プーチンの新冷戦

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第三次世界大戦  プーチン大統領の「夢」  戦争終結の道  ウクライナ分断  孤立するロシア ・・・  どこへ行くプーチン大統領  プーチン大統領の冬支度   
 
 

●アメリカを名指し「安全保障上の主要リスク」ロシア新外交政策方針 4/1
ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻で対立を深めるアメリカを名指しして「安全保障上の主要なリスク」とする新たな外交政策の基本方針を承認しました。
ロシア プーチン大統領「非友好国に対し、わが国への敵対政策を放棄するよう特別な注意を払う」
プーチン大統領は、きのう安全保障会議を開催し、新たな外交政策の基本方針について「ロシアの主権を強化し、より公正で多極的な世界秩序の構築に努める」と強調しました。
基本方針では、アメリカを名指しして「ロシアの安全保障と平和を脅かす主要なリスク」と指摘。欧米との対決姿勢を鮮明にするとともに、中国やインドなどとの関係強化を打ち出しています。
そのうえで「アメリカと共存し戦略的安定を保つことに関心がある」としています。
また、ナチス・ドイツや日本の「軍国主義」の見直しなど歴史を修正することは容認できないなどと一方的に主張しています。
一方、プーチン大統領は先月30日、春の徴兵に関する大統領令に署名しました。4月1日から7月15日にかけて14万7000人の徴兵を行うとしています。
ロシア国防省はウクライナの戦地に送ることはないとし、職業軍人や動員兵だけで軍事作戦の遂行は可能だと強調していますが、民間軍事会社ワグネルはモスクワ市内に巨大な広告を出すなどして、5月までに戦闘員3万人を募集するとしています。
●プーチン大統領「米が反ロの動きを主導」〜新外交政策概念定める大統領令 4/1
ロシアのプーチン大統領は、新しい外交政策概念を定める大統領令に署名した。
プーチン大統領が3月31日に署名した新しい外交政策概念では、アメリカが反ロシアの動きを主導していると指摘。
「政策の優先順位は、反ロシアの動きにロシアが対抗することだ」と、欧米との対決姿勢を鮮明にした。
そのうえで、「ロシアは自らを欧米の敵とは考えていないし、欧米から孤立しているわけでもない。敵対的意図も持っていない」と摩擦を引き起こしているのは欧米の方だと批判した。
また、今後の方針として「21世紀におけるロシアの主要なプロジェクトは、ユーラシア大陸を1つの平和な空間に変えることだ」としたほか、「中国・インド・ラテンアメリカ諸国だけでなく、イスラム文明を友好的とみなし、包括的な互恵協力関係を強化する」と明記した。
ロシアメディアによると、ロシアの外交政策概念の改訂は、2016年以来、7年ぶり。
プーチン大統領は「バランスの取れたものだ」と評価している。
●人権侵害が「恐ろしいほど日常化」、ウクライナ戦争=国連高官 4/1
ターク国連人権高等弁務官は31日、ロシアが侵攻を続けるウクライナで重大な人権侵害が「恐ろしいほど日常的」に行われており、民間人の犠牲者数は公式発表よりもはるかに多いという認識を示した。
ターク氏は演説で「ロシアのウクライナに対する戦争は13カ月続き、人権と国際人道法の深刻な違反が恐ろしいほど日常化している」とし、ウクライナでは「国中で人々が大規模な苦しみや喪失、剥奪、破壊に直面している」と語った。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、ロシアのウクライナ侵攻開始後、民間人の死者8400人超、負傷者1万4000人超を確認している。
ターク氏は「これら数字は氷山の一角に過ぎない」とし、「犠牲者の大半はロシア軍の居住地域での爆発兵器使用によるもの」と述べた。
国連人権理事会は来週、ウクライナで人権侵害の可能性などを調査するために設置した独立調査委員会の任期を延長する決議を採択する見通し。
●ドネツクで攻勢仕掛けるウクライナ軍、ミサイル・自爆ドローンで装甲車を破壊… 4/1
ロシアが武器と引き換えに北朝鮮へ食糧を提供する計画だとホワイトハウスが主張する中、ソーシャルメディアでは、ウクライナ軍がロシアの戦車、装甲車を破壊し、ロシア軍の指揮所を空襲する動画が相次いで公開された。
国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は、ロシアが北朝鮮へ代表団を派遣し、武器と引き換えに食糧を提供する計画だと語った。BBCが30日(現地時間)に報じた。
米国政府はウクライナ戦争で、ロシア軍およびロシアの民間軍事会社ワグネル・グループに対する北朝鮮の武器供給説を何度か提起してきた。北朝鮮はこうした疑惑を否定している。
ここ数カ月にわたり最も激しい戦闘が繰り広げられているウクライナ東部のバフムトで、ワグネルの雇い兵グループは「勝利」を公言しているが、その一方、弾薬の枯渇により攻勢が弱まっている。
ニューヨーク・タイムズ紙は30日、ウクライナで最も優秀な部隊の一つに挙げられる「アダム戦術群(Adam Tactical Group)」の指揮官イェウヘン・メゼビキン大佐(Col. Yevhen Mezhevikin、40)が「敵は全ての資源を消耗した」と語り、同じくウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官とオレクサンドル・シルスキー東部地上軍司令官も、バフムトの状況は安定していると評価している−と伝えた。
ツイッターでは、ウクライナ東部のドネツクでウクライナ軍のミサイル攻撃によりロシア軍の装甲車が次々と爆発し、炎に包まれた装甲車から飛び降りたロシア兵が肝をつぶして散り散りに走っていく動画が公開された。
ルハンスクのクズモウカで、米国の支援したM142高速機動砲兵ロケットシステム(HIMARS)でロケット弾を発射し、ロシア軍の指揮所を破壊する動画も公開された。
また、アブディウカでウクライナ軍の自爆ドローンがロシア軍の戦車2両を破壊する動画も公開された。
ただし、これらの動画の正確な撮影時期は公開されていない。
ウクライナのオレクシー・レズニコウ国防相は前日、エストニアのテレビ局のインタビューで、西側から支援されたレオパルト2、チャレンジャー2などの戦車を利用した大規模な反撃が4月もしくは5月に始まることもあり得ると暗示しており、注目を集めている。
●仏マクロン大統領 5日から訪中 EU委員長も同行 習主席と会談へ  4/1
フランス政府は、マクロン大統領が4月5日から中国を訪れ、EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長とともに、習近平国家主席と会談を行うと発表しました。3月にロシアを訪問したばかりの習主席に対し、ウクライナ情勢をめぐる中国とロシアのさらなる接近をけん制したい考えです。
フランス大統領府は3月31日、4月5日から3日間の日程でマクロン大統領が中国に滞在し、首都・北京や南部・広東省を訪れると発表しました。
6日には、同じく中国を訪問するEUのフォンデアライエン委員長も交え習近平国家主席と3者で会談を行うほか、先月選出された李強首相らとも協議を行うということです。
中国の習主席は先月20日から3日間、ロシアを訪問し、プーチン大統領と会談を行って2か国の緊密な関係を誇示したばかりです。
今回の中国訪問の目的について、フランス大統領府は「ウクライナ情勢をめぐり、中国がロシアを軍事的に支援するという致命的な決断を下せば、戦争に大きな影響を与える」と説明し、中国とロシアのさらなる接近をけん制したい考えです。
フランスからは、大手航空機メーカー「エアバス」などの企業関係者も多く同行して中国の経済界と会合を持つ予定で、経済関係の連携強化を図るねらいもあるとみられます。
●活発化する中国の外交攻勢 「世界平和」への新秩序づくり、加速か  4/1
欧州連合(EU)や欧州各国の首脳の中国への訪問が相次いでいる。22年11月にドイツのショルツ首相、同12月にはEUのミシェル首脳会議常任議長が北京を訪れ、習近平国家主席と会談。23年3月にスペインのサンチェス首相が訪中したほか、マクロン仏大統領やEU委員長も4月中の訪中を表明している。米バイデン政権や日本の岸田政権も対中関係改善に動き出した。
日米欧、対中関係改善へ動く
米ホワイトハウスのインド太平洋調整官、カート・キャンベル氏は3月30日の講演で、米政府はバイデン大統領が中国の習近平国家主席と新たに電話会談する用意があると言明した。キャンベル氏は「(中国との)対話ルートを維持する準備が整っており、これらのルートを開き続けるつもりだ」と強調した。キャンベル氏は台湾海峡と平和と安全の重要性にも触れ、信頼醸成と危機時の首脳同士の直接対話(ホットライン)をめぐる枠組みを米中両国が設けることが「責任ある対応」になると訴えた。
中国の李強首相は3月30日、経済問題などを討議する「ボアオ・アジアフォーラム」の年次総会で基調演説を行い、「一方的な制裁や新冷戦に反対する」と強調した。米国による対中輸出規制の強化や、ウクライナ侵攻に伴う西側諸国の対ロシア制裁を念頭に置いた発言とみられる。中国経済については「成長の勢いは強い」と先行きに自信を示した。李氏は3月中旬に首相に就任したばかり。新政府が景気回復を最優先課題に位置付ける中、実現には対外関係の「安定」が不可欠となる。
中国首相「平和的方法で国家間の争いを解決」
李氏は演説で「アジアが発展するためには、混乱や戦争があってはならない」と訴えた。その上で、「一方的な経済制裁や新冷戦には反対し、平和的な方法で国家間の争いを解決していく」と表明した。経済対策としては、内需拡大を重視すると説明。経済成長を続けるため、外資の投資を歓迎する考えも示した。米銀の破綻などを受けて世界経済の先行きに不透明感が漂う中、「金融の安定を維持する」と強調した。
ボアオ会議は中国主導の国際会議で、スペインのサンチェス首相やシンガポールのリー・シェンロン首相、マレーシアのアンワル首相、国際機関トップらが出席。海外の要人を現地に多数招いて開催するのは2019年以来、4年ぶりとなった。スペインは次期EU議長国。サンチェス首相は、3月31日、北京で習近平国家主席と会談し、ロシアが侵攻を続けるウクライナをめぐる情勢などについて意見交換した。
会談後の記者会見でサンチェス首相は、習主席に対しロシアによる侵攻への懸念を伝えた上で、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談するよう求めたことを明らかにした。ウクライナ情勢をめぐり中国が2月に発表した停戦を呼びかける文書について、サンチェス氏は調停役としての中国への期待を示した。また、サンチェス氏はスペインと中国の関係について「相互主義に基づくバランスのとれた関係を推し進めたい」と述べ、両国の観光フォーラムを6月に開催することを明かした。
中国は欧州との関係改善を目指しており、「スペインとの包括的戦略パートナーシップを新たな段階に進めたい」(外交部報道官)と歓迎している。さらに欧州連合の報道官は3月24日、フォンデアライエン欧州委員長が4月初めに、フランスのマクロン大統領とともに中国を訪問すると明らかにした。習主席らと会談する予定だ。
ウクライナ大統領、習主席との対面会談を希望
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は2月24日、ロシアの全面侵攻から1年を迎えたのに合わせて首都キーウで記者会見し、中国がロシアとウクライナに停戦を促す文書を発表したことに理解を示し、「中国がロシアに武器を供与しないことを強く信じている」と言明。中国の習主席との会談を計画していると述べた。
AP通信によると、ゼレンスキー氏は3月下旬に前線近くの訪問先から首都に戻る電車内でインタビューに応じ、「(習主席と)キーウで会う用意がある」と対面での会談を希望した。
習氏は3月20〜22日にモスクワを訪問しプーチン露大統領と会談。ロシアとの戦略的協力を強化する意向を表明する一方、プーチン氏にウクライナとの和平協議を促した。中国のシンクタンク幹部によると、ゼレンスキー大統領は「ロシアにとって、良くない訪問だった」との見方を示しているという。その理由として、中国がロシアに武器や弾薬を提供するとの発表がなかったことを挙げ、プーチン大統領が25日に同盟国で隣国のベラルーシへの戦術核兵器の配備を発表したことも「中国からの支援がないことに対し(国際社会からの)目をそらすためだった」と指摘した。
習氏は2月24日に「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」という12項目からなるウクライナ戦争の「和平案」を発表した。これ以上の戦火の拡大を抑制し、当事国が停戦に向けた対話を行うべきだというのが「和平案」の趣旨である。ウクライナをめぐる関係諸国の外交が活発化することを見越し、中国の和平への意志をアピールする思惑があるとの見方が有力だ。
ウクライナのクレバ外相は3月16日、中国の和平案を評価。米国の軍部トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は「ロシアもウクライナも軍事力によって目的を達成することはできない」との見方を示した。プーチン氏も本心は「停戦」に導いてほしいと中国高官は踏んでいる。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官はゼレンスキー氏と習氏との対話を支持する考えを示した。
中国とウクライナは友好的
中国外交部の「中国とウクライナの関係」に関する資料には、政治関係、経済貿易関係、両国協力機構など、多方面にわたる緊密な友好関係が列挙されている。それら資料によると、中国とウクライナはいち早く1992年1月4日に国交樹立した。2001年に全面的な友好協力関係を結び、2011年には戦略的パートナーシップ関係を締結。友好関係を深めてきた。2013年12月5日には、「中国ウクライナ友好協力条約」を結んだ。すべての共同声明や協力関係締結の際、ウクライナは、台湾やウイグルやチベット問題などにおいても、常に中国の立場を支持し、台湾の独立に反対する立場を明確にしてきた。
ウクライナは中国の巨大インフラ構想「一帯一路」の加盟国でもあり、中国は巨額の投資をしてウクライナの穀物業などを育成。中国は最大の貿易相手国となっている。ウクライナとしては戦後復興に中国からの巨額の支援を期待しているという。
欧米の動きにつれて日本も動き出した。林芳正外相が4月1日から訪中するほか、自民党きっての親中派・二階俊博元幹事長が多くの経済関係者とともに訪中予定だ。中国人観光客の誘致を働き掛ける。
現在、台湾情勢をめぐり、蔡英文総統の米国訪問や、前総統・馬英久氏ら国民党関係者の訪中など、目まぐるしい動きが交錯している。こうした動きが一段落したら、「仕切り直し」で、劇的な変化があるかもしれない。中露首脳会談で頻出した「多極化」という言葉は、米国の一極支配的先進国価値観による秩序ではない世界のこと。中国がグローバルサウスを包含した世界新秩序を形成する一歩になるとの見方も強まっている。中国がイラン・サウジ和睦の仲介をしたことによって新秩序形成が加速されつつある。  
●ロシア 冬の侵攻 “失敗が明確”との見方も 東部で攻撃鈍化か  4/1
ロシアが掌握を目指すウクライナ東部の激戦地バフムトでは、ロシア軍の攻撃が鈍化しているという指摘が出ています。また、ロシアのゲラシモフ参謀総長が新たな総司令官として冬の間侵攻を続けたものの、失敗が明確になっているという見方も出ています。
ウクライナ東部ドネツク州のバフムトについて、アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは先月30日、「街がロシア軍に包囲される差し迫った危険は阻止された」とするウクライナ軍の司令官の話を伝えました。
アメリカ軍の制服組トップ、ミリー統合参謀本部議長も29日「過去20日か21日の間で、ロシア軍はバフムトやその周辺で全く前進していない」との分析を明らかにするなど、ロシア軍の攻撃が鈍化しているという指摘が出ています。
また、イギリス国防省は1日、ロシア軍の制服組トップ、ゲラシモフ参謀総長が1月にウクライナ侵攻の新たな総司令官に任命されて以降東部ドンバス地域の支配拡大を目指したものの、ロシア軍に数万人の死傷者が出る一方、わずかな地域しか掌握できず、失敗が明確になっていると分析しました。
そして、ロシア指導部が、ゲラシモフ氏の失敗に対し、どこまで許容できるのかという問題を指摘しています。
一方、ロシアのプーチン大統領は31日、新たな外交政策の基本指針を承認し、この中で「アメリカなど西側諸国はロシアがウクライナにおける重要な国益を守るためにとった措置に対して新たなハイブリッド戦争を開始した。目的はロシアを弱体化させることだ」などと軍事侵攻を正当化し、欧米との対決姿勢を鮮明にしています。

 

●ロシア 新たな外交政策の基本指針 欧米への対抗勢力構築目指す  4/2
ロシアのプーチン政権は、新たな外交政策の基本指針のなかで、欧米との対決姿勢を鮮明にし、中国やインドなどとの連携強化を打ち出しています。
外交面で、欧米に対抗する勢力の構築を目指し、働きかけを強めていくものとみられています。
ロシア国防省は1日、軍への弾薬供給に関する会合を開いたと発表し、ショイグ国防相が「製造能力を強化し、通常の弾薬とともに、精密誘導兵器を増やしていく」と述べました。
ショイグ国防相は、先月28日には兵器工場を視察し、欧米諸国がウクライナへの軍事支援を加速させるなか、国内の軍需産業に兵器の増産を促しています。
一方、ロシア政府は外交政策の基本指針を2016年以来、7年ぶりに改定して先月31日に発表し、この中で「アメリカなど西側諸国は、ロシアがウクライナにおける重要な国益を守るためにとった措置に対して、新たなハイブリッド戦争を開始した」などと欧米との対決姿勢を鮮明にしました。
また「ロシアは国連安全保障理事会の常任理事国であり、2大核保有国の1つだ」と強調した上で、中国やインドなどとの連携強化を重視し、多極化した国際秩序の構築を目指すとうたっています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、先月31日「新たな基本指針はロシアが潜在的な反欧米連合を築こうとするものだ」と分析し、先月行われた中国の習近平国家主席との首脳会談の機会でもプーチン大統領からこうした働きかけがあったと指摘しました。
そしてロシアは今月、国連安全保障理事会で議長国を務めることから、新たな外交方針をその前に示し、国連でも働きかけを強めたいねらいがあると分析しています。
一方、「戦争研究所」は「ウクライナ侵攻でロシアの経済力や軍事力は低下している。各国には、ロシアの提案に同意する理由がほとんどない」という見方を示しています。
●ロシア、4月の国連安保理議長国に 「最悪のジョーク」とウクライナ怒り 4/2
ロシアは4月1日から1カ月間、国連安全保障理事会の議長国を務める。ロシアの侵攻を受けるウクライナは加盟国に対し、ロシアの議長国就任を阻止するよう求めていた。ロシアの安保理議長就任にウクライナのドミトロ・クレバ外相は、「エイプリルフール史上最悪のジョーク」だと強い怒りを示した。
安保理の議長は輪番制で、ロシアを含む15理事国が毎月交代で務める。
ロシアが前回、議長国を務めたのは、ウクライナへの全面的侵攻を開始した昨年2月。
ウクライナ侵攻をめぐっては、国際刑事裁判所(ICC)が先月、戦争犯罪容疑でウラジーミル・プーチン大統領らに逮捕状を出している。
逮捕状が出ている人物が率いる国が今後1カ月間、安保理を主導することとなる。
国連安保理の常任理事国5カ国はイギリス、アメリカ、フランス、中国、ロシア。
アメリカは、常任理事国ロシアの議長国就任を阻止することはできないとしていた。
議長国の役割はほとんど手続き的なものだが、ロシアのヴァシリー・ネベンジア国連大使はロシア国営タス通信に対し、軍備管理などいくつかの討論を差配する予定だと語った。
同大使は「一極支配に取って代わる」、「新しい世界秩序」について議論するつもりだとした。
ウクライナは反発
ウクライナのクレバ外相は、「エイプリルフール史上最悪のジョーク」で、「国際安全保障構造の機能が、どこかおかしいとあらためて痛感させるもの」だとツイッターで批判した。
ロシアが議長国に就任した1日に外相はさらに、「国際社会への平手打ち」で、ロシアは「国連安保理の無法者」だと書いた。
ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問は、この動きは「国際法に対する新たな破壊行為だ。(中略)侵略戦争を行い、人道及び刑法の規範に反し、国連憲章を破壊し、原子力安全性を軽視する存在が、世界の主要な安全保障機関のトップを務めることなどできない」とツイートした。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は昨年、安保理がロシアの侵攻を防ぐために十分な行動を取らなかったと非難し、改革するか「完全に解体」するよう迫っていた。
ゼレンスキー氏はさらに、ロシアを安保理から除名するよう求めている。
しかしアメリカは、国連憲章では常任理事国の除名に関する規定がなく、なすすべがないとしている。
「残念ながら、ロシアは安全保障理事会の常任理事国で、この現実を変えるための実行可能な国際的な法的手段は存在しない」と、ホワイトハウスのカリーン・ジャン=ピエール報道官はこのほど定例会見で述べた。
さらに、ロシア政府が「偽情報を広めて」ウクライナでの行動を正当化するため、安保理の議席を利用し続けると、アメリカ政府としては予想していると付け加えた。
15カ国で構成される国連安全保障理事会は、世界の平和を維持する責任を担う。
常任理事国5カ国の顔ぶれには、第2次世界大戦後に安保理が設立された当時の権力構造が反映されている。
非常任理事国10カ国は、任期2年で地域ごとに選出される。日本は今年1月から非常任理事国として、安保理に参加している。
常任理事国のロシアには拒否権がある。安保理決議案を採択するには15カ国中9カ国が賛成し、なおかつ全ての常任理事国が賛成しなくてはならない。
ロシアは昨年2月、ウクライナ侵攻を受けてロシアの即時撤退を求める決議案に拒否権を行使した。中国、インド、アラブ首長国連邦は棄権した。
同年9月にも、ロシアによるウクライナ東部・南部4州の違法併合を非難し、ロシアの即時撤退を求める決議案に、ロシアが拒否権を行使。この時はブラジル、中国、ガボン、インドが棄権した。
●プーチン“次の一手”は隣国への核配備…正当化の口実「核シェアリング」? 4/2
ロシアが隣国のベラルーシに核兵器を配備すると発表しました。これを正当化するプーチン大統領が、その口実に使ったのが、アメリカが同盟国の領土内に核兵器を配備している「核シェアリング」とうい仕組みです。日本でも安倍元首相らが「議論の必要性」を主張した、この“核兵器の共有”政策。どんなものなのか、そして今、核の脅威は世界でどこまで広がっているのか、お伝えします。
ベラルーシに核を置くロシアの言い分
3月25日、ベラルーシに核兵器を配備すると表明したプーチン大統領はこう言っています。「アメリカは何十年も前から核兵器を同盟諸国に配備している」これはどういうことでしょうか?
世界の核兵器の分布
現状、世界にはこれだけの核兵器があります。保有している国ですが、国連安保理の常任理事国でもある5か国、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の他、イスラエル、パキスタン、インド、北朝鮮にも広がっています。そして実は、これら“核保有国”以外にも核兵器は配備されているんです。それが、アメリカとNATO加盟国の「核シェアリング(共有)」と呼ばれる仕組み。ドイツ、オランダ、ベルギー、イタリア、トルコには、アメリカが管理する核兵器が配備されていて、有事の際に、NATOやアメリカが判断したうえで、それぞれの国の軍が使用することになっています。ロシアはこの「核シェアリング」の仕組みを持ち出し、自分たちも同盟国ベラルーシで同じことをやるのだと正当化したのです。
核シェアリングの始まり・そして日本でも…
アメリカの「核シェアリング」が始まったのは1950年代。NATO加盟のヨーロッパ諸国では、旧ソ連と核戦争になった場合、「アメリカは同盟国のために本当に核を使ってくれるのか」と不安が高まったため、アメリカの核兵器をそうした国々に配備して使える体制をとったのです。現在も、戦闘機から投下するタイプの核爆弾がNATO加盟国にあわせて100発ほど配備されているといいます。日本でも2022年、核シェアリングについて、安倍元総理大臣が「タブー視することなく議論しなければならない」と主張しましたが、岸田総理大臣は「政府においては認めない」としています。
核軍縮の終わり? 核弾頭増加の予測
こちらは、世界にある核弾頭の数の推移です。冷戦の終結に伴いアメリカとロシアは、「INF中距離核戦力全廃条約」や核弾頭を削減する「START」などでその数を減らしてきました。しかし、2018年にトランプ大統領がINFから離脱を表明。2023年、プーチン大統領が新STARTの履行を停止するなど、逆行する動きが止まらず、核弾頭の数は「今後10年間で増加に転じる」と分析されているんです。こうした中で、5月には広島でG7サミットが開かれます。岸田総理は、「核保有国と非核保有国の橋渡しをする」と繰り返していますが、G7議長国として「核なき世界」に向けたリーダーシップを発揮することはできるのでしょうか?
●ロシアの作戦「失敗は明白」 英国防省分析、統括司令官任命後 4/2
英国防省は1日、ロシアのウクライナ侵攻で、ロシア軍制服組トップのゲラシモフ参謀総長が1月に軍事作戦の統括司令官に任命された後、東部ドンバス地域(ドネツク、ルガンスク両州)の完全制圧を目指した作戦は「失敗したことが明白になった」との分析を発表した。
ゲラシモフ氏の統括司令官任命は異例の人事で、ロシア軍が大規模攻勢に出るとの見方が強まっていた。英国防省は、ロシアがドンバス地域の戦線で数万人の死傷者を出しながら、制圧した地域はわずかだと指摘。昨年9月の部分動員令で多数の予備役を投入し、人員を増強したが「ほぼ無駄に終わった」とした。
●「究極の政治的裏切り」を先に決断するのは、プーチンかゼレンスキーか? 4/2
外交を通じて平和を実現するか、さもなければ「茫漠たる人類の埋葬地」のみが残される「殲滅(せんめつ)戦争」に陥るか──1795年に発表した『永遠平和のために』でカントは当時の人々にそんな選択を迫った。
残念なことに歴史を振り返れば、人類は往々にして後者を選んできた。少なくとも、目を覆うばかりの惨禍が戦争当事国を交渉のテーブルに着かせるまでは......。
そしてその時点でさえ、戦いを終わらせたければ指導者には胆力が求められる。
ウクライナのゼレンスキー大統領が豪胆な戦時の指導者であることは誰もが認める。一方、今の彼が政治的ムードの人質になっていることも否めない。
隣国の領土にずかずかと侵入し破壊の限りを尽くすロシア。その残虐非道な敵に1_たりとも譲歩せず、完全な勝利を目指さなければ、ゼレンスキーは政治生命ばかりか、文字どおり命を失うことにもなりかねない。
戦争当事国が和平の道を探る段階では、しばしば世論は政治指導者以上に好戦的になっている。ウクライナ戦争のような祖国防衛戦争では国民は打って一丸となるが、戦争が長引いて政治指導者が不完全な形の和平を求めれば、国論は二分され、政治指導者は裏切り者呼ばわりされかねない。
それでも政治指導者が国民の反発を恐れずに停戦交渉を進めるなら、それは恐らく「高邁な裏切り行為」でしかない。
「政治においては祖国か世論のいずれかを裏切らねばならない時がある。私は世論を裏切るほうを選びたい」
これはフランスの元大統領シャルル・ドゴールの有名な言葉だ。彼は1962年3月にこう語り、アルジェリアの独立を認めるエビアン協定に署名した。そのため極右の怒りを買い、協定締結の数カ月後に危うく暗殺されそうになった。
保守強硬派で鳴らすイスラエルのアリエル・シャロン元首相ですら、ユダヤ民族主義者の期待を裏切った。
民族国家の再建を目指す人々は占領地内のパレスチナ人の土地を奪おうと精力的に入植を進めたが、シャロンは2005年、ガザ地区全域とヨルダン川西岸の一部のユダヤ人入植地を解体した。
シャロンは保守派の期待ばかりか、自身が高々と掲げてきた政治的信条まで裏切ったのだ。
ウクライナが望む形での戦争終結、つまりロシアの完全な敗北はそう簡単には実現しそうにない。
激戦が続くなかロシアの残虐なやり口はウクライナ人の怒りをかき立て、和平のための妥協を一切許さないムードが醸成されている。この状況で停戦交渉を進めるには相当の覚悟がいる。
結果的にウクライナ戦争は、長引く持久戦で膨大な死者を出した第1次大戦の哀れなレプリカの様相を呈しつつある。
ロシアが劣勢に追い込まれるにつれ、プーチンが核の使用に踏み切り、NATOが直接的に戦争に介入する危険性が高まる。ロシアと戦略的に手を組む中国がこの機に乗じて台湾に侵攻し、破滅的な世界戦争の火ぶたが切られるシナリオすらあり得る。
ウクライナの指導者たちはイラン・イラク戦争の教訓に学ぶべきだ。80年に始まったこの戦争は、イラクの侵攻に疲弊し切ったイランが国連安全保障理事会の停戦決議を受け入れるまで8年間もかかり、100万人超の死者が出た。賢明な決断のおかげで、イラン国民は全滅を免れた。
本人も驚いているだろうが、この1年余りでゼレンスキーは戦争の英雄となった。だが今、彼は耐え難いジレンマに直面している。
戦争を終わらせるには完全な勝利ではなく、不完全な和平に甘んじざるを得ない。遅かれ早かれゼレンスキーか、望むらくはプーチンが究極の政治的裏切りをせざるを得ないだろう。
●ロシア、反欧米鮮明に ウクライナは戦争犯罪追及 4/2
ロシアのプーチン大統領は3月31日、外交政策の指針となる新たな「外交政策概念」を承認する大統領令に署名した。この中で米国を「反ロシア路線を主導している」と名指しで非難。「多極化した世界秩序の構築」を掲げ、欧米諸国との対決姿勢を鮮明にした。
ウクライナでは、ロシアによる侵攻開始から400日が経過。ロシア軍が多数の民間人を殺害した首都キーウ(キエフ)近郊ブチャの解放から、31日で1年を迎えた。ゼレンスキー大統領は「ブチャを正義の象徴とするために、われわれはあらゆることをする」と述べ、ロシアの戦争犯罪追及を誓った。
2016年以来の改定となる外交指針で、ロシアは「欧米諸国がロシアの弱体化を目的に(軍事力と非軍事力を組み合わせた)ハイブリッド戦争を始めた」と主張。中国やインド、イスラム圏や東南アジアなどとの連携を深め、「非友好国の反ロシア的な動き」に対抗する方針を打ち出した。
ただ、米シンクタンクの戦争研究所は、この指針について「ロシアの経済力と軍事力の低下で、各国にはこの提案に真剣に関心を示す動機がない」と分析。「モスクワを訪問した中国の習近平国家主席にプーチン氏が提案した反欧米圏の形成は、肯定的に受け止められなかった」とも指摘した。
侵攻のさらなる長期化が見込まれる中、国際社会によるウクライナ支援も続いている。国際通貨基金(IMF)は31日、ウクライナに対する総額156億ドル(約2兆円)の金融支援を承認。ロイター通信によると、米国は26億ドル(約3500億円)の追加武器支援を近く発表する見通しだ。  

 

●ロシア・サンクトペテルブルクの飲食店で爆発 親プーチン政権ブロガー死亡 4/3
ロシア第2の都市サンクトペテルブルクの飲食店で爆発があり、プーチン政権寄りの立場で知られる著名な軍事ブロガーが死亡、20人以上がけがをしました。
タス通信などによりますと、サンクトペテルブルクの飲食店で2日、爆発があり、「ウラドレン・タタルスキー」のペンネームで活動していたロシアの著名な軍事ブロガーが死亡し、25人がけがをしました。
タタルスキー氏はウクライナ侵攻についてプーチン政権寄りの立場でSNSなどで情報を発信し、フォロワーは50万人以上にのぼります。
飲食店では当時、愛国的なイベントが催されていて、タタルスキー氏に贈られた像に爆発物が仕掛けられていたということです。
この飲食店はかつて、民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏が所有していた物件で、度々、こうしたイベントが行われていたとされています。
ロシア外務省のザハロワ報道官は2日、声明を発表し、「ロシアのジャーナリストはウクライナの現政権とその黒幕による殺りくの脅威に常にさらされている」と主張しています。
一方、ウクライナ政府の高官は、ロシア国内での争いでウクライナは関与していないとの認識を示しています。
●プーチンは「同志・習近平」に勝利の可能性を潰された…!? 4/3
ゲラシモフ総司令官の苦戦
ロシア―ウクライナ戦争について筆者は、現代ビジネス1月19日付記事で「大きな戦いが近づいている」と予測した。
「ロシア・ウクライナ最終決戦」の予兆…!  歴史の教科書に載るであろう「大きな戦い」が近づいている
そして、2月16日付記事では、予想通り「大きな戦い」がはじまったことをお伝えした。
「ロシア・ウクライナ最終決戦」が始まった…!  はたしてプーチンは「戦術核」使用に踏み切るのか
ロイター2月14日付には、こうある。
〈 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は13日、懸念されていたウクライナでのロシアの新たな大規模攻撃がすでに始まっていると述べた 〉〈 ウクライナ侵攻から1年が近づく中、ロシア軍は13日、ウクライナ東部のバフムトを攻撃。NATOの事務総長は、長い間恐れられていたロシアの大規模攻撃が始まったとの見方を示した 〉
では、その後の戦局はどうなっているのだろうか? 「大きな戦い」は、今もつづいている。だが、ロシア軍は、プーチンが願ったような戦果をあげていない。
プーチンは1月11日、ロシア軍のトップであるゲラシモフ参謀総長を、ウクライナ特別軍事作戦の総司令官に任命した。ロシア・ハイブリット戦略生みの親で、世界的に有名な戦略家がいよいよウクライナ戦争の指揮を執るーー世界中の軍幹部が、「ゲラシモフの戦い」に注目した。
そして、ロシア軍は、大きな戦果をあげつつあった。
3月8日、NATOのストルテンベルグ事務総長は、ウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトが、「今後数日中にロシア軍によって陥落する可能性がある」と語った。
この時点で、ロシア軍はかなり優勢だったのだ。
しかし、英国防省は3月25日、バフムトで、ロシア軍が激しい人員の損失によって「失速している」との分析を発表した。
プーチンは、ゲラシモフに「3月末までにドンバス(ルガンスク州、ドネツク州)を完全制圧しろ」と命じた。しかし、ゲラシモフは、プーチンに与えられたミッションを期限内に完遂できなかった。
習近平に武器弾薬の支援を求めるプーチン
なぜ優勢だったロシア軍は、劣勢に転じたのか? それには三つの要因が挙げられる。
一つは、ロシア兵士の士気の低さだ。自国の領土を防衛しているウクライナ軍の士気は高い。一方で、他国を侵略しているロシア軍の士気は低い。
プーチンは、「この戦争をはじめたのは西側とウクライナだ」とフェイク情報を拡散し、ロシア国内のテレビ世代をだますことには成功している。しかし、前線で戦う兵士は、戦闘が「ウクライナ領内で起こっていること」を知っている。「なんのための戦争なのか」意味を見いだせない。
しかも、動員で連れてこられて人たちは、超短期間の訓練しか受けていない、いわば素人だ。
二つ目の理由は、人員不足。
プーチンは昨年9月、「部分的動員令」を出した。ロシア国防省はこの時、「30万人を動員する」と発表した。それでも、人員が足りなくなってきている。
三つ目は、武器弾薬の不足。
「BBC NEWS JAPAN」3月6日を見てみよう。〈 イギリス国防省は5日、ウクライナ侵攻を続けるロシアの予備役が、弾薬不足のために「シャベル」を使って「接近戦」を行っている可能性が高いとの見方を示した。英国防省の最新のアップデートによると、ロシアの予備役が2月下旬、「『銃器とシャベル』のみで武装して」ウクライナの陣地を攻撃するよう命じられたと述べたという 〉
ウクライナは、欧米から、ほとんど無尽蔵の武器支援を受けることができる。一方、国際的に孤立しているロシアに武器を提供してくれる国はほとんどない。
たとえば、トルコのエルドアン大統領は、「独裁者つながり」でプーチンと良好な関係を保っている。だが、そのトルコは、ロシアの敵ウクライナに無人機「バイラクタル」を輸出している。そしてこの無人機が、ロシアの戦車部隊に壊滅的打撃を与えている。
その一方で、トルコは、ロシア軍に無人機を提供することを拒否しているのだ。困ったロシアは、イラン製の無人機を輸入している。
日経新聞2022年10月27日。〈 イランの最高指導者ハメネイ師は最近、自国の軍事用ドローン(無人機)の効果を称賛した。ウクライナ政府や欧米諸国によると、イラン製のドローンはロシアに売却され、ウクライナの大都市を爆撃するのに使われている 〉
武器弾薬にいたっては、さらに悲惨だ。ロシアは、北朝鮮に輸出した物を買い戻している。
東洋経済1月1日。〈 2022年11〜12月にかけて、ロシアが北朝鮮にかつて販売した武器・弾薬などを北朝鮮から買い戻したという証言も出てきた。東洋経済の取材に応じたビジネス面で北朝鮮と関係が深い中華系実業家によれば、「携帯型の武器や弾薬などを北朝鮮からロシアが買い戻した」という 〉
欧米から全面的に支援を受けているウクライナ。ロシアが支援を受けているのは、イランと北朝鮮。ロシア軍が劣勢なのも理解できるだろう。「ゲラシモフの戦略以前」の問題だ。
しかし、3月20日、プーチンにこの劣勢を挽回するチャンスが訪れた。世界第2の経済、軍事大国・中国のトップ習近平が、モスクワにやってきたのだ。
プーチンの要請を拒否した習近平
習近平との首脳会談。プーチンの目的は、一つしかない。すなわち、習近平を説得し、中国から武器弾薬を提供してもらうことだ。
ところが、習近平には、まったく違う思惑があった。なんだろうか? 習近平には、「ロシア―ウクライナ戦争を和平に導きたい」という野心がある。
では、なぜ、中国は、ロシアとウクライナの和平を願うのか? それは「プーチンを救うことで、習近平自身を救うため」だ。どういうことか? 中国の戦略観では、「二匹のトラの戦いを山頂で眺める賢いサル状態」を最上とする。現状は、どうだろうか? プーチン自身が断言しているように、「ロシア―ウクライナ戦争」の本質は、米国とロシアの戦いだろう。まさに「二匹のトラ」が戦っている。そして、「賢いサル」である中国は、山頂でそれを眺めている。中国は今、最良のポジションにいる。
実際、中国はこの戦争最大の勝ち組だ。
この戦争で、欧米日とロシアの経済関係が切れた。欧州は、ロシアからの石炭、原油、天然ガスをほとんど輸入しなくなっている。結果、中国はロシア産の資源を激安で買うことができている。
「The Moscow Times」3月20日付は、中国が、ロシア産天然ガスを、欧州向けよりも70%安い価格で輸入していることを報じている。
さらに、制裁でドルもユーロも入手できなくなったロシアは、資源を「人民元」で中国に輸出している。
では、ロシアは、資源輸出で得た人民元をどうするのか? 
もちろん中国製品を購入する。要するに、ロシアは、「人民元経済圏」に組み込まれてしまった。つまりプーチンは、ウクライナを侵略するという愚かな決断によって、ロシアを「中国の属国」にしてしまったのだ。
以下の動画を見ていただきたい。
注目していただきたいのは、習近平とプーチンの目線だ。
習近平は、プーチンを一直線に見つめている。一方、プーチンは、習近平と一瞬目をあわせると、すぐ下を向いてしまう。ロシアでは「目を見て話すのがマナー」であるにもかかわらずだ。
習とプーチンは、いまや「皇帝と属国の長」の関係になっている。
習近平はあくまで「チャイナ・ファースト」
筆者は、この戦争がはじまる前から、「ロシアの大戦略的敗北は不可避」と主張してきたが、予想通りの展開になってきた。
このように、中国は現状、ロシア―ウクライナ戦争でもっとも得をしている国だ。ロシアの「弱体化」についても、中国への依存度が高まるので、中国は大歓迎だ。
しかしその一方で、ロシアがウクライナに「敗北」すると困ったことになる。なぜか? ロシアがウクライナに完敗し、プーチンが失脚したと仮定する。そして、親欧米派のロシア新大統領が誕生したとしよう。その新大統領は、ロシアの間違いを認め、クリミアと昨年9月に併合したルガンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州をウクライナに返還する。
さらに、賠償金の支払いも約束する。ここまでいけば、欧米と日本は、対ロシア制裁を解除するだろう。欧米日とロシアの経済関係は改善され、ドルとユーロの使用が再開され、ロシアは、「人民元経済圏」から離脱していく。
最悪のシナリオは、ロシアの親欧米新大統領が、「反中包囲網」に参加することだ。習近平は、このような最悪の事態を招かないために、「和平の仲介役」を買って出た。
中国政府は2月24日、12項目からなる停戦案を発表している。
停戦案の中には、〈(8)戦略的リスクの低減。核兵器の使用及び使用の威嚇に反対するべきだ〉など、一部「反ロシア的内容」も含まれている(核兵器をもたないウクライナは、核兵器を使うことも、威嚇することもできない)。
しかし、2項では、「軍事ブロックの強化、拡大」(つまりNATO拡大)に反対。10項では、欧米日によるロシア制裁に反対している。
要するに、この停戦案は、「ロシアを救う内容」になっている。そして、習近平が停戦案を出してきた理由は、「戦争に負けてプーチンが失脚したら困るから」だ。
習近平は、プーチンに「中国の停戦案を認めろ」と要求した。習は、プーチンの承認を得たうえで、ゼレンスキーとも会談し、より具体的な話に移行したかった。
ところがプーチンは、中国の停戦案について、「西側とウクライナの準備ができていない」といった。要するに、西側とウクライナを「ダシ」にして、中国の停戦案を遠回しに拒否したのだ。彼は、「武器さえあれば勝てる」と信じているのだから。
そして、プーチンは、「武器をくれ!」と習に迫った。しかし、習は了承しなかった。なぜか? 中国がロシアに武器を供与するようになれば、欧米日から制裁を科される可能性が出てくる。世界GDPの2%以下のロシアのために、世界GDPの約半分を占める欧米日との関係を犠牲にできない。習近平は、どこまでも「チャイナ・ファースト」なのである。
こうして、プーチンが「中国製兵器」によってこの戦争に勝利する道は閉ざされた。
そしてウクライナの反転攻勢がはじまる
ロシア―ウクライナ戦争は、これからどうなっていくのだろうか? 「大きな戦い」は、まだつづいている。しかし、ロシア軍の大攻勢は、兵力と武器弾薬不足で止まってしまった。これからは、ウクライナ軍の反転攻勢がはじまるだろう。
なぜプーチンは、ゲラシモフに「3月末までにドンバスを完全制圧しろ」と命じたのか? 期限を切ったことには、理由がある。3月末になると、英国、ドイツ製の戦車がウクライナに届き始めると予想されたからだ。
そして、実際、戦車が届き始めた。
「NHK NEWS WEB」3月28日。〈 ウクライナのレズニコフ国防相は27日、自身のSNSでイギリスの主力戦車「チャレンジャー2」などを受け取ったことを明らかにしました。レズニコフ国防相は「1年前には、パートナーの支援がこれほど強力なものになるとは誰も考えられなかった。ウクライナは世界を変えた」と書き込み、欧米の軍事支援に感謝の意向を示しました。ウクライナへの軍事支援をめぐって、ノルウェー軍は20日、8両の「レオパルト2」がウクライナに配備されたと発表しています。また、ドイツは27日、18両の「レオパルト2」を引き渡したと明らかにし、ウクライナ軍の軍備の強化が進んでいます 〉
戦車を得たウクライナ軍は、反転攻勢の準備を進めていく。
「大きな戦い」の第2幕がはじまろうとしている。
●ロシアの東部ドンバス地方制圧「失敗が明白に」…英国防省 4/3
英国防省は1日、ロシア軍が、ウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク・ルハンスク両州)の全域制圧を狙って今年1月から進めてきた攻勢の拡大について「失敗が明白になっている」との分析を明らかにした。米政策研究機関「戦争研究所」も、プーチン露大統領が掲げた3月末までのドンバス地方の全域制圧を実現できなかったと指摘した。
英国防省は露軍の攻勢拡大について「何万人もの犠牲を払いながら、制圧地の拡大は局地的で限られたものにとどまった」との見方を示した。露軍は昨年秋にプーチン政権が実施した予備役の部分的動員で「一時的に兵員数の優勢」を得たが「浪費した」と分析した。
露軍は1月中旬に侵略作戦の総司令官に制服組トップのワレリー・ゲラシモフ参謀総長が就任した。ゲラシモフ氏の主要任務はドンバス地方の全域制圧だったとみられており、目立った戦果を上げられなかったことで、解任を含めた処分を受ける「現実的な可能性がある」と評した。
露軍はドンバス地方での攻撃を続けている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は1日のビデオ演説で、ドネツク州の州都ドネツク近郊アウディーイウカへの露軍の攻撃で生後5か月の男児が殺害されたと非難した。露軍は戦果を求めてアウディーイウカの包囲を目指している。
露軍側が1月以降、攻勢を特に強めていたドネツク州の要衝バフムトでは、攻撃ペースの鈍化が相次いで伝えられる一方、攻略の主力を担う露民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員が、市内中心部の行政庁舎まで数百メートルの距離まで到達しているとの情報もある。
ドネツク州で露軍の侵略作戦に参加しているプーチン大統領直轄の治安組織「国家親衛隊」の幹部は1日、SNSで、露軍は攻勢よりも防衛に重心を移すべきだと主張した。この幹部は3月末にプーチン氏から「昇進」の辞令を受けた。
ウクライナ軍は4月か5月に大規模な反転攻勢の着手を計画しており、プーチン政権が占領地域の確保を重視し始めた可能性がある。
●ウクライナに欧州の主力戦車集結 「戦場に違い生む」 40両超到着 4/3
ロシアの侵攻を受けるウクライナが切望してきた西側諸国の主力戦車が続々と集まり始めている。
英国やドイツなど10カ国超が供与に加わった「戦車連合」からは40両以上が到着。反転攻勢の機会をうかがうウクライナ軍は、ロシア軍戦車との性能差を生かし、領土奪還につなげたい考えだ。
主軸を担うのはドイツ製の「レオパルト2」。移動しながら数キロ先の標的を攻撃できる精密さに、スピードと高い防御力を併せ持つ。ポーランドやカナダ、ノルウェー、スペインなどの保有国が供与に参加。全体で独政府が目標とした戦車大隊2個分(60両前後)を超える見通しだ。
ドイツなどで実施されたウクライナ兵に対する習熟訓練はおおむね終了。担当した独軍幹部はメディアに、一連の兵器支援で「(戦場に)違いが生じる。ウクライナ軍が主導権を取り戻す」と語った。米シンクタンクの軍事専門家も米欧の主力戦車について「ロシア軍が築いた陣地を突破し、追い詰めるだけの優れた火力と機動力がある」と解説している。
対するロシアは打つ手に乏しいのが実情とみられる。プーチン大統領は戦車供与に反発して、核保有国として取り得る「対抗手段」に言及。核の威嚇で米欧を揺さぶり、ウクライナにとって頼みの綱である支援の先細りを狙う。軍需産業へのてこ入れも伝えられ、長期戦に持ち込みたい思惑もありそうだ。
ウクライナのレズニコフ国防相は「1年前はこれほど強力な支援は想像できなかった」と自信を示しているが、万全とは言えない。第2陣として、米国製戦車「エイブラムス」が秋にも届き、さらに旧式のレオパルト戦車が100両超供与される見込み。それでも、ウクライナ軍が必要だと主張する300両には届かない。
気温の上昇でぬかるんだ地面が固まれば戦車部隊が本領を発揮できる環境が整う。ロシア側もウクライナの攻勢を迎え撃つ構えで、一段と激しい戦闘が予想される。 
●ロシア軍が遊牧民型の戦法で著しい戦果、ウクライナ軍壊滅は間近か 4/3
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2023年3月15日、バフムートなど東部ドンバスの諸都市の運命はウクライナの運命を左右すると訴えた。
3月22日には自らバフムートを視察し将兵を労うなど、戦意の高揚に努めている。
2月20日には米国のジョー・バイデン米大統領がキーウを秘密裏に電撃訪問した。
訪問の目的は、その後のゼレンスキー・習近平会談、中露首脳会談の動きから、停戦交渉の道筋を開くことにあったとみられる。
これらの動向から、ウクライナ戦争はこれまで報じられてきたようにウクライナ軍が優勢とは言えず、かなりの劣勢に追い込まれているのではないかと思われる。
戦場の実相は現在どのようになっているのであろうか。
要塞都市バフムートの防御態勢
以下の分析は、衛星画像分析とウクライナ軍、ロシア軍双方の国防省の日々の戦況発表、他の分析機関の分析結果(例えば、DPA War、Weeb Unionなど)、米国防省とパイプのあるダクラス・マグレガー米陸軍退役大佐、中立国の報道、独立系分析機関の報道などに基づいたものである。
互いの分析結果、特に戦況の進展度、両軍の損耗などの結果がほぼ一致しており、軍事合理性にも合致している。
その昨年開戦来の戦争の推移予想もおおむね的確になされている。総合的に判断して、信頼性の高い分析結果と言えよう。
ゼレンスキー大統領がウクライナの運命を決める戦闘が進展している町として挙げ、その直後に直接訪問し前線部隊を激励したのが、東部ドンバスの要衝バフムートである。
バフムートは、かつては人口7万人を擁し、東部ドンバスの交通の要衝であり、軍需物資の集積拠点でもあった。
ウクライナ軍は2014年以降、NATO(北大西洋条約機構)の支援も受けながら、バフムート市街地全域に堅固な要塞を構築してきた。
建物はそれ自体が堅固な陣地となり、旧ソ連時代から構築されていた地下シェルターには大量の弾薬、燃料、食糧などが備蓄され、長期戦が可能な態勢がとられていた。
陣地はコンクリートで強化された塹壕や地下道で結ばれ、要所には戦車・対戦車ミサイル・対空ミサイルなどの掩体が築かれ、防御陣地の周りには何重もの地雷原、対戦車壕、対戦車障害などが構築されていた。
ロシア軍は2022年5月から、このように要塞化されたバフムート市街地に対し攻撃を続けていたが、2023年1月頃までは、あまり戦線の前進は見られず、一見すると膠着状態にあるかのようにみえた。
しかし実態は、2022年10月頃から熾烈な火力消耗戦をロシア軍はウクライナ軍に強い、その結果、ウクライナ軍の兵員と装備に大量の損耗が出ていたのである。
火力消耗戦の総指揮をとっていたのが、航空宇宙軍総司令官から南部軍集団司令官を経て、2022年10月8日にロシア軍の総司令官に抜擢されたセルゲイ・スロヴィキン上級大将である。
彼は、ドニエプル川北岸のヘルソン州からの撤退をセルゲイ・ショイグ国防大臣に進言し、承認されたとされている。
遊牧民の戦術戦法を多用するロシア軍
ロシア軍はその戦術戦法の多くをユーラシア大陸を席巻したモンゴル軍、トルコ軍などの遊牧民族から大変な犠牲を出しながら学んできた。
遊牧民族は土地の確保に執着せず、柔軟で大規模な機動戦法を得意としている。
敵の陣地線の弱点から包囲し背後に出るのは、どのような軍も多用する戦術だが、ロシア軍はソ連軍と同様に、両翼からしかも内外二重の包囲攻撃を得意としている。
また、わざと負けたふりをして後退し、敵を準備した陣地地域に誘致導入し、背後を断って包囲殲滅するという戦法もよくとられる。
敵を包囲した場合には、わざと一方向だけは退路を残しておき、敵がその退路を利用して撤退する際に、退路沿いに準備した火力の集中射撃や伏撃を加えて殲滅するという戦法もとられる。
今回、スロヴィキン氏が追求した戦法は、弓矢の射程が優勢な点を利用して敵を包囲しながら突撃をせず、弓矢のみを射かけて包囲された敵を全滅させるという、モンゴル軍がとった火力消耗戦法である。
その際には、土地の確保にはこだわらず、敵の兵員と装備にできるだけ多くの損耗を出させることに主眼が置かれる。
2022年のヘルソンやハリコフでの戦いもそうであった。
スロヴィキン氏は航空宇宙軍司令官としての経験から、地域の確保にこだわらず、敵の火力が届かない長距離からのミサイル・ロケット弾火力の質と量の優位性を最大限に発揮すれば、損害を最小限に止めながらウクライナ軍の戦力を減殺できると判断していたのであろう。
人的損耗回避の政治的要請が火力戦法の背景
もともとウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ侵攻作戦を「特別軍事作戦」と称して、ロシア系住民の保護、ウクライナ軍のNATO軍化の阻止、ウクライナの中立化、極右武装勢力の脅威の排除など、限定した目的のための限定作戦として位置づけている。
そのために、投入兵力も当初は約19万人程度に過ぎず、キーウの直接攻略ではなく、包囲すればゼレンスキー政権はすぐに降伏するとみていたのではないかと思われる。
しかし開戦前から約90トンのNATOからの武器・弾薬を集積し防御を固めていたキーウの抵抗力は予想外に強力で、ゼレンスキー大統領も降伏要求に屈しなかったため、その思惑が外れた可能性がある。
その後、情報関係者が処罰されたとの情報があり、一撃で簡単にウクライナ政府は降伏するとの過度に楽観的な見通しを情報関係者が上申していたのかもしれない。
あるいは意図的に陽動作戦としてキーウ攻略を行い、その間に本来目的としていた南部と東部の占領を既成事実化しようとしていたのかもしれない。
その後の北部からの撤退と、その後の東部ドンバス、南部での戦いの推移からは、その可能性も否定できない。
いずれにしても、投入兵力とキーウからの迅速な撤退ぶりからみて、プーチン大統領としては、ウクライナ全土の征服やウクライナ軍の殲滅を当初から企図していたとはみられない。
もし当初からウクライナ全土の征服を企図していたのであれば、約200万人の予備役の全面動員を開戦時から行っていたはずである。
しかし動員は2022年9月になりようやくかけられ、それも戦闘経験のある約30万人のみの部分動員であった。
ここにも、プーチン大統領のできる限りロシア軍の兵員の損耗を少なくして、当初の戦争目的を達成しようとする意志がうかがわれる。
スロヴィキン総司令官が火力消耗戦法を採った背景には、このようなプーチン大統領の政治的意向があったと思われる。
特に、少子化が進んでいるロシアにおいては、戦死者が多発すれば、それが母親を中心とする市民の反政府感情に火をつけ、政権すら危うくなりかねないことを、チェチェン紛争などで体験しているプーチン大統領としては痛感しているはずである。
死傷者を最小限に止めながら、当初の戦争目的を達成することが、プーチン大統領の一貫した戦争指導方針とみられる。火力消耗戦法はそのような政治的要請にも適った戦法であったと言えよう。
またスロヴィキン総司令官は、ウクライナ軍に消耗を強いるとともに、ロシア軍を過広な正面に展開して背後に回られて包囲殲滅される危険を避け、自軍の兵力規模に適した防御正面に河川障害などの地形を利用して再編し、無理のない展開正面に縮小するという作戦もとっている。
ヘルソンもハリコフ州も、ロシア軍はウクライナ軍に敗退し壊乱状態で撤退したわけではない。
ロシア軍の撤退後には、遺棄死体、遺棄兵器、捕虜など、部隊の組織的戦闘の崩壊を示す兆候は遺されていない。ロシア軍が計画的に後退作戦を行い、態勢を建て直したとみるべきであろう。
火力消耗戦の実態とその威力
バフムート守備兵力は開戦時には、約4万人程度だったが、その後ロシア軍の攻勢が強まるにつれ、2022年秋には約6万人に増強されたとみられている。
その際に増援部隊を差し出したのは、南部正面に集結していた約3万人の予備隊主力であった。
ウクライナ軍としては、クリミア半島と東部ドンバス地区をつなぐ陸橋の要衝マリウポリを奪還し、クリミア南部正面と東部ドンバス地区のロシア軍を分断するとの戦略的意図をもって、ザポリージャから南部に向けて、大規模攻勢をかける予定であったとみられる。
しかし、バフムート防衛を最優先するとのゼレンスキー大統領以下の最高司令部の意図が働いたとみられるが、南部での攻勢よりもバフムート防衛を重視し、南部での攻勢戦力主力のうち約2万人がバフムート防衛に転用された。
その結果、バフムートの守備兵力は約6万人に増強されたが、それに対して発動されたのが、スロヴィキン総司令官の火力消耗戦法であった。
ロシア軍は、ウクライナ軍陣地に対し第一線部隊を過早に攻撃させて犠牲が出るのを避け、2022年10月以降、徹底的な火力消耗戦を挑んだのである。
開戦時には対空レーダ、ミサイル・航空基地と滑走路、地上の航空機とその掩体壕、弾薬集積所、燃料集積所などが、ロシア軍の奇襲的なミサイルの集中射撃により制圧された。
しかし、2022年10月以降のミサイル攻撃、無人機・有人機の航空攻撃では、ウクライナ全土の鉄道・道路の中枢・橋梁・トンネル、送電網・変電所・発電所・ダムなどの電力インフラ、軍需物資の集積所など、軍事的な兵站特に輸送網と補給機能のマヒ、民間のエネルギー・物流システムの破壊に重点が置かれた。
それにより、NATOから送られた装備、弾薬・ミサイル、燃料などの軍需物資の中で輸送途上や集積拠点で破壊されるものが続出した。
送られた装備・弾薬等の約3分の1しか第一線部隊には届かなかったとみられている。
それを可能にしたのは、ISRと呼ばれる、情報・監視警戒・偵察ネットワークとウクライナ軍火力の射程外からの長射程のミサイル・ロケット弾、火砲、攻撃型無人機などの火力の組合せである。
ISRを支えたのは、偵察衛星、偵察機、地上の偵察兵など従来の手段だけではなく、特に威力を発揮したのが、両軍とも何千機も運用した無人偵察機である。
これらの中には偵察と攻撃の両任務を果たす無人機もあり、リアルタイムで確認した目標に対し、即座に攻撃をかけることもできた。
ただし、特にNATOから供与されたウクライナ軍側の無人機については、ロシア軍の電子戦と濃密な対空ミサイル・火力網に阻まれ、期待したほどの威力を発揮できなかったとみられている。
もう一つの特色は、火力の射撃精度の向上である。
ダグラス・マグレガー米陸軍退役大佐も強調しているが、湾岸戦争で目を見張る威力を発揮した米軍の精密誘導兵器の威力は、今では世界各国の軍が同様のシステムを構築し、ほぼ同レベルの誘導精度を可能にしており、ロシア軍も例外ではない。
ロシア軍は、自国のグロノスと呼ばれる全地球航法衛星システムをミサイルやロケット弾の誘導に利用し、飛躍的に誘導精度を挙げているとみられる。
その結果、ウクライナ軍は前線に到着する前の移動途上や集結段階でロシア軍の無人機等に発見され、発見されればその直後に精度の高いロケット弾やミサイルの集中射撃を受け、大量の損耗を出している。
ウクライナ軍の損耗の約75%は、これらの遠距離からの火力攻撃により発生したと見積もられている。
ウクライナ軍の甚大な人員の損耗
特に、今回のウクライナ戦争では、攻勢を企図して前進した場合、敵との交戦圏に入る前に無人機等に発見され精度の高い集中火力を被り、攻撃側の部隊損耗が極めて高くなるという特性がある。
そのような特性を無視して、ロシア軍に占領された地域を奪還するために、無理な攻撃を繰り返したことにより、ウクライナ軍の損耗は急激に増加した。
2022年9月頃まではウクライナ軍の損耗は、1日平均戦死傷者、行方不明者を含め1000人程度とみられており、200日間で約20万人の損耗と見積もられていた。
しかし、その後ヘルソン、ハリコフ両州での攻勢の間に損害が急増し、2022年12月初めには、戦死者が約10万人に上るとのNATO事務局長の発言も報じられている。
なおロシア軍は、戦死傷者を含めて12月初旬までの累積の損害は約10万人との西側の見積りも報じられている。
兵員の損耗について、ウクライナ軍は現在、戦死者が約25万人、行方不明者が約7万人、戦傷者が約30万〜40万人と見積もられており、合計約62万〜72万人の損害が出ている。
これは、開戦時の総兵力104.5万人の約6割を超えており、ウクライナ軍の組織的な人的戦力はほぼ壊滅しているに等しい。
現在のウクライナ軍の兵員補充の実態について、ダグラス・マグレガー退役大佐は、以下のように述べている。
「ウクライナ軍は3度軍を編成した。一度目の正規軍主体の軍は2022年7月までに壊滅し、2度目の予備役主体の軍は2022年12月までに壊滅した」
「ウクライナ軍は2022年のクリスマスから3度目の軍を再編し今年の春季攻勢に備えているとされるが、その主体は40歳から50歳の後備役の老兵と徴兵年齢に達しない少年兵などで訓練期間も数週間しかなく、戦場に送られて数日で戦死している」 
さらに「ピザの配達に来た少年をそのまま拘束して軍に送り込んでいる」と、そのウクライナ軍の徴兵の窮状について述べている。
バフムートでも、守備兵力の約半数が死傷し、約4万人から2023年1月末には約2万人に、さらに現在は後述するように4000人以下に減少している。
ウクライナ軍の兵員不足を補ってきたのが、ピーク時には約9万〜10万人とみられた、NATO加盟国などからの傭兵、義勇兵などだが、その損耗も増加している。
開戦前から米英独などで訓練されていたウクライナ軍の兵員は、2022年の作戦で大半が死傷している。
また、その後徴集された新兵は、後備予備が主で訓練水準が低く、そのうえ訓練期間が不足しているため、最新兵器を操作するのは困難である。
そのため、NATO供与のHIMARS、ジャベリン、攻撃ヘリ、新型戦車などの最新兵器を操縦しているのは、主にこれらの外国人傭兵とみられ、それが彼らの損耗の増加をもたらしている。
NATO加盟国も、傭兵や義勇兵として兵員を出すには限界があり、これ以上の兵員の支援をするとすれば、軍事顧問団や特殊部隊に加え、正規軍を派遣する必要が出てくる。
しかしそうなれば、NATO条約第5条の規定により、一国の戦いはNATO加盟国全体の戦いとなり、ロシア軍とNATO軍の全面戦争を招きかねない。
さらに核戦争にエスカレートするおそれもあり、NATOとしてはこれ以上の兵員をウクライナに派遣することは困難な状況になっている。
圧倒的格差の兵站支援能力
ロシアは約10年前からウクライナ戦争を予期し、国を挙げて戦争準備に取り組んできた。
例えば2019年3月、当時のゲラシモフ参謀総長は、軍事科学アカデミー総会に出席し、『軍事戦略発展の方向性』と題する講演を行い、「部隊装備の即応態勢の重要性」を指摘している。
すなわち、「現代の兵器は複雑なため、軍事作戦が始まってから短期間で生産に移行することはまず不可能である。必要なものは平時のうちに所要数を生産し、部隊に配備しておかねばならない」と強調している。
このことが、この方針がウクライナ戦争でも貫かれている。
すなわち、ロシア軍の軍需産業はNATO見積りの2倍のミサイル・砲弾などの弾薬を備蓄し、その緊急時生産能力は見積りの3倍に達しているとダグラス・マグレガー退役大佐などはみている。
ロシア軍は弾薬量において、ウクライナ軍の約10倍の水準を維持している。
例えば、ロシア軍は1日約6万発の長射程のミサイル・ロケット弾・砲弾を射撃しているが、NATOが全面的に支援しているウクライナ軍の弾量は1日約6000〜7000発である。
砲弾の生産量についても、ロシア軍は1日3万数千発を生産しているが、NATOは米軍が2千数百発、NATO全体でも3千数百発と約10分の1にとどまっている。
米国防省は、ウクライナと米軍の弾薬備蓄増強のため14億5000万ドルを投じて弾薬の増産計画を立てている。
計画では、155ミリ榴弾用砲弾の生産能力を今年末までに現在の2倍の月産2万4000発にする計画である。ジャベリン対戦車ミサイルについては、倍増し月産330発に増産する予定になっている。
それ以上の本格的な増産は年内には間に合わず、ジャベリンやHIMARSのような複雑なシステムでは数年は必要になる。訓練にも同様の期間が必要で、年内の戦力化は困難とみられる。
これらの増産は、今年末を目標としており、かつ倍増程度に留まり、ロシア軍とは5倍程度の格差が残ることは否めない。
またこれらの弾薬が、航空優勢もない中、ポーランド国境から800キロ以上も陸路を無事に前線部隊にまで届けられる保証もない。
これまでの結果では、無事に届くのは全体の3分の1程度に留まっていると米軍筋もみている。
戦車についても、ロシア軍は年間約250両の戦車生産能力をもっているが、それ以外に油漬けにして保管している戦車約1万両の中から、「T-72」をエンジン、装甲、射撃統制装置などを改良して新型にし、年間約600両を生産可能とみられている。
それに対し、NATO側では米軍も年間百両以下、ドイツなどもレオパルト戦車は年間22両程度しか生産していない。増産し乗員を訓練するには、やはり数年かかるとみられている。
NATO側では、当面保有している戦車をウクライナに送ることで合意している。
ドイツの「レオパルト2」が18両ウクライナに届いたと報じられ、英国も「チャレンジャー2」を14両、ポーランドも74両のレオパルトを供与することをウクライナに約束した。
しかし、その数はロシア軍に比べ少数で、年内に全部で約150両程度にとどまるとみられている。
他方のロシア軍は国境から百数十キロで前線に届き、ロシア領内の安全圏内に大規模な生産工場、備蓄基地などが展開され、そこから武器・弾薬を安全に大量輸送できる。
ただし、今年に入りウラル地区に備蓄されていた大量の弾薬が底を尽き、極東方面からも追送が必要になったが、長距離輸送間にその約半数が錆びついているとの未確認の情報もあり、ロシア側の備蓄も欧露正面では枯渇しつつあるのかもしれない。
しかし、ロシアは極東などの備蓄の転用、増産能力の向上、他国からの輸入などの手段はとれるであろう。
多種多様な武器・弾薬からなり、規格が異なる物を同時使用せざるを得ないウクライナ軍の兵站面・訓練面の負担に比べると、兵器体系が一本化されているロシア軍の方がはるかに効率的に兵站面の支援を行うことができる。
ウクライナ軍は開戦時の航空戦力や航空基地に対するミサイル攻撃などにより、航空戦力の主力は破壊され、滑走路も整備施設・弾薬庫・燃料庫も大半が使用できない。
残存した戦闘機もポーランド国内に退避し、発進している状況である。
そのため、ウクライナ空域での航空優勢は確保できていない。ロシア軍の濃密な対空火力網に阻まれ、東部ドンバスでの作戦時に戦車部隊の上空を掩護するのは困難とみられる。
2023年3月8日付『ニューズウィーク』誌によれば、2023年2月の欧州訪問の際、ゼレンスキー大統領は戦闘機の供与を要求しており、ウクライナ軍空軍のパイロットが「通常の軍事対話の一環」として米国に来ているとも報じられている。
しかし、パイロットの訓練には1年半程度はかかるとみられており、戦闘機の供与に米国は依然として慎重である。
少数の戦車で航空掩護もなく圧倒的に優勢な戦車戦力と掩護態勢を持つロシア軍に攻勢をかけても、成功の可能性はなく、犠牲を出すだけで終わるであろう。
質の点でも、ロシアを侮ることはできない。
前記のゲラシモフ演説でも、「先端的な科学技術を軍事面に全面的に応用すること」の重要性を強調し、特に核抑止力については、「世界の最先端を走っているという事実に疑いをはさむ余地はない」との自信を示している。
その具体例として、新兵器「キンジャール」は高い有効性を示し、「ポセイドン」、「ブレヴェストニク」の試験は順調に進み、「海洋配備型極超音速ミサイル「ツィルコン」の開発計画も進んでいると述べている。
これらの兵器のうち「キンジャール」は、ウクライナ戦争で使用されている。
「キンジャール」は当初1日6発程度の使用にとどまっていたものが、その有効性が実証され3倍に生産能力が引き上げられたとみられている。
「キンジャール」は高価で複雑な兵器のため、多数を生産・使用はできないが、現用のNATOの防空システムでは撃墜手段はなく、正確に目標に命中し1発でも多大の破壊効果を挙げている。
そのため、ロシア軍は他の攻撃手段では破壊できない、最も重要な目標に「キンジャール」を使用している模様である。
また上記演説で、ゲラシモフ氏は「地上配備型の短・中距離極超音速ミサイル複合体の研究・設計作業も実施が決定された」と述べており、今後はイスカンデルなどに搭載した地上配備型極超音速兵器も登場し、その攻撃威力を増すことになるかもしれない。
ロシア軍冬季攻勢と崩壊寸前ウクライナ軍
2023年1月、ロシア軍の最高司令部改編に伴い、スロヴィキン総司令官からワレリー・ゲラシモフ総司令官に交替した。
路面凍結を待ち、これまであまり動かなかった両軍の接触線が動き始めた。ロシア軍が犠牲覚悟でバフムートその他の要塞都市に対し、全面攻勢を開始した。
1月末から、路面の凍結を待ち、ロシア軍のバフムートに対する占領地域拡大を目標とする本格的な地上部隊の攻勢が開始され、民間軍事会社のワグネルを主体とする歩兵部隊が熾烈な市街戦を戦い、徐々にウクライナ軍の防御陣地を蚕食し始めた。
特に第一線部隊として活躍しているのは、民間軍事会社のワグネルの部隊である。
彼らは近接格闘戦を余儀なくされ犠牲を伴う市街戦や森林内での戦闘に長けており、市街地の東部から徐々に陣地の制圧を進めた。
それと同時にロシア軍正規軍と連携し、バフムート市街地の南北両翼から同市を包囲し、市街地に通じる道路網を遮断している。3月20日過ぎには1本を除き主要な道路はすべてロシア軍の制圧下に入った。
ウクライナ軍は包囲を避けるため撤退を始めているが、装甲車、戦車などは泥濘にはまり動きが取れなくなり、そこを無人機に発見され、精密火力で集中攻撃を受け大半が破壊されている。
そのため、徒歩で撤退を余儀なくされている。
これも、包囲環を縮めながら、一方向にわざと退路を残し、待ち伏せや火力で撤退中の部隊を殲滅するというロシア軍の慣用戦法である。
前述したように、ゼレンスキー大統領は3月15日には東部ドンバスの諸都市の運命は国の運命を左右すると訴え、20日にはバフムートの前線視察も行っている。
しかし3月25日頃には市街地の約7割がロシア軍に占領され、バフムートの守備部隊の戦力は約4千人に減少し、包囲環は縮まっている。
ウクライナ軍の第一線部隊では、砲弾も装備も不足し、部隊の交代もなく将兵の士気も低下しており、窮状を訴える第一線将兵の生の声がSNSなどにも掲載されている。
ゼレンスキー大統領自身も、3月25日、追加の戦車や火砲、HIMARSがなければ、ウクライナ部隊を前線に出すことはできないと、読売新聞のインタビューで述べている。
また、ウクライナ東部の戦況は、「良くない」としている。
バフムートの南方、ドネツク市のすぐ北にある要衝のアディエフカも、バフムートの北方にある要衝のシベリスクも同様に包囲されている。
ウクライナ軍はこれらの要衝都市の郊外に予備隊を集中し、反撃を試みている。
しかし数個旅団規模の予備隊は、集結段階からロシア軍の1.5トン長距離滑空爆弾などの集中射撃により制圧され、反撃後もロシア軍の火力打撃により損害を出し押し戻されている。
その間にも、ロシア軍やワグネルの部隊は、進撃を続け、各要塞都市の間の弱点からさらに深く二重に包囲しつつ、最後の陣地帯である、コンスタンチノフカ〜クラマトルシク〜スラヴィヤンシク方向に追撃を続けている。この最後の陣地帯まで十分な戦力を離脱させ、再編してロシア軍の攻勢を食い止めることは、おそらく困難とみられる。
兵站面でも今夏にはウクライナ軍の弾薬は枯渇するとみられている。
また、装備も弾薬も増産・追送が間に合わず、その前にウクライナ軍が戦力を失い、ロシア軍がウクライナ西部まで制圧するおそれがある。
現在、北部正面のロシア領内、ベラルーシ国内に各15万〜20万人、南部正面にも18〜22万人の兵力が集結し攻撃準備態勢をとっているとみられている。
泥濘期が過ぎれば、ロシア軍の本格攻勢が北部、東部、南部の三正面から開始され、ハリコフ、オデッサ、キーウ、リヴィウなどの要域が占領されるおそれもある。
特にポーランド国境が封鎖された場合には、NATOの支援が絶たれることになり、ウクライナの戦争継続は数週間以内に不可能になるであろう。
このような戦況推移予測を踏まえて、3月20日のバイデン大統領のキーウ訪問がなされ、その後のゼレンスキー・習近平会談、中露首脳会談など、停戦をにらんだ一連の外交交渉が展開されたとみられる。
ウクライナ戦争がウクライナの敗北に終わる可能性が高まっていることを踏まえ、日本の安全保障政策全般を見直さねばならない。
●ゼレンスキー大統領「全領土を取り返す」ブチャなど奪還1年  4/3
ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナでは、東部の激戦地バフムトやその周辺で一進一退の攻防が続いているとみられます。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアからブチャなどキーウ州の全域を奪還して2日で1年になると強調したうえで、「すべての領土を取り返す」と決意を新たにしました。
ウクライナ東部の激戦地バフムトの戦況について、ウクライナのマリャル国防次官は2日、SNSで「依然として厳しい」としたうえで、ロシア側が民間軍事会社ワグネルの戦闘員だけでなく、精鋭とされる空てい部隊も投入しようとしているとしました。
そのうえで、ウクライナは困難な状況だが適切に軍事的決定や段階を踏んでいるとしています。
こうした中、ゼレンスキー大統領は2日に公開した動画の中で、2日がロシアからブチャなどキーウ州の全域を奪還して1年となる日だとしたうえで「最後の占領者が去るか殺される日は来る。ウクライナはすべての領土を取り返す」と述べ、ロシアに支配されている東部や南部の領土を奪還する姿勢を改めて示しました。
そして「ロシアは敗北しなければならない。今後1週間が、われわれの勝利に向けて特に重要だ」として、近く攻勢を強める計画を準備していると強調しました。  
●ロシアの侵略支持する評論家、胸像に仕込まれた爆発物で死亡… 4/3
タス通信などによると、ロシア西部サンクトペテルブルク中心部のカフェで2日夕、爆発があり、ロシアのウクライナ侵略を支持する軍事評論家が死亡、30人が負傷した。露連邦捜査委員会は殺人事件として捜査し、爆発物を仕込んだ胸像を評論家に手渡した女が容疑者だと特定した。
死亡したのは、SNSで侵略支持の投稿を続けていたマクシム・フォミン氏。「ウラドレン・タタルスキー」のペンネームで、通信アプリ「テレグラム」に約56万人の登録者を抱えていた。
カフェでは爆発当時、侵略支持派の会合が開かれていた。女がフォミン氏をモデルにした胸像を手渡した5分ほど後に爆発したとみられ、すでに拘束されたとの情報もある。ロシアの侵略開始後、女は地元で反戦集会に参加し、当時も拘束されたと伝えられている。
露民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏は3日、爆発があったカフェを所有していることを明らかにし、哀悼の意を表明した。
一方、ウクライナ大統領府の顧問は2日、今回の爆発について「クモは共食いをするものだ」とSNSに投稿し、関与を否定した。
ロシアでは昨年8月、プーチン政権の外交方針に一定の影響を与えたとされる民族主義的な思想家アレクサンドル・ドゥギン氏の娘がモスクワ郊外で車ごと爆殺され、ウクライナの関与が疑われていた。
●プーチン大統領が国内に缶詰状態…同盟国まで「入国すれば逮捕」と警告 4/3
ICCの逮捕状で国内に缶詰状態
ロシアの同盟国のアルメニアが、プーチン大統領に「逮捕せざるを得なくなるから来ないよう」警告していたことが分かり、同大統領はロシア国外には出られない缶詰状態になっているようだ。
ロシアの日刊紙「モスクワ・タイムズ」電子版は29日「アルメニア与党、ハーグからの令状でプーチン逮捕を警告」という見出しの記事をアルメニア国民議会のカギク・メルコニアン副議長の大きな写真とともに掲載した。
それによると、同副議長は地元メディアとのインタビューで「もしプーチンがアルメニアへ来れば彼は逮捕されなければならない」と語ったという。
アルメニアは昨年12月に国際刑事裁判所(ICC)への加入のための批准法案をまとめICC入りを目指しており、加入すればICCから逮捕状が出ているプーチン大統領がアルメニアが拘束する義務を負うことになる。
「もし我々がICCに加盟すれば、その義務を果たさなければならないことになる。ロシアの問題はウクライナと解決すればよい」
メルコニアン副議長はこうとも語っている。
同盟国もロシアの侵攻に疑問?
アルメニアは旧ソ連の構成国の一つ。現在もロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)の加盟国で国内にロシア軍の基地もある。ロシアの軍事同盟国であるわけだが、隣国アゼルバイジャンとの抗争をめぐって戦争犯罪を追及する目的でICCへの加盟に踏み切ったとされる。
一方プーチン大統領は、ウクライナ侵攻でウクライナの子供たちを不法に拉致した戦争犯罪で国際刑事裁判所(ICC)から3月17日逮捕状が出されたが、米国や中国はICCに加盟しておらず主に西欧の123の加盟国を避けて通れば逮捕は免れるので実質的な拘束力はないだろうという見方が有力だった。
しかし、アルメニアはロシアが再三警告したにも関わらずICC加盟を強行したわけで、プーチン大統領自身の威信を損ねることになっただけでなく、大統領の行動範囲を著しく制限することにもなった。
さらにアルメニアの決断はロシアの同盟国の間で、今回のウクライナ侵攻をめぐって疑問が生じていることを物語っていると注目されている。
気になる南アフリカの対応
今のところ、アイルランド、クロアチア、オーストリア、ドイツなどがプーチン大統領が入国すれば直ちにICCの逮捕状を執行することを公言しているが、今注目されるのが南アフリカだ。
南アフリカでは8月後半にBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興経済5大国)首脳会談がダーウィンで開催が予定されている。プーチン大統領は2013年の第6回会議以来参加しており、今回は特にウクライナ侵攻問題が主要議題になると考えられるので出席を希望しているはずだ。
しかし南アフリカはICCの加盟国であり、ICCの逮捕状対象者が入国すれば身柄の拘束に協力する義務が生じる。このため、南アフリカ政府は専門家に対応策を検討させているが今のところプーチン大統領に出席を断念させる以外に手立てはないようだ。
プーチン大統領がロシアに心情的に近い指導者とのこの会議さえも出席できないとなると、その打撃は計り知れない。
形式だけと思われていたICCの逮捕状は、プーチン大統領を国内に缶詰状態にしてその権威を失墜させるという意味では大きな役割を果たしているようだ。
●プーチン氏、特別基金を創設 ウクライナで戦う兵士支援 4/3
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は3日、ウクライナで戦う兵士とその家族を支援するための特別基金を創設する大統領令に署名した。
「祖国の防衛者」を支援するこの大統領令は、政府の公式サイトに掲載された。新基金は、対ウクライナ戦に臨む兵士をはじめ、そのパートナーや子どもたちに対する「十分な生活保障」を目的としているという。
プーチン氏は、ウクライナ侵攻開始から約1年がたった2月21日に、連邦議会でこの支援策を発表していた。
その際「われわれの義務は、愛する人を失った家族を支援し、子どもたちを養育して教育と仕事を与えること」であり、この基金により「特別軍事作戦で戦死した兵士の遺族や退役軍人に的を絞り、各人に適した支援を提供する」と述べていた。
●北方四島、日本領と認めず 習主席、ロシアに歩み寄り  4/3
中国の習近平国家主席がロシアのプーチン大統領と先月20〜21日に行った会談で、北方四島の領有権問題について「(どちらか一方の)立場を取らない」と表明していたことが分かった。中国関係筋が3日までに明らかにした。中国は1964年に最高指導者だった毛沢東が北方四島は日本領だと明言して以降、その認識を崩していなかったが、ロシア側に歩み寄り、中立の立場に変更した。
昨年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻で、北方領土問題解決を含む日ロ間の平和条約締結交渉は中断。中国の立場変更を受けてロシアが自信を深め、対日姿勢をさらに硬化させることは確実で、領土返還交渉はいっそう困難になった。
同筋によると、プーチン氏が中ロ首脳会談で、昨年3月にロシアが北方四島に設置した免税特区の活性化が重要だと指摘。先月16日の日韓首脳会談で日韓関係が改善したため、韓国企業による投資は望めないとの認識を示し、中国企業の投資を要請した。
これに対し、習氏は領有権問題については「立場を取らない」と表明した。
●放送禁止用語「戦争」も使用──ロシア国営メディアが政府批判 4/3
ウクライナでの戦闘中に負傷したにもかかわらず、プーチン大統領が約束した補償を受け取れていない。
ロシアの国営通信RIAノーボスチが3月28日、「こんなはずではなかった」と題した記事で兵士らの不満の声を特集し、同国メディアとしては異例の政府批判を繰り広げた。
ロシアでは昨年3月、軍に関する「フェイクニュース」を拡散した者に最高15年の実刑を科す法律が成立し、反プーチンの言説への弾圧が強化された。
「戦争」という表現も禁じられ、メディアは「特別軍事作戦」と称してきたが、今回の記事では「戦争」が用いられた。
プーチンは侵攻開始の1週間後、負傷者に300万ルーブル(約500万円)の補償を約束し、死傷者の家族を支えるのは国家の「義務」だと述べた。
だが死傷者が増加するなか、昨年5月には補償の条件を厳格化。取材に応じた兵士らは、当局がさまざまな理由を付けて補償を拒んでいると訴えた。
●「戦争犯罪の処罰を」=岸田首相、ブチャ解放1年で 4/3
岸田文雄首相は、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対し「侵略は深刻な国際法違反で責任が問われるべきだ。戦争犯罪、残虐行為の不処罰はあってはならない」と非難した。外務省が3日に発表したビデオメッセージで語った。
メッセージは、多数の民間人が犠牲となった首都キーウ(キエフ)近郊ブチャの解放から1年となった3月31日にウクライナ政府が開いた国際会議に送った。
首相は先の同国訪問の際にブチャも訪れた。メッセージで「侵略の惨劇を直接目の当たりにし、ロシアの暴挙の理不尽さに強い憤りを覚えた」と強調。犠牲者への弔意を示し、「美しい大地に平和を取り戻すべく、日本はウクライナと共に歩んでいく」と結んだ。
●ワグネル創設者「市庁舎にロシア国旗掲揚」 ウクライナ東部要衝 4/3
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者エブゲニー・プリゴジン氏は2日、通信アプリへの投稿で、ウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトの市庁舎にロシア国旗を掲げたと主張した。
「法的な観点で言えば、バフムトを奪取した」と語った。ロイター通信が報じた。
ただ、戦闘は依然として継続しているもようだ。ウクライナ軍参謀本部は3日朝の戦況分析で「敵はバフムトを完全支配下に置くべく、攻撃を止めていない」と述べる一方、同国軍が20回以上、ロシアによる攻撃を撃退したと明らかにした。ゼレンスキー大統領も2日、バフムトを中心に激戦が続いているとの認識を示し、兵士への謝意を述べた。
米シンクタンク「戦争研究所」は1日、ロシアによるドネツク州やルガンスク州での攻撃を巡って、戦力不足を指摘。ロシアの軍事ブロガーらからも、今後数週間でバフムトなどを攻略しなければ、大規模攻撃が続けられないとの見方が出ており、ロシア側でウクライナによる反撃に警戒感が広がっているという。
一方、ポーランドのメディアは3日、ゼレンスキー氏が5日に同国を訪問すると報じた。ドゥダ大統領と会談するほか、ウクライナ避難民とも面会するという。 

 

●死亡の戦場記者に勲章 プーチン氏、ロシア「ウクライナによるテロ」 4/4
ロシアのプーチン大統領は3日、サンクトペテルブルクのカフェの爆発で死亡した、ウクライナ侵攻を支持していた戦場記者のウラドレン・タタルスキー(本名マクシム・フォミン)氏に、勇気勲章を授与する大統領令に署名した。インタファクス通信が伝えた。
タタルスキー氏はウクライナ東部ドネツク州出身。人気の「軍事ブロガー」で、SNSには50万人以上が登録する。この日はカフェで開かれた愛国主義的なイベントに参加していた。
ウクライナ侵攻では戦闘員や戦場記者として活動した。昨年9月にプーチン氏がウクライナ4州を一方的に併合した際の式典にも出席していた。
ロシア当局は「ウクライナの特殊機関がロシアの反政権派を使って計画したテロ事件だ」と発表している。
●ブラジル特使がプーチン氏と会談、ウクライナ和平交渉巡り協議 4/4
ブラジルのルラ大統領がロシアに特使を派遣し、プーチン大統領とウクライナの戦争終結に向けた和平交渉の可能性を巡り協議したと、CNNブラジルが3日報じた。
ルラ大統領の外交政策顧問トップを務めるアモリン元外相はCNNブラジルとのインタビューで、3月30日にクレムリン(ロシア大統領府)でプーチン大統領と1時間にわたり協議したと明らかにし、「和平交渉の扉が開いていると言えば言い過ぎだが、完全に閉じているというのは真実ではない」と語った。
「魔法のような解決策は存在しないが、政治的および人的・経済的コストを含む戦争に絡むコストが、平和に向け必要な譲歩のコストよりも大きいということを認識する時が来るはずだ」とし、「その時期にはまだ至っていないが、予想よりも早期に訪れる可能性がある」という考えを示した。
プーチン大統領との会談のほか、17日にブラジル訪問を予定しているラブロフ外相と昼食を共にし、パトルシェフ安全保障会議書記やウシャコフ大統領補佐官(対外政策担当)らとも顔合わせたしたという。
●習近平の訪露によるウクライナ侵攻仲介と多極化構築 4/4
「一部の日本側指導者は、いわゆる《秩序》を大いに語っている。ならばわれわれはそれをビリビリに引き裂いてやる! 今日の世界秩序は世界反ファシスト戦争の勝利の上に築かれており、それに挑戦する歴史修正主義を中国は絶対に受け入れない!」
「米国側のいう米中関係のセーフガードや衝突回避とは、中国側を縛って転倒させ手足も出させず、罵られるままに口ごたえもさせないようにすることだ。しかしそうはさせるものか! 米国が偉大であるならば、別の国が発展するのを受け容れる雅量を持て!」
王毅氏に代わって新たな中国の外交部長に就任した秦剛氏は、去る3月8日に催された記者会見の場で、およそ職業外交官の洗練とはかけ離れた表現で、「開かれたインド太平洋戦略」を通じた日本の役割拡大と対中批判、ならびに国際的な連帯を説く米国の戦略を切り捨てた (中国外交部公式HP所載全文の語感をそのまま直訳した)。
このことは、昨今の日米をはじめとした西側諸国による規制強化の結果、今般の全国人民代表大会(以下、全人代)での政府活動報告が示した「さらなる外資・外国技術の導入によって中国の自立・自強を進め、高度科学技術における争奪戦に勝利し、サプライチェーン自立を強靭化し、製造強国を実現する」という方針に暗雲が垂れ込め、中国経済そのものの再起にも問題が山積しているという吐露に他ならない。
その「中国の秩序は認めよ。外国が示す秩序は受け入れられないし、かつての振る舞いを忘れて正義ぶった者が示す秩序はなおさら受け入れられない。ただ単純に貿易の自由は認めよ。強き者は競争相手に少しは手加減せよ」という狼狽は、あたかも20世紀の世界史でいつか見た光景である。
しかし習近平思想は、内外におけるさまざまな強権への批判を「国情」の名において決して受け入れないばかりか、ごく当たり前な人間の尊厳をも「反人権」と切り捨てるものであり、現在進行形で世界の姿を確実に不安定なものにしている。しかも中国は、「自立・自強」と「多極化」の名において囲い込んだ「圏域」「共同体」によって、既存のグローバリズムを圧倒しようとしている。
その可能性に米国をはじめ西側が次第に気付き、しかもロシアのウクライナ侵攻に対して中国が明確な立場を示さないことが、西側の危機感を強めていることの意味を、中国は真剣に考えるべきであろう。
とは言え筆者の見るところ、「中国中心の多極化グローバリズム」を掲げる習近平思想の立場は、ロシアのウクライナ侵略1周年を機に、ロシアと西側の間で逡巡するのを止めたのかも知れない。習近平政権は西側への憎悪、そして「多極化した新型国際関係」における同志国ロシアの戦略的立場への配慮のため、何一つ侵略されたウクライナの側には立っていない。しかも「侵略戦争は許されない」という、そもそも中国自身が(特に日本に対して)掲げている規範を自ら損ねつつある。
反西側言説・多極化世界構想としてのロシア支持
2月24日に習近平政権が発表した「ウクライナ危機の政治解決に関する中国の立場」では、「各国の主権・独立と領土の一体性は切実に保障されるべきである」という。しかし、各国の独立のありようや領土が具体的にどのような状況・範囲を指すのかについて、習近平政権は一切説明しない。さらに中国は「一国の安全は、他国の安全を代価とすることはできない」「地域の安全は軍事集団を強化し、拡張することによっては保障されない」という。
要するに習近平思想は、ウクライナ南東部を強奪して得られた「新領土」を含む「ロシアの一体性」を尊重するかたちでの「平和的」な解決が望ましいとみている。そして習近平思想は、ウクライナの安全保障を求めるウクライナや北大西洋条約機構(NATO)の立場は、ロシアの利益を毀損するため認められない、と暗に言いたいのである。
しかし、NATOのストルテンベルグ事務局長が「中国はあまり信用されていない」とコメントした通り、ある意味当然のように「立場」の評判が芳しくないためであろうか、3月7日に記者会見を行った秦剛外相は、ウクライナ危機をめぐって次のように述べ、事態の責任を米国とNATOに転嫁した。
「ウクライナ問題の本質は、欧州における安保ガバナンスの矛盾が大爆発したものである。見えざる手(=米国とNATO)が衝突の引き伸ばしと悪化を仕掛け、ウクライナ危機を通じて地政学的な利益を得る陰謀を試みている。ウクライナ危機における各方面の合理的な安全への関心は全て尊重されるべきだ。中国は独立自主で判断し、和平と対話を重視している。危機の製造者・当事者ではないし、武器供与もしない。何を根拠に中国に責任をなすりつけ、制裁や威嚇を加えるのか?」
しかしそもそも、徹頭徹尾ロシアの側に立ち続けていることこそが習近平政権の責任である。結局は習近平思想における反西側言説・多極化世界構想こそが最優先であり、プーチン・ロシアは得難い協力者だということなのであろう。
習近平氏がモスクワを訪問し、伝えられるところによると10時間以上にわたって緊密な会話を交わし、パートナーシップを大々的に誇示したことは、そのような態度表明に他ならない。昨年9月の上海協力機構・サマルカンド首脳会談の際に、プーチンを前にして習近平氏が示した今ひとつれない態度とは全く対照的である。
この時はまだ、中共第20回党大会における習近平3選の前であり、西側とロシアの双方を睨んで中国の立ち位置を測りかねていたか、それとも自らの3選を前に外交上明確すぎる態度を示すのを先送りしたかのいずれかであろうが、少なくとも方針が明確にならなければ、かくも大々的で記念すべきモスクワ訪問にはならないはずである。
ウクライナを犠牲にする中国
実際、3月21日に発表された「中露新時代の全面戦略的協力パートナーシップの深化に関する共同声明」は、目下のところ習近平政権の発展観・文明観・グローバル観の集大成の一つとなっている。要約すると、以下のように言う。
多極化された国際秩序が加速度的に形成され、新興国と途上国の地位が増強され、グローバルな影響力を増している。その中から、自国の正当な権益を断固として守ろうとする地域大国が増え、米欧中心の覇権主義・一方的なやり方・保護主義の横行に反対するのは当然である。
「法の支配に基づいた秩序」なるものによって、一般的な国際法の原則にとって代わることは受け入れられない。
「民主主義が権威主義に対抗する」という西側の言説は虚偽である。(筆者注:ゼレンスキー政権もまたこのような言説によりウクライナ国民を鼓舞している以上、習近平思想はウクライナとの対立を暗に覚悟したことを意味する)
各国の歴史・文化・国情は異なり、いずれも自主的に人権と発展の道を選択する権利がある。他者よりも抜きん出た「民主」は存在しない。だからこそ世界の多極化を実現し、国際関係を民主化すべきである。中露両国はその実現のためのパートナーである。
総じて習近平思想はプーチンとともに、これまで人類社会がさまざまな摩擦や葛藤を繰り返しながらも次第に確認しあってきた普遍的価値を否定し、力を持つ者が自らの論理を内外で強め、物質的発展と勢力圏拡大を目指すという事実こそが普遍的であると言わんとしている。そのような国々が互いに一目置きパワーシェアリングすれば「多極化された国際社会の民主化」だという。
したがって習近平氏が、自らの強権や誤った政策のために苦しむ人々の声に耳を傾けることはないし、侵略されたウクライナの痛みを共にするとも思えない。
既に習近平氏は国内において、「これこそが中華民族共同体意識であり、中国の人権と発展観念である。外部勢力の干渉を拒否して中国の正しい声を受け入れれば誰もが幸せになれる」と称して人々を動員・参加させてきた。そして反発する人々に対しては「外部勢力の影響を受けた分裂主義者・極端主義者への打撃」と称して、一切の容赦なき鉄槌を下してきた。
そしてプーチン・ロシアも「東スラブ民族の共同体意識」を説き、ウクライナが「米国やNATOの悪影響から脱し、ロシアの声を受け入れれば幸せになれる」と称して侵略を続けている。
このように、習近平・プーチン思想は、彼らが影響力を持つと称する範囲において、過酷なガバナンスを通じて思想を統一するという点でも、多極化した世界において西側の影響を排除した「圏」を確立するという点でも、極めて似通っている。
習近平思想の立場は、仮にロシアに対して直接の軍事支援はしないとしても、プーチン思想を擁護し放置し続けることによって、ウクライナの永続的な犠牲と引き換えに成り立つ「多極化世界」を享受しようとしている。少なくとも、ロシアの侵略が引き続くことになれば、西側とロシア双方が莫大な戦費を使うことになり、相対的にみて中国の軍事的プレゼンスに寄与する。また、ロシアは確かに資源を擁する大国であり、完全に衰退する可能性は恐らくない中、それでも今後は中国に依存しながら生きる「弱小な極」であり続けるならば、中国主導の多極化世界構築と「国際関係の民主化」にとって有利である。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、岸田文雄首相のキーウ電撃訪問で日本の強い支持を得たのを受けて、習近平をウクライナに招待した。しかし恐らく、習近平氏はウクライナ国民一般に響く言葉を持たないはずである。
日本がとるべき選択
この先にあるのは、ユーラシア大陸にくすぶる剥き出しの強権がグローバルな規模で広がり続け、彼らなりの「国情」を振りかざしつつ、規範に基づく国際秩序を揺るがす混沌の世界である。それは、文明や文化を異にする他者どうしが時間をかけて共通の規範を見出し共有しようとしてきたこれまでの人類社会の知的営為の否定であり、グローバリズムの深刻な危機・敗北を意味する。
その中で習近平思想は具体的に、多極化世界における自らの足元たる東アジア、そしてアジア・西太平洋地域を自らの「圏」と見なし、その中心にいるのはかつての「反ファシスト戦争」の勝者にして、今や「西側にも勝った」中国であるという姿勢をいっそう強めよう。そして、ウクライナに対するロシアの発想と同じく、「米国や西側ではなく中国との協力・中国の恩恵があってこそ、真正の日本の繁栄がある」と称して、日本の政策決定の余地を狭めようとするであろう。
それが好ましくないと思うのであれば、日本は一層、開かれたアジア太平洋秩序、法の支配に基づく国際秩序の擁護に向けて、志を同じくする国々やNATOなどの組織との一層緊密な協力を打ち立てつつ、日本自身の経済と社会の質と魅力を盛り返すことが喫緊の課題と言える(とりわけ中国は「グリーン経済」を掲げ、莫大な投資を続けている)。そして中国に対しては、「現状の内政と外交では中国の将来の可能性を狭めるだけであり、他国を圧倒する世界観ではなく、誰もが受け入れられる共通の規範のもとで相互尊重の関係を築く」ことを求め続けるべきである。
このような意味において、日本が秦剛新外相から「日本のいう秩序などビリビリに引き裂いてやる!」と罵られたのは、実は日本が普遍的価値観に照らして適切な方向を歩んでいるということであり、この上もない名誉なのである。
その秦剛外相は、去る4月2日に開催された林芳正外相との会談の場で、「平和共存、友好協力が中日両国にとって唯一の正しい選択だ」と強調しつつも、同時に経済的な規制をめぐって「矛盾や分岐をめぐって一部の国々と結託して(拉幇結派)、大声を叫んで圧力をかけるだけでは問題は解決せず、相互の溝を深めるだけだ」と牽制した。中国は、自国の市場の巨大さという魅力と、それが中国自身の「自立・自強」のために日本を排除したものになる可能性を目の前にちらつかせ、改めて日本に対して「米国・西側を選択して低迷するのか、それとも多極化世界における弱小な極として自立しつつ、中国との協力によって生きる道を選ぶのか」と暗に迫ったと言える。
しかし、そのような交渉を前にして日本人ビジネスパーソンを拘束することと、プーチン・ロシアに従わないウクライナを侵略し「ナチからの解放」を掲げることと、発想において一体何が異なるのだろうか。中露両国を日本単独で牽制できないのであれば、やはり開かれた規範を重んじる国々との協力により、中国自身の変化を待つ以外にない。 
●プーチンはヒラリー・クリントンが怖くて歴史を変えるような真似をした 4/4
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2016年の米大統領選挙に干渉したのは、民主党の大統領候補だったヒラリー・クリントン元国務長官をプーチンが「最も」おそれていたからだ、とナンシー・ペロシ元下院議員が発言した。
ペロシは4月3日、コロンビア大学国際公共政策大学院(SIPA)で、クリントンとともに国際政治と国家安全保障について講演した。バラク・オバマ政権で国務長官を務めたクリントンは、1月にSIPAの教授に就任している。
クリントンから、「わが国の民主主義が直面する最大の脅威と課題」について見解を問われたペロシはまず、クリントンによるこれまでの政治的奉仕に対して謝意を述べた。
「彼女の明晰さと断固たる姿勢が、プーチンをアメリカの大統領選に介入する形で彼女に敵対するよう駆り立てた」とペロシは述べた。「ウラジーミル・プーチンがわが国の民主主義に干渉したのは、民主主義のないロシアにとって最大の脅威となる人物がヒラリー・クリントンだったからだ」
クリントンへの怨念
2016年の大統領選挙後、米国の諜報機関は、プーチンが米国の大統領選に干渉し、クリントンをドナルド・トランプより不利になるよう工作していたことを明らかにした。ロシアによるサイバー攻撃には、クリントンなどの民主党幹部に悪い評判を立てるために民主党全国委員会のサーバーをハッキングして、電子メールや文書を入手した件も含まれていた。
何人かの専門家が述べてきた説によれば、こうした干渉の原動力は、クリントンに対する積年の怨恨だった可能性があるという。クリントンは国務長官時代に、ロシアで2011年12月におこなわれた下院選挙を公然と批判し、選挙プロセスは「自由でも公正でもなかった」と述べている。2016年に米ニュースサイト「ポリティコ」が伝えたところによれば、プーチンは選挙後にモスクワで起きた抗議活動を、クリントンによる攻撃のせいだと考えていた。デモ参加者たちは、「米国務省の支援」を受けて、プーチン政権の土台を揺るがそうとしていると発言していたという。
2016年の大統領選でクリントンを破ったトランプは、プーチンが選挙に干渉したとする主張に繰り返し疑念を投げかけている。2018年には、ロイターに対して次のように語った。「わが国の諜報員には大きな信頼をおいているが、プーチン大統領は今日、きわめて強く、パワフルに否定したと言っておこう」
「ロシアの仕業ではない、と彼(プーチン)ははっきり言った」とトランプは続けた。「私に言わせれば----ロシアの仕業だという理由はいっさい見あたらない」
だがトランプ政権下で国家情報長官を務めたダン・コーツは当時、2016年大統領選でロシアがなんらかの役割を演じたとする主張を支持していた。トランプの大統領就任に先立ちってコーツは、ロシアの影響をめぐる調査を支援すると約束し、「大きな懸念をもって見ている」と述べていた。
●プーチンが核のボタンを押す可能性がゼロではない「恐怖」が、欧米に影響 4/4
ボリス・グリズロフ駐ベラルーシ露大使は4月2日「戦術核兵器はわれわれの連合国家の西側国境に移され、安全を確保する可能性を高めるだろう。米国や欧州で騒がれても、これは実行される」とベラルーシ国営放送で表明した。同国はリトアニア、ラトビア、ポーランドと国境を接するが、同大使は戦術核がどこに配備されるか明言しなかった。
戦術核は射程が短く、限定的な攻撃を行うため設計されている。ロシア軍が昨年2月にウクライナに侵攻して以来、北大西洋条約機構(NATO)はバルト三国とポーランドに駐留する部隊を10倍近くに増やした。ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は3月31日、必要ならロシアが大陸間核ミサイルを自国に配備することも認めると述べている。
ロシアの国防問題に詳しい米シンクタンク、ランド研究所のダラ・マシコット上級政策リサーチャーはベラルーシへの戦術核配備について「慎重に事の軽重を見極める必要がある。いずれベラルーシに戦術核が配備されるが、旧ソ連製攻撃機スホイ25のためのものだ。これはロシア・ベラルーシ連合国家がより緊密化したことを表している」と筆者に語る。
ベラルーシはロシアのウクライナ侵攻に協力し、両国は昨年3月、連合国家の統合強化を表明した。マシコット氏は「しかし戦術核配備でウクライナ戦争の軍事的な現実が大きく変わるとは思わない。これは彼らが送ってきたシグナルだ」とベラルーシへの戦術核配備はウラジーミル・プーチン露大統領が西側に送ってきた新たなメッセージに過ぎないとみる。
プーチン「米国は何十年も欧州に戦術核兵器を配置」
3月25日、プーチンはベラルーシの要請により同国に戦術核兵器を配備すると露国営テレビ「ロシア24」で発表した。プーチンは「何も珍しいことはない。米国は何十年も欧州のNATO同盟国に戦術核を配備してきた」と説明。7月1日までに戦術核の貯蔵施設を建設するという。
「戦術核を運搬できるようベラルーシの空軍機10機をすでに改造した。核弾頭搭載可能な短距離弾道ミサイル9K720『イスカンデル』をベラルーシに移し、4月3日から訓練を始める」とプーチンは宣言した。ロシアが他国に核兵器を配備するのは1991年のソ連崩壊後、ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンからロシアに移管して以来、初めてのことだ。
プーチンは「英国が劣化ウランを含む砲弾をウクライナに供与しようとしていることに対する対抗措置だ。米国が同盟国に戦術核兵器を譲渡しないのと同様にロシアもベラルーシに譲渡しない。核拡散防止条約にも違反しない」と述べた。劣化ウランの比重は鉄の2.4倍で対戦車用の砲弾として使われる。
英国のアナベル・ゴールディ国防省担当相は3月20日「ウクライナにチャレンジャー2主力戦車1両を供与するのと同時に劣化ウランを含む徹甲弾などの弾薬も提供する。この弾丸は戦車や装甲車を倒すのに有効だ」と書面で上院議員の質問に答えている。ロシア軍も劣化ウラン弾を保有している。ベラルーシでの貯蔵施設工事も随分前から始まっていた。
英首相官邸「劣化ウラン弾は核兵器と全く関係ない」
英首相報道官は筆者に「昨年、本格的な侵略が始まって以来、ロシアが発している無責任極まりない核のレトリックの最新例だ。軍備管理にこれほどダメージを与え、欧州の安定を損ねている国はロシアを置いて他にない。チャレンジャー2と一緒にウクライナに送られている劣化ウラン弾は通常兵器であり、核兵器とは全く関係がない」と説明する。
「英陸軍は何十年も前から徹甲弾に劣化ウランを使用している。これは標準的な装備で、ロシア軍も使用している。核兵器とは何の関係もない。ロシアはそのことを知っていて意図的に真実を歪めようとしている。われわれはウクライナが違法でいわれのない戦争をはねのけるのを助けるために必要なことを続けていくつもりだ」(英首相報道官)
英シンクタンク、王立国際問題研究所(チャタムハウス)上級コンサルティング研究員キーア・ジャイルズ氏は「ロシアはウクライナとの戦争で核兵器を実際には発射せずに、その『使用』に成功している。ウクライナへの全面的な軍事支援をためらう米国と西側の同盟国はロシアの核の脅威に対して、より明確な対応を示す必要がある」と指摘する。
「モスクワの絶え間ない核の威嚇のレトリックは西側諸国の対応を抑止することで今のところロシアに成功をもたらしている。ロシアはウクライナ侵略の結果責任から逃れている。不確実性の幅は考えられているよりはるかに狭いとはいえ、プーチンがウクライナへの核攻撃を命令する可能性はゼロではない。しかし、その可能性は極めて低い」
プーチンが手にした「免罪符」
「ロシアの脅威がいかに非現実的であるかを考慮せず、ロシアの核態勢に変化が見られないこととも照らし合わせなかったため、西側諸国は『恐怖による麻痺』を招いてしまった。レッドライン(超えてはならない一線)を越えたらエスカレートさせるという脅しによって、ロシアはこれまでのウクライナでの行動に対して『免罪符』を手に入れることに成功した」
ウクライナは生き残るための武器は米欧から供給されているが、勝つために十分な武器は供給されていない。しかし、実際にロシアが核兵器使用に踏み切った場合、さまざまな制度的・現実的な障害を乗り越えなければならない。西側諸国の対応いかんにかかわらず、核のタブーを破ることは、ロシアにとっても深刻な結果をもたらすのだ。
ジャイルズ氏は「核兵器の使用はロシアだけでなく、プーチン個人にも壊滅的な影響をもたらすことを思い知らせるため、米国と西側同盟国から発信するメッセージを早急に見直す必要がある。ロシアが核の威嚇で成功を収めたら、世界中の攻撃的で自己主張が強い不正国家にとっても核による強制という考え方が正当化される」と警鐘を鳴らす。
侵攻1年を控えた年次教書演説でプーチンは米露間に残された最後の核軍備管理条約、新戦略兵器削減条約(新START)への「参加を停止する」と表明した。米国務省によると、ロシアは戦略核兵器の情報提供を停止。米紙ウォールストリート・ジャーナルは米国も情報提供の停止を決めたと報じた。軍備管理が崩壊すれば、米露の戦略核兵器は倍増する恐れがある。
●西側からのウクライナ軍事支援、9.3兆円に NATO事務総長 4/5
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は3日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった昨年からの1年間のウクライナへの軍事支援が700億ドル(約9兆3000億円)に上ると明らかにした。
ストルテンベルグ氏はブリュッセルでの記者会見で、ロシアのプーチン大統領が和平のための準備を進めている兆候はなく、さらなる戦争の準備を進めていると警告した。
ストルテンベルグ氏は「この戦争がいつ終結するのかわからない。しかし、その時には、ウクライナが将来の侵攻を阻止できるように準備を整えておく必要がある。歴史は繰り返さない。ロシアが欧州の安全保障を切り崩し続けることを許してはならない」と述べた。
ストルテンベルグ氏は、近代的な戦車や装甲車がウクライナに届いていることを歓迎した。ストルテンベルグ氏は、そうした戦車や装甲車が前線で真の変化をもたらし、ウクライナ軍がより多くの領土を解放できるようになると述べた。
ストルテンベルグ氏は、NATOによる支援が長期的なものであると確認し、支援の強化をどのようにするのか協議を行っていると述べた。そうした協議のなかには、ウクライナ軍の強化の継続や、旧ソ連時代のものからNATOの水準の装備や軍事ドクトリンへ転換することへの支援が含まれる。
ストルテンベルグ氏は、NATO加盟国は他の脅威や課題にも対処する必要があるとし、情勢の不安定化やテロをはじめ、イランやロシア、中国の影響力の増大を挙げた。ストルテンベルグ氏は、こうした広範な問題全てに取り組むために防衛分野への支出を増やすよう促した。

 

●反プーチン派が犯行声明 ロシア・カフェ爆発 4/5
ロシア第2の都市サンクトペテルブルクで2日に起きたカフェ爆発事件で、反プーチン政権派の組織「国民共和軍」が4日、犯行声明を出した。
事件では、死亡した軍事ブロガーに爆発物を渡したダリヤ・トレポワ容疑者が拘束された。治安当局は「ウクライナ情報機関が計画した」と発表。一方、国民共和軍は外国の支援はないと主張しており、真相は不明だ。
カフェは、ウクライナ侵攻や民間軍事会社「ワグネル」を支持するイベント会場に使われてきた。国民共和軍は爆破したことに満足の意を表明。これに対し、ワグネル創設者のエブゲニー・プリゴジン氏は4日、爆発現場で集会を開き、活動継続をアピールした。 
●敗北を予期したプーチンが「核兵器発射」を決断するとき… 4/5
開戦から1年を過ぎても、ウクライナでは泥沼の戦闘が続く。ロシアが簡単に倒れないのは、最凶の兵器「核」を持っているからだ。プーチンはどう動くのか、「軍事のプロ」二人が徹底分析した。
最終決定はプーチン一人で
小野田「核は絶対に使ってはいけない。それを使うことは世界を滅ぼすことである」という考えは、冷戦時に米ソに戦略的安定をもたらしました。
しかし現在は、そうした安定感は崩れてしまっており、”核兵器を実際にどう使うか”という危険度が冷戦時より上がっていると思います。プーチンは、「核兵器の活用を躊躇しない人物」であると言えるからです。
高橋 必要であれば核を使う、プーチンの姿勢は変わっていません。使うことによる利益とコストのバランスを見て、利益のほうが大きいと判断したら、ということです。
一連のウクライナ戦争の中で、核が使われる可能性が高まった局面がいくつかありました。ひとつは侵攻開始から1ヵ月あまり、ロシア軍がキーウから撤退した'22年3月末〜4月頃です。あの時点でロシア軍が撤退せずに第二次キーウ攻勢をかけていれば、その時には核兵器を使うという選択肢があったでしょう。核兵器の使用によって、戦争を早期終結できる可能性があったからです。
核兵器が使われる際は、国防大臣(ショイグ)、参謀総長(ゲラシモフ)、そして大統領(プーチン)の間に通信回線が設定されます。大統領が核使用について判断し、参謀総長が具体的にどのような兵器を使うかについての助言をして、3人で話し合った上で命令が出されると考えられています。
ただし、使うかどうかの最終判断はあくまでプーチン一人で行う。核兵器の使用は集団決定ではありません。現実にはプーチンは昨年、核を使用しませんでした。
地理的理由で核兵器をためらう事に
小野田 核を使わなかった理由としては、地勢的な条件もありますね。太平洋戦争時、すでに勝勢だったアメリカが日本に対して核を使ったのは、沖縄を制圧して、九州に侵攻する直前でした。沖縄戦での人的損害が莫大だったため、本土に侵攻するとさらに莫大な被害が出ると考えられていました。
その状況で、たまたま史上初めて開発された核兵器があった。核兵器がどのような威力、意義を持つのか、アメリカの為政者がどの程度認識していたのかはわかりませんが、目の前にあった核を使って「戦争を早く終わらせよう」と考えたということです。
これをそのままウクライナに当てはめてみましょう。ロシアは現在、かつて米軍が沖縄を占領していたように、ドンバス地域(東部のルハンスク州とドネツク州を合わせた地域)の大半を占領しています。ここから戦争を早く終わらせるためという、アメリカと同じ思考になるのであれば、首都のキーウではなく第3、第4の都市あたりに核を落とすことになるでしょう。かつて広島や長崎に原爆が投下されたように。
しかし日本とアメリカは太平洋で隔てられていたわけですが、ロシアとウクライナは地続きで、自国の軍隊が地上侵攻しています。ここに軍事的、戦術的な困難さがある。
「使わないと負ける」なら
高橋 威嚇のために陸ではなく、黒海上に核爆弾を落とすという説もありましたね。しかし、ここまで地上戦をやっていたら、海上での核爆発で威力を見せる程度では、おそらくウクライナは抗戦を止めないでしょう。たとえば、現在、最激戦地になっている東部ドンバス地域のバフムトは、すでに核を落とされたのと同じぐらいの規模で破壊され尽くしています。
そう考えると、プーチンが「使うことで勝てる」という判断をして核を使用する状況は、なかなか考えにくい。ただ、核を使う可能性がある状況はこれだけではありません。「使わないと負ける」という状態になった時も、プーチンが核のボタンを押す危険性があるのです。
実際、私を含めた世界中の核の専門家が最も恐怖を感じたのは、ウクライナ軍によるハルキウ反攻でロシア軍が大敗し、壊滅状態に陥った'22年9月でした。
「アメリカは信用できない」
小野田 ウクライナの戦いぶりは、非常にクレバーだったと言えます。ウクライナ軍は南部のヘルソン方面で反撃を起こすという偽情報を流した。ロシアはそれに引っかかり、ハルキウ正面から部隊を南部へと移動させてしまいました。
守りが手薄になったハルキウを目指し、ウクライナ軍は一日20〜30kmという電撃戦を展開して数日間で100km近く占領地域を奪回しました。アメリカはその戦況を見ていて、「まさかハルキウ奪還にとどまらず、さらに北上しロシア領内に入ろうとしているのではないだろうな?」とウクライナ政府を牽制したと思います。
高橋 この時、もしウクライナ軍が実際にロシア国内に逆侵攻していれば、プーチンは核兵器を使っていた可能性があります。ハルキウを突破したときに、そのまま(ロシア領内の)クルスクまで北上するという選択は理論的にはありえた。おそらくロシアは核しか食い止める手段がなかったはずで、緊迫した状況になっていた。
あの時、プーチンは10日ほど核兵器について言及しませんでした。9月21日になって、30万人の「部分動員令」を発表しますが、その時にようやく核を匂わせます。この時は、部分動員令によって「通常戦力を再建する」意思があることを表明するのと同時でしたから、逆に核兵器使用のリスクは下がったと感じられました。その意味で、プーチンは無責任に核をちらつかせているわけではないと言えます。
この戦争が始まって以来、アメリカはロシアに対し、万が一ロシアが核を使用した場合には強い対応を取ることを直接伝達しています。これはあまりにも重要な問題なので、メディアを挟む形のコミュニケーションではなく、直接伝えているはずです。
小野田 中国の関係者と話していてよく彼らが言うのは、「世界で核兵器を使った唯一の国はアメリカだ。だからアメリカが一番信用できない」という言葉です。プーチンが同じように考えているとしてもまったく不思議ではないと思います。
ロシアの人たちは、ソ連時代から「アメリカは核を使う」という前提で動いてきました。冷戦当時、ソ連は「我々はいつか奇襲作戦で核攻撃を受けるかもしれない」と考えて「デッドハンド」と呼ばれる自動報復装置を作っていました。核で攻撃された際には、自動的に核を撃ち返せるようにしていたのです。
ロシアという強靭な国
高橋 プーチン大統領が、アメリカによる核報復ないし軍事介入というリスクがあると認識する限り、核を使うことは難しいでしょう。
ウクライナによるハルキウ反攻の際、通常戦力で大敗したという状況は、核兵器を使ってもおかしくない状況でした。しかし、この時点では部分動員という策を選んだのです。
小野田 しかしこれからのロシアは守勢になって、時間を稼ぐという形にならざるを得ないでしょう。
高橋 今後また、'22年9月のハルキウ反攻と同じように、ロシア軍が戦場で大敗したとしても、当面は追加の動員で凌ぐと思われます。しかし、動員兵を戦力化するためには何ヵ月もかかります。その間にウクライナ軍の進撃を阻止できなければ、核使用のリスクは高まるかもしれません。ただ、ロシアでは予備役、兵役を終えて比較的動員しやすい人間が200万人いると言われている。ということは、あと170万人分の動員能力があることになります。
ロシアは資源と食料が自給できる国なので、戦い方はいくらでもある。政治的意思が続く限り、旧式戦車だろうが第一次世界大戦時の機関銃だろうが、引っ張り出してきて戦い続ける。ハイテク兵器でなければ戦えないわけではありません。
小野田 欧米の有識者の中には「明らかにロシアは負けている」「ロシアは長く持たない」という方々がいます。あれはある意味、プロパガンダという側面もあると理解しなければなりません。ウクライナが勝っていると言い続けることで、西側諸国が「支援疲れ」しないようにしているのです。しかしそうした人たちが思っている以上に、ロシアという国が強靭であることは間違いありません。
目的は「心理的ダメージ」
高橋 一方のウクライナにしても、この戦いは国家の存亡をかけた戦いです。西側の武器供与が止まったら止まったで、イラクのようにレジスタンス化して戦い続けるでしょう。またウクライナが占領されている土地を奪回したとしても、ロシアは戦争をやめないでしょう。結局はロシアが変わらない限り、この戦争は終わらないと思います。
天候が厳しい冬の間、両軍は前進できず、戦線は膠着化していました。しかし本格的に春が来て、ウクライナの反攻が行われる可能性があります。
小野田 ロシアはドネツク州とルハンスク州を完全に取りたいので、現在ウクライナ側が抗戦を続けているバフムトが非常に大きな焦点になっています。同時に、クリミアを守る緩衝地帯となる南部2州(ザポリージャ州とヘルソン州)も絶対に捨てないでしょうね。
では、具体的にどう核を使うのか。ハルキウ反攻のようなケースなら、ロシアはおそらくウクライナ軍の前進を食い止めるために、後背部の予備兵力や補給拠点を標的として狙うでしょう。最前線だと自軍が巻き込まれてしまいますから。
従来の考えからいえばこの時は「戦略核」(首都や司令部を標的にする大型の核)ではなく、「戦術核」(戦場での軍事目標にダメージを与える小型の核)を使うと思われます。高橋さんは、その辺りをどう思われますか?
高橋 よく戦術核、戦略核という言葉が使われますが、これは人為的な分け方にすぎません。世界でもごく一部の専門家しか議論していませんが、運用を考える時にはちょっと違う発想が必要になると私は考えています。
重要なのは「戦場使用」か「都市使用」か、という選択です。ハルキウ反攻で見た場合、ウクライナ軍が最初にハルキウに攻め入った時の戦線は、幅10km、奥行き50kmほどでした。この戦場を広島型原爆より少し小さい10キロトン程度の核で制圧しようとすると、100発が必要です。
しかしICBMに積んでいる500キロトンから800キロトン級の弾頭であれば2〜3発で十分です。ですから戦場使用の場合には、大型の核兵器(いわゆる戦略核)を使ったほうが、使用する数が少なくて済む。
一方、都市攻撃の目的は、物理的な破壊ではなく「心理的ダメージ」です。とすると、使用する核はそれほど大きくなくてよい。「キノコ雲」が起こって犠牲者が出れば、目的を達成できるのです。広島型の10倍、20倍である必要はありません。逆説的ですが、心理的インパクトを狙った都市攻撃は小型の核(いわゆる戦術核)でいいわけです。
核戦争を抑止できるか
小野田 もしロシアが核を使ったら、日本にも大きな影響が出る可能性がありますね。
高橋 アメリカがもしロシアの核に反応しなければ、「アメリカが深く関わっている戦争において、核が使われても何も反応しなかった」という前例ができる。アメリカの「核の傘」に対する信頼性が、同盟国側でも対峙する側でも低下することになるでしょう。
小野田 アメリカが何らかの形でロシアに反撃しなければ、たとえば北朝鮮は核実験を活発化するでしょう。下手をすれば、太平洋にミサイルを撃って核を爆発させるといった、一歩踏み込んだ実験をやるかもしれない。
高橋 一方、アメリカが軍事介入したらどうなるか。これはもう、アメリカとロシアの戦争です。その時、米ロの最前線である日本にも、戦火が及ばない保障はありません。
小野田 プーチンは、ロシアが核を使えばアメリカが対応に迷うということをわかっているわけです。だから「核を使うぞ」と言って、アメリカを抑えようとしている。しかし、それも限界が来ているのかもしれません。
高橋 私たちはあらゆるシナリオに対して準備しなければなりません。核が使われた場合、核戦争になる可能性もゼロではない。その場合、アメリカの同盟国である日本も巻き込まれることになる。だからこそ、核抑止を機能させることが重要なのです。
●フィンランド、NATO正式加盟 ロシアは「対抗措置」警告 4/5
フィンランドは4日、北大西洋条約機構(NATO)に正式に加盟した。フィンランドはロシアによるウクライナ全面侵攻を受け、長年の中立政策を転換。ロシアはNATOの拡大に「対抗措置」を取ると警告した。
フィンランドのハービスト外相がブリュッセルのNATO本部で米国のブリンケン国務長官に公式文書を手渡し、フィンランドのNATO加盟手続きが完了。NATOのストルテンベルグ事務総長は「フィンランドの加盟を歓迎する」と述べた。
ストルテンベルグ氏は、ロシアのプーチン大統領はNATOの東方拡大を食い止めることをウクライナ侵攻の正当的なの理由の一つに挙げているが「正反対の結果になっている」と指摘。ブリンケン長官も「ロシアのプーチン大統領は阻止したいと考えていることを逆に引き起こしてしまった」とし、フィンランドの加盟実現は「プーチン氏に感謝すべきことかもしれない」と述べた。
フィンランドのニーニスト大統領はストルテンベルグ事務総長との共同記者会見で、NATOに対するフィンランドの最大の貢献は自国の領土防衛だと表明。「フィンランドにとっても、NATOにとっても重要な日になった」と述べた。
フィンランドとロシアの国境線は約1300キロメートル。フィンランドのNATO加盟により、ロシアとNATO加盟国との境界線の長さは約倍になる。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は、NATOの拡大は「ロシアの安全保障と国益に対する侵犯」とし、ロシアはフィンランドにNATO軍が配備されないか、注意深く見守ると述べた。
ロシアのショイグ国防相は、フィンランドのNATO加盟でウクライナでの紛争がさらにエスカレートする可能性が高まると警告。ただ、ウクライナでの「特別軍事作戦」の結果には影響を及ぼさないと述べた。
前日にはグルシコ外務次官が、NATOの軍などがフィンランドに配備されれば、ロシアは軍事的安全保障を確実に確保するための追加措置を講じる」と警告している。
ロシアの首都モスクワでは、親ロシア派の活動家らが米大使館前で「NATOを止めろ」「NATOはナチス主義のスポンサーだ」などと書かれたプラカードを掲げ、反NATOデモを実施した。
ロシア外務省は声明で、フィンランドはNATO加盟によって世界的な舞台での自国の影響力を弱め、ロシアとの関係を損なうという危険な歴史的過ちを犯したと指摘。「フィンランド政府の軍事的非同盟政策は、長期にわたりフィンランドの国益に貢献し、バルト海地域および欧州大陸全体における信頼醸成の重要な要因だったが、今や過去のものになった。フィンランドは何も決めない同盟の小さな加盟国の1つとなり、国際問題における特別な発言力を失った。この軽率な措置は歴史が判断すると確信している」とした。
一方、ウクライナはフィンランドのNATO加盟を歓迎。ゼレンスキー大統領は「フィンランドの全ての人々に祝意を示す」とし「ロシアの侵略は、集団的、予防的保障のみが信頼できるものであることを明確に証明している」と強調した。
イエルマーク大統領府長官も「フィンランドは正しい選択をした。ウクライナにとってもNATOは重要な目標だ」と対話アプリ「テレグラム」に投稿した。
ロシアによるウクライナ全面侵攻を受けフィンランドと共にNATOに加盟申請したスウェーデンについてはトルコとハンガリーが承認しておらず、同時加盟は実現しなかった。
スウェーデンのビルストロム外相は記者団に対し、7月にリトアニアの首都ビリニュスで開かれるNATO首脳会議での加盟を望んでいると表明。フィンランドのニーニスト大統領も声明で「フィンランドのNATO加盟は、スウェーデンの加盟なしには完全ではない」とし、スウェーデンの早期加盟実現に向け取り組みを続ける方針を示した。
●「プーチンが最も恐れた男」ナワリヌイが身をもって示したロシアの良心 4/5
アレクセイ・ナワリヌイ。46歳。ロシア人の民主活動家、弁護士。妻と1女1男。
2021年1月以降、9年の刑期で服役中。一応罪名はついているが、独裁国家のつねで、そんなものに意味はない。
ナワリヌイは2010年前後から、政府批判の舌鋒の鋭さで一躍注目を浴びるようになった。クレムリンの頭痛の種で、見逃せば弱腰といわれ、捕まえれば殉教者になりかねない存在だったが、しかしもう捕まえてしまえばクレムリンのもの。
プーチンはナワリヌイを忌み嫌い、「反体制の人」とか「その人物」などといって、ナワリヌイの名前を決して口にしない。「プーチンが最も恐れた男」といわれるゆえんだが、プーチンはかれの存在を認めたくないのだ。肝っ玉の小さい男だ。
そんなナワリヌイを追ったドキュメンタリー映画『ナワリヌイ』が、第95回アカデミー賞(2023年3月開催)の長編ドキュメンタリー賞を受賞した。監督は撮影時まだ29歳だったダニエル・ロアー。
飛行機内で毒殺されかけた
2018年、ナワリヌイはプーチンに対抗してロシア大統領選挙に立候補したが、立候補は無効とされた。SNSに発表した「一緒に詐欺師を捕まえよう」という一連の汚職追放の動画は国民の間で大人気だった。しかしテレビは出禁、新聞はかれのニュースを載せず、最初の頃は盛り上がっていた集会も禁止された。事務所は警官に荒らされ、ナワリヌイは有害な緑色の液体を顔に浴びせられ、拘束された。
2020年8月20日、決定的な事件が起きた。その事件がこのドキュメンタリー映画の中心でもある。
シベリアのトムスクからモスクワへの帰途、ナワリヌイは機内で急に意識不明の重体に陥ったのである。オムスクに緊急着陸したが、夫人やかれのチームは当局に妨害されて会えない(次の写真)。毒の痕跡が消えるまでの時間稼ぎだったといわれる。
夫人の働きかけと、メルケル首相の受け入れもあって、やっと22日にベルリンの病院へ移送された。ドイツの医師は神経剤のノビチョクが見つかったと発表した。
昏睡から覚めたナワリヌイは、ノビチョクを使われたと知って逆に驚く。というのもノビチョクというのはモスクワのシグナル化学センターで生産されていたもので、即プーチンと結びつく毒物なのだ。殺したかったのなら撃ち殺せばいいのに、かれらは「あほ」「ばか」「まぬけ」なのかと毒づくナワリヌイが、おもしろくもあり、タフである。
容疑者を8人に絞り込んだ
オープンソースを駆使するオンライン調査機関べリングキャットの主任調査員クリスト・グロゼフは、当初ナワリヌイを「本当に後ろ盾がないのか」「ロシア政府が操るエセ反体制派の1人ではないのか」と疑っていた。かれが極右や民族主義者とも付き合っていたからだ。しかしかれの毒殺未遂事件を知って、独自に調査を開始する。
クリストは電話、電子メール、免許証などあらゆる情報の膨大なデータベースを調べ上げ、その結果、暗殺実行犯の容疑者を8人にまで絞り込んだのである。その分析の手法は驚くべきもので、わたしは、世界はこんなことになっているのかと知って驚いた。クリストは、容疑者たちの顔写真も名前も住所も電話番号もすべて手に入れ、ナワリヌイと連絡を取ったのである。
ここでナワリヌイとクリストは思い切った賭けに出た。ナワリヌイがドイツから容疑者たちに直接電話をかけ、単刀直入に、なぜおれを殺そうとしたのかと聞く、というのだ。このドキュメンタリーのハイライト部分である。まず「筋肉バカ」(FSBロシア連邦保安庁の軍人)3人に電話をかける。かれらは絶句し、とぼけ、すぐ電話を切る。
そこでナワリヌイたちは方針を変え、関係者の偽名を使って今度は化学者に電話をかける。コンスタンチンという化学者が騙されて、もし飛行機が緊急着陸しなければ暗殺は成功したこと、毒物を仕込んだのはナワリヌイのパンツの縫い目だったことなど、暗殺の詳細をしゃべったのである。ナワリヌイのチームはそのすべてを録音し録画した。
2020年12月17日、モスクワでプーチン大統領の年次記者会見が開かれた。内外の記者たちの前で、ひとりの記者がプーチンに問う。ナワリヌイが自身の毒殺未遂事件の調査結果を発表したが(この段階では、まだコンスタンチンの録音は公開していない)、なぜ警察は捜査しないのか。
「プーチンを大統領にしたくない」と帰国
プーチンが答える。「ベルリンの病院にいる患者の件」だが、といって例のごとく、名前を呼ぶに値しない存在だと余裕を見せながら、「あれは米国の諜報機関の情報」で、「例の患者はCIAの支援を受けている」と。まったく、しゃべっている本人も、また聞いている全員も、ウソだとわかっているウソを平然とつくのである。こうでなくては、独裁者はつとまらない。
さらに「もしその人物が毒殺されるべき存在なら」と、ここでプーチンは小ばかにしたように笑い、「とっくに殺されてる」といったのである。そして「あの人物は自分を格上げしたいのだろう。(略)国のトップと互角なんだぞ」と。
ドイツでこの会見を見ていたナワリネイは頭にくる。冷静につとめてはいるが、あきらかに頭にきている。「上等じゃないか」「ああいう屁理屈を丸ごと叩きつぶしてやる」と、例の化学者との通話内容を公表したのである。だがそんなことでプーチンを「叩きつぶす」ことは当然できなかった。動画が7時間で770万回再生されただけである。
2021月1月17日、ナワリヌイは妻のユリアを伴って帰国した。「プーチンを大統領にしたくない。帰って国を変えたい」とその理由を語ったが、当然逮捕されることは織り込み済みだったはずである。それとも読み違えたのか。
機内での記者たちのインタビュー。モスクワ到着。空港に集結した出迎えの群衆。そのなかのひとりが、ナワリヌイを「ロシアの自由の象徴」という。しかし警察が市民も記者もかたっぱしから連行する。機内の緊迫した様子が映しだされる(次の写真)。別の空港に着陸する。ナワリヌイの周りを記者たちがとり囲む。入国審査。警官がくる。弁護士を呼ぼうとするが無視。警官たちはカメラなど平気だ。そのまま連行する。群衆はナワリヌイの妻のユリアの名前を連呼する。
逮捕2日後、チームは「プーチンの宮殿 世界最大の賄賂」の暴露映像を公開した。1週間で1億回再生された。ナワリヌイの逮捕とビデオの公開は、ロシア全土で抗議行動を巻き起こしたが、結局鎮圧された。調査チームは国外に逃れて活動をつづける。コンスタンチンという化学者は行方不明である。
国営テレビ局の女性は無事密出国
あのロシアで反政府運動をする人がいるというのは驚きである。もちろん国民の大半は、触らぬ神に祟りなし、の無関心派か、プーチン支持派である。それでも勇気ある反対派が存在する。しかも女の人が少なくない。
一番有名なのは、2022年3月14日、国営テレビの第1チャンネルの夜の生放映中に、反戦メッセージを書いた紙を掲げてテレビに映りこんだマリーナ・オフシャンニコワ(当時43歳)である。彼女はロシア第1チャンネルのスタッフだった。
彼女の手書きの紙には「戦争をやめて。プロパガンダを信じないで。あなたはだまされている」と書かれていた。
わたしは、彼女は何年も刑務所に入れられるだろうと思った。ところが意外なことに、翌日、モスクワの裁判所は、オフシャンニコワに3万ルーブル(約5万5000円)の罰金を科しただけで釈放したのである。釈放後、フランスのマクロン大統領が亡命受け入れの用意があると表明したが、彼女はロシアにとどまった。しかし4月11日、ドイツのメディアに記者として採用され、ドイツに渡った。
しかしこれで終わりではなかった。
娘の親権問題で元夫が訴訟を起こしたことから、彼女は7月にロシアに帰国した。そこでまたクレムリンの近くで、たったひとりで「プーチンは殺人者だ」などと書いた紙を掲げ、逮捕されたのである。なんともすごい女性だ。
また罰金刑をいい渡されたが、その後、新たに自宅軟禁下に置かれる決定がなされた。しかしオフシャンニコワはその前に、11歳の娘を連れてロシアを脱出したのである。
2023年2月10日、彼女はパリで記者会見をし、フランスに亡命したことを明らかにしたした。密出国については、足首のGPSをペンチで破壊し、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」の支援を受けて7台の車を乗り継ぎ、4時間歩いて国境を超えたという。もちろん脱出ルートは明らかにされていない。
反旗を翻す女性たち
こういう女性もいる。今年の1月、SNSにロシア批判のコメントを書き込んだ罪で、足にGPSをつけられ自宅軟禁されていた女子大生オレシャ・クリブツォワ(20)が、3月11日ロシアを脱出し、16日にリトアニアに到着した。ロシアのGPSの「追跡装置は頻繁に誤作動」するらしく、当局はまだ彼女の「脱出方法」がわかっていないという。
クリブツォワが自宅軟禁されたのは大学の同級生の密告によるものらしい。彼女は「私の大学の場合は無関心の人が一番多いです。二番目に多いのはウクライナ侵攻の支持者で、戦争反対派は残念ながら三番目です」といっている。
プーチンがいまだに自信をもっているのも、これらの無関心層と侵攻支持層が大半を占めているからである。ほんとうに反対している人間は、すでに国外に脱出しているのだ。クリブツォワは「当局に証言する教師もいますし、勉強は順調だったのに内容の悪い内申を当局に提出した大学幹部の人もいます。彼らのことは馬鹿な告げ口野郎だと思っています」という。
独裁主義者政権下の軍人や警察はどこもおなじなのだろうが、ロシアの警察は子どもでも容赦しない。3月9日、教師から侵攻支持の絵を描くよう指示されたにもかかわらず、「戦争反対」「ウクライナに栄光あれ」と書いた13歳のマリア・モスカリェワを更生施設に送り込んだ。
13歳の少女が、ロシア人のバカな男たちよりもよほど立派という事例だが、彼女が捕捉されたのも、教師や生徒からの密告だったのか。
ナワリヌイがロシア人におくるメッセージとは
映画『ナワリヌイ』のロアー監督に、もし逮捕され投獄されるか殺されるとしたら、ロシアの人々にどんなメッセージを残すか、と訊かれたナワリヌイは、こう答えている。
「仮に僕が殺された場合のメッセージは“諦めるな”だ」「僕が命を狙われたのは、僕らが信じられないほど強いからだ。(略)僕らが持っている巨大な力は悪い連中に押しつぶされている。本当は強いのに僕らに自覚がないからだ。悪が勝つのはひとえに善人が何もしないから。行動をやめるな」
ナワリヌイはこういって、最後に笑った。
すでに書いたように、ナワリヌイは現在刑期9年で服役中。しかし刑期は最大20年になるおそれがあるという。
●ウクライナ戦争への理解が欠ける「トランプのライバル」 4/5
2024年の大統領選で共和党においてトランプ前大統領のライバルになり得るデサンティス・フロリダ州知事のウクライナ戦争についての発言が物議を醸している。米ワシントンポスト紙コラムニストのヘンリー・オルセンは、3月16日付の論説‘Ron DeSantis’s stance on Ukraine is a serious political blunder’で、「ウクライナ戦争でウクライナを支援してロシアに対抗することは米国の国家利益ではない」とするデサンティスの立場は政治的失策である、と論じている。要旨は次の通り。
デサンティスがウクライナ戦争を「領土紛争」だと切り捨てたことは、顕著な政治的失策である。
ウクライナへの軍事援助に対するトランプ派のMAGA(「米国を再び偉大に」の頭文字)共和党員の支持は最近落ち込んでいる。デサンティスがウクライナを声高に支援することに距離を置く選択をしたのは、そのためだ。
しかし、これは共和党内における政治的ダイナミクスを見逃している。デサンティスがトランプに勝って共和党の指名を獲得するチャンスは、MAGA有権者の多く(必ずしも全てではない)をトランプから引きはがすべく誘い、かつ彼らを大多数の非MAGAの共和党員に合体させることにかかっている。デサンティスのステートメントは後者のグループから自身を遠ざけ、第三の候補者がつけ入る隙を与えたことになる。
現に、ニッキー・ヘイリー前国連大使とマイク・ペンス前副大統領は、デサンティスとは見解を強く異にし、ウクライナを支持することは米国の利益であるとの信念を再び述べた。MAGA共和党員は反対するだろうが、世論調査では約40%の共和党員がウクライナ支持に賛成である。
米国の安全保障は敵対国を封じ込め得る同盟のネットワークにかかっている。欧州の北大西洋条約機構(NATO)諸国はそのネットワークの主要な一部であるが、彼らにとってウクライナをロシアが征服することは自身の存立に係わる脅威である。「ウクライナを守ることは主要な利益でない」と言うことは、米欧関係を核心から揺さぶるであろう。デサンティスにとっての優先事項である中国とのグローバルな競争に勝つためにも欧州との緊密な同盟は必須である。
デサンティスのステートメントは、ロシアとウクライナの戦闘それ自体への巨大な誤解を示している。戦闘を「領土紛争」と規定することによって、戦争はウクライナのロシア語圏がウクライナの一部にとどまるべきか否かを巡るものだと彼は示唆しているようである。
しかし、それはロシアがウクライナに侵攻した理由ではない。プーチンは、ウクライナの「真の主権はロシアとのパートナーシップにおいてのみ可能」だと主張した。それゆえ、彼は2014年にはウクライナに侵攻してクリミアを奪取し、2022年に再び行動を起こしたのである。
デサンティスはこのことを理解していないように見える。彼はプーチンの明白な意図に無知であるか、彼の意図を脅威とは見ていないか、どちらかである。どちらにせよ、米国の対外政策を主導する彼の能力の評価を高めることにはならない。
この論説が主題としているデサンティスのステートメントなるものは、保守系メディアの米フォックス・ニュースの扇動的ホストとして知られるタッカー・カールソンが、大統領選挙の共和党の候補および潜在的候補に送り付けたウクライナ戦争に関する質問状に対するデサンティスの回答である。回答は3月14日の放送でカールソンにより紹介され、ちょっとしたニュースとなった。
「ウクライナでロシアに対抗することは米国の主要な国家利益か?」という質問に対してデサンティスは、ウクライナとロシアの「領土紛争」に更に巻き込まれることは、そのような利益に当たらない、と述べている。
主要な国家利益として、国境を確保すること、米軍の即応体制の危機に対処すること、中国共産党の経済的・文化的・軍事的な力を抑制することなどを国家利益に数えているので、優先順位においてウクライナ戦争はこれらの挑戦に劣るということらしい。
デサンティスは、ウクライナ戦争を「領土紛争」と規定していることを含め、ウクライナ戦争の国際秩序に対する脅威の重大性に対する認識が危険なまでに欠落している。
「ウクライナにおける米国の目的は何か?」という質問には、「平和」だと回答しているが、無条件に「平和」を語ることはプーチンに報償を与えることになりかねない。彼は、米軍の展開を必要とし、あるいはウクライナが国境を超えて作戦を行うことを可能にするような援助はすべきではなく、F-16戦闘機や長距離ミサイルは供与されるべきでない、とも述べている。
ウクライナに対する支援の限界を問われたのに対しては、バイデン政権による「白紙手形」の財政支出は最も差し迫った挑戦への対応を阻害するとの趣旨を述べている。
デサンティスは不意打ちの質問に答えたのではない。書面での回答であるので、考えた上での回答であるはずである。それだけに、彼に米国外交を任せ得るのかの疑問を抱かせる。
トランプに支持率でリードされるデサンティス
最近の米クイニピアック大学の世論調査によれば、共和党の指名争いではトランプがデサンティスを46%対32%でリードしている。論説も指摘する通り、トランプの支持層を丸ごと取り込もうとする戦略ではうまくいかないであろう。
デサンティスは過去にはロシアに強く当たることを主張したことがある。例えば、2014年のロシアによるクリミア奪取以降、当時下院議員だった彼はオバマのプーチンに対する弱腰を批判し、ウクライナに「防御的および攻撃的」兵器を供与することを主張したことがある。トランプには、「彼は俺の言っていることを真似ている。これは手のひら返し(flip-flop)だ」と揶揄される始末である。
デサンティスは勉強が必要であろう。その上で、外交政策について包括的に考えを表明する機会を持つべきであろう。 
●収監、殺害、亡命……ロシアの反政府指導者たちは今どこに? 4/5
ロシアにはウラジーミル・プーチン大統領の対抗相手が実質的にいない。彼に批判的な声を上げてきた人の多くが、亡命を余儀なくされたり、投獄されたり、時には殺されたりしている。
2022年2月にウクライナに全面戦争を仕掛けるまでの20年以上にわたり、プーチン氏は反体制派を封殺し、ほとんど消滅させていた。
大統領就任当初、プーチン氏は非常に裕福で政治的野心を持つオリガルヒたちを従わせた。
ロシアの石油大手ユコスのトップだったミハイル・ホドロコフスキー氏は2003年、野党に資金援助した後、脱税と窃盗で禁錮10年の実刑判決を受けた。釈放後、ホドロコフスキー氏はロシアを離れている。
ボリス・ベレゾフスキー氏は、プーチン氏を政治的に支援していたが、決裂後の2013年に亡命先のイギリスで死亡した。自殺だと報じられている。
ロシアの主要メディアも徐々に政府の制御下に置かれるか、ロシア政府の公式発表に沿った報道をするようになった。
アレクセイ・ナワリヌイ氏
現在のロシアで最も著名な野党指導者はアレクセイ・ナワリヌイ氏だ。ナワリヌイ氏は、プーチン氏が「犯罪的な侵略」戦争で何十万もの人々に徹底的な打撃を加えようとしていると、刑務所から非難している。
ナワリヌイ氏は2020年8月、シベリアを訪問中に軍事用の神経剤「ノビチョク」を盛られた。この攻撃でナワリヌイ氏は生死をさまよい、ドイツに搬送されて治療を受けた。
2021年1月にナワリヌイ氏がロシアに戻ると、反政府派の抗議が一時的に高まった。しかし同氏はすぐに詐欺と法廷侮辱罪で逮捕され、禁錮9年の実刑判決を受けた。服役中の同氏は現在、米アカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画「ナワリヌイ」で注目を集めている。
ナワリヌイ氏は2010年代、積極的に反政府デモに関与していた。また、政治基盤だった反汚職基金(FBK)による数々の暴露が、インターネット上で大きな注目を集めていた。FBKは2021年に過激派組織として非合法化された。ナワリヌイ氏自身も汚職疑惑をかけられたが、政治的な動機によるものと繰り返し否定した。
ナワリヌイ氏に関わった多くの人物が治安当局からの圧力にさらされ、一部は国外に逃亡した。これにはFBKのトップだったイヴァン・ジャノフ氏や元主任弁護士のリュボフ・ソボル氏、そしてロシア全土にあったナワリヌイ氏の事務所の所長たちの大半が含まれている。
ナワリヌイ氏の右腕だったレオニド・ウォルコフ氏も、2019年に資金洗浄(マネーロンダリング)疑惑で捜査が始まった際に、ロシアを離れている。
反戦活動家
服役中のプーチン氏批判者でもう1人著名なのは、ロシアのウクライナ侵攻を強く批判しているイリヤ・ヤシン氏だ。ヤシン氏は2022年4月、ユーチューブのライブ配信で、ロシア軍による戦争犯罪の可能性を捜査するよう求めるとともに、プーチン大統領を「この戦争で最悪の殺人者」と呼んだ。
このライブ配信により、ヤシン氏はロシア軍に関する「偽情報の拡散」の罪に問われ、8年半の禁錮刑を受けた。この罪を定めた法律は、昨年2月のウクライナ侵攻開始直後に、ロシア議会で急ぎ制定された。
ヤシン氏は、プーチン氏が初めて政権を握った2000年には17歳で、その頃から政治活動を行っている。
2017年にモスクワ市クラスノセルスキー区の区議会長に選ばれた後も、ロシア政府に批判的な主張を続けていた。
2019年には、モスクワ市議会議員選挙をめぐり、当局が無所属や野党支持の候補者の登録を拒否したことに対する抗議活動に積極的に参加したとして、1カ月以上拘束された。
英ケンブリッジ大学卒のジャーナリスト兼活動家、ウラジーミル・カラムルザ氏は、2015年と2017年に謎の毒をもられ、意識不明となった。2022年4月には、ロシアのウクライナ侵攻を批判した後に拘束され、ロシア軍に関する「フェイクニュース」の拡散、「望ましくない組織」活動への関与、そして大逆の罪で起訴された。弁護人によると、有罪となれば最長で25年の禁錮刑となる可能性があるという。
カラムルザ氏は、ロシア国内外の主要メディアでプーチン氏を批判する記事を数多く執筆していた。2011年には、ロシアの人権侵害者を対象とした欧米の制裁措置の採択に向け、野党の活動を主導した。
多くの欧米諸国が科すこれらの制裁は、マグニツキー法と呼ばれている。これは、当局による横領疑惑を内部告発した後、2009年にロシアの刑務所で死亡した弁護士のセルゲイ・マグニツキー氏にちなんでいる。
民主化闘争
カラムルザ氏は、元オリガルヒで亡命中のホドロコフスキー氏が立ち上げた民主派グループ「オープンロシア」の副代表を務めていた。この組織は「望ましくない」組織に認定され、2021年に解体された。オープンロシアの代表だったアンドレイ・ピヴォヴァロフ氏は、同グループへの関与によって禁錮4年の実刑判決を受けている。
カラムルザ氏はそれよりも長い刑を受けるかもしれないが、親しい友人で主要な反政府指導者だったボリス・ネムツォフ氏とは違い、少なくとも生きている。
プーチン政権以前、ネムツォフ氏はニジニ・ノヴゴロド州知事やエネルギー担当相、副首相を務めたほか、ロシアの議会議員でもあった。その後、ロシア政府に批判的な立場に転換し、プーチン氏を批判する記事を数多く執筆。多くの反プーチン政権デモを主導した。
2015年2月27日、ネムツォフ氏はクレムリン(ロシア大統領府)近くの橋で4発の銃弾を受けた。前年にロシアがクリミアに軍事介入したことに反対するデモ行進への支持を呼びかけた数時間後のことだった。
ネムツォフ氏殺害で、チェチェン共和国出身の5人が有罪となったが、殺害の目的や誰の指示だったのかは明らかになっていない。同氏の死から7年後に発表された調査報告書では、殺害までの数カ月間、ネムツォフ氏が秘密暗殺部隊に連なる政府職員によってロシア全土で尾行されていた証拠が明らかになった。
メディアや個人も標的に
これら反体制派の有力者は、反対意見を表明したことで標的にされたロシア人のほんの一部に過ぎない。
昨年のウクライナ侵攻開始以来、ロシア国内の独立系メディアは厳しい規制や脅迫にさらされている。
先にロシアを離れていたニュースサイト「メドゥザ」に続き、テレビ局「ドシチ(TV Rain)」も国外に拠点を移した。リベラル紙「ノーヴァヤ・ガゼータ」はモスクワにとどまっているが、新聞の発行を止めている。ラジオ局「エコー・オブ・モスクワ」は、当局によって閉鎖された。
多くのニュース解説者がロシアから亡命した。ベテラン記者のアレクサンデル・ネフゾロフ氏は「外国の代理人」と見なされ、ロシア軍に関する「偽情報」を拡散したとして、欠席裁判で禁錮8年の実刑判決を受けた。
数百万人規模の読者や視聴者を持たなくても、標的にされる可能性がある。今年3月には、メッセージアプリ「テレグラム」に反戦チャンネルを開設していた数学科の学生ドミトリ・イワノフ氏が、やはり軍に関する「フェイクニュース」を拡散したとして禁錮8年半を言い渡された。
アレクセイ・モスカレフ氏は、13歳の娘が描いた反戦絵がきっかけで捜査対象となり、ソーシャルメディアで反戦的な投稿をしたとして禁錮2年となった。
プーチン大統領は20年以上かけて、自分の権力に挑戦する手ごわい敵を排除した。これがプーチン氏の計画なら、それはうまくいっていると言える。
●「プーチン大統領、携帯電話やネットのない情報真空状態」 4/5
「プーチン大統領は世の中との連絡を絶った。バンカー官邸で情報真空状態で暮らしながら自身と家族の命だけ大切にする。(こうした)戦争犯罪者の大統領に従うのを中断し戦争をやめるよう声を上げなければならない」。
プーチン大統領を近くで補佐していたロシア連邦警護局(FSO)のグレブ・カラクロフ元情報将校がプーチン大統領の健康状態と偏執症的性格などについて公開し、ウクライナ戦争を終わらせなければならないと訴えたとAP通信が4日に伝えた。
プーチン大統領、携帯電話やネット使用しない
軍事宇宙士官学校を卒業したカラクロフ氏は2009年にFSOに入り約13年にわたりプーチン大統領に暗号化された通信を提供した。彼は昨年10月に家族とともにトルコを経て西側の国に脱出した後、プーチン政権の腐敗を暴く非営利団体であるドシエセンターにプーチン大統領について暴露した。カラクロフ氏は最近ロシアから西側に亡命した最高位の情報将校の1人だ。
カラクロフ氏はプーチン大統領が「情報真空状態」にあると伝えた。彼は「13年間プーチン大統領が携帯電話やインターネットを使うのを一度も見たことがない。彼はすべての情報を最も近い人たちから得て事実上情報真空状態で暮らしている」とした。
プーチン大統領の情報孤立はコロナ禍でさらに激しくなったという。カラクロフ氏は「プーチン大統領は以前は活気に満ちて活動的だったのに、2020年以降のコロナ禍で世の中と自身を遮断し現実に対する考えがゆがんでいった。21世紀にまともな精神状態の人ならウクライナ戦争が起きるように放っておかなかっただろう」と強調した。
カラクロフ氏によると、プーチン大統領は健康を極度に気にしている。最近まで15〜20分の行事でも2週間の厳格な防疫を順守させ、2週間隔離した職員だけ同じ部屋で仕事ができるようにした。プーチン大統領の補佐官は依然として1日に何度もPCR検査を受けているという。
ただし、プーチン大統領の健康に深刻な問題があるのではないと強調した。健康上の理由で海外出張が取り消されたのは1〜2回だけで他の70代の人より健康な方だとした。
暗殺恐れセキュリティに執着
プーチン大統領が暗殺を恐れてセキュリティを徹底させる偏執症的な姿も紹介した。例えばプーチン大統領が滞在するモスクワ、サンクトペテルブルク、バルダイ、ソチなどすべての官邸の執務室を同じく整えたが、これは彼が正確にどこにいるのかわからないようにするためだという。海外に行く時は秘密が保障された対話ができる高さ約2.5メートルの電話ブースを持って行く。昨年10月のカザフスタンとの首脳会談時にロシア大使館内に爆弾退避所を設置するなど防空にも一層気を遣う状態という。
このほかロシア反体制派活動家のアレクセイ・ナワリヌイ氏が暴露したプーチン大統領の豪華な宮殿やヨットなどと、プーチン大統領が明らかにしていない2人の娘がいるのも事実だと話した。
カラクロフ氏は2014年のクリミア併合の際にプーチン政権に失望を感じた。彼は「当時クリミアに行って人々と直接会ったが併合に対する賛否は半々だった。ところが100%近い賛成が出てきてその時初めてプーチン政権に疑いを持った」とした。その後昨年のウクライナ侵攻を見てロシアを離れることを決めた。
カラクロフ氏は「戦犯であるプーチン大統領に従って生きたくなく、娘をもっと良いところで育てたかった。同僚がもっと多くの証拠を出して戦争を止められるように助けてくれることを望む」と頼んだ。彼は現在ロシア内務省の犯罪容疑者公開データベースに指名手配者と登録されている。
●ロシアのインフレは「低下基調」 プーチン氏 4/5
ロシアのプーチン大統領は4日、ロシアのインフレは低下しつつあると述べたほか、ロシア政府が国内の経済や企業を強化するためのプログラムを実施すると語った。
トゥーラにある鉄道関連の工場を訪問したプーチン氏は、インフレは低下基調にあり、3月のインフレは4%を下回るとの見通しを示した。
プーチン氏は従業員からの質問に対し、物価は上昇しているものの賃金は上がっていないことは認識しているとし、ロシア全体、働く人々全員にとっての重要な質問だと答えた。
プーチン氏は「この問題を解決することは国家にとって重要な任務だ。ロシアの家庭の収入が現代の要件にかなうようにすることが第一の任務だ」と述べた。
プーチン氏は2014年にロシアが直面した数々の制裁に言及し、懐疑的な見方があったにもかかわらず、ロシア経済は過去に回復力があることを証明してきたと述べた。
プーチン氏は、今回のウクライナ侵攻のために直面している制裁については言及しなかった。しかし、プーチン氏は先に、ウクライナとの戦争の資金を枯渇させることを目的とした西側諸国による制裁がロシア経済に打撃となる可能性があることを認めていた。
●“国民共和国軍”名乗る反プーチン派が犯行声明 カフェ爆発事件 4/5
ロシアのサンクトペテルブルクのカフェで爆発が起き、ウクライナ侵攻を支持していた軍事ブロガーが死亡した事件で、反プーチン政権派の組織が犯行声明を出しました。
2日、サンクトペテルブルクのカフェで起きた爆発では、「タタルスキー」のペンネームでウクライナ侵攻を支持してきた軍事ブロガーが死亡。26歳のロシア人の女が拘束されていますが、ロシアの当局は「ウクライナの情報機関が計画したテロ行為だ」としています。
こうした中、「国民共和国軍」を名乗る反プーチン政権派の組織は4日、SNSを通じて犯行声明を公開。事件について「外国の組織や情報機関の支援は受けていない」と主張しています。
爆発のあったカフェは、民間軍事会社ワグネルの創設者・プリゴジン氏がかつて所有していたとされ、侵攻を支持するイベントがたびたび催されていましたが、犯行声明では、爆発によりカフェが営業停止となることについて「満足している」としています。
一方、プリゴジン氏は4日、爆発現場で支持者らと集会を開き、イベント活動を継続していくとアピールしています。
●米仏首脳が電話協議、ウクライナ戦争終結へ中国の関与望む 4/5
フランス大統領府は5日、マクロン大統領が中国訪問に先立ちバイデン米大統領と電話協議し、ウクライナでの戦争終結加速に向けて中国の関与を求める立場で一致したと発表した。
仏大統領府の声明によると、両首脳は「ウクライナでの戦争終結を加速させるため中国の関与を求め、地域の持続可能な平和構築に参加する共通の意思に言及した」という。
また、両首脳はグローバルノース(北半球を中心とした先進国)とグローバルサウス(南半球を中心とした途上国)の連携に向けた取り組みに中国が貢献し、気候や生物多様性の問題に関する共同計画を構築することを望む立場を示した。
マクロン氏は5─7日に訪中する。中国外務省は、習近平国家主席がマクロン氏と会談し、2国間関係の方向性を示すと発表している。
●バフムート西側の高地、ウクライナ軍が「掌握」 4/5
激しい戦いが続くウクライナ東部バフムートで、現地で数週間にわたって従軍しているウクライナ軍の兵士は5日までに、バフムートの西側に位置する高地の街チャシブヤールはウクライナ側が掌握していると述べた。
この兵士は過去にもCNNの取材に答えたことがあり、所属は第46独立空中強襲旅団。
兵士によれば、戦争前にはチャシブヤールには数千人の住民がいた。街は周囲よりも高い位置にあるため特に大口径の火器の砲撃で有利で、こうしたことから街はウクライナとロシアの両軍にとって重要だという。
兵士は、ロシア軍がチャシブヤールの南東に位置するウクライナ軍の防御を突破できずにいると述べた。
兵士は「ロシア軍は約1カ月前には機会があった。彼らは道路から数百メートルの位置に立っていた。しかし、ロシア軍には十分な予備兵がなく、押し返され、現在は道路から2キロメートル離れた場所にいる」と述べた。
この道路はバフムートから西へ低地を進んでいく。
兵士によれば、道路周辺の防衛が強固なため、ロシア軍はチャシブヤールへ進攻する方法がない状態だという。
ロシア軍がチャシブヤールに進攻しようとすると、側面からの攻撃に弱くなるという。
兵士は、もしウクライナ軍がバフムートから撤退すれば、チャシブヤールがロシア軍の次の標的となるだろうとの見通しを示した。

 

●「いまのウクライナ危機はアメリカが招いた」ロシア・プーチン大統領 4/6
ロシアのプーチン大統領は新たに着任したアメリカ大使らを前に演説し、「いまのウクライナ危機はアメリカが招いた」と批判しました。
ロシア プーチン大統領「世界の安全保障と安定性に深く関わるロシアとアメリカの関係が深刻な危機に陥っている」
プーチン大統領は5日、アメリカのトレーシー大使ら各国の新任大使らを前に「2014年に起きたウクライナのクーデターをアメリカが支援したことが、いまの危機を招いた」と演説、ウクライナ侵攻の責任はアメリカにあると強調しました。
その後、安全保障会議に臨んだプーチン氏は、侵攻を支持する軍事ブロガーが爆発で死亡した事件などを念頭に、「ウクライナ当局がロシアで行ったテロ行為や破壊工作の準備に西側の情報機関が関与している」と証拠を示さず、一方的に主張しました。
●米駐露大使と初対面のプーチン氏、関係悪化は「米に責任」… 4/6 
ロシアのプーチン大統領は5日、露大統領府で外国大使から信任状を受け取る式典に出席し、1月に着任した米国のリン・トレーシー駐露大使と初めて対面した。プーチン氏は演説で、対米関係悪化の責任は「米国にある」との一方的な主張を展開し、ロシアのウクライナ侵略も正当化した。
ウクライナ侵略の要因については、「米国が(民主化運動を指す)『カラー革命』の手法を用いたためだ」と述べた。露情報機関は3月末、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのモスクワ特派員を「スパイ容疑」で拘束しており、米国が政権転覆を画策しているというプーチン氏の認識を反映した発言とみられる。
一方、ロシアの独立系報道機関や人権団体、記者らは4日、特派員の即時釈放を求める書簡を公表した。書簡には約200の個人・団体が署名し、露有力紙の記者らも参加している。
●プーチン氏、ウクライナ戦争で米国を非難  4/6
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は5日、駐ロシア大使に着任した米国のリン・トレーシー氏に対し、ウクライナ戦争の責任は米国にあると非難した。
プーチン氏は、モスクワのクレムリン宮殿で行われた新任大使17人の信任状奉呈式に出席。テレビ放映された式典で、米国が意図的に世界の安定を損なうような外交政策を堅持していると厳しく非難した。
「世界の安全保障と安定を直接左右するロシアと米国の関係は、残念ながら深刻な危機に直面している」とし、「現代の世界秩序の構築に向けた、両国の根本的に異なるアプローチが原因だ」と主張した。
また、「米国がカラー革命を支持するなどの手段を外交政策で用いたことが、結果的に現在のウクライナ危機を招き、ひいては米露関係の一段の悪化につながった」と指摘した。カラー革命とは、2014年のウクライナでの政変や、それ以降に旧ソ連諸国などで起きた民主化運動による政権交代を指す。
プーチン氏はトレーシー氏に対し、ロシア政府は常に「平等、互いの主権と利益の尊重、内政不干渉の原則のみに基づいて米露関係を構築することを提唱してきた」と語った。
欧州連合(EU)大使に対しても、EUはロシアとの地政学的対立をあおっていると非難し、こうした姿勢がロシアと欧州各国政府との「深刻な関係悪化」につながっていると主張した。
●西側情報機関、ロシアで「テロ攻撃」支援 プーチン氏 4/6
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は5日、西側諸国の情報機関がロシア国内でのウクライナによる「テロ攻撃」を支援していると非難した。
プーチン氏は、ロシアが昨年併合を宣言したウクライナ領土の法秩序維持に関する安全保障会議で、西側諸国の情報機関が「破壊工作とテロ攻撃」に関与したことを示す「根拠」があると発言した。
ロシア第2の都市サンクトペテルブルクでは2日、カフェで起きた爆発により、ウクライナ侵攻を支持する著名軍事ブロガーのウラドレン・タタルスキー氏が死亡した。
ロシア政府はこの事件について、ウクライナが仕組んだもので、収監中のロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の支持者による支援を受けて実行されたと主張。これに対しウクライナ政府は関与を否定し、事件はロシアの内紛によるものだと反論している。
●プーチン大統領 戦術核兵器配備合意のベラルーシ大統領と会談  4/6
ロシアのプーチン大統領は、戦術核兵器の配備で合意しているベラルーシのルカシェンコ大統領と首都モスクワで会談し、両国の安全保障などを巡り意見を交わしたものとみられます。一方、新たに任命されたロシア駐在のアメリカ大使を前に「アメリカによるウクライナ支援が現在の危機を招いた」と主張しアメリカを強く批判しました。
ロシアのプーチン大統領は5日、同盟関係にある隣国ベラルーシのルカシェンコ大統領をモスクワのクレムリンに招き会談を行いました。
会談の冒頭でプーチン大統領は、両国が連携して対処すべき多くの課題を話し合うとしたうえで「国際社会での協力関係や両国の安全保障問題も含まれる」と述べました。
プーチン大統領はベラルーシに戦術核兵器を配備すると先月表明していて、両首脳は配備に向けても意見を交わしたものとみられます。
これに先立ってプーチン大統領はロシア駐在の新任の大使らを前に演説しました。
アメリカのトレーシー大使も出席する中でプーチン大統領は「世界の安全保障と安定に直結する、ロシアとアメリカの関係は残念ながら深刻な危機にひんしている。アメリカが2014年にウクライナでクーデターを支援したことが現在の危機を招いたと言わざるをえない」と主張しアメリカを強く批判しました。
併合したウクライナ東部と南部の4州の治安対策徹底を指示
プーチン大統領は5日、安全保障会議を開き、去年一方的な併合に踏み切ったウクライナ東部と南部の4州について治安対策を徹底するよう関係閣僚などに指示しました。
閣僚らがオンラインで出席する一方で、プーチン大統領の両脇には4州の支配地域の親ロシア派の代表らが座る様子が国営メディアで映し出されました。これらの地域についてロシアが支配を維持する姿勢を強調した形です。
またロシア第2の都市サンクトペテルブルクにあるカフェで今月2日、爆発が起きたなか、安全保障会議では国内の治安情勢を巡っても協議し、プーチン大統領は「ウクライナがロシア側に仕掛けている破壊工作やテロ行為の準備には、欧米の情報機関が関与していると言える十分な根拠がある」と述べました。
●ロシア外相、トルコ訪問でウクライナ戦争や穀物取引など巡り協議 4/6
ロシアのラブロフ外相は今週6─7日に予定されているトルコ訪問で、トルコのチャブシオール外相と会談し、ウクライナでの戦争やエネルギー協力、黒海経由の穀物取引について協議する。ロシア外務省が発表した。
ロシア外務省によると、両外相は「ウクライナ情勢」のほか、地域および国際的な問題について幅広く協議する予定。「両外相は、ウクライナ危機の現状について意見を交換し、ウクライナがロシアの国益と懸念を考慮する場合にのみ可能な紛争の平和的解決の原則と手段について話し合う」という。
また穀物取引の状況についても協議するとした。
●IOC会長「平和の扉開ける」 ウクライナ侵攻念頭に訴え 4/6
国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は5日、国連が制定した6日の「開発と平和のためのスポーツの国際デー」へ向けて動画メッセージを発表し、ロシアによるウクライナ侵攻などを念頭に「スポーツは排除や分断ではない方法で平和への扉を開くことができる」と訴えた。
IOCが侵攻が終わらない中、ロシアとベラルーシ両国選手について「中立」などの条件付きで復帰を認めるよう各競技の国際連盟に勧告したことにウクライナなどが反発している。しかし、バッハ会長は「ほぼ全ての五輪で自分の国が戦争や紛争をしている状態にもかかわらず平和の象徴として競い合う姿を見てきた」と主張した。 

 

●ウクライナがロシアに侵入攻撃、プーチン氏威信に傷… 4/7
ロシア国防省は6日、ロシアが侵略を続けるウクライナと接する露西部ブリャンスク州に「ウクライナ軍の破壊工作・偵察集団」が侵入したと発表した。ウクライナに拠点を置くロシア人部隊「ロシア義勇軍団」は6日、SNSで侵入の成功を発表し、露当局の発表は虚偽と主張した。
義勇軍団のブリャンスク州への越境は3月2日以来で、2度目となる。プーチン露大統領は前回の侵入攻撃後にウクライナとの国境地帯の防衛強化を指示しており、威信が傷ついた。義勇軍団は身を隠す場所の提供で地元住民の協力を得たと主張し、「ロシアの解放闘争は勢いづいている」と訴えた。
一方、露有力紙コメルサントによると、ブリャンスク州に5日朝、ウクライナから軽飛行機2機が飛来して爆弾を投下した。1機は墜落し、露治安当局が60歳代の操縦士を拘束した。露当局は、ウクライナ軍が露側防空網の偵察と攻撃目的で投入したとみている。
インターファクス通信によれば、首都モスクワ南方約50キロ・メートルの民家付近で5日、爆発物を搭載していない自家製とみられる無人機が墜落しているのが見つかった。
ロシアへの軽飛行機や無人機の飛来について、ウクライナ側は関与の有無を含めた反応を示していない。
●プーチン氏「拍手なし」に臆測 侵攻で孤立、イメージ重なる 4/7
ロシアで5日に行われた外国大使の信任状奉呈式で、プーチン大統領の演説後に拍手が起きなかったことに対し、インターネット上で「異変」という見方が広がった。奉呈式では拍手がないのが慣例だが、ウクライナ侵攻に伴うロシアの国際的な「孤立」のイメージと重なり、臆測を呼んだようだ。
信任状奉呈式は、新たに着任した大使を迎える定例行事。今回の奉呈式で、プーチン氏は演説後、拍手を促すような表情でトレーシー駐ロシア米大使ら17人の新任大使らをしばらく見ていたが、反応はなかった。これについて、ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」は「(プーチン氏が演説後)別れのあいさつを何度しても、拍手はなく、微妙な沈黙が流れた」と冷ややかに伝えた。
近年の奉呈式では、プーチン氏が演説後に拍手を受けた例がある。しかし、大半の奉呈式では大使が拍手することはなかった。報道によると、ロシア外務省関係者は「外交儀礼上、拍手する決まりはない」と解説し、自分がその場にいてもしないと述べた。
●「プーチンの名前が読み上げられると大歓声が…」 グローバルサウス 4/7
ナミビアではプーチンが大人気?
3月21日、アフリカ南部・ナミビアで独立33周年を祝う記念式典が開かれた。首都から離れたウタピ(Outapi)で開かれた式典だったが、大勢の市民が見物に訪れた。
ナミビア政府のフェイスブックに掲載された式典の映像によれば、式典では各国からの祝電が読み上げられた。ベラルーシのルカシェンコ大統領、日本の天皇陛下、中国の習近平国家主席、と淡々と名前が読み上げられた。ところが、プーチン大統領の名前が読み上げられると、突如、大歓声と拍手がわき起こった。貴賓席に並んだ人々もずっと無表情だったが、なかには笑顔を浮かべる人もいた。
ナミビアは1966年から90年まで続いた独立戦争で、南アフリカのアパルトヘイト政権などと戦った。当時、ナミビアを支援したのが、アパルトヘイト政策に反対した旧ソ連だった。そのアパルトヘイト政権を倒したアフリカ民族会議(ANC)政権はロシアと親密な関係を築いている。今年2月も、南アフリカで、ロシア、中国両国とともに合同軍事演習を実施した。
また、ロシアや中国は、グローバルサウスと呼ばれる南半球の発展途上国や経済新興国などへの影響力も強めている。米国の経済アナリストの一人は「特に南米のスペイン語圏では、ロシアの影響力を強く感じる」と語る。ロシアの政府機関がスペイン語圏でフェイクニュースを作り、米国のヒスパニック向けに情報を輸出しているという情報もあるという。
米2016大統領選、グローバルサウスでの認知戦を制したロシアとプーチン
前述のアナリストは「2020年米大統領選で、トランプ・ペンス陣営がフロリダ州を制した原因のひとつは、フロリダに住むキューバ系市民などヒスパニックの支持を獲得したことが大きい」と指摘する。ロシアは2016年大統領選では、ヒラリー・クリントン候補のスキャンダルなどの偽情報を流し、トランプ氏の当選を支援したという指摘が多数出ている。
松村五郎・元陸上自衛隊東北方面総監は「日本を含む西側世界では、ロシアが仕掛ける認知領域の戦いは成功していないように見える。でも、グローバルサウスではかなり奏功しているようだ。たとえ、目標の国の政府が偽情報を信じなくても、国民が信じれば、政府がロシア支持や中立の立場を取りやすくなる」と語る。
世界は今、日米や西欧諸国などの自由・民主主義陣営と、ロシア・中国が主導する権威主義陣営、そしてどちらにも属さない陣営の三つに分かれている。習近平国家主席とプーチン大統領は3月にモスクワで行われた首脳会談で、自由・民主主義陣営の動きを牽制し、国際秩序を変えていく姿勢を示した。
「劣化ウラン弾は核兵器」「西側諸国はナチス・ドイツやイタリアのファシスト政権、日本の軍国主義が作った枢軸体制を新たにつくろうとしている」といった、プーチン氏が仕掛ける「認知領域の戦い」の主戦場は、グローバルサウスなのかもしれない。私たちは「何をばかなことを」と高をくくっている場合ではないだろう。
●何も言わないほうがむしろいい? トランプ起訴に沈黙するプーチン氏の内心 4/7
ロシアに友好的だったトランプ前米国大統領が起訴されたが、クレムリン宮は関連の言葉を控えている。トランプ前大統領と厚い親交を続けてきた各国の極右・ポピュリスト志向のストロングマンたちが公開支持の意思を明らかにしたのとは対照的だ。しかし一部ではロシアがこのように関連のコメントを自制している暗黙的なトランプ擁護だという分析がある。
5日(現地時間)、ロシア官営タス通信によると、クレムリン宮のドミトリー・ペスコフ報道官はこの日「我々は米国の内政にいかなる方法であろうとも干渉する資格があるとは考えない」とし「逆に米国もロシア問題に干渉する資格はないと考える。したがってこれに対して言及したくない」と明らかにした。
ペスコフ氏のこの発言は、ロシアのウクライナ侵攻にもプーチン大統領に対して友好的な発言を繰り返してきたトランプ前大統領の起訴関連の質問に対する回答だった。
トランプ前大統領とプーチン大統領はどちらも鉄拳リーダーシップを前面に出した国際社会の代表的な「ストロングマンリーダー」だ。トランプ前大統領は在任期間にプーチン大統領に好感を示して交流を重ねてきた。トランプ前大統領がプーチン大統領の長期執権を羨み、自分も独裁者のように行動したかったという米中央情報局(CIA)前職局長の暴露もあった。ウクライナ侵攻以降はトランプ前大統領がプーチン大統領を「天才」と表現して物議を醸すこともあった。
ロシアの沈黙の裏面には、ロシアと友好的な関係を維持してきたトランプ前大統領を擁護しようとする意図が含まれているという観測もある。コーネル大学歴史学科のデービッド・シルビ副教授は「クレムリン宮は沈黙でプーチン大統領がバイデン大統領よりトランプ前大統領のほうを好むということを表わした」としながら「クレムリン宮は言及そのものが、米国社会の混乱を引き起こした『ロシアの友人』トランプに対して何の役にも立たないと考えている」と明らかにした。
シルビ副教授は「前職大統領の起訴が『米国では何人も法の上にない』というメッセージを含有しているが、プーチン大統領はロシア人にこの点を強調したくない」とも話した。
また、ロシア内政に米国が干渉するなというメッセージが含まれているという分析もある。ジョージメイソン大学政策・政府大学院のマークN.カッツ教授はニューズウィーク誌に「ソ連の時期からロシアは米国とは違って他国の内政に干渉しないと主張してきたが、実際は違う」とし「ロシアの沈黙には『我々も米国内政に干渉しないから、反対に米国も干渉するな』という意図が含まれていると解釈できる」と主張した。
反面、トランプ前大統領と近い他国の極右・ポピュリスト志向の国際リーダーたちは公開支持の意思を明らかにした。ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相は3日、ツイッターに自身とトランプ前大統領が握手する写真を上げて「大統領、ずっと相対して戦ってください。我々はあなたと共にいます」と書き込んだ。エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領も米国の民主主義を批判してトランプ前大統領を擁護した。
メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は5日の記者会見で「私は彼ら(米検察)がトランプ前大統領にした行為に同意しない」とし「選挙のための政治的目的」と批判した。
トランプ前大統領は4日、米国大統領経験者として初めて起訴されて刑事裁判所に立った。2016年大統領選挙を控えてポルノ女優出身のストーミー・ダニエルズさんに会社のお金を渡した後に企業文書を改ざんした疑惑などを含めて合計34件の容疑が適用された。トランプ前大統領はすべての容疑を全面否認している。
●中仏「平和への努力支持」 ウクライナ巡り核戦争反対 4/7
中国とフランス両政府はマクロン大統領の訪中日程最終日の7日、共同声明を発表し「国際法と国連憲章の目的と原則に沿って、ウクライナの平和回復に向けた全ての努力を支持する」と表明した。核戦争や、原発への武力攻撃に反対する立場でも一致した。中仏両国の関係強化もうたった。新華社電が伝えた。
7日、中国広東省広州の中山大で演説するフランスのマクロン大統領(AP=共同)
マクロン氏は7日、広東省広州を訪問。学生と交流するため地元の名門大学を訪れ、演説でウクライナに侵攻したロシアを非難した。習近平国家主席は北京から赴き、前夜の公式夕食会に続いて連日マクロン氏と夕食を共にし、歓待した。
フランス大統領府によると同国大統領が中国有数の商業都市、広州を訪れるのは初めて。18世紀にフランスが中国で最初の外交施設を開いた場所が広州だった。広東省は習氏にとり父親の故習仲勲氏が省トップを務めたゆかりの地。習氏は夕食の場所に父も使った公邸を選んだ上、茶でももてなし、親密感を高めた。
●中仏が共同声明 ウクライナ情勢「平和回復の努力を支持」 4/7
中国とフランスは7日、ウクライナ情勢について「平和回復に向けたすべての努力を支持する」ことなどを盛り込んだ共同声明を発表しました。
中国南部の広東省で庭園を散策した習近平国家主席とフランスのマクロン大統領。
非公式会談の後、両政府が発表した共同声明ではウクライナ情勢について「平和回復に向けたすべての努力を支持する」と表明したほか、核戦争や原子力発電所への武力攻撃に反対することなどでも一致しました。
また、経済面の連携強化や人的往来を活性化することについても盛り込まれています。
習主席がわざわざ広東省まで同行するなど、その厚遇ぶりが目立っていますが、中国側としてはゼロコロナ政策で傷んだ経済を回復させるため、欧米からの投資を呼び込みたい考えで、今回の対応にもこうした思惑が透けて見えます。
●ウクライナ東部のバフムト ロシア側が勢い取り戻しか 英分析  4/7
激しい戦闘が続くウクライナ東部のバフムトでは、掌握をねらうロシア側がここ数日、勢いを取り戻しているとイギリス国防省が分析しています。
ロシアは、東部ドネツク州でウクライナ側の拠点の一つ、バフムトの掌握をねらい、攻撃を続けています。
戦況についてイギリス国防省は7日、「ロシア軍の進軍は先月下旬以降はこう着していたが、ここ数日の戦闘では勢いを取り戻している。街の中心部まで到達し、西側にあるウクライナの主要な供給路が深刻な脅威にさらされている可能性がある」と指摘しました。
その要因について、ロシア軍が精鋭の空てい部隊を投入して作戦を強化したり、砲兵部隊を効果的に使っていたりすることや、確執が続いてきたロシアの正規軍と民間軍事会社ワグネルとの間で前線では関係が改善していると分析しています。
これに先立ち、ウクライナのゼレンスキー大統領は5日、訪問先のポーランドで行った記者会見で、バフムトの戦況について「私にとっては兵士を失わないことが最も重要だ。包囲されて兵士を失う危険がある場合は司令官が相応の正しい決断を下すことになる」と述べ、戦況がさらに厳しくなれば撤退する可能性を示唆したとも受け止められていました。
一方、ウクライナ軍も大規模な反転攻勢に向けた準備を進めていて、欧米側に軍事支援の強化を求めています。
●ロシア外相とウクライナ情勢協議 NATO会合直後に配慮―トルコ 4/7
トルコのチャブシオール外相は7日、首都アンカラ訪問中のロシアのラブロフ外相と会談した。ロシアの侵攻下にあるウクライナ情勢を巡り、チャブシオール氏はロシアの権益にも配慮する立場を強調した。トルコ南部の原発建設での協力についても協議した。エルドアン大統領もラブロフ氏と面会した。
チャブシオール氏は4、5両日、ブリュッセルで北大西洋条約機構(NATO)外相会合に出席し、フィンランドのNATO加盟に立ち会った。NATO拡大に「対抗措置を取る」と危機感を強めるロシアの外相訪問をこの直後に受け入れた形。6日には夕食を共にして歓待しており、トルコのNATO内での独自の立ち居振る舞いが改めて浮き彫りとなった。

 

●ウクライナの大規模反攻、数週間以内か…作戦計画の機密流出情報も 4/8
ウクライナ軍が大規模な反転攻勢の開始を視野に、ロシア軍が占領する南部ザポリージャ州の施設への攻撃を強化している。タス通信によると、ウクライナ軍は6日未明、高機動ロケット砲システム(HIMARS)6発を物流拠点メリトポリに発射した。ドイツメディアによると、ブリンケン米国務長官は、反攻が「数週間以内に始まるだろう」との見方を示している。
6日のメリトポリへの攻撃に関し、ウクライナ側の現地市長(市外退避中)は6日、露軍が基地として使っている飛行場が「使用不能になった」とSNSで明かした。3月下旬には露軍が物資補給で重視する鉄道駅も攻撃対象となった。
一方、米紙ニューヨーク・タイムズは6日、米国と北大西洋条約機構(NATO)が3月1日時点で作成したウクライナの反攻計画に関する機密文書が一部改ざんされて流出したと報じた。反転攻勢のために、ウクライナ軍は4000〜5000人規模の12戦闘旅団を編成し、戦車250両を含む600超の戦闘車両が必要との記述もあったという。
ウクライナ国防省情報総局の幹部は7日、流出文書に信ぴょう性がないと強調した。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は7日、軍司令官らとの会合で情報漏えい対策も協議した。
●“ウクライナ軍事支援の機密文書 SNSで拡散”米国防総省も調査  7/8
ロシアによるウクライナへの侵攻をめぐって、アメリカなどが計画したウクライナへの軍事支援に関する機密文書が、SNS上で拡散していたと、アメリカの有力紙「ニューヨーク・タイムズ」が伝えました。
アメリカ国防総省も事態を把握していて、調査を進めています。
「ニューヨーク・タイムズ」が複数のバイデン政権高官の話として伝えたところによりますと、今週、SNSのツイッターやテレグラムに、ウクライナへのアメリカやNATO=北大西洋条約機構の軍事支援に関する機密文書が投稿され、拡散しているということです。
この中には、武器の供与計画や戦闘地域でのウクライナ軍の戦力のほか、高機動ロケット砲システム=ハイマースに使われるロケット弾の消費ペースなどの情報も含まれているとしています。
情報は3月1日時点のもので、ウクライナ軍が計画しているとされる大規模な反転攻勢についての戦術などは含まれていないということです。
投稿された機密文書の中には、ロシア軍の死者数も含まれていたということですが、この部分は大幅に少なく書き換えられていて、専門家は、ロシア政府がみずからを有利に見せるよう意図的に修正し、情報戦に利用している可能性があると指摘しています。
アメリカ国防総省のシン副報道官は、NHKの取材に対し「報道は把握しており、現在、調査を進めている」とコメントしています。 
●ロシア軍 東部激戦地バフムトの掌握ねらい 攻撃強化か  4/8
ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は、東部の激戦地バフムトの掌握をねらい、一層攻撃を強めているとみられます。一方、ロシア軍は、ウクライナ各地のエネルギー関連施設をねらって大規模なミサイル攻撃を行ってきましたが「エネルギーシステムを損なわせる試みは失敗に終わった」との指摘も出ています。
ウクライナ軍の参謀本部は8日、ロシア側は東部ドネツク州にあるウクライナ側の拠点の1つバフムトや、バフムトからおよそ50キロ南にあるアウディーイウカなどへの攻撃に注力していると発表しました。
このうちバフムトについては、一部の攻撃を撃退したとしながら「ロシア側は完全に支配しようとしている。激しい戦いが続いている」という認識を示しました。
バフムトをめぐっては、イギリス国防省が7日「ロシア軍は、街の中心部まで到達した」などとしたうえで、ロシア側が勢いを取り戻しているという分析を示していて、一層攻撃を強めているとみられます。
激しい攻防が続くバフムトについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は5日「包囲されて兵士を失う危険がある場合は司令官が相応の正しい決断を下すことになる」と述べ、戦況がさらに厳しくなれば撤退する可能性を示唆したとも受け止められています。
一方、ロシア軍は、去年10月以降、ウクライナ各地のエネルギー関連施設をねらって大規模なミサイル攻撃を行ってきましたが、イギリス国防省は8日、先月上旬以降こうした攻撃が少なくなっていると指摘しました。
そのうえで、施設の復旧が進められているなどとして「エネルギーシステムを著しく損なわせる試みは失敗に終わった可能性が高い」と指摘しています。
●ウクライナ軍事支援の機密文書が流出、わかっていること 4/8
米国防総省は7日、ウクライナ戦争に関する機密情報が詳細に記された複数の文書がソーシャルメディアに出回っており、調査を行っていると発表した。情報流出の背後にいるのが何者かについては、ほとんどわかっていない。
バイデン政権の当局者は米紙ニューヨーク・タイムズに対し、Twitter(ツイッター)やTelegram(テレグラム)で拡散された文書に、ロシア軍への反転攻勢に備えてウクライナ軍を増強するための米国と北大西洋条約機構(NATO)の機密計画の詳細が記されていることを認めた。ただし、当初は正規の文書かどうか不明だったとしている。
米高官がニュースサイトのポリティコに認めたところによると、問題の文書は本物で、米軍統合参謀本部が作成した。だが、米国が推計したウクライナ側の死者数を誇張し、ロシア側の死者数を過小評価するなど、不正な改竄の後がみられるという。
ニューヨーク・タイムズによれば、文書は5週間前に作成されたもので、ウクライナ軍の反転攻勢に何が必要となるかについて、1カ月前時点での情報が記されている。具体的な戦闘計画は記載されていない。
文書の中には、米国がウクライナ軍に供与したロケット砲システムの弾薬消費量や、今後供与される武器の写真、部隊・大隊の戦力などが記されたものもあるとされる。
英紙フィナンシャル・タイムズによると「最高機密」と明記された文書はウクライナ東部バフムートで続く戦闘を概説し、別の文書は来るべき反転攻勢に関連してウクライナ軍の部隊を列挙していた。これについてウクライナ軍顧問は、これらの情報は機密ではないとの見方を示した。
軍事アナリストらは英紙タイムズに対し、一連の文書には機密やタイムリーな情報は記載されていないものの、情報漏洩は米国の情報活動における重大な違反であり、ウクライナとの情報共有に悪影響を及ぼす恐れがあると指摘している。
ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領府顧問はテレグラムへの投稿で、問題の文書について「はったりにすぎず、目に入ったゴミだ」と一蹴。ウクライナの反転攻勢に「影響を与える」ためにロシア当局が公開したものだと示唆し「実際のウクライナの計画とは関係ない」と主張した。ウクライナ政府は7日、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が軍関係者と会合を開き「国防軍の計画に関する情報漏洩」の防止策について協議したと発表した。
一方、ロシア政府とつながりのある民間軍事会社ワグネル・グループ系のテレグラム・チャンネル「Grey Zone(グレーゾーン)」は、一連の文書はウクライナがロシア軍司令部を「惑わすため」に流した「偽情報」だと主張している。ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は米CNNテレビに送った声明文で、文書に直接言及はしなかったが「ロシアとウクライナの紛争に米国とNATOが関与していることに微塵の疑いもない」と述べた。
文書の流出させ改竄したのが何者かは不明。ロシアとウクライナは互いを非難している。米ホワイトハウスは本件についてまだ反応していない。
●ロシア情報機関に「不満を持つ」要員が多数、米FBI長官 4/8
米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は8日までに、ロシアによるウクライナ侵攻に関連し、情報機関の要員を含め「不満を持つ」ロシア人が多数いるとの見方を示した。
時事問題や米国が直面する試練へのFBIの対応をテーマに、米テキサス州カレッジステーションにあるテキサスA&M大学で開かれた討論会で述べた。
同大学の公式サイトによると、長官はこの中でFBIが引き入れたいとする「不満を抱く」多くのロシアの情報機関要員がいると指摘。
「これら異論を持つロシア人と話を交わしたいと我々が思っていることを知らせたい」ともし、「彼らは歴史の行く末を変えられる役目をおそらく持つことができる」ともした。
レイ長官はまた、米国と同様に中国もウクライナ情勢を凝視し、教訓を得ているだろうと主張。
中国側が焦点を当てている教訓はロシア経済に及ぼす西側の制裁の影響であろうと推測。その上で「潜在的な制裁の発動が自国の経済へ及ぼす影響を緩和させるための措置を講じ始めている」との批判をにじませた分析も示した。
中国のこの動きは台湾に対して将来的にあり得る行動を占う材料としても受け入れられるとも見立てた。「例えば中国が台湾を押さえる強硬措置に出た場合、多数の制裁が打ち出されることは予想し得る」とした。
●ウクライナ、ブラジル大統領の和平案一蹴 クリミア放棄せず 4/8
ウクライナは7日、2014年にロシアに併合された南部クリミア(Crimea)半島の領有権を放棄するというブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)大統領による和平案を一蹴した。
ウクライナ外務省のオレグ・ニコレンコ(Oleg Nikolenko)報道官は、「ウクライナの領土を1センチでも譲ることを正当化する政治的・道徳的理由はない」「和平調停の試みはいかなるものであれ、主権尊重に基づき、ウクライナの領土保全を完全に回復するものでなければならない」とフェイスブック(Facebook)に投稿した。
ルラ氏は6日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は「すべてを手に入れることはできない」として、ウクライナがクリミア半島の領有権を放棄して和平交渉を開始すべきとの考えを示唆していた。
ルラ氏は来週、同じく和平案を提示している中国を訪問する際、本件についても協議するとみられている。ウクライナ紛争の解決に向けた多国間グループの創設も提案しており、訪中後の実現を「確信」していると述べている。

 

●「あばずれを射殺すべき」と叫ぶ司会者 ロシア、高まる死刑復活の声 4/9
ロシア・サンクトペテルブルクのカフェで2日、ウクライナ侵攻を支持する戦場記者が爆殺された事件をめぐり、ロシアで死刑復活を求める声が強まっている。1996年以来「凍結」してきた死刑制度は、これまでも復活が取りざたされてきたが、侵攻後に欧州との関係が決定的に悪化したことで現実味が増している。反政権派への弾圧に利用される恐れがある。
「あばずれと旦那を一緒に射殺すべきだ。我々は戦争をしている。死刑を復活させ、世界のどこにいる敵でも容赦なく壊滅させる」
3日に放映されたロシア国営テレビの番組。プーチン大統領の支持者として知られる司会者のウラジーミル・ソロビヨフ氏は、戦場記者のウラドレン・タタルスキー氏殺害に関わった容疑で逮捕されたダリヤ・トレポワ容疑者を、声を張り上げてののしった。
●ポーランド「MiG-29追加で送る」 F-16は“ちょっと待って”? 4/9
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は現地時間の2023年4月6日、ポーランドを訪問し、同国のアンジェイ・ドゥダ大統領らと会談しました。
会談では、クラブ自走砲とロソマック装甲兵員輸送車のウクライナへの供与に加え、MiG-29戦闘機14機の追加供与も確認されました。具体的な供与時期に関しては、8機を先行させ数日中に引き渡し、残りの6機に関しても準備が整い次第送る予定であるとウクライナメディアでは報じられています。
また、ウクライナはポーランドほか北大西洋条約機構(NATO)加盟国に、アメリカ製のF-16戦闘機の供与も呼びかけていますが、ポーランド当局は情勢に鑑みて、すぐに供与の決定は下せないという考えのようです。
なお今回、ゼレンスキー大統領のポーランド訪問や、2月の欧州訪問によるNATO諸国の兵器・武器供与に関して、ロシア当局やロシアメディアは猛烈に批判。ウクライナへの武器供与や援助に反対する一般のツイッター投稿を引用し、西側諸国の人々がゼレンスキー大統領の傲慢な態度に激怒した、という報じ方をしているメディアもあります。
●ロシア ウクライナに軍事侵攻 9日の動き 4/9
ウクライナ軍 近く反転攻勢の構え ロシア警戒強める
ウクライナ軍の参謀本部は8日、ロシアが南部のザポリージャ州とヘルソン州で大規模なざんごうを築くなど防衛線を強化し、現地の住民を他の地域に移動させる準備を進めていると指摘しました。ウクライナ軍が近く大規模な反転攻勢に乗り出す構えを示す中、ロシア側は警戒を強めているとみられます。
ゼレンスキー大統領 クリミア奪還の決意改めて示す
ウクライナのゼレンスキー大統領は7日、「残念ながらクリミアはロシアに支配されているが、悪は打ち負かせると確信している。クリミアの解放は、ウクライナだけでなく、全世界にとっても他に替えられるものではない」と述べ、クリミアも奪還する決意を改めて示しました。
ロシア ザポリージャ州などの爆発 ウクライナの攻撃と主張
ウクライナ南部では6日、ロシアが軍事侵攻により占拠したザポリージャ州の主要都市メリトポリの飛行場などで爆発が起きたと現地のメディアが伝えました。また、9年前にロシアが一方的に併合したクリミアでも8日朝、爆発があったと伝えられ、ロシア側はいずれもウクライナ側からの攻撃によるものだと主張しています。 
●旧ソ連・アルメニアがロシア離れ? ナゴルノカラバフ巡り不満か 4/9
親露国家とみられてきた旧ソ連のアルメニアが、米軍主導の演習に参加を発表するなど対露姿勢に変化が生じている。ウクライナ情勢を巡ってプーチン露大統領に逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)への加盟検討も進めており、ロシアは反発を強めている。
地元メディアによると、アルメニア国防省の報道官は7日、年内に欧州地域で米軍が主導する二つの演習に参加する方針を明かした。アルメニアは隣国アゼルバイジャンとの係争地ナゴルノカラバフを巡り、ロシアが十分に介入しないとして不満を強めてきた。
アルメニアはロシアが主導する軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)に加盟するが、ナゴルノカラバフ情勢への対応の不満から、今年は自国領内での演習を受け入れない方針を表明した。米軍主導の演習に参加すれば、ロシアとの関係が悪化する可能性もある。
アルメニアのパシニャン首相は7日、ロシアのプーチン大統領と電話協議した。ロシア大統領府によると、ナゴルノカラバフ情勢などを話し合い、演習参加も議題になったとみられる。
ICC加盟に向けた動きも、背景にあるのはナゴルノカラバフ情勢だ。散発的に続く衝突を巡り、ICCでアゼルバイジャン軍の「戦争犯罪」を追及する狙いがある。アルメニア首相府は2022年12月にICCへの加盟を検討する方針を発表し、憲法裁判所は3月下旬に加盟は「合憲」との判断を下した。
ロシア通信などによると、ロシア外務省はアルメニアに対し、ICCへの加盟は「非常に重大な結果を招く」と警告したという。ICCは3月中旬、ロシアがウクライナから子供の連れ去りに関与した疑いがあるとして、プーチン氏に逮捕状を出した。アルメニアがICCに加盟すれば、拘束の恐れがあるためプーチン氏が同国を訪れる機会は制限される。
両国の関係がもつれる中、ロシアは3月末、アルメニアからの乳製品の輸入を禁じると発表した。衛生上の理由だとしているが、ICCへの加盟を巡り、アルメニアに圧力をかける意図もあるとみられる。
●数千人のウクライナの子どもたちがいまだ行方不明 4/9
複数のウクライナの子どもたちが先月末、家族の元に戻ったとの報道があった。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が主導するウクライナ侵攻で行方不明になった子どもたちだ。
国際刑事裁判所(ICC)は先月17日、同大統領と同国のマリア・リボワベロワ大統領全権代表(子どもの権利担当)に対し、ウクライナの子どもに対する戦争犯罪に関与したとして逮捕状を出した。それ以降、ウクライナの子どもたちが帰還し始めている。だが、ロシアにいると言われる行方不明のウクライナの子どもたちの数と比べると、帰還した子どもたちの数はまだ少ない。行方不明の子どもたちは数千人におよぶとの試算もあるが、プーチンのウクライナ侵攻によってもたらされた強制退去や混乱の中、正確な数字を検証するのは困難だ。
ウクライナの子どもたちの拉致や強制的な養子縁組の問題は今に始まったことではないが、最近になってさまざまなやり方に関する情報が続々と表面化してきている。こうした中、国連ウクライナ調査委員会は先月16日、ウクライナからロシアへの子どもの移送を巡り「人権と国際人道法の違反」を指摘。同委員会によると、子どもの移送や国外退去に関する現在の状況は戦争犯罪に当たる。目撃者は同委員会に対し、移送された低年齢の子どもたちの多くが自分の家族と接触することができず、家族との接触を永久に失ってしまうかもしれないと証言した。また、民間人の本国送還の遅延も戦争犯罪に当たる可能性があるという。
欧州評議会のドゥニャ・ミヤトビッチ人権委員は先月上旬、ロシアやロシアの占領地に移送されたウクライナの子どもたちを家族と再会させるための緊急行動を呼び掛けた。同委員は、この問題に関する詳細な調査と事実調査団を指揮し、プーチンによる侵攻がウクライナの子どもたちに壊滅的な結果をもたらし、多くの子どもたちが死傷し、医療や教育といった基本的権利を享受する機会を奪われるとともに、強制退去させられ、両親や養育者から引き離される危険にさらされていると指摘した。
欧州評議会は、こうした状況にさらされる子どもたちをいくつかのカテゴリーに分類している。1つは、ウクライナのロシア占領地域に居住していた孤児や施設の子ども、次に2014年から昨年2月24日の侵攻開始以前にロシアに連行された子ども、さらに昨年の侵攻開始以降にウクライナのロシア占領地域または一時支配下に入った地域にある保護施設からロシアに連行された子どもたちだ。
欧州評議会が国際社会に呼び掛け
欧州評議会の説明によると、ロシア当局は子どもたちが孤児であるか、親からの世話を受けていないと主張し、定期的に後見人を変更したり、里親に預けたりすることが多いという。こうした事態は、ロシア当局がウクライナにいる子どもの親族や既存の法定後見人の確認や連絡に十分な努力をしないために起こることが多い。子どもやその親族の身元や居場所に関する正確な情報は、すべての事例で入手できるわけではないが、ミヤトビッチ人権委員は、ロシアに連れ去られたウクライナの子どもたちは現在、自国で法定後見人がいるとの報告をウクライナ当局から受けているという。
もう1つのカテゴリーには、戦闘中に親や養育者が死亡、負傷、拘束、失踪したことで同伴者がいなくなった子どもや、いわゆる「ろ過」プロセスで家族と引き離された子どもが含まれる。(訳注:ロシア当局はウクライナの占領地で拘束した地元住民を尋問していると指摘されている。この尋問プロセスが「ろ過」と呼ばれる。)
欧州評議会は次のように指摘する。「ロシア軍の一時的な支配下に入った地域では、ロシア各地やクリミア半島などロシアに占領されたウクライナ領で、娯楽キャンプに送られた子どもたちもいる。親が直接引き取りに来ない限り、キャンプ当局が引き渡しを拒否すると言われているため、規定の滞在期間が終わっても、多くの子どもたちが親元に戻されていない。このようなキャンプに収容された子どもたちは、親ロシア的な世界観やウクライナ人のアイデンティティーをおとしめる歴史物語に洗脳され、反ウクライナ感情が一般化しているとも言われている」「家族や養育者から長く離れることで生じるストレスや不安は、ロシアに連れ去られた多くのウクライナの子どもたちに壊滅的な長期的悪影響を及ぼす可能性がある。これは、特別な支援が必要な子どもたちや施設に入れられた子どもたちなど、最も弱い立場の子どもたちに特に当てはまる」
ICCが子どもに対する戦争犯罪に焦点を当てたことは、この軽視されがちな犯罪に対する正義と説明責任に向けた重要な一歩といえる。しかし、状況に対処するためにはさらなる対策が必要だ。そのため、欧州評議会はウクライナの子どもたちを家族や法定後見人と再会させる仕組みの確立などを求めてきたのだ。ミヤトビッチ人権委員は「子どもの利益を最優先にする原則を十分に尊重した上で、離散したすべてのウクライナの子どもの居場所を特定し、追跡するとともに、家族または法定後見人と再会させる努力を追求すること」を、欧州評議会の全加盟国に呼び掛けた。また同評議会は国際社会に対し、同伴者のいないウクライナの子どもたちの家族との再会を促す分野で活動する信頼できる組織を支援するよう喚起した。同評議会は最後に、子どもに対する犯罪の責任者全員に正義と説明責任を追求するよう訴え掛けた。
ウクライナの子どもたちが帰還し始めているのは、好ましい展開といえよう。だが、それ以上に多くの子どもたちが行方不明になっており、国際社会はそういった子どもたちの帰還を優先させなければならない。
●ウクライナが電力輸出を再開 ロシアのインフラ攻撃から復旧 4/9
ウクライナのエネルギーインフラが、数カ月にわたるロシアの攻撃から復旧し、6カ月ぶりに電力輸出を再開した。
ロシアは昨年10月以降、ウクライナのエネルギーインフラに長期間、意図的な攻撃を繰り返していた。
これにより冬の間、ウクライナの各都市で停電が起きたり、電力不足による計画停電が行われたりした。また、電力輸出も停止せざるを得なかったが、余剰電力を外国に売れるまでに回復した。
ヘルマン・ハルシュチェンコ・エネルギー相はこのたび、輸出を承認する特別令に署名。ただし、国内の顧客を最優先するとした。
ハルシュチェンコ氏によると、ウクライナでは2カ月近くにわたって電力に余裕が出ており、国民は電力使用に制限を受けていないという。
「最も困難な冬は去った」と、ハルシュチェンコ氏は述べた。
「次は電力輸出を開始することだ。そうすれば、破壊されたり損害を受けたりしたエネルギーインフラについて、再建に必要な財源がさらに手に入ることになる」
その上で、電力システムの復旧に携わったエンジニアや各国のパートナーの「多大な仕事」を評価した。
BBCの取材では、ウクライナ市民は3月の時点で、電力供給が安定してきたと話していた。
ドニプロ在住のインナ・シュタンコさんは、「街は変わった。やっと街灯が戻って来たし、街中を歩くのが怖くなくなった」と話した。
しかし、国営エネルギー会社「ウクルエネルゴ」は、ロシアが攻撃を止めるという保証はないと警告した。
ウクエネルゴは8日、ロシアはこの戦争で1200発以上のミサイルとドローンをエネルギー施設に向けて発射してきたと報告。欧州国のエネルギーシステムを破壊しようとする攻撃としては最大のものだと述べた。
ウクライナではこの冬、停電と厳寒の中、各地に設置された暖房付きシェルター「不屈センター」で暖を取った市民もいた。このシェルターでは電力や暖房に加え、食料や医薬品も提供していた。
ロシアがエネルギー施設への攻撃を始めて以降、被害を受けなかった地熱発電所や水力発電所はないという。
また、ウクライナは欧州最大のザポリッジャ原発を抱えているが、同原発は現在、ロシアが占領している。
ウクライナ政府は昨年6月、戦争開始後に最大輸出市場となった欧州連合(EU)への電力輸出で、年内に15億ユーロ(約2180億円)の売り上げを達成したいとしていた。
●ロシア“弾薬供給止めた” 攻撃よりも大規模反転攻勢に備えか  4/9
ウクライナで侵攻を続けるロシアは、一部で攻撃に向けた弾薬の供給を止めたとする声が出ていて、前線での攻撃よりも、ウクライナの大規模な反転攻勢に備えているという見方が強まっています。
ウクライナ東部のドネツク州でロシア軍による侵攻に加わる、親ロシア派の部隊の幹部は8日、SNSで、弾薬の供給がなくなったと訴え、「ロシア軍の司令部は、一部で供給を完全に止める決定をしたようだ。敵の反撃への準備のためだろう。前線の部隊にとっては非常につらい」と不満を書き込みました。
これについて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は8日、「ロシア軍の司令部が、弾薬を供給する優先順位を厳密につけざるをえないことを示している」と分析し、ロシア側が前線での攻撃よりも、ウクライナ軍が近く行う構えの大規模な反転攻勢に備えているという見方を示しています。
これに関連してウクライナ陸軍の幹部は8日、地元メディアに対して、ロシア側は前線での攻撃のペースが落ちていると指摘しました。
そして、ロシア軍が仕掛けている攻撃は、もはや前線を突破するためではなく、反転攻勢を食い止めようとウクライナ軍の戦力を分散させることに集中しているようだと分析しました。

 

●中国の属国と化すロシア 「戦後」も依存は続くのか 4/10
アレクサンドル・ガブエフ(米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンター所長)が、3月18日付の英エコノミスト誌に、「ロシアの中国依存はプーチン後も続く」と題する寄稿をし、ロシアの中国の属国化時代を予想している。
習近平が3月20日に国賓としてロシアを訪問する。ロシアは両国間の対等性を示そうとするだろうが、広がる両国間の力の差は隠せないだろう。
プーチンは、ウクライナ攻撃を米国支配への反乱、ロシアの完全な主権への跳躍にしようとしている。しかし現実は異なる。開戦後13カ月、ロシアは、経済的にも外交的にも中国にますます依存している。2022年、ロシアの輸出の30%、輸入の40%を中国が占めた。ロシアのドル・ユーロへのアクセスが西側制裁下にあるので、この貿易の大きな割合が中国元で決済されている。西側がロシアの天然資源への依存を低める中、この依存は今後も増大する。
今のところ、中国はロシアへの経済梃子を強めることで満足しているが、今後中国は政治的譲歩をより多く求めるだろう。中国はロシアに機微な軍事技術を共有することを求めうるし、北極海や中央アジアでの中国の存在感は高まるだろう。
ウクライナ戦争によって、中国は3つの理由で、ロシアの最も影響力のあるパートナーになっている。第1に、中国のロシア商品の購入増大はプーチンの戦時財政を満たしている。第2に、中国はロシアの兵器の部品や工業機械への半導体の代替不可能な源泉である。
最後に、ロシアは、米国の世界的敵対者である中国を助けることがバイデン政権のウクライナ支援に復讐する最も良い方法であると考えている。これが機微な軍事技術の共有やその他中国の軍事力を助けることがもはやタブーではないように見える理由である。
ロシアにとっての悲劇は、プーチンが政治から引退した後でさえ、中国の「大君主」に従属する巨大なユーラシア独裁制が生き残るという事である。数年後、西側はロシアに経済的に依存することをやめ、代わりに、中国はロシアの輸出の大半を受け入れ、ロシアの金融は中国の通貨である元に釘付けられよう。
西側との結びつきを再建し、この中国の支配から這い出るためには、ロシアは戦争犯罪人についての責任追及、賠償、併合した領土の返還についてのウクライナの要求を満たさなければならない。これはプーチン後でも、ほぼあり得ないシナリオである。ロシアの中国への属国化が予見可能で、利益も多いように見える。
このエコノミスト誌の論説は、カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのガブエフ所長が書いたものであるが、ガブエフはロシアの事情に精通し、かつ中国のユーラシア政策にも詳しい人である。
ガブエフは、ロシアが今後中国の属国になるだろうと予見している。ウクライナ戦争を受けての情勢の発展の中で、ロシアの中国属国化は、大いにありうる事態である。ガブエフは、プーチンが退場した後も、たとえロシアが民主化した場合にも、ロシアの中国属国化は続くと見ている。
ガブエフが言うような情勢が出てくる蓋然性は大きいと考えられるが、そのような情勢は極めて望ましくないとも考えられる。特に、プーチン退場後に民主化した場合にも、ロシアは中国の属国であり続けるとのガブエフの判断には大きな疑問がある。
情勢判断においては、希望的観測は排除すべきであるが、ウクライナ戦争後の情勢の進展によっては、ロシアの民主化や欧米諸国との関係改善の可能性もあると考えられる。その理由は、ウクライナ戦争は平和協定ではなく休戦協定でいつか終わるが、ウクライナが国家として生き残ることは休戦ラインがどこになるかにかかわらず、今の時点で明らかであると思われるからである。
繁栄する「兄弟」を見た時、ロシア人は何を思うか
おそらく、生き残ったウクライナは、欧州連合(EU)に加盟することになるだろう。ウクライナは人権が尊重され、法の支配がある民主国家になり、その経済は奇跡的に回復する可能性さえある。EUで1人当たりの国民所得が最も低い国はブルガリアであるが、ウクライナの一人当たり国民所得は戦争前でブルガリアの半分であった。EU 諸国への出稼ぎだけでも経済の高度成長はできるだろう。
ロシア人とウクライナ人はプーチンが言うような一つの民族ではないが、よく似た兄弟民族である。民主化し繫栄するウクライナを目の当たりにすれば、ロシア人が何故われわれは自由でもなく、貧しいままなのかと疑問を持っても不思議ではない。ここにロシアが民主化するきっかけがある。
それに中国のジュニア・パートナーでいることに誇り高いロシア人が甘んじるとは考え難い。ロシアの歴史を巨視的にみると、欧化論者とスラブ主義者が政権交代してきたように見える。
ガブエフの論は、そうなる蓋然性が高いとは思うが、ロシアの今後には別の発展もありうると考えて、政策展開を考えていく必要があるだろう。
●ベラルーシと信頼関係強調 ロシア報道官 対NATOで結束 4/10
ロシアのペスコフ大統領報道官は9日放映の国営テレビのインタビューで、国家統合を進める同盟国ベラルーシとの間には完全な信頼関係があると述べ、ウクライナ侵攻を非難する米国主導の北大西洋条約機構(NATO)側の圧力に結束して対抗する考えを示した。
プーチン大統領が3月に表明したロシアの戦術核兵器をベラルーシ領内に配備する計画への欧米の批判について、ペスコフ氏は「ヒステリックな反応だ」と指摘。「米国も戦術核を欧州諸国に配備している」と述べ、正当な対抗措置だとの姿勢を改めて強調した。
ロシアとベラルーシは今月6日、プーチン、ルカシェンコ両大統領が出席し、両国でつくる連合国家の最高国家評議会をモスクワで開催。プーチン氏は連合国家の「安全保障政策概念」作成に着手すると表明し、軍事や経済分野での協力を拡大する方針を鮮明にした。
●ウクライナ戦争が今後の国際秩序を規定する理由  4/10
ロシアのウクライナ侵攻から1年以上が経過したものの、未だに戦争収束の道筋は見えない。
ロシアの近隣諸国に対する武力行使は、近年でもジョージア紛争(2008年)、クリミア半島併合(2014年)、シリア介入(2015年)など枚挙にいとまがない。それでも、主権国家の政権転覆と占領を目的とする侵略行為であること、また国連安全保障理事会の常任理事国の行為であることにおいて、ロシアのウクライナ侵攻は極めて秩序破壊的だった。
現代の国際安全保障秩序の前提は、国連憲章第2条4項に明記される領土の保全や政治的独立に対し、武力による威嚇や行使を慎むことにある。国際法上の武力行使の例外は、憲章51条における個別的・集団的自衛権の行使と、憲章第7章における集団安全保障に限られる。
この基本的ルールに背いて他国を公然と侵略する国に対しては、国際社会から厳しいペナルティを課されることで秩序の前提は維持される。しかし公然たる武力行使がむしろ利得を生み出し、ペナルティも生じないとすれば、この秩序の前提は崩壊する。
ロシアのウクライナ侵攻が国際安全保障秩序にどのような変化をもたらすかは、現在進行している戦争の始まり方、戦い方、終結の仕方に大きく依存する。ウクライナ戦争がなぜ始まったかは、武力侵攻に対する抑止力と抑止失敗の教訓として記憶される。戦争がどのように戦われたかは、現代戦の勝利と敗北、利得と損耗のプロスペクト(見通し)に影響を与える。そして、何より戦争がどのように終結するかは、今後の侵略行為の起こりやすさにかかわってくる。
換言すれば、ロシアのウクライナ侵攻後に世界の安全保障秩序を軌道回復できるかが、問われているのである。国際社会がロシアの侵略行為を歴史的失敗に追い込むことができるか、それともペナルティなく追認してしまうかによって、安全保障秩序の基盤は大きく変化するからだ。国際社会はまだその最終的な答えに至っていない。
戦争はどのように始まったか:抑止失敗の教訓
ロシアのウクライナ侵攻はなぜ起こってしまったのか。その原因について、プーチン大統領の偉大なロシア復活への野心(=選択した戦争)と、ロシアの地政学的懸念(=選択せざるを得なかった戦争)の対比に関する論争がある。しかし原因はどうあれ、仮にプーチン大統領が侵略の意思を固めたとしても、なぜロシアの侵略を抑止できなかったのか(抑止の失敗)は、国際安全保障秩序におけるより重要な論点である。
抑止力が成立するためには、相手が有害な行動をとったとしても利得が得られず、むしろ重大な損害が生じることを損得勘定にかけ、相手の行動を思いとどまらせることが必要となる。相手の侵略行為に対する反撃によって、相手に耐え難い損害を与えることが、懲罰的抑止の基本的考え方である。もう一つの抑止力は、相手が有害な行動をとったとしても、防御能力や強靭性によって作戦目的を達成できないようにし、相手の行動を思いとどまらせることだ。これが拒否的抑止の基本的考え方となる。
戦争開始前に、ロシアとウクライナの軍事力は明らかにロシア優位だった。ウクライナには、ロシアに耐え難い損害を与え得る反撃能力は存在しなかった。ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟国であれば、集団防衛の原則によって反撃能力を調達することができたであろう。しかし、当時のウクライナの安全保障を支えていた国際協定は、アメリカ、ロシア、イギリスがウクライナに安全の保障を約束した拘束力のない「ブダペスト覚書」(1994年)に過ぎなかった。実際、ロシアのクリミア半島併合、ドンバス軍事介入、ウクライナ侵攻に対して、同覚書は何の役にも立たなかった。
しかしNATO加盟国でないウクライナに対しても、アメリカや欧州諸国が任意に軍事介入する可能性を示唆し、ロシアの予見される行為に厳しい制裁を課すことにより、ロシアの行動を抑制する道筋は残されていた。しかし、アメリカ政府は早々にウクライナに地上軍を派遣することを否定し、欧州諸国も軍事介入の意思を示さなかった。プーチン大統領の戦略計算における損失の見通しが低く見積もられたことは、想像に難くない。
また侵略行為に対する強靭性(防御)に関しても、ロシアがウクライナ軍の抵抗能力、ウクライナ国民の団結、欧州諸国の対ウクライナ支援に関する見通し、ロシアに対する経済制裁を過小評価していたことは明白である。ロシア軍の戦力優位を利用して、迅速かつ効果的にウクライナを制圧できると考えたのであろう。これが明らかな自らへの過信と相手に対する過小評価であったことは、その後の戦争の経緯が証明している。
戦争の始まり方における教訓は、侵略する意図を持った指導者に侵略のコストを過小評価させたことにある。NATOが軍事介入の可能性を強く示唆し、ウクライナ軍の強靭性や苛烈な経済制裁によってロシアに甚大な損害が及ぶことが事前に示せていれば、この戦争は防げていたかもしれない。
戦争の戦い方:継戦能力の維持と防御優位
2022年2月の戦争開始から1年間で、ロシア・ウクライナ戦争は4つのフェーズ----1初期のロシアの電撃作戦の失敗と北部撤退戦、2ロシア軍の東部2州制圧と南部侵攻を経た東南部4州の併合、3ウクライナ軍の反攻・反転攻勢(ハルキウ・ヘルソン)とロシア軍の追加動員、4戦線の膠着と打開に向けた欧州諸国の支援とウクライナ軍兵装の転換----が展開した。
この戦争の経過において、もっとも特筆すべきは、ウクライナ軍が組織的抵抗力と継戦能力を維持し、ロシア軍の作戦遂行能力を拒否し続けたことだった。
ウクライナ軍の抵抗力・継戦能力を支えた決定的要因は、ウクライナ軍の防空能力が維持され、ロシア軍が各フェーズにおいて制空権を獲得できない環境下で、地上戦を継続できたことにある。ウクライナ軍は米軍およびNATO諸国から防空システムの供与や情報支援を受け、ロシア軍の効果的な航空作戦と制空権獲得を困難にした。また、地上では地理的要因を生かした遊撃戦術や携行型の対戦車・対空ミサイルの効果は顕著で、榴弾砲や多連装ロケットによる砲兵火力でもロシア軍に多大な損耗を与えた。
ロシア軍はウクライナ軍に対して圧倒的な機動部隊(戦車・機械化歩兵)と火力の優位を誇りながらも、ウクライナ軍の抵抗により甚大な損耗を被っている。戦争開始から1年間でロシア軍は全軍が保有する戦車の半数近い1500両以上を喪失し、歩兵戦闘車両の喪失も2000両を超える。ロシア軍が効果的に機甲戦による攻勢作戦を展開できなかったことにより、激戦地においてはしばしば第一次世界大戦を彷彿させる塹壕戦が展開されるようになった。両軍の戦況の膠着は徐々に消耗戦の様相を強めていった。
今後の戦況の変化を見通すことは困難であるが、西側諸国によるレオパルト2やM1エイブラムス等の戦車の集中投入によってウクライナ軍の機甲戦を抜本的に立て直し、NATO諸国から提供される戦闘機の投入によって航空戦を優位に展開できれば、ウクライナ軍が東部および南部において戦局を打開し、領土奪還のための攻勢作戦へとフェーズを移す可能性がある。
しかし、ロシア軍も追加装備の動員や、ミサイル対地攻撃の強化によってウクライナ軍の攻勢を阻止し、さらに追い込まれればワイルドカードとしての戦術核兵器の使用も視野に入れざるを得ない。ロシアが戦争エスカレーションや核兵器の使用を示唆して、NATO諸国の直接的な軍事介入を抑止する構図には変化がない。
戦争の戦われ方における教訓は、継戦能力の維持と持続性・強靭性を担保することによる防御優位の軍事態勢の重要性である。継戦能力の維持には指導者・軍・国民の士気を前提にして、組織的に軍事作戦を遂行できる能力、中でも武器・弾薬の生産・供給能力を系統的に維持し続ける能力が重要となる。こうした防御優位の軍事態勢によって、作戦遂行を拒否し、軍事侵攻を成功させないことを示したことが、国際安全保障秩序への大きな教訓となる。
戦争の終わらせ方:今後の国際安全保障秩序を規定
ウクライナ軍とロシア軍の双方が継戦能力を維持する中で、ウクライナ戦争の早期終結の見通しは立たない。しかし、この戦争がどのように終結するかは、今後中長期にわたる国際安全保障秩序に決定的な影響を与えることは確実である。
ウクライナ戦争の終結には、1交渉による両当事者の停戦・和平合意、2いずれか一方の軍事的勝利(もしくは優位性を固定化した状態)による終結、3消耗と厭戦による戦闘維持能力の喪失による停戦という主たるシナリオがある。千々和泰明氏が「戦争終結の理論」(『国際政治』第195号、2019年3月)で論じたように、「妥協的な和平」と「紛争原因の根本的解決」にはジレンマが生じやすい。
前者については、早期の妥協的和平は戦争による人的・物的犠牲を抑えるだろうが、その間の優勢勢力側の優位を確定し、将来の危険(当事国のさらなる主権侵害や国際安全保障秩序の劣化)を増すことにつながる。ロシア・ウクライナ双方に早期停戦を促すことは、ロシアが侵略によって獲得・支配した地域の現状を固定化することに結びつく。それは、結果として侵略戦争の利得を是認する態度と切り離すことは困難である。
しかし後者の紛争原因を根本的に解決すること、すなわちウクライナが侵略された国土を回復(2月24日以前の状況に回帰)することは、ウクライナ軍が攻勢を続けて戦況を打開して東南部地域の実効支配を再獲得するか、ロシア軍の損耗率を高めて組織的な戦闘能力を低下させるか、ロシアに対する経済制裁を強化して国家として戦争を継続する能力を奪うか、いずれかの方法を追求する以外にない。このいずれもが、甚大な人的・物的・経済的な損失を伴うものとなる。
ロシアに対する経済制裁が十分に効果を上げていないことも、戦争を長期化させる原因となる。ロシア連邦統計局が発表した2022年の国内総生産(GDP)は、前年比−2.1%に過ぎなかった(ウクライナは前年比−30%とみられる)。経済制裁の影響によりロシア国内の個人消費や生産活動は落ち込んだが、輸出の要である原油・天然ガスの価格高騰がGDPの下支えに寄与したとみられている。リーマンショック時には−7.8%(2009年)、新型コロナウイルス感染拡大の影響時に−2.7%(2020年)だったことと比較しても、経済制裁の効果は限定的であることを物語る。
重要なことは、ロシアのウクライナ侵攻が歴史的に失敗であると位置付け、戦争を可能な限り早期に終結させることである。ウクライナ軍が剥奪された領土を奪還する権利を支持し、その軍事作戦を支援するとともに、ロシアの継戦能力とそれを支える国家的体力を奪うことが、現時点での解である。そのために国際社会が努力すべきことはまだまだ多い。
●ロシア、砲弾不足で攻勢減速か ウクライナ反撃に準備―米研究所 4/10
米シンクタンクの戦争研究所は8日付の戦況分析で、ウクライナに侵攻するロシア軍の攻撃ペースが減速している可能性を指摘した。背景にはロシア側の砲弾不足があるとみられる。
研究所によると、ウクライナ軍関係者は、ロシア側の攻撃が全体として「停滞した」と評価し、東部ドネツク州の激戦地バフムトでも一部で攻撃がわずかに弱まったと言及。ロシア側はウクライナが準備している反転攻勢を想定し、ウクライナ軍の分散に注力していると分析した。
ロシアの著名な軍事ブロガーも、ドネツク州の別の激戦地アウディイウカでの攻撃が「ここ1日で速度が落ちた」と断言した。他の前線でも「ロシア軍は前進に苦戦している」と強調した。
研究所は、ロシアは地上での戦闘能力の低さなどを補うため、砲撃に依存していると説明。ロシア軍がウクライナの反攻に備えるため、砲弾の供給を制限したとの報告を紹介した。こうした事情がロシア軍の停滞につながった可能性がある。
ただ、ウクライナ軍参謀本部は9日の戦況分析で、ロシア軍が依然としてバフムトの完全支配を狙っており、戦闘が続いていると明らかにした。英国防省は7日、ロシア軍がバフムト市中心部まで進軍した可能性があると分析していた。  
●テレビ司会者、核兵器使用に反対する国民を「いかれた平和主義者」と罵倒 4/10
ロシア国営テレビの著名司会者、ウラジーミル・ソロビヨフが、核兵器の使用に反対する同国内の人々を「いかれたロシアの平和主義者たち」と攻撃した。ソロビヨフはイデオロギー面でウラジーミル・プーチン大統領との共通点が多く、「プーチンの代弁者」とのあだ名で呼ばれている。
ソロビヨフがこの発言をしたのは、司会を務める番組の中で、2日にロシアの主戦派ブロガー、ウラドレン・タタルスキーが暗殺された事件に触れた時のことだった。
ウクライナのロシア軍は、思うように占領地域を広げることができずにいる。この数カ月は、予想されるウクライナ側の反転攻勢の前にドンバス地方の都市バフムトを攻略しようとしてきたが思うようにいかず、もし撃退されれば、ロシアが2014年に併合したクリミア半島まで危うくなるかもしれない。そうなれば「核使用の根拠になる」と、ドミトリー・メドベージェフ前大統領は言っている。
番組の中でソロビヨフは、タタルスキーが暗殺された今、ロシア政府の敵はプーチンを暗殺するかも知れないと自説を展開。もしプーチン暗殺が「外国の情報機関の手で実行」されたなら、それは正当な「開戦の理由」になるだし、「すぐに核攻撃も続くだろう」と主張した。
「かつてなく戦意は高揚」
さらにソロビヨフは「いかなる場合も」核兵器を使うべきではないと主張する「ロシア国内のいかれた平和主義者たち」に対する激しい批判を繰り広げた。
番組はロシアン・メディア・モニターという独立系の団体によって録画・翻訳され、ユーチューブに投稿された。ジャーナリストのジュリア・デービスが「ロシアのプロパガンダと戦う取り組み」として立ち上げた団体だ。
ソロビヨフは、もしウクライナによる反転攻勢が「戦略的成功」を収めた場合、ロシアは「全面的に戦時体制に移行」するだろうと予言した。
戦況が悪化した場合のプーチンの対応は「手に取るように分かる」と胸を張り、こうも述べた。「必要ならロシアの社会や産業への動員が行われるだろう。軍の予備役も必要なだけ招集されるだろう」
「国は戦時体制に完全に移行する。一時的な敗北にも関わらず、過去にないほど戦意は高揚し、ロシアは戦い続けるだろう。ナチス国家のウクライナが、ポーランドやバルト諸国や汚らわしい国々やその協力者たちとともに完全に打ち倒されるその日まで」
アメリカのシンクタンク戦争研究所が8日に発表した最新の分析によれば、ロシアは自軍の「(兵員など)足りない部分を補うために砲撃に大きく依存している」という。
だが、砲弾不足によりこうした戦い方が「難しくなる」可能性があるという。
8日にはウクライナ軍も、ロシア軍の陣地を攻撃するのに使われている自走式榴弾砲「AHSクラブ」の映像を公開した。ウクライナは昨年、ポーランドからAHSクラブを18両、供与された。
ウクライナ軍は映像とともにこう述べた。「AHSクラブは照準を合わせる速度や射程という点で優れた能力を見せつけた」
「われわれはこの機器のリソースや能力について研究し、製造元に対して改善の提案を行っている」
●ロシア、防空部隊を改革へ フィンランドのNATO加盟にも対抗 4/10
ロシアはウクライナ戦争の経験を基に防空部隊の改革を計画しているほか、フィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟に対抗して防空態勢も強化する。
ロシアのウクライナ侵攻以来、ドローン(無人機)やミサイルを多用した戦闘が展開されており、両国の防空態勢が試されている。
ロシア国防省機関紙「赤い星」が10日付で掲載したインタビュー記事によると、同国の航空宇宙軍副総司令官のアンドレイ・デミン中将は、ウクライナの攻撃に直面して防空部隊は多くの課題に直面していると指摘。50以上の移動式レーダーステーションを加え、A50早期警戒管制機による24時間態勢の巡視を行っているほか、ウクライナに隣接する地域のミサイル・対空施設を強化したと述べた。
ロシアの支配下にあるウクライナの地域では、重要施設を守るために防空部隊が設置された。また、ロシアは対ドローンシステム「RLK−MC」の生産を強化しているという。
デミン氏は「(改革は)間違いなく計画されており、実施される」と表明。「ロシアの防空システム改善を目指し、軍を発展させる」と語った。
●ウクライナ地対空ミサイル枯渇か 5月に、ロシア攻勢対処に懸念 4/10
米紙ニューヨーク・タイムズは9日、ロシアのミサイルや自爆型ドローンの迎撃のためウクライナ軍が地対空ミサイルを大量に消費しており、5月には主力システムの弾薬が底をつく恐れがあると報じた。米国防当局者らは、ロシアの戦闘機や爆撃機が制空権を握り、攻勢に出る可能性があると危惧しているという。
交流サイト(SNS)に流出した米国の機密文書や米当局者らの話を基に伝えた。
同紙によると、米国防総省の2月28日付の機密文書は、ウクライナ軍が使う地対空ミサイルシステムのうち旧ソ連製「ブク」のミサイルは4月中旬に、「S300」のミサイルは5月3日に払底すると試算している。

 

●武器供与で習近平を怒らせたプーチンの誤算 4/11
長期戦に移行か、年内終結か。ウクライナ戦争は2023年4月、その行方を左右する決定的な局面に入った。ロシアとウクライナはそれぞれ、このヤマ場をどう乗り切ろうとしているのか。双方の本音を探ってみた。
プーチン大統領が1日に2回、ショイグ国防相など軍トップに必ず報告させている問題がある。ウクライナの戦況、とくに東部ドンバス地方(ドネツク、ルガンスク両州)での情勢だ。
ロシア軍が2023年1月末から開始した冬季大規模攻勢における最大の激戦地、ドネツク州の要衝バフムトをめぐっては、4月上旬の本稿執筆時点でまだ血みどろの市街戦が続いており、ロシア軍が制圧する可能性も残っている。これが実現すれば、2022年6月以降、戦果がなかったプーチン氏にとっては、待ちに待った戦果となる。
攻撃回数が減るロシア軍
しかし全長1000キロ以上の戦線全体を俯瞰すれば、実現したとしてもバフムト制圧はあくまで局地的勝利。これでロシア軍全体に弾みがつくとは思えない。事実、ドンバスの他の地域では目立った進展もない。プーチン氏が軍に厳命していたと言われる3月末までのドンバス制圧の期限も過ぎた。
おまけにロシア軍の攻撃回数は全体として減ってきている。バフムトの攻防戦の結論を待つまでもなく、大規模攻勢は結局失敗だったとの見方がウクライナや米欧から出ている。それはなぜか。2022年夏以降続いているバフムトの攻防戦がここまで長期化したこと自体、ウクライナ側が仕掛けた、一種の罠だったからだ。
2023年4月以降に南部などで大規模な反転攻勢を計画しているウクライナ軍は、バフムトになるべく多くのロシア軍兵力を引きつけ、多数の人的損失を被らせることにより、反転攻勢への防御に回す兵力を削ぐことを狙っていたからだ。
バフムトではロシア軍に数万人規模の戦傷者が出たと見積もられており、その意味で今後バフムトを失うことになっても、戦略的にはウクライナの思惑通りの展開になったと言える。
バフムトをめぐっては、ウクライナ側にも数千人の死傷者が出ており、アメリカなどからバフムトからの撤収を求める意見もあったが、この時点まで徹底抗戦を続けることは、ゼレンスキー氏が指導者として、自軍の人的損失より、反攻作戦の成功に向けた戦略実現を優先するという冷徹な判断を貫いた形だ。
2022年秋以降、ロシア軍が苦戦した要因としては、お粗末な作戦や士気の低さ、兵器・兵員不足などがすでに表面化していた。しかし今回のロシア側の攻勢の失敗をめぐっては、最近ウクライナの軍事関係者の間で新たに話題になっていることがある。それは地上部隊の攻撃に航空部隊が空からの応援として投入されなかったことだ。キーウの軍事筋の一人は「地上軍と空軍の間で共同作戦が行われなかったことは驚きだ」と指摘する。
元々ロシア軍では、陸空海など各軍の指揮統制を自動的につなぐシステムがないことが問題視され、2010年ごろから全軍をつなぐネットワーク型の指揮統制システム構築の試みが始まっていた。今回陸空共同作戦が実施されなかった要因が、この自動型指揮統制システムの未整備だったかどうかは断定できないが、こうしたロシア軍の前近代的な欠陥が露呈した可能性が高いと筆者はみる。
そうだとしたら、アメリカが提供する衛星情報などを取り込んで立体的な作戦を展開するウクライナ軍の近代的作戦とあまりに対照的だ。
ベラルーシへの戦術核配備はどうなる? 
いずれにしても、ロシア軍の攻勢は今後も継続するとみられる。ウクライナ軍はとくに、ミサイル攻撃を警戒している。しかしウクライナの軍事アナリスト、オレクサンドル・ムシエンコ氏は「(2023年)3月31日までのドンバス制圧を実現できなかったロシア軍の攻撃は今後減っていき、ウクライナの反転攻勢への備えに重点が切り替わるだろう」と予測する。
プーチン氏は2023年3月25日、ロシアと「連合国家」を形成するベラルーシへの戦術核配備を決定、同年7月1日に弾頭の保管庫が完成すると発表した。この発表には2つの狙いがあるとみられる。
2023年4月4日に決まったフィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟を前に、NATOがロシア国境へ大幅に接近することへの強い対抗姿勢を強調することがまず1つ。同時に、ウクライナの反攻作戦開始を前に、ゼレンスキー政権を強く牽制、軍事支援を続ける米欧に対しても、これ以上の軍事支援を控えるよう強いプレッシャーを掛ける「核の威嚇」を狙っているのは間違いないところだ。
しかし、この新たな「核の威嚇」は、クレムリンが期待していた「脅し効果」を得られなかった。ワシントンも、ゼレンスキー政権も比較的冷静な対応をしているからだ。これを象徴するのが、2023年3月28日にアメリカ国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官による記者会見での発言だ。「プーチン氏が公言したことを実行に移す動きは見られない」。
それはなぜか。先述したウクライナの軍事筋は「プーチン氏が配備発表の効果を読み誤ったため」と指摘する。まず、アメリカもウクライナも実際に戦術核が実際に配備されるかどうかわからないとみている。これまで侵攻への直接参戦をロシアに強く求められながらも、のらりくらりと参戦を回避してきたベラルーシのルカシェンコ大統領が今回も結局、言を左右にして、実際の配備を先送りするのではないかとの読みがある。
さらに、実際にベラルーシに配備しても同軍事筋は「反転攻勢をとめる抑止力にはならない」と指摘する。「根本的な勘違いをプーチン氏はしている」というのだ。
なぜなら、ベラルーシでロシア軍が戦術核を発射しようという動きを見せれば、「アメリカがその段階で事前に通常兵器で攻撃するのは確実だ」と軍事筋は言う。戦術核は普段は弾頭部分を倉庫に保管し、使用する直前にミサイルに装着するために倉庫からミサイルまで運搬する。
ロシア国内の場合、戦術核の弾頭が保管場所から発射場所まで移送された場合、アメリカは動きを確実に捕捉できる。今後ベラルーシに発射基地と保管場所を新設しても、アメリカはロシア国内と同様に発射準備の動きを事前に探知できるという。
「これが、クリミアに戦術核を配備するのであれば一定の抑止効果はあるだろうが、ベラルーシの場合、アメリカを含むNATOは攻撃をためらわないだろう」と言う。この場合、ウクライナも同様にベラルーシを攻撃するのは間違いないと同筋は強調する。
習近平を怒らせたプーチン
その場合、ロシアはどう行動するのか。同筋は「ロシアがベラルーシを守るために参戦するとは思えない」と指摘。結局、今回のベラルーシへの戦術核配備発表は、軍事的に大きな脅威と映っていないという。
さらにプーチン氏には、より大きな外交上の誤算があった。2023年3月末の中ロ首脳会談で、訪ロした習近平・国家主席がプーチン氏からの武器供与要請を断ったからだ。外交筋によると、プーチン氏は会談で再三、武器供与を習主席に求め、主席に不快な思いをさせたという。
もともと、事務方の事前協議で中国側は、供与を求めたロシア側に対し、明確に拒否の方針を伝えていた。それにもかかわらず、プーチン氏が面と向かって供与を求めたことで習主席が立腹する原因になったという。
さらに習主席のメンツをつぶすことも起きた。首脳会談の結果として署名した共同声明で、国外に核兵器を配備しないことなどを明記したにもかかわらず、その数日後にベラルーシへの戦術核配備をプーチン氏が発表したからだ。
今回の共同声明で中ロは戦略的協力と包括的パートナー関係深化をうたったが、同外交筋は「中ロが準同盟関係を維持しているのはアメリカをにらんだ太平洋地域の話。ウクライナ問題をめぐっては、この1年間で隙間風が吹いている」と指摘する。
一方で、ウクライナ軍の大規模反攻作戦は当初、2023年3月にも始まるとみられていたが、ずれ込んでいる。同年1月末以降、米欧からの軍事支援がドイツ製主力戦車レオパルトなど質量ともに大幅に拡充し始めたことを受け、ウクライナ側がこうした武器が到着するのを待ってから開始する戦略に切り替えたことが遅れの第1の技術的要因だ。
もう1つの大きな要因は、今回の反攻作戦が、年内の全領土奪還と対ロ軍事的勝利に向けた、1回限りの最後のチャンスとみるウクライナ側が、より慎重に準備を進めていることが挙げられる。
軍事筋は「これに失敗したら、アメリカから(ロシアとの停戦と妥協に向け)タオルを投げ入れられる可能性もある」との危機感を示すほどだ。現時点で反攻開始の時期は公表されていない。ウクライナのメディアに対しても、侵攻計画の事前報道に関して事実上の「ギャグ・オーダー(箝口令)」が掛けられている。ウクライナ国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は、大規模攻勢について政府内で「開始時期など情報を持っている人物は3〜5人だ」と明かしたほどだ。
ウクライナ軍の大規模反攻は4〜5月か
それでも、反攻は2023年4月か5月には始まるとみられている。しかし、反攻作戦の開始場所は明らかにされていない。レズニコフ国防相は3カ所と語ったのみだ。当初、反攻作戦は1カ所で始まるといわれ、南部ザポリージャ州の要衝メリトポリが攻撃対象となるといわれてきた。
しかし、その後、ターゲットは複数に増えたが、米欧から供与された戦車など兵器の配備先も発表されていない。ロシア軍に手の内を見せず、防御網を必要以上に薄く広く、延ばす狙いだ。
とは言え、メリトポリが最初の標的にひとつになるのは確実だ。クリミア半島へ南下する鉄道・道路の結節点で、反攻の最終的な目標であるクリミア奪還を早期に実現するうえで欠かせない都市だからだ。
ロシア本土とクリミア半島を結ぶ輸送回廊の重要拠点であり、ウクライナがここを確保すれば、ロシア軍は補給の大動脈を失うことになる。ウクライナ軍はすでに高機動ロケット砲、ハイマースなどでメリトポリに砲撃を加え、制圧への下準備を始めている。
クリミア奪還作戦の可否を巡って、ウクライナに対してアクセルとブレーキを同時に踏んでいると評されていたアメリカも、ここまできたらウクライナに任せるしかないと踏ん切りがついたようだ。
ブレーキ役の代表格だったアメリカ軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長も3月末の米議会公聴会でこう述べた。「個人的にはクリミアを軍事的に奪還するのは極めて難しい目標だと思っているが、試みるかどうかはウクライナ政府が決めることだ」。
実は、公表されていないが、2023年3月初めにアメリカのブリンケン国務長官がウクライナ側に対してブレーキを掛けていた。「クリミアを攻撃した場合、ロシアが核兵器を使う恐れがある」との懸念を密かに伝えてきた。
反攻作戦はどこから始まるか
この直前に長官は、G20(20カ国・地域)外相会合が開かれたインドのニューデリーで、ロシアのラブロフ外相と短時間接触していた。このため、同軍事筋は「この際にブリンケン氏はロシア側から核を使うぞと脅されたのだろう」とみる。しかしウクライナ側はこのブレーキを無視した。
クリミア奪還作戦をめぐっては現在でも興味深い議論がネット上で行われている。ロシア軍基地が多数あり黒海艦隊司令部もあるクリミアか東部ドンバスのどちらが、反転攻勢の標的としてより容易かとの問いに対して、戦況をウオッチしている複数のロシア系イスラエルの軍事専門家たちが口を揃えて「クリミアに決まっている。イスラエル軍だったら、当然そう選択する」と明快に回答したのだ。
その理由はこうだ。メリトポリなどを制圧してロシア軍の陸上補給回廊を絶つ。そのうえで、ロシア本土とクリミア半島を結ぶ、もう1つの大動脈であるクリミア大橋を2022年10月に続いて再度攻撃して、通行不能にする。そうなれば、クリミア半島は事実上「島」と化し、ロシア軍は完全に補給路を断たれる。これに長期間耐えられる軍隊はない。事前に撤退しなければロシア軍は降伏するしかなくなる、というものだ。
一方でウクライナ軍のクリミア奪還に向けた軍事的態勢が万全か、というとそうではない。同軍事筋は、ロシア軍の防衛陣地を攻撃するための航空機など兵器が足りないのは事実」と打ち明ける。
いずれにしても、全領土奪還による2023年内勝利達成という歴史的悲願をウクライナが勝ち取ることができるかどうか。その成否の見通しは、今夏には見えてくるだろう。
●ロシアで「中国製の自動車」急増が示す不都合なサイン…「供給不足」問題 4/11
ロシアがウクライナに侵攻してから、すでに1年以上の歳月が経過した。
ウクライナ侵攻を批判する欧米日、特にヨーロッパとの関係が極端に悪化したことを受け、ロシアはそれまでヨーロッパに依存していたサプライチェーン(供給網)の再構築に努めてきた。しかし、そうした取り組みの成果は今のところ、限定的な模様だ。
実際に直近の自動車や化学品の生産動向を確認すると、ロシアが慢性的なモノ不足状態となる道を突き進んでいることが浮かび上がる。
ロシア最大の自動車メーカー・アフトバスの「異変」
サプライチェーンの再構築が必ずしも順調ではないことを物語る象徴的な事例として、ロシア最大の自動車会社であるアフトバス(AvtoVAZ)社の発表がある。もともとは7月24日から始まる予定だった3週間の夏季休暇を、5月29日からに前倒しすると発表した。夏季休暇を前倒しにした理由は、生産に必要な部品の不足にある。
ロシアの自動車産業は、欧米日からの経済・金融制裁の影響を最も強く受けた産業だ。
主にヨーロッパから、ロシア国内の生産に必要な部品の供給が途絶えたことを受けて、ロシアの自動車生産は2022年2月から4月の間に、7割近くの減産を余儀なくされた(図表1)。2023年2月時点でも、侵攻前の5割程度の水準にとどまっている。
アフトバス社は、欧米日からの制裁を受けて入手できなくなった200品目を超える部品に関して、その代替供給元を確保したと発表していた。にもかかわらず、ロシアの自動車生産は低調なまま推移してきた。さらにこの春に、多くのサプライヤー企業が納入を終了し、さらに2023年の契約を破棄した企業も少なからずあった模様だ。
このようにして部品不足に直面、供給制約に伴う生産調整を余儀なくされたアフトバス社だが、同社は2023年の目標生産台数を、2022年の販売台数(約19万台)の2倍以上となる40万台と掲げた。夏季休暇後も部品不足がどの程度解消しているか定かではなく、この計画を達成することは非現実的であるように考えられる。
中国製の自動車が増えていることは「モノ不足」のサイン
他方で、ロシアの市場では、中国製品が急増している模様だ。自動車に関しても、新車・中古車を問わず、中国製の自動車が市場を席巻しているようだ。
見る人によっては、「もともと、ロシアの自動車市場は中古車が中心であり、その中古車が中国から入手できるだから、ロシアの自動車産業が低迷していても問題はない」という見方もあるが、これは的外れに思う。
ロシアにおける中国車の輸入急増は、国内での自動車生産の低迷と同時に生じている。言い換えれば、この2つの現象は、「ロシア国内で輸入品の代替生産がうまく行っていない」ことを意味している。つまりロシアでは、需要ではなく供給に問題が生じている。供給不足に基づく超過需要、これはまさしく、モノ不足につながる流れだ。
ロシアを飲み込み始めた「中国依存」
もともと、ロシアの前身国家である旧ソ連は、軍需品の生産には長けていたが、民生品の生産は不得手だった。1991年の旧ソ連崩壊以降、ロシアが克服を最優先してきた課題が、民生品の生産力を高めることであった。それから30年をかけて、ロシアは食料品など、低付加価値の製品に関しては、民生品の生産力を高めることに成功した。
他方で、自動車に代表される高付加価値の製品に関しては、部品や中間財の国産化が進まなかった。そのため、国内で高付加価値の製品を生産するにしても、部品や中間財を海外、特にヨーロッパから輸入せざるを得ず、国産化からは程遠い状況だった。ロシア自身、この状況に危機感を覚えて、国産化を後押ししてきたが、成果は出なかった。
ロシアと中国は、今のところ友好関係にある。しかし中国製品に対する依存度が高まることは、ロシアの経済的な自立を考えた場合、必ずしも好ましいことではない。それに、ロシアと中国の関係がいつ悪化するかも分からない。ロシアが中国に接近するということは、裏を返せば、ロシアが中国への集中リスクを抱えるということと同じだ。
化学品も不足している恐れ
もう一つ注目される動きに、化学品の生産の低迷がある。ロシアの化学品生産は、ウクライナ侵攻に伴う制裁を受けて、一時10%ほど生産が落ち込んだ(図表2)。その後は多少、持ち直したが、水準は低迷している。化学品は工業原料として用いられるため、生産が十分でなければ、幅広いモノの生産が停滞することにつながる。
国内での化学品生産が悪化した一方で、ロシアは友好国から多くの化学品を輸入したようだ。例えば中国国家統計局によると、2022年の中国の対ロ輸出額は762.6億ドルと前年比12.8%増、うち化学品(「化学工業(類似の工業を含む。)の生産品」)は67億ドルと同76.9%増、全体の増加率に対する寄与度は4.3%ポイントに達した。
そもそもロシアが通関統計の公表を止めている以上、ロシアが国内で不足する化学品のどの程度を輸入でカバーできたか、数量的に確認はできない。とはいえ、国内生産の減少分の全てを輸入でカバーできたとも考えにくい。そのため、2022年の化学品の総供給量(国内生産量+輸入量)は、2021年よりも減少したと考える方が自然だろう。
反面、ロシアでは、ウクライナとの戦争の長期化で軍需品の需要が強まっている。少なくとも、2021年よりも2022年以降の方が、軍需品の生産量は増えたはずだ。したがって、民生品の生産に充てることができた化学品の量は、おのずと減少したと考えられる。そして化学品の不足は、幅広い民生品の生産の下押し圧力になったはずである。
もちろん、企業は在庫を抱えている。とはいえ手当てが遅れたままだと、在庫の取り崩しが進み、結局、在庫は空になってしまう。
もともと、ロシアにおけるモノ不足の問題は、中長期的に顕在化してくると考えられていた。しかし化学品の動向を見る限りにおいては、思いのほか早期に顕在化する可能性が高まってきたと言えそうだ。
着実に忍び寄るモノ不足の問題
ロシアの最大の武器は、原油に代表される豊富な天然資源だ。天然資源を輸出して得た外貨で、国内で不足するモノを買えば、一見すると問題がないように見える。しかし、こうした経済成長モデルは、原油価格の動向にぜい弱であるし、また他の製造業やサービス業の発展を阻むものでもある。これがいわゆる「資源の呪い」だ。
ロシアの場合、ウクライナ侵攻以降、その資源の輸出で得た外貨を、軍需品の生産や輸入に費やしている。これはまさに、国富の浪費に他ならない。戦争が長期化すればするほど、こうした性格は強まっていくことになる。仮に停戦に達したとしても、軍事費は高止まりするだろうから、国富の浪費が直ぐに改善されるとは見込みがたい。
そもそもロシアでは、欧米日による制裁でモノの輸入が制限されており、新興国からの輸入にも限りがある。一方で、国内で軍需品の生産が優先されるなら、国内に出回る民生品は徐々に減少し、ロシアはモノ不足に苛まれることになる。
いずれにせよ、自動車や化学品の生産動向を確認するに、ロシアは慢性的なモノ不足状態となる道を突き進んでいると感じざるを得ない。
●戦争で霞む核軍縮 日本の課題は中国の核軍拡抑制 4/11
3月22日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は「ウクライナ戦争は新核軍拡に繋がる恐れ」とのローレンス・ノーマン同紙コラムニストの解説記事を掲載し、ロシアの核使用の恫喝と中国の核軍拡を踏まえ、米国の核戦略議論が割れている現状を説明している。
ウクライナ戦争で軍備管理体制の崩壊と核軍拡競争の再発が懸念されている。プーチンは先月、戦略核兵器を制限する新戦略兵器削減条約(新START)を中断すると発表した。
ロシアが米国のウクライナ支援を新START議論に絡めている結果、交渉再開は実質的に難しい。
米国で核戦略議論も始まった。ロシアの新START中断を奇貨とし核武装を拡大すべきとの意見もあるが、専門家の多くは、ロシアが核弾頭数上限を守っている限り新STARTを潰すのは避け、選択の責任をロシアに負わせるべきだとする。
先月の情報脅威分析では、中国は核計画を制限する合意には関心がなく、米露優位維持の交渉には応じないと見ている。米政府高官によれば、中国の約400発の核弾頭は、2035年には配備数で1500発に増加する可能性がある。
論争は抑止の意味の違いにも帰着する。ある専門家は、中露核兵器数合計の増加に対応し配備済み核弾頭数を増加して中露の基地、指揮統制施設、ミサイルサイロの攻撃を可能にすべきと言う。
一方、これは危険な軍備競争に繋がるとの意見もある。中国の核増強への対処には未だ時間があり、最優先すべきは米露が新START上限超過を避けることだとする専門家もいる。米露はいずれ核心的懸念(ロシア戦術核兵器への米国の懸念と、米国ミサイル防衛へのロシアの懸念)を議論する余地がある。
真の問題は敵の核兵器使用抑止のために何発の核兵器保有が必要かということで、相手が持っているものではなく、自分に必要なものを持つことだからだ。
このWSJの記事掲載後、3月25日、プーチン大統領は、記者会見で、「ベラルーシへの戦術核配備で同国と合意した」と発言した。懸念されていたことが起きた。ただ、両国がしばらく前からこの核兵器配備を議論してきたのは明らかで、新しい話ではない。
重要なのは、米国側が、米国の戦略核態勢を調整する理由はなく、ロシアが核兵器を使う準備をしている兆候もない、としていることだ。実際、プーチン大統領はベラルーシにおける核兵器貯蔵施設を7月1日までに完成させるとは表明したが、戦術核配備の時期については何も述べていない。
より重要なのは、ロシアに核を使わせないようにすることである。なお、米国の核兵器が欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国に配備されているのは公知の事実であり、ロシアが同様のことをベラルーシで行っても即座に核不拡散条約(NPT)違反とは言えないだろう。
日本の核軍縮政策の基本は「究極的核廃絶に向けて現実的な歩みを進めること」、要は核抑止を維持しながら核軍縮を進めることだが、このようなアプローチは、以上のような状況でますます難しくなってきている。
第一に、核軍縮では米露は(冷戦中の米ソでさえ)基本的には同じボートに乗っていた。その背景には「相互確証破壊」、即ち、核戦争が起これば双方が滅亡することが確実なだけの核兵器を持つに至ったという実態がある。
また、核兵器保有のコストは非常に高い。厳密な管理体制を維持し、不拡散防護に完璧を期し、劣化に応じて必要な保守を行う。このコストは相当なものである。米露共、必要以上の核兵器を持ちたくないのは同じで、「相互確証破壊」を維持しつつ均衡のとれた形で核兵器数を削減できるならそうしたい訳だ。
これが、冷戦を通じて米ソ、米露間で各種核軍縮条約が締結された理由だ。しかし、ウクライナ戦争でロシアが核使用の恫喝を行い、この基本的「信頼」関係に疑問が生じつつある。
第二に、中国の核能力が無視できない規模に拡大しつつあり、米露の優越を固定化する核軍縮合意には応じないと言う現実がある。この2つの面で、ゲームのルールが変わっている。
広島でのサミットで日本は何ができるか
それでは、主要7カ国(G7)広島サミットという、本来であれば、核抑止と核軍縮の両立という日本のアジェンダ推進に最適の機会が来るにも拘らず、何もできないのか。後約1カ月半に迫ったG7広島サミット自体に高い期待を持つべきではないが、それを一つのきっかけとしてモメンタム(勢い)を形成してくことは不可能ではないだろう。
現下の状況で、核抑止と核軍縮の両立が一番求められているのは、中国の核軍拡への対応においてだ。日本の国益から見て明確なのは、中国の核軍拡を抑制する、少なくともその政治的コストを大きく上げることが必要なことだ。そのためにどのような対応があり得るのか、知恵を集める必要がある。
少なくとも、中国の核軍拡に対応するにはまだ時間があるというのは米国の力の過信であり、中国の核軍拡が正当化されるような世界的核軍拡の道を米国が先頭に立って始めるのは良い考えだとは思われない。
●ロシア 空爆などでバフムトの建物など徹底的に破壊する作戦に  4/11
ウクライナ東部の激戦地バフムトをめぐってウクライナ軍は、ロシアが空爆や砲撃で建物などを徹底的に破壊する作戦に切り替え、厳しい状況になっているという認識を示しました。そのうえで「防衛は続く」として徹底抗戦の構えを崩していません。
ウクライナ東部ドネツク州のウクライナ側の拠点、バフムトでは激しい戦闘が長期にわたって続いています。
こうした中、ドネツク州の親ロシア派の代表プシリン氏は10日、国営のロシアテレビを通じて、ロシア側がバフムトの75%を掌握したと主張しました。
これに対し、バフムトの前線を視察したウクライナ陸軍のシルスキー司令官は10日、ロシアが戦術を切り替えて、空爆や砲撃で建物などを徹底的に破壊する作戦に出ていると、SNSで明らかにしました。
ロシア軍は、特殊部隊や空てい部隊も投入し、厳しい状況になっているという認識を示しています。
そのうえで、「防衛は続く」として徹底抗戦の構えを崩していません。
ベラルーシの大統領 ロシアに安全の保証求める
こうした中、ロシアと同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領は10日、ロシアのショイグ国防相を首都ミンスクに迎えました。
この中でルカシェンコ大統領は、先の首脳会談でプーチン大統領と議論した安全保障の問題について触れ、「会談ではベラルーシが侵略された場合、ロシアはベラルーシを自国の領土のように守るというような話があった」と述べ、ロシアによる安全の保証を求めました。
●ロシアとウクライナ、新たに200人超の捕虜交換 4/11
ロシアとウクライナは10日、新たに200人を超える捕虜を交換したと発表した。
ロシア人106人、ウクライナ人100人が解放され、ウクライナ大統領府のイエルマク長官によると、東部マリウポリ市と同市にあるアゾフスタル製鉄所でロシア軍に抵抗し拘束された兵士らが含まれる。
ロシア国防省も、交渉の末、ロシア人の捕虜が解放されたと発表した。
●ウクライナの「弱点」も流出機密文書に…米国、ゼレンスキー氏も傍受対象か 4/11
米CNNは10日、米政府などの機密文書の流出を受け、ウクライナがロシアに対する大規模な反転攻勢の作戦の一部を変更したと報じた。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に近い人物がCNNに明らかにした。米国がゼレンスキー氏を通信傍受の対象にしていたことを示す文書も見つかったという。
ウクライナのゼレンスキー大統領=ロイターウクライナのゼレンスキー大統領=ロイター
CNNによると、文書にはウクライナの兵器や防空能力、即応態勢などの「弱点」も含まれていた。通信傍受で得た情報に基づき、ゼレンスキー氏がロシア南部ロストフ州での無人機攻撃を示唆したとの文書もあった。ウクライナ側は、米国の傍受は想定内としているが、流出に強い不満を持っているという。
一方、米紙ワシントン・ポストは10日、流出文書の内容として、エジプトがロシアに最大4万発のロケット砲などの供給を計画していたと報じた。エジプトのアブドルファタハ・シシ大統領が2月、軍高官に計画を秘密にするよう指示していたという。
●駐日米大使「中国、善き隣人ではない」 経済での威圧批判 4/11
エマニュエル駐日米大使は内外情勢調査会での講演で、過去数年間に国際社会を根底から変えた出来事の一つとして、新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナ侵攻に加え、中国の経済的威圧を挙げた。中国が自国の主張を押し通すため、輸出入規制などさまざまな手段を駆使し威圧していると批判。「中国は善き隣人ではない」と断言した。
中国は2010年、沖縄県・尖閣諸島を巡る問題が先鋭化すると、日本へのレアアース(希土類)輸出を事実上停止した。南シナ海問題で対立を深めたフィリピンには、同国産青果の検疫を強化。16年に韓国が弾道ミサイル防衛策として米国製迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備を決めた際には、韓国への旅行を制限した。
中国の「標的」となったのは近隣国だけではない。新型コロナの起源解明に向けた独立調査を求めたオーストラリアに対しては、牛肉などの輸入制限を発動。バルト3国の一つ、リトアニアが台湾の名を冠した「代表処」(大使館に相当)開設を認めると、外交関係の格下げに加え、輸入停止などの報復措置を取った。
エマニュエル氏は「経済的威圧は一種の政治的戦いだ」と批判。ロシアも中国と同様、石油・天然ガス輸出の規制などで、ウクライナを支援する西側諸国を揺さぶっているとして、日米やその友好国は「包括的な戦略」を構築し、連携して対抗する必要があると訴えた。 
●プーチン氏、追い込まれ核使用も 4/11
AP通信は10日、SNSに流出した米国の機密文書とみられる資料に、ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領について、兵員や装備の不足などで追い詰められた場合、戦術核兵器の使用を承認する恐れがあるとの分析が記載されていると報じた。
APによると、資料は機密指定で、プーチン氏やウクライナのゼレンスキー大統領が死亡するなど「想定外の事態」を分析した。その一つとして、プーチン氏が軍幹部を解任し戦闘は激化、高官らは同氏の意思決定に疑義を唱え、兵員や武器も充足できないような状況になれば、プーチン氏が戦術核使用に踏み切る可能性があると指摘した。
ゼレンスキー氏が死亡した場合には、欧州諸国が兵器提供を制限する恐れがあると説明。一方で、新たな指導者が出現し、国内外の支持を獲得する可能性もあるとした。
別の文書にはロシアの連邦保安局(FSB)当局者が、米英に対抗していくことでアラブ首長国連邦(UAE)の情報機関と一致したと主張していると記載されていた。
●戦時の米機密情報流出、同盟国に打撃  4/11
ウクライナ戦争に関連した米国の機密資料が流出したことは、多くのレベルで大失態のように見える。同盟・友好諸国の米国に対する信頼を損ない、軍事に関するロシア国内の協議について米国がどれだけ知っているかを暴露し、そして何よりも、ウクライナの防空能力の弱さをさらけ出してしまった。
流出元は不明であり、それ自体が不安を引き起こす。これらの資料は最初にソーシャルメディアに掲載され、報道機関はそれが本物であるかどうかを確認できていない。しかし、米政府関係者の間に広がる明らかな警戒感は、流出した情報の多くが正確であることを示唆している。どれだけ意味があるか分からないが、米司法省と国防総省は先週、刑事事件として捜査を開始した。
今回のリークがとりわけ有害なのは、それによって、戦争の進展に関する米国の内密な判断が明らかになったからだ。部隊がどこに展開しているのかを漏らすのとは違うが、それに近いものがある。ロシアの軍事計画について米国がどれほど知っているかが明らかになることは、ロシアにいる情報提供者にとって死刑宣告になり得る。
最も厄介なリークは、ウクライナの防空システムが5月までに打ち負かされる可能性があるという情報だ。そうなれば、ロシアが制空権を掌握して、戦術的にかなり有利になる可能性がある。ロシア政府は、制空権を握れば早期の勝利実現の後押しになると期待していたが、ウクライナの防空システムは当初の攻撃をうまくしのいだ。
ロシアは高価な空軍兵力を温存するため、ウクライナへの空軍機の出撃回数を最小限に抑制し続ける選択肢をとった。代わりにロシアはイラン製のドローン(無人機)と巡航ミサイルに依存してきた。このため、ロシアはウクライナ軍の車両部隊や砲兵隊の展開を阻止することが一層困難になっていた。
しかし、流出した資料はウクライナのミサイルが枯渇しつつあるとの分析を行っている。ウクライナの防空体制が崩壊すれば、ロシアはウクライナの地上部隊への攻撃や、さらに多くのウクライナ領土の占領に向けた前進などを思い通りにできるようになる。
今回の情報漏えいによって、ロシア側に極めて重要な情報がもたらされたことで、かなり前から予想されていた春の反転攻勢に向けたウクライナ側の決断は難しくなるだろう。また、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は今回の漏えいを受けて、ロシア軍がウクライナ軍に粘り勝ちを収められるとの新たな自信を得るかもしれない。
米国のウクライナ支援では、特に先進防空システムの供与の進展ペースが、あまりにも遅々としたものだった。そのためウクライナは、主としてソ連時代の旧式な防空システムで対応を強いられてきた。ジョー・バイデン米大統領は昨年12月になってようやく、地対空ミサイル「パトリオット」システム1基のウクライナへの供与を承認し、これにドイツからの1基が加わった。フランスとイタリアは、両国が共同開発したミサイル防衛システムの供与に動いている。しかし、これら防空システムのいずれも、まだ実戦配備されていない。
こうした対応の遅れは、今になって戦場での深刻な事態につながりかねない。今回の情報漏えいを受けて米国は、西側の防空システムとF16のような最新鋭ジェット戦闘機の供与ペース加速に向け、以前よりもずっと重い責務を負うことになった。こうした装備は、ロシアが自国の戦闘機をウクライナに投入した場合に空の防衛を可能にする。
それと同時に、今回の機密情報漏えいが一回限りの失態で終わることを願う。情報をリークした者がもっと多くの資料を盗み出していて、情報流出の大洪水のような事態が起きれば、打撃を被るのはウクライナだけにとどまらないだろう。
●ウクライナ、インドと関係強化意向 モディ首相の訪問期待 4/11
ウクライナのジェパル外務次官は10日、訪問中のインドで行ったインタビューで、対ロシア戦争の解決に向けてインドの一段の関与を望んでいるとし、モディ首相がウクライナを訪問することを期待していると述べた。
CNBCテレビ18の取材に、インドがウクライナ高官を20カ国・地域(G20)関連イベントに招待し、政治的対話を強化することも望んでいるとも語った。
インドは今年G20議長国を務め、9月に首脳会議を開催する。インド政府はウクライナ侵攻を巡り他国ほどロシアに批判的な姿勢を取っておらず、ロシア産原油の輸入も拡大している。
ジェパル氏は4日間の日程でインドを訪問。「インドはウクライナ問題に関与すべきだと考えている」と述べ、「トップレベルでの政治的対話の強化はこの大きな目標に向けた第一歩だと考えている。われわれの大統領は(モディ)首相との電話会談を求めている。いつかキーウに迎えることを期待している」と説明した。

 

●ロシアの石油・ガス収入、第2四半期末までに増加=プーチン大統領 4/12
ロシアのプーチン大統領は11日、石油・ガス収入が第2・四半期末までに増加するとの見通しを示し、世界的な原油高を背景に国内経済全体に一段と前向きな傾向が見られると指摘した。
ロシアの第1・四半期財政収支はエネルギー輸出収入の減少などで290億ドルの赤字となった。
プーチン氏は、欧米の制裁に直面する中でも国内経済は底堅いとの考えを示した。
予算の主要項目である石油・ガス収入は第1・四半期に約1兆3000億ルーブル(158億ドル)減少したと明らかにした上で、「原油価格の上昇により、第2・四半期末には状況が変化する見通しだ。追加の石油・ガス収入が予算に加わる」と説明した。
●ウクライナ民間人8490人死亡、ロシア侵攻後 国連発表 4/12
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は10日声明を発表し、ロシアの侵攻以降、ウクライナで民間人8490人が死亡したと明らかにした。
OHCHRによると、本格的な侵攻が始まった2022年2月24日から今年4月9日までの間のウクライナでの死傷者は2万2734人にのぼる。うち負傷者は1万4244人。
南部マリウポリや東部セベロドネツクなど前線となった一部の都市からの情報が遅れており、また確認中の報告が数多くあるため、実際の数字は「かなり多い」可能性が高いとOHCHRは指摘した。
OHCHRによると、確認された民間人の死亡の多くはロシア軍の攻撃を受けているウクライナ政府支配地域で発生し、東部のドネツク、ルハンスクの2州で3927人が犠牲になった。両州ではこの戦争でこれまでで最も残虐な戦闘が展開された。死傷者が出た際にロシアが占領していた地域では少なくとも民間人1894人が死亡した。
●米機密情報、ロシア側に警戒感「油断誘うため意図的に流出」 4/12
インターネット上に流出したロシアのウクライナ侵略を巡る米政府の機密文書では、米情報当局が両国から情報を入手していた実態の一端が明らかになった。米CNNは10日、ウクライナが計画する大規模な反転攻勢の作戦を一部変更したと報じており、文書流出は最前線の攻防に影響を及ぼし始めている。
CNNなど米メディアによると、文書にはウクライナの兵器や防空能力、即応態勢などの「弱点」に関する記述があった。流出した文書の大部分は、偽造や改ざんがないという。
ウクライナの地対空ミサイルの消耗が激しく、主力になっている「S300」のミサイルが5月3日に底をつくと指摘されていた。補完が急務となっている防空システムの現状が露側に伝わったことになる。
米情報当局がウォロディミル・ゼレンスキー大統領や周辺を通信傍受の対象にしていたことを示す文書も見つかった。ゼレンスキー氏が露南部ロストフ州への無人機攻撃を示唆したことを把握したのは、通信傍受によるものだった可能性が浮上した。ウクライナはロシアへの越境攻撃について、公式に関与を認めない方針を貫いている。
米国と北大西洋条約機構(NATO)が3月1日時点でまとめた文書では、ウクライナ軍が反転攻勢に向けて12旅団を編成し、4月末に訓練が完了するとの見通しも漏えいした。戦力に関する機密情報の流出が続けば、ウクライナと米欧の間で情報伝達に支障が出かねず、西側陣営では戦況への影響が懸念されている。
一方、米情報当局はプーチン露政権や露軍参謀本部からも詳細な情報を得ていた。米紙ニューヨーク・タイムズによると、流出文書には、露軍参謀本部が作成したドイツ製戦車「レオパルト2」など米欧製戦車への対抗策が記されていた。
ウクライナにミサイル攻撃を行う日程や標的を特定した露国防省の計画などを記した文書が確認された。
米バイデン政権は侵略開始前から露軍の計画を事前に把握しており、情報源の存在を裏付ける形となった。米中央情報局(CIA)が露国防省の通信を傍受するなど情報収集の手法に言及した文書も見つかったという。
今回の流出を受けて、ロシアは通信手段の変更や関係者の情報統制など対応を進めるとみられる。ニューヨーク・タイムズは「ロシアが米国の情報収集方法を把握し、情報の流れを断ち切ることができれば、ウクライナの戦場に影響を与える可能性がある」と指摘した。
ロシア側には、米欧が意図的に文書を流出させたとの警戒感も広がっている。露元国防省当局者らが運営する軍事SNS「Rybar」は10日、米主要メディアがウクライナの戦闘準備が整っていないと強調しているのはロシアの油断を誘うためだと分析し、「露指導部の失敗を狙っている」との見方を示した。
ロシアが制圧を目指すウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトを巡り、ロシアが一方的に任命したドネツク州の「暫定トップ」は10日、「75%を掌握した」と主張した。全域制圧に言及するのは「時期尚早だ」と述べ、戦果を誇張する従来の手法を封印した。
●台湾情勢「最悪なのは米中に追随」仏マクロン大統領発言が波紋  4/12
フランスのマクロン大統領が緊張の高まりが懸念される台湾情勢に関して「最悪なのは、アメリカや中国に追随しなければいけないと考えることだ」と述べ、米中の対立から一定の距離を保つべきだと主張した発言をめぐって波紋が広がっていて、閣僚が釈明に追われる事態となっています。
今月中国を訪問し習近平国家主席と会談したフランスのマクロン大統領は、フランスの経済紙「レゼコー」などが9日に報じたインタビューのなかで、台湾情勢に関して自身の見解を述べました。
この中で大統領は「最悪なのは、台湾の問題についてアメリカの歩調や、中国の過剰な反応に合わせヨーロッパの国々が追随しなければいけないと考えることだ」と述べました。
そのうえで「陣営間の対立の論理に立ち入ることは望ましくない」と述べ、ヨーロッパは、米中の対立から一定の距離を保ち、世界の「第3極」になるべきだと主張しました。
この発言をめぐっては、欧米の有力メディアも「中国への抑止力を損ねる」とか、「習主席への接近はロシアのウクライナ侵攻前にプーチン大統領へ接近し、失敗したことをほうふつとさせる」などと批判的に報じ、波紋を広げています。
フランスのルメール経済相は、11日のラジオ番組に出演し「アメリカと中国のライバル関係に乗せられるのではなく、ヨーロッパの独立を築きたいのだ」と発言の意図を説明するなど閣僚が釈明に追われる事態となっています。 

 

●プーチン氏、米記者拘束承認 4/13
米ブルームバーグ通信は12日、ロシアのプーチン大統領がウォールストリート・ジャーナル紙のエバン・ゲルシコビッチ記者の拘束を承認していたと報じた。プーチン政権で対米強硬派が影響力を高めていることが背景にあるという。
冷戦終結後、米メディア記者がロシアで拘束されるのは初めて。ロシアはスパイ罪で起訴し、拘束の長期化が見込まれている。ロシアのウクライナ侵攻を巡り緊張が続く米ロの対立が先鋭化する原因となっている。
ロシアは3月30日、軍産複合体に関する機密情報を入手しようとしていたとして中部エカテリンブルクでゲルシコビッチ氏を拘束した。
●「プーチンの政敵」ナワリヌイ氏、急激な容態悪化… 4/13
収監中のロシアの代表的な反体制派アレクセイ・ナワリヌイ氏が最近、体重が急減するなど容態が大きく悪化したという。
12日(現地時間)dpa、AFP通信によると、ナワリヌイ氏の弁護人はナワリヌイ氏が最近2週間独房収監中に体重が8キロ減少するなど救急車を呼び出すほど健康が大きく悪化したとテレグラムを通じて伝えた。
また弁護人はナワリヌイ氏が医学的問題に関連して適切な治療を受けておらず、刑務所行政当局が彼に渡す薬を受け取ることを拒否したと明らかにした。
特に「ナワリヌイ氏が原因不明の病気を患っている」とし、ロシア当局が彼の健康をゆっくり悪化させ続けた可能性も排除しなかった。
このため、正確な問題把握のために毒性および放射線検査を要求すると明らかにした。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の政敵とされるナワリヌイ氏は、2011年に創設した反腐敗財団を通じてロシア高官の不正疑惑を数多く暴露した。
ナワリヌイ氏は2020年8月、飛行機で突然毒物中毒の症状を見せて倒れた後、ドイツに搬送され治療を受けていたが、2021年1月帰国と同時にロシア当局に逮捕された。続いて開かれた裁判で裁判所は詐欺と法廷侮辱などの疑いで計11年6カ月の実刑を言い渡されたが、彼は政治的判決だとして獄中でも潔白を主張している。
●兵士の「斬首」動画流出 ロシア仕業か、戦争犯罪と非難―ウクライナ 4/13
英BBC放送(ロシア語電子版)は12日、ロシア部隊がウクライナ兵の頭部を切断したとみられる動画2本がインターネット上に流出したと伝えた。うち1本では、ロシア側が識別に使う白いテープを身に着けた人物が実行する様子が収められ、もう1本では破壊された装甲車の横にウクライナ兵2人の胴体だけが残されている。
ウクライナでは「戦争犯罪」(外務省)として怒りをもって受け止められ、クレバ外相は「過激派組織『イスラム国』(IS)より残忍だ」と非難。ゼレンスキー大統領は「ロシアの本質が映っている。偶発的な事件でなく、以前から数千回と繰り返されてきたことだ」と糾弾した。
撮影日時や場所は不明だが、ロシアのSNSでは、民間軍事会社「ワグネル」の仕業で、ウクライナ東部ドネツク州バフムト周辺で撮影されたのではないかという見方が広がっている。ロシアのペスコフ大統領報道官は記者団に「われわれは偽情報の世界に生きている」とコメントし、真偽は確認できないという認識を示した。
●ウクライナでの両軍死傷者すでに35.4万人、長期化も=米機密文書 4/13
ネット上に流出した米国機密情報とされる文書に、ウクライナ戦争でロシア・ウクライナ両軍の兵士合わせて最大35万4000人が死傷したとの記述があることが分かった。また、同戦争が2023年以降も続く長期戦に発展する可能性があるとも記されていた。
2023年2月23日付の分析では「ウクライナ東部ドンバス地方の戦いは年内いっぱいこう着する見込み」と題し、ロシアがをドンバス地方を奪取できる可能性は低いとの見方が示されている。
米国防情報局がまとめたとされる推計では、ロシア側の死傷者は18万9500─22万3000人。うち3万5500─4万3000人が戦死、15万4000─18万0000人が負傷したという。
一方、別の文書では、ウクライナ側の死傷者は12万4500─13万1000人に上り、戦死者は1万5500─1万7500人、負傷者は10万9000─11万3500人とされている。
この数字は、ロシアとウクライナの両国政府が発表した公式発表の約10倍に相当する。
ロイターはこの文書の真偽を独自に検証することはできなかった。ロシアやウクライナを含む複数の国が、流出した文書の信ぴょう性に疑問を呈している。また米政府関係者は、ファイルの一部が改ざんされているようだと述べている。 
●「ロシアは中国の植民地になる勢いだ」──CIA長官 4/13
ウクライナにおける軍事作戦はロシアのウラジーミル・プーチン大統領の「壮大な戦略的失敗」だった──ウィリアム・バーンズCIA長官は11日、ヒューストンのライス大学ベーカー公共政策研究所で行なった講演でそう断じた。ロシアは経済的な生き残りのために中国頼みを加速させることになると、バーンズはみる。
「ロシアは(戦場で)多大な人的・物質的損失を出しているだけではない。特殊部隊や指揮官が屈辱を味わい、ロシア軍の弱体ぶりが白日の下にさらされたばかりか、ロシア経済もまた制裁と貿易制限、1000社を超える西側企業の大脱出による長期的ダメージにあえいでいる」
「戦争初期におけるプーチンの狙いはNATOを分断し弱体化させることだった」と、バーンズは指摘。「だが、現実にはNATOの結束はかつてなく強まり、新たにフィンランドが加盟し、スウェーデンも後に続こうとしている」
支援疲れに期待する勘違い
「ロシアはエネルギー資源と原材料の輸出などで中国頼みを加速させていて、このまま行けば中国の経済的植民地になりかねない勢いだ。こうした状況をすべて勘案すると、ロシアのウクライナ侵攻はプーチンの壮大なるオウンゴールとしか言いようがない」
ジョー・バイデン米大統領はロシアがウクライナ侵攻に向けて着々と準備を整えつつある2021年11月、元駐ロシア大使のバーンズを2021年11月にモスクワに派遣し、侵攻計画を断念するようプーチンを説得させた。だがバーンズが持ち帰ったのは、プーチンは既に決意を固めているとの情報だった。
侵攻開始後1年と2カ月近く、これほど苦戦を強いられても、プーチンは自らの誤りを認めようとしないと、バーンズはライス大学で語った。
「プーチンはウクライナの抵抗をねじ伏せ、西側に支援疲れを引き起こせると信じている。持久戦になれば勝てると思い、西側にもそう思わせようとしている」と、講演の冒頭でバーンズは述べた。
「自分がウクライナに執着しているほど、西側はこの国を重視していないと踏んでいるのだ。私のみるところ、(短期に決着がつくという)侵攻前の読みと同じくらい、この読みも間違っている」
西側がロシアとの経済的デカップリング(切り離し)を進めるなか、ロシアは損失を穴埋めするため対中貿易に望みを託してきた。中国は格安価格になったロシアのエネルギー資源に飛びつき、2022年の中ロの貿易額は前年比35%近く増加。2024年までに2国間の通商規模を2000億ドルに拡大するという目標を予定より早く達成できそうだ。
中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は先月モスクワを訪れ、プーチンと2030年を目処とする経済協力の拡大で合意した。これにより金融、技術、農業、宇宙開発などの部門で、中国企業はロシア市場に優先的に進出できることになった。合意にはロシアが人民元による決済を増やすことも含まれる。
ベテランの中国ウォッチャーによれば、この合意でプーチンが得たのは政治的な見返りだ。ハーグの国際刑事裁判所から戦争犯罪で逮捕状が出された直後に習の訪問を受けたおかげで、プーチンは中国が仲介するウクライナ和平に前向きなゼスチャーを国内外に示せた。
あいまいな習近平、限界を試すプーチン
「今回の会談で、習率いる中国とプーチン率いるロシアの協力関係が深化したのは確かだ」と、バーンズは述べた。両首脳はロシアのウクライナ侵攻の数週間前にも会談を行い、「無制限」のパートナーシップを宣言。しかし中国はロシアのウクライナ侵攻を直接的に非難することを避けてきたため、プーチンは習にどの程度協力の意思があるのか半信半疑で、繰り返し限界を試してきた。
今のところ中国はロシアに対して実戦用兵器を供与することは控えており、見かけ上の「ウクライナ和平案」を提示する一方、プーチンがちらつかせる核の脅しに対しては距離を取っている。
「中ロのパートナーシップは決して侮れないし、両首脳とも本気で協力するつもりだが、少なくとも今のところは無制限と言えるほどの信頼関係はない」とバーンズは語った。
CIAの「最大の長期的」な監視対象は中国だと、バーンズは以前に述べている。
「習近平の中国は(国際社会の)テーブルに就くだけでは満足せず、その場を仕切りたがっている」
●中国とロシアの3月貿易額、過去最高 欧米企業撤退で中国製品に人気 4/13
中国税関総署が13日に発表した3月の貿易統計によると、ロシアとの貿易額(輸出入の合計)が前年同月比7割増の200億ドル(約2・7兆円)となり、月ごとでは過去最高額となった。特にロシアへの輸出額は同2・3倍にまで膨らんだ。ロシアのウクライナ侵攻後、両国の経済関係は深まり続けている。
昨年2月の侵攻開始直後は、米国による金融制裁を警戒する動きが中国で一時広がったこともあり、対ロ輸出は伸び悩んだ。しかし、その後は欧米企業がロシアから多く撤退するなかで、中国のスマートフォンや建設機械、自動車などが現地で人気となり、人民元を使った決済も広まるなど足元は伸び続けている。
一方、3月のロシアからの輸入額は同4割増。原油や天然ガスなどのエネルギーを中心に輸入を増やしている。前年同月比での増加は25カ月連続。習近平(シーチンピン)国家主席は3月にプーチン大統領とロシアで会談し、エネルギー分野の協力拡大で合意しており、今後も輸入の増加傾向は続くとみられる。
中国の輸出額全体では前年同月比で半年ぶりに増加に転じた一方、輸入額全体は微減だった。
●ロシア ウクライナ東部バフムトの完全掌握へ攻撃続ける  4/13
ロシア軍は、ウクライナ東部の激戦地バフムトの完全掌握に向け攻撃を続ける一方、南部の支配地域では、大規模な防衛線を築くなど、ウクライナ側の反転攻勢への警戒を強めているとみられます。
ロシアが侵攻するウクライナ東部ドネツク州のバフムトでは、激しい戦いが続いています。
ロシア軍とともに攻撃を仕掛ける民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏は11日、市内の80%以上を掌握したと主張しました。
アメリカのシンクタンク戦争研究所も12日、ロシア側がバフムトの76.5%以上を支配しているとみられると発表し、ウクライナ軍は13日「敵は市内を完全に占領しようと試みている」と指摘しました。
一方、イギリス国防省は12日、ロシア軍がウクライナ南部ザポリージャ州でおよそ120キロにわたって3重にもなる大規模な防衛線を築いていると明らかにしました。
そのうえで「ロシアは、ウクライナ軍が州内の主要都市メリトポリへの反撃に出ると確信し、防衛に注力しているのだろう」と分析し、ロシア軍はウクライナ側の反転攻勢への警戒を強めているとみられます。
一方、ウクライナの複数のメディアは、ウクライナ軍の兵士がロシア側の兵士によって首を切断される様子だとする動画がSNSで拡散されていると伝えました。
いつどこで撮影されたかは明らかになっていませんが、ウクライナのゼレンスキー大統領は12日に公開した演説で「世界は目を背けてはならない。殺人者を許しはしない」と述べ、ロシア側を非難しました。
ロシア大統領府のペスコフ報道官はこの動画について「私たちはフェイクの世界に住んでいる。この動画の真偽を確認する必要がある」と述べ、ロシア側の関与を否定しました。
●クリミア奪還が近い?家を売り払って逃げるロシア系住民 4/13
ロシア・ウクライナ戦争で、近々ウクライナ軍の反転攻勢があるとの恐れから、ロシア系住民によるクリミア脱出が加速しているという。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権でクリミア問題を統括するタミラ・タシェワ大統領代表が、国営テレビに出演して述べた。ロシア系住民は、2014年にロシアが一方的に併合したクリミア半島をウクライナが奪還しようとすることに不安を募らせているという。
クリミア半島では、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナへの本格侵攻を開始した数週間後の2022年4月11日以降、テロ警戒レベルが上から2番目の「黄色」に引き上げられており、ロシア軍はウクライナ軍の進軍に備えてクリミア半島を要塞化している。
クリミアは「売り出し物件だらけ」
タシェワは「大勢の人が家を捨て、クリミア半島から脱出している」と発言。これに先立ち、現在クリミア半島には50万人から80万人のロシア人が違法に暮らしていると述べ、ウクライナがクリミアを奪還すれば、彼らはウクライナの法律や国際法に従って、国外退去処分となる可能性があると指摘していた。
何千人ものロシア人がクリミアから脱出しているため、クリミアの住宅市場は売り一色だ、とつけ加えた。
「どれだけの人がクリミアを去ったのかについては、統計がないから分からない。残念なことに数十万人単位とはいかないが、数千人単位だと理解している。その証拠に、クリミア大橋にも大行列ができている」と彼女は述べた。クリミア大橋は、ロシア本土とクリミア半島を結ぶ橋だ。
本誌はこの件についてロシア外務省に問い合わせたが、返答はなかった。
クリミア奪還こそ戦争の
クリミア半島の先住少数民族タタール人を支援する「Q-Hub」の代表を務めるエミール・イブラギモワは、ウクライナのNVラジオに対して、ロシア系住民はいずれウクライナ軍がクリミアを解放し、報復を受けるのを恐れている。
2022年8月にクリミアのロシア空軍基地が空爆を受けたときも、多くのロシア系住民が逃げた。生き延びるため、彼らはクリミア大橋を渡った先にあるロシア南部のクラスノダールに逃れたという。
まだクリミアに残っているロシア系住民は、「ウクライナ軍が近い将来、クリミアを奪還しそうだと見て怯え、パニックに陥っているのだ」と、イブラギモワは言う。
ゼレンスキー大統領はクリミアを奪還すると宣言しており、2022年8月29日のテレビ演説の中で、ウクライナ軍はクリミアが併合されて以降ずっと、クリミア奪還を「目標に掲げてきた」と述べた。「今回の戦争は、ロシアが我々の領土であるクリミアを奪い、(東部の)ドンバス地方をも奪おうとしたことから始まった。だからクリミアの解放によって締めくくらなければならない」
ウクライナ国家安全国防会議のアレクセイ・ダニロフ書記は先週、「クリミア解放に向けた12のステップ」を公表。この中には、クリミア大橋の解体や、「2014年2月以降にクリミア半島で暮らすようになった」全てのロシア系住民の追放などが含まれている。
2014年以降、クリミアの首長を務めているロシアの政治家セルゲイ・アクショーノフは、クリミア半島はウクライナによる反転攻勢への「備えは出来ている」としている。
●ロシア、3層構造の防御陣地120キロ…南部メリトポリでウクライナ反転に備え 4/13
英国防省は12日、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部ザポリージャ州で、露軍が占拠する主要都市メリトポリを守るため、120キロ・メートルにわたる3層構造の防御陣地を構築したとする分析を示した。2014年に併合したクリミアと露本土の間に位置する同州で今後、ウクライナ軍の反転攻勢が行われる可能性が高いとみて、露軍は防衛態勢の強化を急いでいる模様だ。
3層構造の防御陣地は、最前線の部隊から離れた場所で後方部隊が2段階に分かれて控える隊形を指すとみられる。英国防省は「手厚い人員や砲撃支援がある場合、手ごわい障害になる可能性があるが、この地域の露軍に十分な資源があるかは不明だ」と評価した。米政策研究機関「戦争研究所」も11日、同州で露軍の特殊部隊が展開している可能性を指摘した。
ウクライナ軍は3月下旬以降、同州の南側7割を占領する露軍が補給拠点とするメリトポリの空港や鉄道駅を高機動ロケット砲システム(HIMARS)などで攻撃している。
●ウクライナ、22年GDPは29.1%減 ロシアの侵攻で 4/13
ウクライナ統計当局が12日遅く発表した2022年の国内総生産(GDP)は29.1%減だった。
ロシアの侵攻により、多数の死者や避難民が出たほか、重工業、送電、農業部門が打撃を受けた。南部と東部の多くの地域はロシアの支配下にあり、穀物・金属輸出に不可欠な黒海の港も利用が難しくなっている。
政府は今年のGDPが輸送・小売り・建設部門の改善により、1%増加する可能性があると予測している。
経済省によると、22年の輸出は35%減少した。
22年の穀物生産は5300万トンで、過去最高だった前年の8600万トンから減少した。
●ロシア戦争犯罪で展示会=ウクライナ大使「現状知って」―NY 4/13
ウクライナに侵攻を続けるロシアの戦争犯罪に焦点を当てた展示会が、米ニューヨークの国連本部近くで開催されている。
ウクライナのキスリツァ国連大使は12日、日本メディアの取材に応じ「今何が起きているかを知ってもらいたい」と訴えた。
会場には、ロシア兵が着用していた迷彩服やブーツ、軍用ヘリの残骸など1000点以上の実物を展示。ロシアの占領から解放された地域で集められたといい、キスリツァ氏は「侵略者に囲まれた(ウクライナ国民の)気分を感じさせるものだ」と説明した。
展示物には、北部チェルニヒウ州で住民360人以上が約1カ月にわたり監禁された学校の地下室につながる扉も。殺害されたり、監禁中に命を落としたりした人々の名前を壁に木炭で書き残した様子も再現された。
キスリツァ氏は「日本の一貫した支援に心から感謝する」と述べた上で、「安全保障の基本的原則(を巡る問題)に全世界がどう対応するかが問われている」と語り、支援継続を要請した。日本で将来、同様の展示会を開く構想があるとも明らかにした。 
●IMFや世界銀行など ウクライナへの全面的支援を確認 米で会合  4/13
ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナへの資金面の支援や復興プロジェクトについて話し合う会合が、12日、アメリカの首都ワシントンで開かれ、今後もウクライナを全面的に支援していくことを確認しました。
この会合はIMF=国際通貨基金と世界銀行が首都ワシントンで開催している春の総会に合わせて開かれ、12日、オープニングセッションが公開されました。
冒頭、オンラインで参加したウクライナのゼレンスキー大統領が、これまでの支援に感謝を伝えたうえで、住宅やエネルギー、交通インフラなどで必要となる支援は今後も変わらないと訴えました。
これに対して世界銀行のマルパス総裁は、ウクライナの復興に必要な資金は長期的に4110億ドル、日本円にしておよそ54兆円にのぼり、ヨーロッパの歴史上最も大きい規模の投資プロジェクトになると強調しました。
また、アメリカのイエレン財務長官は「ウクライナ政府による汚職撲滅などの取り組みを評価している。国際的な援助が適切に使われていると確認することが不可欠だ」としたうえで、ウクライナへの支援を必要なかぎり行うとするバイデン大統領のメッセージを伝えるなど、今後もウクライナを全面的に支援していくことを確認しました。

 

●プーチン氏承認の報道否定 ロシア高官、米紙記者拘束で  4/14
ロシアのペスコフ大統領報道官は13日、スパイ罪で起訴された米紙ウォールストリート・ジャーナルのエバン・ゲルシコビッチ記者の拘束をプーチン大統領が承認していたとの報道について「拘束は大統領ではなく、治安機関の権限だ」と述べ、否定した。タス通信が報じた。
米ブルームバーグ通信は12日、プーチン氏がゲルシコビッチ氏拘束を承認していたと報じていた。
ロシア連邦保安局(FSB)は3月30日、軍産複合体に関する機密情報を入手しようとしたとして中部エカテリンブルクでゲルシコビッチ氏を拘束した。
●「今年戦争は終わらない」機密文書に記されていた米国のウクライナ戦の展望 4/14
米国政府から流出した機密文書に、ウクライナ戦争が今年中に終息する可能性がなく、2024年にも続くだろうという米情報当局の分析が含まれていたことが分かった。
12日(現地時間)、ワシントン・ポスト(WP)は最近オンラインに流出した米国機密文書のうち未公開文書を入手したとし、これを分析して公開した。
該当の文書は米国防情報局(DIA)がウクライナ戦争に対して集めた資料とこれを土台に下した結論などがまとめられているという。文書内容はウクライナとロシアは年内にどちらも確実な勝機をつかめない状態で平和会談も拒否したまま退屈な消耗戦を続けるだろうとうのが骨子だ。この他に主な内容を整理した。
(1)和平会談はない
該当文書によると、DIAはウクライナが相当な領土を奪還してロシア軍に戦争遂行が不可能なほどの打撃を与えても和平会談にはつながらないだろうとの結論を出した。WPは「文書には『予想可能なすべてのシナリオを分析した結果、2023年内に戦争終息のための交渉はない』と明示された」と伝えた。
このような結論はウクライナとロシアの武器や装備など兵力に対する米国の綿密な調査に基づいて下された。文書は現在両者ともに「効果的な作戦を実行するには兵力も補給品も不足した状態」であり、「わずかな領土利益」でも達成されるならば戦争を終わらせる可能性も完全に排除できない状態とも伝えた。ただし「現在最も可能性が高いシナリオは、どちら側も決定的利益を得られない状態で膠着状態を持続すること」という結論を出した。
(2)ウクライナ、ロシア本土に対する攻撃の可能性
消耗戦が持続する場合、ウクライナ側は内部から批判が強まって「指導部交代」に入る可能性が高いとも記されていた。WPは「この内容が政治的・軍事的脈絡でリーダーシップの変化に言及しているのかどうか確実ではない」としつつも「現在ウクライナのゼレンスキー大統領と軍隊首長であるヴァレリー・ザルジヌイ将軍の間に緊張が存在するのは事実」と伝えた。
また、長期戦実行のためにより多くの若者を最前線に送り込み、ロシア本土に対する空襲意志も高まるよりほかはないと展望した。このようなウクライナの雰囲気はロシアのプーチン大統領にとって戦争を激化させたり中国が致命的殺傷武器をロシアに提供したりする名分になるかもしれないと懸念した。
(3)「ロシア、追加動員…核使用の可能性は極めて低い」
ロシアに対しては膠着状態によって戦闘力が急低下するだろうと見通した。また、ロシア軍が占領したウクライナの領土を統合しようとする努力を加速するだろうと説明した。
ロシアは今回の戦争でウクライナに相当な打撃を加えて多くの領土を占領するのが1次目標だ。これを達成した時はウクライナの政権交代のような追加目標を成し遂げるために動く可能性があるとみている。ただし「ロシアが核を使う可能性は相変らず低く、追加戦闘作戦のために『新たな国家動員令』が発表される可能性がある」と予測した。
米国シンクタンクであるジャーマン・マーシャル財団のヘザー・コンリー会長は「今回の戦争はどちらが先に資源の底がつくかを競う様相」としながら「どちらか一方が資源が枯渇した後に交渉が始まるというDIAの主張に同意する」と述べた。
WPはこの文書に対して論評を要請したがDIAはこれを拒否し、ロシアとウクライナ政府報道官はこれに応じなかったと伝えた。
●米軍事機密流出、空軍州兵の男逮捕 4/14
ロシアのウクライナ侵攻関連の情報を含む米軍事機密文書がインターネット上に大量流出した問題で、連邦捜査局(FBI)は13日、空軍州兵の男を逮捕した。メリック・ガーランド司法長官が発表した。
逮捕されたのはジャック・テシェイラ容疑者。米メディアによると、21歳の同容疑者は、機密文書が最初に投稿された通信アプリ「ディスコード」のチャットルームのリーダーとみられる。
米メディアは、マサチューセッツ州ノースダイトンで、赤い短パン姿の容疑者が重武装した捜査官により身柄を拘束され、車に乗せられる様子をヘリコプターから撮影した映像を放送した。 
●ベラルーシ西部に緊急配備…一触即発のロシア「プーチンが核攻撃する」 4/14
ヨーロッパ情勢がめまぐるしく動いている。
4月2日、ロシアの駐ベラルーシ大使が戦術核を配備するという見通しを表明。
4月4日、フィンランドが北大西洋条約機構(NATO)に正式加盟。
4月6日、ロシアとベラルーシのプーチン、ルカシェンコ両大統領が会談。ベラルーシ西部への核配備を事実上承認。
ヨーロッパ北部で、西側諸国とロシアが激しい駆け引きを繰り広げているのだ。
「侵攻したウクライナで、ロシアは苦戦を強いられています。米紙『ニューヨーク・タイムズ』によると、漏えいした米国防総省の機密文書にはロシア軍の損害は最大22万3000人にのぼると記されているそうです。死者は4万人以上になるとか。反転攻勢しようにも、西側からの経済制裁などで資源不足になり、武器や弾薬の生産が限られているといわれます。
かりにロシアがウクライナから撤退すれば、ヨーロッパ南部・黒海との接点を失うことになります。フィンランドのNATO加入は、さらなるダメージでしょう。黒海に続き、北部バルト海を喪失することになりかねませんから。ベラルーシへの戦術核配備は、そうした西側諸国の動きへの牽制とみられます」(全国紙国際部記者)
ロシアの重要な飛び地が危機に
ベラルーシ西部に配備されるとみられる核の真の標的は、ウクライナではないようだ。ロシア情勢に詳しい、筑波大学名誉教授・中村逸郎氏が解説する。
「ロシアには、バルト海に接するカリーニングラードという飛び地領土があります。バルチック艦隊の拠点であり、NATOへ圧力をかけるための重要な土地です。カリーニングラードへはベラルーシから100kmにわたる幹線道路がのび、そこから軍事物資を運びこんでいます。現在、フィンランドのNATO加盟に勢いを得たポーランドとリトアニアに、この幹線道路を封鎖しようという動きがあるんです。両国ともカリーニングラードと国境を接しています。戦術核配備の本当の狙いは、こうした動向への対抗でしょう。道路を封鎖されれば重要拠点カリーニングラードが事実上無力化されるため、プーチン大統領がポーランドやリトアニアを核攻撃する可能性は十分考えられます」
バルト海の状況は、ウクライナ情勢よりさらに危険性が高いという。中村氏が続ける。
「もしロシアとポーランド、リトアニアが戦争状態になればバルト3国やフィンランドも戦闘に巻き込まれることになります。当然、ロシアを支援するベラルーシも参戦する。他のヨーロッパ諸国や米国も黙っていられないでしょう。世界中を核の恐怖におとしめる、第3次世界大戦の勃発です」
緊迫しているのはウクライナ情勢だけではない。バルト海でも、複数の国がからんだ一触即発の状態が続いているのだ。
●ウクライナでのロシア戦死者数めぐりロシア当局内で争いか 4/14
米国防総省の機密文書が多数流出した問題で、ウクライナでのロシア戦死者数の数え方をめぐりロシア軍や治安当局で争いが生じている可能性が明らかになった。機密流出については米当局が13日、21歳の空軍州兵を逮捕したと発表した。
米司法省によると、機密文書を流出させた疑いでマサチューセッツ州空軍州兵のジャック・テシェイラ容疑者を逮捕した。ウクライナ情勢などに関する米軍の機密文書が数カ月前から50〜100点以上が、ゲーム愛好家に人気のソーシャルメディア「ディスコード」に投稿されていた。
テシェイラ容疑者は、空軍州兵の情報部門に所属。機密文書の流出先となったオンラインのゲーム・チャットグループのリーダーだったとされている。空軍州兵は米空軍の予備部隊に相当する。米当局筋によると、機密指定された防衛文書の送信を禁止するスパイ法違反の疑いで訴追される見通し。
ロシアは、今回の流出文書について、米政府が意図的に漏洩させた偽情報の可能性があると批判している。
ロシアの戦死者数は
オンラインに投稿されていた文書からは、ウクライナでのロシア兵の戦死者数について、ロシア国防省の集計は少なすぎると、ロシア連邦保安庁(FSB)が批判している様子がうかがえる。ロシア国家親衛隊や民間雇い兵組織「ワグネル」などの死者数を、国防省が計上していないと、FSBが指摘しているもようだ。
ロシアはウクライナでの戦死者数について、ほとんど公表していない。しかし、ロシア軍とその他の治安当局や組織の間で、ウクライナでの戦争についてしばしば対立が生じていると、これまで西側で指摘されていたことが、米軍文書からも裏付けられたことになる。
米軍文書によると、FSBは2月までのロシアの死傷者数を約11万人としている。他方、過去に明らかになった米政府の情報では、米政府はロシアの死傷者数を18万9500人〜22万3000人と推定。このうち、戦死者は3万5500人から4万3000人に上るとみられている。
ロシアが最後に示した公式な戦死者数は昨年9月のもので、その時は兵士5937人が戦死したと明らかにしていた。
戦死者数をめぐる国防省とFSBのいさかいを指摘した米軍文書は、ロシア軍の指揮系統には依然として、悪い情報を上層部に伝えたがらない傾向がみられると指摘している。
ロシア軍が戦場でどれほどの被害をこうむっているのか、実態のほどをウラジーミル・プーチン大統領は知らされていないのではないかと、これまでも複数の専門家が推測していた。「特別情報」に指定された米軍文書でも、同様の分析が示されていることになる。
別の米軍文書には、ワグネル代表のエフゲニー・プリゴジン氏とロシア国防省の間で2月に「情報戦」が繰り広げられていたという言及がある。
ウクライナ東部バフムート攻略の主力となったワグネルに対し、軍部が砲弾の供給を停止したとプリゴジン氏は繰り返し主張していた。
ロシア国家親衛隊が相当の被害を被っているため、「併合領土のすべてをロシアが確実に掌握することは難しいかもしれない」という分析も、米軍文書には記されている。ロシア国家親衛隊はこれまで、戦闘に参加するほか、昨年9月のウクライナ4州「併合」につながった見せかけの「住民投票」実施を担当した。
米紙ワシントン・ポストによると、流出したのは基地内で容疑者が書き写し、後に内容をパソコンで打ち出した内容と、撮影した文書そのものの写真。
文書を撮影した中には、ウクライナ東部ドンバスでロシア軍が展開する「消耗戦」に対する米軍の分析が書かれていた。それによると、ロシア軍が「予想外に回復」しない限り、ロシアが戦争目的を果たすのをウクライナは阻止し続けるだろうし、その結果「戦争は2023年以降も長引く」ことになるとされている。
情報戦の裏側か
ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は、こうした文書はアメリカが意図的に流出させた可能性があると指摘。アメリカは「紛争当時国」として「敵、つまりロシア連邦をかく乱」しようとしたのかもしれないと述べた。
他方、別の流出文書には、ロシア参謀本部からの情報として、ベラルーシ発のロシア・ベラルーシ合同攻撃が起きると2月初めにウクライナ情報機関を信じ込ませたと、ロシア側が「作戦成功」を喜んでいたという内容が書かれていた。
開戦1周年の2月下旬に向けて、ロシアがベラルーシ駐留部隊を増強しているとの情報が相次いでいた。昨年2月の開戦当初、ベラルーシからウクライナを侵攻しようとして失敗した作戦を、今度こそ成功させるのが狙いだとも言われていた。
この情報を受けてウクライナは、東部や南部の前線から部隊を首都キーウ周辺や北部へと移動させざるを得なかった。
同じ文書によると、ロシア軍は3月に「さらにウクライナ軍をかく乱するため」情報操作を2段階に分けて展開するよう推奨していた。流出文書には、この計画がベラルーシ軍幹部の承認を得るよう伝達されたことも明示されている。
●太平洋艦隊が軍事演習を開始 ロシア国防相 4/14
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は14日、極東ウラジオストクの港を拠点とする太平洋艦隊が軍事演習を開始したと発表した。
ショイグ氏は軍幹部との会合で、ウラジーミル・プーチン大統領の命令で急きょ始まった軍事演習の期間中、太平洋艦隊は厳戒態勢に置かれていると述べた。
ショイグ氏は「演習の主な目的は、海から来る潜在的な敵の攻撃を撃退する任務遂行能力を強化することだ」と説明した。
演習では、潜水艦の探知と破壊のほか、「大規模なロケット攻撃や空域からの攻撃の撃退」、陸海の標的に対するロケットや魚雷、砲弾の発射訓練が行われるという。
●戦争犯罪、7万7千件を記録 ウクライナ検事総長「正義を」  4/14
ロシアが侵攻したウクライナのアンドリー・コスチン検事総長は14日までに共同通信の単独インタビューに応じ、「7万7千件の戦争犯罪を既に記録した」と述べ、殺傷や拷問、性暴力被害のほか、ミサイルで自宅を破壊されるなど私有財産を失ったケースがあると指摘した。「被害者に正義をもたらす」必要があり、ロシアの資産を没収できる仕組みづくりなど補償制度確立が急務だと訴えた。
コスチン氏は、欧州連合(EU)が、ウクライナでの戦争犯罪捜査の証拠を保全するデータベースを構築したと紹介。ウクライナは、ポーランド、スロバキア、バルト3国、ルーマニアとの合同捜査チームにも加わっている。今後は、国際刑事裁判所(ICC)との捜査協力に消極姿勢だった米国とも収集した証拠の共有を進めるなど連携を深める考えを示した。
またICCが、ロシアのプーチン大統領に逮捕状を出したことを「歴史的決定だ」と評価。着手から5カ月で逮捕状を発出できた背景には、ウクライナの検察や司法当局の「100%の協力があった」と強調した。
●ウクライナ 東部のバフムトで劣勢か ロシアは外交活動を活発化  4/14
ロシアはウクライナ東部の拠点バフムトの完全掌握をねらい攻撃を強めていて、ウクライナ側は厳しい状況が続いているとみられます。また、ロシアのラブロフ外相は中南米の友好国を歴訪する予定で欧米との対立が深まる中、外交活動を活発化させています。
ウクライナ軍の参謀本部は、14日もロシア軍が東部ドネツク州のバフムトなどで激しい攻撃を仕掛けていると発表しました。
バフムトの戦況についてイギリス国防省は14日、ロシア側は国防省と民間軍事会社ワグネルとの協力関係が改善して攻撃が強化され、戦闘には、精鋭の空てい部隊も加わっていると指摘しました。
そして、ウクライナ側は依然、バフムトの西部地区を保持しているものの、特に過去48時間、激しい砲撃にさらされ、一部の地域からは撤退を余儀なくされているとしています。
バフムトについては、アメリカのシンクタンク戦争研究所も12日、ロシア側がバフムトの76.5%以上を支配しているとみられると発表していて、ウクライナ側は厳しい状況が続いているものとみられます。
一方、ロシアのラブロフ外相は13日、訪問先の中央アジアのウズベキスタンで中国の秦剛外相と会談し、ウクライナ情勢などをめぐり意見を交わすとともに、両国の結束をアピールしました。
また、ロシア外務省はラブロフ外相が4月後半からブラジル、ベネズエラ、キューバ、ニカラグアの中南米各国を歴訪すると発表し、友好関係にある国々との関係を強化し、アメリカをけん制するねらいもあるとみられます。
さらにラブロフ外相はロシアが4月、議長国を務める国連安全保障理事会の今月下旬の会合に出席したい考えも示していて、欧米との対立が深まる中、外交活動を活発化させています。

 

●ロシアで招集令状“電子化”の改正法成立 通知後の出国禁止に 4/15
ロシアで軍への招集令状を電子化し、オンラインでの通知を可能とする改正法が成立しました。ウクライナ侵攻が長期化する中、効率良く兵員を確保する狙いがあるとみられます。
プーチン大統領は14日、軍への動員や徴兵などの招集令状を電子化させる法改正案に署名しました。数時間の審議で下院で可決されるなど、改正法は異例の速さで成立した形です。
これにより当局側が招集対象者をインターネット上のリストに登録すれば本人に招集令状が通知されることになります。通知を受けた者はロシアからの出国が禁止されるほか、自動車の運転や不動産の取引なども認められなくなるとしています。
プーチン政権は去年、30万人の予備役の動員に踏み切りましたが、国外に脱出する人などが相次いだことから、今回の法改正は兵役逃れを防ぎ、効率良く兵員を確保する狙いがあるとみられます。
こうした中、ロシアではインターネットの検索ランキングで「アパートを妻の名義にする方法」などのキーワードが急上昇するなど、改正法への関心の高さがうかがえます。
●ロシア、「電子招集令状」法成立 予備役の出国阻止―プーチン大統領が署名 4/15
ロシアのプーチン大統領は14日、徴兵忌避の対策として「電子招集令状」を導入する法案に署名し、成立させた。ウクライナ侵攻の長期化を見据え、安定的な動員を可能にするとともに、反戦デモや国外脱出で混乱が広がらないよう国内の引き締めを図る。
インターネットを通じ電子令状が通知された瞬間から、予備役など対象者は出国禁止となる。独立系メディアは「ロシアは前線で戦うにふさわしい男性が国境をまたげないよう封鎖する」と警鐘を鳴らした。
従来の紙の令状は、本人に手渡さなければ原則無効だった。昨年秋に予備役30万人を招集した「部分動員令」の際、直接の受領から逃れることが徴兵の「抜け道」となった。法改正により、ロシア特有の公共サービスサイトの個人ページに電子令状が通知される。気付かなかったと主張しても、運転免許停止などの罰則があり、通知を確認するかどうかは「自己責任」(下院議員)となる。
●ワグネルトップ「停戦すべき時が来た」 ロシア軍の敗北にも言及 4/15
ロシアによるウクライナ侵略で、露軍側で参戦している露民間軍事会社「ワグネル」トップのプリゴジン氏は14日、「プーチン政権は軍事作戦の終了を宣言すべき時だ」とする声明を交流サイト(SNS)上で発表した。同氏はまた、露軍は「東部ドネツク州全域の制圧」とする主目標を達成できそうもない上、ウクライナ軍の反攻で敗北する可能性があるとも警告した。
ワグネルの部隊は最激戦地の東部ドネツク州バフムトを巡る攻防で露軍側の主力を担当。プリゴジン氏は、露軍側の戦力低下を認識し、作戦の終結を求めた可能性がある。ただ、プーチン政権は「軍事作戦は目標達成まで続ける」としており、現時点で停戦に動く可能性は低いとみられる。
プリゴジン氏は声明で、ロシアはウクライナ領の重要地域を占領し、露本土と実効支配するクリミア半島を結ぶ陸路も確保するなど十分な「戦果」を達成したと指摘。侵攻開始から1年に当たる今年2月24日時点の前線を停戦ラインとすべきだと主張した。停戦しない場合、露軍はウクライナ軍の反攻で占領地域を奪還され、威信も失う恐れがあると指摘。「ウクライナはかつてロシアの一部だったかもしれないが、今は国民国家だ」とも述べ、「ウクライナはロシアの一部だ」とするプーチン露大統領の持論に暗に異を唱えた。
一方、ドネツク州のキリレンコ知事は14日、同州の中心都市スラビャンスクの集合住宅などに露軍のミサイルが着弾し、2歳の子供を含む民間人8人が死亡したと交流サイト(SNS)上で発表した。ウクライナのゼレンスキー大統領は「邪悪な国家が再びその本性を表した」と非難。「ウクライナは国内にロシアの痕跡を一つも残さない。全ての敵を罰さずにはおかない」と表明した。
●ウクライナ政府 中国のスマホ大手「シャオミ」を「戦争支援企業」リストに追加 4/15
ウクライナ政府は、中国のスマートフォン大手シャオミを「国際的な戦争支援企業」リストに加えたと発表しました。シャオミは「戦争を支持していない」と反論しています。
ロイター通信によりますと、ウクライナ政府は13日、中国のスマートフォン大手「シャオミ」を「戦争支援企業」のリストに加えたと発表しました。ロシアによるウクライナ侵攻後もロシアでビジネスを続けていることを理由にあげています。
これに対し、シャオミは声明を発表し、「私たちはグローバル企業であり、高品質のスマートフォンや家電を世界中の消費者に提供している。リストに加えられたことに強く反対する。私たちは平和を願い、戦争行為は一切支持しない立場だ」と反論しています。  
●ロシア民間軍事会社トップが「侵攻終結」に言及 一方で戦闘継続も主張 4/15
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」を率いるプリゴジン氏がウクライナ侵攻の終結について言及しました。プーチン大統領周辺で侵攻終結に言及した初めてのケースになります。
プリゴジン氏は14日、声明を発表し、ロシアはウクライナの重要地域を占領し、クリミア半島への陸路も確保するなど十分な「戦果」を挙げたと主張しました。
そして、「特別軍事作戦を終了させることが理想的な選択肢だ」と言及し、今年2月24日時点の前線が、アメリカがロシアに譲歩できる内容だと指摘しました。
このまま侵攻を続けた場合、ロシアが占領地域を拡大できる可能性は「あまりありそうにない」と強調し、別のシナリオはロシアの敗北だとしています。
こうした一方で、プリゴジン氏は戦闘の継続も主張しました。
また、プリゴジン氏は、西側諸国が戦争の長期化を利用してプーチン氏に不満を抱いているロシアのエリートを説得しようとしていると指摘しました。
今回、侵攻終結に言及した真意は分かっていませんが、2月24日までに占領した地域の維持を前提とするプリゴジン氏の主張に、ウクライナが妥協する可能性は低く、現実的な提案ではないとみられます。
戦争の終結時期を示せないプーチン大統領に対するメッセージの可能性もあります。
プリゴジン氏は最近、体制内野党である「公正ロシア」に急接近したり政治政党を立ち上げるという見方も出ていて、来年のロシア大統領選を見据えたとみられる動きを加速させています。
●ロシア特殊部隊スペツナズ、ウクライナ戦争で著しい戦力低下か 米紙報道 4/15
米紙ワシントン・ポストは14日、インターネット上に流出した米情報機関の機密文書をもとに、ロシア特殊部隊スペツナズがウクライナでの戦争により著しい戦力低下を被っていると報じた。
CNNは一連の文書を確認しておらず、その内容について検証できていない。
ポスト紙によると、一連の文書はSNS「ディスコード」を通じて入手されたもので、傍受された情報に言及している。スペツナズの第346旅団はほぼ全滅状態で、活動できるのは「派遣された900人のうち125人のみ」だという。
米当局者はロシアの膨大な死傷者数を踏まえ、ウクライナをはじめとする軍の活動地域で甚大な影響が出るとの見方を示す。ポスト紙によると、高度な訓練を受けた部隊の場合、隊員の補充に最大10年かかると米当局者は見ている。
CNNは米国防総省やロシア国防省にコメントを求めている。
ウクライナの複数の当局者によると、ロシアの特殊部隊は現在、ウクライナ東部バフムートに派遣されている。バフムートは現時点で最も激しい戦闘が繰り広げられている地域。
ウクライナのマリャル国防次官は13日、「敵はワグネルの戦闘員や空中強襲部隊、特殊部隊を含むプロの部隊をバフムートに集中させているが、現地で目標を達成できていない」との見方を示した。
ロシア特殊部隊は侵攻初期にキーウ周辺などで拙劣な使い方をされ、大きな損失を被った。CNNは開戦当初、キーウ近郊ホストメリにあるアントノフ空港で、ロシア空挺(くうてい)軍がウクライナ軍と撃ち合う様子をライブ報道。その後ロシア側は大敗を喫し、4月初めまでに撤退する結果になった。
●ブラジル大統領、米国に「戦争促進」やめるよう要請 4/15
ウクライナでの戦争などに関連する米機密文書がインターネット上に流出した問題で、米空軍州兵のジャック・テシェイラ被告が14日、ボストン連邦地裁に初出廷した。捜査当局は、流出で敵対国が何らかの役割を果たしたかどうかを調査している。
米機密文書流出、21歳の州兵を訴追−バイデン氏は機密配布の制限指示
ウクライナ東部で戦闘が続く中、同国の欧州同盟国の一部は、ウクライナ軍が年内に決定的な突破口を開けるか懐疑的な考えを持っている。一方、ロシアのプーチン大統領は、徴兵逃れするロシア人に新たな厳罰を科す法律に署名した。
ブラジルのルラ大統領は中国・北京を訪問の際、ウクライナでの戦争終結に向けた進展が見られないとして米国を批判した。「米国は戦争を促進するのをやめ、平和について話し始めることが重要だ」とルラ氏は述べた。
●訪中のブラジル大統領「米国は戦争扇動やめよ」 4/15
中国を訪問しているブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領は15日、米国はウクライナで「戦争を扇動する」のをやめ、平和について話し始めるべきだと訴えた。
ルラ氏は、中国で習近平国家主席と会談。アラブ首長国連邦に向けて出発する前に記者団に対し、「米国は戦争を扇動するのをやめ、平和について話し始めなければならない。欧州連合も平和について話し始める必要がある」と語った。
そうすることで国際社会は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に「和平は世界全体の利益になる」と「説得」することができると主張。
プーチン氏やゼレンスキー氏と協議するには「忍耐が重要だ」とした上で、「何よりも必要なのは、武器を供与し、戦争をあおっている国を説得によって止めることだ」と続けた。
中国とブラジルは西側諸国と異なり、ウクライナ侵攻をめぐってロシアに制裁を科しておらず、自らを平和実現に向けた橋渡し役と位置付けようとしている。
ルラ氏は訪中前、ウクライナ紛争の仲裁に向けた多国間グループの創設も提案し、本件について習氏と協議する意向を示していたが、会談後、本件の進展状況についての質問には詳細を明らかにしなかった。
●ウクライナ軍がバフムトの一部から撤退か、補給に重大な問題 4/15
英情報機関は14日、ウクライナ軍が東部ドネツク州バフムトの一部地域からの撤退を余儀なくされているとの見方を示した。ロシア軍が再び攻勢を強め、2日にわたって激しい砲撃を行っていると指摘した。
「ロシアはバフムトへの攻撃を再び強めている。ロシア軍と(民間軍事会社)ワグネル・グループの部隊の連携が改善した」と分析した。
「ウクライナ軍は重大な補給の問題に直面しているが、明け渡さざるを得なくなった陣地から秩序ある撤退を行っている」との見方を示した。
「ウクライナ軍はバフムトの西地区を維持しているが、48時間前からロシア軍の非常に激しい砲撃を受けている」とした。
ワグネルの部隊はバフムト中心部での前進に照準を合わせており、ロシアの空挺部隊は街の側面への攻撃により援護しているという。

 

●プーチン大統領の政敵ナワリヌイ氏、毒物を盛られた疑い… 4/16
収監中のロシア野党の主要人物アレクセイ・ナワリヌイ氏(46)が、正体不明の毒物に徐々におかされている症状を示していると、氏の報道担当者が13日(現地時間)明らかにした。
ナワリヌイ氏の報道担当のキラ・ヤルミシュ氏はこの日、ナワリヌイ氏が中毒症状のため食べ物を食べられず、7日夜には収監中の刑務所に救急車が出動したと述べた。ロイター通信が伝えた。ナワリヌイ氏はロシアの首都モスクワから東に250キロ離れた地域の刑務所に収容されている。
ヤルミシュ氏は、ナワリヌイ氏が腹痛に苦しんでおり、刑務所が提供する食べ物を食べられないにもかかわらず、他の食事を供給されずにいると主張した。同氏は「ナワリヌイ氏は刑務所で与えられる食べ物を食べると腹痛がますますひどくなる」として「毒物中毒の可能性を排除できない」と述べた。ただし、過去にナワリヌイ氏が経験したように大量の毒物によって中毒になるのではなく、少量の毒を継続的に盛られているものと疑われると明らかにした。ドイツ政府も12日、ナワリヌイ氏の健康が悪化し続けていると懸念を表明した。
ナワリヌイ氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対抗する代表的な人物として浮上した2020年8月20日、毒物中毒になり意識不明に陥ったことがある。その時は、シベリア地域で地方選挙出馬を控えた野党候補の支持活動をした後、モスクワに向かう途中、飛行機で意識を失った。飛行機は途中で緊急着陸した。その後、ドイツのベルリンに移り、治療を受けて回復した。ナワリヌイ氏は退院直後、毒物中毒はプーチン大統領の指示によるものだと主張した。
同氏は2021年1月17日、ロシアに帰国した直後に逮捕され、2014年の金品違法取得容疑で下された有罪判決の執行猶予が取り消され、収監された。その後、法廷冒涜の疑いまで加わり、11年6カ月の拘束刑に処された。ナワリヌイ氏は刑務所に収監されている間も、ロシアのウクライナ侵攻を批判するなど、プーチン政権に対する批判を続けている。
ロシア政府はナワリヌイ氏拘束後、関連する反腐敗財団、市民権利保護財団、ナワリヌイ本部などの団体を過激派団体と規定して解散させるなど、ナワリヌイ氏とその支持者の活動を極度に統制している。
ヤルミシュ氏は「プーチンには越えてはならない線が存在しない。ナワリヌイ氏は無実だがプーチンの個人的な恨みのため刑務所に入れられている」と主張した。
●米国の機密文書「ロシア軍の内部分裂が深刻」…NYTが追加入手 4/16
ウクライナ戦争でのロシア軍の内部分裂が深刻化していることを米国が把握しているという事実が、最近流出した米政府の機密文書によって新たに明らかになった。
米「ニューヨーク・タイムズ」紙は13日(現地時間)、最近流出した米国の機密文書のうち、これまで公開されていなかった文書を追加入手したとし、その中には戦争でのロシア軍の死傷者数を正確に集計していないとロシア連邦保安局(FSB)が国防省を批判する内容が含まれていると報じた。この記事によると、FSBは「実際の戦争に参加して死亡または負傷したロシア人は計11万人」であると把握しているが、ロシア国防省は、昨年9月に死傷者数を5937人と発表して以降、さらなる公開は行っていない。米国は、これまでのロシア軍の死傷者数を約20万人と推定してきた。
具体的にニューヨーク・タイムズが入手した資料の2月28日付の内容を見ると、FSBは自国の国防省の死傷者集計を批判しつつ、死傷者数には大統領直属の準軍事組織である国家親衛隊(内務省軍)、民間傭兵グループ「ワグネル」、チェチェン共和国の参戦部隊などが含まれていないと指摘した。米国の情報当局はこれらの文書で「ロシア軍の関係者が上層部に否定的なニュースを報告することをはばかる状態が続いている」と分析した。
今年1月以降に流出したと把握されている米情報当局の文書は100ページ余りあると認識されてきた。しかし、8日のニューヨーク・タイムズの最初の報道以降にメディアが公開してきた内容は、その半分ほどの53ページ。同紙は、これまで報道されていなかった27ページほどを追加入手し、上のように報道した。同紙は、追加文書は写真のかたちで入手し、一部のページは抜けているものの、総じて国家安全保障局(NSA)、大統領直属の国家情報長官室(ODNI)、国防総省統合参謀本部などが作成したものとみられると説明した。
一方、今回の文書では、ロシアのプーチン大統領が2月22日に、互いに公開批判を続けているセルゲイ・ショイグ国防相と傭兵組織「ワグネル」グループの長であるエフゲニー・プリゴジン氏を呼んで和解させようとしたことが明らかになった。同紙は追加文書を分析し、「プーチン大統領が13カ月以上続いてきた戦争で勝利を保証することに失敗した理由の一つは、内部分裂と相互批判」、「クレムリン(ロシア大統領府)がウクライナ戦線に配した雑多な複数の兵力は、時に目的が相反することで、ロシアの戦闘力をさらに複雑にしている」と指摘した。
●ロシア 激戦地の郊外奪ったと主張 ウクライナ側は一部で撤退か  4/16
ウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトの掌握をねらって侵攻を続けるロシアは、郊外2か所の区域を奪ったと主張しました。ウクライナ側は一部で撤退を余儀なくされているという見方が出るなど厳しい状況が続いているとみられます。
ウクライナ側の拠点バフムトをめぐってロシア国防省は15日の発表で、民間軍事会社ワグネルの部隊が街の南と北にある2か所の区域を奪ったとした上で、市内に残るウクライナ軍は退却していると主張しました。
イギリス国防省は14日の分析で、ロシア側は国防省とワグネルの関係が改善され、精鋭の空てい部隊も加わってバフムトへの攻撃を再び活発化させていると指摘した上で、ウクライナ側は一部で撤退を余儀なくされているという見方を示しました。
ウクライナ軍の東部方面部隊の報道官は15日、地元メディアに対して「過去数十年で例のない血みどろの戦いになっている」と述べ、ロシア側が24時間で、バフムトや周辺に150発を超す砲撃を行うなど激しい攻撃を続けていると訴えました。
その上で「われわれは敵の戦闘能力をそぎ落とし、体力と士気を奪うことに全力を注いでいる」と述べ、バフムトでロシアの侵攻を食い止める考えを強調しました。  
●強制併合のウクライナ4州にモスクワ時間、プーチン氏が法律署名 4/16
ロシアのプーチン大統領は16日までに、同国が昨年9月に一方的な併合を宣言したウクライナ東部と南部の4州にモスクワ時間を適用する法律に署名した。
政府の公式サイトに掲載された法令で判明した。対象の地域は東部のドネツク、ルハンスク両州、南部ヘルソン州に中南部ザポリージャ州。
ただ、これら4州では併合の宣言以降、モスクワ時間が実質的に導入されていたという。
ウクライナのキーウ時間は夏はモスクワと同じだが、冬は1時間遅くなっている。
ロシア軍は4州の全土を占領しているわけではなく、ウクライナの実効支配地も混在している。
●ウクライナ 復活祭も南部で砲撃 東部でも激戦続く厳しい状況か  4/16
ロシアが侵攻するウクライナでは、キリストの復活を祝う復活祭にあたる16日も各地では戦闘が行われ、東部の激戦地バフムトでは、ウクライナ側は厳しい状況が続いているとみられます。
ウクライナでは、キリストの復活を祝う復活祭にあたる16日も各地で戦闘が続き、地元の当局者などによりますと南部ミコライウ州で、ロシア軍の砲撃で10代の若者2人が死亡したほか、前日の15日には南部ザポリージャ州で地元の教会が破壊されたとしています。
ウクライナ軍の参謀本部は16日、東部ドネツク州の拠点バフムトと、州都ドネツクの南西にあるマリインカが激戦地となっていると指摘しました。
一方、ロシア国防省は15日、バフムトについて、民間軍事会社ワグネルの部隊が街の南と北にある2か所の区域を奪ったとした上で、市内のウクライナ軍が退却していると主張するなど、ウクライナ側は厳しい状況が続いているとみられます。
こうした中、ワグネルの代表プリゴジン氏は14日、SNS上にウクライナの侵攻に関する長文の論文を投稿しました。
論文でプリゴジン氏は、バフムトを掌握する重要性を強調するとともに、「理想的なのは、特別軍事作戦の終了を発表し、ロシアの成果が得られたことを人々に知らせることだ」などと主張しました。
そして、ウクライナ軍が大規模な反転攻勢を行えば、ロシア側のリスクになるとしていて、侵攻から1年たった2023年2月24日時点でロシア側が占領した領土を維持したうえで停戦することなどを提案しています。
これについてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は15日に発表した分析で、「プリゴジン氏はウクライナ侵略の終結を提案したわけではない。ウクライナを倒すか、または、ロシア国内の愛国主義の勢力を再生してから、将来的にロシアが勝利できるように求めたものだ」と分析しています。
プーチン大統領 ロシア正教会の大聖堂で夜の礼拝に参列
ロシアのプーチン大統領は、キリストの復活を祝う16日の復活祭にあわせて首都モスクワの中心部にあるロシア正教会の大聖堂で、側近のひとりであるモスクワのソビャーニン市長や多くの市民とともに夜の礼拝に参列しました。
プーチン大統領は火をともした赤いろうそくを手にし、ロシア正教会を率いるキリル総主教にあわせて祈りをささげていました。プーチン大統領はウクライナへの侵攻を続ける中、去年もこの時期に、復活祭の礼拝に参列しています。
ロシア正教会のキリル総主教はプーチン政権の軍事侵攻についてロシア正教の信者の世界を守るためのものだとして支持する立場を鮮明にしています。

 

●ゼレンスキー大統領 クリミア含む全領土を奪還する考え示す  4/17
ロシア軍による軍事侵攻が続くウクライナでは、キリストの復活を祝う復活祭にあたる16日も各地でロシア側の攻撃が続き、ゼレンスキー大統領は改めて国民に結束を呼びかけました。
ウクライナでは復活祭にあたる16日も東部や南部でロシア側の攻撃が続き、地元メディアによりますと、南部ザポリージャ州では未明のミサイル攻撃によって教会が大きな被害を受けました。
攻撃があった時間は例年なら大勢の人が復活祭の礼拝を行っていますが、夜間の外出禁止令が続いていることしは礼拝は行われていなかったということです。
また東部ドニプロペトロウシク州でも宗教施設が攻撃を受け、けが人が出たと地元の当局者がSNSで明らかにしました。
復活祭にあわせてウクライナの伝統的な服に身を包んだゼレンスキー大統領は、16日に公開した動画で「すでに長い道のりを歩んできたが、最も難しい峠はまだ先だ。われわれがともにそれを乗り越えた時、国じゅうを太陽が照らす夜明けが来る」などと述べ、改めて国民の結束と徹底抗戦を呼びかけました。
そのうえで、「太陽は南部でも東部でも、そしてクリミアでも輝くだろう」と述べ、2014年にロシアが一方的に併合したクリミアを含むすべての領土を奪還する考えを重ねて示しました。
●中国要人、3カ月連続でロシア訪問 プーチン氏が国防相と会談 4/17
ロシアのプーチン大統領は16日、モスクワを訪れた中国の李尚福国務委員兼国防相と会談した。プーチン氏が中国要人と会談するのは、3月の習近平(シーチンピン)国家主席らに続いて3カ月連続。ウクライナ侵攻をめぐりロシアと米欧が激しく対立するなか、中ロは蜜月関係を国内外に誇示している。
プーチン大統領は週末、ロシア正教会の復活祭の日にもかかわらず、到着したばかりの李氏をショイグ国防相とともに歓迎した。
プーチン氏は、両国の関係が包括的に発展していると評価した。特に軍事分野は、極東と欧州で合同軍事演習が活発に行われ、「ロ中関係の、極めて信頼性の高い、戦略的な性格を強化する一つの重要な分野だ」と述べ、軍事協力の拡大に期待を示した。
李氏は「週末に私のために時間を割いてくれて、とても光栄だ」とプーチン氏に感謝し、「最近のロシアと中国の軍事と軍事技術分野での協力は、大変発展しており、世界と地域の安全保障に多大な貢献をしている」と強調した。中ロ関係の特別な性格と戦略的な重要性を示すために最初の外国訪問にロシアを選んだと説明した。
ロシア国防省によると、李氏は18日までロシアに滞在し、ショイグ氏らと軍事協力や世界の安全保障問題などを協議するという。
ウクライナ侵攻を批判する米欧諸国は、中国がロシアに武器を供与する可能性があると警戒している。中国はロシアへの軍事支援はないと否定しているが、2月に中国外交部門トップの王毅(ワンイー)共産党政治局員、3月にも習近平氏が相次ぎ訪ロし、ロシアとの関係を強化する考えを示している。
●プーチン大統領 中国の国防相と会談 軍事面の連携深まりを強調  4/17
ロシアのプーチン大統領はモスクワを訪問している中国の李尚福国防相と会談し、両国の軍事面での連携が深まっていると強調しました。
プーチン大統領は16日、クレムリンで李尚福国防相と会談し、会談にはショイグ国防相も同席しました。
会談の冒頭、プーチン大統領は「われわれは定期的に有益な情報を交換し、軍事技術の分野で協力し、極東やヨーロッパ、そして陸海空のさまざまな場で、合同演習も実施してきた」と述べ、中国と軍事面での連携が深まっていると強調しました。
ロシアの国営通信社によりますと、この中で李国防相は「われわれの関係は、非常に強固だ。冷戦時代の軍事や政治の関係よりも上回っている」と応じたということです。
李国防相は今月19日までのロシア滞在中に軍の幹部との会談や軍の学校の視察を行う予定で、両国としてはアメリカなどに対抗する姿勢を打ち出したいねらいとみられます。
ウクライナ情勢をめぐって、ロシア軍が兵器不足に直面する中、欧米やウクライナは中国がロシアへの兵器の供与などに踏み切らないか警戒を強めています。
●ウクライナ東部バフムート、「前例のない」戦いに 通りごとに戦闘 4/17
ウクライナ軍とロシア軍が激しい戦いを続けているウクライナ東部バフムート市での戦況について、ウクライナ軍報道官は、過去24時間で100回近い砲撃が行われたと明らかにした。
両軍が街の支配をめぐって、通りごと、あるいは家ごとに約30の戦闘が行われたという。
ウクライナ軍が新たに公開した映像は戦闘の激しさを物語っている。
映像の一つでは、ウクライナ軍の兵士が集合住宅の1階から銃撃を行っているが、部屋の角は完全に吹き飛ばされて粉々になっている。
銃を撃ち合う音や爆発の音が途絶えることはなく、報道官は前日について「過去数十年で前例のない、最も血にまみれた戦闘」と形容した。
ロシア国防省は16日、ロシアの民間軍事会社ワグネルの戦闘員がバフムートの北部と南部の2区画を占領したと主張した。ロシア国営RIAノーボスチ通信が伝えた。
CNNはこの報道について独自に確認ができていない。しかし、米シンクタンク「戦争研究所」は、位置情報を基にした映像で、ロシア側の主張を支持しているようだ。
ウクライナ軍の報道官によれば、ロシア軍は15日にチャシブヤールから西に向かうバフムートの主要な補給路沿いにある街への攻撃を開始した。
●G7外相会合 初日は中国の一方的な現状変更の試みに反対で一致  4/17
G7=主要7か国の外相会合は16日夜、長野県軽井沢町で開幕し、中国による力を背景とした一方的な現状変更の試みに反対していくことで一致するとともに、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて確認しました。2日目の17日は、ウクライナ情勢や「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国を念頭にした支援のあり方などをめぐって意見が交わされます。
長野県軽井沢町で16日夜開幕した外相会合では、議長を務める林外務大臣と各国の外相が、夕食をともにしながら2時間余り、中国を含めたインド太平洋地域の情勢をめぐって意見を交わしました。
この中で林大臣は中国について、東シナ海や南シナ海で海洋進出を強める動きや、大手製薬会社の日本人男性らの拘束などを含め、さまざまな課題への懸念を表明し、国際社会の一員として責任ある行動を求めることが重要だと指摘しました。
その上で、G7の結束が極めて重要だとして、力を背景とした一方的な現状変更の試みに反対することで一致するとともに、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて確認しました。
一方で、林大臣は、中国と意思疎通を継続しながらグローバルな課題への対応では協力し、建設的で安定的な関係の構築を図ることが重要だと強調し、各国の外相も同様の認識を示しました。
また、北朝鮮が前例のない頻度と方法で弾道ミサイルを発射していることに対し、G7として強く非難することで一致しました。
外相会合は、2日目の17日は、ウクライナ情勢をめぐって意見を交わし、結束してロシアへの制裁とウクライナ支援を継続していく方針を改めて確認する見通しです。
また「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国を念頭にした支援のあり方なども議論することにしています。
●ポーランドとハンガリー、ウクライナ農産物を禁輸 自国農業を保護 4/17
中欧のポーランドとハンガリーは15日、穀物などウクライナ産農産物の輸入を一時的に禁止すると発表した。ロシアによる侵攻後に大量流入した安価なウクライナ産農産物から、国内農業を保護する目的という。AP通信などが伝えた。
ウクライナ産の農産物は、ロシアの軍事侵攻の影響でアフリカや中東への黒海経由での輸出が困難になっている。欧州連合(EU)は支援策として関税を免除して輸出を促進しようとしたが、安価なウクライナ産の多くが中東欧の国々にとどまって農産物の価格を押し下げ、地元農家に損害を与えているという。
こうしたEUの対応にポーランドなどは不満を強めており、ブルガリアも禁輸を検討しているという。
EUの報道官は16日、ポーランドなどの措置について、「通商政策はEUの独占的な権限であり、加盟国の一方的な措置は受け入れられない」と述べた。
また、ウクライナの農業政策・食料省は声明で、「ポーランドの農家が苦境にあることは理解しているが、現状ではウクライナの農家が最も難しい局面にあることも強調したい」と懸念を表明した。 
●ロシア軍関連施設で相次ぐ不審火。反プーチン勢力「黒い橋」の犯行声明も 4/17
ロシア西部カザンで4月15日、戦車の訓練場で火災が発生したと地元メディアが伝えた。火災の前には爆発音が聞こえたという。
カザンはモスクワの西約700キロ、100万人以上が暮らす都市だ。ウクライナのネットメディア、キーウ・インディペンデントによれば、爆発音が聞かれたのは市の南部、戦車の訓練に使われている場所の近くだったという。
ロシアが「特別軍事作戦」ことウクライナ侵攻を開始したのは昨年2月。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は当初、短期間での勝利を見込んでいたが、今もロシア軍は期待通りの戦果を挙げるには至っていない。春を迎え、ウクライナはロシア軍に支配されている地域を奪還すべく、反転攻勢の準備を行っているとみられている。
15日午後の時点で、カザンの火災の詳細はほとんど分からないままだった。ロシア当局は考えられる火災の原因について黙して語らないばかりか、火災によるけが人や死者の有無についても明らかにしていない。
そもそもロシア当局は、報道されたような火事の報告は受けていないとの立場だと、地元メディアのインカザンは伝えている。動画も撮影されているのにだ。
インカザンによれば、周辺住民はメッセージアプリのテレグラムに「大きな爆発音」が聞こえたと投稿、爆発の発生を伝えたという。自宅アパートが揺れたとの投稿もあった。
反政府勢力が「犯行声明」を出した例も
カザン市内で煙が高く立ち上る動画も15日朝にソーシャルメディアに投稿されている。
「カザンの住民は戦車の訓練場近くで強力な爆発が起きたと伝えている。地元当局はいつも通り、全てを否定している」と、ベラルーシの報道メディア、ネクスタはツイートした。
地元当局は10月、プーチンが9月に出した部分動員令を受けてウクライナでの戦闘に動員された一部の住民がカザンに送られたと明らかにしている。ちなみに部分動員令が出されたのはウクライナの反攻のさなか。この反攻でウクライナは、北東部ハルキウ州の大半を奪還した。
今回の火災の原因は分かっていないが、ウクライナ侵攻が始まって以降、ロシアでは軍などの関連施設で火災が相次いでいる。
3月には、大陸間弾道弾(ICBM)トーポリMの発射装置などロシア軍向けの兵器を製造している工場で出火。地元当局によれば、建物から7人が救助されたという。
同じく3月には、ウクライナとの国境に近いロシア南部の都市ロストフナドヌーで、連邦保安局(FSB)が使用している建物で火災が発生。「黒い橋」と名乗る反プーチン派勢力が犯行声明を出した。この火災では少なくとも4人が死亡、5人がけがをした。
また昨年12月には、モスクワのクレムリン近くの軍の関連施設でも火災が起きている。
本誌はロシア外務省に電子メールでコメントを求めたが回答は得られていない。
●ワグネル創設者「反転攻勢でロシア敗北の可能性」 プーチンに異を唱える 4/17
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」を率いるプリゴジン氏が突然、ロシアが敗北する可能性があると指摘した。
さらには、“蜜月関係”と言われたプーチン大統領に、異を唱えるような発言もしていて、臆測を呼んでいる。
ナワリヌイ氏の体調悪化 何が?
16日、プーチン大統領がロシア正教会の復活祭の礼拝に参加した。
ロシアメディアによると、プーチン大統領は電報で「復活祭は親切な考えと善行を鼓舞し、社会において非常に道徳的な理想と価値観を促進するのに役立ちます」とメッセージを送ったという。
和やかな雰囲気の一方で、過酷な状況に置かれているとみられるのが現在、刑務所に収監されている反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏だ。
ロイター通信によると、広報担当者はナワリヌイ氏が激しい胃痛を訴えているとし、こんな見方を示したという。
ナワリヌイ氏の広報担当 キラ・ヤルミシュ氏:「すぐには死なないものの、苦しみながら徐々に健康を害するよう、少量ずつ毒を盛られている可能性を排除できない」
そして、ナワリヌイ氏は、7日夜から8日にかけて救急車を呼ぶ事態になったという。
ワシントンポストによると、ナワリヌイ氏の弁護士は、毒物検査などの医療検査を要求し、ロシア当局に苦情を申し入れているという。
これに対し、ロシア大統領府は「ナワリヌイ氏の健康状態は把握していない」とし、「刑務所が対処する問題だ」と述べたという。
「ワグネル」創設者“敗北示唆”
そんななか、14日に民間軍事会社「ワグネル」の創設者・プリゴジン氏が驚きの声明を発表した。
プリゴジン氏(SNS):「ロシアはウクライナ軍の反転攻勢で敗北する可能性がある」
ロシア敗北の可能性を指摘し、特別軍事作戦を終了させるべきだと主張したのだ。果たして、その意図とは…。
大統領に異唱え? 侵攻終結主張
プリゴジン氏が発表した声明。この意図について、詳しく見ていく。
ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者・プリゴジン氏は14日、SNSに投稿した声明で、「ロシアが敗北する可能性がある」とし、「特別軍事作戦を終了させるべきだ」とした。
また、このまま侵攻を続けた場合、ロシアが占領地域を拡大できる可能性はあまりありそうにないと強調。
侵攻開始から1年にあたる今年2月24日時点の前線を停戦ラインとすべきだとし、占領した地域の足場を固めるべきだと主張した。
また、声明では、プリゴジン氏と蜜月関係といわれるプーチン大統領を意識したと思われる部分がある。
それが「ウクライナはかつてロシアの一部だったかもしれないが、今は国民国家だ」と述べている部分だ。
これが、プーチン大統領の「ウクライナはロシアの一部」という持論に異を唱えるような発言とあって臆測を呼んでいる。
「愛国勢力の分裂が始まる可能性」
そして、プリゴジン氏は最近、親プーチン派野党である公正ロシアに急接近しているようだ。
アメリカのシンクタンク戦争研究所によると、プリゴジン氏は公正ロシアの党首、セルゲイ・ミロノフ氏との関係が深まっているそうで、プリゴジン氏がこの党の支配権を獲得し、クレムリン内の分派化をさらに引き起こす可能性があると報告している。
そんなプリゴジン氏が声明を出した意図について、元時事通信モスクワ支局長で拓殖大学の名越健郎特任教授は「来年3月の大統領選への出馬を意識した声明への可能性はある。プーチン政権はプリゴジン氏の活動を警戒しているが、簡単に手を出せない。プリゴジン氏は右派・愛国勢力の英雄。プーチン政権が弾圧すれば、愛国勢力は反プーチンに動きかねないとし、プリゴジン氏はこのまま政治的活動を加速させていく可能性が高く、そうなればプーチン氏を支える愛国勢力の分裂が始まる可能性がある」と分析をしている。
●「世界一の富豪」がウクライナを救った…プーチン得意の「情報工作」失敗 4/17
なぜロシアによるウクライナへの軍事侵攻は長期化しているのか。ジャーナリストの池上彰さんは「理由のひとつにロシアが得意とする情報工作がうまくいっていないことがある。世界一の富豪であるイーロン・マスクがウクライナに提供した衛星通信回線『スターリンク』が戦況に大きな影響を与えた」という――。(第3回)
なぜロシアは「ハイブリッド戦」を展開しなかったのか
もしロシアが軍事行動に出る場合、戦車などによる軍事行動とともに、サイバー攻撃も駆使する「ハイブリッド戦」を展開すると言われてきました。
ところが今回の戦況の推移を見ると、ロシア軍のサイバー攻撃が有効だったとは、必ずしも言えない状態が続きました。
たとえば2014年にロシアがクリミア半島に電撃的に侵攻して占領した際には、ウクライナ政府のコンピューター網にサイバー攻撃が仕掛けられ、政府の機能がマヒしてしまったケースがありました。
そこで今回も同じような攻撃が仕掛けられるのではないかと危惧されていたのですが、それほどの被害が出ないで済んでいます。2014年以降、アメリカがサイバー攻撃を防ぐ技術や装備をウクライナに提供していたからです。
つまり、ロシアのサイバー攻撃は、アメリカが供与した技術や装備によって防がれたというわけです。実際、どの程度の攻撃が行われたのか。
アメリカがウクライナに提供したもの
たとえばマイクロソフトは2022年4月27日に、ロシアが行ったサイバー攻撃に関するレポートを出しています。
そのレポートによれば、ロシアは実際の侵攻前から、積極的にウクライナのインフラに対するサイバー攻撃を加えていました。わかっているだけで実に237回の攻撃を行い、そのうち約40件はウクライナの数百のシステムファイルを破壊・抹消したと報告されています。
さらにロシアは原発などの発電所、空港などにサイバー攻撃を加え、その直後にミサイルなどの実際の攻撃を加えていたこともわかっています。おそらくこれは、サイバー攻撃だけではインフラ機能を破壊しきれなかったので、実際の火力による攻撃、つまり物理的な破壊に切り替えたのでしょう。
2014年とは違い、ウクライナがロシアのサイバー攻撃を防御できたのは、アメリカが提供した「相応の備え」があったからこそです。
アメリカは、2021年の10月から11月にかけて、陸軍のサイバー部隊やアメリカ政府が業務委託した民間企業の社員をウクライナに派遣し、ウクライナ政府のコンピューターシステム自体にコンピューターウイルスが忍び込んでいないかチェックしました。
その結果、鉄道システムに「ワイパー」と呼ばれるウイルスが潜んでいるのを発見、駆除しています。「ワイパー」は、普段はじっと潜んでいるだけですが、外部から指示を受けると突然作動し、システムを破壊するウイルスです。ロシアがウクライナに侵攻した際、大勢のウクライナ国民が鉄道で避難しました。
もしワイパーの存在に事前に気づかなければ、鉄道網は大混乱に陥っていたことでしょう。
最も役に立った機器
今回、ロシアのウクライナ侵攻で、ウクライナにとって極めて役立ったのは、アメリカのスペースXの最高経営責任者のイーロン・マスク氏が提供した「スターリンク」でしょう。
「スターリンク」は、2000基を超える小型の通信衛星を低い軌道に乗せて地球を周回させています。この衛星を使うと、ウクライナのどこにいても通信が途切れることはありません。
ロシア軍がウクライナに侵攻し、携帯電話の中継基地などを破壊したため、通信が難しくなりました。そこでウクライナの副首相がツイッター上でマスク氏に助けを求めると、いち早く通信が可能になるようにスターリンクの機器5000基以上が寄付されたというのです。
これにより、ウクライナ軍はどこにいても連絡が取れ、戦闘に大きく貢献しました。実際の戦闘と同じくらい重要なのが情報です。侵攻開始当初から、ロシアは「ゼレンスキーは首都を捨てて逃げだした。国民を見捨てた」という偽情報をSNSやメディアによって拡散してきました。
こうしたロシアの情報工作、世論や決定権者に対する影響力工作はソ連時代からの「得意技」で、KGB仕込みの工作戦術を、インターネットと組み合わせることで磨き上げてきました。
ウクライナ戦争においても当然、ロシア側の言い分を客観情報のように装って流したり、ウクライナの言い分を否定するフェイク画像をネット上で拡散したりするなどの情報戦を展開しています。
もしスターリンクがなければ…
ロシアの情報戦は、ウクライナの人々だけではなく、NATO諸国の国民はもちろん、日本や、いわゆる西側諸国全体をターゲットとしているのです。もしスターリンクがなく、ウクライナ発の情報が国民に届かなければ、ウクライナ国民は戦意を喪失していたか、ゼレンスキーを敵視するようになっていたかもしれません。あるいは周辺国も、ウクライナへの支援を打ち切っていた可能性があります。
しかしゼレンスキーは、「私は首都にいる」と他の閣僚と一緒にスマートフォンを使って「生中継」し、ウクライナ国民だけではなく、ウクライナを支援する各国の人々を安心させました。
ロシアの偽情報を自らの情報によって打ち消すという、ウクライナ戦争の情報戦を象徴するような場面でした。ゼレンスキー大統領による日々の発表が、途絶えることなく国民に、あるいは全世界に届いたのは、スターリンクの働きがあったからなのです。
さらに2022年3月にゼレンスキーが降伏を呼び掛ける偽の動画が、ロシアのSNSで拡散されるという出来事もありました。実際にゼレンスキーが喋っているかのような、一見しただけでは見分けのつかない動画です。こうした動画や画像は「ディープフェイク」と呼ばれ、新たな戦争の武器になるだろうとかねて指摘されてきました。
新しい戦争の形
「ゼレンスキー降伏勧告動画」は、誰が作ったのか明らかになっていませんが、当然ながらロシアの関与が疑われています。これまでにも、オバマ大統領やトランプ大統領が実際には言ってもいないセリフを話しているかのような偽動画が作成されてきましたが、まさにこのゼレンスキー動画は、ディープフェイクが「実戦投入」された事例となりました。
ただ、これもゼレンスキー自身が「偽物だ」と発信したことで事なきを得ました。もしこうした発信がなければ、戦況が大きく変わっていた可能性さえあります。
さらには、ウクライナの人々が地下壕(ごう)や地下鉄に避難を余儀なくされている実態、自分の部屋から爆音が聞こえる動画などを、自分のスマートフォンから発信したことも、国際世論に対する強いアピールになりました。
戦時の情報戦は、インターネットやスマートフォンによって、個人個人が発信者となり、さらには工作のターゲットにもなるということを、このウクライナ戦争はまざまざと見せつけたのです。
マイクロソフトが発表した「教訓」
マイクロソフトは2022年6月、「ウクライナの防衛 サイバー戦争の初期の教訓」というレポートを発表しています。ここでは「各国は最新テクノロジを駆使して戦争を行い、戦争そのものがテクノロジの革新を加速する」としたうえで、ロシア対ウクライナのサイバー空間の戦いから得られた結論を示しています。
レポートでは4つのポイントを取り上げています。
第1に、先にも述べた「ワイパー」攻撃のような、事前に仕込まれた脅威を見つけることの重要性。
第2に、肉眼で見えないサイバー上の脅威に対する防御を、AIなどを駆使して迅速に行うことの必要性。
第3に、ウクライナ以外の同盟国の政府を標的としたサイバー上の攻撃やスパイ活動に対する警戒。
そして第4に、サイバーを介したネットワーク、システムの破壊などの攻撃や情報窃取だけでなく、情報戦・影響力工作に留意することを挙げています。
国境もなく、目に見えない状態で日常的に行われているサイバー空間でのつばぜり合い。実際の戦地からは遠く離れている日本も、サイバー戦争については全く他人事ではありません。
ロシアが「ワクチン脅威論」を流布したワケ
特に4つ目の影響力工作には注目する必要があります。
マイクロソフトの分析によれば、開戦後にロシアは自国を有利にするためのプロパガンダ情報を拡散し、その拡散度合いは開戦前と比べてウクライナで216%、アメリカで82%拡大した、と報告しています。
しかも直接戦争にかかわる話題だけではなく、ロシアが「ワクチン脅威論」を流布し、他国の国民に自国政府に対する不信感を植え付けようとしていたことも指摘されています。目に見えないサイバー空間で、実際に戦争を行っているわけではない国に対しても、日常的に攻撃が行われている実態――。
ハイブリッド戦の時代は、軍事手段と非軍事手段の区別だけでなく、戦時と有事、さらには戦争当事国とそうでない国の境目をなくすものであり、攻撃対象も、かつてのスパイが工作対象とした政府や軍の要人、メディア関係者などに限らず、「一般市民」までも巻き込むものであることに留意しなければならない時代なのです。
ロシアのスパイが行っていたこと
一方で、ウクライナ国内ではロシアのスパイの摘発に追われました。2022年7月には検事総長とウクライナの「保安局」の長官が解任されています。両氏が管轄する機関で60人以上がロシアに協力した疑いが出たため、その責任を取らされたのです。
解任された2人はいずれもゼレンスキー大統領の側近でした。ウクライナ政府にとっては大きな痛手でした。ゼレンスキー大統領は、国民向けのビデオ演説で、「国家反逆」などの疑いで、650件を超える捜査が進められていると説明しています。
保安局とはウクライナの情報機関。ソ連時代にはKGBでした。一方、ロシアの情報機関のFSBも、もともとはソ連のKGBです。いわば仲間同士でした。
ウクライナが独立を果たした後も、ロシアのスパイだった局員が多数保安局の中に潜伏していたということなのです。熾烈(しれつ)なスパイ合戦の一端が見えました。
当初アメリカは、自らが掴んだロシアの軍事情報について、ウクライナに速報することをためらっていました。情報を加工しないでウクライナ側に伝えると、ウクライナ政府内に潜んでいるロシアのスパイが内容をロシアに伝えることで、ロシア内のアメリカの情報源が暴露されてしまうことを恐れたからです。
ウクライナ国内でロシアのスパイ網が摘発されたことで、アメリカはロシアの軍事情報を速報するようになりました。ロシアによるウクライナ侵攻でも、このようにスパイ活動が展開されていました。
スパイ活動は、時として大きく報道されることがありますが、普段は目にすることがないものです。でも、スパイ活動によって世界史が大きく書き替えられたこともあるのです。
●「そこまでは手が回らない」 旧ソ連の国々の紛争にはプーチンもお手上げ 4/17
旧ソ連のアルメニアと隣国アゼルバイジャン間の係争地ナゴルノカラバフ地方のラチン回廊で4月11日、両国軍の兵士が発砲し、双方に7人の死者が出る事態となった。
今回の衝突は、2020年に起きた6週間のナゴルノカラバフ紛争の延長線上にある。この紛争はロシアの仲介で停戦に至ったが、火種が全て取り除かれたわけではない。
衝突に先立つ7日にはアルメニアのパシニャン首相がロシアのプーチン大統領と電話会談し、ナゴルノカラバフの状況について協議。
双方で停戦合意を履行することの重要性を確認し合ったとされるが、その直後にアルメニア側に通じる唯一の補給路であるラチン回廊で両軍が衝突した。
ロシアはこれまで、旧ソ連構成国であるアルメニアとアゼルバイジャンに影響力を及ぼそうとしてきたが、ウクライナ戦争に総力を注ぎ込んでいる今、この2カ国の紛争にまで手が回らないとの見方もある。
プーチンにとっては新たな頭痛の種かもしれない。
●北方領土で演習のロシア太平洋艦隊は日本を脅かせるほど強くない 4/17
ロシア海軍がアジア太平洋地域で軍事・安全保障任務を遂行するためにある太平洋艦隊は、他国から脅威とみなされるには「戦闘力」不足の可能性が高いと、米シンクタンクが指摘した。
アメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)は、4月14日にウクライナ戦争に関する最新の分析を発表。ロシア軍が太平洋艦隊の抜き打ち検査の一環としてミサイル発射と魚雷のテストを実施したことについてコメントした。
ロシア政府は目前に迫った5月のG7サミットにおいて日本のさらなるウクライナ支援を抑止する材料として、太平洋艦隊の戦闘点検で威嚇しようとしたのだろう、とISWは述べている。
ドイツのキール世界経済研究所が4月4日に発表したデータによると、この戦争が始まってから、日本がウクライナに提供した援助の総額は、2月24日の時点で56億6000万ユーロ(62億ドル)に達している。
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は14日、今回の抜き打ち検査の目的は 「海洋における敵の攻撃を撃退するために、軍隊の能力を高めることだ」と、国営テレビで発表した。
この検査は「あらゆる戦略的方向で任務を遂行するための軍司令部や各部隊の状態を評価し、準備態勢を高めること」をめざすものだ、とショイグは述べ、それには千島列島南部とサハリン島に上陸する敵を撃退する能力も含まれる、と付け加えた。
対ウクライナ追加支援を警戒
千島列島の国後、択捉、色丹、歯舞の4島は、第二次世界大戦の終結時にソ連が占領し、自国領に「編入」した島々だ。日本はこの4島を日本固有の「北方領土」と主張しており、この問題で日露関係は何十年にもわたって緊張している。第二次大戦を正式に終結させる平和条約が日露間で締結されなかったのは、日本が領有権を主張し、ロシアが占領している島々をめぐる紛争が主な理由となっている。
この4島は日本の北海道とロシアのカムチャッカ半島の間に位置するため、多くの軍事的、政治的な利点がある。
5月19日から21日にかけて開催されるG7サミットで議長を務める予定の岸田文雄首相は、3月にウクライナの首都キーウをサプライズ訪問。議長国を務める日本として「ウクライナ侵略への対応を主導する決意を示すことができた」と語った。
「ロシアの東部を管轄する東部軍管区(EMD)は最近、日本の千島列島の北に位置する幌筵島(パラムシル島)に、ロシアが開発した沿岸防衛用地対艦ミサイルシステムの砲台を配備した。これは日本がウクライナへの追加支援を行うことに対する警告であろうと当研究所は評価した」とISWは報告している。
ISWは、広島で開催されるG7で日本がウクライナへの支援を増やさないように、ロシアは北太平洋で「軍事態勢」をとり、日本の鼻先で軍備増強をしてみせようとしている可能性が高いと述べた。
だがISWの評価によれば、ロシア軍は「現時点で日本を脅かす立場にない」という。そして、太平洋艦隊の第40海軍歩兵旅団と第155海軍歩兵旅団の部隊が、昨年末と今年初めにウクライナ東部ドネツク州のヴフレダール付近の戦闘で、大きな損害を被ったことを指摘した。
「太平洋艦隊は、太平洋地域におけるロシアのパワー・プロジェクション(戦力投射)能力に必要な戦闘力が不足しているようだ。そうであれば、日本にとっての真の脅威となるような姿勢を見せたり、対等な軍事大国であることを中国に確信させたりすることは難しい」と、ISWは主張している。
●G7外相会合 ウクライナ情勢 ロシアに即時無条件の軍撤退求める  4/17
G7=主要7か国の外相会合は2日目を迎え、ウクライナ情勢をめぐって、ロシアに即時・無条件で軍の撤退を求めるとともに、中国や中東の国々を念頭に、ロシアが「第三国」を介して制裁を回避し、武器提供を受けることを防ぐため、連携して対処することで一致しました。議長を務める林外務大臣は、ロシアによるウクライナ侵攻によって国際社会が歴史の転換期を迎える中、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くG7の決意を世界に示したいと強調しました。
長野県軽井沢町で開かれているG7外相会合は、2日目の17日にウクライナ情勢をめぐっておよそ1時間40分、意見を交わしました。
この中で、林外務大臣は、ロシアによる侵攻が長期化する中、G7をはじめ同志国が結束を維持するとともに、中間的な立場をとる国が多い「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国との連携強化が重要だと指摘しました。
その上で、日本がこれまでに総額76億ドルのウクライナなどへの支援を表明していることを説明し、プーチン大統領が隣国ベラルーシに核兵器を配備するとしたことを非難しました。
そして、各外相は結束してロシア制裁とウクライナ支援を継続していくことを確認し、ロシアに対しすべての軍を即時・無条件で撤退させるよう求めていくことで一致しました。
さらに、ロシアによる核の脅しは受け入れないという認識を改めて共有し、中国や中東の国々を念頭にロシアが「第三国」を介して制裁を回避し、武器提供を受けることを防ぐため、連携して対処することで一致しました。
林外相 “法の支配に基づく国際秩序守り抜く決意示す”
G7外相会合の17日午前中の最初のセッションでは、16日夜に続き、インド太平洋地域の情勢をめぐって、およそ1時間意見を交わしました。冒頭、議長を務める林外務大臣は「国際社会が歴史の転換期を迎える中、われわれはロシアによるウクライナ侵略や核の威嚇など、力による一方的な現状変更を許さない。法の支配に基づく国際秩序を守り抜くというG7の強い決意を世界に示したい」と強調しました。また「『グローバル・サウス』と呼ばれる新興国や途上国が直面するさまざまな課題に、G7としてともに取り組む用意がある」と述べました。そして、セッションではG7としてインドとの協力をさらに進め、ASEAN=東南アジア諸国連合、それに太平洋の島しょ国への関与を強化していくことで一致しました。
“エネルギー安定供給や食料安全保障” 緊密連携で一致
G7外相会合は、昼食をともにする「ワーキングランチ」で、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国を念頭にした支援の在り方などをめぐって意見を交わしました。この中で、林外務大臣はG7が地球規模の課題で積極的に貢献することで、「グローバル・サウス」の国々などへの関与を強化することが議長国を務める日本の優先課題の一つだという認識を示しました。そのうえで、「それぞれの国の個別の状況に配慮し、価値観を押しつけるのではなく、法の支配に基づく国際秩序の意義を示していくことが重要だ」と主張しました。そして、各外相は、ウクライナ情勢の影響を踏まえ、エネルギーの安定供給や食料安全保障をめぐる対応で緊密に連携することで一致しました。また、「グローバル・サウス」の代表格とされ、ことし、G20=主要20か国の議長国を務めるインドとの協力をさらに強化することを確認しました。
イランを含む中東情勢めぐり意見交換
G7=主要7か国の外相会合は、17日午後、イランを含む中東情勢をめぐり1時間余り意見を交わしました。この中で、林外務大臣はイランの核開発について、先月、イランがIAEA=国際原子力機関の調査に積極的に協力するとした合意を無条件で実施することが不可欠だという考えを示しました。そして、G7として、引き続き、核不拡散への義務を果たすよう求めていくことで一致しました。また、ロシアがイラン製の無人機でウクライナを攻撃していると指摘されていることを踏まえ、イランに対しロシア軍への支援をやめるよう求めることを確認しました。
“アフガニスタンの人権や自由の制限に強く反対”
G7=主要7か国の外相会合は、17日夕方、アフガニスタンと中央アジアをめぐり、およそ1時間、意見を交わしました。この中で林外務大臣は、アフガニスタンの人権や人道状況の悪化について深刻な懸念を示し、イスラム主義勢力 タリバンが、女性の権利の制限を強めていることなどを非難しました。そのうえで、G7として人権や自由の制限に強く反対し、アフガニスタンがテロの温床となるのを防いでいくことなどを確認しました。また、中国やロシアと隣接する中央アジアの5か国をめぐり、対話を通じて、それぞれの国が抱える問題への対応を支援していくことで一致しました。
日英外相 「日英円滑化協定」早期発効目指し緊密連携
G7=主要7か国の外相会合に合わせて、林外務大臣は、17日午後、イギリスのクレバリー外相とおよそ30分間、会談しました。この中でクレバリー外相は15日、岸田総理大臣の演説先で発生した爆発事件についてお見舞いのことばを伝えました。また、両外相は自衛隊とイギリス軍が共同訓練を行う際などの対応を定める「日英円滑化協定」の早期発効を目指し、緊密に連携していくことを確認しました。そして、ウクライナ情勢や中国を含めた東アジア情勢をめぐり、引き続き連携して対応することで一致しました。
林外相「核兵器による威嚇を断固拒否」
G7の外相会合の2日目の議論を終え、林外務大臣は記者団に対し「G7の外相間で胸襟を開いて議論を行うことができて手応えを感じている。国際社会は歴史的な転換期を迎えており、こうした中で、力による一方的な現状変更の試みや、ロシアによるウクライナ侵略、核兵器による威嚇を断固として拒否し、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くG7の強い意志を力強く世界に示したい」と述べました。また「『グローバル・サウス』と呼ばれる新興国・途上国がさまざまな課題に直面する中、G7としても、ともに課題に取り組みたい」と述べました。
林外相 仏外相から台湾海峡めぐり説明受ける
フランスのマクロン大統領が、台湾情勢をめぐり、ヨーロッパは、米中の対立から距離を置くべきだという考えを示し、波紋が広がっていることについて、林外務大臣は、G7外相会合が開かれている長野県軽井沢町で記者団に対し、フランスのコロナ外相から説明を受けたことを明らかにしました。この中で林大臣は「コロナ外相から、フランスは現状の尊重や台湾海峡の平和と安定の維持に深い思いを持っており、力による一方的な現状変更に反対だ。マクロン大統領からも、このようなメッセージを習近平国家主席に伝えたという旨の説明があった」と述べました。そして、「G7外相間で台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認するとともに、問題の平和的解決を求めることで完全に一致することができた」と述べました。
中国「台湾問題 いかなる外部の干渉も容認せず」
G7=主要7か国の外相会合で、中国による力を背景とした一方的な現状変更の試みに反対していくことで一致するとともに、台湾海峡の平和と安定の重要性が改めて確認されたことについて、中国外務省の汪文斌報道官は17日の記者会見で「台湾問題は、中国の内政であり、いかなる外部の干渉も容認しないということを関係国は認識すべきだ」とけん制しました。そのうえで「台湾独立分子が外部勢力の黙認と支持のもとで手段を選ばず分裂活動を進めていることこそが台湾海峡の現状を破壊し、情勢に緊張をもたらす根本的な原因となっている。台湾海峡情勢の安定と、地域の平和を守るには『1つの中国』の原則をきし鮮明に堅持し、台湾独立活動に反対すべきだ」と強調しました。

 

●中国国防相、米国の制裁にもロシア訪問しプーチン大統領とサプライズ会談 4/18
米政府の制裁対象である李尚福国防相が就任後初の訪問先としてロシアを選び、プーチン大統領と会談した。中国の習近平国家主席のロシア国賓訪問後、軍事的にも中ロが緊密になっているという観測が流れている。
16日(現地時間)ロイター通信などによると、李氏は同日、ロシアの首都モスクワでプーチン氏と会談し、「中ロ関係は、冷戦時代の軍事・政治的連合体制を越えている」とし、「両国の協力が地域の安全保障の強化にも役立っている」と述べた。また、「軍事および軍事技術分野で両国の協力が非常に活発で成果も豊富だ」と強調した。プーチン氏は、「両国が合同訓練など協力を持続的に強化することを望む」と話したという。
ロシアのショイグ国防長官の招待でロシアに到着した李氏とプーチン氏の会談計画は事前に伝えられず、異例だと指摘されている。
特に、李氏は米国の制裁を受けていることから、さらに注目を集めている。李氏は中国人民解放軍(PLA)の武器購入及び開発担当である中央軍事委員会装備開発部(EDD)部長だった2018年、米政府の制裁リストに含まれた。中国が当時、ロシアの戦闘機スホーイ(Su)-35や防空ミサイルシステムS-400などを購入したが、これがロシア、北朝鮮、イランを対象に制定された「米国への敵対者に対する制裁法(CAATSA)」に違反したという理由だった。制裁法は、ロシアが2014年にウクライナのクリミア半島を一方的に併合し、16年の米大統領選挙に介入したとし、ロシア企業と取引した第3国に制裁を加えた。これにより、李氏は米国ビザの発給が凍結され、米国管轄権内の金融システムの利用や資産保有などが禁止された。
にもかかわらず習氏は李氏をPLA最高階級の上将に昇進させ、先月、国防相兼国務委員に昇格させて重用した。中国共産党系「環球時報」の英語版、グローバル・タイムズは17日、「米国が本当に中国との国防および軍事交流の再開を望むなら、李氏に対する制裁を撤回し、中国封鎖戦略を止めなければならない」と主張した。 
●中露の軍事連携強化を確認…李国防相、プーチン氏と会談 4/18
中国の 李尚福リーシャンフー 国務委員兼国防相が16日、ロシアを訪問し、モスクワの大統領府でプーチン大統領と会談した。軍事面での連携を強化していく方針を確認した。
露大統領府の発表によると、プーチン氏は会談で「訪問は非常に生産的なものになる」と歓迎。両国が「情報交換や軍事技術協力、極東や欧州などでの合同演習」を進め、連携を強化しているとも指摘し、協力拡大に期待を示した。
李氏は3月の国防相就任後初の外遊となった。李氏は訪露を選んだ理由について「両国関係の特別さと戦略的重要性を強調するためだ」と説明した。中国国防省によると、李氏は「中露の軍事面での相互信頼は日増しに強固になっている」と言及したうえ、「さらに密接に中露両軍の戦略的な意思疎通を進めたい」と呼びかけた。
会談にはセルゲイ・ショイグ露国防相も同席した。露側は会談でウクライナ侵略の現況について説明し、中国側に武器供与を働きかけた可能性がある。
●ロシア、反体制活動家に禁固25年…実刑判決の活動家「見せしめ裁判だ」  4/18
ロシアのウクライナ侵攻を批判したなどとして起訴されていた、ロシアの反体制派の活動家に、禁固25年の実刑判決が言い渡された。
この裁判は、ロシアの反体制派の活動家でジャーナリストのウラジーミル・カラ・ムルザ氏が2022年3月、アメリカ・アリゾナ州議会で、ロシアのウクライナ侵攻を批判する演説をし、国家反逆罪など3つの罪に問われていた。
モスクワの裁判所は17日、カラ・ムルザ氏に禁固25年の実刑判決を言い渡した。
弁護士によると、カラ・ムルザ氏は判決後、「禁固25年は最高点だ。私が市民や愛国者、政治活動家として信じたことを証明する、最高の点数だ」と述べ、自身のプーチン政権批判が正しかったことで、最高刑が言い渡されたとの立場を示した。
カラ・ムルザ氏は今月の最終弁論で「独裁者スターリンによる”見せしめ裁判”と同じだ」と批判し、無罪を求めなかった。
裁判所にはアメリカの駐ロシア大使が訪れ、判決後、「ロシアを覆っている弾圧の新たな凶悪な兆候だ。我々は彼の即時釈放を要求する」と述べた。
ロシア外務省は、アメリカの外務省などに対し、内政干渉だとして、ロシアからの外交官の追放の可能性にも言及して批判している。
カラ・ムルザ氏は、プーチン大統領を批判していて、2015年と17年に2回、何者かに毒物を盛られている。
●プーチンとルカシェンコ 腐れ縁でも核兵器については…… 4/18
今年に入ってから、ベラルーシの独裁者ルカシェンコ氏による外交攻勢が目立っている。なお、欧米諸国はもはや同氏を正式な国家指導者とは認めておらず、本稿でも「ルカシェンコ大統領」という表現は用いない。
改めて、今年に入ってからのルカシェンコの外国行脚をまとめておこう。まず、同氏は1月30日〜2月1日、アフリカ南部のジンバブエを訪問。そして、その足で中東に向かい、2月2〜4日にアラブ首長国連邦(UAE)を訪れている。
2月28日〜3月2日には、国賓として中国を訪問。間髪を入れず、3月12〜13日に今後はイランを公式訪問した。さらに、4月5〜6日にはロシアを訪問し、プーチン・ロシア大統領との首脳会談に臨んだ。
もっとも、一連の外遊の重要度には、かなりの開きがある。最初の2つ、ジンバブエとUAEは、物見遊山の域を出なかった。それに対し、中国、イラン、そしてロシアへの訪問は、体制の存亡にもかかわるものだった。
そして、ルカシェンコの不気味な動きは、ロシア・ウクライナ戦争、ロシアと欧米の敵対関係との関連からも注目を集めた。
ルカシェンコ訪中の際には、中国がウクライナ危機の和平原則を発表した直後だっただけに、「ルカシェンコが露中間のメッセンジャー役を務めるのではないか」といった見方も広がった。また、ルカシェンコがイランに出向いた時には、「イランからロシアへの武器供給の交渉を仲介しに行ったのではないか」との憶測も浮上した。
また、最近のロシアによる動きの中でも、国際社会を騒がせたのが、3月25日にプーチン大統領が、ベラルーシに戦術核兵器を配備することで同国と合意したと明らかにしたことであった。4月上旬のルカシェンコ訪露は、その衝撃冷めやらぬ中で行われたため、「核配備に向けた詰めの協議か?」との警戒感が広がった。
しかし、ルカシェンコとプーチンの関係性を長年ウォッチしてきた筆者などは、だいぶ捉え方が異なる。両者が一枚岩という前提で考えてはならないと思うのだ。
ルカシェンコの夢はクレムリン玉座だった
荒唐無稽な話ながら、1994年にベラルーシ大統領に就任したルカシェンコは、ロシアと統一国家を築き、最終的に自分がクレムリンの玉座に収まることを夢見ていた。当時のロシアのエリツィン政権にとっても、常にロシアになびいてくるベラルーシの存在は都合が良く、場合によってはエリツィン政権の延命工作に使えるかもしれないという計算も働いた。新国家を作った体にしてエリツィンの新たな任期を開始するという案である。両者の思惑が交錯し、ロシア・ベラルーシ間で「連合国家」を創設する旨の条約が結ばれることになった。
しかし、1999年8月にプーチンが首相に就任すると、状況が一変する。プーチンがエリツィンの頼りがいのある後継者として浮上することで、政権延命云々は必要なくなり、ロシアの国家体制を脅かしかねない大胆な統合案は無用の長物となった。
ロシア側は、他ならぬプーチン首相が陣頭指揮を執り、条約案を骨抜きにした。結局、同年12月にエリツィン・ルカシェンコ間で条約は調印されたものの、中身はすっかり空文の羅列と化していた。
この条約が成立した直後、99年の大晦日にエリツィンは電撃辞任し、ロシアの最高権力はプーチンに移行した。プーチンは2000年5月に正式に大統領に就任し、以降本格政権を築いていく。ルカシェンコがクレムリンの玉座に収まるなど、夢のまた夢となった。
これを境に、ルカシェンコはクレムリンのトップに立つ野望を封印し、ベラルーシという一国一城の主として生きることを決意する。ただし、資源もない小国のベラルーシが、自力で食っていくのは至難である。
そこで、ルカシェンコはロシアの内と外を都合良く使い分ける戦法を編み出した。ロシアがベラルーシに供給する天然ガスや石油の価格については、「わが国は統合パートナーだ」として、ロシア国内と同じ格安水準を要求する。しかし、ロシア側が共通ルール受け入れをベラルーシに迫ると、「それはわが国の主権事項だ」として拒絶する。絵に描いたようなダブルスタンダードだ。
こうした路線はロシア側を苛立たせ、両国間でしばしば波風が立った。「クレムリンがルカシェンコを引きずり下ろし、より従順な後継者にすげ替えるのではないか」といった憶測も、しばしば語られた。
しかし、「欧州最後の独裁者」の異名を持つルカシェンコは、ベラルーシが欧米に接近しない担保になる。ロシア側は、狡猾に立ち回るルカシェンコを忌々しく思いながらも、安価なエネルギー供給などを通じ、年間100億ドルとも言われる援助をベラルーシに提供して、ルカシェンコ体制を扶養してきたのである。
甦るゾンビ条約
ところが、2018年暮れになって、ロシア側は突如として、連合国家創設条約の最大限の履行をベラルーシに求めるようになる。上述のとおり、1999年の条約はプーチンが主導して骨抜きにした。確かに、将来的に両国が合意すれば、連合国家の憲法、議会、単一通貨等を導入する可能性があるとされてはいたが、現実にはその機は熟していなかった。にもかかわらず、ロシアが唐突に「最大限の統合に応じなければ、もうベラルーシを支援しない」と迫ったため、これはロシアへの編入をベラルーシに迫る「最後通牒」だとして物議を醸した。
この背景にはやはり、14年のウクライナ政変を受け、ロシアが自らの勢力圏維持に危機感を抱いたことがあっただろう。そこで、20年前にはあえて死産とした連合国家に、新たに命を吹き込み、ベラルーシをロシア圏に固定するために活用しようとしたものと見られる。
統合を渋るベラルーシ側に、ロシアからの支援が細ったこともあり、20年8月の大統領選でルカシェンコは大苦戦した。「ルカシェンコが8割得票し圧勝」とする現実離れした公式発表に憤ったベラルーシ国民は、脱ルカシェンコを掲げて立ち上がった。1994年の政権発足以来、最大の窮地に陥ったルカシェンコは、プーチンから物心両面の支援を取り付けて、どうにかピンチを切り抜けた。
ただ、これですっかりロシアの言いなりになり、要求されるがまま全面的な国家統合に応じるかと思われたが、そこはやはり「食えない男」ルカシェンコであった。その後もロシアからの統合要求を、のらりくらりとはぐらかしている。
また、ロシアも22年2月にウクライナへの軍事侵攻を開始したため、目下のところベラルーシに対し、経済・国家統合よりも、軍事面での協力を優先的に求めている模様である。それでも、本年2月には、クレムリンのベラルーシ併合計画なる秘密文書が流出し、ロシアは中長期的な構えながらやはりベラルーシを飲み込もうとしているとの観測が再び強まった。
プーチンのメッセンジャーではない
こういった次第であり、ルカシェンコとプーチンはもう20年以上も、狐と狸の化かし合いのようなことを続けてきたのである。お互いのことを信用していないし、顔も見たくないのが本音であろう。それでも、自分の権力を守るために、今は我慢してこの男と付き合うしかないと割り切り、腐れ縁を続けているのだ。
そう考えると、「ルカシェンコがプーチンのメッセンジャーとして中国に行く」とか、「プーチンがルカシェンコを通じてイランに武器の追加供給を求める」などといった見方が、いかにピント外れであるかが理解されよう。プーチンが中国やイランに伝えたいことがあるなら、自国の外交ルートを使えばいいわけで、ルカシェンコを介したりすれば話がこじれるだけである。
それではルカシェンコ訪中の主眼はどこにあったのか? これに関しては、普通に中国との二国間関係の発展、とりわけ中国からの投資呼び込みが主目的であったと考えられる。実際、ルカシェンコは習近平国家主席と、中国の一帯一路政策に沿って両国の経済協力を深めていくことを確認し合った。
もっとも、中国にとりヨーロッパをにらんだ橋頭保としてのベラルーシの利用価値は、急激に低下している。代表例を挙げれば、中国からカザフスタン〜ロシア〜ベラルーシを通って欧州市場に至る「中欧班列」というコンテナ列車がある。近年順調な拡大を遂げ、一帯一路の成功例とされることも多かった。ところが、欧州連合(EU)とロシア・ベラルーシの関係が悪化したことで、22年には鉄道による中国〜欧州間のコンテナ輸送量も大きく落ち込んだ。
また、ベラルーシの首都ミンスクの郊外には、中国資本によって建設された工業団地「グレートストーン」がある。ここも一帯一路の一環とされ、中国企業が当地で現地生産を行い、EU市場に輸出する青写真だった。しかし、EUがベラルーシに厳しい制裁を導入した今となっては、そんなビジネスモデルは成り立たない。
他方、ルカシェンコのイラン訪問でも、「23〜26年の全面的協力ロードマップ」に調印するなど、やはり中心となったのは二国間の経済協力であった。そうした中、イラン側が制裁をやり過ごす方法をベラルーシに伝授すると申し出て、ルカシェンコが身を乗り出す一幕があった。
核のボタンの行方
3月25日にプーチン大統領が表明したベラルーシへの戦術核配備の決定も、ルカシェンコとの容易ならざる関係性を考慮に入れると、違う景色が見えてくる。
筆者は、当然のことながら、プーチンが言っているのは、ベラルーシ領に展開するロシア空軍機に戦術核を配備するという意味なのだろうと理解した。これならば、グレーゾーンではあるが、核不拡散を遵守していると強弁できる。ところが、ルカシェンコの言動からは、ベラルーシ軍に戦術核を導入し、自らが核のボタンを握る気満々であることが見て取れたのである。
筆者が最も信頼するベラルーシ人政治学者であるV.カルバレヴィチ氏も、最近発表したコラムの中で、そのあたりの矛盾について論じている。プーチンが3月25日に「ベラルーシに核兵器を引き渡すわけではなく、ロシアの核兵器をベラルーシ領に配備する」と発言したのに対し、ルカシェンコは3月31日の教書演説で「これはわが国の核兵器であり、わが国の領内に置かれた兵器はすべてわが国が管理する」と述べ、根本的な隔たりが露呈した。
おそらく、3月25日にプーチンが配備方針を表明した時点では、ルカシェンコには事前の説明がなかったのではないか。こうした対立ゆえ、4月5日の首脳会談は紛糾し、深夜まで6時間も続いたのだろうと、カルバレヴィチ氏は舞台裏を推理する。
率直に私見を申し上げれば、プーチンがルカシェンコのような気の許せない相手に核のボタンを委ねるなど、ありえないことである。そんなことをしたら、事の成り行き次第では、ルカシェンコが核を使ってロシアを恫喝するような事態も、起きない保証はない。
国際社会を騒がせたプーチンによるベラルーシへの戦術核配備発言であったが、ルカシェンコ側との調整が難航し、実現しない可能性もありそうである。
●ウクライナの農産物を輸入禁止 ポーランドなど自国農家保護で  4/18
ウクライナの隣国のポーランドなど3か国は、ウクライナ産の農産物の輸入を禁止すると相次いで発表しました。3か国を経由してアフリカなどへ運ばれるはずの農産物が国内で流通した結果、打撃を受けている自国の農家を守るためだとしていますが、ウクライナは輸入禁止の見直しを求めていて、影響が懸念されています。
ウクライナと国境を接する国々では、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、アフリカなどへ海上で輸送できなくなったウクライナ産の農産物が、ヨーロッパの別の港を使うための経由地として陸路で運び込まれています。
しかし、貨物列車やトラックといった輸送能力などに限界があり、ウクライナ産の農産物がそれぞれの国内で流通した結果、価格の安さから自国の農家が打撃を受ける事態となっていて、抗議活動も起きています。
このうち、ポーランドとハンガリーは今月15日、自国の農家を守るためだとして、ウクライナ産の農産物の輸入を6月30日まで禁止すると発表し、スロバキアも17日、輸入禁止を明らかにしました。
これについて、ウクライナの農業食料省は、隣国の農家の苦境に理解を示す一方、ウクライナの農家の状況はより厳しく解決策を模索したいとして、輸入禁止の見直しを求めています。
また、ウクライナからの農産物の輸出を支援してきたEU=ヨーロッパ連合は17日、ポーランドなどの措置は受け入れられないとして、対応を協議する考えを示しました。
ロシアの軍事侵攻が長期化し、ウクライナ産の農産物の海上輸送が滞る中、隣国の輸入禁止による影響が懸念されています。
●ウクライナ産農産物輸入中断するポーランド…EU、不和が始まった 4/18
欧州連合(EU)加盟国であるポーランドとハンガリーが自国の農産物保護のためウクライナ産農産物輸入を一時的に中断すると発表した。欧州委員会は「容認できない行為」と警告したが、ブルガリアなど他の東欧諸国も同様の措置導入に向けた検討に入った。これまで「ウクライナ支援」を擁護してきたEUの単一隊列が農産物対立を契機に亀裂が入りかねないとの懸念まで提起される。
ロイター通信とフィナンシャル・タイムズなどが16日に伝えたところによると、この日ハンガリー農業省はウクライナ産穀物と油糧種子(ヒマワリやアブラナなど油を絞るための種)など農産物輸入を6月30日まで禁止すると発表した。前日ポーランド農業省は穀物、肉類、卵、乳製品など数十種に達するウクライナ産農食品の輸入を6月末まで一時中断すると明らかにした。
ポーランドは第三国に輸出されるウクライナ産農産物が自国を経由することも遮断した。ポーランドのブダ経済開発技術相は15日、ツイッターに「ポーランド経由の禁止を含め(ウクライナ産農産物)禁輸措置は完全に施行中」と明らかにした。続けてルーマニアもやはり16日にウクライナ産穀物の輸入禁止を考慮していると現地BTA通信に話した。
東欧に貯まるウクライナ産低価格農産物
東欧諸国が相次いでウクライナ産農産物の禁輸措置を施行した理由は、これまで値段が安いウクライナ産農産物が東欧に大挙流入しこの地域の農産品価格急落を引き起こしたためだ。
昨年のロシアのウクライナ侵攻後、黒海航路を通じたウクライナ産の穀物輸出が事実上遮断され、アフリカ・中東への輸出の道が閉ざされると、ウクライナはポーランドとルーマニアなど東欧を経由する陸路を利用して穀物を運送してきた。
当初EUは陸路で入って来たウクライナ産穀物を近隣の港湾に運んで中東とアフリカに再輸出する予定だった。だが東欧に入ってきた穀物はトラックと鉄道など交通インフラが劣悪で港に運送されずそのまま放置された。合わせてEUは域内食糧供給網とウクライナ農家保護を名分にウクライナ産農産物に対し6月30日まで無関税措置を下した。
これに対し安価なウクライナ産農産物が大量に流入した東欧では農産物価格が急落するなど農業市場に大きな打撃が続いた。特に昨年中欧と東欧地域で豊作となり供給過剰が深刻化し、1年前1トン当たり1500ズウォティ(約4万7460円)だったポーランドの穀物相場は最近750ズウォティと半分になった。
国境封鎖、デモ…農民の不満爆発
最近東欧諸国では農民を中心にウクライナ産穀物輸入に反対するデモが相次いでいる。デモ隊はウクライナのトラックが自国に入ってくるのを防ぐためルーマニアとブルガリアの国境に沿ってトラクターで交通と国境検問所を封鎖したりもした。
状況が深刻化すると、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、チェコ、スロバキアなどは先月EUにウクライナ産農産物に対する無関税措置を撤回する緊急措置を出してほしいと書簡を送った。だが欧州委員会はウクライナ産農産物に対する関税免除を1年延長するという方針を明らかにしたまま特別な措置を出していない状態だ。損害を受けた東欧諸国に5630万ユーロ(約82億7616万円)の補助金を提案したが、加盟国の承認手順を踏まなければならない。
ハンガリーのナジ農業相は「ハンガリーとポーランドは意味のあるEUの措置がない状況に適切な行動に出るほかない」と話した。ポーランドのコバルチク農業相は「ウクライナの農産物がポーランドにとどまらず欧州に深く入り込むよう許容するEUの早急な追加措置を促すために今回の禁輸措置が必要だ」と話した。
「農産物対立、ウクライナと東欧不和の兆候」
EUとウクライナは東欧諸国の禁輸措置にただちに反発した。欧州委員会報道官は声明を通じ「EU加盟国の貿易政策はEUの独占権限であり、個別の加盟国の一方的措置は容認できない」と厳重警告した。続けて「(戦争という)厳しい時期にはEU内ですべての決定を調整することが重要だ」と強調した。
ウクライナのソルスキー農務相は16日にハンガリーのナジ農業相と会談し、「一方的な決定は受け入れられない」と反発した。前日はポーランド政府に「ポーランド農民の苦しさは理解するが、ウクライナ農民こそ最も厳しい境遇であることを理解してほしい」と要請した。これに先立ち5日にウクライナのゼレンスキー大統領はポーランドを訪問し農産物紛争を解決すると約束している。
フィナンシャル・タイムズは農産物をめぐるウクライナと東欧諸国間の対立は容易には鎮まらないと予想した。メディアは「ポーランドとスロバキアなど東欧主要国が選挙を控えている状況で、各国の野党は農村の有権者の支持に依存している保守政権を攻撃するため穀物紛争を激化させている」と伝えた。ニューヨーク・タイムズは「農産物対立は今回の戦争でウクライナの最も強力な同盟国のひとつだったポーランドに不和の兆候として広がっている」と伝えた。 
●プーチン大統領 ロシアが「併合宣言」したウクライナ2州を訪問 4/18
ロシア大統領府はプーチン大統領が去年9月に一方的に併合を宣言したウクライナ南部のヘルソン州と東部のルハンシク州を視察したと発表しました。
ロシア大統領府は18日、プーチン大統領がウクライナ南部のヘルソン州と東部のルハンシク州の軍司令部を訪問したと発表しました。
事前に予定されていない急な訪問だったとしています。
ヘルソン州では、プーチン大統領は現地の司令官を務めるテプリンスキー大佐から戦況報告を受けたとしています。
テプリンスキー大佐を巡ってはイギリスの国防省が16日、1月に解任された後、激戦が続いているバフムトへの攻撃を強化するために前線に戻った可能性が高いと報じていました。
プーチン大統領がロシア軍の制圧地域を訪問するのは3月に東部ドネツク州のマリウポリを視察して以来、2回目となります。
●プーチン氏、ヘルソン州など占領地死守の構え…特殊部隊の離脱「9割超」も  4/18
ロシア大統領府は18日、プーチン大統領がウクライナを侵略する露軍が占領している南部ヘルソン州と東部ルハンスク州の司令部を17日に視察したと発表した。ウクライナ軍が目指す大規模な反転攻勢に備え、占領地域を死守する構えを示した。
プーチン氏の両州訪問は、ロシアによる昨秋の一方的な併合後初めて。占領地の訪問は3月中旬、東部ドネツク州マリウポリと、ロシアが2014年に一方的に併合した南部クリミアを訪れて以来だ。
タス通信によると両州にいずれもヘリコプターで入り、車で司令部に移動した。
ヘルソン州の露軍現地司令官は、プーチン氏から占領地域の防衛を命じられたと公開された動画で明かした。プーチン氏は「あなたたちの意見を聞き、情報交換することはとても重要だ」と述べた。露軍はヘルソン州ドニプロ川東岸地域を占領している。
プーチン氏には「戦時指導者」としての存在感をアピールする意図もあったようだ。ウクライナ侵略に戦闘員を派遣し、露国防省と主導権を争う露民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏が14日、SNSに声明を発表し、露軍が敗北する可能性に言及したためだ。
今回の視察では、一時解任されていた 空挺くうてい 軍のミハイル・テプリンスキー司令官の復権も確認された。
空挺軍はじめ露軍の精鋭部隊の消耗が激しい中、士気を高める狙いもありそうだ。米紙ワシントン・ポストは14日、インターネット上に流出した米政府の機密文書を基に、特殊部隊スペツナズの一部に関し、兵士の死傷などによる戦線離脱が「90〜95%」に達し、再建には「最長10年を要する」との米側分析を報じた。
●プーチン大統領が前線視察 復活祭を祝いイコンを贈呈 4/18
へルソン州、ウクライナ、4月18日 (AP) ― ロシアのプーチン大統領は4月18日早朝、3月に続いて2度目となる、ウクライナで「特別軍事作戦」を遂行中のロシア軍前線司令部を視察した。
クレムリンが公開したビデオ映像には、ヘリコプターでへルソン州南部のロシア軍戦闘指揮所を訪れ、戦況報告を受けるプーチン大統領の姿が映っている。
プーチン大統領は次に、ヘリコプターで東部ルハンシク州の国家親衛隊の前線本部に移動し、ここでも指揮官から戦況報告を受けた。
どちらの場所でも、同大統領は正教会の復活祭を祝い、それぞれの司令官にイコンを贈呈した。
プーチン大統領は3月には、2カ月に及ぶ激戦の末5月に制圧したアゾフ海に面する港湾都市マリウポリを視察した。
ロシアは昨年9月、ドネツク州とザポリージャ州とともに、へルソン州とルハンシク州のウクライナからの独立を宣言し、一方的にロシアに併合した。
侵略戦争が開始から400日を超える今、ウクライナはロシアに占領されているこれら4州とクリミア半島の奪還を目指して、一大反転攻勢の準備中といわれている。
●プーチン大統領 ウクライナ南部と東部を訪問 地域支配を誇示か  4/18
ロシアのプーチン大統領は、一方的に併合したウクライナ南部のヘルソン州や東部のルハンシク州を軍事侵攻後初めて訪問しました。侵攻を続ける姿勢を示すとともに、ロシア側が掌握する地域の支配を誇示するねらいもあるとみられます。
ロシア大統領府は18日、プーチン大統領が去年9月、一方的に併合したウクライナ南部ヘルソン州を訪問したと発表しました。
プーチン大統領は、軍の作戦司令部でヘルソン州と南部ザポリージャ州の戦況について報告を受けました。
この中では、精鋭の空てい部隊のテプリンスキー司令官の功績をたたえ、プーチン大統領が空てい部隊の役割を重視していることがうかがえます。
またプーチン大統領は、一方的に併合した東部ルハンシク州も訪れ、兵士を激励しました。
国営通信社によりますと、プーチン大統領がヘルソン州やルハンシク州を訪問するのは、ウクライナへの軍事侵攻後、初めてだということです。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は18日、大統領の訪問はいずれも前日の17日に行われたと明らかにしました。
プーチン大統領は、3月も一方的に併合した南部クリミアと東部ドネツク州の要衝マリウポリを訪問し、ウクライナ政府は強く反発しています。
欧米からの軍事支援を受けるウクライナ側が、ロシアに占領された地域の奪還を目指すなかで、プーチン大統領としては、兵士たちを激励するなどして侵攻を続ける姿勢を示すとともに、ロシア側が掌握する地域の支配を誇示するねらいもあるとみられます。
ロシア外相 中南米各国との関係強化しG7に対抗か
ロシアのラブロフ外相は、中南米各国を歴訪し、17日、最初の訪問国ブラジルで、ビエイラ外相やルーラ大統領と会談しました。
外相会談後の記者会見で、ラブロフ外相は経済やエネルギー面などで協力していくと強調し、新興5か国=BRICSを構成するブラジルとの連携を打ち出しました。
また、ルーラ大統領が、ロシアによるウクライナ侵攻の停戦に向けた仲介に意欲を示していることをめぐり、ラブロフ外相は「ブラジルの友人たちは現在の状況の原因を正しく理解し、解決に貢献したいと願っていて、感謝する」と述べ、ブラジルが欧米とは一線を画した立場を示していると謝意を示しました。
一方、欧米側がロシアへの制裁を強化する中、ビエイラ外相は会見で「一方的な制裁は、特に途上国にとって悪影響となる」と述べました。
ラブロフ外相はこの後、ベネズエラやキューバ、ニカラグアも訪問する予定で、その後、今月議長国を務めるニューヨークの国連安全保障理事会の会合に出席する考えを示しています。
G7=主要7か国の外相会合がウクライナへの支援継続を確認し、ロシアに対してすべての軍を即時かつ無条件で撤退させるよう求めていくことで一致する中、ロシアとしては、友好関係にある国々との関係を強化し、対抗したい思惑があるとみられます。
ロシアと中国の国防相が会談 “軍事協力拡大”強調
ロシアのショイグ国防相はモスクワを訪問している中国の李尚福国防相と18日、会談しました。
この中で、ショイグ国防相は「われわれの協調的な取り組みが国際情勢を安定させ、紛争の可能性を減らすことに役立っている。ロシアと中国の軍事協力は拡大していくと確信している」と強調しました。
これに対し、ロシアの国営通信社によりますと、李国防相は「中国とロシアの関係が高いレベルで発展し、戦略的協力を強化する決意を世界に示すため、就任後初めての外国としてロシアを訪問した」と述べたということです。
プーチン大統領も今月16日にクレムリンで李国防相と会談して軍事面での連携が深まっていると強調していて、李国防相は、17日にはモスクワのロシア軍の学校の視察を行っています。
G7=主要7か国の外相会合で、中国の力や威圧による一方的な現状変更の試みを強く反対したり、ウクライナに侵攻するロシアを非難したりするメッセージが打ち出される中、両国は結束を誇示し、対抗する姿勢を示すねらいがあるとみられます。
一方、ウクライナ情勢を巡り、ロシア軍が兵器不足に直面する中、欧米やウクライナは中国がロシアへの兵器の供与などに踏み切らないか警戒を強めています。
●ロシア、軍事演習でG7けん制 日本意識、対中アピールも 4/18
ロシアのプーチン政権は18日、太平洋艦隊(司令部ウラジオストク)の臨戦態勢の緊急点検を続け、最終段階としてミサイル発射演習を開始した。
一連の演習は、北方領土への「敵の上陸」阻止も想定しており、ウクライナを支援する先進7カ国(G7)の議長国である日本を意識し、G7をけん制する狙いもありそうだ。
ペスコフ大統領報道官は17日、「あらゆる軍事演習は国際法を厳守して実施している」と記者団に説明。日本が外交ルートを通じ「北方四島に関するわが国の立場に反する」と抗議したことに反論した。
緊急点検を名目とした演習は、プーチン大統領の命令により14日に始まった。18日の国防省発表によると、日本海では対潜水艦戦を専門とする部隊が射撃訓練を実施。太平洋には核兵器を搭載可能な戦略ミサイル原潜が展開したほか、ベーリング海とオホーツク海の公海上をTU95爆撃機2機が飛行し、ウクライナ侵攻で対立する米国を威嚇した。
16日からは中国の李尚福・国務委員兼国防相がモスクワを訪問。プーチン氏は初日に会談し、中ロの軍事協力は「戦略的関係と信頼を強化している」と強調した。米シンクタンクの戦争研究所は演習について、ウクライナ侵攻で軍事力が低下する中でも「ロシアは中国と対等なパートナーだとアピールしようとした」と指摘した。
演習は18日に長野県軽井沢町で閉幕したG7外相会合の日程とも重なった。戦争研究所は「(プーチン政権が)5月の広島市でのG7首脳会議(サミット)に先立ち、日本にウクライナ支援を思いとどまらせるよう意図した可能性が高い」と分析している。 
●中国に屈服するロシア エネルギーとその先 4/18
ウクライナ侵攻後のロシアは同盟国を欲している。ベラルーシ、エリトリア、ニカラグア、北朝鮮、ベネズエラなど少数の「いつもの顔ぶれ」が支持を表明する一方で、外交的には孤立してしまった。ロシアと「無限の友好関係」にあり、西側の制裁に対する万能薬となるはずだった中国にさえ、意図的に距離を置かれたままだ。
エネルギーに依存するロシア経済は打つ手がなくなり、ますます中国に目を向けるようになった。これは、ウラジーミル・プーチン大統領が約20年前に始めたプロセスの加速である。だが、中国がロシアを必要としている以上に、ロシアは中国を必要としている。
ウクライナ侵攻から1年、ロシアの天然ガス売上高は開戦前と比べて半減した。習近平国家主席のモスクワ訪問で、いくらかの安心材料がもたらされるとロシアは期待していた。習主席はロシアとの関係について「今、100年来見られなかったような変化が起きている。その変化をともに推進しているのが私たちだ」と美辞麗句を披露した。また、公開書簡でもエネルギーの重要性を強調し「中国はロシアと連携して、より緊密なエネルギー協力パートナーシップを築く用意がある」と表明した。
しかし、中国は明らかに自国の利益を重視し、悠長に構えている。天然ガスに関する新たな協定は、いまだ締結されていない。プーチンは露中首脳会談に先立ち、シベリアから中国へ天然ガスを輸送する新パイプライン計画を持ち出して、合意は最終段階にあると主張した。中国側の反応はまだない。ロシアは再三にわたり中国に中身のある支援を求めてきたが、中国は応じていない。
中国は世界最大のエネルギー消費国であり、ロシアに対して大きな影響力を持っている。プーチンは、旧ソビエト連邦とソ連崩壊後の指導者たち(自分自身を含む)が慎重に育ててきた欧州の巨大な天然ガス市場を失った。年間1500億立方メートルの天然ガス輸出収入は、ロシアの生命線だった。中国はその収入を代替する存在にはほど遠い。ロシアは中国にとって第5位の天然ガス供給国にすぎず、中国経済の成長への影響は微々たるものだ。中国の天然ガス輸入に占めるロシアの割合はわずか6%で、一方、最大のパートナーであるオーストラリアは40%に上る。ロシアは2022年9月、シベリア東部のパイプラインの保守点検が必要だとして中国への天然ガス供給を1週間以上にわたり停止し、中国政府を威圧しようとする失策を犯した。
中国にロシアの威圧は効かない
石油だけでは、ロシアは救済できない。現在ロシアは中国の石油輸入の6分の1を占める最大の石油供給国となっているが、中国には他にも多くの石油供給源があり、ロシアの威圧が効果を発揮しようもないほど多様な化石燃料ポートフォリオを有している。また、中国の南シナ海における埋蔵量は、天然ガスが約5兆立方メートル、石油が160億〜330億バレルとされる。サウジアラビアとイランの関係改善を仲介した外交的勝利も相まって、中国は極めて豊かな代替供給源を確保しているのである。
天然ガス輸出も万能薬とはならない。英経済紙エコノミストの調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)のグローバル予測担当ディレクター、アガテ・デマレは「ロシアの天然ガスパイプラインは、ほぼすべてが欧州向けだ。新規敷設は高くつき、高度な技術も必要となる。時間とコストがかかる」と指摘する。ロシアがガスの代替供給先を何よりも必要としている今、中国の支援の動きはにぶい。天然ガス開発には時間と先行投資が求められるが、中国はロシアにそれを割きたくはないのだ。
中国はエネルギー輸入削減計画を掲げつつ、ロシアからの石油購入量を増やしており、2022年10月にはロシア産石油の購入額を102億ドル(約1兆3700億円)に倍増した。中国の石油精製会社はロシアが提供する割引を活用している。ロシアにとって石油輸出の拡大は難しいことではないと証明されたわけだが、これによってロシアが膨れ上がる財政赤字と経済の停滞から救われることはなかった。ロシアがOPECプラスに減産を迫れば(それは景気後退を招く恐れがある)、原油価格が上昇し、すでに過熱している世界経済にさらなるインフレ圧力がかかり、ロシア経済をも弱体化させる結果になりかねない。
ロシアは中国の属国と化した
ロシアの中国依存は、エネルギーや輸入にとどまらない。人民元への依存度も高まっている。開戦当初、プーチンは西側とのエネルギー貿易をルーブル建てに切り替えようとした。しかし、先日の露中会談では、中国をはじめ外国との貿易決済通貨を人民元に移行すると発表した。中国にとっては勝利だが、ロシアの立場はとてつもなく脆弱になった。人民元は厳格に管理され、通貨交換性が確保されていないため、中国政府はいつでも意のままにロシアを押さえ込むことが可能となり、ロシアに対する影響力はいっそう増大する。ロシアの人民元建て輸出決済は、すでに2021年の0.5%から2023年初頭には16%に増加。ロシアは北朝鮮に次いで中国からの輸入に依存する国になっている。
ロシアがこのような屈辱に耐えているのは、それが戦費をまかない、切実に必要な武器や物資などの軍事援助につながると期待しているからだ。だが、後者はまだ実現していない。これは、中国にとって経済的なつながりがはるかに深い西側諸国から大々的な報復を招くだけでなく、プーチンを中国の厳しい管理下から逃すことになりかねない。しかも、ロシアが必要としている援助は、設計図や先端技術ではなく、弾薬や燃料、トラックなど、あらゆる軍事活動の基幹となるものである。中国共産党中央政治局は、戦略的備蓄について別の計画を持っているかもしれない。
中国のロシア支配は拡大している。プーチンが帝国を追い求めた結果、皮肉にもロシアは中国に何十年も原材料を提供することになるであろう属国と化してしまった。習近平がロシアと中国は「変化をともに推進している」といくら強調したところで、中国人がロシア人を動かしているのは明らかだ。ロシアのエリートは、早くそれを理解したほうがいい。
●ウクライナでの戦争、「できるだけ早期」の終結に関心 ロシア外相 4/18
ロシアのラブロフ外相は17日、訪問先のブラジルで、ロシアがウクライナでの戦争を「できるだけ早期に」終結させることに関心があると語った。ブラジルのビエイラ外相との共同記者会見で述べた。
ラブロフ氏は、ブラジル側がウクライナ情勢について「優れた理解」を示したことに謝意を示したほか、ブラジルの和平交渉模索の意欲にも感謝した。
ブラジル外務省の発表によれば、ラブロフ氏は同日、ブラジルのルラ大統領とも会談を行う。
ウクライナは、和平の実現は、ロシアが国境を回復して、ウクライナ政府がクリミア半島を奪還した場合にのみ達成できると繰り返し表明している。
ウクライナのクレバ外相は先週、ルーマニアで開催された黒海の安全保障に関する会合で、「本当の平和とは、国際的に認められたウクライナの国境を回復することを意味する。真の平和とは、ウクライナのクリミア半島で標的となっている人々にとっての安全な故郷を意味する」と述べていた。
ビエイラ氏によれば、紛争の平和的な解決に貢献するブラジルの立場を改めて示したほか、ロシアとウクライナの交渉を仲介する友好国のグループを結成するというルラ大統領の考え方を伝えたという。
ビエイラ氏は、一方的な制裁に反対するブラジルの姿勢についても強調した。
ビエイラ氏は、一方的な制裁は、国連安保理の承認を得ることに加えて、世界各国の経済、特に新型コロナウイルスの世界的な流行から完全には回復していない発展途上国の多くに悪影響を及ぼすとの見方を示した。

 

●米高官、ロシア核配備に対処必要 NATO会合でプーチン氏批判  4/19
シャーマン米国務副長官は18日、ロシアのプーチン大統領が3月に戦術核兵器をベラルーシ領内に配備する計画を発表したことについて「対処し、非難しなければならない。緊張を高める危険なものだ」と批判した。ワシントンで開かれた大量破壊兵器の不拡散に関する北大西洋条約機構(NATO)の会合で述べた。
シャーマン氏は、計画はプーチン氏による核の威嚇の一環で、今後もウクライナや欧米をけん制し続けるとの見方を示した。現時点でベラルーシへの配備の動きは確認されていないとした。
ロシアが戦術核の使用に踏み切る可能性にも懸念を示した。
●ロ軍、激戦地バフムト空爆強化 ウクライナ陸軍声明、兵力集中か 4/19
ウクライナのシルスキー陸軍司令官は18日、ロシア軍がウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトで空爆と砲撃を一層強化し、街を「廃虚にしている」とする声明を発表した。英国防省は、ロシア軍が州都ドネツク周辺での攻撃を縮小させ、兵力をバフムトの戦闘に集中させる可能性を指摘した。
バフムトはドネツク州の主要都市へと通じる幹線道路上に位置し、ウクライナ軍は防衛を重視してきた。シルスキー氏は18日の声明で「バフムトの戦いは続く」と述べた。だがロシア軍の制圧地域が広がる中でウクライナ軍は補給に問題が生じているとされ、一部撤退の動きも伝えられ始めている。
●ウクライナ戦争長期化巡るブラジル大統領の見解は誤り=ホワイトハウス 4/19
米ホワイトハウスのジャンピエール報道官は18日、ブラジルのルラ大統領が、欧米のウクライナ向け武器供給が戦争を長引かせているとの見解を示したことを受け、その論調は中立ではないと批判した。
同報道官は、ルラ大統領の発言のトーンが中立ではなかったことに米当局は衝撃を受けたとした上で、「われわれはもちろん戦争終結を望んでいる。ルラ氏の論調は誤りであるため、反論し続ける」と述べた。
●ブラジル大統領、ウクライナ侵攻を非難 中立国に調停呼び掛け 4/19
ブラジルのルラ大統領は18日、ロシアによるウクライナの領土侵害を非難し、戦争終結に向けた調停を改めて呼び掛けた。
ルーマニアのヨハニス大統領との昼食会で、和平仲介へ中立的な国が結集する必要があると述べた。
ルラ大統領は先週末、西側諸国はウクライナへの武器供与で戦闘を長期化させていると発言し、関係国から批判を受けていた。
ホワイトハウス報道官は「事実を見ずにロシアと中国のプロパガンダを繰り返している」と非難。18日もルラ氏の口調は中立ではないと不快感を示した。
関係者によると、米高官はルラ氏の発言について相手側にバイデン政権の不満を伝えている。
ルラ氏の外交政策顧問は米国の批判を「ばかげている」と一蹴し、ブラジルはロシアの立場を共有していないと強調した。
ロシアのラブロフ外相は17日にブラジルを訪問。ブラジルとロシアはウクライナ問題に関する見解を共有しているとして、ルラ大統領の和平への取り組みに謝意を示した。
ルラ大統領は戦争終結に向けた仲介役を自認。不干渉と中立というブラジルの伝統に基づき、戦争に関与していない国にロシアとウクライナの双方に協議を促すよう呼び掛けている。
●プーチン大統領 支配地域訪問 ゼレンスキー大統領 激戦地へ  4/19
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部や南部の支配地域を訪れ、軍事侵攻を続ける姿勢を示すとともに、支配を誇示するねらいがあるとみられます。これに対してウクライナのゼレンスキー大統領は東部の激戦地を訪れて前線の兵士を激励し、徹底抗戦していく姿勢を改めて強調した形です。
ロシア大統領府は18日、プーチン大統領が去年9月に一方的な併合に踏み切ったウクライナ南部ヘルソン州と東部ルハンシク州の支配地域を相次ぎ訪問したと発表しました。
ロシアの国営通信社は、訪問はウクライナ侵攻後、初めてだと伝えています。
プーチン大統領は、支配地域の軍の作戦司令部で戦況について報告を受けたり、空てい部隊の司令官の功績をたたえたりし、ロシアが併合したとするウクライナ東部と南部の州全域を掌握しようと侵攻を続ける姿勢を示すとともに、支配を誇示するねらいがあるとみられます。
一方、ウクライナ大統領府は18日、ゼレンスキー大統領が東部ドネツク州の激戦地の1つアウディーイウカを訪れたと発表しました。
ゼレンスキー大統領は、前線で戦闘を続ける兵士らに対して「あなた方に望むのは勝利だけだ」などと激励しました。
ウクライナ軍の参謀本部は、連日、ロシア軍がアウディーイウカ周辺で攻撃を仕掛けていると発表しています。
ゼレンスキー大統領としては、国民が結束して徹底抗戦を続け、欧米の支援を得ながら占領地を奪還していく姿勢を改めて強調した形です。
●ウクライナ大統領、東部の激戦地訪問 4/19
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は18日、ロシア軍の激しい攻撃にさらされている東部アウディーウカを訪問し、自国軍兵士と面会した。
アウディーウカは、ロシア軍の占領下にあるドネツク市に近い。ウクライナ大統領府によると、ゼレンスキー氏は兵士に感謝を伝えた。兵士と共に屋外に立つ姿を映した映像も公開されたが、防護服を着用している様子はなかった。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も前日、ウクライナ南部ヘルソンと東部ルガンスクの両州を訪問し、司令官から報告を受けた。 
●ウクライナ訪問は事前収録か プーチン氏「もうすぐ16日」 ロシア 4/19
ロシア大統領府が18日に映像を公表したプーチン大統領のウクライナ占領地訪問について、ペスコフ大統領報道官は「前日(17日)」に訪れたと主張したが、独立系メディアは東方正教の復活祭(イースター)の16日より前の「事前収録」だった可能性を指摘した。
映像は当初、プーチン氏がキリスト教の祝祭を「未来形」で呼んでいたが、報道を受けて音声が修正された。
南部ヘルソン州と東部ルガンスク州を視察したとされる映像で、プーチン氏は勝利のお守りといわれるイコン(聖像画)を作戦司令部に贈呈。この際に「もうすぐ(16日の)復活祭だから」と述べていたが、しばらくして音声が差し替えられ「もうすぐ」という一言だけ消された。国営テレビのニュースでは、無音部分に雑音を重ね合わせ、巧妙に隠蔽(いんぺい)した。
記者団の指摘に対し、ペスコフ氏は「復活祭は40日間祝う」と主張。未来形でも不自然ではないと強弁した。ただ、音声を修正した理由については説明しなかった。
一方、ウクライナ大統領府によると、ゼレンスキー大統領は18日、ロシア軍による包囲が進む東部ドネツク州アウディイウカを訪問し、最前線の兵士らを激励した。両首脳がそれぞれ部隊を視察したと発表されたのは同じ18日。ただ、場所も日時も異なることになり、前線の近くで「ニアミス」することはなかったとみられる。
●ロシア側「バフムトの9割支配」 プーチン氏が併合地訪問 4/19
ウクライナ東部ドネツク州の要衝・バフムトを巡り、ロシア側は「9割を支配した」と主張しました。
親ロシア派武装勢力「ドネツク人民共和国」の幹部は18日、バフムトで攻勢を掛けるロシアの民間軍事会社「ワグネル」が「バフムトの9割を支配していて、前進を阻止することはできない」と主張しました。
ロシア大統領府は同じ日に、プーチン大統領がロシアが一方的に併合したウクライナ南部のヘルソン州と東部のルハンシク州の軍司令部を訪問したと発表しました。
ヘルソン州では現地の司令官から戦況報告を受けたとしています。
ウクライナ軍が東部の激戦地などを巡って反転攻勢を計画するなか、プーチン氏は現在の支配地域を維持するためにも現場を訪れ、士気を高める狙いがあったとみられます。
●大使たちに無視されたプーチン いよいよ袋小路か 4/19
ウクライナ危機で先鋭化した米国とロシアの対立が、冷戦期を彷彿とさせる様相を呈している。3月にはソ連崩壊後初めて、ロシアで活動していた米主要紙の記者がスパイ容疑で逮捕され、4月に外国大使らが出席して行われた信任状奉呈式で、プーチン大統領は米大使に「ウクライナ危機は米国が原因だ」と突きつけた。
侵攻開始から2年目を迎えても戦況が打開できず、無謀な戦略で自軍の人的損害が増え続けるなか、プーチン政権は苦境の理由を米国に押し付けて、国民の目を外に向けるほかはない。ウクライナ危機の長期化が確実視されるなか、両国間の対立は今後も悪化の一途をたどることが確実だ。
狼狽したプーチン氏
「私はこの儀式の前向きな雰囲気を壊したくはない。そしてあなたは私の意見に同意しないだろう。しかし大使、あなたの国が2014年のウクライナをはじめとした各国のカラー革命≠扇動したことが、結果として現在のウクライナ危機を招き、ロシア・米国関係の悪化を引き起こしたのだ」
4月5日、クレムリンで新たに任命された各国の駐ロシア大使たちを前に演説したプーチン氏は、新任のトレーシー米国大使に対しこう言い放った。トレーシー氏は憮然とした表情を浮かべながら、じっとプーチン氏の顔を見つめていた。
プーチン氏はギニア大使には「ロシアとギニアは伝統的に親密な関係にある。ロシアは主要投資国でもある」などと語りかけ、赤道ギニア、ジンバブエ大使には「7月にはサンクトペテルブルクで第二回アフリカフォーラムが行われる」などと呼び掛けるなど、他国の大使にはそれぞれ好意的に言及した。各国の大使の面前で、米大使を辱める意図が鮮明だった。
ただ、ここで異変が起きた。プーチン氏が演説を終えても、参加した大使らは誰一人として拍手を送らず、プーチン氏が逆に狼狽する様子が全世界に映像で配信された。ロシアの孤立がむしろ鮮明になった。
WSJ記者を逮捕
ロシアでは3月下旬、モスクワに駐在していた米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のエバン・ゲルシュコビッチ記者が不明瞭なスパイ容疑で逮捕される事態も発生した。米国人記者がスパイ容疑によりロシアで逮捕されたのは、ソ連崩壊前の1986年に逮捕されたUSニュース&ワールドリポートのニコラス・ダニロフ記者以来の出来事だ。
報道関係者の逮捕は外交関係にも甚大な影響を与えるため、今回の事態は西側メディアに強い衝撃を与えた。ソ連崩壊後に自由化されたロシアでの海外メディアの活動が、これほど明確に当局の標的になったことはなく、米露関係が冷戦時代の対立状態に戻ったことを強く印象づけた。
86年に逮捕されたダニロフ氏はスパイ活動とは何ら関係がなく、旧ソ連国家保安委員会(KGB)が罠として送り付けた「国家機密」と記載された文書が入っていた封筒を明けてしまったために、当局に逮捕された経緯がある。最終的にダニロフ氏はソ連のスパイとの囚人交換で米国に帰国した。
ゲルシュコビッチ氏はWSJの記者として、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」や、ロシアの軍需産業の実態を報じようとするなか、ロシア中部エカテリンブルクで突然逮捕された。ロシア側は、ゲルシュコビッチ氏が米当局に情報を流していたと主張しているが、米側は一切否定している。
ロシア外務省の高官はゲルシュコビッチ氏の処遇をめぐり、ロシアが囚人交換に応じる可能性を指摘しているが、仮に実施されるとしてもゲルシュコビッチ氏をめぐる裁判が終了した後としており、年単位で時間がかかる可能性もある。
ゲルシュコビッチ氏をめぐる一連の事態からは、ロシアが西側メディアに対し、これ以上ロシアの内情に迫る報道を容認しないという強いメッセージが伝わってくる。外交関係者と異なり、不逮捕特権がないジャーナリストは、裁判で有罪になれば長期の懲役を免れない。仮にスパイ容疑で有罪となれば、同氏は20年程度の懲役刑が課される可能性もあるという。今後、西側の主要メディアがモスクワから脱出する動きが加速しそうだ。
背景にロシア軍の苦境か
プーチン政権が米国や西側メディアとの対立を表立って先鋭化させる理由のひとつには、ウクライナにおける前線での苦戦が続くなか、米国に対し対抗姿勢を見せ続けるのと同時に、苦戦の理由が米国という「外敵」にあると国民に繰り返し訴え、その責任を西側諸国に押し付ける意図が伺える。
侵攻開始から2年目に突入するなか、ロシア軍は依然として前線の膠着状態から抜け出せないままでいる。英国防省は4月上旬、ウクライナ東部ドネツク州でロシア軍を指揮していたルスタム・ムラドフ司令官が「解任された可能性が高い」との見方を、SNSを通じて示した。現地メディアは、解任されたとも報じている。
ムラドフ氏はドネツク州で戦闘を展開するロシア統合軍グループ「ボストーク」のトップだ。3月にショイグ国防相がウクライナの前線を視察した際には、同氏のもとを訪れるなど、ウクライナにおける軍事作戦における同氏の役割の重要性が伺えた。
ただ同氏が手掛けた作戦では、膨大な数のロシア軍の死傷者が出ていたとされ、同氏の手法を疑問視する声が上がっていた。特に、2月に行われた東部ブフレダルでの攻防戦では、ロシア軍はわずか3日間の作戦で戦車36両を含む100以上の主要装備を失い、100人規模の部隊で8人しか生き残らなかったなどと現地メディアで報じられている。ムラドフ氏の命令のもと、地雷を避けるため無理な隊形で突進を試みたことが原因とされるが、東部での戦況が打開できない状況が続くなか、焦りで無理な作戦を遂行した可能性が伺える。
ロシア軍はウクライナ侵攻開始以後、総司令官が繰り返し交代しており、1月に異例の形で総司令官に就任したゲラシモフ参謀総長も目立った成果を上げられていない。軍主要幹部の交代が止まらないという事態そのものが、ロシアの戦線での苦境を物語っている。ウクライナでのロシア軍の戦死者数をめぐっては、英国防省は侵攻開始から1年間で最大20万人規模に達していると推計している。
戦闘終了を求める声もあからさまに上がりつつある。ウクライナ侵攻に参画するロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者、プリゴジン氏は4月、「政権は軍事作戦の終了を宣言すべきだ」とSNS上で表明した。東部で十分な「戦果」を挙げたからなどとしているが、ロシア軍の主目標とされる東部のドネツク、ルガンスク両州の制圧もできていないまま、戦力の損失でこれ以上の制圧地域の拡大も困難と判断している可能性がある。
ウクライナ軍が欧米諸国と連携して大規模な反撃を準備するなか、現状での凍結を求めることは都合の良い¢iえだと言えるが、東部戦線の激戦地で戦闘を続けてきたワグネルのトップがこれ以上の占領地の拡大が困難と判断した事実は重い。
米機密文書流出の影響は
そのような最中に、米国防総省の機密文書がインターネット上に多数流出していた事態が発覚し、ウクライナ危機に対する米国や西側各国のかかわりや、米側が抑えていたロシア軍の詳細な状況が表面化する事態が起きた。ウクライナ軍の防空ミサイルの枯渇が視野に入っていた事実や、米国や欧州諸国のウクライナ軍への関与の一部などが明らかになった。
ネット上に流出した文書がどこまで本物で、それが実際に戦況へどう影響するかといった点は不透明な部分が多く、現時点では評価が難しい。ただ、ウクライナ危機をめぐる情報は、事実としても想定しうる内容のものが多く、さらに数カ月前の情報もあり、今後の戦闘にどこまで影響を及ぼすかは見えないのが実情だ。
冷戦を終結させたゴルバチョフ元ソ連大統領が死去し、1980年代以降のソ連の民主化の流れを生み出した市民の力は、プーチン氏の登場以後、着実にその勢力を弱められ、ウクライナ危機で完全に封じ込められた。米露の対立激化はもはや、冷戦期に匹敵する様相を呈しているが、ロシア国内ではそれを止める勢力は皆無となっている。ウクライナ侵攻というプーチン氏の暴走が止まらない限り、事態が改善に向かう可能性を見いだすことはできない。
●米機密文書流出、ウクライナでの戦争の重要情報はあったのか 4/19
米国防総省の機密文書の流出が明るみになってから10日ほどがたった。ウクライナでの戦争について、どんなことがわかったのか。
流出文書の大半は今年2〜3月に作成されており、ウクライナでの紛争の状況についてかなり突っ込んだ洞察を含んでいる。詳細な記述にあふれ、その多くは非常に複雑だ。
しかし行間を読むと、米国防総省が紛争の成り行きを理解しようと、時に困難を伴いながら、最大限の努力をしている様子がみえてくる。
「戦場の霧」があるのは明らかだ。
例えば、双方の人的・物的損害がどれくらいなのかという重要な問題。生データから状況は浮かぶが(死傷兵はロシアが22万3000人、ウクライナは13万1000人)、国防総省はこの数字に「低い信頼性」しか置いていないことが、流出文書から分かる。
理由はいくつかある。作戦上の秘密保持、意図的な改変、「ウクライナによる情報共有についての潜在的偏見」と呼ばれるものなどだ。
つまり、ウクライナにとってアメリカは最も重要な同盟国かもしれないが、アメリカは提供される情報を信用しているとは限らないのだ。
ドンバスの戦闘をめぐっては
似たような「確信のなさ」は、東部ドンバス地方における戦況を要約した文書(2月22日付)にも表れている。
その中では、この戦闘が「2023年を通して膠着(こうちゃく)状態に陥る可能性が高い」という見方に、国防総省は「中程度の信頼性」をもっていると書かれている。
しかし、「ウクライナの作戦の持続力を正確に推定できれば」さらに大きな信頼性をもてるとも記されている。さらに、2022年後半のウクライナの反攻がロシアの士気と装備に及ぼした影響は、完全には把握できないと書かれている。
これらは、国防総省の計画立案者らの頭の中で日々渦巻いている疑問の一部でしかない。他にもまだたくさんある。
どうすればイスラエルをもっと関与させられるのか? 韓国を説得し、ためらいなくウクライナに砲弾を供給させることは可能なのか? ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が死んだらどうなるのか?
物事の不確実性が高いことを考えれば、現状への理解を深めるため、アメリカが非公然の手法を使うのは驚くことではない。
たとえそれが、支援を約束している国に対するスパイ活動であってもだ。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と側近らが、ベラルーシやロシア国内のロシアの標的を攻撃することの是非を協議している会話が傍受されていたとされるのは、そのためだ。
そして、うわさもある。
文書によれば、ゼレンスキー氏の首席補佐官を務めるアンドリー・イェルマク氏は2月17日、「ロシアの陰謀」に関する情報を得た。軍のワレリー・ゲラシモフ総司令官と、安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記が関与し、プーチン氏の「特別軍事作戦」を妨害するという内容だった。
この計画は、プーチン氏が化学療法を開始する日に合わせて実行予定だったとされた。だが結局、そうしたことは起こらなかった。
それでも、ロシアの亀裂や弱体化の情報を得たい米国防総省にとっては、この計画に関する報告書は1日ほどは、興味をそそるものだっただろう。
軍事紛争は大規模で複雑な事象だ。軍事、政治のさまざまな要因によって常に変化する。
つまり、文書が作成されてからの数週間で、状況は微妙に変わっている可能性が高い。
多くの報道がなされているウクライナの防空システムがいい例だ。
枯渇するとみられていたが
2月後半に作成された少なくとも2点の文書では、ウクライナの防衛にとって重要な地対空ミサイルである、ソヴィエト連邦時代のSA-11とSA-10が、それぞれ3月31日と5月2日までに枯渇する見込みだと書かれている。
この二つのシステムがウクライナの中・長距離の防衛の89%を占めていると文書に記されていることを考えると、恐ろしい予測のように思える。
この予測は「現在の迎撃ミサイルの消費量」に基づいたもので、ウクライナはロシアの生活インフラに対する攻撃に、あと2〜3波しか耐えられないと結論づけている。
だが実際には、ウクライナのインフラに対するさらなる大規模攻撃は実施されていない。そのため、ウクライナは貴重な在庫を少しばかり長く保有できている。
流出文書には、スロヴァキアが3月中旬に承認したばかりのミグ29戦闘機13機が届いたことも一切書かれていない。
必然的に、これらの文書のトーンはアメリカの発表より冷めていて、悲観的ですらある。
予測されているウクライナの反攻が今後数週間のうちに始まれば、ウクライナが大成功を収めるだろうといった予測はない。
その代わり、「若干の領土の獲得」が語られている。
ウクライナの「弱点」は、それが公になるずっと前から、アメリカとウクライナの共同計画に反映されていた可能性が高い。
ただ、そうした弱点がどれほど改善されたかはわからない。今回の流出文書は、最近作られたものではあるが、常に変化する状況の断面に過ぎないからだ。
●韓国大統領、ウクライナへの軍事支援容認を示唆 4/19
韓国の尹錫悦大統領はロイターのインタビューで、ロシアの侵攻を受けるウクライナで民間人への大規模攻撃などが実施された場合、軍事支援に踏み切る可能性を示唆した。
来週の訪米を前に行われたインタビューで尹氏は、韓国が1950─53年の朝鮮戦争で国際支援を受けたように、ウクライナの防衛と再建を支援する方法を政府として模索していると述べた。
「民間人への大規模攻撃や虐殺、重大な戦争法違反など、国際社会が容認できない事態が発生した場合、人道・資金援助だけに固執するのは難しいかもしれない」と語った。
韓国政府がウクライナへの兵器供与に前向きな姿勢を示唆したのはこれが初めて。
「違法に侵略された」ウクライナの防衛・再建への支援に制約はないとの認識を示した上で、「戦争当事者との関係や戦況を考慮して最も適切な措置を講じる」とした。
日本を含めたアジア版の北大西洋条約機構(NATO)「核計画グループ」を想定しているかとの質問には、情報共有、共同有事計画を強化するための米国との2国間対応に軸足を置いていると応じた。「強力な核攻撃への対応という点では、NATOより強硬な手段を準備すべき」だとし、日本の参加に大きな問題はないが、まずは米韓の体制作りをする方が効率的だと述べた。
●ロシアの装備は「過去に後退」と西側当局者 第2次大戦後世代の戦車も 4/19
西側諸国の複数の当局者は18日、ロシアがウクライナでの戦闘で使用している装備について「過去に後退している」との見解を示した。ロシア軍の配備する戦車の中に、第2次世界大戦後間もない時期に導入されたものが含まれていることが念頭にある。同軍は戦闘で失われた戦車の補充に苦慮している。
同日の状況説明に臨んだこれらの当局者らは、ロシア軍の装備の大幅な増加を確認していないと主張。使用中の装備も比較的古い年代のものだと指摘した。またロシア政府について、今回の戦争でより旧型の戦車への依存を強めていると付け加えた。
具体的には当初使用されていた戦車「T80」、「T90」から、戦闘の経過と共に「T72」へと移行し、今回初めて改修の施された「T55」が投入されるのを確認したという。同様の構図は大砲についても当てはまるとしている。
T90とT80はそれぞれ1992年と76年に初めて導入された。T72の運用開始は72年。T55は第2次大戦後間もない48年の導入だ。
「彼らは装備の面で過去に後退している」と、当局者らは述べた。
当局者らによれば、ロシア軍は依然として兵力に関しても苦しい状況にある。多数の人員の招集は可能なものの、適切な訓練を施すことが今なおできていないのがその理由だ。
比較的小規模な訓練を隣国ベラルーシで行ってはいるが、動員したとされる15万人のうち、中隊レベルの訓練を受けたと当局者らが確認できるのは1万5000人とみられている。
ロシア軍の現状はウクライナに侵攻した当初から低質化していると、当局者らは述べた。
●ウクライナ東部バフムト ロシア軍攻撃強化か 反転攻勢に備えも  4/19
ロシアが侵攻するウクライナ東部のバフムトでは、ロシア軍による砲撃や空爆が増加していて、完全掌握に向けて攻撃を強化しているもようです。また、プーチン大統領は、支配地域の前線を相次ぎ訪問していて、ウクライナの大規模な反転攻勢に備えるねらいともみられています。
ウクライナ軍の参謀本部は19日、東部ドネツク州のウクライナ側の拠点バフムトと、州都ドネツクの南西にあるマリインカが激戦地となっていると発表しました。
バフムトについてウクライナ陸軍の司令官は、前日には「敵が最も力を注ぎ、支配しようとしている。砲撃や空爆の回数を増やし、街を廃虚にしようとしている」と指摘しています。
イギリス国防省は、ロシア側がバフムトに戦力をさらに移そうとしているとしたうえで、ロシア軍と民間軍事会社ワグネルの部隊が前進を続け、中心部の主要な鉄道が最前線となっていると分析しています。
こうした中、ロシア大統領府は18日、去年9月に一方的な併合に踏み切った南部ヘルソン州と東部ルハンシク州の支配地域をプーチン大統領が相次いで訪問し、作戦司令部で戦況について報告を受けたと発表しました。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、プーチン大統領が訪問で、精鋭の空てい部隊の司令官らを名指しして激励したことなどについて、「今後のウクライナの反転攻勢を見越し、潜在的なスケープゴートを特定することを意図していた可能性も高い」として、ウクライナの反転攻勢に備え、前線の責任を明確化するねらいだと分析しています。
一方、ウクライナの国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は、17日のAP通信のインタビューで、大規模な反転攻勢について「準備が整えばすぐにでも開始する。準備不足のまま始めることはない」と述べ、欧米の兵器供与を受けながら反撃への準備を進めていると明らかにしています。
●「仏大統領、終戦のため中国と秘密作業…夏の露ウ平和会談が目標」 4/19
マクロン仏大統領がウクライナ戦争を終わらせるために中国と秘密交渉を進行中という海外の報道があった。フランスは中国とのこの作業を通じて、早ければ今夏にロシアとウクライナが参加する平和会談が開かれると予想した。
18日(現地時間)のブルームバーグ通信によると、マクロン大統領は最近、エマニュエル・ボン外交政策顧問に中国外交トップの王毅共産党中央政治局委員と協力してウクライナ終戦交渉の基盤を用意するよう指示した。これを受け、ボン顧問と王委員は近く電話会談をするという。
仏大統領室の関係者は「こうした作業が順調に進めば、ロシアとウクライナの間の平和会談が早ければ今年夏に開かれる可能性がある」と伝えた。また「ロシア・ウクライナのこの春の攻勢の結果しだいで、平和会談でいくつかの条件が変わることもある」とも話した。
西側の同盟国にもマクロン大統領と中国の秘密作業が伝達されていると、ブルームバーグは報じた。ウクライナにもこうした内容が伝えられたとみられる。これに先立ち15日、マクロン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領と1時間半ほど電話会談した。
ゼレンスキー大統領は電話会談の直後、「マクロン大統領から最近の中国訪問の結果を聞き、(ロシアとの)平和会談開催の次の段階について議論した」と明らかにした。ただ、ロシア大統領府は18日、「フランスが提示した平和協定計画を見ていない」と伝えた。
マクロン大統領は今月5−7日、中国を国賓訪問し、中国の習近平国家主席と会談した。両首脳はウクライナ戦争の解決に向けた外交的努力と後続措置について議論した。この席で習主席はゼレンスキー大統領と電話会談をする用意があるとし、時期を眺めながら電話をするという意思を表した。
習主席は先月20−22日にロシアを国賓訪問し、プーチン大統領と会談した。習主席がゼレンスキー大統領と接触する場合、ロシアとウクライナの間で平和交渉のきっかけが生じるという見方が出ている。
英日刊テレグラフによると、マクロン大統領は中国との秘密計画を順調に進めるため、中国を含む複数な国とウクライナに対する安保保障を構想している。7月にリトアニアの首都ヴィリニュスで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会談でこれに関する議論が行われる予定だ。
一方、ゼレンスキー大統領とプーチン大統領は春の攻勢を控えてそれぞれウクライナ最前線を訪問し、兵士を激励した。ゼレンスキー大統領は18日、東部ドネツク州の最前方激戦地アウディイウカを訪問し、指揮官から戦況の報告を受けて兵士を褒賞した。
アウディイウカはロシアが占領中のドネツク州ドネツク市の中心街からわずか10キロ離れた地域で、最近バフムトと共に最大激戦地になったところだ。
プーチン大統領は17日、ウクライナ占領地の南部ヘルソンと東部ルハンシク(ルガンスク)地域の軍部隊を訪問し、軍指揮官から戦況の報告を受けた。ロシアが昨年9月に同地域の併合を発表した後、プーチン大統領がこの地域を訪問したのは今回が初めて。
●ロシアの侵攻「糾弾」 米国の反発受け厳しい姿勢 ブラジル大統領 4/19
ブラジルのルラ大統領は18日、ロシアのウクライナ侵攻について「ウクライナの領土の一体性を損なうことを糾弾する」と強調し、ロシアへの厳しい姿勢を明確にした。
ブラジルを訪れたルーマニアのヨハニス大統領との昼食会で語った。
ルラ氏は先に中国を訪問した際、米国が「戦争を後押し」しており、ウクライナ側にも非があるとの認識を表明。米高官が17日、「ブラジルは事実に全く目を向けず、ロシアと中国のプロパガンダをオウムのように繰り返している」と強く反発していた。 

 

●「国家反逆」に終身刑 ウクライナ侵攻で引き締め―反対派の弾圧懸念・ロシア 4/20
ロシア下院は18日、「国家反逆罪」の最高刑を現行の禁錮20年から終身刑に引き上げる刑法改正案を可決した。ウクライナ侵攻で動揺する国内を引き締める狙い。プーチン政権はこうした重罪を恣意(しい)的に適用して反対派を弾圧しており、国内外で強い懸念が示されている。
戦時下で即可決
「(1930年代のソ連のような)大粛清とは言えないが、独裁者スターリンの論理だ」。独立系メディア「メドゥーザ」は、最近の法の運用に危機感を抱く専門家の話を伝えた。
昨年秋に出された予備役30万人の部分動員令は、反戦デモと徴兵忌避を生んだ。ロシア軍の劣勢と侵攻の長期化から追加動員の観測が強まり、今も徴兵事務所への放火がたびたび伝えられている。プーチン政権はそうした放火事件に「テロ罪」を適用し、厭戦(えんせん)気分の封じ込めに躍起だ。
「ウクライナ軍に協力しようと出国を試みた」などと疑いを掛け、当局が「要注意人物」を拘束するケースも相次ぎ、昨年7月からは国家反逆罪に問えるようになった。ロシアでは死刑制度が存続しているが、執行は凍結されており、実質的な最高刑の終身刑を科すインパクトは強い。
改正法案では、国家反逆罪の厳罰化に加え、テロ罪の最高刑も15年から20年に引き上げられる。改正内容だけでなく、戦時体制が強まる中、重要法案が下院で事実上、即日可決されたことにも衝撃が広がっている。今月中旬にも、上下両院のスピード審議を経て「電子招集令状」を導入する法律が可決、成立したばかりだ。
「抑圧の証拠」
プーチン政権を批判する記者で活動家のウラジーミル・カラムルザ氏は、ウクライナ侵攻下で拘束された。ロシア軍に関する「偽情報」流布や「好ましからざる団体」での政治活動の罪のほか、国家反逆罪にも問われ、17日に禁錮25年の判決を言い渡された。
欧米で著名なカラムルザ氏への判決について、トレーシー駐ロシア米大使は「抑圧の証拠だ」と非難した。これに対し、ロシア外務省は18日、トレーシー氏らを呼んで「あからさまな内政干渉だ」と抗議。やめなければ大使館員を国外追放すると警告した。
国家反逆罪が厳罰化されれば、政権のさじ加減一つで、記者や活動家に終身刑が科されることも理論上あり得る。昨年9月にはロシア有力紙コメルサントの元記者が、国家反逆罪などで禁錮22年の判決を受け収監されている。
●イタリアで緊急事態宣言――「史上最大の難民危機」の原因、影響、有利な者 4/20
・コロナやウクライナ侵攻による生活苦を背景に「居住地を追われる人々」は地球上で1億人を超えた。
・それにともない、先進国だけでなく新興国でも難民ヘイトが急増している。
・「史上最大の難民危機」はナショナリズムを重視する保守政党の台頭を促す一因になっているが、そのなかにはプーチン政権と近いものも少なくない。
難民急増でイタリアは緊急事態宣言を出したが、これは氷山の一角に過ぎず、世界は「史上最大の難民危機」に直面している。
1億人以上が居住地を追われる
イタリア政府は4月12日、緊急事態を宣言した。難民が多すぎて「混雑している」ことが理由だった。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、イタリアにいる難民は一昨年の約8万人から昨年には約30万人に急増した。
このうち約17万人がウクライナ難民で、残る約13万人はそれ以外からだった。なかでも北アフリカや中東から地中海を超えてイタリアに渡る難民は、この数年で急増している。
急増する難民の対策に、イタリア政府はEUに支援を求めている。
もっとも、これは氷山の一角ともいえる。UNHCRによると、「居住地を無理やり追われる人々」は昨年末、地球上で1億人を突破したからだ。
居住地を追われる人々のうち約半分(5320万人)は国境を越えられない国内避難民(internally displaced people)で、安全な国に逃れられる人々よりむしろリスクが高いが、難民ほど注目されない。
アメリカでは4年前の4倍に
難民だけに限っても、現在の危機はかつてない規模だ。その結果、例えばアメリカは難民申請受け付けの上限を2019年段階の3万人から2021年には6万2500人に引き上げ、2022年にはこれが12万5000人に至った。
難民を数多く生み出している国の多くは、治安悪化や経済破綻などに直面している。
例えば、アフガニスタンの場合、2021年だけで12万人以上が国外に逃れた。この年、アフガンではイスラーム主義組織タリバンが激しい戦闘の末に首都カブールを奪還し、その後も各地でアルカイダやイスラーム国(IS)残党が活動している。
また、南米ベネズエラでは2018年に経済が破綻して以来、生活が極度に悪化して700万人以上が流出し、2021年だけでも9万人以上が国を離れた。
世界的にほとんど注目されない中央アフリカ共和国では2013年、イスラーム、キリスト教徒それぞれの民兵が民間人の殺傷を繰り返すようになった。旧宗主国フランスも見放すなかで人道危機はエスカレートし、2021年だけで5万人近くが居住地を追われた。
それぞれの国には個別の理由があるが、その多くでコロナ禍やウクライナ侵攻などによる経済悪化、食糧危機、治安悪化が拍車をかけてきた。「史上最大の難民危機」はいわば現代世界の一つの縮図ともいえる。
難民をブロックする動き
これに対して、各国では難民の流入阻止を加速させている。
例えばイタリアでは昨年、法律が改正され、地中海を小さな船で渡ってくる難民の救助活動を行うNGOなどに、救助後ただちに関係機関に届け出ることが義務化された。その理由は「状況を正確に把握するため」と説明された。
しかし、支援団体などからは「役所での手続きに必要な時間が増え、これまでより救助活動のペースが落ちた」といった批判や苦情が相次いでいる。
一方、中南米からアメリカを目指す人々に(自らも移民系の)ハリス副大統領が「来ないでもらいたい」と繰り返してきたアメリカ政府は、難民申請の基準も厳格化してきた。
とりわけ滞在許可の得やすい子連れ家族の入国制限強化を検討中ともいわれ、人権団体などから「(人の移動を制限した)トランプ政権のレプリカ」とも批判されている。
2014年からのシリア難民危機がヨーロッパを二分し、イギリスのEU離脱の引き金になったように、難民増加は国内政治問題になりやすいため、経済が不安定化する状況で各国政府がブレーキを踏みやすくても不思議ではない。
先進国の「防波堤」とは
先進国がドアを閉ざすのと連動して、その周辺の新興国・途上国では「混雑」が先進国以上になっている。
具体的には、中東とヨーロッパの継ぎ目にあるトルコ、アメリカと中南米の境目であるメキシコ、地中海を挟んでイタリアの対岸にあたるチュニジアなどがそれにあたる。
これらの国には、欧米各国に入れない難民の多くが滞留してきた。しかも、同じような難民は後から後からやってくる。そのため、例えばトルコは世界最大の難民受け入れ国であり、390万人が滞在している。
トルコほどでなくとも、メキシコには約21万人、人口1200万人程度のチュニジアにも約1万人の難民が滞在している。
もともと難民のほとんどは新興国・途上国で保護されてきた。UNHCRによると、2021年段階で難民のうち出身国の隣国で保護される割合は69%を占めた。難民を生み出した国のほとんどが途上国で、途上国の隣国の多くは途上国だ。
そのなかでもトルコ、メキシコ、チュニジアなどは、いわば先進国の防波堤になっているともいえる。
新興国にも広がる難民ヘイト
それだけに、これら各国でも先進国と同じく、難民ヘイトが横行するのは不思議ではない。
最大の難民受け入れ国トルコでは今年2月の大地震後、シリア系難民への嫌がらせや襲撃が多数報告されるようになった。「難民が略奪している」といったデマが原因だった。
メキシコでは他の中南米からやってきた難民、とりわけ先住民系に対する軍や警察の超法規的な拘束や暴行もしばしば報告されている。
さらにチュニジアでは2月21日、サイード大統領が「アフリカの不法移民の群れが暴力や犯罪を運んでくる」、「犯罪的な陰謀によってチュニジアがアラブ人の国ではなくアフリカの国にされてしまう」と述べた。
サイードの演説をきっかけに黒人への襲撃は急増し、人権団体アムネスティ・インターナショナルは一部の警官までもこれに加わっていたと報告している。
周辺国からも批判が噴出するなか、サイードは「自分の発言がねじ曲げて解釈された」と弁明に追われた。
史上最大の難民危機は、これまで先進国で目立っていた難民ヘイトが新興国でも表面化するきっかけになったといえる。
有利なのは誰か
しかし、こうした難民ヘイトを先進国が批判することは稀で、むしろこれら各国への援助は増えている。これらが先進国の防波堤になっている以上、不思議ではない。
メキシコの人権活動家でコラムニストのベレン・フェルナンデスは「難民を制限したいアメリカの汚れ仕事をメキシコは引き受けている」と指摘する。
この状況で有利な者があるとすれば、その最有力候補はロシアのプーチン大統領かもしれない。
「多くの難民はロシアまで来ないので高みの見物ができる」という意味だけではない。難民危機が深刻化するほど、プーチンに近い政治的立場が欧米で広がるからだ。
ウクライナ侵攻以前からプーチンは「リベラルな価値観は時代遅れ」と公言し、外国人や異教徒、女性、性的少数者などの権利保護にも消極的だった。その国家主義、伝統主義的な主張は、多様性や流動性といった価値観を否定するものだ。
しかし、こうした主張はグローバル化に拒絶反応を示す欧米の多くの白人右翼をひきつけ、ロシアは「キリスト教の伝統的価値観を守る大国」の認知も勝ち取った。「異物」を排除しようとするアメリカのトランプ前大統領やフランスの最大野党・国民連合のルペン党首なども、プーチンと良好な関係で知られた。
プーチンに近い立場の台頭
欧米ではウクライナ侵攻後、ロシアへの反感は強いものの、それはプーチンに近い政治的立場が信頼を失ったことを意味しない。実態はむしろ逆で、ナショナリズムの高まりにより、「反多様性、反流動性」という点でプーチンと似た政党・政治家の台頭が目立つとさえいえる。
それは昨年からの欧米での選挙結果からうかがえる。
昨年4月のフランス大統領選挙決選投票でルペンは現職マクロン大統領に敗れたものの、その得票率はこれまでで最多となる41.45%を記録した。
さらに、昨年11月のアメリカ中間選挙で共和党は議会下院を握ったが、それを率いるマッカーシー下院議長はトランプと近く、バイデン政権がウクライナ問題に入れ込むあまりメキシコ国境を軽視し過ぎていると主張してきた。
トランプもルペンもウクライナ侵攻そのものは支持していないが、選挙戦では国民生活を強調し、ウクライナ支援やロシア制裁に消極的だった点で共通する。
プーチンに近い立場はそれ以外にもある。
昨年9月のスウェーデン総選挙で民主党が初めて政権を握り、今月初めのフィンランド総選挙で「真のフィン人」党が第二党に躍進した。どちらも反EU、反移民政党としての顔をもつうえ、北欧最大の極右団体「ノルディック抵抗運動(NRM)」との結びつきが指摘されている。
NRMの一部のメンバーは、プーチン政権の支持基盤であるロシアの極右団体「ロシア帝国運動」の訓練所で軍事訓練を受けていたことが判明している。
こうした背景のもとで進む「史上最大の難民危機」は、欧米でプーチンと思想的に近い者の台頭を促す一因といえる。ウクライナ難民以外の難民を単に厄介者とみなす風潮が西側で高まることは、プーチン擁護にも繋がりかねないのである。
●ロシア「韓国によるウクライナへの武器支援は戦争への介入を意味」 4/20
ウクライナに対する武器支援の可能性を示唆した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の発言に対し、ロシアは「確実な戦争への介入を意味する」と反発した。
ロイター通信が19日に報じたところによると、ロシア大統領府のペスコフ報道官は記者団との電話会議で「韓国はロシアに対して非友好的な立場を取った」「ウクライナに対する韓国の武器支援は紛争への明らかな介入を意味する」と述べた。
尹大統領はロイター通信とのインタビューで「もし民間人に対する大規模攻撃だとか、国際社会で到底黙認できない大量虐殺、あるいは戦争法の重大違反などが発生した場合、人道支援や財政支援にとどまり、これだけにこだわるのは難しいかもしれない」との考えを示した。
民間人への大規模攻撃などを前提とした発言だが、「殺傷兵器の支援は不可」としてきた韓国政府の立場が変わった可能性に言及したものだ。
●EU“ウクライナ産農産物 輸入禁止適切でない” 農家の支援検討  4/20
ポーランドなどが、アフリカなどへ運ばれるはずのウクライナ産の農産物が国内で流通し農家が打撃を受けているとしてウクライナからの輸入を禁止したことを受けて、EU=ヨーロッパ連合は、個別の輸入禁止は適切ではないとしたうえで、農家への支援策などを検討していることを明らかにしました。
EUは、ロシアによる軍事侵攻で黒海の港から輸出できなくなったウクライナ産の農産物について、域内の港から輸出できるよう支援してきました。
しかしポーランドやハンガリーなどEUの一部の加盟国は、アフリカなどへ運ばれるはずの農産物が国内で流通して農家が打撃を受けているとして、今月、ウクライナ産の農産物の輸入を相次いで禁止しました。
こうした中、EUの執行機関、ヨーロッパ委員会のフォンデアライエン委員長は19日、EUとしての対応を求めていたポーランドやハンガリーなど5か国に書簡を送って懸念に理解を示しつつも、各国が個別に輸入禁止を行うことは適切ではないという考えを示しました。
そのうえでヨーロッパ委員会は、5か国に対して農家の損失を補償するために1億ユーロ、日本円で140億円余りの支援策などを検討していることを明らかにしました。
EUとしては、一部の加盟国の不満によってウクライナへの支援に影響が出るのを防ぎたい考えです。 
●【露兵もシラケる】“プーチンの似顔絵”に「そういうことかクソッ!」 4/20
戦地のロシア兵にプーチン大統領の似顔絵が“支援物資”として届けられた。
キリスト教の復活祭に合わせて、ウクライナの前線にいるロシア兵に届いた意外なものーー。
映像に映っているのは、戦場のロシア兵に送られた支援物資だ。
水や食料と一緒に入っていたビニールの袋を手に取ると、兵士は思わず叫んだ。
ロシア兵: そういうことか。クソッ!カメラを止めろ!
兵士が手にしているのは、「お祈り用」と書かれた袋。
袋の中に入っていたのは、プーチン大統領の、似顔絵だった。
キリスト教では、“イコン”と呼ばれる聖職者の似顔絵が教会などに数多く描かれている。
今回、兵士たちに送られたのは、イコン風に描かれたプーチン大統領の似顔絵だった。
支援物資は政権を支持する政党が送付
プーチン大統領の「自分を神のように崇拝しろ」というメッセージだろうか。
そのプーチン大統領は、一部を実効支配しているウクライナの領土を電撃訪問した。
そして、軍の幹部に、金色の豪華な装飾が施された扉付きの“イコン”をプレゼントした。
しかし、こちらは、自分の似顔絵ではなかった。
兵士に届けられた支援物資は、プーチン政権を支持する政党から送られたもの。
しかし、似顔絵については「そんなものは送っていない」と否定している。
●ドイツ大統領、プーチン氏とナチスを比較 ワルシャワ・ゲットー蜂起の追悼式 4/20
ナチス・ドイツによる迫害に抵抗したユダヤ系住民が大量虐殺された1943年4月の「ワルシャワ・ゲットー蜂起」を追悼する式典が19日、ポーランドの首都ワルシャワで行われ、ドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領が出席し、ナチスによる残虐行為になぞらえてロシアによるウクライナ侵攻について語った。ドイツの大統領が、ワルシャワでのこの式典で演説するのは初めて。
シュタインマイヤー大統領は、ウクライナ侵攻によってロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「国際法に違反し、国境を無視し、領土を収奪した」と非難した。さらに、ナチス・ドイツによる「犯罪を許していただきたい」と謝罪した。
1943年4月19日に始まったユダヤ人の蜂起では、ワルシャワのゲットー(ユダヤ人が強制的に隔離された地区)で起きた。ユダヤ人を強制収容所に連行しようとするナチスに抵抗し、数百人が拳銃や機関銃、手りゅう弾などで3週間にわたりナチスと戦い続けた。ナチスはゲットーを区画ごとに燃やし、蜂起を弾圧した。約1万3000人のユダヤ人が殺害され、その多くは炎や煙によって死亡した。残るゲットーの住民約5万人のほとんどは、ナチス占領下のポーランドに作られていたマイダネクとトレブリンカの強制収容所に送られた。
シュタインマイヤー大統領は19日の追悼式で、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領、イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領と共に、ゲットー蜂起の英雄をたたえる記念碑に花輪を手向けた。
追悼式では、プーチン大統領による戦争が「果てしない苦しみと暴力、破壊と死を、ウクライナの人たちにもたらしている」と述べた。
さらに、「ポーランドの皆さん、イスラエルの皆さん、あなた方は自分たちの歴史から、自由と独立のために戦わなくてはならないこと、自由と独立を守らなくてはならないことを知っています。民主主義が自らを守ることがいかに大事か、皆さんは知っています」と述べた。
その上で大統領は、「しかし私たちドイツ人もまた、自分たちの歴史から教訓を学んでいます。決して二度と。つまり、ロシアがウクライナに対して行っているような犯罪的な侵略戦争は、決して欧州であってはならないのです」と呼びかけた。
シュタインマイヤー大統領はさらに、これはつまりドイツをはじめ他の欧米諸国が「しっかりとウクライナと共に立ち、ウクライナを支え続ける」という意味だと強調した。
ワルシャワ・ゲットー蜂起の追悼式で、ドイツの大統領が演説するよう求められたのは初めて。
ドイツは他の欧米諸国と異なり、ウクライナ侵攻の開戦当初、ウクライナの関係は必ずしも良好とは言えなかった。ドイツが最新兵器の提供を渋ったことや、ロシア産天然ガスの購入を継続したことから、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領をはじめとするウクライナ政府幹部はしばらくの間、ドイツを公然と批判していた。
シュタインマイヤー大統領が昨年、他の西側首脳と一緒にキーウを訪れようとした際、ゼレンスキー大統領から断られたという報道さえあった。
しかし、今やドイツは、ウクライナにとって最強の支援国の一つだと見られている。
昨年2月24日の侵攻開始以来、数万人が殺害され、多くのウクライナの市町村が破壊されてきた。
ウクライナとその協力国は、ロシア軍が大量虐殺や強姦や市民の強制移住など、無数の戦争犯罪を繰り返してきたと非難している。
ロシアの占領下にあった複数の地域では集団墓地が見つかり、民間人の遺体の一部には拷問の痕跡が残っている。
オランダ・ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)は今年3月、ウクライナ侵攻をめぐる戦争犯罪容疑で、プーチン大統領らに逮捕状を出した。これについてロシア政府は激しく反発している。
●「ピオネール」への改名求める 子ども全国組織でロシア大統領  4/20
ロシアのプーチン大統領は19日、閣僚とのオンライン会議で、「ソ連版ボーイスカウト」と呼ばれた「ピオネール」の再興を目指して昨年12月に創設された子ども組織の全国統一団体「一番の運動」をソ連時代と同じ名称に変更するよう求めた。ロシア主要メディアが伝えた。
ウクライナ侵攻を巡る欧米との対立を背景に、プーチン氏は自給自足で経済や科学の発展を目指したソ連時代を見習うよう国民への訴えを強めている。
プーチン氏は家族政策を担当するゴリコワ副首相とのやりとりで「『一番の』とはピオネールのことではないのか」と質問。ピオネールという言葉に「既にイデオロギー的色彩はない」と述べ、改名の検討を求めた。
「子どもたち自身が選んだ名前ですが」と食い下がるゴリコワ氏に「それは知っているが、彼らと相談する必要がある」と議論を打ち切った。
社会主義に奉仕する少年の育成を目指したピオネールは昨年が創設100周年に当たり、12歳の女の子が全国統一団体の創設を提案。投票で「ピオネール」は退けられ「一番の運動」になっていた。
●露核弾頭「アヴァンガルド」 利権まみれで役立たず 4/20
ロシアの戦略核兵器に関する連載第3回は、極超音速で滑空する核弾頭「アヴァンガルド」について。
この開発は不調かつ利権まみれで、2019年の配備開始以来まだ僅か6発しか配備されていない、しかも開発関係者が反逆罪で続々と逮捕されていると、ロシアの軍事専門家、米国タフツ大学フレッチャー・スクールの客員研究員のパベル・ルジンが説明する。
『ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』のインタビュー。聞き手は反プーチンの立場で知られるジャーナリストのユリア・ラティーニナ。

(質問)「アヴァンガルド」を搭載するICBMのSS-19「スティレット」(UR-100N UTTKh)とはどのようなものか。
(訳注:「アヴァンガルド」は単体で発射されるのではなく、ICBMに搭載される。)
(ルジン)SS-19「スティレット」は、かなり成功したソ連のミサイルだ。1980年代に多く生産された。しかし液体燃料方式なので、基本的に全て配備から外された。燃料の注入・排出を繰り返すため、すぐに使用できなくなる。
1990年代、ロシアはウクライナから約30基を入手し、燃料抜きで保管していた。今日、これが「アヴァンガルド」搭載のため使用されている。
このミサイルは「ヤルス」より強力だが、「サタン」ほど強力ではない。その投射重量は4トンだ。「サタン」は10トンだ。
いわゆる極超音速で滑空する物体は非常に重く、断熱材が特に重い。そのため1基のミサイルに1発の「アヴァンガルド」しか搭載できない。現在「アヴァンガルド」6発を、ミサイル6基を配備している。
(質問)プーチンのお気に入りの「ヤルス」に「アヴァンガルド」を搭載しないのは、「ヤルス」が重さに耐えられないからか?だから、かつてウクライナで生産され、現在は生産されていないミサイルに搭載しているのか?
(ルジン)その通り。
「ヤルス」は、「アヴァンガルド」搭載には向いていない。しかし「スティレット」は「アヴァンガルド」搭載に問題ない。
核弾頭そのものは小さく、スペースを取らない。しかし極超音速滑空体は、過負荷や高温などに耐えるために扁平な形にしている。これは断熱材の巨大な塊だ。米国のスペース・シャトルと同様だ。
滑空体は大気圏突入で燃え尽きないように、セラミックで覆われる。セラミックが全重量のかなりを占める。
(質問)「アヴァンガルド」を「サタン」に搭載しないのは、「サタン」が実際には機能しないことを意味するのか?
(ルジン)おそらくそうだろう。
また「サタン」には、多くの「アヴァンガルド」を搭載できない。もし「アヴァンガルド」1発を「サタン」に搭載するとすれば、「サタン」に搭載していた10発の核弾頭を取り外す必要がある。
そうなると、米国との核の均衡の計算がおかしくなってしまう。
紙に10発の核弾頭があると書いてあるので、ロシアは米国人に対して「ロシアは米国を破壊できる」と言える。
したがって、「サタン」に「アヴァンガルド」を搭載するのは馬鹿げたことだ。
(質問)「アヴァンガルド」の優れた点は何か?マッハ20以上の速度で大気圏に突入するというのは、どういう意味か?核弾頭はいずれもマッハ20を超える速度で大気圏に突入するのではないのか?プーチンは、「アヴァンガルド」が米国のミサイル防衛を突破できると言っている。だが、他のICBMも米国のミサイル防衛システムを突破できるのではないのか?
(ルジン)「アヴァンガルド」の意義も、ロシアの組織に関わるものだ。
「サタン」が、ロシア国内の3つの工場に利益をもたらすことを述べた(第1回)。
同様に「アヴァンガルド」について、企業「戦術ミサイル兵器」が多額の資金を受け取っている。
滑空体開発に数百億ルーブル(数百億円〜1千億円超)をかけたのに、配備は僅か6発だけだ。
つまり、これらの滑空体は、非常に高価だ。関連する工場、企業、経営者が得るものも巨大だ。
「アヴァンガルド」の制御システムのため、新しいジャイロスコープ(回転儀)を開発したが、噂によればあまり成功していない。
(質問)つまり「アヴァンガルド」は制御不能なのか?
(ルジン)公式には制御可能だが、実際には非常に大きな問題があるようだ。
公開情報でも、極超音速機が大気圏に突入し、プラズマの雲に入ると、極超音速体の制御に問題が生じると言われている。
この物体は、いわば盲目で耳も聞こえず、連絡がつかず、材料には膨大な負荷がかかる。どうしたらよいか、誰にも分らない。
極超音速体が、クレムリンが言う程バラ色ではないという最も明確な兆候は、この開発に関与した科学者、学者、エンジニアが反逆罪で続々と逮捕されていることだ。2010年代後半から逮捕され、今も逮捕が続いている。モスクワ、サンクトペテルブルク、ノヴォシビルスクの何人もが拘留され、既に判決を受けた者もいる。
(質問)米国も1960〜70年代に極超音速滑空体の開発を試みたが、やる価値がないという結論になったのか?
(ルジン)米国は2000年代と2010年代に開発しようとし、テストも実施した。太平洋でも極超音速機を実験した。
しかし機体が耐えきれなかった。制御された極超音速飛行の実現は不可能だ。
(質問)不可能というのは、当面の話か?
(ルジン)当面の話だ。永遠に不可能とは言っていない。
飛行機のように飛ばすことが試みられてきた。30〜40分で世界のどこにでも飛んで打撃を与える。しかしどうしても機体そのものが壊れてしまう。
現在、「ツィルコン」の後、彼らは極超音速滑空体を備えた巡航ミサイルに別のアプローチを行っている。これまでの試験の結果は満足できるものではない。
(訳注:「ツィルコン」は、ロシアの超音速ミサイルで、艦船に搭載される。)
(質問)どのようなミサイルを開発しようとしているのか?
(ルジン)空中発射即応武器(ARRW、Air-Launched Rapid Response Weapon)だ。それは爆撃機から発射される。米国が開発に取り組んでいる。
(質問)つまり、プーチンは地球の他の誰よりも進んでいると言うが、誰もそれを検証できないということか?
(ルジン)プーチンは基本的にそのように言っている。米国人はそれをまともに受け止めた。
(米国人の反応は、)「もしロシア人が(そのような兵器を)持っているなら、私たちは持つことになるだろう。」これまでのところ、特に何かが起きたということもない。(訳注:米国の開発も前進がないとの趣旨。)
(質問)まとめると、「アヴァンガルド」は存在するが、実際には翼のある弾頭にすぎない。従来の弾頭とは異なり、セラミックで防護されているため、遙かに重たい。飛行が不安定になる恐れもある。超高速飛行は予測不可能で制御できない。結局利点はなく、欠点ばかりだ。そういうことか?
(ルジン)その通り。理論上は自動制御だ。慣性システム、光学ジャイロスコープなどがある。
しかし、ジャイロスコープにも問題山積だ。仕様書の通りに機能しない。コースからの逸脱という問題ではなく、ジャイロスコープが機能しないために飛行を制御できないのだ。
(質問)最も単純なものが最も信頼できると言われている。ミサイルが幾何学的にあるべき形のものならば、計算通りの場所に飛ぶだろう。しかし翼を付けたり、色々いじったりすれば、うまくいかない。
(ルジン)問題は翼だけではない。
普通の弾頭は円錐形だが、「アヴァンガルド」は扁平で玉石のようだ。
そこでは、制御は翼によるものではなく、爆薬、あるいは何らかの動力よるのだが、このためシステムが更に複雑になる。動力の起動、軌道の修正等の課題が追加的に出てくることを意味する。
これはすべて、このおもちゃを非常に高価でまったく意味のないものにする。
第1に、発射する人にとってさえ、軌道が予測不可能だ。
第2に、操作しようとすれば速度が低下するため、操作の余地が殆どない。
(質問)軌道が予測不可能ということの意味は何か?ロケットがワシントンの米国議会を狙って発射されたとしよう。それはホワイトハウスで爆発するのか、それとも大西洋で爆発するのか?
(ルジン)ミサイル防衛システムでは、弾頭を捉えると、その軌道を計算する。
この滑空兵器は、水平と垂直の両方の方向で動くので、軌道が予測できない。ミサイル防衛システムのコンピューターに、過剰な負荷がかかる。これが、この兵器の狙いだ。
しかし紙の上では機能しても、現実には膨大な問題がある。
(質問)(「サタン」や「ヤルス」がミサイル防衛システムを突破できるのなら、)そもそもなぜ「アヴァンガルド」が必要なのか?
(ルジン)工場を維持するためだ。それ以外の理由はない。
(質問)液体燃料の「サタン」は廃棄されることになり、「サルマート」はまだ実用化されておらず、固体燃料「トーポリ」と「トーポリM」も最早利用できない。他方、成功している「ヤルス」、そして「アヴァンガルド」の運搬手段である「スティレット」はある。このような理解で正しいか?
(ルジン)概してその通り。「サルマート」が戦闘任務に配備されれば、「スティレット」は退役するだろう。或いは、保管している30基の「スティレット」を利用し、「アヴァンガルド」を搭載し配備するかもしれない。
米国との新しい交渉が始まった場合、それらを静かに配備から外すこともできる。善意のジェスチャーとして、それらを廃棄するかもしれない。いずれにせよ資金は出され、どこかで使われる。
(質問)300基以上あると言われるICBMは、実際には約200基ということか?
(ルジン)その通りだ。
●ウクライナに初めてパトリオット到着…ロシア、米国向け新型固体ICBM公開 4/21
19日(現地時間)、ウクライナに西側が支援する最初のパトリオット(PAC)対空ミサイルが到着したことが分かった。この日、米国は3億2500万ドル(約4315億ウォン)規模のウクライナに対する追加軍事支援も発表した。
ロシアのプーチン大統領がウクライナの戦場を訪問するなど戦況が時々刻々と変わる中、ウクライナの戦力が急速に拡充する状況だ。これに対しロシアは新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)を公開して対抗した。
ウクライナのレズニコウ国防相はこの日、ツイッターを通じて「我々の美しいウクライナの空はパトリオット防空体系が到着したおかげでより一層安全になった」とし、関連写真と共にパトリオットの最初の引き渡し事実を明らかにした。そして「我々の防空部隊員は(パトリオット体系に)短期間で熟達し、我々のパートナーは約束を守った」とし、西側の支援を評価した。これに先立ちウクライナ軍は65人の防空部隊員を米国に派遣し、パトリオット運用および維持保守のための訓練を受けた。
しかしレズニコウ国防相は今回到着したパトリオットに関連し、どの国がどれほど提供し、どこに配備するかなどの具体的な事案については公開しなかった。これまでパトリオット支援計画を明らかにした米国・ドイツ・オランダに対する感謝の意を表しただけだ。レズニコウ国防相が公開した写真に登場するパトリオットは「PAC−2」で最新型でない。専門家の間では「在庫として保有していた旧型パトリオットをウクライナに先に支援したようだ」という分析が出ている。
こうした中、米国防総省はこの日、ウクライナ軍に対する追加武器支援計画を明らかにした。
最近の支援計画を発表して以来16日ぶりで、バイデン米政権が承認した36回目の支援だ。ウクライナ戦争が消耗戦の様相に向かっている中、米国は主に砲弾・弾薬中心の支援を続けている。今回も多連装ロケットの高速機動砲兵ロケット体系(ハイマース)用の精密誘導ロケットと155ミリ・105ミリ砲弾、トウ(TOW)対戦車ミサイル、900万発以上の弾薬などが追加支援目録に入った。
一方、ロシアは米国を戦略武器で脅かした。この日、ロシア国防省はショイグ国防相がモスクワから南西に190キロほど離れたカルーガ州の戦略ミサイル部隊(SVN)を訪問し、新型ICBM「ヤルス」を点検したと明らかにした。固体燃料ICBMの「ヤルス」は射程距離が1万2000キロで米本土全域を射程圏とする。
一方、この日、米ホワイトハウスはプーチン大統領が最近、激戦地のウクライナ南部ヘルソンを訪問したことに関連し、士気を高めるための「ショー」という立場を明らかにした。ホワイトハウスのカリーヌ・ジャン=ピエール報道官はこの日の定例記者会見で「プーチン大統領の訪問は彼らの状況が良くないという兆候であり、プーチン大統領は明確にこれを知っているようだ」とし「プーチン大統領はロシア軍が侵攻の目標達成において困難に直面していることを知っている」と話した。戦争の長期化で悪化したロシア国内の民心をなだめるための訪問とみられる。

 

●ロシア軍機がロシアの都市に弾薬投下、大きな爆発 国営通信 4/21
ロシア軍の戦闘爆撃機Su34が20日、ウクライナとの国境の北にあるロシアの都市ベルゴロド上空を飛行中に「航空用弾薬の緊急投下」に迫られ、市中心部で大規模な爆発が起こった。国営通信や地元当局者が明らかにした。
国営RIAノーボスチ通信はロシア国防省の話として、弾薬の投下が必要になった理由は調査中だと伝えた。
ベルゴロド州のグラトコフ知事はSNS「テレグラム」への投稿で、現時点で人的被害は確認されていないと述べた。
同氏によれば、爆発は市中心部の交差点を揺らし、直径約20メートルの「非常に大きな衝突穴」ができた。付近の集合住宅の窓や駐車中の車数台が壊れ、電柱も倒れたという。
RIAノーボスチ通信によれば、高層マンション近くの店舗の屋根にはひっくり返った車がある。緊急部隊が現場に展開しているという。
ベルゴロドはウクライナとの国境から北方約40キロに位置する。 
●ロシア西部で大規模爆発 ロ軍戦闘機から誤って弾薬落下か 4/21
ロシア西部のベルゴルドで大規模な爆発がありました。ロシア国防省はロシアの戦闘機から弾薬が落下したためだと説明しています。
ロシアのウクライナとの国境近くのベルゴルドで20日夜、市内中心部の交差点に巨大な穴ができる大規模な爆発がありました。
地元当局によりますと、2人が負傷したということです。
今回の爆発についてロシア国防省は、上空を飛行していたロシアの戦闘爆撃機「スホイ34」から弾薬が誤って落下したためだと発表しました。
去年10月には、ロシア南部の湾岸都市エイスクでロシアの戦闘機が住宅地に突っ込み、15人が死亡する事案が発生しています。
●ロシア 北方領土元島民らの組織を「好ましくない組織」に指定 4/21
ロシア検察当局は21日、北方領土の元島民らで作る、千島歯舞諸島居住者連盟をロシア国内での活動を禁じる「好ましくない組織」に指定したと発表しました。
ロシア検察当局は「この組織の目的はロシアの領土の一部を奪おうとしている」「ロシアについての否定的な意見を形成し、反ロシア感情を高めている」などと主張しています。
連盟は北方領土の返還を目指すほか、元島民の墓参などの実施に向けた働き掛けなどを行ってきました。
ロシアは最近、北方領土周辺での軍事演習を行うなど日本への牽制(けんせい)を強めています。
望ましくない組織に指定されるとロシア国内での活動が禁止されるほか、組織を金銭的に支援したり、組織が作成した資料などを拡散することも禁じられます。
●「核戦争」で脅すプーチンに自由陣営諸国はどの国も屈しなかった 4/21
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領がインタビューでウクライナへの軍事支援の可能性に言及したことを受け、ロシアは連日「敵対的反ロシア行為」「戦争への介入」「目には目を」などと過激な言葉で非難を続けている。韓国政府に対して脅迫のようなメッセージを出し続けているのだ。ロシアはウクライナへの軍事支援を行っている他の国に対しても同じような脅迫を行っている。しかしそれらの国々でロシアからの軍事支援中断要求に応じた国は一つもない。
ロシアはウクライナに軍事支援を表明した欧米各国への脅迫を続けているが、その行動パターンは昨年2月にウクライナ侵攻を開始して以来ずっと繰り返されている。これらの脅迫によりNATO(北大西洋条約機構)を中心とする欧米の結束がさらに強まると、ロシアは今度は核兵器の使用をちらつかせ、各地で戦闘訓練を行うなど脅迫の方法も多様化している。
先月は英国がウクライナに劣化ウラン弾の支援を発表したが、その直後にロシア外務省のザハロワ報道官はメッセージアプリのテレグラムに「この砲弾はこの地に住む人々を殺害するのはもちろん、環境を汚染しがんを誘発する」「(英国が劣化ウラン弾を支援した場合)ロシアもこれに相応する対抗措置を取るだろう」と警告した。
ドイツもロシアの代表的なターゲットだ。ロシアのプーチン大統領は今年2月にボルゴグラードで開催された第2次世界大戦戦勝記念式典での演説で「不幸にもナチスのイデオロギーがロシアの安全保障にとって再び直接の脅威になったことを目の当たりにしている」「十字架が描かれたドイツ製戦車レオパルドの脅威を受けているのは事実だ」と訴えた。プーチン大統領はさらに「ロシアは核兵器を含む全ての武器を使う準備ができている」と警告した。「核戦争」にまで言及しながら欧米諸国をけん制したのだ。
プーチン大統領の側近であるメドベージェフ国家安全保障会議副議長も昨年9月「ロシアに編入された領土を守るためには、戦略核兵器を含む全ての武器が使用されるかもしれない」と発言した。ロシアのボロジン下院議長も今年1月にテレグラムを通じ「ロシア領土の占領に使用される武器をワシントンとNATOがウクライナに供給するのであれば、より強力な武器で報復するだろう」と述べ、核兵器使用の可能性をにじませた。
このような一連の脅迫にもかかわらず、NATOはもちろんNATOに加盟していないオーストラリア、日本、韓国までウクライナへの軍事支援、あるいはさまざまな支援を積極的に検討しているため、ロシアの対応はサイバー攻撃や軍事訓練などを強める形に変わりつつある。
●プーチンの首にある「謎の深い傷跡」は治療跡 意味深な「形」にも注目集まる 4/21
4月16日に撮影された、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(70)の写真が話題になっている。プーチンの首に傷跡のようなものが見られ、「医療処置の跡ではないか」と健康不安説が再び取り沙汰されているのだ。
プーチンはこの日、モスクワにある救世主キリスト大聖堂で行われた正教会のイースター礼拝に出席。その際に撮影された写真の1枚には、神妙な面持ちでろうそくを持つプーチンの首に、傷跡か深いシワのようなものが写っている。
ウクライナの国会議員のオレクシー・ゴンチャレンコは、翌日YouTubeに投稿した動画でこの傷についてコメントし、プーチンは「あまり元気そうではなかった」と述べた。「(プーチンは)教会で昨日、あまり元気そうではなかった。動くのも大変そうだった。彼の首には傷跡がはっきり見える。しかも、よく見ると『Z』の文字に似ている」「それが何かはわからない。彼らは全身にマークがあるのかもしれない。しかし、最も可能性が高いのは、彼が何らかの医療処置を受けたことだ」とゴンチャレンコは述べた。
ウクライナのブロガー、デニス・カザンスキーも自身のテレグラムチャンネルで同じ画像を共有し、首のマークがZに似ていると指摘した。Zは、ロシアのウクライナ侵攻を支持するシンボルだ。「ボロージャ(ウラジーミル)はどうしたのだろうか。Zの意味が、やっと理解できた気がする」
甲状腺がんやパーキンソン病との憶測も
この傷跡によって、プーチンの重病説が再び浮上している。ロシア独立系調査メディア「プロエクト」は昨年、プーチンが甲状腺がんを患っていると主張。甲状腺がん専門医のエフゲニー・セリバノフが頻繁に彼に同行していると伝えた。
ウクライナ国防省のキリーロ・ブダノフ情報総局長も以前、プーチンが「長い間」がんを患っていると主張し、「死期は近い」との見解を示していた。
プーチンの健康をめぐっては、昨年2月にベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領と会談を行った際、手や足が震えていたことから、がんに加えてパーキンソン病も患っているとの報道も相次いだ。一方でロシア当局は、プーチンが深刻な健康問題を抱えているとの憶測を繰り返し否定している。 

 

●「好ましくない組織」北方領土の元島民らの団体 ロシアが指定 4/22
北方領土の元島民などでつくる千島歯舞諸島居住者連盟についてロシアの検察当局はロシア国内の活動を禁じる「好ましくない組織」に指定しました。
ロシア検察当局は21日、日本の千島歯舞諸島居住者連盟について「ロシアの領土の一部を奪おうとしている」「ロシアについて否定的な意見を形成し、反ロシア感情を高めている」と非難しました。
そして、「好ましくない組織」に指定したと発表し、ロシア国内での活動などを禁じる方針を打ち出しました。
この連盟は北方領土の返還を目指すほか、元島民の墓参などの実施に向けた働き掛けなどをしています。
ロシアは今月、北方領土周辺で軍事演習を実施するなど日本への牽制を強めています。
●「習近平が外交辞令から態度を一変し、プーチンに大きく歩み寄った理由」 4/22
中国、ロシア、イラン、サウジアラビア… 四つの出来事から浮かび上がる事実
別々に見える出来事の意味を深く読むと、裏でつながる事実が浮かび上がってくる場合があります。最近の国際情勢でいえば、そうした出来事が四つありました。
核開発を進めるイランが、ウランの濃縮率を核兵器への転用が可能なレベルまで引き上げつつあると発覚したこと。そのイランとサウジアラビアの国交回復の準備が、中国の仲介によって軌道に乗ったこと。中国、ロシア、イラン3カ国の海軍が、合同演習を行ったこと。中国の習近平国家主席がロシアを訪問して、プーチン大統領と会談したことです。
ウランの濃縮率が90%になると、核兵器を作ることができます。イランで83.7%という高い濃縮率の粒子ができたことが、2月末に発覚しました。イランはIAEA(国際原子力機関)に対して「技術的な問題による偶然で、意図してはいなかった」という趣旨の言い訳をしましたが、そんな偶然が起こるものでしょうか。
これは、米欧と2015年にまとめた核合意に違反します。かつての米国であれば、ペルシャ湾に航空母艦を派遣して威嚇するくらいはやったに違いありません。しかし今回は、IAEAに対応を丸投げしました。IAEAのグロッシ事務局長はイランのテヘランを訪問してライシ大統領と会談しましたが、核開発の責任者は最高指導者のハメネイ師です。権限を持たないライシ大統領と何を合意しても、核開発阻止にはつながりません。
中東の問題が北京で解決されるのは前代未聞
私にとって今年最大の事件は、そのイランとサウジが、16年以来断交していた外交関係を正常化させることです。しかもその合意は、中国・北京においてなされました。
イランのシャムハニ国家最高安全保障委員会事務局長とサウジのアイバン国家安全保障顧問が訪中し、中国からは外交担当トップの王毅・共産党中央外事工作委員会弁公室主任が参加して、4日間の非公開協議が行われたのです。
国交回復は3月10日に「三カ国共同声明」として発表され、この合意が「習近平国家主席の寛大なイニシアチブに応えたものである」という一文が含まれていました。4月6日に初めて行われた両国の外相会談も、場所は北京でした。中東の問題が、北京で解決されるとは前代未聞です。米国は、事後に報告を受けただけでした。
この経緯は、中東における最大のパートナーだったサウジアラビアと米国の関係が大きく変化したこと、さらに言えば米国が中東においてプレゼンスを失いつつあることを示しています。『ニューヨークタイムズ』が、〈過去4分の3世紀にわたって中東の中心的であったアメリカは、重大な変化の瞬間に傍観者となってしまった〉(3月11日)と報じた通りです。
サウジアラビアが中国を担いだ理由
中国は逆に、中東での影響力を徐々に高めています。イランは21年9月に、中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンによって設立された上海協力機構(SCO)の正式な加盟国となっています。今年2月には、ライシ大統領が中国を訪れました。
サウジアラビアへの接近は顕著です。昨年12月に習主席がサウジを訪問して、サルマン国王と包括的戦略パートナーシップ協定に署名し、両国の企業は34件の投資で合意しています。サウジは3月末、SCOの対話パートナー国になることを決めました。
サウジは、米国との関係を悪化させたいわけではありません。中国を引きずり込むことによって、中東における米国のプレゼンスを相対的に低下させたい。あちらが兄貴分、自分が弟分だった力関係を、今後は対等だと誇示したいのです。その点で、中国、サウジ、イランの思惑は一致しています。
そして中ロ・イランの3カ国は3月15日から19日まで、アラビア海で海軍の合同演習を実施。米海軍への挑発と受け取るのが自然ですが、今回も米軍は何の手出しもできませんでした。中東湾岸諸国の関係が中国を軸として激変しているのに、日本ではさして話題になっていないのは不思議です。中ロは2月にも、南アフリカ共和国を加えた3カ国海軍の合同演習をインド洋で実施したばかりです。
入れ込み気味のプーチンに対して社交辞令にとどまった習近平
4つ目の大きな出来事が、政権3期目に入ったばかりの習氏が、3月20日から22日までロシアを訪れて、プーチン氏と会談を行ったことです。
このとき私が気になったのは、習氏の態度の変化でした。19日にプーチン氏が「人民日報」に、20日に習氏が「ロシア新聞」に、それぞれ寄稿しています。そこには、明らかな温度差がありました。プーチン氏の寄稿は、現在の中ロ関係の認識を入れ込み気味に表明しています。
〈ロシアと中国の関係は歴史上最高のレベルに達し、さらに強くなり続けています。冷戦時代の軍事・政治同盟よりも質が高く、リーダーもフォロワーも存在せず、制約も禁じられた話題もありません。われわれの政治対話は極めて信頼できるものとなり、戦略的交流は包括的なものとなり、新しい時代を迎えています。
習近平主席と私はこれまで約40回会談していますが、常に時間と機会を見つけ、さまざまな正式な形式で、「ネクタイを外した」環境の中でコミュニケーションを取ってきました〉(ロシア大統領府HPより筆者訳)
ウクライナ戦争下のロシアにとって、中国との関係を維持することがいかに重要かが伝わってきます。これに対して習氏の寄稿は、この訪ロが〈友好、協力、平和の旅になる〉と、いわゆる外交辞令にとどまっていました。
同盟から協商へ緩い2国間関係が増えていく
ところが4時間半に及んだ首脳会談では、習氏は冒頭からにこやかな態度に一変します。これは習氏がモスクワに入った後、考えを改めたためでしょう。大使館でブリーフィングを受けて、ビジネスライクに一定の距離を置いてバランスを取るより、ロシア側へ一歩踏み込んだ方が得だと判断したものと思われます。
会談後の共同声明も、〈両国関係は歴史上最高のレベルに達し、着実に成長している〉と両国の緊密さを誇示する、プーチン氏の寄稿を踏襲するような内容でした。
両国の関係は同盟ではなく、協商と呼ぶべき緩い関係です。同盟ならば、一方が攻められたら共同防衛しなければいけませんが、そこまでの責任はお互いに負いません。中国はロシア産の原油や天然ガスの輸入を増やすことで、ウクライナに対する戦争を間接的に支援しています。ロシアは中国に、軍事的な支援や兵器の供与を求めていません。中国が中立的な立場を保ちながら、国連と共に和平を仲介してくれた方がロシアの国益にかなうからです。
現にウクライナのクレバ外相は、中国の秦剛外相兼国務委員と3月16日に行った電話会談で、2月に中国が提案した12項目の「和平案」を評価したと伝えられています。
この中ロのような緩い2国間関係が、今後増えてくるはずです。どちらが兄でどちらが弟といったきつい縛りではなく、対等の立場を保ち、是々非々で問題ごとに協力していく関係です。これは米国につき従う西側諸国連合の構図とは異なります。ここに挙げた4つの出来事から見えてくるのは、世界のパワーバランスが大きく急速に変わりつつある現実です。

 

●岐路に立つウクライナ戦争 習近平・マクロンの停戦に応じたいゼレンスキー 4/23
4月5日に訪中したフランスのマクロン大統領と欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は、「(米国のように)中国との関係を切るのは利口ではない」(マクロン)、「習近平主席はタイミングが来ればゼレンスキー大統領と会うと語った」と話すなど、長期化かつ泥沼化するロシアのウクライナ侵攻の解決に、中国の力を借りたい気持ちを滲ませた。
また、マクロン大統領は帰国後の12日、「(米国の)同盟国であることは下僕になることではない」と、米依存のウクライナ支援に疲れたフランスや他の欧州諸国の世論を代弁するような発言をした。
欧州から見たウクライナ戦争は、明らかに転換点を迎えつつある。キーウ訪問を視野に入れた習主席もいよいよ本格的な停戦調停に向けた地ならしを始めたようだ。
4月13日にはウズベキスタンで中国の秦剛外交部長が、ロシア、イラン、パキスタンの各外相と第2回アフガニスタン問題会合を開催し、その中でウクライナ問題の平和的解決も話し合った。これが、中国はロシアに武器供給をしているイスラム圏をまとめようとしているとの噂に繋がった。
同14日にはベアボック独外相が訪中して「中国はもっとロシアに終戦を働きかけるべきだ」と語り、中国はそれを受けて李尚福国防部長を16日から訪ロさせ、ロシアはプーチン大統領が歓迎し、ショイグ国防相との三者会談も行っている。
岸田首相キーウ訪問時のル・モンドの記事
3月22日、キーウを電撃訪問した岸田首相がゼレンスキー大統領と共同記者会見を行っていた頃、ル・モンドが「Guerre en Ukraine : Volodymyr Zelensky dit avoir « invité » la Chine à dialoguer et « attendre une réponse »(ウクライナ戦争:ヴォロディミル・ゼレンスキー氏、中国を対話に『招待』し『返答を待つ』と発言」という見出し記事を電子版に流した。モスクワ電だと聞いているが、デモの続くパリは日米の思惑や評価とは異なる雰囲気を感じさせた。
習主席は、3月20日から22日まで国賓として、新チャイナセブンの蔡奇政治局常務委員や王毅中央政治局委員など8人を連れて、4年2カ月ぶりにロシアを訪問した。これは、昨年9月のウズベキスタンでの上海協力機構総会で、プーチン大統領と面会するために連れていた旧チャイナセブンの栗戦書中央弁公庁主任や王毅外相など7人よりも多い。王毅が外相から昇格していることとも併せて、今回は昨年より重要度を引き上げたことを意味する。
モスクワの高層ビルには「熱烈歓迎」の垂れ幕がかけられ、プーチン大統領が国賓として迎えた習主席とクレムリン宮殿の大広間を2人で歩く傍らに立った交渉参加者は、中国側がこの8人、ロシア側が6人と中国側の方が多かった。習主席の方がプーチン大統領より格上だと言わんばかりの演出だ。
習主席は5年前に北京を訪問したプーチン大統領に友誼勲章を授与しているが、これは世界平和の維持に卓越した貢献を果たした外国人に授与するもの。この時から習主席は、中国がロシアと同格かそれ以上にあると考え始めたと言われている。
この延長線上で流れたのがル・モンドのゼレンスキー大統領が中国を招待したという見出し記事なのだが、これはモスクワ訪問最終日に岸田首相がゼレンスキー大統領と共同記者会見をした裏で、中国を軸とした停戦への動きが密かに進んでいたことを示唆していたのである。
中国の停戦仲介に必要な欧州の協力
中国は2月24日にウクライナ問題への和平仲介として12項目の提案を発表。これは現状のロシア占領地域の存在を追認することでもあり、反ロシア陣営は異口同音に批判した。しかし、終わりの見えない戦闘状況を考えれば、米国の思いとは裏腹に、そろそろ自国予算を国内向けに振り向けたい欧州諸国の首脳にとっては、またとない機会に写ったのかも知れない。
ル・モンドは昨年9月の上海協力機構の総会では、プーチン大統領が習主席に対して語った「貴兄の配慮ある対応に感謝する」との言葉を含めて首脳会談の様子を細かく取材していた。この会談に参加した栗戦書中央弁公庁主任は、事前にモスクワ入りして同大統領と会談を重ねてきたとされ、こうした背景を知る関係者にとってプーチン大統領の言葉は、中国がロシア支援を行っていることへの謝意を示したと理解できた。
その後、昨11月にはドイツのショルツ首相が訪中して習主席と会談。ドイツ企業の対中輸出の大型商談をまとめたうえで、ウクライナ情勢の平和的解決と核の不使用を訴えることで一致。本年1月には、ゼレンスキー大統領がワールド・エコノミック・フォーラムに参加した中国政府代表にで習主席への手紙を託している。
また、仏経済誌レゼコーによれば、2月15日に王毅外相(当時)がドイツ、イタリアと共にフランスを訪問して、マクロン大統領と会談し、「(両国が)国際法を尊重し、平和に貢献するための同じ目標」を持っていることを確認。中国とフランスを中心とする欧州は、北京・広州での二回の習・マクロン首脳晩餐までに、プロセスを踏んできたことが窺える。
しかも、マクロン訪中直前の3月28日には、ゼレンスキー大統領が習主席のキーウ訪問を招待したと公表し、ウォールストリート・ジャーナルのインタビュー(Zelensky: Ukraine Is ‘Ready’ for Chinese President Xi to Visit (wsj.com))で、「ロシアと全面戦争になる1年以上前に習主席とコンタクトを取ったことがある」とも語り、同大統領のベクトルが一段と中国依存に傾きつつあることを感じさせた。
欧州は中国の仲介を求めているし、ウクライナもそこに期待を持っているのだ。
しかし、中国が米国の反中感情の下でウクライナ問題に介入するには、欧州諸国の協力が必要である。半年以上前から仏独やロシア・ウクライナ等と交渉してきた中国にとって、マクロン大統領の訪中は重要だった。だからこそ、米大統領以上とも言える歓待をしたと言えるだろう。
極東経由で貿易拡大するロシア
西側諸国はウクライナ侵攻をめぐり対ロシア経済制裁を行なってきたが、それはほぼ完全に失敗に終わった。今ではルーブルの対ドル相場は1年前の65ルーブル程度からさらに上昇して81.7ルーブル(4月13日)と、侵攻前の状態に戻っている。
筆者は昨年5月7日付拙稿「NATOのウクライナ軍事支援本格化で一段と注目される中国の動向」で、中国は清朝時代に帝政ロシアに奪われたウラジオストックなど極東領土の奪還を考えていると書いた。今回の習主席の訪ロに際して、中国メディアはサハリン(樺太)が台湾の2倍の広さで、エネルギーや鉱物資源が豊富にあることを相次いで報じ、習主席の目がオホーツク海まで及んでいることを示唆している。
2022年の中ロ貿易は、中国からの輸出が前年比12%増の762億ドル、輸入が43%増の1122億ドルだった。本年3月は輸出が前年同月比約2倍、輸入も4割増と拡大を続けている。
NATO諸国はロシアからの天然ガス輸入を止め、他の貿易についても基本的に大幅に減少させているものの、ロシアには極東にウラジオストックなどの港があり、そこから欧米以外に船積みして貿易を続けている。ロシアやモンゴルで活動する欧米人事業家によれば、シベリア鉄道は輸送量が目一杯で、モンゴルの同鉄道利用は後回しにされているため、輸出予定が大幅に遅れているとのことだ。
また、コロナ感染症のためにモンゴルとの国境を超える鉄道を止めていた中国は、2月下旬にこれを再開。シベリア鉄道からモンゴルを経て中国に入るロシアからの輸入品、逆にシベリア鉄道を経て、モスクワやサンクトぺテルブルグなどへの輸出品の輸送も満杯状態が続いている模様だ。
米国が対ロ輸出を禁止している半導体も、第三国を経由してロシアに流れ込んでいるとの記事が出ているが、ロシアの各空港もイランなどロシアを支援する国々と往来する旅客機のスケジュールがコロナ前の状態に戻っているとのこと。武器商人(=死の商人)が行き交っているのかも知れない。
ロシア経済は生き延びている。ウクライナ南部と東部の占領地域へのウクライナ軍による反転攻勢が間近と言われ、劣勢にある印象のロシアだが、それは両軍の死傷者だけを増やして両陣営を疲弊させるだけという懸念もある。
停戦仲介が本格化する時期は?
こうした状況下、ロシアはゼレンスキー大統領が習主席へのウクライナ訪問を求めたことについて、「全ては中国に任せる」(ラブロフ外相)とコメントしたほか、イランのほかサウジアラビアも期待を表明。ロシアや中国依存度を高める他の国々は中国の停戦仲介に肯定的である。
NATO諸国とて、対中制裁と言いつつ、欧州にも影響する半導体規制のためのCHIPS法への不満や、ロシアからの天然ガスパイプライン・ノルドストリーム2の破壊をしたのは米国ではないかという疑念を持っており、米国への不信感を持ちながらの戦闘長期化は、無理な軍事予算に怒る国民の声もあって回避したいところだろう。
一方、停戦仲介に本腰を上げつつある中国は、習主席がマクロン訪中時にエアバス160機注文等の大盤振る舞いをした。秦剛外交部長は4月14日、中国はロシア・ウクライナのどちらへも武器を売らないと語った。15日には王毅中央政治局委員が、ベアボック独外相との面談で台湾問題への理解を求めている。中国は強かである。
ウクライナ東部や南部での反転攻勢を準備中と言われるなか、ゼレンスキー大統領は攻勢によるある程度の領土回復後の停戦を望んでいるのかもしれないが、ロシア寄りの中国がいつ停戦仲介に動き始めるかは自分では決められない。武器供与を依存する欧州が中国案に乗れば、それが現状維持であっても受け入れざるを得ないかもしれない。
米国も、中ロの貿易などを考えると、中国にイニシアチブを取られるのが我慢できなくても、時間と共にロシアが「これは世界のための米国一極による覇権への挑戦である」と言い始めたこともあり、どう動くかを考え始めたとしてもおかしくはないだろう。
国際情勢を見る際、ウクライナ問題だけに注目したり、台湾問題に特化していては全体を見間違う。中東も南米もアフリカも新たな動きをしているからだ。同時に、ロシアのベラルーシへの戦術核配備の動きは、仮に中国の停戦仲介が失敗したらこれを使うという脅しとも考えられる。いずれにせよ、中国の今後の動向が注目される。
●侵攻長期化でロシア異変 原油下落で“財政悪化”値引幅制限の奇策 4/23
ウクライナ侵攻の長期化により国内で異変が生じている。ロシアで最も重要な祝日とされる5月9日の戦勝記念日の軍事パレードを巡り、占領地域や国内各地での中止の発表が相次いでいる。さらに、例年、プーチン大統領も参加して、戦没者の遺影を掲げながら、全土で市民約1000万人が街を行進する「不滅の連帯」が盛大に開催されていたが、今年は「不滅の連帯」が全土で中止となった。侵攻開始以来、反体制派や反逆者に対する処罰の強化が継続する。ロシアの裁判所は17日、政府に批判的なジャーナリストで活動家のウラジーミル・カラムルザ氏に対し、国家反逆罪などで25年の禁錮刑を言い渡した。去年、2月のウクライナ侵攻後、反政権派に対して、最も厳しい判決となった。カラムルザ氏は、10日の最終意見陳述で、プーチン政権や侵略を批判した自身の発言について、「誇りに思っている。ロシアを覆う闇が払われ黒は黒、白は白だと言える日が必ず訪れる」と語った。また、ロシア下院は18日、国家反逆罪の最高刑を現行の禁錮20年から終身刑に引き上げる刑法改正案を可決した。
侵攻長期化に伴う戦費膨張と西側による経済制裁の影響を受け、ロシア財政は悪化による荒波で揺れている。ロシア財務省が7日に発表した第1・四半期の財政収支は2兆4000億ルーブル(3.9兆円)の赤字となった。政府が2023年に見込む赤字額全体の8割超を占めている。ロシア経済を支えているロシア産原油の価格低迷が背景にあるとされる。ロシア産原油の輸出価格に上限を設定した先進国の制裁措置を契機に、価格に大きな変動が生じている。番組アンカーで野村総合研究所・エグゼクティブエコノミストの木内登英氏は、「ロシア産原油の主な輸出先であるインドや中国などに足元を見られ、大幅に値引きして輸出することを強いられている」と分析する。ロシアは税収確保の対応策として、ロシア産原油の価格に対し、値引き幅の上限を制限する措置を講じた。値引き幅の上限は、4月は34ドル、5月は31ドル、7月は25ドルと設定されており、徐々に縮小させていく。上限価格と実際の販売額の乖離分は、税金納付の際に石油会社の負担となる。 木内氏は、「仕組みはウラル原油の価格の値下がりをとめる要素にはならない」と有効性と持続性に懐疑的な見解を示す。
G7(主要7カ国)が、5月に広島で開催される首脳会議に合わせ、ロシアへの輸出を全面的に禁じる措置を検討していると米国メディアが報じた。20日の米ブルームバーグによると、G7が検討を進める新たな輸出禁止の制裁案は、「医薬品と農産物が除外される可能性が高い」と伝えた。西側の経済制裁及び規制をよそに、中国は、ロシアに対する資材輸出を拡大させている。米ウォールストリート・ジャーナル紙によると、中国はロシアへの半導体の輸出は、2021年の7400万ドルから2022年の1億7900万ドルと約2.4倍に増えており、一方、トルコによるロシアへの半導体の輸出は、2021年の7万9000ドルから、2022年の320万ドルとおよそ40倍にも増加している。 G7 がほぼ全ての品目の輸出禁止措置を講じた場合、制裁の実効性はあるのか、また、戦争に与える影響などを考察する。 

 

●ロシア軍とワグネルが銃撃戦、死者も──ウクライナ軍発表 4/24
ロシア軍兵士と民間軍事会社ワグネルの傭兵の間で撃ち合いが起きたとみられると、ウクライナ軍当局が23日に明らかにした。原因は、ウクライナ侵攻でロシアが戦果を上げられない責任がどちらにあるかをめぐる対立だったという。
ウクライナ東部では今も激しい戦闘が続いている。一方で、奪われた領土の奪還を目指すウクライナ側の反転攻勢も近いとみられる。
ウクライナ軍参謀本部の23日の発表によれば、ウクライナ侵攻でともに戦っているはずのロシア軍とワグネルの間の緊張が、ここへきて頂点に達している。
発表によれば「大した戦果を上げることができなかったロシア軍とワグネルは、敗北の責任を互いに転嫁しようとしている」という。「どちらも自軍の戦術ミスや被害の責任を相手に押しつけようとし、挙げ句の果てにルハンスク州の村で衝突が起きた」
対立は銃撃戦へとエスカレートし、双方で死者も出たという。事件が発生した正確な日時や死者数といった詳細は分かっていない。
予想外の善戦
ロシア側は事件の発生を認めていない。弊誌もウクライナ側の主張の真偽を検証することはできていない。弊誌はロシア国防省にコメントを求める電子メールを送ったが回答は得られていない。
軍事アナリストによれば、ロシアが短い期間にウクライナに勝利できなかったのは、士気も戦うモチベーションも低いなど、原因はいくつも考えられるという。
欧米諸国から供与された武器も、ウクライナの予想外の善戦に一役買っている。昨年秋の反攻でウクライナは広い範囲の領土を奪還したが、これも供与された兵器があってのことだった。
戦闘員が帰国後に殺人
ロシアは東部の都市バフムトを奪取して象徴的な勝利としたいと考えており、その目標に向けてワグネルはロシア軍とともに戦ってきた。だが戦況は数カ月間にわたって膠着状態が続いている。ちなみにワグネルの戦闘員は主に元受刑者で、ウクライナでの戦闘に参加することで恩赦を受けた人々だ。
バフト周辺では、ウクライナ侵攻以降では最も激しい戦闘が繰り返されてきた。ここ数カ月戦況は一進一退を続けているが、ロイターによればロシアは23日、占領地域を拡大したと発表したという。
また英紙ガーディアンは23日、ロシアに帰国したワグネルの戦闘員が、殺人事件に関与した疑いが持たれていると伝えている。報道によれば、すでに2人のワグネル元戦闘員が、殺人容疑で逮捕されている。
●中国のウクライナ和平案の狙いは何か? 4/24
ノルウェーの元外交官で中国専門家のベッケボルドが、3月21日の習近平のロシア訪問での中国のウクライナ和平提案について、グローバルサウス(南半球を中心とした途上国)、欧州および戦後のウクライナとの関係で中国の立場を強化するという隠された意図があると米国外交専門メディア「フォーリン・ポリシー」で論じている(4月4日付け‘China’s ‘Peace Plan’ for Ukraine Isn’t About Peace’)。要旨は次の通り。
中国の12項目のウクライナ和平提案は戦争を終わらせるロードマップとしては抽象的過ぎる。むしろ、米国に対抗するための外交上の情報発信として見るべきだ。中国は、特にグローバルサウス、欧州および戦後のウクライナの3者との関係で立場を強化することを狙っている。
第一に、中国はグローバルサウスに対して、将来の平和の担い手として自らを提示する目的がある。中国は、グローバルサウスの多くの国が、ウクライナ戦争を西側とは違った解釈をしており、ロシア寄りで早期の交渉による戦争終結を望んでいることを知っている。
第二に、中国の和平提案は、欧州との関係をリセットしようとする試みの一部である。中国は、米国の経済的なデカップリングと安全保障上の対抗関係への政策転換を永続的なものと考えているが、ロシアが最大の課題である欧州については、米中関係において完全に中立となる見込みはないとしても、「単に米国の路線に従うことだけが、唯一の選択肢ではない」とリマインドし続けるであろう。
欧州の指導者は、習近平がプーチンに戦争を止めさせる上で何ができるのか、また何をする気があるのか、現実的に理解することが必要である。一部の欧州国政府は、北京をモスクワから引き離すことができると考えているかもしれないが、それは、あり得ないシナリオである。
第三に、中国の和平提案は、戦後のウクライナの復興において自らを位置付ける努力の一環であり、中国は、ウクライナ復興を支援し役割を果たす用意があると明言している。中国にとっては、ウクライナ復興支援は、欧州全体に対する中国の関与を強化するものとなろう。
結局のところ、中国がウクライナ戦争に平和的な解決をもたらす能力は限られている。しかし、中国の和平提案が戦争終結に役に立たないとしても、中国が失うものはない。逆に、中国は、西側とグローバルサウスの間に楔を打つことができる。そして、戦後の復興支援への関与を含むこの提案が欧州との関係を改善するのに資するのであれば、極めて大きな成果だと言えるであろう。

この論説は、中国のウクライナ和平提案を中国の外交政策全体の中で位置付けており、また、ウクライナ問題および中国に対する欧州の見方を代表するものとして参考となる。
中国の第一の狙いであるグローバルサウスに対して平和実現の担い手としての中国の役割をアピールすることについては、ウクライナ和平提案においても穀物の輸出の促進が謳われており、特に戦争により生じた経済的困難を解決する上で南の諸国からの期待が追い風になっている。この論説では、提案が実を結ばなくても中国は失うものは無いとしているが、西側としては、グルーバル・サウスの期待感を中国がより責任感を持ってウクライナ和平に取り組むような圧力に転換したいところだ。
第ニ点の中国が和平提案を欧州連合(EU)との関係改善に活用しようとしているとの見方は注目に値する。中国側に米国との関係悪化を埋め合わせる意味でもEUとの関係改善の強い動機があり、EU側にも経済面での中国との協力が自国経済の活性化にもつながることから、相互に必要とする余地がある。従って、EU側としては、関係改善と引き換えに、中国がウクライナ問題に対してよりバランスの取れたアプローチを行い、ロシアに影響力をかけるよう交渉の余地があるかもしれない。
ロシアに対する抑止となるか?
中国の12項目の和平提案には、国連憲章の原則や国際法の順守、主権、独立、領土保全の支持(第1項)、停戦のための敵対行為の停止(第2項)、和平交渉の再開(第4項)、人道的危機の解決(第5項)、民間人の保護(第6項)、原子力発電所の安全、(第7項)、核兵器の不使用(第8項)、穀物輸出の促進(第9項)といったロシアの更なる侵略行為や残虐行為を抑止する効果を持ち得る条項が含まれている。
これらの部分をベースに、例えば、習近平がウクライナ側の言い分も聞くべくセレンスキーと会談すべきこと、あるいは、第1項の趣旨からすればロシア軍の撤退を要求すべきことなど、中国側に要求することが、間接的にロシアに対する抑止的効果を持つかもしれない。
第3点は、ウクライナの戦後復興において中国の役割を確保する狙いがあるとのことであるが、そのような状況が来るとすれば大変結構なことだ。ウクライナとしては、中国の資金援助や投資を受け入れても、EU加盟や安全保障についての考慮は変わらないであろうから、それが中国の復興支援と両立するのであれば大歓迎ということであろう。
EU側としては、中国批判派のバルト諸国やチェコと云ったメンバーもいて、対中関係改善に一枚岩ではないが、フランスやドイツは、米国のデカップリング(分断)政策とは一線を画し、中国との経済関係の継続と引き換えに、中国に対しウクライナ問題に対するより中立的なアプローチを要求するのであろう。
同時に、戦略的自律という建前論と中国との冷戦構造を求めないとして、中国との信頼関係の構築に努めようとするようであるが、EU内でのコンセンサスや北大西洋条約機構(NATO)における米国依存という現実との間でのバランス、更には、中国の人権問題の扱いなどにも気を遣う必要があり、西側同盟とG7(主要7カ国)の協調の枠内で進めてもらう必要があろう。
●ウクライナ軍、ドニエプル川東岸に拠点か 米戦争研究所が分析 4/24
米シンクタンク「戦争研究所」(ISW)は22日、ウクライナ南部ヘルソン州で、ウクライナ軍がロシア軍に占領されているドニエプル川東岸に拠点を築いたとする見方を示した。ロシアの複数の軍事ブロガーが投稿した画像などを基に分析した。ウクライナ軍が東岸での反攻のきっかけとする可能性がある。
ウクライナのメディアによると、ウクライナ軍報道官は23日、「進行中の軍事作戦については情報を秘匿する必要がある」と述べ、この分析についてのコメントを避けた。
ISWによると、ウクライナ軍の拠点は州都ヘルソン市の南方10キロ前後の地点とみられる。同軍が一定の陣地を構え、補給路を確立した可能性があるという。ウクライナは、同州のほぼ全域をロシア軍に制圧されていたが、昨年11月に州都ヘルソンを含む西岸を奪還した。ウクライナ軍はこの春にも大規模な反転攻勢に乗り出すと予想されており、ドニエプル川東岸はその主要な目標地域の一つだとみられる。
●ロシアでの“活動等禁止”へ 北方領土元島民が怒り… 4/24
21日、ロシア当局が北方領土の元島民らでつくる日本の団体に対し、ロシア国内での活動などを禁止する方針を打ち出した。元島民から怒りの声が上がっている。一方で、南の島にロシア人が押し寄せていて問題となっている。
ロシア検察当局「好ましくない組織」…連盟は“抗議”
ロシア検察当局:「ロシアの領土の一部を奪おうとしている」「ロシアについて否定的な意見を形成し、反ロシア感情を高めている」
ロシア検察当局は21日、北方領土の返還を目指し、元島民などでつくる「千島歯舞諸島居住者連盟」を非難。さらに、「好ましくない組織」に指定したと発表し、ロシア国内での活動などを禁じる方針を打ち出した。
新型コロナの影響で2020年から中断している北方領土への墓参りの再開も困難になるとみられ、元島民から次々と怒りの声が上がった。
元島民・大塚誠之助さん「我々はずっと友好的だったんです。今回のような扱いをされる覚えはないですね」
元島民・岩崎忠明さん「気持ちだけはくじけない、そういう気持ちです」
連盟の脇紀美夫理事長はコメントを発表し、「きわめて一方的な対応であり断じて受け入れることはできない」と抗議した。
“招集令状電子化”テスト開始 プーチン氏が法案署名
今回、ロシア側が発表した意図についてロシア情勢に詳しい慶応義塾大学の廣瀬陽子教授は、次のように話す。
廣瀬教授「北方領土問題で、まさにロシア側が全く譲歩する気がないということを改めて示したことになると思います。国後島と択捉島の間の国後水道(海峡)という所が唯一、潜水艦が通れる所なんですね。やはり、軍事戦略的な意味合いからも北方領土は非常に重要となっています」
一方、14日にプーチン大統領が招集令状を電子化する法案に署名したばかりだが、インタファクス通信によると20日、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクの軍事委員会幹部が徴兵などの招集令状を電子化するテストが始まったことを明らかにしたという。
ロシア人の“バリ島渡航”急増 要因は?
プーチン政権が去年9月、部分的動員令を発令してから、ロシアから海外に渡る人が増えていると報じられているが、ある南の島に渡っているという。
多くのロシア人が行く先は、インドネシアのバリ島だ。インドネシアメディアによると、去年9月の部分的動員令の発令後にバリ島への渡航が急増し、今年1月だけで2万2500人が渡ったそうだ。
要因として考えられるのが、簡単なビザの取得サービスだ。去年5月、インドネシア政府はロシアを「到着ビザ」の給付対象国に加えた。
これによって事前手続きなしでも、到着時に空港などで30日間の観光目的ビザを取得できるようになった。
さらに、ビザ発給にかかる手数料もおよそ4500円と比較的安く、延長も可能だということだ。
強制送還“ロシア人は最多” 徴兵回避のためか
そして、ロシア人によるトラブルも増えているようだ。現地メディアによると、3月上旬の1週間、交通違反で摘発された外国人の数は171人、うち3分の1の56人がロシア人だったようだ。
またCNNによると、今年1月1日から4月2日までの間に、バリ島で法律に違反し、強制送還された外国人は40人で、そのうちロシア人は最多の14人だったという。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、強制送還されたロシア人の中には、ロシアでの徴兵を回避するために、ビザで許可された在留期間を超えて滞在していた人もいると伝えている。
“楽観的態度”示すジョコ大統領「問題ではない」
一方、ロシア人のトラブルを巡っては、インドネシアの自治体と政府で温度差があるようだ。
ロイター通信によると、バリの州知事が「到着ビザ」の発給対象国からロシアを外すよう、インドネシア政府当局に要請したということだ。
一方、インドネシアのジョコ大統領は「(トラブルを起こすロシア人に対し)彼らは逃亡しているのではなく、観光できているのだから問題ではない」といった楽観的な態度を示したと、現地メディアは伝えている。
ロシア情勢に詳しい慶應義塾大学の廣瀬教授によると、「インドネシアはロシアから石油や兵器などを多く購入していて、安定的な国家運営において、ロシアとの関係維持は極めて重要」とし、そのためインドネシア政府は、プーチン政権を刺激し、外交問題に発展するのは避けたいのが本音ではと分析している。
●「プーチンは単に恐怖を感じている」 病的な精神状態を元情報将校が暴露 4/24
長らく中立を保ってきたフィンランドが今月4日、NATOの一員となった。これによりNATO加盟国とロシアとの国境はおよそ2600キロに倍増、欧州に緊張が高まりつつあるのだが、そんな折“張本人”のプーチンが、深刻な精神状態にあると暴露され……。
さる4日にAP通信が公開したインタビュー動画は、驚くべき要素に満ちていた。
「2009年からロシア連邦警護庁(FSO)に所属し、昨年亡命するまでプーチンの間近で警護にあたっていたグレブ・カラクロフという情報将校が、大統領の精神状態や特異な行動を赤裸々に語っているのです」とは、全国紙デスク。
「彼は、昨年10月にカザフスタン経由でトルコへ脱出。直前までプーチンと政府高官との通信管理を担っており、今回『13年間、大統領が携帯電話やインターネットを使うのを一度も見たことがない』『国外でも、テレビはロシアの国営放送しか見ようとしない。全ての情報を側近たちから得ていて、ある種の“真空状態”の中で暮らしている』などと、その“裸の王様”ぶりを暴露しました」(同)
「プーチンは単に恐怖を感じている」
インタビューは昨年12月に行われたといい、〈プーチンは追跡可能な飛行機を好まず、ウクライナ侵攻に備え、特別な装甲列車で移動していた〉〈(モスクワ以外の)都市に机や壁掛けなどが全く同じ執務室を設置していた〉〈盗聴を防ぐため、外国訪問の際には、トラック1台分ほどの大きさの通話ブースを持参していた〉などと発言。その上で、「プーチンは単に恐怖を感じているのだと思う」と、言い捨てていたのだった。
大統領選も懸念
浮き彫りになったのは、独裁者の孤独と病的な妄執である。防衛研究所の兵頭慎治・政策研究部長は、「これまでプーチンの通信の秘密を扱う部署の実態はほとんど明かされませんでした。彼がそこに強いこだわりを持っていたのは間違いなく、外国訪問時に巨大な機器を持参して肉声を漏らさないようにしていても、何ら不思議ではありません」としながら、「各地の執務室を同じデザインにしているというのも、映像などで特定されて所在地をつかまれないようにするためだと考えられます。もっとも、彼が暗殺や盗聴を恐れているのはウクライナ侵攻以前からで、今回のフィンランドのNATO加盟で、メンタルの状態がいっそう悪化する恐れはあります」
元時事通信社モスクワ支局長の名越健郎・拓殖大学特任教授も、こう言うのだ。
「バイデン政権きってのロシア通であるバーンズCIA長官は、一貫して『プーチンが自暴自棄になる可能性を考えると、核に頼る恐れを軽視できない』と語っています。それもあって米国は、ウクライナへの決定的な援助に踏み切れず、中途半端な対応が続いているのです」
不安要素はむろん国内にもあり、「これまでプーチンを支持してきたロシアのエリート層が、戦争の長期化に伴う欧米からの制裁で孤立し始めている。来年3月の大統領選に向け、彼らから『あと6年任せていいのか』といった議論が出てくると、支持層の分裂をもたらす可能性もあります」基盤が揺らげば、ますます捨て鉢になりかねない。
●「プーチンは英国攻撃を準備している」英議員が警告の深刻度 4/24
ロシアのプーチン大統領が、「英国攻撃の準備をしている」と報じられた。反露感情が強く、ロシアはウクライナを支援する英国など西側諸国の動向に神経をとがらせており、英国東部に面する北海で工作活動を実施したり、サイバー攻撃も急増させたりしているという。
英保守党のボブ・シーリー議員が21日、英紙デイリー・テレグラフの電子版「ザ・テレグラフ」に「プーチンは英国を攻撃する準備をしている」と寄稿した。「潜在的な敵対国が、より大規模な紛争に向けて準備を進めていることは、厳然たる事実である」と警告している。
また、3本のパイプラインがガス供給の43%を担い、5本の送電ケーブルが英国と欧州を結ぶ電力を供給していることなどを挙げ、「海での妨害工作があれば、一発も撃たずにこの世界を停止させることができる」と指摘した。
ロシアは北海で漁船や調査船を装って海中を監視し、通信やエネルギー供給に必要なインフラ施設の位置を確認していることが判明している。デンマークの情報当局者は、ロシアが西側との軍事衝突に備え、破壊工作の準備をしているとの見方を示した。
ザ・テレグラフは19日には、英政府通信本部(GCHQ)の関係者の話として、西側諸国がロシアのハッキングの活動の急増と戦っていると報じた。ダウデン内閣府担当相は、「ロシアが最近、英国とその同盟国に目を向け始めている」との見方を示した。
ロシアの外交・安全保障に詳しい笹川平和財団の畔蒜(あびる)泰助主任研究員は、「ロシアが欧米と紛争状態になった場合、攻撃する可能性があると警告したものだ。英国は歴史的にも反露感情が強く、ウクライナ侵攻後も情報戦や宣伝戦を行ってきた。英国も、欧州とロシアが衝突すれば『まず最初に狙われる』と敏感なのだろう」と分析する。
英露間に軋轢(あつれき)を生じた事件は少なくない。2006年には英国に亡命中の元ロシア諜報員、リトビネンコ氏が死亡した。ロシアの情報機関によって毒殺された疑いがある。18年にも同様に元諜報員のスクリパリ氏が毒殺未遂に遭った。
ウクライナ戦争でも英国は主力戦車「チャレンジャー2」の供与を表明するなど支援に積極的だ。
先進7カ国(G7)はロシアへの追加制裁案として、一部の医療品などを除く「ほぼ全面的な輸出禁止措置」を検討するなど敵対姿勢を明確にしている。
ロシアと西側が実際に戦火を交えることはあるのか。畔蒜氏は「西側もエスカレーションは避けたいだろうが、米国がウクライナに長距離ミサイルやF16戦闘機を供与することで、緊張に拍車がかかることも想定される。タガが外れる状況になる可能性もゼロではない」と指摘した。 

 

●ロシア、海外2社の資産を一時管理 プーチン氏が法令署名 4/25
ロシアのプーチン大統領は25日、海外のエネルギー企業2社がロシア国内で保有する資産を一時的に管理する法令に署名し、必要に応じ他の外国企業に対しても同様の措置を取る可能性を示唆した。
法令は国外にあるロシアの資産が差し押さえられた場合に取り得る対抗措置を記したもので、独電力大手ユニパーのロシア部門およびフィンランドのエネルギー大手フォータムの資産に対し既に措置を講じたことを示している。双方の株式は一時的に連邦国家資産管理局の管理下に置かれた。
また、米国や他の国による「非友好的で国際法に反する」行為に早急に対応する必要があるとしている。米国などの行為について具体的には言及していない。
タス通信によると、連邦国家資産管理局はさらに多くの外国企業の資産を一時管理する可能性があるとし、経済における重要性に応じて当該資産を運営する方針を示した。
「同法令は所有権の問題には関係なく、所有者から資産を奪うものではない。外部管理は一時的であり、元の所有者がもはや経営上の決定権を持たないことを意味する」と述べたという。
●ロシア大統領府、プーチン氏に複数の「替え玉」説否定 4/25
ロシア大統領府(クレムリン)のぺスコフ報道官は25日、プーチン大統領には多くの「替え玉」がおり、プーチン氏自身は大半の時間を核シェルターで過ごしているという話は「うそ」と一蹴した。
ぺスコフ報道官は「プーチン氏はいつも非常にアクティブで、周りで働く者はついていけないほどだ」と述べた。
長らくささやかれているプーチン氏の病気説について、クレムリンは繰り返し否定している。
また、プーチン氏は2024年に予定されているロシア大統領選への再選出馬を表明していない。 

 

●ウクライナ軍、5月にも大規模軍事作戦か 米紙報道 4/26
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は24日、米当局者の話として、ウクライナ軍が早ければ5月にも大規模な軍事作戦を始めると伝えた。作戦は、アゾフ海沿岸を含むウクライナ南部で展開される可能性が高いという。
同紙によると、ウクライナ軍は作戦に向け、計約5万人の兵力を持つ12部隊を4月末までに準備しており、そのうち9部隊を米国と北大西洋条約機構(NATO)軍が訓練したという。米当局者は同紙に対し、米国やNATO加盟国が作戦に向け、ウクライナ側に多くの火器や弾薬を供給したと主張。その上で、今回の作戦が決定的な成功を得られない場合、欧米諸国はウクライナへの支援を減少させ、ウクライナには紛争を凍結、または終了させるため、ロシアと真剣に交渉するよう圧力がかかる可能性があると指摘した。
一方、ウクライナ軍広報官は25日、ウクライナ側が過去3日間で、ロシア軍が占領しているウクライナ南部ヘルソン州のドニエプル川東岸で「目覚ましい戦果を挙げた」と述べた。露軍の戦車や戦闘用車両、対空防衛システムなどに打撃を与えたと主張し、近い将来、さらなる攻撃を仕掛けることを示唆した。
米シンクタンク「戦争研究所」は22日、ウクライナ軍がドニエプル川東岸に一定の陣地を構え、補給路を確立した可能性があるとの分析を発表している。東岸は軍事作戦の目標地域の一つとみられている。
●黒海穀物合意巡る状況は暗礁に、ロシア輸出に障害=ラブロフ外相 4/26
ロシアのラブロフ外相は25日、黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意を巡る状況が暗礁に乗り上げたと述べた。ロシアの輸出を阻む障害がまだあるという。
また、黒海穀物合意を巡り国連のグテレス事務総長がプーチン大統領に送付した書簡についてはいずれ反応を示すとした。
グテレス氏はこの日、ラブロフ氏とニューヨークで会談。ラブロフ氏にプーチン大統領に書簡を渡すよう依頼したという。国連によると、グテレス氏は書簡で黒海経由の穀物輸出合意の「改善、延長、拡大を目指す道」を提案した。
ラブロフ氏は国連で行われた記者会見で、グテレス氏とグリフィス国連事務次長による「ロシアに対する違法かつ横暴な制裁」を発表した国との合意に向けた取り組みを称賛した上で、「ただ、実質的に何の結果も出ていない」と指摘した。
また、黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意について中国とは議論していないと説明した。
●プーチン氏、資産接収への報復を命じる大統領令に署名 4/26
ロシアのプーチン大統領は25日、ロシアが国外に保有する資産が差し押さえられた場合の報復措置を指示する大統領令に署名した。
ロシア国営タス通信が報じ、大統領府の公式サイトでも公表された。
大統領令は、ロシアの資産が「敵対国」によって差し押さえられた場合、ロシア側は国内の外国資産を一時的に管理下に置くと定めている。
この一時的管理は、大統領の判断によってのみ解除できるとも明記されている。
タス通信によると、すでに独エネルギー大手ユニパーのロシア部門の資産が、ロシア政府の一時的管理下に入った。 

 

●ロシア、西側企業の資産を一時管理下に プーチン大統領が法令に署名 4/27
ロシアはフィンランドのエネルギー会社フォータムと独電力大手ユニパーがロシア国内に保有する資産を一時的に管理下に置いた。ロシア政府は、ロシア企業に対する海外の動きへの報復としてさらなる資産差し押さえ措置を講じる可能性があると警告した。
プーチン大統領が25日夜、法令に署名した。この決定は覆される可能性があるとしている。
ペスコフ大統領報道官は「この法令は、非友好的な国々の攻撃的な行動への対応だ。ロシア企業の海外資産に対する西側諸国の姿勢の写し鏡だ」と述べた。
「(法令は)財産問題には触れず、所有者の資産を没収するわけではない。外部管理は一時的なものであり、元の所有者が経営決定をする権利を失ったことを意味するだけだ」とし 「法令の主な目的は、ロシア資産が海外で違法に収用された場合に対抗措置を講じる可能性に備えて補償基金を創設することだ」とした。
ユニパーのロシア部門ユニプロUPRO.MMは国内で総容量11ギガワット(GW)以上の発電所5基を運営しており、従業員は約4300人。ユニパーはユニプロの株式83.73%を保有している。
ユニパーはユニプロに対する措置について検討していると発表した。
ドイツ財務省の広報担当者は、ロシアの法令が具体的にどのような影響を及ぼすか評価する必要があると述べた。
フィンランドのトゥッティ・トゥップライネン国有企業担当相はツイッターで、今回の情報は憂慮すべきものであり、この問題を注意深く見守ると述べた。
フィンランド外務省はコメントしなかった。
フォータムは「当社の理解では、新たな政令は登記上のロシア国内資産や企業の所有権には影響しない」との声明を発表。「しかしこれがフォータムのロシア事業や進行中の事業売却プロセスなどにどのような影響を及ぼすかは依然として不明だ」とした。
フォータムのロシア部門はウラル地方と西シベリアに7つの火力発電所を有している。また現地のパートナーと共同で風力・太陽光発電所のポートフォリオを保有している。これらの資産の簿価は2022年末時点で17億ユーロ(18億7000万ドル)だった。
●ゼレンスキー大統領が習国家主席と電話会談 ロシアの侵攻後初 4/27
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は26日、中国の習近平国家主席と「長く意義のある」電話会談を行ったと発表した。両国の首脳が言葉を交わしたのは、昨年2月のロシアの侵攻開始以来、初めてとなる。
ゼレンスキー大統領はツイッターで、この電話会談と、駐中国・ウクライナ大使の任命が、「両国関係を進展させる力強い推進力」になるだろうと述べた。
中国も電話会談があったことを認め、「我々は常に平和の側にいる」と述べた。
26日の電話会談で習国家主席は、中国は「責任感のある多数派の国」として「対岸の火事を眺めることも、そこに燃料を加えることもしない。ましてや、この危機から利益を得ようともしていない」と述べたという。
これは、中国最大の国際的ライバルであり、この戦争でウクライナに最も協力しているアメリカを非難したものとみられる。
習氏はまた、ウクライナと直接かかわる意思を表明。欧州問題特別大使をキーウをはじめとする諸都市に送り、政治的和解に向けて「深いコミュニケーション」を取るとしたという。
一方のゼレンスキー氏は、元閣僚のパヴロ・リャビキン氏を駐中国大使に任命した。
米ホワイトハウスのジョン・カービー報道官は、電話会談は「良いことだ」と評価した一方で、これが「何らかの有意義な和平の動き、計画、提案」につながるか見極めるには時期尚早だと話した。
西側諸国と違い、中国はロシアの侵攻について中立の立場にいると見せようとしている。
しかしロシア政府との強い関係を隠そうとはせず、侵攻を非難してもいない。3月には習国家主席が2日間にわたりロシアを公式訪問した。
習氏はロシアのウラジーミル・プーチン大統領を「大切な友人」と呼び、12項目からなるあいまいな和平案を提示した。一方で、ロシアへの武器供与は約束しなかった。
中国の和平12項目は、ウクライナと西側諸国から広く批判されている。ウクライナの将来の安全保障やロシアに占領された領土について明確な計画が示されておらず、ロシアへの一方的な制裁の解除も求めているからだ。
習氏の訪ロの数日後、ゼレンスキー氏は習氏をウクライナの首都キーウへ招待すると発表。中国政府とはロシアの侵攻以前には連絡を取っていたが、侵攻後は途絶えていると述べていた。
中国が戦争終結に協力する可能性は低いと思われる。これは、ロシアがウクライナの領土から軍を撤退させる用意を見せないからだけではない。ゼレンスキー氏が、「領土での妥協と引き換えの平和はありえない」と強調している点も挙げられる。
また、習氏とプーチン氏の友好関係に加え、中国がロシアとの貿易を拡大していることや、「侵攻」という言葉を使うことすら否定していることなどからも、中国政府が仲介役になるのか疑問の声もあがっている。
ロシアのマリア・ザハロワ外務報道官は、ロシア政府は中国のアプローチに「幅広い一致」を見たものの、主な障壁はウクライナの「非現実的な要求」だと述べた。ロシアは和平の条件として、2014年に侵攻したクリミアを含め、併合したと主張しているウクライナ領土をロシアのものと認めるよう求めている。
   ロシアの対中輸入高と輸出高の推移を現したグラフ。年々拡大している
外交に意欲、そのわけは
それでも、1時間にわたるゼレンスキー氏と習氏の電話会談は、突然のものではなかった。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は4月初め、習氏が「条件と時期が合えば」ゼレンスキー氏と話す意向を示していたと述べた。フォン・デア・ライエン委員長は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の訪中に同行していた。
ゼレンスキー大統領は何度も習国家主席に接触しているが、これは中国の膨大な富と世界的な影響力が戦局を揺るがす可能性があることの証左だ。
習主席は先に、イランとサウジアラビアの関係を修復するなど、外交で成功を収めている。国際的に重要なステークホルダーとしての役割に味をしめた可能性もあるが、こうした介入には経済的な要素もあるだろう。
中国経済は長年にわたる厳しい新型コロナウイルス規制が終わってもなお脆弱(ぜいじゃく)だ。輸出に依存しており、ウクライナでの戦争が長引く中、完全に立ち直ることはできない。
今回の電話会談のニュースは、慎重に制御されている中国の国営メディアでトップニュースとして取り上げられ、中国側の解釈が報じられた。
中国のソーシャルメディアでは、多くのユーザーが平和的な対話を呼びかけ、中国が責任ある国として行動していると見て、支持を表明した。
典型的なコメントは、「中国は行き詰まりを打破し、氷を溶かさなければならない!」といったものだった。
●ゼレンスキー大統領 習主席に ロシアへの協力控えるよう強調  4/27
ウクライナのゼレンスキー大統領は26日、中国の習近平国家主席と電話で会談しました。ゼレンスキー大統領は会談で「ロシアへの支援が少なければ少ないほど、戦争は早く終結し、国際関係に平穏が戻るだろう」と述べ、ロシアへの協力を控えるよう強調しました。
ゼレンスキー大統領は26日、中国の習近平国家主席とロシアによるウクライナへの軍事侵攻後、初めて電話会談を行いました。
ウクライナの大統領府は会談は1時間にわたり、2国間のあらゆる話題について議論したと発表しました。
会談で、ゼレンスキー大統領は習主席に対して、戦況は厳しい状況が続いていると伝えたうえで「ロシアへのどんな支援も侵略の継続やさらなる平和の拒否につながる。ロシアへの支援が少なければ少ないほど、戦争は早く終結し、国際関係に平穏が戻るだろう」と述べ、ロシアへの協力を控えるよう強調しました。
また、ゼレンスキー大統領は、会談後みずからのツイッターに中国語で「習主席と長く、充実した電話会談を行った。両国関係の発展に強い勢いを与えるものと信じている」と投稿し、中国が果たす役割の重要性を訴えました。
一方、中国外務省は習主席は電話会談で「中国はできるだけ早い停戦や平和の回復のために努力する」と述べ、仲介役として建設的な役割を果たす姿勢を強調したと伝えました。
また、会談では、中国政府が政府の特別代表をウクライナなどに派遣する考えを示したということです。
ゼレンスキー大統領「長く合理的な会談だった」
ゼレンスキー大統領は26日に新たに公開した動画で中国の習近平国家主席との会談について「主にどのようにして平和を回復するかについて意見を交換した。長く、合理的な会談だった」と述べました。
そして「両国はともに国家の主権や領土の保全、安全保障のルールを順守することに関心を持っている」とした上で中国の国際社会での影響力を利用して和平に向けた土台作りが進むことに期待を示しました。
ロシア外務省「中国側の対応を評価」
ロシア外務省のザハロワ報道官は26日声明を発表し「われわれは中国側が交渉のプロセスの確立に向けて努力する用意があることを認識している。中国外務省がことし2月24日に示した立場とわれわれのアプローチは広く一致している」として、中国側の対応を評価する姿勢を示しました。
一方で「これまでのところ、キーウの政権はウクライナ危機の政治的かつ外交的な解決を拒否している。ワシントンに支配されている操り人形たちが平和への呼びかけに応じることはほとんどない」として、ゼレンスキー政権を非難しました。
米ホワイトハウス 歓迎も注視する考え示す
アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は26日、記者団に対し「習主席や中国当局がウクライナの考えを知ることは重要であり、よいことだと思う」と歓迎しました。
一方でカービー調整官は「会談が有意義な平和への一歩や提案につながるかどうかは現時点ではわからない」と述べて注視していく考えを示しました。
そのうえで「われわれは平和につながるいかなる取り組みも歓迎する。その平和は持続的で信頼できるものでなくてはならず、ゼレンスキー大統領やウクライナ国民が賛同するものでないかぎりそうはならないと思う」と強調しました。
●米機密文書「ロシアの財政、ウクライナ戦争最小1年持ちこたえられる」 4/27
ロシアが西側の強力な経済制裁にも「ウクライナ戦争で最小1年は持ちこたえる資金がある」と米情報当局が評価したことがわかった。ワシントン・ポストは26日、最近オンラインに流出した米政府の機密文書のうちこうした内容が含まれた文書があったとして内容を公開した。
同紙によると、先月初めに作成されたこの機密文書には「ロシアの民間企業代表ら経済エリートがロシア政府に資金支援を続けており、戦争を1年以上引っ張っていくことができる」という米情報当局の評価が入れられた。多くのロシア企業が欧米連合(EU)などの制裁で経営に深刻な打撃を受けたが、プーチン大統領に対する支持を撤回するどころか戦争資金を出しているという話だ。
この文書には「ロシア当局は(制裁による)経済的圧力を避けるため法人税引き上げと政府系ファンドの収益などに依存している」という内容も入っていた。
ただ、文書では追加制裁やロシア産石油に対する原油価格上限制などにともなう影響は排除されていたことがわかった。また、戦争長期化にともなう弾薬支出、追加兵力徴集の必要性などロシアの戦闘力に影響を及ぼしかねない他の要因も情報判断から抜けていた。この文書と関連した質問に米財務省とホワイトハウスは回答を拒否したと同紙は伝えた。
これに先立ち今月初めに米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)も「ロシアが依然として西側の制裁に対する驚くべき水準の適応力を持っている」という内容の報告書を出している。
このように米情報当局がロシアの財政的余力を予想よりしっかりしていると評価してはいるが、持ちこたえられる期限を1年ほどとみただけでロシアの経済事情が完全に楽観的なだけではないという解釈も出ている。
実際に先月初めにロシアのシルアノフ財相はミシュスティン首相に、国際投資銀行(IIA)と国際経済協力銀行(IBEC)、ユーラシア投資銀行などロシア主導の金融機関が「潜在的に当惑する崩壊を避けられるよう非常計画を支援してほしい」という内容の書簡を送った。これと関連して、ワシントン・ポストは流出した文書の中に「ロシアの銀行の外貨準備が十分でなく、ロシアの情報機関である連邦保安局(FSB)の懸念が深い」という内容の文書もあると伝えた。
一方、プーチン大統領は25日に自国内の外国企業の資産を一時的に統制できる法案に署名した。今回の措置は米国など西側諸国がロシアの資産を差し押さえたことに対する正面対抗の性格とみられる。
これに先立ち西側は昨年2月のロシアのウクライナ侵攻直後に制裁違反を理由としてロシア中央銀行とロシアの財閥、企業の海外資産を凍結した。こうした凍結資産をウクライナ難民支援と戦後再建に使おうという議論も起きている。
●現在のロシア地上部隊、ウクライナ開戦時より「規模大きい」 米軍司令官 4/27
米欧州軍のカボリ司令官は26日、ロシアはウクライナでの戦争で損失を被っているものの、依然として豊富な戦力が残っているとの見解を示した。
カボリ氏は上院軍事委員会で証言し、「ロシアの地上部隊は今回の紛争でやや劣化したが、現在の規模は開戦時よりも大きい」と述べた。
空軍が失った航空機は80機にとどまり、まだ戦闘機と戦闘爆撃機が合わせて1000機残っているという。海軍が失った艦艇は1隻。
米空軍州兵がリークしたとされる軍の機密文書からは、ロシアの地上部隊が戦争のどの場所に投入されたのかがうかがえる。2月と3月の日付が入った文書によると、使用可能なロシアの大隊544個のうち、ウクライナ戦争に投入された大隊は527個。このうち474個は既にウクライナ入りしているという。
文書の一つでは、ウクライナで戦死したロシア兵の数を3万5000〜4万3000人と推計している。
ウクライナ東部バフムート周辺の戦闘では特に死傷者数が多い。ウクライナ軍東部方面部隊の報道官は25日、ロシアは「すべての戦力をバフムートに集中させている。我々が管轄する作戦区域の他の場所では、それほど強力な戦闘作戦は実施していない」と指摘した。
米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長も先月、バフムートを巡る戦闘でロシア兵が大きな犠牲を出していると述べていた。
ただ、こうした損失はロシアの総兵力のごく一部に過ぎないとみられる。カボリ氏は大西洋におけるロシア潜水艦の哨戒活動について聞かれ、ロシア軍の大部分はウクライナ侵攻で影響を受けておらず、近年になく高い水準で活動しているとの見解を示した。
●ロシア軍 南部ザポリージャ原発敷地内に陣地築いたか 英国防省  4/27
ウクライナ情勢をめぐり、ロシア軍が南部ザポリージャ州の原子力発電所の敷地内に戦闘のための陣地を築いたとイギリス国防省が指摘しました。ウクライナ軍の大規模な反転攻勢に備え、警戒を強めているものとみられます。
ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、SNSで、南部ミコライウ州で夜間、ロシア軍の黒海艦隊から攻撃を受け、ビルや住宅などが破壊され、市民1人が死亡し、23人がけがをしたと明らかにしました。
また、ゼレンスキー大統領は、ウクライナのチョルノービリ原子力発電所の事故が起きてから26日で37年を迎えたのに合わせて、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長とも電話で会談し、ロシア軍が占拠している南部のザポリージャ原発を取り戻すことの重要性を強調しました。
そのザポリージャ原発についてイギリス国防省は27日、衛星写真の分析から先月までにロシア軍が敷地内の6つの原子炉の建屋の屋根に土のうを設置し、戦闘のための陣地を築いたと指摘しました。
そして、「ロシアが戦術的な防衛計画の中に、原子炉の建屋を組み込んだことを示す最初の兆候だ。戦闘が起きれば安全システムが損傷される可能性が高まる」と懸念を示しました。
ウクライナ軍が南部の州などで大規模な反転攻勢を仕掛けるとされる中、ロシア軍が警戒を強めているものとみられます。

 

●ロシアのドローン産業、120億ドル規模に拡大も=プーチン氏 4/28
ロシアのプーチン大統領は27日、生産増強計画が実行されれば同国のドローン産業が近く1兆ルーブル(122億5000万ドル)規模になる可能性があると述べた。
プーチン氏は昨年、ロシアは無人航空機(UAV)の生産量を増やし、軍事・民生用途に広く使用するためのインフラを構築する必要があると述べた上で、2030年までのドローン開発戦略を指示していた。
プーチン氏とドローン関連産業の幹部は、ドローン産業が近い将来5000億ルーブル規模になると見込んでいるという。これは非常に控えめな数値で、官民が協力すれば1兆ルーブル規模になる可能性があるとプーチン氏は説明した。
同氏は、ドローンを製造するために設計されたモスクワの工業団地を視察した後に演説し、UAVは経済のほぼ全ての分野において使用可能だと強調した。
ロシアでは既に無人機が多数製造されているが、さほど高機能ではなく、ウクライナへの攻撃には主にイラン製無人機「シャヘド」を利用している。
ある幹部はドローンは特に農家にとって有益だと指摘。プーチン氏は農業省がこれに留意すべきと述べた。
●ロシア・トルコ大統領が電話会談、協力深化で合意 4/28
ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が27日、ロシア国営原子力企業ロスアトムによって建設されたトルコ初の原子力発電所の記念式典を前に電話会談を実施したと、両国の大統領府が発表した。
トルコ大統領府によると、エルドアン大統領はプーチン大統領との会談で、原発に関するプーチン大統領の協力に謝意を表明。国連とトルコが仲介した黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意(黒海イニシアティブ)やウクライナ情勢についても協議したという。
また、プーチン大統領はエルドアン大統領と経済、貿易、農業に関する協力深化で合意したと発表。ロシアの穀物から作られた小麦粉を必要とする国に送るというエルドアン大統領の計画について両国が協力していると述べた。
ロシアはこれまで資源の主な輸出先だった欧州に代わる市場を模索。プーチン氏は、天然ガスを「関心のある外国の買い手に市場価格で供給する」輸出ハブとしてのトルコの役割への期待を改めて表明した。
ロスアトムがトルコ南部メルシン県に建設しているアックユ原子力発電所の総工費は200億ドル。原子炉4基が設置され、発電能力は4800メガワット(MW)。この日に初めて燃料が搬入され、プーチン大統領もオンラインで式典に参加した。
プーチン氏は「これは旗艦プロジェクトだ。相互に経済的利益をもたらし、両国の多面的なパートナーシップの強化に役立つ」と表明。アックユ原発は「世界最大のプロジェクト」だとし、これによりトルコは将来的にロシア産天然ガスの輸入量を減少させ、最も安価なエネルギーの一つである原子力エネルギーを持つという利点を享受できると述べた。
エルドアン大統領は、アックユ原発へのプーチン氏の支援に謝意を表明。「トルコに第2、第3の原発をできるだけ早く建設するための措置を講じる」と述べた。
ロスアトムによると、アックユ原発の安定的な電力供給開始は2025年。
エルドアン大統領は健康問題のため記念式典にはオンラインで参加。トルコのコカ保健相は27日、エルドアン大統領の健康状態は良好で、可能な限り早期に日々の業務を継続すると述べた。
●ロシアの支援を受けトルコで初建設の原発で式典 両首脳が出席  4/28
ロシアの支援を受けてトルコで初めて建設されている原子力発電所で、燃料を搬入する式典が27日行われ、両国の首脳がオンラインで出席しました。
トルコ南部のアックユ原子力発電所で行われた式典で、ロシアのプーチン大統領は「この原発は、互いに経済的な利益をもたらすとともに、両国の多面的な協力関係を確実に強化する」と述べました。
プーチン大統領としては、ウクライナへの軍事侵攻で欧米との関係が断絶する中、トルコと、エネルギーなど経済協力を通じた関係強化を進めたい考えです。
一方、エルドアン大統領は「ついに原子力を持つ国の仲間入りを果たした」と成果を誇り、2028年までに4基すべてが稼働する見込みだと強調しました。
エルドアン大統領は、4月25日に体調不良を訴え、その後の公務を取りやめていました。
この日の式典で、オンラインとはいえ公に姿を見せた背景には、5月14日に大統領選挙を控える中で、トルコで初めてとなる原発の建設を主導している姿を示すとともに、健康状態に不安があるという見方を打ち消したいねらいもあったとみられます。
●ロシア産エネルギーを運ぶ「灰色の船団」、壊滅的な石油流出への懸念 4/28
ギリシャ・ペロポネソス半島の南東側にあるラコニア湾。海は鮮やかな青緑の水をたたえ、海岸地帯はウミガメの重要な営巣地だ。
ただ、ここは自然が美しいだけの場所ではない。一帯はロシアのエネルギー輸出品を運ぶタンカーの重要拠点にもなっている。
ロシアのウクライナ侵攻を受け、欧州連合(EU)は海上輸送による石油輸入の大半を禁止した。通常であればEUに向かう原油製品や石油精製品がアジアに行き先を変える中、積み荷は長旅に備え、ここラコニア湾でより大型の船に積み替えられる。
調査会社S&Pグローバルによると、ロシア産原油の船から船への積み替えはこの数カ月で急増し、今年1〜3月には過去最多の水準に達した。ギリシャ付近では今年3月、暖房や輸送機関に使われるロシア産軽油350万バレル以上が船舶間で積み替えられた。これはS&Pグローバル調べで前年同月比の7倍を超える。
こうした積み替えは、ロシアのプーチン大統領が1年2カ月近く前にウクライナ全面侵攻を命じて以降、世界の石油市場が一変したことを浮き彫りにしている。これまで最大の買い手だった欧州の穴を中国やインド、トルコが埋めるなか、航海の距離は伸び、以前に比べ多くの船が必要になっている。S&Pグローバルのデータからは、航海途中での積み替えが増えている状況がうかがえる。
データ企業クプラーのシニアアナリスト、マシュー・ライト氏は「地中海における船舶間の積み替えが急増した」と指摘。「ロシアの港から小さめの船が現れ、より大きな船に積み荷を移し替えた後、大きな方の船はアジアに向かう」と説明する。
こうした船の多くは「灰色の船団」と呼ばれる船舶の一部だ。ライト氏のような業界関係者は、過去1年の間にロシア産石油の輸送を始めた船を指して、この言葉を使っている。船の所有者についてはほとんど知られておらず、ペーパーカンパニーの可能性もある。
「灰色の船団」は必ずしも不正を行っているわけではない。しかし、ライト氏のような西側のウォッチャーは、所有者が伏せられていることが多い船の登場で石油市場の透明性が薄れ、規制当局による監視が難しくなっていると指摘する。
オーストラリアとカナダ、米国は国際海事機関(IMO)に最近提出した書類で、トランスポンダーを切り、「姿を消して」、公海上で石油を積み替える船が増えていると指摘した。位置情報を送信するトランスポンダーの切断は制裁逃れの手段になりうると、これらの国々は主張する。
IMOの法務・渉外ディレクター、フレッド・ケニー氏はCNNに対し、海上積み替えへの警戒感がここ1年で高まったとの見方を示した。このような状況では衝突が起きやすく、壊滅的な石油流出事故の確率が高まる。
ケニー氏によると、船の所有者がはっきりしない場合、石油の海上積み替えに関する厳格な規則を順守しているかどうかの確認も難しくなるという。
「きれいな海での安全な輸送を確保する規制体制が損なわれているとの懸念が高まっている」(ケニー氏)
怪しげな事業
国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシアの石油輸出量はウクライナ侵攻前の水準に回復したものの、輸出から得られる収益は依然として大きく落ち込んだ状況にある。主要7カ国(G7)はロシア産石油や石油製品の価格に上限を設定したほか、買い手の減少で値引き交渉力が増しているとの事情もある。
クプラーのデータによると、中国によるロシア産石油の輸入は今年1〜3月、前年同期比で38%増大。インドの輸入量は10倍近い水準に激増した。
ロシア船石油の取引がより複雑になるにつれ、欧米の舟荷主の多くは手を引いた。現在はそこに怪しげなプレーヤーが参入し、「灰色の船団」の形成を促している状況だ。
英国を拠点とする市場情報会社、ベッセルズバリューによると、今年のタンカーの取引のうち、新設企業や非公開の買い手への石油タンカーの売却は約33%を占める。非公開の買い手への売却が全体に占める割合は2022年は10%、21年は4%にとどまっていた。
船を追跡する
CNNは宇宙テクノロジー企業マクサーの人工衛星画像を用い、ラコニア湾に停泊する2隻の石油タンカーを精査。クプラーと協力して、積み替えの詳しい様子を調べた。
2隻のトランスポンダーのデータによると、小さい方のタンカーは2月下旬にロシアのサンクトペテルブルクに寄港し、燃料油の貨物を積み込んだ。CNNはその後、同船が西欧沿岸をぐるりと回って地中海に入る様子を追跡。ここまで来たところで、同船は黒海沿岸にあるロシアの港湾ノボロシスクの方向から来た大型船に貨物を移し替えた。クプラー氏はこの船を「灰色の船団」の一員だとみている。
大型タンカーはそこからさらに航海を続け、欧州とアジアを結ぶ主要航路であるスエズ海峡を進んだ。
こうした取引が頻繁になるにつれ、専門家の間ではリスクへの懸念が高まっている。
IMOのケニー氏によると、一つの船から別の船に石油を積み替えること自体は珍しくないが、所有者が不明確で追跡が難しい「灰色の船団」の場合、最善の慣行に従っていない可能性もあるという。
ケニー氏は「船から船への積み替えで発生しうる問題は無数にある。積み替えに関する複雑な業界ルールがあるのはこのためだ」と述べ、流出の可能性に言及した。
カナダや日本、英国は、船がトランスポンダーを切っていれば、偶発的な衝突のリスクが高まると指摘。トランスポンダーの切断はほぼ常に違法であり、クプラー氏は2022年以降、こうした例を複数記録している。
「トランスポンダーを切っている船を目撃したり、そうした報告を受けたりすれば、私たちにとって憂慮すべき事態になる」(ケニー氏)
●ウクライナ 新たな旅団を編成し訓練も本格化 反転攻勢へ準備  4/28
ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナ側は、東部の激戦地で徹底抗戦を続ける一方で、領土の奪還に向けて新たな旅団を編成し訓練も本格化しているとして、反転攻勢への準備が進んでいると強調しました。
ウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトをめぐり、ロシア国防省は27日、空てい部隊の支援のもとで、突撃部隊が北西部や南西部の4つの区画を新たに支配したと主張しました。
一方、ウクライナ国家警備隊の幹部は27日、会見で、バフムトで徹底抗戦を続け、西部の補給ルートを確保しているとしました。
また、ロシアに支配されている領土の奪還に向けて、新たに編成された9つの旅団では、多くの志願兵が加わり訓練も本格化しているとして、反転攻勢への準備が進んでいると強調しました。
こうした中、バフムトで戦闘員を投入しているロシアの民間軍事会社ワグネルのトップは26日、再び弾薬不足に陥っているとした上で、気象条件が良くなればウクライナ側が反撃に出る可能性があると訴えました。
これについてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は26日「ウクライナ側の反転攻勢に対する不安がロシアで広がっていることが明らかになった」と指摘しています。
ロシア大統領府は27日、プーチン大統領が28日にサンクトペテルブルクで演説を行い、とくにウクライナに派遣された兵士やその家族に対する支援策について言及すると明らかにし、長引く軍事侵攻に対する国民の理解を得たいねらいもあるとみられます。
●ロシアの戦費支える中国の原油輸入、ウクライナ戦争勃発後は急増 4/28
ロシアによるウクライナ侵略戦争について、中国の習近平政権は対外的には「中立」と、「和平仲介」の意志を表明している。だが、だまされてはいけない。中国は西側の制裁下のロシアを財政金融面で支え、戦争を長引かせている。
中国のロシア支援の極め付きはロシア原油の輸入である。中国関税庁統計から算出したロシア原油輸入量はウクライナ戦争勃発後、急増の一途で、この3月には日量227万バレルと前年同期比50%増となった。
先進7カ国(G7)は昨年5月にロシア産石油輸入の段階的禁止、さらには12月にはロシア産原油の価格上限を1バレル当たり60ドルに設定する措置を打ち出した。価格制限は上限価格を超えるロシア原油の海上輸送に対し、損害保険適用を禁じるというものだ。しかし、対露制裁に加わっていない中国とインドなどがロシア原油の購入を増やしている。
ロシア原油の価格はどうなっているか。グラフはロシア産の代表的な油種であるウラル原油、ロシア制裁まではほぼ同等の価格水準だったブレント原油の国際相場、さらに中国のロシア原油輸入の1バレル当たりの価格である。
戦争直後、ウラル原油はブレント原油急騰とは真逆に急落した。ブレントは22年6月に最高値をつけた後、下落基調にあり、ウラルも同時並行して下がっている。他方で、両油種間の価格差は大きく開いたままで西側の制裁は国際相場上では効果を発揮している。1バレル当たりではウラルは30ドル前後もブレントよりも低い。しかし、中国のロシア原油輸入価格をみると、ブレント相場との価格差は10ドル以下で、ウラル原油相場よりも20ドル以上高い。
ロシアの石油輸出は日量1000万バレル程度で、うち200万バレル以上が中国向けとして、1日当たり約4000万ドル、年間で約146億ドルを中国はロシアに補助している計算になる。世界の軍事費を計算しているストックホルム国際平和研究所によると、ロシアの軍事費は23年は868億ドルで、ウクライナ戦争などの要因で前年比で73億ドル増えた。中国によるロシア原油買いの割り増し分はロシア軍事費増の2倍にも相当するのだ。
ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵略開始の20日前、北京で習近平党総書記・国家主席との共同声明で「限りない友情と制限のない協力関係」をうたったが、中国はロシア原油輸入だけでもまさに、その盟友関係を実践していることになる。
3月21日にモスクワを訪問した習氏とプーチン氏の共同声明で、中露関係について「軍事・政治的同盟ではない」とし、ウクライナ戦争の外交的解決を促す中国の提案をロシア側が「建設的」と評価した。ところが、中国の駐フランス大使は4月21日、ウクライナを含む旧ソ連圏諸国について「主権国家としての具体的な地位に関する国際合意は存在しない」と述べた。ロシアのウクライナ併合の野心を正当化する習政権の本音がにじみ出た格好だ。 
●侵攻を批判すればロシア国籍をはく奪か プーチン氏、改正法案に署名 4/28
ロシアのプーチン大統領は28日、ロシア国籍を取得した人がロシア軍の信用をおとしめる行為などをした場合、国籍を剝奪(はくだつ)できる改正法案に署名した。政府がサイトで公表した。180日後に施行される。ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ4州の出身者も対象となっており、ウクライナ侵攻への批判を封じる狙いがあるとみられる。
改正法によると、軍の信用失墜のほか、ロシアの領土保全を脅かす行為も含まれる。4州を「ウクライナ領」と主張することも処罰される可能性がある。発言の時期は問わないとしており、過去にさかのぼって適用される恐れもある。
ロシアの独立系メディアによると、国籍剝奪の決定に裁判所の同意は必要なく、ロシア連邦保安局(FSB)が決められるとしている。
●ウクライナ南部のロシア支配地域、複数の場所で爆発の報告 4/28
当局の報告やSNS上の目撃証言によれば、ウクライナ南部にあるロシア占領地域の複数の場所で27日、激しい爆発が発生した。
ヘルソン州で開設されているSNSテレグラムの非公式チャンネルは、同州の町ノバカホフカやその近郊で複数の爆発があったと報告した。ノバカホフカにはドニプロ川に面する重要な水力発電施設がある。
テレグラムのチャンネルの一つは「ノバカホフカで攻撃音が聞こえた。何かが燃えている」と説明。「煙が見える。爆発音のような音も聞こえた」とも述べた。
CNNはどの目標が攻撃を受けたのか確認できていないが、ロシアが任命したノバカホフカの地元当局は、ウクライナ軍の砲撃で電力供給が断たれていることを明らかにした。
ウクライナが支配するドニプロ川西岸地域からも攻撃があった。ヘルソン州の軍政当局によれば、近郊の村への砲撃で女性1人が死亡、その夫が重傷を負ったという。
ザポリージャ州メリトポリでは大きな爆発音が聞こえた。同市のフェドロフ市長が明らかにした。メリトポリはロシアの占領下にある都市で、前線から離れたロシア軍の拠点になっている。
ロシアが任命したザポリージャ州占領当局の高官によると、集合住宅の入り口付近で即席爆弾が爆発した。建物はやや損傷したものの、死傷者は出ていないという。
●NATO事務総長 ウクライナ支援 “戦闘車両の98%以上を供与”  4/28
NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は27日、ベルギーのブリュッセルにある本部で記者会見し、NATOの加盟国や関係国がこれまで行ってきたウクライナへの軍事支援について「ウクライナに約束した戦闘車両の98%以上がすでに引き渡されている」と述べました。
具体的には、1550両以上の装甲車と230両の戦車、合わせて1700両以上の戦闘車両が各国からウクライナに供与されたとしています。
ストルテンベルグ事務総長はウクライナの9つ以上の旅団が訓練を受けてきたことを明らかにしたうえで「ウクライナは、占領地の奪還を継続するにあたって有利な立場に立つことになる」と述べ、各国からの支援の成果を強調しました。

 

●ロシア、国家反逆罪に終身刑 プーチン氏が法令に署名 4/29
ロシアのプーチン大統領は28日、国家反逆罪に対する最高刑を終身刑とし、従来の懲役20年から引き上げる大統領令に署名した。ウクライナ全面侵攻開始後の政府に対する反対意見を抑圧する措置の一環と見られる。
大統領令は大統領府のウェブサイトに掲載された。終身刑への引き上げは議会ですでに承認されていた。
議会はこのほか、「人命を危険にさらし、ロシアの不安定化を目的とした行為」と定義される「テロ行為」に対する最高刑を懲役20年とし、現在の15年から引き上げることも承認した。
政府は、ウクライナや欧米の情報機関の侵入から国を守るためにこうした措置が必要との見解を表明。人権団体は、わずかながらに国内に残っている反対派の声を抑え込もうとしているとしていると懸念を示している。
●ロシア市民権取得拒否なら国外退去も、支配地域で プーチン氏署名 4/29
ロシアのプーチン大統領は28日、ウクライナのロシア支配地域の住民にロシア市民権取得の道を開く法令に署名した。しかし来年7月1日までにロシア市民権取得を拒否もしくは取得に向けた行動を取らなければ、国外退去処分となる可能性がある。
法令はロシアが一部を支配するウクライナのドネツク、ルガンスク、ヘルソン、ザポロジエの4地域に適用される。
さらに同法令の下、ロシアの国家安全保障を脅かすと判断された場合や無許可の抗議活動に参加した場合も、国外退去処分となるという。
●ロシア、中南米・アフリカとの関係拡大 欧米に対抗=プーチン氏 4/29
ロシアのプーチン大統領は28日、ロシアは欧米の「経済的侵略」に対抗するために迅速に行動する必要があるとし、ロシアはユーラシア、中南米、アフリカ諸国との関係を拡大すると述べた。
プーチン大統領は議員との会合で「欧米の経済的侵略に直面している現在、議会、政府、全ての地方当局が一つのまとまったチームとして迅速に行動しなければならない」と指摘。「われわれはロシアが孤立することを放置するつもりはない。それどころか、ユーラシア、アフリカ、中南米の友好国と実利的かつ平等で、双方に利益をもたらす、独占的な協力関係を拡大するつもりだ」とした。
また、「新たな地域」のロシアに戻るという選択を守るためにあらゆることをしなければならないと表明したほか、ロシアとの協力を望む世界的企業と協力する用意があると語った。
ロシア通信社によると、シルアノフ財務相は2023年の財政赤字の対国内総生産(GDP)比率が2%を超えないとの予測を維持しているが、これを達成できるかは石油・ガスの収入次第とした。
●ナワリヌイ氏の釈放要請、各界著名人がプーチン氏に公開書簡 4/29
ロシアで収監中の反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の釈放を求め、ノーベル文学賞受賞作家を含む各界の著名人がロシアのプーチン大統領宛ての公開書簡に署名した。
署名したのはノーベル文学賞作家のスベトラーナ・アレクシエービッチ氏(ベラルーシ出身)とマリオ・バルガス・リョサ氏(ペルー出身)のほか、世界的バレエダンサーのミハイル・バリシニコフ氏、小説「悪魔の詩」で知られる作家のサルマン・ラシュディ氏、カナダの作家マーガレット・アトウッド氏ら。
元弁護士のナワリヌイ氏はプーチン政権の汚職や腐敗を糾弾。現在、詐欺などの罪で計11年6月の禁錮刑で服役している。
ナワリヌイ氏の広報担当者は今月13日、同氏が激しい胃痛を訴えていると明らかにし、ゆっくりと毒を盛られている可能性があるとの見方を表明。支持者の間で同氏が獄中で死亡する恐れがあると懸念が高まっている。
●ウクライナ各地でロシア軍によるミサイル攻撃 子ども含む23人死亡 4/29
ウクライナでは28日、各地でロシア軍によるミサイル攻撃があり、子どもを含む23人が死亡しました。
ウクライナ当局によりますと、中部ウマニでは集合住宅などへのミサイル攻撃で子ども3人を含む少なくとも21人が死亡。
また、東部ドニプロでも民家などが攻撃を受け、2歳の女の子とその母親が犠牲となったほか、首都キーウにも51日ぶりとなる攻撃があったということです。
ゼレンスキー大統領は「テロ攻撃を打ち負かすことができるのは、ウクライナへの武器供与とロシアに対する厳しい制裁です」と改めて各国に訴えています。
一方、レズニコフ国防相はロシアへの反転攻勢に向けた準備が「最終段階にある」と明らかにしています。
こうした中、プーチン大統領は28日、サンクトペテルブルクで議会関係者らを前に演説し、一方的に併合したウクライナの4つの州について「ロシアの歴史的領土であり、地域の住民はわれわれの親戚だ」と主張しました。
また、来月9日の戦勝記念日をめぐり、ドローン攻撃などへの懸念から複数の地域で軍事パレードを中止する発表が相次ぐ中、プーチン氏は「戦勝記念日はロシアにとって神聖な日だ」と述べ、重要視する姿勢を示しています。
●ロシア軍攻撃で市民25人死亡 ウクライナ軍反転攻勢の構え強調  4/29
ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は28日、ウクライナ各地をミサイルや無人機で攻撃し、これまでに子どもを含む25人が死亡しました。ウクライナ側はロシアを強く非難するとともに、近く大規模な反転攻勢に乗り出す構えを強調しています。
ロシア軍は28日、ウクライナの首都キーウなど各地を巡航ミサイルや無人機で攻撃し、このうち中部のウマニでは、集合住宅が被害を受けました。
多くの住民ががれきの下敷きになったとみられ、ウクライナ政府によりますと、これまでに子ども4人を含む23人が死亡したということです。また、東部のドニプロでは、2歳の女の子と母親のあわせて2人が死亡しました。
ゼレンスキー大統領は28日、キーウを訪れたスロバキアとチェコの大統領との共同記者会見で「ロシアはこの戦争で敗北しなければならず、その指導者は侵略と大量虐殺の罪で罰せられなければならない」と述べ、プーチン政権を強く非難しました。
またレズニコフ国防相は記者会見で「われわれの準備はできている。天候や指揮官の決断しだいで、すぐにでも実行に移す」と述べ、近く大規模な反転攻勢に乗り出す構えを強調しました。
一方、ロシアのプーチン大統領は28日、第2の都市サンクトペテルブルクで議会の代表らを前に演説し、動員で招集されるなどした兵士とその家族への支援策を強化する必要があるとして、兵員不足も指摘される中、待遇改善に力を入れる姿勢を示しました。
その上で、ウクライナへの軍事支援を強める欧米諸国を念頭に「かつてのパートナーたちはみずからの意見を押しつけようとしている。われわれは彼らのルールに従うつもりはない」と述べ、改めて対決姿勢を鮮明にしました。
●ウクライナ各地へ攻撃、23人死亡 高層住宅などミサイル被弾 4/29
ロシアが侵攻を続けるウクライナ各地で28日、ロシアによるミサイル攻撃があり、ロイター通信によると、少なくとも23人が死亡した。各地で空襲警報が発令され、爆発音が響いた。
ウクライナ軍によれば、ロシア軍は28日未明にカスピ海からTU95爆撃機で攻撃を実施。ウクライナ側は、防空システムで首都キーウ(キエフ)上空などで巡航ミサイル21発を撃ち落とし、ドローン2機も撃墜したと明らかにした。
地元メディアなどによると、中部チェルカスイ州ウマニでは、高層住宅にミサイル数発が撃ち込まれて火災が発生。当局者は子どもを含む少なくとも21人が死亡したと明らかにした。東部ドニプロではミサイル攻撃で30代の女性と2歳の子どもが死亡。中部のポルタワやクレメンチュク、南部ミコライウにも爆撃が加えられたもようだ。 
●ロシアによる“子どもの連れ去り”に安保理で非難相次ぐ 4/29
国連で戦時中の子どもの連れ去りに関する非公式会合が開かれ、各国からロシアへの非難が相次ぎました。
ウクライナ キスリツァ国連大使「責任あるすべての国がともに行動することは、私たちに共通する責務です。そうでなければ、罪のない子どもたちが犠牲になるという暴力の悪循環を断ち切ることはできません」
28日に安全保障理事会が開催した子どもの連れ去りに関する非公式会合で、ウクライナの国連大使は「ウクライナという国のアイデンティティを消し去ろうとしている」とロシアを強く非難。欧米諸国を中心に出席した多くの国も「国際法違反だ」などと相次いで批判しました。
ウクライナ当局は侵攻以降、およそ1万9500人の子どもが強制的に連れ去られたとしていますが、ロシアの代表は「根拠のない糾弾だ」と反発しています。
この件についてウクライナのゼレンスキー大統領は、中国の習近平国家主席と電話会談した際、子どもたちを取り戻すための支援を要請したと明らかにしました。
ところで、ロシアのプーチン大統領は28日、国家反逆罪の最高刑を懲役20年から終身刑に引き上げる法改正案に署名しました。これにより、政権に反対する勢力や人物を合法的に処分する動きが早まることも懸念されます。
●ロシア “人々がパニックに” 招集令状のオンライン通知可能に  4/29
ロシアのプーチン大統領は、今月14日、兵役義務の招集令状について、書面による手渡しから、オンラインによる通知も可能とする改正法案に署名し成立させました。
招集令状は、政府のポータルサイトに登録した個人のアカウントに通知される仕組みで、本人が通知を開いていなくても届いた時点で効力が発生するということです。
招集令状が届くと、ロシアからの出国が禁止されるほか、通知から20日以内に招集に応じなければ、自動車の運転や不動産の登録、それに銀行などからの融資を受けることができなくなるなど、生活する上でさまざまな制約を受けるということです。
ロシアの国営通信社は、今月20日、プーチン大統領の出身地サンクトペテルブルクで試験運用が始まったと伝え、携帯電話のショートメッセージで招集令状を送る方法も検討されているとしています。
プーチン政権は去年9月、予備役の動員に踏み切り、ロシア国内では、招集令状の受け取りを拒んだり、国外に脱出したりする市民も相次いでいて、今回の法改正は、政権側が招集逃れを抑え込もうとしているという見方がでています。
ロシア兵支援のNGO「人々はパニックに陥っている」
ロシア兵などの人権保護に取り組むNGO「徴集兵の学校」の代表で、現在は、ロシア国外で活動を続けるアレクセイ・タバロフ氏はNHKのオンラインインタビューに対し、招集令状がオンラインで通知されることが可能になったことについて、「令状を受け渡す原則が厳格化された。人々はパニックに陥っている」と述べました。
その理由について、タバロフ氏は「人々にとってロシアから出国禁止になることが恐ろしく、『鉄のカーテンが下りてもう終わりだ。どこにも行けなくなる』と考えているからだ。また、国民は、すぐに招集され、ウクライナへ派遣されると考えていて、軍から逃れることも隠れることもできなくなるという雰囲気が作られた」と指摘しました。
また、タバロフ氏は「国民は動員に否定的だったため、政権は、動員から契約による兵士募集という、異なるパッケージで包み込んだ。しかし、これは動員のようなものだ」と述べました。
その上で政権側は、高額な報酬を掲げてロシアの地方で兵士を募集するほか、徴集された若者に対し、軍が圧力を強めてウクライナの戦地に行くよう新たな契約を結ばせる可能性があると懸念を示しました。
一方、来月9日の第2次世界大戦の戦勝記念日にあわせて各地で行われてきた「不滅の連隊」と呼ばれる市民の行進がことしは見送られることについて、タバロフ氏は「プーチン政権は、ウクライナの戦争で犠牲になった兵士の遺影を持った人々が路上に出てくることを懸念している。反戦運動につながる制御できない激しい怒りを呼び起こす可能性もある」と述べ、政権側が戦争をめぐる国内世論に神経をとがらせているという見方を示しました。
タバロフ氏が代表をつとめるNGO「徴集兵の学校」は今月、プーチン政権から「外国のスパイ」を意味する「外国の代理人」に指定され、圧力が強まっています。
●ウクライナ、5月に大規模反攻か プーチン氏を震え上がらせる1700両の戦車 4/29
ロシアの侵略を受けたウクライナの大規模反攻が5月にも始まるとの観測が強まっている。ゼレンスキー大統領が各国に供与を求めた戦車や装甲車などの戦闘車両は1700両以上集まった。ロシア軍が掌握する東部や南部での攻勢が予想されるが、「大戦車軍団」で戦況を打開し、ロシアのプーチン大統領を震え上がらせることはできるのか。
反撃の口火どこから
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長によると、NATO加盟国と友好国がウクライナに供与した戦闘車両は装甲車が1550両以上、戦車が230両以上で、各国がウクライナに約束したうちの98%以上が引き渡されたことになる。
戦車では、ドイツ製の「レオパルト2」や、英国の「チャレンジャー2」、米国の「エイブラムス」などが到着した。

ストルテンベルグ氏は「同国の9つ以上の旅団を訓練した」と表明。今月末までに12旅団を編成する予定と伝えられている。
ロシアは昨年、ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州、南部のヘルソン州とザポロジエ州について一方的に併合を宣言した。2014年にはクリミア半島を併合したが、ウクライナはどこで反撃の口火を切るのか。
元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は、1ザポロジエ州からアゾフ海の海岸線到達を目指す2ヘルソン州からクリミア半島の付け根を目標とする3激戦が続く東部地域―のいずれかを想定する。
「通常、優勢を確保するには敵方の3倍の戦力を要する。ウクライナ軍は戦力を集中させるため、3正面のうちいずれかを選択するだろう。戦車や歩兵戦闘車は、なるべく障害の少ない地域をロシア軍が対応できない速度で進軍し、配備が薄い主力部隊の後方を狙う迂回(うかい)戦術が考えられる」という。
「成功確率は50%」
渡部悦和氏「戦力集中のため、3正面のいずれかを選択するだろう」
供与された戦車はどのように使われるのか。軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「戦車は敵の塹壕(ざんごう)を越え、戦車砲が敵方の戦車や歩兵戦闘車、塹壕の中の歩兵を標的に攻撃しつつ、相手の前線を押し下げる戦力になる。ただ、戦車単独で万能なわけではない。対戦車ミサイルを持つ敵兵には歩兵戦闘車の兵士が対峙(たいじ)し、鉄条網や対戦車壕、地雷原などには工兵が対処することが必要だ。空域からの攻撃にも弱いので制空権を握れるか、戦車の燃料の補給が続くかもカギになる」と指摘する。
ロシア軍も主力戦車「アルマタ」を作戦地域に投入したと国営ロシア通信が伝えた。米欧製戦車に対抗する狙いもみえるが、渡部氏は「『レオパルト2を超える』など宣伝されたが量産もできず、信用できない」とみる。
ウクライナ軍にとっては航空兵力も課題だ。ポーランドやスロバキアが旧ソ連製の「ミグ29」を引き渡す一方、欧米製戦闘機の供与は決まっていない。「ミグ戦闘機を十分に活用し、ドローンを偵察や戦果の確認に用いるしかない」と世良氏はいう。
ウクライナは勝機をつかめるか。渡部氏は「反攻の前提条件はそろいつつある。成功する確率は50%以上とみているが、楽観はできない」と強調した。
●ウクライナの反攻準備「ほぼ完了」、後は実行命令待ちと国防相 4/29
ウクライナのレズニコウ国防相は28日、ロシア軍に対する反転攻勢の準備が終わりつつあるとの見解を示した。オンライン上の情勢説明で述べた。
「次の問題は参謀本部次第」とし、「神の意思があり、天候条件が整い、司令官たちの決定があれば直ちに実行する」と主張した。
反攻に投入される兵器を既に確保したのかとの質問には、米国が提供を約束した主力戦車「エイブラムス」は間に合わないと指摘。ドイツの主力戦車「レオパルト2」と英国の主力戦車「チャレンジャー」は届いたとし、「レオパルト1」もこの後に到着すると述べた。
様々な型式の装甲車両を多数保持しているとし、歩兵戦闘車「ブラッドレー」、同「マルダー」や装甲戦闘車両「ストライカー」などに言及した。
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は先に、外国の支援国がウクライナへ約束していた戦闘車両のうち98%以上が既に引き渡されたとも明かしていた。
ウクライナのマリャル国防次官は先週、軍事戦略上の問題などを踏まえ、反攻の開始やその時期は発表しないと宣言していた。

 

●ロシアとの戦争「数十年続く可能性」 ゼレンスキー氏、支援訴え 4/30
ウクライナのゼレンスキー大統領は29日までにフィンランド放送協会(YLE)などのインタビューに応じ、ロシアとの戦争が数年もしくは数十年続く可能性があると指摘した。ウクライナが準備する大規模反攻の成否は欧米の軍事支援次第だとの認識を示し「できるだけ多くの命を救いたい。そのためには武器の数が重要だ」と訴えた。
ロシア軍を撤退させ、2014年にロシアが併合したクリミア半島の奪還にも成功すると信じていると強調。「第3次世界大戦のリスクを高めるよりも、ウクライナを支援する方が安上がりだ」と述べた。
ウクライナ国防省情報総局の報道官は29日、クリミア半島セバストポリの石油備蓄施設で同日発生した火災について、ロシアがウクライナ中部ウマニの集合住宅を攻撃したことへの「天罰だ」と語った。ウクライナの関与は明言しなかった。地元メディアが伝えた。集合住宅の攻撃では子どもを含む23人が死亡した。
●ロシアの「反逆罪」、終身刑に引き上げ…反戦封じ込めへプーチン氏が改正  4/30
ロシアのプーチン大統領は28日、国家反逆罪の最高刑を禁錮20年から終身刑に引き上げる改正刑法に署名し、同法は成立、発効した。ウクライナ侵略を巡る反戦や反政権の機運を厳罰で封じる狙いがある。
国際刑事裁判所(ICC)が戦争犯罪の疑いでプーチン氏らに逮捕状を出したことを踏まえ、ロシアが加盟していない国際機関の決定執行に協力した場合、最高禁錮5年の条文を加えた。テロ行為の最高刑は、禁錮15年から20年にするなど厳罰化した。
ロシアが一方的に併合したウクライナの東・南部4州のウクライナ人を念頭に、ロシア国籍取得者が破壊工作に関与したり、露軍の権威を失墜させたりすると露国籍をはく奪する法律も28日、プーチン氏の署名で成立した。180日後に発効する。反露住民を排除し、強制移住を正当化する布石との見方が出ている。
侵略作戦に参戦する兵士や治安要員の確保を容易にするため、「国際平和維持任務」の範囲を拡大し、参加要件を緩和した。18〜27歳が対象の徴兵者は最前線に派遣されない原則だが、平和維持活動を名目とする志願者の派遣が合法化された。
●クリミア燃料施設で火災 ウクライナ高官 “天罰は今後も続く” 4/30
ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミアにある燃料の貯蔵施設で大規模な火災が起き、ロシア側は無人機の攻撃を受けたとしています。
一方、ロシアでは来月の第2次世界大戦の戦勝記念日で恒例となっている軍事パレードが各地で見送られ、長期化する軍事侵攻の影響が広がっているものとみられます。
ウクライナ中部のウマニで28日に起きたロシア軍によるミサイル攻撃について、クリメンコ内相は29日、集合住宅が倒壊して23人が死亡し、このうち6人が1歳から17歳までの子どもだったと明らかにしました。
こうした中、29日には、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミアの軍港都市にある燃料の貯蔵施設で大規模な火災が起き、現地を支配するロシア側の代表は無人機の攻撃を受けたとしています。
これについてウクライナ国防省の情報総局の高官は地元メディアに対して、ロシア海軍の黒海艦隊の施設が爆発したものだとしたうえで「ウマニでの住民殺害に対する天罰だ。この罰は今後も続くだろう」と述べ、住民に軍事関連の施設に近づかないよう呼びかけました。
一方、ロシアでは来月9日の第2次世界大戦の戦勝記念日を控え、首都モスクワをはじめ各地で式典の準備が進められています。
しかし、国境付近や中部の州などでは安全上の問題を理由に恒例の軍事パレードの中止が相次いで発表され、プーチン政権が国民の愛国心の高揚を図るために重視してきた行事にも、長期化する軍事侵攻の影響が広がっているものとみられます。 
●最大の支援国がなぜ?ポーランドが決断したウクライナ産農作物禁輸措置 4/30
ロシアによるウクライナ侵攻の長期化を受け、ヨーロッパではウクライナに対する「支援疲れ」が広がっている。それはウクライナ支援の最前線にあり、同国と国境を接するポーランドでも同様だ。歴史的な経緯もあり、ポーランドはウクライナに強い連帯感を抱き、同国からの避難民を大々的に受け入れ支援してきた。だが、風向きが変わってきたようだ。
ポーランド政府は4月15日、ハンガリーとスロバキアとともに、ウクライナ産の農作物の輸入を一時的に禁止すると発表した。具体的には、穀物、乳製品、砂糖、果物、野菜、肉類の輸入を6月末まで禁止すると発表したのである。結局、欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会の批判を受けて、ポーランドはこの措置を21日に解除した。
EUの通商政策は、いわゆるEUの排他的権限に属し、原則としてEUレベルでの政策決定のみが容認される。そのため、欧州委員会はポーランドなどによるウクライナ産の農作物の禁輸措置を批判したわけだが、ポーランドだけでなく、ブルガリアやルーマニアもウクライナ産農作物の禁輸措置を検討しているという事実がある。
それではなぜ、中東欧諸国でウクライナ産の農作物の禁輸措置が検討されるに至ったのか。その主因は、EUの通商政策が中東欧諸国の農作物価格を急落させたことにある。その通商政策とは、EUがウクライナを支援すべく、同国産の農作物を無関税で輸入するとともに、EUを通じて第三国に輸出することを奨励するという内容のものだ。
周知のように、ウクライナ産の農作物は、ロシアとの戦争を受けて、黒海からの輸出が困難になった。この状況に鑑み、EUはウクライナを支援すべく、同国産の農作物の輸入の強化と再輸出の奨励を図ったわけだ。しかしながら、その結果、中東欧諸国にウクライナ産の農作物が大量に流れ込み、農作物の価格が急落する事態となったのである。
 
 

 

●ロシア軍がキーウなどミサイル攻撃−防空は機能と当局 5/1
ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループを率いる創設者のエフゲニー・プリゴジン氏は、モスクワの軍司令部が追加の弾薬を供給しない場合はウクライナ東部のバフムトから部隊を撤退させると述べた。傭兵部隊とロシア国防省の緊張関係を示す最新の兆候となった。
ウクライナ軍のザルジニー総司令官は北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍最高司令官と米欧州軍司令官を兼任するカボリ陸軍大将と対面で会談した。この数日前、ウクライナのレズニコフ国防相は南東部でロシア軍に反転攻勢を行う準備が最終段階に入ったと明らかにしていた。
ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミアのセバストポリにある燃料貯蔵施設の大規模火災は発生後数時間で鎮火した。親ロシア派の当局者はウクライナが攻撃を行ったと非難した。
ロシアがキーウや主要都市にミサイル攻撃
ウクライナの首都キーウや主要都市が1日早朝、ロシア軍のミサイル攻撃を受け、空襲警報のサイレンが鳴り響いた。キーウ当局は防空システムは機能していると説明。地元メディアによると、東部ドニプロでも爆発音が聞かれた。
キーウ南方のウマニでは4月28日、ミサイルが高層住宅に着弾し、民間人23人が死亡。これとは別にドニプロでも2人が死亡した。
仏大統領とウクライナ大統領が電話会談、軍事支援を協議
フランスのマクロン大統領は4月30日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、主権と領土一体性の回復のためにウクライナが必要とする支援をフランスは提供するとあらためて確約した。仏大統領府が声明で明らかにした。
●ワグネル「ロシア軍がバフムトへ補給せねば撤退も」 ウクライナ軍は補給路確保 5/1
ウクライナ軍は29日、激戦が続く東部の要衝バフムトへの主要補給路を依然として確保していると表明した。
「命の道」と呼ぶこの補給路はバフムトと西方の近隣町チャシウ・ヤルを結ぶもので、距離は17キロ余り。ロシア側は兵たんの遮断を目指している。
一方、ロシア民間軍事会社「ワグネル」の創始者エフゲニー・プリゴジン氏は同日公表のインタビューで、ロシア軍がさらに弾薬を送らなければバフムトから部隊の一部を撤退すると警告した。
インタビューがいつ収録されたかは不明。正規軍が必要な弾薬を供給していないとしばしば発言している同氏は「われわれは国民を欺き、全てがうまくいっていると言うのをやめる必要がある」とした上で、「正直なところ、ロシアは大惨事の瀬戸際にあると言わざるを得ない」と述べた。
●ロシアの民間軍事会社25社がウクライナ侵略に参加… 5/1
ウクライナの英字紙キーウ・ポストは4月末、公開情報収集(オシント)企業の調査に基づき、雇い兵を戦地に送るロシアの民間軍事会社25社がウクライナ侵略作戦に参加していると伝えた。東部バフムト攻略で露軍側の主力を担う「ワグネル」以外にも、露国防省や情報機関「連邦保安局」(FSB)との関係が深い軍事会社が確認された。
調査を行った国際的なオシント企業「モルファー」によると、露軍事会社はウクライナ以外で活動している12社と合わせて37社あり、全社がプーチン政権と何らかの関係があるという。ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は複数の会社に関わっている。
37社のうち67%が公金を資金源とし、実業家が運営資金を拠出している会社は16%だった。残る17%は官民の資金で活動しているという。露軍事会社は非合法だが、プーチン政権は戦死者を出しても責任を負う必要がなく、財政負担を軽減できることから特例にしているようだ。
正規軍と軍事会社間や軍事会社同士の勢力争いが露側の攻撃に影響しているとの見方がある。米政策研究機関「戦争研究所」は4月下旬、バフムト攻略でワグネルと国営ガス会社「ガスプロム」系とされる軍事会社などの競争が激化していると指摘した。
●ウクライナの反攻、ロシアの「惨事」に ワグネル創設者 5/1
ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は4月30日、ウクライナの反転攻勢が始まれば、ロシアにとって「惨事」になりかねないと警告し、同社部隊の弾薬不足に不満を漏らした。
ワグネル部隊は、ウクライナ東部の激戦地バフムートで数か月にわたってロシア側の先頭に立って戦っている。
プリゴジン氏はウラジーミル・プーチン大統領の盟友だが、ワグネルのトップとしてロシア国防省との権力闘争に巻き込まれている。
プリゴジン氏は大統領府(クレムリン)寄りの従軍記者とのインタビューで「われわれ(ワグネル)には必要な弾薬の10〜15%しかない」と述べ、ロシア軍幹部を批判した。
また、ウクライナが5月中旬に反攻を開始するとの見方を示した上で、「この反攻はわが国にとって惨事になりかねない」と警鐘を鳴らした。
●習・ゼレンスキー協議 中国は責任果たす関与を 5/1
ロシアのプーチン大統領に対する影響力を行使して、侵攻したウクライナからの軍撤退に応じるよう働きかけるべきだ。
中国の習近平国家主席がウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議した。侵攻後、両首脳が意見を交わしたのは初めてだ。
習氏は「速やかな停戦と平和の回復のため独自の努力をする」と表明した。3月のプーチン氏との会談に続き、対話による解決を呼びかけた。
ゼレンスキー氏は「中国の政治的影響力」に期待を示す一方、ロシアに有利な中国の提案に対し「領土を犠牲にした平和はあり得ない」とくぎを刺した。武器供与など対露支援を控えるよう求めた。
米国に対抗するため、ロシアと連携する中国の戦略が大きく変わったわけではない。それでも、国内で絶大な権力を握る習氏が、主権や領土一体性を尊重する原則を確認した意義は小さくない。
侵攻から1年2カ月を経て、習氏がゼレンスキー氏との電話協議に臨んだのは、国際社会において中露が一体とみなされるリスクを気にしたからだろう。
中国にとって最も避けたいシナリオは、ロシアに向けられた欧米の結束が、自国への包囲網に発展することだ。
欧州諸国では、中国の対露姿勢への警戒感が高まっている。最近も、ウクライナの主権を疑問視するような駐フランス大使の発言が物議を醸し、習指導部は火消しに追われた。
今回の協議で、習氏は、出口の見えない戦争について「対岸の火事と傍観せず、火に油を注ぐこともしない」との立場を強調した。「核戦争に勝者はいない」とも指摘し、核兵器による威嚇を辞さないプーチン氏との違いをアピールした。
習氏の言動からは、ロシア、ウクライナの双方と対話ができる優位性を誇示し、対外イメージの改善につなげる思惑がうかがえる。
ただ、中国が停戦の実現に向けて力を尽くすというならば、国連憲章を踏みにじったロシアの暴挙を見過ごすことは許されない。
「仲介役」を果たすには、責任ある大国として火中の栗を拾う覚悟が求められる。本気度が試されるのはこれからだ。
●ゼレンスキー大統領反攻宣言=uまもなく重要な戦闘が始まる」 5/1
ロシアの侵略を受けているウクライナのゼレンスキー大統領は4月30日、「まもなく重要な戦闘が始まる」と述べ、大規模反攻の開始時期が近いことを示唆した。ロシアが実効支配する南部クリミア半島で発生した大規模火災も反攻の前触れとみられる。対するロシア側は、民間軍事会社「ワグネル」創設者のプリゴジン氏が国防省への不満をあらわにし、東部戦線からの撤退の可能性があると指摘した。軍周辺の足並みの乱れは、プーチン政権の指導力の低下を浮き彫りにしている。
ゼレンスキー氏は「国境警備隊の日」に合わせた演説で、「侵略者が私たちの平和を奪うことは絶対にない」とも述べた。ただ、欧州メディアなどのインタビューではロシアとの戦争が「数年もしくは数十年続く可能性がある」としており、厳しい戦いが続くとの見方を示した。
ウクライナ軍のフメニュク報道官は同日、クリミア半島セバストポリで29日に起きた石油備蓄施設の火災は無人機(ドローン)による攻撃で、ウクライナ軍が計画する大規模な反転攻勢の「準備の一環」だと述べた。「ロシア軍は浮足立ち、家族を半島外に移動させている」とも発言、大規模反攻の準備が進んでいることを示してロシア側の動揺を狙ったとみられる。
大規模火災が発生したセバストポリにはロシア黒海艦隊が司令部を置く。けが人は出なかったが、ウクライナ軍当局者は同艦隊用の計4万トン超の容量を持つ10以上の石油タンクが破壊されたと述べた。
ロシア国防省は30日の戦況説明で、激戦が続く東部ドネツク州バフムトの西部で新たに4つの街区を支配下に置いたと表明した。だが、バフムトでのロシア側の主力部隊であるワグネル創設者のプリゴジン氏は「弾薬の供給問題が解決されなければ、バフムトを放棄し、前線を明け渡す」と宣言、ショイグ国防相に対し、最後通告を突きつけた。プリゴジン氏はウクライナの反転攻勢が5月15日までに始まるとの見方も示し、「ロシアにとって悲惨な結果をもたらす」と指摘した。
筑波大学名誉教授の中村逸郎氏は「ワグネルはスーダン情勢に関与しているとの情報も浮上した。民間軍事会社である以上、資源もあるスーダンの方が『カネになる』と考え、ウクライナ戦線から離脱する可能性があるのが現状だ。プーチン氏にとっては、官僚的な正規軍よりも戦争のプロ集団であるワグネルを頼りにせざるをえない。軍事組織の対立を統制できず、反攻に抵抗できる態勢が十分に整っていないのではないか」と分析した。
●ローマ教皇、ウクライナ和平努力に参加と明かす 5/1
ローマ・カトリック教会のフランシス教皇は30日、ローマ教皇庁(バチカン)がウクライナの戦争終結に向けた取り組みに参加していることを明らかにした。
ハンガリーの首都ブダペストへの3日間の訪問を終えた記者会見で語った。
この取り組みは進行中だが、まだ公表されていないと述べ、公表時には自身で詳細を明かす意向を示した。
教皇はブダペスト滞在中にオルバン首相のほか、プーチン・ロシア政権と連携するロシア正教会の代表者、イラリオン府主教と会談した。
会見では、両会談が和平を加速させるかという質問に「和平は常に窓口を開くことによって実現すると確信している。閉鎖によって成立することはあり得ない」と答えた。
ウクライナのシュミハリ首相は先週、教皇との会談で、同国からロシア領へ連れ去られた子どもたちの帰還に向けた支援を要請していた。教皇は会見でこの支援について問われ、「教皇庁は行動を取る用意がある。なぜならそれが正義だから。間違いなく正義だ」と述べた。 
●ワグネルが「軍事的反乱」を企てる──元ロシア軍情報将校 5/1
元ロシア軍情報部門将校で、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力の司令官も務めたイーゴリ・ギルキンは4月29日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が民間軍事会社ワグネルの「軍事的反乱」に直面するかも知れないと警告した。ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジンは、補給不足が続くなら激戦が続くウクライナ東部バフムトから撤退すると述べている。
ギルキンはメッセージアプリのテレグラムで、「最高司令部の同意なしに前線からの」撤退を命じるのは「軍事的反乱以外の何物でもない」とする投稿を行った。
ワグネルはバフムト攻略戦においてロシア軍とともに戦い、大きな役割を果たしてきた。だがプリゴジンは弾薬の支給も支援も不十分だとして、ロシア国防省を繰り返し公然と批判してきた。
同じく29日にギルキンはテレグラムで、プリゴジンが28日までに弾薬の供給不足が解消されなければワグネルの部隊をバフムートから撤退させると警告したことについて、ロシア軍上層部に対する「公然の」脅迫だと述べた。
撤退すればロシア側には大きな痛手に
ギルキンはワグネルが撤退すれば、近々始まると見られるウクライナの反転攻勢を前にロシア側に「壊滅的な打撃」を与える可能性があることはプリゴジンも承知していると主張した。反攻の準備を進めるウクライナに対し、アメリカを含む西側諸国は先進的な軍事装備品や戦車、ミサイルなどを支援している。
ギルキンはまた、プリゴジンがロシアのセルゲイ・ショイグ国防相への書簡の中でワグネルの撤退の可能性をちらつかせたと述べた。一方、ロイターは28日、プーチン政権からの支援が不十分なためにワグネルが多数の死傷者を出しているとのプリゴジンの発言を伝えている。
一方、ギルキンは29日、プリゴジンは過去にも「ロシア軍司令部とロシア軍全体の両方について非常に悪く言うことがあった」とテレグラムに投稿した。
ギルキンはウクライナ侵攻をめぐり、ロシア国防省にもプリゴジンに対しても非常に批判的な姿勢を取ってきた。3月にはプリゴジンの排除が「今すぐに必要だ」と述べている。
「彼の政治的野心はワグネルにも、ウクライナに対する勝利の大義にも害をなすだけだ。(プリゴジンの)精神病やワグネルの戦争犯罪、恥知らずで偽りだらけの自己顕示や軍に腐った『犯罪的な考え』を広める傾向は、さらに深刻になっている」とギルキンはテレグラムで述べている。
ギルキンは一方で、ロシア軍部隊もワグネルもともに前線から撤退する必要があると述べた。理由は「補給路の再編成を行い、前線の突破に向けてもっと見込みのある戦略的方法で(ワグネルの部隊を)使えるようにするため」だという。
●南アフリカがプーチン大統領側にサミットに来ないで 5/1
BRICS(新興5カ国首脳会議)で今年の議長国を務める南アフリカがロシア側にプーチン大統領の出席をやめるよう求めていると地元メディアが報じました。
南アフリカのサンデータイムズは30日、南アフリカ当局がロシア大統領府に対し、プーチン大統領のオンラインでの首脳会議出席を提案していると報じました。
ICC(国際刑事裁判所)がプーチン大統領に逮捕状を出していて、ICC加盟国の南アフリカはプーチン大統領が南アフリカへ入国する場合には逮捕しなければなりません。
南アフリカは一時、プーチン大統領を受け入れるためにICCを脱退する動きも見せましたが、今は一転してICCにとどまる方針を明らかにしています。
タス通信などロシアの国営メディアもサンデータイムズ紙の報道を引用して報じています。
●ロシア軍、兵たんトップの国防次官を交代 5/1
ウクライナ軍の反転攻勢に備えるロシア軍は4月30日、兵たん担当のトップに当たる国防次官の交代を発表した。
ロシア国防省は、数日前から解任のうわさがあったミハイル・ミジンツェフ大将と国家警備隊の元幹部アレクセイ・クズメンコフ大将が交代し、「クズメンコフ氏がロシア連邦の国防次官に任命され、軍の後方支援を担当する」と発表した。
ミジンツェフ氏は約1年前、ロシア軍がウクライナ東部の港湾都市マリウポリを占領した際、一部の西側メディアから「マリウポリの虐殺者」と呼ばれた。兵たん担当には昨年9月、ウラジーミル・プーチン大統領が部分動員令を発した数日後に任命されていた。
わずか7か月で解任された理由については明らかにされていないが、ウクライナ侵攻ではロシア軍の兵たんにおける問題が露呈しており、特に部分動員令により生じた混乱でそれが顕著になっていた。
●ウクライナ 近く大規模な反転攻勢の構え ロシアは備え強化か  5/1
ウクライナのゼレンスキー大統領は「重要な戦闘がまもなく始まる」と述べ、近く大規模な反転攻勢に踏み切る構えを示しています。一方、ロシア側は支配地域で防衛線を築いていると指摘されるなど、備えを強化しているとみられます。
ウクライナ軍のザルジニー総司令官は5月1日、未明の時間帯にロシア軍が18発の巡航ミサイルで攻撃し、このうち15発は迎撃したと発表しました。
ただしこの攻撃で、東部ドニプロペトロウシク州の当局は子ども5人を含む34人がけがをしたとしています。
ゼレンスキー大統領は4月30日「重要な戦闘がまもなく始まる」と述べ、大規模な反転攻勢が近いことを示唆しました。
反転攻勢について、欧米側はすでに1700両以上の戦闘車両を引き渡したとしていて、早ければ5月にも開始されるという見方がでています。
また、ロシアが一方的に併合した南部クリミアの軍港都市セバストポリにある燃料の貯蔵施設で4月29日に起きた大規模な火災について、ウクライナ軍の南部方面司令部の報道官は30日「大規模な攻撃に向けた準備だ」と述べ、ウクライナ側の関与を示唆しました。
破壊されたのは、およそ4万トンの燃料が保管できるロシア海軍の黒海艦隊の燃料施設で、無人機による攻撃だとも指摘されています。
こうした中、イギリス国防省は5月1日、衛星写真の分析から、ロシアが一方的に併合したクリミアの北側などのほか、ウクライナと国境を接するロシア領内の西部ベルゴロド州やクルスク州にも、ロシア軍がざんごうを掘るなど大規模な防衛線を築いていると指摘しました。そして「ウクライナが大きな突破を成し遂げる可能性があるというロシア指導部の深い懸念を浮き彫りにしている」と指摘し、ロシア側も反転攻勢への備えを強化しているとものとみられます。
「ワグネル」代表 “反転攻勢 15日までに始まる可能性”
ウクライナへの軍事侵攻に多くの戦闘員を投入している、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の代表プリゴジン氏は、ウクライナ軍の反転攻勢が5月15日までに始まる可能性があるという見方を示しました。
SNSで戦況を発信している、ロシアの軍事ジャーナリストとのインタビューで主張したもので「天候がよくなり戦車などは移動しやすくなってくる。15日には間違いなく反転攻勢に出るだろう」としています。
インタビューの動画は4月29日までに投稿されたものですが、実際にいつ発言したのか、それに15日という日付に具体的な根拠があるのかは分かっていません。
また、プリゴジン氏は弾薬不足を重ねて訴え、東部の激戦地バフムトからの撤退まで示唆していて、ロシア国防省への不満を表した形です。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は29日、「プリゴジン氏はウクライナ東部で守りに入るよう政権側を説得しようとしている。バフムト撤退の脅しは、後方のロシア側の陣地が反撃に対してぜい弱だという懸念を示しているとみられる」と分析しています。
“ロシア 少なくとも25の軍事会社が戦闘員を派遣か”
ウクライナへの侵攻を続けるロシアは、正規軍だけでなく、ワグネルなど少なくとも25の民間軍事会社が戦闘員をウクライナに派遣し、軍事侵攻に関わっているという見方がでています。
これは公開情報を元に調査を進める国際的なグループ「モルファー」が、4月24日に公表したものです。
それによりますと、ロシアでは、違法となっているものの37の民間軍事会社が確認され、そのすべてがプーチン政権と何らかの関わりを持っていると指摘しています。
37の民間軍事会社は、世界の34か国で活動しているとしていますが、7割近い25の民間軍事会社は、ウクライナで活動していると分析し、ウクライナの侵攻のためだけに設立された民間軍事会社も多数存在するとしています。
調査グループは、ロシアの民間軍事会社は戦闘員が仮に死亡しても正規兵に比べて、政府の補償など負担が少なく、紛争地への投入も容易にできることから近年、その数が急速に拡大していると指摘しています。
●ロシア、国境から遠く離れた場所に長大な塹壕か 英国防省が指摘 5/1
英国防省は1日、撮影された画像をもとに、ロシアが2014年に一方的に併合したウクライナ南部のクリミア半島北部だけでなく、国境から離れた本土の奥深くにも長大な塹壕(ざんごう)を掘っていると指摘した。
同省はこうした現象について「ロシア指導部がウクライナの反転攻勢の成功を恐れている」証しと指摘。その一方で、「一部は『ロシアはウクライナや北大西洋条約機構(NATO)から脅威にさらされている』と訴えるため、地方当局が独自に命じた可能性がある」ともした。
ロシア側は国境近くの地域がウクライナ軍から攻撃を受けていると主張するが、ウクライナ側は否定している。
●ウクライナ各地で死傷者、ロシアが新たなミサイル攻撃 5/1
ウクライナ軍は1日、同国東部や中部の各地がロシアの新たなミサイル攻撃を受け、死傷者が出たと報告した。
同軍によると、東部クラマトルスク、コスティアンティニウカ、パブロフラドや中部ドニプロペトロウスク州が標的となった。
ロシア軍はウクライナ軍や住宅地域に向けて27回の空爆を行い、多連装ロケットシステム(MLRS)から45発を撃った。市民に死傷者が出たとしているが、人数は公表されていない。
首都キーウでも同日早く、ロシアのミサイル攻撃を受けたが、ウクライナの防空能力で撃退したという。キーウ市軍政トップは「初期報告では、すべてのミサイルとドローンが我々の空軍によりキーウ上空で破壊された」との声明を発表した。
キーウでは人的、物的被害の報告はないという。
●ウクライナ、反転攻勢控え米欧と調整 ロシア軍、未明にミサイル攻撃 5/1
ウクライナのゼレンスキー大統領は4月30日、フランスのマクロン大統領と電話会談し、ロシアの侵攻を巡る情勢について1時間以上にわたり意見を交わした。ウクライナ軍のザルジニー総司令官も、米欧州軍のカボリ司令官と面会したと発表。政治と軍事の両面で、近く予想されるウクライナ軍の反転攻勢の見通しや、今後の支援方針について擦り合わせたもようだ。
ウクライナ大統領府によると、ゼレンスキー氏は電話会談で「前線の状況と5〜6月に想定される展開」を詳細に伝えたという。30日のビデオ演説では、会談について「勝利による戦争終結を早めるために、自分たちの態勢を調整している」と語った。
ザルジニー氏はフェイスブックで「(カボリ氏に)この先の行動の起こりうるシナリオと脅威、前提条件について説明した」と明らかにした。カボリ氏は北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍最高司令官を兼務している。
5月1日もロシアによるミサイル攻撃が続いた。ウクライナ軍によると、1日未明にロシアの爆撃機から巡航ミサイル18発が発射され、防空システムにより15発を撃破した。現地メディアは、東部ドニエプロペトロフスク州ではミサイル攻撃により少なくとも25人が負傷したと伝えた。
一方、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島セバストポリで4月29日に起きた燃料タンクの炎上については、ウクライナ軍の報道担当者が攻撃を認め、「誰もが期待している広範かつ本格的な攻勢の準備作業だ」と述べた。

 

●教皇「ウクライナ停戦に向け秘密任務を遂行中…必要なことする」 5/2
ローマ教皇フランシスコがウクライナ戦争の停戦に向け「秘密和平任務」を遂行中だと明らかにした。また、ロシア本土に連れ去られたウクライナの子どもの帰還のために努力すると述べた。
AP・ロイター通信によると、教皇は先月30日(現地時間)、3日間のハンガリー訪問を終えてバチカンに戻る際、飛行機で同行する取材陣に「大衆に公開されていない任務を進行中」とし「時が来ればこれについて明らかにする」と述べた。
教皇は「私はすべての必要なことをする用意がある」とし「和平は常に開かれたチャンネルを通じて実現する。意思疎通のチャンネルが閉じられていれば決して和平は来ない」と話した。
教皇はハンガリー訪問中、オルバン首相のほか、ハンガリーにあるロシア正教会の関係者とウクライナの和平について対話をしたと紹介し、「みんなが和平に進む道に関心を持っている」と伝えた。
また、教皇はロシアに強制移住させられたウクライナの子どもの帰還を助けるとし、「家族を再結合させるために可能なすべてのことをする」と明らかにした。
教皇は「すべての人間的な振る舞いは役に立つが、残忍な振る舞いは役に立たない」という発言もした。ロシア側の行為に対する迂回的な批判と解釈される。
教皇はローマ教皇庁が関与した両国間の捕虜交換過程がうまく進行したことに言及し「これ(子どもの帰還)もうまく進行しそうだ。極めて重要なことだ」と強調した。
先月27日、ウクライナのシュミハリ首相は教皇庁を訪問し、「ロシアに強制的に連れ去られた子どもたちを取り戻せるよう助けてほしい」と要請した。昨年2月にロシアがウクライナを侵攻して以降、ロシアが占領した地域から子ども約2万人がロシア本土に連れ去られたという。国際刑事裁判所(ICC)は先月、ロシアがウクライナの子どもを不法に移住させた行為が戦争犯罪に該当するとし、ロシアのプーチン大統領に対する逮捕状を発行した。一方、ロシアは安全ために子どもを移住させたと反論し、拉致疑惑を否認している。
●ロシアのバフムト攻勢「失敗した」と米推計、死者2万人以上か… 5/2
米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は1日、ウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトを巡る戦闘で、昨年12月以降のロシア側の死者数が2万人以上に上るとの推計を示した。このうち約半数が露民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員だという。カービー氏は記者団に、ロシアのバフムト攻勢は「失敗した」と述べた。
4月30日、ウクライナ東部バフムト付近で泥道を歩くウクライナ兵=AFP時事4月30日、ウクライナ東部バフムト付近で泥道を歩くウクライナ兵=AFP時事
ロシア側の死傷者は10万人を超えると推計し、「ロシアは軍事的な備蓄や戦力を使い果たしている」と指摘した。ワグネルの戦闘員は大半が受刑者で、「十分な訓練を受けずにバフムトの戦闘へ投入された」との見方を示した。ウクライナ側の死傷者数には言及しなかった。
4月30日、ウクライナ東部バフムト付近に集まるウクライナ兵=AFP時事4月30日、ウクライナ東部バフムト付近に集まるウクライナ兵=AFP時事
ウクライナ軍が計画する大規模な反転攻勢の開始時期については、「(ウォロディミル・)ゼレンスキー大統領が決断することだ」と述べた。ウクライナが反転攻勢に必要だとして求めた物資の提供は「ほぼ100%完了した」と明らかにした。
●米下院議長、ウクライナ支援に「賛成」 慎重姿勢から変化か 5/2
マッカーシー米下院議長(共和党)は1日、訪問先のエルサレムで記者会見し、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの軍事・経済支援に「賛成する」と明言した。これまで共和党内の慎重意見を踏まえ「白紙の小切手は切らない」と語っていたが、姿勢を変化させたと米メディアが注目している。
世界の軍事費、過去最高 ウクライナや東アジア情勢が影響―国際平和研
マッカーシー氏は、ロシア人記者が質問の中で「あなたは際限ない武器支援を支持していない」と述べたのに対し、「違う。私はウクライナ支援に賛成票を投じた」と反論。「私が支持しないのは、あなたの国がウクライナにしていることだ」と述べ、子供を含む民間人殺りくを非難した。 
●ロシア大統領、「非友好国」株主への配当支払い規則明確化指示 5/2
ロシアのプーチン大統領は2日、ロシア企業がいわゆる「非友好国」の株主に配当金を支払う手続きを「明確にする」よう政府に指示した。
ロシアは、ウクライナ侵攻を受けて自国に制裁を科した国を「非友好的」と見なし、非友好国企業の利益・配当の本国送金を制限するなどの対抗措置を講じている。
ロシア大統領府は、配当金支払いに関する提案は「居住者がロシアで生産を拡大し、新技術に基づく事業を展開し、ロシア経済に投資することを条件とする」べきだと述べた。プーチン大統領は、5月20日までに提案を出すよう政府に指示したという。
ロシアは先週、フィンランドのエネルギー会社フォータムと独電力大手ユニパーがロシア国内に保有する資産を一時的に管理下に置いた。ロシア企業に対する非友好国の攻撃的措置への対応とし、さらなる資産差し押さえ措置を講じる可能性があると指摘した。
●ウクライナ副首相、占領地の国民に「ロシア旅券取得拒否」を呼びかけ… 5/2
ウクライナのイリナ・ベレシュチュク副首相は1日、ロシアに占領された地域に住むウクライナ人に対し、ロシア旅券の取得を拒否するようSNSで呼びかけた。一方、ウクライナ最高会議(議会)の人権委員会は「生き残るため」の取得に理解を示し、当局の見解が分かれる事態となっている。
プーチン露大統領は4月27日、ロシア国籍を拒む住民の国外追放を可能にする大統領令に署名した。対象はロシアが一方的に併合した東部「ドネツク人民共和国」と「ルハンスク人民共和国」、南部ザポリージャ、ヘルソン両州。ロシア化を進める動きの一環とみられ、2024年7月1日までにロシア国籍を取得して旅券を受領するよう求めている。
ベレシュチュク氏はこの大統領令に対し、「ウクライナ人をロシア人にするのは不可能だ」と述べ、露軍への協力拒否や占領地からの脱出などを呼びかけた。
一方、ニュースサイト「ウクライナ・プラウダ」によると、ウクライナ議会の人権委員会は4月30日、「ロシア国籍を取得しなければ拘束されて人質になる恐れがある」と指摘。占領地のウクライナ人は厳しい選択を迫られている。
●ロシア戦死者、昨年12月以降で2万人超す 米政府が推定 5/2
ウクライナ侵攻によるロシア側の死者が、昨年12月以降で2万人を超えているとの見方を、アメリカ政府が1日に示した。うち半数は民間の雇い兵企業「ワグネル」の所属だとした。
米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官が、新たに機密解除された情報をもとに記者団に説明した。
カービー氏は、「私たちの推定では、ロシアは10万人以上の死傷者を出した。そのうち戦死者は2万人超とみられる」と述べた。
これらの人数について、BBCは独自に検証できていない。ロシアはコメントを出していない。
ロシアは東部の都市バフムートの占拠を狙い、昨年からウクライナと消耗戦を続けている。双方にとって、同市は象徴的な意味が大きい。現在、住民は数千人が残るだけになっている。
ウクライナ当局はこれまでに、バフムートの戦いで可能な限り多くのロシア兵を殺害し、ロシアの予備兵力を削ぐ考えを示している。ただ、ウクライナが現時点で掌握しているのは、同市のわずかな地域に限られている。
「ロシアの攻勢は裏目」
カービー氏はこの日、「ロシアが主にバフムートを通してドンバス地方で仕掛けた攻勢は失敗した」と説明。「ロシアは真に戦略的重要性のある領土を奪えていない」との見方を示した。
また、「ロシアの攻勢は裏目に出た。何カ月も戦闘を続け、多大な損失を被った」と述べた。
ウクライナ側の死傷者数については、「ウクライナは犠牲者で、ロシアが侵略者」であることから、推定は明かさないとした。
ロシアがバフムートを占領すれば、東部ドネツク州全域の支配という目標にわずかに近づく。同州は昨年9月、東部と南部の3州とともにロシアに併合された。
アナリストらは、バフムートに戦略的な価値はほとんどないとしている。ただ、めぼしい戦果を報告できていないロシア軍司令官らにとっては、重要な場所になっているという。
ワグネルのトップが撤退に言及
同市におけるロシアの攻撃は、ワグネルが中心となっている。
ワグネルのトップのエフゲニー・プリゴジン氏にとっては、バフムート制圧の可否に、自らとワグネルの評価がかかっている。
だが、プリゴジン氏は最近、バフムートからの部隊を撤退をちらつかせている。
ロシアの有名戦争ブロガーとのインタビューでは、ロシア国防省から必要な弾薬が提供されなければ戦闘員らを引き揚げると述べた。
そして、戦闘員らは西アフリカのマリに送ることになるかもしれないとした。
プリゴジン氏は、ワグネル戦闘員らがロシア国防省から十分な支援を受けていないとし、同省としばしば衝突している。
同氏はまた、ロシアのメディアと軍指導者たちに対し、ウクライナの春の反攻を前に「すべて大丈夫だと言って、ロシア国民にうそをつくのをやめる」よう求めている。
さらに、ウクライナ軍について、「見事で正しい軍事作戦」と、その指揮をたたえている。
状況は「困難」とウクライナ司令官
ウクライナ地上部隊のオレクサンドル・シルスキー司令官は1日、バフムートでの反撃によって、ロシア部隊をいくつかの拠点から撤退させたと、テレグラムに投稿した。だが、状況は依然として「困難」だと述べた。
同司令官はまた、空挺部隊やワグネル戦闘員などの新たなロシア部隊が、大きな損失を被りながら「絶えず戦闘に投入されている」と説明。
「だが、敵が街(バフムート)を支配することは不可能だ」 とした。
●ロシア軍 東部の激戦地バフムトの完全掌握へ 攻撃強める  5/2
ロシアでは、5月9日に第2次世界大戦の戦勝記念日が近づく中、ウクライナ東部の激戦地バフムトの完全掌握をねらい攻撃を強めています。一方、バフムトなどで、ロシア側の死傷者はおよそ10万人に上るとの見方が出ています。
ロシアでは5月9日の第2次世界大戦の戦勝記念日が近づく中、ロシア軍は東部ドネツク州の激戦地バフムトの完全掌握にむけて攻撃を強めていて、プーチン政権としては国民に戦果を示したいねらいもあるとみられます。
これに対してウクライナ陸軍のシルスキー司令官は2日、SNSでバフムトを訪問したと明らかにし「われわれは防衛作戦を続け、敵を阻止していく」などと述べ、徹底抗戦するとして兵士を激励しました。
一方、アメリカ ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は1日、バフムトとその周辺におけるロシア側の死傷者は去年12月以降、およそ10万人に上るとの見方を示しました。
このうち2万人以上が死亡し、その半数はロシアの民間軍事会社ワグネルの戦闘員だとしています。
バフムトの戦況について、ワグネルの代表のプリゴジン氏は弾薬不足を重ねて訴え、バフムトからの撤退まで示唆していて、ロシア国防省への不満を表しています。
こうした中、ロシア国防省は4月30日、軍事物資の補給部門を統括する国防次官についてミジンツェフ次官を交代させ、新たにクズメンコフ氏が就任したと明らかにしました。
国防次官の交代について理由などは明らかにされていませんが、イギリス国防省は2日、「ロシア軍が補給問題でいかに苦戦しているかを浮き彫りにしている。攻撃が成功できる十分な弾薬を保有していない」と指摘しました。
そして、弾薬不足の問題がロシア国防省とワグネルの確執も引き起こしているとしたうえで「ロシアの政治指導者は戦場で成果を要求するが、一方で補給部門の担当者たちは板挟みにあっている」として、軍事物資の補給が依然、大きな課題になっていると分析しています。
ロシアの攻撃でウクライナ側は3人が死亡
ウクライナのゼレンスキー大統領は、30日から1日にかけて行われたロシア軍による各地への攻撃の被害について、1日夜、大統領府のホームページで明らかにしました。
それによりますと、ウクライナ東部ドニプロペトロウシク州のパウロフラードでは2人が死亡したほか、40人以上がけがなどをして手当てを受けたということです。
また、北部のチェルニヒウ州にある村では学校が攻撃を受け、近くにいた14歳の男性が死亡したということです。
ゼレンスキー大統領は「こうした攻撃の一つ一つに対し、侵略者ロシアはわれわれからの報いを受けることになる」と述べて、ロシア側に対し反撃を続けていく考えを示しました。
●北部チェルニヒウ州で学校に被害も ウクライナ各地でロシアのミサイル攻撃続く 5/2
ウクライナ情勢です。東部の戦闘でのロシア側の死者について、アメリカ政府高官は去年12月以降の5か月間で2万人を超えたとの推計を明らかにしました。一方、ウクライナ各地でロシア側のミサイル攻撃は続いています。
ウクライナ各地では、1日もロシア側の攻撃が続き、ゼレンスキー大統領はパブログラードで2人が死亡したと明らかにしました。北部チェルニヒウ州では学校が被害を受けたということです。
ウクライナ ゼレンスキー大統領「この攻撃は2009年生まれ、14歳の少年の命を奪いました。学校の近くにいただけなのに」
一方、この日、ロシア西部ブリャンスク州では、石油製品などを運んでいた貨物列車が脱線し炎上。けが人は出ていませんが、州知事は「爆発装置が作動した」と主張しています。前日には、ウクライナ軍による砲撃で住民4人が死亡したということです。
こうした中、アメリカ政府のカービー戦略広報調整官は、激しい戦闘が続くウクライナ東部の要衝バフムトやその周辺でのロシア側の死傷者が、去年12月以降だけで10万人以上にのぼるとの推計を明らかにしました。死者は2万人を超え、その半数近くは民間軍事会社「ワグネル」が手配した戦闘員だとしています。

 

●ロシア ショイグ国防相 ミサイルなど兵器の製造を急ぐよう指示  5/3
ロシアのショイグ国防相は軍需産業に関わる企業に対し、ミサイルなど兵器の製造を急ぐよう指示したと明らかにしました。欧米の軍事支援を受けるウクライナが近く反転攻勢に乗り出す構えを示す中、ロシアは兵器製造を強化し侵攻を続ける考えとみられます。
ウクライナでは2日、南部ヘルソン州でロシア軍による砲撃を受け地元当局は市民3人が死亡し5人がけがをしたと明らかにしました。
また、東部ドネツク州の激戦地バフムトをめぐり、ウクライナ軍の参謀本部は「激しい戦闘が続いているがウクライナ軍は持ちこたえている」と発表しました。
バフムトとその周辺について、アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は1日、ロシア側の死傷者は去年12月以降、およそ10万人に上るとの見方を示していますが、ロシア大統領府のペスコフ報道官は2日「完全にでたらめだ」と反論しています。
ロシア軍はバフムトの完全掌握に向けて攻撃を強めていて、プーチン政権としては今月9日のロシアの第2次世界大戦の戦勝記念日が近づく中、国民に戦果を示したいねらいもあるとみられます。
一方、ロシアのショイグ国防相は2日、軍の幹部を集めた会議で「ウクライナでのロシア軍の活動は兵器や軍装備の補充に大きく依存している」と述べ、軍需産業に関わる企業に対し兵器の製造を急ぐよう指示したと明らかにしました。特にミサイルについては短期間で倍増させるよう求めたとしています。
ロシア国防省は先月30日、軍事物資の補給部門を統括する国防次官を交代させたと発表したばかりで、弾薬など兵器不足が深刻化していると指摘されています。
ウクライナが欧米側の軍事支援を受け近く反転攻勢に乗り出す構えを示すなか、ロシアは兵器製造を強化し、侵攻を続ける考えとみられます。
●ウクライナ反攻の予兆か 戦勝記念日前、ロシアで爆発相次ぐ  5/3
ウクライナではロシアの侵攻が続く中、ゼレンスキー政権側が予告した大規模な反転攻勢がいつ始まるかが焦点となっている。
けん制目的とみられるロシア軍の空爆が激しさを増す一方、ロシア側で爆発が相次ぎ、反転攻勢の予兆という見方もある。
ロシアが支配するウクライナ南部クリミア半島では4月29日、ドローンによるとされる攻撃で燃料タンクが炎上。5月1日には国境近くのロシア側で、貨物列車が爆発に見舞われ脱線した。
緊張の高まりを受け、5月9日の対ドイツ戦勝記念行事は地方で次々と中止が決まった。プーチン大統領の「弱さ」と受け止められれば、大統領選前の求心力低下につながりかねない。
ロシア側による全域制圧が間近といわれた東部ドネツク州の激戦地バフムトの情勢も流動的だ。ウクライナのシルスキー陸軍司令官は4月30日に前線を視察。「敵は市内の一部で反撃を受け、複数の陣地から撤退した」と主張した。
シルスキー氏は「(ロシアは)大損害にもかかわらず(民間軍事会社)ワグネルの突撃部隊、他の民間軍事会社、空挺(くうてい)部隊を投入し続けているが、市全域を制圧できていない」と戦況を分析した。事実なら、新たな民間軍事会社に依存せざるを得ないほど、ワグネルが弱体化した可能性がある。
ワグネル創設者プリゴジン氏は最近、対立するロシア国防省に不満を表明。「不足する弾薬が補充されなければ(バフムトから)部隊を撤退させざるを得ない」と述べた。ウクライナ軍の反転攻勢が5月15日までに始まると予想した。
一方、ゼレンスキー大統領は北欧メディアの取材に対し、反転攻勢の時期は明らかにしなかったが、準備していると確認。成否は西側諸国の武器供与次第という考えを示した。「われわれがクリミア半島に迫れば、ロシア人は逃げ惑うだろう」と語り、軍事力による奪還を示唆した。
●なぜロシアは制裁に屈しなかった? 世界の基軸通貨は米ドルから人民元に? 5/3
ロシアのウクライナ侵攻から1年余りが過ぎた。西側諸国による厳しい経済制裁にもかかわらず、プーチン大統領は「勝利を確信している」と強気の姿勢を崩さない。核兵器の使用をほのめかし、友好国のベラルーシに戦術核兵器の配備を宣言。明白な侵略戦争を、いまも“特別軍事作戦”と正当化する姿は独裁者そのものだが、そのロシアを水面下で支えているのが中国である。
中国の狙いは、米国に取って代わり世界に冠たる覇権国家になることだ。習近平国家主席はその野望を隠そうともしない。複数の偵察用気球を飛ばして超大国・アメリカの領空を侵犯しながら、気球が米軍に撃墜されると謝罪どころか「明らかに過剰反応であり、厳重に抗議する」と開き直ったのは記憶に新しい。
背景には習氏の覇権主義(ヘゲモニズム)がある。自分たちの考え方や制度を世界標準とし、それに他国を従わせて自国の利益を確保するやり方ともいえる。覇権主義国家は世界の人々が生きていくために必要なモノやサービスの独占を狙う。水や食料、原材料、エネルギー、そして物流だ。これらを支配できれば自分たちに逆らう国はなくなるからである。
人民元を世界の基軸通貨に据えようと画策
いまや覇権主義をむき出しにする中国は、自国通貨の人民元を米ドルに代わる世界の基軸通貨に据えようと画策している。その狙いを解説する前に、基軸通貨とは何かを説明しておこう。
グローバルビジネスの現場では、決済の際に世界のどこでも通用し、価値が安定している通貨が必要だ。これが基軸通貨であり、現在は米ドルがそれに当たる。最近はクレジットカードでの支払いが主流だが、私たちは海外旅行や出張の際、円を訪問先の国の通貨に交換する。しかし、いまもアジアや中東、アフリカでは米ドルでの支払いが可能なことが多い。理由は、米ドルが基軸通貨として高い信用を勝ち得ているからだ。
極めて有効な戦略兵器を保持することと同義
誤解を恐れずに言えば、基軸通貨を保有することは極めて有効な戦略兵器を持つことと同義だ。最も大きなメリットは世界で通用する通貨を自国で生み出せる点にある。例えば、100ドル札の原価はわずか20セントほど。アメリカは100ドル札を1枚印刷するだけで、原価の500倍ものモノやサービスを世界中で手に入れることができる。
もちろん、無計画に刷ればハイパーインフレを招きかねない。だからアメリカは各国に国債を売りつけて、その価値を担保している。現在のアメリカの債務残高は30兆ドル超で、円に換算すると4千兆円に達する。アメリカは世界一の借金国だが、それでも超大国の地位を維持できているのは米ドルに基軸通貨という信用があるからに他ならない。これこそが、アメリカが超大国として君臨し続ける力の源泉ともいえる。
決済の際、為替の変動リスクがないことも大きなメリットだ。私たちが海外の旅先で円を米ドルに両替する時、為替市場が円高ドル安なら得をするが、逆の場合は損をする。それが数十億ドルから数百億ドルという額のビジネスシーンだったらどうか。為替差損を被るリスクがないことが、いかに大きな強みなのかが分かるだろう。
世界中の取引、資金の流れを把握
基軸通貨は他国と交渉する際の大きな“武器”にもなる。2014年にはフランス最大手の銀行BNPパリバが、アメリカが金融制裁の対象としていたスーダンやイランなどと金融取引を秘密裡に続けたとして、アメリカ政府から総額89億ドル(約9千億円)もの罰金を科された。翌15年には外国為替市場における指標レートを不正に操作した、イギリスのロイヤル・バンク・オブ・スコットランドなど金融6社が数千億円規模の制裁を科されている。
こうした海外の金融機関による不正を、アメリカ政府はどうして把握できたのか。それは、国際貿易のおよそ6割が米ドルで決済されているからだ。米ドル決済とは、アメリカの金融機関を通じた決済を意味する。つまり、アメリカ政府は自国の金融機関を介して世界中の政府機関や企業の取引、資金の流れを把握できるのだ。しかも、利用される金融機関は手数料収入による莫大な利益を手にしている。
各金融機関に蓄積される、グローバルな商取引データは膨大で、貿易の最新トレンドの把握や将来的な成長産業などを見極めることにも役立つ。基軸通貨の保有は、世界経済を支配することに限りなく近い。
なぜ基軸通貨になることができた? 
米ドルが世界に基軸通貨として認められた経緯はこうだ。第2次世界大戦後、戦勝国のアメリカは欧州各国から、貸付金や輸出品の代金を、信用力が落ちた各国の通貨の代わりに金(ゴールド)で回収し、世界最大の金保有国となった。その後、アメリカは国の復興を急ぐ各国との貿易に力を注ぎ、「米ドルでの決済」を定着させていった。
本来なら建国から200年にも満たない国の通貨は信用力に乏しい。ところがアメリカには大量の金があった。1944年にスタートした金ドル本位制=ブレトン・ウッズ体制が戦後の金保有量の増加でより強固になり、米ドルが国際的な基軸通貨として定着したのである。1ドル=360円とされたのもこの頃のことだ。
この金本位制は1971年にニクソン大統領が米ドルと金との兌換を停止した、いわゆるニクソンショックによって終焉(しゅうえん)を迎えた。概念的には金の裏付けがなくなることから米ドルの価値が下落する危険性が高まるが、当時ニクソン政権で国家安全保障担当の大統領補佐官だったキッシンジャーは、世界中のモノやサービスの決済で米ドルが使われ続ければ、将来も米ドルが基軸通貨として君臨できると考えた。
ペトロダラー制
1970年代は世界のエネルギーのほぼ100%が石油に依存していた。そこで彼は、原油取引の決済をドルに固定すれば、あらゆる国や地域の経済活動を支配下に置けることに気付く。金とドルの交換が停止されると、キッシンジャーは政情が不安定だった中東諸国を訪問。先々でアメリカが中東地域の平和を担保すると申し出る一方、見返りとして各国が原油を輸出する際は必ず米ドルで決済することを求めた。各産油国は圧倒的な軍事力を誇るアメリカの要求を受け入れ、この商慣習が定着した。
原油が「1バレル=〇ドル」と決済されるのは、この時からである。やや古い表現ながら、国際金融の世界では金ドル本位制を廃止した後の体制を「ペトロダラー制」と呼ぶ。“石油本位制”というイメージで、とくに80年代に多用された。
改めて指摘すると、産油国が米ドルでの決済を受け入れた最大の理由は、アメリカが世界最強の軍事力を保有していたからだ。ところが、最近は超大国・アメリカのプレゼンスが低下しつつあり、対照的に軍事的にも経済的にも中国の台頭が著しい。アメリカや欧州は中国を「価値観の共有ができない国」と非難するが、その背景には「中国は西側の標準に従わないけしからん国」とのホンネがある。戦後、民主主義陣営が培った国際秩序が脅かされていると感じているのだ。
「決済を米ドルから人民元に変えてほしい」
第2次大戦後、国際社会における法のスタンダードは英米法とされた。いまでも国際金融の世界における基準は英米法であり、世界の共通語も英語だ。ものづくりの基準も、かつてイギリスが作ってアメリカが世界に普及させたISO(国際標準化機構)規格である。企業の会計基準も英米式に倣うというように、世界経済は英米が用意した基準で動いている。
中国はそんな既存の秩序の変更に敢然と挑んでいる。象徴的な出来事が、昨年12月の習氏によるサウジアラビアへの訪問だ。習氏はGCC(湾岸協力理事会)にも出席し、周辺国の首脳たちに経済関係などの緊密化を提案した。その際、「輸出される原油の決済を米ドルから人民元に変えてほしい」と臆面もなく訴えている。この時、習氏は「サウジとイランの懸け橋になりたい」と両国の仲介も申し出ており、4月6日に行われた7年ぶりのサウジとイランの外相会談を演出した。
一連の習氏の動きに、私は「いよいよ来たな」との印象を禁じ得なかった。中国で社会主義市場経済が始まった94年〜95年ごろ、勤務先の金融機関で中国政府に対する資金の貸し付けを担当していた時のことだ。中国の財務部職員から「おかしいと思わないか? どうして原油は米ドル決済と決まっているんだ。どうして日本は円で決済しないんだ? 日本はGDP世界第2位の経済大国じゃないか」と言われた。30年近くも前から、中国はペトロダラー制に強い不満と疑問を感じていたのだ。
急速にムハンマド皇太子との関係を悪化させたバイデン大統領
先の習氏の動きで重要なのは、訪問先が世界第3位の石油産出国であるサウジアラビアだったことだ。習氏は首都・リヤドの王宮で、サルマン国王より先にムハンマド皇太子と会談した。確かに皇太子は将来の国王と目され、国政に大きな影響力を持つ実力者だ。が、私はこの背景に、2018年に起きたサウジアラビア人記者のジャマル・カショギ氏の殺害事件があるとみている。
かねてカショギ氏は、ムハンマド皇太子に批判的な言説で知られ、17年に拠点をアメリカに移してからもサウジアラビアにおける言論弾圧の実態や、隣国のイエメンで続く内戦への介入を激しく批判する記事を発表していた。その矛先は主に皇太子で、それが原因でカショギ氏は訪問先のトルコのサウジ領事館内で殺されたとみられている。
ムハンマド皇太子は、イラン核合意から離脱するなど対イラン強硬派だったトランプ前大統領と親しい関係にあった。ところがバイデン大統領は、悪化したイランとの関係を修復する方針を掲げた。カショギ氏の不審な死についても「ムハンマド皇太子が暗殺作戦を承認した」とするCIAの報告書を公開し、急速に皇太子との関係を悪化させた。習氏はそこにつけ込み、実力者の皇太子に「この際、ドルでの決済を人民元に」とオファーしたのである。
米ドルの弱体化
中国がサウジアラビアに決済通貨を米ドルから人民元に乗り換えるよう求めた理由は明らかだ。大国のサウジが動けば他のGCC諸国も同調すると見込んでいるからで、すでに多くの国際金融の専門家が「いずれサウジは人民元での決済を受け入れる」とみている。早ければ今年が“ペトロダラー制崩壊元年”になるかもしれず、それは米ドルの基軸通貨たる地位からの失墜を意味する。アメリカだけでなく、日本や西側諸国にとって最悪のシナリオだ。
昨年、米ドル基軸通貨体制を大きく揺るがす事態が勃発した。発端はロシアのウクライナ侵攻である。アメリカはロシアを潰す絶好の機会と捉えた。今後、圧倒的な経済力を背景に軍備の増強や挑発行為を繰り返す中国が、ロシアと共同でアメリカに対抗してくれば安全保障上の懸念が増大するからである。
弱い方からたたく方針を取ったアメリカは、2021年3月には、バイデン大統領は記者からの「プーチン大統領を人殺しと思うか」との問いに「イエス」と答えた。さらに侵攻開始の6日前には「現時点でプーチン大統領は(侵攻を)決断したと確信している」とロシアをあおった。プーチン大統領はその挑発に乗って軍事作戦を開始した。
バイデン大統領は金融面でロシアの“首”を絞めれば、プーチン大統領はすぐに音を上げると踏んでいた。“首”とは米ドル決済を拒否する措置のことで、SWIFT(国際銀行間通信協会・銀行間の国際金融取引に関するネットワークシステム)からの追放である。
SWIFTにはおよそ200の国や地域から、1万1千を超える金融機関が参加している。通信システムには、「いつ、誰が、どこで、誰から、何を買い、どれだけの対価を支払ったのか、それはどこで決済されるのか」といった情報が流れている。システムが利用できなくなれば、ロシアは一切のグローバル決済ができなくなる。本来なら、その時点でロシアはお手上げ状態に陥るはずだった。
米ドルを駆逐する千載一遇のチャンス
ところが、プーチン大統領は各国に自国通貨のルーブルでの決済を求めた。西側を含むロシア産の原油やガスに頼る国々は輸入を途絶えさせるわけにいかず、すぐにルーブルの調達を始めた。為替市場はドル安ルーブル高に振れ、ドル決済の比率が低下し、逆にルーブル決済の比率は上昇した。一時的なものとはいえ、この現象は米ドルの基軸通貨としての評価が弱まったことを意味する。中国はこれを米ドルを駆逐する千載一遇のチャンスと捉えた。その第一手が、習氏のサウジ訪問だったのである。
ところで、ロシアは原油と天然ガスの産出量がともに世界2位の資源国だ。数年前、ロシアの金融機関の関係者が「米中が半導体分野で覇権争いを繰り広げているが、俺たちが工業用ガスの輸出を止めたらどうするんだろうな」などとうそぶいていた。
現時点でロシアからの輸入に依存している国は、CIS(独立国家共同体)に加盟する10カ国をはじめ、統計ではおよそ50カ国に上る。世界の国数は196だから、約4分の1がロシアとの取引をやめるわけにはいかないのが現状である。
国際経済秩序の崩壊
欧米による制裁の失敗は、この点を軽視したことにある。ロシア産の天然ガスにはフィンランドやバルト3国、ポーランド、ドイツなどが大きく依存しており、小麦やトウモロコシ、食用油などの食料が世界中に輸出されている。原材料では軍需産業や半導体の生産に必須のニッケルをはじめ、白金や金、ダイヤモンドも大量に採取されている。半導体の生産に必要なネオンガスなどの工業用ガスは、いまも主要な製造国がロシアに頼っている。
ところで、経済は商品やサービスを扱う「実体経済」、預金や金融商品がメインの「金融経済」、そして軍事産業が主導する「軍需経済」に大別される。戦後のアメリカは「実体経済を束ねるもの」として金融経済を重視し、その上で他国を圧倒する軍事力を保持していれば実体経済を押さえられると考えた。が、ウクライナ侵攻を機に、世界には「金融経済より実体経済が重要」との認識が広まった。私を含む国際金融の専門家たちは、激しさを増す欧米とロシアのせめぎ合いを「実体経済の中ロvs.金融経済の英米」との構図で捉えている。
この争いはどちらに軍配が上がるのか。私には実体経済を押さえているロシアが有利で、欧米が堅持してきた金融経済の優位性が崩れていくとの予感がある。残念なことだが、それは米ドルを基軸通貨とする国際経済秩序の崩壊の始まりを意味する。
ロシアには豊富な天然資源やエネルギーのほかに、多くの食料生産拠点がある。そのロシアに接近する中国も、現在は世界のものづくりのおよそ3割を占めるとされるほど実体経済が強い。歴史的にロシアは中国を嫌ってきたが、自国が欧米から包囲網を敷かれている現在は「敵の敵は味方」である。日増しに強まる中ロの結びつきは、世界にとって大きな脅威と化している。
デジタル人民元の脅威
あまり知られていないが、中国は2018年から「人民元版SWIFT」とも言うべきCIPS(人民元決済システム)という独自の国際決済システムを運用している。米ドル基軸通貨体制を揺さぶるツールの一つだが、すでにロシアはこれを利用しており、他国にもその輪は広がりつつある。こうした中国の戦略的な動きは加速する一方だ。
無論、バイデン大統領は危機感を強めている。日本をはじめ西側諸国にサプライチェーンの見直しを訴え、半導体などの戦略物資の生産を自国か同盟国内に限定し始めた。昨年5月にアメリカが旗振り役となって日本やオーストラリア、インド、フィリピンなど14カ国が参加したIPEF(インド太平洋経済枠組み)を発足させたのはその一環だ。
中国が通貨における覇権の奪取を企図するデジタル人民元の推進も同様だ。一般に誤解があるようだが、中央銀行デジタル通貨(CBDC)は暗号通貨(仮想通貨)とはまったくの別物だ。暗号通貨とは、ブロックチェーンやスマートコントラクトなどの技術を用いた取引の仕組み自体が価値を裏付ける通貨で、デジタル通貨は既存の法定通貨と同様、国家・中央銀行が発行と管理を担う。ちなみに日本では、2021年からデジタル円の実証実験が始まっている。
このデジタル通貨の世界において、アメリカは「米ドルのデジタル通貨が国際標準」と主張し、中国は「デジタル人民元こそ、世界中の決済で使われるべきだ」と訴えているのである。
デジタル通貨の決済では金融機関の介在を必要としない。A社とB社が共通のデジタル通貨を保有していれば、現金取引のように直接決済ができるからだ。極めて利便性が高いが、それでも導入が遅々として進まない理由には、銀行などの消極姿勢がある。金融機関の仲介を経ない通貨が普及すれば、莫大な手数料ばかりか、金融機関そのものの存在意義を大きく失うことにつながる。
デジタル人民元の浸透に加担する日本企業
それは中国も同じだが、現時点では中国が一歩リードしている印象が強い。理由は金融先進国のアメリカやイギリスでは金融機関の発言力が強く、彼らが導入に及び腰だからだ。その点、中国のすべての金融機関は中国共産党の統制下にある。
巨額の損失が生じようとも、政府が割り切ってデジタル人民元の普及を優先すれば、金融機関はそれを受け入れざるを得ない。その中国では、国営企業の一部は給与の半額をデジタル人民元で支払い始めている。習氏は独裁国家ならではのスピード感で、デジタル人民元を浸透させるべく動いているのだ。
結果的に、ではあるものの、その中国に加担している日本企業がある。東南アジアでグローバル展開を進めているユニクロがその一社だ。ユニクロは中国で人気があり、全国におよそ900もの店舗を持つ。すでに中国政府はユニクロにデジタル人民元での決済を求めている。中国国内の店舗に限るが、日本企業がデジタル人民元の拡大に一役買う形になっているのだ。今後はタイやマレーシアのユニクロでも、デジタル人民元での決済が可能になるとみられる。いずれアジアの大半のユニクロでは、デジタル人民元しか使えなくなるかもしれない。
タイはデジタル人民元に協力的な国の一つだ。現政権を率いるのは元陸軍司令官のプラユット首相で、元軍人だけに中国人民解放軍とのつながりが深い。いまやタイ政府は、デジタル人民元の本格的な導入を検討している。中国はタイの高速鉄道整備計画に協力しているが、両国の経済力の差はあまりに大きい。将来的には中国がタイの鉄道網を実質的に支配するだけでなく、デジタル人民元の普及によって、中国の経済圏に飲み込まれる危険性すら指摘されている。
米中覇権争いの行方
では、米中のデジタル通貨を巡る覇権争いの行方はどうなるのか。仮に米ドルが“デジタル基軸通貨”の地位を得たとしても、競争は終わらない。デジタルルピー(インド)といった第三極の登場も予想されており、地球規模でデジタル通貨圏を巡る“陣取り合戦”が始まるだろう。少しでも多くの国や地域を取り込めば、それだけ広い経済圏を支配下に置けるからだ。
来たるべき新たな通貨秩序にわれわれはどう備えればいいのか。それは日本を世界が依存する強靭な国家にすることだ。ロシアは戦時下にありながら、エネルギーや物資をタテに、ウクライナを支援する西側の国々をけん制し、経済制裁で譲歩を迫った。同様に、われわれは世界の国々が日本に頼らざるを得ない環境を構築すればいい。それは国際社会における、日本のプレゼンスを増すことにもつながるだろう。
今後も大幅に需要が高まる半導体などの核心部品と、その製造装置の供給が日本の大きな“武器”になる。いまでこそ、台湾や韓国の半導体が世界を席巻しているが、その生産には日本の製造装置が不可欠だ。こうした日本にしか作り得ない、高度な技術による製品がカギを握っている。
世界に類を見ない新素材の開発も有効だ。川崎市には、砂から鉄を生み出す素材の研究を進めている企業がある。実用化されれば、日本は鉄鉱石を輸入せずに済むようになる。こうした先進技術を誇る日本企業は、全国に散在している。
「ものづくり」を戦略的に展開
さらに、グローバルメンテナンスという視点も大きな意味を持つ。日本独自の製品や製造装置、あるいは製造ラインを輸出するだけでなく、現地での維持管理や修理を担うことだ。時には契約が数十年という長期にわたるケースもあり得るので、リユースやリサイクルといったSDGs思想にもつながる。
日本が誇る高度な技術はいまも健在だ。世界が必要とする「ものづくり」を、国を挙げて戦略的に展開する。これこそが、日本を大国の思惑に翻弄されない強くたくましい国家に生まれ変わらせる道である。
●2日連続で列車脱線 「爆発」「破壊工作」主張 ロシア 5/3
ウクライナと国境を接するロシアのブリャンスク州で2日、前日に続いて貨物列車が脱線し、直後にボゴマズ知事が「(線路で)爆発物がさく裂した」と再び主張した。
地元メディアによると、関係筋は「同じ破壊工作グループの仕業の可能性がある」と指摘したが、詳細は不明だ。
1日はウクライナやベラルーシとの国境近くで石油製品や建材などを輸送する貨車のうち7両と機関車が脱線し、一部が炎上した。2日は貨車20両が脱線。火災は起きなかったが、積んでいた硫黄や硝石などが流出したという情報がある。現場は州都ブリャンスク郊外で、前日に比べて都市部に近い。けが人は伝えられていない。
モスクワでの対ドイツ戦勝記念行事を9日に控える中、ウクライナのゼレンスキー政権が近く大規模な反転攻勢を開始するとの見方が出ている。プーチン政権は警戒を強める一方、緊張の高まりに乗じて国内を引き締め、「祖国防衛」の宣伝に利用している側面もある。 
●ロシア、ウクライナがドローンで大統領府攻撃と主張 ウクライナは否定 5/3
ロシア政府は3日、クレムリン(ロシア大統領府)を狙った2機のドローンを撃墜したと発表した。ウクライナがウラジーミル・プーチン大統領を暗殺しようとしたと非難している。ウクライナは、一切の関与を否定している。
ソーシャルメディアに投稿された未検証の映像では、小型の物体がクレムリン上空を飛行した後、小規模の爆発を起こす様子が映っている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の報道官は、ウクライナは現在、ロシアに侵攻された自国領土の解放に注力していると述べた。別のウクライナ政府関係者はBBCに、この件はロシアがウクライナで「大規模で挑発的なテロ行為の準備をしている」兆候だと話した。
ロシアが昨年2月にウクライナ侵攻を開始して以来、両国はしばしば相手を非難し、非難された側はそれを否定するというやりとりを繰り返している。
ロシア政府は、クレムリンを狙ったドローン2機を電子レーダーで無効化したとしている。プーチン大統領の報道官によると、大統領は当時クレムリンにいなかった。
クレムリンは声明で、「キエフ(ロシア語でキーウ)の政権は昨夜、ロシア連邦の大統領のクレムリン公邸を無人航空機で攻撃しようとした」と述べた。さらに、ロシアは「これを計画的なテロ行為で大統領暗殺を意図した行為」とみなすとして、「我々が必要とみなす報復策をどこでも、いつでも実行する権利を保有する」と主張した。
ロシアはプーチン氏に対して厳重な身辺警護を徹底している。BBCのスティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長は、ドローンがクレムリンに接近できるなど驚嘆すべきことだと話した。
クレムリンによるとプーチン氏は無傷で、執務を予定通り続ける。3日にはモスクワ郊外のノヴォ・オガリョヴォにいたという。
ロシアのソーシャルメディアに投稿された映像には、3日未明のモスクワ上空に煙がたなびいている様子が映っている。
クレムリンによると、ドローンの破片がクレムリン敷地内に落下したものの、負傷者はなく、建物への損傷もなかった。
クレムリンはさらに、9日には第2次世界大戦で旧ソ連がナチス・ドイツに勝利したことを祝う「戦勝記念日」を控えており、式典には外国から複数の要人が出席する予定だと指摘。戦勝記念日のパレードは予定通り行われると、ロシアのメディアは伝えた。
これに対してウクライナのセルヒイ・ニキフォロフ大統領報道官は、「モスクワでの出来事は明らかに、5月9日を前に状況をエスカレートさせるためのものだ」との見方を示した。
ウクライナ大統領顧問のミハイロ・ポドリャク氏は、これを機にロシアはウクライナの民間施設や民間人を標的にすることを正当化するかもしれないと話す。あるいは、ロシア国内の「抵抗勢力によるゲリラ活動」の可能性も指摘した。
「ロシア連邦で何かが起きている。しかし、ウクライナのドローンがクレムリン上空を飛んだなど絶対にあり得ない」と、ポドリャク顧問は強調した。
米中央情報局(CIA)出身で元国務省幹部のミック・マルロイ氏はBBCに、出来事の報告が正確ならばプーチン氏への暗殺未遂だったことは「ありえない」と指摘。ウクライナはプーチン氏の行動を逐一追跡しており、当時プーチン氏はモスクワにいなかったからだという。
「ロシアの人たちに、我々はいつでもどこでも攻撃することができる、ロシアがウクライナで始めた戦争はやがてロシアに到達する、ひいては首都にも到達すると、示すための行動だったのかもしれない」と、マルロイ氏は話した。
逆に、もしドローンについての報告が事実と異なる場合、「ロシアはこれを口実にゼレンスキー大統領を標的にするため、この事案をでっち上げたのかもしれない。ロシアはこれまでもゼレンスキー氏を狙ってきた」からだと、マルロイ氏は指摘した。
●米、「プーチン氏暗殺未遂」へのウクライナ関与真偽まだ確認できず 5/3
米ホワイトハウスは3日、ウクライナがロシアのプーチン大統領殺害を狙いクレムリンをドローン(無人機)で攻撃したというロシア側の主張を認識しているとしつつも、現時点で真偽の確認は取れていないという認識を示した。
ロシア大統領府は3日、ウクライナが夜間にドローンを使ってプーチン大統領殺害を図ったものの未遂に終わったと表明した。ウクライナ政府側は関与を否定しているが、ロシアは報復する権利を留保していると表明。強硬派はウクライナのゼレンスキー大統領に対する迅速な報復を要求している。
●クレムリンに無人機、ロ大統領府「ウクライナがプーチン氏殺害未遂」 5/3
ロシア大統領府は3日、ウクライナが夜間にドローン(無人機)を使ってプーチン大統領殺害を図ったものの未遂に終わったと表明した。ウクライナ政府側は関与を否定した。
ロシア大統領府によると、大統領宮殿内のプーチン氏の居所を目指して無人機2機が飛来したが軍と特殊部隊がレーダー戦システムを用いて無効化した。
「これは、9日の戦勝記念日パレードを目前にした計画的なテロ行為であり、大統領の命を狙ったものであるとみなす」とし、「ロシアは、適切と思われる場所と時間に報復措置を取る権利を有する」と表明した。
周辺にはドローンの破片が散乱しているが、人的・物的被害は出ていないとしている。
RIA通信によると、プーチン氏は当時クレムリンにはおらず、モスクワ郊外ノボオガリョボの大統領公邸で執務していた。
ウクライナ大統領府高官は、クレムリンへのドローン攻撃とは無関係だと主張、そのような行為をしても戦果につながらずロシアを刺激してより過激な行動を取らせるだけだと述べた。
ポドリャク大統領顧問はロイターに対し、ウクライナ政府が攻撃の背後にいるという主張や、ロシアがウクライナの破壊工作員とされる人物を逮捕したという話は、ロシアが今後数日内にウクライナに対し大規模な「テロリスト」攻撃を準備していることを示唆すると述べた。
●中国は「戦争を終わらせるようロシアに圧力を」 米大使 5/3
米国のバーンズ駐中国大使は2日、米国は、中国がロシアにウクライナでの戦争を終わらせるよう圧力をかけることを望んでいると述べた。
バーンズ氏は米シンクタンク「スティムソンセンター」のイベントにバーチャル形式で出席し、「ウクライナが領土全てを取り戻し、文字通り完全に主権を再び手にすることができるよう、中国はロシアに対して軍を撤退するよう圧力をかけるべきだ」と述べた。
バーンズ氏はさらに「中国がロシアにウクライナの学校や病院、アパートなどへの攻撃をやめるよう圧力をかければ非常に助かる。ここ1、2カ月、ウクライナ市民へのひどい空爆やドローン(無人機)攻撃で多くの犠牲者が出た」と指摘。その上で「だからこそ米国、そして欧州の国々、ウクライナが中国にそうしたことを期待している」と述べた。
同氏は、中国の習近平(シーチンピン)国家主席とウクライナのゼレンスキー大統領の電話協議は「良い第一歩」だが、その後何らかの動きがあるのかは不明と述べた。
バーンズ氏は「我々は中国に対して、より厳しい姿勢でロシアに助言することを望んでいる。もちろんウクライナ政府が受け入れられる条件で可能な限り早期に戦争を終わらせるための行動を取ってほしい」と述べた。
バーンズ氏によると、米国は中国がロシアに殺傷能力のある兵器を提供する可能性がある問題を「何カ月もの間、非常に注意深く」見守っているという。
「中国が実際に兵器を提供しているという証拠は目にしていないが、我々は注視し続ける」と述べた。
中国政府はウクライナでの戦争については中立を主張してきたが、ロシアの侵攻を非難しておらず、過去1年にわたり同国との経済・外交関係を強化している。
●ロシア ウクライナと国境接する地域で火災や事故相次ぐ  5/3
ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナが近く反転攻勢に乗り出す構えを見せる中、ロシアでは、一方的に併合したクリミアに近い石油施設で火災が起きるなど、ウクライナと国境を接する地域で火災や事故が相次いでいます。
ウクライナでは2日、南部ヘルソン州でロシア軍による砲撃を受け、地元当局は市民3人が死亡し、5人がけがをしたと明らかにし、イエルマク大統領府長官は「テロ攻撃だ」と批判しました。
一方、ウクライナと国境を接するロシア西部のブリャンスク州の知事は2日、SNSに「鉄道の駅の近くで正体不明の爆発装置が爆発した。貨物列車の機関車など数両が脱線した」と投稿しました。
ブリャンスク州では、前日の1日にも貨物列車の脱線が起き、州知事は爆発装置が爆発したと発表しています。
さらにブリャンスク州では、3日も一部のロシアのメディアがロシア軍の飛行場が5機の無人機から攻撃を受け、航空機が損傷したなどと伝えています。
また、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミアの「クリミア大橋」に近いロシアの南部クラスノダール地方で3日朝、地元の州知事がSNSに「石油を貯蔵する施設で火災が起きた」と投稿しました。
ロシアの国営通信社は火災が起きた施設は、貯蔵容量が2万トンに上り、当局の話として「無人機が落下したあと火災が起きた」などと伝えています。
クリミアをめぐっては、先月29日も軍港都市セバストポリで黒海艦隊に供給されるとみられる燃料の貯蔵施設で大規模な火災が起き、ウクライナ側は「大規模な攻撃に向けた準備だ」と関与を示唆しています。
こうした中、ロシアの治安機関FSB=連邦保安庁は3日、クリミアで、ロシア側の要人の暗殺やインフラ施設へのテロ攻撃を計画していたとしてウクライナ側の複数の工作員を逮捕したと発表しました。
犯行は、ウクライナ国防省の情報機関、情報総局のブダノフ局長が主導したとしていて、ウクライナが近く反転攻勢に乗り出す構えを見せる中、警戒を強めているものとみられます。

 

●ウクライナ・ゼレンスキー大統領「我々はプーチンもモスクワも攻撃していない」 5/4
ロシア大統領府がクレムリンに対しウクライナによるドローン攻撃が試みられたと発表したことに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は「攻撃はしていない」と否定しました。
ウクライナ ゼレンスキー大統領「我々はプーチンもモスクワも攻撃はしていない。自国の領土で戦い、村や町を守っている。その兵器も十分ではないのだ」
3日、訪問先のフィンランドで記者会見に臨んだゼレンスキー大統領は、ロシア側が発表したクレムリンへの攻撃へのウクライナの関与を全面的に否定。
国際刑事裁判所がプーチン大統領に対し戦争犯罪で逮捕状を出していることを念頭に「我々は法廷に委ねたい」と語りました。
●クレムリンに無人機攻撃か 被害はなし ロシア大統領府 5/4
ロシア大統領府は、プーチン大統領を狙って首都モスクワのクレムリンをウクライナの無人機が攻撃しようとしたと主張し、報復措置をとると発表しました。これに対しウクライナのゼレンスキー大統領は「われわれがプーチン大統領やモスクワを攻撃することはない」と述べて関与を否定しました。
ロシア大統領府は3日、「2機の無人機が夜、首都モスクワのクレムリンにある大統領府を攻撃しようとした。無人機は軍や特殊部隊によってレーダーで無力化され、クレムリンの敷地内に破片が落下した。被害は出ていない」などと発表しました。
また、「大統領にけがはなく、大統領のスケジュールに変更はない」としています。
ロシアでは今月9日、第2次世界大戦の戦勝記念日を迎え、クレムリン近くの赤の広場ではプーチン大統領の演説や軍事パレードが予定されています。
大統領府は無人機による攻撃の試みはウクライナのゼレンスキー政権によるものだとしていて、「戦勝記念日の前に行われたものだ。ロシアの大統領を狙ったテロ行為だ」と主張しています。
そのうえで「ロシアは適切な時期と場所で報復する権利がある」として報復措置をとるとしています。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は、プーチン大統領は当時、モスクワ郊外の公邸にいてクレムリンにはいなかったとしたうえで、「軍事パレードは行われる。計画は変わらない」として9日の戦勝記念日のパレードは予定どおり実施されるとしています。
ロシア大統領府は3日、プーチン大統領がモスクワ郊外の公邸でロシア西部の州知事から報告を受けるなど通常の公務を行う様子を公開しました。
またモスクワのソビャーニン市長は、事態を受けてモスクワ上空では当局が許可したものを除きすべての無人機の飛行を禁止したと発表しました。
ウクライナ大統領「プーチン大統領を攻撃することない」
一方、この無人機攻撃についてウクライナのゼレンスキー大統領は訪問先のフィンランドで行われた会見で「われわれがプーチン大統領やモスクワを攻撃することはない。自国の領土のために戦うだけだ」と述べて関与を否定しました。そしてロシアがウクライナによる攻撃だと主張する意図について「ロシアは何も勝ち得ていない。プーチン大統領は国民を前進させるために何らかの動機づけが必要なのではないか」と述べました。
ウクライナ大統領報道官 関与を否定
ウクライナのゼレンスキー大統領の報道官は声明を出し「ゼレンスキー大統領が繰り返し述べているように、ウクライナはすべての利用可能な戦力や資金を自国の領土解放のために差し向けているのであって、国外への攻撃のためではない」と述べて、関与を否定しました。
米国務長官「確認できることはない」
ロシア大統領府が、首都モスクワのクレムリンをウクライナの無人機が攻撃しようとしたと主張していることについて、アメリカのブリンケン国務長官は「この件で確認できることはない。ロシア政府が言うことは、到底うのみにはできず、何が事実かを見極めていく」と述べ、事実関係を調査中だとの立場を示しました。
またブリンケン長官は、もしウクライナがロシアの領土を攻撃すると決めた場合アメリカは批判するかと聞かれたのに対し「ウクライナがどのように自国を防衛し領土を取り戻すかは、ウクライナが決めることだ」と述べました。
一方、ホワイトハウスのジャンピエール報道官は会見で「アメリカは戦争が始まった当初からウクライナ軍が国外で爆撃を行うことを推奨しておらず、それを可能にするような支援もしていない」と強調しました。
モスクワ市民 不安や懸念の声
ロシア大統領府が首都モスクワのクレムリンを狙ってウクライナによる無人機の攻撃があったと発表したことについて、モスクワに住む70代の女性は「ぞっとする。こんなことはよいはずがない」と話し、不安な表情をみせていました。
また60代の男性は「予測できない状況だ。あらゆることがいま起きている」と懸念を示しました。
一方、50代の会社員の男性は、ウクライナを批判した上で「特別軍事作戦でもっと攻撃を強めるべきだ」と話し、ロシア軍はウクライナへの攻撃を強めるべきだと主張していました。
別の70代の女性は「モスクワに近づく前に撃墜されるはずだ。クレムリンの上空で起きるはずがない」と驚いた様子で話した一方「私たちは政府に守られているという信頼があり、心配はしていない。9日の戦勝記念日も無事に行われるだろう」と話していました。
ロシア国内 これまでも各地で無人機による攻撃
ロシア国内では、これまでも各地で無人機による攻撃があったり墜落した無人機が見つかったりしていて、政権側はウクライナ側によるものだとして警戒を強めています。
去年12月には、中部と南部にある空軍基地で爆発が相次ぎ、ロシア国防省は、ウクライナ側が無人機を使って駐機中の軍用機に攻撃を仕掛けたと一方的に主張しました。
ことし2月には首都モスクワから南東およそ100キロ余りの場所で無人機が墜落したと地元知事が発表し「民間インフラが狙われた」と主張しました。
さらにモスクワ近郊では先月下旬、無人機が3機、落下した状態で相次ぎ見つかったと伝えられ、このうち1機には爆発物が積まれていたとされています。
ロシアの新聞は、今月9日の戦勝記念日にあわせてロシア国内で無人機による攻撃が起きる可能性に備えて、国防省が警戒態勢を強化していると伝えています。
一方、ロシアが9年前、一方的に併合したウクライナ南部クリミアでは、先月29日、燃料の貯蔵施設で大規模な火災が起き、無人機による攻撃だという見方が出ていて、これについてはウクライナ側が「大規模な攻撃に向けた準備だ」と関与を示唆しています。
●ゼレンスキー大統領、軍事支援要請のためにフィンランド電撃訪問… 5/4
ウクライナのゼレンスキー大統領が3日(現地時間)、フィンランドを電撃訪問した。
フィンランド大統領室は同日声明を出し、ゼレンスキー大統領がフィンランドのヘルシンキで開かれる北欧5カ国の首脳会談に出席する予定だと明らかにした。
大統領室は「会談ではロシアの侵攻とウクライナに対する北欧諸国の持続的な支援、ウクライナとEU・NATOとの関係、ウクライナの平和計画が議論される予定」と説明した。
同日の日程は、安全保障上の理由でゼレンスキー大統領がヘルシンキに到着した後、電撃的に公開された。
ロイター通信は、フィンランド大統領宮の一帯にゼレンスキー大統領を見るために数百人が集まって歓呼したと伝えた。
ゼレンスキー大統領は北欧首脳会談への出席とは別に、フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領をはじめ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランドの首脳と相次いで二国間会談を行う予定だ。
ゼレンスキー大統領はこの席で、各国に追加の軍事支援を直接要請するものとみられる。ウクライナ大統領室報道官も「今回の会談は韓国に対する追加的な軍事支援調整のために用意された」と説明した。
フィンランドをはじめ北欧諸国は昨年2月、ロシアのウクライナ侵攻以降、ウクライナに比較的積極的な軍事支援を続けている。
この中でフィンランドとスウェーデンの場合、長い間維持してきた軍事中立路線を廃棄し、軍事支援はもちろん各自の安保不安を解消するために北大西洋条約機構(NATO)への合流を決めた。
フィンランドは先月、NATOの31番目の加盟国として公式加盟し、スウェーデンは手続きがまだ進められている。 
●「アメリカの指示のもとドローン攻撃」ロシア大統領報道官が主張 5/4
ロシア大統領府は、ウクライナがクレムリンへの“ドローン攻撃”を試みたと発表したことをめぐり、アメリカの指示のもと攻撃が行われたと主張しました。
ロシアのペスコフ大統領報道官は4日、“ドローン攻撃”をめぐり、「こうしたテロ行為を決定するのはワシントンだと知っている。ウクライナはそれに従っているだけだ」と述べ、アメリカの指示のもとで攻撃が行われたと主張しました。そのうえで「ウクライナとアメリカが関与を否定するのは馬鹿げている」と述べています。
また、プーチン大統領の様子について、「大統領は極限状態でも常に冷静沈着であり、的確な命令を出している」と強調しました。5日にプーチン大統領が安全保障会議を開催するとしていて、ドローン攻撃に関しても協議を行う可能性があるということです。
そして、今後の報復措置については、「バランスの取れたロシアの国益に沿ったものになる」と述べています。
●攻撃先に?プーチン大統領の執務室 “謎の人影”も… 5/4
ロシア大統領府のクレムリンでドローンが爆発した瞬間の映像です。一体、誰が何の目的で飛ばしたのか。そこには“謎の人物”も映り込んでいて、映像を独自に検証すると新たな可能性が見えてきました。
米国「ロシア偽旗とは判断尚早」
ロシア側の“衝撃的な発表”。情報はいまだ錯綜(さくそう)しています。
米・ホワイトハウス、ジャンピエール報道官「ロシアに“偽旗作戦”してきた過去があるのは明白ですが、今回の攻撃についてそう判断するのは時期尚早」
ロシア大統領府が「ウクライナがクレムリンに対してドローン攻撃を試みた」と発表したのは3日午後2時半ごろのこと。攻撃はドローン2機によるもので、防空システムによって防御されたとしています。映像はその12時間前、午前2時半ごろに撮影されたものとみられます。
攻撃先に?プーチン氏執務室が
映像から分かることを整理します。爆発が起きた「クレムリン」は「城塞(じょうさい)」を意味し、世界遺産にも登録されています。その歴史は古く、現在に至るまでロシア政治の“中心地”として存在します。モスクワ川沿いにある建物が大クレムリン宮殿です。ロシア外交の舞台としても利用され、首脳会談などが度々、この宮殿で行われてきました。今回、ドローンで攻撃されたのは大クレムリン宮殿の反対側、観光名所「赤の広場」の正面にある「元老院」と呼ばれる建物です。
筑波大学・中村名誉教授によりますと、ドローンが爆発した屋根の下にプーチン大統領の「執務室」があるといいます。プーチン大統領は未明まで、この執務室にこもることも珍しくないそうです。今回、ドローンが飛んできたとみられるのは南東の方角からです。その方向にはモスクワ川の下流、そして古い市街地が広がっています。タワーマンションのような高層ビルは見当たりません。ウクライナの首都キーウは画面の上の方角に位置します。今回、爆発したドローンは赤の広場にあるショッピングモールのあたりから撮影されたとみられます。2機、飛んできたというドローン。午前2時半の映像に映っていたのが1台目なのか、2台目なのかは分かっていません。そして、映像には気になる点も…。爆発が起きたその瞬間、屋根の辺りに“人影のようなもの”が映っています。人だとしたら、なぜ未明にこんなところにいるのでしょうか…。
3日未明にロシアのクレムリンで起きた爆発。ロシア大統領府は「ウクライナが2機のドローンでクレムリンへの攻撃を試みたが、プーチン大統領はけがをせず無事だった」と発表しました。ウクライナのゼレンスキー大統領は攻撃への関与を否定しています。
ウクライナ・ゼレンスキー大統領「我々はプーチンやモスクワを攻撃しない。我々は自分の領土で戦っている」
ドローン爆発「自作自演の可能性」
食い違う主張…。専門家はどう見ているのでしょうか。
安全保障が専門、明海大学・小谷哲男教授:「ウクライナがドローンを2機飛ばしたとして、果たしてロシア側の何重もある防空網を突破して、たどり着くことができたのかが疑問。明らかに今回のドローンが搭載していた爆弾の爆発力は小さい。とてもクレムリンを破壊できるようなものではない。ロシア側が自作自演した可能性がいまのところ高い」
映像には爆発の瞬間、屋根の辺りに2人分の“人影らしきもの”も映っています。この点については…。
安全保障が専門、明海大学・小谷哲男教授:「人が映っている映像は、実は2機目のドローン爆発であることが分かってきたので、普通に考えれば1機目がクレムリンのドームに衝突して爆発して、確かめに警備員が屋根に上ったところ、2機目がやってきたのでは。ロシアの自作自演だったとして、現場のクレムリンの警備員まで計画が知らされていなかった可能性が十分ある」
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も「ドローン攻撃はロシアによる自作自演の可能性がある」との分析を明らかにしています。
ロシア記念日が関係? 専門家指摘
では、なぜこのタイミングで“工作”を行う必要があったのでしょうか。専門家が理由の一つとしてあげたのが、プーチン大統領にとって“大切な記念日”との関係です。
クレムリンで起きた爆発は自作自演なのでしょうか…。仮にそうだとしたら専門家は今、ロシアがこうした動きを見せる理由について5月9日、ロシアの戦勝記念日を挙げます。
安全保障が専門、明海大学・小谷哲男教授:「パレードをやることが難しいということは言えるかもしれない」
この日はソビエト連邦がナチス・ドイツに勝利したロシアにとって特別な日。毎年、クレムリンの前にある「赤の広場」で大規模な軍事パレードが行われ、約1万人の兵士が参加しますが今、ロシアにその余力がないのではと小谷教授は指摘します。
安全保障が専門、明海大学・小谷哲男教授「実際には戦闘でかなり兵力を使っているので、戦勝パレードをする余裕はないはずだから、モスクワが攻撃されたので戦勝パレードも縮小、あるいは中止しなければならないとそういう口実に使う可能性はあると思う」
●米戦争研究所 クレムリンへのドローン攻撃は「ロシアの自作自演の可能性」 5/4
アメリカのシンクタンク、戦争研究所は、クレムリンへのドローン攻撃はロシアによる自作自演の可能性があるという分析を明らかにしました。
クレムリンへの攻撃でロシア国民に対して、ウクライナ侵攻を身近な出来事だと実感させたうえで、追加徴兵などより広い、社会的動員の条件を設定するためだと指摘しています。
●ロシア与党院内代表「プーチン大統領に対する攻撃はすべてのロシア人狙うもの」 5/4
ロシアのプーチン大統領が属するロシア与党「統一ロシア」のワシリエフ下院院内代表が「大統領を狙った攻撃は私たち(ロシア国民)各自に向かっている」と明らかにしたとタス通信が4日に伝えた。
ワシリエフ院内代表は前日夜、党のテレグラムアカウントへの投稿で「今日テロリズムが再び台頭しロシアの心臓部を狙っている」としてこのように話した。
これに先立ちクレムリン(ロシア大統領府)は前日に発表した声明で「2日夜にウクライナがドローンで大統領官邸に対する攻撃を試みた。2機のドローンがクレムリンを狙ったが軍が電子戦システムを適切に使いこれらを無力化した」と明らかにした。
ロシアのソーシャルメディア(SNS)にはドローンとみられる飛行体がクレムリンの屋根の上で爆発する場面を収めた未確認映像が広がっている。ワシリエフ院内代表はこれと関連し「クレムリンに対する攻撃、政治指導者に対する暗殺の試み、クリミア大橋爆発を含めた鉄道・送電線などインフラ施設破壊行為、ガスパイプライン爆発などはウクライナのテロ活動というのは事実」と主張した。
彼は「1990年代にロシアは北コーカサス地域をわれわれの領土から奪おうとする国際テロリズムに直面した。テロリスト組織に向けた傭兵、資金、武器などが送られた」と話した。続けて「われわれロシアは高い代償を払ってテロリズムをはね除けた経験がある。プーチン大統領は軍隊と法執行機関などの支援を受け国際テロリズムに途轍もない打撃を与えて国を統合した」と説明した。
ワシリエフ院内代表はその上で「テロリズムに抵抗するには最大限の団結と警戒、協力が必要だ。最も重要なのは祖国と大統領に対する防衛はすべての人がやることだと理解すること」と強調した。
ロシアがウクライナのテロだと主張するドローンの爆発に対しウクライナのゼレンスキー大統領はロシアの主張を否定した。ゼレンスキー大統領は前日のフィンランド訪問中、記者らの質問に「ウクライナはプーチンまたはモスクワを攻撃していない。われわれはわれわれの地で戦う」と明らかにした。
●「我々はプーチンもモスクワも攻撃はしていない」 ゼレンスキー大統領否定 5/4
“ウクライナがモスクワの大統領府、クレムリンにドローン攻撃を試みた”ロシアはこう主張し、“報復の権利がある”と発表しました。ゼレンスキー大統領は全面否定していますが攻撃の激化が懸念されます。
「ドローン攻撃」の発表から一夜明けた4日朝のモスクワ・クレムリンです。
大きな被害は見られませんが、ロシア大統領府は3日未明、ウクライナがドローン2機を使ってクレムリンへの攻撃を試みたと発表。「ゼレンスキー政権によるテロ行為だ」と主張しています。そして… ロシア大統領府「必要な報復措置をとる権利がある」
一方、ゼレンスキー大統領は… ウクライナ ゼレンスキー大統領「我々はプーチンもモスクワも攻撃はしていない」 攻撃への関与を否定し、“ウクライナは自国の領土を守る兵器も十分には持っていない”と訴えました。
アメリカのブリンケン国務長官は攻撃について「確認できない」としています。アメリカ ブリンケン国務長官「単純にわからないのです。ただ、ロシア政府からの情報は大きな疑いを持って受け止めるようにしています」
一方、ウクライナでは、この日も。南部ヘルソン州の当局者はロシア軍による砲撃がスーパーマーケットや鉄道の駅など多くの人が集まる場所に直撃し、23人が死亡したと明らかにしました。ウクライナメディアによりますと、翌4日も広範囲で空襲警報が出されたほか、首都キーウなどにドローンが飛来し、軍が24機中18機を撃墜したとしています。専門家はこうした4日の攻撃は「“クレムリンへの攻撃に対する報復”の初期段階なのではないか」と分析しています。
東京大学先端科学技術研究センター講師 小泉悠さん「(ロシア)大統領府側からも『これはウクライナによるテロなのだ』『大統領を狙ったものなのだ』という声明が出ている以上、これは何らかの厳しい対応をするのだと思います」また、「今後ロシアが様々な形で相当の“報復措置”を講じるのではないか」と指摘しています。
●ゼレンスキー氏、ICC電撃訪問 プーチン氏の処罰訴え 5/4
ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、戦争犯罪の容疑で3月にロシアのプーチン大統領に逮捕状を出したオランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)を電撃訪問した。ハーグでは演説も行い、ウクライナに侵攻したロシアの「侵略犯罪」を裁く特別法廷の設置を要求。プーチン氏への処罰も訴えた。
ゼレンスキー氏のオランダ訪問は侵攻後初めて。トレードマークのカーキ色の服でICCを訪れ、ホフマンスキ所長の歓迎を受けた。
ゼレンスキー氏は演説で「われわれはここハーグで(プーチン氏の)別の姿を見たいと願っている」と述べ、プーチン氏がハーグの法廷で裁きを受けるよう訴えた。「ロシアの侵略犯罪は法廷によってのみ裁かれるべきだ」とも指摘した。
滞在中、ゼレンスキー氏はオランダのルッテ首相と会談する。
ゼレンスキー氏は3日、フィンランドを訪問し、ニーニスト大統領と会談。その後、オランダに向かった。

 

●ロシア「対独戦勝記念日」の行事中止広がる…国境で攻撃誘発を避けるため 5/5
ウクライナに侵略するロシアのプーチン政権が、国威発揚に向けて重視する9日の旧ソ連による第2次世界大戦の対独戦勝記念日にちなんだ行事を中止する動きが、ウクライナとの国境付近の州を中心に広がっている。露大統領府が3日、モスクワの大統領府を標的にした無人機攻撃があったと発表したことで、中止の動きに拍車がかかる可能性がある。
政権は最重視
ウクライナと国境を接する露西部ブリャンスク州政府は3日、戦勝記念日に軍事パレードを実施しないと発表した。この州では1、2の両日、線路が爆発して貨物列車が脱線し、露当局が捜査を開始した。タス通信によると、ブリャンスク州知事は、パレード中止は「市民の安全確保のため」としており、ウクライナ軍による攻撃の誘発を避けることが目的とみられる。
プーチン政権は昨年2月のウクライナ侵略開始前から、ナチス・ドイツに勝利した記念日を国民の結束を維持する観点から最重視してきた。旧ソ連側だけで2700万人以上の犠牲を出したとされる対独戦をロシアは「大祖国戦争」と呼び、侵略開始後の昨年も、規模は縮小しつつも全土で兵士らによる軍事パレードを実施した。
パレードの中止は9州に広がっている。ロシアが一方的に併合しているウクライナ南部ヘルソン州とクリミアも中止を表明している。
ロシア第2の都市で、プーチン大統領の故郷でもある西部サンクトペテルブルクは、軍事パレードは実施するものの、露軍機の編隊飛行を取りやめると地元メディアが報じた。
デモ発展警戒
最大規模となるモスクワ中心部「赤の広場」での軍事パレードについて露大統領報道官は3日、「予定通り実施する」と述べたが、編隊飛行の中止が取りざたされている。
中止の動きで特に注目されているのが、独ソ戦で犠牲になった家族や先祖の写真を掲げて住民が各地で自発的に行進する「不滅の連隊」と呼ばれる行事だ。
不滅の連隊は、2012年にシベリア・トムスクで独ソ戦の記憶の風化を防ごうと始まった市民活動で、昨年は全土で約1200万人が参加した。プーチン氏も昨年、モスクワ中心部で行進に参加するなど事実上の官製行事になっている。
今回の中止を巡っては、ウクライナ侵略で戦死した兵士らの遺族が参加して、侵略を継続するプーチン政権への抗議デモに発展する事態を警戒しているとみられている。
●ゼレンスキー大統領 国際刑事裁判所でプーチン氏の処罰訴え 5/5
ウクライナのゼレンスキー大統領は、戦争犯罪の疑いでロシアのプーチン大統領に逮捕状を出したICC=国際刑事裁判所を訪れ、プーチン氏の処罰を訴えました。
ゼレンスキー大統領は4日、ウクライナの占領地域から子どもをロシアへ不法に移送した戦争犯罪の疑いがあるとして、プーチン大統領に逮捕状を出したオランダ・ハーグのICC=国際刑事裁判所を訪問しました。
ウクライナ ゼレンスキー大統領「我々がここで見たいのはプーチン氏だ。戦争行為において、国際法の都市ハーグで刑を下されるべきだ」
ゼレンスキー大統領は「侵略の罪を裁くことができる機関は法廷のみだ」と述べ、プーチン氏の処罰を訴えました。
●プーチン氏に「侵略罪」で裁きを、ゼレンスキー氏がハーグ訪問 5/5
ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、訪問先のオランダのハーグで行った記者会見で、ロシアのプーチン大統領はウクライナでの戦争について裁かれなければならないと述べ、「侵略罪」を裁く新たな国際法廷の設置を呼びかけた。
ゼレンスキー氏は国際刑事裁判所(ICC)があるオランダのハーグを電撃訪問。記者会見で、ウクライナに対する侵攻そのものをロシアによる「主要な犯罪」と見なす必要があるとし、侵攻を行っている人々を裁くために「特別の法廷を設置したい」と述べた。
ICCは3月、プーチン大統領に対しウクライナでの戦争犯罪の責任を問う逮捕状を発行している。
ゼレンスキー氏は記者会見に先立ちICCで行った演説で、プーチン大統領は犯罪行為に対する裁きを受けなくてはならないとし「われわれが勝利したとき、実現すると確信している」と述べた。
●茂木氏 キューバ大統領とウクライナ情勢協議 ロシアの伝統的友好国  5/5
キューバを訪問している自民党の茂木幹事長は日本時間4日夜、ディアスカネル大統領と会談した。
北中米を歴訪中の茂木氏は、3カ国目のキューバの首都・ハバマで、ディアスカネル大統領と会談した。
キューバは、新興国を含め途上国が所属する国連の「77カ国グループ」で議長を務めていて、会談に先立ち、茂木氏は「G7広島サミットに向けて、幅広い国の支持を獲得したい」と述べている。
また、キューバは社会主義国で、伝統的にロシアとも友好関係にあり、茂木氏は3日、ロドリゲス外相と会談し、「ウクライナ情勢の改善に向け、働きかけをしてほしい」と要望した。
●中ロ外相 会談で結束強調 上海協力機構の外相会議を前に  5/5
中国とロシアが主導する枠組み、上海協力機構の外相会議が、5日にインドで開かれます。会議に先立ち、中国とロシアの外相が会談して結束を強調し、ウクライナ侵攻をめぐって欧米などがロシアへの経済制裁を強める中、どのような議論が行われるか注目されます。
中国とロシアが主導する安全保障や経済協力の枠組み、上海協力機構の外相会議は5日に議長国インドにある南部ゴア州で開かれます。
会議に先立って、4日に中国の秦剛外相とロシアのラブロフ外相が会談を行い、ロシア外務省によりますと、両外相は結束を強調し、ウクライナ情勢についても「平和的に解決するための取り組みを含めて議論した」としています。
その上で「新植民地主義は容認できないことで一致した」としていて、アメリカなどに対抗する姿勢を確認したとみられます。
一方、インドのジャイシャンカル外相も中国とロシアの外相とそれぞれ会談を行いました。
ロシアとしては、欧米などが経済制裁を強める中、中国やインドなど加盟国との経済面での連携を強化したいねらいがあるとみられます。
また、中国としても、経済や安全保障面で対立するアメリカへの対抗軸として結束をアピールする思惑があるとみられ、今回の外相会議でどのような議論が行われるか注目されます。 
●ロシアが戦勝記念日の軍事パレード縮小 「戦力低下を覆い隠そうとしている」 5/5
9日に予定されるロシアの戦勝記念日を前に、アメリカのシンクタンクはプーチン政権が軍事パレードを縮小し、ロシア軍の戦力低下を覆い隠そうとしているようだという見方を示した。
来週9日の戦勝記念日に、ロシア国内の少なくとも21の都市が軍事パレードの中止を決めている。アメリカのシンクタンク「戦争研究所」はプーチン政権が3日のクレムリンでのドローン攻撃を理由にして軍事パレードを縮小し、ロシア軍の戦力低下を覆い隠そうとしているようだと指摘した。
首都モスクワで4日に行われたリハーサルでは、先導車を除いて戦車の姿が見あたらなかった。去年の同じ時期に実施されたリハーサルに比べて状況が変わっている。
●ロシア民間軍事会社ワグネル、10日にバフムト戦線離脱か 5/5
ロシア民間軍事会社ワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏は5日、10日に部隊をウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトから撤退させると表明した。
プリゴジン氏は軍参謀総長、国防省、最高司令官であるプーチン大統領に宛てた書面の声明で「撤退するのは、弾薬がなければ無意味に滅びる運命にあるからだ」と述べた。
撤退は、ロシアの対独戦勝記念日の翌日というタイミングでプーチン大統領にとっては打撃となる。ロシア大統領府は、声明について、ウクライナでの「特別軍事作戦」に関わるとして、コメントを差し控えた。
ワグネルはロシアのバフムト攻略を先導する形で戦い、3週間前にはバフムトの80%以上を制圧したと主張していた。
しかしウクライナ軍も激しく抵抗、ワグネルはロシア政府の支援を得られず消耗し、プリゴジン氏はプーチン政権に対する不満を募らせた。
プリゴジン氏は声明で「弾薬が不足しているため、われわれの損失は毎日飛躍的に増加している」とし、声明に添付された動画で「配下の若者たちは弾薬のないバフムトで無駄で不当な損失を被るわけにはいかない」と述べた。
弾薬はどこだ!
5日、声明とは別に投稿された動画で、プリゴジン氏は、ワグネルの戦闘員とする数十人の遺体の中に立ち、「弾薬が70%不足している。ショイグ(国防相)! ゲラシモフ(参謀総長)! 弾薬はどこだ」と声を張り上げた。
プリゴジン氏は声明で、ゲラシモフ参謀総長に対し、バフムトのワグネル部隊を正規軍に置き換え、その時期を明示するよう求めた。
撤退については非難を覚悟しているとした。また再び戻るとも約束。「傷を癒し、祖国が危険にさらされたとき、祖国を守るために再び立ち上がるだろう」と述べた。
●ロシア 各地で無人機の飛行禁止 南部では3日連続火災で警戒  5/5
ロシアのプーチン政権が、ウクライナの無人機がクレムリンに攻撃を仕掛けたと発表したことを受けて、ロシアの国営通信社は、各地で無人機の飛行を禁止する措置がとられたと伝えています。また、クリミアに近いロシア南部では、3日連続で燃料の貯蔵施設で火災が発生し、ロシア側は警戒を強めているとみられます。
ロシア大統領府は3日、ウクライナの無人機がプーチン大統領を狙ってクレムリンに攻撃を仕掛けたと発表し、さらにアメリカも関与したと主張して批判を強めています。
国営のロシア通信は3日、今回の事態を受けて、首都モスクワだけでなく、第2の都市サンクトペテルブルク、それにウクライナとの国境に近い州などおよそ40の地域で無人機の飛行を禁止する措置がとられたと伝えています。
また、ロシアの国営通信社は5日、一方的に併合したウクライナ南部クリミアに近いクラスノダール地方にある燃料貯蔵施設の敷地内で火災が発生したと伝えました。
当局者の話として「無人機による攻撃だ。60平方メートルにわたり火災が発生した」としています。
クラスノダール地方では、今月3日と4日にも石油貯蔵施設で火災が起き、いずれも無人機による攻撃だと伝えられ、3日連続で発生した事態にロシア側は警戒を強めているとみられます。
戦況を分析するイギリス国防省は4日「燃料施設からの供給が寸断されることで、ロシア軍への燃料補給の作戦が変更を余儀なくされる可能性が高い」としてロシア側の作戦に影響が出る可能性を指摘しています。
●「ロシア、今年大きな攻撃は不可能」 米国家情報長官 5/5
ヘインズ米国家情報長官は4日、ウクライナとロシアの戦争について、ウクライナ軍の反攻の成否にかかわらず、ロシア軍は弾薬と人員の不足により「今年大きな攻撃」をかけることはできないとの見方を示した。
ヘインズ氏は上院軍事委員会に対し「実際、ロシアが強制動員を開始せず、イランなど既存の供給元に加えて第三者からのかなりの弾薬供給を確保しなければ、小さな攻撃すらロシアにとっては続けることが難しくなるだろう」と述べた。
さらにヘインズ氏はロシアのプーチン大統領について、「おそらく」ウクライナにおける短期的な野心を縮小したと指摘。「ウクライナの東部と南部の占領地支配を強固にし、絶対にウクライナを北大西洋条約機構(NATO)の加盟国としない」ことを勝利と考えていると付け加えた。
ただこうした評価にもかかわらず、ロシアが今年停戦を交渉する可能性は高くないと同氏は述べた。政治的な要素が「プーチン氏の考えを変える」ことがない限り、そうした交渉に入る公算は極めて低いとした。
また、ロシア軍はウクライナ軍の反攻に備えて「新たな防衛態勢」を整えつつあり、「4月に獲得した領土は、その前の3カ月のどの月よりも少なかった」と説明した。
●米政府、「クレムリンへのドローン攻撃はアメリカが支援」とのロシア主張を否定 5/5
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を狙ったドローン(無人機)攻撃があったとロシア政府が主張している問題で、アメリカ政府は4日、関与を否定した。プーチン大統領の報道官が、「クレムリン(ロシア大統領府)へのドローン攻撃はウクライナがアメリカ政府の支援を受けて実行した」と主張したのを受けてのこと。
ロシア政府は3日、クレムリン(ロシア大統領府)を狙った2機のドローンを撃墜したと発表した。ウクライナがプーチン大統領を暗殺しようとしたと非難している。ウクライナは一切の関与を否定し、ロシアがこれを口実に戦争の激化と拡大を図っていると反論している。
ロシア政府のドミトリー・ペスコフ大統領報道官は4日、モスクワ中心部にあるクレムリン(ロシア大統領府や大統領官邸などが入る)への攻撃は3日早朝に起きたと述べ、アメリカが関係しているのは「間違いない」と主張。ただし、証拠は示さなかった。
「このような攻撃について決定するのはキエフ(キーウのロシア語読み)ではなく、ワシントンだ」とペスコフ氏は強調した。
これに対して米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は記者会見で、「ばかげた主張だ」、「ペスコフはうそをついている。それだけのことで、単純な話だ」と述べた。
「アメリカは何も関係していない。いったい何が起きたのかさえはっきりと分かっていないが、アメリカは何の役割も果たしていない。そのことは保証できる」と、カービー氏は述べた。
カービー調整官はさらに、アメリカ政府はウクライナによる自国外への攻撃を奨励も支援もしていないと説明。個々の国家首脳への攻撃も支持しないと話した。
ソーシャルメディアで拡散している動画には、クレムリンから煙が上る様子や、大統領官邸の入る旧元老院の上で小規模な爆発が起きる様子が映っている。旧元老院のドーム屋根を男性2人が登ろうとしている様子も見える。
これについてウクライナは、ロシアによる自作自演の偽旗作戦だと非難している。他方、クレムリンを脆弱(ぜいじゃく)に見せる攻撃をロシアが自作自演するメリットを疑問視する声も上がっている。
ウクライナに対するロシアの攻撃は続いており、3日には南部へルソンで駅やスーパー、集合住宅などが砲撃され、21人が死亡した。ただし、本格的な攻勢の激化の様子はまだみられていない。
ゼレンスキー大統領は対ロ特別法廷を要求
こうした中でウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4日、オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)を訪れ、ロシアによる「侵略の犯罪」を裁く特別法廷の設置を求めた。
ICC訪問後の演説でゼレンスキー氏は、ロシアがウクライナで戦争犯罪を繰り返していると述べ、「国際法の首都」においてプーチン氏が「自らの犯罪行為について罰の言い渡しを受けるべきだ」と主張。開戦間もなく首都キーウ近郊ブチャを占領したロシアが、民間人を多数殺害したと指摘し、東部ドンバス地域でロシアが「数百万回」もの砲撃を重ねていると述べた。
ICCは今年3月、ウクライナ侵攻をめぐる戦争犯罪容疑で、プーチン大統領らに逮捕状を出した。ロシアが占領したウクライナの地域から子どもたちをロシアへと不法に移送しており、プーチン氏にこうした戦争犯罪の責任があるとしている。また、ロシアが全面的な侵攻を開始した2022年2月24日から、ウクライナで犯罪が行われていると指摘している。
ただし、国家間の侵略行為について訴追する権限をICCは託されていない。
●「ロシアが海底ケーブル狙う懸念高まる」 NATO高官 5/5
北大西洋条約機構(NATO)のキャトラー事務総長補佐は3日、ウクライナでの戦争の一環としてロシアが海底インターネットケーブルなど同盟国の重要なインフラを標的にするかもしれないという「持続的で重大なリスク」があるとの考えを示した。
情報・安全保障担当のキャトラー氏は「ロシアが西側諸国の生活を混乱させ、ウクライナを支援している国々に対する影響力を手に入れようと、海底ケーブルなど重要なインフラを標的にするかもしれないという懸念が高まっている」と記者団に語った。
同氏によると、国際的なインターネットトラフィックの95%超が約400本の海底ケーブルを通じて伝送されている。これらのケーブルは「毎日、推定10兆ドル(約1340兆円)相当の金融取引に使われている」とした上で、ケーブルは「経済の要」だと指摘した。
また、ロシアがケーブルを「積極的にマッピング」している一方で、「中国も海底に関して大きな動きを取っている」という。中国は「他国の脆弱(ぜいじゃく)性を広範に試すのではなく、自前の海底インフラを築く方向で動いている」と説明した。
NATO加盟国は状況を注視しているという。キャトラー氏は「これは真に全体的であらゆる方面や領域に関わる脅威だ。脅威を明確に浮かび上がらせるために、民間部門、NATO、加盟国の相互協力が本当に重要だ」と述べた。
●「欧州は戦争経済に入る」EUが弾薬生産増強へ750億円拠出案… 5/5
欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会は3日、欧州の弾薬生産能力を増強するため、5億ユーロ(約750億円)を防衛産業に投資する案を発表した。域内で使われていない弾薬工場の再稼働や、既存の工場の生産ラインを向上させ、ロシアの侵略を受けるウクライナ支援の長期化に備える構えだ。
加盟国の承認を受けて施行される。投資の対象は、ウクライナで不足する152ミリや155ミリ砲弾などの生産が中心となる。1年間で100万発の生産能力を目指すという。
現状では、EU圏内の約15か所の工場が候補に挙がっている。その多くが冷戦後の防衛産業の縮小を受けて稼働停止した工場となる。
EUによるとギリシャでは、2016年と19年にそれぞれ閉鎖された2か所の弾薬工場が候補に入っている。欧州委・域内市場担当のティエリー・ブルトン委員は3日の記者会見で「(2か所の)設備はそのまま残っており、資金を投入すれば即座に稼働できる」と述べた。
財源は、EUが4割、恩恵を受ける加盟国などが6割を拠出する。EUではこれまで、防衛産業への投資はタブーだった。ブルトン氏は「今重要なのは、生産能力を高めることだ。欧州は戦争経済に入る」と訴えた。
一方で、EUは3日、大使級会合をブリュッセルで開き、ウクライナに今後1年間で弾薬100万発を供給する計画と18か国による弾薬の共同調達計画に、計20億ユーロ(約3000億円)を拠出する案を承認した。

 

●精鋭部隊も使い捨て、勝利を自ら捨てたロシア軍は近く潰走か 5/6
1.兵器技術やバイブリッド戦でも敗北
ロシア軍がウクライナに侵攻して14か月以上が経過した。
この間、ロシア軍の兵器は、米欧製のジャベリン対戦車兵器、HIMARS(長射程精密誘導ロケットシステム)、スイッチブレード自爆型無人機などの兵器によって、木っ端微塵に破壊されている。
ロシア軍が、戦力で圧倒的に優勢だったにもかかわらず勝利できない大きな理由の一つは、報道にもあるように兵器の性能が劣っていることだ。
また、脅威であると見られていたロシア軍の電子戦やサイバー攻撃などを含めたハイブリッド戦も、ことごとく見破られて、ウクライナ軍の防御的措置がとられた。
ウクライナ軍に勝利できないもう一つの理由である。
2.戦争目的や目標を達成する覚悟なし
米国の研究所などの情報をまとめると、ロシアの戦争戦略では、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の政権を崩壊・屈服させウクライナをロシアの傀儡政権の国家にしたいという目的があった。
そして、短期間にウクライナの全域あるいは首都を占領しようという戦争目標があったと考えられる。
このための軍事作戦として、ベラルーシを含めたロシアとウクライナが接する国境の全域から攻撃を行った。
作戦が上手くいくと想定した場合、ウクライナ全域を占領するというのであれば、両国の国境線約2000キロの全正面から同時攻撃するのは、当然採用される作戦だと考えてよいだろう。
全域を占領する作戦が、上手くいかない可能性が高い場合の案としては、次の3つのうち、1〜3の順に優先順位を決めて作戦することであったはずだ。
1 政権を転覆するためにキーウを占領する。
2 ロシア領内からクリミア半島までの回廊を確保する。
3 ドンバス地域を完全にロシア領にする。
しかし、2と3だけでは、戦争目的・目標の達成とはならない。
ロシアは、キーウ侵攻作戦が失敗に終わったため、早々に1を諦め、2クリミア半島までの回廊の確保と3ドンバスをロシア領にする作戦を採用した。
これは、ロシア軍の現実的な戦力から判断すれば、やむを得ない判断だったのかもしれない。
だが、この案を採用しても戦争目的・目標は達成されず、ウクライナの現在の政権が存続する間は、徹底的に抗戦される可能性は残ると考えたはずだ。
ロシアは、キーウを占領することを諦め、ウクライナ政権の息の根を止めることに集中しなかったのだ。
これが、ロシアが苦戦に至る遠因となった。
今、振り返ってみると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は戦争目標であるキーウを早期に占領し、ゼレンスキー政権を潰して戦争を終結させるために、ロシア軍のすべての戦争手段を投入しなかった。
その覚悟がなかったことが致命的であった。
3.プーチンの誤算:軍の腐敗
ロシアは、戦争目的・目標を重視して短期間に作戦を実行すべきであった。その理由を次に述べる。
ミハイル・ゴルバチョフ氏が1985年、書記長に就任し、ペレストロイカ(ロシア政治体制の改革)の方針に基づき、ロシア軍の解体が始まった。
ソ連邦崩壊後には、軍の解体に拍車がかかった。
その後、ロシア兵に給与が払われなかったり遅配されたりが頻繁に起こるようになった。
そのため、ロシアの兵器や弾薬は倉庫から盗み出され、海外に売られた。
米国は当時、「ロシア軍は脅威ではなくなった」と発表した。また、「Soviet Military Power」(1981年発刊)というソ連軍の実態と脅威を紹介した米国国防情報局の報告書は廃刊にされた。
約10年後に、プーチン氏が大統領に就いて、軍の健全化と即応態勢が部分的に回復したが、軍内に巣食った腐敗は残ったままだった。
世界に恐れられた旧ソ連軍の軍隊には戻ってはいなかった。
軍全体の軍紀が腐敗してしまい、10〜20年かかっても回復できなかった。
首都モスクワなどのウラル山脈の西側(欧州正面)では、回復が早かったのだが、中央から遠く離れた地方、例えばウラル山脈以東の旧極東軍管区や旧シベリア軍管区では回復させるのは難しかった。
なぜなら、軍中央(総参謀部)の命令指示が行き渡らず、目が行き届かなかったからだ。
プーチン氏は、中央の目が届くところや、近代化を進めていた戦略ロケット軍という近代化が進められた軍部隊を主に視察していた。
また、モスクワで開かれる戦勝パレードで、精鋭の部隊や兵と装備を見ていただけなので、軍の腐敗した実態を把握できてはいなかった。
ソ連邦崩壊前から始まったソ連軍解体と縮小、兵士への給与の未払い、兵器とその部品、弾薬の窃盗と横流しなどで、ロシア軍の規律・士気はどん底へと落ちて行った。
2000年頃から少しずつ戻り始めたものの、ソ連軍解体前の強いロシア軍には戻ってはいなかった。
特に、シベリア軍管区や極東軍管区では、兵器の墓場までできた。
この軍の実態をプーチン氏が十分に掌握していれば、今の段階でウクライナを占領し、屈服させるという本格的な戦争を仕掛ける愚かなことはしなかったはずだ。
これらのことは、防衛省・自衛隊の情報分析官として、旧ソ連軍やロシア軍、特に旧極東軍管区やシベリア軍管区を長年分析してきた筆者の知識に基づく結論である。
4.精鋭部隊を早期に大量損失
とはいえ、ロシア軍部隊の軍紀がすべて腐敗していたわけではない。
空挺部隊、特殊部隊(スペツナズ)、海軍歩兵、モスクワなどの都市に所在するエリート部隊は、士気・規律とも優れていた。
だが、これらエリート部隊や各部隊の百戦錬磨の兵士は侵攻当初から地上戦に投入された。
現在までに、作戦の失敗と混乱で多くを失った。
では、これらのエリート部隊は、どのように運用されたのか。
通常、空挺部隊は敵の後方に降着し重要拠点の襲撃を行う空挺作戦を行い、特殊部隊(スペツナズ)は密かに潜入し重要施設や要人を襲撃する特殊作戦を行い、海軍歩兵は渡洋・渡河作戦時に戦闘をしつつ上陸作戦を行う。
しかし、ロシア軍の侵攻作戦においては、陣地攻撃や陣地防御を担任する部隊として使われているのだ。
つまり、これらの部隊の機能を生かさず、機械化部隊などと同様に地上戦闘に投入されているのだ。
エリート部隊なので勇猛果敢ではあるが、地上戦闘には不向きな部隊であるために、損失は大きい。
ロシア軍には、新たに徴収した兵員は十分にいる。
だが、新兵たちは実際に戦理に合った戦い方ができるかというとそうではない。戦いでは、かえって足手まといになってしまう。
ウクライナ軍とロシア軍は、約700キロという広大な接触線で対峙して戦っている。ロシア軍は、実際に戦える兵員が不足している。
空挺作戦・上陸作戦・特殊作戦に使う予定がないのであれば、機甲部隊を主体とした攻撃や防御においては、予備の部隊として使われるのが、軍事作戦上からすれば戦理に合っている。
やむを得ず空挺部隊などを機甲・機械化を主体とした攻撃・防御部隊として投入しているのだ。
ロシア軍の部隊は、その役割に応じた運用がされず、エリート部隊の誇りもなく投入されている。結果、これらの多数が無駄死にさせられた。
5.戦術なきロシア地上軍
このような中、現在どのような戦い方を行っているのか。
ルハンシク州やドネツク州で攻撃しているロシア軍部隊は、それぞれの地域において、ウクライナ軍部隊の陣地に対して、戦術もなくただ単に攻撃しているだけだ。
そして、何度も何度も同じ攻撃を繰り返しては、撃退されている。
プーチン氏に「ルハンシク州やドネツク州の境界まで占領せよ」と言われて攻撃しているのだから仕方がない。
ロシア地上軍は、砲弾などから守られた陣地から出て、攻撃前進するような単純な攻撃を行っている。
そのため、ウクライナ軍に発見されてまず砲撃を受け、対戦車ミサイルで攻撃され、接近すれば、手榴弾や機関銃などで殺傷される。
次から次へと大量の犠牲を出しているだけだ。
6.ワンパターンな二重包囲攻撃
ロシア地上軍は、ドネツク北のバフムトやアウディウカの市街地で、どのような攻撃を行っているのか。
この2か所では、市街地で守るウクライナ軍をロシア軍が歴史的に採用してきた左右からの挟撃(2重包囲作戦)と正面突破攻撃を何度も繰り返している。
ロシア軍は、ルハンスク州からヘルソン州までの両軍の接触線の中で、最も兵力を集中させて攻撃しているが、多くの犠牲を払っている。
   ロシア地上軍の二重包囲攻撃イメージ
これらが成功しないとみると、左右からの挟撃している部隊を撤収し、正面攻撃に転用している。
多くの犠牲を払っても、次から次へと攻撃を繰り返している。
囚人を加入させた傭兵部隊なので、死傷しても構わないという考え方なのだろう。
ここには戦術はない。大量の砲弾を撃ち込んで、そして傭兵に攻撃前進させているだけだ。
もしも、この地を必成目標として占拠したいのであれば、他の正面を犠牲にしてこの地に戦力を集中すべきだろう。
また、包囲攻撃するのであれば、2重包囲ではなく、ウクライナ軍が最も弱い部分を見つけ出し、兵站連絡線を止める地域の1か所に集中して攻撃する方が効果的だ。
だが、いつも同じパターンで攻撃している。
   戦闘力を集中して行う包囲攻撃イメージ
7.弾薬が枯渇して敗北へ
戦術で敵を混乱させるのではなく、火砲弾薬を多く撃ち込んで破壊するというのが、ロシア軍の戦い方だ。
戦術を考案するのではなく、力を信奉しているのだ。戦力、すなわち物量で勝利するというのがロシア軍の戦い方だ。
これも一つの戦法ではあるが、その物量は無限ではない。
ウクライナ軍砲兵に破壊され、枯渇してくれば、戦場で敗北の道をたどる。
米国統合参謀本部議長が、「ロシア軍には戦略・戦術がない」と話したことがあるが、現在戦っている地域の戦い方には戦術がなく、参謀本部議長の発言通りだと思う。
このように、戦術もなく隣接部隊との協力もなく、いつものワンパターンで攻撃すれば、いずれ砲弾や兵器も枯渇する。
その時、ウクライナ軍が優れた兵器を保有し、態勢を整えて戦略・戦術を駆使して反撃を開始すればどうなるであろうか。
ウクライナ軍は、ロシア領内の軍事工場、ロシアが不法に占拠している地域では、作戦全般に影響する兵站施設を破壊している。
また、軍の戦闘に直接影響する砲兵や弾薬庫も破壊し続けている。
したがって、防御ラインの前方に設定しているロシア軍の火力ポケットは、十分に機能しないかもしれない。
5月に入ってからは、直接攻撃するロシア軍第一線防御陣地へ砲撃も開始した。
ウクライナ軍はロシア軍を混乱させ、戦闘能力を十分に発揮させない戦術を採用し、反攻するだろう。
いったん防御ラインを突破されれば、ロシア軍は防御の弱い部分から瓦解して行くだろう。
その場合、突破されたところへ新兵主体の予備部隊を投入し、突進するウクライナ軍に対して反撃(逆襲)することは、極めて困難であろう。
なぜなら、ロシア軍の予備部隊や予備の兵器は、ほとんどなくなっているからだ。  
●ポーランドの軍事力強化へ米が協力 調達協定を更新、ウクライナ支援策も協議 5/6
オースティン米国防長官は5日、ワシントン郊外の国防総省でポーランドのブワシュチャク国防相と会談し、ポーランドの軍事力強化について話し合った。相互の防衛調達に関する協定を更新した。
ポーランドはロシアの侵攻を受けるウクライナの隣国で、ロシアの脅威に危機感を強めている。
会談では、ウクライナへの支援策も協議。オースティン氏は、ドイツ製主力戦車レオパルト2などを提供しているポーランドの取り組みを称賛した。
●ロシア軍 バフムトの優先度下げ ほかの地域の防衛に重点か  5/6
ウクライナが大規模な反転攻勢に乗り出す構えを示す中、ロシアは、完全掌握を目指してきた東部の激戦地バフムトに対する優先度を下げて、ほかの地域の防衛に重点を置き始めているという見方がでています。
ウクライナ東部の激戦地バフムトをめぐり、ロシアの正規軍とともに戦闘に加わっている民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏は5日、ロシア国防省が意図的に弾薬の供給を止めているとして政権側の対応を批判しました。
そして5月10日にバフムトから撤退すると表明しました。
この発言についてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は5日「ロシア国防省がバフムトの優先度を下げていることを示している。ウクライナの反転攻勢に備え、弾薬や物資の供給を控えている可能性がある」として、ウクライナが大規模な反転攻勢に乗り出す構えを示す中、ロシア側はほかの地域の防衛に重点を置き始めているという見方を示しました。
こうした動きに対してウクライナ軍の参謀本部は6日、バフムトでは激しい戦闘が続いているとし、徹底抗戦する構えを示しました。
一方、ロシアでは、プーチン政権が5月3日、ウクライナの無人機がクレムリンに攻撃を仕掛けたと発表した中、9日に各地で行われる予定だった第2次世界大戦の戦勝記念日の軍事パレードなどが中止されると相次いで明らかになっています。
こうした中、ロシア大統領府は5日、プーチン大統領が安全保障会議を開き、戦勝記念日の準備について話し合われたと発表しましたが、詳しい内容は明らかにされておらず、モスクワの赤の広場で行われる行事についても慎重に議論が進められているとみられます。
“撤退表明は非難の矛先を国防省・軍に向けるねらいか”
ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏がバフムトから5月10日に撤退すると表明したねらいについて、防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事は「5月9日のロシアの対独戦勝記念日までにバフムトの完全掌握が間に合わなかったことの責任を国防省側に転嫁するとともに、プーチン大統領が国民に戦果を示せないことへの非難の矛先を国防省、軍の側に向けるねらいがある」と指摘しました。
その上で「ロシア軍の空挺部隊が投入されているので、ワグネルの部隊がバフムトから撤退したとしても、今こう着しているバフムトの戦況自体には大きな影響がないのではないか」とも述べワグネルが実際に撤退するかや撤退した場合の影響を慎重に見極める必要があるという見方を示しました。
また「プリゴジン氏は大統領に対しては政治的なアピールを続けるのではないか」とも述べ、プリゴジン氏はバフムトから撤退したとしても戦闘には関わり続けるという見方を示しました。
一方、プリゴジン氏が「ロシア国防省が弾薬の供給をとめている」と訴えていることについて兵頭氏は「ワグネルの部隊は損耗率が激しく戦闘能力が大幅に低くなっている一方で、ロシア軍としては武器や弾薬を供給せずに維持することで、ウクライナ側の反転攻勢に備えようとしているのではないか」と指摘しました。
一方、ロシア大統領府が5月3日、ウクライナの無人機がプーチン大統領を狙ってクレムリンに攻撃を仕掛けたと主張し、報復措置をとるとしていることについては「可能性としては、首都キーウの大統領府、国防省の建物といった権力の中枢をねらった報復攻撃が考えられる」と述べました。
ただ、実際に行うかどうかについては、ピンポイントで攻撃可能な精密誘導ミサイルがどのくらい残っているかや、5月9日の戦勝記念日といった政治的な動きを踏まえて判断するとみられると分析しています。
●ロシア側当局者 ウクライナ側の攻撃そなえ、住民およそ7万人の避難発表 5/6
ロシアが占領するウクライナ南部ザポリージャ州の当局者は、ウクライナ側の攻撃にそなえ、住民およそ7万人を避難させると発表しました。
ザポリージャ州でロシア側の占領当局代表を務めるバリツキー氏は5日、ウクライナ側からの砲撃が激化しているとして、前線に近い地域の住民を州内の別の地域に避難させると発表しました。
対象地域にはザポリージャ原発があるエネルホダルも含まれていて、ロシア国営メディアはおよそ7万人が避難すると伝えています。
これについてアメリカの政策研究機関「戦争研究所」は、「強制移住」だとしているほか、ロシア側がウクライナ軍の反転攻勢に備えて防衛ラインを後退させようとしていると分析しています。
また、ザポリージャ州メリトポリのウクライナ側の市長は5日、ロシアが子供たちをキャンプを名目にして連れ去るおそれがあるとして。キャンプには参加しないよう呼びかけています。
●ロシア、ベラルーシ招待なし ウクライナ侵攻で英の制裁対象  5/6
英国の首都ロンドンで6日実施のチャールズ国王の戴冠式に、昨年2月のウクライナへの侵攻に伴い英政府の制裁対象となっているロシアとベラルーシなどは招待されなかった。ロイター通信が報じた。
ロイターによると、軍事政権が民主派排除を続けるミャンマー、内戦が長期化するシリアのほか、アフガニスタン、ベネズエラも首脳の招待はなかったという。北朝鮮とニカラグアは大使級の招待にとどまった。
昨年9月19日にロンドンで執り行われたエリザベス女王の国葬にも、ロシアやベラルーシ、ミャンマー、シリアなどは招待されなかった。

 

●プーチン氏支持の作家爆発事件「ウクライナの指示と自供」「米国も関与」主張 5/7
プーチン政権のウクライナ侵攻を支持するロシアの作家ザハル・プリレーピン氏の車が爆発し運転手が死亡した事件で、ロシア連邦捜査委員会は6日、拘束した容疑者の男がウクライナ特務機関の指示を受け、道路上に爆発物を仕掛けたと自供したと発表した。インタファクス通信が伝えた。
ロシア外務省は声明で、責任はウクライナを支援して反ロシアの計画を実行している米国にもあると批判。事件について沈黙していることが「米国の関与を暴露している」と主張した。
ロシアは今月3日に大統領府があるモスクワ中心部のクレムリンにウクライナの無人機攻撃があったと発表。政権幹部は具体的な根拠を示さずに米国の関与を指摘するなど、今月にも大規模反攻に踏み切るとされるウクライナに軍事支援を続ける米国への一方的な批判を強めている。
捜査委によると男は1993年、ウクライナ東部ドネツク州生まれ。2018年にウクライナ特殊機関に入り、22年にプリレーピン氏殺害のためロシアに入国した。
プリレーピン氏は6日、ロシア西部ニジニーノブゴロドで乗っていた車が爆発。運転手が死亡し、自身も重傷を負った。
プリレーピン氏はウクライナ侵攻の前から、独立を主張するドネツク州などで義勇軍に参加していた。
●ロシア作家の爆殺未遂事件、当局「男がウクライナの指示で実行した」 5/7
ロシアの作家で、プーチン政権支持の体制内野党「公正ロシア」の共同議長でもあるザハール・プリレピン氏の爆殺未遂事件で、ロシア連邦捜査委員会は6日、拘束した男がウクライナ側の指示で実行したと自供した、と発表した。4月には戦場記者が爆殺されており、ロシアは「ジャーナリストらを狙った卑劣なテロだ」と主張し、ウクライナや米欧を批判している。
同委員会によると、男は、アレクサンドル・ペルミャコフ容疑者。プリレピン氏の車を狙い、モスクワから東に約400キロ離れたニジニノブゴロド付近の道路に、あらかじめ遠隔操作できる爆発物を仕掛けた。
爆発で車は大破し、プリレピン氏が重傷を負い、運転手は死亡した。男は逃走したが、拘束されたという。
●ウクライナとロシアの代表団が“けんか” 国際会議の会場で 5/7
トルコで開かれた国際会議の会場で、参加していたウクライナとロシアの代表団がウクライナの国旗を巡り、激しくもみ合う事態となりました。
トルコの首都アンカラで4日、国際会議の会場に来ていたウクライナとロシアの代表団がもみ合いとなりました。
CNNなどによりますと、ロシア代表団の女性のインタビュー中にウクライナ代表団の1人が背後で国旗を掲げたため、ロシア側が国旗を奪い取りました。
ウクライナ側が国旗を取り返そうと殴りかかり、両者はもみ合いになったということです。
映像には、周囲の人たちが仲裁に入る様子が収められています。
これに先立ち、会議の最中にもロシア側の発言中にウクライナ側が国旗を掲げ抗議したことで両者で小競り合いとなり、会議が一時中断していました。
●ロシアがバフムートで白リン弾使用か ウクライナが映像公開 5/7
ウクライナは6日、ロシアが東部バフムートでの戦闘で白リン弾を使ったと非難した。
ウクライナ軍が公表したドローン映像には、白いリンとみられるものがバフムートに降り注ぎ、街が燃える様子が映っている。
白リンを使った兵器は禁止されていないが、民間人のいる場所での使用は戦争犯罪に当たるとされている。
白リン弾の火は燃え広がりやすく、消火が非常に難しい。ロシアは以前にも、白リン弾の使用で非難されている。
ロシアは昨年後半からバフムート占領を試みているが、同市の戦略的価値は疑問視されている。西側当局は、バフムートでの戦闘でロシア兵数千人が死んでいるとみている。
ウクライナ国防省はツイッターで、今回の攻撃は「焼夷(しょうい)弾を使った、バフムートの非占領地域を狙ったもの」だと説明した。
この攻撃がいつ行われたのかは明らかになっていない。しかし、ウクライナが公表した、哨戒ドローンで撮影されたとみられるこの映像には、高層ビルが炎に包まれる様子が映っている。
ソーシャルメディアに投稿された他の映像では、地面に火が燃え広がり、白い雲が夜空を照らしている。
BBCの分析では、ウクライナ国防省が投稿した映像はバフムートの市街地の西側で、小児病院に近い場所と特定された。この分析では、攻撃に何らかの焼夷弾が使われたことは確定したものの、リンが使用されたかは特定できなかった。
ロシアは侵攻開始当初のマリウポリ占領など、ウクライナで白リンを使った攻撃を行っていることを非難されている。
ロシア政府は公に白リン使用を認めたことはない。ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は昨年、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がこの件に言及した際、「ロシアは国際条約に違反したことはない」と述べた。
白リンは蝋(ろう)のような化学物質で、燃焼温度は800度。酸素に触れることで発火し、明るい煙を発生させる。
人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は、白リンは「深刻なけがをもたらすことで悪名高い」としている。
粘度が非常に強く、はがすのが難しいだけでなく、包帯を解くと再発火することもあるという。
ロシアは、焼夷弾の使用を禁止している「特定通常兵器使用禁止制限条約」に署名している。
しかしHRWは、白リン弾は当初「本来、軍事作成を隠蔽する煙幕を作り出す」のが目的だったため、この条約の対象になっていないのだと説明する。
HRWによると、白リンはアメリカ軍によるシリアおよびイラクでの過激派組織「イスラム国」との戦闘を含め、「ここ15年間、繰り返し使われている」という。
一部の専門家からは、民間人のいる地域で白リン弾を焼夷弾として使うことが、違法なことに変わりはないとの意見も出ている。バフムートの侵攻前の人口は8万人だったが、現在では民間人はほとんど残っていない。
●ウクライナ軍 近く反転攻勢の構え ロシアは足並みの乱れ続く  5/7
ウクライナ軍が領土の奪還を目指して近く大規模な反転攻勢に乗り出す構えを示す中、ロシア側は南部ザポリージャ州で支配地域にいる住民7万人を移動させると発表するなど、一段と警戒を強めているとみられます。
ウクライナ軍のザルジニー総司令官は6日、SNSで「アメリカ軍の制服組トップ、ミリー統合参謀本部議長と電話で会談し領土解放に向けた軍の準備状況について伝えた」と明らかにし、ウクライナ軍は近く大規模な反転攻勢に乗り出す構えとみられます。
こうした中、ロシアが一方的な併合に踏み切ったウクライナ南部、ザポリージャ州の親ロシア派のトップ、バリツキー氏は5日、「ここ数日、ウクライナ軍の砲撃が強まっている」として、ロシアの支配地域にいる住民を移動させると発表しました。
ロシア軍が占拠するザポリージャ原子力発電所がある地域も含まれ、対象の住民はおよそ7万人に上ると伝えられ、ウクライナ軍の動きに一段と警戒を強めているとみられます。
一方、ロシアが9年前、一方的に併合した南部クリミアでは6日、地元行政府トップのアクショノフ氏がSNSで「ウクライナ軍の弾道ミサイルを上空で迎撃した」と主張しました。
ロシアでは9日に第2次世界大戦の戦勝記念日をむかえますが、プーチン政権が完全掌握を目指してきた東部の激戦地バフムトでは民間軍事会社ワグネルの代表が弾薬不足を訴えて10日に撤退すると警告し、足並みの乱れが続いています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は5日「ウクライナの反転攻勢に備え、弾薬や物資の供給を控えている可能性がある」としてロシア側はバフムト以外の地域の防衛に重点を置き始めているという見方を示しています。
●米戦争研究所「ロシアはバフムトの優先度下げた」 5/7
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」がウクライナ東部の激戦地バフムトからの撤退を表明したことについて、アメリカのシンクタンクは「ロシアはバフムト攻略の優先度を下げた」と指摘しました。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は5日、激戦地バフムトについて「ロシア国防省はウクライナ軍の反転攻勢への準備のため、バフムト攻略の優先度を下げている」との見解を示しました。
そのうえで「ワグネル」が被った損害やロシア軍は新たな人員を配置する余裕がないことが前線のウクライナ軍に有利に働く可能性があると指摘しました。
一方、ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は6日、「ワグネル」のバフムト撤退の表明に対して「敵の発表を深読みする必要などない」と切り捨て、「我々は常に最も陰湿なシナリオに備えるべきだ」と強調しました。
●トルコ大統領選 投票まで1週間 エルドアン大統領に逆風  5/7
今月14日の投票まで1週間となったトルコ大統領選挙では、物価の高騰などを受けて、再選を目指すエルドアン大統領が逆風にさらされています。
トルコはウクライナ情勢においても仲介役を買って出ていて、選挙の結果は国際情勢にも影響を与えるだけにその行方が注目されます。
トルコの大統領選挙には4人が立候補していて、再選を目指すエルドアン大統領と最大野党の党首で、6つの野党の統一候補として立候補したクルチダルオール氏の事実上の一騎打ちとなっています。
エルドアン大統領はロシアの軍事侵攻が続くウクライナからの農産物の輸出の合意をはじめ、トルコの仲介外交の成果を誇るなど、首相時代も含め20年にわたる政権運営の実績を訴えています。
これに対し、クルチダルオール氏はエルドアン政権のもとで「通貨安や物価高騰が起きた」と指摘しているほか、ことし2月に南部で発生した大地震をめぐっては、耐震基準を満たさない建物の建築を許したことが多くの犠牲をもたらしたと批判しています。
また、外交面ではエルドアン大統領のもとでぎくしゃくした欧米各国との関係改善を打ち出しています。
調査会社各社による最新の世論調査では、クルチダルオール氏がわずかにリードしているものの、一部ではエルドアン大統領が追い上げているという結果も出ていて、接戦が予想されています。
今月14日は議会選挙の投票も同時に行われるほか、大統領選挙については、過半数を獲得する候補がいなければ今月28日に上位2人による決選投票が行われます。
国民からはエルドアン大統領に厳しい声も
トルコの大統領選挙の投票まで1週間となる中、再選を目指すエルドアン大統領をめぐっては、国民から支持する声のほか、政権交代を強く求める声も上がっています。
イスタンブールで話を聞いたところ、工場で働いているという36歳の男性は「今の生活に満足している。エルドアン政権を変える必要はないと思う」と述べ、エルドアン氏に投票すると話していました。
一方、44歳の運転手の男性は「経済状況が悪く、生活が安定しないのは政府のせいだと思っている。クルチダルオール氏に投票する」と話していました。
震源に近い南部カフラマンマラシュでも話を聞きました。
50歳の女性は「長年エルドアン氏が自分たちの生活を楽にしてくれたと感じている」として、エルドアン氏の続投を支持するとしています。
一方、避難先から投票のために一時的に戻ってきたという43歳の女性は「地震のせいではなく施工主などの怠慢で家が壊れたのです。この状況を作り出した政府を支持する気はありません」と批判し、クルチダルオール氏に投票すると話していました。 
●ロシア、深刻な労働力不足か 予想より200万人多く減少 英国分析 5/7
英国防省は7日、ロシアがウクライナ侵攻が原因で、過去数十年で最も深刻な労働力不足に直面しているとの分析を公表した。
同省は、1万4千人の被雇用者を対象にしたロシア中央銀行の調査をもとに、ロシアでは雇用可能な人の数が1998年以来、最低水準にあると指摘。過去3年間に予想よりも200万人多く人口が減少したと伝えられていると明らかにした。若い世代や価値の高い産業で働く高学歴層を含む最大130万人は、ウクライナ侵攻の始まった昨年にロシアを去ったという。
同省は、労働力の不足はロシアの経済の減速やインフレにつながる可能性が高いとしている。
●爆破された「クリミア大橋」、鉄道の運行再開…対独戦勝記念日前に復旧誇示  5/7
ロシアのマラト・フスヌリン副首相は5日、昨年10月に爆破された露本土とウクライナ南部クリミアを結ぶ「クリミア大橋」の鉄道復旧工事が完了し、運行を再開したとSNSで明らかにした。9日の旧ソ連による対独戦勝記念日を前に、素早い復旧を誇示する狙いがある。
火の手と黒煙が上がるクリミア大橋(2022年10月)=ロイター火の手と黒煙が上がるクリミア大橋(2022年10月)=ロイター
クリミア大橋は、ロシアのウクライナ侵略で軍事上の重要な補給路となっており、今年2月下旬に車道が全面復旧した。鉄道部分は24時間態勢の工事により、予定よりも早く復旧が完了したという。ロシアは、ウクライナが橋を爆破したと主張している。

 

●「ロシア国防省が弾薬供給を約束」 ワグネル創設者「部隊は前進」 5/8
激戦が続くウクライナ東部バフムートの情勢をめぐり、ロシアの民間軍事会社ワグネル創設者のプリゴジン氏は7日、「(ロシア国防省から)作戦継続に必要な弾薬や武器の供給を約束された」とSNSへの投稿で明らかにした。ロイター通信などが報じた。
プリゴジン氏は5日、弾薬供給の遅れに不満を示し、10日にバフムートから撤退すると表明していた。6日には、ロシア・チェチェン共和国のカドイロフ首長に戦闘を引き継ぐ意向を示していた。カドイロフ氏はロシアのプーチン大統領の盟友とされ、ウクライナ侵攻にチェチェンの独自部隊を派遣している。
米シンクタンク「戦争研究所」(ISW)は6日、プリゴジン氏らの一連の動きについて「国防省と正規軍を無能と決めつけ、バフムート攻略の挫折の責任をなすりつけようとしている」と分析した。
プリゴジン氏は7日の投稿で、撤退を中止するかどうかは明言していない。ただ、ロイター通信によると、音声メッセージで同日夜には「我々の部隊は280メートル前進した。弾薬を受け取ることを期待している」とSNSに投稿した。
●目指すべき休戦とは 岐路に立つ米国のウクライナ支援政策 5/8
米外交問題評議会(CFR)のリチャード・ハース会長とチャールズ・カプチャン上級フェローが、米国の外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」のウェブサイトに4月13日付で掲載された論文‘The West Needs a New Strategy in Ukraine’において、ウクライナ戦争について西側は新たな戦略を必要としていることを論じ、今年末にかけて休戦に持ち込むべきことを提唱している。長文であるので、主要点のみをごくかいつまんで紹介すると、次の通り。
ウクライナを屈服させようとするロシアの努力は失敗したが、この紛争の最もあり得る結末はウクライナの完全な勝利ではなく血生臭い膠着状態である。従って、紛争を外交的に終結させるべしとする要請は強くなっている。
しかし、双方とも戦うことを誓っており、交渉による解決のための条件は熟していない。ロシアはドンバスの大きな部分を占領するつもりである。ウクライナはドンバスとクリミアの間の陸上回廊を打破し、その全土からロシア軍を排除し領土的一体性を回復する準備をしているようである。
西側はその原則を犠牲にすることなくこれらの現実を認めるアプローチを必要としている。最善の方策は2本柱の戦略である。まずは、ウクライナの軍事能力を強化し、しかる後、今年末にかけて戦闘の時期が過ぎるに伴い、モスクワとキーウを交渉のテーブルに付かせることである。
西側はウクライナに対する武器支援を直ちに迅速化し、その量と質を強化し、ウクライナの反転攻勢をできるだけ成功させて、モスクワに外交的解決を考慮するよう仕向けるべきである。反転攻勢が終了するまでには、戦場で最善の努力を尽くした後であり、また、兵員と外国の支援の制約の増大に当面して、キーウも交渉による解決という考えを受け入れることに傾くかも知れない。
第二の柱は、停戦とこれに続く和平プロセスを今年末に向けて斡旋することである。この外交的な賭けは失敗するかもしれない。双方とも戦い続けることを望むかもしれない。しかし、衝突の再発を防止し、うまく行けば永続的な平和のための舞台をしつらえ得る、永続的な休戦を追及する価値はある。
キーウに休戦と不確かな外交努力という路線に同調させるのは、モスクワに同調させるのと同様、困難なことである。多くのウクライナ人は、この提案を裏切りと見なし、休戦ラインは新たな事実上の国境になるに過ぎないことを怖れるであろう。ゼレンスキーはその戦争目的を劇的に縮小することが必要になる。
過去1年、西側はウクライナが成功を定義し西側の戦争目的を定めることを認めてきたが、この政策は、戦争の当初はともかく、今やその使命を終えた。この政策は賢明ではない。何故なら、ウクライナの目標は西側の他の利益と衝突しつつあるからである。
また、この政策は持続可能でもない。何故なら、戦争のコストが増しており、支持の継続に対する西側の一般市民と政府の疲れが増大しつつあるからである。

米国の政策形成にも影響力を有すると思われる両名が西側の政策の転換を求める見解を公にしたことは注目されなければならない。要は、今年末にかけて休戦に持ち込むということである。休戦の先にあるのは永続的な和平ではなく、朝鮮半島と同様の「凍結された紛争」だと見通している。
それを実現するための前提として、ウクライナが西側の戦争目的を定めることを認めて来た従来の路線を放棄すべきだと明言している。バイデン政権は、戦争を終わらせるための交渉を何時どうするかはウクライナの判断であり、圧力をかけることはしないと言ってきた。
これに対し当論文は、ウクライナに休戦を押し付けるとは言わないまでも、強い姿勢で説得に当たるべきことを示唆しており、戦い続けるウクライナにいつまでも支援は続かないとの強硬姿勢が垣間見える。
当論文は、西側のプライオリティは「主権的で確たる民主主義としてのウクライナの存在を維持すること」と認めつつ、それは短期的には領土的一体性の回復を必要としない、として休戦を正当化している。
しかし、2014年に占領されたクリミアとドンバスの一部はともかくとして、海に面したザポリージャとへルソンを占領され海への重要な出口を封じられた状態は、ウクライナの経済的な存立に重大な障害とならないのか? この地域の産業は破壊されたかも知れないが、その潜在的重要性はどのように評価されるのか?
この地域をウクライナが奪回出来れば、それは2022年2月以前の状態に近づくことを意味し、ロシアに報償を与えないとの原則に近づくことにもなろう。この論説が、休戦は「凍結された紛争」に転じると想定しつつ、休戦ラインの位置に無関心であることは理解し難い。
ウクライナの失地回復は必須だが……
上記に関連するが、西側はウクライナが反転攻勢に際しロシア軍を極力2022年2月の線に押し戻せるよう、ウクライナに対する武器支援を格段に強化すべきである。それによって、ウクライナが黒海とアゾフ海沿岸地域を解放することに成功すれば、休戦をよほど受け入れ易くなるであろう。成功とまでは行かなくとも、戦場で最善を尽くしたとの達成感をウクライナに抱かせることは重要であろう。
確かに、ウクライナが定義する戦争目的に沿ったウクライナ支援という政策は、西側の他の利益・プライオリティと衝突しつつある。支援疲れの問題もある。従って、今年末にかけて休戦に持ち込むべきだとの論旨は理解し得るものである。米国の大統領選挙を来年に控え、対ウクライナ支援政策が党派的駆け引きの餌食となることを避けることは賢明であろう。いずれ戦争が終わるとすれば、それは「凍結された紛争」の形とならざるを得まい。
しかし、問題は、その状態である。ウクライナが説得されるとすれば、それは反転攻勢で失地を回復する重要な戦果をあげた場合ではないかと思われる。ただし、その場合、ロシアが休戦に応ずるかは見通し難い。 
●ウクライナ大統領 “5月8日を戦勝記念日に” ロシアと決別強調  5/8
ウクライナのゼレンスキー大統領は、第2次世界大戦でナチス・ドイツが降伏した日の5月8日を戦勝記念日にすると明らかにし、5月9日を戦勝記念日としているロシアと決別し、領土を奪還して勝利する考えを強調しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、動画を公開し、この中で第2次世界大戦でナチス・ドイツが降伏した日の5月8日について、多くの国がナチスに勝利した日として記憶していると指摘し、この日をウクライナの戦勝記念日にする法案を議会に提出すると明らかにしました。
そして5月9日は、ナチスとロシアに対するヨーロッパの団結を記念する「ヨーロッパの日」にするとし、5月9日を戦勝記念日としているロシアと決別する姿勢を示しました。
そのうえで、「残念ながら悪が戻ってきた。当時のように私たちの都市や村に押し寄せ、ウクライナの人々を殺している。今回は別の侵略者だが目的は同じだ。支配か破壊だ」と述べ、第2次世界大戦のナチス・ドイツになぞらえて、軍事侵攻を続けるロシアを非難しました。
ゼレンスキー大統領は、ロシアからすべての領土を奪還した日が新たな「ウクライナの勝利の日」になるとして、「勝利の日はわからないが、ウクライナにとって、そしてヨーロッパ、さらに自由な世界全体にとって、祝日になることは知っている」と強調しました。
●ロシアに大規模攻撃の余力はない──ウクライナ軍情報トップ 5/8
ウクライナ軍の情報トップが、ロシアには「ウクライナ領内で再度の大型攻勢を試みる」力は残っていないとの見方を示した。
米ヤフーニュースは6日、ウクライナ国防省のキリロ・ブダノフ情報局長のインタビュー記事を公開した(取材日は4月24日)。この中でブダノフは「今日の時点で、ロシアには軍事的にも経済的にも政治的にも、ウクライナ国内のどこであれ、再度の大型攻勢を試みる力はない」と述べた。
ブダノフに言わせれば、ロシアのミサイルの在庫は枯渇しつつある。それでもロシアには今も「大規模な防衛戦を行う能力は十分にある」という。
「これこそが、われわれが直面しようとしている問題だ」とブダノフは述べた。「ロシアは(ミサイルの)在庫をまとめて、ウクライナの攻勢を防ぐためにそれを配備しようとしている。だが実際のところ、すでに在庫はゼロに近いのだが」
ウクライナはこの春にロシア軍に対する反転攻勢に出ると見られている。だが今後の軍事戦略に関し、ウクライナ政府の口は固い。
アメリカのシンクタンク、戦争研究所は6日、ウクライナの反転攻勢を前に、ロシアはウクライナ各地で「防衛戦」を戦うため、兵站などの検討に力を注いでいるようだと指摘した。
反攻を世界が「過大評価」? 反攻がどんな形になるかは分かっていないが、ウクライナのオレクシー・レズニコフ国防相は4月末に、「準備はまもなく終わる。兵器や軍の装備品に加え、兵士たちにその使い方の訓練を施す必要がある」
レズニコフはメディアに対し「われわれは(西側諸国から)最新鋭のシステムを受領した」と述べた。
5月初め、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者、エフゲニー・プリゴジンは、「ウクライナ軍の前進はすでに始まっている」との考えを述べた。
ロイターによればプリゴジンは「非常に近い将来、(戦況は)活動期に入ると考えている。それは数日後のことかもしれない」と述べた。
ウクライナ政府は以前から、ロシアに占領された地域(2014年に併合されたクリミア半島を含む)の奪還に努めているとしてきた。
だがチェコのペトル・パベル大統領は英紙ガーディアンに対し6日、ウクライナ政府は「作戦を成功させるのに必要なものがまだそろっていないと感じている」との見方を伝えた。
パベルはこうも述べた。「もし反攻が失敗すれば、ウクライナにとっては大きな痛手となるだろう。なぜなら少なくとも年内は、チャンスは2度とないからだ」
「われわれの反攻作戦の見通しは世界で過大評価されている」とレズニコフは述べたと、6日のワシントン・ポストは伝えている。
●ワグネル代表 “活動継続に必要な弾薬 供給を約束された”  5/8
ウクライナ東部の激戦地で弾薬不足を訴え、ロシア軍との確執を深めているロシアの民間軍事会社ワグネルの代表は、7日「われわれは弾薬と武器の供給を約束された」とSNSに投稿しました。弾薬の供給をめぐる今回の混乱は、ロシア側の指揮系統の問題で、今後のウクライナ軍の反転攻勢への対応に影響を及ぼすという指摘も出ています。
ウクライナ東部の激戦地バフムトでロシアの正規軍とともに戦闘に加わっている民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏は「われわれはこの先も軍事活動を継続するために、必要なだけの弾薬と武器の供給を約束された」とする音声メッセージを7日、SNSに投稿しました。
プリゴジン氏は、これまで前線の弾薬不足を理由にロシアの国防相や軍の参謀総長を名指しで非難し、ワグネルは今月10日バフムトから撤退し、そのあとはロシア側の別の部隊がワグネルに替わって戦闘を継続すると主張していました。
ロシア国防省はワグネルの主張に対して、これまで公式の見解を示していません。
弾薬の供給をめぐる今回の混乱についてアメリカの戦争研究所は、ワグネルを含むロシア側の強硬勢力が「ウクライナ戦線の総司令官であるゲラシモフ参謀総長に対して無理やり、弾薬を供給させたかもしれない」と指摘しています。
そして、ロシア軍がこうした指揮系統の乱れの問題を短期間で解決する可能性は極めて低いとしたうえで、今後のウクライナ軍の反転攻勢への対応にも影響を及ぼすと分析しています。
●ロシアへの反転攻勢 最終目標はクリミア? 各国の思惑は? 5/8
「重要な戦闘がまもなく始まる」ロシアに対する大規模な反転攻勢が近いことを示唆した、ウクライナのゼレンスキー大統領。領土の奪還を目指すウクライナにとって最終的な奪還の目標であり、今後、焦点となりそうなのが、2014年にロシアが一方的に併合したクリミアです。なぜクリミアが注目されるのか。ロシア、アメリカなど各国の思惑はどこにあるのか。詳しく解説します。
クリミアで何が起きてる?
「天罰は今後も続くだろう。侵略者の軍施設の近くにいることは避けるべきだ」
ロシアが一方的に併合したウクライナ南部のクリミア。
その軍港都市セバストポリにあり、ロシア海軍黒海艦隊が使用している燃料の貯蔵施設で4月29日に起きた大規模な火災について、ウクライナ国防省の情報総局の高官は、そう述べました。
ウクライナ軍の南部方面司令部の報道官は「誰もが待ち望んでいる大規模な攻撃に向けた準備だ」と関与を示唆。
さらに5月3日には、「クリミア大橋」に近いロシアの南部クラスノダール地方の石油貯蔵施設でも火災が起き、無人機による攻撃だと伝えられました。
ゼレンスキー大統領も「重要な戦闘がまもなく始まる。わたしたちの土地や国民をロシアの支配から解放しなければならない。陸と海で国境を完全に取り戻さなければならない」と述べ、大規模な反転攻勢に踏み切る構えを示しています。
これに対し、ロシアの治安機関FSB=連邦保安庁は「クリミアで、ロシア側の要人の暗殺や、インフラ施設へのテロ攻撃が計画されていた」として、ウクライナ側の7人の工作員を逮捕したと発表。
ウクライナ国防省の情報機関、情報総局のブダノフ局長が主導したと主張しました。
さらに、ロシア軍はクリミアの北側などで塹壕ざんごうを掘るなど、ウクライナの進軍に備えた大規模な防衛線を築いているとの指摘も出ていて、緊張が高まっています。
そもそもクリミアとは?
黒海の北側から南に大きく突き出したウクライナ南部のクリミア半島。
戦略上重要な拠点として何世紀にもわたって係争が続いてきました。
18世紀にオスマン帝国からロシア帝国に併合されたあと、1850年代には列強の勢力争いを背景に、ロシアとイギリスやフランスなどとの間で行われた「クリミア戦争」の戦場になりました。
ロシア帝国の崩壊後はソビエトに引き継がれましたが、1954年にソビエトの当時の指導者フルシチョフが、クリミア半島の帰属をロシア共和国からウクライナ共和国に移管。
しかし、1991年にソビエトが崩壊しウクライナが独立すると、ロシアとウクライナの間で帰属をめぐる対立が始まりました。
プーチン大統領にとってのクリミアとは?
プーチン大統領にとって、クリミアはみずからの力を誇示する象徴的な場所でもあります。
2014年にウクライナで起きた政変でロシア寄りの政権が崩壊したのを機にプーチン政権を後ろ盾とする親ロシア派は、ロシア系住民が多くを占めていたクリミアで住民投票を強行。
圧倒的多数の賛成を得たとして、プーチン政権は3月18日にクリミアを併合すると一方的に宣言しました。
当時の演説でプーチン大統領は「人々の心の中でクリミアはこれまでも、これからも、ロシアの不可分な一部であり続ける」と述べ、併合の正当性を主張しました。
ことし4月に大規模な火災があったセバストポリは、ロシア海軍の黒海艦隊が駐留する戦略的に重要な拠点でもあります。
9年前に一方的に併合を宣言した3月18日には、そのセバストポリをプーチン大統領が軍事侵攻後初めて訪問。
私服姿で地元幹部から説明を受ける姿や、みずから車を運転する様子も公開し、その支配を誇示しました。
ロシアによる併合後のクリミアは?
“ロシア化”とも言える既成事実化が進められ、プーチン政権はクリミア支配の正当性を主張し続けています。
標準時間をモスクワと同じ時間帯に変更。
通貨もロシアのルーブルに切り替えたほか、地元住民にロシア国民であることを証明するパスポートも発給しています。
2018年にはクリミアとロシア本土を結ぶ全長19キロの「クリミア大橋」を完成させ、プーチン大統領みずからダンプカーを運転して橋を渡り、クリミア支配を内外にアピールしました。
また、クリミアへの支配を続けるための特別プログラムを作り、火力発電所や空港、道路などのインフラ整備を進め、巨費を投じてクリミアの発展に力を入れています。
クリミアに住む住民は?
ウクライナとゆかりがある市民の動きに、クリミアを支配しているロシア側の当局は神経をとがらせ、締めつけを強めているとみられます。
地元の人権団体は、侵攻開始からの1年でウクライナの歌を歌ったり侵攻に反対したりしたとして200人以上が摘発されたと非難しています。
ことし2月、ロシア側からクリミアに入ったアメリカのNBCテレビは、ロシア系住民が「ここは自分たちの土地だ。自分たちで防衛したい」と話すなど、クリミア奪還を目指すウクライナ側の動きに反発する市民の声を伝えました。
一方、「侵攻について話すと涙が出る。なぜこんなことになってしまったのか。平和に暮らすことはできないのか」という女性の声も紹介し、ロシア系住民が多く暮らしプーチン政権寄りの考えを持つ人が相当数に上る中で、ウクライナ侵攻に否定的な声を上げにくい状況があると伝えています。
ウクライナにとってのクリミアとは?
ロシアによる軍事侵攻が長期化する中で、ウクライナ側はクリミア奪還を目指す方針を明確にしています。
去年3月、ゼレンスキー政権はロシアとの停戦交渉で「クリミアの主権は15年間かけて協議する」として、一時的に棚上げする姿勢も示していました。
ゼレンスキー大統領自身も去年5月、NHKとのインタビューで「まずは領土を2月24日以前の状態に戻した上で、ロシアとの交渉のテーブルにつく」と明言。
クリミアの奪還を待たずに和平交渉に入る可能性も示唆していたのです。
しかし、ブチャで起きたロシア軍による市民虐殺、そしてその後、ウクライナ東部で大規模な領土奪還に成功したことで、ゼレンスキー政権はしだいにクリミア奪還を目指す姿勢を強めます。
ことし3月、クリミアの問題を統括するタシェワ大統領代表は、2021年に定めたクリミアを巡る戦略についてクリミア奪還を明記する方針を明らかにしました。
政府としての戦略の内容をより具体化し、奪還を目指す方針を明確にしたのです。
クリミアを巡る攻防 ロシアはどう出る?
「クリミアはロシアにとって明らかに越えてはならない一線、レッドラインだ」
プーチン政権に近い、ロシアの政府系シンクタンク「ロシア国際問題評議会」でことし3月まで会長をつとめたアンドレイ・コルトゥノフ氏はこう、警告します。
コルトゥノフ氏「クリミアを奪還する試みはロシア指導部にとってはもちろんレッドラインだ。
クリミアは、ロシアから切り離せない一部として認識され、クリミアに住む人々もロシア社会の一部として認識している。ウクライナが時々、クリミアのロシア側の施設に攻撃を加える試みを目の当たりにするが、ロシア指導部は、相当いらだっているようだ。ただ、ウクライナがクリミアを、奪還できる可能性は、大きくないと思う。クリミアは基本的にしっかりと防衛されている」
プーチン大統領の側近で、強硬派として知られる安全保障会議のメドベージェフ副議長も国営メディアとのインタビューで「核抑止力の原則に規定されたものを含む、あらゆる防衛手段を使う根拠になる」と発言。核戦力をちらつかせて威嚇しています。
クリミアでは3月、アメリカとロシアの双方の軍によって、一触即発になりかねない事態も起きました。
クリミア沖合の黒海上空で、アメリカ軍の無人機と、ロシア軍の戦闘機が衝突したとアメリカ側が発表し、映像を公開。ロシア側も反発し、非難合戦になりました。
コルトゥノフ氏は、クリミア周辺の黒海はロシアが「領海」と捉えているため、ロシア側とNATO=北大西洋条約機構が直接、衝突する危険性が高まっていると懸念を示しています。
コルトゥノフ氏「3月の案件は、意図しないエスカレーションが起こりうることを示すものだ。双方が意図していなくても、負の連鎖が続き、最悪の場合、核すら含む直接的な軍事衝突に発展する危険性もある。これは誰もが注意を払うべき深刻な警告だ」
ウクライナのクリミア奪還にアメリカは?
最大の軍事支援国アメリカは、ウクライナがクリミアの奪還を目指すことについて、慎重な姿勢をとり続けているとみられています。
アメリカの戦略を見る上で注目されている兵器がATACMSと呼ばれる射程がおよそ300キロの地対地ミサイルです。
これまでアメリカが供与してきたどの兵器よりも射程が長く、ウクライナ側は、長い射程によって安全な場所からロシア軍を攻撃できるなどとして供与を要望。
ただ、クリミア半島のほぼ全域を射程にとらえられることから、アメリカでは、クリミアを攻撃する際に使用されるという見方が出ているのです。こうした理由もあってか、ウクライナ側の要望に対してアメリカ政府はこれまでのところ応じる姿勢を見せていません。
ウクライナを巡る国際情勢などに詳しいカリフォルニア大学リバーサイド校のポール・ダニエリ教授は「ロシアを刺激し戦闘をいっそうエスカレートさせることは避けたい」というアメリカ側の懸念を指摘します。
ダニエリ教授「アメリカは、供与した兵器でウクライナがクリミアを攻撃することに神経をとがらせている。もしATACMSを供与するならウクライナがどのように使うのかを巡ってきちんとした取り決めが必要だとアメリカは考えている」
その一方、アメリカはことしに入って、提供しないとしていた戦車の供与を一転して決めるなど、軍事支援については、さまざまな方針も示されています。
ダニエリ教授「アメリカは、ウクライナにロシアを打ち負かしてほしい一方で、ロシアが衝突をエスカレートさせたり、核兵器の使用に踏み切ったりすることは避けたいと考えている。兵器の供与を巡って一貫性がないのは、そのための戦略を打ち出すことにアメリカが苦心しているからだ」
アメリカが、ロシアを刺激することは避けつつ、ウクライナへの支援を強化して勝利につなげるための明確な戦略を見いだせないでいるというのです。
ウクライナ、ロシア双方にとって譲れない一線になっているクリミア。
5月にも領土奪還に向けたウクライナの大規模な反転攻勢が開始されるという見方も出る中、そのクリミアをめぐって、各国の思惑は複雑に交錯しています。

 

●ロシア「戦勝記念日」 プーチン「ナチスの思想継承者を正当化させない」主張 5/9
ロシアできょう第2次世界大戦の対ドイツ戦勝記念日を迎えるのにあわせ、プーチン大統領はウクライナ侵攻を念頭に「ナチスとその思想的継承者を正当化させないことがわれわれの義務だ」と表明しました。
ロシアは対ドイツ戦勝記念日にあたるきょう、モスクワの赤の広場で軍事パレードを行い、プーチン大統領が演説する予定です。
ロシア大統領府によりますと、これに先立ちプーチン大統領は8日、旧ソ連諸国の首脳や国民に向けて祝辞を送りました。
その中でプーチン氏は「ナチスの侵略者を粉砕したすべての人たちに尊敬と感謝の意を表する」と述べたうえで、ウクライナ侵攻を念頭に「ナチスとその思想的継承者を正当化させないことがわれわれの道徳的な義務だ」と主張しました。
去年はウクライナの国民にも祝辞を送っていましたが、今年は取りやめています。
一方、きょうの軍事パレードには、当初キルギスの大統領のみが出席を明らかにしていましたが、8日になってアルメニアやカザフスタンなど旧ソ連諸国の首脳の出席が相次いで発表されました。
ロシアとしては孤立していないとアピールする狙いがあるとみられますが、カザフスタンのトカエフ大統領は去年11月、ウクライナ侵攻をめぐり「和平を模索する時だ」と発言し、ロシアと距離を置く姿勢を示しています。
こうした中、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏は、ウクライナ東部の要衝バフムトで部隊が前進を続けているとSNSに投稿しました。
ロシア国防省から「供給を約束された」としていた弾薬については、その後の投稿で「受け取り始めている」と主張。バフムトでは激しい戦闘が続いているとしています。
●ロシアの対独戦勝記念日、プーチン氏が「赤の広場」で演説へ… 5/9
旧ソ連による第2次世界大戦の対独戦勝記念日の9日、ロシアのプーチン大統領はモスクワで演説する。演説では改めてウクライナ侵略を正当化し、国民に協力を呼びかける見通しだ。式典会場に隣接する露大統領府が3日に無人機で攻撃されており、厳戒態勢の中で軍事パレードが行われる。
式典はモスクワ中心部「赤の広場」で午前10時(日本時間午後4時)に始まる予定だ。露大統領府への無人機攻撃を巡り、露大統領府は「ウクライナによるテロ攻撃」と主張し、「報復の権利」をアピールしている。プーチン氏はこれまで対応を明らかにしておらず、演説でどう言及するかが注目される。
軍事パレードはモスクワ以外でも行われる見通しだが、ウクライナとの国境付近を中心に20都市以上が「安全上の理由」などから中止を発表している。ウクライナ軍による攻撃の誘発を避けるためとみられる。露国防省は昨年と異なり、モスクワでのパレードに参加する戦車などの装備を事前に発表していない。
独ソ戦で犠牲になった家族や先祖の写真を掲げて住民が各地で自発的に行進する「不滅の連隊」も中止する。露政府は反戦デモに発展する事態を警戒しているとみられる。
一方、プーチン氏はモスクワの式典に旧ソ連構成国の首脳を次々と招待している。タス通信によると、ベラルーシやカザフスタン、アルメニアなど6か国の首脳が8日、モスクワ入りした。ロシアは侵略開始後、「勢力圏」と位置付ける旧ソ連構成国への影響力低下が指摘されており、プーチン氏には求心力を誇示する狙いがあるとみられる。
●ロシア、キルギス内の軍事施設「発展」で合意 大統領会談 5/9
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は8日、首都モスクワを訪問した中央アジア・キルギスのサディル・ジャパロフ大統領と会談し、キルギス国内のロシア軍事施設を「発展」させることで合意した。ロシア大統領府が発表した。
ロシアは、旧ソ連構成国の同盟国であるキルギス国内に空軍基地や海軍施設などを保有している。ジャパロフ氏は、9日にモスクワで予定されている対ドイツ戦勝記念日の軍事パレードに出席する予定。
●G7結束が最善の中国抑止策、依存引き下げと防衛力強化の加速を 5/9
ホメロスの「オデュッセイア」を基にした「スキュラとカリュブディスの間」はどちらの道を選ぶか判断が困難であることを指すことわざだが、広島で今月開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、中国に関して同じような状況に置かれていると感じられるかもしれない。台湾を中国に侵攻してほしくないが、同国との戦争も避けたい。
この2つの「怪物」の間で舵を操る最善の方法は、G7が強力な抑止戦略で合意することだ。そうすれば中国の習近平国家主席は台湾への侵攻に消極的になるかもしれない。そうでなければロシアのプーチン大統領がウクライナ戦争に当たって西側が弱すぎると誤って判断したように、習氏はG7の分裂を利用できると考えるかもしれない。
ユーラシアは一つの大陸
米国のアジアの同盟国に断固とした姿勢のメリットを説得する必要はないだろう。しかし、欧州の指導者の中には疑念を抱いている者もいる。フランスのマクロン大統領は先月、欧州連合(EU)が台湾を巡る危機に巻き込まれないよう警告を発した。
習氏がウクライナ戦争直前にプーチン氏と「制限なし」の友好関係を宣言して以来、欧州とアジアは地政学的に一つの広大な大陸になった。
中国が武力で台湾を併合すれば、日本や韓国など他のアジア諸国は脅威を感じるだろう。中国がこの地域の覇権国になりかねない。台湾への侵攻が成功した場合、米国は孤立主義に陥るか、ウクライナから中国に目を向けるか、いずれかの反応を示す可能性がある。
中国はまた、ロシアへの武器供与に勢いづくかもしれない。そうなれば欧州にとって恐ろしい話だ。
2つの加速
G7各国が抑止の必要性に合意できたなら、次にそれを達成するための効果的な戦略を立案する必要がある。それは中国への依存度引き下げと防衛力強化の両方を加速させることだ。
イエレン財務長官を含む米高官は最近、経済の「デカップリング(分断)」とは対照的に、中国へのエクスポージャーを「デリスキング(リスク低減)」する政策を求める欧州に賛同している。
また、米国は中国が先端半導体など軍事的に有用な技術を獲得するのを阻止するため同盟国に働きかけている。中国と米国およびその同盟国の軍事的格差が縮まるのを防ぐことができれば、それも侵略の抑止になり得る。G7が冷戦時代のココム(対共産圏輸出調整委員会)のように、輸出管理に関する行動を調整する事務局を設置すればより効果的だろう。
G7各国は軍事力強化に向けた既存の計画を加速する必要もある。これは米国とアジアの同盟国だけでなく、欧州諸国も同様だ。欧州の防衛力を強化することで、米国の焦点はより東方に向けられる。
米国が欧州から目をそらすべきと言っているわけではない。結局のところ、中国を抑止する唯一の最良の方法はウクライナがロシアを撃退するのを支援することだ。
コンティンジェンシープラン
G7の抑止戦略のもう一つの柱は、中国が台湾に侵攻した場合にどうするかというコンティンジェンシープラン(不測の事態を想定した緊急対応策)だ。
一つの選択肢は徹底的な経済制裁だろう。しかし、これは賢明ではないかもしれない。中国との関係を急速に断ち切った場合の経済的、財政的コストはG7にとっても、そして他の国々にとっても恐ろしいものになる。例えば、米国とその同盟国が対ロシアと同じように中国の3兆2000億ドルに及ぶ外貨準備を凍結すれば、中国は外国人が保有するほぼ同額の国内資産を没収することで対抗できる。
もちろん、中国が医薬品の製造に必要な原薬といった重要物資の供給を停止すれば、G7は報復をしなければならないだろう。しかし、中国にはデカップリングによる痛みに耐えられるだけの力があるかもしれない。したがって、侵略に対抗して全面的な経済戦争を起こさないという戦略であればG7内のコンセンサスを得ることはより容易になりそうだ。
バイデン米大統領も、同盟国を納得させるために、戦争は最後の手段であることを明確にする必要がある。緊張が高まった際に米国がどのように対応するかについて、コンセンサスを得ることが理想的だ。
例えば、中国による台湾封鎖シナリオが取り沙汰されている。米国は封鎖を突破するため全面戦争を引き起こす可能性があるのだろうか、それとも1948年のソ連によるベルリン封鎖時のように、米国と同盟国が台湾に物資を空輸するのだろうか。
中国による台湾占領というスキュラと、紛争というカリュブディスの間を航行するのはコストゼロではないだろう。G7は最低でも防衛とサプライチェーン(供給網)確保に多額の資金を投じなければならなくなる。
オデュッセウスは何人かを失った。しかし、少なくとも彼の船と乗組員の大半は生き残った。
●ロシア新興財閥から「ひどい」戦争の批判、ウクライナ侵攻巡り 5/9
ロシアの新興財閥(オリガルヒ)の一人、アンドレイ・コバレフ氏が8日、政府のウクライナ侵攻や侵攻行為が自国にもたらした結果を批判した。
コバレフ氏はSNS「テレグラム」で共有した動画で、自分は当初、ロシア軍がウクライナ軍の防衛を打ち破り、キーウを2、3週間以内に掌握すると信じていたと発言。それが現実とならなかったことに驚きを示した。
コバレフ氏はウクライナ侵攻以降にロシアが被った大きな損失を指摘。侵攻当初に到達した地点からのロシア軍の撤退、ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」の沈没、クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア大橋の爆発、クレムリン(ロシア大統領府)に対する無人機攻撃と主張される事案に言及した。
コバレフ氏の発言は自身が会長を務める企業家団体の生配信で行ったもの。同氏は「これは特別軍事作戦ではなく、ひどい戦争だ」と述べた。
さらに「世界全体が我々に敵対している。122カ国が我々を侵略者と認識する票を入れた」とも語り、先月国連総会で採択された決議に触れた。ウクライナに対する戦争を「ロシア連邦による侵略」と位置付けるこの決議には、中国とインドも賛成票を入れた。両国はこれまでロシアによる全面侵攻を非難していなかった。
テレグラム上にある事前録画した別の動画では発言のトーンを少し抑え、戦争での勝利を確実にするため、プーチン大統領が「国家企業家の奉仕の呼びかけ」をすべきだと述べた。
コバレフ氏は不動産実業家で「全ロシア企業家運動」の会長を務める。同団体のホームページによれば、公職の経験もあり、モスクワ市議会の議員だった時期もあるという。
ロシアでは政府への異議を唱える余地はほとんどない。プーチン氏が情報空間の統制を強め、市民の多くはウクライナ侵攻の正確な情報にアクセスできない。公然と異議を唱えようとすれば長期の禁錮刑かそれ以上の刑罰を受ける可能性がある。
だが、一部のロシア人の間では、つまずきの多い侵攻の今後の行方に動揺が広がり始めている兆候がある。歌手のアーラ・プガチョワ氏は昨年9月、ロシア兵が「我々の国をのけ者にする幻想の目的のために死ぬ」のを止めるように訴えた。
コバレフ氏の批判は1945年のナチス・ドイツ降伏を記念する5月9日の「戦勝記念日」前日に行われた。 
●プーチン大統領「ウクライナの国民は西側諸国の人質」… 5/9
ロシアのプーチン大統領は9日、モスクワの中心部「赤の広場」で行われている式典での演説で、ウクライナ侵略を第2次世界大戦の独ソ戦と重ね合わせ「ロシアに対する戦争が再び始まった」と強調し、「ウクライナの国民は西側諸国の人質となっている」と米欧を批判した。
●ロシアで戦勝記念日のパレード、プーチン氏が演説 「ウクライナは人質」 5/9
ロシアの首都モスクワにある赤の広場で9日、対ドイツ戦勝記念日のパレードが始まった。プーチン大統領が演説し、ウクライナは「西側の主人」に率いられる政権の「人質」になったと主張した。
ショイグ国防相は軍隊を視察し、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利してから78年を迎えたことを祝った。
戦勝記念日はプーチン大統領の日程で最も重要なイベントになる。プーチン氏は長年、国民の支援を結集し、ロシアの軍事力を誇示するためにこの日を利用してきた。
だが、今年はパレードの豪華さとは対照的に、ウクライナでの軍事作戦の停滞が目立つ。モスクワの外では、ウクライナ国境地帯をはじめとする複数の地域で、安全上の懸念や展示する軍事装備の不足から準備の規模が縮小された。
パレードにはロシアの「特別軍事作戦」に参加した兵士も姿を見せた。
プーチン大統領は演説で、ロシアに対して「真の戦争」が仕掛けられていると主張。ウクライナ国民については、「西側の主人率いる犯罪政権の誕生につながったクーデターの人質になった。西側の残酷で自己中心的な計画の駒になったのだ」と述べた。
●“異例ずくめ”のロシア戦勝記念日・・・ 5/9
9日、ロシアでは戦勝記念日の軍事パレードが行われ、プーチン大統領が演説をしました。プーチン大統領の演説からどのような現状が読み取れるのでしょうか。解説です。
異例ずくめのロシア戦勝記念日 プーチン大統領の狙いは
日比麻音子キャスター: そもそも戦勝記念日の式典は、国民の愛国心を鼓舞する目的があり、また軍事力を国内・国外にアピールする重要な行事とされていますが、今回はどのように行われたのでしょうか。
・軍事パレードの兵器→事前の説明なし
・外国メディアに対して取材制限→TBSのカメラも建物の中から撮影
・軍事パレード→今回は少なくとも21の都市が中止を表明。2022年は全体で28の都市でパレードが行われたので、2023年は小規模の開催となった。
「ロシアに対する真の戦争」プーチン大統領が演説で語ったこと
日比キャスター: では、こういった中でプーチン大統領は何を語ったのでしょうか?
プーチン大統領「ロシアのために戦っている全ての人々を歓迎いたします」「全世界の人々と同じように、我々は平和的な自由で安定した将来を見たいのです」「ロシアに対して真の戦争が行われています」「ロシア国民のみなさん、ロシアの運命を決する戦いはいつも神聖なものでした」などと、ロシア国民に対しても鼓舞するような内容が語られています。
一方で、西側諸国に対してはこのような言葉がありました。
プーチン大統領「西側諸国はいつも優位性について語っている。世界を分裂させようとしている。彼らの目的は、我々の国を破壊することだ」
この行事はそもそも犠牲者の追悼や国際社会の結束といった象徴の側面もある中で、西側諸国に対しては強い非難の言葉があったわけです。
ホラン千秋キャスター: ウクライナ侵攻が始まって2回目の戦勝記念日になるわけですけれども、前回と比べて今回は規模が縮小されたり、今までと勝手が違ったりというのはどんな背景があるんでしょうか?
防衛省 防衛研究所 高橋杉雄氏: 基本的には今、最前線で激戦が繰り広げられているので、最前線で使っている兵器を出せなかったということだと思います。また、最前線で泥まみれになっている兵士がアイロンの通った軍服でパレードをしている兵士たちを見てどう思うかを考えたときに、あまり派手に演出できないといったところがあったのではないかとも思います。同時にここでナショナリズムを高揚させないと、軍隊に入ってくる人を増やすことができないので結構ジレンマがあったのではないかなと感じます。
ホランキャスター: 海外のメディアを入れないのはどういうことでしょうか?
防衛省 防衛研究所 高橋杉雄さん: おそらく全体をコンパクトにしたいということと、あとは基本的にこれはロシアのものだというところで、国際的なアピールに気をつかわなくなっているということではないかと。
ホランキャスター: 肝心の内容に気になる部分はありましたか?
防衛省 防衛研究所 高橋杉雄氏: 言った部分と言っていない部分がポイントだと思います。発言した部分で言えば、西側に対する敵愾心ですよね。これはこれまでの演説でも一貫していて、プーチン大統領は民主主義とかだけではなくLGBTの問題などについても、はっきりと敵意を示しているわけです。あと、対独戦勝記念日ですからナチスに対する勝利を祝うイベントなわけですけれども、そこにおいて西側がナチスみたいになっているというか、西側がウクライナを支援しているからウクライナの国民が悪いんじゃなくて、ウクライナを支援する西側が悪いんだっていうトーンを強調しているのも言ったことですね。言わなかったこととして言うと、戦意を煽るような挑発的な言葉はあるんですけれども、喋り方としては非常に穏やかに喋っていましたし、そのあたりをどう読み解くかを考えていく必要があると思います。
ドローン攻撃は“自作自演”?
日比キャスター: そして軍事パレードを迎える数日前にこういったことがありました。ロシア大統領府によりますと、5月3日にクレムリン(ロシア大統領府)へのドローンの攻撃があったと発表がありました。
・ロシア側=“ウクライナ側がドローン攻撃を試みた”
・ウクライナ側=攻撃を“全面否定”
高橋さんによると、これはロシアによる自作自演の可能性があるということです。
防衛省 防衛研究所 高橋杉雄氏「“ロシアの政府の中心地”が攻撃されたとすることで、軍を拡大し、さらなる攻撃の“動機づくり”に利用したのではないか」
ホランキャスター: この“さらなる攻撃”が懸念されますよね。
防衛省 防衛研究所 高橋杉雄氏: ここのところ4日続けて首都キーウがドローンで攻撃されています。ただし2022年の秋からやっていた大規模なミサイル攻撃がなくなっていて、もしかしたらミサイルの数が足りなくなっているのではないかということも推測できますね。おそらくロシアはウクライナの反攻に備えてます。そのときのために弾を取ってるんだと思いますけど、まだわからない部分はいっぱいあります。
●プーチン大統領演説 侵攻正当化 今後も続ける姿勢強調  5/9
ロシアでは9日、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利してから78年の記念日を迎え、首都モスクワでは、日本時間の9日午後4時から中心部の赤の広場で記念の式典が行われました。プーチン大統領は演説で、「われわれの祖国に対して、再び本当の戦争が行われている」などと述べ、ウクライナへの軍事支援を強める欧米側を非難したうえで、ロシアによる軍事侵攻を正当化し、今後も続ける姿勢を強調しました。
―――演説の内容―――
“祖国に対して再び本当の戦争が行われている”
プーチン大統領は演説で、「文明は再び重要な岐路に立たされている。今、われわれの祖国に対して再び本当の戦争が行われている。しかし、国際的なテロを撃退し、東部ドンバス地域の住民を保護し、われわれの安全を確保する」と述べ、ウクライナへの軍事支援を強める欧米側を非難したうえで、ロシアによる軍事侵攻を正当化しました。
“ロシアの将来 特別軍事作戦に参加のあなたがたに”
プーチン大統領は演説で、「ロシアの将来は、特別軍事作戦に参加しているあなたがたにかかっている。勝利に万歳」と述べ、ウクライナへの軍事侵攻を続けていく姿勢を強調しました。
“西側のエリートがロシア嫌いをまきちらした”
プーチン大統領は演説で、「西側のエリートは、ロシア嫌いをまきちらし、人間らしさとは反対の価値観を広めた。自分の命をかえりみず、ヨーロッパの自由のためにナチスを打ち倒したのが誰だったのか、彼らは忘れてしまったようだ」と述べ、欧米を批判しました。
“国全体がわれわれの英雄たちを支援するため結束”
プーチン大統領は演説で、「われわれは特別軍事作戦に参加した人々、 最前線で戦っている人々、負傷者を救っている人々のすべてを誇りに思う」と述べました。そのうえで、「国全体が、われわれの英雄たちを支援するために結束している。すべての国民は、英雄を支える準備ができている」と述べ、国民に一層の結束を呼びかけました。
プーチン大統領 日本を批判的に言及 友好関係強める中国たたえる
プーチン大統領は、演説で「われわれは、ナチズムと勇敢に戦ったレジスタンスの参加者と、アメリカやイギリス、その他の国の連合軍の兵士に敬意を表す。日本の軍国主義と戦った中国の戦士たちの偉業を記憶し、尊重している」と述べました。プーチン大統領としては、ロシアへの制裁などで欧米側と歩調を合わせる日本について批判的に言及する一方で、プーチン政権が友好関係を強める中国をたたえた形です。
戦勝記念日の式典と軍事パレード終わる
ロシアの首都モスクワ中心部の赤の広場で行われた第2次世界大戦の戦勝記念日の式典と軍事パレードは、日本時間の午後4時45分頃に終わりました。
“クレムリンへの無人機攻撃”への直接の発言なし
ロシア大統領府は今月3日、クレムリンに対して無人機による攻撃が仕掛けられたと発表しましたが、プーチン大統領からこれについて直接の発言はありませんでした。
ゼレンスキー大統領 “ロシア軍はバフムトを掌握できなかった”
ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、首都キーウを訪れているEU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長とともに記者会見し、ロシアで第2次世界大戦の戦勝記念日にあたる9日までに、ロシア軍が何らかの軍事的な成果を得ようとしていたと指摘しました。ゼレンスキー大統領は「ロシア軍はバフムトを掌握できなかった。ロシアにとっては5月9日までに終わらせたかった最も重要な軍事作戦だった」と述べ、ロシア側が東部の激戦地バフムトの攻略に失敗したと強調しました。
ワグネル “不足の弾薬 要求の10%もバフムトで数日戦う”
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に参加している民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏は、これまで不足していると訴えてきた弾薬について、ロシア国防省から受け取ったとしたものの「要求した10%だった。われわれはだまされた」と述べました。ただ、「われわれはバフムトを離れず、あと数日は戦うだろう」と述べ、弾薬を使って東部の激戦地バフムトでの戦闘を続けると主張しました。プリゴジン氏は5月5日に、ロシア国防省が弾薬の供給を意図的に止めていると非難し、10日にバフムトから撤退する意向を表明していましたが、これを事実上、撤回したものとみられます。
「赤の広場」の軍事パレード 規模は縮小に
首都モスクワの赤の広場で行われた戦勝記念日の軍事パレードについて、ロシア大統領府は9日、参加した兵士の数はウクライナへの軍事侵攻にも加わった530人の兵士を含む8000人以上だったと発表しました。ロシア国防省はことし3月、1万人以上が参加すると発表していましたが、規模は小さくなっています。また軍事パレードでは、ウクライナへの攻撃にも使用されている短距離弾道ミサイル「イスカンデル」や、核兵器の搭載が可能なICBM=大陸間弾道ミサイル「ヤルス」などの核戦力も披露されました。一方、去年と比べて軍用車両の数は少なく、戦車は第2次世界大戦で旧ソビエト軍の主力を担った「T34」が1両だけで、戦闘機などによる上空の飛行も実施されませんでした。さらに、例年、戦勝記念日に、軍事パレードとともに恒例行事となっていた「不滅の連隊」と呼ばれる市民が行進する催しについても安全上の懸念を理由に全土で中止されました。
旧ソビエトの首脳7人が式典に出席
ロシア大統領府によりますと、旧ソビエトのアルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、それにウズベキスタンの首脳が式典に出席したということです。
ロシアの「戦勝記念日」とは
ロシアで、5月9日は第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利したことを祝う「戦勝記念日」で、最も重要な祝日の1つとなっています。第2次世界大戦の期間中、旧ソビエトでは世界で最も多い、少なくとも2600万人の兵士と市民が死亡したとされ、ロシアで戦勝記念日は苦難の末に勝利した栄光と誇りの日と位置づけられています。例年、この日には各地で記念式典などが行われ、戦勝国・敗戦国を問わず大戦の犠牲者を追悼し、平和に向けた国際社会の結束が誓われるなど「追悼と和解」の象徴という側面もありましたが、プーチン政権は、この戦勝記念日を国威発揚の場として利用してきました。ウクライナへ軍事侵攻開始後の去年の戦勝記念日では、プーチン大統領が演説で、「アメリカやその同盟国が背後についたネオナチとの衝突は、避けられなかった」などと述べ、ウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」だとする主張を繰り返し、欧米の脅威が背景にあったとして侵攻を正当化しました。また軍事パレードでは、天候を理由に実施されなかったものの、核戦力による戦争など、非常時に大統領が乗り込む特別機の飛行も計画されました。さらにロシア側は、ウクライナ東部や南部の占領地域でも記念の催しを行い、ロシアの支配下に置いたと誇示しました。
軍事パレード ことしは相次ぎ中止
ロシアのプーチン政権は、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した5月9日の戦勝記念日を国民の愛国心を高揚させ、結束を強める機会として重視してきました。しかし、ことしは4月に入ってから安全上の懸念などを理由に、軍事パレードの中止が相次いで発表されました。中止が決まったのは、ロシア西部のベルゴロド州やクルスク州、ブリャンスク州などウクライナと国境を接する地域のほか、北西部のプスコフ州や中部のリャザンなど国境から離れた地方、さらに、ロシアが9年前、一方的に併合したウクライナ南部のクリミアや、軍事侵攻後の去年9月に併合したとしている東部ルハンシク州や、南部ヘルソン州、ザポリージャ州などでも軍事パレードの中止が決まっています。ロシアのメディアは、5月4日までに軍事パレードの中止が発表されたのは、20以上の都市に上ると伝えています。一方、首都モスクワの中心部赤の広場で行われている軍事パレードについては、ロシア大統領府はプーチン大統領の演説とともに、予定どおり実施されるとしています。ただ、一部のロシアメディアは4月、赤の広場で行われる軍事パレードでは、航空機による上空の飛行は中止が検討されていると伝えていて、規模が縮小される可能性もあります。
「不滅の連隊」は全土で実施見送りに
また、軍事パレードとともに恒例行事となっている「不滅の連隊」と呼ばれる市民の行進について、国営通信社は安全上の懸念を理由に、ことしは全土で実施が見送られることになったとしています。「不滅の連隊」が中止される背景についてイギリス国防省は4月、ウクライナでのロシア側の損失に参加者の目が向くことを政権側が懸念している可能性が高いとする分析を発表しています。
旧ソビエト6か国の大統領や首相 出席予定
モスクワで9日開かれる戦勝記念日の式典には、旧ソビエトのベラルーシ、ウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、それにアルメニアの6か国から大統領や首相が出席する予定です。プーチン大統領は8日、キルギスのジャパロフ大統領とモスクワで会談し、「第2次世界大戦では、36万人のキルギス国民が前線に行き、そのうち13万4000人が帰らぬ人となった」と述べ、当時、ソビエトの一員として、ともにナチス・ドイツと戦った両国の歴史を強調しました。ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領は8日、関係が良好な旧ソビエトの国々の首脳に対して、戦勝記念日を祝うメッセージを送ったということで、欧米との対立が深まる中、第2次世界大戦の歴史を共有する旧ソビエト諸国をつなぎ止めたい思惑があるとみられます。
●プーチン氏演説要旨 「西側の目的はロシアの破壊」 5/9
文明は再び決定的な転換点にある。わが国に対して戦争が起こされたが、われわれは国際テロリズムに反撃し、ドンバス地域(ウクライナ東部ドネツク、ルガンスク両州)の住民と自らの安全を守っている。
あらゆる優越のイデオロギーは嫌悪すべきであり、犯罪的だ。しかし、西側のグローバル主義のエリートらは、自らを特別な存在と考えて流血や政変を引き起こし、ロシア嫌悪と攻撃的ナショナリズムを植え付けている。自らの意思やルールを押し付けるためだ。
彼らは、ナチ主義者による世界支配の試みが何をもたらしたかを忘れたようだ。彼らの目的はわが国の破壊である。第二次大戦の結果を消し去り、世界の安全保障のシステムや国際法を破壊することだ。
彼らの法外な野心と傲慢こそが、今日のウクライナの民衆を苦しめている破局の原因だ。ウクライナの民衆はクーデター(2014年の親露派政権崩壊)と、その上に生まれた西側の主人たちの犯罪的体制の人質となった。
われわれにとって祖国防衛の記憶は神聖だ。ナチズムと戦った人々、米英などの同盟軍の戦士を正当に評価する。日本軍国主義と戦った中国戦士の偉業も敬う。共通の脅威に団結して戦ったことは極めて貴重な遺産だ。ソ連の全民族が共通の勝利に貢献した。
(ウクライナでの)特別軍事作戦の参加者を誇りに思う。今、あなた方の戦闘業務に国の安全と将来がかかっており、国全体が団結している。
●プーチン大統領[演説全文] ロシア対独戦勝記念日・軍事パレード… 5/9
ロシアで最も重要な祝日の一つ、対ドイツの5月9日、恒例の軍事パレードが行われました。プーチン大統領はウクライナへの軍事侵攻を継続する考えを示し、ウクライナを支援する欧米の動きを批判した上で、戦争責任を転嫁しました。そのうえでウクライナへの軍事侵攻を継続する考えを示し、国民に団結を求めました。プーチン大統領の演説の全文は以下の通りです。

尊敬するロシア国民よ!
親愛なる退役軍人の皆さま!
ロシアの兵士、水兵、軍曹、下士官、中尉、准尉! 将校、将軍、提督!
特別軍事作戦の参加する兵士、指揮官!
戦勝記念日、おめでとう。
この日は、祖国を守りながら、その名をはせ、不滅の存在となった我々の父、祖父、曽祖父をたたえる日だ。
彼らは、計り知れない勇気と多大な犠牲を払い、人類をナチズムから救った。
今日、文明は再び重要な転換点を迎えている。祖国に対して再び真の戦争を仕掛けられたが、我々は国際テロを撃退し、ドンバスの住民を守り、安全を確保した。
我々にとって、ロシアにとって、西にも東にも非友好的で敵対的な民族は存在しない。この地球上の大多数の人々と同様に、我々も平和で、自由で、安定した未来を望んでいる。
我々は、自国が他国よりも優れているイデオロギーは反感を買い、嫌悪すべき犯罪的なもので危険だと確信している。
欧米は世界を征服しようとしたナチスの狂気が何をもたらしたかを忘れているようだ。この怪物的な完全悪を打ち破ったのは誰か、祖国のために立ち上がり、ヨーロッパの人々の解放のために命を惜しまなかったのは誰かを、彼らは忘れてしまったのだ。
我々は、多くの国でソ連兵や偉大な指揮官の記念碑が無慈悲かつ無惨にも破壊され、ナチスとその協力者が再びあがめられている。
本物の英雄たちの記憶が消し去られ、ゆがめられている様子を目の当たりにしている。
勝利という偉業を果たした世代の犠牲者を冒涜(ぼうとく)することは犯罪以外の何ものでもない。
世界中からネオナチ崩れのゴロつきを集め、ロシアに対する新たな敵対キャンペーンを皮肉的かつ公然と準備すること、これは彼らのあからさまな仕返しだ。
彼らの国的に、新しいものはない。我が国を崩壊・消滅させ、第二次世界大戦の結果を覆すことで、国際的な安全保障とシステムを決定的に破壊し、各国の主権を絞めつけることだ。
彼らの過剰な野心、傲慢(ごうまん)さ、手段を選ばないやり方は、必然的に悲劇を招く。これこそが、ウクライナ国民が現在直面している悲劇の理由だ。
ウクライナ国民は、欧米という支配者、犯罪政権によるクーデターとの人質となり、残酷で利己的な計画を実行するための交渉材料にもさせられている。
我々ロシア人にとって、祖国を守った人々の記憶は神聖なものであり、我々は、その記憶を心に刻んでいる。我々はナチズムと勇敢に戦った権力への抵抗(レジスタンス)した兵士たち、アメリカ、イギリス、その他の国の連合軍の兵士に敬意を表する。
また、我々は日本の軍国主義との戦いにおける中国の戦士たちの武勲にも敬意を表する。
私は共通の脅威との戦いにおいて、連帯とパートナーシップを築いた経験は、我々のかけがえのない財産であると確信している。
信頼と決して損なわれてはならない安全保障、すべての国、民族が独創的に、かつ、自由に発展する平等な権利という大原則に基づき、より公正な多極化世界へ向けた不可逆的な動きが勢いを増している今、それは確固たる支柱となる。
今日、独立国家共同体の首脳が、ここモスクワに集まったことは、非常に重要なことだ。私は、我々の祖先の武勲に対する感謝の表れだと考えている。
ソ連の民族はともに戦い、ともに勝利した。ソ連のすべての国民が、共通の勝利に貢献した。
我々は、このことを決して忘れてはならない。戦争によって命を奪われた、すべての人々、息子、娘、父親、母親、祖父、夫、妻、兄弟、姉妹、親族、友人をしのび、我々はこうべを垂れます。
ここで1分間の黙祷。(1分間の黙祷)
尊敬するロシア国民よ!
祖国の運命を左右する戦いは、常に国家的、民族的、神聖なものになった。我々は祖先の教訓に従い、その軍事的、労働的、道徳的業績の高みにふさわしいとはどういうことなのか、深く、はっきりと理解している。
我々は、特別軍事作戦に参加した人、最前線で戦っている人、銃撃の中で前線を守っている人、負傷者を救っている人、すべてを誇りに思う。戦闘における皆さんの任務ほど、重要な大義はない。
我が国の安全、国家・国民の未来は、あなた方にかかっている。
あなた方は名誉ある軍務を果たし、ロシアのために戦っている。
あなた方の家族、子どもたち、友人たちは、あなたの後ろについている。彼らはあなたを待っている。
あなた方は、彼らの限りない愛情を感じていると確信している。
ロシア全体が我々の英雄を支援するため、一つに団結している。誰もがあなたのために祈り、協力する準備ができている。
同志よ! 友よ!  親愛なる退役軍人の皆さま!
今日、ロシアのすべての家族が大祖国戦争の退役軍人をたたえ、親族や英雄をしのび、戦勝記念碑に花を手向ける。
今、我々が立っている赤の広場は、英雄ユーリ・ドルゴルーキーとドミトリー・ドンスコイ、ミーニンとポジャルスキー、ピョートル大帝やクトゥーゾフ将軍の兵士、1941年と1945年のパレードにちなんだ場所だ。
今日、特別軍事作戦の参加者は、軍隊の幹部、部分動員で軍隊に加わった人、ルハンスクとドネツクの人民共和国軍の兵士、多くの義勇兵、ロシア国家親衛隊、内務省、ロシア連邦保安庁、非常事態省、その他の特殊サービスや機関の職員だ。
友人諸君に告ぐ!
戦場でロシアのために戦っている、今、この瞬間も任務に就いているすべての人々に敬意を表する。
大祖国戦争の間、我々の英雄的な祖先は、我々の団結ほど強く、強力で信頼できるものはないことを証明した。
祖国への愛ほど強いものはこの世に存在しない。
母国ロシアのために!
勇敢なる我が軍のために!
勝利のために!
ウラー!(万歳!)
●プーチン大統領「本物の戦争」発言の狙いは? 市民の行進“不滅の連隊”中止 5/9
プーチン大統領の「本物の戦争」という表現ですが、どういった狙いがあるのでしょうか?
赤の広場はまだ封鎖されていますが、周辺の規制はすでに解除され、現在は観光客の姿が戻っています。
プーチン大統領は演説の中で「われわれの祖国に対し、再び本物の戦争が開始された」と述べ、これまで「特別軍事作戦」と称していたウクライナ侵攻について「本物の戦争」という表現を使いました。ただ、あくまで西側諸国から仕掛けられたものであり、西側が「ロシアの崩壊を求めている」と主張し、ウクライナ侵攻を祖国を守る戦いと位置づけて正当化するとともに侵攻を継続する姿勢を示しました。
旧ソ連がナチスドイツを破り「大祖国戦争」と呼ばれる第2次世界大戦と侵攻を重ね合わせ、国民の団結を呼びかけた形です。
一方、パレード後のこの時間帯は例年、第2次大戦の戦死者らの遺影を掲げて市民が行進する「不滅の連隊」が行われてきましたが、今年は全土で中止となりました。
表向きは「安全上の理由」ですが、ウクライナでの戦死者の遺影を掲げる人たちが出ることで損失が強調されることや、侵攻そのものへの抗議につながることを政権が警戒しているとの見方も出ています。
こうした動きはいずれも、政権が侵攻のさらなる長期化をにらんだものといえそうです。

 

●やはり雑すぎた、ドローン「プーチン暗殺説」 5/10
ロシア大統領府(クレムリン)への5月3日のドローン攻撃は「ウクライナによるプーチン大統領暗殺計画」とのロシアの主張に、多方面から疑念の声が上がっている。
首都モスクワで取材するBBC記者のリザ・フォクトは、攻撃が違う方向から2機のドローンで行われたと発信。「別方向から正確に大統領府ドームを狙った点は特筆すべき」と言う。
新米国安全保障センターのサミュエル・ベンデットは「暗殺説には疑念を抱いているが、もしウクライナによる攻撃なら重要な時期にロシア中枢を狙える能力を示した点で象徴的だ」と言う。
一方で東欧専門家のセルゲイ・サムレニーは、ロシアによる「偽旗作戦」だと主張。
元駐ロシア米大使のマイケル・マクフォールも暗殺説を否定し、「使用されたドローンには破壊能力も殺傷能力もないし、プーチンはクレムリンで暮らして(寝て)いない」とツイートする。
「ロシアのプロパガンダを繰り返すのはもうやめるべきだ」
「この人たちは誰なのか、なぜ爆発直前からクレムリンの屋根に登っているのか?」
●ウクライナ戦争の停戦を邪魔する西欧のロシア観  5/10
人間の思考は、すでにすり込まれたイメージを壊すことを嫌う。すり込まれたとおりのことが起こると、安心するのだ。敵国への憎悪となると、多くの場合、このワンパターンの思考回路から生まれている。
この思考回路から出ると、仲間はずれになり、時として非国民の烙印を押されかねないからだ。こうして人間の自由な思考は停止し、唯々諾々とオウムのようにワンパターンの言説に従うのだ。
プロパガンダは、すり込まれたイメージを増幅することで起こる。すり込まれたイメージを、一般には偏見という。しかし、偏見ほど楽なものはない。なにしろ考えたり、調べたりする手間が省け、おまけに仲間もそれに簡単に同意してくれるからだ。内輪だけで盛り上がるとはこのことをいう。
しかし、こうした偏見を外交担当者が持つと、それは大変なことになる。だからこそ、フランスのルイ14世時代の外交官であるジャン=クロード・カリエールは『外交談判法』の中で、こう述べているのだ。
「間違いを犯したくなければ、彼らの物の考え方を考慮に入れることが必要である。…… 自分自身の考え方を、いわば脱ぎ捨てて、相手の立場に身をおき、いわば相手そのものとなり、相手と同じ考え方や気質になることである」
相手の立場を考えないで、自らの思考パターンだけを押しつければどうなるか。それは徹底した対立と戦争という悲惨な結果を招くことになる。その典型的な例のひとつが、19世紀のクリミア戦争(1853〜1856年)へ至る西欧のロシアに対するワンパターンの思考回路だったともいえる。19世紀に増幅された憎悪が、結果的に戦争へと導いたのである。
クリミア戦争という前例
オーランドー・ファイジズという人の『クリミア戦争』(上下巻、染谷徹訳、白水社)という書物がある。クリミア戦争に至る過程の中で、ロシアに対する紋切り型の考えが西欧に広まっていった過程が、そこでうまくまとめられている。
とりわけ1812年、ナポレオンがロシアに侵攻するちょうどそのときに出版された『ピョートル大帝の遺書』という偽書の出現が、その発端だという。現在この書物は偽書であり、ピョートル大帝のものではないことはわかっている。しかし、この書が作り上げたイメージは、強烈であった。
たとえこれが偽書であったとしても、「ロシアはアジア的で、根っからの侵略者で、世界征服をねらっている野蛮で危険な国家である」という、現在に至るまで繰り返される「西欧のロシアに対する思考回路」が、これによってつくりあげられたことは間違いない。
今でもこの書物は、ロシアとの関係が悪化するたびにどこかで再版されて、繰り返し読まれている。それはあたかも反ユダヤ主義をかき立てるために今でも再版される、偽書『シオン賢者の議定書』(1903年)にも似ている。
日本でも、日露戦争(1904〜1905年)勃発時に、国威発揚のために『ピョートル大帝の遺書』が、紹介されていた。伊地知茂七は日露戦争の際に出版した『露西亜小史』(巌正堂、1904年)の中で、この偽書を使ってロシアという国の持つ侵略性と野蛮さを、高らかに語っていた。
この偽書は、ナポレオンがロシアを征服する口実として効果のあった書物だが、この野蛮でアジア的で侵略好きのロシアというイメージは、その後ナポレオンが敗北し、ナポレオンを追ってパリまでロシア軍がやってきたことで、より現実的なものになる。
ロシアからみたら、この戦争は祖国を救うための祖国戦争にすぎなかったのだが、西欧から見たら、野蛮なロシアが西欧を蹂躙し侵略した征服戦争のように見えたのだ。
とりわけロシアの悪しきイメージが大きな意味を持ってくるのは、ギリシア独立戦争(1821〜1830年)の後、ワラキアやモルダビアをロシアが占領し、黒海沿岸でオスマントルコに変わって覇権を握り始めた1830年代以降だ。イギリスとフランスもオスマントルコの衰退の中で、バルカンの派遣を握ろうとしていたがゆえに、ロシアの南下は脅威となっていた。
マルクスも陥った思考回路
その中で、大のトルコびいきである文士でイギリスのデヴィッド・アーカートが、ロシア批判の宣伝を行ったことで、イギリスの世論は反ロシア一色にそまっていく。『ロシアとイギリス』という書物を1835年に出版し、世論に大きな影響力を持つ新聞『タイムズ』紙を味方につけ、時の首相パーマストンに対してロシア批判を、狂気のごとく繰り返したのだ。これがクリミア戦争へと、世論をかき立てる要因になったわけである。
クリミア戦争(ロシアでは東方戦争、トルコでは露土戦争)の時代、カール・マルクスはアメリカの有力紙『ニューヨーク・デイリー・トリビューン』のヨーロッパ特派員という肩書で、世界情勢について健筆を振るっていた。ロシア嫌いであったマルクスは、アーカートのロシア論に飛びついた。
1848年革命が、ロシアのツァー体制の野蛮さによって敗北したことに怒りをもっていたマルクスは、アーカートと一時期懇意になる。そして彼を、半分疑いながらも、その主張を全面的に取り上げ、お決まりのロシア批判の論説を書く。
最近復刻された『一八世紀の秘密外交史』(白水社、2023)は、マルクスが、アーカートが編集していた資料集などを典拠にし、アーカートを支持していた『フリープレス』に1856年掲載した、マルクスのロシア観を知るために重要な論文である。
ジャーナリストとして鋭いマルクスも、ある意味アーカートを含む西欧的思考回路に翻弄されていた。やがてアーカートの狂気じみた部分に辟易したマルクスは、ロシアに対する見方を変えていくが、クリミア戦争の頃はやはりマルクスもワンパターンの西欧的視点に振り回されたことは間違いない。
もっともマルクスのために付け加えておくが、マルクスは、アーカートのファナティックさを懸念していた。だからこそ、この人物の怪しさを周りの人から諭され、「彼についてはまったく仲間などではなく、パーマストンに関すること以外彼とは何の共通性もない」と、やがて主張することになったのだ。
このマルクスの論説を快く思わなかったロシア人がいた。それは、西欧人のロシア嫌いの典型的な思考回路に辟易していた、帝政ロシア時代の哲学者・作家だったアレクサンドル・ゲルツェン(1812〜1870年)である。
彼は、マルクスがアーカートの言説を無批判に採用していることを、こう批判している。
「すべての者をロシアの手先だと考え、またそのように公然と語っていた人物(アーカート)は、マルクスという第一級の、無名の天才をとりまいていたドイツの不遇の政治家たちの一味にとって、掘り出された宝のもののようであった」
思考回路の閉塞性を打ち破れ
とはいえ、マルクスは自らロシア語を学び、ロシア人と文通することで、それまで影響されてきた西欧的ロシア観からやがて脱却していく。さすがにマルクスは、優れたジャーナリストであったのだ。
しかし今、ウクライナ戦争の言論は、いったいどうなっているのであろうか。こうした西欧のパターン化した議論を、ただ垂れ流しているだけではないだろうか。冷静に、相手の立場も考えるという努力をしているといえるのであろうか。
ワンパターンの思考回路は、確かに受け入れやすい。しかし、それを乗り越えてこそ、ジャーナリズムの真骨頂があるのではないか。たとえ非国民とののしられようと、しっかりとした見識をもつことはウクライナ戦争の停戦を導くためにも重要なのだ。
●米、防空システムなど12億ドルのウクライナ支援発表 5/10
米国は9日、12億ドル(約1620億円)のウクライナ向け追加軍事支援を発表した。防空システムなどが含まれる。
ロシアのプーチン大統領は対独戦勝を記念する軍事パレードに出席し、演説でウクライナ侵攻を継続する意向を表明するとともに、敵はロシア解体を画策していると非難した。
ウクライナのゼレンスキー大統領はキーウを訪れた欧州委員会のフォンデアライエン委員長と会談。同委員長は「プーチン氏の軍事機構と収入を損なわせるために」欧州連合(EU)は最善を尽くすと話した。9日もキーウでは空爆による爆発音が聞かれた。同市への空爆は今月5回目。
ウクライナ情勢を巡る最近の主な動きは以下の通り。
欧州委員長、ロシアの侵略裁く「特別法廷」設置を支持
フォンデアライエン欧州委員長はロシアの侵略を裁く「特別法廷」の設置を支持するとともに、国際社会の支援が不可欠だと述べた。同委員長はキーウでのスピーチで、「ロシアの戦争犯罪を巡る責任追及こそが正義だ」と述べた。特別法廷の形態などには言及しなかった。
ワグネルは当面バフムトから撤退せず−プリゴジン氏
ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループの創設者、エフゲニー・プリゴジン氏はロシア国防省に求めている弾薬の10分の1程度しか供給されていないものの、ウクライナ東部バフムトからワグネルは当面撤退しないと述べた。
●プーチン大統領「祖国相手に戦争起きている」…侵攻初めて「戦争」と規定 5/10
ロシアのプーチン大統領は9日、同国最大の祝日である戦勝記念日の記念演説で「現在祖国を相手に『戦争』が起きている。われわれはこれに対抗し主権を守護している」と主張した。ロシアはこれまでウクライナ侵攻を「特別軍事作戦」と呼んできたが、今回の記念式を通じて初めて「戦争」と規定した。
続けて「ロシアは平和な未来を望むが、西側諸国はむしろわれわれに対する憎悪と嫌悪を育てている。彼らの目標はロシアの没落」と非難した。ロシアのウクライナ侵攻を西側のせいにしたのだ。
プーチン大統領はこの日、赤の広場で旧ソ連構成国の連合体である独立国家共同体(CIS)首脳らと軍事パレードを見守った。ロシア政府はこれまで戦勝記念日の軍事パレードを軍事力誇示行事として活用してきたが、今回はウクライナの攻撃の可能性を懸念して規模を大幅に縮小し警戒レベルを高めた。
ロイター通信などによると、爆発とドローン攻撃が相次ぐロシア西部とクリミア半島など20カ所余りで戦勝記念日の軍事パレードが取り消されたり縮小された。
行事場所周辺のセキュリティは大きく強化された。モスクワ上空ではドローンの使用が禁止された。少なくとも15都市ではドローンの飛行を防ぐため衛星利用測位システム(GPS)の信号をかく乱する電波妨害作業も実施された。
ロシア軍は戦勝記念日を控えてウクライナ全域に大規模自爆ドローン攻撃に出た。ウクライナ軍は8日に声明を通じて「ロシア軍が60機以上のイラン製自爆ドローンで空襲した。このうち36機は首都キーウに向かった」と主張した。ウクライナ南部オデーサでもロシアのドローン攻撃により食糧倉庫が燃え関係者3人が負傷した。
●プーチン大統領 軍事侵攻の継続を強調 バフムトの戦況が焦点  5/10
ロシアのプーチン大統領は第2次世界大戦の戦勝記念日の演説で、ウクライナへの軍事侵攻を継続する姿勢を強調しました。これに対してウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア側は戦勝記念日までにウクライナ東部の激戦地を掌握しようとしたが失敗したと指摘し、引き続きバフムトの戦況が焦点のひとつとなります。
ロシアのプーチン大統領は9日、第2次世界大戦の戦勝記念日にあわせた演説で「われわれの祖国に対して再び本当の戦争が行われている」などと述べ、ウクライナへの軍事支援を強める欧米側を非難してウクライナへの軍事侵攻を正当化し、今後も継続する姿勢を強調しました。
これに対してウクライナのゼレンスキー大統領は、9日の会見で、東部の激戦地バフムトについて「ロシア軍はバフムトを掌握できなかった。ロシアにとっては5月9日までに終わらせたかった最も重要な軍事作戦だった」と述べ、戦勝記念日にあわせて軍事的な成果を示そうとしたロシアの思惑は失敗したと指摘しました。
バフムトをめぐっては、ロシアの正規軍とともに戦闘に加わっている民間軍事会社ワグネルが弾薬の不足を理由にバフムトから撤退する意向を示し、ロシア側の足並みの乱れが指摘されています。
これについてワグネルの代表プリゴジン氏は9日、要求していた弾薬の一部をロシア国防省から受け取ったとした上で「われわれはバフムトを離れず、あと数日は戦うだろう」と主張し、引き続きバフムトの戦況が焦点のひとつとなります。
ウクライナのゼレンスキー大統領は7日、「われわれは5月と6月の新たな出来事に備えて、活発に準備を進めている」と述べていて、今後の東部や南部での反転攻勢を示唆しました。
●習近平恐るべし ロシア制裁のウラで 「中国・人民元」が世界を席巻… 5/10
ロシア制裁の罠
中国の人民元が国際通貨としての存在感を高めている。ウクライナ戦争を契機に中国人民元による国際決済が大幅に増加しているのだ。
もちろん、これに危機感を募らせるのはアメリカである。
ブルームバーグによれば、今年3月、中国の輸出入の決済での人民元の比率(48%)が初めて米ドル(47%)を上回った。
人民元決済が最も増えているのは、エネルギー大国ロシアとの間の貿易だ。
西側諸国の制裁により国際金融決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除されたロシアは、中国が構築した「人民元国際決済システム(CIPS)」を利用するようになった。ロシア中央銀行は、4月上旬「昨年のロシアの輸入決済の人民元のシェアが前年の4%から23%に急上昇し、今年もその比率は上昇している」ことを明らかにしている。
背景にあるのは、もちろん西側陣営のロシアへの経済制裁だ。しかし、人民元の広がりはロシアだけではない。
サウジもブラジルもアルゼンチンも…
中国は今年3月、アラブ首長国連邦(UAE)産LNGについても人民元建てで購入することを取り決めており、エネルギー取引の分野で人民元の存在感が高まりつつある。
ロシアとともに人民元決済に意欲的なのはブラジルだ。
ブラジル政府は3月末、中国との間の決済をSWIFTではなくCIPSで行うことを決定した。ブラジルは大豆やトウモロコシなどの大輸出国であることから、今後、穀物取引の分野でも人民元のウエイトが大きくなることが予想される。
南米ではアルゼンチンも4月26日「中国からの輸入に関する決済をドル建てから人民元建てに変更する」と発表している。
中国が関与しない貿易でも人民元での決済が始まっている。
4月28日付サウスチャイナ・モーニングポストは、「バングラデシュはロシアが建設する原子力施設の資金を人民元で支払う予定だ」と報じた。
中国のこうした動きに、アメリカは神経をとがらせている。
さらに後編記事『習近平の「通貨覇権」戦略が本格始動していた…! 中国・人民元が世界で巻き起こす「脱アメリカ」と「次の戦争」のヤバすぎる関係』では、勢いを増す中国・人民元が如何にして世界を揺るがしていくのか、歴史の教訓から世界で高まる戦争のリスクについて考えていこう。
●中国外相とドイツ外相が会談 ウクライナ情勢めぐり応酬  5/10
ドイツを訪問した中国の秦剛外相はベアボック外相と会談しました。ウクライナ情勢をめぐり、ベアボック外相がロシアによる侵攻をやめさせるために行動するよう促したのに対し、秦外相は対話による解決が重要だとする従来の立場を繰り返しました。
ドイツの首都ベルリンを訪れた中国の秦剛外相は、9日、ベアボック外相と会談し、その後開かれた共同会見で、気候変動問題などで協力していくことや来月にも予定される両国の首脳と閣僚を交えた政府間協議に向けて準備を加速させることを確認したと明らかにしました。
一方、ウクライナ情勢をめぐってベアボック外相は「中国は、戦争を終わらせる重要な役割を果たすことができる」と述べ、ロシアによる侵攻をやめさせるために行動するよう促しました。
これに対し秦外相は「政治的な解決のための条件を整えることが唯一の出口だ」と述べ、対話による解決が重要だとする従来の立場を繰り返しました。
またベアボック外相はEU=ヨーロッパ連合が軍事転用が可能な機器をロシアへ販売したとして中国企業への制裁を検討していると一部メディアが伝えたことについて問われると、明言を避けつつも「中国政府が企業へ影響力を行使することを期待する」と述べました。
これに対し秦外相はロシアへの軍事支援について改めて否定したうえで、中国企業に制裁が科されれば「中国も企業の正当な権利と合法的な利益を断固として守るために必要な対応をとる」とけん制しました。
秦外相は、このあとフランスとノルウェーを訪問する予定で、中国としてはアメリカとの対立が続くなか、ヨーロッパとの関係を重視する姿勢を示しています。 

 

●戦勝記念日で権力誇示図ったプーチン氏、孤立が浮き彫りになるばかり 5/11
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にとって、赤の広場で行われた今年の戦勝記念日のパレードは、歴史をかけた戦争を継続させるチャンスだった。だが結局は、地政学上の孤立を強調しただけだった。
集められた軍隊の前で演説したプーチン大統領は、ウクライナ侵攻と第2次世界大戦で払った犠牲を直接結び付けた。ロシアでは今なお「大祖国戦争」と呼ばれる戦争を生き延びた退役軍人に囲まれながら、大統領は自分こそが西側諸国の「グローバル主義のエリート集団」に包囲されたロシアを救う救世主で、庇護(ひご)者だと位置づけた。
「今日、文明社会は再び分岐点に立たされている」とプーチン氏は演説した。「またもや我が祖国に対して、真の戦いの火ぶたが切って落とされた」
ロシアには「東西いずれにも敵国はいない」としながらも、プーチン氏は闇の勢力がロシア政府に陰謀を企てているとほのめかした。
「欧米グローバル主義のエリート集団はいまだに例外論をぶち、人々を互いに反目させて社会を分断している。血なまぐさい紛争やクーデターを扇動し、憎悪やロシア嫌悪、好戦的ナショナリズムを植え付けている」「ウクライナ国民は、西側の支配者に操られた犯罪政権が引き起こしたクーデターの人質にされた。彼らの残忍で身勝手な計画の駒にされてしまった」(プーチン氏)
ここで説明しておいたほうがいいだろう。プーチン氏は以前から、ウクライナが正当な国家ではないという見方をしてきた――ウクライナ人とロシア人は「ひとつの民族」で、ウクライナ国家は人工国家だというのが同氏の意見だ。同氏の陰謀論的な世界観では、ウクライナをはじめとする国家は単なる属国で、米国政府が支配していることになる。もし世界的な秘密結社がウクライナ政府を裏で操っているのであれば、ウクライナにおけるロシアの「特別軍事作戦」も正当化される。
だが思い出してもらいたい。2014年、ウクライナの欧州連合(EU)加盟を支持する群衆がキーウ市内の独立広場に押し寄せ、親ロシア派の大統領を追放した暴動は紛れもなく民衆によるもので、米中央情報局(CIA)やジョージ・ソロス氏の差し金ではなかった。現在もロシア語を話すウクライナ人や、時にはロシア国籍を持つ人々さえも、ウクライナ側について戦い、命を落としている。
だが、こうした事実確認もプーチン氏には馬の耳に念仏だ。ロシアにとって、国を挙げて第2次世界大戦をしのぶことは国家宗教に限りなく近く、5月9日――1945年にロシアがナチス・ドイツに勝利した記念日――は最も聖なる日とされている。国内の群衆にとって戦勝記念日のパレードは、78年前に終わった戦争の退役軍人と現在ウクライナで行われている戦争の参加者との視覚的な類似性をもたらすものとなる。
国営メディアによると、9日に赤の広場で行われたパレードにはウクライナでのロシアの「特別軍事作戦」に参戦した兵士も500人以上が参加した。またプーチン氏も演説の中で、参戦者を大祖国戦争の勝利の末裔(まつえい)だと称えた。当然ながら、ウクライナ側はこうした歴史認識の刷り込みに反論している。
ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は動画の中で、公式な戦勝記念日を5月9日から8日に変更する法案をウウクライナ議会「ベルホーブナ・ラーダ」に提出したと発言した。またロシアの攻撃を、ヒトラー時代のドイツになぞらえた。
「世界でもほとんどの国が、ナチスに対する大勝利の記念日は5月8日だ」「反ヒトラー連合が共同でもたらした勝利の悪用は決して認めない。連合国が関与せずとも勝利がもたらされたかのような嘘(うそ)を認めるわけにはいかない」(ゼレンスキー大統領)
プーチン氏が戦勝記念日のパレードを祝った同じ日、ゼレンスキー大統領は重要な来賓をキーウで出迎えた。欧州はウクライナに今後も支援を継続するという約束を引っ提げて訪れた、欧州委員会のウルスラ・フォンデアライエン委員長だ。
「ウクライナは我々欧州の価値観すべてを守るため、最前線に立っている。すなわち自由、民主主義、思想や言論の自由だ」「現代人が享受する欧州の理想のために、ウクライナは果敢に戦っている。ロシアではプーチン政権がこうした価値観を消滅させてしまった。そして今、ここウクライナでも壊しにかかっている。ウクライナが体現する成功、ウクライナが示す規範、ウクライナのEU加盟を恐れているからだ」(フォンデアライエン委員長)
ゼレンスキー大統領はフォンデアライエン委員長との共同記者会見でプーチン氏の戦勝記念日パレードに少々水を差し、金ばかりかかってなかなか進まないロシアの戦況についてふれた。
「(ロシア軍は)バフムートを占領できなかった」。苦戦を強いられ、広い範囲で損害を負った東部ウクライナの街についてゼレンスキー大統領はこう述べた。「ここはロシアが5月9日までに達成しようとしていた軍事作戦の最後の要衝だった。残念ながら、街はもう存在しない。すべてが完全に破壊されてしまった……だからロシアは勝利として提示できる何らかの情報を必要としている。どこかの街でも奪い取りたいところだが、それを果たせずにいる」
ロシアで毎年行われる戦勝記念日の祝典は、国威発揚も兼ねた大規模な公開行事になっている。今年のパレードではロシアの軍事力の一部が披露されたものの――S400防空システムや大陸間弾道ミサイル「ヤルス」など核兵器の一部が公開された――ロシア軍が誇る近代戦車の大行列の不在が際立っていた。
フォンデアライエン委員長のキーウ訪問で、プーチン氏が欧州や西側から孤立していることが浮き彫りになった。ロシアの戦勝記念日祝典の来賓席は、EUの制裁対象となっている大統領(ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ氏)、中央アジアの独裁者(タジキスタンのエモマリ・ラフモン大統領)、産油国の世襲君主(トルクメニスタンのセルダル・ベルディムハメドフ大統領)の姿があった。
ウクライナの戦場では、壊滅状態のバフムートでロシア軍との攻防が続いており、赤の広場での堂々たる式典とはこれ以上ないほどの対照を成している。
そうした事実は、ロシアの民間軍事組織「ワグネル」を率いるエフゲニー・プリゴジン氏の発言からもひしひしと感じられた。同氏はソーシャルメディアで、ロシアの軍指導部を痛烈に非難した。
「現在彼ら(ウクライナ軍)は、アルチェモフスク(訳注:バフムートのロシア語での呼称)方面で陣形の側面を突破し、ザポリージャで軍を再編成している。反転攻勢が間もなく始まろうとしている」。同氏は9日、ソーシャルメディアで発言した。「反転攻勢はテレビ画面上ではなく、現場で行われるときっぱり明言している」
戦勝記念日は過去の世代のものだとプリゴジン氏は続けた。
「戦勝記念日で祝うのは祖父の代の勝利だ」と同氏。「我々はまだ1ミリも勝利を獲得していない」
●ロシア、欧州通常戦力条約破棄へ…プーチン氏が下院に法案提出  5/11
ロシアのプーチン大統領は10日、欧州の通常戦力の配備数に上限を設定する「欧州通常戦力(CFE)条約」の破棄を決め、下院に破棄の承認を求める法案を提出した。セルゲイ・リャプコフ外務次官を破棄手続きの担当者に任命する大統領令も出した。
CFE条約はロシアの前身であるソ連時代の1990年に北大西洋条約機構(NATO)とワルシャワ条約機構の加盟国が締結した。ただ、ロシアは2007年に一方的に履行を停止し15年には離脱を表明しており、既に形骸化している。
プーチン氏は9日の旧ソ連による対独戦勝記念日の式典での演説で、「我が祖国に新たな戦争が仕掛けられた」などと主張し、ウクライナ侵略を正当化しており、国内向けに強硬姿勢を打ち出したものとみられる。
●ロシア、欧州通常戦力条約破棄へ プーチン氏が法令に署名 5/11
ロシアのプーチン大統領は10日、欧州通常戦力(CFE)条約の破棄に向けた法令に署名した。
欧州通常戦力条約は、旧ソ連などで構成されたワルシャワ条約機構加盟国と北大西洋条約機構(NATO)加盟国が配備できる通常兵器の上限を定める軍縮合意。ロシアは2015年に同条約の履行を完全に停止すると表明していた。
プーチン大統領は署名した法令で、同条約の破棄を巡る議会での審議の政府代表にリャプコフ外務次官を任命した。
●CFE条約破棄へ ウクライナ巡りNATOに対抗―ロシア大統領 5/11
ロシアのプーチン大統領は10日、欧州通常戦力(CFE)条約を破棄する法案を下院に提出した。ロシアは既に、北大西洋条約機構(NATO)との対立を踏まえ2007年からCFE条約の履行を停止しており、条約は死文化していた。昨年2月からのウクライナ侵攻を巡り関係が悪化するNATO加盟国に対し、ロシアがさらなる強硬措置を取った形だ。
10日の大統領令によると、プーチン氏はCFE条約の破棄問題に関する上下両院の審議を担当する大統領代表にリャプコフ外務次官を任命した。
通常戦力ではNATOが優位に立ち、ロシアは核戦力が頼みの綱。プーチン氏は今年2月、米ロ間に唯一残る核軍縮の枠組み、新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止も表明している。
CFE条約は、戦車をはじめとする通常兵器の保有数を制限し、欧州の東西両陣営で均衡を図るために1990年に署名。しかし、冷戦終結に伴うワルシャワ条約機構の消滅やNATOの東方拡大といった情勢変化を受け、99年に修正する条約が締結された。
プーチン政権は14年にウクライナ南部クリミア半島を一方的に「併合」した後、15年にCFE条約に関する協議から離脱すると発表した。
●ロシア、旧ソ連「血の結束」誇示 孤立回避、プーチン氏が首脳招集 5/11
ロシアのプーチン大統領は、モスクワの「赤の広場」で9日に催された対ドイツ戦勝記念行事に、独立国家共同体(CIS)各国の首脳を急きょ招待した。
ロシアが隣国に牙をむいたウクライナ侵攻で旧ソ連圏に動揺が広がる中、第2次大戦で約2000万人の犠牲者を出した往年の大国の「血の結束」をアピールした。
航空機パレードや公式レセプションの中止が事前に報じられた今年の記念日。各国首脳の訪ロで雰囲気が変わり、ロシア国営テレビは朝食会を含む慌ただしい「戦勝外交」を放映した。
記念行事に当初から首脳が参加を予定していたのはキルギスのみ。報道を総合すると、プーチン氏は公式・非公式な電話会談で、CIS各国首脳に「招集」をかけたとみられる。侵攻に伴う対ロシア制裁や国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状が重くのし掛かる中、自国民に孤立のイメージを持たれるのは避けたかったようだ。
プーチン氏は演説で「CIS各国首脳が集まったのは重要だ。(旧ソ連国民)全員が勝利に貢献した」と謝意を表明。アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの首脳は行事に付き添った。
中でも目立ったのは、全首脳が参加した中央アジア5カ国。ユーラシアの地政学上の要衝で、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」の観点から熱い視線を送る。戦争に伴う旧ソ連圏の動揺は、ロシアと微妙な距離を生みかねず、勢力圏に引き留めるのはプーチン政権の優先課題と言える。
中国は今月18、19の両日、中央アジア5カ国と首脳会議を開催する。中ロは戦略的パートナーシップを深めるものの、中央アジアを巡って水面下で綱引きを演じている。米シンクタンクの戦争研究所は8日、「プーチン氏は軍事パレードを中央アジアへの影響力誇示に利用しようとしている」と指摘した。 
●ウクライナ高官「計画はまだ承認されていない」反転攻勢めぐり  5/11
ウクライナ政府で安全保障政策を担当する高官は、軍事侵攻を続けるロシアに対する反転攻勢について「計画はまだ承認されていない」と述べ、いくつかの選択肢を検討している段階だと明らかにしました。ウクライナ側としては、反転攻勢で確実に成果を得るためにも慎重に準備を進めているものとみられます。
ウクライナの国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は9日、公共放送のインタビューに応じ、領土の奪還を目指して行うとする反転攻勢について「時期や方向性の最終決定はウクライナ軍の最高司令官である大統領の執務室で行われる」と述べ、最終的な決断は、ゼレンスキー大統領が下すと強調しました。
その上で「われわれの計画をすべて知っているものは誰もいない。なぜなら、計画はまだ承認されていないからだ」と述べ、いくつかの選択肢を検討している段階だと明らかにしました。
ウクライナ国内などでは、反転攻勢への期待が高まっていますが、ウクライナ政府と軍としては、確実に成果を得るためにも慎重に準備を進めているものとみられます。
反転攻勢をめぐってはレズニコフ国防相が先月末「全体としてわれわれの準備はできている」と述べるなど早ければ今月にも始まるという見方が出ています。
●習近平の「中国通貨覇権」が本格始動していた…! 5/11
ウクライナ戦争を契機に中国人民元による国際決済が大幅に増加している。
人民元決済が最も増えているのは、エネルギー大国ロシアとの間の貿易だが、サウジアラビア、ブラジル、アルゼンチンなどにも人民元決裁が広がり、中国が関与しない取引でも人民元決済が行われ始めている。
これに神経をとがらせているのは、基軸通貨ドルの地位を棄損されかねないアメリカだ。
新たな戦争の火種となりかねない人民元台頭の影響を見ていこう。
中国の「通貨覇権」
とはいえ、人民元決済の流れは大きくなっているが、国際貿易決済に占める人民元の存在はドルの足元に及ばない。国際銀行間通信協会(SWIFT)によれば、今年2月時点のドルのシェアは84%であるのに対し、人民元のシェアは前年の2倍以上になったものの、4.5%にとどまっている。
しかし、アメリカが神経をとがらせているのは、中国の「通貨覇権」を警戒しているからだ。
米大統領経済諮問委員会(CEA)のメンバーのジャレッド・バースタイン氏は米上院銀行委員会が4月18日に開いた公聴会で「中国が国際基軸通貨であるドルの弱体化を望んでいるという一定の証拠がある」と述べた。
「アメリカに代わって通貨覇権を握る」との野望を中国が抱いているのかもしれないが、足元のドル離れはアメリカ自身に問題があると言わざるを得ない。イエレン米財務長官は4月15日「アメリカの金融制裁の実施がドルの国際的覇権を弱体化させつつある」と述べたように、ロシアへの経済制裁が災いしている。
揺らぐアメリカの信頼
通貨は決済に使えることはもちろんだが、それ自体が財産的な価値を有する。
アメリカが冷戦終了後に「世界の警察官」になったことでドルの価値は飛躍的に高まり、アメリカと敵対する勢力も争ってドルを求めるようになった。
世界の外貨準備に占めるドルの割合は2001年に7割を超えたが、アメリカ政府がドルを制裁の手段として利用するようになったせいでその魅力が落ち、直近の比率は6割弱にまで低下した。
今回の制裁でロシア政府が保有するドル建ての外貨準備(約1000億ドル相当)を凍結したことから、ドルの財産的な価値は再び毀損した。「アメリカの意向に背けば手元のドル自体が無価値になる」との恐れから、ドル離れが加速しているというわけだ。
ドル離れは今後も進んでいくだろうし、また人民元は次の基軸通貨と噂されてもいる。とはいえ、人民元がドルに代わる存在になることは不可能だ。
決済通貨としての役割は大きくなったとしても、資本取引が自由化されていない人民元は中国政府の意向に大きく左右され、その価値はドルと比較にならないほど低いとの見方が一般的だ。
アメリカの国際社会の威信が落ちる中、基軸通貨ドルの価値を支えているのは、世界で最も大きく、かつ流動性に富んだ国内の金融市場だ。ドル離れが喧伝されているが、中央銀行も民間セクターもドル建て債券の保有を増やし続けている(4月26日付ロイター)。
しかし、アメリカの金融市場に暗い影が忍び寄っている。
世界を騒がせるアメリカの「財政の崖」
連邦政府の債務は、6月1日にも法定上限の31兆4000億ドルに達することが予測されているが、党派対立が激化している議会で上限の引き上げについての合意が得られる見通しが立っていない。下院は4月26日、マッカーシー議長が提案した債務上限引き上げと引き換えに大幅な歳出削減を求める法案を可決したが、バイデン政権がまったく受け入れられない内容だ。
上限が引き上げられなければ、「アメリカ政府がデフォルトに陥る」という前代未聞の事態となる。
アメリカが誇る金融市場が大混乱し、前述のバースタイン氏が懸念するようにドルの基軸通貨としての地位が大きく揺らぐことになる。混乱に乗じて中国が人民元の基軸通貨化を進める可能性も排除できないだろう。
通貨覇権が引き起こした「第2次世界大戦」
気になるのは「通貨覇権を巡る争いが世界戦争の引き金になった」という悲しい歴史の前例があることだ。
第2次世界大戦勃発直後の1940年、欧州での戦争を優位に進めていたドイツが「欧州共通通貨」構想を提唱すると、英ポンドに代わってドルの基軸通貨化を目論んでいたアメリカは「トンビに油揚げをさらわれる」と大慌てとなった。
ドイツとの対決姿勢が一気に高まり、アメリカの大戦参加の遠因になったと言われている。
通貨を巡る興亡が米中の決定的な対立を引き起こさないことを祈るばかりだ。
●ロシアは「量」で勝負、ウクライナは「質」で対抗=NATO高官 5/11
北大西洋条約機構(NATO)のロブ・バウアー軍事委員長は10日、ウクライナでの戦争について、時代遅れの装備で訓練不足だが人数の多いロシア軍と、西側の優れた武器を持ち良く訓練された相対的に小規模なウクライナ軍との戦いになるとの認識を示した。ブリュッセルのNATO本部で開かれた同盟各国の軍事責任者会議の後、記者団に語った。
バウアー氏は、ロシア軍が現在、第2次世界大戦後に設計された古いモデルであるT─54戦車を、かなりの数配備していることを指摘。
「しかし、問題は彼らがまだ、多くのT─54を持っているということだ」とした上で「ロシアは今後、あまり訓練されておらず、旧式の装備を持つ多数の兵士という『量』で勝負することになろう」と述べた。
一方、ウクライナ側は「西側の兵器システムと訓練を受け、『質』に重点を置くだろう。それが、今後数カ月間の大きな違いだ」とした。
バウアー氏によると、NATO加盟各国の軍事責任者は会議で、ウクライナに対する「揺るぎない支援」改めて表明。バウアー氏は「NATOが必要な限りウクライナを支援することは間違いない」と述べた。 
●軍事訓練のために予備役招集、大統領令に署名 プーチン氏 5/11
ロシアのプーチン大統領は10日、予備役の民間人を招集して軍事訓練を行うことを認める大統領令に署名した。ロシア政府のウェブサイトで公開された文書で明らかになった。
大統領令によれば、プーチン氏は、ロシア連邦の軍隊や国家親衛隊、治安機関、連邦保安庁などでの訓練のために、予備役の市民を2023年に招集することを命じた。
予備役のロシア人に対する軍事訓練は毎年行われている。
ロシア軍の予備役は、最大200万人の特別戦闘部隊の予備役と、さらに人数の多い適格者の予備役からなり、ショイグ国防相によれば推計2500万人規模。
数十万人を戦場に送り込もうとするロシアの動きは反発や抗議を生み、若い男性をはじめとする多くのロシア人が国外に脱出した。プーチン氏は4月、ロシアの徴兵制をより効率的、より近代的にする法令に署名した。この法令により、徴兵逃れがより難しくなった。
●ロシア、最大1万人の受刑者と戦闘契約か 英国防省「4月だけで」 5/11
英国防省は11日、ロシア国防省が今年4月だけでも国内で最大1万人の受刑者とウクライナでの戦闘に加わる契約を交わしたとの見方を示した。ロシアでは昨夏以来、民間軍事会社「ワグネル」が国内各地の刑務所から恩赦と引き換えに戦闘員を募り、激戦地に投入してきた。今年初めからは正規軍の兵力不足を補うため、国防省自らが同様の募集に乗りだしたとされる。
一方で、英国防省は、ワグネルはロシア国防省や軍との対立が原因で今年2月以降、刑務所での戦闘員募集を禁じられているとも指摘した。代わって国防省が受刑者の募集に力を入れるのは、国民の多くが警戒する正式な大量動員を避けながら兵力増強を図る政策の一環という。
ロシアのプーチン政権は昨秋、「部分的動員」の名目で30万人の予備兵の招集に踏み切ったが、動員を逃れようとする男性らが大量に国外に逃れる事態に発展した。戦闘地のロシア軍の死傷者はその後も増え続け、深刻な兵力不足が続いているとされる。
●ウクライナでの戦争、「私が大統領なら1日で終わらせる」 トランプ氏 5/11
トランプ前米大統領は10日、CNNが東部ニューハンプシャー州で開いた対話集会に参加し、ロシアによるウクライナ侵攻について、自身が大統領であれば戦争は起こらなかったとの認識を示した。
来場者の女性から米国によるウクライナへの軍事支援を支持するかどうか尋ねられた中で言及した。トランプ氏は、現在自身が大統領なら「1日で戦争を終わらせるだろう」と述べた。
その上でウクライナのゼレンスキー大統領やロシアのプーチン大統領と会談するだろうと付け加えた。
「彼らは共に、弱みと強みの両方を持っている。24時間以内に戦争は解決する。完全に終わるはずだ」(トランプ氏)
一方、ウクライナへの侵攻を踏まえてプーチン氏を戦争犯罪人と考えるかどうかについては明言せず、「後から議論すべき」問題だと述べた。
「彼を戦争犯罪人ということにすれば、現状を止めるための取引が非常に難しくなるだろう」「彼が戦争犯罪人となれば、人々は彼を捕まえ、処刑しようとする。その場合、彼は格段に激しく戦うだろう。そうしたことは後日話し合う問題だ」(トランプ氏)
その上でトランプ氏はプーチン氏について、「間違いを犯した」との認識も表明。ウクライナへの侵攻を示唆しつつ「彼の間違いは行動に踏み切ったことだ。私が大統領であれば決してそうすることはなかった」と指摘した。
●戦争の影響は温暖化対策にも 機能低下の北極評議会、高まる氷解リスク 5/11
北極評議会は30年近くにわたり、冷戦後の協力関係の成功例として知られてきた。ロシアや米国を含む加盟8カ国は、気候変動に関する研究や、生態系に注意を要するこの地域の社会開発で協力してきた。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、加盟国はロシアとの協力を中止。北極の海岸線の半分以上を支配するロシアと協力できない以上、北極評議会の存在意義は脅かされかねないとの懸念が専門家の間で高まっている。今月11日にはノルウェーがロシアから議長国を引き継ぐ予定だ。
北極評議会が機能不全に陥れば、この地域の環境と400万人の住民に悲惨な影響が及びかねない。海氷融解の影響を受ける上、ほぼ未開発の鉱物資源に対して非北極圏諸国が関心を抱いているからだ。
評議会はフィンランド、ノルウェー、アイスランド、スウェーデン、ロシア、デンマーク、カナダ、米国の北極圏8カ国で構成。過去には環境保護・保全に関する拘束力のある合意を生み出している。
評議会は、北極圏の先住民族が声を届けられる貴重な場でもある。安全保障問題は取り扱わない。
だが、ロシアとの協力関係が断たれたことで、130のプロジェクトのうち約3分の1が棚上げされ、新規プロジェクトは進められず、既存のプロジェクトは更新できていない。欧米とロシアの科学者が気候変動の研究成果を共有することはなくなり、捜索救助活動や原油流出事故についての協力も停止している。
アンガス・キング米上院議員は、ロイターに対し「北極評議会が様々な問題を解決する上で、この状況が深刻な足かせになるのではと心配している」と述べた。
地域分断も
北極圏は、世界の他の地域と比べて約4倍の速さで温暖化が進行している。
海氷が消え、北極の海は海運の他、石油、ガス、金、鉄鉱石、レアアースなど天然資源の開発に熱心な産業に開放されつつある。
ロシアと他の加盟国との不和により、こうした変化に有効な対応が採れる可能性は大幅に低くなった。
ハーバード・ケネディースクールの北極圏イニシアチブ共同ディレクターで、オバマ元米大統領の科学顧問だったジョン・ホールドレン氏は「ノルウェーが大きな課題を抱えている。ロシアを欠いた状態で、北極評議会の優れた活動を最大限守り抜くという課題だ」と述べた。
一方、ロシアは同国なしに活動は続けられないと主張する。同国のニコライ・コルチュノフ北極圏大使はロイターに、北極評議会は弱体化しており「北極問題に関する主要なプラットフォームであり続けることができる」という自信はないと語った。
さらに心配なのは、ロシアがこの地域の問題で独自の道を歩むばかりか、対抗する評議会を設立する可能性だ。
ロシアは最近、北極圏で非北極圏諸国との協力関係を拡大するための措置を講じている。ロシアと中国は4月24日、北極圏における両国の沿岸警備隊の協力関係を定めた覚書に署名した。
それに先立つ4月14日、ロシアは中国、インド、ブラジル、南アフリカのBRICS諸国をスバールバル諸島のロシア人居住地に招き、調査を実施した。同諸島はノルウェーの主権下にあるが、1920年の条約に基づき他国も産業活動を行える。
米ホワイトハウス北極圏運営委員会の執行ディレクター、デビッド・バルトン氏は「ロシアが北極圏以外の国、特に中国と関係を築こうとしており、これは懸念すべき事態だ」と述べた。
ロシアのコルチュノフ氏は、軍事的な意図を持たない限り、北極圏に非北極圏の国が来るのをロシア政府は歓迎すると説明。「われわれが純粋に平和的なパートナーシップ形態に専念している背景には、非北極圏諸国と科学・経済協力を築くことの必要性もある」と述べた。
ロシアとの関わり方
ノルウェーは、ロシアからの議長国の円滑な引き継ぎを「楽観視」していると言う。北極評議会を維持することが、全ての北極圏諸国の利益となるから、というのがその理由だ。
ノルウェーのペテルソン外務副大臣は、ロイターに対し「北極圏協力のための最も重要な国際フォーラムとして北極評議会を守り、存続させる必要がある」と述べた。
しかし、ノルウェー自体、ロシアとの関係が緊迫化している今、それは容易ではないだろう。ノルウェーは今年4月、ロシア外交官15人をスパイだとして追放した。ロシアはこれを否定。コルチュノフ氏は、この追放によって協力に必要な信頼が損なわれたと語った。
それでも、ノルウェーはロシアとの微妙なバランスを取る役目に適している、とアナリストは言う。ノルウェーは北大西洋条約機構(NATO)加盟国であり、北極圏でロシアと国境を接している。
オスロのフリチョフ・ナンセン研究所で北極の統治・安全保障の上級研究員を務めるSvein Vigeland Rottem氏は「政治的に許されるようになった場合、ロシアを北極評議会に再び迎え入れるべくドアを開けておく可能性について、ノルウェーは最も率直に発言してきた」と述べた。
デンマークのAaja Chemnitz Larsen議員は「将来的にロシア抜きの北極評議会はあり得ない」と指摘。「いつか(ウクライナでの)戦争が終わり、違う時代が訪れた時に備えておく必要がある」と語った。

 

●プーチンはなぜウクライナに攻め続けるのか…どうしても「欲しいもの」とは 5/12
地政学の新たな入門書『戦争の地政学』が話題になっている。そもそも地政学とは何か? ロシアはなぜウクライナに侵攻したのか? 
地政学とはなにか
地政学とは読んで字のごとく、国に備わった地形が政治に大きな影響力をもつという考え方のことです。
ロシアによるウクライナ侵攻は、地政学への関心を大きく高めました。なぜロシアは国際的な非難を浴びてまで、ウクライナを領有したがるのか。地政学的な視点をもとにすると、それに一応の答えをもたらすことができます。簡単に述べてみましょう。
ロシアは本当に古い時代から(帝政ロシアの時代から)領土的野心をあらわにしてきました。かの地は広大な北極海に面していますから海には困らないように思えますが、気温が低いため、冬になると海が凍結してしまうのです。
日本に住んでいれば理解しやすい事象かもしれません。北海道の知床は冬になると海が凍り、流氷が見られるようになります。美しいので観光資源になっていますが、港をつくることはできません。凍ってしまえば船が入ることはできないからです。
ウクライナは黒海に面し、凍らない港を持っています。ロシアとしてはどうしても欲しい地です。
日清・日露の両戦争は朝鮮半島を舞台にしていますが、これもロシアの「凍らない港が欲しい」という考えと無縁ではありません。朝鮮半島を領有するということは、凍らない港を手にすることとイコールだからです。日本としてはそんなところにロシアに来られては困ります。日本本土を守るために朝鮮半島を支配下に置く必要があり、朝鮮半島を防衛するために満州が必要だったと見ることも可能でしょう。
半藤一利さんが「日本の戦争の要因はすべて『ロシアがおっかない』だ」(修辞は筆者)と言っていましたが、言い得て妙と思います。
地政学とはごく簡単に言えば上のような論を展開するものです。
「・・・本書の執筆にあたって、あらためて「地政学」という文字が題名に入っている、近年に公刊された書籍を数十冊買いあさって渉猟してみた。カラフルな挿絵が数多く挿入されていたり、漫画の登場人物が会話をする形式であったり、趣向が凝らされていて、楽しめた。地政学には、様々な引き出しがある。わかりやすい地図があって便利なもの、思い切った単純化を施して劇画化しているもの、詳細な国際情勢分析を施しているものなど、多様である。地政学の視点の魅力の一つは、地理的条件が国際情勢に影響を与えているという簡明なメッセージとともに、切り口の多様さでもあるだろう。その地政学が持つ懐の深さは、今後も維持されるべきだし、発展させていくべきだ。・・・(『戦争の地政学』より)」
だがちょっと待てよ。地政学ってそんな単純なもんじゃないぜ。本書の執筆動機はなによりそれだ。著者はそう語っています。
地政学はともすれば、世界を単純化してわかったつもりになりがちです。粗雑な見解や解釈も多く見られます。
しかし、地政学を扱うならば、ひとつの考えに固執することは類型的思考に至ることであり、まったく異なる価値観が存在することも知らねばなりません。本書は、戦前の日本やナチスドイツが、ひとつの地政学を信奉したために大きな失敗を招いたことを指摘しています。
地政学をその誕生からひもとき、深くまで入って論を展開する本書は、地政学を題材とした書籍の決定版と呼べるものです。
ふたつの地政学
『戦争の地政学』の冒頭、著者は次のように述べています。
「・・・地政学の視点が明らかにする国際紛争の構図は、どのようなものか。
本書はこの問いに取り組む。地政学の視点を用いて、国際政治情勢を見ていく。安全保障の分野に特に焦点をあてながら、地政学の視点が、どのような有用性を持っているのかも考える。そこで本書が特に重視するのは、異なる地政学の視点が映し出す世界観の違いである。・・・(『戦争の地政学』より)」
地政学には大きくわけて、「英米系地政学」と主としてドイツで発達した「大陸系地政学」、ふたつの潮流があります。これらは単なる学派の相違ではなく、その出発点から異なるまったく別の考え方です。ひとくちに「地政学」と言うと誤謬をふくむことが多いのは、まったく異なるふたつの考え方が存在し、それが国際紛争に発展することも多いからです。
戦中の日本が高らかに宣言した「大東亜共栄圏」という発想は、あきらかに大陸系地政学に基づくものです。しかし、日清・日露のふたつの戦争にからくも勝利することができたのは、日英同盟があったためでした。すなわち、そのころの日本は英米系地政学に近い考え方であったことがわかります(日英同盟は、英米系地政学の誕生に寄与しました)。
太平洋戦争/日中戦争の敗戦後、日本は米国に統治され、やがて強固な同盟関係を築くことになりますが、敗戦後の日本の再出発に英米系地政学が果たした役割はきわめて大きなものでした。すなわち、同じ国が、英米系→大陸系→英米系と変遷を遂げているわけです。本書はなぜその変遷があったのかを詳細に述べるとともに、近年大きな注目を集める中国の動向についても言及しています。
ウクライナ戦争も、ロシアの大陸系地政学を参照するならば、まったく別の視座を得ることができます。
「・・・プーチンが激怒したのは、アメリカが支援した民主化運動によってマイダン革命が起こったことだ。民主化支援は、アメリカ側から見ればロシアの勢力圏の切り崩しとは異なる事柄であっただろうが、他方において、プーチンにとっては、暗黙の合意に対する裏切り行為であった。そこでプーチンは、首都キーウがアメリカの勢力圏に入ったとみなし、代わりにクリミア併合と、東部地域の分離主義運動への軍事的加担を行ったのであった。・・・(『戦争の地政学』より)」
●ゼレンスキーが宣言した「反転攻勢」でウクライナがロシアに勝利する方法 5/12
ゼレンスキー大統領は4月30日、「重要な戦闘がまもなくはじまる」と述べ、大規模な反転攻勢が近いことを示唆した。来るべき反転攻勢は、今回の戦争の行方を決定づける重要なものになるだろう。
はたして、ウクライナ軍は、ロシア軍に勝つことができるのだろうか? 勝つことができるとしたら、どんな方法があるのだろうか? 
これまでの戦局を整理すると
まず、今日までの流れを簡単に振り返ってみよう。
プーチンは1月、ロシア軍のトップ、ゲラシモフ参謀総長を、ウクライナ特別軍事作戦の総司令官に任命した。ゲラシモフはロシアの「ハイブリッド戦略」を考案した世界的に有名な戦略家だ。
プーチンは、ゲラシモフに「3月中にルガンスク州、ドネツク州を完全制圧しろ」と命じた。そして、ロシア軍は2月半ば、大規模な攻勢を開始。当初、かなり優勢に戦いを行っていることが報じられていた。
NATOのストルテンベルグ事務総長は3月8日、ウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトが、「今後数日中にロシア軍によって陥落する可能性がある」と語っていた。
しかし、ロシア軍は結局、バフムトを越えて次に進むことができなかった。バフムトのほとんどを支配しているが、完全制圧には至っていないのだ。
結局、ゲラシモフは、プーチンから与えられた「3月中にドネツク州、ルガンスク州を完全制圧する」というミッションを完遂できなかった。
なぜ、猛攻をつづけていたロシア軍の勢いは止まったのか? 原因は、「武器弾薬不足」だ。
〈 イギリス国防省は5日、ウクライナ侵攻を続けるロシアの予備役が、弾薬不足のために「シャベル」を使って「接近戦」を行っている可能性が高いとの見方を示した。英国防省の最新のアップデートによると、ロシアの予備役が2月下旬、「『銃器とシャベル』のみで武装して」ウクライナの陣地を攻撃するよう命じられたと述べたという 〉(BBC NEWS JAPAN 3月6日)
それで、プーチンは3月20日、モスクワで習近平と会談した際、「武器弾薬を送ってくれ」と哀願した。ところが、日本と欧米から経済制裁されたくない習近平は、これを拒否した。
この会談について、筆者は4月3日付の現代ビジネス記事『プーチンは「同志・習近平」に勝利の可能性を潰された…!? ウクライナの反転攻勢で「大きな戦い」第2幕がはじまろうとしている』で触れている。
「武器弾薬が不足していること」「習近平がプーチンの要求を拒否したこと」は、バフムトで戦うロシアの民間軍事会社ワグネルのトップ・プリゴジンの発言からもわかる。
プリゴジンは5月5日、激高した様子で、「ショイグ(国防相)!  ゲラシモフ(参謀総長)!  弾薬はどこにあるんだ? !」と叫ぶ動画を投稿している。以下の動画(ANNnewsCH)の1分頃からプリゴジンの発言を見ることができる。
プーチンが習近平に会った3月から現在に至るまで、武器弾薬不足は解消されていない。そのため、バフムト以外でロシア軍の動きは、事実上止まっている。そして、プリゴジンも、「弾薬を受け取れなければ撤退する」と、軍上層部を脅している状態なのだ。
ウクライナがロシアに勝利する方法
ロシア軍の動きが3月末、武器弾薬不足で鈍ってきた。一方、ウクライナには、西側からの武器が続々と届きはじめている。
〈 ウクライナのレズニコウ国防相は27日、英国の主力戦車や欧米諸国の装甲車の第1陣を受け取ったと明らかにした。レズニコウ氏はフェイスブックへの投稿で、空挺部隊の司令官らとともに、機甲部隊に新たに加わった兵器の試験を行う栄誉を得たと報告した。 レズニコウ氏によれば、英国から主力戦車「チャレンジャー」を受け取ったほか、米国からは装甲車の「ストライカー」と「クーガー」、ドイツからは歩兵戦闘車「マルダー」の供与を受けた。レズニコウ氏は各国からの支援の継続に謝意を示した。ドイツのショルツ首相は、主力戦車「レオパルト2」をウクライナに引き渡したことを明らかにした 〉(CNN.co.jp 3月28日)
そして、ゼレンスキーは4月30日、「重要な戦闘がまもなくはじまる」と宣言したのだ。
ウクライナ軍は、いつどこを攻めるのだろうか? これはトップシークレットなので、もちろん正確に知ることはできない。だが、「ウクライナがロシアに勝利するためには、何をしなければならないか」は、ある程度わかる。
ここでは、2014年から2017年まで米軍駐欧州軍司令官を務めたベン・ホッジス氏の見解を紹介する。同氏は4月19日、ドイツの国際放送ドイチェ・ヴェレ(DW)のインタビューに答え、ウクライナがとるべき戦略について語っていた。
まず、いつ反転攻勢は始まるのか? ホッジス氏は、「1〜2か月後」と答えた。つまり、5月半ばから6月半ばということだろう。
ウクライナ軍は、どこを攻めるのだろうか? ホッジス氏は、「クリミアが一番重要だ」としている。なぜか? ホッジス氏は、以下のように解説した。
〈 クリミアがロシアに占領されている間、ウクライナは安全にはならない。ロシアは、いつでもウクライナへの侵略を再開できるからだ。だから、停戦交渉の結果クリミアがロシアに留まれば、ロシアはとても有利でいることができる。セヴァストポリの黒海艦隊から、空爆も補給も行われている。安全保障の観点から、ウクライナはクリミアを奪還しなければならない。ウクライナの経済は、穀物の輸出で成り立っている。現状、ロシア黒海艦隊は、いつでもウクライナの穀物輸出を止めることができる。それで、ウクライナは、ロシアの許可がなければ穀物を輸出できない状態だ。だから、「クリミアなしでもウクライナは停戦を受け入れる」と考えるのは、おかしなことだ 〉
では、どうすれば、クリミアを奪還することができるのか? 重要なことは、「クリミアを孤立させること」だ。その為には、まずロシア本土とクリミアをつなぐ陸路を使えなくする必要がある。
ロシア本土とクリミアは、ルガンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州経由でつながっている。プーチンは昨年9月、この4州の併合を宣言し、陸路を確保した。だから、ウクライナ軍はまず、この陸路を分断するための戦いをする必要がある。
そして次に、クリミアの軍事施設を破壊して、使用不能にする。ホッジス氏はいう。
〈 クリミアを奪還するためには、まずクリミアを孤立させなければならない。その後、高精度の長距離砲を使う。セヴァストポリの軍港、クリミアのサキ空軍基地、ジャンコエ兵站センターやその他の軍事施設を破壊して、使用不能にする 〉
残る、クリミアとロシア本土のつながりは、「クリミア大橋」だけになる。クリミア大橋は、どうするのだろうか? 
〈 クリミア大橋は、脱出したいロシア人が逃げられるように、しばらく残されるだろう。しかし、最終的には、破壊される 〉
ロシア人、ロシア軍に逃げ道を残しておくのは、いいアイディアだろう。逃げ道のない「背水の陣」では、激しい抵抗にあうかもしれない。しかし逃げ道があれば、競って逃げ出す可能性が高くなる。
プーチンは本当に戦術核を使うのか?
2000年から2008年まで、つまりプーチンの1期目2期目、ロシアは年平均7%の経済成長をつづけていた。原油価格が上昇しつづけていたからだ。
1998年、1バレル10ドルだった原油価格は、2008年夏には140ドル台まで高騰していた。つまり、10年で価格は14倍化したのだ。
しかし、その後「シェール革命」による供給増で、原油価格は上がらなくなる。2014年3月のクリミア併合後の制裁も、追い打ちをかけた。そして、ロシア経済は、長期低迷するようになった。
ロシアの一人当たりGDPは2022年度、15443ドルで世界61位。10年前の2012年は、15287ドルで世界52位。10年で一人当たりGDPの額は、ほとんど変わらず、順位は9位も下がった。
23年つづくプーチンの治世で、彼は何を成し遂げたのだろうか? ほとんど何もないが、唯一ロシアで「歴史的偉業」と思われているのが「クリミア併合」だ。これは、ウクライナや国際社会にとっては「暴挙」だが、ロシアでは「天才戦略家プーチンがクリミアを無血で取り戻した」ことになっている。
もしウクライナがクリミアを奪還したら、プーチンには誇れるものが何もなくなってしまう。だから、クリミア奪還を阻止するために、彼は「戦術核の使用」を決断するのではないか? ホッジス氏は、その可能性を否定した。
〈 ロシアが核兵器を使う可能性は極めて少ないと思う。ロシアの核兵器が有効なのは、ロシアが核兵器を使っていない間だ。「ロシアは核兵器を使うかもしれない」と思い、私たちは自分自身を制限する。ロシアが、ベラルーシに戦術核を配備すると宣言した時、どれだけ多くの人が反応したか思い出してほしい 〉
それでもプーチンが核を使ったらどうなるのだろうか? 
〈 ロシアがウクライナに対し戦術核を使ったとしても、ウクライナは戦いつづけるだろう。ロシア軍のトップは、「われわれが戦術核を使っても、ウクライナは戦いつづける」ことを知っていると思う。バイデンは、「ロシアが核兵器を使ったらロシアにとって破滅的な結果になる」といった。習近平も、「核兵器を使わないよう」呼びかけた。インドも、「核兵器を使わないよう」呼びかけた。プーチンの側近たちも、プーチンは核兵器を使うことができないことを知っていると思う 〉
ホッジス氏の見立てが正しいことを、心から願う。
ここまでの、ホッジス氏の見解をまとめると、次のようになる。
・ウクライナ軍は、反転攻勢で、クリミア奪還を目指す可能性が高い。
・そのためにウクライナ軍は、ロシア本土とクリミアを結ぶ陸路を分断し、クリミア内の軍事施設を破壊、最後にクリミア大橋を破壊し、孤立させる。
・ウクライナ軍がクリミアを奪還しても、プーチンは、戦術核を使わない。
ホッジス氏は、「われわれが必要なものを供与すれば、ウクライナは年末までにこの戦争に勝利できる可能性がある」と語った。
反転攻勢でウクライナ軍が勝つのか、ロシア軍が勝つのか、現時点ではもちろんわからない。しかし、いずれにしても、来るべき反転攻勢が、この戦争の帰結を決める重要な戦いになるのは間違いない。
●米中高官 ウクライナや台湾情勢など協議 対話継続で一致  5/12
アメリカ本土の上空を飛行した中国の気球の問題などをめぐり、アメリカと中国の対立が深まる中、両国の高官が会談し、対話を継続していくことで一致しました。
バイデン政権の高官は会談後、閣僚などの訪問が数か月以内に実現するという見通しを示しました。
アメリカのホワイトハウスは安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官が、中国で外交を統括する王毅政治局委員とオーストリアの首都ウィーンで10日と11日、会談したと発表しました。
双方はロシアによるウクライナ侵攻や台湾情勢などについて協議し、両国の間で対話を継続していくことで一致したとしています。
バイデン政権の高官は記者団に対し会談は8時間以上に及んだと明らかにしたうえで「率直で実質的、建設的な議論だった」としています。
また、アメリカ本土の上空を飛行した中国の気球の問題を受けて延期となっていたブリンケン国務長官による中国訪問について、具体的な日程については話し合われていないとする一方、「数か月以内に両国の間で訪問が実現するだろう」と述べ、国務長官を含め閣僚などの訪問が実現する見通しを示しました。
アメリカと中国は気球の問題などをめぐり対立を深めていますが、アメリカはこれまで対話を重視する姿勢を強調していて、バイデン大統領も10日、習近平国家主席との電話会談について「進展はあった。うまくいくだろう」と述べています。
一方、中国としては、来週のG7広島サミットを前にアメリカと対話を継続する姿勢を示すことで対立の激化を避けるねらいがあるとみられます。 
●ロシア報道官「我々は戦争をしていない」発言に相次ぐ非難 5/12
「なぜロシアの行動がこれほど遅いのか疑問に思うかもしれない。ロシアは戦争をしていないからだ」
5月11日、ロシアの国営通信社「タス通信」によると、ロシア大統領府(クレムリン)のペスコフ報道官は、ボスニア・ヘルツェゴビナのテレビ「ATV」のインタビューにこう語った。
ロシアは戦争をしていない――。誰もが疑問符を浮かべざるを得ない、突拍子もない話に聞こえるが、ペスコフ報道官はインタビューで平然とこう続けている。
「我々は、戦争をしているわけではない。戦争をするのはまったく別のことだ。(戦争とは)インフラの完全な破壊であり、都市の完全な破壊だ。我々はそんなことはしていない。我々は(ウクライナの)インフラを維持しようと努めており、人命を守ろうとしている」
たしかに、冒頭のペスコフ報道官の発言のように、ロシアのウクライナ侵攻は、当初の目論見より大幅に遅延しているようだ。
「5月5日、ロシアの民間軍事会社・ワグネル創設者のプリゴジン氏は、ロシア国防省から供給を約束されている弾薬や武器の供給が遅れていることを理由に、5月10日にバフムートから撤退すると表明しました。その後、武器が供給されたことで撤退は撤回されたと見られますが、ちぐはぐな印象はぬぐえません」(ジャーナリスト)
たしかに4月8日、英国防省は、ロシアによるウクライナの電力供給網などのインフラ施設への大規模攻撃が、ほとんどなくなっていることを発表している。しかし、その理由について、「侵略が長期化し、ロシアのミサイルの在庫が尽きかけていること」が理由だと分析している。ものは言いようなのだ。
5月3日には、ウクライナ南部ヘルソン州のスーパーマーケットや駅などが攻撃を受け、23人が死亡。多くの人命が奪われているなか、一連のペスコフ報道官の発言を「共同通信」が紹介すると、日本国内でもネット上で非難が相次いだ。
《どうしたらこういう嘘をいえるのだろう? ロシアのウクライナ侵攻のどこに「人命尊重」があるのか》
《「人命尊重」で作戦の遅れなんてよく言える。無差別攻撃で電気、水道などインフラはもちろん図書館、駅、デパート、住宅・・・・を攻撃し、罪のない子供たち、多くの人々を殺害し、何が人命尊重なのか。》
《他国に侵攻し罪無き人々を大量虐殺しておきながら、人命尊重とは悪い冗談にもほどがありますよね、もう戦争する物資も人員も枯渇してるのでしょう》
5月9日、ロシアのプーチン大統領は戦勝記念日の演説で「本当の戦争が開始された」と語り、戦意を昂揚している。戦争を長引かせる“嘘”や“言い訳”は、もう聞きたくない。
●中国、特別代表をウクライナ・ロシアなど5か国に派遣 5/12
中国政府は12日、元駐ロシア大使の李輝氏を、ユーラシア担当の特別代表としてウクライナやロシア、欧州各国に派遣すると発表した。ロシアによる侵攻開始以降、ウクライナを訪れる政府関係者としては最高位に当たる。
中国外務省の汪文斌報道官は定例会見で、李氏が15日から、ウクライナ、ポーランド、フランス、ドイツ、ロシアを歴訪し、「ウクライナ危機の政治的解決について、全関係者との意思疎通を進める」と明らかにした。
汪報道官は李氏の訪問について、和平と交渉を促す中国側の意欲を示すものだと説明した。
先月には中国の習近平国家主席が、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話会談に臨んでいる。
李氏は、2009〜19年に駐ロシア大使を務めていた。退任し帰国する直前には、同国のウラジーミル・プーチン大統領から友好勲章を授与されていた。

 

●ウクライナ、バフムートで前進をあらためて主張 ロシアの否定受け 5/13
ウクライナ政府は12日、自軍が東部バフムートで前進し、領土を奪還していると明らかにした。バフムートをめぐる攻防戦はロシアがじわじわと前進しながらも数カ月にわたり膠着(こうちゃく)していただけに、ウクライナ軍の前進は情勢変化のきざしをうかがわせる。
ウクライナ政府によると、ウクライナ軍は1週間で2キロ前進した。ロシア側は、自軍を一つの地域に集結させたのだと説明している。
ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は通信アプリ「テレグラム」への投稿で、ウクライナが拠点を一切失うことなく2キロ前進したのに対し、ロシア側は多数の兵を失ったと書いた。
ロシアの軍事ブロガーたちは、ウクライナ軍が複数の地域で前進したか、あるいは部隊を移動させていると書いている。
アメリカのシンクタンク、戦争研究所も11日、ウクライナはバフムートでおそらく2キロ前進したと分析している。
BBCが検証した5月11日投稿の動画では、ウクライナ軍の標章をつけた兵士たちが門の前でポーズをとっている。後方には、ウクライナ軍の標識のついた戦車が見える。撮影場所はバフムート工業大学の近くで、最近までロシアの雇い兵会社「ワグネル」が掌握していた地域だと特定された。
こうした数々の分析はバフムート情勢の変化のきざしをうかがわせるものの、ウクライナの全面的な反転攻勢が始まった明確な兆候はない。
その一方で、ロシア占領下の東部ルハンスク市では12日、2回の爆発が報告された。ソーシャルメディアに投稿された画像には、市内から黒煙が上る様子が映っている。画像はBBCが検証、確認した。爆発の原因は確認されていない。ルハンスクは戦闘の前線から約90キロ離れている。
この前日にはイギリス政府が、長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」をウクライナに提供したと明らかにしていた。製造元によると、「ストームシャドウ」の射程は250キロ以上。ウクライナはこれまでロシアの標的攻撃には、高機動ロケット砲システム「ハイマース」(射程80キロ)に頼っていた。
ただし、ルハンスクでロシアが任命した現地当局者は、12日に砲撃されたのはかつて企業2社が入っていたビル2棟で、使われたのはウクライナ製ミサイルだと思うと話している。
これに先立ちロシア国防省は、バフムート南部にいたロシア軍部隊が戦略的な理由から位置を変更したのだと説明していた。マロイリニウカ地区にいた部隊は「ベルヒウカ貯水池の方が防衛拠点として好ましい」として、移動したのだという。
しかし、「ワグネル」代表のエフゲニー・プリゴジン氏は、国防省が言っているのは部隊の移動や再編成などではなく、「残念ながら『逃走』だ」と非難した。
激しい攻防戦が長引くほどにバフムートの象徴的な重要性は増しているものの、戦術上の意味は多くの専門家に疑問視されている。
ウクライナの反転攻勢は
昨年2月のロシアによる侵攻開始から間もなく占領された南東部メリトポリでは、11日朝に大規模な爆発が報告されている。
原因は不明だが、ウクライナ軍は同日、ロシア軍の部隊や備品を計14回にわたり空爆したほか、ロシアのドローン9機を破壊したと発表。さらに、砲兵隊や弾薬庫、防空装備など数十の軍事拠点に対する攻撃を成功させたとしている。
ウクライナの反攻開始については、さまざまな見方が出ている。ウォロデミル・ゼレンスキー大統領は10日、BBCなど欧州の公共放送局に対して、時期尚早との見方を示し、「(手持ちの兵器でも)前進し成功できると思う」と説明。「しかし多くの人を失うことになる。それは受け入れられないと思う。だから待つ必要がある。まだもう少し時間が必要だ」と話し、西側諸国が提供を約束した武器の必要性を強調した。
他方で、複数の親ロシア派の戦争記者や軍事アナリストが、ウクライナ軍の戦車がハルキウの環状道路をロシアとの国境に向けて進むなど、反攻を開始していると指摘している。
匿名の米軍幹部はCNNに対して、ウクライナ軍が大規模な反攻に備え、敵の武器庫や司令部、装甲・砲兵システムなどを攻撃していると話した。
ウクライナ軍が昨年春に南部や南東部で大規模な反撃を展開した際には、その前触れとして戦場の「形」を作るため、ウクライナは空からの攻撃を繰り広げていた。
●南ア「ロシアへの武器供給承認せず」、米の非難に反論 5/13
南アフリカは12日、制裁対象のロシア船が昨年12月に南アフリカ・ケープタウン近郊の海軍基地で武器を積載したとする米国の非難に反論した。
米国のブリゲティ駐南アフリカ大使は11日、ロシアの船舶が昨年12月に南アフリカのサイモンズタウンの海軍基地で武器を載せたと確信していると述べ、南ア政府が公言するウクライナ紛争での中立性に合致しないことを示唆した。
南ア大統領府は11日、退役判事を中心にこの疑惑を調査すると発表。12日にはロシアへの武器輸送があったとされる時期に通常兵器規制委員会(NCACC)のトップだったグングベレ通信相が「702ラジオ」で「われわれはロシアへのいかなる武器も承認していない(中略)、制裁も承認もされていない」と語った。
南ア外務省はこの日、ブリゲティ大使を呼び、前日の発言について抗議。外務省は声明で「昨日の行動と発言に対して政府の強い不快感を表明した」とした。外務省によると、ブリゲティ大使は「一線を越えた」ことを認め、「南ア政府と国民に無条件で謝罪する」と述べたという。
この件に関して米国務省は現時点で反応していない。
これに先立ち、米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官はこの日の記者会見で、南アの武器提供疑惑について直接触れなかったものの、「米国は一貫して各国に対しロシアの戦争にいかなる支援も提供しないよう強く求めてきた。ロシアのプーチン大統領に罪のないウクライナの人々を殺すことを容易にさせてはならない」と改めて表明。問題の積み荷が南ア政府の承認を受けていない民間のものだったのかについてはコメントを避けた。
ブリゲティ氏は11日の記者向けのブリーフィングで「ロシアの貨物船『レディR』が2022年12月6─8日にサイモンズタウンに停泊し、武器と弾薬を積載してロシアに戻ったと確信している」と指摘。
リフィニティブの船舶データによると、「レディR」はサイモンズタウン出港後、北上してモザンビークに向かい、23年1月7日から11日までモザンビークのベイラ港に停泊。その後、紅海のポートスーダンに向かって航行し、2月16日にロシア南部クラスノダール地方にある黒海沿岸の主要港ノボロシースクに到着した。
米国は22年5月、ロシア政府のために武器を輸送しているとの疑いで「レディR」と関連の海運会社「トランスモルフロート」を制裁対象に加えている。
●ロシア、「核の威嚇」強める 使用に高いハードル 米の原爆投下を政治利用 5/13
ロシアはウクライナ侵攻が長期化する中、「核の威嚇」を続けている。
クリミア半島など占領地を死守し、西側諸国のさらなる介入を阻止するための最後の手段として、核兵器を使う可能性を排除していない。被爆地・広島で開幕する先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、広く国際社会を巻き込んで「核兵器使用は決して認められず、極めて高い代償を伴う」という強力なメッセージを発することができるかが焦点になる。
「国家存立の危機」。ロシアが核を使用できるとする基準は、曖昧さをまとう。2014年に併合したクリミア半島支配は「レッドライン(譲れない一線)」であり、ウクライナの奪還作戦が核攻撃を誘発しかねないとの見方は根強い。
取り沙汰されているのは、戦術核兵器を限定的に使ってあえて緊張を高め、相手に停戦などを強いる「エスカレーション抑止」という理論だ。プーチン政権は侵攻開始当初から核の威嚇を強化。使用が現実味を帯びた。
だが、実際に核攻撃に踏み切れば、厳しい制裁を科されて国際社会から孤立するのは必至で、当のロシアへの悪影響は計り知れない。思い通りの効果を得られるかも不明で、ハードルの高い「使えない兵器」という側面が浮き彫りになっている。ロシアに一定の距離を置く中国が支持せず、見切りを付けるのではないかとみるロシア人専門家もいるほどだ。
ゼレンスキー政権はひるむどころか、大規模な反転攻勢を予告。苦慮するロシアは、戦勝記念日を控えた3日、「ウクライナのドローンによるプーチン大統領暗殺未遂」があったと主張した。高官は「テロリストを抑止・破壊できる兵器の使用を要求する」と述べ、核のハードルを下げる情報戦に出た。
プーチン政権はたびたび米国による広島と長崎への原爆投下に言及。米国への非難に「政治利用」し、被爆者の核廃絶に向けた思いを無視してきた。メドベージェフ前大統領は1月、ロシアがウクライナで核を使用するシナリオに警鐘を鳴らす日米首脳共同声明に反発。「(岸田文雄首相は)切腹するしかない」とSNSに記した。
ロシアは核拡散の動きも見せている。プーチン氏は3月、同盟国ベラルーシに戦術核兵器を配備すると表明。7月1日までに核貯蔵施設が完成予定だ。「核拡散防止条約(NPT)に違反する」(ウクライナ高官)と懸念が出ている。一方、最近では中国へのロシアの高濃縮ウラン提供が報じられ、核戦力の増強につながるのではないかと警戒されている。 
●ロシア・南ア首脳が電話会談、プーチン氏「外交路線拒否せず」 5/13
ロシアのプーチン大統領は12日、南アのラマポーザ大統領と電話会談を行い、ロシアはウクライナの紛争を解決するための「外交路線」を拒否したことはないと伝えた。ロシア大統領府が発表した。
ロシア大統領府によると、プーチン氏はウクライナ和平協議にアフリカ諸国も参加するとのラマポーザ大統領の提案に支持を表明。このほか、ロシア産の穀物と肥料をアフリカ諸国に無償で提供すると改めて提案した。
●プーチン演説から読み解く ロシアの苦境と財政悪化 5/13
プロローグ / 歳歳年年軍不同
旧ソ連邦諸国にとり、毎年5月9日は1年で最大の「祝日」(お祭り)になります。この日、ドイツ軍がソ連軍に降伏したからです。
しかし、欧州では「終戦記念日」は5月8日です。なぜでしょうか? 
昨年2月24日のウクライナ侵攻開始後のウラル原油下落により、ロシア(露)の国家予算赤字幅は今後さらに拡大し、戦費問題はますます表面化・深刻化するでしょう。
ロシアのV.プーチン大統領(70歳)にとり、油価下落は大いなる誤算でした。ウクライナ侵攻電撃作戦は2〜3日で収束する予定でしたが、泥沼化・長期化は想定外でした。
ウクライナ戦争は誤算の連続であり、今ロシアで一番困惑しているのは、実はプーチン大統領その人ではないかと筆者は想像する次第です。
筆者は毎年、モスクワ「赤の広場」で挙行される軍事パレードの実況中継をTVで観察し、V.プーチン大統領の一挙手一投足に注目してきました。
今年も観ましたので、本稿では「赤の広場」における軍事パレードの印象と、発表されたプーチン大統領演説を総括してみたいと思います。
もちろん、筆者の個人的感想にすぎない点を明記しておきます。
最初に結論を書きます。
モスクワ「赤の広場」にて5月9日に挙行された今年の軍事パレードは、結果として過去最悪の軍事パレードになったと判断します。
ロシア国民もこのパレードを観て、ロシアの行く末を案じていることでしょう。
ロシア経済は油価(ウラル原油)依存型経済構造です。その油価は現在下落傾向にあり、油価低迷と戦費拡大によりロシア財政は破綻の危機に瀕しています。
ロシア財務省は5月10日、今年1〜4月度のロシア財政収支を発表。今年の国家予算案は2.92兆ルーブル(約5兆円)の赤字予算ですが、1〜4月で既に3.42兆ルーブルの赤字となりました。
このまま油価(ウラル原油)低迷と戦費拡大が続けは、今年は10兆ルーブル以上の財政赤字となるでしょう。
「赤の広場」の軍事パレードで流れる軍歌と「カチューシャ」(戦時歌謡曲)は毎年同じです。
しかし、今年の軍事パレードで軍楽隊が奏でる音楽はロシア軍の「軍隊行進曲」ではなく、ロシアの「葬送行進曲」に聞こえました。
唐の詩人劉希夷の「代悲白頭翁」(白頭を悲しむ翁に代わる)に、人口に膾炙する名句があります。
年年歳歳花相似 歳歳年年人不同(年々歳々花相似たり 歳々年々人同じからず)
この名句を拝借すれば、今年の「赤の広場」における軍事パレードには下記対句がよく似合います。
年年歳歳曲相似 歳歳年年軍不同(年々歳々曲相似たり 歳々年々軍同じからず)
第1部 / 「赤の広場」でのプーチン演説
最初に、今年5月9日にモスクワ「赤の広場」で挙行された軍事パレードにてプーチン大統領が演説した内容を訳出します(筆者仮訳)。
筆者は毎回、露TVの実況中継を自分のパソコンで観ながら、演説するプーチン大統領の一挙手一投足を観察してきました。
今年は露タス通信の実況中継を観ておりましたが、途中で画面がフリーズしたり音声が一部途切れたりする部分もあったので、演説後にロシア大統領府のサイトに接続して露語原文を取り込み精読しました。
大統領府にアップされているロシア語を直訳すると以下のようになります。急いで翻訳しましたのでお見苦しい点があるかもしれませんが、ご容赦ください。
(全文訳)
皆様(呼びかけ詳細略)
祖国を防衛し、その名を後世に残した我々の父親、祖父、曾祖父の名誉のために本日の式典を祝福いたします。あなた方の不滅の勇敢さと多大なる犠牲が人類をナチズムから救いました。
今日、文明は再び決定的な転換点に差し掛かっています。我らが祖国に対し、またもや本物の戦争が仕掛けられているのです。
しかし、我々は国際テロには断固として反撃しました。我々はドンバス住民を保護し、自国の安全を確保します。
我々にとりまたロシアにとり、非友好的国民や敵対する国民は西側にも東側にも存在しません。地球に住む圧倒的多数の人々と同様、我々は平和な自由な安定した未来を希求しているのです。
自分たちが優れているといういかなる優越感も有害であり、犯罪であり、死に至る病です。
一方、グローバリズムを標榜する西側エリートたちは相変わらず自分たちは例外であると見なし、人々を煽り、社会を分断し、血なまぐさい闘争や交渉を扇動し、憎悪とロシア嫌いと攻撃的ナショナリズムの種を撒き散らし、人間を人間たらしめんとする家族的、伝統的価値を破壊しているのです。
彼らは今後も独裁を続け、実際には搾取システムや暴力、圧力にほかならないのですが、国民に自分達の意思・権利・規則等を押し付けているのです。
西側エリートはどうやら、世界支配を目論むナチストがどのような結果をもたらしたのか忘れてしまったようです。誰が奇跡を起こしたのか忘れたのです。
これは、誰が故郷の大地のために立ち上がったのか、ヨーロッパの国民を解放すべく、ソ連軍の兵士が自分を犠牲にしたことを残念にも思わない完全悪です。
いくつかの国では、ソ連軍の兵士像を無残にも破壊し撤去しようとする動きもあります。彼らは代わりにナチズムの現代版カルトを創り出そうとしており、真の英雄の記憶を消し去ろうとしているのです。
平和のために戦ったソ連軍兵士の記憶を消し去ることは犯罪です。
彼ら欧米の目的は何ら目新しいものはありません。彼らはロシアの崩壊と消滅を画策しており、第2次世界大戦の結果を消し去り、世界の安全と国際法を破壊し、主権国家の発展中枢を窒息死させようとしているのです。
計り知れぬ野望や自分たちにはすべてが許されているという思い上がりは、結局悲劇で終わることになるでしょう。
今、ウクライナの国民が耐え忍んでいる悲劇の原因はまさにここにあるのです。
ウクライナ国民は国家クーデターと西側支配者の犯罪的体制の人質となったのです。
ロシアに住む我々にとり祖国防衛者の記憶は神聖なものであり、我々の心の中に生きています。
ナチズムに対する抵抗運動に参加した人々、連合国たる米軍や英軍、その他の国々の軍人は当然の報酬を受けるべきです。
日本の軍国主義と戦った中国将兵の功績にも敬意を表します。
全体主義に対する戦いの時代に培った連帯と協力は我々の何物にも代え難い遺産である、と私は確信しております。
信頼と揺るぎない安全、すべての国と国民が自由に発展する平等な可能性の原則に基づく、より公平な多極化の世界を目指す不退転の運動は今まさにその力を発揮しつつあります。
今ここモスクワにCIS(独立国家共同体)の指導者達が参集したことは大変重要なことです。我々の先達、共に戦い共に勝利したソ連邦の全国民がこの勝利に貢献したのです。
我々は先達の功績を忘れることはありません。
戦争の犠牲となった神聖な記憶、息子や娘たち、父母、祖父、夫、妻、兄弟姉妹、祖国の友人の前に我々は頭を垂れるものであります。
(黙祷)
皆様
我が祖国の運命にとり決定的な戦いは常に、祖国愛であり国民的であり、神聖なものになりました。我々は先達の尊厳ある労働や道徳の価値を知っています。
我々は、最前線で戦っている人、戦火の中で前線を守っている人、戦傷者を看護している人、この特別軍事作戦に従事しているすべての人たちを誇りに思います。
国家の安全、国家と国民の未来はあなた方の双肩に掛かっています。あなた方は戦う義務を立派に果たしており、祖国ロシアのために戦っています。
あなた方の銃後には家族が、子供が、友人が控えています。彼らはあなた方の帰りを待っています。あなた方は彼らの惜しむことのない愛を感じているはずです。
我々の英雄を支援すべく、国中が団結しています。我々全員があなた方を支援しており、あなた方の無事を祈っています。
皆様
今日、すべての家族は大祖国戦争従軍者の名誉を讃えており、故郷の英雄たちに思いを馳せ、軍人の記憶に花束を捧げています。
我々は今、この赤の広場に立っています。ユーリー・ドルガルーキー公やD.ドンスコイ公の像、抵抗者ミニナやパジャールスキーの像もあります。
ピヨートル大帝やクツーゾフ将軍の勇士たち、1941年と1945年の軍事パレードを想起させるこのロシアの大地に立っているのです。
今日ここに、特別軍事作戦に従事している人たちが集まっています。
動員されたロシア国防軍の軍人、ルガンスクやドネツク州の民兵、義勇兵、国家親衛隊、内務省、連邦保安庁、非常事態省、その他特別任務を担当する省庁の人たちです。
皆様を歓迎します。祖国ロシアのために前線で戦っている人、軍務に就いているすべての人を歓迎します。
大祖国戦争の時代、我々の先達は我々の団結以上に強固なもの、強いもの、信頼あるものは存在しないことを証明してくれました。我々の祖国愛以上に力のあるものは存在しないのです。
祖国ロシア万歳、我らが栄えある国軍万歳、勝利万歳、ウラー! 
第2部 / 「赤の広場」 軍事パレード概観
   2-1 / 総括:
実況中継を観ていて驚いたのは、突然「日本軍国主義」がプーチン大統領の口から飛び出したことです。
日本の軍国主義と戦った中国将兵を賛美する内容でしたが、これはロシアの対中依存度が深化したことの証左と筆者は理解します。
換言すれば、そこまでプーチン大統領は追い込まれているとも言えます。
対日関係で言えば、日露関係は日暮れて途遠しではなく、日暮れて途消滅となりましょうか。
今年のプーチン大統領演説を一言で表現すれば言い訳と詭弁に満ちた内容であり、注目すべき内容は何もなく、筆者に言わせれ何を今更、道頓堀よとなります。
登場した戦車は「T34」1輌のみ。自走砲も登場せず、戦車も自走砲も多分ウクライナの最前線で活躍(? )していることでしょう。
プーチン大統領は冒頭、「今日、文明は決定的な転換点にある。我が祖国に対し、またもや本物の戦争が仕掛けられている」と述べています。
しかし、本物の侵略戦争を仕掛けたのは誰でしょうか? 
「彼ら欧米の目的は何ら目新しいものはない。彼らはロシアの崩壊と消滅を画策しており、第2次世界大戦の結果を消し去り、世界の安全と国際的権利を破壊し、主権国家の発展中枢を窒息死させようとしている」
主語と目的語を入れ替えるとその通りですね。
本稿では、「赤の広場」における軍事パレードの歴史と今年の軍事パレードをみた筆者の個人的感想を述べさせていただきたいと思います。
   2-2 / 「軍事パレード」の経緯:
最初の対独戦勝記念日は、ドイツが降伏した1945年の6月24日に実施されました。
2回目の対独戦勝記念日のパレードが開催されたのは1965年5月9日です。
この日、「勝利の旗」が赤の広場に登場しました(「勝利の旗」は1945年5月1日にドイツ国会議事堂の屋上に掲げられた赤旗)。
対独戦勝記念日はお祭りですから、従来は将兵や大戦参加者の行進が主体でした。
プーチン新大統領が2000年5月に誕生後、戦車や自走砲などの重火器が「赤の広場」の軍事パレードに登場したのは2008年のことです。
60周年記念日となる2005年5月9日には、独G.シュレーダー首相(当時)が参加。
65周年記念日となる2010年5月9日には、英・米・仏・ポーランドを含む計13か国の外国軍隊が「赤の広場」の行進に参加しました。
史上最大規模の対独戦勝記念軍事パレードは70周年記念日となる2015年5月9日でした。
この日は194輌の軍用車輛と軍用機140機が参加。軍用機参加数では空前絶後となりました。
ロシアの最新鋭戦車「T-14」が初めてテレビに登場したのもこの軍事パレードでした。
参考までに、直近4年間の軍事パレードの規模は以下の通りです。
ちなみに2020年の75周年軍事パレードは、第1回対独戦勝記念軍事パレードが1945年6月24日に挙行されたことに鑑み、6月24日に実施されました(下記数字は概算)。
2020年:将兵1万4000人/戦闘車輌200輌/軍用機75機(75周年に合わせ75機)
2021年:1万2000人/190輌/76機
2022年:1万1000人/130輌/悪天候のため、軍用機パレード中止
2023年:8000人/ 80輌/軍用機パレードなし
昨年の軍事パレードはウクライナ侵攻直後となり、外国からの賓客はゼロ。参加将兵1万1000人、軍用車約輛130輌、航空機パレードは悪天候のため中止となりました。
昨年5月9日のモスクワ「赤の広場」における対独戦勝77周年記念日の軍事パレードでは、プーチン大統領はウクライナ特別軍事作戦における「勝利宣言」するはずでした。
しかし「勝利宣言」も「戦争宣言」もなく、海外からの賓客は一人もおらず、結果としてロシアの孤立を浮き彫りにした軍事パレードになりました。
付言すれば、昨年の軍事パレードの注目点は、プーチン大統領が戦争宣言するかどうかでした。
プーチン大統領が対ウクライナに宣戦布告して一番迷惑を受けるのが、集団安全保障条約(CSTO/計6か国)に参加しているカザフスタンやベラルーシなどです。
軍事同盟ですから、ロシアが戦争宣言すれば、参戦しなければなりません。
しかし、意味も意義も大義もない戦争にカザフスタンやベラルーシが参戦するはずもなく、この場合、ロシア軍事同盟国の間に亀裂が入ったことでしょう。
昨年の軍事パレード終了後にプーチン大統領が無名戦士の墓を歩いている時、隣に寄り添う大統領府の若者が話題になりました。
あるロシア専門家が「大統領代行は大統領令で置くことができる。彼はプーチン大統領の後継者と目されている」と解説していましたが、この解説は間違いです。
大統領代行職は憲法第92条に規定されています。
現職大統領が辞任した場合や健康上の理由などで職務遂行が一時的に不可能になった場合、大統領は大統領代行を置くことができます。
しかしその場合、「大統領代行は首相」とロシア憲法に明記されています。
プーチン氏は1999年8月に首相就任。同年12月31日のエリツィン大統領辞任表明により大統領代行に就任し、2000年3月の繰上げ大統領選挙で当選。これはロシア憲法の規定通りの動きです。
マスコミでは時々、N.パートルシェフ安保会議書記を大統領代行に指名するかもしれないとの話が浮上しますが、これも憲法違反です。
ただし、プーチン大統領がロシア憲法を順守するのか・しないのかは別問題です。
戒厳令を敷けば露連邦法は効力を失い、実質大統領令で何でも可能になります。
   2-3 / 今年の「軍事パレード」:
モスクワ時間5月9日午前10時(日本時間午後4時)に始まり、10時47分に終了。
終了後、プーチン大統領は「赤の広場」から退出。歩いて隣の「無名戦士の墓」に移動、11時に到着して献花。11時5分に解散となりました。
5月8日までは、参加予定の外国要人はキルギスのジャパロフ大統領1人でした。
しかしプーチン大統領はさすがにこれではマズイと思ったのか、急遽K.トカエフ大統領(カザフ)/A.ルカシェンコ大統領(ベラルーシ)/S.ベルディムハメドフ大統領(トルクメン)/S.ミルジョエフ大統領(ウズベク)/E.ラフモン大統領(タジク)/N.パシニャン首相も(無理やり)呼びつけました。
タジクのラフモン大統領に至ってはいったん断っていましたが、強制連行された感じです。
モスクワ時間午前10時に始まり、10時7分にショイグー国防相とサリュコフ地上軍総司令官がプーチン大統領に軍事パレード準備完了を報告。
約10分間のプーチン大統領演説後、10時24分に礼砲と国家演奏。27分に軍楽隊が場所を移動して、軍事パレードが始まりました。
10時33分に「カチューシャ」の演奏が始まり、女性士官が行進。将兵による行進は10時41分に終了して愈々「T-34」戦車の登場となりましたが、今年はなんと戦車1輌でした。
付言すれば、「カチューシャ」は日本ではロシア民謡として親しまれてきましたが、実は「戦時歌謡曲」です。
日本で親しまれている「ポールシュカ・ポーレ」に至っては立派な赤軍軍歌であり、赤軍騎馬隊が敵陣営に突撃していく歌です。
その後、各種軍用車、地対空ミサイル「S-400」(4輌)の後、3輌の大陸間弾道ミサイル「ヤルス」が登場して、10時47分に軍用車輛のパレードが終了。
プーチン大統領は「赤の広場」から退場して、「無名戦士の墓」に歩いて移動。
毎年この軍事パレードを観ている筆者にとっては、あまりにもあっけなく終わった感じです。
将兵の行進も揃っておらず、事前の練習不足が否めませんでした。
   2-4 / 欧州とロシアではなぜ「戦勝記念日」が異なるのか? :
ではここで少し脱線します。
欧州の終戦記念日は5月8日、旧ソ連邦諸国の対独戦勝記念日は5月9日です。なぜでしょうか? 
実は、答は簡単です。
欧州戦線は東部戦線と西部戦線の2つの戦線があり、西部戦線では5月7日に停戦協定が締結され戦闘行為終結し、8日夜11時発効。ゆえに、5月8日が終戦記念日になります。
一方、5月9日は旧ソ連邦諸国最大の祝日「対独戦勝記念日」です。
ドイツのA.ヒトラーは1945年4月20日、ベルリン総統官邸地下壕にて56歳の誕生日を迎えました。
同日、ソ連赤軍のジューコフ元帥率いるベルリン攻略軍はベルリン総攻撃開始。4月30日には、総統官邸100メートルにまで肉薄。
ヒトラーはその前日、「生きて虜囚の辱めを受けず」と宣言。地下壕にてエバ・ブラウンと挙式後、デーニッツ海軍総司令官を総統後継者に任命して翌日ピストル自殺。新婦も後を追って服毒自殺しました。
ゲッベルス後継首相は翌5月1日朝、ベルリン攻略軍との単独講和を試みるも、連合軍側から交渉当事者の資格なしとして相手にされず失敗、家族一同服毒自殺。
翌2日、ベルリン防衛軍バイドリング中将はベルリン攻略第8親衛軍チャイコフ大将と休戦協定を締結、ベルリンにおける戦闘は終了しました。
すなわち、ベルリン陥落は5月2日です。
5月7日にはドイツ国防軍総司令部統制局長ヨードル元帥は仏ランス村に出向き、連合軍総司令官米アイゼンハワー元帥に降伏を申し入れ、降伏文書に調印。降伏文書は現地時間5月8日午後11時発効。
これが、西部戦線(西欧)において5月8日が戦争終結記念日となるゆえんです。
一方、ドイツ国防軍と赤軍との降伏交渉は赤軍総司令官ジューコフ元帥と独カイテル元帥の間でベルリンにて行われましたが、交渉は長引き、降伏文書に調印したのは5月8日深夜となりました。
この時モスクワでは時差の関係で既に9日未明に入っており、これが東部戦線においては5月9日が対独戦勝記念日となるゆえんです。
ちなみに、独デーニッツ元帥と英モントゴメリー元帥の間では、それ以前に北ドイツにおける休戦協定が成立。
バルト海の制空権と制海権が空き、東部に入植した数十万のドイツ人がケーニッヒスベルク(現カリーニングラード)から無事ドイツ本国に帰還しています。
上記の流れは、日本が1945年8月14日に受諾したポツダム宣言をソ連(軍)がどのように理解していたかという問題にも繋がります。
   2-5 / 軍事パレード後のロシアの重要記念日:
5月9日の軍事パレードに続くロシアの重要記念日は、来る6月12日の通称「ロシア独立記念日」、正式には「ロシア国家主権宣言記念日」になります。
1990年3月に創設されたロシア共和国人民代議員大会は同年6月12日の第1回総会にて、ロシア国家主権宣言を採択。
この「国家主権宣言の日」を「ソ連邦からロシア共和国(当時)が独立宣言した日」と解説する人が多いのですが、それは間違いです。
1990年当時、M.ゴルバチョフ・ソ連邦初代大統領とB.エリツィン・ロシア共和国最高会議議長という大物政治家2人の個人的確執があり、モスクワは二重権力状態でした。
エリツィンはソ連邦共産党政治局員候補まで登りつめた共産党の大物幹部ですが、ゴルバチョフ書記長により1987年11月に解任されました。
しかし1989年3月の露共和国人民代議員選挙で当選。1990年5月には露共和国最高会議議長に選出されました。
一方、ゴルバチョフ書記長は1990年3月、ソ連共産党の指導的役割を規定した憲法第6条を廃止。
複数政党制と大統領制を導入する憲法改正案(通称「ゴルバチョフ憲法」)を採択、ソ連邦初代(そして最後の)大統領に選出されました。
その後、エリツィン最高会議議長は90年6月12日、ロシア共和国人民代議員大会にて、「ソ連邦構成員としてのロシア共和国の主権を宣言する」という主権宣言を採択しました。
すなわち、主権宣言はロシア共和国の主権を確認しただけで、ソ連邦からの独立宣言ではありません(この点、誤解している人が結構います)。
第3部 / ウクライナ戦況、ロシア軍の被害状況と戦争の帰趨 (2023年5月11日現在)
ロシア軍が2022年2月24日にウクライナに全面侵攻開始してから本日5月11日でプーチンのウクライナ侵略戦争は442日目となり、1年と3か月目に入りました。
開戦後2〜3日でキエフ(キーウ)は陥落。ゼレンスキー大統領は国外逃亡か拘束され、親露派ヤヌコービッチ元大統領の傀儡政権を樹立する予定でしたから、戦争長期化・膠着状態はプーチン大統領にとり誤算の連続となりました。
プーチン大統領は今年2月21日の大統領年次教書の中で、「NATO(北大西洋条約機構)との戦い」と「祖国防衛」を繰り返し強調しましたが、この戦争の戦場はウクライナであり、ロシアではありません。
この戦争はロシアの侵略戦争です。
ロシアの祖国防衛戦争ではなく、ウクライナの祖国防衛戦争です。
皮肉な話ですが、今のゼレンスキー大統領は1941年6月のスターリン首相を想起させます。
側近からの忠告にもかかわらず、ドイツ軍のソ連侵攻はあり得ないと固く信じていたスターリンにとり、1941年6月22日のバルバロッサ(赤髭)作戦発動は文字通り「青天の霹靂」でした。
ゼレンスキー大統領も、米国からのロシア軍事侵攻可能性大との情報にもかかわらず、ロシア軍のウクライナ侵攻は「青天の霹靂」となりました。
注目すべきは侵攻後です。
スターリンはモスクワに踏みとどまり、赤軍の陣頭指揮を執りました。
ゼレンスキー大統領は、ロシア側が「ゼレンスキーは国外逃亡した」と偽情報を流す中、キーウに踏みとどまり、キーウから毎日情報を発信しました。
中国の習近平国家主席(69歳)は2023年3月20日訪露、プーチン大統領と中露首脳会談を開催。プーチン大統領は中国側から全面的軍事支援を期待していました。
筆者は従来、「中国が本格的対露軍事支援を開始すればウクライナ版第2次朝鮮戦争になるので、このシナリオはあり得ない」と主張してきましたが、習近平主席は言質を与えず、筆者の予想通りの展開となりました。
共同声明には「平和のための交渉促進」が謳われたのみです。ゆえにプーチン大統領は3月25日、態々「中露同盟は軍事同盟ではない」と釈明せざるを得ませんでした。
この点、プーチン大統領にとっては大きな失望であったと推測します。
一方、露北極圏ヤマル半島からモンゴル経由中国向け天然ガスパイプライン「シベリアの力(2)」建設構想も協議され、交渉促進で両首脳合意。ただし中国側に急ぐ動機はなく、動機はロシア側にあります。
露ガスプロムは金城湯池の欧州ガス市場を喪失したので、代替市場創設が喫緊の課題となりました。
習近平国家主席は3月20日の非公式会談の冒頭、プーチン大統領に対し「来年の露大統領選挙で当選を確信しています」と発言。
中国の悪夢はロシアに親欧米政権が成立することですから、弱いプーチン大統領が政権の座にしがみつくことは中国の国益に適います。
もう一つニュアンスがあります。
欧州が対ウ支援において決して一枚岩ではないのと同様、中露も一枚岩ではありません。隣国は最大の敵性国家です。
旧ソ連邦は中国と約7000キロ、現在のロシア連邦は約4200キロの対中国境線を有しているので、中国にとり米国に次ぐ敵性国家はロシアになります。
ロシアがほどほどに負けて、対中依存度が増す形(=露の資源植民地化)で停戦・終戦の方向に収束していくことは中国の国益に適います。
換言すれば、プーチン大統領が居残り、ロシアがほどほどに負けることは中国にとり「一石二鳥」となります。
ここで、ウクライナ戦況を概観します。
5月11日朝のウクライナ参謀本部発表によれば、ロシア軍が全面侵攻した昨年2月24日から今年5月11日朝までのロシア軍累計損害は以下の通りです。
破壊されたロシア軍兵器の在庫が減少していることは確かですが、新規に生産、あるいは修理している兵器もあるはずです。
故に、あくまでも一つの参考情報(目安)として記載する次第です。
もちろん、ウクライナ大本営発表ですからこのまま上記の露軍戦死者数を信じることは危険ですが、それにしても信じられないようなロシア軍の被害です。
他方、ロシア軍の自軍被害に関する大本営発表は2022年3月25日に発表したロシア軍戦死者「1351人」が最初です。
その後、ショイグー国防相は同年9月21日に「ロシア軍戦死者は5937人」と発表しましたが、以後戦死者に関する公式発表はありません。
この戦死者数自体、もちろん大本営発表の偽情報ですが、ここで留意すべきは「ロシア軍戦死者」とはロシア軍正規兵の将兵が対象であり、かつ遺体が戻ってきた数字しか入っていないことです。
ロシア軍の遺族年金支払対象者はこの「戦死者」のみで、「行方不明者」は対象外です。
付言すれば、ウクライナ東部2州の親露派民兵集団、チェチェンのカディロフ私兵集団や民間軍事会社ワーグナーなどの傭兵部隊等の戦死者は、ロシア軍の戦死者に算入されておりません。
一方、ウクライナ軍は今春反攻開始予定と言われてきましたが、米州兵によるウクライナ関連軍事機密情報漏洩事件などにより、戦略・戦術の変更を余儀なくされた模様です。
ただし、欧米が約束した新規武器供与は順次始まり、米防空システム「パトリオット」、最新鋭「レオパルト2」型戦車や歩兵戦闘車、自走砲等も戦場に投入開始。
ポーランドからは「MIG29」戦闘機も供与され、ウクライナ軍の反転攻勢準備も徐々に整い始めた感じです。
プーチン新ロシア大統領が2000年5月に誕生した時、彼のスローガンは強いロシアの実現と法の独裁でした。
油価上昇を享受したプーチン大統領ですが、ウクライナ侵攻の結果としてウラル原油の油価は下落開始。
油価下落によりロシアは弱いロシアの実現と大統領個人独裁の道を歩んでおり、結果としてプーチン大統領は自らロシアの国益を毀損していることになります。
第4部 / 2油種(北海ブレント・露ウラル原油)週次油価動静(2021年1月〜23年5月)
2021年1月から23年5月までの2油種(北海ブレント・露ウラル原油)週次油価推移を概観します。
油価は2021年初頭より2022年2月末まで上昇基調でしたが、ロシア軍のウクライナ侵攻後、ウラル原油は下落開始。
ウラル原油以外は乱高下を経て、2022年6月から下落傾向に入りました。
ロシアの代表的油種ウラル原油は、西シベリア産軽質・スウィート原油(硫黄分0.5%以下)とヴォルガ流域の重質・サワー原油(同1%以上)のブレンド原油で、中質・サワー原油です。
日本が輸入していたロシア産原油3種類(「S-1」ソーコル原油/「S-2」サハリン・ブレンド/ESPO原油)はすべて軽質・スウィート原油にて、日本はウラル原油を輸入していません。
ちなみに、2022年6月〜2023年3月度のロシア産原油輸入はゼロでした(例外:2023年1月度S-2サハリン・ブレンドを少量輸入)。
露ウラル原油の5月1〜5日週次平均油価は$49.92/bbl(前週比▲$4.55/黒海沿岸ノヴォロシースク港出荷FOB)、北海ブレント$74.62(同▲$6.78/スポット価格)となり、ブレントとウラル原油の大幅な値差は続いています。
この超安値のウラル原油を輸入し、自国で精製して石油製品(軽油や重油)を国際価格で輸出して、“濡れ手に粟”の状態がインドと中国です。
付言すれば、露ウラル原油の油価は、欧米が上限設定し昨年12月5日に発効したFOB価格$60を超えていません。
一方、中国が輸入しているロシア産原油は主にESPO原油であり、ウラル原油ではありません。
ESPO原油はシベリア産原油であり、主に原油パイプラインでロシアから中国に輸出しているので、$60条項は適用されません。
中国はウラル原油よりもバレル約20ドルも高い価格で原油を輸入しており、ロシアに補助金を払っているという奇妙な説も流れましたが、ESPO原油がウラル原油よりも$20高いだけなら、バナナの叩き売り原油になります。
近代戦は補給戦、継戦能力の原動力は経済力と資金力(戦費)です。
ロシア経済は油価(ウラル原油)に依存しており、油価下落は露経済を弱体化させます。
今後の油価動静はウクライナ戦争の帰趨に大きな影響を与えるので、筆者は今後の油価動静に注目している次第です。
第5部 / ロシア経済は油上の楼閣経済 国庫税収は油価次第
   5-1 / ロシア経済は油上の楼閣経済構造:
下記グラフをご覧ください。露経済と国庫税収は油価(ウラル原油)に依存していることが分かります。
ウラル原油の油価が国家予算案策定の基礎になっており、国庫歳入はウラル原油の油価に依存しています。
ちなみに、石油・ガス税収の8割以上が地下資源採取税で、非石油・ガス税収の大半は付加価値税(消費税)と利潤税(利益税)です。
   5-2 / 露財務省/2023年1〜4月度国庫財政収支発表(2023年5月10日):
露財務省は5月10日、今年1〜4月度の露国家予算案遂行状況を発表。財政赤字は3.42兆ルーブルを超えました。
原油生産量が未発表になるなどの情報統制が厳しくなる中で、ロシアにとって芳しくない財政状況が依然として公表されていることは、ロシア研究者にとり一服の清涼剤になります。
下記で注目される点は、石油・ガス税収は前年同期比半減。非石油・ガス税収は増えていますが、増えているのは付加価値税(消費税)であり、利潤税(利益税)は約2割減少していることです。
これは企業収益、特に石油・ガス関連企業の財政状況が急激に悪化していることを示唆しています。
油価が下落すれば、露経済・財政を直撃。油価下落=露経済弱体化=戦費枯渇です。
これが、露ウラル原油の油価動静が注目されるゆえんです。 (単位:10億ルーブル)
エピローグ / ロシアの真の国益は? 
ロシア経済は油価依存型経済構造であり、GDPも国家財政も貿易収支もすべて油価次第です。
プーチン大統領は油価高騰を享受した大統領ですが、換言すれば、油価が下落すれば彼の権力基盤も弱体化することになります。
最近、ようやく日系マスコミでもロシア財政悪化問題が脚光を浴びるようになりましたが、財政悪化の根本原因がウラル原油の油価下落であることを理解している人はあまりいないようです。
ちなみに、ロシアの石油・ガス税収の8割以上が地下資源採取税、その他は石油・ガス輸出関税などです。
石油・ガス税収は2020年までは石油輸出収入の方がPL(パイプライン)ガス輸出税収より多かったのですが、2021年から逆転。
今では石油・ガス輸出関税の大半がPLガス輸出関税となり、PLガス輸出減少=石油・ガス関税収入減少になります(付言すれば、LNG輸出関税はゼロ)。
ロシア政府の赤字対策は石油・ガス産業に対する大増税であり既に導入されましたが、この財政悪化問題は今後ますます深刻化・先鋭化していくこと必至です。
今年の露国家予算案想定油価はバレル$70.1ですが、現在の油価は大幅に下回っています。
油価(ウラル原油)がこのままバレル$50前後で推移すれば、実施した大増税も焼け石に水となり、早晩ロシアの財政破綻は不可避となりましょう。
ロシアはウクライナ戦争の長期戦を覚悟しているようですが、長期戦の前に経済悪化と財政破綻危機(=戦費枯渇)が表面化すること必至にて、その結果「国破れて山河在り」の姿が透けて見えてきます。
ウクライナ戦争の長期化を予測する人は多いのですが、筆者はそうは思いません。
油価水準が低迷している中で、現在のような大規模な戦闘を継続する余裕はロシアにはありません(逆も真なり)。
油価低迷が継続すればロシアの戦費は枯渇して、今年中に停戦・休戦・終戦の帰趨が見えてくるものと筆者は予測しております。
英W.チャーチル曰く、「ロシアは謎の中の謎に包まれた謎の国である。しかしロシアを理解するカギが一つある。それはロシアの国益だ」
現在の局面におけるロシアの国益、それはロシア軍の早期撤退・停戦・終戦にほかならないと筆者は考えます。
●ロシア併合のウクライナ東部で大規模爆発、露側「ミサイル攻撃」主張… 5/13
タス通信などによると、ロシアが一方的に併合したウクライナ東部ルハンスク州の州都ルハンスク中心部で12日夕、複数回の大きな爆発が起きた。露側はSNSを通じて「ウクライナがミサイルで攻撃した」と主張した。ウクライナ側は関与を認めていない。
露側によると、プラスチック工場の事務所がある建物などに2発が着弾した。少なくとも子供6人が負傷したとしている。
米CNNは、ルハンスクは米国供与の高機動ロケット砲システム「HIMARS」の射程(約80キロ・メートル)圏外にあり、攻撃されるのは珍しいと伝えた。露側は、英国提供の巡航ミサイル「ストーム・シャドー」(射程250キロ・メートル超)や、HIMARSの可能性は低いとの見方を示している。
一方、タス通信によると、やはり併合下にある南部ザポリージャ州の主要都市メリトポリの変電施設でも12日夕、大規模な爆発が起き、一部で停電と断水が起きた。爆発に関与したとして複数の容疑者が拘束されたという。また、南部クリミアでは、露側が一方的に任命した「首長」が、露軍が12日に「敵の無人機」を撃墜したとSNSに投稿した。 
●ロシア、ICC裁判官を「指名手配」へ プーチン氏の逮捕状で 5/13
重大犯罪を担当するロシアの連邦捜査委員会は13日までに、国際刑事裁判所(ICC)が先にウクライナ侵攻に絡む戦争犯罪の容疑でプーチン大統領らに逮捕状を出した問題に触れ、この決定に積極的に関与したとするICCの裁判官ら4人をロシアの指名手配リストに近く含めるとの方針を明らかにした。
ロシア国営RIAノーボスチ通信が同委のアレクサンドル・バストルイキン委員長の発言として報じた。ロシア・サンクトペテルブルクで開かれた法律問題に関する国際フォーラムに出席し、述べたとした。
ICCは今年3月17日、ウクライナの子どもたちをロシア内へ違法に連れ去った戦争犯罪に加わった容疑でプーチン氏に逮捕状を発布。同国で子どもの権利問題を担当するリボワベロワ大統領全権代表にも同様の疑いで逮捕状を出していた。
ロシア連邦捜査委はICCの決定を受け、裁判官ら4人に対する刑事捜査を迅速に始めたとの対抗措置も明らかにしていた。ロシア大統領府は「法外かつ容認できない決定」とも反発していた。
ただ、ロシアはICCに加盟していない。プーチン氏が出廷しない欠席裁判はICCで原則的に認められておらず、開廷の可能性は逮捕状の対象者をロシアが引き渡したり、訪問先の海外で拘束されたりした場合に出てくる。
●FRB議長も、メルケル元首相も! 要人を次々に騙す「ロシアの2人組」 5/13
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がロシアのイタズラの「被害」に遭っていたことが判明したのは4月末のことだった。ロシア人コメディアンである「ボバンとレクサス」というコンビに騙されて、リモート会談に臨んでいる姿が公開された。
パウエル議長は2023年1月に、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の「声真似」をしたボバンとレクサス側と、15分以上、真面目に経済の話をした。アメリカの中央銀行にあたるFRBの議長がまんまといたずらに騙されたことで、リテラシーとセキュリティを懸念する声が上がった。
パウエルは、ロシア中央銀行のエリヴィラ・ナビウリナ総裁について、ロシアのウクライナ侵攻による西側諸国からの経済制裁の中で踏ん張っていると評したという。さらに、2023年はアメリカは景気低迷すると述べ、その理由はインフレ抑制のために利上げしたためだとも述べたという。
ちなみに筆者の取材に応じたウクライナの政府関係者は、「ボバンとレクサスは、ロシア情報機関であるFSB(ロシア連邦保安庁)とつながっている。そうでないと、これまでのように錚々たる面々にアクセスすることもできないだろう」と述べている。
そう、これまでにボバンとレクサスに騙された要人は多い。
エルトン・ジョンにはプーチンが謝罪する羽目に
2014年に活動を始めてから、当初はロシア人著名人にイタズラをしていたが、その後は外国要人を狙うようになった。
例えば、ボバンとレクサスは2015年に、ウラジーミル・プーチン大統領のフリをして英歌手のエルトン・ジョン氏を騙して、同性婚事情について話をした。この件では後に、プーチンがエルトンに実際に謝罪をしたと報じられている。
それ以外にも、2022年には、イギリスのベン・ウォレス国防相をウクライナのデニス・シュミハリ首相からの連絡であるかのように騙して、15分ほどウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟の是非について議論し、その様子を動画で公開している。
さらに過去には、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領もやられているし、最近では、ドイツのアンゲラ・メルケル元首相や欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁も騙して、その様子を動画で公開している。
ちなみに、ボバンとレスサス側は、ロシア政府やFSBとのつながりを否定しているという。
●独、4000億円の追加兵器供与 ウクライナ反転攻勢後押し 5/13
ドイツ政府は、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対して歩兵戦闘車などを含む27億ユーロ(約4000億円)規模の新たな軍事支援を決めた。欧米メディアが13日、一斉に伝えた。昨年2月の侵攻開始以来最大規模といい、近く見込まれるウクライナ軍の反転攻勢を後押しする。
追加供与するのは、歩兵戦闘車「マルダー」20両と対空防衛システム「IRIS―T」4基、旧式の主力戦車「レオパルト1」30両など。独誌シュピーゲルは数週間から数カ月以内にウクライナに送られる計画だと伝えた。
●ウクライナ軍バフムートで進撃 ロシア軍も事実上の後退を認める 5/13
激戦地のウクライナ東部ドネツク州バフムート周辺で、ロシアが重視する5月9日の対独戦勝記念日後にウクライナ軍が攻勢を強めている。ロシア国防省は、軍が北西郊外で後退したのに続き、占領下の近郊ソレダルが激しい攻撃を受けたことも明らかにした。ロシアでは「ウクライナの反転攻勢が始まった」とするSNSの投稿が一時拡散。同省は国内の動揺を抑えるのにも腐心している。
同省がソレダルへのウクライナ軍の攻撃があったのを明らかにしたのは12日午後。前日の11日、95キロの戦線に戦車40台、兵士約千人を動員した26回にわたる攻撃を受けたが、「撃退した」とした。
バフムートの北東約10キロの位置にあるソレダルは昨年2月の侵攻開始以降もウクライナ軍の支配下にあったが、今年1月にロシアの民間軍事会社「ワグネル」の部隊を中心にロシア軍が制圧。その後ワグネルはバフムート市内に進軍し、市内の9割以上と西部をのぞく周辺を支配し、ロシア軍にとって状況は安定しているとみられていた。
10日には、ウクライナ陸軍トップのシリスキー司令官がバフムート北西郊外の前線でロシア軍を「最大2キロ後退させた」と発表。ロシア国防省も11日、「より有利な条件の境界線を作った」と事実上後退を認めていた。

 

●ロシアの労働力不足 ウクライナ侵攻で悪化 5/14
ロシアによるウクライナ侵攻は、ウラジーミル・プーチン大統領の長年の懸案事項である少子高齢化を加速させた。侵攻により西側諸国から制裁を科され悪化した経済が、さらに停滞する可能性もある。
低出生率が何年も続き、労働力の減少に直面していたロシアにとって、ウクライナ侵攻は状況の悪化と、長期間にわたりその影響が残り得ることを意味する。
動員により、男性数十万人が労働市場から消えた。さらに、高学歴者の多くは国外に脱出した。
ロシア連邦統計局の元職員で人口統計学者のアレクセイ・ラクシャ氏はAFPに対し、ロシアは以前から労働力不足に陥っていたが、「動員と大量出国でさらに悪化した」と指摘した。
ロシアでは1990年代のソ連崩壊後、経済難や将来への不安などから出生率が半減し、今も回復していない。
プーチン大統領は少子化対策として、第2子以降を対象に一時金給付などを導入してきた。
新型コロナで打撃
ロシア当局はウクライナでの戦死者数について、昨年9月に国防省が5937人と発表して以降、更新していない。
西側は、ウクライナ、ロシア両国の死傷者はそれぞれ15万人に上ると推計している。
モスクワ国立大学のナタリア・ズバレビッチ氏は「軍事作戦による正確な死者数は分からないが、30万人が動員され、若い労働力がさらに減った」と指摘した。
さらに、新型コロナウイルスによって約40万人が死亡したと公式統計ではされているが、実際の死者数はこれを大幅に上回るとみられる。
労働力が減少していることを考えると、3.5%という失業率は良いとはいえない。人手がおらず、さまざまな業種で人材不足が起きていることを示している。
ロシア中央銀行が先月19日に公表した統計から、「急激な」人手不足が起きており、特に加工業や輸送業、水道業などで顕著であることが明らかになった。
人は戻ってくるか?
高等経済学院は先月、ロシアが人口減少を回避するには、21世紀末まで、毎年39万人から110万人の移民を受け入れる必要があるとの研究結果を発表した。
だが一部の業種では労働力を補えず、特にIT関係など高いレベルの教育を必要とする仕事では人材不足が続くという。
人口統計学者のラクシャ氏によると、侵攻後の昨年2月から3月にかけて、男性約10万人を含む15万人がロシアを離れた。9月の部分的動員発表を受け、さらに約50万人が出国したと推定されるという。
最近では、動員回避者に経済的な制限を課す法律が施行された。これにより出国者の外国永住がさらに後押しされる可能性もある。
だが、ズバレビッチ氏は出国者の60%以上がリモートでロシア企業の仕事を続けていると指摘。「一部は戻ってくる」との見方を示した。
●イタリア電撃訪問のゼレンスキー「今日はロシアのドローン17機撃ち落とした」 5/14
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は13日、ローマを予告なしで訪問し、イタリアのジョルジャ・メローニ首相と会談した。ゼレンスキー氏は会談後の記者会見で「今日は露軍のドローン17機を撃ち落とした」と述べ、米欧からの軍事支援継続の必要性を強調した。
メローニ氏は「ウクライナと北大西洋条約機構(NATO)との関係強化を支援する。7月のNATO首脳会議の中心議題になるだろう」と応じた。
ゼレンスキー氏はバチカンで、ローマ教皇フランシスコとも会談した。教皇はプーチン露大統領と親しいロシア正教会トップのキリル総主教との会談を通じた和平仲介を模索している。
●ゼレンスキー大統領 ローマ教皇と会談 和平実現へ支援求める  5/14
ウクライナ軍は、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナ東部の激戦地バフムトでの反撃の成果を強調しました。こうした中、ゼレンスキー大統領は、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇とバチカンで会談し、和平の実現に向けた支援を求めました。
ウクライナのマリャル国防次官は13日、東部の激戦地バフムトについて「近郊の2つの戦線で、われわれの軍は徐々に前進している。敵を撃破し、かなりの数を捕虜にした」とSNSに投稿し、反撃の成果を強調しました。
一方、ロシア国防省は、東部ルハンシク州の中心都市で、親ロシア派が事実上統治するルハンシクを12日、ウクライナ軍の戦闘機が攻撃したと発表しました。
攻撃には「イギリスがウクライナに供与した巡航ミサイル『ストームシャドー』が使われた」として、ウクライナへの軍事支援を強化するイギリスを非難しています。
さらに、ロシアの有力紙「コメルサント」によりますと、ウクライナと国境を接するロシア西部のブリャンスク州で13日、ロシア軍の戦闘機と戦闘爆撃機、それにヘリコプター2機のあわせて4機が墜落したということです。
「コメルサント」は複数の専門家の指摘として、敵に撃墜された可能性が高いと伝えています。
こうした中、ゼレンスキー大統領は13日、ロシアによる軍事侵攻が始まって以降初めて、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇とバチカンで会談し、和平の実現に向けた支援を求めました。
ローマ教皇庁によりますと、会談で双方は、ウクライナへの人道支援を継続する必要があるという認識で一致したということです。
また、ドイツ国防省は13日、ウクライナに対し新たに27億ユーロ、日本円でおよそ4000億円相当の軍事支援を行うと発表しました。
今回の支援には戦車30両のほか、歩兵戦闘車両や防空システムなどが含まれ、ドイツからウクライナへの軍事支援は倍増することになると、ドイツのメディアは伝えています。
●あのポーランドがなぜ?ウクライナ産農産物拒絶の裏側 5/14
4月に、ポーランドをはじめとする一部の欧州連合(EU)加盟諸国がウクライナ産農産物の輸入を禁止したことは、国際的に波紋を広げた。
2022年2月24日にプーチン・ロシアがウクライナ侵略を開始して以来、EUはウクライナと連帯し、手厚い支援を提供してきた。そのEUの中から、ウクライナの商品を拒絶する国が現れたのである。
しかも、ウクライナ産農産物禁輸の動きは、ポーランドから始まった。これまで難民受入等で、EUの中でも最もウクライナに寄り添ってきたはずの国だ。
ポーランド政府は4月15日、ウクライナ産の穀物およびその他食品の輸入を一時的に禁止すると発表し、その後品目を拡大していった。ほどなくして、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアもこれに追随した。
そもそも、EUでは共通通商政策が絶対のルールであり、加盟国が単独で輸入禁止措置を講じたりするのはご法度である。今回、ポーランドをはじめとする国々は、なぜその禁を犯してでも、ウクライナ産農産物の流入にストップをかけようとしたのか?
むろん、一言で言ってしまえば、「自国の農業生産者を守るため」である。しかし、その切実さを理解するためには、これまでの経緯と、問題の全体像を知っておく必要がある。
関税割当という障壁
ウクライナとEUは14年に「連合協定」に調印し、両者間では「深化した包括的な自由貿易圏(DCFTA)」が成立した。これに伴い、EUはウクライナ産品に対する関税を、基本的に撤廃した。
しかし、EUは多くのセンシティブな農産物・食品に関してはウクライナ産品に「関税割当」という制限を残した。一定量までは無関税で輸入できるが、それを超えると関税が課せられるという仕組みである。関税は、たとえば穀物であれば1トン当たり100ユーロ近くに上り、ばかにならない額である。
14年4月から関税割当制が施行されると、その後の実際の割当利用状況は、ややちぐはぐなものとなった。
小麦、とうもろこし、はちみつ、加工トマト、ぶどう・りんごジュース、砂糖などは、当該年の割当が年明け早々に使い切られてしまうのが通例だった。「欧州のパンかご」と称されるウクライナの輸出ポテンシャルに、割当の規模がまったく見合っていなかったのである。
他方、豚肉、牛肉、一連の乳製品などでは、ウクライナの生産者がEU市場に輸出するために、EUの認証を取得しなければならない。コスト面などから、そのハードルは高く、これらの品目では、せっかくの割当がほぼ利用されない状態が続いた。
結局のところ、EUは農業保護主義の牙城であり、ウクライナと連合協定を結んだからといって、ガードは固かったのである。ウクライナ穀物輸出業界のある大立者は16年、「DCFTAは欺瞞だ」と吐き捨てた。
状況を一変させたロシアの侵略
その状況を一変させたのが、やはりロシアのウクライナ侵略だった。EUはウクライナ支援策の一環として、22年5月30日付のEU規則870号により、同年6月4日から1年間、ウクライナ産品に対する輸入制限措置の適用を全面的に免除することを決めた。農産物に対する輸入割当、輸入関税も課せられなくなった。
こうして、不充分な輸入割当がウクライナの対EU農産物・食品輸出を制約する状況は、時限的ながら解消されたわけである。実際、22年夏以降、ウクライナの対EU農産物輸出は全般に勢い付いていくことになる。ただし、筆者の理解する限り、ウクライナの畜産・酪農生産者等がEU市場に輸出するのにEUの認証取得が必要な状況は変わらず、この点は障壁として残った。
そして、もう一つウクライナの農産物輸出への影響が大きかったのが、「黒海穀物イニシアティブ」である。22年7月に国連とトルコの仲介で合意が成立し、ウクライナ産農産物をオデーサ州港湾から輸出することが8月から可能になったものだ。
以降、ウクライナの対EU農産物輸出の半分ほどが、同スキームによる海上輸出だったと見られる。スペイン、イタリア、オランダ、ベルギー、ポルトガルなど、地中海および北海沿岸諸国への輸出は大部分がこれであったはずだ。
図1に見るとおり、ウクライナからEUへの農産物・食品輸出額は、21年の93億ドルから、22年の148億ドルへと、58%の伸びを見せた。
一方、ウクライナ側の統計によれば、22年の農産物・食品の輸出総額は234億ドルで、輸出全体の53%を占めた。現時点で、ウクライナで本格的に機能している唯一の産業が農業であり、おそらくはその輸出の3分の2近くをEUが受け入れていると見られる。
近隣諸国へのしわ寄せ
現状ではウクライナの対EU農産物輸出の半分ほどが、黒海穀物イニシアティブによる海上輸出になっていると見られる。西欧の裕福な国々が、ウクライナの安価な穀物やひまわり油を買い入れている形であり、こうした国には充分吸収する余裕がある。
問題は、残りの半分である。これらが、陸路を伝ってポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニアに溢れ出していた。また、ブルガリアには(ルーマニアにも一部は)海路によってウクライナ産農産物がもたらされた。
驚くべきは、これら中東欧5ヵ国によるウクライナ産農産物輸入の急増振りである。図2に見るとおり、22年の輸入額は、前年の4倍強に膨らんでいる。ウクライナを支援するためにEUとして決定したウクライナ産農産物輸入の自由化だったが、そのしわ寄せが近隣の中東欧諸国に集中的に及んでしまったのである。
ウクライナの安い農産物が、これだけ急激に流入すれば、地元生産者が悲鳴を上げるのも当然だろう。中東欧は、EUの中でも所得水準が低い地域であり、なおかつ農業の重要性は無視できない。年内に総選挙を控えるポーランドをはじめ、各国ともウクライナ産農産物の輸入禁止という非常手段に訴えたというのが真相だった。
ひとまず妥協は成立したが
EUは共通通商政策を取っている。ポーランド等が単独でウクライナ産農産物の輸入を禁止したことに関し、欧州委員会は憂慮を示した。
EUと一連の中東欧諸国は、どうにか4月28日までに、本件に関する妥協に達した。これらの国が自国へのウクライナ産農産物の流入をブロックすることは容認するものの、同諸国はウクライナ産農産物を然るべく通過させ、他のEU諸国に輸出できるようにするという合意が成立した。また、中東欧諸国には1億ユーロの支援金が提供されることとなった。
同時に、EU諸国は4月28日、ウクライナ産品に対するすべての関税および関税割当の免除を、さらに1年間継続することも決定した。
それにつけても、今回の騒動にしても、そもそもロシアがウクライナを侵略し、その後も食料を武器に駆け引きなどしなければ、起こらなかった問題だ。侵攻前は、ウクライナの穀物輸出の99%、ひまわり油輸出の91%が、海運によるものと言われていた。それが、黒海穀物イニシアティブでかなり復活したとはいえ、同プロジェクトではロシアが意図的に荷物検査を遅らせているとされ、海上輸送がフル稼働するには至っていない。そこで輸送し切れない分が、ポーランドなどの中東欧諸国に溢れた形であり、同諸国を責めるのは酷である。
今回のウクライナ産農産物輸入禁止をもって、中東欧諸国や、ましてやEUのウクライナ支援疲れなどと決め付けるのは、不適切であろう。現時点では、ウクライナと連帯するEUの姿勢に、揺らぎは見られない。ただ、ロシアによる侵略が長引けば、その「とばっちり」で、今回のような騒動が増えていくことが懸念される。
●徴兵で人手失うウクライナ農業、種まきや収穫に試練 5/14
ウクライナ中部チェルカースィ州で大規模な農場と牧場を経営するオランダ出身のキース・ホイジンガさん(48)は、過去20年間で数多くの試練に見舞われてきたが、ロシアの侵攻で予想もしていなかった新たな問題を突きつけられた。
この農場の従業員350人のうち40人前後が兵役に就いたため、代わりに未経験者を採用せざるを得ず、作業効率の低下を余儀なくされた。ホイジンガさんは今、穀物収穫量と牛乳生産量の落ち込みによる収入減少を恐れている。
戦争のために農業分野で貴重な働き手を失ったのはホイジンガさんだけではない。ロイターが3人の農家、大手穀物企業1社と業界団体関係者1人に取材したところによると、1年の中で最も大事な種まきと収穫の時期はただでさえ大変だが、軍による招集のために一層困難な事態を迎えている。
ウクライナでは戦争が始まって以降、穀物輸出が滞った上に、肥料の入手ルートが細り、農地が広範囲にわたって破壊されたため穀物生産が急減。輸出収入の目減りを懸念した政府が、主要農業セクターの一部人員に対する兵役を免除する対策を講じているものの、その効果は限定的だ。
ロイターの取材に応じた関係者の大半は、代わりの働き手を雇ったり、幾つかの仕事で増員したりすることが可能だが、経験を穴埋めすることはできないと語る。
ホイジンガさんは「(作業面で)相応の能率と質がなくなっている」と嘆き、農地1万5000ヘクタールと乳牛2000頭の農場にとって数十万ドルかそれ以上の損失につながる恐れがあるとの懸念を示した。
作付けと追加徴兵が重複
しかもタイミングの悪いことに、今年は種まきの時期が大雨のせいで例年より遅れ、ウクライナが準備を進めている大規模反攻作戦に向けた追加的な徴兵手続きと重なってしまった。
「350人の従業員のうち40人が軍にいる。全員が最前線に配置されているわけではないが、彼らがいなくなって困っている。ウクライナ全土の農家で見ても、平均して労働力の15%前後を軍に供給していると思う」と、ホイジンガさんは述べた。
ホイジンガさんはウクライナ軍に機器や資金を積極的に供出しており、軍が農機やトラックの運転に慣れた人を徴募するのはもっともだと理解を示しつつも、機械修理の中心的な担い手が14カ月前に出征した痛手を実感している。
「彼はとても素早く機械を直してくれる。トラクターが壊れても対応できる。今いる新人は(修理に)1時間か1時間半はかかる。もちろんこれから経験を積んでいくが、数年を要するだろう」という。
兵役免除の限界
ウクライナは、肥沃な黒土に覆われた大平原と黒海沿岸の港湾を持つ世界有数の穀物輸出国。農産物輸出は、ロシアの侵攻前には国内総生産(GDP)の約12%を占め、全輸出の6割に達していた。
ただ戦争で状況は一変し、2021穀物年度に過去最高の8600万トンだった穀物生産量は22年度におよそ5300万トンに減少したもようで、今年度は最悪の場合、4430万トンにまで落ち込む恐れがある。
そうした中でウクライナ政府は、穀物増産に向けて一部の農場を経済にとって極めて重要な機関と指定し、従業員の兵役免除を認める法律を制定した。
先月にはこの指定を受ける基準が緩和され、農場の面積に関する要件が1000ヘクタールから500ヘクタールに下がったほか、保険適用労働者の平均人数も最低50人から20人に変更された。その結果、対象となる農場が増えた。
農務省高官は「状況は非常に緊迫している。だが軍の動員が農業セクターにとって必要な労働を阻んだり、大幅に制限したりしたと言うのは間違っている」と述べた。
それでも、特に年初時点で徴兵対象者が拡大されたため、農業従事者が兵役を必ずしも回避できる状況になっていない、と2人の農家は反論している。
そもそもウクライナの農村地帯では、過去数十年で多くの若者が都市部へ去っていく流れが続いているため、働く意思や能力がある人材の母集団がそれほど大きくないとみられる。
また過剰に徴兵されるのを防ぐ上では、こうした法律や規則よりも地元の徴兵事務所と良好な関係を築いたり、軍に物資提供を申し出たりする方が効果的なケースもある。
首都キーウ東部バリシェフカの穀物企業グレイン・アライアンスは、従業員1100人中51人が現在、「ウクライナを守っている」と明かした。同社は5万7000ヘクタールの土地を有し、このうち5万4000ヘクタールを耕地化している。
同社は声明で「ウクライナの国防力を強化する措置の緊急性と重要性は理解している。しかしその次には、農業セクターに対して適切な人材を供給するという重大な問題がある」と指摘。「ウクライナと国民の食料保障は戦争に勝利するためにも大事だ」とした上で、種まきと収穫の作業に十分な労働力を確保するため国防当局と協力していると付け加えた。
農業団体のある幹部は、今年の状況は「難しいが致命的ではない」と語り、その理由としてある程度の労働力を守る手だてがなされている点を挙げた。具体的には女性のより積極的な活用や、戦争で行き場を失った人の採用、今いる従業員の再訓練などに取り組んでいるという。
●G7広島サミットで発表 ウクライナに関する声明の原案明らかに  5/14
今週19日に開幕するG7広島サミットで発表する予定のウクライナに関する声明の原案が明らかになりました。
ロシアによる侵攻を国連憲章を無視した侵略戦争だと強く非難し、ウクライナにできるだけ早く恒久的な平和をもたらすためのあらゆる努力を払うとしています。
今週19日に開幕するG7広島サミットで議長国を務める日本は、首脳宣言とは別にウクライナに関する声明を発表する方向で各国と調整を進めていて、その声明の原案が明らかになりました。
原案では、ロシアによるウクライナ侵攻について、不当で、国連憲章を無視したいわれのない侵略戦争であり、食料とエネルギーの安全保障などで弱い立場の国に影響が出ていると指摘した上で最も強いことばで非難するとしています。
そしてロシアに対してすべての軍を即時かつ無条件で撤退させるよう求め、永続的な平和の実現はロシア軍の撤退なしには実現できないと強調しています。
さらに、ロシアが核兵器や生物・化学兵器を使用すれば、深刻な結果に至ると指摘し、去年、ロシアも参加したG20サミットで「核兵器の使用、もしくは使用の脅しは容認しない」などとした首脳宣言を採択したことに触れています。
また、ウクライナが必要とする経済支援を確保するとしたほか「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国も念頭に、ウクライナ情勢で影響を受けている国や人を支援するとしています。
そして「平和の象徴」である広島から、G7がすべての政策的な手段を動員しウクライナにできるだけ早く恒久的な平和をもたらすためのあらゆる努力を払うことを誓うと結んでいます。
政府はロシアへの制裁などの具体的な記載についてさらに検討するとともに、首脳間の当日の討議も踏まえ、声明を固める方針です。  
●ゼレンスキー氏、米大統領選に杞憂せず 「それまでに勝利」 5/14
ウクライナのゼレンスキー大統領は14日までに、来年の米大統領選の勝敗結果が米国によるウクライナへの支援態勢の変更につながりかねない可能性について杞憂(きゆう)していないとの考えを示した。
英BBC放送を含む欧州の公共放送との会見で11日に述べた。「米大統領選の実施時期に我々が直面している状況がどうなっているのか誰がわかるだろう?」とし、「それまでに我々が勝利を収めている」との信念を伝えた。
ウクライナは米連邦議会における超党派の支援を得られ続けるだろうとも期待した。
ゼレンスキー大統領の今回の発言は、米国のトランプ前大統領が今月10日、CNN主催の米有権者らとの対話集会に臨み、大統領に新たに当選した場合のウクライナ支援の是非に触れ、「約束はしない」などと明言を避けた態度を受けたものともなっている。
トランプ氏は集会で、ウクライナ情勢に触れ、「誰が勝つべきなのか」の質問には明確には応ぜず、「誰もが死なないで欲しい」「勝敗の側面から問題を考えていない」などとかわしてもいた。
ロシアの侵攻を受け、米政府はウクライナへ相当な規模での財政支援などを実施。最近ではウクライナが近く踏み切るとされる大規模な反攻作戦をにらんだ追加の援助も打ち出していた。
この新たな援助分を含めた場合、米国によるこれまでの軍事支援の拠出額や約束分はロシアの侵攻が始まった昨年2月以降、369億ドルに達した。

 

●ワグネル・プリゴジン不満大爆発、明らかにプーチンのロシアはしくじった 5/15
しのびよる反転攻勢の足音
「特別軍事作戦」という名のプーチンによるウクライナ侵攻が始まってから、早くも15ヵ月が経過している。ロシアの侵攻前であれば、多くの専門家がNATO加盟国によるウクライナへの大規模な武器支援は「絶対にありえない」と思っていた。しかし、この常識はすでに時代遅れのものだ。ウクライナに対する各国の武器支援も増え、今ではウクライナによる反転攻勢がそろそろ始まるのではないかと注目されている。
ただウクライナに対する支援は、ウクライナがロシアを完全に打ち負かすためにはまだ十分とは言えないだろう。NATO加盟国からしたら、ただでさえロシアはウクライナ支援に対してかなりの不満を持っており、いつの間にかロシアと戦っている相手であると責められている。各国はそうした中で、ロシアの逆鱗には触れても、プーチンが怒りのあまり(今以上)我を忘れて核ミサイルの発射ボタンを押してしまわない範囲でしか、ウクライナを支援できていない問題がある。
ウクライナは限られたリソースでより大きな成果を出すために様々な工夫をしており、公式には認めていないが、クリミア半島での燃料貯蔵施設に対するドローン攻撃や、ウクライナ国境近くのロシアの貨物列車の爆発に関与していると思われる。これらはロシア軍の補給に影響を与える。
これらを含めて反転攻勢の第一段階として捉えていいのか、ウクライナの反転攻勢はどこまでロシア軍に打撃を与えるのか、そして占領地をどの程度奪還できるのかについてはまだわからない。ただウクライナにとっては今後も国際社会からの支援を得続けるためには、反撃によって成果をあげる必要がある。ゼレンスキーとしても、作戦の開始時期については慎重にならざるを得ない。
むろん反転攻勢の結果、ロシア軍の戦線が崩壊したとしても、プーチンが敗北を認めウクライナから軍をすぐに撤退させない可能性が高い。しかし、今後ロシアはウクライナから奪還される「失地」を簡単には取り返せる保証がない。
この反転攻勢はウクライナにとって天王山になるだろう。
準備不足で始めてしまった侵略の弊害
ロシアの「特別軍事作戦」がうまくいっておらず、予想よりも長引いているというのは周知の事実である。その理由はいくつもあるが、中でも特に深刻なのはロシアが準備不足なまま戦争を始めてしまったという問題であろう。
プーチンがいつウクライナへの侵攻を決意したのかについては、未だにわからないことがたくさんある。しかし、それでも専門家の間では今回の戦争の青写真を作ったのは情報機関であったという見方が主流であり、仮に軍上層部の作戦立案への関りがあったとしても弱かったと考えられる傾向にある。
ウクライナに侵攻させた軍の部隊の規模を見ても、プーチンは、侵攻前、明らかに楽観視していた。欧米から制裁が課される覚悟はしていても、ウクライナでの戦争が長期戦になることはあまり考えていなかったように見える。そのため、国内における弾薬や兵器の増産体制を構築しないままウクライナへ侵攻してしまった。
この問題は欧米のメディアでは何度も指摘されたが、ロシアの前大統領のメドベージェフ・安全保障会議副議長も以前SNSにて「敵は我々の生産体制について色々と指摘しているが、我々は近いうちに生産スピードを上げることができるだろう」と半ば認めていた。しかし、まだ改善は見られない。
プーチンの選択肢を狭める対ロ制裁
ロシアがこの状況を打破できていないのは経済制裁によるところが大きい。ウクライナに侵攻してから、ロシアは、SWIFTからの排除や石油価格上限設定をはじめとする様々な経済制裁を課されている。これらはロシアの戦争継続能力に対して直接打撃を与えることは出来なかったとしても、プーチンの資金繰りにはある程度の影響を及ぼすことができる。
制裁のせいで、プーチンは戦争のための資金調達にエネルギーを注がないといけないし、ルーブル安が続けばより高い金額で武器・兵器に使う半導体や材料を外国から買わなければならなくなる。
またプーチンはこの戦争で中国からの支援を期待していたようだが、それも限定的である。中国としてはロシアが倒れることは避けたいと考えていても、制裁を課されてまでロシアに協力したいとは考えていない。そのため、ロシアに対して半導体は輸出しても、すぐに実戦で使える弾薬や兵器を売ることに対しては慎重だ。
制裁の効果はすぐに出ないかもしれないが、プーチンの行動の選択肢を狭めることができる。
不満を表明するプリゴジン 
ロシアのウクライナ侵攻がうまくいっていないことに対しては、戦場からも不満の声が聞こえる。中でも目立つのは民間軍事会社「ワグネル」の創始者であるプリゴジンの発言だ。
彼は「プーチンのシェフ」という異名も持っているが、事あるごとにSNSに「ワグネルの兵士は俺のためではなく、祖国のために命を落としてきた」「弾薬が十分にあれば、大半の兵士が命を落とさずに済んだ」という旨の動画を上げ、国防省を批判し、弾薬不足問題について日々不満をぶちまけている。
これらの発言は良心からではないだろう。正確な数はわからないが、プリゴジンは「6カ月程ウクライナでの戦闘に参加したら恩赦をやる」と元囚人も刑務所からスカウトしてきた。そしてワグネルの戦い方は相当過酷であり、突撃部隊は上官の許可なく撤退したり、命令に背いたりしたらその場で処刑されると有名だ。「弾薬さえあればワグネルの兵士は死なずに済んだ」という主張には説得力がない。
そのプリゴジンだが、ここ最近では目立つ発言をしている。例えば、4月の中旬に「ロシア軍がドネツク州全域の制圧が出来そうにない」「ウクライナの反攻で敗北する可能性がある」という旨の理由で「プーチン政権は軍事作戦の終了を宣言する時がきた」という主張をした。このような主張はロシアでは異例である。
また5月4日にはワグネルの兵士とみられる死体を背に放送禁止用語を連発しながら「ショイグ、ゲラシモフ! 弾薬はどこだ?」と問い詰めるビデオをあげ、6日には弾薬がなければワグネルは5月10日にバフムトから撤退すると騒いでいた。たださすがにこれに対してはかなり厳しいことを言われたようで、プリゴジンは「バフムトからの撤退は祖国に対する反逆になると示唆された」と発言している。
穿った見方をすれば、プリゴジンはワグネルの名前を宣伝する目的で過激なことを言って注目を浴びようとしている。ただこのようなやり方でワグネルの知名度が上がったとしても、「国防省から弾薬をもらえない組織」に積極的に入ろうとする人は出るとは考えられない。
ワグネルの担当しているバフムトでの戦闘はかなり長期化しており、ロシア側が期待しているような成果を出せていない。またロシア軍とワグネルの連携はうまくいっていない。そのため、プリゴジンはその責任を国防省に対して擦り付けようとしているように見える。
●あまりに奇妙な「プーチン暗殺未遂ドローン攻撃」、現場に緊張感なし 5/15
ウクライナ侵攻は、その1「ワグネル・プリゴジン不満爆発、明らかにプーチンのロシアはしくじった」で解説したようにプーチンがどう言いつくろうと、あまい見通しで始めてしまったことで、とんでもない窮地にロシアを陥れている。そんな中、奇妙な騒動が起こった。
注目だけ集めたドローンによる「プーチン暗殺」未遂
もう一つ重要な出来事として、5月3日未明にクレムリンにてドローンによる攻撃が2回あり、その映像が拡散された。この事件については、わかっていることがほとんどない。ただロシアによる偽旗作戦、ウクライナによる攻撃、もしくはロシアに恨みを抱いている勢力による犯行が有力であったという見方が多数である。
ただ誰がやったにせよ、あの規模のドローン攻撃に軍事的な意味はなく、象徴的な効果しかない。「プーチンに対するテロ攻撃」という見出し文のインパクトと映像のインパクトが釣り合っていないのか、ドローンが爆発する映像はSNSでは流通しているものの、ロシアのメディアでは見かけない。
この事件に対し、ロシア大統領府は「プーチンを狙ったテロ攻撃である」と断定し、「アメリカが支援した」と主張。メドベージェフもSNSに「ゼレンスキーとその取り巻きを物理的には排除する以外の選択肢は残っていない」と投稿した。
奇妙なことに、この攻撃に対する肝心のプーチンは反応してこない。昨年の自身の誕生日の翌日にクリミア大橋での爆発があった際、プーチンはすかさず「市民の平和な生活が脅かされている」とウクライナとその支援国を批判した。
それまでもロシア軍によるウクライナの住宅や病院、あるいは学校といった施設への攻撃があったが、ロシア側はそれらを否定してきた。また認めたとしても、「そこは軍事施設の近くにあったから巻きこまれてしまった」という旨の言い訳をしていた。だが、このクリミア大橋の爆発を契機にロシアはウクライナに対する攻撃の規模をあげ、ウクライナ全土へのミサイル攻撃を繰り返してきた。今回のドローン攻撃は本当にウクライナによるものだとしたら、プーチンの反応はあまりにも不自然である。
余談だが、筆者は事件当日にクレムリン周辺の状況を見に行ったが、驚くほど警戒がなかった。パレード当日に向けて、赤の広場は例年通り閉鎖されていたが、警備の人員は増員されておらず、クレムリン内の観光も普通に行われていた。
またクレムリン周辺は電波妨害がされており、Bluetoothの接続がやたらと悪くなるところや、GPSがクレムリン周辺ではなくモスクワ郊外の空港を示すエリアもあるが、少なくとも事件当日にそれが拡大されてはいなかった。
仮にこれが偽旗作戦だったとしたら、何をしたかったのかが見えてこない。奇妙さだけが残った。
ロシア・ウォッチャーはこうした不可解な現象に極めて高い頻度で遭遇する。プーチンの今年の「戦勝記念日」演説は別の意味でも注目されることになる。
すっかり身近に感じるようになったロシア軍
この一年間の間に戦争はモスクワでも身近な存在になった。一年前はロシア軍がキーウ周辺から撤退し、ブチャの虐殺が明るみになっていた頃だったが、謎な高揚感は漂っていた。あの頃は多くのロシア人にとって、ウクライナにおける戦争はまだ自分たちの戦争であるという自覚はなかった。
ただ昨年の第二次世界大戦以来の部分動員によって、この戦争はロシア人にとってかなり身近な存在になった。部分動員はまだ一回で済んでいるが、招集令状がオンラインで強制的に渡される法律もでき、追加の部分動員があった場合、逃げるのが難しくなっている。
またロシア軍の人員を拡充すべく、街のいたるところに「我々の仕事は祖国を守ることだ」とロシア軍への入隊を呼び掛けるポスターが貼られている。観光地ではその場で入隊届けが書けると思われるスペースが設立され、以前よりもロシア軍が身近な存在になっている。
ロシア軍は特別軍事作戦への従事者の給与を公開しているが、それによると最低月給は約20万ルーブル(約35万円)であり、モスクワの平均の3倍以上である。筆者が見かけた求人の中で、これを超えていたのは24万ルーブルのワグネルだけだった。
消え失せつつある楽観論
モスクワに住んでいて、変化を少し感じるようになってきた。流石に一年以上も続くと「戦争はすぐに終わるだろう」という楽観論はすっかりなくなっている。
いつも流している討論番組では、ロシアの専門家たちは相変わらず連日「アメリカはウクライナを最後の一人になるまで戦わせるだろう」という議論を続けており、戦争の展望については「アメリカに必要なのはロシアの敗北だが、それはありえない。アメリカが手を引くときは責任をウクライナ政権に擦り付けるだろう」という予測を出している。
ただ見ていると、悲観的なコメントをする専門家が司会者から「もっと楽観的になれないのか」と叱責されても、「ありとあらゆる可能性を考えるのがプロだ」と反論される場面が何度かあった。
周りのロシア人と話していても、変化を感じることが多くなった。以前は聞いてもいないのに「ウクライナ軍がロシア軍に勝てるはずがない」「どうせすぐに終わるさ」と絡まれることが何度もあったが、気が付けばこのような話が振られることはほとんどなくなった。
●「プーチンを守る」と決めた習近平。隣国が“戦争の仲介役”で得る大きな果実 5/15
内向き志向を強めるアメリカとは正反対に、積極的に世界の難題解決にコミットし始めた中国。一体そこにはどのような「裏事情」があるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、中国政府の思惑と彼らが描いている壮大な計画を深掘り。さらに習近平政権がロシア支援を継続し、ウクライナ戦争を長引かせることにより得られる「とてつもなく大きな果実」について解説しています。
崩さぬロシア寄りの姿勢。それでも中国がウクライナ戦争の仲介役を買って出た訳
「中国はロシアとウクライナの停戦を仲介すると表明したが、どこまで本気に取り組むつもりなのだろうか?」
習近平体制が第3期目に入り、外交活動を再開する中、次々と国際社会の難題に取り組む姿勢を見せる中国の変容に、正直戸惑うことが多々あります。
サウジアラビア王国とイランの歴史的な和解の仲介の実現。国際社会が見放したミャンマーを支え続け、国軍と民主派の停戦に向けた話し合いを促す姿勢。一帯一路政策によって、債務地獄に陥れた各国に“寛大な”姿勢を見せようとする方向性。重い腰を上げてロシアとウクライナの停戦の仲介に乗り出すことを表明した変容。そして、解決の糸口が見えないスーダン情勢へのコミットメント。
コロナ前までにもすでに経済力と軍事力を合わせて周辺国に、時には強引に勢力圏を拡げてきた中国ですが、それは主に中国の経済的な影響力と中国製品の販路の開拓、そして国際社会における外交的なサポートの拡大などを目的としてきたと思われます。
ところがコロナが一段落し、習近平国家主席が異例の3期目の任期に入った途端、これまでにないほど積極的な外交を展開し、これまであえて距離を置いてきた国際紛争に対しても、まるで火の中の栗を拾うかのように、積極的にコミットする姿勢を示しだしました。
中東地域、アジア地域、そして東アフリカ地域に対する外交攻勢については、これまで経済面での戦略的パートナーシップを通じて強化してきた関係をベースに、欧米諸国、特にアメリカが去った後の力の空白に入り込んで、一気に勢力圏を拡大するという戦略が見られますが、スーダンへの介入はまだしも、ロシア・ウクライナ紛争への介入は少し趣向が異なるような気がします。
スーダンとロシア・ウクライナ紛争への介入を見てみた際、一つ明確に言えることは、他のケースと異なり、中国はどちらか一方のサイドをサポートしているということでしょう。
スーダンでの内戦では、経済的な理由から明らかに国軍側の味方ですが、それでもRSFに対しても一定の影響力を持っています。
先の内乱(2021年)にはアメリカ政府が調停に乗り出し、今でも国務省においてスーダン問題特別代表が任命されるなど、スーダン情勢の安定に努めていますが、今回の内戦に対しては、強い懸念は表明するものの、これまでのように軍事的な支援は行わず、距離を置いているように思われます。
その一因にはongoingのウクライナ情勢へのコミットメントを優先していることがありますが、事態の鎮静化に向けた働きかけを行ってはいません。
そこに他のケース同様、アメリカのコミットメントの空白が出来、そこに中国が入り込むという図式が成り立つのですが、スーダンのケースでは、ロシアと共に恩恵にあずかっているスーダンの金鉱の権益保持のために、一刻も早く紛争を終結させなくてはならないという思惑が働いています。
そのために、これまで明らかに国軍・政府支持であった姿勢を少し曖昧にし、政府とRSF双方に働きかけ、迅速な停戦と事態の沈静化、そしてどちらが今後、政権の座についても中国とロシアが持つ金鉱の保全と保護を確約させるべく、“仲介者”というお面を被って介入し、紛争終結後の決定的な影響力の確保に乗り出しています。
影響圏を中国本土からスーダンに至るまで拡げる習近平
加えてすでに隣国エチオピアを中心にHorn of Africa (アフリカの角)一帯に勢力圏を築いていることを活かして、スーダンとエチオピアの不仲の調停にも乗り出すことで、当該地域からアメリカを追い出して、一気に権益を掌握するという狙い・戦略も透けて見えます。
すでにジブチに港を確保し、ジブチとエチオピアのアディスアベバを繋ぐ鉄道を敷設することで物流網を独占していますし、アメリカCIAがおくblack site(注:ブッシュ政権以降のGlobal War on Terrorの重要な拠点としてエチオピアに置かれていると言われており、中東・北アフリカを監視しているもの)に対しても圧力をかけることで、アメリカに監視される対象国の支持も得て、一気に地域に影響力を広めるというgrand strategyがあるようです。
そうすることで、先に調停し、関係修復をお膳立てしたサウジアラビア王国(実はエチオピアとジブチの対岸)からイランに至るアラビア半島にまで影響を拡げ、その影響圏が中国本土からスーダンにまで至ることになるという状況です。
そのど真ん中にインドが位置し、中国に対して警戒心を持ちつつも依存度を高めるASEANが存在しますが、そのすべての国々ですでにアメリカの影響力が低下していることから、程度の強弱はあるものの、一つの緩い勢力圏が成り立つと言えるかもしれません(これに横やりを入れられるのは、実は日本“だけ”なのですが、果たしてそれに気づいているのでしょうか)。
ただこの勢力圏の拡大と確保は、まだ経済的な側面が強いように思われ、習近平体制下で広げてきた中国の拡大パターンに沿っていると考えられます。
しかし、目をロシアとウクライナ情勢への介入に移すと、違った景色が見えてきます。
昨年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻までは、中国とウクライナの関係は非常に良好だったと思われます。
中国の初めての空母・遼寧は、元々旧ソ連の空母をベースにしており、ウクライナ所属の空母であったことから、中国がウクライナから購入したものです。
その際、中国の新疆ウイグル自治区をはじめとする少数民族に対する人権侵害への抗議の一環として、欧米諸国はウクライナにこの売却を思いとどまるように圧力をかけましたが、ウクライナは「約束は守らないといけない」と圧力に屈せず、予定通りに中国に空母の引き渡しに応じたことで、義を重んじる中国の心をつかみ、その後、中国資本によるウクライナへの投資拡大につながりました。
つまりウクライナは中国にとっては“特別な国”だったはずです。
しかし、その状況はロシアによるウクライナ侵攻を受けて、変化したように思われます。
中国は表面的にはロシアの侵攻に対して懸念は示すものの、本格的な抗議にはつながらず、ロシア寄りの態度を貫き、国連安全保障理事会をはじめ、さまざまな外交フロントでロシアと共同戦線を張り、ウクライナの後ろ盾となり、ロシア包囲網を固めた欧米諸国とその仲間たちに対峙する姿勢を明確にしました。
欧米諸国とその仲間たちから幾度となく“ロシアへの支援”を止めるように圧力をかけられても耳を貸さず、べったりではないにせよ、ロシアを支持する姿勢を貫いています。
ロシアによるウクライナ侵攻を受けた国際社会の激しい反応を横目に見つつ、いずれ来ると予想されている中国による台湾侵攻を実行に移した際に、どのような反応が予測されるかを見ながら、表立っては目立たないように、まさにステルス状態の外交を行ってきました。
ただその間、プーチン大統領とは数十回、リモート形式ではありますが、連絡を密に取り合い、ロシアと中国が進めてきた国家資本主義陣営の拡大を着々と進めるべく協力を貫いてきました。
その間、明らかに両国の力関係・バランスに変化が訪れて、中国優位が鮮明になってきましたが、ジレンマは抱きつつも、中国はロシア側の仲間であり続けています。
中ロ間で交わされた「決して公表されないdeals」の内容
ちなみにロシアによるウクライナ侵攻以降、ゼレンスキー大統領からの再三の協議依頼をことごとく無視し、やっとそれに答えたのが今年4月20日に入ってからで、それは中国がロシアとウクライナの停戦の仲介に名乗りを上げてから1か月以上経ってからのことで、それはまた習近平国家主席がモスクワ訪問してプーチン大統領と3日間に及ぶ協議をしてから1か月後の出来事であったことからも、中国の立ち位置が透けて見えるかと思います。
以前、ウクライナからの訪問要請を受けて、習近平国家主席がどのように対応するのか注目すると書きましたが、進むも退くもリスクを負うことになるキーウ訪問を見送り、1時間に及ぶ電話会談に切り替えたのは、仲介役として取るべき最低ラインのコミットメントを行ったに過ぎないと考えられます。
このような若干冷たい対応になった理由はいくつか考えられます。1つは、中国が仲介の意思を表明し、停戦合意案を提示した際、評価はしたものの、公然と中国に要求と条件を突き付けたゼレンスキー大統領の姿勢に反発したことがあります。
2つ目は、それでも中国の仲介を受け入れる用意があるのか分からないウクライナを警戒し、ロシアを除く全方面にいい顔をするゼレンスキー大統領の真意を探る狙いがあったものと考えられます。
3つ目は、中国の仲介に対する国際社会の“本当の”評価と反応を見極めるために、ゼレンスキー大統領と習近平国家主席の直接の協議に対する可能性を棚上げにしておき、ぎりぎりのタイミングで電話会談に切り替えて、一応メンツは保ったと考えられることです。
いずれにせよ、仲介のオファーをしつつ、明らかにロシア寄りな習近平国家主席の思惑が見えてきます。
ロシアへの明らかな肩入れは、中国にも共通する欧米への反発が存在しますが、本来中立であるべきとされる仲介者が明らかにロシア寄りの姿勢を崩さないのには、3月のモスクワでの首脳会談時に交わされた“決して公表されないdeals”の存在があると思われます。
その一例は【中国に対するロシアのウラン濃縮技術とノウハウの提供】と【ウラニウムのロシアから中国への提供】の約束です。
表向きは脱炭素に向けた取り組みの強化と言っていますが、実際には中国人民解放軍の核戦力の迅速な拡大に欠かせない(でも中国がキャパシティーを十分に持っていない)ウラン濃縮技術と、ウラン鉱石の安定的な供給についての密約を両首脳間で結んだという分析があり、これは高い確率で信用できると思われます。
別の例は、ロシアが持つ様々なエネルギー権益に対する中国のアクセス権の保証ではないかと思います。
ちょうど今週に入って、中国の艦船がサハリンIとIIの域内にはいってきて操業するという事態が起こっていますが、中国に対する安定的・持続的な天然ガスの供給という約束に基づく行為だと思われます。
3つ目の例は、第3国を経由した中国からロシアへの軍事物資の共有です。中国からロシアへの直接的な供給は、NATOとの軋轢を強め、中国がロシア・ウクライナ戦争に軍事的に巻き込まれる恐れと、対ロシア制裁の煽りを食って中国に対する経済制裁が発動される恐れが生じますが、中ロと友好的な関係もしくはピュアに経済的な関係がある第3国を経由しての供給となると、なかなか追跡が難しくなると言われています。
もともとKGB時代から行われ、FSBに引き継がれている同様の手法は、実質的な供給者などが割り出せない仕組みになっており、今回も中国と共にこのスキームを活用し、同時に、インドなどのグローバル・サウスの国々をうまく取り込んで行うという仕組みの存在に対する疑念があり、それが中ロをしっかりと結びつけていると思われます。
中国の「プーチン政権のロシアを守り抜く」という戦略
そして今週聞いてハッとした分析内容は、【中国にとって、仮にウクライナが負けても、一時期の経済的なつながりが断たれるだけで、同様、それ以上の規模のつながりをロシアとすぐにでもつなげると信じているが、プーチン大統領のロシアが負けてしまうような事態だと、欧米とその仲間たちと中国単独で対峙しなくてはならない状況に陥り、中国は国際社会における孤立を極める恐れがあると考え、プーチン政権のロシアを守り抜くという戦略】の存在です。
明らかにロシア寄りであるにもかかわらず、どうして中国はロシアとウクライナの仲裁役に名乗りを上げたのでしょうか。
一説によると、習近平国家主席に忖度したフライング行為と言われています。聞くと習近平国家主席は本件の仲裁には乗り気ではなかったが、周辺が習近平体制の基盤を国内外に対して固めるための手法として打ち出したのではないかとのことでした。ただ、これについては少し疑わしいと感じており、仲裁がなかなか前に進まないことに対して、国際社会から習近平体制が非難されることを避けるためのいいわけではないかと思います。
別の見方では、戦争の結果がどうであれ、ロシアとウクライナ両国における権益の確保と復興事業契約の獲得など経済面が強調されますが、ここでもアメリカが見捨てた国・地域に中国がすかさず入り込んでくるという勢力圏の拡大を狙ってのことというものがあります。
実際の理由がどのような内容であれ、どうして中国は沈黙を破り、急に国際紛争の調停に乗り出すことにしたのかについては謎が多く存在します。
ただいろいろな側面から見た場合、ロシアとウクライナという当事国を除いて本紛争に対して決定的なカギを握っているのは、もしかしたら中国だけではないかと思われます。
その理由は中国がロシアに対してどのような形であれ、武器の供与を行わなければロシア側の対話への機運とモチベーションが高まる半面、ウクライナ側がNATOからのプッシュに応えてロシアを攻撃するような事態になった場合、プーチン政権が倒れ、ロシアの存亡にかかわる事態に迅速につながりかねないと考えられることでしょうか。
また逆にどのような形であれ、中国がロシアに対する支援を継続する限り、調停は成り立たず、代わりにあと数年はロシアとウクライナの戦争が継続してしまうという懸念に繋がります。
後者の場合、冷酷な見方をすると、ロシアもウクライナも回復不可能なレベルまで経済が落ち込み、戦争継続に対する疲弊感が募り、それぞれの存在が危ぶまれるまでにロシアもウクライナも弱体化すると同時に、戦争が継続されることで、ウクライナを後押しする欧米諸国とその仲間たちの余力も削ぐことができるため、中国としては自国の力を蓄え強化しながら、他国の力を削いでいくという戦略が成り立つ可能性が出てきます。
来週末に開催されるG7広島サミットでは、中国に対する懸念にG7が一致団結して取り組みを強化するという方向で話し合われるようですが、同時に日本としては、隣接する国としての立場からも“いかに中国と付き合うか・対峙するか”について戦略を立てておく必要があると考えます。
5月15日にもウクライナによる対ロ反転攻勢が本格化すると予想されていますが、その結果がどのようなものになるのかのcasting voteを握っているのは、もしかしたらロシアでもウクライナでも、そしてNATOとその仲間たちではなく、実は中国なのではないかと感じています。
●ゼレンスキー大統領 反転攻勢に自信 欧米の軍事支援を背景に  5/15
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアによる軍事侵攻以降初めてイタリアやドイツなどを訪れ、「ことし中にロシアの敗北を決定づけることができる」と述べて、欧米側の軍事支援を背景に反転攻勢を成功させることに自信を示しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は13日から14日にかけてイタリアやバチカン、ドイツを相次いで訪れました。
14日にはドイツでショルツ首相と会談し、会談後の共同の記者会見で「ドイツの支援はウクライナ国民の命を救うものだと強調したい」と述べ、兵器の供与を含めたこれまでの支援に感謝しました。
これに対しショルツ首相は「ドイツはウクライナを今後も支え続ける」と応じ、支援を続ける考えを示しました。
ドイツ政府はゼレンスキー大統領の訪問にあわせて、日本円でおよそ4000億円相当の新たな軍事支援を発表していて、反転攻勢を支える構えです。
ドイツに先だって訪問したイタリアも必要な限り軍事支援を行うと表明していて、ゼレンスキー大統領は「今こそ、この戦争を終わらせるときだ。ことし中にロシアの敗北を決定づけることができる」と述べ、欧米側の軍事支援を背景に反転攻勢を成功させることに自信を示しました。
一方で、反転攻勢について「われわれはロシア国内への攻撃はしない」と述べ、あくまで領土の奪還のためだと強調しました。
また、アメリカが供与に応じていないF16戦闘機などを念頭に「われわれは戦闘機同盟の創設に取り組んでおり、ヨーロッパ各国の首都を訪れているのはそのためだ」と述べ、ドイツにも戦闘機の供与を呼びかけていることを明らかにしました。
これに対しショルツ首相は今後、供与するかどうか、明言は避けました。
●ウクライナ ゼレンスキー大統領が独首相と会談 5/15
ウクライナのゼレンスキー大統領は、訪問先のドイツでショルツ首相と会談し、共同記者会見で「不法に占拠された領土を奪還する準備をしている」と述べました。
ゼレンスキー大統領は14日、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後初めてドイツを訪問し、ベルリンでショルツ首相と会談しました。
会談後の共同記者会見でゼレンスキー大統領は、「ウクライナの目標は、国際的に認められた国境内の領土を解放することだ」と強調しました。
近く見込まれる反転攻勢については「成功を信じている。成功のための準備は、ほぼ整っている」と述べ、年内にロシアに勝利し、戦争を終結させることに意欲を示しました。
ウクライナはイギリスから長距離巡航ミサイルの供与を受けましたが、ロシア国内への攻撃については「関心がない」と否定しました。
一方、ショルツ首相は、「必要な限り支援する」と述べ、ウクライナへの支援を続ける考えを示しました。
ドイツは13日、戦車や弾薬など27億ユーロ(約4000億円)の軍事支援を発表しています。
ヨーロッパ歴訪中のゼレンスキー大統領は13日にはイタリアを訪れ、メローニ首相と会談し、バチカンではローマ教皇と会談していました。
フランスメディアによりますと、14日夜遅くにはパリも訪れるということです。
●米・スペイン首脳が会談、ウクライナ支援や防衛協力を協議 5/15
バイデン米大統領とスペインのサンチェス首相が12日、ホワイトハウスで会談した。ウクライナ支援を強調するとともに、移民問題や防衛面での協力を話し合った。
会談では、バイデン氏が「われわれは共にウクライナを支援する」と述べる一方、サンチェス氏はウクライナ戦争についてプーチン・ロシア大統領を非難。「国際法と国連憲章の趣旨を尊重する恒久的かつ公平な和平に向け尽力していく。間違えてはならない。この戦争には侵略者と被害者が存在し、侵略者はプーチン大統領だ」と述べた。
サンチェス氏はウクライナのゼレンスキー大統領に「無条件の支援」を表明し、2014年のクリミア編入以前の状態への領土復帰要求を含むゼレンスキー氏の和平案を支持している。
●ロシア軍司令官2人死亡、バフムトでウクライナ前進か 5/15
ロシア国防省は14日、ウクライナ東部バフムト近郊で旅団長ら軍幹部2人がウクライナ軍の攻撃により死亡したと発表した。バフムトではウクライナ軍が本格的な反攻に転じたとの見方が強まっており、戦闘が激化しているとみられる。
露国防省の発表によると、死亡したのは現地で指揮を執っていた旅団長と別の部隊の副司令官。いずれもウクライナ軍の攻撃を受け、撃退を試みていたという。
バフムトではウクライナが少しずつ進軍している模様だ。ウクライナのマリャル国防次官は13日、通信アプリ「テレグラム」で、ウクライナ軍がバフムト郊外の2方面で前進を続けていると明らかにした。
米シンクタンク「戦争研究所」は13日、「ウクライナ軍がバフムト地域で反攻を続けている」との分析を公表。推計では約17平方キロを奪還したという。英国防省も13日、ウクライナ軍が1キロ前進したとの見方を示した。
一方、ウクライナ各地ではロシアの攻撃による民間人の被害も続いている。ウクライナメディアによると、東部ハリコフ州の村では14日、砲撃により50〜60代の男女が死亡。南部ザポロジエ州でも砲撃で4人が負傷した。南部ヘルソン州の村では不発弾が爆発し、少なくとも5人が死亡した。  
●ロシア、北欧国境に核爆撃機16機 NATO拡大で対抗 ウクライナ退避も狙い 5/15
ノルウェーのメディア「バレンツ・オブザーバー」は13日、ロシア北西部ムルマンスク州のオレニヤ空軍基地に核兵器を搭載可能な戦略爆撃機16機が駐機しているのが、7日撮影の衛星写真で確認されたと伝えた。
同基地は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のフィンランドやノルウェーまで約200キロの距離。ウクライナ侵攻を踏まえたNATOの「北方拡大」への対抗措置の可能性がある。
確認された16機の内訳は、TU160超音速戦略爆撃機2機とTU95戦略爆撃機14機。同メディアによると、ノルウェーの軍事専門家は「(ロシアによる)警告だ」と指摘した。
オレニヤ空軍基地は州都ムルマンスク南方にあり、2011年までは海軍飛行場だった。核貯蔵施設から近いとされる。ウクライナ侵攻開始前はTU22M爆撃機などが置かれていたが、昨年8月にTU160が確認され、10月までにTU95を含めて10機以上に増えたという。
戦略爆撃機は、遠方から巡航ミサイルを発射する形でウクライナ各地への空爆に使用。昨年12月には拠点であるロシア中部サラトフ州のエンゲリス空軍基地などに対し、ウクライナ軍によるとされるドローン攻撃が起きた。この際に移動させた戦略爆撃機がオレニヤ空軍基地にあるというが、同メディアは機体の増加について「短期的な退避のためだけではない」と伝えている。 

 

●聞こえ始めた「プーチンはクソ馬鹿」の声。ロシア国内でも噴出する独裁者批判 5/16
東部の激戦地バフムトで「効果的な反撃」を展開し、一部領土の奪還に成功したと伝えられるウクライナ軍。ゼレンスキー大統領は海外メディアのインタビューに対し「大規模な反転攻勢を準備している」と語りましたが、この先戦況はどのような変化を見せるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、バフムトでの反撃が持つ意味と、ウクライナ軍が反転攻勢で狙う「本命」の地を予測。さらにプーチン大統領への批判や国民感情の変化等、ロシア国内の様子についても詳しく紹介しています。
プーチンは負ける。ロシア首脳部も国民もついに「敗戦」を覚悟し始めた理由
ウ軍は反転攻勢に出て、バフムトやアウディーイウカやボラレダラなどで、威力偵察や本格的な反撃をおこなっているようだ。特に、本格的な反転攻勢に出たのがバフムトであり、ロ軍の弱い所を攻めている。
また、ザポリジャー州やヘルソン州などの複数地点でも偵察に出ているし、攻撃準備をしている。
   バフムト方面
ウ軍はバフムト郊外で本格的な反転攻勢に出ている。ウ軍の攻撃は諸兵科連合軍作戦であり、前線部隊にもパッドでウ軍全体の動きがわかるようにして連携を取る。これでロ軍は対応できない速度で攻められている。
郊外のクロモベのO0506道路の近接地域のロ軍陣地をウ軍第92機械化旅団が攻撃・奪還し、ロ正規軍は後退している。この方面には、ワグナー軍はいないという。ロシア国防省も12日「(バフムート北の部隊は)防衛ラインの安定性を高めるためベルヒフカ貯水池周辺の有利な位置を保持している」と後退を認めた。この方面では、ロ軍が総崩れの状態になり、立て直せるかが問題である。
イワニフスクでもウ軍第24突撃旅団がロ軍陣地を攻撃して、ロ軍を後退させている。ウ軍の戦車が至近距離で砲撃し制圧、その後歩兵がBMP-1から下車展開して、塹壕を掃討している。歩兵だけでは、戦車に対抗できないし、RPGは持っているが、戦車に当てるのは難しいようであり、ジャベリンのような優れた対戦車ミサイルをロ軍は持っていないようだ。これでは、戦車で蹂躙されるだけである。
もう1つが、ウ軍第3突撃旅団が、運河を渡河してクリシチョウカ方向に攻撃して、進撃中であり、ここを守っていたロ軍第72自動車化狙撃旅団の2個中隊が壊滅して、第72自動車化狙撃旅団全体が2kmほど後退した。取り残されたワグナー軍の500人も全滅したが、第72自動車化狙撃旅団がワグナー軍に撤退の連絡もないことで、孤立したからだとプリゴジンは言って、側面のロ軍旅団は、戦わずに逃亡したと、怒っている。
しかし、第3突撃旅団とはアゾフ連隊のことで、そこの指揮官は「真っ先に逃げ出したのはワグナーの兵士達で第72旅団の兵士達は包囲され降伏を受け入れるまで懸命に戦っていた。プリゴジンは嘘つきだ」と述べている。
ウ軍第3突撃旅団の一部は、クリシチョウカ市内に到達しているようである。このため、イワニフスク近郊の第72自動車化狙撃旅団全体は、既に包囲されている状態になっている。数千名のロ軍兵は、絶体絶命の状態である。ウ軍第3突撃旅団は、戦車T64や装甲車M113などで構成されている。
ここまでで、今年の2月に、ロ軍が手に入れた地域が、たった1日で取り返されたことになっている。ロ軍の弱さや装備のなさが、どうしようもないレベルであることがわかる。ロ軍が3ヶ月かかってとれた土地も、後数日で取り返される運命にあるようだ。
市内北側では、ウ軍は第2市立病院までロ軍を押し戻している。東側はワグナー軍は前進できずにいる。ヘッドマンスーパーマーケットでもワグナー軍は停滞している。
市内南側は、ウ軍の攻撃で、工業大学を取り戻している。しかし、工業大学の南側では、ウ軍がワグナー軍を押し戻したが、再度、ワグナー軍は第2小学校まで前進してきた。
バフムトに到着した攻撃の主役レオパルト2戦車隊
プリゴジンは、市内攻撃兵力をバフムト郊外側面の防衛に回さないと、逆包囲される可能性があると、危機感を持っているようである。このため、兵力不足で攻撃ができないようだ。
ウ軍は、西と南から市内のワグナー軍を逆包囲する作戦であり、プリゴジンの心配は当たっている。ウ軍がバークヒフカを取れば、バフムトを徐々に包囲し始めるだろうとプロゴジンは言う。
そして、攻撃の主役であるレオパルト2戦車隊が、バフムトに到着した。ここからが、春の攻勢を開始することになる。
しかし、米軍の高官は「ウ軍は待望の反攻作戦に向けて形成作戦を開始した」と述べているが、形成作戦自体は「敵を欺くためにも行われる」と付け加えており、一般人が「戦場で何が起こっているのか」を予測するのは本当に難しい。ということだそうだ。
バフムトでの反転攻勢は、欺くために行い、ザポリージャ州に展開するロ軍をバフムトに応援で送ると、今後はザポリージャ州が手薄になる。
プーチンを「幸福なじいさん」呼ばわりしたプリゴジン
前回からの続きでは、ワグナー軍は、ロ軍から弾薬が提供されることになり、バフムト攻撃を続行していたが、要求の10%程度しか弾薬が届かないとプリゴジンはクレームを付けた。
しかし、プリゴジンは9日、「我々が(バフムトの)陣地を離れたら、祖国に対する国家反逆罪になると明確に書かれていた」とロ軍幹部から言われて、渋々、バフムトにいる状態である。
これに対して、プリゴジンは、ロシアの戦勝記念日に公開した動画で「一人の幸福なじいさんがロシアによるウクライナ侵攻はロシアの勝利で終わると確信している。このじいさんが最終的にクソ馬鹿であることが明らかになれば、国はどうすればいい?戦争にどうやって勝てばいいのか?」と述べたが、バフムトでの戦闘を見ると、それが実感することになる。
プリゴジンは、後援者の一人である、ロシアの億万長者にしてプーチン大統領の「個人銀行家」ユーリー・コヴァルチュク氏と連絡が取れなくなったというが、この動画が影響している。
プーチンは、プリゴジンの言葉を聞いたら激怒すると思うが、しかし、これまでプーチンを支持していた戦争推進派が、幻滅している。そして、プーチンに愛想をつかした極右勢力が、最前線で勇敢に戦うプリゴジンを支持するようになっている。
しかし、ウ軍の大攻勢を受けて、バフムト死守の方向にワグナー軍はなっているようだ。プリゴジンの政治生命も危うい。それと、英国は、ワグナー軍をテロ組織に指定する方針だという。金融制裁を科すとされ、ワグナー軍の資金調達にも影響が出るとみられる。
このため、プリゴジンは、ジョイグ国防相に「バフムトに来て、ロ軍の状況を見ろ」と要求している。
それと、ロシアのミルブロガーによると、「ソレダル方向では、ウ軍は接触線全体(長さ95キロメートル)に沿って攻撃作戦を実施した。ウ軍は1,000人以上の軍人、最大40台の戦車と特殊装備を用いて26回の攻撃を開始した」。ロ軍は逃げ出すものがいるという。
ということで、ボダニウカからウ軍第56歩兵旅団が、ロ軍陣地を攻撃し、ここをロ軍第200独立親衛自動車化狙撃旅団が守っているが、後退するロ軍兵士に対して督戦的な行動を行っている。バークヒフカを取られるとバフムト逆包囲されることになる。プリゴジンの心配も分かる。
それと、ザルジニー軍総司令官とシルスキー陸軍司令官は、ともにバフムト地域で作戦指揮をしているようであり、ロ軍は、この2人を殺したと嘘の情報を流している。
しかし、ゼレンスキー大統領は最高司令官本部会議を開催し、「私たちは、シルスキー将軍の報告を聞いた。その部隊は圧倒的な力で敵を阻止し、さらには敵をある方向に押し戻したそうです」と発言した。
キーウへの攻撃で露呈したロシアの巡航ミサイル枯渇
   その他方面
クレミンナ方面では、セレブリャンスクの森方向にロ軍は攻撃したがウ軍に撃退されている。
アウディーイウカ方面でも、プレボマイスクにウ軍は攻撃したが、ロ軍の砲撃で、損害を出し撤退した。逆にロ軍は要塞に攻撃したが失敗している。
ロ軍は、マリンカとノボミハイリフカに攻撃して来たが、ウ軍は撃退している。ウ軍はノボドネツクの川を渡河し攻撃して、ロ軍は、後退している。ここからマリウポリまでは、一直線であり、マリウポリのロシア人や親ロ派住民は、逃げ出している。ここが本命であるとみるが、まだ分からない。
ロシア支配地のルハンシク市が長距離攻撃された。ウ軍はミサイルシステム「グロム(フリム)」が使用されたとロ軍は主張した。攻撃されたのは、機械製造工場と弾薬保管拠点と石油貯蔵所のようだ。
ドニプロ川東岸や中州のウ軍拠点をロ軍は砲撃している。しかし、ベリスラフにウ軍が集結して、ドニプロ川に大量のウ軍小型船が集結し、水陸両用車も目撃されているという。
ロ軍は、9日朝にかけて巡航ミサイル25発をキーウなどに発射し、うち23発が迎撃された。5月9日は戦勝記念日であり、戦果が欲しいが、巡航ミサイルが枯渇していて、100発も打てないようだ。
ウクライナに供与された真のゲームチェンジャー
ウ軍は、ロ軍への反転攻勢を前に、準備段階に当たる「形成」作戦を開始したと、米軍や欧米当局の高官が明らかにした。
形成作戦の内容には、部隊の進軍に備えて戦場の状況を準備するため、武器集積所や指揮所、装甲車、火砲を攻撃することで、大規模な諸兵科連合作戦の前に行われる標準的な戦術だ。
しかし、ゼレンスキー大統領は11日、欧米から約束された軍事支援のさらなる到着を待つ必要があるため、反攻開始には「もう少し」時間が必要だとの認識を示していた。
それと戦争には、後方支援も必要であり、ドイツのラインメタル社がウ軍戦車を修理・製造する合弁会社をウクロボロンプロム社と設立した。長期戦になると、ラインメタル社は考えているようだ。
それと、ウクライナ国防省は月12日、国産戦車「オプロート」を国内企業ウクロボロンプロムに発注すると発表した。「オプロート」は、既存のT-80UD戦車をベースにウクライナが開発した重量50t超の主力戦車で、いくつかのモデルが存在し、主砲だけ見てもロシア規格の125mm滑腔砲とNATO規格の120mm滑腔砲の2種類が存在する。
この戦闘で効果があるのは、英国が射程距離250km以上の巡航ミサイル「ストームシャドウ」をウ軍に提供したことである。空対地ミサイルなので、ポーランドとスロベニアのMIG29を改修して、改修後ウ軍に供与して、この戦闘に間に合ったようであり、これで、クリミア大橋を破壊できることになった。
この供与に対して、「イギリスによるミサイル供与は破壊と人的犠牲の点で、紛争をさらに深刻化させる」とロシア外務省が非難した。
米高官も、ストームシャドーは「射程の観点から見て真のゲームチェンジャー」であり、ウクライナが開戦当初から要求してきた戦闘能力を与えるものだとした。
しかし、ウ軍はロシア国内への攻撃には使えないという。
もう1つ、ウ軍のHIMARSの命中精度が下がっているのは、ロ軍の電子戦装置によるが、スタンドオフデコイジャマー「ADM-163B MALD」をウ軍が使用しているが、これを米国が極秘に供与したようである。使用方法は、スタンドオフデコイジャマーを放ち敵防空網を撹乱して、その隙に本命のミサイル攻撃ないし航空攻撃を行う流れになる。ルハンシク市の長距離攻撃に使用されたようだ。
もう1つが、11日に、ウ軍兵の訓練に使う米主力戦車エイブラムスがドイツに到着した。ここから訓練が開始する。
ゼレンスキー大統領はいつまで待つのあろうか。このエイブラムス訓練後まで待つとすると、9月以降迄待つことになる。
「自分が大統領なら1日で戦争を終らせる」。トランプの大風呂敷
もう1つ、米国の支援がいつまで続くのかが問題である。大統領候補のケネディ氏は、800もの海外の米軍基地を閉鎖するという。米国の国防予算は世界一でありながら内部から空洞化してきているとした。
一方、トランプ前米大統領は10日、ロシアによるウクライナ侵攻について、自身が大統領であれば戦争は起こらなかったとの認識を示した。
また、トランプ氏は、現在自身が大統領なら「1日で戦争を終わらせるだろう」と述べた。「彼らは共に、弱みと強みの両方を持っている。24時間以内に戦争は解決する。完全に終わるはずだ」とトランプ氏は言う。
プーチン氏を戦争犯罪人と考えるかどうかについては、「彼を戦争犯罪人ということにすれば、現状を止めるための取引が非常に難しくなるだろう」「彼が戦争犯罪人となれば、人々は彼を捕まえ、処刑しようとする。その場合、彼は格段に激しく戦うだろう。そうしたことは後日話し合う問題だ」とトランプ氏。
「敗戦」の方向に傾くロシア国内の世論
5月9日の対独戦勝記念日に、プーチンの演説や軍事パレードなど恒例の催しが行われた。プーチンはロシアの崩壊を狙う西側に対し祖国を守るための戦争であることを強調し、あたかも被害者のようにした。そして規模を縮小した軍事パレードは外国メディアの取材を許可せず、現役の戦車も航空機も登場しないものだった。
プーチンは10日、予備役の民間人を招集して軍事訓練を行うことを認める大統領令に署名したが、予備役を集めて志願兵にしたいようである。兵員不足が起きていて、戦線を維持できない状態である。
そして、欧州通常戦力(CFE)条約の破棄に向けた法令に署名した。欧州通常戦力条約は通常兵器の上限を定める軍縮合意であるが、既にロ軍は通常兵器を大幅に失い軍縮している状態である。
それと同時に、ロシアのペスコフ大統領報道官は、ウクライナでの軍事作戦について「非常に難しい」状況だが、今後も続けるとの立場を示した。「特別軍事作戦が進行している。非常に難しい作戦で、当然ながら特定の目標は1年で達成した」と述べた。
それと、12日、ペスコフ大統領報道官は、西側メディアのプーチンへの直接取材やインタビューなどを原則拒否するにした。「真実を伝えようとする姿勢が見られない間は彼らと話さない」と述べた。
このあたりが、ロシア上層部でもウ軍に負ける可能性を見始めているように感じる。
そして、ロシア国民もかなり不安になっていると独立系世論調査機関『レバダセンター』の副所長は言う。「4月の世論調査で75%が“戦争を支持しロシアが必ず勝利すると信じている”という結果が出ている。
しかしこれは表面的な結果だ。より深い分析をすれば国民はこの戦争に不安になっていることが分かる。不安が圧倒的に多い。どんなウ軍の反転攻勢があるのかわからない。反転攻勢とは単なる戦闘ではなく、弱いウ軍に抵抗できないロシアの威厳に対する攻撃でもある。そもそも何のために、この戦争を始めたのかと国民が考え始める」という。
この調査報告書では、ウクライナの反転攻勢を心配している人が62%。欧米からの武器供与を心配している人も77%。何より今後難しい局面が来る、これまでより大変なのはこれからと考えている人が過半数いる。どんどん状況が厳しくなっているという受け止めが感じられるという。敗戦の方向にロシア国内では世論が傾いている。この傾向は、プリゴジンの発言も影響しているようだ。
このような不安から、ロ軍の元大佐イーゴリ・ストレルコフ氏らが創設した民間団体「怒れる愛国者クラブ」が12日、ウクライナ侵攻は「停滞している」としてプーチン政権を批判した。ロ軍の戦いぶりを「受け身に回っていて、作戦の目的が達成できていない」と訴えた。「戦略と目的がはっきりせず、勝利に必要な手段を使っていない」と指摘。社会のあらゆる力を総動員すべきだと述べた。
ルカシェンコは昏睡状態か。唯一の支持者失うプーチン
また、ウ軍に迎撃された極超音速ミサイル「キンジャール」は、パトリオットミサイルを撃破しようとして発射されたが、逆に迎撃されたようだ。
ウクライナ原子力企業エネルゴアトムは10日、同国南部のザポロジエ原発を占拠するロシアが、原発が立地する都市エネルゴダールから職員ら約3,100人の退避を準備していると発表した。原発を維持できずに、核汚染の可能性を見て、退避するようだという。
もし、原発の核物質の暴走になると、福島第1原発や、チェルノブイリ原発と同様に、50kmまでの住民の退避も必要になる。そうすると、ザポリージャ州の広範囲が対象になる。これは戦況に大きな影響を受けることになる。
一方、9日の対独戦勝記念日の昼食会に欠席したルカシェンコ大統領は、心筋梗塞を患っており、おそらく人工的な医学的昏睡状態に置かれているようだという。プーチンに取って、強い支持をしてくれる唯一の存在を失うことになる。
もう1つ、14日はトルコの大統領選挙であるが、エルドアン大統領が負けそうであり、負けるとクルチダルオール氏は、欧米的なセンスでロシアと対応するので、ロシアとしても、この選挙に介入してきたが、負けると大きい。
それと、12日、モスクワ近郊のジェルジンスキー市で火災が発生したが、MiG航空機のエンジンを製造する工場のようである。
中央アジアサミットにロシアを呼ばず。プーチンを見限る習近平
NATOのストルテンベルグ事務総長は10日、東京に連絡事務所を新設するために日本政府と協議しているとした。中国は、NATOの日本進出を危惧しているようだ。
中国は、秦剛外相を欧州に派遣している。背景には、米中の対立激化から欧州を引き離そうとする中国側の思惑があり、米国のやり方に従えば欧州の利益が損なわれると警告している。しかし、NATOの日本進出となる。
中国は、4月CPIが前年比0.1%(前回0.7%)へと減速して、デフレの状態になりそうだ。経済も低調であり、欧米企業の撤退も「反スパイ法」拡大で加速している。このため、経済面を考えるなら、欧州を引き留めたいようである。
このため、中国は特別代表をウクライナ・ロシアなど5か国に派遣して、和平交渉の仲介役を果たして、中国の威信を上げたいようである。
9日の対独戦勝記念日にもロシアに友好的なメッセージも送らず、反対に、中国の船舶は、ロシアのザルベジネフチとペトロベトナムの合弁会社ベトソフペトロの「04-03」ブロックに入り、ロシアの権益を障害していた。
5月19日からは、中央アジアサミットで、中国と中央アジア諸国との首脳会談も予定しているが、ロシアを招待していない。
このように、中国は非常に微妙な外交を展開している。
イスラエルでは、ガザから400発以上のロケット弾が打ち込まれて、アイアンドームへの飽和攻撃になり、民間人が複数、けがをしたようである。同時にビスボラからもロケット弾攻撃を受けている。裏には、イランがいるし、サウジはイランとの和平が成立、シリアはアラブ連合会議に復帰している。
イスラエルが、中東で孤立的な立場になってきたようである。この紛争にエジプトが仲介するようであるが、こちらも微妙なことになってきた。戦争が近い感じである。
というように戦争の時代になり、日本でも、有事に輸入が止まるなど国内で食料が不足する事態に備え、農林水産省が農産物の増産を農家や民間事業者に命令できる制度をつくる方向で検討を始めた。
さあどうなりますか?
●プーチン氏の後継者、ウクライナ侵略「黒幕」との良好な関係が重要… 5/16
慶応大教授の廣瀬陽子氏がロシアによるウクライナ侵略について講演し、戦争の背景や特徴、今後の展望などについて解説した。
廣瀬氏は国際政治や旧ソ連地域の研究が専門で、政府の委員も歴任している。冒頭、ロシアの外交戦略の根幹となる「勢力圏構想」について説明。ロシアが勢力をもつ旧ソ連の領域に向け、拡大している北大西洋条約機構(NATO)の動きを踏まえ、ウクライナは「重要な緩衝地帯だった」と背景を解説した。
今回の戦争は、経済制裁や情報戦などに実際の戦闘を組み合わせた「ハイブリッド戦争」だと指摘。米国などと比べ軍事予算が少ないロシアにとって、正規の軍より安いコストで運用でき、国際的な影響力も高いなど利点があるという。
廣瀬氏は「ハイブリッド戦争の黒幕」ともいえる人物として、エフゲニー・プリゴジン氏の名前を挙げた。民間軍事会社「ワグネル」の創設者で、ホットドッグ販売などで財をなし「プーチンのシェフ」とも呼ばれる。「ロシアの研究者と議論したとき、『プリゴジンと良好でなければプーチンの後継者になれない』と言っていた」といい、内政への影響力も大きいことがうかがえるという。
今後の戦況については、どちらかの勝利で終結する可能性は低く、長期化するとの見方を示した。今後始まるというウクライナ軍の大規模な反転攻勢が命運を分けると指摘。「風化させず、我がこととして支援し続ける必要があるのではないか」と締めくくった。
講義後、参加者からは「北方領土返還について、どうロシアと接するべきか」という質問が出た。廣瀬氏は、2020年にロシアが領土割譲を禁止する憲法改正を行ったことを踏まえ「『国境をどう設定するか』という議論に持ち込めばぎりぎり交渉の可能性はあるが、ロシアは次々と日本との関係を断つ行動に出ており、返還交渉は厳しくなっている」と述べた。
●プーチン氏、旧ソ連諸国との協力に意欲 安全保障会議 5/16
ロシアのプーチン大統領は15日、ロシア安全保障会議のビデオ会議で、旧ソ連諸国との協力から得られる利点について協議しなければならないだと述べた。
安全保障会議は通常金曜日に開かれるが、今回は前倒しして実施。前倒しの理由は明らかにされていない。会議には閣僚らも出席。テレビ放映された冒頭発言でプーチン氏は「ロシアと旧ソ連の各共和国は幅広い競争上の利点を持っている」とし、共同で良い結果を出すために何ができるか話し合いたい」と述べた。
昨年のウクライナ全面侵攻開始以降、西側諸国が対ロシア制裁を強化する中、一部の旧ソ連諸国はロシアの重要な経済パートナーになっている。
●G7に対抗したロシア 食糧恫喝戦略≠ナアフリカ囲う? 5/16
5月19日から広島市内で開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)に向け、欧米や日本など自由主義諸国が結束を高めようとする中、その動きに対抗するかのようにロシアが中国、インドなどに加えアフリカ諸国との連携強化を誇示しようとしている。アフリカは食料輸出や武器供給などでロシアに依存する国々が多数あり、政治、経済面でその影響力を色濃く受けている。
5月中旬には、南アフリカがロシアに武器を輸出していた疑惑まで浮上したが、プーチン大統領は即座にラマポーザ大統領と電話会談を実施し、食料危機が進行するアフリカへの穀物供給を約束するパフォーマンスを見せた。ロシアはG8からかつて、ウクライナのクリミア半島を併合したことで排除された経緯もある。
自らのウクライナ侵攻と、黒海封鎖がアフリカを中心とする国々の飢餓状態を急激に悪化させているにも関わらず、あたかも救済者のようにふるまうプーチン氏の姿勢は偽善≠ノほかならない。政権基盤が弱い国々に武器輸出や私兵集団「ワグネル」の派遣を通じロシアに依存させ、自陣営に引き込む手法は恫喝に等しいが、プーチン政権はそうやって培ったアフリカ諸国との関係性を最大限に利用している。
冷戦時代から続くアフリカとの関係
「プーチン大統領は食料安保をめぐる協議において、南アフリカのラマポーザ大統領に対し、必要ならばアフリカ諸国に対しては、大量の穀物と肥料を送る準備がある。一部は無料≠ナ送る用意があると伝えた」
5月12日、プーチン氏はラマポーザ氏との電話会談でそう提案したという。あたかもアフリカの食料危機をロシアが救うかのような言いぶりだ。
南アフリカをめぐっては11日、同国に駐在する米国大使が「南アは2022年12月に、ロシアへ秘密裏に武器や弾薬を提供したとの情報がある」と指摘し、国際社会に衝撃を与えたばかりだった。ロシアとの関係を理由に国際社会の批判を浴びかねない南アを、プーチン氏が即座に救済≠オた格好だ。
両氏はまた、7月下旬にロシア・サンクトペテルブルクで開催される「ロシア・アフリカ首脳会議」や、8月にヨハネスブルクで開催されるロシアや中国、インド、ブラジル、南アがメンバーの「新興5カ国(BRICS)首脳会議」をめぐっても意見を交換したという。プーチン氏の言動からは、G7が対ロシアで協調を強めようとするなか、アフリカ諸国などとの関係を誇示して国際的な孤立イメージを払拭する狙いが透けてみえる。
プーチン氏はウクライナ侵攻を背景に国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状を出されており、ICC加盟国の南アはプーチン氏が首脳会議で訪問すれば同氏を逮捕する義務を負う。しかしラマポーザ氏は、ICCからの脱退を目指すと発言するなど極端にロシア寄りの姿勢を繰り返し示している。
多くのアフリカ諸国は冷戦時代、ソ連による政治的、経済的支援を受けた経緯があり、南アについてもそれは同様だ。現在政権を握る与党「アフリカ民族会議(ANC)」も、ソ連からの支援を受けていた経緯がある。欧米による植民地支配に苦しめられたアフリカ諸国が国連などの場で、ロシアに同調する姿勢を示すのは決して故なきことではない。
ロシアがウクライナに侵攻した直後に開催された国連総会の緊急特別会合で、ロシア軍に対する「即時かつ無条件の撤退」などを求めた決議では、賛成票を投じなかった国の実に半数がアフリカ諸国だった。
食糧を武器に恫喝
しかし、そのようなソ連、ロシアとの歴史的な結びつきだけがアフリカ諸国をロシアになびかせているわけでは決してない。
米シンクタンクの調査によれば、サハラ砂漠以南のアフリカや南アジアを中心とした世界の少なくとも36カ国が重大な飢餓に直面しており、その主要な理由がロシアによるウクライナ侵攻が食料や燃料価格高騰を招いたことにあるという。また米ワシントンを拠点とする「対アフリカ戦略研究センター」によれば、アフリカにおいて消費される穀物の30%はロシアから輸入されており、その95%が小麦だ。アフリカ諸国はさらに、ウクライナ産の穀物にも多く依存している。
ロシアはウクライナに侵攻し、農地の占領や地雷の敷設、さらにウクライナ南部の黒海周辺の主要港の占領や黒海を封鎖するなど、ウクライナ産穀物の輸出を妨害する戦略をとっている。ロシアは昨年7月には、トルコと国連の仲介で黒海を通じたウクライナ産穀物の輸出に合意しているが、一方的に履行を停止するなどしてウクライナと関係各国を揺さぶっている。合意期間は断続的で、期限が近づくたびに関係各国は再交渉を強いられる構図が生まれている。
そのような中で、ロシアは自らがアフリカに穀物を供給する姿勢を繰り返しアピールし、逆にウクライナやロシアに経済制裁を科す西側諸国を非難し続けている。アフリカ諸国としては、食糧という文字通りの命綱をロシアに握られた格好で、その意向をむげにはできない。穀物輸出をめぐる次回の合意期限は5月18日に設定されており、これはG7サミットの開幕前日にあたるため、その動向が注視される。
武器や傭兵も
昨年3月以降、ロシアによるウクライナ侵略を非難する趣旨で実施された5度の国連決議において、すべての決議で棄権、または反対したアフリカ諸国は中央アフリカ共和国、マリ、スーダンだったという。カーネギー国際平和基金によれば、これら3カ国はいずれも政権基盤が弱いが、ロシアによる軍事支援やロシアの私兵集団「ワグネル」の支援を受けるなどして、政権を維持している国々だという。
例えばスーダンでは、ロシアから軍事支援や政治支援を受けることと引き換えに、軍がスーダン国内に埋蔵された金への利権をロシア側に付与していた実態が米CNNの調査で判明している。この動きは2014年のロシアによるクリミア併合後に活発化し、その後国際的な制裁を受けるロシアがスーダンの金を調達するケースが増えたという。マリや中央アフリカ共和国においても、国軍に対するワグネルの関与がかねてから指摘されている。
ソ連崩壊後、その後継国のロシアはアフリカ大陸の大半から軍事支援の手を引いたが、2000年に発足したプーチン政権は旧ソ連時代の軍事支援国との関係回復を再び進めた。ロシア政府は18年にはギニア、ブルキナファソ、ブルンジ、マダガスカルと軍事協定を結び、イスラム過激派に手を焼くマリ、ニジェール、チャドなどがロシアに軍事支援を要請した。ロシア製の武器に頼る国も少なくなく、アフリカ市場で出回る武器の約半数がロシア製といわれる。
特にアルジェリア、エジプト、アンゴラがロシア製武器を多く調達している。これらの国の多くは、国連での対ロシア決議で棄権や反対するなど、ロシア寄りの立場を示している。
象徴的な出来事もあった。ロシアは4月下旬に、自国が議長を務める国連安全保障理事会において、「国連憲章の擁護」をテーマにした会合を開催し、自国の立場を正当化する主張を展開してみせた。ここではロシアと連携する中国が対米批判を展開したほか、ガーナ、ガボン、モザンビークはロシアによるウクライナ侵攻に言及しなかった。
アフリカは国連総会の場では54票を有するなど存在感が高く、中国やインドなども出席する国連の場では、ロシアは国際社会から孤立しているとのイメージを抑えることができる。
G7側も対抗
ただ、このような現状をG7側も十分に理解している。米国のバイデン政権は今年に入り、ブリンケン国務長官やハリス副大統領らを相次ぎアフリカに派遣したほか、3月に主催した「民主主義サミット」では約120カ国・地域を招待し、アフリカ5カ国を新たに加えた。日本も、岸田文雄首相が4月末からアフリカ4カ国を歴訪するなど、議長国としてアフリカとの連携を強化している。
アフリカ諸国に対しては、ロシアと連携する中国も浸透を強めており、欧米や日本がアフリカでどこまで巻き返せるかは不透明な部分がある。ただ、ロシアは実際にはアフリカ全体との貿易額では欧州連合(EU)の20分の1程度しかなく、対アフリカの直接投資にいたっては1%しか占めないほか、ワグネルが入った国々では逆に暴力が過激化している実態も伝えられており、その関与が各国の発展につながっているかは強い疑問がある。
ウクライナ侵攻でロシアが今後さらに劣勢に陥れば、ロシアを見限るアフリカ諸国が今後増加する可能性もある。
●ロシア核使用なら「追放」 サミットでNPT再確認―駐日仏大使 5/16
フランスのフィリップ・セトン駐日大使がインタビューに応じ、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の主要議題となるウクライナ情勢に関し、ロシアが核兵器を使用すれば国際社会から「追放」され、強力な制裁に直面することになると警告した。主なやりとりは次の通り。
――ロシアが核使用を示唆している。
無責任な受け入れ難い脅しだ。軍事的、人道的にあらゆる悲劇を招くため、その可能性について言及したくはない。ロシアを含む核保有国は2022年1月、核戦争を絶対に起こしてはならず、決して勝者はいないとする声明を発表した。
――ロシアが使用した場合の対応は。
まずロシアが使用しないようにすることが最優先だ。ロシアは各国から政治的非難を受けるだけでなく、確実に国際社会から追放されるだろう。そして間違いなく対ロ制裁が強化される。
――岸田文雄首相はサミットで核廃絶に向けたメッセージを打ち出したい考えだ。
広島という象徴的場所で行われるサミットについては、核軍縮、核不拡散、原子力の平和利用を定めた核拡散防止条約(NPT)を尊重する強いメッセージを発する機会であるべきだとわれわれは言ってきた。北朝鮮やイランに関係した核拡散の脅威が高まる中、非常に高い政治レベルでNPTの原則と目標を繰り返すものであるなら、首相のメッセージはサミットで支持されるだろう。
――インド太平洋地域で中国が存在感を高めている。
中国がさまざまな手段で影響力を拡大しようと企てているのを目の当たりにしている。フランスの国家戦略は欧州連合(EU)と同様で、地域の国々が必要とし、彼らの主権を尊重した支援を提供することだ。
――台湾に対する中国の脅威をどう見るか。
フランスの姿勢は一貫している。G7外相会合の共同声明でも、この地域の安定と現状維持に加え、当事者に対話を通じて相違を解決するよう求めている。さらにわれわれは、この地域で航行の自由をはじめとする多くの原則を尊重し、適用するよう要請している。
●EU G7サミット前に会見 “中国との関係めぐる議論が重要”  5/16
G7広島サミットに出席するEU=ヨーロッパ連合の大統領と委員長が会見し、サミットでは、EUのウクライナへの支持を改めて明確に示すとともに、台湾情勢といった安全保障上の観点などから中国との関係をめぐる議論が重要だと強調しました。
今週19日に開幕するG7広島サミットへの出席を前に、EUのミシェル大統領とフォンデアライエン委員長が15日、ベルギーのEU本部でそろって会見を行いました。
この中で、ミシェル大統領は「われわれはゼレンスキー大統領が提言した和平に向けた10項目への支持を表明する」と述べ、ロシア軍の撤退やウクライナの領土保全の回復など、和平に向けたウクライナの立場に対してEUの支持を明確に表明する考えを示しました。
また、フォンデアライエン委員長は中国との関係をめぐる議論も重要だという認識を示し「核心的な外交政策や安全保障上の課題についてパートナーと結束する。台湾海峡の平和と安定への揺るぎない関与を改めて確認する」と述べました。
EUは現在、中国との関係のあり方をめぐって加盟国の間で議論を続けています。
議論のたたき台として、EUがこのほど加盟国に示した文書では台湾情勢をめぐって緊張が大幅に高まる事態への備えが必要だとしたうえで、現状が損なわれることを防ぐためにパートナーの国々と連携する必要があると指摘していて、EUはこうした認識のもと、G7サミットに臨むとみられます。  

 

●世界原油市場、ロシアの減産で「完全に安定」=プーチン大統領 5/17
ロシアのプーチン大統領は17日、世界的な原油市場について、ロシアが価格を支えるために減産を維持しているため、全体として「完全に安定している」と述べた。
プーチン大統領はテレビ中継された政府会議で、ロシアは「必要な水準」での減産を続けているとし、「自主減産を含めロシアが行っている全ての措置は、石油輸出国機構(OPEC)加盟国と構成する『OPECプラス』との取り組みの中で一定の価格を維持する必要性に密接に関連している」と述べた。
ロシアは4月2日、2月の産油量を基準とする日量50万バレル(約5%)の減産を年末まで延長すると発表。OPEC主要国も同日、減産を発表した。
イランを訪問中のロシアのノバク副首相は同日、ロシアは今月、日量50万バレルの減産を達成したと述べた。
●アフリカ、ロシアとウクライナを仲裁…「プーチン氏・ゼレンスキー氏と合意」 5/17
アフリカ諸国がロシアとウクライナの終戦交渉の仲裁に乗り出すことを決めた。ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領もこの提案を受け入れた。
16日(現地時間)、英紙ガーディアンなどによると、南アフリカ共和国(南アフリカ)のシリル・ラマポーザ大統領は同日、ケープタウンでシンガポールのリー・シェンロン首相との共同記者会見で「プーチン大統領やゼレンスキー大統領とこの提案について話し合った」と明らかにした。
ラマポーザ大統領はプーチン大統領とゼレンスキー大統領ともアフリカの指導者と潜在的な平和計画について話し合うことで合意したと述べた。また「両首脳との議論は、彼らがアフリカの指導者たちを迎え、この紛争をどのように終息できるかを議論する準備ができていることを示した」と説明した。同時に「成功するかどうかは今後進められる議論にかかっている」と述べた。
アフリカの首脳で構成された平和使節団には、南アフリカやセネガル、ウガンダ、エジプト、コンゴ共和国、ザンビアが参加する。プーチン大統領とゼレンスキー大統領は、それぞれの首都モスクワとキーウで彼らを迎える予定だ。具体的な日程は公開されていない。
ラマポーザ大統領は、米国と英国が同計画に「慎重な」支持を表明し、国連のアントニオ・グテーレス事務総長も同計画について報告を受けたと明らかにした。これとは別に、中国、ブラジル、トルコなど一部の国家も仲裁者として平和解決への努力を支援している。
●極超音速キンジャール6発を撃ち落してわかった、ロシア核はそんなに怖くない 5/17
ウクライナは、ロシアが5月16日にキーウ上空に発射した極超音速の空対地ミサイル「キンジャール」6発を撃墜したと発表した。西側の防空システムの有効性を実証するとともに、ロシアがこの戦争にもたらす核リスクの大きさが変わる可能性もある出来事だ。
ウクライナの発表によると、MiG-31戦闘機から発射された6発のKh-47キンジャールは、ロシアが一晩で発射したミサイル18発の一部だ。キンジャールのほかには、陸上から巡航ミサイル3発、黒海から「カリブル」巡航ミサイル9発が発射されたという。
ウクライナ軍総司令官のヴァレリー・ザルジニーは、18発すべての迎撃に成功したと述べている。とりわけキンジャールは核弾頭を搭載可能で、最高速度マッハ10とされており、ロシアは「誰にも止められない」と豪語してきた。
ドイツのシンクタンク、ヨーロッパ・レジリエンス・イニシアチブ・センターの創始者であるセルゲイ・サムレニーは本誌に対し、「ロシアが止められないと言った兵器はこれが初めてではなく、ほぼ止められることが判明している」と語った。
ロシアに勝った防空システム
「今回の件は、ロシア軍とロシア技術の信憑性に傷をつけた」とサムレニーは続ける。「通常、このような攻撃においては、防空システムが手一杯で迎撃が間に合わなくなるはずだ」
「西側の武器支援を受けたウクライナ軍は、ロシアによる、これまでで最も現代的な兵器を使った激しい攻撃も撃退できることがはっきりした」
またサムレニーは「西側では、核戦争へのエスカレーションが起こり得るという恐怖はいまだに根強い」と言う。「しかし、すべてのリスクの重みを改めて見直す必要がある」と述べた。
ウクライナがロシアの最先端のミサイル迎撃に成功したのが本当だとしたら、ロシアによる核攻撃が成功する可能性は「私たちが考えていたより大幅に低くなる」とサムレニーは言う。
開戦以来、ロシアの国営テレビはしばしば、自国の核兵器を自慢してきた。ウラジーミル・プーチン大統領も核威嚇を行ってきた。
ノルウェー、オスロ大学の博士研究員ファビアン・ホフマンは本誌の取材に対し、これほど激しく、時間調整された、多ベクトルのミサイル攻撃を封じたウクライナの能力は、「たとえこれらのミサイルに核兵器が搭載されたとしても、途中で撃ち落とせる可能性が十分ある」ことを示唆すると述べている。
「この事実は、ロシアの意思決定者に難しい問いを投げ掛けることになる。核兵器の有効性について、これまでよりも不安を感じることになるだろう」とホフマンは話す。
だからといって西側が、これまでより核エスカレーションのリスクを冒そうしてはならないが、「核で対峙することがロシアの利益になるとは思わない」とホフマンは述べた。
ウクライナは5月4日、アメリカの「パトリオット」防空システム(広域防空用の地対空ミサイルシステム)を使って、初めてキーウ近くの上空でキンジャール1発を撃墜したと発表している。
パトリオットは、NATO諸国がウクライナに供与している先進的な防空システムの一つだ。ドイツの短距離空対空ミサイル「IRIS-T」は、2022年10月にウクライナに到着し、以来、60以上の目標を撃墜している。フランスとイタリアが共同開発する地対空ミサイルシステム「SAMP/T」も最近到着した。
パトリオットが、18発のうち何発を迎撃したかは不明だが、ウクライナ軍の成功は、ウクライナが集中砲火に耐えられる防空システムを持ったことを示している。ウクライナ軍の指揮を執るセルヒイ・ポプコは今回の集中砲火について、「異例の密度」と表現する。
プーチンは、ロシア語で「短剣」を意味するキンジャールをロシアの次世代兵器と謳っていたが、「高度な防空システムを回避できる」といったロシアの主張に対しては、専門家から疑問の声が上がっていた。
●ロシア軍と民間軍事会社ワグネル 確執が深刻化  5/17
ウクライナの激戦地バフムト周辺では、ロシア軍と民間軍事会社、ワグネルとの確執が深刻化しています。そうした中でプーチン大統領はどう考えているのか。石川一洋専門解説委員に聞きました。
バフムトをめぐる戦況は
(石川さん)東部の要衝バフムトは、ロシア軍が去年の秋からじわじわと支配地域を広げていました。
バフムトの都市部はここ、民間軍事会社ワグネルが制圧の主力となっていました。しかし先週バフムト周辺のロシア軍に対してウクライナ側が反撃に出て、ロシア軍が一部撤退に追い込まれました。ロシア軍も現場指揮官の大佐二人が戦死したことを認めています。ロシアの軍事専門サイトルィバリによればバフムトの北東部でウクライナ軍がロシア軍の陣地を攻撃し、地域を奪還したとしています。またワグネルの発表した戦況地図ですとウクライナ軍が南部でも一部地域を奪還しています。こうした中、バフムト周辺の状況について国防省とワグネルの対立が深まっています。
ロシア国防省コナシェンコフ報道官
「ロシア軍はより優位な状況を作るために部隊を転戦した」
ワグネル・プリゴジン代表
「国防省の報道官は、ウソをついている。無断で撤退すれば反逆罪だというが、ロシア軍指導部こそが反逆罪ではないか」プリゴジン氏は、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長を呼び捨てで弾薬不足を非難するなど、軍の統制を乱す行為を続けています。ロシアの軍事専門記者などがワグネル支持の発信を続けロシア軍の権威が低下しています。
最高司令官のプーチン大統領は どのような立場を?
(石川さん)プリゴジン氏に対して、もしも戦線を勝手に離脱したら反逆罪に問うと警告したようです。しかし軍指導部への批判は黙認しています。都市部の制圧というもっとも困難で犠牲を伴う作戦をワグネルに依存しているからです。ワグネルは中東やアフリカなどで都市部での戦闘経験が豊富で、囚人を動員し犠牲を厭わない残酷な非人道的な戦術でバフムトなど都市部の制圧を担ってきました。最高司令官のプーチン大統領もワグネル依存を許容しました。プリゴジン氏は軍指導部とともに財閥など富裕層やエリートを裏切り者を意味する「第五列」として批判し、極右の支持層のはけ口という政治的な役割も果たしており、プーチン大統領はそれも許容しています。ただ軍事力を持ったワグネルのプリゴジン氏に政治的な動きを許すことはプーチン体制の脅威になりかねないという懸念も体制内部では深まっています。
政治情報センター ムーヒン所長
「ワグネル指導部の政治的な動きは許しがたい 国の政治指導部の力を弱めている」
プリゴジン氏がウクライナ軍の情報機関と接触の報道も
このワグネルをめぐってはアメリカの新聞ワシントンポストが、プリゴジン氏がウクライナ軍の情報機関と接触し、ウクライナがバフムトから撤退するのを条件にロシア軍の位置情報を教えるという取引を持ち掛けていたと報じられました。どう見ますか?。
(石川さん)取引の情報が事実かどうかは確認できません。ただこれまでもプリゴジン氏はウクライナ側と独自に交渉し捕虜の交換はしています。お互いに偽情報工作を含めて接触があった可能性はあります。ウクライナから見ればロシア軍の指揮統制の乱れは、反転攻勢に利用できないのかどうか、慎重に分析を進めているでしょう。ただプリゴジン氏が弾薬不足という軍非難は、軍内部での主導権争いのために利用している側面があり、額面通りには受け取っていないでしょう。ウクライナ軍がバフムトで局地的な反撃を試みて、ロシア軍を一部撤退に追い込んだのは、軍事的な意味とともに、ロシア側の足並みの乱れを確かめようという軍事偵察の意味もあるかもしれません。
ロシア国内で奇妙な事件が続いているが背景は?
一方、ロシア国内では民族主義の作家への暗殺未遂や国境付近で戦闘攻撃機や軍用ヘリがほぼ同時に4機墜落するなど奇妙な事件が続いていますが、この背景はどう見ていますか?
(石川さん)国境付近での墜落については、軍は原因を発表していません。ただプリゴジン氏はウクライナ側の攻撃ではなく、ロシアの防空システムが誤って撃墜したのではと示唆しています。テロでは今月には軍事侵攻を積極的に支持してきた現代作家プリレーピン氏への暗殺未遂事件が起きました。去年8月、プーチンの頭脳といわれる思想家ドゥーギン氏の娘のドゥーギナ氏が爆殺、そして4月にはドンバス出身の軍事ブロガー・タタルスキーことフォミン氏も爆殺されました。いずれもロシア民族主義の強硬派です。ドゥーギン氏を含めて三人ともプリゴジン氏と国防省の対立ではプリゴジン氏の立場を支持していました。ロシアの捜査当局は事件の背後にはウクライナの治安当局がいると断定していますが、ウクライナにとって何の利益があるのか疑問もあります。強硬派を狙ったテロには、何者かがロシアのプーチン体制内部の亀裂を深めるという政治的な思惑があるのかもしれません。プーチン大統領はプリゴジン氏をいわば子飼いとして操り、来年3月の大統領選挙に向けてプリゴジン氏を利用しているつもりでしょう。極右支持層の中にはプリゴジン氏を大統領に推そうという動きも出ており、プリゴジン氏の独断専行を野放しにしていきますと、プーチン体制にとって危険な存在になるかもしれません。
●ウクライナ、ロシアの極超音速ミサイルを迎撃したと発表 5/17
ウクライナは、16日に首都キーウを襲った「異例なほど密度の濃い」ミサイル攻撃の中で、極超音速空対地ミサイルを迎撃したと発表した。
ウクライナ当局は、ロシアの極超音速ミサイル「キンジャール」6発を空軍が撃墜したと発表した。空軍はこの日、キーウへ向けて短時間に集中的に撃ち込まれたミサイル計18発を迎撃。キンジャール6発はこの中に含まれるという。
ロシアは、キンジャールが既存の防空システムを回避できると主張している。その上でロシアは、ウクライナによるキンジャール撃墜を否定。アメリカがウクライナに供与した防空システム「パトリオット」1基を、キンジャールが破壊したとしている。
ウクライナはコメントを控えている。BBCは、双方の主張を独自に検証できていない。
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は16日夜、同国はウクライナが撃墜したと主張するほど多くのキンジャールを発射していないと述べた。
だが、ウクライナの主張が正しい場合、ロシアは最上級のミサイルが撃墜されたことにいら立ちを感じているだろう。これは、パトリオットを含む西側の近代的な防衛システムがウクライナに供給されていることが大きい。
ロシアはなお、時速1万1000キロメートルで飛ぶキンジャールを破壊できる防空システムは、世界に存在しないと強調している。
「キンジャール」はロシア語で「短刀」の意味。ほとんどの弾道ミサイルは飛行中に極超音速、つまり音速の5倍(時速約6000キロ)以上の速度に、一時的には到達する。
ウクライナ政府は先週、初めてキンジャールを迎撃したと発表した。
ウクライナは近く反攻を開始すると見られており、ロシアはここ数週間、空からの攻撃を加速させている。キーウは5月に入ってすでに8回の空爆を受けている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は13日のイタリア訪問を皮切りに、ヴァチカン、ドイツ、フランス、イギリスを歴訪しており、数十億ドル規模の軍備供与の約束を取り付けている。
16日に撮影された映像には、防空システムがキーウ上空で標的を破壊している様子が映っている。
ウクライナ軍のヴァレリイ・ザルジニー総司令官は、ロシア軍は北と南と東からキーウを攻撃。海上と陸地から計18発のミサイルをキーウへ放ったが、ウクライナ側はそのすべてを迎撃したと述べた。
これには、黒海の戦艦から発射された巡航ミサイル「カリブル」9発と、地上から発射されたミサイル3発も含まれているという。
キーウの軍当局トップを務めるセルヒイ・ポプコ氏は、「最短の時間で最多の数のミサイル攻撃」が続いたと話した。
迎撃ミサイルの破片落下を警戒して、建物の窓から離れるよう政府は警告した。
キーウのヴィタリ・クリチコ市長は、市内の動物園を含めた市中心部にもロケット砲の破片が落下したと話した。動物や職員にけがはなかったという。
昨年2月24日にロシアがウクライナ侵攻を開始して以来、民間人と戦闘員の死傷者は数十万人に上るとされる。複数の市町村が破壊され、820万人近いウクライナ人が欧州内で難民として登録されている。そのうち280万人はロシア国内にいる。
●ウクライナ軍 反転攻勢 ロシア軍のミサイルなどの攻撃が激化  5/17
ウクライナ側が反転攻勢に乗り出す構えを示す中、ロシア軍による航空戦力やミサイルによる攻撃が激しくなっています。ウクライナ軍はロシアが極超音速兵器だとするミサイルなどを迎撃したと発表し、ゼレンスキー大統領はロシアの攻撃に対抗するため欧米側にさらなる支援を求めました。
ウクライナでは16日、首都キーウなど各地で、ロシア軍が集中的にミサイル攻撃を行い、ウクライナ軍はロシア側が極超音速ミサイルだとする「キンジャール」などの迎撃に成功したと発表しました。
ゼレンスキー大統領は16日、地対空ミサイルシステム「パトリオット」をはじめとする兵器を供与した各国に感謝の意を示し「各国とともにテロ行為に対する防衛を可能なかぎり強化していく」として、ロシアの攻撃に対抗するため欧米側にさらなる支援を求めました。
一方、ロシア国防省はキンジャールによる攻撃でウクライナ軍の「パトリオット」を破壊したと発表するなど、ウクライナ側の主張を否定しています。
戦況を分析するイギリス国防省は17日「ロシアとウクライナの国境周辺で空の戦闘が激化している。ウクライナは今月3日、キンジャールの迎撃に初めて成功した。その後、ロシア軍はウクライナの防空能力を無力化しようとしたが、さらに数発のキンジャールを失った可能性が高い」と指摘しました。
そして「プーチン大統領はキンジャールを『無敵だ』と誇示してきたが、これがぜい弱だったことはロシアにとって驚きであり、困惑しているだろう」という見方を示しています。
●バフムト近郊でウクライナ軍領土奪還、市内でロ軍前進 5/17
ウクライナは同国東部の激戦地バフムト近郊の北部と南部で同国軍が前進し、この数日間で領土約12平方マイル(約31平方キロメートル)を奪還したと発表した。一方、ロシア軍は重火器と増援に支えられ、バフムト市内で前進した。
ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、16日未明にキーウに向けて発射された極超音速ミサイル「キンジャール」6発のほか、巡航ミサイル「カリブル」9発、地上発射型ミサイル3発の合計18発を迎撃したと説明した。この攻撃によりキーウ市内で少なくとも3人が負傷した。
ウクライナ検察当局は収賄の疑いで同国のクニャゼフ最高裁判所長官を拘束した。同長官は罷免された。
ウクライナ情勢を巡る最近の主な動きは以下の通り。
独首相、ウクライナの損害記録する枠組みを高く評価
民主主義の促進や人権保護を目指す国際機関、欧州評議会はアイスランド・レイキャビクでの首脳会議で、ロシア軍がウクライナに与えた損害を記録する枠組みを立ち上げる方針で、ドイツのショルツ首相はウクライナの今後にとって極めて重要になるだろうと述べた。

 

●プーチン大統領が演説  5/18
ロシアのプーチン大統領が5月9日、首都のモスクワで演説しました。
この日は戦勝記念日。第2次世界大戦で、アメリカやソ連(現在のロシアを含む15の共和国で構成された国)などの連合国軍がナチスドイツに勝った日です。ソ連は1991年に崩壊しましたが、ロシアにとって、戦争での犠牲者を追悼する大事な日です。
プーチン大統領は毎年、このイベントで国民の結束を高めようとしています。演説では、ウクライナを侵略していることについて「私たちの国を守るため」と述べました。
この日は軍事パレードも行われましたが、参加した兵士やお披露目された兵器は昨年よりも減りました。ウクライナ軍の猛反撃にあい、パレードに参加させる余裕がなくなっているとみられています。
●ロシアはG7諸国を恐れない? 西側視点では見えない「世界」 5/18
5月、ワシントンでロシア系米国人の学者と昼食を摂った。北朝鮮問題が共通の関心事項で、10年以上の付き合いがある人物だ。訪日経験もあり、当時の安倍晋三首相や菅義偉官房長官らとも面会している。私が挨拶代わりに、北朝鮮の問題を取り上げると、彼は首を振ってこう答えた。「北朝鮮のようなマージナル(限定的)な話はどうでもいい。今はロシアだ。ウクライナの話をしよう」。彼が語った世界は、西側世界が描いているロシアとは正反対の話だった。
「砲弾不足」情報は間違い?
「西側世界は楽観的に過ぎないか。ロシアはそれほど追い詰められていないぞ」
私が3月の中ロ首脳会談について尋ねたときの、彼の答えだ。西側の報道では、ロシアが中国に軍事支援を求めたのではないかという観測が流れていた。
「ロシアは中国に軍事支援を期待していない。ただ、経済制裁には加わらないで欲しいと思っている。武器はロシアのなかで生産できる。ごく単純に言えば、ロシアが中国に燃料を提供する代わりに、中国から(ミサイルなどに必要な)半導体を売ってもらえれば良いのだ」
米国などは情報衛星を使い、ウクライナの戦況を逐一把握している。ロシアの砲弾が枯渇しそうなのかどうかは、ロシア軍が使った砲弾の薬莢(やっきょう)を見ればわかる。
薬莢には製造年とメーカーを示す刻印がある場合が多い。砲弾は基本的に古いものから使っていく。砲弾が古くなれば、火薬が劣化して、不発弾になったり、想定した距離を飛ばなくなったりするからだ。味方を掩護(えんご)するつもりで、後方から撃って、敵まで届かず、味方の頭の上に落ちたら大変だ。
ところが、西側世界が観察している限り、いつまで経っても、ロシア軍の薬莢から、新しい砲弾を次々に使っている兆候が出てこない。本当に砲弾が不足しているなら、生産したての新しい砲弾を次々に投入するはずだが、そうでもないらしい。
ただ、ロシアの民間軍事会社ワグネルは砲弾不足を訴えている。創設者のプリコジン氏が砲弾不足を理由に、ウクライナ東部の激戦地バフムートからの撤退を宣言したこともある。
「ワグネルは昨年秋、北朝鮮から砲弾を調達したではないか」。私がそう問うと、知人は反論した。
「北朝鮮軍の砲弾が使い物になると本気で思っているのか。あれは、韓国がウクライナを支援するなら、ロシアは北朝鮮と接近するぞ、と脅すのが本当の目的なのだ」
確かに、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が4月、ロイター通信とのインタビューでウクライナへの軍事支援の可能性に言及した直後、メドベージェフ安全保障会議副議長(前大統領)が、SNSで北朝鮮に対する軍事支援をほのめかした。
私がプーチン政権の現状について尋ねると、「安定している。がんだとか、クーデターの可能性だとか、ありえない」と即答した。「同じような楽観論はロシアのなかにもある。ロシア人の間では、バイデン(米大統領)が政治的にも肉体的にも不安定だという見方が広がっている。それと同じだ」
ただ、「ロシアが困っていない」ということではないという。中国がロシアに対する経済制裁に踏み切れば、ロシアには致命傷になる。だから、ロシアは中国への傾斜を強めているのだという。
ロシアは4月、太平洋艦隊の「緊急点検」だとして、極東で大規模な軍事演習を行った。約2万5千人、艦艇約170隻、核兵器を搭載できる戦略爆撃機などが参加した。演習が、中国の李尚福国務委員兼国防相のロシア訪問中に行われたことをみても、中国に対するアピールであった可能性が高い。
「極東での演習は珍しくないが、あれだけフルスペックで実施するのはあまり例がない。目的は二つ。第1に、クリルやサハリンを日本に侵略させないというメッセージだ。日本がトマホーク巡航ミサイルを購入するなどしている動きに反応した。そして、第2の理由が、台湾有事の際に中国を助けるというシグナルだ」
プーチン大統領は9日の対独戦勝記念日での演説で「日本の軍国主義との戦いでの中国兵の功績に敬意を表す」と語り、中国の歴史認識を支持する考えも示した。日米などの専門家の間では、台湾有事の際、ロシアや北朝鮮が軍事挑発を行い、日米などの戦力を分散させるのではないかという懸念の声が出ている。
「ウクライナに核兵器使わない」
ロシアが中国を引き留めておくための材料である「燃料」とは、天然ガスのことなのか。この問いには、こんな答えが返ってきた。「ロシアは昨年、濃縮ウラン240トンを中国に売却している」
そんな話は聞いたこともない。IAEA(国際原子力機関)は知っているのか、と尋ねると、「IAEAも把握しているはずだ」という。まさか、そこまでのことをロシアがするだろうか、と半信半疑で聞いていた。
会食から数日後。
香港メディアなどが、「ロシアが中国に高速増殖炉で使用する高濃縮ウランを供給している」と報じた。
「ロシアはウクライナには核兵器を使わない。血を分けた兄弟だと思っているからだ。だが、英国やドイツには使っても構わないと、ロシアは考えている。北朝鮮やイランとの関係を強めるため、核開発で協力する可能性もある」
非常に興味深い話を繰り返すので、私はオンレコでのインタビューを申し入れた。「それは断る」と言われた。
「私の分析は、米国の一般のそれとは異なる点が多い。オンレコでインタビューに応じたら、私の仕事に障害が生じる可能性が高いからだ」
19日から広島で始まる主要7カ国首脳会議(G7サミット)はウクライナを主要議題の一つとして取り上げる見通しだ。おそらく、ウクライナへの支援強化とロシアに対する制裁強化を打ち出すのだろう。
しかし、ロシアにそれほど大きな衝撃にはならないという。「ロシアはG7など恐れていない。様々な枠組みの一つに過ぎないと考えているからだ」
3月、アフリカ・アンゴラのジョアン・ロウレンソ大統領をインタビューしたときのことを思い出した。アンゴラは歴史的に旧ソ連・ロシアとの関係が深く、ロウレンソ氏自身、旧ソ連への留学経験がある。
インタビューのなかで、日本には中国のアフリカへの影響拡大を懸念する声もあることを指摘すると、ロウレンソ氏の表情が厳しくなった。「なぜ、そんな質問をするのか。アンゴラにとって中国も日本も関係ない。みなと仲良くするのがいいのだ」という答えが返ってきた。
3月21日、アフリカ南部・ナミビアで独立33周年を祝う記念式典が開かれた。ナミビア政府のフェイスブックに掲載された式典の映像によれば、式典では各国からの祝電が読み上げられた。日本の天皇陛下、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩総書記と、次々に名前が読み上げられた。誰も特に反応を示さない。
ところが、「ウラジーミル・プーチン・ロシア大統領」と読み上げられると、突如、大歓声と拍手がわき起こった。ナミビアは独立戦争で、南アフリカでアパルトヘイト(人種隔離政策)を行った白人政権などと戦った。アパルトヘイトに反対した旧ソ連はナミビアを支援した。南アフリカのアパルトヘイトを推し進めた政権を倒したアフリカ民族会議(ANC)政権は、ロシアと親密な関係を築き、2月には、ロシア、中国両国とともに合同軍事演習を実施した。
西側の「常識」と異なる話の連続に、頭が混乱した。自分の英語が下手だから、聞き間違えているのかとも思ったぐらいだ。
自分が、主に日本語と英語の情報世界に生きてきた反動なのかもしれない。最後に、第2次世界大戦(1939〜1945年)と比べた場合、今はどの時点にあたるのだろうか、と聞いた。
「ようやく1942年ごろといったところだ。まだ先は長い」
●ロシア軍 広域で攻撃強化 英 オランダ 戦闘機調達などを支援へ  5/18
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは、国境を接する広い地域で攻撃を強めているという指摘が出ています。こうした中、イギリスとオランダは戦闘機の調達などを支援する「国際的な連合」の構築に向けてともに取り組むことで合意し、反転攻勢に向けて航空戦力の強化につながるか注目されます。
ウクライナでは16日、首都キーウなど各地でロシア軍による集中的なミサイル攻撃があったほか、ロシア国防省は17日、南部の都市ミコライウにもミサイル攻撃を行ったと発表しました。
一方、ウクライナ大統領府のイエルマク長官は17日、ロシアと国境を接する東部ハルキウ州や北東部のスムイ州、それに北部のチェルニヒウ州でロシア軍が攻撃を強めているとSNSに投稿しました。
16日までの1週間で合わせて160回を超す砲撃があり、子どもを含む16人が死亡したとして「敵は戦闘の前線だけでなく、あらゆる場所でテロを行っている」と非難しました。
これについてウクライナのマリャル国防次官は17日、SNSに「敵はわれわれの軍をその場にとどめようとしている」と書き込み、ウクライナ軍の部隊がほかの地域に展開するのを阻止しようとしているという見方を示しました。
こうした中、イギリスのスナク首相とオランダのルッテ首相は16日、ウクライナへの戦闘機の調達などを支援する「国際的な連合」の構築に向けて取り組むことで合意しました。
イギリスの首相官邸によりますと、この枠組みではパイロットの訓練からウクライナ側が求めているF16戦闘機の調達まで幅広く支援するということです。
これに関連してウクライナのクレバ外相は、F16などを念頭に新たな戦闘機の供与を受ける可能性を示唆していて、反転攻勢に向けて航空戦力の強化につながるか注目されます。
●ハンガリー、EUのウクライナ軍事支援基金阻止も OTP銀巡り 5/18
ハンガリーのシーヤールトー外相は17日、ウクライナ政府が戦争支援者リストからハンガリーのOTP銀行を削除しない限り、欧州連合(EU)による次回の対ウクライナ軍事支援資金や対ロシア制裁を阻止する考えを示した。
ハンガリーは今週、EUが運営する基金「欧州平和ファシリティー(EPF)」からウクライナ軍事支援に追加で5億ユーロ(5億5040万ドル)を充てる案に反対した。
EU加盟国政府がウクライナに供与した武器や弾薬の費用を請求できるようにするものだが、ハンガリーは承認の条件として、バルカン半島や北アフリカなど他地域にも資金を充てるよう保証を求めた。
だがEU外交官によると、非公開の場では、ウクライナがOTP銀行をブラックリストに指定していることが反対の主な理由であることを明確にしたという。
EU当局者は、ブラックリストの対象がOTP全体かロシア支店のみか確認を進めるなど問題解決に取り組んでいると述べた。
●ウクライナ産農産物の輸出“ロシアとの合意 さらに2か月延長” 5/18
ウクライナ産の農産物の輸出をめぐるロシアとウクライナの合意について、仲介にあたったトルコや国連はさらに2か月延長するとして、7月中旬までいまの輸出の枠組みが維持される見通しとなりました。この合意をめぐっては、ロシア側が延長に同意しない姿勢を示し、懸念の声が上がっていました。
ロシアとウクライナは去年7月、国連とトルコの仲介でウクライナ産農産物の輸出の再開で合意し、これまでに2度、期限が延長されましたが、ロシア側は「ロシア産の農産物などの輸出が滞っている」と主張して、今月18日以降は延長に同意しない可能性を示唆し、懸念の声が上がっていました。
この合意についてトルコのエルドアン大統領は、さらに2か月延長すると、17日自身のSNSなどで発表し、7月中旬までいまの輸出の枠組みが維持される見通しとなりました。
また国連のグテーレス事務総長も17日、ニューヨークの国連本部で会見し「決定を歓迎する。世界にとってよいニュースだ。食料は世界で最も弱い立場にある人々のもとに届いている」と述べました。
これを受けてウクライナのクブラコフ副首相兼インフラ相もツイッターで「食料安全保障の強化に力を尽くしてくれた国連とトルコに感謝している」と歓迎しました。
一方、ロシア外務省のザハロワ報道官は2か月延長で合意したことを確認したと述べたうえで「最も困っている国々を助ける機会となる」と指摘し、ロシアが関係強化を目指すアフリカなど途上国に寄り添う姿勢を示すねらいもあるとみられます。 
●プーチン「再び本当の戦争が始められた」発言が示唆する“核を使う可能性” 5/18
「われわれの祖国に対し、再び本当の戦争が始められた」。これは5月9日、戦勝記念日の式典におけるロシアのプーチン大統領の発言だ。ウクライナ侵攻が始まって1年以上が経ったいま、“新たな戦争”を仄めかした意図はどこにあるのか。プーチン大統領研究の第一人者で筑波大学名誉教授の中村逸郎さんが解説する。
「戦争に核を用いることを示唆していると考えられます。なぜなら、ロシアにはもう戦局を変える兵器がなく、残されている決定打は核だけだからです。以前とは違うステージに入ったことを強調したかったのでしょう」
もし現実となれば、どんな展開が予想されるのか。
自作自演で核攻撃を正当化する
すでにプーチン大統領は今年3月、ベラルーシに戦術核兵器を配備する計画を発表している。
「プーチン氏が核を撃つ『Xデー』は5月19日から始まるG7広島サミット期間の可能性があります」(中村さん)
世界はいま、過去に例がないほど緊迫しているのだ。自衛隊元陸将の福山隆さんがこう話す。
「戦争をやめるとプーチン大統領は国内で求心力を失い、政治生命はもちろん命も失うことになる。また、いま戦争をやめれば勢力を増してきている中国が世界のイニシアチブを取ってしまうばかりか、ロシアが崩壊する危険もあります。だから、プーチン大統領は走り続けるしかない状況なのです。何より、どの戦争も同じですが、継続すればそれだけ際限なくエスカレートしていくのがセオリーです。つまり、人やものがいくら犠牲になったとしても、可能な作戦はなんでもやるようになる。そこで登場するのが、最終兵器である核というわけです」
中村さんが続ける。
「“経済がめちゃくちゃになっても戦うべき”と主張する強硬派もいますが、ロシア国内でも“戦争は間違いだった”との声が日に日に高まっています。大統領府の高官まで“今回の戦争はやりすぎだ”と公言するありさま。プーチン氏の地位そのものが危うい状況です。そういった“内なる抵抗勢力”を沈黙させるためにも、一発逆転を狙って核兵器を使う可能性があるのです」
では、「核のボタン」が押されるとき、一体どこが狙われるのか。
「標的として第一に考えられるのが戦争相手国のウクライナ。第二にウクライナ国境近くのロシア領内に“自作自演”で落とすことが考えられます。周囲でとやかく言う人たちや自身の言うことを聞かない人たちを一掃しつつ、ウクライナやアメリカのしわざだと主張し、他国へ核攻撃するのを正当化するシナリオです」(中村さん)
福山さんもウクライナへの核使用があるとみる。
「ウクライナ領内のどこに落とすかは、100通りのターゲティングをしているはず。大量殺戮に見えないようにしつつ、かつゼレンスキー大統領やNATO(北大西洋条約機構)にとどまらず世界中に恐怖心を植え付けられるようシミュレーションを重ねていることでしょう。標的として考えられるのはロシアがウクライナから奪い、占領した地域です。激戦地域で人が少ない空白地帯に核を撃ち込めば、ウクライナ軍も入って行けなくなる」
懸念される核攻撃は爆弾だけではない。
「核を高層大気圏で空中爆発させ、通信や電力システムを断絶させる『電磁パルス(EMP)攻撃』という手段もあります。瞬間的に高電流、高電圧が発生し、あらゆる電子機器が故障する。電力インフラが破壊されて広範囲で停電が起きるほか、電話や銀行のオンライン回線など通信が途絶、大混乱を引き起こします」(福山さん)
広島から西日本全体に被害が及ぶほどの威力
最悪のシナリオとして日本が狙われる可能性もある。
「ロシアは過去、日本に何度も警告を発しています。例えば3月28日、ロシア海軍が日本海で超音速対艦ミサイルを使用する演習を行いましたが、あれもそのひとつです。加えてG7が開催されている期間の広島には、バイデン米大統領をはじめ各国の首脳が多数来日する。それを一網打尽にするために核を撃ち込んでもおかしくない。世界の主要国の中で日本が最も核兵器に弱く、迎撃できないのもその理由です」(中村さん)
日本に撃ち込まれるとすれば、どんな核兵器が使われるのか。中村さんが続ける。
「ロシアが撃つとすれば、おそらく大規模な目標の破壊を目的とした『戦略核』になる。広島から西日本全体に被害が及ぶくらい強大な威力を持つ核を使う可能性が高いです」
一方、福山さんはこうみる。
「現在のところロシアが日本を直接撃つ大義名分はないですが、このまま戦争がエスカレートすると第三次世界大戦に突入する恐れがある。もし戦争が始まれば極東にあるロシア基地だけではなく、中国や北朝鮮からも核で狙われる可能性があります。そうなれば例外なく、日本のどこにでもミサイルが降ってくる可能性があります」
ロシアが日本を直接核攻撃するとなれば、やはり米軍基地が狙われるのだろうか。
「逆です。米軍基地に直接撃ち込んだ瞬間から、米露対決という世界的戦争にエスカレートします。だから、米軍基地は避けるはずです。日本に撃ち込むとすれば、まずは離島など人の少ないところに威嚇的に発射するのではないでしょうか」
実際に核を撃ち込まれたとき、日本は自国を守れるのだろうか。
「日本になすすべはない。核ミサイルの迎撃はまだ人類が経験したことがなく、放射性物質が大気中に飛散するのか、単に破片が落ちてくるのかまったくわかりません。国を守るためには核ミサイル攻撃を受けても防衛できる迎撃システムの開発が必要です」(中村さん)
たとえ攻撃されたのが他国であったとしても核には甚大な被害が伴う。
「ウクライナの首都キーウに核が使われ、南東から北西に風が吹いた場合、ポーランドやドイツ、フランスにかけて、ヨーロッパ北部の広い範囲が汚染されます。日本に直接の汚染影響はすぐにはこないものの、食料やエネルギーなどの供給に大きな影響を及ぼし、いま以上の経済的な大混乱は免れない。日本が空襲や原爆に苦しんだ日々が、明日またやってくるかもしれない。世界は極めて不安定な時期にあることを忘れてはなりません」
核の危機は決して“対岸の火事”ではない。
●ロシア、フィンランド大使館の銀行口座を凍結 5/18
フィンランド外務省は17日、在モスクワの大使館と在サンクトペテルブルクの総領事館の銀行口座がロシア政府によって4月末に凍結されたと明らかにした。
外務省は声明で、「フィンランドはロシア当局と連絡を取り、調査を求めた。フィンランドはロシアに対して、フィンランド外交団の現地通貨と決済取引を確保するよう求めた」と述べた。
外務省によれば、ロシア当局から口座凍結の決定に関する説明はまだない。
フィンランドは4月に北大西洋条約機構(NATO)の31番目の加盟国となった。これにより、欧州北東部の安全保障の態勢に大きな変化が生まれ、NATO加盟国がロシアと接する国境線の長さは約1300キロ増加した。
フィンランドのNATO加盟はロシアのプーチン大統領にとって打撃となった。プーチン氏は長年にわたってNATOを弱体化させようと試み、ウクライナへの侵攻の前にはNATOのさらなる拡大を停止するよう求めていた。
フィンランドは今年に入り、ロシアと国境を接する東部で、フェンスの建設を開始した。計画では東部国境に130キロから260キロのフェンスを構築する。
●キーウに今月9回目のミサイル攻撃 前日の砲撃で少なくとも9人死亡 5/18
ウクライナの首都キーウで18日早朝、ロシアによる空からの攻撃があった。キーウへのこうした攻撃は今月になって9回目。前日には各地で砲撃があり、5歳男児を含む少なくとも計9人が死亡、19人がけがを負ったとされた。
キーウのヴィタリ・クリチコ市長は18日、落下した破片によって市内のガレージで火災が発生したが、負傷者はいなかったと通信アプリ「テレグラム」に書き込んだ。
ウクライナ当局によると、南西部の港湾都市オデーサではミサイル攻撃で1人が死亡、2人が負傷した。このほか、ウクライナ中部ヴィンニツャ、フメリニツィキー、ジトーミルの各州でも爆音が響いた。
キーウの軍事行政当局は初期の情報として、飛来したミサイルはすべて撃墜したとみられるとした。キーウのセルヒイ・ポプコ行政府長官は、カスピ海上空でロシアの戦略爆撃機から多数のミサイルが発射されたと述べた。巡航ミサイルも含まれていた可能性があるとし、空爆後にロシアはキーウ上空に偵察用ドローン(無人機)を飛ばしたとした。
ポプコ氏はまた、キーウの東で住宅以外の建物が炎上したと説明したが、負傷者の有無は明らかにしなかった。
前日には5歳児が犠牲に
前日17日にはウクライナ各地が砲撃され、少なくとも計9人が死亡、19人がけがを負ったとされた。ウクライナとロシアは互いに、相手が民間人を攻撃したと非難している。
南部ヘルソン州のオレクサンドル・プロクジン知事は、州内のゼレニウカ村をロシアが砲撃し、5歳男児など3人が死亡、2人が負傷したと話した。商店の外を砲弾が直撃したという。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はビデオ演説で、ゼレニウカ村で死亡した少年は7月で6歳になるはずだったと説明。「これはテロリストによる新たな砲撃だ。人々はごく普通の店の近くの通りにいただけだった」とし、国際社会にロシアへの圧力強化を訴えた。
一方、ロシア占領下の東部ドネツク市では、ウクライナの砲撃によって5人が死亡、15人が負傷したと、ロシアの支援を受けるアレクセイ・クレムジン市長が述べた。
同市長は、ウクライナ軍が17日だけで砲弾163発とロケット弾20発を同市に向けて発射したと非難。負傷者には13歳の子どももいたとした。また、砲弾が民家や集合住宅を直撃し、インフラが被害を受けたと述べた。
BBCは、どちらの主張とも独自に検証できていない。
ドネツク市は2014年から親ロシア派の分離主義者が支配している。同市があるドネツク州は、ロシアが昨年、不法に併合した4州の一つ。
ウクライナの反転攻勢
ウクライナはゆっくりと確実に、ロシア侵略軍に対する大規模な反転攻勢の準備を進めている。
西側当局によると、ウクライナ軍は戦車や戦闘車、工兵などを結集させているという。また、地雷除去や架橋、長距離砲による攻撃といった技術も整えているという。
西側当局はロシア軍について、困難な状況にあるものの防衛線は「潜在的に手ごわく」、部隊は「広範囲の地雷原」に守られているとみている。
そのため、ウクライナ軍の反攻を評価するには、獲得領土の広さだけでなく、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に戦略の見直しをさせられるかも考慮すべきだとした。
こうしたなか、ウクライナのドミトロ・クレバ外相は17日、キーウで中国の外交官と会談。ロシアに領土を明け渡すことになる和平案を拒否した。
ウクライナが黒海を通じて数百万トンの穀物を輸出できるようにする協定は、期限切れ前日に2カ月間延長された。
●「前例ない」首都空爆続く 南部で1人死亡―ウクライナ 5/18
ウクライナの首都キーウ(キエフ)市当局幹部のポプコ氏は18日、ロシア軍によるキーウへの「前例のない火力での空爆」が続いていると述べた。ウクライナとロシアの間では17日、トルコと国連の仲介でウクライナ産穀物輸出の2カ月延長が決まったが、戦況への影響はみられない。
ポプコ氏によると、ミサイルを防空システムで探知し、破壊しているものの、各地に破片が落下。ウクライナ軍によれば、キーウでは17日夜から18日にかけて飛来したミサイル計30発のうち、29発の迎撃に成功した。空爆はキーウ以外でも行われ、南部オデッサで1人が死亡した。
●ウクライナ軍、バフムト周辺で500m前進 ロシア軍は空挺部隊などを追加投入 5/18
ウクライナ軍は17日、東部の激戦地バフムト周辺でさらに前進を遂げたと明らかにした。ロシア側が空挺部隊を含む新たな兵士投入を続けているとも指摘した。
ゼレンスキー大統領は演説で、ロシアの砲撃が複数の地域で続いていることに言及し、国際社会はロシア政府への圧力を強める必要があると訴えた。
ウクライナ軍報道官は同国テレビで「われわれは防衛作戦を成功させ反撃しており、この日は一部で500メートル前進した」と述べた。
ロシア側に弾薬不足の兆候は見られないとし、「敵はあらゆる(兵器)システムを使ってバフムトを制圧しようとしている。何らかの暫定的な成功を収めようと空挺兵を中心に新たな部隊を投入している」と語った。
ロシア側はこれについてコメントしていないが、RIAノーボスチ通信はロシア軍がバフムト西部制圧に向けて戦闘を続けているとする国防省の発表を伝えた。
ロシアの民間軍事会社ワグネルの創始者エフゲニー・プリゴジン氏は「敵の前進を受け、ロシアの空挺兵は敵に有利な位置を取っている」と語り、ウクライナ軍がバフムトで優位に立っていることを示唆した。

 

●ナゴルノカラバフ巡り首脳会談 25日にプーチン氏仲介で 5/19
アルメニアのパシニャン首相は18日、仲介役ロシアのプーチン大統領の提案を受け、係争地ナゴルノカラバフを巡って対立するアゼルバイジャンのアリエフ大統領と25日にモスクワで会談すると明らかにした。
タス通信などが伝えた。アルメニアは本土と支配地域を結ぶ回廊の封鎖解除を要求している。 
●プーチンも青ざめる…ウクライナの「反転攻勢」がいよいよ近づいてきた! 5/19
「反転攻勢」が近づいてきた
ウクライナの「反転攻勢」が秒読み段階に入っている。いつどこで大規模作戦を開始するのか、世界が見守っているが、なかでも、私は「ドネツク州」に注目している。バッテリーの材料になるリチウムをはじめ、重要な戦略資源が大量に埋まっているからだ。
ウクライナはまだ、正式には反転攻勢の開始を宣言していない。だが、実際には、すでに一部が始まっている可能性が高い。ロシア国内やクリミア半島のロシア軍施設などで、原因不明の爆発や火災が相次いでいるからだ。
CNNは5月11日、西側の情報を基に「前段階である形成作戦(shaping operation)を開始した」と報じた。本格攻勢の前に「ロシア軍の司令部や武器集積所、大砲などを攻撃している」という。わざわざ、敵に作戦開始を伝える必要はないので、この見方が妥当だろう。
世界情勢を左右しうるウクライナの地下資源
本格攻勢のタイミングもさることながら、場所も注目だ。ロシア軍が実効支配するクリミア半島と東部ドンバス地域を分断するために「その中間を攻撃するのではないか」という見方も有力だ。私は、とりわけドネツク州の行方に注目している。
そこには、リチウムやタンタル、ニオブといった重要鉱物が埋まっているからだ。とりわけ、自動車などに使われるバッテリーの原材料であるリチウムが貴重だ。その希少性から、リチウムは専門家の間で「ホワイト・ゴールド」と呼ばれている。まさに、ゴールド並みなのだ。
ウクライナの地質学者であるスヴィトラナ・ヴァシレンコ氏とノメンコ・ウリアナ氏は2022年2月、学会に「ウクライナに眠るリチウム資源開発の見通し」と題する論文を発表した。両氏は、ウクライナに眠るリチウム酸化物の埋蔵量を50万トンと推計している。まったく未開発だ。そのうえで、埋蔵が確認されている場所の地図を紹介した。有望視されているのは、シェブチェンキブスケ(Shevchenkivske)と呼ばれる地域である。
重要鉱物の開発、生産をめぐる世界の現状は、中国が圧倒的な支配力を握っている。たとえば、世界に占めるリチウム加工の割合は58%、ニッケルは35%、コバルト65%、グラファイトは71%といった具合だ。
先週のコラムで紹介したように、米国は3月31日、インフレ抑制法に盛り込んだ米国産業優遇政策の一環として、米国製電気自動車に対する優遇税制を発表した。そこで重要な意味を持ってくるのが、リチウムである。
最大で7500ドル(約100万円)もの優遇税制措置を受けるためには、米国製バッテリーと認定される必要がある。だが、肝心の原材料であるリチウムが手に入らなければ、米国は自前でバッテリーを作れないからだ。中国との競争に勝つためにも、ウクライナのリチウムを確保できるかどうかが、決定的な鍵を握っている。
プーチンの狙いはウクライナの資源?
ウクライナのリチウムは、戦争開始前から世界が注目していた。
たとえば、ビル・クリントン元米大統領は昨年4月、米誌「アトランティック」に寄稿した論文で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が侵攻を決断した理由の1つとして「彼はウクライナの地下に眠る貴重な資源を支配したかったのだ」と書いている。
目先の戦いに目を奪われて、欧米メディアも地下資源について、ほとんど言及しなくなってしまったが、実は「地下資源こそが開戦理由」という見方もあったのだ。偶然かもしれないが、先に紹介した論文が発表されたのも、開戦と同じタイミングだった。
米国が資源に関心を抱くのは当然だが、いまとなっては、あからさまに口にできない。「米国はリチウム欲しさにウクライナを応援している」などと受け止められたら「自国の利益のために、ウクライナを戦わせているのか」と批判されてしまうからだ。
とはいえ、ウクライナに膨大な地下資源が眠っている事実に変わりはない。
リチウムなどが集中しているドネツク州を含む東部ドンバス地域の帰趨は、米国にとって、ロシアだけでなく、中国との対決でも鍵を握る。そうだとすれば、この問題は「ウクライナをどこまで支援するか」という話にも直結する。
3月17日公開コラムで指摘したように、米国は「必要とするだけ支援する」と言いながら、水面下では停戦交渉の可能性を探ってきた。共和党のトランプ支持議員を中心に「ウクライナよりも中国の台湾侵攻抑止に、米国の資源を集中すべきだ」という議論も高まっている。
ウクライナの地下資源は「長期的に見れば、中国に対抗するためにも、ウクライナ支援が必要だ」という有力な反論材料になるのだ。
日本にも大きな影響がある
日本の経済産業省は3月28日、米国と日米重要鉱物サプライチェーン強化協定に署名した。この協定は、先週のコラムで紹介した米国の「新しいワシントン・コンセンサス」に同調し、かつ西側陣営がリチウムなど重要鉱物のサプライチェーンを確保するうえで、重要な意義をもっている。
日本は協定締結によって、電気自動車のバッテリー製造で、米国の自由貿易協定(FTA)締結国と同等に扱われる資格を得た。遠からず、日本の電気自動車も米国車並みの税制優遇措置を受けられるようになる可能性が出てきたのだ。
私は、先週のコラムで「日本としては当面、米国に付き合っていくしかない」と書いた。日本は英国やフランスと違って、中国に近いうえに、独自の核兵器はなく、核の持ち込みも許さず、安全保障を米国に頼り切っている国であるからだ。重要鉱物をめぐる日米協定は、その第1歩になる。
東部ドンバス地域をめぐる戦いの行方は、巡り巡って、日本にも大きな影響を及ぼす。これから夏までの戦いが、今回の戦争の最大の山場になるだろう。
●6月にナワリヌイ氏支持デモ ウクライナ侵攻下で異例 ロシア 5/19
ロシアのプーチン政権を批判し、収監中の反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の陣営は18日、本人が47歳を迎える6月4日、釈放を求めて国内外各地で街頭行動に出るよう支持者に訴えた。
ウクライナ侵攻を続けるロシアでのデモ呼び掛けは異例。
「戦時体制」の言論弾圧で国民の一部に不満がくすぶる中、デモが拡散すれば、多数の拘束者が出る恐れがある。
毒殺未遂の治療をドイツで受け、ロシアに帰国した2021年に拘束・収監されたナワリヌイ氏にとっては、刑務所で迎える3回目の誕生日。国外脱出を余儀なくされた側近らは動画メッセージで、自由を求める国民一人ひとりもナワリヌイ氏も「独りぼっちではない」と強調した。
●シリアに関するロシアとの取引によってウクライナ戦争終結を早める可能性 5/19
先週、ロシア軍が「信頼できる戦闘部隊の深刻な不足」によりバフムトで後退したとの報道があった。ロシア政府は急いでこのニュースを否定した。ロシア軍が後退するたびに欧米の人々は喜んでいるが、彼らは自分たちが何を望むかに慎重になるべきだ。欧米が最も望まないのは、ロシアが自暴自棄になって自暴自棄な手段を取ることだ。
ロシアは敗北を受け入れないだろう。それはウラジミール・プーチン大統領やクレムリンを超えて、ロシアの国家威信の問題なのだ。彼らはあらゆる手段で敗北を防ごうとするだろう。したがって、死傷者数と損害を可能な限り抑えつつこの戦争を終わらせるためには交渉を通した解決が必要だ。シリアはそのような解決の入り口になる可能性がある。欧米とロシアには同国の安定化という共通の目標があるからだ。しかし当然ながら、争点となるものが一つある。バッシャール・アサド大統領の存在である。
これまでのところ、欧米の対ロシア政策は同国を孤立させるというものだ。しかし、ロシアを孤立させることで戦争が終わる可能性は低い。ロシアは生き残るために巧妙な方法を見つけている。同盟相手として米国の競合国に目を向けているのだ。ロシアは現在、中国に近づいており、イランにも間違いなく接近している。サウジアラビアやトルコなどの米国の同盟国はロシアに関して中立を保っている。これらの国は、信頼できない気まぐれなパートナーを喜ばせるためにロシアとの関係を断つことに価値を見出していないのだ。
欧米諸国でロシアの資産が差し押さえられているにもかかわらず、ロシアは生き残ることができるようだ。ドイツは今年中にロシア産原油の輸入をほぼ全て停止することを予定しており、2024年半ばまでにロシア産天然ガスの輸入を停止するというより広範な計画も持っている。EUにも同様の計画がある。2027年までにロシア産化石燃料の輸入を停止しようとしているのだ。これらは全て、ロシアと関わり合うのではなく孤立させるための取り組みだ。それでも、ロシアは天然ガスを代わりに買ってくれる国を見つけるだろうし、東側で友好国を作るだろう。経済的苦難がロシアを降伏へと追いやることはない。
これまでのところ紛争解決の可能性はないように見える。ロシアと関わり合うのではなく孤立させることがトレンドだからだ。紛争解決のためには関わり合いが必要であり、関わり合いが上手くいくためには信頼構築が必要だ。現在、欧米とロシアの間には非常に大きな不信感がある。問題も複雑だ。ウクライナをめぐっては、クリミア、ドンバス、ジョージア、欧州におけるNATOの地位のほか、多くの複雑な要因が絡んでいるのだ。
より容易な道は、シリアに関してロシアとの関わり合いを開始することだろう。それは、国際社会とロシアの両方にとっての長期的目標がシリアの安定化であるという単純な理由による。アラブ諸国は現在、シリアにおけるイランやトルコの影響力を封じ込めるためにアサド大統領との関わり合いを段階的に行っている。一般に考えられているのとは逆に、それがロシアの影響力の低減につながるのであれば米国はこのプロセスを容認するだろう。
しかし、アサド大統領はいかなる変化を起こすことにも乗り気ではなく、その能力もない。同国南西部の麻薬密売人を一人捕まえる筋力さえない。ヨルダン空軍が彼の代わりにその仕事をしなければならなかった。アサド大統領には約束を反故にした前科もある。彼には今さら自身の行動を変える理由はない。したがって、地域の諸大国と関わり合う必要があるのだ。そして、ロシアはシリアの安定化のために登場する必要がある主要プレイヤーである。
「シリアは紛争解決の入り口になる可能性がある。欧米とロシアには同国の安定化という共通の目標があるからだ。」 ダニア・コレイラト・ハティブ博士
アサド大統領はロシアの同盟者だが、彼がシリアを安定化できないことをロシアは知っている。ロシアはいくつかの問題に関してアサド大統領と衝突してきた。例えば、アレッポをめぐる戦闘の際、ロシアはチェチェン軍警察を送り込んだ。地元住民が感情を害したり攻撃を受けたと感じたりしないよう、スンニ派部隊が派遣された。これらの部隊の任務はアレッポを安定化させることと、家屋が没収されないようにすることだった。しかし、アサド大統領とイランの民兵組織はロシア軍に対する作戦を継続した。最終的にロシア軍は撤退した。アサド大統領やイラン人らと対決したくなかったからだ。
そして2018年、難民の帰還を促すために、ロシアはアサド大統領に対し、徴兵に応じなかった人々に恩赦を与えるよう圧力をかけた。アサド大統領は難民の帰還を防ぐために、18歳になったのに徴兵に応じなかった男性全員に懲役と罰金を科す法律を作っていた。この法律のせいで、国外にいる間に18歳になった男子がいる難民家族は帰国できなかったのだ。恩赦は与えたものの、アサド大統領は難民の帰還を妨げるための巧妙な方法を見つけ出した。帰還者を恣意的な容疑や偽の容疑で逮捕したのだ。そのため人々は帰還を思いとどまった。
アサド大統領が妨害者の役割を果たしたもう一つの例はダルアーの件だ。シリア体制と反体制勢力の和解に向けたロシアの努力が地域の安定化に至らなかったため、彼はダルアーに関する全ての約束を反故にしたのだ。
それでもロシアにとって、シリアにおける利益を守ってくれる存在はアサド大統領以外にはいない。彼がいなくなれば、ロシアは自国の利益を守るために投資してきたもの全てを失うだろう。具体的にはタルトゥースとフメイミムの基地のことだ。だから、欧米がロシアと取引をまとめ、同国を対等な存在として扱えば、信頼構築に向けた最初の一歩となり得る。
欧米の心構えはロシアに対していかなる譲歩を行うことにも反対するというもので、ゼロサム的メンタリティによって駆動されているが、柔軟性が必要だ。そうでなければ、ウクライナはロシアと長い紛争を戦うことになるだろう。さらに悪ければ、より壊滅的な戦争へと発展し、ロシアが極限的な手段を使うことになる。そのため、関わり合うことが重要であり、シリアは比較的容易な入り口になる可能性がある。また、シリアに関する取引を行えばプーチン大統領の面子を保つことができるだろう。ロシアの戦略的利益を守るような取引を行えば、プーチン大統領は国民に対して「欧米とやっと話が付いた。ロシアに恥をかかせるわけにはいかないことを欧米が理解したのだ」と言いつつ、さらなる取引を行う気になるかもしれない。
欧米は早くロシアと関わり合ってシリアを安定化すべきだ。それが他の諸問題の解決を効率化するための良い入り口だからだ。しかしその第一歩は、欧米がロシアを相手にする際のゼロサム的な考え方を捨てることだろう。
●中国和平案でG7切り崩し 制裁への武器は「穀物」―ロシア 5/19
ロシアのプーチン政権は、ウクライナ侵攻の長期化を視野に「戦時体制」を既に固めている。有利な停戦に向けて期待するのは、ゼレンスキー政権の後ろ盾である先進7カ国(G7)が、ロシアへの強硬論と妥協論で分断されることだ。目下、友好国・中国が「和平案」を掲げて欧州に特使を派遣しており、G7を切り崩したいロシアに助け船を出している。
ロシア経済は西側諸国の制裁による崩壊を免れ、昨年の国内総生産(GDP)は前年比2.1%減にとどまった。だが、これ以上の悪化は許容し難く、今年4月に「G7が対ロ全面禁輸を検討中」と外国メディアで報じられると、メドベージェフ前大統領は「(黒海経由の)穀物輸出合意を打ち切る」と警告した。
G7議長を務める岸田文雄首相がウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃訪問した3月21日、モスクワでは中ロ首脳会談が行われた。議論した「中国の立場」は和平案とも称されるが、ロシア軍撤退を要求せず、制裁に反対する内容。実質的に「ロシアの立場」に近く、ゼレンスキー大統領は「和平案」ではないと強く主張している。
中国は支持を得るべく、李輝ユーラシア事務特別代表が15日、ウクライナ、ドイツ、フランス、ポーランド歴訪を開始した。月末のロシア訪問で締めくくる予定。迎えるルデンコ外務次官は「(李氏が)歴訪で得た印象を伝えてくれるのを心待ちにしている」と述べ、G7に対抗する中ロの共闘をアピールした。
●制裁解除なければ穀物輸出合意の延長なし ロシア 5/19
黒海のウクライナの港からのウクライナ産穀物の輸出延長に関する合意について、ロシア外務省は18日、特定の制裁解除という要求を西側諸国が満たさなければ合意は延長されないと警告した。
世界の飢餓を解決するために重要と位置付けられている輸出合意について、ロシアは7月17日まで2カ月間延長することに同意した。
合意によってウクライナは穀物を黒海の港から輸出できる一方で、ロシアの輸出は西側諸国の制裁によって妨げられているとロシアはたびたび不満を示してきた。ロシア大統領府は、ロシアからの輸出促進を支援する国連との合意は成果を生んでいないと主張している。
ロシア外務省は譲歩がない限り合意延長の協議はないと警告。同省の声明には「ロシア産の肥料や食料に対する一方的な制裁を実際に解除する必要性を米国、英国、欧州連合(EU)に喚起する。最貧国へのロシア産肥料の寄付すら制裁のために阻止され続けている」とある。
穀物に関する輸出取引はロシアによる戦争に端を発する。ウクライナへの本格侵攻後、ロシアは黒海にあるオデーサ、チョルノモルスク、ピブデンニといったウクライナの主要な港からの輸出を封鎖した。
国連とトルコが仲介するまで、何百万トンというウクライナ産の穀物はロシアの封鎖によって必要とする国々に届けられずにいた。
ウクライナのボドナール駐トルコ大使は「現在の合意延長はロシアの外需を満たすことを考慮しているものではない」と指摘。さらに「ロシアが取り付けようとしているのは、アンモニアの補給ルート、そして穀物や肥料の取引に関係している銀行や組織に対する制裁の解除に関連したものだ。この問題はまだ協議中だ」と述べた。
●中国、中央アジア5か国と首脳会議…「12項目の提案」支持取り付け狙う  5/19
中国と中央アジア5か国による首脳会議が18日、西安で開幕した。中国の 習近平シージンピン 国家主席は先進7か国首脳会議(G7サミット)開催をにらみ、中央アジア各国との連携を誇示しつつ、ウクライナ情勢を巡る国際世論にも影響力を及ぼそうとしている。
対面での開催は初めてとなる。習氏は19日に各国首脳との共同記者会見に臨む。中央アジアとの関係強化に関する演説も行い、巨大経済圏構想「一帯一路」を通じた経済協力や投資の強化を提唱する。ロシアによるウクライナ侵略が主要議題となるG7サミットに対抗する形でウクライナ問題も議論する。中国が掲げる「12項目の提案」への支持取り付けを図る見通しだ。
中国外務省によると、習氏は17、18の両日、各国首脳との個別会談もこなした。強権的手法が指摘されるカザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領には「カザフが国情にかなった発展の道を歩むことを支持する」と述べた。中国が「内政に干渉している」と批判の矛先を向ける米欧を意識した発言となる。
ロシアとのつながりが深い中央アジアには日米欧が取り込もうと動き、中国側は「地政学的な駆け引きの戦場にしてはならない」( 秦剛チンガン 国務委員兼外相)と警戒する。中央アジアは習氏が重視する一帯一路の起点でもあり、鉱物資源も豊富で、経済面での要衝でもある。
ロシアは中国との連携を重視する一方、「勢力圏」と位置づけてきた中央アジアで中国の影響力が強まることを警戒している。プーチン露大統領は9日、モスクワでの旧ソ連による対ドイツ戦勝記念日の式典に中央アジア5か国の首脳全員を招待。演説で「ソ連の人々すべてが共通の勝利に貢献した」と一体感を強調した。しかし、中央アジア各国には、ウクライナ侵略を受けて、ロシアと政治的に距離を置く動きも見られる。
●アフリカ代表団がモスクワ訪問へ、ウクライナ和平巡り=ロ報道官 5/19
ロシア大統領府(クレムリン)は18日、ウクライナでの戦争終結に向け主導的役割を果たそうとするアフリカ諸国の代表団がモスクワを訪問すると明らかにした。
ロシア・ウクライナ間の和平交渉を巡っては複数の国が仲介を申し出ており、中国の特使も今週に欧州を訪問している。
アフリカの計画詳細はまだ公表されていないが、南アのラマポーザ大統領はゼレンスキー・ウクライナ大統領とプーチン・ロシア大統領がアフリカ指導者らとの会談に同意したと述べた。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は「複数の国から代表団が派遣され、モスクワに滞在する」と記者団に述べた。
また、「ウクライナ情勢打開につながるいかなる助言も、大いに注意を払って傾聴する用意があると既に述べている」とした。 
●「ソ連が原爆投下と米吹聴」 プーチン氏側近、責任転嫁―ロシア 5/19
ロシアのプーチン大統領の最側近パトルシェフ安全保障会議書記は19日、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に絡み「(米国は原爆使用について)謝罪してこなかったし、今後も謝罪するつもりはない」と批判した。「落としたのは米国ではなく、ソ連だと日本人に吹聴している」と根拠なしに述べた。タス通信が伝えた。
ロシアによる核兵器の威嚇をG7が非難する中、米国に責任転嫁を図ろうとしたとみられる。
パトルシェフ氏は、米国が軍事的必要性なしに広島と長崎に原爆を投下したことが「破滅と膨大な数の市民の犠牲をもたらした」と語った。
●インド記者「戦争は反対だが中立的立場」カギ握る“グローバルサウス”本音 5/19
ウクライナのゼレンスキー大統領の電撃来日について、世界のメディアはどう見ているのでしょうか。
ゼレンスキー大統領の来日には、大きな注目点があります。“ロシア寄り”ともいえる国のトップに、直接、会えるかもしれないことです。それがG7に招待されているインド、ブラジル、インドネシア、ベトナムの4カ国。グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国の中で、ロシアに対する経済制裁に非協力的な国です。
そのリーダー格が今年のG20議長国であるインド。エネルギー高騰に苦しみながら制裁を続ける各国をよそに、割安になったロシア産の原油を大量に買っています。
『新興国がロシアの制裁逃れに利用されている現状を変えなければ、この戦争は終わらない』。ゼレンスキー大統領の来日は、そんなメッセージを、直接、訴える機会になるかもしれません。
インドメディア『WION』は、「広島でウクライナとインドの首脳会談が決定」と報じました。率直に聞いてみました。インドメディア『WION』シダーン・シバール上席特派員:「(Q.ゼレンスキー大統領の来日の目的はグローバルサウスとの対話とも言われている。グローバルサウスの国際社会での立場が重要になりつつある。どう評価する)グローバルサウスがどっちつかずなのは、G7ほど豊かでないからです。ゼレンスキー大統領が働きかけても中立的な立場は変わらないでしょう。なぜなら国によって優先事項や懸念は違います。ヨーロッパが懸念するのはウクライナ情勢でしょう。ウクライナには同情するし、戦争には誰も賛成しませんが、ほかの国の見解や、その経緯も考えるべきです。インドやインドネシアなどを大国は味方につけたいでしょうが、インドはエネルギーや食料など、何が得られるかを考えるのです。ゼレンスキー大統領に協力すれば、インドの重要度は増します。モディ首相との会談は、重大なイベントになるでしょう。インドはすでに世界で重要な役割を担っているのです」
同じくグローバルサウスのベトナムにも聞きました。ベトナム国営放送のブィマィンフン東京支局長:「(Q.ゼレンスキー大統領がロシアを説得してほしいと言ってきたら)個人的な意見だが、できればベトナムは、日本を含めたG7各国に対し、対話的方法で、できればロシアとウクライナとの対話、あるいは面談を主催したほうがいい。この対話を通じて、ウクライナもロシアもG7の各国もある。できれば、それぞれ国の立場を調整して、これは良いか反対か。G7の各国が中心的な役割を果たしたらいいのでは」
ロシア、ウクライナ、そしてG7国の間にベトナムがたち、対話での解決方法を模索するべきという意見です。
重要なのは、こうした国から少しでも“ウクライナへの歩み寄り”を引き出せるかどうかです。そんな新興国と友好関係を築いてきたのが日本です。岸田総理:「G7を越えた国際的なパートナーとの関与を強化することであり、この2点をG7として明確に打ち出したいと思います」
アメリカ・バイデン政権を取材している記者にこんな質問をしてみました。CNNホワイトハウス担当のフィル・マッティングリー記者「(Q.サミットは ウクライナが反攻を備えた重要なタイミングで行われます。ウクライナとの連携をめぐり、このサミットの位置付けや重要性は)ゼレンスキー大統領の来日が重要性をすべて物語っています。G7同士も西側の民主主義国も、太平洋地域も互いに接近しています。昨年2月までは、ここまでの接近はあり得ないと考えられていました。ウクライナが反攻を控えたいまこそ 、支援の維持、強化が何より大切です。同時に自国内の支援の重要性を訴えることも重要です。少なくともバイデン大統領はそうです。ウクライナが反攻を控え、なぜ、いまが重要なのか。米当局は、反攻の結果が何らかの和平、解決策の基礎になると考えています」
フランスの主要メディアも同じ見解を示しました。仏紙『ル・モンド』のフィリップ・メスメール東京特派員:「紛争の出口が多く取り沙汰されるなか、G7サミットはとても重要だと思います。ウクライナを支援する国家が広島に集結しているからです 。ここで出口戦略を議論しようとしている。(Q.当然ながら ウクライナ政府は、G7各国に期待を寄せていますが、一方で中国の後押しも期待していますよね)中国を交える必要はあるでしょう。中国は、和平プロセスに関わっています。私は、関係国がそろって、テーブルを囲み、紛争が終わる方法を見つけてほしいです。少なくとも犠牲となっているウクライナを納得させるよう方法です。同時にロシアに恥をかかせないこと。恥をかかせれば、代償を伴います」
●「課題は中国への不信感」戦争終結に向けた対話の可能性は? 5/19
岸田総理はグローバルサウスとの連携強化を掲げていますが、簡単ではなさそうです。
大越キャスター: G7は、支援の規模や中身に違いはあっても、ウクライナに全面的に寄り添うという点では完全に一致しています。しかし、G7が一致しているからといっても、世界が、必ずその方向に動くとは限りません。グローバルサウスの代表格であるインドのジャーナリストの話には深く考えさせられるところがありました。彼は「ロシアによるウクライナ侵攻には誰も賛成していないし、G7がインドを味方につけたいのはわかる。しかし、インドは、エネルギーや食料などの国益が第一で、どちらにも偏らない」と話していました。こうした国々と、ウクライナでの戦争終結に向けて、どう協力関係を築いていくか、そこには難しさがあるなと実感しました。
防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。
(Q.ウクライナにとって、グローバルサウスの国々は、どのような重要性を持つのでしょうか)
ウクライナからすると、ウクライナ支援・ロシアへの制裁は、欧米・G7だけでは十分ではないと思っていると思います。何とかして、グローバルサウスを取り込みながら、国際社会の輪を広げていきたいという願いがあるのではないかと思います。また、欧米諸国は民主国家が多いので、今後、選挙や政権交代があると、中長期的なウクライナ支援が、どこまで維持されるのかという懸念もあるのではないかと思います。
ただ、グローバルサウスの代表格であるインドを取り込むのは、簡単ではなさそうです。20日にクアッドの会合が行われます。他方で、中国とロシアの枠組みであるBRICS、ここにもインドは入っています。インドは、したたかな外交を展開しています。モディ首相とゼレンスキー大統領の首脳会談が予定されていますが、ゼレンスキー大統領が、インドの立ち位置を引き寄せられるのかが注目されると思います。
(Q.欧米各国がウクライナに軍事支援を強め、プーチン政権を追い詰めるのは必然の流れだとしても、やはり外交の力も大きいと思います。その際、G7とは一線を画す中国の動きがポイントになると思います。ウクライナに平和をもたらすうえで、どのようなポイントが大事になっていくと思いますか)
最近、中国は、ウクライナ問題に関して、和平仲介の動きを強めています。ただ、欧米諸国からすると、中国に対する不信感があります。さらに、ポドリャク統領府顧問が対中不信感について言及しています。実際に、中国は影でロシアを支えているところもあり、制裁の抜け穴になっていたりするなど、戦争を継続するプーチン政権を支えようとしているところがあります。戦闘が続く段階においては、ウクライナ自身が中国の和平案を受け入れるのは難しいのではないかと思います。ただ、戦後の復興・復旧となれば、そもそもウクライナと中国の経済的な関係は密ですので、経済力の大きい中国の支援を受け入れるのではないかと思います。
大越キャスター: 広島でゼレンスキー大統領が、どのような日程で動いてくのか、まだ明らかになってはいませんが、G7首脳との合同会議に加え、日本やアメリカとの1対1の会談が行われる日程が浮上しています。
そして、グローバルサウスの代表格・インドのモディ首相との1対1の会談も行われるとインドメディアは伝えています。世界経済、環境問題など、グローバルな問題の議論に加えて、ゼレンスキー大統領の動向がこのサミットの焦点となっています。
●G7広島サミットの”ウクライナ支援” 「去年のサミットより内容が充実」 5/19
G7広島サミットの「会議の最新情報」をお伝えします。国際メディアセンターから青坂記者です。青坂さん!
(青坂記者)ここからは、サミットを長年研究する名古屋外国語大学の高瀬教授とお伝えします。高瀬先生よろしくお願いいたします。
さて、19日午前中、G7の首脳たちは歴史的な平和公園の訪問を果たしましたが、それに先立ち、岸田総理大臣は各国首脳との2国間会談を精力的に行いました。
岸田総理は19日朝、カナダのトルドー首相を皮切りにドイツのショルツ首相、それにフランスのマクロン大統領と相次いで会談を行っています。
そして午後はまず世界経済や生成AI・人工知能などデジタル分野について議論しました。また、つい先ほど終わったウクライナ情勢をテーマにしたセッションでは声明が発表されました。「ロシアのウクライナ侵攻に対してG7が一つに結束することで一致しロシアとロシア侵攻を支援する国に更なる措置を講じた」としています。またロシアによる「核兵器の威嚇」、加えて「使用も許されない」との立場を改めて表明しました。
Q:さて高瀬先生今回のウクライナに関する声明なんですけども、どのように評価されますか?
(名古屋外国語大学・高瀬淳一教授)去年のドイツのエルマウのサミットと比較しますと、非常に内容が充実したなという印象を持ちます。去年は、結束と人道支援というものを中心に特別な文書を出しましたが、今年はさらに復興からの支援とか、財政支援、そしてロシアを追い込むためにいろいろな制裁をさらに幅広く行っていくということも盛り込みました。
Q:過去のものと比較してもかなり進んだ形になった?
(高瀬教授)外務大臣会合のときよりもより多く、財務大臣会合時より幅広くという感じがいたします。
Q:そんな中でウクライナに関してはゼレンスキー大統領の広島訪問はかなりこれ現実味を帯びてきました。
(高瀬教授)そうですね。ゼレンスキ―大統領がいらっしゃって、対面で話をすることによってウクライナ支援というものがさらに拡大し、さらに大きくなる、具体性を持つというようなことが期待されます。
●ロシア軍が巡航ミサイルをキーウへ発射、5月10回目の攻撃… 5/19
ウクライナ空軍などによると、ロシア軍は19日、自爆型無人機22機と巡航ミサイル「カリブル」6発をウクライナの首都キーウなどに発射した。ウクライナ軍は無人機16機とミサイル3発を撃墜したという。露軍によるキーウへの攻撃は2日連続で、5月に入ってから10回目となった。キーウの軍関係者はSNSで、「短い間隔で数波に及んだ」とし、露軍がウクライナ軍の防空網の弱体化を狙っているとの見方を示した。
キーウ周辺に展開している米国製の地対空ミサイルシステム「パトリオット」は露軍のミサイル攻撃で損傷していたが、米国防総省のサブリナ・シン副報道官は18日の記者会見で、損傷は軽微で「完全復旧した」と明らかにした。
一方、ウクライナ軍の報道官は19日、最大の激戦地である東部ドネツク州の要衝バフムト情勢に関し、「我が軍が一定程度、戦闘の主導権を握っている」と述べ、周辺での反撃の進展を強調した。露国防省は19日、セルゲイ・ショイグ国防相が、ウクライナ南部ザポリージャ州の露軍司令部を視察したと発表した。ウクライナ軍の大規模な反転攻勢に備えた動きとみられる。

 

●プーチン大統領「極めて強力な反ロシアプロパガンダ」欧米非難 5/20
G7広島サミットで対ロシア制裁の強化が示される中、プーチン大統領は「極めて強力な反ロシアプロパガンダが繰り広げられている」と述べ、欧米を非難しました。
ロシア プーチン大統領「経済、軍事、政治、情報など事実上、すべての武器がわれわれに向けられている。極めて強力な反ロシアプロパガンダが繰り広げられている」
プーチン大統領は19日、ロシア南部で開かれた会議でこのように述べ、欧米がロシアの歴史や文化、価値観を攻撃し、多民族国家であるロシアを分断させようとしていると主張しました。
そのうえで「制裁や中傷が強まれば強まるほど、ロシア全体の結束は強固なものになっている」としています。
G7広島サミットでロシアに対する制裁強化が盛り込まれた声明が出される中、欧米の動きをけん制する狙いもあるとみられます。
●プーチン体制崩壊の予兆か?ロシアで「民間軍事会社」乱立の3つの事情 5/20
ロシアによるウクライナ侵攻で一躍脚光を浴びた民間軍事会社「ワグネル」。そのトップのプリゴジン氏が東部の激戦地バフムトで「ショイグ!ゲラシモフ!弾薬はどこにあるんだ!」とロシア国防相と軍参謀総長を呼び捨てにしながら、弾薬の供給がなければ撤退すると凄んで見せた映像が記憶に新しい。
ワグネルだけじゃない…ロシアに37の「民間軍事会社」
本来、雇い兵組織は法律で認められていないのだが、実はロシアの民間軍事会社はワグネルだけではない。公開情報の収集分析を行う国際企業「モルファー」が4月下旬に公表したリストには37の民間軍事会社が名を連ね、このうち25社がウクライナで活動しているという。
例えば、ロシアが2014年に併合したクリミア半島の首長、アクショノフ氏が資金面等で支援する民間軍事会社「コンボイ」。約3000人いるという戦闘員にはワグネル出身者もいて、ロシアの主力戦車T80やT90、航空機を保有している。ヤシク副司令官はBS-TBS『報道1930』とのインタビューで「ロシア国防省と契約を締結し命令に従って軍務を遂行している。訓練センターもあり、志願した人に対してスナイパー育成、爆発物の取り扱い、ドローンや戦車の操縦などを教育している」と証言している。
国営企業ガスプロムやショイグ国防相も民間軍事会社を設立
最近注目を集めているのは、ロシア最大の国営天然ガス企業のガスプロムが設立した民間軍事会社で、「ポトーク」「ファンケル」「プラーミャ」という複数の会社の存在が明らかになっている。エネルギー企業が掘削施設やパイプラインなどを守るため警備部隊を設けるのは不思議ではないが、国防省の傘下に入ってウクライナ侵攻に参加している。米国の政策研究機関「戦争研究所」によると、バフムトではワグネルとの主導権争いが激化しているという。
プーチン大統領に近いオリガルヒ=新興財閥のデリパスカ氏とティムチェンコ氏がスポンサーになっている民間軍事会社「レドゥット(リダウト)」もウクライナ侵攻に戦闘員を派遣している。ウクライナの捕虜となったロシア人戦闘員が「前線ではレドゥットの指揮下にあった」と語っている映像がSNSで流れた。
また、興味深いのはショイグ国防相までが「パトリオット」という民間軍事会社を立ち上げていることだ。ウクライナ東部軍の広報担当官は去年12月、ドネツク州南東部のウフレダルでパトリオットの部隊がワグネルと競う形で活動していると指摘していた。
ワグネルを排除へ…ロシアで民間軍事会社が乱立する3つの事情
ロシアの民間軍事会社は、いずれも国防省や治安機関FSB=連邦保安局など政権側と何らかの関わりを持っている。本来は非合法のはずなのに、プーチン大統領のお墨付きのもと数多くの民間軍事会社が設立され活動している背景には大きく3つの事情がある。
まずはウクライナで戦うための兵力の補充だ。欧米の推計によると、今回の戦争によるロシア軍の死傷者は最大で20万人に上る。不足する兵員を確保するために国家総動員令を出すのは可能だが、国民の動揺と反発を恐れる政権側はとても踏み切れない。そこで民間軍事会社の戦闘員を代わりに戦地に送り込むのである。彼らはロシアの平均給与の数倍で雇われるが使い捨てにされ、仮に多数が死傷したとしても政府は責任を問われない。
2つ目は、クレムリン内の権力・利権争いとの関係だ。影響力を強めるワグネルのプリゴジン氏は、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長ら軍の主流派と対立。権力への野心を隠さなくなったことで大統領周辺からも疎まれている。プーチン大統領のサンクト・ぺテルブルク時代からの盟友、ミレル氏が率いる国営企業のガスプロムが“官製”の民間軍事会社を相次いで設立したのも、ワグネル排除の動きの一環とみられる。
プーチン体制崩壊でスムータ=大動乱の時代が来るか?
そして3つ目は、プーチン体制が崩壊する時に備えて、力ある政治家やオリガルヒたちが私兵部隊を整え、自らの身の安全を確保するとともに権力や利権を奪取しようと目論んでいるというものだ。
ロシアの腐敗を告発するサイト『グラグ・ネット』の運営者、オセチキン氏は「彼らは権力移譲の準備をしている。ロシアにおける権力の分配は権力者の間のみで行われることを完全に理解している」としたうえで「何かが起こった場合に彼らは民間軍事会社に頼ることができる」と指摘している。
ロシアの人たちはスムータ=大動乱を恐れる。スムータとはムソルグスキーのオペラ『ボリス・ゴドノフ』でも描かれた17世紀初頭のロシアの大動乱を言うが、ロシア革命の時の大混乱やソ連崩壊直後の混迷の時代を指す言葉としても使われる。プーチン体制が本当に崩壊するのかはわからないが、民間軍事会社の乱立はスムータを予感させる現象の1つと言えなくもない。
●プーチン大統領の孤立がさらに深まる−ゼレンスキー大統領 広島サミット参加 5/20
ウクライナのゼレンスキー大統領がG7広島サミットに対面で出席することがわかった。ゼレンスキー大統領にとって、アメリカのバイデン大統領やG7の首脳らに加え、アフリカやアジアなど新興国・途上国「グローバルサウス」に対して直接訴えることができる意味は大きい。 厳しい経済制裁下にあるロシアは、今回広島サミットに出席する「グローバルサウス」を頼みの綱としているためだ。
ゼレンスキー大統領がインドのモディ首相やブラジルのルーラ大統領、ベトナムのファム・ミン・チン首相といったロシアが拠り所にしたいグローバルサウスの首脳らに直接呼び掛ける姿が映し出されれば、ロシアにとって衝撃は少なくない。
孤立深まるロシア「他の世界との隔絶 鮮明に」
クレムリンに近い関係者は、ゼレンスキー氏とインドやブラジルとの直接会談を警戒しつつ、「広島サミットは『レッド・ライン』になる。西側とロシアとの交渉の余地は完全に失われ、ロシアと他の世界との隔絶を鮮明にする」と述べる。
ゼレンスキー氏の広島サミットへの出席は、プーチン氏の国際的な孤立を際立たせることになる。
中国は中央アジア5か国の首脳を集めた「中国・中央アジアサミット」を主催し、G7への対抗勢力を着実に構築しているが、そこにプーチン氏の姿はない。
さらにプーチン氏は、ロシアが主導するBRICS(新興5カ国)の首脳会議への参加すら危ぶまれている。8月に南アフリカで開かれるが、ICC(国際刑事裁判所)による逮捕状発行を受けて、南アフリカがプーチン氏の出席に難色を示しているのだ。
関係者は「プーチン氏はできるだけ国際会議に出席し、国際的に孤立していないのだと示したいが、それができないでいる」という。
存在感を増すインド・モディ首相
ロシア政府関係者は「今回の広島サミットでもG7の首脳らは、プーチン氏の動向を受けたG20への対応についても話し合うだろう」とみている。
この関係者によると、「プーチン氏は9月にニューデリーで開催されるG20首脳会議への出席を望んでいる」。一方で「ドイツ政府は、プーチン氏が出席するのであれば、首脳レベルでの出席は取りやめるとの方針を示している」という。
プーチン氏とも個人的に親しいモディ首相が、すでに1年以上続くウクライナ情勢をめぐりG20をどのような舞台にするのかも今後の国際情勢を大きく左右することになる。
プーチン氏は国内の動きにも警戒が必要
広島サミットへのゼレンスキー大統領の出席で、ロシアの国際的な孤立が改めて強調されることでプーチン政権を支えるエリートたちに動揺が広がる可能性もあり、ロシア国内の動きにも注意が必要だ。
さらにロシアの反体制派も動き始めている。現在服役中の反体制派指導者ナワリヌイ氏の陣営が18日に声明を発表し、ナワリヌイ氏の誕生日である6月4日に国内各地の主要都市でデモを行うよう訴えかけた。
独立系メディア「重要な物語」によると、ロシア大統領府が国内とウクライナの占領地の500以上の大学で秘密裏に行った調査では、ロシアの現状を最もよく表す言葉にとして44%が「危機」、32%が「衰退」と答え、3分の1以上の学生が国外への出国を希望しているという。
ロシアでは部分的動員に反対する昨年9月のデモが厳しく弾圧されて以降、半年間以上、大規模なデモは行われていない。ロシアの国際的な孤立が改めて強調される中で、6月にデモが行われれば、大きく広がる可能性もある。プーチン大統領の内憂外患の状況は、一層深まっている。
●ウクライナ戦争の仲裁、「基本原則」の尊重必須=クレバ外相 5/20
ウクライナのクレバ外相は19日、どの国でもロシアとウクライナの戦争を仲裁する役割を担うことができるが、「基本原則」には従わなければならないと述べた。
ポルトガルのジョアン・ゴメス・クラヴィーニョ外相との共同記者会見で、仲裁は「ウクライナ領土の完全な回復につながる」べきで「紛争を凍結」してはならないと指摘。「この2つの原則を尊重し、誠実に行動すれば、誰もが役割を果たすことができる」とした。
また主要7カ国(G7)は「親しい友好国かつパートナー国」であり、ロシアに対する新たな制裁やウクライナへの財政支援など「常に議論すべきことがたくさんある」としたほか、7月にリトアニアの首都ビリニュスで開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、ウクライナのNATO加盟に向けた「意味のある一歩」が踏み出されることを期待していると語った。
●ロシア後退のウクライナ、広がる隣人への不信 5/20
ウクライナ南部ヘルソン市で地区長の仕事をしているバレンティナ・ハラスさん(74)は、自分は裏切り者ではないと訴える。
しかし彼女が住む家の庭の壁には、赤いペンキでウクライナ人でありながらロシアのファシストであることを意味する「ラシスト(Rashist)」という言葉や、モスクワの戦争マシンへの支持の象徴とされる「Z」の文字がびっしり書き込まれている。
8カ月余りにわたって占領していたロシア軍が昨年11月に撃退された後も、なおロシア側の容赦ない砲爆撃にさらされているヘルソン。そこに渦巻くのは相互不信と恐怖だ。
ロシア軍の占領から半年が経過した時点で、隣人同士が疑心暗鬼に陥り、裏切り者がどこから現れても不思議はないと思わせる状況になった。
ハラスさんの場合は、昨年11月26日にウクライナ軍の関係者4人が自宅を訪れ、ロシアに協力した疑いがあると告げられた。事実と認められれば最大で10―15年の禁固刑を科せられる重罪だ。関係者らは家宅捜索をして彼女のコンピューターと携帯電話を押収し、近所の人たちから彼女がロシアに従い、ロシアのパスポートを取得するよう積極的に呼びかけたとの申し立てがあったと説明したという。
その後ハラスさんは警察からも尋問されたが、今のところ具体的な罪状を挙げられて逮捕ないし起訴はされていない。もちろん彼女は全ての容疑を否定し、なぜ協力者のレッテルを貼られたのかも見当が付かないと困惑。ロシア軍が追い出されたのはうれしいと付け加えた。
「正直なところ、何が何だか分からない。捜査結果でも何も見つからなかった」と涙ながらに話した。
一方、隣人のイリーナさんの説明は全く異なる。
イリーナさんは「ハラスさんは公然とロシアを支持し、ロシアは偉大で、自分はウクライナの支配下で恐ろしい思いをしたと誰彼となく触れて回っていた。それは決してこっそりとした告白ではなかった」と語った。
さらに「住民らはハラスさんがすぐ連行されると思っていた。われわれは何カ月間も彼女を弾劾する文書を書いてきた。だが彼女は逮捕されず、住民はショックを受けている」と打ち明けた。
このような対ロ協力者を糾弾する動きは、ロシア軍がウクライナの領土から大きく後退した後、日常的に目にされる光景になっている。
キーウのある軍事アナリストの分析では、ロシアはこれまでに昨年2月の侵攻開始後に占領したウクライナ領の40%強を失っており、現在掌握しているのはクリミアを含むウクライナの約5分の1だ。
ウクライナ検察当局のウェブサイトを見ると、国内全体で対ロ協力者に関して5300件を超える捜査が進められている。ただ各捜査が具体的にどの段階かにあるかは、はっきりしていない。
氷山の一角
ロシアがヘルソンを占領した際には、同市や周辺地域がロシア領の一部に編入されるのを望むかどうかを決める住民投票を実施。ロシア側は編入が支持されたと発表したものの、ウクライナと西側諸国はこの投票結果に信頼性はないと切り捨てている。
こうした空気の中でロイターは、知人や関係者がロシアに協力した疑いがあると話す住民5人から話を聞くことができた。
またヘルソン地区検察幹部に取材したところ、対ロ協力容疑で立件された事案はこれまで152件で、地元議員や警察当局者、医師、ビジネスマンなど対象者は合計162人。早い段階で立件されて法廷での審理が行われた幾つかの事案では有罪が認定されている。この中には住民投票で賛成票を投じるよう働きかけたとの容疑もある。
ヘルソンはなお戦闘地域となっているため裁判所が稼働できず、別の場所で審理が進められている関係で手続きは遅れているという。
ただ立件されたのはあくまで氷山の一角かもしれない。ヘルソン地区のウクライナ治安当局の報道官は、詳しい内容には触れずに住民投票の組織化や運営に関与した1147人を特定したと述べた。
生き残る手段
ウクライナが計画している大規模な反転攻勢によってロシア軍をさらに領土外に駆逐できた場合、より多くの都市や農村で、ヘルソンが足元で経験しているような事態に直面しそうだ。
実際のところ、対ロ協力は人々が占領下で生き残るための厳しい選択という面がある。
例えば一部の農家は、純粋に事業を継続していくためだけにロシアの法制度に基づいた農場の登録を行ったため、訴追されかねなくなっている、とウクライナの農業団体は指摘する。
複数の団体は、対ロ協力を取り締まる法令はあいまいな部分があり、占領下で何とか生活を維持していこうとした人々の現実をきちんと反映するように改正しなければならないと主張している。あるいは、本物の裏切り者と生存のために行動した人を明確に区別するべきだ、といった声も聞かれる。
●年明け以降もマイナス成長が続くロシア経済、その裏側で起きている変化 5/20
ロシア連邦統計局が5月17日に発表したロシアの2023年1〜3月期の実質GDP(国内総生産)は、速報値はで前年比1.9%減という結果だった。2022年4〜6月期以降、ロシアの実質GDPは4四半期連続で前年割れとなっているが、マイナス幅そのものは3四半期連続で縮小しており、経済は最悪期を脱している(図表1)。
   【図表1 ロシアの実質GDP】
速報段階で公表されるデータは、主要産業別の付加価値の動きにとどまっている。
1〜3月期も不調が続いた産業としては、まず卸売り(前年比10.8%減)と小売り(同7.3%減)が挙げられる。さらに、貨物も前年比2.1%減と悪化が続いた。反面、製造業が同1.1%増と前年増に転じ、建設(同8.8%増)や旅客(同15.7%増)が回復した。
ロシアがウクライナに軍事侵攻を仕掛けたのは2022年2月24日のことだった。その後、矢継ぎ早に欧米日が経済・金融制裁を強化し、ロシア経済は圧迫された。そのため、同年4〜6月期の実質GDPは前年比4.5%減と腰折れした。ただ、実質GDP成長率のマイナス幅が徐々に縮小しているように、その影響は徐々に吸収されてきた。
この過程で、ロシア経済は欧米日による経済・金融制裁の強化と、ウクライナとの戦争の長期化を受けて、その構造を変化させていったと考えられる。
具体的に言えば、対外的には貿易の取引先がヨーロッパから中国やインドといった新興国にシフトした。金融面でも、脱ドル化を進めて人民元や金(ゴールド)による決済や保有が増えた。
そして、戦争の継続を前提に、ロシアは経済運営の統制色を強めてきた。ロシアの企業は政府の命令次第で民生品よりも軍需品の生産を優先せざるを得なくなったし、何より、働き盛りのロシア国民が徴兵される仕組みが整ってきた。
実質GDP成長率のマイナス幅が徐々に縮小する過程で、ロシアの経済構造は着実に変化したわけだ。
ロシアの経済統計の信ぴょう性はともかく、GDP統計の需要の構成項目(コンポーネント)の変化を確認しても、この1年間でロシア経済の構造が着実に変化したことがよく理解できる。
ロシア連邦統計局はまだ2022年10〜12月期までしか実質GDPの季節調整値を公表していないが、このデータからも興味深い事実が見て取れる。
回復するGDPの影で急増しているある数値
まず、コロナ前の2019年の平均を基準(=100)としてロシアの実質GDPの推移を確認すると、ウクライナに侵攻した2022年1〜3月期の実質GDPは104.3であったが、それが翌4〜6月期には99.3まで急減した(図表2)。その後、ロシア経済は緩慢ながらも回復軌道に乗っており、2022年10〜12月期の実質GDPは100.4に達した。
   【図表2 ロシアの季節調整済実質GDPと公需依存度】
他方で、この間の政府支出の対GDP比率の動きを確認すると、2022年1〜3月期から4〜6月期にかけて急上昇していることが分かる。
具体的には、この間に政府支出の対GDP比率は18.7%から19.9%に急上昇した。同年10〜12月期には20.1%にまで上昇し、コロナショック直後の2020年4〜6月期(20.2%)の水準に迫っている。
コロナショック直後は、都市封鎖(ロックダウン)などに伴う民需の腰折れに加えて、経済対策が実施されたため、政府支出の対GDP比率が急上昇せざるを得なかった。いわばこの動きは、腰折れした民需を公需が支えるという、マクロ経済運営における基本的な絵姿そのものを示すものであり、正常な経済の構造だと言っていい。
しかし、2022年1〜3月期から4〜6月期にかけて生じた政府支出の対GDP比率のジャンプアップは、公需が民需を支えた結果、生じたものではない。7〜9月期以降も同比率が上昇していることが示すように、この間の政府支出の増加は構造的な性格を強く帯びている。これは戦争に伴う軍事費の増加を反映した動きであるとみるべきだろう。
戦争を受けて圧迫される民需の姿
実際、コロナショック後と異なり、ロシアの経済では民需の低迷が続いている。
実質GDPと同様にコロナショック前の2019年を基準(=100)とする指数でロシアの民需の動きを確認すると、ロシアの民需は2021年4〜6月期に107.3でピークを付け、2022年1〜3月期には、2月のウクライナ侵攻に伴い102.3まで減少した。
直近2022年10〜12月期の民需は99.4まで低下したが、一方で公需(政府支出)は2022年1〜3月期から10〜12月期の間に106.1から109.9と3.6%増加している。厳密に言えば、公需には政府支出のみならず公共投資も含まれる。民間投資以上に公共投資が好調だった場合、公需はさらに膨らみ、民需は圧迫されたことになる。
   【図表3 ロシアの公需と民需の推移】
ロシア財務省は月次の連邦財政統計を公表しており、歳入に関しては費目まで公表されている。しかしながら、歳出の費目が確認できるのは、現時点で2021年12月期までである。そのため、歳出総額に占める軍事費の割合を統計的に把握することは不可能であるが、歳出増の最大のドライバーが軍事費であることはまず間違いない。
GDP統計は「基礎統計」を用いて算出する「加工統計」だ。したがって、その作成に当たっては、政治的な思惑が強く働きかねない性格を持つ。そうした危うさを持つGDP統計からでさえも、ロシアでは戦争の開始を受けて、公需が民需を圧迫するようになった構図が窺い知れる。恐らく、実態はGDP統計以上に深刻なのではないか。
軍需がけん引する成長は拡大再生産にはつながるか
ロシアの2023年1〜3月期の実質GDPの季節調整値は、今のところ、6月の中旬に公表される予定のようだ。前年比のマイナス幅が2022年10〜12月期より縮小しているため、季節調整値の水準もまた、前期から上昇しているはずである。
一方で、1〜3月期も激しい戦争が行われたため、公需が増えた反面、民需の低迷が続いた公算が大きい。
計算上、民需が圧迫されても、それ以上に軍需が増えればGDPは成長する。しかし、そうして達成された経済成長は拡大再生産にはつながらないし、経済の発展につながるものではない。
事実、2022年の季節調整済の実質GDPの動きは、軍需の増加に伴う公需の増加が、民需の増加を伴うものではないことをよく示している。
ロシアがウクライナとの戦争を続けるのみならず、仮にウクライナとの間で停戦に合意したとしても、政権の経済運営の在り方が根本的に変化しない限り、公需が民需を圧迫する構図は続くだろう。
今後、ロシアのGDP統計を分析するに当たっては、今まで以上に、成長率の裏にある需要や産業の構造変化に注目する必要がある。
●ロシアの集中的な攻撃 ウクライナ反転攻勢への警戒強化か  5/20
ロシアが今月に入ってウクライナ各地への集中的な攻撃を繰り返していることについて、ウクライナ国防省の幹部は、反転攻勢に向けた準備を妨害しようとしているという見方を示しました。こうした中、ロシアのショイグ国防相は、前線の司令部を訪れて偵察活動の強化を指示し、ロシアが反転攻勢への警戒を強めていることをうかがわせています。
ウクライナ空軍は19日、ロシア軍が巡航ミサイル6発と22機の無人機で攻撃を仕掛けたと発表しました。
このうち3発のミサイルと16機の無人機を迎撃したということですが、一連の攻撃によって、ゼレンスキー大統領の出身地でもある東部のクリビーリフでは2人が重軽傷を負ったと、地元当局がSNSで明らかにしました。
ロシアは18日も各地でミサイルや無人機による攻撃を仕掛けるなど、今月に入って異例ともいえる頻度で集中的な攻撃を繰り返しています。
これについてウクライナ国防省情報総局の幹部は19日、地元メディアに対して、ロシアは冬の間に仕掛けた電力インフラへの攻撃に失敗した今、ウクライナ側の反転攻勢に向けた準備を妨害しようと、標的を軍事施設や弾薬庫などに切り替えているという見方を示しました。
こうした中、ロシア国防省は19日、ショイグ国防相が、ウクライナ南部ザポリージャ州の支配地域にある前線の司令部を視察したと発表しました。
ショイグ国防相は現地の司令官に対して、ウクライナ軍の計画を事前に察知し、その実行を阻止するため偵察活動を強化するよう指示したということで、領土の奪還を目指すウクライナの反転攻勢への警戒を強めていることがうかがえます。
●ウクライナに占領地返還必要 中国に対ロ非難求める―ポーランド 5/20
中国政府の李輝ユーラシア事務特別代表は19日、ワルシャワで、ロシアが侵攻を続けているウクライナの情勢を巡りポーランド高官と協議した。ポーランド外務省が発表した。ポーランド側は「ロシア軍の撤退と占領した領土の返還が唯一の受け入れられる解決策」だと伝えた。
ポーランド高官はまた、中国がロシアの侵略を非難することへの期待も表明した。李氏は「ウクライナの情勢は誰の利益にもならない」と強調し、停戦と和平交渉の重要性を指摘。中国は核兵器の使用に反対すると説明した。
●ゼレンスキー大統領 軍事侵攻めぐり「目をつぶっている国が」  5/20
ウクライナのゼレンスキー大統領は、サウジアラビアで開かれたアラブ連盟の首脳会議に出席し、ロシアの軍事侵攻をめぐって「目をつぶっている国がある」と述べ、ロシアと協力関係を維持しているアラブ諸国に苦言を呈しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、サウジアラビアの西部ジッダで開かれたアラブ連盟の首脳会議に出席しました。
ゼレンスキー大統領が中東を訪問するのは、ロシアによる軍事侵攻が始まって以来、初めてです。
演説のなかで、ゼレンスキー大統領は「残念ながらこの場も含め、世界にはロシアの違法な併合に目をつぶっている国もある」と述べ、ロシアによる軍事侵攻のあともロシアと協力関係を維持しているアラブ諸国に苦言を呈しました。
その上で「ロシアがいかに影響力を及ぼそうとも、みなさんには正直な目を向けてほしい」などと述べて、アラブ諸国に対し、ロシアに厳しい姿勢で臨むよう求めました。
アラブ諸国をめぐっては、OPECプラスでロシアと関係が深いサウジアラビアをはじめ多くの国が、ウクライナ侵攻のあともエネルギー分野などでロシアとの協力関係を維持していて、ゼレンスキー大統領としては、アラブ諸国にくぎを刺した形です。
そのうえで、ロシア軍の撤退など、ウクライナが和平に向けて掲げる10の項目に対する支持を呼びかけました。 
●バイデン米政権がロシアに追加制裁、資産凍結や禁輸など 5/20
バイデン米政権は19日、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの制裁の対象に、300を超える個人や企業、団体を追加すると発表した。対象は20カ国を超え、海外からロシアを支援する動きに幅広く網を掛ける。広島市で開かれている先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で、ロシアを非難する声明をまとめたことに合わせた措置となる。
イエレン財務長官は声明で、「プーチン(ロシア大統領)が野蛮な侵略を行う能力をさらに狭め、制裁を逃れようとするロシアの試みを断ち切るための世界的な取り組みを進める」と述べた。
財務省は個人22人と104の企業や団体を対象に、米国内の資産を凍結。国務省は約200の個人や団体、船舶、航空機を制裁対象に加え、商務省は71の企業や団体について、米国の製品や技術の輸出を実質的に禁止する。
主な対象はロシアが軍事的な重要技術や機器、物資を調達するための取引先や、資金源となる石油・ガス採掘の研究機関、資金調達を支援した金融機関など。拠点はロシアだけでなく、欧州諸国や中東、インドなど広範にわたる。
米財務省は、これまでの制裁措置によってロシアの軍需産業は部材を調達するため、国外の個人や団体を通じた「脱法行為や回避行為が増えている」と指摘。今回の制裁により「第三国や国際的な団体に対し、ロシアの戦争への物的支援を停止するほか、厳しいコストを課すことを求めたG7首脳の呼び掛けを実行する」と説明した。
●ロシア、F16供与方針を批判 欧米に「重大なリスク」 5/20
ロシアのグルシコ外務次官は20日、バイデン米政権が欧州の同盟国による米国製F16戦闘機の対ウクライナ供与を容認する方針に転換したことについて「状況をエスカレートさせるものだ」と批判、「欧米自身にとって重大なリスクになる」と警告した。タス通信が伝えた。
プーチン政権は、ウクライナへの軍事支援を続ける欧米が交戦を長引かせていると批判してきた。欧米製戦闘機の供与は北大西洋条約機構(NATO)側とロシアとの直接の交戦に発展する危険性があるとのけん制を今後強めるとみられる。
F16の供与にグルシコ氏は「今後、考慮に入れることになる」とする一方で、軍事作戦を続ける姿勢を明確にした。
●中国、中央アジアサミットで布石、「一帯一路」強化=ウクライナ戦争尻目に  5/20
5月18、19日の両日、中国・中央アジアサミットが古代シルクロードの出発点(陝西省西安市)で開催された。このサミットには、中国のほか、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンが参加した。6カ国首脳が対面で集まるのは初めて。中国と中央アジア諸国が連携し、新たなページを画したイベントとして注目される。会議は2年に一回定期開催され、次回は2025年にカザフスタンで開くこととなった。
中央アジアは、豊富な資源を有し、中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」の主要ルートとなっている。習近平国家主席は共同記者会見で、自ら提唱した「一帯一路」が今年で10年の節目を迎えるとして、中央アジア諸国と産業・投資の協力拡大などを進める方針を表明した。「新たな出発点」として協力を強化発展させると謳った。ユーラシアを貫く「シルクロード経済帯」の拡充強化の意義は大きい。中国と中央アジア5カ国の昨年の貿易総額は700億ドル(約9兆5000億円)を超え、過去最高水準を記録した。
中国・中央アジアサミットは最終日に「西安宣言」を採択。中国と中央アジアは「運命共同体」として、経済や文化の領域から国家安全の領域まで幅広く協力すると宣言した。 さらに、中央アジアに隣接するアフガニスタンについても「平和と安定を守ることを助ける」として、影響力を行使する考えを示した。中央アジアにとって喫緊の課題であるインフラ開発などの支援策も提示した。上海協力機構(SCO)の枠組みの中でも、中国、ロシア、インドと中央アジア諸国は、地域の安全保障と経済発展で積極的に協力していくとしている。
東アジア―欧州間の「国際貨物列車」が急拡大
中央アジア5カ国は、重要なハブとして、中国が欧州域内で経済的な役割を拡大するのを可能にしてきた。ロシア経由で中国と欧州を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」もその一例。2011年3月に重慶市からドイツのデュイスブルクまで運行したのが始まりで、湖北省武漢市、四川省成都市、河南省鄭州市、陝西省西安市など他都市からも運行されている。中国各都市と欧州23カ国180都市を結んでいる。
2021年の「中欧班列」の運行本数は前年比22.4%増の1万5183本、輸送されたコンテナ数は前年比29%増の146万4,000TEU(20フィートコンテナ換算値)と大きく増加した。同年の輸送貨物の付加価値額は749億ドルと、2016年の80億ドルから大きく増加した。輸送貨物も、当初の携帯電話やノートパソコンなどのIT製品から、自動車部品、完成車、化学工業品、機械電気製品、穀物、酒類、木材などに拡大した。欧州と中国を繋ぐ中央アジア諸国は鉱物資源に富み、中国西部の中国企業にとって、重要なマーケットとなっている。
習近平国家主席は19日、中央アジアサミットで基調演説し、中国と中央アジア諸国の協力に関する8項目の提案を打ち出した。
提案内容は(1)メカニズムの構築強化=中国と中央アジアの協力の計画・発展、(2)経済貿易の拡大=多くの貿易円滑化措置により貿易規模を新たなレベルに引き上げること、(3)交通網の深化=中国・キルギス・ウズベキスタン高速道路、中国・タジキスタン・ウズベキスタン高速道路の拡充整備と、中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道プロジェクトに関する交渉推進、(4)エネルギー協力の拡大=中国・中央アジア天然ガスパイプライン建設を加速、(5)グリーンイノベーションの推進=中国は中央アジア諸国と塩害の管理・開発などの分野で協力し、アラル海の生態系危機の解決に取り組むこと、(6)発展レベルの引き上げ=中央アジア諸国の貧困削減のための科学技術特別協力プランの策定への協力、(7)文明対話の強化=中央アジア諸国の「文化シルクロードプラン」への参加、(8)地域の平和維持=地域の安全維持とテロ取締りへの協力――など。
中央アジアは一帯一路の要衝で、天然ガス・石油や鉱物資源の供給地。中国はウクライナ侵攻によってロシアの影響力が低下するなか、地域を支える役割を強めようとしている。日本が議長国を務めるG7サミットでは、中国とロシアによる「力による一方的な現状変更は許さない」というメッセージを打ち出した。これに対し、中国は「G7の言うルールは国際社会共通ではない」との立場。異例の3期目に入った習政権は、新興国や途上国への独自の外交攻勢を展開している。
複雑な地域情勢下、中国が先行
一方で、中央アジア5カ国はウクライナ問題で難しい立場に置かれ、複雑な状況に直面している。カザフスタンはロシアと軍事的、経済的にも同盟関係にあるが、トカエフ大統領が昨年6月、プーチン・ロシア大統領を前に、ロシアが承認したウクライナ東部の親ロシア派地域の独立を認めない考えを示すなど、「ロシア離れ」の動きを強めている。ロシアの同盟国であるキルギスやタジキスタンには4月下旬、米国高官が訪問。昨年8月には、トルクメニスタンを除く4カ国が、タジキスタンで米国と軍事演習を実施した。
侵攻をめぐる国連総会でのロシア非難決議でも、5カ国は反対していない。背景には侵攻への不満があり、米欧の制裁に巻き込まれれば、ロシア以上に打撃を受ける。ただ、地理的に米欧の手厚い支援は期待できず、急激にロシアから距離を置くのも難しい。
そこで中央アジア諸国が期待するのが中国。ロシアや米欧は地域へのインフラ投資には消極的で、一帯一路を推進する中国とは利害が一致する。習氏とトカエフ氏との首脳会談では、貿易やエネルギー分野などでの協力推進で一致。トカエフ氏は18日、「中国への石油パイプラインの拡張を計画している」と期待を示した。
5カ国はロシアと一定の距離
サミットに参加する5カ国は旧ソ連構成国で、元々ロシアの強い影響を受ける。ただ、ウクライナ侵攻後は、カザフスタンのトカエフ大統領が、ロシアが独立を承認したウクライナ東部の親露派「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を承認しない考えを示すなど、5カ国はロシアと一定の距離を置く。中国としてはロシアの影響力の低下を見極めながら、今回のサミットで中央アジア諸国との関係強化に動いた形だ。
ロシアも「勢力圏」の維持に必死だ。今月9日にモスクワで開催された対ドイツ戦勝記念式典には中央アジア5カ国の首脳を招待し、結束を演出した。出口の見えないウクライナ戦争を尻目に、地政学的に複雑な中央アジアだが、中国が一歩先行している格好だ。

 

●ロシア軍、バフムト制圧へ兵力増派…ウクライナ軍報道官「戦闘は続いている」 5/20
英国防省は20日、ウクライナに侵略するロシア軍が東部ドネツク州の要衝バフムトで、兵力を増強したとの分析を明らかにした。これに対してウクライナ軍は東部での反撃を強化し、反転攻勢の準備を進めている。
ウクライナ国防次官は19日、露軍側が「数千人規模」の兵力を増派し、バフムト市内全域の制圧を試みていると指摘した。バフムト周辺でのウクライナ軍の戦闘については「ペースはやや落ちたが、前進が続いている」と述べた。
これに対し、バフムト攻略で露軍側の主力を担う露民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏は20日、バフムト市内全域を制圧したとSNSで主張した。ウクライナ軍の報道官は20日、「戦闘は続いている」と述べ、陥落を認めていない。
露軍は20日、首都キーウを3日連続で攻撃した。ウクライナ空軍によると、露軍は19日夜と20日未明に自爆型無人機20機を発射し、ウクライナ軍が全機を撃墜した。20日に発射された18機は全てキーウが標的だったという。ウクライナ軍の地対空ミサイルを消耗させて、反転攻勢を遅らせる狙いとみられる。
一方、タス通信は、ウクライナ軍が20日、露軍の占領下にあるドネツク州の港湾都市マリウポリを複数のミサイルで攻撃したと報じた。露軍が基地にしている空港などで爆発が発生したとの情報もある。
●ロシアのプーチン大統領、激戦地バフムト制圧発表 5/21
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトを制圧したと主張し、民間軍事会社ワグネルを名指しでたたえた。タス通信が21日伝えた大統領府の発表によると、プーチン氏は「(作戦に当たった)ワグネル突撃部隊と共に、必要な支援を行ったロシア軍に対し、解放作戦の完了に祝意を表明した」という。
ワグネルの創設者プリゴジン氏は20日、通信アプリ「テレグラム」に投稿した動画声明で「きょう正午(日本時間20日午後6時)、バフムトを完全に制圧した。作戦は224日間続いた」と発言。ただ、ウクライナ軍報道官はメディアに対し「事実でない」と否定し、反転攻勢が続いていると訴えていた。
ロシア国防省がその後、20日深夜にバフムト掌握を発表。プーチン氏の「制圧宣言」はこれらを受けた。大統領府や国防省がワグネルの功績を認めることは極めてまれで、プリゴジン氏と国防省の間で表面化した対立に「終止符」を打つ思惑もあるもようだ。
20日は、ロシアがドネツク州の港湾都市マリウポリを激戦の末に制圧宣言してから1年に当たる。ウクライナが大規模攻勢を予告する中、プーチン政権として「戦果」を誇示するとともに、占領地の奪還を許さないようロシア軍の引き締めを図った格好。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)やゼレンスキー大統領訪日から自国民の目をそらす狙いもありそうだ。
プリゴジン氏によると、25日からワグネル戦闘員を順次撤退させるという。制圧地域は既に展開しているロシア軍が担当するため、今後、ウクライナの反転攻勢でロシア側が後退を強いられてもプリゴジン氏は責任を回避できる形だ。
●ロシア国防省がウクライナのバフムト制圧を発表 プーチン氏も祝福 タス通信 5/21
ロシア国防省はウクライナ東部の激戦地バフムトの完全制圧を発表し、プーチン大統領もこれを祝福しました。
ロシア国防省は21日、ウクライナ東部の激戦地バフムトについて、「ロシア軍の支援を受けたワグネルの攻撃で、解放が完了した」と発表しました。
これに先立ちロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者・プリゴジン氏も廃墟の街の中でロシア国旗を掲げる映像をSNSに投稿し、バフムトの完全制圧を主張していました。
タス通信によりますと、プーチン大統領がバフムトでの作戦完了を受け、ワグネルとロシア軍を祝福したということです。
一方、ウクライナ軍の報道官は20日、現地メディアに対して「戦闘は続いており、我々はバフムトで多くの建物を保持している」とプリゴジン氏の主張を否定しています。
●ロシア “バフムト完全掌握の国防省をプーチン大統領が祝福”  5/21
ロシア大統領府は、プーチン大統領が、ウクライナ東部の激戦地バフムトを完全に掌握したとする国防省を祝福したと発表しました。ウクライナのゼレンスキー大統領がG7広島サミットに参加し、反転攻勢に向けてさらなる支援を求める中、戦果をアピールし、軍事侵攻を続ける姿勢を示すねらいがあるとみられます。
ロシア大統領府は21日、「プーチン大統領がバフムト解放作戦の完了を祝福した」と、国営通信社を通じて発表しました。
これに先立ちロシア国防省は、ウクライナ東部ドネツク州のバフムトについて、民間軍事会社ワグネルとともに攻撃を続けた末に完全に掌握したと、SNSで主張していました。
また、ワグネルの代表プリゴジン氏も20日、SNSに動画を投稿して街の掌握を主張したうえで、今月25日以降に部隊を撤退させてバフムトの防衛をロシア軍に引き継ぐとしました。
バフムトは、ドネツク州の全域掌握をねらうロシア側が、スロビャンシクなどウクライナ側の拠点への足がかりとして重視し、連日攻撃を繰り返してきました。
一方、ウクライナ軍の徹底抗戦によって戦闘は長期化し、最近ではウクライナ側が反撃に出て郊外で一部を奪還したと発表するなど、激しい攻防が繰り広げられていました。
ウクライナのゼレンスキー大統領がG7広島サミットに参加し、反転攻勢に向けてさらなる支援を求める中、プーチン大統領としては、バフムトを掌握したと戦果をアピールし、軍事侵攻を続ける姿勢を示すねらいがあるとみられます。
バフムトを掌握したとするロシア側の主張に対して、ウクライナ軍の東部方面部隊の報道官は20日、ロイター通信に対して「主張は事実ではない」と否定しました。
また、ウクライナのマリャル国防次官もSNSに、「バフムトの状況は危機的だが、防衛を続けている」と投稿し、双方の主張は食い違っています。
●激戦地バフムート、ワグネルとロシア国防省が掌握を宣言 5/21
ウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムートについて、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者プリゴジン氏は20日、「完全に掌握した」と発表した。ロシア国防省もアルチェモフスク(バフムートのロシア名)での作戦完了を宣言した。
プリゴジン氏はSNS「テレグラム」に投稿した動画の中で、「バフムート掌握に向けた作戦は224日間続いた」と述べて勝利を宣言。25日には同市をロシア軍に引き渡すと述べた。
同氏は動画の中で、プーチン大統領に「母国防衛の栄誉」を与えられたと感謝の意を表したが、同時にショイグ国防相、ゲラシモフ参謀総長を名指ししてロシアの「官僚主義」を批判。両氏が戦争を「自分たちの娯楽」にした気まぐれのせいで、本来の5倍の死者が出たと批判した。
続いてロシア国防省も20日、ワグネルの突撃部隊による攻撃の成果として、バフムートの解放が完了したと発表した。
さらにロシア国営タス通信によると、プーチン大統領は同日、バフムート「解放作戦」の完了を確認したワグネルとロシア軍に祝意を表した。
ただしウクライナのマリャル国防次官は、プリゴジン氏の投稿の直後にテレグラム上で、バフムートが「重大」な局面にあることを認める一方、ウクライナ軍部隊が市西端の地区で産業、インフラ施設などを引き続き掌握し、防衛線を維持していると主張した。
CNNは双方の発言の真偽を独自に確認していない。
●ワグネル代表「バフムトを掌握」 ウクライナ軍「事実でない」  5/21
ウクライナ東部の激戦地バフムトについて、ロシア国防省は完全に掌握したと発表しました。一方でウクライナ軍は、戦闘は依然として続いていると強く否定しています。
ロシア国防省は21日、ウクライナ東部ドネツク州のバフムトについて、民間軍事会社ワグネルとともに攻撃を続けた末に完全に掌握したと、SNSを通じて発表しました。
これに先立ちワグネルの代表プリゴジン氏も20日、SNSでバフムトの掌握を宣言し、25日以降に部隊を撤退させるとしていました。
ドネツク州の全域掌握をねらうロシアにとって、バフムトはウクライナ側の拠点となっているスロビャンシクなどへの足がかりとして重視してきた街で、ワグネルの戦闘員を中心に長期間にわたって攻撃を続けてきましたが、このところウクライナ軍が周辺の一部を奪還したと発表するなど、激しい攻防が続いてきました。
ロシア側の主張に対してウクライナ軍の東部方面部隊の報道官は20日、ロイター通信の取材に「主張は事実ではない。われわれの部隊は戦っている」と強く否定し、ウクライナのマリャル国防次官もSNSに「状況は危機的だが、今もバフムトで防衛を続けている」と投稿し、双方の主張は食い違っています。
●プーチン大ショック、極超音速「キンジャール」まで撃墜、封じられる核攻撃 5/21
バイデン氏、F-16のパイロット訓練認める
[ウクライナ中部クリヴィー・リフ発]日本時間の5月19日金曜日の正午過ぎ、英フィナンシャル・タイムズは、「ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が今週末のG7サミットに対面で出席する」「ゼレンスキーは、日曜日に広島で行われる議論に参加する見込み」と報じた。
その一報があった翌20日土曜日の午後3時30分、ゼレンスキー大統領は専用機で広島空港に降り立った。
19日のG7で、ジョー・バイデン米大統領はF-16を含む第4世代戦闘機でウクライナのパイロットを訓練する計画への支援を表明した。バイデン氏は今年初め「ウクライナがF-16を必要とするとは思わない」と否定的な見方を示していた。そこから一転、米国が欧州諸国によるウクライナへのF-16供与に初めてゴーサインを出した格好だ。
ロシアを刺激しないよう少しずつ武器供与の既成事実を積み重ねる「サラミ戦術」がこれまでは功を奏している。
対ロシア制裁について曖昧な態度を取り続けているインドのナレンドラ・モディ首相やブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領もG7に招待されている。ゼレンスキー氏の直接出席は、G7にとって西側と中露に対し等距離外交を続ける“第三勢力”の巨頭モディ、ルラ両氏への圧力を増し、味方に引きつける絶好の機会となる。
ゼレンスキー氏は最近、イタリア、ドイツ、フランス、英国を訪問し、武器弾薬供与の約束を取り付けた。19日にはサウジアラビアで開催されたアラブ連盟の首脳会議にサプライズ出席、「私たちの国土での戦争に異なる見解を持つ人々がいても、ロシアの刑務所の檻から人々を救うという点では一致団結できると確信している」と訴え、外交にも力を入れている。
ロシア軍はミサイル、ドローン攻撃でウクライナ軍の反攻計画を妨害
英国における戦略研究の第一人者である英キングス・カレッジ・ロンドンのローレンス・フリードマン名誉教授は最新の有料ブログで「ウクライナの反攻は電撃戦による短期決戦ではなく、長期の攻撃を準備している」と分析した上で「ウクライナの防空はミサイルや無人航空機(ドローン)攻撃を含むロシアの航空戦力に対処できるのか」と問いかけている。
米紙ニューヨーク・タイムズは米当局者や漏洩した米国防総省の機密文書をもとに、ウクライナの防空網は1年以上にわたって西側の兵器で強化されてきたものの、大量の弾薬を供給しなければ、最短で4月中旬までにロシア軍のミサイルやドローンの度重なる砲撃で脆弱になった防空網が崩壊に追い込まれる恐れがあると伝えていた。
だが現在までの戦況を見ると、ウクライナにとって最悪の事態は免れている。
ウクライナ空軍司令部によると、5月に入ってロシア軍によるミサイル、ドローン攻撃は激化しているのだが、ウクライナ国防情報部のヴァディム・スキビツキー代表は「ロシア軍はこれらの攻撃でわれわれのエネルギーシステムの破壊を試みたが、失敗した。今はわれわれの春、夏の反攻計画と準備を妨害することを最優先にしている」と分析している。
「ロシア軍は現在、指揮統制センター、弾薬や装備の供給ルートや集中地点、燃料貯蔵所、兵員集中地帯に対してミサイルを使用。われわれの防空システムが配備されている地域に特別な関心を持つようになった。ロシア軍の航空戦術は毎日約20〜25発の精密誘導弾KAB-500を前線と前線地域で使用している」とスキビツキー代表は言う。
実際、ウクライナ軍はロシアのミサイルやドローンを含む航空戦力を相手に、よく凌いでいる。
ロシア軍の極超音速空対地ミサイルKh-47M2キンジャールを撃墜
ウクライナ空軍の発表から5月に入ってからのロシア軍のミサイル、ドローン攻撃を見ておこう。
【5月1日】ロシア北西部ムルマンスクから9機の戦略爆撃機Tu-95、カスピ海地域から2機の可変翼超音速戦略爆撃機Tu-160を使って空対地巡航ミサイルKh-101/Kh-555を18発発射。うち15発はウクライナ軍によって破壊される。
【5月3日】ウクライナに近いロシアのブリャンスクと、アゾフ海の南東岸から最大26機のイラン製神風ドローン「シャヘド136/131」を使用。うち21機がウクライナ軍によって破壊される。ウクライナ南部ミコライフとヘルソンでロシアのドローン4機が破壊される。
【5月4日】ブリャンスクとアゾフ海東岸から最大24機のシャヘド136/131を使用。ウクライナ軍によってうち18機が破壊される。またキーウ上空でウクライナ軍のトルコ製バイラクタルTB2が制御を失ったため同軍が撃墜。
ロシア領の戦闘機MiG-31Kから発射された極超音速空対地ミサイル「Kh-47M2キンジャール」が、キーウ上空でウクライナ軍の広域防空用の「地対空パトリオット」によって破壊される(5月6日に発表)。
【5月5日】南東方向から2機のシャヘド136/131で攻撃するもウクライナ軍によって破壊される。
【5月6日】アゾフ海東岸から8機のシャヘド136/131で攻撃するも破壊される。さらにロシアのドローン5機が破壊される。
【5月8日】ブリャンスクの空港から35機のシャヘド136/131が攻撃をしかけるも、ウクライナ軍によって破壊。ヘルソンでもロシアのドローン3機が破壊される。クリミアの中距離爆撃機Tu-22Mからミサイル8発を発射し、ウクライナ南部オデーサを攻撃。黒海の空母から巡航ミサイル「クラブ」を8発発射するが、ウクライナ軍により破壊される。
【5月9日】カスピ海の戦略爆撃機Tu-95から17発の「Kh-101/Kh-555」を発射。ウクライナ軍によりうち15発が破壊される。25発の巡航ミサイル、クラブとKh-101/Kh-555を発射、ウクライナ軍によりうち23発が破壊される。3機のシャヘド136/131も破壊される。
【5月12日】ロシアのドローン4機が破壊される。
【5月13日】21機のシャヘド136/131のうち17機とロシアのドローン1機が破壊される。
【5月14日】4機のシャヘド136/131とロシアのドローン「オルラン10」が撃墜される。ヘルソンでロシアのドローン3機が撃墜される。夜間攻撃では18機のシャヘド136/131、ロシアのドローン7機、黒海の艦船からクラブ、Tu-95からKh-101/Kh-555 /Kh-55が使用されるが、うちドローン25機、巡航ミサイル3発が破壊される。
【5月16日】6機のMiG-31からキンジャール6発、クラブ9発、黒海の艦船から3発の短距離弾道ミサイル、9K720イスカンデルを発射するが、すべて破壊される。6機のシャヘド136/131、3機のドローンも撃墜される。
【5月17日】2機のTu-160と8機のTu-95から22発のKh-101/Kh-555、黒海の艦船から6発、地上からイスカンデル2発が発射するも29発が破壊される。2機のシャヘド136/131と2機のドローンが撃墜される。
【5月19日】22機のシャヘド136/131と、黒海の艦船から6発のクラブでウクライナを攻撃したが、16機のシャヘド136/131と3発のクラブが撃墜される。2機のシャヘド136/131とロシアのドローンが撃墜される。
【5月20日】キーウに向かった18機のシャヘド136/131が破壊される。
「ウクライナの反攻作戦の能力を短期的に低下させるのが目的」
米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は「ロシア軍のドローンやミサイルによる定期的な攻撃はウクライナの反攻作戦の能力を短期的に低下させることを目的とした新たな航空作戦の一部である可能性が高くなっている」と分析。2022年秋から23年冬にかけての重要インフラ攻撃と比べ、高精度ミサイルの使用は大幅に減少した。
「ロシア軍は精密ミサイルのかなりの割合を使い果たしている可能性が高く、現在限られた在庫を節約するためこれらのミサイルの使用数を大幅に減らしている可能性がある。ロシア軍の新たな航空作戦はキーウと後方地域のウクライナ軍の産業と物流施設に焦点を当てているようだが、ウクライナ軍全体の能力が大きく抑制されているとは考えにくい」という。
前出のフリードマン氏は「ゼレンスキー氏が武器を増やすために最優先にしたのは防空システムと最新の戦闘機だ」と指摘する。「最終的にはF-16がウクライナに届くだろう。米国は現在、同盟国(オランダの可能性が高い)がF-16を提供することに反対していないように見える」。実際、バイデン政権は欧州の同盟国に対してF-16のウクライナへの供与を認める意向を示し始めている。
ただ都市部が常に攻撃を受けていることへのウクライナ側の懸念は非常に強い。
「ミサイルやドローンを使ってウクライナ全土を攻撃してもウクライナの戦略的立場を根本的に変えるほどの一貫性と有効性を持ってはいないが、実害、痛み、ストレスを与えているのは間違いない。電力供給を中断させることを目的とした当初の作戦は失敗。ウクライナの反攻が迫っているため物資の供給妨害や指導者の注意をそらすことに優先順位をシフトした」
強化されたウクライナの防空システム
今年3月、ウクライナの10都市を狙った80発以上のミサイル攻撃でインフラが破壊された「困難な夜」(ゼレンスキー氏)を受け、ドイツの地上防衛用地対空ミサイルIRIS-T、米国とノルウェーが開発した中高度防空ミサイルシステムNASAMS、米国とドイツからそれぞれパトリオットが供与された。
これにより、ウクライナの防空能力は格段に向上した。
核弾頭も搭載できる極超音速空対地ミサイル「キンジャール」は速度、不規則な飛行軌道、高い操縦性の組み合わせにより迎撃困難と考えられてきた。しかし5月4日、ウクライナはパトリオットを使ってキーウ上空でキンジャールを撃墜。5月16日にもキーウの防空力を圧倒するため複雑な攻撃があったが、6発のキンジャール、9発のクラブ、3発のイスカンデルはすべて破壊された。
「ミサイルが撃墜されたとしても、ウクライナ側はそのために貴重な防空資源を使い果たし、前線部隊を支援できなくなる恐れがある。しかし、その目的はやはり、傷つけ、罰することであり、運が良ければウクライナの攻撃計画を妨害することだ」とフリードマン氏は指摘する。ゼレンスキー氏は最近の欧州歴訪で防空システム強化の約束も取り付けた。
5月15日には、ウクライナとの国境から50キロメートル近く離れたロシアのブリャンスクで2〜3機のロシア製ヘリコプターと戦闘爆撃機Su-34、多用途戦闘機Su-35が撃墜された。ロシアの防空網の致命的な欠陥なのか、それともウクライナ軍が車両搭載システムを用いて国境付近を攻撃しているのか、さまざまな憶測を呼んだ。
「ウクライナの、ミサイルを無力化する能力の高さには目を見張る」
オスロ大学研究員でミサイル技術の専門家ファビアン・ホフマン氏は英紙デーリー・テレグラフへの2回にわたる寄稿で「英国はウクライナに英仏が共同開発した空中発射巡航ミサイル、ストーム・シャドウを送り、クリミア大橋などこれまで届かなかった標的を攻撃できるようにする。送られたバージョンの射程は250キロメートルと思われる」と解説する。
低空飛行でステルス性の高いストーム・シャドウは迎撃するのが難しい。ウクライナ軍は国内のほぼ全域を標的に、要塞化された構造物や埋もれた構造物も破壊できるようになる。「しかしロシア軍の電子戦部隊はGPS(衛星測位システム)誘導を妨害することで、ストーム・シャドウの成功を妨げる恐れがある」(ホフマン氏)との懸念もあったが、すでに戦果を収めている。
「ウクライナのミサイル撃墜率は、ウラジーミル・プーチン露大統領の最大の脅威が無力化されたかどうかを問うものだ。ウクライナひいては米欧がミサイルを無力化する能力の高さには目を見張るものがある。おそらく、すべてではないにせよ、ほとんどのミサイルが無力化され、ロシアのミサイルの威力は大きく損なわれた」(同)
核弾頭も搭載できるキンジャールは戦術核の基礎をなす。「ロシアの短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルに対するウクライナのミサイル防衛が明らかに有効であることを考えると、ロシアが戦術核をうまく配備する能力に疑問符が付くだろう。ロシアの意思決定者は戦術核で目標を攻撃できるかどうか、疑問を持ち始めるかもしれない」とホフマン氏は指摘する。
●ロシア企業、湾岸マネーに熱視線 会合で投資呼び掛け 5/21
ウクライナ侵攻で西側による制裁や外国企業の撤退に直面するロシアは、ペルシャ湾岸産油国の投資家に自国への投資を呼び掛けている。
アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビでこのほど開催された年次投資会合では、ロシア政府が投資の好機だと訴え、ロシア企業は湾岸マネーを取り込もうと特設パビリオンに出展した。
ロシア経済発展省のパベル・カルミチェク氏は「アラブをはじめ、あらゆる投資家を呼び込むためにやって来た」と述べた。
ウクライナ侵攻をめぐり、西側諸国にはロシアのウラジーミル・プーチン大統領が孤立したように映っているが、サウジアラビアとUAEは中立的な立場を保ってきた。
ロシアの富裕層は西側による制裁の影響を回避するため、UAEに殺到してビジネスを展開。不動産購入ではロシア人が最大の顧客になっている。
会合で演説したマクシム・レシェトニコフ経済発展相は、中東・北アフリカとの協力は「ロシアの外交・経済政策の優先課題の一つだ」と述べた上で、「共同プロジェクトを始める時だ」と訴えた。
さらに湾岸諸国の「独立した外交政策」を評価するとともに、「ロシアにとって信頼できるパートナーだ」と称賛。貿易を促進するため、制裁の影響を回避できる「独立した金融・銀行システム」の創設を呼び掛けた。
デニス・マントゥロフ副首相によると、ロシアとUAEの昨年の貿易額は前年比68%増の90億ドル(約1兆2000億円)に達した。
「競争優位性」
ロシア代表団は会合で、西側の制裁にもかかわらずモスクワは依然、世界最大級の都市経済圏であり、主要な投資先だとアピールした。
モスクワ市外交経済局長のセルゲイ・チェレミン氏は投資家に向けた演説で、「制裁下の困難な時期にあるが、モスクワにはいくつもの競争優位性がある。ロシア市場に参入するための入り口だ」と述べた。
またロシアのパビリオンでは起業家のマクシム・アニスモフ氏が、ロシアで設計・製造された3D印刷技術を披露した。アニスモフ氏はAFPに対し、「発展中のこの地域には多くのビジネスチャンスが存在する」と語った。
UAEのエンジニア、アドナン・ニムル・ザルーニ氏は、パビリオンでの展示を見た後、ロシア企業への投資を検討する考えを示し、「多くの素晴らしいチャンスがある。鉱業や畜産、エネルギー、農業、技術力に富み、高度な技能を持ったプログラマーも存在する」と評価した。
コンサルティング会社ハリージエコノミクスの幹部ジャスティン・アレクサンダー氏によると、湾岸地域の政府系ファンドは過去10年間、ロシアへの投資を拡大してきた。ただ、「これらの投資は西側に比べて小規模にとどまっている」という。
侵攻のコスト
国際通貨基金(IMF)は4月、ロシア経済の見通しについて、昨年と今年上半期のエネルギー高が「大きな財源」になったとして、2023年の成長予測を引き上げた。ただし、ウクライナ侵攻は中期的には大きく影響してくるとし、ロシア経済は侵攻開始前の予測よりも約7%縮小するとみている。
サンクトペテルブルク国際経済フォーラムを主催するロスコングレス財団の取締役会長であるアレクサンダー・ストゥグレフ氏は、「ロシア経済は困難な状況下でも強靭さと成長力があることを示している」と語った。
さらにウクライナ侵攻の影響で、西側の制裁や大手外国企業のロシア事業撤退が相次いでいるが、「ロシアは(ビジネスに対して)大きく開かれている」と強調した。
しかし、湾岸地域の専門家であるロバート・メイソン氏は、アラブの投資家はロシアの特定の部門については支援するかもしれないが、その影響は限定的との見方を示した。「構造的には、現時点において(湾岸諸国の投資が)形勢を一変させるものにはならないだろう」と話した。 
●サミット非難、新興国注視=戦闘機供与の影響見極め―ロシア 5/21
ロシア外務省は21日、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)について「非西側諸国を取り込み、中ロの発展を阻止する」ことを狙ったと非難した。プーチン政権は、招待国として参加した「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の動きを注視。西側諸国によるウクライナへの戦闘機供与計画についても、影響を見極めていく構えだ。
政権にとって西側諸国によるウクライナ支援は既定路線で、侵攻の長期化を見据えて「戦時体制」を固めている。戦況で優位に立つことが、将来の停戦交渉でカギを握るという立場は不変だ。
政権がむしろ注視したのはグローバルサウスの動向。サミットにはロシアの友好国であるブラジルとインドも招待された。ペスコフ大統領報道官は「心配していない」と強がり、ラブロフ外相は西側諸国とグローバルサウスの間に「断層が生じている」と主張した。
一方、ロシア国営テレビは「西側諸国は対ロ制裁の強化で合意したが、ロシアへの全面禁輸に踏み切れなかった」と報じた。政権は、G7による対ロ全面禁輸が現実となれば「(ウクライナ産)穀物輸出合意を打ち切る」(メドベージェフ前大統領)と警告。G7首脳声明に全面禁輸が盛り込まれず、ロシア経済へのさらなる打撃は回避されたことには安堵(あんど)しているようだ。
被爆地でのサミット開催は対米批判に利用され、ザハロワ外務省情報局長は、米国が核兵器を使った広島で「ロシアの核の脅威」をテーマとするのは「皮肉極まりない」と論評。プーチン大統領の最側近パトルシェフ安全保障会議書記は「(米国は)原爆を落としたのはソ連だと日本人に吹聴している」と根拠なしに発言した。
国営テレビは、広島でのサミット反対デモを「国民の総意」と歪曲(わいきょく)。「バイデン米大統領の訪問に日本人は激怒した」と報じ、G7の権威低下の宣伝を試みた。
ただ、ロシアも米国の影響力を必要としているようだ。メドベージェフ氏はSNSで、ゼレンスキー政権との停戦交渉は無理だとしつつ「戦後の世界秩序は米国としか話せない」と指摘。局面打開のための対米交渉に含みを残した。
●ローマ教皇、ウクライナ和平の仲介目指す使節任命 5/21
ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は20日、ボローニャ大司教で
イタリア司教協議会の会長も務めるマッテオ・ズッピ枢機卿を、ウクライナ戦争の和平達成を仲介する使節に任命した。
ローマ教皇庁(バチカン)の報道担当部門の責任者であるマッテオ・ブルーニ氏が声明で述べた。「使節の目的はウクライナ紛争の緊張緩和への寄与」とし、「和平への道のりを開く希望を抱きながら努めることになる」と記者団に話した。
声明は、ズッピ枢機卿による使節としての役目の内容や取りかかる時期についてはバチカンが検討している段階にあるとした。
●ウクライナに自衛隊車両100台 岸田首相、ゼレンスキー氏へ伝達 5/21
岸田文雄首相は21日、広島市内でウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、「ロシアの核の威嚇、使用はあってはならない」と表明、ウクライナとの連携に決意を示した。自衛隊のトラックなど車両約100台や非常用糧食約3万食分を新たに提供する方針を伝え、「多面的な支援を積極的に進めたい」と語った。
会談は約50分行われた。大統領は今回の広島訪問について「核兵器のもたらす被害の甚大さや、戦争は許されないことを再認識した」と語った。
首相は先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で「法の支配に基づく国際秩序の重要性」を確認したことを紹介。大統領は「ウクライナの領土の一体性と国民への支持を表明してもらい、一生忘れることはない」と謝意を伝えた。
互いに「ウォロディミル」「フミオ」とファーストネームで呼び合う場面もあった。
●グテーレス国連事務総長「ウクライナ情勢の早期解決は困難」 5/21
サミットに参加するため広島を訪れた国連のグテーレス事務総長が、「ウクライナ情勢の早期解決は困難」との認識を示しました。広島テレビの単独インタビューでの発言です。
グテーレス事務総長が最初に語ったのは、自身と被爆地・広島とのかかわりでした。
国連・グテーレス事務総長「私が初めて広島に来たのは1980年代のこと。その時に見た悲劇や核兵器の愚かさは、強く印象に残っています。それは、その後の私の政治的選択に極めて大きな影響を及ぼしました。おそらく、国連の事務総長を目指したのもその影響です」
ロシアの侵攻から1年以上がたったウクライナ情勢の今後については、厳しい見方を示します。
国連・グテーレス事務総長「両国が和平に向けて真剣な議論のテーブルに着く可能性はありますが、それがいつかについて語るのは時期尚早。両国が和平交渉に早急に応じるとは思えませんが、いつかその日は来るでしょう」
国連の安全保障理事会は去年2月、ウクライナ侵攻を非難し、ロシア軍の即時撤退を求める決議案を採決。しかし、ロシアが拒否権を行使し否決されました。国連安保理は機能不全に陥っているとの指摘もあります。
国連・グテーレス事務総長「私も強く思っていることですが、安全保障理事会は現在の状況に対応しきれていません。常任理事国に新たなメンバーを迎えるなど、世界の安全保障に効果的に対処するため、方法論を一新することが重要だと考えます」
●バイデン大統領 ゼレンスキー大統領に新たな軍事支援を伝達  5/21
アメリカのバイデン大統領は21日午後、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナ兵へのF16戦闘機の訓練を開始することや、追加の砲弾の供与などを含む新たな軍事支援を行うことを伝えました。
会談でアメリカのバイデン大統領は「大規模な攻撃を行うプーチン大統領の残虐性を誰も予想していなかったと思う。だからこそアメリカはウクライナの自衛のための能力を強化するため、できるかぎりのことを続けている」と述べました。
その上で、ウクライナが求めていたF16戦闘機について同盟国などとともにウクライナ兵に対する訓練を開始すると伝えました。
またウクライナの戦力を強化するため追加の砲弾や軍用車の供与など、3億7500万ドル、日本円にしておよそ513億円相当の新たな軍事支援を行うことも伝えました。
これに対してゼレンスキー大統領は「あなたのリーダーシップ、そして新たな軍事支援に感謝する。われわれは決して忘れない」と述べてアメリカの支援への謝意を伝えました。
両氏が対面で会談するのは、ことし2月にバイデン大統領が首都キーウを事前の予告なしに訪問した時以来で、戦闘が長期化する中でもアメリカの支援は揺るぎないものだという姿勢を強調した形です。

 

●見えてきたプーチンが戦争する理由£キ期化で焦る中国 5/22
これだけの負け戦、大ロシア軍はどこへ行ったのか? 民間軍事部隊ワグネルのプリゴジン隊長は弾薬不足を理由に激戦地バフムートから撤退すると宣言し、口汚い表現でロシア国防大臣と軍総司令官を罵倒した。ビデオは世界中に拡散し、大ロシア帝国が誇る軍事組織が弾薬に事欠く事態を世界中が目撃した。弾薬は後日供給されたようだ。
しかしロシア軍兵士の練度は低く、装備や武器は旧式の年代物だという。ロシア兵は60年代のウクライナの古地図を手渡されて戦場をうろついている。もとより士気など高いはずがない。
抑々弱体の軍隊で戦争を始めたのだ。このこと自体ロシアで今起きている混乱と錯乱の証拠だ。
「政治的に従順でいれば楽に暮らせる」というプーチン氏と国民の約束のもとでここまで来た。しかし2023年4月の時点で、ロシアは一人当たり国内総生産(GDP)で世界の63位。ハンガリー、ポーランド、クロアチア、ルーマニアなど、かつてのロシアの配下にあった衛星国に後れを取っている。
屈辱的だ。ウクライナとの開戦後、20万人以上の兵士が死んだ。ウイキペディアによれば90万人以上の生産能力のある国民が国を去った。ロシア経済は国際的な制裁を受け、国家の負債は膨大化し、国は実際上破綻している。
プーチン大統領のロシア大国意識、歴史的な被害者意識、それに起因する無数の判断の過誤。その上、失敗から学習できないシステムで、組織的に総合力を発揮できず、長期的な戦略思考が無く、新しい発想を全く生み出せない。
ロシアがこうなってしまったのは「ロシア政府の中枢が常に恐怖にさらされ、恐怖を通り越して半宗教的な集団エクスタシーに動かされているからだ」とロンドン大学パストーフ博士が解説している。わが愛するロシアの純朴な友人たちの能力不足のせいではないと理解したい。 
ロシアは崩壊するのか?
ロシア在住の識者によると、ロシアでは今や誰もがプーチン政権が終ると理解しているという。人々は、プーチン体制がもう存在しないかのように、国の将来について議論しているようだ。
問題は、どのように体制が崩壊し、その後何が起きるかだ。今のままではプーチン政権が勝利する道筋は無さそうだ。
国の将来へ共有されたビジョンもない。政治的資源は枯渇している。有為な人材は国外に出た。ロシアは変わらざるを得ない。だがどう変わるのか?
抑々ロシアでは大衆が街頭に出て大規模なデモをした程度で政権が転覆することは無いとされている。弾圧機関がガッチリ機能しているからだ。しかし、エリートの分裂が起きれば何らかの展開が始まるとされている。
政府はすでに衰退している。明らかにコントロールを失い、命令が守られていない。あらゆる問題が雪だるま式に増大し、すべての安定が失われている。ソビエト連邦末期、ミハイル・ゴルバチョフが、誰も従う気のない、強制力のない法令を次々と発布した時に似てきた。
政権が崩壊すれば、さまざまな軍事組織が衝突し、ラムザン・カディロフやワグネルグのプリゴジンが戦闘員とともに戦いに加わり、野心家の将軍や知事、その他の組織が入り乱れて戦闘に参加することになるだろう。こうなると暴力と流血のレベルは想像を絶するものになり、事態は黙示録的なものとなると論ずる者もいる。
もちろん、政権交代の可能性も民主化の可能性も低いと見る専門家もいる。プーチン氏はまさにその為にあらゆる防御と弾圧の仕組みを綿密に構築してきた。弾圧機関が異変をすぐに察知し、公開、非公開で処刑する。
米国安保プロジェクト(ASP)のバネサ・スミス・ボイル研究員は、こういう環境の中でロシアの次期大統領に親欧米の民主主義者が就任する可能性はほとんどないと指摘する。しかし別の論者はクレムリンの縦割りの権力機構の外側から来た指導者なら、戦争を終わらせ、欧米とのより良い関係を模索するだろうと論じている。
ハーバード大学のレミントン教授はむしろ戦死した兵士らの母親などが行動を起こすと国を動かすかもしれないと考える。同教授は既に中銀の債務は巨大化し、大量のロシア兵が戦死し、軍事組織は機能不全に陥っているため、ロシアの政変は1年以内に50%以上の確率で発生すると見ている。
統治の正統性の議論が始まった
ここへ来て、米有力紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の論説委員がこの戦争はとどのつまり正統性の戦争だと言い始めた。プーチン大統領は自分の強権統治の正統性を国民が問題視しているのを知っている。彼はそれを巻き返すために戦争に打って出て、強い勝利者たる地位、つまりプーチン流の正統性を確保しようとしているのだとする議論だ。
プーチン大統領は北大西洋条約機構(NATO)拡大をウクライナ侵攻の口実にしているが、NATOが攻めてくる組織でないことは大統領自身十分に知っているはずだと論じている。その証拠に、NATOに包囲されているカリーニングラードやNATOに新規加盟したフィンランドとの830マイルの国境警備にもロシア軍を新規に配備していない。要するに「NATOの拡張を喰いとめる」などと世界に向かって主張するプーチン大統領自身がNATOは拡張主義だとは思っていないのだ。
彼にとっての最大の問題はロシア国民が自分の統治を信任していないという危機感だ。それがこの戦争を始めた動機だ。戦場での勝利が正統性を与えてくれる、つまり今日のロシアの問題の核心は「統治の正当性」なのだ。WSJ紙はそう論じた。
更にこの記事は同じ問題が中国や台湾との関係にもあると論じている。要するに台湾は中国の安全保障を全く脅かしてはいないが、台湾の存在自体が中国共産党の権力独占の正統性を無言で問うているというのだ。ロシアがウクライナを侵攻した途端、中国は「専制体制の統治の正統性」という深刻な問題に繋がる危険を察知し、ロシアの今後を強く案じてきたと論じている。
要するにWSJ紙は現代的な情報革命の時代では、一党独裁の政府がいくら言論統制をしても、国営TV放送で一方的な情報を日夜流しても、統治の正統性を確保することは難しくなってきたと議論をしているのだ。
政権の正統性が民意に由来していない時、専制政権側は言論統制をする。しかしそれは現代の情報革命に挑戦することになり、闘いは熾烈になる。そこをWSJ紙は論じ始めた。要するに専制政治側の最も脆弱な側面に切り込んできたのだ。
筆者はこの欄で「ロシアの民主化」の必要性を再三にわたり論じて来たが、WSJ紙は同じことを別の形で論じ始めた。だが「ロシア民主化論」の先行きは不明瞭である。上記の通りロシア問題の専門家たちは簡単ではないと論じている。筆者も同感だ。
ただ、ロシアの民主化を可能にする一つの重要なシナリオは欧米側の働きかけである。周知の通り、スウェーデンの経済学者で世界論壇の指導層の一人であるアンダース・アスランド氏らがロシア支援の新マーシャル・プランの実行をフォーリンアフェアーズ誌で提案している。
これは単なる一例だが、ロシアに民主的政権が出来れば現に大規模な経済支援が実行されるだろう。何故ならロシアの民主化自体、世界の安定化に貢献し、西側世界にとって歴史的な前進だからだ。
その上、ロシア人は自国の民主化を狂信と迷妄と血の弾圧から解放される歴史的機会だと捉えるだろう。苦難に次ぐ苦難の歴史を辿ってきたロシア人が今度こそ、運命的な決断をする。西側は賢明な作戦を立ててそれを促して行くべきだ。それに自由民主主義には十分な国際競争力がある。
ユーラシアの盟主を目指す中国
ロシアの民主化に立ちはだかるもう一つの問題は中国だ。中国は5月18〜19日、中央アジア5カ国との首脳会議を開催する。明らかにユーラシアの将来に重大な関心を持っていることを示している。
中国はユーラシアの盟主になろうとしているのだ。その為にポスト・プーチンのロシアでも引き続き専制体制が生まれるように工作するだろう。ぐずぐずして下手をするとユーラシア全体が民主化する危険があるからだ。
また、中国は当然上記WSJ紙が指摘した「統治の正統性」の問題が中国にとっては面倒な展開になりかねないことを既に知っているはずだ。WSJ紙に指摘されるずっと前から熟知している問題だ。
中国は駐ロシア大使などを歴任してきた李輝氏をユーラシア問題担当の特別代表に任命し、ウクライナ問題の解決を手始めに動き始めている。要するに北京の外交マシーンはユーラシア全域でトップギアで走り始めているのだ。
中国主導でウクライナ問題を解決し、ロシアの民主化を阻止し、「統治の正統性等のくだらない問題」が国際的な議論の俎上にのぼらないように工作を始めているに違いない。「世界の大国のように行動し始めた中国」という記事が既に出ている。
日本はもちろん、西側自由同盟は賢明な作戦を練って対応するべき時だ。ユーラシア地政学の将来、日本とアジア太平洋の安寧と発展等に直結する問題だからだ。
●G7広島サミットがプーチン大統領にとって痛手となった理由とは? 5/22
ウクライナのゼレンスキー大統領やインドなどグローバルサウス諸国の首脳も参加した先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)はロシアによる核の恫喝どうかつを非難し、ロシア包囲網を強化した。プーチン大統領は、米国の非人道性を強調するプロパガンダ(政治宣伝)に広島の原爆被害を利用してきただけに、被爆地広島でのサミットを苦々しく受け止めているだろう。(編集委員・常盤伸)
プーチン氏は昨年9月、ウクライナ南東部4州を併合したと主張した演説で「米国は世界で唯一、核兵器を2度使用し、広島と長崎の都市を破壊した。米国が(核使用の)前例をつくったのだ」と言及した。プーチン氏はこれまでも繰り返し広島を引き合いに出し、反米プロパガンダを展開してきた。プーチン政権は約10年前から、広島、長崎への原爆投下を、ロシアが内外で拡散する反米プロパガンダ活動の象徴として、フル活用してきた。日本を真の主権のない米国の従属国とみなすプーチン氏は同演説でも、「米国はドイツ、日本、韓国などを占領している」と侮辱的な表現を用いている。
ところが広島サミットでは、岸田首相の主導で、原爆投下国のバイデン米大統領や核保有国の英仏首脳などG7首脳が平和記念資料館を訪れ、核軍縮文書「広島ビジョン」を発表。ロシアを名指しで非難した。プーチン氏にとっては国際世論を巡る宣伝戦でも痛打となった。
ウクライナで苦戦のロシア、核使用の可能性はあるのか
一方、開始間近とされるウクライナの反転攻勢を前に、苦戦するロシアが核を使用する可能性はあるのだろうか。ロシアは約2000発の小型戦術核弾頭を保有。短距離弾道ミサイル「イスカンデル」や、巡航ミサイル「カリブル」や極超音速ミサイル「キンジャール」などに搭載しての使用が想定されている。
プーチン氏は昨年2月の侵攻直後から、核兵器使用の構えを繰り返し示し、米欧の介入やウクライナ支援を強くけん制してきた。ロシアの情報戦に精通する英王立国際問題研究所のロシア専門家キア・ジャイルズ氏は最近発表した「ロシアの核恫喝」という長文の報告書で、ロシアによる核兵器使用の威嚇は、米欧のウクライナ支援を抑制するための「驚くほど成功した情報キャンペーン」だと分析する。
しかし米欧が侵攻当初の、歩兵携行用多目的ミサイル「ジャベリン」などから、高機動ロケット砲システム「ハイマース」、さらには防空用の地対空ミサイルシステム「パトリオット」など徐々に強力な兵器を供与し、ウクライナが反撃に成功する中でも、軍事的な対立がエスカレートし、核を使用せざるを得ないほど状況が制御不能になるのを回避してきた。
侵攻から1年以上経過し、「恫喝の効果」は低下しつつある。広島サミットに合わせて、ロシアからの最も強い反発が予想された、ウクライナへの欧州諸国のF16戦闘機供与を米国が容認したが、ロシア側は外務省が型どおりの批判をするだけで、強い反応を控えている。
軍事的にも戦術核使用効果は疑問符がつく。ウクライナ軍とロシア軍が対峙たいじする前線は約1000キロもあり、広大な領域で、多くの部隊が分散して機動的な攻撃を続けるウクライナ軍に1発の核攻撃で重大な打撃を与えるのは不可能だ。
逆に、バイデン政権などが警告するように、ロシアを圧倒的に凌駕する米欧の通常戦力による攻撃で、ウクライナ領内に展開するロシア軍を短時間で壊滅させる可能性が高い。ウクライナでの戦術核の使用は、即座に米国と対峙する戦略的な性格を帯びるのだ。
最も強調すべきなのは、1発でも核を使用すれば国際社会から今度こそ完全に孤立し、文字通り「亡国」と化すということだ。プーチン政権は、G7を中心とするリベラルな国際秩序を、「悪魔的」な「西側エリートの独裁」とまで断罪するようになった。米国と対立する中国との戦略的パートナーシップや、旧ソ連時代から関係の深いアフリカ諸国や、アジア諸国との関係強化に、ロシアの活路を見出す。しかし、中国は核の先制使用に明確に反対しており、3月にモスクワを訪問し、関係強化でプーチン氏と一致した習近平国家主席も、さすがにロシア批判に回らざるを得なくなるだろう。また、ロシアと良好な関係を維持し、対ロ包囲網に加わらないインドやブラジル、インドネシアなどのグローバルサウス諸国も、ロシア離れが加速するのは間違いない。そうなれば、ロシアの経済状況は急激に悪化し、腐敗した権威主義体制が崩壊する可能性が高まるだろう。
それでも閉ざされた情報空間で生きる独裁者プーチン氏が、クリミア半島がウクライナ軍に奪還される可能性が高まるなど、ウクライナ戦争の帰趨次第では、昨年2月の全面侵攻決定と同様、非合理的な決定を、「合理的」な判断と思い込み、核使用という破滅的な道を選ぶ恐れは残っている。侵攻を正確に予測した米軍事専門家、マイケル・コフマン氏ら多くの専門家が、今後の核使用の可能性を排除していない。
●ロシア、中国と安全保障協議 22日に開催=RIA 5/22
ロシアのプーチン大統領の側近であるニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記が22日、中国共産党の政治局員である陳文清氏と会談すると、ロシア通信(RIA)が伝えた。
陳氏は昨年10月の党大会後に政治局員に昇格し、公安・司法・情報機関を束ねる中央政法委員会の党書記に任命された。
RIAによると、パトルシェフ氏が陳氏と会談するのは初めて。
二国間の安全保障協議は年次行事だが、ロシアは昨年2月のウクライナ侵攻開始以降、中国と経済、政治、軍事面で一段の関係強化に動いている。
●対抗手段に出る習近平。G7の真裏で中国が開催する「もう一つのサミット」 5/22
透けて見える習近平の意図。なぜ中国は和平外交を展開するのか。
「李輝大使が中国政府ユーラシア事務特別代表になったのか…」5月16日と17日に李元駐ロシア中国大使がキエフでクレバ外相との会談に臨んだ映像を見て思わずつぶやいた言葉です。
李輝氏は10年以上にわたり、中国政府外交部では、駐米大使・駐英大使、そして駐日大使と並ぶエース級が就任する駐ロシア大使を務め、2019年の退任時には、李輝大使のロシアへの献身と敬愛に対してプーチン大統領本人から友誼勲章を直接授与されるほど、ロシア政治のトップにも食い込んでいた人物です。
李輝大使は確か旧ソ連時代も含めると17年ほどロシアに滞在し、ロシア語に堪能であるだけでなく、ロシア文化にも造詣が深く、ゆえにプーチン大統領からも「ロシアの真の友人」との評価を得たと言われています。
今ではもう70歳を超え、確か外交官は退官されていますが、現役を退かれた後も私が属する調停グループにもアドバイスをいただく非常にシャープな人物です。ただ退官後は「ロシア文化・文学についての本でも書くかな」と仰っていたので、悠々自適な生活を送っておられるのかと思っていたら、習近平体制下での“和平外交”の先頭に立つ一人として表舞台に戻ってきました。
この特使の派遣については、習近平国家主席とゼレンスキー大統領が行った4月26日の電話会談の中で中国側がオファーし、ウクライナ側が受け入れることを決めたものですが、私自身、中国政府は一体誰をこの特使に充てるのかなと非常に関心を持っていました。
その理由は【誰が特使になるかによって、習近平国家主席と中国政府がどこまでロシア・ウクライナ戦争の停戦仲介と平和的な解決に本気なのかを探る指標になる】と考えていたからです。
聞くところによると、4月26日の習近平国家主席とゼレンスキー大統領との電話会談後、プーチン大統領はこの“特使派遣”合意に対して不快感を示し、不安を抱いていたそうですが、この李輝氏がその特使に就任することを知ってかなり喜び安心したそうです。
その理由はすでにお話ししましたが、ロシアに対する深い敬愛と憧憬を抱く李氏の特使任命は、中国の平和外交・和平外交の立ち位置が明らかにロシア寄りの調停になるものと期待できるからです。
そのことは、キーウで会談したクレバ外相も重々承知で、李輝特使に対して「ウクライナは領土の分割や喪失、そして戦争の凍結には応じない」と釘を刺し、「領土の一体性の保持がマストであり、黒海を通じた穀物輸出の再開と安全の保障、そして核兵器の安全保障について、中国の協力をお願いしたい」と要請し、中国が中立的な観点から調停を行うことを要請したようです。
このクレバ外相の言葉を少しだけ深読みすれば「ウクライナ政府は、中国政府が行う和平外交の中立性を信頼していない」というメッセージを、李氏を通じて、中国政府に伝えたのではないかと思います。
ただ李氏もクレバ外相も時折通訳を介することなく、ロシア語で直接に対話を行い、かなり込み入った内容の話までしたようで、その際に、李輝特使はウクライナ側の“政治的解決に向けた条件”を事細やかに聴取したようです。
●バフムトでロシアとウクライナの主張に食い違い 引き続き焦点  5/22
ウクライナ東部の激戦地バフムトをめぐりロシア側が完全に掌握したと発表したのに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアに占領されていない」とこれを否定しました。
双方の主張が食い違い、バフムトの戦況の行方が引き続き焦点となっています。
激戦が続いてきたウクライナ東部ドネツク州のバフムトについてロシア大統領府は21日、「プーチン大統領がバフムト解放作戦の完了を祝福した」と発表し、戦果をアピールしました。
この発表に先立ちロシア国防省も、民間軍事会社ワグネルとともにバフムトを完全に掌握したと主張しました。
これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領はG7広島サミットのあとの記者会見で「バフムトでは、正確な位置は教えられないが、重要な任務が続いている。21日の時点でバフムトはロシアに占領されていない」と述べ、ロシア側の発表を改めて否定しました。
ウクライナ陸軍のシルスキー司令官は21日、みずからのSNSにバフムト近郊の前線を訪れ兵士を激励した動画を投稿し、「ウクライナ軍の反撃は続いている」としてバフムト近郊で攻勢をかけていることを強調しました。
バフムトをめぐっては、ロシア側に多くの戦闘員を送り込んでいるワグネルの代表、プリゴジン氏が今月25日以降に部隊を撤退させる意向を示しています。
双方の主張が食い違う中、戦況の行方が引き続き焦点となっています。
ゼレンスキー大統領「勝利を近づけるための外交の1日」
ウクライナのゼレンスキー大統領は日本時間の21日夜遅くSNSに「ウクライナに勝利を近づけるための外交の忙しい1日」とコメントを投稿し、G7広島サミットに対面で参加したことの成果を強調しました。
また21日はカナダのトルドー首相、インドネシアのジョコ大統領、韓国のユン・ソンニョル大統領、アメリカのバイデン大統領、それに岸田総理大臣と個別に会談したとして、各国の首脳と抱き合ったり、固く握手したりする様子をうつした動画も投稿しました。
ウクライナ情勢をテーマにしたセッションに参加したことや広島の原爆資料館を訪れたことにも触れ、サミットに招待してくれた岸田総理大臣への感謝のことばを述べています。 
●ウクライナ戦争の「肉挽き器」 ロシア軍の消耗を強いる戦い 5/22
約9カ月におよぶウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムートを巡る戦いは、400年の歴史を持つこの町を完全に破壊し、ロシア軍に消耗を強いるウクライナ軍の戦術の前に、数万人の犠牲者を出してきた。
ウクライナ戦争最長となった「バフムートの戦い」で、現地の状況を独自に確認することは困難だが、ロシア国防省は、ロシア軍に支援された民間軍事会社「ワグネル」が、バフムートを制圧したと報告した。
しかし、ウクライナのゼレンスキー大統領は、バフムートはロシアに占領されていないと反発している。
いずれにせよ、ウクライナとロシア双方にとって、この小さな町が持つ価値は、戦略的というより、象徴的な意味合いが大きい。
ウクライナ軍にとっては、ロシア軍をここで足止めし、兵力を消耗させることがより重要であった。
約15カ月に及ぶ戦争でウクライナ軍が大規模な反攻に備える中、全長1500キロにおよぶ戦線の一部でしかないバフムートで、ロシア軍の資源と士気を枯渇させることが、ウクライナ軍に課せられた目的なのだ。
ここ数カ月、ロシア軍とウクライナ軍が争っていたのはバフムートの市街地そのものであり、今週までウクライナ軍の指揮官は、ロシア軍が90%以上を支配していると認めていた。
しかし、ウクライナ軍は現在、市外の田園地帯を通る戦略的道路付近で大きく前進し、民間軍事会社の戦闘員を包囲する目的で、ロシア軍の北と南の側面を数メートル単位で削り取っている。
ウクライナ軍も、バフムートを防衛するために高い犠牲を払ってきた。しかし、軍事専門家は、ロシア軍が戦線の他の場所に兵力を展開できないでいる間に、ウクライナ軍の前進を可能にしたバフムートでの数カ月にわたる気骨ある抵抗は、十分価値があったと指摘している。
ロシア軍は、失われた北と南の側面を補い、ウクライナ軍のさらなる前進を防ぐために、バフムートに増援部隊を配備したと伝えられているが、これはロシア軍がいかに疲弊し、これ以上どこへも進めないということの表れだと、西側の軍事専門家は指摘する。
●ウクライナ戦争で「中立」であること  5/22
アイスランド共和国首都レイキャビクで16日から第4回欧州評議会(CoE)サミットが開催されたが、人権保護を目的とした国際機関の同会議にオーストリアから参加したファン・デア・ベレン大統領はウクライナ戦争に言及し、その悲惨な現状を説明、「わが国も地雷除去など人道的支援をする用意がある」と表明した。大統領のレイキャビク発言はウィーンの夜のニュース番組でも大きく報道された。
ここまでは良かったが、その翌日、オーストリアのクラウディア・タナー国防相は、「わが国の連邦軍は地雷除去には参加しない」と発言し、大統領の発言をあっさりと切り捨てた。その直後、ネハンマー首相は、「中立国のわが国は紛争地での地雷除去活動はできない」と説明し、オーストリアは中立国であると強調した。
地雷除去作業中、ロシア軍と衝突し、戦闘になった場合、オーストリア連邦軍は中立主義だからといって戦いを放棄し、逃げ去ることはできない。だから、人道的な地雷除去活動といっても戦闘が行われているウクライナでの活動は中立主義と一致しないというわけだ。
大統領が国際会議の場で「やります」といったことをその直後、同じ国の閣僚が「それは出来ません」と一蹴すれば、国の威信とメンツは丸つぶれだが、状況はそのようになった。ファン・デア・ベレン大統領は、「地雷除去作業は中立には反しない」と主張し、大統領の出身政党「緑の党」も大統領の発言を支持したが、保守派政党「国民党」出身の国防相、そして首相まで「できません」と宣言したことで、残念ながら、オーストリア連邦軍のウクライナでの地雷除去活動は白紙に戻った感じだ。
欧州の代表的中立国はウクライナ戦争勃発前までは4カ国、フィンランド、スウェーデン、オーストリア、スイスだ。フィンランドとスウェーデンの北欧2カ国の中立国はロシアの脅威から安全を守るために北大西洋条約機構(NATO)加盟を決意したが、スイスとオーストリアは依然、中立主義を堅持している。ただ、スイスでは国内で中立主義の見直しを求める声が高まってきているが、オーストリアでは“中立主義の堅持”で政府も国民もコンセンサスが出来ていて、それを変えようとする声はほとんどない。
ところで、ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、広島で開催された先進諸国首脳会談(G7サミット)に参加する前、サウジアラビア西部ジッダで開催されたアラブ連盟(21カ国・1機構)首脳会談に顔を出し、ロシア寄りが多いアラブ諸国首脳にウクライナの現状を訴え、ウクライナ支持を呼び掛けた。その後、同大統領は広島のG7に参加、7カ国の首脳たちばかりか、新興・途上国「グローバルサウス」の代表国首脳たちと精力的に会談を重ねた。
インドのモディ首相との会談では、インドがウクライナ戦争では中立の立場を堅持する一方、ロシアとも深い経済関係を維持していることに対し、ゼレンスキー氏はウクライナでのロシア軍の戦争犯罪を説明し、ウクライナ戦争での中立を放棄すべきだと要請した。それに対し、モディ首相はウクライナ国民の被害に同情を示す一方、ロシアとの経済関係を放棄することは国民経済の観点からも難しいと説明したという。
ゼレンスキー大統領にとって、ウクライナ戦争はロシアの侵略から始まったもので、ウクライナは明らかに被害国だ。それを他国の首脳たちが「中立」という言葉を盾に自国の国益だけを重視し、ロシアの戦争犯罪に沈黙していることに、「ウクライナ戦争では『中立』はあり得ない」と叫びたい心情かもしれない。同大統領にとって、冷たいか熱いかのどちらかであり、「中立」はなまぬるい立場というわけだ。
中国共産党政権はここにきて世界の紛争で仲介役を演じることに腐心してきた。サウジ(スンニ派の盟主)とイラン(シーア派代表国)の対立に仲介し、両国の和解に貢献していることに自信を持ってきた。そしてウクライナ戦争ではロシアとウクライナ間の調停を申し出、12項目の和平案を発表した。ただし、その12項目の内容をみると、中国が明らかにロシア支持であることは一目瞭然だ。中国の和平案第1項目には「国家の主権を尊重:一般に認められている国際法と国連憲章は厳密に遵守されなければならない」と堂々と明記されている。ロシアがウクライナの主権を侵略していることは誰の目にも明らかだ。ただ、中国共産党政権はその事実を見ないのか、恣意的に無視しているのだ。
世界最大のキリスト教会、ローマ・カトリック教会の最高指導者フランシスコ教皇はキーウとモスクワに派遣団を送り、両国の和平交渉を進めたい意向だが、ゼレンスキー大統領は今月13日、フランシスコ教皇との対面会見で、「バチカンはロシアの戦争犯罪をはっきりと批判してほしい」と要請、キーウだけではなく、モスクワからも歓迎されることを期待するローマ教皇の調停工作に拒否姿勢を見せている。誰でも嫌われることを願わないが、ウクライナ戦争では誰が侵略者かをまず明らかにしてからでなくては、和平交渉は始まらないのだ。
ウクライナ戦争で「中立」を主張する国の多くは、その国益を重視し、紛争両国から可能な限り等しい距離を取る姿勢だ。例えば、インドはウクライナ戦争がロシアの侵略から始まったことを理解しているが、ロシアから安価な天然ガス,原油などの資源を輸入できるメリットを失いたくないため、ロシアを正面から批判できない。同じことが、中立国オーストリアのウクライナでの地雷撤去活動の拒否でもいえる。ロシアとのこれまでの経済的、人的繋がりをウクライナ戦争のために全て放棄できないのだ。「中立」という言葉は、その快い響きも手伝って、打算、国益をカムフラージュできるからだ。
繰り返しになるが、ウクライナ戦争では「中立」はあり得ない。ロシアの侵略から始まった戦争だ、ただ、ロシアを「悪」、ウクライナを「善」といった「善悪2分」論は危険性も内包している。「善悪論」を強調しすぎると、ロシアのプーチン大統領のパラレル世界を間接的に認めることになるのだ。プーチン大統領は、「ウクライナに対するロシアの戦争は西洋の悪に対する善の形而上学的闘争」(ロシア正教会最高指導者キリル1世)というナラティブ(物語)を信じている。善悪の立場が逆だけで、その構図は同じだ。ちょうど、ヘーゲルの弁証法の観念の優位性と物質の優位性を逆転して共産主義思想が構築されたようにだ。
●ワグネルは今週、酷い目に遭う――米軍元司令官 5/22
ロシアの民間軍事組織ワグネルは来週、ウクライナで「悲惨な状況」に直面するだろう――アメリカ欧州・アフリカ陸軍のマーク・ハートリング元司令官が21日、そんな見方を示した。東部の激戦地、バフムトがウクライナ側に包囲されているからだという。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は昨年2月、「特別軍事作戦」の名の下にウクライナ侵攻を開始。短期間で勝利を収めるはずが兵士たちの士気の低さなどさまざまな問題に見舞われ、開戦後1年以上経っても戦いは続いている。中でも激しい戦闘が続いているのはウクライナ東部のドネツク州バフムトだ。
ワグネルは実業家のエフゲニー・プリゴジンが創設した。戦闘員の多くは元受刑者だ。バフムトでロシア軍とともに戦ってきたワグネルは、かつてはロシアの勝利の鍵を握ると見られていた。
バフムトを巡る戦況は数カ月間、膠着状態が続いていたが、ここを落とせばプーチンにとっては象徴的な勝利となるはずだった。だが激しい戦いの結果、どちらの勝利とも言いにくい状況になっている。
バフムート攻防戦はまだ終わらない
プリゴジンは20日、メッセージアプリのテレグラムに、ワグネルがバフムトを完全制圧したと投稿し、ロシア側の勝利を主張した。だがウクライナはこれを否定。激しい戦闘はまだ続いており、今後の形勢のカギを握っているのは自分たちだと主張した。
ウクライナ陸軍のオレクサンドル・シルスキー司令官は21日、ウクライナ軍は近くバフムトの「戦術的包囲」を行うと述べた。本誌はウクライナとワグネルのどちらの主張についても真偽を確認できていない。
ハートリングはウクライナの発表を受け、21日にプリゴジンに警告するこんなツイートを投稿した。
「われわれが何度も言ってきたように、プリゴジンもワグネル戦闘員もプロの兵士ではない」「エフゲニー、おめでとう。バフムトの中心に旗を立てたんだね。だが、その君たちは包囲されている」
また、ワグネルはここまで5カ月も酷い目に遭わされてきたが、また来週も酷い目に遭うだろうと述べた。
米シンクタンクの軍事研究所は21日、バフムトの一部地点がワグネルに制圧されたものの、いずれも「戦術的もしくは作戦上、重要な場所ではない」との見方を明らかにした。また、同研究所ではワグネルが勝利したという主張を裏付ける位置情報データは得られていないという。
一方でウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は20日夜、メディアに対し、ロシア軍とワグネルの部隊はバフムトの「すべてを破壊した」と述べたが、21日の記者会見で制圧を否定した。

 

●モスクワ大学の上に反体制旗か、自由ロシア軍団が映像を投稿 5/23
ロシア南西部ベルゴロド州で起きた攻撃事案で実行を主張する集団「自由ロシア軍団」は22日夜、SNS「テレグラム」に、モスクワ大学の上空に反体制旗が掲げられている様子を映したものとみられる映像を投稿した。
映像では、風船に持ち上げられる形で、自由ロシアの旗とよばれる青色と白色のストライプからなる旗が大学の主要建物の上に掲げられているように見える。自由ロシア軍団はこれを実行したと直接認めてはいない。
テレグラムへの投稿には「我々を支持し、待っていた人々のおかげだ!」「ロシア、自由のための軍団!」との記述があった。
同集団が投稿した他の映像には、モスクワのさまざまな場所で反体制旗が掲げられているように見える様子も収められている。
CNNはこうした事案の真偽を独自に検証できていない。
この旗は反プーチンのロシア反体制グループの一部で使用され、ウクライナ侵攻以降は使用が広がっている。
●「ウクライナとの国境付近侵入の工作員39人殺害」ロシア側報道  5/23
ウクライナへの侵攻を続けるロシアは、ウクライナと国境を接する州に工作員が侵入したと発表し、ロシアのメディアは、当局が工作員39人を殺害したと伝えています。一方、ウクライナ側は、侵入はプーチン政権に反対するロシア人の地下組織によるものだとしていて、現地で緊張が高まっています。
ロシアが侵攻するウクライナでは東部ドネツク州の激戦地バフムトをめぐり、ロシア側は21日、完全掌握を発表していますが、ウクライナのマリャル国防次官は22日、SNSで「バフムト郊外の北と南で敵と支配権を争っている」として、ロシア側が街の大半を掌握する一方、郊外では反撃を続けていると強調しました。
一方、ウクライナと国境を接するロシア西部のベルゴロド州の州知事は22日、ウクライナの工作員が州内に侵入したとして、テロ対策を行うための態勢を敷くと発表しました。また、砲撃を受けて州内の8人がけがをしたとしています。
これについてロシア大統領府のペスコフ報道官は22日に「国防省やFSB=連邦保安庁などがウクライナからの侵入を撃退し、排除しようとしている」と述べ、プーチン大統領に報告したと明らかにしました。
ロシアのメディアは、ロシア側の当局がウクライナ側の工作員39人を殺害したと伝えています。
これについて、ウクライナ大統領府のポドリャク顧問はSNSで「関心を持って注視しているがウクライナは関係がない」と関与を否定し、侵入はプーチン政権に反対するロシア人の地下組織によるものだとしています。
こうした中、ウクライナ側に立って戦うロシア人などの義勇兵を名乗る組織がSNS上でロシア領内に入ると主張し、軍用車両などの映像を公開していて、現地で緊張が高まっています。
●ロシア軍、ウクライナから越境した部隊と交戦−クレムリンが主張 5/23
ロシア軍はウクライナとの国境を越えて侵入した部隊と交戦していると、ロシア大統領府(クレムリン)が明らかにした。ロシアへのこうした侵入があったと当局が報告するのは、過去2カ月で2回目になる。
ウクライナと国境を接するロシアのベルゴロド州で「ウクライナ工作員」による攻撃があったとの報告を、プーチン大統領は国防省と安全保障担当当局者から受け取ったという。ペスコフ大統領府報道官が22日語ったとして、ロシアのメディアが報じた。ロシアは攻撃を撃退し、壊滅させるだけの十分な兵力を同州内に有していると、ペスコフ氏は述べた。
一方、ウクライナ国防省情報総局のアンドリー・ユソフ報道官は同国公共放送ススピーリネとのインタビューで、ロシア人志願兵らが作戦を行っていると説明。「自由ロシア軍団」と「ロシア志願兵団」がウクライナ民間人を守るための「安全回廊」を設置する目的でベルゴロド州に入ったと語った。
これより先、ベルゴロド州のグラトコフ知事はテレグラムで、ウクライナ軍の「破壊工作と偵察を行う集団」が州内に侵入し、ロシア軍と国境警備兵が共同して「敵の殲滅(せんめつ)に必要な措置」を講じていると主張した。
ロシアの国営メディアRTは、国境に近いベルゴロド州のグライボロンで銃声が聞こえ、煙が上がっている様子を報じた。
●露ベルゴロド州知事「ウクライナ軍が侵入し、露軍などが応戦」ウクライナ否定 5/23
ウクライナと国境を接するロシア・ベルゴロド州の知事は22日、ウクライナ軍が州内に侵入し、ロシア軍などが応戦したと主張しました。ウクライナ側は否定しています。
ベルゴロド州のグラドコフ知事はSNSで、グロトボ村が砲撃を受け、幼稚園で火災が発生したほか、8人がケガをしたとしています。また、ウクライナ軍の破壊工作グループが国境を越えて侵入し、ロシア軍などが応戦したと主張しました。
ロシアのペスコフ大統領報道官は、「ウクライナの破壊工作員がベルゴロド州を突破しようとした」とプーチン大統領に報告したとしています。
一方、ウクライナで活動するロシア人の反政府武装組織「ロシア自由軍団」が声明を出し、「我々は襲撃を開始した。ロシアは自由になる」などと主張しました。
ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、「出来事を興味深く見守る。地下ゲリラ集団はロシア人で構成されている」として関与を否定しています。
●ロシア、G7サミットに合わせ「バフムト制圧」発表…戦果を内外にアピールか 5/23
今回のサミットについてロシアはどのように受け止めているのでしょうか。
ロシアの大衆紙、日曜日が休刊日のためいずれもバフムトの制圧を一面で取り上げていて、サミットについては淡々と報じるにとどまっています。
ロシア側がバフムトの完全制圧を発表したのは、ちょうどゼレンスキー大統領が来日した20日で、真夜中になってプーチン大統領はワグネルとロシア軍に祝意を示しました。ロシアではワグネルのような傭兵は違法な存在ですが、プーチン氏の祝意について独立系メディアは初めてお墨付きを与えた形だとしていて、プーチン氏としては、それだけこのタイミングで戦果を内外にアピールし、侵攻を続ける姿勢を示す狙いがあったものとみられます。
そうした中、ロシア外務省は今回のサミットに強く反発する声明を出しました。ゼレンスキー氏を参加させたことで「プロパガンダのショーになり果てた」とし、サミットの声明は「反ロシア、反中国の悪意で満ちている」と批判。中国にも言及することで対欧米で連携を図りたいものとみられます。
もう一つ強調したのがグローバルサウスとの関係です。「G7は彼らを取り込み、中ロとの関係発展を阻もうとしている」とし、ロシアとして欧米と一線を画すグローバルサウスとの関係強化を図る中、欧米とグローバルサウスとの接近に強い警戒心を示した形です。
●戦車も弾薬も軍服も全部足りない…次々明らかになるロシア軍の惨状 5/23
CNN.co.jpは5月16日、「ロシア軍、もはや大規模な攻撃行動は不可能か ウクライナ当局者が主張」との記事を配信、YAHOO! ニュースのトピックスに転載された。ウクライナ国防省の報道官が15日に国内向けテレビ番組に出演し、ロシア軍の弱体化を明らかにしたと伝えたのだ。
CNNによると、テレビ出演したのは国防省情報総局のアンドリー・ユーソフ報道官。ロシア軍は大規模な攻撃行動が不可能となり、前線の全体で守勢に回っているとの分析結果を発表した。
ロシア軍はウクライナの都市部やインフラ施設に対して何度もミサイル攻撃を行ってきた。ユーソフ報道官によると、巡航ミサイルの一部は在庫が不足しつつあるが、S300型地対空ミサイルは今も大量の備蓄があるという。
さらに報道官は、ロシア軍は守りを固めていると言及。ウクライナ軍はロシア軍の堅い防御を《重大な要素として確実に考慮に入れながら》領土奪還を目指すとした。
ここで注意が必要なのは、CNNは報道官の発言を、そのまま報じたということだ。同社の取材結果や分析といった客観的な視点は反映されておらず、ウクライナ国防省による“大本営発表”だった可能性はある。
ならば実際のところはどうなのか。軍事ジャーナリストは「5月9日に行われたロシアの戦勝記念パレードは非常に示唆的です」と言う。
「モスクワの赤の広場で行われたパレードで、たった1両の戦車しか登場しなかったと世界各国のメディアが注目しました。この戦車は1939年に開発されたT-34-85です。独ソ戦の緒戦で劣勢に立たされていたソ連軍が投入すると、その高い性能で戦況を一変させてしまいました。ロシア人にとってはまさに救国の戦車であり、毎年のパレードで主役級の位置を占めてきたのです」
戦車の被害は3000両!?
軍事ジャーナリストがロシア軍の弱体化を確信したのは、1両のT-34-85を見た時ではなく、その後のパレードだったという。
「例年ならT-34-85の後、最新鋭の戦車T-14アルマータなど多数の戦車と軍事用車両が続きます。陸軍大国を自認するロシア軍の威信をかけたパレードが展開されるはずなのですが、今年はたった1両のT-34-85が象徴したように、戦闘用車両が少なく、規模の縮小は明らかでした。加えて、昨年は実施された戦闘機のデモンストレーション飛行も見送られました」(同・軍事ジャーナリスト)
ロシア空軍については、昨年から様々なメディアや専門家が「存在感が全くない」、「空から攻撃する姿が確認されていない」と疑問視してきた。パレードでデモンストレーション飛行が見送られたことで、さらに謎が深まったと言える。
「オランダに拠点を置く軍事専門のサイト『オリックス(ORYX)』は、ロシア軍戦車の被害状況を調査、発表しています。それによると、少なく見積もっても1900両、多ければ3000両の戦車が破壊されたか鹵獲(ろかく)されたそうです。ロシア軍は開戦当初、実戦で使用可能なT-72やT-90といった戦車を約2500両、保有していました。となると、3000両では保有数を超えてしまい、計算が合わないことになります」(同・軍事ジャーナリスト)
戦車バイアスロン大会
オリックスはSNSに公開された最前線の画像や動画などを丁寧に分析し、ロシア軍戦車の被害状況を推計している。しかもT-72やT-90といった戦車の型式別に損害数を集計しているため、3000両という数字は決してデタラメなものではないという。
「ウクライナ軍の激しい反撃で大きな被害を受け、ロシア軍は骨董品とも言うべき古いタイプの戦車を前線に送っています。1962年に量産が決まったT-62を倉庫から引っ張り出し、1958年に登場したT-55も極東の戦車保管庫から鉄道でウクライナ方面に輸送しました。旧式戦車が戦力になるはずもなく、それだけ前線では戦車が不足しているのでしょう。オリックスの分析から、ロシア軍は2500両の主力戦車の大半を失い、旧式戦車も500両が損害を受けたと考えられるのです」(同・軍事ジャーナリスト)
ロシア軍の現状を指し示すものとして、ロシアが2013年から開催してきた「戦車バイアスロン」大会が挙げられるという。冬季オリンピックの正式種目「バイアスロン」と同じように、戦車の射撃精度と障害物ルートの走破タイムで順位が決まる。
「日本では知られていませんが、毎年20カ国を超える参加国があり、オブザーバー参加も含めると40カ国を超えるという非常に大きなイベントです。東欧圏だけでなく、ロシア製の戦車を使っているインドやミャンマー、ベネズエラやアルジェリアといった国も参加し、かつてはアメリカも招待されていました。重要なのは毎年のようにロシアのチームが優勝してきたことです。これは不正が行われたという意味ではなく、本当に無敵を誇ってきたのです」(同・軍事ジャーナリスト)
補給の差
新型コロナが世界中で猛威を振るった2020年以降も、戦車バイアスロンは実施されてきた。ところが、今年は初めて中止になっただけでなく、「今後は2年に1回とする」と隔年開催が発表されたのだ。
「その背景として、戦車も戦車兵も枯渇している可能性があります。無敵を誇ったロシアチームのT-72ですが、ウクライナ軍によって3両のうち2両は破壊され、1両は鹵獲されたほか、戦車兵の戦死も確認されています。一方のNATO(北大西洋条約機構)軍は5月1日から戦車バイアスロンに似た『アイアンスピア演習』を実施、こちらも射撃の技能などを競い、イギリスのチャレンジャー2が優勝しました」(同・軍事ジャーナリスト)
ちなみに今年のアイアンスペア演習は、ロシアやベラルーシと国境を接するラトビア共和国で実施された。戦車バイアスロンが中止に追い込まれたロシアに見せつける意図があったのは間違いないだろう。
「ロシア軍の苦境は、SNSなどにアップされた兵士の服装や装備品の写真を見ても分かります。服装は汚く、破損も目立つ。特に調達兵は軍服や武器が自弁で、ゴム長靴を履いた兵士がいるほか、手にする小銃も非常に古いものばかりです。一方のウクライナ軍は苦境を伝えられた緒戦時からNATO仕様の清潔な軍服に身を包み、ベルトやチャックといった部分も壊れていませんでした。対照的な軍服の様子から、ロシア軍は補給に苦しみ、ウクライナ軍の兵站は充分に機能していることが分かります」(同・軍事ジャーナリスト)
臥薪嘗胆
ロシア民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏(61)はSNSなどで何度も弾薬不足を訴えてきた。軍や政府を恫喝するような動画もあり、日本でも大きく報じられている。
「もちろん情報操作の疑いもありますが、ワグネルの兵士が着ている軍服は、ロシア軍の兵士よりはマシです。とはいえ、昨年の段階で北朝鮮の砲弾と銃弾がウクライナの最前線に送られたという報道もありました。ロシア軍が深刻な弾薬不足に陥っている可能性は充分にあり、いくらプリゴジン氏が補給を求めて軍や政府に迫ったとしても、そもそも送れる弾がないのかもしれません」(同・軍事ジャーナリスト)
2014年のクリミア危機でロシア軍がクリミア半島を実質的に占領したため、ウクライナ軍は弱いという評価が定まってしまった。しかしその後は、まさに臥薪嘗胆の思いで軍の増強を続けてきた。
「ロシア軍の侵攻時、ウクライナ軍の兵力は約19万人でした。さらに、国家親衛隊が約6万人、国境警備隊が約4万人で、合計30万人に近い戦力だったのです。一方のロシア軍の兵力は開戦当初、約15万人だったことが最新の調査で分かりました。要するに、最初からロシア軍は戦力不足だったのです。確かに、一部のウクライナ軍は緒戦で混乱に陥って敗走しました。それでも何とか持ちこたえて反撃に転じたのは、戦力差から考えても当然の結果だったのです」(同・軍事ジャーナリスト)
鍵を握るバフムト
ウクライナ軍は充分な戦力を維持しており、ロシア軍は弱体化し、疲弊している。となれば、ウクライナ軍が一気に反転攻勢に出るのではないかと思ってしまうが、そう簡単にはいかないという。
「ウクライナ軍は絶対に失敗が許されず、これだけでも相当なプレッシャーです。NATOから供与された戦車の運用は始まりましたが、ロシアの核リスクが存在することもあり、欧米諸国は航空支援には消極的な姿勢を示してきました。広島サミットでアメリカのバイデン大統領はF−16の供与を容認する考えを明らかにしましたが、パイロットの養成には時間がかかります。戦闘機や攻撃機の援護がなければ、いくら高性能のレオパルト2とはいえ、ロシア軍の反撃に手を焼くはずです。虎の子の戦車を失ってしまえば、反攻どころの騒ぎではありません」(同・軍事ジャーナリスト)
やはり鍵を握るのは東部戦線の戦況だという。
「ロシアはバフムト陥落を宣伝しました。ウクライナ側は認めたのか認めていないのか、やや混乱気味ですが、今後もウクライナ軍が東部戦線で猛攻を仕掛ける可能性は高いでしょう。ロシア軍を追い出すという目的は変わっていないはずです。攻撃をかけながら、敵軍の戦力を見定めるに違いありません。何しろロシア軍は、動員兵の場合は新兵教育すら放棄し、残った精鋭部隊の弾よけとして使っています。ワグネルやロシア正規軍がどれほど弱体化しているのか、戦況から分析するのです」(同・軍事ジャーナリスト)
もう一つのプレッシャー
ウクライナの長い冬は終わり、首都キーウの気温は東京とそれほど変わらない。大地の泥濘(でいねい)も固まり、軍事車両は自由自在に移動できる。
「ウクライナ軍の倉庫は、NATOから供与された様々な兵器で埋め尽くされているでしょう。“敗北は許されない”というプレッシャーだけでなく、“必ず反攻に転じ、勝利を収めなければならない”という圧力も厳しいものがあるはずです。ウクライナ軍の上層部はいつか反攻作戦の決断を下すのでしょうが、その前に東部戦線で相当の戦果を収めないと、反攻開始の決断を下すのは難しいのではないでしょうか」(同・軍事ジャーナリスト)
●ウクライナ軍、バフムトを南北から挟み撃ちか ロシア軍の包囲を目指す 5/23
ウクライナ軍は22日、東部の激戦地バフムトの北部と南部で前進を続けていると発表した。ロシア軍の包囲を試みているという。バフムトの状況について専門家は、仮にロシア軍が同市を制圧したとしてもインフラは残っておらず、ロシア軍が同市を維持しながら西進するのは極めて困難だとの見方を示した。
バフムトを巡っては、ロシア側が先日、同市全域の掌握を宣言したばかり。同市を巡って、双方とも自らに優位な展開になっていると主張している。だが激しい戦闘で街は荒廃し、G7広島サミットに参加したウクライナのゼレンスキー大統領は、バフムトを原爆投下直後の広島になぞらえた。
これはロシアの民間軍事会社ワグネルが公開した映像。戦闘員ががれきの中で部隊の旗を掲げる様子だとしている。ロイターはドローンが撮影した映像を確認したものの、撮影日は不明だ。
バフムトの状況について専門家はこう語る。
英王立防衛安全保障研究所 エド・アーノルドさん「バフムトの掌握はまだのようだ。(中略)究極的には、より広い視野で戦闘を見る必要がある。ロシア軍は8月以来、持てる力をすべて注ぎ込み、言わばようやく町を占領したに過ぎない。しかし画像で見ると、町には何も残っていない。広い地図上では、取るに足らない点でしかない。実際にここで行われていることとは、ウクライナのほかの場所で戦えないようにするため双方の軍を固定化しようとしているのだ。ロシア軍は、自分たちが現在いる場所は、長期的に滞在することができないかもしれないと気づくだろう。インフラが存在しないからだ。したがってバフムトを維持したままロシア軍が西に進軍することは、非常に非常に難しいだろう」
一方ワグネルのトップ、プリゴジン氏は、今月25日から部隊の撤退を開始し、バフムトの支配権をロシア正規軍に引き渡すとしている。プリゴジン氏は、正規軍は持ち場の一部から離れたと非難。ロシア国防省はこれを否定している。
バフムトの戦いにおける損失が、今後ウクライナ戦争全般にどのような影響を与えるのか、明らかになることだろう。
●ロシアがバフムート90%以上支配、ウクライナ「消耗戦の後に反撃」 5/23
ロシアが完全に支配したと明らかにしたウクライナ東部の激戦地バフムートの一部地域でウクライナが抵抗を続けている。一部では、ウクライナが大反撃のためにロシアのバフムート消耗戦を誘導したという分析も出ている。
21日、ロイター通信やAP通信などによると、ウクライナ軍の指揮官のほとんどは、ロシアがバフムートを90%以上占領したと判断しながらも、奪還の可能性が消えたわけではないと強調している。ウクライナのシルスキー陸軍司令官は同日、ウクライナ軍が陣取っているバフムート郊外の一部地域が「意味がない」としながらも、「状況が変われば(バフムート)都心に進入する機会が必ず生まれるだろう」と話した。これに先立ち、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏は前日、バフムート市内で「バフムートは完全に占領された」と宣言した。
ウクライナがバフムート奪還の可能性を口にする背景には、現在、ウクライナ軍が進駐している地域と情勢がある。ウクライナ軍はそれほど広くはないが、バフムート郊外の一部高台を中心にロシア軍を半円形に囲む陣形を維持している。ロシア軍をある程度市内を中心に囲い込む効果があるのだ。
バフムート郊外でウクライナ軍の特殊部隊を指揮したイェウヘン・メゼビキン大佐は、このような陣形について「相手を疲れさせた後に攻撃することが狙い」と話した。米国のシンクタンクである戦争研究所(ISW)は、ウクライナのバフムートでの側面抵抗と関連して、「ロシア軍が不足している兵力をバフムートに追加配置するよう追い込んだ」とし、「これこそウクライナ軍指揮部が意図したものだ」と分析した。ロシア軍をバフムートに追い込んで大反撃を行った場合、他の戦線でのロシア軍兵力を減らす効果があるということだ。
しかし、ウクライナ軍がこのような作戦を意図したとしても、甚大な被害を受けたことは否定できないというのが一般的な見方だ。民間の義勇隊指揮官のタラス・デイアク氏は、「バフムートで敵軍(ロシア)の注意をそらすことが私たちの重要な任務だった」とし、「私たちは高い代償を払った」と話した。
●ウクライナ情報機関トップ “大規模反転攻勢 まもなく始まる” 5/23
ウクライナ国防省の情報部門のトップがNHKの単独インタビューに応じ大規模な反転攻勢について、最小限の兵器などで近く始めることができるという認識を示しました。ただ、反転攻勢では激しい戦闘が長期にわたる可能性を示唆し「作戦の継続にはかなりの備蓄が必要だ」としてゼレンスキー大統領が参加したG7広島サミットをきっかけに欧米側による兵器の供与がどこまで進むのか注視する考えを示しました。
ウクライナ国防省情報総局のブダノフ局長が今月19日、日本のメディアとしては初めてNHKの単独インタビューに応じました。
このなかでブダノフ局長は、準備を進めているロシア側に対する大規模な反転攻勢について「多くの市民がいまもロシアの占領下にあり、もう時間を無駄にすることはできない。最小限の兵器などはすでにそろっている。まもなく始まるということだけは言える」と述べ、反転攻勢を近く始めることができるという認識を示しました。
ただ、ブダノフ局長は「私たちの領土からロシアを追い出さなければならない。この目標のためにあらゆる力と手段を使うのだ。作戦をうまく継続していくためには兵器も弾薬もかなりの備蓄が必要だ」と述べ反転攻勢ではロシア側の防御などを受けて激しい戦闘が長期にわたる可能性を示唆しました。
そのうえで、ゼレンスキー大統領がG7広島サミットに対面で参加したことに関連して「もっと兵器が必要だ。戦闘機がいる。国際社会がウクライナを本当に支援する準備ができていることを望む」と述べ、反転攻勢をどう進めていくかを検討する上でもサミットをきっかけに欧米側による兵器の供与がどこまで進むのか注視する考えを示しました。
「ロシアの攻撃の90%を阻止」
さらに、ブダノフ局長はウクライナに対するロシア側の攻撃について「編成中の部隊や、兵站などを攻撃することで、われわれの反転攻勢に向けた準備を妨げようとしている」と分析しましたが「いまや軍事目標に対する攻撃の90%が阻止されている」と述べ防空システムなどで迎撃できていると強調しました。
また「ロシア軍では、たとえば潜水艦などの技師として働いていた人が機関銃を渡されて『襲撃してこい』と言われるというのが現実だ。非常に多くのロシア軍兵士が複合的な要素から士気を欠いている。ウクライナで何をしているのか。誰も理解していない」と述べました。
「ワグネルは影響力が失われること恐れた」
ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏とロシア国防省などとの確執が表面化していると指摘されることについてブダノフ局長は「ワグネルは、権力と影響力が失われつつあることを恐れた。プリゴジン氏にとっては自身の権力や命、会社の生き残りをかけた戦いだ」と述べロシア側の政治的な混乱は続くという見通しを示しました。
一方、ロシアと経済だけでなく軍事的な連携も深める中国について、ブダノフ局長は「中国はロシアに兵器などを供給していない」と述べ、軍事支援については否定しました。ただ「多くの電子機器は供給している」と述べ中国からロシアに輸出された電子部品などがミサイルの開発に使われているという見方を示しました。  
●西側のウクライナ兵器供与、「核大惨事」リスク高まる=ロシア前大統領 5/23
ロシアのメドベージェフ安全保障会議副議長(前大統領)は23日、西側諸国がウクライナに供与する兵器の破壊力が強くなるほど「核によるアポカリプス」のリスクが高くなると警告した。
メドベージェフ氏は訪問先のベトナムでロシア通信(RIA)とタス通信に対し「(ウクライナに)兵器が供与されればされるほど、世界は一段と危険な場所になる」とし、「これらの兵器の破壊力が増すほど、『核によるアポカリプス(黙示録)』と一般的に呼ばれる事態が発生する恐れが大きくなる」と述べた。
その上で、北大西洋条約機構(NATO)は核戦争の可能性を真剣に受け止めていないように見えるとし、「NATOは間違えている。ある時点で情勢が完全に予測不可能な方向に動く可能性がある。そうなった場合、責任は全てNATOにある」と語った。
また、ロシア西部ベルゴロド州にウクライナの「破壊工作集団」が侵入したとされることについて、攻撃者は「卑劣な人間」で、「ネズミ」のように駆除されるべきだとした上で、「責任はウクライナ政府にある。最終的には外国のスポンサー、つまり米国、欧州連合(EU)加盟国、英国などに直接的、かつ直接的な責任がある」と述べた。
●ロシア“ウクライナ工作員侵入し戦闘” 反体制組織との見方も  5/23
ロシアのプーチン政権はウクライナと国境を接する西部の州にウクライナ側から工作員が侵入して戦闘が起きたと発表し、ロシアで重大事件を扱う連邦捜査委員会はテロ事件として捜査を開始しました。イギリス国防省は攻撃はロシアの反体制組織によるものだという見方を示しています。
ウクライナと国境を接するロシア西部、ベルゴロド州の州知事は22日、ウクライナの工作員が州内に侵入し、銃撃や無人機による攻撃を受け、戦闘が起きていると発表しました。
州知事は女性1人が死亡したほか、複数のけが人がいるとしていて、ロシアで重大事件を扱う連邦捜査委員会は23日、テロ事件として捜査を開始しました。
またロシア国防省は23日、「ベルゴロド州にウクライナの民族主義の部隊が侵入したが対テロ作戦によって阻止し、これを打ち負かした。ウクライナの70人以上のテロリストを殺害し、装甲車やトラックを破壊した」と発表しました。
これに対しウクライナ大統領府のポドリャク顧問は22日「ウクライナは関係がない」と関与を否定しています。
一方、ウクライナ側に立って戦うロシア人などの義勇兵を名乗る2つの組織はSNSで、ロシア領内に入りベルゴロド州で戦闘を行っていると主張し、軍用車両などの映像を公開しています。
イギリス国防省は23日「ベルゴロド州の国境近くの少なくとも3か所でロシア治安部隊とパルチザン組織が衝突した可能性が高い。ロシア側はいくつかの村で住民を避難させ、追加の部隊を配備した」と指摘し、攻撃はプーチン政権に反発するロシアの反体制組織によるものだという見方を示しました。
そのうえで「ロシアは国境地域で直接攻撃を受け、深刻な安全上の脅威にさらされている」と指摘するとともに、プーチン政権は「戦争の犠牲者」として今回の事案を軍事侵攻の正当化に利用するとみられると分析しています。
ウクライナ軍幹部“義勇兵組織と協力もロシアでの戦闘不参加”
ウクライナ側に立って戦うロシア人などの義勇兵だとする組織がロシア領内に入り、戦闘を行っていると主張していることについて、ウクライナ軍の幹部はNHKの取材に対し、この組織と協力関係にあるとしながらも「ウクライナはロシアの土地を求めてはいない」と述べ、ウクライナ軍は、今回の戦闘には加わっていないと強調しました。
このウクライナ軍の幹部は去年10月、日本に支援を呼びかけるウクライナ議会の議員団の一員としても来日したロマン・コステンコ氏で23日、NHKのオンラインインタビューに応じました。
コステンコ氏は、ロシア人などの義勇兵を名乗る2つの組織が、ロシアのベルゴロド州で戦闘を行っていると主張していることについて、「彼らには彼らの目標がある。ウクライナ軍は彼らと協力関係にあるが、ウクライナはロシアの土地を求めてはいない」と述べ、ウクライナ軍は、今回の戦闘には加わっていないと強調しました。
一方、コステンコ氏は、ウクライナ軍が重視しているのはロシア側への大規模な反転攻勢だとしたうえで、「私はいわゆる反転攻勢を『春から夏にかけての作戦』と呼びたい。私たちはそれなりの量の兵器を蓄えてきた。ただ、ロシア軍の兵器の備蓄はウクライナの何倍もある」と述べ、作戦は短期間では終わらず、継続的な軍事支援が必要になると訴えました。
そのうえで、G7広島サミットにゼレンスキー大統領が対面で参加したことについて、「決定的に重要な出来事だった。インドを含め各国のリーダーが、ウクライナへの支援の必要性を理解していた」と述べ、G7だけでなくインドなど各国に対してウクライナの現状を訴え、理解を得る機会になったと評価しました。
●ウクライナ反攻時に不在か ワグネル部隊、2カ月撤退 5/23
ウクライナ侵攻に加わるロシア民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏は21日、ワグネル部隊を6月1日までに前線から完全撤退させ、2カ月間にわたって再編と再武装、再訓練を行うと表明。米シンクタンクの戦争研究所は22日、ウクライナ軍が準備する大規模反攻の際、ワグネルがほぼ不在になる可能性があると指摘した。
プリゴジン氏は20日、ワグネル部隊がウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトを制圧したと表明。制圧地を軍に引き渡し、25日に部隊を撤退させるとしていた。
戦争研究所は、ワグネル部隊の代わりに、訓練が不十分なロシア軍部隊が戦線に配置される可能性が高いと分析した。
●ゼレンスキー大統領はなぜ訪日前にアラブ連盟首脳会議に参加したのか 5/23
ゼレンスキー大統領は訪日前にロシア制裁を行っていないアラブ連盟首脳会議で講演した。日本ではアラブ諸国をまで説得したと絶賛しているが、そうだろうか?その背後で周到に動いていた習近平の狙いを考察する。
「見て見ぬふりをするな」とゼレンスキーがアラブ連盟に
訪日する前の5月19日、ウクライナのゼレンスキー大統領はサウジアラビア(以後、サウジ)で開催されていたアラブ連盟首脳会談に招待され、首脳たちを前に演説した。要点は以下の通り。
・ウクライナの苦しみを「見て見ぬふりをしている」者がいる。事態を率直な目で見てほしい。
・長期の戦争がリビアやシリア、イエメンにどれだけの苦しみをもたらしたかを見てほしい。
・スーダンやソマリア、イラク、アフガニスタンでの長年の戦闘でどれだけの命が失われたかを直視てほしい。
・たとえウクライナでの戦争について異なる見解を持つ人がこの会議にいても、ロシアの収容所から人々を救うために団結できると確信している。
・クリミアはロシアによる占領の苦しみを味わっている。しかし、クリミアの被占領地域で抑圧を受けている人の大半は(あなたたちアラブ諸国の人々と同じ)イスラム教徒だ。(要点は以上)
これに対して同調する首脳はいなかった。それどころか、そこには完璧にプーチン側に付いているシリアやイランがいたのだから。
しかもアラブ諸国が習近平やプーチンの周りに集まり始めたのは、正にゼレンスキーが列挙したようなスーダン、アフガニスタン、イラク、シリアなど、どの国をとっても、すべてアメリカのCIAか「第二のCIA」と呼ばれるNED(全米民主主義基金)が仕掛けた戦争だということをアラブ諸国が知っているからである。アメリカの軍事ビジネス