり、何もかもが適切に機能していない」と回答した。英国が壊れていくように感じるのは実質賃金がずっと上がらないことや、警察、原則無償で診療が受けられるNHS(国家医療サービス)の機能低下が主な原因だろう。
万引きが前年比37%も激増
エネルギー・生活費の危機で英国では万引きが前年比37%も激増。英紙デーリー・テレグラフは「食べ物を買う余裕のない人たちから注文を受けて盗みに入るプロまであらゆる種類の犯罪が起きている」と店員の眼の前で酒、菓子、剃刀、コーヒー、肉など転売価値のあるものなら何でも持ち去られる様子を伝える。NHSの待機患者数は過去最悪の768万人に達した。
世論調査会社Ipsosが7月19〜23日に実施したポリティカル・モニターでマーガレット・サッチャー以降の歴代首相が英国を良くしたか、悪くしたかを尋ねている。72%がトラス氏は英国を悪くしたと答え、良くしたと答えたのはわずか5%だった。62%がジョンソン氏は英国を悪くしたと回答、25%が良くしたと答えた。
英国を良くした首相ランキングは以下の通りだ。
(1) サッチャー46%(悪くしたとの回答は37%)
(2) トニー・ブレア42%(同36%)
(3) キャメロン29%(同45%)
(4) ゴードン・ブラウン28%(同33%)
(5) ジョン・メージャー26%(同19%)
(6) ジョンソン25%(同62%)
(7) メイ21%(同49%)
(8) トラス5%(同72%)
英中銀・イングランド銀行元総裁のマーク・カーニー氏は「民間部門での経験がほとんどなく、自由市場主義者の仮面をかぶった政治家人生を送ってきた人々は強い経済にとって使命、制度、規律の重要性を著しく過小評価している。極端な保守派には経済を動かすものに対する根本的な誤解がある」と厳しい。
総裁在任中、保守党の強硬離脱派から激しい攻撃を受けたカーニー氏は「EU離脱派は英国を『テムズ川のシンガポール(規制緩和で成功した国家)』にするという夢を達成するどころか、トラス政権は『英仏海峡のアルゼンチン(財政破綻した国家)』を実現した」と、脱炭素化経済への移行の妨げになりかねないトラス氏の主張を一蹴した。
●「100年に1度の危機」に合理性ある提言を試み尽力 尾身茂氏ら専門家 9/20
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の会長などを務め、政府に100以上もの提言をしてきた尾身茂氏(結核予防会理事長)ら専門家有志3人が9月14日、日本記者クラブ(東京都千代田区)で記者会見し、3年半余りのさまざまな活動を振り返った。
この日までにコロナ対策に関する政府関係の役職をすべて退任した尾身氏は「100年に1度の危機の中で(感染症対策の)経験を持つ人間が信じたことを言わないと歴史の審判に耐えられないと思った」「唯一、絶対の正解がない中で、できる限り科学的に合理性がある提言を試みた」などと語った。
政府は感染症対策の司令塔組織として「内閣感染症危機管理統括庁」を9月1日発足させ、「新型インフルエンザ等対策推進会議」の議長を務めた尾身氏を退任させるなど、メンバーや体制を一新した。現在流行拡大の「第9波」を迎えている最中の退任に、同氏は「第9波はまだピークに達していない。医療にかなりの負荷がかかっている」と懸念を示しながらも新体制に期待を寄せている。
会見に同席した川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は小児科医の経験から、子どもに対する配慮や感染防止の重要性を指摘。東京大学医科学研究所の武藤香織教授は医療社会学者の立場から、長いコロナ禍で偏見や差別にさらされた人が少なくなかったことに触れて、パンデミック(世界的大流行)時の人権擁護の大切さを訴えた。
2020年1月に新型コロナウイルスが国内で初確認されて以来、政府に助言、提言する専門家集団を率いてきた尾身氏。専門家の意見や提言と政府の政治判断との間には時に乖離(かいり)もあった。同氏らは政府の厳しい行動制限に科学的根拠を与えたとして時に誹謗(ひぼう)中傷も浴びた。会見を通じ3人の表情からは専門家として科学に基づいて行動、尽力してきたという自負のほか、激務から解放された安堵感もうかがえた。
社会経済負荷を最小限に、感染防止効果を最大限に
尾身氏は自治医科大学の1期生で1978年卒。僻地(へきち)・地域医療に従事した後、同大学助手などを経て90年代から世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局で感染症対策を担当し、2003年に中国などで重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した時は事務局長を務めた。20年から新型コロナウイルス感染症対策分科会長を務めてきた。
同氏は安倍晋三元首相(故人)や菅義偉前首相の記者会見に同席し、「政府の代弁者」と批判を受ける時もあった。一方、時に国会などで政府方針に対し率直な意見を述べ、厳しい注文を付けた。特に、国内旅行の費用を補助するGoToトラベルや東京五輪・パラリンピックを巡っては、尾身氏が最もこだわり重視してきた専門家と政治家のあるべき役割分担のイメージが崩れた時期でもあった。一部メディアでは「政府部内から『尾身を黙らせろ』との声が上がった」とも報じられた。その頃の同氏の苦悩は深かったとみられる。
「私たちは分科会も既に卒業しているので、記者会見でお話しするのは最後になります」。会見で尾身氏はこう前置きして用意した紙を読みながら所感を語り始めた。「今回の感染症対策は私が経験した中で最も難しかった。背景としてはウイルス側の要因に加え、人間や社会側の要因もあった。感染症対策に唯一、絶対の正解はない中で当初から社会経済への負荷を最小限にし、感染拡大防止効果を最大限にすることを目標にした」。政府とやり取りする中での具体的対策となると、一つの正解を見つけるのは極めて困難だったという。それでも「できる限り科学的に合理性があり、多くの人に理解、納得してもらうような提言を作ることを試みた」。
この試みが簡単でなかったのは、提言の根拠となるデータが不足していたこと、社会全体の共通認識が得られにくくなっていたこと、そして提言の内容や根拠が社会に伝わりにくくなったことの3つを挙げた。パンデミック初期は人々の未知ウイルスに対する不安もあり、「3密回避」などの行動制限に対してある程度、社会の共通認識はあった。新型コロナウイルスに関して当初は情報が限られていたが、次第に多くなった。そうなると人々の立場や価値観は多様になり、求められる対策に対する合意は得られにくくなったという。
専門家と政治家の役割分担、見えてきた課題
感染症対策と経済の再建との間で揺れた政府。そうした政府と専門家集団との危機感との認識のずれがあったのは間違いない。両者の認識の乖離は2020年夏に政府が始めたGoToトラベルを巡って顕在化した。
同年7月の参院予算委員会で尾身氏は「今の段階で全国的なキャンペーンという時期ではないと思います」と明言している。尾身氏が懸念した通り、同事業が始まる時期と合わせるように感染は全国に拡大していった。両者の意見の乖離、違いは21年夏に結局無観客で行われた東京五輪・パラリンピックの開催方式を巡っても見られた。
こうした経緯について尾身氏は「今回政府と専門家の役割分担について課題が見えてきた」と冷静な表現を使った。そして「政府と専門家がいつも同じ意見であるとは限らない。意見が異なることが時々あってもそれはむしろ健全で、これからの課題は専門家の提言を採用しない場合はその理由を(政府が)しっかり説明することで、それにより意思決定プロセスが明確になる」と述べた。
政治家や担当官僚とは立場は異なっても「この危機を何とか乗り越えよう」という思いは共通だったと強調している。
用意した所感の最後に「市民の皆さんにはそれぞれ大変なご苦労があった中で『接触8割削減』や『3密回避』などの感染対策に協力していただき心よりお礼をしたい」「感染症に限らず日本社会は今後もさまざまな苦難に直面することがあるだろう。その際に専門家の知見を社会でどのように活用していくのか、私たちの試みが反省も踏まえて今後のより良い対策に生かされることを祈念している」と結んだ。
やるべきことはやった経験を次世代に
3年半以上のコロナ禍を通じて尾身氏の「補佐役」だった岡部氏は小児科の出身だ。東京慈恵医科大学を卒業後、小児科医として臨床経験を積んだ。一般外来や乳児健診などに携わりながら感染症学やウイルス学の知見を深め、尾身氏より前にWHOの西太平洋地域事務局に入り、伝染性疾患予防対策課長を務めた。SARSが発生した2002年当時は、国立感染症研究所で感染症情報センター長として対策に必要な情報収集作業の前面に立っている。
岡部氏は2020年4月に政府が初めて出した緊急事態宣言について「最初は(強い行動制限に)慎重な姿勢だったが、医療の現場の友人から『重症患者や中等症の患者さんがどんどん入院してきて、このままでは医療の現場が危なくなる』と言われ、全体の医療が崩れると思って宣言に賛成した。それでもそういう形でいいのか自問自答を続けた」と振り返った。
「この病気の患者の中心は大人で、高齢者は特にリスクが高かった。専門会議のメンバーや対策に関わる人も大人の医療に関わる人が多く、対策も大人社会中心になった。このために子どもへの配慮に乏しい状況がしばしばあった。それでも(コロナ禍の一連の会議の)後半から入ってもらった小児科医による提言を生かした。子どもへの配慮もできるようになった」。子どもへの対策をどう考えるかは今後も課題として残ると訴えている。
同氏はさらに「対策に関して多様な考え方による議論が行われた。ベストアンサーがない中で多様なメンバーが誠心誠意やったとは思う。その結果、日本の死者数、致死率は高齢化社会にあっても世界的にも低く抑えられたのはいいことだったが、経済、教育の面で、また差別の問題など社会に影響が及んだ」。
所感の最後に「私たちはやるべきことはやったという思いはあるが、決して完璧ではなかった。今回の経験が次の世代(の研究者・担当者)に引き継がれて次のパンデミックに備えていくことが必要だ」と述べている。
差別や偏見の問題を改めて指摘
続いてマイクを持った武藤氏は東京大学大学院医学系研究科で博士号を取得。研究テーマは社会科学と先端医科学の相互作用で、米ブラウン大学などを経て2007年東京大学医科学研究准教授、13年から現職。医療社会学者の立場から尾身氏、岡部氏らとコロナ禍の当初から専門家会議や分科会に加わり、対策の倫理面などで独自の問題意識から積極的に発言、発信してきた。
「入ってくる情報が制限されて短時間で政策決定しなくてはならない現場だった。だからこそ生命倫理や公衆衛生倫理の原則や概念に立ち返って考えることが大事だと思った」。政策によって負の影響を受ける人、声を上げられない人の存在をできる限り想像して伝えることも役割の一つだったという。
現在は多くの人が新型コロナウイルスに感染し「ウィズ・コロナ」の社会になっている。しかし、感染者がまだ少なく、有名な芸能人が死亡するといったニュースが伝えられた頃は漫然とした不安が社会に広がり、「感染源」として感染者や濃厚接触者に対する目も厳しかった。流行初期だった2020年の初めごろ、多くの医療機関はさまざまな面で暗中模索の状況であり、院内感染や施設内感染に対する防止策は難しい時期だった。
「院内感染を起こしてしまったことに対する多くの批判が医療従事者やケア提供者らに出て、それが偏見や差別の原因になった。遊興施設でクラスターが発生するとこれも厳しい批判が出た」。武藤氏はコロナ禍の当初に見られた差別や偏見の問題を改めて強調した。
2020年7月に政府の新たな分科会ができた時に、武藤氏は差別や偏見に関する作業部会を作るよう尾身氏に要請した。その後報告書が出て新型インフルエンザ等特別措置法が改正され、同13条に国や地方公共団体の責務として「知識の普及や差別の実態把握、相談支援や差別や偏見防止のための啓発」が盛り込まれた。
「今後新たな感染症が流行した時は当初からこの法律の条文(13条)に基づいて活動が始まる。メディアの皆さんにも十分理解してもらった上で報道してもらいたい」。直接は言及しなかったが、コロナ禍のメディアの報道の仕方に反省点はなかったかどうかも検証するよう暗に求めた。
武藤氏は最後に「人工呼吸器や病床が不足した時の優先順位の決め方や、どんな時に面会やみとりの制限が正当化できるのかなど、難しい判断が求められた。多くの場合その判断は現場任せにされた。最終判断は地域や医療機関で異なるが、どのようなことを考慮して難しい判断をするかは国も(基準などを)早めに示すべきだった」と指摘し、今後の課題とした。
「第9波、冬にかけて気がかり」
尾身氏、岡部氏、武藤氏の3人が一通り、コロナ禍の3年半余りを振り返った後、大勢詰めかけた記者やオンラインで参加した記者らとの質疑応答に入った。
新型コロナウイルス感染症の感染法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に移行してから4カ月以上が経過した。感染状況に関する公表が感染者の「全数把握」から週1回、全国約5000の定点医療機関からの「定点把握」に変わり、「流行状況」は分かりにくくなっているが、専門家は「明らかに流行の第9波だ」との見方で一致している。
現在の感染状況について問われた尾身氏は「第9波はピークに達していない。まだ多くの地域で感染者が増えている。医療の現場もかなり負荷がかかっている。冬にかけて気がかりだ」と述べた。そして「この病気は若い人や体力のある人が感染してもほとんど重症化しないが、(若い人でも)後遺症の問題がある。高齢者や基礎疾患がある人など、致死率が低いにも関わらず(感染者数は多いために)死亡者が増えている。コロナはまだ終わったわけではなく、しばらく続くので社会活動を維持しながら感染対策をとっていくことが大切だ」と強調している。
岡部氏はまだ感染の波が続いていることを前提に「我々がこのような会見をするのは我々の役割に区切りが付いたということであって、新型コロナが終わったと受け止めないでほしい」「5類になったからといってコロナという感染症がもう大丈夫となった訳ではない」と釘を刺した。
脅迫を受けながら「当然やるべき仕事だった」
「3年半余りの間、前面に出て発信してきたことで脅迫や誹謗中傷にもさらされてきたと思うが、提言を出し続けてきたモチベーションや思いはどうだったのか」。記者にこう問われて尾身氏は「多くのメンバーは感染症対策に直接関わってきた。(コロナ禍という)この大事な時に、また全ての人々が大変な思いをして不安があった時に、感染症対策の経験がある者が信じたことや言うべきことを言わないのでは歴史の審判に耐えられない、責任を果たせないという思いが当初から全員にあった。経験を持つ者が当然やるべき仕事と思っていた」。
「人的被害はなかったものの段ボール1箱ぐらいの手紙が届き、多くは批判の内容だった」という岡部氏は「やるしかないだろうと思った。他のメンバーとともに誠心誠意やってきた」と語った。武藤氏は「コロナ対策をめぐるさまざまな議論から下りるのは無責任だと思った」と述べている。
「コロナとの共存」「ウィズ・コロナ」を前提とした「新しい日常は確立しつつあるか」との質問に武藤氏は「テレワークの推進など確立しつつある面もあるが、(感染防止のために混雑したところには)なるべく一斉にどこかに行かないといった注意点ではコロナ前に戻っている」と指摘した。
尾身氏は「多くの日本の方々がいろいろ大変な思いをし、辛抱した。その結果、累積死亡者も欧米より少なかった。この間日本社会のいい面もあったし課題も出てきた。感染症のパンデミックは社会、経済の全てを巻き込み、オンラインの普及が進んだ半面、差別などの問題も生じた。さまざまな面で影響が出ることが今回分かった。今回の経験を『のど元過ぎれば』とせずに、それぞれの人がそれぞれの立場から振り返って今後どうすべきかを考える良い機会だった」。
まだ続くコロナ禍、しっかりした検証を
日本国内では現時点で3000万人以上が感染し、欧米などよりは少なかったものの7万5000人以上が既に亡くなっている。厚生労働省は9月15日、全国約5000の定点医療機関から4〜10日の1週間に報告された感染者数は計9万9744人で、1医療機関当たり20.19人だったと発表した。前週比はほぼ横ばいで第9波が続いている。国内ではオミクロン株派生型の通称「エリス」と呼ばれる「EG.5.1」の検出割合が増え、全体の過半数を超えている。コロナ禍は明らかにまだ続いている。
新型インフルエンザ等対策推進会議の議長は、尾身氏から国立成育医療研究センターの五十嵐隆理事長に代わった。尾身氏が長く会長を務めてきた感染症対策分科会や基本的対処方針分科会も廃止された。5類移行後も新型コロナウイルスは勢い失わず、今後の新型コロナを巡る医療体制に対する懸念や不安の声も少なくない。
記者からは「(尾身氏らが退任して)新体制移行により感染防止対策に問題はないと思うか」との質問も出された。尾身氏らは「しっかりやってもらえると信じているし、期待している」とエールを送った。その一方で「多くの資料が残っている。これまで対策に関わってきた者として支援は惜しまない」などと話し、今後は新しい体制のメンバーが中心になり、時間をかけてこれまでのコロナ対策の検証をしっかり行うことを求めた。
●中国要人相次ぎ動静不明 習氏権力基盤の歪みか 国際会議に姿見せず…9/20
習近平国家主席率いる中国がどうもおかしい。習氏は、インドネシアでのASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議(5〜7日)や、インドでのG20(20カ国・地域)首脳会議(9〜10日)を欠席したうえ、米国で11月に開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)への参加も疑問視されている。米紙ウォールストリート・ジャーナルは、米ニューヨークで19日から始まる国連総会一般討論に、中国外交トップの王毅共産党政治局員兼外相が欠席する見通しと報じた。中国人民解放軍や外交部の幹部が相次ぎ動静不明、更迭されている。ジャーナリストの長谷川幸洋氏が、習政権の異変に迫った。
中国の李尚福国防相が、公の席に2週間以上も姿を見せず、「更迭されたのではないか」という噂が流れている。事実なら、先の秦剛外相(国務委員)の解任や、ロケット軍司令官と政治委員の交代に続く異例の事態だ。
国際会議に姿見せず、11月APEC欠席の推測も
李氏は、8月29日に北京で開かれた中国アフリカ平和安全フォーラムに出席したのを最後に動静が途絶えた。米国のラーム・エマニュエル駐日大使は9月8日、X(旧ツイッター)に「習主席の閣僚体制は、いまやアガサ・クリスティの小説『そして誰もいなくなった』のようだ」と皮肉を込めて投稿していた。
李氏は65歳。2022年の中国共産党大会で中央委員に任命され、今年3月、国防相に就任したばかりだった。
中国は何も発表していないが、国防相就任前には軍装備を調達する部門の責任者を務めていた。中国のサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は、ロケット軍司令官らの更迭を「汚職絡み」と報じており、李氏も汚職に関係していた可能性がある。
習近平氏をめぐる一連の「異常事態」は最近、世界で関心を集めている。
習氏は南アフリカで8月22日に開かれたBRICS(新興5カ国)首脳会議に参加しながら、ビジネス会合を欠席し、代わりに商務相が習氏の演説を代読した。続いて、9月9、10日にインドで開かれたG20首脳会議を欠席した。
本来なら、新興国のリーダーとして指導力をアピールする絶好の場だったはずだ。ところが、習氏の欠席で、主催国のインドが、アフリカ連合(AU)のG20加盟を主導するなど、ライバルであるインドの存在感を際立たせる結果になってしまった。
いまや、11月に米国で開かれるAPECも「欠席するのではないか」という憶測が飛び交っている。
焦りと動揺?国内の締め付け強化も
不動産バブルが弾けて、経済が崩壊の危機にある習氏は「外遊している余裕がない」という見方があったが、経済だけでなく、重要閣僚が相次いで失脚したとなると、習氏の権力基盤自体が揺らいでいる可能性もある。
要人更迭と歩調をそろえるように、習政権は国内の締め付けも強めている。
中国の国家安全部は8月21日、米中央情報局(CIA)に協力してスパイ活動をしていたとして、39歳の政府職員を逮捕した。米メディアによれば、彼は日本留学中にCIAにリクルートされ、帰国して政府に就職し、情報を盗むように唆(そそのか)された、という。
国家安全部は別の中国人もCIAに協力したスパイ容疑で逮捕している。彼はイタリア留学中にリクルートされ、中国の軍事企業に就職していた。さらに上海警察は8月、海外移住について助言する大手コンサルタント企業の女性経営者と従業員を逮捕した、とSNSを通じて発表した。国内では「移住を試みた顧客も摘発されるのではないか」という懸念が広がっている。
本欄で何度も指摘したように、正規の海外移住だけでなく、中国を脱出して、不法に米国に入国しようとする中国人も後を絶たない。一連の事態は習政権の焦りと動揺を物語る。「次に捕まるのは誰か」。政権の断末魔を見ているようだ。 
●岸田内閣の改造人事も日本の政治も、なぜ「驚くほどつまらない」のか? 9/20
改造しない方が対面を保てたのではないかと思える岸田内閣の改造人事が発表された。支持率は上がらないのに、岸田文雄首相にも自民党にも奇妙な安定感が漂っているのはなぜなのか。そして、なぜ日本の政治はここまで「つまらない」ものに成り下がってしまったのか。
特異な内閣改造人事 やらない方がよかったのでは?
先般行われた岸田文雄政権の内閣改造および自由民主党の幹部人事は奇妙であった。党内では麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、萩生田光一政務調査会長が続投し、閣僚では松野博一官房長官、西村康稔経済産業大臣、河野太郎デジタル大臣、鈴木俊一財務大臣などの主な顔触れが留任した。その結果、改造人事を行ったことがほとんど目に付かないラインナップで再スタートした。
岸田首相に人事を大きく動かすだけの政治的なパワーがないことが露呈した。これなら改造を行わない方が体面を保てたのではないか。俗に「政権は、解散のたびに強くなり、改造のたびに弱くなる」と言われるが、その通りだと印象付ける人事だった。
主な人事で目立つのは、林芳正外務大臣を交代させて上川陽子氏を充てたことと、小渕優子氏を自民党の選挙対策委員長に任命したことくらいだ。
人事前から女性閣僚の起用が注目された今回の改造だが、既に閣僚経験があり、実務能力が豊富で胆力もある(オウム真理教事件の死刑囚の刑執行を行った法務大臣だ)上川氏が重職に就ける立場で残っていたことは幸いだった。個人的には、岸田氏の代わりに総理大臣をやってもらいたいと思う人材だ。来年の総裁選に出てもらえないものだろうか。
「ドリル優子」のみそぎは完了にはほど遠い…
小渕氏の起用は、先般逝去された故・青木幹雄元幹事長や、今も隠然たる影響力を持つ森喜朗元首相らの「推し」に応えた。だが、小渕氏は党内ではすこぶる評判がいいらしいが、過去の「ドリル問題」があって答弁の矢面に立つ場面の多い閣僚には起用できなかった。就任時の国民の反応を見ても「ドリル優子」の印象はいまだに強烈で、「みそぎ完了」にはほど遠いことがうかがえた。
ただし、小渕氏と同派閥の茂木氏への牽制(けんせい)にはなったのかもしれない。「あなたには、人気と人望がない」というメッセージだ。
なお、プライベートな問題が話題になって去就が注目された内閣府の官房副長官だった木原誠二氏は、党の幹事長代理と政調会長特別補佐を兼務するという特異なポストで処遇する方向で調整しているという報道があった。実現すれば、表に出ない形で政策に関わることになる。
木原氏は岸田内閣の重要政策のほとんどを実質的に仕切っていた。しかし、彼の代わりをこなせる「使える人材」が他にいないということは、日本の政治家集団の人材払底を象徴している。
また、今回の人事では、閣僚に女性を5人起用したものの、副大臣・政務官54人の中に女性が一人もいないという、端的に言って「大ちょんぼ」をやらかした。そもそも女性議員が少ないということはあっても、これでは次の閣僚候補が育たない。
また、将来の問題以前に、このラインナップではいかにもまずいと気が付いて岸田首相に進言できる側近が、政治家にも官僚にもいないとは、何とも寒々しい現状だ。
よし悪しは別として感想を言うと、日本にあって、政治家はこんなに魅力のない職業になってしまったのか、とあらためて思った。
首相補佐官に異例の人物を抜擢 狙いは組合か、国民民主党か
今回の改造人事の中で、一風変わった注目を浴びた人事があった。5人の首相補佐官の一人に、元国民民主党副代表で、現在は出身母体であるパナソニックの労働組合に戻っていた矢田稚子氏が起用されたことだ。矢田氏の担当は、岸田政権において経済政策上の最大の課題ともいえる「賃金・雇用」だ。
今や首相官邸は、ある意味では国会よりも自民党内よりも政策が実質的に決まる政権の中枢だ。この中に取り込むのだから、重要人事だ。
矢田氏は、政治経験と労働組合経験の両方を持つが、一民間人の立場であった。政権としては「能力と経験を買った」と言えばどうにでも説明がつくが、岸田政権が、矢田氏の起用を通じて産業別の労働組合(電機労連)とコネクションを持とうとしているのか、あるいは国民民主党との距離を近づけようとしているのか、その意図が注目されている。
特に政治的には、国民民主党を近い将来に連立政権へ取り込むための布石ではないかとの憶測を呼んでいる。
国民民主党は、政府の2022年度予算案に賛成した過去を持つ(23年度予算には反対)。また、先の代表選挙では、与党との政策面での連携に積極的な玉城雄一郎代表が、野党としての立場を重んじる前原誠司氏を抑えて代表続投を勝ち取ったところでもある。
国民民主党の連立政権入りはあり得るのだろうか?
国民民主の連立政権入りは「ない」 売り時はなかなか来ない
筆者は、国民民主党の連立政権入りは「ない」と考えている。理由は複数あるが、端的に言って「今は売り時ではない」し、「売り時はなかなか来ない」と思うからだ。
まず、自民党は連立与党である公明党も合わせた現有勢力で政治的な「数」が十分足りており、国民民主党の勢力を必要としていない。
自民党と公明党との関係は現在、まるで倦怠期の夫婦のごとき、きしみを見せている。しかし、公明党の支持母体である創価学会の選挙戦での組織力を考えると、公明党と別れて国民民主党と組むといった選択肢は、自民党における個々の議員の選挙事情を積み上げて考えると全く現実的ではない。
また、国民民主党が政権入りするとすれば、そのモチベーションは重要閣僚ポストを一つか二つ欲しいということだろうが、これは、無風状態での連立入りでは実現するとは考えにくい。
自公連立では過半数の確保が危ぶまれるような、自民党政権にとっての緊急事態が発生したときに、国民民主党を連立に取り込んで政権の維持を図る必要が生じて、国民民主党が「高く売れる」時が訪れるかもしれない。ただ、そこまでの状況にならないと、ポストや政策で国民民主党が連立政権内で張り合いのある存在感を持つことはできないだろう。
また、自民党との連立は、国民民主党における個々の議員にとって選挙にマイナスに働くのではないか。小選挙区で余裕を持って勝てるような個人的な地盤を持っている議員の場合には、「わが先生を大臣に」と支持者に力が入るかもしれない。しかし、彼ら以外の議員や候補者にとっては、有権者にとって自民党に対する批判勢力であることの意義が大きいのではないだろうか。
先般、日本維新の会の馬場伸幸代表が、共産党と立憲民主党について日本に要らないと言ったついでに、自党について「第2自民党でいい」と口を滑らせて以来、維新への支持が伸び悩んでいるように見える。
維新も国民民主も、有権者として見ると「自民党政権に不満と批判があるけれども、左翼政党に投票することには違和感がある」という政権批判票の受け皿として存在感を持っている。連立政権の閣内に取り込まれることは、国民民主党にとって選挙にプラスに働くまい。
加えて、自民党側から見るとしても、国民民主党が野党勢力の統一を妨げつつ、野党票を分断していることが、実は好都合である。
労働組合の中央組織である連合が、今や、野党の共闘を阻むことによって、実質的に自民党の有力な応援勢力になっている。国民民主党は、小さくてもその有力な実働部隊だ。連合の芳野友子会長も国民民主党の連立政権入りを否定している。
また、玉木代表本人に「あなたは、どれくらい大臣になりたいのか?」を聞いたことはないが、連立に加わっても有力大臣になれないなら、小党といえども党の代表として、自民党の中堅議員をはるかに超えるスポットライトを頻繁に浴びながら、11億7300万円に及ぶ政党交付金(23年)の差配をしている方が、政治家としては快適なのではないだろうか。
方々の関係者の個人の利害までさかのぼって考えると、国民民主党が、少なくとも「今」連立政権入りすることが合理的だとは思えない。
現在の政治システムを作った小沢一郎氏が犯した「設計ミス」
政治家それぞれに利害を発生させてインセンティブともブレーキともなっている小選挙区制や政党交付金を中心とする現在の政治システムを作ったのが、小沢一郎氏であることは衆目の一致するところだろう。制度に対する小沢氏の設計意図は、政権交代が容易に可能で、いわゆる金権政治を排することができる、緊張感があってクリーンな政治体制を作ることにあったのではないかと推察する。設計の意図は悪くないと言っておこう。
しかし、制度設計の前提として政治家が「政権を取る」ことに目的としても手段としてももっと大きな情熱を傾けるであろうと仮定したことが、現実に合っていなかった。
どうやら、起源は自民党が旧民主党から政権を奪還した辺りにさかのぼる。この時、政権を持つことのメリットを知る自民党は「もう下野するのは嫌だ」と民主党政権の仲間割れを反面教師に結束を固めるのと同時に、党内でも党外でも、ライバルをつぶす行動様式を身に付け始めた。
そして、選挙を前にした候補者としての政治家が典型的だが、政治家個人を子細に見ると、「政権にチャレンジして冷や飯を食うよりも、協力してポストや選挙に有利な環境を得ることの方が、自分にも自分の仲間にも好都合だ」という利害があることが発見された。
政治家は、支持者を巻き込んだビジネス体であり、同時に生活者でもある。特に昨今多い、2世、3世議員となると、何重にも身の回りの人間関係に縛られた存在だ。
すると、派閥内のポジションをキープすることや、一度は大臣と呼ばれること、野党第一党の幹部としてほどよい注目を浴びること、小党の党首が意外に心地よいこと、支持してくれる団体があればどこにでもあいさつに行くことなどが重要な、「小さな均衡」が方々に出来上がる。そして、個々の議員の利害と関心は「政権奪取」からどんどん離れていく。
故・安倍晋三氏が第2次政権にあってその形を完成した。有利なポジションに就いた者は、自らの積極的な強化よりも、もっぱらライバルをつぶすことによってポジションを維持するという戦略行動のパターンが出来上がった。
岸田政権もこれを受け継いだ。手段は冷遇、封じ込め、分断、牽制などさまざまだが、有力なライバルが育っていないという一点をもって、支持率は上がらないのに、岸田首相個人にも自民党にも奇妙な安定感が漂っている。
政権側には、今は不人気でも、個人の利害を考えると、政治家も広義のお仲間であるメディアも「いずれは『長いものに巻かれる』に違いない」と信じている余裕を感じる。
既存の大手メディアにはまだ政治部という大集団があるので、発信される情報量は多いのだが、正直に言って今は「政治」がまったくつまらない話題になってしまった。そして、このことも政権にとって好都合なのだろう。
●日本に対する「海外からの反応」は驚くほど変わった…岸田首相と安倍元首相 9/20
安倍晋三元首相が亡くなって1年を超える月日が流れた。安倍氏はどんな政治家だったのか。新著『安倍晋三実録』(文藝春秋)を書いた政治外交ジャーナリストの岩田明子さんは「安倍元首相はリアリストだった。たとえば『日本を守る』という最終目的のために緊密な日米関係を築く一方、中国やロシアなどあらゆる国との関係を深めた」という――。
議論の過程が見えない岸田政権
今年6月に上梓した『安倍晋三実録』は多くの反響があり、いただいた感想の中には「食事も忘れて一気に読んだ」といった声もありました。また、「安倍外交の真髄を知ることができた」と、特に外交の舞台裏について書いた部分を高く評価してくださる方もいます。
清和会の若手議員の一人からは「自分たちが安倍外交を引き継がなくてはいけないと思いを新たにした」とメールを頂戴しました。他方で、「われわれは理念に走りがちだけど、安倍さんのリアリストの面をもっと学ばなくてはいけないと思った」と話された議員の方もいました。重要な指摘だと思います。
ここ最近、率直に感じるのは、国際社会における日本の存在感の低下です。というのも、安倍政権の頃は、海外の新聞に“PM Shinzo Abe”とか“Japan”という文字を毎日のように目にしましたが、現在は“Japan”も“PM Kishida”もあまり見かけません。
内閣支持率の低下も気になります。異次元の少子化対策、防衛費倍増の財源など、結論は明確なのに、そこに至る丁寧な議論の過程が私たち国民に見えてこないことが原因かと思います。
物価上昇や、建築、救急車などでの人手不足問題など、社会機能の低下が肌で感じられるのに、政治が解決すべき国民生活に直結する課題は山積みのままです。
安倍氏が岸田政権について語ったこと
第2次安倍政権(2012年12月〜2020年9月)もゴールが見えてきた頃、安倍さんが後継となる首相について、電話で口にした一言が印象に残っています。
「安倍政権は、波風を立てながら、物事を前に進めていく、毒気の強い政権だったといえる。もしも岸田さんが総理になったら、少しほっとする感じの政権になるかもしれないね」
2021年9月、岸田政権がスタートすると内閣支持率は上昇、その後しばらく高支持率が続いていました。
安倍さんは「ご祝儀相場とはいえ、岸田さんの人徳なのかな」と不思議そうに話していました。
岸田総理は、総理に就任する前年、お母さまを亡くされています。「人が亡くなるときは、その人にとって大切な人の苦労も持って行く、という話を聞いたことがある。助けられた時こそ、徳をもって、謙虚に努めなければならないね」と安倍さんは話していました。
こうした類の言葉は、第2次政権がスタートした頃から、安倍さんの口から出てくるようになりました。「ポストや権力は天からの預かりもの」とまるで自戒するかのように、よく語っていました。岸田さんについても、謙虚さと「聞く耳」を忘れてはいけないと心配したのだと思います。
第1次安倍政権(2006年10月〜2007年9月)の頃は、安倍さんは“政界のプリンス”であり、若くしてトップに登りつめたと自負している印象がありました。ところが2007年に潰瘍性大腸炎の悪化で総理大臣を辞任。“雌伏の5年間”を経験してからは、まるで別人のように変貌を遂げました。
「つっけんどんな安倍さん」に食い込むまで
『安倍晋三実録』では、私が安倍さんとの距離を縮めていくプロセスが「仕事の参考になった」という感想もいただきました。
官房副長官だった安倍さんの番記者になったのは2002年のことです。当時の安倍さんは「掴みどころのない政治家」という印象で、対峙してもこちらを一瞥するだけで多くを語りませんでした。
他社の記者には親しげに話すのに、私にはつっけんどんに早口で話す。ご自宅に電話をかけ、昭恵夫人が取り次ごうとしても、「いないと言って!」と不機嫌そうな声が聞こえてくる。電話に出たときも「何?」と無愛想。1年近く距離が縮まらないことに焦って、上司に「担当を変えてほしい」と直訴したこともありました。
そんな私が安倍さんとの距離を縮めるきっかけになったのは、2003年に清和会(当時は森派)の議員が、政治資金規正法違反などで東京地検特捜部から捜査を受けたときでした。かつて法務省を担当していた経験から、今後の展開について私の“読み筋”を話すと「法務畑が得意分野だったんだね」と興味深そうに耳を傾けていました。
担当を外れても取材を続けた
それから安倍さんと会話が少しずつ増えるようになり、ご自宅の固定電話から、だんだん携帯電話を鳴らすようになりました。ただ素っ気ない態度は変わらず、電話をかけるたびに緊張していました。
第1次安倍内閣で安倍さんがあっけなく辞任し、雌伏の5年間では、人間的な側面や本音の部分に接する機会が増えました。自民党が下野し、民主党政権が誕生してから、私は安倍さんの担当を外れ、今度は菅直人副総理の担当として、政権を追いかけつつ、番記者のときと変わらず安倍さんに電話をかけ、ご自宅にもせっせと通いました。
安倍さんに限らず、権力の中枢へと階段を上っている政治家は、把握する機密情報が増え、多くの「番記者」が張り付くようになります。そのため口が堅くなり、取材のハードルは上がってしまうのがこの世界の常。一方、権力の座から降りると、ハードルが下がり、アクセスしやすくなる。
首相の間は、対面で会う機会が限られていましたが、第一次政権の退陣直後、珍しく、「サシ」で新橋の居酒屋に行きました。店長のサービスで、白魚の踊り食いが出てきたのを鮮明に覚えています。私が生きた白魚を箸でつまんで口に入れ、もぐもぐと食べると、安倍さんはびっくりしていました。店員さんに自分のお椀を渡して「かわいそうだから生け簀に戻してあげてください」と言ったときは、プリンスらしさを見たような気がしました。
「維新の党首になっちゃえばいいのに」
当時の私は、安倍さんが5年後に再び総理大臣になるとは想像だにしませんでした。むしろ、復権はないと確信していました。2012年に橋下徹さんや松井一郎さんが安倍さんに新党(日本維新の会)への合流を打診したと聞いたときは、「またとないチャンスでは?」と言ってしまったぐらいです。
病気が理由とはいえ、1年で総理大臣が交代する事態を招き、2年後には自民党が野党に転落したのですから、安倍さんは大きな十字架を背負ってしまったわけです。
他社の番記者が離れていく中、それでも私が取材を続けたのは、安倍さんが政治家人生を終える最後まで見届けるのが責務だと思ったからです。
「雌伏の5年間」による安倍氏の変化
安倍さんは雌伏の5年間で、様々な分野の人と会い、政策を練り上げ、人生観や人との接し方など、大きな変化を遂げました。かつてのつっけんどんな態度は消え、誰にでも親しみやすい印象を与えたと思います。取材を受ける場合も、自身の考えを一方的に話すのではなく、記者や質問の背景を知ろうとする姿勢が感じられました。
企業の経営者が集まる会議にもよく顔を出していましたが、ただ出席するだけではなく、一人ひとりのバックグラウンドや政治に求めることを知ろうと、安倍さんからいろいろ質問していました。次に会ったときも、相手の名前やストーリーを忘れておらず、安倍さんから「あれから業績はよくなったの?」などと個別に尋ねる。経営者の皆さんからは「安倍さんが自分の話を覚えていてくれた」という感想をよく耳にしました。
苦しい5年間で、人間としての幅や政治家としての厚みが増したのだと思います。
旧統一教会について話したこと
安倍さんとの電話は、たいてい夜でした。夕方以降は情報収集タイムと決めていたようで、毎晩のように誰かと会食し、帰宅してから政治家や記者などあちこちに電話する。夜は、情報収集をして世間で何が起きているのかを必死で探ろうとしている感じでした。
私に電話をかけてくるのはいつも午後10時から午前0時ぐらいの間でした。短いときは10分程度、長ければ1時間前後になることもありました。
初めは政治や外交の話題でも、どんどん脱線して最後は雑談というパターンもありました。日曜の晩にかけてきたから重要な話かと思ったら、大河ドラマの感想や俳優の演技に対する「突っ込み」だったことも……。
また安倍さんも私も無呼吸症候群を患っていましたので、CPAP(治療用具)の操作の仕方を問い合わせてきたり、私の体の調子を尋ねてくることもありました。
安倍さんが凶弾に倒れる前日は二度かかってきました。一度目の電話で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の話題が出ました。第1次安倍内閣で秘書官を務めた井上義行さんが、旧統一教会の“祝福”を受けたと聞いたので、安倍さんに確認したのです。皮肉なことに、旧統一教会について話すのは初めてのことでした。
嫌な予感がして私はつい語気を強めてどういうことなのかと問うたのですが、安倍さんは声のトーンを下げて「特に問題はないので。大丈夫だから。明日は朝早いから」と電話を切ってしまいました。でも後味が悪かったのでしょう、1時間ほどするとまた電話をかけてきました。今度はいつもの明るい調子で、「予定が急遽変更になり、奈良に応援にはいることになっちゃった」などと話し、電話は切れました。「また明日」という言葉だけが残り、まさか、これが最後の会話になるとは想像すらしていませんでした。
事件の第一報が入った瞬間、私はとっさに安倍さんの携帯電話を鳴らしましたが、つながりませんでした。コールバックを祈りながらスマホを握りしめている時間が、重く、悲しく、とてつもなく長く感じました。
政治に欠かせない「リアリスト」の顔
この1年あまり、安倍さんについて書いた本が何冊も出版され、雑誌の特集も組まれました。実にさまざまな立場から、安倍さんが語られています。
私は、『安倍晋三実録』では、ファクトを正確に残すことに腐心しました。安倍さんとのやりとりはたくさんありましたが、最高権力に上り詰め、そこから転落し、そして再び挑戦するという劇的な政治家人生を近くでウォッチできたことは、記者冥利に尽きる思いです。安倍さんの残した言葉を記録として残すことが、次世代を担う政治家の指針や、国民の判断材料として活きるのではないかと考えています。
「安倍さんの遺志を継ぐ」と話す政治家のなかには、安倍さんの理念にだけ目を向ける人が少なくありません。
しかし、安倍さんは理念を大切にしながら、リアリストの政治家として、戦略的な視点から実績を重ね、水面下では入念な根回しや議論を進めてきました。この視点を、本書にできるだけ盛り込んだつもりです。
「保守一辺倒」「リベラル一辺倒」ではない政治
例えば、安倍さんが採った外交戦略「地球儀俯瞰外交」は、日本を守ることが最終目的です。アメリカ一辺倒にならず、緊密な日米関係をうまく使いながら、多くの国と二国間関係を強化しました。さらに日米関係を、日本のためだけでなく、世界のために活用するという発想が安倍外交の特徴です。
日本が中国やロシアなど、多くの国とつながれば、アメリカにも強く出られる。中国に強く出るために、アメリカだけでなく、インドやオーストラリアともつながる。戦略的に日本のプレゼンスを高めていったのです。
だから日米関係、日中関係など、それぞれのシーンで見せる顔が違うのも当然です。最終目的にたどり着くために臨機応変な発想と戦略をとる、というのがリアリズムの政治です。保守一辺倒、リベラル一辺倒ではない政策決定を次々に進めた安倍さんのリアリストの顔。ここはみなさんに伝えたかったことの1つです。
●日本が原発をゼロにできない2つの理由、米国の反対と安保問題 9/20
日本はなぜ、原発をゼロにできないのか。理由は2つある。
一つは米国の反対である。もう一つは日本の安全保障上の要請である。
米国の反対については、8月31日のTBSの報道1930「日本が脱原発に踏み切れないワケ」の中で、米国が日本の原発ゼロに反対した事例を解説していた。その内容は後述する。
日本の安全保障上の要請とは、原発のもつ抑止機能である。
原発は単なる電力生産のための工場ではないと言われる。濃縮ウランを核反応させ、プルトニウムという核兵器の原料を生成する原発は、潜在的核兵器製造能力の淵源である。
すなわち核兵器を製造する潜在的能力を持っていると思わせることが抑止力にもなるのである。
言い換えれば、潜在的侵略国が、日本が短期間に核兵器を製造・保有できることを考慮して、日本への侵略を断念することである。
ところで、戦後を代表する政治家、中曽根康弘元首相は日本の原子力の生みの親としても知られる。
中曽根氏は1955年8月に、国連第1回原子力平和利用国際会議に出席した後、鳩山一郎首相への手紙の中で次のように述べている。
「国際政治の軸が文明的共存に移り、原子炉を有するや否や、即ち原子力の発達度合が国際的地位の象徴となってきたことが今度の会議ではっきりした」
「日本が国際的地位を回復するのには、中立的である、この科学の発達に割り込むのが最も他国を刺激せず、早い道である」
「日本が将来原子力国際機関の理事国にでもなれば、国際的地位回復の重要な足掛かりとなる」(出典:中曽根康弘回顧録『政治と人生』p171-172)
当時、中曽根氏は、原発を国際的地位の象徴と見ていたことは興味深い。中曽根氏が原発を抑止力として見ていたかどうかは筆者には分からない。
さて、今、日本の核燃料サイクルは、東日本大震災における原発事故(2011年)に伴う原発の廃止や稼働停止、高速増殖炉もんじゅの廃止(2016年)、再処理工場の建設の遅れなどにより破綻の瀬戸際にある。
最も深刻なのが、高レベル放射性廃棄物の最終処分場が決まっていないことである。このままでは、原発ゼロを目指す国民運動が盛り上がる可能性がある。
そのような中、岸田政権は原子力の積極利用に踏み出した。
2022年8月24日に開催された第2回GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議にリモートで出席した岸田文雄首相は、締め括りの挨拶において、原子力に関し以下の3項目を明言した。
1原子力規制委員会による設置許可審査を経たものの、稼働していない7基の原子力発電プラントの再稼働へ向け、国が前面に立つ。
2既設原子力発電プラントを最大限活用するため、稼働期間の延長を検討する。
3新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発/建設を検討する。
この岸田氏の原子力の積極的利用策は、米国の原発ゼロへの反対と我が国の国家安全保障上の要請を認識してのことであろうと筆者は見ている。
さて、本稿は、日本が原発をゼロにできない2つの理由について筆者の個人的な考えを述べたものである。
初めに、報道1930「日本が脱原発に踏み切れないワケ」の放送内容について述べる。次に、核の脅威に対する対応について述べる。
1.報道1930の放送内容等
1-(1)民主党政権が原発事故を受けて政策変更した当時の状況
1 2002年に成立した「エネルギー政策基本法」を受けて、政府は日本のエネルギー政策の基本的な方向性を示す「エネルギー基本計画」を策定し、約3年に1回、見直すことになった。
2003年に定めた「第1次エネルギー基本計画」では、「原子力の推進」を明記した。
2 2010年6月、民主党政権下の策定された「第3次エネルギー基本計画」では、「原子力の新増設」を明記するとともに「長期エネルギー需給見通し」の2030年のエネルギーミックス(電源構成比率)は、「原発5割」となった。
3 日本のエネルギー政策の大きな転機となったのは、東日本大震災に伴う原発事故(2011年)である。
2012年9月6日、民主党は、東京電力福島第一原発事故を受けて、将来の原子力発電への依存度に関する提言をまとめた。
提言では、「『原発ゼロ社会』を目指す」として「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と明記した。
4 2012年9月12日、日本の原発ゼロに反対する米国は、米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハムレ所長が日本経済新聞へ寄稿し、戦略の再考を促した。
ハムレ氏は寄稿の中で、次のように述べて中国の動向を睨み原発ゼロの再考を促した。
「国家安全保障上の観点からも日本は『原子力国家』であり続ける必要がある」
「今後30年間で、中国は75から125基の原子力発電所を建設する。日本はこれまで核不拡散問題において、世界のリーダーであり続けてきた」
「日本が原発を放棄し、中国が世界最大の原子力国家になったら、日本は核不拡散に関する世界最高峰の技術基準を要求する能力も失ってしまう」
5 また、同じ9月12日、政府は、原発ゼロ政策を説明するため、長島昭久首相補佐官と大串博志内閣府政務官を米国に派遣した。
両氏は、米エネルギー省や原子力規制委員会(NRC)幹部らと会談した。この時の米国の反応は次の(2)のアで紹介する。
6 9月14日、政府の「エネルギー・環境会議」は、2030年代に原発稼働ゼロを目指す革新的エネルギー・環境戦略を決定した。
その5日後の9月19日、政府は「今後のエネルギー・環境政策について」を閣議決定した。
その閣議決定では、「今後のエネルギー・環境政策については、『革新的エネルギー・環境戦略』(2012年9月14日エネルギー・環境会議決定)を踏まえて、関係自治体や国際社会等と責任ある議論を行い、国民の理解を得つつ、柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する」というもので、「原発稼働ゼロ」という文言が消えていた。
7 2014年に定められた「第4次エネルギー基本計画」で、「原発依存度の低減」が明記され、原発縮小に転換した。
これを受け、2030年のエネルギーミックスでは、「原子力20〜22%」という数値になった。
ちなみに、2018年7月に策定された「第5次エネルギー基本計画」および2021年10月に策定された「第6次エネルギー基本計画」のエネルギーミックスは、共に従来の「原子力20〜22%」のままであった。
1-(2)報道1930「日本が脱原発に踏み切れないワケ」の放送内容
本項は、筆者が、ゲストの発言の要旨を書き起こしたものである。
番組のゲストは、元防衛大臣石破茂衆議院議員、笹川平和財団研究員小林祐喜氏であり、さらに、当時、日本の原発ゼロに反対する米国に説明に行った元内閣府政務官大串博志 衆議院議員がテレビインタビューでビデオ出演した。
   ア.大串博志氏のテレビインタビューでの発言
・米側の方からはいろいろな意見があったのは事実である。
・今後、原発ゼロにする一方で、稼働している原発から出た使用済み燃料を再処理すると、再処理の結果、余剰のプルトニウムが生まれることに関して、核不拡散の観点から国際安全保障上の問題があるという懸念が表明された。
・また、米国側から懸念があったのが、技術の面である。
原発ゼロの方向を打ち出した場合に、今後原発に関する技術者の育成などが困難になるのではないかという懸念が表明された。
・日本は唯一NPT体制の下で、核を持たない国の中で、核の再処理をフルセットで認められた唯一の国である。
その根拠は日米原子力協力協定の中に定められている。
原子力発電にしても、あるいは核政策についても米国との間で相当密接な関係の中で行われているという特別な立場にある。
そして、日米原子力協力協定の下で米国と相当すり合わせをしなければならないのは間違いない。
   イ.ゲストの笹川平和財団研究員小林祐喜氏の発言
・1979年のスリーマイル島原発事故で米国の平和利用の分野の原子力産業が一気に衰退し、再処理技術や原子力の基盤技術で日本に頼らなければならなくなった。
・今、原子力技術は大型軽水炉から次世代炉といわれる小型炉などに移行していくと言われている。
次世代の小型炉の場合はウラン濃縮に工夫がいる。
通常の原子炉の場合はウラン235の濃縮5%で良かったが小型炉や次世代炉の場合はウラン235の濃縮20%が必要となる。
米国には、ウラン濃縮用の遠心分離機を作るメーカーがないので、民生用のウラン濃縮用の遠心分離機をすべて輸入している。
どこが、民生用の遠心分離機を提供できるかと言えば、ロシアのロスアトム(ROSATOM)、欧州のユレンコ(URENCO)および日本の日本原燃(JNFL)しかない。
米国はエネルギーの自給あるいは同盟国間の供給体制の確立を目指して、エネルギー省が次世代用の濃縮ウランの助成事業を行っており、海外にも門戸を開いている。
ロシアのロスアトムはエネルギー安全保障上から除外されるので、エネルギー省の要望に応えられるのは、欧州のユレンコと日本原燃しかない。
このような状況下で、米国は日本の原発ゼロを認めないであろう。
   ウ.ゲストの元防衛大臣石破茂衆議院議員の発言
石破氏は、日頃から「日本は核兵器を持つべきでないが、核兵器を持つ能力を持っていると思わせることが抑止力となる」と主張している。
・日本が原発をやめることについて、原子力協力協定があるからやめられないとは論理的にはならない。そこを誤解してはいけない。
小林先生が言うように技術的問題、日本の技術がないと米国の原子力政策にとって具合が悪い。
あるいは、ハレム氏が言うように、日本の原子力技術者は、高給で中国、韓国に引き抜かれている。
どんどん日本から原子力技術者いなくなる。原子力技術が失われることはまずい。
日本が核武装することは認めないが、日本から技術者がいなくなることもまずい。
理解しにくいことであるが、そのようなことで米国は対応してきている。米国の一部に日本核兵器論があるが、主流ではない。米国の圧力があるから原発をやめられないというのは正しくない。
・私は原発のウエイトはどんどん落としていくべきだと思っているが、ゼロにすることに賛成はしない。
限りなく落としていくべきだと思う。ただし、原発のウエイトはどんどん落としていくが、原発の安全性(テロ対策等を含む)は高める努力を続けなければならない。
・安全保障上も日本の原発をゼロにすべきでない。ウクライナ戦争もある。中国も石炭があと40年でなくなる。
そうなると中国の原発依存度は高まる。ロシアも同じである。世界の原子力技術を中露が席巻することはエネルギー安全保障上からも好ましいことではない。
1-(3)筆者コメント
世界全体で、2023年1月1日現在では、39カ国・地域で431基の原発が運転中(運転可能炉を含む)で、72基が建設中で、86基が計画中である。
20基以上運転している国は、米国92基、フランス56基、中国53基、ロシア34基、日本33基、韓国25基、インド22基である。(出典:日本原子力産業協会「世界の最近の原子力発電所の運転・建設・廃止動向2023年1月1日」)
原子力の民生利用は、2011年の福島第一原子力発電所事故以降、日本を含む西側先進国で顕著な形で停滞する一方、新興国、とりわけ中国、ロシアが国策として原子力発電の輸出戦略を推進し、また中東各国など開発途上国での利用が拡大する傾向にある。
原子力の民生利用が世界において促進されることで、核物質や原子力技術、特に核燃料サイクルの機微技術(ウラン濃縮・再処理技術)の軍事転用がもたらす核拡散リスクが懸念されている。
とりわけ発展途上の地域においては、原発を新規に導入しようとする国を中心に、中国やロシアなどが積極的に輸出展開を図っている。
原子力の民生利用の分野への中国・ロシアの台頭により核拡散のリスクが懸念される中で、米国は、日本に対して、核兵器への転用が可能なプルトニウムの在庫管理、使用管理において日本が先導して厳しい国際規範を制定する、特に再処理・ウラン濃縮技術の輸出禁止など、機微技術の国際管理において先導的役割を果たすことを期待していると考えられる。
2.核の脅威に対する対応
日本は、現在、日本に対して友好的でない核保有国、すなわちロシア、中国、北朝鮮に取り囲まれている。
これらの国は、共通して、国際法を守らない、武力で恫喝する、理性的でない独裁者に支配されている。
2-(1)核の傘
戦後の日本は、核超大国・米国との同盟関係を軸に自国の安全保障を図ってきた。その象徴が「核の傘」である。
もし日本を核攻撃すれば、背後に控える米国から核兵器で耐えられないような報復攻撃を受ける。よって、日本への核攻撃を思いとどまらせるという考え方である。
ところが、ロシアのウクライナ侵略においては、米国のジョー・バイデン大統領はウラジーミル・プーチン大統領の核の恫喝の前に、米国としての軍事力の行使を完全に抑止された状態となってしまった。
このことは、米国が同盟国に提供する「核の傘」の信頼性を揺るがすことになった。
ちなみに、「核の傘」は通称で、本来は「拡大抑止」と呼ばれる。
「拡大抑止」とは自国だけでなく、同盟国が核・通常攻撃を受けた際にも報復する意図を示すことで、同盟国への攻撃を他国に思いとどまらせることである。
2-(2)韓国の対応
ここで、日本以上に北朝鮮の核の脅威に対峙している韓国の対応について述べてみたい。
韓国は自ら核武装はせず、米国の「核の傘」に入ることで安全保障を図ってきた。ここまでは日本と同じである。
ところが、核・ミサイル開発をやめない北朝鮮に対して、韓国国内では、米国の「核の傘」を含む戦力により韓国への攻撃を思いとどまらせる「拡大抑止」の信頼性を疑問視する声が大きくなってきた。
韓国の政治家たちは、北朝鮮に対して核兵器をいつ、どのように使用するのかという米国の計画について、韓国のさらなる関与を認めるよう、長らく米政府に要求してきた。
北朝鮮の核兵器の大型化・高度化が進むにつれ、韓国の人々はバイデン氏が何をきっかけに、自分たちに代わって核のボタンを押すことになるのか見当もつかない状況に警戒心を強めてきた。
米政府が韓国政府を見捨てるかもしれないとの不安から、韓国は独自の核兵器を開発すべきだとの声も上がっていた。(出典:BBC2023.4.27)
そのような中、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は2023年1月11日の国防部の年頭業務報告で、北朝鮮の挑発の水準が高まれば「大韓民国が戦術核を配備したり、独自の核を保有したりすることもありうる」とし、「もしそうなるとすれば、韓国の科学技術でより早期に韓国も(核兵器を)保有できるだろう」と述べた。
これに対して米ホワイトハウスは翌日、朝鮮半島の非核化を重ねて強調しつつ、韓国の核武装に否定的な考えを遠まわしに明らかにした。(出典:ハンギョレ新聞2023.01.14)
2023年4月26日、訪米した尹錫悦大統領は米国のバイデン大統領とワシントンで会談し、潜水艦派遣や核協議グループ(NCG)新設など対北朝鮮に対する拡大抑止強化で合意した。
この合意は「ワシントン宣言」と呼ばれる。
米政府は、同国の北朝鮮に対する核兵器使用の計画に、韓国が関与することを認めた。韓国はその見返りとして、自国の核兵器を開発しないことに合意した。
米国の拡大抑止に関連し、韓米はこれまで高官級の拡大抑止戦略協議体(EDSGC・次官級出席)、日米は拡大抑止協議(EDD・審議官級出席)など2国間枠組みを通じて協議を続けてきた。
韓米はさらに一歩進んで、2023年4月末の「ワシントン宣言」で、北朝鮮の核の脅威を管理するために両国次官補が四半期に一度会う「核協議グループ」の設立に合意したわけである。
尹錫悦氏の核武装宣言が本気だったのか、あるいは米国との交渉のための駆け引きだったのかは分からないが、筆者は後者であると見ている。
そして、尹錫悦氏は見事米政府から核協議グループ新設という譲歩を引き出し、日本より一歩先んじた。
2-(3)日本の対応
日本では、ロシア、中国、北朝鮮の核の脅威に対する反応が韓国とは異なる。日本では核武装せよという声は上がらない。
国民は米国の拡大抑止をそれほど信頼しているのであろうか。あるいは、いわゆる核アレルギーが核の脅威の対する感覚を鈍感にしているのであろうか。
   ア.核に関する4つの政策
1967年12月、当時の佐藤栄作首相が衆院予算委で、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」とする「非核三原則」を表明し、翌年1月の施政方針演説に盛り込んだ。
その後、「非核三原則」は、我が国の核政策の表看板として長く掲げられ、歴代内閣は同原則を堅持する旨表明している。
1968年1月、 佐藤首相は衆議院本会議において、「非核三原則」、「核軍縮の推進」、「米国の核抑止力への依存」、「核エネルギー平和利用の推進」という核に関する4つの政策を表明した。
「米国の核抑止力への依存」 が政府の政策であるとの見解を、 日本政府首脳が国民の前で言明したのは、 これが初めてのことであった。
そして、 この核に関する4つの政策の表明を契機として、 「米国の核抑止力への依存」 は日本政府の核・安全保障政策の柱として確立・定着したのである。
   イ.核兵器保有は憲法違反ではないとする国会答弁
次に、核兵器保有は憲法違反でないとする2人の首相の国会答弁を紹介する。
1つ目は、1957年5月7日、岸信介首相が参議院予算委員会での発言だ。
「憲法上の解釈としては、私はいわゆる核兵器と名前がつくものは全部憲法違反だという御説もあるようでありますけれども、それはこの技術と科学の発達につれまして、核兵器と言われるところの性格というもの、性質も、また兵器の種類もいろいろこれから出てくることでありましょうし、従って名前は核兵器とつけばすべて憲法違反だということは、私は憲法の解釈論としては正しくない」
こう答弁し、核兵器保有は合憲との認識を示した。(出典:国会会議録検索システム 第26回国会 参議院 予算委員会 第24号 昭和32年5月7日)
2つ目は、1973年3月17日、田中角栄首相は参議院予算委員会の答弁。
「いままで政府が統一見解で述べておりますものは、自衛の正当な目的を達成する限度内の核兵器であれば、これを保有することが憲法に反するものではないというのが、従来政府がとってきたものでございます」(出典:国会会議録検索システム 第71回国会 参議院 予算委員会 第5号 昭和48年3月17日)
   ウ.日米安全保障条約終了後の選択肢
ア項で見たように非核三原則は「米国の核抑止力への依存」が前提となっている。すなわち日米安全保障条約が存続し得る限り、日本は核武装しないということである。
しかし、何事にも終わりが来る。日米安全保障条約が終わるときを想像してほしい。
真偽のほどは不明だが、米ブルームバーグ通信は2019年6月25日、当時のドナルド・トランプ大統領が、日米安全保障条約を破棄する可能性について、側近に漏らしていたことが分かったと報じている。
将来、米国側から日米安全保障条を終了させる意志を通告するかもしれない。その場合には、この条約は、通告が行われた後1年で終了する。
日米安全保障条約終了後の防衛形態は、白紙的に述べれば、単独防衛、米国以外の新しい国との同盟、非武装中立などが考えられる。
どの防衛形態になるかはその時の日本を取り巻く安全保障環境次第であろう。
特に単独防衛の場合は、核武装を選択肢の一つとして残しておきたい。そのためには、将来も潜在的核兵器製造能力の淵源である原発が稼働されていることが必須である。
従って、安全保障上の観点から言えば、将来、潜在的核兵器製造能力(技術者も含む)を維持するために、少なくとも何基の原発の稼働が必要かを検討し、原子力政策に反映することも考えておく必要がある。
ここで、一つ逸話を紹介する。
バイデン米大統領が副大統領の時、中国の習近平国家主席に北朝鮮の核・ミサイル問題での協力を求めた際、「日本が明日にでも核を保有したらどうするのか。彼らには一晩で実現する能力がある」と発言している。
習近平氏が「中国軍は米国が中国を包囲しようとしていると考えている」と述べたのに対し、バイデン氏が日本に触れ、米中の連携がなければ日本の核保有があり得るとの認識を伝えたという。(出典:産経ニュース「「日本は一晩で核保有可能」米バイデン副大統領が習近平国家主席に発言」2016年6月24日)
上記のバイデン氏の話は、北朝鮮の核武装が日本の核武装を触発するという意味であろう。
そうならば、日本は、北朝鮮が核武装するなら日本も核武装を考えるとあえて主張し、米・中・露に本気になって北朝鮮の核武装を阻止するよう働きかけるべきであったと、今になって、筆者は思う。
おわりに
2009年4月には、米国のバラク・オバマ大統領とロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領による米露首脳会談が行われ、「核のない世界」への決意を確認し合った。
また同月には、オバマ大統領による核廃絶に向けたプラハ演説が行われた。それから、14年経ったが、期待したのとは全く違う世界となってしまった。
また、多大な戦禍をもたらした第2次大戦後の教訓に基づき、戦争を防止し、紛争を平和的に解決しようとして創設された国連の集団安全保障体制ももはや実質的に消滅してしまった。
今、国際社会は19世紀末の弱肉強食の世界に戻ってしまった感がある。
さて、危機管理の要諦は、最悪の事態を想定して万全の準備をすることである。
日米安全保障条約が終わるなどの最悪の事態を想定して、自分の国は自分で守る覚悟とそれを実現する手段が必要である。
今、考えられるその手段の一つが「核武装」である。
「核武装」というとおどろおどろしいが、それが現実である。世界の人口の半分近くは「核武装」した国に住んでいる。
筆者は、日米安全保障条約が存続し得る限り、日本は核武装すべきでないと考えている。米国も反対するであろう。
筆者の結論は、日米安全保障条約が終わるなどの最悪の事態を想定して、必要なときにいつでも「核武装」が選択できるように備えておくべき、ということである。
そのためには、エネルギー安全保障上の観点を別にしても、将来とも潜在的核兵器製造能力の淵源である原発の必要最小限の稼働が必要であると考える。
●「ドリル優子」と皮肉られても…小渕優子こそ“初の女性首相”の有力候補 9/20
2014年に政治資金規正法違反のスキャンダルが発覚し、経産相辞任を余儀なくされた小渕優子氏。その小渕氏が、自民党の役員人事で選挙対策委員長に任命された。約9年ぶりの要職復帰となる。だが小渕氏といえば、不祥事の発覚後に「証拠隠滅のためにパソコンのハードディスクをドリルで破壊した」という報道が飛び交い、いまだにネット上で揶揄(やゆ)されている状況だ。だがそれでも、筆者は小渕氏が「初の女性首相」になれる可能性を秘めていると考える。その理由とは――。
選挙対策委員長に小渕優子氏を起用の理由とは?
去る9月13日、岸田文雄首相が内閣改造および党役員人事を行った。今回の人事では、安倍派、麻生派、二階派、茂木派など、各派閥の人材を幅広く登用しているのが特徴だ。党内に“敵”を作らず、政権の基盤を安定させることを重視したとみられる。
すでに各所で詳しく報じられているため、本稿では全員の紹介は避けるが、閣僚19人のうち初入閣は11人。13のポストを入れ替えるなど、「派閥のバランス」を重視しながらもフレッシュな顔ぶれをそろえた。
岸田内閣・自民党は新体制の下で、「異次元の少子化対策」や防衛費の大幅増、マイナンバー制度の改善、経済安全保障体制の確立といった課題に取り組んでいくことになる。
筆者が今回の人事で注目しているのは、岸田首相が女性閣僚を内閣改造前の2人から5人に増やしたことだ。女性閣僚数としては、第1次小泉純一郎内閣、第2次安倍晋三改造内閣と並び過去最多である。
その面々を順に見ていくと、「ポスト岸田」の有力候補の1人である高市早苗・経済安全保障担当相は留任となった。高い専門性と実務能力を評価されての判断だろう(本連載第311回p3)。
そして、岸田首相が特に重視する外相には、元法相の上川陽子氏が起用された。上川氏は東京大学卒・ハーバード大学大学院修了で、法相在任時にはオウム真理教の元代表、麻原彰晃(本名:松本智津夫)元死刑囚らの死刑執行命令書にサインをした人物である。今回の人事でも、その度胸と手腕が評価されたとみられる。
日本はこれまで、女性の人権問題について国際社会から厳しく批判されてきた(第333回)。その中での上川外相の抜擢(ばってき)には、日本における女性政治家の活躍を国際社会に強くアピールする狙いもありそうだ。
また、副大臣を経験していない自見英子(じみはなこ)・前内閣府大臣政務官は地方創生担当相に、加藤鮎子・前国交大臣政務官はこども政策・少子化担当相に抜擢された。この二人の起用に関しては、岸田内閣の支持率低迷が続く状況を打開するために、政権の清新さをアピールする思惑があるのかもしれない。
そして、復興相には無派閥の土屋品子氏が初入閣した。土屋氏は聖心女子大学を卒業後、栄養関連の専門学校で学んだ異色の経歴を持つ。栄養士・製菓衛生師・調理師などの資格も保有しているとのこと。この人物の登用にも、「ジェンダー平等」をアピールする狙いがあると推察される。
一方、党役員人事に目を向けると、選挙対策委員長には小渕優子氏が起用された。この判断は、一連の女性閣僚の登用とは毛色が異なるものだ。
経産相在任時に不祥事が発覚 しばらく裏方に徹してきた小渕氏
というのも、過去の人事も含めて、自民党による女性政治家起用は(1)華やかさと人気を内閣支持率に取り込むこと、(2)「女性の社会進出」に積極的に取り組んでいると世間にアピールすること――の2点を主な目的としてきた。
もちろん、それは決して悪いことではない。女性を積極起用する中で、高市氏をはじめ、野田聖子・前こども政策担当相、小池百合子・現東京都知事など、手腕を身に付けて実績を上げる女性政治家が続々と台頭してきた。世間へのアピールにとどまらず、優秀な人材の輩出につながる効果もあったといえる。
だが、今回の小渕氏の起用は、こうした文脈からは逸脱している。それどころか、内閣支持率を下落させる懸念材料になりかねない。
小渕氏は知っての通り、第84代総理大臣である故・小渕恵三氏を父に持つ世襲議員だ。戦後最年少の34歳9カ月で初入閣し、内閣府特命担当相として少子化対策や男女共同参画などに従事。14年には経済産業相に就任し、順調なキャリアを積み重ねていた。
ところが、経産相在任時に政治資金規正法違反のスキャンダルが発覚し、辞任を余儀なくされた。嫌疑不十分で不起訴となったが、それ以降、小渕氏は閣僚に就いていない。党組織本部長など、どちらかといえば裏方といえる仕事で汗をかいてきた。
そんな「スネに傷持つ身」である小渕氏が、今回久しぶりに要職に起用されたわけだ。
だが小渕氏は、経産相就任前に文部科学大臣政務官や財務副大臣の経験はあるものの、それ以外は政治家として顕著な実績があるわけではない。経済安全保障の専門家として存在感を見せる高市氏や、こども家庭庁の設立に携わった野田氏と比べると見劣りする。
政治家としての「修羅場」の経験値も同様だ。悔しい結果に終わったものの、高市氏、野田氏は初の女性首相を目指して総裁選を戦った経験がある。特に野田氏は「郵政造反議員」として05年の郵政解散総選挙において小泉首相(当時)に反旗を翻し、選挙区に「刺客候補」を立てられる苦境を生き残った。
それに対して、小渕氏は元首相の令嬢として、政界の先輩からかわいがられてきた印象だ。最年少の閣僚起用や、経産相への抜擢は、能力や業績を高評価された人事というよりも、先輩方の寵愛(ちょうあい)が反映された結果だと思えてならない。
もちろん、高市氏や野田氏も21年に「NTTとの会食問題」が取り沙汰されるなど不祥事もあった。両名とて“清廉潔白”というわけではないが、やはり政治家としての実績・経験は小渕氏を上回っているとみてよいだろう。
そんな中で下された、今回の人事。小渕氏の抜擢は「参院のドン」と呼ばれた故・青木幹雄氏の「遺言」に基づくものだという見方が強い。だから筆者は「従来の女性登用の文脈から逸脱している」と述べたのだ。
今回の起用は小渕氏にとって飛躍のチャンス!?
青木氏は小渕恵三内閣の官房長官で、茂木派の長老として隠然たる影響力があった。小渕優子氏の“実質的な後見人”といえる立場だったが、今年6月に89歳で死去した。
一部報道によると、青木氏は生前「われわれの使命は小渕優子内閣を作ることだ」と公言していたという。そして、森喜朗元首相がその「遺志」を後押しした。
青木氏は小渕元首相が急死した際、森氏を後任に決めた人物だとされる。いわば森内閣の生みの親だ。青木氏に恩義がある森氏は、その「お別れの会」で「(小渕優子内閣を作るという)夢がかなうよう最大限努力してまいる」という趣旨の発言をしたと報じられている。
今回の小渕氏の選対委員長への起用にも、森氏の意向が反映されているようだ。それが事実ならば、またもや長老の寵愛による抜擢である。実力でもぎ取った要職だとは到底いえない。
ただし、岸田首相が小渕氏に任せたのは「選挙」の対策である。結果が数字として表れるため、その力量が可視化されてしまう難しい職務だ。「政治家は選挙に落ちたらタダの人」という言葉があるように、結果によって党員の人生が大きく左右されてしまう責任ある立場でもある。
この人事に鑑みると、岸田首相は小渕氏に対して「長老の意をくんでポストは与えるけれども、実力は自らの手で証明しなければならない」と示したようにも思える。
一方で、実力さえ証明できれば、今回の起用は小渕氏にとって飛躍のチャンスでもある。選対委員長として候補者一人一人の勝利に向けて汗をかき、結果につなげれば、派閥を問わず人望を得られるまたとない好機となるからだ。所属派閥である茂木派だけでなく、他派閥にも支持を広げられるだろう。
もし小渕氏が首相就任を本気で目指すならば、この党内での支持拡大が実現のキーポイントになり得る。先ほどの高評価とは矛盾するようだが、高市氏や野田氏は、自ら仲間を集め、若手の面倒を見て汗をかき、派閥を率いて総裁選に勝とうとしたわけではなかった。彼女らは「無派閥」のまま総裁選に出た。いわば、「初の女性首相候補」という神輿に担がれることで当選を目指したといえる。
これに対して、現段階の小渕氏には、神輿に担がれるだけの人望や実力はないかもしれない。しかし、長老から与えられた機会ではあるが、自ら汗をかき、泥をかぶって仕事をし、成果を出すことができれば、従来の女性政治家にはなかった「数の力」(=党内での支持基盤)を得られる立場についた。
その上、政府は衆参両院の候補者に占める女性の割合を25年までに35%にするとの公約を掲げている。公約実現に向けて女性候補者を育成し、立候補・当選させていけば、「小渕ガールズ」とも呼ぶべき自らの権力基盤となるグループを形成できるかもしれないのだ。
なにより、選対委員長として成果を出せば、茂木派の後継者として認められて「小渕派」を率いるポテンシャルも秘めている。
ただもちろん、これらはあくまで仮定の話であり、そう首尾よく事が運ぶとは限らない。岸田首相も、何度も総裁選に挑戦して煮え湯を飲まされるような経験をした後に当選した。小渕氏も根気強く挑戦し続ける必要があるだろう。
「ドリル疑惑」の払拭も避けては通れない
そして、総裁選と直接的な関係はないが、今後の小渕氏にとっては「国民からのマイナスイメージの回復」も重要な課題となる。
今回の党役員人事が発表された際、SNSの「X」(旧Twitter)上では「ドリル優子」という言葉が飛び交った。
14年のスキャンダル発覚時に、東京地検特捜部が小渕氏の後援会事務所などを家宅捜索すると、会計書類を保存したパソコンのハードディスクが電動ドリルで破壊された状態で見つかったという。このことを揶揄(やゆ)した小渕氏の異名だ。
この「証拠隠滅疑惑」に対する国民の視線はいまだに厳しい。だが、たとえ国民に不人気な政治家であり、長老の寵愛によって要職を与えられたにすぎなくても、小渕氏が大きな可能性を秘めていることに変わりはない。
繰り返しになるが、汗をかき、泥をかぶって「数の力」を得られれば、日本初の女性首相になれるかもしれないのだ。小渕氏は、自らに課せられた使命の大きさを知り、汚名返上に邁進すべきである。
●実は“タカリ”の被害者? ドリル優子が穴をあけてまで隠したかった大問題 9/20
9月13日に行なった内閣改造で、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を入閣させた岸田首相。一方副大臣と政務官に目をやると女性はただの1人も選ばれず、対象的な結果となっています。その「原因」を考察しているのは、米国在住作家の冷泉彰彦さん。冷泉さんはメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で今回、岸田氏の女性観に問題があるわけではないとした上で、女性の副大臣・政務官ゼロという問題の背景に考えられる「本当に怖い話」を解説しています。
ドリル優子と「副大臣・政務官に女性ゼロ問題」を考える
どうも日本の政局には閉塞感が濃くなっています。別に岸田氏を降ろせとは言いませんが、国の成長力と生産性を確保するための必要な変更に取り組むように、何とか少しでもマトモな方向を向いて欲しいと思うばかりです。その準備として、3点ほど指摘しておきたいと思います。
1.西村康稔に加藤勝信。コロナ禍に責任回避を続けた政治
コロナ禍については、最新変異株の動向はあるにしても、社会的には出口から出てしまっています。そんな中で、尾身茂博士も委員会の解散により、政府のポジションからは解放されたようです。
尾身博士に関しては、コロナ対策に不満を持つ人々があれこれ悪口を言っています。アメリカでも同様で、功績のあったトニー・ファウチ博士は保守派を中心に散々な言われ方をしていました。
ですが、尾身博士もファウチ博士も感染症の専門家です。感染症の専門家のミッションというのは単純で、研究している感染症による死亡数を少しでも下げるのが、この方々のミッションです。
その一方で、対策等による社会的コストを考えて、最適解の政策を決定し、国民の協力を求めるのは政治家の仕事です。政治家が逃げ回っていて、また時には官僚組織の防衛に向かい、時には専門家と対立して経済優先に傾斜したり、あるいは経済への影響を専門家のせいにしたりしたのは、責任回避だと思います。
専門家はコスト100で死亡極小を主張するのが仕事です。一方で経済の専門家は、経済コストは極小で、死亡は許容範囲を主張するのでいいわけで、その中間にある最適解を決定して宣言し、国民に説明するのは政治の責任です。
コロナ禍の間、政治はずっとこの責任回避を続けてきました。例えばですが、西村康稔とか、加藤勝信というような方々は、「あれではダメだった」ということを、厳しく自戒すべきです。
2.ドリル優子がドリルを使ってまで消したかった問題
小渕優子氏の選対委員長就任が話題になっています。小渕氏については、2014年に関連する政治団体の政治資金収支報告書に虚偽の記載が発覚しました。その際に、東京地検特捜部による捜索が入る前に事務所のPCのハードディスクにドリルで穴を開けて、廃棄したのは有名な話です。このエピソードを受けて、同氏は「ドリル優子」というニックネームをつけられて、現在に至っています。
この事件の顛末として、小渕氏は経済産業大臣をクビになり、元秘書は有罪判決を受けました。ですが、大切なのは「ドリルで消したこと」ではありません。そうではなくて、「ドリルで消さなければいけないような問題」があったのが問題なのです。
ドリルで消さねばならなかった問題とは何だったのか、それは、90年代に様々な紆余曲折を経て成立した「小選挙区比例代表制による政治改革」が踏みにじられたということです。もっと言えば、政治改革が想定した、政治とカネの問題におけるカネの流れが逆流しているのです。
まず、政治改革の第一の狙いは、それまでの中選挙区制における「自民党候補同士の熾烈な選挙戦」が、多額のカネを必要としていたわけですが、これを断ち切ろうとしたわけです。具体的には、定数1の小選挙区を設定すれば保守同士の戦いはなくなり、政策本位の選挙戦になるというのが制度設計でした。
中選挙区制の時代には、例えば80年代に岡山に住んでいた私が聞いた話では、倉敷とか総社といったあたりでは、橋本龍太郎と加藤六月が熾烈な選挙戦をしていて、陣営は「今日はこっちは天丼、こっちはカツカレー」などと有権者を接待して買収していました。それこそ、カネが無限にかかるような話だったのです。
小渕氏の場合も、お父様の恵三氏の場合は、中選挙区で中曽根康弘、福田赳夫と常に厳しい選挙戦を闘っていたわけです。そんな中で、有権者をまとめるための「観劇ツアー」などが常態化していたのでしょう。明治座に昼食、お土産、往復バス付きで招待する、会費は格安で差額は買収という方法です。
問題は、小選挙区制度になったら、この「観劇ツアー」は要らなくなったわけです。それこそ、恵三氏から承継した小渕優子氏の選挙区は、無風区と言われて常に得票率は70%前後となっていました。野党は対立候補を立てるのから逃亡してせいぜい共産党の泡沫候補が出るだけで、現在に至っています。ですから小渕優子氏は将来を嘱望された有力議員として全国で応援演説をする立場であり、地元では選挙運動をしないで良かったのです。
にもかかわらず有権者は「格安観劇ツアー」をせびり続けた、これは買収ではありません。むしろ反対です。タカリであり、悪質な賄賂の要求です。全く理不尽なカネであり、その源泉が実は選挙が公営化されたために税金から(一部かもしれませんが)出ていたわけで、観劇に行った人は全員が収監されて公民権停止になっていいレベルの犯罪だと思います。
政治改革の目的を完全に踏みにじったドリル優子
今回文春がすっぱ抜いた、カネがファミリー企業に流れていたという問題も同様です。政治改革前に、政治家のファミリー企業が問題になるというのは、例えば田中角栄がそうでしたが、ファミリー企業で儲けたカネを政治に投じていた、これが「政治とカネの不正」だとして叩かれていたのです。
とにかく、カネを作って投入した奴が中選挙区で有利になる、これではカネで権力を買うようだから、これを防止するというのが70年代からの政治改革論議でした。小選挙区制と、選挙の公営化は、この問題を断ち切るためだったのです。
ですが、今回のスキャンダルは、ガソリン代などをチマチマとファミリー企業から買って、カネをそちらに回していたというのです。直ちに違法かどうかは不明ですが、まるで、セコい野党系の素人政治家が、身内を秘書にしたり、自分の家を事務所にしたりして摘発されるのと同じ構図です。
とにかく、小渕氏の問題は、90年代に国を挙げて必死になって実現した政治改革の主旨、つまりファミリー企業などで違法な政治資金を作って、これを「保守対保守の熾烈な選挙戦に投入するのを止めさせよう」という制度の目的を完全に踏みにじっているということなのです。
つまり、選挙区にライバルがいないのに、観劇ツアーをせびる有権者を黙らせられなかったとか、昔は政治資金を支えたはずのファミリー企業が、不景気になって反対にカネをせびる問題を断れなかったという「マネーの逆流」が起きていたのです。
情けないことに、小渕氏は支持者への説明に「2年間かかった」と言っています。このコメントを聞くと、「自分が政治資金問題で疑惑を招いて信頼を失ったので、支持者に許してもらうのに2年かかった」という風に聞こえます。ですが、本当はそうではないかもしれません。「先代の時は観劇ツアーがあったのに、お嬢になってから法律やなにやらで、できないというので、自分としてはガッカリだ」というタカリ構造の有権者に対して「もうできないんですよ」と「説得」するのに2年かかったのかもしれないのです。
ドリルでHDを破壊しなければならなかったのは、そうした内容であったと考えるのが自然です。
だとしたら、小渕氏は被害者なのかもしれません。ですが、仮にそうであれば、こんなセコい、そして違法な既得権益すら潰せない政治家には、巨大な抵抗勢力と戦って、日本経済をグローバリズムに適応した姿に変更するのは無理だと思います。この方への過大評価はもう止めにしたら良いのではないでしょうか。
ついでに言えば、小渕氏との政策の違いをしっかり打ち立てた対立候補をぶつけることから、逃亡し続けた立憲の泉代表には、少なくとも「ドリル優子」を面白おかしく批判する資格はないと思います。
3.「女性副大臣・政務官ゼロ」に透けて見えるコワい話
閣僚に5人の女性を起用したのはいいのですが、副大臣と政務官にはゼロだったということで、岸田氏の内閣改造には批判が出ています。全くもって、情けない話です。
では、岸田氏もしくは岸田政権が「女性に対して差別的」だとか「女性の活躍に否定的」なのかというと、必ずしもそういうことではないと思います。
問題はもっと深いところにあります。
1つは、とにかく党内基盤が盤石ではなく、当選回数と統治スキルを勘違いして、猟官してくる政治家を「抑えきれない」ということです。
2つ目は、総裁選から逆算して、味方を作り敵を封じるためには、人事のパズルには失敗できないということです。
3つ目は、仮に政権が強力で1番目の問題からも、2番目の問題からもある程度自由で、本当に適材適所人事ができる環境にあったとしても、核になる岸田氏自身に「やりたいことがない」あるいは「5年から10年レンジですら国家の大計がない」ということです。
たぶん、3が最大の問題であり、同時に政権が弱いので1と2も重くのしかかっているということなのでしょう。その結果として、あくまでパズルをこのように組むしかなかったのだと思います。
それにしても、3の問題は本当に心配です。今回更迭されたという木原誠二氏の書いたという「新しい資本主義」がいい例です。再分配強化と、景気対策の話と、経済安保の話という全く別方向の話が「ワンプレートに和洋中が乗ったチャンポン定食、しかも食い合わせは最悪」という格好で並んでいるだけです。
ここから透けて見える「何もない感」というのは恐怖でしかありません。しかしながら、もっとコワいのは「それよりマシ」な代替チョイスがないということです。
仮の話ですが、茂木とか萩生田というような人々が本気で「次」を狙っているのなら、今のうちから思い切り世論との直接対話を始めていただきたいのです。中期的な国家の方向性について「何か」考えている内容があるのか否か、そして菅義偉、麻生太郎のように世論との対話スキルが「決定的に欠落している」ことはないかどうか、とにかく今から自分をさらけ出して、世論の評価を求めていただきたいのです。
茂木氏は統率力、特に部下のモチベーション向上スキルが足りないという世評がありますが、それが間違いであることを証明していただきたいです。萩生田氏は、短期間に文科相と経産相を経験したわけですから、いかに現在の日本が必要としている教育と現実がズレているか分かるはずです。ですが、それでも文科にも「今でもいい顔」をしているのなら、全く信用できません。経産行政と文部行政の矛盾に気づかないか、気づいても放置するのであれば、そんな政治家は必要ありません。
話が脱線しましたが、女性の副大臣・政務官ゼロという問題の背景に考えられることは、本当に本当にコワい話だと思います。
●日韓に依然ある深い溝 日本の「不安」と韓国の「不満」 9/20
日本の外務省高官が「年末に岸田首相が今年もっとも多く会談した外国首脳は誰かと数えたら、間違いなく尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領になるはずだ」と驚きを込めて話していた。韓国が3月に徴用工問題の解決策を発表して以降の急速な関係改善は、それまでが悪すぎたこともあって戸惑うほどだ。
ただあまりに急激な変化であるだけに、相手の思いにまで目を向けるのが難しくなっている側面もあるのではないか。それを象徴するような言葉を先日、ソウルで開かれた民間対話「日韓フォーラム」で聞いた。あるセッションで司会者が「日本側には期待と不安があり、韓国側には期待と不満があるようだ」とまとめたのである。
尹錫悦大統領のリーダーシップ
30年ほど前から続く政治家や研究者、ジャーナリストらによる対話だ。現在の国際情勢を考えれば協力強化以外の選択肢がないことや、尹大統領のリーダーシップが大きな転換点を作ったことに異論は出なかった。
日本側からは、東京電力福島第1原発から出る処理水の海洋放出に対する韓国政府の姿勢への謝意も語られた。韓国が中国と一緒に反対に回っていたら、日本にとって大きな負担になっていたからだ。
にもかかわらず語られたのが「不安」と「不満」だった。日本側の不安は「次の大統領になっても続くのか」であり、韓国側の不満は「日本が相応の誠意ある呼応をしてくれない」というものだ。毎年のように参加し、個人的な親交を持つ人も多い場でもこうした認識ギャップが出てくることは軽視しない方がいいだろう。
日本はきちんと対応してくれない
それでも対話の基調は「不安」や「不満」より、「期待」に焦点を当てようとする明るいものだった。だが、終了後に尹政権の要人と会ってみると、やはり「不満」の強さを感じざるを得なかった。日米韓連携を進め、日韓関係を重視して努力しているのに、日本がきちんと応じてくれないと強い語調で語っていたからだ。
韓国世論を刺激しやすい歴史認識問題と関連しても、日本側の否定的な態度に依然として悩まされているのだという。8月の日米韓首脳会談を受けて、韓国外務省は世界各地の大使館や領事館に現地で日米との意思疎通を強化するよう指示を出した。だが、これも日本の反応が悪くて空回りというか、肩すかしをくらったような感じなのだとぼやくのだった。
後者については肩に力が入りすぎという気がしないでもないのだが、とにかく尹政権の意気込みは伝わってくる。それだけに日韓フォーラムで聞いた「不満」が思い出された。
なぜ釜山万博を支持してくれないのか
現場のレベルでも似たようなものである。韓国側が口をそろえて不満を語るのが2030年の万博誘致問題だ。韓国・釜山とサウジアラビアが有力候補で、今年11月に開催地が決まる。尹政権にとっては重大な関心事で日本に支持してほしいと頼んでいるのだが、日本は応じない。
万博開催で韓国を支持すると岸田文雄首相が言えば、それだけで韓国側は大喜びするのにやろうとしない。韓国政府関係者は「サウジの反応を気にして、経産省がストップをかけているようだ」と指摘する。
この関係者は「政権の方針があるから、われわれは日本とうまくやっていると取り繕わないといけない。でも、日本政府の反応が悪いのは万博に限らない」とこぼしていた。ソウルの同僚によると、韓国外務省の幹部からも「日本政府は韓国との関係はもう大丈夫と安心しきっているのではないか」という苦言を聞くという。
元東京特派員である韓国紙「朝鮮日報」の朴正薫(パク・ジョンフン)論説室長は9月2日のコラムで、大阪・関西万博誘致の際に当時の李明博大統領が支持を公言したのに、釜山への万博誘致の支持要請に日本が応じないのであれば「真心が疑われる」と批判した。
朴氏は「日本は学ぶべきところの多い大国だが、国力に似合った『大国外交』をする国ではない。価値・原則・大義よりも目の前の損益を計算する『そろばん外交』を駆使する」と書いた。さて、これにどう答えるのが適切なのだろうか。
●処理水放出は30年で終わらない!? 建前だらけ…原発廃炉への道筋 9/20
8月末に始まった福島原発の処理水の第一回目の放出。残念ながら、処理水放出は政府などが示すように今後30年程度で終わることは決してない。その年数は根拠のない建前の数字であり、関係者や専門家でそれを信じているものはまずいない。つまり今のままなら処理水は、その何倍、ひょっとすると何十倍もの期間にわたって生まれ続けることになる…。
「汚染水」と「処理水」の違い
確認事項として、汚染水と処理水が発生する仕組みを示しておいた。
下図のように、発生する汚染水をALPSで処理することで処理水と呼ぶことになっている。しかし、中国は全体を汚染水と言い続けていて、それが現在の騒ぎの原因となっている。
一方、ALPS通過後の処理水にトリチウムという物質が残ってしまうが、世界中の原発の通常運転でも発生したトリチウムを含む水を放出処理しているから大丈夫というのが、東京電力と政府の姿勢である。
   処理水発生のメカニズム
ここの議論は今回のコラムの主目的ではないが、一点だけ事実を記しておく。
福島のタンクにたまっている“処理水”のうち、そのまま希釈して放出できるものは全体の3分の1にすぎない。残り3分の2は、事故当初からの基準を超える様々な放射性物質が入り込んでいて、放出前に再度の処理をしなければならない。つまり、現存する“処理水”のうち多くは汚染水と言わざるを得ない。
国、東電はこれを隠してはいないが、知らない人も多い。まず多面的で積極的な情報公開が必要なのは言うまでもない。
もう一つの問題は、この放出がどのくらい続くのかということである。
処理水放出期間の「30年程度」に根拠なし
東電と政府によると「放出期間は30年程度に及ぶ見通し」とされている。これは、原発の廃炉が達成されるまでの期間と合致する。理屈は一応あっているが、では、この廃炉までの30年はどこから来ていて、どれだけ確実なものなのだろうか。
実は、ここから急にその根拠が揺らいでくる。
   廃炉に向けた中長期ロードマップの目標行程(マイルストーン)
上記の図が、いわゆる「廃炉工程表」である。
すでに何度か改訂され2019年12月のものが最新となっている。一番右の、「廃炉措置終了までの期間(30〜40年後)」が、廃炉までの年数にあたり、基準年は一番左の冷温停止状態達成の2011年12月なので、廃炉は2041年から2051年となる。
第2期の「燃料デブリ取り出し開始」の2021年12月は過ぎてしまい、まだ始まっていない。すでに遅れているのが分かる。今年の後半に試験的に取り出しを行うとしているが、グラム単位である。デブリの総量は880トンなので、廃炉までの残り20〜30年はどう見ても現実的でない。
では、もともとの30〜40年はどうやって決めたのであろうか。
実は、根拠はない。
当時の原子力委員長が、「準備に10年、炉心融解した3つの原子炉に10年ずつで40年だが、意味のない計算式」と語り、地元に配慮した政治家が(期間を)値切ったと政治判断を示唆している(朝日新聞2021年2月11日付)。
結局、処理水の放出期間30年程度も同様に何の保証もない。
ドイツの廃炉年数との近似性
筆者は、福島事故後の2011年から2012年にかけてドイツ東北部の原発廃炉の現場を取材し、テレビ番組にした経験を持つ。当時、東ドイツ最大の原発基地の廃炉が20年以上かけて行われており、近接地の中間貯蔵施設にも入った。
ドイツでは、原発が廃棄される場合、使用済み核燃料はガラス固化されてキャスクに収められ、解体された原子炉格納容器や蒸気発生装置などと一緒に中間貯蔵施設に収納される。この後、最終処分場へと運ばれるのだが、中間施設が“最終化”しないために、法律で保管の年限が決められている。これが40年間なのである。
世界最悪規模の原発事故の処理がどのくらいの時間で可能なのか、日本に限らず世界中で算定できる国や機関は当然なかったであろう。当時、えいやの政治判断なのか、ひょっとするとドイツの廃炉への年数を参考にしたかもしれない。
しかし、ドイツのケースは通常の原発の廃炉である。燃料デブリの取り出しにめどが立たず、これ以外にも激しく汚染された原子炉建屋や原子炉格納容器などを考えると、日本では100年単位の時間が費やされても何の不思議もない。
建前だらけ…日本の原発廃炉への道筋
一度決めたことを変えない。
決定にしっかりした根拠があり、信念を持ってことにあたると言うなら、それは良いことなのかもしれない。しかし、単なる建前や責任逃れのためであるなら、それは害悪でしかない。
こと原子力発電に関しては、この建前が多すぎる。
今回の廃炉への道筋も、建前だらけと言っても過言ではない。2019年の廃炉工程表の改定にあたって政府は、「2041〜51年に廃炉を終える目標を堅持した」とある。事故後の厳しい状況下はともかく、何年もたった後に、いまだに建前を守っている。できるはずのないことをできるということで、間違った結論が導き出される可能性が増している。そもそも目指す「廃炉の定義」さえ、示されていない。
建前が残る限り、処理水は30年後に出ないことにされる。また、廃炉に要する費用も極端に低くなる。これを都合が良いと考える人たちもいるのだろうが、いずれ違った現実を突きつけられるのは、私たち国民である。
事故後に作り上げられた建前はいったんチャラにして、合理的かつ現実的な数字を作っていくべきである。厳しい事実が待っているであろうが、それは乗り越えるしかない。
コラムの途中でドイツの中間貯蔵施設の例を挙げたが、これにはドイツの政治家の言葉がセットになって「落ち」としてついてくる。ドイツでも、日本と同様にいまだに最終処分場が決まっていない。
つまり、収納されている核汚染物が、40年で中間貯蔵施設から出ていく行き先がないのである。このことを、現地選出の国会議員に質問したが、答えは「保管期間を延長すればいい」であった。日本よりずいぶんましな制度だと思うが、ドイツの政治家も建前で生きているのである。
●最強の官庁“財務省”、罪は多々わかっていてもだれも罰することができない 9/20
恥ずかしながら、わたしは55歳過ぎごろまでまったくの経済(財政)音痴、政治音痴だった(いまもそれほど変わらない)。
「国の借金800兆円って、なんのことだ?」と思い、「国はいったいだれに借金してるんだ?」と思った。また「国民一人当たりの借金は数百万円になる」といわれ、ネットには「日本の借金時計」なるものがあって(今もある)、毎秒200万円ほど増え続けていて、このままだと国の財政はやがて破綻すると脅されていた。
その後、「国の借金」とは基本的に国債の発行残高のこと、正確には国の負債額だとわかったが(現在の額は約1230兆円)、考えてみれば、国の負債額と「国民一人当たりの借金」など、なんの関係もないのである。
国の借金だけをいい募り、その額を国民の頭数で割って、無意味に一人あたりの借金額を示して国民を不安にし、国家財政の危機を煽って増税の不可避性を植え付けたのは財務省である。
今年の10月から導入されるインボイス制度に関連して、ある友人がそれを推し進めているのは財務省であり、財務省はろくでもないことばかりやると憤慨した。わたしもインボイスは無関係ではないらしく、出版社から何通も通知がきていたが、めんどうだったのでほうっておいた。
しかしいよいよ期限が差し迫ってきたので、この際その制度についてすこし勉強してみようと思い、ついでだから財務省関係の本も読んでみようと思ったのである。
おあつらえ向きの読みやすそうな本があった。森永卓郎氏の『ザイム真理教』(フォレスト出版)である。
大蔵省と専売公社主計課は「隷属関係」
この本を読んで、官僚世界の支配構造の前近代性に驚いた。森永氏は、「私は大蔵省の『奴隷』だった」と衝撃的な告白をしていたのである。
森永卓郎氏は1957年生まれの66歳である。東京大学卒業後、氏は日本専売公社(現JT)に入社した。当時、大蔵省主計局と専売公社主計課の関係は「隷属関係」にあった。「大蔵省の言うことには、絶対服従」だったのだ。
予算編成の時期になると、森永氏は大蔵省主計局の前の廊下で「ずっと座っていること」が仕事だった。予算の査定をしている主査がなにかわからないことがあると、部屋のなかから「お〜い、もりなが〜」と叫ぶ。数秒以内に主査の前に駆け付けないと「怒鳴りつけられる」。専売公社は当時、大蔵省の“植民地”だったのである。
「自分の周りの人間が、誰しもひれ伏してくる。自分の命令には、みなが絶対服従だ。本当は、大蔵省の役人に頭を下げているのではなく、予算というお金に頭を下げているにすぎないのだが。それには気づかないのだ」
これはあらゆる権力の支配・被支配構造の本質である。だがそんな森永氏も、「大蔵省から予算を取った後、今度は工場や支社に予算を配分する立場に変わる」。すると今度は自分が「ミニ大蔵省」になって、下に威張り散らすのだ。これまたあらゆる権力の行使に共通する階段構造である。
関東支社の予算課員が入社一年目の森永氏に、忘年会をセットするから来ていただけないかと伺いを立てる。するとあの森永氏がこういったというのである。
「行ってもいいけどさ、女連れて来いよな」(そして当日、女性の予算課員がやってきた。それが現在の妻だという)。
ノーパンしゃぶしゃぶ接待花盛りだった時代のことである。「MOF担」というものがあるのを知ったのもこの時代。もし森永氏が大蔵省の役人だったら、自分は接待にずぶずぶになっただろうといっている。人間は弱いものだから、と正直である。
財務省に唯一洗脳されなかった財務官僚
高橋洋一氏の『さらば財務省! 政権交代を嗤う官僚たちとの訣別』と『財務省を解体せよ!』は、下手な小説を読むよりはるかに読み応えがあった。ほかにも同氏の『数字を読めない「文系バカ」が日本をダメにする』を読んだ。
高橋氏は、森永氏に“財務省に唯一洗脳されなかった財務官僚”といわれた稀有な人である。アメリカ占領軍に、「従順ならざる唯一の日本人」といわれた白洲次郎みたいな人である。氏は1955年生まれの68歳。
冒頭で触れた国の借金による財政破綻論のウソは、元大蔵(財務)官僚の高橋洋一氏によって突き崩されたのである。もう20年以上前になるか、テレビで高橋洋一氏が、次のように述べたのだ。
国の借金が何百兆円あろうと、それだけで国家財政が破綻することはない、なぜなら負債の反対側には国の充分な資産があるからだ。あたりまえのことじゃないか、という涼しい顔で高橋氏は語っていたものだ。
かれのこの説明は何回か聴いた。いつも早口でしゃべるあまり風采の上がらぬおじさん(失礼!)のようで、こんな正直な人が政府のなかにいるのかと不思議に思え、最初は、そういうものか、と半信半疑だった。
高橋氏がどういう人かはわからなかった。だがかれは自信満々だった。こんなことをはっきりいう人が政府内にいるのかと思った(かれは日本ではじめて国のバランスシートを作った)。
高橋氏もかつて大蔵省にいた。森永卓郎氏は東大経済学部卒だが、高橋氏はおなじ東大出身でも異色だった。理学部数学科卒である。
高橋氏の学生時代の将来の夢は数学者になることだった。理系の人間はふつう公務員試験をうけない。むしろ「理系にとっては公務員など眼中にない存在」だった。
「神童」なのか「変人」なのか
しかしたまたま試験を受けて合格した。「2年に1人は君のような人材がいてもいいんだ」と珍しがられ、「いわば変人枠」で大蔵省に勧誘されたという。上司たちは氏を最初は甘く見ていたのだろうが、高橋氏はただの「変人」ではなかったのだ。
わたしもあの早口おじさんが、まさか数学の神童だったとは知らなかった。中学のときは「主要教科の教科書は一日目で読み終わった」。暗記科目は「フォトメモリー」のように「読んだらほとんどが記憶に残った」。
なにより「数学はものすごくできて、中学生のときに東大等の大学入試の数学の問題は簡単に解けた。東大の数学問題なら百点はとれた」というのだ。中学生ですよ。「神童」ではないか。旺文社の全国模試は「常に数学は全国一位だった」。
この数学の才能が、財務省のなかで出る杭としても叩かれず、出過ぎた杭として引き抜かれもせず、だれからも一目も二目も置かれた秘密である。
ちなみにかれは「東大」などなんの評価もしない。「『東大がいい』という、くだらない価値観にごまかされないほうがいい」「東大に行こうが、三流大学といわれる大学に行こうが、ちょっとした差でしかない」と断言し、それどころか「大学に行く必要があるのかとすら思う」とまでいっている。
最高官庁といわれる財務省の官僚は日本最高のエリートだと思っているが、「それは完全に、東大法学部をはじめとする日本の文系社会におけるヒエラルキーの延長線上にあるイメージにすぎません」。だから「国際的に通用する人材、どこへ行っても他流試合ができる人は、財務官僚のなかの4分の1程度」しかいない。「東大など世界から見れば、お話にもなりません」
東大などはなから相手にしていない人だからいえる言葉ではあろうが、高橋氏はほんとうにそう思っている。
財務省はどうして「増税」にこだわるのか
高橋洋一氏は財務官僚についてこういっている。
財務省が「政治家やマスコミ、他省庁をひれ伏させ、“最強官庁”の名をほしいままにしてきた」のは「予算編成権と国税査察権」があるからだ。そのほかに、「天下り先のポストを差配する」人事権もある。財務省は「総理、官房長官、官房副長官のすべてに秘書官をだしている」)。
官僚にとって一番大事なのは国よりも省、とよくいわれる。要するに、「いかに多くの予算を確保し、OBを含めた自分たちの利益を確保できるか」という、いわゆる「省益第一主義」である。
しかし「財務官僚の場合、これに加えて『財政再建主義』という原則が加わります」。つまり「なるべく歳出を減らし、歳入を増やすことに固執する」。これを実現するための「最も有力な手段」が「消費増税」である。
財政再建主義は、財務省の絶対譲れない宗旨である。だから減税など決してしない。ガソリンがいくら高くなってもガソリン代の4割は税金だが、ガソリン減税はしない。財界には消費増税時に賛成してもらったので、企業の内部留保がいくら巨額になろうとも、「それへの課税は検討されることはありません」。日本新聞協会は消費税のとき、「租税特別措置」という餌を与えられて消費増税を免れたため、財務省批判ができない。
財務省はどうして「増税」にこだわるのか。「結局のところ、自らの権益を拡大するため」つまり「歳出権の拡大」だ、というのが高橋氏の見解だ。省の利益・権益のために国政を左右するのかと思うが、官僚たちならやりかねないのだ。
しかしそれでいて財務官僚たちは、自分たちは「国士」だと勘違いしているという。「国士とは身を投げうって国家を支える憂国の士ですが、悪者になってもいいから、あえて国民に不人気な増税という選択肢をわれわれは選ぶのだと思い込み、正当化している」
「予算編成」と「徴税」の組織を分けるべき
それだけではない。官僚は無謬説の上にたっているから、絶対に自分たちの政策の非を認めようとしないのである。
高橋氏は、文書改ざん、事務次官のセクハラ発言、平気でうそをつく不誠実な答弁、、財務官僚の傲慢さやおごりなど、最強がゆえにやりたい放題の財務省を改革するには「財務省解体」という荒業が必要だと主張する。財務省解体とはどういうことか。「歳入庁」の新設である。
「国税庁を財務省から切り離し、日本年金機構の徴収部門と合併させ」、「新たに税金と年金などの社会保険料の徴収を一括して行う『歳入庁』を新設すること。つまり、国税庁と日本年金機構の徴収部門を統合した組織をつくる」ことである。
現状は「他省庁は予算を求め、政治家は徴税を恐れ、マスコミはネタを求めて、財務省にひれ伏しています。世界を見渡しても『予算編成権』という企画部門と、『徴税』という執行部門が一体となっている財務省のような組織は例外的です」
財務省は税の入口と出口をがっちりと握って放さないのである。
現在、「年金保険料の徴収漏れは数兆円規模と推計」される。しかしこれは歳入庁を創設すれば減らすことができる、と高橋氏はいう。マイナンバー制度も「消費税インボイス」をやるのなら、歳入庁創設を前提にしなければ有効とはいいがたい。そうすれば「税・社会保険料で合計10兆円程度の増収になる可能性がある」
しかしできない。政治家は国税庁の上部組織の財務省主税局に頭があがらない。財務省も権力の源泉であり自分たちのポストでもある国税庁を死守する。国税庁長官は事務次官になれなかった人が最後につくポストで、東京・名古屋・大阪国税局長もキャリア官僚のポストだ。マスコミも国税庁の調査能力を怖れて議論をしない。
歳入庁の創設に財務省は徹底的に抵抗する。「国税庁は財務省の“植民地”になっており、国税権力を財務省が手放さないのです」
財務省の罪は多々わかっている。だがだれも罰することができないのだ。
財務省と戦った安倍元首相
わたしは安倍晋三首相をある意味、誤解していたところもある。
百億円単位の巨額を使って軽薄にアベノマスクを使った愚策や、伊藤詩織氏をレイプしたとされる元TBSワシントン支局長の山口敬之氏の不逮捕疑惑や、森友問題での国会答弁の曖昧さなどで、わたしは安倍首相が好きではなかった。国葬にも反対だった。
これらの点ではいまでも反省はないが、安倍首相が財務省と戦い、国民のための政治を本気でやろうとしていたとはじめて知ったのである。高橋氏は第一次安倍内閣のブレーンを務めた。財務省は財政再建・金融引き締めだが、安倍内閣は経済成長優先・金融緩和で対抗した。「増税ではなく経済成長による増収」を目指した。
安倍首相が財務省依存から脱して、消費増税の二度にわたる延期をし、財政出動ができたのも、日銀の副総裁に「金融緩和に積極的なリフレ派の岩田規久男氏を起用でき」、積極的な金融緩和に取り組めたからだという。
高橋洋一氏は第一次安倍政権で「旧社会保険庁を解体し、歳入庁を創設しようとした時」、財務省は「激しく抵抗」したという。理由は「国税庁を財務省の配下におけなくなると、財務省からの天下りに支障が出る」というばかばかしいものだった。
高橋洋一氏みたいな人に一回総理大臣をやらしてみたいと思う。近々『安倍晋三回顧録』も読むつもりだ。 

 

●「隙あらば増税」の影消えず…岸田政権 「大胆な経済政策」も変わらぬ 9/19
ガソリンやエネルギー、食品など物価高が続くなか、岸田文雄政権の優先課題は経済対策だ。だが、財務省の影響力は強いままで、「国民生活を応援する大胆な経済政策」が打ち出されても、その後の「増税・負担増」で国民にツケが回る懸念が強い。
岸田首相は13日の記者会見で、月内には閣僚に対し経済対策の柱立ての指示を行い、来月中をめどに取りまとめを目指す考えを示した。
「ガソリン補助金の継続を含め、国民生活を応援する大胆な経済政策を実行していく」と述べたが、ガソリン価格の「トリガー条項」の凍結解除や二重課税の解消に踏み込む姿勢はない。
第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは「経済政策に大きな変化はなく、財政規律重視の動きは続きそうだ。すでに出ている物価高対策でも、ガソリン価格のめどが当初の168円から175円に引き上げられた。電気・ガス料金対策も、補助金の規模が縮小されてから年末までの延長を決めるなど出口を意識する姿勢が目立つ。経済対策では特定分野への投資減税などが浮上する可能性もある一方で、国民負担を増やす可能性があることには注意が必要。昨年度の補正予算は真水で29兆円程度だったが、今回はさらに小規模になると見込まれる」と慎重だ。
閣僚の顔ぶれをみると、鈴木俊一財務相が留任。首相側近の官房副長官に財務省出身の村井英樹氏が就くなど、同省に近い人物も目立つ。
一方、「非緊縮派」では、初入閣の木原稔防衛相は、積極財政派と目される党の財政政策検討本部のメンバーだ。
上武大学の田中秀臣教授は「『増税・負担増』批判や保守派に配慮した人事もみられるが、全体的に財務省への依存度は強まったといえる。岸田首相の経済政策は党内勢力や支持率などの状況に左右されがちだ」と分析する。
首相が大規模な経済対策と補正予算を掲げても、その後の「負担増」路線に警戒が必要だと田中氏は話す。
「岸田首相が本当に『変化』を見せたければ、補正予算で少なくとも真水10兆円程度が必要だ。本来なら消費減税が望ましいが、難しいだろう。次期衆院選対策として大胆な策を打ち出したとしても、選挙後に『デフレ脱却宣言』をして財政再建に向けて動きだせば、ツケは必ず国民に回ってくる。国民は、政府が『隙あらば増税』と考えていることに意識を向けておくことが重要だ」
●内閣改造も政権浮揚に繋がらず… 与党内に新内閣を不安視する声 9/19
先週発足した「第2次岸田再改造内閣」ですが、改造後も支持率が伸び悩み、与党内からは早くも新内閣を不安視する声が上がっています。
けさ、内閣改造・党役員人事後、初めて開かれた自民党の役員会。岸田総理は「内外ともに正念場」だと訴え、“変化”を呼びかけました。
岸田総理「変化を力として閉塞感を打破し、“あすはきょうより良くなる”と誰もが思える国づくりを皆さんと進めていきたい」
内閣改造では、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を起用するなど「変化を力にする内閣」と位置づけましたが、報道各社が改造後に行った世論調査では、内閣支持率は概ね「横ばい」と政権浮揚には至っていません。
野党からは… 国民民主党 玉木雄一郎 代表「そもそも、内閣改造で支持率を上げようとしたのかと。総裁選挙に向けた万全の布陣を考えた結果なのかなと」
5人の女性閣僚を起用する一方、54人いる副大臣・政務官への女性の起用はゼロ。「変化を力に」と謳う岸田総理ですが、自民党内からも“派閥の力学”を重視した旧来型の政治が続いているとの声が上がっています。
閣僚経験者「派閥の意見ばかり取り入れたジグソーパズル内閣だ」
内閣改造後も支持率が伸び悩む状況に、閣僚経験者は…
閣僚経験者「ご祝儀ムードで普通は支持率が上がるはずなのにね。スタートダッシュで支持率が上がらないと、今後も上がる要素がないな」
岸田総理「(内閣支持率に)一喜一憂するのではなく、先送りできない課題について取り組み、結果を出すことによって、国民の期待に応えていく」
きょう、国連総会に出席するためニューヨークに向けて出発した岸田総理。言葉だけでなく、行動でいかに結果を出していくのか、その手腕が問われています。 
●安保法成立8年 元に戻れなくなる前に 9/19
安全保障関連法の成立が強行されてから19日で8年。安保法の狙いは「日米同盟」強化で紛争を未然に防ぐ抑止力を高め、日本国民全体のリスクを減らすことだが、日本周辺の緊張は緩和されるどころか、むしろ高まっている。
「集団的自衛権の行使」を認めた安保法を起点に、「敵基地攻撃能力の保有」に至った防衛力の抜本的強化が、アジア・太平洋地域の緊張緩和に寄与しているのか、冷静に考えるべき局面である。
今年8月、台北市で開かれた国際フォーラム。自民党の麻生太郎副総裁から驚くべき発言が飛び出した。
「今ほど日本、台湾、アメリカなどの有志国に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はない。戦う覚悟だ。防衛力を持っているだけでなく、いざとなったら使う、台湾海峡の安定のためにそれを使う明確な意思を相手に伝えることが抑止力になる」
仮に中国が台湾を武力統一しようとする場合、日米などの民主主義国は台湾とともに戦う。その覚悟を示すことが中国に対する抑止力になる、という趣旨である。
国民に「戦う覚悟」迫る
麻生氏は以前にも、台湾有事は日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」に当たり得るとの見解を示したことはある。
今回の発言は戦争防止が目的であるとはいえ、日本国民に「戦う覚悟」まで求める内容であり、当然、見過ごしてはなるまい。
憲法9条は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又(また)は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定めており、武力行使の可能性に言及して台湾問題という「国際紛争」を解決しようとすること自体が憲法に反するからだ。
しかも麻生氏は、岸田文雄首相=写真、2021年11月の自衛隊観閲式で=を支える政権首脳だ。台湾に同行した自民党議員も麻生氏の発言内容は首相らと調整済みと説明する。
もし政府が武力による威嚇を認めるなら憲法解釈の重大な変更に該当し、到底容認できない。首相は見解を明らかにすべきだ。
首相は昨年の国家安保戦略など3文書改定で「敵基地攻撃能力の保有」を容認し、防衛予算を「倍増」する防衛力の抜本的強化へと大きくかじを切った。殺傷能力を有する武器輸出にも踏み切ろうとしている。
憲法に基づいて歴代内閣が堅持してきた「専守防衛」のタガは緩み、9条の形骸化が一層進む。
その起点が15年、当時の安倍晋三政権が国会内外での反対論を押し切って成立を強行した安保法による安保政策の抜本的転換にあると言っても間違いはあるまい。
安保法の主眼は、日本が直接攻撃されていなくても、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある「存立危機事態」に該当すると政府が判断すれば、集団的自衛権に基づいて他国への武力行使ができるようにすることだった。
当時の国会審議で、安倍首相はその意図を「紛争は予防され、日本が攻撃を受けるリスクは一層なくなっていく」と説明していた。
しかし、その後の日本周辺の国際情勢は緊張を増すばかりだ。
軍事重視が緊張高める
北朝鮮は核・ミサイル開発を進め、ウクライナに侵攻したロシアとの軍事的な協力関係を強めている。中国は軍備増強とともに海洋進出を強め、武力による台湾統一の選択肢を放棄していないとみられている。
台湾海峡の緊張は、日本が集団的自衛権を行使して参戦する可能性に現職政治家が言及するまでに高まっている。
中国の軍事的台頭を咎(とが)め、状況に応じて日本も防衛政策を適切に見直す必要性はあるとしても、安保法以来の軍事力重視の姿勢が地域の緊張を一層高める一因になっていないか。少なくとも軍拡競争を加速させる「安全保障のジレンマ」に陥っている現実から目をそらせてはなるまい。
集団的自衛権の行使を認めた安保法は憲法違反だとする安保法違憲訴訟で、最高裁は憲法判断をせず、原告側の上告を退けた。
しかし、今必要なことは、日本を再び「戦争をする国」にしないために、安保法の違憲性を正面から問うことではないか。
このままでは防衛力はどこまでも増強され続け、憲法の平和主義は完全に死文化する。破滅的な戦争に至ったように、一線を越えれば、もう元には戻れなくなる。私たちは自覚しなければならない。
●菅義偉氏 安倍晋三元首相は「最高の政治家」 9/19
前首相の菅義偉氏(74)が18日深夜、TOKYO FM「TOKYO SPEAKEASY」に出演。安倍晋三元首相について「最高の政治家」と評した。
昨年7月に奈良市で銃撃され、死亡した安倍氏。菅氏が事件の一報を受けたのは「車の中です。あのとき沖縄の選挙応援やってまして、羽田に行く途中だった」といい「それで車の中でいろんな状況を収集しながら、自民党全体として選挙運動はその日は中止。それで現場に駆けつけた。とにかく生きていてほしい、その一心でしたよね。残念な結果でしたけど」と声のトーンを落とした。
政治家としての安倍氏は「方向性をきちっと打ち出して。遠い日本の目標を進めていくとか。最高の政治家だったと思います」と回想。
プライベートでは「人の話を聞くのがうまかった。ほめて仕事をやらせる人だった。私もいっぱいほめられました」と懐かしんだ。
●政策正常化への植田日銀総裁の手法、「衝撃と畏怖」とは違うアプローチ 9/19
4月に総裁が交代した日本銀行内では安堵(あんど)感がある。植田和男総裁は、混乱を最小限に抑えながら金融政策の正常化に向けて歩みを進めるという、前任の衝撃的なデビューとは全く異なるアプローチだったからだ。
2013年、黒田東彦前総裁はデフレ脱却に向けて停滞する経済を刺激するため、「衝撃と畏怖」の異次元金融緩和策を導入した。足元でインフレ率が16カ月連続で日銀の2%目標を上回って推移する中、植田総裁は、世界で最も大胆な金融実験の出口へ地ならしをするために日銀内の多くが考え得る以上のことを成し遂げている。
事情に詳しい複数の関係者によると、植田氏の学者らしいコミュニケーションの取り方が黒田氏との最も明白な違いだと日銀当局者らはみている。黒田氏は、金融刺激策の必要性を繰り返し強調する決まったフレーズを使い、原稿に忠実だったのとは対照的に、植田氏は記者や政治家からの質問に対して詳細な説明をし、時にさまざまな角度から回答する特徴がある。
関係者らによれば、日銀総裁としては戦後初の学者出身である植田氏は、公の場でさまざまなシナリオを考察することをためらわないため、一部の日銀当局者を不安にさせることがあるという。だだ、こうした思考が植田氏にアイデアをもたらし、市場への影響を測るテストとして機能している。
日銀は今週の金融政策決定会合で現行政策の維持を決めるとみられているが、主要国では最後となるマイナス金利政策の解除に向けて市場とのコミュニケーションの環境整備は進んでいるもようだ。
日銀ウオッチャーの多くは、9日付の読売新聞が報じたインタビューにおける植田総裁の発言はこのプロセスの一環と解釈した。植田氏は、賃金と物価の好循環を見極めるのに十分な情報やデータが年末までにそろう可能性もゼロではないことに言及しており、これはマイナス金利解除の可能性を含む政策変更の条件の一つだ。
日銀総裁、賃金と物価の好循環のデータが年内にそろう可能性も−報道
事情に詳しい複数の関係者がブルームバーグに語ったところによると、総裁発言に関して日銀内では、従来と比べて踏み込んだ内容ではないと受け止められている。
ただ、この報道は多くのエコノミストがマイナス金利解除の予想時期を前倒しする要因となった。ブルームバーグ調査によると、エコノミストの半数が来年上期にマイナス金利の解除を予想している。 
   マイナス金利解除予想を前倒し
日銀の新体制発足から数カ月間で分かった別の重要な点として、植田総裁は予想以上に変化に寛容で、金融政策が為替に与える影響を進んで認めていることだ。
植田総裁の下で日銀はすでに、必要があれば利下げを行うという方針を破棄し、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の運用方針を大幅に柔軟化した。YCC政策は16年に黒田前総裁の下で導入された。
植田氏の4月の総裁就任当時、10年国債利回りは0.45%程度だった。足元では0.7%を上回る水準で推移している。
   薄れる関係性 | 植田総裁のYCC柔軟化で
黒田、植田両氏をよく知る元日銀審議委員の桜井真氏は、「植田総裁の下で日銀は過剰な金融緩和政策から実体経済の変化に対応した適切な緩和政策へ移行」を進めていると指摘。「予想をやや超える金融緩和変更の進展があった」と語った。 
植田総裁は、投資家をパニックに陥れたり、住宅所有者や有権者、企業経営者が自身を総裁に任命した岸田文雄首相に反発したりするのを避けるため、正常化に向けた環境を水面下で構築している。緩和の縮小ペースが遅過ぎれば円は安値を更新する可能性がある一方、急ぎ過ぎれば景気の腰を折り、デフレ不況を再び招く恐れがある。
世界の債券投資家は、超低金利を支える最後のグローバルアンカーを失うことを懸念している。日本からの証券投資エクスポージャーが相対的に大きくなり過ぎたオーストラリアやフランス、オランダの市場では、日本の金利が上昇すれば資金が逃げる可能性がある。 
   豪州やオランダ市場は日本の金利上昇に敏感
岸田首相が防衛力強化や少子化対策への支出増加を計画する中で金利が上がれば、債務の償還費や利払い費などの国債費がさらに膨らむ可能性がある。日本の債務残高は先進国で最も高い水準で、国債費はすでに年間予算の4分の1余りを占める。
もっとも、植田総裁が単に現状に固執すれば、為替介入の脅威を維持しながら数十年で最も強いインフレの影響緩和へ追加対策に頼らなければならない岸田氏の忍耐力を試す危険がある。
ブルームバーグ・エコノミクスの見方「植田総裁は論理的に話し、丁寧に質問に答えているが、戦略的なメッセージを送るという点では改善の余地がある。投機家は植田総裁が先に繰り返したハト派的な発言を受けて円を売った。市場はまた、7月の予期せぬYCC修正や読売新聞とのインタビュー内容から、植田総裁の真意を測りかねている」木村太郎シニアエコノミスト
日銀の過去の金融刺激策の取り組み具合を踏まえれば、緩和縮小には慎重なアプローチが必要だ。バランスシート上の資産は日本の経済規模を25%上回る水準に達しており、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)と比べてもはるかに大きい。
   米欧を上回る日銀の資産規模 | 中銀資産の対GDP比
植田総裁は10年国債金利のさらなる上昇を容認しながらも、ここまでは市場をおおむね落ち着いた状態に保つことに成功した。日銀は金融緩和を当面続ける必要があるとする一方、どのように緩和路線を進むかについて植田氏は柔軟性を示している。
植田総裁は、1990年代後半に日銀審議委員を務めていた当時から変わらず、物価と賃金、成長の好循環の実現に取り組む強い意志を示している。だが、黒田前総裁が作り上げた複雑な緩和策とは一定の距離を置いていることも示唆している。
日銀出身でUBS証券の足立正道チーフエコノミストによれば、物価安定の実現への決意という点で両氏に恐らく違いはないものの、植田氏の方が論理的で、より良いコミュニケーションを取っている。植田氏は経済の変化に合わせて政策を調整する能力を証明しているという。
足立氏は、「米国経済の先行きや春闘など不確実要因は多々ある」とし、「正常化する前にこういった項目を確認していかなければならない」と語った。
●安倍政権のジャニーズ政治利用、ジャニーズ事務所の政権利用も見逃すな 9/19
創業者ジャニー喜多川氏による性加害問題に蓋をしてきたジャニーズ事務所のタレントを広告に起用してきた企業や、番組に出演させてきたテレビ局の社会的責任が問われているが、もうひとつ見逃せない問題がある。ジャニーズ事務所と政治の密接な関係だ。
とりわけ憲政史上最長の安倍政権(2012年〜2020年)とジャニーズ事務所は濃密な関係だった。安倍政権はジャニーズのタレントの人気を政治利用し、ジャニーズ事務所は国家権力の威光を得ていたといっていい。
安倍氏とジャニーズの関係はざっと振り返るだけでも以下のような具合である。
・2019年9月に東京ドームで開催された故ジャニー喜多川氏のお別れ会で、安倍晋三首相の弔辞が代読された。「ジャニーさんへのエンターテインメントへの熱い思い、託したバトンは、必ずやジュリー(藤島景子)さん、滝沢(秀明)さんをはじめ、次の時代を担うジャニーズのみなさまへと、しっかりと受け継がれていくと私は確信しております」という内容だった。
・2019年11月には東京ドームであった嵐のコンサートを訪れ、ステージ裏でメンバーと面会した。
・2018年末に福島復興を支援してきたTOKIOのメンバーと首相官邸で懇談し、2019年5月にはピザ屋で会食して親密さをアピールした。
・2018年6月のG20大阪サミットの開幕前日には、関ジャニ∞・村上信五のインタビューを受けた。
・2020年元日にはラジオ新春番組でV6の岡田准一と対談した。
安倍氏はジャニーズのタレントと会うたびにインスタグラムなどで紹介し、好感度アップを図ってきたのだ。
一方、ジャニーズ事務所も「政治」へ接近した。桜井翔が日本テレビ系「news zero」のキャスターに、小山慶一郎が日テレ系「news every.」のキャスターに、国分太一がTBS系「ビビット」のMCに、東山紀之がテレビ朝日系「サンデーLIVE!!」に、中丸雄一が日テレ系「シューイチ」に出演。政治問題や社会問題についてコメントを重ね、世論形成に大きな影響力を持ち始めたのである。
ジャニー喜多川氏による性加害問題は2004年時点で週刊文春との裁判で真実だと認められていた。マスコミはジャニーズ事務所の影響力に怯えて報道を控えてきたが、政界、官界、財界では誰もが知る「常識」だった。それを承知で安倍氏はジャニーズ事務所と密接な関係を重ね、所属タレントと親密さをアピールして、政権浮揚につなげてきたのである。
安倍氏の政治責任に加え、それを追及してこなかったマスコミ各社の報道責任が問われる。安倍政権の長期化の背景にジャニーズ事務所を政治利用した世論誘導があったことは、政治史的にもしっかり検証されなければならない。
内閣改造後、政府内からはジャニーズ事務所との関係を見直す動きは出始めた。
武見敬三厚生労働相は記者会見で、厚労省広報などでジャニーズ事務所のタレントの起用について実態調査する考えを示したうえ、「結果が出てから適切に対応を検討する」と述べた。農林水産省は、農業情報を発信する「ノウフクアンバサダー」に任命したTOKIOの城島茂の活動を当面見合わせると発表した。当然の動きだろう。
重要なのは、これらの見合わせを急場しのぎの対応策に終わらせないことだ。さらには、政府がジャニーズ事務所のタレントを起用してきた経緯に不透明な経緯がなかったのか検証することも必要である。そのような総括なしにタレント起用を再開することは許されない。
●「隙あらば増税」の影消えず…岸田政権「大胆な経済政策」も変わらぬ 9/19
ガソリンやエネルギー、食品など物価高が続くなか、岸田文雄政権の優先課題は経済対策だ。だが、財務省の影響力は強いままで、「国民生活を応援する大胆な経済政策」が打ち出されても、その後の「増税・負担増」で国民にツケが回る懸念が強い。
岸田首相は13日の記者会見で、月内には閣僚に対し経済対策の柱立ての指示を行い、来月中をめどに取りまとめを目指す考えを示した。
「ガソリン補助金の継続を含め、国民生活を応援する大胆な経済政策を実行していく」と述べたが、ガソリン価格の「トリガー条項」の凍結解除や二重課税の解消に踏み込む姿勢はない。
第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは「経済政策に大きな変化はなく、財政規律重視の動きは続きそうだ。すでに出ている物価高対策でも、ガソリン価格のめどが当初の168円から175円に引き上げられた。電気・ガス料金対策も、補助金の規模が縮小されてから年末までの延長を決めるなど出口を意識する姿勢が目立つ。経済対策では特定分野への投資減税などが浮上する可能性もある一方で、国民負担を増やす可能性があることには注意が必要。昨年度の補正予算は真水で29兆円程度だったが、今回はさらに小規模になると見込まれる」と慎重だ。
閣僚の顔ぶれをみると、鈴木俊一財務相が留任。首相側近の官房副長官に財務省出身の村井英樹氏が就くなど、同省に近い人物も目立つ。
一方、「非緊縮派」では、初入閣の木原稔防衛相は、積極財政派と目される党の財政政策検討本部のメンバーだ。
上武大学の田中秀臣教授は「『増税・負担増』批判や保守派に配慮した人事もみられるが、全体的に財務省への依存度は強まったといえる。岸田首相の経済政策は党内勢力や支持率などの状況に左右されがちだ」と分析する。
首相が大規模な経済対策と補正予算を掲げても、その後の「負担増」路線に警戒が必要だと田中氏は話す。
「岸田首相が本当に『変化』を見せたければ、補正予算で少なくとも真水10兆円程度が必要だ。本来なら消費減税が望ましいが、難しいだろう。次期衆院選対策として大胆な策を打ち出したとしても、選挙後に『デフレ脱却宣言』をして財政再建に向けて動きだせば、ツケは必ず国民に回ってくる。国民は、政府が『隙あらば増税』と考えていることに意識を向けておくことが重要だ」
●岸田政権の「資産運用立国」構想は実質的な年金破綻宣言 9/19
岸田政権は、2024年から始まる新しいNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの制度改正をテコに、「資産運用立国」を目指す方針を大々的に打ち出している。だが、昨今の物価高で、投資どころか日々の生活に余裕がなくなっているという人も少なくない。そんな中で、政府が「資産所得倍増」を喧伝する背景には何があるのか。人口減少や経済活性化などの問題に詳しい作家・ジャーナリストの河合雅司氏が解説する。
金融庁が今後1年間の重要施策をまとめた「金融行政方針」を公表した。「資産運用立国」の実現に向け、具体的プランを年内に策定するという。
「資産運用立国」とは、2022年5月に岸田文雄首相が外遊先のロンドンで突然表明した「資産所得倍増プラン」が下敷きだ。政府は同年11月の「新しい資本主義実現会議」で、個人投資家を対象にした優遇税制「NISA」の普及や、資産運用会社の運用力を高めるための環境整備など「資産所得倍増プラン」を策定。5年間でNISAの総口座数(一般・つみたて)を現在の1700万から3400万へ、買付額は現在の28兆円から56兆円へと倍増させることなどを目標として掲げた。
政府が家計金融資産に狙いを定めて投資を促す狙いはどこにあるのか。内閣府の資料によれば、日本の家計金融資産は2007兆円(2022年6月末時点)だが、その半分にあたる1102兆円が現預金となっている。政府には、これが「有効に使われていない」と映っているのだ。
これだけのマネーの何割かでも投資に回れば、日本の株式市場は活況を呈すことだろう。持続的な企業価値向上の恩恵は、資産所得の拡大という形で家計にも及ぶ。人口減少が進む日本経済にとって、マネーを積極的に循環させることの意義は大きい。
だが、家計金融資産をどう使うかは個々の自由である。政府の理屈通りには回らない。事実、「貯蓄から投資へ」という大号令は岸田政権が初めてではない。これまで幾度となく唱えられてきたが、なかなか進んでこなかった。
“五公五民”を負担しながら投資できるか
日本の家計金融資産がなかなか投資に回らない理由については、内閣府の「2023年度年次経済財政報告」が分析しているが、「余裕資金がない」との回答が4割弱を占め、断トツだ。投資をしようにも、元手が無くてはやりようがない。
総務省の家計調査報告によれば、2人以上世帯における2022年の平均貯蓄額は1901万円である。だが、これはあくまで平均額であり66.3%はこれを下回る。100万円未満が9.7%で最も多く、100万〜200万円未満が5.4%、200万〜300万円未満が4.6%などとなっているのだ。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)が貧困線(中央値の半分)に満たない世帯員の割合を示す相対的貧困率(2021年)は15.4%にのぼる。
そうでなくとも税や社会保険料負担が上昇し「五公五民」と言われるまでになり、昨今の物価高も加わって生活に余裕のない人が増えている。SNSには「現在の可処分所得では投資したくともできない」「投資しろと言うなら、継続的な賃上げが先だろう」など、現実離れした「資産運用立国」構想には批判的な声が渦巻いている。
「政府の本音」と「国民の老後不安」
家計調査報告によれば、負債保有世帯が37.7%を占め、その91.3%が住宅や土地のための負債だ。住宅ローンなどの支払いに追われていたのでは投資に目が向かない。
年代別では、50歳未満の純貯蓄額(貯蓄現在高−負債現在高)はマイナスである。貯蓄現在高が負債現在高を上回るのは50代となってからだ。50代の純貯蓄額は1208万円、60代は2251万円、70歳以上は2321万円である。
50代になると住宅ローンの支払いが終わる人が出てくるということだろう。だが、50代といえば子供の大学進学や親の介護などでまとまったお金が必要というケースが増えてくる年代でもある。これらのデータを見る限り、投資を考える余裕が出始めるのは60代が中心と思われる。
政府もこうしたデータは把握しているだろう。その上で、国民に投資を促しているということは、ここに政府の本音が隠されていると見ていい。
60代以上の資産運用と聞いて思い出すのは、「老後資金2000万円不足問題」だ。2019年、金融庁のワーキンググループが、高齢夫婦無職世帯は年金収入だけでは毎月約5万円の赤字であり、30年で約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になるとの試算を公表し、国民に大きな衝撃が広がった。
この報告書が述べたかったのは、もちろん「2000万円の不足」などではなく、投資などによって資産寿命を延ばすことの重要性だった。
「資産運用立国」においても、ここの部分は変わらないだろう。政府が「老後資金2000万円不足問題」の際と共通して託しているのは、「公的年金だけでは老後資金は不足するので、足りない分は自助努力で調達してほしい」というメッセージにほかならない。
「資産運用立国」とは、見方を変えれば、政府が実質的な年金破綻宣言をしているようなものである。急速な少子高齢化と人口減少を前にして、厚労省は有効な手立てを見つけ出せずにいることは多くの国民が知るところだ。
少しでも長く働こうという人が増えたのも老後不安があるからであり、資産運用による資産寿命の延長が有力な選択肢の1つになることもその通りだ。それでもあえて投資をしないできた人が多かったのには、それ相応の事情がある。60代以上にとって、投資というのは負担が大きいからだ。
「銀行預金が合理的」に思える理由
株式投資などというのは、大儲けする人がいる一方で、大損をすることもある。退職金を株式投資につぎ込んだ結果、大やけどを負ったという事例もたびたび耳にする。
若い頃ならば株価が長期低迷したとしても我慢して値上がりを待つという選択肢も取りやすい。だが、高齢になってからの投資はそうはいかない。
60代以上にもなると基礎疾患を持つ人が多くなる。元気そうに見えても、いつ大病を患うか分からない。若い頃に比べて死を意識しやすくもなる。人生の先がだんだんと見えてくるにつれて、元本割れしない金融商品を選んでおいたほうが無難と考える人が多くなるのは自然なことだろう。金融機関の販売ありきの姿勢に二の足を踏む人も少なくなく、現金のまま金融機関に預けることは決して「不合理な判断」ではないのである。
高齢者の1人暮らしや高齢夫婦のみの世帯が増えたことも、貯蓄を選ぶ大きな理由となっている。昔の高齢者と比べて、70代、80代になってから多額の出費を迫られる機会が増えたためだ。
例えば、住宅の大規模修繕である。子供世帯と同居するのが当たり前だった時代にはその費用を高齢者自らが全額負担することは少なかったが、いまや子どもがいない高齢者も増え自ら支払う人が珍しくない。定期預金や株式の期待収益率のほうが上回っていることが分かっていても、普通預金として持っておきたいというニーズは小さくないのだ。
銀行預金が減らないのは、それが多くの高齢者や高齢者予備軍の世代にとって合理的な資産運用法に思えているからである。
「資産運用立国」という構想自体を否定するつもりはないが、それを目指すには日本社会は少し年を取り過ぎたということだ。高齢化率はすでに3割である。
このまま政策を進めても、既存の投資家や富裕層を優遇するだけに終わりそうだが、それでも岸田首相が「資産運用立国」を推進するというなら、是が非でも若い世代の収入が持続的に上昇するようにすることである。
若い世代の多くが投資にもお金を回せる所得水準になったとき、はじめて「資産運用立国」が実現する。  

 

●岸田政権、皇位継承たなざらし 担当内閣参与が退任 9/18 
岸田政権下で皇位継承の議論がたなざらしになっている。今後も皇族数の減少が見込まれるなど喫緊の課題と位置付けられるが、自民党では保守派が女性・女系天皇の容認につながることを警戒。今月13日には、皇室制度を担当する山崎重孝内閣官房参与が退任し、ますます進捗(しんちょく)が見通せない状況となった。
「衆参両院議長の下で検討が行われている。国会の議論にコメントする立場にない」。松野博一官房長官は15日の記者会見で、政府として議論を促さない考えを改めて示した。
皇室典範は、父方が天皇の血筋を引く「男系男子」が皇位を継承すると規定。現在、皇位継承資格を有するのは、(1)秋篠宮さま(2)秋篠宮さまの長男の悠仁さま(3)上皇さまの弟の常陸宮さま―の3人のみで、安定的な継承には不安が残る。
皇室の構成も平成以降最少の17人にとどまり、悠仁さま以外の未婚の皇族はいずれも女性。婚姻などで皇族数がさらに減少すると、天皇が行う国事行為の臨時代行や、各種行事への臨席、被災地への慰問といった皇族の役割が果たせなくなる恐れもある。
上皇さまの天皇退位を受け設置された政府の有識者会議は2021年12月にまとめた最終報告書で、悠仁さまが皇位を継承する流れを揺るがせにしてはならないとし、その次代の議論は「機が熟していない」と明記。その上で、皇族数の確保策として、(1)女性皇族が結婚後も皇室に残る(2)旧宮家の男系男子が養子として皇籍に復帰する―の2案を提示した。
岸田文雄首相は今年2月の自民党大会で「安定的な皇位継承を確保するための対応は先送りできない課題だ」と述べたが、具体的な動きにはつながっていない。有識者会議の報告を受け設置された自民党の「皇室問題等についての懇談会」(座長・麻生太郎副総裁)も22年1月の初会合以降、音沙汰なしだ。
この問題に関わってきた政府関係者からは「首相は表で言うだけで、やる気がない」との不満が漏れる。ある閣僚経験者も「議論の機運が全く盛り上がっていない」と認める。
自民党内には保守派を中心に「女系天皇容認につながるのではないか」(安倍派幹部)との意見が根強い。一方で、21年の総裁選で野田聖子元少子化担当相が「女系天皇も選択肢の一つだ」と訴えるなど容認派も一定数いる。首相としては、党内が二分し政権基盤が揺らぐのを避ける思惑もありそうだ。  
●「女性ならではの共感性…」岸田発言ってどこがヤバいの? 9/18
9月13日岸田総文雄総理は、内閣改造および党役員人事を行った。
女性閣僚が5人起用されたことに注目が集まったが、副大臣26人と政務官28人の人事に女性はゼロ。全体のバランスを考えた適材適所の人事だとどこかで聞いたことがあるような言葉を述べていたが、2023年になってもこの男女比であることに落胆が隠せない。
さらに、総理が会見で話したある言葉について、多くの疑問の声が上がっている。
「女性ならではの感性や共感力を十分発揮していただきながら、仕事をしていただくことを期待したい」。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「女性ならではといいますが、すべての女性に共感力があるという科学的根拠はありませんし、逆に男性に共感力がないとも言えません。しかも、すべての政治家が共感力をもって任務を全うするのは当然のことです。そこにジェンダーはまるで関係ありません。また今回の発言、岸田総理は悪意があったわけではなく、むしろ女性を褒めるつもりで述べたつもりだと思いますが、それがさらに事態を悪化させている印象です」。
というと?
「女性が社会に出るとどうしても個人ではなく、ジェンダーを枕詞に語られることが多い。それは本人の実力ではなく、女性だからできているのだと言っているも同然です。また〇〇ならではという言葉は、その属性の特定のイメージや役割に人を閉じ込めてしまいます。多くの場面で悪意がなく使われているのが怖いところ。これは差別につながるマイクロアグレッションのひとつとも言えるでしょうね」。
マイクロアグレッションとは無意識の偏見や思い込み、無理解の言動で相手を傷つけることを表す言葉だ。人種やジェンダー、性的嗜好、宗教など、さまざまな場面で見られ、受け取った側が侮辱されていると感じる言動のことである。
もし、今回の岸田総理の発言を聞いてまるで違和感を持たないという人がいたのなら、その人はきっとマイクロアグレッションについてまるで知らないのだろう。もしかしたら、すでに加害者になっているかもしれない。今回は、ハラスメントの根底にあるマイクロアグレッションを繰り返す夫との決別を考えている女性に話を聞くことができた。
大澤恭子さん(仮名・49歳)はほかでもない、夫の発言について長年、心におりのようなものを貯めてきた。
「夫は人一倍、男性はこうあるべき、女性はこうあるべきという思想が強く、結婚前から薄々は気がついていましたが、歳を重ねるごとにその色合いがどんどんと濃くなっていると感じます。ひとつひとつの発言は、取り立ててひどく聞こえないかもしれませんが、私にとっては本当に辛いもので…。この先、どうやって一緒にやっていくか考えてしまうほどです。夫は私がそんな感情を抱いているなんて、1ミリも思っていないでしょうけど」。
恭子さんと夫は結婚23年。共働きの夫婦だ。
「私の仕事はグラフィックデザイナーです。かれこれ25年以上、フリーランスとして働いています。同時に結婚してから家事と育児は、私が中心になってやってきました。夫は在宅で仕事をする=時間に余裕があると思っているんです。でもそんなことはありません。もちろん通勤時間を省くことはできますが、それによって仕事をする時間と家事をする時間が莫大に増えるわけではありません。それなのに、掃除洗濯は毎日、料理は手作り、保護者会など子どもの行事はすべて妻が参加、これが夫の当たり前なんです」。
共働きでこの配分。ありえないバランスである。
「そもそも女性を下に見ているんだと思います。不思議なのは、夫が共働きの家庭で育っていること。専業主婦のお母さんに育てられて、それがルーツになっているんだとすればわかりますが、そうではないんですよね」。
確かに。具体的にはどんなことをされると辛い、苦しいと感じるのだろうか?
「あるとき、冷凍食品を出して痛い目に遭いました。仕事の締め切りの日でどうしても食事が作れないから、冷凍のグラタンで済ませて欲しいと言ったら、なんて言ったと思います?かわいそう、ですよ。愕然としました」。
冷凍食品を食べる自分と息子がかわいそうだというのだ。
「それ以来、冷凍のグラタンを見るだけでイラついてしまうほど、ショックな出来事でした。冷凍食品だけでなく、お惣菜なんかも同じ。さらに、前日のおかずにはひとつも手をつけません。それでいて、食後にお腹が空いたといって、カップ麺などを食べているので…。マイクロアグレッションだけでなく、もはやモラハラともいえるのかもしれませんが…」。
さらに恭子さんがゾッとするというのが、夫の声かけだ。
「私が家事をしていると変な褒め方をするんです。やっぱりママがやってくれると安心だとか。私が家事をしていることがえらいと言わんばかり。そもそもえらいという感情も上から目線ですし、夫がそういう発言をすればするほど、子どもたちはそれが当たり前だと思うわけじゃないですか。妻が家事をして、夫に褒められる構図…ホラーでしかありません」。
そのほかにも、立ってするか、座ってするかのトイレ問題、生活用品の買い足しや補充など、名もなき家事に対する配慮など、あげればキリがない。
「子どもが小さいときは忙しくて、夫の発言ひとつひとつに対して意見するようなパワーが残っていなかったんです。ところが子どもが大きくなって手が離れてくるとその発言が、以前より気になるようになってしまって…。その結果、喧嘩や言い合いも増えているのが現状です」。
最近でいうとどんなことで喧嘩になったのだろう?
「夫が会社の女性社員のことを何気なく、話していたときのことでした。その女性は感情でぶつかるタイプで、仕事場で少し疎ましがられているとのことでした。そのときの夫の発言がどうしても許せなくて…」
―女ってどうしてああ、感情論になっちゃうんだろうね?だから、雇うのは男の方がいいんだよね。
のぞみさんは、思わず立ち上がってしまったという。
「すべての女性が感情的であるとも思いませんし、逆に言えば男性が感情的でないとも思いません。個人個人、感情的になる部分やシーンはあるでしょうけど、それをジェンダーでひとくくりにするのはあまりにも乱暴じゃないですか?」。
さらに夫は続けた。
―特に40代以上の女って、すごい扱いづらくなるよね。
●処理水放出を巡る日本国内の「残念な反応」…リベラルは「中国の味方」 9/18
ALPS処理水海洋放出に伴う中国の海産物全面輸入禁止措置は、日本の水産業、特に中国や香港への輸出が大きな割合を占めていたホタテ、ナマコなどを中心とした生産者に大きな衝撃を与えた。
新たな販路開拓には時間が必要となり、出荷適齢期を迎えた養殖品を中心に大量の魚介類が行き場を失くしてしまった。
国内ではこれらを食べて応援しようとの機運が高まり、中国向けにホタテを多く輸出していた北海道別海町には8月24日以降「ふるさと納税」の申し込みが相次ぎ、寄付件数・寄付額ともに去年の同じ時期に比べて連日、5倍から8倍に急増したという。
農水省はX(旧ツイッター)で「#食べるぜニッポン」のハッシュタグと共に「日本産水産物の消費拡大に資する取組を実施します。特にホタテ、ブリ、鯛、マグロ、練り物。一人でも多くの方に、少しでも多く食べていただけると状況が劇的に改善します」と発信した。
公益財団法人国家基本問題研究所も9月6日、次のような意見広告を新聞各紙に掲載した。
〈 おいしい日本の水産物を食べて、中国の横暴に打ち勝ちましょう。
東京電力福島第一原発処理水の海洋放出を受けて、中国政府は日本の水産物を全面輸入禁止にしました。「福島の『核汚染水』から中国の消費者を守るため」と言っています。科学的根拠の一切ないひどい言いがかりです。それでいて中国は多くの漁船団を日本周辺海域に送り込み魚を取り続けています。私たち日本人はこんな不条理には屈しません。
中国と香港への日本の水産物輸出は年間約1600億円です。私たち一人ひとりがいつもより1000円ちょっと多く福島や日本各地の魚や貝を食べれば、日本の人口約1億2千万人で当面の損害1600億円がカバーできます。
安全で美味。沢山食べて、栄養をつけて、明るい笑顔で中国に打ち勝つ。
早速今日からでも始めましょう 〉
ところが、こうした機運に水を差す発信も少なくない。
雑誌編集者の早川タダノリ氏は、この意見広告に対して〈「食べて応援」が行き着くところはこんな地点であることがわかる。失政がもたらした惨事を、一貫してナショナリズムの動員によって穴埋めしようとするこいつら、そもそも「中国に勝とう」って言うが、勝者はどこにもおらん〉と発信した。
「失政」とは具体的に何を指すのか。
そもそも処理水の安全性は確保されている。これを保管し続けるため増え続けたタンクは廃炉作業と復興の大きな障害となり、地元自治体からは地上での継続保管に反対する要望が何度も訴えられ続けてきた。
9月14日付の拙稿『処理水放出を巡る世界の反応…中国の「核汚染水呼ばわり」「水産物禁輸」は結局、政治的な“情報工作”“外交戦”でしかない』で示したように、国際社会も総じて処理水海洋放出への理解や支持表明や日本産食品の輸入規制解除が相次ぐ中、中国や北朝鮮が事実と科学に背を向け逆行している状況だ。
こうした輸出入規制について言えば、中国はこれまでもたとえば2010年のレアアースであったり、日本以外にも台湾産パイナップル、フィリピン産バナナ、オーストラリア産石炭などに対して事実上の政治的報復として常習的に繰り返してきた“前科”が無数にある。
今回もその一例を重ねたに過ぎず、これは「風評問題」ではない。極めて政治的な問題であり、文字通りの外交・情報戦と言える。
このような状況で、「日本が汚染されている」かのような極めて侮辱的・差別的な中国の横暴を「失政がもたらした惨事」と日本側に責任転嫁して正当化し、理不尽な被害を受けた当事者の救済すら「ナショナリズムの動員」などと侮辱して邪魔することが一体誰のためになり、何に利するというのか。
アメリカ在住映画評論家の町山智浩氏(@TomoMachi)も同日、〈中国が買ってくれなくなった日本の魚を日本人が食べると中国に勝つことになるの? 中国にとって痛くもかゆくもないのに? 〉と発信した。
町山氏は前日9月5日にもこのような発信をした。
〈「福島県漁連によりますと、7日朝、いわき市の沖合8.8キロ、水深75メートルほどの漁場でとれたスズキから県漁連が自主的に設けた基準を超える放射性物質が検出されました」
いったん排水を止めて他の方法も検討してみて〉
しかし町山氏が共有したこのNHKニュースは約半年前の2月のものであった。
そもそも検出された85.5Bq/kgは主にセシウム由来であり、トリチウムが議論となった処理水とは何ら関係がない。ほぼ全ての魚介類が検出限界地未満の中で、米国の食品基準1200Bq/kgはおろか非常に厳しい国内の100Bq/kgすら下回る、リスクの議論上では意味を持たない「自主基準」超過が出た稀なケースに過ぎない。
ALPS処理水放出と無関係な過去のニュースを持ち出し、まるで近海の魚が汚染されたかのように「いったん排水を止めて」と訴えたこの投稿には、「『やり方は違えど国の事福島の事思ってやってる』事じゃないよね。ワザとデマを流して貶めようとしてる」「古い記事を引っ張り出して来てまで風評加害に勤しむ。なんでそこまで福島への憎悪を募らせてるんだろう…」などの批判が殺到している。
9月12日時点で町山氏からの訂正等は確認できず、投稿に返信できるアカウントは町山氏がフォローしているか返信した相手のみとする制限がかけられていた。
ここでとりあげた発信は氷山の一角に過ぎない。ジャーナリストの佐々木俊尚氏は9月6日のニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演し、こうした状況に疑問を呈した。
「(中国向け水産物の輸出額減少を受け)『だから処理水放出なんかダメだ』と騒いでいる人が左派を中心にたくさんいます。中国政府に言われたから処理水の放出をやめるなど、『中国政府に屈してどうするのだ』と思うのですが。少しおかしいですよね。もともと『リベラル』と名乗っていた人たちが、気がついたら処理水放出で中国の味方、独裁国家を味方しているという謎の構図になってしまっている。これは何なのだろうという」
●日本医師会元会長「けんか太郎」が父の武見厚労相、日医代弁者にならない 9/18
武見厚生労働相は17日のNHK番組で、父親が日本医師会(日医)の会長だったことに自ら触れ、「医療関係団体の代弁者になることは毛頭考えていない」と強調した。
武見氏の父・太郎氏は長く日医会長を務め、日医の意に沿わない場合、政府相手でも徹底抗戦し、「けんか太郎」の異名を取った。
武見氏はかつて日医の政治団体、日本医師連盟(日医連)の組織内候補だった。13日の内閣改造では、日医連の現在の組織内候補である自見地方創生相も初入閣した。日医は声明で両氏の入閣を「誠に喜ばしい限りだ」と歓迎した。
年末に向け、日医などと診療報酬改定の調整が本格化する見通しで、武見氏には「身内びいきになる」との懸念を打ち消す狙いがあったようだ。政府内では「日医が嫌がる政策に切り込めるか、今後力量が試される」との声が出ている。
●「TVタックル」で岸田文雄政権の外交力を疑問視 「外交の岸田って…」 9/18
17日放送の「TVタックル」で、大竹まことが岸田文雄首相の外交力を疑問視した。
内閣改造で外務相が交代
岸田首相が13日に行われた内閣改造でこれまで外務相を務めてきた林芳正氏に代わり、上川陽子氏を起用した話題を取り上げたこの日の『TVタックル』。
番組はこの交代劇について「悪化している日中関係の打開策になるか?」と問題提起をする。そして阿川佐和子が「林さん張り切っていたのにね。上川さんに代わったのは、東さんはどう思う?」と東国原英夫に意見を求めた。
東国原が理由を分析
東国原は「1回置こうということでしょうね。林さんは同じ岸田派ですので、 次の総裁選じゃなくてその次に林さんが出るんじゃないかなと思います。 来年の次の総裁選に」と持論を展開する。
話を聞いた阿川は「それはつまり、国内というか林さんの処遇をどうするかという計算で。外務大臣として今までしばらく積み重ねてきた諸外国との関係って、せっかく『林と仲良くなったのにさ』って思っている外国の人もいるのでは」と指摘。
この疑問に東国原は「ああ、外務大臣が代わっても変わりませんからね、外交は。外務省の役人がやるので」と話した。
大竹が岸田政権の外交力を疑問視
阿川が「上川さんはハーバードかなんか出ていらっしゃる」とつぶやくと、東国原は「岸田さんがずっと外務大臣をやっていて、今、首相じゃないですか。でも外交は全然変わっていませんよね。誰がなっても同じかな、じゃあ上川さんにしておこうという感じ」と解説する。
すると大竹が「でもそれはさ、 最初に外交の岸田って言ってたんだよ。じゃあ岸田さんはなにをやっていたんだと。それを林さんがうまく継いだわけじゃない。外交以外のパイプを日本はどれだけ持ってるのかと思ったら、意外とパイプがないんだね。日本って」と指摘した。
宮崎氏も持論
元衆議院議員の宮崎謙介氏は「岸田さんが外務大臣をやったころというのは安倍政権下で、あんまり中国とも仲良くできない状況だったというか、あんまりしなくてもいい、いいとまでは言わないですけど、それぐらいの状況だった」と指摘する。
そのうえで「岸田さんはそこまで中国とのパイプ 持てていなかった」とコメントしていた。 

 

●岸田政権、内閣改造後も「ロシア経済協力相」のポストを廃止せず 9/17
刷新性が無く、支持率アップに結び付かなかった岸田首相の内閣改造でしたが、一部界隈から新内閣でも「ロシア経済分野協力担当相」のポストが存続していることに批判が集まっています。
 ――「ロシア経済協力相」西村氏兼務 北方墓参再開見通せず:北海道新聞デジタル
北海道新聞によると、岸田首相が「ロシア経済協力相」を存続させている理由は、1)ロシアからのエネルギー供給が停止されること、2)領土交渉の進展に悪影響が出ることを恐れているからだそうです。
 ――日本政府は、対ロシア経済協力担当大臣の閣僚ポストを維持することを決定した。内閣改造にもかかわらず、このポストは引き続き西村経済産業大臣が務めている。日本は、もしこのポストを廃止すれば、ロシアがLNG供給を中断させることで報復するかもしれないと懸念している。また、ある日本外交筋は、「このポストの廃止は、領土交渉に対する日本の姿勢の後退と受け取られかねない」と語っている。
ロシアは憲法で領土の割譲を禁止しており、西側諸国の対ロシア経済制裁に参加した日本を非友好国として認定しています。そのような状況下でロシアと領土交渉を出来ると日本政府は本気で思っているのでしょうか?
 ――先日の番組で鈴木宗男さんが、「ロシアへの制裁をやめれば北方領領土が返ってくる!(可能性がある?)」と仰ってましたが、ロシアは2020年の憲法改正で「領土の割譲を禁止する」という項目がハッキリと明記されたので、それはあり得ないことはお伝えしておきたい。返還を検討する時点で違憲なんです。
 ――ロシアのプーチン大統領は26日までに、9月3日を「軍国主義日本に対する勝利と第2次大戦終結の日」と定める法案に署名し、成立させました。対ロシア制裁を発動した「非友好国」日本への対抗措置とされています。 — 時事ドットコム(時事通信ニュース)
ロシア経済協力相の存続は野党からも批判されています。ロシアへの経済制裁を担当している大臣が同ポストを兼任していることが矛盾していると指摘する野田元首相の指摘は妥当なものです。この矛盾が放置されることは他国から日本外交が「二枚舌」であるという批判を呼び起こす可能性があります。
 ――朝日「ロシア経済協力相」是非めぐり迫る野田氏 首相は廃止に慎重姿勢 / 立憲民主党の野田佳彦氏は「実務もないのに、なぜ大臣を置き続けるのか」と質問。経済制裁を担当する経済産業相が兼務していることの矛盾も指摘した / 制裁担当が経済協力も兼務!?日本無茶苦茶!
ロシアとの経済協力を通して北方領土を取り戻すという安倍政権の戦略は失敗に終わりました。しかし、日本政府はその総括を行っている様子がありません。
 ――対ロシア経済協力に6年間で200億円投入…「無駄だった」と官庁幹部 北方領土交渉は停止
 ――「ロシア経済協力担当大臣」って、岸田改造内閣でも廃止されてないし、西村康稔氏とか萩生田光一氏とか世耕弘成氏とか大臣経験者もいっぱいいるし、そもそも政府として対露外交を何にも総括してないし、陰謀論者とか反米主義者とかより何よりまずそっちだろ、って思うのは何か変なのかなあ
日本がウクライナ支援を行っている以上、日露経済協力の進展は見込めず、外交で北方領土が帰ってくることはありません。外交手腕に自信があるとされる岸田首相ですが、「ロシア経済協力相」が存続する限りはその手腕には信用が持てません。
●岸田内閣不支持率68% 内閣改造の影響乏しく 9/17
毎日新聞は16、17日の両日、全国世論調査を実施した。岸田内閣の支持率は25%で、8月26、27日実施の前回調査(26%)から1ポイント減の横ばい。岸田内閣としては過去最低だった2022年12月に並んだ。不支持率は8月調査と同じ68%。岸田文雄首相が13日に実施した内閣改造と自民党役員人事で岸田内閣への期待が高まったかについては、「高まっていない」が77%に上り、「高まった」は10%にとどまった。
内閣支持率は相次ぐマイナンバーのトラブルなどの影響で6月以降下落が続き、8月から横ばい傾向となっている。人事の「刷新」による政権の浮揚効果は限定的だった模様だ。これまで岸田内閣として過去最低の支持率だった22年12月は「政治とカネ」などを巡る閣僚の「辞任ドミノ」に見舞われていた。
内閣改造で女性閣僚が2人から5人に増えたことについてどう思うかを聞いたところ、「どちらとも言えない」の49%が最多で、「不十分だ」の28%、「十分だ」の23%が続いた。
14年に関連政治団体の政治資金収支報告書の虚偽記載などが発覚し、経済産業相を辞任した小渕優子氏を選対委員長として党執行部入りさせた人事については「評価しない」が56%に上り、「わからない」は23%、「評価する」は21%だった。
留任した河野太郎デジタル相にマイナンバー制度のトラブル解消を期待するかとの問いでは「期待しない」が47%で、「期待する」は40%だった。
岸田政権の物価高対策について「評価しない」が76%で、「評価する」は9%にとどまった。岸田首相にいつまで首相を続けてほしいかとの質問では、「早く辞めてほしい」の51%が最多で、「来年9月の自民党総裁任期まで」が25%、「できるだけ長く続けてほしい」「わからない」が各12%だった。
政党支持率は、自民党26%(前回25%)▽日本維新の会13%(同15%)▽立憲民主党11%(同9%)▽れいわ新選組5%(同6%)▽共産党5%(同4%)▽国民民主党5%(同6%)▽参政党3%(同2%)▽公明党2%(同3%)――などで、「支持政党はない」と答えた無党派層は25%(同26%)だった。
調査は、携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)機能を使う方式と、固定電話で自動音声の質問に答えてもらう方式を組み合わせ、携帯449件・固定581件の有効回答を得た。
●岸田政権のガソリン政策を疑問視「なんでトリガー条項を嫌がるのでしょう?」 9/17
お笑い芸人のほんこんが17日、「X」(旧ツイッター)を更新。トリガー条項を発動しない岸田政権に疑問の声を上げた。
ほんこんは「高松市内の某所のレギュラーガソリン価格は182円。まだまだ高い。補助を拡充したのに恩恵を実感できない。不十分だし非効率。6月20日、国民民主党は西村大臣に対して(1)現行補助の半年延長(2)トリガー条項発動(3)暫定税率や二重課税の廃止」と提言する国民民主党代表の玉木雄一郎氏の投稿を引用。
その上で「なんで岸田さんは トリガー条項を嫌がるのでしょうね?」と岸田政権の姿勢を疑問視した。
トリガー条項とはガソリン価格が3か月連続で160円を超えると、ガソリン税のうち上乗せ分の25・1円の課税を止めるというもの。現在もレギュラーガソリンの平均価格が180超という高騰が続く中、岸田政権に発動が期待されている。
●岸田政権、副大臣、政務官に女性ゼロの一因「自民党女性局のフランス研修」 9/17
フジテレビ政治部長で解説委員の松山俊行氏が17日、同局「日曜報道 THE PRIME」に出演。政府は15日の閣議で、第2次岸田再改造内閣の副大臣26人と政務官28人を決定し、女性は一人も起用されず、自民党が政権復帰した2012年の第2次安倍内閣以降、初めて女性ゼロとなったことに言及した。
再改造内閣の女性閣僚は過去最多に並ぶ5人としたものの、副大臣・政務官は全員男性で、政権が掲げる女性活躍と乖離した格好。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と接点があったのは副大臣12人、政務官14人の計26人に上った。
女性ゼロの人事に関し、岸田文雄首相は記者団に「適材適所でこのような老壮青、男女のバランスとなった。どの閣僚にどの副大臣、政務官を付けるのか、チームとして人選した結果だ」と述べた。
松山氏は「閣僚と副大臣、政務官を合わせて女性比率が7%弱ということで、かなり低い比率」と指摘。「背景には、本来、副大臣レベルで入ってもおかしくない方が今回、閣僚として何人か若手が入った。その分、副大臣の人数が足りなくなってしまったというのと、自民党の女性局のフランス研修、観光旅行だと批判されましたけれど、その影響で女性局の関係者が入りづらくなってしまった。あと派閥の推薦が上がってきて決めるわけですけど、その段階で選挙が近いことを懸念する議員、特に女性議員から今回は遠慮したいという声があったと聞いています」としつつ、「やっぱり54人の副大臣、政務官が全員男性というのは国際的にはどうなのかなと」と疑問を呈した。
●岸田政権、副大臣、政務官に女性ゼロ「国際社会で通用するのか…矛盾では」 9/17
元大阪市長で弁護士の橋下徹氏(54)が17日、フジテレビ「日曜報道 THE PRIME」に出演。政府は15日の閣議で、第2次岸田再改造内閣の副大臣26人と政務官28人を決定し、女性は一人も起用されず、自民党が政権復帰した2012年の第2次安倍内閣以降、初めて女性ゼロとなったことに言及した。
再改造内閣の女性閣僚は過去最多に並ぶ5人としたものの、副大臣・政務官は全員男性で、政権が掲げる女性活躍と乖離した格好。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と接点があったのは副大臣12人、政務官14人の計26人に上った。
女性ゼロの人事に関し、岸田文雄首相は記者団に「適材適所でこのような老壮青、男女のバランスとなった。どの閣僚にどの副大臣、政務官を付けるのか、チームとして人選した結果だ」と述べた。
橋下氏は「岸田さん、形だけ取り繕ったというか、日本社会に対しては、女性の指導者層30%を目指すというメッセージを出しています。閣僚については、岸田さんを除いた大臣は約26%が女性になっていますから一見30%に近いような形になっているんですけれども、副大臣と政務官、ここもリーダー層」と指摘。副大臣、政務官54人がそろった映像を見て、「ここにゼロで、この映像を見て、これ国際社会で通用するのか、日本社会に対して30%の女性の指導者層に広げていくんだと言っていること、全く相矛盾している。閣僚だけで取り繕ったなとしか僕は思えませんね」と自身の受け止めを話した。 
●自公過半数割れが「一つの前提」 政権入り巡り 国民・玉木代表インタビュー 9/17
国民民主党の玉木雄一郎代表は16日までに、時事通信のインタビューに応じた。同党の連立政権入りが取り沙汰されていることについて、「自公政権が過半数を割ることが一つの前提だ」との考えを示した。主なやりとりは以下の通り。
――党勢拡大の目標は。
大型選挙ごとに比例得票数を2割ずつ増やしていきたい。2020年代半ばには、公明党や共産党と同規模以上の勢力になりたい。
――国の最重要課題は。
持続的賃上げだ。喫緊の課題はガソリン代と電気代の値下げだ。当面は補助延長でもよいが、ガソリン税の暫定税率廃止に踏み込むべきだ。賃上げの環境整備として、消費税の時限的減税や、所得税減税も選択肢だ。
――防衛増税や社会保険料引き上げへの賛否は。
反対だ。安定財源は必要だが、タイミングを間違えないことだ。持続的賃上げを実現するまで、増税や金融引き締めはやるべきではない。
――将来的な連立入りの可能性は。
代表選で勝利し、政策本位で与野党を問わず連携する方針は承認された。その上で、(与党に)より近づくのか、遠目に見るのかは党内でよく議論したい。一般論として、連立を組むには、安全保障、エネルギー、憲法などの基本政策の一致と、選挙区調整という二つの条件がある。これを満たす政党は、現在どこにもない。
――前原誠司代表代行は、代表選で立憲民主党や日本維新の会との共闘を訴えた。
2大政党的な政権交代や、「非自民、非共産」を集めて何とか過半数を取るというのは古くなっている。新しいアプローチで権力をリシャッフル(再編)したい。
――連合は立民と国民の連携を求めている。
両党が協力できる環境をつくるために、連合から立民に働き掛けてほしい。共産党と事実上の政策協定を結んだり、原発ゼロをうたったり、(東京電力福島第1原発の処理水を)汚染水だと言う議員がいたりするところとは一緒にできない。
――仮に入閣するならどのポストがいいか。
首相だ。個別の閣僚より、一国を担い、「給料が上がる経済」「自分の国は自分で守る」「人づくりこそ国づくり」を主要課題とした政策を実現したい。まだ単独では難しいので、方向性が一致する政治家と新しい政権を担いたい。
――理想とする政権像は。
どこも過半数を取らない状況が生まれると、多数派も少数意見を丁寧に聞くようになる。多様化した価値観の中で民意をくみ取るためには、穏健な多党制にならざるを得ない。自公が過半数割れするということは一つの前提だと思う。自民党も今の形ではなくなるかもしれない。基本政策が一致すれば、今の自民党の一部を含め、与野党全ての政治家と一緒にやる可能性はある。その時に政権の一角を担えるよう、国民を大きくしておきたい。どこかと合流する気は全くない。 
●岸田政権の目玉政策「令和版デジタル行財政改革」…新組織を作る意義は? 9/17
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」。9月13日放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『令和版デジタル行財政改革』で司令塔を設置 その狙いは?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
岸田文雄首相は、行政の効率化を目指す「令和版デジタル行財政改革」の推進に向け、司令塔となる新たな会議体を設置する方針を固めました。9月13日におこなわれた内閣改造で「デジタル行財政改革」の担当大臣を新たに設け、河野太郎デジタル大臣が兼務することも発表されました。
「令和版デジタル行財政改革」とは?
吉田:塚越さん、「令和版デジタル行財政改革」とは何なのか、改めて教えてください。
塚越:簡単に言えば、「国と地方の行政の効率化を、デジタル技術を使っておこなおう」というものです。政府・与党の関係者によれば、新たな組織を内閣官房に設置する予定で、50人規模で人選も進んでいるとのことです。
内閣官房は内閣、特に総理大臣を補佐する機関でもあるので、この新たな組織を総理直轄の司令塔とアピールすることで、支持率をアップさせるのが狙いと見られています。
吉田:「デジタル行財政改革」、どのような狙いがあるのでしょうか?
塚越:コロナ禍における国の対応において、特にデジタル領域に多くの問題があったということが背景にあります。給付金の支給に遅れが出たり、保健所業務もFAXを利用していたことなどが問題になっていました。こうした一連の問題について、岸田首相自身が「デジタル敗戦」という言葉を口にしたことも印象的です。
すでに今年6月の記者会見で岸田首相は、国がトップダウンで地方に命令するのではなく、国がデジタルによって地方を支える仕組みを目指すといった考えを示していました。「デジタル行財政改革」を内閣改造の旗印にすることも1つの狙いだと言われています。
デジタル基盤の共通化を狙う
ユージ:「デジタル行財政改革」とは、どのようなことが想定されているのでしょうか?
塚越:報道されているところでは、国と地方自治体のデジタル基盤を共通化させるとのことです。介護や教育、子育てなどの分野で人工知能を活用して、個々のニーズにあったサービスの迅速化を目指します。
具体的には、コロナの給付金やマイナンバーといった、国が実施する政策の問い合わせに地方自治体が忙殺されたので、全国一律の制度の対応は、国が人工知能を利用したチャットボット(=自動対話システム)などを導入するとのことです。自治体の負担を軽減して、自治体は本来の業務に集中してもらうという狙いです。担当閣僚を中心に、具体的な施策の検討を進める予定とのことです。
こうしたことは重要ですが、「デジタル基盤の共通化」という構想に対して、検討されているのが「チャットボットの導入」とは、影響があまりにも限定的かなと個人的には思います。地方に負担をかけないようにするということですが、それくらいなら既存の組織でもできるのではないか、ということが気になります。
すでに存在する「デジタル庁」…新たに組織を作る意義は?
ユージ:「令和版デジタル行財政改革」、塚越さんはどのようにご覧になっていますか?
塚越:聞いているリスナーさんも感じたと思いますが、日本にはすでにデジタル社会の実現に向けた「デジタル庁」があるわけです。他にも「デジタル田園都市国家構想」という、デジタル技術で地方と都市との格差を縮め、少子高齢化や過疎化を乗り越えようとする方針を政府が2021年に出しており、このための会議が内閣官房に設置されています。新しく組織をつくる必要が本当にあるのか? ということは問題です。
今回の組織は50人規模の人材で構成されるということですが、新たに人を雇うのであれ、今の省庁から併任するのであれ、結局はお金と時間、書類が増えるだけではないか、という疑念があります。同時に、本気でシステムを変えるならその程度の人数では話にならないかなと思います。
現時点で報道されているのは「チャットボットを作る」といった程度です。もし今回の組織が本当に必要なら、それ相応の理由と内容を岸田首相自身が説明する必要がありますが、現状ではふわっとしています。岸田政権の目玉政策という割には内容が不透明過ぎるので、内容はみんなでチェックしていかないといけません。
そして、担当は河野大臣ですが、彼はデジタル庁でマイナンバーの普及対応を急ぎ過ぎて問題になりました。この組織ではどう振る舞うのかを見ていく必要があるのではないでしょうか。
ユージ:デジタル庁と、今回の組織は別のものなんですよね?
塚越:はい。今回は内閣官房にできるということです。デジタル庁とはどのくらい連携するのか、この組織が本当に必要なのか、ということはこれからなので、我々はきっちり見ていく必要があると思います。
●10月に経済対策 「規模ありき」には陥るな 9/17
岸田文雄政権の第2次再改造内閣がまず取り組もうとしているのが、物価高を踏まえた経済対策である。
首相は先の記者会見で、9月中にその柱立てを閣僚に指示し、10月中をめどに対策を取りまとめる意向を表明した。併せて、財源を裏付けるための令和5年度補正予算案も編成する考えだ。
原油高騰や為替相場の円安基調で足元の物価はなお高水準である。大企業を中心に賃上げが広がってきたものの、物価高の勢いには追いついていない。
その点で政府が適切な施策を講じ、苦境に立つ家計や企業を支える必要性はある。減速する中国経済などの海外情勢も十分に見極めて、実効性の高い経済対策としなければならない。
注意したいのは、規模ありきの大盤振る舞いで対策の規模を膨張させることだ。これは従来の経済対策で常態化していた傾向である。新型コロナウイルス禍で一段と顕著になった。
だが、コロナ禍から本格的に回復してきた現在の経済は昨年までとは異なる。巨額の財政出動の論拠とされてきた深刻な需要不足もみられなくなった。むしろ、訪日客需要の高まりも相まって人手不足による供給制約が問題になっているほどだ。
そんな中で無節操に歳出を拡大すれば、インフレを助長することにもなりかねない。歳出圧力を強めがちな与党が特に認識しておくべきことである。
問われているのは対策の中身だ。想定されているのは、ガソリン価格の高騰を抑制する補助金の継続のほか、構造的な賃上げや投資拡大の強化、人口減少や災害の対策である。
具体化する際には、やみくもに財政資金をばらまくのではなく、低所得世帯や中小・零細企業などを重点的に支える工夫が求められる。賃上げ機運をさらに広げるため、税制を含む政策の強化で中小企業を後押しする取り組みも万全にしたい。
政府内では年末に向けて6年度当初予算の編成作業も行われている。5年度補正予算に盛り込むのは緊急性の高い施策に絞り、それ以外は当初予算で措置するのが筋である。ここをあいまいにしてはならない。
政府は今年の経済財政運営の指針「骨太の方針」で歳出構造を「平時」に戻す考えを盛り込んだ。岸田首相はその点を改めて銘記しておくべきである。 

 

●「自公国」連立へ首相布石 補佐官に異例の野党出身者―岸田政権 9/16
岸田文雄首相は15日、国民民主党副代表を務めた矢田稚子元参院議員を首相補佐官に抜てきした。野党出身者の補佐官起用は極めて異例で、自民、公明両党の連立政権に国民を加える「自公国」連立へ布石を打ったとの見方が与野党に広がる。ただ、国民を支持する連合は連立に反対で、構想の先行きは不透明だ。
「適材適所の考え方で首相が判断した。これ以上申し上げることは差し控えたい」。松野博一官房長官は15日の記者会見で、今回の人事は自公国連立への布石かと問われると、こう述べるにとどめた。首相官邸で同じ質問を記者団から受けた矢田氏も「私は関知していない」と語った。
自公国連立構想は菅政権時代に自民内の一部で浮上。昨年12月に機運が高まったものの、国民内で慎重派の意見が強まり、暗礁に乗り上げた。しかし、2日の国民代表選で与党寄りの姿勢が目立つ玉木雄一郎代表が再選されると自民内で再燃。13日の内閣改造では国民幹部を入閣させる案も取り沙汰された。
自民内で検討されているのは、「政策協議」「閣外協力」などと段階を追って国民との間合いを詰める案だ。矢田氏は連合に加盟する電機連合の元組織内議員で、関係者によると、連合の芳野友子会長と良好な関係にある。自民関係者は「今回の人事は連合とのパイプづくりが狙いだ」と説明。閣僚経験者は「将来の連立に向けた布石だ」と言い切った。
首相は14日、公明党の山口那津男代表に電話し、「矢田氏を補佐官に起用したい。ご承知おきください」とわざわざ伝えた。公明は国民の連立参加には慎重とみられ、修復の途上にある自公関係が再び悪化しないよう配慮したようだ。
国民の反応は割れている。玉木氏は15日、東京都内で記者団に、矢田氏は8日に国民顧問を退任したため補佐官就任は知らなかったとしつつ、「現場の声を届けてくれる」と期待感を表明。一方、連立慎重派の一人は「国民幹部が裏で動いたのではないか」と疑心暗鬼に陥っている。
立憲民主党は反発している。泉健太代表は15日、都内で記者団に「違和感がある。政治的人事と言われても仕方がない」と批判した。立民支持と国民支持の労組を抱える連合の関係者は「連合が壊れる」と悲鳴を上げた。
●初の「女性ゼロ」…副大臣・政務官は男性ばかりの記念写真 岸田政権 9/16
政府は15日の閣議で、第2次岸田再改造内閣の副大臣26人・政務官28人の人事を決定した。2001年に現行の副大臣・政務官制度が始まって以来初めて、内閣発足時の女性起用がゼロとなった。政府は「社会のあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合」を20年代の可能な限り早期に30%に引き上げる目標を掲げている。目標に逆行する人事に、自民党内からさえも「さすがにひどすぎる」と批判の声が上がっている。 
旧態依然の「派閥推薦」重視の結果か
岸田文雄首相は今回の内閣改造で、閣僚には過去最多と並ぶ5人の女性を起用した。ただ、首相を除く閣僚・副大臣・政務官の「政務三役」の計73人で見ると、女性比率は7%弱にとどまる。国会議員全体での女性比率は約16%、自民の約12%にも届いておらず、政務三役への登用率の低さが際立っている。
計11人の副大臣・政務官が起用された昨年8月の内閣改造と対照的な人事となった背景には、党内の各派閥からの推薦を基に調整したためだとみられる。副大臣経験者の女性議員は「派閥推薦がそもそも男性ばかりだった」と指摘。「首相は当選回数を無視して女性閣僚を増やしたのに、副大臣・政務官の女性数を減らしたら意味がない」と不満を漏らす。
口をそろえて「適材適所」と説明 野党から疑問の声
女性副大臣・政務官ゼロの評価を記者会見で問われた鈴木俊一財務相は「適材適所でやった結果、女性がいなかったということだと思う。女性が活躍する場を持ってもらうことが望ましい」と言葉を選んで話した。加藤鮎子女性活躍担当相は会見で「副大臣・政務官の人事にコメントすることは控える」と述べるにとどめた。一方で「女性が有権者の52%を占めており、政策決定への女性参画が拡大することは、多様な国民の意見を反映させるために必須だ」と付け加えた。
野党からも「女性活躍を推進する気概が全く感じられない」(立憲民主党の西村智奈美代表代行)、「あれだけ人数がいても自民の女性議員が育っていない」(日本維新の会の藤田文武幹事長)と疑問視する声が上がっている。
首相は記者団に、「適材適所でご覧のような男女バランスとなった。チームとして人選した結果だ」と釈明。「女性ならではの感性」で職務に当たることを女性閣僚に求めたこともあり、一貫性を欠いた人事にさらに批判が高まりそうだ。(小椋由紀子、山口哲人)
東京家政学院大の野村浩子特任教授(女性活躍推進)の話 政治分野で女性リーダーの登用が著しく遅れるなか、女性大臣を5人増やして目立つ所を整えただけで、次の大臣候補となる副大臣・政務官が異例のゼロというのは女性活躍に逆行しており、考えられない人事だ。政府は東証プライム市場の上場企業に2030年までに女性役員30%以上を達成するよう求めているが、政治の世界こそ「隗より始めよ」だ。女性をリーダー層に積極的に引き上げていかないと、多様性のある意思決定は実現できない。
●銃撃事件追い続ける 統一教会問題を長年取材 鈴木エイトさん 9/16
安倍晋三元首相が奈良市で街頭演説中に凶弾に倒れて1年2カ月余り。霊感商法などが問題となった世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員らの関係が次々と明らかになり、多くの2世信者が教団による家庭崩壊を訴えだした。そうした報道があるたびに的確なコメントで注目されているのがジャーナリストの鈴木エイトさん(55)だ。
風変わりな経歴を持っている。滋賀県出身で日本大学に入学後、ミュージシャンを目指していた時期がある。「若気の至り」と言うが、パンク系のバンドを組み、ライブでは長髪をなびかせたボーカルとして、ちょっとした人気者だった。結局、メジャーデビューは果たせずに26歳で髪を切った。アルバイトをしていたビルの管理やメンテナンスの会社に就職した。
週5日勤務。作業着で空調機点検−といった業務をこなした。挫折感はあったが自分の選択。可もなく不可もない日々を送っていた。2002年、教団に関する特集番組を偶然、見た。「アンケート」「手相を勉強」と言って入信者を導く偽装勧誘を知った。東京・渋谷でそれを目撃。近寄って「これは問題の宗教団体の勧誘」と阻止した。
「強い正義感を持っていたわけではないが、ウソをついての勧誘は問題だし、無垢(むく)な人がはまってしまうのは見過ごせなかった」。毎週末、そんな阻止活動で渋谷のほか、新宿や池袋にも通うようになった。
「善良で真面目な人ほどはまりやすい」とは知っていた。実は姉が教団の信者。ちょっとしたきっかけで入信し、身内の不幸を突かれては「一族のメシア(救済者)が必要」とマインドコントロールされた。
「『姉の問題で阻止活動を始めた』と矮小(わいしょう)化されると困る。姉は家族の問題で、教団は社会の問題。誰だって何か問題に気付けば、できる範囲でやることをやるでしょう。私にできることが阻止活動だった」
教団から脅迫されたり、暴行されたりもした。それでも活動を続けた。教団を知れば知るほど問題意識は高まった。教団の被害者を救済する全国霊感商法対策弁護士連絡会や日本脱カルト協会とも連携。09年にはニュースサイト「やや日刊カルト新聞」に参加して、本業の傍ら副業のジャーナリスト活動を本格化した。
教団の霊感商法や合同結婚式は1980年代に社会問題化し、メディアが盛んに報じた時期があった。しかし、教団が信者による選挙応援を武器に自民党の政治家に近づくにつれて下火に。メディアの監視が働かない中、2012年末に首相に返り咲いた安倍氏は教団に接近。21年9月に教団関連の集会で安倍氏のビデオメッセージが流された。鈴木さんなどによる、ごく少数の報道によって山上徹也被告は安倍氏と教団の関係を確信。銃撃事件を起こしたとされている。
その事件でメディアが教団の問題を再び報じるようになり、20年間余りも孤独な闘いを続けてきた鈴木さんにもスポットライトが当たった。それまでは出版社に相手にされなかったが、著作が次々と出版されて日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞なども受賞。副業だったジャーナリスト活動がやっと本業になった。
しかし、心中は複雑だ。「安倍さんと教団の関係は問題だが、その代償で命を落としたのは何とも皮肉。それに、山上被告が犯行に至る経緯には私の報道の影響がある」と言う。
「安倍さんの死に大きな喪失感があった。選べるのなら、注目される今の自分より、無名のまま安倍さんを追及する自分を選ぶ」
教団の問題はヤマ場を迎えている。政府が解散命令を請求するかどうかだ。鈴木さんは「政治家が邪魔しなければ、10月には出る」と予測する。ただ、請求されても霊感商法の被害者救済や信者の社会復帰など、多くの問題は残る。教団と関係の深い大物政治家の問題も未解決のままだ。
「後に知ったが、事件前に山上被告は私に接触していた。もしかしたら、事件を止められたかもしれない。間接的とはいえ、私は事件の当事者の一人。最後まで事件を追及する責任がある」 
●歴代総理より一流企業の総合職のほうが高学歴…日本の政治家は低学歴 9/16
政治家にはどんな学歴が求められるのか。評論家の八幡和郎さんは「先進国の指導者の多くが輝かしい学歴の持ち主だが、近年の日本の総理大臣はそうではない。国内トップクラスの学歴と知力と専門知識、そして高度な国際経験を持つ人材が指導者でなければ、あらゆる分野で世界の最先端から遅れてしまうだろう」という――。
最後の「東大卒・元官僚」は宮澤喜一氏
大統領や首相など国の指導者は、すべての職業の中でも、最高の知力、専門知識、職業経験を必要とする仕事のはずである。実際、米国はハーバード大学、英国はオックスフォード大学、フランスはフランス国立行政学院(ENA)の卒業生が多い。
日本でも、戦前の首相は帝国大学出身の官僚か職業軍人が原則だったし、戦後も昭和が終わるまでは官僚、弁護士、ジャーナリストなどが多かった。
ところが、平成になると地方政治家が多くなり、やがて世襲政治家の天下になった。最後の東京大学法学部出身で元官僚の宰相は、1991年に就任した宮澤喜一である(93年に退任)。
それ以降、上智大学出身の細川護熙以降の最終学歴は、成城大(羽田孜)、明治大(村山富市)、慶應大(橋本龍太郎)、早稲田大(小渕恵三)、早稲田大(森喜朗)、慶應大(小泉純一郎)、成蹊大(安倍晋三)、早稲田大(福田康夫)、学習院大(麻生太郎)、東京大工学部(鳩山由紀夫)、東京工業大(菅直人)、早稲田大(野田佳彦)、法政大(菅義偉)、早稲田大(岸田文雄)だ。
トップクラスの知力の持ち主とは言いがたい
学歴が一人ひとりの知的水準をそのまま表しているわけではないにしても、全般的に見たとき、諸外国の指導者のほとんどが、自国におけるトップクラスの学歴と知力、一般教養、専門知識を持っているのとは大違いだ。上記の総理大臣の学歴リストは、たとえば、一流企業総合職採用の出身校の分布より低レベルなのではないか。
上記のなかで、知力では東京大学工学部卒の鳩山由紀夫が群を抜いているのだろうが、器用な受験勉強的秀才で、一般教養を深めた風情でない。細川護熙は近衛家の伝統につながる公家的で特殊な教養人だ。安倍晋三は地頭の良さは間違いないが、本当にまじめに本を読んで勉強したのは、第1次政権で大失敗して下野してからという印象がある。
これから詳しく分析するように、戦前から戦後にかけての歴代首相が、旧制高校から帝国大学、陸軍士官学校・海軍兵学校から陸軍大学・海軍大学、さらに、ほとんどが海外留学・勤務の経験を持っていたのと比べ、劣化が激しいのである。
江戸時代は恐るべき低学歴社会だった
歴史的経緯を振り返ると、江戸時代の日本には高等教育機関は存在しなかったし、科挙もなかったので、恐るべき低学歴社会だった。藩校も低レベルの漢学を教えて中国語の読み書きはできるようになったが、あとは、少しばかりの歴史や論理的思考をつまみ食いしていただけだ。
庶民が学べる中等教育学校はなく、家庭教師か私塾くらいしか学ぶ方法はなかった。ようやく幕末になって学問ブームが起き、適塾(大阪)、咸宜園(豊後日田)、松下村塾(萩)などが現れ、さらに慶應義塾に至って高等教育機関らしくなった。幕府、各藩が競って洋学校も設立した。
明治になると、帝国大学(最初は東京だけ)のほか、外国人教官を呼んで留学準備や初歩的な学問を教える学校、軍の学校が設立されたが、体系的な学校制度となったのは、1890年前後からだ。連続テレビ小説「らんまん」で主人公が帝国大学に出入りし始めたのは1884年で、そのころは、外国人教官が留学帰りの日本人に置き換わりつつある時期だった。
海外事情に精通していた明治時代の首相たち
明治時代の首相はいずれも維新の功労者であり、近代学校制度ができる前の人たちだが、伊藤博文をはじめ、海外留学や数カ月以上の長期視察で海外の事情をしっかり勉強した国際人ばかりだった。例外は、海外渡航経験ゼロの大隈重信だが、もともと長崎の英語学校出身だし、耳学問で世界に通じていた。
大正から終戦までは、首相は帝国大学出身の官僚か職業軍人ばかりとなり、私学出身者は慶應大学出身の犬養毅(ジャーナリスト。少し公務員経験もある)だけ、官僚経験がないのは、旧制一高から京都大学で学び、25歳で貴族院議員となった近衛文麿だけだ。そして、ほとんどが海外留学・勤務の経験者だった。
戦後は旧軍人が排除され、官僚出身者(幣原喜重郎、吉田茂、芦田均、岸信介、池田勇人、佐藤栄作、福田赳夫、大平正芳、中曽根康弘)が主体になった。そのほか、東京大学出身の弁護士(片山哲、鳩山一郎)、早稲田大学出身のジャーナリストだった石橋湛山、高等小学校卒で工務店経営者だった田中角栄、それに、明治大学在学中から長期の洋行を繰り返し卒業直後の選挙で代議士となった三木武夫がいた。
総理候補になるだけでも高いハードルがあった
このころ総理大臣候補になるには、たとえ学歴や官僚経験がなくとも、官僚出身者が多い政界で、十分に政策論で対抗する能力が必須であり、外務大臣、大蔵大臣、通産大臣のうちふたつを経験することが総理の条件と言われたこともあった。
だが、大平正芳が現職のまま死去して、妥協の産物として水産講習所(現東京海洋大学)出身で重要閣僚経験がない鈴木善幸が総理になってから、学歴も重要ポストの経験も問われず、政治的な駆け引きと大衆人気だけで総理が決まるようになった。
古典的な官僚出身者である中曽根康弘の後は、はじめての県議出身だった竹下登、同じく宇野宗佑、議員秘書出身の海部俊樹が続き、宮沢喜一以降は先述の通りだ。親が政治と関わりがなかったのは、村山、菅直人、野田だけである(菅義偉の父は町会議員)。
英国・フランスの指導者の「華麗なる学歴」
一方、海外ではどうだろうか。もっともエリート主義的なのは、英国とフランスだ。英国では、サッチャー以降の9人の首相のうち、7人が「THE世界大学ランキング」7年連続1位のオックスフォード大学卒で、例外は高校中退のメージャーとエディンバラ大学歴史学科のブラウンだけ。
フランスは、エリート官僚養成校であるENA(国立行政学院、現在は改組されてINSP)出身者が、ジスカールデスタンからマクロンまで6人の大統領のうち4人を占めている。例外はいずれも弁護士出身のミッテラン(ENA設立以前の世代)とサルコジ(ENAの登竜門であるパリ政治学院を終了できなかった)だけだ。
米国では、大学より大学院が問題だが、平成以降に就任した6人の大統領のうち4人(ブッシュ父子、クリントン、オバマ)が、エリート校であるハーバード大学、イェール大学や大学院に何らかの形で在籍していた。例外は、トップクラスのビジネス・スクールであるペンシルベニア大学ウォートン・スクール出身者のトランプと、中の下クラス(小室圭氏のフォーダム大学より下位に位置づけられる)であるシラキュース大学ロースクール出身のバイデンだ。
ドイツの場合、すべての大学が同じ基準で単位を与える仕組みなので、大学名からは学力・知力を判断できないが、コールとメルケルは博士、シュレーダーとショルツは弁護士である。
指導者の低学歴は日本の悪しき伝統
ゴルバチョフ以降のソ連・ロシアの指導者を見ると、ゴルバチョフは最難関であるモスクワ大学、プーチンとメドベージェフは名門レニングラード大学(現サンクトペテルブルク大学)の法学部。エリツィンはウラル工科大学の建築科、ミシュスチン首相もエンジニアだ。
中国の国家主席では、江沢民は上海交通大学、胡錦濤と習近平はいずれも清華大学出身のエンジニアである。首相も李鵬、朱鎔基、温家宝がエンジニアで、李克強は北京大学法学部、李強は農業エンジニアである。社会主義国ではエンジニアが経済運営の中心にあることの伝統を引き継いでいるといえる。
このようにまとめてみると、いかに日本の歴代総理の学歴が低レベルであるかが理解できるだろう。指導者の低学歴というのはこの国の悪しき伝統であり、政界に限った話ではない。
江戸時代の教育水準が高かったとかいう人がいるが、仮名(かな)というものがあるので低レベルながら読み書きができる人が多かっただけだ。武士は藩校で九九すら教えられなかったから、プロの官僚ないし軍人の役割は果たせず、勘定方とか兵法学者といった世襲の職人集団が担っていた。
日本人の留学熱、学習意欲はすっかり冷めている
戦前の旧制高校は一般教養を学ぶにはよかったが、帝国大学で初歩的な専門知識を得た後、官僚になってから仕事や海外勤務での見聞を通じて海外事情についての知識を補った。軍人も軍の大学で学部レベルの勉強はするが、その後、海外で武官として最新知識を得た。
戦後の官僚や企業幹部も、国内では大学院に進まず、大学院レベルの学びは海外留学に頼っている。経済産業省作成の資料によると、日米の時価総額上位100社の経営者のうち、日本では84%が学部卒で大学院修了は15%。米国は67%が院卒で、博士課程修了者も1割いる。
しかも、留学組が政界でも経済界でも優遇されているかといえばそうでもない。さらに、日本人の留学熱はすっかり冷めている。
明治初期は留学熱がすさまじかったのに、国内の教育体制が整備され、そこそこの勉強ができるようになると、それで満足してしまった。
日本が世界の最先端から遅れてしまった理由
そしていま、同じことが起きつつある。私(1951年生まれ)たちの世代から今世紀初頭までは留学熱が高く、競って海外の有名大大学院へ行ったし、留学先は喜んで「新しい超大国」になった日本人を官民問わず受け入れてくれた。
しかし現在、米中対立で少し歯止めがかかってはいるが、欧米の名門大学では日本人が減り、中国人など他のアジア系の学生だらけになっている。こんな状態では、日本はあらゆる分野で世界の最先端から遅れてしまう。
もちろん、日本では本人の能力や職歴より、誰の子どもかのほうが総理大臣の道に進めるかどうかの決め手になるから、政治家の子どもの留学熱が高いのは歓迎したい。だが、これまでは、箔付けと語学を学ぶことが主目的となり、修士や博士になることはオマケ扱いだった。小泉純一郎、麻生太郎、安倍晋三などがそうだ。
総理大臣の低学歴化が影響しているのではないか
内閣改造後の新閣僚では、河野太郎が日本でなく米ジョージタウン大学卒、上川陽子、西村康稔、伊藤信太郎、加藤鮎子が米国の大学院を修了している。総理候補と言われる茂木敏充、林芳正、小泉進次郎、玉木雄一郎なども同様だ。留学ブームだった世代が閣僚適齢期になった反映である。
「日本はもはや先進国ではない」と言われて久しいが、国の指導者である総理大臣の近年の低学歴化・海外経験の乏しさが影響しているように思えてならない。
「総理大臣はかつてのように東大卒を主にすべき」というわけでないが、激動の国際情勢や金融情勢についていくには、少なくとも国内トップクラスの学歴と知力と専門知識を持ち、さらには高度な国際経験を持つ政治家、あるいは、学歴はなくとも彼らと議論して負けない政治家が総理候補となるのが望ましいだろう。
●核軍縮・安保理改革訴え 岸田首相、国連総会へ19日出発 9/16
岸田文雄首相は国連総会に出席するため、19日に米ニューヨークへ出発する。一般討論演説で、ライフワークとする「核兵器のない世界」実現や、常任理事国ロシアのウクライナ侵攻で機能不全が指摘される安全保障理事会の改革を訴える見通しだ。ウクライナ情勢に関する安保理首脳級会合にも出席する。
首相は滞在中、高濃縮ウランやプルトニウムを対象とする核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)に関するハイレベル行事を主催。5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)でまとめた核戦力データの透明化を訴える「広島ビジョン」も踏まえ、核軍縮に向けた機運を醸成したい考えだ。
このほか、新型コロナウイルス禍を受けた国際保健、持続可能な開発目標(SDGs)をテーマとする会合に参加。ウクライナのゼレンスキー大統領との会談も調整している。22日に帰国する。
松野博一官房長官は15日の記者会見で、「国際社会が複合的な危機に直面する中、安保理改革を含め国連の機能強化の重要性を強調する」と説明。首相演説に関し、「分断や対立ではなく協調の世界を目指し、人間中心の国際協力を提唱する」と語った。
国連総会の関連会合には上川陽子外相も出席する。13日の就任後、外遊は初めて。18日(日本時間19日)にG7外相会合を開催し、議長を務める。 
 

 

●来年以降、政権を揺さぶる火種になる…岸田政権を待ち受ける"第2の爆弾" 9/15
「デジタル行財政改革担当相」は河野大臣が兼任
岸田文雄首相は9月13日に内閣を改造した。焦点のひとつだった河野太郎デジタル相は留任、改造内閣の看板になるかと思われた「デジタル行財政改革担当相」は新設されたものの、河野大臣の兼任となった。
当初は、マイナンバーカードへの健康保険証など情報の紐付けを巡る大混乱の責任を取らせてデジタル相を交代するのではないかと見られていた。結局、火中の栗を拾えるだけのデジタル化への知見を持った政治家が限られることから、今後さらなる炎上を抑えるためにも河野氏以外では難しいと判断したようだ。
さらに国民的な人気も高く、岸田氏にとっては潜在的に地位を脅かす存在である河野氏を、閣内で引き続き難題を抱えさせることで、抑え込もうという政治的な狙いもあるという解説も永田町では聞かれる。岸田首相は情報の紐付けミスの「総点検」を11月末までに行うよう指示しており、河野大臣に大きな重荷を背負わせている格好だ。
マイナンバーカードへの健康保険証の一体化については、野党のみならず与党内からも見直しを求める声が出ている。紐付けミスが相次いで発覚した6月以降、内閣支持率が大きく低下。NHKの世論調査では5月に46%だったものが、8月には発足以来最低に並ぶ33%にまで低下するなど、岸田内閣の足元が大きく揺らいだ背景にはマイナンバー問題があった。
父は「日本医師会のドン」という厚生労働相
首相周辺は、マイナカードと保険証を来年秋から一体化する方針を先送りする方向で動いたが、結局、8月4日の会見では一体化及び保険証の廃止の方針は堅持した。河野大臣と加藤勝信・厚生労働相(当時)の2人が先送りに強く反対したことが背景にあったとされる。今回の内閣改造で、日本医師会の推薦を受ける武見敬三氏が厚労相に就いたことで、この厚労省の姿勢がどう変わるのかが注目される。
武見氏はかつて日本医師会のドンと呼ばれた武見太郎氏の子息。今回の人事には「医師会が大臣になったようなもの」「あまりにも露骨」といった声が噴出しているが、保険証の廃止に慎重姿勢を取る医師会の声が今後の行政にどう反映していくことになるのか。武見大臣が医師会の説得に回って保険証廃止に突き進むのか、河野大臣との間でバトルを繰り広げることになるのか、大いに注目される。
11月末までに行われる総点検で、問題が解決するかどうかは首を傾げる。マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせたいわゆる「マイナ保険証」に他人の医療情報が紐付けされたミスの発覚件数は8月になっても増え続けている。8月8日段階で新たに1069件のミスが明らかになり、実際に他人の情報が閲覧されていた事例も5件確認された。累計の誤登録件数は8441件にのぼる。しかも、今後も誤登録の発見は増え続ける可能性があると報じられている。
「インボイス制度開始」という新たな難題
内閣改造が終わり、秋の臨時国会が始まれば、再び、マイナンバー問題の野党による追及が再開する。NHKの世論調査では9月の内閣支持率は36%と3ポイント改善、とりあえず一服状態だが、これがどう動くか。来年秋の自民党総裁選で再選を狙う岸田首相にとってマイナンバー問題はアキレス腱(けん)であり続ける。
そこにもうひとつ難題が加わる。消費税のインボイス制度が10月1日から開始されるのだ。「適格請求書発行事業者」として登録し、その番号や消費税額を明記した請求書を発行する仕組みで、モノやサービスを購入するために代金を支払った側はこの適格請求書(インボイス)が無ければ、その消費税分を税額控除することが原則できなくなる。飲食店なども登録番号などを明記した領収書(適格簡易請求書)を発行することになり、それをベースに税額控除を受ける。つまり、売り上げに伴って受け取った消費税(仮受消費税)から経費として支払った際の消費税(仮払消費税)を差し引いた金額を納税することになる。
インボイス制度は「増税策」であることは間違いない
すでに課税業者の多くは適格請求書発行事業者として登録を始めており、6月末時点でおよそ300万ある課税事業者のうち8割を超える事業者が登録を済ませたという。個人事業主の課税事業者も7割以上が登録している。
問題は、インボイスを発行できるのは、消費税の申告をする課税事業者に限られること。国内の事業者は個人法人合わせて823万あるとされ、その6割が「免税事業者」とされる。とくに個人事業主の過半数が免税事業者だ。こうした事業者の発行する請求書や領収書では税額控除を受けられなくなるため、免税事業者との取引を縮小するのではないか、という見方が広がっている。経費処理するのに簡単な課税事業者の店を利用しよう、ということになるのではないかというわけだ。
インボイス制度を導入する財務省の狙いは、結局のところ、免税事業者を減らし、課税事業者に変えていくことにある。免税事業者も売り上げが減っては困るので、自ら課税事業者になって適格請求書(領収書)を発行できるようになろうという動きが出ている。そうなれば当然ながら、国に入る消費税の額は増えるわけで、増税策であることは間違いない。
来年以降、政権を揺さぶる火種になる
消費税「率」を引き上げれば、国民の注目が集まり大きな反発を生む。ところが課税業者を増やす今回のインボイス制度では、なかなか反発が起きにくい。実際にどれぐらい税負担が増えるのかが見えにくいからだ。だが実際に増税負担を被ることになるのはこれまで免税されてきた個人や零細事業者ということになるだろう。もちろん、様々な経過措置や特例措置も設けられているが、事業者の負担が増えることは間違いない。
例えば非課税事業者が課税事業者に転換しても、実際に消費税を納税することになるのはまだしばらく先だ。その負担増を実感し始めるのは来年以降になる。まだ、その全体的なインパクトを予想するのは難しいが、政権を揺さぶる火種になることは間違いない。しかも不満が爆発するのが来年となると、総裁選前に爆弾が破裂することになりかねない。
インボイス制度や請求書や領収書の電子保存など、デジタル化の進展で、徴税漏れは大きく減っていくことになる。加えて、課税業者が増えていけば間違いなく消費税収は増える。国にとってはデジタル化の恩恵は大きい。
「何のためにデジタル化を進めるのか」国民の怒りが蓄積
一方で、国民側からすれば、何のために国のデジタル化を進めるのか、という憤懣(ふんまん)が蓄積しつつある。マイナンバーカードも「便利になる」と言って普及させる一方で、結局は個人の資産捕捉などに繋げて税収を増やすことが狙いだろう、ということになる。
そんな不満を解消するために、今回の内閣改造では当初、「デジタル行財政改革担当大臣」を新設し、デジタル化が行政コストの削減につながることをアピールするはずだった。総理直轄のデジタル行財政改革本部を設置することで、国が進めるデジタル化は行政改革のための手段なのだということを示す狙いだったのだ。菅義偉前首相がデジタル庁を創設した時に狙いとして示していたのは「縦割りの打破」。デジタル化が進めば行政コストが下がるというのがデジタル庁創設の謳い文句だったのだが、その理念を再度国民に訴えようとしたのだろう。
ところが蓋を開けてみれば、河野デジタル相が新設のデジタル行財政改革担当大臣を兼任することで終わり、斬新さはすっかり消えてしまった。
今後、マイナンバーのミス続発が止まらないまま、国民に不便さを押し付けることになる保険証の廃止に固執し続ければ、岸田内閣の支持率が再び低下を始めることになるかもしれない。さらに、それにインボイス制度への国民の憤懣が重なれば、岸田政権の足元を突き崩す「第2の爆弾」になるに違いない。
●次の自民総裁1位は小泉氏、2位石破・河野氏 首相6位 9/15
日本経済新聞社とテレビ東京は13、14日の緊急世論調査で、事実上の次の首相となる自民党総裁にふさわしい人を聞いた。小泉進次郎元環境相が16%で首位に立った。2位は15%の石破茂元幹事長、河野太郎デジタル相が続いた。現職の岸田文雄首相は6%で6位となった。
4位は8%の高市早苗経済安全保障相、5位は7%の菅義偉前首 ・・・
●「ドリル優子」も要職に…「説明責任を果たした」って本当? 9/15
13日に行われた内閣改造と自民党役員人事。メディアやネットで飛び交ったのが「説明責任」というキーワードだ。政治資金の資料をドリルで壊したり、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点が判明したりした議員が、果たしていない責任。記者会見で釈明しているケースもあるが、なぜ世論を納得させられないのか。「説明責任」のあるべき取り方とは。(曽田晋太郎、山田祐一郎)
13日の自民党選対委員長就任会見で、政治資金問題の説明責任を指摘された小渕優子氏。「十分に伝わっていない部分があれば、私自身の不徳の致すところ」と涙ながらに述べたが、ある自民中堅議員は「説明責任を果たしたとは言えない」と冷ややかに話す。
2014年、小渕氏の関連政治団体が支持者向けの観劇会費用などに関し、不透明な会計処理を行っていた疑惑が表面化。元秘書2人が政治資金規正法違反に問われ、執行猶予付きの有罪となった。東京地検特捜部が事務所を家宅捜索した際、会計書類を保存したパソコンのハードディスク(HD)がドリルで壊されていたことから、「ドリル優子」とも批判された。
「選挙の顔」の役割を果たせるのか
小渕氏は経済産業相を辞任した後、不起訴に。ただ、自身が依頼した第三者委員会の調査結果公表を待って地元・群馬で記者会見したのは1年後。これ以降公の場での説明はなかった。
13日の会見では「地元に戻り、700の(後援会)支部を2年以上かけて回った」と釈明。だが、前出の中堅議員は「『身内』だけでなく、国民に対して説明をしないといけない」。
選対委員長は定例記者会見がなく、国会で野党から追及を受けることもないため、これ以上傷口は広がらないとの見方もある。ただ、岸田文雄首相が期待する「選挙の顔」の役割は果たせるのか。自民若手議員は「選対委員長として表舞台に出る中で、これから何度も過去の問題がぶり返すのであれば、特に選挙が弱い若手は影響を受ける可能性がある」と吐露した。
全容うやむや、説明せず幕引きの印象
世論が納得しない理由について、企業の危機管理に詳しい「エイレックス」の江良俊郎社長は「政治家に限らず、影響力を持つ組織や個人の不正、行動に疑義がもたれた場合、当事者は十分な情報提供をし、丁寧に説明する義務と責任を負っている」と話す。小渕氏の場合、「HDをドリルで破壊するなど悪質な印象が強かったにもかかわらず、第三者の報告書公表や自身の会見が遅かった。会見でも『これ以上説明できない』などと全容を開示せず、メディアをはじめ社会に不満がくすぶっていた。経産相辞任で、説明せず幕引きした印象が強かったのでは」と語る。
一方、今回の人事では、妻が元夫の死亡を巡り警視庁から事情を聴かれたと週刊文春に報じられた木原誠二前官房副長官が会見を開かないまま退任した。「首相の側近として政策で党との調整を担うのに余人をもって代え難い」(岸田派議員)ため、党幹事長代理などで起用されるとの報道もあるが、小渕氏のように尾を引く恐れはないのか。
選挙プランナーの松田馨氏は「ネガティブなイメージが付き、今後の出世は難しいという声もある。ただ、木原氏の妻が日弁連に人権救済の申し立てをしており、テレビや新聞がほとんど取り上げておらず、大きな火種にはならないだろう」とみる。むしろ、「初入閣組を中心に大臣の失言やスキャンダルがあれば、政権への大きなダメージになる」という。
日本では情報開示の認識甘く
そもそも「説明責任」とはどういう意味か。青山学院大の八田進二名誉教授(会計学)によると、英語の「アカウンタビリティー」を訳したもので、責任ある立場に課せられる結果責任を指す。
「もともとは米国の会計の世界で『会計責任』『報告責任』という意味で使われてきた言葉。『アカウント・フォー』(〜を説明する、〜の責任を持つ)の意味から、近年は政治や行政、一般社会で広く『説明責任』として使われるようになり、2000年代以降は日本でも広まった」
業務を遂行する責任(レスポンシビリティー)とは異なり、「経営者が株主総会で経営成績をデータで示して承認を得るのが企業の説明責任」という。「海外では説明責任の意識が根付いているが、日本では混同されている場合が多く、説明責任への意識が脆弱ぜいじゃくなままだ」。政治家の説明責任については「冗舌に話すことで果たしたと勘違いしている。疑念や疑惑を払拭するには、事実を明確にして国民を納得させることが必要だ」と指摘する。
「旧統一教会と接点」組も複数起用
まさにそうした説明責任が求められているのが、旧統一教会との関係。だが今回の人事では、昨年自民党が実施した調査で、教団側とのかかわりを認めた国会議員が複数起用された。
留任した萩生田光一政調会長は教団関連の会合に出席したり、選挙で教団側からボランティア支援を受けたことが判明。それでも13日の会見では「今までも機会あるごとに説明を続けてきた。調査結果の内容を党に報告し、関係を絶っている。現段階で何か説明不足だという指摘は当たらない」と述べた。
関連団体の会合に出席するなどしていた木原稔防衛相も同日の会見で、教団関係団体との関係を絶っていると強調。「党の調査に回答している。それ以降、特に過不足はない」とした。
検証不足だから追及が終わらない
これで国民は納得できるのか。ジャーナリストの鈴木エイト氏は「萩生田氏は説明を尽くしてきたのか疑問だ。木原氏もそれなりの接点があった人物。いま関係を絶っているから大丈夫というのではなく、当時どうだったかという検証が足りないから、いつまでも指摘されることになる」と話す。
教団の解散命令請求の検討などを所管する文部科学相に就任した盛山正仁氏も、関連団体の会合であいさつする接点があったが、14日の就任会見で「現在、団体との関係は全くない」と述べた。鈴木氏は「解散命令請求に向けた岸田首相の意向を反映しやすい」とみるが、野党からは影響を懸念する声も上がる。
全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)事務局長の川井康雄弁護士は「そもそも昨年の党の調査自体、安倍晋三元首相を対象としないことに象徴されるように全く内容が足りていない」と指摘。この調査をもって説明を果たしたとする新閣僚らにくぎを刺す。岸田首相は「過去の関係いかんにかかわらず、現在は関係を一切有していないことを前提に任命した」と強調したが、川井氏は「改めて調査が必要だ」と訴える。
だんまりが当たり前に
岸田政権では昨年も8月の内閣改造後、旧統一教会との関係や政治とカネを巡り、4人の閣僚が相次いで辞任した。それなのに今回も追及必至の人事を繰り返したことに対し、政治ジャーナリストの泉宏氏は「説明責任を果たさないことが当たり前になってきている」と批判する。
「茂木派の小渕氏を党四役に登用したのは来年の総裁選をにらんだ動きだ。岸田首相としても小渕氏が追及されるのは計算済み。説明責任以上にメリットがあるから、普段会見がない選対委員長にした」と泉氏。国民の目を軽視する姿勢に「新内閣に期待する声は少ないだろう」と話した。
デスクメモ
首相は会見で「強固な実行力を持った閣僚を起用した」と説明したが、真に受けた人がどれだけいるのか。明治維新や戦後復興を引き合いに「明日は今日より良くなる」と言われても、根拠がなければ精神論だ。バラ色の政策を語るなら、裏付ける客観的事実の説明責任も問われる。
●インドによるインドのためのG20 9/15
G20(20カ国・地域)首脳会議に参加するため、議長国インドの首都デリーを訪れた外国要人やメディア関係者が目にしたのは、ビルの壁面やバス停、公共掲示板などを埋め尽くすG20のポスターと、モディ首相がほほ笑む無数の大型看板だった。「インドによるインドのためのG20」と形容するライターもいたが、インドにとっては「グローバル・サウス」、つまり新興国・途上国のリーダーとしての役割を国際社会にアピールする壮大な政治・外交ショーだったようだ。
激論避け会議の「成功」を優先
9月9〜10日にデリーで開催されたG20首脳会議では、ロシアのウクライナ侵攻や途上国の債務危機、環境、食糧、エネルギーなど国際社会が抱える様々な課題に先進国と新興国がどう取り組み、いかなる解決方法を示すかが注目された。習近平・中国国家主席とプーチン・ロシア大統領という2大巨頭を欠いたG20は会期初日に首脳宣言を出すという異例の展開となったが、ウクライナ侵攻を止める気配のないロシアや、周辺の係争地域をすべて自国領とした地図を発行するなど領土への非妥協的姿勢を露わにした中国とどう折り合いをつけるかが、会議運営の肝だった。
一方的な非難で彼らがへそを曲げれば、宣言はおろか会議自体が決裂し失敗に終わる恐れもあった。実際、今年2月、3月の財務相・中銀総裁会議や外相会議では中ロの反発などから共同声明すら出せないという危機的状況に陥っていた。
フタを開けてみれば、首脳宣言はロシア・ウクライナ問題を「侵攻」ではなく、より中立的かつ責任があいまいな「戦争」という言葉で総括。武力行使や威嚇に反対を示しつつも、ロシアへの非難という点では昨年のインドネシア・バリ島での首脳会議よりも一歩後退したと言わざるを得ない。
欧米諸国はロシアへの処罰感情が強く、非難の文言では譲れないとの観測もあったが、結果としてインドのメンツを考慮し、サミットの「成功」に協力したという形になった。インドとしてはウクライナ問題のせいで首脳会議そのものをつぶすわけにはいかなかった。根回しに駆け回ったインド外交官の苦労がしのばれる。
世界の課題をアピール
さらに首脳宣言では「G20は経済フォーラムであって、地政学的問題や安全保障を話し合う場ではない」といまさらのように開き直る文言も盛り込まれた。「紛争には首を突っ込みません」という意思表明だが、少々無責任ではないのか。
それでも、世界が直面する様々な課題について先進国と新興国・途上国の代表が一堂に会して解決策を模索し、「何とかしなければいけない」というメッセージを打ち出したことには意義がある。宣言ではエネルギーや環境、貿易、そして国際通貨基金(IMF)や世界銀行など国際金融機関の改革にも一歩踏み込んだ。
しかし、会議をしている間にも元利が膨れ上がる待ったなしの債務問題についてはザンビアやガーナ、エチオピア、スリランカなどにおける事態の進展に歓迎を表明しつつ、「債務問題への対応は重要」「引き続き努力していこう」という「掛け声」にとどまった。巨大債権国となった中国が全面協力しない限り債務問題は一歩も動かないことは万人が理解していたとはいえ、これには失望を禁じ得ない。
注目すべきは55カ国・地域でつくるアフリカ連合(AU)のG20加盟が承認されたこと。これにより深刻な債務を抱える国が多く、ガバナンスにも難があるアフリカ諸国に対し、加盟各国がコミットを強化していくという効果が期待できる。うがった見方をすれば、アフリカ市場開拓において単独ではスピードや資金面で中国には太刀打ちできないインドが、多国間でアフリカに関与することで有利に事を運べる、という思惑もありそうだ。
異論を抑えるクロスワード・パズル
議長国インドのシェルパ(首脳の補佐役)を務めたのは、エネルギッシュなキャラクターで知られたキャリア官僚OBで、日本とも関係が深いアミターブ・カント氏。彼はG20閉幕後、「(首脳宣言の)83項目すべてで全加盟国の支持を得られた、ただ一つの脚注もない」と自画自賛した。
しかし、首脳宣言の文言を読んでみれば、〇〇を「歓迎する」「留意する」「支援する」「支持する」「認識する」「再確認する」「求める」「コミットする」といった表現を巧みに使い分けていることに気づく。言葉のインパクトを最大にしつつ、すべての加盟国から異論が出ないよう、官僚や首相補佐官らが注意深く練り上げた労作と言っていいだろう。合意形成を最優先させた「シャンシャン総会」で、丁々発止の厳しい議論を今回はスルーしました、ということか。
また、宣言文の最終盤では「(G20は)宗教的及び文化的多様性に留意する」と明記、信教の自由や表現の自由の重要性を強調するとともに、「宗教的憎悪に基づく行為を強く非難する」としている。イスラム教徒多住地域であるカシミール地方の「併合」やイスラム教徒に差別的な「国籍法改正」が国際社会で問題視され、つい7月にはデリー郊外のハリヤナ州で7人が死亡する宗教暴動が起きたばかりの議長国インドにとってはいささか皮肉な中身となっている。
世界4番目の月面軟着陸成功を果たし宇宙開発の進展をアピールしたインドは、G20サミットの議長国を務め上げたことでグローバル・サウスの「盟主」に一歩近づいた。成長力を秘めた人口14億人超の巨大な市場や、豊富な理科系人材、地政学的重要性を兼ね備え、世界から注目されているインドは今回、外交面においても大きな得点を挙げたのは間違いない。ご祝儀ということはあったにせよ、加盟国首脳はこぞってインドを称賛している。
インド・モディ政権の究極の目標は超大国への仲間入りだ、といわれる。だとすれば、そのために必要なのは経済成長や政治の安定はもちろん、国際社会からの信頼と尊敬を勝ち取ることだろう。
G20首脳会議の開幕前、デリーにあるスラムの周囲は突然緑色の巨大な布で覆われた。スラムの住民男性は英国の公共放送「チャンネル4」のカメラに向かって「政府は世界中からやってくる要人たちに、我々のような貧しい人間を見せたくないのだろう」と苦笑い。また、米CNNはG20開催に伴う「美化キャンペーン」の一環として、会議場近くのスラムが破壊されたと報じたが、印政府当局はX(旧ツイッター)を通じて「最高裁の命令に基いて違法建築を撤去したもので、G20とは関係ない」と反論している。
貧困や不公正、腐敗などがついて回るのがグローバル・サウスの現実だが、途上国のリーダーを自任するインドとしても、自国の貧困は隠したかったようだ。
●内閣改造・自民役員人事「評価しない」50%、岸田政権 最低支持率… 9/15
読売新聞社は、第2次岸田再改造内閣が発足した13日から14日にかけて緊急全国世論調査を実施した。岸田内閣の支持率は、改造前の前回調査(8月25〜27日)と同じ35%で、今回の内閣改造・自民党役員人事は政権浮揚につながらなかった。前々回調査(7月21〜23日)から3か月連続で、岸田内閣発足以来最低の支持率となった。
内閣改造・自民党役員人事を、全体として「評価する」とした人は27%にとどまり、「評価しない」は50%だった。内閣の不支持率は前回調査と同じ50%だった。
女性閣僚を過去最多に並ぶ5人に増やしたことについて、「評価する」とした人は72%に上った。河野デジタル相の留任を「評価する」とした人は54%で、「評価しない」の34%を上回った。
一方、自民党役員人事への評価は厳しく、茂木幹事長の留任を「評価する」とした人は32%、「評価しない」は42%。小渕優子・元経済産業相を党四役である選挙対策委員長に起用したことを「評価する」とした人は37%、「評価しない」が44%だった。小渕氏については、関連する政治団体の政治資金を巡る問題で、説明責任を十分に果たしていないとの指摘があることなどが影響したとみられる。
岸田首相にどのくらい続けてほしいと思うかの質問では、「自民党総裁の任期が切れる来年9月まで」が54%(5月調査56%)で最も多く、「すぐに交代してほしい」が27%(同15%)、「できるだけ長く」が14%(同26%)だった。5月調査に比べ、長期政権を望む回答が減った。
岸田内閣に優先して取り組んでほしい課題(複数回答)では、「景気や雇用」87%、「物価高対策」86%、「少子化対策」69%、「年金など社会保障」68%、「福島第一原子力発電所の処理水と風評被害対策」66%などの順だった。
次の衆院選での比例選の投票先は、自民党32%(7月調査34%)、日本維新の会13%(同15%)、立憲民主党7%(同8%)などの順だった。政党支持率は、自民党が31%(前回30%)、維新6%(同6%)、立民4%(同3%)など。無党派層は41%(同44%)だった。
●内閣改造で暗躍した2人のドン、「ドリル優子」起用の内幕とは? 9/15
「変化を力にする内閣」ではなく「自分自身の防衛力強化内閣」
自民党役員人事の決定と第2次岸田再改造内閣の発足を翌日に控えた9月12日、JR高崎線宮原駅西口に、立憲民主党の枝野幸男前代表の姿があった。
「次元の異なる少子化対策とその財源」や「マイナンバーカードと保険証の一体化」、そして「防衛費増額に伴う財源とその使途」や「福島第1原発処理水放出の余波」など、この日、枝野氏が駅立ち(駅頭での演説)で指摘した問題のすべてが、とりもなおさず、岸田政権が抱える喫緊の課題になる。
では、岸田文雄首相が今回の自民党役員人事と内閣改造でこれらの課題に向け、まい進できるのか?と聞かれれば、その答えは「極めて難しい」と言うしかない。
岸田首相は人事を終え、9月13日夜の記者会見で、「この内閣は『変化を力にする内閣』だ。変化を力として『あすは、きょうより良くなる』と、誰もがそう思える国づくりを一緒に行っていく」と述べた。
ただ、党内第2、第3派閥の領袖、麻生太郎氏と茂木敏充氏、それに、最大派閥安倍派から、「5人衆」の中でも中心的存在の萩生田光一氏を、それぞれ自民党副総裁、幹事長、政調会長に留任させた党役員人事には、安倍、麻生、茂木の3派閥を取り込み、来年秋の総裁選を無風に近い形で乗り切ろうとする思いが透けて見える。
また、菅義偉前首相や二階俊博元幹事長に近い森山派会長の森山裕氏を、選挙対策委員長から総務会長に横滑りさせた点からは、なりふり構わず「総主流派体制で政権維持」という切羽詰まった感も読み取れる。
内閣改造で言えば、
(1)「女性登用を目玉に」の狙いどおり、女性閣僚が留任を含め、過去最多タイの5人
(2)初入閣組が、19人の閣僚のうち半数を超える11人
これら二つの点は、評価できなくもない。
とはいえ、「刷新」のイメージを打ち出すなら、誰よりも代えるべきだった官房長官を、岸田派の小野寺五典元防衛相や根本匠元厚労相、あるいは突破力がある萩生田氏あたりに交代させてもよかったのでは、と思う。
それを、萩生田氏と同じ安倍派「5人衆」の1人、松野博一氏留任で着地させた点、そして、2年前、総裁選で争った河野太郎氏と高市早苗氏を留任させた点は、「変化を力にする内閣」どころか、「変化させないことで首相自身の党内での防衛力を高めた内閣」とでも言うべきものだ。
岸田首相は、9月5日、ASEAN首脳会議とG20首脳会議に出席するため日本を離れる直前、側近に、「最後の人事にするつもりで自前の人事を行う」という方針を伝えている。しかし、結果を見れば、安倍派、麻生派、茂木派におもねる人事になってしまったと論評すべきだろう。
内閣改造に注文をつけた森元首相と麻生副総裁
人事を間近に控えた8月下旬から9月上旬、岸田首相に注文をつけていた人物がいる。一人は、今なお「安倍派のドン」として君臨する森喜朗元首相である。
森氏は、8月29日、東京プリンスホテルで開かれた青木幹雄元官房長官のお別れの会で、「心残りは小渕恵三さんのお嬢さんのこと。あなたの夢、希望がかなうように最大限努力する」と語っている。
その森氏は、同時期に岸田首相と電話で会談し、「『これなら衆議院解散・総選挙ができるよね』という顔触れにしたほうがいい」とアドバイスを送った。
もう一人は、麻生氏だ。9月7日、東京都内のステーキ店で茂木氏と酒をくみ交わした麻生氏は、「茂木幹事長交代」「代わりに茂木派の小渕優子氏を処遇」で調整しようとしていた岸田首相に、茂木氏を外さないよう強く迫った。
そもそも、86歳の森氏や82歳の麻生氏が今なお実権を握る政治に「刷新」など望むべくもないが、その森氏や麻生氏のアドバイスが、茂木氏留任と小渕選挙対策委員長就任の大きな後押しになった。
小渕氏に関しては、岸田首相の頭の中に再入閣もあったとされる。ただ、小渕氏には、2014年、政治資金問題で経済産業相を辞任した黒歴史がどうしても付きまとう。当時、証拠となるパソコンをドリルで壊したことで、今もなお「ドリル優子」と揶揄(やゆ)され続けている。
これに加え、「麻生氏のプッシュで留任した茂木氏が小渕氏の入閣には強く抵抗した」(自民党中堅議員)ため、選挙を取り仕切る責任者(実際には幹事長の茂木氏が最高責任者)に落ち着く形となった。
その小渕氏は、9月11日、自民党の総裁室に呼ばれ、岸田首相と面会した後、ある政治ジャーナリストに電話を入れている。「特にポストの打診はなく、政権への感想を聞かれただけ」と語ったそうだ。
実はこのとき、選挙対策委員長を打診されたとみられるが、就任後さっそく、「週刊文春」が、小渕氏の関係政治団体が、2015年以降、7年間で1400万円以上を自身のファミリー企業に支出していたとする疑惑を報じている。
「決して忘れることのない傷。今後の歩みを見ていただき、ご判断いただきたい」
9月13日、就任会見でこのように述べた小渕氏には、あらためて説明責任が問われる可能性がある。
党内の「求心力」は 人事後は「遠心力」に変わる
元来、内閣改造は必ずしも政権浮揚につながるとは限らない。むしろ勝負手である衆議院解散のほうが、2005年、小泉政権時代の「郵政民営化解散」や、2014年、第2次安倍政権下での「アベノミクス解散」のように、求心力を高める結果になるケースが多い。
2007年、第1次安倍政権で行われた内閣改造、あるいは、その翌年、福田政権で実施された内閣改造のように、人事を断行しても支持率が上がらず、1カ月前後で退陣に追い込まれた例も少なくない。人事は政権の体力を奪いかねない劇薬なのだ。
直前までは、大臣・副大臣待望組を中心に党内で保たれていた求心力が、終わった途端、「な〜んだ」と遠心力に変わる。
実際、「攻めの人事」どころか「守りの人事」となった今回、岸田首相を支える岸田派内では、「女性閣僚を重視したせいでうちが冷や飯を食わされた」との声が上がり、二階派内でも「要望していた顔ぶれと違う」と怒りの声が聞かれる始末だ。
以下、岸田首相が直面する諸課題を想定しながら、「旧統一教会と接点があった閣僚が多い」などの他メディアが報じていること以外に、危惧される問題を列記しておく。
<初入閣組が11人もいる点>
官房長官や文部科学相を歴任した河村建夫氏が、筆者にこう語ったことがある。
「閣僚になって1年は何もできない。省内を把握し幹部の名前や特性を理解するのに時間がかかり、覚えた頃に内閣改造で交代になる」
つまり、防衛、少子化、農林水産など、日本の今後を決める省庁の閣僚に初入閣組が就いたことは、一見、フレッシュには見えるものの何も成果を上げられない恐れがあるということになる。
また、10月半ばから始まると見られる臨時国会で答弁に窮したり、「政治とカネ」や「旧統一教会」関連の問題が浮上したりすれば、政権の命取りになる危険性もはらむ。
<マイナンバーよりインボイス制度のほうが面倒な点>
マイナンバーカードをめぐるひも付けミス以上に国民の間に不満と懸念が広がるのが、インボイス制度の10月1日からの導入だ。
これまでは事業者は領収書で税額控除できたが、今後は原則としてインボイス(品目ごとに消費税率と税額を明示する適格請求書)が必要になる。インボイスを発行するには課税事業者になる必要があり、発行できない場合、取引を打ち切られたり、消費税分の値引きを要求されたりする可能性があるため、「結局は税収を増やすのが目的」という政府への疑念が広がることになりかねない。
<防衛費増額や少子化対策に「痛み」を伴いそうな点>
年々増える防衛費が来年度予算の概算要求で過去最大の7兆7000億円を超えた。近い将来、増税で財源を確保しようとすれば、野党だけでなく自民党保守派からも批判を受ける。
少子化対策に関しても、経団連が9月11日、来年度の「税制改正に関する提言」で「消費税引き上げ」を選択肢として盛り込んだように、消費税増税が視野に入ってくるようであれば、支持率がさらに下落する。
そうでなくとも、補正予算で思い切った経済対策が打てず、ガソリンや物価高騰が続くようなら、支持率のV字回復は望めない。
岸田首相がもくろむ総裁選での再選
こうした中、今回の人事を受けて、東京・永田町では早くも「衆議院の解散・総選挙は近い」という声が広がり始めた。
「岸田首相は、盛山文部科学相を通して10月に旧統一教会への解散命令を東京地裁に請求し、補正予算を成立させた後、解散に踏み切るかも」(前述の自民党中堅議員)といった見方である。この場合、10月下旬解散、11月14日(大安)公示、同26日(これも大安)投開票となる。
最近では、2017年9月、「森友・加計問題」で批判の矢面に立っていた安倍首相が、「国難突破解散」と位置付け、勝負に出て圧勝した例がある。マスメディアがはじき出す支持率と選挙の勝敗の相関関係は思ったほど高くない。
そのため、岸田首相が解散権を行使する可能性は捨てきれないが、人事で出そろった顔ぶれを見ると、筆者には、岸田首相が来年秋の総裁選勝利を最優先に、自分自身の防衛力を強化するために配置した布陣に見えて仕方がない。
●意図不明の内閣改造で政局の焦点は11月総選挙へ 総裁再選のシナリオ 9/15
第15回のポリティコでは第2次岸田内閣と自民党の新執行部の顔ぶれを論評したうえで、政局の底流を流れる権力闘争の実相と来年の総裁選再選に向けた岸田政権のシナリオを紐解いた。
9月13日に発表された岸田新内閣では、大方の予想に反して林芳正外相が上川陽子元法相と交代となった。数日前にウクライナを訪問しゼレンスキー大統領に支援の継続を約束してきたばかりの林氏をこのタイミングで交代させた岸田氏の狙いは何だったのか。
組閣後の記者会見で外相の交代について聞かれた岸田首相は、外相は首脳外交を支える立場にあり、その役割を担える人材は党内にも林氏の他にもたくさんいると語った。素直に聞けば首相の首脳外交にかける強い思いを語ったようにも聞こえるが、見方によっては得意の英語とピアノを駆使して外相として国際舞台で存在感を示す林氏が外相のままでは、首相は思うような首脳外交が展開できないと言っているように聞こえなくもない。党の役員にも就かず事実上の無役となった林氏については、衆院に鞍替え直後に外相に就いたことで、地元の地盤固めや党内人脈を拡げる時間がなかったので、ここでひと休みさせて派閥の後継者になるための準備を進めてもらおうという首相の親心と見る向きもあるが、それは生き馬の目を抜く権力闘争の場である政治を甘く見過ぎだろうか。
執行部では、9年前に政治と金の問題で経産大臣を辞任して以来、政治の表舞台から姿を消していた小渕優子氏が党4役の一角である選対委員長の要職に就いた。政治とカネの問題が取り沙汰された際に、秘書がドリルでパソコンのハードドライブを破壊して証拠隠滅を図ったことの衝撃がまだ消えていない小渕氏ではあるが、小渕氏は不祥事に対する反省を示す意味で、この9年間、公的な役職を辞退し、永田町で言うところの「雑巾掛け」仕事に徹してきた。自民党内には他にも過去の不祥事を抱える議員は多くいるが、小渕氏に対する批判だけが未だに尾を引いているのはなぜか。首相を父親に持ち、父親の急死で若くしてテレビ局勤務から議員に転身し、そしてほどなく経産大臣の要職に就いた若い女性に対する妬み嫉みという側面もあるかもしれない。いずれにしても小渕氏にとっては、選対委員長という久しぶりの要職で次の選挙でどれだけ女性議員を当選させることができるかが、今後の政治生命を左右する重要な試金石となる。
今回の人事で今後の政局に大きく影響を与えるのが、茂木幹事長の留任だ。元々岸田首相は茂木幹事長を交代させたい意向だった。しかし、内閣改造直前の岸田、麻生、茂木会談で茂木氏の留任が決まったとされている。しかし、その際の交換条件が、来年の総裁選に茂木氏が出馬しないことだったとされる。幹事長留任が決まってハッピーなはずの茂木氏が、会談の後、とても不機嫌だったことが思い起こされる。
最後は秋本真利議員の逮捕について。秋本氏はもともと自民党内の通称再エネ議連の事務局長を務め、再エネ推進派であると同時に、反原発の急先鋒でもあった。再エネ議連は河野太郎氏や小泉進次郎氏らの反原発論者が幹部に名を連ね、先の総裁選でも河野氏を応援した議員が多く所属している、菅元首相を後ろ盾に持つ議連だ。そこに今年2月、何ともう一つの再エネ議連として再エネ社会実装議連なるものが設立された。発起人には麻生太郎氏や岸田文雄氏、鈴木俊一財務相ら岸田政権の中枢が丸ごと名を連ね、会長には今回の人事で総務会長に就任した森山裕氏が就いている。こちらの再エネ議連は永田町では「反原発ではない再エネ議連」と呼ばれ、河野氏らの「反原発の再エネ議連」とその点で一線を画している。とはいえ、自民党内に同じ目的をもった議連が2つできることは普通では考えられない。これは明らかに再エネというこれからの巨大市場をめぐる現在の政権主流派と、菅政権時の旧主流派の主導権争いになっていると見ていいだろう。
東京地検特捜部は秋本氏が業者からの賄賂の見返りに業者に有利になる国会質問をしたとして贈賄罪で逮捕しているが、そもそも秋本氏には自身の政治力だけで再エネ政策を変更させるだけの力はない。背後には河野氏、そして菅元首相の影響力が見え隠れする。言うまでもないことだが、政治家の逮捕の前には検察が官邸にお伺いを立てることが慣わしだ。そして、秋本氏の逮捕と元祖再エネ議連の力を削ぐことは、岸田首相にとって最大のライバルとなる河野氏の力を削ぐことにもつながる。しかも、今回は秋本氏に対する賄賂が馬主組合を経由して行われていたことを検察はメディアを使ってしきりとリークしている。馬主組合というのは、河野太郎氏の祖父の河野一郎元農林大臣の時代から続く、河野氏にとっては莫大な利権であることはよく知られている。
秋本逮捕も木原誠二官房副長官をめぐる捜査中止疑惑も、裏には権力闘争のにおいがプンプンする。政治には権力闘争がつきものかもしれない。しかし、問題は、検察はもとより警察までが、政権の意向で捜査をしたりしなかったり、中断したり再開することがあたり前になっていることではないか。日本では正義さえ政治の副産物になってしまったのかと思うと悲しくなる。
いずれにしても、今回の改造で今後の政局は、早ければ10月の臨時国会冒頭解散、11月中旬総選挙の線を睨みながらの攻防となる。維新の躍進で自民党は多少の議席減が避けられないとみられているが、多少の負けであれば、今回の人事で党内の敵を根こそぎ摘むことに成功した岸田首相を退陣に追い込める勢力は今のところ見当たらない。むしろ勢いを増す維新の選挙準備が整う前に解散総選挙を打っておきたいというのが、岸田政権の思惑のようだ。そうなると来年の総裁選でも岸田首相がそのままスムーズに再選される公算が大ということのようだが、果たして一寸先は闇と言われる政界でそのような安直な筋書き通りに事が運ぶだろうか。
●“茂木は次の次の総裁選でいい” 改造人事の真相は 9/15
総理大臣の岸田文雄は、9月13日、内閣改造と自民党役員人事を行った。今回の人事で岸田は何を狙ったのか。舞台裏でどのような駆け引きがあったのか。周辺にも心の内をなかなか見せない岸田の真意に迫る。
“なんだ、言わねえのかよ”
「いったい、総理はいつになったら言うのか」(自民党議員)
猛烈な暑さにようやく終わりが見え始めた9月初旬。永田町は、任期満了となる自民党役員の人事と、それにあわせた内閣改造がいつ行われるのかという話題で持ちきりだった。
岸田は、9月5日(火)から11日(月)までASEANとの首脳会議やG20サミットなどのためインドネシアとインドを、そして19日(火)からは国連総会に出席するためアメリカ・ニューヨークを訪問することになっていた。
この日程を踏まえれば、人事は、外遊の間の11日の週か、外遊が終わった9月下旬に行うしかない。
2週間ほどの違いだが、秋の臨時国会の召集時期や物価高などに対応する経済対策の検討期間に密接に関係してくるため、国会議員のみならず、各府省の官僚などを含め、多くの関係者が岸田の判断に注目していた。
9月4日(月)、自民党本部。自民党総裁でもある岸田、副総裁の麻生太郎、幹事長の茂木敏充の三者会談が行われた。
みずからが率いる派閥が党内第4派閥の岸田は、第2派閥会長の麻生と第3派閥会長の茂木の3人で緊密に意思疎通を図り、安定的な政権運営に努めてきた。
9月14日現在の自民党の派閥 安倍派100、麻生派55、茂木派54、岸田派46、二階派41、森山派8
定期的に意見を交わす3人だが、この日は「外遊前にどうしても会いたい」という岸田の強い要望でセットされたとされる。麻生と茂木は、岸田が人事の日程を示し、人選の根回しもあるだろうと見立てていた。しかし、岸田が口にしたのは「来週人事をやるなら今週中には決めます」というひと言だけだった。
翌5日の出国直前に行われた自民党の役員会でも、岸田は人事の時期に触れなかった。「なんだ、言わねえのかよ」役員会の出席者の1人は、麻生がこう口にしたのを耳にした。政権を支える麻生や茂木にさえ、人事の日程を伝えず海外に出発した岸田。
永田町の関係者たちは、その真意をはかりかねていた。
「日程すら早く言わないのは、人事をもてあそんでいるような雰囲気になりかねず、心配だ」(岸田派の閣僚経験者)
飛び交う臆測
日程を明かさない岸田のやり方に、さまざまな臆測が出た。
その1つが、国民民主党の連立政権入りに向けた調整が進んでいるのではないかというものだ。
まさに内閣改造の前、国民民主党では、9月2日の代表選挙で与党との協調も排除しない玉木代表が再選されていた。
真偽不明の情報が飛び交った。
「国民民主党の代表選挙を受けて、総理は、水面下の調整を注視しているのではないか」(自民党議員)
結局、実現することはなかった国民民主党の連立入り。
自民党や政権の幹部の1人はこう振り返る。
「3党連立が時期尚早であることは、総理も分かっていたはずだ。人事の時期を明言しなかったことと関係があったとは思えない」(自民党幹部)
「何事においても総理は慎重で、完全に決め切るまでは身内にも方針は明かさない。これが“岸田流”ということなんだろう」(政権幹部)
9月8日(金)。岸田は訪問先のインドから与党幹部に電話をかけて13日に人事を行う意向を伝えた。そして10日(日)の記者会見で、記者からの質問に答える形で初めて公にした。
「早ければ13日に自民党の役員人事と閣僚人事を行うことを考えている」人事を行う、実に3日前のことだった。
“茂木は次の次の総裁選でいい”
人事で注目が集まったのは、自民党の実質的なナンバー2である幹事長ポストだ。
留任した茂木は67歳。外務大臣や経済産業大臣、政務調査会長など、政府や党の要職を歴任し「ポスト岸田」の1人と目されている。岸田は、来年秋に予定される党の総裁選挙での再選を見据え、茂木を幹事長にとどめるかどうか思案していた。
とどめれば、総理・総裁を支える幹事長として総裁選挙には出にくくなるはず。しかし、その保証はない。幹事長として権力を握り、さらに力をつける可能性もある。
内閣支持率が低迷する中、こう岸田に進言した議員もいた。
「幹事長を代えて党のイメージを刷新すべきだ」(自民党議員)
その茂木も、思いを巡らせていた。茂木派は、かつて竹下登、橋本龍太郎、小渕恵三の3人の総理大臣を輩出した派閥の流れをくむ名門派閥だ。しかし、近年は、総裁選挙に候補者すら出せていない。派閥内の若手からは、次のような声が上がっていた。
「無役になって来年の総裁選挙で勝負してほしい」(茂木派の若手)
微妙な緊張感が漂う岸田と茂木。その2人に、1つの“解”を提示したのは麻生だった。
関係者によると、麻生は「幹事長は代えるべきではない」と岸田に幾度となく進言。3派の連携の重要性を説き、「来年の総裁選挙で再選するためにも、幹事長は茂木であるべきだ」と繰り返し茂木の留任を求めたという。一方、茂木に対しては「焦ることはないんだ。お前は次(来年)の次の総裁選挙でいいんだ」と説いたという。
9月11日(月)、自民党本部。午前7時すぎに帰国した岸田は、正午に党本部の総裁室に入り、夜にかけて派閥の幹部も務める党幹部ら、計8人と個別に会談した。異例の“リレー会談”だ。ここで茂木とも膝を突き合わせた。
そして、その場で幹事長留任を打診した。
茂木が来年の総裁選挙に立候補しないことを留任の条件にするとの観測も出ていたが、岸田が総裁選挙を話題にすることはなかったという。麻生を通じて自分の考えは伝わっていると考えたのかもしれない。幹事長を引き受けたあと、茂木は周辺に「幹事長である限り、総裁選挙に出るなんてバカなことはしない。岸田総理を支える」と述べた。
岸田、麻生、茂木による「三頭政治」とも呼ばれる党運営が当面続くことが決まった瞬間だった。
安定感と刷新感
岸田が行った人事には、さまざまな視点から練られた形跡がある。まず人事の特徴はこうだ。閣内では官房長官や財務大臣、党では副総裁、幹事長、政務調査会長といった政権中枢のポストはのきなみ留任。一方、閣僚19人のうち11人を初入閣させ、女性は過去最多に並ぶ5人を起用。
新体制の顔ぶれからは「安定感」と「刷新感」の両立を狙ったことが見て取れる。
来年の総裁選挙に向けた足場固めもうかがえる。
茂木を幹事長に留任させたことに加え、党の選挙対策委員長に同じ茂木派の小渕優子を起用した。
派閥内からは警戒感も出ている。
「茂木派を分断させて、茂木氏をけん制する狙いがあるのではないか」(茂木派の議員)
前回の総裁選挙を戦ったデジタル大臣の河野太郎、経済安全保障担当大臣の高市早苗は引き続き内閣に取り込んだ。党内では「ライバル封じだ」と話す議員が少なくない。
さらには、党内の各派閥の意向を最大限くみ取ろうとした形跡もある。外遊から帰国した日に異例の“リレー会談”で各派閥の意向も聴き取った岸田。
人事が行われたあと、派閥の幹部たちからは「100点満点だ」「要望した通りだ」などと満足そうな声が多く聞かれた。
一方で、“リレー会談”に幹部の姿がなかった派閥もある。岸田政権と距離があるとされる二階派だ。
関係者が、二階派の人事をめぐる内幕を明かした。当初、岸田は、これまで2人の閣僚を出していた二階派に1人の入閣を提示したという。
「1人だけなら、うちの派閥はもう結構です。1人も入閣させません」(二階派の議員)
二階派側は激怒し、こう回答した。岸田は改めて2人を入閣させたいと伝え、従来どおりの2人の入閣が固まった。
自民党派閥ごとの閣僚の人数 安倍派4、麻生派4、茂木派3、岸田派2、二階派2、森山派0、谷垣グループ1、無派閥2、公明党1
各派閥のバランスも考えながら腐心したあとがうかがえる今回の人事。しかし、党内では、「要望が聞き入れられなかった」として、人事への不満が出始めているという声も聞かれる。
「来年の総裁選挙に向けて対応を考えていかないといけない」(閣僚経験者)
焦点は解散時期
人事が終わり、焦点は、衆議院の解散・総選挙の時期に移る。衆議院議員の任期は10月末で折り返しを迎える。自民党内では次のような声も出始める。
「追い込まれ解散にならないよう早めに決断すべきだ」(自民党議員)
早いタイミングでの解散はあるのか。ポイントの1つは内閣支持率の行方だ。
今回の人事を受けて、ある自民党議員はこう話す。
「支持率が上がれば、秋の解散もあり得る」(自民党議員)
「これまでより年内解散の可能性があるという感じがする。総理はできるだけ、このタイミングでやりたいと模索しているのではないか」(派閥幹部)
しかし、去年の例をみると、改造後、4人の閣僚が、旧統一教会との関係や、失言、それに政治とカネの問題をめぐり辞任。秋の臨時国会で追及され、支持率は下落・低迷していった。
岸田が、この秋や来年の早い時期での解散を模索する場合、新閣僚が初めての論戦に臨む秋の臨時国会が1つの試金石となる。
一方で、次のように話す議員もいる。
「今回の人事は総裁選挙を見据えたもので解散するための布陣ではないのではないか」(自民党議員)
「総裁選挙で勝てそうだとなれば無理して解散する必要もない」(自民党幹部)
岸田が衆議院解散という“伝家の宝刀”を抜くタイミングはいつなのか。総裁選挙に向けた自民党内の駆け引きや、野党の動向、それに支持率の推移。変数が多く複雑な方程式を岸田はどう解くのか。
●副大臣・政務官に女性ゼロ 法務柿沢氏、財務神田氏 9/15
政府は15日の閣議で、副大臣26人、政務官28人の人事を決定した。女性は副大臣、政務官ともにゼロ。副大臣4人、政務官7人を起用した前回改造時に比べ、女性登用の観点からは大幅に後退。閣僚に5人を起用し女性活躍をアピールしただけに、政権の本気度が問われそうだ。
女性の起用ゼロについて、岸田文雄首相は首相官邸で記者団に「適材適所でこのような男女のバランスとなった。チームで人選を行った結果だ」と説明した。
副大臣では、法務副大臣に柿沢未途衆院議員、財務副大臣に神田憲次衆院議員を起用。政務官では、文部科学兼復興政務官に山田太郎参院議員を充てるなどした。 
●内閣改造のうわさ話 [9/11-9/15] 9/15
9/11 内閣改造、高市早苗氏留任か SC本格整備、保守層の取り込み狙い…
岸田文雄首相が13日に行う内閣改造・自民党役員人事で、高市早苗経済安保担当相を留任させるとの見方が強まっている。高市氏は現在、安全保障上の機密を扱う人を認定する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度の整備を担当しており、続投は不可欠との指摘があった。保守色の強い高市氏を留任させることで、LGBT法の法制化で離反した保守支持層の取り込みを画策する狙いもありそうだ。
岸田首相は11日朝、G20(20カ国・地域)首脳会議など一連の外交日程を終え、政府専用機で羽田空港に帰国した。自民党の麻生太郎副総裁や、茂木敏充幹事長、公明党の山口那津男代表らと会談しながら、11、12両日で人選作業を進める。
こうしたなか、政権内で中国などに毅然とした姿勢を示してきた高市氏の処遇が注目されている。
中国は科学的根拠もなく、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を批判し、日本産水産物の禁輸など、常軌を逸した「反日」対応をしている。
高市氏は先月29日、「外交ルートの抗議申し入れで仮に効果を発揮しない場合、(中国に)対抗措置を検討していく段階」と語り、G7(先進7カ国)各国との連携や、WTO(世界貿易機関)への提訴などを含めた対応策を明示した。
自民党ベテランは「高市氏の提案は、『遺憾砲』に終始する岸田政権の外交姿勢とは一線を画した。G7各国との方向性とも合致する」と評価する。
岸田首相は8月28日、高市氏を官邸に招き昼食を共にした。高市氏は「人事の話はなかった」と語ったが、前回の党総裁選で激突した両者の関係はどうなりそうか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「発足当初は高かった岸田内閣の支持率の約3割は、安倍晋三元首相を支えた保守層だったと見ている。安倍氏亡きあと、保守層は高市氏を支持している。岸田首相は、高市氏を閣内に置くことで、保守支持層を留めておく狙いだ。次期総裁選を見据え、高市氏の動きを抑えることにもなる」と分析した。
9/12 機密資格制度の重要性強調 時事通信イベントで高市経済安保相
経済安全保障に関するシンポジウムなどを行う「経済安全保障対策会議・展示会」(エコノセック・ジャパン実行委員会、時事通信社主催)が12日、東京都内で始まった。
高市早苗経済安全保障担当相が基調講演し、機密情報を扱える資格者を政府が認定する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度の重要性を強調した。
適性評価制度がなければ、日本企業の海外での活動に制約がかかる懸念があり、政府が創設に向けた検討を進めている。高市氏は「海外で日本の優れた技術を生かしていく意味では、幅広く経済・技術版のクリアランス制度をつくることが必要だ」と説明した。
資格者認定に際しては、機密情報の取り扱いを認める公務員や民間人を審査する仕組みが必要となる。審査では経済状況などの個人情報にも踏み込むため、高市氏は「調査の実施主体はしっかり国に設けるべきだ」と語った。
イベントは13日も行われる。会場は東京都中央区の時事通信ホール。民間企業や官公庁が出展し、サイバーセキュリティー関連サービスなどを展示する。 
9/13 “保守のスター”高市早苗氏を閣内に置いた岸田首相の狙い
岸田改造内閣での処遇が注目されていた一人、高市早苗経済安全保障担当相は留任となった。奈良県知事選での敗北、総務省の「行政文書」問題、岸田文雄首相との不仲説など様々な“問題”が出ていたが、岸田首相は閣内にとどめる選択をした。来秋の総裁選対策の一環という見方もある。
「安倍(晋三)元首相がお亡くなりになって保守のスターのような存在の高市氏。しかし、岸田首相とはギクシャクしていたので微妙ですね」と自民党の閣僚経験者は話す。
高市氏は、2021年の自民党総裁選では安倍元首相のバックアップを受け、候補者として岸田首相とも戦い、2位だった。
政権では経済安全保障担当相として存在感を示し、岸田首相とは政策面での違いも主張してきた。
   岸田首相も頭を抱える
昨年12月、高市氏は防衛費のための増税を巡り、<総理から突然の増税発言。反論の場も無いのかと、驚きました>と批判を展開。岸田首相との衝突を危惧する声が出るなか、記者会見で、「閣僚の任命権は総理にある、罷免をされるのであればそれはそれで仕方ない」と述べ、岸田首相との“溝”が明確となった。
そして、今年3月には、放送法の解釈について高市氏の発言内容が記録されている総務省の「行政文書」が問題となり、国会でも追及された。総務省が行政文書と認めるなかで高市氏は、「捏造だ」「当時、放送法の説明も受けていない」などと反論した。高市氏が強硬に「官僚が悪い」とかつての部下に責任を押し付ける姿勢に、岸田首相も頭を悩ませた。
さらに、4月の統一地方選では、総務相時代の秘書を奈良県知事の候補者に擁立した。しかし、県連会長として最も重要な候補者の調整に失敗し、保守分裂となった結果、維新候補に敗れたことで責任論も浮上した。
こんなこともあった。昨年8月、岸田首相から経済安全保障担当相としての入閣を要請された際には、前任者だった小林鷹之衆院議員の留任を懇願していたといい、SNSに、<入閣の変更が無かったことに戸惑い、今も辛い気持ちで一杯です>と投稿し、不満をあらわにした。
官邸関係者によると、「高市氏は政調会長から安全保障担当相になったことに不満を述べていました。小林氏のことを持ち出しているが、高市氏の本音は政調会長までやっているので、どうして格下のようなポストなんだ、という意味に聞こえます。岸田首相は保守の『スター』であることを認識した上で閣内に、と配慮して入閣させたと思いますが」とのことで、高市氏のSNSへの投稿に岸田首相は、「どうしてああいうことをするんだろう」とムッとした表情だったという。
   総裁選で高市担ぐ動きを警戒
岸田派のある衆院議員は、「高市氏は安倍元首相が後ろ盾になって総裁選に出馬できた人です。安倍元首相亡きあとも、根強い人気がある。支持率が低調ななか、高市氏が閣外に出ると保守層に逃げられかねない。また、会長が決まらない安倍派は、来年の総裁選候補は現在のところいません。そうなれば、安倍派の一部のメンバーが再度、『高市氏で』と早々に動くかもしれない。実際、そう言っている議員もいるし、高市氏も誰かに担いでほしいはず。岸田首相としてはウクライナ情勢や台湾有事を考えた際に政策の継続性も大切になるので、高市氏を閣内に置いて混乱を避けたかったようです」との見方を示す。
今回の人事を見ると、高市氏に加え、茂木敏充幹事長、河野太郎デジタル相も続投し、注目されていた茂木派の小渕優子氏も選対委員長に決まった。
「岸田首相は、来秋の総裁選で出馬しそうな人は軒並み処遇しました。総裁選に出たいということは、岸田首相への反発になります。出たいなら辞めて出てくれという無言の脅しのように思えますね」(前出・閣僚経験者)
そうした岸田首相の“ライバル”対策は昔からあったという。
   小渕氏と競わせる魂胆か
広島県の自民党関係者がこう打ち明ける。
「10年近く前です。岸田首相は地元の広島に戻ると、朝に事務所で会議を開くのですが、そこで『広島1区、誰かライバルになりそうなのはいるか』と最初に聞くのです。盤石でライバルなどいないのですが、気になってしょうがない。ある若手の地方議員の名前が周辺から上がったときは、外相か政調会長だったかで超多忙なのに、その議員を会食にまで誘って懐柔していました」
自民党で長く政務調査役を務めた政治評論家の田村重信氏は、今回の人事についてこう話す。
「来年の総裁選シフトのように、出そうな人をみんな閣内、党役員に取り込んだ岸田首相のうまさを感じます。高市氏に関しては、注目されてきた小渕氏と競わせたいという思いがあるのでしょう。支持率の下落も落ち着きつつあり、解散・総選挙はいつあってもおかしくないです」
ライバル対策も済ませ、支持率への影響はいかに。
9/13 ポスト岸田封じ込め人事…首相、総裁選再選へ布石 
岸田文雄首相(自民党総裁)が13日決めた内閣改造・党役員人事は、自身の来年秋の総裁選再選を強くにらんだものだ。「ポスト岸田」の1人である茂木敏充幹事長を留任させつつ、女性首相候補として名前が挙がる小渕優子元経済産業相を選対委員長に起用することで、茂木氏の台頭を牽制(けんせい)する狙いがある。前回総裁選を争った河野太郎デジタル相と高市早苗経済安全保障担当相も続投させ、政権内に取り込んだ。(田村龍彦)
「岸田政権をしっかり支えていきたい。それに尽きる」。茂木氏は13日の就任記者会見で、首相が総裁選再選を目指した場合の対応を問われ、こう答えた。
首相は一時、茂木氏の交代を検討した。「幹事長は誰がいいか」。自身に近い議員に尋ねることもあった。茂木氏は少子化対策や経済対策でスタンドプレーが目立つ。一方で、第3派閥の茂木派(平成研究会)を率いており、総裁選に出馬すれば脅威になりかねない。
ただ、首相の後見人で、第2派閥の麻生派(志公会)会長の麻生太郎副総裁が、茂木氏の続投を主張した。党幹部は「首相は麻生さんの言うことを聞いた」と語る。
その中で、首相が打った手が茂木派に所属し、党内で将来の首相候補に推す声もある小渕氏の選対委員長起用だ。茂木氏に批判的だった故・青木幹雄元参院議員会長が後ろ盾で、最大派閥の安倍派(清和政策研究会)に影響力を持つ森喜朗元首相も要職起用を望んだ。
茂木氏が反岸田で動いても派閥で付いていく議員は半分−。首相の頭にはそんな計算もあった。
安倍派については、萩生田光一政調会長ら「5人衆」と呼ばれる有力者を留任させた。各自がにらみ合い、新会長が決まらない状況は100人派閥の結束を鈍らせ、首相にはプラスに作用する。
前回総裁選に出馬した高市氏は改造前、党で政策立案や仲間づくりに取り組みたい意欲も周囲に見せていたが、留任。河野太郎デジタル相も懸案のマイナンバー問題にあたらせる。知名度が高い両氏の政権と異なる動きを封じる思惑が透ける。
「総裁選シフト以外のメッセージが伝わらない」。前回、河野氏を支援した閣僚経験者はつぶやく。
9/13 小渕優子選対委員長「全ての質問に答えた」就任会見「政治とカネ」釈明
自民党四役の一つ、選対委員長に新たに選ばれた小渕優子氏(49)は13日、党本部での就任会見でさっそく釈明に追われた。
2014年の不透明な政治資金を巡る「政治とカネ」の問題への説明責任を問われて「誠意を持って説明してきた。十分に伝わっていない部分があれば、私自身の不徳の致すところだ」と陳謝した。(柚木まり)
   言葉に詰まりつつ「私の今後の歩み見て」
小渕氏は会見で、記者から有権者や国民への説明責任を果たしているかを聞かれたのに対して「当時、地元をはじめ、関係者に大変な迷惑や心配を掛けた。心からおわび申し上げたい」と深々と頭を下げた。時折、言葉に詰まりながら「あの時に起こったことは、政治家として歩みを進めていく中で心に反省を持ち、決して忘れることのない傷。私の今後の歩みを見てもらい、判断いただきたい」と述べ、唇をかみしめた。
当時の状況に関しては「問題を自身で説明できなかった」と経済産業相を辞任した経緯を釈明。2015年に自身が依頼した第三者委員会の報告書を公表したとした上で「記者会見を開き、全ての質問に答えた。地元700の支部を2年以上掛けて回り、誠意を持って説明した」と語り、「私に必要な話があるということであれば言ってもらいたい」として、今後も説明に応じる姿勢を見せた。
   「ドリル優子」今も批判
小渕氏を巡っては、政治資金問題の発覚時、説明責任を十分に果たさなかったとの指摘が今も根強い。東京地検特捜部が小渕氏の後援会事務所を家宅捜索した際には、パソコンのデータを保存するハードディスク(HD)がドリルで破壊されていたことから、政界やネット上で「ドリル優子」と批判されている。
   小渕氏の「政治とカネ」問題 当時の説明は
小渕優子氏が依頼した第三者委員会は2015年10月、「小渕氏本人は不正に関与しておらず、法律上の責任はない。監督責任は軽いとはいえないが強く問うことにはためらいを感じる」と指摘した。
その翌日に会見した小渕氏は「おわびしたい」と何度も謝罪する一方で「すっかり秘書に任せていた」「今後の調査には限界がある」などと述べ、対応に批判が上がっていた。
小渕氏は茂木派。最近は自民党の組織運動本部長を務めていた。岸田文雄首相(自民党総裁)が13日の党臨時総務会で党四役人事を正式に決定し、選対委員長に選ばれた。
2014年に第2次安倍改造内閣で、経産相で2回目の入閣を果たしたが、支持者向けの観劇会の費用などに関して、収支報告書への虚偽記載や不記載が発覚。元秘書2人が政治資金規正法違反(虚偽記入)で執行猶予付きの有罪となった。
9/13 首相臨時代理、松野氏1位
政府は13日夜の初閣議で、岸田文雄首相不在時の臨時代理順位について、(1)松野博一官房長官(2)高市早苗経済安全保障担当相(3)鈴木俊一財務相(4)河野太郎デジタル相(5)新藤義孝経済再生担当相―とすることを決めた。 
9/14 「岸田首相、大丈夫?」 小渕氏のみそぎも萩生田氏の旧統一教会の説明もまだ 
9月13日、岸田文雄首相の内閣改造、自民党役員人事の顔ぶれが決まった。女性閣僚が過去最多タイの5人、初閣僚が11人と刷新感を出しながら、政権の中枢を担うポストは留任させ、支持率の回復と権力基盤の安定を狙ったと見られている。しかし、SNSでは早速、選対委員長に就いた小渕優子氏の起用に批判が噴出している。果たして今回の岸田首相の人事は吉と出るのか、凶と出るのか。東京新聞の望月衣塑子記者に聞いた。
――今回の人事の第一印象はどうか。
女性を登用し、刷新感もあり、注目されていますが、インパクトはそこまでないと思います。
今回入閣した女性5人のうち加藤鮎子氏、自見英子氏、土屋品子氏は世襲政治家です。女性活躍を掲げながら、「世襲でないと閣僚になりにくい」という印象が出てしまうのは残念です。
――注目の抜擢は?
外相に就く上川陽子氏は実力者だと聞いてます。首相になるためには、内政だけではなく、外交もできないといけないと言われています。選対委員長になった小渕優子氏が将来の首相候補として期待されている向きもありますが、上川氏のほうが一歩近づいたように思います。自民党内では対中強硬派の声が強まっていると言われてますが、それをいかに抑えて、中国との関係を正常化していくか、手腕が問われるところだと思います。
また、世襲議員ですが、こども政策担当相の加藤氏がジャニーズ問題でどこまで踏み込むか注目しています。前任の小倉将信氏は元所属タレントからヒアリングは行わず、消極的な姿勢を見せていました。
省庁ではジャニーズタレントを広告に起用しているところもあります。政府として無関係とはいえないでしょう。今回の事件は国際的にも問題視されており、加藤氏がこどもの性被害問題に積極的に取り組むことができるか問われていると思います。
――岸田首相の人事の狙いはどこにあると思いますか。
表向きは刷新感を出しながら、権力の中枢は派閥の会長や幹部が占めました。麻生派を率いる麻生太郎氏は副総裁に留任、茂木派トップの茂木敏充氏も幹事長留任が早々に決まりました。安倍派の幹部である松野博一官房長官、萩生田光一政調会長も留任となりました。これまでの政権の骨格は維持したかたちです。
今回の人事で、国民の支持率を回復に向かわせながら、足元の党内の基盤を整えたことで、次期衆院選や来年の総裁選に臨んでいこうとしているのだと思います
――支持率は上がるのでしょうか。解散のタイミングはいつが考えられるのでしょうか。
今回の人事で少し改善するとは思いますが、これまでの不人気を払しょくするほどではないでしょうね。これから出てくる経済対策でどのくらいインパクトを出せるかがポイントになってくると思います。
解散については、最短では、臨時国会を召集して、冒頭解散というシナリオが考えられます。北朝鮮がミサイルを飛ばし、金正恩総書記とロシアのプーチン大統領が会談をするなど国際情勢が厳しい中だと政権の支持率が上がりやすい傾向があります。そうしたなかで、今回の人事と経済対策などで国民の支持を高め、そして解散というシナリオですね。
臨時国会が始まってしまうと、支持率は下がるでしょう。原発処理水やマイナンバーカード、物価高対策など野党から厳しく追及される問題が山積しているからです。岸田首相としてはこのままズルズルとやって、任期満了で降ろされるというのは避けたいところでしょう。
――衆院選、総裁選を乗り越えると、宏池会で最も長く首相を務めた池田勇人氏の在職日数1575日が視野に入ってきます。岸田首相が池田氏と並ぶのは、26年1月と言われています。
岸田首相は池田氏を「尊敬している」と述べていますし、目標にしているところはあるでしょう。岸田首相は「これがしたい」という政策が見えてこないので、そうなると池田氏の在職日数を超えることが目標となってくるかもしれませんね。
――岸田首相は改造後に「思い切った経済対策を実行する」と述べていました。期待は?
支持率回復に向けて思い切った対策を出したいのでしょうが、これまでの政策を見ていると期待はしていません。「異次元の少子化対策」では、十分な対策を示し切ることができていませんでした。聞こえのいい言葉だけの政策に国民は飽き飽きしています。国民の生活は本当に疲弊しています。生活者に寄り添った政策を示せなければ、支持率は回復しないと思います。
――岸田首相の増税路線に対してSNSでは「増税メガネ」などと揶揄されています。今回の人事で、増税路線は変わらないでしょうか。
増税路線は変わらないと思います。今回の人事では官房副長官の木原誠二氏の後任として、岸田派の村井英樹氏が就きました。村井氏は財務省の出身です。財務省にとって岸田・木原は「やりやすい」と言われており、財務省の意向に沿って増税路線の政策が行われてきましたが、同じ路線でいくということでしょう。
先日、経団連が少子化対策などの社会保障制度の維持のための財源として消費税の増税が有力な選択肢の一つと提言していました。増税を進めたい政府を後押ししようとしているのだと見ています。岸田首相は、結局、国民を見た政策はしていません。国民の生活を助けるような「減税」という言葉は絶対に出てこないと思います。
――小渕氏、萩生田氏、木原氏は政治スキャンダル含みと言われています。
いずれも支持率に影響すると思います。
小渕氏は2014年に政治資金規正法違反が発覚した際、責任をとって議員辞職するべきでした。辞職して再選するといったプロセスを経て、みそぎを済ませるべきでした。事件から9年を経てもなお国民からの激しい批判を見ると、みそぎができたとはいえません。
萩生田氏は旧統一教会と深い関係について記者会見を開くことなく、説明責任を十分に果たしていないと指摘されています。しかし、昨日(13日)の就任会見で「今後も不備があれば、求めに応じていきたい」と言いながらも、「説明不足だというご指摘は当たらない」とも答えていました。メディアも厳しく質問して、追及していかなければなりません。
木原氏については、妻の元夫の死亡を巡る疑惑、愛人疑惑、違法デリヘル問題などで『週刊文春』の追及を受けていましたが、「留任するのでは」と見られていました。岸田首相は何とか留任させたいと考えていたようです。しかし、このような疑念のある人物を重用しようとするのには疑問があります。
現在、党の幹事長代理に就任するという報道が出ていますが、呆れますね。国民の目に触れにくい幹事長代理というポジションに逃げさせて、スキャンダルは見て見ぬふりとなれば、国民の支持は得られないでしょうね。
「岸田首相、大丈夫かな」という印象です。
9/15 2023年9月 電話全国世論調査 / 内閣改造
   ( )内の数字は前回8月25〜27日の結果
   あなたは、岸田内閣を、支持しますか、支持しませんか。
・支持する      35(35)
・支持しない     50(50)
・その他        2( 4)
・答えない      13(11)

   今、どの政党を支持していますか。1つだけあげてください。
・自民党       31(30)
・立憲民主党     4( 3)
・日本維新の会    6( 6)
・公明党       3( 3)
・共産党       3( 3)
・国民民主党     3( 3)
・れいわ新選組    1( 3)
・社民党       0( 0)
・政治家女子48党   0( 0)
・参政党       1( 0)
・その他       0( 0)
・支持する政党はない 41(44)
・答えない      5( 3)

   次の衆議院選挙の比例代表選挙では、どの政党に投票しようと思いますか。
・自民党     32
・立憲民主党   7
・日本維新の会  13
・公明党     5
・共産党     3
・国民民主党   4
・れいわ新選組  3
・社民党     0
・政治家女子48党 1
・参政党     2
・その他の政党  −
・決めていない  25
・答えない    5

   岸田首相は、内閣改造と自民党役員人事で、主な閣僚や党役員を留任させて、政権の骨格を維持しました。今回の人事を全体として、評価しますか、評価しませんか。
・評価する    27
・評価しない   50
・答えない    23

   自民党の幹事長に、茂木敏充さんが留任したことを、評価しますか、評価しませんか。
・評価する    32
・評価しない   42
・答えない    25

   自民党四役の選挙対策委員長に、小渕優子さんが起用されたことを、評価しますか、評価しませんか。
・評価する    37
・評価しない   44
・答えない    18

   デジタル大臣に、河野太郎さんが留任したことを、評価しますか、評価しませんか。
・評価する    54
・評価しない   34
・答えない    12

   女性の閣僚を、これまでの2人から、過去最多に並ぶ5人に増やしたことを、評価しますか、評価しませんか。
・評価する    72
・評価しない   18
・答えない    9

   岸田首相には、どのくらい首相を続けてほしいと思いますか。次の3つの中から、1つ選んでください。
・できるだけ長く 14
・自民党総裁の任期が切れる来年9月まで 54
・すぐに交代してほしい 27
・その他     0
・答えない    5

   今後、岸田内閣に、優先して取り組んでほしい課題を、次の中から、いくつでも選んでください。※
・景気や雇用            87
・物価高対策            86
・財政再建             58
・年金など社会保障         68
・少子化対策            69
・外交や安全保障          62
・原発などエネルギー政策      54
・福島第一原発の処理水と風評被害対策66
・マイナンバートラブルへの対応   50
・憲法改正             28
・その他               0
・とくにない             1
・答えない              0

   ジャニーズ事務所は、ジャニー喜多川元社長による性加害を認めて謝罪したうえで藤島ジュリー景子社長が引責辞任し、被害者に補償する方針を示しました。こうした対応で信頼を回復できると思いますか、思いませんか。
・思う      17
・思わない    72
・答えない    11

   
[調査方法] 9月13〜14日に、コンピューターで無作為に作成した固定電話と携帯電話の番号にかけるRDD方式( RDD「ランダム・デジット・ダイヤリング(Random Digit Dialing)」の略)で18歳以上の有権者を対象に実施。 
2023/9 閣僚の応接室席順、「2位」は変わらず高市氏 3位は鈴木氏 
第2次岸田再改造内閣のメンバーが閣議前に集まる首相官邸の応接室での席次が13日決まった。ナンバー2とされる岸田文雄首相の左隣には、改造前と同じく高市早苗経済安保相が座る。序列3位といわれる右隣は鈴木俊一財務相となった。
2023/9 国会席次、ナンバー3に鈴木財務相 
第2次岸田再改造内閣の衆参両院本会議場での閣僚席(ひな壇)の新たな席次が13日、決まった。議場から見て中央にある演壇左側に岸田文雄首相、その隣のナンバー3とされる席はこれまでの林芳正氏に代わり新たに鈴木俊一財務相となった。ナンバー2とされる演壇右側には高市早苗経済安全保障担当相が引き続き座る。
首相官邸の閣僚応接室での席次も、首相から見て右隣が鈴木氏、左が高市氏の席となった。
2022/8 岸田内閣「ナンバー2」は高市経済安保相、席次決まる…
第2次岸田改造内閣の閣僚応接室での席次が10日、決まった。「ナンバー2」とされる岸田首相の左隣には、首相と昨年の総裁選で争った高市経済安全保障相が座る。
内閣改造前は、同じく総裁選で戦った野田聖子・前少子化相が座っていた。首相の右隣はこれまで通り、岸田派所属の林外相が座る。席次は閣僚歴や議員歴などを踏まえ、首相が決定する。

 

●ガソリン価格「4カ月ぶり値下げ」でも184.8円… 9/14
9月11日現在、レギュラーガソリンの全国平均店頭小売価格は、1リットルあたり184円80銭と、前週に比べて1リットルあたり1円70銭の値下げとなった(経済産業省発表)。
「値下げになったのは、じつに4カ月ぶりです。9月4日時点では、186円50銭と2週連続で過去最高を更新していました。9月7日から国の補助金が拡充されたことが要因で、価格上昇に歯止めがかかった形です」(経済ジャーナリスト)
補助金効果で値下がりしたにもかかわらず、SNSからは手放しで歓迎する声はほとんど聞こえてこない。
《ガソリンの補助金ってもう出てるらしいよ!近所のGSは今日からガソリン値下げするってさ。しかし…助かるけどいつまでも続けられないよねこんなの。》
《いや、高いよ。去年の9月は小売価格169円だぞ。そもそも175円設定が高過ぎ。トリガー条項の発動で直ぐに150円台になるよ。岸田総理は「まずは足元の物価高に対応しなければならない。国民生活を応援する大胆な経済政策を実行していく」とか言ってたよ。ほな実行せえよ。》
《ガソリンの補助金じゃなくて円安対策が1番ガソリン価格が下がるわ》
9月14日、埼玉県内のガソリンスタンドで給油に来ていた人に話を聞いた。
「今日はガソリンが値下げしたというニュースを聞いたので給油に寄りましたが、わずか2円弱の値下げでは、まったく実感が湧きませんね。せめて、お盆の前に対応してくれたらよかったのにと思います」
「個人事業主として大手通販会社の下請けをしていますが、ガソリン代は自己負担です。前回、給油に来たときは満タンにせずに、補助金が価格に反映されるまで待っていました。これっぽっちの値下げじゃ、焼け石に水ですが……」
前出の経済ジャーナリストが語る。
「本来、補助金は9月末までの緊急対策でしたが、岸田政権は年末まで延長することを表明しています。しかし、補助金による値下がりを待つ買い控えが起こり、受給のバランスが狂いますし、ガソリン高騰の原因である円安が続く限り、根本的な解決にはならず、財政支出が膨らみ続けます。ガソリン価格が3カ月連続で160円を超えると、ガソリン税のうち、上乗せぶんにあたる25.1円の課税を止める『トリガー条項』の発動が期待されていますが、岸田首相が発動に踏み切る様子はありません」
ガソリン価格は、補助金の効果で10月末には約175円に下がるという。だが、2021年9月は150円台で推移していたことを思えば、国民が納得しないのも当然だろう。
●尖閣領有で「弱腰」の印象与えた岸田首相 中国にくみしやすい存在 9/14
岸田文雄首相は、インドネシアで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)首脳会議で、中国が東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に反対して日本産水産物を全面禁輸するなど嫌がらせを強めていることに、「突出した行動を取っている」と名指しで批判した。
一方、中国が8月下旬に公表した「2023年版標準地図」に対し、ASEANや台湾、米国などが一斉に中国批判を展開したのに、岸田政権は当初、外交ルートで抗議したものの、公開を避けていた。
地図は、南シナ海ほぼ全域を中国の管轄権としたうえ、台湾の東側に新たな「段線」を設けた。そのラインの延長線上には尖閣諸島(沖縄県石垣市)が存在し、中国領に含まれる可能性があった。
フィリピンのマルコス大統領は地図について、「これ以上、緊張がエスカレートすることを許してはならない」「自制心を持ち、緊張や誤解を増大させるような一方的な活動を控えるよう求める」と中国を厳しく批判した。
岸田首相は中国を念頭に、「東シナ海で日本の主権を侵害する活動が継続されている」と述べたものの名指しは避け、中国との「建設的かつ安定的な関係」を目指すと説明した。
「日本は米国など『西側諸国』と歩調を合わせつつ、中国との極端な関係悪化を避けたい立場」(朝日新聞8日付)からの判断だったとされる。
処理水問題では批判をしながらも、領土問題では譲歩したかたちだが、中国は「岸田首相はくみしやすい存在だ」と思ったはずだ。しかし、これは物事の軽重を誤った判断ではなかったか。
処理水問題は、中国への輸出に依存していた日本の海産物業者には痛手だが、禁輸が1年続いても日本の国内総生産(GDP)への影響は0・03%と限定的だ。中国のインバウンド(訪日客)需要が減っても、やはり影響は限定的である。関連業者を支援しつつ、中国への依存から脱却していく。これらは取り返しのつく問題だ。
一方、領土は一度奪われると、戦争でもしなければ取り返せない。
ロシアが不法占拠する北方領土や、韓国が不法占拠する島根県・竹島がその例だ。だから実効支配は絶対に譲ってはならず、「譲らない」との国家の断固たる意志が必要だ。地図問題こそ、一層強い名指し批判が必要だったはずだ。
さらに、尖閣諸島は中国の台湾侵攻とも密接に関連する。侵攻の際に、中国が地対空ミサイルを設置するとみる軍事専門家もいる。「台湾有事」を避ける意味でも、尖閣諸島領有について日本政府の強い意思表示が必要だが、岸田首相の姿勢は「弱腰」との印象を与えたはずだ。
最近、気になるのは「台湾有事は起こらない」との言論が、日本国内で形成されつつあることだ。
●中国メディア、再改造内閣を分析「知中派の代表格だった林前外相が…」 9/14
第2次岸田再改造内閣の発足について、中国メディアは「知中派の代表格だった林前外相が交代した」と伝える一方で、日中関係への影響は少ないと分析しています。
中国メディアは内閣改造について、外相だった林芳正氏が中国との関係を重視する「知中派」の代表格だったと位置づけた上で、彼が交代したことが「中日関係への影響が大きいとは言えない」とする専門家の分析を掲載しました。
また、新たに就任した上川外相については「外交に関する実績と人脈はない。外交で自主性を発揮できなくなれば、疑問符がつく可能性もある」としています。
さらに、岸田政権が処理水放出で「国内の対立を引きおこした」と主張した上で、内閣改造がこれを薄めることができるとも分析しています。
●欧米に傾斜しすぎる日本、グローバルサウス争奪戦に参加せよ 9/14
「なぜ日本はウクライナ問題で欧米に過剰にコミットするのか、一体何が狙いなのか」、このような感想を筆者の欧米の知人から質問されることがある。ウクライナ戦線の現地からロシア軍との貴重な実戦データや戦訓といった見返りを十分に受けられず、欧州のようにエネルギーを第三国経由で入手しない日本を欧米人は非常に不思議に思っているから、こうした質問がされるのだ。
岸田政権の欧米寄りの外交方針
岸田政権が今年5月にG7広島サミットでゼレンスキー大統領を日本に招いた上、欧米諸国のリベラルな価値観を前面に押し出した「G7広島首脳コミュニケ」を取りまとめたことは記憶に新しい。
もちろん、西側欧米諸国の「不倶戴天の敵」はロシアであるため、彼らにとって岸田政権がウクライナ支援で欧米諸国に過剰に肩入れすることは望ましいことだ。そのため、「日本にそこまで期待していないよ」とわざわざ伝えてくる国はない。
たしかに、安倍政権以来の日本の外交努力もあって、近年では欧州諸国の艦艇が日本に寄港し、彼らの太平洋地域の秩序に対する関心が高まっていることは事実だ。NATOと自衛隊の情報共有も徐々に改善し、NATO最大の航空軍事演習への高官派遣時の情報共有やサイバーセキュリティ・宇宙空間・偽情報分野での情報共有などの協力関係も始まっている。これは歓迎すべきことだ。
そして、岸田政権がウクライナ支援にのめり込む理由は、中国の影響力拡大を抑止する観点から欧州各国からのコミットメントを確実にすることが狙いだ。だが、米国は日本の付属品であると思われていれば、日本と真面目に交渉する国など存在しない。2年前のニューヨークタイムズでは外務省から岸田首相が『チワワ』と綽名されていると中谷元元防衛大臣の発言が報じている。欧米の外交官から見れば、現状の岸田外交の振る舞いは行儀が良い『チワワ』という表現が的確だ。
岸田政権は一度立ち止まって、自らの立ち位置を再認識するべきだ。
日本の真の立場:欧米との関係性
日本人は勘違いしがちであるが、日本は欧米諸国の一員ではない。日本は極東アジアの一か国に過ぎない。NATO事務局は東京に連絡事務所を設置することを進めていたが、フランスのマクロン大統領が「インド太平洋は北大西洋ではない」と反対した。フランスと経済的な関係の強い、中国政府からの強烈な要請もあった結果と見做すべきだ。その結果として、同設置案は採択に必要な全会一致の賛成を得られず、今後の継続検討の課題となってしまった。そしておそらく設置されることはほぼないだろう。
本件は表面的にはフランスが反対したという形を取ったが、NATO加盟国には日本に対して同じ感想を持つ国が多いことは容易に想像できる。当たり前だが、彼らは日本との軍事協力を必要以上に深めて、東アジアで余計な戦線を持ち、中国共産党を刺激し中国市場と中国資本を失うほどお人好しではない。 岸田政権がロシアだけでなくグローバルサウス全体にまで説教をする態度をとり、全力でウクライナ支援にのめりこんでいるのとは対照的な冷徹ぶりだ。
しかも、ドイツとポーランドは今年6月までドルジバパイプライン経由でロシアのエネルギーを輸入しており、6月以降も第三国のエネルギーをロシア経由で輸入している。 また現在のドイツはイランからエネルギーを輸入しているが、その利益はイラン製自爆ドローンの量産に使われ、ロシアに供与されてウクライナ市民を殺害している。こうした冷徹でリアリスティックな姿勢や考え方が日本政府や日本人にはないのは大きな問題だ。
さらに、岸田政権はバイデン政権や欧州諸国の方針に過剰に合わせることで、何かを得るどころか、本来得るべきであった重要な信頼を失っている。それはグローバルサウスの国々からの信頼だ。
グローバルサウスとの関係:日本の外交の新たな焦点
これらの国の欧米やロシアに対するアプローチは、まったく日本政府とは違うからだ。 国連の発表では、2023年度中にインドが中国を抜いて世界1位となる。しかし、今後、人口が増える国はインドだけではない。インド、ナイジェリア、パキスタン、インドネシア、エジプト、を筆頭にグローバルサウスの国々が経済力上昇を背景とした生活環境の改善を通じて人口爆発を起こしている。東南アジア、南アジア、中南米だけでなく、アフリカからも大量の中間層が形成されることで、地球の南北のバランスは大きく変わることになるだろう。そしてこれらの国々の中ではすでに人々の収入が、日本人を大きく抜いている国も出始めている。
こうしたことの認識も日本政府にはない。 グローバルサウスの国々は、ウクライナ戦争がもたらす資源高・食料高を必ずしも望んでおらず、対ロシアの政策においてまったく欧州諸国を支持していない。国連で反戦決議を取れば賛成するものの、経済制裁に参加していないことからもこれは明らかだ。ロシアの行為を否定することと、経済制裁に参加せず自国民の経済を守ることは両立するということだ。 さらに、文化的・政治的に保守的な国も多く、バイデン政権や欧州諸国が押し付ける過剰にリベラルな価値観を受け入れることは決してない。
グローバルサウスの中心は中国、インド、ブラジル(及びロシア)だ。彼らはBRICsの枠組みを拡大することで、欧米抜きで自分たちの影響力を強めている。8月に南アフリカのヨハネスブルクで開催された第15回BRICS首脳会議のテーマは「BRICSとアフリカ−相互協力による成長、持続可能な開発、包括的な多国間主義のためのパートナーシップ」であった。同枠組みへの参加国は拡大する見通しであり、既に約20か国が公式に加盟申請し、さらに20か国以上が参加に関心を示している。
また、中国はサウジアラビア及びイランの手打ちを仲介して中東地域でのプレゼンスを伸ばしつつある。これは米国の中東に対するプレゼンスが相対的に低下していることの裏返しだ。(まして、安倍首相のイラン訪問中にタンカーが襲撃された日本外交とは大違いだ。) フランスの影響力が減退しているアフリカ諸国ではイスラム系テロリストに対抗するためにロシアを頼りにする向きも少なくない。欧米諸国の軍事支援は限定的である上、ロシアが支援の条件としてリベラルな価値観を押し付けないことは極めて重要な要素となっている。
インドにおいて開催されたG20の裏側で、2023年9月10日よりロシアのウラジオストクで東方経済フォーラムが開始された。ウクライナ侵攻で疲弊した大陸国家のロシアの国際会議にすら中国や北朝鮮やベラルーシといった国だけでなく、インド、ベトナム、カザフスタン、ラオス、ミャンマー、シンガポール、フィリピンといった国々が参加しているのが実態だ。今後、この国際会議にも参加国が戻ることはあっても減ることはないだろう。
日本の外交政策の誤解と修正の必要性
日本は欧米から見れば遠く離れた極東アジアの地にある異国に過ぎない。しかし、当の本人たちは自分たちが対等の立場の一員として扱われていると錯覚している。 特に岸田政権の外交政策の勘違いぶりは、日本の対グローバルサウス外交の強みを決定的に傷つけている。
具体例を挙げるなら、ODA大綱に2023年度に追加された『ジェンダー主流化を含むインクルーシブな社会促進・公正性の確保』の原則」が含まれたことが挙げられる。バイデン政権、欧州各国、人権団体は首肯するかもしれないが、その原則追加について援助対象国が本音で求めているかは疑問だ。日本の対外的な援助が欧米リベラル風に変化して、それを喜ぶ援助対象国など本当にあるのだろうか。表面上の援助歓迎姿勢と実際の本音の差が著しいように感じる。
欧米のリベラルイデオロギーを全面に受容した外交を展開しても、欧米もグローバルサウスも日本を真の友人として受け入れることはないだろう。日本外交は日本人としての知恵を絞ったものに一皮むける必要がある。 
●維新 馬場代表 選挙結果次第で国民民主との連立政権ありうる 9/14
日本維新の会の馬場代表は、衆議院選挙の結果次第では、政策や理念が近い国民民主党と連立政権を組むこともありうるという認識を示しました。
日本維新の会の馬場代表と国民民主党の玉木代表は13日夜、BSフジの番組「プライムニュース」に出演しました。
この中で馬場氏は「自民党と同じような保守的な二大政党で、ときどき政権が代わるようになれば、政治や政治家の緊張感がかなり高まる。国民民主党とは政策・理念が近く、衆議院選挙の結果次第では、両党の連立政権はできるのではないか」と述べました。
一方で、両党の選挙協力については、国民民主党の支援団体である連合との調整が必要だとして、難しいという認識を示しました。
また、玉木氏は、岸田総理大臣が13日夜の記者会見で国民民主党を連立政権に加える可能性を問われ、「いかなる政党であれ、政策議論を深めた上で、必要な連携を進めていく姿勢は大事だ」と述べたことについて、「賃上げも含め、あらゆることを提案したい。厳しいことも含め、聞く力を発揮してもらいたい」と述べました。
●政治家の情けないプレゼンテーションスキル 9/14
・自民党新4役会見で小渕優子選対委員長が質問に声を震わす。
・岸田総理は相変わらず単調な会見で、何がメッセージか伝わらず。
・政治家として「国民に訴えかける力」を持ってもらいたい。
きょう自民党新四役の会見とその後の岸田総理の会見を見て、2つ感じたことを記す。
1つ目は、小渕優子新選挙対策委員長の会見の対応のまずさだ。
驚いたのは、小渕氏が2014年に「政治とカネ」の問題で経済産業相を辞任した経緯を問われた時だ。「心に反省をもち、決して忘れることのない傷だ。私自身の今後の歩みをみてご判断いただきたい」と述べたが、その後、説明責任を果たしたと思うか、と畳みかけられると、言葉を詰まらせ、「十分に伝わっていない部分があれば私自身の不徳の致すところだ」と声を震わせた。新聞の中には「涙目で」とか「涙ぐむ」と見出しをとっているところもあった。
新人議員でもあるまいし、中堅どころか、次期総理を狙えるのではとの呼び声も出ている、と質問の中で話している記者もいた中での一幕だった。
この質問は100%記者から出ることはわかっていたはずだ。事前に想定問答のトレーニングを受けなかったのだろうか。
通常、民間で、新しくしかるべきポジションについた人は、インタビューのトレーニングを受けることが多い。聞かれたくない質問、想定外の質問、苦手な質問などに対して簡潔かつ適切に答えることが出来るまで模擬会見を行って練習するのだ。
茂木幹事長や萩生田政調会長は、よどみなく質問をさばききっていただけに、余計小渕氏の回答の稚拙さが際だった。
疑惑について改めて記者会見を開く考えがあるかを問われると、「必要な話があれば言って頂ければと思う」と小渕氏は答えたが、それまでにしっかりトレーニングを受けることをお勧めする。
ふたつめは、岸田総理の会見が相も変わらず国民の心を打たないものだったことだ。
そのわけは、彼の話し方の特徴にある。それは、
1 棒読み=抑揚がない
2 言葉をやたら区切る
3 「ん〜」、「え〜」、などという間投詞が多い
の3点に尽きる。
1と2だが、なぜそうなるかというと、官僚の作文をただ読んでいるだけだからだ。官僚の書く文章は「霞ヶ関文学(話法)」と揶揄されるが、その特徴は、臆面もなく官僚にしか通じない表現をちりばめることで、当たり障りのない内容にし、決して相手に言質を取らせないことだ。
そうした例は枚挙に暇が無いが、「喫緊の課題として」とか「緊張感(スピード感)を持って」とか「あらゆる可能性を排除せず」とか「関係省庁(各国)と緊密に連携をとって」とかいうやつだ。そう思ってないでしょ、と相手に思わせるに十分な、心のこもってない表現だが、書いている霞ヶ関の人達はそんなことはおかまいなしなのだろう。
総理だけではなく、官房長官、大臣、あらゆる政府関係者がこうした表現を乱発するものだからどの答弁も同じに聞こえてくる。それがそもそもの目的なのかもしれないが、それで国民の心を打つことは出来ない。
まして総理大臣である。何のための会見か。今日の会見はこれからの政策課題と内閣改造・党役員人事の意図の説明の場だったが、平坦な話しぶりが延々と続き、全く頭に入ってこなかった。強調すべき所は強調し、抑揚をつけてくれないと、人間は何が大事なのかわからない。延々と同じ調子で話されては一体この人は何を伝えたいのか、と人は感じてしまうものなのだ。
さらに、岸田総理の話が国民の心を打たない理由は、その話し方に加え、国民の実感と乖離している内容をえんえんと話すからだ。
岸田総理は、政権発足からの2年間を振り返り「新しい時代の息吹が確実に生まれつつある」と述べ、「経済でも外交でも世界での日本の存在感を高められた」と評価したが、「新しい時代の息吹」や「世界での日本の存在感」を感じている人がどこにいるのだろう?
新内閣を「変化を力にする内閣」と表現したが、お年寄りばかりでとても変化とはほど遠い陣容にしか見えない。代わり映えしなく、現状維持がせいぜいのところだろう。
極めつけは、「我々の前に流れている変化の大河はまさに100年に1回ともいえる時代を画するものだ」と述べたことだ。「大河(たいが)」と耳で聞いたときはすぐには分からなかった。あまりにこの言葉を繰り返すのでまさか「大河」ではないだろうな、と思って後で他社の記事を見たら本当に「大河」だった。私だったら、こんな誰も使わないような大仰な言葉を総理の演説には選ばない。
国民が今感じている変化は、食料品の値上げであり、電気・ガス・ガソリンの高騰であり、税金や社会保障費の重さである。つまり生活が苦しくなっているという負の変化だ。生活費を切り詰め、遊興費を減らし、日々を暮らしている。「変化の大河」などという陳腐な言葉は、庶民の感情を逆なでこそすれ、共感を得られるものではない。
自分の言葉で語らない、官僚の書いた作文を読まされているから必然的に棒読みになる。そして、目でプロンプターの文字を追っているから、時折変なところで区切って読むことになる。それが聞いている人に、ああ、自分で書いた文章じゃないんだな、と分からせてしまうのだ。
3は岸田総理のもともとのくせだ。考える時に口を一文字に結んで天を仰ぎ、「ん〜」とか「え〜」とかやる、あれだ。これを多発されると、聞いているほうは、どうしてもイライラしてくる。これも、質問に間髪入れずに答えるためのトレーニングをしていないからだろう。こうしたくせは直すことが出来るものなのだ。
官僚が総理や大臣に、「もう少し話す練習した方がいいですよ」、などというわけはない。政治家は自ら「話す力」=「国民に訴えかける力」を養ってもらいたい。
まさに、「言葉に権威あらしめよ」、だ。
●韓国で「福島原発処理水」反対デモが“大失敗”で、まさかの「ブーメラン」に… 9/14
韓国「反日ムーブメント」、またまた不発へ…!
韓国では文在寅政権時に「反日正義」を振りかざして大手を振るっていた勢力が、いま急速に力を失う中で、なんとか世論を喚起起用とデマまでまき散らすほどの醜態を演じている。その様子を見ていると、「この国の政治家は大丈夫なのか」と呆れてモノが言えなくなる。
いま尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の有言実行な行動のみが、何とか私が正気を保っていられる理由だ。そんな日韓関係改善に努力する日韓両国の動きの中で、日本政府が福島原発処理水の放出日を8月24日と決定した。だが、韓国野党はその発表の前に8月26日に大規模な集会「福島汚染水放水反対」を行うと決めていた。
もちろん処理水放出に向けた批判デモなのだが、24日の放出の知らせを聞いた民主党関係者は「予想より放出時点が早くて当惑する」と情けなく話したという。
韓国野党も支持者を巻き込み、これまで非科学的デマで国民を再び反日へ扇動しようと拡散運動を必死で行ってきたが、デマは政府の正論で打ち消され、不発に終わった。
やっと放水という現実的な批判ができると勇んで26日の大集会を予定していたわけが、それも「放出後の反対の意味は?」と肩透かしに終わったわけだ。
文在寅の「罪」
これまで韓国の政治家たちの「反日感情」の政治利用は保身からでしかない。政党の支持率のために竹島に上陸したり、嘘がバレそうになったら日本を批判したりとして来たわけで、そこに政治家としての一貫性はほぼないように映る。
国民もそれに対して異論を唱えれば左派勢力の圧力で社会的に抹殺されかねなかったのが、いまは嘘の様に何でも話せる様になった。日本に居ると「えっ、そうなの?」と思われがちだが本当にそうだったのだ。
そんな状況が文在寅政権まで続いていたことを、韓国メディアの報道では一度も見たことがない。韓国メディアもいまやっと文在寅前大統領が従北を貫くためにいかに人権を無視して来たか、当時の文在寅政権、政党がいかに嘘を言ってきたかを指摘し、報道をし始めている。
日本とばかり比較して恐縮だが、韓国が日本の平均年収を超えたと言うが、「何だろう、この貧乏感」はと思っていたことを日本で気付かされた。それは、目に入るもの耳で聞く物が「豊か」ではないのだ。
デタラメ、嘘、豊かさ…
私は日本から韓国に移り住んでいると、多くのことが「デタラメで嘘」に見えて聞こえてしまう。最近の左派の言動を見ていると、ますますその思いは強くなる。そういった中での生活はいくらおカネに余裕ができても、気持ちを「豊か」にしない。
日本で暮らしていた時には収入が多かれ少なかれ気持ちが殺伐とし、ストレスを抱えることはなかった。韓国ではどこに行ってもデモや政治的横断幕は目に入り、どの街に行っても一定の汚さを感じて、知らない間にストレスとして蓄積されている。無意識に日本と比べていたのだろう。
三つ星ホテルや高級輸入車のデーラーでさえ、よく見ると外観のガラス清掃はされておらず、汚れで曇っているということもよく目にする。心休まらない韓国でいくら景気の良い、評価が高い数字を知らされても、日常で感じる“雑さ”からそんな数字に信用性はないと第六感が思いっきり訴えてくる。
それはほんとうに私だけのことなのだろうか……と最近は思うのである。
●ジャニーズ事務所流「力の支配」が国家レベルで行われているのが今の政治 9/14
ジャニーズ会見があり、タブーの封印が解けたとばかりにさまざまな報道がなされた。厳しい意見もあるが、いまだに忖度、擁護記事も多い。
元シブがき隊・本木雅弘はなぜ潰されなかった? 奥山和由氏が明かしたメリー氏の「圧力」
性加害だけを見れば、その期間の長さ、被害者の数からして1人の人間が起こしたものとしては人類史上まれに見る猟奇的事件である。
「タレントに罪はない」といってもCMなどは対会社の契約であるから、世界的常識からすれば大企業ほど取引を解消するのはやむを得ないだろう。
私の予想通り新社長は東山氏になった。古くからの友人である。芸能界引退のケジメもいかにも彼らしい。演者の東山が見られないのは残念極まりないが、これからのいばらの道、頑張っていただきたい。
彼は社名変更なども早いうちから言及していたから、必ずしも今回の方針は本意ではないのかもしれない。社長なのだから少し時間をかけてでも改革に大ナタを振るって欲しい。
やはり分社化して名称は変更し、所属タレント全員と面談し、他事務所への移籍の自由を与え、移った者に対する圧力は一切かけないという誓約書を交わすぐらいが必要ではなかろうか。今のままだと、内部は前より何も言えない空気になっているのではないか。
マスコミにも責任はある
何も言わなかったマスコミの責任は確かにある。いや誰も何も言えない構造になっていた。それはジャニーズだけの問題ではない。事務所を辞めたタレントを「使うなら、うちの他のタレントは一切使わせない」などというやり方は、どこの事務所もやってきた。そしてマスコミは唯々諾々とそれに従ってきた。私も芸能界は力関係だと思い知らされていた。
いや芸能界だけではない。
木原官房副長官の醜聞も、萩生田氏の統一教会関係問題も、大手マスコミは全く記事にしない。これこそが極めて日本的な悪習ではないのか。
総理大臣の記者会見にフリーの記者が入れず、あらかじめ用意した質問に官僚が書いた答えを読み上げるだけ。もし先日のジャニーズ会見でこんな事が行われたら、どれほど非難されただろう。 それ
が国レベルで行われているのである。異常としか思えない。あのトランプでさえ、何十分もかけて自分の言葉で答えていたのに。
ジャニーズが範を示せば…
今回はこういった、日本特有の力関係のなあなあを、少しでも改善していくよい機会なのではないか。ジャニーズが範を示し、周りが影響されていく。そんな未来をヒガシ、イノッチ、ぜひお願いします。
●立民 泉代表「インパクトなく薄味な内閣改造だ」 野党各党の反応は 9/14
第2次岸田第2次改造内閣の顔ぶれについて、立憲民主党の泉代表は、「変えた人事にインパクトがあるかというとそうでもなく、薄味な内閣改造だ」と述べました。野党各党の反応です。
立民 泉代表「薄味な内閣改造」
立憲民主党の泉代表は、訪問先のアメリカの首都ワシントンで記者団に対し「変えた人事にインパクトがあるかというとそうでもなく、薄味な内閣改造だ。非常に重要な時期だけに交代によってさまざまな行政が停滞しないかということを心配している。少子化対策ではこども家庭庁ができていよいよという時に大臣が交代していちからのやり直しになるのではないかと懸念している」と述べました。
また、自民党の役員人事で、かつて政治資金をめぐる問題で経済産業大臣を辞任した小渕優子氏が選挙対策委員長に起用されたことについて「ドリルでパソコンのデータを破壊するというのは当時も前代未聞だったし、今も語り継がれるような証拠隠滅だ。大臣を辞めてそのまま、ほおかぶりをして今に至るのが残念だ。国民に説明責任を果たしてもらう必要はあると思う」と述べました。
また、衆議院の解散・総選挙をめぐっては「主要閣僚があまり動いていないということからも岸田総理大臣は十分、解散を考えているのではないかと認識してわれわれも準備する」と述べました。
立民 岡田幹事長「肩すかし内閣」
立憲民主党の岡田幹事長は「刷新を期待していた人は多いと思うが、内閣の骨格は変わらなかった。確かに女性の大臣は5人と増えたものの、それぞれの力量や何をしたいかが、なかなか伝わらない。ワクワク感のない『肩すかし内閣』という印象だ」と述べました。
また自民党の役員人事については「萩生田政務調査会長は、就任以来、旧統一教会についてほとんど説明していないし、小渕選挙対策委員長も改めてしっかり国民に向かって説明してもらいたい。それぞれ国民の納得いくような説明は全くなされていない」と指摘しました。
一方、衆議院の解散・総選挙をめぐっては「岸田総理大臣が、経済対策を打ち出すのであれば補正予算案を編成する形になると思うので、しっかりと審議する時間を作ってもらいたい。補正予算案をつくり、予算委員会で説明して、その上で解散ということなら受けて立ちたい」と述べました。
維新 馬場代表「適材適所と評価できるレベルでない」
日本維新の会の馬場代表は、「率直に印象を申し上げると『総裁選挙対策内閣』だ。派閥の順送りや、年齢や期数の重視もかなり見られ、適材適所と評価できるレベルではない」と述べました。
また、これまでで最も多い女性5人が入閣したことについて「男性だから女性だからと言うことはぼちぼちやめた方がいい。岸田総理大臣が、女性の入閣が内閣改造の目玉だと言うなら、お門違いであり、適材適所の配置に性別は関係ない」と述べました。
さらに、衆議院の解散・総選挙の時期については「今の日本の情勢を見ると、選挙により政治に空白期間を作るべきではない」と指摘しました。
一方、自民党の役員人事で、かつて政治資金をめぐる問題で、経済産業大臣を辞任した小渕選挙対策委員長が起用されたことについて「疑惑が残っているとすれば、説明責任を果たすべきだ」と述べました。
共産 小池書記局長「聞く耳持たない布陣」
共産党の小池書記局長は、「インボイス制度の導入やトラブル続きのマイナンバー問題など、国民的な批判が高く、政策転換が求められるところに聞く耳を全く持たない布陣で、『聞く耳持たずに突き進む内閣』だ。内閣改造ではなく『政治の改造』が必要で、ただちに臨時国会の開会を求めたい」と述べました。
また、自民党の役員人事で、かつて政治資金をめぐる問題で経済産業大臣を辞任した小渕選挙対策委員長が起用されたことについて「自民党が政治とカネの問題をいかに軽視しているかというあらわれではないか。問題点として指摘していきたい」と述べました。
国民 玉木代表「マイナスなことは徹底的に止める」
国民民主党の玉木代表は、「『賃上げ実現内閣』になってもらわなければならない。持続的な賃上げを実現することが日本の経済や社会にとり、最優先の課題になっているので内閣をあげてしっかり取り組んでほしい」と述べました。
また、政府・与党との関係については「われわれを応援している皆さんの声や考えはしっかり伝えていきたい。持続的な賃上げの実現につながることは協力し、マイナスのことは徹底的に止めるということで臨みたい」と述べました。
一方、自民党の役員人事で、かつて政治資金をめぐる問題で、経済産業大臣を辞任した小渕選挙対策委員長が起用されたことについて「多くの国民が十分な説明責任が果たされていないと考えていると思う。国民の信頼を得るための説明責任は引き続き果たしていくべきだ」と述べました。
れいわ 山本代表「ほぼ何もしないメンバー」
れいわ新選組の山本代表は「現在の物価高には減税や給付金の対応がすぐに必要だが、これまで通りほぼ何もしないメンバーが発表されただけだ。自民党を倒すしかない」とするコメントを出しました。
社民 福島党首「内向き延命内閣」
社民党の福島党首は「岸田総理大臣の、岸田総理大臣による、岸田総理大臣のための『内向き延命内閣』で、国民に対して、どのような人が必要で何をやるかよりも、重要なところは続投させて政権を安泰にし、新しい人は派閥の論理で入れて安定を図っている。不適材不適所内閣だ」と述べました。
●女性閣僚が最多の5人、刷新感を狙うも継続性に課題−岸田内閣 9/14
岸田文雄首相は13日行った内閣改造で、歴代最多と並ぶ5人の女性閣僚を誕生させた。来年の自民党総裁選に向けての態勢立て直しと位置付けられた人事で刷新感を打ち出したが、今後も継続して女性を要職に登用し、多様性を取り込む糸口とできるかが課題となる。
外相には約20年ぶりの女性起用となる上川陽子元法相、こども政策担当相に当選3回の加藤鮎子衆院議員を抜てきした。このほか、地方創生担当相に自見英子参院議員、復興相に土屋品子衆院議員を充てた。初入閣の加藤、自見、土屋の3氏はいずれも父親が閣僚も経験した国会議員だった。高市早苗経済安全保障担当相は留任した。
エマニュエル駐日米国大使は上川外相について「非常に有能」と評価し、就任を歓迎した。民間企業でも指導的地位への女性登用が遅れている日本にとって「前向きの大きな一歩だ」と指摘した。ブルームバーグの電話インタビューで語った。
女性閣僚5人は2001年4月に発足した第1次小泉純一郎内閣と14年9月発足の第2次安倍晋三改造内閣に続き、3回目。いずれも一時的な登用で次の内閣では女性閣僚は減少しており、政権が多様性を取り込むきっかけとはなっていない。小泉内閣の5人は民間人2人も含まれていたが、20年たった現在も自民党の国会議員に占める女性の割合は衆参を合わせても約12%で他党に比べても少ない。
元民主党衆院議員で早稲田大学教授の中林美恵子氏は「民間企業も同じだが、リーダーシップを発揮できる可能性のある女性社員がいなければ女性役員の誕生は難しい。政界では衆院の方が大臣となる機会は多いが、それでも基本的に女性の数が少な過ぎる」と指摘する。
日本では首相のほか、重要閣僚と位置付けられる財務相も女性が務めたことはない。官房長官も1989年から90年にかけて第1次海部俊樹内閣で森山真弓氏が務めて以来、30年以上、男性が占めてきた。自民党役員では幹事長に登用された女性議員はゼロだ。 
岸田首相は13日夜の記者会見で、「自民党は女性活躍を最重要課題として掲げている」とした一方で、女性閣僚に対しては「女性としての、女性ならではの感性や、あるいは共感力、こうしたものも十分発揮していただきながら仕事をしていただくこと」を期待していると述べた。 
14日行われた就任記者会見で、上川外相、加藤こども相は女性の政治参画の遅れに関して発言した。上川氏は「ジェンダーギャップの課題は大変大きい。女性閣僚の1人として位置を占めることになった意味を重く受け止めている」と強調。加藤氏も、「非常に問題だ。内閣の一員としてより多くの女性の声が政権の中で反映されるように頑張っていきたい」と意欲を示した。
政治への女性参画遅れる日本
世界的に女性の政治参画が進む中、日本の取り組みの遅れが指摘されている。世界経済フォーラムが6月に公表した2023年版のジェンダーギャップ指数で、日本は146カ国中125位で、前年から9ランク下落。政治分野のスコアでは、146カ国中138位だった。
韓国やアフリカ諸国など世界130以上の国で議席の一定数を女性に割り当てるクオータ制度を採用している。日本では18年施行の「政治分野における男女共同参画推進法」で、各党に男女同数の候補者擁立を求めているが、努力義務にとどまっている。 
内閣改造に先立って行った自民党役員人事では、小渕優子氏を選挙対策委員長に抜てきした。岸田首相は会見で、女性議員を「より増やしていかなければいけない」と指摘。同氏について選挙対策への知見が高く、「候補者の発掘やきめ細かい支援など女性議員3割に向けて力をふるってもらう」ことを期待していると述べた。
女性候補擁立で基本計画
今年4月に行われた衆参五つの補欠選挙で自民党からは2人の女性が立候補し、当選した。6月に茂木敏充幹事長や幹事長代理を務めていた上川氏らが中心になってまとめた女性議員の育成・登用に関する基本計画では、今後10年で党の女性国会議員比率を30%に引き上げると明示した。
同計画は選挙区での候補者選定を原則的に公募で行うことや、衆院の比例代表では女性を上位にし、参院の比例代表でも積極的に女性を擁立するとしている。茂木氏は13日の記者会見で、同計画の実行など「さまざまな取り組みを前に進めていきたい」と語った。
クレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストは、改造人事では「クオータ制を意識した」ことが見て取れると分析している。3人が初入閣であることに触れ、「閣僚経験を積ませることも含めて、育成と活用の両輪を狙っているのではないか」と述べた。
●防衛費増が招く「増税」「国債」「債務危機」3つの罠 9/14
持続的経済成長は続くのか
この記事のタイトルから、現在の日本の財政政策に対する批判を期待された読者もいらっしゃるかもしれない。だが、ここでの議論は、経済学の前提に対するもっとも根源的な批判となるのではないかと思われる。その批判とは、持続的経済成長とは、単なる「神話」ではないかということなのだ。
私たちは、経済が成長し続けるのは当たり前のことだと考えている。しかしそれは、せいぜいここ数世紀間のことにすぎない。もしかしたら、それはあらゆる社会システムと同じく、いつか消滅するものだと考えられないのだろうか。私が『戦争と財政の世界史: 成長の世界システムが終わるとき』の執筆にあたって、つねに考えていたのはそういうことであった。
ここ20年間ほど、私の頭を悩ませ続けてきた問題があった。それは、近代経済は、18世紀後半のイギリスで誕生したのか、それとも17世紀のオランダで誕生したのか、どちらなのかということである。
イギリスからはじまった産業革命により近代経済が誕生し、それが世界中に広まったというのが一般的な見方であろう。それは、資本=賃労働関係にもとづく資本主義システムが、世界を覆い尽くしたということを意味する。イギリスから、持続的経済成長がはじまったとされてきた。
それに対し最近提示されているのは、持続的経済成長は17世紀のオランダではじまったというものである。それは、「近代世界システム」を提唱したアメリカの社会学者ウォーラーステインが主張したことで有名になった説である。
この2つのどちらが正しいかということは、経済史を研究し続けてきた私にとって非常に大きな問題であり、ウォーラーステインの説を基本的には支持していたものの、確実にそうだと言い切るには、なお、一抹の不安があった。
その不安を解決したのが、『戦争と財政の世界史』の執筆であったといってよい。
経済が成長し続けていたので借金の返済が容易になった
ヨーロッパの経済史研究によれば、近代的な財政システムは、火器の発明を中心とする「軍事革命」により戦費が増大したことから生まれた。戦費の調達のために国債(公債)を発行し、それを長期的に返済するというシステムこそ、近代的財政システムの元になったというのである。そして、それを開始したのがオランダだったというわけだ。だからこそ、オランダは、いわば近代的財政システムをもつ最初の国として誕生した。オランダ史の近年の研究をまとめるなら、このように主張することができよう。
当時のオランダは7つの州が公債を発行し(国債は発行されなかった)、戦費を調達した。オランダは、1人当たりの税負担がヨーロッパでもっとも多い国であった。それが返済できたのは、持続的経済成長を成し遂げたので、公債の返済が容易になったからである。
それに対し、18世紀のイギリスは、対仏戦争を遂行していく過程で、イングランド銀行が巨額の国債を発行し、その返済を議会が保証するというファンディング・システムを構築した。このような形態での債務返済こそ、現代にまで通じる近代的な財政システムなのである。
オランダであれ、イギリスであれ、長期的にはなんとか借金を返済することができた。それは、経済が成長し続けていたので、借金の返済が容易になったからだ。
18世紀の対仏戦争は、イギリスに巨額の借金を負わせた。そのため19世紀初頭イギリスの公債発行額の対GDP比は200%近くに達したが、大きな戦争がなく、しかも経済成長をしたので、19世紀末には比率は30%程度にまで減少した。19世紀後半のイギリスは、綿織物の輸出もあったが、むしろ海運業や金融業の収入により、世界経済のヘゲモニーを握るようになった。しかもイギリスは、植民地、とくにインドを収奪することで国債(公債)依存度を減らしたのである。
しかし、第1次世界大戦のために公債発行額の対GDP比は大きく上昇し、両大戦間期は大不況の影響もありそれはあまり低下することはなく、さらに第2次世界大戦がはじまると、この比率は急速に上昇し、終戦時には、250%近くに達した。戦後になって、経済成長のために(たとえ先進国のなかでは、アメリカに次いで低かったとしても)、イギリス政府は借金を返すことができた。しかし、1990年代以降、公債発行額の対GDP比は上昇傾向にある。
日本の国債残高
日本の国債発行残高は、現在、1000兆円を超えている。これは、とてつもない額だといわざるをえない。それは、戦争とは関係がなく増えていった。
日本は諸外国と同じく、国債の発行により戦費を調達した。日露戦争のときに高橋是清が活躍し、欧米の外債市場で国債の調達に成功することで戦費を調達したからこそ、日本はこの戦争に勝利することができたのである。それは最終的には1986年になってようやく返済できたほどに、巨額の借金であった。
アジア・太平洋戦争期にも巨額の国債を発行し、その多くを日銀引き受けとすることによって、ようやく戦争を継続することができた。戦後、インフレーションによって日本国政府の実質的な借金返済の負担は減った。さらに高度経済成長により、日本の公債発行額の対GDP比は大幅に減少した。
しかし、1970年代半ばから、とめどもなくという修飾語句が適切なほどに、日本の公債発行残高は増えている。それは、社会保障費の増加がもっとも大きな要因である。
そもそも国家に、「社会保障」という考え方はなかった。国家がおこなう最大のことといえば、戦争であった。だが、戦争でたくさんの人が死ぬと、国家はその家族への補償を考えるようになった。それが、社会保障の1つの起源になったのではないだろうか。
社会保障に関して有名なものは、1880年代にドイツのビスマルクが導入した医療保険法、災害保険法、養老保険である。イギリスで同様の制度が導入されたのが1911年であったことを考えるなら、ビスマルクの先見の明は明らかである。
だが、欧米の先進諸国で社会保障費が誰の目にも明らかに上昇するようになったのは、1980年代のことであり、その勢いはなかなか止まらない。公的支出のGDP比を増やすことは簡単だが減らすことは難しい。日本ほどではないにせよ、多くの国々でこの比率は、どちらかといえば上昇傾向にある。
戦争は、いつもあるというものではない。たまにとまではいかなくても時々戦争になり、国債(公債)を発行して戦費を調達し、それを平時に返済する。それに対し、現在、国家予算の多くの部分を占めるのは社会保障費であり、それを減らすことはきわめて難しい。今後、世界的に老齢人口が増えると予想されるのだから、それはなおさらだろう。国家は、戦争国家から福祉国家へと変貌し、国債(公債)発行の要因が短期的な戦費から、恒常的に必要な社会保障費へと変化している。
そのような状況下でCOVID-19のような緊急事態が生じると、国は国債を発行する。したがって、国債の発行額はなかなか減らない。しかし、経済が成長しないなら、その返済は著しく困難になる。そういう事態が発生しないと、誰が断言できるのだろうか。
成長の世界システムの終わり
オランダやイギリス、そして世界中の国々が国債(公債)を発行できたのは、持続的経済成長を前提としていたからである。国債は次世代に負担を負わせるといわれることもあるが、経済成長があれば次世代の負担は少なくなる。そして彼らは、さらに次世代へと負担を転嫁する。その次の世代も負担を転嫁していけばいい。経済が成長する限りは。
日本の経済成長は人口増大よりも技術革新の寄与が大きかったという説もあるが、技術革新による経済成長は、増大する人口に支えられていたとはいえないか。今後、そう遠くない将来に人口が減少するなら、技術革新による経済成長がどの程度期待できるのだろうか。地球の資源問題を考えるなら、世界の人口増はどこかでストップし、やがて人口減少へと至るだろう。それでも、持続的経済成長を期待することができるのだろうか。
最近の人口増が急激すぎることは、多くの人が知ることであろう。太平洋戦争期に、「1億玉砕」と喧伝されたが、日本で生まれた日本人は私の記憶では7,000万人であり、残りの人々は植民地の人々(ないしは植民地生まれの日本人を祖先としない人々)であった。それから80年間ほどで、日本人は5,000万人も増えた。少子化の問題が取り沙汰される昨今だが、戦後、日本人の数はこれほどに増えたのである。
拡大を基調とし、持続的経済成長を前提とする「近代世界システム」は、終焉を迎えつつある。それは、すぐにというわけではなくても、あまり遠くない将来におこるのではないか。そのとき、われわれは持続的経済成長を前提としない新しい経済システムの誕生を目にすることになる。そうなったとき、われわれは国債を発行できなくなるかもしれない。
『戦争と財政の世界史: 成長の世界システムが終わるとき』は、そのような可能性を示唆した書物なのである。 

 

●小渕優子氏 マスコミが踊った9年ぶり2回目の「幹事長するする詐欺」 9/13
岸田文雄首相(66)は、9月13日に内閣改造と党役員人事を実施した。
注目の的になっていたのが小渕優子衆院議員(49)の“新ポスト”だ。新聞やテレビの事前報道では、しきりに「幹事長起用説」が流されたものの、結局、就任したのは党4役とはいえ幹事長よりは「軽い」ポストである選対委員長だった。
自民党担当記者が話す。
「じつは、9年前にも同じようなことがあったのです。そのときとそっくりだなと思いましたね」
2014年9月3日、当時の安倍晋三首相が内閣改造と党役員人事をおこない、当時40歳だった小渕氏が経済産業相に抜擢された。小渕氏にとっては、2008年の麻生太郎内閣での少子化担当相以来、2回目の入閣となったのだが――。
たしかに当時の報道を見ると、今回と同じく新聞などが相次いで「小渕優子幹事長」誕生の可能性を報じているのだ。
《小渕氏の処遇をめぐっては一時、幹事長起用説も流れた》(2014年7月19日・産経新聞)
《統一地方選、衆院選向けに党四役への抜てきが取り沙汰されるのは小渕優子元少子化担当相だ。幹事長に就任すれば女性初となる》(2014年8月26日・下野新聞)
《安倍首相が9月3日に行う内閣改造・自民党役員人事では、首相が目玉人事として検討している小渕優子・元少子化相の幹事長起用が実現できるかどうかが焦点だ》(2014年9月1日、東京読売新聞)
自民党関係者が話す。
「政治家としての力量という点では、2014年当時、まともに大臣を務められる自民党女性議員は、小池百合子氏と野田聖子氏の2人しかいませんでした。それだけ自民党は人材難だったんです。にも関わらず、“小渕優子幹事長”という人事情報がまことしやかに流されたのは、いまだ力量不足だった小渕氏を世間に大きく見せるための“仕掛け”だったと聞いています」
だが結局、小渕氏は経産相就任の直後に、自身の政治資金規正法違反を「週刊新潮」に報じられ、2カ月ともたずに辞任した。
そして、今回も流された「幹事長起用説」について、前出の自民党担当記者はこう話す。
「小渕氏はすでに当選8回。今年50歳になるということで、それだけを見れば幹事長になってもおかしくはないのですが、“ドリル優子”のイメージが悪すぎる。
2019年に自民党群馬県連会長に就任し、ようやく表に出て来始めましたが、要職の経験がまだまだ足りていない。しかし、一部では彼女を将来の総裁候補として期待する声も出ている中で、今回またも『幹事長起用説』が流されたのは、改造人事に乗じて前回以上の“大物感”を演出するための仕掛けだったと見ています。
まあ、9年前に比べたら、今回はやや現実味がありましたけどね」
政治部デスクは、小渕選対委員長誕生の裏側について、こう言う。
「小渕氏の起用は今回の改造人事の目玉です。岸田総理は、故・青木幹雄さんから生前に直接『小渕さんを頼む』と言われたことを明かしています。
青木氏が死去した際に弔問に訪れた自宅でも、同席した森喜朗氏から『(青木氏の)遺志を生かしてくれ』と言われたそうです」
9月13日の党4役の就任会見では、過去の不祥事を問われて、涙を流した小渕氏。
「官邸は早い段階から、小渕氏に対して『閣内での起用は難しい』という認識でした。“ドリル問題”の説明責任を果たしていないとの声は多く、国会答弁を強いられる閣僚として『人前に出すのは難しい』との考えです。
もうひとつ、小渕選対委員長の人事には、岸田総理の“重大な意向”が秘められています。次の総裁選でライバルになると目される茂木幹事長をけん制することです。
幹事長は選挙での『公認権』を握っていることで絶大な力を振るえますが、選挙については今後、小渕氏を通じて官邸からの指示を出すことで、茂木幹事長の好きなようにさせたくないのでしょう。
総理周辺に聞くと、総理は“11月解散”を視野に入れはじめました。小渕氏は地方での街頭演説には定評があり、選対委員長として、全国をまわらせることで“客寄せパンダ”にする狙いも込められていると思います」(同前)
前出の自民党関係者も「解散総選挙は近い」とし、こう続ける。
「10月中旬に臨時国会が召集されますが、早ければ10月末から11月頭にかけて、岸田さんは衆議院を解散する可能性が大きい。理由は2つ。新閣僚に何らかの問題が発覚しないうちにやりたい。もうひとつは、躍進が予想される日本維新の会に準備期間をできるだけ与えたくないということ」
ハリボテを大きく見せようとする人間にロクなやつはいないけれど――。
●「女性政治家として海外にも発言し信頼を得る努力を」上川陽子氏が外相に 9/13
9月13日の内閣改造で衆院静岡1区選出の上川陽子議員(70)が外務大臣として入閣しました。20年ぶりに誕生した女性の外務大臣。上川さんが選ばれた理由とは?
上川陽子衆議院議員「上川でございます。お世話になります」
上川さんは13日午後、東京の議員会館で総理官邸からの連絡を受けました。
上川陽子衆議院議員「伺います。よろしくお願いいたします。では、いまから官邸に行ってまいります」
外務大臣に任命され、総理官邸へと向かいました。
上川さんは、2000年の衆議院選挙で初当選し、現在7期目。2007年、第1次安倍改造内閣で内閣府特命担当大臣に任命され、当選3回で初入閣しました。
2014年には法務大臣に任命され、再犯防止策の取り組みを学ぶため、静岡刑務所を視察しました。
上川陽子法務大臣(当時)「鏡を磨いて、磨いて、磨いて、磨いて、慎重にも慎重な検討を重ねた上で、死刑執行命令を発したものでございます」
2度目の法務大臣を務めていた2018年7月、地下鉄サリン事件などオウム真理教の一連の犯行に関わったとして、教祖だった麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚ら13人の死刑執行を命じました。法務大臣を3度務め、着実にキャリアを積んでいきました。
松野博一官房長官「外務大臣、上川陽子」
今回務める外務大臣は、女性議員としては歴代3人目で20年ぶりです。
上川陽子衆議院議員「国のため、世界に向けてしっかりと発信し、日本の存在を高めていくことができるように少しでも前進する」
今回の内閣改造で岸田総理は、上川さんをはじめ、女性の積極的な起用に踏み切りました。岸田総理は、高市早苗経済安全保障担当大臣の留任を決めたほか、こども政策担当大臣に加藤鮎子衆議院議員、復興大臣に土屋品子衆議院議員、地方創生担当大臣に自見英子参議院議員を初入閣させ、女性閣僚は現在の2人から5人に大幅に増えることになりました。
TBS・後藤俊広政治部長は5人の中でも「上川さんを外務大臣に任命したことが1番のサプライズだった」と話します。
TBSテレビ 後藤俊広政治部長「失敗の類がない非常に手堅いタイプの政治家、ベテランの女性議員であるということで、今回の目玉候補になるだろうなという予想はあったんですが、そのポストが外務大臣ということは想定しづらかったのは確かです。岸田さんが外交を進める上での地ならしをどんどん進めてもらうという積極的な役割を期待しているんじゃないかと思います」
岸田総理は、政権の骨格は維持しつつ、女性の活躍を世界にアピールしたい考えです。地元選出の議員が外務大臣になったことについて、静岡市の難波市長は…。
静岡市 難波喬司市長「上川先生のような難題から逃げない姿勢と温かい心、温かいまなざしを持った政治家が外務大臣として活躍されることは本当に素晴らしいことだと思います。大いに期待しています」
上川陽子衆議院議員「外交の舞台では、日本の国益とともに、世界の平和に日本がどこまで貢献できるか。女性の政治家という形で海外にも発言をし、信頼を得ていくための努力をしていきたい」
ロシアによるウクライナ侵略など課題が山積する外交問題…上川外務大臣の手腕が問われます。
●維新 「汚染水、汚染魚と堂々と口に出す政党、政治家は猛省を」 9/13
日本維新の会の馬場伸幸代表(58)が13日、国会内で会見し、岸田文雄首相の内閣改造と自民党役員人事について「総裁選対策内閣。派閥の順送りであるとか、非常に隅々まで配慮した、目配りした布陣になっている」と述べた。
12日の島根県内での会見では、内閣改造について「適材適所の布陣を期待している」と話した馬場氏。新内閣発足に「すべてがそうとは言いませんけれども、かなり派閥順送り。年齢重視、期数重視な部分も見受けられますので、そういった評価ができるレベルではない」とした。
馬場氏は、岸田首相が外交を通じて東京電力福島第1原発の処理水海洋放出について説明していることに「度重なる国際会議の場において、世界中に説明を行っているというのことがG20でも功を奏した。中国も処理水についてはG20の場では言及ができなかったということがそれを示している」と評価した。
一方で「国内の政治家とか政党が、科学的な見地に基づかない汚染水であるとか汚染魚であるとか、堂々と口に出して発信をしているというのは非常に残念。何を目的にそういうことをされているのか全く理解できませんが、そういった政党、政治家の皆さん方には猛省を促したい」と批判した。
次期衆院選広島6区に共産党公認で立候補予定だった元広島県福山市議の女性が、X(旧ツイッター)で「汚染魚」と不適切投稿し、同党が公認を取り下げたことに触れた馬場氏は「IAEAが処理水放出にGOサインを出しているわけですから、その水について汚染水であるとか、汚染魚という表現は非常に遺憾」と話した。
共産党の小池晃書記局長は11日の会見で「汚染水」という表現は続けるとしたが、馬場氏は「汚染魚という発言をされた立候補予定者の擁立をやめたわけですから、この際、汚染水という言い方も辞められたほうが国民からの理解は得られるのではないか」とした。
●拉致被害者家族 「日本の平和を考え、声を上げて」 拉致問題担当相は留任 9/13
13日の内閣改造で、松野博一氏が官房長官に留任し、引き続き拉致問題担当相も兼務することが決まった。北朝鮮による拉致被害者の有本恵子さん(63)=拉致当時(23)=の父、明弘さん(95)は、拉致問題が解決に向かわないことについて、いらだちをあらわに。「政治家である限り、現在の世界秩序の維持や将来の日本の平和を考え、声を上げてほしい」と述べ、北朝鮮としっかりと向き合う覚悟を要求した。
●組閣日にも野党の虎党アレ$S待ち 維新は道頓堀ダイブ自重呼びかけ 9/13
岸田文雄首相の内閣改造と自民党役員人事を受け、野党各党は13日、国会内で会見などを行ったが、プロ野球で阪神の18年ぶりのセ・リーグ優勝が間近に迫っていることもあり、虎党で知られる日本維新の会の馬場伸幸代表(58)や社民党の福島瑞穂党首(67)はアレ≠ノ興味津々だった。
馬場氏は、記者団から阪神の優勝が近いことについて問われ「あまり政治家がプロ野球の話をするのはよくないと先輩から教えられてきまして…公の場であまり野球の話はしないようにしておりましたが、大の阪神ファンであります」と説明。「今年はもう、かなりの確率でアレ≠するいうことは間違いないと思っております。ここ数日以内にアレ≠するように期待をしたい」と笑顔で話した。
21年ぶりのセ制覇、日本一になった1985年(昭和60)当時、大阪でコックをしていたという馬場氏は「歓喜ぶりというんですか…私も仕事を終えてからなんば(大阪の繁華街)に繰り出しまして、大騒ぎしたのを覚えています」と振り返った。大阪の中小企業の倒産件数が、ここ数カ月増加しているとして「識者によると、1000億円近い経済効果があるのではないかという風に言われている。そういった皆さんの力になれば非常にいいなと考えている」と景気浮揚を期待した。
馬場氏は「大阪の皆さんにおかれては、ハメを外さないように、度を超えたことをやらないようにお願いをしたい。あの川は非常に危ない川ですからケガをしたり、命を落とす可能性もありますので、事故につながる危険な行動については控えてほしい」と、道頓堀川へのダイブ自重を呼びかけた。
福島氏は定例会見後に「大学時代から周りに阪神ファンが多く、社会党、社民党の阪神ファンの大筆頭は土井たか子さんだった。甲子園で一緒に街頭演説をしたことがある。判官びいきの社民党、社会党に阪神ファンはめちゃくちゃ多い。政治は変えられる。野球のアレ≠熾マえられる」と阪神愛を語った。
2005年の優勝もよく覚えているといい「周りはみんなすごく喜んだ。政権交代もそれから。やっぱり1強≠ヘ良くない。金の力で何でもやれるといったらそれは違う」と、猛虎を政治の世界に投影させる。「もちろんみんなの力ですが、岡田監督の力量も大きい。うれしいです。頑張ってください」とアレ≠フ瞬間を心待ちにしていた。 
●女性初入閣が3人とも「世襲」、5人入閣は「最多タイ」…改造内閣の人事 9/13
岸田文雄首相が13日に実施した内閣改造で、女性閣僚は首相を含む20人のうち5人となり、過去最多に並んだ。改造前の2人から大幅に引き上げることで女性活躍に取り組む姿勢をアピールする狙いがあるが、識者は「女性の顔が一時的に利用されることがないように」とくぎを刺す。一方、初入閣の3人全員がいわゆる「世襲」議員で、女性議員が少ない上に世襲率が高い自民党の現状も浮き彫りになった。
今回入閣した女性閣僚は上川陽子外相(70)、土屋品子復興相(71)、自見英子地方創生担当相(47)、高市早苗経済安全保障担当相(62)、加藤鮎子こども政策担当相(44)の5人。衆院当選8回の土屋氏、同3回の加藤氏、参院2回の自見氏が初入閣となった。
改造前の女性閣僚が2人だけだったことには、自民党内外から「女性をもっと起用すべきだ」との声が上がっていた。世界経済フォーラムが今年6月に発表した23年のジェンダーギャップ指数では、日本の政治分野は146カ国中138位と、経済や教育など他分野に比べて特に低い。
上川氏は13日、記者団に対し、こうした指標を例に挙げて「女性の政治分野の活躍が極めて低いのは日本の課題だ」と強調。閣僚の女性比率が今回、25%まで上がったことについては「数値目標としては3割以上が一つの大きな国際標準。女性の政治家として対外的にもしっかり発言し、信頼を得るための努力をしていきたい」と語った。
女性閣僚5人は、2001年4月の第1次小泉内閣発足時と14年9月の第2次安倍改造内閣発足時と並ぶ過去最多タイだ。
「自民党が女性人材を育ててこなかった」
これに対し、お茶の水女子大の申h栄シンキヨン教授(政治学)は「世界では男女同数内閣の国も増えている。いまだに01年の小泉内閣の記録を超えられないのは、自民党が女性人材を育ててこなかった結果だ」とみる。野党からも「驚くべき数字ではないし、もっと増やせば良かった。適材適所かどうかは問われるだろう」(立憲民主党の岡田克也幹事長)との声が上がる。
自民党は女性国会議員比率が11.8%(6月時点)に留まり、今後10年間で30%まで引き上げることを目標に掲げたばかりだ。
岸田首相は13日、内閣改造後の記者会見で、5人の女性閣僚を登用したことについて「適材適所だと思っている。経済、社会、外交・安全保障、この3つの柱を中心に政策を進めていくために、ご活躍いただける方を選んだ」と述べた。
求められるのは、イメージを覆す「結果」
また、初入閣の3人がいずれも、父親が国政で要職を担った世襲議員である点にも注目が集まっている。
加藤氏は、官房長官や自民党幹事長などを歴任した故・加藤紘一氏の三女。自見氏の父は自見庄三郎・元金融担当相、土屋氏の父は参院議長や埼玉県知事を務めた故・土屋義彦氏だ。交流サイト(SNS)上では「女性活躍ではなく世襲活躍」などと皮肉る向きもあり、3人にはこうしたイメージを覆すような「結果」も求められる。
申教授は「自民党は男女問わず世襲議員の比率が高い上、そもそも女性議員の母数が少ない。初起用の女性閣僚は若い世襲議員になる傾向がある」と指摘。その上で「岸田首相が女性閣僚を増やしたことは、トップリーダーの重要なメッセージになる。女性の顔が政権刷新や選挙対策のために一次的に利用されることなく、自民党の体質を改めるための持続的な努力の一環となることを期待したい」と話した。
●旧統一教会問題はうやむや…「接点」公表議員を次々起用 9/13
岸田文雄首相(自民党総裁)は13日、第2次岸田再改造内閣を発足させた。新閣僚では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求の検討など、一連の問題を所管する文部科学相に、教団側と接点のあった盛山正仁氏(69)を充てた。同日決定した党役員人事でも、教団側との接点を認めた萩生田光一政調会長(60)を再任。教団と党所属国会議員に関する問題をあいまいにした形でスタートする。
旧統一教会を巡っては、昨年9月に党が公表した調査結果で、教団側と何らかの関わりがあった国会議員が180人に上っている。このうち、会合に出席してあいさつや講演をしたなどとして、125人の実名が公表された。
今回就任した閣僚や党役員などでは、盛山、萩生田両氏のほか、木原稔防衛相(54)や伊藤信太郎環境相(70)、村井英樹(43)、森屋宏(66)両官房副長官、平井卓也党広報本部長(65)の計7人が実名公表の対象だった。
首相は13日の会見で「過去の関係いかんにかかわらず、現在は当該団体との関係を一切有していないことを前提に任命した」と強調。教団への対応に関し「しっかりした結論を出すべく、最終の努力を進める。宗教法人審議会の意見を伺いながら、法に基づき最終的に判断する」と話した。
ただ、岸田政権が旧統一教会と党国会議員を巡る問題に厳しい態度で臨んでいるとは言い難い。教団側との接点が相次いで発覚し、昨年10月に経済再生担当相を事実上更迭された山際大志郎衆院議員や、教団トップを「マザームーン」とたたえたとして批判された山本朋広衆院議員は、次期衆院選の公認候補に内定している。
立憲民主党の岡田克也幹事長は13日、記者団に「旧統一教会の問題はこれから本格的なバトルが政府との間で始まる。それに耐えられる内閣なのかが問われる」と指摘。共産党の小池晃書記局長も、盛山氏の文科相起用について「(解散命令請求の検討などで)手心を加えることが絶対にあってはならない」と訴えた。
●女性閣僚5人、最多タイ 11人初入閣、平均63.5歳―第2次岸田再改造内閣 9/13
13日発足の第2次岸田再改造内閣では、女性の積極登用が目立った。閣僚19人のうち、初入閣3人を含む5人が女性。2022年8月の前回改造時の2人から大幅に増えた。これまで最多の第1次小泉内閣(01年4月)、第2次安倍改造内閣(14年9月)に並んだ。
今回初入閣したのは11人で、多くは自民党の各派が推した「入閣待機組」。過半数を入れ替えて刷新感を出す一方、政権の要である松野博一官房長官や鈴木俊一財務相ら6人が留任した。安定感に定評のある上川陽子外相と新藤義孝経済再生担当相の閣僚経験者2人が再入閣した。民間からの登用はなかった。
派閥別の人数は、前回改造時から大きく変わらず、最大勢力の安倍派と第2派閥の麻生派が最多の4人、第3派閥の茂木派が3人で続いた。前回3人だった総裁派閥の岸田派は1減の2人で、二階派や無派閥と並んだ。谷垣グループは1人、森山派からの起用は前回に続きなかった。
参院からは武見敬三厚生労働相と松村祥史国家公安委員長、自見英子地方創生担当相の3人が入った。
岸田文雄首相を含む平均年齢は63.5歳で、前回改造時の62.7歳から0.8歳上がった。最年長は武見氏、土屋品子復興相、公明党の斉藤鉄夫国土交通相の71歳。最年少は44歳の加藤鮎子こども政策担当相で、子育ての現役世代として「異次元の少子化対策」を担う。
衆院の当選回数は首相と同じ10回の鈴木、斉藤両氏が最多。最少は加藤氏で、3回での抜てきとなった。 

 

●まるで民間企業?日本維新の会“政党らしくない”プロモーションの裏側に迫る 9/12
「堅苦しい」「難しい」といったイメージを持たれがちな政治の世界。実際、政治や政治家を遠い存在のように感じている人も少なくないことでしょう。
そんな中、国政政党「日本維新の会」は、政治をもっと身近に感じてもらおうと、YouTubeチャンネルの活用や、タレントを起用した対談企画、ビジネスセミナーへの登壇など、多彩な手法でプロモーションに取り組んでいます。その広報活動は、まさに民間企業さながら。
今回は、そんな日本維新の会を統括する藤田文武幹事長と、広報分野で指揮を執る柳ヶ瀬裕文総務会長を突撃取材。政党プロモーションのキーマンを直撃し、“政党らしくない”プロモーションの裏側について話を伺いました。
Profile
藤田文武さん / 1980年、大阪府寝屋川市生まれ。筑波大学体育専門学校群卒業後、オーストラリア、ニュージーランド留学を経て、スポーツ関連のベンチャー企業へ。役員として経営全般に携わった後、独立起業。スポーツ・健康・医療・介護・福祉・教育・ITの分野で事業を展開。2019年4月、衆議院議員補欠選挙に初当選し、2021年10月の衆議院議員総選挙で2期目の当選。2021年11月、日本維新の会 幹事長に就任。
柳ヶ瀬裕文さん / 1974年11月8日、東京都大田区生まれ。海城高等学校を経て、早稲田大学卒業。筑波大学大学院人間総合科学研究科・博士前期課程在学中。(株)ジェイアール東日本企画で7年間にわたり勤務し、参議院議員公設第一秘書となる。その後、2007年に大田区議会議員にトップ当選。2009年には、東京都議会議員に初当選を果たし、3期10年務める。2019年、参議院議員選挙で比例当選。2021年11月、日本維新の会 総務会長に就任。
政治の世界で、本音を伝える。常識を覆すプロモーションに込める想い
日本維新の会がプロモーションに注力し始めたのは、2021年11月に執行部が刷新されたことに端を発します。若くして幹事長と総務会長にそれぞれ抜擢された藤田幹事長と柳ヶ瀬総務会長は、これまでの常識を覆すプロモーションに取り組む方針を打ち出しました。
当時、大阪以外の地域ではまだまだ認知が広がっていませんでした。選挙応援で全国を回ると、「日本維新の会って、大阪の党でしょ」といったような声をよく耳にしたものです。
私たちは政策にこだわり、それらが必ず日本をより良くすると信じています。だからこそ、プロモーションに力を入れて私たちのほうから国民の皆さまに近づくことで、まずは日本維新の会について知っていただきたいと考えました。
これまでのプロモーション活動は概ね国政選挙に合わせた限定的なものでしたが、藤田幹事長主導のもと、その前例を取っ払って予算を大胆に割き、継続的なプロモーションの実施を決定。民間の広告会社で勤務していた経験を持つ柳ヶ瀬総務会長が、チームを率いることになりました。
「やれることは全部やろう」という意気込みでプロモーションに臨んでいます。
意思決定が極めて早く、チャレンジングな取り組みに前向きなのは、日本維新の会ならではです。
プロモーションに正解はありませんので、トライ&エラーを続けていかなければなりません。
「民間では当たり前にやっていることを私たちも積極的に取り入れていこう」というのが基本的なスタンスです。
幅広い年代に日本維新の会を知ってもらうため、民間と同様、あらゆるチャンネルを駆使している日本維新の会。ただ、試行錯誤を重ねながらも、共通して課している“ルール”があると柳ヶ瀬総務会長はいいます。
戦略として“生感”や“ざらつき”を強く意識しています。従来の政党プロモーションは、綺麗に包んで見せるのが常套手段でした。しかし、国民の皆さまは見透かしていますし、それに飽きています。
私たちは多少いびつだったとしても、なるべくありのままを届けることを心がけています。そのほうが、より身近に感じていただけるのではないかと考えているからです。
藤田幹事長も「建て前が横行しがちな政治の世界で、本音を伝えるカウンターカルチャーを大切にしたい」と力を込めました。
都度反省もある? 失敗を恐れず王道かつ斬新な手法に挑戦
既存の政党プロモーションの枠にとらわれず、多角的に情報を発信しているという藤田幹事長と柳ヶ瀬総務会長。ここからは、具体的なプロモーション事例について、どのような意図で展開されているのか、ご紹介しましょう。
これまでの政党CMと同じようなものは作りたくありませんでした。広告会社に勤めていた経験から思うのは、「CMは見る人の興味を引かなければいけない」ということ。
ちょうどコロナ禍が終息しつつあるタイミングだったので、「社会は変わろうとしているのに政治はいつまでも変わらない」という国民の皆さまのモヤモヤをストレートに表現し、そのうえで「維新はやる」とメッセージを伝えました。
特にマスメディアを活用したプロモーションに関しては、国政選挙の時期に集中させるのが政界では通例でした。地方選挙では、他党の露出が減る傾向にあるため、多くの人に見てもらいやすくなるチャンスが生まれます。
私たちは今年の春の統一地方選挙に背水の陣で臨んでいたので、この好機に国政選挙並みの予算をかけ、全国での認知拡大を目指しました。
統一地方選挙後の効果検証の結果、閲覧数は主要政党内で群を抜いていたとのこと。その事実に確かな手応えを感じているそうです。
予算をかけて広告を出稿していましたが、それ以上の反響をいただけたのは、WebCMの内容が政治の世界では目新しく、多くの人に刺さったからではないかと自負しています。
藤田幹事長の発案で、民間企業の採用活動のように候補者募集に重きを置くことになりました。この国会議員候補者募集ムービーは、その一環で制作したものです。
「政治家として生まれた人はいない。条件は、ただ変えたいという想いだけ」とのメッセージで、多様なバックグランドを抱えた人材を募る私たちの姿勢を伝えています。
「ただ変えたい」と立ち上がった馬場代表と吉村共同代表のヒューマンストーリーに共感していただける人に立候補してもらいたい。そんな想いで作りました。
政策や政治性はもちろん、どんな人が政治に携わっているのかを知ってもらう必要があると考えました。
20代への認知不足が課題でしたので、若い方々にアプローチする狙いで番組を作りました。
ゲストの皆さまには「若者を代表して、疑問や不安を率直にぶつけてください」とお願いしていましたが、たまに吉村共同代表が困った表情を見せたりするのが“生感”があっておもしろかったように思います。
「オープンであること」を心がけているのが日本維新の会の特徴です。
こうしてプロモーションの裏側を公開したり、質問がなくなるまで記者会見を続けたりしているのも、正直に本音を伝えることで信頼していただきたいからに他なりません。
ベンチャー企業での勤務経験があり、自身でも事業を展開してきた藤田幹事長のキャラクターは、ビジネスパーソンとの親和性が高いのではないかと考えました。
ビジネス分野のオピニオンリーダーに私たちが民間感覚を持った政党であることを伝えるため、異例ではありましたが、藤田幹事長に登壇をお願いしたのです。
政治の世界は何事も遅れているのが実情です。しかし、私たちは最先端のスキルやテクノロジーをどんどん取り入れようとしています。
日本維新の会は民間企業に近いカルチャーや風土を持ち、民間のノウハウを計画的に取り入れながら成長してきています。その過程を包み隠さずに伝えて理解してもらうのは、やはり信頼していただくうえで非常に価値があることだと思います。
その他、馬場代表が飲食店の大将に扮するYouTubeトーク番組「馬場食堂」も好評だそうです。同番組の評判は海を渡り、アメリカ・ニューヨークを視察した際に「馬場食堂、見たよ」と声をかけられたというほど。好意的に受け止められている様子に笑みがこぼれました。
これまでの手法では届かなかった層にまでリーチできている実感はあります。
王道と斬新の匙加減は難しく、都度反省はしていますが、チャレンジを後押してくれるので、失敗を恐れずにチーム一丸となって取り組めています。
私たちは近い将来、責任政党になることを視野に入れています。
これからも明確な戦略に則り、王道でありながらも斬新な情報発信に挑戦していきます。
人材発掘でも民間感覚を追求! さらなるプロモーションで、信頼される政治を取り戻す!
スピード感を持ち、次々に新しいプロモーションを仕掛ける日本維新の会。その姿はまるで、民間企業さながら。藤田幹事長は、民間感覚の重要性を強調します。
政治家が決める法律や条例の影響を最も受けるのは民間の方々です。その政治家に民間感覚が欠如していたら、社会は大変なことになってしまうでしょう。それに、成長する組織というのは、どれだけ他業種・他分野からアイデアやノウハウを吸収できるかが鍵を握ると考えています。
政党も例外ではありません。まだまだ発展途上ではありますが、さまざまな面において民間感覚が当たり前の政党にしていきます。
民間感覚が当たり前の政党へ。その想いを「人材発掘」の面でも体現した際たる例が「エントリー説明会」です。
「政治家というキャリアを転職の選択肢に」というスローガンを掲げ、全国各地で開催しています。「政治家を職業にするのか」といったご批判はありますが、多種多様な人材が参画するのが本来の政治の姿です。
培ってきた知識やスキルを用いて公に奉仕したいと考える人たちの受け皿となるために門戸を開き、カジュアルな雰囲気で私たちと心合わせをする場所として機能しています。
最近では、未来を担う若者から政策へのアドバイスを求める「リバースメンター制度」をスタート。議員と意見交換し、政策提言する18歳〜34歳までのリバースメンターを募集しました。
40代の私と柳ヶ瀬総務会長は政界では若手に分類されますが、一般社会では若者といえる年齢ではありません。20代や30代の人たちの感覚とはズレているはずですので、本気でキャッチアップしないと、若者のための政治から遠ざかってしまうのではないかと危惧しています。
常に自分たちを客観視して、民間感覚を大切にしていきたいと思っています。
「エントリー説明会」や「リバースメンター制度」にも反映されているように、“政党らしくない”プロモーションにも共通している民間感覚を重視する姿勢。最後に、今後の展望についてお伺いしました。
社会構造や人々の価値観が変わっている今、政治が変化するためには政党が牽引しなければなりません。
私はプロモーションを担っていますので、変わろうとしていることを国民の皆さまにしっかりと伝え、信頼される政治を取り戻したいと考えています。
私たちは政策や政治姿勢に自信を持っていますが、それも伝わらなければ意味がありません。
さらにプロモーションに力を注ぎ、日本維新の会へ期待を抱いていただけるよう、政治家に対する信頼感につなげていきます。
●維新・馬場代表は民主主義の基本をわきまえていない 政治家として致命的 9/12
7月に、ネットテレビで、日本維新の会の馬場伸幸代表が、「共産党はなくなった方がいい」と発言した。抗議を受けたが、「政治家として信念、理念を持って発言している」として、謝罪や撤回には応じなかった。その際に、「(共産党は)破防法に基づく調査対象団体、政府が危険な政党と見ている」と付け加えた。
私は、この発言に接した時に、言葉を選ばずに言えば、「知性の欠如」だと思った。
まず、「共産主義」を標榜する暴力革命(ロシア=1917年と中国=1949年)しか知らなかった日本国が1952年に破壊活動防止法を制定したのは正当であった。しかし、その後70年以上、暴力革命の兆候もなかった日本共産党に今、前述のような批判を向けることは、知的に不誠実であろう。
さらに、それ以上に、今回の馬場発言は、日本国憲法が保障する民主主義の意味を理解していない点で、政治家として致命的だと言わざるを得ない。
わが国は国民主権国家である(憲法1条)。人間は皆、先天的に個性的で、正確には人間の数だけ異なった意見が存在する。だから、全ての人に「等しく」(14条)思想・良心の自由(19条)と表現の自由と結社の自由(21条)と参政権(15条)が保障されている。その上で、自由な討論と選挙を経て政治的決定と変更を重ねて漸進して行く仕組みが、民主主義である。
そのような日本の政治の中で、公党の代表が、他党に対して、「なくなった方がいい」と言い放って恥じず、それを自分の「信念、理念」だと開き直る。この政治家は「信念」「理念」の意味を知らないのではないか?
あれは、最初の発言直後に「不用意で言い過ぎでした。撤回して謝罪します」と言っておけば済んだ話である。
●神宮外苑再開発の「スクラップ&ビルド」は時代遅れ 9/12
「再開発では、CO2排出削減に非常に逆行するようなことが行われているのです。都知事が今の段階で切り替えることには、歴史的な意味があるのではないかと思います」
神宮外苑再開発をめぐり、420名の建築や都市計画、造園、環境や経済の専門家からなる有志団体が9月11日、施行認可の撤回を求める要請書を東京都の小池百合子都知事宛に再提出した。
要請書では、環境影響評価審議会の柳憲一郎会長に対して、環境アセスメントの再審査も求めている。
専門家有志は、3月8日にも同様の要請書を都知事、都議会議長、環境影響評価審議会会長に提出している。
しかし、9月11日に東京都庁で記者会見した有志代表で元日本大学教授の糸長浩司氏によると、これにまでに要請書に対する回答はない。
糸長氏らは要請書を再提出して、専門家や市民の意見に耳を傾けるよう改めて小池都知事に求めた。
専門家有志が指摘する9つの問題点
専門家有志が要請書で指摘しているのは、再開発を巡る次の9つの問題点だ。
・緑地の一部が破壊される
・風致地区制度をないがしろにした計画である
・歴史的価値のある建築物が失われる
・都市防災拠点が縮小する
・公園まちづくり制度を誤用している
・都市公園区域に超高層ビルが建設される
・環境影響評価の進め方に問題がある
・膨大なCO2が排出される
このうち、環境影響評価の進め方については、日本イコモス国内委員会が2023年1月に事業者の提供した環境影響評価書には「誤りや虚偽がある」と指摘し、再審査を求めていた。
これに対し、審議会で事業者が説明をする場が設けられたが、問題を指摘した日本イコモスの出席は認められず、専門家から「事業者の説明や審議会の進め方に問題がある」などの声があがっていた。
糸長氏は「審議会は事業者が出した評価書を止める、もしくは再度提出させることができたにもかかわらずしてこなかった。都知事も別の専門家を入れて事業者とディスカッションする場を設けることができるのにしなかった。その結果、疑義を提示していたイコモスの同席もなく事業者の一方的な説明になってしまった」と記者会見で批判した。
「スクラップ&ビルド型」の問題点
糸長氏は、CO2排出の観点から、今回の再開発が「スクラップ&ビルド型」であることが問題だとも語った。
再開発では、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて建て替えるほか、伊藤忠商事本社ビルも、今の2倍となる190メートルの高層ビルに建て替える。
しかしスクラップ&ビルドだと、建物を建てる時だけではなく、壊す時にもCO2が排出される。
糸長氏は、その解体時のCO2排出量は環境影響評価書に書かれていないと述べる。
「こういったやり方は時代遅れです。東京都は脱炭素に取り組むと言っており、再開発にかかるすべてのCO2排出量を計算しなければいけない。しかも再開発で緑の量も減るので、CO2吸収量も減ることになります」
「再開発では、CO2排出削減に非常に逆行するようなことが行われているのです。都知事が今の段階で切り替えることには、歴史的な意味があるのではないかと思います」
新建築家技術者集団会員の若山徹氏も「本当に神宮外苑に超高層ビルはいるのか」と疑問を投げかけた。
「ここは本来、建物の高さを制限し、自然環境を守るために風致地区(良好な自然的景観)に指定された地域です。そこで再開発をやるということが、根本的におかしい」
「その歴史的な経緯を踏まえれば、施設は改修リニューアルを中心に考えた方がいいのではないかと思います」
千葉商科大学学長の原科幸彦氏は「公共空間を、企業の利益だけに使うという考えが、そもそも間違っている。みんなが100年かかって残した土地を使わせるというのは、経営者の倫理にもとる」 と述べた。
専門家有志が3月8日に要請書を提出した後も、1年以上にわたり見直しを求める署名活動やデモが続いている。
坂本龍一さんや村上春樹さんら著名人も反対を表明し、サザンオールスターズの桑田佳祐さんは、9月18日リリースの新曲「Relay〜杜の詩(リレー〜モリノウタ)」が、神宮外苑再開発をテーマにした曲だとラジオ番組で明かした。
さらに、世界的な学会「国際影響評価学会(IAIA)」日本支部が6月に停止を勧告したほか、ユネスコの諮問機関である国際イコモスも9月に「遺産危機警告(ヘリテージアラート)」を出した。
糸長氏は「市民や専門家の熱い思いがうねっている中で、都知事は相変わらず業者任せで、自分たちのやっていることは間違いないという主張をしており、討論の場を一切開こうとしない。(討論の)場を広く設けることが、政治家、事業の最終決定責任者としての役割ではないのか」と述べた。
事業者は、再開発に対する市民からの質問に対しプロジェクトサイトにQ&Aのページを設けて、回答している。
糸長氏は、東京都や事業者は疑問にきちんと回答しようという姿勢があるならば、こういったページだけではなく、専門家や市民も交えたディスカッションの場を設定してほしいと求めた。
●小泉進次郎氏は「アホ」か「天才」か、処理水の安全性をサーフィンでアピール 9/12
《今日は福島県南相馬市の坂下海岸で地元の子どもたちとサーフィンをしました》
9月3日、自民党の小泉進次郎元環境相が福島県を訪れ、地元の子どもたちとともにサーフィンを楽しんだ(冒頭は小泉氏のインスタグラムより)。その狙い、理由は……。
「8月22日、日本政府は東京電力福島第一原発にたまる“処理水”の放出開始を決定。24日より放出が始まりました。中国政府は処理水を“核汚染水”と呼んで放出に反対。日本産の水産物の輸入を全面的に停止しました」(政治担当記者)
その後、中国の日本人学校に石や卵が投げ込まれる事件なども発生。そんな“処理水は危険”という風評に対しての小泉流の応援が今回の福島県訪問だった。
SNSでは称賛の声が
小泉氏はサーフィンを楽しむ姿に加え、中国が輸入を停止している日本産の魚(福島県常磐沖で取れたヒラメ)を味わい、《#三陸常磐の海の幸》《#魚を食べよう》というハッシュタグをつけて投稿。安全性をアピールしている。
《パフォーマンスだと言われても構いません》
小泉氏はインスタグラムでそう言い切った。SNSでは彼の今回の行動に対して称賛の声が数多く上がっている。
《スーツ又は作業着を着て遠くから見ているだけの議員よりも、体を張ってアピールしているのは良い事だと思う》
《進次郎氏、サーフィンだけでここまで局面変えられるの天才過ぎるだろ!》
否定の声も承知の上
元総理大臣を父に持ち、“小泉ジュニア”として鳴り物入りで政界入り。女性人気も高かったが、近年彼の発言は“小泉構文”として揶揄される対象に。中身がなかったり、同じことを繰り返したり、当たり前のことをさも自分だけがたどり着けた答えかのように説明する小泉氏の姿に、“アホ”“頭が空っぽ”という評価をする人は少なくなかった。しかし、今回の行動で久しぶりに称賛を集めた。彼はアホなのか、天才なのか?
「実際の政治的な評価や実績は別として、SNSを含めたメディア発信はほかの政治家と比較して秀でていると思います。今回の行動は“福島の海を訪れて安全性をアピールする行動力がすごい”、“サーフィンという誰もが思いつかない発想”と評価する人がいる一方、小泉構文などから“アホがサーフィンしてる”と否定的な人もいる。小泉さんは肯定的な評価だけでなく、否定的な声も出ることをわかってやっていると思います」(ITジャーナリスト)
良いことも悪いこともすぐに広まってしまうSNS社会。
「処理水についていくら科学的な説明をしても民衆の耳目は悲しいことにサーフィン以上には集まらない。メディアの取り上げ方も同様。小泉氏のサーフィンは大してうまくないのでどこか間抜けな姿に見えました。肯定的な人には楽しい絵面に見えますし、アンチはよりバカにする。SNS社会は肯定と否定という“両輪”があるほうが、どちらか一方だけより拡散されやすい。そもそも何をやっても炎上もせず、話題にもならない議員なんて山ほどいるわけですから」(同・ITジャーナリスト)
小泉氏の好きな言葉は「意志あるところに道はある」。拡散を狙う意志のもとにメディア・SNSという道を使うのが誰よりも上手なのかもしれない。もちろん政治家としての評価はそれだけではいけないのだが。
●まるで米国のパシリ、「日本の外交」劣化の行く末 9/12
インドでG20首脳会議が行われている最中の9月9日、林外相がウクライナを初訪問した。日本政府のウクライナ政府への支持を確認したという以外に特に目新しいものは見当たらないが、そもそも外交的にどのような意義がある訪問だったのか、あえて検討してみたい。
G20のタイミングで訪問したワケ
まずはそのタイミングだ。G20首脳会議がインドで開催されている中で行われた訪問だった。岸田首相のG20参加と同時期に林外相が中東と東欧を歴訪しており、外交の観点から非常に積極的である。確かに国会閉会中の9月は外交日程をこなすにはいいタイミングである。これから国連総会も始まる。
しかし、あえてこのタイミングでウクライナを訪問したのは、それ以外に外交的に重要な意味がある。それは、G20サミットにウクライナが招待されなかったことに関係している。
日本が議長国を務めるG7サミットにはゼレンスキー大統領が電撃的に現れて話題となったのに対して、G20議長国のインドはウクライナを招待しなかった。G20は、ロシアや中国のほか、ブラジルや南アフリカ、トルコなど、ウクライナ侵攻に関して中立的な国々がメンバー国となっており、西側色の強いG7とは色合いが異なっている。
G7での議論では、ウクライナ支援を強化するためにグローバルサウスを取り込むことが重要だと言われてきたわけだが、まさにグローバルサウスが集合しているのが、このG20なのだ。
だからこそ、ウクライナ支援政策(すなわちロシアの孤立化)をグローバルサウスに広げるためにも、ウクライナのG20への招待が期待されていたわけだが、その期待が見事に裏切られた形となった。
つまり、このタイミングでのウクライナ訪問は、G20サミットにウクライナが招待されなかったことを補うという隠れた意味があった。G7議長国として、日本がその役割を担わざるを得なかったということだ。
アメリカに追随した格好
しかし、もちろん日本の責任感だけではなかろう。直前の9月6日、7日には、アメリカのブリンケン国務長官がやはりウクライナを訪問して、劣化ウラン弾の供与を含む10億ドル規模の新たな支援を約束している。
林外相のウクライナ訪問は、ブリンケン国務長官と歩調を合わせた形だ。そこまでアメリカに追随する必要があるのかと思ってしまうが、それが岸田外交の「基本方針」ということなのだろう。
林外相の訪問のおかげで、ウクライナ側のメンツは何とか保たれたかと思いきや、G20サミットの共同宣言がウクライナは気に入らなかったようで、「誇るべきものは何もない」とコメントした。
自らがメンバーでもないG20の首脳宣言に対して水を差すとは非常に挑発的だが、さすがは強気のウクライナ、というほかない。ウクライナからしてみれば、ロシアを名指しで非難しないような宣言には何の意味もない。
反対に、欧米と中露の対立による分断の深まりを回避し、なんとか宣言をまとめようと尽力したインドにしてみれば、部外者から水をかけられて不愉快だったろうが、「ロシアの侵略から世界を守っている」ウクライナには、そんな国際的儀礼にかまってはいられない。
ウクライナの反転攻勢は、西側諸国からの莫大な支援にもかかわらず、目に見える結果を出せていないのだが、ウクライナは、軍事支援が足りないからだとして、さらなる支援を世界に要求している。9月7日に訪日したウクライナのステファンチュク最高会議議長は、何を思ったか日本に対してパトリオットシステムや砲弾の供与を求めることまでしている。
そんな中、G20に招待もされず、首脳宣言でも明示的なウクライナ支持を獲得できなかったのである。ウクライナが望んでいるような「戦場での勝利」が得られない中で、国際政治での支持も得られないとなれば、そろそろ停戦の潮時だ、という声が高まることになるだろう。ゼレンスキー大統領が恐れているのは、まさにこの状況なのだ。
影響力を持ち始めているG20
ちなみにG20のGDPはEUを除いても世界の約8割を占め、G7の2倍弱となっている。経済規模だけで見れば、G7よりもG20のほうが、はるかに比重が重い。しかも、中国やロシアがおり、政治的な意味合いでも、G7より包括的で重要性が高いと言える。つまり、G7よりもG20での合意形成のほうが、国際政治における実態を表現していると言っていい。
もちろん、当事者であるロシアや、その支援者である中国がいることから、首脳宣言での表現が弱められたのだ、という言い方もできる。しかし、そのこと自体が、中露が国際政治において決して無視できない大きな影響力を持っていることを示しているのだ。
確かにウクライナの現状には同情の余地がある。NATOは事実上のロシアに対する軍事同盟であるが、ウクライナはメンバーにも入れてもらえていないにもかかわらず、その最前線に立たされてしまっている。
その代償として、NATO諸国がこの状況に対して責任を負っているのは明らかであり、何らかの形でウクライナを支援しなければならないのはよく理解できることだ。
しかし、ひるがえって我が国日本はどうだろうか。さすがに同情心で外交政策を決定しているわけではあるまい。では、法の支配に基づく国際秩序を擁護するためだとでも言うのだろうか。どう転んでも日本にそんな大それたことをもくろむ国力はない。
口でどれだけきれいごとを主張しても、結局のところ国連常任理事国ですらなく、むしろ「旧敵国」にすぎないというのが、国際政治における我が国の立場なのだ。
日本は第2次大戦で無条件降伏して以来、韓国、台湾、フィリピンと並んで、アメリカの極東政策の前線基地となってきた。つまり、中露を大陸に閉じ込めておくための防波堤である。
ヨーロッパ方面の矢面にも立たされている?
それが今やヨーロッパ方面でも矢面に立たされようとしているのだろうか。まさかとは思うが、アメリカの対露、対中包囲網の前線に立たされようとしている、などということがあるとすれば、空恐ろしい話ではないだろうか。
このシナリオはただのうがちすぎの妄想とは言い切れない。なにしろ、常識的に考えれば、ブリンケン長官に続いてウクライナを訪問すべきだったのは、むしろNATOのヨーロッパ諸国の外務相だったはずであるところ、意表をついて世界の東端から日本の外務相がはるばるやってきているのだ。
それにつけても心配なのは日本である。ただただ、対米追従の戦略なき外交を続けていれば、自らの生き残りをかけた選択肢をますます少なくしてしまうだろう。G7はGDPでもG20の約半分、国の数では半分以下だ。EUどころかNATOの中でも対露姿勢に温度差がある。いわんや、BRICSやグローバルサウスの国々をや、だ。
日本政府には、G7以外にも数多くの国々があり、それぞれの立場があるという当たり前のことに目を向け、多様な意見に耳を傾けて、射程の長い外交を進めてもらいたい。
●応じないと非国民? 岸田政権が旗を振る「国民運動」に違和感 9/12
東京電力福島第1原発事故に伴う処理水の放出開始後、中国の禁輸の影響で、日本産水産物の売り上げ減が懸念されている。国内の消費拡大に躍起になるのが岸田政権。閣僚が試食し、「食べて応援」をアピールするだけではない。市井の人々を取り込む「国民運動」も進める。これには釈然としない思いが湧く。水産業界の苦境を招いたのは岸田政権なのに、国民が駆り出されるのか。応じないと非国民扱いされないか。
自衛隊で食材利用、自ら試食、自民党ではホタテカレー
「政府全体として日本産水産物の国内消費拡大に取り組んでいきたいと思っており、わが国の水産物の消費拡大にご協力願いたい」
野村哲郎農相は8日の記者会見でこう述べ、省庁の食堂で日本産ホタテなどを使用したメニューを追加するよう閣議で協力を求めたと明らかにした。
浜田靖一防衛相も同日に記者会見。全国の自衛隊の駐屯地や基地で提供する食事に日本産水産物を積極活用する考えを示した。
消費拡大に躍起になるのは他の面々もだ。
岸田文雄首相や西村康稔経済産業相、渡辺博道復興相らは東京・豊洲市場や被災地を訪れるなどし、主に福島県産の魚を試食して安全性をアピール。経産省福島復興推進グループ総合調整室の担当者は「日本産水産物の消費を全国に広げる活動の一つ。首相や大臣が発信することに意味がある」と強調する。
小泉進次郎元環境相は、福島県南相馬市の海岸で子どもたちとサーフィンをした後、地元で水揚げされた魚を試食と報じられた。5日にあった自民党の水産部会・水産総合調査会合同会議では、北海道産ホタテを使ったカレーが昼食として提供されている。
さらにCMなど予定「現時点で具体的な費用をはじくのは難しい」
そもそも岸田政権は、海洋放出前から国内消費拡大の方策をまとめていた。
8月22日の関係閣僚会議では行動計画を改定。テレビCMやネット動画などを活用したPR、学校現場で文部科学省の「放射線副読本」を使った理解醸成、インフルエンサーや著名人、日本サーフィン連盟に協力を依頼しての情報発信などを盛り込む。
それぞれの費用が気になるところだが、経産省資源エネルギー庁原子力発電所事故収束対応室の担当者は「各省庁が今後こんなことをやるという計画段階の方針。予算から逆算しているものでもない。現時点で具体的な費用をはじくのは難しい」と話す。
対策1番目が「国民運動」…担当者は「あくまで協力要請」と説明
本日の昼食は、ALPS処理水放出後の8月25日に福島県いわき市で水揚げされたスズキを使った塩焼き御膳です。福島県産のあおさ入り味噌汁もいつも食べています。漁業者の皆様の思い、誇り、自信が詰まった美味しい三陸常磐ものを噛みしめました。中国の嫌がらせ電話などに負けないよう応援していきます。…
水産物の輸出額のうち、中国と香港の合計で4割を占める。年額でいえば1600億円。海洋放出に伴う全面禁輸の打撃は甚大だ。そんな中で岸田政権は今月4日、「『水産業を守る』政策パッケージ」を発表。その最初の項目には、国内消費拡大に向けた「国民運動」の展開が掲げられた。
国民運動とは果たして何を意味するのか。
経産省福島復興推進グループ総合調整室の担当者は、ふるさと納税の返礼メニューの活用などを挙げた上で「国内での消費拡大の機運を高め、その流れを全国に広めるのが狙い」と説明する。「特定の国への輸出に依存していた部分が大きい日本産水産物を国内で消費し、水産業を守る取り組みの一環。あくまで協力要請」と述べる。
国民運動については、5日の自民党部会でも盛り上げるべきだとの声が上がった。出席した議員の一人は「風評被害が起きないように皆で正しく理解しようとする方策だ」と語る。
別の議員は「日本は正しいことをしていると世界にアピールする活動の一つだ」と説明する。
「海洋放出も『食べて応援』されるのも勝手に決められたこと」
水産業の苦境を考えれば、日本産水産物を食べて応援したい気持ちが生まれるのも分かるが、政府が強く旗を振り、国民を駆り出すのは釈然としない。
福島原発事故の問題を取材しているフリーライターの吉田千亜さんは「海洋放出も、『食べて応援』されるのも、福島の人たちからすれば勝手に決められたこと。理不尽だという思いが募っている。でも政府のキャンペーンに疑問を呈せば『非国民』『風評加害者』とみなされるので、被害者は黙るしかない」と物言えぬ福島の空気を憂える。
日本政府は今月5日、日本の水産関係者を支援する経費として本年度の予備費から207億円を支出すると閣議決定した。風評被害対策300億円、漁業継続支援500億円の基金と合わせ計1007億円の対策となる。
被害も負担も国民が引き受ける? 識者「東京電力に求償すべき」
大島堅一・龍谷大教授(環境経済学)は「中国の禁輸で、全国の漁業者が被害を受け、その支援を税金でまかなうことになる。さらに国民全体で被害も負担も引き受けるというのは筋違い」と指摘し、事業者の責任を定める原子力損害賠償法に基づき、国は事故を起こした東電に求償すべきだと述べる。
さらに「環境の影響を受ける他国などとの協議は国際原子力機関(IAEA)の国際安全基準でも定めている」と述べ、7月に公表された包括報告書でもその旨が記されていると解説。「中国の反発を『想定外』としながら、『食べて応援』を呼びかけるのは不誠実だ」と話す。
日本の魚を食べて中国に勝つ?
協議の乏しさが露呈する中、複数の全国紙の今月6、7日付朝刊では「保守派の論客」とされるジャーナリスト、桜井よしこさんが理事長を務める公益財団法人の意見広告が掲載された。
「日本の魚を食べて中国に勝とう」
そんな大見出しに続き、中国の禁輸を「科学的根拠の一切ないひどい言いがかり」「不条理に屈しない」と強調。「安全で美味。沢山食べて、栄養をつけて、明るい笑顔で中国に打ち勝つ。早速今日からでも始めましょう」と訴えた。
「『日本スゴイ』のディストピア」の著書がある編集者、早川タダノリさんは「『食べて応援』の行き着くところはこんな地点」と受け止める。中国の理解を得られなかった外交の失政を「被害を受けるかわいそうな日本」にすり替え、中国に勝つという言葉で排外主義とナショナリズムをあおっていると懸念する。
「意見を調整できないまま、陳腐なキャンペーンで社会を分断」
そもそも物価高で、国内の消費は厳しい。総務省が発表した7月の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は28万1736円。物価変動の影響を除く実質で前年同月を5.0%下回った。支出の3割ほどを占める「食料」の支出も切り詰められ、魚介類は前年同月比11.9%減と落ち込んだ。「国内で魚の消費を増やすのは現実的でない。勝者なんてどこにもいない」(早川さん)
食の思想を研究している藤原辰史・京都大准教授(歴史学)は「食べる行為は個人の感情を揺り動かすとともに、社会とつながるパブリックな行為」と語る。
今回の処理水放出と中国の禁輸も「食の問題」と捉えられる。「社会的な文脈が深く関わる問題。食べることは個人の自由として済ませられる問題でもないし、科学的に安全だから了解、というのも単純すぎる」
国内外の関係者間で討議をして決めるべき重大な課題だったが「意見を調整できないまま、これまでの原発政策と同様に、陳腐なキャンペーンと税金の投入で社会を分断した」と嘆く。
「処理水放出は解決済みの問題ではないと認識した上で、放出する日本の側が、意見を交わす国際的な場を設定することが大切だ」
デスクメモ
関係者の理解を得ずに話が進む。唐突に国民運動が始まる。政府の非は棚上げされたまま、運動の目的として「他国に勝つ」が掲げられる。私たちは何に巻き込まれているのか。わけが分からぬ状況。こうして戦時動員されるのか。まだ歯止めはかけられる。国民が良識を示さねば。
●改造人事、総裁選を意識 実力者取り込み、刷新感カギ―岸田政権 9/12
岸田文雄首相が本格調整に入った内閣改造・自民党役員人事には、党内各派の実力者を取り込んだ「総主流派」体制を構築することで、来年秋の党総裁選を乗り切ろうとの思惑がにじむ。ただ、党内対策に偏れば新味に乏しい人事となりかねず、政権浮揚へ刷新感をどう打ち出すかが焦点だ。
首相は11日朝、外遊先から帰国後、萩生田光一政調会長をひそかに公邸へ呼び込んだ。13日の人事について協議したとみられる。萩生田氏は森山裕選対委員長とともに要職での起用が有力となっており、永田町には「萩生田官房長官」説が駆け巡った。
首相は午後に党本部で再び萩生田氏と会ったほか、森山氏や続投させる方向の茂木敏充幹事長、麻生太郎副総裁とも相次ぎ会談。幹事長や官房長官といった「骨格の人事は固まったのか」との記者団の問いかけには応じなかった。
萩生田氏は最大派閥・安倍派で空席が続く会長ポストの有力候補と目される。茂木、森山両氏はそれぞれ派閥トップ。麻生派領袖(りょうしゅう)の麻生氏は首相の後見役を自任する。政権の要所に有力者をつなぎ留めようとの思惑は明らかだ。
政権内では、2021年の前回総裁選で首相と争った河野太郎デジタル相と高市早苗経済安全保障担当相の留任案も浮上。総裁選出馬への意欲を隠さない西村康稔経済産業相の要職起用も有力で、石破茂元幹事長についても閣内での処遇が取り沙汰される。政府関係者は首相の人事方針について、「総裁選に向け、ライバルに力を蓄えさせないことを意識しているのだろう」と指摘する。
党内には、低迷する内閣支持率を再浮上させるには「若手、女性を大胆に登用し、新たな改革志向を打ち出すのが最も大事だ」(党関係者)との声も上がる。首相は政権基盤の安定と人事の浮揚効果のバランスをどう取るかで苦慮しそうだ。
●財務省のしょうもない計算ミス≠ニ動きが鈍い岸田政権 9/12
日本の消費の悪化が続いている。原因は庶民のおカネの不足だ。総務省が5日に発表した7月の家計調査では、実質消費は5カ月連続の減少だ。昨年11月以降、実質消費が増加したのは2月だけで、他はすべてマイナスである。しかも前月に比べて悪化傾向を強めている。消費の低迷といっていい。
7月の猛暑日地点の数は、気象庁が統計を取り始めてから2番目に多かった。もちろん8月に入ってもその勢いは止まらず、まさに異常気象といってよい。そのためエアコンや夏物衣料、そして光熱費が消費増加に寄与した。他方で、自宅のメンテナンスやリフォームへの支出が大きく減少した。
また魚介・肉類など食品は10カ月連続の減少で、しかも消費減少への寄与度も大きい。建築資材の高騰もあり、リフォーム代などは高止まりし、契約数がかなり減少している。構造的な人手不足も深刻で、それが人件費を引き上げてもいる。また食料価格も相変わらず高いままで、前年同月比で8%以上にもなる。
いろいろなモノが高くて、庶民の暮らしを直撃している。そのため買いたくても買えない状況だ。だが、エアコンを使わないと生命にかかわるので、電気代がかさんでいる。これも所得を圧迫して、ちょっとしたぜいたくもできない。
岸田文雄政権の動きは鈍い。生活必需品の価格が高くなっても積極的な消費支援策を打ち出していない。例えば、ガソリン代はレギュラーが1リットル当たり200円を超えた地域もあった。だが、岸田首相はガソリン価格を抑制するための補助金の延期をなかなか決めなかった。理由は財務省の「しょうもない計算」がある。
財務省のしょうもない計算とはこういう理屈だ。モノの価格が高くなると、そのため消費が低下する。消費が低下するので、モノを売る方は価格を下げる。これが経済全体で始まれば物価は自然と低下していく、という理屈だ。
こんな財務省のしょうもない計算は見事に外れている。物価はなかなか下がらず、高止まりしたままだ。物価が高いので消費が低迷している。生活が苦しいからだ。ここが岸田首相や財務省にはわからない。
消費低迷の特効薬はある。消費税減税だ。だが、これに対しても財務省やその影響にある政治家や専門家たちは反対している。理由はこれまたしょうもない理屈だ。消費減税を決めると国民が減税まで買い控えるというものだ。バカらしい。一時的な消費の減少を打ち消すだけで、それ以降は消費拡大が続くだろう。減税しないための屁理屈は大概にすべきだ。
●「吹っ切れた」岸田文雄、解散に向けて怒りの猛進…喧嘩師で勝負師? 9/12
内政では「新しい資本主義」とか「デジタル田園都市国家構想」など一度聞いただけでは分からないことを言う割に、国民生活に直結する懸案事項では、かなりの喧嘩師ぶりを発揮しています。特に、外交では福島のALPS処理水批判を世界的に展開していた中国の首相・李強さんをASEANの会場で発見すると敢然と声かけ。これを呼び水に中国を国際会議での公式会見の場で名指しで批判してしまいます。
いいぞ、俺たちの岸田。
漢・岸田文雄の真骨頂
思い返せば、「やる」となったら周囲の反対を押し切ってでもやろうとするのが岸田流とも言えます。さすがは東京大学二浪の男。悲運の横死を遂げてしまった安倍晋三さんの国葬を断行したのも、キーウ電撃訪問も、G7広島サミットでの各国首脳の原爆資料館立ち寄りも、「やる」となったらど真ん中を突っ切ろうとする御大将こそ漢・岸田文雄の真骨頂と言えます。
ネットでは岸田批判として「息を吐くように増税」と揶揄され、国民生活が厳しさを増す怨嗟の声が響き、岸田内閣の不支持率は50%を超えてしまっています。支持率こそ下げ止まりましたが、こんなんで夏に解散総選挙を打とうと真面目に検討していたのも事実なんですよ。正直やんなくて良かったですね。
ただ、実は岸田政権はなにひとつ増税はしていません。むしろ、経済対策でカネをばら撒こうとしていますね。
「海外にカネをばら撒いている」という批判も、蓋を開けてみればほぼ全額が円借款、すなわち開発援助の貸付であり、しかもその援助で潤うのは日本企業という仕組みになっています。批判者が考えるほど岸田さんは馬鹿ではない、ということになりましょうか。
岸田さんがその死を泣いて嘆いた安倍晋三さんが手がけたアベノミクスで、デフレ対策の名のもとに大胆な金融緩和を行って確かに雇用が生まれたのは事実です。しかしながら、結果的に長年の低金利で円安に誘導され、いまや「安い日本」が当たり前になってしまいました。
海外から観光客が押し寄せるのも、ガソリン代がリッター188円とか法外な値段になっているのも、電力代が上がり続けるのも単純に日本の国力が衰退したからというよりはゼロ金利によるデフレ脱却にこだわり過ぎたアベノミクスの副反応とも言えます。
さらに、1990年代から少子化対策をしないとまずいよねと言い続けてきたものの、ついに日本の人口は大きく減少するフェイズに入ってしまい、高齢者の割合が増えすぎて社会保険料が上がりまくっております。こりゃもう、どうにもならん。働いて納税する少ない若者の数で、大量の高齢者を養うなんて無理な話ですから、年収によっては、納税額よりも納める社会保険料のほうが高いという事態もあり得ます。
これをどうにかするための、旧民主党政権最後の野田佳彦さんと安倍晋三さんとの解散での合意が2012年「社会保障と税の一体改革」だったはずなんですけどね。あれからもう10年ですか、改革なかなか進まないまま。
やる気です、岸田さん。
そういう体たらくにした自民党政治が悪いのだから、いまの岸田政権が責任を取るべきというのも理屈ではそうなんですけど、岸田さん自身がなんか悪いことをしたわけでもないんですよね。公私混同が酷いかなぐらいかな。政府役職関係に身内・親族を使うのはやめたほうがいいですね。
あと、自民党女性局の子連れフランス視察旅行とか風力発電の口利きで競走馬なんてマジ最悪でしたからね。せっかく真面目に働いて他でポイント稼いでも、しょうもないスキャンダルで全部吐き出すのを繰り返しているのは残念なことです。
で、そんな岸田さん、ついに9月13日に内閣改造と、党役員人事に着手するよと言い始めました。おー。さらに、大型の経済対策を次の国会冒頭で議論するよって話になり、さらにさらに、長年の懸案だった統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の解散命令請求を10月中旬にはするよとまで言い始め、さらにさらにさらに、東京都では余計なことを言って公明党さんをブチ切れさせ東京での選挙協力関係の解消まで突き付けられたところから岸田さん自身の介入で元鞘に収めてもらっています。これはもう11月に選挙をやるための各種の布石としか言いようがありませんですよ。やる気です、岸田さん。
自民党内の議論でも、一部の自民党議員からは相変わらず統一教会の解散請求は見送るべきという議論がもっぱらで、その意を受けた統一教会も「岸田政権は解散請求は進めない」と踏んでいた節が強くありました。しかしながら、岸田政権が解散請求に踏み切ったのは、要するに統一教会から支援を受けて議員バッジをつけてる自民党議員もろとも落選していただいて結構という斬り捨てなのでしょう。
実際、夏に選挙するかどうかで騒いでいたときも、かなりはっきり統一教会から支持を強く受けていた議員は落選するであろう予測は出ていました。安倍さんを殺した事情でもあった統一教会に依存している議員は、自民党であってもけじめをつけろ、という。
その意味では、ちゃんとした政府広報というか、国民との対話が行われているならば、無い無いと言われていた岸田政権のテーマ性、メッセージ性は実はちゃんとあるわけです。無能とか検討使とかボロカスに言われがちな岸田さん、仕事はしっかりやっています。岸田さんの決断を支える官僚も頑張っています。
ただ口下手なのかアピール能力がないのか知りませんが、国民には岸田政権が自分ごととして対応してくれているという実感がないという評価が出ていて、これはもったいないなとも思うのです。
各種調査でも、岸田さんの人柄については支持者も不支持者も歴代自民党政権の中では評価されており、支持率が低くても「岸田さん自体は好き(嫌いではない)」なのです。調査が始まって以降、歴代の自民党総理、とりわけ森喜朗さんや麻生太郎さんの壮絶な嫌われぶりからすると、支持率がそこまで下がり切らない理由は岸田文雄という人格の高潔さと割と清潔感のあるイケメン中年だからだろうと思います。
自公政権は、いつの間にか中道左派的な政策を実現する存在に
他方で、安倍政権を支えた岩盤支持層的な保守層からは、かなり自民党は離脱されてしまっており、これらはテーマ性の塊みたいな日本維新の会に流れていってしまっています。今年4月の統一地方選挙でも東京では自民党は大敗と言っていい惨状になっており、得票予測でも右派は維新に流れ、都市部は立憲民主党に奪われる状況になると、せっかく岸田さんがやる気になっても完敗となりどっかと政権交代しなければならなくなるかもしれません。
保険として、ちょっと前まで何故か国民民主党との与党連立に含みを持たせる話が流通していましたが、そもそもが連合(労働組合)を支持母体とする国民民主党がたまたま政策協議で話の分かる玉木雄一郎さんが代表だからと言っていきなりご一緒するのは公明党さんも容認しなかろうと思います。
そういう話が出るのも、岸田文雄さん率いる自公政権は、いつの間にか中道左派的な政策を実現する存在となり、経済対策も経済的弱者に対してガソリン代や電気代、批判も多かった働き方改革の断行、果ては子ども養育費の扶助といった、大きい政府、高い負担で高い福祉・生活保障へと舵を切っているからに他なりません。総体的に支持率が立憲民主党や日本共産党が埋没するのも、実際に左派的な政策はおおむね自民党に先取りされてしまってやることが無くなっているからLGBT関連とか不同意性交罪のようなネタしか残されなくなっており、都市部の左翼票頼みになっていく局面になってきました。
逆に、日本維新の会が脅威になっているのは文字通り日本土着の新自由主義とも言うべき「働かざる者、喰うべからず」の精神で小さな政府、低負担、低福祉の政治軸を明確に打ち出し、社会保障とか支える役所とか全部予算切っちまえよという割り切った政策が、負担増が続く社会保険料で悩む勤労世帯のハートをつかんでいるとも言えるわけですよ。本来なら、自民党こそがそういうことを言って旧社会党から怒られるという旧55年体制を見てきた人たちからすると寂寥感すらある事態だとも言えるんですけどね。
岸田さんがとるべき手段は?
岸田さんが、このままの政策方針で日本全体をどうにかしよう、日本人全員を分け隔てなく良い生活を送れるようにするのだという路線であるならば、今回の解散総選挙以降の岸田さん最大の敵はこの「日本土着の保守思想である維新の会そのもの」になってきます。各種世論調査でも、実質的に野党第一党はもはや維新である一方、都市型選挙区では立憲はまだまだ強く、その両方から挟まれる自公政権が失う議席をどれだけ最小限にとどめられるのかが、解散に打って出る岸田文雄さんの担うべき責務と言えましょう。
働かない誰かを斬り捨てて活躍できる人たちにもっと配分しようという維新は活力を前面に出し、それに対抗するには岸田さんが国民全体で安心・安全な社会を作るための改革を断行しますよというしか方法はないんですよね。
その辺を上手く言葉にできて選挙に強かったのが安倍晋三さんの本質であったとするならば、その後継となる岸田さんがアベノミクスを反省し、統括する別の何かを打ち出さないとせっかく選挙になっても勝てないんじゃないの、岸田さんの気持ちは分かるけど選挙はやめようよってなるのではないかと思います。 

 

●内閣改造、高市早苗氏留任か SC本格整備、保守層の取り込み狙い… 9/11
岸田文雄首相が13日に行う内閣改造・自民党役員人事で、高市早苗経済安保担当相を留任させるとの見方が強まっている。高市氏は現在、安全保障上の機密を扱う人を認定する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度の整備を担当しており、続投は不可欠との指摘があった。保守色の強い高市氏を留任させることで、LGBT法の法制化で離反した保守支持層の取り込みを画策する狙いもありそうだ。
岸田首相は11日朝、G20(20カ国・地域)首脳会議など一連の外交日程を終え、政府専用機で羽田空港に帰国した。自民党の麻生太郎副総裁や、茂木敏充幹事長、公明党の山口那津男代表らと会談しながら、11、12両日で人選作業を進める。
こうしたなか、政権内で中国などに毅然(きぜん)とした姿勢を示してきた高市氏の処遇が注目されている。
中国は科学的根拠もなく、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を批判し、日本産水産物の禁輸など、常軌を逸した「反日」対応をしている。
高市氏は先月29日、「外交ルートの抗議申し入れで仮に効果を発揮しない場合、(中国に)対抗措置を検討していく段階」と語り、G7(先進7カ国)各国との連携や、WTO(世界貿易機関)への提訴などを含めた対応策を明示した。
自民党ベテランは「高市氏の提案は、『遺憾砲』に終始する岸田政権の外交姿勢とは一線を画した。G7各国との方向性とも合致する」と評価する。
岸田首相は8月28日、高市氏を官邸に招き昼食を共にした。高市氏は「人事の話はなかった」と語ったが、前回の党総裁選で激突した両者の関係はどうなりそうか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「発足当初は高かった岸田内閣の支持率の約3割は、安倍晋三元首相を支えた保守層だったと見ている。安倍氏亡きあと、保守層は高市氏を支持している。岸田首相は、高市氏を閣内に置くことで、保守支持層を留めておく狙いだ。次期総裁選を見据え、高市氏の動きを抑えることにもなる」と分析した。
●各党の支持率は NHK世論調査 9/11
各党の支持率です。
「自民党」が34.1%、「立憲民主党」が4.0%、「日本維新の会」が5.8%、「公明党」が2.2%、「共産党」が2.3%、「国民民主党」が1.9%、「れいわ新選組」が0.9%、「社民党」が0.4%、「政治家女子48党」が0.2%、「参政党」が1.0%、「特に支持している政党はない」が42.8%でした。
「自民党」の支持率は、先月から横ばいの34.1%で岸田内閣の発足後では、最も低い水準となっています。
一方「特に支持している政党はない」、いわゆる無党派層の割合は、岸田内閣発足後、初めて40%を超え42.8%に上っています。
また「立憲民主党」の支持率は4.0%で、「日本維新の会」の5.8%が上回りました。 
●日本は「戦う覚悟」を持てるのか 9/11
先日、自民党の麻生太郎副総裁が訪問先の台湾で講演し、台湾有事の際には台湾防衛のため防衛力を行使する考えを表明、賛否両論が渦巻いた。
講演で、麻生副総裁は、中国が台湾への軍事的な圧力を強めていることについて、「台湾海峡の平和と安定は、日本はもとより、国際社会の安定にとっても重要だ。その重要性は、世界各国の共通の認識になりつつある」と指摘した上で、「今ほど日本、台湾、アメリカをはじめとした有志の国々に非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はないのではないか。戦う覚悟だ。いざとなったら、台湾の防衛のために防衛力を使うという明確な意思を相手に伝えることが抑止力になる」と強調した。
講演の最後にも、「台湾の人たちの生活、幸せ、繁栄を維持するため、現状を守り抜く覚悟を蔡英文総統の後に総統になられる方にも持っていただき、同じ価値観を持つわれわれと一緒に戦っていただけることを心から期待する」と連帯を呼びかけた。
麻生副総裁が述べたとおり、日本には、台湾や米国などの有志国とともに、戦う覚悟〞が求められている。8月10日付「産経新聞」朝刊の「主張」(社説)を借りよう。
「戦争を防ぐには、戦う態勢と覚悟を伴う抑止力を相手に示さなければならないという逆説の実行が大切である―が安全保障の世界の常識といえる。/麻生氏は副総理兼財務相当時の令和3年7月にも「日米で台湾を防衛しなければならない」と語っている。「力の信奉者」である中国を自制させるには、日米台などが連携して抑止力を向上させ、同時に外交努力を尽くす必要がある。」
翌9日付の台湾大手紙「自由時報」は一面に「台湾海峡の安全を守る決意を示す」との見出しを掲げて、講演を紹介。加えて二面と三面にも関連記事を掲載した。麻生副総裁が、台湾でも人気の漫画「ワンピース」を取り上げ、「主人公のルフィは友達を裏切らない」と発言したことを、「日本は台湾を裏切らない意味だ」とも論評した。
果たして、そのとき、日本はルフィ〞になれるのだろうか。しっかり、台湾の期待に応えられるのだろうか。
不安材料には事欠かない。事実、在日本中国大使館は、「身の程知らずで、でたらめを言っている」とする報道官談話を発表。談話で「台湾は中国の台湾であり、台湾問題の解決は完全に中国の内政問題だ」と指摘。「もし日本の一部の人々が中国の内政問題と日本の安全保障を結びつけるならば、それは再び日本を誤った道に導くことになるだろう」と非難した。
中国当局の反発に加え、台湾メディアでも、中国寄りの「中国時報」は「戦争をあおっている」、「台湾への善意が感じられない」などと麻生講演を批判した。
日本国内でも、案の定、野党幹部らが記者会見で以下のとおり批判した。
立憲民主党の岡田幹事長「外交的に台湾有事にならないようにどうするかが、まず求められる。台湾有事になったとしても、アメリカは、はっきりと軍事介入するとは言っておらず、含みを持たせている。最終的に国民の命と暮らしを預かっているのは政治家なので、軽々に言う話ではない」
共産党の小池書記局長「『戦う覚悟』という発言は、極めて挑発的だ。麻生氏は、明確な意思を伝えることが抑止力になると言ったが、恐怖によって相手を思いとどまらせることは、軍事対軍事の悪循環を引き起こすものだ。日本に必要なのは、戦う覚悟ではなく、憲法9条に基づいて絶対に戦争を起こさせない覚悟だ」
野党だけではない。連立与党の公明党からも、同八月末、山口代表の中国訪問を控えていたこともあり、「中国を明らかに刺激している。本来なら避けて欲しかった発言だ」との党幹部発言が報じられた。
台湾有事は極東有事であり、日本有事ではない。私は昨年上梓した『ウクライナの教訓 反戦平和主義が日本を滅ぼす』で、そう述べた。「保守」陣営からの反発も招いたが、その一方、同書は「咢堂ブックオブザイヤー2022大賞」に選ばれた。
きちんと同書を読んでいただければ、避けられた誤解だったが、「台湾有事は極東有事であり、日本有事ではない」が、同時に、けっして台湾有事は他人事ではない。むしろ日本は当事国となる。その趣旨で「台湾有事は日本有事」と言っても許されるかもしれないが、それでは、日米間の「事前協議」問題や、中国による核恫喝のリスクを含めた重要な論点が雲散霧消してしまう(拙著参照)。私を批判するだけの「保守」陣営には、そのリスクが見えていない。
麻生副総裁が述べたとおり、「戦う覚悟」は必要である。だが、すでに現職総理でもなく、閣僚ですらない自民党副総裁が、そう講演しただけで内外から反発や批判が噴出するのだ。そのとき、本当に「戦う覚悟」を持てるのか。小谷哲男教授(明海大学)のX(旧ツイッター)投稿を借りよう。
「「戦う覚悟」発言、究極的には日本国民が持つべき覚悟を意味する。しかし、台湾有事に介入すれば東京を核攻撃すると言われてもその覚悟を持てるのか。日本が攻撃されてなくても、台湾海峡を渡る中国艦船を自衛隊の対艦ミサイルや潜水艦で攻撃する覚悟はあるのか。日本国内でまず議論すべき問題。」
●処理水「理解が一層広まった」 首相 中国との応酬に変化も 9/11
岸田首相は、まもなくインドから帰国する。
同行しているフジテレビ政治部・高橋洵記者の報告。
福島第1原発の処理水を海に放出して以降、初めての国際会議で岸田首相は、30近くの国々に日本の立場への理解を訴えた。
岸田首相「多くの国から、処理水放出のプロセスが安全で透明性の高いものであると。理解がいっそう広まったものと感じている」
岸田首相は、インドネシアで日本産水産物の輸入停止を行う、中国の李強首相との立ち話で、措置の撤廃を直接訴え、会議では「突出した対応だ」と名指しで批判した。
これに対し、中国は「責任ある方法で核汚染水を処理すべきだ」と厳しい主張で応じた。
しかし、続くインドのG20で李強首相は一転、日本批判や「汚染水」発言を控え、呼応する形で岸田首相も、中国の名指し批判は避けた。
中国の変化は、会議で日本への理解が広まる一方、中国への賛同はなく、孤立化を避けた中国が、いったんは主張を控えたともいえる。
ただし、今回は習近平国家主席が欠席し、日中首脳会談も実現せず、輸入停止の撤廃の実現に向けた駆け引きはこれからとなる。
●岸田首相 森山選対委員長を政権の要職で起用する方向で検討 9/11
岸田総理大臣は訪問先のインドから帰国し、13日行う内閣改造と自民党の役員人事に向けて調整を本格化させます。
これまでに自民党の森山選挙対策委員長を、政権の要職で起用する方向で検討を進めています。
G20サミットなどへの出席のため、インドを訪れていた岸田総理大臣は、一連の日程を終え、午前7時すぎ、政府専用機で羽田空港に帰国しました。
岸田総理大臣は10日夜、現地で行った記者会見で「関係の方々と調整を進め、早ければ13日に自民党の役員人事と閣僚人事を行うことを考えている」と述べ、13日、内閣改造と自民党の役員人事を行う意向を表明しました。
12日にかけて与党幹部らと会談するなど、調整を本格化させます。
岸田総理大臣は、自民党の麻生副総裁と茂木幹事長を留任させる方向で検討しているほか、森山選挙対策委員長も政権の要職で起用する方向で検討を進めています。
森山氏は、農林水産大臣や党の国会対策委員長などを務めた経験があり、与野党に幅広い人脈があることで知られています。
今回の人事では、政権の骨格をどの程度維持するかや、全体の規模、それに女性閣僚が増えるかどうかなどが焦点となります。
●処理水問題”中国がこうなることはわかっていた”対応策ゼロの岸田外交 9/11
元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏は「東京電力福島原発の処理水について中国がいちゃもんをつけてきた問題の発端は、早くから手を打たなかった岸田外交にある」と一喝する――。
原発処理水をめぐって、中国との情報戦が始まった
東京電力福島原発の処理水を巡って、問題は中国との情報戦の様相を見せ始めている。外務省資料から、これまでの経緯をまとめると以下のようになる。
8月24日、海洋放出が開始されると、中国外交部は、日本の海洋放出開始に対して「断固たる反対と強烈な非難を表明し、誤った行為の中止」を求める報道官談話を発出した。
同日、呉江浩(ご・こうこう)駐日中国大使から日本の岡野正敬外務事務次官にも同様の申し入れがあった。同日、中国海関総署(税関)は、日本からの水産物輸入の全面的な停止を発表した。その後、中国からの嫌がらせの電話が日本中の飲食店や役所に寄せられた。
放出するトリチウムの量だけを見れば、より危ないのはむしろ中国の原発の方だ
改めて言うまでもないが、日本が海洋に放出した処理水は、汚染水をALPS処理し、さらに海水で100倍以上に希釈したものだ。規制基準(6万ベクレル/L以下)を満たし、WHOの飲料水基準(1万ベクレル/L)を満たす、1500ベクレル/未満にまで濃度が下がったものである。規制基準の1/40、飲料水基準の1/7ということになる。
他方、中国の原発では、1年間に液体で、紅沿河原発は87兆ベクレル、寧徳原発は98兆ベクレル、陽江原発は107兆ベクレル、泰山第三原発は124兆ベクレルのトリチウムをそれぞれ海洋や河川等に放出している(出典:『(参考)世界の主要な原発におけるトリチウムの年間処分量』)
日本の福島では、「ALPS処理水」を海洋放出するにあたり、放出するトリチウムの年間の総量は、事故前の福島第一原発の放出管理値(年間22兆Bq)を下回るように設定されている。数字だけ見れば、むしろ危ないのは中国である。
トリチウムは、人体にも数十ベクレル、降り注ぐ雨にも220兆ベクレル/年、水道水にも1ベクレル/L含まれているものだ。ごく弱い放射線だが、体内に入っても蓄積されず、水と一緒に排出される。これらの点は、国際原子力機関(IAEA)の包括報告書でも、「人及び環境に対し、無視できるほどの放射線影響となる」と結論づけられている。
中国国民の9割が処理水放出を危険と感じていたが、岸田首相は不安払拭のための外交努力をしてこなかった
無視できるほど無害な処理水に対して、ヒステリックな反応をしている中国だが、これには伏線があった。まず、去年(2022年)3月に、東京大学の関谷直也准教授(災害情報論)が行った調査があり、この結果が読売新聞(2023年2月14日)に掲載されている。日本、韓国、中国、台湾、シンガポール、ロシア、ドイツ、フランス、英国、米国の計10か国・地域の大都市でインターネット利用者計3000人(20〜60歳代)を対象にしている。「その結果、『海洋放出が行われた場合、福島県産食品の安全性をどう思うか』との質問に対し、『とても危険だ』と『やや危険だ』との回答の合計が日本は36%だった。一方、残る9か国・地域はいずれも6割を超え、高い順から韓国93%、中国87%、ドイツ82%、フランス77%、台湾76%、米国74%と続いた」という結果が出たという。
つまり、中国では、9割に近い人たちが処理水放出後の福島県産品について危険だと感じていたのだ。そもそも、2021年4月13日には、関係閣僚会議で「処理水の処分は、福島第一原発の廃炉を進めるにあたって、避けては通れない課題だ。基準をはるかに上回る安全性を確保し、政府をあげて風評対策の徹底をすることを前提に、海洋放出が現実的と判断した」と述べ、海洋放出を決定しているのである。
その後、菅前首相は退陣し、岸田文雄首相へとバトンタッチした。2年近い在任中に、処理水放出に危険を感じる隣国の中国や韓国に対して、きちんと説明をする外交努力をしていたとは到底思えない。
習近平は処理水を「放射能汚染水」と表現してプロバガンダ
その象徴と思われるのが、2023年3月21日の、中国の習近平主席とロシアのプーチン大統領との首脳会談と共同声明だ。
当時は、ウクライナ問題に対する両国の立場の違いが浮き彫りになったが、この中で「日本に対しては、昨年発表した共同声明に続き福島第一原発の処理水問題を挙げ、海洋放出計画への深刻な懸念を表明。『日本は周辺国などの利害関係国や関係国際機関と十分な協議を行わなければならない』と強調した」(朝日新聞・3月22日)ことだ。声明では、処理水を「放射能汚染水」と表現している。
プーチン大統領が、これまでのところ福島の処理水について、大きな動きをしていないことを考えると、この声明を持ち出したのは、習近平主席本人ということになる。習近平主席が強い意志で、この日本への全面禁輸を仕掛けているのである。
岸田外交の失敗。中国包囲網を築きながら親中をアピールする滑稽さ
この動きにまったくの鈍感にしか動けなかったのは、岸田外交の圧倒的な失敗であろう。岸田首相は、この強いメッセージが理解できず、自分や外務大臣である林芳正氏が親中派であるという自負から、中国包囲網を続けていった。
サミットではヨーロッパ諸国が中国への配慮をにじませていることに歩調を合わせていたが、中国包囲網以外の何物でもないQUAD(日米印豪)を嬉々として開催し、その後、韓国大統領とアメリカを訪れ、日米韓の首脳会談を行ったのである。
中国やロシアは外交的メッセージを盲信することはない。実際に自分たちに対してどういう行動をとっているかで「冷たく判断」していくわけである。
ロシアが他の西側諸国と比較して日本に対して怒りを発していないのも、ウクライナに武器を送らず、期限切れしそうな自衛隊メシ、ヘルメット、必勝しゃもじ程度のものしか供与してない点だ。
逆に、中国が怒っているのは、いくら親中派の外務大臣がどうとりつくろうとしても、やっていることは中国を刺激することばかりだったということだ。
習近平が仕掛けてきた以上、処理水問題はしばらく長引く
もしも世界一狡猾で、賢かった安倍政権、安倍外交であれば、日米韓の会談のその足で、北京へ赴くことぐらいしたであろう。何もせず、習近平主席の怒りを察知することができなかったのだ。習近平主席は、これまで使えるものは何でも使ってきたし、表情には出さず静かに政敵を葬ってきた経歴がある。また中国の体制から考えて、習近平主席が自ら日本の処理水を問題視しているとなれば、周囲は完璧な忖度をし、その線に沿った情報しか習近平主席へあげなくなっている可能性がある。
今、岸田首相が、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席のためインドネシアを訪問していて、9月6日午後、ASEANプラス3(日中韓)首脳会議の開催前に、中国の李強(リーチアン)首相と短時間、接触したが、何の改善ももたらさらないであろう。
習近平主席が言い出した問題である以上、解決まで時間が長引くことは覚悟しなくてはいけない。
やはり、安倍首相のもとで、外務大臣をちょっとやっていったからといって、「外交の岸田」などと自負をはじめるような人物の外交がうまくいくことなど、期待してはいけなかったのだ。国難に際して、中国へ土下座外交を開始し、漁師にカネをばらまくだけの惨状には目を覆いたくなる。
日本には、いくつか外交オプションがあった。例えば、中国の全面禁輸に対抗して、こちらも禁輸する。WTOに提訴する。これらは、禁輸については中国側のさらなる対抗処置を恐れて、WTOについては時間がかかることから見送られている模様だが、押せば引くと思われればさらに押してくるというのが外交である。どうせ解決には時間がかかるのだから、日本は国家としての矜持を見せなくてはならないときだ。
●麻生氏に反対され断念 岸田首相の「茂木切り」〜得をしたのは麻生氏だけ 9/11
岸田文雄首相は9月の内閣改造・自民党役員人事で、茂木敏充幹事長を交代させるつもりでいたが、土壇場で麻生太郎副総裁に反対され、茂木氏を留任させることにしたーーマスコミ各社はおおむねそのような方向で報じている(FNN『幻となった「茂木はずし」 麻生氏進言で首相、葛藤の決断』)。
岸田首相はポスト岸田への意欲を隠さない茂木氏への警戒感を強め、両者の間にはすきま風が吹いていた。菅義偉前首相や二階俊博元幹事長と親密な公明党も茂木氏との関係はぎくしゃくし、東京では自公の信頼関係が「地に落ちた」(石井啓一・公明党幹事長)と言われるほど一時は悪化していた。
私も、岸田首相が茂木氏を交代させ、菅氏や二階氏に近い森山裕選挙対策委員長か、あるいは茂木派の次世代ホープである小渕優子元経済産業相を幹事長に据え、「茂木外し」を進める可能性は十分にあるとの見方を示してきた。
一方で、茂木氏を幹事長にねじ込んだ麻生太郎副総裁が茂木氏続投を強く主張していることから、茂木氏交代で麻生氏を説得できるかどうかが大きな焦点となるとも指摘してきた。
茂木氏を留任させるか交代させるかは、岸田首相が今後の政権運営で、麻生氏を引き続き最大の後ろ盾とするのか、菅氏や二階氏との連携に舵を切るのかを見定める最大のポイントだったのである。
これまでのマスコミ報道によると、結果は茂木氏留任に。つまり、岸田首相は麻生氏に軍配をあげた。つまりは麻生氏に茂木氏留任を迫られ、決然と振り切ることができなかったのである。
岸田首相は最終決断を下さすに外遊に飛び立った。帰国後に茂木氏と会談して最終決定する考えだが、首相不在の間に麻生氏主導で「茂木氏留任」の外堀は埋まっており、帰国後にひっくり返すのは至難の業だろう。
これにより、第二派閥・麻生派ー第三派閥・茂木派ー第四派閥・岸田派を主流派とする現体制は維持され、菅氏と二階氏は引き続き非主流派となる。最大派閥・安倍派の後継会長が決まらない状況に乗じて、岸田首相は安倍派を分断しながら、来年秋の自民党総裁選で過半数の支持を獲得する戦略を進めていくことになろう。
それでは、岸田首相はなぜ麻生氏に軍配をあげたのか(なぜ麻生氏を振り切れなかったのか)。
もちろん麻生氏は「岸田政権の生みの親」であるというのが大きな理由なのだが、麻生氏も高齢で影響力が低下しつつあり、麻生氏頼みで来年秋の総裁選を勝ち切れるのかという不安もあったことだろう。だからこそ、茂木氏交代を画策したのだ。
岸田首相が麻生氏を切れなかったのは、以下の理由があると私はみている。
1 麻生氏や茂木氏が窓口となって交渉してきた国民民主党との連立構想が浮上したこと。これは麻生氏らが自ら煽ったフシがあるが、それでも国民民主党の連立入り交渉を水面下で続けるとなれば、窓口役の茂木氏を幹事長から外しにくい。麻生氏や茂木氏はそれを狙って国民民主党との連立構想を流布し、外堀を埋めたとみられる。
2 公明党との関係が修復に向かったこと。これも茂木氏留任の環境を整えるため、麻生氏や茂木氏が公明党との関係修復に急いだ結果とみていい。
3 菅氏側近の秋元真利衆院議員が東京地検特捜部に再生エネルギー事業をめぐる受託収賄罪で逮捕されたこと。この事件は原発推進のための「国策捜査」との見方があるが、それに増して菅氏への政治的牽制と側面もある。麻生氏や茂木氏と検察東京の関係は定かでないが、内閣改造・党役員人事直前の強制捜査が麻生・茂木ラインに有利に働いたのは間違いない。
4 福島第一原発の海洋放出への対抗措置として中国が日本の水産物の全面禁輸に踏み切り、日本国内で反中感情が高まったこと。岸田首相は当初、中国との関係改善に向けて親中派の二階氏に訪中を打診したが、中国政府の対応が硬いうえ、国内で反中感情が高まったことを受けて、対中強行姿勢を示して支持率回復につなげる姿勢に転じた。麻生氏は台湾有事などを煽って対中強行姿勢を示してきた経緯があり、日中関係の悪化も麻生氏の追い風になったとみていい。
以上の理由に加え、私は、麻生氏が岸田首相に対し、土壇場で「来年秋の自民党総裁選で茂木氏が岸田首相を引きずり下ろして出馬することはない」と約束し、警戒感を解いたのではないかとみている。
これは岸田首相と麻生氏の二人だけの極秘やりとりでウラを取るのは難しいが、そのくらいの「約束」がなければ、岸田首相が茂木氏留任を受け入れるのは難しかったのではないか。
岸田首相は帰国後に茂木氏と会談して、来年秋の総裁選への対応を確認するつもりだろう。だがその場で茂木氏が「総裁選に出馬します」と伝えるとは思えず、「岸田首相を支えます」と言われたら切り捨てることはできまい。
政界の一寸先は闇である。岸田内閣の支持率がさらに低下すれば、茂木氏が「口約束」を破って来年秋の総裁選で岸田首相に対抗して名乗りをあげる展開もゼロとは言えない。そのときに「約束が違う」と言っても、後の祭りだ。
とはいえ、茂木氏は留任後、少なくとも当面は政権を支える姿勢をみせるだろうし、内閣支持率が回復すれば岸田首相に対抗して出馬するのは難しくなるのも事実である。その意味で政治家同士の「口約束」の効果はゼロとは言えない。
麻生氏は茂木幹事長の続投を強く主張していただけに、交代となればメンツが丸潰れである。それに増して政敵の菅氏や二階氏に近い森山氏が幹事長に就任すれば、麻生氏の影響力も大幅低下するところだった。茂木氏留任は絶対に譲れない一線だった。
それに比べ、首相の座を狙う茂木氏にとって留任が正しい選択だったかどうかはわからない。
茂木氏は来年秋の総裁選時には69歳になる。岸田内閣の支持率が回復すれば総裁選で「岸田続投」となり、茂木氏に首相の順番は回ってこなくなる可能性が高い。さりとて、岸田内閣の支持率が低下し、「岸田勇退」となれば、岸田政権失速の責任を幹事長として共有することになり、党内で「茂木支持」が広がるのは難しい。
どちらに転んでも、茨の道だ。
茂木氏は自らを幹事長に引き立てた麻生氏のメンツを守るために留任したことで、最後は自らの首相への道を狭めたーーそんな構図も十分に成り立つのである。 

 

●原発処理水問題で露呈した岸田政権の政治術不在 9/10 
岸田政権の原発処理水に関する説明は十分だったのか。中国に策謀の機会を与えたのは政治術不在ゆえだ。
はるか昔の学生時代、京極純一先生の政治学の講義で、政治の世界で紛争を処理するときには、「盗人にも三分の理」という心構えが必要という話を聞いた。不当な主張をしているように見える側にもそれなりの言い分があり、それを聞いたうえで妥協点を探るのが政治術だという意味だった。
いわゆる処理水の海洋放出をめぐる岸田政権の稚拙な対応を見て、このエピソードを思い出した。もちろん海洋放出に反対する人々は盗人のような不当なことをしているわけではなく、むしろ三分の理しかないのは政府の側であろう。
自国の原発事故に起因する放射性物質を含有する水を太平洋に流すなら、もっと肩身の狭そうな態度で国内関係者や各国に平身低頭してお願いしたうえでなければならない。中国がこの問題を政治的に利用していることは明らかだが、中国にそのような策謀の機会を与えたこと自体、岸田政権における政治術の不在の帰結である。
たまり続ける処理水対策としての海洋放出を国民や諸外国に支持してもらうには、それが唯一可能で安全な方法であること、または可能な選択肢の比較の結果、最善の方法であることを論証しなければならない。岸田政権はその義務を果たしたとは言いがたい。 ・・・ 
●日本の政治家、モロッコに哀悼のメッセージを送る 9/10
岸田文雄首相は、アズィーズ・アハヌーシュ・モロッコ首相に、1,000人以上の人々が死亡した壊滅的な地震に対する哀悼の意を表すメッセージを土曜日に送った。
「モロッコ王国の中部での地震災害で多くの貴重な命が失われ、多くの人々が影響を受けたことを深く嘆き悲しんでおります」と岸田首相は述べた。「亡くなられた方々に深く哀悼の意を表し、彼らのご家族に心からお悔やみ申し上げます。影響を受けた方々の速やかな回復と、影響を受けた地域の迅速な復興を心よりお祈り申し上げます」。
「また、現地のニーズに基づいて、日本は可能な限りの支援を提供する用意があることをお伝えしたいと思います」と、述べた。
林芳正外務大臣もモロッコのナースィル・ブリタ外務大相にメッセージを送った。「カイロでの私たちの会合の直後に、モロッコ王国の中部で地震災害が発生し、多くの貴重な命が失われ、多くの人々が影響を受けたことを深く嘆き悲しんでおります」。
「亡くなられた方々に深く哀悼の意を表し、彼らのご家族に心からお悔やみ申し上げます」。林大臣はまた、日本ができる限りの支援を提供する用意があり、復興に協力する用意があることも述べた。
●秋本衆院議員逮捕 政治とカネの徹底解明を 9/10
東京地検特捜部が秋本真利衆院議員=自民党を離党=を逮捕した。日本風力開発側から提供された総額6100万円の資金を巡る受託収賄容疑だ。「政治とカネ」は政治不信に直結する問題であり、疑惑を徹底究明すべきだ。
洋上風力は、再生可能エネルギー拡大の「切り札」として政府が位置付ける。石油燃料が高騰し続ける中、輸入に頼らざるを得ない日本にとって洋上風力への期待は大きい。政治家と業者の癒着が疑われれば、国民は再生エネルギー自体に懐疑的な感情を抱きかねない。
東京地検特捜部は8月4日に収賄容疑で東京・永田町の議員会館事務所を家宅捜索した。この1カ月あまりの捜査で立件できる材料がそろったとみたのだろう。
秋本容疑者は家宅捜索直後に外務政務官を辞任したが、政府の要職に就いていた政治家が収賄容疑の捜査対象となったこと自体、政府は深刻に受け止めるべきだ。
秋本容疑者は2012年に初当選した当時から脱原発を主張していた。17年8月に安倍内閣の国土交通政務官に就任し、同年秋には自民党内の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の事務局長となった。国会質問で洋上風力について質疑し、入札で事業者を選定する際の基準の見直しなどを訴えていた。
東京地検は、日本風力開発が事業参入に有利になるよう秋本容疑者に国会で質問するよう依頼し、秋本容疑者はその見返りに謝礼を受領したとみている。本格的な聴取はこれからだが、秋本容疑者が、資金提供を受けた特定の企業が入札で有利になるよう配慮して国会質問していたとすれば、公平性や透明性が求められる政治家として失格である。直ちに辞職すべきだ。
秋本容疑者に資金提供した日本風力開発側は贈賄容疑を認めているとされる。当初は資金は秋本容疑者と社長側が共同運営する馬主組合などに充てたものと主張し、賄賂性を否定していたという。
今年になり、2019年参院選広島選挙区の買収事件で東京地検特捜部の検事による供述誘導の疑いが浮上した。あくまで証拠に基づいて資金提供の背後にある構図の究明に徹してほしい。
再生エネルギーの開発促進は、脱炭素社会とエネルギーの自給率向上に向け避けては通れない重要課題だ。とりわけ洋上風力発電は周囲を海で囲まれている日本で本格的な普及が期待されている。
政府は18年に施行した再エネ海域利用法に基づき、対象海域の指定や事業者の選定を進めているが、透明性の確保は急務だ。
外務政務官を辞任はしたものの、秋本容疑者の任命責任は岸田文雄首相について回る。衆院解散を見据えた小手先の内閣改造で支持率の浮揚を狙うより、重要課題であるエネルギー政策への疑念を払拭することが先決だ。
●自公連立政権入りに含み残す 国民・玉木代表「与野党超えて協力」 9/10
国民民主党の玉木代表は、10日朝のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」に出演し、自公連立政権入りの可能性について、「政策本位で与野党超えて協力する」と述べた。
国民民主党・玉木代表「政策本位で国民にとって国にとって必要な政策を進めるためには、与野党超えて連携・協力していきましょうということをやっていますから」
玉木代表は、国民民主党の自公連立政権入りが取り沙汰されていることについて、「われわれから何か言ったことはない」と沈静化を図った。
一方で、「政策本位で与党でも協力するところはする」と先々の連立入りに含みも残した。
また処理水をめぐり、野党の一部から政府と異なる見解が出ていることについて、玉木代表は「政治家は科学に基づく発言をすべきだ」と批判し、自民党の佐藤正久元外務副大臣は、「中国を利することになる。絶対に慎んでほしい」と慎重な対応を求めた。
●中国首相が処理水めぐり日本批判せず G20サミット 9/10
インドで開幕したG20サミットの会議で、中国が処理水を巡り日本への批判をしていなかったことが分かりました。現地から報告です。
(政治部・千々岩森生記者報告)  政府関係者によりますと、岸田総理より先に順番が回ってきた中国の李強首相からは処理水に関する発言も、そして、日本を批判する言葉も聞かれませんでした。
岸田総理は9日の会議で、中国を念頭に「突出した行動を取っている」と述べ、(日本の)水産物の輸入停止を批判しました。
ただ、李強首相が日本を批判しなかったため、岸田総理も中国を名指しすることは避け「一部の国が」との表現にとどめました。
李強首相は、6日には「核汚染水」という言葉を使って日本を強く批判しましたが、7日はトーンを下げてきていました。
輸入停止がすぐに解除される可能性は低いものの、日本政府は、中国の出方に変化が表れるのかどうか慎重に分析する方針です。
●岸田政権は世論への対応がうまい? 内閣改造から「木原隠し」の解散総選挙 9/10
「外遊から帰国すれば、内閣改造、党役員人事で一色だ。どんなサプライズを考えているのか、そして解散総選挙に突っ込むか。党内では2人寄ればそんな話ばっかりだ」と自民党のベテラン議員がつぶやく。
現在、外遊中の岸田文雄首相は9月11日に帰国すると、すぐさま内閣改造と自民党の役員人事に着手するとみられている。9月13日が濃厚だ。
早くも、麻生太郎自民党副総裁や茂木敏充幹事長の留任が内定したというニュースが駆け巡る。
安倍派の「5人衆」では、松野博一官房長官と萩生田光一政調会長が、重要閣僚か自民党の有力ポストで決まったかのような報道もある。
岸田首相はこれまで、内閣改造や党役員人事について、「適材適所で決める」と述べるにとどまっているが、内閣支持率が低迷している中でメンバーを一新して国民にアピールし、政権の求心力を高めるのが最大の狙いとなろう。
今回の人事の最大の焦点
自民党の政務調査役を長く務めた田村重信氏は、「麻生氏、茂木氏を早々に留任として麻生派と茂木派をガッチリおさえた。安倍派5人衆にも処遇、配慮するニュースもある。3つの派閥を軸に今後の政権運営をし、安定感を第一に考えていることは透けてみえます」
岸田首相は、まず政権の安定感を優先するという戦略のようだ。
その安定感において、焦点となりそうなのが木原誠二官房副長官の処遇だ。 
岸田首相の右腕で、「影の首相」とも呼ばれ、岸田政権の「要」でもある木原氏。内閣改造での入閣が濃厚とされていたが、週刊文春の報道で状況が変わった。
週刊文春は、木原氏の妻の前夫は自殺したとされているが「不審死」であり、木原氏の妻が関与していたのではないかとスクープした。また、警視庁が「不審死」について再捜査に乗り出し、木原氏の妻が捜査対象になると、木原氏が警察サイドに「圧力」をかけたのではないかという疑惑も報じている。
渦中の人物となった木原氏の処遇はどうなるのか。官邸関係者がこう打ち明ける。
「内閣改造では木原氏は交代で、党本部のポストでほとぼりをさましてから復活させる、という話が流れていた。しかし、岸田首相が木原氏は外せないと決断したようです。官房副長官留任はほぼ決まり。岸田首相は外遊の真っただ中ですが、しっかり木原氏が同行しています。アメリカや中国の首脳が集うインドでのG20サミットに同行させるというのは、留任が前提にあるからです」
立憲民主党は8月、週刊文春の報道をもとに木原氏の問題について警視庁からヒアリングをした。その際、木原氏にも出席を求めたが、「週刊文春を刑事告訴した」という説明がなされ、木原氏は姿を見せなかった。
立憲民主党は秋の臨時国会で徹底追及の構え
立憲民主党の幹部は、内閣改造後の10月にも開かれる見込みの臨時国会を見据えて、こう話す。
「木原氏が官房副長官に留任となれば、そりゃあ徹底的に疑惑追及することになる。週刊文春の記事からも明らかに不審死であり、木原氏は国会議員という立場からしても、全面的に協力すべき。なのに、捜査に圧力、妨害をかけたと書かれているのですから、こんな大きな問題はありません。臨時国会の最大のポイントが木原スキャンダルです」
故ジャニー喜多川氏の「性加害」問題や、贈収賄事件での衆院議員の秋本真利容疑者の逮捕、京都アニメーションの青葉真司被告の裁判など大きなニュースが続き、印象が薄れつつある木原氏のスキャンダルだが、「再炎上させて、火の手をあげたい」と立憲民主党の幹部は意気込む。
スキャンダル炎上を止めるには…
一方、岸田首相はスキャンダルの再燃は避けたいところ。
「木原氏のスキャンダル炎上を止めるには解散総選挙しかないでしょう。臨時国会の冒頭でやれば、野党の追及の場はなくなります。木原氏を守るためなら岸田首相は打って出るかもしれない」と自民党の幹部が漏らす。
前出の田村氏も、「世論調査で自民党の支持率は低下してきているとはいえ、維新や立憲民主党も大きくアップしているような状況ではない。自民と公明で過半数がとれると決断すれば、岸田首相は解散総選挙をやってくるのではないか。ジャニーズの会見日に秋本容疑者逮捕というタイミング。岸田政権は世論への対応がうまいし、運が強い。松川るい参院議員のエッフェル塔炎上など、他にもスキャンダルがあるが、解散総選挙になるとマスコミも、選挙妨害を意識してスキャンダル報道はある程度自制してくる。木原スキャンダルを追及させない解散総選挙は十分あり得るでしょう」と話す。
木原氏を手放せないという岸田首相は周辺に、「一部で大きく報じられているが、なんの確証もない。なぜ木原がこんなにたたかれなきゃいけないのか。警察もシロと言っているではないか」とこぼしているという。
内閣改造から「木原隠し」の解散総選挙に突っ走るのか? 

 

●中国のSNS情報操作、米世論誘導狙い Microsoft調査 9/9
米マイクロソフトは8日までに、サイバー攻撃に関する調査報告書を公表した。SNS上で中国の工作員とみられる偽アカウントが生成AI(人工知能)を使い、米国の世論を誘導しようと試みている可能性があると指摘した。2024年の米大統領選に向け、情報操作への警戒感が強まりそうだ。
報告書によると、3月ごろから銃規制や特定の政治家など論争になりやすいテーマに焦点を当てた誤情報が増えたという。生成AIで目を引く画像をつくって発信しているのが特徴だ。
いずれもアカウントはインフルエンサーや著名人を偽装しているケースが多い。調査対象にしたSNSの詳細は明らかにしていないが、X(旧ツイッター)やフェイスブックとみられる。
例えば自由の女神が銃を持つ画像に「暴力の女神」とキャプションをつけた投稿があった。自由の女神は指が6本以上ある不自然な画像で、生成AIによってつくられたことを裏付けているという。
米国の有権者になりすました投稿があったとも指摘した。米司法省が中国の公安当局の工作グループによるプロパガンダ情報だと指摘した手法と類似していると述べた。
報告書は「(生成AIを使った)比較的質の高いビジュアルコンテンツは、SNS利用者から高い注目を集めている」としている。より目を引く加工画像を使って拡散力を高めている実態が明らかになった。
マイクロソフトの脅威分析センターのゼネラルマネジャー、クリント・ワッツ氏は「いつ大規模に導入されるかはわからないが、中国がこうした技術を時間をかけて磨いていることが予想される」とコメントしている。
SNS上の偽情報やプロパガンダへの警戒感はロシアの介入が報じられた16年の米大統領選をきっかけに強まった。近年では急速に生成AIの商用サービスが広まったことで複数の言語への翻訳や自由な画像作成が容易となり、悪用が懸念されている。
●秋本議員逮捕 「利権」の構図、徹底解明を 9/9
海に囲まれた日本で、再生可能エネルギーを拡大する切り札となるのが洋上風力発電だろう。その事業が汚職事件の舞台となったのは由々しき事態だ。東京地検特捜部が衆院議員の秋本真利容疑者を、受託収賄容疑で逮捕した。
逮捕容疑は贈賄側の日本風力開発の前社長から総額で約6100万円を提供された秋本容疑者が「請託」を受け、同社の意向に沿う国会質問をした、というものだ。
秋本容疑者は「国会質問は自身の政治信条に基づく」と容疑を否定したが、党内で再生エネルギーの「族議員」を自任するなど、洋上風力発電の業界と密接な関係を持っていたことは疑いない。
本人は8月に事件が表面化した直後に外務政務官を辞任し、説明責任を果たさないまま自民党を離党した。しかし比例南関東で党を代表して選出された議員であり、即時に議員辞職するのが筋だろう。同時に言えるのは個人の問題だけでなく政権の看板政策の在り方も問われることだ。
洋上風力発電は1兆円規模の市場に成長すると予想されている。この事件で新たな利権が浮き彫りになったとの見方もある。事業の仕組みが成熟しない中、業界と癒着した政治家の「介入」が起きる余地があるのかもしれない。
今回、収賄罪より重い受託収賄罪の立件に検察が踏み切ったのも競走馬に関する資金の名目で現金が動き、恣意(しい)的な国会質問が行われたとする構図に強い自信があるからだろう。前社長は贈賄の意図を認めたと伝えられる。
象徴的なのが昨年2月の国会質問である。秋田県沖の事業参入を巡る前年末の入札では、売電価格の安さから大手商社などの企業連合が独占的に落札し、選外の日本風力開発は不満を抱いたようだ。秋本容疑者は「売電価格より運転開始の早さを評価すべきだ」と政府にただした。
既に次の公募が始まっていた段階なのに政府が異例の評価基準見直しを表明し、やがて新基準が公表される。同社側から賄賂の一部とされる現金が議員会館で渡ったのは、その直後だ。政府側は政策変更の手続きに問題はないと言うが、本当にそうなのか。
洋上風力発電のイメージダウンが、早くも懸念されている。この事件で普及の流れを停滞させてはならない。政治家の思惑で再生エネルギー政策がゆがめられることがないよう、関係省庁は一連の経緯を十分に検証すべきだ。
もう一つ指摘したいのは国会質問の重みだ。国権の最高機関で議員に認められた権利であり、職務権限とする司法判断は定着している。リクルート事件、KSD事件など国会質問が受託収賄罪に問われた事件は過去にもあった。
金をもらって質問する―。それがまかり通れば議会政治の根幹が揺らぐ。検察の見立てが正しければ岸田政権でも相次ぐ「政治とカネ」の問題の中で特に深刻であり、任命責任うんぬんの話にとどまらない。秋本容疑者の逮捕に、ひとごとのような反応をする政府・与党は事の本質をどこまで認識しているだろう。
●統一協会と自民党 深い癒着を曖昧にはできない 9/9
文部科学省は7日、宗教法人法に基づく質問権行使への統一協会の対応が不適切だとし、東京地裁に過料を科すように通知しました。同省が今後、解散命令の要件を満たすと判断すれば、宗教法人審議会を開き、地裁に解散命令を請求することになります。被害拡大防止、被害救済のために解散請求を速やかに行うことが必要です。
一方、岸田文雄政権は統一協会と自民党の癒着の解明に背を向けています。関係の深さを批判された党議員を次の衆院選の公認候補に決めるなどしました。疑惑の幕引きは絶対に許されません。
統一協会は「質問権行使自体の違法性を含め徹底的に争う」と主張しています。多額献金で家庭崩壊を招くなどの重大な被害に全く反省がなく、責任逃れに躍起です。同協会の違法行為を断罪し、被害根絶、被害者・家族の救済・支援を強めることが不可欠です。
統一協会は、正体を隠して信者を集め、高額献金や霊感商法などの被害を広げました。自民党を中心とする政治家が統一協会と親密な関係をつくり、同協会の「広告塔」となり、お墨付きを与えたことが被害を深刻化させました。
長期にわたる深い癒着関係は、昨年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件で大問題になりました。安倍氏は統一協会関連団体の集会に敬意を示すビデオメッセージを送っていました。安倍氏には国政選挙で自民党候補者に統一協会の組織票を差配した疑惑もあります。
統一協会と表裏一体である「国際勝共連合」を1960年代末に日本に引き入れたのは岸信介元首相(安倍氏の祖父)らです。自民党と統一協会の癒着の中心は、安倍氏が会長を務めた派閥「清和会」ですが、岸田首相は故人であることを理由に安倍氏の調査を拒みました。同派会長だった細田博之衆院議長についても本人の説明任せに終始し、究明を妨げています。
自民党は昨年、同党国会議員の約180人が統一協会と接点があったと公表したものの、議員の自主申告の集計で済ませました。首相が強調する関係断絶は説得力がありません。統一協会関連施設を訪問するなどしていた萩生田光一氏が政調会長という要職に就いているのも無反省を象徴する一つです。山際大志郎経済再生担当相は統一協会系行事に繰り返し出席していたことが発覚し、閣僚辞任に追い込まれました。ただ、癒着の真相については本人も自民党も口をつぐんだままです。
自民党は山際氏を神奈川18区に擁立することを決めました。統一協会の韓鶴子総裁を「マザームーン」と呼び親密さが指摘された山本朋広・元防衛副大臣も同4区に擁立します。全容解明を置き去りにして、関係議員を次々公認する動きは国民の声に反します。
統一協会の名称変更が2015年の安倍政権下で文化庁に認められた経過も依然闇の中です。
都倉俊一・文化庁長官が1984年、国際勝共連合の集会に参加するなどしていたことも判明し、統一協会の調査をはじめ宗務行政を統括する長官としての立場が問われています。
統一協会の反社会的行為の一掃のためには、政治が関係を断ち切り、毅然と対処することです。解明を終わらせてはなりません。
●国民は限界だ…ガソリン高騰、補助金地獄! 9/9
元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏は「ブライダル産業活性化のためとされている補助金の一部が、実は、森まさこ首相補佐官の地元への利益誘導のために使われている」と指摘する――。
ブライダル補助金で炎上中の森まさこが今度は官邸の私物化
週刊文春(2023年9月14日号)「岸田“公邸忘年会”報道からわずか3カ月で…森まさこ首相補佐官(59)が娘と友人たちを首相官邸ツアーに招待していた! 『官邸の私物化』と波紋広げる」において、2023年8月末に司法修習生の長女とその友人一行を首相官邸に招待し、“見学ツアー”をしていたことが報じられている。文春は、「首相補佐官の立場を使った私的利用ではないか」との指摘を受けている。
森まさこ首相補佐官については、これまでにも、SNSに、「ブライダル補助金」事業の成果を書き込み、さらには、ブライダル大手から100万円の献金を受けていたことも発覚し、ネットで炎上しているところだ。
12億円もの補助金が海外カップルが日本で結婚式を挙げるために使われていた
森氏がアピールした「特定生活関連サービスインバウンド需要創出促進・基盤強化事業」は、少子化や新型コロナ禍が直撃したブライダル産業活性化のため、海外のカップルを呼び込み、日本で結婚式を挙げさせて、産業や地域を活性化するものだった。2022年度補正予算案で12億円が計上されている。
識者たちからの批判は様々であったが、「税金が特定の団体へと消えていく」「外国人に対する補助で、日本人は恩恵を受けない」というものが主だったものだ。
しかし、この「特定生活関連サービスインバウンド需要創出促進・基盤強化事業」で、つくられた資料を読み込むと、その闇はますます深いものであることがわかる。「特定生活関連サービスインバウンド需要創出促進・基盤強化事業費補助金説明会」(2023年6月16日)と題する資料だ。詳細を知りたい人は、調べてアクセスしてみてほしい。
森まさこの「地元限定」の補助金だった
P33「補助金の活用事例」において、補助事業名「みちのく和婚の外国人カップル向けウェディングツーリズムの開発」とあり、実施概要には、「海外在住の日本人の国際結婚カップル・外国人カップル、および日本文化に多大な興味を抱いているインバウンド層を主なターゲットにし、東北の様々な歴史的建造物、および地域資源、文化財を活用した日本古来の伝統的な結婚式・挙式の広告宣伝、インバウンドウェディングのサービスを展開する」とある。今、問題になっている補助金事業である。
読んでいて気になることが、外国人、業界団体というキーワード以外になかっただろうか。私にはあった。「東北の様々な歴史的建造物、および地域資源、文化財を活用した」というところ。もっといえば「東北」に限定した補助金である点だ。
さらに、この「特定生活関連サービスインバウンド需要創出促進・基盤強化事業」の中には、「福島和婚の海外発信による日本伝統文化と福島への啓蒙促進事業」という事業も採択されている。今度は「福島」である。
種明かしをすれば、森まさこ氏の地元は、東北の福島県である。業界団体への誘導だと怒りを感じていたら、実態はさらにひどいことになっている。採択された事業を見る限り、これは、ただの地元の企業への補助金だ。地元のために、税金を放り込んだだけ。これぞ、自民党政治家の面目躍如だ。地元支援者たちは、拍手喝采だろう(当然ながら、その地元においても何の恩恵にもあずかれない大多数の有権者が存在し、彼らには税負担増の未来が待っていることには留意が必要だ)。
異次元の子育て対策の費用が、外国人が結婚式をするための補助金に使われる矛盾
しかもその審査基準として「少子化対策に貢献できる事業か。少子化対策に貢献することは、海外需要のみならず、国内需要創出への裨益を狙う観点でも重要」と示されているのを考えると、これは、岸田政権の「異次元の少子化対策」予算に含まれているということだ。
莫大な税金を投入して、異次元の子育て対策といっているが、実態は、外国人の結婚式の補助金に使われていた。これでどうやって日本の出生率が改善されるのか。あまりのデタラメを前にして、私は、ただただ虚しい。
何か社会的な課題が持ち上がると、補助金をバラまいて、対策をしたふりをする。対策をしたことで、すでに自民党にとっては「実績」となってしまう。小学生の野球チームが、大谷翔平のストレートが打てないからと、バットを短く持てと指導されたとして、打てるだろうか。打てるわけがないのである。しかし、自民党にとっては、対策をとった時点で、仕事は終わったと勘違いしている。大谷を前にして、小学生にバットを短く持てとという指導をしました。とりあえず、記念撮影しときましょう、というのがトンチンカンな自民党政治である。
外国人が日本で行う結婚式に、補助金を与えて何の意味があるのだろうか。まさしく、ムダの一言である。こんなことにお金をつぎ込んでいたら、いくらお金があっても足りないだろう。増税をする前に、まずは補助金政治をやめさせることが肝心だ。
ガソリン税中抜き体制の責任は岸田首相にある
これは、ガソリン税でも同じことがいえる。「石油元売りに支払われる補助金はすべて卸売価格に反映させているので、直接的には収益に影響を与えない」と政府は主張している。しかし、補助額と小売価格の実態を調査した小嶌正稔桃山学院大学経営学部教授によれば、「(2022年)7月12日には累計で1リットル当たり45.2円分、8月9日には累計で1リットル当たり46.2円分が消費者に還元されなかった」(ダイヤモンドオンライン・2022年9月9日)という。
石油元売りの収益を決めるのは、元売り間と小売市場、二つの取引結果である。いくら石油元売にじゃぶじゃぶと補助金(税金のこと)を注ぎ込んだところで、クルマユーザーがガソリンを購入する際には、値段は結局高いままということになる。 
このつぎ込んだ税金の多くが雲散霧消をする現象は、この政策を採用する岸田文雄首相、与党自民党の責任ということになる。もし、これが補助金という形態をとらず、減税という形をとったなら、「中抜き」は一切発生しないことになる。
安易にバラマキ政治を続ける自公政権。どうでもいいことに補助金(=税金)を使うな
世界中で、減税することは常識的に行われているのにも関わらず、日本では「減税をすると社会保障が無くなる」「国家が機能しなくなる」などと、わけのわからない議論が勃発する。
これは米国共和党の強い影響力を持つ全米税制協議会のグローバー・ノーキスト氏から聞いたが、アメリカでは減税に反対する勢力は、もっともメディアが取り上げられやすいことを狙って「減税するとワシントンの行政機構を閉鎖することになる」などと脅すのだという。
どうでもいいいことに使っている補助金は莫大な金額となっており、これを止めさせるには、「寄生虫たちが使える予算を減税によって絞り、寄生虫同士で食い合いをさせるのが一番良い」と話をしていた。
今回のケースで言えば、『寄生虫』とは、つまり、森まさこ氏やブライダル業界であり、減税を頑なに拒否する自民党税制会長・宮沢洋一参議院議員のことだ。宮沢氏は、どうみても非合理な石油元売りの合併を経産大臣時代に進めた、石油価格が高い原因をつくった張本人である。
国民はこれがムダだ、あれがムダだと指摘を続け、さらには政治家に歳出を絞らせればよい。国民生活は厳しさを増している。すべては国民負担率を釣り上げ続け、いまなお「まだ負担は上がっても大丈夫」「消費税は20%までは安い水準と言える」などと考え、安易にバラマキ政治を続ける自公政権の責任である。
●記者会見の政治利用 公権力と報道は対等 表現の自由は市民の権利 9/9
地方自治体の首長パフォーマンスが目立つ時代だ。1月には馳浩・石川県知事が県政を扱った地元放送局の映画の内容をきっかけに、記者会見に当該社の社長の出席を求めたり、定例の記者会見を取りやめたりする事態となった。7月には広島県安芸高田市の石丸伸二市長が会見で地元新聞社を詰問することも起きている。いわば、会見の場を自身の主張を一方的に開陳する(できる)場であると理解し、政敵と認定したメディアを攻撃する機会と捉えているようにみえる。
これまで県内でも政治家や政党が、記事内容に抗議をするとともに当該社の取材を拒否したりすることはあったし、関西でも首長がメディアに対し逆質問をして、やり込めることが常習化する状況が起きて久しい。東京では政党がとりわけ選挙時に、政治的公平さを求めて放送番組内容に干渉したり、出演を取りやめたりするなどの取材・報道妨害を行うことは珍しくなかった。
しかし、公式な記者会見を自らのパフォーマンスのために利用することは、かつての「大本営発表」にも通じるものであって明らかに問題がある。ただし残念なことにネット上では「威勢がよい首長」を支持する声の方がむしろ大きいといえ、それに政治家の側が後押しされ、ますます勢いを増しているようだ。
主催者は誰か
最初に確認する必要があるのが、記者会見の位置付けである。基本構造は、公権力(公的機関)が市民・有権者に対しアカウンタビリティー(説明責任)を果たすための場で、読者・視聴者を代表する記者が市民の知る権利を代行する形で会見の場に臨んでいるというものだ。報道団体である日本新聞協会も、2002年見解で「公的機関が主催する会見を一律に否定するものではないが、運営などが公的機関の一方的判断によって左右されてしまう危険性をはらんでいます。その意味で、記者会見を記者クラブが主催するのは重要なことです」としている。
閉鎖性や非公開性、権力側との癒着など、厳しい批判の対象である「記者クラブ」の存在を前提とした議論に、違和感のある向きもあろう。ただし、対公権力との関係で圧倒的に弱い立場にある報道機関が、互角に対峙(たいじ)するための制度的な工夫として、ここでは考えておきたい。あくまでもポイントは、会見は取材先である公権力側と報道側との間の、対等な緊張関係のもとで行われるものでなくてはならないという点だ。
以前の97年見解では、公的機関の記者クラブがかかわる記者会見について、「原則としてクラブ側が主催する」としていたものを、新見解では、ネット社会到来という時代状況等を踏まえ公的機関が主催する記者会見を一律に否定しないことに変更した。しかしその解説では、「当局側出席者、時期、場所、時間、回数など会見の運営に主導的にかかわり、情報公開を働きかける記者クラブの存在理由を具体的な形で内外に示す必要がある」と指摘している。
悪しき慣習
本来は、会見の場で政治家が一方的に自説を開陳し、質問を受け付けないとか、特定の記者(社)の出席を拒否したり質問を認めなかったりするという行為は許されるものではない。ただし残念ながら実態は、会見を実質的に政治家の側が仕切る状況が一般化している。たとえば首相の官邸会見はその典型例で、出席者の数や顔ぶれに始まり、司会を官邸が行い、事前に質問を提出させ、それに従って質問者を指名し、さらに追加質問は認めないという運用がなされている。公権力側が一方的かつ圧倒的な主導権をもって実施している実態は、最低でも「主催権は両者で共有する」が、完全に崩壊していることを示している。
そうした悪しき慣習が当然視され、地方自治体レベルの会見においても我が物顔の首長が登場することになっている。その延長線上で、「説明責任」は公権力側にあるにもかかわらず、報道側に、批判するなら理由を面と向かってこの場で言えなどと、会見の場で「報道機関の説明責任」を求めるという、逆転した事態が生まれてしまっているわけだ。
もちろん報道機関も、紙面や番組等で問題を指摘する場合に、きちんとした理由を述べることが求められるが、それは読者・視聴者に対する責任であって、政治家に対してではない。弁が立つ政治家は、会見の場で記者をやり込めることで、自分の主張を正当化しがちだが、こうした「画」を利用し有権者へのアピール効果を狙うような会見の使い方は間違っている。
少し異なる文脈だが、放送法で定められた政治的公平さの政府解釈で、公平かどうかを判断するのは政府であるとしているが、これも放送局に、違法でないことを公権力に対して説明する責任を負わせるという意味で、通底する考え方である。一般的な学説では倫理規定であるとされており、法が求めているのは「視聴者に対する約束事」であって、放送局の説明義務は公権力ではなく市民に対してのものだ。
報道機関の課題
同様に、近年は国会答弁のなかで首相が、「私にも言論の自由がある」と言う時代ではあるが、会見パフォーマンスを行う首長も、それが自身の表現の自由の行使であると思っている節がある。しかし表現の自由は市民の権利であって、政府はあくまでもそれを保障する役割であって、個人と同じ意味での表現の自由は、政府にはない。
もちろん、公務員である教師が教授の自由として、講義で自説を述べることにはじまり、政府がワクチン接種を奨励する広報を行ったり、原発推進の政策メッセージを発信したりするような、「政府言論」は存在する。ただしこれらも無制約に認められているわけではない。政府や政治家が、中継(とりわけネット生配信)でする表現行為は、憲法で保障されている自由な表現行為とは似て非なるものであるということだ。
したがって報道機関は、会見の場面で首長に応答する義務はないし、もし説明するのであれば自身の媒体で、市民向けに説明することになる。とりわけ今日において、報道機関自身にも「見える化」が求められており、取材過程の可視化は課題だ。政治家に対してきちんと対峙し、市民代表として真っ当な質問で真実性の追及をしているか、事件・事故の取材で市民に対して横柄な態度をとっていないかなど、社会から見られていることを十二分に意識し、個々のジャーナリストが、その社会的責任を果たす必要がある。
報道過程の可視化としては、記者の名前を表記すること(署名記事)や、顔写真を掲載することなどが行われてきている。これらは新聞と読者との距離を縮めるための方策でもあるが、これも報道機関の説明責任の取り方の一つであり、まさに信頼関係の醸成のためといえるだろう。
会見における政治家のパフォーマンスを許しているのは、一般市民のネット上の喝采であろうが、もし報道機関の首長に対する遠慮があるとしたら、それは読者・視聴者の期待を裏切ることだ。あるいは会見に同席するライバル社への“いじめ”に対して見て見ぬふりをする報道機関に、知る権利の代行者を語る資格はなかろう。

 

●国民民主の政権参加見送り 9/8
岸田政権は自民、公明両党の枠組みに国民民主党を加える「自公国」連立を見送る。国民の玉木雄一郎代表の再選を受け、自民内に連立論が浮上したが、国民や支援組織の連合内に支持が広がらなかった。玉木氏も明確に否定した。岸田文雄首相(自民党総裁)は8日、内閣改造・党役員人事の13日実施を目指す意向を外遊先のインドから複数の政権幹部に電話で伝えた。従来通り自公連立内閣とする。政府、与党関係者が明らかにした。
内閣改造日程は中下旬の2案あったが、首相は13日実施へ調整を開始。公明の山口那津男代表には「13日を目指し、内閣改造・自民党役員人事を行えるよう準備を重ねている」と伝えた。自公国連立が困難になったことが早期人事を後押ししたとみられる。
国民民主は8日の両院議員総会で新執行部体制を了承した。代表選で「非自民・非共産」勢力結集を唱えた前原誠司氏も代表代行に再任された。玉木氏は議員総会後、国民からの入閣の有無を記者団に聞かれ「そんな話はない」と明言した。
●入札敗れ「政治の力」商社に対抗 ルール変更要請 9/8
周囲を照らす極彩色の巨大な武者人形が夜道を練り歩き、威勢のいい「ラッセラー」の掛け声が響いた。
8月上旬、青森市で行われた「青森ねぶた祭」。桃太郎をかたどった山車の台座に、青森・陸奥湾の洋上風力発電事業への参入を目指す日本風力開発(日風開)の名前があった。昨年、初めて祭り参加者のスポンサーとなり、今年も社員ら数十人が現地入りしていた。「地域貢献」の一環だった。
所有者のいない海に設置される洋上風力発電の施設は、国が整備する区域を事前に指定する。「準備区域」「有望区域」「促進区域」の順に段階が進み、最後は入札で開発事業者を選ぶ仕組み。区域の指定には地元の反応も考慮されるとされ、候補地に食い込もうとする企業は多い。
ただこの時、日風開の前途には暗雲が垂れこめていた。ねぶた期間中の8月5日、社長(当時)の塚脇正幸(64)が洋上風力発電事業を巡り衆院議員の秋本真利(48)に賄賂を贈った疑いがあるとして、本社が東京地検特捜部の家宅捜索を受けたからだ。
令和2年、首相(当時)の菅義偉が2050(令和32)年までに脱炭素社会を達成する「カーボンニュートラル」を宣言。洋上風力発電は目標達成の切り札とされ、国は2040(令和22)年までに発電能力で3千万〜4500万キロワットを導入すると掲げる。
平成31年4月には事業推進のための「再生エネ海域利用法」が施行され、区域の指定も順次開始されたが、特徴は事業規模の大きさにある。小型のものだと数億円で建設できる陸上風力発電と違い、洋上風力のそれは数千億円以上だ。
最も「地元」に食い込んだ業者が、事業を受注する−。関係者によると、風力発電業界には長年、こうした慣習があった。だが令和3年12月、この慣習を打ち破る出来事が起こった。
洋上風力発電で初となる大規模入札で、三菱商事のグループが日風開を含む既存の風力発電業者などを抑えて秋田県沖と千葉県沖の計3区域を全て落札。圧倒的な低価格が勝因だった。
予想外の結果は「三菱ショック」と呼ばれ、業界は騒然となった。外資系の最大手と組み、うち2区域の入札に参加して敗れた日風開にとっても、衝撃は大きかった。同社関係者は「最低、1つは取れるとみていた」と打ち明ける。
焦った塚脇は資本の力ではなく、「政治の力」で入札の審査条件そのものを変えることを志向した。業界団体や旧知の大学教授に働きかけ、価格だけでなく、地元への密着度や事業開始時期の早さなどを条件に加えるべきだと論陣を張った。
そして頼ったのは、同じ法政大出身で脱炭素を掲げた菅を「オヤジ」と慕う「再エネ族議員」の秋本だった。
4年2月17日の衆院予算委員会。既に2回目の入札公募が1回目と同じ基準で始まっていたが、秋本は「2回目から評価の仕方を見直してもらいたい」と、経済産業相(当時)の萩生田光一に迫った。
その翌月、萩生田は2回目の入札を停止。審査基準を見直してから再開すると公表した。半年後の10月、実際に審査基準は変わった。
価格重視である点は変わらず、霞が関でも基準の変更自体は「穏当なもの」と受け止められたが「多少とも有利になったのは間違いない」(検察幹部)。その翌日、日風開社員が衆院議員会館の秋本の事務所を訪れた。持っていた袋の中にあったのは、現金1千万円の束だった。
「洋上風力は結局、政治家の力に頼らざるを得ない。(塚脇は)仮にカネがかかっても、プロジェクトが取れるなら安いものだと思ったのだろう」。ある業界関係者は、こう打ち明けた。 
●政権浮揚かけ岸田内閣改造へ、「最後のチャンス」との見方も 9/8
岸田文雄首相は9月中にも内閣改造・自民党役員人事を行う。内閣支持率が低迷する中、来年秋の自民党総裁選や衆院解散戦略を左右する政権浮揚をかけた判断となる。
春闘の賃上げは30年ぶりの高水準だったが、物価高で実質賃金は減少が続く。マイナンバーカードを巡るトラブル、ロシアのウクライナ侵攻や福島第1原子力発電所の処理水放出で悪化した日中関係など課題は山積している。
ピクテ投信投資顧問の市川真一シニア・フェローは、「内閣改造で変化の兆しを示せば、市場の期待感が株価に影響し、上向きのスパイラルが支持率を押し上げる」と指摘。逆に変化がなければ岸田首相の下での解散・総選挙は難しくなるとして、今回の改造を「総裁選に向けた最後のチャンス」との見方も示した。
内閣改造は13日にも実施する方向と共同通信が報じたが、岸田首相は7日の記者団の取材では明言しなかった。市場関係者らの見方を交えて人事の注目点を探った。
1.ポスト岸田候補
最大の焦点は、茂木敏充幹事長や2021年の総裁選を争った河野太郎デジタル相、高市早苗経済安全保障担当相ら「ポスト岸田」候補の処遇だ。
茂木氏を巡っては、7月の北国新聞によるインタビューで麻生太郎副総裁が「間違いなく仕事をしていて評価も高い」と述べたのに対し、森喜朗元首相が8月の同紙で、「麻生さんは茂木幹事長を留任させたいようだが、彼は能力があるから財務大臣も外務大臣でも何でもできる」と応じている。
市川氏は「茂木氏の処遇で総裁選の構図が透けて見える」と語る。現職が再選を目指した総裁選で閣僚や幹事長が立候補した例は少ない。石破茂氏は要職から外れていた18年に当時の安倍晋三首相に挑戦したが、閣僚だった15年は出馬しなかった。
NHKは8日、岸田首相が麻生副総裁と茂木幹事長を留任させる方向で検討していると報じた。
2.安倍派5人衆
岸田派は党内第4派閥にすぎない。首相は政権基盤の弱さを補うため、最大派閥・安倍派の松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長、高木毅国対委員長や世耕弘成参院幹事長の「5人衆」と呼ばれる幹部に協力を仰いできた。
ただ、岸田首相が増税で一部を賄う方針を示した防衛財源を巡っては、萩生田氏らがNTT株売却の可能性を探り、主導権を確保しようとする動きも見せる。安倍派は先週、塩谷立元文部科学相を座長とする新体制を発足させた。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、恒久財源をつけられない政策は先行き不透明感を生み、企業が先行投資を控えるとして安倍派の有力者をどのポストに配置するか注視していると述べた。
3.経済閣僚
クレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストは、鈴木俊一財務相について「日本銀行や財務省に近い印象がある」として、交代すれば市場へのメッセージになるとの見方を示した。一定の距離を保てる閣僚になれば成長優先の印象が高まるとし、茂木氏もその候補になり得ると述べた。
岸田氏は緊縮財政派との印象が強く、経済成長を優先する姿勢が市場に伝わっていないと指摘。経済再生担当相のポストに積極的な発信ができる人材を登用することも一案だと述べた。現在の後藤茂之氏は旧大蔵省出身だ。
4.女性・若手
閣僚19人のうち、女性は高市氏ら2人。40歳代以下は小倉将信少子化担当相1人だ。市場関係者は政治にも多様性とイノベーションを求め始めており、会田氏は、女性に限らず若手の登用がどこまで進むかも、今後の経済成長に影響するとみている。
女性議員では茂木派の小渕優子氏や岸田派の上川陽子幹事長代理らの処遇が焦点だ。森元首相は小渕氏の幹事長起用を提案している。若手では週刊誌でスキャンダルが報じられた木原誠二官房副長官の去就も注目される。
5.公明党
公明党が10年以上担ってきた国土交通相の人事は自公両党の今後の関係にも影響を与える可能性がある。朝日新聞などは自民党内に国交相ポストの奪還論が浮上と報じたが、公明は引き続き確保したい考えだ。両党は衆院選の候補者調整で対立して東京での選挙協力が一時解消されたが、岸田首相と山口那津男代表が修復に動いた。
6.デジタル、少子化
内閣改造は首相が今後の政策の優先順位を示す機会にもなる。日本総研の石川智久調査部長は「実務能力のある閣僚を据えた上で、首相から何をやり遂げるかのメッセージが聞きたい」と語り、注目分野にデジタルや少子化対策を挙げた。
マイナカードのトラブルは、デジタル化の足かせになっている。政府は11月末までデータの総点検作業を行うが、24年秋の健康保険証廃止とマイナカードへの一体化を推進してきた河野デジタル相が留任するかどうかで政権の取り組み姿勢が分かる。
少子化対策で、政府は30年代までに現在の倍となる10兆円の予算確保を目指している。小倉担当相の下でまとめた具体策は給付拡充など経済支援策が中心だ。7月のNHK世論調査では、政府の少子化対策に期待していない人は「あまり」「まったく」を合わせると60%を超えた。
●インボイス制度は「消費税増税」の布石だ! 巨額財政支出の穴埋め 9/8
円安と原油高のダブルパンチで政府のガソリン補助金など物価高対策費は膨れ上がる見通しだ。加えて、長期金利の上昇を受けて国債の利払い費もかさむ。巨額の財政支出のツケはいずれ国民に回ってくる。財務省と一体の岸田政権が、密かに消費税増税を企んでいるのは間違いない。10月からスタートするインボイス制度も増税のための布石とみられている。
経産省が6日に発表したレギュラーガソリンの全国平均価格(4日時点)は186.5円となり、過去最高値を更新した。政府は段階的に縮小してきたガソリン補助金を7日から拡充。当面は1リットル=180円未満に抑え、10月5日から年末までは175円を超えないようにする。
「足元の原油価格は1バレル=88ドルを付け、100ドルも視野に入ってきた。為替も、年末に1ドル=150円と予測する金融機関やエコノミストも増えています。さらなる円安と原油高によりガソリン補助金は、想定外の巨額な財政支出を要することになりそうです。ガソリンや電気・ガスの補助金を来年末まで継続すれば、累計の支出は20兆円程度に上るとみられています」(市場関係者)
さらに、財政を直撃しそうなのが国債の利払いだ。来年度概算要求の利払い費は、今年度予算に比べ、12.8%増の9.5兆円に膨らんだ。日銀の金融政策の修正により、長期金利がわずかに上昇していることが影響している。
いずれ、岸田政権は増税に動き出すとみられている。立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏(税法)が言う。
「巨額支出の穴埋めに浮上しそうなのが消費税増税です。政府は税率を一律に上げるのではなく、複数の税率を設けて、国民に“配慮”する“ポーズ”を取るとみられます。10月から始まるインボイス制度によって複数税率がやりやすくなる。必要性が乏しく、批判を浴びながらも、インボイス制度を強行するのは、消費税増税の布石と言っていいでしょう。しかし、複数税率にしたところで大増税に変わりはありません」
“増税請負人”を首相秘書官に起用
岸田政権は人事面でも増税シフトを敷いている。岸田首相は7月4日、“増税請負人”と称される一松旬氏を首相秘書官に起用した。
「一松氏は1995年に旧大蔵省に入り、主計局主計官などを歴任。省内でも10年に1人と言われる“超エース級”の財務官僚です。社会保障政策に精通し、防衛増税の制度設計にも関わった。物価高対策や国債の利払いの巨額支出に対応するため、一松氏が中心となって消費税増税を推し進めてもおかしくありません」(財務省関係者)
総務省の家計調査によると、7月の実質消費支出は前年同月比5%も減った。岸田政権が消費税増税に動けば、節約志向は加速し、日本経済はボロボロだ。
●岸田政権がぶち上げた「第3次国土形成計画」とは? 9/8
生活圏人口10万人を目安にした「地域生活圏」構想。7月28日、政府は2050年を見据えた国土づくりの方向性を示す「第3次国土形成計画」を閣議決定した。同計画はこれまで、第1次が08年、第2次が15年と続き、今回は8年ぶりとなる。
日本はいま、人口減少と少子高齢化がもたらす地方生活の危機、気候変動や巨大災害リスクの切迫といった課題に直面している。一方でコロナ禍による働き方の多様化が急速に進んできている。こうした流れを受け、新時代に地域力をつなぐ国土形成計画として今回新たに策定されたのが「地域生活圏」構想だ。国土交通省総合計画課の担当者が説明する。
官民連携で、縦割りや枠をとっぱらう
「人口減少で危ぶまれる地域社会に、自治体と民間が市町村の枠にとらわれず、独自にデザインする生活圏を設定するというものです」
そして、こう続ける。
「前回、前々回は30万人規模の地域圏を想定していましたが、人口減少が進むなか、今回新たにデジタル活用を踏まえ10万人規模の地域圏を想定しました」 
「人口10万人規模の地域生活圏」に欠かせない要素として挙げるのが、「民間視点を最大限取り入れた官民連携のパートナーシップ。デジタルの徹底活用で、生活者、事業者の利便性を最適にするため、自動運転、ドローンによる物流、遠隔医療・オンライン教育などのサービスを加速させる。そして縦割りではない、横割りの発想です」。
今回の構想に沿った動きはすでに始まっているとして次の事例を挙げる。岩手県宮古市では安定電源の確保に向けた取り組みとして「スマートコミュニティ推進協議会」を設立。市内のエネルギー発電事業者や地元企業が一体となり発電、売電資金を教育・公共施設に使用している。
鳥取県の米子市と境港市は地元企業5社との出資でエネルギー自立を目指した地域エネルギー会社「ローカルエナジー梶vを設立、公共施設での消費が始まっている。香川県三豊市では地元事業者12社の共同出資で「暮らしの交通梶vを設立、AIを使った交通サービス「mobi」の運用を開始している。
こうした地域生活圏構想は、岸田政権が進める「デジタル田園都市国家構想」を具体化するものといえる。人口減少などの地域課題をデジタル実装により解決し、成長産業の創出、交通、物流確保、教育機会や医療・福祉を充実させ、雇用拡大し、地域創生を図るというものだ。
結局、国頼みかと疑問の声も
今回の地域生活圏構想について、地域経済に詳しい神戸国際大学経済学部の中村智彦教授は「中身的に新鮮味はありません」と冷めた目を向ける。
「人口減少と高齢化が急激かつ深刻で妙案がないことを示しています。地方の小さな自治体でも国に頼らず、新たな取り組みに挑戦し、成果を上げています。国の施策より一歩前にという機運がすでにある。今回の計画も高齢政治家が過去の手法にこだわる姿が明らかです」
岸田首相は8月3日、第14回デジタル田園都市国家構想実現会議の開催で群馬県高崎市を訪れた。選挙対応の地方行脚という声もあるのだが。

 

●岸田首相も使用!「仮定の質問には答えられない」政府の常とう句 9/7
「仮定の質問にはお答えできない」
政治家の国会答弁をはじめ、首相や大臣の記者会見で頻出するこの言葉。耳にしてモヤっとすることはないだろうか。
8月8日、自民党の麻生太郎副総裁が訪問先の台湾で「“戦う覚悟”を持つことが地域の抑止力になる」と爆弾発言。これを受けて、記者から「台湾有事の際に日本は軍事介入するのか」と問われた松野博一官房長官は、「仮定の質問には答えない」と回答した。
他にも用例はたくさん。2021年1月7日、首都圏に二度目の緊急事態宣言の発出を伝える記者会見で、記者から「この宣言を延長する場合、今回と同様に1カ月程度を想定しているか」と問われ、菅前首相は「仮定のことについては私からは答えを控えさせていただきたい」と回答している。
岸田首相も、今年3月、日韓政府で合意を得た徴用工訴訟の問題で、“今後、韓国で政権交代が起これば、問題が再燃するのではないか?”と記者に問われ、「仮定に基づいた質問には答えない」と回答した。
こうした政治家たちの姿をみて、「『仮定の質問』というものには答えないでもいいのだ」と思っている人も多いだろう。だが、神戸学院大学法学部教授で政党国家論などが専門の上脇博之さんは、こう指摘する。
「いずれも、的を射た質問だったので、政府の側に〈答えたくない〉という判断があって、その逃げ口上として“仮定の質問”などと言ってごまかそうとしているのでしょう。
『仮定』は2つに分類されると思います。一つは、政府が関係ない、本当に荒唐無稽な仮定の質問です。そうであれば答えようがないが、当然、政府として想定しておくべき問題もある。たとえば、上の台湾に関する質問は明らかに後者ですから、答えて当然の『仮定の質問』になります」
確かに、“明日、宇宙人が攻めてきたらどうするか?”、“突然、すべての水が固形化したらどうするか?”と問われても、政府も回答のしようがないだろう。だが、台湾有事も、緊急事態宣言の延長も、政権交代による韓国の方針変更も、十分に考えられる“仮定”だ。政府はこうした仮定の質問に対して、真摯に対応するべきだと、上脇さんは指摘する。
「想定していないなら〈大変重要な指摘なので、後日想定して回答します〉と答えるべきです。外交的な配慮など理由があって、答えない方がいいというのなら、そう説明するべきでしょう。なぜなら、政府は国民に対して説明責任を負っているからです」
政府が説明責任を負う理由はふたつあるという。
「ひとつは、憲法21条に明記されている国民の“知る権利”を保障するため。もうひとつは、民主主義国家では、権力者の取り巻きだけで政治を行う君主制とはちがって主権が国民にあるからです。
主権者である国民が正しい判断を下すためには、正しい情報や重要な情報を知らされなければならない。国会議員や報道機関は国民に代わって質問しているので、政府は聞かれたことに対する説明責任があります。知っていたら、その政権を支持しなかったということも十分ありえますから」
しかし、これまで政治家は、「仮定の質問」を根拠にした不誠実な答弁が繰り返し、国民は正しい情報を知る機会を逃してきた。
「突拍子もない質問ならともかく、いずれも政府として想定しておくべきことです。『仮定の質問には答えられない』というのは、たいていの場合は、逃げ口上だと言わざるをえません。知る権利を保障し民主主義を実現するためにも国民は説明を求め続ける必要があります」(上脇さん)
「仮定の質問なので答えられない」。政治家のそんな常とう句を聞いたとき、それが“荒唐無稽な仮定”なのか、“ありうる仮定”なのか考えてみるといいかもしれない。
●高市早苗氏が強い意欲、セキュリティー・クリアランス制度創設 9/7
日本列島を覆う酷暑は月が変わって少しずつ収まりそうですが、永田町は「内閣改造・党役員人事」や、「解散総選挙ありやなしや」と政局がヒートアップしてきました。
そんな折、高市早苗経済安全保障相が、政局ではなく政策の話でシブく記事になっていて、この方らしいなと思いました。
高市氏は8月24日配信のラジオNIKKEIのポッドキャスト番組で、2024年の通常国会に経済安保推進法の改正案を提出すると明言したのです。その要点は、1安全保障上の機密を扱う人を認定する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度を定める2機密情報の漏洩(ろうえい)に「懲役10年以下」程度の罰則を設ける方向―というものです。
セキュリティー・クリアランスとは、安全保障上の機密を扱う政府職員や民間人らに情報へのアクセス資格を付与する制度です。政府が個人の身辺や民間企業の情報管理体制などを審査し、適格性を評価します。
すでに6月に有識者会議の中間報告が出されていて、高市氏はその際、法案提出の時期は未定としていました。
今年2月に有識者会議を立ち上げる際、岸田文雄首相から「今後1年程度を目途に」と指示されていましたから、予定に沿うものなのでしょう。
約2年前に岸田政権が発足し、高市氏は当初、政調会長として党側から政権を支える立場となりました。私はその直後、22年1月にインタビューしましたが、すでにこのセキュリティー・クリアランス制度構築に意欲を示していました。
当時、経済安全保障関連法案が党内で検討されているタイミングでしたが、中心はサプライチェーンの強靱(きょうじん)化や、基幹インフラの安全性確保でした。セキュリティー・クリアランスは必要だとは言われていたものの、野党やメディアの反対を恐れて盛り込まれませんでした。とにかく、法律をつくることを優先したのです。
インタビューの中で、高市氏はセキュリティー・クリアランス制度について、「本来でしたら、できるだけ急いでつくらなければならないもの」と危機感をあらわにし、「世界の情勢に応じて、必要な条文を付け加えていくという作業は、ずっと続けていかなければならない」と、法改正に意欲を示していました。
この制度に関しては、経済安保関連法の採決の際、法案に盛り込まれていなかったのにも関わらず、野党から反対の声が上がっていました。
「研究者・民間企業も対象とした秘密保護法制の拡大につながり、プライバシー・学問の自由の侵害、労働者の不利益取り扱いを含め深刻な人権侵害が生じかねず、認められません」(共産党・塩川鉄也議員の反対討論)
今回も与野党対決法案になることは避けられません。担当大臣の覚悟は見えても岸田首相に覚悟はあるのか? 支持率に右往左往しないことが求められますが…。
●岸田政権「水産業支援策」にSNSは冷ややか…“やっているフリ”? 9/7
「わが国の基本的な立場を説明した」
インドネシア・ジャカルタで開かれている東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席している岸田文雄首相(66)が6日、中国の李強首相(64)と立ち話を行い、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出について理解を求めた。
福島原発処理水の海洋放出を受け、中国は日本の水産物の全面禁輸措置を決定。日本の水産業者は地元の福島だけでなく、全国規模で影響を受ける深刻な事態が続いている。
中国の対応が見えない中、日本政府は、水産業支援のための「政策パッケージ」を公表。水産物輸出の中国依存リスクを抑えるためとして、中国への輸出割合が大きいホタテ貝などの販路開拓や加工設備の国内導入などを支援するというのだが、ネット上では《対処療法では無意味》といった冷ややかな意見に加え、《安倍政権と同じゴマカシ、やっているフリ感の手法》といった声もチラホラ見られる。
場当たり的な対策を揶揄!?
岸田政権は今回、支援策について予備費から207億円を支出。支援額は既存の基金との合計で総額1007億円になる見込みで、岸田首相は「水産業を守る」ための5本柱を策定した──と胸を張っていたが、《ゴマカシ、やっているフリ感の手法》との指摘でみられるのは、こんな理由だ。
《安倍政権もあったよね、総額をまずどーんと打ち出すやり方。GDP600兆円とか、緊急経済対策億円とか。でも金額の意味あるの》《単純な短い言葉で訴える。安倍政権では「3本の矢」だったけれど、今回は「5本柱」》《仕上げは、何となくやっているフリ感を表す「パッケージ」の言葉を使う。安倍政権でも聞いた「経済政策パッケージ」》
福島原発からの処理水海洋放出は30〜40年続くとされ、岸田政権が掲げる水産業の支援策が今後も続くとは限らない。SNS上では、そんな政府の“場当たり的”な対策を揶揄する意味もあるようだ。
●岸田政権でまた「カネ」の不祥事 秋本真利衆院議員、受託収賄容疑 9/7
岸田政権で外務政務官を務めた衆院議員秋本真利容疑者(自民党を離党)が7日、受託収賄容疑で逮捕された。岸田文雄首相は安倍、菅両政権で相次いだ「政治とカネ」に絡む問題を断ち切るとしてきたが、昨年後半の4閣僚の「辞任ドミノ」では2閣僚がこの問題に起因して交代。首相は「こうしたことが再び起こらないよう取り組む」と強調していたにもかかわらず、問題は繰り返された。
与党では2020年6月、自民の河井克行元法相と妻の案里参院議員が公選法違反で逮捕され、それぞれ実刑、有罪判決が確定。公明党の遠山清彦元財務副大臣は、日本政策金融公庫の融資を違法に仲介したとして、貸金業法違反罪で有罪判決が確定した。
岸田政権の閣僚では昨年11月、政治資金規正法を所管する寺田稔総務相が、政治資金収支報告書に故人の名前を会計責任者として記載した問題などで事実上更迭された。秋葉賢也復興相も、自身の政治団体事務所の賃料を妻らに支払ったとされる問題などが発覚。首相は昨年末、交代に踏み切った。
自民の薗浦健太郎元首相補佐官は、政治資金収支報告書に政治資金パーティーの収入などを実際よりも少なく記載したとして略式起訴された。
秋本容疑者の逮捕を受け、立憲民主党の泉健太代表は国会内で記者団に「許されず、議員辞職すべきだ」と批判。秋本容疑者が岸田内閣で外務政務官を務めていたとして「首相の任命責任が問われる」と指摘した。共産党の小池晃書記局長も東京都内で記者団に「自民党が責任を持ち議員辞職を迫るべきだ」と語った。
松野博一官房長官は記者会見で「国民に不信を持たれないよう、常に襟を正す必要がある」と述べた。
薗浦健太郎氏に続いて千葉で「また不祥事」
秋本容疑者が逮捕された7日、千葉県佐倉市の地元事務所を昼に訪れると、ポスターなどもなく閑散としていた。
「選挙の時しか姿を見なかった。地元の要望を熱心に聞かず、馬主としての私利私欲で政治をゆがめたとしたら許せない」。事務所近くを通った無職男性(76)はそう語気を強めた。
県内では昨年12月、衆院千葉5区の薗浦前衆院議員が、政治資金収支報告書へのパーティー収入過少記載で議員辞職し、今年4月に補選があったばかり。男性は「付き合いで投票するのではなく、候補者がどんな政治家かを見極めないと」と強調する。
秋本容疑者は再生可能エネルギーを推進し、脱原発を訴えてきた。市内で衣料品店を営む女性(76)は「本当に政策として実現したかったのか。お金目的だったのではと疑ってしまう。地元として恥ずかしい」と嘆息する。
過去4回、衆院選挙区で議席を争った立憲民主党県連代表の奥野総一郎衆院議員は「政治とカネの問題の連続で、国民の政治不信につながる恐れがある。再生可能エネルギーが利権のように使われたのなら普及にもストップがかかりかねない」と語った。
自民党県連幹部の一人はこう危機感を募らせた。「不祥事が続いている。選挙も控え、困ったとしか言いようがない」 
●「台湾有事」に備えて「戦う覚悟」があるのか…誤解されがちな麻生副総裁 9/7
自民党の麻生太郎副総裁が訪問先の台北市で、日本、台湾、米国が「戦う覚悟を持ち、相手に伝えることが抑止力になる」と発言し、中国などから批判を浴びている。政治ジャーナリストの小田尚さんは「麻生氏は、日本も台湾防衛に関与するという意思を台湾政府に伝えるとともに、米国も積極的に関与すべきだとの考えを示している。これは台湾有事を回避することにつながる政治的言動だと受け止めるべきだ」という――。
岸田政権の中枢からのメッセージ
自民党の麻生太郎副総裁(元首相)が8月7〜9日、台湾を訪問し、台北市内での講演で、大事なのは台湾海峡を含むこの地域で戦争を起こさせないことで、そのためには「抑止力」を機能させる必要があり、日本や台湾、米国にはいざというときに「戦う覚悟」が求められる、と主張した。岸田文雄政権の中枢から発せられたこのメッセージの意義は小さくない。
麻生氏は、さらに、蔡英文総統と会談した後、記者団に対し、「来年1月の台湾総統選の結果は、日本にとっても極めて大きな影響が出るから、『次の人を育ててもらいたい』と蔡英文総統に申し上げた」と述べ、中台関係の「現状維持」路線を推し進めてきた、民進党政権の継続が望ましいとの考えを明らかにした。
自民党からは昨年12月に萩生田光一政調会長、世耕弘成参院幹事長が相次いで台湾を訪問しているが、党No.2に当たる副総裁の訪問は、1972年の日台断交以来、初めてとなる。
「台湾海峡の平和と安定が重要だ」
NHKなど日本メディアの報道によると、麻生氏は8月8日、台湾外交部(外務省)など主催の国際フォーラムでの基調講演で、中国が台湾への軍事的な圧力を強めつつあることについて、「台湾海峡の平和と安定は、日本はもとより、国際社会の安定にとっても重要だ。その重要性は、世界各国の共通の認識になりつつある」と指摘した。
そのうえで、麻生氏は「今ほど日本、台湾、アメリカをはじめとした有志の国々に非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はないのではないか。戦う覚悟だ。防衛力を持っているだけでなく、いざとなったら使う、台湾の防衛のために使う、台湾海峡の安定のためにそれを使う明確な意思を相手に伝える。それが抑止力になる」と強調した。
「懲罰的抑止」を成立させる3条件
極めて常識的な発言である。「抑止力」の定義から見ても、的を射ていると言える。
例えば、神保謙慶大教授(国際政治学)は2017年5月、読売新聞への寄稿の中で、「抑止力」について、こう解説している。
「抑止力とは『相手の有害な行動を思いとどまらせる』一般作用を指す。抑止力には様々な形態があるが、その中核を占めるのは、有害な行動に対する報復を予め示す『懲罰的抑止』である。懲罰的抑止を成立させるためには、1相手に対する(堪え難い)報復能力の保持、2相手に対する報復意思の明示、3相手が12を理解すること、という3条件を満たすことが必要となる」
神保氏が説く「報復意思の明示を相手が理解すること」が、麻生氏が言う「戦う覚悟、防衛力を使う明確な意思を相手に伝えること」に相当するのだろう。
麻生氏は講演の中で、抑止力が機能せずに戦闘に至った事例として、1982年の英国とアルゼンチンによるフォークランド紛争を挙げた。当時、英国はアルゼンチンの侵攻をほとんど予想せず、武力によって奪回するという報復意思も明示しなかったとされる。
野党幹部の的外れな批判コメント
これに対し、立憲民主党の岡田克也幹事長は、8月8日の記者会見で、「外交的に台湾有事にならないようにどうするかが、まず求められる。台湾有事になったとしても、米国は、はっきりと軍事介入するとは言っておらず、含みを持たせている。最終的に国民の命と暮らしを預かっているのは政治家なので、軽々に言う話ではない」と批判した。
共産党の小池晃書記局長は8日の記者会見で、「『戦う覚悟』という発言は、極めて挑発的だ。麻生氏は、明確な意思を伝えることが抑止力になると言ったが、恐怖によって相手を思いとどまらせることは、軍事対軍事の悪循環を引き起こすものだ。日本に必要なのは、戦う覚悟ではなく、憲法9条に基づいて絶対に戦争を起こさせない覚悟だ」と語った。
こうした野党幹部のコメントは、国際情勢、抑止力をめぐる議論への理解が乏しく、的外れというほかない。
麻生発言は「政府と調整した結果」
中国は、予想通り反発した。中国外務省は翌9日、「一部の日本の政治家は、台湾海峡の緊迫した状況を誇張して対立をあおり、中国の内政に乱暴に干渉した」との報道官談話を発表した。在日中国大使館も同じ日の報道官談話で、「身の程知らずで、でたらめを言っている」「日本の一部の人間が執拗しつように中国の内政と日本の安全保障を結びつけることは、日本を誤った道に連れ込むことになる」と激しい口調で反論した。
だが、麻生氏の発言は、衆院議員個人のそれではない。麻生氏に同行した自民党の鈴木馨祐政調副会長(元外務副大臣、麻生派)は9日夜のBSフジ番組で、「当然、政府の内部も含めて、調整した結果のことだ」「岸田首相とも極めて密に連携した」と説明している。首相がどこまで関与したかは明らかではないが、その後も政府関係者から麻生氏の見解への異論はうかがえない。
安倍氏の「台湾有事は日本有事」発言
想起されるのは、安倍晋三元首相の「台湾有事は日本有事」という発言だ。報道によれば、安倍氏は2021年12月、台湾で開かれたシンポジウムに日本からオンラインで講演し、新しい日台関係について「日本と台湾がこれから直面する環境は緊張を孕んだものとなる」「尖閣諸島や与那国島は、台湾から離れていない。台湾への武力侵攻は日本に対する重大な危険を引き起こす。台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある。この点の認識を習近平(中国)国家主席は断じて見誤るべきではない」との見解を明らかにした。
確かに、台湾と与那国島は110kmしか離れていない。戦闘機なら、7分前後で到達する距離だ。台湾海峡の安定が損なわれる事態になれば、必ず日本に波及し、その影響は計り知れないだろう。
麻生氏の台湾での講演での発言は、安倍氏の講演の延長線上にあるともいえる。なぜ、このタイミングだったのだろうか。
安全保障環境は「平時から非常時に」
ひとつは、麻生氏に、東アジアの安全保障環境が「平時から非常時に変わりつつある」との認識があるからだ。
昨年8月にナンシー・ペロシ米下院議長(当時)が台湾を訪問したことに中国が猛反発し、台湾周辺で軍事練習を展開し、弾道ミサイルのうち5発を日本の排他的経済水域(EEZ)内の海域に撃ち込んだことがその一例だ。中国軍の目標の一つが与那国島の陸上自衛隊のレーダーだった、と一部で報じられている。
台湾有事が発生すれば、日本が「当事者」になる恐れが大きいこと、台湾に隣接する島嶼部が攻撃されることを想定しなければならないことを意味する。
中国が米国の軍事介入を考慮し、始めに在日米軍基地をサイバー・ミサイル攻撃することもあり得る。米軍が介入し、日本がそれを支援することで巻き込まれるのではなく、いきなり日本の個別的自衛権行使の話になるのである。
その後、習近平国家主席が昨年10月、3期目に入った第20回中国共産党大会で、台湾統一をめぐって、「決して武力行使の放棄を約束しない」「祖国の完全統一は必ず実現しなければならず、必ず実現できる」と強調したことも、台湾有事のリスクをさらに高めている。防衛省筋によると、「必ず実現できる」と述べたのは初めてで、党大会で「武力行使を放棄しない」とうたったのは今世紀に入って初めてだという。
「2027年までに台湾侵攻の準備を」と習氏
ウィリアム・バーンズ米中央情報局(CIA)長官は今年2月、ワシントンでの講演で、習主席が「2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう軍に命じたことを指すインテリジェンス(情報)を把握している」と述べ、内外に警戒を呼び掛けている。27年は習政権の3期目が終わる年に当たる。
こうした緊迫した中台情勢に、麻生氏は、日本も台湾有事に関与(コミット)するという意思を台湾側に伝えるとともに、米国もきちんと台湾防衛に積極的に関与すべきだ、と迫っているとも言えるだろう。
ジョー・バイデン米大統領は、中国が台湾を武力統一しようと図った場合、米国としてどう対応するかを明らかにしないという歴代政権の「曖昧戦略」を踏襲している。それによって、中国による台湾侵攻を抑止すると同時に、台湾が独立を目指そうとする動きを防止する狙いがあるとされている。
米国は犠牲を払ってまで台湾を守るか
バイデン氏は、21年8月から4回にわたって、台湾有事に軍事的に関与する意思を明示しながら、その都度、「米国の政策に変わりはない」とし、関与を否定してきている。
麻生氏の狙いは、バイデン米政権に曖昧戦略から脱却し、台湾防衛への関与を明確にするよう求めることだが、簡単ではない。米国が台湾を守るのは、台湾関係法(1979年制定)によるオプションに過ぎず、台湾に対する協定上の義務はないからだ。米国が多大な犠牲を払ってまで台湾を守るのか、との疑念は残っていくだろう。
「我々民進党の主張は現状維持だ」
だが、曖昧戦略のもう一つの目的である、台湾独立の動きを防ぐことについては、その可能性は極めて低くなっている。
蔡総統は21年10月、建国記念日の祝賀式典で演説し、「我々の主張は現状維持だ。(中台)両岸関係の緊張緩和に期待する」と述べ、統一圧力を高める中国にあらがっている。
台湾の民意は、現状維持派が独立志向派よりも多い。22年6月の台湾政治大学の世論調査によると、「永遠に現状維持」が29%、「現状維持、将来再判断」が28%で、現状維持派が大半を占める。「どちらかといえば独立」は25%、「今すぐ独立」が5%で独立派が3割、「どちらかといえば統一」「今すぐ統一」の統一派は1割に満たない。
もう一つ、麻生氏訪台の時期にかかわる、来年1月の台湾総統選の出馬予定者にも、独立志向派は見当たらない。民進党の候補予定者の頼清徳副総統は、かつて独立派を標榜していたが、現状維持派に転じている。
頼氏は今年1月、民進党主席就任の記者会見で、蔡総統の対中路線を継承する方針を表明し、「中台は互いに隷属しない」「台湾は実質的に独立した主権国家だ。改めて独立を宣言する必要はない」とも語った。
「覚悟」がなければ何も始まらない
麻生氏は8月8日の頼氏との昼食会の冒頭、「台湾の総統となる方の、いざとなった時に台湾政府が持っている力を台湾の自主防衛のために、きっちり使うという決意・覚悟というものが、我々の最大の関心だ」と述べた。頼氏との会談では、抑止力をめぐって議論を深めたという。
麻生氏は同日の記者会見では、総統選について、「台湾はきちんとした人を選ばないと、急に中国と手を組んで儲け話に走ると、台湾の存在が危うくなる」と述べ、中国寄りの国民党の候補予定者の候友誼・新北市長を牽制するなど、台湾内政に際どく踏み込んだ。侯氏は「両岸の交流を強化し、対立を減らす」と中国との関係改善を訴えている。
台湾有事を起こすかどうかは、独裁者・習氏の判断であり、抑止を成立させるには日本、台湾、米国が「戦う覚悟」を示し、習氏がそれを理解することにほかならない。覚悟がなければ、当局間の情報交換、住民避難計画、共同軍事演習も始まらないではないか。
●「岸田政権は正気の沙汰とは思えません」森永卓郎氏 トリガー条項発動ナシ 9/7
ガソリン価格が高騰している。SNSなどではガソリン税を軽減する「トリガー条項」に踏み切るべきという声が上がるが、政府は比較的効果が少ない「ガソリン補助金」で対応することを決めた。背景にはどんな考えがあるのか。経済アナリストの森永卓郎さんに聞いた。
――トリガー条項に踏み切らない政府の背景にはどういった事情があるのでしょうか。
トリガー条項を発動させない理由は二つあると見ています。一つは、岸田文雄首相は予算をなるべく使いたくないという財務省の考えに染まっているのでしょう。岸田首相率いる自民党「宏池会(岸田派)」は、大蔵省(現財務省)出身者が多い。
今回、延長が決まった、石油元売り各社への補助金の内容は、レギュラーガソリンの場合、9月7日から年末までは、1リットルあたり185円を超えた部分は全額補助。一方で、168円から185円までの部分は10月4日までは30%、10月5日から年末までは60%を補助します。全国平均で175円程度を目指すとしています。
しかし、去年の夏まで実施していたガソリン補助は、168円以上になれば、最大補助額35円、さらなる超過分も50%を補助するという内容でした。これに比べれば、今回の補助はだいぶ絞ったことがわかります。
今回のガソリン補助金はは昨年度(22年度)の第二次補正予算から出すとしています。つまり、昨年度の二次補正予算をこれまで使ってきましたが、2兆円ほど残っており、その残りで済まそうとしているということです。
ちなみに23年度の補正予算は予備費として5.5兆円計上されており、その内4兆円が新型コロナ対策や原油・物価高対策を目的にしたものになっています。こちらには手をつけないということです。
昨年度予算の範囲内でやるから限界がある。逆算するとこの程度の補助しかできないということです。
トリガー条項を発動させてないもう一つの理由は、財務省の利権にかかわるからですね。
税金として徴収し、それを補助金として元売りなどにばら撒くことで、利権が生まれる構造があります。財務省としては税収も減り、利権にもつながらないトリガー条項の発動をやろうなどとは絶対に思わないでしょう。
――国民の生活が厳しくなっているなか、岸田首相の経済政策についてはどう見ていますか。
いま岸田政権は激しい緊縮財政を敷いています。安倍政権のときの2020年度の基礎的財政収支は80.4兆円の赤字でした。積極財政をしていたということです。その後、政府は赤字額を大きく減らしていまして、今年度予算の基礎的財政収支は10.8兆円の赤字にまで減っています。
赤字を減らすと聞くと、良いことのようにも聞こえますが、ここで意味するところは、景気が悪くなっているときに、政府は支出を切り詰めているということです。安倍政権と比較すると岸田政権は70兆円も支出が少なく、これは国の1年分の収入と匹敵する額です。
背景にあるのは財務省の思想です。財務省は「日本は借金まみれ」のような印象を与える主張をしています。しかし、それは間違いです。財務省が発表している20年度の政府の連結貸借対照表を見ると、1661兆円の負債がありますが、資産も1121兆円あります。差し引き540兆円の借金となります。ただ、日銀が保有する資産と負債もあわせて考えると、日本の借金はわずか8兆円になります。今年度末には借金がゼロになって、黒字になっている可能性が高いです。
それにもかかわらず、国民にお金を出さず、逆に増税する岸田政権は異常です。正気の沙汰とは思えません。岸田首相の判断は冷静な経済的、財政的判断ではなく、「財政を均衡させてなくてはいけない」という「財務省の教義」に捕らわれているのだと思います。
経済が厳しく景気をよくしていく必要がある中で緊縮財政を実施するなど経済政策としてあり得ません。財務省の主張はもはやカルトです。私は財務省のことを「ザイム真理教」と呼んでいます。
――トリガー条項を発動すると国民の生活に混乱が生じる、というのが政府の立場のようです。
混乱なんて生じるわけありません。ルール通りにやればいいだけです。トリガー条項は、レギュラーガソリンの1リッターあたりの価格が160円を3ヶ月連続で超えたら、臨時増税分の25.1円の課税を止め、価格を下げる。そして、130円を3か月連続で下回れば、課税を戻すというとてもシンプルなルールです。混乱のしようがありません。
混乱が生じることがあるならば、対策を講じておけばいいだけです。「混乱が生じる」という政府の答弁は9年前から同じと報道されていました。ルール通りにやっていれば、今ごろガソリン価格は、150円半ばくらいでしょう。国民もその効果を実感できたはずです。
ちなみに、9月使用分の電気・ガス料金が各社で値上がりします。政府はこれまで1キロワットあたり7円の補助金を出していましたが、9月使用分から半分の3.5円に減らします。9月に入っても暑い日が続いているので、10月にびっくりするような請求書が来ると思います。
岸田首相は「国民が効果を実感できるような物価対策を講じる」、「岸田内閣の最優先課題の一つは物価高対策」といったようなことを言っていますが、実際にやっていることは、セコイことしかしていません。
アメリカから米国製巡行ミサイル「トマホーク」を400発購入すると岸田首相は言っていましたが、それを購入するよりも、ガソリン代や電気・ガス代を下げる施策に力を入れたほうが、国民の暮らしを守ることにつながると思いますね。
――生活が苦しくなる中で、消費税減税を望む声も出ています。
私は消費税を減税することはできると思います。ゼロにすることも大丈夫だと思います。
財務省はこれまで日本が大赤字になると、国債と円が暴落し、ハイパーインフレが起きると危機感を煽ってきました。しかし、安倍政権時の20年度に80兆円の赤字を出しても国債の暴落も円の暴落も起きませんでした。私はこのことは安倍政権が実施した画期的な実験だったと思います。
――緊縮財政はこのまま続くのでしょうか。
少なくとも岸田首相がいる限りは続くでしょう。解散にいつ出るかわかりませんが、岸田首相が1年後の自民党の総裁選を乗り切ると、宏池会出身の首相の中で最長の在任期間である池田勇人元首相の1575日を抜く可能性も出てきます。岸田首相がここに色気を出し始めたら、国民の生活はより一層ボロボロになるでしょう。
安倍元首相は回顧録の中で、財務省は「省益のためなら政権を倒すことも辞さない」と批判していました。財務省の官僚は政治家に対して「ご説明」にまわっており、自分たちの教義を受け入れる信者を増やしています。自民党に限らず、立憲や共産党といった野党も信じている、メディアも国民も信じている状況です。
やはり国民の怒りがもっと高まらないといけないと思います。もし「日本は借金だらけで増税もしかたない」「いま減税できないのも仕方ない」などと思っているようであれば、それは財務省の教義に洗脳されています。早く目を覚ますべきだと思います。
●岸田首相に忍び寄る“中国・ファーウェイ”、英米では「スパイ活動疑惑」批判 9/7
中国政府とのつながりという不信感を拭い去れない中国の通信大手ファーウェイは、米国を中心に大いに警戒されている。そんなファーウェイが岸田政権に忍び寄っている。
米国がスパイ活動の懸念を表明してきた中国通信大手のファーウェイ
中国の巨大通信企業、ファーウェイ(中国語表記:華為技術、英語表記:HUAWEI)は、5G(第5世代移動通信システム)技術とスマートフォンの世界的なリーディングカンパニーである。
中国の深センに拠点を置くファーウェイは、国内外に製品を販売してきた。1987年に、同社のCEOである任正非(ジン・セイヒ、Ren Zhengfei)が設立。同社のサイトによれば、20万人以上の従業員を抱える「独立した民間企業」であるとしているが、例えば米トランプ政権においては「ファーウェイは最終的に中国共産党に支配されており、海外に設置された同社の機器がスパイ活動を助長するために使用される可能性があると主張」された。ファーウェイはこれを否定している。
米国をはじめとする多くの国では、ファーウェイにはスパイ行為や知的財産の窃盗の恐れ・可能性があると指摘されてきた経緯がある。そして米国、英国などでは、ファーウェイをはじめとする中国のテクノロジー企業に厳しい規制を課してきた。
米国の政府・議会関係者は、ファーウェイを中国共産党(CCP)の商業的延長と見なしていて、同社が国際制裁に違反し、知的財産を盗み、サイバースパイを行う可能性があるとして、米国の国家安全保障を脅かしていると主張してきたのだ。
ファーウェイの5G機器には、中国政府が大量のデータを収集・集中管理し、通信ネットワークや公共事業を攻撃するために必要なアクセスを中国・北京に与えるバックドアが含まれている可能性も懸念されている。
米国の六つの情報機関トップが「ファーウェイ製品を使うな」と注意喚起
米議会がファーウェイに関する警告を受け始めたのは2012年のことだ。米下院情報特別委員会の報告書は、ファーウェイと同じく中国の通信企業であるZTEについて、2社が製造した機器を使用することは、「米国の核心的な国家安全保障上の利益を損なう可能性がある」と結論付けた。
また18年には、米中央情報局(CIA)と米連邦捜査局(FBI)、米国家安全保障局(NSA)を含む六つの情報機関のトップが、ファーウェイ製品を使用しないよう米国人に注意を促し、同社が「検知されないスパイ行為」を行う可能性があると警告した。
さらに、米シンクタンクの外交問題評議会のサイトでは、今年の2月8日に「Is China’s Huawei a Threat to U.S. National Security?(中国のファーウェイは米国の国家安全保障に対する脅威か?)」と題した記事が掲載された。
「中国政府は、中国の民間企業に対し、中国共産党支部の設立を法的義務化するなど厳格な規制と、国が援助する投資を通じて、強い影響力を持っている。アリババの共同創業者であるジャック・マー氏や、文化大革命時に人民解放軍でエンジニアとして活躍したファーウェイの創業者であるレン氏など、多くの大企業の幹部は中国共産党員だ」
「習近平国家主席の指導下で、政府と民間の境界がますます曖昧になっている。専門家によれば、中国共産党は特にハイテク企業に対する影響力を拡大しようとしているという。最近では、国有企業や地方政府が民間企業への投資を増加させている。外国の報道機関は、政府がハイテク企業に対して、中国共産党が直接保有する株式を提供し、党員が経営においてより大きな役割を果たすよう圧力をかけ始める可能性があると報じている。ファーウェイでそのようなことが起きた証拠はないが、北京は動画共有サービス大手TikTokの親会社であるByteDanceの株式を取得している」
ファーウェイはスパイ活動疑惑を繰り返し否定するが…
西側諸国でファーウェイへの不信感が高まる中、ファーウェイは中国共産党と距離を置き、自社の機器がスパイ活動に使われたことはないし、今後も使われることはないと繰り返し主張し、ファーウェイは政府からの諜報活動の要請には答えないとしている。
ただし、中国においては国家安全法(15年)、国家情報法(17年)が制定され、国民と企業には「国家の安全を維持する責任と義務」があり、中国企業は中国の情報収集当局を「支援、援助、協力」しなければならない。これらの法律の存在もあって、西側諸国の懸念を払拭するには至っていない。
19年以降、米国ではサプライヤーが輸出ライセンスなしにファーウェイに製品を販売することを禁止し、同社が半導体チップを設計・製造する際に米国の技術を使用することを禁止した。これらの規制導入後、ファーウェイの売り上げ、利益、市場シェアは急落。かつては世界最大の販売台数を誇っていた同社の携帯電話事業は壊滅的な打撃を受けた。
米国の制裁によって半導体チップを入手できないため、5G携帯電話の製造中止を余儀なくされた。そんな事情もあり、ファーウェイの携帯電話端末市場における世界シェアは、20年の一時期には20%近くに達して米アップルや韓国サムスン電子を上回っていたが、22年にはわずか4%にまで落ち込んだのだ。
しかし、今、そんな厳しい制裁でどん底に突き落とされたファーウェイは復活を遂げようとしている。
まず、「中国政府は、22年にファーウェイに前年比2倍の65.5億人民元(約1300億円)相当の政府補助金を支給。さらに特定の研究プロジェクトに関連する条件付き資金として、2021年の3倍となる55.8億人民元(約1100億円)を受け取った」(英紙「Financial Times」、23年5月3日)という。
結果、米国による制裁措置により、プロセッサー・チップやその他の技術へのアクセスが制限されているにもかかわらず、ファーウェイは23年上半期の売上高が前年比で3%増加を果たした。
ファーウェイによると、ICTインフラ部門の売上高は1672億元(約3.3兆円)に達し、コンシューマー部門の売上高は1035億元(約2.1兆円)に上った。電気自動車向けにネットワーク技術などを提供する自動車部門の売上高は10億元(約200億円)だったという。
復権を狙うファーウェイは岸田政権に忍び寄る
ファーウェイは虎視眈々(こしたんたん)と世界市場での復権を狙っているようだ。その手始めが日本の岸田政権だ。岸田文雄首相は、8月11日から16日まで、夏休みを取ったが、8月14日に、東京・本郷の東京大学へ行き、松尾豊教授の研究室で生成AI(人工知能)に関する講座に参加したことを記憶している人もいるだろう。
この松尾氏が理事長を務める一般社団法人日本ディープラーニング協会は、スポンサー(GOLD賛助会員)に、ファーウェイの関連企業である華為技術日本(ファーウェイ・ジャパン)が名を連ねる組織だ。
また、20年に中国の「上海展覧中心(上海EXPOセンター)」で開催された「HUAWEI CONNECT 2020」において、松尾氏はリモートで講演を行っている。このイベントでは、日本ディープラーニング協会の理事である江間有沙東京大学未来ビジョン研究センター特任講師(当時)もリモート講演を行っている。
そしてその松尾氏と江間氏は、AIの活用に向けた政府方針について有識者と議論する政府の「AI戦略会議」の構成員名簿に名を連ねている。松尾氏に至っては同会議の座長を務めている。つまり、政府のIT分野の大方針を決める重要人物だ。
米国を中心に、世界中から締め出しを食らっているファーウェイの狙いは一つだろう。
●「国民を馬鹿にしている」エッフェル姉さん・松川るいは雲隠れで火消しに成功 9/7
支持率下落に悩む岸田文雄首相が起死回生のため近く内閣改造・自民党役員人事に踏み切る。「ポスト岸田」を狙う茂木敏充幹事長や河野太朗デジタル相らの処遇が焦点となっているが、もう1つの注目点は重要ポストへの女性起用だ。ジェンダーギャップ指数が世界最低水準にある日本は女性閣僚が全19人中2人にとどまっており、高市早苗経済安保担当相の交代論もくすぶる。
経済アナリストの佐藤健太氏は「『エッフェル姉さん』『ニョッキ松川』『松川るい16世』などとさまざまな異名がつけられた松川るい参院議員には、従来重要ポスト起用が期待されていたが、今回の騒ぎで遠ざかった。首相にとって大胆な女性起用は賭けになるだろう」と指摘する。
フランス研修炎上を受けた松川るいは女性局長を辞め、火消しにとりあえず成功
8月22日、自民党は女性局ニュースのトップに「女性局フランス研修について」と題した一文を掲載し、お詫びの言葉を並べた。女性局長だった松川参院議員や今井絵理子参院議員といった女性局メンバーら38人が7月下旬にフランスを訪問し、エッフェル塔を背に松川氏ら3人が両手を頭の上で合わせる「エッフェル塔ポーズ」を笑顔でとっている写真をSNSに投稿。「税金で観光旅行に行っているのか」「国民感覚とはかけ離れている」などの批判が殺到したことを受けてのものだ。
女性局名の“謝罪文”には「今般のフランス研修につきまして、不適切な情報発信等により国民の皆様、党員の皆様の信頼を損なう事態となりました。ここに国民の皆様、全国でお支え頂いている皆様にあらためてお詫び申し上げます。今後、女性局として、頂いている様々なご意見、ご批判を真摯に受け止め、地道に活動を積み重ねながら、信頼回復につとめてまいる所存であります」と記されている。
松川氏は8月21日に女性局長の辞表を党執行部に提出し、女性局役員のページからは松川氏の名が消えている。表舞台から姿を消したことなども影響してか、JNNの世論調査では内閣支持率が上昇。岸田政権としては“火消し”にひとまず成功した形だ。
現役外務省幹部「松川るいは将来の首相候補だったが、残念だ」
ある外務省幹部は悔しさをにじませる。「松川氏は外務官僚出身で、夫は現職の幹部。外交・安全保障分野に強い与党議員として防衛政務官や党国防部会長代理を歴任し、将来の宰相候補として入閣が期待されていただけに残念だ」。昨年夏の参院選大阪選挙区で2回目の当選を果たし、一時は高市経済安保担当相の後任として名があがっていた才女の“失点”は高くついたとの見方が広がる。
自民党内の女性議員は受け止めが複雑だ。「男性、女性に関係なく、国民が困窮する中であのようなポーズ写真をSNSに投稿すれば国民から批判されても仕方ない」と冷静な声があがる一方で、「『やっぱり女性だから・・・』と言われることになれば悲しい」などと岸田首相が女性登用を躊躇するきっかけになることへの懸念もある。
高市経済安保担当相は岸田首相に異論をぶつけた経緯から、次の組閣で抜ける可能性が高い
岸田内閣には高市経済安保担当相、永岡桂子文部科学相という女性の閣僚2人がいるが、政権内では高市氏の交代は「織り込み済み」となっている。前回の自民党総裁選で首相のライバルだった高市氏は安倍晋三元首相の支持を得て保守層を取り込み善戦した。影響力拡大を警戒した岸田氏は閣内に取り込んだが、昨年末の防衛費大幅増に伴う増税プランを決定する際には首相方針に異論を唱え、「罷免されても仕方がない」と啖呵を切った経緯がある。
最終的には首相の説得に応じたものの、「何を言い出すかわからない」(政府関係者)と警戒心がくすぶる。ただ、後ろ盾だった安倍氏を失ったことで「もう高市氏は党総裁選に出られないのではないか」(別の政府関係者)との声もあり、閣内に取り込んでいる必要はなくなったとの見方が広がる。
もう1人の永岡文科相については、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐり政府は10月中にも解散命令を裁判所に請求する方向で検討に入ったと報じられている。松野博一官房長官は9月4日の記者会見で宗教法人法に基づく対応を問われ、「文科相が報告徴収、質問権の行使などを通じて着実に進めている」と述べており、9月に実施予定の内閣改造で永岡氏を交代するのは適切ではないとの声が根強い。
次の女性大臣二人の最有力候補
当初、次の内閣改造では女性閣僚の大幅増が予想されてきた。その理由の1つに世界経済フォーラムが6月に発表した2023年版「世界男女格差報告書」がある。日本のジェンダーギャップ指数は調査対象となった146カ国中125位で過去最低となり、特に「政治参加」の評価は138位と最も低いレベルだったからだ。岸田政権には国会議員(衆院議員)の男女比に加え、閣僚の女性の数を改善していく機運が高まっていた。
だが、7月末の「エッフェル姉さん」の失点によって首相が大胆な起用を躊躇する可能性は高まる。それでも現在2人の女性閣僚がいることを考えれば、「最低2人」は確保したいところだ。では、高市氏が交代濃厚の今、他には誰が候補となりえるのか。
最有力候補は、上川陽子党幹事長代理と小渕優子党組織運動本部長の2人だ。上川氏は東大卒業後、三菱総合研究所研究員を経てハーバード大学大学院に留学(政治行政学修士)というキャリアを持ち、政治家としても実務能力の高さに定評がある。少子化担当相や法相を歴任し、首相が率いる「宏池会」(岸田派)に所属している点も入閣に追い風となる。
もう1人の小渕氏は、早くから将来の女性宰相候補として期待されてきた人物だ。父親の小渕恵三元首相と近かった青木幹雄元官房長官や森喜朗元首相の寵愛を受け、党や閣内で要職を重ねてきた。2014年に「政治とカネ」問題によって経済産業相辞任に追い込まれたものの、地道に汗を流す姿勢には共感も広がる。
小渕を選ぶか茂木を選ぶか…岸田首相の大きな賭け
とはいえ、小渕氏が所属する派閥「平成研究会」(茂木派)を率いるのは茂木敏充幹事長であり、党三役のうち2人を茂木派から起用するわけにはいかない。党内最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が党三役の1つを確保することを考えれば、小渕氏は茂木氏が執行部を外れる以外に重要ポストにのぼりつめることはできないのだ。上川氏を入閣させる場合にも岸田派の閣僚数を増加させることになれば、他派閥からの批判が予想される。普通に考えれば、岸田派の閣僚を1人辞めさせる必要が生じる。
小渕氏を選び、来年夏の自民党総裁選でライバルとなり得る茂木氏を無役にするのか。政権の安定を重視し、茂木幹事長続投を決めるのか。あるいは「第3の道」でのサプライズを見せるのか。内閣支持率の続落が止まらない中、首相が断行する内閣改造・党役員人事は政権の行方を左右する大きな賭けになることは間違いない。

 

●岸田総理の目玉政策「令和版デジタル行財政改革」で新たな組織を立ち上げへ 9/6
岸田総理大臣が目玉政策に掲げる「令和版デジタル行財政改革」を推進するため、新たな組織を立ち上げることが分かりました。
岸田総理が打ち出した令和版デジタル行財政改革は、デジタル技術を使って国と地方の行政の効率化を目指すものです。
複数の関係者によりますと、新たな組織は内閣官房に置かれ、50人規模となる見込みで、すでに人選が進められています。
岸田政権の新たな目玉政策として総理直轄の司令塔を設けることで、支持率アップにつなげる狙いがあるとみられます。
担当閣僚も新設される見通しですが、デジタル庁やデジタル田園都市国家構想実現会議事務局など、デジタル関連の組織はすでに複数あり、「これ以上、組織を増やしても混乱を招くだけだ」との声も上がっています。
●岸田首相「人事は適材適所」で麻生氏も木原氏も続投報道…SNSで批判殺到 9/6
岸田文雄首相は、9月中に実施を予定する内閣改造・党役員人事で、麻生太郎・党副総裁を留任させる意向を固めた。また、最側近の木原誠二官房副長官を続投させる方向だという。9月6日、朝日新聞が報じた。
岸田首相は5日、インドネシアとインド歴訪に先立ち、官邸で記者団に「適材適所に尽きる。タイミングはまだ決まっていない」と述べるにとどめていた。
「麻生派は55人が所属する党内第2派閥。8月の派閥研修会で麻生氏は『岸田政権のど真ん中でしっかり支える』と語るなど、一貫して岸田首相を支持してきました。
ただ、8月末に徳島市内での講演で、岸田首相の防衛費増額、原発再稼働の実績をあげたうえで、『支持率なんかあてにならない』と述べた際は、激しい批判を浴びてもいます。
岸田首相は、2021年8月、党総裁選前に、『党役員は1期1年、連続3期までとすることで権力の集中と惰性を防ぎたい』と党改革を訴えていたこともあり、麻生氏の留任は『内向き』ととられかねません」(政治担当記者)
木原官房副長官に関しては、妻が元夫の死亡をめぐり警視庁から事情聴取を受けたことや、木原氏が、本番行為をさせる違法デリバリーヘルス(派遣型風俗店)の常連だったことを「週刊文春」が報じている。
そのためか、麻生副総裁留任、木原官房副長官の続投の意向が報じられると、SNSでは批判的な声が多くあがった。
《麻生さん、今年83歳でしょ?そろそろ退いて頂いた方がいいのでは?いつまでも日本が変わらない気がする》
《麻生を留任しスキャンダル渦中の木原を続投させる意向、加えて処理水の中国関連では未だ二階に頼りきりとは。岸田にはリーダーシップも決断力もない》
《これって最悪の選択じゃないの》
茂木敏充幹事長の処遇も焦点となっている。9月5日の記者会見で、茂木氏は2024年秋の党総裁選への対応を問われ、「少なくとも今、幹事長だ。幹事長として、内外の課題が山積するなか、政権をしっかり支えていく。これが私の仕事だ」と述べた。
「この発言は、幹事長続投に意欲を示したものとみられます。茂木氏を幹事長から外せば、党総裁選に出馬しかねない。無風での総裁再選を目指す岸田首相の悩みどころです。
とはいえ、9月3日に発表されたJNNの全国世論調査では、『大幅に替えるべき』が51%で、『あまり替えるべきではない』の34%を上回っています。
内閣支持率の低迷に悩む岸田首相にとって、ここで『大幅な刷新感』を出さなければ、支持率回復は見込めません」(同前)
8月30日、岸田首相は二階俊博元幹事長と党本部で会談し、近く内閣改造・党役員人事に着手する方針を伝えたが、二階氏は「好きにやったらいい。全面支援する」と応じたという。内閣改造・党役員人事で、岸田首相は支持率を回復できるだろうか。
●岸田政権「対中弱腰」 台湾が「台湾省」と記された中国「新地図」に抗議も… 9/6
中国が領有権を一方的に主張する新地図を公表して、アジア各国が猛反発している。中国とASEAN(東南アジア諸国連合)は6日、インドネシアの首都ジャカルタで首脳会議を開くが、激しい議論も予想される。実は新地図では、日本固有の領土である沖縄県・尖閣諸島も、中国名「釣魚島」と表記され、新たな境界「十段線」の中国側に組み込もうとする意図が感じられた。外務省は外交ルートで抗議していたが、岸田文雄政権は「中国を刺激しない」方針なのか、夕刊フジが取材をかけた翌日(5日)まで「抗議の事実」を公表していなかった。識者からは、岸田政権の弱腰、危機意識の欠如を懸念する声が噴出している。
問題の地図は、中国自然資源省が8月28日に公表した「2023年版標準地図」だ。同省のHPでは、「中国地図」や「世界地図」が、さまざまな図法で複数公表されている。
これらの地図の中には、習近平国家主席率いる中国が南シナ海の大半を勝手に囲い込んだ境界「九段線」に加え、台湾の東側まで拡大した「十段線」が記されていた。台湾は「台湾省」と記されていた。フィリピンやベトナム、マレーシア、台湾などが公表直後から猛烈に抗議している。
前述したように、尖閣諸島を、中国名・中国呼称の「釣魚島」「Diaoyu dao」などと表記している。
さらに不穏な兆候もある。
台湾の東側まで拡大した「十段線」のラインを延長すると、尖閣諸島を中国側に含む可能性があるのだ。
外務省によると、地図の公表直後、一連の事実を把握し、在日中国大使館に対し、課長級のルートで「独自の主張は受け入れられない」などと抗議した。北京の日本大使館ルートでも抗議した。十段線の意図についても、「中国側に詳細に事実確認をした」という。
ところが、岸田政権は「抗議の事実」について、すぐに公表しなかった。松野博一官房長官が5日午後の記者会見でやっと、外交ルートを通じて厳重に抗議し、即時撤回を要求したと明らかにした。夕刊フジが、外務省に取材した翌日である。
外務省は声明などを出さなかった理由について、「事案により判断している」というが、アジア各国が強烈に反発しているのとは対照的だ。
福井県立大学の島田洋一名誉教授は「中国共産党が重視するのは『実効力』であり、現実の伴う『行動』だ。日本の国益に反する中国の主張に対して、明確かつ即座に『ノー』と通告し、国内外に発信しないと意味がない。岸田首相や閣僚、外務省幹部などが繰り返し、『尖閣諸島は日本領土である』と意思表示し、中国の暴挙に抗議を伝えないと、中国は意に介さない。事なかれ主義の対応は、日本を軽視させる誤ったメッセージになる。日本の反応は国際社会にまったく伝わらず、中国側の主張を認めたと受け止められかねない」と危機感を示す。
ちなみに、中国が地図を公表した直後の8月31日、フィリピンは「中国の主権を正当化しようとする試みで何の根拠もない」と声明を発表した。南シナ海での中国の主権主張を退けた2016年の仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)裁定の順守を求めた。
ベトナムも同日、「ベトナムの海域に対する主権、管轄権を侵害している」と非難したほか、台湾の外交部(外務省に相当)報道官は「(台湾は)絶対に中国の一部ではない」と猛反発した。
中国事情に詳しい評論家の石平氏は「アジア各国が次々と反論したのは主権国家として当然であり、日本の『沈黙』はことさら目立った。はっきり主権を主張しなければならない局面なのに、岸田政権の弱腰は何に忖度(そんたく)しているのか」と語気を強めた。
島田氏「自国領」現実化のための軍事行動に警戒
ところで、中国が公表した新地図から、どんな「意図」「野心」が読み取れるのか。
島田氏は「中国は国家として『宣言』したことを必ず実行しようとする。新地図で宣言した『自国領』を現実化するために、軍事を含めた行動に踏み出す懸念は極めて高い。台湾を含めて、有事に備えた具体的な準備が必要だ」と警鐘を鳴らす。
石平氏は「中国の野望を図面化したところで得るものはなく、むしろ近隣諸国の反発と警戒を招き、関係を悪化させただけだ。共産党政権は意思統一を欠き、各部局が習氏に忖度し、身勝手な行動をする傾向が強まっている。党中央も事態の収拾に追われている」と語る。
ASEAN関連首脳会議の後、インドでもG20(20カ国・地域)首脳会議(9、10日)が行われる。問題の新地図では、インド北東部のアルナチャルプラデシュ州が、中国領「南チベット」として記載されていた。G20議長国で同州を実効支配するインドでは、会議直前の地図公開を「円滑な議事進行の妨げ(で敵対行動)」との受け止めが広がっているという。
ともかく、余計な刺激を避けようと、明確な主張をしなければ、岸田政権の弱腰ぶりを見透かされるだけだ。中国の主張はエスカレートして、既成事実を積み重ねられてしまう。岸田政権に日本を任せられるのか。 
●「大阪万博は国家事業」って維新のご都合主義では? …責任はどこへ?  9/6
パビリオン建設が遅れる2025年大阪・関西万博。そもそも開催できるのか、日に日に疑問の声が高まる中、強力に旗振りしてきた日本維新の会から、首をかしげたくなる発言が相次いで出た。「万博は大阪の責任ではない」「国家事業だ」。開き直りや自己保身にも聞こえる言葉。この期に及んで国頼みをあらわにするのは、ご都合主義が過ぎないか。
「大阪の責任ではなく…」
「国のイベントなので、大阪の責任ではなく、国を挙げてやっている」
発言の主は日本維新の会の馬場伸幸代表。万博の海外パビリオン建設が遅れている問題を巡り、8月30日の党役員会でこう述べた。
同じ日に記者会見に臨んだのが藤田文武幹事長。馬場氏と歩調を合わすように「(万博は)国家事業」と主張。さらに「与野党の別なく一丸となって結束し、成功に向けて取り組むべきだ」と強調した。
万博に関して「国」を前面に押し出す維新幹部の2人。ただ万博といえば、大阪府と大阪市が深く関与してきたのではないか。
さかのぼること9年前。大阪府の万博推進局によると、大阪維新の会の府議団などが2014年8月、にぎわいづくりの一環として万博の誘致を提案した。
15年には、府が設立した検討会が誘致の可能性検討状況について報告書をまとめ、16年に府の別の会議が基本構想を策定。17年に府市、地元経済界などが主体となって「日本万国博覧会誘致委員会」を設立すると、25年万博への立候補を経て、18年11月に大阪が開催地に決まった。
19年1月には、開催準備に当たる「日本国際博覧会協会(万博協会)」が国主導で発足した一方、協会は府の咲洲庁舎内に事務所があり、府市の職員が派遣されているほか、幹部の副会長には府知事と大阪市長が名を連ねる。費用負担の面でも府市は深く関与しており、協会によると、万博の会場建設費1850億円のうち、国と府市、経済界で3分の1ずつを負担する。
維新は選挙公約に「万博の成功に向け」
大阪が地盤の日本維新の会も万博推しだ。
そもそも府市のトップは維新の幹部が務めてきた。昨年の参院選の選挙公約でも「万博の成功に向け、国と開催都市、官民が強力に連携して国内機運の醸成に努めます」「関連事業は会場周辺のみならず大阪府全域を始め、関西や全国へと拡大・展開します」とうたっている。
大阪在住のジャーナリストの吉富有治氏は「もともと万博の誘致で一生懸命旗を振ってきたのは府市であり、維新だ。大阪開催が決まってから最近の選挙まで『誘致に成功したのは維新の功績だ』と大々的に宣伝してきた。地元では万博イコール維新という認識に揺るぎはない」と説く。
その万博を巡っては、最近になってパビリオン建設の遅れが顕在化した。労働規制の緩和を画策しているとも報じられ、強い批判の声が上がっている。
逆風下で維新幹部から出てきたのが冒頭の発言だ。
吉富氏は「もともと旗を振り、会場として夢洲ゆめしまを選んだなど『舞台装置』を整えたのに、今になって責任を逃れようとする姿勢はひきょうだし、つじつまが合わない」と批判する。
神戸大の小笠原博毅教授(社会学)も「国政でさらに上を目指す維新にとって浮動票の確保は生命線。市民から支持されないと思ったら、頭の向きを変える政党の体質が現れている」と述べ、開き直りを想起させる姿勢を非難する。
高速道路も液状化対策も
維新幹部の発言で気になるのは「万博は国家事業」という部分もだ。この言葉を聞くと、費用面の懸念が浮かんでくる。
会場建設費は先に触れた通り、国と府市、経済界が3分の1ずつ負担する。当初は計1250億円だったが、1850億円に。既に1.5倍だが、資材高騰は高止まりしており、さらに上振れするリスクもある。
万博関連費を巡る問題はこれだけではない。
万博へのアクセスとして使う高速道路の整備では、工法の見直しなどによって2度、工費が増額され、当初1162億円だった整備費は2957億円と倍以上に。この整備は国が55%、市が45%を負担する。
万博開催地の夢洲の跡地にはカジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)が予定されているが、用地の土壌汚染と液状化への対策で、市は約790億円の負担を決定している。
そんな中で飛び出したのが「万博は国家事業」という言葉だった。
なぜ夢洲でなければいけなかったのか
前出の小笠原氏は「ポピュリズム政党として短期的には無責任だと批判されても、国からの支持と援助を最大限に引き出し、大阪・関西圏の傷を最小限に食い止めて成功にこぎつけたとシナリオを描く維新関係者はいるだろう」とみる。
膨らむ万博関連費を見るにつけ、「地盤に難がある夢洲をなぜ活用しようとするのか」と疑問が湧く。
かつてごみが埋められ、「負の遺産」とも言われた人工島・夢洲を巡っては、2011年の大阪府知事・市長のダブル選後、市のトップになった橋下徹氏が夢洲へのカジノ誘致を検討していることが表沙汰に。今はIRの整備構想が進む。
万博はカジノをつくる大義名分にすぎない?
帝塚山学院大の薬師院仁志教授(社会学)は「維新にとっては、もともと夢洲にカジノをつくることが目的。万博はその整備を進めるための大義名分に過ぎない。もっといえば、夢洲の開発そのものを目的にしているように見える。バブルの過剰投資と同じ。維新の理屈は当初から変わっていない」と語る。
維新によって役割の重さが強調された国は最近、どう振る舞っているのか。
8月31日に官邸で開かれた万博に関する会合で、岸田文雄首相は「成功に向けて政府の先頭に立って取り組む決意だ」と表明した。
内閣官房の万博担当者は取材に「関係者が一体となって加速化するという会合だった」と話した。しかし、新しい方策を尋ねても具体的な回答はなかった。
政治評論家の有馬晴海氏は「岸田首相は自分が万博誘致を決めたわけでもなく、思い入れはあまりないだろう。ただ、突き放すことはできないから、あくまで型通りの対応をしただけでは。岸田氏をはじめ、多くの自民党の政治家にとって、『今更泣きつかれても』というのが本音ではないか」と推察する。
どこまで必要なのか、議論して中身を練ったのか
とはいえ、国が今以上の役割を担うとなると、追加費用が必要になった場合、さらなる国費が投入される可能性も否定できない。その財源は当然ながら、国民の税金ということになる。
駒沢大の山崎望教授(政治理論)は「維新は党のカラーとして対立構図をつくるのが得意だが、議論や調整は苦手な印象がある。大阪での万博開催ありきで、どこまで日本に必要なのか、議論して中身を練ったのか疑問だ」と指摘する。
このままでは、広く国民の理解は得られないとして、山崎氏はこう提言する。
「現実に今の予定のままの万博ができるとは思えない。計画を縮小し、お金がかからないものにして、合意を広げるしかないのではないか。それができないのなら、撤回を含めて考え直すべきだ」
デスクメモ
岸田氏は処理水放出で自らの非を棚上げする。「地元理解なし」を顧みずにいる。維新も万博を巡って自らの責任を棚上げする。第2自民党を体現するのかと皮肉を語る場合ではない。今を放置すれば権力者がやりたい放題に。それを甘受するのか。私たちに問いが突き付けられている。
●ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか 9/6
いかにも岸田政権らしい補助金延長の「ぐずぐず」
ガソリン価格が上昇している。原油価格や円安の影響もあるが、政府の補助金が予定通り縮小されていることの影響が大きい。このままだと1リットル当たりで200円を超えてくる可能性がある。
補助金の縮小は「予定通り」であり、これに伴いガソリンの小売価格が上昇することは国民に周知されていたはずなのだが、ここにきて不満が高まっている。「対策」を求める声があり、岸田文雄首相は、9月で終了するはずだった補助金の年末までの延長を決め、さらに補助金をかさ上げすることにした。そして、今後、補助金はさらに延長される可能性が大きい。
自民党内では、国民がメリットを「実感できる」措置、効果が「目に見える」補助金を求める声が上がっていて、報道ベースでは、「低迷する内閣支持率を気にする」岸田政権という文脈の注釈が付く。
政治家が国民の支持を気にすることは必ずしも悪いことではないが、補助金を下げて、戻して、様子を見るという推移は、いかにも岸田政権らしい「ぐずぐず」の展開だ。政策として一貫性があまりにない。周囲の官僚たちは「混乱しているのは政治家さまで、われわれは振り回されています」と言いたいかもしれないが、両方まとめて無能なのではないか。
「超」複雑なガソリン価格とトリガー条項
ガソリン価格の仕組みは税金と補助金が絡んで複雑であり、政策論として複数の論点をはらんでいる。
元売り業者が、原油を輸入して精製し、保管・輸送してさらにマージンを乗せた元売り価格に、ガソリン税が乗るが、ガソリン税は本則の税率に加えて暫定的な特例税率が上乗せされている。それぞれが小売価格では1リットル当たり20円台後半の金額だ(現在本則28.7円、特例25.1円)。さらに、石油石炭税(2.8円)が加わって、これにガソリン小売業者のマージンが乗って小売価格が形成され、そこに消費税が掛け算されて追加された金額が、ガソリンスタンドでユーザーが目にするガソリン価格になる仕組みだ。
さらに、分かりにくく、補助金と並んで議論になっているのが、暫定税率=特例税率を巡る「トリガー条項」を巡る事情だ。暫定税率は、道路整備のために財源が必要だとして1970年代に導入されたものだが、2010年に道路整備は一段落したとしてこれが廃止された。ところが、同時に同額が特例税率として残って一般財源化された。
ただし、この時にガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合には特例部分を減税する「トリガー条項」が導入された(発動後、価格が130円を3カ月連続して下回れば税率が元に戻るルールだ)。
ところが、このトリガー条項が11年の東日本大震災の復興財源の確保を理由に凍結されて現在に至っている。
新たな補助金制度を作るよりトリガー条項の凍結解除を検討せよ
制度の趣旨を素直に解釈すると、トリガー条項は、資源価格高騰などやむを得ない事情でガソリン価格が急激に上昇した場合に、これに対応しきれない業者や生活者を救済する激変緩和措置として設けられたものだろう。まさに今の状況がそれに当たるので、この凍結解除、すなわち自然な発動が求められるのではないかと思われるのだが、その気配は全くない。
新たな補助金制度を作るよりも、元々ある制度の趣旨を生かす方が自然だし、制度をシンプルに運用できる。しかし、政府の意向は、暫定税率=特例税率による税収は固定化して守りたいということであるらしい。
そもそも、お金に色は着いていないので、「○○による税収は、××に支出する特定の財源だ」という決め事に実質的な意味はない場合が多いはずだ。「××に対する支出」が一般財源からも支出されなければならない重要度の高いものなら、この支出に充当された税収の分だけ、一般財源に余裕ができるので、「○○の税収」は実質的に一般財源として流用されたのと同じだ。
「○○は××の特定財源だ」という呪文は、専ら「○○税」を創設するために、一定数いる知恵の回らない国民を納得させるための方便にすぎない。このことは、民主党政権時代に一部の政治家も含めて丸め込まれた「消費税は社会保障のための財源」との説明を思い出すとよく分かる。
ただし、税金が実現してしまうと、その金額分を特定の財源に充てたことにしなければならない建て付けは時に不便だ。道路整備が進んだときに暫定税率を特例税率にすり替えて一般財源化した際に、財政当局はうまくやったと思ったかもしれない。しかし、その際に付けたトリガー条項を凍結するに当たって震災の復興財源という別の方便が必要になり、今になってみるとその方便がまた古くなった。
トリガー条項の凍結解除は、もともと野党側(特に国民民主党)から出てきた話なので、自民党は乗りにくいかもしれないが、新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう。
「価格への補助」はもうやめた方がいい
政府にやる気がないトリガー条項の凍結解除も含めて、現在および目下検討中の「ぐずぐず補助金」も、広い意味では、ガソリン価格を引き下げるための補助金の性質を持つ。そして、この補助の適切性には大いに疑問がある。
まず、資源配分の効率性と価格メカニズムの観点で考えると、原油をはじめとする諸コストが上昇して価格が上がっているのなら、消費者はまずガソリン使用の抑制を考えるべきだ。
世界的に資源価格が上がっている時に、資源の相対的な希少性が増しているのだと考えることは自然だ。
加えて、地球環境に対する配慮の観点から化石燃料の使用抑制がかねて求められていた。
つまり、ガソリンや電気料金の値上げに対して、国民はそれぞれの立場から、ガソリン消費の抑制や節電を考えることが経済合理的であり、近年の社会運動にも合致する方向性なのだ。補助金を使って価格をゆがめることは、経済政策として適切ではない。
とはいえ、ガソリンを多く使うビジネスで急には消費量を減らせない業者や、同じくガソリンの使用を減らすことが短期的には難しい生活困窮者がいるはずだ。彼らに対しては何らかの所得補助措置を考えるべきだろう。もちろん、所得の補助を受けた業者や生活者も、ガソリンの使用抑制に工夫すべきではある。そして、「急には対応できない」というユーザーのために、トリガー条項が存在していることは前述の通りだ。
金持ちの高級車のガソリン代を税金で補助する必要があるのか
高所得者・富裕層のガソリン代、電気代を補助しないで済むとするなら、困窮者向けの所得補助に必要な金額は、国民全体が使用するガソリン代、電気代の価格抑制に必要な補助金の額を大きく下回るはずだ。
また、言わずもがななことかもしれないが、価格抑制による補助の分配効果を考えると、富裕層が乗る高級車のガソリン代は低所得者が乗る車のガソリン代を大きく上回るだろうし、大邸宅と小ぶりなアパートの電気代は比較してみるまでもない。価格抑制で得るメリットは、絶対額で見て富裕層の方が大きいのだ。
もちろん、最終的に将来の税金で負担するにせよ、インフレを通じて間接的に負担するにせよ、補助金分の財源を誰が負担するかという問題を併せて考えないと、再分配の効果を確定して論じることはできない。ただ、直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう。
街に出ると、いかにもお金持ちが乗っていそうな高級車を目にすることがあろう。あの車のガソリン代を税金で補助する必要があるのか、と考えてみることは無益ではない。
経済的なロジックとしては、価格を抑えるために補助金を投入する政策はもうやめる方がいい。
不合理が実現する合理的な理由
筆者が考える、ガソリン価格に関わるあるべき政策の優先順位を大まかに言うと、
(1). ガソリン価格への補助をやめて、困窮者への所得補助を充実させる、
(2). (1)の早急な実現が不可能で激変緩和措置が必要な場合、トリガー条項の凍結解除を補助金よりも優先する、
というものだ。現実的には、まずトリガー条項の凍結解除からということになるだろう。シンプルでかつ合理的ではないだろうか。
しかし、筆者の案が実現しないと信じるに足る、残念で強力な現実が存在する。その根源は一人一票を大原則とする民主主義と個人の経済合理的判断だと言うと穏やかではないが、以下のような事情だ。
まず、困窮者の所得を補助する政策は困窮者とされた国民には直接メリットがあっても、多数のそうではない国民にとってメリットが見えにくい。多数の国民が、ガソリン価格の高騰を眺めつつガソリンの使用を抑制する工夫を考えなくてはならない現実に直面して、不満に思うだろう。
これに対して、補助金による価格抑制は、個々の効果は小さくても直接的なメリットを感じる国民の数が多い。政権支持率に効くのはこちらの方だろう。
また、困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。
ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ。
直接的で近視眼的な賛否を超えて合理的な状態を実現するためには、国民が政策の立案・実行を委託する政治家や官僚に良識と能力が必要だが、どうやらわれわれはそのような政治家や官僚の養成に不熱心だった。
「これが日本国民のレベルなのだ」と言われたら返す言葉がないが、目を背けたくなるような現実がそこにはある。 

 

●「戦後日本の骨格を作り替えた大政治家であった」菅元総理が安倍家の墓訪問 9/5 
安倍元総理が亡くなって1年2ヶ月。
菅義偉元総理が、きょう(5日)初めて長門市の安倍家の墓所を訪れ、花を手向けました。
菅元総理は地元の人に改めて安倍元総理の功績を伝えたということです。
関係者によりますと、菅元総理が安倍昭恵さんに墓参りを希望していることを打診し、今回、初めて実現しました。
きょうは、山口4区選出の吉田真次衆議院議員の他、江原長門市長、それに地元の支援者らが見守る中、安倍元総理が眠る墓に花を手向けました。菅元総理は、安倍政権下で長く官房長官を務め、安倍元総理が退陣した後の政権を引き継ぎました。
花を手向けた後、安倍元総理の功績を語る様子を参列者が撮影していました。
菅元総理「振り返りますとまさに戦後日本の骨格を作り替えた私は大政治家であったと思っています」
参列者は「本当に会いに来たという印象で 心情尽くして心尽くして墓参りしているなという印象を受けました感動的でした」
安倍晋三元総理は去年7月に奈良県で選挙応援中に銃撃され亡くなり、ことし7月、納骨されました。
菅元総理は墓参の後、帰京したということです。 
●安倍政権もジャニタレを徹底利用 政治家に問われるダンマリの重大責任 9/5
ジャニーズ事務所創業者のジャニー喜多川氏の性加害を認定し、藤島ジュリー景子現社長の早期退任を提言した、同事務所設置の「再発防止特別チーム」。しかしその責任を問われるのは、ジャニーズ事務所の関係者のみにとどまらないようです。今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東さんが、1960年代から報じられてきた喜多川氏の「性加害の実態」を振り返るとともに、同事務所がいかにしてメディアに圧力をかけてきたかを紹介。さらに所属タレントを政治利用し続けた安倍政権の責任についても考察しています。
プロフィール:伊東 森(いとう・しん) / ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。
ジャニーズ事務所を政治利用した安倍政権に沈黙貫いたメディア / ジャニー喜多川氏「性加害」の責任を問われるべき面々
ジャニーズ事務所創業者であり、前社長のジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害問題について、外部専門家による「再発防止特別チーム」は29日、喜多川氏が多数のジャニーズJr.に対し、長期間にわたり性加害を繰り返していたという事実を認定したと発表。
特別チームは、喜多川氏が事務所内では1970年代前半から2010年代半ばまで、ジャニーズJr.の少年たちへの性加害を繰り返したとし、少なくとも数百人の被害者がいるとの複数の証言を得たとする。
信憑性については、チームのメンバーで精神科医の飛鳥井望氏が、「その時の状況をある程度詳しく聞き、真実性があると判断した」と説明する。
ジャニーズJr.は、CDデビューを目指す未成年が多くを占める。調査報告書では、性加害の根本原因が、喜多川氏の性嗜好異常にあり、「一方的な強者・弱者の権力勾配のある関係性」の下で未成年に行ったとする。また、喜多川氏の姉で事務所名誉会長だった藤島メリー泰子氏(2021年死去)が喜多川氏による性加害を知りながら、「徹底的な隠蔽を図ってきた」と組織の在り方にも言及し、事務所も、「見て見ぬふり」をしてきた指摘する。
取締役、代表取締役を務めたメリー氏は2021年に死去しているため、ジャニー氏の性加害を認識していたかを直接確認することはできない。
しかし、調査報告書によると、メリー氏はジャニー氏の性加害問題を認識していたと推認するのが合理的かつ自然であるとしている。メリー氏と戦前から懇意にしていた新芸能学院の名和太郎氏の夫人は生前、「ジャニー氏は、小さい頃にジャニー氏がやってきたようなことと同じような性加害を受けて育ったから、一種の病気なんだ」と話していたという。
ジャニーズ性加害の主な経緯
1965〜67年 「初代ジャニーズ」メンバーも所属した芸能学校での、ジャニー喜多川氏による少年へのわいせつ行為を、一部週刊誌が報道
1988年 フォーリーブスのメンバーだった北公次さんが、著書で喜多川氏の性行為強要に言及
1999年 週刊文春が喜多川氏によるジャニーズ事務所所属の少年へのわいせつ行為などを報じる
2003年 週刊文春の記事をめぐり、事務所などが起こした訴訟で、東京高裁がセクハラ行為の真実性を認める。翌年確定
2019年 喜多川氏が死去
2023年
 3月 英BBCが喜多川氏の性加害を報道。以降、元所属タレントらの告発が相次ぐ
 5月 事務所の藤島ジュリー景子社長が動画と文書で謝罪
 8月4日 国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会、日本政府に被害者救済を要請
 8月29日 事務所が設置した再発防止特別チームが調査結果と提言を発表
「再発防止特別チーム」調査報告書の骨子
ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長は多数のジャニーズJr.に対し、長期間にわたって性加害を繰り返した。
姉の藤島メリー泰子氏が性加害を知りながら徹底的な隠蔽を図り、事務所も見て見ぬふりをして被害拡大を招いた。
性加害問題をマスメディアが取り上げてこなかったことで事務所は隠蔽体質を強め、被害が拡大した。
同族経営の弊害を防ぐため、藤島ジュリー景子氏は辞任すべきだ。
事務所は性加害を事実と認め、被害者への真摯な謝罪と救済に乗り出すとともに、適正な補償をするために「被害者救済制度」を構築すべきだ。
確実に存在していたジャニーズ事務所からの圧力
再発防止特別チームは、「マスメディアの沈黙」という言葉を使い、マスメディアが性加害を知りながら、メディアが正面から報道しなかったと指弾する。
会見の翌日、ジャニーズのタレントを長年取材してきた日刊スポーツの記者がコラムを書いている。
報告書では「メディアの沈黙」も指摘された。世間でイメージされるような「圧力」を認識したことはないが、記事の性質上、日々の取材ではタレントの生の声、素顔を読者に伝えることに終始して、「密室」での出来事に思いが至らなかったというのが正直なところだ。「気付き」がなく、幾度かのタイミングを失した点で、改めて襟を正す必要を感じている。
「圧力はなかった」とする日刊スポーツ。しかし同紙は、2年前にメリー氏が死去した際、メリー氏が日刊スポーツに乗り込んできたことを伝えている。
それは「日刊スポーツ・ドラマグランプリ」が初めて開催された翌年の1998年のこと。第1回は記者と評論家の「審査員票」と「読者投票」で各賞を決め、票の比重は半々だった。メリー氏はこの審査方法に抗議したという。
元ジャニーズ担当記者がこう綴っている。
「応対した私に『あなた、全部のドラマ見ているの?』と聞いてきた。私は『見られる限りは、録画してでも…』としどろもどろに答えた。『見られないのに(記者や評論家が)審査するのはおかしいですね』とズバッと指摘された。そして『やはり視聴者に任せるべきです』。言外に『そうしないとジャニーズのタレントは出さない』のニュアンスを感じたが、メリーさんは純粋にドラマグランプリのことを考えてくれていたと思う。第2回から読者投票だけに切り替え、今年の第25回の節目につながっている」(日刊スポーツ・2021年8月18日付)
そもそも、文藝春秋に対する訴訟の東京地裁判決でも、週刊文春の記事において、「原告事務所〔注:ジャニーズ事務所を指す〕は怖く、当局〔注:在京の民放テレビ局を指す。〕でも事務所にネガティブなことを扱うのはタブーである」「マスコミ対応を委ねられているメリー喜多川は、ドラマの共演者が気に入らないと、その放送局の社長に直接電話をかけ、外すよう要求することもあった」とあった。
ジャニーズ事務所を徹底利用した安倍政権の責任
「政治の責任」も問わなければならない。
「ジャニーさんへのエンターテインメントへの熱い思い、託したバトンは、必ずやジュリー(藤島景子)さん、滝沢(秀明)さんをはじめ、次の時代を担うジャニーズのみなさまへと、しっかりと受け継がれていくと私は確信しております」
これは、2019年9月に東京ドームで行われた喜多川のお別れ会で代読された、安倍晋三首相(当時)の弔辞の一節だ。安倍氏もまた、ジャニーズ事務所を徹底的に政治利用してきた。
2018年末には、福島復興を支援してきたTOKIOのメンバーと首相官邸内で懇談し、2019年5月には行きつけのピザ店で会食している。
翌月のG20大阪サミットの開幕前日には、首脳会談の合間をぬって、関ジャニ∞の村上信五のインタビューを受け、2020年の元日にはラジオの新春番組でV6の岡田准一と対談。
2019年11月には、嵐の東京ドームのコンサートに足を運び、ステージ裏でメンバーと面会している。この数日前には、嵐が天皇即位を祝う「国民祭典」で奉祝曲を披露していた。
そもそも安倍長期政権の時代は、ジャニーズタレントの「報道進出」の時期と重なる。日本テレビでキャスターを務める桜井翔をはじめ、同じく日テレ系「news every.」のキャスターに小山慶一郎が。
TBSのMCには国分太一が抜擢された。
現在でも「サンデーLIVE!!」(テレビ朝日)に東山紀之が、「シューイチ」(日テレ系)に中丸雄一が出演と、所属タレントが政治を扱う報道・情報番組に出演中だ。
要は、安倍氏のジャニーズ接近は、民放の政権批判を封じ込めようとする狙いもあったかもしれないのだ。
一方、SNSでは性被害当事者らへの誹謗中傷がエスカレートしている。これらは、尊厳を踏みにじる二次被害であり、専門家は、「加害に当たる投稿を正当な批判と思い込んでいることが多い」と指摘する。
●自公が東京での選挙協力を復活 党首会談で正式合意 9/5
自民・公明両党は、次の衆議院選挙における東京での選挙協力を復活させることで正式に合意した。
岸田首相と公明党の山口代表は、両党の幹事長を交えて会談し、合意文書に署名した。
候補者調整をめぐる対立から、公明は東京での選挙協力を解消するとしたが、今回の合意により、次の衆院選で東京29区の公明の候補者を自民が推薦し、東京の残りの選挙区は、個別の事情をふまえ、協力体制が整えば公明が自民の候補者を推薦する。
また、次の次の衆院選で、公明が東京で2議席を獲得できるよう取り組むことでも合意した。
岸田首相「政策を前に進めていくうえで大きな力になると思っている」
山口氏は、「信頼関係を崩すのは一瞬だが、建設するのは死に物狂いの努力が必要だ」と述べている。
●首相「政権運営に協力願いたい」 9/5
岸田文雄首相は5日の自民党役員会で「9月は外遊が多くなり日程が窮屈だが、引き続き政権運営に協力を願いたい」と求めた。新たな経済対策について「物価高から国民の生活を守る強い決意で検討を進める」と強調した。月内に踏み切る内閣改造・党役員人事の時期には触れなかった。
その後官邸で記者団の取材に応じ、人事に関し「適材適所に尽きる。タイミングはまだ決まっていない」と述べた。
首相は役員会で次期衆院選を巡り、公明党との間で正式合意した東京都での選挙協力復活に言及し「自公の強固な連立の下、政権を運営していく」と語った。
●自民・茂木氏 来秋の総裁選問われ「幹事長として岸田政権支える」 9/5
(来秋の自民党総裁選の対応について問われ)少なくとも私はいま、党幹事長です。平成研究会(茂木派)の会長もやっている。幹事長として、内外の課題が山積する中で、岸田政権をしっかり支えていく。これが私の仕事だと思っている。
(国民民主党との連立の可能性について)国民民主とは賃上げ、経済対策、安全保障問題、憲法改正など重要な政策について、我が党の方針と一致する部分も多いと受け止めてきた。
我が国が直面する内外の諸課題の解決に向け、今後も前向きな政策提言には誠実に対応しつつ、さまざまな取り組みを前に進めていきたい。 

 

●処理水と日中関係 冷静に対話できる土台築け 9/4
あまりに過剰な対応だ。東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が始まった日、中国政府は日本の水産物輸入を全面的に停止した。海に接しない地域を含めており、科学的根拠を示してもいない。
呼応して、中国発の日本への嫌がらせ電話が、無関係の施設や飲食店に多数かかっている。悪口や罵倒が目的のような例も多い。中国の交流サイト(SNS)では、フェイク情報や日本製品の不買を呼びかける投稿が目立つ。
こうした行動をとる中国国民は一部かもしれない。政府や国営メディアが流す「汚染されている」との一方的な情報で、不安や反日感情をあおられたと見える。当局は放置せず速やかに対処すべきだ。互いの国民感情を悪化させ、深刻な経済損失を招く。
中国政府は海洋放出への批判を政治利用したと言える。反対を明確にした2021年春は、米国のバイデン新政権が中国の台湾侵攻に警戒感を打ち出した頃だった。日本は米国に歩調を合わせ、安全保障に加え、半導体製造をはじめ経済でも中国への対抗策を強めた。その動きへのけん制と捉えることができよう。
似たような「経済的威圧」を多用してきたのが中国だ。南シナ海の領有権問題で対立したフィリピンに輸入バナナの検疫を強化、新型コロナウイルスの発生源調査を迫ったオーストラリアにはワインに高い関税をかけた。国際的な信用を得られない手法だ。
その上で日本政府に問いたいのは、海洋放出の判断によって結局、漁業者にしわ寄せがいく現状である。日本の水産物輸出額は22年は3873億円で、輸出先のトップは中国だ。10都県の水産物輸入を禁止した香港を合わせると40%超を占め、禁輸が長引く影響は計り知れない。
政府は風評被害などに備えた基金800億円のほか、新たに200億円程度の支援を予定する。別の輸出先の確保や水産物の加工支援を想定するようだが、急ぐべきだ。
そもそも習近平体制の下で強硬策を辞さない中国に対し、日本政府の読みは甘過ぎた。農林水産相が全面禁輸を受けて「驚いた」「全く想定していなかった」と述べたが、理解し難い。
いかに日中が自国の言い分を声高に主張し合うだけで、科学に基づく協議ができず、相手の出方もつかめない状況だったかを物語る。政治家による外交努力を尽くし、解決策を模索した跡は見えない。日中は切っても切れない経済関係にある。全体の利益を計る視点、長期を見据えた対話が欠けていないか。
冷静に交渉ができる土台を速やかに築く必要がある。首脳レベルの対話は必須だ。
処理水を巡っては、国際原子力機関(IAEA)が「国際的な安全基準に合致している」と評価したと殊更に強調するだけでは、好転しない。トリチウム以外の放射性物質も含まれる点や、その長期的な影響など、重ねて検討が必要な要素は多い。海洋放出が妥当なのかを検証しつつ、責任を持って説明を続ける姿勢が日本政府には求められる。
●麻生氏「明らかに政治の話」中国の水産物全面禁輸を批判 9/4
自民党の麻生副総裁は、福島第一原発の処理水が海に放出されたあとの中国による日本の水産物の全面的な輸入停止について、「明らかに政治の話だ」と中国の対応を批判しました。
「トリチウムなんてものは全く出ていませんとはっきりしていてもだめなんだから。これは明らかに政治の話なんであって、科学的な話でも何でもないということははっきりしているでしょうが」(自民党・麻生副総裁)
そのうえで麻生氏は「漁業関係者だけでなく、経営者とか政治家、役人も含めてどう対抗するか考えてやっていく必要がある」として、中国に依存しない輸出体制の強化の必要性を指摘しました。
また、次の衆議院選挙について「岸田総理大臣が選挙をするという話は少なくともこの半年間、聞いたことがない。『そんなに近いのか』と正直、私は思っている」と述べ、早期の衆議院の解散には疑問を呈しました。
●中国の政治的意図による過激な反応 9/4
石破茂です。
福島原発からの処理水排出開始から一週間、中国の政治的意図による過激な反応には閉口するしかありませんが、あれほどまでに非科学的な主張をヒステリックに繰り返すところを見ると、共産党の統治体制に何らかの不安があるのかもしれません。
人口の急減と急速かつ大規模な高齢化、地域間や階層間の格差拡大、脆弱な医療福祉体制、不動産バブルの崩壊などの経済不安等々、中国が抱える課題は山積しています。あくまで共産党の軍隊である人民解放軍による国民の抑圧と、メディア統制を駆使した共産党一党支配体制は絶大な効果を発揮してきましたが、それも「経済は成長し、国民は豊かになる」という実感があってのことであり、これが怪しくなってくるといかに強権的な支配を行なっても、鬱積した人民の不満が爆発して共産党が最も怖れる「易姓革命」が起こりかねません。
日本としては、中国の姿勢にいちいち過敏に反応することなく、国際社会に向けて「やはり中国の主張はおかしい」と思うよう、着々かつ淡々とあらゆる効果的な手法を用いるべきです。
昨年11月、IAEAの福島視察が発表された際には、中国は「日本はIAEAの厳格な基準に従うべき」と言っていたはずなのですが、日本の主張を認める判断が下ったら、それについて一切言及しないのはどういうわけなのか。
IAEAに対して異議を申し立てるなり、第2位である資金拠出を停止するなりしてもよさそうなものですが、そうはせずに一方的に日本の批判ばかりしているのはどういうことなのか。
2016年、南シナ海仲裁裁判所において、フィリピンとの間で南シナ海の島嶼部の領有権をめぐり、自国に不利益な裁定が出た際、「あのような裁定は単なる紙屑」と言い放った国ですから、隣国である我が日本は、今後一層心して対応していかねばなりません。
処理水の安全性について、自民党水産総合調査会としてもこれ以上ないほどに丁寧な周知に努めてまいります。また、一切の責任が無い漁業者が受ける損害に対しては、迅速に補償がなされるようよく注意してまいります。
故意によるものかどうかはともかくとして、一部報道で、まるで海に処理水をそのまま流しているかのような映像が使われているのは是非とも改めていただきたいものです。日本のメディアでありながら、中国の主張を利するようなことにならないか、いささか気がかりです。
処理水は海底トンネルを通して1キロ先の海中に放出されており、陸から水が流れるような映像の方法は採っておりません。諫早干拓の水門開門の是非が争われた裁判についての報道でも、水門閉鎖の映像が事ある毎に放映され、その印象によって干拓事業に対するネガティブなイメージが広まる結果となりました。
今日から9月、この時期になって、赤坂議員宿舎周辺の樹々からつくつく法師の鳴き声が聞こえないのは、赤坂宿舎に住んで20年近くになりますが初めてです。
8月も終わり近くになると、それまでのミンミンゼミやアブラゼミに代わってつくつく法師が一斉に鳴き始め、夏の終わりの寂寥感を感じるとともに、まだほとんど手付かずの夏休みの宿題(特に読書感想文と自由研究)を仕上げねばならない焦燥感に駆られたものでしたが、この齢になっても同じような思いが致します。
子供の頃、焦燥効果絶大なあの鳴き声を聞く度に「うるさい!鳴くな!」とばかりに蝉捕りの網を持ち出して,一匹残らず捕ってしまおうかとの凶暴な思いに取り憑かれたものでした。
先週に引き続き、今週も台風7号による鳥取県内の被災地を廻ってまいりました。政府にも誠心誠意対応して頂いておりますが、現場に行くほどに被災の大きさに愕然とする思いです。早急な復旧のために更に微力を尽くします。
台風で樹園地への土砂流入や落果等の影響を受けたものの、今年の20世紀梨はかなり良い仕上がりとなっています。見た目も青々と美しく、味も爽やかな鳥取の20世紀梨を御賞味頂けれは大変幸いですし、新品種の「新甘泉(しんかんせん)」も人気です。何卒よろしくお願い申し上げます。
関東大震災から百年の節目となりました。災害の激甚化と多発化の昨今、防災省の設置につき更に思いを強くしております。
また、朝鮮人虐殺についても、これを風化させることなく、真摯な検証が必要です。安全保障や処理水問題について、韓国の現政権が厳しい国内批判を浴びながらも日本に理解のある姿勢を維持している中、日本もこれに誠実に応えなければならないと思っております。吉村昭の「関東大震災」(文春文庫)をもう一度読み返してみたいと思っておりますし、今週読んだ「関東大震災がつくった東京」(武村雅之著・中公選書)からも幾多の示唆を受けました。
鹿児島県徳之島に所在する伊仙町犬田布(いぬたぶ)岬にある戦艦大和の慰霊塔が老朽化し、伊仙町役場が中心となって修復に向けたガバメントクラウドファンディングを行なっています。日本一の出生率を誇り、世界自然遺産の島でもある徳之島伊仙町は、平和祈念の町でもあります。多くの方々のご賛同を心よりお願い申し上げます。
残暑厳しい折、皆様どうかご健勝にてお過ごしくださいませ。
●「半導体確保は政治的問題」大統領が動くアメリカと出遅れる日本の差 9/4
かつては水産物の争奪戦で中国に敗れ問題になった「買い負け」。しかしいまや、半導体、LNG(液化天然ガス)、牛肉、人材といったあらゆる分野で日本の買い負けが顕著です。7月26日発売の『買い負ける日本』は、調達のスペシャリスト、坂口孝則さんが目撃した絶望的なモノ不足の現場と買い負けに至る構造的原因を分析。本書の一部を抜粋してお届けします。
買い負けの現代的背景(1)政府の動き
ホワイトハウスでは2021年4月、ジョー・バイデン大統領が「CEO Summit on Semiconductor and Supply Chain Resilience(半導体のCEOサミット)」と名付けた決起集会を開いている。これはホワイトハウスと半導体・IT関連企業のトップを集めて開いたものだ。
ホワイトハウスのホームページでも内容を確認できるが、YouTubeで当日のバイデン大統領の様子を見ると、わざわざ半導体のウエハーを左手で取り関係者に「これがわれわれのインフラストラクチャーであり、多額の投資を行う」と宣言している。
石油や鉱物が眠っている場所は神様が決めたかもしれない。ただし、どこで半導体を生産するべきかは人間が政治的に決めるのだ。
さらに2021年9月23日に米国の商務長官であるジーナ・レモンド氏は半導体不足がボトルネックであるとし、代表的な半導体メーカーにたいして透明性を図るように伝えた。これは各社に需要量や在庫量などを開示するように求めたのだ。当然ながら契約情報などは機密にあたる。大きな反発は当然だった。
しかし、米国は世界の中心であり、強引な手法であっても世界の半導体メーカーの注意を米国に向けさせ、もし歯向かったら何が起きるかわからない、と思わせるにはじゅうぶんだった。
なおこの動きは一例で、他にも米国政権が半導体業界を牽制すると、ただちに米国の自動車メーカーが米国政府の姿勢に賛同し半導体各社に早急な納入を求める動きが多々見られた。官民が一致していた。
さきにも紹介した装置メーカーのサプライチェーン統括者は感心するように、そして呆れるように「米国政府は世界の半導体各社に米国優先の圧力をかけていた。あれだけプッシュするんだから強いですよ」と述べている。
同時に米国政府は、次々に半導体への投資を決定していった。研究や工場誘致、減税など、円換算で3〜5兆円規模が次々に可決され、過激なほどだった。ただ半導体誘致にはそれほどの狂気が必要なのかもしれない。
時計の針を進めるが、米国での新工場設立に際し、2022年12月にTSMCが発表したアナウンスは示唆的だ。アマゾン、AMD、アップル、ブロードコム、NVIDIAといった名だたる企業らがTSMCの米国工場建設について賛辞を連ねている。
そのいっぽうで、TSMC会長のマーク・リュウ氏は「米国に連れてきてくれて(has brought us here)ありがとうございます」と述べているのが印象的だ。自ら望んで進出したわけではないけれども、米国に呼んでくれてありがとうと。中国に配慮した内容だったかもしれない。経済合理性ではなく、政治的な色彩が濃かったと暗に述べているように私は思う。
TSMCは日本と米国に工場を設立している。ただ、先端の技術はさすがに台湾に残しているので、台湾の重要性は残るはずだ。この意味でTSMCは米国に完全に抱き込まれたわけではない。
いっぽうで日本はどうか。2021年の記者会見では、梶山弘志経済産業大臣(当時)は「自動車用の半導体の供給不足が生じていることは承知をしております。政府としては、日本台湾交流協会を通じて自動車業界と連携した上で、台湾当局に対し、メーカーの増産に向けた働き掛けを行っているところであります」とし、政府高官が台湾に渡って、台湾政府とTSMCにたいして日本向けの半導体製造を増産するよう要求した、と明かしている。
もちろん日本側も努力はしたと思う。ただ、ここで明らかになるのは、日本と違って米国は大統領が直々に半導体を確保するよう動いている点だ。それ以前にも、トランプ前大統領が中国の半導体を封印しようとしていた姿勢は記憶に新しい。
それに対して日本には、首相ができることはなんでもやる、という狂気は見られなかった。
買い負けの現代的背景(2)日本企業の認識のズレ
まったく個人的な話だが、私は自動車メーカーの研究所で働いていた経験がある。自動車メーカーでは調達担当者が工場に出社して、製造ラインが止まっているときほど恐怖する瞬間はない。それは「あってはならないこと」が起きたのであり、さらに自分の担当している部材が原因ならば大問題だ。
自動車は数万点の部品で成立している。たった一つの部品であっても、なければ生産が止まる。ささいな部品であっても、重要部品であっても、止まる意味では等価だ。製造ラインが止まるのは、めったになかったことだから「寿命が縮まる」といっていた人もいた。
逆にいえば、それだけ「納期通りに部材が入って当たり前」の世界だ。自動車産業は自身を中心に仕入先が回る“天動説”的な考えをもっている。自動車産業では垂直統合といって、自動車メーカーがピラミッドの頂点として君臨していた。
ただし、自動車産業は半導体メーカーとソリが合わない点がある。
一つ目は、商習慣だ。
自動車産業では、確定発注数量が決まる前に、事前情報を仕入先に提示する。現実にはこの内示を把握した瞬間に動き出さなくてはならない。
自動車メーカーは、ジャスト・イン・タイムで仕入先から納品してもらっている。直接、自動車メーカーに納品するこの仕入先をティア1と呼ぶ。このティア1が半導体を購入し、部材を組み立て自動車メーカーに供給する。自動車メーカーが数量の見通しをティア1に伝え、その見込みが甘いとティア1は半導体の注文をキャンセルせざるをえない。コロナ禍などで不景気になると調達した半導体が在庫として積み上がってしまい、経営にダメージを与えるからだ。
つまり半導体の調達は自動車産業とそもそも相性が悪いといえる。自動車メーカー側はギリギリに発注して、ジャスト・イン・タイムで納品されるのに慣れているし、それができる環境に甘んじてきた。
ただこの甘えは、自動車産業に限った話ではない。私たちは半導体のサプライチェーンなど真剣に考えてこなかったし、半導体が命運を握るとまで考えた人はいなかった。かつて日本は製造業大国で、かつ右肩上がりだった。購入量は世界随一。ただし、現在では中国などのアジア各国が力をつけてきた。必然的に日本の相対的なシェアは下がる。さらに日本は少子高齢化と経済成長の停滞で、ここから購入量が上がるとは考えにくい。
アロケーション(配分比率)については、結局のところ、販売する企業が、誰に販売するかを決める。複数の関係者は「アロケーションに関わる責任者にとって日本企業は魅力的に映っていない」とする。
二つ目は、使用している半導体の回路幅だ。
半導体は微細化技術が肝だ。小さな面積のなかに多くのトランジスタを配置する。微細化ができるほど高性能になり商品の差別化につながっていく。
現在、世界先端の微細化技術を有するのはTSMC、次に韓国サムスンだ。米国のインテルが次順位につける。微細化の先端度合いを回路幅のナノで表現する。直観的にはナノ数が小さいほど半導体回路の同一面積に多くの回路を詰め込める。現在、自動車産業で使われる半導体は40ナノていどだ。しかし、スマートフォンでは7ナノといった高性能品が使われる。スマートフォンは一台に100億以上の微細なトランジスタを組み込んでいる。
またTSMCは2ナノの開発や、1ナノの研究を進めるなど、業界内では独走している。新型コロナウイルスは100ナノメートルだから半導体の微細技術の凄さがわかる。
ここでTSMCの2022年第4四半期産業別売上高を見てみよう。
   ・ハイパフォーマンスコンピューティング:42%
   ・スマートフォン:38%
   ・IoT:8%
   ・自動車:6%
   ・デジタル消費電気機器:2%
   ・その他:4%
こう見ると、自動車向けはたったの6%にすぎない。しかもこれは自動車産業を主とする各国高官からのプレッシャーによって上昇した結果だ。少し前には4%しかなかった。しかしそれでも6%だ。つまり、自動車など、TSMCにしてみればささやかな比率にすぎない。
車載用の半導体は利益が稼げないわりには品質要求が高い。周りを見渡せばスマートフォンやコンピュータなど、もっと半導体を高く購入してくれる業界がある。“天動説”の自動車産業から見える光景とは違い、ファウンドリーからすれば、単価が安く質には口うるさい顧客と映る。さらに売上比率も高くはない。これまで自動車産業は景気が悪くなればただちに内示数量を減らし、景気が浮揚すれば「早くもってこい」と催促する需要家だったが、現在では半導体を中心とする“天動説”の世界が広がっているのだ。
なお、これは日本の自動車メーカーだけが旧世代の半導体を使用しているわけではないため日本の失策のように書くのは逡しゆん巡じゆんする。どの自動車メーカーも人命にかかわるため慎重になる。ただ、日本のお家芸たる自動車は相対的な地位を下げている。
さらにTSMCに製造を委託する企業の約7割は米国企業であるだけではなく、アップルをはじめとして、未来の先端半導体の開発を依頼するのも米国企業だ。これは日本との差を考える際に示唆的だ。新製品を描けるビジョナリーな企業は日本ではないとすれば、半導体メーカーは、どこを向いて営業するだろうか。
日本の奮闘は実るか
なお、昨今の状況をまとめておこう。半導体は経済安全保障における重要な戦略物資だ。そこで日本政府からの熱心な要望を受けてTSMCの熊本への進出が発表されたのは2021年10月だった。投資額は1兆円を超える。最先端の回路幅ではなく自動車産業向けの旧世代が中心になるものの、供給の安定に寄与する。
サムスン電子も日本の横浜に半導体開発拠点・試作ラインを置くと決めた。またマイクロン・テクノロジーやソニーグループも日本での工場の新設を相次いで発表した。
半導体を巡る危機感は全世界で共有されており、米国が主導するIPEF(インド太平洋経済枠組み)では、半導体など参加国の重要物資入手を強化する協定に合意した。これには日本やアジア諸国など14カ国が参加する。中国は参加していない。この協定により合意国内での調達拡大が目指されるほか、品不足に苦しむ国への対応を協議する。
欧州19カ国も2020年12月に「欧州半導体イニシアチブ」を宣言し、最先端半導体の製造への投資を計画する。日本勢も負けずとトヨタ自動車、NEC、ソニーグループ、ソフトバンクらが出資したラピダスが2025年までに先端半導体を試作できるように動いている。さながら半導体戦争の様相を呈している。
これから半導体の潜在ニーズはさらに高まる。諸企業の日本への投資も結局は日本市場が魅力的であり続けるかにかかっている。買い手の日本企業にも改善が必要だ。そうでなければ日本進出等のきらびやかなニュースも空騒ぎに終わる可能性を秘めている。
●国民はもう限界だ…鬼の岸田政権 ”所得倍増計画に騙された国民” 9/4
昔から「人の噂も七十五日」と言われるが、岸田文雄首相についた負のイメージはそう簡単には消えることがなさそうだ。数々の増税プランを机上にのせる岸田政権は、物価高や円安対策などへの感度が鈍く、内閣支持率の続落を見ても国民の怒りが拡大していることがわかる。SNS上では「増税メガネ」なる不名誉な異名をつけられ、行財政改革に切り込むことなく膨張させる予算への不安も尽きない。経済アナリストの佐藤健太氏は「首相は国民の不満を受けとめておらず、目を逸らすために『外敵』を設定し、先のことばかりを論じている」と指弾する。
最低賃金1500円に!…でそれってどうやって実現するんですか…
またも“岸田流サプライズ”が飛び出した。首相は8月31日に開いた新しい資本主義実現会議で「2030年代半ばまでに全国加重平均が1500円となることを目指す」と表明し、最低賃金(最低限の時給)を1500円にアップさせていくことを強調したのだ。もちろん、政府による目標設定は重要だろう。ただ、国民が足元の物価高に困窮するタイミングで「2030年代半ば」と中長期ビジョンを語る姿に疑問を抱いた人々は少なくないはずだ。
毎年見直されている最低賃金は10月から全国平均が1004円になり、初めて1000円台を突破する。ただ、最低賃金の全国平均は20年前の2002年度は663円で、2022年度の961円と比べて298円のアップにとどまる。にもかかわらず、首相はこれを「2030年代半ばまで」の十数年間で約500円上昇させるというのだから、よほど明確なビジョンをお持ちなのだろう。
思い出されるのは、首相が発してきた数々の「迷言」だ。2021年9月の自民党総裁選の際、岸田氏は「分配なくして次の成長はなしだ」と訴え、小泉純一郎政権からの新自由主義的政策を否定してみせた。いまだ中身が見えない「新しい資本主義」を掲げ、令和版「所得倍増計画」をスローガンとして打ち出したのは記憶に新しい。
所得倍増計画は一体どこにいったんだ!
だが、政権発足後は「所得倍増」と言葉が消え、いつの間にか「資産所得倍増」に変わった。そのための施策は少額投資非課税制度(NISA)の拡充・恒久化にとどまり、要するに「自分の老後資金は自らの投資運用で稼ぎましょう」という投資促進策だ。
2022年1月の経済団体の会合では、子育て・若者世代の世帯所得の倍増を可能とするような制度改革にも取り組むと表明したが、今年6月にまとめた「こども未来戦略方針」の中身は児童手当の拡充など目新しさはほとんどない。
威勢良くキャッチフレーズを並べる一方で、その財源は必ずしも明確にしていない点も岸田政権の特徴だ。倍増させると豪語していた子ども予算は2024年度から3年間は年3兆円台半ばと中途半端で、2028年度までに安定財源を確保するとしている。不足分は国債を発行し、国民には実質的な追加負担を求めないというものの、お金に色はない。実質的な予算の付け替えや他の増税で収支を合わせることが本当にないのかは注視する必要があるだろう。
北朝鮮に対する“遺憾砲”だけはめちゃくちゃスピーディ
昨年末に首相が決定した防衛費大幅増に伴う増税プランのスケジュールも不明確だ。防衛費は2027年度までに4兆円増となるが、歳入手段は2025年以降の議論に先送りされている。政府は2024年度予算の概算要求で脱炭素化に向けてGX(グリーントランスフォーメーション)分野に2兆円超を要求し、10年間で20兆円規模の資金を拠出する方針だが、これには2028年度以降に企業からの賦課金などを見込んでいる。
つまり、岸田政権による施策は「実現が先のもの」か、増税などの「痛みが先のもの」が多いのである。史上最長政権を築いた安倍晋三元首相のように、長期政権を担う気が満々と評することもできるだろうが、自民党総裁の任期は3年で連続3期まで。さすがに「2030年代半ば」は首相(党総裁)を退任しているはずで、最後まで岸田路線が継承されていくのかは不透明と言える。
岸田首相は弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮には「断じて容認できない」などとスピーディーに“遺憾砲”をみせるものの、足元の物価高には鈍感であると疑いの目が向けられている。2022年から続く物価上昇に加え、8月30日に発表されたレギュラーガソリンの全国平均価格は1リットルあたり185.60円と15年ぶりに最高値を更新した。
岸田首相が絶対にやりたくない「トリガー条項」の発動
止まらない価格上昇に首相はようやく全高平均小売価格を10月中に175円程度まで抑制する方針を表明したものの、遅きに失した感は否めない。加えて、普通に考えればガソリン補助金で国民は何か得するわけではない。これまで通り、ガソリン税をとられていた分の一部を補助金という形で“還元”されるだけなのだ。ガソリン価格の約4割は税金であるため、税の一部を軽減する「トリガー条項」を発動すれば国民負担をより軽減できるはずだが、首相はこれだけ長い時間をかけても減税策などを決断できずにいる。
鈴木俊一財務相はトリガー条項を発動する場合、大きな価格変動に伴って買い控えや駆け込み需要が生じ、販売・流通に影響があると見ているが、それでは何のために「条項」があるのか。ちなみに、レギュラーガソリン1リットルあたりの小売価格は、ロシアによるウクライナ侵略が始まった直後の2022年3月初め時点で約174円だった。一部地域はハイオクで200円の大台を突破しており、仕事や日常生活にマイカーを使用する人々の負担は膨れ上がっている。
生活に密接な飲食料品や電気料金の値上げも著しい。民間調査会社「帝国データバンク」が8月31日発表したデータによれば、今年1〜9月末までの飲食料品の値上げは2万6490品目に上り、さらに12月末までに4500品目超の価格上昇が見込まれている。電気料金は大手電力10社が10月請求分(9月使用分)を値上げし、平均的な家庭で前月と比べ642円から1024円高くなるという。
「取れるところから取る」という岸田政権
2022年度の国の税収が過去最高の71兆円台に上っても減税策が実施されるわけでもなく、来年度予算の概算要求は過去最大の114兆円超に達するというのだから、政権と国民には乖離があるのは間違いないだろう。マンション価格が高騰を続ける中、9月から適用される住宅ローン金利(10年固定)も引き上げられ、庶民のマイホーム購入は遠くなるばかりだ。
岸田首相の諮問機関である政府税制調査会は、サラリーマンの退職金や通勤手当などの課税見直しも机上にのせており、「先送りしてきた代替財源の穴埋め」(政府関係者)を探すことに躍起となっている。加えて、自治体間の財源の偏在を調整するための地方交付税では足らないと見るや、東京都など大都市の税収を剥奪して“国税化”する偏在是正措置も強行しようとしている始末だ。机上にのるサラリーマン増税プランや、地方自治に逆行する国主導の愚策に共通するのは「取れるところから取る」という岸田政権の姿勢だろう。
岸田首相は、かねて「理念や国家観がない政治家」と永田町で言われてきた。だが、1つだけ明確になってきたものがある。それは「新しい主義は、新しい社会主義である」ということだ。後先のことを考えず、とにかく成長よりも分配を優先して追い求める。そうした姿勢に苦言を呈してきたとされる安倍元首相が亡くなった今日、「岸田カラー」はいよいよ色濃くなってきている。 

 

●衆院解散・総選挙「この半年、聞いたことがない」 自民・麻生副総裁 9/3
(岸田政権の発足から)10月で2年が経過するので、衆議院の選挙が近いんじゃないかとオタオタしたりザワザワしたりしている人がいっぱいいらっしゃいますけど、「岸田総理が選挙をする」というような話は少なくともこの半年、聞いたことがありませんので、「そんなに近いのかね?」と私どもは正直思っている。
今、日中の間で話が込み入ってきて、いわゆる漁業の収穫物、魚だ、ホタテだ、ナマコだ、いろんなものが輸入禁止になってきた。表向き、福島(第一原発)の処理水の問題があるからということになっているが、これは明らかに政治の話であって、科学的な話でもなんでもないことははっきりしている。
となれば、これが解決してもまた(輸入禁止を)やられるかもしれないと思っておかねばならん。向こう(中国)は輸入して加工し、アメリカに輸出している。じゃあ(日本が)加工して、中国を経由しないでアメリカに売ればいい。「中国よりもっとうまく加工しますよ」ということができるようにして初めて交渉が成り立つと思う。こういった問題があった時、対抗するためにどうするのかは、漁業関係者だけじゃなく、経営者、政治家、役人を含めて考えていく必要があるんじゃないでしょうか。 
●大炎上「ブライダル補助金」問題の本質とは? 「予算を決めた後に使い道」 9/3
自民党の森まさこ参院議員が自身のX(旧ツイッター)で、ブライダル業界への補助金事業の進捗を報告したことが波紋を呼んでいます。少子化対策として確保された予算をブライダル業界への補助金として使うことの是非に加え、森氏が業界から献金を受けていたと報道されたこともあり、利益誘導なのでは? という声も上がっています。
このケースでは、本人がわざわざSNSでアピールしたことから、多くの人に知られることになりましたが、多くの政治家が国家全体のためというよりも、自身を支援してくれる組織のために動いています。
国会議員は選挙で選ばれますから、有権者に票を入れてもらわなければ、そもそも議員でいることができません。連続して当選できる議員のほとんどは、熱心に支持してくれる組織や団体を持っており、こうした人たちの基礎票がないと、安定して政治活動ができないというのが現実です。
しかし、特定の政治家をいつも熱心に応援してくれる有権者というのはそう多くありません。議員の誠実さや政策に賛同して支持するのが理想的ですが、熱心な支持者の多くは、やはり何らかの利益を期待しているわけです。そうなると議員は、自らの支持者の利益になるような政策ばかり立案することになりますから、お金の争奪戦となってしまいます。
政府が何らかの対策を行うために予算をつける際、中身が定まらないまま、先に金額だけが決まるというパターンをよく目にします。こうした予算の作り方に対しては、なぜ内容を固めずに金額ありきで物事を進めるのかといった批判が寄せられるのですが、こうなってしまう最大の理由は、それぞれの議員が自身の支持基盤に対して予算の分捕り合戦を行っているからです。
岸田政権は防衛費の大幅な増額を決定しましたが、これについても5年間で43兆円という金額が決まっているだけで、中身については明確になっていません。防衛費の増額については賛否両論がありますが、積極的に賛成していない人であっても、日本の防衛力が強化されるのであれば仕方がないと考えている人も少なくないと思います。しかし現実には、増額された予算が本当の意味での防衛力強化につながるとは限りません。
防衛費の増額が決定されて以降、永田町では増えた予算をめぐって予算獲得競争が行われており、とても防衛に関係するとは思えないものまで「防衛関連予算」として次々と要求が出てきている有様です。
景気対策も同様で、先に金額が決まり、その後、各省からは政治家の意向を受けた予算要求が次々と出てきますが、景気対策とはほど遠い予算もたくさん含まれているのが現実です。
政府が予算を策定する際には、各省が予算要求を行い、財務省がその予算が妥当なのかを査定していきます。要求された予算が本当に政策目的に合致したものなのか、便乗予算ではないのかなど、ひとつずつチェックしていくわけですが、100兆円を超す巨額予算すべてについて目を光らせるのは困難です。
また、一部の予算については議員の力が強く、財務省が予算をカットしようとしても政治的圧力でひっくり返ることがザラにあります。
政治というものが、基本的に何らかの経済的利益に沿って動いている形態のことを「利益誘導型政治」と呼びますが、残念ながら日本は昔も今も、政治形態の基本は「利益誘導型」です。
日本は民主主義の国であり、最終的に誰を議員に当選させるのかを決めるのは国民自身です。加えて言うと公務員というのは、国民の代表である政治家が望む政策を、実務家として遂行するのが仕事ですから、政治家が望む政策を勝手に変更したり、その予算を阻止するということはあってはなりません。
そうなると、特定の人にしか利益が行き渡らない社会を作るのか、そうではない公平な社会を作るのかは、全て政治家次第であり、ひいてはその政治家に票を入れる私たち行動にかかっていることになります。選挙に行って、投票で意志を示すことがまずは大事ですが、できることはそれだけではありません。
身近な問題であっても、このお金の使い方はおかしい、ということがあれば、多少の軋轢があったとしても、しっかりと声を上げていく姿勢が大事でしょう。世論が大きくなれば政治家はその声を無視できなくなります。
人は自分の身近な人たちが関わっていると、おかしいと思ってもなかなか声を上げません。ムラ社会的な雰囲気が色濃く残る日本の場合、周囲に忖度することが日常茶飯事となっています。しかし、こうした行為こそが特定の利権を生み出す原因にもなっていますから、利益誘導型政治を生み出している責任は、私たち国民にもあると言えるのです。
社会を変えていくには、やはり身近なところから取り組むことが重要でしょう。
●政治家にこそ「学び直し・リスキリング」を課すべきだ 9/3
民間にばかり要求する無責任
成長分野への円滑な労働力の移動などを促すための「学び直し(リスキリング)」を岸田政権は重要政策と位置づけ、5年間で1兆円を投入するという。衰退産業から成長産業への人材移動が必要なことは間違いない。
日経新聞が「リスキリングサミット2023」を開き、岸田首相、茂木自民党幹事長がメッセージを寄せています。二人の発言を聞いて、「学び直しは政治家にも求められていることを自覚していない」と失望しました。
日本経済が2、30年も停滞しているのは、適切な財政・金融政策を取らず、ポピュリズムの政策を連発してきた政治の責任も大きい。政治家の政策判断の間違い、政治倫理の軽視、政治家そのものの人的な劣化が目に余ります。
一般企業は様々な研修の機会を設けているのに、政治家にはそうした場がまずない。当選すれば、「みそぎを受けた」ことになり、問題があっても免罪になる、不問に付すという次元の世界です。政界版の「学び直し」を誰かが要求すべきです。
定年まで会社にしがみつかず、新しいスキル、知識を身に着け、転職や起業を試みていくことは必要です。日経(8月31日夕刊)の見出しは「首相『学び直し、官民挙げ』」とあり、「首相が掲げる『新しい資本主義』は人への投資が基盤になる」とも書いています。
見出しが「官民挙げ」なので、政治家自身もその気になっているのかと想像したら、民間企業にだけ学び直し(リスキリング)を求めています。私は「それは違うだろう。政治家自身の学び直しは必要だろう」と違和感を覚えました。政治家自身の刷新、政治の改革などは念頭にない。
日経は9月2日朝刊で「学び直し、問われる効果」という大きな解説記事を載せました。「リスキリングを成長につなげるために官民の緊密な連携も欠かせない」と指摘しています。
緊密な連携のためには、「民のリスキリング」も「政のリスキリング」が求められていることを指摘してほしかった。経済記事は経済記者、政治記事は政治記者という伝統的な役割区分から抜け出していません。メディア、特に政治ジャーナリズムのリスキリングも求めたい。
識者の談話もあり、「リスキリングは単なる研修の充実ではない。経済構造の大きな変革を伴う」(柳川範之・東大教授)とあります。政治家も基本的な研修(学び直し)から始め、政治構造の変革を目指してもらいたい。
政治家の劣化を示す事例はいくらでもあります。自民党所属の国会議員(4人)、地方議員(38人)がフランスに海外研修にでかけ、幼児教育の義務化、政治分野における女性活躍を学び、上下院の議員と意見交換しました。先進的な海外の事例を学ぶことは必要です。「観光旅行のようだった」などと、文句をつけてはいけません。息抜きの観光は許される。
問題はエッフェル塔を背景に「はい、ポーズ」の写真をとり、それを誰かがネットに投稿した。どのような反応が起きるか想像もしていない。こどもじみた行動です。「こんなばかばかしいことで世間をにぎわすな」と叫びたい。代表団の国会議員が女性局長を辞任した。
政治家の行動がどのように受け取られ、どんな反応が起きるかといった程度の想像力は持っていてほしい。ネット時代になってから特にそうなった。こんなことで解任など、語るに落ちる。
福島原発の処理水を「汚染水」といった農相もネット時代でなければ、言い直せばそれで済んだ。情報ネット化時代における政治家の行動、発言の仕方について、政治家は専門家から「学び直し」の指導を受けたらよい。
秋元衆議院議員(再生エネルギー議連事務局長)が風力発電の会社から3000万ー6000万円を受領していたことが発覚した贈収賄事件で、東京地検特捜部から事情聴取を受けています。馬好きで中央競馬会に馬主登録(19年)をしていたとか。国会議員が馬主登録するなんて語るに落ちる。
馬主になって共同経営の形をとり、資金提供の受け皿にしたのかもしれない。資金を提供した会社の社長が「国会質問の謝礼だ」と、特捜部に供述しているそうですから、クロでしょう。政治倫理、政治規範の基礎を学び直してほしい。嘘はいけないにしても、巧妙な嘘のつき方を練習しておかないと、中国やロシアの情報戦略にしてやられる。
政治は経済原則をもっと勉強してほしい。ガソリン価格が1g180ー190円に高騰し、自民党がガソリン補助金の削減を撤回し、年末まで延長する意向です。「ガソリン・ポピュリズム」と呼ばれています。
価格の高騰は原油価格の反転、円安、補助金の削減に原因があります。政治が知るべきは「価格高騰は消費を減らせ」という市場のシグナルなのです。補助金などをつけるから、計画通りに段階的撤廃をしようとすると、値上がり要因になり、継続の要求がでてくる。
ガソリン補助金を年末まで延長(累計6兆円)すれば、どうなるか。市場は「消費を減らせ」といっているのに、補助金が復活させれば、消費は減らない。減らないどころか、22年度の国内販売量は7年ぶりに増加に転じています。これが岸田首相の唱える「新しい資本主義」の一断面です。
補助金でガソリン価格を値下げして、消費を奨励するようなものだから、脱炭素にもが逆行する状況を生む。政府の介入(補助金の投入)は市場の価格形成をゆがめ、正しい消費行動をとれなくする。
政界構造では、自民党の場合、首相、閣僚などの主要ポストの8割は世襲議員によって占められている。小選挙区制になってますますその傾向が強まっている。世襲政治は地盤(後援会組織)、看板(親子代々からの知名度)、カバン(政治資金)に支えられ、小さな選挙区ほど有利になる。
政界は家内制手工業のような世界を形成している。新しい政治人材が政界に参入しにくい。民間企業でそうなったら衰退していくのに対し、政界ではますます繁盛し首相への道が開けてくる。
ここにも「学び直し」、構造変革の問題があるのに、政治ジャーナリズムは取り上げない。せっかく築いた人脈が途切れてしまうことを恐れている。岸田政権が「リスキリング」の看板を掲げた時、「政界もリスキリングを」と政治ジャーナリズムは声をあげたでしょうか。
●「鬼門」の農相ポストが再び時の政権を追い詰める? 野村農相「汚染水」発言 9/3
海洋放出が始まった東京電力福島第1原発の処理水を「汚染水」と発言し、4時間あまりで謝罪と発言撤回に追い込まれた野村哲郎農相(79)の資質問題が、処理水をめぐる中国の日本産水産物輸入の全面停止という強硬な対応に追われる岸田政権を直撃した。野村氏は「言い間違え」を主張し、首相や政権幹部らも「言い間違え」で足並みをそろえるが、言い間違えても許されることと、そうではないことがあるのが、世の常だ。
今回、野村氏が発言したタイミングは、岸田首相が東京・豊洲市場を視察し、水産事業者への支援策を発表した日。結果的に、支援策のニュースをかき消すような形になった。支援策には多くの漁業関係者が注目しているはずだし、首相のメンツも丸つぶれ。「言い間違え」ですむ問題でないことは、一目瞭然だ。
東日本大震災から12年が経過するが、被災地では今も震災前の生活に戻っておらず、特に原発事故の影響はなお続いており、政府には言葉も行動も合わせた支援継続が求められている。それを崩しかねない今回の出来事、しかも中国の主張をなぞるような発言を、言い間違えであっても水産事業者の担当閣僚が口にしてしまったという事実は、重いのだと思う。
直近では第2次安倍政権で、震災に関連した失言をした2人の大臣は、発言直後に更迭された。岸田文雄首相は野村氏の更迭を否定したが、岸田政権で昨年秋から冬にかけて起きた「辞任ドミノ」では、問題を抱えた閣僚の処遇に対する、後手後手の対応が露呈したことは記憶に新しい。今週9月8日に予定される、処理水海洋放出をめぐる衆参両院での閉会中審査に野村氏が出席予定で、この場で再び「炎上」するようなやりとりが起きれば、再び首相の判断にも批判が高まることになる。
野村氏の発言後、取材した政府関係者の言葉には、うなずくしかなかった。「まさかの鬼門復活だよ…」。
「鬼門」とは、かつて安倍晋三政権(第1次も第2次も)で不祥事やスキャンダルで交代が相次いだ、農相ポストのこと。第1次安倍政権では、2007年5月から9月までの約4カ月間に、当時大きな批判を浴びた事務所費問題などで農相が3人交代し、第2次政権でも2015年2月、政治とカネの問題で農相が辞任した。第1次政権では、この農相ポストをめぐる「負の連鎖」が、安倍氏を退陣に追い込む一因になった。その役職が再び、首相の足を引っ張るような形になったのが今回の問題のもう1つの側面だ。
野村氏は昨年8月の内閣改造で、当時78歳で初入閣を果たした。当選4回の参院議員。JA出身の農水族である一方、当選回数が適齢期となった「大臣待機組」の1人として、念願の入閣を果たした経緯がある。
「政策に詳しいことと大臣の資質は、必ずしもリンクしない」(関係者)といわれる。野村氏は「汚染水」以外にも、全面輸入停止に踏み切った中国の対応を「想定は全くしていなかった」と素直に驚いて危機感のなさを露呈。6月の記者会見時にかりゆしシャツで臨んだ際には「遊び人みたいな感じ」などと述べ、沖縄ではかりゆしが正装という認識が不足しているとの指摘を受けたこともあった。今回、発言の不安定さがあらためて露呈しただけに、野党議員からは「岸田首相は本当にこのまま続投させるのだろうか」と、首をひねる向きもある。
岸田首相が今回、野村氏の更迭を否定したのは、漁業者への支援策のとりまとめが迫ることに加え、近く内閣改造・自民党役員人事が予定されることも、影響しているとの見方が強い。更迭でダメージを負うより、内閣改造で何もなかったかのように退任させるのではないか…との見立てだ。
首相動静によると、岸田首相は8月に入り、各閣僚と昼食を取っている。1回に2閣僚が出席しているが、永田町では、この場が、内閣改造を前に「大臣再任か退任かの『面接』になっている」との見方がある。8月28日には、ともに去就が注目される河野太郎デジタル相と高市早苗経済安保相が昼食の場に参加したため、さまざまな臆測が流れた。野村氏は8月2日、現在の処理水問題にともに取り組む西村明宏環境相とともに、首相との昼食に参加している。今回の発言問題のかなり前ではあるが、この時の「面接」も含めて、野村氏の処遇が判断されることになる。久しぶりに岸田首相の「人事眼」が問われるシーズンが迫ってきた。
●増税岸田が日本を壊す!米共和党のドンが怒り爆発… 9/2
「出生率をあげるために政府がお金を使うと、出生率が下がる」
そう語るのは、共和党に多大な影響力を持つ保守系ロビー団体の代表、グローバー・ノーキスト氏だ。
日本の国民負担率は50%近く、いわゆる「五公五民」状態にもかからわず、自民党議員、特に幹部たちの共通見解は「消費税をあげる余地がある」「防衛費、少子化対策、そして将来の社会保障費増に備えて増税をお願いしたい」であるのが現状だ。そうした現状を打破するにはどうすればよいか。選挙に強く、そして近代的な共和党に生まれ変わった方法について、作家の小倉健一氏が「共和党のドン」に直撃した。
日本のように税金が高い国では出生率は下がる
ノーキスト氏は、レーガン大統領の要請を受けて1985年に設立した納税者擁護団体「全米税制改革協議会」(ATR)の議長である。ATRは、政府の規模とコストを制限し、連邦、州、地方レベルでの増税に反対するために活動している。ATRは「納税者保護誓約書」を組織し、連邦および州議会の全候補者に対し、すべての増税に反対することを米国民に文書で確約するよう求めている。ノーキスト氏は、あまたある保守系の団体をまとめ上げていき、強力なネットワークを構築していった。トランプ政権下では「トランプの影に、この男あり」とまで言われていた。来日したノーキスト氏をインタビューした。
――日本の岸田政権は、防衛費を倍増し、異次元の少子化対策と称して莫大な予算を子育て支援につぎ込む構えです。岸田首相は、政策をぶち上げた当初、増税によってそれらの財源を賄う考えでしたが、国民からの強烈な反対にあい、支持率が低迷していることからいったん断念しました。しかし、お金は自然に湧いてくるものではありませんから、当然、増税か国債の発行によって負担が追加されることになります。増税が経済に負の影響を与えることは論を待ちません。例えば、「国民負担率+1%ポイント上昇で潜在成長率を0.11%ポイント押し下げる」ことは、エコノミスト(永濱利廣氏)の研究によって明らかになっており、他にも同様の研究結果があります。
ウクライナ戦争の影響によって増えた予算は、増税を正当化するものでは決してない。何かやむを得ない理由で支出が増えたのなら、他の支出を減らせばいい。税金が高い国において出生率が低い理由の1つは、政府が子どもを産むのにお金がかかるようにしているからだ。政府が子どもを産むためだとしてお金をつぎ込めば、つぎ込むほど、税金が上がってしまい、結果、お金がないせいで、子どもを産むことができなくなるということだ。出生率を上げるためにお金を使おうとすると、出生率が下がるのだ。経済が成長し、政府が教育費を負担して子供を産ませることを不可能にしていないと人々が感じていれば、人々はより多くの子供を産むだろう。
政府のコストを減らせば(減税すれば)、経済成長する
――日本では、減税を訴える国政政党は皆無と言っていい状況です。また、減税を主張すると、社会保障費がなくなり人が死ぬ、ということを真顔で語りだす経済評論家が存在し、しかも、社会的なコンセンサスを、幸いにして一部ですが、得ているような状況にあります。
アメリカで減税に反対する勢力が、好んで用いるプログラムがある。もし、予算を削減しなくてはならない局面になったら、減税に反対する勢力が、最初にすることはワシントンの政府機関を閉鎖してしまうことだ。これはものすごくナンセンスでありながら、人々の注目を集めると思っているのだろう。日本でもきっと人々の注目を集めるために、そうしたナンセンスな主張をしているのだろう。反対派は、人々がもっとも注目を集めるものから切ろうとする。
しかし、私たちがやらなくてはならいことは、(政府の)総支出を減らすというシンプルな一点だ。なぜなら、政府のコストを減らせば、経済成長するからだ。
最初は少しだけでもいい。それが結局大きな節約になっていく。現在の100のものを90にすることだけに拘る必要はない。100から110へと予算を増やそうという計画を、105にするだけでも大きな一歩だ。ムダなことにお金をつぎこまないこと。総支出を減らし、成長のために減税をする。財政の足かせを減らすのだ。
●「アリラン」を共に歌った…朝鮮人虐殺追悼式、日本の政治家が初めて出席 9/2
1日午前11時58分、会場内に集まった約400人全員が黙祷した。100年前の1923年9月1日、マグニチュード(M)7.9の大地震が東京一帯を襲ったその時間だ。この日、東京千代田区国際フォーラムで開かれた「第100周年関東大震災韓国人殉難者追念式」には韓国・日本の政治家と在日韓国人らが集まり、当時死亡した英霊を慰めた。
100年前に発生した関東大震災では約10万5000人が死亡した。地震による混乱の中で「朝鮮人が暴動を起こした」「井戸に毒をまいた」などのデマが広がり、約6000人と推定される朝鮮人が日本の警察・在郷軍人・民間人に残酷に殺害された。日本内閣府中央防災会議が2008年に作成した報告書には「大地震当時にデマが広がり、各地で結成された自警団が日本刀、斧などで武装しながら、在日朝鮮人を片っ端から尋問し、暴行を加えて殺害した」と書かれている。
今年100年を迎え、在日本大韓民国民団(民団)が主催して在日韓国大使館と在外同胞庁が後援する大規模な追念式が開かれた。尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日大使はこの日の追悼の辞で「関東大震災当時、韓国人が悔しく犠牲になったという事実は誰も否定できない歴史」とし「こうした不幸な過去は二度と繰り返してはならない」と述べた。
続いて「ありのままの歴史を直視して相互理解を深めれば、自由民主主義・人権・法治など普遍的価値を共有するパートナーの韓国と日本は真のパートナーとして未来志向的な協力を継続できるだろう」と強調した。李寿源(イ・スウォン)民団東京本部団長も「未来を眺めて着実に努力を続け、韓日両国の平和、安寧、より良い共存共栄の平和な世界構築に力を注ごう」と述べた。
この後、歌手チャン・サイクさんが舞台で「アリラン」「春の日は過ぎゆく」を歌った。行事に参加した在日韓国人と政治家も「アリラン」を静かに共に歌った。チャン・サイクさんは公演の後、「今日の私の歌が亡くなった方々に少しでも慰めになり、同胞の皆さんに力になることを望む」と語った。
日本の政治家10人出席、菅前首相は弔花
この日の行事には鳩山由紀夫元首相、山口那津男公明党代表、福島瑞穂社会民主党党首、逢坂誠二立憲民主党代表代行、武田良太日韓議員連盟幹事長ら10人余りの日本の政治家が出席し、朝鮮人犠牲者を追悼して献花した。韓国からは鄭鎮碩(チョン・ジンソク)韓日議員連盟会長と尹昊重(ユン・ホジュン)幹事長、「賢鎮(ペ・ヒョンジン)国民の力議員らが出席した。
自民党議員など日本の政治家が民団主催の追念式に出席したのは今回が初めてであり、最近の韓日関係の変化を表している。ただ、日本政府が朝鮮人虐殺を認めていない現実を反映するかのように政府関係者の追悼の言葉はなかった。日韓議員連盟会長を務める菅義偉前首相はこの日の行事に弔花を送った。
鳩山元首相はこの日の行事後、記者らに対し「日本政府が今からでも朝鮮人虐殺に関する事実を把握し、間違ったことに対してはきちんと謝罪する気持ちを持たなければならない」とし「申し訳ない」と述べた。
小池知事、今年も追悼文を送らず
この日の同じ時間、東京墨田区の横網町公園でも日朝協会などが主催する追慕祭が開かれた。30度を超える残暑の中で数百人の市民が出席し、100年前の虐殺で犠牲になった朝鮮人と中国人を追悼した。
この日の行事を主催した「関東大地震朝鮮人犠牲者追悼式実行委員会」(以下、実行委)は1974年から横網町公園で毎年9月1日に追悼式を開いている。石原慎太郎元知事氏、舛添要一元知事ら過去の東京都知事はこの行事に追悼文を送ってきたが、小池百合子現知事は2017年から追悼文を送っていない。
実行委は100年を迎えて小池知事に何度か追悼文を要請したが、今回も追悼文はなかった。「関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任を問う会」事務局長の田中正敬氏はこの日の行事で「(朝鮮人)虐殺はその間の調査と研究で知られている歴史的な事実」とし「東京都知事と日本政府は過去を直視して犠牲者と真摯に向き合って責任を果たさなければいけない」と述べた。 
●直木賞作家・今村翔吾が現代の政治家に思うこと 9/2
「すでにお金持ちでありながら、これ以上お金を増やすことか歴史に名を残すことなら、どうして後者を選ばないのか」
ピンチに発動してきた日本の免疫力
テレビに出演すると、日本の政治についてコメントを求められる機会がたびたびあります。
正直なところ政治については門外漢ですし、日本の政治家の頑張りが足りないなどと偉そうに語るつもりもありません。ただ、昔と今で政治家の質が大きく変わっているのは感じています。
決定的な違いは、腹の括り方にあります。
明治から戦前の時代までは、現代と比べて暗殺事件の発生件数も多く、政治家にはいつ死んでもおかしくないという緊張感がありました。緊張感を抱きつつ、たとえ非難をされようが、国民を生かすためにすべきことをやり抜いていました。
大久保利通は、初代の内務卿(現代でいうと総理大臣)でしたが、公共事業に私費を投じ、多額の借金を作っていたという逸話があります。しかも、債権者たちは大久保の借金の使い道を知っていたので、死後は遺族に対して返済を求めなかったといいます。
今も国民のために仕事をしている人がいるとは思いますが、戦後から大きく政治のあり方が変わり、政治とカネのような問題が頻出するようになったのは事実でしょう。
私が現役の政治家にぶつけたいのは、「それ以上お金を得てどうするつもりなのか」という疑問です。今の政治家は、国民の平均所得と比較すれば多額の給与にあたる歳費以外に、月100万円も支給される「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交通滞在費)などの経費も支給されています。しかも、民間ではあたり前の「領収書」は不要ですし、「残金の返却も不要」というルールになっています。
すでにお金持ちでありながら、これ以上お金を増やすことと歴史に名を残すことのどちらを目指しているのか、どうして後者に興味を持たないのかと思うのです。
今後、本当に明治の元勲と同じくらいの覚悟で政治に取り組む人が出てきたら、日本の政治は大きく変わっていくはずです。それを期待する反面、もはや無理なのではと冷静に捉えている自分もいます。
ただ、一つだけ希望があるとすれば、これまで日本がピンチに陥ったときには、救世主となる人材がいきなり登場してきたということです。
日本を一体の生き物だとすれば、これまで本当に生存本能が脅かされたときには、特別な免疫機能を発揮して病巣や傷を治療して回復させるような現象が何度となく起きているのです。
そういう特別な免疫力が日本に残っていたら、という希望は持っています。今の日本に免疫力が働いているようには見えませんが、もしかすると日本はまだ本気で追い詰められていないのかもしれません。
歴史を踏まえて日本の教育を考える
今、日本では教師不足と教師の過重労働が大きな問題となっています。文部科学省の「令和3年度公立学校教職員の人事行政状況調査」によると、精神疾患で休職した教師の数は5897人で、過去最多となっています。
教師の長時間労働の原因はさまざまですが、公立学校の教員に残業代を支払われないと定めた法律や休日の部活動などにより、定額働かせ放題〞の状況が野放しになっている現状が問題視されています。
日本はもともと教育大国であり、待遇が良くなくてもやりがいを求めて教師を目指す若者がたくさんいました。しかし、過酷な勤務実態はなかなか改善されず、今や若者が教師になりたいと思えないような国になっています。
歴史を見れば、教育に力を入れない国は確実に衰退しています。どうにかして日本の教育を復興させる必要があります。
そこでヒントとなるのが私塾の存在です。日本には近世から近代初期にかけて、私塾が教育の一端を支えていました。
私塾とは江戸時代に儒学者・国学者・洋学者などの民間の学者が開設した私設の教育機関。武芸や技芸を教える塾もあり、身分にかかわらず自由な教育が施されていました。
江戸前期には中江藤樹の藤樹書院、伊藤仁斎の古義堂、中期には荻生徂徠の蘐園塾など儒学の教育が主流でしたが、中期になると本居宣長の鈴屋のような国学の塾が現れます。
そして、後期にはシーボルトの鳴滝塾、緒方洪庵の適塾に代表される洋学塾が見られるようになり、幕末には吉田松陰の松下村塾のように政治的な教育を行う塾も登場しています。
現代では「塾」というと受験のための学習塾のイメージが強いですが、これだけ多様性がうたわれているのですから、もっといろいろな塾があってもいいと思います。
昨今は会社の定年を迎えた人が、大学で学び直すケースも増えていると聞きます。勉強熱心なのは素晴らしいですが、社会で何かをやり遂げた人が教える側に回ることも必要ではないでしょうか。
シニア世代には「私たちの知識はもう通用しない」という遠慮もあるでしょうが、本の読み方や問題解決の仕方など、若者に受け継ぐべき知的資産は少なくないはず。
歴史小説には、前述した『世に棲む日日』のように、私塾をとり上げた作品も多数あります。過去の教育法をヒントに、日本の教育を立て直す動きが盛り上がればと期待しています。
●大阪の人以外はよくわからない日本維新の会、どれくらい信頼できる政党か 9/2
今年4月に行われた統一地方選挙で、他の候補に大差をつけて当選し、大阪府知事の続投を決めた日本維新の会の共同代表を務める吉村洋文氏。大阪市長選挙でも、維新の横山ひでゆき氏(元大阪府議会員)が当選した。
吉村氏は会見で、「府民のみなさんと約束したことを必ず実行する」と語ったが、維新政治の矛盾を指摘する声も少なくない。「維新政治は嘘ばかり」と語る日本城タクシー株式会社、代表取締役の坂本篤紀氏に真意を聞いた。
──坂本さんは維新政治をどう見ていますか、維新政治の特徴や政治手法について感じていることを教えてください。
坂本篤紀氏(以下、坂本):私はよく「維新に批判的」などと言われます。維新を支持する方々の中でも、反対意見に聞く耳を持たない、議論にもならない維新の信者、通称「イシンジャー」には、私の意見は批判的に聞こえるのかもしれませんが、私の感覚では、ごく普通のことを指摘しているに過ぎません。
年収が2億5000万円あるわけではないし、イーロン・マスクみたいな稼ぎ方をしているわけでもない。そんな私からすると維新の政治感覚は肌に合わない。
たとえば、維新が謳う「教育の無償化」などがそうですが、彼らは平気で前言を翻す。
「完全無償化ですよ」「私立高校にただで通える」などと言い切っていましたが、実際には「上限」や「所得制限」などについて、いまだに議論している最中だという。「なんや、やってなかったんかいな」という話です。
しかも、この10年で公立学校を10校以上閉鎖している(昨年8月の時点で、大阪府は10年間で15校の高校を廃校にする計画を立てている。廃校が検討されている学校も含めると、2014年度から2023年度の間に廃校する学校の数は17校になる)。
もともと入学金も授業料も安い公立を閉めて、「私立に行きなさい」は政策としておかしい。
──維新と言えば新自由主義というイメージがあります。大阪でもいろんなことを民営化してきました。
維新流・民営化の評価
坂本:「民営化がどうして必要なの」と問いたい。国鉄の民営化だって、何がどうよくなったというのか。残った二十数兆円の借金を国民にかぶせて、その分不景気になり、地方では鉄道が走らない状況になってしまった。
民営化で無くしていいものと悪いものがある。
学校に利益を求める。ごみ収集を民間に委託しようとする。民営化しても、儲かるとはとても思えないし、儲からなかったらゴミを回収してくれないようになってしまう。お金にならないことをするのが公の仕事でしょう。
大阪市の場合は、交通局を民営化するという馬鹿げたことをやりました。
横浜の市営バスの運転手さんの年収は740万円ですが、大阪はバスの運転手さんの給料が400万円台になってしまった(大阪市は民営化により、大阪運輸振興への業務委託を進め、運転手の給与が引き下げられた)。たくさん黒字を出してほしいわけではないけれど、これはおかしい。
公立病院が赤字だから閉めるというが(橋下徹氏の知事時代、行政の無駄を省くとの号令のもと、公立病院の数を減らした)、患者が良い医療を受けて、それに払う対価が安かったから公立病院が赤字になっているわけでしょう。診察を受けた患者で言えば黒字や。誰のために政治をしているのか。
中央区の一等地にあった大阪市立東商業高等学校は分かりやすい例で、3年連続定員割れしたという理由で廃校にされ、その後に建てられたのがタワーマンションとスーパーマーケットです。それで、入学金の高い私立に行きなさいというのが今の大阪の政治です。
「大阪の成功を全国へ」と言っていますけど、実際には失敗している。
──維新は大阪のビジネス界とどんなつながりを持っているのでしょうか?
最初のころの話と違う大阪万博
坂本:一般社団法人大阪青年会議所(JCI大阪)との関係があるのではないかと思います。大阪は自民党からの鞍替えも多い。自民党はもともと大阪では選挙で弱かった。このままじゃ泥船だからということで維新に寝返った。
維新は世襲議員を目の敵にして「自分たちにはしがらみはない」というけれど、大阪の府議会議員や市議会議員を見たら、ほとんど2世です。3世という人までいる。
──2025年大阪万博が近づいていますが、あまり準備が進んでいないことなどが話題になっています。
坂本:あれは沼万博です(笑)。もともとゴミを焼いた灰や浚渫で掘った道頓堀川のヘドロで埋め立てて作ったのが夢洲。なんであんなところで万博しようと考えたのか理解できない。
チケットを企業に押し付ける。学校にも万博へ行けと求める。予算に関しても、「1250億円でいける」なんて言っていたのに1850億円に引き上げられる。全然話が違う。
最近の吉村知事の囲み取材を見たら、「万博は国の行事ですから博覧会協会を通じて急がせます」なんて言って、「なんだったら手伝いましょうか」という態度に転じ始めている。「鶴見区あたりの陸地でやります」と言って謝ればいいのに。
しかも、統一地方選挙が終わるまで万博の工事の遅れを口にしなかった。夢洲と結ぶ橋の構想も嘘、橋の新設も見送りにして、もともとあった夢舞大橋だけでやることになった。最初のころの話と全然違う。
「身を切る改革」の本質
──笹川理府議が5月末に、別の大阪維新の会の女性市議にセクハラやパワハラをして離党しました。梅村みずほ参院議員も今年5月、名古屋出入国在留管理局で病死したスリランカ人女性・ウィシュマさんについて、「ハンガー・ストライキによる体調不良で亡くなったのかもしれない」と発言し、日本維新の会から党員資格停止6カ月の処分を受けました。
昨年8月には、福岡市の堀本和歌子市議会議員が、別の元衆議院議員の男性の名前で「旧統一教会の式典で韓日トンネルへの賛意と、祝辞を述べさせていただきました」などと記したビラを博多区内で配ったとして、警察から任意で事情を聞かれ、10月に日本維新の会を離党しています。
ビックリするような問題行動を起こす議員が次々と維新から誕生しています。
坂本:維新議員の不祥事を真面目に読み上げたら2時間くらいかかる。「身を切る改革」が口癖ですが、身内には甘いのが維新の実情で、身内の義理を果たすという意識だとしたら、ほとんどヤーサンの世界です。
「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」と書いて問題になった長谷川豊という人もかつて維新にいましたが、維新に一番欠けているのは当事者意識です。
ただのポピュリズムとも少し違って、方向性としてはトランプに近いものを感じる。自分たちの利益につながる強固な2割くらいの有権者の支持を固めて、そっちを向いてだけ政治をする。そうすると、当日の投票率が4割だったら大阪では確実に過半数が取れる。
大阪都構想をなぜ住民投票にしたのか。議会で通そうとしたら半分以上の支持を集めなければならないから無理だと考えたということです。

 

●うっかり間違えただけ、それでも野村哲郎農水相には国益のために辞めて 9/1
朴訥ながら農政には詳しい人
野村哲郎農水相は農協職員から政治家になった人。国会答弁を何度か聞いたことがあるが、受け答えは朴訥ながら農業の現場については詳しく、いい人が大臣になったなと思っていた。
だが今回の「汚染水」発言は言い間違いとは言えダメだ。野村氏は中国が日本の水産物の禁輸を打ち出した際も「全く想定していなかった」と述べて「危機感がない」と批判された。
少し弁護すると、このとき野村氏は「中国はこれまで10都県を輸入停止していたので、10都県は対象になるのかなと思っていた。すべてなのかどうかは全く想定していなかった」と言ったのであって、「全く想定していなかった」わけではない。だが中国からしてみれば「しめしめ。日本の農水相がビビってる」と思ったことだろう。
すると中国国内では、日本人学校に投石したり、日本の魚屋さんに脅迫電話をかけたりして騒ぐ者が相次いだ。これらの行動を起こしたのが何者かは明らかになっていないが、反日教育を受けた人や、社会に不満を持っている人、SNSでフォロワーを増やしたい人達も多い。いずれにせよ中国政府はそれらを放置、黙認している。
中国との情報戦に勝利しろ
専門家によると中国は経済の悪化で国民の不満が増大しており、今回の日本たたきは憂さ晴らしになっている側面があるという。
一方で中国政府としては、反日行動を隠れ蓑に反政府行動が起きることを最も恐れている。また米国との対立、経済の悪化を考えると日本企業の全面撤退は困る。だから2012年の尖閣国有化のときのような大きな騒ぎにはならないだろうという見方が多い。
つまりこれは中国との情報戦なのだ。相手は官も民もいろいろな方法で仕掛けてくる。こちらは冷静にそれに対抗する。時には強い言葉も必要だ。
日本は科学的根拠に基づき、IAEAのお墨付きももらって安全な処理水を放出した。それに対して「核汚染水」などと非科学的な表現を使って非難しているのは世界中で事実上中国だけだ。
敵のスローガンを口にするな
ロシアはウクライナ侵略で中国に借りがあるので透明性の確保を日本に求めているが実はこの件にはあまり関心がない。韓国政府は処理水放出を容認した上で、先日首相が「汚染水が放出されるわけではない」と述べ、「汚染水」と呼ぶのを事実上やめた。
大事なことを忘れていた。日本の一部野党とメディアはなぜかいまだに「汚染水」と呼び、放出に反対している。すなわち世界中が処理水の安全性を認めているのに、中国と日本の一部の人たちだけがいまだに「汚染水」という言葉を使って騒ぎ続けているのだ。
この状況において、日本の農水相が「汚染水」と言ってはイカン。野村氏は79歳と高齢だ。前回に続き、今回もうっかり言ってしまったのだろう。そんな人を責めるのは心苦しい。だが我々は今、中国との情報戦という「戦争」を戦っている。そんな時に敵のスローガンを間違えて口にしてしまう人が日本の農林水産の司令官であってはいけない。
岸田文雄首相は直ちに野村農水相を罷免すべきだ。
●関東大震災の朝鮮人虐殺 東京で追悼式典開催=韓日国会議員ら出席 9/1
在日本大韓民国民団(民団)東京本部は1日、東京都内で関東大震災当時に起きた朝鮮人虐殺の犠牲者を追悼する「殉難者追念式」を開催した。
関東大震災から100年を迎え、在日韓国大使館と在外同胞庁が後援した今年の式典には初めて韓日の政治家が出席し、例年に比べ大きな規模で開かれた。
朝鮮人虐殺を公式に認めていない日本政府の関係者の姿はなかった。
韓国からは超党派の国会議員でつくる「韓日議員連盟」の会長を務める与党「国民の力」の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)議員と幹事長である最大野党「共に民主党」の尹昊重(ユン・ホジュン)議員、幹事である国民の力の「賢鎮(ペ・ヒョンジン)議員が出席した。
日本からは鳩山由紀夫元首相、山口那津男・公明党代表、福島瑞穂・社民党党首、逢坂誠二・立憲民主党代表代行、額賀福志郎・日韓議員連盟前会長、武田良太・日韓議員連盟幹事長らが会場を訪れた。
献花台の両側には、日韓議員連盟会長を務める菅義偉元首相と韓悳洙(ハン・ドクス)首相からの花輪が並べられた。
民団は「関東大震災当時の韓国人に対する大量虐殺の悲劇は天災であると同時に人災だった」と指摘。数千人の韓国人が虐殺されたが、国を奪われた状態だったため抗議はもちろん調査を要求することもできなかったと強調した。
民団東京本部の李寿源(イ・スウォン)団長は「悲惨な受難の歴史は絶対に忘れてはならない」として犠牲者に哀悼の意を表した。
また、日本政府の中央防災会議が作成した関東大震災の報告書に「過去の反省と民族差別の解消の努力が必要なのは改めて確認しておく」と明記されているとして、韓日両国の平和と共存に希望を示した。
尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日大使は、犠牲になった韓国人の正確な数は確認されていないとしながら「数字を問わず、関東大震災当時に韓国人が無念に犠牲となった事実は誰も否定できない歴史だ」と述べた。
続けて、不幸な歴史は二度と繰り返されてはならないとし、「ありのままの歴史を直視すれば、韓国と日本は真のパートナーとして未来志向的協力を持続し、世界平和と繁栄に共に寄与できるだろう」との考えを示した。
一方、尹大使と李団長は約6000人が命を奪われたと推算される朝鮮人虐殺を認めない日本政府に明確に真相究明を求めることはせず、犠牲者の追悼と両国の相互理解を強調した。
鳩山元首相は追悼式に出席後、記者団に対して日本は朝鮮人虐殺をきちんと調査し、過去の過ちに対して謝罪の気持ちを持たなければならないと述べた。
●関東大震災での朝鮮人虐殺「記録ない」 日本に「必要な措置検討」=韓国 (8/31)
韓国外交部の任洙ソク(イム・スソク)報道官は31日の定例会見で、日本政府が1923年の関東大震災当時に起きた朝鮮人虐殺について「記録が見当たらない」としたことについて、「韓国政府はこれまでさまざまな機会に日本に対して過去を直視するよう促した」として、政府として必要な措置を引き続き検討するとの立場を示した。
また、政府は関東大震災に関して日本側に真相調査の必要性を提起し、真相究明のための資料提供を要請したと説明した。
日本の松野博一官房長官は30日の記者会見で、朝鮮人虐殺について「政府内において事実関係を把握する記録が見当たらない」と述べた。また、災害の発生時に国籍を問わず全ての被災者の安全と安心を確保するために努力することが非常に重要な課題だと認識していると述べたが、反省や教訓という言葉はなかった。 
●デジタル化は何をもたらすか 与野党の“通”に聞く 9/1
デジタル庁が発足して9月1日で2年。政府の“司令塔”として社会のデジタル化を推進している。一方で、マイナンバーカードをめぐるトラブルが相次ぎ、不安を感じている国民が少なくないのも実情だ。立法に関わる国会議員は今後をどう展望しているのか。デジタルに精通する2人の与野党議員に聞いてみた。
与党代表“デジタル族”平将明  
自民党の平将明衆議院議員。自他ともに認める与党きってのデジタル通だ。取材のため議員会館の事務所を訪問した際、平の指に目がとまった。白と黒の見慣れぬ指輪。何やら意味ありげなものに思え、尋ねてみた。
「白い方は決済用。クレジットカードとひも付けてあって、コンビニなどでカードみたいに水平に当てて支払いができる。黒い方は生体情報の管理。睡眠の質や脈拍数、血中酸素濃度をモニタリングしている」
デジタルで行政改革を
生活にデジタルを積極的に取り入れている平。現在は、党のデジタル社会推進本部で、AIを社会でどう活用するかを検討する作業チームの座長を務めている。平は、行政改革の観点からデジタル化を進めることが急務だと主張する。
「人手不足のため、デジタル化しないと役所はパンクする。ほとんどの人がマイナンバーカードを持ち、それで手続きができるなら圧倒的にランニングコストを下げ、満足感を上げられる」
デジタルが苦手な人たちはついて行けるのか。取り残されはしないのか。率直な疑問をぶつけてみた。
「全員が無理にデジタルに入ってきて下さいと言っているわけではない。デジタルでできる人が入ることで『勘弁してよ』っていう苦手な人を支援するのに人を割くことができる」
マイナのトラブルをどうみるか
政府がデジタル化を急ピッチで進めようとする中、マイナンバーカードをめぐるトラブルが後を絶たない。政府が8月に公表した中間報告では、カードと一体化したマイナ保険証に他人の情報が登録されていたケースが累計で8441件にのぼっている。この事態を平はどう受け止めているのか。
「政府の対応は90点。デジタル庁って10か月でつくり、デジタル人材と官僚という全然違う人たちをひとつの器に入れている。正直よくやっていると思う。ただミスは起きていいわけではないので、どう減らしていくかもう少し考える必要はあった」
そして、一連のトラブルによってデジタル化の流れを止めてはいけないと強調した。
「いまがデジタル化の胸突き八丁だ。苦しいけど、ここさえ抜ければ山の頂が見える。これだけ大きな国でデジタルをやっている国は少ない。マイナカードの申請も9000万以上の申請があって素地はできている。AIも最大限活用すべきで、勝ち筋はやはりデジタルだ」
野党代表“デジタル族”中谷一馬
野党にもデジタル化をめぐる見解を取材しようと“デジタル通”を訪ねた。立憲民主党の中谷一馬衆議院議員。党のデジタル政策のプロジェクトチームで座長を務めている。ことし3月の衆議院内閣委員会では、実験的に生成AIがつくった質問を岸田総理大臣に行った。また8月にはシンガポールを訪問し、デジタル先進国の取り組みを視察している。中谷の事務所はデジタルであふれていた。まず、大きな滝が映し出されたパネル。よく見ると、水が流れているではないか。何でも「デジタルアート」というんだとか。机の上にある観葉植物は鉢ごとクルクル回転しながら浮いている。
政府のマネジメントにマイナス100点
近未来的な空間の中でインタビューを行うと、中谷は政府のマイナンバーカードをめぐるトラブルへの対応を強く批判した。
「政府のマネジメントサイドにマイナス100点。そして、マネジメントサイドに振り回されながら現場で日々奮闘し、努力している方々に100点を差し上げたい。なので、トータルで0点ということになる」
厳しい評価の理由をさらに尋ねた。
「保険証を廃止する時期ありきで進めたことは愚の骨頂だ。そもそもマイナンバーの制度は何のために導入するのかや、国民にどんなメリットがあるのかが共有されない状況のまま進められた、戦略的なミスだ」
なぜ、こうした事態を招いたと考えるのか。中谷は、専門的な知見と意思決定のあり方がかみ合わなかったためだと指摘した。
「極めて頭のよいド素人がそれっぽい理屈を組み立てて、政策決定をすることが霞が関や永田町では散見される。専門的な知見をもっていないので、要所要所でミスが起き、それに対するリカバリーがまったくできない」
デジタル化は“急がば回れ”
政府の対応を酷評する一方、中谷自身も社会がデジタル化を進めることについては賛成の立場だ。今後、どのようにデジタル化を進めていくべきかを問うた。
「デジタル化が遅れているのも事実で、速い流れの中で進めていかなければならないが、“急がば回れ”であり、急に無理やり進めようとしても進まない。皆で合意形成をしながら、なおかつ一歩ずつ歩んで積み上げていくことでしか時代は変わらない」
デジタル化の展望は
行政改革のためデジタル化を急ぐべきだと主張する平に対し、国民との合意形成を図りながら一歩ずつ歩むことが結果的に近道になると訴える中谷。これから社会がどう変わっていくと考えるか、2人に聞いてみた。
まずは、平。
「これからの日本は、圧倒的に人手不足となる。AIで一元的に対応する行政のコールセンターをつくりたい。10年ほどでつくれるのではないか。政府、都道府県、自治体の“縦割り”や“横割り”もなくなる」
その上で、政治の役割について、こう語った。
「技術革新と規制のバランスを考えると、日本は資源がないからイノベーションで戦うしかない。早め早めに規制の整備をして前のめりでやるしかない」
一方の中谷。
「フランスの小説家、ジュール・ヴェルヌが残した『人が想像できることは、人が必ず実現できる』という名言がある。10年後ぐらいには、自動運転車や空飛ぶ車もほぼでき上がり、自動運転の車の移動時間が仕事をしたり、オンライン診療を受けたりする時間に変わるかもしれない」
今後もさまざまな技術によってわれわれの生活の利便性は高まると指摘した上で、こう力を込めた。
「時代の変化に非常にわくわくし、未来に展望を抱いている。一方で、ルールや制度を整えていく衆議院議員の1人として緊張感を持っている。グローバル社会の中でリスクになる部分をどうコントロールしていくかに尽力したい」
デジタル化という時代の変革を国民の利便性向上や行政の効率化、ひいては日本の成長につなげることができるのか。政治家の担う役割は大きい。
●「処理水」政治キャンペーンで既に負けている日本 9/1
8月30日、中国外務省次官補・報道官・華春瑩(ホア・チュンイン)はX(旧ツイッター)に英語で4連続投稿をし、「なぜ日本はトリチウムの希釈ばかりを強調するのか。福島の放射能汚染水には60種類以上の放射性核種が含まれているが、残りの放射性核種の処理はどうなるのか」「もしその水が本当に無害であるなら、なぜ日本は700億円を費やして宣伝キャンペーンを始めようとしているのか。なぜ日本は関係者による福島の放射能汚染水と海水のサンプル収集を拒んだのか」「この水が無害ではないと判明した場合、近隣諸国や他の多くの国が海洋放出しないよう勧告する中で、日本は海洋放出を続けられるのか。これが誠実で責任ある国の振る舞いなのか」「中国と日本には『覆水盆に返らず』ということわざがある。『こぼれた水は二度と元の盆に戻らない』という意味だ。受けたダメージは元に戻せない。日本は手遅れになる前にやめるべきだ」と畳みかけた。
21年4月、政府は処理水の海洋放出を決めたが、科学的根拠を国際原子力機関(IAEA)に求めたのは7月になってから。それが「科学的」と言われる根拠だ。だが中国のこの政治的キャンペーンの背景には米国のいうことは無条件に受け入れるのに中国の声は聞き入れないというメッセージがある。加えて福島第1原発事故以降、今日までの東京電力と日本政府の原発処理は日本国民と世界に誠実だったかを問うている。
福島の事故以降、欧州は原発推進機運がうせ、世界最大の原子力産業会社「アレバ」も今では「オラノ」に変わった。その縮小された部分を中国がこの10年担ってきた。米・ウェスティングハウスの原発をベースに中国が独自開発した第3世代原発に中国は自信を持つ。中国製第3世代原発は海外輸出も進み、今では中国は世界第2位の原発大国だ。その国に向かって「科学」を説いた日本政府の国内外への説明戦略と外交戦略が正しいと思うだろうか。既に日本は政治キャンペーンで敗北しているのだ。
●処理水問題:中国の理不尽な輸入禁止や迷惑電話扇動に断固たる措置を 9/1
米国人が一人でも拉致されると米国はすかさず対抗措置を取り、相手を外交交渉に誘い出して被害者を取り戻す。
民間団体の調査によると800人近くが拉致されている可能性のある日本ではわずかに5人しか取り戻していない。
無辜の国民が国家主権を侵害されて連れ去られたのを取り返せない不甲斐なさ、外務省と同省を統括する外相(さらには首相)は、当初の問題処理を誤ったのではないかと詰問したい。
ここでは拉致問題は扱わないが、いまだに解決しないことから得られた教訓だけは生かさなければ、誤りを繰り返し国益を毀損し続けるだけである。
拉致問題で得られた教訓は何か?
それは遺憾の意を示すことや飴玉を与えながらの交渉では、国民の意向を考慮する必要がない全体主義の国に対しては問題解決にはつながり難いということだ。
政治問題や経済問題で理不尽かつ不利益をもたらす言動を相手が行なっても、日本(政府)は馬鹿の一つ覚えのように「遺憾である」と繰り返すだけなので、「遺憾砲」と揶揄さえされている。
米国や英国などG7に属する国は言うまでもなく、日本よりもはるかに小さな国力しかないとされる国でも、中国が理不尽な、あるいは国益に反すると見られる制裁などを行った時には、非難の声明を出すとともに同等か同等プラスαくらいの対抗措置をとって対処することがしばしばである。
例えばある人物がスパイとして拘束された時には、まず非難するが、前後して類似した業務に従事する人物を拘束する。
相手が何かを理由に総領事館を閉鎖したときは、こちらも相手により打撃を与える総領事館を閉鎖するなどする。
数百万人しかいない国でも中国漁船に拿捕された人物や船を取り返すために、中国の他の船を撃沈さえする。
国家とは領土、国民、主権(の擁護者)とされ、国の大小とは関係ない。どのような国も国益や主権の侵害に対しては必死で最大限の努力をしている。
憲法の呪縛
日本はG7の一員でもあり、人口は米国に次いで大きい。
しかし、日本には国益や主権の観念がないのではないかと思われる行動をとることが多い。
国際社会は日本の憲法が前提するような正義を重んずる善人の集まりばかりではない。
むしろ、性悪説を前提にした方が大部の場合は問題の解決に結びつくのではないだろうか。
極端な話であるが、日米は同盟関係にある。しかし、どこまでも米国は自国の国益増進を目的にしており、交渉においては少しでも自国に有利になるように日本に要求してくる。
日本も主権国として国益の視点から主張すべきであるが、「米国が日本を守ってくれている」という恩義の感情や、「相手の国を慮る」という日本的習性から、必ずしも主張しないことが多いと仄聞した。
日米安保条約下の地位協定においても日本は米国の他の同盟国よりも主権をかなり譲歩している。言うなれば国家の体をなしていない「半」国家か擬似国家の為体(ていたらく)である。
特に中国はことあるごとに日本製品の輸入禁止や制限、不買運動、あるいは理由もなく日本人を拘束するなどしてきた。
しかし、日本はほとんどの場合、しかるべき対処行動はとらずに抗議するだけであった。
「日本」の代表という立場を忘れて、「自分がいい子」になりたがっている一面があるのかもしれない。
しかしそれ以上に憲法の前文を信じ(込まされ)、諸外国は「正義の国」だから「善意」を持つ「平和愛好国」で、交渉ごとで過大な要求などしているはずがないと思い込んでいるのかもしれない。
実態は全く異なり、国益丸出しで取れるものは何でも取ってやれ、その成果が自分の地位向上にも役立つとしか思っていない者ばかりである。
日本では相手に楯突いた人は「喧嘩好き」として嫌われ、譲歩した人は「心が広い」として歓迎される風潮がある。
日本の伝統が根っこにあることは言うまでもないが、憲法がさらに思考の幅を狭めている。
しかし、国際社会は凸型思考(口論し合う)が一般的で、凹型思考(譲り合い)は日本国内でしか通用しないことを知る必要がある。
国際社会に日本型思考で対処していたのでは国益を減ずる結果をもたらす危険性が大きい。
日本の対処は生ぬるい
処理水の海中放出はIAEA(国際原子力機関)による調査で安全基準をクリアしており、国際社会の多くの国は問題視していない。
そうした中で中国のみが輸入禁止の措置をした。
しかし、日本は対抗措置をとっていない。政府が例によって「遺憾」であると抗議しただけである。
しかし、中国共産党の意図を受けたとみられる偽メールが無関係のところにも来襲し、また在中国の日本人学校や多くの日本関係施設が嫌がらせを受けるなどし始めた段階で、政府(外務省)は駐日中国大使を外務省に招致して「極めて遺憾」と抗議した。
抗議のレベルを上げたが依然として「口先だけ」の抗議に変わりはない。
こうした日本の外交上、あるいは貿易上の不手際が日本の選択肢を狭めてきたのではないだろうか。
自衛隊や海上保安庁の巡視船の行動が厳しく制限されているために、尖閣諸島の領海に我が物顔で侵入を繰り返すと同様に、口頭だけの「遺憾砲」も空砲でしかないことを相手はとっくに見透かしてきたわけである。
中国(共産党指導部や政府)は自国の主張が合理的でないことを100%知った上で反対している。
国内経済の悪化で不満が蓄積しつつあるとされ、日本への団体旅行を許可したのはガス抜きの一環ともされる。
今回の「核汚染水」の捏造も国民の関心を逸らすことであり、もう一つは日本の国際的な評価を落とすことであると見られている。
中国が利益圏と見ていたアフリカで日本は国家の信頼性を引っ提げて食い込みを図ろうとしている。
そうした日本の信頼性に疑問を抱かせることは紛れもなく中国の国益につながる。
日本の処理水は国際基準の安全性をクリアしていることを承知の上で、中国は反日行動をそそのかしている。
そうしたなかで日本が馬鹿の一つ覚えで「処理水は安全」「国際基準をクリアしている」などと主張してデータを公表し、また大臣が周辺で水揚げされたばかりの魚の刺身を試食したところで、効き目が限定されていることは言うまでもない。
ウイグル綿などの輸入制限を仄めかせ
処理水の海上排出については、核の国際機関であるIAEAが日本以外の数カ国の専門家で検査し、安全であることを保証した。
それがIAEAの安全宣言という形で国際社会に発信されており、決して日本が独自に秘密裏で行った宣言などではない。
処理水の安全レベルは国際的な安全基準をも大きく上回ってさえいる。
IAEAの宣言は控えめすぎるとさえ思うくらいであるが、日本政府はあえてそのことを強調したりしないで「安全基準をクリア」していると控えめな表現で訴えている。
このように周到に日本が対応し、理論的、科学的に安全性が確認されているにもかかわらず、中国は「核汚染水」と国際社会に喧伝してやまない。
まさしく政治的な反日キャンペーンでしかないことが分かる。
中国は自国の原発周辺から「汚染水」を垂れ流している。日本の処理水どころの話ではない、まさしく「核汚染水」である。
中国は日本の処理水が国際基準をクリアしていることを知っている。言うまでもなく、中国の汚染水よりもはるかに安全であることも知っている。
そうした中国に日本(政府)がいくら「科学的に安全性が確認されている」「国際基準をクリアしている」と外交ルートで依頼しても聞く耳を持たないのは当然である。
にもかかわらず、「遺憾」「極めて遺憾」と繰り返したところで変わらないであろう。相手は民主主義国家ではなく人民の意見などに耳を傾ける国ではないのだ。
風評被害を補償するのは当然としても、それ以前に風評被害を抑えることに尽すべきであり、それは対中圧力である。
かねて中国はウイグル人の人権を抑圧していると国際社会で批判されている。ウイグル綿の生産はそうした人権無視で行われているとも言われてきた。
しかし、日本の某企業は確たる証拠がないとして活用し続けている。
ともあれ疑惑が持たれている綿の輸入制限、或いは禁止するなどの対抗措置がこの際は有効ではないだろうか。国際社会の共感も得やすい。
おわりに
今後、安全保障上で大きな問題となってくるのが、外国人、中でも中国人や中国資本による日本の土地買い占めである。
土地の買い占めは自衛隊施設の近傍、港湾を見渡せる地域、無人島、あるいは天皇が行幸された記念碑を包含するなど、決して個人的な趣味でなく国家意思の介在が読み取れる。
中国の国家意思が明確に見えるのは、大使館や総領事館などの外交施設が所在する土地の保有である。
外交では相互主義が基本である。米国の大使館も総領事館も日本からの借地に存在し、借地料が払われている。
日本の在米大使館や総領事館も米国の土地を借用して建てており、借地料を支払っている。
英国もフランスもドイツも、いや中国を除くすべての国の大公使館や総領事館等の外交施設は日本の借地や借家に存在している。
そればかりではない。米英仏などの国に所在する中国の大使館や総領事館もすべて当該国からの借用地に存在する。
中国では土地を買うこと(すなわち所有)ができないことに基づく相互主義である。
日本においてだけ、しかも中国だけが東京にある大使館や大阪などにある総領事館の用地を買い上げて「所有」している。
異常な話はさらに続く。
中国大使館用地は同盟関係にある在日米国大使館用地よりも広い。驚くことはさらにある。
総領事館はビザの発給くらいが主な仕事で1部屋や2部屋くらいで十分と言われるが、中国の総領事館の多くは大使館よりも広い土地を所有していることが分かっている。
土地問題は従来はさほど問題視されなかったが、中国が国防動員法などを制定し、習近平主席が台湾奪回のために「戦争準備」を指令して以降、中国やその影響下にある中国系資本による土地の買い占めが安全保障の観点から注目され、危険視されるようになってきた。
処理水を「核汚染水」と呼び国際社会に喧伝することは、日本をその問題に集中させ、その間にさらに土地を買い占める、あるいは、日本に譲歩する取引材料にするためなどいろいろ考えられる。
政府が遺憾砲の発射と漁業への補償で乗り切ろうとしている裏で、中国はもっと大きな網を張り巡らせていることを忘れてはならない。
●海洋放出めぐる中国の反日活動、無策の岸田政権は見限られるかも… 9/1
中国政府は、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出について、日本産の水産物の輸入一時停止などの対抗措置を決定。8月28〜30日に予定されていた公明党の山口那津男代表の訪中を「適切なタイミングではない」と延期した。
呉江浩・駐日中国大使は8月30日、筆者の取材に対し、日本側が期待する9月の日中首脳会談について「日本側と協議した事実はない。流動的だ」と語り、実現に否定的な見通しを示した。
日中関係は今後どのような展開を見せるのか。
2012年の尖閣諸島国有化をめぐる中国側の対応と比較しながら観測すると、中国が岸田政権を見限り、政権交代まで首脳会談に応じない「最悪シナリオ」も浮上してくる。
「なぜ一時停止と書かないのか」と駐日大使
海洋放出が始まった8月24日以降の日中関係の推移を振り返る。
放出開始をめぐり、中国から日本への苦情や嫌がらせ電話は東京電力だけで6000件超に上り、中国にある日本人学校には石や卵が投げ込まれた。
ネット上では日本製化粧品の不買呼びかけも出はじめ、外務省は8月27日に中国への渡航者に注意を呼びかけるなど、日中関係は悪化の一途をたどっている。
呉大使は筆者らとの懇談の中で「嫌がらせ電話はよくない。私のオフィスにも嫌がらせとみられる無言電話がかかってきている」と明かした。
中国側では、8月30日に「極端な情緒をあおる言動は慎むよう」沈静化を求める中国紙の社説が出た。同日、日本では高市早苗・経済安全保障担当相が、中国の禁輸措置に対し世界貿易機関(WTO)への提訴を検討すべきと訴え、対立をあおった。
WTOへの提訴については、韓国政府が福島第一原発事故の発生後、福島はじめ8県産の水産物の輸入を禁止したことを不当として日本政府が提訴したものの、2019年4月に日本側が逆転敗訴(WTO上級委員会は韓国の措置が妥当と最終判断)した経緯から、自民党内にも消極論がある。
中国側にも妥協の余地がある
呉大使は日中関係について、「問題をこじらせてはならないと考えて対処している。しかし日本メディアは、中国税関総署が『原産地を日本とする水産品の輸入を全面的に一時停止すると決定』と発表しているのに、『全面禁輸』と書き続けている」と指摘。メディアは「日本政府に洗脳されているのでは」と批判した。
日本メディアの多くが「禁輸」の表現を使うのは、中国の強硬姿勢を際立たせるためだろう。
一方で、中国税関総署があえて「一時停止」という表現を使っているのは、中国側に妥協の余地があることを示していると筆者は考える。
呉大使は8月28日に岡野正敬・外務事務次官と会った際、「海洋放出のモニタリングに中国の専門家を立ち会わせては」と提案したが、外務省側は「検討する」としただけで、同意を得られなかったという。
中国の専門家をモニタリングに参加させる選択肢は、今後の局面打開のヒントになるかもしれない。
呉大使は、中国政府が日本向け団体旅行を解禁したのに続いて、「日本人のノービザ渡航の回復も了承しているが、いつ回復するかは海洋排出問題の処理にかかっている」と語り、当面は海洋放出が関係改善の障害になるとの見方を示した。
「尖閣諸島を思い出す」と経団連会長
中国側の対抗措置を見て、日本経済団体連合会(経団連)の十倉雅和会長は8月28日の記者会見で、「尖閣諸島(を国有化した2012年ごろ)を思い出す」と指摘した(朝日新聞、8月29日付)。
日本政府による尖閣諸島の国有化に抗議して中国各地で反日運動が行われた2012年9月のように、今回の処理水海洋放出問題でも同様の、あるいはそれ以上の反日運動が繰り返される可能性はあるのか。
当時は、国有化直後から北京や上海など中国の主要都市で大規模デモが発生。一部の参加者が暴徒化し、日系スーパーや工場を破壊・放火する暴力的運動が数日続いた。
ただし、その動きには伏線があった。
中国の温家宝首相(当時)はデモが暴徒化する前、北京の講演で「中国政府と国民は、主権と領土の問題で半歩たりとも譲歩しない」と強い姿勢を示していた。この発言は、当時の大規模デモが中国政府の主導で行われていた可能性が高いことを示している。
一方、今回の海洋放出問題では、李強首相や中国外交を統括する王毅外交部長(党政治局員)ら政府当局者は発言を一切控えている。外交部も2012年のように日本を非難する声明は発表していない。
汪文斌副報道局長は8月28日の記者会見で、中国国内の日本人学校などへの嫌がらせについて「承知していない」と、当局による「あおり」を否定した。
尖閣国有化時との「相違点」
2012年と2023年、中国側の対応の違いは明らかだが、それは何に起因するのか。
第1に、尖閣諸島をめぐる問題は、日中双方が領有権を主張して対立し、主権と領土という核心的利益に関係する重大な問題だ。
日本政府による尖閣国有化の決定を、中国側は国家による「現状変更」とみなした。
第2に、中国が当時抱えていた政治状況が挙げられる。
国有化のわずか2日前にロシア・ウラジオストクで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、胡錦濤・国家主席は野田佳彦首相(いずれも当時)と立ち話をした。
中国側によれば、胡氏はその際、日本側の国有化について「全て不法、無効なものであり中国側は断固反対する。日本側は誤った決定をせず、中日関係の発展の大局を守るべき」と警告した。
ところが、その警告は2日後の国有化発表であっさり無視されることとなり、胡氏は完全にメンツを失った。
当時、中国共産党は総書記を胡氏から習近平氏にバトンタッチする微妙な時期に当たっていた。北京の中国研究者も「権力交代に入った時期だけに、処理を誤れば党内矛盾が顕在化しかねない」と、日本への強硬な対応の背景を分析した。
一方、今回の海洋放出問題は、中国の主権や領土といった核心的利益に関わる問題ではなく、中国側の利益を直接的に侵害しているわけではない。そこに大きな違いがある。
日中首脳会談は「望み薄」
公明党の山口那津男代表の訪中について、中国側が「適切なタイミングではない」と延期を求めてきたのは、今後の日中首脳交流を占う上で無視できない要因だ。
公明党は歴史的に中国と友好的な関係にあり、岸田政権も山口訪中に期待を寄せていた。岸田氏は山口氏に首相親書を託し、山口氏自身も習会談に意欲を見せていた。
しかし、山口氏の訪中延期が決まったことで、岸田政権が期待していた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議(9月4日〜7日)での岸田・李強首脳会談、その直後の9月9日〜10日に予定されている主要20カ国・地域首脳会議(G20)での岸田・習首脳会談の実現に、黄信号が灯った。
冒頭で紹介した呉大使の「日本側と協議した事実はない。流動的だ」との発言はそれを裏付けるものだが、呉大使は「秋に予定される与野党議員による訪中に変更はない」とも述べており、対日交流には「是々非々」対応で臨む姿勢を示している。
山口氏の訪中延期の理由については、岸田親書の内容が海洋放出を決定した日本政府の判断の正しさを繰り返す内容だったため、と指摘する声もある。中国側は親書の内容について、事前に「内容のあるものを期待する」と注文を付けていたとされる。
岸田政権が9月の日中首脳会談に強い期待を寄せていたのは、デフレ懸念や不動産をめぐる過剰な債務問題で中国経済の冷え込みが続いているため、中国側は対日関係の改善に動くという判断からだった。
米中関係の悪化が続く中、習政権は対日関係まで悪化させることを望んでおらず、海洋放出問題については「やがて矛(ほこ)を収める」という分析だ。
しかし筆者はそうは思わない。
日本政府が菅政権以降の2年間、アメリカとともに台湾問題で中国を仮想敵とし、徹底した対中軍事抑止政策をとってきたことに対し、中国は何らかの「対抗措置」を検討していたと筆者は考えている。
この解釈が正しければ、中国側が海洋放出問題でただちに妥協する可能性は低い。
妥協重ねて首脳会談実現した安倍氏。岸田氏は…
では、日中関係のこう着状態はいつまで続くのか。
それを考える上では、先述した尖閣国有化問題の「後処理」を振り返るのが参考になる。
2012年末、国有化を決定した野田政権が衆議院解散後の選挙で敗北して退陣、第二次安倍政権に交代。安倍氏は対中関係改善に向けた工作を開始した(以下の肩書きはいずれも当時のもの)。
まず、福田康夫元首相による2014年7月の極秘訪中で、安倍氏訪中のお膳立てが行われた。
福田氏訪中を受け、谷内正太郎国家安全保障局長が同年11月、楊潔篪国務委員と北京で会談。その翌日、日中両国は尖閣周辺の情勢をめぐり、「見解の相違を認め、対話と協議を通じて不測の事態を避ける」ことで一致したとする合意文書を発表。
こうして、北京でのAPEC首脳会議の際、日中首脳会談が実現したのだった。日本側の政権交代を経て、尖閣問題で日本側が妥協し安倍・習会談が実現するまで、およそ2年かかった。
ただ、首脳同士の交流は再開したものの、この時は「会談」と言うより、国際会議を舞台にした「接触」と言うべきものだった。正規の首脳会談実現までには、さらに4年を要した。
2017年5月、習近平国家主席が提唱するシルクロード経済圏構想「一帯一路」に関する国際会議が北京で開かれ、日本からは自民党の二階俊博幹事長と安倍氏側近の今井尚哉・政務秘書官が出席。両氏は現地で習氏と面会し、首脳の相互訪問実現を求める首相親書を手交した。
親書を読んだ習氏は、「(一帯一路に対する)日本の積極的態度を表している」と評価したのだった。
親書の内容は今日まで公開されていないが、今井氏が親書を「一帯一路に協力する」という表現に「独断で書き換え」それが「黙認された」ことを、複数の政府関係者が証言している。
この二階氏と今井氏の訪中を受け、翌2018年に北京での(正規の)日中首脳会談がようやく実現した。
上で述べたように、日本側は中国との関係改善を実現するため、尖閣をめぐる見解の相違を認める合意文書を発表し、首相親書で「一帯一路」への協力を表明するなど、妥協を重ねた。
日中の経済力逆転を背景にした、中国外交の強みとしたたかさを見せつけられた。
おそらく今回も、首脳会談再開に向けて中国側は海洋放出問題での日本側の妥協を迫るだろう。それに加え、環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)加盟問題で、台湾より優先的に中国を加盟させる要求を絡める可能性もある。
岸田政権の弱さは、バランス感覚を持ったブレーンがいないことだ。首脳会談の実現には、政権交代まで待たねばならないかもしれない。岸田氏にとって最悪のシナリオは、決して非現実的な観測ではない。

 

●夏の終わりに没した日本最大の大怨霊「崇徳院」。その本当の姿とは? 8/31
暑かった8月も終わろうとしています。長寛二(1164)年の旧暦8月26日(現在の暦法で9月14日)、第75代天皇の崇徳院 (崇徳天皇/崇徳上皇 諱・顕仁 1119〜1164年)が、配流先の讃岐(香川県)で没した日とされます。
崇徳院は、世にいう日本三大怨霊の一柱に数えられ、今なお怖い怪異譚を新たに生み出しています。しかし遺された御製の和歌は小さな命に心寄せる優しさをたたえたもの。崇徳院は本当に大怨霊だったのでしょうか。
院政が生み出した呪われの皇子・崇徳院の生涯
古よりドロドロとした権力闘争を繰り返し、魔都とも呼ばれる京都。治暦四(1068)年即位した後三条天皇により凡そ100年間続いた藤原氏による摂関政治(幼帝を立て、補佐役の臣下摂政・関白が政治の実権を掌握する政治体制)は実質終わりをつげ、後三条帝の意思を継いだ白河天皇が譲位後も政務を取り仕切って、上皇(太上天皇)による政治支配を特徴とする院政時代が始まりました。
白河上皇(後に受戒して法皇に)の院政下にあり天皇に即位した一人が鳥羽天皇で、白河院の孫にあたります。白河院には出自の怪しい祇園女御なる愛妾がありましたが、この祇園女御に、父を七歳の時に亡くした藤原璋子(ふじわらのしょうし)を養女として預け、自身も代父となって孫の鳥羽天皇の后として入内させます。この璋子の産んだ第一皇子が顕仁親王、後の崇徳院でした。ところがこの璋子は白河院のお手付きの愛人であったため、皇子顕仁の本当の父は白河院であると人々は公然と噂し、父の鳥羽天皇もまたそれを信じて顕仁親王を憎み、疎みました。そして白河院は鳥羽帝を退位させ、保安四(1123)年には当時五歳の顕仁親王(崇徳天皇)を即位させてしまうのです。
治天の君こと白河院にいいようにされてきた鳥羽上皇ですが、白河院が崩御すると、いよいよ自身の院政政治で権力を振るい始めます。
鳥羽上皇の寵姫に保延五(1139)年に男子が生まれると、2年後には当時23歳の崇徳天皇を退位させ、幼い躰仁親王(近衛天皇)に帝位を践祚(せんそ)。さらにこの幼帝が十代で夭折すると、崇徳院の実弟である雅仁親王(後白河天皇)を帝位に。兄弟の即位は、自身の実子の帝位の道が断たれたことを意味し、崇徳院はこのとき実質政治権力の埒外にはじきだされたのでした。
鳥羽法皇の院政下で、権力を再び掌中にしようとする摂関家による暗躍が活発化する中、鳥羽法皇が病に倒れます。後白河院を抱き込んでの権力掌握を目論む摂関家にとって、後ろ盾の鳥羽法皇の危篤は、排除したはずの崇徳院の勢力の盛り返しを危惧させました。
そこで後白河院勢は近衛天皇の崩御は崇徳院の呪詛であるという中傷を流しました。さらに臨終の床にある鳥羽法皇の見舞いに訪れた崇徳院に、面会すら許そうとはしませんでした。
こうして鳥羽法皇が崩御すると、崇徳院と実弟の後白河院との対立は一気に抜き差しならないものとなったのでした。
鳥羽法皇の崩御の三日後には、後白河院勢は崇徳院に謀反の動きありと難癖をつけ、平清盛ら北面の武士集団を集めます。身の危機を感じた崇徳院は近従たちとともに居場所を転々としながら、何とか反後白河勢の仲間を募りますが、平清盛、源義朝らに率いられた後白河勢が崇徳院の居館を急襲、鴨川一帯を火の海にして激しい戦闘が繰り広げられます(保元の乱)。数で劣勢の崇徳院勢は一夜で敗北、崇徳院は投降します。この反乱(実質的には朝廷ー後白河院勢による弾圧粛清)は武士集団、特に平清盛の台頭を招き、連綿と続いた王朝政治の終焉を招いた事件となりました。
投降した崇徳院は四国讃岐に配流となり、二度と京都に戻ることはできませんでした。『保元物語』(作者不詳 13世紀ごろ)によれば、配流地で崇徳院は乱により命を落とした者の慰霊のため、自らの指先から取った血をもって五部大乗経を書写し、京都の石清水八幡宮に奉納するよう使者に託しました。しかしその経には呪詛が込められていると後白河院は恐れ(実際血で書いた経文は気味が悪いものですが)、讃岐に送り返してしまいます。父法皇の臨終にも立ち会えなかったこともあいまって、崇徳院の悲憤は遂に限界を超え、「この上は我、大魔縁となりて、皇を取って民となし民を取って皇となさん」と王朝を呪う言葉を舌先をかみちぎった血により書き記し、後は蓬髪となって生きたまま怨霊悪鬼と化した、と伝わります。
崇徳院は長寛二(1164)年、讃岐で崩御します。諡号(天皇が死後に贈られる正式な天皇名)は侮蔑の意を込めて異郷の地名「讃岐」とされました。後白河院は喪に服することもなく、崇徳院(讃岐院)は配流地の讃岐白峯に葬られたままでした。その状況が変わったのは、死後11年経った頃、後白河院の最愛の女御である平滋子が死去。続いて中宮(皇后・皇太后・太皇太后の総称)、そして二条天皇の皇子六条天皇(既に譲位して上皇に)の死去が相次ぎ、この頃からこの相次ぐ不幸は何者か、いや間違いなくあの無辜の崇徳院の怨霊による災禍であるという噂がささやかれていました。さらに都の三分の一を焼失させたといわれる1177(安元三)年の安元の大火、翌1178(治承二)年の治承の大火と災害が相次ぎ、朝廷は浮足立ちます。既に朝廷はこの頃、平清盛により院政を骨抜きにされ、権力を握られていましたが、その清盛にも不幸が相次ぎます。1179(治承三)年には娘の盛子、さらには嫡子重盛が急死。そしてその2年後には清盛自身が病没します。
朝廷は、崇徳院の呪いを鎮めるために讃岐で法要を行い、また諡号も「讃岐」を「崇徳」に改め(実際に崇徳院となるのはこのときから)、京都のゆかりの地に慰霊廟を建てるなどなどの慰霊に努めました。しかし決してその御霊を京都に戻すことはありませんでした。崇徳院の京都への帰還が果たされたのは、明治天皇により京都上京区に建設された白峯神宮に本尊を遷座した慶應四年の崇徳院の命日、何と明治改元の前日のことでした。
王朝末期の抒情詩人。崇徳院の歌の世界
では崇徳院の和歌のごく一部を見ていきましょう。崇徳院は幼い時より和歌に親しみ、帝位についてからは多くの歌会を催した、当代きっての優れた歌人でした。勅撰和歌集には八十一もの美しい歌が採られ、自らも勅撰和歌集『詞花和歌集』を編みました。藤原定家の百人一首に選ばれ、その中でも指折りの人気を誇る一首がこれです。
瀬をはやみ 岩にせかるる滝川の われても末に 逢はむとぞおもふ (詞花和歌集)
この歌、初出の『久安百首』では「ゆきなやみ 岩にせかるる滝川の」となっており、「瀬をはやみ」としたのは崇徳院自身による改変であろうと思われます。急流は岩にぶつかって二つに分かれてしまっているが、引き裂かれた二つの流れはいつか再び一つになるであろう、という強い意思に貫かれた清冽な印象を与える歌。仲を引き裂かれた男女の激しい恋情の歌として解釈されるのが一般的ですが、崇徳帝の悲劇の生涯を見るにつけ、さまざまな解釈が可能な意味深な内容です。
花は根に鳥はふる巣にかへるなり春のとまりを知る人ぞなき (千載和歌集)
春咲いた桜はやがて根に戻り、鶯は故郷に戻るのに、春という季節の帰るところはあるのだろうか、という抽象的なメタファーが独特で、個性的な一首です。晩春の日暮れ、各家に灯がともる、心うずくひととき。鳥も人も皆温かい家へと帰っていく。けれども「私には帰宅を待ってくれている家などどこにもない」と、実の親に憎まれ続けた崇徳院は自身の悲しい境遇を「春」にたくしたと解釈することができます。
このごろの鴛鴦(をし)のうき寝ぞあはれなる 上毛(うはげ)の霜よ 下のこほりよ  (千載和歌集)
近頃の寒い季節にオシドリが水に浮いて寝ている姿が不憫だ。羽には霜がつき、足元は凍っているではないか。凍えながら耐える野鳥のオシドリに心を寄せる一首です。「霜よ」「こほりよ」と畳みかける重韻は、現代詩やポップスの歌詞にも通じる、現代人にも訴求力のある名歌ではないでしょうか。
恋ひ死なば 鳥ともなりて 君がすむ宿の梢にねぐらさだめむ (久安百首)
鳥となって愛する人のところへ飛んでいきたい、というモチーフは、古今東西共有されてきたものです。崇徳院の和歌はこのようにけれん味がなくわかりやすいものが多く、本来明るく、素直な心根の人物であったことをうかがわせます。それにしても、「ねぐら」「ふる巣」「帰る」「うき寝」など、心休まる帰るべきところに安らいたい、という切ない願望が随所にあらわれ、胸をつかれます。
秋ふかみ たそかれ時のふぢばかま 匂ふは名のる心ちこそすれ (千載和歌集)
秋の黄昏時、薄闇の中で、フジバカマの花の香りがにおってくる。まるでフジバカマが私はここよ、と語りかけてくるようだ、という一首。ささやかで可憐な歌です。
いかがでしょうか。これほど優しい歌を歌う人物が、本当に大怨霊だったのでしょうか。
近代に再び繰り返された崇徳院の呪い?人喰い地蔵の怪
さて保元の乱で後白河院側が襲撃し、崇徳院の居館のあった鴨川の東岸、春日河原に寿永三(1184)年、崇徳院の霊を祀る崇徳天皇廟である粟田宮が設置されています。しかし、室町期の応仁の乱の騒乱などで廟は荒廃、廃絶。唯一本尊となる地蔵尊のみが修験者(霞衆)の総本山である聖護院の広大な森に移動され、安置されたと伝わります。当時の京都は地蔵信仰と六地蔵巡りが盛んで、崇徳院ゆかりの一帯にも多くの地蔵の野仏が安置されていたようです。現在では京都大学・京大病院の敷地になっているこの地で大正時代、京大理学部建設の折に五十体ほどの古い地蔵菩薩の石像が出土しました。工事人足たちが「地蔵さんじゃ漬物石にも使えない」と、路傍に放り出して休憩の椅子代わりにするなどの粗雑な扱いをしていたところ、やがて工事請負業者の社長や人足、建物の大工の棟梁、出入り商人、大学の建築部長などが相次いで急死する事態が発生。誰ともなく「石地蔵をぞんざいに扱うから祟られたのだ」と噂が広がり出したのです。有名な稲荷下げ(民間の霊能力祈祷師)に伺いを立てると、「地蔵様の本地仏である大日如来が大変なお腹立ちで、このままではなお六人の命が取られる。それから地蔵には霊力のある狸の霊も憑いている(崇徳院の死没地讃岐は狸霊の本場です)ので、すぐに地蔵菩薩と狸を丁重に祀り、毎日供物を欠かさないよう」と諫言されます。しかし、それを聞いた大学側の教授は非科学的だと取り合いませんでした。するとその教授が4〜5日後に突然亡くなってしまいます。
こうなってくると大ごとだと、大学側も出土した石地蔵を全て並べて祠を設置し、地蔵盆の八月二十八日には盛大に例祭を行うこととしました(『天狗の面』)。それに先立つ明治末期、現在京大理学部キャンパスのある聖護院吉田村の畑で石地蔵が出土、その地蔵を庭石代わりにしていたところ、その一家全員が亡くなるという出来事が発生。大正末期に地蔵は京大病院敷地内に祀られました。
これらは現在、京大病院と京大医学部の敷地にそれぞれ「祟り地蔵」として祀られています。そしてそれらのすぐとなり、東大路通を挟んだ聖護院の一院家である積善院凖堤堂には、崇徳院地蔵、別名「人喰い地蔵」が祀られています。「すとくいん」をもじり、いつしか人の命を喰らう「ひとくい」へと変質したと伝わります。これらの地蔵は崇徳院を祀る崇徳天皇廟、その信仰圏の民間の地蔵が散逸し埋もれたものだと考えられます。
病院や学校という怪談が生まれがちなシチュエーションということもあるのか、戦後にも猟奇的な事件が発生したり、怪異現象の起こる場所として有名でもあります。京都の人々にとっては崇徳院はなお生々しい恐ろしい祟り神「御霊」として、恐れられているのです。
けれどもその実像は、残された御製の歌の数々、そして薫陶を受けた僧・西行の挽歌などを見ても、並み外れて繊細で心優しく、また才に恵まれた魅力的な人物であったと読み取ることができます。本当に怖いのは、排除した者を怨霊として悪鬼化し、遠ざける側の猜疑心なのかもしれません。
●維新・馬場代表、中国と一部左派野党や政治家の暴論・暴挙と対峙 8/31
日本維新の会が、東京電力福島第1原発の処理水放出をめぐり、「風評被害解消」に乗り出す。中国は処理水を「核汚染水」と呼び、理不尽な抗議や日本産水産物の禁輸を始めた。維新はこの件では、政府与党と足並みをそろえて、科学的根拠をもとに暴論・暴挙と対峙(たいじ)していく。処理水を「汚染水」と発信する一部左派政党や政治家との対決姿勢も鮮明にした。
「われわれも堂々と処理水放出については応援をしていく」
維新の馬場伸幸代表は30日の党会合でこう語った。独自の風評被害対策として、東北の食材を使ったイベントの検討を指示した。
IAEA(国際原子力機関)や、WHO(世界保健機関)は日本の放出計画を評価しているが、中国は「核汚染水」と批判している。日本でも共産党や社民党は「汚染水」「毒」などと表現。立憲民主党の泉健太代表は「処理水」が党の公式見解というが、一部の所属議員は「汚染水」と発信している。
維新の藤田文武幹事長は党会合後、「民間の方が(汚染水と)言う分には自由だが、責任ある政治にかかわる、特に議員については非科学的な、フェアじゃない態度で不安をあおるようなことがあってはならない」「(一部左派政党や政治家が)政治的に足を引っ張ってやろうみたいな思惑の中でやっているのだとしたら、こんな情けないことはない。次の衆院選では『無責任な勢力』に権力を持たせない。維新が新しい政治構図を作るために頑張りたい」と語った。
維新の姿勢をどうみるか。
ジャーナリストの石井孝明氏は「維新幹部の発信を聞き、真っ当な野党として政府与党と連携する姿勢は、非常に評価できる。一部の左派野党や政治家が、処理水を『政争の具』にして、中国や韓国の左派野党と同様の主張をしていることは理解に苦しむ。左派野党の低迷を見ても、国民も古い体質を理解しているのではないか」と語った。
●「国民生活は他人事」岸田首相 “2030年代半ばに時給1500円”宣言 8/31
岸田文雄首相(66)が新たに表明した賃上げ方針。国民を鼓舞しようとの目標と思われるが、かえって絶望を招いてしまったようだ。
8月31日、「新しい資本主義実現会議」で最低賃金の引き上げを表明した岸田首相。2030年代半ばまでに時給1500円にすることを新たな目標とするという。各メディアが報じた。
これまでも、最低賃金の引き上げを目標に掲げてきた岸田政権。10月から適用される、2023年度の都道府県別の最低賃金額の全国平均は、前年比43円増の1004円となった。
しかし、消費者が直面する物価高は深刻だ。7月の消費者物価指数の前年比上昇率は3.3%。「生鮮食品を除く食料」に至っては9.2%と大幅に上昇している。8月28日にはレギュラーガソリンの小売価格(全国平均)が過去最高を更新。8月30日には、電力大手10社が10月分の電気料金を発表し、全社で642円から1024円の値上がりとなることも明らかになった。
賃上げは物価高に追いついておらず、8月8日に公表された、物価変動を考慮した6月の実質賃金は前年同月比1.6%減。15カ月連続でマイナスとなっており、生活が楽になる気配は一向にない。
また、OECD(経済協力開発機構)が7月11日に発表した「2023年雇用見通し」では、日本の最低賃金の伸び率は、OECD加盟国平均の3分の1であることが指摘されている。海外の最低賃金を見ると、最も高いオーストラリアは23.23豪ドル(約2194円)、ドイツでは’24年1月から12.41ユーロ(約1970円)に引き上げが決まっており(現状12ユーロ)、フランスは11.52ユーロ(約1828円)だ。(※為替レートは8月31日時点)
今後も継続的に物価が上昇するとなれば、10年後の1500円の価値は今よりも大幅に下がってしまうだろう。そんななか、“1500円”まで上げるのに約10年かけるという岸田首相。目先の生活についても不安を抱える人が多いなか、掲げた日本の未来まで“ショボイ”ことに絶望する人が相次いでいる。
《10年後?15年後?ほんとマジで岸田に殺される》《前向きそうに見えて『そのペースじゃ間に合わない……』と絶望感を与える発言になってしまったな。1500円あげるのに10年以上かけるってことだからな……まあ良くて年間5%。使えるお金は年に2,3%は上がるかも知れんが、物価はもっと上がるだろうね》《10年後には日本円の価値がさらに下落しているだろう。その時に時給1500円というのはちょっと待ってよの話。いつまで経っても豊かになれないこの日本》《2030年代半ばって、まだ10年以上先の話でしょ。 何か夢も希望ない話だなぁ そもそも、岸田さん、おるんかいな。。。》《緊急課題なのに、のんきなことを国民生活は他人事って明言してますね》 
●なぜ日本だけ「統一教会問題」被害が大きいのか 8/31
安倍元首相殺害事件に端を発し、統一教会の人権侵害と不法行為が露わになり、それを支えてきた政治家たちとの関係が問われるようになった。多くの事実関係が明らかになっているが、このような事態が生じるに至った歴史的経過については必ずしも十分に示されてきたとは言えない。同時に、統一教会は世界各地に広がっているが、日本以外では大きな被害が生じたことはない。どうしてこのような事態が生じたのか。
「解散命令」の可能性も含め日々報道がなされている「統一教会問題」を、歴史的・国際的文脈から多角的に論じた『これだけは知っておきたい 統一教会問題』の編者で宗教学者の島薗進氏が解き明かす。
統一教会問題の広がり
解散命令が求められるような教団だから悪を具現したような存在と決めつけてよいのか。日本の宗教史から見ていくと、社会からの激しい非難を浴びた教団の処遇というと、戦前の大本のように「宗教弾圧」という視角から捉えられた時期が長かった。1995年にオウム真理教地下鉄サリン事件が起こって、「危険な宗教の取り締まりは当然」というような考え方が主流になっているようだが、それよいのだろうか。
宗教2世の窮状が問われているが、宗教団体に属する家庭で育った子どもたちが一様に苦難を負っていると捉えることでよいのだろうか。また、統一教会がジェンダー・バックラッシュを進める宗教団体の代表のように扱われているが、それは妥当だろうか。宗教団体の家族重視の姿勢は広く見られるものであって、とくに際立ったものではないのではないか。広く新宗教にも家族を重んじる考え方は見られるのではないか。
『これだけは知っておきたい 統一教会問題』は上記のような問題を取り上げているが、力点は以下の問いにある。
〈統一教会は世界各地に広がっているが、日本以外では大きな被害が生じたことはない。どうしてこのような事態が生じたのか〉
この問いに答えていくには、統一教会の信仰の内実を問い、どのような特徴があるのかを理解する必要がある。また、この宗教団体の急速な拡大の背景となった韓国と日本の宗教史、政治史にも注意を向けておく必要がある。さらに、この時代の韓米日の国際関係についての理解が求められる。1960年代から1990年代までの統一教会の信仰や宗教活動のあり方と、それをめぐる宗教史、政治史、国際関係史について見通しをもつ必要がある。
1970年代から1990年代の統一教会
そもそも日本とそれ以外の地域でこれほど大きな違いが生じたのはいつ頃だろうか。たとえば合同結婚式で多くの女性が韓国の男性と結婚する「韓日祝福」はどうか。7000人とされる日本の若い女性が教祖・教団の意思によって韓国に嫁いでいった。韓国の男性は信仰をもっていないが、配偶者を得ることができないような貧しさやその他の事情をもった人が多かった。それは1984年頃から始まったことだ。
「霊感商法」はどうか。統一教会が巨額の金を市民からむしり取るために、「霊感」を装って弱みをにぎり、途方もない額の費用を求めるようになったのは1977年か1978年のことだ。これを『朝日ジャーナル』が取り上げ、批判したのは1986年から1987年、全国霊感商法対策弁護士連絡会が結成されたのは1987年のことだ。
多くのマスコミが統一教会の被害や合同結婚式の問題を取り上げたのは1992年であり、ソ連が解体し東西冷戦体制が崩壊した後のことだ。この頃、すでに坂本弁護士一家殺害事件が起こっており、その3年後にはオウム真理教地下鉄サリン事件が起こっている。1990年代の後半になるとすでに霊感商法はおおっぴらにできなくなっている。全国の民事裁判で統一教会に不利な判決が出ていき、2000年代になると刑事事件でも立件されるようになった。
以上のように統一教会の被害をめぐる歴史を概観すると、1970年代の半ばから1990年代の初めにかけてが、被害の発生と増大のカギとなる時期であることが見えてくる。この時期の統一教会は、日本においてだけは甚だしい人権被害を起こし、多大な被害者を生み出すような活動を継続できたのだ。
日本だけでこれほどの被害が生じた理由
ひるがえって1960年代から1970年代の前半までを見れば、統一教会は日本伝道にだけ力を入れたわけではない。とくに1960年代はアメリカ伝道に多大な力を注いでいた。韓国国内の伝道もヨーロッパ諸国の伝道も重視されていた。この時期は日本が資金提供源として特定されるようなことはなかった。
ただ、1960年代にはアメリカでの政界工作にきわめて大きな比重が置かれていた。そしてその背後には、1961年に成立した韓国の軍事政権があった。ベトナム戦争が進むなかで、反共を掲げる朴正煕の軍事政権とアメリカのニクソン政権との間には深い連携関係があり、日本の自民党政権もそれにからみ、韓米日の連携が強化されていたのだ。
ところが1970年代の半ばまでに、大きく事情が変わる。ベトナム戦争でアメリカが敗色濃厚になる。ウォーターゲート事件でニクソン政権が崩壊する。他方、世界的に「カルト」問題が注目されるようになり、統一教会の政界工作や強引な布教による信徒隔離のあり方が問題にされるようになってくる。
韓国、アメリカやヨーロッパの諸国では、この時期以降、統一教会は人権侵害の及ぶような伝道活動や資金集めはできなくなった。日本だけでそれが可能になり、日本は教祖と教団全体のために資金集めを使命とする国と見なされるようになった。
どうしてそんなことになったのか。『これだけは知っておきたい 統一教会問題』はこの問いへの答えを示そうとしている。こうしたことが二度と起こらないために何が必要か、その問いに答える手がかりも、本書のなかから見えてくるはずだ。
●2%の「物価安定の目標」と「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」 8/31
2%の「物価安定の目標」
日本銀行法では、日本銀行の金融政策の理念を「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」としています。
物価の安定が大切なのは、それがあらゆる経済活動や国民経済の基盤となるからです。
市場経済においては、個人や企業はモノやサービスの価格を手がかりにして、消費や投資を行うかどうかを決めています。物価が大きく変動すると、個々の価格をシグナルとして個人や企業が判断を行うことが難しくなり、効率的な資源配分が行われなくなります。また、物価の変動は所得配分にゆがみをもたらします。
こうした点を踏まえ、日本銀行は、2013年1月に、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、これをできるだけ早期に実現するという約束をしています。
長短金利操作付き量的・質的金融緩和
日本銀行は、2016年9月の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証を行い、その結果を踏まえて、金融緩和強化のための新しい枠組みである「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入しました。
この「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の政策枠組みは、2つの要素から成り立っています。第1に、金融市場調節によって長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」、第2に、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」です。
   (1)イールドカーブ・コントロール
「総括的な検証」で示したとおり、2013年4月に導入した「量的・質的金融緩和」は、主として実質金利低下の効果により経済・物価の好転をもたらし、日本経済は、物価の持続的な下落という意味でのデフレではなくなりました。これを踏まえ、実質金利低下の効果を長短金利の操作により追求する「イールドカーブ・コントロール」を、枠組みの中心に据えています。
その手段としては、2016年1月のマイナス金利導入以降の経験により、日本銀行当座預金へのマイナス金利適用と長期国債の買入れの組み合わせが有効であることが明らかになりました。これに加えて、指値オペや連続指値オペといった手段を備えることで、長短金利操作の円滑な実施を図っています。
   (2)オーバーシュート型コミットメント
日本銀行は、「オーバーシュート型コミットメント」で、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続することを約束しています。これによって、2%の「物価安定の目標」の実現に対する人々の信認を高めることを狙いとしています。
日本銀行は、2018年7月、強力な金融緩和を粘り強く続けていく観点から、政策金利のフォワードガイダンスを導入することにより、「物価安定の目標」の実現に対するコミットメントを強めるとともに、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性を強化する措置を決定しました。
2021年3月には、2%の「物価安定の目標」を実現するために、「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」 [PDF 4,217KB]を行いました。その結果を踏まえて、持続的な形で、金融緩和を継続するとともに、情勢変化に対して、躊躇なく、機動的かつ効果的に対応することができるよう、「貸出促進付利制度」の創設などの政策対応を行いました。
2022年12月には、緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していくため、長短金利操作の運用を一部見直すことを決定しました。
2023年4月には、先行きの金融政策運営に関する方針を改めて整理・明確化しました。
こうした対応を含め、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとでの決定事項等は、「金融政策に関する決定事項等」からご覧いただけます。
(参考)イールドカーブ・コントロール導入前の取組み
日本銀行では、2013年4月に、「量的・質的金融緩和」を導入しました。その後、2014年10月には「量的・質的金融緩和」の拡大、2015年12月には「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置の導入、2016年1月には、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入、2016年7月には「金融緩和の強化」を行いました。 

 

●百田尚樹氏と有本香氏が「百田新党」立ち上げ準備を本格化 8/30
ベストセラー作家で保守論客としても知られる百田尚樹氏と、ジャーナリストの有本香氏が、保守新党(いわゆる『百田新党』)の立ち上げ準備を本格化させているようだ。2人が生出演するネット番組「百田尚樹・有本香のニュース生放送 あさ8時!」(あさ8)で29日、「9月1日のSNS開設」が明らかにされた。夕刊フジの公式サイトzakzakなどで速報したところ、多くの期待の声が集まった。
「待望の保守新党が立ち上がる」「期待しかない!」「日本人の普通の気持ちが百田さん、有本さんから伝わります。応援します」「推せる政治家政党いなくて困ってる人も、仕方なく自民党に入れてた人沢山いたと思います!」
zakzakや、夕刊フジ編集局X(旧ツイッター)には29日、このような意見が次々と書き込まれた。
一方で「サプライズがないと失敗する」「保守同士で票の取り合いになるのが心配だ」など厳しめの意見もあった。
有本氏は29日の「あさ8」で、新党について「9月1日にSNSなどで発信を開始します」と発表した。党名発表は、まだ先という。
百田、有本両氏が新党立ち上げを決断した背景には、保守政治≠ゥら逆行するような自民党の動きがあった。
岸田文雄政権の発足後、財務省主導の増税路線や、韓国への前のめりな外交が顕在化したが、百田氏が特に反発したのが、LGBT法の拙速な法制化だった。
当初から法案に反対していた百田氏は6月10日、自身のユーチューブ放送で、「決意表明です『LGBT法案が成立したら、私は保守政党を立ち上げます』」と発信し、「百田新党」結成の意向を表明した。
百田氏は、安倍晋三元首相が昨年7月に暗殺されてから保守政党だったはずの「自民党のタガが外れた」「自民党を消極的に支持していたが、保守政党ではないことが明らかになった」と断じた。
「百田新党」には、保守陣営などから期待の声があがる。
人気作家でジャーナリストの門田隆将氏は月刊誌「WiLL」で、百田氏と対談し、「国民は新しい風を求めている。大暴れを期待します」とエールを送った。
福井県立大学の島田洋一名誉教授も29日、自身のXに「何となくレーガン、サッチャーを思い出すのは私だけではないだろう」と、期待を書き込んだ。
●党勢拡大に向け、玉木雄一郎候補と前原誠司候補が大激論! 8/30
選挙ドットコムちゃんねるでは8月28日、国民民主党の代表選挙候補者討論会を生放送しました。立候補している玉木雄一郎衆議院議員と前原誠司衆議院議員に登壇していただき、次の衆議院議員選挙を見据えた野党共闘に関する方針、党勢拡大のための支持率向上に向けた方策などを伺いました。この記事はその生放送でのやり取りを要約したテキスト版です。9月2日の投開票に向けて、両候補が訴えたこととは?そして、その差異はどこにあるのでしょうか?
立候補者2人の基本プロフィール
2020年9月に現在の国民民主党が結党して以来、2回目となる今回の代表選挙。立候補したのは現代表の玉木雄一郎衆議院議員と、現代表代行の前原誠司衆議院議員の2人です。有権者は国会議員(21人)や地方議員(271人)、党員・サポーター(3万6682人)です。代表選は、有権者の種別ごとに与えられたポイントを得票数に応じて各候補に配分して、獲得ポイント数が多い候補を選出する仕組みです。
8月21日に告示され、8月29日に郵便投票・8月30日正午に電子投票が締め切られました。9月2日の臨時党大会で投開票が行われ、新代表が選出される予定です。新代表の任期は3年間です。
   玉木雄一郎(たまき・ゆういちろう)候補のプロフィール
玉木候補は1969年5月1日生まれ、香川県出身。選挙区は香川2区で、現在5期目です。
東京大学を卒業後、大蔵省(現 財務省)に入省し、行革大臣秘書や専門官などを経て、政治家の道に入ります。
初めて立候補した2005年衆院選では落選しましたが、その次の2009年衆院選で初当選を果たして以降は5回連続で当選しています。
2018年5月から旧・国民民主党代表(共同代表含む)を務め、現在の国民民主党が結党した2020年9月以降、代表を担い続けてきました。YouTubeでの情報発信が盛んな政治家としても知られ、公式チャンネル「たまきチャンネル」に登録者数は17万人(2023年8月30日現在)を超えています。
   前原誠司(まえはら・せいじ)候補のプロフィール
前原候補は1962年4月30日生まれ、京都府出身。選挙区は京都2区で、現在10期目です。
京都大学を卒業後、松下政経塾に8期生として入塾し、1991年京都府議会議員選挙に初当選しました。1993年衆院選で京都1区から出馬して当選を果たし、以降は10回連続で当選を重ねています。
国会議員として、民主党代表や民進党代表、国土交通大臣や外務大臣など党や内閣の要職を歴任してきました。現在は、国民民主党代表代行を務めています。
自他ともに認める、政界屈指の「鉄オタ」の顔も。自身のTwitterでは、訪れた先々で撮影した車両や車窓からの風景などを投稿されています。
選コム討論会で両候補が語った野党共闘への姿勢の違いとは?
Q(TO 玉木候補)
ガソリン価格高騰の際に減税できるトリガー条項の発動に首相が理解を示す答弁をしたことで、玉木候補は昨年度の当初予算に賛成をしました。 しかし、結果的にトリガー条項の発動には至っていません。当時、自民党や公明党とはどこまで握れていたのでしょうか?
玉木雄一郎候補(以下、玉木候補):
我々は2年前の衆議院選挙で一番の主要公約に「トリガー条項凍結解除によるガソリン値下げ」を掲げて戦ったので、何としても実現したいと考えていました。
特に、昨年2月以降はロシアのウクライナ侵攻で、国際的にも原油価格が高くなった。これは国益にも資するだろうということで、引き下げを交渉したわけですね。ただ、我々は小さな政党ですから、普通のことをやっていたのでは見向きもされない。そこで、予算案への賛成をテコに、岸田文雄総理、そして公明党の山口那津男代表に交渉のテーブルについていただいて、トリガー条項凍結解除の議論を始めました。
これはもう現にそうだったし、実は公明党さんも、トリガー条項凍結解除に行こうということでした。しかし、仕入れ時にすでに「蔵出し税」と呼ばれる税金がかかってるので、高くなったものを安く売ることで損が生じてしまう。課税の時期とかタイミングをどのように円滑にするのか、その具体的な対応案をもうまく出せない中で対策は急務だったため、結果として補助金になってしまいました。そこは、未だに非常に残念だし、引き続き(凍結解除を)求めています。
ただ、結果として、最大リッター35円を超えるレベルまで補助水準が拡充しました。リッター168円以下にしようという当時の約束は一応は守られたことになります。100点満点ではないのでご批判もいただいてますけれど、一定の実現には繋がったと思います。
Q (前原候補へ)
現在の党の路線では自民党から利用されてしまうと警鐘を鳴らされていますが、(前原候補が訴えている)立憲民主党や日本維新の会との選挙協力では利用される恐れはないと言えるでしょうか?
前原誠司候補(以下、前原候補):
そうならないように、しっかりと交渉します。お互いギブアンドテイクなので、我々もプラスになるように交渉するので、私はあまり心配していないですね。
Q(前原候補へ)
民主党政権が終わってから10年が経ちますが、最初の5年間は民主党と民進党という「大きな塊」で、支持率は残念ながら低迷を続けました。 前原候補は民主党代表も務められていましたが、今回トライされていることは同じ失敗にはならないでしょうか?
前原候補:
私が民進党代表だった1ヶ月もなかったんですが、一つの反省は、希望の党との合流をめぐる情報管理です。
安全保障法制には全員が賛成していたにもかかわらず「踏み絵」と言われ、党首を経験した人はダメだという「排除リスト」なるデマや怪文書まで流れ、疑心暗鬼に陥りました。野田さんが排除されていましたが、小池さんは野田さんのことをすごく高く評価されていたので、排除されるはずがありません。
もし今回私が代表にならせていただいて野党協力や大結集を進めていく際には、しっかりと平時から備えておきます。
Q(玉木候補へ)
前原候補の立憲・維新との調整などのお話について、玉木候補のお考えはいかがでしょうか?
玉木候補:
百歩譲って、国民民主党と立憲民主党、国民民主党と日本維新の会で、何かできるのはイメージができます。しかし、野党第1党の立憲と第2党の維新が、現に次の衆議院選挙に向けて70以上の選挙区で重なっています。うちと立憲なら4選挙区でしか重なっていなくて、現職(の選挙区)では全くだぶってないです。
この70以上の選挙区で候補者調整をするのは相当なことです。それに、今の支持率を見ると、比例では維新が野党第1党になる可能性もある中で、小選挙区で負けても立てることの意義が維新側にはあるので譲らないと思うんですよね。例えば、長崎1区や埼玉14区で調整に応じるとは思えない。
そういう中で「大きな塊」と言っても、まず野党第1党と第2党が自公に対して、一枚岩で向き合う体制がとれるかということに私は極めて懐疑的なんですね。うちだけが候補者をおろす・おろさないを調整するということになれば「労多くして益なし」になります。
だから次の衆議院選挙は、我が党として陣営を固め、比例と小選挙区の組み合わせで最大化できるような候補者の立て方や戦略的な取り組みが現実的だと考えています。党を強く大きくすることに集中することが必要です。
Q(前原候補へ)
こうしたお2人の考え方の違いはどのように生じていると考えていますか。
前原候補:
信頼関係ですよね。維新の馬場伸幸代表や藤田文武幹事長と、候補者調整を含めたディープな話ができるのは国民民主党には私以外にいません。
仲間を批判しているのではありません。総支部長や比例復活で当選した1回生の方々は人生を懸けて出馬してくださる。そうした人たちのために、今後のことも含めて立憲や維新としっかり話ができるのは私しかいません。
候補者擁立の考え方、進め方は?
Q(玉木候補へ)
単独路線での党勢拡大を考えると、今の制度ではできる限り小選挙区に候補者を立てることになりますが、その一方で落選するリスクも増えます。どのように考えていますか。
玉木候補:
一つの目安は、全国11のブロックごとに現職を含めて3人立てること。1人は確実に小選挙区で取ってもらって、1人は比例復活して、もう1人は次に向けてと考えています。
もちろん「カカシを立てる」つもりはないので、1人1人を大切にしつつ、でも比例と小選挙区を組み合わせながら、最大限の議席をどう確保していくのかです。
前回は27人立てて、比例5議席と小選挙区5議席を獲得しました。2割ずつ比例票を確実に増やすという目標を達成するには、次の衆院選では380万票の比例票を取る必要があります。そのためには、当然立てる総支部長の数も27から、最低でも2割増の30強を一つのめどに立てていきたいと思っています。積極的に擁立していくっていうのは必要だろうと思ってます。
Q(前原候補へ)
次期衆院選の具体的な数字目標はありますか。
前原候補:
党勢を拡大するなら、やっぱり支部長を立てなきゃ駄目なんですよ。玉木さんは2割2割増やすとおっしゃるけども、他党も必死で、立憲は150人、維新は130人、そして参政党は50人擁立しているのに対し、うちは23人なんですよね。2割ずつ増やすと言われても現実味がないんですよ。
ですから、私はとにかくまず私が代表にならせてもらえればこの総支部長をどうやって増やすか考えなければなりません。具体的な数字目標は現在のオファーの状況なども踏まえて考えなければなりませんが、50人ぐらいでないとね。
Q(前原候補へ)
れいわ新選組と参政党は、枠組みの中に入りますか。
前原候補:
れいわ新選組は入らないですよ。参政党は話をしてみなきゃならないと思っています。
どうする政党支持率?
Q (両候補へ)
国民民主党の現在の支持率の受け止めと、今後の展望をお願いします。
玉木候補:
最近の上昇傾向は、メディア露出に一定程度比例していると考えています。
国政選挙もそうなんですけど、やっぱり地方選挙への候補者擁立も含めて、露出を高めて受け皿を作りたいです。全国で国民民主党を認識していただく機会を作っていくことが一番大事だと思いますね。
前原候補:
皆様のおかげで国民民主党を取り上げていただいてるということが大きいとは思いますが、それでもまだまだ低いですよね。これだとなかなか展望を開けないというのが私の率直なところです。やはりどこかで大きな転換をしなくてはなりません。
Q(両候補へ)
今後の支持率についてのお考えをお願いします。
玉木候補:
来年の通常国会が終わった頃には、立憲民主党の支持率を上回ってると思っています。皆さん笑うかもしれませんけど、色々なトレンド分析をしていると、そういう可能性もある。次の代表任期の2025年までのその間の責任を負うということなので、その次の任期の終わり頃にはですね、今、支援いただいている4つの民間産別が安心して、我が党で擁立しても大丈夫だと思ってもらえるような党勢・支持率にすることが最優先です。
そのためには、まずしっかり総支部長立てていくことと、常日頃から全国で旗を立てて活動していくことです。
前原候補:
党を大きくしていく、支持率を高めていくことはお互いが目指しているところです。 ただ、やはり大変だなと思うのは1人1人の総支部長のサポートです。
そういう意味でも、立憲と維新とも調整が不可欠で、どれだけできるかはまさに交渉力にかかります。や一緒に政権を担おうという呼びかけのもとで、信頼関係を持って、ある程度の選挙区調整・枠組み作りっていうのはやっていかないと、私は総支部長候補がなかなか出てこないんじゃないかという気がしますね。
玉木候補:
そのときに問題なのが、立憲民主党さんの先に日本共産党さんがいることです。政権を担おうという自負があるから、憲法、安全保障、そして原発を始めとしたエネルギー政策は現実的にやらないといけない。
私は、原発ゼロを綱領に掲げている立憲に変わっていただかなくてはと考えています。
前原候補:
我々のレゾンデートルである政策は大事です。2020年の8月に旧国民民主党の多くは、立憲民主党に行かれたんですね。そこからまた人を集めた原点はやっぱり政策です。政策を横に置いて数を増やすことには与しないという原点を絶対に忘れてはなりません。
憲法改正や原発の安全利用、日米同盟の堅持は必要だし、教育予算の倍増や、農業・エネルギーの自給率を高めることが政策目標です。そして、賃上げにも徹底的に我々はこだわってきました。政権を取ることを考える上でも、こうした価値観を共有できる方々に一緒にやりませんかと呼びかけていきます。
個別質問:党名変更は?単独党勢するなら?
Q(玉木候補へ)
党名変更について、現在はどうお考えですか。
玉木候補:
変更については賛否両論あります。決めうちではなくて、皆の意見を聞いて判断していきたいと思っています。
Q(前原候補へ)
仮に、単独で党勢拡大するとしたら方策はどう考えますか。
前原候補:
現職の全員当選と、総支部長できるだけ上乗せしていくことに力を入れたいと思いますね。
人生かけて総支部長になってくださった方々をどれだけ当選させられるかは代表としての責務です。誤解を恐れずに言うと、新たにこれから総支部長になってくださる方は「カカシ」でもいいという人を選んでいくしかないと思っています。国政選挙後の地方選挙を見据えた候補者擁立など、色々なことをしっかり話をしながら総支部長を選んでいきます。
討論会を終えて…選挙ドットコム編集長より
今回の国民民主党の代表選では、他のメディアでも多くの討論会が開催されていたため、選挙ドットコムの討論会は、政策よりも選挙に焦点を当てた議論を行いました。両候補には真摯にお答え頂きまして、心より感謝申し上げます。
●「五輪汚職と神宮外苑再開発」 田原総一朗と上杉隆が語る 8/30
政府が国策として推し進めている再エネ事業を巡って、収賄の容疑で自民党の秋本真利衆院議員が逮捕された。マイナンバー問題の対応で国民の不信感が募るなか、岸田政権にとっては大きな打撃となっている。だが、巨額の資金が動く国を挙げた大きなプロジェクトは、時に深い「闇」を生むのも事実だ――。
今回、五輪汚職と神宮外苑再開発の“接点”に光を当てた単行本『五輪カルテル』が話題のジャーナリスト・上杉隆氏と、政権の浮沈を見届けきたテレビジャーナリズムのパイオニア・田原総一朗氏が激論を交わした。
「五輪汚職と神宮外苑再開発」の意外な関係
田原 岸田内閣の支持率が下がっているね。マスコミ各社の世論調査でも前月よりさらに低下し、支持率は30%前後と、政権発足以来の最低水準まで落ちてしまった。
上杉 ただ、7月の広島サミットでは、G7首脳が揃っての原爆資料館の訪問を初めて実現させています。
田原 岸田総理は、世界で初めて原爆が投下された広島出身。「核兵器のない世界」の実現に向けて目に見える成果が期待されたが、むしろ「核抑止力」を認める姿勢を示した。「核廃絶」への試みは後退してしまったね。
上杉 岸田総理は外相だった2016年、伊勢志摩サミットで来日したオバマ大統領(当時)の広島原爆資料館訪問を実現させています。米国大統領の訪問は史上初で、一定の成果を挙げたものの、滞在はわずか10分。しかも、被爆の実相をテーマとする「本館」には足を踏み入れず、「東館」のロビーに立ち入っただけでした。
田原 広島サミットではどうだったか?
上杉 原爆を投下した米国はもちろん、核保有国である英・仏の首脳も「本館」の訪問を拒んでいた。そこで、岸田総理は「東館」に「本館」の展示物を秘かに持ち込んだのです。こうして、初めてG7首脳が揃っての原爆資料館訪問を実現し、彼らの瞼に原爆被害の実相を焼き付けることに成功した。
そのうえ、世界2位の核保有国・ロシアと戦っているウクライナのゼレンスキー大統領の対面参加も実現したのだから、見事な手腕です。あの時点で解散総選挙に打って出れば圧勝だったのに、なぜしなかったんですかね?
田原 自信があったんだろうね。当時は、マイナンバーを巡る不祥事がこれほどの大ごとになるとは思ってなかっただろうし。だが、今は違う。マイナンバー問題に加えて、「総理の右腕」と言われる木原誠二官房副長官周辺でもスキャンダルが出てきた。今、政権の課題は木原問題と河野太郎デジタル担当相の処遇……。だが意外にも、自民党幹部は河野を辞めさせないほうがいいと言う。河野がいなくなると総理に直に批判が集中するから、だそうだ(笑)。
上杉 河野さんは“弾除け”ですか(笑)。マイナンバーの問題はもちろん、今年に入って逮捕者が出始めた再エネ事業を巡る問題も、国を挙げて強引に推し進めたプロジェクト。大きな事業はとかくブラックボックス化しやすいが、政治を巻き込む構図は一連の五輪汚職も同じです。
――目下、『週刊文春』が一大キャンペーンを張って追及しているスキャンダルの渦中の人・木原官房副長官は、“永田町の政商”と呼ばれた矢島義也氏が率いる大樹総研にも繋がる。矢島氏は政界人脈をテコに官界に食い込み、大樹総研は再エネ関連の新興企業に政官への対策をコンサルティングして、莫大な利益を上げていた。
木原氏は、議員落選中に大樹総研に特別研究員に迎えられ禄(ろく)を食(は)んでおり、矢島氏との関係の深さが取り沙汰されている。2019年に秋元司前衆院議員が日本のIR参入を目指す中国企業・500ドットコムから賄賂を受け取った容疑で逮捕された件でも(一審で実刑判決。現在、控訴中)、500社は大樹総研の顧客だった。
さらに、国際政治学者・三浦瑠麗氏の夫・清志氏が逮捕されたメガソーラーを巡る横領事件でも、清志氏は矢島氏と関係が深いJCサービスから7億円の融資を受けた過去があり、大樹総研には東京地検特捜部の強制捜査が入っている。
今や再エネの推進は国策事業で巨額のカネが落ちているが、そこに生まれた利権の「闇」に有象無象が群がる構図は五輪汚職にも重なる。
田原 三浦瑠麗さんの夫は、原発推進派にやられたんだよ。
そうそう、上杉さんの書いた『五輪カルテル』を読みました。僕は1970年代、東京12チャンネル(現テレビ東京)の社員で、雑誌に『原子力戦争』という記事を連載していた(後に書籍化)。取材を進めると、原発推進派の運動のバックに電通がいることがわかる。
そのことを連載に書くと、会社(テレビ東京)から「連載をやめてくれ」「連載をやめないなら、会社を辞めてくれ」と言われた。おそらく、あらゆる方面から圧力がかかったんだろうね。テレビ東京はまだ小さな放送局だったので仕方がない。
上杉 それで田原さんはどうしたんですか?
田原 連載も会社も辞めなかった(笑)。それどころか、連載を原作にした映画までつくったんです(映画『原子力戦争』=1978年公開 監督/黒木和雄 主演/原田芳雄 製作・文化企画プロモーション/ATG)。すると、僕が所属する部署の局長が処分されると発表があり、会社を辞めざるを得なくなった。
退社してフリーになって数年後、朝日新聞から本を書いてくれと依頼があって、電通について書きたいと言ったんです。せっかく取材するのだから連載記事にしようということで、『週刊朝日』で連載することになり、1回目の原稿を出すと次の日、「全部書き直してくれ」と連絡が入った。たった1日しか経っていないから、本当のところはわからないが、どこかからストップがかかったのでしょう。
上杉 当時はそれほどのタブーだったんですね。でも、今はタブーというより、メディアの側が萎縮して、勝手に自主規制している側面のほうが強い。
田原 確かに。僕はそのとき、思い切って当時、電通の広報を取り仕切っていた小暮剛平さん(のちに同社社長、会長を経て相談役)に直談判しに行った。すると、なぜか小暮さんは僕のことを面白がってくれて、「今、電通は多くの問題を抱え、来たるべきマルチメディアへの対応など、今後進むべき道を迷っている」と言う。そして、こうしたことも含めて「自由に取材して、自由に書いてくれ!」と言ってくれたんだ。当時、こうしたタブーに斬り込む本はなかったから、連載をまとめた『電通』(朝日新聞。1981年)を出版するとベストセラーになった(笑)。
上杉さんもかなりギリギリのところまで書いているけど、大丈夫なの?
上杉 まぁ、担当編集がクビになるくらいでしょう(笑)。
五輪汚職の話をすれば、先ほど秋本衆院議員の逮捕の話が出ましたが、“バッジ”(国会議員)の逮捕を主導したのは、森本宏・東京地検特捜部長(当時)でした。その森本氏が次席検事に就任したタイミングで、一連の五輪汚職の捜査が始まったんです。
田原 汚職事件の中心人物・高橋治之元五輪組織委理事は逮捕され、当初は高橋を重用した森喜朗元五輪組織委会長の逮捕も噂されたが、現実には逮捕には至らなかった。
僕は、当初から検察は森さんを逮捕する気などなかった、と思っている。木原問題にしても、検察に圧力をかけて捜査を止めたなどと報じるメディアもあるが、そんな事実はない。検察が木原を恐れているだけだよ。
上杉 高橋元理事の逮捕は、最終的に森さんに辿り着くための捜査の“階段”だった。そもそも高橋氏の事件は、五輪スポンサー企業に選定する代わりに賄賂を受けた個人による単純な贈収賄事件。捜査は終了し、すでに司法の場に移っています。
でも、五輪テスト大会、本大会の運営事業の受注を巡る官製談合の捜査は、今もまだ続いる。事件の筋が悪いので逮捕まではいかないだろうといわれているが、やはり特捜の狙いは森元総理です。実際、森さんは少なくとも5回事情聴取を受けているし、側近は7回も東京地検に呼ばれている。
ただし、僕の取材では、森さんの逮捕まで事件が伸びる可能性はかなり低くなっています。逮捕があるとすれば、来年の2月まででしょうね。というのは、森本次席検事の任期が満了する予定だからです。森本氏のほかに総理経験者の逮捕まで視野に入れて動く人材は、今の検察には見当たりません。
田原 かつて検察は、その強大な権勢から“今太閤”と呼ばれた田中角栄元総理を、1976年のロッキード事件で逮捕している。いつから検察は力を失ったのか?
上杉 清和会(現安倍派)政権ができて以降、潮目は変わっていきます。まず2002年に小泉純一郎内閣が発足すると、党本部から総理官邸に権力が集中していきました。そして、安倍政権発足後の2014年に内閣人事局がつくられ、時の政権が官僚の人事権にも深く関与するようになる。「官邸官僚」と呼ばれる勢力が力を増したのもこの頃からで、これに歩を合わせるように、検察が政治家の不祥事に手を突っ込むことは減っていった。それは、東京五輪汚職が火を噴く2022年まで続きます。
田原 東京五輪招致に成功しながら、任期途中で失脚した猪瀬直樹元都知事(現在は参院議員)は著書『東京の敵』で、「自分は森喜朗元首相に失脚させられた」と明言している。
神宮外苑に巨大利権を生み落とした“錬金術”
――猪瀬元知事は当時、五輪開催都市のトップとして、組織委会長に民間からトヨタの張富士夫会長を招聘したかった。だが、医療法人「徳洲会」グループから借り入れた5000万円を政治資金収支報告書に記載していなかった資金提供問題で失脚している。猪瀬氏はこの問題について、都知事就任後、速やかに5000万円を返却しようとしたが、当時、徳洲会には公職選挙法違反で強制捜査が入っており、「今、来てもらっては困る」と拒まれ、返金できなかったとしている。
田原 徳洲会問題で足元をすくわれた猪瀬さんは、その後辞職に追い込まれた。そして、組織委会長に就いたのが森元総理だった。
上杉 当時、都議会では自公のなかに反猪瀬の動きがあり、特に公明党は参院議員宿舎の変更や、猪瀬都知事の独断専行に反発していた。五輪を巡っても、開催都市のトップが就くことはできない組織委会長に自ら収まろうとして、森元総理の逆鱗に触れたのです。
田原 トヨタの張会長を招聘する前は、上杉さんが言うように猪瀬さん自らが組織委会長に就こうとしていたという話もあったらしいね。
上杉 その後、資金提供問題が発覚したとき、都議会総務委員会で知事は吊し上げられます。議会では、カネを借りたときに使ったとされるものと同様の鞄が用意され、この鞄に現金5000万円を模した発泡スチロールを必死に詰め込もうとするが、なかなか入らず、汗だくになって苦しむ猪瀬都知事(当時)の姿が、ニュースで繰り返し流されました。
ただ、僕の得た情報では、この直前、都議会の公明党控室で鞄に現物の5000万円と同等の容量の発泡スチロールを用意してそれが入らないよう細工が施されていたといいます。このときのニュース映像が猪瀬氏の評判を落とすのに絶大な効果を挙げた。これが決定打となり、都知事辞任を余儀なくされます。
このときの議会の追及は苛烈を極め、後に猪瀬氏はこれを法律によらず私的に断罪する「人民裁判」だったと批判しているほどです。
田原 仮に森元総理が逮捕されれば、1976年のロッキード事件の田中角栄元総理以来となる総理経験者の逮捕になる。森さんの逮捕があるとすれば、どういうケースだろう。
上杉 東京五輪の汚職は2030年冬季五輪の札幌招致に影を落としています。「これ以上捜査を続けると招致活動に悪影響を及ぼす」と懸念する声も内部にあり、検察は一枚岩ではなくなってしまった……。
ただ一方で、「ここまで捜査したからには、森を捕(と)らないと世論の批判は避けられない」という声もあります。つまり、森元総理の逮捕は世論の後押しが条件になる。ところが、官製談合をメディアは報じない。ロッキード事件のときは、メディアは朝から晩まで繰り返し報じたが、現在、五輪の大会運営を巡る官製談合を報じるメディアはほとんどない。ロッキード事件では田中角栄元総理が受け取った賄賂は5億円。これに対して、官製談合の受注額は少なくとも200億円を上回る。しかも、これらの原資は公金です。
戦後有数の一大疑獄事件といっても過言ではないにもかかわらず、メディアが沈黙するのは、テレビや新聞、雑誌社までが五輪スポンサーに名を連ね、メディア自身が「五輪カルテル」に加わっているからです。
田原 特に、許認可事業のテレビは政府の中にいるようなもので、カルテルの最たるものと言っていい。動かないだろうね。それでも、僕はそうした縛りの中で、権力とどこまでケンカできるかが面白いと思うんだ。
上杉 現在、神宮外苑の再開発に伴い3000本の樹木が伐採の危機に瀕していますが、実は、この再開発は五輪招致を契機に動き出したのです。
明治神宮は100年前に明治天皇・皇后を崇敬するために、全国の有志によって造営され、日本中から選りすぐった樹木が植樹された。つまり、再開発によっていま樹齢100年を超える巨木を含む木々が伐採されようとしている。
都市の緑は非常に大事であり、一度伐ってしまったら、その姿は永遠に失われてしまうでしょう。だから、米国人実業家のロシェル・カップ氏や作家の村上春樹氏、作曲家の故・坂本龍一氏などがこぞって反対の声上げたわけです。ところが、保守から反対の声が聞こえてこない。明治天皇を崇敬する外苑の樹木伐採には、本来、保守が真っ先に反対して然るべきでしょう。
田原 日本の保守は米国との戦争に敗れて以降、本来の姿から完全に捻じれて親米保守と化した。一方で、リベラルが反米となり、こちらも捻じれている。今の日本の保守は現状肯定だから、対米従属にも何ら疑問を抱かない。現状肯定のはずの保守が外苑再開発に反対しないのは、一方で経済成長を重視しているからです。
上杉 保守を自認していた故・石原慎太郎元東京都知事は、2016年の五輪招致に際して、外苑には手を着けようとしなかった。実際、IOC(国際オリンピック委員会)に提出した「招致立候補ファイル」でも、メインスタジアムは臨海地区の晴海に新設する構想で、神宮外苑に巨大な新国立競技場を建てる考えはなかったのです。
田原 石原さんの思い描いた東京五輪とは、どんなものだったのだろう。
上杉 1度目の五輪が「世界クラブへのデビュー」だったのに対して、2度目の五輪は「アジアの都市のリーダーとして、成熟を訴える」と考えていました。だから、石原の五輪は、レガシーを活用して総予算4500億円に抑えるコンパクトなものだったのです。
ところが、石原都知事の後を継いだ猪瀬直樹、舛添要一、そして小池百合子と都知事が変わっていくにつれて、石原さんの思い描いた五輪は大きく姿を変えていった。招致に立候補したとき7340億円と見積もった大会経費は、最終的には3兆7000億円に膨れ上がり、石原の五輪はまったく異なる姿になっていた……なぜなのか? そんな疑問が本を書こうと思った出発点でした。
田原 石原さんとは彼が国会議員の頃、ある月刊誌の対談で大ゲンカをしたことがある。彼は「今の日本は対米従属で、自立した国家にならなければいけない。そのためには、憲法を改正し軍隊を持つべきだ」と主張した。
僕は「アンタの言っていることは正論だ。でも、日米同盟を辞めろとは言わないじゃないか! それで、あんたの主張する自主憲法制定なんてできっこない!」「自前で軍隊を持てば、防衛費は3、4倍にも膨らむ。アンタの話はリアリティがない!」と言ったら、石原さんは答えられなかった。
上杉 そんなことを正面切って言うジャーナリストなんて、田原さんくらいしかいませんよ(苦笑)。石原さん、相当、怒ったんじゃないですか?
田原 ところが、対談記事が載った雑誌が発売されて1週間後、石原の秘書から電話がかかってきて『あの対談を後援会の冊子に転載してもいいか』と申し出てきたんだ(笑)。なんと、あの大ゲンカの記事を石原が面白がっている、という。
彼は意見が違う人間を否定せず、耳を傾けていた。その懐の深さに驚きました。それ以来、彼とはとても仲よくなった。当時、自民党にはハト派と呼ばれる政治家がいたが、彼らは石原さんを怖がって付き合いなんてない。
すると石原さんが『ハト派の連中が何を考えているかさっぱりわからない。田原さん、俺に紹介してよ』と言ってきた。それで、加藤紘一、羽田孜、小渕恵三あたりを紹介したんだ。だけど、3人とも石原さんにやられっ放し(笑)。僕はハト派を全面的に応援したけど。
上杉 話を神宮外苑再開発に戻せば、そもそも外苑は日本初の風致地区に指定され、高さ15mなど厳しい建築制限が課されていました。
田原 ところが、その神宮外苑に高さ200mに迫る三井不動産や伊藤忠の超高層ビルが建とうとしている。
上杉 外苑の大地主である明治神宮は100年先までの安定した運営を目指して、財政の立て直しを図っています。ただ、最大の収入源の神宮球場は老朽化し、建て直すにも莫大なカネがかかる。そこで、球場の上空を利用する権利「空中権」を売却して建設費を調達したのです。一方、「空中権」を買った側は超高層ビルの建設が可能になった。
超一等地の外苑の空中権は総額1000億円超ともいわれる。まさに“現代の錬金術”で、これに明治神宮と三井不動産の思惑が一致した。そして、都が建築規制を大幅緩和した結果、巨大利権が生み出されました。実は、こうした「絵」は五輪招致が決定する1年以上前に、森元総理と都庁幹部によって描かれていたのです――。
東京五輪は外苑再開発のために招致されたのか? 神宮の杜の静けさが、再開発を巡る喧噪にかき消されようとしている。
●岸田文雄氏、政治リーダーの資質 8/30
異様な言葉
ついに「処理汚染水」の海洋放出が始まった。
政府のやり方はとても無責任だと思う。
政府と東京電力はこれまで「地元関係者の理解を得ないで、いかなる処分も行わない」と言ってきた。これは、政府が国民と交わした「重大な約束」である。どんなことがあっても、それを反故にしてはいけない。約束と信頼とは、政治におけるもっとも大切な事柄である。だが、岸田首相は、あっさりとその約束を踏みにじった。
岸田首相は「処理汚染水の海洋放出」について、次のように言っていた(TBS「報道特集」8月26日)。
「約束は、現時点では果たされていないが、破られたとは考えていない、こうした声をいただきました…。」
さすがにぼくも、この発言にはぶっ飛んだ。こんな言葉が、日本国のリーダーの口から出てくるは思いもしなかった。ほとんど日本語としても成立していない。無内容な官僚が書いた文章を、いつも抑揚もなく読むだけの岸田首相だが、それにしたって、これはひどい、ひどすぎる。
責任を取りたくないためか、「…こうした声をいただきました…」と、他人に下駄を預けている。腹が立つより、呆れてしまう。
また、同じ「報道特集」では、西村康稔経産相の言葉も紹介していた。
「今の段階では、約束を、私の立場で申し上げれば、果たし終わったわけではなくて、守り続けている状況…」
なんじゃ、これ? アホらしくてコメントする気にもならないが、「どうしても放出したいのなら、せめて“約束を果たし終わってから”にすればいいじゃないか」と突っ込まれたら、西村さんはどう答えるつもりなのだろう?
これらが、悲しいかなこの国のリーダーの言葉なのである。
政治的リーダーとは、国家運営の責任を持ち、国民をきちんと納得させながら、様々な施策を行っていくものと、ぼくは理解しているのだが、こんな言葉を発する人をリーダーと認めることができようか。
もうひとつ呆れたのが、野村哲郎農林水産大臣である。この人も一応は大臣なのだから、日本のリーダーのひとりには違いないのだが、あまりのいい加減さに声も出ない。
処理汚染水の放出に抗議しての中国の日本産水産物の禁輸措置に対して、8月25日の記者会見で「たいへん驚いた。まったく想定していなかった」と、あっけらかんと述べてしまったのだ。
しかしこれは、野村農水相だけのことだろうか。岸田内閣の右往左往ぶりを見ていると、政府自体がこれほどの中国側の態度硬化を予測できていなかったように見える。つまり、政府が政治的リーダーシップを失っていたのではないか。
福島、沖縄の地で
岸田首相のリーダーシップを疑わざるを得ない言動は、様々な場面で頻出する。最近の例では、福島を訪れた際のことだ。
アメリカから帰国してすぐのことだから、疲れていたというのは理解できる。しかし、20日にせっかく福島を訪れながら、東電幹部らと面会し、汚染除去装置ALPSの視察などをしただけで東京へトンボ返りしてしまった。
多分、この福島行ではもっとも大切であったはずの「地元漁業者たちと面会して意見を聞く」ということはせずに、そっけなく帰京した。ぼくはほとほと、この人の酷薄さ、薄情さ、冷酷さを感じたのだ。
もっとも困っている人たちには会わず、意見も聞かず、ただ「行ってきました」という行為だけのパフォ−マンス。そこに人間の体温は感じられない。現地の漁業者たちが「首相、誠意ない」(毎日新聞21日)と怒るのも当然だろう。
同じことを沖縄でもやっている。
8月25日、岸田首相は沖縄を訪問した。そこでやったことといえば、まず沖縄で開催中のバスケットボールW杯の試合観戦。翌26日には、焼失後の復元工事中の首里城を視察。そして、観光業者たちとの車座集会…。
別にそれらのことに文句を言うつもりはない。だが、せっかく那覇市まで脚を運びながら、なぜ玉城デニー沖縄県知事とは会おうともしなかったのか。なぜ安保関連の場所を訪れなかったのか。沖縄で最大の政治的焦点になっている辺野古基地工事現場を、せめて上空からヘリで視察するくらいのことを、なぜしなかったのか。那覇からヘリを飛ばせば15分足らずで辺野古上空に到達する。
時間がなかった、などとは言わせない。最初から、岸田首相には、そんな気は毛頭なかったのだ。
それにしても、ぼくは岸田首相という人はつくづく「愚かな宰相」だと思う。せっかく政治の焦点である場所を訪れながら、かえって批判を浴びるような行動をする。
どんなに批判を受けようが、福島へ行ったら現地の漁業者の意見を聞けばいいし、沖縄へ行ったら主張が対立する玉城知事に会って、意見を交わせばいいと思う。岸田首相の得意のセリフ「聴く力」を、たとえパフォーマンスでもいいから、なぜ演じて見せようとしないのか。不思議だ。
いかに無内容でも、せめて「やってる感」を国民に見せるために行動するくらいの演技力は、政治家として必要なのではないか。
岸田首相の懐刀と言われているのが木原誠二官房副長官であることは、ジャーナリストたちの一致した見方である。しかし、例の「文春砲」の直撃を受けて、さすがの知恵袋も空っぽになってしまったのか。
政治的演出家としては、木原氏はもはや失格である。
無責任体質
マイナンバーカードに至っては、岸田首相のリーダーシップは無きに等しい。
ひたすら突っ走るだけの河野太郎デジタル相にすべてを押し付け、岸田首相は「総点検を命じた」などと言うだけ。これだけの疑問が続出し、医療現場や自治体窓口からの悲鳴が届いているにもかかわらず「総点検を命じた」だけで、どんな対策をとるのかには触れない。
毎日新聞(8月28日夕刊)「特集ワイド」で、経済学者の金子勝さんが、こんなふうに怒っていた。
・・・ 「本質はヒューマンエラーではなく、国内産業の衰退 / 深刻、マイナ敗戦 / 無責任国家のなれの果て
(略)金子さんはミスの件数よりも、ヒューマンエラーを強調する岸田政権の姿勢に対して怒り心頭だ。それは、人為的なミスを防げないマイナカードのシステムそのものを問題視するからだ。金子さんはこの問題をクレジットカードに置き換えて説明する。
「例えば、インターネットで買い物してカード決済する場合、番号や名前の入力を間違えたらエラーが出ますよね。一方、間違えてもそのまま登録できてしまうマイナカードって、システム自体に問題があるとは思いませんか? なのに岸田政権はトラブルの責任を入力した自治体職員やカード利用者に押しつけています」(略)
「マイナ問題で誰か辞めた人はいましたか? 首相や河野太郎デジタル相、富士通の社長もトップのままです。混乱を招いたと謝罪はしますが、誰も責任を取りたくないから失敗を認めないのです」(略)
「自らの失敗を認めることになるので、岸田さんは保険証廃止の撤回は絶対しないと思う。批判をかわそうと資格確認書をどんどん発行し、ほとぼりが冷めるのを待つのでしょう。結果的に、日本のデジタル化はますます遅れるのです」(略)
「マイナ問題は、この国の無責任体質のなれの果てです。図らずも、それが浮き彫りになったということです」 (葛西大博)」 ・・・
金子さんの言うように、この国の無責任体質は、来るところまで来た感がある。それをもっとも象徴しているのが、岸田文雄首相なのだろう。
この国のリーダーの資質が問われている。
朝貢外交
まるで何をやっているのかわけの分からない岸田首相だが、その彼がただひとつ躍起になるのは、バイデン米大統領への朝貢外交である。
国民には何も知らせずに、「新型迎撃ミサイルの日米共同開発」などを、唐突に決めてきてしまう。これは迎撃困難といわれる「極超音速兵器」への対処能力を向上させようというもの。一歩ずつ、アメリカの対中強硬政策に組み込まれていく。
その見返りなのかどうかは定かではないが、バイデン氏は「日本の『処理水放出』は科学的であり、米国としては納得している」とお墨付きを与えた。
さらに、政府与党は「殺傷可能兵器の輸出」を認める方向で動き出した。ここにも岸田氏の意向が見える。
日本がともかくも守ってきた「武器輸出3原則」を根底から否定するものであるにもかかわらず、あっさりと、これもお得意の「閣議決定」で済ましてしまうのか。ますます危ない場所へ脚を踏み入れていく。
この人は、ずうーっと東の彼方を見てばかりいるようだ。
おーい、自分の国のことも考えてくれよう…と心の内で呟いてみる。
●急速に悪化する内閣支持率、政治日程から読む内閣改造と解散時期 8/30
・岸田政権の内閣支持率が急低下している。内閣支持率と与党第1党の政党支持率を足し合わせた、いわゆる「青木率」も危険水域と目される50%を割り込んだ。
・「年内解散は困難」との見方が広がっているが、年内解散の可能性が消えたわけではなく、解散時期は1年内、2来年秋の自民党総裁選まで、3自民党総裁選後の3パターンが考えられる。
・年内解散を目指す場合のシナリオとして考えられるのは、内閣改造・党役員人事におけるサプライズ演出であり、財政健全化の先送り、ないしは拡張的な財政政策であろう。
5月をピークに急速に悪化する内閣支持率
内閣支持率は2023年に入り回復方向にあったが、5月頃をピークに急速に低下している。NHK世論調査によれば、昨年11月に33%まで低下した内閣支持率は今年5月に46%まで上昇したが、8月に再び33%まで低下した。この間の不支持率は46%→31%→45%と推移している。
昨年後半の支持率低下は、旧統一教会を巡る問題が主因とみられる。今年前半の支持率上昇は、旧統一教会を巡る問題への世論の関心が薄れる中、マスク着用基準緩和やコロナ「5類」移行などウィズコロナが進展したことが背景だろう。
足元の支持率低下については、原因としてマイナンバー問題がよく指摘されるが、保守層の離反や一部議員の不祥事など複合的な要因が影響しているとみられる。
支持率から不支持率を差し引いたスプレッドは今年8月に12%ptまでマイナス幅が拡大した。菅政権末期の2021年8月に記録した23%ptにはまだ距離があるものの、岸田政権下で最悪となった昨年11月の13%ptや、安倍政権末期の2020年8月に記録した13%ptに近づいている。
危険水域に近づく「青木率」って何?
内閣支持率と与党第1党の政党支持率を足し合わせた、いわゆる「青木率」も落ち込んでいる。青木率は今年5月に82.5%まで持ち直したが、8月には67.1%まで下落した。岸田政権下では昨年11月につけた70.1%を下回って最低水準を更新だ。
菅政権末期の2021年8月に記録した62.4%を上回っているものの、安倍政権末期の2020年8月に記録した69.5%を下回っている。政権運営が不安定化しつつあることを示唆する。
なお、8月の時事通信調査では、「青木率」が危険水域と目される50%を割り込んだことが永田町界隈で注目を集めた模様だ。
もっとも、内閣支持率が昨年11月並みに低下し、「青木率」も昨年11月を下回っているにもかかわらず、政治情勢には当時ほどの切迫感がない。
昨年終盤は、旧統一教会を巡る問題への関心が高まり、早期に内閣総辞職に追い込まれるとの観測もあった。足元では、支持率低下を受けて、主要各紙から「年内解散困難」との観測が相次いでいるが、内閣総辞職に至るとの観測は特段みられない。
支持率が急速に低下している割には、自民党内で「岸田おろし」を画策するような動きも特段みられない。
その背景としては、主に3つが考えられる。
第1に、菅政権末期と異なり、自民党総裁選や衆院任期満了まで時間的な猶予があるため、差し迫って選挙の「顔」を選ぶ必要がない。
第2に、最大派閥である安倍派が、会長を選出することができない状況であり、政局を仕掛ける余裕がない。
第3に、来年秋の自民党総裁選に向けて、有力な対抗馬を欠いている。
8月に実施された産経・FNN調査や共同通信調査、JNN調査では、いずれも石破元幹事長が「ポスト岸田」の首位となったほか、河野デジタル相や小泉元環境相の人気も高い。
だが、石破元幹事長や小泉元環境相は党内の国会議員の支持に広がりを欠く。河野デジタル相もマイナンバー問題の矢面に立っている。逆に、主要各紙が有力候補として取り上げる茂木幹事長や林外相、高市経済安保相は、世論調査における支持率が相対的に低い。
解散時期で考えられる3パターン
今年6月に岸田首相が早期解散見送りを表明した頃に比べて、内閣支持率は低迷している。主要各紙から「年内解散困難」との観測が相次いでいるほか、与党幹部からも早期解散に慎重な意見が出始めている。
岸田首相に近いと目される、自民党の遠藤総務会長は8月22日に衆院解散について「慌てる必要はない」と言及した。また、公明党は元々今年秋の解散に前向きだったとみられるが、8月23日に石井幹事長は「岸田首相も決断しにくい状況になっている」との見方を示した。
支持率動向を踏まえれば、年内解散の可能性は遠のいたとみて良いだろう。ただ、年内解散の可能性が消失したわけではない。
では、衆院解散・総選挙の時期はいつになるであろうか。大まかに分けると、1年内、2来年秋の自民党総裁選まで、3自民党総裁選後の3パターンが考えられる。
1年内:秋の臨時国会冒頭(10月下旬頃)のほか、窮屈な日程になるが、臨時国会終盤(12月頃)が解散時期の候補として挙げられる。
自民党と公明党の関係が修復されつつあり、野党の選挙協力が進まないうちに解散に打って出るという可能性は残されている。何よりも、岸田首相にとっては、来年の自民党総裁選前に支持率低迷で解散が封じられる事態を防ぐため、なるべく早期の解散を模索する動きが続くだろう。
ただ、既述の通り、足元の支持率動向から考えれば、年内解散は難しくなっている。解散に踏み切る場合は、支持率を好転させ得る何らかの大きな材料が必要になる。
2来年秋の自民党総裁選まで:来年の通常国会冒頭(1月中)、2024年度当初予算成立後(3〜4月頃)、通常国会終盤(6〜7月頃)が候補として挙げられる。
仮に支持率が好転するタイミングがあれば、岸田首相は解散に踏み切ることになろう。だが、支持率が低迷ないしは一段と低下する場合、解散を打ちたくても打てない状況に追い込まれ、「岸田おろし」の動きが生じるリスクが高まる。
3自民党総裁選後:解散が自民党総裁選後に後ずれするケースは2通りある。
まず、岸田首相が解散に踏み切らずとも総裁選を乗り切った後に、頃合いをみて解散に踏み切るケースが考えられる。ただ、その場合は、繰り返しになるが支持率動向次第で「岸田おろし」のリスクを背負うことになる。
もう1つは、岸田首相が総裁選で敗れるなど退陣して、新首相が早期解散に踏み切るケースが考えられる。
「攻め」か「守り」か、内閣改造の姿勢で見える解散時期
歴代の首相がそうであったように、岸田首相は政権の長期化を狙っている。その際、年内を含めてなるべく早期の解散を目指す可能性と、解散に踏み切らずとも総裁選を乗り切ることを目指す可能性の両方が考えられる。
岸田首相がどちらを志向しているかを見極める上では、内閣改造・自民党役員人事がヒントになる。
早期解散を志向するのであれば、サプライズ人事を狙うだろう。
過去をみれば、小泉政権が2003年9月の自民党役員人事で、当時の安倍官房副長官を幹事長に抜擢した結果、主要各紙調査で内閣支持率が10〜20%ポイントほど急上昇したという例がある。
ただ、よほどのサプライズ人事でなければ、支持率上昇のカンフル剤としては機能しづらい。
内閣改造・党役員人事の最大の注目点は「ポスト岸田」候補の処遇であろう。
主要各紙では、茂木幹事長や林外相、河野デジタル相、高市経済安保相の4氏が有力候補として取り上げられる。最大派閥の安倍派では、萩生田政調会長が候補として取り沙汰される。また西村経産相は、岸田首相が出馬しなければ、という条件付きで名乗りをあげている。
これら「ポスト岸田」候補は、大臣もしくは党3役を現在務めているが、引き続き留任もしくは横滑りにより政権幹部にとどまるか否かが注目される。
基本的には、大臣や党3役は現職の総理・総裁に反旗を翻して総裁選に出馬しづらい。「ポスト岸田」候補が軒並み政権幹部にとどまるようであれば、解散を打たないまま、岸田首相が総裁選の無投票再選を目指すというシナリオもみえてくる。
その場合は、支持率次第で「岸田おろし」が生じ、内閣総辞職や総裁選出馬断念を迫られるリスクを背負うことになる。
まとめれば、内閣改造・党役員人事が、サプライズを演出して早期解散に向けた「攻めの姿勢」になるのか、それとも「ポスト岸田」候補を政権幹部にとどめる「守りの姿勢」になるのか注目される。
当面の政治日程から読む内閣改造の時期
なお、9月中は岸田首相の外遊が相次ぐため、内閣改造の日程は絞られる。9月11〜13日が有力視されているが、14〜15日に岸田派の夏季研修会が設定されたため、副大臣や政務官人事も含めて3日間で一気に決める必要が出てきた。
日程が窮屈になるため、8月10日付の時事通信や8月11日付の産経新聞は、内閣改造が9月最終週へ後ずれする可能性を報じている。9月最終週の場合、産経新聞によれば、臨時国会召集は10月後半にずれこむ模様だ。
9月最終週の内閣改造の場合、政治日程が窮屈になるため、年内解散の可能性が一段と低くなるという見方につながりやすい。確かに、衆参補欠選挙が予定されている10月22日に合わせて総選挙に踏み切る可能性はなくなるだろう。ただ、年内解散が必ずしも不可能となるわけではない。
早期解散を目指す場合のシナリオ
仮に岸田首相が年内を含めた早期解散を目指す場合、支持率を好転させるための何らかの大きな材料が必要になる。
その一つは、内閣改造・党役員人事におけるサプライズ演出であり、もう1つは財政健全化の先送り、ないしは拡張的な財政政策であろう。
年末に向けての補正予算編成や当初予算編成、税制改正議論において、財政健全化が進むか否か、以下4つのポイントが注目される。
1補正予算で30兆円前後の計上が続いている経済対策の規模を縮小させるか否か
2当初予算で5兆円の計上が続いている予備費の規模を縮小させるか否か
3防衛増税の時期を決定するか否か
4少子化対策の財源を手当するか否か
【早期解散の場合】
岸田首相が早期解散を志向する場合、これら4つのポイントの多く、もしくはすべてが先送りとなりそうだ。
まず注目されるのは、補正予算編成であろう。
岸田政権は、8月末までにガソリン補助金の延長を取りまとめた後、9月中に電気代・都市ガス代の負担軽減策の延長を取りまとめる見込みだが、その9月の経済対策が大型になると、8月23日付の読売新聞と時事通信が報じている。30兆円に近い規模が打ち出されるか否かが注目される。
補正予算編成の後は、税制改正議論が注目される。
振り返れば、安倍元首相は2度にわたって消費増税延期を打ち出し、国政選挙を乗り切ってきた。岸田首相も、この例に倣う可能性があるのではないか。かつて防衛増税の信を問うため解散との観測が出ていたが、むしろ防衛増税「延期」の信を問うて解散に踏み切る可能性が考えられる。
解散先送りの場合のシナリオ
【解散先送りの場合】
岸田首相が解散に踏み切らずに総裁選を乗り切ることを志向する場合、早期解散ケースに比べれば財政健全化にある程度配慮したポリシーミックスとなろう。
例えば、補正予算の規模は縮小へ向かう可能性がある。ただ、物価高騰が続く中、かつ税収増が続く中では、増税に対して慎重化すると見込まれる。
増税に距離を置くスタンスは既に表面化しつつある。
6月末に政府税調が中期答申「わが国税制の現状と課題−令和時代の構造変化と税制のあり方−」を取りまとめた際、巷間では「サラリーマン増税」との受け止めが広がった。
対して岸田首相は、7月25日に自民党の宮沢税調会長と面会したが、宮沢氏は異例にも首相とのやり取りを披露し、岸田首相が増税を全く考えていないことを強調した。
いずれにせよ、支持率低下により、岸田政権では財政健全化が進みづらくなり、むしろ拡張的な財政政策が採られ得る状況となっている。当初は財政健全化に前向きと目された岸田政権だが、「黄金の3年」を活かせそうにない。 

 

●なぜ「政権交代」は響かない言葉になったのか…枝野幸男 8/29
岸田文雄内閣の支持率が低迷している。だが、野党第1党である立憲民主党の支持率も伸びていない。なぜ立憲は世論の受け皿になっていないのか。2017年に立憲を結党し、21年まで代表を務めた衆院議員の枝野幸男氏(59)に、ジャーナリストの尾中香尚里さんが聞いた――。
「枝野幸男」と「菅直人」は体質が違う
今年で政治家生活30周年を迎えました。ついこの間、初当選したばかりのような気がします。「あっという間だったな」という印象です。
30年間の仕事の中で、政治家としての今の私を形作ったのは、新人議員時代に取り組んだ薬害エイズ問題です。あの時は「自社さ」の橋本政権で、私はさきがけ所属の与党議員でした。(危険な非加熱製剤を多くの血友病患者に投与し、HIVに感染させてしまった)製薬会社や厚生省(現厚生労働省)の追及はもちろんでしたが、被害者の皆さんのニーズに応えてどう現実を動かすか、という仕事に、1年生議員として取り組みました。
「言う(問題を追及する)だけでは済まされない」仕事です。それを、あれほど国民の注目を集めた大きな仕事でいきなりやらせてもらえたことが、その後(の政治家人生)に大きく影響していると思います。
私は30年間、良くも悪くも「与党体質」です。野党にいる時も「どうしたら結果を動かせるか」ということを、強く意識していました。
薬害エイズ問題に一緒に取り組んだ菅直人さん(当時厚相、現立憲民主党最高顧問)は市民運動から政界に入り、キャリアを重ねたところで結果を出しましたが、私は初めから「運動」「要求」という世界とは違う生まれ育ちをしてきました。ここが菅さんとの決定的な違いだと思いますが、それは私の利点であり、弱点でもあります。政治は権力闘争の側面もあるので、もっと野党的に割り切れた方が楽なことは多いかもしれないですね。
2021年に立憲代表を退いた2つの理由
2017年に立憲民主党を結党し、衆院選を経ていきなり野党第1党となりました。代表として2021年の衆院選を戦いましたが、議席を減らし、代表を辞任しました。
辞任の理由は2つあります。
「枝野個人商店」からの脱却が必要だった
ひとつは、立憲民主党は野党第1党、つまり「公器」になりました。「公器」としての役割を果たすためには「枝野個人商店」と呼ばれる状況から脱しなければいけない、と考えたのです。結党してから私がずっと代表を続けていれば、そういう揶揄(やゆ)から逃げられません。どこかで一度は私が引いて、他の人が代表を務める必要があります。いいタイミングだと思いました。
もうひとつは、2017年に立憲民主党が、希望の党騒動という経緯のなかでバタバタと結党され、さらに「1度の選挙で最大野党になる」という想定外のことが起きてしまったため、私自身いろいろな「準備」が整っていませんでした。というより、それまでの「準備」では足りなくなったのです。
準備とは「首相になる準備」のことです。私は、立憲民主党の結党直前にあった民進党代表選(2017年9月)に立候補しているので、その時点で首相になる準備自体はできているつもりでした。でも、立憲民主党という新しい「器」を政権政党に育てるための準備と、私自身のさらなるインプットが必要だと考えました。
それは結党の時から訴えてきた「草の根民主主義」であり「ボトムアップの政治」の実践です。草の根の皆さんの声に耳を傾けることを、代表の仕事と両立させるのには限界がありました。
サイレントマジョリティーの声を聴く
代表を辞めた後、この2年近くの時間は、そのインプットの部分にかなりエネルギーを注いできました。非常に有意義な時間を過ごせたと思っています。
常に意識していたのは「サイレントマジョリティーの声に耳を傾ける」ことです。
代表をやっていると「ノイジーな意見」はたくさん聞けます。非常に声の大きい、特定の意見が、どうしても耳に入りやすいのです。
でも、政治に対して積極的に声を上げられない人たちがいます。政治と、自分の抱えている問題が、つながっていることに気づいていないのです。そういう人たちの声をいかに感じるか、ということを、一貫して意識してきました。
例えば地方の視察で、質疑応答の時間があります。代表時代もゼロではありませんでしたが、ものすごく慌ただしい。今なら30分とか1時間とか、長い時間が取れます。
大事なことは、実際に意見を言ったり、質問したりする人たちだけではありません。それ以上に大切なのは「その人たちの意見や質問を聞いている人たちがどんな反応をしているのか」を見ることです。そこにサイレントマジョリティーの声があると思います。
そんな中で感じたことは、3つあります。
「政権交代」だけではもはや国民には響かない
1つは、多くの国民は今の政治を肯定していないこと。国会では自民、公明の与党が圧倒的多数だし、また日本維新の会に勢いがあると言われていますが、ほとんどの人はそんな政治に納得していない。みんな現状にいら立ち、諦めてしまっています。
2つ目は、「政権交代」という言葉はなかなか響かない、ということ。あれは2009年(民主党政権の誕生)で終わったのです。
「自民党政権はダメだから、政権交代しよう」ということで、2009年に民主党政権が誕生しました。でも、民主党が期待に応えきれなかったのは間違いありません。
今は永田町以上に、国民の方が「ただ政権が変わればいい、というものではない」ことを、よくわかっています。だから「政権交代」だけを掲げても、全く反応しません。
では求めているのは何か。それが3つ目に感じたことなのですが、国民が不満を抱いている本質は、目の前の一つひとつの政策課題についてではない、ということです。
例えば今だったら「紙の保険証の廃止に反対」という声があります。でも、単にそのことに対応すればそれでいいのか、というと、そうではありません。国民は、保険証問題に象徴される社会構造にいら立っているのです。だから、個別のテーマに振り回されても、国民のニーズに応えたことにはなりません。
国民が求めているのは各論ではなくビジョン
もちろん保険証廃止のような個別のテーマもやらなければいけませんが、単発の問題に一つひとつパッチワークのように対応するだけでは、国民の期待は集まりません。「この国全体をどうしてくれるのか」という問いに、自民党は答えていないし、われわれも答えを伝えきれていません。だから国民は自民党に不満を抱いているし、一方でわれわれがいくら「政権交代」を叫んでも反応しません。
国民が求めているのは各論ではなく、理念であり、ビジョンなのです。
私は立憲民主党の結党以来、理念やビジョンを語ることの大切さを強く訴えてきました。2年前の2021年には『枝野ビジョン 支え合う日本』(文春新書)という著書も発表しました。でも、それらは私が期待したほどには伝わっていませんでした。発信の仕方に問題があったのです。
理念を訴えることを、もっと徹底しなければいけなかった。それが、代表を辞めた後の2年間の実感であり、反省点です。
「私たちは何者なのか」ということ、つまり党のアイデンティティー、理念やビジョンを、もっともっと繰り返し強く発信しないといけません。
こういうことは既存のメディアではなかなか取り上げられません。報道は「新しいこと」を追うのが仕事なので、同じことを繰り返し言っても、ニュースにはならないのです。
それでも、例えばテレビのニュースで発言が15秒くらいで切り取られる時、そこで使われやすいフレーズを、普段から繰り返し使っていかなければいけませんでした。
われわれがこれまで掲げてきた理念そのものが間違っていたとは思いません。伝える手段、伝える能力、伝える意欲に問題があったと考えています。
党名にも掲げた「立憲主義」とは何か
そもそもわが党は、党名こそが理念そのものです。立憲民主党。党の綱領も「立憲主義」という言葉から始まります。ものすごく分かりやすい。
ただ「立憲主義」という言葉には多くの意味が含まれているし、国民の間にも十分に知られた言葉ではありません。「立憲主義とは護憲のことだ」と勘違いしている人もいます。「われわれの基本理念は立憲主義」と言うだけでは足りないのです。
では、立憲主義とは何か。それは「個人の尊厳」と「健康で文化的な生活」の2点です。日本国憲法の13条と25条です。
われわれは一人ひとり、他人に迷惑をかけない限り自由であり、自らの価値観に基づいて生きられる。この憲法13条こそが日本国憲法の基礎です。さらに、政治が国民に対して、健康で文化的な生活を保障しなければならない。これを明記したのが25条です。生活保護や教育の無償化など、国民の生活を下支えすることに政府が責任を持つという考え方は、この条文から出ています。
全ての国民は個人として尊重され、健康で文化的な生活を営む権利を持っている。このことを実現することがわれわれ、立憲民主党の存在意義であり、理念です。
自民党は憲法改正を主張していますが、つまり今の憲法の「価値」を変えたいんだと思います。現行憲法がうたう「個人の尊重」という理念は、自民党のそれとは明確に違う。自民党が目指す個々の政策を見ても、個人よりも家族、家族よりも企業、そして何よりも優先されるのが国家です。
立憲民主党は「国家を構成しているのは個人なのだから、個人を大事にしなければ、国を大事にすることにはならない」という考えに立ちます。自民党とは明確に価値観が違うと思います。
いかにして「まっとうな未来」をつくるか
こうした理念に基づき、どんな社会を目指すのかというビジョンですが、やはり、われわれが結党当時から訴えている「まっとうな政治」という言葉に行きつくと思います。でも「まっとうな政治」は、目指すべき社会をつくるための前提条件に過ぎません。
われわれが目指すのは「まっとうな政治」を行うことで「まっとうな社会」と「まっとうな経済」を取り戻すこと。「まっとうな社会」「まっとうな経済」「まっとうな政治」の三つによって「まっとうな未来」をつくることです。
では「まっとうな社会」とはどういう社会なのか。それが「支え合う社会」です。ここで言う「支え合い」は「あなたと私が個人で支え合う」こととは違う。「政治の力で公共サービスを充実させ、社会全体で互いに支え合う」ことです。
「まっとうな経済」とは、安心を生み消費を活性化させる経済です。富の再分配によって公共サービスの担い手を支えることで、国民一人ひとりが安心して暮らすことができ、結果として消費を生み出し、お金を循環させることができます。「まっとうな社会」と「まっとうな経済」がつながるのです。
そして、公共サービスを充実させるには、政治に対する信頼を取り戻すことが欠かせません。今は国政も地方政治も、議会によるチェック機能が働かなくなり、お金の流れが見えなくなっています。政策決定のプロセスを透明化して、議会のチェック機能を回復させることで、公正で信頼できる「まっとうな政治」を取り戻さなければなりません。
「まっとうな政治」がベースになければ、富を再分配するために今大きく稼いでいる国民から税金をいただくことはできませんからね。
●なぜ日本は子育て世代にダメージのある政策ばかり講じてきたのか… 8/29
晩婚化、非婚化は多くの先進国で見られる共通の現象だ。その中でなぜ日本では最速のスピードで少子高齢化が進むのか。元国税調査官の大村大次郎さんは「日本は子育て世代にダメージのある政策ばかりを講じてきた。教育費は上がり、消費税の負担が重くなり、非正規社員が激増している。児童手当だけでは全く足りない」という――。
日本の少子化は人災か
ご存じのように現在、日本は深刻な少子化問題を抱えている。
出生率は先進国では最悪のレベルであり、世界最悪のスピードで高齢化社会を迎えつつある。
この少子化については、「日本人のライフスタイルが変わったから」と考えている人も多い。確かに、ライフスタイルの変化によって晩婚化、非婚化が進んだという面もある。
しかし、晩婚化、非婚化は、女子教育の進んだ先進国ではどこにでも見られる現象である。日本が先進国の中で最も少子化が進んでいる理由にはならない。
よく知られているが日本が他の先進国と比して著しく少子化が進んだのは、「政治の無策」という面も大きいのである。
日本では半世紀近く前から、「このままでは少子高齢化社会になる」ということがわかっていながら、有効な対策を講じてこなかった。
子育て世代にダメージのある政策ばかり講じた
半世紀前、日本よりもはるかに深刻な少子化に陥っていたヨーロッパ諸国は、この50年間、さまざまな子育て対策を行い、現在、出生率は持ち直しつつある。
しかし、日本はむしろ子育て世代に最もダメージのある政策ばかりを講じたのである。たとえば、国立大学の授業料はこの50年間に、15倍にも高騰している。また平成元(1989)年に導入され、たびたび税率が上げられてきた消費税は、子育て世代に最もダメージが大きい税金である。国はこの50年間、子育てがしにくくなるような政策ばかりを講じてきたのである。
現在、政府は「次元の異なる少子化対策」に力を入れようとしているが、まだ全然、問題解決にはなっていないレベルである。
半世紀前は、父親一人が働いていれば、多くの家庭で子ども2人くらいは育てることができた。しかし、現在は、夫婦共働きであっても、子ども1人を育てるので精いっぱいという家庭が多い。
日本はいったいなぜそういう国になったのか? 
日本はどうすれば少子化問題が解消できるのか? 
子育てや教育に関する国際データをもとに検証していきたい。
日本の衰退は免れない
ご存じのように昨今、日本は急激な少子高齢化に見舞われている。
このまま進めば、どれほど企業が頑張ったところで、日本の衰退は免れない。その事実は、どんな楽観論者も否定できないはずだ。
そして、少子高齢化というのは、いま何も手を打たなければ、必ず進んでいく。つまり、いま何も手を打たなければ、日本は必ず衰退するのだ。
南海トラフ地震のような大災害は、もしかしたら、この数十年のうちには起きないかもしれない、もしかしたら100年くらい起きないかもしれない。
しかし、少子高齢化は、地震のような不確定な要素はまったくない。このままいけば、必ず避けられないものなのである。
厚生労働省の発表では、2022年の出生数は80万人を割りこみ77万747人だった。出生数が80万人を下回るのは1899(明治32)年の統計開始以来、初めてのことである。1970年代には200万人を超えていたこともあったので、この落ち込み方はすさまじい。
わざわざ少子高齢化を招いたとしか言いようがない
先ほど触れたように、日本人のライフスタイルが変わったことは、晩婚化や少子化の一因となった。が、これほど急激な少子高齢化が起きたのは、政治の失策が大きな原因となっているのだ。
というより、ここ20〜30年の政治は、わざわざ少子高齢化を招いているとしか言いようがないほど、お粗末なものなのであった。
実は少子化という現象は、日本だけのものではなかった。
「女性の高学歴化が進んだ社会は少子化になる」ということは、かなり前から欧米のデータで明らかになっていた。
そして、欧米では、日本よりもかなり早くから少子高齢化の傾向が見られていた。日本の少子化は1970年代後半から始まったが、欧米ではそのときにはすでにかなり深刻な少子化となっていた。
そして1970年から75年くらいまでは、欧米のほうが日本よりも出生率は低かった。つまり、40年以上前から少子高齢化は、先進国共通の悩みだったのだ。
が、その後の40年の歩みが、日本と欧米ではまったく違うのである。
ほかの先進国は少子化対策にお金をかけた
この40年間、欧米諸国は子育て環境を整えることなどで、少子化の進行を食い止めてきた。
図表1は、先進主要国における家族関係社会支出のGDP比である。これを見ると、日本はヨーロッパ主要国に比べて、かなり低いことがわかるはずだ。ヨーロッパ主要国は少子化を食い止めるために政府がそれなりにお金と労力をかけているのだ。
欧米諸国のほとんどは、1970年代の出生率のレベルを維持してきた。だから、日本ほど深刻な状況にはなっていない。
1974年の時点で、日本の合計特殊出生率はまだ2を少し上回っていた。
フランスは日本より若干高いくらいだったが、イギリスもアメリカもドイツも日本より低く、すでに出生率が2を下回っていたのだ。
しかし、フランス、イギリス、アメリカは、大きく出生率が下がることはなく、2017年は出生率は2近くになっている(図表2)。
一方、日本は70年代から急激に出生率が下がり続け、現在は1.4を切っている(2020年時点で1.33)。もちろん、出生率が2に近いのと、1.4以下とでは、少子高齢化のスピードがまったく違ってくる。
なぜ先進国の間でこれほどの差がついたかというと、日本はこの40年間に、子育てを支援するどころか、わざわざ少子高齢化を招き寄せるような失政を犯してきたからである。
30代前半の非正規男性で結婚しているのは2割のみ
少子化問題は経済問題でもある。
データを見る限りでは、現在の少子化を招いた原因として、経済も非常に大きい要素を占めている。
男性の場合、正社員(30〜34歳)の既婚率は約60%だが、非正規社員の既婚率は約20%である(「令和4年版 少子化社会対策白書」)。
非正規社員の男性のうち、結婚している人が2割しかいないということは、事実上、非正規社員の男性は結婚が困難、ということである。
これは何を意味するか? 
ジェンダーをめぐる認識が急速に変化しているとはいえ、男性はやはりある程度の安定した収入がなくては結婚できない、という考え方は根強い。だから派遣社員などでは、なかなか結婚できないのである。
つまり、「派遣社員が増えれば増えるだけ、未婚男性が増え少子化も加速する」ということである。
男性の非正規雇用が激増している
そして、日本では近年、男性の非正規雇用が急激に増加している。
図表3は、パートタイム労働者のうち男性に絞って主要先進国と比較したものである。これを見ると日本の男性のパートタイム労働者はこの15年で激増しているのがわかる。
もちろん、パートタイム労働者だけではなく、非正規雇用に枠を広げると、その人数は非常に多くなる。
現在、日本では働く人の約4割が非正規雇用である。その中で男性は、700万人近くもいる。20年前よりも倍増したのだ。つまり、結婚できない男性がこの20年間で300万人以上も増加したようなものである。
現在の日本は、世界に例を見ないようなスピードで少子高齢化が進んでいる。このままでは、日本が衰退していくのは目に見えている。どんなに経済成長をしたって、子どもの数が減っていけば、国力が減退するのは避けられない。
いまの日本にとって、経済成長よりもなによりも、少子高齢化を防がなければならないはずだ。
「非正規雇用が増えれば、結婚できない若者が増え、少子高齢化が加速する」
これは、理論的にも当然のことであり、データにもはっきり表れていることである。
なのに、なぜ政治家や官僚はまったく何の手も打たなかったのか、不思議でならない。
なぜ日本の非正規雇用者数が近年激増したかというと、政界と財界がそれを推進したからである。
バブル崩壊後、財界は「雇用の流動化」と称して、非正規雇用を増やす方針を打ち出した。たとえば1995年、日経連(現在の経団連の前身団体の一つ)は「新時代の“日本的経営”」として、「不景気を乗り切るために雇用の流動化」を提唱した。
こんなことを30年も続けたら国家が破綻しかかって当然
「雇用の流動化」というと聞こえはいいが、要は「いつでも首を切れて、賃金も安い非正規社員を増やせるような雇用ルールにして、人件費を抑制させてくれ」ということである。
これに対し政府は、財界の動きを抑えるどころか逆に後押しをした。
1999年には、労働者派遣法を改正した。それまで26業種に限定されていた派遣労働可能業種を、一部を除いて全面解禁したのだ。
さらに2004年にも、同法は改正され、1999年改正では除外となっていた製造業も解禁された。これで、ほとんどの産業で派遣労働が可能になった。
同法の改正が、非正規雇用を増やしたことは、データにもはっきり出ている。90年代半ばまでは20%程度だった非正規雇用の割合が、98年から急激に上昇し、現在では30%を大きく超えている。
また裁量労働制などの導入で、事実上のサービス残業を激増させたのである。
労働者の生活を極限まで切り詰めさせて、一部の大企業、富裕層の富を増大させてきたのがバブル崩壊後の日本である。こんなことを30年も続けていれば、国家が破綻しかかって当然である。
現在、岸田政権は、さすがにこのことに気づいて労働環境の改善に取り組もうとはしている。しかし、日本衰退のスピードに比べると、あまりに遅すぎるというのが著者の気持ちである。
先進国最悪レベルの子どもの貧困
図表4は、OECD34カ国における子どもの相対的貧困率である。
相対的貧困率は、その国民の平均所得の半分以下しか収入を得ていない人たちの割合である。
この子どもの相対的貧困率は、日本がOECD34カ国中ワースト10に入っているのだ。
このデータは「相対的貧困率」とは言うものの、日本は現在、先進国の中で平均所得は低いほうである。そのため、この数値が高いということは「子どもの絶対的な貧困者の割合」もそれだけ多いと考えていいだろう。
ひとり親家庭に厳しい日本
図表5は、OECD33カ国における「一人親世帯」の子どもの相対的貧困率である。ご覧のように、このランキングでは日本はワースト1位なのである。
日本は子どもの相対的貧困率も低いが、それ以上に「一人親世帯」の相対的貧困率が低いのだ。
内閣府の令和3年度「子供の貧困の状況と子供の貧困対策の実施の状況」によると母子家庭の親の就業率は83.0%であり、父子家庭の親の就業率は87.8%となっている。
つまりは、ひとり親家庭のほとんどの親は、就業している。
しかし、ひとり親家庭の「正規雇用」の割合を見てみると、母子家庭50.7%、父子家庭71.4%となっている。ひとり親家庭の正規雇用率は著しく低い。
非正規雇用の増加が貧富の格差を招いたことは前述したが、子どもの貧困に関しても同様に、非正規雇用の増加が大きな影響を与えているのだ。
消費税が少子化問題を悪化させた
次に認識していただきたいのが、「消費税は子育て世代への負担が最も大きい」という事実である。
前述したように消費税は平成元(1989)年に導入され、この30年間にたびたび増税されてきた。少子高齢化が進んでいく時期とリンクしている。
消費税は、収入における消費割合が高い人ほど、負担率は大きくなる。
たとえば、収入の100%を消費に充てている人は、収入に対する消費税の負担割合は10%ということになる。
が、収入の20%しか消費していない人は、収入に対する消費税の負担割合は2%でいいという計算になる。
収入に対する消費割合が低い人は、高額所得者や投資家である。彼らは収入を全部消費せずに、貯蓄や投資に回す余裕があるからだ。こういう人たちは、収入に対する消費税負担割合は非常に低くなる。
では、収入における消費割合が高い人はどういう人かというと、所得が低い人や子育て世代ということになるのだ。
人生のうちで最も消費が大きい時期というのは、大半の人が「子どもを育てている時期」のはずだ。そういう人たちは、必然的に収入に対する消費割合は高くなる。
ということは、子育て世代や所得の低い人たちが、収入に対する消費税の負担割合が最も高いという現実があるのだ。
児童手当はまったく足りない
子育て世帯に対しては、「児童手当を支給しているので、負担は軽くなったはず」と主張する識者もいる。
しかし、この論はまったくの詭弁(きべん)である。
児童手当というのは、だいたい1人あたり月1万円、年にして12万円程度である。
その一方で、児童手当を受けている子どもは、税金の扶養控除が受けられない。
そのため、平均的な会社員で、だいたい5〜6万円の所得税増税となる。
それを差し引くと6〜7万円である。つまり、児童手当の実質的な支給額は、だいたい年間6〜7万円にすぎないのだ。
しかも、子育て世代には、消費税が重くのしかかる。
子ども1人にかかる養育費は、年間200万円くらいは必要である。食費やおやつ、洋服代、学用品などの必需品だけでも平均で200万円くらいにはなるだろう。
ちょっと遊びに行ったり、ちょっとした習い事などをすれば、すぐに200〜300万円になる。
子どもの養育費が200万円だとしても、負担する消費税額は概算で20万円である。
児童手当では、まったく足りないのだ。
つまり子育て世代にとって、児童手当よりも増税額のほうがはるかに大きいのである。
少子高齢化を食い止めるためには、子育てがしやすいように「支給」しなければならないはずなのに、むしろ「搾取」しているのである。
●「日本を信頼」が92%でトップ フィリピン、「最大の脅威」は中国 8/29
フィリピンの政治コンサルタント会社パブリカス・アジアは、フィリピン人の外国や地域連合に対する信頼度を調べた世論調査の結果を発表した。日本を「信頼する」と答えた人は92%でトップだった。一方、79%が中国を「最大の脅威」に挙げた。南シナ海で海洋進出を強める中国への不信感が浮き彫りとなった。
調査結果によると、日本を「とても信頼する」と答えた割合は55%で、設問で挙げられた計12の国・地域連合の中で単独トップ。「かなり信頼する」の割合を合わせた信頼度は92%に上り、フィリピンが加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)と並んで最も高かった。日本を「あまり信頼しない」は8%、「全く信頼しない」は1%にとどまり、フィリピン人の親日ぶりが表れている。
「とても信頼する」の割合ではASEANが45%、カナダが44%と続いた。歴史的に関係が深く、安全保障面でつながりを強める米国は39%と、韓国やオーストラリアと同等の高さだった。対照的に、中国は9%、ロシアが14%だった。
一方、「フィリピンにとって最大の脅威は」との問いには、79%が中国と答え、米国が9%、ロシアが6%と続いた。中国への警戒感は群を抜いており、南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)周辺での緊張の高まりが背景にあるとみられる。
外交政策についての質問では、南シナ海問題に対するマルコス政権の姿勢に6割以上が賛成を示した。マルコス政権は中国との経済関係は重視しつつ、南シナ海問題では中国への強硬な姿勢を貫き、米国との安全保障協力を強めている。
パブリカス・アジアは「中国に屈しないこと、領土問題の外交的解決を模索していることなどが支持されている」と説明した。
調査は米国の市場調査会社の協力を得て、フィリピン全国から無作為に抽出した1500人を対象に、3月2〜6日に実施した。結果は今月17日に公表した。
●総額2兆円!巨額のマイナンバー予算を懐に納める「巨大企業」の実名 8/29
一度走り出したら、立ち止まることも間違いを認めることもできず、破滅まで突き進む—。そんな日本の悪しき性が、また鎌首をもたげている。くり返される失敗の深層には、この国の宿痾があった。
保険証廃止は実現困難
〈該当する資格がありません〉
マイナンバーカードを端末にかざすと、そんなエラーが表示された。持ち主はパニックだ。
「どうなってるの? 保険適用じゃなくなるの?」
困惑する患者をなだめ、すぐさま役所に問い合わせる—大阪府の北原医院では、マイナンバーカードを保険証として使えるようにするシステムを導入した今春から、こんな光景がたびたびくり広げられている。同院の井上美佐院長が語る。
「エラーが出る原因は、大きく分けて2つ。マイナンバーカードに記されている名前の漢字や住所といった情報が、保険証にある登録内容と合致せずハネられてしまうケースと、結婚・離婚などで苗字が変わったり、勤務先が変わって社会保険から国民健康保険に切り替わったけれど、役所の側の情報更新が追いついていないケースです」
呆れたのは、地元の自治体に問い合わせた際、こう言われたことだ。
「役所で使っているパソコンが古くて、その患者さんの名前の漢字を正しく表示できない。申し訳ないが、今まで通り紙の保険証を持って来てもらってください」
岸田政権は来年'24年の秋をめどに「保険証の廃止」そして「マイナンバーカードへの完全移行」を強行しようとしている。だが、こんな体たらくではとうてい不可能だろう。井上氏が続ける。
「紙の保険証がなくなってマイナ保険証だけになれば、エラーが出た人が健康保険に加入しているかどうか、簡単にはわからなくなるでしょう。患者さんに『被保険者資格の確認がとれないので、とりあえず診療費を10割払ってください』なんて言ったら、揉めごとになるに決まっています」
国の無策に振り回されて
これまで「住民票をコンビニで発行できる」「マイナポイントがもらえる」という程度だったマイナンバーカードの使い道を、いきなり急拡大させる。そんな拙速な判断を政府が下したせいで、大混乱が起きていることはご存知の通りだ。
宮崎県では7月、県の職員が、障害者の持つ療育手帳のデータをマイナンバーと関連づける「紐付け」作業中に、パソコン上の個人情報を1行ズレた状態でコピーし、2336名の県民に別人のマイナンバーが関連づけられる事故が起きた。
このミスは、たった一人の職員が長時間作業にあたっていたために起きたと言われる。各地の役所も、同じような極限状況だ。千葉県の某中規模自治体の幹部が明かす。
「マイナンバー関連の作業はコロナワクチン接種と同様、国は指示するだけで、実務は自治体や関係機関に丸投げです。
日本人の名前や住所は表記がまちまちで、漢字・カナ・異体字が交じっているため、目視で書き写して何度も確認しないといけない。何万人分ものデータをくり返しチェックするわけですが、秘密を守るために、認証の済んだ少人数のスタッフが作業せざるを得ません」
目を血走らせながら、来る日も来る日も手作業で膨大なデータの入力・確認に明け暮れる—こうした現状は行政の現場でデスマーチ(死の行進)と言われている。
2兆円を費やす
自治体だけではない。マイナ保険証のトラブルは、約4000万人の健康保険のデータを管理する全国健康保険協会、通称「協会けんぽ」の内部でもデスマーチが常態化しているために起きているのだ。8月16日には、同協会の加入者40万人分の保険情報とマイナンバーが紐付けできていないことが判明した。保険証関連のエラーは、週に数千件にのぼる。
「制度の発足当初、保険証を完全にマイナンバーカードで代替するなんて計画はなかった。河野太郎デジタル大臣が去年の10月、ほとんど思いつきで言い出した話で、我々は国の行き当たりばったりに振り回される日々です」(前出・自治体幹部)
'16年の導入から7年が過ぎ、日本はいま「マイナンバー敗戦」に突き進んでいる。その恐るべき実態を見ていこう。
「健康保険、年金、運転免許、介護保険と、これまで日本では複数の『番号制度』がバラバラに運用されてきました。マイナンバーは当初、'03年から稼働している住民基本台帳ネットワークシステム、いわゆる『住基ネット』レベルの情報とだけ連携するという話でしたが、後付けで他の諸制度とも連携することになった。
マイナンバーを導入すれば、並立する制度を一つにスッキリまとめられるのではないかと思うかもしれませんが、実態は逆です。日本の公的システムは増改築を繰り返して巨大化した旅館のように、複雑怪奇な構造になりつつある」(ITジャーナリストの佃均氏)
これまでマイナンバーのシステム構築、ほかの行政サービスとの紐付け、カード発行・交付、マイナポイントをはじめとする普及促進策などの諸政策に費やされた予算は、2兆円を超える。
表沙汰になりにくい
中でも、巨額の費用が渡っているのが「5大ベンダー(=ITシステム開発会社)」と呼ばれる企業群だ。富士通、日立製作所、NTTデータ、NEC、日本IBMの5社で、日本の行政をシステム面から牛耳る存在である。神奈川県の某自治体の元首長が証言する。
「今春にも、マイナカードを使ってコンビニで住民票を発行したら他人のものが出てくるトラブルがありましたが、原因は富士通の子会社『富士通Japan』が開発したシステムの不備でした。
とりわけ富士通は日本の自治体に最も食い込んでいて、各地の役所のサーバー室の管理を請け負ったり、社員を送り込んだりして、自分たち以外は公共システムをいじれないようにする。機器やシステムを維持管理する利権さえ確保すれば、あとは安泰ですからね。この構造が非効率な仕事の温床になっている」
何十万人、何百万人もの個人情報を扱う行政のITシステムは、いわば巨大な「バーチャル書庫」のようなものだ。しかし、道路やホールのように目に見えるわけではないから、そこにムダと非効率、寡占・独占があっても批判されづらい。
国民の目が届かないところで、まるで平成期に談合で槍玉に上がった建設業界とそっくりな、「もたれ合い」の構造が温存されてきたのである。
●「誰得」なマイナンバー制度、政治家がゴリ押すウラにある「不幸な日本の未来」 8/29
一体、マイナンバーって誰が得するんだ? 国民はみんなそう思っているのに、「もう決まったことだから」と開き直るそぶりすら見せる政治家たち。その裏で、「現場」である役所や医療機関では大パニックが起こり、関与する大手企業は莫大なマネーを懐に収めている。<総額2兆円! 巨額のマイナンバー予算を懐に納める「巨大企業」の実名>に続いて、なぜこのような「怪物」が生み出されたのかを検証する。
必死にプラスイメージを作る
「ベンダーにとってマイナンバーのような巨大システムは、開発・維持・手直しと三重に業務が発生する美味しい仕事です。しかも、マイナンバー関連業務の入札は8割以上が随意契約や一者応札で企業間の競争がなく、発注先が大手ベンダーに偏っていることが判明しています」(ITジャーナリストの佃均氏)
前述した5社のうち富士通、日立、NTTデータ、NECの4社は自民党の政治資金団体「国民政治協会」に多額の献金を行ってもいる。終わりなき増改築と保守点検が求められるマイナンバーはまさに、彼らにとって夢のような「完成することのない大聖堂」であるといえる。
「本当は、マイナンバーカードもマイナポイントも、『便利そう』とか『トクしそう』というプラスイメージを作るための手段でしかありません。だって、マイナンバーの本質は『国民の背番号』なんですから」
ある財務官僚はこう声を潜める。驚くべき言い草だが、実はこれが政府と霞が関の本音である。
多くの国民が勘違いしていること―それは、「マイナンバーとマイナンバーカードは別物」という事実だ。マイナンバーカードを受け取らないことや返納することはできるが、マイナンバー付与を拒否することはできない。好む好まざるにかかわらず、すでに役所や税務署はマイナンバーを使って国民の納税状況や保険給付を把握・管理している。
もう後戻りはできない
「そもそも、マイナンバーは当初『社会保障・税番号』という名前で、国民のカネの動きを効率的に捕捉することを念頭に起案されました。推進してきた政治家には財務省と関係が深い人物が多く、民主党政権では大蔵省出身の古川元久元官房副長官らが、その後の第二次安倍政権では麻生太郎元財務大臣などがいます。
特に麻生氏は'19年、『将来的にはマイナンバーカードで買い物の決済をできるようにして、ポイントをつければいい』と発言している。レジのPOS(販売時点情報管理)システムのように、全国民の購買情報を把握して、架空経費計上や所得隠しを防ごうという構想が透けています」(経済ジャーナリストの磯山友幸氏)
巷では「マイナンバー制度の言い出しっぺは民主党政権だ」「いや安倍政権だ」という「起源論争」に明け暮れる人々もいるが、実際には'60年代から「国民番号制度」の議論は始まっていた。'80年には元大蔵官僚の総理・大平正芳氏が「納税者番号制度法案」を成立させてもいる(導入前に頓挫)。マイナンバーとは、半世紀にわたる財務省・霞が関の悲願がついに結実したものなのだ。
しかし、そんなお上の都合を国民が簡単に受け入れてくれるはずもない。そこで冒頭の官僚が言うように、捻り出されたのが「マイナンバーの書かれたカードを作れば、便利でトクしますよ」と喧伝する策だった。
カード製造やシステム構築が必要になるから、前章で触れたベンダーをはじめ、関係業界に予算を配って仕事と権益を生み出すこともでき、霞が関にとっては一石二鳥だ。デジタル庁を発足させた菅義偉前総理は、マイナンバーカードを「デジタル社会のパスポート」として流れを加速させた。
「ですが、日本では行政システムの縦割りが強すぎるうえ、それぞれのシステムとマイナンバー・マイナンバーカードをつなぐ仕組みの開発は、ベンダーの能力不足で困難だとわかった。官僚が余計な仕事を増やした結果、進むことも引くこともできない窮地に陥ってしまったのが現在の状況なのです」(磯山氏)
「敗戦」の失敗を繰り返す気か
現行の仕組みですら座礁しかけているにもかかわらず、政府は懲りることなく、'26年にアップデートを施した「次期マイナンバーカード」への移行を画策していることも付記しておこう。
かつての日本は役人や軍人の暴走で自滅の道をたどり、悲惨な敗戦を迎えた。今まさに、同じような失敗を犯そうとしているのかもしれない。
「国として、統一した個人認証システムを作ろうという方針自体は正しいと思います。しかし、問題はあまりにも設計が稚拙で、実際の運用方法も練られていないことです。
マイナカードには名前・住所・顔写真が印刷されていますが、落とせば即、個人情報がダダ漏れになる。付属のケースで目隠しするというのも奇妙な仕様だと思います。'13年のマイナンバー法成立時点で、すでにスマホは国民の3割台まで普及していたのですから、セキュリティ面を考えても、カードではなくスマホを中心にした仕組みを設計すべきだったのではないでしょうか」
こう指摘するのは、ソフトウェア開発会社「サイボウズ」社長の青野慶久氏だ。
世界の主要国には、日本よりはるか前に番号制度を導入した国が多い。アメリカやイギリス、フランスなど欧米諸国では1930〜'40年代に、韓国や台湾でも'60年代に制度が確立している。
こうした国々では日本と違って、すでに「生まれた時から自分の番号を持っている」国民が大部分を占めるため、番号制度自体の是非が問題になることはない。そして、個人情報は「漏れて当たり前」というのが常識だ。
個人情報がダダ漏れ
アメリカでは、マイナンバーにあたる「社会保障番号」とそこに紐づいた与信情報は長い間ダダ漏れ状態で、クレジットカードのなりすまし被害が多発している。'17年には大手信用情報会社がハッキングに遭い、国民の半数近い1億4000万人分のデータが盗まれた。
人口約5200万人の韓国にいたっては、過去に少なくとも1億3000万件の住民登録番号が漏洩している。全国民が平均3回近くも漏洩被害に遭っている計算だ。
情報セキュリティの専門家で、情報安全保障研究所首席研究員の山崎文明氏が言う。
「行政手続きがすべてオンラインで可能なデジタル先進国と言われるエストニアでさえ、'17年に国民の個人情報を特定するための秘密鍵(暗号通信を解読するための数字)が漏洩し、80万人分の個人カードを作り直す事態に見舞われました。
日本は番号制度の後発国なのですから、こうした先例を踏まえて、たとえばカードへの記載は顔写真と氏名にとどめ、本人識別のためのICチップだけを搭載するといった形にもできたはずです」
'18年には、日本年金機構がマイナンバーや年金番号を含む個人情報501万人分の入力作業を民間企業「SAY企画」に委託したところ、同社がデータを中国の業者に丸投げして大問題になった。第1章でも触れたように、マイナンバーと各種個人情報の紐付け作業はあまりに作業量が膨大なため、まだ向こう数年は終わらないはずだ。ただでさえ人為的ミスが多発する中、どんな思わぬルートから情報が漏れるかわからない。
政府の狙い
日本中を震え上がらせた「ルフィ強盗団」は、闇市場で出回る個人情報名簿をもとにターゲットを物色していたとされる。個人番号導入の「最後発国」である日本のマイナンバーは、犯罪者にとっては、いわば手付かずの宝の山だ。もはや国民にできるのは、腹を括ることだけである。
今年6月、デジタル庁が公表した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に関する資料には、こう書かれている。
〈2025年度 運転免許証とマイナンバーカードの一体化〉〈2026年度 介護保険証のペーパーレス化 全国実施〉
つまり、健康保険証の廃止は序章にすぎない。向こう数年の間に、さまざまな本人確認書類をマイナンバーカードに統合する。さらには、交通系ICカードやクレジットカードと同等の機能をも持たせ、支出や移動履歴、病歴などのあらゆる個人情報を集約する「究極のカード」をめざす―これはすでに、政府内では既定路線なのである。
しかし、保険証廃止だけでも国民の猛烈な反発を招き、内閣支持率は30%台前半まで急落した。運転免許証、介護保険証の廃止にまで手をつければ、与党が瀬戸際に追い込まれるのは確実だ。
なぜ政府は、これほどまでにマイナンバーとマイナカードの浸透・普及を急いでいるのか。
「本当の目的」として囁かれているものが二つある。まずは、すでに触れたカネの流れの把握、特に富裕層に対する資産課税である。エコノミストの田代秀敏氏が言う。
「いま富裕層の間では、『これほど政府がマイナンバーと資産などの情報の紐付けを急いでいるのは、日本が万が一、財政破綻をきたした時に備えているのではないか』という憶測が広がっています。財務省の官僚たちは国の財政破綻を本気で憂えていますから、『その日』が来たら富裕層の口座を封鎖し、資産に税を課して財源を調達するつもりなのではないか、と」
国の形が変わってしまう
そしてもうひとつは、古今東西、国民番号制度が裏に秘めてきた重大な目的―有事の備えだ。
韓国、エストニアなど番号制度の先進国と言われる国々には、冷戦構造下で周辺国と鋭く対立してきた歴史がある。こうした国では、国民に番号を付与することは反逆者やスパイを炙り出し、いざというときの動員をスムーズにするための仕組みでもあったのだ。
「これほどの混乱が生じても突き進む政府の様子には、どうしてもマイナンバーとマイナカードをすぐ定着させたいという思惑を感じます。それは、日本が明日をも知れぬ状況に陥った時の備えのためだ―と考えるのは、穿ち過ぎでしょうか」(田代氏)
われわれはもう、後戻りするには大きすぎるカネと労力をマイナンバーに費やしてしまった。いずれにせよこの先、日本はこれまでと全く異なる国になってしまうことだけは、間違いなさそうだ。 

 

●勢いづく日本維新の会 野党第一党を狙うが失速の懸念も 8/28
日本維新の会の勢いがとまらない。「全国政党化」を目論む中で脆弱だった東北での足場固めも進む。この秋にも衆院解散・総選挙があると囁かれているだけに、維新執行部は強気の言動を繰り返している。立憲民主党や共産党などの野党だけでなく、与党の自民、公明両党ともガチンコ対決≠フ構えだ。さながら現代版「大阪夏の陣」。秋まで勢いは続くのか、それとも失速してしまうのだろうか。
「第2自民党」で波紋
「地方議員が空白だった地域に議員が誕生することは国政選挙にとっても、もちろんプラスだ」
日本維新の会幹事長・藤田文武は8月2日の記者会見で、そう語った。7月30日に投開票された仙台市議選(定数55)で、擁立した新人5人の全員当選を果たした。支持基盤の弱い東北エリアでの躍進は次期衆院選での「全国政党化」実現に弾みになる。
藤田は記者会見で「地方議会はどこも古い体質で、様々なしがらみの中で政治力学が決まっている。それをぶち壊してくれるのは日本維新の会だと好感を持って受け入れられているのだろう。仙台のみならず、各地で感じる」とも強調した。
日本維新の会は昨年3月、政権奪取に向けた「中期経営計画」を発表している。2022年7月の参院選での議席倍増がホップ≠ナ、23年4月の統一地方選で地方議員600人以上を確保することがステップ≠ニ位置づけた。そして、次期衆院選での「野党第一党」をジャンプ≠ニする具体的な目標を掲げている。
ホップ、ステップはクリアしたため、次期衆院選が最大の焦点となる。ジャンプを勢いづかせるためにも「大阪から始まった維新の改革を全国に拡げていくためには地方組織の強化は必須課題」だった。
日本維新の会は現在、東北の衆院議員は21年10月の前回衆院選で復活当選した早坂敦しかおらず、事実上の「空白」エリアだった。今回の仙台市議選で躍進したことから、党執行部は今春の統一地方選の勢いを維持しているとみて、各地に頻繁に足を運び地方議員らとのコミュニケーションを重ねることで、地方組織を固めていく方針だ。
主要な報道機関の7月の世論調査で日本維新の会の政党支持率をみると、いずれも野党第一党の立憲民主党を上回っている。NHK=5.1%(立憲民主党5.1%)▽朝日新聞=7%(同4%)▽毎日新聞=16%(同9%)▽読売新聞=9%(同4%)―といった数字だ。
次期衆院選での比例代表の投票先を尋ねても同じ傾向となる。30%前後ある自民党には大きく引き離されているが、ホップ、ステップに続くジャンプ(野党第一党)もクリアできそうな流れが続いている。
代表の馬場伸幸は強気な言動を繰り返す。7月23日のインターネット番組では「第1自民党と第2自民党との改革合戦が政治を良くする。立憲民主党がいても日本は良くならない」と語った。共産党に対しても「日本から無くなったらいい政党。言っていることが世の中ではありえない」と切り捨てた。
これには立憲民主党代表の泉健太は「維新は党名を『第2自民党』に変えた方が分かりやすい」と反発。共産党委員長の志位和夫も「第2自民党では与党第2党になるだけだ」と批判し、「無くなったらいい」発言の撤回を求めた。
それでも馬場は、発言の真意を問われると「政治家として信念、理念を持って発言している」と語る。
自公とも全面対決
日本維新の会がターゲットとするのは野党だけではない。自民党と連立を組む公明党とも全面対決する構えをみせる。
これまで看板政策の「大阪都構想」を実現させるためには、住民投票に賛成してきた公明党は必要な存在だった。ただ、今春の統一地方選で日本維新の会が大阪府議会、大阪市議会ともに過半数を獲得したことで状況は一変。公明党への配慮から候補者擁立を見送ってきた衆院大阪3、5、6、16区と兵庫2、8区の関西6選挙区に候補者を立てることを決めた。
党内で議論を重ねた結果だとされるが、次期衆院選で野党第一党を奪取するには、全国に289ある小選挙区すべてに候補者を立てることが必要で、公明党との協力関係も「清算」することは避けられないと判断した。
昨年夏の参院選で、公明党は「比例で800万票獲得」という目標を掲げたものの「618万票」にとどまり、組織力にもかげりがみえることも決断を後押ししたという。
公明党は「いま維新は非常に勢いがあるから厳しい戦いになる。我々はいま政権与党にいるからこその政策実現力をしっかりと訴えて、勝利を期していきたい」(幹事長の石井啓一)など受けて立つ構えだが、勢いのある日本維新の会には警戒感が強まる一方だ。
公明党だけでなく、自民党も危機感を募らせている。先の衆院選では、大阪に19ある小選挙区のうち15を日本維新の会に確保され、「全敗」したからだ。残る4つは日本維新の会と住み分けをした公明党が獲得している。
このため、日本維新の会に圧倒される大阪を立て直そうと「大阪刷新本部」を立ち上げ、次期衆院選の候補者を公募で選び直すという異例の対応に出た。大阪を地盤とする元議員らからは不満、批判の声があがり、党本部に幹事長、茂木敏充を訪ねて直接抗議したが、公募の決定は覆らなかった。
茂木は8月2日、公募した10の小選挙区のうち、8つの小選挙区の立候補予定者を発表した。新人は会社員の大辻沙耶(11区)やヒット曲『無錫旅情』で知られる演歌歌手・尾形大作(18区)ら5人。3人は前回衆院選に立候補し落選した元職が再任された。
「人が変われば新しくなる面もあるが、人間ですからやはり自分が変わるということもあると思っている」。茂木は強調したが、狙ったようなイメージ刷新にはつながらず、日本維新の会にどこまで対抗できるかは不透明なままとなった。
日本維新の会は安倍晋三、菅義偉両政権とは蜜月関係にあったが、岸田文雄政権になると疎遠になっている。岸田政権は現在、マイナンバーカードのトラブル対応などで逆風にあり、性的少数者(LGBT)への理解増進法の対応を巡っても「岩盤保守層の自民党離れが進んでいる」(自民党中堅)とされる。日本維新の会が保守層の受け皿になる可能性が高く、今後、自民党との溝はさらに広がりそうだ。
失速の懸念材料も
ただ、日本維新の会にとって懸念材料がないわけではない。そこには自公連立政権との関係が影を落とす。
日本維新の会が主導してきた大阪・関西万博は、工事の遅れなどで25年4月からの開催が危ぶまれているのだ。万博には153カ国・地域が参加を表明しており、そのうち約56カ国・地域が独自に形状やデザインを設計・建設することを希望している。特色ある各国のパビリオンは万博の目玉となる。
ところが、建設業者が決まっているのは8月上旬の段階で6カ国にとどまっている。多くの国・地域は設計・建設の相談もない状況だという。建築資材や人件費の高騰が背景にあるとされるが、日本国際博覧会協会(万博協会)の準備不足のほか、政府と大阪府・市、参加各国との調整不足があることも否定できない。
そうなる状況を懸念した大阪府知事で日本維新の会共同代表の吉村洋文が首相・岸田に支援を要請したのは、開催まで2年を切った5月29日のことだった。岸田は「万博を成功させるために大阪府知事、大阪市長とともに一緒に頑張りましょう」と吉村に伝えた。
準備が加速するとみられたが、自民党内には「維新はあれだけ自分たちが誘致したとアピールしていたのだから、遅れたのは維新の責任だ」と冷ややかな見方があり、パビリオン建設が加速することはなかった。
もっとも、東京五輪・パラリンピックに続き、経済再生の「起爆剤」になるとされた万博も延期になれば、日本経済に与えるダメージは大きい。「政府には万博相もいる。最終的には国の事業なのだから国が主導しなければ、いずれ首相に矛先が向くことになる」との見方が広がった。
そのため、経済産業省は8月2日、建設資材の高騰などに伴う代金未払いなどのリスクを軽減する「万博貿易保険」を新たに設けることを決めた。参加国のパビリオン建設を受注した国内の会社を対象に、代金が支払われない場合などは政府が補償する仕組みだ。
さらに、経産省は前事務次官で現顧問の多田明弘を万博担当にする異例の人事に踏み切った。準備加速に向け建設業界などとの調整役を担う。局長級の幹部を専従で博覧会協会のサポートにあたらせることも決めた。
しかし、今も与党内には「ドバイ万博も1年遅れたのだから、大阪・関西万博も遅れる理由を丁寧に説明すれば理解を得られるのではないか」との声がくすぶる。そうなれば日本維新の会も逆風は避けられない。
強気の姿勢が逆に・・・
強気の姿勢も「もろ刃の剣」となっている。
これまで日本維新の会は、野党と与党の中間に位置する「ゆ党」とか、「自民党別動隊」などと揶揄されてきた。だからこそ、国会議員の定数削減や調査研究広報滞在費(旧文通費)見直しなど自民党との違いをアピールしてきた。そうした中での馬場による「第2自民党」発言は、国民にとって自ら第2自民党だと認めてしまったように映る。
しかも、安倍・菅政権からハト派とされる岸田政権になり、不満をもつ自民党支持層を引き付けようと、より保守色を打ち出すために安全保障政策や憲法改正などを前面に掲げれば、自民党の基本政策と重なってしまう。ジレンマを抱えるだけに、今後の対応によっては勢いが失速する可能性がある。
それでも日本維新の会は強気だ。政権奪取に向けた「中期経営計画」に沿って、あくまでも単独政権を目指す構えを崩していない。
馬場は8月6日に放送されたラジオ番組で、自公連立政権に参加する可能性について「選挙を経て自公両党で政権を維持できない場合、いろいろな余地が出てくる」と語り、次期衆院選で自公両党が過半数割れしたときは連立入りも排除しない考えを示した。自公政権を揺さぶる狙いがあったとされる。
次期衆院選で野党第一党の座を獲得し、永田町で影響力、発言力を強めることができるのか。日本維新の会は社会保障改革と税制改革、成長戦略を一体的に取り組む政権構想を掲げているが、「第2自民党」にならないためにも党として骨太の国家観を語るべきときにきている。 
●なぜ国民は声を上げない? 株や不動産など“日本の資産”が暴落する未来 8/28
私は日本の将来に対して強い危惧を抱いている。それは恐怖と言っても良いものだ。今後、高齢化がさらに進展するため、社会保障財政がひっ迫し、日本経済の生産性は低下する。そして対外収支も悪化する。だが政治家は目先のばらまき政策にしか関心がない。それでもなぜ、国民は声を上げないのか。
世界初の「超高齢化社会」で何が起きるのか?
日本はこれから超高齢化社会に突入する。それは、世界のどの国も経験したことがないものだ。医療や介護の需要が激増することは、目に見えている。また、年金財政の悪化も避けられない。
支給開始年齢が引き上げられる事態も十分あり得る。そうなれば、老後資金の準備が十分でないために、生活保護を申請する高齢者世帯が急増するだろう。こうした事態の対処が急務であるにもかかわらず、何の手当ても準備もなされていない。
高齢者が多くなれば、労働人口は増えない。そのため、日本経済の生産性は現在よりもさらに低下する。
医療や介護分野での人手不足は、ますます深刻化する。外国人に頼ろうとしても、日本の国際的な地位が低下してしまうので、人材を集めることもできない。それだけではなく、日本の若い人々が、高賃金を求めて海外に流出する。
2022年以降の急激な円安の中で、こうした動きはすでに現実化している。そのため、要介護状態になってもケアを受けられない高齢者が続出するだろう。
こうした状況の中で、不満が鬱積して凶悪事件が多発し、治安が悪化する危険もある。その兆候はすでに現れているのかもしれない。
日本が賞賛された時代は“夢”だったのか…?
一方で、こうした状態に対処するための技術が開発されている。デジタル技術の進展によって、リモート医療が可能になった。世界では、コロナ下でリモート医療に向けての大きな進展があった。しかし日本では、医師会の反対によって進展していない。
新しい技術への日本の不適応さは、医療だけでなく、他の分野でも著しい。世界経済が大きく発展する中で、日本は古い産業構造から脱却できず、国際的な地位が低下している。
さまざまな国際ランキングで、日本の位置は最下位から数えた方が早くなってしまった。かつて、「ジャパンアズナンバーワン」と賞賛された時代があったことなど、夢のようだ。
そして、状況は悪化の一途を辿っている。5月22日と6月5日の本欄で触れたように、2000年の沖縄サミット時にG7の中で最も豊かな国だった日本は、2023年の広島サミットでは最も貧しい国になった。
日本衰退の原因:政治家
日本の衰退を加速させる原因は、経済政策の誤りだ。私はこうした問題をこれまで多くの機会に指摘してきた。しかし、いくら指摘しても十分ではない。政治家は次の選挙のことしか頭になく、人々の目先の歓心を買うための政策しか行わない。
「産業政策」と称するものは、特定企業への補助金だ。そして、対象となる産業は衰退産業だ。こうした補助金によって産業が復活するはずはない。実際、2000年代になってから、製造業、特に半導体や液晶関連企業の救済のための補助策が増えたが、これらの産業が衰退する流れは変わらなかった。
一方、年金、医療、介護などの制度改革についての議論は、ほとんど行われていない。税制の根本的な見直しについても、そうだ。岸田内閣は、少子化対策と称して効果の疑わしい給付金を増加させようとしている。しかも、それに対する財源を準備しているわけではない。
政治家が特定の集団との利益関係に影響されるのは、やむを得ないことだ。しかし、それだけであっては、単なる利権ブローカーになってしまう。
戦後の日本の政治は、特定の集団の利害に大きく影響されてきたものの、長期的な視野に立っての政策も忘れられなかった。この10年間程度の大きな問題は、そうしたことがほとんど考慮されなくなってしまったことだ。
日本衰退の原因:日銀
日本の金利は日本銀行の低金利政策によって、非常に低い水準に抑えられている。それによって円安が進み、国内の物価が上昇して、国民生活が圧迫されている。それにもかかわらず、日本銀行は円安を放置している。
長く続いた低金利政策の結果、日本企業は低金利でないと生き延びられない状態になってしまった。そして、生産性が低下し、国際競争力を失った。
日本の異常な低金利は、政府の資料の中では、今後修正されることになっている。財政収支試算や公的年金の財政検証では、名目長期金利が中長期的に3%程度まで上昇することが想定されている。
しかし、それは資料の中だけのことであって、実際の金利が正常化される見通しは、立っていない。したがって、日本経済が低金利と低生産性の状態から脱却していくとは考えにくい。企業は存続のために、政府に補助金を求めることしか考えないだろう。
円・株・不動産など資産価格が「暴落」する未来
日本企業の生産性が低下するため、日本の対外収支は悪化していく。その兆候は、すでに現れている。日本の貿易収支は恒常的な赤字になる可能性が高い。それだけでなく、経常収支も赤字化する危険がある。そうなれば、対外資産の取り崩しを余儀なくされる。
こうした事態が将来に予測されれば、それが現実にならなくても、金融市場は反応してしまう。経常収支が赤字化するのは10年先のことかもしれないが、それを予測して、いま金融市場でキャピタルフライト(資本逃避)が生じてもおかしくない。しかも、一旦始まったキャピタルフライトが加速してしまうこともある。
すると、金利が急上昇し、株価も不動産価格も暴落する。要するに、日本国内のすべての資産価格が暴落する。円の価値も暴落する。
そうなったとき、どうすればよいのか? 個々の家庭の場合、蓄えがなくなって生活資金が尽きれば、生活保護を申請することができる。国も生き延びるために、IMF(国際通貨基金)に緊急融資を求めることができる。
これは、1990年代末のアジア通貨危機の中で、韓国が実際に行ったことだ。しかし、経済規模が大きい日本に対しては、IMFといえども十分な措置をすることができるかどうか、わからない。では、日本はどうやって生き延びればよいのか?
日本は“沈没しそうな”豪華客船
今の日本はたとえてみれば、かつて世界の七つの海にきらびやかさを示した豪華客船のようなものだ。あらゆるものが世界最先端だった。しかし、その後の修理が十分でなかったために、さまざまなところで損傷が著しい。
浸水が始まり、このままでは沈没することが目に見えている。本格的な修理が必要だと誰もが思っているが、そのことを口にしない。そして、見かけだけを取り繕って浸水の状況を見えなくし、やりくりしている。
船長の頭にあるのは、豪華なダンスパーティーで船客を満足させることだ。そうすれば、船長の地位は安泰だ。誰もがおかしいと思いながら、この状態をどうすることもできない。
経済復活に何が必要か? 国民は議論し声を上げよ
最も問題なのは、国民がこうした状態に対して声を上げないことだ。忙しい日常生活に追われ、国の問題には目を向けられないのか? しかし、声を上げることが必要だ。これまで述べた問題は日本全体の問題であり、国民1人ひとりの生活に直接影響するからだ。
高齢化が進む中での生産性回復は困難ではあるが、不可能ではない。ただ、自然には解決しない。それには、経済政策の大転換が必要だ。
選挙は国民の声を示す基本的な方法だが、それ以外にも意見を示す方法はある。私たちは、現在の日本の状況に対する意見を述べ、議論する機会を作るべきだ。
声を上げるにしても、「私にも補助金を」というのでは、事態を悪化させるばかりだ。まずは、日本衰退の原因をはっきりと把握する必要がある。すでに述べたように、経済政策の誤りが基本的な原因だと私は考えている。しかし、そうではないという意見もあるだろう。こうした問題について、徹底的な議論を行うことが必要だ。
●ガソリン価格高騰で瀕死の国民にムチを打ち続ける鬼の岸田政権…  8/28
岸田文雄首相の“社会主義化”が止まらない。小泉純一郎政権からの新自由主義的政策が「持てる者と持たざる者の格差と分断を生んだ」と主張する岸田首相は、主要政策として「新しい資本主義」を唱え、成長よりも分配に重きを置く。だが、その実態は取れるところから奪った果実を国が配るもので、想定される増税プランや社会保険料アップなどを見れば、飛び出す杭を打って「全国一律の金太郎飴」を作ろうとしているだけのように映る。
経済アナリストの佐藤健太氏は「岸田首相は大都市から財源を収奪し、『金太郎飴』をつくるために再分配しようとしている。やっていることは『新しい資本主義』ではなく、『新しい社会主義』そのものだ」と厳しい評価を下す。
経済成長を重視しない岸田政権に対して橋下徹「社会主義になってしまうのではないかと危機感」
岸田政権発足から2年近くが経過した。岸田氏は2021年9月の自民党総裁選時から分配政策の重要性を唱え、首相就任後初めての記者会見となった10月4日には「私が目指すのは、新しい資本主義の実現です」と強調。「成長だけで果実がしっかりと分配されなければ消費や需要は盛り上がらず、次の成長も望めません。分配なくして次の成長はなしです」と訴えた。
経済成長を重視する小泉政権や安倍晋三政権と比べて、分配をより重視するのは政策の転換だ。金融所得課税の強化などを打ち出し、成長を軽視するかのような岸田氏の姿勢に安倍元首相は懐疑的だったとされ、岸田氏にも直接・間接で苦言を呈してきたという。
近年の選挙で躍進を続ける日本維新の会の“創業者”である橋下徹元大阪市長も2021年12月5日のフジテレビ系番組で、岸田政権のスタンスを「どうも政治・行政が金を分配する話ばかりで、社会主義になってしまうのではないかという危機感を持っている」と指摘したことがある。分配を前面に打ち出すことには経済界にも不安の声が上がってきた。
木原誠二「成長も分配も」は本当か?法人税、所得税増税が迫っている
これに対して、首相最側近の木原誠二官房副長官は「『成長も分配も』だ。我々は企業がしっかり分配できるように、まず国がやり、法人税の減税をしながら企業に促していく。成長、規制改革もしっかりやる」と反論している。
だが、政権発足後の歩みを見ればどうだろう。首相は昨年末に防衛費大幅増に伴う増税プランを決めているが、その財源を賄うために法人税、所得税、タバコ税の3つの税目で増税などの措置をとることを決定している。
首相は自らが旗を振る「官製春闘」で、大手企業の賃上げ率が3.91%と30年ぶりの高水準となったことを誇る。たしかに、東京商工リサーチの「賃上げに関するアンケート調査」(2023年度)を見ても、賃上げは企業の84.8%が実施(予定含む)するなど機運は高まっている。
ガソリン小売価格は13週連続上昇。さらにそこに退職金課税見直しで国民を追い込む岸田政権
だが、その一方で2022年から続く物価上昇は国民生活を追い込んでいる。レギュラーガソリン小売価格は13週連続で上昇し、全国平均で1リットルあたり181.90円と高騰している。それにもかかわらず、政府は6月から石油元売り会社に対する補助金を段階的に縮小、原油高と円安が追い打ちをかける。さらに汗水流して長年勤め上げたサラリーマンの退職金にも課税見直しの動きがあることなどを見れば、取れるところから奪って国が全てを決めると言っているようにも映る。
そもそも資本主義国が「官製」の賃上げを実施しているのには違和感がある。「格差是正」と言えば聞こえが良いかもしれないが、機会の平等を整えるのではなく、結果の平等に重きを置いて国が追求していけば、それは社会主義でしかない。
驚かされるのは、海外には100億円、1000億円単位の資金拠出をスピード決定し、過去最高の税収を確保する一方で、その“果実”を減税策などで国民に還元するわけでもなく、「財源がない」という姿勢が目立つことだ。
岸田政権の社会主義化は総務省の動きからも見えてくる
8月12日付の毎日新聞朝刊1面トップには「分権は『出来レース』 総務省、OB使い『裏工作』」という記事が掲載された。中身を読むと、東京都などの大都市の税収を国が収奪し、他の自治体に再配分する「偏在是正」措置を強化するため、全国知事会が7月7日に開催する地方税財政常任委員会で議題にするよう総務省幹部が提言案を作成していたという。しかも、国と地方が「対等・協力関係」にある中、総務省が裏で「箸の上げ下げ」をしていると思われることを嫌い、総務省側は一部の県幹部に「知事会がやりたいテイで」と裏工作していた、と掲載されている。
同じような記事は「デイリー新潮」が7月14日に配信し、「AERAdot.」も8月19日に「全国知事会は総務省の『シナリオ通り』に」という記事を出している。もし、これらの報道が事実ならば岸田政権の“社会主義化”を象徴するようなものだろう。
2008年10月に創設された偏在是正措置は、大都市の法人事業税と法人住民税の一部を国が奪い、自治体間の税収格差をならすために再配分する仕組みだ。ただ、近年は全体の財政状況が改善し、格差そのものが縮小しているとされ、偏在是正措置を行う必要はなくなったとの指摘も根強い。
石原慎太郎「国は地方分権の流れに逆行したことをしている」
本来ならば、困窮する自治体側が「格差是正を」と求めるのだろうが、そうした声が上がらなかったことに偏在是正措置を実施したい総務省が困惑し、裏工作をしていたのならば茶番でしかない。ちなみに、過去に見られた偏在是正措置を振り返ると、当時の石原慎太郎都知事は国主導のシナリオをこのように糾弾していた。
2007年12月7日の記者会見で、石原都知事(当時)は「国は、自分自身は行財政改革を満足にも進めていませんな。そういう責任というものを履行せずに、それを棚に上げてね、相変わらず地方間の財政調整によって地方に責任を押しつけようとしている」と痛烈に批判している。その上で「東京都は、法人2税の見直しが地方税の原則に反する。地方自治体の税源涵養努力を無にするという、地方分権に逆行する極めて乱暴な、愚かしいものだということを主張してきた。東京は昼間(流入)人口が一番多いときは370万人。単一の地方自治体の中で一番人口の多い横浜市の人口に匹敵する訳ですよ。そういう人たちが東京にやってきて、そのためのライフライン、水や電気あるいはアクセスや治安も含めて、それを都の行政として賄っている訳だから。そういった非常に特異な東京の実情を全く斟酌せずに、東京は税収の量が一番多いから何とかしろというのは、とにかく言語道断」と説明した。
何もしない自治体であっても財源が「天」から降ってくることになる
そして「国の権限で一方的にこういうことを地方に押しつけて、何でもまかり通るというのはどういうことなのかね。国の権限でやるんだから黙ってついてこいということじゃないでしょう」と厳しく批判し、「地方自治の死を招きかねない」「子供の財布に親が手を突っ込むみたいな。親はもうちょっと働けという話だ」と語気を強めている。
こうした石原氏の主張は、今の岸田首相にも聞いてもらいたいものだ。自治体間の財源の偏在を調整するための地方交付税は何なのか。財源が足りないという国は行政改革や財政改革をどのようにやってきたのか。地方創生と言いながら、自治体はどれだけ創意工夫をしてきたのか。「子供の財布に親が手を突っ込む」状態が続いていれば、何もしない自治体であっても財源が「天」から降ってくることになり、分権改革なんて進むことはないだろう。
そもそも偏在是正措置の「目標」はどこにあるのかが分からない。全ての自治体が税財源を均一にすれば納得するのか。そんなことをすれば努力をしたところが損をする仕組みになる。「一緒に手を繋いでゴールしよう」というシステムは、日本国内だけで成立するものであり、世界の都市間競争から遅れをとるのは自明だ。
結局新しい資本主義は社会主義じゃないのか
謎なのは、東京選出の国会議員たちは何をしているのかという点である。自民党の宮沢洋一税調会長は与党が税制を決めるものだと繰り返しているが、毎日新聞などの報道を見れば総務官僚が全国知事会に関与している疑いがある。仮に事実であれば、選挙で民意を経ていない官僚が知事を中央からコントロールしていることになる。明らかに官僚としての「則」を超えている行為と言えるだろう。
自民党の萩生田光一政調会長は同党都連会長で、公明党の山口那津男代表も東京選挙区だ。行財政改革の重要性を掲げる維新の音喜多駿政調会長も東京選出である。臨時国会においては、名が上がる総務省幹部に事実関係を確認すべきだろう。
2021年10月の就任会見で岸田首相は「一人一人の国民の皆さんの声に寄り添い、そして多様な声を真摯に受け止め、形にする。こうした信頼と共感が得られる政治が必要です」と語った。首相は自らの内閣を「新時代を共に創る、共創内閣」とうたっていたが、そこに「競争」はない。目立つのは「結果の平等」という社会主義的なものばかりだ。地方の偏在是正措置は、いまだ見えない「新しい資本主義」が実態としては社会主義であることを感じさせるには十分と言える。
●経済アナリスト・森永氏が岸田政権を斬る!「日本は借金国家ではない!」 8/28
「今後の増税予定を知って、怒りを通り越して愕然としました。税金を多く払ったのに、庶民の暮らしは、さらに悪くなるんですね」(会社員=40代)
たとえば10月から始まるインボイス制度。これは請求書の書式に新しいルールを導入するものだが、売り上げが1000万円以下の小規模業者を倒産の危機に追いやる制度だと、現時点ですでに予想されている。
さらに同月には、酒税法も改正される。ビールの価格は下がるものの、発泡酒と新ジャンルの税金はアップするという。
「そもそもビールなんて、税率が下がっても手が届きません。今、飲んでる新ジャンルも2日に1回になりそうです」(自営業・50代)
現在検討中の増税を含めて、ゴーサインが出されたら、まさにお先真っ暗なのだ。
そんな中、獨協大学経済学部教授で、経済アナリストの森永卓郎氏が出した著書『ザイム真理教』がベストセラーとなっている。
「書名はSNSで話題となった言葉で、オウム真理教をもじったものです。ザイム=財務省がうたう緊縮財政、増税推進は、カルトの教義と同じくデタラメ。増税しなくても、日本経済は大丈夫だという、我ら庶民にとっては、溜飲が下がる内容です」(経済誌記者)
同書のデータを基に作成した、左の表『昭和と令和家計の比較』を見てほしい。消費税導入前の1988年より、2021年の「手取り額」は、384万円から366万円へと18万円も減っているのだ。しかも、物価上昇分は含まれていないという。財務省の言いなりに増税した結果、我々の暮らしは確実に苦しくなっているといえる。
実は日本は借金国家ではない
「財務省が金科玉条のごとく信奉する“均衡財政主義”という教義は、ざっくり言えば、国債などに頼らず、税金だけで予算をやりくりすることです。財務省は文字通り、国債を“国の借金”と捉えている。国債が増えれば、財政破綻を招き、ハイパーインフレや国債・為替の暴落が起きるというのが、彼らのよく使う脅し文句なんです」(前同)
詳細は、『ザイム真理教』を読んでもらうとして、簡単に言うと、現在、日本の債務残高(対GDP比・2022年)は米国の2倍以上とされる。国債の借金額だけだと987兆円、すべての借金の合計は1661兆円(20年度末の財務省資料)。国民一人あたりに直すと、1329万円強だ。
一方、日本の保有資産は1121兆円もあり、差し引くと、実際の国民一人当たりの借金は432万円ほど。財務省のうたう他の先進国に比べて、飛び抜けた借金国家ではないと、同書は指摘している。
国の借金など恐るるに足らず。著者の森永氏は『週刊大衆』の取材に、こう答える。
「20年度に、日本は年間80l兆円の基礎的財政収支の赤字を出しましたが、為替の暴落も、国債の暴落も、ハイパーインフレも起きませんでした。私は、年間100兆円程度の財政赤字を永久に出し続けても、大丈夫と考えています」
経済評論家の杉村富生氏が補足する。
「そもそも、自国通貨建ての借金で破綻した通貨発行権を持つ国などないんです」
一般の家庭や企業と、国家は分けて考えるべきなのだ。
●日米韓首脳会談で「海洋放出」を決めて中国に反発される岸田外交の稚拙〜 8/28
福島第一原発「ALPS処理水」の海洋放出について、政府や大手マスコミがいかに非科学的態度であるかは前回記事『海洋放出の是非を見極めるポイントは「処理水か、汚染水か」「濃度か、総量か」〜非科学的な大本営発表を慣れ流すマスコミ報道にウンザリ』で解説したが、今回はそれに続いて、岸田政権の政策のチグハグさを指摘したい。
岸田政権は海洋放出後、中国と香港が日本のからの水産物の全面禁輸に踏み切ったことに猛反発している。昨年の水産物の輸出総額は3873億円で、輸出先の1位は中国、2位が香港、3位が米国。中国と香港をあわせた輸出額は1626億円にのぼり、水産物輸出総額の42%を占める。日本の水産物業界にとって大打撃だ。
岸田首相は中国の禁輸措置に心外な様子をみせているが、外交ルートを通じて海洋放出に踏み切れば禁輸などの強行措置で対抗されることは十分に承知していたはずである(その感触さえつかんでいなかったとしたら外務省の大失態である)。
しかも岸田首相は解放放出決定に先駆けて米国を訪問して日韓首脳会談に臨み、米韓首脳には海洋放出について理解を得ていた。この背景には、米国主導で日米韓の連携を強化して「中露包囲網」を強化するバイデン政権の思惑が見えていた。
米中の覇権争いが強化するなかで、あえて日米韓首脳会談で「海洋放出」への理解を得る政治的パフォーマンスをした以上、中国が反発して対抗措置に踏み切ることは当然予想されたことである。
つまり、岸田政権は中国の全面禁輸措置による日本の水産業への大打撃を覚悟したうえで、海洋放出に踏み切ったとみていい。今さら意外感を見せて抗議するのは政治的パフォーマンスとしかいいようがない。
さらにチグハグなのは、岸田政権がコロナ後の「インバウンド復活」を日本経済再生の切り札に掲げながら、国際社会が批判する海洋放出に踏み切ったことだ。
コロナ前は中国人旅行客の「爆買い」を中心としたインバウンドが日本経済を下支えしていた。コロナ禍で観光業界が大打撃を受けると、政府は「GOTOトラベル」や「全国旅行支援」に莫大な税金を投じて観光業界を全面的に支援。コロナ後は円安が加速して国民生活がエナルギーや穀物の物価高で困窮するなか、円安によるインバウンドによる経済刺激策に重点をおいてきた。
今月には中国旅行客の団体旅行が解禁され、外国人旅行客はコロナ前に迫る勢いで回復しつつある。観光業界は円安の追い風も受けて大盛況だ(ガソリン高騰で苦しむ国民生活と対照的である)。
そこへ海外の「日本熱」を冷やす「海洋放出」である。一方で中国人旅行客をはじめ海外から人を呼び込むインバウンド支援に巨額の税金を注ぎ込みながら、一方で日本渡航への「不安」をかき立てインバウンド効果を帳消しにしかねない「海外放流」に踏み切る。実にチグハグな政策実行としかいいようがない。
なぜこのようなことが起きるのか。岸田政権の政策執行が縦割りだからである。
インバウンド支援を進めるのは国土交通省(観光庁)や観光族議員(二階俊博元幹事長ら)である。一方で、海洋放出を進めるのは経済産業省や東京電力である。それぞれが自分の足元の利益しか考えず、自分たちの都合で政策を進めているから、インバウンド支援と海外放流が同時進行で進むのだ。
裏を返せば、岸田官邸が政権運営の旗印を明確に掲げて政策全般を調整することなく、各省庁から上がってくる政策テーマをそのまま受け入れてばかりいることを映し出しているといえるだろう。
内政・外交全般を仕切ってきた木原誠二官房副長官が文春の疑惑報道で立ち往生し、内閣支持率も急落して岸田首相の求心力が落ちるなか、岸田官邸の機能不全はますます深刻になっていく可能性がある。その先行きを示唆するかのような海洋放出劇である。 

 

●「支持率なんかあてにならない。皆さんの目で」自民・麻生太郎副総裁 8/27
この岸田政権になってから取り巻く国際情勢は、台湾海峡もきな臭くなってきた。「台湾は必ず中国領土である。そういうものにする」と堂々と表明している人がとなりの中国大陸にいるわけですから、そういった状況に合わせて日本の国防費は大きなものにしていかざるをえない。
予算もいままでとは全く状況が違いますので、倍増させていただきます。国内総生産比で言えば、従来三木武夫内閣では1%だったものを、2%にしますという法案を我々は通しました。
安倍晋三が夢にまで見ていた法案を、岸田(文雄)は1年半で成し遂げていますよ。財源を獲得するための法案を今年の6月、無事通させていただいております。
原発再稼働なくして、太陽光だ風力だけで電力は賄えませんよということで、原子力発電というものを当分の間使えるようにという話も、岸田内閣で通りました。
法案として数々の難しいものを通していながら、支持率は上がらねえ。政策はきちんとやったにもかかわらず、支持率は上がらない。っていうことはあまり支持率なんかあてにならないってことですよ。
なんとなく世論調査なんて名前がついているんでえらい立派なものに見えるけど、実際は何を誰がどうしてきているかという点だけはこういった機会に見直してみて、みなさんの目で見ていただければ、というのが率直な願いです。(徳島市内の会合で)
●理不尽な水産物全面禁輸に「ポーズ」ばかりの岸田政権 8/27
東京電力福島第1原子力発電所の処理水海洋放出への対抗措置として、中国政府は8月24日、科学的根拠を示さないまま、日本産水産物の全面輸入停止措置を決めた。
同日夜、岸田文雄首相は、「外交ルートで、中国側に対して即時撤廃を求める申し入れをおこなった」と明らかにした。
中国への水産物の輸出は2022年、国・地域別1位の871億円で、全体の約22%を占める。措置が続けば、国内水産業への打撃は避けられない。
8月25日、松野博一官房長官は、記者会見で、風評被害などに備えて準備した300億円の基金も活用して、中国以外の販路開拓を支援する考えを示した。
だが、日本の放出計画は国際原子力機関(IAEA)も「国際的な安全基準に合致する」と評価しているもの。そしてそもそも、中国の原発施設は、福島第1原発の最大6.5倍ものトリチウムを放出している。
国民民主党の玉木雄一郎代表は8月26日、自身のX(旧Twitter)にこう書きこんだ。
《英仏とも、処理水放出計画が安全でかつ国際原子力安全基準と合致していることを示す国際原子力機関(IAEA)の報告書を歓迎する旨発表している。中国の全面禁輸の対応はこうした国際社会の主張とは全く異なる科学的根拠を欠くものであり、政府はWTOに提訴するなど毅然とした対応を取るべきだ》
福島市の木幡浩市長は同日、市役所などに中国語での迷惑電話が相次いでいると自身のFacebookに書き込んだ。
《市役所では、確認できているものだけで、2日間で約200件。小中学校にもかなり来ているようです。飲食店やホテル・旅館も多く、多いところは1事業所だけで100件以上も。多くは+86(中国)発信で、中国語。我が身の所業をわきまえぬ困った国です。福島は、原発事故の被害に加え、事後処理の負担も負わされている立場。政府には、この状況を早々に伝え、対応を求めます。》
理不尽な日本産水産物の全面輸入停止と、相次ぐ中国語での迷惑電話。一方で、即時撤廃を申し入れる岸田政権の生ぬるい対応に、SNSでは、WTOへの提訴を求める怒りの声が広がっている。
《放出容認が世界の趨勢であり、科学的にも何ら問題がないのであれば、禁輸措置を取った中国をWTOに提訴すべき。中国が自主的に折れることは当面考えられないのに「抗議」と言っているだけなら、ガス抜きのための国内向けポーズと言わざるを得ない》《中国が日本の海産物を全面禁輸したみたいだけど、こんなの科学的根拠ないし、日本がWTOに提訴したら中国大恥かくんじゃないの?》《中国がここまで、とは思わなかった。もう呆れるしかない。粛々とWTOに提訴した上で、中国リスクについて考え直すしか無い。孤立してるのは中国なので、ここで引いてはいけない》
岸田首相は中国に対して、WTOへの提訴という断固とした措置を取ることができるだろうか。 
●迷惑電話で中国側に遺憾伝達 外務省局長「憂慮している」 8/27
外務省の鯰博行アジア大洋州局長は26日、在日中国大使館の楊宇次席公使に対し、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を巡り、中国からとみられる電話や嫌がらせが多数発生しているとして「極めて遺憾で憂慮している」と伝えた。
迷惑電話を巡っては、東京都江戸川区の区総合文化センターに中国の国番号「86」で始まる番号からの着信が相次いだ。日本政府関係者によると、日本の医療機関や飲食店にも電話があった。中国の動画投稿アプリでは日本へ抗議の電話をするよう呼びかけられている。
日本大使館は短文投稿サイト、微博(ウェイボ)の公式アカウントで、商業施設への迷惑電話は経済損失を招く可能性があり、医療機関であれば人命に関わると指摘。こうした電話は「犯罪行為だ」と批判した。
日本大使館近くの日本料理店では従業員が「店への嫌がらせがあるのではないか」と不安を漏らした。広東省広州市の日本総領事館が入る施設では24日から警察官が警戒に当たるようになった。
●処理水放出に時間がかかった背景にマスコミの影響 8/27
東電福島第1原発の処理水について、24日に海洋放出が始まった。放出開始までに時間がかかった背景はなにか。風評被害をなくすためには何が必要なのか。
この問題を考える上で、「安全」と「安心」が重要だ。「安全」とは客観性に基づくもので、根拠は科学に依存することが多く、その反対概念は「危険」である。「安心」とは、主観に基づくもので、人によってさまざまだが、その反対概念は「不安」である。
先に達成すべきは安全であり、その後、安心が形成されていく。行政でできるのは安全までで、安心には時間と説得が必要なので、マスコミの影響が大きい。安全であるにもかかわらず、不安があるときに風評被害が起こる。
これで思い出すのが、豊洲市場への移転をめぐる小池百合子都知事のかつての発言だ。「安全基準」と飲用にできる「環境基準」を混同し、合理的でない安全基準以上の無理難題を求めつつ、安心という感覚に行政が依存し、時間を浪費した。
今回、行政はそこまでぬかっていなかった。処理水についてはかなり早い段階で科学的な安全性が確保されているという説明がなされ、国際原子力機関(IAEA)の最終確認も取られた。安全性の確認も慎重な手順で行われ、処理水放出はあえて急がず、処理タンクが満杯になるギリギリまで時間を使ったのだろう。
安心に対する調査も継続的に行われている。消費者庁による「風評に関する消費者意識の実態調査」では、福島産品の購入を放射性物質を理由にためらう人の割合が2013年2月の第1回調査で19・4%だった。その後、ほぼ一貫して低下し続けて、今年1月の第16回調査では過去最少の5・8%まで低下している。ただし、この結果について、メディアではほとんど報道されていなかった。
また、福島県は今でも食品の放射性物質検査を行っており、検査結果も公表されている。その結果をみても福島産について安全性の問題はないが、これもあまり報道されない。
一方、中国が日本からの水産物の輸入について不合理な規制強化を行うと大々的に報道する。安心につながる報道はなされないが、不安になるような報道がなされるというメディアの非対称によって、安全であるが不安がなかなか解消されないという状況になっている。
ここでの出番は政治だ。和田正宗参院議員が発言しているが、政治家が処理水を飲んで安心をアピールするというパフォーマンスがある。この方法は、中国が政治的に難癖をつけているのでその撃退にもなるという一石二鳥の策だ。
2011年当時にも内閣府政務官が処理水を飲んだことがあるが、いまも健在だ。今回は外相が飲むと同時に、中国の外相にも自分のところで放出している処理水を飲めといえばいい。中国の外相が四の五の言って飲まなければ政治的に負け、飲んでも日本の主張を認めたことになるので、いずれにしても日本にとって不都合ではない。
●原発処理水放出 「漁業関係者、周辺諸国に根回しなし… 政治家の仕事は」 8/27
「青汁王子」こと実業家・三崎優太氏(34)が27日までに自身のSNSを更新を更新。東京電力福島第1原発処理水の海洋放出開始について言及した。
中国の国家市場監督管理総局は25日、処理水の海洋放出開始を受け、食品業界の経営者に対し、日本の水産物の加工や調理、販売を禁じると発表した。食の安全を確保するためと主張している。中国税関総署が24日に日本産水産物の輸入を全面的に停止したのに続き、日本産水産物を徹底的に排除する措置を打ち出した。
一方、世界保健機関(WHO)報道官は25日、「処理水放出についての日本の規制基準は、国際的な放射線の安全基準に基づいている」と述べ、日本の対応に問題はないとの見解を示した。
三崎氏は「国内の漁業関係者への根回しもなければ、周辺諸国への根回しもなし。政治家の大切な仕事って調整だよね。処理水の海洋放出が必要なのは理解できるけど、誰も納得してないのに強行ってどうなの?」と私見をつづった。 

 

●中国水産物禁輸「まったく想定していなかった」野村農相の発言に集まる驚き 8/26
8月25日、野村哲郎農相は閣議後記者会見で、中国が日本産水産物を全面的に輸入停止すると表明したことについて、「たいへん驚いた。まったく想定していなかった」と述べた。「日本からの食品輸入規制を緩和・撤廃する国際的な動きに逆行するもので、極めて遺憾だ」と述べ、即時撤廃を申し入れたことを明らかにした。
中国政府はこれまで、東京や福島を含む10都県産の食品を輸入停止(新潟県産の精米は除く)していたため、「10都県は対象になるのかなと思っていた。どのぐらい拡大していくかは、まったく想定していなかった。われわれも一昨日の中国の発表で驚いているところだ」と述べた。
中国への水産物の輸出は2022年、国・地域別1位の871億円で、全体の約22%を占める。品目別では、ホタテ貝が467億円、なまこ(調製)が79億円、かつお・まぐろ類が40億円となっている。
野村氏は、日本政府が農林水産物・食品の2030年の年間輸出額5兆円達成を目指していることについては「全体の輸出が減少することは、間違いなく避けられない」と述べた。
また、対策として、「海外でのプロモーションや商談会の開催、新たな輸出先の開拓等」をあげ、「中国が輸入を禁止した分を、どこに振り向けていくのか政府全体でも検討していく」と述べた。
タレントのフィフィは8月25日、自身のX(旧Twitter)にこう書きこんだ。
《お花畑ですよね。中国は今や日本の敵国のスタンスです。日本が半導体の輸出規制もしている中でこうした嫌がらせをされる事も想定できないんですかね。台湾有事への危機が高まればもっと増えますよ。だから中国依存型経済からの脱却なんです!》
ジャーナリストの江川紹子氏も同日、自身のXにこう書きこんだ。
《ということは、何の準備もしてないのでしょう。こういうことを、記者会見であっけらかんと公言しちゃうのにも驚きです》
野村氏はラ・サール高校を卒業後、JA鹿児島県中央会で35年間務めたのち、参院議員に。自民党の農林部会長、農林水産政務官などを歴任した農水族議員だ。2022年8月の内閣改造で、78歳にして初入閣を果たした。
4月には、岸田文雄首相が花粉症対策の関係閣僚会議を開く考えを示したことについて、「農水省としてはまったく『知らぬ存ぜぬ』でびっくりした。総理がおっしゃった以上はやらなきゃいけない」と述べたこともある。
だが、中国が日本産水産物を全面的に輸入停止するのを「まったく想定していなかった」と発言されてはたまらない。
SNSでは、野村氏の発言に対し、批判的な声が多く上がっている。
《こうした発言そのものが安全保障上のリスクなんですが》《おいおい想定範囲内では無いのか。こうしたリスクは事前に洗い出しをしておいて対応策を準備しておくもの。昨日から与野党政治家の発言を見聞きしていると、あまりに危機管理レベルの低さに失望するばかり》《この程度の予想も出来ないような人間を、大臣のポストに置かざるを得ないほど、岸田内閣は人材不足だということ》《岸田文雄が任命した岸田内閣閣僚も、どいつもこいつもホントに無能で無神経で無責任だな…》
871億円にのぼる水産物の輸出先を、日本は見つけることができるだろうか。
●原発処理水 放出開始 言掛かりつけ中国が欲しいのは日本の「政治的譲歩」 8/26
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が8月25日、ニッポン放送に出演。福島第一原発の処理水放出について解説した。
原発の処理水、8月24日から海への放出を開始
福島第一原子力発電所にたまる処理水について、東京電力は政府の方針に基づき、基準を下回る濃度に薄めた上で、8月24日午後1時ごろに放出を始めた。放出完了には30年程度という長期間が見込まれる。
飯田)初回は17日間で7800トンあまりが放出されます。
宮家)コロナ禍の前に福島第一原発を見学する機会がありましたが、当時も既にタンクがたくさんあって、「そろそろ限界なのです」という話を伺いました。しかし、話を伺えば伺うほど、トリチウムは基本的に自然界にもあるものですから、取り除けないのは仕方ないことなのです。
処理水放出はいつかはやらなければならないこと 〜政治家が政治判断で行う
宮家)ALPS処理水は、いずれ出さなければいけない。科学的根拠もあるし、各国みんなやっていることですから、科学的に反対できる人はいないと思います。
飯田)そうですね。
宮家)もちろん心配する人もいますし、風評被害が出るのは大変なことです。いくら「放水はどうですか?」と聞かれても、賛成できる人は少ないでしょう。特に漁業関係の方は心配ですからね。
飯田)風評被害が出た場合は。
宮家)いつかはやらなければいけないけれど、政治家が政治判断で行う必要がある。そして菅総理(当時)が決断され、岸田総理の時代にその時期がきたということです。
態度を変え、理解を示す韓国
宮家)言い方が難しいのですが、私はこの処理水を飲めばいいのではないかと思っています。実際に「飲ませて欲しい」と頼んだのだけれど、いろいろな不純物があるからダメだと言われました。
飯田)不純物があるから。
宮家)問題は「トリチウムがいかに安全か」ということですから、「不純物を取り除き、トリチウムを含んだものを飲ませてください」と言ったのですが、これも難しくて未だに飲めていません。でも、私は飲んでも平気だと思っています。
飯田)自然界にあるものだから。
宮家)韓国ですら態度を変えたのですよ。尹大統領は定期的なモニタリングを行うべしと言っていますが、我々もそう思っているわけです。日本の方がはるかに影響は大きいわけですから。
政治的譲歩が欲しいため日本に言い掛かりをつける中国 〜モニタリングをして常にトリチウム濃度を公表するべき
宮家)しかし、そこで中国が言い掛かりをつけてくる。科学的に見れば、中国の原発から出ている処理水の方がトリチウム濃度は高いぐらいです。「それにも関わらず、なぜ中国は科学的根拠もなく、あのような言い掛かりをつけてくるのか」と誰かに聞かれました。
飯田)なぜ中国はあのようなことを言うのか。
宮家)日本もそうですけれど、日中関係は現在のままでいいわけがないので、対話しなければいけない。しかし、彼らは前提条件なしに対話する気はないわけです。いまは日米韓がタッグを組んでいるので、中国は日本にもう少し譲歩させたい。政治的譲歩が欲しいから言い掛かりをつけ、「日本が降りるのだったら少し黙っていてやろうか」と言っているのです。
飯田)政治的譲歩が欲しいために。
宮家)そういう状況にまでなってきている。しかし、こんなことをやっていたら逆効果になりますよ。
飯田)逆効果に。
宮家)中国の人から輸入禁止にするを言われたので、私は「よく考えてごらん。そんなことをやれば、日本はますますアメリカや韓国と一緒になるから逆効果だよ」と話しました。
飯田)中国人の方に。
宮家)そう言ったら黙っていましたけれど、黙っても、禁輸はやめられないでしょう。墓穴を掘ることをわかった上で中国は文句を言ってくる。科学的根拠に基づき、IAEAが「安全だ」と言っているわけです。我々も漁業関係者の方々が言うように、とにかく透明性を持って、しっかりとモニタリングを行い、常に濃度を公表していく。それに尽きると思います。
中国が日本産水産物の全面禁輸を発表 〜これが日中関係にとっていいことなのか
飯田)中国政府は日本産水産物を全面禁輸すると発表しました。それに対して、岸田総理は即時撤廃を求めています。漁家の方々にとっては大変なことですよね。
宮家)正当な抗議であれば私も「なるほど」と考えますけれど、中国の批判は言い掛かりに近いものです。処理水の問題を過度に政治化することが、本当に日中関係にとっていいことなのか、彼らには考えてもらいたいですね。
中国の狙いは日米韓を分断すること
飯田)水産物を主要な産業にしている自治体はたくさんあります。「X」(旧ツイッター)などでも「いまこそ、ふるさと納税で日本が(福島を)支えましょう」と書かれています。
宮家)中国が政治的な動きとして何を狙っているかと言うと、日本国内に言い掛かりをつけ、日米韓を分断しようとしているのです。そうならないためにも、我々が自分たちで支えられる部分は支える必要があると思います。
飯田)かつて台湾がパイナップルを禁輸されて困ったときは、日本や世界が支えました。
宮家)泣き寝入りはいけません。理不尽なことを言ってくる人がいたら、戦えるときは戦わないといけないのです。
●小池都知事も「グッドです」相次ぐ政治家の「福島産魚PR」に殺到する疑問 8/26
8月24日に福島第1原発の処理水の海洋放出が始まったことを受け、東京都の小池百合子知事は8月25日、都庁の食堂で職員との昼食会に参加。福島県産の魚などを使った定食を食べる様子を報道陣に公開した。
この日のメニューは、福島県産のスズキや宮城県産のカツオ、ヒラメなどの刺し身、三陸産イワシのフライなど。刺し身を口にした小池知事は、「グッドです。フレッシュです。みなさんもぜひ召し上がってください」と話し、笑顔を見せた。
東日本大震災で被災した岩手や宮城、福島の魚介類や農産物の消費喚起に向けた取り組みの一環。水産物は、福島第1原発の処理水が海洋放出される前の、24日午前までに水揚げされたものだという。
小池氏は食事後の記者会見で、中国が日本の水産品輸入を全面禁止したことを聞かれ、「国のほうでしっかり対応してもらいたい」と述べる一方、「農水産物の大消費地の東京で復興を、あと押ししていきたい。福島県産の食材を食べて、復興支援に協力してほしい」と呼びかけた。
8月23日には、西村康稔経済産業相が、都内で開催されている魚や水産加工品の国際見本市に出席。福島産のサンマを使った干物や東北の魚介類で作った海鮮丼などを試食し、「最高ですよ、これはもう本当に。きょう、お昼も夜もいらないですね」と感想を語ったが、処理水放出前のパフォーマンスに「茶番」などの批判があがっていた。
福島第1原発の処理水放出をめぐっては、ニュースキャスターの辛坊治郎氏が、「私が原発担当相なら、処理水を全世界のメディアの前で飲む」と語るなど、政治家の発信力不足を嘆く声も多い。
小池氏の言動にも、SNSでは批判的な声が多く上がっている。
《この人も無意味な事やってるよ 汚染されてても味は変わらんよ そもそも昨日の今日なら放出前の魚だろ 本当に食べてPRしたかったら数十年食べ続けるしかないよ》《政治家が福島産水産物を食べるパフォーマンスが流行りだが、なんの意味があるんだ なんで放出処理水を飲まないのか》《放出口周辺で採れた魚食わんと意味ないやろ》《こういう“やってみせ”、何度見てきたことか》
8月24日、中国は日本産の水産物輸入全面停止という対抗措置に踏み切った。魚を食べるよりも、処理水を飲む様子を中国に示す政治家は、日本に出てこないのだろうか。
●習政権が隠蔽する「金融時限爆弾」 爆発すれば世界的ショックへ… 8/26
中国で「金融危機」が拡大しつつある。不動産バブル崩壊加速に伴い、中国最大級の投資ファンドと傘下企業が売り出した「信託商品」の支払いが滞っているとして、投資家たちがSNSで情報発信し、各地で抗議活動を行っているのだ。「中国版リーマン・ショック」に拡大する可能性が指摘される今回の金融危機について取材を続けてきた産経新聞特別記者の田村秀男氏は、危機についての情報隠しを図る習近平政権とSNSでの発信を続ける投資家との「闘い」をリポート。今後、日本経済にも甚大な影響を与える恐れがあるとして、厳重警戒を呼び掛ける。
チクタクと進む時限爆弾と格闘する主人公が爆発寸前に止めるというのは、ハリウッドのサスペンス・アクション映画の定番である。だが、中国となると全く違った展開になる。強権の習政権は「時限爆弾」の情報をひたすら隠蔽し、あたかもその事実はないかのようにメディアに強いる。
そう、中国のノンバンク(非銀行)大手の「中植企業集団」とその傘下の「中融国際信託」による支払い停止問題に対する習政権の対応がまさにそれである。本欄はこの金融危機勃発以来、連続で詳報してきたが、今回は習政権の情報隠しに焦点を合わせてみる。
現地のSNSなどの情報によると、中植・中融の信託商品の元本総額は日本円換算で約20兆円に上るが、満期が到来しても元利や配当の支払いが7月から途絶えた。中植・中融からは「払えない」としか返答がないという。こうした状況にもかかわらず、中国共産党と政府が統制する中国国内のテレビや新聞は1行も報じなかった。
抗議の投資家に公安警察が脅し
8月11日になって、中融の信託に投資していた中国の上場企業3社が規定に従って情報開示したことから、問題の一部が露見した。それでも、習政権下の国家金融監督管理総局は何のアクションもとらないし、主要メディアが記事にすることもない。
15万人に上るという投資家たちはそこで、スマホのチャットアプリ「微信」(ウイーチャット)上で上海、北京など各地ごとにグループを結成し、抗議運動を始めた。
各地の投資家たちは8月15日、中融国際信託が翌16日に事情説明すると聞き、微信で北京集結を決めた。すると、15日深夜から翌日早朝にかけ、地元公安警察の幹部が首謀者格の投資家の自宅を突然、訪問した。「あなたの身のためには北京には行かないほうがよい」。椅子に座った幹部は、組んだ片方の脚を揺すりながら投資家にこう勧めた。この光景は隠し撮りされ、微信に流れた。
人工知能(AI)を使った習政権のネット監視技術は、微信で発信する投資家の身元をただちに把握し、警察権力を使って脅迫するといわれる。なりふり構わぬ恐怖政治だ。それでもめげずに、一部の投資家は16日、北京の中融ビル前に集結した。
中融の社員たちは「警察」と書かれたメガホンを使って解散を呼びかける。社員の背後には、警察官たちの姿があった。これ以来、同じような抗議は上海、西安など各地で連日行われたが、中植・中融、政府とも無視するばかりだ。中融の北京ビルは周りをブロック柵で閉鎖した。
だが、いくら隠しても時限爆弾は時を刻んでいる。
グラフは、不動産投資の資金源の推移である。信託などノンバンク系が関与する「融資」「自己調達」は激減している。不安に駆られた預金者や投資家は資金の回収を急ぐ一方で、香港に押しかけて銀行で口座を開設するため行列をなしていると現地メディアが伝えている。香港では人民元を香港ドルや米ドルに換えられるからだ。
人民元も株も売り一色だ。中国の国内金融の規模は米国を凌駕(りょうが)している。情報不足のなかで中国金融爆発が及ぼす世界へのショックは計り知れない。日本の投資家にとって「対岸の火事」どころではないだろう。見えにくい中国の動きを注意深くウオッチする必要がある。 

 

●「国民を馬鹿にする政治家」松川るいに大阪・枚方自民がブチぎれた! 8/25
フランスの議員研修中にエッフェル塔前でポーズ写真を披露した自民党女性局のメンバーが批判にさらされている。矛先が向かうのは松川るい参院議員や今井絵理子参院議員らで、ネット上では「エッフェル姉さん」「ニョッキ松川」「松川るい16世」などと異名がつけられている状況だ。
“擁護派”には議員研修であっても「観光」は許容されるべきとの声があがるが、作家の佐藤健太氏は「問題視されているのはそこではない。本質は岸田文雄首相の翔太郎前政務秘書官と同じ」と厳しく指弾する。
松川るいらの「エッフェル塔ポーズ」は生活が厳しい国民たちの感情を逆撫でした
批判が殺到したのは、松川氏や今井氏といった自民党女性局メンバーら38人が7月下旬にフランスを訪問し、その記念撮影をSNSに公開したことだった。その中の一枚にはエッフェル塔を背に松川氏ら3人が両手を頭の上で合わせる「エッフェル塔ポーズ」を笑顔でとっている写真があった。
こうしたSNS上の発信に「税金で観光旅行に行っているのか」「感覚がずれているのではないか」といった批判が相次いだのだ。松川氏は「SNS上の発信について不適切なものがあった。多くの誤解を与えたことについて反省している」と語り、「誤解されてはいけないと思い、(投稿を)削除させていただいた」と説明した。自民党は小渕優子組織運動本部長が「注意」したのだという。
松川るいはなぜ自分がこれだけ批判されているのか、わかっていない。国民の声がわからない
だが、これは「誤解」と言えるのか。普通に考えれば、誤解というのは「事実や言葉などを誤って理解する」という意味になる。だが、「エッフェル塔ポーズ」写真への理解は誤解しようがない。たしかに“擁護派”が主張するように、たとえ議員研修中であっても、プライベートな時間は確保され、観光や好きな時間に充てることは自由だ。思い思いの写真を撮影するのも良い。エッフェル塔を背にポーズ写真を撮った日本人は何も松川氏らだけではない。だが、釈明して投稿を削除した松川氏を含め、問題視されているのは「そこではない」ことを理解していないこと自体が問題なのではないかと感じる。
松川氏の投稿に関し、公明党の山口那津男代表は「それがどのような受け止められ方をするのかということは、しっかり見通した上で責任を持って対応すべきだ」と指摘。国民民主党の玉木雄一郎代表も「喜々としてアップ(投稿)するかどうかは、もう政治家としてのセンスの問題なので有権者に選挙で判断していただくもの」と手厳しい。
松川るいの空気の読めなさは、岸田首相の長男・翔太郎氏を思い出させる
たとえ議員研修であっても「観光」や「自由な写真撮影」は許容されるものの、それをSNSにアップするかどうかは別問題であるということだ。批判の矛先が向かったのは「国民感覚とのズレ」にあることを、国民の声に耳を傾けるべき要職にある者として「誤解」しないでいただきたい。
思い出すのは、岸田首相の長男で首相秘書官(政務)を務めていた翔太郎氏だ。首相の外遊中に翔太郎氏が公用車を使って「観光」や「土産物購入」をしていたと報道され、昨年末には首相公邸で親族と「忘年会」を開催。写真撮影にも興じていたことが報じられ、首相が事実上の更迭に踏み切った。
政治家としての感覚が疑われるのも無理はない
翔太郎氏の「観光」報道が飛び出した際、首相最側近の木原誠二官房副長官は今年1月27日の記者会見で「不適切な行動はなかった」と擁護した。さすがに公邸での写真撮影には「報道にあるような行為は適切さを欠く」(松野博一官房長官)との声が上がり、最終的に父親である岸田首相が更迭せざるを得なくなった。もちろん、何か法律を犯したわけではない。だが、そのような行為をすれば国民がどのように受け止めるのかという視点が翔太郎氏にも、松川氏にも欠落しているのは間違いないだろう。
フランス研修の費用は参加したメンバーの自費や自民党費で賄われ、税金が投じられていないとの“擁護”にも疑問符がつく。松川氏ら議員や翔太郎氏には「給与」という形で公金が入っているからだ。翔太郎氏の「記念撮影」がどこから流出したのかは謎だが、松川氏は自らSNSにアップしている。もはや政治家としての感覚が疑われるのも無理はないだろう。
2022年から続く物価高に困窮する国民は、生活防衛に必死になっている。足元の電気代・ガス代高騰に加え、レギュラーガソリンの全国平均価格は13週連続で値上がり。政府の補助金が減少し、15年ぶりの高値が続いている。コロナ禍を脱し、そろそろ行きたいと思っていても海外はおろか、国内旅行も「自粛」せざるを得ない人は少なくない。
国民生活が物価高で苦しむ中、松川るいは「上級国民」の態度を改めよ
大阪選挙区を地盤とする松川氏には、足元の自民党枚方市支部が8月7日に選挙区支部長の更迭を茂木敏充幹事長に申し入れた。“維新旋風”に押され、大阪の自民党を抜本的に再生しなければならないという危機感を抱く中での「ニョッキ松川」には嫌気がさしたのかもしれない。
1971年生まれの松川氏は東大卒業後に外務省に入省し、ジョージタウン大国際関係大学院修士号を取得。2016年7月の参院選大阪選挙区で当選し、2020年9月には防衛政務官に就任した。2022年7月の参院選大阪選挙区で2期目の当選を果たし、外交・安全保障や女性活躍などの分野で活躍が期待されてきた一人だ。自民党では女性局長や外交部会長代理、2025年大阪・関西万博推進本部事務局長などを務めている。キャリアを見れば、将来を嘱望されていた優秀な人物であることは間違いない。
ただ、キャリアで優秀な「上級国民」だからこそ、公金を得ている以上は人一倍どのように映るのかは意識しておくべきポイントだろう。自身の長所に「柔軟な発想」をあげる松川氏は、短所を「細かいことが苦手」としている。これ以上、華麗なキャリアに傷をつけないためにも、重要なことは「細部に宿る」点を忘れず、国民感覚とのズレを縮めてもらいたいと願う。
というのも、今日本国民の生活は大変なことになっている。令和版「所得倍増計画」はどうなったんだ
というのも今日本の国民の生活は大変なことになっている。
資源エネルギー庁が8月16日に発表したレギュラーガソリンの全国平均価格は181.9円(同14日時点)となり、前週から1.6円も値上がりした。13週連続の値上がりで、過去最高値だった2008年8月(185.1円)に迫るレベルだ。一部地域ではハイオクガソリン価格が200円を超えるガソリンスタンドも現れている。識者の中には来月末にはレギュラーガソリンの全国平均価格が200円近くになると主張する人もいる。
背景には、原油価格の高騰や円安がある。だが、その負担感を増大させているのは政府による補助金の縮小だ。国は2022年1月、石油元売り会社の「ガソリン補助金」を通じてガソリン平均価格を抑えてきた。だが、今年から上限額や補助率を段階的に縮小しており、9月末で終了する予定としている。
実質賃金は15カ月連続でマイナスが続いている
加えて、ガソリンには揮発油税と地方揮発油税、石油石炭税などの税金がかかり、販売価格の4割強を占めている。「ガソリン税」に消費税が課されるという“二重構造”になっており、その税負担は決して小さくない。一部からは税率を一時的に下げる「トリガー条項」を発動すべきだとの声があがるが、岸田政権は「財政への影響がある」などと消極的だ。
所得環境が好転しない中で、物価が上昇していけば生活が楽になるわけはない。8月15日発表された4〜6月の国内総生産(GDP)は、物価変動を除いた実質で3期連続のプラスとなった。前期と比べてプラス1.5%、年率換算で6.9%の伸び率になっている。
ただ、好調が目立ったのはインバウンド需要だ。円安効果に加えて、コロナ禍の落ち着きから外国人観光客の消費が増加し、旅行者数は回復傾向にある。その一方で個人消費はマイナス0.5%と3期ぶりのマイナスとなっている。実質賃金は15カ月連続でマイナスが続いており、家計の消費マインドは低迷したままだ。
日本国民がおかれているこの状況下でのインスタ投稿と批判に対する松川氏からの反論は、まさしく国民を馬鹿にしているといえよう。
●「水産物汚染の張本人は政治家・マスコミ・エセ専門家たちだ」 韓国漁師たち 8/25
日本が福島原発汚染水の海洋放出を始めた24日、韓国沿岸漁業人中央連合会が声明で、「韓国の海と水産物を汚染する張本人は汚染水海洋放出を政治に利用する政治家・マスコミ・エセ専門家たちだ」「国際機関や著名な科学者たちが明らかにした通り、韓国の海・韓国の水産物は安全だ」と述べた。そして、「水産業界の未来が原発汚染水『怪談(デマ)』で壊されてはならない」と訴えた。
科学者たちは「『福島汚染水海洋放出により韓国国民が食する水産物が放射能に汚染される』という主張は誇張などというレベルではなく、捏造(ねつぞう)に他ならない」と説明している。福島汚染水海洋放出による放射線被ばく量は、レントゲン撮影時の1000万分の1だという。2011年の福島原発事故直後、海に流れ出た汚染水は、現在海洋放出している汚染処理水よりも、核種によって600−3万倍を超える放射性物質が含まれていた。だが、この12年間、韓国の海と水産物に何の影響もなかった。それにもかかわらず、水産市場の買い物客は大幅に減ったという。
既に福島周辺のすべての水産物は輸入禁止となっている。韓国政府は全国200の海域で海水を採取・検査し、卸売市場や養殖場など水産物生産段階で2次検査を行っている。市場やスーパーなどで水産物を流通させる直前に韓国食品医薬品安全処が3次検査を行っている。2011年の福島原発事故発生後、7万5000件の水産物に対して放射能検査が行われたが、基準値を超えたことはない。一言で言えば、韓国の水産物は安全だということだ。福島の水産物の輸入を再開した欧州はバカではない。福島の海洋放出水が韓国より先に到達する米国・カナダではいかなる「怪談」もない。駐日米国大使は福島に行ってその水産物を食べると言った。彼らもバカではない。
それにもかかわらず、一部の消費者たちが水産物を避けるのは、韓国国会を掌握している野党・共に民主党とテレビ番組が「水産物を食べれば放射能に汚染される」との主張を毎日繰り返しているためだ。政治的に政権を攻撃するためのものだが、その被害を受けるのは韓国の水産業界だ。15年前の狂牛病(牛海綿状脳症〈BSE〉)デモの時も同じだった。このデモを主導した人物は「当時、狂牛病の事実関係について会議をしたことはない。李明博(イ・ミョンバク)政権退陣にどのように利用できるかという次元だけで話が交わされた」と告白した。今回も同じだろう。
今回の「怪談」は狂牛病怪談よりも早く消えるだろう。今後、韓国の海水と水産物を採取して放射能を調査すれば、問題ないことが明らかになるからだ。しかしその間に罪のない漁業関係者たちが被害を受ける。良識のある国民たちが立ち上がり、水産物の消費をこれまでより増やすなどして、「怪談」が消えるまで水産業界を助けてほしい。そして、韓国政府は月1・2回の海水放射能調査を大幅に増やすべきだ。
●福島原発「処理水海洋放出」開始に韓国の市民・政治家・メディアの反応 8/25
ソウルの人気寿司店で聞いた話
8月の初め、土砂降りの雨の中、韓国の若者たちに人気の寿司“おまかせ”専門店を訪れた。ソウル市麻浦区に位置するこのおまかせ専門店は、ソウル全域に4つの店舗を有している。店員によると、人気の理由は手ごろな値段だ。江南やホテルのおまかせは、夕食コースが20〜30万ウォン(2〜3万円)程度の店が多いが、ここの夕食は8万ウォン。筆者が食べた昼食コースは5万ウォンだった。
平日のランチでも予約がいっぱいという人気店だが、その日は雨のせいか比較的空いていた。カウンターに座って板前さんとあれこれ世間話を交わす中、福島原発の処理水放出が話題に上がった。
板前さんは、「常連さんの中には福島の汚染水が放出されれば寿司を食べないという方が結構いらっしゃるので困っている」と打ち明け、「うちには日本産のネタはないが、韓国海域で獲れる水産物もなぜか敬遠されている。政府がいくら安全だと強調しても不安感は消えないようだ」とため息をついた。
そして24日、実際に日本政府による福島第一原発の処理水の放流が始まったことで、あの日聞いた板前さんの心配はより現実味を帯びてきた。
前日の23日、経済紙『韓国経済』のインターネット版は「高飛車だったおまかせ店も半額割引……商売をやめるべきか」という記事を掲載し、「日本福島厳罰汚染水の放出問題で韓国のおまかせ熱風が折れた」と伝えた。
同紙によると、福島原発の汚染水放出で水産物全般に対する消費者の不安心理が高まり、これまで高飛車だった江南の高級おまかせ専門店も客誘致のために価格を半額に下げるなど全力を尽くしているが、それでも客足は途絶えてしまったそうだ。
これまで予約がいっぱいでなかなか訪問できなかった特急ホテルの和食レストランも、今では予約は難しくないという。
一例として、韓国のグルメ族の間で評判が高かった新羅ホテルの和食レストラン「有明」は、今やいつでも予約可能な状態だといい、同じホテル内の「ラヨン」(韓国料理)や「八仙」(中華料理)などは1ヵ月以上も予約がいっぱいなことと比べ、明確に人気が落ちていると報道した。
韓国政府の水産物消費増進策
韓国の主要日刊紙やテレビなどは、韓国各地の水産市場を訪ねて商人と市民の生の声を伝えた。韓国最大のニュースエージェンシー『聯合ニュース』は22日、福島原発の処理水放出決定の直撃弾を受けた釜山のチャガルチ水産市場のルポ記事を掲載した。
記者のインタビューに応じた商人たちは一様に、不安と怒りが入り混じった反応を見せている。
「結局飢え死にしろと言うことだ」「売り上げが3分の1に減った。新型コロナウイルス感染症の時より大変だ」「今週末の予約もまったくなく、お客さんもいない」「科学者が(安全だと)言っても、お客さんは日本が釜山に近いので何かと影響があると信じている」「政府が乗り出して水産業者が飢え死にしないようにしなければならない」 (22日記事「今もお客さんいないのに……汚染水放流決定でチャガルチ市場の‘ため息’」)
日本政府の処理水放出決定で韓国の水産業界が大きな打撃を受けるということはすでに予想されていた。
今年4月、消費者市民の会という市民団体が消費者525人を対象に実施した調査によると、回答者の92.4%が「汚染水放流以後、水産物消費者を減らす」と答えている。
2022年には、自治体政府傘下の済州研究院が、日本の福島汚染水放流によって韓国の水産業界が被る被害額は3兆7千億ウォンに達すると警告していた。
韓国政府は今後、水産物の安全検査を強化し、消費減少を最大限防ぐという考えだという。
まず、日本政府が行っている処理水放出の安全性を常に「3重チェック」すると発表した。IAEAが運営する福島原発現場事務所に韓国側専門家が定期的に訪問し、情報を常時共有する一方、日本政府が運営する放射能関連リアルタイム情報ホームページには韓国人のために韓国語を提供、放出過程で異常が感知されれば直ちに韓国側に通知することを約束した。 このほか、韓国の海洋水産部も独自に放射能チェックに乗り出す。
海洋水産部は福島県など8県の水産物の輸入禁止措置を維持しながら、水産物の放射性物質に対する検査と韓国海域の放射能モニタリングを強化するとした。
従来92ヵ所で行っていた放射能モニタリングを200ヵ所に増やし、福島近隣の公海上の8ヵ所で毎月放射能調査を実施。水産物消費増進のための各種割引イベント、消費クーポン発行などに加え、2000億ウォン規模の漁民支援金を用意する方針を決めている。
「政府の対策はキャンペーンに過ぎない」
しかし、政府の対策の実効性については、早くも疑問が提起されている。特に、韓国の水産物委託取引の30%を占める釜山地域の有力紙は、韓国政府の対策を強く批判している。
釜山の最大日刊紙『釜山日報』は24日、「汚染水放流開始、政府の水産物被害対策に呆れる」という社説を通じて、漁民と商人たちのための直接的な支援策作りを促した。
「(韓国政府は)水産物消費の活性化のために企業共生協力を進めていると明らかにしているが、直接的な支援対策はなく、漁民の反発は避けられない見通しだ。
国民の力は党政協議を通じて漁民経営安定のための2000億ウォンの予算編成を推進するという。しかし、これも油類費支援や融資などの間接支援であり、漁民の実質的被害補填にははるかに及ばない水準だ。
日本政府は自国漁民の反発が激しくなると、8000億ウォンの支援対策をまとめ、漁民支援と新たな漁場開拓に乗り出した。国際的には汚染水の放流が安全だといいながらも、自国漁民への支援は強化している。
しかし、韓国政府の水産業被害対策は水産物消費促進など、まだキャンペーン水準に過ぎない。同じ被害を受けている韓国漁民は支援からは疎外されている。漁民被害の原因提供者である日本政府を相手に被害補償でも要求しなければならない状況だ。
汚染水の放流が現実化しただけに、被害漁民と商人に対する政府の綿密な支援対策が伴わなければならない」
「汚染水被害の憂慮を怪談として片付けるな」
また『国際新聞』も「水産生態系を守るきめ細かい汚染水対策を出さなければならない」という社説を通じて政府と与党に特別法の用意を促した。
「水産業界が百尺竿頭に置かれているが、政府の具体的な対策は不十分でもどかしいばかりだ。
釜山は国内最大の遠洋漁業と近海漁業基地に代表される水産業中心地だ。水産業は、関連事業体数が2万6000社、従事者も10万人に達する地域経済の核心軸だ。
(汚染水の放流決定で)水産物の消費が萎縮すれば、漁業と水産業だけが影響を受けるわけではない。観光分野と地域経済までその影響が及ぶ可能性がある。
韓国政府は汚染水放流対策として今年3693億ウォンの予算を編成したが、大半が水産物備蓄と販路確保などに割り当てられる。原発汚染水の放流による被害支援策は非常に不足している。
国会立法調査処からは、水産業など関連産業被害対策特別法を作って支援しなければならないという指摘が出ている。正義党は、水産物消費減少をはじめ、放射能検査と行政人材投入で韓国が害を被ることになったとし、日本政府に求償権訴訟を起こすことにした。
政府は汚染水被害の憂慮を怪談として片付けるのではなく、水産生態系を守る現実的な対策を打ち出すべきだ」
共に民主党は反日・反尹錫悦扇動に全力
水産業界の危機感が高まる中、韓国国会の第1党である共に民主党は、むしろ国民の不安感を刺激している。
李在明(イ・ジェミョン)代表は福島原発水の放流を「第2の太平洋戦争」「国民安全非常事態」「人類に対する犯罪」と糾弾し、反日・反尹錫悦扇動に総力を傾けている。
23日、国会でのろうそく集会を皮切りに、26日までの「100時間緊急行動」に出る場外闘争に突入した。多数議席を占めている国会で「福島原発汚染水対応特別安全措置4法」を立法する方針だが、これには放射能汚染被害を漁業災害に含め、被害支援基金を造成するために日本政府に求償権を請求できるよう法的根拠を設ける内容が盛り込まれた。
これまで韓国では多くの原子力専門家や海洋専門家などの科学者らが前面に出て、今回の放流が韓国の海や水産物に及ぼす影響が極めて軽微だということを説明してきたが、韓国人は依然として不安感を払拭できずにいる。
日本との関係改善を推進している尹錫悦政権にとって、今回の処理水放出開始は、大きなヤマ場になるかもしれない。
●処理水海洋放出に抗議の声 ソウルの日本大使館前で 8/25
東京電力は8月24日、福島第一原子力発電所にたまったトリチウムなどの放射性物質を含む処理水を、政府の方針通り基準を下回る濃度に薄めて海への放出を始めたが、処理水の海洋放出に反対する韓国の活動家グループが、ソウルの日本大使館前で抗議集会を行った。
海洋放出が始まってから1時間もたたないうちに、韓国の韓徳洙首相は、処理水放出が韓国に到着する食品の安全性に影響を与えることはないと国民向けのメッセージを発表した。
韓国政府が日本の計画を支持したことをめぐり、激しい政治的対立が勃発している。
リベラル派の批評家たちは、尹錫烈大統領率いる保守政権が、国民の健康を犠牲にして、日本との関係改善を推し進めていると非難。
多くの外国人専門家は、放出が環境や人体に与える影響はごくわずかだと指摘。また、国際原子力機関も、放出が計画通りに行われるよう、現地に専門家を配置している。
●歴史は日本の海洋放出の罪を追及することになる CRI 8/25
日本政府は2023年8月24日午後1時、多くの人が反対するにもかかわらず、福島原発事故の汚染水の海洋放出を強行した。海の生態系と人々の健康への「攻撃」だ。この日は世界の海洋環境にとって厄災の日となった。日本政府は生態環境の破壊者、世界の海洋汚染者に完全になり下がり、歴史にまた一つ、拭えない汚点を残した。
原子力関連事故の汚染水が人為的に海洋に放出されたのは、人類が原子力を平和利用して以来、初めてのことだ。公認された処分の基準はない。この行為が国際社会を大きなリスクにさらすことは間違いない。東京電力の計画によると、17日間で7800トンの汚染水を排出する。2023年度内には約3万1200トンの排出を見込む。専門家は、日本には現在、約130万トンの汚染水があるので、排出期間は30〜50年に及ぶと予測している。関連研究のシミュレーションによると、核汚染水は2026年11月に北太平洋のほぼ全域を覆って北米沿岸に到達し、2030年2月にはインド洋に到達し、10年後には太平洋のほぼ全域に拡散すると見られる。
12年前はすでに、福島原発事故により大量の放射性物質が海洋に放出され、深刻な災害がもたらされた。日本は12年後になり、何の証明もなしに、核汚染水の浄化装置が長期的に信頼でき、何の証明もなしに、海洋放出が海洋環境と人類の健康にとって安全で無害であるとして、利害関係者と十分に協議することもなく、海洋放出を強行して現地の人々、ひいては世界の人々に二次被害を与えることになった。中でも真っ先に被害に遭ったのは漁業従事者だった。
日本政府が独断専行で海洋放出を決めたことを受け、日本では漁業関連などの各界から「次世代に災難をもたらす」として政府に中止を求める抗議が相次いだ。日本の多くの主要メディアも、日本政府は誠意に欠け、無責任であり、急いで海洋に排出することは「未来に一層の禍根を残す」と批判した。韓国は24日、日本の福島産水産物の輸入禁止措置を維持すると発表した。中国は8月24日から、日本を原産地とする水産物の輸入を全面的に一時停止すると発表した。これらの事態をもたらした当の本人は、私利私欲に走った日本政府だ。
自分自身が問題を引き起こし、他人をひどい目に遭わせる――。そんな日本が世界を警戒させている。日本の岸田文雄首相は、放射能汚染水の海への放出計画について「全責任を負う」と言明した。事前対策も保険もなく、実害が分かったからといって引き返すこともできないこの「襲撃」に対して、日本の政治家はいったいどのようにして「全責任」を負うのだろうか。どのようにして子孫に説明するのか。
「覆水盆に返らず」と言う。日本政府は2023年8月24日、歴史の恥辱に改めて自らをくぎ付けにした。直面するのは、世界の強い非難と各国の厳しい抵抗、そして国際社会が求める損害賠償だ。歴史は日本に対して、海への汚染水排出の罪を追及することになる。
●電気・ガス料金の支援延長要請 自公党首会談で公明・山口代表 8/25
長引く物価高への対策をめぐり、岸田首相に対し、公明党の山口代表が、電気・ガス料金の支援を延長して行うよう求めた。
電気やガス、ガソリン代などの政府の支援策は9月末が期限だが、岸田首相は22日、ガソリンなどの燃料価格対策について与党で取りまとめるよう指示していた。
24日午後、首相官邸を訪れた山口氏は、電気・ガスについて10月以降も支援を続けるべきだと求めた。
公明党・山口代表「9月で(支援が)終わることに対する国民の不安が強く表れているわけだから、電気代・ガス代を除くとか、ガソリン代に限るとか、国民の不安に応えることにならない」
一方、野党からは、ガソリン税を軽減する「トリガー条項」の発動を求める声が上がっている。
立憲民主党・長妻政調会長「歴史的な高騰ですよね、このガソリン価格。一時的とはいえ、『トリガー条項』の凍結解除、発動というのは必要だと」
「トリガー条項」の運用は現在、法律で凍結されている。
●日本が処理水海洋放出を開始し隣国憤怒、懸念は「科学」「政治」―独メディア 8/25
2023年8月24日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、東京電力福島第一原子力発電所の汚染処理水の海洋放出が始まることについて中国や環境保護団体から反発が出ている一方、専門家からは「ベストな方法」との見方が出ていることを報じた。
記事は、東電が24日、当日より17日間かけて合計約7800立方メートルの処理水を海洋放出すると発表したことを紹介。海洋放出をめぐっては国際原子力機関(IAEA)が安全性を支持する報告を発表したものの、日本国内や東アジアの近隣諸国、および漁業関係者からは「日本政府は海洋放出の影響を意図的に過小評価しており、30年にわたる放出が太平洋の環境破壊を引き起すのではないか」といった懸念や反発の声がなおも出ていると伝えた。
そして、1カ月前に日本の10都県産の食品輸入を停止したばかりの中国税関総署が24日、日本全国の水産物の輸入を即日停止すると発表したことに言及。税関総署のデータによると中国は2022年に日本から5億ドル(約730億円)以上の水産物を輸入しており、日本の漁業にとっては大きなダメージになることを伝えたほか、中国外交部も同日に海洋放出に断固として反対し、日本側に厳正な抗議を行ったことを明らかにしたとしている。
また、環境保護団体グリーンピース日本事務所の原子力専門家が「日本政府はトリチウムに焦点を当てて処理水に害はないと主張することで、メディアや国民の目をそらすことに成功している。しかし、原子力発電所の廃水には、ストロンチウム90をはじめ人体や環境に有害であることが知られている多くの放射性物質が含まれている」と主張したことを伝えた。
一方で、放射線の生態学的影響の専門家であるウィーン工科大学のゲオルク・シュタインハウザー教授が「希釈してゆっくり海に流す限り、トリチウムが人間や環境に大きな危険をもたらすことはない。また、福島から計画されている放出量は、以前に大国が行った核兵器実験によって海に残されたトリチウムの量よりもはるかに少ない」と述べ、現状では海洋放出が「最良で最も安全な方法」と評価したことを伝えた。
また、独ユーリッヒ研究センター(FZJ)の放射線防護部門の責任者であるブルクハルト・ホイエル・ファビアネク氏も海洋放出について「放射線学的に無害」との認識を示し、「仮にトリチウムが人体に入ったとしても、そのリスクは極めて小さい。トリチウムはいわば水の一部であり、すぐに体外に排出される」と語ったことを紹介している。
さらに、一部の海洋放出反対派が「日本は単にエネルギーと費用を節約するために原子力発電所の廃水を海に流すことを選択した」と主張し、巨大な容器に処理水を流し込んで保管するといった代替案を提起していることについて、シュタインハウザー氏が「処理水を保管するための巨大な容器が漏れた場合、地中に染み込んだトリチウムを希釈することは難しく、結果として地元の地下水が汚染される。だからこそ私は海に流すことが最適かつ安全な解決策だと考えている」と指摘したことを伝えた。
記事は、処理水の海洋放出の危険性がどれほどのものなのかという疑問を解決するのは単純なものではないとしつつ、それ以前の大きな問題点として「2011年の津波で福島第1原発の炉心が溶融する事故が発生して以降、事業者である東電による透明性の低い姿勢が外部からの信用を著しく低下させた。そして、自国の原子力産業と癒着した日本政府も、この問題における信用度が低い」と指摘している。 

 

●原発の処理水 海への放出開始 国内外の反応は 8/24
福島第一原子力発電所にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水について、東京電力は政府の方針に基づき、基準を下回る濃度に薄めた上で、24日午後1時ごろ、海への放出を始めました。
事故の発生から12年余りを経て、懸案となってきた処理水の処分が動き出しますが、放出の完了には30年程度という長期間が見込まれ、安全性の確保と風評被害への対策が課題となります。
福島第一原発では、事故の直後から発生している汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含む処理水が1000基余りのタンクに保管され、容量の98%にあたる134万トンに上っています。
政府は22日、関係閣僚会議で、基準を下回る濃度に薄めた上で、24日にも海への放出を開始することを決めました。
これを受けて東京電力は放出に向けた準備作業を始め、大量の海水と混ぜ合わせた処理水を「立て坑」と呼ばれる設備にためた上で、トリチウムの濃度を確認していました。
分析の結果、トリチウムの濃度は1リットルあたり43から63ベクレルと、国の基準の6万ベクレルを大きく下回り、放出の基準として自主的に設けた1500ベクレルも下回っていて、想定どおり薄められていることが確認できたということです。
モニタリングを行う船を出すための気象条件にも問題はないとして、東京電力は24日午後1時3分に海への放出を始めました。
放出作業は、原発内の免震重要棟という施設にある集中監視室で、作業員が画面を操作してポンプを動かし、処理水を海水と混ぜた上で「立て坑」に流し込みます。10分後の午後1時13分には、「立て坑」から沖合1キロの放出口につながる海底トンネルに流れ込んで海に放出されたということです。
また24日午後3時すぎから4時すぎにかけて原発周辺の海域で海水を採取したということで、現在、トリチウム濃度を分析していて、25日午後に結果が出るということです。
東京電力によりますと、これまでのところ、放出設備などのトラブルは報告されていないということです。
最初となる今回の放出は、7800トンの処理水を海水で薄めた上で17日間の予定で連続して行うとしていて今年度全体の放出量はタンクおよそ30基分の3万1200トンを予定しているということです。
ただ、処理水が増える原因である汚染水の発生を止められていないことや、一度に大量の処理水を放出できないことから、放出期間は30年程度に及ぶ見込みで、長期にわたって安全性を確保していくことが重要な課題になります。
岸田首相「政府として緊張感を持って全力で取り組む」
岸田総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し「IAEAとしても連日高い頻度での原子力発電所からのモニタリングデータのライブ配信をはじめ、国際社会が利用できるさまざまなデータの公表など、透明性の向上に資する取り組みを実施していく予定だと承知している。先日、福島第一原発を訪問した際には、私自身、IAEAが常駐する予定のスペースも確認した。日本政府として緊張感を持って全力で取り組んでいく」と述べました。
東電 小早川社長「風評対策や賠償 全社を挙げて」
放出が開始されたあと、東京電力の小早川智明社長は、記者団の取材に対し、「きょうから処理水の放出を開始したが、引き続き、緊張感を持って対応していく。処理水の放出は、廃炉が終わるまで長い時間がかかるので、その間、安全性を確保し、地元の人たちの信頼に応えていく必要がある。風評対策や迅速かつ適切な賠償などについて、全社を挙げて持続的に対応し、風評を生じさせない、県民の信頼を裏切らない、という強い覚悟のもと、社長である私が先頭に立って対応にあたっていく」と強調しました。
IAEA事務局長 監視と評価活動続ける方針を強調
IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は、放出の開始を受けて24日、声明を発表し、「IAEAの専門家は国際社会の目の役割を果たし、放出活動がIAEAの安全基準に合致していることを保証するため現地にいる」として、監視と評価活動を続ける方針を改めて強調しました。
IAEAは福島に事務所も設けていて、さらに声明では、専門家が最初に放出される水のサンプルを採取し、放出される水に含まれるトリチウムの濃度は東京電力が放出の基準として自主的に設けた1リットルあたり1500ベクレルをはるかに下回る値だと確認したと説明しています。
《国外の動き》
   中国 日本の水産物輸入を全面的に停止
東京電力が処理水の放出を始めたことを受けて、中国の税関当局は日本を原産地とする水産物の輸入を24日から全面的に停止すると発表しました。中国の税関当局は、発表の中で「福島の『核汚染水』が食品の安全に対してもたらす放射性物質による汚染のリスクを全面的に防いで中国の消費者の健康を守り、輸入食品の安全を確保する」としています。
また、税関当局は「日本の食品の汚染リスクの確認を続け、日本から輸入される食品に対する監督管理を強化する」としていて、水産物以外の食品の輸入にも影響が及ぶおそれがあります。
中国ではすでに先月から各地の税関当局が日本産の水産物を対象に放射性物質の検査が強化されていて、先月、日本から輸入された水産物は去年の同じ月と比べて金額にしておよそ3割減ったことが明らかになっています。今回の措置で日本の漁業に影響が出ることは避けられず、今後の日中関係のさらなる悪化も懸念されます。
中国外務省の汪文斌報道官は24日の記者会見で「断固たる反対と強烈な非難を表明し、日本にはすでに厳正に抗議した。間違った行為を日本にやめるよう求める。日本の行為は全世界にリスクを転嫁し、痛みを子や孫世代に与え続けるもので、日本は生態環境の破壊者、そして海の汚染者となる。日本は長期にわたって国際社会の非難を受けることになるだろう」と述べました。
岸田総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し、「外交ルートで中国側に即時撤廃を求める申し入れを行った。科学的根拠に基づいて専門家同士がしっかり議論していくよう中国政府に働きかけていく。風評被害をはじめ水産業者が海洋放出によって損害を受けることのないよう基金の活用や東京電力による賠償なども含め、万全の対応をとっていく」と述べました。
   中国のSNSで反発の声 根拠のない投稿も拡散
処理水の海への放出をめぐっては、中国の多くのメディアが速報で伝えました。このうち、国営の中国中央テレビのリポーターは、インターネット向けの配信で、放出開始とともに福島第一原発の近くから中継し、日本国内では放出に反対の声もあるなどと伝えていました。
中国のSNSウェイボーでは放出開始をめぐる話題が一時、検索ランキングのトップにあがり「今後日本料理は食べない」とか「仕事はせずに日本に抗議する」といった日本への反発の声がみられました。なかには、「福島で放射線量が瞬時に上がった」などといった根拠のない投稿も拡散していました。
一方で「刺身が本当に好きなのにどうすればいいのか」といった投稿もあり、中国で日本の水産物が食べられないことを懸念する声もあがっていました。
   中国 複数の原発から福島第一上回るトリチウム放出も
福島第一原発では、トリチウムの年間の総放出量は、22兆ベクレルとなっていますが中国の原発の運転状況などをまとめた、「中国原子力エネルギー年鑑」によりますと、2021年、中国国内の原子力発電所のうち少なくとも13か所で、これを上回る量のトリチウムが放出されていたということです。
このうち、東部浙江省にある秦山原発ではおととし1年間で218兆ベクレルと、福島第一原発の年間総放出量のおよそ10倍にあたるトリチウムが放出されたということです。
ただ、中国政府は、福島第一原発の処理水は、事故で溶け落ちた核燃料を冷やすために使われたとして、「データの真実性や正確性が証明されていないうえ食品の安全や健康への長期的な影響が証明されていない」などと主張しています。
   事故後の規制 一時55の国や地域に
東京電力福島第一原発の事故をきっかけにした日本からの食品の輸入停止などの規制の動きは、一時、世界の55の国や地域に及びました。これまでに48の国や地域で規制は撤廃された一方、7つの国や地域では規制が続き、このうち、中国や韓国、香港など5つの国と地域はいまも輸入停止の措置を行っています。
・中国はすでに日本から輸入する食品に対する検査を厳しくていて、日本から輸出された水産物などが中国各地の税関当局でこれまでより長く留め置かれていることが確認されています。さらに東京電力が24日、処理水の海への放出を始めたことを受けて、中国の税関当局は原産地が日本の水産物の輸入を24日から全面的に停止すると発表しました。
日本から中国への水産物の輸出額は去年871億円にのぼります。さらに農林水産物や食品をあわせた輸出額では去年およそ2782億円にのぼり、中国は日本にとって最大の輸出先です。
また、放出決定を受けて、
・香港政府は24日から東京、福島、千葉、宮城など、10の都県からの水産物の輸入を禁止することを明らかにしました。日本から香港への水産物の輸出額は去年755億円となっているほか、農林水産物や食品をあわせた輸出額は、去年およそ2086億円で中国に次ぐ2位の輸出先です。
・マカオ政府も東京、福島、千葉など10都県からの水産物や、肉や野菜などの輸入を禁止すると発表しています。
   香港の日本料理店 日本の食品離れを懸念
福島や東京を含む10の都県からの水産物の輸入を禁止にした香港の繁華街にある日本料理店では、日本から朝、空輸した新鮮な魚を、夕方に受け取り、刺身として提供して人気を集めてきました。
この日も、愛媛産のたいが届き、料理人がさばいていました。この店では、香港政府が輸入を禁止した10都県以外から魚を仕入れて対応するとしていますが、客が産地に関係なく日本の食品を避けるようになるとして懸念を強めています。
経営者の陳強さんは「日本が処理水を放出すれば、お客さんは心配して、日本料理を食べなくなる。そうすれば売り上げが影響を受け、大変な問題になる」と話していました。
店を訪れた男性は「週に2、3回は日本料理を食べていたが回数は減ると思う」と話していました。
   韓国首相「過度に心配の必要ない」
韓国のハン・ドクス首相(韓悳洙)は、東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水の放出開始からおよそ30分後の午後1時半ごろ、国民に向けた談話を読み上げ、「科学的基準と国際的手続きに従って放出されるのであれば、過度に心配する必要はないというのが世界中の専門家の共通意見だ」と指摘しました。
そして、「韓国政府は、関連する情報を確保して徹底的にモニタリングし、同時に水産業を守るためのさまざまな支援策を展開する。日本産水産物の輸入規制も維持していく」と述べました。
さらに、「国民を最も脅かしているのは、科学に基づかない偽ニュースと政治的利益のための虚偽の扇動だ。誤った情報で国民を混乱させてはならない」と強調しました。
   韓国 最大野党は強く非難 ソウルで抗議集会も
韓国の国会で過半数を占める最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表(李在明)は、党の緊急会議で、「国際社会の懸念と反対にもかかわらず、日本は人類最悪の環境災害の道を選んだ。第2次世界大戦のとき、銃と刀で太平洋を踏みにじったとすれば、いまは放射性物質で人類全体を脅かす形だ」と強く批判しました。
その上で、「『核汚染水』を投棄する犯罪に免罪符を与えたユン・ソンニョル政権(尹錫悦)は、非難を避けられない。私たちは最後まで戦う」と述べました。
このほか、ソウルの中心部では、環境運動の市民団体などが集会を開き、「放射性物質の投棄は、海を汚す非文明的行動であり、直ちに中止すべきだ。日本の放出を擁護するユン政権も共犯だ」などと批判しました。
また、韓国メディアは、放出に反対する大学生ら16人がソウルにある日本大使館に入ろうとして警察に取り押さえられたと伝えています。
   台湾外交部「国際的な基準に合致する放出を引き続き促す」
台湾外交部の劉永健報道官は「科学的な問題では専門家を尊重する」とした上で「日本側に対し、国際的な基準に合致する形で放出を行うよう、引き続き促していく」と述べました。
台湾の原子力委員会が福島第一原子力発電所の事故後10年間の海流のデータをもとにシミュレーションしたところ、処理水は主にアメリカ西海岸の方に向かって流れ、一部が放出のおよそ1年から2年後に台湾付近の海域に到達する見通しだということです。
そして、放出の4年後にトリチウムの濃度が最大値に達するものの、台湾の海域に自然に存在するトリチウムの濃度の平均値よりもはるかに低く、安全面の影響は無視できる程度だとしています。
   北朝鮮“人類に核の災難もたらすことためらわない犯罪行為”
東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水の海への放出が始まったことについて、北朝鮮外務省は24日、国営の朝鮮中央通信を通じて報道官の談話を発表し放出の中止を強く求めています。
談話では「国内外の強い抗議と反対を無視したまま、『核汚染水』を海に放出することこそ、人類に核の災難をもたらすこともためらわない犯罪行為だ」と非難しました。
そのうえで「破局的な結果に対する責任はすべて日本が負うことになる」と強調していて、北朝鮮としてはみずからの後ろ盾である中国とロシアの対応を念頭に足並みをそろえる思惑があるとみられます。
   ロシア外務省「完全な透明性を示し、すべての情報の提供を期待」
ロシア外務省のザハロワ報道官は24日、国営のロシア通信に対し「状況の推移を注意深く監視している。日本政府は、放出した水が環境に及ぼす影響について、完全な透明性を示し、すべての情報を提供することをわれわれは期待している」と述べました。
ロシア政府はこれまで中国とも連携しながら処理水の放出に対して懸念を示していて、ロシアの国営テレビの記者は現地からリポートを行い、「放出が始まった。国内外で抗議活動が活発に行われているにも関わらず日本側はこうした措置をとった」などと伝えています。
ロシアの衛生当局は先月、放射性物質を含む水産物がロシア国内に流通するのを防ぐためだとして、日本産の水産物や加工品について「輸入する際の検疫や流通の管理を強化するよう各地の機関に指示した」と発表しています。
   フィリピン外務省「IAEAの技術的専門性を認識」一定の理解示す
フィリピン外務省は、東京電力による福島第一原子力発電所にたまる処理水の放出について、「フィリピンはこの問題については、科学的かつ事実に基づいた観点から、この地域の海洋への影響を引き続き注視していく。島しょ国家として、フィリピンは海洋環境の保護と保全に最大の優先順位を置いている」とするコメントを発表しました。
その上で、放出計画の安全性を検証してきたIAEA=国際原子力機関が、海洋放出を国際的な安全基準に合致していると結論づけたことを踏まえて、「この問題に関するIAEAの技術的専門性を認識している」とコメントし、一定の理解を示しました。
   中国のねらいは?専門家「国際社会全体の信頼維持が重要」
日本政府が処理水の海への放出を開始したことを巡り、中国が反対する姿勢を示すねらいについて国際政治学や原子力政策に詳しい一橋大学の秋山信将教授は次のように話しています。
秋山教授「中国が強硬に反対する表向きの理由は環境汚染に対する懸念だが、中国は日本に対して海洋放出を認めないという姿勢を貫くことによって、外交的に優位な立場を取りたいという思惑があるのだろう。特定の国や地域の反発に気を使うというよりは、国際社会全体に対しての信頼を維持していくことが重要だ。科学的に安全性が証明されたからもうコミュニケーションは不要だと言うことではなく、科学的な安全性と社会的な安心の両方を獲得する必要がある。日本政府は多くの国が反対しないという姿勢に満足せず、相手の立場に立って知りたい情報を根気強く提供することが重要だ」
   IAEA リアルタイムで知らせるウェブサイト公開
IAEA=国際原子力機関は24日、東京電力福島第一原子力発電所で、トリチウムなどの放射性物質を含む処理水を基準を下回る濃度に薄めて海へ放出する活動が計画どおり行われているかをリアルタイムで知らせるウェブサイトを公開しました。
IAEAが公開したウェブサイトでは福島第一原発で処理水を薄めて海に放出するまでの作業がイラストで説明されています。
このなかでは作業の段階ごとに数値と印が表示されていて、計画どおり進んでいれば緑の印、東京電力による対応が必要な異常な数値が示されている場合は赤の印で知らせる仕組みとなっています。
ウェブサイトでは海に放出される水に含まれるトリチウムの濃度も確認することができます。
示されている情報は東京電力からIAEAに提供されたものだということです。
IAEAのグロッシ事務局長は24日、動画メッセージを公開し、みずからウェブサイトを説明した上で、IAEAとして放出作業に引き続き関与し、国際社会への情報公開に取り組む姿勢を強調しました。
《国内の動き》
   西村経産相「廃炉に向け大きな一歩 踏み出した」
西村経済産業大臣は、処理水の放出を始めたことについて、記者団の取材に対し、「福島第一原子力発電所の廃炉を成し遂げること、そして福島の復興を実現していくことは最重要課題だ。海洋放出が始まることで、廃炉に向けた大きな一歩を踏み出した。漁業者の皆さんの思いに寄り添いながら、データを透明性高く公表していくことで安全安心を確保し、なりわいの継続に向けた支援に全力で取り組んでいく」と述べました。
   林外務相「中国側に措置の即時撤廃を求める申し入れを行った」
林外務大臣は、長野県駒ヶ根市で記者団に対し「IAEAの包括報告書には、処理水の海洋放出は国際安全基準に合致しており、人および環境への影響は無視できる程度であるという結論が示されている。中国が現行の輸入規制に加えて新たな措置を導入したことは、国際的な動きに逆行するもので極めて遺憾だ。中国側に対して、科学的根拠に基づかない措置はまったく受け入れられず措置の即時撤廃を求める申し入れを行った」と述べました。
   外務省事務次官 駐日大使と電話会談 輸入停止措置の撤廃求める
中国の税関当局が日本を原産地とする水産物の輸入を全面的に停止すると発表する中、24日午後、外務省の岡野事務次官は、中国の呉江浩駐日大使と電話で会談しました。
この中で呉大使が放出に反対する立場を伝えたのに対し、岡野次官は日本の立場を改めて説明するとともに、科学的根拠に基づく冷静な対応を行うよう求めました。
そして中国側による輸入停止措置について、国際的な動きに逆行するもので極めて遺憾だとして、早期に撤廃するよう強く求めました。
   立民 泉代表「政府は地元の理解や風評被害対策にもっと注力を」
立憲民主党の泉代表は、兵庫県尼崎市で記者団に対し「IAEA=国際原子力機関の報告書により、一定の安全性は担保されたにせよ、地元の漁協も政府の対策や取り組みが不十分だと言っており、そういう声に正面から応えてこなかった岸田政権の対応は批判されてしかるべきだ。政府は、地元の理解や風評被害対策にもっと力を入れて全国民に説明していく必要がある」と述べました。
その上で「国会での説明は当然で、私たちは予算委員会の開会を要求している。2015年に政府は福島県漁連に対し『関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない』と約束しており、岸田総理大臣がその約束を果たしたと考えているのか、問わねばならない」と述べました。
   漁業者「若い漁業者の将来はどうなるんだと悲しくなる」
福島県相馬市の漁業者、四栗久光さんは原発事故の4年後に漁を再開し、おもに刺し網漁を行い、カレイやヒラメなどを水揚げしてきました。
処理水の放出に反対し続けてきたということで、午後1時すぎ、自宅のテレビで、処理水を薄めた上で海への放出が始まったことを伝えるニュースをじっと見つめていました。四栗さんは、「今までみんなで訴えてきたことが通らず放出されてしまい悔しい」と、涙を浮かべて話していました。
相馬市の漁業者は原発事故のあとは回数を制限して漁を行っていて、四栗さんの水揚げ量は今も事故が起きる前の4割ほどにとどまるということです。
四栗さんは、「処理水の放出は長期間にわたり続くということで、その中でもしも問題が起きたらと思うと、若い漁業者の将来はどうなるんだと悲しくなります。早く当たり前に漁ができるようになって欲しい」と話していました。
   都内の鮮魚店 福島県産の海産物 検査で問題なければ販売続ける
都内で鮮魚店など9店舗を運営する食品流通会社は、4年前から福島県産の海産物を現地から仕入れて販売していて、このうち目黒区にある店舗では23日に福島県沖で水揚げされたヒラメやタイが販売されていました。
親潮と黒潮がぶつかるプランクトンが豊富な海で育った福島県産の魚は味がよく、客からも好評だということで、この会社では福島第一原発にたまる処理水が薄められて海に放出されたあとも検査で問題がなければ販売を続けることにしています。
食品流通会社「フーディソン」の山本久美恵さんは、「今後も変わらず、基準値を下回った魚は取り扱いを続け、福島県産の魚のおいしさをお客様に伝えることで漁業者の力になっていきたい」と話していました。
店舗を訪れた70代の男性は、「処理水はあまり気にしておらず福島県や太平洋沿岸の魚をこれからも買うつもりです」と話していました。
   豊洲仲卸会社 風評による実害も「ケアの説明、丁寧に」
東京・江東区の豊洲市場から20あまりの国や地域に水産物を輸出している仲卸会社は、ウニやキンメダイ、ノドグロといった高級品を香港やマカオに輸出しています。しかし、処理水の放出を前にした23日、20年近く取り引きしている香港の飲食チェーンから、24日に予定していた出荷をとりやめて欲しいと連絡が入ったということです。
香港政府は東京や福島など10の都県の水産物について、24日から輸入を禁止するとしています。
取引先からは現地の輸入規制の運用に不透明な部分があり、規制の対象となっていない地域の水産物も含めて、確実に入荷できる見通しが立たないと伝えられたということです。
この仲卸会社はおよそ500万円分の水産物をすでに仕入れていたことから急きょ、代わりの出荷先を探すなどの対応に追われ、仕入れ値を下回る価格での取り引きを余儀なくされたということです。
仲卸会社「山治」の山崎康弘社長は「風評による実害がまさかきょうのきょう、出るとは思っておらず困っている。処理水の放出についての政府の説明には納得していたが、実際に実害が出た以上、理解とは別の問題だ。仕入れの支払いも迫っているので、東京電力や政府には、実害をどうケアするのか、丁寧に説明してもらいたい」と話しています。
   全漁連 「風評被害すでに発生 速やかな対応を」
処理水の海への放出が始まったことを受けて、全漁連=全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長はコメントを発表しました。
坂本会長は「我々が処理水の海洋放出に反対であることはいささかも変わりはない。国が全責任を持って放出を判断したとはいえ、今、この瞬間を目の当たりにし、全国の漁業者の不安な思いは増している。我々、漁業者は安心して漁業を継続することが唯一の望みだ」としています。
そのうえで、「国には安全性の確保や消費者の安心を得ていく取り組みなどを通じて『漁業者に寄り添い、必要な対策を取り続けることをたとえ今後数十年にわたろうとも、全責任を持って対応する』との岸田総理大臣の約束を確実に履行して頂きたい。加えて、現在、すでに発生している風評被害への可及的速かな対応を強く求める」としています。
   風評問題 専門家「買ってくれると自信をもって生産を続けて」
風評の問題に詳しい筑波大学の五十嵐泰正教授は、風評被害を抑えるためのポイントとして、「風評被害は、起こると思うと現実に起こってしまうという性質を持っている。流通業者が『消費者や小売業者が買わなくなる』と思えば、萎縮してしまってその産地の水産物が流通のルートに乗ってこなくなる。消費者の間では、処理水やトリチウムに関しては大分浸透してきた部分もあるので、科学的な判断で冷静に購買行動を続けてもらいたい」と話しています。
また、漁業者など生産者側に対しては「消費者が買ってくれないかもしれないと思って生産量を下げると、加速度的に流通構造の中から閉め出されてしまう。よいものを検査して出すのであれば消費者は買ってくれると、自信をもって生産を続けてほしいし、国もそれをしっかり守っていく姿勢を示し続けてほしい」と話していました。
その上で、国の情報発信については「科学的な安全性を示す上で、事実を伝えることに加えてもう一つ大事なのは発信する主体が信頼されているかどうかだ。政府への信頼感がなければ、どんなに正しい情報でも伝わらなくなってしまう。信頼醸成に正解はなく、丁寧に理解を求めていくしかない」と指摘しました。
   福島 内堀知事 「日本全体の問題 国が前面に立って」
処理水の放出が始まったことを受けて、福島県の内堀雅雄知事はコメントを発表しました。
この中で内堀知事は、まず東京電力に対して「処理水の取扱いは、長期間にわたる取組が必要で、安全性の確保が大前提だ。東京電力は、『廃炉と汚染水・処理水対策の実施者である』という意識を常に持ち、安全や安心が確実に担保される体制を構築するなど、万全な対策を徹底的に講じるよう求める」としています。
その上で、国に対しては「処理水の問題は、福島県だけではなく、日本全体の問題であり国が前面に立ち、関係省庁がしっかりと連携し、政府一丸となって万全な対策を徹底的に講じ、最後まで全責任を全うすること」などと求めています。
   宮城 村井知事「安全安心であること分かってもらえるように」
宮城県の村井知事は、記者会見で「IAEAが科学的に問題ないことはしっかりと立証しているが、安心につながっていないことが風評の引き金になる。安全ということが、安心であるということを国民や諸外国に分かってもらえるように、東京電力だけでなく、政府を挙げてしっかりと説明責任を果たしてもらいたい」と述べました。 
●中国の全面禁輸「想定外」 政治問題化する処理水放出…不信募る日本 8/24
東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を受け、中国が切ったカードは日本産水産物の全面禁輸だった。日本からは「想定外」「異常な対応」との声が上がるが、今後の経済的な影響は小さくない。両国関係が上向かず、政治的解決の糸口も見えない状況だ。
24日までの2日間、上海では「国際漁業博覧会」が開かれた。オーストラリア産マグロの解体ショーなどで盛り上がりを見せた会場には、約30カ国から4千社超が出展。だが、日本企業はわずか数社程度だった。
そのさなか、日本産の水産物の全面禁輸が発表され、関係者には衝撃が走った。「冷凍は在庫があるけれど、今後取引先がどう反応するかわからない」。日本の冷凍マグロを扱う業者の担当者は顔を曇らせた。
農林水産省によると、昨年の中国への水産物の輸出額は、国・地域別で最も多い871億円。このうち467億円と品目別最多で、刺し身などが人気なのがホタテだ。日本の冷凍ホタテの卸業者は肩を落とす。「放出前ですら取引のある数十店からやめたいと言われている。今後が怖い」
ALPS処理水を「汚染水」と呼び、放出に反対し続けてきた中国。中国政府と国営メディアの論調は、「危険」「無責任」一色のため、市民の間では不安が高まっている。これまでは様子見の市民も多かったが、スーパーやネットショッピングで塩が品薄になるなど、過剰ともいえる反応まで出ている。
中国は海洋放出が近いとみられた6月から批判の度合いを強め、「(海洋放出は)コストの安さを見込んだ方法だ」として見直しを求めてきた。
計画が「国際的基準に合致する」とした国際原子力機関(IAEA)の調査報告書が出た直後の7月には、2011年の原発事故から禁止されてきた10都県以外の水産物などへの放射能の検査を強めると発表。通関に2週間〜1カ月程度かかるようになり、鮮度が保てないため冷蔵(チルド)の鮮魚は事実上、輸入が止まっていた。
今回の全面禁輸は全国が対象で、冷蔵や冷凍を問わず、魚類や貝類、甲殻類、海藻なども幅広く適用されるとみられる。
中国にとって、水産物輸入額(20年)トップ10に日本は入っておらず、経済的損失は大きくないとの判断もあったとみられる。香港も24日から10都県を対象に水産物の輸入を停止した。昨年の輸出額は755億円で中国に次ぐ2位。日本にとっては影響は小さくない。
外交上のはたらきかけも目立った。
日本側の協議呼びかけ「何度ドアたたいても返答なし」 ・・・
●日本は尖閣諸島を守れるのか?結局誰かが住むしかない? 8/24
島国日本にとって、海こそが外国との接点だ。その海がこのごろキナ臭い。8月20日放送の「そこまで言って委員会NP」では「ニッポンの海について考える」のタイトルで、福島第一原発の処理水放出問題や北朝鮮のミサイル落下など、海を巡る様々な課題を取り上げた。中でも際どい議論が展開されたのが、尖閣有事に日本の防衛は十分か不十分かを問うもの。
ほとんどの論客が「不十分」と答えたが、田嶋陽子氏(元参議院議員)だけが「十分」と回答。
「中国がいろんなことをやっても日本は海上保安庁しか出していない。それだけの対応で十分ということ。海上自衛隊が出るようになった時は大変だが。」
すかさず山田吉彦氏(東海大学海洋学部教授)が実態を明かす。
「それは表面的なことだけ。近くに潜水艦もいるし、東シナ海周辺に陸上自衛隊の拠点も形成され、自衛隊も動いてどうにか今、均衡が保たれている。」
田嶋氏が質問。「なぜ政治家たちはそういうことを整理して中国と政治をやらないのか。」
これに久々に出演した辛坊治郎氏(元読売テレビ解説委員長)が反応する。「政治の問題が非常に大きい。日中国交回復の時に、中国側から尖閣領有権問題を棚上げにしようと言われて、それをそのまま続けてきた責任が極めて大きい。」
竹田恒泰氏(作家)が付け加える。「しかも民主党政権の時に尖閣諸島を国有化したのもやりすぎだった。せっかく東京都が持とうとしたのに。」
山田氏が解説する。「今考えると尖閣諸島の国有化は、中国のレールに乗ってしまった。東京都が買った場合、中国は政府に物を言っても東京都の所有地であればそれ以上言えない。私はずっと、政府には海洋調査をお願いしてきた。6年ほど前にお願いした時は、許してもらえなかった。2021年に交渉したところ、菅政権でようやく、海洋調査を始めようと納得してもらった。」
番組議長・黒木千晶アナがその背景を聞くと、山田氏はこう続ける。「それだけ中国の進出の歯止めが利かなくなっていることと、中国海警局が準軍隊化してきて脅威の度合いが変わってきたことがある。」
ここで辛坊氏が自分の体験を語る。「日本政府はトラブルを抑えたいから、日本人が島に行こうとするだけで必ず止める。今、自分が乗ってる船を岡山の小さな工場で整備してたら、 海上保安庁の人がわざわざ見に来て『この船ですか、辛坊さんが尖閣に行こうとしてるのは』と言われた。その意図があるなら、船舶検査証出さない、というぐらいの勢い。」
門田隆将氏(作家・ジャーナリスト)が補足する。「日本の政界には親中派が満ち満ちている。とにかく中国の機嫌を損ねないようにしてくれとの意思がものすごく強い。尖閣の灯台の電池交換をしても、そのことすら隠す。」
須田慎一郎氏(経済ジャーナリスト)が隣の小松正之氏(生態系総合研究所代表理事)のパネルを見ながら言う。「小松氏の意見が過激だ。漁業者を居住させ水産加工場を作るとある。」
小松氏が当然のように言う。「だって戦前は日本人が住んでいた。尖閣には漁業権も設定されていたし、漁港もあった。実態がないのに日本の島だと言うのは空虚だ。人がいて、経済活動や社会活動をやらない限り、そのうち中国が上陸して、竹島みたいになってしまう。」この時小松氏が竹島の名を思い出せず、「韓国の独島、日本ではなんだっけ?」と聞いたので笑ってしまった。
山田氏も人がいるべきとの主張。「今がチャンスだ。実は中国側は今、体制を整え直さざるを得ない 。例えば今年の1月に海洋調査に行った。その時中国側は4隻の 海警船プラス2隻、76ミリ速射砲を積んだ軍艦並みの船が来ていた。これに対し日本の海上保安庁は調査を守るために20隻体制をとった。完全にシャットアウトして、下には自衛隊もいた。」
辛坊氏が山田氏を煽る。「上陸したらよかった。そしたら中国が武力で山田氏を排除しに来るかどうか見ものだ。」
だったら辛坊氏と二人で上陸をと黒木アナが促したが、辛坊氏は船で連れて行くことならできると逃げた。
竹田氏がさらに乗っかって言う。「漁民に扮した日本人が難破を装って尖閣に上がり、それを海上保安庁が救助しに行って、寝かさなきゃと簡易テント立てて、お医者さん呼んで病院を・・・」
収拾がつかなくなり、黒木アナが話を戻して山田氏に聞く。「誰かが住まないと守れない?」
山田氏が結論づけて言う。「やはり無人島のままではダメ。」
須田氏が掘ろうとする。「障害になってるのは?」
山田氏がしどろもどろになりつつ言う。「極めて中国と仲がいい勢力。政治家の中にいる・・・」
開き直って政治家の名前を挙げたようだが、さすがに番組がサイレン音を入れてごまかした。防衛力も大事だが尖閣を守るなら誰かが住むしかないようだ。問題は、それが誰かだが。 
●中国の行方を探るうえでのカギは、習近平の「思考の枠組み」の理解 8/24
若者の失業率が過去最悪を更新している中国で、その最高指導者の習近平は最近、次のような言葉を発表した。「祖国と人民が最も必要としている場所で光と熱を発せよ、さすれば悔い無き青春の記憶を残せる……」。若者たちが冷笑したことは想像できるが、目の前の現実とかけ離れたこの文革時代の輝ける記憶も、間違いなく習近平体制の行動原理の一部なのだ。
そもそも習近平とは誰なのか、その思想と権威は何を求め、何を恐れているのだろうか。体制の外交が抱える米中対立の火種は、いずれ全面衝突へと向かうのか――。対中外交の最前線を熟知する元駐中国特命全権大使・宮本雄二氏の近著『2035年の中国 習近平路線は生き残るか』から、東京大学法学部の高原明生教授(現代東アジア政治)が中国を理解するための「思考の枠組み」を紹介する。
今や、どこのどういう立場で仕事をしているとしても、中国の動向から目を離すことはできない。習近平政権と中国の行方が世界に大きな影響を及ぼすことは間違いない。しかし、相変わらず中国政治の奥の院は分厚い帳に閉ざされている。昨年の党大会閉幕式での胡錦濤前総書記の途中退席や、今般の秦剛外相の突然の更迭が明瞭に示すのは、相変わらずの中国の不透明性にほかならない。
日中国交正常化から50年以上が経ったが、国民の間の相互理解はどれほど進んだと言えるだろうか。昨今の日本では、中国を批判し、その否定的な面をあげつらうことを目的にしたような本が書店に多く並んでいる。インターネット上でも読むに堪えない感情的な議論が横行する。こうした知的状況下で、果たして国民の代表である国会議員は正しい政策方針を議論し、決定することができるだろうか。
このような時代に頼りになるのは、その道一筋のプロフェッショナルだ。宮本雄二氏は、長年にわたり対中外交の最前線で活躍した経験をもとに、中国および日中関係に関する深く、かつ冷静な解説を世の中に向けて発信し続けている。私のような研究者を含め、日本社会はそれから大いに裨益してきた。
もちろん、習近平政権下の中国は政治面でも経済面でも大きな変貌を遂げた。過去の中国に関する知識、いわば中国専門家の常識が通用しなくなっている面も確かに多い。だが宮本氏の優れた点は、思考を続け、外交の現場で練り上げられてきた中国理解のための「脳内ソフト」を新しい情報を加味しながら修正し、精緻化してきた点にある。
根本的に重要なのは「人物」の理解
著者は本書において、第3期に突入した習近平政権が直面し、今後の中国を理解する上で鍵となる諸問題を余すところなく取り上げて俎上に載せている。新書にもかかわらず、内容は包括的で掛け値なく読み応えがある。
そもそも習近平とは誰か、どのような人物なのか。習近平という、ほとんど独裁的と言える程の権威と権力を獲得した指導者を理解することが、中国の行方を探る上では根本的に重要な課題であることは間違いない。
習近平の人格や思想に影響を与えた要因は何か。本書は、党と自分の信念に忠実に生きた父親、習仲勲元副総理の影響や、青年時代に陝西省の農村に下放されて幹部として務め、統治機構の末端を支えた経験、そして福建や浙江、上海といった沿海地方を指導した際に政治、イデオロギーを重視した経歴などにつき紹介している。
確かに、文化大革命についての習近平の評価は、当時反党分子として吊るし上げられた父親とは異なるように思われる。息子は貧しい農村に下放されて苦労したのだが、その艱難辛苦を乗り越えて自分を鍛えることができた、といった成功体験として文革をとらえているのだろう。
7月10日の『人民日報』が掲載した評論記事は、青年たちに次のような呼びかけを行った。西部地域や農村など、「祖国と人民が最も必要としている場所で光と熱を発せよ、さすれば悔い無き青春の記憶を残せるのみならず、現場での錬磨から一生ものの精神的な富を得ることができる」――就職難にあえぐ今の若者たちに対し、正しい職業観を持てと呼びかけたのだが、事実これが最高指導者の青春の記憶なのだろう。中国のネット民たちは、この評論に冷笑を浴びせたと伝えられるのではあるが。
中国で盛んに学習されるようになった習近平思想とは何か。本書は、習近平思想の特徴として、政治とイデオロギーの重視、党の指導の強調、党組織の強化、国粋主義的なナショナリズムを挙げている。そして問題はこうした思想を掲げてどのような実績が上がるかであり、国民の反応によっては将来路線闘争が起こる可能性もあると指摘する。
まさにその通りであろう。かつてケ小平は、文革の反省から集団指導制を導入し、指導者の個人崇拝を厳しく戒めた。その際の敵役が華国鋒であり、毛沢東の指示と決定の堅持を唱えたが、それよりも実践の結果が大事だと主張したケ小平らに打倒された。習近平も、いつかその轍を踏む日が来ないとも限らない。
習近平につきまとう「統治の正当性」への不安
では、習近平政権の安定性がこれから揺らぐことはあるのか。本書は、選挙のない中国で習近平は「統治の正当性」の欠如を意識しており、国民の支持を失うことを恐れていると指摘する。これまでは生活水準の向上によってその支持をつなぎとめてきたが、次第にそれだけでは国民は満足しなくなる。
習近平は反腐敗闘争や環境の改善を進め、現時点では国民はまだ政権を支持している。しかし、昨年までの厳しいゼロ・コロナ政策と国民生活への管理と締め付けの強化に国民は不満を募らせた。オミクロン変異株の流行、ロックダウンへの抗議活動の広がり、そして準備なき制限措置の解除により、習近平の指導者としての権威に陰りが生じたことは否定できないと本書は指摘する。
さらに著者が問題として取り上げるのは、中国共産党の経済ガバナンスだ。第一に、中国は大きいので政策の微調整が難しい。第二に、市場化に乗り出してから、まだ40有余年しか経っていないのに経済は日本の1970年代か80年代の水準に達している。この経済実態に官僚機構は追い付けていない。そして第三に、官僚たちが指導者の優先順位を忖度して動く結果、多くの政策目標を予め検討し、調整して同時に追求することが難しい。さらに第四には、統制の強化と「経」から「政」にガバナンスの重点がシフトしたことが影響を及ぼしているという。
これらも大変興味深い指摘だ。どの国の官僚機構もそうかもしれないが、中国のそれが特に苦手としているのが部門間協調だ。共産党の大きな役割が実はそこにあるのだが、なかなかうまくいかず矛盾が起きる。
例えば、経済発展のために対外交流を盛んにすべきなのに、国家安全のためと称して外資企業の社員を拘束してしまう。そして統制の緩和と強化のサイクルは、政治と経済との矛盾という、社会主義市場経済の孕む根本的な矛盾の所在を指し示す。すなわち、経済活性化のために統制を緩めると、私営企業が強大化する一方、共産党の力が相対化される。それに不安を募らせ、やがて統制を強化すると、その結果として経済が活力を失う。
次の指導者は統制緩和に舵を切るだろうが、それまで中国の社会安定はもつのだろうか。社会がより自由だった江沢民時代の方が安定していたという本書の指摘は大変興味深い。
本書で一貫する「誰がどのような行動を取ればよいか」の考察
では、習近平政権の外交は如何なものか。日本人は忘れがちだが、内政の安定のためには外交の安定が欠かせない。日本と同様、中国にとっても最も重要な国は米国だ。本書は、現在の中国指導部の対米観は甘いという。米国議会は「一つの中国」の原則を否定する方向に動き、中国側の外交的レッドラインを試している。それに対し、中国は軍事演習の強化や戦闘機による台湾海峡の中間線越えなどで米国の軍事的レッドラインを試している。
だが中国自身が米国の地位を脅かしている今日、米国が譲歩する可能性は少ない、しかし中国の国粋主義的ナショナリズムは強く、米中は衝突への道を歩んでいると本書は憂う。
軍事力の増強を最重要課題とする中国の、軍拡のペースは2027年までは落ちないと著者は予測する。だが経済の減速もあり、中国が米国を相手に圧倒的優位に立つことはできない。
本書によれば、中国は米国と軍備管理、軍縮の話し合いに入り、東アジアで安全が保たれる仕組みの構築に尽力すべきであり、日本もそのための環境整備に努め、中国外交の路線修正を促す外交を強化すべきだ。日中関係については、それを競争的共存関係と捉え、中国との間に平和で安定した協力関係を築くことが日本の国益に資するという基本的な考え方は依然として正しい、中国との関係がもたらすマイナスを最小化し、プラスを拡大する「普通のあるべき外交」をしっかりやっていくのがよいというのが宮本氏の主張である。
外交に関する本書の分析を読んで感嘆するのは、それが単なる評論ではなく、事態の改善のために誰がどのような行動を取ればよいか、現実的な政策の考察が常に行われていることだ。プロの外交官にとっては当然のことかもしれないが、現状分析に当たる学者はこの姿勢をよく学ぶ必要がある。
対外政策決定に関し、現状に鑑みて、日本と中国に共通することが二つあるように評者には思われる。一つには、どちらも一方における競争と、他方における協力を同時に進めなければならない。そしてもう一つだが、競争と協力という矛盾する政策を巧みに同時進行できるかどうかには、どちらの国でも内政の事情が強く反映される。
安全保障の観点からは、相手を強化することになるので協力の追求はナンセンスだ。だが、協力せずに経済が衰弱すれば、競争は不可能になる。二つの相矛盾する真実の間で調整を図り、対外関係を安定的に運営できるかどうかは、ひとえに指導者の政治的な力量にかかっている。外交の基本も内政にある。
本書は内政と外交の全体をバランスよく捉えた著作である。ここで示される思考の枠組みを押さえておけば、次々と新たに発生する事象を分析し、政策を考える上でも役に立つ。優れた現状分析は、未来の事象を理解するためにも大いに活用されるべきであり、長きにわたって大きな価値を有するものなのだ。
●結婚式離れに喘ぐブライダル業界を補助金で救う必要は…税金の無駄遣い 8/24
森まさこ首相補佐官が自身のXで投稿した「ブライダル補助金」が物議を醸している。経済評論家の渡邉哲也さんは「ブライダル業界はコロナ以前から淘汰の波にさらされていた。そんな業界をあえて補助金で救う必要があるのか、ということがこの問題の本質だ」という――。
少子化対策のようにみえるが全くそうではない
森まさこ首相補佐官の「ブライダル補助金」に関するツイート(X)が炎上している。
内容的には、「先日、経産省サービス産業課よりレクを受けました。議連の要望が叶い新設されたブライダル補助金の第一次、第二次公募の結果について報告を受け、夏の概算要求に向けた対応も説明を受けました。これを受けて秋に議連を開いて議論して参りたいと思います」というものである。
ブライダル補助金は一見、少子化対策の一環のようにみえるが、実はそうではない。ブライダル業界を支援するものであり、インバウンドを支援するもので「外国人による日本での挙式を促す補助金」である。確かに結婚式場などウエディング業界には恩恵があるが、外国人への補助金政策ともいえるものなのだ。
特定の業界だけが優遇されてはいけない
また、これに関係して、森まさこ補佐官の政党支部が、結婚関連企業大手テイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)から100万円の献金を受けていたことも、大きな批判の的になっている。状況次第では贈収賄が成立する案件でもある。
この問題であるが、政治家が業界団体などからの陳情を受けることは当然の話であり、憲法で定義された請願権の一部といってよい。ただし、そこに特定の業者との癒着や金銭の授受があってはいけないわけだ。同時に陳情を受けたとしても、それが国民全体の利益になっていなくてはいけない。特定の業界だけが優遇されてはいけないのである。
そもそも、ブライダル業界を救う必要はあるのか
確かにウエディング業界は、コロナで大きな影響を受けただろう。ただし、それはウエディング業界だけの話ではなく、多くの業界に共通するものである。
また、コロナがなくとも、結婚式というものの在り方が大きく変容しており、「なし婚」「地味婚」が増え、結婚式場での派手な結婚式を行うカップルは減少し続けていた。この問題の本質は、核家族化が進み、職場などの人間関係も希薄化しており、派手な披露宴を無駄と考える人が増えたことであると考える。つまり、ブライダル業界はコロナ以前から淘汰の波にさらされていたわけだ。そんな業界をあえて補助金で救う必要があるのかという問題なのだ。
これはウエディング業界だけの話ではない。かつて、百貨店と銀行はつぶれないといわれていた時代もあった。しかし、バブル崩壊以降、百貨店の数は大きく減少し、銀行も淘汰の波にさらされ続けている。これは時代の変化によるものであり、受け入れざるを得ないものである。
大学や高校などの学校も同様であり、外国人留学生と巨額の補助金で学校を維持するのは本末転倒であり、日本人の税金が無駄に使われている実例といえるのだろう。
省庁と議員による利権構造
なぜ、このような無駄が許されるかといえば、各省庁と議員による利権構造がそこに存在するからといえる。
多くの学校法人は文部科学省からの天下りを受け入れ、学校は各種補助金獲得のために奔走する。令和4年度の私立大学等経常費補助金だけで約3000億円であり、他にもさまざまな補助金が支給されている。また、外国人留学生制度の予算は264億円程度となる。それは本当に必要なのかということなのだ。
確かに大学には研究機関としての役割もあり、それが日本の発展を支えている側面があるが、それは一部の大学であり、ただ単に学位を得るだけの場になっている大学も多い。
学生から選ばれなくなった大学をわざわざ補助金で救う必要があるのか、という問いは、今回のブライダル補助金とまったく同じ構造になっている。
誰も注目しない「予算決定までのプロセス」
これらの問題の根幹にあるのは、省庁別の縦割りと政官民が一体となった利権構造ということになる。法整備面ばかりが注目されるが、国の基本は予算である。年一度の通常国会では予算審議を行い、予算を決定する。国が行う事業はほぼすべてこの予算で決まり、予算が執行されることでさまざまな事業が行われるわけだ。
だが、予算の決定までのプロセスに関しては、ほとんどの人やメディアは注目していない。ここに大きな問題があるといえる。1月の通常国会が始まり予算案が提出されると、翌年度の予算編成が始まる。各省庁が翌年度以降の事業について、有識者や業界団体などを呼んで、編成作業を開始する。そして、7月には「骨太の方針」が決定する。
実は「経済財政運営と改革の基本方針」通称骨太の方針が一番の予算の肝であり、ここに入っている文言が予算に反映されるわけだ。これは各省庁と自民党の「部会」、政調会で調整され、総務会で機関決定。これらを自民党と政府の間で調整し、閣議決定する仕組みになっている。
国益に反していてもゴリ押しで通ってしまう
良くも悪くも、ここに長年政権を担ってきた自民党の正と負が存在するのである。国会は17の委員会で構成され、各専門分野別に個別の委員会となっている。財政金融や厚生労働、外交防衛など専門別に分けられているわけだ。どうしても、国会中継が入る予算委員会ばかりが注目されるが、それは最終的な調整のための委員会であり、根本は個別の委員会で決定するのである。
そして、自民党には各委員会に合わせ部会制度というものがある。部会には役人も出席し、予算や事業についてのレクチャーを受けるとともに各議員の陳情案件などを審議するわけだ。これを平場の議論と呼ぶ。部会には各部会の議員(一般的に族議員と呼ばれる)以外でも自民党国会議員であれば誰でも参加できる。一般的に国会は9時から始まるため、部会は国会の準備を兼ねて8時から始まる仕組みになっている。実はここで政策と予算のほとんどが決まってしまうのである。
問題は、ここに役人たちの利権と議員の陳情案件が多く含まれることであり、それが国益に反していてもゴリ押しで通ることがあることにある。
国民感情に反した政策や予算が連発される理由
さらに、予算は基本、前例踏襲であり、時代にそぐわなくなっても、無駄になってもなかなか削られないことも問題だ。自らの省庁の予算を増やすことが役人の手柄であり、族議員はそれを後押しするとともに自らの実績にするわけだ。これらが間違った方向で出ているのが、国民感情に反する各種政策や予算ということになる。
議員は選挙で選ばれる。そして、役人と異なり各分野の専門知識を持つ人は少ない。議員を育てるのが部会制度であるが、同時に長年のなれ合い構造による問題も生じるのである。そこで、政権交代でこれを壊すという話になるが、過去の政権交代の例を見てもわかるように、それは簡単ではなく、逆に議員側が素人集団の集まりになってしまうため、役人たちに牛耳られることになる。
コロナ禍に新たな利権が生まれ、暴走している
また、コロナは予算を大きく変えたことも大きい。景気対策、雇用対策等で膨大な新規の事業計画が生まれ、それを個別に丁寧に精査することなく、緊急性を優先する形で即時予算化された。ここに、新たな利権が生まれ、それが暴走しているともいえる。その最たるものが森補佐官の「ブライダル補助金」であるといえる。
今回、森まさこ首相補佐官の不用意なツイートで発覚したこの問題であるが、先述のようにこれはブライダルだけの問題ではない。すべての分野で同様の案件があり、時代にそぐわなくなっても続いている補助金が多数存在する。本来、このような問題を指摘し改善を求めるのが野党の役割といえるが、それが機能していないのが日本の最大の問題であり、またメディアの役割でもあるといえる。
●9月結成「百田新党」は岸田自民党や日本維新の会を駆逐する「巨大爆弾」か 8/24
作家の百田尚樹氏とジャーナリストの有本香氏が9月に「百田新党(仮)」を結成するべく、準備を進めている。知名度抜群なだけに、自民党に不満を持つ層や、日本維新の会、参政党への支持にも影響を与えることになりそうだ。
作家による新党では、石原慎太郎元都知事が結成した「次世代の党」などがあるが、長続きはしなかった。ベストセラー作家であり、ネット番組では舌鋒鋭く事象を解説する百田氏は、政治家としては素人。それだけに「長続きはしない」(自民党閣僚経験者)との冷ややかな見方もある。
百田氏は自身のYouTube番組で、LGBTなど性的少数者への理解増進法が成立すれば、社会の根幹を形成する家庭や皇室制度が崩壊し、日本が破壊される恐れがあるとして「保守新党を新たに立ち上げる」と宣言した。さらに、岸田文雄総理が法案成立に向けて動いているとして、支持できない、との立場を鮮明にしている。
本気度を疑う見方は強かったが、LGBT理解増進法が成立したことで、百田氏は「衆院選、候補者を立てます」と断言。
焦点となるのは、百田氏が自ら党首として陣頭指揮に立つかどうかだ。ネット番組でのやりとりでは、有本氏が「私、党首やりませんからね」と言うと、百田氏は「ワシは雑用係や」と応じるなど、けむに巻いている。
教訓とすべきは、小池百合子都知事が立ち上げた「希望の党」だ。2017年の衆院選では台風の目とされたものの、小池氏自身が衆院選への出馬を見送ったことで、求心力を失った。さらに小池氏の「排除」失言もあり、235人の候補を立て、わずか50議席の獲得で惨敗した。
百田氏には、党首として衆院選に出馬する覚悟があるのか。その言動は、岸田総理の発言以上にニュースになることだろう。
●公務員の給料は「政治主導」でもっと上げていい 8/24
国家公務員の初任給を1万円以上引き上げるよう、人事院が内閣・国会に対して勧告した。大卒・高卒の初任給をともに1万円超引き上げるのは、33年ぶりのことだという。しかし今回に関しては、公務員の給与アップのスピードを政治的にさらに加速することが適切だったのではないか。(経済評論家 山崎 元)
国家公務員の給与改定は 人事院勧告にプラスαが欲しかった
人事院は、8月7日に2023年度の国家公務員の給与改定に関して、内閣と国会に勧告を行った。勧告文書は川本裕子総裁から岸田文雄首相に手渡しされた。
国家公務員の給与は人事院の勧告に基づいて国会で承認されて決まり、勧告はある程度以上の規模を有する民間企業の給与水準を参考にして決定されるのが大まかな仕組みだ。
今回の人事院勧告では、国家公務員を志望する学生が減っている近年の傾向に鑑みて、大卒で1万1000円、高卒で1万2000円の初任給引き上げを行ったことが、ニュースの見出し的には「目玉」になっている。勧告後の大卒の初任給は24万9640円だ。
全体として、若手の給与の伸びを大きくするバランスになっていて、全体の平均で見たベースアップはプラス0.96%だ。金額では月額3869円に相当する。また、ボーナスが年間4.40月分から4.50月分に0.10カ月分増額され、増額分は期末手当の増と勤務の評価に基づいて支給される勤勉手当分に二分されている。
人事院の資料によると、モデルケースで試算した定期昇給分を加えると月収で約2.7%、年収で約3.3%の増加率になるという。
しかし、昨今の3〜4%程度の消費者物価指数ベースのインフレ率を考えるとしても、定期昇給込みでもインフレによる生活費の上昇をカバーできるかが危ぶまれる。加えて、そもそも、物価上昇率と比較すべきはベースアップ率なので、国家公務員の報酬は物価上昇に全く追いついていない。
これでは「官庁の中の官庁」とも呼ばれる財務省の職員をはじめとして、国家公務員が「デフレ好きの、インフレ嫌い」になるのは無理もないことであるように思われる。天下国家の観点から政策を論じる公務員も、天下国家の議論以前の生活実感に無意識のうちに影響を受けることがあるのではないか。貧乏が身につくと、周囲も貧乏にと、すなわちデフレを望むようになる。
「安いニッポン」解消の トリガーは賃上げ
今年から来年にかけてはマクロ経済政策上、デフレからの脱却を果たし、賃上げとマイルドなインフレの好循環を確立できるか否か重要な岐路に立つ重要な時期だ。
公務員の給与は、純然たる公務員だけでなく多くの職場で参照され影響力が大きい。現在のような仕組みだと、インフレの環境下では公務員の給与の伸びは参照される民間企業の給与の伸びを後追いする形になるので、公務員は「賃上げとマイルドなインフレの好循環」を実感するのが1年遅れることになる。
人事院の勧告は、現在の仕組みではこの程度で仕方がないとして、今回に関しては、政治的に特別にインフレ対応加算を考えてよかったのではないか。人事院に追加の勧告を求めるような形で公務員の給与アップのスピードを政治的に加速することが適切だったのではないか。
「賃上げ」が十分に行われて国民が年率2%程度のインフレを「常態」だと感じてくれるようになれば、日本銀行にも現在の金融緩和政策を見直す余地が生まれる。すると、為替レートの円高を通じて国民の生活費の抑制にもつながるような好都合な波及効果を生む可能性がある。「安いニッポン」を解消するトリガーは明らかに賃上げにある。政治が動かせるのは、公務員の賃金だ。
主には来年の春の民間企業の賃上げが、手取りベースで物価上昇を上回る「実質賃金の上昇」を実感させるものであるかどうかに当面の日本経済の行く末が懸かっているが、岸田政権はその気になれば、公務員の給与の特別加算を通じて賃上げの流れをつくることができるはずだ。
東大生の「公務員離れ」 若手優秀層に不人気な職場に
公務員の報酬水準がいかにあるべきかは、古くから論じられていて、なかなかスッキリした結論の出ない難しい問題だ。
今回の報告資料を見ると、人事院が20代から30代の若手人材において公務員離れとも呼ぶべき傾向に強い危機感を持っていることがうかがわれる。
ここ十数年くらいの傾向だが、上級職を目指すような学業優秀層が、職場として国家公務員を選ばなくなっている。端的に分かる現象は、上級職公務員の採用者の中の東京大学卒業者の比率が下落していることだ。
東大の卒業生が公務員に向いているとも限らないし、出身校や性別などが多様化するのは職場の一般論として好ましいことだ。しかし、事実上どこにでも就職できるような競争力とその背景にある問題処理能力を持った人材が集まらなくなることには損失がある。この間、組織としての官庁が得たものはあったけれども、重要な何かを失ったことも間違いあるまい。
職場としての公務員が不人気になったことの影響があるのだろう。東大では、学部に進む際の進路振り分けで法学部の人気が低下しているという。同学部のかつての威光を思うと隔世の感がある。
加えて、国家公務員にあっては、20代後半から30代半ばにかけての年代で離職者が増えていて、過去(人事院の文書では10年前)との比較で、この年代の人数比率が大きく低下している。
かつてコンサルティング会社に在職したこともあり企業の人事に詳しい川本総裁は、官僚組織が「最優秀層の学生が集まらなくなって、若手の離職者が増えている会社」のような、危機的な状況だとみているはずだ。企業なら、大規模な人事コンサルティングプロジェクトが必要な状況だ。
今回の勧告でも、20代後半から30代前半にかけての公務員の処遇が民間企業と比べて劣後することを解決しようとする努力の跡があるのだが、全体の年代別の給与構造を変えずにこの年代の条件アップを試みることには限界がある。
20代後半から30代前半が、お金を使って「人生を楽しむ能力」が最も高い年代に当たるとの意見があるくらいで(例えば書籍『DIE WITH ZERO』を参照)、この年代で十分お金が使えない給与カーブは痛い。
優秀な官僚を維持して 「政治主導」へのカウンターパワーを作れ
もっとも、国家公務員が優秀層の人材にとって魅力的な職場ではなくなった理由は、経済条件だけではあるまい。
民主党政権が成立する前後から盛んになった官僚バッシングは、形を変えつつ今日に引き継がれていて、官僚はかつてほど「尊敬される職業」ではなくなった。
大臣・副大臣・政務官などの少数の政治家が乗り込んで大きな官庁を差配しようとした、経営的に「無理ゲー」であった民主党型の政治主導は、首相官邸の権限を強化して官僚の幹部人事に介入する形にバージョンアップされて安倍政権・菅政権に引き継がれ、今日の自民党型の政治主導を形作った。このように官僚の政治家に対する立場が弱体化したことは、職場としての官庁の魅力を削いでいる。
ただし、政治主導が一概に悪いとは言えない。国民が官僚をコントロールできるのは政治を通じてだし、政治家の側がレベルアップするともっとうまく機能するはずだと考えることはできる。しかし、現実の政治と政治家を考えたときに、若手官僚や官僚志望者の信頼を得ることは容易ではなさそうだ。
官僚は、民間企業よりも雇用が安定しているし、相対的には先の見通しが立ちやすい職場だ。若手の官僚人材を確保するためには、初任給など目先の経済条件の改善だけでは限界がある。将来、どのような仕事ができるのかが大切だ。
また、官僚がよき公僕であり続けるためには、それを支えるに十分なプライドを持てることが必要だ。優秀層の人材は元々競争意識の高い人たちなのだから、広く社会的にもアピールできるステータスを設計する工夫が必要だ。官庁内の人事だけをモチベーションに「頑張れ」というのでは無理がある。
誰が優秀なのかが外部にも分かりやすく伝わる仕組み、政策に関わった官僚個人の名前がオープンに伝わる仕組みなどの工夫が必要なのではないか。
また、「決まったことは絶対に忠実に実行する」ことを条件に、「決まるまでは、官僚個人が政策に意見を言っていい」という慣例作りが必要であるように思う。論文を発表するなり、メディアで発言するなりを、官僚個人の責任で行うといい。意見の出ない官僚は、論文を書かない学者くらい無益だと思われるくらいでいいのではないか。
国民は、その問題の当事者である官僚の知見を知りたいだろう。また、官僚の意見は、政策面での政治家の暴走を防ぐ上でも有効だろう。この国の政策には議論が圧倒的に不足している。
日本の国民が、行政に全く素人の政治家を受け入れ、選挙を一種の人気投票のようなものとして許容してきた背景には、「政治(家)は頼りなくても、日本の官僚は優秀だ」という信頼があった。しかし、今その信頼が崩れようとしている。官僚組織の存在意義に関わる危機ではないか。
公務員の賃上げを祝う 「ムード作り」が政治家の仕事
高邁(こうまい)な政策的理想の追求は必要なのだが、何事もお金で評価されやすい今日にあって、お金の問題はやはり重要だ。
例えば、ざっと3000万円前後と推定される事務次官の年収は、カテゴリーチャンピオンの報酬としていかにも安い。上場企業の経営者の年収が不況でもデフレでも上がり続けてきた今日、あまりに大きな差が付いた。これでは、部下たちも力が出まい。
人事院的な用語では「勤勉手当」に相当するのかもしれないが、少なくとも局長級以上の官僚は、業績や能力の評価によっては、給料収入を凌駕するようなボーナスがもらえる仕組みがあっていいのではないか。
また、民間の優秀な人材の引き抜きも、期限付き・権限なしでお金だけ払って、まるで動物園が珍獣をレンタルするような形で雇うのではなく、十分な権限と立場とを与えた上で行うべきだろう。
公務員の人事制度については、根本的なコンサルティングプロジェクトが必要な大問題なので、話題にきりがないが、当面、公務員の賃金を思い切って引き上げることは大いに望ましい。この点は、はっきりしている。
すでに、税収は毎年の政府見通しに対して上振れしているが、「賃金の上昇を伴うマイルドなインフレ」となれば、人件費の増加に見合う分の相当部分が税収として戻ってくるはずだ。もちろん、賃上げは将来にわたって収入が増えることが予見できる給料を中心に行うべきだ。ケチな一時金では、貯め込まれてしまって消費に十分回らないことは過去の給付金で経験済みだろう。
各種の学校の先生、自衛官、福祉の仕事の関係者など、公務員の給料に連動して賃上げを提供したい関係者は数多存在するし、公務員人材の質的・量的確保は喫緊の課題だ。
「民間企業も、当然後に続くだろう」という前提の下に、まず公務員から率先して「実質手取りでプラス」の賃上げを当面「政治主導で」行うといい。その間に、報酬のベンチマークの決め方も含めて、公務員の人事制度を根本的に見直すといい。元々はコンサルティング業界のご出身である川本総裁には、そのための道作りを期待したい。
一方、岸田首相に期待するのは公務員の給与を当面追加で5%くらい上げる政治主導の官製賃上げだ。官民双方で賃上げを祝うムードづくりが政治家の仕事だ。小手先の対策よりも少子化に歯止めをかける上で効くだろうし、国力の向上を通じて、米国から旧式の武器を高値で買うよりも長期的にはよほど国防の役にも立つのではないか。
お金は「人に対して」有効に使いたい。
●安倍元首相襲撃事件と「政治の力」 有田芳生氏が語る自民党と教団の関係 8/24
2022年7月の参院選期間中に安倍晋三元首相を襲撃・殺害した山上徹也被告(42)は、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の熱心な信者の息子だった。教団への恨みが犯行の原因で、安倍氏は、教団との関係が深かったことで標的とされた。旧統一教会の問題を40年にわたって取材してきたジャーナリストで前参院議員の有田芳生氏(71)は、宗教で崩壊した家庭に育った「宗教2世」の問題をこれまでも取材してきたが、なぜ、事件は防げなかったのか。有田氏に、教団と政治との関係について聞いた。
国会議事堂の西側には、衆参両国会議員の活動拠点となる地上12階建ての3棟のビルがある。有田氏が現職時代に使っていた北側の参院議員会館事務所からは、自民党本部が見渡せた。安倍元首相が銃撃された後の雨の日に事務所の窓から見た光景は、今でもはっきりと覚えている。
「自民党本部の敷地内に設けられた献花台に長い列ができ、母親に連れられた子どもたちも並んでいました。安倍さんも、まさか旧統一教会の問題で白昼に暗殺されるとは思ってもいなかったでしょう。不幸な亡くなり方をされたと思います」
裕福な家庭に生まれた山上被告を一変させた旧統一教会
複雑な思いもあった。ジャーナリストとして長年、宗教問題を取材し、旧統一教会の霊感商法や過剰な献金の問題を追及してきた。2010年に参院議員に当選してからも、国会の質疑で旧統一教会の被害者問題を取り上げてきた。それでも、国が抜本的な対策に動くことはなかった。
殺人などの罪で起訴された山上被告は、兄と妹を持つ3人きょうだいの次男として育った。もともとは裕福な家庭だったが、父親が亡くなった後に母親が旧統一教会の熱心な信者になり、生活が一変した。母親は家族の財産を次々に売却し、最後には家族が住んでいた自宅も売ってしまった。献金の総額は1億円を超えるという。多額の献金が原因で、02年には破産宣告を受けた。生活は困窮を極め、山上被告自身も大学進学を諦めた。
山上被告の兄は病を抱えていた。兄の医療費を工面するため、05年に死亡保険金の受取人を兄にして自殺未遂をしたこともある。その時は一命を取り留めたものの、自らの命を捨ててまで助けようとした兄は、15年に自殺した。
「山上被告の家庭は不幸でした。私は旧統一教会問題に関する講演を全国各地でしていますが、山上被告のことを話すと、泣きながら聞いている人もいます。だからでしょう。山上被告には、大事件を起こした犯人であるにもかかわらず、全国からたくさんの食料品や現金の差し入れが届いています」(有田氏)
尾行、脅迫、暴行… 取材中に受けた嫌がらせ
有田氏が旧統一教会を取材するようになったのは1980年代半ばからだ。後に、週刊誌「朝日ジャーナル」の旧統一教会霊感商法追及キャンペーンにつながる。
「もともと旧統一教会は、花、ハンカチ、靴下などを販売して教団の資金を稼いでいました。しかし、それでは大した額にはなりません。75年7月に文鮮明(ムン・ソンミョン)教祖から日本の組織に送金命令が出され、そこから霊感商法に移っていきました」
霊感商法に使われたのは壺、多宝塔、印鑑、ペンダント、指輪など。何ということもない商品が、原価の数十倍で販売されていた。記事が掲載され始めると、有田氏は嫌がらせを受けた。
「自宅への無言電話、尾行も受けました。地下鉄の階段で殴られて『俺の顔、覚えとけよ』と言われたこともありましたね。脅迫の手紙にはカッターナイフが仕掛けられていて、封を開けると指が切れる仕組みになっていました」
有田氏が統一教会を取材し始めたのは、日本経済がバブル景気に沸いていた時代だ。それも90年代初めに終焉し、その後に訪れた不景気は様々な社会問題を引き起こした。人々の心に不安が広がっていったころ、旧統一教会の問題がテレビで話題になり始めた。92年、人気歌手の桜田淳子さんがソウルで開かれた教団の合同結婚式に参加したことは、雑誌やテレビの芸能ニュースで繰り返し取り上げられた。93年には、新体操の元選手の教団脱会騒動も話題になった。
「私も、92〜94年の間に旧統一教会に関する記事を100本以上書きました。しかし、新聞やテレビニュースでは結局は芸能ネタ扱いでした。霊感商法が社会問題として取り上げられることは、ほとんどありませんでした」(有田氏)
オウム真理教事件で変化した報道
一時は世間を騒がせた旧統一教会も、次第に関心が失われていった。特に、95年にオウム真理教による地下鉄サリン事件が起きてからは顕著になった。14人が死亡、約6300人が被害に遭った世界初の化学兵器テロに、ニュースはオウム一色になった。旧統一教会の問題は話題にすらのぼらない。有田氏への仕事依頼も、オウム真理教に関するものがほとんどになる。「週刊誌に旧統一教会のネタを売り込んでも通らず、編集者からは『オウムに比べるとね…』と言われるばかりでした」。
しかし、教団はこの後からだんだんと、自民党議員との関係を深めていったとみられている。2022年9月に自民党が公表した調査結果によると、所属する国会議員379人の半数近くにあたる180人が旧統一教会と何らかの接点があった。21年の衆院選や22年の参院選でも、旧統一教会の友好団体は自民党の候補者と「政策協定」を結んでいたことが報道された。その内容は、憲法改正、安全保障の強化、家庭教育支援法などの制定、LGBT問題や同性婚合法化の慎重な取り扱いなどを求める内容だ。こういった政策への賛同を明記した「推薦確認書」に署名を求めていた。
自民党と旧統一教会の関係を、有田氏は歴史的にこうひもとく。
「1954年に韓国で設立された旧統一教会は、58年に密航してきた信者が日本で布教を始めました。米国でもそのころから布教を始めています。68年には、『国際勝共連合』を韓国と日本で設立しています。宗教団体として政治家に接近したら怪しまれるだけだから、『共産主義に勝つ』という目的を掲げることで接近していったのです。安倍さんの祖父である岸信介元首相とも、国際勝共連合を通じて関係を深めていきました」
安倍家と旧統一教会の深いつながり
安倍氏と旧統一教会の関係も、祖父の代から続くものだ。有田氏は、自民党の大臣経験者から「旧統一教会と自民党の関係は安倍さんの仕切りだった」と聞いたという。
教団も、安倍氏を重宝していた。安倍氏は2021年9月、韓国で開かれた旧統一教会の関連団体であるUPF(天宙平和連合)の集会に、約5分間のビデオメッセージを寄せた。山上被告は、この動画を見て犯行を決意したと言われている。その中で安倍氏は、このように語っていた。
〈こんにちに至るまで、UPFとともに、世界各地の紛争の解決、とりわけ、朝鮮半島の平和的統一に向けて、努力されてきた韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁をはじめ、みなさまに敬意を表します〉
韓鶴子氏は創始者である文鮮明氏の妻で、現在の旧統一教会の教祖である。教団側にとっても、首相退任後も自民党に強い影響力を持つ安倍氏は、重要な存在だった。
それでも有田氏は、安倍氏と教団の関係について不思議に思っていることもある。
「安倍さんが03〜04年に自民党の幹事長を務めていた時、私が『旧統一教会が近づいてくるでしょう?』と聞いたら、『しょっちゅう来ますよ』と言っていました。『お会いになるんですか?』と聞いたら、『会わないようにしています』と。そのころはまだ、自民党の政治家は教団と距離を置いていたんです。教団からすると、イベントに祝電ももらえない時期もありました。それが霊感商法を問題視する声が風化していったことで、安倍さんは自らビデオメッセージを出すほど安心して付き合うようになっていました」
有田氏はオウム真理教などの取材を通じて、警察幹部たちとも関係を持っていた。ある警察幹部から聞いたあるフレーズが、今でも耳に残っているという。
「オウム事件の捜査終了直後、警察幹部は『次は統一教会だ』と張り切っていました。しかしその後、何の動きもなく、10年ぐらいたった時に、この幹部に摘発できなかった理由を尋ねました。すると、『政治の力だよ』と言っていました」
政治の力⁉ 安倍氏の事件は、「政治の力」で抑えきれなかったものが、山上被告の犯行を生み出し、その標的が「政治の力」の象徴だった安倍氏になったということなのか。
いまだ解決までは遠い宗教2世問題
旧統一教会の「被害者救済法」は22年12月、国会で成立した。今後は教団の宗教法人格の取り消しに発展していくかが注目されている。一方、対策は不十分だとの声もある。
「宗教法人格が剥奪されると、税法上の優遇措置がある程度は失われます。それでも、任意団体としての旧統一教会は残ります。国境を超えて携帯電話で送金できる時代に、献金を止めることも難しい。教団内部では『これは宗教弾圧だ』と批判することで結束を固めるでしょう」
有田氏は23年4月、安倍氏の死去に伴い、実施された衆院山口4区の補欠選挙に出馬したが、落選。現在、教団からはテレビ番組での発言が名誉毀損にあたるとして訴訟を起こされている。訴えられた途端にテレビへの出演は一切、なくなった。有田氏は、5月に開かれた支援集会で、こう決意を語った。
「訴えられてなんぼのもんじゃという気持ちでやっていく。徹底的に戦う。生きてるうちは戦う」
●「尹大統領は卑怯…汚染水に関し世論気にして次官に発表させるのか」 8/24
与党「国民の力」のユ・スンミン前議員は23日、前日に国務調整室のパク・クヨン第1次長が日本の福島第一原発の汚染水放出に関する後続措置を発表したことについて「国民の健康、海の安全に関する問題は尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が自ら発表すべきだった。卑怯(ひきょう)だ」と述べた。
ユ前議員は23日、CBSラジオの番組で「日本の首相の前では尹錫悦大統領が自ら(汚染水の放出に)賛成しておきながら、国民の前では民意が良くないから大統領、首相、長官ら、このような人々はみな逃げてしまい、一介の次官が出てきてこのように発表するのか」と述べつつ、上のように語った。パク第1次長は前日のブリーフィングで「日本の放出計画に科学的、技術的問題はないと判断した」と語った。
ユ前議員は「尹大統領は7月12日にリトアニアでのNATO首脳会議で韓日首脳会談を行った。その際、岸田文雄首相の前で「計画通り放出を履行するならば」と表現したことは、事実上放出に賛成して帰ってきたもの」だとし、「大韓民国の大統領が日本の首相の前で放出に賛成したため、そのままゲームオーバーとなったと私は考えた」と語った。
尹大統領は岸田首相との首脳会談で、「原子力安全分野の代表的な傘下国際機関である国際原子力機関(IAEA)の発表内容を尊重する」としながらも、「計画通り放出の全過程が履行されるかどうかについての情報をリアルタイムで韓国と共有するとともに、放出の点検過程に韓国の専門家も参加させてほしい」と述べた。
またユ前議員は、「『(日本との関係において)我々が得るものは何か』という根本的な問いを提起すべき時がすでに来ている」とし、「強制徴用問題も譲歩し、福島第一原発の汚染水も賛成し、そのようにして我々が得るものは何か」と述べた。  

 

●垂秀夫駐中国大使、処理水イチャモン 「核汚染水」表現の中国一蹴 8/23
岸田文雄政権は22日、東京電力福島第1原発の処理水をめぐる関係閣僚会議を開き、海洋放出を24日に開始する方針を決定した。岸田首相は「国が全責任を持つ」といい、風評被害対策や漁業者支援に全力を挙げる姿勢を強調した。これに対し、中国の習近平政権や、韓国と日本の一部左派野党は処理水を「汚染水」と呼び、結果的に風評被害を拡散させている。こうしたなか、中国政府に呼び出された日本の垂秀夫(たるみ・ひでお)駐中国大使は、中国の抗議に毅然(きぜん)と反論し、「核汚染水」という表現の変更まで求めた。識者は、「中国が警戒する男」といわれる垂氏の姿勢を評価し、岸田政権全体の覚悟と行動を求めた。
東電は22日、政府の決定を受けて処理水の海洋放出に向けた準備作業を始めた。まず、放出予定の処理水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度を測定し、国の基準値を下回っているかを確認する。結果に問題がなく、天候や海の状況が穏やかならば、政府が決定した24日に海への放出を始める。最初に放出予定の約7800トンは、約17日かけて放出する。
福島第1から2023年度に計画する処理水の海洋放出量は約3万1200トンで、トリチウムの総量は年間上限とする22兆ベクレルの4分の1以下となる約5兆ベクレルとした。保管タンク約10基分を減らすことができるという。
トリチウムの濃度は、国の規制基準の40分の1、世界保健機関(WHO)の飲料水基準の7分の1に希釈する。
放出計画に関わった省庁幹部は「処理水のレベルに問題がないかの検証や、トンネルを通した沖合への放出システムなど、時間をかけて方策を練り、高度な安全性を担保できる形を提示した。実行後もモニタリングを継続していく。官邸には、地元住民や、諸外国への丁寧な説明を重ね、しっかりと信頼を得てほしい。結果として、そうした積み重ねが、いわれのない『批判』を防ぐことにもなる」と語った。
国際原子力機関(IAEA)も「国際的な安全基準に合致する」と評価している。
こうした科学的根拠を示しているのに、中国は猛反発してきた。
中国外務省の汪文斌副報道局長は22日の記者会見で、「深刻な懸念と強烈な反対」を表明し、「日本が誤った決定を正し、核汚染水の海洋放出計画を撤回することを強く促す」と述べた。さらに中国の孫衛東外務次官は同日、駐中国大使の垂氏を呼び出して、抗議してきた。
これに対し、垂氏は「(中国が)科学的根拠に基づかない主張を行っていることは残念だ」と述べ、中国が日本産水産物などに対する事実上の輸入規制を敷いたことにも「科学的根拠に基づかない措置は受け入れられない」と、真っ向から反論した。
垂氏はさらに、中国側が処理水を「核汚染水」と呼んでいることについても、「日本が海洋放出するのは『汚染水』ではなく、『ALPS(多核種除去設備)処理水』であり、中国側はこの用語を使うべきである」と強く求めた。
まさに正論である。
垂氏は、京都大在学中はラガーメンとして鳴らし、1985年に外務省に入省した。いわゆる「チャイナスクール(中国語研修組)」だが、国益重視の気骨あふれる外交官として知られた。中国・モンゴル課長や駐中国公使などを歴任し、中国での人脈の広さと情報収集能力の高さに定評があった。
第一次安倍晋三政権の対中外交理念である「戦略的互恵関係」を編み出した。第二次安倍政権時代の2020年9月に駐中国大使に起用された際には、「中国側が人事に同意しない」との見方も出たほどだ。
垂氏の対中姿勢をどう見るか。
京都大学の先輩にあたる福井県立大学の島田洋一名誉教授は「垂氏は外務省のチャイナスクールには珍しく、中国にしっかり言うべきことを言う外交官として若いころから注目されてきた。大使として赴任した後の言動も信頼できる。現地にいる垂氏が頑張って発信を行っているのは、日本人の士気を鼓舞する意味でプラスになる」と話す。
ただ、日本の左派野党には、処理水放出に反対する向きもある。
共産党の志位和夫委員長や社民党の福島瑞穂党首は22日、X(旧ツイッター)で放出に反対を表明し、処理水を「汚染水」と呼んで政府の対応を批判した。
岸田政権は今後、どうしていくべきか。
島田氏は「処理水問題で、中国が日本産水産物の輸入規制を行っているのは、日本が半導体などハイテク分野で米国に歩調を合わせて中国への輸出規制を行っていることへの報復だろう。岸田首相が議長を務めた広島G7(先進7カ国)サミットでは、中国の経済的圧迫に対してG7が結束して対抗措置を取ることを決めており、G7に対抗措置を呼びかけるべきだ。日本で風評被害を生み出している政治家に対しても、法的措置を含めた対応を取った方がいい」と語った。 
●辞める必要は? 松川るい議員の女性局長辞任に西田亮介氏 8/23
「昔あるいは現役の政治家も海外で無茶苦茶なことをしていた。今回の行動はそこまで軽率だったのか?」
自民党女性局のフランス研修が「観光旅行だ」などと批判されている問題で、松川るい参議院議員が女性局長の役職を辞任したことについて、東京工業大学准教授の西田亮介氏が22日の『ABEMAヒルズ』で見解を述べた。
西田氏は「辞任は本人の意思であり、解散の可能性もちらつくなかで自民党も早く幕引きするためにもやむを得ないと判断したのだろう。しかし、本当に辞任する必要があったかどうかについては疑問だ」とコメント。一方で、「物価高や円安、それからコロナで長く海外に行きづらかった事情もあり、不満の蓄積した国民感情に配慮が足りなかったとは言える。むろん経費精算については透明性を確保し、国費が直接の遊興費に使われていないかチェックできることが大事だ」と指摘する。
今回の件で、“炎上させれば辞任させられる”という既成事実を作ってしまったことにはならないか。西田氏は「その通りだ」と回答。そして、「昔の政治家や現役の政治家の手記には、海外で大使館を巻き込みながら無茶苦茶をしていたことをちらつかせる記述もある。それと比較して、今回の松川議員をはじめとする自民党議員たちの行動がそこまで軽率だったのかというとそうともいえず、穏当だ」との考えを示した。
最後に、「海外視察は産官学民どこでも物見遊山的な性質が強いが、それでしか広げられない『幅』もあるはずだ。そんなことはみんなわかっている。日本が“貧すれば鈍する”と泥縄式に見聞や視野を広めることをやめようとならないことが大事だ」とした。
●82歳の麻生太郎・副総裁に続き、84歳の二階俊博・幹事長も 「ドミノ引退」 8/23
麻生太郎・自民党副総裁が引退の意向を固めたという情報が流れている。麻生氏の後継者と自他共に認める長男の将豊氏は、いつでも総選挙に出馬できる準備が整っているという。政界では、どれほどの実力政治家でも、「引退」が決まった途端にたちまち力を失っていく。
かつて郵政選挙に大勝して自民党内に圧倒的な力を持った小泉純一郎・元首相でさえ、「総裁選不出馬」を表明した途端、現職首相のうちに求心力が低下して後継者争いが激化した。
政界実力者と呼ばれた野中広務・元幹事長も政界引退を表明すると急速に力を失い、野中氏が仕切っていた自民党最大派閥の橋本派も東京地検特捜部の日歯連闇献金事件【※】捜査を受けて壊滅的打撃を受けた。
【※2001年に都内の高級料亭で野中氏を含む旧橋本派の政治家らが日本歯科医師連盟(日歯連)から1億円の小切手を受け取ったが、政治資金として届け出をしなかった闇献金事件(2004年に発覚)。村岡兼造・元官房長官らが逮捕され、有罪判決を受けた】
政権を一手に支えてきた麻生氏の引退が秒読みとなること自体が、岸田首相の政権基盤に大打撃となるのは間違いない。
政治評論家・有馬晴海氏が語る。「麻生さんは文字通り岸田政権の大黒柱。副総裁として党内に睨みを利かせ、政策面では前財務大臣として岸田政権の予算バラマキを財務省に認めさせてきた。外交もそうです。とりわけ岸田派、麻生派、茂木派の主流3派体制は麻生さんの存在でなんとか持っている。その麻生さんの引退が見えてきて力を失えば、主流3派体制は崩壊に向かう。麻生派では総裁候補の河野太郎・デジタル相と麻生さんの義弟の鈴木財務相との跡目争いが予想されるし、次の総裁選を狙っている茂木幹事長は麻生さんという重しがなくなるとわかれば首相に反旗を翻しやすくなる。最大派閥の安倍派でも、有力な次期会長候補の萩生田光一・政調会長が首相の政策に批判を強めており、来年の総裁選に向けて自民党内で反岸田の動きが加速するのは間違いないでしょう」
それに拍車をかけるのが自民党実力者の引退ドミノだ。
解散・総選挙が来年にずれ込めば、82歳の麻生氏に続いて84歳の二階俊博・幹事長も地盤を三男に譲って引退するという見方が強い。
「二階派のベテラン議員の中には二階氏と一緒に引退しそうな議員が多い。そうなると二階派でも跡目争いが始まるでしょう」(有馬氏)
自民党の5大派閥を見ると、後継者争い真っ最中の最大派閥・安倍派に加え、麻生派、二階派、そして茂木派でも茂木幹事長を支持する衆院側と小渕優子・元経産相を支持する参院側が一触即発の状況にある。
麻生氏の引退表明をきっかけに、自民党の各派閥で本格的な跡目争いが激化し、派閥分裂や再編という自民党大動乱に突入する可能性が強いのだ。
そんな政界激震の中で、党運営を麻生氏に丸投げしてきた支持率ジリ貧の岸田首相が政権を保つのは容易ではない。麻生氏の“電撃引退表明”が、瀕死の岸田首相にトドメを刺すことになるかもしれない。
●天下の愚策 都会人の“罪の意識”を利用した「ふるさと納税」が日本を滅ぼす 8/23
2008年に開始され、昨年度は実に890万人もが利用したふるさと納税。いまや地方自治体にとって貴重な財源ともなっていると伝えられていますが、この寄附金税制に対しては賛否両論が巻き起こっているのもまた事実です。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、ふるさと納税を「都会人の愚かな罪の意識をターゲットにしたロクでもない政策」と一刀両断。同制度を終わらせなければならない理由を徹底解説しています。
「上京してすみません」都会人の罪の意識につけ込む、ふるさと納税
1980年代からジワジワと日本経済を蝕んできた競争力低下、そして1990年代以降のバブル崩壊と国際化対応失敗で、国力の決定的な衰退が続いています。その原因の1つに、地方の活力低下があるし、その地方の活力の足を引っ張っているのは都会の側ではないか、そのような観点を考えてみたいと思います。
1つ思い浮かぶのは、1970年代の「列島改造論」でした。田中角栄の提唱したこの「改造論」ですが、ダーティーな手段で集めたカネを選挙資金として派閥内にバラまくという、文字通りの金権政治を行った人物です。せっかくの「改造論」も、角栄というキャラクターと一緒に「悪印象」をベッタリ貼られて歴史の彼方に消された印象があります。
この「改造論」ですが、簡単に言えば、
「工業を地方へと再配置すると同時に、交通・情報通信の全国的ネットワークの形成をテコにして、人とカネとモノの流れを巨大都市から地方に逆流させる“地方分散”を推進する」
というものです。地方がどんどん衰退してゆく現在から考えると、何とも素晴らしい政策に見えます。勿論、100点満点ではありませんし、この改造論がそのまま実現したとしても、日本経済の衰退を食い止めることができたかというとそれは違うと思います。例えば、製造業の時代は限りがある中で、地方が知的産業によって活性化するという文化・文明的な観点は「改造論」には欠落していました。
ある意味では、中身つまりソフトウェアよりも、ハードつまりハコモノ行政に偏った政策論であったのは事実で、21世紀には限界を露呈していたと思います。また、交通ネットワークにしても、ストロー効果、つまり便利な交通システムで地方と都市を直結すると、経済も人も都市の方へ「吸い上げられてしまう」という逆効果についての思慮は不足していたと思います。
ですから、両手を挙げて賛成とは行きませんし、何よりも金権政治によって自民党の派閥抗争を勝ち抜こうという角栄の政治手法に関しては、全くもって戦後日本の政治における「黒歴史」に他ならないと思います。
そうではあるのですが、とにもかくにもこの「改造論」というのは、「GDPを地方に分散せよ」」というのが、その核にある主張であり、その必要性、その先見の明ということについては、不滅の輝きを持っていると思います。以降、様々な政治家が様々な政治スローガンを掲げましたが、ここまで国家の大規模な中長期見通しについて明確なビジョンを持った主張はなかったと思います。
「列島改造論」を潰したトンチンカンなセンチメンタリズム
ですが、この「改造論」はあっけなく潰されました。この石油ショック+金権批判という周囲の問題に加えて、「改造論」そのものへの批判といいますか、反発も強かったからです。批判は主として2つの点に関してでした。
1つは、改造論で地方経済が拡大するのなら、地方の土地を買っておこうということで、様々なマネーが流れ込んで、地方の主要都市の地価が上昇したことです。これに対して激しい批判が起きました。
もう1つは、産業を地方に拡散することは、公害も同じように拡散して、地方の美しい自然が破壊されて環境が汚染されるので反対というものです。
どう考えても、これはイチャモンとしか言いようがない話でした。地価の上昇については、例えばですが、主要都市の駅前とか商業地区などに投機的なマネーが入ってきただけで、別に盛岡とか富山、釧路といった中核都市の住宅地全体が当時の言い方を借りるのなら「狂乱地価」になっていたわけではありません。
もっと言えば、静かな住宅街となっているシャッター通りに「商業地区としての高額な評価額と担保価値」がくっついていて、その実勢価格との調整ができていない現在と比べますと、地方の地価が上昇したということは、それだけ地方の経済について経済界が明るい見通しを持っていたということです。
にもかかわらず、「土地が高くなるというのは要するに家が買えなくなることだ」「だから庶民には苦痛でしかない」「そんな地下上昇を地方にまで輸出するというのは、都市の住民に取っては申し訳ない」というトンデモ感情論が渦巻いてしまったのでした。
もう1つの公害の拡散懸念というのも、合理的な理由はありません。70年代の公害問題は、50年代から60年代の技術や設備を60年代の規制で運用する中で発生したわけです。ですが、強烈な反省とともに、70年代の中期には環境フレンドリーな生産技術がどんどん実用化していましたし、環境規制も厳しくなっていました。
ですから、経済の地方拡散イコール公害の拡散にはなるはずもなかったのです。ですが、「産業化は公害を伴う」「その公害を自然の美しい地方にも輸出するというのは、都会の人間として申し訳ない、あるいは許せない」というセンチメンタルなロジックが拡散すると、それが世論の大勢になって行ったのでした。
つまり、石油ショックと金権批判という環境だけでなく、「列島改造論」は都市の感情論、それも「地価上昇を輸出して申し訳ない」とか「公害を輸出して申し訳ない」という「すみません感情論」によって潰されたのです。ネーミングも多少問題があり、「改造論」というと、それこそ「コンクリートをバラまく」イメージが伴ったと言うこともあります。ですが、中核にあったのは「罪の意識」、それも一方的でトンチンカンな、センチメンタリズムでした。
その当時を振り返ってみると、この「罪の意識」というのは本当でした。都市の人々は、本当に地方の地価が上がるのは悪いことで、申し訳ないと思っていました。公害についても、「地方は都会の人間が余暇を楽しむために、自然を残しておいて、自分たちのレジャーランドになって欲しいし、それ以外は望まない」などという偽悪的なあるいは利己的な感情はそれほどなかったのです。
70年代の都会人は本当に素朴に「地方に産業が移転すると、公害も拡散してしまうので、それは申し訳ない」と思っていたのです。何という浅はかさであり、何という愚かさでしょう。これでは、悪意のある差別のほうがまだ「まし」というものです。「善意とヒューマニズムに酔い潰れて真実を見失った感情論」が起こした悲喜劇と言っても過言ではありません。
未だ政策を左右する「都会人の愚かな罪の意識」
もう一度申し上げますが、
「産業の地方への拡散によって、都市と地方の経済格差を是正する」
この考え方は全く間違っていません。と言いますか、先見の明のある、そして日本という国が生き延びていくために最低限必要な原則だと思います。ですが、その大事な原則が、都市の人々による全くの勘違いによる「罪の意識」によって潰されたのです。
では、この勘違いによる「罪の意識」によって国の政策が歪められるというのは、70年代の日本人だけが「やっちまった」ミスなのかというと、問題はそうではないということです。
21世紀に入って四半世紀が過ぎようという現在でも、この「都会人の愚かな罪の意識」というのは健在であり、それが政策を左右しています。と言いますか、70年代より悪質なことに、この「都会人の罪の意識」をそのまま政策として取り入れたシステムが稼働しているのです。
他でもない「ふるさと納税」です。
自分は都会に住んでいて都会に地方税を納税しているが、自分の「ふるさと」が衰退してゆくのには「心を痛めている」ので、何とか「地方の役に立ちたい」、これが「ふるさと納税」が「付け込んでいる」都会人の精神状態です。つまり70年代に改造論を潰した際の意識と、全く同質でありながら、より明確な感情としての「自分は地方に役立ちたいのに、都会に住んでいて申し訳ない」という「罪の意識」、そのものをターゲットにした政策以外の何物でもありません。
どうしてこの「ふるさと納税」がいけないのかというと、理由はいくらでも挙げることができます。
1)地方税制を歪める。経済規模に応じて地方政府の行政サービスは必要になるのに、都市の自治体に入るべき金が地方に流れてしまう。特に、東京は今後、引退世代の単身家庭が激増するので金を貯め込んでおく必要があるのに、コロナで知事がバラマキを行った結果、財政規律はユルユルになっており、「ふるさと納税」など一刻も早く止めないと、近未来に破綻自治体になってしまう。
2)正規の税収でない「お土産物を倍の値段で売った」上がりの半額を、地方の自治体は手にするが、それで地方経済が復活するわけでも、地方の消滅可能性都市が延命するわけでもない。ゾンビはゾンビなのに、かえって整理統合を先送りするだけ。
3)仮に大都市は「ふるさと納税」で税収が流出しても「やって行ける」のであれば、リストラして「小さな政府」にすることで、税率を下げるべき。とにかく税制と、歳出のコントロールということがセットで政策論争を経て、実施されるべきスキームが、メチャクチャになっている。
4)例えば子どもが2人とか3人などいて、教育をはじめとした地域のサービスを受けているとか、高齢世帯で地域の福祉に頼っている場合でも「ふるさと納税」で、その地域の納税を部分的に回避するというのは、全くのモラルハザード。
他にもあると思いますが、とにかくロクな政策ではありません。一刻も早く止めるべきなのですが、驚いたことに菅義偉前総理は、この8月19日に長野市で講演し、自分が総務大臣の時代に提唱した「ふるさと納税」の規模について、「総額2兆円という目標は必要だ。自然にそうなっていくことが望ましい」と述べたそうです。
報道によれば、ふるさと納税制度に基づく2022年度の寄付総額は9,654億円だったそうですから、2兆円を目指すというのは、今から更に倍増させるということです。これはもう異常としか言いようがありません。
終わりにすべき「自分にお歳暮が届いてラッキー」的なお遊び
人気取りになるというのは、分かります。住民税の負担に嫌悪感を持っている都市の住民、特に現在すでに「ふるさと納税」をしていて、制度上の上限アップがあればいいと思っている人には「とりあえずトク」だということになるでしょう。また「税収がダメダメ」だが「ふるさと納税」で何とか自治体の財政をまかなっている地域では、額が増えるのは大歓迎だと思います。
ですが、全体としてはもう無理なのです。大都市はやがて人口高齢化で税収が枯渇し、歳出が激増します。地方の多くの地域では、鉄道を剥がしてもバスの運転手がいないので、人が住めない地域が出てきます。橋の架替えや水道管の総取り替えなども、大変で、人口減の中では多少「ふるさと納税」のカネが入っただけでは、どうしようもない自治体も増えます。
とにかく、都市にはもう余裕はありません。そして地方の多くの自治体は、役場だけでなく、居住地の統合と集中へと進むフェーズに入っています。そんな中で、税収については、納税地と行政サービスの還元を一致させて、成立しない部分は切る、成立する部分、どうしても守らねばならない部分は守るということを、真剣にやっていかなくてはなりません。
これからは、1年毎に「ふるさと納税」のデメリット、つまり都市も地方も自治体が財政破綻へ向かうという事実は悪化するばかりです。「自分にお歳暮が届いてラッキー」的なお遊びはもう終わりにしなくてはいけません。
そもそも、菅義偉氏が、この制度を推進しているというのも、あまりいい気持がしません。菅氏の場合、秋田県で生まれて、いちご農家を継がずに、教職を目指したが進学先の関係で上京して、現在に至っているようです。奥さまは奥さまで静岡のいちご農家に関係しているようですから、恐らく「いちご農家を継がなかった」ということへの「罪滅ぼし」をしたいという気持ちを、意識的に、あるいは潜在的にお持ちということは想像できます。
本当の心の中はともかく、この骨の髄まで政治家である方としては、「上京者の持つ、故郷への複雑な思い」を幅広くアピールすることで、政治的な求心力に使おうと考えているということはあるに違いありません。
ですが、こうした発想はやっぱりダメだと思います。国政を担う人間が、故郷を捨てて上京したことを、一種の原罪のように思って、それを「返礼品ごっこ」の奇怪なシステムでチャラにしようというのは、やはり安易ですし、末期的です。
もしも、菅氏が本当に心から「いちご農業」のことを考えているのなら、まず「いくらプレミアム化しても儲からない」仕組みにメスを入れて、大規模化、栽培技術、栽培設備の高度化などを取り入れて、ハッキリと「持続可能な高収益産業」に切り替えていく仕組みを提案すべきです。また、必要に応じてその改革にカネを投入すべきです。
そうした正攻法で地方の問題に切り込むことなく、安易な「返礼品ごっこ」で曖昧なカネを動かし、それが地方問題に関する政策だというのは、やはり止めた方がいいと思います。この制度によって、地方の財政的自立が損なわれるばかりか、納税とその対価としての行政サービスのバランスに民意を働かせるという、地方自治という民主主義の根幹が腐ってしまう、これは大変なことです。 

 

●中国の根拠のない処理水批判に反論した政治家が1人もいない日本の現状 8/22
ジャーナリストの有本香が8月22日、「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。福島第一原発の処理水の海洋放出について解説した。
24日にも処理水放出か 〜22日の関係閣僚会議で決定へ
東京電力福島第一原発から生じる処理水について、岸田総理大臣は8月21日、全国漁業協同組合連合会の会長らと総理官邸で会談し、風評被害などの対策に「国が全責任を持つ」と伝えた。早ければ24日に海洋放出を開始する方針を固めた。22日の関係閣僚会議で決定する。
岸田総理「坂本全漁連会長を始め、漁連の皆様方とお目にかかり、率直な意見交換をさせていただきました。本日のやり取りを踏まえ、22日朝に関係閣僚会議を開催し、政府全体で安全性の確保や風評対策の取り組み状況について改めて確認し、東京電力によるALPS処理水の放出の具体的な日程を決定することにいたします。」
西村大臣の福島第一原発「処理水」に関するSNS「ショート動画」がわかりやすい 〜政府広報としてCMなどで積極的に流すべき
飯田「もともと「日米韓首脳会談のあとにこれを決める」と言われていました。」
有本「本当はもっと早くてもよかったと思いますが、評価したいです。何より重要なのは、政府がもっと積極的に風評を抑え込み、否定することです。」
飯田「政府が。」
有本「21日に西村経産大臣のSNSで、ショート動画のようなものがアップされていました。これが非常にわかりやすいのです。私たちの日常生活のなかでも、自然界から受ける放射性物質の影響があるではないですか。」
飯田「そうですね。」
有本「それが大体2.1ミリシーベルトくらいです。今回の処理水で言われている影響は、その100万分の1〜7万分の1くらいです。さらに今後、放出後もしっかりとモニタリングしていく予定なので、「これ以上何が必要ですか?」という話です。それ自体がわかりやすい事実なのですが、この短くまとめられたショート動画を、政府は「政府広報」という形で流せばいいのではないでしょうか。」
飯田「政府広報として。」
有本「西村大臣のSNSをフォローしているのは10万人足らずなので、これでは不十分です。メディアでのCMなどを使い、流していく必要があります。」
政府は風評被害を防ぐためにも「科学的に問題ない」ということを積極的に言っていくしかない
有本「何よりも漁業関係者の方々が困っているのは、輸出が減ってしまって魚価が上がらないことです。」
飯田「漁価が上がらない。」
有本「国内の需要喚起を積極的に行う必要があると思います。ただ、全漁連の坂本会長が政府と対立しているように煽っているメディアもありますが、コメントを拝見していると、必ずしもそうではない。科学的な安全性については理解を深めてきているという話もされています。」
飯田「そうですね。」
有本「国民もそうだと思います。政府は「科学的に問題ない」ということを積極的に言っていくしかないと思います。」
安心をつくり出すのが行政の役割
飯田「漁業者の方々も、海が汚れて魚が食べられなくなることを心配しているわけではない。」
有本「風評被害を心配しているのですよね。風評を封じ込めるには、科学的に問題なく「安全」であることを広めるしかありません。」
飯田「風評を封じ込めるには。」
有本「いつもそうなのですが、「安全」よりも「安心」ということを先に言いますよね。以前、東京では築地から豊洲へ魚市場を移転するときに、あろうことか知事が「安全はあるけれども安心はない」と言ってしまったのですが、あれは大きな間違いです。安全であるならば、安全であるということを過剰なくらい言って、安心をつくり出すのが行政の役割です。政治の役割としては今後、「いかに安全であるか」を言うしかない。」
中国の処理水への根拠のない批判に反論した政治家が1人もいない日本の現状 〜大人しすぎる日本の政治家
有本「処理水の海洋放出について、いろいろと文句を言っている中国などは、トリチウムに関しても濃度が大体日本の6〜7倍とされていますよね。「何を言っているのだ?」ということを、「誰か1人でも有力政治家が言ったのか」という話なのです。」
飯田「いませんね。」
有本「このようなときは、相手の言っていることに対してきちんと反駁しなければならない。それを国民は見ています。「あなたの言っていることは違いますよね?」と言うだけの政治家がおらず、あまりにも大人しすぎます。」
飯田「大人しすぎる。」
有本「間違ったことを言われても言われっぱなしというのは、国際的にはもちろん弱いと思うのですが、国内でも外国から訳のわからない風評のようなものを広められていることに対して、きちんと対抗していない状態を国民は見ています。」
飯田「国際原子力機関(IAEA)が専門家たちを引き連れて調査し、報告書を出しました。そのなかで科学的な安全性は担保されているのだと。IAEAも継続してモニタリングしていくと言っています。」
有本「「何の問題があるのか?」という感じですよね。なかには、「処理水を薄めて政治家が飲むパフォーマンスをすればいいのだ」と言う人もいますが、それも中国が飲んでみろと言ったからそれに乗るような話になるので、そのような馬鹿馬鹿しいことをやる必要はありません。本来は飲むものではないのだから。」 
●韓国が忌み嫌った「アベ」が亡くなったことに、韓国人はなぜ困惑しているのか 8/22
日韓外交に絶大な影響を及ぼしてきた故安倍晋三元首相と韓国の反日勢力の関わり合い。「ポスト安倍」時代の日韓関係はどうなっていくのだろうか。『日韓の決断』よりお届けする。
「極右政治家」の象徴
第26回参院議員選挙の投開票日まであと2日と迫った22年7月8日、元首相の安倍晋三は奈良県での演説中に銃撃され、帰らぬ人となった。
この訃報が韓国に伝わると、一介の日本人記者である私にまで韓国の知人からお悔やみの言葉がいくつも届いた。その姿に、個人の問題を国民全体の問題としてとらえがちな韓国の集団主義文化を感じつつ、この国にとって「アベ」を失ったインパクトの大きさを肌で感じた。
韓国で「アベ」は特別な響きをもつ。だからこそ標的にもなりやすい。
保守系与党「国民の力」に羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)という裁判官出身の著名な女性議員がいる。日本にも度々訪れ、筆者も東京で開かれた国際会議で席が隣同士になり言葉を交わしたことがある。
国内では舌鋒(ぜっぽう)鋭く革新政党を追及するため保守層に人気があるが、大統領時代の文在寅を「金正恩の首席報道官」とからかったときは革新層の反発を招き、逆に親日派と攻撃され「安倍の首席報道官」とか、羅の名前を安倍(アベ)と掛けて「ナベ」などと呼ばれた。
韓国人の一般的な安倍観は、A級戦犯容疑者だった元首相、岸信介の孫であり「歴史修正主義者」「極右政治家」とのレッテルに代表される。国民にもメディアにも安倍は右傾化する日本政治の象徴であり、巨大な存在だった。さらにジェンダーや性的マイノリティーへの差別的な表現が批判を受けた議員を重用したことも韓国内で安倍のイメージを悪くした。
摩擦が経済、安保に波及
日韓関係が「国交正常化後で最悪」といわれたピークは、おそらく19年8月22日、文在寅政権が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めたときではないだろうか(後に「日本への破棄通告の効力を停止」に変更)。
これに先立ち日本政府は日本企業に対する元韓国人徴用工への賠償命令を確定させた大法院判決への事実上の対抗措置として、半導体材料の対韓輸出管理の厳格化措置に踏みきっていた。日韓間の摩擦が歴史問題から経済、さらに安全保障分野まで波及した点で極めて深刻な事態に陥った。
筆者はGSOMIA破棄決定のニュースに韓国で出くわした。日韓関係の立て直し策を話し合う国際会議に参加していたソウルで大きな衝撃を受けた。
この直前に取材した韓国外務省幹部は「破棄だけはあり得ない」とはっきり否定していたし、国際会議の韓国側メンバーも青瓦台の決定に「想定外だ」「考えられない」と一様に動揺を隠せないでいた。
そのうちの1人に北朝鮮情勢と安全保障が専門の尹徳敏(ユン・ドクミン)(尹錫悦政権で駐日大使に就任)がいた。「日米韓の3カ国協力を揺さぶるような決定を喜ぶのは北朝鮮の金正恩だけだ。理解に苦しむ」。
こうした尹徳敏のコメントを載せた急ごしらえの記事を翌日付の日本経済新聞1面用に仕立てて東京に送ったのを思いだす。
韓国社会が「反日」で一枚岩になった瞬間
日本の輸出管理厳格化措置を契機に、それまで文在寅の経済運営や外交政策を厳しく批判してきた保守系メディアも矛先を日本に転じ、韓国社会が「反日」で一枚岩になった。
「経済戦争が全面化」「破局へ追いやるアベ」――。首相として同措置を最終決定した安倍を批判する言説が韓国メディアにあふれた。
左派系の市民団体や労働組合などの反政権勢力が結集して「民心」と呼ばれる国民感情をあおり、政権を突き上げるかたちで日本との2国間の取り決めを覆す。あのときと同じだ――。
日韓GSOMIA破棄決定の一報に筆者は、15年末以降にソウルで目の当たりにした日韓慰安婦合意をめぐる騒動を思いだしていた。
この年の春、筆者にとって2度目の韓国勤務がスタートした。慰安婦問題をめぐり日韓の対立が泥沼化しているさなかだった。
韓国の報道・ニュース番組で「アベ」という言葉を聞かない日はないと言っていいほどだった。そのほとんどが「首相」や「氏」などの敬称を付けず「アベ」と報じていた。革新系勢力が国内を反日で束ねるために「アベ」を積極的に利用したのが実態だった。
海外の政治家の中でも抜群の知名度をもつ安倍は、韓国で政治家やメディアの関心を一身に集め、元慰安婦の女性らを顧みない「極右政治家」の象徴に目されていた。
当時は朴槿恵大統領時代だったが、朴政権発足の直前に、安倍が米国で「次期大統領の朴槿恵さんのお父さんは私の祖父(岸信介元首相)の親友でもあった」と紹介したことも韓国内でやり玉にあげられた。
安倍にとっては日韓修復に努める考えを示す発言だったが、韓国では朴父娘の親日ぶりを証明するエピソードとして野党からの攻撃材料に使われたのだ。結局、朴父娘は2人とも在任中に一度も訪日できない大統領となった。
日韓にようやく訪れた「春」は短かった
日韓は冬の時代が長く続いたが、15年11月に雪解けを迎える。
安倍が日中韓首脳会談に出席するため韓国を訪問し、朴と日韓2国間では約3年半ぶりとなる首脳会談を開いた。翌12月に日韓両政府は慰安婦合意を交わした。このときだけは韓国メディアも「アベ」と呼び捨てでなく、「安倍首相」や「安倍総理」と呼んだ。
安倍が日韓首脳会談後に随行者と食事したソウル市内の焼肉屋を後に何度か訪れたことがある。安倍が利用した部屋や席が一目で分かるようになっており、「客寄せ」に使われていた。
日韓にようやく訪れた「春」は短かった。反保守と反日を結びつけた慰安婦合意の抗議運動が各地で繰り広げられるなか、大統領選で政権交代が起こると、新たに大統領に就いた文在寅のもとで慰安婦合意はあっさりと白紙化されてしまった。
安全保障より「自尊心」
「重大な挑戦だ」「2度と日本に負けない」「政府が先頭に立つ」――。19年の韓国で、日本による対韓輸出管理の厳格化措置に対抗する反日運動の旗を振ったのは大統領の文在寅自身だった。
米国の反対を押し切ってGSOMIA破棄決定に突っ走った選択は、韓国の安全保障には明らかにマイナスだったが、文の信任が厚い青瓦台国家安保室第2次長、金鉉宗(キム・ヒョンジョン)の記者団への説明には仰天し、常識では測れない韓国政治の恐ろしさを体感した。
金鉉宗は8月15日の文の光復節演説を持ち出して日本をこき下ろした。
「われわれは日本に対話の手を差し伸べ、演説発表前には日本側に内容を知らせたのに、日本側は何の反応も見せず、『ありがとう』の言及すらなかった」「日本の対応は単なる拒否を超え、韓国の『国家的自尊心』を傷つけるほどの無視で一貫するなど外交的欠礼を犯した」――。
その言葉は、自国民の生命や安全を守る安全保障よりも、国家、民族のプライドの方が大事だ、と言わんばかりだった。
「自尊心」を守った韓国政府の決定は国民に支持されると考えたのだろう。確かにこのとき市民団体など反政権勢力が用いた「経済戦争」というワーディングは、韓国の基幹産業である半導体が日本に標的にされた国民の心に突き刺さった。ソウル中心部で展開された反日デモで「NO! 安倍」と書かれた巨大な横断幕が登場したのもこのときだった。
なぜ安倍と文は交われなかったのか。
実は2人は日韓が小泉純一郎、盧武鉉両政権時代にそれぞれ官房長官、秘書室長という最も首脳に近い補佐役の立場で首脳外交の失敗をつぶさに見ていた。
両国内で保守と革新を代表する力のある政治家同士が教訓を生かして手を結べば日韓に新たな時代をつくれるのではないか、「小泉・盧」は必ずしも悪い組み合わせではない。筆者はかつてコラムにこう書いたことがある。
水と油だった安倍政権と文政権
実際にはそうならなかった。文政権発足直後の17年7月、ドイツ・ハンブルクでの初の出会いこそ悪くはなかった。
このとき筆者も文に同行取材したが、首脳会談の冒頭、安倍は「アンニョンハシムニカ」と第一声に韓国語を用いて会場の笑いを誘った。前夜の米大統領、トランプを交えた夕食会でも、安倍と文が相手の腕に手を添え満面の笑みで握手する写真が韓国メディアに載った。安倍周辺が「歴史問題を切り離す文は前大統領の朴槿恵より話しやすい」と語っていたほどだ。
だが、互いに角突き合わせるまでそう時間はかからなかった。
日韓で対立する歴史問題と安全保障や経済などの協力を分離するとした文政権の「ツートラック」政策が破綻したからだ。
「未来のために過去をたださなければならない」とあくまで「過去」の歴史にこだわった文と、「過去を断ち切らなければ未来は訪れない」と考える安倍の信念はまさに水と油で最後まで溶け合わなかった。
何より「北朝鮮」をめぐる2人の対立は決定的だった。
南北融和を最優先する文は北朝鮮指導部を敵視し圧力強化の必要性を訴え続けた安倍を、自らが主導する対北朝鮮政策と米朝対話にブレーキをかける張本人とみなした。
安倍にとっても日本人拉致をはじめとする北朝鮮問題はライフワークだ。2人にとって絶対に譲れない一線が北朝鮮だったのだ。
「嫌韓」「反日」の流れを止められない?
日韓関係の破局を食い止める「安全装置」も機能しなくなって久しい。
現大統領、尹錫悦の外交ブレーンである国立外交院長の朴母、は日韓関係が「国交正常化後で最悪」と呼ばれていた19年の日本記者クラブでの講演で、最近の日韓関係について、1政府当局間を含めて意思疎通のパイプが極めて細くなった、2ともに「自分が正義、相手が悪」という善悪二元論に陥っている、3相手の価値を軽視し、「嫌韓」「反日」の流れを止められない――と指摘。「日韓関係が難しくなった」と話した。
超党派でつくる議員連盟や自民党の外交部会・外交調査会は一昔前まで、政府間交渉が行き詰まると韓国との議員間のパイプを使って独自に解決策を探り、軟着陸に導く緩衝材の役割を果たしてきた。
なかでも日韓議連は首相経験者ら大物政治家が会長ポストに就いてきた議連の名門で政府間の窮地を幾度となく救ってきた。しかし、自民党内の世代交代や政府機構改革などによって党の存在感が低下し、日韓議連もすっかり影響力を失った。
こうしたなか、今後の日韓関係を占う意味で日本でも注目される人事があった。
23年3月、日韓議連の新たな会長に前首相の菅義偉が就任した。首相経験者の会長就任は13年ぶりだ。安倍首相時代に内閣の要である官房長官を長く務め、韓国との外交の酸いも甘いも知る菅は徹底したリアリストでも知られている。
菅会長について韓国政府高官は筆者に「(22年11月の)麻生太郎元首相が訪韓し尹大統領と会談したのに続く日韓関係への良いシグナルだ」と評価してみせた。
安倍を「極右政治家」と蛇蝎のごとく嫌った韓国が「アベ喪失」に複雑な波紋
「日韓は経済的にも、安全保障上も極めて大事な隣国だ。両国の友好発展に取り組む」と決意を語った菅は日韓外交のキーパーソンになり得る。
日韓外交で岸田が思い切った決断に踏みきり、党内や支持層を抑えなければならないときにこそ菅の真価が試される。
それでも党内を束ねるうえで安倍の代わりになるのは難しいだろう。
韓国は安倍を「極右政治家」と蛇蝎のごとく嫌った。一方で自民党最大派閥を率い、日本の保守層をまとめられる安倍の抜きんでた実力を認め、対日外交の羅針盤にしていた。大統領選に当選した尹が就任前に日本に派遣した政策協議団が安倍との面会を強く希望したのもそのためだ。その際は安倍も面会に応じた。
安倍に限らず、日本の政治家による韓国への厳しい言葉遣いに「もう少しうまい言い方があるのではないか」と思ったことは1度や2度ではない。
一方で、安倍があれだけ強く押し込んだからこそ韓国が日本の本気度や事の重大性に初めて気がつき、その結果として尹政権による様々な対日政策の転換につながったとみることもできる。
「アベ」の喪失は韓国にも複雑な波紋を広げている。「日本で実際に外交・安保の議論をリードしているのは誰か」「誰と話せば岸田首相に届くのか」――。安倍の死後、韓国のあちこちでこうした戸惑いの声が漏れている。
安倍構想への追随もためらわず
尹の大統領就任はアベにとらわれてきた韓国政治に風穴を開けた。
22年12月28日に公表された韓国初の包括的な外交・安全保障指針「自由・平和・繁栄のインド太平洋戦略」は、「台湾海峡の平和と安定が、朝鮮半島の平和と安定に重要」と明記し、韓国で台湾と朝鮮半島のリスクを結びつけた初めての文書である。
台湾有事に備え、自由や人権を重んじる国々と手を携える決意や、台湾海峡および近海の安定が自らの平和に欠かせないとする韓国自身の問題認識を盛り込んだ。
「インド太平洋戦略」という名称を使ったこと自体が韓国政府の大きな変化を物語る。「自由で開かれたインド太平洋戦略」という言葉の生みの親は日本の安倍であり、米国によって広まった概念だ。「台湾有事は日本有事」と語っていた安倍は国際社会に同調を呼びかけた。
安倍と激しくやり合った文大統領時代は同構想と距離を置きたいとの意識が韓国政権内に浸透していた。その点、尹は日本や安倍へのわだかまりが全くない。
文前政権はインド太平洋戦略に対し「中国囲い込み」と猛反発する中国政府に配慮して終始、消極的だったのに対し、尹政権は韓国独自の外交文書で堂々と打ちだした。
感情よりも戦略を重視する尹らしい決断だ。岸田文雄政権時代に日韓両首脳の手を結ばせたのは、緊迫する安全保障情勢への危機感だが、日本側も尹の覚悟を認めるほかなかった。
●孤軍奮闘で旧統一教会と自民党の蜜月を暴いたジャーナリスト・鈴木エイト氏 8/22
日本の憲政史上、最も長く首相を務めた安倍晋三元首相が2022年7月8日、選挙演説中に銃撃されてから1年が過ぎた。事件を機に、自民党を中心とする政治家と旧統一教会の関係がクローズアップされるようになった。その端緒となったのが、ジャーナリストの鈴木エイト氏がコツコツと積み重ねてきた調査報道だった。長年、孤軍奮闘だった鈴木氏は、大手メディアが教団の問題を取り上げなかったことについて、どう見ていたのだろうか。
教団に対する解散命令の行方は⁉
旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の「解散命令」をめぐる動きは現在、表面上は静かだが、鈴木氏は水面下でずっと動きがあり、この夏からいよいよ本格化する可能性が高いと見ている。
「文部科学省はちゃんと動いているので、あとは岸田文雄首相の決断だけにかかってきますね」
文科省はこれまでに宗教法人法の質問権を計7回行使し、教団側から資料を提出させてきた。だが、裁判所に解散命令請求を提出するには至っていない。
「文科省の質問権の行使に対し、教団側が、自分たちが不利になるような資料を出してくるわけがないので、文科省側が独自に入手した資料と照らし合わせ、念には念を入れているために時間もかかっているのでしょう。私は、岸田首相は決断すると思っています。今秋までには、解散命令請求をし、政府は一歩踏み出すと見ています」
もし、解散命令が出れば、教団は宗教法人格を奪われ、税制上の優遇措置も受けられなくなる。
振り返れば、安倍氏が銃撃された翌週、メディア関係者の間で、ある文書の存在が話題になった。そこには、旧統一教会の関連団体が主催するイベントに出席、あるいは祝電を送っていた国会議員の名前がリストになってまとめられていた。名前が書かれていた政治家は100人以上。一部に野党議員もいたが、その多くは自民党に所属する国会議員だった。
リストの作成者名には「鈴木エイト」と書かれていた。他のメディアの記者たちは、このリストをもとに各議員への取材を開始した。すると、議員たちは判で押したように「(旧統一教会の関連団体とは)知らなかった」「記憶にない」などの苦しい弁明を繰り返した。これが国民の反発を招くことになる。同時期には、安倍氏を銃撃した山上徹也被告(42)の母親が旧統一教会に1億円以上の献金をしていて、家族が崩壊していたことが報道されていた。教団の広告塔となっていた自民党の国会議員に対して厳しい目が向けられるようになった。
コツコツ取材してきたリストを記者たちに公開
一方、鈴木氏が主筆を務めるニュースサイト「やや日刊カルト新聞」には、このリストそのものは公開されていない。その理由を、鈴木氏はこう説明する。
「自分たちが運営するサイトに掲載するよりも、大手メディアの記者たちにリストを渡したほうが動きやすいだろうなと思ったんです。旧統一教会の問題を私一人で抱え込み、スクープを連発しようなんて野心はありませんでした。それは今も同じです。情報はどんどんオープンにして、みなさんで一緒に取材しましょうよ、というスタンスでした」
その影響は鈴木氏の予想を上回るものだった。朝日新聞の調査によると、事件直後に57%あった岸田政権の内閣支持率が、わずか1カ月で10ポイントも急落し、その後も下がり続けた。批判にさらされた自民党は、所属する政治家と旧統一教会の関係について点検を開始。2022年9月8日、旧統一教会と何らかの関わりがあった所属国会議員は半数近くに当たる180人だったと公表した。ちなみに、点検はアンケート形式で実施されたため、結果はあくまで自己申告である。旧統一教会と関係していた自民党の国会議員はさらに多いとみられている。
「私が調べきれていなかった部分を、記者の人たちが次々に解明してくれました。その点でも、リストをみなさんにオープンにしたのは良かったと思います」
今でこそこう言えるが、鈴木氏が地道に重ねてきた取材が実を結ぶまでには、長い時間がかかった。旧統一教会の調査を始めたきっかけは02年にさかのぼる。大学時代はアルバイトとバンド活動に明け暮れ、卒業後はビル管理会社の契約社員として働いていた。その頃、旧統一教会の信者が、教団の名前を隠して、道ゆく人に声をかける「偽装勧誘」の現場を目撃した。
「JR渋谷駅の改札を出たところでした。『手相の勉強をしています』『顔に気になる相が出ています』などと言って、声をかけている勧誘員が多数いました。興味を持ったり、不安に思ったりして応じた人に『今、あなたは人生で最大の転換期です』などと言う。次々にいろいろな言葉をかけて、最後には教団系の施設へ連れていくという手口でした」
熱心な信者は善意ある人が多い
「手相の勉強」のほかにも、「意識調査のアンケート」の場合もあったという。いずれも、興味を持って話を聞いた人を教団が信者に運営させる「ビデオセンター」に連れていくのが狙いだった。ビデオセンターでは、教義に関心を持たせるための映像を視聴させていた。
「そのあとは勧誘を毎日のように続けて、徐々にマインド・コントロールをかけていく。最後は教団主催の合宿に参加させて、新たな信者を育てていました」
これは問題だと感じた鈴木氏は、偽装勧誘を阻止する活動を始めた。基本的に単独の活動で、時には、偽装勧誘を阻止された信者から暴行を受けたり、尾行されたりすることもあったという。その一方、活動中に新たに気づいたこともある。会話を交わした信者は、優しい人が多かったことだ。
「そもそも、手相の勉強に善意で協力する人に悪い人はいないですよね。むしろ、善意のある人のほうが信者になって、勧誘活動も熱心なんです。そのことは、信者の人たちと話をして初めて知ったことでした」
善意のある人ほど新興宗教にはまってしまうという現実。そこに至るまでの知られざるマインド・コントロールの手口。信者引き留めの内部統制の手段として使われる有力政治家の存在。鈴木氏は、これらの事実を広く知ってもらうためにメディアに何度も企画書を出した。ところが、結果は散々だった。
「当時はほとんど相手にされませんでした。編集者は『政治家のネームバリューがない』とか『統一教会は旬じゃない』と言うばかり。ずっとそんな扱いでした」
そんな中、興味を示してくれたのが、「週刊朝日」だった。14年4月11日号に「安倍帝国vs.宗教」というタイトルで掲載され、当時の安倍政権と自民党議員、統一教会について詳述した。
「その後も1年に1回ぐらいは週刊朝日で書かせてもらいました。でも、編集部には記事に対するクレームのほか、『フェイクニュースを書いている鈴木エイトに書かせるのはおかしい』などという意見が寄せられていたそうです」(鈴木氏)
訴訟の連発が報道を萎縮させていた
メディアが新興宗教に関連する社会問題を取り上げなくなったのには、別の理由もあるという。
「旧統一教会に限らず、問題が指摘されるほかの宗教団体でも記事が出るとすぐにクレームが入る。訴訟も多い。次第にメディア側に『面倒くさいニュースは取り上げたくない』という空気が生まれてしまった」(鈴木氏)
一方で、多くの新興宗教は、豊富な資金を背景にメディア対策を強化していた。記者にお中元やお歳暮を贈る。海外で開催されたイベントに日本のメディアを招待する。そんな中で、旧統一教会の問題が報道で取り上げられることはなくなっていったという。
それでも、鈴木氏はジャーナリストの藤倉善郎さんが09年に立ち上げた「やや日刊カルト新聞」で調査報道を続けた。
追及の手を緩めない鈴木氏に対し、怪文書が出回ったこともある。〈ハゲタカジャーナリスト 鈴木エイト〉とタイトルが付けられた文書には、こう書かれていた。
〈本業は大工? 普段の彼はジャーナリストらしからぬ風貌で、作業服を着、古くさい軽トラに乗って朝早く現場に向かう。『取材』の時はスーツに着替えるが〉
〈もう八十歳を過ぎた実母を……働かせている〉
すべて事実無根の作り話だ。
「軽トラに乗って朝早く出かけたのは、不動産の仕事もしていて、賃貸物件をいくつか持っているためです。当時、保有する物件のリフォームをしていたので、木材を積んで早朝出ていったところを見たのでしょう。母親も自分の好きなように働いているだけです。給料の一部を私がもらうこともありませんよ」(鈴木氏)
鈴木氏は、文書を作成した人物が誰かも、その目的も分かっているという。
「そのビラが作られたのは3年ほど前です。安倍氏の事件後に私がテレビに出演するようになったので、一時期、永田町にも出回るようになりました。私が信用できない人物だと触れ回りたかったのでしょう」
国は事件の調査と正式な報告書の作成を
岸田内閣は、22年末に旧統一教会の問題を受けて被害者救済を図るための新法を成立させた。しかし、「新法ができたからといって根本的な解決になったわけではない」と鈴木氏は言う。また、事件が起きた背景について、国が正式な調査を実施すべきだと訴える。
その鈴木氏が、次に追及する政治家は誰なのだろうか。
「自民党には、安倍氏にすべてをおっかぶせて逃げようとしている政治家が複数います。そこはきっちり検証していきたい」
そして、メディアの責任についてこう語った。
「再び、メディアが報じなくなったら、元のサヤに収まるのは明白で、こうした教団を生き永らえさせてきた政治家の問題はまったく報道されなくなってしまう。教団も政治家も報道が沈静化すれば元に戻ると思っている。幕引きさせないのがメディアの責任だと思います」
●麻生太郎氏、岸田政権の支持率低下で引退カウントダウン 8/22
「岸田首相の後見人」の麻生太郎・自民党副総裁が引退を決意したという情報が流れている。皮肉にも、そうした麻生氏の背中を押したのは岸田文雄・首相の解散先送りだった。
麻生氏の後継者と自他共に認める長男の将豊(まさひろ)氏(38・麻生商事社長)は、父は元首相、父方の曾祖父は吉田茂・元首相、母方の祖父も鈴木善幸・元首相というウルトラサラブレッド。現在、父も経験した日本青年会議所(JC)の会頭を務めており、JC全国大会の挨拶では「日本を取り戻す」という安倍内閣と同じスローガンを掲げるなど、政界入りを強く意識していることがわかる。
実は、将豊氏のJC会頭就任は、父から出された後継者になるための条件だったという。麻生家に近いメディア関係者の話だ。
「麻生さんは自分が経営者時代にJC会頭を務め、そのときに全国にできた仲間たちが政治家になってからも支えてくれたことから、将豊さんに『政治家を目指すなら、その前にJC会頭になって全国に仲間をつくれ』と“宿題”を出していた。将豊さんは今年1月にJC会頭に就任し、年内いっぱいで任期を終えます。会頭を退いた来年1月1日以降は“宿題”もクリアして、いつでも総選挙に出馬できるわけです」
仮に解散・総選挙が年内に行なわれた場合、現職のJC会頭である将豊氏は途中で辞任して総選挙に出馬するのは難しかった。だが、岸田首相は通常国会終盤の6月解散を見送ったうえ、支持率急落や相次ぐ政界スキャンダルで秋の解散も事実上、困難になったと見られている。
政治評論家の有馬晴海氏が指摘する。
「岸田総理は秋の解散を視野に入れているとの見方もありましたが、現在の支持率では無理です。解散・総選挙のタイミングはどんどん先送りされ、来年以降になるのは間違いないでしょう。そうなれば麻生さんの引退が決まる。今年6月や年内の解散であれば、後継者の長男がJC会頭在任中で出馬できないから麻生さんは自らもう1期やったのでしょうが、総選挙が来年になれば代替わりになる。岸田首相が年内解散できないという状況になったことで、麻生さんの引退のカウントダウンが始まったわけです」
主の引退を見越したように、麻生事務所では代替わりに備えた体制作りが行なわれているという。
「この1、2年の間に麻生さんに長く仕えてきた公設秘書が相次いで定年を迎え、若手スタッフへの引き継ぎも進んでいます。古参スタッフに囲まれていては、息子もやりにくいだろうと。これもご自身の引き際を意識した息子を想う親心と言えます」(ジャーナリスト・藤本順一氏)
●金子恵美「議員は襟を正して行動を」自民党女性局の海外視察に思うこと 8/22
元衆議院議員の金子恵美さんと、身近な話題から政治を考えていく今回は、未だ炎上やまない自民党女性局メンバーによる「フランス研修旅行」に見る「議員視察の意義」について。議員の視察とは本来、何をしに行きどんな成果を得るものなのでしょうか。そのフィードバックはどのようになされ、どこに生かされるのか。金子さんが解説します。
議員は何のために視察に行く?
自民党女性局の海外視察が話題になっています。様々な議論が繰り広げられていますが、批判が8、9割といったところでしょうか。国民感情を逆撫でする軽率な行動とその後の対応に、党内からも擁護の声はほとんど聞かれません。今回はこの「議員視察」に焦点を当てたいと思います。
視察を通して、議員は何を得るのでしょうか。
視察の目的とは、市民・国民の声を代弁するために現場で何が行われていて、どのようなことが起こっているのかを知るためです。
例えば、エネルギー問題で原発の議論をするとします。原発施設の構造や、事故が起きた際の原因が何であったのか、それをどのように克服し改善しているのかを現地に赴き目で見て確かめることで、腹落ちしたり新たな気づきが得られます。その知見を議会での発言に活かすなど、政治活動に反映させることができるのです。
先進的な農業政策、イノベーティブなスタートアップ企業、安心安全のための防災、逼迫した貧困問題の現場、沖縄の基地問題の現状と本音、充実した教育システム……など、ありとあらゆるテーマについての視察が可能です。
事実、国民の声を政治に反映させるために、これまで「視察」がとても重要な役割を果たしてきました。私自身も、議員時代は多くの視察に行き、現場の皆様の努力と成果と課題を生で伺うことができて、その後の議員活動に大きく影響を及ぼしたことが何度もありました。まさに「百聞は一見にしかず」で、机上の空論にならないように視察をする意義は非常に大きいものと実感していました。
現在騒がれている自民党女性局の視察の問題は、それが「視察なのかどうか」という点に尽きると思います。国民の目から見て、3泊5日で実質の「真面目な視察」と見られる時間が合計で6時間だった、というところがメインの争点でしょう。「税金で旅行に行っている」と思わせてしまったことが問題なのです。格差が広がっていると言われて久しい現代の日本。物価高も続き、苦しい生活を強いられている方々が多い中で、エッフェル塔での記念写真が「国会議員の特権」の象徴に映ったことは、残念ながら庇いようもありません。
ただ、このことによって、議員の視察そのものが「旅行」とみなされてしまうのは、政治家の今後の活動としては非常に大きなダメージとなりました。私の知る限りでは、この夏に難民キャンプへ赴き、現場の悲惨な状況を視察している議員もいます。志を持って閉会中の時間を有意義に生かし、知見を広げるため現地に足を運び、自分の今後の議員活動の幅を広げるために頑張っている議員もいます。なので、一緒くたに「海外視察」=「悪」と烙印を押されることはよろしくないと危惧します。
以前の記事にも書きましたが、議員が海外の要人と交流をする「議員外交」も非常に重要です。国と国の関係は、日ごろから温め合いながら作られていくものです。国境を越えても人と人の仲を深めていくのは、綿密で頻繁な交流なのです。視察を通して、議員外交をすることは日本のために他なりません。それを途絶えさせてしまうことは、絶対に避けるべきだと私は思います。
視察に求められる「準備」と「結果」
さて、私はどうだったかというと、いくつか事例を挙げたいと思います。3つほどご紹介しますね。
まず、日韓の交流です。日韓議員連盟の中に女性国会議員同士が交流する会があり、そのメンバーで訪韓しました。歴史問題で関係が悪化している中でも対話のチャンネルをしっかり作っておくべきと考え、私はこの会に参加し、時には激しい議論を交わしてきました。私は親韓の議員だと言われてきましたが、文化は好きなものの、政治的にはツッコミどころ満載な韓国には厳しいスタンスでした。なので、特に逆上する韓国人国会議員にも冷静な議論で対峙してきました。
大統領が交代して今でこそ親日的な流れができつつありますが、当時は日韓友好を謳いながらも実態は程遠いものでした。
さまざまな感情はありましたが、「交流を続ける」「パイプを作る」ことに意義があると思い、地方議員の時代から始めて、国会議員になってからも継続していました。地方議員のときの渡航費用は「政務活動費」として計上していました。つまり税金です。振り返ってみても、この活動が国民の期待を裏切るような「旅行」ではなかったと断言できます。
2つ目は、「委員会視察」です。国会議員時代に私は予算委員会に所属していました。委員会視察は所属委員が派遣されるかたちで視察が行われます。目的を掲げ、それを達成するために現地に向かいます。与党だけではなく、野党も一緒に参加します。私が派遣されたのは「地方創生の現場視察」で島根県の出雲市に行きました。出雲大社の神門通りを視察し、現地の関係者からインバウンドの反響や今後の展望、現在抱えている課題について説明を受けました。続いて松江市での会議で、政府のすすめる地方創生の問題点など地元の方から意見を聴取しました。
これらの視察内容は、後日委員会内で必ず報告するので、会議録でご覧いただけます。余談なんですが、出雲大社で先輩議員から「うちの娘はここのお守りをもらってから、縁談が決まったんだよ」と、当時独身の私にお守りをくださいました。このお守りは効果テキメンで、翌年私は結婚しました(どうでもいい話ですね笑)。この先輩はご自身の2つ折りの財布からお金を出して払っていましたし、領収書ももらっていませんでした。したがって、自費で払われていました(笑)。ただ、この往復の旅費、昼食の費用などは衆議院の負担だと記憶しています。
そして3つ目。日本の職人さん達の処遇改善を目標に、参考になるドイツの「マイスター制度」を学びに行きました。マイスター制度と言うのは、その資格がないと独立開業ができないという仕組みです。ドイツではその資格を取得するための教育システムが確立しており、マイスターの称号は社会的地位となっています。日本の匠、職人の社会的地位の向上、担い手確保の仕組みづくりのヒントを得るべく、有志の同僚国会議員5人で渡航し、ドイツのナンバーワンマイスターに選ばれた方からお話を伺ったり、ドイツの経済産業省にあたる省庁に行き意見交換をしてきました。
後日聞いた話では、翌日のドイツの経済系新聞に「日本の国会議員団が、マイスター制度を視察に来た」との記事が掲載されたそうです。これは完全に有志での海外視察なので自費で行きました。航空券代、宿泊代、飲食代、等含めて1,000,000円近くかかった記憶があります。ただ、この企画の発案者である宮崎謙介(現在の夫)が企画書を持って重鎮の先生たちに説明をし、資金援助をしてもらい、いくばくかは安くなったと記憶しています。もちろんその後、レポートを書いて重鎮の議員に報告に行きました。ちなみに自費で視察に行く場合には、民間からの資金援助を取り付けていくこともあります。
国会議員である以上(地方議員も同様)、国民の代表として常に国民から見られていますし、今の時代はさらにその目が厳しくなっています。だからこそ、常に襟を正して行動すべきですし、もしも「視察」に行って説明責任を問われたならば、堂々とレポートを示せるくらいの準備と結果を示さなければならないことを自覚してほしいものです。
●立憲・泉代表は党を割れ!政治学者が「小沢氏と決別すべき」と指摘する理由 8/22
岸田文雄内閣の支持率が20〜30%台に低迷している。だが、本来ならこれを好機と捉え、「倒閣」に動くべき野党にも覇気がない。小沢一郎氏が最後の戦いに乗り出している立憲民主党は、党内の足並みがそろわない。急成長していたはずの「日本維新の会」では、馬場伸幸代表が自らの党を「第2自民党」と評する発言をし、批判を呼んでいる。両党はこれからどうすべきか。
岸田内閣が支持率低迷も 立民は混迷、維新は「第2自民党」騒動
岸田文雄内閣の支持率が下落している。各種世論調査の中には、危険水域と呼ばれる2割台にまで落ち込んだものもある。政界の常識では、内閣支持率が危険水域を切れば「倒閣」の動きが出てくるものだ。
だが、岸田首相にはあまり危機感がないように思える。本来であれば支持率低下を「政権交代の好機」と捉えて勝負に出るべき野党側も混乱し、迷走しているからだろう。
迷走ぶりが特に目立つのは立憲民主党(以下、立民)だ。立民では、かつて自民党政権を2度倒して政権交代を実現し、「剛腕」「政界の壊し屋」の異名を取った小沢一郎氏が「最後の戦い」に動いている。
小沢氏が呼びかけ人に名を連ねる「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」には、立民の衆院議員95人のうち約60人が賛同した。その背景には、立民の泉健太代表が、共産党との選挙協力を否定する発言を繰り返してきたことへの反発があるとみられる。
泉代表はこの動きを受けて、共産党との候補者調整を進める方針に転換せざるを得なくなった。だがその一方で、共産党への拒否感が強い「連合」(日本最大級の労働組合)や国民民主党との連携は進まなくなった。“全方位外交”は難しいのである。
このように、立民は党内が分裂し、迷走している印象を国民に与えている。勝負に出るべきタイミングにもかかわらず、立民の政党支持率も低迷したままだ。
また、立民に代わって野党第1党の座を奪おうという勢いの日本維新の会(以下、維新)でも、その快進撃に水を差す出来事があった。
馬場伸幸代表が今夏、「第1自民党と第2自民党の改革合戦が政治を良くする」という発言をし、波紋を呼んだのである。野党の代表が、自らが率いる党を「第2自民党」と認めたのは初めてだ。言わずもがなだが、馬場代表は党内外から厳しい批判を浴びた。
ただ実際のところ、維新は国会で「第2自民党」的な位置付けではある。憲法審査会では改憲を主張し、「改正マイナンバー法」「改正入管難民法」に賛成した。「LGBT理解増進法」が成立した際は、自民党との修正協議に応じるなど協力した。
その一方で、維新の党内には「第2自民党」であることに違和感を抱く層も出てきた。
音喜多駿政調会長の下で今夏開催された「マニフェスト・ブートキャンプ」という勉強会では、経済、社会保障、安全保障など402項目の政策を総点検。自民党との対立軸となる「改革路線」の目玉政策を探った。
「第2自民党」と言ったり、自民党との違いを探そうとしたり、維新幹部の言動は右に左に揺れて迷っているようだ。
迷走する野党が気付いていない 対立軸の“古さ”とは?
立民・維新の迷走の背景には、一つの共通点がある。それは「右派VS左派」「保守VS革新(リベラル)」という対立軸の“古さ”に気付いていないということだ。
本連載で何度も指摘してきたが、そもそも安倍晋三政権以降の自民党は「左傾化」している。本来であれば左派野党が取り組むべき政策を次々と実行し、立民や共産党など左派野党をのみ込んできた。
「全世代への社会保障」「子育て支援」「女性の社会進出の支援」「教育無償化」、そして「新しい資本主義」――。
いわば自民党は、所得の格差を是正し、全国民の生活を安定させるための「社会民主主義的政策」を次々と打ち出してきた。こうなっては、左派野党はお株を奪われたも同然である。左派野党はいまや、自民党の「補完勢力」になり下がっているというのが筆者の考えだ。
では、その状況下における「新しい対立軸」が何かというと、「デジタル・イノベーション党VS社会安定党」である(第294回)。いずれも筆者の造語なので順に解説していこう。
デジタル・イノベーション党はもはや政党ではなく、「市場での競争に勝ち抜いて富を得ようとする人たちの集団」である。具体的には、SNSで活動する個人、起業家、スタートアップ企業やIT企業のメンバーなどだ。
彼らは政治への関心が薄い。「勝ち組」を目指す人たちにとって、社会民主主義的な「格差是正」「富の再分配」は逆効果になるからだ。
彼らの関心事は、日本のデジタル化やスーパー・グローバリゼーション(第249回・p2)を進めることである。
そして彼らは、政治を動かす必要があると判断すれば、現政権を批判する政党を時と場合に応じて支持する。その支持政党が「野党」となる。
立憲・泉代表は小沢氏と決別すべきだ
一方の社会安定党とは、自民党・公明党の連立与党を、立民・社民党・共産党・れいわ新選組などが補完するグループだ。この中に含まれる左派野党は、前述の通り自民党にのみ込まれ、実質的に「同じグループ」を形成してしまっている。
もう少し踏み込んで説明すると、自民党は英国の「保守党」と「労働党」を合わせたような「包括政党(キャッチ・オール・パーティー)」という特徴を持つ。
いわば、自民党は日本国民のニーズに幅広く対応できる、政策的にはなんでもありの政党だ。野党との違いを明確にするのではなく「野党と似た政策に予算を付けて実行し、野党の存在を消してしまう」のが自民党の戦い方である。
現在の岸田内閣も、左派野党が「弱者救済」を訴えれば「野党の皆さんもおっしゃっているので」と躊躇(ちゅうちょ)なく予算を付けて実行できる。その場合、もちろん自民党の実績となる。だから、左派野党は事実上の「自民党の補完勢力」から抜け出せないのだ。
今後は左派野党が望むと望まざるとにかかわらず、この対立軸が主流になっていくだろう。
だが立民や維新は、いまだに政治を「左と右」の古い対立軸で見ているのだろう。立民が共産党との共闘に踏み切ろうとしている背景にも、「自民党=保守」という“化石”のような発想が根強く残っているように思えてならない。
維新も「右か左か」という旧来型の考え方にとどまり、自民党が再び右寄りになることを恐れている印象だ。維新は「デジタル・イノベーション党」からの支持を得るという手もあるはずだが、政治の外側に自らの活路があることに気付いていないのだろう(第329回・p5)。
では、立民と維新は、現状打破のためにどうすべきか。
まず立民の泉代表は、共産党との共闘を模索する小沢氏などの党内左派と決別し、党を割るべきではないか。国民民主党や維新との合流を念頭に置き、連携を進めるのも手だ。維新側も、泉代表が労組と縁を切れば、連携への障害はないはずだ。
もしこの案が実現すれば、2017年10月総選挙時の「希望の党」の再現となる。17年以降動きが止まった日本政治が、ようやく動き始める時だ。泉代表は変化の潮流をつかみ、今こそ行動すべきである。
一方、維新は自民党に代わる「国家像」を国民に提示すべきだ。
維新が「政権政党」に成長するための道とは?
その一つが、自民党の中央集権体制に代わる「地方分権体制」である。維新の会は「道州制」を打ち出してきたが、それをより具体的かつ詳細な国家戦略として練り上げ、国民に提示するのだ。
それは単に、国から地方への権限移譲を進めるだけでない。これからの時代は、地域同士が国境を越えて直接結び付き、経済圏を築く「コンパクト・デモクラシー」が当たり前になっていく。その動きを加速させるのだ。
例えば、関西・九州・四国などの地方都市に経済特区を設け、外資を呼び込み利益を上げる。日本の各都市が、シンガポール・香港・上海といった成長著しい国や地域と直接結び付けば、経済成長のスピードは加速するはずだ。
また、あくまで昨今のロシア情勢を度外視した仮説だが、北海道が将来的に、サハリン・シベリアと石油・天然ガスの取引を直接行っても面白いかもしれない。
その実現可能性はさておき、現在の日本では当たり前の「中央政府が地方を規制で縛り付け、全てが首都に集中する経済システム」に疑念を呈する活動を、もっと大々的に行ってもよいのではないか。
また、中央政府についても、従来筆者が主張している「参院を改革し、知事・市長や地方議会の代表が直接国会議員になれる連邦国家型上院の導入」(第69回)という統治機構改革を打ち出せば、憲法改正に関する維新独自の「目玉」を作れる。
17年の総選挙で、維新の代表は松井一郎大阪府知事(当時)、希望の党の代表は小池東京都知事だった。国政政党の代表が国会議員ではなかったというのは、いささか異常な状況だが、この改革が実現すれば解消できる。そして今以上に、地方の意思を国会の決定に反映しやすくなるだろう。
維新に関しては、一つ一つの政策をボトムアップ式に見直しつつ、国家のグランドデザインに丁寧に落とし込んでいけば、国民に訴えるべき政策がおのずと見えてくるはずだ。そこに、維新が政権政党に成長する道があると筆者は考える。 
 
 

 

●「ブライダルまさこ・木原副長官文春砲」説明なし 自覚欠いた自民 8/21
岸田文雄政権の「説明責任」はどうなっているのか。政権中枢などに次々と疑惑や問題が炸裂(さくれつ)しているが、国民の理解を得ようとする様子はない。最近も、森まさこ首相補佐官(女性活躍担当)に、「ブライダル補助金」と100万円の献金問題が直撃して大炎上しているが、森氏は沈黙したままだ。岸田首相は18日(日本時間19日)、米ワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドで日米韓首脳会談を行った。衆院解散を見据えた外交成果にしたいようだが、都合のいいアピールばかりでは、一部で「危険水域」に突入した内閣支持率のさらなる低下もありそうだ。
5月の広島G7(先進7カ国)サミット以降、岸田政権では疑惑・問題が相次いでいる=別表。
特に、岸田首相の懐刀である木原誠二官房副長官側には、週刊文春が1カ月以上、連続で疑惑を報じた。
党内外から「木原氏自身が堂々と説明すべきだ」との声が上がったが、木原氏は目立つ政務を控え、日弁連に人権救済の申し立てを行い、刑事告訴も行ったとして、疑惑を解消するための記者会見を開こうともしない。
「岸田首相はあえて説明をさせず、表舞台に立たせないことで沈静化を図った」(自民党ベテラン)というが、政権中枢を担う副長官が機能不全≠ノ陥ったのは明らかだった。
首相補佐官である森氏に浮上した「ブライダル補助金」問題も、似たような道をたどりつつある。
森氏は先週末、自身のX(旧ツイッター)やフェイスブック(FB)に、「ブライダル補助金」事業の成果を書き込んだ。正式には「特定生活関連サービスインバウンド需要創出促進・基盤強化事業」で、2022年度補正予算案で12億円が計上された。
SNSでは、ブライダル補助金が少子化対策になるとも読み取れたため、当初は「無駄遣い」「ピント外れ」などと批判が殺到した。実際は、外国人の結婚式を日本に呼び込み、業界や地域の活性化を図る内容だったうえ、業界大手から森氏が代表を務める「自由民主党福島県参議院選挙区第四支部」に100万円が寄付されていたことも発覚した。ネット上は、森氏を「ブライダルまさこ」と命名して大炎上している。
夕刊フジでは今週、東京や福島にある森氏の事務所に何度も連絡を入れているが、お盆期間なのか、まったく連絡がつかない。
日本維新の会の音喜多駿政調会長は「森氏の『ブライダル補助金』問題は、企業献金の抜け道を悪用した癒着≠ニみなされ、国民の怒りは当然だ。血税の使い方は徹底的な情報公開、説明責任が必須で、国会議員の責務だ。長期政権による自民党の慢心、よどみは深刻といえる。維新は率先してコンプライアンス(法令遵守)の強化に取り組み、国民の信頼を獲得したい」と強調する。
若狭弁護士 政治倫理上完全に「アウト」
岸田政権の相次ぐ疑惑・問題発覚と、説明責任の欠如は極めて深刻だ。
評論家の屋山太郎氏は「最近の不祥事は『行儀の悪さ』が目にあまり、国民は『政治家の質の低下が加速している』と受け止めている。そして、岸田政権は常に『説明責任』を欠いている。不祥事が起きても、政治家が信念を持って誠実に説明し、行動すれば、信頼は戻ってくる。ところが、岸田政権は筋の悪い対応に終始している。岸田首相は『政治への決定的不信』につながりかねない危機的状況を直視すべきだ」と語った。
岸田内閣の支持率低下が止まらないなか、自民党内の危機感は高まっている。
党中堅は「岸田政権の政策は世情をくみ取れていない。増税路線が露骨だから、物価高対策なども一時しのぎの弥縫策と見透かされている。加えて、自覚を欠いた言動が連発したら、選挙で大惨敗する」と肩を落とす。
森氏の問題では、さらなるリスクを指摘する声もある。
元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「陳情を受けて便宜を図り、直後に献金を受けたなら、政治倫理の観点からは完全に『アウト』だ。捜査当局は『興味深い案件』と食いつくのではないか。弁護士出身で法相も務めた森氏は、リスクや問題を感じなかったのか。首をかしげざるを得ない」と語っている。
G7サミット後に岸田文雄政権に直撃した問題
・「公邸忘年会」問題で、長男の翔太郎秘書官を更迭
・LGBT法の拙速な成立で、保守派や女性団体が反発
・木原誠二官房副長官側に「文春砲」が直撃
・マイナンバーカードをめぐる相次ぐトラブル
・自民党女性局のフランス研修中の写真投稿が大炎上
・自民党の秋本真利外務政務官に風力発電会社から不透明資金提供疑惑
・森まさこ首相補佐官の「ブライダル補助金」と100万円献金
●自民党女性局フランス研修では、きっと見ていないフランスの少子化問題 8/21
日本で自民党女性局がフランスに海外研修に来て、観光旅行さながらの写真をSNS上に掲載して大炎上した。これを見て、この日本の政治家の方々がわざわざ研修にいらっしゃるフランスでの子育てや少子化対策などについて、私がフランスで子育てしてきた経験と私の知る範囲のフランスの教育について、少し書いてみようと思います。
日本よりはマシだけど、フランスでも少子化は進んでいる
フランスでの少子化対策の一環として、一番大きなものは、子供を育てている人に対しての税制優遇と、子育てにかかる費用や施設の援助であるのではないかと思っています。この税制優遇にしても、子育ての援助にしても、共通するのは、親の収入に応じて金額が異なっており、援助が必要な人により多くの援助が行き渡るように配慮されているものだと思われます。したがって、両親が働いている場合、一人親の場合、子供の人数などにより、その援助の金額は異なります。
フランスでは3歳から16歳までが義務教育となっているので、公立の学校に通う限り、必要なのは、学校での特別な行事や旅行のための費用が主です。給食費に関しては親の年収に応じて金額が異なります。年度初めには、新年度に必要なものを揃えるための準備金として、親の収入によって括りはありますが、子供の年齢に応じて一人につき398ユーロ(約6万3千円)〜434ユーロ(約6万9千円)が支払われます。これは、今年9月からの新年度が始まる前、8月中に支払われる金額で、毎年金額は変動します。今年は該当する300万世帯に向けて、この準備金が支払われることになっています。
子供を持つことによる税制優遇措置は、特に3人以上になると格段に有利になるという話で、娘の友人たちなどを見渡すと3人兄弟姉妹という家族が結構多い気がします。また、子供の数は年金のポイントにも加算されます。
しかし、それが功を奏していたのも一時期までの話で、2010年を境にフランスの出生率はグングン下がっています。2010年には832,799人生まれていた子供が、2022年には723,000人にまで減少し、急激な下降線をたどっているのです。
現実は厳しく、フランスだって、いいところばかりでもない
子供を持つことで色々な優遇措置があるとはいえ、現実はそう簡単ではありません。出産のための休暇や育児休暇があるとはいえ、その後も女性が仕事を続けていくためには子供を預ける場所が必要になりますが、その保育所とて妊娠した時点で予約しなければ、安心できる保育所のスペースは確保できないという話もよく聞く話です。
また、子供を持つことでもらえる児童手当をあてにして、子供を産めるだけ産み、親は働かずして(親の収入が少ないほど児童手当は多い)、子供を虐待しながら児童手当で生活するような者まで出てきます。
公立の学校にやれば始終ストライキに悩まされ、子供の預け場所に右往左往する始末。犯罪の低年齢化にもアクセルがかかり、子供が一日の大半を過ごす学校はその子の人生を大きく左右することになります。昨今の低年齢化するフランスの未成年の犯罪は家庭さえしっかりしていれば……などという生易しいものではなく、少しでも安全・安心な教育の場所と考えるとどうしても私立の学校を選びたくなってしまいます。
我が家の場合、幼稚園(幼稚園もエコールマテルネルと呼び、学校扱い)までは娘を公立の学校に通わせていましたが、1カ月近くも学校のストライキが続いたことに、もう心底ウンザリして是が非でもストライキのない私立へ!と小学校からは私立に入れました。それさえも、入学試験というものがなかったために(今はわかりませんが、当時の娘の学校では)、気がついて、申し込みをしたところがもう遅く、娘の幼稚園(幼稚園とはいえ学校扱いなので成績表があります)の成績表を送ってみたり、策を講じてようやくギリギリ滑り込めた感じでした。
フランスは格差社会と言われるだけあって、学力とて優秀なほんの一握りの人々と、まずまずの中間層、下は限りなく下で、最近のINSEE(国立統計経済研究所)の調査によると、フランスの16歳35,000人は読み書きができないという衝撃的な数字が出ており、この年齢の5%に相当します。日本では、きっとあり得ない数字だと思います。
隣ではないけど、隣の芝生は青く見える……のか、良いところばかりがピックアップされて伝わりがちで、ましてや政治家が公式に視察に来られたりしても、フランス側は良いことしか言わないだろうけれども現実はそんなに甘くはないのです。
フランス人が発するもう一つの少子化対策への提言 La vie est belle(人生は美しい)
フランスでの少子化が再び叫ばれ始めてから(今年の初め頃だったか?)あるフランスの大手新聞社に掲載された記事がなかなか興味深く、まさに少子化といえば日本……と言わんばかりに日本やその他の国を引き合いに出し、少子化対策への提言をしていたことがありました。
ここでは、少子化に向かっている日本についての具体的な数字を示しながら、「日本はその小さなサイズにもかかわらず、経済的および文化的に非常に重要な役割を果たしてきました。私たちは日本人が団結することに期待したいと思います!」と事実だけを客観的に述べて大変危機的な状況を説明しながらも、日本を腐すことなく「頑張れ」と比較的ソフトにしめていました。
加えて、フランスもなかなかな警告ラインに達している現状について説明し、「……にもかかわらず、私たちの国の指導者たちは、十分な数の子供がいなければ国の将来を確保することは困難であることを忘れている!」と手厳しく述べています。
そして現在、大家族を持つことはかなり質素に生活することを意味しており、家族手当はある程度の規模で存在するものの、生活水準の低下を補うにはほど遠い。養うべき人数が増加し、両親のフルタイムの仕事が困難または不可能になる場合もある。国の手当は子供の数が増えても相対的な貧困に陥らないようにするために必要なレベルにはほど遠いものであると指摘しています。
つまり、政府の対策はまだまだ充分ではないということです。
しかし一方では、これから子供を産み育てていく世代に向けて、「あらゆる困難にもかかわらず人生は美しいものです。楽観的に生きましょう!」「la vie est belle(ラ・ヴィ・エ・ベル)」と呼びかけています。これは、いかにもフランスらしい言い方でもあるし、きれいごとのように聞こえないでもありませんが、一面では、結構真実を突いているような気もするのです。
人生にとって何が楽しいことなのか? 何が有意義で価値のあることなのか? そのあたりの価値観が実はけっこう大きな起動力でもある気もするのです。
フランス、ましてやパリといえば、キラキラなイメージがあるかもしれませんが、そんなキラキラな生活を送っている人はごくごく一部です。日常の生活はけっこう質素でシンプルで、家族で過ごす時間をとても大切にしています。フランス人のバカンス好きは有名ですが、それもほぼ子供を含めた家族で過ごす時間です。フランス人はそのバカンスのために生きているといっても過言ではないほどです。(しかし、そのバカンスにさえ行けない人が増えているのですから、子供どころではない人も大勢いるということでもあります)
その人の人生において何に重きを置くか──そんな家族とともに過ごすバカンスのために、子供を持って自分の家族が欲しい!そうして充実した人生を送りたい!と思うことほど大きな動機もないのではないかとも思うのです。
私が前々から感じている日本でいう「家族サービス」という奇妙な言葉はフランスにはありません。家族で過ごすことは、家族みんなが一緒の時間を楽しむことであって、一方的にサービスするものではないからです。
たしかに出産も子育ても本当に大変ですが、過ぎてしまえばむしろ大変だったことの方が良い思い出になっている気さえします。子育て中は本当に大変でしたが。
自民党女性局はフランス研修で何を学んだのか
今回、私がこの記事を書くきっかけになった自民党女性局のフランス研修についてですが、サイトを見ると、フランスの3歳からの義務教育の目的や効果、少子化対策、政治分野における女性の活躍等が書かれており、保育所などを視察されたそうですが、そもそも7月24日〜28日という時期的は夏休み期間で学校もお休み。
パリで生活する人があまりパリにいないタイミングです。百聞は一見にしかずとも言いますし、また、直接話を交換することに意味があるとは思いますが、どうにもモヤモヤしないでもありません。
今回のフランス研修で彼女たちが間違いなく学習したであろうことは、不用意なSNSへの投稿はご法度だということ。
政治分野における女性の活躍云々以前に、性別関係なしにフランスの政治家は、SNSの発信にも自分たちの行動が国民の目にどう映るのかにも大変気を配っています。 
●日本から「韓国」に移り住んで「こんなデタラメな国はない」と“確信”したワケ 8/21
「こんなデタラメでいいのか」と…
韓国で、私が文在寅政権時代に多くの痛い目を見たことは著書『それでも韓国に住みますか』にも綴っているが、「こんなデタラメな国」はないと私は思っている。
というのも、政権が変わった途端、我々庶民の生活に大きな影響が出てしまうのだ。
実際、2019年から「反日・不買」が始まった際には、その波は一気に韓国国民全体を飲み込んだ。その結果、それまで日韓ビジネスを行って来た者たちはどれほど苦しめられた4年間だったか……思い出すだけでも吐き気がしてくる。
私もそれまで進めていたプロジェクトが幾つかあったが、すべて白紙になり、大きな損害を被った1人だ。
それでもいまだに韓国の左派たちが福島原発の処理水をめぐってデマやフェイクを垂れ流している。彼らは自分たちが調子の良い時には判決や科学的機関のデーターが正しいといい、都合が悪くなるとそれまで言い放ったことを忘れたかの様に反対のことを言い出したりしている。
そんな相変わらずぶりが変わらないのが、いまの韓国野党であり、左派市民団体なのだ。
「デマ」と「呆れ」
そんなデタラメ思想に賛同してしまう日本の政治家が一部にいるが、いったい何が目的なんだろうと、参政権がないにもかかわらず私は恥ずかしさを感じずにはいられない。
このデマのおかげでどれだけの関係業者が迷惑し、怒っているかを知るべきと思うのだ。
今回、必死な左派の活動を見ていると、すでに「ローソク集会」や「反日・不買運動」が何の意味も持たなかったことに気づいている韓国国民には、何一つ響いてないことがよくわかる。
そんなデマがいくら撒き散らされても、韓国では居酒屋、寿司屋は繁盛し続けているし、訪日韓国人も相変わらず多い。
私は先日、日本のテレビ局に協力して韓国取材を段取りし、韓国の若者たちに取材をしたが、ここでも若い世代の韓国人たちは歴史と文化を分けて考え、日本文化楽しんでいることがハッキリとわかった。
韓国の未来
それにもかかわらず、韓国左派は北従思想、共産思想、社会主義擁護が露呈し、その方向性を国民が否定しだしていることになぜ気づかないのか、あるいは知っていて知らん顔なのか、まだ世間を騙し通せると思っているのだとすれば呆れてモノが言えない。
だが、今の尹政権はハッキリと日韓問題(歴史観)に決着をつけると大統領自ら明言している。その影響で若者が文化を楽しむことを優先し、歴史観は二の次にしだしたのだ。
尹政権がそういった雰囲気を作ったことで、左派が流すデマに事実上大きな被害は出ていないが、業者を含めた韓国民はこのデマを見て聞くたびに嫌気と怒りしか感じていないだろう。
そこに韓国左派思想の未来が見え始めているのかも知れない。
●「韓国国民の本音」の“意外な中身”と、韓国で起きている「巨大異変」の中身 8/21
韓国「反日の現場」でほんとうに起きていること
韓国の弘大(ホンデ)地区は、有名大学もあり、若者が集まる場所としても有名だ。
そんな場所で、これまで大学生や高校生と話す機会が何度かあったが、いまや彼らから「反日的」な雰囲気を感じ取れることは皆無になっている。
そんな時、あえて彼らに「反日」な考えはないのかと聞いてみたとき、少し驚く答えが返って来た。
というのも、大学生、高校生の共通した答えが「一部のおかしな人はいる」と言うのだ。そして「私たちもそうした人たちとは接しない」と言い、「その思考を理解するのが難しい」と言うのだ。
もちろん学校でそう言った質問を授業中に受けたなら体裁上、教育に沿った答えを真面目にするという。
が、普段は「反日」というようなことはまったくなく、むしろ「楽しければそれでいい」というのが本音のようだ。
そういった意見を聞いたあと、週末の光化門の「反日デモ」を見ていると、この国には「反日」という意識がほんとうはどこにあるのか理解に苦しむのだ。
ユニクロを買う「反日女子」
韓国で根っこに「反日思想」がある若者は、実際には光化門でしか見られないのではないのかと、思わざるを得ない。
光化門は韓国のデモの「中心地」と位置付けられている場所だが、私はソウルではこの場所以外で「反日」を見たことがないのだ。
「反日・不買」ムーブメントが盛んだった時でも、ソウルの至る場所に日本式の居酒屋が並び、そこのお客には「反日」は他人事と思える様だった。
カンナムのカフェでは日本への対応を話しあうビジネスマンが多くいたり、知り合った大学生からは「反日女子」がヒートテックを買っていると連絡が来たりと、私にとって韓国の「反日」とは光化門(半径3キロ圏内くらい)という限定的な地区だけの話の様に思えてならない。
逆に言えば、光化門だからこそ「反日」を叫べるのかも知れない。
「光化門」という場所
光化門とは韓国の大手、中堅新聞社が集中する場所でもある。そうしたメディアは日々こういったデモを取り上げるには都合の良い場所にいるわけだ。
韓国の聯合ニュースのビルは、いつでも大使館前の水曜集会を見下ろせる場所にある。慰安婦像から十数メーター離された正義連は、いまは聯合ニュースビル前で集会を行っている。朝鮮日報、東亜日報も、まさに光化門のデモを見下ろせる大通りに位置する。すぐ近くにアメリカ大使館もあって反米活動も取材しやすい。
中央日報は数年前に引っ越して、いまは光化門から離れているが、ソウル新聞や名の通った新聞社の多くがここに位置するわけだ。
そういった場所からの報道であれば、直に内容が伝われることも多いだろう。一方で、そこに集まる人達は、韓国全土の中では「一部の人」であると認識しないと見間違えてしまう恐れがある。
弘大やカンナムでは「反日」を他人事の様に捉えている。日本文化を楽しむ韓国人が、デモに集まる韓国人以上にいることを認識しないといけない。
●岸田政権を支える麻生太郎氏、長男へのバトンタッチは既定路線 8/21
収束の気配のないマイナンバーカードを巡るトラブル、自民党議員に相次ぐスキャンダル、そして20%台の“危険水域”にまで転落した岸田内閣の支持率……。9月中旬にも内閣改造・自民党役員人事を行なうとみられる岸田文雄・首相にとっては、まだまだ酷暑が続く。そこに来て、岸田首相の最大の後ろ盾にも、ある異変が起きていた。
支持率ジリ貧の岸田政権にあって、ひとり気を吐いているのが「岸田首相の後見人」の麻生太郎・自民党副総裁だ。
「今ほど日本、台湾、アメリカをはじめとした有志の国々に非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はないのではないか。戦う覚悟だ。いざとなったら、台湾の防衛のために防衛力を使うという明確な意思を相手に伝えることが抑止力になる」
麻生氏は8月8日に自民党ナンバーツーの副総裁として初めて台湾を訪問して蔡英文・総統と会談し、現地の講演で台湾有事についてそう発言して国際的に大きな波紋を呼んだ。
また、韓国も2回にわたって訪問、尹錫悦(ユンソンニョル)・大統領と長時間会談して日韓関係改善の道筋をつけてきた。
外交だけではない。
8月14日には岸田首相との関係冷却化が伝えられる茂木敏充・幹事長と2人で会食。秋の内閣改造では茂木氏の幹事長交代が取り沙汰されているが、「麻生さんは岸田派、麻生派、茂木派の主流3派で政権を支える体制を維持するために、茂木さんが次の総裁選に出馬せずに岸田首相の総裁再選を支持すれば、幹事長に留任できるようにすると説得している」(麻生派幹部)という。
岸田首相はマイナ問題や側近の木原誠二・官房副長官のスキャンダル報道に加えて、秋本真利議員の洋上風力汚職まで発覚してまさにボロボロの状態だが、「それを麻生さんがたった1人で懸命に支えている」(同前)という状況だ。
「最後の仕事だという覚悟」
だが、ここに来て、“政権の大黒柱”である麻生氏が引退を決意したという情報が飛び込んできた。
麻生家に近い地元・福岡のメディア関係者の証言だ。
「麻生家も後援会も、次の総選挙で長男の将豊氏(38、麻生商事社長)にバトンタッチするというのは既定路線で、それを前提に準備を進めている。もちろん、麻生先生もすでに引退する腹を固めています。麻生派会長の座は義弟(千賀子夫人の実弟)である鈴木俊一・財務大臣に譲って、政界入りする将豊さんの将来を託すつもりです。
今、麻生さんが韓国との関係修復に力を入れているのも、台湾で踏み込んだ発言をしたのも、現役のうちに自分がやっておかなければならない最後の仕事だという覚悟を強く感じる。引退表明は近いのではないか」
麻生氏を長年取材してきたジャーナリストの藤本順一氏も同じ見方だ。
「麻生さんが今期限りの引退を考えているのは、最近の政治的な言動からしてまず間違いないでしょう。外交でいえば、麻生さんは政界入りする前の日本青年会議所会頭時代から韓国や台湾との交流に積極的に取り組んできた。いわば、麻生さんのライフワークであり、思い入れが強い。とくに台湾については、かつて日本が中国の主張する一国二制度を受け入れたことにも忸怩たる思いがあり、今回の『戦う覚悟』発言につながった。そういう意味で一連の外遊は政治家人生の締めくくりを強く意識したものと言えます」
麻生氏が外交面や党内政治に積極的に動いているのは、引退を意識しているがゆえの行動だという指摘だ。
“これでもう思い残すことはない”
自民党副総裁として台湾で積年の思いを語った麻生氏はそんな心境だと見られているのである。
●「現地を見た方がいい」予定になかった首相の福島第1原発訪問 8/21
処理水タンクが立ち並ぶ福島第1原発構内。「(放出する沖合)1キロ先とは、かすんでいる辺り?」「ずっと配管が行って、海底において放出する?」。海を臨む展望デッキに立った岸田文雄首相は、処理水の放出設備を見渡しながら東京電力幹部に矢継ぎ早に質問した。最後に「大きな課題に取り組んでいる現場の皆さんには、緊張感を持って引き続きやっていただきたい」とハッパをかけた。

今夏の海洋放出開始へ最終局面に入った処理水問題。首相直々の原発視察で「政治決断」の地ならしが極まった。ただ漁業者の理解を得られるかは依然不透明で、中国が対抗措置を強める恐れも拭えていない。
首相側近によると視察は当初、政府の段取りに含まれていなかった。「放出するならば、現地に足を運んで原発の現状を見たほうがいい」。秘書官たちの進言を受けて決まったという。
米国での日米韓首脳会談から19日深夜に帰国し、翌日の強行日程。現場に赴いた上での最終決断を演出したい思惑はあからさまで、側近も「首相自身が最後に自分で判断するためだ」と解説する。だが、首相の置かれた状況は厳しい。

首相は21日にも全国漁業協同組合連合会長と面会し、海洋放出を妥当とした国際原子力機関(IAEA)の報告書を基に放出への理解を求める考えだ。その一方「漁業者との信頼関係は少しずつ深まっている」とする首相に対し、福島県漁連の野崎哲会長は「何を捉えて理解が進んでいると言っているのか分からない」とすれ違う。そもそも、漁業者は処理水の安全性よりも風評被害への懸念が強く、前向きな返答を引き出せる見通しは立っていない。
加えて共同通信社の世論調査では、放出を巡る政府説明が「不十分」や、風評被害を懸念する回答がいずれも8割を超えた。当事者のみならず、世論の理解を得ているとは言い難い。

国外批判も大きい。処理水を「核汚染水」と主張し反発を強める中国は、日本産水産物への全面的な放射性物質検査を始めており、流通停滞など実害も表面化。放出開始により措置がエスカレートし、農産物の輸出全般に波及する可能性もある。「説明の場を設けると常に言っているが応じてくれない」と官邸幹部。
安倍晋三政権が先送りした処理水問題に自ら決着をつけようとする岸田首相。ただ、広がる一方の内外の批判に政府内には手詰まり感が漂っている。 

 

●洋上風力発電は「安全保障上の喫緊の課題」と小野寺氏 8/20
自民党の小野寺五典元防衛相(党安全保障調査会長)は20日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』に出演し、「日米韓協力の新時代」を打ち出した18日の日米韓首脳会談の意義について、「韓国が政権交代しても、前のようにちゃぶ台返しやゴールポストを移すことが簡単にはできなくなる」との認識を示した。
小野寺氏は防衛相だった頃に日本のイージス艦と米国のイージス艦を視察した際、日本のイージス艦内の情報画面には韓国軍の情報が反映されていなかったのに対し、米国のイージス艦内の情報画面には韓国軍の情報が反映されていたことを明らかにした。その上で今回の日米韓首脳会談を経て日本と韓国が情報共有できるようになれば、「日本の安全保障にもとても大きいプラスになる」と述べた。
元外交官の宮家邦彦氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)は、今回の日米韓首脳会談の意義に関し「(日米、日韓の)二国間の同盟はあるが、NATO(北大西洋条約機構)のような多国間(の集団安全保障体制の創設)は絶対に無理だ。二国間以上で多国間以下のものをどうつくっていくかということが(首脳会談の)ポイントだった」との見解を示した。
一方、離島や防衛関係施設周辺等での土地の所有・利用をめぐる安全保障上の懸念を受けて、去年(2022年)施行された「重要土地等調査法」に関し、小野寺氏は「まだまだ不十分だ」との認識を示した。「ウクライナ戦争を見ても、重要インフラは基地と同様に重要な拠点ということがはっきりした」として、外国人や外国企業による重要インフラ周辺の土地所有規制を「強化していきたい」と強調した。
さらに小野寺氏は、洋上風力発電に関し「(設置)場所も、どの国(の企業)がつくっているかという資本もよく確認することがいま一番喫緊の課題だ」と話した。「いろんなところの申請が出ているが、風力発電が私どもとして困る場所につくられる(と問題がある)。例えば、レーダーを阻害する。あるいは、他の国の製品が使われていると、そこからどんな情報を日本から取っているかも分からない」と指摘した。
以下、番組での主なやりとり。
松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員): 歴史上さまざまな大きな会談が行われてきたアメリカ・キャンプデービッドで開かれた日米韓首脳会談だが、終了後の記者会見でバイデン大統領は、日米韓の防衛協力を「前例のないレベルに引き上げる」と述べた。
小野寺五典氏(元防衛相・自民党安全保障調査会長): アメリカは今までは一国で「君たちをしっかり守るよ」と言えたが、だんだん力が低下する中で、私どもが意識する周辺国が力をつける中で、連携して対応しないと持たないという別の一面もあるのではないか。
宮家邦彦氏(元外交官・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹): (米国としては)日韓関係改善のスピードをもう少し早めなければいけない(と考えた)。ヨーロッパでウクライナ戦争が起きている。中国も何か企んでいるかもしれない。いま何かやらなければいけない。ところが、(日米、日韓の)二国間の同盟はあるが、NATO(北大西洋条約機構)みたいなもの、多国間(の集団安全保障体制の創設)は絶対無理だ。だから、二国間以上で多国間以下のものをどう作っていくかということが(首脳会談の)ポイントだった。その核心は日韓だ。
橋下徹氏(番組コメンテーター・弁護士・元大阪府知事): 韓国で有事が起きた時に韓国を支援するのは日本に駐留する在日米軍と、場合によっては(横田基地に所在する)朝鮮国連軍後方司令部だ。もうすでに(日韓は)同盟と言わなくても準同盟関係にあるのではないか。
小野寺氏: 日本にある在日米軍基地は、韓国の支援のために相当の役割を果たすことになっている。本来であれば日本に対してその基地負担についても「日本に感謝する」と韓国から言ってもらうのが普通であり、以前はそういうことを発する韓国の政治家もいた。最近どうも日韓関係が悪くなって互いにあまりこの問題について本質を議論しなくなった。在日米軍基地はかなりの部分、そして(日本に駐留する)朝鮮国連軍後方司令部も、いざという時のためのものだ。日韓、日米韓の関係をしっかりすることは、日韓両国の安全保障にとって重要だ。一番大きいのは、例えば、私が防衛大臣のとき、日本のイージス艦で日本の周辺はどうなっているかという情報を画面で見るのだが、日本のイージス艦で見ている映像と、たまたまアメリカのイージス艦に入って同じ映像を見ると、出てくる絵が違う。なぜかというと、アメリカのイージス艦は韓国の情報も入った上での一つのピクチャー(画像)で、周辺の状況が出てくるから。本来日本もこれを持つことは、日本の安全保障にもとても大きいプラスになる。今回、安全保障面で見れば、日韓、日米韓の関係は日本にとってもプラスになる。日韓関係は文在寅前政権時にかなり悪化した。(韓国海軍駆逐艦が自衛隊哨戒機に対して行った)レーダー照射問題や、(韓国側による一方的な)GSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)の破棄表明でギクシャクした。こういったことを完全に水に流せるのか。
小野寺氏: 現場で任にあたっている隊員からすれば、非常に危険な状況に一時あったわけで、この問題についてはこれからも累次、防衛当局が確認する必要がある。今までは韓国の政権が代わると日本に対して急に違う対応をされることがあった。ところが、日米韓三か国が組んで今後新しい枠組みでやっていくとなれば、この対話のチャンネルは崩せないので、韓国の政権が代わったとしても前のようなちゃぶ台返しやゴールポストを移すことは簡単にできなくなる。そういう意味で、この三つでグリップすることは大事だ。
松山キャスター: (外国人や外国企業による土地購入の)経済活動としての部分と、安全保障上の問題は切り分けて考える必要があると思う。安全保障上の問題について具体的に動きだしているのが、共和党の大統領候補デサンティス知事のフロリダ州だ。7月1日から重要インフラ施設から10マイル(約16km)以内にある不動産について、中国、ロシア、イラン、北朝鮮などの個人・企業に対して購入・所有を禁止した。具体的な国名を上げて禁止する動きが出ている。今の日本の法整備ではここまで踏み込んでいないが、小野寺さんはこの動きをどう受け止めるか。
小野寺氏: 本来あるべきだと思う。ただ、日本の場合、憲法の規定もあり、できる範囲で今ギリギリやってるのが「重要土地等調査法」だ。まずは重要インフラ周辺の土地所有者は誰で、どういう目的で取引が行われるのか監視し、万が一の場合には国が取得する等、いろんなことをようやくできるようになった。ただ、まだまだ不十分だ。まずは現行憲法下でこれをもっと規制すべきだ。実際、いまウクライナ戦争を見ても重要インフラは実は基地と同様に重要な拠点ということがはっきりした。安全保障上、私どもはしっかり監視をするし、外国人、あるいは外国企業がその周りの土地を所有して、逆に日本の安全保障が脅かされることがあれば本末転倒だから、ここは強化していきたい。
橋下氏: フロリダ州のデサンティス知事の考え方は、国名をあげてこの国の人に対しての取引を規制するということだが、僕はこれは違うと思う。重要施設だから、重要インフラだから、相手の国籍がどうであれ、重要インフラの周りの土地は買ってはいけないよと。国名や国籍で何か規制するというわけではないですよね。
小野寺氏: 国名で規制すると、(買っても)いい国の人の名義を使って買って、結局それが別の国の資本で運用されてしまうこともある。だから国名で規定しても実効性はない。むしろ国がしっかり管理をする形を取っていく。国名は別として、その方が実効性はある。
宮家氏: 日本で在日米軍基地の周りの土地が買われてしまって、しかもどこの国とは言わないが、間違いなくやってるだろうなという人たちがいる。そういうのを考えると、デサンティス氏のやり方がいいとは思わないが、やはりもう少し日本のレベルを上げないといけない。
小野寺氏: 例えばいま、風力発電がある。洋上風力発電でいろんなところの申請が出ているが、実は、風力発電が私どもとして困る場所に作られると(問題だ)。例えば、レーダーを阻害する。あるいは、風力発電にほかの国の製品が使われ、そこからどんな情報を日本から取っているかもわからない。風力発電一つとっても、安全保障上管理する必要がある。(設置)場所も、どの国が作っているかという資本もよく確認することがいま一番喫緊の課題だ。 
●ウクライナ — 即時停戦の必要性信じる日本の政治家 8/20
東京:日本維新の会所属の政治家鈴木宗男氏によるロシアのウクライナ侵攻をめぐる発言が、日本国内で物議を醸している。
昨年2月の侵略以来、鈴木氏は侵略の責任はウクライナにもあると主張し、即時停戦を求める声明を繰り返してきた。鈴木氏の立場は、ロシア軍の完全かつ無条件撤退を求める日本政府の立場とは大きく異なる。
鈴木氏は北海道・沖縄開発庁長官、外務政務次官などを歴任。長年ロシアとの交渉に携わってきた。
鈴木氏は共同通信のインタビューで、ウクライナ情勢について「ロシアとウクライナには明らかな国力の差がある」とし、「ウクライナは(西側諸国の支援なしでは)単独で戦うことはできない」と語った。
更なる流血の事態を想定し、双方とも停戦が必要であり、これ以上高齢者の犠牲者を増やさないためにも、一刻も早く停戦を実現することが重要だ」と述べた。
ポリティコによると、マーク・ミリー統合参謀本部議長は昨年11月、ニューヨークでの会合で、ウクライナの軍事的勝利は難しい可能性があると述べ、この冬はロシアと交渉を開始する良い機会だと付け加えた。
鈴木氏も同様の考えを持っており、近年存在感を増しているグローバル・サウスと呼ばれる発展途上国が双方に停戦を求めていると指摘した。
鈴木氏は、約40カ国と国際機関の代表が参加した今月初めにジェッダで開催された国際平和会議に感銘を受けたとも述べた。
●「これからの日本について、日本はダメじゃない。その可能性について」 8/20
在仏20年になる父ちゃんだが、20年前、パリの空港からパリ市内に入る高速道路の左右はすべて日本企業の巨大看板で埋め尽くされていた。
まさに、シャルルドゴール空港からパリへの道はジャパニーズゴールデンゲートだった。
実際、日本は世界一と自負するほどの経済大国であった。
その日本経済の求心力が低下しはじめ、逆に、中国や韓国企業の看板が目立ちはじめ、今、日本の会社の看板と言えば「ダスキン」くらいしかしかないのだ。マジで。
それに急速な円安、日本にいると気づかないが、日本の円ではまともに買い物が出来ない状態が続いている。父ちゃんは外貨を稼がないとならなくなった。
じゃあ、もう日本に未来はないのか、ということをぼくはずっと考えてきた。
トヨタなどの大手自動車会社はまだ力があるが、将来的にも、そういう日本の基幹産業がトップでいられるかどうか、微妙な感じを受ける。
デザイン力、将来を見通す力、とくに政府の支援の仕方も含め、日本は長期的な戦略において、ここのところ元気のいい国々と比較すると、ちょっと弱い。
西側という古い幻想はもうない。BRICSのようなものがどんどんこのバランスを崩して来るだろう。もの凄い勢いで。ドルなんて、もしかすると・・・。
世界一と胡坐をかいていた間にぐんぐん抜かれているのは間違いない。
そもそも資源がない。ロシアがあれだけの戦争をやっても、まだ、大国でいられるのは、十分な資源を握っているからである。
でも、しかし、今回の日本滞在で、日本没落か、と思って心配してきたこの20年の考え方にちょっと変化が出はじめた。日本にはもの過ぎ資源があるじゃないか!
その資源というのは、日本人そのもの、なのである。
笑われるかもしれないが、やっぱり、日本人は、他の国の人々とはくらべものにならないほどの真面目さ、勤勉さが国民の根底にあるということだ。
これは世界で暮らせばよくわかる。凄いことなのだ。
ぼくは20年フランスで暮らしたし、アメリカでも暮らしたことがあるので、ちょっとはわかる。
驚くべき斬新さはないのだけれど、国民全体が一つの力になっている。
なので、来日する度に、その底力、安定感に、驚かされる。
とくに今回は、空港から、タクシーから、街並みから、あらゆることに、目を見張った。もはや、父ちゃんの目は外国人の目なのであーる。ぎろぎろ。
異論はあるだろう。
個性は強くないかもしれない、向こう見ずなエネルギーも弱いかもしれない。
ワーカホリックな国民性、政府がそれを利用している、など、不安材料はそれなりにある。
でも、責任感や、目的に向かう力、集中力はやっぱりすごい。問題は、ジョブスとか、ほら、いろいろといるような経営者、ああいう発想を持ったリーダーになる存在が、かなり薄いということだ。
若い起業家の人たちはメディアで立派なことをおっしゃっているが、世界規模じゃないし、現実の大樹を見てない。そこが、今、急激に成長している新興国の起業家たちと違う点なのである。
これは、政府のやり方に、大きな問題があって、外から見ていると、残念でならない。
ビジョンが「今」を基準にしているので、5年後、10年後が全く見えない投資ばかりがなされ、うだつの上がらない「金貸し」という印象で、しかもメッキがはげかけている。
ただ、島国で、他国と繋がっていないので、その利点は、可能性を秘めている。
ぼくにはたくさんの日本復活へのアイデアがあるのだけれど、この紙面では語り切れないし、ぼくはご存じのように実業家ではないし、ジャーナリストでもないし、政治的人間でもないので、個人的アートへ向かうことで精一杯、なので、この話はまたいつか、ということにしましょう・・・。
ただ、もったいないなぁ、と思う。
同じく、資源のないフランスと比較しても、フランス人は個性的で面白い人間たちだけれど、勤勉さは日本人の方が圧倒的に上で、しかし、なぜ、フランスが強いのか、というと、政治力があるからだ。
EUを束ね、あの規模感(日本の半分の人口)の国なのに、世界の政治のかじ取りをうまくやる。
フットワークが政治にある。もしも、日本の政権が、まともなフットワークを持つことが出来たら、国民資源がこの国を強く再生させることが出来るだろうと思う。
もう少し、日本の政治家は、外を知り、外から学ばないとならない。内を大切にするべきだ。
政治家を育てバンバン排出するフランスのエナのような特別な学校を創設するようなところから、はじめなとならないのだけれど、こういうこと、言っても、ハぁ、ですよね? 
実に、もったいない話なのである。
●重度の「感染症依存症」に陥った日本人に飲ませる“特効薬”は永久にない 8/20
コロナ騒動を終わらせたくない人々
7月29日、4年ぶりの隅田川花火大会が行われ、103万人が参加した。すると途端に元気になるのがコロナ騒動を終わらせたくない人々である。
82万人が訪れた京都の祇園祭宵々山(7月14〜16日)の時もそうだったが、「マスクをつけてない人が多い! メガクラスターが発生するじゃないか!」とツイッターで人の楽しみに難癖をつける。そして毎度「2週間後は地獄になる!」と煽り、ならなかったら次のターゲットを探す。
7月24日〜30日の1医療機関あたりの陽性者数は全国平均が15.91人。京都は16.54人。もっとも多いのは佐賀県で31.79人となっている。佐賀で京都の祇園祭宵々山レベルの祭なんてこの時期にやっていない。
そして、8月7日〜8月13日の全国平均は14.16人になった。祭あっても減ってるじゃねーかよ。
もう世の流れが「コロナ? 何それ?」に向かうのは止められない。ワクチン接種を推奨し続けてきた日本医師会の釜萢敏理事(政府分科会メンバーでもある)も、ワクチン接種について方針転換してこう述べた
「65歳以上の人や基礎疾患がある人以外が重症になる割合はそれほど高くはない。全体の感染を抑えるために無理をして接種してもらうというよりも、個人で選択してもらう時期に入った」
メディア・政治家・専門家・ツイッターの医クラ(医療クラスター)・コロナ脳らが恐怖を煽り続けたことをシレッとなかったことにしようとしているが、そうはさせない。私は本稿にて、この3年半に及ぶ歴史的騒動をしっかりと記録しておく。
コロナを終わらせたくない人々の手口はだいたいこうだ。

1) 「第〇波」が開始しそうだ、「水面下で始まっている」などと警鐘を鳴らす。
2) 基本的な感染対策の徹底と気の引き締めを要求する
3) 陽性者が増えると「指数関数的に増加する」と言い出し、「だから自粛をしマスクをしてワクチンを打て」と言う
4) テレビが「マスク警察」となって「アーッ、マスクをしていない人がいます!」とヒステリーに叫ぶ。知事や各地の医師会が「おじいちゃん、おばあちゃんに会う時はマスク着用を」と言う
5) 陽性者数が減り、「第〇波」が終わったと判断されると「まだ普通の病気ではない。引き続きマスクの着用とワクチンの追加接種を」と専門家が警鐘を鳴らす
6) マスク様とワクチン様を信仰する人は「民度の高い日本は大多数がマスクをし、ワクチンを打ったからこの程度の被害で済み、収束した」と言い、引き続きの自粛と感染対策を要求する
7)以下、1〜6をループさせる。なお、2023年3月13日以降「マスクは任意」と政府が方針を発表して以降、メディアは「マスクをしている人は東京駅で94%」や「これからもマスクを着用する意向の人は80%」などと煽りをやめない

よくもこんな茶番を8回もやってきたものだ。そして今、9回目をなんとか続けようと必死な勢力がいる。貴殿らは邪魔。もう、喋るな。そしてこれから糾弾されろ。なんの権限があって人々に行動制限を課し、国民総我慢大会を強いたのだ。
欧米各国は2022年初頭には「対策しても無駄。もう気にしていられない。昔に戻ろう」とばかりにこのバカ騒動から撤退。アフリカ諸国はそもそもほぼ気にしていなかった。「もっとヤバい感染症、時々流行るんですよ……」という気持ちもあったかもしれない。
それなのに日本は「対策をすればコロナは撲滅できる」という根拠レスな根性論で対策を続けた。その際、専門家と政治家とメディアとコロナ脳が見事な連携で上記 1)から6)を繰り返した。
尾身茂氏は相も変わらずワクチン推奨
2023年8月、そんなコロナ界隈にも「なんとなく終わった」感が漂っている。結局、すべては人々のマインドの問題だったのだ。あとはメディアが過度に煽らなくなっただけの話だ。社会の空気感が変わったから専門家もトーンダウンした。
分かったのは、コロナは壮大なる“社会ヒステリー実験”であり、儲かる者がその利権を固持し、他人が楽しい様を恨む人々、潔癖過ぎる人々、幼稚な死生観の人々、「経済より命」「PCR検査の無償化を要求します」「学校に空気清浄機を!」と叫ぶ“自称ヒューマニスト”がなんとしても終わらせたくなかっただけ、ということだった。
政府分科会会長だった尾身茂氏が6月26日、「第9波の入り口」にあることを発表。そのうえで、お得意の「高齢者を守れ」発言をし、「(5類移行で)接触の機会が増え、感染者の数がある程度増えることは織り込み済み」と述べた。
そして、そして、お決まりのワクチン接種を呼びかけたのである。現在6回目絶賛進行中で、7回目も準備はできている。大丈夫、無料のものが大好きな日本人は接種してくれますよ。
本稿では、日本のコロナ政策、そして人々の行動様式に多大なる影響を与えた「自説を曲げず軌道修正ができぬ頑固過ぎる専門家」、そして彼らを盲信する「(どんなバカなものでも)ルールはルール!」「政府や自治体や専門家が言うことは絶対に正しい!  そこに異論を挟むヤツは反社会的人物!」と考える多数の日本国民について書いてみる。
ちなみに、コロナの5類化開始の5月8日を前にした4月19日、厚労省の専門家会合に参加した脇田隆字座長は、第9波の可能性を示唆し、高齢者が多い状況で推移する「可能性」を述べていた。私はこの発言を、政治家と国民に対して「お前ら本当に5類に賛成するんだな、死んでも知らないからな。今だったらまだ引き返せるぞ」というメッセージと捉えた。
それにしてもラクな仕事である。「第〇波の可能性」「次の波は前の波を超える被害が出る可能性」「マスク着用など基本的な感染対策は継続すべき」「ワクチンの追加接種が必要」を定期的に言っておけば「ありがたやー」とメディアが記事にしてくれる。
それを読んだコロナを恐れる人々は「専門家様もこう言ってるゾ!  5類移行は時期尚早だった!  特効薬がないのにあまりにも乱暴だ!  マスクをしない不届き者も増えている。だから陽性者が増えたんだ!」と勢いづかせるのである。
ちなみに風邪にもインフルエンザにも特効薬は存在しない。コロナに特効薬ができるのも現代の科学では無理だろう。
またいつもの光景が始まった…
6月20日頃、沖縄で新型コロナウイルス陽性者が激増し、「医療が逼迫している!」とメディアやツイッターで医師が危機をしきりと伝えるようになったが、「またいつもの光景が始まったわ……」と暗澹たる気持ちになった。
尾身氏は沖縄の陽性者が増えたことについて、「コミュニティーを大切にする生活様式や、比較的低いワクチン接種率も影響している可能性があると指摘した」(共同通信・6月26日)と分析。第6波の時(2022年1月1日〜3月31日)と言ってることが変わっていないのである。
尾身氏は「人流を抑えれば感染は抑えられる」「マスクを含めた感染対策には効果がある」「子供・若者が高齢者に移して高齢者を殺す」「ワクチンが救世主」という論を一切変えず、政府に対しても3年間同じ提言ばかりしている。
ならばなぜ、日本の超過死亡が2021年・2022年と激増し、2022年には17週間にわたって世界一の陽性者数を叩き出したのだ? 貴殿の提言、まったく効果なかったでしょうに。それに、沖縄についての話も印象論に過ぎない。
沖縄は毎度気の毒である。何かといえば「大酒飲み」「家族やコミュニティーを大切にするから集いが多い」「ワクチン接種率が他の都道府県より低いから感染しやすい」といった印象論でやり玉にあげられるのだから。
もう一つの要素は米軍の存在だ。第6波は沖縄で一早くスタートしたが、その理由は「マスクをしない米兵が日本に来たから」とされた。この件については、基地反対派が政治的意図をもって言いふらした説という面も強いだろう。
確かに沖縄のみワクチン2回接種率が70%を下回るのは事実だが、人口100万人あたりコロナ死者数は全国平均が597.6人。もっとも高い大阪府が977.4人、2位は北海道の896.7人。沖縄は8位の692.1人である。
この「100万人あたり〇人死亡」というヤツは厄介で、情弱を怖がらせるための有効な表現手法でもある。全国平均の「100万人あたり597.6人」は別の言い方をすれば「致死率0.05976%、生存率99.94024%」である。全国平均より高い沖縄は「致死率0.06921%、生存率99.93079%」だ。
その後、10万60歳という超後期高齢者のデーモン閣下が自身の公演で観客へのマスク着用を要求し、高校野球鹿児島大会ではインフルエンザやコロナが増えているということで開会式が中止に。おなじみの光景がやってきた。
未だ「感染症を恐れることこそ人生でもっとも大切なこと」といったモードから日本人は抜け出せていないのである。そして、その空気を生み出したのは、この3年半、専門家が扇動するコロナの恐怖と、それを拡散する政治家・メディアである。
このメディア・専門家によって拡散された恐怖から、末端の組織人や家族人が従業員、客、そして家族に過度な感染対策を押し付け、「他人はばい菌である」「他人を見たらコロナと思え(元は岡田晴恵氏の発言)」という空気感を作り出したのだ。
多くの日本人が陥った「感染症依存症」
感染症分類が5類になって以降、マスクを外す人が増え、コロナ報道も減った。だが、専門家とコロナ脳たちは相変わらずで、「ウイルスの性質が変わったわけではない」「基本的な感染対策は必要」を言い続け、定点観測での陽性者数が増えたら「第9波はこれまでよりもヤバくなるかもしれない」などと煽り発言をやめようとしない。
だから、変な話だが、日本人の多くは「感染症依存症」という何が何やら分からないヘンテコな精神状態に陥っているのだ。メディアも同様で、かつてはそれほど危険視していなかったRSウイルス、インフルエンザ、ヘルパンギーナ、手足口病の流行を深刻ぶって報道。これらは数年前までは「風邪」「夏風邪」などと称されていたものである。
これらについてもいつもの「感染症煽り医」がメディアに出演し、事態の深刻さと感染対策の重要性を説いている。最近では、松本哲哉氏や伊藤博道氏といったお馴染みのメンバーが再びテレビで活躍をし始めた。そうした効果もあり、ついには上記風邪・夏風邪の増加を問題視し、挙句の果てには「子供達が風邪で熱が出る」までニュースとして出すようになったのだ。
「ヘルパンギーナにワクチンなし」という当たり前の話なのに、さらに言うと過去には誰も気にしていなかったようなことまで6月下旬、ニュースとしてテレビは報道する始末。「謎の風邪」という言葉も一時期ツイッターのトレンド入りした。社会全体で「風邪」を恐怖の病気扱いするようになったのである。
この3年半、感染症の専門家とされる人々は、新型コロナについてハッキリ分かっていないにもかかわらず、すべてを把握しているかのように振る舞った。
「マスクが防ぎます」「ロックダウンをすれば封じ込められます」「酒を2時間以内に切り上げればリスクは減ります」「酒類を提供しなければ防げます」「4人以上の会食はいけません」「県をまたぐ移動はいけません」などなど、思い込みを元に人々に生活スタイルの強要と行動制限を課した。そして日本人は羊のように従った。
「感染症の専門家」はいつしか「新型コロナの専門家」としても扱われ、その一言一言が政治家に影響を与え、そして一般人が拡大解釈して各施設や学校では過度な感染対策が行われた。
そこまで恐怖に陥れたら、なぜか医師免許を持っているだけの人物が「専門家」扱いされるようにもなる。なんで貴殿らは新型コロナウイルスのこと、ワクチンのこと何でも知っているんだ? 
ツイッターには「医クラ」と呼ばれる人々多数存在したが、救急医、内科医、歯科医らがこぞってコロナの恐怖と医療従事者の頑張りとマスクとワクチンの素晴らしい効果について連日ツイートを続け、信者が「ありがたやー!」と崇めた。そして異論を呈する者に対しては、これら教祖が犬笛を吹いて「こいつを攻撃しろ!」と暗に焚きつけ、異論を呈した者に一斉に襲い掛かり、罵詈雑言を浴びせた。
こうなってくるともはや医クラは万能感MAX状態になり、「マスクの専門家は医者だ」、と述べる者まで登場した。いや、マスクの専門家はマスクメーカーの従業員であり、不織布メーカーの従業員である。
ツイッターユーザー「えれこーど」氏(現・Mr.NoWaven)は不織布メーカーの従業員である。そんな同氏が自社製品にとって絶好のチャンスだというのに、不織布マスクはウイルス対策のためではなく、その性能が誇大解釈されていると説明。それなのに「お前は嘘つきだ!」と「マスク真理教」の信徒からは猛烈に批判された。
いや、えれこーど氏こそが教祖だろうよ。だが、「不織布マスク」という神を冒涜した堕落した教祖、という立場に同氏は落とされてしまったのである。
結局、日本人は、テレビに出る医者やツイッターでフォロワーの多い医クラといった「権威」の言うことを素直に信じ過ぎ、それに従って対策を続けたため、異論に対して噛みつきたくなるのである。何しろマスクの効果に疑問を呈する者は、素晴らしい教義を貶める邪教の信者なのだから。
専門家が作り上げた「設定」の数々
さて、ここからは、専門家が作り上げ一般人が信じ込んだ「設定」について見ていこう。まずは【医療崩壊】である。
元々2020年4月の緊急事態宣言は、医療体制を充実化させるための時間稼ぎ、という目的で人々は自粛をし、飲食店は営業を休止した。その後も度重なる緊急事態宣言とまん延防止等重点措置(マンボウ)は発出され、医療業界は何度も体制を変えるチャンスはあったというのに、2023年6月、「沖縄が医療逼迫している!」とメディアと医クラは大騒ぎ。そして「感染症依存症」の人々は仰天しパニックに陥った。
あのな、貴殿らが「コロナ陽性で熱が出ると私は死ぬ!  私の母は基礎疾患があるからうつしては絶対にならない!  病院様〜、診てください!」と慌てるのがいけないの。本来自宅で休んでおけばいいだけの人まで救急車で病院に来るから、貴殿らのいうところの「医療崩壊」が起きていたのである。
沖縄県医師会は6月29日、県庁で緊急会見を開き、県民に感染対策を呼び掛けた。会見では、県内の入院患者が950人を超え、重点医療機関の医療従事者のうち565人が休職していると発表。病床・人員不足を懸念する会見だった。
この休職者についてだが、実際に医療体制に影響はもたらしている。たとえば、沖縄県立中部病院は以下の制限をした。
「小児の夜間休止」「心臓血管外科患者の紹介・救急受け入れ」「新規外来紹介患者、救急紹介患者」「消化器内科診療」「耳鼻咽喉科診療」。6月22日の発表では、患者25人、職員19人の陽性が明らかになっていたのだ。こうした制限の理由は以下の通り。
〈 新型コロナウィルス感染症の増加に伴い、職員の感染・濃厚接触者増加によるマンパワー不足のため通常医療が提供できない状況となっております。(中略・ここでは各科の制限状況を説明)。皆様にはご不便、ご迷惑をおかけいたしますが、科の体制がひっ迫している現状をご理解頂き、ご協力を賜りますようお願い申し上げます 〉
5類になったというのに、いまだにいわゆる「濃厚狩り」を行い、休職者を増やしているのである。まさに「セルフ医療逼迫」とでもいえよう。
本当に体がツラい人だけが休めばいいのに、元気な濃厚接触者まで休職させられた。「患者さんを救いたいのに……」と考える休職者もいることだろう。それなのに病院の方針として、闇雲に検査をした結果、医療逼迫を招く結果となった。
ちなみに、沖縄が医療崩壊したと言われた6月21日の重症化病床は27床中5床の使用。これが医療逼迫の実態だ。
そして、7月1日、沖縄のラジオ局・琉球放送がイオン名護で行ったイベントには大勢の人々が密集する写真が掲載された。マスク着用率は約半分。ここにコロナ脳は噛みついた。「マスクしろ、密を避けろ、こんなイベントを今やるな、沖縄は医療崩壊しているんだぞ!」というのが基本線である。
コロナ脳と医者にとっての希望の星が沖縄なのである。ここでも沖縄はコロナを終わらせたくない人々に利用されている。ちなみに、8月7日〜13日の一医療機関あたりの感染者数は日本全体では14.16人だが、沖縄は日本で最も少ない6.72人だった。
ただの「夏風邪」が「重篤な症状」に
こんなことだから、医者たちは、いかに自分たちが大変で社会にとって有益な仕事をしているかをアピールし、そして庶民は自分たちに感謝すべき存在、という考え方にすっかり染まってしまった。秋田大学医学部附属病院長の6月23日のツイートが象徴的である。
〈 コロナも5類になって少し落ち着いたような気もするでしょうが、その時傷ついた看護師達の心は未だ癒えてません。コロナが下火になっても、コロナの前からも、#看護師 は24時間患者さんに寄り添ってくれています。仕事とは言え本当に大変な職業です。彼女彼らに激励の #応援メッセージ をください。〉
いや、院長、貴殿が看護師の待遇を上げてあげればよいだけでは? しかも、貴殿の病院、コロナの外来診療していないじゃないですか。
今はインフルやRSウイルスの診断で大変だったってことですか? 2019年までだって、両方で多くの患者来ていたでしょうに。看護師だって「応援メッセージなんかよりカネと休みをくれ」と思ってるんじゃないですか? 
子供を持つ親からすれば、ヘルパンギーナを含めた「夏風邪」はよくある症状だった。それなのにコロナ騒動が3年半続いた現在、「よくある症状」は「重篤な危険をもたらす症状」ということになってしまった。医師会らはヘルパンギーナも2類相当にしたいのか? もう医療崩壊どころか健康皆保険制度崩壊まっしぐらだ。
ツイッターユーザー・鈴木兆氏は医師が騒ぎまくっている医療崩壊について6月24日にこうツイートした。
〈 俺も孫が幼児の時小児科に連れて行ったことがあるが、当時PCからネット予約して通院しても診察まで1時間待ち、待合室はごった返していた。孫は39度くらいあって、他の子は知らないがみんな普通に動き回る。それがデフォルトだった。その良し悪しは置いておくが、今はそれを医療崩壊と言うそうだ。〉
私も喉を時々やられ、猛烈に痛くなることが2014年〜2020年まで、2年に一度くらいあったため、その際は腕の良い医師のいる耳鼻咽喉科を受診したが、ネット予約開始と同時に予約を取ろうとするも、なかなかアクセスできず、再アクセスを試み続けると数分後にいきなり「43番目です」と出る。受診できる目安は8時30分の受診開始から2時間半後の11時なんてこともあった。
早く受診できることを期待し、仕事をするためパソコンを持って10時30分に行くと待合室はビッシリで私の番まであと13人、なとど出ている。多いのは子供と高齢者だった。それだけ腕の良い病院というのは混んでいるものなのだ。
ツイッターユーザー・あーぁ氏は医療崩壊についてこうツイートした。医療側の人間は常に「大変だー大変だー!」と言い続けていることを皮肉っているツイートだ。
〈 あのね、2類相当以上の時もずーっと医療逼迫って騒いでて、5類になってからも医療逼迫って騒いでるんだからもう放っとけばいいんだよ 〉
だが、人々は医療従事者に「いつもありがとうございます」と激励のメッセージを送る。そう、この3年半は、社会が「医療従事者は常に大変」「医療こそもっとも崇高な仕事」と思い込んでしまったのである。
実際、2020年12月21日、当時日本医師会会長だった中川俊男氏は「医療はあらゆる産業で一番重要だと私は思っている」と発言。また、町田市医師会の佐々木崇氏は、「不要不急の商売は次々と潰れていく」というコラムを町田医師会報第553号に掲載。理容院の感染対策が同氏的にはなっていないと感じ、「素人でもできる不要不急の商売は次々と潰れていく」とこれまたゴーマンな意見を述べたのだ。
結局、医者の選民思想に全国民が付き合わされたのがコロナ騒動だったのである。
●未だに「マスク」と「ワクチン」を崇め奉る日本人は、いつまで“コロナ禍プレイ”を 8/20
専門家は年中「気を抜くな」と言い続ける
ここからはさらに個々の設定を見ていこう。
【コロナには油断できる月は一切ない!】
まるで『日本全国酒飲み音頭』が毎月酒を飲む理由を探すかのように、専門家は毎月のように「気を抜くな」と言い続ける。1〜12月の理由と、その他、「〇〇が危険です!」と言われたものについて振り返る。
   1月:正月と成人式でコロナになるぞ
   2月:入試で人が動き、集まるからコロナになるぞ
   3月:送別会と卒業式でコロナになるぞ
   4月:花見と入学式でコロナになるぞ
   5月:ゴールデンウィークでコロナになるぞ
   6月:梅雨で室内にこもるからコロナになるぞ
   7月:夏休み開始と海の日の連休と花火大会でコロナになるぞ
   8月:お盆の帰省でコロナになるぞ
   9月:新学期開始とシルバーウィークの移動でコロナになるぞ
   10月:祭りや行楽シーズン、ハロウィンでコロナになるぞ
   11月:気温が下がり始めるからコロナになるぞ
   12月:クリスマスと忘年会と年末の帰省でコロナになるぞ
「危険設定」されたものは以下の通り。
屋形船が危険/タクシーが危険/ライブハウスが危険/パチンコ屋が危険/夜の街が危険/県をまたぐ移動が危険/ゴミが危険/宅配業者・郵便配達人が危険/東京五輪が危険/高校野球が危険/音楽フェスが危険(特に愛知県常滑市のNAMIMONOGATARI)/学校行事(入学式、遠足、修学旅行、体育祭、文化祭、運動会、合唱コンクール、林間学校、卒業式)が危険/帰省が危険/親戚同士集まるのが危険/大学が危険(小中高が対面になってもリモートを継続した大学が多かった)/給食が危険/K-1が危険/阿波踊りが危険/岸和田の「だんじり」が危険/接待を伴う会食が危険/正面で向かい合って食事をすると危険、斜めにすべき/公共施設における椅子をすべて使うと危険/2時間以上飲食をすると危険/5人以上で食事をすると危険/子供は高齢者にとって危険な存在/祇園祭が危険/隅田川花火大会が危険
茨城県で行われていた「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」は、2021年に茨城県医師会の反対により中止に追い込まれ、翌年からは千葉で実施されることになった。2019年には33万7000人が訪れた大規模フェスが消えたのだ。
しかし、2022年、地元・茨城放送が「LuckyFes 2022」を開催。この時は茨城の医師会は反対をしなかった。反対していたらどうなったのか? 同フェスのHPには『「茨城のフェス文化の灯を消すな!」を合言葉に、LuckyFM Green Festivalがこうして立ち上がりました(通称LuckyFes)』とある。
あのさ、自分らの県の判断でフェス文化の灯を消しといて何言ってるの? ロッキンオンは東京の会社主催だから苦々しかっただけなの? luckyFesは地元企業で関係者に知り合いも多いから許したの? としか思えない。
「楽しいもの」を悪者にする一方で
次に、どう考えても腑に落ちない「謎設定」を振り返っていく。
【なぜか悪者にされない存在】
満員電車/高齢者施設/病院/役所/郵便局/選挙/国会/全国の議会/県知事や総理大臣への表敬訪問/テレビ番組/風俗店/マッチングアプリ/ラブホテル/AV撮影/相撲
これらでクラスターが発生したり、これらが原因で陽性者が続出したという報道は寡聞にして知らない。基本的には娯楽・祭・学校行事・各種式典・花見・会食(飲み会)という「楽しいもの」を悪者にし、規制をかける。
相撲が悪者にならない理由はよく分からない。激しくぶつかり合う力士はマスクしてないではないか。要するに勝手に専門家とメディアがこれらが危険な場所である、という「設定」にしただけなのだ。
それは初期の頃「不要不急の外出は避けてください」と散々アナウンスされたものだから、娯楽的なものは「欲しがりません、勝つまでは」状態になったのだ。
一方、上記【なぜか悪者にされない存在】は、必要火急だから悪者にするわけにいかなかった。一時期電車はガラガラになったが、さすがにリモートを延々続けるわけにもいかず復活。仕事のためには電車に乗らざるを得ないため、悪者にできなかったのだ。「窓を開ければ大丈夫」という謎の条件を付けることが免罪符となった。
政治や役所業務の中止も社会の停滞をもたらすためこれらも悪者にはされない。ただし、役所の宴会や議員のキャバクラ通いは糾弾の対象となった。
超濃厚接触であるラブホテルや風俗関連は専門家やメディアが口にするのが恥ずかしいからか【なぜか悪者にされない存在】になった。
なお、2021年3月24日、厚労省老健局老人保健課の職員23人が会食をしていたことが分かり批判された。19時15分に開始し、24時近くまで残っていた者が十数人いたという。この頃は都の要請で飲食店には21時までの時短営業となっていたが、幹事は23時まで開いている店を探していたのだという。
このニュースが出た時、「厚労省職員、大宴会が問題ないこと分かってるんだったらそのこと早く言い、コロナ騒動終わらせろ!」と思ったが、結局謝罪をし、厳正な処分をすると述べるだけだった。
テレビ番組が悪者にならなかった理由は、「コロナの危険について教えてくれる大切なもの」であることと、自分達で自分達のビジネスを否定するわけにはいかなかったからだ。一社ぐらい「我が局は大勢の人が働いています。クラスターになる可能性があるので、緊急事態宣言明けまで番組は流しません」ぐらい言えば良かったのにそんな局はなかった。
そして、テレビ番組のスタジオで出演者は妙なアクリル板を間には置いていたものの、マスクをしていない。この矛盾を述べるとコロナ脳は「スタジオは換気が良く、出演者は番組ごとにPCR検査をしているから安心だ」とくる。そしてドラマでは『孤独のグルメ』(テレビ東京系)ではマスクを着けていたが、大多数のドラマではマスクは外していた。ほぼすべての連続ドラマも主要キャストが欠けることなく無事オンエアを終了した。
『ワールドビジネスサテライト』(同)では、大江麻理子キャスターをはじめとした出演者が一時期マスクをしていたが、いつしかシレッと外していた。とにかくすべてが一貫しておらず「設定」が空気によってつくられていき、その設定に合致していれば悪者にはならなかったのだ。
また、「テレビ出演者は毎晩組の前にPCR検査をし、スタジオの換気は良い」という説が、出演者のマスクナシの根拠とされたが、これは真っ赤な嘘である。私はコロナ期間中、何度もテレビに出たが、レギュラーで出る番組では一度もPCR検査を要求されなかった。
2021年8月、イレギュラーで出た番組では検査を要求されたが、「それならば出ません」と伝えたところ、「中川さんを中心に据えた流れになっているので、ならば受けないでいいです」と言われ、ズッコケた。
換気についても嘘である。スタジオというものは室内にある。せいぜいドアを開けている程度である。「換気扇が優秀なのだ」という説もあるが、換気扇を回せばマイクが音を拾ってしまうため、換気扇を全開にすることなどできない。
不思議なのは、テレビ局も鉄道会社も上記のようなことを積極的に言わないのに、コロナ脳が勝手に擁護してくれる点である。
「なぜ出演者はマスクをしていないの?」「なぜ満員電車ではクラスターが発生しないの?」と矛盾点を突かれると、勝手にテレビ局と鉄道会社を一斉に擁護し始めるのである。航空会社は「機内の空気は3分で入れ替わるので安心です」と言うものの、結局は最高峰に厳しいマスク警察の業界になっていた。これも首尾一貫していない。
クラスター発生源の不都合な真実
このように【悪者】と【悪者にならない存在】を見てきたが、ここで補足が必要だ。
彼らが言うところの【悪者】とは、「クラスターが発生しそうな場所」であるが、2023年4月24日〜30日の「全国における施設別のクラスター発生割合」は以下の数字だった。
高齢者施設:65.52%、障がい者施設:5.75%児童施設:2.3%、学校施設:5.75%、医療機関:19.54%、飲食店:1.15%、事業所等:0%、その他:0%
高齢者施設と医療機関を合わせると85.06%で、【悪者にならない存在】の代表格である両施設がまさに「悪者」なのである。しかも高齢者施設など100%がマスクし、ほぼ全員がワクチンを規定の回数を打っているだろうに、クラスターの最大の発生源ではないか。こう指摘するとまた推測を元にした屁理屈が来る。
「高齢者施設の入居者は認知症の方もおり、マスクを適切につけられないケースもある」
いやいや、マスクを適切に着けている人間なんてほぼいない。不織布マスクを着用したうえで、四辺をビニールテープで密閉し、さらにその上からN95マスクを着けるのが「適切なマスクの着用」でしょうよ。認知症の人を悪者にするなよ。
マスクに関する設定も謎が多過ぎた。日本医科大学の北村義浩特任教授は「マスクはパンツのようなもの」「マスクにはワクチンと同等の効果がある」などと述べ、マスク神話の普及に貢献した。
だが、マスクの隙間は5μmで、30μmの花粉からは守ってくれるものの、PM2.5の2.5μmよりも大きい。ましてや0.1μmのウイルスをどのようにして防いでくれるのか。「飛沫を飛ばさないためだ」と言うのだろうが、それは元々咳が出る人間が周囲への配慮のために着用していたものであり、健康な者が着けることは想定していなかった。もはや口と鼻から出る「息」でさえ「飛沫」扱いされたのである。
WHOも含めた世界の見解の趨勢が空気感染になり、マスクの無意味さが分かっても相変わらず「飛沫恐怖症」の人々は多い。飲食店の店員がマスクをしていないだけで恐怖だったとツイッターに書き、「飛沫トッピングなど頼んでいない!」とキレるのである。空気感染にマスクは意味がない、と言っても「それでも着けないよりはマシだ」と来る。凄まじい信心である。
多くの国ではマスクの義務化は2022年初頭には終了。欧米でマスクをする者は稀である。東アジアと東南アジアではまだマスクを着けている者は多いが、互いに干渉はしあわなくなっている。
私は今年2月から5月までタイ・バンコクとラオス・ルアンパバーンにいたが、マスク着用を求められたのはバンコクのTシャツ屋と金を売る店だけであった。ドアに近付くと中から店員がやってきて「マスク!」と叫ぶのである。よく見たら入口には「マスクの装着を」と書いてある。これ以外では一切なかったし、ラオスではマスクをしている人など滅多に見なかった。
だが、同時期の日本は店内アナウンスや交通機関で「他の方の安心・安全のため、鼻まで覆うマスクの着用をお願いします」と何度も流された。実質的な強要である。
「マスク信仰」が定着した最大の理由
このマスクについても奇妙な設定が多数あったので振り返ってみよう。
知事・閣僚・総理は喋る時に外す
ただしマスクを外した総理が喋る場では閣僚は装着
飲食店店員は装着し客は外し楽しく会話
客は飲食店に入店する時、便所へ行く時、会計時、外へ出る時は装着。仲間と同じテーブルにいる時は不要
TVで芸能人・専門家・コメンテーターは不要で一般人は装着
G7の歓談・娯楽時は不要。ただし日本人の随行員は皆マスク
マスク警察は2重にすればいいのにそれをせず素顔の者に「マスクしろ!」とキレる。1+1=2ではないのか?
TVの収録中やドラマ・映画撮影中、演者はマスク不要。収録・撮影が終了したらすかさず演者も装着
卒業式等の集合写真では、「※撮影時だけマスクを外しています」の注意書きが流行る
会見が始まると政治家や社長等は「やれやれ」とばかりにマスクを外し始める。「それまで着けていました」アピールが重要
銭湯・温泉では、パンツを脱ぐまではマスク。最後に外すのがマスク
コーヒーのカップやペットボトルを持っていれば顎マスクはOK
新幹線で弁当を食べている時はマスクを外してOK
海外に行くと日本人であっても外してOK。ただし、日本に戻ったら装着(帰りの飛行機でも装着)
総理や知事、閣僚が海外に行き会談をすると外してOK、ただし日本に戻ったら即装着
総理が海外に着いた際、飛行機のタラップでは装着していないが、帰国時のタラップでは装着
プロ野球・高校野球ではスタメンの選手はベンチで外してOK、他の選手・監督・コーチは着用
前出・集合写真を撮り、ネットに公開する時の「※撮影時のみマスクを外しています」は、妙なマナーとして一時期定着した。
ただし、成人式の後にその会場から陽性者が複数名出ると「そういえば集合写真を撮影した時にマスクを外した。その時にうつった」ということになる。また、普段からマスク着用を呼びかける人物がマスクを外した写真をSNSに公開すると、そのダブルスタンダードっぷりへの批判が集まる。
マスク着用を訴え続けた医クラの一人に上松正和氏がいる。同氏が医師の峰宗太郎氏と一緒にネット中継をした際、2人がマスクを外した笑顔写真を公開。これを批判されると上松氏はこう答えた。
「マスクは感染対策の一つのなので、状況に応じてするものです。共に3回目の接種を終えて、日頃の感染対策も信頼できる人と2人でいる場合はその必要性は薄いです」――新たな謎設定の爆誕である。
上松氏か峰氏のどちらかがワクチン接種2回だった場合は「共に2回目の接種を終えて」という設定にしていたことだろう。とにかく彼らは自分にとって都合よく設定を作り、自己正当化をするのである。
また、マスクを重視し続けた福島県いわき市の内田広之市長は、Jリーグの試合会場の外で、妻と球団マスコットとの記念撮影をツイッターに公開したところ、当然ダブスタを突っ込まれた。この時の言い訳が秀逸だ。「撮影時のみ息を止めていた」と状況を説明。ああそうですか。でも今、そのツイート、削除していますよね。
ここまで「マスク信仰」というものは凄まじいのだ。その原点となったのは「マスクを外して15分以上一緒にいたら濃厚接触」という設定である。
濃厚接触認定されてしまうと営業停止・出勤停止に追い込まれるため、なんとしてもそれを避けるべく、マスクを常に着けるよう各施設やイベントは従業員と利用者に要求した。それが拡大解釈され、「マスクを外した瞬間があったらその時が感染のタイミング」「気が緩み、適切に着けていなかったため感染してしまった」ということになったのだ。
なお、「15分」は小学生に対して虐待にも近い扱いを生み出した。「簡易給食」の誕生である。14分59秒以内に給食を食べなくてはいけないため、「菓子パン+ジュース」といった栄養価の低過ぎる給食を提供したのである。
某小学校の教諭はこの簡易給食を食べた生徒が「おいしかった」と言ったことに対して「ほっこりした」とツイッターで書いた。そこは「こんな健気なことを言わせて申し訳ない」が本来言うべきことだ。何が「ほっこりした」だ!
なお、尾身氏は飲食の際、口にものを入れる時は片耳にマスクをかけ、口の中に入ったらマスクをすかさず着用する食べ方を提唱。「尾身食い」と呼ばれるようになったこの不潔な食べ方は、テレビの食レポでは大活躍だった。
コロナ脳が抜きたがる「伝家の宝刀」
そして、謎設定の本丸は何と言ってもワクチンだろう。
【ワクチンの設定が変化し続ける件】
河野太郎ワクチン担当相(当時)が「ワクチンを打てばそもそも感染しない説」を言い出し、これが「思いやりワクチン」という謎の概念に繋がった。岸田文雄首相も動画で「感染を防ぎます」と主張した。ワクチンの効果について、厚労省が2021年5月6日のアドバイザリーボード提出資料(更新・一部修正)を公表しているが、ここには以下のような記述がある。
〈 ○ファイザー社のワクチンやモデルナ社のワクチンについては、発症予防効果については、臨床試験において、95%程度のワクチン有効率が得られている。
※基本的に、感染予防効果については、臨床試験においては十分に示されていない。
○加えて、諸外国で実施されている疫学研究等により、徐々に感染予防効果を示す研究結果も報告されてきている。結果の解釈については、研究デザインの違いや、研究実施上の様々なバイアスを考慮する必要があるものの、複数の疫学研究等において、感染予防効果に関して、90%台のワクチン有効率が報告されている 〉
また、2023年7月1日でも見られる厚労省はワクチンのQ&Aコーナーでは、効果についてこう述べている。
〈 日本で接種が行われている新型コロナワクチンは、新型コロナウイルス感染症の発症を予防する高い効果があり、また、感染や重症化を予防する効果も確認されています。時間の経過とともに感染予防効果や発症予防効果が徐々に低下する可能性はありますが、重症化予防効果は比較的高く保たれていると報告されています 〉
岸田首相が6回目のワクチン接種をする動画を首相官邸のツイッターIDが公開したが、「皆さまや身近な人を守るため、ワクチン接種のご協力をお願いします」の文面が添えられた。
これらをまとめると、ワクチンの効果は2023年7月現在でも「感染しにくくなる」「感染しにくくなるから他人にも感染させない」「感染しても発症予防効果がある」「発症しても重症予防効果がある」「追加でとにかく打て」ということになる。なんという万能薬なのだ。
だが、2022年に日本は17週にわたって世界一の陽性者数を叩き出し、死者数も激増。コロナ死者数は2021年1月1日段階で累計3513人、2022年1月1日は18385人、2023年1月1日は57727人、そして5類化前日の5月7日は74669人だった。
「あきらかにワクチン打ってから陽性者も死者も増えていますよね。感染予防効果も重症予防効果もないじゃないですか?」と疑問を挟むと、すかさず伝家の宝刀が抜かれる。
「もしも打っていなかったらもっとひどいことになっていたのだ!」
「手を洗う救急医Taka」こと木下喬弘氏は元々河野太郎元ワクチン担当相に助言をしたり、mRNAワクチンを「神」と表現するなど、ワクチン推進を続けた人物だが、最近になって新たな名言を動画で発表した。
「ワクチンて実は水道水とか電気みたいな本当に大切な社会インフラなんよ。みんな電気使うやろ? 水も飲むやん? それと同じように当たり前にワクチンを受け入れて欲しい。だからワクチンの話ばっかしてるんよ」
その後に動画では「ワクチンすげ〜」のテロップが入り、「検索 こびナビ」と自身の所属する団体のサイトへの誘導を呼びかけた。
マスクについても同じである。「マスクを着けても陽性者増えまくったじゃないですか?」と言うとこう返ってくる。
「マスクをしていなかったらもっと被害は大きかったはずだ! 100%の効果とは言えないかもしれないが、被害を減らす可能性があるだろ! マスクをしない人間を我々が守ってあげているんだ! マスクはシートベルト! マスクはヘルメット! あなたは雨が降っていても傘をささないのですか?」
この「〇〇しなかったらもっとひどかった(かもしれないだろ)論法」というものはもはや反証不能なのだ。
この手の人々に、アメリカのマスク義務州かつ経済規制州であるノースダコタ州と、義務ではなく経済規制ナシ州である隣接したサウスダコタ州の10万人あたり陽性者数がほぼ同じカーブを描いている様を見せてもまったく話が通じない。「それでもマスクは効果があるんだ!」としか言わないのである。
もはや布を崇める奇妙な宗教としか考えられない。そしてコロナ脳は悶絶的に比喩がヘタクソである。
厚労省の情報改竄を許してはいけない
厚労省は2022年4月10日まで発表してきたワクチン未接種・2回済・3回済者の人口10万人あたりの感染者数を改竄していた。それまでは未接種者の感染者数が大幅に多くなる数字だったのが、4月11日以降、途端に未接種者の感染者数が激減。中には接種者よりも少ない世代も出るほどだった。
突然変わった理由は、4月10日以前は、「接種歴」の欄に記入をし損ねた2〜3割を「未接種」に含めていたからなのだ。すでに8割が2回打っていたわけだから接種者が記入漏れをする例も多数あっただろう。厚労省はワクチン接種の絶大なる効果を見せるためにこのような情報改竄をしていたのだ。
なぜ、集計方法を変えたかといえば、名古屋大学の小島勢二名誉教授から指摘されたからである。小島氏は、オミクロン株誕生以降の各国のワクチン効果と比べ、日本だけが突出して効果が高いことになっていることに疑問を抱いた。そして、厚労省にその不審を問い合わせたところ、厚労省は改竄を認めたのだ。ただし「意図的ではない」とのこと。
厚労省のデータが専門家や知事を含めた政治家によるワクチン推奨の根拠だったのだが、これが根本から覆ったのである。いつしかこの接種回数別10万人あたり陽性者数の発表もやめた。都合が悪い結果が出てしまったのでは、と疑いたくなる。
さらに、ワクチンの使用期限が延び続けるのも意味不明である。ファイザーの従来型の場合、当初-90℃〜-60℃の冷凍庫で保管し、6ヵ月の有効期限だった。しかし、2021年9月10日に9ヵ月となり、2022年4月22日に12ヵ月に。2022年年8月19日は15ヵ月に延長。2023年1月25日には18ヵ月、そして2023年6月29日に24ヵ月になったのである。
医療従事者のツイートを見ると、薬は使用期限があり、1日でもその日を過ぎると廃棄にするものだと呆れていた。なぜかこのワクチンだけは通常の薬とは別の扱いになっているのだ。
また、厚労省は2022年10月、2022年10月6日、「初回接種(1・2回目接種)がまだお済みでない方へ 年内に1・2回目接種を完了することをご検討ください」と呼びかけた。
資料では「(1)1・2回目接種に使用している従来型ワクチンは、年内で国からの供給を終了する予定です」「(2)オミクロン株対応2価ワクチンは、1・2回目接種が完了しないと接種できません」とある。さらには11月18日にも念を押すかのようにこの件をツイッターに投稿。
「お前ら、年内に打たないと一生ワクチン打てないからな、さっさと打てよ!」と脅しにかかってきたわけだが、それまで差別にめげず、自分の頭で「こりゃ不要だ」と考える人間がこんな呼びかけで打つわけがない。非接種者からは「どうぞどうぞ、早く終了してください」や「やったー、これで金輪際新コロワクチン打たないで済む!」といった喜びの声があがった。
なんでこんなにコロコロ変わるのか
しかし、その後厚労省は内村航平もビックリのアクロバティックウルトラCを見せる。
「初回接種(1回目・2回目接種)についてのお知らせ」という更新日不明のページには、「接種を行う期間は、令和3年(2021年)2月17日から令和6年(2024年)3月31日までです」とあったのだ! いつの間にか、2022年12月31日までではなくなっていたのである。なんと1年3ヵ月も延びたのだ!
さらに、2023年4月26日の「新型コロナワクチン 令和5年春開始接種についてのお知らせ」という資料では、2023年度のワクチン接種のスケジュールを年齢別に分けて表にしている。
この表の中の2つの項目を見ておったまげた。「6か月〜4歳」については「初回接種(1〜3回目接種)従来型ワクチン」とあり、当然2023年9月以降も従来型ワクチンを打てることになっているのだ。そりゃあ、2024年3月31日まで打てるのだから当たり前だが。
続いて「初回接種がまだの方」という項目を見ると「初回接種(従来型ワクチン)は5月8日以降も引き続き受けられます。まずは初回接種を受けてください」とある。「まずは初回接種を受けてください」部分は黄色のハイライトをしている。それだけこの一言が重要なのだ。
というか、2022年12月31日で従来型ワクチンは接種できなくなるはずじゃなかったのか? なんでこんなにコロコロ日付が変わるんだ? 完全に無茶苦茶である。すべて、厚労省と専門家が「設定」を変えればどうとでもなるようなものだったのだ。
賞味期限改竄や、誤表記をした食品は回収・謝罪・返金、さらには営業停止に追い込まれるのが世の常だが、新型コロナウイルスワクチンについては何でもアリなのである。
国民も疑問を抱かず「やったー、6回目も無料だ!」と大喜び。そしてもうすぐ高齢者は7回目が、若者も9月から6回目が開始する。第一三共の国産ワクチン(武漢株対応)も承認された。非接種者の中に「国産でなくては怖い」と思ってる人間がいるとでも厚労省は思っているのか?
そして武漢株対応にした点が実にこすい。要するに「武漢株対応から初めないとまともな抗体がつきません。物事には順番がありまして、オミクロン株対応や二価ワクチンを打つためには武漢株対応の接種が必要です」というロジックを崩したくないのである。
と思ったら、8月に入ると初回接種者もオミクロン株対応ワクチンを打てることとなった。もう何が何やら分からない。
情報が人々を狂わせ、社会を狂わせる
コロナの無茶苦茶な設定については延々に書き続けられるのでこの辺で最後にする。
【副反応は効いているサイン】
前項の続きになるが、なぜ6回も打つのか? 2回目までは分かる。2021年秋の空気感からすれば、ワクチンパスポートの議論もあったことから、もはや仕事をする条件であり、移動をする条件のようなものになっていたのだから。
3回目でやめた人も百歩譲って「まぁ……浅はかだが当時貴殿は怖かったんですね」と思う。だが、4回目以降打つ人間はもう知ったこっちゃない。散々ワクチン後の体調不良を訴える声がネットには書き込まれていたというのに疑いもなく打つのだから、もはやワクチンが大好きな人という認定で構わない。
Yahoo!リアルタイム検索で「ワクチン 打たなければ良かった」「ワクチン もう打ちたくない」「ワクチン 副反応 つらい」「ワクチン 5回目 もう打たない」「ワクチン 後悔」などと検索してみると人々が悶絶している様を見ることができる。かなり気の毒な状況にある人もいるし、ツイッターのプロフィールには「〇年〇月〇日、ワクチンを打ってから体調不良で」などと書く人もいる。
それでも打つ理由は「コロナが怖い。死にたくない」「周囲の人にうつしたくない」「念のため」「無料だから」という、情報弱者的感覚か過度な心配性かケチかのどれかである。まぁ、上記のような検索はせず、テレビの言ってることを鵜呑みにしているだけだろうが。
薬を飲むことにより発生する体の異変は「副作用」と呼ばれるが、ワクチンの場合は「副反応」。これはよく考え抜かれた言葉である。「副作用」であれば「薬のせい」だが、「副反応」は「あなたの体のせい」なのだ。この副反応をめぐっては、初期の頃、集団パニックともいえる状況だった。
テレビに出る専門家や、ツイッターの医クラが「副反応はワクチンが効いている証拠。あなたは超人になろうとしているのです!」という信仰を初期の頃生み出し、ワクチン信者は「副反応がキツければキツいほどコロナに対して強固な鎧を得ることができる」と信じた。
1・2回目の頃のツイッターのブームは、ワクチン接種後の体温計の示す温度を紹介することだった。38℃台であれば甘っちょろく、39℃台はなかなかの有段者、40℃台は黒帯、といった感覚で人々は「高熱自慢合戦」をしていた。
「キタキタキターーーーーー! 40.2℃! ワクチンが働いている! これでオレは超人だァァァ!」的に自慢する者が続出した。
さらにはワクチン接種に備え「スポーツドリンクと冷えピタとカロナール用意しました!」といったツイートも多かった。その後は実況中継のように「腕が痛い」「倦怠感がすごい」「こんなだるいの初めて」「3日間寝込んでる」「金曜日の接種にしてよかった」といった感想がツイッターには多数書かれた。
一体何のSMプレイだよ? としか私のような一度もワクチンを打っていない者は思う。
「6回目のワクチン、これまでの副反応よりはマシかな……」といった感想もあるが、私のようにまったく熱も出ない人間からすれば「なぜ自ら進んで熱を出しに行くの? その注射、あなたに合ってないんじゃないの?」と思うのである。まぁ、他人事だからどうでもいいが。
その中でも究極的なケースが「オトナサローネ」というメディアの編集者・星雅代氏(1976年生まれ)が執筆した『コロナワクチン6回目接種「過去でいちばん辛かったかも」毎回大苦労の編集者が実感したこととは』という記事だ。壮絶な記録である。
6回目を打ってから4時間後に37.3℃の熱が出て腕が痛くなるのを皮切りに、悶絶の記録が並ぶ。59時間後には36.5℃になるものの、〈いつもなら3日目には普通に仕事していた記憶があるのですが、今回は30分もパソコンに向かうと、もうクタクタ。しかも、いつもやっているのと同じ作業なのに時間がかかり、ベッドで休みながらしか仕事できない状態です〉という状態に。
私も編集者だが、こんな状況で仕事などできるわけがない。結局同氏は接種後9日、37.5℃前後の熱が出たというのだ。そして、締めはこうなっている。
〈 今回の副反応は、体力的にも精神的にも、本当にきつかった! 編集部の会議で経過を話したら、「星さん、それもうコロナかかっちゃったほうが楽なんじゃないの」と言われましたが、「いえ、重症化して死にたくないので」と答えました(後遺症も怖いですからね……)。
今回の結論:何回も打っていても、副反応はツライ。でも、また秋に接種が開始されれば、迷わず予約をとると思います。〉
本人の選択だからとやかく言う気はないが、最後の編集部メンバーの助言に対する同氏の決意を見ると、もはやコロナは精神に悪影響をもたらすウイルスだったのではないだろうか。
要するにコロナ禍とは、『コロナ論』著者の小林よしのり氏が2020年の初期に喝破した「インフォデミック」である。情報が人々を狂わせ、社会を狂わせるということだ。まぁ、でも、この編集者はまた打てばいいと思います。
日本はいつまでやり続けるのか
さて、厚労省が6月9日に発表した「疾病・障害認定審査会 感染症・予防接種審査分科会 新型コロナウイルス感染症予防接種健康被害審査第一部会 審査結果」という資料は、ワクチンが健康被害を与えたと認定し、医療費や医療手当を出すことを決定したものである。
中には以下の疾病名・障害名が並び、10代・20代・30代の若者も多数含まれている。その資料の1ページ目(全8ページ)から見てみよう。
免疫性血小板減少性紫斑病(43歳)、頻脈性不整脈・急性心筋炎(38歳)、IgA血管炎(33歳)、ギラン・バレー症候群(34歳)、痙攣発作(19歳・49歳)、急性心膜心筋炎(26歳・17歳・34歳・16歳・20歳・20歳・19歳・16歳・27歳)、右突発性難聴(46歳)、肺動脈血栓症・大腿静脈血栓症(47歳)、左上肢運動障害(18歳)、無菌性髄膜炎・帯状疱疹(33歳)、中毒疹(34歳)、気管支喘息発作(45歳)、多形痒疹・左上肢腫脹・疼痛・発赤(38歳)、末梢神経障害・頭痛(43歳)、急性咽頭炎・急性喉頭炎(39歳)
なにやら恐ろしげな病名が並びまくるが、これがその後の7ページも続くのである。
「ワクチンはメリットがデメリットを上回る」「若い人にとっては自分のためというよりは周囲の人のために打つ」(忽那賢志医師の発言)「思いやりワクチン」「ワクチン打とうぜ!」(福岡県のキャッチフレーズ)などに流された人々が上記のような被害を受けたのだ。これら被害はワクチン接種を推進した厚労省が認めたものである。
さて、日本はいつまで“コロナ禍プレイ”をやり続けるのか、この3年間、私自身相当なバッシングを受けながらコロナ騒動を批判してきたが、まぁ、当然の帰結だわな。結局、私のようなコロナを怖がらず、感染対策にもワクチンにも意味はないしウイルスは根絶できないという現実主義者のことをデイドリームビリーバーは理解できないのだろう。
貴殿らは永遠にコロナを恐れ、マスクをし続け、2050年に61回目のワクチンを接種してください。その時もオミクロン型であったとしても、疑問を抱かない人はもう処置なしだ(この皮肉が分からない人は一生分からない)。
●処理水放出「韓国は大人の対応、中国は政治的に利用」 小野寺元防衛相 8/20
福島第一原発の処理水を海に放出する日本政府の方針をめぐり、自民党の小野寺五典元防衛相は、20日のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」で、「韓国は大人の対応。中国は政治的に利用している」と述べた。
岸田首相は、20日に福島第一原発を視察した後、全国漁業協同組合連合会の会長らと面会した上で、週内に関係閣僚会議を開いて放出開始の時期を決める方向で調整している。
小野寺氏は、韓国政府は国際安全基準に合致しているとの見解を示したIAEA(国際原子力機関)の包括報告書を尊重する考えを示していることを指摘し、「大人の対応をしてもらっている」と述べた。
一方、「中国は政治的に利用している」と述べ、科学的根拠を示さず処理水放出に反発している中国の対応に懸念を示した。
さらに小野寺氏は、「危険だ、危険だと言っているが、中国や台湾の漁船は大挙してサンマを獲りに来ている」とした上で、「言っていることと、やっていることが全く違う」と述べた。
そして、「外交的にこういう矛盾を言って、政治的にしっかり対応すべきだ」と訴えた。 

 

●泉房穂氏 岸田政治≠ノズバリ「異次元なんて言葉遊び」「まやかしだ」 8/19
元兵庫県明石市長の泉房穂氏が19日、自身の「X」(旧ツイッター)を更新し、自身の誕生日に決意表明≠行った。
この日X(旧ツイッター)で誕生日を祝う風船が飛んだことについて「日付が変わり『風船』がいっぱい上がってきた。素直に嬉しい」と喜ぶと「昨日までの60年間、自分なりには精一杯生きてきた。人生1周目≠ェ終わり、いよいよ今日から人生2周目≠ェ始まる。皆さん、これからも引き続き、よろしくお願いいたします」とつづった。
また誕生日を祝うコメントが多く届けられていることに「皆さん、「『お誕生日おめでとう』と『お祝い』をしていただき、ありがとうございます」と感謝の気持ちを明かすと「『明石の街を、やさしくしてみせる』との10歳の誓いを、人生1周目をフルに使ってやってきた。今日から人生2周目。『国の政治も、やさしく変える』との60歳の誓い。さて、変えるまでに何年必要なんだろう…」と投稿。60歳という節目に新たな誓いを立てたようだ。
さらに、やさしく変える≠ニ誓った「国の政治」について「私は日本に政治がないと思う。ほんとの政治をしてほしいと思う。みんなは驚いて総理を見る。今の総理を選んだのは、昔ながらの汚い派閥政治だ。異次元なんて言葉遊びも、やってるフリのまやかしだ。私は国民の負担を気にしながら思う。国民のために、官僚や業界の反対を押し切ってでも決断して実行するのがほんとの政治だと思う」と自身の見解を示すと、ユーザーから大きな反響が寄せられている。
●中国人民が習近平政権に見切り%本の不動産爆買い 共産党不信 8/19
中国経済が深刻な状況に追い込まれてきた。経営再建中の中国不動産開発大手「中国恒大集団」は17日、米連邦破産法15条の適用をニューヨーク連邦破産裁判所に申請した。複数の米国メディアが速報した。不動産危機が「影の銀行(シャドーバンク)」問題に飛び火し、巨大な金融危機に発展しかねない状況だ。景気悪化を示す統計も次々と公表されている。背景の1つとして「習近平総書記(国家主席)率いる中国共産党が、人民の信頼を失っている」と指摘する専門家がいる。日本の不動産を爆買いするなど、海外に資産を移して国外逃亡を狙う中国人たち。ジャーナリストの長谷川幸洋氏による最新リポート。
中国経済が変調をきたしている。7月の消費者物価は前年同月比で0・3%下落し、内需の強さを示す指標の1つである輸入も、同じく前年比12・4%減少した。不動産バブルが崩壊して以来、いよいよ本格的な景気後退とデフレが始まったようだ。
多くのエコノミストは「ゼロコロナ政策の終了でV字型回復」を予想したが、それが完全に間違っていたどころか、いまだに間違えた理由もよく説明できていない。
そんななか、新型コロナ政策の暴走によって、「中国の国民が共産党と政府に対する信頼を完全に失ったことが、景気失速の本当の理由だ」とする論文が8月2日付で米外交誌「フォーリン・アフェアーズ」に登場した。
論文は「国民の信頼失墜は政府のマクロ経済政策を無効化し、それによって経済は一段と不安定化する一方、財政政策を乱発すれば、政府の債務問題は、さらに深刻化する」とも予想している。
筆者は、ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン会長である。同氏は英中央銀行・金融政策委員会の外部投票メンバーなども務めた有識者だ。「中国経済の奇跡の終焉(しゅうえん)」というタイトルが問題の深刻さを物語っている。
一体、ポーゼン氏は何を指摘したのか。
問題の核心は、習近平政権の新型コロナ政策にある。習政権は厳格な都市のロックダウン(封鎖)を断行したが、それによって、国民は何カ月にもわたって外出を禁じられ、生活の糧を失う人々が続出した。飲食店など零細事業者は、やむなく事業を閉じざるを得ず、倒産した。
ところが、昨年11月に人々が白紙を掲げて抗議する「白紙革命」の運動が全国に広がると、習政権は一転して、ゼロコロナの終了を宣言し、一挙に感染者が激増したのは、ご存じの通りだ。
ポーゼン氏は、右から左へ極端に揺れ動く政策を目の当たりにして「多くの中国人が党と政府を信用しなくなった」。その結果、人々は「自分の身を守るのは自分しかない」と理解して、自動車や耐久消費財、不動産といった資産の購入を控え、ひたすら貯蓄に励むようになった。「過剰な貯蓄と過小な投資こそが、中国経済停滞の真因」と指摘している。
私は、一読して「目からウロコ」の思いがした。
7月14日発行の本コラムで指摘したが、昨年から中国を「脱走」して、米国への不法入国を試みる中国人が激増している。中国を逃げ出せない中国人たちは、貯蓄するしか「身を守る術」がないのだ。
かつては、「政治に口を出さなければ、暮らしは保証される」という暗黙の了解があった。ところが、新型コロナ政策は「共産党こそが生殺与奪の権を握っている」と国民に知らしめてしまった。
その結果、政府が財政支出を拡大しようが、金利を引き下げようが、人々は反応しなくなった。信頼できないからだ。そうなると、政府は景気調節手段を失い、経済はますます不安定化する。
中国の国家統計局は15日、若者(16歳から24歳)の失業率の発表を停止してしまった。まさに、「都合の悪い数字がなければ、問題はない」という姿勢なのだ。これが、いまの中国である。
ポーゼン氏は「中国人は、ますます海外資産に逃亡する」とも指摘している。日本は、中国人や中国系企業による不動産の購入を制限する防衛策が急務だ。 
●フランス「物見遊山」視察で注目「いますぐ辞めてほしい女性国会議員」 8/19
自民党女性局のメンバーら38人のフランス視察が「観光旅行のようだ」と批判を浴びるなど、女性議員への注目度が高まっている。
そこで本誌は緊急アンケート調査を実施。「いますぐ辞めてもらいたい」と思う女性国会議員は誰かを、全国の30代から60代の女性500人に聞いた。対象としたのは、メディアなどで注目度の高い女性議員18人だ。それでは「いますぐ辞めてもらいたい」トップ5から見ていこう(敬称略)。
【第5位】30票 福島みずほ(社民・参院)
社会民主党党首。人権派弁護士として注目を浴び、1998年の参院選で初当選。「辞めてもらいたい」理由は
「かつての慰安婦問題や、今の原発処理水にしても、韓国の肩ばかり持つ人。日本の為にはならない」(40代・パート・神奈川県)
「言っていることすべて論理が破綻。本当に弁護士なのかと思う。党自体も存在意義なし」(30代・教員・東京都)
【第4位】33票 辻元清美(立民・参院)
学生時代に国際交流NGO「ピースボート」を設立。1996年の衆院選で初当選。2001年、当時の小泉純一郎首相に「ソーリ、ソーリ!」と連呼したことでも注目を集めた。
「何を言いたいのかわかりにくいうえに、自己主張が強すぎ。人の話を聞くことができない」(40代・会社員・北海道)
「とにかく人に対して感情的、攻撃的で人としてどうかと思う。人を批判する割には、自分自身の問題(反社組織との関係などの噂)について何も話さないのはおかしい」(60代・主婦・大阪府)
【第3位】34票 杉田水脈(自民・衆院)
会社員、市役所勤務を経て政治の道へ。「LGBTは生産性がない」など、発言がたびたび批判されている。
「LGBTに関する発言、女性蔑視の発言など、問題発言があまりに多い。国会議員としての資質に疑問を感じる」(40代・派遣社員・奈良県)
「根本的に思想に問題があるのでは。国民のことを考えているようには思えない」(60代・パート・福岡県)
【第2位】60票 生稲晃子(自民・参院)
元おニャン子クラブのメンバー。2022年の参院選に出馬し初当選。
「統一教会とのかかわりについて、最後まですっきりしなかった印象。何をやりたくて政治家になったのかよくわからない」(30代・アルバイト・大阪府)
「元アイドルはいいとして、当選してあれだけ注目されたのに、いまだに何をやっているのかがさっぱりわからない。何してるの?」(40代・パート・京都府)
【第1位】200票 今井絵理子(自民・参院)
全体の4割の票を集め、ぶっちぎりの1位になったのは元SPEEDの今井議員。フランス研修の批判に対しては「無駄な外遊ではありません」「党からの支出と、参加者の相応の自己負担によって賄われています」と反論している。
「元市議と不倫して手つなぎの写真を撮られたり、今回のフランスのことも、とにかくモラルがない」(30代・医療関係・大阪府)
「障害のあるお子さんを育てたのは立派だと思います。しかし妻子ある相手と不倫して、その人の家庭を壊したような人が国会議員を続けているのは疑問に感じます」(60代・主婦・北海道)
「不倫はするわ、フランスの騒動では偉そうな態度で反論するわで、議員としての資質に欠けている。一刻も早く辞めてほしい」(50代・主婦・東京都)
「初当選のとき池上彰さんに沖縄の基地問題のことを聞かれ『これから勉強します』と答えたことは忘れない。あれから何かやったのですか? 自分の出身地のことすら考えられない人間が、国のことを考えられるわけがない」(40代・派遣社員・大阪府)
200票のうちの、4割が30代からの票。子どものころに見たアイドル時代との落差にがっかりしているのか……。
第6位以下は、次のとおり。
【第6位】23票 蓮舫(立民・参院)
「他人に厳しく自分に甘い。揚げ足取りしかできない人」(30代・会社員・神奈川県)
【第7位】21票 大石晃子(れいわ・衆院)
「やってることがめちゃくちゃ。日本の将来に悪影響」(60代・会社員・茨城県)
【第8位】17票 松川るい(自民・参院)
「パリの件で印象が悪すぎる。一度辞めて勉強し直す手もあるのでは」(40代・会社員・福島県)
【第9位】14票 三原じゅん子(自民・参院)
「自民のタレント議員たちのリーダーだから」(60代・主婦・神奈川県)
【第10位】13票 高市早苗(自民・衆院)
【第11位】12票 田村智子(共産・参院)
【第12位】11票 稲田朋美(自民・衆院)
【第13位】8票 小渕優子(自民・衆院)
【第13位】8票 森まさこ(自民・参院)
【第15位】5票 丸川珠代(自民・参院)
【第16位】4票 梅村みずほ(維新・参院)
【第17位】2票 野田聖子(自民・衆院)
【第17位】2票 石垣のりこ(立民・参院) 

 

●内閣改造で支持率は上がらないよ ハルキを読む岸田首相の夏休み 8/18
岸田文雄首相が夏休み用の本に、村上春樹の新作『街とその不確かな壁』(新潮社)を買ったと知り、春樹ファンとしてはうれしくなった。筆者もまだ半分くらいまでしか読んでないが、世捨人のような主人公が、初恋の少女の思い出に浸りながら「他人の夢を読む」という、いかにもハルキっぽい小説だ。日本の最高権力者がこの本を読んで何を思うのか、感想を聞いてみたい。
さて、岸田首相の夏休みは、15日の戦没者追悼式などの公務の合間を縫って、10冊の本を読んだり、ゴルフをしたりして英気を養っているのだが、「秋以降の政局」についても思いをこらしていることだろう。
最初の関門は、9月11〜13日の間に行われるとみられる内閣改造・自民党人事。焦点は、1河野太郎デジタル相の交代2木原誠二官房副長官の交代3小渕優子元経産相ら女性抜擢(ばってき)―の3つだ。
自民党の麻生太郎副総裁の発言を読む限り、河野氏は交代のようだが、小渕氏の党4役などへの抜擢については異論もあるようだ。
問題は、木原氏の処遇だ。文春報道については、木原氏が日弁連に人権救済の申し立てをしており、筋としては残すべきだとは思う。だが、ここまでいろいろ書かれると、さすがに職務続行は難しいかもしれない。
内閣改造というのは、メディアが「これで支持率が上がるかも」と毎回煽るのだが、筆者にはその理由がよく分からない。支持率は政治家が行った結果に対して、それを国民が評価すれば上がるものではないのか。
「改造すれば支持率が上がる」と、政治家や政治記者が信じているとすれば、それは国民をバカにしているのではないかと思うのだ。
直近の内閣支持率は、時事通信が4ポイント減の27%、NHKが5ポイント減の33%で、あまり解散したくなるような数字ではない。もし、岸田側近の誰かが、「この低い支持率を派手な改造で上げて解散だ!」などと、のんきなことを考えているのなら、やめた方がいいと思う。
正直言って、岸田政権には安倍晋三政権ほどのキレはない。木原氏への文春砲や、自民党女性局の仏ウキウキ研修旅行など、突っ込みどころも満載だ。だが、安全保障やエネルギー政策への取り組みを見る限り、最近30年間の歴代政権に決して劣らない安定感があると思う。
これから秋にかけて与党内から早期解散圧力がかかるが、「今はその時にあらず」だろう。解散したら政権は失わなくても議席はかなり減るのではないか。内閣改造などの「飛び道具」に頼らず、地道に政策を実現して国民の支持を得た方がいいと思う。
●安倍政権でさえ忘れる日本...我々は歴史から学べないのか 8/18
安倍晋三元首相が亡くなってから7月で1年を迎えた。この間、私にとっての驚きは1年の節目が安倍政権とは何だったかという議論よりも、手製の銃で安倍氏を撃った――現段階では厳密に言えば「撃ったとされる」だが――山上徹也被告の近況や、山上被告の母親が入信している旧統一教会の話題がメディア上での主要なトピックになったことだった。
それ以外ではせいぜい自民党の最大派閥で保守色の強い旧安倍派を今後、誰が束ねるのかが話題になっていたぐらいだろう。今の日本社会において亡くなってしまうということは、存在そのものが過去になってしまうという現実をまざまざと見せつけられた。
安倍氏は日本の憲政史上、最も長く権力の座に就いた政治家だ。それも正統かつ民主的な選挙を重ねて選ばれてきた。その功罪の議論が盛り上がらず、過去になっていくのは忍びないものがある。
政策的にリベラルな面もあった
生前に長時間インタビューを重ねて出版された安倍氏の回顧録は順調に増版し、ベストセラーになってはいる。だが、それを基にして「アベノミクスの功罪」「集団的自衛権の解釈変更の是非」にまで議論を発展させている論客は限られるし、マスメディアが適切に議題を設定できているとは言い難い。
私個人の見解で言えば、安倍氏がアベノミクスで進めた金融緩和は労働市場にも好影響を与え、明らかに良い効果があった。デフレ脱却という面から見れば、欧米ならリベラル、左派政党が主張するスタンダードな政策だ。むしろ旧民主党政権がこの方向に舵を切れなかったことが、同政権や下野した旧民主党系勢力への幻滅を生んだ一因になっていると考えている。
だが、税率が5%から8%、10%になった消費増税は金融緩和というアクセルと同時に景気のブレーキを踏むようなものだったし、効果的な財政出動も十分とは言い難かった。ここは野党が突くべき論点なのに、一部を除き相変わらず漠然とした「アベノミクスか否か」ということばかり議論している。
また、集団的自衛権を認めるのならば、真正面から改憲を問うのが筋だったのではないかと思う。東日本大震災からの復興、新型コロナ禍での政治......。安倍氏に問えることはもっとあったし、安倍氏自身も語りたいことがたくさんあっただろう。
野田佳彦元首相が追悼演説で語ったように「安倍晋三とはいったい、何者であったのか。あなたがこの国に遺したものは何だったのか」を問うことは今でも必要だ。長期政権から教訓を引き出し、学ぶという意味でも。そして政治家に限らず、人間は暴力によって命を奪われてはいけない。この点を忘れないためにも、私も安倍政権という歴史を問うていきたいと思う。  
●尾辻秀久参院議長の追悼の辞から考える「政治家の言葉」の重要性 8/18
「聞く力」と「丁寧な説明」を掲げる岸田首相。だが、マイナンバー制度に伴う健康保険証の廃止方針をはじめ、政策について十分に説明できているとは言い難い状況だ。8月18日、RKBラジオに出演した元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎さんは、全国戦没者追悼式での尾辻秀久参院議長の追悼の辞を紹介しながら「政治家の言葉」の重要性についてコメントした。
小学生の手紙に答えない岸田首相
8月17日の毎日新聞朝刊に、東京・世田谷区の小学6年生が、岸田首相に送った手紙の話が載っていました。書き出しは概ねこうです。
―――「戦争は怖いし、絶対にやってはいけないと思っていたのに、ニュースで、防衛費をあげようとしていることを知りました。そこで、岸田首相に『ぜひ聞いてみたい』と、クラスのみんなで手紙を書きました」―――
そうして「なぜ軍事費を増やしているのですか?」など、率直な問いが記されています。2月に首相官邸あてに送られましたが、返信はなく、そのことを知った記者からの質問に、首相はこう述べました。「一つ一つにお返事を出すことは困難でありますが、安全保障政策については、国民の皆さんのご理解を得られるよう努めていきます」――これ、答えていませんよね。
「聞く力」と「丁寧な説明」を掲げる岸田首相ですが、この防衛費の件にせよ、マイナンバー制度に伴う健康保険証の廃止方針にせよ、なぜなのか、何のためなのかを十分に説明できていないと感じるのは、私だけではないと思います。内閣支持率は毎日新聞の調査などですでに3割を切りましたが、それは「この国をどうしたいのか」という思いより、政権を維持する、その思いの強さが透けて見えるから、でもあるでしょう。
「自分の言葉」で語った尾辻秀久参院議長
そんな、もやもやとした空気の中、心に響く政治家の言葉がありました。終戦から78年を迎えた15日、日本武道館で開かれた全国戦没者追悼式。天皇陛下のおことばに続く「追悼の辞」で、尾辻秀久参院議長が述べた言葉です。
―――「本日ここに、天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、 全国戦没者追悼式が執り行われるにあたり、 謹んで哀悼の誠を捧げます。父も32歳で戦死をいたしましたので、私は今日、参議院議長として、また、遺族のひとりとして、ここに立たせていただいております。私たちは、焼け野原の中、お腹を空かせて大きくなりました。「一度で良いから、お腹いっぱいご飯を食べたい」と思っていました。母が元気なころ、軽口で「親バカだなあ」と言いましたら「私が親バカでなければ、父親のいないあなたは生きていなかった」。母に諭されたことを忘れることはできません。その母も41歳で力尽きた時、戦没者の妻の皆さんが母親代わりになって下さいました。遺骨収集でご一緒しました時、その中のおひとりがご遺骨に語り掛けられました。「子供達をしっかり育てるという、あなたとの約束は、ちゃんと守っていますよ」私たちは、生きるか死ぬかという中を、肩を寄せ合って生き抜いて参りました。平和で豊かな国を作り上げました。いま、私たちがしなければならないことは 「犠牲となられた方々のことを忘れないこと」 と、「戦争を絶対に起こさないこと」であります。平和を守るために、私の経験を次の世代に語り継いで参りますことを戦没者の御霊(みたま)にお誓いを申し上げて、 追悼の言葉といたします。」―――
参院議長の追悼の辞は、メディアにほとんど取り上げられないんですが、思いのこもった「自分の言葉」ですよね。だから、胸を打ちます。
実は尾辻議長、前年もやはりご家族のことに触れて、「母は、残された私と妹を、女手ひとつで、必死に育ててくれましたが、41歳で力尽きてしまいました。母も戦死したと思っております」と、語っています。
15年前には「議会史に残る名演説」も
尾辻さんの言葉については2年前にラジオ番組でも話したことがあって、その時は、現職の国会議員が亡くなった時に行う「哀悼演説」でした。2008年に旧民主党の山本たかし参院議員が亡くなった際の尾辻さんの哀悼は「議会史に残る名演説」と言われ、与野党の違いを超えて認め合い、尊敬しあう間柄を、今の政界にも思い出してほしいという趣旨でお話ししました。簡単に振り返ります。
山本議員は末期がんの身を押して「がん対策基本法」と「自殺対策基本法」の成立に奔走し、当時、厚生労働大臣だった尾辻さんも「同志」として、共に取り組みました。哀悼演説は、時に言葉を詰まらせ涙をぬぐいながら「あなたは参議院の誇りです。社会保障の良心でした」という言葉で締めくくられます。これ、ネットで「山本たかし」「追悼演説」と検索すると動画がありますので、ぜひご覧いただければと思います。
就職で言われたひとことが政治家としての原動力に
戦没者追悼式の話に戻りますが、とりわけ私が胸打たれたのは、母親代わりになってくださった戦争未亡人の一人が、収集した遺骨に向かって語りかけた言葉。「子供達をしっかり育てるという、あなたとの約束は、ちゃんと守っていますよ」です。
実は尾辻さん自身、お母さんを亡くした後、防衛大をやめて郷里の鹿児島に戻り、働いて妹さんを大学に出しました。この時の話が、母校・鹿児島玉龍高校での講演に残っているので、少しご紹介します。
―――「とにかく仕事を探さなきゃいかんと思って、一生懸命、仕事を探したんだけれどもね、その頃、片親というだけで就職は絶対にだめでしたからね。ましてや両親がいない私が、就職できるわけがない。あんまり腹が立つから、会社で言ったことがありますよ、『何でおれを雇ってくれないんだ』と。その時言われたのは、『うちは慈善事業ではありません』と、はっきり言われました。今、私が政治の世界で生きているのも、その一言ゆえと言ってもいいと思います」―――
私も母子家庭でしたが、ここまで露骨な差別はなく、一世代上の苦労を初めて知りました。
その後、尾辻さんは一念発起して東大に進むんですが、世界を放浪して中退し、政界に進みました。同郷の私は、中学校時代にその放浪記「ボッケモン(鹿児島弁で無鉄砲なやつ)世界を行く」を読んだ当時から存じ上げていますが、記者になってからは「日本会議」や「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」といった活動から、正直、距離を感じていました。
ただ一方で、「発達障害の支援を考える議員連盟」や「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」の会長や、「イクメン(育児・子育てをする男性)議員連盟」の顧問なども務め、選択的夫婦別姓導入には「どちらかと言えば賛成」、日本の核武装は「将来にわたって検討すべきでない」とし、原発の海外輸出には反対――というのも、尾辻さんらしいというか。
自らを「保守」「右翼」と言いながら、そこを支持基盤とした安倍さんとは相容れず、総裁選では二度、対立候補を支持して、以後、大臣や党の要職に就くことはありませんでした。多くは言いませんが、少なくとも損得で物事を決めない、そういう方です。
国会議員にも受け止めてほしい言葉の重み
さて、今日最後にご紹介するのは、その尾辻さんが山本議員の哀悼演説の中で語った、こんなエピソードです。
―――「質疑の中で、私が明らかに役所の用意した答弁を読みますと、先生は激しく反発されましたが、私が私の思いを率直にお答えいたしますと、幼稚な答えにも相づちを打ってくださいました。先生から、『自分の言葉で自分の考えを誠実に説明する大切さ』を教えていただきました」―――
これなんです。『自分の言葉で、自分の考えを、誠実に説明する大切さ』。政治家の言葉は、こうあるべきだと、改めて思います。
そうして、「戦争をする覚悟」ではなく、戦争体験者であり遺族である尾辻さんが語った「いま、私たちがしなければならないことは『犠牲となられた方々のことを忘れないこと』と、『戦争を絶対に起こさないこと』であります」という言葉の重みを私自身胸に刻み、国会議員の方々にもしっかり受け止めてほしいと願ったお盆でした。
●日本の政治は制度疲労と時代の変化にどう対応するのか?  8/18
夏のこの時期は国会がない一方、政治家が様々な活動をする時期でもあります。かつてお盆の頃は政治家の外遊は当たり前のようなものでした。コロナ明けで外遊復活となった途端、自民女性局38名のフランス研修旅行がSNSに掲載された奇妙な写真が発端で大炎上しました。旅費に誰がいくら払ったか、という話はタブロイド紙のお得意分野ですのでそちらにお任せしますが、この手の研修旅行はまるで農協の団体旅行のようであまり格好よくありませんね。
研修旅行がやりにくくなった背景もあります。その一つはオンブズマンが細かいチャチャを入れるからで現地のこと細かい行動やその支払額などが報告され、追及のネタになります。当然ながら庶民感覚とかけ離れた食べ物を食べたり、観光なのか研修なのかわからないような場合には厳しく責められます。
私も以前、同様の研修旅行の現地案内人としてお手伝いしたことがありますが、その団体はかなり真面目でレポートもしっかり作っていました。座長の意識の問題でありましょう。その点からは自民女性局はネジが4-5本飛んでいた、ということです。「自らに甘い」典型ですね。
さて、座長といえば自民党清和政策研究会、通称安倍派の会長席が不在のまま、2人+5人の集団指導体制となっていましたが、今般、塩谷立氏が「座長」という称号を得ました。会長ではなく、座長であり、あくまでも集団指導体制の中の意見とりまとめ役という形であります。では7人衆の中でなぜ、塩谷氏だったのかといえば彼が10期務めており、7人衆では一番長いうえに、ドン森からのお墨付きを頂いたこともあります。ちなみに下村博文氏は9期、他の5人衆は5−8期です。長老を祭り上げただけであり、実力や将来を見据えたものではありません。塩谷氏と対立していた下村氏の去就も気になります。
この清和政策研究会は自民の中では本来は傍流でした。保守本流は宏池会や平成研究会ですが、清和政策研究会が反吉田茂路線で親米、憲法改正、再軍備などのタカ派的なところがあり、自民党好きのおじさま方にはたまらない響きなのであります。
これは実は共産党の話にもつながります。志位和夫委員長は日本のプーチンか、と言いたくなるほどの長期政権で既に22年を超えています。志位さんは東大物理工学科を卒業した相当頭が切れる人物とされます。「Youはなぜ、そんなに委員長が好きなの?」と聞けば「それがなぜ悪い?俺は何一つ、悪いことをしていない」と返します。そして共産党の自慢は「戦前戦後を通じてずっと同じ政党の名前を貫いているのは私たちだけです」といかにも由緒正しいニッポンの本流(になれない)政党というわけです。
ここではっと気がつく方がいらっしゃるかもしれませんが、自民の清和政策研究会もそもそもは岸信介氏の日本自由党が源流であり、岸氏は先日のブログで記載した通り戦前と戦後をつないだ人物の一人であり、ある意味日本社会のフィクサーでもあるわけです。つまり、日本は歴史を重んじ、戦争という断絶期間があっても脈々と続いていることに特別の価値観を置くようです。繰り返しますが私はそれを善悪の括りでは判断しません。それが日本の特筆すべき社会構造なのです。
しかし、日本が民主主義でかつ、与党に一定の刺激を与えるためには野党には頑張ってもらわねばなりません。その中で立憲民主党の不甲斐なさが報じられ、泉代表が次の選挙でケツを割りそうなニュアンスの発言をする中で「志」がない点、同じ「志」が名前につく「志位」さんはブレない点ではまともなのかもしれません。
さて、野党が野党を貫くのか、与党にすり寄るのか、大事な一戦を控えるのが国民民主党であります。党代表選挙を9月2日に控えますが、現代表の玉木氏に対して前原誠司氏が打って出ます。その主義主張は好対照ですが、基本的に前原氏は前科があり過ぎてベテランほど彼になびかないとみています。玉木氏有利というのが現状ではないかと思います。前原氏は京大で学者になるほど頭脳明晰ではなく、外交官になりやすかった東大でもない、母子家庭で苦労したので選択したのが松下政経塾で箔をつけるでした。
前原氏の話はこのブログで書ききれないほどあると思いますが、皆さんもご記憶にあろうかと思いますので控えます。むしろ、「昔の名前でやっています、前原誠司」が敗者復活戦に挑むのか、王者、玉木雄一郎が防衛を果たすのか、このタイトルマッチはある意味、後楽園ホールでやってもらいたい試合であります。
よもやま話なので何をどうまとめるか、難しいのですが、日本の政治も全体的に制度疲労と時代の変化に今後、どう対応するのか、という大きな課題が残りそうです。政治家は法律を作る人ですが、その政治家を取り締まる仕組みがないのは規律監督の機能欠落である点は掲げておきます。
●日本の「EV敗戦」 その要因は「国交相が長年、公明党議員 利権官庁」 8/18
キャスターの辛坊治郎が8月17日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。国土交通省のトップ、国交相のポストを長年にわたり公明党の議員が務めていることを巡り、「日本は『EV敗戦』を迎えようとしている。国交省は利権官庁であり、トップの定期的な人事異動は社会の常識だ」と苦言を呈した。
ベトナムの電気自動車(EV)メーカー、ビンファストがナスダック市場に上場した。取引初日の終値で評価した時価総額は850億ドル(約12兆円)を超え、ドイツのフォルクスワーゲンやアメリカのフォードなど自動車大手を上回った。
辛坊)今、明らかに日本は「EV敗戦」を迎えようとしています。その大きな要因は、国土交通省のトップである国交相を長年、同じ政党の議員が務めていることです。
国交相のポストは10年以上にわたり、公明党の議員が務めています。最近、自民党内に国交相のポストを奪還しようとする動きがあることがニュースになりました。しかし、これは自民が取り戻すとか取り戻さないとか、そういった次元の問題ではありません。
国交省は典型的な利権官庁です。その利権官庁のトップを10年以上も連続で同じ政党に任せておくというのが問題なのです。どれだけクリーンな政党、勢力、政治家であろうが、権力は腐敗します。ですから、こうした利権官庁に関しては、定期的な人事異動を行うのが社会の常識です。今、求められているのは「岸田政権、そこはどうなっているんだ」という視点なのです。
確かに、自民に政権を任せるというのは有権者の判断です。しかし、利権官庁の最たるところの国交省のトップ人事に関しては、有権者は決められません。ですから、政治の責任として、しっかりと国交相人事をローテーションすべきです。
●関東大震災100年…東京都知事、「朝鮮人犠牲者追悼文」またもや拒否 8/18
小池百合子東京都知事が関東大震災100年を迎える今年も、朝鮮人犠牲者追悼式典に追悼文を送らない方針だという。これは2017年以来7年連続のことであり、関東大震災当時、日本軍や警察などが加担した朝鮮人虐殺自体を否定するのでないかという批判の声が上がっている。
東京新聞は17日付で、東京都が来月1日、東京都墨田区の都立横網町公園で行われる関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典と関連し、小池知事の追悼文を送ってほしいという主催者側の要請を断る意思を伝えたと報じた。
「日朝協会」など日本の市民団体は1974年から毎年、関東大震災当時に日本軍、警察、自警団によって虐殺された朝鮮人犠牲者のために追悼式典を行っている。行事を主催する「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会」は先月31日、東京都を訪れ、「今年は関東大震災100年になる年だ。過去から学び、次の世代に伝えることが重要だ」とし、追悼文の送付を重ねて要請した。しかし東京都は「(都知事が)大震災で犠牲となったすべての方々に哀悼の意を表しており、個々の行事への送付は控える」として、この要請を断った。
関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会の宮川泰彦委員長は東京新聞に「全くもって遺憾。知事は朝鮮人虐殺の歴史的事実から目を背けている。歴史的事実を否定しているとも捉えられる姿勢だ」と批判した。
これまで極右政治家とされる石原慎太郎をはじめ、猪瀬直樹、舛添要一など2006年以降の歴代東京都知事らは追悼文を送ってきた。朝鮮人虐殺は自然災害で死亡した人々とは性格が全く異なるためだ。小池知事も就任したばかりの2016年には追悼文を送ったが、翌年の2017年から突然送付を取りやめた。
小池知事のこのような対応は「朝鮮人虐殺」を歪曲する極右勢力の歴史認識と脈を共にするものとみられる。日本の極右団体は関東大震災の朝鮮人被害者数が誇張されており、虐殺も当時朝鮮人が起こした暴動に対する正当防衛だったと主張している。
小池知事は2月、東京都議会で関東大震災朝鮮人虐殺と関連して「何が明白な事実かについては、歴史家がひもとくものだ」とし、虐殺に対する明確な答弁を避けた。小池知事は追悼文送付を取りやめた2017年3月、都議会でも追悼文に否定的見解を表わした経緯がある。自民党所属の議員が「追悼碑に書かれた『朝鮮人犠牲者6千余名』は根拠が希薄だ」という質疑に対し、小池知事は「慣例的に(追悼文を)送付してきたものであり、今後は私自身がよく目を通したうえで、適切に判断する」と答弁した。
関東大震災は1923年9月1日午前11時58分に発生したマグニチュード7.9の大規模災害で、10万5千人余りが死亡または行方不明になった。当時、不安な社会雰囲気と相まって「朝鮮人が暴動を起こした」、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマが広がった。この過程で日本の警察と軍隊、自警団が朝鮮人、中国人、日本人社会主義者などを虐殺した恐ろしい事件が起きた。大震災後、日本政府が事件を隠蔽したことで、朝鮮人犠牲者数や原因などが正確に把握されていない。
ただし、日本内閣府中央防災会議は2008年、国家機関では初めて虐殺事件を分析した報告書を通じて「関東大震災時には、官憲、被災者や周辺住民による