孤立が進むロシア
プーチン大統領
どんなロシアの姿 考えているのでしょう
争い 戦争で変えられる社会
想像できません
私が 平和ボケか
1/1・1/2・1/3・1/4・1/5・1/6・1/7・1/8・1/9・1/10・・・1/11・1/12・1/13・1/14・1/15・1/16・1/17・1/18・1/19・1/20・・・1/21・1/22・1/23・1/24・1/25・1/26・1/27・1/28・1/29・1/30・1/31・・・ 2/1・2/2・2/3・2/4・2/5・2/6・2/7・2/8・2/9・2/10・・・2/11・2/12・2/13・2/14・2/15・2/16・2/17・2/18・2/19・2/20・・・2/21・2/22・2/23・2/24・2/25・2/26・2/27・2/28・・・ 3/1・3/2・3/3・3/4・3/5・3/6・3/7・3/8・3/9・3/10・・・3/11・3/12・3/13・3/14・3/15・3/16・3/17・3/18・3/19・3/20・・・3/21・3/22・3/23・3/24・3/25・3/26・3/27・3/28・3/29・3/30・3/31・・・ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
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●プーチン氏は皆さんを滅ぼしている……ゼレンスキー氏がロシア国民に 1/1
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12月31日、ロシア国民に向かって、ウラジーミル・プーチン大統領はロシアを破壊しているとロシア語で呼びかけた。一方でウクライナ国民に向かっては、新年に勝利を願うと語りかけた。 大みそかにプーチン大統領は、軍服姿の大勢の前に立ち、新年に向けたあいさつをした。これを受けてゼレンスキー大統領は、ロシアの大統領が自軍を率いるのではなく、兵の後ろに隠れていると非難した。 12月31日から1月1日にかけて、ウクライナは首都キーウをはじめ各地でロシアによる砲撃を受けた。少なくとも1人が死亡し、数十人が負傷した。ウクライナ軍のヴァレリー・ザルジニー総司令官は、ロシアが31日に打ち込んだ巡航ミサイル20発のうち、ウクライナ軍は12発を撃墜したと述べた。 こうした状況でゼレンスキー大統領は通信アプリ「テレグラム」で、31日の攻撃の実行者は非人間的だとウクライナ語で非難。続いてロシア語に切り替えると、「あなた方のリーダーは、自分が前線で指揮していて、軍は自分の後ろに従っていると、皆さんに見せようとしている。しかし実際には、彼は隠れている。軍の後ろに隠れ、ミサイルの後ろに隠れ、邸宅や宮殿の壁の後ろに隠れている」のだと語りかけた。 「(プーチン氏は)皆さんの後ろに隠れている。そして皆さんの国と未来を、燃やしている。ロシアによるテロについて、誰もあなたたちを許さない。世界のだれも、あなたたちを許しはしない。ウクライナは許さない」と、ゼレンスキー大統領はロシア語で重ねた。 ●願うのは「勝利」 ゼレンスキー氏はのちにこれとは別に、ウクライナ国民へ新年のあいさつを発表。ロシアの侵攻を跳ね返してきた国民の「とてつもない」取り組みに感謝した。 「ウクライナの皆さん、皆さんはものすごい。これまで達成してきたこと、いままさに成し遂げていることを見てください。『世界2位』と言われていた軍を、我が軍の兵士たちが初日から撃破してきた、そのすごさを見てください」 「大戦争において小事などありません。無用なことなどありません。私たち一人一人が戦士で、一人一人が前線です。一人一人が防衛の基礎を担っています。私たちはひとつのチームとして戦っている。国全体が、すべての州が。皆さん全員を尊敬します。ウクライナのあらゆる不屈の地域に感謝したい」と大統領は述べた。 さらにゼレンスキー氏は、「新年が来るまで残り数分です。全員に祈りたいことはひとつ、勝利です。それが一番のことで、すべてのウクライナ人に共通する願いです。新年は帰還の年になりますように。国民が帰還し、兵士は家族の元に戻り、捕虜は自宅に戻り、移民はウクライナに戻ってくるように。私たちから盗まれたものが戻ってくるように。子供たちには子供時代が、私たちの親には穏やかな老年期が」と語りかけた。 ●「西側が嘘をついた」とプーチン氏 プーチン氏の新年のあいさつは、ロシアが2023年になるタイミングに合わせて、国内の11の標準時で次々と放送された。 プーチン氏は、ロシアの未来がかかっているとして、ウクライナで戦う兵を支えるよう国民に呼びかけた。 「かねて分かっていたことを今あらためて確認しているが、主権を持つ独立したロシアが確かな未来を築けるかは、すべて我々にかかっている。我々の力と意志に」と、プーチン氏は述べた。 大統領はさらに、ウクライナ侵攻は、「この国の国民と歴史的な国土を守る」ためのことだとして、「道義的、歴史的な正義は我々の側にある」と強調した。 ウクライナ侵攻は、「この国の国民と歴史的な国土を守る」ためのことだと強調し、「道義的、歴史的な正義は我々の側にある」と強調した。 プーチン氏はさらに、昨年2月24日に始まったウクライナ侵攻は、西側の「挑発」が原因だと非難。「西側は平和について嘘をついた。西側は侵略の準備をしていた(中略)そして今では、ロシアを弱らせて分裂させるため、皮肉にもウクライナとその国民を利用しているのだ」と述べた。 ロシアのウクライナ侵攻開始に関する、プーチン氏やロシア政府のこの主張を、ウクライナと西側諸国は否定している。 |
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●プーチン大統領「前進あるのみ」 南部の前線兵士らと面会 1/1
ロシアのプーチン大統領は12月31日、侵攻したウクライナ東部ドネツク、ルガンスク両州に近いロシア南部ロストフナドヌーの南部軍管区司令部を訪問し「何一つ引き渡してはならない。前進あるのみだ」と述べて軍関係者を激励、目的達成まで軍事作戦を続ける決意を示した。国営テレビなどが報じた。 前線の兵士らと面会したプーチン氏はNATOの東方拡大やウクライナへの欧米の軍事支援を念頭に「ロシアは全てを引き渡すか戦うかというところまで追い詰められた。あなた方のような人たちがいる限り降参するわけにはいかない」と強調した。作戦を統括する司令官らに勲章を授与し、士気を鼓舞した。 |
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●プーチン大統領 「ただ戦い、前進」 攻撃続ける姿勢強調 1/1
ロシアは31日もウクライナへ相次いで攻撃を行い各地で被害が出ています。こうした中、ロシアのプーチン大統領は軍の司令部を訪問し「ただ戦い、前進しなければならない」などと述べ、攻撃を続ける姿勢を改めて強調しました。 ウクライナメディアなどによりますと、ロシアは大みそかの31日もウクライナ各地に対してミサイルなどを使って攻撃し、これまでに首都キーウでは1人が死亡し20人がけがをしたほか、南部のザポリージャ州やミコライウ州でも、複数のけが人が出たということです。 ウクライナ軍のザルジニー総司令官は31日、SNSでロシアにより巡航ミサイル20発以上が発射され、このうち12発を迎撃したとしています。 戦況を分析しているイギリス国防省は31日「ウクライナの人々の士気を下げるため、今後、数日以内にロシアが攻撃を行う現実的な可能性がある」と指摘し、家族などと過ごす新年にあわせた休暇期間にもウクライナのエネルギー施設などに対する大規模な攻撃を行う可能性があるとの見方を示しています。 こうした中、ロシアのプーチン大統領は31日、ウクライナに隣接する南部ロストフ州にある軍の南部軍管区の司令部を訪れました。 国営のタス通信によりますと、プーチン大統領は侵攻の指揮を執るスロビキン総司令官などに勲章を授与したほか、兵士たちとも会い「諦めるという選択肢はない。ただ戦い、前進しなければならない」と述べ、攻撃を続ける姿勢を改めて強調しました。 ●テレビ演説で国民に支持と協力を訴え また、ロシアのプーチン大統領は31日、大みそかの恒例となっている国民向けのテレビ演説をウクライナに隣接し前線に近い南部ロストフ州にある南部軍管区の司令部で行いました。 この中で、プーチン大統領はこの1年を振り返り「困難だが必要な決断をした」と述べた上で、「祖国を守ることは祖先と子孫に対する神聖な義務だ。道徳的、歴史的正義はわれわれの側にある」などと主張し、ウクライナへの軍事侵攻を正当化するとともに、一方的に併合に踏み切ったウクライナの4つの州をロシアの一部だとする姿勢を改めて示しました。 また、「西側はロシアを弱体化させ、分裂させるためにウクライナとその国民を利用している」と持論を展開し欧米側を批判しました。 そしてプーチン大統領は「愛する祖国の未来のためにただ前進し、勝利しよう」と述べ、戦闘が長期化する中、軍事侵攻の継続を強調し国民に支持と協力を訴えました。 |
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●プーチン氏、新年演説で侵略正当化 ゼレンスキー氏「戦い続ける」 1/1
ロシアのプーチン大統領は昨年12月31日深夜、新年の国民向け演説を行い、「われわれはロシアの未来と独立、歴史的にロシア領だった新たな地域に住む国民のために戦っている」などと述べ、ウクライナ侵略やウクライナ東・南部4州の併合を正当化した。その上で「ただ前進し、家族や祖国のために戦って勝利するだろう」と宣言した。 プーチン氏は「2022年はロシアが主権を獲得するために困難で運命的な決定を行った年だった」と振り返り、「国民保護と祖国防衛は祖先と子孫に対する神聖な義務だ。正しさはわれわれの側にある」と主張した。また、「米欧はウクライナやその国民を利用してロシアの弱体化と分裂を図ってきた」とし、ウクライナでの軍事作戦は「祖国防衛」のためのものだとする持説を改めて披露した。 例年のプーチン氏は1人で演説してきたが、今回はプーチン氏の背後に軍服姿の男女が並び、「戦時」であることが強調された。 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領も同日、新年の国民向け演説を行い、「ウクライナ国民は(ロシアの侵略が始まった)2月24日に目覚めた」と表明。「ウクライナ国民は白旗ではなく、青と黄色の旗(ウクライナ国旗)を選んだ。逃げるのではなく、戦うことを選んだ」とし、「われわれは勝利のために戦い、戦い続ける」と強調した。 ゼレンスキー氏はまた、露国民に向けたメッセージも公表。「あなたたちの国の指導者は軍人の前に立ち、軍人を従えているように見せようとしている。しかし彼は軍人やミサイル、自分の宮殿の後ろに隠れている」と指摘。「彼はあなたたちの背後に隠れ、ロシアの国家や未来を燃やしているのだ」とも述べ、プーチン氏に抵抗するよう暗に呼び掛けた。 |
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●「プーチンは後ろに隠れている」 ゼレンスキー氏、ロシア国民に訴え 1/1
ウクライナのゼレンスキー大統領は12月31日、国民向けに毎晩行っている演説でロシア国民に向けても語り、ロシアはプーチン大統領が「生きている間ずっと」権力の座にとどまっていられるよう戦争を行っていると非難した。 ゼレンスキー氏は「ロシアが行っているこの戦争は、北大西洋条約機構(NATO)との戦争ではない。あなたたちの宣伝者らはうそをついている」「歴史的なもののための戦争ではない。1人の人間が死ぬまで権力にとどまるための戦争だ」と訴えた。 「あなたたちロシアの市民がどうなるかはプーチンには関係がない」とも指摘した。 さらに、プーチン氏は「軍隊やミサイルの後ろ、住まいや宮殿の壁の後ろ」、そしてロシア市民の後ろに隠れているとし、「プーチンはあなたの後ろに隠れ、ロシアやあなたの未来を燃やしている。誰もあなたのテロを許さないだろう」と述べた。 ゼレンスキー氏はまた、ロシア軍が発射したミサイルの大半がウクライナ軍の防空部隊に迎撃されたことにも言及し、「防空能力がなければ犠牲者の数は違っていた。もっと多かっただろう」「これはウクライナ支援がさらに強化されなければならないことを世界に改めて証明している」と述べた。 |
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●独裁者・プーチンが抱く「ロシア帝国復活」の野望…戦火拡大の危険性も 1/1
●ウクライナ・ロシア戦争の陰で渦巻く各国の思惑 ロシアとネットワークを築く国として、しばしば中国が挙げられる。インドもまた、ロシアと経済的な結びつきを深めている。 「自由で開かれたインド太平洋」を守るために、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4ヵ国で安全保障や経済について協議する「Quad(日米豪印戦略対話)」が2007年につくられた。Quadは軍事同盟ではないものの、合同軍事演習を実施している。 Quadの一員であるインドは、今回の対ロ非難に加わらなかった。インドは兵器の4割をロシアから買っており、既存の装備品の8割はロシア製だ。だから兵器のメンテナンスの問題が生じる。 ただし、単に「武器依存度が高いから、インドは対ロ制裁に踏み切れない」という解説は一面的で事態の本質を捉え損ねる。「ロシアとの関係では、極力中立的な地位を維持したい」というインドの主体的な意思の表れだ。 インドにとって重要なのは、中国の脅威に対して、オーストラリアとアメリカと日本を巻き込むことだ。Quadは価値観同盟ではなく、中国を封じ込める利益があるからつきあっている。それ以上でも以下でもないことが露見した。現にウクライナ侵攻によって割安になったロシア産原油を、インドは購入している。 対ロ関係で意外と気づかれていない重要な存在が、サウジアラビアだ。アメリカとイギリスはサウジに対し、原油を増産してロシアを孤立させる取り組みに加わるよう働きかけた。しかしサウジは応じていない。ロシアと手を握っているからだ。中国に販売する原油の一部を、人民元建てにする方向で協議中だという報道もある。 サウジアラビアにとって、西側の消費文明を受け入れながらも、政治に関しては権威的な体制を取るロシアや中国は、つきあうのに都合がいい。人権外交を掲げるアメリカよりも、独自のルールを尊重してくれるからだ。アフリカや中南米の諸国も同じ感覚だ。結局どの国も、イデオロギーや価値観より利害で動くのである。 アメリカや日本と歩調を一にしているのは、EU諸国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどロシアが非友好国としている国だ(もっともEUの中でも、ハンガリーは日和見的だが)。 新しい世界地図の上で、日本はどうやって生き残っていくのか。東アジアにおいて、ロシアと北朝鮮はすでに現実的な脅威だ。中ロの軍事協力が進んでロシアの最新兵器を中国が得れば、軍事力はさらに高まる。韓国は中ロとの関係も深く、歴史認識などさまざまな問題で日本に厳しく当たってくる。 国ごとに抱える事情を等閑視してはならない。ロシア、北朝鮮、そして中国は日本にとっての脅威であり、韓国はどっちを向いているのかわからない。こうした国際関係の新たな緊張の中で、日本は最前線に立たされる可能性がある。 アメリカとの同盟は重要だ。しかし、それがアメリカと価値観を完全に共有する「イデオロギー同盟」という選択肢で良いのか。この点について、日本は自分の頭で真剣に考えなくてはならない。 ●プーチンが頭の中で思い描く「ロシアの地図」 プーチン大統領に見えている世界地図の中のロシアは、ソ連の崩壊という歴史的悲劇によって不当に縮小させられた版図だ。プーチン大統領にとってのロシアは、「ロシア帝国(1721〜1917年)の地図」だ。 ロシア帝国は現在のロシアをはじめ、フィンランド、ベラルーシ、ウクライナ、ジョージア、モルドバ、ポーランドの一部や、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの中央アジア、バルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、外モンゴルなどユーラシア大陸の北部を広く支配していた大帝国だった。 ウクライナにはまず反ロシア的でない新政権を打ち立て、非軍事化させてヨーロッパとの緩衝地帯とする。さらに時間をかけて小国家に分割して、少しずつウクライナを併合していく。これがプーチンの狙いだろう。 ただしロシア軍の振る舞いは相当にひどく乱暴なので、現時点で兄弟民族のウクライナ人ほとんど全員を敵に回した。高まった反ロシア感情を鎮めるには、かなり時間がかかる。ロシアもそのことをよくわかっているので、ウクライナ人から内発的にロシアとの協力を望む政治エリートが出現するのを、時間をかけて待つと思う。 プーチン大統領がその先に見据えているのは、南の国境だ。欧米に接近を続けるジョージアには、ロシア軍の介入によって2008年に独立を宣言した「南オセチア共和国」がある。国連加盟国の中ではロシア、ニカラグア、ベネズエラ、ナウル、シリアの5ヵ国だけしか承認していない国家だ。 その南オセチア共和国のビビロフ大統領は22年3月末、「歴史故郷であるロシアと再統一する国民投票を近く行う」と表明した。国民投票が実施されれば、圧倒的多数の賛成を得ることは確実だ。 するとジョージアは反発して、南オセチア共和国に軍事介入する可能性がある。ジョージアが武力で阻止しようとしても、ロシアは力でそれをはね返し、「南オセチア共和国」を併合するだろう。 もう一つ注目されるのが、ロシアの飛び地の領土であるカリーニングラードだ。ここはリトアニアとポーランドに囲まれており、NATO加盟国であるリトアニアが国境を封鎖しようとしている。これは協定違反であり、ロシアにとって見過ごせない。軍事力で阻止しようとすれば、今度こそNATOがロシアとの直接戦争の危機に直面する。 プーチン大統領は長期戦略に基づいて、戦火をさらに拡大させるかもしれないのだ。 |
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●それぞれ火種を抱える習近平とプーチン、ことし中ロは軍事同盟に近づくのか 1/1
●傷を舐め合う会談 2022年は、ロシアがウクライナに侵攻し、東西冷戦終結以降の国際秩序が破壊された年として記憶された。続く2023年は、民主国家と強権国家のデカップリングが決定的になる年として、記憶されることになるかもしれない。 そんなことを予感させる出来事が、昨年暮れの12月30日に起こった。中国の習近平主席と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の42回目となる首脳会談が、オンラインで開かれたのだ。 CCTV(中国中央広播電視総台)の映像を見ると、両首脳とも顔色がよろしくない。察するに、習主席は中国国内の爆発的なコロナ蔓延に、プーチン大統領は泥沼化していく戦況に、相当な危機感を抱いているものと思われる。言ってみれば、「互いの傷を舐め合う会談」となった。 ●「年末オンライン会談」は恒例行事? 中国側が報じた両首脳の冒頭発言は、以下の通りだ。 習近平主席「尊敬するプーチン大統領、わが旧き友よ、あなたと再び会談できて、とても嬉しい。年末にオンラインで会談することは、すでに私たちのよき伝統となっている。私たちの共同の指導のもとで、中ロ新時代の全面的な戦略的パートナーシップ関係は、さらに成熟し、強靭なものとなっている。変節混乱の国際情勢に直面して、中国はロシアと戦略的な協調を強化し、互いの発展のチャンスと全世界のパートナーシップを堅持していく。両国国民にさらに多くの福祉が生まれるよう努力し、世界がさらに安定していくよう注力していく。私は(プーチン)大統領と双方の関係及び双方が関心を持つ重大な問題について意見交換し、いつ何時たりとも意見交換していきたい。」 プーチン大統領「こんにちは、尊敬する習近平主席、わが親愛なる友人よ、あなたにお目にかかれて大変嬉しい。あなたと中国共産党の指導のもと、中国は経済社会発展の各分野で新たな成果を上げ、中国の国際社会における威信はさらに高まっている。昨今の国際関係が緊張する局面の中で、ロ中新時代の全面的な戦略的パートナーシップ関係の重要な意義はさらに高まっており、それは国際舞台の重要な安定剤となっている。尊敬する習主席、この場を借りて私はあなたと中国国民に、新年と春節(1月22日)を、明けましておめでとうと言いたい。衷心よりあなたの幸福と健康を願い、友好的な中華民族の繁栄を願っている。」 以上である。習主席の発言にあった「年末にオンラインで会談することは、すでに私たちのよき伝統となっている」という発言は、意外だった。 習近平時代になってから、元旦のニュースは、トップが新年を迎えての習近平主席の国民向けメッセージ、2番目が習主席とプーチン大統領が互いに新年の祝電を交換したというものが、定番になっている。3番目以降はその年によって異なる。 だが、「年末にオンライン会談をした」という定番ニュースはなく、これを「非公開の伝統」にしていたか、もしくは祝電の交換のことを言っているかのどちらかだ。だが習主席は、はっきりと「オンライン会談」と述べているので、やはり非公開で毎年行ってきたと見るべきだろう。 ●ロシアが求める軍事協力強化に中国は明確な返答をせず 中国側は、中ロ関係についての習近平主席の発言を、続いて報じている。それは、以下の通りだ。 「中ロ両国の協力の内なる動力と特殊な価値は、さらに顕著になってきている。今年1月から11月までで、中ロ貿易額は過去最高となり、投資協力はよく整い、エネルギー協力はさらに「錨(いかり)」の役割を発揮し、重点分野の協力項目は安定して実施されている。地方同士の協力も順調に進み、人文交流もますます密接になっている。スポーツ交流年の活動も予定通り進み、双方の友好な社会民意の基礎は、さらに安定して確固たるものとなっている。(中ロ)双方は継続して、現有の協力体制と対話ルートをうまく活用し、両国の経済貿易、エネルギー、金融、農業などの分野で実務的な協力を積極的に進展させていくべきだ。そして港湾などの通行施設の建設を推進し、伝統的なエネルギーと新エネルギーの協力を開拓していくのだ。最近、中国はコロナウイルスの状況の変化により、臨機応変の防疫措置を取っている。科学によるウイルスの防止と、経済社会の発展を統合し、いままさに社会活動に重心を置いた健康保持と重症化防止の方策ができた。中国はロシアを含む各国と、秩序ある回復、人員の正常な往来を行っていくつもりだ」 このように、中ロの経済的な協力強化を謳った。だが、ロシア側が求めている武器・兵器の提供については言及していない。 ●習近平に訪ロ要請 習主席はさらに、自己の「世界観」を開陳した。 「いまや世界は再び、歴史の分岐点に差しかかっている。それは、冷戦的思考を再現し、分裂対立と集団的な対抗の道に走るのか、それとも人類共通の福祉から出発し、平等互尊と協力共勝の道を実践していくのかということだ。この二つの道は、大国の政治家の知恵を試しており、全人類の理性を試している。事実が繰り返し証明しているのは、包囲し圧力をかけることは人心を得ず、制裁干渉の注力は失敗するということだ。中国は、ロシア及び全世界のあらゆる覇権主義と強権政治に反対する進歩的なパワーと道を同じくし、いかなる一国主義、保護主義、覇権行為にも反対し、(中ロ)両国の主権、安全、発展の利益と国際的な公平正義を固く守り抜いていく。(中ロ)双方が国際的な仕事の中で密接に協力、配合し、国連の権威と国際法の地位、真の多国間主義を維持、保護していこうではないか。全世界の食糧安全、エネルギー安全などを維持、保護していく問題で、大国としての担当、役割を発揮していこうではないか。(中ロ)双方がSCO(上海協力機構)のメンバーの団結と相互信頼を増進させ、それぞれの核心的利益の問題では相互支持を増大させ、手を携えて外部勢力の干渉と破壊に抵抗していこうではないか。BRICS(新興5カ国)の協力は目覚ましく、5カ国の吸引力と明るい前景を十分に展開している。中国はロシアとともに積極的にSCOのメンバーを増やし、BRICSのパワーを増大させ、新興市場国家と発展途上国の共同の利益を維持、保護していく」 以上である。 この発言は矛盾を孕んでいる。アメリカやNATO(北大西洋条約機構)が進めるデカップリング(分断)を非難しながら、自らは中国とロシアを中核としたSCOや拡大BRICSの「準同盟的関係」を築こうとしている。 ロシア側の報道では、3月に中国で3期目の習近平政権が正式に始動した後、習近平主席をモスクワに招待したいとプーチン大統領が述べたという。 思えば習主席は、2013年3月に1期目の政権を発足させた時も、その翌週にはモスクワに飛んでいた。もしかしたら、中国がウクライナ戦争終結の仲介に乗り出す時が、世界が米中新冷戦とデカップリングを決定づける時になるのかもしれない。 |
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●首都キーウにロシア軍攻撃 1人死亡 日本人1人含む20人けが 1/1
ウクライナでは12月31日も首都キーウなどでロシア軍による攻撃があり、キーウでは1人が死亡したほか、日本人のジャーナリスト1人を含む20人がけがをしました。 ウクライナでは31日午後、全土に防空警報が出される中、首都キーウなどでロシア軍によるミサイルなどを使った大規模な攻撃がありました。 ウクライナの地元メディアは、この攻撃で首都キーウの中心部にあるホテルや、教育施設などが被害を受けたと伝えています。 一連の攻撃についてキーウのクリチコ市長は、1人が死亡したほか、日本人1人を含む20人がけがをして病院に搬送されるなどしたとSNSで明らかにしました。 また、ウクライナの内相の顧問はSNSで、クリチコ市長の話として、けがをした日本人は、日本の新聞社に所属するジャーナリストだとしています。 ウクライナでは年末も各地のインフラ施設などが大規模なミサイル攻撃を受けて、電力不足がいっそう深刻化するなど、市民生活への影響が広がっています。 ●けがをした日本人は 朝日新聞社によりますと、ウクライナの首都キーウでけがをした日本人は、映像報道部に所属する関田航さん(36)だということです。 会社では、けがの程度など詳しい状況について確認を進めているとしています。 ●NHK取材班のホテルからも白い煙確認 爆発音のような音は、現地時間の31日午後2時ごろから少なくとも5回程度聞こえ、NHKの取材班がいるホテルからは、遠くに白い煙が上がっている様子が確認できました。 ウクライナでは31日も午後から全土で防空警報が出され、キーウでもクリチコ市長が市民に避難を呼びかけていました。 ●外務省 確認進める 外務省によりますと、現地の大使館員を病院に派遣するなどして確認を進めていて、日本人がガラスの破片などでけがをしたという情報があり、程度は重くはないとみられるということです。 ●イギリス国防省 新年の休暇期間も攻撃の可能性 戦況を分析しているイギリス国防省は31日「ウクライナの人々の士気を下げるため、今後、数日以内にロシアが攻撃を行う現実的な可能性がある」と指摘し、家族などと過ごす新年にあわせた休暇期間にもウクライナのエネルギー施設などに対する大規模な攻撃を行う可能性があるとの見方を示しています。 |
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●プーチン大統領「祖国防衛は神聖な義務」新年メッセージで侵攻を続ける姿勢 1/1
ロシアのプーチン大統領は新年のメッセージでウクライナ侵攻について「祖国の防衛は神聖な義務だ」と述べ、侵攻を続ける姿勢を強調しました。 ロシア・プーチン大統領「祖国の防衛は祖先と子孫に対する神聖な義務だ。道徳的かつ歴史的な正しさは我々の方にある」 プーチン大統領は兵士たちを後ろに並ばせて、ロシアにとって2022年は「完全な主権を確立するため困難だが必要な決断の年だった」と述べました。 一方的に併合したウクライナの4つの州については「我々の歴史的領土で住民たちを守るために戦っている」と主張。「祖国防衛は神聖な義務だ」と侵攻を正当化し継続する姿勢を強調しました。 そのうえで、「欧米はウクライナを利用してロシアを崩壊させようとしているがそうはいかない」と語りました。 今回のメッセージは前線に近い南部軍管区を訪問して、そこで収録されたということで、その際、侵攻を統括する総司令官らを表彰したとしています。 侵攻が続く中での年越しとなった首都モスクワでは、恒例の花火が中止となりましたが、イルミネーションは実施されていて、侵攻を支持する「Z」の文字なども並んでいます。 |
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●ロシア国防相「勝利は必定」 1/1
ロシアのセルゲイ・ショイグ(Sergei Shoigu)国防相は12月31日、ウクライナ侵攻が11か月目に突入する中、「新年が必ずやってくるように、わが軍の勝利も必定だ」と述べた。 ショイグ氏は、2022年には大きな試練に直面したが、軍事的・政治的に困難な状況は新年も続くとの見方を示した。 戦地で新年を迎える兵士らについては「ロシアの国益を守り、安全保障を確保するための戦闘任務を勇敢にこなしている」とたたえた。 |
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●プーチン氏、新年のあいさつで「勝利する」 軍服の兵士と出演 1/1
ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は2022年12月31日、国民向けの新年の祝辞を発表したが、軍服を着た兵士と共に出演するなど、軍事色を前面に出すあいさつとなった。ロシア軍が苦戦を続けているが、プーチン氏は「我々の家族とロシアのために勝利する」と訴えるなど、戦闘継続の姿勢を揺るがせていない。 国内が11の時間帯に分かれているロシアでは毎年、その地域が新年を迎える直前に、収録された大統領の祝辞が国営放送で報じられる。今回は後方に多くの兵士が控える中、スーツ姿のプーチン氏があいさつする映像が流された。 プーチン氏は22年を振り返り「困難だったが、必要な判断を下し、ロシアの主権を完全に手にするために重要な一歩を歩んだ年だった」と述べ、2月に始めたウクライナ侵攻を正当化した。これまで欧米諸国がロシアへの侵略の準備を進めてきたと主張し、「ロシアを弱体化させて、分裂させる目的で、ウクライナとその国民を利用してきた」とも強弁。そのうえで国内の団結を呼び掛けた。 またロシア大統領府が12月31日に公開した映像では、プーチン氏は南部ロストフナドヌーにある南部軍管区本部を訪問。兵士たちに勲章を与えたほか、シャンパングラスを手にして、兵士たちと談笑する姿が報じられるなど、軍事面への関与が全面的に伝えられている。 |
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●焚き火をしてウクライナ軍に発見される動画が拡散…“冬将軍”未熟なロシア兵 1/2
ろくな訓練を受けていないロシアの徴集兵が戦地の最前線で焚き火をし、ウクライナのドローンに発見されて攻撃を受けた──そのような動画が、ロシア国内で一時的に拡散されたという。今は削除されたのか見られなくなっている。 ロシア軍のお粗末ぶりを報じる記事は多い。例えば、共同通信は12月21日、「ロシアはウィキで銃の扱い学ぶ? 侵攻『歴史的失敗』と米紙」との記事を配信、YAHOO! ニュースのトピックスに転載された。担当記者が言う。 「ニューヨーク・タイムズ電子版の報道を紹介する内容でした。《前線の兵士がインターネット上の百科事典「ウィキペディア」で銃の使用方法を学んでいたとみられる》という記述はインパクトがありました」 軍事ジャーナリストは「ニューヨーク・タイムズの報道は正確でしょう。徴集兵の内部告発にも同じ内容のものがあるからです」と言う。 「ロシアの徴集兵は、一応、基地で訓練を受けているという建前です。そんな徴集兵の一部が隠して持ち込んだスマートフォンの動画や画像の中に、銃の取り扱いを教える“教科書”がウィキペディアのコピーだったというものがありました。ニューヨーク・タイムズの報道と一致します」 ロシア軍は充分な装備を兵士に供与できていないとの報道が以前から相次いでいた。中でも「徴集兵が自腹を切って装備を調える」という記事は注目を集めた。 ●ゴム長靴の徴集兵 CNN.co.jpは12月23日、「兵士のため一般ロシア人が靴や防弾ベストを購入、政府は供給問題の解決目指す」との記事を配信した。 記事によると、最前線のロシア兵は防寒具や寝袋、防弾ベスト、制服までもが枯渇。装備の費用に充てるため、ロシア国内ではクラウドファンディングによる資金集めが行われているという。 「以前には、徴集兵や新兵に『衣服や寝袋は自分で調達しろ』との命令が下ったと報道されました。ウクライナの最前線で行動するロシア軍部隊の写真をよく見ると、魚市場の人たちが使うようなゴム長靴を履いている兵士がいました。どうやら軍靴も支給されていないようです」(同・軍事ジャーナリスト) こんな徴集兵が、厳冬期のウクライナに送られる。ウェザーチャンネルによると、12月23日のキーウは、最高気温が2度、最低気温がマイナス1度となっている。 12月20日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44)は東部ドネツク州の激戦地バフムート(アルチェモフスク)を電撃訪問し、兵士を激励した。 ウェザーチャンネルによると、バフムートの23日の最高気温は5度、最低気温はマイナス1度だった。 ●軍隊は冬が苦手 デイリー新潮は、キーウでボランティア活動をするパルホメンコ・ボグダン氏に取材した際、現地の気温について訊いた(註)。その時の答えは以下のようなものだった。 《キーウは北海道と同じくらいの寒さと考えていいと思います。僕が勤めていた前の会社の上司が北海道の方で、キーウにいらした時に北海道と似ているとおっしゃっていました》 札幌市の23日の最高気温は2度、最低気温は0度。確かにウクライナに似ている。 比較のため、世界有数の厳寒地として知られるロシアのイルクーツクを見てみよう。日本気象協会の発表によると、23日の最高気温はマイナス8度、最低気温はマイナス15度となっている。 ウクライナは極寒の国だと思っていたが、ロシアに比べればたいしたことはない──そう思った人もいるかもしれない。だが、それは完全な誤りだという。 「少なくとも陸軍の地上部隊にとっては、氷点下の気温は兵士の命に関わる問題です。マイナス1度でさえ野外での行動は危険が伴います。凍傷や低体温症で死者が出る可能性があるからです。しかも、風速が1メートル強くなれば、体感温度は1度下がります。軍隊は冬になると、著しく士気が下がって当然なのです」(同・軍事ジャーナリスト) ●アメリカ軍の実力 とはいえ、人間はマイナス40度でも戦争を行った歴史を持つ。1939年11月、ソ連がフィンランドに侵攻した「冬戦争」では、最高気温が氷点下の日も珍しくなく、ソ連兵の多くが凍傷で命を落とした。 「今は防寒具も発達し、NATO(北大西洋条約機構)軍が使うような冬服なら、厳冬期の戦闘も不可能ではありません。ただし、汗をかくと低体温症の危険があり、下着や靴下を小まめに取り替える必要があります。つまり、冬の戦争は、夏より多量の物資を必要とするのです」(同・軍事ジャーナリスト) 極端な話、夏ならTシャツ1枚でも戦闘ができるかもしれない。だが冬は、弾薬だけでなく大量の防寒具や食料、暖を取るための器具などを運ぶ必要がある。 「米軍は寒冷地で戦う兵士用に、特別な戦闘糧食を準備しています。一般に知られる戦闘糧食(MRE=Meal, Ready-to-Eat)とは違い、MCW(Meal, Cold Weather)と呼ばれるもので、高カロリーで凍結の恐れのないフリーズドライの食品で構成されています。パッケージも茶色のMREとは違い、雪原で目立たない白色です」(同・軍事ジャーナリスト) ●タイヤの悪夢 ウクライナ軍はNATO軍の支援を受けている。最近はNATO軍の冬服を着るウクライナ兵の姿も目につくという。防寒具を自前で調達しなければならないロシア軍とは雲泥の差だ。 「ろくな訓練を受けていない徴集兵が寒さに耐えかね、焚き火をしても仕方ないのかもしれません。ただ、煙は遠くからでも目立ちます。しかも、現代の戦争はドローンが上空から最前線を偵察しています。火を使えば、現在地を敵軍に把握されてしまうリスクが極めて高いと言わざるを得ません。そんな初歩的なことも教育されていないということでしょう」(同・軍事ジャーナリスト) 先に《冬の戦争は、夏より多量の物資を必要とする》という点に触れた。 思い出されるのは、ウクライナ戦争の緒戦で、「ロシア軍のトラックは中国製のタイヤを使っており、非常に質が悪い」という報道だ。目にした方も多いだろう。 「あの時より、ロシア軍のタイヤ事情がよくなっているとは思えません。冬道を安定して走れるようなタイヤを確保できているかは疑問です。兵士や物資の輸送にトラックは重要な役割を果たしています。陸路の補給が機能しないとなると、ロシア軍は身動きが取れなくなる可能性があります」(同・軍事ジャーナリスト) ●不潔なロシア軍 厳冬期を迎えるロシア軍には、他にも意外な強敵が潜んでいる。それは感染症だ。 「冬季は風邪やインフルエンザの感染リスクが最大限に上がります。おまけに今冬は、新型コロナの第8波も取り沙汰されています。規律ある軍隊は衛生を最優先にして感染症の蔓延を封じます。ところが、戦闘に敗れ正規兵が逃げ出したロシア軍の陣地の写真を見ると、ゴミだらけの凄まじく不潔な環境だったことが分かったのです」(同・軍事ジャーナリスト) 正規兵でさえ衛生観念がない。充分な訓練を受けていない徴集兵だと──。発熱者が続出して戦闘不能になることも充分に考えられる。 兵站の話に戻れば、凍結した悪路をロシア軍のトラックが進むことができなければ、最前線で発熱者が出ても医薬品が送れない。これでは戦闘以前の問題だ。 ●焦土作戦 もちろんウクライナ軍にとっても、冬の攻撃はリスクを伴う。ロシア軍の装備が貧弱でも油断は厳禁だ。 「兵力に勝る軍なら厳冬期でも進撃は可能でしょう。ウクライナ軍もロシア軍を次々に撃破するかもしれません。しかし、前線を押し上げて領地の奪還を継続するとなると、難易度が上がります。何しろ地面さえ凍っています。テントの設営も一苦労です。まして陣地の構築となると難事業でしょう」(同・軍事ジャーナリスト) ロシア軍は敗走する際、集落や街を焼き払うかもしれない。ナポレオンを苦しめた焦土作戦の復活だ。 もしロシア軍が守りを固めれば、ウクライナ軍が苦戦する可能性もある。攻める難しさを痛感する冬になるかもしれない。 |
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●プーチン氏「ウクライナはロシアの領土」 正月もキーウ攻撃 1/2
ウクライナを侵攻中のロシア軍は12月31日から1月1日にかけ、各地でイラン製無人機(ドローン)などによる攻撃を続行した。首都キーウ(キエフ)では1人が死亡、朝日新聞の邦人カメラマンが軽傷を負った。ロシアのプーチン大統領は新年演説で「何一つ(敵に)引き渡してはならない」と述べ、軍事作戦を完遂する決意を強調した。 プーチン氏は、2022年を「ロシアが完全な主権を取り戻す道のりの出発点」と述べ、侵攻の決断を自画自賛した。ウクライナについて、ロシアの「歴史的な領土」と表現し、侵攻を正当化。ウクライナ政府へ支援を続ける米欧を「うそつきで偽善的」と強い言葉で非難した。 新年演説は通常、モスクワのクレムリンを背景に行われるが、今回は南部ロストフナドヌーの軍管区で録画され、プーチン氏の周囲を軍人らが固めた。戦時体制を想起させ、国民を結束させる狙いとみられる。 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は新年の演説で「国民は戦うことを選択した。われわれはロシアに勝利するだろう」と述べ、徹底抗戦の構えを示し、23年を「奪還の年にしよう」と国民に呼びかけた。 31日から1日の攻撃により、キーウではインフラが損傷し、緊急停電に追い込まれた。一方で、現地メディアによると、ウクライナ軍は無人機45機を迎撃。ドネツク州ではロシア軍基地を破壊し、400人規模の部隊を壊滅したと発表した。 |
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●プーチン氏「今が歴史的転換点」 新年メッセージ、戦闘長期化必至 1/2
ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は昨年大みそかの国民向け新年メッセージで「ロシアの主権と独立、将来の安全保障は全てわれわれの力と意思にかかっている」と述べ、今が国にとって歴史的な転換点だとの認識を強調した。 厳しい対ロ制裁を科してウクライナへの軍事支援を続ける欧米との対決姿勢を鮮明にし、国民の結集を図った。併合を宣言したウクライナ東部・南部4州を「ロシアの歴史的領土」と位置付け、軍撤退を和平条件とするゼレンスキー政権の要求を事実上拒否。双方の立場の違いは大きく、一層の戦闘長期化は避けられない情勢だ。 |
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●ニーナ・フルシチョワ「ロシアでも西側でも人々は無能で独裁的な指導者を支持」 1/3
今のロシアは、私の曽祖父ニキータ・フルシチョフが首相だった頃(1960年代前半)の全体主義国家ではないはずだ。だが悲しいかな、ロシアのDNAには全体主義が染み付いている。あの国の指導者は今も現実をねじ曲げ、どんなに愚かで、あり得ない話でも国民に無理やり信じ込ませる。 ジョージ・オーウェルの『一九八四年』に登場するオセアニア国では「戦争は平和なり」とされたが、ウラジーミル・プーチン大統領のロシアでは「特別軍事作戦」が平和構築の一形態とされている。2022年2月24日に始まったウクライナ侵攻を、ロシアの都会に暮らす一般市民が気にかけることはなかった。ロシア軍の戦車が国境を越えて戦地に赴いても、みんなパーティーに興じていた。まるで、石油と天然ガスの輸出でプーチンのロシアが絶頂期にあった2004年に戻ったかのように。 このシュールな偽りの平和が、ロシア国内では侵攻開始から半年ほど続いた。許し難いことだ。曽祖父が若き日を過ごしたウクライナ、あの美しい大地が爆弾で穴だらけにされ、首都が包囲され、人々が国外へ逃れ、あるいは家族と離れて戦っていたときも、ロシアの人はいつもどおりの生活を送っていた。 大都市にいれば、それなりに経済制裁の影響は感じられた。高級品は店頭から消え、マクドナルドなどは店を閉ざした。それでも娯楽は十分にあった。ソ連崩壊からの30年で、都会の人は素敵なモノや快楽を手に入れていた。戦争はどこか遠くの話(あるいは近すぎて口にできない話)だった。ならばプーチンに任せておけばいい、どうせ彼が全てを仕切っているのだから。みんなそう思っていた。見ざる、聞かざる、言わざるが一番だと。 ただし西側の人にも、優越感に浸る資格はない。国内外に数え切れない紛争の種をまき散らし、罪深い行為に手を染めながら、やはり多くの人は現実から目を背け、快楽の消費に励んできた。そして今は、せっかく民主主義の国々にいながらプーチンと大差ない指導者たちを担ぎ、道徳的に破綻した契約を結んでいる。 ●恐怖と恥辱と排除の論理へ ドナルド・トランプ前米大統領が嘘を嘘で塗り固め、人種差別や反ユダヤ主義を口にし、私腹を肥やし、政府機関を腐らせていた4年間、アメリカ人は抵抗しただろうか。もちろん一定の抗議活動はあり、トランプは4年だけでホワイトハウスを追われた。しかし、それでもまだトランプを支持するアメリカ人が大勢いる。とりわけ共和党内ではそうだ。なぜか。彼が最高裁に保守派の判事を3人も送り込み、大企業に有利な規制緩和を進め、富裕層に減税をプレゼントしたからだ。 イギリスの国民も、ボリス・ジョンソン元首相を3年間も野放しにしていた。彼が無能な取り巻きに政府の仕事を回しても、議会や王室を軽視しても、好きなようにさせた。たぶんブレグジット(イギリスのEU離脱)の「功績」ゆえだろう。 ポーランドではヤロスワフ・カチンスキの政権が法廷と国内メディアの大半を脅し、飼い慣らしている。補助金のばらまきで農村部や貧困層に取り入り、盤石の支持基盤を固めているからだ。 こうして政府が国民の一部と取引するのが当たり前になると、専制主義と独裁の土壌が育つ。人は国家(または世界)のためではなく、自分と仲間の利益のために票を投じるようになる。そして指導者は有権者の望みをかなえる代わりに、民主主義と倫理を堂々と踏みにじる。国民の物質的欲望を満たす一方で、異質な少数者に対する恐怖心をあおり、憎悪を政治の武器とする。 プーチンやトランプのようなポピュリストは巧みに支持者の空気を読み、それに合わせて自分の意見や立場を変える。ウクライナ侵攻に対するトランプの反応を見ればいい。当初はプーチンに肩入れしていたが、国内世論の動向を見て、ある時期から侵攻反対に舵を切った。 だがウクライナ人の勇気をたたえてきたアメリカ人の間にも、今は支援疲れが見える。共和党議員の多くは、ウクライナ支援も無条件ではないと言いだしている。トランプ同様、心の底では「アメリカだけがよければいい」と思っているのだろう。 さすがに今は、ロシアの一般市民もウクライナで起きている惨劇の不条理に気付き始めた。ただしウクライナの人々に同情したからではなく、自分の息子や親兄弟が兵隊に取られかねない事態になったからだ。しかし、もしアメリカの共和党議員がウクライナの現実に背を向け、目を閉じてしまうようなら、ロシアの人々もプーチンの戦争に反対する意欲を失うだろう。 社会契約とは、社会の全ての人が共通の利益のために、一定の規則や規範を受け入れるという暗黙の了解を意味する。だがポピュリストは異質な人を排除して、ひたすら身内の利益だけを追求する。まさにプーチンがやってきたことだ。 そうしたアプローチの有効性にプーチンが気付いたのは、ある意味で意外だった。もともと彼は思慮深い男ではない。トランプも同様だ。しかし、そこが一番の問題かもしれない。だから私たちはだまされ、ポピュリストのゆがんだ統治を受け入れてしまった。もう思慮も分別もなく、あるのは恐怖と恥辱、そして排除の論理だけ。そこでは独裁者が栄え、野蛮な戦争が繰り返される。 |
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●ウクライナ砲撃で「63人死亡」 動員兵か、ロシアが異例の公表 1/3
ロシアのプーチン政権が一方的に「併合」したウクライナ東部ドネツク州マケエフカで12月31日夜から1月1日未明にかけ、ロシア軍を狙い、ウクライナ軍が米国提供の高機動ロケット砲システム(HIMARS)で砲撃を加えた。ロシア国防省は2日、兵士63人が死亡したと発表。一方、ウクライナ側は動員されたロシア軍予備役とみられる約400人が死亡したと明らかにしており、死者数はロシア側発表より多い可能性がある。 ウクライナ侵攻でロシア国防省は、相手の砲撃のたびに占領地の住民の犠牲者数を強調することはあったが、自軍の死者数を個別に公表するのは極めて異例だ。 今回の砲撃については先に、複数のプーチン政権系メディアが通信アプリで「人的損害200人」「死者全員が動員兵」と指摘していた。ロシア国防省は、隠し通せば遺族の不満が増大しかねないことから「最小限」の人数公表に踏み切ったとみられる。 |
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●ロシアの最新核兵器アバンガルドの恐怖 「マッハ27でジグザグに滑空」 1/3
●ロシアの最終兵器 12月17日、ロシア国防省は最新の核兵器システム「アバンガルド」を南西部のオレンブルク州に配備したと発表した。形状はハングライダーのようで、従来のICBM(大陸間弾道ミサイル)とはまったく異なる。 プーチンが「隕石のように目標を破壊する。迎撃も不可能だ」と自信満々に語るロシアの最終兵器の性能はいかほどか。 「従来のICBMは高度1000kmから放物線を描き、目標へ飛んでいきます。一方のアバンガルドは、高度100kmという低い軌道から、一直線に滑空して飛来してくる。その速度はマッハ27に達し、探知できても迎撃が間に合いません。しかも、左右ジグザグに滑空するので、撃ち落とすのは非常に困難です」(軍事評論家の高部正樹氏) アバンガルドの飛行距離は6000km以上で、ウクライナ全土が射程圏内に入る。 ●従来の防空システムでは対応できない そんな中、米国政府は21日、迫りくる核の脅威に対抗し、ミサイル迎撃システム「パトリオット」をウクライナへ供与することを発表した。 しかし、それもアバンガルドの飛来速度には対応しきれない。 「これまでは、仮にウクライナへ核ミサイルが撃たれても、従来の防空システムで迎撃できたかもしれません。しかし、アバンガルドが配備されたとなると、話は変わってきます。ウクライナは喉元にナイフを突きつけられたような状態で、緊張はより高まっていくでしょう」(高部氏) ウクライナ東部のドンバス地方で劣勢が続いていたロシア軍だが、12月に入り、隣国ベラルーシ南部に兵力を移送。ウクライナ軍の総司令官は「'23年1月にも、侵攻当初の目的だった首都・キーウに再び進軍し、制圧しようとしている」と警戒感を示している。 2度目の首都制圧作戦に失敗は許されない。少しでも戦局が膠着すれば、プーチンは迷いなく最終兵器の発射ボタンを押すことだろう。 |
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●今年の世界10大リスク、1位は「最も危険なならず者国家」ロシア 1/3
国際情勢のリスク分析を手がける米コンサルタント会社「ユーラシア・グループ」は3日、2023年の世界の「10大リスク」をまとめた報告書を発表した。1位には、ウクライナ侵略を続けるロシアを挙げ、「世界で最も危険なならず者国家になる」と説明した。 報告書は「プーチン大統領は少なくとも(併合を宣言した)東・南部4州の大半を制圧するよう(国内で)圧力を受けている。ロシアは撤退しない」と指摘した。 ロシアが核兵器による脅しを強め、ウクライナを支援する欧米の不安定化を狙ってサイバー攻撃や選挙介入も行うと分析した。 2位は、昨年10月の共産党大会で3期目政権を発足させた中国の習近平(シージンピン)国家主席だった。報告書は、習氏が権力を「極限」まで集中させたが、チェック機能が働かず「習氏が大きなミスをする可能性も高い」と予測。新型コロナ対策などの公衆衛生や経済、外交の分野でのリスクを挙げた。 3位は、人工知能(AI)の技術開発で、報告書は文章などを自動生成する技術の開発に言及した。社会に偽情報があふれ、「大半の人々には真偽の見極めができなくなる」と懸念を示した。こうした技術は海外の民主主義国を揺るがし、国内の反体制派を封じ込めたい独裁者への「贈り物」になるとも警告した。 ユーラシア・グループは地政学上のリスクを扱い、国際政治学者イアン・ブレマー氏が社長を務めている。 |
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●プーチン氏、トルコ大統領と4日会談へ 1/3
ロシアのプーチン大統領が4日にトルコのエルドアン大統領と会談する予定と、ロシア大統領府のペスコフ報道官が3日、インタファクス通信に明らかにした。 ロシアが昨年2月にウクライナ侵攻に踏み切って以降、両首脳は数回電話会談を行っているほか、トルコは国連と共にウクライナ産穀物の輸出再開を巡る仲介役を務めた。 |
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●国内でも支持を失うプーチン大統領、懸念される八方塞がりの「暴発」 1/4
ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領が、ロシア国内で政治的にますます孤立を深めつつあるとする分析が米国で詳細に報道された。 プーチン大統領はなおロシア国内で強大な権力を保ち、ウクライナの軍事屈服を目指す意図に変わりはないが、年来の側近とされる勢力との間に新たな距離が生まれたというのだ。プーチン氏の新情勢下での孤独は軍事面でのさらに大胆な攻勢にもつながりかねない、とも警告されている。 ●盟友の言葉からも浮かび上がる国際的な孤立 プーチン大統領の新たな孤立についての分析は米大手紙ワシントン・ポスト(2022年12月30日付)の長文の記事で伝えられた。「敗北に慣れていないプーチンは戦争の行き詰まりとともに孤立を深める」という見出しの記事だった。 筆者は、同紙の国際報道部門での長年のロシア報道で知られるキャサリーン・ベルトン記者である。現在同記者はロンドン駐在だが、ロシア勤務が長く、『プーチンの支持者たち』という著書でプーチン氏の政治経歴をKGB時代から詳しく追い、同氏の支持者や側近に光を当てて国際的な注目を集めた。今回もロシアやウクライナで現地取材を行い、とくにロシア側の関係者多数に直接インタビューしたという。 ベルトン記者のこの記事は、まずプーチン大統領の国際的な苦境を強調していた。同大統領は2022年12月19日にベラルーシを訪れ、国際的に唯一の完全な盟友ともいえるルカシェンコ大統領と会談した。その際のルカシェンコ氏の「プ―チン氏と私は、いま世界中で最も有害で有毒とされる共同侵略者だが、唯一の問題はどちらがより有害か、だ」という自虐的な半分冗談めいた言葉を引用し、プーチン氏の孤独を比喩的に描写していた。 同記事はさらに、プーチン大統領が12月26日にロシアのサンクトペテルブルクで開いた旧ソ連共和国諸国の首脳会議でも、温かい連帯の対応が得られず、中国やインドへのウクライナ問題での協力要請も前進していないことを指摘して、「プーチン氏は1999年にロシアの大統領代行となって23年目の2023年、国際的にも国内的にもかつてない孤立の状態に至った」と総括していた。 ●保守系エリート層のプーチン支持が大きく減少 そのうえで同記事は、プーチン大統領の最近のロシア国内での孤立について、複数のロシア政府関係者の言葉からとして以下の骨子の考察を伝えていた。 ・プーチン氏は元来、少数の堅固な支持者や側近だけを信頼して、依存し、最終的には自分の判断を下すのだが、最近はこの支持者と側近の数が減ってきた。その理由は、プーチン氏のウクライナ戦争での挫折により、プーチン信奉者の数が減ったことと、その側近の間でウクライナでのさらなる軍事エスカレーションを求める勢力と停戦の検討を求める勢力の対立が激しくなったことが挙げられる。 ・ウクライナ戦争でプーチン氏は、至近の強固な支持者たちに「軍事的に数日、あるいは数週間で決着をつける」と告げたにもかかわらず、いまや300日が過ぎて、支持者たちの落胆が顕著となった。プーチン氏は和平や停戦に応じると述べながらも、なおウクライナのインフラへの激しいミサイル攻撃で軍事威嚇を続ける以外の方法を見せていないことが、さらに側近との溝を生むようになった。 さらにベルトン記者は、米国でロシア事情分析の権威とされるカーネギー国際平和財団上級研究員のタチアナ・スタノバヤ氏の最新の見解も紹介していた。 スタノバヤ氏はロシアに生まれ高等教育を受け、フランスや米国でも学術活動を続けてきた女性のロシア研究の専門家である。ロシア人ながらプーチン政権に対しては客観的な立場の学者として米欧でも信頼されてきた。そのスタノバヤ氏の見解は以下の通りだった。 ・年来、プーチン大統領を支持してきたロシア国内の保守系エリート層の動向は重要だが、この層でのプーチン支持が目立って減ったことが、プーチン氏の孤立という印象を強めている。ウクライナ侵攻に関してこのエリート層はプーチン氏が独自の戦略を有することを信じてきた。だが、ここにきてその戦略への信頼が極端に減ってきたことが明白だといえる。 ・プーチン大統領の最近の言動には、疲れが目立つようになった。従来のプーチン氏支持のエリート層からも、ウクライナでの苦戦によるプーチン氏の心労の重さが同氏の本来の能力を減速させているとの観測が表明されている。その結果、エリート層でもプーチン氏の言明を言葉どおりに受け取らない傾向が生まれ、実はウクライナ戦でプーチン氏は具体的で現実に沿った対処策を持っていないのではないかという懐疑が表明されている。 ●軍事攻撃をさらにエスカレートさせる懸念 ベルトン記者のこの記事は、プーチン大統領の元政策顧問だった政治学者セルゲイ・マルコフ氏の見解も引き出していた。マルコフ氏はウクライナ攻撃を支持するロシア国粋派でプーチン大統領の信頼も厚かったとされる。同氏の見解の骨子は以下の通りである。 ・ウクライナでの軍事行動で敏速な勝利を得なかったことが、プーチン大統領の今日の孤立と呼ばれるような苦境を生んだことは明白だ。これまではロシアの軍隊がウクライナで全力で戦闘しながらも、ロシアの一般国民は年来の正常な生活を送ってきた。だが2023年からはかつての第2次大戦のように、国家、国民を挙げてウクライナでの戦争に総力を注ぐ方向へ進まざるをえないだろう。 ・2022年秋のロシアでの軍事動員令で新たに徴募された約30万人の軍事要員は、まだ十分な訓練と兵器を得ていない。この新兵力をいつ、どのようにウクライナでの戦闘に投入して、実効ある戦果をあげるのか、その具体的な方途をプーチン大統領はまだ持っていないようだ。同大統領の国内での地位や権力を左右する最大要因はウクライナ戦での勝敗だから、現在の戦況が同大統領の影響力に影を投げることは当然だといえる。 ベルトン記者の報道は以上のように、プーチン大統領の支持勢力からも同大統領の最近の孤独が指摘される現状を伝えていた。 この報道でさらに注目されるのは、ロシア政府の外交官の懸念として「プーチン大統領は現在の苦境を脱するためにウクライナでの軍事攻撃をさらにエスカレートさせることも考えられ、そのエスカレートには戦術核兵器の使用という危険な可能性も含まれる」という言葉を紹介している点だった。 この四面楚歌と呼んでもおかしくない状況をプーチン氏自身はどう打破するのか。2023年の世界の最大の不安定要因ともいえるだろう。 |
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●ロシア、兵士を映画で「英雄化」 1/4
ロシアのプーチン大統領は3日、ウクライナで続ける軍事作戦に参加する兵士らを「英雄」として扱うドキュメンタリー映画の製作を支援するよう国防省に命じた。また軍事作戦をテーマにした映画の上映機会を確保するよう文化省などに指示した。タス通信などが伝えた。 侵攻に加わる軍関係者を英雄としてたたえることにより、戦闘長期化で社会に厭戦気分が広がるのを防ぐとともに、前線の兵士らの士気を高める狙いがあるとみられる。 プーチン氏はまた、軍病院だけでなく一般の病院も軍事作戦で負傷した兵士の治療とリハビリを受け入れるよう保健省に指示した。 |
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●一般人に紛れ、常にプーチンの背後に控える「謎の金髪美女」...何者なのか? 1/4
ウクライナへの侵攻を開始して以降、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は国民を鼓舞するテレビ演説などを何度も行ってきた。だが、それらの映像のなかに、「同一人物」とみられる女性が様々な立場の人物として繰り返し登場していることが発見され、憶測と嘲笑が飛び交う事態となっている。 この奇妙な騒ぎの発端となったのは、昨年末にロンドン在住のベラルーシ人ジャーナリストであるTadeusz Giczanによるツイートだった。彼は、プーチンが別々の場面で民衆の前に立つ3枚の画像を投稿。1枚目は兵士の前、2枚目はボートに乗った船員たちの前、3枚目は宗教関係の行事に参列する信者たちの前で撮影されたものだ。 まったく違う場面で撮影されたはずのこの3枚の写真(動画)だが、それらのなかになぜか同一人物とみられる金髪の女性が写っていると、Giczanは指摘した。それも最前列のプーチンの真横あたりの場所が割り当てられているため、ロシア当局が何らかの意図をもって彼女を写真撮影の列に送り込んでいるのだろうという印象を受ける。 Giczanはツイートで、「兵士、船員、敬虔なキリスト教徒。神はミステリアスな方法で動く」としている。 ●ほかにも2枚の写真に登場する人物が このツイートに反応したCNNのClarissa Ward特派員は、女性の身元と役割について疑問を投げかけている。写真の見栄えを良くするために起用された俳優なのか、それとも様々な場面においてプーチンのすぐ近くに控えていなければならない何らかの理由があるのか......。 「彼女は誰? ボディーガード? 俳優?」とWardはツイートした。さらにWardは、「右側の(2枚の)写真には、ほかにも両方に写っている人物がいる」とも指摘した。 さらに別のジャーナリストたちによる謎解きは続き、「兵士たちとの写真」は新年を迎える直前にテレビ放送された演説の時のもので、「礼拝者たちとの写真」は22年のイースターの演説の際に撮影されたものだとされた。そして話題の女性を含む写真の中の人々は、プーチンの警備隊から選ばれた「民衆」役だという声も上がっている。 ウクライナのアンドリー・ザゴロドニュク元国防相も、こうした指摘に対して「間違いない。驚く人もいないだろう」とした。 |
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●プーチン大統領犯罪的過失<鴻Vア軍「ハイマース」攻撃で400人死亡か 1/4
ロシア国防省は2日、ウクライナ東部ドネツク州の都市マケエフカで高機動ロケット砲システム「ハイマース」による攻撃を受け、軍関係者ら63人が死亡したと発表した。ロシア軍が認めた一度の攻撃による死者数では昨年2月の侵攻開始以来最大だが、ウクライナ側は動員兵ら約400人が死亡したと主張している。ロシア国内では軍指導部を追及する声が強く、プーチン大統領の責任も問われそうだ。 米調査会社ユーラシア・グループが3日、今年の10大リスクの筆頭に掲げた「ならず者国家ロシア」だが、ウクライナで苦戦が続いている。 ウクライナ軍のハイマースによる攻撃は昨年12月31日深夜に行われ、多数のロシア兵が住んでいたマケエフカの職業訓練校が全壊した。米軍供与のハイマース6発のうち4発が着弾した。 英BBC放送ロシア語版は、兵士らが新年を祝う食事を並べ、日付が変わる直前のプーチン大統領の国民向けメッセージが放送されている時刻に攻撃があったと伝えた。 BBCによると、ドネツクにあるロシアの代理機関の元高官は、1つの建物に多数の兵を配置した判断を「犯罪的過失」と非難した。 タス通信は2日、親露派「ドネツク人民共和国」筋の話として、多数の兵士が携帯電話を使ったためウクライナ側に探知されたとみられると報じており、軍の規律の乱れもうかがえる。 プーチン氏は国民向け新年メッセージで「ロシアの主権と独立、将来の安全保障は全てわれわれの力と意思にかかっている」と述べ、今が国にとって歴史的な転換点だとの認識を強調した。 「重要なのはロシアの運命だ。祖国の防衛は先人と未来の世代に対する神聖な義務だ」と語るなど、過去最長の9分間に及んだメッセージでは、停戦交渉に全く触れず、長期戦の構えを見せる。 だが、ウクライナ側が米軍の「パトリオット」など防空システムを強化する一方、ロシア側は兵力の枯渇が懸念されている。不利な戦況が続けば、プーチン氏に反旗を翻す強硬派が台頭する可能性もある。 前出のユーラシア・グループは、プーチン氏には戦争をウクライナ国内にとどめる余裕がなくなっており、戦術核をウクライナ近くに移動させるなど、核の威嚇がより強まると指摘する。ロシアとプーチン氏をどう打ち負かすかが、2023年の西側陣営の重大課題となる。 |
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●国内反発でプーチン氏が追い込まれている?“次の一手”は? 1/4
今年に入ってから、ロシアのプーチン大統領は、異例の対応をいくつも取っています。まず、一つ目の異例の対応は、プーチン大統領が国民に向けた新年の演説です。これまでは、クレムリンを背景に演説していましたが、今回は、軍人を自分の周りに囲む形で行っていました。また、演説時間も9分間と、過去20年で最長となりました。 防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。 ●Q.プーチン大統領の演説から、何を感じましたか 年末に向けて、ロシア国民に語りかける演説がキャンセルされたので、新年、何を語るのか注目されていました。今回、大きく二つの内容がありました。一つは、軍人をねぎらって、寄り添う姿勢を見せる。だから、背景に軍人とみられる人がいるということです。31日に、軍人に対する勲章の授与があって、そのときに、この演説を収録したとみられます。そして、もう一つ。ロシア国民に対して、改めて欧米を批判したうえで、理解・支援をつなぎとめたいという異例の新年の演説となりました。ある意味、プーチン大統領は追い込まれているともいえます。 年が明けてすぐに、ウクライナ軍がロシア軍の兵舎を攻撃しました。ロシア国防省は、ロシア兵89人が死亡したと発表しました。一度に多くの人的被害を公表するのは異例です。国防省は、兵士に禁止していた携帯電話の使用がきっかけで、ウクライナ側に位置を特定されたと発表しました。一方で、ロシアの有力議員からは、大勢の兵士を1カ所に集めていた軍上層部の対応に批判も出ています。 ●Q.なぜ、ロシア国防省は、異例の公表をしたのでしょうか 二つあると思います。一つは、侵攻当初から、作戦がうまくいっているというプロパガンダ、情報統制が国内できかなくなってきているので、あえてマイナスの情報を公表することで、ロシア国内からの批判や反発を早めに抑え込む。ダメージコントロールの狙いがあると思います。そして、今回、動員兵が現場に携帯を持ち込んでいたため、位置を特定されたと公表。つまり、これは現場に問題があると、一種の責任転嫁です。これによって、軍の上層部、さらにはプーチン政権の中枢部に非難の矛先が向かわないようにするという狙いもあると思います。 ●Q.異例の対応を取らざるをえないプーチン大統領の周りで、いま、何が起きているのでしょうか 以前は、絶対的な政治力があったので、プーチン大統領の命令や指示というのは、みんな従っていました。プーチン大統領自らが、軍人に低姿勢で寄り添う姿勢を見せざるを得ない。それぐらい軍と大統領の関係がうまくいっていない側面があります。さらに、一部の強硬派から突き上げられて“4州の併合”を宣言するとか、30万人の部分動員に踏み切らざるを得ないような状況がありますので、プーチン大統領のリーダーシップに陰りが見えてきたといえると思います。 ●Q.かつてないほど追い込まれているプーチン大統領は、今後、どういった行動を取ると考えられますか 今後、注目される動きが、『国民総動員』『追加の部分動員』。この二つの選択肢がありますが、『国民総動員』は、ロシア国民からさらなる批判・反発が上がるので、それをプーチン大統領は懸念していると思いますので、そう簡単にはしないと思います。そうすると、ロシア国内やウクライナの一部では『追加の部分動員』は、あり得るのではという見方が高まっています。そのタイミングですが、当初、踏み切った30万の部分動員の訓練が終了して、戦力化が行われるのが2月。この部分動員を使って大規模な攻勢を仕掛けてくるのではと、ウクライナ側は警戒しています。それでも、戦況がロシアにとって好転しない場合には、追加の部分動員に踏み切る可能性もあるのではないかと思います。ただ、部分動員に踏み切ると、戦闘は長期化していくし、来年3月、プーチン大統領自身、大統領選挙を控えています。そうなると、国民のプーチン離れがさらに強まっていくことになります。プーチン大統領は、大きなジレンマに直面しつつあるのではないかと思います。 |
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●ロシアとウクライナ トルコなど各国首脳と相次いで電話協議 1/4
ロシアとウクライナの戦闘が2023年に入っても続く中、両国の首脳は3日、それぞれ周辺国首脳と相次いで電話協議を実施し、自国への支援取り付けなどに取り組んだ。4日にはトルコのエルドアン大統領が両国首脳と個別の電話協議に臨む見通し。戦闘終結の見通しが立っていないが、関係国による積極的な首脳外交が続いている格好だ。 ロシア大統領府によると、プーチン大統領は3日、隣国カザフスタンのトカエフ大統領と電話で協議し、2国間問題を中心に意見を交わした。 ロシアによるウクライナ侵攻に対し、カザフスタンが全面的な支持を表明しなかったことなどから、両国の関係は昨夏あたりからほころびをみせてきた。ただしロシアとしては、これ以上の関係の冷却化を避けたい狙いを含め、首脳間の対話に臨んだとみられる。 一方で、ウクライナのゼレンスキー大統領は3日に投稿したツイッターで、英国、オランダ、ノルウェー、カナダの首脳と個別に電話協議したことを明かした。スナク英首相との間では「今年にも(ロシアとの戦闘で)勝利に近づくため、我々の取り組みを強化することで一致した」という。 オランダのルッテ首相もツイッターへの投稿で、ゼレンスキー氏に対し「ウクライナが抵抗するだけではなく、戦争に勝つために、オランダは必要なことを全て実行する意向を伝えた」と明かしている。 トルコメディアによると、同国のカリン大統領報道官兼顧問は、エルドアン氏が4日、プーチン、ゼレンスキー両氏と電話協議に臨む予定を明かした。トルコはロシアによるウクライナ侵攻が始まった初期の段階から仲介役を買ってでたが、停戦協議そのものは頓挫した。トルコとしてはロシア、ウクライナの双方と個別に協議し、協議再開につながる糸口を探す狙いとみられる。 |
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●プーチン氏、極超音速ミサイル搭載フリゲート艦の地中海配備を命令 1/5
ロシアのプーチン大統領は4日、極超音速ミサイルを搭載したフリゲート艦「アドミラル・ゴルシュコフ」の実戦配備を命じた。 ロシア国営タス通信はショイグ国防相の話として、このフリゲート艦は大西洋やインド洋、地中海を航行する長距離の航海に出ると報じた。 同艦には「比類のない最新の極超音速ミサイルシステム『ツィルコン』や最新世代のその他の兵器が備わっている」とプーチン氏はショイグ氏、同艦のイゴール・クロフマル艦長とのビデオ通話で述べた。 プーチン氏はまた「そうした強力な武器は潜在的な外部の脅威からロシアを確実に保護することを可能にし、国益を守るのに役立つと確信している」と期待を示した。 ショイグ氏によると、同艦はツィルコンを使って「演習を実施する」という。 同艦への「任務完了の開始」の命令に先立ち、プーチン氏は「非常に喜ばしい。素晴らしい共同作業で、期待通り良い結果だった」と述べた。 |
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●極超音速巡航ミサイル搭載艦を実戦配備 プーチン「世界に類を見ない兵器」 1/5
ロシアのプーチン大統領は、開発を進めてきた極超音速巡航ミサイルを搭載した艦船が実戦配備されたことを明らかにしました。 ロシア プーチン大統領「世界に類を見ないこのような強力な兵器により、ロシアを外部の脅威から守り、国益を守れると確信している」 プーチン大統領は4日、海上発射型の極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」を搭載したフリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」を実戦配備したと明らかにしました。 オンライン形式で行われた式典にはショイグ国防相も出席。開発を進めてきた「ツィルコン」の巡航速度は音速の9倍にあたるマッハ9で、射程は1000キロを超えるとし、「最新のミサイル防衛システムも突破できる」と強調しています。 このフリゲート艦は大西洋、地中海、インド洋への航海に向かうとされ、「ツィルコン」を含めたミサイルの発射訓練が行われるということです。 ウクライナ侵攻以降、欧米との対立が深まる中、最新兵器の実戦配備をアピールすることでけん制する狙いがあるとみられます。 |
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●ロシアの庇護から恐る恐る抜け出す中央アジア 1/5
帝政ロシアは19世紀の全盛期に中央アジアを瞬く間に支配下に置いた。ソビエト連邦の時代になると、この広大な地域におけるロシアの影響力はさらに強まった。 そして今、主にウラジーミル・プーチンがウクライナ征服を目指した戦争に失敗していることから、中央アジアの国々がロシアの庇護から抜け出し、1991年の共産主義崩壊以降には見られなかったやり方で自らの独立を主張している。 ●いきなり西側を頼らないが・・・ カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの中央アジア5カ国はいずれも慎重に行動している。 この地域の軍事、政治、経済そして文化におけるロシアの影響力はまだ強い。 5カ国が戦略を抜本的に組み直して中国や米国に、ましてや欧州連合(EU)やトルコに近づくなどと考えるのは非現実的だ。 また、中央アジア諸国の指導者たちがプーチンとの間に慎重に距離を置き始めていることを、国内の自由化と取り違えるべきではない。 保守的な独裁者たちが支配するこの地域には、政治勢力間の自由な競争など全く見られず、かえってその不在が目を引く。 カザフスタンとウズベキスタンで2022年に発生した暴動で示されたように、社会不安に対する体制側の懸念には十分な根拠がある。 独裁者らが統治する土地は大半がイスラム教社会であり、米軍が2021年にアフガニスタンから撤退してイスラム主義組織タリバンが権力を掌握したことを受け、イスラム過激派が勢力を広げる可能性を懸念している。 このため、同じ旧ソ連の共和国のジョージア(グルジア)、モルドバ、ウクライナなどに見られる西側の同盟への統合と民主主義を渇望する動きは、中央アジアでは再現されていない。 ●ウクライナ侵攻で認識に変化 それでも、プーチンが侵略の挙に及んだことを受け、中央アジア諸国の指導者たちの目には、ロシアはもう地域の秩序を保証してくれる頼りがいのある国には見えず、最悪の場合には脅威になりかねないように映る。 一方では、中央アジアの指導者たちは2月に始まったウクライナ侵攻とその7カ月後にプーチンが宣言したウクライナ領内4地域の併合を見て、自分たちに攻撃を仕掛けてくる前兆なのではないかと危惧している。 この懸念はカザフスタンに特に当てはまる。 面積が中央アジアで最も広い同国の総人口1900万人のうちほぼ300万人がロシア系民族で、その大部分が国境を接する北部に住んでいるからだ。 プーチンはウクライナの領土の一部併合を発表したとき、ロシア国外に住む数百万のロシア語話者が「昔からの本当の故郷に帰還する」決意でいるなどと不気味に語った。 またその8年前には、カザフという独立国家の正統性に疑問を投げかけ、「より大きなロシアの世界にとどまる」方がカザフの利益になると示唆していた。 これはロシアの超ナショナリストの間で重要なテーマになっており、2年前にはある活動家が「北カザフスタンはロシア領だ」と書いた横断幕をモスクワの在ロシア・カザフスタン大使館に掲げたこともあった。 ●ロシアの力の衰え 他方では、西側から強力な支援を得ているウクライナとの戦争にロシアが苦戦しているせいで、中央アジアの安定を支えるロシアの力も衰えたように見える。 この変化は急激だった。 プーチンはウクライナ侵攻のわずか1カ月前に、ロシア主導の軍事ブロック「集団安全保障条約機構(CSTO)」の部隊をカザフスタンに送り込み、クレムリンの権限を見せつけていた。 これはカザフスタン大統領のカシムジョマルト・トカエフが暴動鎮圧のために行った出動要請に基づく措置で、暴動では200人を超える死者が出た。 ロシアがウクライナを攻撃したことを考えると、トカエフが同様な要請を再度行うことはもうないだろう。 だが、キルギスとタジキスタンとの間で9月に武力衝突が起きたときには、ロシア政府にもCSTOにも介入する意思または力がなかった。 これに苛立ったキルギスの指導部は、10月に予定されていたCSTOの軍事演習への参加を取りやめた。 タジキスタン大統領のエモマリ・ラフモンも同じくらい不満を覚えた。 ロシアと中央アジア諸国との首脳会議では、プーチンが中央アジア諸国をまだ「旧ソ連の一部」であるかのように扱っているとして言葉で長時間攻撃した。 またウズベキスタンは12月、ロシアやカザフスタンと一緒に「天然ガス連合」を結成しようというロシア政府の提案を辞退している。 ●自国の独立と安定が一番 中央アジアの指導者たちはロシア政府の反感を買いすぎないように腐心している。 カザフスタン、キルギス、タジキスタンはウクライナ侵攻を公の場で非難するどころか、3月に行われた国連での非難決議の投票を棄権した。 トルクメニスタンとウズベキスタンに至っては、意思を示す投票さえしなかった。 5カ国の目的はどこかのブロックに吸い込まれるのを避けることであり、独立と安定を維持することなのだ。 帝政ロシアによる中央アジア支配があっという間に進んだ1860年代のこと。 欧州の列強に配られた覚え書きの中で、ロシアの外務大臣だったアレクサンドル・ゴルチャコフ公爵は「最大の困難はやめ方を知ることにある」と述べていた。 今日におけるロシア最大の問題は、1世紀以上享受してきた中央アジアへの影響力を維持する方法なのかもしれない。 |
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●BBCドキュメンタリーから学ぶ耐えるロシア民の本質 1/5
ウクライナ侵攻はロシアの劣勢が続き、早晩、プーチン大統領は譲歩せざるを得ない。兵器、食料不足でロシア兵の厭戦気分が高まり、反プーチン色が強まり、政権は追い込まれる――。そんな希望的観測をよく耳にするが、「いや、ロシア兵もロシア人も最後まで耐える」とジャーナリスト、石郷岡建さんはみる。20代のころ、天文学でモスクワ大学に留学しロシア女性と結婚し、のちに離婚、1990年から2002年にかけ計2度、毎日新聞の特派員としてモスクワに滞在した人だ。 思い入れが強い気もするが、言い分はこうだ。第2次世界大戦で旧ソ連の戦死者は他を圧倒している。軍人が1450万人、民間人が700万人に上り、日本はそれぞれ230万と80万人なので、異常な多さだ。身内の悲劇は孫、ひ孫にわたって伝えられ、戦死など人生の不条理に慣れた国民という面がある。 「ロシアはドイツと3都市で壮絶な戦いをして、レニングラードだけで100万人以上死んでいます。米軍の第2次世界大戦死者数を上回っているんです」。ちなみに米軍の総死者数は29万人超だ。 「だから、ロシア人は日本軍を褒める。爆弾抱えて戦車に突っ込むとか。うちもそうだったって」。そんな気質から、今回の戦争も「プーチンが交代しない限り最後までやる」と石郷岡さんはみている。 最後とは。「場合によっては核を使う。使う気持ちはある。ウクライナにではない。米国に。ロシア人のほとんどはウクライナとは戦争をしたくない。だけど、ウクライナを使っている米国には降伏しない。もし、負けたらロシアは崩壊します」 こうした考えの根にあるのは、1991年12月のソ連崩壊がまだ終わっていないという見方だ。ソ連という社会主義国家体制は現在も崩壊途上にあり、ロシアもウクライナも歴史上一度も近代国家になり切らないまま現在に至っている。そんな前近代の地ではどんなことでも起こり得ると言うのだ。「崩壊により国内や周辺国で戦争、内乱が起き、膨大な数の人が死ぬことになる。ロシア人は本能的にそれがわかっている」 絶望的な見方だ。筆者のように91年に1カ月ほどカムチャツカ半島に行っただけの部外者には、この是非を判断しようがない。ウクライナ侵攻も、核をもつ大国のおかしな独裁者が弱小国をいじめているだけじゃないかと短絡しがちだが、いくら情報、知識を集めても、その地を知らない者には真相は見えてこない。 旧ソ連、ロシアを知るには今という点だけを見てもわからない。歴史という線でみる必要がある。そこで見たのが、英国のアダム・カーティス監督によるBBCドキュメンタリー、「ロシア1985–1999 トラウマゾーン」だ。 ●まざまざと見せるロシア民の実際 BBCのモスクワ特派員が撮った膨大な未公開映像を時系列に編集した、計7部、7時間におよぶ作品にはナレーションも音楽もない。つまり見る者を下手に誘導しない。カーティス監督は英ガーディアン紙の取材に、従来の手法を使わなかったのは、「あまりに強烈な映像に無意味に介入せず、見る人にただ出来事を体験してほしかったからだ」と語っている。 映像は2022年8月に死去したゴルバチョフ大統領(当時、以下同)による社会主義体制のペレストロイカ(立て直し)の無力さから始まる。1991年夏のヤナーエフ副大統領らによるクーデターを機に崩れていくソ連の体制、エリツィン大統領による市場経済の急激な導入でオリガルヒと呼ばれた新興財閥、マフィアが台頭する。国の富を懐に入れ外に流し、国内産業を切り崩した魑魅魍魎に押されるように現れたプーチン大統領の登場で幕を閉じる。 だが、これはあくまでも政治の流れであり、映像の妙味は特派員の目で民を間近に捉えているところだ。 宇宙船ミールの乗組員からチェチェンのゲリラ兵、息子を軍から逃亡させる母、物乞いをする少女まで。テレビ中継中に記者を殴打する成り金政治家から、機動隊に素手で立ち向かう中年男、英首相への贈呈を必死に拒むトルクメニスタンの名馬、ロールスロイスのショールームをのぞく男、高級ファッション誌ヴォーグのきらびやかな編集長、売血で飢えをしのぐ人々まで、崩れゆくソ連の構成員をつぶさに、執拗に映している。 意外なのは80年代後半のソ連の人々のファッションや佇まいが当時の日本とよく似ているところだ。また、登場したときはスマートで、宇宙人のように輝いて見えるエリツィン大統領が、権力を握り、オリガルヒと繋がるにつれ、みるみる太り、人間性を崩していくさまも痛々しい。クーデター直後、記者会見するヤナーエフ副大統領の手の震えなど、映像は決定的な細部を記録している。 ●あらゆる場面で現れる「最後まで耐えるロシア人」 85年から99年。わずか14年という歴史の急変が描くのは、ソ連崩壊前にはなかった貧富の格差のみならず、広大なユーラシアの隅々にまで及んだ大いなる哀しみだ。国家、あるいは国家という幻想らしきものが崩れることで、一人ひとりにこれほどの哀しみをもたらすのか。 大統領も農民も、富裕層も貧しい兵士も、同等に分刻みで映し出される。考えてみれば、当たり前のことで、地位は違っても、一人ひとりはそれぞれの人生を与えられた同じ時間の中で生きている。 哀しみと同時にそこにあるのは、国に期待もしない、半ば諦めている人々の強さだ。中国の王兵監督のドキュメンタリー映画「鉄西区」(2003年)に現れる、街ごと消える製鉄所の工員たちに通じる強さを筆者は感じた。それは、社会主義の長い実験の末、秩序ひとつない混沌の世界に放り出されたせいなのか。 石郷岡氏の言う「最後まで耐えるロシア人」の素顔が作品のあらゆる場面に現れている気がする。統制下とはいえ、なぜウクライナ侵略が10カ月続いても、7割の国民が「プーチンの戦争」を支持するのか。前線で息子を失った母たちはなぜ、不満を吐露しないのか。そんな謎を探る上で、貴重な映像と言える。 |
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●暖かい欧州の気候、プーチンが負けた…バルブ締めたが天然ガス価格急落 1/5
欧州向け天然ガスパイプラインのバルブを握りしめ寒い冬だけを待ったロシアのプーチン大統領が敗着に陥った。欧州で冬季の異常高温現象が発生してガス需要が減り、当初懸念された欧州のエネルギー大乱が起きていないためだ。 ブルームバーグは3日、こうしたニュースを伝えながら「欧州の予想外の暖冬は気候危機が生んだ悪材料だが、本当の敗者はプーチン大統領」と報じた。最近ウクライナ軍の奇襲攻撃でロシア軍の大規模兵力被害が相次ぐ渦中に天候さえもプーチン氏の味方にならない局面ということだ。 この冬の世界は異常気候に陥っている。北米では大雪と寒波で死亡者が続出したのに対し、欧州では新年初日にポーランドやオランダなど少なくとも8カ国で1月としては過去最高の気温を記録し、春のような陽気を見せた。北米大陸の場合、地球温暖化により冷たい北極気流が下がってきて異例の厳しい寒さを引き起こし、欧州の場合、アフリカから暖気団が北上して異常高温を引き起こしたというのが英国気象庁の分析だ。 実際にリヒテンシュタインの首都ファドゥーツでは1日に気温が20度まで上がり、チェコのヤボルニクは19.6度、ポーランドのヨドウォブニクは19度を記録した。海抜2000メートルのアルプス山脈でも雪が溶けスイスやフランスなどのスキー場は開店休業状態だ。ブルームバーグは専門家の話として「この年末年始は欧州北西部地域の気温が長期平均値より8.5度高いものと予測される」と伝えた。 温和な冬の天候で欧州各国の暖房需要が減り、プーチンのエネルギー武器化戦略も力が抜けた様相だ。昨年末から下落傾向を継続していた天然ガス価格はむしろロシアのウクライナ侵攻前の水準よりも落ちた状況だ。欧州の代表的な天然ガス価格指標であるオランダTTFハブの2月物先物価格は、2日基準で1メガワット時当たり約76ユーロだった。昨年2月24日にロシアがウクライナを侵攻する直前の約88ユーロを大きく下回る。 これに先立ちロシアが西側の経済制裁に対抗するため欧州向けガスパイプライン供給を本格的に中断した昨年8月とは異なる状況だ。当時は天然ガス価格が1メガワット時当たり約350ユーロまで高騰した。今回の戦争前まで欧州諸国は天然ガス消費量の40%程度をロシア産に依存していた。 プーチン大統領の戦略を崩したのは異常気候だけでない。ロシアの資源武器化が長期化することに備え欧州の主要国が中東やアフリカなどで液化天然ガス(LNG)確保に死活をかけたためだ。これと関連しニューヨーク・タイムズは3日、「欧州諸国がロシア産天然ガスに代わる新たな供給源を確保して各国のガス備蓄量が80%以上を維持し、天然ガス市場は当分下落傾向を継続するだろう」と伝えた。 さらにウクライナの戦場でロシア軍も苦戦を免れない様相だ。特に1日夜のウクライナ軍によるロシア軍臨時訓練所爆撃はロシア側に大きな衝撃を与えた。ウクライナ軍の多連装ロケットである高速機動砲兵ロケットシステムのハイマース4発がウクライナ東部ドネツク州マキイウカの訓練所を攻撃し多くの死傷者が発生した。 当初ロシア軍が明らかにした死亡者は63人だったが、3日現在89人に増えた。ウクライナ軍は実際の死亡者は数百人に達すると主張した。今回死亡したロシア新兵らは昨年9月にプーチン氏が発動した部分動員令で徴集された兵士だったとBBCは伝えた。 他の激戦地でもロシア軍の被害が大きくなっている。ウクライナ軍総参謀部は「先月31日に南部ヘルソンのチュラキウカ地域でもロシア軍500人が死亡したり負傷した」とフェイスブックを通じて主張した。ウクライナ軍は戦争勃発から今月2日までで約10万7440人のロシア軍将兵が戦死したと集計した。 |
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●「遺体袋山積み」…プーチンの傭兵、バフムトで大規模戦死 1/5
ロシアのプーチン大統領の最側近である民間軍事企業のワグネルグループがウクライナ戦争の最大激戦地であるバフムトで大きな損失を出しているものと把握された。英日刊紙ガーディアンは3日、ワグネルグループ創設者のエフゲニー・プリゴジン氏がウクライナ東部戦線を視察する姿を収めた映像を入手してこのように報道した。 公開された映像にはプリゴジン氏がある建物の地下室を視察する様子が含まれている。床のあちこちには戦闘で死亡したワグネルグループの傭兵の遺体収納袋が置かれており、別の一方には足の踏み場もないほど積み上げられた遺体収納袋も見られる。プリゴジン氏が「戦闘で死亡した戦士らは棺に収められて家に帰るだろう」と話す姿とともに、兵士らが遺体収納袋を運ぶ場面も収められた。ガーディアンが公開した別の映像ではプリゴジン氏が「バフムトではすべての家が要塞化されている」と話す。「1棟過ぎれば防衛線、1棟過ぎればまた別の防衛線が出てくる」ということだ。この戦線で彼らが大きな困難に陥っている傍証だと同紙は伝えた。 ウクライナ東部ドネツク州に位置するバハムトは最近戦争の最大の激戦地に浮かび上がったところだ。 ドネツク州の半分を占領し自国領だと主張するロシアは昨年11月に南部ヘルソンから退いてからはこの地域を死守するために全力を挙げている。そのためには主要都市へ向かう要衝地であるバフムトの掌握が重要だ。プーチン大統領はワグネルグループをこの地域の核心戦力として投じ、新たに補充する兵力も次々と送っている。そのため戦闘が塹壕戦に広がり、ロシアとウクライナの双方で1日数百人の死傷者が続出しているとガーディアンは伝えた。 それでもロシアのバフムト戦闘勝利は容易ではなさそうだとの観測が出ている。ニューズウィークは3日、「ウクライナもやはりバフムトで兵力を増強している。ロシアが突破口を見いだす可能性はますます低くなっている」と報道した。 残忍なことで悪名高いワグネルグループはプーチンが手足のように働かせる傭兵集団だ。戦争が激しくなりプリゴジン氏が直接ロシアの刑務所を訪問して釈放を見返りに囚人を募集する場面が公開されたりもした。米国情報機関は先月ワグネルグループが北朝鮮から兵器を購入しウクライナ戦争で使っていると発表している。 |
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●ウクライナで一方的停戦を トルコ大統領、プーチン氏に要請 1/5
トルコのエルドアン大統領は5日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、昨年2月から続くロシアのウクライナ侵攻について、一方的に停戦を宣言するよう要請した。 トルコ大統領府によると、エルドアン氏はトルコの仲介で昨夏に成立したウクライナ穀物輸出合意などを「前向きな成果」と評価。ロシアによる「一方的な停戦の宣言と公平な解決見通し(の提示)」が、今後ウクライナ側との和平を進める上で有益という考えを示した。 ロシア大統領府によれば、プーチン氏は、西側諸国が兵器・作戦情報の提供を通じて「破壊的な役割」をしていると批判。「ウクライナがロシアの要求に従い、新しい領土(占領地)の現実を受け入れるならば、ロシアは真剣な対話にオープンだ」と主張した。 |
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●ウクライナ情報機関トップ「プーチン氏はがん」 1/5
ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領が、がんを患っていると、ウクライナ国防省の情報機関トップが述べました。 ウクライナ国防省のブダノフ情報局長は4日までのアメリカメディアのインタビューで、ロシアに対する大規模な反撃を春に計画していると述べ、「3月に戦闘が最も激しくなる」との見方を示しました。 また、プーチン大統領に近い人物から得た情報だとして「がんを患っている」と述べ、「死期は近いが、その前に我々が勝利する」と話しました。 こうした中、フランスがウクライナに偵察戦闘車の供与を決め、アメリカのバイデン大統領も歩兵戦闘車の供与を検討していることを明らかにしました。欧米製の戦闘車両がウクライナに送られるのは初めてだということです。 |
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●「プーチン大統領は“がん”患い死期が近い」ウクライナ側が主張 情報戦か 1/5
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、ウクライナ側が「プーチン大統領は“がん”を患い、死期が近い」との健康不安説を主張しています。専門家はウクライナ側が仕掛けた情報戦の可能性に触れ、「プーチン大統領は一番触れてほしくないところを敵に触れられた」と指摘しています。 先月31日に公開された映像には、ロシア南部を訪れたプーチン大統領が、大勢の兵士たちとともにグラスを手にする様子が映っていました。兵士たちと「万歳! 万歳! 万歳!」と唱えると、「明けましておめでとう」と乾杯の音頭をとっていました。 大統領は国民向けの新年のテレビ演説で「あらゆる困難を乗り越えて我が国が偉大で独立していられるよう、家族のために、唯一の愛する祖国の未来のために、前進して勝利するのだ」と呼びかけ、首都キーウをはじめとしたウクライナ侵攻をめぐり、一歩も譲らない姿勢を強い口調で改めて示していました。 こうした中、ウクライナ国防省の情報機関トップ、ブダノフ情報局長はアメリカメディアのインタビューで、“ロシアに対する大規模な反撃を春に計画している”とし、「3月に戦闘が最も激しくなる」との見方を示しました。 さらに、プーチン大統領について気になる情報が飛び出しました。ブダノフ氏は、“プーチン大統領に近い人物から得た情報”だとして、「彼(プーチン大統領)は長い間、病気だ。“がん”だと思う。死期は近いが、その前に我々が勝利する」と述べたのです。 “がんを患い死期が近い”とウクライナ側が主張しだした、プーチン大統領の健康不安説。 プーチン大統領はかつて、ことあるごとに屈強なイメージをアピールしてきました。時には、柔道で背負い投げを披露。2009年には、野外の水場でバタフライをしたり、上半身裸で乗馬したりする様子を公開しました。2017年には、またしても上半身裸で、ルアーで魚を釣り上げる様子が。ただ、そんなプーチン大統領も現在、70歳になっています。 “がんを患い死期が近い”との情報は本当なのでしょうか。ロシア政治に詳しい慶応義塾大学の廣瀬陽子教授は、“ウクライナ側が仕掛けた情報戦の可能性”を指摘します。 慶応義塾大学 廣瀬陽子教授「プーチン大統領の“病気説”というのは、去年の年末からかなりいろいろな海外メディアで出ているんですよ。そういう見方をすれば、むしろ、それにウクライナが乗っかったとも言えるわけで。デンマークの諜報(ちょうほう)機関は『がんであるけれども、末期ではない』とも言っているんです。(今回は)若干、もしかすると情報戦の要素もあると」 ただ、“がんを患っている”といった健康不安説が報じられることで、ウクライナ侵攻への影響が出る可能性もあるといいます。 慶応義塾大学 廣瀬陽子教授「戦闘員の戦意に悪影響を及ぼしたり、国民にとっても“プーチン大統領がこの先、長くないかもしれない”となると、いろいろな疑念・疑問を持ってくることはあると思うんです」 ――一番ダメージを受けるのは、やはりロシア側? 慶応義塾大学 廣瀬陽子教授「ロシアというより、プーチン大統領だと思うんですよね。プーチン大統領にとっては、“一番触れてほしくないところを敵に触れられた”というところで、非常に嫌な展開だと思われます」 ロシア軍は4日、核弾頭が搭載可能な極超音速ミサイル「ツィルコン」を備えた最新鋭のフリゲート艦を実戦配備しました。今後、大西洋や地中海などに向かい、「ツィルコン」の発射訓練も行うといいます。ロシアとしては、核戦力をちらつかせることで、ウクライナ支援を続ける欧米などをけん制する狙いがあるとみられます。 |
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●プーチン──支持してもロシアのために戦いたくないベラルーシ 1/5
森林地帯に出現した道路、ウクライナ北部と接する国境付近に向けてゆっくりと輸送される軍事装備品──ベラルーシ領内を捉えた最近の衛星画像では、そんな様子が確認できる。多くの専門家に言わせれば、ベラルーシがロシアのウクライナ侵攻の新たな拠点になる可能性を示す兆候だ。 新年早々にも、今度は北の方角から攻撃されるのではないか。国境付近への軍需品の到着は、先頃ベラルーシ軍が実施した「対テロ」演習や戦闘態勢強化などを目的とする臨時検査と併せて、ウクライナ政府の懸念を呼んでいる。 欧州最後の独裁国家と称されるベラルーシはこれまで、ウクライナ侵攻とは軍事的におおむね距離を置いてきた。だが、それも近々変化しそうな兆しが大きくなっている。 ベラルーシでは対ロシア国境から、ポーランドとの国境に近い南西部の都市ブレストへ兵士・軍需品を輸送する列車の運行頻度が増加。ロシアのインタファックス通信によれば、駐留ロシア軍の戦術演習も予定されている。 ウクライナへの軍の展開は、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領にとって危険な賭けになるだろう。ベラルーシ軍特殊作戦部隊の元中佐で、欧州の他の国に亡命したアルツョーム(匿名希望)は筆者らにそう語った。 「ルカシェンコはウクライナ派兵の回避に全力を尽くしている。権力を握っていられるのは、軍や治安当局の(支持の)おかげだと自分でも分かっている。彼らがウクライナで死傷したら、身の破滅につながりかねない。ポーランドがベラルーシ攻撃を計画中だから、国境沿いに軍隊を配置する必要があると主張しているが、ルカシェンコは(ロシアのウラジーミル・)プーチン(大統領)の言いなりだ」 ルカシェンコはウクライナ派兵に消極的だとの見方に同意する声は圧倒的に多い。6選を決めた2020年大統領選後の反政府デモとその弾圧を受けて、国内情勢が不安定化しているためだ。 「複数の調査が示すように、軍のウクライナ派遣には大部分の人が反対している。正当化するのは政治的に難しい」と、ベラルーシ出身の独立系ジャーナリスト、ハンナ・リウバコワは指摘する。 「ベラルーシ軍を構成するのは、社会的地位が低く、戦う動機を持たない徴集兵の若年男性だ。彼らが死体で戻ってくることになれば、抗議デモに火が付く可能性がある」 ●戦いたくない兵士たち 国境地帯に配置中の兵員の推定数には、大きな幅がある。とはいえロシア軍の増援部隊を含めて、計3万人以上の展開に備えていると、ウクライナ当局者らは言う。 リウバコワの話では、ベラルーシ軍兵士はその一部を占めるにすぎない。「ウクライナ侵攻当初、戦闘準備が整っていたベラルーシ軍大隊の兵員総数は1万人弱。明らかに、ウクライナに打撃を与えるのに十分な規模ではないが、彼らを失えば、ルカシェンコにとって問題になるだろう」 ベラルーシの運輸労働者らが、メッセージアプリ「テレグラム」に作成したチャンネルでは、対ポーランド国境へ向かう兵士・軍事装備の動きを追うことができる。人気が高いあるチャンネルによれば、12月中旬のある日には、対ロシア国境から約60キロ離れた北東部の都市ビチェプスクからブレストに、軍需品と共に兵士計310人が送られた。 複数の衛星画像では、別の国境地帯の森林に新設された道路を移動する軍用車両が確認できる。ベラルーシ軍大隊にロシア軍兵士2万人以上が合流して新たな戦線を張る可能性があると、ウクライナ側は懸念している。 一方で、ウクライナ軍の下で戦うベラルーシ義勇兵集団、カストゥーシュ・カリノーウスキ連隊のバジム・カバンチュク副司令官は、ベラルーシの対ウクライナ参戦は間近とみる。 「ベラルーシ軍の8割は、この戦争を戦いたくないと思っている。ウクライナに派遣されたら、軍は崩壊する。それが分かっているから、ルカシェンコは(派兵を)避けようとしているが、事態がエスカレートして制御不能になり、総動員令発令や参戦に発展するはずだ」 しかし、大量の地雷が仕掛けられた国境地帯を、多数の死傷者を出さずに越えるのは難しい。ベラルーシでの軍事的増強は、新たな戦線をちらつかせてウクライナ軍を攪乱するための情報作戦だと主張する向きもある。 ウクライナへの即時攻撃は、あり得ない展開ではないものの可能性が低いとリウバコワは言う。「これはロシアの情報作戦だと考えている。ベラルーシの現体制は使い勝手のいい仲間として、ロシアに協力している」 「即時攻撃に踏み切るだけの兵力が整っていない。だが22年2月(のウクライナ侵攻前)には、多くの人が判断を間違えた。プーチンにとって(ウクライナの首都)キーウ(キエフ)掌握は軍事的観点から見て最も論理的であり、ベラルーシを経由するのがキーウへの最短ルートだ」 英国防省は22年11月、ベラルーシの首都ミンスク南郊にあるマチュリシ飛行場に、ロシアの迎撃機「ミグ31」2機が駐機している可能性があるとの情報報告を発信した。 マチュリシでは、ミグ31に搭載される兵器の最高峰で、核搭載可能な極超音速ミサイル「キンジャール」のものとみられる容器の目撃報告も複数登場した。英国防省は、ウクライナ戦争へのベラルーシの関与拡大を告げる情報作戦の一環だと判断している。 いずれにしても、ベラルーシが攻撃に出たとして、確実な「敗者」になるのはルカシェンコその人だ。ウクライナ派兵を回避してきたおかげで国内で得ているある程度の支持は、前線から「貨物200便(戦死者運送を意味する軍用語)」が到着する事態になれば、あっという間に逆転しかねない。 数少ない高位の亡命ベラルーシ人であるアルツョームにとって、対ウクライナ参戦が「欧州最後の独裁者」に混乱をもたらす可能性は明らかだ。ベラルーシ軍内部ではロシア支持が厚いが、プーチンのために戦う意欲は欠けている。 「(ロシアの戦争犯罪は)心理戦の一環だと、ベラルーシ兵は聞かされている。ルカシェンコの言葉を信じる者もいる」と、アルツョームは話す。「多くの兵士はロシアを支持しているが、誰もロシアのために戦いたいと思っていない。これは自分たちの戦争ではないと知っているからだ」 |
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●ウクライナ支援の弱体化、プーチン氏に「侵攻継続を促す」 独外相 1/5
ドイツのベアボック外相は4日、西側諸国に対し、ウクライナがロシアの侵攻に対抗できるよう兵器の供与を継続するよう呼び掛けた。ベアボック氏は、ウクライナ政府への支援が弱まることは、ロシアのプーチン大統領に対して侵攻の継続を促すことにつながるとの見方を示した。 ベアボック氏はポルトガル首都リスボンで行われた記者会見で、ウクライナへの支援が弱まる兆候はすべて、プーチン氏に対して侵攻の継続を促すことにつながると述べた。 ベアボック氏は「我々はこの戦争をウクライナの勝利で終わらせたいと考えているため、ウクライナの市民と民間のインフラを守るためには、どうすればより良い支援が行えるのか繰り返し自問自答しなければならない」と述べた。 ベアボック氏は、ウクライナに対して防空システムの供与を継続することは必須だと強調した。 ベアボック氏は、こうした供与は復興に向けた継続的な資金援助や、エネルギーや暖房、水の供給を再開するための資材の供給とあわせて行うことになると言及。これ以上の破壊を食い止めながら実施するとの見通しを示した。 |
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●ロシア “プーチン大統領が6日から36時間停戦を命じた”と発表 1/6
ロシア大統領府は、プーチン大統領がロシア正教のクリスマスにあわせて一時、停戦するよう国防相に命じたと発表しました。ウクライナに対して、この期間は「停戦を宣言するよう求める」としていますが、ウクライナ側はロシアが占領地を去ることが条件だと強く反発しています。 ロシア大統領府は5日、プーチン大統領がロシア正教のクリスマスにあたる今月7日にあわせて、6日正午から8日午前0時まで(日本時間の6日午後6時から8日午前6時まで)の36時間は停戦するようショイグ国防相に命じたと発表しました。 そのうえで「ウクライナ側に停戦を宣言し、信者たちが礼拝に参列できるようにすることを求める」としています。 ●ゼレンスキー大統領 “一時停戦は態勢立て直しの口実” これに対して、ウクライナのゼレンスキー大統領は5日夜、新たに公開した動画で「ロシアはわれわれのドンバス地域での反転攻勢を少しでも食い止め、装備や兵士を輸送するためにクリスマスを利用したいのだ」と述べ、ロシア側の主張する一時的な停戦は態勢立て直しの口実にすぎないとの見方を示しました。 ●ウクライナ大統領府顧問「占領地から去って初めて一時停戦」 ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、SNSで「ロシアが占領地から去って初めて一時停戦ができる。偽善は自身の中にとどめておくべきだ」と述べ、プーチン大統領を批判しました。 また、ウクライナ大統領府のティモシェンコ副長官はウクライナ南部ヘルソン州で住宅がロシア軍の砲撃を受けて12歳の男の子を含む家族3人が死亡したことをSNSで明らかにしました。 砲撃はロシア正教会の総主教が一時、停戦を呼びかけた直後だったとしてティモシェンコ副長官は「家族は正教会のクリスマスを祝う準備をしていたのに、恥知らずのロシアの一撃で命を落とした」と書き込み、強く非難しました。 ●ウクライナ市民「ロシアは信用できない」 ウクライナの首都キーウの市民からは、冷ややかな声が上がっています。 ロイター通信の取材に対し、52歳の女性は「プーチン大統領が本当に停戦するとは思えない。私たちはミサイル攻撃を受けながら新年を祝った。そのときも私と娘はどこにも行けず、平和だったのは1時間か2時間だけだった」と話し、ロシアを非難しました。 また、市民の男性は「これは悪い冗談だ。私たちの国の歴史上、ロシアを信じていい結果になったことがない。彼らは信用できず、用心しないといけない」と話し、不信感をあらわにしていました。 さらに、別の33歳の男性も「ロシアは口では停戦と言えるが、実際にはイラン製の無人機などを使って攻撃を続けるのだろう」と話していました。 |
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●プーチン大統領が36時間の停戦命令、ウクライナにも宣言求める… 1/6
ロシア大統領府の発表によると、プーチン大統領は5日、侵略を続けるウクライナ東部・南部の前線で6日正午(日本時間6日午後6時)から36時間、停戦に入るようセルゲイ・ショイグ国防相に指示した。プーチン氏がウクライナ侵略で停戦を命じるのは初めて。 ロシア正教会では、旧暦のユリウス暦で12月25日にあたる1月7日にクリスマスを祝う。露大統領府は、停戦はこれに合わせたものだとし、ロシアが一方的に併合したウクライナ東部・南部に多く住む正教徒が礼拝する機会を与えるためと説明した。プーチン氏は、ウクライナ側にも停戦を宣言するよう求めた。 タス通信などによると、ロシア正教会トップのキリル総主教は5日、クリスマスに合わせた休戦を呼びかけていた。 |
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●プーチン氏、極超音速ミサイル搭載の軍艦を派遣 ロシア国営メディア 1/6
ロシアのプーチン大統領が、同国で最も近代的な軍艦の1隻を長距離の航海に派遣したことがわかった。極超音速ミサイルを搭載したこの艦は、大西洋や地中海、インド洋を航行する予定。ロシアの国営メディアが4日に報じた。 当該のフリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」は、ロシア北部の港湾を4日に出発した。港湾の地名は明かされていない。タス通信の報道によるとプーチン氏はこれに先駆け、同艦の艦長やショイグ国防相とビデオ通話で協議していた。 プーチン氏は同艦が極超音速ミサイルシステム「ツィルコン」を搭載していると強調。ツィルコンは音速の5倍の速さで飛行するため、探知や迎撃がより困難になる。 ロシアは2021年後半にツィルコンの発射試験を行った。ロシア北西部の白海でアドミラル・ゴルシコフから発射し、当時の報道によれば400キロ先の標的に命中させたという。 戦闘も想定される状況でツィルコンが配備されるのは今回の任務が初めて。 ロシアが10カ月目に突入した隣国ウクライナとの戦争にツィルコンを投入するのかどうかは不明。タス通信の報道でもこの戦争に関する具体的な言及はない。 ツィルコンがロシアの主張通りに機能するとすれば、恐ろしい兵器となる。ただアドミラル・ゴルシコフに搭載したツィルコンをウクライナ国内の標的に対して使用するのは、兵站(へいたん)上の困難が伴う。 ロシアから見たツィルコンの最適な射程は、ウクライナの南に位置する黒海から発射した場合となるが、アドミラル・ゴルシコフが黒海へ到達するにはトルコが管理するボスポラス海峡を通過しなくてはならない。トルコ政府は戦争の初期から、外国の艦船によるそうした通行を許可しない方針を示している。 アドミラル・ゴルシコフは、理論的には地中海の北の海域からでもツィルコンを発射できるものの、その場合ミサイルはウクライナに到達するまでに北大西洋条約機構(NATO)に加盟する複数の国々の上空を飛行することになる。それはロシアによる侵攻の著しい拡大とみなされる可能性がある。 米海軍の退役大佐でアナリストのカール・シュスター氏は、アドミラル・ゴルシコフの配備について、プーチン氏にとっては軍事面と同様に政治的な声明でもあると指摘。「プーチン氏はロシアが依然として世界的なプレーヤーであることを誇示しようとしている。自身によるウクライナへの侵攻で代償が生じ、各国から激しい非難を浴びているにもかかわらずだ」と述べた。 |
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●ゼレンスキー氏「プーチン政権は戦争継続のため休息」…「36時間停戦」入り 1/7
ロシア国防省は6日、プーチン大統領の指示を受け、ウクライナ東・南部の前線地域で同日正午(日本時間6日午後6時)から、ロシア正教会のクリスマスに合わせた36時間の停戦に入ったと発表した。プーチン氏はウクライナ側にも応じるよう呼びかけたが、ウクライナ側は露軍撤退を求めるなど反発している。停戦の実現は困難とみられる。 ロシア正教会は旧暦を採用し、7日にクリスマスを迎える。プーチン氏は5日、東・南部の戦闘地域に正教徒が多く住んでいるとして、礼拝など祝祭行事に参加する機会を与えるよう、ウクライナ側に求めた。 ゼレンスキー大統領=ロイターゼレンスキー大統領=ロイター 一方、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は5日夜のビデオ演説で「プーチン政権は戦争を継続するため、休息を利用する」と批判し、改めてウクライナからの露軍の撤退を求めた。ミハイロ・ポドリャク大統領府顧問もSNSで「ロシアが占領地域を去って初めて一時的な停戦ができる」と否定的な見方を示した。 露国防省は6日、露側が設定した停戦期間に入った後、東部ドネツク州とルハンスク州、南部ザポリージャ州でウクライナ軍が攻撃を行ったと主張した。 |
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●ロシア国防省“ウクライナ側が攻撃を続けている” プーチン“停戦”指示も… 1/7
ロシア国防省は6日、プーチン大統領の指示に基づく停戦に入ったものの、ウクライナ側が攻撃を続けていると主張しています。 ロシア国防省の報道官は、プーチン大統領の指示のもと、ロシア軍が6日正午に攻撃をやめたあとも、ドネツク州などでウクライナ軍が砲撃を行っていると主張しました。 親露派指導者のプシリン氏は、ウクライナが攻撃をやめない場合、自衛のための反撃は行うとしています。 ロイター通信は、ウクライナ東部の前線でロシア軍の砲撃による爆発音を聞いたとするウクライナ兵の話を伝えていて、ロシアの一方的な停戦によって交戦がやむかどうかは不透明な情勢です。 |
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●ロシア停戦呼びかけ、侵略正当化へ口実作りか… 1/7
ロシアのプーチン政権による停戦呼びかけには、ウクライナ側が反発することを見越し、侵略を正当化する新たな口実を作る狙いがあるとの見方が出ている。 露大統領府の発表によると、プーチン大統領は、軍や国防省への停戦指示は、ロシア正教会トップのキリル総主教による訴えを「考慮した」と説明した。キリル総主教はプーチン氏と親しい関係で、5日に停戦を呼びかけていた。 ただ、バイデン米大統領は5日、「彼(プーチン氏)は、(12月)25日や元日に病院や保育園、教会を爆撃する準備があった」と記者団に語り、一方的な停戦表明であるとの認識を示した。「息継ぎをしようとしているのだろう」と、時間稼ぎであるとの見方も示した。 米政策研究機関「戦争研究所」も5日、ロシアが直前に呼びかけた停戦は「(ウクライナ側に準備の時間を与えない)突然の発表で、戦闘が続く可能性が高い」と懐疑的な見解を示した。ロシアが、ウクライナ側が応じなければこれを非難し、「迫害されたロシア人の保護」と主張する侵略の目的への支持につなげようとしているとも分析した。 ウクライナのオレクシー・ダニロフ国家安全保障国防会議書記も5日、自身のSNSに「停戦の発表は偽りだ。我々はあなた方にかみつくだろう」と投稿した。6日深夜から7日未明にかけて露軍に対する攻撃を行う可能性も示唆した。 一方で、メドベージェフ前露大統領は6日、露側が表明した停戦開始に先立ち、「ウクライナの指導層は(停戦の呼びかけを)拒否した。感謝の念もない」とSNSに投稿した。 トルコのタイップ・エルドアン大統領は5日、プーチン氏、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領と相次いで電話会談し、停戦協議などを呼びかけた。しかし、露大統領府によると、プーチン氏はロシアによる東・南部4州の併合が条件と再び主張したという。領土の完全奪還を目指すウクライナ側との停戦協議が再開する見通しも立っていない。 |
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●「廃虚にされたウクライナ」の教訓とは…全国紙の元日社説読み比べ 1/7
「新聞の社説を読むほど暇ではない」。そう断じるのはもったいない。「保守的な読売新聞・産経新聞」「リベラルの朝日新聞・毎日新聞」「経済人に愛される日本経済新聞」とバラエティーに富んだ各社の新聞社説は、読み比べることで、ニュースへの複合的視点を与えてくれる。私たちに一番役に立つ社説はどこの社のものか。徹底的に解読する。 ●日経・読売・朝日・産経・毎日 元日の社説を読み比べると… 「今年こそ、良い年にしたい」 日本経済新聞の元日の社説は、2年連続で同じ文言から始まるというユニークな書き出しだ。昨年は、新型コロナウイルスの猛威が衰えを見せない中で、「経済もコロナ禍前の水準には戻らず、いまだに非常時のもとで生活していると感じている人」に寄り添うような形であった。 今年の書き出しは、以下の通りだった。 「今年こそ良い年にしたい。そんな思いで多くの人が新たな年を迎えたことだろう。ちょうど1年前の2022年元日付の社説はこんな書き出しで始まった。そうした願いもむなしく、22年は混迷の1年として歴史に刻まれることになるだろう」 そして、ロシアによるウクライナ侵攻によってもたらされた、エネルギー価格の高騰で、40年ぶりのインフレを嘆いていた。 2023年1月1日、日経新聞のみならず、他の新聞各社(読売新聞・朝日新聞・産経新聞・毎日新聞)の社説も、ウクライナ戦争への議論からスタートした。 いちばん内容が無かった社説から紹介していこう。ワーストは、毎日新聞。『探る’23 危機下の民主主義 再生へ市民の力集めたい』と題する1700文字余りの論稿だ。 「核大国の独裁者が隣国を侵略し、国際秩序を揺るがす中、新年を迎えた」として、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領への批判、中国の習近平体制への警戒感に続く。さらに、「民主主義と専制主義の戦い」を標榜(ひょうぼう)する米国のジョー・バイデン大統領には「体制間対立を言い募るだけでは、民主主義国の土台を侵食する深刻な問題が覆い隠される」と批判。チェニジアの議会選挙は投票率が1割などと、話が何一つ深まらないままに転々とする。 そして突然、「看過できないのは、危機を口実にした議会軽視である」として、現代日本の民主主義への批判が始まった。安全保障政策の大転換、原子力発電所の新増設方針について、国会での「熟議」がなかったのだという。 たしかに、熟議ではなかったのかもしれない(というか、テレビと新聞が旧統一教会問題ばかり取り上げていたせいで注目されなかった)。ただ、毎日新聞における「熟議」とは一体どのような状態を示しているのだろう。 社説の後段に、理想的な熟議の方法が示されるのかと思ったが、「期待されるのは地球温暖化対策を生活者の視点で話し合う『気候市民会議』の広がりだ」という言及が出てくるくらいだった。「東京都武蔵野市が昨年、自治体主催としては初の会議を開催した。外国籍の住民や高校生を含む68人が食品ロス削減や節電などについて意見を交わした」と述べられている。 これを読む限りでは、議論の参加者に外国人や高校生を含んでいれば「熟議」ということなのだろうか。熟議になっていないと批判するなら、毎日新聞が考える具体的な「熟議の方法」を示すべきだ。ゆっくり考える時間が与えられたであろう元日の社説がこの調子では先が思いやられる。 ●朝日新聞の元日社説は読み応えがあった その点、同じリベラルでも、朝日新聞の社説『空爆と警報の街から 戦争を止める英知いまこそ』は読み応えがあった。「黒こげのアパート群に雪が吹きつける。窓という窓は割れ、飼い主を失った犬が群れをなしてうろつく。開戦初期にロシア軍の砲火を浴びたウクライナの都市ホストメリの空港周辺は、いまも廃虚そのものだ」という書き出しからして、読者を引き込む力を持っている。 ウクライナの悲惨な状況を嘆きつつ、「国連安全保障理事会は常任理事国であるロシアの拒否権行使で、違法な侵略戦争を止める決議を、たった一本も採択できなかった」として、紛争解決手段としての国連の機能不全を指摘する。 その後、欧州の知識人が国家の暴走を止めるための仕組みを模索してきた経緯を述べつつ、次のように続く。 「戦地ウクライナに身を置くとまざまざと実感される。これだけ科学文明が発達し、国境を越えた人の往来や経済のグローバル化が進んだ21世紀の時代にあって、戦争という蛮行を止める策を、人類がなお持ち得ていないことを。一人の強権的な指導者の専横を抑制する有効な枠組みがないことを」 この言葉には、筆者も共感できた。どうやって侵略戦争を抑止するかは、中国や北朝鮮という乱暴な国の隣人である日本も、真剣にその仕組みを模索しないといけない。 ●読売新聞と朝日・毎日を読み比べると面白い理由 朝日新聞と同じく、国連の機能不全を嘆いていたのが、読売新聞の社説「平和な世界構築へ先頭に立て 防衛、外交、道義の力を高めよう」だ。 ただし読売新聞は、「国連の機能マヒぶりをさらけ出している」としながらも、「国際世論の高まりが、穀物輸出の封鎖、原子力発電所への攻撃などの最悪事態を部分的ながら回避させ、改善策が講じられてもいる。国際世論は無力ではないのだ」「年明けに国連安全保障理事会の議長国を務めるのは日本だ。立場にふさわしい活動が求められていることを自覚したい」として、「ちょっとは何かの役に立っているかもね」と言いたげだ。 日本が国連の機能不全を改善することを期待しているのかもしれないが、ウクライナ戦争に関してそれは無理というものだ。 面白かったのが、毎日新聞と読売新聞の論調の違いだ。毎日新聞は「話し合いで物事を決める民主主義は手間がかかる」、読売新聞は「民主主義にも弱点はある。自由な選挙を通じて多様な民意が表明され、意思決定に時間がかかる」と、同様の指摘をしている。一方、外国人や未成年も参加する多様性こそ民主主義、熟議こそ民主主義だと毎日新聞が捉えているのに対し、読売新聞は「それでも、失政があれば修正が行われる。復元力が民主主義の強みだ」としている。 ●「シェルター担当大臣」創設まで説いた産経新聞の元日社説 ただ、これはお互いに抽象論でしかない。抽象論を一切排し、徹底的に台湾有事・日本の危機への具体的対処を説いたのが、産経新聞だ。 産経新聞の1月1日の社説は、毎年「年のはじめに」というコラム名となり、論説委員長が執筆する。今年は、「『国民を守る日本』へ進もう」というタイトルだった。産経新聞の社説は、グローバルな視点や民主主義、思想史、歴史などの大きな話を捨てきっている。 岸田文雄首相の「東アジアは明日のウクライナかもしれない」という言葉から、昨年の安全保障政策転換の具体的内容をひもとき、懸念される中国人民解放軍による台湾侵攻、北朝鮮の核・ミサイルへの「抑止力と対処力の向上」が必要であると論じている。 果ては、シェルター担当大臣をつくり、台湾並みの地下シェルター整備をせよという。新たに大臣をつくる必要はみじんも感じないが、実用性の高い社説であった。 ●日経新聞の元日社説は経団連加盟企業のトップの“台本”? 最後は、冒頭で書き出しだけ紹介した日経新聞だ。日経新聞の社説を読んだ経団連加盟企業のトップが、少し時間がたつと日経社説と同じ趣旨の話をし始めることで有名だ。 今回の社説では「分断から修復(協調)へ」と主張している。しばらくすると同じことを、経団連の誰かが言い出すはずだ。 今回の日経社説は、「世界は『2つの罠(わな)』に陥りつつあるのではないか」として、「ツキディデスの罠」と「キンドルバーガーの罠」について触れていた。この指摘は「米中新冷戦」と呼ばれた18年ごろの議論で、今さら言い出すかというところではあるが、簡単に解説しておく。 ツキディデスの罠とは、新興国が覇権国に取って代わろうとするとき、二国間で生じる危険な緊張の結果、戦争が不可避となる現象のことをいう。もう一つのキンドルバーガーの罠は、覇権国の不在・空白が国際秩序の混乱や戦争を招くという論だ。 説明して分かる通り、今のウクライナ戦争とは関係がない。日経社説の書き出しだけは面白かったのだが、その後は話が転々としてまとまりに欠けるものだ。「日本では米国のような極端な政治の分断はみられない」と書くぐらいなら、そんなテーマ設定を選ぶべきではない。 朝日新聞、読売新聞、産経新聞の社説から読み解けたのは、「独裁者プーチン」の武力侵略によって「廃虚にされたウクライナ」を前にした教訓だったと感じる。戦争を抑止するのは結局、「軍備か、対話か」という二択ではなく、「軍備も、対話も」ということなのではないだろうか。 |
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●プーチン氏の停戦宣言は「敗北への一歩」 ロシア側からも否定的な声 1/7
ロシアのプーチン大統領が一方的に宣言し、モスクワ時間の6日正午から始めた36時間の「停戦」をめぐり、米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は同日、ウクライナ侵攻に関わるロシア側の関係者らからも否定的な声が上がっているとの分析を公表した。 ISWによると、ウクライナ東部ドネツク州の親ロシア派が名乗る「ドネツク人民共和国」トップのプシリン氏は、SNSで停戦に言及。「敵の挑発に応戦しないという意味ではない」と述べ、反撃目的での攻撃は可能だと強調した。さもなければ、ウクライナ軍に形勢を有利にするチャンスを与えてしまうことになるとも述べた。 ISWは、プシリン氏の発言について「停戦宣言を暗に批判している」と指摘。「宣言が、ロシアの軍事指導層にあまり受け入れられなかったことの証左だ」としている。 また、ドネツク州の元親ロシア派幹部で、2014年のマレーシア航空機撃墜事件でオランダの裁判所から終身刑を言い渡されているイーゴリ・ギルキン氏も、停戦についてSNSに投稿。ウクライナ軍に守りを固める時間を与えてしまうとし、「(プーチン氏を指す)ウラジーミル・ウラジーミロビッチは、敗北と降伏に向けた大胆で決定的な一歩を踏み出した」とこき下ろした。 ISWによると、インターネット上で侵攻を支持する著名な軍事ブロガーたちも、停戦宣言を「ロシア兵を危険にさらす」として批判しているという。 |
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●露プーチン大統領、ロシア正教会の礼拝に出席 ひとりで十字切る姿 1/7
ロシアのプーチン大統領は、一方的に宣言した停戦期間中の7日、クレムリンにあるロシア正教会のクリスマス礼拝に出席しました。一方、前線では散発的な砲撃が続いています。 在日ロシア大使館によりますと、プーチン大統領は7日、モスクワ・クレムリンの大聖堂で行われたクリスマス礼拝に出席しました。公開された映像では、プーチン大統領がひとりで胸の前で十字を切る様子が映っていて、多くの参列者とともに市内の教会の礼拝に出席した去年とは様子が異なりました。 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、SNSでクリスマスメッセージを公開し、「ウクライナの地に勝利と平和と繁栄がもたらされますように」と述べました。 プーチン大統領は、日本時間の6日午後6時から36時間の停戦を指示していますが、ウクライナ側はこれを受け入れていません。 ロシア国防省は6日、ドネツク州などでウクライナ軍による砲撃があったと発表しました。一方、ウクライナ軍参謀本部は7日、ロシア軍の占領地を攻撃したことを認めた上で、「ロシア側は、この1日で1回のミサイル攻撃と20回のロケット攻撃を行った」と発表するなど、双方による攻撃が続いているとみられます。 |
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●ロシアの動員予備役30万人のうち「539人死亡」…BBCが独自集計 1/7
英BBCは6日、ロシア語の独立系メディアなどと共同でウクライナ侵略を巡るロシア兵の死者を独自集計した結果、プーチン大統領が昨年9月に発令した予備役の部分的動員で招集された約30万人のうち、539人の死亡が確認されたと報じた。 このうち500人は派遣されたウクライナで死亡したという。残りの39人は、前戦に送られる前にロシア国内で訓練中の事故などが原因で死亡したという。今月1日のウクライナ軍による東部ドネツク州の露軍臨時兵舎への攻撃は含まれていないといい、実際の死者数はさらに多いとみられる。 |
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●ロシア国防省“ウクライナ側が攻撃を続けている” プーチン“停戦”指示も… 1/7
ロシア国防省は6日、プーチン大統領の指示に基づく停戦に入ったものの、ウクライナ側が攻撃を続けていると主張しています。 ロシア国防省の報道官は、プーチン大統領の指示のもと、ロシア軍が6日正午に攻撃をやめたあとも、ドネツク州などでウクライナ軍が砲撃を行っていると主張しました。 親露派指導者のプシリン氏は、ウクライナが攻撃をやめない場合、自衛のための反撃は行うとしています。 ロイター通信は、ウクライナ東部の前線でロシア軍の砲撃による爆発音を聞いたとするウクライナ兵の話を伝えていて、ロシアの一方的な停戦によって交戦がやむかどうかは不透明な情勢です。 |
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●プーチンの軽率な開戦決断は、癌のホルモン療法による「誇大妄想のせい」 1/8
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の健康不安説が取り沙汰される中、ウクライナ情報機関のトップが「プーチンはがんを患っており、死期は近い」と述べ、波紋を呼んでいる。 プーチンが昨年2月にウクライナに侵攻して以来、ソーシャルメディアユーザーやアナリストらはプーチンの健康状態に注目し、赤の広場で足を引きずったり、机にしがみついたり、右腕に力が入っていないように見える映像から、プーチンを「診断」しようとしてきた。 ウクライナ国防省の情報機関トップ、キリロ・ブダノフは米ABCニュースに対し、プーチンはがんを患っており、死期は近いと語り、プーチンの健康不安説に拍車をかけた。プーチンは「末期的な病気」なのかと問われたブダノフは、「そうだ」と答え、「非常に長い」期間にわたって、病気の状態にあると述べた。 また、プーチンの死期については、「近いと思う。そう願う」と話したうえで、その時がくるよりも早くウクライナがロシアに勝利すると主張した。 このインタビューの映像を、ウクライナ内務省顧問のアントン・ゲラシチェンコがツイッターに投稿すると、コメントが多数寄せられた。 冷戦史家のセルゲイ・ラドチェンコは、ブダノフの主張を「心理戦を意図したものとみられ、うのみにはしない」ものの、彼の予測は「悪くない」と投稿した。 ●「丸い顔」はホルモン治療の影響? デンマーク軍情報機関のロシア分析責任者は、同国の日刊紙ベリンスケに、プーチンは末期疾患ではないとの見方を示している。しかし、がんのためにホルモン治療を受けた可能性は高く、「満月のように丸い顔」もそのためだと指摘した。 「ヨアキム」とだけ名乗ったこの高官は、情報筋は明かさなかったものの、「誇大妄想は、プーチンが受けたホルモン治療の副作用の1つとして知られている」ため、ウクライナ侵攻における彼の軽率さも説明できると述べた。 しかし、プーチンは何度も転倒するなどして慢性的な痛みを抱えていると、この高官はみており、「そのため、座っているとき何かを強くつかむ傾向がある。痛みを和らげるためだ」と話した。 プーチンが12月31日に行った毎年恒例の新年の演説では、頻繁に咳をしているように見えることがネット上で話題になった。 年末の記者会見がこの10年で初めて行われなかったのも、プーチンの健康状態の悪化がカメラの前で目立つようになったことが理由の1つだと、一部のメディアは報筋の話として伝えている。 ニューズウィークは昨年6月、プーチンが同年4月に進行性がんの治療を受けていたことが米情報機関の機密報告書で明らかになったと報じた。 反政府系学者のワレリー・ソロベイは2020年、プーチンががんとパーキンソン病を患い、同年緊急手術を受けたと指摘している。またニューラインズ誌は、ロシア新興財閥「オリガルヒ」のある人物が、プーチンが「血液のがんで重病」だと話す音声ファイルを入手したと報じた。 ロシア政府は、プーチンの健康状態は良好であると繰り返し主張している。 |
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●ウクライナ、Xマス停戦は「欺瞞」=8日までロシア宣言、砲撃で死者 1/8
ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン政権が「一方的停戦」を宣言する中、東方正教のクリスマス(7日)の祈とうが6日夜から行われた。ロシア国防省は「順守」をアピール。だが、ウクライナでは空襲警報が全土に発令されたほか、砲撃で死者が出ており、ゼレンスキー政権高官は「欺瞞(ぎまん)だ」と非難した。 プーチン大統領は、クレムリンの生神女福音大聖堂の儀式に独りで参加。7日の声明で「(ロシア正教会は)特別軍事作戦の兵士を支援している」と評価した。 ロシアが宣言した停戦は6日正午〜8日午前0時(日本時間6日午後6時〜8日午前6時)の36時間だが、双方の合意に基づいたものではない。ウクライナが応じないことを想定して提案し、相手を「停戦の意思がない」とおとしめる材料とするのが狙いとみられる。米シンクタンクの戦争研究所は「ウクライナの評判を傷つける情報戦」と一蹴した。 実際、ロシア国防省は「停戦を順守しているにもかかわらず、ウクライナ軍が集落に砲撃を続けた。ウクライナ軍の陣地はロシア軍の反撃で制圧した」と発表。ゼレンスキー政権を批判しつつ、双方の交戦を認めた。東部ドネツク州の高官によれば、激戦地バフムト周辺ではロシア軍の砲撃で住民2人が死亡した。 現地メディアによると、一方的停戦に入った6日午後、ウクライナ全土で約2時間にわたり空襲警報が続き、市民が地下室などに避難を余儀なくされた。ポドリャク大統領府顧問は、ツイッターで「これがロシアの停戦の本質だ。その言葉を真剣に受け止めないでほしい」と警告した。 西側諸国は今回の停戦について、劣勢のロシアが時間稼ぎを図っていると分析している。一方、北大西洋条約機構(NATO)加盟国ながらロシアに融和的なハンガリーのノバク大統領は、ツイッターに「停戦が平和に向けた一歩になるように」と投稿し、賛意を示した。 |
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●「朝鮮半島型」分断シナリオ警戒 ロシアの出方巡りウクライナ高官 1/8
ウクライナのダニロフ国家安全保障・国防会議書記は、ロシアが東・南部4州を占領し、戦況がこう着する現状について、プーチン政権は朝鮮戦争(1950〜53年)の休戦協定で朝鮮半島が分断されたような「シナリオ」も検討していると警戒を促した。 現地メディアが8日、伝えた。 ダニロフ氏は、朝鮮戦争で北緯38度線付近を軍事境界線と定め、南北分断が固定化された経緯を念頭に、プーチン政権の今後の出方を分析。「ロシア人は今、何でも思い付くだろう。提案してくる可能性があるシナリオの一つが『38度線』であることは、確実に分かる」と発言した。 その上で「最近、韓国人と話したのだが、彼らは譲歩したのは間違いだったと考えている。今も(北朝鮮)問題を抱えている」と説明。ウクライナとしても応じられないと拒否する立場を示した。 ダニロフ氏は、劣勢のプーチン大統領が側近のコザク大統領府副長官を通じ、水面下で外交を試みている情報も明らかにした。「(コザク氏は)欧州の往年の政治家と会談することを通じ、ロシアには現状を維持しつつ、ウクライナを停戦に応じさせるため、譲歩の用意があるというメッセージを伝えようとしている」と指摘した。 |
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●プーチン氏、クリスマス礼拝に一人で出席 1/8
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は6日、ロシア正教のクリスマスに合わせて行われた真夜中の礼拝に一人で出席した。 礼拝は、ロシア大統領府(クレムリン)にある、帝政ロシアの皇帝のために建てられたブラゴベシチェンスキー大聖堂で行われた。大統領府が公開した写真には、礼拝を執り行う金色の法衣(ほうい)を着た聖職者と並ぶプーチン氏の姿が捉えられていた。 プーチン氏は例年、首都モスクワ郊外の教会で行われる礼拝に参列していた。 大統領府が発表したメッセージでプーチン氏は、正教徒を祝福し、クリスマスが「善行と志」を後押しすると述べた。また、ウクライナでの攻勢を全面的に支持する正教会最高指導者のキリル総主教を称賛した。 |
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●「プーチン大統領、最大50万人の追加徴集を準備」 1/9
ロシアが最大50万人の兵力を追加徴集するために動員令を下すだろうというウクライナ軍当局者の観測が出た。英紙ガーディアンは「ロシアのプーチン大統領が戦争を終わらせる意思がないという明確な信号」と分析した。 7日(現地時間)、米政治専門メディア「ポリティコ」によると、ウクライナ軍事情報局のアンドリー・チェルニャック報道官は「ロシアは今月中旬、昨年9月に発令した部分動員令よりはるかに大きな規模の追加徴集を準備している」と明らかにした。 バディム・スキヴィツキー軍事情報局副局長は「ロシアが兵力を追加してウクライナの北・東・南部で今夏以前に大規模な攻撃を準備中」と話した。また「ロシアが今回の攻撃でも勝機をつかまなければ、プーチン政権は崩れるだろう」とし「今後6〜8カ月が今回の戦争の最後の山場になるだろう」と見通した。 追加徴集規模を50万人と予想する理由については「ドネツク、ハルキウ、ザポリザで攻撃に踏み切り、同時にヘルソンとクリミア半島の防御が必要であるため」と説明した。 ウクライナ軍事情報局は現在、ロシア地上軍の規模が28万人だと明らかにした。開戦当初15万人だったロシア地上軍は、昨年9月に部分動員令を通じて徴集した30万人のうち半分ほどが追加投入された。 これまで追加動員令に対してロシアは可能性がないという立場を示した。しかし、一部ではこれを既成事実と見なしている。 ロシア極右民族主義評論家で元情報将校のイゴール・ストレルコフ氏は開戦1年目の2月に動員令を発表するものと予想した。 |
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●「負け戦」での終結認めぬロシア国民 1/9
ロシア国民はウクライナでの「プーチンの戦争」を支持しているのだろうか? この問題は昨年2月の侵攻開始以来、ロシアでも頻繁に議論されてきた。 侵攻約9カ月後に行われたロシアの大手世論調査機関(独立系の「レバダ・センター」や政府系の全ロシア世論調査センター「VTsIOM」を含む)の調査によると、人口の約75%が侵略を支持していた。しかし、ロシアの専門家によれば、ロシア人の多くはこの数字には、非常に懐疑的であるという。 ●「計画通り」との回答減 ロシアの独立系メディア「メドゥーサ」の女性記者とロシアの独立系ジャーナリストは、ロシア当局が状況をどのように見ているかを調べたところ、役人、政治管理者、専門家のグループが、侵攻開始後、少なくとも6カ月間にわたり戦争に対する国民の考え方について「秘密の世論調査」を実施してきたことが明らかになった。両記者は、未公開だったこの調査結果へのアクセスを取得することに成功した。これらの調査は、クレムリンが管理する世論調査サービスによって実施されたものだという。 こうした世論調査で定期的に尋ねられる最後の質問で問われるのは、回答者がウクライナでの軍事作戦が計画通りに進んでいると信じているかどうかである。 秘密調査の結果、夏以降、戦争は計画通りに進んでいないと信じている人の数が着実に増えてきていることが明らかになった。最新データによると、最近、最高レベルの42%に達した。一方、戦争が計画通りに進んでいると考える回答者の数は、減少傾向にある。ある調査の11月の最新の数字は最低で、わずか22%であった。 「レバダ・センター」のデニス・ウォルコフ所長は、回答者に和平交渉のような選択肢が提示された場合、この選択肢を選ぶ人が増えていると指摘した。ウォルコフ所長は「全体的なムードは、全てを迅速に終わらせるというものだが、ウクライナ側への大きな譲歩なしにだ」と述べるとともに、9月21日の部分的動員宣言のあとに交渉への支持が一段と高まった、と付け加えた。 ウクライナでのおよそ9カ月間にわたる戦争のあと、プーチン大統領が正しいことをしたと信じているロシア人はますます少なくなっており、11月17日時点で60%だった。これは依然として過半数だが、6カ月で最低で、春から10ポイント低下している。 年齢は、調査の主要な要因である。18歳から45歳までのカテゴリーでは、回答者の約40%が戦争を始めたのは正しいと思うと答えた。ただし、人口の4分の1を構成し、一般的にインターネットから情報を入手できる若い回答者が、戦闘開始以後の戦争支持率の全体的な低下のほとんどを占めている。高齢者(45歳以上)では、76%が「プーチンの戦争」へ進む決断を支持している。この支持率も春以来の最低のレベルだが、劇的な変化はない。 ウォルコフ所長は、11月中旬のロシア軍によるウクライナ南部ヘルソンの明け渡しや、ウクライナ軍による反撃が成功した中でのその他の軍事的敗北は、人々の意見に深刻な影響を与えていないが、否定的な背景を生み出したと述べた。同所長は「戦争がうまくいっていないと考える人が増えているが、その理由を尋ねると、彼らの最初の反応は、戦争が“あまりに長く”引きずられているという認識である。つまり、物事が計画通りに進んでいないということだ。第2の最も一般的な答えは、動員宣言であり、これはプロの軍隊が失敗していることを意味する」と語った。 戦争は決して開始されるべきではなかったと考える人々がますます増えていくにもかかわらず、戦争の継続を支持する人々の比率は増大している。ある調査によれば、11月17日現在、回答者の67%が戦争継続を支持している。また、当局が戦争を終わらせることを望んでいると回答した人はわずか18%で、過去6カ月で最低だった。 ●軍事的な敗北を恐れる ある専門家によれば、ロシア軍が敗北しつつあることを認識している人々は「(戦争を)始めるべきではなかったが、続けなければならない」という態度を取っているという。彼は「敗北の概念は、軍事作戦を今すぐ終わらせてはならないという結論に人々を導くが、『負けつつあるときに、去ることはできない』のだ。人々は軍事的敗北の結果を恐れている」と語った。 ロシア国民の多くは、戦争の早期終結を望んでいるが、「負け戦(いくさ)」での終結は認めたくないという心境のようだ。 |
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●プーチン政権与党内にも“厭戦”拡大? 与党の6割以上、戦争に反対か 1/9
ロシア・プーチン政権の与党「統一ロシア」を支持する人の6割以上が、ウクライナとの戦争に反対している可能性のあることが、独立系メディアの報道でわかりました。 ロシアの独立系メディア「ベドモスチ」によりますと、政権与党「統一ロシア」は、2024年の大統領選挙などに向けて政党支持者のリストを整理しました。 その際、SNSで「特別軍事作戦に反対」する投稿に「いいね!」を押すなどした支持者をAIを使って割り出したところ、1600万人に上ったということです。これは「統一ロシア」の支持者2500万人のおよそ64%に相当し、これらの支持者は政党リストから削除されたということです。 ロシアでは去年11月末の世論調査で、「停戦協議開始」を支持する人が55%に上ったと独立系メディアが伝えていて、戦争の長期化にプーチン大統領の政権与党内にも厭戦(えんせん)ムードが広がりつつある可能性があります。 |
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●ロシア 軍事侵攻の動き 1/10
●日仏首脳会談 「G7広島サミットでウクライナ支援継続、強化を」 ヨーロッパなどを歴訪している岸田総理大臣は、フランスの首都パリにある大統領府、エリゼ宮で日本時間の午前4時すぎからマクロン大統領と首脳会談を行いました。会談で岸田総理大臣は、ことし5月の「G7広島サミット」について、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するG7の強い決意を示すとともにウクライナ侵攻を続けるロシアに対する厳しい制裁と強力なウクライナ支援を継続、強化していく姿勢を示す場にしたいという考えを伝えました。また、エネルギーや食料安全保障を含む国際社会の課題も議論する意向も伝え、両首脳は、サミットの成功に向けて連携していくことを確認しました。 ●マクロン大統領はエネルギー支援などで日本に謝意 フランスのマクロン大統領は、岸田総理大臣との共同記者発表で、ロシアによるウクライナへの侵攻に関連して「日本はロシアの行為を迅速に非難して対抗措置を取り、ウクライナを財政的、人道的に支援したほか、難民を受け入れ、エネルギーの面でも欧州を支援した」と述べて、日本がエネルギー危機に陥るヨーロッパに向けてLNG=液化天然ガスを融通したことも踏まえて感謝を述べました。そして「ウクライナ戦争に限らず、日仏両国は国際的な危機や核不拡散の問題で、協調を欠かしたことはない」と述べて、北朝鮮やイランによる核開発の問題や中国が影響力を強めるインド太平洋地域での安全保障、それに気候変動などの課題で、緊密な連携を続けたい考えを示しました。 ●ウクライナ東部激しい攻防 ロシア側 “ワグネル”加わり攻勢か ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は東部のウクライナ側の拠点の掌握を目指して、大量の砲撃とともに民間軍事会社の戦闘員も加わって攻勢を仕掛けているとみられ、徹底抗戦を続けるウクライナ軍と激しい攻防となっています。ウクライナ東部のドンバス地域ではウクライナ側の拠点の掌握を狙うロシア軍とウクライナ軍との間で激しい戦闘が続いています。このうちドネツク州のウクライナ側の拠点バフムト近くにあるソレダールについて、ウクライナ軍の報道官は9日、地元テレビに対し「敵はこの1日で106回の砲撃を行った」と述べるとともに至近距離での戦闘も起きていると説明しました。また、ウクライナのマリャル国防次官は9日に「敵は強力な突撃を始めた。民間軍事会社『ワグネル』の戦闘員で編成された多数の突撃部隊を投入し、大量の砲撃を行っている」とSNSに投稿しました。ロシアメディアもロシア側にはワグネルの戦闘員が加わって、市街戦が行われていると伝えていて、兵力を集中させて突破を図るロシア側と徹底抗戦を続けるウクライナ軍との間で激しい攻防となっています。 ●各地でミサイル攻撃 住民への被害相次ぐ 東部ハルキウ州の知事は9日、市場がミサイル攻撃を受け、2人が死亡し5人がけがをしたと明らかにしたほか、南部ヘルソン州の知事も「住宅地への砲撃で1人が死亡した」とSNSに投稿しました。ウクライナ大統領府のティモシェンコ副長官も、南部ミコライウ州でミサイル攻撃があり8人が病院に運ばれたうえ、住宅100棟以上が被害を受けたと明らかにするなど、各地で住民への被害が相次いでいます。 ●ゼレンスキー大統領 動画で徹底抗戦続ける姿勢強調 ウクライナのゼレンスキー大統領は9日公開した動画で、激しい戦闘が続く東部ドネツク州のウクライナ側の拠点の戦況について触れ「侵略者たちはソレダールに最大限の力を集中させている。我々の兵士たちが厳しい攻撃に抵抗してくれていることで、ウクライナは追加の時間と力を得ることができた」と前線の兵士をたたえました。その上で「テロリストたちを我々の土地から追放し、ロシアの攻撃計画から住民を確実に守るためには、ウクライナは必要なすべてのものを手に入れなければならない。こうした武器や装備は、まもなく前線の兵士たちに届くはずだ」として、徹底抗戦を続ける姿勢を強調しました。 |
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●「プーチンはガンで死期が近い」報道…背水のロシア 1/10
ウクライナ高官から驚きの発言が出たのは1月4日だ。米国メディア『ABCニュース』のインタビューに、キリロ・ブダノフ情報総局長がこう答えたのだ。 〈ロシアのプーチン大統領に近い人物から得た情報です。プーチン大統領はガンを患っている。かなり進行しているため死期は近いでしょう〉 ブダノフ総局長の発言が本当だとすると、プーチン大統領の不可解な行動のつじつまが合う。ウクライナへの突然の侵攻、予想外の苦戦で慌てて予備役兵30万人を部分的動員、たび重なる核兵器の使用示唆……。どれも常識的な判断とは思えず、強い焦りを感じるのだ。ロシア情勢に詳しい、筑波大学名誉教授の中村逸郎氏が語る。 「プーチン氏は、6年ほど前から病気を患っているといわれます。病状が悪化すれば、肉体や精神のバランス感覚を失ってしまう。おそらく正常な判断ができないのでしょう。プーチン氏は70歳になりました。男性の平均寿命が65歳ほどといわれるロシアでは、かなりの高齢です。心身両面の衰えが如実になり、プーチン氏は焦っていると思われます」 ●「もうレイプはしないように」 理解しがたい施策は、いくつもある。ロシアの民間軍事会社「ワグネル」による、凶悪犯登用もその一つだろう。国内の刑務所にいる殺人犯などを、部隊へ動員し前線に送り込んでいたのだ。1月6日、ウクライナ系メディア『ラジオ・スヴォボダ』により、その後の衝撃の事実が明らかになった。 「凶悪犯は6ヵ月間戦闘に加わっていましたが、同メディアによると約20人が前線から戻ってきたとか。紹介された動画には、『ワグネル』のトップが彼らと握手をしながらこう発言する様子が映っています。『君たちは半年間アドレナリンを使ったので、1ヵ月は事件を起こさないだろう。酒を飲み過ぎないように。ドラッグを使わないように。もうレイプをしないように』と。凶悪犯は恩赦を受け刑を免除され、一般の人々との日常生活へ復帰するそうです」(全国紙国際部記者) 前線に投入されるのは凶悪犯だけではない。22年末に『読売新聞』が報じたのは、旧アフガニスタン特殊部隊の勧誘だ。 「特殊部隊は、01年にタリバン政権が崩壊後に欧米から特殊訓練を受けた精鋭です。タリバンとの戦闘で経験も豊富。特殊部隊は3万人にのぼるといわれます。しかし21年にタリバンが復権したことで、多数がイランなどの国外へ脱出します。多くの兵士は仕事がなく、生活に困窮しているそうです。『読売新聞』によると、ロシアはイランの協力をえて元アフガン兵にSNSでメッセージを送り熱心に勧誘しているとか。報酬は月20万円ほどで、家族の住居も確保されるそうです。アフガンは79年に旧ソ連の侵攻を受け、多くの犠牲者を出しています。ロシアへの不信感は大きいでしょう。しかし生活に困る現状を打破するため、応じる兵士も少なからずいるとみられます」(同前) ウクライナへの侵攻以来、ロシア軍の被害は10万人以上になるとされる。死期が近づき焦るプーチン大統領。なりふりかまわぬ戦闘と軍への動員は、終わりがみえない。 |
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●英国、ウクライナ軍に主力戦車の供給を検討 1/10
英国政府は同国軍の主力戦車「チャレンジャー2」をウクライナに供給することを検討している。実現すれば北大西洋条約機構(NATO)標準の戦車をロシア軍との戦闘用に提供する初の西側諸国となる。 ドイツのショルツ首相は、同国はウクライナに対してこれまで資金面と軍事面で最も手厚く支援してきた国の一つであり、「今後も必要な限り続けていく」と表明した。 ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの侵攻開始以降でとりわけ激しい戦闘が続いているドネツク州の前線2カ所を強化すると明らかにした。 ウクライナ情勢を巡る最近の主な動きは以下の通り。 ●独首相、プーチン大統領との対話は続ける ショルツ独首相はロシアのプーチン大統領とウクライナでの戦争について対話を続けていくと語った。軍事力によって欧州の国境線を変更しようとするロシアの試みをドイツ、欧州は決して受け入れないと伝えることが目的。首相はさらに、今後の対ウクライナ武器支援でドイツは引き続き米国などの同盟国と緊密に協力していくと述べ、ドイツが単独で動くことはないと言明した。 ●米大統領補佐官、ウクライナ向けの追加支援は揺るぎない マッカーシー米新下院議長が共和党の強硬派と交わした2024年度の支出抑制合意が軍事費削減につながる可能性があることを受け、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、先月成立した23年度の1兆7000億ドル(約225兆円)の包括的歳出法に盛り込まれた470億ドル規模のウクライナ向け追加支援が危うくなることはないと主張した。 ●英国、ウクライナへの戦車供給は最終決定まだ 英国は主力戦車供給についてまだ最終決定を下していない。敏感な問題だとして匿名を条件に複数の関係者が明らかにした。英国防省のウェブサイトでは、チャレンジャー2は他の戦車破壊を目的に設計された主力戦車と説明されている。 |
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●ウクライナ戦争、NATOとの戦い=プーチン氏側近 1/10
プーチン・ロシア大統領の最側近の1人であるパトルシェフ安全保障会議書記は10日、ウクライナ戦争について、ロシアを世界の政治地図から消そうとする北大西洋条約機構(NATO)との戦いとの認識を示した。 ロシア紙「論拠と事実」に「ウクライナで起きていることはロシアとウクライナの衝突ではない。ロシアとNATO、特に米英との軍事的対立だ」と述べた。 「西側諸国の計画はロシアをばらばらにし、最終的には世界の政治地図から消し去ることだ」と主張した。 |
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●プーチンがただ一人殺せない反体制派ナワリヌイに差し向けられた「生物兵器」 1/10
収監中のロシア反体制派指導者で、ウラジーミル・プーチン大統領に対する批判を続けていることで知られるアレクセイ・ナワリヌイが1月9日、2022年の大晦日を独房で過ごしたことをツイッターで明かした。 その後、刑務所の看守がインフルエンザにかかった受刑者を「生物兵器」として自分の独房に送り込んできたと主張。弁護士は、ナワリヌイがインフルエンザの症状を発症して体調を崩したと報告した。 現時点では、ナワイヌイの症状が命にかかわるものであることを示す兆候はない。だがある大学教授によれば、ナワリヌイが最終的に「自然死」することが、プーチンの究極の目標かもしれないという。 プーチンが権力を握ってから20年超の間に、彼と敵対した数多くの人物が暴力的な死や不審な死を遂げてきた。ナワリヌイは法廷侮辱罪や公金横領罪などで有罪評決を受けて2021年2月から収監されており、あと12年は刑務所での生活が続く見通しだ。 米ジョージ・メイスン大学公正政策大学院のマーク・キャッツ教授は本誌に対して、「もしもプーチンがナワリヌイの死を望むなら、容易にそうすることができたはずだ」と指摘した。「プーチンは、国家が直接手を下す形ではなく、ナワリヌイが病気で死んでくれた方が、自分にとって都合がいいと考えているのかもしれない」 ●「有名すぎて殺せない」 米ニューハンプシャー大学のローレンス・リアドン准教授(政治学)は本誌に、ナワリヌイが今も生きている理由は単純に、彼が今や「有名すぎて殺せない」からだと指摘した。 「ナワリヌイは弁護士であれ政治家であれオリガルヒ(新興財閥)であれ、プーチンにとっての政敵を怖がらせるのに便利なツールとして利用されている」と彼は述べた。「問題は、プーチンがかつてナワリヌイの暗殺に失敗していることだ(ナワリヌイは2020年に神経剤ノビチョクを使った攻撃を受けたが生き延びた。ロシア政府はこの件について関与を否定している)。この一件でナワリヌイは正義の擁護者として世界的に有名になり、欧州議会から人権や自由を擁護する活動を行う個人を称える「サハロフ賞」を授与され、メディアやソーシャルメディアを活用してロシア内外で反プーチンの政治運動を確立した」 キャッツは、インフルエンザにかかった受刑者がナワリヌイの独房に入れられた一件については、間接的にナワリヌイ殺害を狙った動きではないかもしれないと述べた。 |
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●プーチンを応援する米国人たち 1/10
米国の論客やジャーナリストはウクライナのテレビに度々出演し、同国への連帯を表明したり、戦況の分析を行ったりしている。一方で、ロシアの電波では米国からの声はほとんど聞こえてこない。元下院議員のトゥルシー・ギャバード氏や、FOXニュースのタッカー・カールソン氏、マージョリー・テイラー・グリーン下院議員などのウクライナ批判者によるコメントが時折、短い映像で流れてくる程度だ。ロシアのメディアに登場する米国人の論客の大半は、過激な政治活動家だった故リンドン・ラルーシュが率いたラルーシュ運動の後押しで設立されたシラー研究所(ドイツ)に所属するバージニア州のリチャード・ブラック元上院議員や、元海兵隊情報将校でイラク戦争批判に転じて評判を落としたスコット・リッター氏など非主流派の人々だ。 だがもっと驚くべきなのは、エスタブリッシュメント(支配階層)の人物が登場することだ。コロンビア大学の経済学者ジェフリー・サックス氏、外交専門誌「ナショナル・インタレスト」の元国家安全保障担当記者マーク・エピスコポス氏、そして同誌を発行する保守系シンクタンクのセンター・フォー・ザ・ナショナル・インタレストのトップを最近まで務めていたディミトリ・シムズ氏だ。彼らは、ロシアで最も鼻持ちならないプロパガンディスト、ウラジーミル・ソロビョフ氏の番組に進んで出演している。ソロビョフ氏は、ロシアに欧州侵略を呼び掛け、ウクライナの都市を徹底的に爆撃し、ウクライナ人を「ナチズム」のために罰することを要求してきた。先月、同氏は放送でこう宣言した。「現段階でウクライナを広く焼き払えば、ドイツ、英国、フランス、欧州のナチス野郎どもを叩くのが容易になり、米国も苦しむことになる」 サックス氏は昨年11月以降、ソロビョフ氏の番組に3回出演している。サックス氏は以前から、ロシアが2014年にウクライナを侵攻したのは、北大西洋条約機構(NATO)がロシアに向けて「威嚇的」に拡張してきたことが理由であり、西側がロシアを挑発したのだと主張してきた。昨年秋に出演した際、同氏は敵対行為の即時終結を求めた。その時点で終結していれば、ロシアはウクライナの15%を支配し続けることになった。これは2022年2月の侵攻以前のロシア支配地の2倍以上だ。サックス氏の英語のコメントをロシア語に吹き替えたものによると、彼はロシア人に対して「大勢の」米国人が「ウクライナ紛争からの撤退を望んでいる」と語り、「偽情報」を流したとして米政権を非難し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が提示した和平条件を「全くナンセンス」と呼んでいる。 エピスコポス氏もまた、ソロビョフ氏や同じチャンネルの他の番組に頻繁に登場している。彼は、メディアが完全な国家統制下にあるロシア人に対し、「米国では開かれた議論が封じられている」とか、「経済はボロボロだ」などと言うのが好きなようだ。また、「(米下院議員の)マージョリー・テイラー・グリーンは、共和党員だけでなく民主党員も含め、多くの米国人の一般的な気分を反映している。つまり、疲弊し、インフレや犯罪、崩壊しつつあるインフラという深刻な問題を抱えている人たちのことだ」と述べ、「キーウ(キエフ)にまた多額の資金を送る」ことはしたくないと話した。 (米保守系シンクタンクのトップ)シムズ氏については、スターリン時代の外相ビャチェスラフ・モロトフ(故人)の孫にあたるビャチェスラフ・ニコノフ氏とともに、ロシア国営テレビで国際問題番組の司会を長く務め、米ロの協力を促進する外交政策リアリストとして位置づけられてきた。ところが、その冷静な姿勢は消え、シムズ氏はプーチン氏肯定の一辺倒になった。ゼレンスキー氏の訪米を受け、シムズ氏はロシアの視聴者に向けて、「嫌なパフォーマンスだった。ゼレンスキーに愛想良く抱きつく米国大統領の映像を見て、腐敗しきった嘘つきだと感じた。米国の大統領と政権チームはナチスのイデオロギーを代表する人物らを迎えたのだ。彼の軍隊は民間人を撃ち殺す。ゼレンスキーの手にキスをするナンシー・ペロシ下院議長(当時)を見て、私はうんざりした。ペロシ氏はこの国で3番目に位の高い人物だ。称賛と従属が入り混じったような感じだった。何と言ったらいいのか分からない」。(エピスコポス氏もシムズ氏も、出演時にはロシア語を話している。) 米国市民には、その時々の問題に対して意見を述べる権利がある。そして専門家は、大多数の米国人が持つ親ウクライナの見解に異議を唱える自由がある。しかし、大規模な戦争犯罪や残虐行為を行う国家のために太鼓をたたく公式のプロパガンダに協力することは、それとは別の問題である。サックス氏、エピスコポス氏、シムズ氏はもっとよく考えるべきだ。 |
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●全部がプーチンのせいではない、2023年の世界を待つ「5つの危機」とは? 1/10
2023年の世界を脅かす5つの危機のうち4つは、直接もしくは間接的に、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を開始した昨年2月24日の朝にさかのぼる。 プーチンの戦争が原因で、世界の政治システムは第2次大戦以降で最大の危機に直面し、世界経済は激しいインフレに苦しんでいる。そして、エネルギー市場では空前の大激変が起きていて、食料市場は深刻な供給不足に見舞われている。 もう1つの危機だけがプーチンと直接関係がない。今年、世界を悩ます5つの危機を見ていこう。 ●ウクライナ戦争 ウクライナ戦争は今年も世界の安定を揺るがし、核兵器使用のリスクを高め、各国の経済をかき乱すだろう。アメリカなどの武器支援によりウクライナ軍の能力と士気は高い水準を維持すると思われるが、ロシアもまだ(途方もない数の兵士を失いつつも)ウクライナに甚大な打撃を及ぼせる軍事力を擁している。今後の焦点はウクライナ、ウクライナを支援する国々、ロシアが戦闘継続に向けて国内の結束を維持できるかどうかだ。 ●世界経済の苦境 これはプーチンだけが原因ではない。ウクライナ戦争以前に、新型コロナのパンデミックにより、世界経済は既に大きなダメージを被っていた。コロナ禍の3年間、世界の国々が国境を閉ざし、社会・経済活動を制限した結果、世界規模で深刻な供給不足が発生。その後、コロナ対策が緩和されて需要が急増すると、需給ギャップが拡大した。それに加えて戦争を機にエネルギーと食料の価格が高騰し、インフレ率は過去40年で最も高い水準に達している。欧米の中央銀行は、インフレ対策で金利を引き上げ始めた。一方、新興国の経済は欧米の利上げの影響とサプライチェーンの混乱で打撃を受けている。今年は世界規模の景気後退が始まる可能性もある。 ●エネルギー供給の逼迫 プーチンが始めた戦争は、世界のエネルギー市場に混乱と激変をもたらしている。ヨーロッパ諸国は、対ロシア制裁の一環としてロシア産の石油・天然ガスの輸入を減らし、アメリカ産の液化天然ガス(LNG)に切り替える計画に乗り出した。30年までにエネルギー生産の45%を再生可能エネルギーに転換することも目指している。今年は、ヨーロッパ以外の国々も、ウクライナ戦争によるエネルギー市場の混乱への対応を迫られそうだ。 ●世界の食料供給の混乱 プーチンの戦争は、今年も世界の食料供給を混乱させ続けるだろう。ウクライナは有力な穀物輸出大国(世界の小麦輸出の10%を占めていた)だったが、戦争が始まって以降、その穀物輸出は60%も落ち込んだ。それにより世界の食料供給が減少し、49カ国の4900万人が飢餓の危機に瀕している。世界食糧計画(WFP)は、現在の状況を現代史上最悪の食料危機と呼ぶ。 ●地球温暖化 今年、世界が向き合わなくてはならない最大の危機は、プーチンが原因ではない。人間の活動による地球温暖化の悪影響は、今後さらに加速する。世界の国々が直ちに、温室効果ガスの排出削減に向けた実のある対策を講じない限り、干ばつの増加、降水パターンの変化、大量の環境難民の発生、海水面の上昇など、取り返しのつかない問題が生じる。この点では専門家の見方が一致しているが、昨年も各国政府は温暖化対策で合意に達することができなかった。 ウクライナ戦争をきっかけに、「脱化石燃料」の流れが加速しているものの、今年も人類は過剰な量の温室効果ガスを大気中に吐き出し続けるだろう。 |
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●戦力枯渇近づくロシア軍、侵攻開始からミサイルは8割減 プーチンの苦境 1/10
ロシア国防省が8日、ウクライナ東部ドネツク州クラマトルスクで、ウクライナ軍の陣地を攻撃し計600人以上を殺害したと発表したことについて、同国軍報道官は同日、「ロシアのプロパガンダ」と否定した。戦力の枯渇が近づいているとみられ、プロパガンダや謀略に頼るプーチン大統領の苦境も浮上している。 ロシア側は陣地2カ所をミサイル攻撃したと主張したが、ウクライナ軍報道官によると、攻撃されたのは民間のインフラ施設で「ウクライナ軍は被害を受けていない」という。ロイター通信は現場の取材班の証言として、攻撃や被害は確認できなかったと伝えた。 英国防省は9日、昨年12月25日の衛星画像から、ロシア南部アストラハン州の基地で最新鋭のスホイ57戦闘機5機が確認されたと明らかにした。使用を自国領内からのミサイル発射に限っていると分析。ウクライナ領内での損失で機体の評価が低下することや、機密の漏えい回避を最優先としていると指摘した。 ウクライナのレズニコフ国防相は、侵攻開始後に確保した分を含むロシアのミサイル貯蔵量は、戦略ミサイルが19%、戦術ミサイルが78%に減少したとのデータを示す。 こうしたなか、ロシアの元軍人や「プーチンファンクラブ」というSNSを運営する極右活動家らが、ドイツで、ウクライナ支援に反対の市民感情を扇動する工作を行っている。昨年8月にベルリンで開かれたイベントに登壇した男性は、ロイターの取材に、かつてスパイ機関として知られるロシア軍参謀本部情報総局(GRU)に勤務していたと認めたという。 |
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●HIMARSでロシア軍徴集兵400人死亡 背景に「兵士のパーティー情報漏れ」 1/10
2023年の幕開けと同時に、またまた「お粗末なロシア軍」の実状が報じられた。テレ朝newsは1月4日、「死者89人に ウクライナ軍『ハイマース』でロシア軍拠点を攻撃」の記事を配信、YAHOO! ニュースのトピックスにも転載された。担当記者が言う。 「注意が必要なのは、テレ朝の記事だけでは事態の全貌が分からないということです。同社の報道姿勢に問題があるというのではなく、情報が錯綜したことがその原因でした。ウクライナ側は戦果を過大に発表した可能性があり、ロシア側は限られた情報しか出しませんでした。各社はファクトチェックを厳密に行わざるを得ず、欧米の主要メディアも慎重な報道に終始しました」 では、各社の報道を精読してみよう。情報が錯綜したことで細切れになった記事を繋ぎ合わせるだけでも、かなりの実状が浮かび上がってくる。 「テレ朝の記事はロシア国防省の発表をそのまま伝えました。それによると、12月31日にドネツク州マキイウカのロシア軍施設が攻撃を受け、89人の戦死者が出たとのことです。攻撃したウクライナ軍は、高機動ロケット砲システム『ハイマース(HIMARS)』を使ったことが分かっています」(同・記者) ロシア軍が自軍の被害や戦死者数を発表するのは珍しい。世界の主要メディアも「まずは国防省の発表を報じよう」と類似の記事を配信した。 ●親露派も軍を批判 「加えてテレ朝は、《ロシアの独立系メディアが建物にいたのは動員兵だったと報じました》と補足しています。動員兵=徴集兵は、正規兵に比べて練度や士気が低いことで知られています。それが原因で多数の死者が出た可能性が高いため、国防省の発表とセットにして報じたのでしょう」(同・記者) ドネツク州マキイウカはウクライナの東部に位置する。今回の戦争が起きる前から親ロ派勢力が掌握していた地域だ。そして一部のネットメディアは、《最前線から20〜30キロほどしか離れていない》とも報じている。 「欧米の記者や専門家だけでなくロシア国内でも、『HIMARSの直撃を受けたはずなのに死者が少なすぎる』と疑問に感じた人は多かったようです。そこでアメリカのニュース専門チャンネルCNNは、ロシアのネット上で拡散されている情報に注目しました」(同・記者) CNN.co.jpは1月3日、「ウクライナ軍の攻撃でロシア軍に多数の死傷者か、弾薬庫が爆発」の記事を配信した。 「テレ朝は《ロシア軍の建物》と報じましたが、CNNによると《専門学校の建物》だそうです。ここに多数の徴集兵が集められていました。ウクライナ軍は《ロシア軍の死者は約400人、負傷者は300人》と主張。一部の親ロシア派軍事ブロガーでさえ、《ロシア軍の死傷者数は数百人に上る可能性がある》と指摘しました」(同・記者) ●携帯電話が原因!? なぜ400人もの戦死者が出たのか──CNNはHIMARSのロケットが弾薬保管庫を直撃した可能性に触れた。 「興味深いことに、弾薬保管庫の情報も親ロシア派の軍事ブロガーがネット上に書き込んだようです。親ロ派が公然と軍を批判したのですから、これも非常に珍しいと言っていいでしょう。CNNによると、ブロガーは《大量の弾薬の保管庫の隣に宿所を与えられていたようだ》と部隊の安全管理が杜撰だったことを明らかにしました。徴集兵が中心の部隊だと、防御の意識さえ希薄なのかもしれません」(同・記者) さらに珍しいことが続く。ロシア国防省が「自軍兵士のミス」を認めたのだ。これに着目したのがイギリスの公共放送BBCだ。 「BBC NEWS JAPAN」は1月4日、「ウクライナ東部でミサイル砲撃死ロシア兵は89人に、兵の携帯電話利用が原因とロシア軍」との記事を配信した。 「ロシア軍は兵士たちに、“携帯電話の使用禁止”を命じていたそうです。ところが、専門学校に集まった徴集兵は命令を破り、携帯電話を使った。それをウクライナ軍が探知して場所を割り出し、HIMARSによる狙い撃ちに成功した──これがロシア国防省の説明でした」(同・記者) ●規律なき徴集兵 だが、ロシア国防省の説明は、大損害を出した責任を末端の兵士に押し付けようとした可能性もあるという。 「BBCはその点に配慮し、《ロシアのコメンテーターや政治家の間には、軍の失態を批判する声も上がっている》と報じています。国防省の発表をそのまま報じると、ミスリードになってしまう可能性があり、それを防ごうとしたのでしょう」(同・記者) ただし、ここで疑問が浮かぶ。「兵士が携帯電話を使うと部隊の位置が特定される」というのは本当なのだろうか。 疑問に思った読者も少なくなかったようだ。BBCは翌5日、「【解説】ロシア兵の携帯電話使用で位置を特定し得たのか ウクライナの砲撃」との続報を配信した。 この解説記事でBBCは、《ウクライナとロシアの双方の軍が共に、携帯電話の位置を追跡する能力を持っている》と伝えた。 「例えばウクライナ軍の場合、ロシアの将軍が使っていた携帯電話を割り出し、位置を特定して殺害に成功したそうです。BBCは『機密保持のため、兵士が携帯電話を使うことに制限を課すのは当然』とした上で、徴集兵が中心の部隊で携帯電話が普通に使われていたとしたら、著しく規律が緩んでいる可能性があると指摘しました」(同・記者) ●本当の原因はパーティー情報 複数のメディアが報じた記事を精読することにより、次第に事態の全貌が明らかになってきた。やはりと言うべきか、ロシア軍の実状は相当に酷いことが分かる。 ところが、である。まだまだ大手メディアが報じていない驚愕の事実があるのだ。HIMARSの狙い撃ちが成功した理由について、もっと“根本的な原因”がネット上で拡散している。 「専門学校は軍の宿舎として使われており、徴集兵は新年を祝うパーティーを開いていたというのです。そこにミサイルが直撃し、多数の死者が出たという情報がネット上で拡散しました。出所はウクライナやロシアのSNSなどで、パーティー中と思われる写真も投稿されています。日本でも一部のネットメディアが記事にし、ロシアに詳しい専門家もある程度の信憑性を認め、その内容をネット上で紹介しました」(同・記者) 軍事ジャーナリストも「既に昨年末の時点で、『宿舎で新年パーティーを開く予定』とSNSなどに投稿していたようです」と呆れ返る。 「宿舎は最前線から20〜30キロしか離れていません。HIMARSどころか榴弾砲でさえ射程距離は20〜40キロです。こんな危険な場所でパーティーを開くこと事態があり得ない。それがパーティーの情報を事前にSNSで拡散させたというのですから、何をか言わんやです。普通の軍隊なら考えられません」 ●アメリカ軍の休息ルール ロシア軍に限らず最前線の近くに駐留する部隊は、手元に武器や弾薬を置きたがる傾向があるという。 「そこにミサイルが直撃したら、たとえアメリカ軍でもかなりの被害が出るのは避けられません。だからこそ部隊の現在地は機密情報として扱われるのです。これは軍事作戦における“イロハのイ”ですが、被害を受けたロシア軍の部隊は基本的なことさえできていなかったことになります」(同・軍事ジャーナリスト) 兵士や士官も人間だから、息抜きが必要なのは当然だろう。だが、それを最前線で行うというのも軍隊の常識では考えられないという。 「アメリカ軍はベトナム戦争ではタイで、湾岸戦争ではカタールで兵士を休ませました。一定の期間が経つと、本国にも一時帰国させます。戦地、近隣国での休息、本国への一時帰国、これをローテーションするのです。ロシア軍の場合、モスクワ近くの部隊なら新年のパーティーを許可してもいいでしょう。しかし、最前線に駐留するマキイウカの部隊には、臨戦態勢を取らせるべきでした」(同・軍事ジャーナリスト) ●情報源は「人間」の可能性 こうした事実を繋ぎ合わせると、ロシア国防省の「兵士が携帯電話を使ったのが原因」という説明は、やはり責任転嫁の可能性が高いという。 「ウクライナ軍が携帯電話の電波をチェックし、『大晦日の晩、多数のロシア兵が特定の地域で携帯電話を使っている』ことをキャッチするのは可能でしょう。とはいえ、その情報を得てから急いでHIMARSを手配し、移動させ、照準を合わせてミサイルを発射するとなると、なかなか簡単なことではありません」(同・軍事ジャーナリスト) HIMARSの動きを考えると、ウクライナ軍が事前にパーティーの開催を把握していたと見るのが自然のようだ。 「以前から親ロシア派が掌握している地域だとしても、反ロシア派の住民も残っているでしょう。ロシア軍の動きを察知しようと、ウクライナのスパイも活動しているはずです。そもそもパーティーの開催を事前に明かすような部隊ですから、誰でも情報を掴み、ウクライナ側に通報できたに違いありません」(同・軍事ジャーナリスト) 情報提供を受けたウクライナ軍はHIMARSを極秘裏に移動。狙い撃ちの準備を着々と進めたと考えられる。 ●死者に責任転嫁 状況証拠もある。何しろHIMARSのミサイルが宿舎に着弾したのは、モスクワ時間で午前0時1分だったことも判明している。ロシア軍が新年を迎えた瞬間を狙ったと考えるのが自然だろう。 パーティー中のロシア軍を壊滅させようと、ウクライナ軍は事前に入念な作戦計画を立てていたのだ。さらに大晦日の当日は、アメリカの軍事衛星やドローンの情報も活用した可能性があるという。 「最後の補完的な情報として、携帯電話の発信状況、位置情報などを参考にしたかもしれません。しかし、メインの情報ではなかったでしょう。いずれにしても、ウクライナ軍は新年早々、劇的な戦果を挙げました。ウクライナ軍の士気は高揚するでしょうし、ロシア軍は文字通りの赤っ恥を世界に晒しました」(同・軍事ジャーナリスト) ロシア国防省が異例の発表を行ったのも、あまりに軍の実態がお粗末だということと関係があるという。 「ロシア国内でも、軍を疑問視する声が沸騰しました。その全てが正論です。ロシア軍が沈黙を続けても、世論は沈静化しないと考えたのでしょう。自分たちにとって都合のいい事実を小出しに発表することで、現場の徴集兵に責任転嫁を図ったのだと考えられます。まさに『死人に口なし』です」(同・軍事ジャーナリスト) |
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●プーチンを知る米国元高官の見方「一進一退の攻防で有利になるのはロシア」 1/11
「ウクライナ国内での戦闘がこのまま今のような一進一退で続くと、時間の経過はロシアのプーチン大統領にとって有利となる」という見解が、米国政府の元国務長官と元国防長官により発表された。 両元高官は在任中にプーチン氏と直接折衝した経験がある。その経験に基づき、プーチン氏がロシア帝国再興のためにウクライナ制圧を自らの歴史的使命とみなし、米欧諸国のウクライナ支援の衰えを時間をかけて待つ覚悟を持っているという考察を明らかにした。 同高官たちは、この暗い展望を打破するためには米国などがウクライナへの軍事支援を一気に拡大し、ウクライナ軍が早い時期にロシア軍に大きな被害を与えることが必要だと提唱した。 ●プーチン氏と直接折衝した経験を基に提言 米国のコンドリーザ・ライス元国務長官とロバート・ゲーツ元国防長官は共同で1月7日、「時はウクライナ側を利さない」と題するオピニオン記事を米国大手紙ワシントン・ポストで発表した。 ロシアのウクライナ侵略の展望はこのままの戦闘状態が続くと、ロシアのプーチン大統領にとって有利な見通しとなる。ウクライナ側がその状況を崩すためには早期に大規模な軍事攻勢に出てロシア側に手痛い被害を与えるべきである、という提言だった。 ライス氏は米国史上初の黒人女性の国務長官として、2005年から2009年まで2代目ブッシュ政権に加わった。1990年代には先代ブッシュ政権の中央情報局(CIA)長官だったゲーツ氏は、2006年から2011年まで2代目ブッシュ政権とオバマ政権の国防長官を務めた。両氏とも在任中にはロシアの大統領や首相だったプーチン氏と直接折衝した経験があり、その際の経験に基づいてプーチン大統領のウクライナ問題への思考や戦略を判断した、としている。 ●ロシア帝国を再興するという使命感 ライス、ゲーツ共同論文は、まずプーチン大統領のウクライナに関する狙いや真意について以下の骨子を述べていた。 ・プーチン氏はウクライナ全域をロシアの支配下におくことを決意し、もしその支配が達成できなければ、ウクライナの国家機能を奪い徹底破壊するつもりでいる。同氏はロシア帝国を再興するという救世主的な使命感を抱いているが、その使命においては、ウクライナを含まないロシア帝国は存在し得ないと考えている。 ・私たち(ライス、ゲーツ両氏)は、米国政府を代表してプーチン氏と何回も直接交渉をした。その経験から、プーチン氏は長期間の戦闘でウクライナを疲弊させ、米欧諸国のロシアに対抗する団結やウクライナ支援の熱意もやがて減退させられると確信している、と判断する。戦争が継続するとロシアの経済も国民も苦難の道をたどるが、かつてロシア人たちはもっと苦しい状況を耐えてきた。 ・プーチン氏にとって敗北という選択肢はない。同氏が、ロシアへの併合を宣言したウクライナ東部ルハンスク、ドネツク、南部ザポリッジャ、ヘルソンの4州をウクライナに返還することは絶対にない。プーチン氏はもし2023年に軍事的成功を得られなければ、同4州での軍事拠点をなんとか確保して、さらに翌年の新たな軍事攻勢の準備を進めるだろう。その新攻勢は、黒海の沿岸地域とドンバス地方全域を制圧して、西方へと進出することを狙いとする。ロシアのクリミア併合と今回のウクライナ攻撃との間には8年の時間があったのだから、プーチン氏がどんなに時間を要しても自分の使命達成のために忍耐することは明白だ。 ●停戦交渉はウクライナ側を不利に ライス、ゲーツ論文は、プーチン氏の意図や戦略を以上のように分析する一方、ウクライナの対応については、きわめて現実的な認識を示していた。以下が、その部分の骨子である。 ・ウクライナのロシアへの軍事反撃は勇敢かつ見事だが、経済は破壊され、数百万の国民が逃亡し、産業インフラ、鉱山資源、工業生産力も大被害を受け、農耕地の多くがロシアに奪われた。その結果、ウクライナは軍事も経済も今や米欧諸国からの支援に依存しきっている。この現状では、ウクライナが軍事的な新作戦で大成功を早期に達成しない限り、米欧諸国からウクライナに停戦交渉に応じることへの強い圧力がかかることは避けられない。 ・現状での停戦交渉では、どのような交渉を行ったとしてもウクライナ国内のロシア軍の存在をそのままにせざるを得ない。その結果、このまま戦争が継続するとロシア側をずっと有利にする見通しが強い。つまり現状での停戦交渉はウクライナ側を不利にすることが確実だといえる。一方、米国や西欧諸国のウクライナ支援は今後それぞれの国内事情などによって縮小へと向かう可能性も否定できない。その可能性がロシア側の狙いであることは当然である。 ●さらなる支援で積極果敢な新攻勢を 同論文は、以上のようにウクライナ側にとって悲観的な状況を報告しながらも、ウクライナの苦境を救う唯一の方法を示していた。それは、米国や西欧諸国がウクライナへの軍事支援を質、量ともに劇的に強化して、ロシアへの積極果敢な新攻勢をかけることだという。その部分の主旨は以下の通りだった。 ・ウクライナが現在の戦況を決定的に有利に変えるには、東部と南部のロシア支配地区を猛烈な攻撃で奪回することが必要だ。そのためには、まずウクライナ軍の地上戦闘用機動力を増強することが欠かせない。バイデン政権が準備したウクライナ軍事支援予算の範囲内でも、その種の増強は可能だ。すでに決まったブラッドレー戦闘装甲車の供与は有効だが、さらに戦闘能力の高いエイブラムス重戦車の供与も必要となる。 ・北大西洋条約機構(NATO)諸国はウクライナの新軍事攻勢の実現のために、より長距離射程のミサイル、より高性能の無人機、より増量しての弾薬、より高度の監視、偵察能力などをウクライナに供与すべきである。この種の軍事供与は数週間以内という緊急性を要する。 ライス、ゲーツ両氏は以上のような主張と提案の総括として、米国や西欧諸国の側にウクライナへの支援の疲れのような傾向が現れたことを指摘し、「米欧がウクライナへのロシアの侵略と拡大を許すと、過去の歴史が証明したように、やがては米欧全体への避けられない脅威となって迫ってくる」と警告する。だからこそ、ウクライナの画期的な軍事抵抗が速やかに必要だと提唱するのだった。 |
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●国防契約違反に刑事罰警告 ロシア前大統領、軍需企業に 1/11
ロシア前大統領のメドベージェフ安全保障会議副議長は10日、北西部サンクトペテルブルクの戦車修理工場を視察した。侵攻したウクライナでの軍事作戦を念頭に、軍に必要な兵器を早急に供給するよう求め、要求に応えられなかった場合は刑事罰が科されると警告した。タス通信が伝えた。 ロシア通信によると、プーチン大統領は昨年9月、国防に関する国との契約に違反した場合は最高で懲役10年を科す刑法改正に署名した。 メドベージェフ氏は、欧米がウクライナへの軍事支援を強化していると指摘。「われわれはもっと早く、粘り強く、より効果的に対応しなければならない」と強調した。 |
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●戦況の“焦点”東部の街 ロシアが反撃 「ワグネル」戦闘員を大量投入し… 1/11
戦いの重要な鍵を握るとされるウクライナ東部の街で今、戦闘が激化しています。そこにロシアが大量に送り込んだのは、プーチン大統領に近いとされる民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員でした。 北東部・ハルキウでは、ロシア軍によるミサイル攻撃が続いています。9日に公開された映像には、がれきの中で炎が激しく上がる様子や、がれきの中から幼い子どもが救出される様子が映っていました。 警察官「ロシア軍は市民を標的にしている。パニックにさせようとしています」 AP通信によると、この攻撃で2人が死亡、13歳の少女を含む5人がけがをしました。 激しい攻防が続く東部・ドネツク州のバフムトでもロシア軍による攻撃が続いています。取材に応じた地元住民は「私たちの町は、以前はとてもきれいでした。多くの花が咲いていて、道が整備されていて…」と侵攻以前の様子を振り返りました。取材中にも砲撃のごう音がとどろき、破壊された街からは黒煙が上がっていました。 地元住民「言葉が出ません。(ロシアが)何を求めているのかわかりません」 そして今、戦況の焦点となっているのが、バフムト近郊の街、ソレダールです。ソレダールをめぐっては、ウクライナ側が制圧を試みたものの、ロシア側が民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員らを大量投入した上、集中的に砲撃を行うなど反撃しているのです。 ウクライナのゼレンスキー大統領は、自身のSNSに公開した動画で、「(ソレダールでは)全てが完全に破壊され、生命はほとんど残っていない。ソレダールの土地全体が死体とがれきで覆われている。狂気の姿だ」と述べました。 「ワグネル」は、プーチン大統領に近い関係とされるエフゲニー・プリゴジン氏が創設しました。戦闘員を大量投入している理由は、どのようなものなのでしょうか。 ロシア政治に詳しい慶応義塾大学の廣瀬陽子教授は「ワグネルは(ロシアで)最も影響力があり、かつ力が強い民間軍事会社。去年の4月段階で(戦闘員が)8000人くらいと言われている。特に今回の戦闘の中で、(戦闘員の)人数が増えている。『ワグネルなくしてロシア軍は、戦えない』とまで言われています。(要衝の街)バフムトとセットでソレダールにも相当注力して、(ワグネルとしても)絶対に守り抜くという姿勢なのだと思う」と分析しています。 |
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●ロシアの砲撃、一部で75%減少と米当局者ら 苦境の表れか 1/11
ロシアがウクライナに侵攻して11カ月目に入る中、米国とウクライナの当局者らはロシアの砲撃がピーク時に比べて大幅に減少しており、場所によっては75%減っているところもあるとCNNに明らかにした。 両国の当局者らはその明確な理由をまだ把握していない。ロシアは供給の少なさから砲弾の割り当てを制限しているのかもしれない。あるいはウクライナ軍の効果的な攻撃に直面し、広範にわたる戦術の見直しの一環の可能性もある。 いずれにせよ、砲撃の著しい減少は間もなく1年を迎える戦闘でロシアがますます苦しい状況に追い込まれていることを示すさらなる証拠だと当局者らはCNNに語った。 こうした情勢はウクライナが西側の同盟国からの一層の軍事支援を受けている中でのものでもある。米国とドイツは先週、ウクライナ軍に初となる装甲車両と、空からの攻撃に対抗するのに役立つ地対空ミサイル「パトリオット」を追加で供与すると発表した。 一方、ロシアのプーチン大統領は当初「特別軍事作戦」としか説明しなかったウクライナとの戦争について、国内の政治的支持を補おうと明らかに必死になっている、と米情報当局者らはみている。 |
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●ナワリヌイ氏の健康懸念=医師ら170人、大統領に書簡―ロシア 1/11
ロシアで収監中の反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の健康状態が懸念されるとして、医師をはじめ医療関係者約300人が10日、プーチン大統領宛ての公開書簡を出した。独立系メディアが伝えた。必要な措置を受けさせないことによる「虐待」をやめるよう訴えている。 弁護士によると、ナワリヌイ氏は「発熱やせき」がある中、繰り返し独房に入れられている。公開書簡はこれを踏まえ「意図的に健康を害されている」と表明。憲法と法律により、全ロシア国民は医療を受ける権利があると強調し、外部の医師の診察と病院での入院を認めるよう迫った。 |
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●「ロシア政権内の権力闘争が激化か ラピン氏が復権、一方ワグネルは暗躍」 1/11
ウクライナ侵攻で苦戦が続くロシアのプーチン政権内で権力闘争が激化しているとみられます。 ロシアメディアは10日、中央軍管区司令官を昨年、解任されたロシア軍のラピン大将が陸軍の参謀総長に就任したと伝えました。 ロシアの独立系メディア「重要な歴史」は関係者の話として、ラピン氏の急な復権は独自の部隊を持ち、プーチン政権内で台頭する強硬派のプリゴジン氏やカディロフ首長に対して戦闘はロシア軍が主導で行っていることを示すメッセージだと報じています。 ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者のプリゴジン氏とチェチェン共和国のカディロフ首長は昨年10月、ウクライナ東部・ドネツク州の拠点リマンからの撤退を巡って当時、司令官だったラピン氏を痛烈に批判し、解任に追い込んだとみられています。 ロシア軍の敗退が続くなかで、独自の部隊を持つプリゴジン氏やカディロフ氏の影響力が高まっていて、プリゴジン氏は今月11日、自身のワグネルの部隊がウクライナ東部・ドネツク州のソレダルを攻撃し、制圧したと主張しました。 プリゴジン氏は、この戦闘にロシア軍が関わっていないことを強調していて、ワグネルの影響力の拡大を狙っているものとみられます。 |
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●殺人に強盗…“凶悪犯”の兵士が街に?最大50万人の追加動員を計画か 1/11
地面に空いた大きな穴。そのすぐ近くで、バチバチと音を立てながら炎が激しく燃え上がっている。年が明けても、ウクライナを攻撃し続けるロシア。住民にインタビュー中、「あちこちに花が咲くきれいな街だったんです」と話す声をかき消すように突然、爆発音が響いた。市民に心の安まる時はない。 そうした中でウクライナ側は、ロシアが1月15日にある計画を立てているとの情報を明らかにした。それは戦場への追加動員。しかも、その規模は2022年9月の30万人を大きく上回る、最大50万人。社会的分野や経済分野の人も対象になるという。 ロシアをめぐる不穏な情報は他にも。 プーチン大統領の側近、プリゴジン氏。自分が創設した軍事会社「ワグネル」の兵士たちに向かって、こう話していた。 プリゴジン氏「酒を飲み過ぎるな!薬物を使うな!女性を襲うな!トラブルを起こすな!」 実はこの兵士たち、殺人や強盗などを犯した凶悪犯罪者。戦場の最前線で半年間戦ったことで恩赦が与えられ、自由の身になったという。海外のメディアによれば、この中には覚醒剤密売組織や宝石強盗グループのトップ、複数の殺人を犯した人物が含まれているとのこと。 「犯罪者が街に帰ってくる」などの声が出ているという。 |
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●ロシアの大規模攻勢を跳ね返すウクライナの自信 1/12
ウクライナ侵攻は2023年に入り、大きな局面を迎えそうだ。2022年8月末に始まったウクライナ軍による反転攻勢で主導権を奪われていたプーチン政権が、早ければ2023年1月末から2月にも大規模な逆攻勢に打って出る可能性が高まってきたからだ。 もともと大規模な反攻作戦開始を計画していたウクライナ軍は、これを奇貨として正面から迎え撃ち、撃退する方針を決定した。領土奪還と勝利に向け「最後の戦い」を合言葉に準備に入った。米欧もこのウクライナの戦略を支持し、地上戦での攻撃を想定した軽戦車の供与に初めて踏み切った。2022年2月24日に始まったウクライナ侵攻開始から丸1年を迎え、プーチン氏は政権の存亡を賭け、最大の軍事的正念場を迎えそうだ。 ●プーチンのメンツを潰した攻撃 この局面転換の直接のきっかけになったのは、ウクライナ軍が2022年12月31日夜にウクライナ東部ドネツク州マケエフカのロシア軍拠点に行ったロケット砲攻撃だ。宿舎への高機動ロケット砲「ハイマース」(HIMARS)による砲撃でロシア兵士多数が死亡した。ウクライナ側は約400人が死亡と主張、ロシア軍は執筆時点で死者89人としている。 この攻撃はプーチン氏にとって最悪のタイミングで起きた。兵士らが新年を祝う食事をテーブルに並べ、日付が変わる直前にプーチン大統領が行う国民向けメッセージが放送されている時刻に行われたためだ。 ウクライナ国境に近い南部軍管区司令部を訪問したプーチン氏は、演説でロシア軍が窮地にあることを将兵に率直に語りかけた。「ロシアはすべてを引き渡すか、戦うかというところまで追い詰められた。だが、降参するわけにはいかない。何一つ敵に引き渡してはならない。前進あるのみだ」と述べ、軍事作戦を続ける決意を示した。それだけに演説をあざ笑うかのようなハイマース攻撃は、プーチン氏にとって屈辱的なものになった。 ロシア国防省は公表していないが、同様の部隊宿舎などを狙ったハイマース攻撃はその後も続き、ロシア兵士の死者は1000人規模に達したとの説もある。マケエフカでの兵力損失については、すでにロシア国内で国防省への批判が出ている。 2022年6月以降、戦場での勝利がないまま、兵力のいたずらな損失が続いている。このような状況が今後も続けばプーチン政権への支持が落ち込み、政権内部で自らの権威も大きく揺らぐのは必至だ。ウクライナの軍事筋は、この危機感ゆえにプーチン氏が政権維持に向け、攻勢を決断したと話す。 ロシアの攻勢は、東部ドンバス地方(ドネツクとルガンスク両州)と南部ヘルソン州が想定されている。2022年9月の「部分的動員令」で集めた約30万人の動員兵のうち、隣国ベラルーシなどで訓練中だった20万人を一挙に前線に投入するとみられている。ロシアは今回の侵攻で正規軍などすでに約20万人を投入しており、兵力は計40万人規模になる計算だ。 これに対し、ウクライナ軍はこのロシア軍の攻勢がなくても2023年春には自ら大規模な地上戦を仕掛ける計画だった。そのため、ロシア側の動きは「好都合」と受け止めている。ウクライナ大統領府や国防省内では、これからのロシア軍との戦闘を「ラスト・バトル(最後の戦い)」と呼び意気込みをみせている。ラスト・バトルとは、この戦闘でロシア軍を決定的な敗北に追い込むという意味だ。 ●ロシアの大規模攻勢は「破れかぶれ」 ウクライナ側は、ロシア軍の大規模攻勢について「破れかぶれの作戦だ」と撃退に自信を示す。これまでロシア軍は、ウクライナ軍の火砲の場所を特定するために、動員兵にほとんど武器を持たせずに最前線におとりとして飛び出させるというお粗末な使い方が目立っていた。 今後の攻勢で動員兵が一転して強力な戦力になるとはウクライナ側もみていない。このため、ウクライナのレズニコフ国防相は、現状では正規軍を中心に約40万人規模といわれる自軍兵力について、追加動員で増強する必要は現段階ではないとしている。 これまでは軍事作戦の計画を事前に公表するのを避けてきたウクライナ軍最高幹部の中には、今回はメディアに向けて作戦計画を大胆に発信する者もいる。ブダノフ軍情報局長は2023年1月4日放送のアメリカABC放送との会見で、「(2023年)3月に戦闘は最も熱くなるだろう」と予告した。そのうえで自軍の攻勢を「ロシアに最終的な敗北を与えるものだ」と強調したほどだ。 この自信の背景にあるのが、今後の戦争方針をめぐって米欧と意思が一致していることだ。ウクライナ軍事筋はウクライナ軍の攻勢戦略に「アメリカも乗った」と指摘する。公表されてはいないが、具体的戦略・戦術について「2022年末から何度もアメリカとは打ち合わせを行った」と証言する。 これは2023年1月5日のアメリカとドイツ両国の共同首脳声明に反映された。アメリカはブラッドレー歩兵戦闘車を、ドイツはマルダー歩兵戦闘車をそれぞれ提供する方針を明らかにした。アメリカ政府は1月6日発表した総額約30億ドル(約4000億円)の追加軍事支援に、ブラッドレー50両を含めた。 今回の追加支援の規模は、1回の支援額としては過去最大となった。今回の支援には対戦車ミサイル500発も含んでいる。ドイツはアメリカに続いて地対空ミサイルシステム「パトリオット」も送る。フランスも兵員装甲車の供与を発表。米欧はウクライナの地上戦での攻撃能力を増強する方向で一斉に動き出した。今後、アメリカ・イギリス・ドイツから戦車が提供される可能性も十分にある。 ブラッドレーは、ウクライナ側がアメリカ側に以前から求めているエイブラムス戦車とは異なる軽戦車だ。歩兵の輸送に加え強力な対戦車ミサイルを装備しており、イラク戦争ではイラク軍戦車を多く破壊した実績から「戦車キラー」と呼ばれた。 ウクライナ軍関係者は、ぬかるんだ戦場で戦車より機動的に動くことができ、ロシアの戦車部隊を相手に戦闘もできるブラッドレーのほうが望ましく「維持が難しいエイブラムス戦車はそれほど強く望んではいない」と打ち明ける。そもそもロシア軍の戦車はすでに相当部分が戦闘で破壊されており、ウクライナ側は今後の地上戦でそれほど脅威になるとは考えていないという事情もありそうだ。 ●ロシア領内の攻撃をアメリカが容認 もっとも、ロシア軍が近く大規模攻勢をかけてきた場合、上記した米欧からの攻撃用兵器は戦闘開始には間に合わないとみられる。この場合、ウクライナ軍は当面ハイマースのほか、アメリカなどから供与された榴弾砲やドローンを使って攻撃するという。 2022年夏以来の反転攻勢で、ウクライナ側に戦局の主導権をもたらす「ゲームチェンジャー」になったのはハイマースだ。2023年には「ドローンが新たな主役になる」と軍事筋は指摘する。ドローンはアメリカから多数供与されているが、これとは別に、旧ソ連時代には軍需産業の中心地だったウクライナは軍需企業がよみがえりつつあり、現在では自国製攻撃ドローンの開発に躍起となっている。 2022年12月21日、ウクライナのゼレンスキー大統領を招いて開いたワシントンでの首脳会談で、バイデン大統領は実は重要な確約をウクライナ側に示していた。アメリカ製兵器を使わなければ「ウクライナがロシア領内を攻撃するのは構わない」との方針を伝えたのだ。これにはウクライナ側も喜んだ。 インフラや住宅を狙ったロシア軍のミサイル攻撃に悩まされているウクライナは、ロシア空軍の出撃拠点などへの攻撃は侵略を受けた主権国家として当然の反撃と捉えているためだ。この確約を得て、ゼレンスキー氏は帰国後、今後のロシア領内への攻撃の戦略を決めた。それは「道徳的高みに立って行う」というものだ。 つまり、国際法に違反して民間人を狙う攻撃を繰り返すロシア軍とは一線を画し、ウクライナ軍は民間人を狙わず、空軍基地など軍事施設に目標を限るということだ。今後、ウクライナ軍は自国製ドローンを使って、ミサイルを発射する爆撃機が配備されているロシアの空軍基地などを攻撃することになるだろう。この戦術をとっている限り、米欧や日本などのパートナー国家からの支持を得られるとみているようだ。 ●戦闘を2023年秋で終わらせたいウクライナ ゼレンスキー政権はなぜ2023年春に大規模攻勢を準備していたのか。その理由は、現在の戦争状態を2023年秋以降は続けたくないと考えているからだ。その思いは米欧も同じだと軍事筋はいう。あまりに戦争の犠牲や負担が大きいからだ。 一方で、プーチン政権は戦場で窮地に追い込まれつつも、防御を固めて戦争の長期化を目指している。人口は1億4000万と4000万強のウクライナより多い。戦争を半ば膠着状態のまま引き延ばして、その中でウクライナの戦争疲れを待って戦局の好転をうかがう戦略だった。 このため、ロシア軍はドネツク州の拠点バフムトなど一部戦線で攻撃をかける一方で、残りの延べ1000キロメートル以上ある戦線では、塹壕戦を展開するなど防御態勢をひたすら続けていた。 ウクライナ軍は、このままでは戦争遂行上の「体力」が持たなくなる恐れもあるため、ひそかに大規模攻勢の計画を練っていた。その意味で塹壕から部隊がはい出すロシア軍からの攻勢は、むしろウクライナ側からすれば、渡りに船の展開といえる。 ロシア軍と正面から戦う中で、ウクライナ軍は2014年のクリミア併合以来、ロシアに占領されたままの全領土奪還を目指す方針だ。この背景には、クリミア半島の武力奪還を含め、ウクライナの戦略を追認したアメリカ政府の方針がある。 2022年夏まではプーチン政権を刺激し戦術核使用につながる恐れがあるとして、クリミア奪還にも難色を示していたバイデン政権は、今や全領土奪還に反対していない。核使用につながるとしてアメリカがウクライナに示していた軍事行動上の限界線、いわいる「レッドライン」は変化しているのだ。 実は、米欧が2022年秋以降、強力に展開してきた外交工作の結果、プーチン政権が核使用に踏み切る可能性についての米欧側の懸念は大幅に減少している。このため、ウクライナのロシアへの軍事作戦をめぐるアメリカからの異論は大幅に減ってきている。 こうしたアメリカとの腹合わせの成功について、ウクライナ政府のナンバー2であるイエルマーク大統領府長官は2023年1月3日、地元テレビとの会見で嬉しそうにこう誇示した。「サリバン(国家安全保障問題担当の米大統領補佐官)と電話で話し、今後のことに関し完全な一致に達した。勝利とは何か。受け入れられない妥協とは何か。戦争の目的とは、などでだ。われわれにとっての勝利は、彼らにとっても勝利となったのだ」と。 ●岸田首相は早期にウクライナ訪問すべき サリバン氏との合意はウクライナにとって大きな意味を持つ。なぜなら、ウクライナ側に徹頭徹尾同情を示し、軍事的支援に積極的姿勢を示してきたオースチン国防長官とは対照的に、サリバン氏は対ウクライナ武器支援をめぐりバイデン政権内で最も慎重な立場をとってきた人物だったからだ。それゆえ、イエルマーク氏はサリバン氏との調整成功を喜んだのだ。 このため、ウクライナ側は、今後も米欧からさらなる強固な軍事支援を得ながら、ロシア軍に攻勢をかけることになろう。同時にプーチン政権や国際社会に対しては、ウクライナからのロシア軍完全撤退を和平交渉開始の前提とする姿勢をアピールしていくことになるだろう。 一方で、ウクライナ政府は2023年1月4日、ゼレンスキー大統領の意向として岸田文雄首相に対し、都合のよい時期にウクライナを訪問するよう招請した。これは米欧との連携強化を実現したゼレンスキー政権が2023年、先進7カ国(G7)議長国となった日本からもより強い支援のメッセージを受けたいという願望の表れだろう。 岸田首相は6日のゼレンスキー氏との電話会談で、越冬支援などウクライナとの連携を強化する方針を示した。筆者はこの発言がウクライナにとって、心強い発言だったと評価する。ただ、G7首脳会議(広島サミット)開催は5月だ。開催前の時点で越冬支援はもはや議論にならないだろう。このため、岸田首相にはなるべく早い時期にキーウ訪問を実現し、議長国にふさわしいより包括的なウクライナ支援策を提示してほしいものだ。 |
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●ロシア・プーチン大統領、 軍への兵器・物資の供給加速を表明 1/12
ロシアのプーチン大統領は、国の防衛能力を向上させるとして、ウクライナに展開する部隊を含め、軍への兵器や物資の供給を加速させていく考えを表明しました。 ロシア プーチン大統領「我々は防衛能力を向上させ、ウクライナでの特別軍事作戦に参加する部隊を含めた軍への供給に関する全ての問題を解決する」 ウクライナ侵攻をめぐり、ロシア軍の兵器や装備の不足が指摘されるなか、11日、政府の会議にオンラインで参加したプーチン大統領は、兵器などの供給を加速させると表明。「我々は国の安全と利益を保証する」と強調しました。 また、一方的に併合したウクライナの4つの州をめぐっては、戦闘が続いている地域もあるとして、「厳しい状況にある。多くの地域で住民が安全を確保できていないことは理解している」と発言し、地域開発の計画を今年3月末までに作成するよう、あらためて指示しています。 こうした中、ロシアとウクライナの人権担当者が11日、トルコで協議しました。ロシア側の担当者は、ウクライナ側と捕虜のリストを交換し合い、互いに40人の捕虜をすでに帰国させたと明らかにしています。 |
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●プーチン大統領 イラン大統領と電話会談 2国間協力の拡大など協議 1/12
ロシアのプーチン大統領とイランのライシ大統領が電話会談を行いました。軍事協力の強化にも触れた可能性があります。 ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領は11日、イランのライシ大統領と電話会談を行い、2国間協力の拡大などについて協議したということです。 ウクライナ侵攻をめぐり、ロシアはイラン製の無人機や弾道ミサイルの調達を進めていると指摘されていて、会談では軍事協力の強化についても触れた可能性があります。 |
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●「ロシアが核使用に踏み切れない」事情 1/12
今も継続するロシア・ウクライナ戦争において、ロシアが核を使用する可能性はどれくらいなのか? 同問題をロシア軍事の研究者の小泉悠氏が解説。 ●核兵器の使用という賭け 一方、垂直的エスカレーション――つまり、核兵器の使用にプーチンが踏み切れなかった理由は、西側がウクライナへの軍事援助を制限し続けてきたのとほぼ同様の構図で理解できる。つまり、ひとたび核兵器を使用したが最後、事態がどこまでエスカレートするかは誰にも予測できないということだ。 『現代ロシアの軍事戦略』でも述べたとおり、ロシアの軍事理論家たちは、通常戦力で戦争に勝利できない場合に核兵器を使用する方法について長年議論し続けてきた。 これはロシアの通常戦力が冷戦期と比較して大幅に低下したという現実を反映したものであり、大きく分けて次の三つのシナリオに分類することができる。 ・戦術核兵器の全面使用によって通常戦力を補い、戦闘を遂行する(戦闘使用シナリオ) ・大きな損害を出す目標を選んで限定的な核使用を行い、戦争を続ければさらなる被害が出ることを敵に悟らせることで停戦を強要する(停戦強要シナリオ) ・第三国の参戦を阻止するため、「警告射撃」としてほとんど(あるいは全く)被害の出ない場所で限定的な核爆発を起こす(参戦阻止シナリオ) 第一の戦闘使用シナリオ自体は冷戦期から存在してきたが、冷戦後には、そのような能力をもって抑止力として機能させようという考え方が生まれてきた。「地域的核抑止」と呼ばれるもので、1997年頃には既にロシアの軍事出版物に登場していたことが確認されている。 ただし、地域的核抑止戦略が実際にどこまで機能しうるかについては、これを疑問視する見方が根強い。 イスラエルのロシア軍事専門家であるドミトリー・アダムスキーによると、ロシアのいう地域的核抑止が機能するためには戦術核兵器の配備状況や使用基準が高度に透明化されている必要がある。 要はどんな状況でどの程度の戦術核兵器を使用するのかを敵が認識していなければ戦術核使用の脅しは役に立たないということだが、現実問題としてロシア側からはこのような情報が明確に宣言されたことはなく、断片的な情報は相互に矛盾していたり、ズレを抱えている場合が非常に多い。 したがって、地域的核抑止は高度に統合された核運用政策などではなく、軍と戦略コミュニティが独自に主張している曖昧な概念の集合体に過ぎないというのがアダムスキーの結論であった。 ロシアの戦術核戦力がほぼ無傷のまま温存されているにもかかわらず、ウクライナが現に戦争継続を諦めていないことからしても、「地域的核抑止」は機能していないと考えるべきであろう。 脅しを目的とするのではなく、純粋に戦場の形勢を有利に転換するために核兵器を使用するというシナリオはさらに可能性が低い。このような場合にはかなりの数の戦術核兵器を使用する必要が出るが、こうなると西側はもはやウクライナに対する軍事援助を制限しなくなり、場合によってはNATOの直接介入(飛行禁止区域の設定から地上部隊の展開まで)さえ真剣に考慮せざるを得なくなるためである。だが、第三次世界大戦を恐れているのはロシアも同様であって、これはあまりにも危険な賭けと言えるだろう。 ●エスカレーション抑止は機能するか これに対して第二の停戦強要シナリオは、近年、西側で「エスカレーション抑止」戦略として広く知られるようになり、多くの懸念を呼んできたものである。 戦闘使用のように核兵器で敵の損害の最大化を狙うのではなく、軍事行動の継続によるデメリットが停止によるメリットを上回ると敵が判断する程度の「加減された損害」を与えるというのがその要諦であり、1990年代末から2000年代初頭にかけてその原形は概ね完成していた。 米国による広島と長崎への原爆投下のロシア版とでも呼べるような核戦略であり、現在のウクライナに当てはめるならば、まだ大きな損害を受けていない都市(例えばリヴィウやオデーサ)を選んで低出力核弾頭を投下するようなシナリオが考えられるだろう。 もっとも、ジェイコブ・キップが指摘するように、核兵器によるエスカレーション抑止型核使用は、紛争が極限までエスカレートした場合に限られていた用の敷居を大幅に引き下げる点で危険性を孕んだものでもあった。 しかも、2010年代以降、ロシアのエスカレーション抑止型核使用に懸念を募らせた米国は、トライデントUD‐5潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に出力を抑えた核弾頭(W78‐2)を搭載しておき、ロシアの限定核使用には同程度の核使用で応えるという戦略を採用している。 つまり、ロシアがウクライナに対して「加減された損害」を与えた場合には、これと同等の損害が自国にも返ってくる可能性があるということであり、そうなった場合には全面核戦争へのエスカレーションさえ覚悟せねばならなくなるだろう。ウクライナを攻めあぐねるロシアがそれでも限定核使用を決断できない理由が、おそらくこれだと思われる。 また、それゆえにロシアもエスカレーション抑止型核使用を公式の核戦略として採用しているわけではなく、そのような可能性を示唆することで脅しとするための心理戦ではないかという見方が従来から西側の専門家の間で広く持たれてきた。 ●核のメッセージング 最後の参戦阻止シナリオも、ほぼ同様のリスクを抱えている。この場合、核兵器はまだ参戦していない大国へのメッセージングを目的として使用されるものであるから、これは核戦略用語でいう「先行使用」ではなく「予防攻撃」に相当しよう。 前者は通常兵器による戦闘が始まっている中で先に核使用を行うことを意味するのに対し、後者はまだメッセージの受け取り手とは戦争が始まっていない段階で核使用に踏み切ることを意味するからだ。 こうした核戦略がロシア軍の中でいつ頃から生まれてきたのかははっきりしないが、国際的な注目を集めたのは、2009年10月に『イズヴェスチヤ』紙が行ったニコライ・パトルシェフ国家安全保障会議書記へのインタビューであった。 今後の軍事ドクトリンにおいては、武力紛争や局地戦争(ロシアの軍事ドクトリンは、戦争を規模や烈度によって四つに分類しており、この二つは最も規模・烈度の小さなものとされている)でも予防的に核使用を行うことを想定すべきだ、というのである。つまりはロシアが行う小規模な軍事介入を西側が実力で阻止しようとした場合、核兵器を使って警告を与えるという考え方と解釈できよう。 しかし、繰り返すならば、限定的であろうと損害が出なかろうと、核兵器を使用したが最後、事態がどこまで転がっていくのかは誰にもわからない。 米国の国家安全保障会議(NSC)が2017年に行ったという図上演習は、このことをよく示している。ジャーナリスのフレッド・カプランが描くところによると、この演習のテーマは「ロシアが在独米軍基地に限定核使用を行った場合にどう対応すべきか」であったが、この際、あるチームは限定核使用による報復をベラルーシに行うことを選択し、もう一つのチームが通常兵器による報復を選んだという。 つまり、全く同じロシアの限定核使用という事態であっても、米国からどのような反応が返ってくるかをロシアは確信できないということを以上の事例は示している。実際には、ここに大統領の性格や国民の気分といった、より曖昧な要素が加わるわけであるから、ロシアがそう簡単に核使用に踏み切れるとは思われない。 核兵器をウクライナに対する「警告射撃」として使用するという考え方もあるが、これも問題がある。例えば黒海で核兵器が爆発したとして、ゼレンシキーが「だから何なのだ」と言って領土奪還作戦を続ければロシアのメンツが潰れるだけであろうし、かといってロシアが都市への核攻撃へと踏み切れば前述のエスカレーションの危険が立ちはだかることになる。 ●それでも核使用リスクは払拭できるものではない 2017年に承認されたロシア海軍の長期戦略文書「2030年までの期間における海軍活動の分野におけるロシア連邦国家政策の基礎」や2020年に公開された「核抑止の分野におけるロシア連邦国家政策の基礎」が核兵器によるエスカレーション抑止に言及しつつ、あくまでもこれを一般論に留めていることからしても、停戦強要シナリオと同様に心理戦の域を出ないとの見方が有力視されている。 ただし、ロシアが実際に限定的な核使用の思想を長年にわたって温めており、そのための能力も実際に有しているという事実自体は決して軽視されるべきではない。エスカレーションのリスクに関するプーチンの利害計算が西側のそれと同様であるという保証はどこにも存在しないからである。 |
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●「日本には珍しい自立した政治家」ロシアが安倍元首相を信用した納得の理由 1/12
安倍元首相が銃撃で亡くなった際、プーチン大統領が感情のこもった弔電を送ったのはなぜか。元外交官で作家の佐藤優氏は「ロシアの政治エリートは安倍氏が独自の理念を持ち、日本の他の政治家のように米国の代弁者的な振る舞いをする人物ではなかったと評価している」という――。 ●プーチンが送った弔電に表れた親愛の情 2022年7月8日、銃撃されて亡くなった安倍晋三元首相の妻・昭恵氏、母・洋子氏に宛てた、プーチン大統領からの弔電が話題になった。その冒頭は次のようにつづられている。 〈尊敬する安倍洋子様 尊敬する安倍昭恵様 あなたがたの御子息、夫である安倍晋三氏の御逝去に対して深甚なる弔意を表明いたします〉 安倍氏の死去が発表されて間もないタイミングで送られた弔電は次のように続く。 〈犯罪者の手によって、日本政府を長期間率いてロ日国家間の善隣関係の発展に多くの業績を残した、傑出した政治家の命が奪われました。私は晋三と定期的に接触していました。そこでは安倍氏の素晴らしい個人的ならびに専門家的資質が開花していました。この素晴らしい人物についての記憶は、彼を知る全ての人の心に永遠に残るでしょう。 尊敬の気持ちを込めて ウラジーミル・プーチン〉 プーチン大統領はKGBという情報機関出身者らしく、さまざまな情報・報告を収集し吸収することを重視する一方、それらの情報をどのように政策に反映させるのか明かすことはない。冷徹さが特徴と言える。もちろん自身の感情を文章に表すことはほとんどない。 ところがこの弔電の文面は儀礼の域を超えたものだ。安倍元首相に心の底から親愛の情を抱いていたのだと感じさせる。 ●ロシアの政治討論番組で語られた安倍氏の評価 安倍氏が亡くなった当日夜に放映された政治討論番組「グレート・ゲーム(ボリシャヤ・イグラー)では、出演者が安倍氏と安倍外交について言及した。 「グレート・ゲーム」は、ロシア政府系放送局「第1チャンネル」が制作する番組で、政府がシグナルを送る機能を果たしている。この日の出演者は、ヴャチェスラフ・ニコノフ氏(国家院[下院]議員、ヴャチェスラフ・モロトフ元ソ連外相の孫)、イワン・サフランチューク氏(モスクワ国際関係大学ユーラシア研究センター所長)らだった。 ニコノフ氏はゴルバチョフ・ソ連共産党書記長のペレストロイカ政策、エリツィン・ロシア大統領の改革政策を積極的に支持した知識人であるが、現在はプーチン大統領のウクライナ侵攻を正当化する論陣を張っている。 彼らの評価からプーチン大統領が親愛の情を隠さない弔電を送った理由を垣間見ることができる。 ●「安倍氏は米国の代弁者ではない」 番組では、ニコノフ氏が、安倍氏の死についての経緯と、生前の業績に触れた後、次のように述べた。 〈安倍氏は日本では珍しい自立した政治家だった。私は首相になる前の安倍氏と会ったことがある。当時、年2回、ロ日間の副次的チャネルでの対話が少なくとも年2回行われており、私もメンバーだった。安倍氏がそれに参加したことがある。安倍氏は独自の思考をしていた。日本の知識人と政治家は、しばしば米国の立場を自分の見解のように述べる。しかし、安倍氏はそうではなく、自らの理念を持っていた。もちろん安倍氏は反米ではなかったし、親ロシアでもなかった。偉大な政治家として独自の行動をした。現実としてもロシアと日本の関係発展のために重要な役割を果たした。プーチン大統領が安倍氏の母親と妻に感情のこもった哀悼の意を表明したのも偶然ではない。実に偉大な政治家で日本の歴史に道標を残した〉 安倍氏が独自の理念を持ち、日本の他の政治家のように米国の代弁者的な振る舞いをする人物ではなかったと評価している点に注目してほしい。サフランチューク氏は、日本の対ロ外交を安倍氏以前と以後に分けて述べる。 〈私にとって安倍氏は以下の点で重要だ。日本は長い間、米国によって設定された地政学的状況を受け入れていた。対して、安倍氏は現代世界において、特にアジア太平洋地域において日本の場所を見出そうとした。安倍氏は米国との同盟関係を維持しつつ、日本の独立性を確保しようとした。安倍氏のロシアに対する姿勢は非常に興味深かった。安倍氏が権力の座に就くまでの20年間、日本はロシアの弱さに最大限につけ込もうとした。この時期、日本は親西側的外交を主導した。この論者はすべての分野でロシアの弱点につけ込もうとした。日本は際限なく提起するクリル諸島(北方領土に対するロシア側の呼称)問題を解決することができず、そのため日本には不満がたまっていた〉 ●ロシアを援助することで北方領土問題の解決を試みた橋本氏、小渕氏、森氏 〈米国によって設定された地政学的状況を受け入れていた〉とは、東西冷戦期、日本列島は北東アジアにおける、共産主義勢力に対する防波堤の役割を果たしていたことを指す。日本の政治エリートのソ連観もイデオロギー対立に加え、地政学的状況にも拘束されていた。やがて東西冷戦が終結し、ソ連崩壊によって誕生したばかりの、国家としては弱かったロシアを援助することで北方領土問題を解決しようとしたのが、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗と続く政権だった。 ●ロシアの弱さに最大限につけ込んだ小泉氏 当時の北方領土交渉は「日ソ共同宣言」に基づいて進められていた。しかし、この流れは小泉純一郎政権の誕生によって断たれてしまう。サフランチューク氏の言う〈ロシアの弱さに最大限につけ込む〉外交を日本は展開した。当然、北方領土交渉は動かなかった。 民主党政権を経て、安倍氏が首相に就任した頃のロシアは、ソ連崩壊直後の弱いロシアではなく、資源輸出大国として力をつけていた。安倍氏は対ロ外交を大きく転換させた。それをサフランチューク氏は次のように解釈する。 〈安倍氏はロシアが強くなることに賭けた。強いロシアと合意し、協力関係を構築する。アジア太平洋地域においてもロシアを強くする。それが日本にとって歓迎すべきことだ。地域的規模であるが、アジア太平洋地域において多極的世界を構築する。ロシアの弱さにつけ込むという賭けではなく、ロシアの力を利用し、強いロシアと日本が共存する正常な関係を構築することだ。これが、安倍が進めようとしていた重要な政策だ。(2014年に)クリミアがロシアの版図に戻ったとき、日本では再び西側諸国のロシアに対する圧力を背景に、ロシアが日本に対して何らかの譲歩をするのではないかという発想が出てきた。私の考えでは、安倍氏は賢明な政策をとり、西側諸国の単純なゲームが成り立たないことを理解し、ロシアの戦術的弱点につけ込むという選択をしなかった。そして、ロシアと長期的で体系的な関係を構築しようとした〉 ●ロシアと長期的で体系的な関係を構築しようとした安倍氏 欧米諸国にとってロシアは基本的な価値を共有できない国であり、強くなれば脅威の側面がせり出してくる。 しかし、日本の場合は事情が異なる。 自国の「価値の体系」「利益の体系」「力の体系」、そして北東アジアの地政学的状況を長い目で見るならば、強いロシアとの関係強化を進めたほうが国益に適う。したがって、すべてのケースで欧米諸国と歩調を合わせる必要はない。安倍氏はそれを行動で示した――サフランチューク氏はそう言いたいのだろう。 ●日米同盟の枠内で日本の独立性を確保しようと努めた 2氏の話は、追悼の意という趣旨を差し引いても、安倍氏を政治家として高く評価している。それは次の2点に集約される。 一つは、「日米同盟の枠内で日本の独立性を確保しようと試みた政治家だった」ことだ。 2016年の日ロ首脳会談後の共同記者会見でプーチン大統領は「日本と米国との関係は特別です。日本と米国との間には日米安全保障条約が存在しており、日本は決められた責務を負っています。この日米関係はどうなるのか、私たちにはわかりません」と述べた。 つまり、平和条約の締結後、日本領となった歯舞群島、色丹島に、安保条約に基づいて米軍が展開する可能性を示唆した。公の場で安倍氏に対してこの懸念にどう応じるのか、大きな問いを突きつけたことになる。 ロシアにとって、ウクライナ戦争の一因であるNATO東方拡大と構造的には同じ安全保障上の危険が生じることになる。安倍氏による北方領土交渉は未完に終わったが、その問いに対する回答を真撃に探っていたのではないだろうか。 2020年、アメリカからの購入が決まっていた迎撃ミサイル防衛システム「イージス・アショア」配備が中止された。当時、河野太郎防衛大臣が決定したかのように報じられたが、安倍氏の了承があったことは間違いない。 中止理由として、迎撃ミサイル発射時に周辺民家の安全が担保できないこと、イージスアショアの発射コストが膨大過ぎることが挙げられた。 その代替の一つとして、日本は国内で戦闘機から発射するスタンド・オフ・ミサイルの長射程化を進め、三菱重工が開発している。これも日米同盟の枠内で模索された安倍流の国家主義だと言える。 ロシアに対するシグナルにもなったと思う。 ●強いロシアと関係を結び日本の地位の確立を試みた 安倍氏をロシア政治エリートが評価するもう一つは、「安倍外交には、アジア太平洋地域においてロシアに一定の影響力を発揮させ、強いロシアと結ぶことで、この地域での日本の地位を担保しようとする戦略性があった」点だ。 アメリカが進めてきたロシアの台頭を抑える政策に日本も加担し、ロシアを中国に接近させてしまうほうが、日本にとって不安定要因が増すことになる。強い国同士が安定的な関係を築いたほうが、地域的な問題が解決しやすくなると考えていたのだ。 ●サフランチューク氏の岸田政権評価 ウクライナ戦争が起きた現在、岸田文雄政権の対ロ政策は、ロシア側にどう映っているのか。 サフランチューク氏は、日本が欧米との連携を強めており、「安倍氏の遺産は遠ざけられている」と言う。しかし、現在のような欧米の価値観に歩調を合わせた外交はいつまでも続けられないと見ている。 〈日本が世界の中で独立して生きていかなくてはならず、どのようにアジア太平洋地域の強国との関係を構築し、強いロシアと共生していくかという考え方は、日本の社会とエリートの間で維持される。いずれかの時点で日本はこの路線に戻ると私は見ている。なぜならそれ以外の選択肢がないからだ〉 ●今後の対ロ政策は安倍外交路線に戻るのか… 日本が安倍外交路線に戻るかどうかは、ウクライナ戦争の帰結に左右される。 ロシアがウクライナ戦争で一定の成果を得た場合、アメリカは実質的な敗北を喫する。バイデン大統領は、ただでさえ低い支持率をさらに低下させ、次期大統領選挙で政権交代が起きる可能性も排除できない。政権が変わったときにアメリカの対ロ外交の論理は転換するだろう。 「価値の体系」が肥大化した西側の外交が行き詰まったとき、日本は、「価値の体系」「利益の体系」「力の体系」の三つの体系をうまく操ってきた安倍氏の外交遺産を活用せざるを得なくなるとロシア側は見ている。 ニコノフ氏が、安倍氏のことを反米でも親ロシアでもないと認識していたように、自国の利益のために何が最適かを模索する愛国者で、かつ、交渉相手国の利益にもつながる戦略的思考ができ、リアリズムに徹した対話可能な外交ができる政治家――ロシアの政治エリートが安倍氏を尊敬し、信用した理由である。 |
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●ロシア、原油販売で問題なし 制裁や価格上限でも=副首相 1/12
ロシアのノバク副首相は11日、西側諸国による制裁や原油価格上限に直面しているものの、原油輸出の契約取り付けで問題はないと言明した。 ノバク副首相は政府のオンライン会議で、国内の石油業者が2月の契約締結を完了したと指摘し、「現時点で問題があるとは報告されていない」と語った。 西側諸国は昨年12月5日、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの追加制裁として、ロシア産原油の上限価格を1バレル=60ドルとする措置を導入。これに対し、プーチン大統領はロシア産原油の価格上限を導入した国への原油と原油製品の供給を2月1日から5カ月間禁止する大統領令に署名している。 プーチン大統領も同会議で、ロシア経済について「金融および銀行システム、経済全体が安定した状態にあり、前向きに発展していると断言できる」とし、「2023年もこのテンポが維持されると信じるに足る十分な根拠がある」と述べた。 レシェトニコフ経済発展相は、2022年のインフレ率が11.9%に達したとした上で、今四半期末までに伸びは大幅に鈍化し、第2・四半期には目標の4%を下回る公算が大きいという見方を示した。 |
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●「核大国への軍事介入を忌避する米国」 論じられるべき核共有 1/12
ロシアは、2021年秋から約15万〜20万の兵力をベラルーシとの共同演習と称してウクライナ国境に展開していた。そして、昨年2月24日、ウクライナへの侵略を開始した。 ●ロシアに言う資格がない「約束破り」 当初は、ロシアが国家承認したドンバス地方の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」からの要請によるとして、ウクライナ東部へ侵攻した。だが、次第にクリミア半島を繋ぐ南部地域に侵攻し、そしてついにべラルーシ国境から首都キーウに向かっていった。 ロシアの目的は、ゼレンスキー政権を倒し、ウクライナを非軍事化、中立化することである。これはすなわち、少なくとも安全保障に関してはウクライナの主権を認めないということである。 プーチン大統領は、「冷戦直後に米欧諸国はNATOを拡大しないとロシアに約束したにもかかわらず、それを守らなかった」という主張を繰り返している。この「約束」は、米国のベーカー国務長官(当時)やドイツのゲンシャー外相(当時)らが口にしたとされるもので、文書として残っているわけではない。 そのような流れの中で2008年4月のブカレストNATO首脳会談で、ウクライナとジョージアの将来的なNATO加盟の方針が確認された。 これに反発したロシアは、2008年にジョージアに侵攻し、南オセチア及びアブハジアを実効支配した。2014年には、ウクライナのクリミア半島をいわゆるハイブリッド戦により併合した。 ロシアはNATOが約束を破ったと主張するが、文書に残っていないものを根拠にすることは国際政治では通用しない。一方で文書として残っていた日ソ中立条約を一方的に破り我が国に侵攻したソ連の歴史を鑑みると、その末裔であるロシアは言える立場ではない。 ●プーチン氏が「特別軍事作戦」と呼ぶ理由 通常、戦争は領土、民族、宗教的対立等で起こるが、この戦争の厄介なところは、プーチン大統領の歴史観、世界観から発している点である。 プーチン大統領の歴史観、世界観は2021年7月に発表された「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」の中で示されている。それは簡単に言えば、「ロシア、ウクライナ及びベラルーシは三位一体であり、同根である」「ウクライナ及びベラルーシが独立したのはソ連の手違いだった」というものだ。 ロシアは、兵力不足を補うため動員をかけた現在でも、この戦争を「ロシア・ウクライナ戦争」と言わず、「特別軍事作戦」と呼んでいる。 それは、彼にとってウクライナは外国ではないからだ。すなわち、彼にとってはこの戦争は「国内治安問題」なのである。 例えば領土問題が原因であれば、どこかの時点で妥協点が見出せるかも知れない。だが、この戦争がプーチン大統領の歴史観・世界観から発している以上、妥協点を見出すことは極めて困難に思える。 今年に入って米独仏は機動性の高い歩兵戦闘車や装甲車という戦闘能力の高い兵器の供与に踏み切った。しかしながらウクライナ戦争の今後の推移は、執筆時点ではどうなるかはまだ分からない。 だが、この戦争が世界の安全保障に一大転機をもたらしたことは確かだ。当然のことながら日本の安全保障にも大きく影響することとなった。 ●「安心してください」崩れたNPTの前提 第一には、戦後の核管理を支えてきたNPT体制の実質的な崩壊である。 NPTすなわち核拡散防止条約は、核軍縮を目的に1968年に国連総会で採択され、1970年に発効した。190カ国が加盟しているが、インド、パキスタン、イスラエルは未加盟である。北朝鮮は脱退し、核開発を進めていることは周知のとおりである。 NPTは米国、中国、イギリス、フランスそしてロシアの5カ国以外の核兵器の保有を禁止する条約である。つまり5カ国に核の管理は全面的に委ねて核兵器の拡散を防ごうとするものであるが、その前提は「核保有国である5カ国は責任ある大国なので、非核保有国は安心して下さい」というものだ。 ところが今回のロシアによるウクライナ侵略は、その前提が崩れたことを白日の下にさらすことになった。 2014年のクリミア併合の際にも核兵器を準備していたことを、プーチン大統領は1年後のメディアのインタビューで答えている。その時も世界は驚愕したが、今回は軍事作戦遂行中に核の威嚇を行ったのである。 これは、NPT体制への信頼を喪失させるものであり、日本のみならず世界の安全保障に大きく影響することは疑う余地がない。 少なくとも北朝鮮の核廃棄は望めなくなったと言えよう。その意味でウクライナ戦争は北朝鮮に核保有の正当性を与えたとも言える。 第二は、世界は核戦争を考慮して軍事的に動かない米国を初めて見たということである。1991年の湾岸戦争は、当時のイラクのサダム・フセイン大統領が隣国クウェートを侵略したことにより生起した。 当時のブッシュ大統領(父)は、「これを放置すれば、冷戦後の国際秩序は崩れる」として米国を中心に多国籍軍を編成し、1カ月でイラク軍をクウェートから追放した。 その後、息子のブッシュ大統領はイラクが核兵器を保有しようとしているとして、2003年にイラク戦争を開始し、最終的にサダム・フセイン大統領を捕獲している。 一方、ウクライナのケースも、ロシアが自国の安全保障を名目として、隣国ウクライナを侵略したわけであり、事象としてはイラクのクウェート侵略と何ら変わりはない。しかし、ウクライナでは、米国のバイデン大統領は、早々に軍事介入はせず、厳しい経済制裁で対応することを宣言した。 何が米国の対応に違いをもたらしたのか。 明らかにイラクは核保有国ではなく、ロシアは核大国だからだ。 ●日本はウクライナと同じ境遇にある 米国がウクライナに軍事介入すれば、ロシアと直接ぶつかることになり、核戦争へエスカレーションする可能性があるためだ。 ウクライナはNATO加盟国でないから米国は軍事介入しなかったという見方もあるが、湾岸戦争当時クウェートと米国の間にも軍事同盟関係はなかった。 言うまでもなく我が国は、その米国の核の傘に全面的に依存しているのである。台湾海峡そして尖閣諸島問題を抱える我が国の最大の脅威は中国であるが、中国はロシア同様NPT体制を支える核大国である。 冷戦時代、世界の安全保障の最前線であったヨーロッパ各国とりわけ当時の西ドイツは自国の生き残りをかけて米国に核シェアリングを迫った。これは核使用に関する判断と責任を米国と共有しようとするものだ。 米中対立の枠組みの中で、世界の安全保障の最前線に立ってしまった我が国は、この新たな情勢を踏まえて、核シェアリングについても正面から議論する段階に来ている。 |
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●ロシア、ウクライナ侵攻の総司令官を交代 3カ月で2度目 1/12
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は11日、ウクライナ侵攻の指揮をとる総司令官を、就任からわずか3カ月で解任した。総司令官の交代はここ3カ月で2度目。 解任されたのは、シリアへの軍事介入で残忍な人物と評され、「アルマゲドン(最終戦争)将軍」の異名を持つセルゲイ・スロヴィキン将軍。昨年10月にウクライナ侵攻の総司令官に任命され、最近の残忍な攻撃を指揮してきた。 後任にはワレリー・ゲラシモフ軍参謀総長が選ばれ、プーチン氏が「特別軍事作戦」と呼ぶウクライナでの軍事侵攻を率いることとなった。 この配置転換は、ロシア側がここ数カ月間の戦闘で立て続けに敗北した後、ウクライナ東部で前進していると主張する中で行われた。 ゲラシモフ氏は2012年に軍参謀総長に就任。ソ連崩壊後のロシアで同ポストを最も長く務めている。 スロヴィキン将軍は今後、ゲラシモフ氏の下で副司令官となる。 スロヴィキン氏は冬の到来を迎えたウクライナでエネルギーインフラ破壊作戦を開始し、住民数百万人を電気も水道もない状態に陥らせた。また、南部の街ヘルソンからのロシア軍の撤退を指揮した。この撤退はウクライナ側にとって大きな成功となった。 ●配置転換の理由は ロシア国防省はスロヴィキン氏の配置転換について、「軍隊の異なる部門間の連絡を緊密なものにし、ロシア軍の管理の質と効果を向上させる」ことが目的だと説明した。 しかし、スロヴィキン氏が権力を持ちすぎたことの表れだとみる向きもある。 軍事アナリストのロブ・リー氏は、「ウクライナ(侵攻)における統一部隊司令官として、スロヴィキン氏は非常に強力な人物になりつつあった。プーチン氏と話す際に(ロシア国防相のセルゲイ)ショイグ氏やゲラシモフ氏を通していなかったようだ」とツイートした。 ロシアのタカ派の軍事ブロガーの中には、「特別軍事作戦」の新責任者となったゲラシモフ氏らロシア軍指導陣を強く批判する者もいる。こうしたブロガーはウクライナでの戦争を支持しながらもその遂行方法を頻繁に批判している。 ●ウクライナ東部で戦闘続く 総司令官の交代は、ウクライナ東部の町ソレダールで戦闘が続く中発表された。 ソレダールはウクライナ東部ドネツク州にある小さな塩鉱山の町で、ロシア軍が戦略的に重要視する街バフムートから約10キロの位置にある。ソレダールを掌握すれば、ロシア軍はバフムートを射程圏内とする、安全な砲撃場所を確保する可能性がある。また、地下の採掘トンネルを、ウクライナ軍のミサイル攻撃からの避難や、部隊の駐留、装備品の保管に利用することも可能になる。 ソレダールに雇い兵を投入しているロシアの民間雇い兵組織「ワグネル・グループ」は、ソレダールにおける「襲撃」に加わっているのはロシア軍に属さないワグネルの戦闘員だけだと主張している。 ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は10日夜、「ワグネルの部隊がソレダールの全領土を制圧した」と主張した。しかし、ロシア国防省は11日にプリゴジン氏の主張を否定する内容の声明を発表した。 これを受けてプリゴジン氏は11日夜、同じ主張を繰り返した。メッセージアプリ・テレグラムに投稿した短い声明の中で、ワグネルの雇い兵がウクライナ側の約500人を殺害したと豪語した。「街全体にウクライナ兵の遺体が散乱している」。 ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は先に、「我々の陣地へ向かう道のりには敵の戦闘員の遺体が散乱している。我が軍の兵士は勇敢に防衛している」と述べている。 これらの主張は独自に検証できていない。 ●ロシア国防省と雇い兵組織に亀裂か ソレダール周辺での直近の出来事をめぐり、ロシアの公式見解に食い違いが生じている。これは、とりわけワグネルと国防省の間で亀裂が生じていることを示唆している。 一方でウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ソレダールは陥落していないとしている。 ゼレンスキー氏は11日夜のビデオ演説で、「テロ国家とそのプロパガンダを広める者」が、ソレダールで何らかの成功を収めたかのように「見せかけようとしている」が、「戦闘は続いている」と述べた。 「我々はウクライナの防衛強化のために1日も休むことなく、あらゆることを行う。我々の潜在能力は高まっている」 |
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●プーチン大統領自国も裏切り≠竄ヘり「停戦」まっ赤なウソ 攻撃継続 1/12
ロシア正教会の提案を受け、クリスマスに合わせて36時間(現地時間6日正午から8日午前0時)の軍事作戦の停戦を命令したプーチン大統領。だが、案の定、命令は真っ赤なウソでウクライナへの攻撃を継続。国際社会はおろか、停戦を歓迎した国内を裏切る形となった。専門家は「プーチン氏への信頼低下を決定的にした」と指摘する。 ロシア正教会最高位のキリル総主教は旧暦のクリスマスに当たる7日未明、モスクワの救世主キリスト大寺院で礼拝を行った。これに先立ち、国営テレビで「祖国のために祈ろう。神の恵みにより真実が勝つことを願う」と述べた。 プーチン氏もクレムリンの聖堂で礼拝に出席した後、「この聖なる祝日は善行を促し、社会における精神的価値と道徳観を高める」と国民向けメッセージを発表した。ただ、厳粛なムードの裏で、停戦はあっけなく反故(ほご)にされた。 ウクライナ東部ルガンスク州のガイダイ知事は6日、ロシアが一方的に設定した停戦期間中の3時間に、ロシア軍が同州を14回砲撃し、集落への突入も3回試みたと通信アプリに投稿した。 隣接するドネツク州のキリレンコ知事も7日、前夜にロシア側の砲撃があり、激戦地のバフムトと周辺で民間人2人が死亡したと明らかにした。州内の集合住宅や病院も被害を受けた。 一方、ロシア国防省はウクライナ軍が砲撃を続けたなどと主張。2014年にロシアが併合したクリミア半島セバストポリのラズボジャエフ市長は、7日未明にウクライナ側からの無人機攻撃があり防空システムで迎撃したと通信アプリに投稿した。 ロシア政治に詳しい筑波大学の中村逸郎名誉教授は「停戦を宣言しておいて、相手の攻撃を口実に反撃する偽旗作戦の一種かもしれない。国際社会はこれまでも、プーチン氏の約束を信じてこなかったが、停戦を破ったことで、信用失墜は決定的となった」とみる。 24年にはロシアで大統領選が控える。政権内部では、プーチン氏に反旗を翻す強硬派が勢力を増し、プーチン氏の地位を脅かしている。 「反戦世論もある中、停戦命令に国内からプーチン氏を歓迎する向きもあったが、約束を破られた格好だ。大統領選前にますますプーチン氏の求心力の低下につながり、政権内部の反プーチン派を勢いづかせることになるだろう」と中村氏。 ロシアの独裁者に終わり≠ェ近づいていることは確かだ。 |
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●プーチン大統領「遅い、ふざけているのか」と副首相を叱責… 1/12
ウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領は11日、出席した政府のオンライン会議で軍用機を含む航空機の調達作業が遅れているとし、担当のデニス・マントゥロフ副首相に対して「ふざけているのか」と厳しく 叱責しっせき した。 この模様は露主要メディアが報じた。プーチン氏は、侵略で苦戦が続く中、他の閣僚や関連産業の引き締めを図るとともに、自身に向かう批判をかわそうとした可能性がある。 会議には、首相や各分野を担当する副首相らが参加した。プーチン氏は、侵略を巡る露軍部隊への物資供給の徹底や防衛力の強化を改めて指示した。 一番手で報告させたマントゥロフ氏に対し、「(契約作業が)遅い。遅すぎる。今年の受注を受けていない企業もある。ふざけているのか。1か月以内で作業を完了させよ」とまくし立てた。マントゥロフ氏が「最善を尽くす」と応じると、プーチン氏は「最善を尽くすではなく、実行せよ」と念を押した。 |
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●東部戦線で重大局面 ロシア包囲、ウクライナは抵抗 「侵攻」総司令官交代 1/13
ロシアが一方的に「併合」を宣言したウクライナ東部ドネツク州の拠点都市バフムトを巡り、両国軍の戦闘が重大局面を迎えている。 半年近く攻防戦が展開されたが、ここ数日間で戦況が急変。ロシア国防省は11日、バフムト近郊の町ソレダルを南北から包囲したと主張した。ウクライナは「戦闘は続いている」(ゼレンスキー大統領)と抵抗の構えを崩さないが、陥落は時間の問題という見方もある。 ロシア軍がソレダルを攻略すれば、バフムトの戦いが激化するのは必至。欧米の追加兵器支援を待つウクライナ軍が、多大な人的損害を被る恐れもありそうだ。 プーチン政権は昨年7月、東部2州のうちルガンスク州全域を制圧。残るドネツク州に戦力を集中させたが、バフムト周辺の前線がこう着し、これより西方に進軍できなかった。先にはウクライナ軍が死守する事実上の州都クラマトルスクがある。バフムト攻防戦は東部戦線の行方を決定付けることから、両国軍とも重視していた。 「プーチンのシェフ」の異名を取る実業家プリゴジン氏は10日、自身が創設した民間軍事会社「ワグネル」が「自力でソレダル全域を掌握した」と主張。一方、ロシア国防省は11日、精鋭の空挺(くうてい)部隊が主力になっていると指摘した。米シンクタンクの戦争研究所は9日、プリゴジン氏の意図について「戦果を繰り返しアピールし、国内でワグネルの評価を高めようとしている」と分析した。 こうした中、ショイグ国防相は11日、ウクライナ侵攻を統括してきたスロビキン総司令官の交代を決定。制服組トップのゲラシモフ参謀総長が新たな総司令官として「特別軍事作戦」を指揮することになった。劣勢でワグネルなどの存在感が高まる中、ロシア軍が主導権を取り戻した上で「決戦」に備える意図があるとみられる。 |
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●外交で止められなかった独裁者プーチン、核使用に踏み切るか? 1/13
2022年2月24日、ロシア軍がウクライナへの軍事侵略に踏み切り、第2次世界大戦後、最大級の侵略戦争となるとともに、国際社会に大きな衝撃を与えた。2014年3月のクリミア併合をはるかに越える「力による現状変更」であり、ウクライナの主権及び領土の一体性を侵害する国際法及び国連憲章への重大な違反行為である。 国連安保理常任理事国であり、核大国であるロシアの侵略に対して、国際法や国連は無力であった。国際社会での孤立を恐れることなく、プーチン大統領はルビコン川を渡ってしまったが、その暴走を止めることはできるのか。 ●外交で侵略は抑止できたか? 2021年10月末より、ロシアはウクライナ国境付近に10万人以上の兵力を集結させ、米国や北大西洋条約機構(NATO)に対して、NATO不拡大の法的保証などを要求した。結果的に両者間の交渉が決裂し、プーチン大統領は軍事侵略という最悪のシナリオを決断した。 一見、この外交交渉がうまくいけば侵略が回避されたかのように見えるが、ロシア側の要求は米国・NATOが決して受け入れることができないものであり、最初から交渉決裂を侵略の口実に利用しようとしたのではないかと思われる。つまり、外交交渉でウクライナ侵略を抑止することはできなかったのである。 私を含めた内外の多くの識者は、プーチン大統領が大規模な侵略という非合理な決断を行う可能性はそれ程高くないと予想していた。なぜなら、十数万の限定兵力でウクライナ全土を軍事制圧することは難しく、国際社会での孤立や制裁など政治的な損失も計り知れないからである。 残念ながら、悪い意味でその予想は外れてしまった。外部の観察者が計算する損得勘定は、プーチン大統領には通じなかったのである。 ●プーチンの強い被害妄想と「思い込み」 一般市民への容赦ない攻撃や頻繁な核使用を示唆する発言など、当初、プーチン大統領は理性を欠いたとの見方も指摘されたが、本人は必ずしも非合理な主体ではない。なぜなら、プーチン大統領には独自の内在的論理があるからだ。 まず、ロシアが「影響圏」とみなす旧ソ連地域に、ロシアが敵視する米国率いる軍事同盟NATOが拡大することは容認できない。しかも、プーチン大統領は、2021年7月に明らかにした論文の中で、ロシア、ベラルーシ、ウクライナは同一の政治空間にあるべきと主張していた。 冷戦時代から続く米国に対する強い被害妄想と、ウクライナはロシアの保護下にあるべきという偏狭な歴史認識が折り重なり、外部からは非合理に見えるロジックがプーチンの頭の中で出来上がった。これが、ネオナチであるゼレンスキー政権からロシア系住民を保護するという軍事行動にたどり着く。独裁者のこうした思い込みを、他者が変えることは簡単ではない。 ●力で暴走を止められるか? 2014年のクリミア侵略と2022年のウクライナ全土侵略には、ロシアから見るとある共通点がある。それは、当時のオバマ大統領と現在のバイデン大統領のそれぞれが、ロシアが侵略しても米国は直接介入しないと早い段階で宣言した点である。 「世界の警察官」を辞めたとする米国にとって、同盟国ではないウクライナを防衛する義務はない。もし、「軍事オプションを含めてあらゆる選択肢がある」とあいまいな姿勢を示していれば、プーチン大統領が2回の侵略を躊躇した可能性はあるだろう。通常戦力で劣勢のロシアからすれば、米国との全面戦争は自滅行為であるからだ。 部分動員を発表した9月21日の演説でプーチン大統領は、「もし我が国の領土保全が脅かされた場合、我々はロシアと国民を守るために、使用可能なあらゆる兵器システムを必ず使う。これはブラフ(はったり)ではない」と述べ、領土防衛の観点から核使用も辞さない構えを見せた。さらに、占領したウクライナ4州を「併合」した上で、戒厳令まで導入した。 ●圧倒的な軍事力を有する米国の対応が鍵に プーチン大統領が核使用に踏み切るかどうかは、最終的に米国の出方をどう計算するかによる。ロシアが核を使用した場合、米国は通常戦力を用いて、ウクライナ領内や黒海上のロシア軍に攻撃を加えるというメッセージを、水面下でロシア側に伝えているとみられている。その場合、それに対するロシア側の報復も予想され、ロシアと米国の全面戦争に発展する恐れがある。 4州の「併合」を宣言した9月30日の演説でプーチン大統領は、「ウクライナにおける戦争はロシアの存亡を賭けた西側との戦い」であるとし、西側を「サタニズム(悪魔主義)」と呼んだ。これに対して、10月6日にバイデン大統領は、「キューバ危機以来、我々は初めて核兵器使用の直接の脅威に直面している。戦術核を安易に使用すれば、アルマゲドン(世界最終戦争)が避けられなくなる」と述べた。 プーチンは核使用に踏み切れるのか、バイデンはそれに報復してロシアとの戦争を決断できるのか、お互いの腹を探り合う心理戦が始まっている。米露間の対立と緊張は、一層深まりつつある。果たしてロシアと事を構える決断を下すことができるのか、その決断を米国民が支持するのか、中間選挙後のバイデン大統領の政治力をプーチン大統領は見極めようとしている。 プーチン大統領の暴走を止められるのは、もはや力しかない。その場合、圧倒的な軍事力を有する米国の対応が鍵となる。米国が参戦の構えを見せてロシアが折れれば、戦争終結の出口が見えるだろう。しかし、ミスカルキュレーション(計算違い)で軍事衝突に至れば、第3次世界大戦や核戦争のリスクが生じる。 冷戦以上に、緊張と分断が極まり、力がものを言う難しい時代に突入したと言えるだろう。 |
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●プーチン大統領「合併のウクライナ地域、状況厳しいところ多い」 1/13
ロシアのプーチン大統領が11日、ロシアが昨年9月末に併合宣言をしたウクライナ地域の状況について「地域によって厳しい」と述べた。 この日、プーチン大統領は生中継された高官会議でこのように指摘した後、「それでもロシアはこの4つの地域の生活をより良くさせるすべての資源を持っている」と強調した。 ロシアはウクライ軍の奪還作戦が成果を出し始めると、9月末にヘルソン州、ザポロジエ州およびドンバスのルハンシク(ルガンスク)州とトネツク州など侵攻後に面積の半分以上を占領した4地域で同時住民投票を実施し、90%近いロシア併合賛成を引き出した。 10月初めにロシア議会と法で4州のロシア編入が確定したが、ウクライ政府はもちろん西側は不法併合だしてこれを認めていない。 プーチン大統領のこうした発言が、11月にヘルソン州、12月にルハンシク州の西端の一部がウクライナ軍に奪還されたことを意味するのか、経済的な困難を意味するのかは明確でない。 プーチン大統領は以前にも4つの併合地域での「困難」を対外的に言及していた。 |
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●中国の“眼鏡”を通して見たロシア・ウクライナ戦争 1/13
12月30日、習近平とプーチンがビデオで会談した。ロシアのウクライナ侵攻について習近平は曖昧な形で懸念を表明し、交渉を通じた解決を求めているが、ロシアを非難することは避け、他方ロシアからの石油購入を増やし、結果的に西側の制裁の埋め合わせをしている。 ロシア・ウクライナ戦争勃発以来、中国人学者達がどう論じているかを分析すると、やはり中国独特の認識が見えてくる。 ●プーチンの国家観を分析する 龐大鵬・中国社会科学院ロシア東欧中央アジア研究所副所長は、ロシアの国家観念の展開を説明し、それが、今回のロシア・ウクライナ間の衝突と密接に関係があると論じた。ロシアの国家観と、西側の価値観が対立し、そのことが衝突の重要な原因だとする。「ウクライナ危機は一つの国家の問題ではなく、冷戦後の世界の基本矛盾の展開の産物である」と主張する。 ロシアには伝統的に国家について独特な認識を持つ“国家学派”があり、それは西側とは異なる。プーチンは政権初期の2003年に“大欧州”の理念を提唱したが、それは失敗に終わったという歴史も説明する。 龐大鵬は、プーチンが“文化主権”を重視することも注目している。西側からの文化侵略、そして「カラー革命」を防ぐことが重要であり、「ウクライナ問題は文化主権の危機とロシアは見ている」。 趙会栄・中国社会科学院ロシア東欧中央アジア研究所ウクライナ室主任も、「カラー革命」、NATO拡大へのロシアの懸念に触れ、ユーラシアの主導権を追求するロシアとグローバルな覇権を追求する米国の間にあって、ウクライナが西側陣営に加入し独立を求めることに、ロシア・ウクライナ衝突の主要矛盾があると主張する。 米国はこの衝突を「最も積極的に扇動した者」、「衝突から最大の利益を得た者」であり、ウクライナは「衝突の最大の被害者」とする。 龐大鵬も趙会栄も、プーチンの考え方を「ロシアの考え方」として説明しようとしている。プーチンが「カラー革命」を恐れているのはその通りだろう。それは中国が“和平演変”(武力によらない政権転覆)を恐れるのと共通している。しかしプーチンの考え方が、どれだけのロシア人により支持されているのかは説明していない。 ●ウクライナの国家建設の困難さから中国が引き出すべき教訓 劉顕忠・中国社会科学院ロシア東欧中央アジア研究所研究員は、ウクライナの歴史を概観し、宗教、文化、言語などが様々で、国民文化と呼べるものも形成されておらず、国としてのアイデンティティを確立することに困難があると主張している。 ウクライナにおいてロシア語、ロシア文化を圧迫・排斥し、ウクライナ化を強行したことは、「法的根拠もなく、(以前から住む)ロシア人その他の少数民族の感情を傷つけ、社会の分裂を悪化させた」と指摘する。 劉顕忠は、多民族国家においては、国家の共通語を普及させると共に、「少数民族の言語・文字も学習・使用できることを尊重・保障する」ことが必要であり、そのことは中国にとっても教訓になると結論を述べる。この結論は、結構なことである。 劉顕忠の論説を読んで読者が疑問に思うであろうことは、それではなぜ国家建設やアイデンティティ確立でいまだに苦しんでいるとされるウクライナ人が、このように団結して戦いを継続しているのかである。それは民主化という過程を通じて、ウクライナの人たちが勝ち得た一つのアイデンティティなのだろう。アイデンティティには様々な要素があり得る。 ●世界秩序への影響と中国の対応 楊潔勉・前上海国際問題研究院院長(楊潔篪前国務委員・元外交部長の弟)は、ウクライナ危機の本質は、米露間のゲーム(賭け事)との認識を述べ、その背景には米国が中国とロシアを攻撃していることがあると述べる。 ウクライナ危機は、国際秩序の根幹たる国家主権と領土の一体性の原則に関わるが、この点について楊潔勉は、ロシアがコソボの先例に言及していることを引用している。コソボがセルビアから独立した際、欧米そして日本はコソボの独立を支持したが、ロシア、中国はコソボの独立を認めていない。 この問題について、コソボに関して、西側が“保護する責任(R2P)”を唱えて、「(セルビアへの)内政不干渉という基本原則が空っぽにした」と楊潔勉は指摘する。この点で、楊潔勉はロシアの主張を支持しているかのようである。 しかしだからと言って、中国はドンバスなどの“独立”や、ロシアによるドンバスなどの併合を認めてはいない。少数民族の独立は、中国にとり扱いが極めて厄介な問題であり、何かを言えば“両刃の剣”となって自分に返ってくる。 楊潔勉は、ウクライナ危機に途上国がいかに対応するかを注目しており、中国としてこれら諸国の行動に二国間、多国間の枠組も通じて、積極的に関与し、グローバル・ガバナンス、国際システム作りに貢献していく意欲を表明している。 このように楊潔勉は、ウクライナ危機を、中国の見方である二極対立と多極化という観点で解釈し説明している。多極化という観点からは、中国は途上国への働きかけを強めていくのだろう。他方、国家主権と領土の一体性の原則については、国連憲章上の大原則を守るために、中国としてどう尽力するのかについて、明確な立場を示していないように見受けられる。 ウクライナ危機が、核拡散、気候変動、テロリズム、海賊、貿易、金融、様々な物資の供給等のグローバル・ガバナンスに悪影響を与えるとの懸念と、対応の必要性を訴える論文も発表されている。その点では協力できることもあるだろうが、中国は自国の経済発展に悪影響が及ぶことをやはり強く恐れている。 更に于遠全・当代中国世界研究院(中国のシンクタンク)院長は、中国の対応が西側から非難されていることに言及し、また徐明棋・上海国際金融経済研究院特別招聘研究員は、台湾問題と結びつける議論に警戒感を示している。 ●中央アジアなど旧ソ連諸国への波紋 鄭潔嵐・上海外国語大学ロシア東欧中央アジア学院講師は、ロシア・ウクライナ戦争が旧ソ連諸国に様々な波紋をもたらしたと指摘している。たとえば旧ソ連諸国からロシアへの出稼ぎ労働者が大量に失業した。物価上昇も経済に打撃である。「中央アジア諸国の指導者の殆どが曖昧な中立の立場をとっており、その理由は理解に難くない」と指摘する。(同じような立場をとっている中国が、中央アジアをそのように評しているのは興味深い。) 更に米国が中央アジアとの関係強化に動いていることも注目している。 中央アジア諸国などの旧ソ連諸国の「政治、経済、安全等各方面の形勢が更に複雑になり、地域が“一体化に逆行する”傾向が増大している」との認識を示し、中国としてこれらの地域の動向への懸念を持っていることを示している。その上で、「ロシア・ウクライナの和平達成を促進するよう国際社会が尽力すべき」との結論を述べる。 ●まとめ 中国は、ロシア・ウクライナ戦争を自分の“眼鏡”を通して、独特に解釈している面がある。(どこの国も、自分の立場から見ていると言えば、そうなのだが。)ロシアの実情、ウクライナの実情についての理解も、我々とは異なる面が少なからずある。 同時に様々な悪影響が中国自身に及ぶことに強い懸念も持っている。 “グローバル・ガバナンス”という言葉を使って、中国として貢献する意欲も表明している。 コロナ禍の下で世界的にコミュニケーションが途絶えがちになっているが、ロシアのウクライナ侵攻という大事件を受けて、その原因や対応などについて意識的に意見交換、認識のすり合わせをしていく必要があると言えるだろう。 |
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●米紙が詳細な調査報道「ロシア軍の“歴史的失敗”はなぜ起きたか」 1/13
ロシア軍のウクライナ侵攻は、ウクライナ軍が1月1日未明、東部ドネツク州マケエフカのロシア軍臨時兵舎を米国製精密誘導ミサイル、ハイマース(HIMARS)で攻撃し、動員兵ら多数の死者を出して越年した。 ロシア国防省は89人が死亡と発表、ウクライナ側は約400人が死亡したとしており、単独の攻撃では最大規模の犠牲者が出た模様だ。兵舎のそばに武器・弾薬が置かれていたため、引火して大爆発が起きたとされる。ロシアのSNSでは、軍幹部の不手際を非難する政治家や元軍人らの書き込みがあふれた。 ロシアのジョーク・サイトでは、「ロシア軍はウラジーミル・プーチン大統領の軍改革のおかげで、ウクライナ領内で2番目に強力な軍隊になった」とする自虐的なアネクドートも登場したが、冷戦期以来、米国と並ぶ強大な軍事力を誇ったロシア軍が予想外に弱かったことは、ウクライナ戦争の大きな謎だ。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」(電子版、12月16日)は、「プーチンの戦争」と題して、ロシア軍の「歴史的失敗」に関するインサイド・ストーリーを報じた。 この調査報道を基に、ロシア軍がなぜ苦戦するのかを探った。 ●パトルシェフ書記らが軍指導部の責任追及 クレムリンの内情に詳しいとされる正体不明のブロガー、「SVR(対外情報庁)将軍」は3日、SNS「テレグラム」で、兵舎攻撃の報告を受けたプーチン大統領が1日夜のオンラインによる安全保障会議で、国防省や軍参謀本部の幹部を口頭で叱責したと書き込んだ。 それによれば、会議では各組織から死者数に関する異なる情報や報告がなされたが、ニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記は、死者・行方不明者312人、負傷者157人という数字を、名簿を添付して報告。「悲劇」の原因を軍指導者に求め、責任者の処罰と人事異動を要求したという。連邦保安庁(FSB)のアレクサンドル・ボルトニコフ長官もパトルシェフ書記の報告を支持し、軍参謀本部の責任を追及、大統領も同調したとされる。 パトルシェフ書記やFSBは、軍指導部がこれまで、実際の損失や苦戦を秘匿し、大統領に虚偽の報告をしてきたことも問題視したと「SVR将軍」は伝えている。ただし、「SVR将軍」の書き込みには、フェイクニュースも少なくない。 攻撃を受けた臨時兵舎は職業訓練学校を改装したもので、ハイマース4発の攻撃で全壊した動画がネット上で公開された。攻撃は1月1日午前零時1分に発生、犠牲者の大半は昨年9月の部分的動員令で徴兵された動員兵だったという。ロシア国防省は、携帯電話の使用を禁止していたにもかかわらず、多数の兵士が携帯を使っていたことで位置が特定されたと説明した。 実際には、ウクライナのパルチザンが事前に施設を特定し、通報していた可能性もあるが、大量の部隊や砲弾を集約させるなど「人災」の要素もありそうだ。 ●米英の特殊部隊も協力か ドネツク州の親露派指導者、デニス・プシーリン「ドネツク人民共和国」代表代行は、自身のSNSで、負傷者のほぼ全員がモスクワなどロシアの他地域に移送され、治療を受けたとし、「仲間の仇を討つ英雄的な行動」を呼び掛けた。プーチン大統領は、負傷者らを救出した6人の軍人を表彰することを決めたという。 ロシアのネット・メディア「ブズグリャド」は、「戦地での携帯電話の使用は強制的に禁止すべきだ。敵はそれによって軍の陣形や位置を探知し、司令部に送信してデータをリアルタイムで特定できる。米英の特殊部隊は通信手段を読み取るシステムを持ち、ウクライナ軍と共有している」とする軍事専門家の発言を伝えた。 ドネツク州親露派のネット・メディア「今日のドンバス」も、軍事専門家の話として、「北大西洋条約機構(NATO)軍は衛星300基以上を保有してロシア軍の動向を追跡し、情報戦で圧倒的に優位に立つ。今回の攻撃は、ウクライナ軍が米軍顧問団と調整し、ゴーサインが出るとすぐに元旦攻撃を実行した」と伝えた。 別の「ドネツク人民共和国」幹部は、「州の占領地には、頑丈な建物や地下室のある廃墟が多数あり、部隊を分散させるべきだった」とし、ずさんな部隊配備を決めた責任者の処罰を要求した。「マケエフカの悲劇」は、ロシア軍に多くの教訓と反省を残したようだ。 一方、ロシア国防省は8日、ロシア軍が報復として、ドネツク州クラマトルスクのウクライナ軍臨時兵舎を攻撃し、600人を殺害したと発表したが、ウクライナ政府は全面否定した。各国のメディアもこの攻撃を確認しておらず、ロシア側は「報復攻撃の成果」を国内にアピールする必要に迫られたようだ。 ●地図は1960年代、武器マニュアルはウィキペディア ウクライナ侵攻後のロシア軍のずさんな戦闘ぶりは、「ニューヨーク・タイムズ」紙の調査報道に山のように紹介されている。同紙は、ロシア軍や当局者の数百通のメールや文書、侵攻計画、軍の指令、捕虜の証言など大量の情報を集め、「世界最強の軍隊がなぜ、はるかに弱いウクライナ軍に惨敗を喫したか」を描いている。 同紙によると、ロシア軍は緒戦で古い地図や誤った情報に基づいてミサイル攻撃を行い、ウクライナの防空網は驚くほど無傷だった。ロシアが誇るハッカー部隊のサイバー攻撃も失敗に終わった。ロシア兵の多くは携帯電話を使って家族らに電話したために追跡され、攻撃の餌食になった。ロシアの航空機は次々に撃墜されながら、危機感もなく飛行を続けた。 ロシア兵はわずかな食糧や弾薬、半世紀前のカラシニコフ銃、1960年代の地図を持ち、過密状態の装甲車に載せられて移動。使い方を知らない武器の説明書代わりにウィキペディアを印刷して戦場に赴いたという。 ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍旅団の兵士は同紙のインタビューで、「部隊の中には、これまで銃を撃ったことがない者もいた。航空機の援護や大砲はおろか、弾薬も乏しかった。当初は怖くなかったが、砲弾が飛び交い、仲間が倒れる戦場で、いかに自分たちが騙されていたかを悟った」と話した。 ●1時間前に侵攻を命令 同紙によれば、侵攻計画そのものが杜撰で、ロシア軍は数日内に勝利することを想定、首都キーウで行う軍事パレードを意識し、将校らに軍服や勲章を梱包して持参するよう指示していたという。 2022年2月24日の侵攻前、ベラルーシ領内には数万のロシア兵が駐留していたが、ある自動車化歩兵旅団は、駐留は演習目的と聞かされており、前日に指揮官から「明日ウクライナに入る」と指示された。侵攻1時間前に行軍を知った部隊も多く、「前の車両について行き、18時間以内に首都に入る」よう命じられたという。 しかし、巨大な車両の動きは鈍く、道路が荒れ、車列はすぐに詰まった。当時、ベラルーシから一本道を南下する戦車・装甲車両の60キロに及ぶ大渋滞が報じられたが、ウクライナ軍の待ち伏せ攻撃で大量の車両が破壊され、多くの死傷者を出したという。 キーウ北東のチェルニヒウ攻略に向かったロシア軍の中核である3万人の戦車部隊は、森に隠れたウクライナ軍の対戦車ミサイル、ジャベリンの餌食となって隊列がバラバラになり、敗走した。「ロシア軍はウクライナ軍の攻撃の素早さにショックを受けた。チェルニヒウ近郊での敗北が首都包囲作戦を台無しにした」(同紙)という。 ロシア軍は首都近郊のアントノフ空港を制圧し、キーウ攻略の拠点にしようとしたが、空挺部隊のヘリが到着すると、待ち構えたウクライナ軍が米国製の携行型対空ミサイル、スティンガーで次々に迎撃して撃墜。300人以上の空挺部隊が殺害され、空港制圧は失敗した。 ●お菓子や靴下を略奪して喜ぶロシア兵 電撃作戦が失敗すると、ロシア軍は補給という基本的な問題に直面した。長期戦に必要な食糧や水、その他の物資を持ち込んでおらず、兵士らはウクライナの食料品店や病院、家屋に侵入して略奪した。 ロシア軍が制圧した南部ヘルソン州の州都、ヘルソンで、兵士がスーパーや電気店を略奪し、電化製品などを運び出す防犯カメラの映像が世界に報じられたが、ある兵士は日記に、「必要な物資だけ盗む者もいれば、テレビやパソコン、高価な酒まですべて奪う者もいた。お菓子を見つけると、皆子供のように喜んだ」とし、最も価値の高かったのは靴下だったと書いているという。 ロシア軍の中にはパニックに陥り、自滅的な行動に走る者も出た。運転手は戦場に出るのを避けるため、車両の燃料タンクに穴をあけ、走行不能にした。ウクライナ側が押収したT-80型戦車約30両は無傷だったが、調査すると、燃料タンクに砂が混入し、作動不能になっていたという。 ウクライナ側の電話盗聴も効果を挙げたようだ。ウクライナの盗聴担当者は同紙に「ロシア兵がパニックになって友人や親族に電話するのを探知した。彼らは普通の携帯で今後の作戦を決めていた。敵の居場所や今後の行動も分かった」と話した。ロシア人はウクライナ語を解さないが、ウクライナ人の大半はロシア語を理解する。盗聴作戦では女性のチームが活躍したという。 ●黒幕は「メディア王」コバルチュク 同紙は、非合理で無謀なウクライナ侵攻作戦を決断し、命令したプーチン大統領の「狂気」にも肉薄している。 それによれば、プーチン大統領にとって、ウクライナはロシアを弱体化させるため、西側が利用した人工国家であり、ロシア文化発祥の地であるウクライナを取り戻すことが22年間の統治で「最大の未完の使命」と考えたという。 政権に反旗を翻したオリガルヒで元銀行家のオレグ・ティンコフ氏は「22年間、周囲の者が天才だと称賛し続ければ、プーチンもそれを信じるようになる。ロシアのビジネスマンや役人はプーチンの中に皇帝を見た。皇帝の気がおかしくなっただけだ」と指摘した。 同紙は、ウクライナ侵攻で大統領を後押ししたキーパーソンとして、メディアや銀行を牛耳る大富豪のユーリー・コバルチュク氏を挙げている。新型コロナ禍で2020年から隔離生活に入ったプーチン大統領は、欧米指導者とは会わず、居場所も不明で、会議もオンラインで行ったが、コバルチュク氏はこの間も頻繁に会い、「西側との存亡を賭けた戦い」を促したとされる。 保守派の物理学者だったコバルチュク氏はサンクトペテルブルク出身で、1990年代からプーチン氏と親交が深い。ロシア銀行頭取として銀行業をバックに影響力を拡大。テレビや新聞を傘下に収め、「メディア王」と呼ばれる。 ●「西側は弱い」とプーチンに進言 米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」(22年12月2日)も同氏を、「ウクライナ侵攻を後押しした陰の実力者」とし、「2月の侵攻開始以降、コバルチュク、プーチン両氏は頻繁に会っているほか、電話やビデオを通じても連絡を取っている」とする関係者の証言を伝えた。 同紙は「コバルチュク氏はプーチン氏との個人的な関係の深さや世論の誘導で突出した存在だ。戦況が悪化すると、コバルチュク氏のメディア帝国は侵攻を絶賛するプロパガンダを大量に投下し、反政府派を弾圧。懸念を強める国民の注意をそらすなど、政権にとって極めて強力な役割を果たした」と指摘した。 プーチン大統領の愛人とされる元新体操選手のアリーナ・カバエワさんが、コバルチュク氏率いるナショナル・メディア・グループの会長を務めていることも、コバルチュク氏が大統領の最側近であることを示唆しているという。 同紙によると、コバルチュク氏はプーチン氏に対して、「西側は弱く、今こそロシアの軍事力を見せつける時であり、ウクライナに侵攻して国家主権を守るべきだ」と訴えたとされる。コロナ禍とコバルチュク氏の台頭が、プーチン大統領の判断を誤らせたかもしれない。 |
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●ダニエル・シロ 「プーチンの登場は共産主義革命の帰結である」 1/13
独裁者の登場はたいていの革命の帰結であると、アメリカの研究者ダニエル・シロは「誰が革命を望むのか?」において指摘している。歴史から学ぶべき教訓について、仏紙「レクスプレス」がシロを直撃した。 ●問題山積の国で革命が起きる 彼の名前はフランス人のように聞こえ、そして彼の来歴は20世紀ヨーロッパの悲劇的な運命を示している。ワシントン大学でロシア・ユーラシア研究に携わるダニエル・シロは、ロシア系ユダヤ人の両親のもと1942年にフランスで生まれ、6歳のときにアメリカ合衆国に移住した。 彼は独裁政治や、専制主義、ジェノサイドの研究を専門とする。スイスの出版社マルクス・ハラーから出版された『誰が革命を望むのか? ラディカルな理想主義の悲劇』において、歴史上の大規模革命をふるいにかけ、その繰り返されるモチーフを描き出している。始動はリベラルで、急進派に転じ、そして急進性を維持するか、あるいは反動的になる。学識豊かで含意あるこの著作では、過去の知識と同時に現在の教訓を学ぶことができる。 ──なぜ革命に興味を持たれたのでしょうか? 私は、ロシア革命が起こったときにフランスに避難した、ロシア系ユダヤ人の家系の出身です。共産党は、私の祖父の工場を接収しました。私は1942年11月27日にヴィシーで生まれました。トゥーロンでのフランス艦隊自沈の日です(ヴィシー政府による接収に対抗してフランス海軍が艦艇を自沈させた出来事)。 第二次世界大戦が始まると、両親はパリを脱出し、アンドル県の小さな村に身を隠しました。そこなら、ユダヤ人であることを密告する人がいなかったからです。父はドゴールの解放軍に加わってスペインに行き、そのときにフランス風に聞こえる姓を求められたので、シロと名乗るようになりました。私は6歳のときに家族と共にフランスを離れ、アメリカ合衆国に移住しました。 多くのアメリカ人はヨーロッパ人やロシア系ユダヤ人の末裔なので、アメリカ合衆国ではよくある話ですが、この逸話は私が革命の経緯に関心をもったきっかけでもあります。私は東ヨーロッパの歴史を、特にルーマニアの歴史を研究しました。私の最新の著作では、フランス、ロシア、イランなどのいくつもの大規模な革命が、あるいは、アルジェリアのように正当な動機で始められた植民地解放運動が、なぜ上手くいかないのかを解き明かそうとしました。 ──あなたはこの本で、ほとんどの革命を説明する見取り図を提示しています。 一般的に、革命は解決できない問題が山積する国で起こります。フランス革命が典型的な例です。ロシアではもっとひどい状況でした。 イランにおいて、シャー(王)は自国で何が起きているのか理解していませんでした。これはビデオ・インタビューで見ることができます。彼は国民に愛されていると、自分が国民の父であると、イランの政治体制は西欧民主主義よりも優れていると語っていました。王政が転覆する1年前にも彼は同様に語っていました。 インドシナ半島やアフリカでのフランス植民地政策については、1920-30年代に起きていたことに気づいていれば、フランスはもっと上手くやることができたでしょう。しかし、フランス植民地政策は何も変化せず、あとは暴力によって終焉を迎えるだけになりました。 そして、革命が始まると、急進派はつねに穏健派を排除することになります。このことを私は、悲劇的な人生を送ったフランス人将軍の名前を借りて、「ラファイエット症候群」と呼んでいます。 ラファイエットは本当の意味でリベラルで、奴隷制がアメリカにとって良くないとワシントンを説得しようと試みたほどです。彼は君主制維持を望んでいましたがリベラルでした。貴族からは裏切り者とみなされ、左派の共和党からも同様に裏切り者とされました。もし逃亡しなかったら、彼は逮捕され処刑されていたでしょう。その後、彼はオーストリアで5年間収監されました。 ところでヒトラーに権力を握らせたのは誰だったか? リベラル派ではなく、右派です。ヒトラーより急進的ではなかったのですが、右派はヒトラーを利用できて、コントロールできると考えたのです。右派の人々は考えが甘く、命を落とす者もいました。 イランでも同様です。ホメイニ師は初期の革命家たちを、さらには穏健派たちを排除してしまいました。アルジェリアでも同様のことが確認できます。初期のナショナリストたちよりも急進的だったFLNは、よく組織され、唯一暴力行使を厭わなかったので、権力を握ることができました。 いずれにせよ、より強力で、より苛烈だからこそ、急進派は権力を掌握することになります。急進派は戦争のような外部への干渉も利用します。というのも、穏健派も危機に直面したときには急進的な手段を選ぶことになるからです。 ●排除される穏健派 ──フランス革命についての言及が多いのはなぜですか? フランス革命は、ロシア革命など全ての革命のモデルです。多くのロシアの革命家は、フランスの革命家や歴史家の著作を読んでいました。そして、急進派が権力握った際、反動の危機を前にしてどうすれば権力を維持できるのか、理解していました。たとえばスターリンは、もし自らが穏健派だったら1930年代に政治システムが瓦解することを分かっていました。それゆえに彼は人を殺しに殺して権力の座を保ったのです。 フランスでは革命の1年半後に反動が来ました。テルミドールの反動です。こうしたことは、どの革命にも起こりうることですが、たとえばロシアでは、非常に長い時間、70年も経ってから起こりました。権力の座に居ることは、反対勢力の抹殺を正当化します。同じ勢力の者でも、革命を推進できない者はそうなります。 しかしながら、一、二世代後になると、民主的なコントロールを欠いた革命のシステムは腐敗し始めます。フランス革命後の総裁政府は腐敗しました。ソビエト社会主義連邦共和国も、チャウシェスク政権のルーマニアも、現在のイランも同様です。 ──あなたは穏健派の無力を指摘していますが、どういうことでしょうか? 無力というよりむしろ、甘さです。ヒトラーに権力を掌握させた右派は、彼があそこまでのことをするとは考えていませんでした。『我が闘争』には、ユダヤ人を殲滅するか、あるいはロシアを侵略するべきだと、はっきりと書かれていました。しかし、あまりにも信じ難いことだったので、そのことを誰も真剣に受け止めませんでした。理性の信奉者である穏健派には、狂気が勝利を収めることなど想像もつきません。 同じような動きが今日のアメリカの共和党の中に見受けられます。彼らはトランプのような人間が存在して、そのような人間に支配されることなど、信じることができないでいます。さらに言うと、私がこの本を書き始めた頃よりもさらに、アメリカ合衆国は革命に近づいているように思えます。 特に、穏健右派が穏健左派との対話を拒むときに、こうしたことが起きます。このとき、それぞれの陣営は、中道派との妥協を模索するのではなく、それぞれの極論を重視しがちです。 ケレンスキーのケースがそれです。彼は非共産党員の社会主義者で、1917年12月7日からロシア暫定政府を指導していました。右派に支持されたコルニーロフ将軍がサンクトペテルブルクに進軍し始めることは、誰の目にも明らかでした。その対応策として、ケレンスキーはかつて自らが排除した共産主義者たちを動員したのです。 ドイツでも同様です。カトリック党(中央党)が穏健社会主義者と対話をしていれば、ナチス政権は誕生しなかったでしょう。しかし、カトリック党は、自分達の立場により近いと思われる──判断を誤っていましたが──極右勢力を選んでしまいました。今日のヨーロッパでも、同様の危険が確認できます。 ──というと? たとえばフランスです! 穏健左派は、中道派ではなく、極左と組むことを望んでいます。合衆国では、穏健な共和派は、穏健民主派よりも急進共和派を望ましいとしています。中道が消え去るとき、悲劇はもうすぐそこです。 ──穏健派はどのような姿勢をとるべきでしょうか? 急進化に対して断固とした態度をとるべきでしょうか? ひとたび革命の論理が動き始めたら、もう手遅れです。その前に手を打つ必要があります。革命的だとみなされるいくつかの変化は、革命なしでも実現可能です。 たとえばイギリスです。イギリスでは、1800年から重要な変化が起こっていますが、血の海が流れたことはありません。貴族もブルジョワも、新たな社会的手札に適応しなければならないことを分かっていました。この適応に際して、ディズレーリ首相のような穏健右派が重要な役割を持っていました。彼は、社会的要求が過熱する前に、自らの支持層を拡大しなければならないことを分かっていました。 ──あなたは「理想信者たちの専制と空想のユートピア」に一章を割いています。なぜこのような発想に至ったのでしょうか? ロシア/イギリスの哲学者アイザイア・バーリンは、ユートピアとは文字通り「どんな繋がりもない」ことを意味するので、ユートピアが存在し得ないことを見事に示しています。必要に駆られて何かを変えようとすることは望ましいことですが、杓子定規でユートピア的なイデオロギーは権力と暴力なしに実現することはできません。なぜなら常に反対勢力があるからです。 そしてまた、イデオローグたちは、自分たちの計画に信念をもち、自分たちは絶対に正しく、この計画を望まない者たちは間違っていると信じ込んでいます。それゆえ、いつか誰もがこのイデオロギーだけが正しいと理解するだろうから、皆が自分たちに従わなければならない、という訳です。 たとえば中国では、極左のマオイズムは、社会を反映せず、経済危機をもたらし、何千万人もの人を死に至らしめました。毛沢東は自らの理想を諦めるのではなく、自らが正しいと結論を出しました。トロツキーが言うのとは逆に、スターリンは官僚の一人ではなく、革命の信奉者でした。システムが崩壊するのは、信念のない新たな世代が権力の座につくときです。 その意味で、全体主義は宗教の一種です。全体主義は現実世界において、「歴史」という神と、天国とを持っています。それを信じるならば、すべてが可能になります。空想的宗教や全体主義的発想は、神は自分たちの味方だから、自分たちこそが正しいということになります。それに従わない者がいるなら、抹殺されなければなりません。この文脈においてアメリカ独立革命は例外的です。 アメリカ独立革命はフランス革命のようには進展しませんでした。前者は、すでに権力の座にある者によってコントロールされていました。アメリカ人たちは、すでに議会に慣れ親しんでいました。というのは、どのコロニーにもイギリスモデルの議会があったからです。そして、アメリカには出版の自由がありました。権力者は決してコントロールを緩めることなく、革命は急進的なものではありませんでした。 しかしそれは、未解決の諸問題を残さなかったということではありません。奴隷制と人種差別というアメリカの大問題はいまだに存続しているのですから。南北戦争を独立戦争の第二部と考える歴史家もいます。南北戦争では、3000万人の人口のうち、70万人以上の死者が出ました。現代に換算すると、700〜800万人の死者が出た計算になります! ──イギリスのケースを参考にすることはできるでしょうか? なぜ「革命」がこうも上手く進んだのでしょうか? 歴史家たちによると、最初の近代的な革命は1688年の名誉革命だとされています。このとき英国王ジェームズ2世はフランスに逃げ、1701年にフランスで亡くなりました。この挿話は暴力的なものですが、すぐさま議会はコントロールを保ち、君主制は徐々に立憲君主制になっていきました。絶対的な君主制に進んだフランスとは逆方向の動きです。 最初のうちは英国議会もそれほど民主的ではありませんでした。限られた家の者しか投票も立候補もできませんでした。しかし、最初から議会は意見交換と討論の場であり、国家も徐々にそのやり方に適応するようになりました。これが民主主義の特性であり、議論と透明性を認めるからこそ、諸問題に対応することができるのです。 これに対する完璧な反例を見つけるには、今日のロシアを見れば充分です。プーチンは共産主義革命の間接的な帰結です。共産主義革命の帰結は独裁者であり、そして一人の独裁者が全てを決定するとき、決して自らの過ちを省みることはありません。プーチンはまさに今ロシアを破壊しており、仮に戦争に勝ったとしても、ロシアは破壊されてしまっているでしょう。 プーチンはウクライナを侵略するという巨大な過ちを犯しています。ウクライナで実際に起こっていることを、取り巻きの誰も彼に伝えないからそのようなことになっているのです。多くの人が無駄に命を落としています。プーチンを失脚させる必要があります。 習近平も大きな過ちを犯していますが、変わらなければならないと敢えて彼に言う者はだれもいません。彼もまた、台湾を侵略するなどして、国を破滅へと導くかもしれません。あらゆる批判を遮断しているからです。 ──結局、ロシアや中国のような革命は、19世紀の終わりに共和制を選んだフランスのような革命よりも、極端なものではないのでしょうか。 私はそんなにフランスに寛大ではありません。フランスは共和制という安定した政治システムを見出したように見えますが、それほど単純なことではありません。たとえば、ヴィシー政府の件から分かるように、意見の一部は革命を認めず、共和制を抹消しようと目論み、そのような意見が政府内でも思想界でも多くの政治的支持を集めました。1940年代、フランスのリベラルな民主主義は死に絶えました。ナチスが敗北してやっと、フランスはこの傾向から解放されました。 一方ロシアでは、その名に値する議会組織というものが存在したことがないという事実が、今日重くのしかかっています。1993年、ボリス・エリツィンはその政権の初期に、議会の反対にあい、街に戦車を出動させることで対抗しました。 ロシアで唯一の改革者はゴルバチョフでした。幸運、あるいは不運がここにもあります。プーチンが権力の座につくことは避けられないことではありませんでした。 腐敗したエリツィンがプーチンを選んだのは、プーチンが腐敗したサンクトペテルブルク市長の右腕であり、エリツィンには不安の要素が何もない、こうした類の後継者が必要だったからです。プーチンは約束を守りました。政治家の個性も重要です。たとえばベトナムでホーチミンが行使した権力はかなり暴力的でしたが、カンボジアのポルポトの暴力ほどではなく、ホーチミンは理性的な側面も見せていました。 ●取り返しがつかなくなる前に改革を ──民衆の革命的暴力は、過去のことなのでしょうか、あるいは再び出現するのでしょうか? アメリカやフランスは今日でも多くの問題を抱えていますが、18世紀ほどではありません。とはいえ、革命的暴力は、どんな所でも出現しうるということです。 1960年代に私が大学で学んでいたとき、私たちにとっての疑問のひとつが、ナチスによるユダヤ人虐殺が別の国でも起こり得たのか、あるいはそれはドイツ文化の一部なのかということでした。別の国では決してそのようなことは起こり得ないと考える人もいます。 しかし、あらゆる場所で、命令されれば隣人を攻撃するような人間がいるということを、歴史は証明しています。ドイツの歴史はナチズム解説の一助となるでしょうが、どんな国でもこうした極端に走る可能性はあります。 ──現段階で、革命の研究からあなたはどのような教訓を引き出しますか? 改革を望むなら、取り返しのつかない状況になる前に行う必要があり、そして革命に至らないようにするということです。フランスはその良い例です。1789年以前にも、特に税収システムにおいて、改革の可能性はありました。改革が必要な時に、改革を遅らせたり、妨害してはなりません。エリートたちがしばしば理解していない重要な点です。 同時に、エリートたちが自信を失って、周囲の状況を変える意志を完全になくしてしまう事態も避けるべきです。これは、貴族が啓蒙主義の思想を受け入れながらも、変わろうとしなかったフランスやロシアで見られたことです。 最後に具体的事例を挙げましょう。今日、西欧諸国は重要な問題に直面せざるを得ません。移民の問題です。もし、穏健派が移民を真剣に取り上げなかったら、ますます多くの人々が不満を募らせ、極端な方向に向いてしまう危険があります。私たちの国にはトランプがいて、あなたの国にもトランプに相当する人物がいるのですから。 |
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●激戦地 負傷兵の収容中... ロシア側は「全域を制圧」 1/13
ウクライナの戦場を走る、装甲兵員輸送車。ボロボロになった建物の近くに止まった。車体には、赤い十字マークが。すると、建物の中から、けが人が運び出された。砲弾が飛び交う中、傷ついた兵士を収容する瞬間。けが人を乗せて、荒れ果てた街の中を走っていると、すぐ近くで爆発が。ここは今、最も激しい戦闘が行われている東部ドネツク州の街ソレダル。 プーチン大統領の側近・プリゴジン氏は、「われわれは、ソレダル全域を制圧した」という声明を出した。ソレダルには、プリゴジン氏がトップを務める軍事会社「ワグネル」の兵士たちが、大量に動員されている。 一方、ウクライナ側は、制圧報道に反発。 ゼレンスキー大統領「われわれの部隊はソレダルを守り、ロシアに大きな損失を与えている」 情報戦が繰り広げられる中、ロシア側に動きがあった。現場の最高司令官スロビキン氏が、突然交代。事実上、解任させられた形。代わって、その地位に就いたのが、ゲラシモフ参謀総長。 戦況が思うようにいかないロシア。プーチン大統領としては、制服組のトップを戦場に送る異例の人事で、軍の士気を高めようと決断したとみられている。 |
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●プーチン氏5期目へ大統領選の準備着手 ロシア紙報道 1/13
ロシアの有力紙コメルサントは13日、ロシア大統領府が2024年3月の次期大統領選に向けた準備に着手したと報じた。ウクライナへの軍事侵攻を続ける中、現職のプーチン大統領が出馬することを前提に予定通り実施するという想定だ。戦況の大幅な悪化や内政の混乱が起きなければ、プーチン氏の5期目の当選は確実とみられる。 大統領府(クレムリン)に近い複数の情報筋の話として伝えた。クレムリンの内政部門が、次期大統領選に向けて専門家たちとの協議に入った。まだ事前協議の段階で、どのような政治方針で臨むかも未定だ。 コメルサント紙によると、ロシアの次期大統領選は24年3月17日に投票される見通しだ。23年12月に上院の決定により公示される。前回、18年3月の大統領選では、プーチン氏は公示直前の17年12月6日に出馬を表明した。24年の次期大統領選への出馬はまだ明言していない。 ロシアでは20年7月の憲法改正を問う国民投票の結果、大統領任期について「通算2期」と定める一方、これまでの任期は適用外とした。これにより、首相在籍期間を除いて、00年からすでに合計4期20年近く大統領職にあり、独裁的な権力を持つプーチン氏が5期目を目指す出馬が可能になった。 大統領選に向けた内政上の今後の焦点は、22年に実施を見送られた大統領の年次教書演説と23年秋の統一地方選だ。軍事侵攻の戦況や有権者の意識を見極めつつ、大統領選の圧勝をどう演出するかがクレムリンの課題となりそうだ。 |
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●ウクライナ戦争で浮上する朝鮮戦争型「休戦案」は実現不可能 1/14
ウクライナでは、東部のドネツク州で激しい戦闘が繰り広げられている。ロシアが、民間の軍事組織ワグネルを使って、ウクライナ側の拠点バフムトの掌握をねらって攻勢をかけ、近郊の町ソレダールを掌握したと主張している。 ロシアのショイグ国防相は、ゲラシモフ参謀総長をウクライナ軍事侵攻の総司令官に任命した。参謀総長が総司令官というのは極めて異例のことである。国防省は「遂行すべき任務の範囲が拡大したことに対応し、部隊間の緊密な協力を進めるため」としているが、ロシア軍の作戦が上手く行っていないことの表れだという意見も西側にはある。 また、航空機関連の調達が遅れていることについて、プーチン大統領がマントゥロフ副首相兼産業貿易相を叱責し、迅速に対処するように指示したことをロシアのメディアが伝えている。 欧米から供与された最新鋭兵器を使って反撃するウクライナ軍の前に、ロシア軍は劣勢に立たされている。今後、東部での戦闘がどのような展開を見せるかを注視したいが、停戦への可能性を見出すのは困難である。 ●朝鮮半島型の休戦シナリオとは 戦線が膠着する中で、ウクライナのメディアが8日に伝えたところによると、ウクライナのダニロフ国家安全保障・国防会議書記は、ロシアが朝鮮戦争の「休戦」協定のようなものを提案してくる可能性があると述べたという。 ダニロフは、「ロシア人は今、何でも思い付くだろう。提案してくる可能性があるシナリオの一つが『38度線』であることは、確実に分かる。最近、韓国人と話したのだが、彼らは譲歩したのは間違いだったと考えている。今も(北朝鮮)問題を抱えている」と発言している。 要するにこれは、東部のドネツク、ルガンスク、南部のヘルソン、ザポリージャの計4州については、プーチンはロシア領と宣言しており、ウクライナを分割して、残りの領土をウクライナ領とする分割案にならざるを得ないだろう。もちろん2014年に併合したクリミアはロシア領のままである。 これは、朝鮮半島が38度線で分断されて、北朝鮮と韓国という二つの国家が対峙している状況を念頭に置いている。 ダニロフはまた、プーチンの側近であるコザク大統領府副長官が、水面下で欧州の政治家と接触しており、現状維持を前提に、譲歩案も示していると述べた。 ウクライナ、ロシアともに完全な勝利を収めることが難しいまま、お互い多大な犠牲を払い続けるよりは、とりあえず戦闘を凍結する「休戦」にすることで、実質的に戦争を終結させる朝鮮戦争方式は、確かに双方に一定のメリットがあるとも言える。 またダニロフの情報がどこまで正しいのかは不明であるが、ロシア軍の侵攻から来月で1年が経過する時点で、停戦の可能性について、ロシア、ウクライナ双方から様々な観測気球が打ち上げられるのは当然である。 このダニロフの発言に対して、ロシアのペスコフ大統領報道官は、9日に、ダニロフのいう朝鮮半島方式の提案はデマだと否定した。 朝鮮半島型の停戦という発想であるが、そもそも朝鮮戦争とはどのようにして勃発し、またどのような経緯で「休戦」したのかをしっかりと把握しておく必要がある。 ●米ソに分割占領された朝鮮半島 第二次大戦終結時に、朝鮮半島は、ドイツと同じように、米ソで分割占領された。戦後の国際秩序をめぐって、スターリンはアメリカとの関係に最大の注意を払わねばならず、過度にアメリカを刺激することは避けた。 その慎重さの理由は、ソ連がアメリカには力で対抗できないという現実を直視したからである。そこで、スターリンはアメリカに負けない国力、とりわけ軍事力を持つことに腐心する。 金日成は、1930年代後半から満州で中国軍と共に抗日闘争を行っていたが、1940年秋にソ連領の沿海州に逃亡し、ハバロフスク近郊でソ連軍による教育・訓練を受けた。 日本の敗北後、1945年9月に金日成はソ連の軍艦で北朝鮮に帰国し、1946年2月、北朝鮮臨時人民委員会を設置し、委員長に就任する。1年後の1947年2月に、これが正式に北朝鮮人民委員会となり、臨時政府となった。 朝鮮半島の南は米軍が占領し、アメリカに亡命していた李承晩が帰国し、アメリカの後押しで、大統領として1947年3月に大韓民国臨時政府を樹立した。 南北間では、小規模の武力衝突が頻発したが、米ソ両国とも本格的な戦争は望んでおらず、駐留していたソ連軍は1948年末、米軍は1949年夏には朝鮮半島から撤退する。 これをチャンスと見た金日成は、武力統一を敢行しようとするが、スターリンは承認しなかった。 ●朝鮮戦争勃発 ところが、1949年10月1日に中華人民共和国が誕生し、さらには翌年の1月、アチソン米国務長官が、アメリカの「不後退防衛線」の範囲の中に朝鮮を含めないと述べたために、スターリンは慎重論を転換させ始める。 このアチソン声明の後、スターリンは、金日成の南への侵攻準備を了承する。4月には、金日成がモスクワを訪問し、スターリンと共に詳細な侵攻の計画を立てるが、スターリンは金日成に対して、中国が北朝鮮の侵攻に賛成する必要があると述べた。そのため、金日成は5月に毛沢東を訪ね、毛沢東は、アメリカが介入すれば、中国も北朝鮮に軍事支援を行うと約束した。 こうして、1950年6月25日、北朝鮮は北緯38度線を越え、韓国に侵攻したのである。 ●国連安保理を欠席したソ連 北朝鮮の進撃は進み、釜山にまで到達する勢いであったが、金日成とスターリンにとって誤算だったのは、アメリカが迅速に対応したことである。 6月27日、国連安保理は緊急会議を開く。ソ連は、共産党政権の中華人民共和国ではなく、国民党政権の中華民国を中国の代表とする国連に抗議して、この年の1月から安保理をボイコットしていた。安保理は、北朝鮮を侵略者と認定して非難し、軍事行動の停止と撤退を求める決議を可決した。ソ連には拒否権があり、出席していたら、この決議案は通らなかったはずである。 スターリンが、マリク国連大使に「安保理に出席し、決議案に反対せよ」という指示を出さなかったのはなぜか不明であるが、70歳を超える独裁者は正常な判断力を失っていたようである。しかし、粛清を恐れて誰もスターリンに反対することはできなかったのである。 この点は、今回のウクライナ戦争と大きな違いで、安保理にはロシアは欠席せず、常任理事国として拒否権を発動し、国連を機能不全に陥らせていることは周知の事実である。 朝鮮戦争に話を戻すと、7月7日、国連安保理は、アメリカを中心に、イギリス、フランス、オランダ、オーストラリア、ニュージーランド、トルコ、タイなど22カ国によって、マッカーサーを司令官とする国連軍を形成し、韓国に派遣することを決議した。派遣された国連軍は緒戦は苦戦するが、何とか釜山を防衛することに成功する。そして、9月15日には、マッカーサーは仁川上陸作戦を敢行する。これに勢いを得た韓国軍と国連軍は、10月になると38度線を越え、北朝鮮に進撃し、20日には平壌を陥落させた。 ●中国参戦 このような状況を見て、10月13日、スターリンは金日成に対して、ソ連への亡命すら提案したのである。そして、毛沢東の中国を参戦させることが反転攻勢に繋がると考えたが、毛沢東にすれば、ソ連の支援のない形で参戦すれば、リスクが大きすぎる。そこで、毛沢東は周恩来と林彪をソ連に派遣し、1月11日にスターリンと会談させ、中国は参戦を決めていないと言わせ、ソ連の支援を引き出そうとした。結局スターリンは、ソ連が航空支援することを約束し、毛沢東に参戦を促したのである。 毛沢東は、朝鮮半島の状況を慎重に検討し、参戦したほうが有利だという判断を固め、10月12日の夜の政治局緊急会議で、参戦を決定する。 10月19日、毛沢東は中国人民義勇軍を参戦させ、鴨緑江を越えて反撃に出た。中国軍の猛攻を受けて、国連軍は後退し、12月には平壌、さらに翌年1月にはソウルまで制圧される状況となった。マッカーサーは全力で反撃し、3月にはソウルを奪還し、中国・北朝鮮軍を38度線まで押し返した。その状態で戦況は膠着状態となった。 マッカーサーは、戦況を打開するために、中国国内への爆撃や原子爆弾の使用を提言するが、トルーマンは第三次世界大戦を引き起こすことを危惧して、その提案を容れず、1951年4月にマッカーサーを全ての軍のポストから解任した。 そして、休戦交渉を開始するが、長い交渉の結果、1953年7月27日、休戦協定が調印された。この年、アメリカでは1月にアイゼンハウアー政権が誕生し、3月5日にはスターリンが死去したが、それも休戦への弾みとなったのである。 ●二つの戦争の比較 朝鮮半島方式の停戦というが、朝鮮戦争とウクライナ戦争はその中身が大きく異なる。 第一に、ソ連の承認の下、北朝鮮が半島統一を目指して南に侵攻したのと、ロシア自らがウクライナに侵攻したのとは違う。朝鮮戦争のときには、韓国と共に米軍を中心とする国連軍が戦っている。また、途中から中国が北朝鮮側に参戦している。 NATOは武器支援はするが、自らは参戦しない。戦争の参加者の構成がそもそも違う。 第二に、朝鮮戦争の場合、1950年6月に始まり、1953年7月に休戦に至るまで3年間も戦闘を続け、38度線で膠着状態となったが、ウクライナの場合、東部戦線においても、まだそのような状態には至っていない。ウクライナは西側からの支援が続く限り、戦い続けることができる。国民の士気も盛んである。ロシアにしても、劣勢に立たされているとはいえ、継戦能力はまだ維持している。それに核兵器も保有している。 第三に、核の選択については、朝鮮戦争の場合、トルーマン大統領が、マッカーサーを解任することによって阻止した。ウクライナ戦争では、クリミア奪回まで戦うというゼレンスキーを誰が解任、あるいは翻意させることができるのか。 朝鮮戦争の場合、1953年に国連主導の休戦提案が出ると、韓国の李承晩大統領は、「停戦反対、北進統一」を唱え、休戦に反対した。しかし、国連は彼を無視し、国連軍や米軍と対立したため、孤立してしまった。その結果、休戦を受け入れざるをえなくなったのである。 休戦協定は、韓国政府代表が署名しないまま、国連軍と米軍の代表、中朝連合軍の代表が署名して成立した。 一方、今のロシアでは、プーチンを解任できる権力がない。ロシア兵の犠牲がさらに増え、国民の不満が爆発するまでにはまだ時間がかかる。アフガニスタンにソ連軍が侵攻したときには、撤兵まで10年間が必要だった。 第四に、指導者の交代である。朝鮮戦争停戦のきっかけとなったのは、トルーマン政権からアイゼンハウアー政権への交代、それにスターリンの死である。プーチンもゼレンスキーも健康状態は不明だし、具体的な暗殺計画があるのかどうかも分からない。そのような不確定な情報を根拠に休戦の可能性を判断すべきではない。 以上の相違点を見ただけでも、朝鮮半島型の解決は無理である。ウクライナ戦争の終結には、別の道を探る必要がある。 |
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●既に「詰んでいる」プーチン・ロシア、戦争終了後に考えられる2つの展開 1/14
戦闘開始から1年と経たずに追い詰められ、誤算が続くロシア。核のボタンを握る孤独な独裁者が指導する大国は、これからいかにして未来を切り開くことができるのか。西側諸国はプーチン後のロシアをどのように扱えばいいのか──。『この世界の問い方 普遍的な正義と資本主義の行方』(朝日新書)を上梓した社会学者の大澤真幸氏に聞いた。 ──本書の中で、「プーチンは、ヨーロッパへの劣等感やルサンチマンを持っている」「ヨーロッパを選んだウクライナに、ロシアが見ているのは、否認し、斥けようとした自分の姿である」こう書かれています。ロシアのウクライナ侵攻には、日本人には見えにくい国家が抱える心理的な葛藤があるという印象を受けました。改めて、なぜロシアがウクライナに侵攻したと考えますか。 大澤真幸氏(以下、大澤): この戦争がどうして起きているのかということを考えてみると、プーチンが意識している問題と、プーチン自身にも十分に意識されていない無意識の衝動の2つがあるように思います。 まず、プーチンが意識している問題には、ロシアが抱えるヨーロッパに対するコンプレックスがあります。 我々は単純に「ロシアもヨーロッパの一部である」と考えがちですが、ヨーロッパの中にもヨーロッパというアイデンティティの密度や濃度があり、西に行けば行くほど、そして、イギリスに近い場所ほど、よりヨーロッパであるという感覚があります。 宗教にしても、ヨーロッパにはカトリックがあり、カトリック以上にプロテスタントの世界ですが、「我々が最も先進的である」という意識がヨーロッパにはあります。 「俺たちだって本当のヨーロッパなのに」と思いつつ、現実には「そこに追い付いていない」という実感をプーチンは持っています。ですから、ヨーロッパに対して憧れを持つと同時にルサンチマンを抱えている。 ヨーロッパの中にいるのに、その中で一流国と見なされていない。本当は一流国として見てほしいという本音があるように思えます。 さらに、最もヨーロッパっぽいところが新大陸に移植されてアメリカとなり、ヨーロッパ以上に威張っている現実もある。 そして、ロシアには自分たちは「大国である」という意識があります。自分たちは大国で、自分たちこそが本物のヨーロッパなのだ、という大国ナショナリズムをプーチンは背負っている。 このような前提がある中で、ロシアはウクライナが気に食わない。 ●スネ夫に裏切られたジャイアンなプーチン 大澤: ウクライナには自分たちが大国であるという意識はなく、ロシアにつくか、ヨーロッパにつくかという選択を迫られてきました。ロシアは「ウクライナはもちろんロシアを選ぶ」と思っていた。 ところが、ウクライナの中では長い間、揺れる気持ちがあり、「ヨーロッパの方に向かった方が良さそうだ」という結論に至った。 ロシアからすると、スネ夫に裏切られたジャイアンのような心境です。「お前は絶対に俺を裏切らないと思っていたのに」という本音がある。こうなるとジャイアンは、のび太以上にスネ夫が憎い。 ここまでが広く周知されているロシアの状況ですが、さらにその根底に、こういった状態を生み出す無意識の情動がある。 ここから先は、アメリカの政治学者サミュエル・ハンチントンが唱えた「文明の衝突」という概念が手掛かりになります。 西側ヨーロッパ、ビザンチンのような東側のヨーロッパ、イスラムや中華文明など世界は様々な文明で分割され、文明圏同士が対立するという考え方です。 しかし、「文明の衝突」というビジョンだけでは、国家が国家に侵略戦争を仕掛けるという状況の説明にはまだ不十分です。ここに資本主義から生じる対立というものがあり、これを昔のマルクス主義者たちは「階級闘争」と呼びました。 「文明の衝突」に「階級闘争」が加味されている、というのが現在の状況だと私は考えます。 ロシアは西側の先進国と比較すると貧しく、西側諸国の価値観の中では階級的には冷遇されている。このことに対する反発を、文明の衝突という構図に紛れ込ませプーチンは利用している。 ですから、今日の戦争はロシアとウクライナの争いではなく、もっと大きな対立です。ただ、ロシアとヨーロッパの闘いなのかというと、そればかりでもなくて、ロシアは最終的にはヨーロッパの抱える理念と闘っている。 ●ウクライナ戦争後に考えられる2つの展開 大澤: これは単なる領地や国境線をめぐる争いではなく、例えば、平和、人権、民主主義、対等な処遇やフェミニズムといった進歩的な理念と闘っていると見るべきです。だからこそ、ウクライナにも大勢の応援が付いてくる。 ロシアには西側の理念に対して「それはお前たちの理屈だろ」という相対主義的でポストモダンな姿勢がある。 プーチンの周りには哲学者や歴史学者のブレーンがいて、自分たちのビジョンを主張するために理論武装してきました。プーチンは決して遅れた封建主義の人間などではなく、やはり侮れない存在です。 ──ロシアはウクライナ侵攻以降、日に日に追い込まれて、取り返しがつかないほど多くのものを失っているように見えます。戦争がどのように決着するかはまだ予想がつかないところですが、ロシアはこの戦争を経て、西側と距離を縮める方向を選び、グローバル市場に復帰することを望むのか、権威主義的な閉じた政治を今まで以上に徹底しようと考えるのか、どちらでしょうか。 大澤: このまま何となく戦争が終息していくというシナリオは一般的に考えてもあり得ないと思います。ロシアの置かれた状況は、将棋に例えるならば「もう詰んでいる」状態で、どう逃げたところで玉は詰まされる。 私はこの先、2つの展開が想定されると考えています。 1つ目の展開は占領統治です。ロシアが今のような体制だと、この先も何が起こるか分からず危険がある。だから、日本が受けたような占領統治を行う。時間をかけてロシアの生態を作り直す。このようなやり方をイメージする人は少なくないでしょう。 ロシアのダメージがどこかで決定的となり、これ以上の戦争の継続が困難となった段階で、全面降伏に近い状態に至り、そこから10年ほどロシアは占領統治される。 冷戦後に放っておいたら今のようなロシアになってしまったので、次は「よきにはからえ」と放っておくわけにはいかない。徹底的に、日本以上に、厳しい占領統治をしなければならない、という考え方です。 しかし、これはたいへん難しいと思います。 ●新しいロシア革命に必要なビジョン 大澤: よく言われることですが、占領統治が成功した例は日本しかありません。あの小さくて、国の体をなしていたか疑問のあるアフガニスタンに対してさえ、占領統治は成功しなかった。多くの時間を費やしたにもかかわらず欧米風の民主主義を導入することができませんでした。ましてやロシアは「自分は大国である」という誇りを持つ国家です。 西側の冷戦後のロシアに対する対応は冷淡でした。「ぼくらの仲間になりたかったら、オブザーバーとして末席に来てもいいよ」といった待遇です。 西側からしたらそれでも歓迎したつもりかもしれません。しかし、ロシアからすると「なんだ、その扱いは」という印象だったと思います。ここでさらに占領統治などということになれば、気持ちよく民主主義を導入とはいかない。いったん受け入れるフリをしたとしても必ず強い反動が出ます。 そこで考えられる2つ目の展開は、ロシア国内からプーチン政権を倒す運動が出てきて、西側がそれをバックアップしていくというものです。 この時に重要なのは、この運動の持っているポテンシャルです。目の前のプーチンを倒すことが目標では足りません。「また新しい権威主義体制ができました」ではダメなのです。 自分たちの体質を変える市民革命がロシアの中から発生し、これが世界の政治秩序さえ変えていくようなビジョンを打ち出す必要がある。 グローバル資本主義にも大いに問題があり、ロシアの抱える階級闘争もその中から生まれてきたもので、欧米の価値観に賛成できないたくさんの国々をロシアが代弁して闘ってきた側面もある。 ですから、現在の資本主義的な経済秩序を乗り越えるための暗中模索の動きがロシアから新たにスタートして、何十年もかかる世界永続革命の始まりのようなものになれば、ロシアの置かれた状況は「詰んでいる」から「まだ詰んでいない」となり、いくらでも展開を新たに生み出していくことが可能になります。 ●新生ロシアから生まれる新秩序 ──それはつまり、ロシアの中でプーチンを倒す新しい流れが始まり、西側や世界がその動きをバックアップして、今の西側よりもある意味ではよい、あるいはもっと新しい価値観が生み出される、ということがロシアのいい形での生き残り方であるということでしょうか。 大澤: そうです。私たちはついつい西側がよくて、それに歯向かう愚かな国があるという図式で現状をとらえがちです。しかし、必ずしもそうではなくて、西側自体にも問題があり、今日のロシアの状況は西側の抱える問題とも連動している。だから、かなり多くの国が西側と一緒になってロシアを叩くことを拒否しているのです。 西側にも乗り越えなければならない問題がある。ですから自分たちを見直し、より良い秩序を構築するためにも、新しい革命がこれからロシアから起きた時には、西側を含めて世界がそれを支えていく必要があるのです。 |
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●プーチン氏、5選へ準備 ゼレンスキー氏も再選目指すか 1/14
ロシア紙コメルサント(電子版)は13日、同国の大統領府が2024年3月の大統領選に向け、プーチン大統領(70)の陣営が5選の準備を始めたと報じた。ウクライナ政府高官も年末の段階で、ゼレンスキー大統領(44)の再出馬を期待する意向を表明していた。両国が戦闘収束の見通しを立てられない中、大統領周辺が共に来春の選挙をにらんだ情報発信を本格化させている。 コメルサント紙に語ったロシアの当局者によると、大統領府の内政担当者は次期大統領選に関連し、専門家との協議を始めた。ロシアでは9月に統一地方選が予定されていることから、プーチン氏の陣営は与党がどの程度の支持を得るのかを見極め、大統領選に臨む方針を固めていく意向とみられる。 ロシアの独立系世論調査機関レバダセンターの調査では、22年2月にウクライナ侵攻を始めた後、プーチン氏への支持率は70%台後半〜80%台前半で推移してきた。ただし多くの国民が率直な回答を避けてきた側面もうかがえる。そのためウクライナでの戦況が悪化し、支持率が如実に低下する場合、プーチン氏が出馬を見送る可能性も残されていそうだ。 00年に初当選したプーチン氏は首相に横滑りしていた期間(08〜12年)を除き、大統領の座に就いてきた。20年には大統領任期に関する憲法条項が修正されており、通算4期目の今任期を終えても、次も出馬できる。 ウクライナでは、イエルマーク大統領府長官が22年12月末、国内のテレビ番組に出演した。ロシアとの戦闘を指揮してきたゼレンスキー氏について「(独立を達成した後の)過去30年間で最も優れた大統領だ」と称賛。本人とは24年春の大統領選への出馬の有無を話し合っていないとしながらも「(ゼレンスキー氏が)この国に更に貢献できると信じている」と述べた。 19年大統領選では7割の票を得て当選したゼレンスキー氏だが、その後は内政を混乱させたことなどもあり、支持率が20%を切った時期もあった。しかしロシアから侵攻を受けた後は、国民の先頭に立ち抵抗してきた姿勢が評価されており、各種の世論調査では8〜9割の支持率を記録。この後は戦況を見極めながら、再出馬の有無や表明する時期を判断するとみられる。 1991年にソ連から独立したウクライナだが、長い間、社会と経済の混乱が続いてきた。結果として、94〜05年に務めた第2代大統領のクチマ氏を除き、大統領経験者で再選した人はいない。ゼレンスキー氏が再選に成功すれば、四半世紀ぶりに2期目を務める大統領になる。 |
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●国民が戦死する一方で...ロシア高官の子供が、ドバイや米国で「贅沢休暇」 1/14
ロシアがウクライナへの本格侵攻を開始した際、ロシア高官たちは口を揃えて欧米諸国を激しく非難していた。だがそうした高官たちの息子や娘が、紛争が始まってからも北大西洋条約機構(NATO)加盟国を含む諸外国を頻繁に訪れ、優雅な休暇を過ごしていることが、その証拠となる写真とともに明らかになった。 これは、ロシア語の独立系ニュースメディア「ザ・インサイダー」が調査したもの。同メディアはセルゲイ・ナルイシキン対外情報局長官、セルゲイ・ショイグ国防相、ウラジーミル・ジャバロフ上院外交第1副委員長など、同国高官の子供と関係のある人物のインスタグラムアカウントを分析した。 その結果、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が昨年2月24日にウクライナへの本格侵攻を開始した後も、一部のロシア高官の子供がイタリア、ギリシャ、トルコ、アメリカなどのNATO加盟国で休暇を過ごしていたことがわかった。 ナルイシキンの娘ベロニカのインスタグラムアカウントは非公開だが、ザ・インサイダーは彼女の親友であるビクトリア・コソラポワが撮影した休暇の写真を分析。2人は頻繁に一緒に旅行をしているという。コソラポワは、ロシアでは禁止されているはずのインスタグラムに、トルコやイタリア、ギリシャで撮影したベロニカとの写真を投稿していた。 ナルイシキンは昨年7月、NATOが「ロシアと、その同盟国であるベラルーシに対してハイブリッド戦争を仕掛けている」と非難していた。 ●国防相の娘はドバイで優雅な新年 ナルイシキンはまた、ロシアがウクライナを攻撃したのは、ウクライナを「脱ナチス化」し、「ネオナチ」の指導者を権力から排除するためというクレムリンの主張を繰り返してきた。同年4月には、国防省が発行する雑誌のウェブサイトに掲載された記事で、欧米諸国は「ナチス」の支配下に置かれる危険性があると主張した。 「(欧米諸国の覚醒は)欧米諸国において、国家志向で分別があり、現実主義の政治家が権力を握ることではなく、紛れもなく完全にリベラル・ナチスの独裁政権が樹立されることによって終わる可能性がある」とナルイシキンは述べた。 ザ・インサイダーは、ショイグ国防相の娘クセニアがドバイで豪勢に新年を迎え、ホテル「シーザーズ・パレス・ドバイ」に滞在していたことも明らかにした。 さらに、ジャバロフ上院外交第1副委員長の息子のアレクサンダーは最近、休暇でトルコとアメリカを訪れていた。ザ・インサイダーは、「(親のジャバロフが)『親米』の反対派を暴露していた時、息子のアレクサンドルはアメリカを旅行していた」と指摘している。 アレクサンドルは2021年8月に、妻とサンフランシスコとロサンゼルスを訪れ、過去数カ月の間にトルコとドバイも訪問しているという。 |
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●ロシア軍、東部ソレダル制圧と主張 雇い兵組織やウクライナと食い違い 1/14
ロシア軍は13日、長く戦闘が続いていたウクライナ東部の町ソレダルを制圧したと主張した。ロシアの攻勢にとって「重要な」一歩だとしている。 ロシア軍報道官は、ソレダル制圧によって戦略的に重要なバフムートへ軍を進められるようになるほか、ウクライナ軍を孤立させられると説明した。 ロシア政府による声明としては、これは非常に自信にあふれた、野心的なものだ。 一方、ウクライナ当局はソレダルでの戦闘は続いているとしており、ロシアがかく乱用の「雑音」を情報として出していると非難した。 ソレダルでの戦闘は、この戦争でも特に多くの犠牲を出している。 戦争前の人口が1万人と比較的小さなソレダルが、戦略的にどれほど重要な場所なのかについては、異論がある。しかし、仮にロシア軍による制圧が確認された場合、ロシア政府にとっては大きな安心要素となる可能性が高い。 ソレダルでは、ロシア軍と民間雇い兵組織「ワグネル・グループ」が互いに、ソレダル攻略は自分たちの手柄だと主張しており、縄張り争いが起きている。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9日、ソレダルには「生命はほとんど残っていない」、「すべての壁が残っている建物はない」と述べた。まるで世界の終わりのような光景で、町はミサイル攻撃によって傷を負い、ロシア兵の死体が転がっていると語った。 13日の演説でも、ソレダルでは引き続き激戦が続いていると述べたが、ロシア側によるソレダル制圧の主張については触れなかった。 現地ドネツク州のパヴロ・キリレンコ知事によると、15人の子どもを含む559人の民間人がソレダルに留まり、移動することができない状態だという。 ソレダルが町として比較的小さいことから、ロシア軍にとっての重要性は、軍事アナリストの間でも意見が分かれている。米シンクタンクの戦争研究所 (ISW)は、ロシアがソレダルを制圧した可能性は高いとした一方で、ここからバフムートを包囲できるとは思えないと述べた。 それでも、ロシアのソレダル制圧が確認されれば、ロシア政府はそれを前進、あるいは勝利と捉えるとみられる。 そしてそれこそ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に必要なことだ。ロシア軍によるウクライナの町制圧は昨年7月以降、途絶え、それ以来ロシア軍は屈辱的な敗北を続けている。 ウクライナは昨年、反撃を成功させ、北東部ハルキウ地域からロシア軍をほぼ撤退させた。10月にはロシア本土とクリミア半島を結ぶケルチ橋を攻撃し、11月には南部ヘルソンからロシア軍を追い出した。ヘルソンは、ロシアがこの戦争が始まってから唯一、制圧していた州都だった。 こうした中、ソレダル制圧はロシア国民と冬の戦線にいるロシア軍にとって「朗報」となる。 しかし、ウクライナ軍東部司令部のセルヒイ・チェレヴァティ報道官は、ロシアによるソレダル制圧を否定。「戦闘員の戦術的な位置を明らかにしたくないので、これ以上の詳細な説明はしない」とした。 ハンナ・マルヤー国防次官は、戦闘は「一晩中ソレダルで熱く」行われていたと発言。ウクライナ兵は困難な局面でも、「勇敢に防衛を維持しようとしている」と付け加えた。 ●深まるワグネル・グループとの亀裂 西側諸国とウクライナの当局者は、ソレダルとバフムートでの戦闘の大半は、悪名高く残虐な「ワグネル・グループ」が行っていると述べている。 創設者エフゲニー・プリゴジン氏はここ数日、ソレダルにいるのはワグネルの部隊だけだと繰り返し主張している。10日夜には、ワグネルが町を占領したと発言。しかし翌11日には、ロシア国防省がこれと矛盾する発表を行った。 国防省による日々の報告には、ワグネルへの言及がない。13日に報告でも、ソレダル制圧ではロシア軍の空挺部隊が大きな役割を果たしたと述べている。 プロゴジン氏はこれに対し、国防省の報告を読んで「驚いた」という声明を発表した。ソレダルには「空挺部隊は一人もいなかった」と主張し、「(ワグネルの)戦闘員を侮辱」し、「他人の功績を盗む」ことを戒めた。 また、ウクライナでのワグネルの進攻を阻む最大の脅威は「自分の場所に留まりたい役人たち」だと非難した。 国防省はその後に出した声明で、ワグネル戦闘員の戦闘における「勇気と無私の行動」を称賛したが、正規ロシア軍が主役であることを再度強調した。 軍事アナリストらは、ロシア軍とワグネル・グループ間の緊張について長く議論してきた。オリガルヒ(富豪)のプリゴジン氏は公の場で軍高官を批判しており、これには11日にウクライナ侵攻の指揮をとる総司令官に任命されたワレリー・ゲラシモフ軍参謀総長も含まれる。 ロシア軍は9月末以来、30万人の予備役を動員してきた。一方、プリゴジン氏はロシア国内の刑務所で戦闘員を募集しているとみられている。 ウクライナのアンドリイ・イエルマク大統領府長官は、仏紙ル・モンドの取材で、ロシアの犯罪者が前線へ直接送り込まれては死亡していると指摘。 「ソレダルは市街戦になっており、両陣営とも町を制圧したとは言えない」と語った。 |
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●ロシア国防省と民間軍事会社「ワグネル」の対立浮き彫りに 1/14
ウクライナに侵攻するロシアの国防省は東部のソレダールを掌握したと発表しましたが、ウクライナ側はこの地域で防衛が続いていると主張しています。一方で、ソレダールを巡ってはロシア国防省と、戦闘に参加しているロシアの民間軍事会社「ワグネル」との間の対立が浮き彫りになっています。 ロシア国防省は13日、激しい戦闘が続く東部ドネツク州で、ウクライナ側の拠点の一つバフムトの近郊の町ソレダールを12日夜に掌握したと発表しました。 これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は今もこの地域で防衛を続けていると主張しています。 ロシア軍としては、ウクライナ側の反転攻勢に対して軍部への批判が続く中、重要な戦果だと誇示したい思惑もあるとみられます。 一方でソレダールをめぐってはロシアの民間軍事会社「ワグネル」が多くの戦闘員を投入していたとされ、ワグネルの代表で強硬派とされるプリゴジン氏はロシア国防省の発表に先立ってロシア軍の部隊ではなく、ワグネルの戦闘員によってソレダールを掌握したと主張していました。 ロシア国防省が13日に行った当初の発表ではロシア軍の部隊による功績だと強調していましたが、およそ6時間後に声明を改めて出し「戦闘はロシアの多様な部隊によって行われた。ワグネルの志願兵の勇敢な行動によっても達成された」などとしています。 アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は13日「ロシア国防省がソレダールの掌握をめぐりワグネルを参加している部隊として認めなかったため、ロシア国内で大きな反発を引き起こした」として軍部に批判的な強硬派勢力から圧力があったと指摘しました。 そのうえで「今回の発表はワグネルと国防省との間の対立を浮き彫りにしている」としたうえで、ウクライナへの軍事侵攻でワグネルの代表プリゴジン氏の存在感が増していると分析しています。 |
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●ロシア ウクライナに軍事侵攻14日の動き 1/14
●ウクライナ大統領府「キーウの重要インフラにミサイル攻撃」 ウクライナ大統領府のティモシェンコ副長官は日本時間の14日午後4時半すぎ、現地時間の14日午前9時半すぎにSNSに投稿し「キーウの重要インフラにミサイル攻撃が行われた。詳細は調査中だ」としたうえで、市民に対し、シェルターに避難するよう呼びかけました。NHKの取材班が滞在しているホテルでは日本時間の14日午後4時半ごろ、現地時間の14日午前9時半ごろ、少なくとも3回、「ドーン」という音が聞こえました。これについてキーウのクリチコ市長は「市内で爆発があり対応している。シェルターにとどまるように」とSNSに投稿しました。 ●ゼレンスキー大統領「ソレダール 戦いは続いている」 ウクライナのゼレンスキー大統領は13日に公開した動画で、「ドネツク州での激しい戦いは続いている。バフムトやソレダール、そして東部の町や村をめぐる戦いは続いている」と述べ、ロシアがバフムト近郊の町ソレダールを掌握したと発表するなか、いまもこの地域で防衛を続けていると主張しました。そのうえで、「敵はこの方面で最大の戦力を集中させているがウクライナ軍が国を守っている。ソレダール付近で敵を撃破するために重要な働きをしている部隊に感謝をしたい」と述べました。 ●イギリス政府 ウクライナに主力戦車の供与を検討 イギリス政府が、ウクライナへの軍事支援を強化するため、主力戦車の供与を検討していることが分かりました。スナク首相がウォレス国防相に供与を検討するよう指示し、今後数週間のうちに方向性が示される見通しです。イギリスメディアは、候補となっているのは120ミリ砲を搭載する陸軍の主力戦車「チャレンジャー2」で10両程度の供与が検討されているとしています。イギリスの首相官邸は、NHKの取材に「われわれはこの戦争でウクライナを勝利に導く次世代軍事技術の支援を加速させる。戦車の供与は、形勢を一変する能力をウクライナに与えることになる」と、その意義を強調しています。ウクライナのゼレンスキー大統領は、攻撃力の高い戦車の供与を各国に求めていて、隣国ポーランドは1月11日、保有するドイツ製戦車を供与する意向を表明し、ドイツがこれを認めるかどうかが焦点となっています。一方で、各国の間では攻撃力の高い戦車の供与は戦闘のさらなる激化を招くとして慎重な意見があり、アメリカ、フランス、ドイツは今月、装甲車の供与を表明しています。 ●IAEAグロッシ事務局長 来週ウクライナ訪問 IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は13日声明を発表し、来週ウクライナを訪れ、安全性への懸念が広がっているザポリージャ原子力発電所を巡り、ウクライナ政府の高官と協議を行うと明らかにしました。ザポリージャ原発は施設周辺への砲撃により原子炉の冷却に必要な外部からの電力供給が失われる事態が相次いで起きていて、IAEAは、原発周辺を安全が確保された区域に設定するための協議をウクライナとロシア双方と続けています。グロッシ事務局長は声明で「双方との協議は求められるほどのスピードではないが前進している。すみやかに合意できることを願っている」として協議に意欲を示しました。 ●ウクライナの人権担当者「人道回廊設置でトルコが調整」 ウクライナ議会の人権保護委員会の委員長、ルビネツは、NHKの取材に応じ、今月12日までアンカラで3回にわたり、ロシア議会で人権問題を担当するモスカリコワ氏と協議してきました。ルビネツ氏は、ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領がトルコの仲介で「人道回廊」の設置に合意した場合、ロシア側と詳細を詰めた上で、両国が連絡を取り合う事務所をトルコに設置したいという考えを示しました。ルビネツ氏は「去年の侵攻開始以来、2万人以上の市民がロシアの人質になっている。家族のもとに帰せるようロシア側と協議したい」と話していました。ウクライナでの戦闘が長期化する中、今後、具体的な成果に結びつくのかが焦点となります。 ●米シンクタンク「ロシアはソレダールの重要性を誇張」 アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は12日、ロシア軍がソレダールの大部分を掌握したとみられると指摘する一方で「ソレダールの占領は、軍事作戦上、重要な進展ではなく、バフムトの包囲に即座につながりそうにない。ただ、ロシアはソレダールの重要性を誇張している」という見方を示しています。 ●ウクライナ軍の報道官「ロシア軍はソレダールを掌握していない」 ウクライナ軍の報道官は13日、地元メディアに対し「ロシア軍はソレダールを掌握していない。彼らの発表は事実ではない」と述べ、ロシア側の主張を否定しています。 ●ロシア国防省 ソレダールを掌握したと発表 ロシア国防省は13日、激しい戦闘が続いていた東部ドネツク州で、ウクライナ側の拠点の1つバフムトの近郊の町ソレダールを12日夜に掌握したと発表しました。国防省は、ロシア軍の精鋭とされる空てい部隊が軍事作戦を展開したなどとしたうえで「ソレダールを掌握したことで、 バフムトでウクライナ軍の補給路を遮断し部隊を封鎖できる」と主張していて、バフムトへの攻勢を強めたいものとみられます。ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」は、ロシア軍が新たな町を掌握するのは去年7月以来だと指摘しています。ロシア軍としては、去年の夏以降、ウクライナ側の反転攻勢を受けて劣勢が続き、ロシア国内でも強硬派などから軍部への批判が強まる中、重要な戦果だと誇示したい思惑もあるとみられます。 |
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●“プーチン大統領側 来年の大統領選へ立候補の準備” ロシア紙 1/15
ウクライナでは14日、ミサイル攻撃を受けた東部の都市で少なくとも12人が死亡するなど、ロシア軍は各地への攻撃を強めたとみられます。こうしたな中、ロシアの有力紙は、プーチン大統領側が来年3月に行われる予定の大統領選挙への立候補に向けて準備を始めたと伝えました。 ウクライナでは14日、ロシアによるミサイル攻撃が首都キーウや西部リビウなど各地で相次ぎました。 東部ドニプロペトロウシク州のドニプロでは9階建ての高層住宅が攻撃を受け、ウクライナ軍の幹部は、少なくとも子どもを含めた12人が死亡し60人以上がけがをしていると明らかにしました。 ゼレンスキー大統領は14日に公開した動画で「ロシアによるテロを止めるために必要なものは、パートナーたちが保有している兵器だ」と述べ、さらなる軍事支援の必要性を強調しました。 こうした中ロシアの有力紙「コメルサント」は13日、ロシアの大統領選挙が来年3月に予定通りに行われ、プーチン大統領側が立候補に向けて準備を始めたと伝えました。 プーチン政権に近い関係者の話として伝えたところによりますと、政権の担当者がプーチン氏の立候補に向けて最近、専門家たちと協議を行ったということです。 2000年から大統領を続けるプーチン氏は次の大統領選挙に立候補するかなど、みずからの去就については明らかにしておらず、軍事侵攻が続くなか5期目を目指して来年以降も政権を担うのか、動向に関心が集まっています。 |
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●「裏切り者ではない」 ウクライナ側で戦うロシア人部隊 1/15
ウクライナ側に付いて戦う「自由ロシア軍団」に加わるロシア人にとって、最も重要なのは秘匿性だ。 自由ロシア軍団の正確な人数は機密事項であり、所在が明かされることもなく、声明を出す際には慎重に言葉が選ばれる。 カエサルという仮名を使っている同軍団の報道担当者が、昨年秋にウクライナ軍がロシア軍から奪還したウクライナ東部ドネツク州の村ドリナで取材に応じた。 カエサル氏はロシア語と英語を交えながら、「祖国と戦っているわけではない。(ロシア大統領のウラジーミル・)プーチンの体制、悪と戦っている」と語った。その上で「私は裏切り者ではない。国の行く末を案じる真の愛国者だ」と強調した。 自由ロシア軍団は、ロシアがウクライナに侵攻してすぐに創設され、ウクライナ軍の外国人部隊の一端を担っている。そのエンブレムは、突き上げた握り拳に「ロシア」と「自由」という文字でデザインされている。 カエサル氏によると、同軍団には「数百人」のロシア人が加わっており、2か月間の訓練を経て東部ドンバス地方に昨年5月に配置された。 軍団の兵士の一部は、数か月にわたって激しい戦闘が続いている東部前線のバフムートで任務に就いている。 匿名を条件に取材に応じたウクライナ関係者は、自由ロシア軍団について「士気の高い熟練した部隊で、任務を完璧にこなす」と語った。志願者には忠誠心を確認するため、数回に及ぶ面接や心理テストのほか、うそを発見するといわれるポリグラフによる検査も課されるという。 ●政治的な宣伝工作で役割 自由ロシア軍団の戦争遂行努力における貢献は、戦場以外でより大きな意味を持つと解説するのは、軍事専門家のオレグ・ザダノフ氏だ。 ザダノフ氏は軍団について「戦闘行為に参加するものの、数が少ないために大勢には影響しない」と指摘する。その上で、「その重要性は政治的な側面にある。民主主義や自由を支援し、正しい側で戦うロシア人が存在することを示せるのはウクライナにとって好都合だ」との考えを示す。 ソーシャルメディア上では、軍団は主にプロパガンダ動画を投稿し、数千人の入隊希望者がいるとしている。 サンクトペテルブルク出身で理学療法士として働いていた報道担当のカエサル氏は、入隊したのは政治的な動機があったためだと明かした。 自身を「右派のナショナリスト」と形容するカエサル氏は、プーチン政権は武力でしか打倒することができないと考えている。 カエサル氏は「ロシアは死につつある。地方に行けば、酔っ払いや薬物依存者、犯罪者が目に付くだろう。民衆は苦しんでいる」と訴える。20年もプーチン政権が続いたことが原因なのは明らかだと強調する。 「プーチンを支える体制や政府、側近のすべてが最低だ。敗者であり、地位を悪用した泥棒だ。金や快楽のために生きることにしか関心がない。国家を運営できるわけがない」と断じた。 ロシアが昨年2月にウクライナに侵攻した後、カエサル氏は妻と4人の子どもをキーウに連れて来た。家族がウクライナにいることで自由に発言でき、家族の身もより安全だと考えている。 「家族の皆も爆撃の恐怖におびえ、寒さの中での暮らしを余儀なくされている。だが、私の選択に賛成している」と話した。 |
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●ロシア前大統領「岸田日本首相、米国の随行員のよう…切腹せよ」 1/15
ロシアのメドベージェフ前大統領は14日、日本の岸田文雄首相に対し「米国の随行員としての姿だけ見せている」として切腹だけが彼の名誉を回復できると主張した。 ロイター通信がこの日報じたところによると、メドベージェフ前大統領は岸田首相がバイデン米大統領との会談後に出した共同声明に対する不満を吐露しながらこのように話した。 これに先立ち日米首脳は前日の声明でロシアのウクライナ侵攻に言及し、「世界のいかなる場所においても、あらゆる力または威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対する」と明らかにした。 その上で「ロシアによるウクライナでのいかなる核兵器の使用も、人類に対する敵対行為であり、決して正当化され得ない」と警告した。 これに対しメドベージェフ前大統領は、声明はロシアに対する被害妄想を見せているとし、「広島と長崎の原爆で犠牲になった日本人数十万人に対する記憶を無にするもの」と話した。1945年の第2次世界大戦が終戦間際に米国が日本に投下し多くの被害者を出した原爆に言及したのだ。 メドベージェフ前大統領は岸田首相が米国に謝罪を要求する代わりに「米国の随行員としての姿だけ見せている。こうした恥は岸田が日本に戻って閣議で切腹してこそそそぐことができる」とした。 メドベージェフ前大統領は一時親西側の政治家と見なされたりもしたが昨年2月のロシアのウクライナ侵攻後は激しい言葉を継続しプーチン大統領の友軍の役割をしてきた。 |
●ロシア 新たな総司令官のもとでも大規模ミサイル攻撃 5人死亡 1/15
ウクライナでは14日、ロシア軍によるミサイル攻撃が各地で行われ、東部の都市では少なくとも5人が死亡するなど被害が相次いでいます。ロシアは新たな総司令官となったゲラシモフ参謀総長のもとでも大規模なミサイル攻撃を続けた形で、ウクライナ側は非難を強めています。 ウクライナでは14日、ロシアによるミサイル攻撃が各地で相次ぎ、ウクライナ軍は、ロシア側が撃った38発のミサイルのうち25発を迎撃したと発表しました。 一連の攻撃によって各地で被害が出ていて、このうち東部ドニプロペトロウシク州の知事は、ドニプロの高層住宅が攻撃を受け、少なくとも5人が死亡、子ども12人を含むおよそ60人がけがをしたとSNSで明らかにしました。 また、首都キーウでロシア軍による攻撃が確認されたほか、西部リビウでも重要なインフラ施設への攻撃があったと地元の知事が明らかにしています。 ウクライナでは、先月31日にもキーウなど各地でロシア軍による大規模な攻撃があり死傷者が出ていました。 ロシアは今月11日に軍事侵攻の指揮をとる総司令官となったゲラシモフ参謀総長のもとでも大規模なミサイル攻撃を続けた形で、ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、「このテロに関わったすべての人間を見つけだし、責任を負わせる」とSNSに投稿し、非難を強めています。 一方、イギリスのスナク首相は14日、電話会談を行ったゼレンスキー大統領に対して、追加の軍事支援の一環として陸軍の主力戦車「チャレンジャー2」を供与することを伝えました。 イギリスの新聞テレグラフは「数週間以内に14両が供与される」と報じています。 ゼレンスキー大統領は攻撃力の高い戦車の供与を各国に求めていて、これまで隣国ポーランドとチェコが旧ソビエト製の戦車を供与していますが、欧米製の戦車は初めてです。 これに対し、ロンドンにあるロシア大使館は14日、声明を発表し、「イギリスはウクライナを武装し、紛争をエスカレートさせようとしている。イギリスが率先してとった行動は、他の西側諸国にも自国の戦車をウクライナ軍に提供するよう説得することが目的だ」などと反発しています。 |
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●プーチンの愛人と噂される元清掃員、大富豪になっていた...驚きの資産額 1/15
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の愛人とされるスベトラーナ・クリボノギフが、1億ドルを超える純資産を保有していることが分かったとロシアメディアが報じた。 ロシアの独立系メディア「Mozhem Obyasnit(モーヘム・オブヤスニト)」が、別の独立系メディア「プロエクト」による推定を引用してメッセージアプリ「テレグラム」に投稿した内容によれば、元清掃員であるクリボノギフの純資産は、77億ルーブル(1億900万ドル)にのぼるという。 これに加えてクリボノギフは、ロシア第二の都市であるサンクトペテルブルクに広さ130平方メートルの高級アパートを所有しているとされている。 モーヘム・オブヤニストが入手した記録によれば、彼女がこの物件の所有者になったのは2004年8月。プーチンとの間にできたとされる娘のエリザベータ(またはルイーザ)を出産したわずか数カ月後のことだ。また記録によれば、クリボノギフはこのアパートにある地下駐車場の駐車スペースも所有している。 問題の高級アパートは19世紀半ばに建てられた賃貸物件で、2001年に外観のリノベーションが行われている。不動産会社の目録には、「豊かな緑や花に囲まれベンチや遊び場を備えた、外からは見えない中庭」が特徴だと記されている。 ●銀行やスキーリゾートの共同所有も さらにクリボノギフはサンクトペテルブルク市内に、この物件のほかにも、少なくとも2つのアパートを所有しているという。1つ目は市内を流れる川の中州であるカーメンヌイ島にあるアパートで、2022年の賃貸料は1カ月あたり70万ルーブル(9900ドル)だった。2つ目はフォンタンカ運河のほとりにあるアパートだ。 クリボノギフはさらに、ロシアのプライベートバンク大手「バンク・ロシア」の共同オーナーだとも報じられている。同銀行を支配しているのは、プーチンの盟友であるユーリ・コワルチュクだ。クリボノギフは、この銀行の少なくとも8億ルーブル(1130万ドル)相当の株式を保有しているとされる。 また世界の富豪の租税回避などについて暴露した財務資料「パンドラ文書」によれば、クリボノギフとコワルチュクはソチにあるイゴラ・スキーリゾートも所有している。 クリボノギフは学生時代に経営学を学び、1990年代にまだサンクトペテルブルクの副市長だった頃のプーチンと出会った時には清掃員として働いていた。その後、彼女は2003年3月に娘のエリザベータ(ルイーザ)を出産。当時プーチンはまだ、元客室乗務員のリュドミラ・シュクレブネワと結婚していた。 |
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●ウクライナ侵攻で台頭してきたロシアの民間軍事会社「ワグネル」 組織の実態 1/15
受刑者さえ戦場に送り込んでいるロシアの民間軍事会社「ワグネル」。“プーチン大統領の料理人”の異名をとる人物が創設し、“影の軍隊”とも呼ばれるワグネルとは、どういった会社なのでしょうか。 ●主導的立場で残虐行為 2014年に創設されたワグネルですが、イギリス国防省の分析では、ロシア軍が侵攻当初から支配するウクライナ東部の戦闘で中心的な役割を果たしていたほか、ドイツの調査によると、虐殺のあったブチャでは、主導的な立場で残虐行為を行っていたと言います。また、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、何度も暗殺を仕掛けてきたとも伝えられています。 ●多数の受刑者を戦場に ワグネルは、本来、給料を払って雇った「傭兵」を派遣する会社ですが、ウクライナ侵攻で、ワグネルが投入している5万人のうち4万人が受刑者。現在、激しい戦闘が続くバフムトでは、ワグネルの戦闘員だけで1000人が死亡し、このうち9割が受刑者だといいます。AFP通信によると、ワグネルは、受刑者に対し、最前線で”決死”の前進を命じ、発砲するウクライナ軍の位置をあぶり出すことに利用。いわゆる、捨て駒として受刑者を投入しているというのです。 ●“プーチン大統領の料理人” 代表を務めるのは“プーチン大統領の料理人”と呼ばれるプリゴジン氏です。イギリスのメディアによると、プリゴジン氏は10代のころ、強盗などの罪で10年間刑務所に服役。出所後にホットドッグの屋台を開いて資金を貯め、自分のレストランを構えるまでに成り上がりました。その後、プーチン氏が来店し、繰り返しケータリングを受注する中で、親密な仲になったといいます。2002年には、プーチン氏とブッシュ元大統領との食事会が、プリゴジン氏の経営する水上レストランで催されました。 ●「ワグネル」の由来 さて、その「ワグネル」の名前の由来ですが、ドイツの作曲家ワーグナーのロシア語読みに ちなんだとされています。ワーグナーの「ワルキューレの騎行」。かつて、ヒトラー率いるナチス・ドイツも、戦意高揚に利用したとされます。 ●シリアやアフリカの紛争国へ ワグネルが戦闘を行うのは、ウクライナだけではありません。ロシアが支援しているアサド政権のシリアの内戦では、反体制派を抑え込む役割で暗躍。その後、アフリカの紛争国などにも顧客を広げていったとみられています。 ●世界の中でも特殊な民間軍事会社「ワグネル」 実は、この民間軍事会社、ワグネルだけではなく、アメリカやイギリスなどに、数多く存在します。イラクでは2007年、アメリカの軍事会社「ブラックウォーター」が要人の警護中に銃を乱射。民間人17人を殺害、大きな問題となりました。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は、そもそも、民間軍事会社の主な業務は、警備や物資の補給など、後方支援でワグネルのように、最前線で戦闘に参加するなど、戦争そのものに大きな役割を果たすのは、極めてまれだといいます。ワグネルの問題点として、正規軍ではないため、例えば多数の死者を出しても『戦死者にはカウントされない』ことなどをあげます。プーチン政権は、戦場で大きな犠牲を出したとしても、隠ぺいが可能となります。事実上、ロシアの“影の軍隊”として暗躍する、民間軍事会社。国際社会は、どう対処して行けばいいのでしょうか。 |
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●ロシアの情報収集の実態を聞かされビビる「皆さんの身の安全を」 1/15
歴史学者でウクライナ研究会会長の岡部芳彦氏(49)が15日放送の読売テレビ「そこまで言って委員会NP」に出演。ロシアの情報機関の実態について言及した。 番組では、ロシアのプーチン大統領の料理人といわれる民間軍事会社「ワグネル」グループのボス、エフゲニー・プリゴジン氏について特集した。 プーチン大統領の闇の仕事≠一手に担っているといわれるプリゴジン氏だが、岡部氏は、日本のロシア専門家がプリゴジン氏に関しては歯切れが悪いと指摘。その理由として「ワグネルを取材していた記者が3人、アフリカで殺されている」と紹介し、自身も「今、テレビで話しながら怖くて。ロシアのブラックリストに載っても、ロシアの工作員にポロニウムを飲まされるとか殺されるとかはないと思うんですけど、ワグネルのことを悪く言ったら、僕も危険なのかなというのは頭の片隅にはある」と語った。 岡部氏によると、ロシアの情報機関はそうした発言を訳し、イノスミ≠ニいうウェブサイトに掲載しているそうで、共演者の発言を確認したところ、元外交官で立命館大学客員教授の宮家邦彦氏が5回、作家でジャーナリストの門田隆将氏と元朝日新聞記者で青山学院大学客員教授の峯村健司氏がそれぞれ1回掲載されていたという。 3人の記者の殺害命令はプリゴジン氏が下したとされ、議長の黒木千晶アナウンサーは「おおおお」と身震い。門田氏から「議長も発言、気を付けてよ。新婚なんだから」と呼びかけられると、「皆さんの身の安全を」と答えるのが精いっぱいで、峯村氏は「止めましょうか、このコーナー」と締めくくっていた。 |
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●作戦「計画通り」とロシア大統領 経済情勢安定と強調 1/15
タス通信によると、ロシアのプーチン大統領は15日放映の国営テレビとのインタビューで、ウクライナでの軍事作戦について「肯定的に推移している。全て国防省と参謀本部の計画通りだ」と述べ、順調に進んでいるとの見方を示した。 欧米が武器供与などの軍事支援を続けるウクライナ軍が反撃を強め、戦況は膠着しているとの見方が多い。発言には、批判を受けるショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長への信頼を強調し、ロシア国内の動揺や保守強硬派の不満を抑える狙いがあるとみられる。 欧米の制裁で悪化が指摘される経済情勢に関しプーチン氏は「安定しており、予想したよりはるかにいい」と指摘した。 |
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●子どもが自動小銃の訓練、「Z」の文字でダンス…戦慄の愛国&軍事教育 1/16
〈学校で軍事訓練の経験のある兵士は、経験のない兵士よりはるかに有能だ。平和を望むなら、戦争に備えなければならない〉 昨年末、ロシア紙『イズベスチヤ』の取材に対し与党「統一ロシア」のシュハゴシェフ副議長はこう答えていた。 ロシアが軍事教育を強化している。教育省が昨年まとめた7〜18歳が通う学校向けの新教育プログラムでは、次のような指針がまとめられているのだ。 ・今年1月1日までに各学校の教師は軍事訓練の研修を受講。 ・9月までに自動小銃カラシニコフや手榴弾の投げ方などを生徒に指導。 ・140時間の基礎教練を行い核や化学兵器への対応も学ぶ……等々。 「ウクライナ情勢が影響しているのは明らかでしょう。当初は短期間でウクライナを制圧できると考えていたプーチン大統領の期待を裏切り、欧米の支援によりロシア軍は予想外の苦戦。損害が激しく兵力不足が著しいんです。 プーチン大統領は、慌てて予備役の兵士30万人を動員しました。民間軍事会社『ワグネル』は、レイプ犯など凶悪犯罪者まで投入する始末です。それでも兵力不足を補えない状況なんですよ」(全国紙国際部記者) ●校内のいたるところに「Z」の文字 ロシアでは、愛国教育の徹底にも余念がない。ロシアの独立系メディア『メデューザ』が報じた、小学校の様子は異様だ。 「同メディアが報じた映像には、白、赤、青の3色のロシア国旗を持った子どもたちが映っています。後方の窓には、ロシア語の『勝利のために』の頭文字とされる『Z』のマークが。教師が『プーチン大統領とともに戦いましょう!』と掛け声をかけると、子どもたちがこう叫ぶんです。『大統領のために、国家のために! ウラ〜!(万歳!)』と」(同前) 校内のいたるところに見られるのが、この『Z』の文字だという。子どもたちは『Z』と書かれたシャツを着て、愛国歌『進めロシア』を熱唱。国旗を持って『Z』の人文字を作り、プーチン大統領を讃えるダンスを踊る。 「児童に配られているのは、『平和の守護者』と題したビデオ教材です。女児が国営テレビの司会者に、『特別軍事作戦』(ウクライナ侵攻のロシア側の呼称)について質問するという内容。西側諸国が報じた、ロシア軍によるウクライナ市民への攻撃は『フェイク(嘘)だ』と断じています。さらにウクライナでは、親ロシア派の住民が不当に弾圧されていると主張しているんです」(同前) ロシア情勢に詳しい、筑波大学名誉教授の中村逸郎氏が解説する。 「ロシアの学校で行われているのは、プーチン大統領への洗脳教育です。子どもたちは思考停止状態になり、プーチン大統領にとって都合の良い人間に育てられています。ウクライナがロシアの支配下になれば、同じような教育が行われるでしょう」 プーチン大統領は24年3月の大統領選で、5選を目指しているといわれる。独裁政権が続けば、ロシアの子どもたちはますます思考を停止させられ、泥沼の戦争が支持されることになるだろう。 |
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●プーチン的思考から予想するウクライナ侵攻の行方 1/16
●「死」への不可解なこだわり ロシア国民に厭戦気分が漂ってきているなか、プーチン大統領のまるで狂気に陥っているかのような発言に、非難の声が上がっている。昨年11月25日、ウクライナへの軍事侵攻で戦死した兵士の母親たち20人ほどを相手に、プーチン氏はこう切り出した。 「私たちはみんな、死ぬものなんです。ウォッカを飲み過ぎたり、不慮の交通事故に遭遇したり、いろいろいな死因があります。皆さんの子どもたちの死は、価値のあるものだったのです」 母親たちへの何の慰めにもなっていない、と私は思う。参加者といっても、与党の女性議員や支援団体から動員された人々であり、いわば身内のメンバーで占めていた。でも、画面からはとても重苦しい雰囲気が伝わってくる。みんな、押し黙ったまま。 私はこの席で、プーチン氏が「死」という言葉を連発したことに驚いた。硬い表情からも、「死」への不可解なこだわりが感じ取れるのだ。政治家は国民の命と財産を守ることが責務なのに、プーチン氏は「人間の死は避けられない」と言明し、「息子たちの戦死を諦めなさい」と言わんばかり。私は率直に言って、今回の戦争はプーチン氏の死への恐怖心が引き起こしたのではないかと疑っている。 ●冷水につかって何を想う ロシア国民の7割ほどがロシア正教会の信者であり、プーチン氏も敬虔(けいけん)な信者として知られる。たとえば毎年1月中旬に執り行われる宗教行事「神現祭(洗礼祭)」では、聖堂内や敷地に設置されたタンクに水を満たし、司祭が十字架を浸して十字を描き、水の成聖を行う。この聖水につかるために、信者と同様にプーチン氏も裸で冷水に身を沈めて魂を清める。彼が零下20度の屋外で冷水を浴びるシーンが何度もテレビで放映されたり、カレンダーにも掲載されたりした。 プーチン氏は実質的に約23年間最高権力者の座にあり、「神現祭」は年初に欠かせない宗教行事のようだ。在職中、チェチェン紛争やシリア内戦に軍事介入したり、ロシア新興財閥(オリガルヒ)や野党指導者、ジャーナリストの不審死が続発したり、物議を醸している。真偽のほどは不明だが、プーチン政権絡みの事件ではないかと見られている。恐らく罪の意識を抱いているプーチン氏にとって、神現祭は魂を清め、罪に向き合う大切な行事なのかもしれない。 ロシア正教会はキリスト教の分派であり、ビザンチン帝国を経由して11世紀頃にロシアに流入した。ただ両者が異なるのは、ローマ・カトリックとは死後の解釈に大きな隔たりがあることだ。 カトリックでは死者の霊魂は天国、または地獄に行くことになるが、その両者の間に「煉獄(れんごく)」が存在する。生前の罪の「償い」が不十分だった人たちの霊魂が、煉獄の苦しみという「罰」に清められると、天国に迎えられる。死後に罪への「償い」を成就させる試練の場が用意されており、天国に迎えられるチャンスがあるというのだ。 このカトリックと違って煉獄の場が教義に明示されていないのが、ロシア正教会だ。人間は生きている間に悔い改めないかぎり、天国へは行けないと解されているようだ。死後にどんなに贖罪(しょくざい)を求めても、地獄から脱して天国に渡る橋は架かっていない。だから信者たちは、生前に罪にしっかり向き合うことが大切だと考えている。 70歳になったプーチン氏は、身体的にも肉体的にも衰えを感じ取っているはずだ。ロシア男性の平均寿命は約68歳と報じられており、プーチン氏はかなりの高齢といえる。否応なしに「死」の予兆を感じ取っており、過去を振り返り、そして現実を見つめると、もはや地獄に行く運命にあると覚悟を決めたのだろうか。そのことを、身近な司祭などの誰かがプーチン氏に囁いたのかもしれない。 ●煉獄なき罪人、戦争は「地獄への道連れ」か もはや遠い過去となった2010年1月。プーチン氏と親交のある司祭に、私はこんな質問をした。 「国内では、プーチン大統領を聖人と崇める雰囲気が漂ってきています。スルコフ大統領府第一副長官(当時)は、プーチン氏を神の使者と評しています。あなたは、どう思いますか」 司祭は教会内の静まり返った夜の事務室で、声を荒げた。 「ばかな話だよ。彼を聖人と呼ぶなんて・・・」 司祭はクレムリン内で、プーチン氏と並んで歩く写真を見せてくれた。黒い法衣の胸に金色に輝く十字架を、司祭は手のひらで握り締めている。十字架を、プーチン氏のけがれから守っているかのようだ。 プーチン氏の神現祭への参加は2021年が最後で、ウクライナへの軍事作戦に踏み切る1カ月前の神現祭には参加していない。地獄に突き落とされるであろう、破れかぶれの自暴自棄に陥っているプーチン氏にとって、親米路線に走るウクライナは、ロシアへの裏切りに映る。ゼレンスキー大統領も地獄に引きずり落としてやろうという魂胆かもしれない。プーチン氏はこれまでの多数の蛮行の罪を現世で洗い流すのは無理。だから、ウクライナを巻き込んで自滅への道に突き進んでいるのだろう。ウクライナへの残虐性が、増すばかりの情勢だ。 ●本物の「皇帝」でないなら 今後予想される展開だが、1月末にはロシアが総攻撃を仕掛けるのではないか。この「総攻撃」の中にはキーウ(キエフ)に対する戦術核の使用もあり、首都が殲滅(せんめつ)するのではないかと懸念されている。そのような悲劇でもって戦闘はいったん休止になるが、北大西洋条約機構(NATO)軍がロシア本土に反撃するような事態になれば、まさに第三次世界大戦の開始となる。 その一方で想定されるシナリオでは、ロシア国内で反戦機運が高まり、プーチン政権打倒に市民たちが立ち上がる。民衆が地方の行政府の建物を包囲し、反政府運動がモスクワなどの都市に拡大する。16世紀以降、ロシアでは「皇帝信仰」が民衆の間に広まってきた。本物の皇帝ならば、民衆を不幸にすることはないという考えだ。今回の戦争では戦死者は10万人に及ぶという数字がロシア国内で飛び交っており、犠牲者の増加、さらに経済の疲弊が進めば、プーチン氏は本物の「皇帝」ではないとして全土で暴動が起こりかねない。 ロシア国内の最新世論調査では「反戦」に賛成の回答者が65%に達した。プーチン政権の打倒でもって戦争はストップし、欧米からの軍事支援を受けるウクライナが領土を奪還する。 ただ、ロシアの若者や起業家たちは開戦後、総勢970万人が国外に脱出している。ロシアの労働人口の13%に相当する深刻さであり、2年後には国内総生産(GDP)が30%も激減するとの予測が報じられている。戦後のロシア社会は、「暗黒の時代」を迎える。あまりにも代償の大きな戦争となるであろう。 |
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●2023年油価が示すプーチンの末路、“本能寺の変”は必至か 1/16
●プロローグ マスコミ界を徘徊する神話 「一匹の妖怪がヨーロッパを徘徊している。共産主義という名の妖怪が」 「一つの神話がマスコミ界を徘徊している。石油・ガス収入によりロシアの戦費は問題ないという神話が」 前者は『共産党宣言』(K.マルクス)冒頭の一句、後者は筆者のパロディーです。 筆者は2022年2月24日のロシア軍によるウクライナ全面侵攻開始以来、戦費問題に言及してきました。 しかし、マスコミ界では戦費に言及する報道・解説記事はほぼ皆無で、民間テレビには「ロシアは石油・ガス収入があるので、対露経済制裁措置は効果ない」と解説する経済評論家も登場しました。 ロシア軍は2022年2月24日にウクライナ全面侵攻開始。この原稿を書いている本日1月14日はプーチンのウクライナ侵略戦争から325日目となり、ウクライナ侵略戦争は既に11か月目に入っており、もうすぐ丸一年を迎えます。 本来ならば、ロシア軍の侵攻数日後にはウクライナの首都キエフ(キーウ)は制圧され、ロシア軍は解放軍としてウクライナ国民から歓呼の声で迎えられ、V.ゼレンスキー大統領は追放・拘束され、V.ヤヌコービッチ元大統領を新大統領とする親露派傀儡政権を樹立する予定でした。 その証拠に、露国営RIAノーヴァスチ通信は侵攻2日後、キエフ陥落の予定稿を流すという珍事が発生しています。 ゆえに、ウクライナ侵略戦争の長期化・泥沼化は露V.プーチン大統領にとり大きな誤算となりました。 戦況悪化と正比例するかのごとく、ロシア政治に内包されていた矛盾が次々と顕在化・表面化してきました。 祖国防衛戦争を標榜する現在のプーチン大統領の姿は、大東亜共栄圏を標榜する太平洋戦争末期における旧日本軍大本営末期の姿と瓜二つと言えましょう。 プーチン大統領は2023年1月11日、ウクライナ特別軍事作戦総司令官にV.ゲラーシモフ参謀総長(上級大将)を任命。 S.スロヴィーキン総司令官(上級大将)は3か月で副司令官に降格。戦闘中に総司令官を更迭するのは、戦況が不利に展開している証拠です。 換言すれば、それだけプーチン大統領は追い詰められているとも言えます。 今回の人事異動の特徴は、3人の副司令官が任命されたことです。 O.サリューコフ地上軍総司令官(上級大将)とA.キム参謀次長(大将)も副司令官に任命され、国防省として背水の陣を敷いたことになります。 これでロシア軍敗退となれば、S.ショイグ国防相(上級大将)は解任必至です。 なお、今回国防省権限を強化する戦争指導体制を敷いたことは、「民間軍事会社ワーグナー(実態はワーグナー独立愚連隊)」の突出を嫌ったプーチン大統領の意向を反映しているとの見方も出ていますが、正鵠を射た見解と考えます。 継戦能力の原動力は経済力と資金力(戦費)です。 ロシア経済の規模は小さく(GDPは日本の4分の1程度)、経済は既に弱体化しており、戦費は枯渇しつつあります。筆者は開戦当初より、カネの切れ目が縁(戦争)の切れ目と主張してきました。 ウクライナの大地では今春、日露戦争の奉天会戦、第2次大戦の欧州戦線におけるクルスク戦車戦のような大規模な会戦が展開し、会戦後に停戦・終戦の姿が垣間見えてくるものと予測します。 本稿の結論を先に書きます。 ロシア経済は油価依存型経済構造です。油価の長期低迷がソ連邦崩壊のトリガーになりました。 油価低迷により露経済は破綻の道を歩み、戦費が枯渇・消滅する結果、早晩プーチン大統領は停戦・終戦を余儀なくされるでしょう。 ●第1部 プーチンの夢想 ソ連邦は今から101年前の1922年12月30日に誕生しました。 「強いロシア」を標榜する、旧KGB(ソ連邦国家保安委員会)出身のV.プーチン大統領(70歳)は、2005年4月25日に発表した大統領就任第2期2回目の大統領年次教書の中で、「ソ連邦崩壊は20世紀の地政学的惨事である」と述べました。 本人にとり、偉大なるソ連邦崩壊は20世紀最大の惨事でした。 意味も意義も大義もないウクライナ全面侵攻に踏み切ったプーチン大統領の頭の中には、この偉大なるソ連邦復活の野望が蘇っていたことでしょう。 換言すれば、ウクライナ侵攻は本人の夢想を実現する一つの過程であったのかもしれません。 1917年の「2月革命」(旧暦)で帝政ロシアが崩壊し、ケレンスキー内閣が樹立。その年の「十月革命」でケレンスキー内閣が倒れ、レーニンを首班とするソビエト政権が誕生しました。 その後ロシアは赤軍と白軍に分かれた内戦状態となり、ソビエト連邦は1922年12月30日に成立。 そのソ連邦は1991年12月25日に崩壊し、ロシア共和国は新生ロシア連邦として誕生。 ゆえに2021年はロシア連邦崩壊30周年、昨年2022年はソビエト連邦誕生100周年記念の年になりました。 ロシア軍のウクライナ全面侵攻作戦は2022年2月24日に発動され、原稿執筆時の1月14日は侵攻開始後325日目となりました。 戦争は既に11か月目に入っており、戦闘は長期戦・消耗戦の様相を呈しています。 侵攻開始数日後にはウクライナの首都キエフ(キーウ)を制圧、親露派ヤヌコービッチ元大統領を首班とする傀儡政権が樹立されるはずでした。 しかし、戦争長期化・泥沼化によりプーチン大統領は国内マスコミ統制強化と実質「戦時経済」への移行を余儀なくされ、情報統制された露マスコミ報道にはロシア軍大本営発表があふれることになりました。 プーチン大統領は、戦争でもないのに2022年9月21日には「部分的動員令」を発令。 9月30日にはウクライナ東南部4州を一方的に併合宣言、10月19日にはウクライナ東南部4州に戒厳令を導入。10月22日には、ロシア政府もついに戦争であることを認めました。 これも大誤算で、ロシア軍の苦戦・苦境が透けて見えてきます。 NATO(北大西洋条約機構)東進を阻止すべくウクライナ侵攻開始したのに、逆にフィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請を誘発。 従来は対ノルウェー国境196キロがNATO対峙線でしたが、新たに1272キロのフィンランド国境がNATO対峙線にならんとしています。 これはプーチン大統領の戦略的失敗と言えます。 戦況不利となったプーチン大統領は2022年12月19日、ベラルーシの首都ミンスクを訪問。A.ルカシェンコ大統領に軍事作戦への協力を求めました。 迷走する「プーチンの戦争」は今後どうなるのでしょうか? 来年2024年3月は大統領選挙です。プーチンは再度立候補するのでしょうか? あるいは、信頼できる部下・側近に後を託すのでしょうか? この問題を考える上で重要な出来事が1月13日、隣国カザフスタンで発生しました。 旧ソ連邦時代からカザフスタン共和国の独裁者であったN.ナザルバエフ前大統領は、自分の長女ダリガへの権力継承の繋ぎとして、忠実な番犬を大統領に引き立てました。 番犬を繋ぎの暫定大統領に引き上げる条件として一族郎党の不逮捕特権を確認させたのですが、部下が大統領になると逆に残った権力も剝奪され、長女も権力の座から追放されました。 そして1月13日、本人の名誉称号と家族の不逮捕特権も反故にされてしまいました。 すなわち、家族の投獄も今後あり得るということになります。 隣国カザフスタンの政治情勢を見て、プーチンはますます権力の座にしがみ付くことになるでしょう。 ●第2部 ウクライナ開戦 2022年2月22日の朝目覚めたら、世界は一変していました。 ロシアのV.プーチン大統領(当時69歳/1952年10月7日生まれ)がウクライナ東部2州の親露派が支配する係争地を国家承認したのです。 これは明らかに2015年の「ミンスク合意2」に違反するもので、筆者は即座に、ロシアは今後欧米側からの大規模経済制裁必至と考えました。 方針大転換の日は現地2月21日深夜。 プーチン大統領はロシア安全保障会議を開催して、ロシア高官全員から形式上の賛意をとりつけた上で、上記2地域の国家承認を行う手続きを開始しました。 2月24日には米露外相会談が予定されていました。 その場で次回米露首脳会談の日程が協議・決定されることになっており、2月21日のタイミングでウクライナ東部2州の係争地を国家承認することは無意味でした。 なぜなら、この2州の係争地は既に実質モスクワの支配下にあったからです。 この東部2州国家承認を受け、2月24日に予定されていた米露外相会談は破綻。 それまでのプーチン大統領の対米外交は上手く進展しており、あと1週間我慢すれば、本人の望み通りのものが手に入らなくとも、多くの外交成果が期待できたはずでした。 象徴的な言い方をすれば、「ミンスク合意2」から7年間待ったゆえ、あと7日間待てば、ロシアの歴史に新しい1頁が拓かれていた可能性も十分あったはずです。 では、なぜあと7日間我慢できなかったのでしょうか? 外交交渉が成立・合意すると困る勢力が、プーチン大統領をして係争2地域を国家承認させたことが考えられます。 あるいは、困る勢力とは、畢竟(ひっきょう)プーチン大統領自身であったのかもしれません。 その後、事態は急速に悪化。 米露外相会談が予定されていたまさにその2月24日、プーチン大統領はウクライナ侵攻作戦を発動。ロシア軍は対ウクライナ国境を越えて、ウクライナに全面侵攻を開始しました。 筆者は当初よりロシア軍のウクライナ侵攻はあり得ない・あってはならないと考えていたのですが、筆者の予測は大外れ。結果として、最悪の事態になりました。 原稿執筆時の2023年1月14日はロシア軍が2022年2月24日にウクライナ全面侵攻開始以来325日目となり、ウクライナ戦争は長期化・泥沼化。プーチン大統領にとり予想外の展開となりました。 1月14日のウクライナ大本営発表によれば、ロシア軍がウクライナに全面侵攻開始した2月24日から1月14日朝までの325日間におけるロシア軍戦死者数は累計11万4660人に達しました。 本来ならば、ロシア軍の侵攻数日後にはウクライナの首都は制圧され、短期電撃作戦のはずが長期戦・消耗戦となり、一番困惑しているのはプーチン大統領その人と筆者は想像します。 現地での戦闘は激化しています。 特に、バフムート周辺とバフムート北側10キロに位置するソレダールでは白兵戦の様相を呈しており、ロシア側傭兵部隊ワーグナー独立愚連隊は1月11日、ソレダール制圧を発表。 続く13日には、ロシア国防省が「ロシア軍、ソレダール制圧」と発表しました。 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は戦闘継続を報じていますが、筆者個人的には、ウクライナ側も局地戦に拘泥しないで守備隊を撤退させて勢力温存する方が賢明と考えます。 プーチン新ロシア大統領が2000年5月に誕生した時、彼のスローガンは強いロシアの実現と法の独裁でした。 しかし結果として弱いロシアの実現と大統領個人独裁の道を歩んでおり、プーチン大統領は自らロシアの国益を毀損していることになります。 その結果、対ウクライナ戦争はロシア経済の衰退をもたらし、プーチンの墓標になるでしょう。 ●第3部 ウクライナ戦況 ロシア軍の被害状況 (2023年1月14日現在) ウクライナ侵略戦争は既に11か月目に入り、もうすぐ丸一年になります。 ウクライナ侵略戦争の長期化・泥沼化は露プーチン大統領にとり大きな誤算となり、ウクライナ侵略戦争により、プーチン自身、様々な不都合な真実に直面しています。 ロシア憲法によれば毎年大統領年次教書発表が規定されています。 発表する期間は、大統領就任日からの1年間です。ある民間テレビ報道番組では、「前回の大統領年次教書は2021年4月に発表されたが、22年は未発表です」と解説していました。 しかし、これは不正確です。 2021年4月21日に発表された大統領年次教書は21年度の年次教書ではなく、20年度の教書です。すなわち、21年の大統領年次教書は未発表です。 2022年の大統領年次教書発表も未定です(発表期限は23年5月6日まで)。 毎年中葉に実施されてきた「国民との対話」も2022年は中止となり、毎年年末には恒例の「マスコミ大会見」が開催されてきたのですが、それも中止になりました。 ここで、ウクライナ戦況を概観します。 露軍の自軍被害に関する大本営発表は2022年3月25日に発表した戦死者1351人が最初ですが、ショイグ国防相は9月21日、「露軍戦死者は5937人」と公式発表しました。 この戦死者数自体、もちろんロシア大本営発表の偽情報の類ですが、ここで留意すべきは「ロシア軍戦死者」とはロシア軍正規兵の将兵が対象であり、かつ遺体が戻ってきた数字しか入っていないことです。 ウクライナ軍は毎日、戦況報告を公表しています。もちろん大本営発表ですからそのまま鵜呑みにすることは危険ですが、一つの参考情報としてウクライナ軍発表のロシア軍被害状況は以下の通りです。 なお、露軍戦死者には新たに動員された予備役30万人も含まれているので、総兵力を115万人と仮定すれば、戦死者比率はちょうど1割になります。 戦車は保有数量の4分の1、装甲車は5分の1が撃破されており、ロシア軍の戦闘能力は大きく低下しています。 付言すれば、戦車は4分の3も残っているので、ロシアはまだ十分戦闘能力があるとテレビで語っている軍事評論家がいました。 ロシアは約2万キロの陸路国境線を有し、日本の国土の46倍あり、その国土を5軍管区に分けて防衛しています。 すなわち、戦車総数の中にはサハリン島や千島列島(クリル諸島)、カムチャッカ半島などに配備されている戦車も含まれているのです。 それらの防衛用戦車を算入して、ロシアにはまだ4分の3の戦車が残っているので十分な戦闘能力があると言えるのでしょうか? もちろん、隣国との国境に配備された戦車隊をガラ空きにして、ウクライナに転用するなら話は別ですが。 ●第4部 3油種週次油価推移概観 ここで、2021年1月から23年1月までの3油種(北海ブレント・米WTI・露ウラル原油)週次油価推移を概観します。 油価は2021年初頭より22年2月末までは傾向として上昇基調が続きましたが、ロシア軍のウクライナ侵攻後、ウラル原油は下落。 他油種は乱高下を経て、2022年6月から下落傾向に入りました。 ロシアの代表的油種ウラル原油は、西シベリア産軽質・スウィート原油(硫黄分0.5%以下)とヴォルガ流域の重質・サワー原油(同1%以上)のブレント原油で、中質・サワー原油です。 ちなみに、日本が輸入している(いた)ロシア産原油は3種類(S−1ソーコル原油/S−2サハリンブレンド/ESPO原油)のみで、すべて軽質・スウィート原油ですが、2022年6〜11月は輸入ゼロでした。 今年23年1月3〜6日の平均油価は北海ブレント$77.20/bbl(前週比▲$4.63/スポット価格)、米WTI $74.27(同▲$4.96)、ウラル原油(黒海沿岸ノヴォロシースク港出荷FOB)$41.84(同▲$2.91)になりました。 この超安値の露産原油を買い漁っているのが中国とインドです。 ロシアの2021年国家予算案想定油価(ウラル原油FOB)はバレル$45.3、実績は$69.0。2022年の国家予算案想定油価はバレル$62.2、通期実績は$76.1になりました。 上記のグラフをご覧ください。黒色の縦実線は、ロシア軍がウクライナに全面侵攻した2月24日です。 この日を境として、北海ブレントや米WTI油価は急騰。6月に最高値更新後に下落。12月末で北海ブレントと米WTIは$80を割り込んでおり、油価は下落傾向です。 一方、露ウラル原油は、ウクライナ侵攻前は$90でしたが、侵攻後下落開始。11月中旬には2022年国家予算想定油価を割り、12月末には遂に$40台前半まで実に$50も下落。 欧米はロシア産原油に$60(FOB)の上限油価を設定しましたが、現実は既にこの上限設定価格を大きく下回っています。 ●第5部 露ウラル原油月次油価推移概観 油価下落による損害 次に、過去4年間の露ウラル原油の月次油価推移を概観します。 下記のグラフより明らかな通り、ロシア軍がウクライナ全面侵攻開始した2022年2月の露ウラル原油の平均油価はバレル$92.2でしたが、以後毎月ウラル原油の油価は下落して、12月度は$50.5になりました。 上記グラフより明らかなごとく、ウクライナ侵攻がなければロシアはバレル$90の油価水準を享受していたことでしょう。 政府想定油価が$62.2ですから、ロシア経済は順風満帆のはずでした。 ロシアの原油生産量は約10mbdです(mbd=百万バレル/日量)。ロシアは半分を原油として輸出、残りの5mbdを国内で精製して石油製品(主に軽油と重油)を生産し、そのうちの半分を輸出しています。 油価は、バレル$90から$50まで$40も下落しました。この油価下落がロシア経済にどのような損害を与えているかは算数の問題です。 原油輸出量は5mbdですから、$40下がると1日の損害は5mbd×$40で2億ドルになります。 石油製品も勘案すれば、1日あたりの損害は約3億ドルになり、年間では1000億ドル以上の輸出金額減になります。 天然ガス事情もロシア国庫財政にとり悲劇的な数字になります。 欧州ガス市場は露ガスプロムにとり金城湯池の主要外貨獲得源であり、PL(パイプライン)ガス輸出関税(FOB金額の30%)は露石油・ガス税収の大黒柱でした。 今年2023年1月からはPLガス輸出関税はFOB金額の50%に増税となり、本来ならばガス輸出税収は大幅増収となるはずでした。 付言すれば、露LNG輸出関税はゼロゆえ、露がいくらLNGを輸出しても関税収入はゼロです。 今年の露天然ガス輸出量は1000億立米減少するとの予測が出ています。露国庫財政の大黒柱たるPLガス輸出税収が今、減少・消滅しつつあります。 これが何を意味するのかと申せば、露戦費主要供給源の一つが減少・消滅するということです。 ●第6部 国家予算案概観(2023〜25年) ロシア政府は2022年9月28日、2023〜25年国家予算原案を露下院に提出しました。 ロシア国家予算原案は下院にて3回審議・採択後上院に回付され、上院にて承認後、大統領署名をもって発効します。 ロシア政府は2022年9月28日、露下院に2023〜25年国家予算原案を提出。 11月24日の下院第三読会にてこの原案は可決・採択され、上院承認後、プーチン大統領は12月5日にこの予算案に署名して政府予算案は発効しました。 ロシア政府が9月28日に提出した国家予算原案の概要は下記の通りにて、想定油価はウラル原油です。 2022年の期首予算案は想定油価$62.2で黒字予算案でしたが、ウクライナ戦争により$80でも大幅赤字となりました。想定油価の見通しは$80でしたが、2022年実績は$76.1になりました。 これが何を意味するのか申せば、2022年の赤字幅はさらに拡大するということであり、実際拡大しました。 昨年(2022)12月27日に発表された政府見通しでは油価$80.0で国庫収支案はGDP比▲2.0%でしたが、今年1月10日に発表された政府速報値は22年油価実績$76.1、国庫収支▲3.3兆ルーブル(GDP比▲2.3%)になりました。 付言すれば、ウラル原油の現行油価水準(FOB)は既に$40程度ゆえ、今年の予算原案想定油価$70.1(赤字2.92兆ルーブル)は既に実現不可能な油価水準になっています。 これが何を意味するのかと申せば、2023年露国家予算案の赤字幅は今後さらに拡大する(=戦費減少・枯渇)ということです。 一方、露会計検査院の22年予算案見通しは以下の通りにて、政府期首予算案では国防費3.5兆ルーブル(約500憶ドル)でしたが、実際には4.7兆ルーブル(約670億ドル)にまで膨れ上がるとの見通しです。 露予算案に占める国防・情報・治安費は3分の1になるので、文字通りロシアは戦時経済と言えます。 ●エピローグ 国破れて山河在り 最後に、ロシア軍によるウクライナ全面侵攻とプーチン大統領の近未来を総括したいと思います。ただし、現在進行形の国際問題なので、あくまでも2023年1月14日現在の暫定総括である点を明記しておきます。 筆者の描くウクライナ侵攻を巡る背景とウクライナ戦争の近未来予測の輪郭は以下の通りです。 あくまで推測ですが、ウクライナへのロシア軍関与は当初、ウクライナ東部2州に親露派政権樹立→その政権から治安部隊の派遣要請を受ける→ロシア治安部隊が平和維持軍として駐留する→国民大多数の賛成により併合されるという筋書きが想定されていたと考えます。 これがかつてのソ連邦指導者の思考回路であり、ソ連軍の行動様式にて、この方式で“合法的に”併合したのがバルト3国です。 今回はウクライナ東部2州の親露派が支配する地域の国家承認に始まるウクライナ限定侵攻作戦のはずが、プーチン大統領の妄想によりウクライナ全面侵攻に拡大したと、筆者は考えます。 プーチン大統領によるウクライナ東部2州国家承認と“合法的に”国家併合する期首構想が妄想により膨れ上がり、ロシア軍にとり不利な戦況の中で東南部4州の国家併合・戒厳令まで猪突猛進。 その結果、戦況はますます不利となり、占領地からのロシア軍順次撤退を余儀なくされているのが現実の姿です。 ロシア国内では一部に厭戦気分も出ており、世論調査でも戦争に反対する声が大きくなっています。 国内に戦争反対の機運が醸成され、プーチン大統領の支持率が低下すると、ロシア国内が流動化することも懸念されます。 かつてのロシアの裏庭たる中央アジア諸国でも、ロシア離れが表面化・顕在化してきました。 特にカザフスタンのロシア離れは、既に「The Point of No Return(回帰不能点)」を超えた感じです。 プーチン大統領は従来、外交交渉を重視してきました。 せっかく2022年2月24日に米露外相会談が設定されており、長いトンネルの先に光明が見えてきたまさにそのタイミングで、プーチンはルビコン川を渡ってしまったのです。 プーチンのプーチンによるプーチンのための戦争はプーチン時代の終わりの始まりを意味することになるでしょう。 ウクライナへの軍事侵攻は意味も意義も大義もありません。対ウクライナ全面侵攻に踏み切ったことにより、プーチン大統領はロシアの国益を毀損しました。 今後、プーチン大統領を支えてきた利権集団間の対立が激化・表面化することも予見され、本人の失脚も十分あり得るものと筆者は予測します。 継戦能力の原動力は経済力と資金力(戦費)です。 ロシア経済は既に弱体化しており、戦費は枯渇しつつあります。プーチン大統領は「戦費使用に制限はない」と豪語しました。 しかし戦費使用枠に制限を設けなくても、戦費そのものがなくなれば、「使用制限を設けない」とする政策も無意味となります。 ロシアは戦争している場合ではありません。 油価下落とガス輸出量減少はロシア経済を破綻させるでしょう。ロシア経済再生の道、それは即時停戦・撤退しか有り得ません。 ロシアはプーチン大統領の所有物ではなく、ロシア悠久の歴史の中で彼は一為政者にすぎません。 その一為政者がロシア国家の信用を失墜させ、ロシアの歴史に汚点を残す侵略者になったのです。 換言すれば、ロシアの真の敵はプーチン大統領その人ということになります。 このまま戦争を継続すれば、「国破れて山河在り 城春にして草木深し」となるでしょう。筆者はそうならないことを祈るのみです。 |
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●分断化される世界−2023年はエネルギーと半導体、台湾が火種か 1/16
世界は今、大国間の対立が経済の地図を塗り替えており、企業経営者は増えつつあるグローバルな火種を慎重に回避しながら進むことを余儀なくされている。 ロシアのウクライナ侵攻に伴う激しい戦闘や米国と中国の間の対立エスカレートを受け、世界の国々はどちら側につくか決断を迫られている。天然ガスや半導体など重要な品目の不足を回避しようと取り組んでいる政治指導者らは、新たな経済的優先事項を定めるとともに、自国が支配力を有する商品を国益の追求に活用しようとしている。 グローバルな結び付きがかつてないほど緊密化し、大企業は世界のフラット化に成功したと考えていたが、スイスのダボスで今週開催される世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)に参加する有力企業幹部らにとって、現在の状況はそうした時代からの転換を意味する。 WEFではこうした新たな地政学的リスクを中心に議論が行われる。ロシアのウクライナ侵攻開始以降、エネルギー安全保障が世界的に重視されており、米国は中国による最先端技術へのアクセスを阻止しようと取り組んでいる。そして、台湾有事をはじめとする地域的リスクもある。 コンサルティング会社ベインの「マクロ・トレンズ・グループ」のマネジングディレクター、カレン・ハリス氏(ニューヨーク在勤)は、「われわれの住む世界は、金融の脆弱(ぜいじゃく)性を含め一段と分断化されている。このため誰もが抱いている疑問は、一層多極化された世界において、どこにどのように投資するかだ」とダボスに向かう前に語った。 各国の経済的な国政術によって緊張が一段と高まっている世界において、今年ホットスポットとなりそうな分野を幾つか挙げる。 ●武器化されるエネルギー 米国と同盟国によるロシアとの経済戦争ではエネルギーがその中心にある。双方ともエネルギーを武器化しようとしており、2023年にはさらなる混乱も起こり得る。 ロシアのプーチン大統領は、米国と他の主要7カ国(G7)が発動させたロシア産原油の価格上限に参加する国への原油と同製品の輸出を禁止する大統領令に署名した。現在の上限価格は1バレル当たり60ドル。G7のルールはロシア産原油の輸出価格が同水準を大幅に下回ることにつながっており、ロシアの戦費調達能力を圧迫する可能性がある。 ロシア産原油にはまだインドや中国、トルコといった買い手がいる。ロシアにはさらに、供給を完全に停止する選択肢もある。そうなれば石油市場は大混乱に陥り、世界中でインフレ率を押し上げた昨年の原油価格高騰が繰り返される恐れがある。 原油に限った話ではない。ディーゼルなどロシア産の精製品に対する同様の規制が来月から実施される。欧米当局者の一部は、これが供給不足の引き金になり得ると懸念している。 ロシアから天然ガスを輸送するパイプラインの稼働停止は、世界の供給に大きな穴を開けた。これまでのところ欧州の暖冬がガス不足の深刻度を和らげ、ガス・電力価格は下落している。それでも各国は今年、不足する液化燃料の供給確保に追われることになりそうだ。 ●半導体巡る攻防 電気自動車や弾道ミサイル、新たな人工知能(AI)技術などあらゆるものに不可欠な部品である半導体は、世界経済の最も重要な戦場の一つになりつつある。 バイデン米政権はこの1年間、中国による最先端半導体の購入・製造を阻止するため、輸出規制を含むさまざまな手段を行使してきた。また、製造業の米国回帰のため国内半導体産業向けに520億ドル(約6兆6500億円)の補助金プログラムを立ち上げた。 米国はこうした規制について、中国の軍事力強化を抑止するものだと説明。これに対し中国政府は、同国の経済発展を阻むことを狙った幅広い取り組みの一環だと批判している。いずれにせよ、この規制が機能するには米国の同盟国の協力が必要だ。最先端半導体の製造に必要な装置の有力メーカーにはオランダと日本の企業が含まれており、両国は既に協力に同意した。 米国の規制に従うことはコストを伴う。半導体および同製造装置のメーカー各社は、巨大な中国市場を失う可能性があるためだ。一方、中国政府は自国の半導体産業の育成に多額の資金を投入しているが、自国での最先端技術の開発は恐らく難しく、規制強化の動きに報復することもあり得る。 ●台湾巡る冷戦懸念 米欧の指導者らは、台湾が新たな冷戦における次の前線となり、武力行使に至ることを懸念している。 米国防総省は最近、中国による台湾への軍事的手段の行使が差し迫っている兆しはないと指摘。ただ、昨年8月のペロシ米下院議長(当時)の訪台に強く反発した中国は軍事演習を強化し、領海・領空侵犯を繰り返しており、こうした行為が今後も増えると同省は分析している。バイデン大統領はウクライナへの米軍派遣の可能性は否定したものの、中国が軍事侵攻すれば米国は台湾を守ると明言した。 超大国同士が直接衝突することに伴うリスクに加え、対立には経済的な側面もある。半導体の受託生産世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)を擁する台湾は、あらゆる種類のグローバルサプライチェーン(供給網)に不可欠な存在だ。中国による封鎖など、戦争には至らない程度の緊張エスカレートでも巨大なドミノ効果を引き起こす恐れがある。 中国による台湾侵攻とそれへの西側諸国の対応は、「誰もが備えている不測の事態だ」と、国際金融協会(IIF)のティム・アダムズ専務理事は指摘。「どの企業も、制裁がどのようなものになるか、誰が米国の味方になるかなどについて思いを巡らしている」と語った。 ●「フレンド・ショアリング」と補助 各国政府は、国政術の手段として自国の経済力をてこに国益を追求する姿勢を強めている。攻めの面ではライバル国による製品や市場のアクセスを阻止することであり、守りの面では、信頼できる同盟国に限定して戦略的に重要な製品のサプライチェーンを構築する「フレンド・ショアリング」といった構想だ。 しかし、友とは仲たがいすることもあり、最も友好的な地は自国にある。そのため各国は国内生産業者への補助を増やし、自由貿易の王道から離れようとしており、これはすでに摩擦を引き起こしている。 米国では500億ドル余りの国内半導体業界支援を盛り込んだ法が昨年成立。また、税制改正や気候変動対策を盛り込んだ4370億ドル規模の「インフレ抑制法」には電気自動車業界を支援する税優遇措置が含まれた。こうした措置に欧州は強く反発。米国に拠点を戻すよう促すインセンティブを与える不公正な貿易慣行だとし、対抗手段として独自の財政支援を打ち出す姿勢を示した。 世界的な補助金合戦では最も懐の豊かな国が勝者となり、増大する債務負担に苦しんでいる途上国の経済が敗者となるリスクがある。 ●ドルの支配 ドル以外の通貨でビジネスを行う方法を模索する国が増えており、これは米国と敵対する国に限られた話ではない。米国が外交目標を推し進める手段として自国通貨を活用しようとしていると、これらの国々は見なしているためだ。 バイデン政権は、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン率いる政権を財政難に追い込むため、アフガン中央銀行の準備金のうち約70億ドル相当を凍結した。米国と欧州連合(EU)はロシアの準備金のうち約5000億ドルを合法的に押収しウクライナ復興に充てる方法を探っている。 世界の基軸資産としてのドルを置き換えることは、実現するとしても何年もかかりそうだ。ドルの安全資産としての地位は、昨年のウクライナ侵攻開始後の激動の数カ月間に見られた急伸からも明らかになった。中銀から商品取引に至るまであらゆる分野で定着しており、明確な代替候補は見当たらない。 しかし中国やロシア、イランだけでなく、米国とより友好な関係にあるインドや湾岸諸国などの間でも、ドルを排除した貿易関係を構築する方法が模索されている。中国の習近平国家主席がサウジアラビアを先月訪問し、中国人民元建てのエネルギー取引などが議題となったことは、来るべきことの兆しなのかもしれない。 米国とその同盟国にとってのリスクは2つある。ドルの支配力に依存する制裁措置が威力を失う可能性と、西側諸国以外の国々の間で行われる貿易取引によって主要商品が市場に出回らなくなり、他の買い手にとって価格が上昇しインフレ高進が進むことだ。 シンガポール元外相のジョージ・ヨー氏は先週の会議で、「米ドルはわれわれ全員にとって呪いだ。もし国際金融システムが武器化すれば、それに代わるものが育つだろう」と語った。 |
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●春の地上決戦<Eクライナ大攻勢とロシア苦境 「核のボタン」可能性も 1/16
ロシアとウクライナの消耗戦が新局面を迎えるのか。米欧各国が年初から、ウクライナに戦車など装甲兵器を供与すると相次いで発表した。ロシアはミサイル攻撃を続ける一方、軍幹部の人事などで態勢立て直しを図っている。春にも行われるとみられる「地上決戦」の展望を軍事専門家に聞いた。 英首相官邸は14日、数週間以内に英軍の主力戦車「チャレンジャー2」14両をウクライナに供与する方針を発表した。30両前後の自走砲「AS90」の投入も検討、ウクライナ兵らへの訓練を数日中に開始するという。 ポーランドのドゥダ大統領は11日、ドイツ製主力戦車「レオパルト2」をウクライナに供与する方針を決めた。ドイツの承認が必要となる。 レオパルト2は東西冷戦期の西ドイツで開発され、攻撃力、防御力ともに西側の主力とされる。軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「射撃精度が高く、米国の『M1A2』などと並び、世界最強の戦車といえる。導入されれば、ロシアの主力戦車『T72』などを撃破する能力があり、クリミア半島奪還に向けた反攻も夢ではなくなる」と解説する。 米国は戦車より軽量で機動性が高い「ブラッドレー歩兵戦闘車」50両を含む約30億ドル(約4000億円)の追加軍事支援を発表した。ドイツもマルダー歩兵戦闘車、フランス装輪装甲車「AMX10RC」を提供する。 「歩兵戦闘車は機関砲を搭載し、兵員の輸送と対歩兵攻撃が主任務になる。装輪装甲車は『歩兵戦闘車以上、主力戦車未満』の位置付けだ。105ミリ砲を搭載し、戦車よりも展開の速さが持ち味だ。主力戦車を撃破する能力はないものの、占領地域を取り戻すことに貢献する可能性はある」と世良氏は話す。 ロシア側も兵器の調達は急務だ。プーチン大統領は11日のオンライン会議で、航空機調達の遅れについて「時間がかかり過ぎている」「ふざけているのか」とマントゥロフ副首相を叱責した。 14日にはウクライナ全土をミサイル攻撃し、東部ドニエプロペトロフスク州の州都ドニプロでは集合住宅に着弾した。ゼレンスキー大統領は15日の声明で、15歳の少女を含む30人が死亡したと述べたが、死傷者はさらに増える恐れがある。 ロシア軍は人事面の混乱も目立つ。制服組トップのゲラシモフ参謀総長が侵攻の統括司令官に任命され、昨年10月から司令官を務めていたスロビキン氏は約3カ月で事実上の降格となった。昨秋に作戦司令官から解任されたラピン大佐が陸軍の参謀長に任命されたとの情報もある。 ウクライナ側は春の大規模反攻を示唆している。前出の世良氏は「東部ドンバスや首都キーウなどで地上の決戦が繰り広げられる可能性がある。兵器供与後も訓練に時間を要するため、大規模反攻まで間に合うかが課題だが、ロシア軍の戦力や資源の枯渇も想定され、戦力ではウクライナの優位は保たれそうだ」との見方を示す。 ただ、西側の戦車供与を受けて、プーチン氏が「核のボタン」を押す可能性もあると世良氏は語る。「戦術核使用を決断するなどの懸念は残るが、エスカレーションを十分に留意した上で、米欧が最新兵器の供与など軍事支援を続けるしか方法はないのではないか」 |
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●「非ナチ化」を掲げウクライナ侵攻を続けるロシアから、ユダヤ人が逃出す背景 1/16
ロシアの元首席ラビ(ユダヤ教指導者)が「ロシアで反ユダヤ主義が台頭しつつある」として、ユダヤ人に国外脱出を呼び掛け、世界的に波紋が広がっている。「非ナチ化」と称し、ウクライナ侵攻を続けるプーチン大統領の下、むしろユダヤ人が迫害されるというのは杞憂きゆうなのか。それとも—。 ロシア・東欧のユダヤ人 / 現在のベラルーシ、ポーランド、ウクライナを含むロシア帝国領では、14世紀以降、ユダヤ人の居住が進み、特にベラルーシでは人口の半分をユダヤ人が占める街もあった。一方で社会では反ユダヤ感情も根強く、ソ連誕生直後は指導部に多くのユダヤ人がいたことから「社会主義革命はユダヤ人の陰謀」とのデマも拡散。第2次大戦でナチスによるユダヤ人迫害に加わる住民らもいた。 昨年末、英紙を通じてユダヤ人にロシアから去るよう呼び掛けたのは元首席ラビのゴールドシュミット氏だ。同氏はウクライナ侵攻で社会混乱が広がれば、ロシア国民の不満と憎悪はユダヤ人に向くと予想。キリスト教世界で差別を受けてきたユダヤ人らが「スケープゴート(いけにえ)になる」と懸念した。 ロシアでは昨年2月のウクライナ侵攻後、わずか半年でユダヤ系の約2万500人がロシアから逃げ出した。16万5000人と推定される同国のユダヤ系住民の12%に相当する。 ゴールドシュミット氏によれば、「ロシアの国家権力は政治体制が危機的状況になると、大衆の怒りと不満をユダヤ人社会に向けようとしてきた」という。現在のベラルーシやポーランド、ウクライナを含むロシア帝国の各地では19世紀から20世紀初め、ユダヤ人への集団的迫害「ポグロム」が起きた。英BBC放送はユダヤ人社会の現状について「迫害を受けた歴史の亡霊がよみがえり、人々の心に影を落とした」と分析した。 「自由にモノを言えず、息苦しい。自分の血筋を生かしてイスラエル国籍を取得すべきかも」。こう語るのはモスクワの大学4年、ナスチャさん(仮名)。ロシア正教会の信徒だが、母方がユダヤ系のためイスラエルに逃げることも検討中だ。 ユダヤ人社会が特に問題視するのが、ウクライナ侵攻を「ナチズムとの闘い」とするプーチン政権の政治宣伝だ。 ロシアの前身、旧ソ連は第2次大戦で、ユダヤ人を「ホロコースト」によって虐殺したナチス・ドイツに勝利。プーチン政権も「欧州をナチスから解放したのはソ連」と誇り、愛国心を国民統合の要としてきた。ソ連と続くロシアを「正義と善」、逆らう勢力を「ナチスのごとき絶対悪」とする構図は、ウクライナ侵攻にも活用されている。 ユダヤ人社会は、ウクライナにおけるロシア系住民の境遇を、第2次大戦中のユダヤ人迫害に例えて侵攻を続けるプーチン政権に不快感を抱いているもよう。ユダヤ教はロシアの宗教界で例外的に侵攻への支持を表明していない。 対するプーチン政権はユダヤ民族主義団体の活動停止をちらつかせる。ラブロフ外相も昨年5月、イタリアのテレビ局のインタビューで「(ナチス・ドイツの首領)ヒトラーにはユダヤ人の血が入っている」と発言し、イスラエルのベネット首相が強く反発した。 ユダヤ系のゼレンスキー・ウクライナ大統領はロシアとファシズムを合わせた「ラシズム」との造語を用い、ロシア軍による民間人殺害の非道を訴えている。 |
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●ロシア、核搭載可能なスーパー魚雷「ポセイドン」を初生産=タス通信 1/16
ロシアは核兵器の搭載が可能な(訂正)スーパー魚雷「ポセイドン」を初めて生産した。近い将来に原子力潜水艦「ベルゴロド」に搭載する。 タス通信が16日、匿名の防衛筋の話として報じた。 後にポセイドンとして知られることになる魚雷は、プーチン大統領が2018年に初めて発表。独自の原子力電源を持つ全く新しいタイプの戦略的核兵器と説明していた。 プーチン氏は2018年の演説で、魚雷の射程は無制限になり、潜水艦や他の魚雷の何倍ものスピードで深海を進むことができると発言。 「音は非常に小さく、操縦性が高い。事実上、敵による破壊は不可能だ。今日の世界に対抗できる兵器はない」と述べていた。 |
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●エネルギー危機で絶好調のアルジェリア、ロシアとの武器取引 1/16
アルジェリアはアフリカ最大の天然ガス輸出国。現在は、大国間の対立とエネルギー危機という時代の新局面を利用し尽くそうとしている。 同国のアブデルマジド・テブン大統領は昨年11月、新興国の経済グループBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)への加盟を正式申請した。12月には、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」への参加を延長する協定に署名している。 アルジェリアはロシアのウクライナ侵攻以来、ヨーロッパにとって重要なガス供給国だ。アルジェリアのエネルギー輸出による利益は2020年に約200億ドル、21年には約340億ドルだったが、昨年は500億ドルを超えている。 しかしアルジェリアは、同盟国にロシアとの経済関係の断絶を求めるアメリカから目を付けられている。 「アルジェリアとロシアの関係拡大は、全ての国に脅威をもたらす」。リサ・マクレーン米下院議員は昨年9月にこう述べて、他の26人の議員と共に署名したアントニー・ブリンケン国務長官宛ての書簡を発表した。 「(21年だけでも)アルジェリアはロシアとの間で総額70億ドルを超える武器購入を承認した。この取引でアルジェリアは、スホーイ57を含むロシアの最新型戦闘機の購入に同意した」と、この書簡にはある。 「アメリカは、ウラジーミル・プーチンと彼の野蛮な戦争に対する支援は許されないというメッセージを世界に送る必要がある」 アルジェリアがBRICS加盟を目指すのは、中国やロシアとの貿易関係を維持し、エネルギー輸出国として拡大する経済的機会を守りたいためだ。 中国は13年以来、旧宗主国のフランスに代わり、アルジェリアへの主要輸出国になっている。ロシアはアルジェリアの兵器の約80%を供給。アルジェリアはロシアからの武器輸入額で、インドと中国に次いで世界第3位だ。 中国とロシアがアルジェリアのBRICS加盟申請を歓迎したのは、当然だろう。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、昨年5月にアルジェリアを訪問。 中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は昨年12月にサウジアラビアを公式訪問した際、アルジェリアのエイムン・ベンアブデラフム首相と会談し、さらなる関係強化を誓った。 ただし、加盟への道は簡単ではなさそうだ。 「問題はBRICS加盟国に課される一定の義務を受け入れられるかどうか。一部の法律を共通の基準に調和させる必要がある」と、首都アルジェのモハメド・アブデヌール・ラベヒ市長は昨年12月に語った。しかもBRICSは2010年の南アフリカを最後に、新たな加盟国を受け入れていない。 ●民主化デモが再燃する日 アルジェリアでは軍が実権を握っており、19年に軍の支援を受けて当選したテブンは反政府派を弾圧している。当局は昨年12月、著名なジャーナリストのイフサネ・エル・カディを逮捕し、彼が運営する独立系ネットラジオ局「ラジオM」を閉鎖した。 国内政治的な正統性を欠くテブン政権は、より積極的な外交政策を選択した。外貨収入の約9割を占める石油・ガス輸出の需要が伸びている今、アルジェリアは絶好調だ。 だがこの好景気が終わったとき、国民は19年に起きた大規模な民主化デモのように、再び変化を要求するかもしれない。 |
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●「裏切り者ではない」 ウクライナ側で戦うロシア人部隊 1/17
ウクライナ側に付いて戦う「自由ロシア軍団」に加わるロシア人にとって、最も重要なのは秘匿性だ。 自由ロシア軍団の正確な人数は機密事項であり、所在が明かされることもなく、声明を出す際には慎重に言葉が選ばれる。 カエサルという仮名を使っている同軍団の報道担当者が、昨年秋にウクライナ軍がロシア軍から奪還したウクライナ東部ドネツク州の村ドリナで取材に応じた。 カエサル氏はロシア語と英語を交えながら、「祖国と戦っているわけではない。(ロシア大統領のウラジーミル・)プーチンの体制、悪と戦っている」と語った。その上で「私は裏切り者ではない。国の行く末を案じる真の愛国者だ」と強調した。 自由ロシア軍団は、ロシアがウクライナに侵攻してすぐに創設され、ウクライナ軍の外国人部隊の一端を担っている。そのエンブレムは、突き上げた握り拳に「ロシア」と「自由」という文字でデザインされている。 カエサル氏によると、同軍団には「数百人」のロシア人が加わっており、2か月間の訓練を経て東部ドンバス地方に昨年5月に配置された。 軍団の兵士の一部は、数か月にわたって激しい戦闘が続いている東部前線のバフムートで任務に就いている。 匿名を条件に取材に応じたウクライナ関係者は、自由ロシア軍団について「士気の高い熟練した部隊で、任務を完璧にこなす」と語った。志願者には忠誠心を確認するため、数回に及ぶ面接や心理テストのほか、うそを発見するといわれるポリグラフによる検査も課されるという。 ●政治的な宣伝工作で役割 自由ロシア軍団の戦争遂行努力における貢献は、戦場以外でより大きな意味を持つと解説するのは、軍事専門家のオレグ・ザダノフ氏だ。 ザダノフ氏は軍団について「戦闘行為に参加するものの、数が少ないために大勢には影響しない」と指摘する。その上で、「その重要性は政治的な側面にある。民主主義や自由を支援し、正しい側で戦うロシア人が存在することを示せるのはウクライナにとって好都合だ」との考えを示す。 ソーシャルメディア上では、軍団は主にプロパガンダ動画を投稿し、数千人の入隊希望者がいるとしている。 サンクトペテルブルク出身で理学療法士として働いていた報道担当のカエサル氏は、入隊したのは政治的な動機があったためだと明かした。 自身を「右派のナショナリスト」と形容するカエサル氏は、プーチン政権は武力でしか打倒することができないと考えている。 カエサル氏は「ロシアは死につつある。地方に行けば、酔っ払いや薬物依存者、犯罪者が目に付くだろう。民衆は苦しんでいる」と訴える。20年もプーチン政権が続いたことが原因なのは明らかだと強調する。 「プーチンを支える体制や政府、側近のすべてが最低だ。敗者であり、地位を悪用した泥棒だ。金や快楽のために生きることにしか関心がない。国家を運営できるわけがない」と断じた。 ロシアが昨年2月にウクライナに侵攻した後、カエサル氏は妻と4人の子どもをキーウに連れて来た。家族がウクライナにいることで自由に発言でき、家族の身もより安全だと考えている。 「家族の皆も爆撃の恐怖におびえ、寒さの中での暮らしを余儀なくされている。だが、私の選択に賛成している」と話した。 |
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●西側の武器でウクライナでの戦争が激化とプーチン氏 エルドアン氏と電話 1/17
ロシアのプーチン大統領は16日、トルコのエルドアン大統領と電話会談を行い、西側諸国によるウクライナへの武器の供給が戦争行為を激化させているとの見解を示した。また正教徒にとってのクリスマス期間中の停戦をロシアが提案した際、ウクライナ政府がこれを拒絶したことは同政府の「偽善的政策」の一例だと述べた。 クレムリン(ロシア大統領府)が声明で明らかにした。それによるとプーチン氏は、ウクライナ政府が当てにしているのは戦争行為の激化に他ならないと注意を促し、西側の支援がそれをもたらしていると指摘。武器や軍装備の輸送量の拡大に言及した。クリスマス停戦の提案を拒んだのも、ウクライナ政府による「偽善的政策」の表れだと主張した。 その上で、トルコ側の主導により、ロシアとウクライナ両国の人権委員が捕虜交換の問題について話し合う見通しだと明らかにした。交換はまず負傷者を対象に行われるとしている。 電話会談ではこのほか、ウクライナ産穀物の黒海経由の輸出などに関する一連の合意の履行も議論。その上でロシアとトルコの協力関係を一段と進展させる意向を再確認したという。優先事項としてはロシア産天然ガスの供給など、エネルギー部門での協力を挙げた。 会談の数日前には、ロシアのミサイルがウクライナ東部の都市ドニプロのアパートに着弾し、少なくとも40人が死亡した。 |
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●ロシア動員兵に大量の犠牲、それでも戦争は続く 1/17
ウクライナ東部にあるロシアの仮設兵舎を狙ったミサイル攻撃で、新たに動員されたロシア兵数十人が死亡してから2週間が経過した。しかしロシア国内の多くの人々は、自分たちの親類は生きているのか、それとも死んだのかという問いの答えをいまだに得られていない。 ある36歳の女性は、この兵舎を使っていた連隊の1つに所属していたいとこを探したところ、採用事務所からは彼が任務を行っているとの説明を受けたという。「ニュースを待て」と言われたと、この女性は話す。彼女は現在、病院に電話して、いとこが運ばれてこなかったかどうか尋ねている。 しかしロシア国防省によると、ロシア占領下のマキイウカにおける元日の攻撃で少なくとも89人のロシア人動員兵が殺害されたが、死者の多くの出身地であるロシア南西部のサマラ地域では、ささやき程度の不満の声が聞かれただけだった。サマラでは、ロシア政府の戦争継続の方針に公然と抵抗する人はほとんどいない。開戦から1年近くがたち、これまでに何千人ものロシア兵の命が奪われた。 サマラ出身のこの女性は戦争に反対で、ウラジーミル・プーチン大統領に投票したことは一度もなかったという。しかし、いとこの動員についてどう思うか尋ねると、「私は何も思わなかった。彼は招集されたから、行かなくてはならなかった」と答えた。 女性は「私たちの曽祖父母は第2次世界大戦を経験した。家族に臆病者はいなかった」と話した。 攻撃から影響を受けた人々が示す諦めの態度は、長期戦への備えを固めるロシア政府にとっての強みを浮き彫りにする。プーチン氏は、死者数が増えているにもかかわらず、国内から戦争のコストをめぐる圧力をほとんど受けていない。30万人の男性を動員する彼の決断は、一連の敗北で昨年後半に弱まったロシアの戦線を強化したとみられ、昨年7月以来初となる前進を可能にし、ウクライナ東部の町、ソレダルの制圧を主張するに至った。 ここで問題となるのは、士気が低く、古い装備しか持たない訓練不足の動員兵をウクライナに大量投入する戦略で、ウクライナの抵抗を低減できるかどうかだ。 また、強い動機を持つ兵士と次第に強化される西側諸国製兵器に支えられたウクライナ軍の士気が、戦争の長期化に耐え切れるのかという点も、問われることになる。 1月1日午前0時1分すぎ、ウクライナの精密誘導ロケット弾が、鉱業の町マキイウカの職業訓練校に着弾した。この学校は、ロシアの占領軍によって新兵用の兵舎に転用されていた。 その何時間か後には、近くの兵舎にいた動員兵たちが被害現場に向かわされ手袋を渡された。がれきの中で遺体を探し回っていた27歳の動員兵は、何十もの遺体が積み重なる中で時間の感覚を失ったと語った。彼は徴集される前は、電気技師だった。その後ロシアの戦争ブロガーらが伝えたところによれば、この攻撃による死者は少なくとも200人に上ったという。 この動員兵は、遺体処理時の状況を振り返り「なぜこんな悲惨な状況になってしまったのかということ以外、何も考えられなかった」と語った。 その数日後、彼は配置された塹壕の中で身をかがめ、砲弾の嵐が降り注ぐ下で、明確な任務もないままに、ソ連時代のライフルを握りしめていたという。 「士気などない。ただ恐怖と絶え間ないストレスがあるだけだ」とその動員兵は語った。「この戦争はわれわれが望んでやっているものではない。自分たちは単に生き残ろうとしているだけだ」 この動員兵には、ロシアの独立系メディア「ヴョルストカ」がまず話を聞き、招集状をウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した。この兵士は今、どう戦闘を逃れるか、生き残って家族のもとに帰るかということしか考えていないという。 「動員兵の多くはここにいたいなどと少しも思っていない」とこの兵士は話す。 サマラの企業経営者アナスタシア・アンドレイチェンコ氏(36)は、2014年にロシアがひそかにウクライナ東部を侵略して以降、ウクライナ東部に駐留するロシア軍に何度となく物資を運んできた。マキイウカの攻撃から数日のうちに、アンドレイチェンコ氏と彼女のボランティア仲間は、生き残った兵士のためにクラウドファンディングで装備品(冬用の制服とブーツ、防寒下着、発電機、暗視ゴーグル、ドローン)を調達し、これを西方約850マイル(約1368キロ)離れたウクライナの都市マキイウカに届けた。 アンドレイチェンコ氏は、この攻撃はサマラの人々に恐怖を与えたが、それでも自身はこの侵攻を支持すると語った。ロシア社会が戦場の兵士と故郷の親族を支援する姿勢を示すのは、彼女のような市民の義務だと同氏は話す。 同氏は「今一番大事なことは後方を守ることだ」と語る。「社会から信念とスピリットを失わせるわけにはいかない。皆の士気をできる限り維持する必要がある」。 攻撃に巻き込まれた兵士の一部やサマラにいる彼らの家族の多くは、ロシア国防省が、攻撃を受けた責任を軍の司令官ではなく、動員兵のせいにしたことに対して憤っている。国防省は、ウクライナ側が兵舎の位置を特定できたのは、兵士たちが携帯電話を使用していたからだとした。戦争ブロガーや家族らによると、兵舎の場所は、前線からわずか10マイル(約16キロ)しか離れていない上に分かりやすく、弾薬庫の場所ともなっていたため、明らかな標的になった。 2014年にウクライナ東部で非正規軍を率いたロシアの元情報当局者イゴール・ガーキン氏はこの攻撃の後、ロシアの将官は「訓練のしようがない」とソーシャルメディアのテレグラムで語った。軍事ブロガーのウラドレン・タタルスキー氏(昨年9月にはウクライナ4州の併合式典のためプーチン氏からクレムリンに招かれている)は、マキイウカへの攻撃を受けてロシア軍幹部を裁判にかけるよう求め、ロシアのトップ当局者たちを「訓練不足のとんでもない愚か者」だと表現している。 こうした批判について、ロシア国防省はコメントしていない。 |
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●ロシア軍のミサイル攻撃 少なくとも40人死亡 30人以上行方不明 1/17
ウクライナに侵攻を続けるロシア軍が今月14日、東部の都市に行ったミサイル攻撃で、ウクライナの当局は子ども3人を含む、少なくとも40人の住民が死亡したほか、依然として30人以上の行方がわかっていないと発表し、犠牲者が増え続けています。 ロシア軍が今月14日、ウクライナ各地に行ったミサイル攻撃で、東部の都市ドニプロでは9階建てのアパートにミサイルが着弾しました。 攻撃には、ロシア軍の対艦ミサイルが使用されたとみられ、ウクライナの非常事態庁は16日、これまでに子ども3人を含む少なくとも40人の住民が死亡し、75人がけがをしたほか、依然として30人以上の行方が分かっていないと発表しました。 これに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は16日、「ロシア軍は住宅や社会的なインフラ設備を攻撃しておらず、標的は軍事施設のみだ」と述べたうえで、今回の被害は、ウクライナ側の対空ミサイルによる誤爆の可能性があるとする主張を一方的に展開しました。 こうした中、ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が16日、電話で会談し、トルコ大統領府によりますとエルドアン大統領は、和平を仲介する用意があることを改めて伝えたとしています。 一方、ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領は、「ウクライナ政府は破壊的な政策をとり、欧米の軍事支援で敵対行為を激化させている」と主張しました。 さらに今月上旬、ロシア正教のクリスマスにあわせてロシア側が一方的に停戦を宣言したことをめぐっても、「ウクライナ側が、偽善的な政策によって停戦を拒否した」と非難したということで、停戦に向けた歩み寄りの兆しはみられない状況です。 |
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●ロシアによる侵攻開始後、ウクライナで7000人超の民間人が死亡 国連発表 1/17
ロシアによる侵攻が始まってからウクライナではこれまでに7000人以上の民間人が攻撃で死亡したと国連が発表しました。 OHCHR=国連人権高等弁務官事務所は16日、去年2月のロシアによる侵攻開始から15日までに、攻撃で死亡したウクライナの民間人が7031人に上ったと明らかにしました。14日に起きたウクライナ東部・ドニプロへのミサイル攻撃では9階建ての集合住宅が倒壊し、40人の死亡が確認されています。いまも20人以上の行方が分かっていません。 一方、ロシア側が制圧したと主張するウクライナ東部ドネツク州のソレダルについて、イギリス国防省は16日、ウクライナ軍が態勢を維持していることがほぼ確実だとの分析を示しました。 |
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●ウクライナ侵攻 民間人の死者7000人超に 国連発表 1/17
国連はロシアによる侵攻開始以降、ウクライナにおける民間人の死者が7000人以上にのぼると発表しました。 国連人権高等弁務官事務所は16日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった去年2月末から今月15日までに、民間人7031人の死亡が確認されたと発表しました。また「死傷者のほとんどは、重火器やミサイルなど広範囲に被害をもたらす兵器によるものだ」と指摘。攻撃が激しい地域からの報告が遅れていることなどから、実際の死者数はさらに多くなる可能性があるとしています。 一方、中部ドニプロで14日、集合住宅が破壊されたミサイル攻撃について、ウクライナ当局はこれまでに子ども3人を含む40人が死亡したと発表しました。34人が行方不明のままで死者はさらに増えると見られます。 ロシアのペスコフ大統領報道官は16日、「ロシア軍は住宅などを攻撃していない」と述べ、ウクライナ軍に迎撃されたミサイルが着弾したものだと主張しました。 こうした中、ロシアと隣国ベラルーシの空軍による合同軍事演習が16日から始まりました。演習は来月1日までの予定で、合同パトロール飛行や地上部隊の支援などの訓練を行うとしていて、ベラルーシ国内のすべての軍用飛行場を使用するということです。 一方、ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領は16日、トルコのエルドアン大統領と電話会談を行いました。プーチン氏は、ウクライナが欧米からの軍事支援により戦闘を激化させているとして「破壊的な政策だ」と指摘。 自らが一方的に提案したロシア正教のクリスマスにあわせた停戦にウクライナが応じなかったことについて、「偽善だ」と述べたとしています。また、両首脳はロシアとウクライナの人権担当者がトルコで接触したことに関連し、捕虜交換についても言及したということです。 |
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●ロシアの軍事侵攻でウクライナ市民7000人超が死亡 国連発表 1/17
国連はロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まった去年2月以降、ミサイル攻撃などにより、ウクライナで死亡した市民が7000人を超えたと発表しました。今月14日にも東部でアパートにミサイルが着弾して、これまでに少なくとも40人が死亡し、市民の犠牲者が増え続けています。 ロシア軍は14日、ウクライナ各地にミサイル攻撃を行い、東部の都市ドニプロでは9階建てのアパートにミサイルが着弾しました。 ウクライナの非常事態庁は16日、これまでに子ども3人を含む少なくとも40人の住民が死亡し、依然として25人の行方が分かっていないと発表しました。 これについてロシア側は、ウクライナ側の対空ミサイルによる誤爆の可能性があるとする主張を一方的に展開しました。 ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、公開した動画で「戦争犯罪をおかしたすべての人は必ず特定され、裁判にかけられる」と述べ、ロシア側を強く非難しました。 こうした中、国連人権高等弁務官事務所は16日、ウクライナでの市民の犠牲者数を発表しました。 それによりますと、軍事侵攻が始まった去年2月24日以降、今月15日までに、ミサイル攻撃などによって少なくとも7031人の市民の死亡が確認され、このうち433人は子どもだとしています。 侵攻による被害は拡大し、市民の犠牲者が増え続けています。 |
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●ドイツ国防相が辞意 ウクライナ軍事侵攻をめぐる不適切発言で 1/17
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐって、不適切な発言をしたと批判を浴びていたドイツのランブレヒト国防相が16日、辞意を表明しました。ウクライナへの軍事支援の強化が焦点になる中での辞任で、ショルツ首相は空白が生じないよう後任の選定を急ぐ方針を強調しています。 ドイツのランブレヒト国防相は16日、ショルツ首相に辞意を申し出て、了承されました。 ランブレヒト氏は先月末、首都ベルリンで打ち上げ花火の音が響く中「ヨーロッパの中心で戦争が行われていて、それに関わりすばらしい人たちと出会えた」などとする新年のメッセージをSNSに投稿し、地元メディアや野党から、ウクライナが侵攻を受ける中不適切な発言だと強い批判を浴びていました。 ランブレヒト氏をめぐっては以前から資質が疑問視されていてロシアの侵攻直前に軍事支援を求めるウクライナにヘルメットの供与を決め「ドイツがともにあるというシグナルだ」と述べて批判を招いたことや、去年4月には軍のヘリコプターに私的に息子をのせたことなど多くのミスをしたと報じられています。 ショルツ首相は16日、空白が生まれないよう後任の選定を急ぐ方針を強調しました。 ドイツでは、今月20日、ウクライナへの軍事支援を話し合う欧米各国による会合が開かれ、イギリスが主力戦車の供与を決める中、ドイツも戦車の供与に踏み切るかが焦点となっていて、そうした判断にも影響が出るか関心が集まっています。 |
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●ウクライナ ドニプロ住宅攻撃の死者40人に、ドイツ国防相辞任 1/17 ウクライナ東部ドニプロの9階建て集合住宅に対するロシア軍のミサイル攻撃で、死者が40人に増加した。ロシア軍は他の都市にも攻撃を広げている。 欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会のボレル副委員長(外交安全保障上級代表)は「こうした犯罪に免責は一切ない」とツイートし、EUは「必要な限り」ウクライナを支援すると表明した。ウクライナ空軍司令部はロシアの長距離対艦ミサイルによる攻撃だったと説明した。 進退を巡って臆測が続いていたドイツのランブレヒト国防相が辞任した。同国製戦車「レオパルト2」を含む兵器のウクライナ向け供給で重要な決定を検討しているショルツ首相にとっては打撃になる。 ウクライナ情勢を巡る最近の主な動きは以下の通り。 ●ウクライナ、円借款の返済延期で日本と合意−5000万ドル相当 ウクライナは、約5000万ドル(約64億3000万円)相当の円借款の返済を2027年−31年に延期することで日本と合意したと、ウクライナ財務省が電子メールで発表した。 ●プーチン、エルドアン両大統領が電話会談 ロシアのプーチン大統領は、トルコのエルドアン大統領と電話会談した。ロシア大統領府が声明を発表した。会談では天然ガス供給やトルコに地域のガス集積地を設置するなどのエネルギー分野の協力を協議したほか、捕虜交換を含むウクライナ情勢や、穀物合意の履行について意見交換を行った。 ●ワグネルの元部隊司令官、ノルウェーに政治亡命を申請 ロシアの民間軍事会社ワグネルの元部隊司令官が先週末に陸路国境を越えてノルウェーに入国し、同国で政治亡命を申請した。ロシアの人権活動家が投稿した動画の中で、この元部隊司令官、アンドレイ・メドベージェフ氏は、ウクライナの前線に展開していた自らの部隊を辞めた後、命の危険を感じてロシアを脱出したと説明した。戦いを拒否したワグネル戦闘員に対する超法規的な殺害について証言できると同氏は語った。 |
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●22年のロシアGDP、2.5%減 専門家の予測ほど悪化せず―プーチン大統領 1/17
ロシアのプーチン大統領は17日、2022年の同国の国内総生産(GDP)が前年比2.5%減になったとの見通しを示した。ウクライナ侵攻に伴う欧米などの制裁措置の影響でマイナス成長となったものの、多くの専門家の予測ほど悪化しなかったとの認識を強調した。ロイター通信が報じた。 |
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●かつて強盗犯だった男が軍事会社設立しプーチンに接近 ワグネル創設者 1/17
旧ソ連邦時代の末期、エフゲニー・プリゴジン氏(61)は盗みの罪で惨めな獄中生活を強いられていた。それが今や、ロシアで最も強力な傭兵集団の創設者として、ウクライナにおける戦果をアピールしてプーチン大統領からより大きな「寵愛」を得ようと一層の接近を図っている。 プリゴジン氏が率いる民間軍事会社「ワグネル」の部隊は、激戦が続くウクライナ東部ドネツク州バフムト北東郊外のソレダルを制圧したと表明。この軍事的成功を積極的に利用しようというのが、同氏の目論見だ。 プリゴジン氏によると、ソレダルを巡る戦闘はワグネルが単独で行った。だが、ロシア国防省は当初、正規軍が活躍したと主張。国防省側は13日、ソレダル制圧を正式に発表するとともに、勝利には正規軍の空挺部隊とミサイル部隊、砲兵部隊が貢献したと説明した。 これについてプリゴジン氏は、政府はワグネルに正当な称賛を送っていないと非難。「彼らは常に、ワグネルから勝利を盗もうとたくらみ、ワグネルの評価をおとしめるためだけに名前も知らない別の集団の存在を話題にしている」と憤った。 国防省はその後、状況をより「明確にする」として新たな声明を公表。ソレダル突入部隊の一角に「勇敢で自己犠牲的な」ワグネルの戦闘員が含まれていたと述べた。 このように存在感を増すプリゴジン氏は、いつかロシア国防相になってもおかしくないと、何人かの評論家は予想する。もっともプーチン氏が側近グループを互いにけん制させて「分割して支配する」政治手法を用いる傾向にある以上、プリゴジン氏が果たしてどの程度、プーチン氏への影響力を持っているのか、実際のところは良く分からない。 ●新しい英雄 プーチン氏の有力な支持者(そのうち何人かは同氏との直接的なパイプを持つ)は、さえない結果しか残せていない正規軍と比べ、プリゴジン氏が見事な成果を上げていると指摘する。 プリゴジン氏を「新しい英雄」をほめそやす元ロシア大統領顧問のセルゲイ・マルコフ氏は「プリゴジン氏にも欠点はあるが、私はそれらを口にしたくない。なぜならプリゴジン氏とワグネルは現在、ロシアの国家的な宝だからだ。彼らは勝利の象徴になっている」と自身のブログに記し、政府がワグネルにもっと資源を回すべきだと提言した。 政府系メディアRT編集長で大統領側近でもあるマルガリータ・シモニャン氏も、ソレダル制圧に関してプリゴジン氏に感謝の意を表した。 大統領府のスピーチライターだったアッバス・ガリアモフ氏は自身のブログで、プリゴジン氏はプーチン氏がショイグ国防相を更迭する事態をにらんで行動しているとの見方を示した。 プーチン氏はこれまでワグネルに関して、国家を代表していないが、ロシアの法令にも違反しておらず、世界のどこにおいても活動し、ビジネス上の利益を増進させる権利があるとの見解を明らかにしている。 ただ、ウクライナ戦争に対するロシア側の世論形成に関与してきた軍事ブロガーの1人はプリゴジン氏について、法の枠外での活動を認められた古代ローマ帝国の「百人隊」の指揮官になぞらえた。 その上で、ワグネルがさらに何度か成功を収め、今はオンライン投票レベルに過ぎないプリゴジン氏の国防相就任という話がこの先、現実味を帯びてくると述べた。 一方で、プリゴジン氏はワグネルの戦闘員の命など何とも思っていない、と元連邦保安局(FSS)幹部は批判する。この幹部の話では、ソレダルとバフムト周辺の確保に軍事的な重要性がないという。 政治分析を手がけるR・ポリティクの創設者、タチアナ・スタノバヤ氏は「要するにプリゴジン氏は、当局との関係の密接さに大きく左右される民間ビジネスマンであり、これは非常に脆弱な立場と言える」と話した。 ●プーチン氏の対策 ロシア政府は、プリゴジン氏が刑務所で何千人もの囚人をワグネルの戦闘員として徴募するのを許可している。複数の米政府当局者によると、その数は約5万人に上る。また、ワグネルは戦車や軍用機、ミサイル防衛網の装備も認められている。 正規軍との関係で言えば、プリゴジン氏は時折、軍上層部を無礼な言動で批判してきたが、何人かの西側の軍事専門家の見立てでは、こうした表面上のあつれきにもかかわらず、裏ではワグネルと正規軍は緊密に結びついていると考えられるという。 もっとも西側軍事専門家の間では、ウクライナ戦争の指揮官として軍の最上級幹部が指名されたのは、プリゴジン氏の影響力を抑える狙いがあったとの見方も出ている。 経営破綻したロシア大手石油会社・ユーコスの重役だったレオニド・ネブズリン氏は、実際のところワグネルが政府の統制から外れるリスクはあると警告する。 ロシア当局と近いある人物は、大統領府はプリゴジン氏を「使える手駒」とみなしつつも、そうした軍事組織の指導者に対しては暴走させないための「安全措置」をきちんと講じていると述べた。 |
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●「戦闘拒否なら銃殺、恐ろしく」…「プーチン私兵」ワグネル指揮官の脱出 1/17
ロシア民間傭兵会社ワグネルグループの元指揮官が服務延長を拒否してノルウェーに亡命を申請したと、ノルウェー当局とロシア人権団体が16日(現地時間)明らかにした。ウクライナ東部戦線で悪名高いワグネルグループは昨年、ウクライナ・ブチャでの民間人虐殺の主犯と見なされたりもした。 CNNによると、元ワグネルグループ指揮官のアンドレイ・メドベージェフ氏(26)はワグネルグループの服務延長を拒否し、国境を越えてノルウェーに渡った。メドベージェフ氏は脱出の理由について「ワグネルの服務更新を拒否した後、命を失うのではないかと恐ろしかった」と明らかにした。 これに先立ち昨年11月、ワグネルの傭兵からウクライナ軍に転向したある男性がロシア側に処刑される映像が公開され、衝撃を与えた。メドベージェフ氏は自分も殺害されるのでないかと恐ろしくなったと伝えた。 メドベージェフ氏は自身の脱出を支援した人権団体代表オセチキン氏のインタビューで「我々は盾のように戦うよう投げ出された」と話した。また「戦闘を拒否したり裏切ったりすれば銃で撃たれて死んだ」と暴露した。 メドベージェフ氏は自身が昨年7月6日にワグネルと服務契約を結び、指揮官に任命されたと明らかにした。ウクライナ戦場で多くの傭兵を失ったワグネルグループは、ロシアの犯罪者までも傭兵として募集しているという。西欧ではワグネルグループがウクライナ駐留ロシア軍の約10%を占めるとみている。 メドベージェフ氏は「囚人が合流してからワグネルの雰囲気は完全に変わった。我々は人間として扱われなかった」と語った。続いて「毎週、より多くの囚人が来て(戦場で)多くの死傷者が発生した」と伝えた。 メドベージェフ氏の弁護士はBBCに「メドベージェフ氏はワグネルの傭兵としてウクライナ戦場で服務する間、多数の戦争犯罪を目撃した」とし「彼が戦争犯罪の証拠をノルウェーに持っていき、これを戦争犯罪調査団体と共有する計画」と明らかにした。 オセチキン氏によると、ワグネルグループを率いるエフゲニー・プリゴジン氏は昨年11月からすべての傭兵契約が自動更新されるよう指示した。プリゴジン氏はプーチン露大統領の側近として知られる。 しかしメドベージェフ氏はこれを拒否し、ワグネルを離れることに決心した。オセチキン氏はワグネルの手配で追われる身分になったメドベージェフ氏の脱出を支援した。 BBCによると、メドベージェフ氏は命がけで国境を越え、13日にノルウェーに不法入国した。メドベージェフ氏はノルウェー到着後、現地民間人に拙い英語で助けを求め、国境守備隊に拘禁された。その後、ノルウェー警察によって不法入国者のための施設に収監され、取り調べを受けている。 今回の事例はワグネルの傭兵が西欧に亡命を申請した最初のケースとみられると、メディアは伝えた。 |
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●一触即発♂「米vsロシア ウクライナ軍支援拡大 1/17
ロシアからの領土奪還作戦に向けて、米軍などによるウクライナ軍支援が拡大している。欧州での訓練に加え、地対空ミサイルシステム「パトリオット」に関する米国本土での訓練も近く本格化する。欧米の積極的な軍事支援にロシア側は神経をとがらせており、ロシア軍の戦闘機がドイツ軍機に緊急発進(スクランブル)をかけるなど一触即発だ。 AP通信によると、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は15日、ウクライナ兵約500人を対象とした新たな訓練がドイツで同日に始まったと述べた。 米軍による訓練はこれまで月平均約300人に対し、米国が供与した兵器の使い方を教えるのが中心だった。新たな訓練は戦場での部隊連携を重視した指導を進め、戦車や大砲、戦闘車を効果的に使えるようにする。 また、FOXニュースは同日、パトリオットの使用訓練を受けるウクライナ兵90〜100人を乗せた航空機が南部オクラホマ州の陸軍施設フォート・シルに到着したと報じた。部隊をウクライナの戦場から離脱させ、米本土で訓練するのは異例だ。ロシア軍はウクライナで民間施設を含めたミサイル攻撃を続けており、ウクライナにとって防空システム強化は大きな課題だ。 さらに英国防省は16日、英軍の主力戦車「チャレンジャー2」に加え、無人機や自走砲AS90をウクライナに供与すると明らかにした。多連装ロケットシステムや近距離防空ミサイル「スターストリーク」も含む。 ウォレス国防相は「ウクライナの国土からロシア軍を追い出すことを可能にする。プーチン大統領による占領の終結を加速させる」と強調した。 ウクライナ国防省のブダノフ情報局長は、大規模な攻撃を春に計画していると発言。米欧各国の支援を受けて、ロシアが一方的に併合を宣言した東部や南部での反攻に弾みを付ける考えだ。 これに対しロシア国防省は16日、ロシア国境に近いバルト海上空に飛来したドイツ海軍の対潜哨戒機P3Cに、ロシア軍のスホイ27戦闘機が緊急発進(スクランブル)したと発表した。 ドイツはウクライナにマルダー歩兵戦闘車などを提供すると発表している。欧米の支援強化にロシアの反発と焦りもうかがえる。 |
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●ロシア軍ミサイルに対抗できない──ドニプロ住宅に被弾、ウクライナの焦燥 1/17
ウクライナ軍の防空担当司令官ニコライ・オレシュク中将は14日、ロシアがウクライナ東部ドニプロ市の攻撃に使用したような巡行ミサイルKh-22を迎撃・撃墜できるシステムは自国にはないと述べた。 オレシュクによると、Kh-22ミサイルの発射、高度、飛行速度は探知できるが、ミサイルの軌道は「数百メートル」ずれる可能性があるという。 ウクライナの識別システムは、飛来するミサイルがKh-22であることを識別できるほど洗練されているが、それでも1発も撃ち落とせていない。 「ウクライナ軍には、この種のミサイルを撃ち落とすことのできる兵器がない。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって以来、このタイプのミサイルは210発以上発射されている。いずれも防空兵器で撃墜されていない」と、オレシュクは語った。 Kh-22は重量が約950キログラム、射程は600キロメートルに及ぶ。このようなミサイルを追跡し、破壊することができるのは、西側諸国の特定の防空システムだけだとオレシュクは言う。 「西側諸国からウクライナに将来提供される可能性のある対空ミサイル複合システム(パトリオットPAC-3やSAMP-Tなど)だけが、飛行中のこうしたミサイルを迎撃することができる」 ●ドニプロ市の被害は甚大 ロシア軍が多くの地域を支配しているウクライナ東部のドニプロペトロウシク州の州都ドニプロ市では、14日のロシア軍の攻撃で大規模な破壊と多くの死者が出た。ロシアの攻撃の主役となったのがこのKh-22ミサイルだった。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は14日、ドニプロ市内の9階建てのアパートが瓦礫と化し、少なくとも5人が死亡した現場を映した動画を公開した。 「ロシアのテロで命を奪われたすべての人々を永遠に忘れない!世界は悪を止めなければならない。ドニプロの瓦礫撤去は続いている。すべてのサービスが機能している。われわれはあらゆる人、あらゆる命のために戦っている。テロに関与した者全員を探し出す。誰もが最大限に責任を負うことになる」と、ゼレンスキーは書いている。 ウクライナ内務大臣顧問アントン・ゲラシチェンコも、建物の破壊状況を示す写真をツイートした。この爆発による死者は子どもを含む40人に達している。 「ドニプロで集合住宅が被弾。被害は深刻。瓦礫の下に人がいる。レスキュー隊が働いている」と、ゲラシチェンコは書いた。 ロシアとウクライナ戦争は、2月24日で1年を迎えようとしている。ロシアはこれまでの戦争で推定11万4000人の自国軍兵士が死亡しているが、戦争を続けることに固執している。 |
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●ロシア軍、兵力を150万人に増強へ 1/18
ロシアのショイグ国防相は17日、プーチン大統領がロシア軍の兵力を150万人に増強することを決定したと発表した。行き詰まるロシアによるウクライナ侵攻は間もなく11カ月を迎える。 ペスコフ大統領報道官によると、プーチン氏は国防省が発表した提案に「概念上、同意した」という。 ペスコフ氏はロシア軍の増強の詳細はまだまとまっていないとも述べた。 ロシアは昨年9月に、ウクライナ軍の反撃により一部で大きく撤退するなど戦況の悪化を受けて部分的動員を行った。その後、30万人を徴兵するという目標は達成されたとして11月に部分的動員を終了した。 同月にはプーチン氏は、殺人、強盗、窃盗、薬物取引などロシア刑法上の重罪で保護観察を言い渡されたり、最近刑務所から出所したりした犯罪者の動員を可能にする法改正に署名した。 ペスコフ氏はロシア軍の増強について「これは西側諸国が行っている戦争のためだ」と述べた。さらに「代理戦争には戦争行為への間接的な関与の要素と、経済、財政、法的な戦争の要素の双方が含まれる」と主張した。 米国、英国、欧州連合(EU)を含むウクライナを支援する国々は、ウクライナ侵攻を受けてロシアに経済制裁を科しており、ロシアと西側諸国の外交関係はかつてなく冷え切っている。 |
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●ウクライナ東部で戦闘続く ロシア軍は2026年までに兵士を150万に増員へ 1/18
ウクライナ東部などで激しい戦闘が続くなか、ロシアは軍の兵士の総数を150万人にまで増員することを決めました。 ロシアのショイグ国防相は17日、プーチン大統領が現在115万人のロシア軍の兵士を2026年までに150万人に増やすことを決定したと明らかにしました。ロシアが一方的な併合を主張するウクライナの4つの州に新しい部隊を創設するとしています。 こうしたなか、ウクライナ東部ドネツク州の知事によりますと、バフムトなどで16日から17日にかけロシア軍によるミサイル攻撃があり、市民2人が死亡しました。 一方、14日に攻撃を受けた中部ドニプロの集合住宅での救出活動が終了。ゼレンスキー大統領は45人の死亡が確認されたと発表しましたが、未だに多くの人の行方が分かっていません。 ウクライナ情勢をめぐる会合が開かれた国連の安全保障理事会では。 ウクライナ キスリツァ国連大使「人が密集する住宅街を狙った攻撃は明らかに戦争犯罪です」 ウクライナの大使はこのように訴え、各国からも非難の声が相次ぎました。 |
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●習近平・プーチン会談に見る中露の「正義」の欠如 1/18
2022年12月31日付の英フィナンシャル・タイムズ紙に、同紙モスクワ支局長のマックス・セドンと同紙中国テクノロジーリポーターのライアン・マクモロウが、「プーチンと習近平が2国家関係を深化させることを誓う」との記事を書いている。 プーチンと習近平は12月30日のビデオ会談でプーチンが「歴史上もっとも偉大である」とした両国関係を深化させると誓った。 9月の中露の対面会談では、中国は、ロシアによるウクライナ侵攻を非難せず、戦争の責めをウクライナに対する西側支援に帰した。 中国は値引き価格でロシアの石油を買い、西側制裁の効果を弱めている。習近平はウクライナ戦争を交渉で解決するとのロシアの意思を評価すると述べ、中国として危機を解決するのを助ける用意があると述べた。習近平は「和平の見通しはいつでもある。中国は客観的で公正な立場を引き続き堅持し、国際社会を団結させ、平和的にウクライナ危機を解決する建設的な役割を果たす」と述べた。和平交渉は、4月にロシア軍が占領した町で民間人に対する残虐行為があったとの告発の後、崩壊した。 最近、プーチンは、ウクライナが交渉を拒否していると責任を負わせ、ロシアは戦争を終わらせる用意があると主張している。ただ、ロシアは、ウクライナが南部と東部の州のロシア支配を認める場合のみ交渉を始めると述べ、全ての領土の奪還を交渉の前提条件とするウクライナにはこれは受け入れられない条件である。 台湾をめぐる習の主張についての西側と中国との戦略的対立関係、技術産業への米国の制裁は、中国がロシアとの関係を切ることを躊躇させている。 プーチンは中露のパートナーシップは地政学的緊張の高まりの中で安定化要因として益々意義深くなっていると述べ、習は双方は「国際情勢で緊密に調整し協力し、一方的な政策に反対すべきであり、制裁や干渉は失敗する運命にある」と米国を非難して述べた。 習は2012年に中国共産党総書記になって以来、年一度の首脳の相互訪問を続け、春にはロシアでプーチンに会うと期待されている。プーチンは2022年2月初め、ウクライナ侵攻の2週間前に北京に習を訪問した。プーチンは2022年12月、習へのメッセージを託してメドベージェフ前大統領を北京に派遣した。 12月30日、プーチンと習近平はビデオ会談をしたが、この記事はその模様を報じているものである。 米欧日にも、中国がロシアにウクライナ戦争をやめるように圧力をかけることを望んでいる人がいるが、この記事を読む限り、中国にはそのようなことをする気はないと判断してよいと思われる。 習近平は、一方的な外交政策に反対であり、制裁や干渉は失敗する運命にあると言ったと言うが、何もしないのに制裁が発動されたのではなく、ロシアが戦争を始めたから制裁が発動されたのである。これを一方的というのは公平でも公正でもない。ウクライナへの侵攻こそが一方的な行為である。 さらにウクライナ戦争が熾烈を極めている時に、平和的にウクライナ危機を解決する建設的な役割を果たすという習近平発言は何を意味しているのか、理解に苦しむ発言である。 ●国際法や正義の尊重の姿勢を持たない中露 要するに、制裁で困っているロシアの足元を見て、石油・ガスを安価に入手し、中国と米国との関係が悪化する中で、ロシアとの関係を良好に維持することを狙い、中国の国益を最大化しようとしているだけである。国際情勢の健全化や国際関係の公正・公平化には言葉の上では言及しているが、そこに重点を置く姿勢は一向にないといってよいと思われる。 中露はともに猜疑心の強い国である。今の状況では、両国ともお互いに良好な関係を維持することが得策であると考えていると判断してよい。 中露両国には国際法や正義の尊重の姿勢はなく、状況対応主義以外の原則はないのではないかと思われる。この中露が国連の平和機能の中心である安全保障理事会で拒否権を持つ常任理事国であることは、大きな問題である。 両国が状況対応主義で国際法や正義の尊重の姿勢を持たないならば、ロシアと中国には、力を重視した対応以外にうまく対応するやり方はないと考えられる。言い換えると、両国に力による現状変更を思いとどまらせるためには、当方も力を重視していく以外に手はないように思われる。 |
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●国連安保理 ロシアミサイル アパート着弾で欧米や日本が非難 1/18
日本が議長国を務める国連の安全保障理事会でウクライナ情勢をめぐる会合が開かれ、東部のドニプロでロシア軍のミサイルがアパートに着弾し多数の市民が犠牲になったことについて、欧米や日本などからロシアへの非難が相次ぎました。 安保理の会合は17日、ロシアの要請で開かれ、ネベンジャ国連大使がウクライナ政府によってロシア系住民の権利が侵害されているなどと主張し、改めて軍事侵攻を正当化しました。 しかし各国からは、東部のドニプロで14日、アパートにロシア軍のミサイルが着弾し、子どもを含む40人以上が死亡したことについて、ロシアに対する非難が相次ぎました。 このうちアルバニアのホッジャ国連大使は「この残忍な攻撃は1トンの弾頭を積んだミサイルによるものとされ、罪のない市民の命を奪った」と述べたほか、フランスのドリビエール国連大使も「数十人の市民が犠牲になったロシアの攻撃を断固として非難する」と述べました。 また、議長を務める日本の石兼国連大使も「いかなる主張をしても、ドニプロの住宅に対するミサイル攻撃を含め、国際法の明白な違反や恐ろしい行為は正当化できない」と述べました。 これに対してロシアのネベンジャ国連大使が再び発言し「ミサイルは住宅地に配備されたウクライナ側の対空ミサイルによって迎撃され、アパートに落下した」として、民間施設は標的にしていないと反論しました。 一方、中国やブラジルなどの代表は、今回の事態には言及せず、あくまでも戦闘の早期終結を目指すべきだと訴えました。 |
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●プーチン氏「勝利は確実だ、疑いない」…ロシア軍35万人増強へ 1/18
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は17日、プーチン大統領が、露軍兵士の定員を現在の115万人から35万人増やして150万人とする方針を決定したと発表した。2026年までに実施する。ウクライナに侵略する露軍兵士の死傷者数が10万人を超えていると指摘されており、兵力増強を図る必要に迫られたとみられる。侵略に総力戦で臨む布石との見方も出ている。 露国防省の発表によると、ショイグ氏は侵略作戦に関する国防省や軍の幹部らとの会合で兵力増強の方針を明らかにした。 昨年2月の侵略開始前の定員は100万人で、実働数は約90万人とされていた。定員は昨年8月の大統領令に基づき、今月1日から115万人に増員されたばかりだった。 ショイグ氏は会合で「軍事的な安全保障は軍の構造強化によってのみ可能になる」と述べ、26年までに実現を目指す軍の改革案も明らかにした。海軍や航空宇宙軍、核戦力を扱う戦略ロケット軍の戦闘機能を強化する方針も示した。 ロシアが一方的に併合したウクライナ東・南部4州に常設部隊を創設し、併合の既成事実化を進める構えを見せた。 米政策研究機関「戦争研究所」は17日、露軍の改革案について「ウクライナ侵略の長期化に備える一方、短期間で軍の強化を図る狙いがある」との分析を明らかにした。プーチン氏が近く予備役の大規模な動員再開を表明するとの指摘が増えていることにも言及した。 露国営テレビなどによるとプーチン氏は18日、露西部サンクトペテルブルクの兵器工場を訪れて職員らと懇談し、ウクライナ侵略に関し「勝利は確実だ。疑いない」と述べ、協力を呼びかけた。第2次世界大戦でのナチス・ドイツによる包囲戦での犠牲者の慰霊碑にも献花し、愛国心の鼓舞に腐心した。 |
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●プーチン大統領 80年前の激戦地訪問 侵攻継続を示すねらいか 1/18
ロシアのプーチン大統領は、第2次世界大戦でナチス・ドイツとの激戦地となったサンクトペテルブルクで犠牲者を追悼しました。国民の愛国心に訴えウクライナへの軍事侵攻をさらに続けていく姿勢を示すねらいがあるとみられます。 第2次世界大戦中レニングラードと呼ばれたロシア第2の都市サンクトペテルブルクは、ナチス・ドイツが1941年9月からおよそ900日間にわたって包囲し数十万人の犠牲が出た激戦地となりました。 18日は、ちょうど80年前、当時のソビエト軍が街の包囲網を突破し、翌年の完全解放につながった節目だとして現地で記念の式典が開かれました。 式典でプーチン大統領は、自分の父親も戦った地に建てられた記念碑や共同墓地で花をささげて犠牲者を追悼しました。 このあとプーチン大統領は退役軍人や愛国者による団体の代表と面会するほか、軍需工場を視察する予定です。 ウクライナへの侵攻を続ける中、プーチン大統領は去年8月、兵士の総数をおよそ115万人に増やすことを決めましたが、ロシアのショイグ国防相は17日、さらに150万人に増やすことをプーチン大統領が決定したと明らかにしました。 これについてロシア大統領府の報道官は「欧米諸国による代理戦争に対応するためだ」と主張しています。 プーチン大統領としては当時の激戦を追悼し功績をたたえることで国民の愛国心に訴え、国際社会の批判を顧みることなくウクライナへの軍事侵攻をさらに続けていく姿勢を示すねらいがあるとみられます。 |
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●プーチン大統領「新たな脅威に対応を」第2次世界大戦 激戦地で 1/18
ロシアのプーチン大統領は、第2次世界大戦でナチス・ドイツとの激戦地となったサンクトペテルブルクを訪問し、犠牲者を追悼しました。また「われわれの国への新たな脅威に対応できるようにすることが非常に重要だ」と述べ、国民の愛国心に訴えウクライナへの軍事侵攻をさらに続けていく姿勢を示すねらいもあるとみられます。 第2次世界大戦中レニングラードと呼ばれたロシア第2の都市サンクトペテルブルクは、ナチス・ドイツが1941年9月から、およそ900日間にわたって包囲し数十万人の犠牲が出た激戦地となりました。 18日は、ちょうど80年前、当時のソビエト軍が街の包囲網を突破し、翌年の完全解放につながった節目だとして現地で記念の式典が開かれました。 式典でプーチン大統領は、自分の父親も戦った地に建てられた記念碑や共同墓地で花をささげて犠牲者を追悼しました。 また、プーチン大統領は、訪問先の歴史博物館で演説し、80年前の戦争を振り返り「大祖国戦争で経験したような悲劇が二度と起きないようにわれわれの国への新たな脅威に対して即座に対応できるようにすることが非常に重要だ」と述べました。 さらに現在の国際情勢に触れたうえで「総力戦で、われわれの国に圧力をかけ続けている」と述べ欧米側を批判しました。 また、プーチン大統領は退役軍人たちとの会合でウクライナの東部ドンバス地域について「われわれは、だまされてきた。平和的な手段で解決しようとあらゆることを行ったが、不可能だったことが明らかになった」と述べ、軍事侵攻に踏み切ったことを改めて正当化しました。 プーチン大統領としては、過去の激戦を振り返り功績をたたえることで国民の愛国心に訴え、現在の国際社会からの批判を顧みることなくウクライナへの軍事侵攻をさらに続けていく姿勢を示すねらいもあるとみられます。 |
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●プーチンは再びキーウ陥落を狙う──ウクライナ議員 1/18
ロシアのウクライナ侵攻が始まって11カ月の節目が近づく中、ウクライナの国会議員、イェホル・チェルニウが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領には、今後の戦略に関して2つの道があると発言した。 プーチンは2022年2月24日、電撃的勝利を収めようという目論見のもと、ウクライナで「特別軍事作戦」を開始した。しかし、西側の軍事支援を得たウクライナの国防力は、予想よりも強力だった。大勢を見ると、ロシア軍は何カ月にもわたって、はかばかしい戦果を得られない状態が続いている。 だがウクライナ国会議員のチェルニウは油断はできないと言う。この秋から冬にかけてはウクライナ側が戦局を優位に進めているものの、プーチンには今でも、勝利につながる可能性をもつ方法が少なくとも2つあると警告した。 「第1の選択肢は、首都への素早い攻撃によって完全な勝利をおさめ、ウクライナを降伏に追い込むというものだ。プーチンは、キーウに対して新たな攻撃作戦を仕掛けようとする可能性がある」とチェルニウは1月17日、ツイッターに投稿した。 ●東西を分断する ロシア軍は開戦当初、ウクライナの首都キーウを攻略しようとしたが、陥落させることができず、退却を余儀なくされた。 それ以降、ロシアはいくつもの困難に直面してきた。兵員不足や経済制裁により、占領した領土をウクライナに奪還されてしまう状況だ。 チェルニウは第1のシナリオにおいて、ロシアがウクライナ西部における「複数の目標を攻撃する」おそれがあると警告した。その狙いは、ウクライナをヨーロッパのほとんどの地域と結びつけている輸送ルートを断ち切ることだ。このルートは、ロシアの侵攻が始まって以来、軍事および経済的支援の重要な供給源となってきた。 もっとも、米戦略国際問題研究所(CSIS)のセス・ジョーンズは17日、本誌の取材に対し、この戦略がプーチンにとって実行可能なものとなる可能性は低いとの見方を示した。 「話を聞く限り、これは2022年2月時点でのロシア側の戦略だったように思える」とジョーンズは述べた。「この時点で、ロシアはこの戦略を成功裏に実行することができなかった。彼らには、各軍の連携、士気、指揮統制、兵站が欠けていた。しかも、それ以降のロシア軍の行動を見る限り、これらの点が大幅に改善したと考えられる証拠はまったくない」 また衛星写真を見る限り、電撃戦でウクライナの領土を奪取する作戦の再実行に向けて、ロシア軍が兵力を増強している兆しは見当たらない点も指摘した。 一方でチェルニウは、プーチンが勝利に向けて「長期戦」の道を選ぶ可能性にも言及した。この作戦には、ドンバス地域を含むウクライナ東部をロシア軍が掌握することが含まれる。 プーチンは2022年、ドネツク、ヘルソン、ルハンシク、ザポリージャの4州を一方的に併合した。住民投票の結果を受けたものだが、この投票には不正があったとの声が西側では大勢だ。これらの領土を自国の支配下に収めたのち、ロシア政府は次の作戦を準備するだろう、とチェルニウは警告した。 「同時に彼ら(ロシア軍)は、自らの目的を達成するため、6〜12カ月にわたる次の軍事作戦の準備を進めるかもしれない。我が国の独立国家としての地位を奪い、ウクライナを併合するためだ」とチェルニウはツイートした。 ●核攻撃は見合わない CSISのジョーンズも、こちらの選択肢が「ロシア軍が取り組む作戦」だと考えている。そして、ロシア軍は今後数カ月のうちに、東部の主要地域でウクライナ軍を包囲する作戦を試みる可能性はあるとした。ジョーンズはさらに、ロシアが取る可能性があるもう2つの戦略を挙げた。その1つは、ウクライナ軍の前進を押しとどめつつ、今後の攻勢に備えて自軍を再構築するまで時間を稼ぐというもの。 二つめは、ロシアが最終的に核兵器の使用を検討する可能性だが、これは「リスキーなステップ」になると述べた。 「核兵器の使用が軍事的にどれほど効果的かは疑わしい」とジョーンズは述べた。「核兵器は、ロシア軍が直面している軍の連携に関する問題を解決してはくれないし、代わりに大規模な報復や制裁、外向的な孤立を招くのはほぼ確実だ」とジョーンズは指摘した。 一方、チェルニウは、自身が挙げた2つのシナリオに関して、そのどちらに関しても、ウクライナは自国の領土を守り抜く準備ができていると述べた。 「ウクライナとその支援国も、プーチンに対抗する作戦を擁している」とチェルニウはツイートした。「プーチンはまもなく戦場で、その作戦を目の当たりにするだろう」 |
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●ロシア外相会見、停戦へ欧州安保の再構築要求 1/18
ロシアのラブロフ外相は18日、モスクワで記者会見を開き、ウクライナ軍事侵攻の停戦と和平に向けた交渉の可能性について「真剣な提案であれば応じる用意がある」と述べ、欧州大西洋地域全体の安全保障体制の再構築を含めて協議したい意向を示した。 年初の恒例の記者会見で、ラブロフ外相は「欧米とウクライナに関してだけ話すのは意味がない」と指摘した。「(欧米は)欧州大西洋地域に長年存在してきた安保体制を壊すためにウクライナを利用している」と主張し、欧州安保の枠組み全体を和平に向けた協議のテーマとしたい考えを示した。 ウクライナへの軍事侵攻で劣勢にあるロシアは、戦闘を続けながらも、和平交渉開始への糸口を探っている。ただ、ウクライナのゼレンスキー大統領が提唱しているロシア軍の全面撤退など10項目の和平案については「支離滅裂だ」と改めて否定した。 記者会見では日本にも触れ、「日本は再び軍事化の道を進んでいる」と批判した。「(軍拡へ)憲法の条文改正が行われるだろう」とも指摘した。ロシアは2022年3月、軍事侵攻を巡り対ロ制裁を発動したとして、一方的に日本との平和条約締結交渉を打ち切った。 インド太平洋地域の情勢については「軍事ブロックがつくられている」と発言した。米国と英国、オーストラリアによる安保協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」を例として挙げ、「反ロシア、反中国」だと主張した。「日本もこのブロックに引き込まれようとしている」と警戒を示した。 |
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●ウクライナでの勝利「必然」、軍需産業生産拡大で=ロシア大統領 1/19
ロシアのプーチン大統領は18日、国内の強力な軍産複合体が生産を拡大しており、これがウクライナでロシアが勝利する要因の一つだと語った。サンクトペテルブルクの防空システム製造工場で従業員に対し述べた。 プーチン氏はロシアの軍需産業が製造している対空ミサイルの数は世界の他の国々の合計とほぼ同じであり、米国の3倍だと指摘。「勝利は確実だ。間違いない」と言明した。 |
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●ロシア軍の“歴史的失敗”はなぜ起きたか、米紙が詳細な調査報道 1/19
ロシア軍は開戦時、キーウで軍事パレードを行うことを想定し、将校たちに軍服や勲章を持参するよう指示したという。「なぜ、世界最強の軍隊がウクライナ軍に惨敗を喫したか」――開戦以来のこの疑問に対して、米「ニューヨーク・タイムズ」紙は数百通に及ぶロシア軍や当局のメールや文書、捕虜の証言などを集め検証を試みた。 ロシア軍のウクライナ侵攻は、ウクライナ軍が1月1日未明、東部ドネツク州マケエフカのロシア軍臨時兵舎を米国製精密誘導ミサイル、ハイマース(HIMARS)で攻撃し、動員兵ら多数の死者を出して越年した。 ロシア国防省は89人が死亡と発表、ウクライナ側は約400人が死亡したとしており、単独の攻撃では最大規模の犠牲者が出た模様だ。兵舎のそばに武器・弾薬が置かれていたため、引火して大爆発が起きたとされる。ロシアのSNSでは、軍幹部の不手際を非難する政治家や元軍人らの書き込みがあふれた。 ロシアのジョーク・サイトでは、「ロシア軍はウラジーミル・プーチン大統領の軍改革のおかげで、ウクライナ領内で2番目に強力な軍隊になった」とする自虐的なアネクドートも登場したが、冷戦期以来、米国と並ぶ強大な軍事力を誇ったロシア軍が予想外に弱かったことは、ウクライナ戦争の大きな謎だ。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」(電子版、12月16日)は、「プーチンの戦争」と題して、ロシア軍の「歴史的失敗」に関するインサイド・ストーリーを報じた。 この調査報道を基に、ロシア軍がなぜ苦戦するのかを探った。 ●パトルシェフ書記らが軍指導部の責任追及 クレムリンの内情に詳しいとされる正体不明のブロガー、「SVR(対外情報庁)将軍」は3日、SNS「テレグラム」で、兵舎攻撃の報告を受けたプーチン大統領が1日夜のオンラインによる安全保障会議で、国防省や軍参謀本部の幹部を口頭で叱責したと書き込んだ。 それによれば、会議では各組織から死者数に関する異なる情報や報告がなされたが、ニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記は、死者・行方不明者312人、負傷者157人という数字を、名簿を添付して報告。「悲劇」の原因を軍指導者に求め、責任者の処罰と人事異動を要求したという。連邦保安庁(FSB)のアレクサンドル・ボルトニコフ長官もパトルシェフ書記の報告を支持し、軍参謀本部の責任を追及、大統領も同調したとされる。 パトルシェフ書記やFSBは、軍指導部がこれまで、実際の損失や苦戦を秘匿し、大統領に虚偽の報告をしてきたことも問題視したと「SVR将軍」は伝えている。ただし、「SVR将軍」の書き込みには、フェイクニュースも少なくない。 攻撃を受けた臨時兵舎は職業訓練学校を改装したもので、ハイマース4発の攻撃で全壊した動画がネット上で公開された。攻撃は1月1日午前零時1分に発生、犠牲者の大半は昨年9月の部分的動員令で徴兵された動員兵だったという。ロシア国防省は、携帯電話の使用を禁止していたにもかかわらず、多数の兵士が携帯を使っていたことで位置が特定されたと説明した。 実際には、ウクライナのパルチザンが事前に施設を特定し、通報していた可能性もあるが、大量の部隊や砲弾を集約させるなど「人災」の要素もありそうだ。 ●米英の特殊部隊も協力か ドネツク州の親露派指導者、デニス・プシーリン「ドネツク人民共和国」代表代行は、自身のSNSで、負傷者のほぼ全員がモスクワなどロシアの他地域に移送され、治療を受けたとし、「仲間の仇を討つ英雄的な行動」を呼び掛けた。プーチン大統領は、負傷者らを救出した6人の軍人を表彰することを決めたという。 ロシアのネット・メディア「ブズグリャド」は、「戦地での携帯電話の使用は強制的に禁止すべきだ。敵はそれによって軍の陣形や位置を探知し、司令部に送信してデータをリアルタイムで特定できる。米英の特殊部隊は通信手段を読み取るシステムを持ち、ウクライナ軍と共有している」とする軍事専門家の発言を伝えた。 ドネツク州親露派のネット・メディア「今日のドンバス」も、軍事専門家の話として、「北大西洋条約機構(NATO)軍は衛星300基以上を保有してロシア軍の動向を追跡し、情報戦で圧倒的に優位に立つ。今回の攻撃は、ウクライナ軍が米軍顧問団と調整し、ゴーサインが出るとすぐに元旦攻撃を実行した」と伝えた。 別の「ドネツク人民共和国」幹部は、「州の占領地には、頑丈な建物や地下室のある廃墟が多数あり、部隊を分散させるべきだった」とし、ずさんな部隊配備を決めた責任者の処罰を要求した。「マケエフカの悲劇」は、ロシア軍に多くの教訓と反省を残したようだ。 一方、ロシア国防省は8日、ロシア軍が報復として、ドネツク州クラマトルスクのウクライナ軍臨時兵舎を攻撃し、600人を殺害したと発表したが、ウクライナ政府は全面否定した。各国のメディアもこの攻撃を確認しておらず、ロシア側は「報復攻撃の成果」を国内にアピールする必要に迫られたようだ。 ●地図は1960年代、武器マニュアルはウィキペディア ウクライナ侵攻後のロシア軍のずさんな戦闘ぶりは、「ニューヨーク・タイムズ」紙の調査報道に山のように紹介されている。同紙は、ロシア軍や当局者の数百通のメールや文書、侵攻計画、軍の指令、捕虜の証言など大量の情報を集め、「世界最強の軍隊がなぜ、はるかに弱いウクライナ軍に惨敗を喫したか」を描いている。 同紙によると、ロシア軍は緒戦で古い地図や誤った情報に基づいてミサイル攻撃を行い、ウクライナの防空網は驚くほど無傷だった。ロシアが誇るハッカー部隊のサイバー攻撃も失敗に終わった。ロシア兵の多くは携帯電話を使って家族らに電話したために追跡され、攻撃の餌食になった。ロシアの航空機は次々に撃墜されながら、危機感もなく飛行を続けた。 ロシア兵はわずかな食糧や弾薬、半世紀前のカラシニコフ銃、1960年代の地図を持ち、過密状態の装甲車に載せられて移動。使い方を知らない武器の説明書代わりにウィキペディアを印刷して戦場に赴いたという。 ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍旅団の兵士は同紙のインタビューで、「部隊の中には、これまで銃を撃ったことがない者もいた。航空機の援護や大砲はおろか、弾薬も乏しかった。当初は怖くなかったが、砲弾が飛び交い、仲間が倒れる戦場で、いかに自分たちが騙されていたかを悟った」と話した。 ●1時間前になってキーウ侵攻を命令 同紙によれば、侵攻計画そのものが杜撰で、ロシア軍は数日内に勝利することを想定、首都キーウで行う軍事パレードを意識し、将校らに軍服や勲章を梱包して持参するよう指示していたという。 2022年2月24日の侵攻前、ベラルーシ領内には数万のロシア兵が駐留していたが、ある自動車化歩兵旅団は、駐留は演習目的と聞かされており、前日に指揮官から「明日ウクライナに入る」と指示された。侵攻1時間前に行軍を知った部隊も多く、「前の車両について行き、18時間以内に首都に入る」よう命じられたという。 しかし、巨大な車両の動きは鈍く、道路が荒れ、車列はすぐに詰まった。当時、ベラルーシから一本道を南下する戦車・装甲車両の60キロに及ぶ大渋滞が報じられたが、ウクライナ軍の待ち伏せ攻撃で大量の車両が破壊され、多くの死傷者を出したという。 キーウ北東のチェルニヒウ攻略に向かったロシア軍の中核である3万人の戦車部隊は、森に隠れたウクライナ軍の対戦車ミサイル、ジャベリンの餌食となって隊列がバラバラになり、敗走した。「ロシア軍はウクライナ軍の攻撃の素早さにショックを受けた。チェルニヒウ近郊での敗北が首都包囲作戦を台無しにした」(同紙)という。 ロシア軍は首都近郊のアントノフ空港を制圧し、キーウ攻略の拠点にしようとしたが、空挺部隊のヘリが到着すると、待ち構えたウクライナ軍が米国製の携行型対空ミサイル、スティンガーで次々に迎撃して撃墜。300人以上の空挺部隊が殺害され、空港制圧は失敗した。 ●お菓子や靴下を略奪して喜ぶロシア兵 電撃作戦が失敗すると、ロシア軍は補給という基本的な問題に直面した。長期戦に必要な食糧や水、その他の物資を持ち込んでおらず、兵士らはウクライナの食料品店や病院、家屋に侵入して略奪した。 ロシア軍が制圧した南部ヘルソン州の州都、ヘルソンで、兵士がスーパーや電気店を略奪し、電化製品などを運び出す防犯カメラの映像が世界に報じられたが、ある兵士は日記に、「必要な物資だけ盗む者もいれば、テレビやパソコン、高価な酒まですべて奪う者もいた。お菓子を見つけると、皆子供のように喜んだ」とし、最も価値の高かったのは靴下だったと書いているという。 ロシア軍の中にはパニックに陥り、自滅的な行動に走る者も出た。運転手は戦場に出るのを避けるため、車両の燃料タンクに穴をあけ、走行不能にした。ウクライナ側が押収したT-80型戦車約30両は無傷だったが、調査すると、燃料タンクに砂が混入し、作動不能になっていたという。 ウクライナ側の電話盗聴も効果を挙げたようだ。ウクライナの盗聴担当者は同紙に「ロシア兵がパニックになって友人や親族に電話するのを探知した。彼らは普通の携帯で今後の作戦を決めていた。敵の居場所や今後の行動も分かった」と話した。ロシア人はウクライナ語を解さないが、ウクライナ人の大半はロシア語を理解する。盗聴作戦では女性のチームが活躍したという。 ●黒幕は「メディア王」コバルチュク 同紙は、非合理で無謀なウクライナ侵攻作戦を決断し、命令したプーチン大統領の「狂気」にも肉薄している。 それによれば、プーチン大統領にとって、ウクライナはロシアを弱体化させるため、西側が利用した人工国家であり、ロシア文化発祥の地であるウクライナを取り戻すことが22年間の統治で「最大の未完の使命」と考えたという。 政権に反旗を翻したオリガルヒで元銀行家のオレグ・ティンコフ氏は「22年間、周囲の者が天才だと称賛し続ければ、プーチンもそれを信じるようになる。ロシアのビジネスマンや役人はプーチンの中に皇帝を見た。皇帝の気がおかしくなっただけだ」と指摘した。 同紙は、ウクライナ侵攻で大統領を後押ししたキーパーソンとして、メディアや銀行を牛耳る大富豪のユーリー・コバルチュク氏を挙げている。新型コロナ禍で2020年から隔離生活に入ったプーチン大統領は、欧米指導者とは会わず、居場所も不明で、会議もオンラインで行ったが、コバルチュク氏はこの間も頻繁に会い、「西側との存亡を賭けた戦い」を促したとされる。 保守派の物理学者だったコバルチュク氏はサンクトペテルブルク出身で、1990年代からプーチン氏と親交が深い。ロシア銀行頭取として銀行業をバックに影響力を拡大。テレビや新聞を傘下に収め、「メディア王」と呼ばれる。 ●「西側は弱い」とプーチンに進言 米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」(22年12月2日)も同氏を、「ウクライナ侵攻を後押しした陰の実力者」とし、「2月の侵攻開始以降、コバルチュク、プーチン両氏は頻繁に会っているほか、電話やビデオを通じても連絡を取っている」とする関係者の証言を伝えた。 同紙は「コバルチュク氏はプーチン氏との個人的な関係の深さや世論の誘導で突出した存在だ。戦況が悪化すると、コバルチュク氏のメディア帝国は侵攻を絶賛するプロパガンダを大量に投下し、反政府派を弾圧。懸念を強める国民の注意をそらすなど、政権にとって極めて強力な役割を果たした」と指摘した。 プーチン大統領の愛人とされる元新体操選手のアリーナ・カバエワさんが、コバルチュク氏率いるナショナル・メディア・グループの会長を務めていることも、コバルチュク氏が大統領の最側近であることを示唆しているという。 同紙によると、コバルチュク氏はプーチン氏に対して、「西側は弱く、今こそロシアの軍事力を見せつける時であり、ウクライナに侵攻して国家主権を守るべきだ」と訴えたとされる。コロナ禍とコバルチュク氏の台頭が、プーチン大統領の判断を誤らせたかもしれない。 |
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●プーチン大統領侵攻を改めて正当化 「平和的解決は不可能だった」 1/19
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵攻の理由とする東部での紛争をめぐり「平和的な解決を試みたが不可能だった」として、侵攻を改めて正当化しました。 ロシア プーチン大統領「我々は合意に達しようと長い間我慢してきたが、今となっては、翻弄され、だまされていたことが分かった」 プーチン大統領は18日、第2次世界大戦の激戦地となったサンクトペテルブルクを訪問、退役軍人らとの会合で、ウクライナ東部で2014年から続いた紛争について「平和的な解決を試みたが不可能だった」として、侵攻を改めて正当化しました。 プーチン氏はその後、防空ミサイルを生産する軍需企業を視察。ロシア軍の兵器不足が指摘される中、ロシアで生産される防空ミサイルの数は全世界の生産量に匹敵すると主張し、「最終的なロシアの勝利に疑いはない」と強調しました。 一方、ラブロフ外相は18日、年頭の記者会見を行い、日本について「再び軍事化の道を進んでいる」と批判しました。ラブロフ氏は「北朝鮮への対応としているが、ロシアと中国も念頭に置いているのは明らかだ」と主張しています。 |
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●武器供与、新たな段階に 20日にウクライナ支援国協議 1/19
ロシアの侵攻を受けるウクライナへの軍事支援が新たな段階を迎えている。20日にはドイツ南西部ラムシュタイン米空軍基地で、支援を協議する国際会議が開かれる。これまで西側諸国がウクライナの要望に応じてこなかった攻撃力の高い戦車の供与などが議論の軸になる見通し。ロシアが春にも大規模攻勢をかけるとの見方が出る中、一致した対応でウクライナ軍の補強を急ぎたい考えだが、戦闘の激化は避けられない。 年明け早々にフランス、米国、ドイツが戦闘車両供与を相次いで表明。その後も英国が主力戦車の提供を明らかにした。17日にはオランダのルッテ首相がバイデン米大統領との会談で、地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」を送る意向を伝え、支援の動きが広がっている。 一方で支援国も一枚岩ではない。ドイツ製主力戦車「レオパルト」の供与を巡っては、前向きなポーランドやフィンランドと、慎重な製造国ドイツの間の不和が露呈した。ロシアとの全面衝突を避けたい思惑から武器を限定してきた西側諸国の間で、戦況の変化に対応できず乱れが生じた側面もある。 ドイツのハーベック副首相兼経済・気候保護相は17日、自国からの供与への言及は避けつつ、「他の国が支援したいなら、妨げないことが適切だと思う」と指摘。他国の独製戦車引き渡しを容認する考えを示唆した。同時に、最終決定には米国の後押しが必要だとして、米側に関与を求めた。 ショルツ独首相は同日、バイデン氏との電話会談で、ウクライナ支援について意見を交わした。20日の会議を主催するオースティン米国防長官は前日にベルリン入りし、ぎりぎりまで調整に当たる。ロシアの侵攻が新たな局面に移りつつある中、ウクライナ支援国が団結した姿勢を打ち出せるかが試されている。 |
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●もはや西側の政策もプーチン自身も、ロシアの崩壊を止められない理由 1/19
ウクライナの首都キーウ(キエフ)を制圧し傀儡政権を樹立するロシアの試みは早い段階で失敗、ロシアの敗北は日ましに現実味を増しているようだ。 だが軍事侵攻から1年近くたつというのに敗北が招き得る結果についてはほとんど論じられていない。ロシア崩壊の可能性を思えば、危険なほど想像力に欠けている。 敗色がさらに濃厚になった場合ロシアで何が起きるのか、最悪のシナリオは複数ある。 最も可能性が高いのは、ウラジーミル・プーチン大統領が権力の座を去り、戦争継続と既存の政治的ヒエラルキー打倒を望む極右ナショナリスト、現体制に利害を有する保守派、息を吹き返して戦争終結とロシアの改革を誓う民主主義運動との間で熾烈な権力闘争が起きることだ。 その場合は誰が勝っても政権は弱体化し、戦争遂行にかまけてはいられなくなるに違いない。その結果、機能不全の経済とも相まって不満を抱く国民は抗議デモを繰り広げ、一方、タタール、バシコルトスタン、チェチェン、ダゲスタン、サハなどロシア連邦を構成する共和国は自治拡大を目指すだろう。 こうした混乱を生き延びた場合、ロシアは中国の弱い従属国と化しそうだ。生き延びられなければ、ユーラシアの地図は大きく変わる可能性がある。 ロシア帝国の何世紀にも及ぶ征服がもたらした広大な国土、反体制派勢力地域の長い歴史、非ロシア民族の多さを考えれば、はるかに注視すべきシナリオは中央集権制の崩壊とロシア連邦の分裂だ。 歴史上、戦争や革命や体制崩壊や経済危機が画期的な変化をもたらした例はいくらでもある。ナポレオンの帝国は1812年のロシア遠征失敗と翌年のライプチヒの戦いでの敗北を受けて崩壊。1918年には第1次大戦で敗北した4つの帝国(オスマン、オーストリア・ハンガリー、ドイツ、ロシア)が崩壊に追い込まれた。 同様に1985年にミハイル・ゴルバチョフがソ連共産党書記長に就任した際、ソ連崩壊を予想した者はほとんどいなかったが、図らずもソ連を葬ったのは彼のペレストロイカ(改革)だった。 ●「空白地帯」化を危惧する声も ロシアがこれらの国々と同じ道をたどるとしたら、それはロシアのエリートの意図や西側の政策とはほとんど無関係で、より大きな構造的要因によるものだ。 ウクライナでの軍事的、道徳的、経済的敗北などさまざまな葛藤が積み重なったことがプーチンのロシアを彼の大言壮語とは懸け離れた脆弱国家にしている。 そうした要因はほかにもある。行きすぎた権力集中体制のもろさと無能さ。敗北や病や加齢に伴う個人崇拝の破綻。ずさんな石油価格政策。社会の隅々にまで蔓延する腐敗。世界最後の旧態依然とした帝国における大きな民族的・地域的亀裂。 ロシア崩壊は誰も望んでいないかもしれないが、政治的・経済的・社会的混乱が拡大し、連邦を構成する各共和国が独立を模索するシナリオは想像に難くない。 現在は一触即発の状態なのかもしれない。ウクライナ戦争の失敗がプーチンとロシアの脆弱さを露呈し、それが崩壊寸前のロシアの体制の骨組みに飛び火する可能性は大いにある。 何が引き金になるかは予想できず、ロシアが現在の体制のまま危機を乗り切る可能性はあるが、その場合も国家は大幅に弱体化し、構造的緊張は続くはずだ。 プーチンはロシア崩壊の可能性も考えているのか、1月の新年の国民向け演説でウクライナ戦争がロシアの独立性を脅かす可能性に初めて言及した。 しかし現実にロシアが崩壊した場合、その結果は不安定で暴力的なものになるのだろうか。 ジョージ・ワシントン大学ヨーロッパ・ロシア・ユーラシア研究所のマルレーヌ・ラリュエル所長によれば答えはイエス。「崩壊は複数の内戦を生む」「新たに誕生した小国同士が国境と経済資産をめぐって争う」一方、ロシア政府の支配層は「いかなる分離主義にも暴力で応じる」ためだという。 ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官も「ロシア連邦が崩壊もしくは戦略的政策を実行できなくなれば、11の時間帯にまたがる領土はさまざまな勢力が権力争いを繰り広げるリーダーシップの空白に陥りかねない」と指摘。 領内の勢力は暴力的な方法で紛争を解決しようとし、諸外国は力ずくで領土拡大を図る可能性があり「大量の核兵器の存在がこれらの危険性に拍車をかけるだろう」と警告した。 ●近隣国の安定が「防疫線」に ただしどちらも最悪のシナリオであり、歴史上、帝国の崩壊は近隣国や世界にとっては必ずしも悪いことばかりではない。 例えばナポレオン失脚後のヨーロッパは比較的平和で、オーストリア・ハンガリー帝国の場合も崩壊直後はポーランドとウクライナの領有権争いなどはあったものの数年で安定。ソ連崩壊後でさえ驚くほど平和だった。 恐らく、独立した元共和国と新たに誕生したヨーロッパの衛星国で国境が画定し、行政が機能し、支配層が国家建設に着手できる状態だったからだろう。 その半面、オスマン帝国の崩壊はトルコとギリシャの領有権争いを招き、ロシア帝国の崩壊後はバルト海から太平洋まで広範囲で紛争が起きた。ドイツ帝国崩壊は第2次大戦につながったと言えるかもしれない。 ロシアの残党が分離主義国家と戦うと悲観論者は指摘するだろう。ロシア軍はウクライナでの敗北で弱体化し複数の戦線では戦えないと楽観論者が反論すれば、悲観論者はロシアの核兵器に言及する。 双方の意見が唯一一致するのは、ロシアには大規模で重装備の民兵組織が存在する故に、内戦が起きる可能性だ。 結局、西側の政策もプーチン自身も崩壊は止められない。ロシアの体制危機の根は深い。ロシアを不安定にし、崩壊のきっかけをつくった張本人がプーチンなのだ。 それでも西側はロシア崩壊に備えるべきだ。かつて死にゆくソ連を救おうとしたように近隣国よりもロシアのニーズを優先するようなことがあってはならない。 バルト海沿岸から中央アジアまでロシアと国境を接する国々が安定を維持し「防疫線」を形成できれば、ロシア国内で何が起きてもそれを封じ込めることができる。 プーチン帝国崩壊の余波を最小限にとどめるには、ウクライナに対して、ゆくゆくは解放されたベラルーシやカザフスタンなどの重要な国に対しても、強力な支援を続けるに越したことはない。 |
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●プーチン氏「ロシア人の結束」訴え ナチス戦「80年」イベント出席 1/19
プーチン露大統領は18日、第2の都市サンクトペテルブルク(旧レニングラード)を訪れ、第二次大戦時にナチスドイツが同地を包囲した攻防戦に関するイベントに出席した。プーチン政権はナチスとの戦争とウクライナ侵攻を重ね合わせ、現在の軍事侵攻を正当化するとともに、国民に戦いの継続と協力を訴えている。 レニングラードでは1941年9月からナチスによる包囲が始まり、44年1月に解放されるまで2年4カ月の戦闘が続き、100万人を超す市民が死亡したとされている。ロシア大統領府は43年1月18日に包囲網が破られ始めたとして、この日を「80年の記念日」と位置づけた。 レニングラード出身のプーチン氏の家族では、父親が攻防戦に従軍したほか、母親が救護活動に当たったという。また、兄が包囲されていた時期に死亡しており、プーチン氏は毎年のように攻防戦に関するイベントに参加してきた。 この日は黒いスーツとネクタイを身につけて、市内にある犠牲者の追悼碑に献花した。さらにナチスに包囲されていた当時の生存者や退役兵らと面会したほか、ミサイル製造工場を視察し、従業員と対話する機会を設けた。 工場の従業員の質問に答える形で、プーチン氏は第二次大戦時のウクライナ独立運動の指導者ステパン・バンデラがナチスと協力したうえで、一般市民を襲撃していたと指摘した。現在のウクライナ軍が東部ドンバス地方(ドネツク、ルガンスク両州の一帯)で「一般市民を撃つような行為を続けている」と主張し、ウクライナのゼレンスキー政権が「ネオナチであると見なす論拠がある」と訴えた。 またプーチン氏は「勝利は必然だ」と述べ、そのためには「ロシア人の結束と団結」「あなた方のような軍産複合体と工場の仕事」が必要だとして、従業員らに支持を求めた。 ウクライナはナチズムに関するロシアの主張を一顧だにしていないが、プーチン政権は侵攻開始から間もなく11カ月となる今でも、このロジックを唱え続けている。 ロシアのラブロフ外相も18日の記者会見で、ナポレオン時代のフランスやナチスが帝政ロシアやソ連を攻撃してきた歴史を取り上げ、現在の米国が同盟を築き、ロシアとの戦いを組織化していると指摘。そのうえでナチスがユダヤ人の撲滅を試みた「最終的解決」を持ち出し、「これはロシアに関する問題への『最終的解決』だ。ヒトラーもユダヤ人に関する問題を最終的に解決しようとした」と語った。 ラブロフ氏はウクライナへの兵器支援を続ける欧米諸国とナチスを関連付けて、軍事侵攻の正当化を試みたが、イスラエル政府はこの発言に反発している。タイムズ・オブ・イスラエル紙によると、イスラエル外務省は「現在起きている出来事とヒトラーの『最終的解決』を比較することは歴史の真実を損なわせる」と非難する声明を出した。 |
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●苦戦が続くロシア、新たに「動員令」か 軍の定員を50万人増強する方針 1/19
ウクライナ軍がロシア軍への大規模反攻に向けた準備を加速させている。ウクライナ兵が米本土で地対空ミサイルシステム「パトリオット」の使用訓練を始めた。欧米の戦車の供与も進むが、弱腰≠フドイツがカギを握る。対するロシアのプーチン大統領は侵攻継続の姿勢で、軍の定員を50万人増強する方針だ。近く新たな動員令を打ち出すとの観測もある。 米国防総省は17日、ウクライナ兵90〜100人を対象にした地対空ミサイルシステム「パトリオット」の使用訓練を、南部オクラホマ州の陸軍施設フォート・シルで始めたと明らかにした。訓練は10週間続く見通し。 ウクライナ軍のザルジニー総司令官は同日、ポーランドで米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長と対面で初めて会談した。 ウクライナでは18日に首都キーウ近郊でヘリコプターが墜落し、モナスティルスキー内相を含む計14人が死亡した。 ゼレンスキー大統領は同日、スイスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でのオンライン演説で、「西側の戦車提供は、ロシア軍戦車による侵攻ペースを上回らなくてはならない」「防空システムの提供は、次のロシアのミサイル攻撃に先んじなければならない」と強調、支援に向けた決断の迅速化を求めた。 欧米がウクライナ支援で足並みをそろえるなか、判断が注目されているのがドイツだ。ドイツ製主力戦車「レオパルト2」を保有するポーランドが、ウクライナへの供与を表明しているが、製造国ドイツの承認が必要となる。 南ドイツ新聞と米紙ウォールストリート・ジャーナルの電子版は18日、ドイツのショルツ首相は米国が主力戦車「エーブラムス」を提供する場合に限り実施する意向だとし、米国次第だと条件を付けた。 一方、ロシアのショイグ国防相は17日、軍の定員を現在の100万人規模から2026年までに150万人に増やすことをプーチン氏が決定したと明らかにした。 苦戦が続くロシアだが、プーチン氏はなおも戦争継続の意欲を崩していないとみられる。 米シンクタンクの戦争研究所は「プーチン氏が軍を拡大するための、第2の動員令を発表する可能性がある」と分析した。 |
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●プーチン氏謀った独産業の破綻は失敗、ハベック経済相 1/19
ドイツのハベック経済相は19日までに、ウクライナに侵攻する中でロシアのプーチン大統領が謀っていた独産業界の破綻(はたん)は失敗したとの認識を示した。 同国ベルリンで開かれた地元経済紙「ハンデルスブラット」が主催したエネルギー問題関連の会合で表明した。 経済相は侵攻に伴ってドイツが抱え込んだエネルギー危機は2024年までに克服されるだろうと予測。天然ガスの輸入のための早急な基盤整備や保管施設は23年あるいは24年の冬季に備えて全面的に整うとの見通しを表明。 そうなれば「妥当な水準」での「安全かつ安定した」ガス供給の態勢につながるだろうとした。 ドイツのガス供給網の行政当局によると、昨年12月には凍えるような寒さの日々が短期間あったものの1月に入ってからはこれまで温暖な天候が続き、国内のガス備蓄施設では収容能力の約90%を確保できているとした。 今冬にガス不足が起きる可能性は少ないとしながらも、状況がさらに悪化し得る事態も警戒した。 ハベック氏は気温が氷点下になれば、国内のガス消費量は1日あたり備蓄量の約1%消える計算になるとも報告。「今冬の数カ月を適切なガス備蓄量を保って乗り切れば昨年のような非常事態には再びならないだろう」とも言明した。 |
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●プーチン大統領まさかの追放も…泥沼ウクライナ侵攻で激化する権力闘争 1/20
ウクライナの要人を乗せた非常事態庁のヘリコプターがキーウ近郊で墜落、モナスティルスキー内相ら16人が死亡するまさかの出来事に衝撃が広がっている。ヘリは前線へ向かう途中だったが、現場付近でロシア軍による攻撃はなかったという。墜落原因は調査中だが、プーチン大統領が戦端を開かなければ起きなかった悲劇だ。 「特別軍事作戦」の総司令官を制服組トップのゲラシモフ参謀総長に交代させたばかりのロシアでは、ショイグ国防相が2026年までに兵士の定員を現状の115万人から150万人に引き上げると発表。さらなる長期戦に備えた動きにも見えるが、来年3月に実施予定の大統領選で5選を狙うプーチン大統領の焦りが透けて見える。というのも、手足となってきた民間軍事会社「ワグネル」の存在が肥大化しているのだ。 ワグネルを率いるのは「プーチンのシェフ」と呼ばれる実業家のプリゴジン氏で、強硬派の筆頭格だ。プーチン大統領の意向に沿って世界のアチコチに傭兵を派遣しウクライナではロシア軍がおののくほど残虐な戦闘を展開させているとされる。 筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)はこう言う。 「大統領選を執り行うのは大統領府ですが、キリエンコ大統領府第一副長官やシルアノフ財務相、ナビウリナ中央銀行総裁ら経済畑の面々はロシア経済を疲弊させる作戦継続に反対の立場。クレムリンがプーチン氏の続投に向けて一枚岩になれていない。穏健派の対極にいるのがプリゴジン氏で、プーチン氏は板挟みになっている。そうした隙を突くように、プリゴジン氏はポスト・プーチンをにらんだ動きを強めています」 ●ワグネル代表が裏社会から表舞台へ プリゴジン氏は昨年11月、プーチン大統領の故郷であるサンクトペテルブルクに公式事務所「PMCワグネル・センター」を開設。裏社会から表舞台に躍り出た。 「ワグネル・センターが先日、法人格を取得したことからも、プリゴジン氏の勢いにプーチン氏が押されていることが見てとれます。プリゴジン氏は囚人をスカウトしてウクライナの戦地に送り込んでいますが、その延長で、収監中の反体制派指導者ナワリヌイ氏の釈放に動く可能性がある。理由はどうあれ、国民的な同情を集めるナワリヌイ氏を自由の身にし、『反汚職』『反ブルジョア』を旗印に大統領選に挑めば、勝機はあります。プーチン体制を象徴する汚職やブルジョアによって弱いロシアになった、と訴えれば世論に響く」(中村逸郎氏=前出) どう転んでも、ロシアの混迷は深まりそうだ。 |
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●ロシア経済の大幅縮小予想も 戦争混迷で動員逃れの人口減が重荷に 1/20
英国に住む筆者は、クリスマスイブ(12月24日)の夜には、英国国教会でのクリスマス礼拝に参加するのが恒例となっている。大聖堂の聖歌隊に所属する娘の送迎や教会でのボランティアも担当しているため、昨年もイエス降誕を祝う深夜12時を大聖堂で無事迎えられた。ちなみに日本でも有名なクリスマスソング、Silent Night(きよしこの夜)はキリスト教のHymn(賛美歌)であり、聖歌隊による生の合唱で聞くことはお勧めである。 一方、ユリウス暦で動くロシア正教会のクリスマスは年明けの1月7日である。クリスマスイブとなる1月6日には、英国国教会をはじめとするキリスト教宗派と同様に真夜中に礼拝があり、例年ロシア国営テレビはプーチン大統領が出席する様子を放映する。 通常はモスクワ郊外の地元の教会において、複数人で礼拝に参加するプーチン大統領だが、今年はモスクワ市内の大聖堂で、たった1人で参加するという異例の事態となった。ちなみにロシア正教会は英国国教会と違い、椅子がないため礼拝中は終始立ちっぱなしである。(ロシア正教会での)結婚式も同様で、参加者全員立ったままで行うのはそのためである。 現時点では、ロシアとウクライナが停戦交渉の席に着く可能性は低く、侵攻の長期化は避けがたい。プーチン大統領が提案した1月6日から36時間のクリスマス停戦も、ウクライナはロシア軍の態勢立て直しのための時間稼ぎであると批判して応じず、実現しなかった。 ロシアによる徹底的ともいえるインフラ破壊攻撃で、電気や暖房、水道といったライフラインすら絶たれた中でクリスマスを迎えるウクライナ国民にとって一方的な停戦提案は、到底受け入れられるものではなかったといえよう。礼拝でのプーチン大統領の孤独な姿や悲しげな表情が強く印象に残るクリスマスであったが、それもそのはず、2023年のロシア経済の見通しには相当悲観的にならざるを得ないからだ。 2022年2月末のウクライナ侵攻、そしてそれに伴う西側諸国の制裁開始から数週間で、ルーブルのレートは過去最低の水準に落ち、ロシア経済が急降下の状態に陥ったことは記憶に新しい。しかし政策金利を20%にまで引き上げ、通貨および資本に大幅な制限を導入するなど、ロシア中央銀行が金融危機を阻止するため機敏に動いたことが功を奏し、市場は徐々に安定を取り戻した。そのため、足元の経済は予想されていたほどの低迷を見せていない。 2022年4月には国際通貨基金(IMF)が2022年のロシアの実質GDP成長率を8.5%減と予測していたが、10月には3.4%減にまで上方修正した。さらに12月のロシア経済発展省の見通しでは、2022年1〜11月のGDPは2.1%減(通年では2.0%減)とIMFよりも高く推計している。 ●動員逃れで全労働人口の約1.5%が減少も ただ、中長期的にみればロシア経済の下振れリスクは大きいといわざるを得ないだろう。2022年第3四半期のGDPは3.7%減と、第2四半期(4.1%減)に続く低下幅を示し、既に景気後退に陥っていることは明らかである。インフレによって消費者の購買力も損なわれているため、個人消費も弱く小売売上高はやや持ち直しているとはいえ、11月には前年比7.9%減を記録した。 プーチン大統領は侵攻開始以降、年金支給額、最低賃金の10%の引き上げや、8〜16歳の子供に対する新たな給付金、企業融資や住宅ローン返済猶予の延長などを拡充するなど、なりふり構わぬばらまき政策を加速している。大統領選挙を2024年3月に控え、今後もばらまきが拡大する可能性は高く、財政の悪化は免れないといえよう。 さらに侵攻が長期化するにつれ、ロシアが直面することになる最大の課題は人口の減少である。特に深刻なのは軍事侵攻への動員逃れのため国外に逃れる国民の増加である。ロシアは9月に30万人の部分的動員に踏み切り、ウクライナ側の発表によると50万人の追加動員に踏み切る可能性が高いという。 そのため動員から逃れるために海外へ出国する人は後を絶たない。2022年第3四半期にロシアを離れた人数は前年比で120万人も増加し、ビザが不要なカザフスタンとジョージアがその主要な受け入れ先となっている。ロシアの全労働力の約1.5%が他国に流出したといわれており、追加動員が発令されれば、さらなる人口減に直面する可能性が高い。人口減は労働人口の減少はもちろん、消費需要の減少を生み出すこととなり、さらなる経済の悪循環を招く恐れがある。 既にロシア国民の行動パターンには変化が現れつつあり、特に顕著なのは現在進行中の貯蓄ブームである。12月末に発表された家計貯蓄に関する統計データでも明らかとなり、ロシア中銀は再三にわたり、貯蓄率の伸びに関し、警戒を込めてコメントしている。貯蓄率が伸びたのは、侵攻の長期化で今後訪れる困難な時期に備え、金銭的な備えを国民が求めていることが一因と考えられる。 ●過去最大の石油輸出収入も戦費に使われ財政赤字は拡大 エネルギー価格の高騰により、2022年のロシアの輸出収入は過去最高の水準に達している。ロシア統計局の発表によれば、石油生産量は1月から10月で、前年比2.4%増でその多くが輸出され、最も重要な石油産業がロシア経済を引き続き下支えしていることに変わりはない。 ロシアにおける主要輸出分野は、1石油、2ガスおよび3石油製品である。これら3製品は、ロシア総輸出収入の約50%を占め、その動向が貿易収支に重大な影響を与えることになる。石油は2022年12月より海運輸送される場合には主要7カ国(G7)やオーストラリアが参加した石油価格上限スキーム制裁の対象となっている。ただロシアは新たな輸出先を開拓し市場の多様化に成功し、1年前には欧州連合(EU)諸国がロシアからの輸出先の約50%を占めていたが、2022年末の時点では約30%まで低下している。 ロシアの原油輸出収入の70%に相当する海上輸送される原油の輸出先がEUから新しい市場、主にトルコとインドにシフトしたことも背景にある。国際指標の北海ブレント原油とロシア産のウラル原油の間で生じた価格差が現在1バレルあたり20〜25ドルに達しているにもかかわらず、ロシアの石油輸出収入は過去最大となっている。 ただ過去最大の石油輸出収入にもかかわらず、景気後退も重なり、ロシア政府の財政に着実に悪影響が出ていることも確かである。さらに原油に比べ輸出先を容易に変更することが難しい石油製品に対し、2月からEUの禁輸措置が発効するため、輸出減の可能性も指摘されている。 ロシアの石油精製産業は世界第3位の規模だが、部分的動員による労働者不足が原因で、既にロシアの精製業は苦境に陥っているという。特に貨物タンカーはこれまで輸出してきた欧州よりも遠く離れた国へ輸出するため、輸送費が増している。このため、精製業の利幅は圧迫され、2023年を通じ前年比で1日あたり60万バレルの減産になるといわれている。 シルアノフ財務相は12月末、一連の価格上限スキームによって輸出収入が減少し、2023年の財政赤字はさらに拡大する可能性があることを認めている。ロシア政府の2023年1月10日の発表によると、2022年の財政赤字は対GDP比で2.3%(3.3兆ルーブル)にまで拡大している。過去最大の石油ガス収入により、歳入は2.6兆ルーブル増加(前年比10%増)したものの、同時に歳出が7.4兆ルーブルも増加(前年比26%増)したことが原因である。 財政支出の詳細は2022年6月より欧米など非友好国の圧力を理由に公開されていない。しかし、その大半が軍事費に利用されていたと考えられる。シルアノフ財務相は2023年1月の会合でも、支出を増大させたが、これは主に社会保障や国民支援に使われているとし、(上述の)年金引き上げや住宅ローン返済猶予の延長などを挙げたが、ウクライナ侵攻については触れなかった。 また財政赤字を解消するための2022年の原油価格に対する国家予算の損益分岐点は、ウラル原油が1バレル101ドル程度といわれるが、価格上限スキームの影響もあり、12月の平均は1バレル51ドルにとどまっている。さらに、2022年のガスプロムからの特別利潤税1.8兆ルーブルがなかったと仮定すると、損益分岐点の石油価格は1バレル115ドルまで上昇するなど、財政リスクは非常に深刻である。ロシア政府が2023年の予算案で想定した原油価格は1バレル70ドルのため、引き続き支出を削減する方法を模索するものと思われる。プーチン政権は既に戦費や選挙対策以外の支出の削減または延期を開始しており、財政赤字を補うために、一部大企業に対する増税を検討している。 ●公式発表よりも格段に悲観的な経済見通しがリークされた ロシア中銀は12月の金融政策決定会合で、市場コンセンサス予想通り、主要政策金利を7.5%で据え置いた。ただ声明の文言はタカ派的で、短期的にもインフレ寄りのリスクが、ディスインフレのリスクよりも高まっている点を強調している。その背景として、侵攻開始から夏頃までは急激なエネルギー価格の上昇によりルーブルが急伸したが、直近ではこのトレンドが反転していることがある。 このルーブル安の理由のひとつとして考えられるのは、海外の銀行口座におけるロシア人の預金の増加といった例にみられるような資本の流出である。ロシア中銀によると、2022年初め、ロシア人が国外に保有する預金は300億ドル未満だったが、2月の侵攻以降、9月時点で660億ドルに達するなど、加速度的に資本が流出している。 また2022年を通じ、多くの外資企業がロシアでの活動を停止、あるいは市場から撤退した。ロシアから撤退したブランドには、米マクドナルドや独メルセデス・ベンツグループ、スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)、デンマークのレゴなどあまたある。ロシア商工会議所の調査によれば、西側諸国の制裁により、悪影響を受けた企業は60%に及んでいるという。またその相当数が海外提携先を失い、これを置き換える新たな提携企業を見つけたのは、約25%にすぎないとの結果が出ている。さらに同調査に回答した企業の3分の1以上が、失った取引先を埋め合わせることができていないという。 さらに海外からの輸入も西側諸国の制裁厳格化とルーブルの下落により、2022年春より急減したままである。資本の移動への制限や経済制裁により、過去最高を記録した輸出収入はロシア国内にとどまっている。西側諸国の対ロシア輸出制限の多くは、ハイテク製品を対象にしており、ロシア軍事産業の生産能力をそぐことを目的としている。 ロシアは侵攻開始後、国際貿易統計を非公開にしたが、戦争と制裁の影響でロシアの輸入は急減したとみられている。特に技術製品の輸入減は顕著で、主要貿易相手国の輸出データからの間接的な推計ではあるが、9月の製品輸入は侵攻前の水準を約3割は下回っている。ロシアはこれまで何年にもわたり、輸入品を国内生産に置き換えようと努力してきたが、依然としてハイテク製品や中間財は輸入に依存している。ロシアの生産構造は数十年前から変わらず、採掘やローテクの資本集約的な産業が圧倒的である。制裁により技術や資金調達の利用が制限されている今、技術製品の代替品輸入の見通しはさらに限られている。 そのような中で重要商品の輸入減や欧州へのエネルギー供給の遮断により、ロシア経済への悪影響が今後拡大することを予測した内部報告文書がリークされたことは注目に値する。報告書では、金属や石油、ガスなど、ロシア経済の生命線である「さまざまな輸出志向型セクターでの生産量の減少」について警鐘が鳴らされている。 米メディアが報じたこの文書で想定されている3つのシナリオのうち、ワーストシナリオではロシアのGDPは2024年までに2021年比で12%減と大幅に縮小し、2030 年までには完全には回復しない。またベースシナリオでも、来年にかけてロシアのGDPはピークから底まで8.3%の落ち込みに直面し、回復には2020年代後半までかかるとしている。2023年の戦況にもよるが、当面、プーチン大統領には苦難の道が続くことが予想されている。 |
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●プーチン氏がイラン大統領と電話会談、イラン製無人機などの供与巡り協議か 1/20
ロシア大統領府の発表によると、プーチン大統領は19日、イランのエブラヒム・ライシ大統領と電話会談した。両首脳は今月11日にも電話会談しており、プーチン氏がウクライナ侵略で、イラン製の無人機(ドローン)や短距離弾道ミサイルの供与を求めた可能性が指摘されている。 メドベージェフ前露大統領は19日、自身のSNSに「通常(兵器で)の戦争での核大国の敗北は、核戦争を誘発する可能性がある」と投稿した。米欧によるウクライナへの兵器供与の拡大をけん制したものとみられ、メドベージェフ氏は「核大国は自国の運命を左右する紛争で負けない」とも主張した。 一方、ウクライナ軍参謀本部は19日、南部ザポリージャ州などで同日、ロシア軍から4回のミサイル攻撃と、15回の空爆を受けたと明らかにした。 ミサイル攻撃のうち2回は、ザポリージャ州の集落にある民間のインフラ(社会基盤)施設を狙ったとみられる。被害状況など詳細は不明だ。激しい攻防が続いている東部ドネツク州のバフムトやソレダルなどでも露軍の砲撃が続いたという。 ウクライナのドミトロ・クレバ外相とオレクシー・レズニコフ国防相は19日、連名で声明を発表し、欧州各国などに対し、戦車の早期供与を求めた。 声明は、ドイツ製戦車「レオパルト」を保有するドイツやデンマーク、オランダなど12か国の国名を挙げ、英政府が陸軍の主力戦車「チャレンジャー2」の供与決定を発表したのに続くよう訴えた。 ドイツ以外の国がウクライナにレオパルトを供与するには、ドイツの再輸出許可が必要になる。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は19日のビデオ演説で、「ドイツのリーダーシップの強さは変わらない」と述べ、ドイツに再輸出許可を出すよう呼びかけた。 |
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●ゼレンスキー大統領、プーチン大統領が生きているか分からないと発言 1/20
ロシアの侵攻が始まってもうすぐ1年になるウクライナのゼレンスキー大統領が、スイス・ダボスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の朝食会で、集まった人々を前にロシアのプーチン大統領がまだ生きているか分からないと発言し、死亡している可能性を口にしたとウクライナのメディアが報じた。ゼレンスキー大統領は18日、各国の代表者らを前にオンライン演説し、武器供給の加速や国際社会の団結を訴えていた。 ウクライナのオンラインニュースメディアPravdaが情報筋の話として伝えたところによると、「私は誰と何を話したら良いのか分からない。時々、グリーンスクリーンの前に現れるロシアの大統領が本物なのかどうか分からない。彼が生きているのか、彼が決定を下しているのか、誰かが(代わりに)決断を下しているのか、私にはよく分からない」と演説したという。 プーチン大統領の健康状態を巡っては、以前からがんとパーキンソン病が進行して重病である可能性が度々メディアを賑わせてきた。昨年12月に年末恒例となっていた大規模な記者会見を10年ぶりに取りやめ、連邦議会での伝統的な演説もキャンセルしたことも、健康不安説に拍車をかけている。 ロシアのSNSテレグラム・チャンネルにあるGeneral SVRという軍事関連サイトは、プーチン大統領は抗がん剤の副作用に苦しんでおり、ほとんど誰とも面会できない深刻な状態であると主張。また、ニューヨーク・ポスト紙も17日、薬の副作用で衰弱し、めまいを訴え、食欲も失っているとプーチン大統領の現状を伝えている。 |
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●ウクライナ 西側が追加兵器支援を相次ぎ表明−20日に国防相会議 1/20
ウクライナ支援で一致する西側同盟国が20日にドイツのラムシュタイン米軍基地で開く国防相会議を前に、ウクライナへの追加兵器支援を表明する国が相次いだ。 バイデン米政権は、約25億ドル(約3200億円)規模の次回のウクライナ軍事支援パッケージで米軍の装甲車「ストライカー」約100台を供与する計画だ。英国は地上・空中発射型ミサイル「ブリムストーン」を追加で600発、デンマークはフランス製榴弾砲をウクライナにそれぞれ供与する。ウクライナ当局者は同盟国に戦車や砲弾、長距離ミサイルシステムの追加提供を強く訴えていた。 バイデン政権はロシア産原油の輸出上限価格を引き下げる動きには反対に傾いている。ロシアのプーチン大統領はイランのライシ大統領と今年2度目の電話会談を行った。 ウクライナ情勢を巡る最近の主な動きは以下の通り。 ●ロシア産原油の上限価格、米国はバレル60ドルでの維持求める 一部の欧州諸国はロシアの収入源に対し一段の圧力を求めているが、バイデン政権は現在の上限価格を引き下げる動きには反対へと傾いている。ロシアの代表的な油種であるウラル原油の取引価格は、主要7カ国(G7)が昨年12月5日に導入したバレル当たり60ドルの上限価格や国際的な相場を大幅に下回っている。欧州連合(EU)は市場の平均価格を少なくとも5%下回る水準に上限価格を維持することを目的に、1月中旬から2カ月ごとに上限を見直すことで合意している。 ●ゼレンスキー氏、年内のEU加盟交渉開始を切望 ウクライナのゼレンスキー大統領は首都キーウでミシェルEU大統領と記者会見し、EUへの完全加盟について年内の交渉開始を望んでいると表明した。ゼレンスキー氏が「必要な前提条件は全て整っており、強力な意欲もある」と述べると、ミシェル氏は「EU加盟へのウクライナの願望をわれわれは応援する」と答えた。 ●プーチン、ライシ両大統領が今年2度目の電話会談 ロシア大統領府の発表によれば、プーチン大統領はイランのライシ大統領とエネルギーや輸送面の協力を話し合った。両大統領の電話会談は今年に入り2回目。また、シリア情勢についても協議した。ロシアとイランは、ロシアによるウクライナ侵攻後にさまざまな分野で協力を広げている。 ●ポーランド、ドイツの承認なしでも戦車供給する可能性 ポーランドはドイツ製戦車「レオパルト2」のウクライナ供与について、ドイツ政府の承認が得られなくても行う可能性があるとモラウィエツキ首相が語った。首相は18日遅く、ポルサット・ニュースに対し「承認は二次的な問題だ」と主張、「この承認を近く得るか、さもなければ必要なことをわれわれ自身で行う」と述べた。ポーランドはレオパルト2戦車をウクライナに14台提供する用意がある。 |
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●ハゲタカが虎視眈々?戦争で疲弊しきったロシアのどこに儲けのチャンス・・・ 1/20
●ロシアに儲けのチャンスがある? / ロシアの何が狙われるのか 広大な領土からのエネルギーなど資源の採取に偏するロシア経済と逆なのが中国です。漢王朝の時代から模倣ばかりやってきた国柄ですから、よその国で開発したものを模倣して生産する製造業でも効率のいい方法に長けていて、そのうえ勤勉な国民性があります。最近はメリットが薄くなってきているようですが、人口も多いので人件費も比較的低く抑えることができます。 その中国に比べれば、ロシア人は大量生産・大量消費の伝統をもたない国民性で、製造業に向かない国柄です。だからペレストロイカ以来、製造業を国の柱にすることを悲願にしてきたにもかかわらず、なかなか実現しませんでした。それは、ウクライナ戦争後も変わることはないでしょう。 そうであれば、戦争後のロシアに西側諸国の投資家が乗り込んでいっても、投資する対象がないように思われがちです。しかし、そんなことはない。戦争で疲弊し切ったロシアは、じつは儲けのチャンスが転がっている場所でもあるのです。 ボロボロになった資産でも、それを証券化して売りさばいてしまうのが金融市場です。米国の信用度の低い借り手向け住宅ローン、いわゆるサブプライムローンも証券化されて世界中で取引されました。それがリーマン・ショックを引き起こす原因にもなったわけですが、それほど広範囲で取り引きされていたということです。リーマン・ショックでは損失ばかりが注目されますが、それ以前に大儲けした人たちもかなりいます。 言い方を変えれば、ボロボロになったものほど証券化することで儲けにつながる可能性は高くなるということです。破壊は儲けるチャンスです。その意味では、ウクライナ侵攻でボロボロになったロシアには、投資家が儲けるチャンスがゴロゴロしていることになります。それを見逃す投資家はいないはずです。 安値で買い叩いた証券や債券などの資産を高値で売りさばいて大儲けするのが、いわゆるハゲタカファンドです。バブル崩壊後の日本でも、このハゲタカファンドが暴れ回って大儲けしています。同じことが、戦後のロシアでも間違いなく起きます。 ソ連の崩壊後に政府と結託して事業を拡大し、プーチンとも密接な関係を築くことで急速に富を増やしていったオリガルヒと呼ばれる大富豪がロシアに存在しますが、プーチン失脚後には彼らの政治的影響力が失われるはずです。それをハゲタカファンドが見逃すはずもなく、身ぐるみ剝がれてしまうのは確実です。 国際金融という場で、ロシア経済の荒廃は儲けのチャンスです。そこで誰が得するかといえば、間違いなく米国です。ウクライナ侵攻は、ますます米国のドル覇権が強まる結果をもたらすことになります。 プーチンが脱ドルによってロシア帝国の再興を狙うのがウクライナ戦争なのですが、北欧フィンランドとスウェーデンの二ヶ国、さらに肝心のウクライナまでもがNATO陣営に加わる結果になりそうです。 結局、ロシア経済再生のためには西側金融資本に頼らざるを得ません。それが嫌なら、核を使って徹底的に周辺国を叩きのめすしかありませんが、そうするとロシア自体も核の報復攻撃を受けて焼け野原、そうでなくとも死の灰に覆われて、住めなくなる恐れがあります。 ●天然ガス代金のルーブル決済を要求するワケ 旧ソ連時代に蓄積した核など兵器産業以外に製造業をもたず、エネルギー収入に頼るロシアは、いくら外貨をエネルギー輸出で稼いでも、所詮はドル支配からは逃れられないのです。 だからひたすら強権的な指導者が「剣」を振るって、周辺諸国を屈服させるしかない。しかしながら通貨ルーブルは「剣」を支えることもできません。せいぜい通貨で頼れるのは中国の人民元だということで、CIPS決済を媒介にした中露通貨同盟を築こうとしているわけです。 しかし一方で先述したようにそもそも人民元自体、ドルに準拠しています。人民元がドルの裏付けを失えば信用が失墜し、CIPS経由のロシアのルーブル決済は困難になります。 だからこそ、プーチンは欧州の天然ガス代金決済をルーブルにせよと迫っているのです。狙いのひとつはそれだけ西側のルーブル需要が高まり、ユーロに対するルーブル価値が安定すること。ユーロはドルと同等の国際通貨ですから、ルーブルはドルに対しても安定するということになります。 そればかりではありません。プーチンは通貨当局に金本位制の検討を命じているという情報が2022年4月にロイター電で流れ、日本国内でもちょっとした話題になりました。 ロシアは石油、天然ガス、穀物さらに金という代表的な国際商品の産出国です。国際商品市況はエネルギー価格に引っ張られて上昇を続けています。金もそうです。石油や天然ガスに連動して相場が上昇する金とルーブルを一定の交換比率で結び付ける。ロシアにはそれができるし、ルーブルの価値は高く、安定します。それで世界はルーブルを欲しがり、ロシアに投資が殺到するだろうと、金融制裁に脅かされているプーチン大統領が夢想してもおかしくないでしょう。 ただし金本位制といっても、ロシア国内で出回るルーブルをもつロシア国民が、そのルーブルを金に公定価格で換えてもらえるという意味ではありません。ルーブルの現金と当座性預金合計は2022年5月時点でドル換算約5400億ドル、これに定期性預金を加えると1兆700億ドルに達します。ロシア中央銀行の金準備は1342億ドルですから、金が圧倒的に足りない。ロシア国内のルーブルを公定レートで金に換えることは不可能なのです。 つまりルーブルの金本位制というのは、海外の通貨当局が保有するルーブルについて、ロシア中央銀行は金への交換に応じるという意味です。 当然、金に裏打ちされたルーブル相場はドルやユーロなど他通貨に対して数段強くなるはずです。 それでも、金との交換はとても無理です。世界全体の外貨準備総額は12兆5500億ドルとロシア中央銀行の金準備額の94倍にもなります。世界全体の公的金準備は2022年5月時点で3万5427トンですが、このうちロシアは2298トンにすぎません。米国8133トン、ドイツ3355トン、イタリア2451トン、フランス2436トンと、米欧に圧倒されています。 その米国は1971年にさっさとドルと金の交換停止に踏み切っています。それでも基軸通貨の座は確保どころか、さらに強化されました。世界で流通するモノや金融商品がドル建てであるからこそ覇権通貨になれるのです。 ちなみにロシアは世界第3位の産金国で、産出量は年間300トン、第1位の中国が370トンです。金本位制は通貨覇権を狙う中国ならやりそうだとの見方がありますが、中国共産党がストックや生産に限りがある金と心中するはずはありません。人民元は金リンクなしで量的拡大が進む基軸通貨ドルと連動させることで、価値を保ちます。 それと同時に、経済成長の原資となるのです。ドル、ユーロ、日本円と違って人民元だけが金と交換できるというなら、人民元の対ドル相場は数倍、数十、数百倍にも上昇するでしょう。しかし、そのときは中国の輸出競争力が失われ、深刻なデフレ不況に見舞われ、共産党独裁体制は根底から揺らぐでしょう。 |
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●米、ウクライナに追加軍事支援へ 歩兵部隊の前線展開に注力 1/20
バイデン米政権は19日、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対し最大25億ドル(約3210億円)の追加軍事支援を実施すると発表した。米軍の装甲車「ストライカー」が初めて盛り込まれた。すでに供与を決めているブラッドレー歩兵戦闘車と合わせ、激戦が続くウクライナ東部の前線でウクライナ軍の機動力を高めるのが狙いだ。 ウクライナ側が要請している米軍の主力戦車「M1エイブラムス」は含まれていない。米国防総省によると、今回の軍事支援には、ストライカー90台▽ブラッドレー歩兵戦闘車59両と対戦車ミサイル590発▽耐地雷伏撃防護車(MRAP)53台▽高性能地対空ミサイルシステム「NASAMS」用の追加砲弾――などが盛り込まれた。 ストライカーは、ブラッドレーよりも軽量で高速に走行できる。一方で、ブラッドレーは対戦車ミサイルの搭載が可能で強力な火力を持つ。合わせて使用することで迅速に歩兵部隊を前線に展開することが期待されている。今回とは別に米政府は6日にブラッドレー50両の提供を表明している。 米国のウクライナに対する軍事支援は昨年2月に侵攻が始まって以来、約267億ドルに上る。 |
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●プーチン氏「引退説」現実味、追放恐れ後継者指名か 1/20
ウクライナ侵攻で国内外の批判が高まるロシアのウラジーミル・プーチン大統領(70)をめぐり、「引退」情報が西側メディアで飛び交っている。権力の座から追放されることを恐れて2024年3月の大統領選に出馬せず、後継者を指名する計画があるというのだ。プーチン氏が出馬するとの報道もあるが、どちらを選ぶのか。 ペスコフ大統領報道官は19日、プーチン氏がロシア正教の「主の洗礼祭」に当たる同日未明、モスクワ郊外で水浴をしたと明らかにした。例年、映像や写真を公開しているが、今年は公開の予定はないという。 露有力紙コメルサント(電子版)は13日、プーチン氏が大統領選に向けて立候補準備を進めていると報じた。しかし、クレムリン(大統領府)の元スピーチライターで、イスラエルに亡命しているアッバス・ガリャモフ氏の見方は全く異なる。 ガリャモフ氏の証言を報じた英紙デイリー・ミラー(電子版)などによると、プーチン氏は、軍事的敗北や人気急落で追放されるリスクを冒すよりも、後継者を選び、自身は黒海沿岸のリゾート地にある「宮殿」で終身上院議員として過ごす計画を立てているという。 政権中枢では民間軍事会社「ワグネル」を率いるエフゲニー・プリゴジン氏の台頭が警戒されているとした。 こうした情報について「信憑(しんぴょう)性のある話だ」と話すのは、筑波大学の中村逸郎名誉教授。プーチン政権の現状について「経済畑からも軍事畑からも、『もはやプーチン氏を支えられない』という空気が流れている。プーチン氏は20年以上も権力を掌握してきた分、悪事や内実を暴露されるリスクがあり、政権を降りることを恐れている。だが、とどまればクーデターのリスクもあり、八方塞がりだ」との見方を示す。 「ポスト・プーチン」としてこれまで有力視されてきたのは、プリゴジン氏ら強硬派勢力のほか、ドミトリー・メドベージェフ前大統領や、セルゲイ・キリエンコ大統領府第1副長官らだ。 だが、前出のガリャモフ氏は、プーチン氏は後継者として、モスクワ市のセルゲイ・ソビャニン市長や、ミハイル・ミシュスチン首相ら「忠実な部下」を指名する可能性が高いと指摘する。 プーチン氏は00年から08年まで大統領を2期務めた後、いったん首相に就き、12年に再び大統領に就いた。現在は、憲法改正で6年となった任期の2期目だが、24年の大統領選に出馬して勝てば、さらに2期12年務めることも可能だ。 「ポスト・プーチン」について中村氏は次のように予測した。 「プーチン氏が身の安全を確保するため、先手を打ってプリゴジン氏を後継者に指名する可能性もある。キリエンコ氏は行政手腕もあり、最もプーチン氏に近いが、プリゴジン氏に対抗できるほどの力があるかは不透明だ。いずれにしてもプーチン氏自身は『弱体化するロシア』の象徴的存在になりつつあることは間違いない」 |
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●ロシアの新総司令官ゲラシモフはどんな人物か。スロビキンと交代した理由。 1/20
1月12日、ロシアのショイグ国防大臣は、統括司令官の交代を発表した。 昨年10月8日から統括司令官を務めたスロビキン総司令官(航空宇宙軍司令官)は副司令官と降格になり、ロシア軍制服組トップのゲラシモフ参謀総長が統括司令官に任命された。 このことは、クレムリンの権力に近い人々さえ、驚かせたという。 スロビキンは、司令官として初めて権限拡大の恩恵を受けた人物だった。別名「ハルマゲドン将軍」。 2016年に「反乱軍」の抵抗を断ち切るためにシリアのアレッポの空からの破壊を命じ、同年末にシリアの都市を陥落させたことから、このあだ名がついた。 任命されてから、たった3ヶ月で交代。様々な憶測を呼ばずにはいられない。 新しく統括総司令官になったゲラシモフとはどういう人物で、なぜスロビキンと交代となったのだろうか。 ●ゲラシモフ総司令官とはどんな人物か ヴァレリー・ゲラシモフ、67歳。ソ連が崩壊したとき、30代半ばだった。現在70歳のプーチン大統領と、同世代である。 タタールスタン共和国の首都カザン出身で、ソ連流の実力主義の賜物であり、素晴らしいキャリアの持ち主である。 タタールスタンの質素な家庭に生まれ、ソ連、そしてロシアの主要な軍事学校を卒業し、1997年には軍参謀本部付属の軍事学校を卒業した。 彼は、第2次チェチェン紛争で、北コーカサス軍管区の第58軍の司令官となった。 この紛争中、チェチェン共和国の若い女性を残虐に殺害して有罪となったロシア軍人「ユーリ・ブダノフ事件」で、ゲラシモフが彼を逮捕し責任を追及したことで、有名になった(チェチェン人はロシアを非難するが、ロシア人の中には、ブダノフの無罪を支持する者が少なくなかった)。 2012年、プーチンにより、ロシア連邦軍参謀総長兼ロシア国防副大臣に任命された。その後、軍歴はシリア、2014年にクリミアとドンバスと続く。 フランスのピエール・ド・ビリエ将軍は、2017年まで仏軍参謀長を務めた人物で、ヴァレリー・ゲラシモフとの会談の思い出をBFM TVで語った。 「私が気づいたのは、彼は一つのものしか認識していなかったということです。パワーバランスです。言葉の要素ではなく、声の大きさでもなく、本当の意味でのパワーバランスです」と述懐する。 また、ゲラシモフ参謀長は、2014年にはクリミアとドンバスで、ウクライナ領の占領に加わっている。そのため、欧州連合(EU)とウクライナの保安局から逮捕状が発行されている。 ビリエ将軍は、彼が会談の中で、軍人のウクライナ駐留を正当化するために、「彼は私に、ロシアに対する西側からの脅威NATOについて、私が認めることのできない攻撃性をもって話し続けたのです」という。 また、ヴァレリー・ゲラシモフは、ロシアの「新世代戦争」論の中核と言われる「ゲラシモフ・ドクトリン」の生みの親として知られている。 2013年2月、軍事科学アカデミーで行われた、ハイブリッド戦争に関する発表である(本当に本人が著者なのかについては異論がある)。 ハイブリッド戦争とは軍事戦略のことで、政治の戦争があり、昔ながらの戦争、正規ではない戦争、サイバー戦争をまぜあわせるものだ。フェイクニュース、外交、法律の戦争、外国の選挙介入など、他の影響力をもつ方法も一緒に使うというものだ。 ただ「ゲラシモフ・ドクトリン」は、ハイブリッドという言葉から連想されるような新しいものではないという分析がある。 ソ連は、敵陣のはるか向こうで活動する反政府武装集団への軍事支援を行って隠蔽しようと努力してきた。それの継続にすぎないという評価である。 ●なぜ総司令官は交代したか 昨年の2022年10月、スロビキンが権限を拡大した総統括司令官に任命されたとき、ロシア国家はプロパガンダを張った。 まるで軍が重ねていた失敗の状況(つまりウクライナの成功)を一変させる、一大事件であるかのように。 このような異例の方法で人事を公表したのは、クレムリン自身であった。『ル・モンド』が報告した。 それなのに、3ヶ月で更迭。様々な憶測を呼ばずにはいられない。 このことも含めて、どのような分析が欧米メディアでなされているか、紹介したいと思う。 ●1、体系的な問題 まず、米国防総省のライダー報道官は12日の会見で、ロシアのウクライナ戦争における体系的な問題が、最近の司令官交代につながった可能性が高いとの見方を示した。 これは独自の見解とはいえない。当のロシア国防省が公式発表で、交代をそのように説明しているからだ。 ロシア国防省の公式発表によると、この人事は3つのことに関連しているという。 1)(特別軍事作戦の)実施において解決される(べき)任務の規模の拡大。 2)軍隊の職務と各支部の間のより緊密な相互作用を組織する必要性。 3)同様に、すべての種類の支援の質と、指揮統制の有効性の改善。 言い換えれば、以下のようになるのではないか 1)今後、戦争(領土奪取)の規模を拡大する。 2)今は軍の各組織や職務が縦割りになっており、バラバラで困っている。これを改善して、一体性のあるものにしなくてはならない。 3)今はすべての種類の支援の質が満足できるレベルにない。指揮統制もバラバラで効果に疑問符がつくので、すっきりと改善しなくてはならない。 2)と3)は明らかに、以前から続く「体系的な問題」を語っている。構造的と言ってもいい。 ライダー米報道官は、「われわれは、兵たんや指揮統制の問題、継続性の問題、士気、ロシアが設定した戦略的目標を達成できていないという観点からこの状況について議論した」と説明した。 ●2、ロシア国防総省の優位性を示す ロシア内部で権力闘争が起きている。そのためにこの人事が行われたとする説である。たくさんの識者が指摘している。これに反対する意見は、ほとんど聞いたことがない。 スロビキン前統括司令官は、ワグネル・グループを率いるオリガルヒ、エフゲニー・プリゴジン氏の公けのお気に入りであった。かつ、ショイグ国防大臣のライバルであると言われてきた。 つまりスロビキン前統括司令官 &プリゴジン(ワグネルのトップ) VS ゲラシモフ新統括司令官&ショイグ国防大臣 のように言われている。 多くのロシアのミルブロガー(軍人でブログ等を書く人たち)やシロビキ(治安や国防関係省庁の関係者)は、クレムリンの戦争遂行のやり方を批判してきた。 (誤解を恐れずに言えば、甘すぎる、無能だ、という批判である)。 ロシア軍に大変強く批判的なモスクワの超保守界は、ワグネル・グループがウクライナにおけるロシアの数少ない成功の先頭に立ったと考えている。そして、ロシア国防総省を批判するのである。 そのため、ワグネル VS ロシア国防総省 の様相を呈している。 つまり危険なほど単純化するとーー「スロビキン司令官・プリゴジン(ワグネルのトップ)・超保守派や超国家主義者・シロビキ・ワグネル VS ゲラシモフ参謀長・ショイグ国防大臣・保守派・国防総省」となる。「主戦派」という時は、どちらなのかは不明である。 プリゴジンは、2022年5月にロシア軍が首都キーウ等から撤退した後ごろから、ロシア国防総省の戦争遂行をますます批判していた。 さらに、ドンバスのロシア武装勢力の元司令官で、著名なミルブロガーであるイゴール・ガーキンは今年の1月10日に、これまでで最も直接的なプーチン批判を行い、プーチンの解任を支持すると大きく示唆した。 だから政権は彼らに対して、ロシア国防総省のほうが上なのだと示すための、政治的決断をしたというのだ。 アメリカのシンクタンク戦争研究所は、そのように主張している。 「ウラジーミル・プーチンからエフゲニー・プリゴジンへの、『好き勝手やっていいと思うなよ、という戒め』と見ることだろう」と、英バース大学のロシア政治専門家スティーブン・ホール氏はFrance 24に語る。 ホール氏は、今回の人事によって「イデオロギー的にプリゴジンに近いと考えられている前任者のスロビキンよりも、ワグナー・グループに与える自由度はかなり低くなると思われる」という。また、この人事は、ショイグ国防大臣の肩の荷を軽くするものでもあるとも説明する。「これまで、自分の背中を刺すために時間を使っていたスロビキンと、もう付き合う必要はない」とも語る。 しかも、リマン陥落の責任者と糾弾されて解任された、ラピン司令官(大佐)が、ロシア陸軍の参謀総長に任命された。復権と言える。 彼は、ロシア南部チェチェン共和国のカディロフ首長や、プリゴジンをはじめとする強硬派から批判された経緯がある。 (ただし、プロパガンダに満ちたテレビでは、リマン陥落さえまともに報道されていないという)。 ロシアメディアは情報筋の話として、ラピン氏の陸軍参謀総長就任は軍に盾突くなというプリゴジン氏への警告だと伝えた。BBCが報じた。 外交政策研究所の上級研究員でロシア軍の専門家であるロブ・リーはツイッターで、「ウクライナの統一司令官として、スロビキンは非常に強力になっており、プーチンと話すときにショイグ国防大臣やゲラシモフ参謀長を回避していたようだ」という。 戦争研究所は、プーチン大統領が、シロビキ系の軍事ブロガーに媚びる試みから脱皮しようとしていることを示唆するもの(つまり、今まで彼らに媚びてきた)であるかもしれないと分析する。 ホール氏は、スロビキ司令官は今後、ゲラシモフ新統括司令官が転ぶように仕向けながら、実際には今までと同じように続けるのではないかと述べている。 ●その3、失敗したから更迭した 2022年10月にスロビキンが職務につくと、ウクライナの民間インフラに対する大規模な爆撃作戦が開始された。 この戦略は、ウクライナ社会を降伏寸前まで追い込むことを意図したものだったが、期待された結果をもたらさなかった。 2022年2月の攻勢開始後、最初に占領された都市で、重要な地方首都ヘルソン。11月11日にウクライナ軍が奪還して、ロシア軍が撤退したことも記憶されている。 そして12月31日の夜、ドンバス州のマキイウカへのウクライナ軍の攻撃は、動員されたロシア兵を多数殺した。数十人か数百人か。彼らが使った携帯電話で居場所が知られてしまったという失態。ロシア国防省は、公式の死者数を89人と発表したが、これは事件になった。 このような失敗をしたので、更迭したという意見である。 ロシアのテレグラム(SNS)で100万人以上のフォロワーを持つロシアの軍事ブロガー「Rybar」。当局の厳しい管理下にある。 スロビキン将軍の「疑わしい」結果に躊躇なく言及していると、『ル・モンド』は報告している。 このことは、英国国防省の意見にも一致するかもしれない。 「劇場司令官としての総司令官の配置は、ロシアが直面している状況の深刻さが増していることを示すものであり、作戦がロシアの戦略目標を下回っていることを明確に認識するものである」と発信している。 ただ、この見解には異論もある。 マキイウカで動員兵が殺されたことで批判されたのは、ワグネルではなく、正規軍のほうであるというのだ。 プリゴジンのほうは、ドンバス州のソレダルでワグネル・グループが「勝利」と発表して以来、誇り高い男を演じ続けていたという。 ロシア軍はこの姿勢を快く思っていなかった。参謀本部は、正規軍の空挺部隊が戦闘に大きく貢献したことを急いで明言し、ワグネルだけによる勝利ではないと主張した。 そして英国国防省が分析するように、今回の人事は「戦争の遂行能力の低さをゲラシモフのせいにしてきたロシアの超国家主義者や軍事ブロガーのコミュニティの多くから、極めて不愉快な思いで迎えられる可能性が高い」のである。 ●その4、ヘルソン撤退だけが仕事だった なかなか興味深い意見がある。 「Republic(共和国)」という名前の、ロシアの独立系メディアがある。 戦争前、2010年に同サイトは、ROTOP(Russia Online Top)コンテストの「今年の情報サイト」カテゴリーで1位を獲得した。しかしこのメディアの会社は、2021年10月、ロシアで「外国代理人」としてレッテルを貼られた。『ル・モンド』によると、現在亡命中のようだ。 ドミトリ・コレゼフ編集長は、こうした指導者の交代は「スロビキンの任務は、ヘルソンを明け渡すという『難しい決断』(当時の言葉)を下すことだけだったことを示唆しているようだ」と指摘したという。 スロビキンが10月に総司令官になって翌月の11月、露軍が制圧できた唯一の州都ヘルソンから撤退しなくてはならなかった。プーチン大統領が、ヘルソン州、ザポリジャ州、ドネツク州、ルハンスク州の4つを「併合」、この地域は「永遠にロシア」だと宣言してから、わずか6週間後のことだ。 スロビキンの就任前、『ニューヨーク・タイムズ』紙で、無名のロシア軍将校がヘルソンからの撤退を進言し、プーチンがそれを拒否したという報道があったという。 ロブ・リー上級研究員は、この報道について、「スロビキンはドニプロ川を渡って撤退しようとしたが、プーチンに基本的にダメだと言われたと私は解釈しています。ドニプロ川は大きな川であり、大きなバリアであり、ロシアにとっては戦線を固め、他の場所で前線を維持するための容易な方法だったのです」と述べる。 リー研究員は、この措置はロシアの戦線に安定をもたらしたと、スロビキンの能力を評価している。 当時、ロシア・チェチェン共和国の指導者ラムザン・カディロフと、ワグネルのプリゴジンは、ヘルソン撤退を進言したスロビキン司令官の判断を讃えていた。 しかし、BBCの報道によると、ロシアの主戦派ブロガーたちの意見は異なっていた。彼らは撤退について、怒りの投稿をせっせと書き続けていた。 「ロシアの希望が殺された。絶対に忘れない。この裏切りは何世紀も、自分の心臓に刻まれる」(「ザスタフニ」) 「プーチンとロシアにとって、とてつもない地政学上の敗北だ(中略)国防省はとっくの昔に社会の信頼を失っているが(中略)大統領への信頼もこれで失われる」(「ズロイ・ジュルナリスト」) ヘルソンの撤退は、スロビキン司令官と協議後に、ショイグ国防相が撤退を命令した様子を、テレビで流している。テレビには(おそらくわざと、責任逃れのためか)登場しなかったプーチン大統領の威信をも揺るがせたのだった。 スロビキンの進言を受け入れて、彼に「汚れ役」を負わせた形になったが、それは陰謀ではなく、むしろ能力の問題だったようだ。 正規軍は、ソ連をひきずる官僚組織にどっぷりつかって、能力を疑われている。スロビキンは、非難されるのを覚悟で、西岸撤退という合理的な判断を下せたということだ。 スロビキンは56歳で、ソ連崩壊時にはまだ25歳だった。若い学生のような年代時に、ペレストロイカを経験した世代である。 しかし、プーチン大統領は撤退には反対していたようだ。受け身の姿勢で西岸撤退とスロビキン総司令官就任を承諾したが、主戦派は予想どおり怒ってしまい、自分の立場も揺らいでしまった。 その後戦況も思うように改善しなかったので、その3に挙げた「失敗」を理由に降格させてしまった、という流れの可能性は否定できない。 ●その4、ゲラシモフを調整役に プリゴジンは、総司令官から、副総司令官に「降格」になった。 とはいえ、ゲラシモフ参謀長は制服組トップであり、輝かしい経歴をもち、ロシアの軍事でナンバー3と言える人物だ(大統領、国防大臣に次ぐ)。年功序列からもスロビキン氏の先輩である。 参謀総長がトップに立つのは異例とはいえ、ある意味、あまり変わったとは言えないと分析が可能なことを、CNNや英ガーディアンは伝えている。 序列から言えば、スロビキン降格というよりは、さらに上が登場したという意味だろう。 前述のコレゼフ『共和国』編集長は、「参謀長が指揮を執るのは、敗北の時代が終わり、ロシア軍が新たな大攻勢に備えていることを期待しているからだと考えることができる」と言っている。 ゲラシモフ参謀長の登場は、戦線での動きと重なっている。ドンバスのソレダル村の運命は、広報によれば完全には決まっていないようだが、ロシア軍の侵攻は疑う余地がない。数カ月間見たこともない前進である。 ソレダル陥落が確認されれば、ロシア軍には久々の勝利であり、新たな展望が開けそうである。 この新しい参謀長の任命は「本質的に、春には大規模な攻勢を期待すべきであり、部隊間のより良い調整が必要であることをプーチンも認識していることを確認した」と、英国王立サービス研究所のロシア安全保障問題の上級研究員マーク・ガレオッティはツイッターで述べている。 陸軍参謀総長とウクライナ作戦司令官という2つの顔を持つヴァレリー・ゲラシモフは、この調整を改善するためのあらゆる手段を手にしていると思われるという。 ●その5、プーチン大統領の策略 最後に、プーチン大統領のポジションについてである。 政治学者のタチアナ・スタノバヤは、「彼はさまざまな人物を試し、その間を行き来し、その時々に説得力のありそうな人物にチャンスを与えるのです。今日はゲラシモフが説得力があるように思えたが、明日は別の人物になるかもしれない」と指摘する。 「実際には、問題は達成すべき任務にあり、人物にあるわけではありません」、「プーチンは、潜在的な敗北の中で有効な戦術を模索している」とも言う。 米国のニューラインズ研究所(地政学)の外部コンサルタントであるジェフ・ホーンは、この決定は、ロシア大統領が「最も得意とすること、つまり協力者同士を戦わせ、彼らが互いに議論するのに忙しく、ロシア大統領がレフェリーの役割を果たせるようにする」、教科書のような例だ、という。 クレムリンの主人は、宮廷内のある派閥が優位に立ちすぎて、「公の場で居心地の良さを感じ始める」ことを好まない、とホール氏は付け加える。そのため、ヴァレリー・ゲラシモフには、ワグナー・グループを少しずつ軌道に乗せる権限が与えられていたのだろう、という。 プーチンは、ウクライナでの軍事的な後退が裏目に出る可能性を察知していた。「今後、ロシア軍にとってウクライナ情勢がさらに悪化した場合、ゲラシモフは最前線に立ち、他人のせいにすることができなくなる」と指摘する。 たとえ失敗したとしても、プーチンはゲラシモフを排除する口実を得ることができる。ゲラシモフを正規軍の無能のやり玉にあげてきた超保守界を喜ばせることができる。プーチンはどちらに転んでも安泰ということになる。 このような状態をさして、ガレオッティ上級研究員は、「(ゲラシモフの)降格のようなもので、少なくとも最も毒のある聖杯だ」と述べた。 この「毒のある聖杯」という表現は、欧米メディアのあちこちで使われた。 「毒入り聖杯」でなければ「避雷針」だ。前述の軍事ブロガー「Rybar」は、ゲラシモフが輝かしい経歴をもっているにもかかわらず、今や「避雷針」の役割を果たし、さらなる挫折の場合には爆発する可能性があると指摘している。 ● 以上、欧米メディアに見られる5つの理由を解説した。 おそらく全部本当なのだと思う。ただ、どうしても今ひとつ納得できない。 筆者は6番目の理由を考えてみた。それにはワグネルと民間軍事会社の本質を考えなくてはならない。そもそもなぜ、国防総省とワグネルは対立しているのだろうか。 |
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●ロシア雇い兵組織ワグネル、セルビアで勧誘 強い反発招く 1/20
ロシア兵と一緒に、セルビア人「志願兵」たちがウクライナで戦うために訓練を受けている――。そんな内容のニュース映像をロシア側が作成し、セルビアで怒りの声が噴出している。同時に、セルビアのロシアとの複雑な関係もあらわになっている。 問題の映像は、ロシアの雇い兵集団「ワグネル」がセルビア語で作った。ウクライナで続く戦争に参加するよう促すのが目的とされる。 セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領は憤慨。国営テレビで、「なぜワグネルは、私たちの規則に違反すると知りながら、セルビア人に呼びかけるのか」と話した。 同国の首都ベオグラードを拠点とする弁護士や反戦団体も19日、セルビア人をワグネルに勧誘したとして、ロシア大使とセルビア保安・情報局(BIA)のトップを刑事告発した。 ベオグラードでは挑発的な壁画があちこちで見られるが、中心部の建造物の壁に先週、ワグネルのどくろのエンブレムが現れた。極右団体「国民パトロール」の署名入りだった。この団体は、ロシア支持の集会を開催したことがある。ただし、参加者はわずかだったという。 セルビア人が国外の紛争に参加するのは違法だ。 ウクライナでの戦争に関わっているセルビア人は、多くはないとみられる。2014年にロシア軍と一緒にウクライナで戦った人もいたが、公的には承認されていなかった。 実際、セルビアの裁判所は25人ほどに対し、「外国の戦場での戦闘」に参加したとして有罪判決を出している。 ●ロシア優先と批判されてきたが セルビアは、欧州連合(EU)加盟の野心よりも、ロシアとの長年の友好関係を優先していると批判されることが多い。ただ、最近の状況は、現実がそれほど単純ではないことを示している。 ヴチッチ大統領は、ウクライナでの戦争に関し、セルビアは「中立」だと発言している。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とは「何カ月も」話をしていないとも説明。両国関係が良好とは言えないことをうかがわせている。 主要政党はどこも、ロシアのウクライナ侵攻への支持をほのめかしてすらいない。 国連でもセルビアは、ロシアの侵攻を非難する決議に一貫して賛成票を投じてきた。 欧州議会では今週、ヴチッチ氏が、「私たちにとって、クリミアはウクライナであり、ドンバスはウクライナだ。今後もそのままだ」と発言。セルビアのスタンスを明確にした。 ●EU加盟めぐる力学 しかし、欧州議会はセルビアに好印象をもっていない。ロシアへの制裁実施を、セルビアが繰り返し拒んでいるからだ。 欧州議会は、セルビアが制裁に同意するまでEU加盟交渉を中断するよう求める決議を可決。セルビアが交渉中断を決議されたのは、これが2回目だ。 セルビアがロシアとの友好関係を維持することは理にかなっていた。ロシアから安価なガスの供給を受けられる、ロシアの国営天然ガス会社ガスプロムがセルビアの石油会社NISの過半数を所有している、ロシアがコソヴォの独立を認めない――といったことが、その理由だった。 だが、ウクライナ侵攻が認識を変えた。プーチン氏は、ウクライナ東部の占領地域の独立を承認する際、正当化の理由として、コソヴォの一方的な独立宣言に言及。セルビアは悪印象をもった。 一方のEU側も、西バルカン諸国への無関心が、ロシアに干渉の余地を与えていたと、遅まきながら気づいた。アルバニアと北マケドニアの加盟交渉が速やかに始まり、ボスニアが加盟候補となった。 セルビアのヴチッチ大統領は今週、同国が西側に近づいて行くと、改めて強調した。 「EUが私たちの取るべき道だと分かっている」と、ヴチッチ氏は米ブルームバーグに話した。「他に道はない」。 |
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●10年前に主席就任直後の習氏がモスクワ訪問、プーチン氏は「同志」と呼んだ 1/20
早くも旧聞になる。 昨年末の12月21日、ウクライナのゼレンスキー大統領がワシントンを電撃訪問したその日、ロシアのメドヴェージェフ前大統領(現安全保障会議副議長、与党「統一ロシア」党首)が北京を訪れ、習近平国家主席と会見した。 バイデン大統領は、ウクライナに地対空ミサイルシステム“パトリオット”一基の供与を含む18億5千万ドル支援(約2400億円)のビッグな“クリスマス・プレゼント”を約束した。 他方、習近平国家主席は、現下の戦争について、対話による解決が重要だとの従来の立場を崩さなかった。 ロシアにとり、事前の前触れなしにおこなわれたこの会談が、太平洋の向こうでおこなわれたもうひとつの首脳会談に当てた「政治ショー」であったことは明らかだ。中国の立場が変わらないことなど事前に承知していたにちがいない。 私が注目したのは、中国側がロシアに対して示した「礼節」だ。 プーチン大統領は、自らのいわば「名代」として、メドヴェージェフ前大統領を北京へ派遣している。そして、これに応えて中国は、いまや力関係の逆転が明白になったロシアの前大統領を、国家主席自らが立って北京の釣魚台国賓館で迎えている。 思い起されるのは10年前。 2013年3月14日、習は午前に開催された第12期全国人民代表大会で中国の新しい国家主席に就任するや、プーチンと電話会談をおこなって「史上もっとも友好的な中ロ関係の構築」を約束し合うと、翌週モスクワへ飛んだ。 そして、プーチンは習をクレムリン宮殿の騎馬儀じょう隊で迎えると、「タヴァ―リシチ(同志)!」と声も高らかに呼びかけて、ふたりの格別な盟友ぶりを世界に示したのだった。 昨年2月24日、プーチン大統領は、専制的権力者としての自らの限りある政治余命を考えて、ロシアから離反していくウクライナを欧米の影響下から取り戻すことを急ぎ、ウクライナに侵攻した。 だが、短期間で終わるはずだった作戦は、未だ終結への出口を見ない。 いま、一年後に大統領選挙を控え、クレムリンの主はいったい何を思うだろう?彼は正義を誤り、兄弟国を侵略した。もはやこの軍事作戦の勝利のみが、彼の政治的立場を救い得る。時折、テレビに映る表情に、追い詰められた独裁者の苦衷が滲むとみるのは私だけではないはずだ。 習近平国家主席は、自らメドヴェージェフ前大統領と会見することで、同じ専制的権力者としてプーチン大統領と結んだ長い誼(よしみ)に最大限応えたとみるべきだろう。 ところで、メドヴェージェフ氏は、プーチンから習に宛てた「親書」を携えていたという。 むろん、その中味は不明だ。 だが最後に、こう記してあったかもしれない。 「タヴァーリシチ・シー(習同志)、彼を宜しく頼む」 |
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●「戦場カメラマン」横田徹がウクライナで感じたロシア兵の不気味さ 1/20
世界を震撼させたロシア軍のウクライナ侵攻からもうすぐ1年が経つ。当初、電撃的に首都キーウ制圧を目指したロシア軍の動きはウクライナ軍によって阻まれた。その後、ウクライナ軍はロシア軍による占領地域の約4割を奪還した。ただ、戦場での情報を厳しく統制するウクライナ軍は前線への取材をほとんど許しておらず、戦闘の様子を目にした報道関係者、特に日本人は極めて少ない。その一人、ベテラン「戦場カメラマン」の横田徹さんに話を聞いた。 ● 横田さんと会ったのは1月11日。ウクライナに出発する前夜だった。昨年5月と9月に続く、3度目のウクライナ取材だという。 まず、横田さんが語ったのは、昨年の大晦日にロシア軍のミサイル攻撃で朝日新聞の関田航記者が足を負傷したことだった。 「関田さんが滞在していたキーウのホテルの写真を見るとかなり大きく壊れている。軽傷で本当によかったと思います」 横田さんは1997年のカンボジア内戦取材以来、東ティモール、コソボ、アフガニスタン、イラク、シリアなどに足を運んできた。そんな戦争取材のベテランが口にしたのは、ウクライナには安全な場所がない、ということだった。 「ウクライナは、どこにいてもミサイルが飛んでくる。だったら、本当に危ないところに行って、パッと帰ってくる。取材はほどほどにしますよ」 そう言って、ときおり笑みを見せながら話す様子は気負いをまったく感じさせない。 「今、ウクライナ東部は暖かくても氷点下という世界です。そういう過酷な状況のほうが絵になる映像や写真が撮れる」と、今回の取材のねらいを説明する。 むろん、ロシア軍侵攻から1年になる2月24日に向けて増える報道需要も想定している。 「戦争取材にはお金がかかります。ぼくは状況次第ではアメリカの大手テレビ局なみに、1日20万円くらいコーディネーター料を支払います。それをどう回収するか、というのはこの仕事では大切なことです」 淡々と、そう話す。 ●ロシア軍の支配地域へ 今回の戦争ではNATO諸国がミサイルや大砲などの兵器をウクライナに供与するほか、さまざまな国の義勇兵がロシア軍と戦っている。横田さんはこの義勇兵に焦点を当てた。 昨年5月、キーウの基地を訪れた際、横田さんを出迎えてくれたのは国際義勇軍の中核を担うジョージア人部隊の司令官、マムカ・マムラシュビリ氏だった。 黒海の東岸にあたる旧ソ連の構成国ジョージアは、2008年、ロシアに侵攻された。そんなジョージアの人々は、ウクライナに対して強い親近感を抱いている。 横田さんはウクライナ東部の前線から数十キロのところにあるジョージア人部隊の後方基地に案内された。 「行ってみたら、兵士たちはもうびっくりするような装備を身に着けていて、完全に特殊部隊じゃないか、と思いました。キーウ近郊の国際空港の奪還にも関わった部隊でした」 横田さんが同行したのはロシア軍支配地域への偵察任務だった。兵士を乗せた車は舗装されていない道を全速力で前線に向けて突き進んでいく。 「スピードを出さないとやられてしまうんです。前線の近くまで行って、パッと車を降りて移動する。頭上を飛ぶロシア軍のドローンから逃げながら(笑)」 ロシア軍の陣地が見えるところまで近寄ると、小型ドローンを飛ばす。上空から敵の陣地を撮影し、それをもとに攻撃のプランを立てるという。 しかし、目の前にロシア軍の陣地が見えるということは、相手からも横田さんらが見えるのではないのか? 「そのとおりです。だから、砲弾を撃ち込まれて、背後に着弾しました。ロシア軍はわれわれの位置を上からドローンでつかんでいるので、かなり正確に弾が落ちてきます」 ●信頼の厚い日本人義勇兵 ドローンが飛んでいると、ブーンと、独特の回転翼の音がする。しかし、音がしない場合もあるという。 「だから、どこへ行っても空を見上げている。もしくは建物の中に隠れる。地雷が埋まっているかも、と足元ばかりを気にしていると、上からやられてしまう」 国際義勇軍の傘下にはジョージア人部隊のほか、日本人が加わっている部隊もある。 「戦闘訓練を受けたことがあるなしに関わらず、戦場を体験して、すぐにウクライナを離れる人がとても多いので、出入りが激しいのですが、平均すると常時10人弱の日本人義勇兵がさまざまな部隊で活動しています」 その多くは元自衛官で、アメリカ人やイギリス人の義勇兵よりも信頼されているという。 「アメリカ人は、ウクライナの戦闘に参加することで寄付金を集める、いわば金稼ぎを目的にした義勇兵が多い。アメリカ人やイギリス人は使えないのが多いんだけど、日本人はよくやっていると、ジョージア人部隊の広報官は日本人義勇兵のまじめな戦いぶりと生活態度を高く評価していました。日本人の気質からしてわかる気がしますね」 ●ロシア軍陣地で目にしたもの 一方、ロシア兵の戦いぶりはどうだろうか? 「広大な畑の中に幅20〜30メートルの防風林があったんです。そこにロシア軍は陣地を設けていた。でも、周囲から見れば、そこに身を隠していることは誰の目にも明らかだった。案の定、ウクライナ軍にミサイルを撃ち込まれて、ロシア兵はみんなやられてしまった。穴の中で待ち構えていた戦車がひっくり返っていた。なぜロシア軍はこんな素人のような戦い方をするのか。優秀な指揮官が本当に不足しているんでしょうね」 昨年9月の取材では、砲撃を続けながら敗走するロシア軍を追いかけるように、抜け殻となった陣地を次々に訪れた。そこで目にしたのはたくさんの兵器や弾薬だった。 「まだ洗濯物が干されて、食べかけの食料がそのまま残されているようなロシア軍陣地に足を踏み入れると、弾薬箱が放置され、中にはミサイルや砲弾が奇麗に詰められていた。それをウクライナ軍が全部回収して使う。戦車もそうです。修理するため、戦車をけん引していくシーンをあちこちで目にしました」 ウクライナの民間人がロシア軍陣地から兵器をくすねてくる話も山ほど聞いた。 「大きなトラクターで戦車を引っ張って盗んできたとか、そういう話はどこにでもあります。最初は信じられなかったけど、本当なんですね。ロシア軍の塹壕(ざんごう)に行ったら携帯ミサイルが2本立てかけてあったので、かっぱらってきたって、写真を見せてくれた人もいました。ミサイルを担いでくるときにロシア兵と間違われてウクライナ兵に発砲されたそうです。ロシア軍の兵器の管理はどれだけずさんなんだよ、って感じです」 ●ロシア兵の劣悪な環境 兵器だけでなく、ロシア軍の兵士の扱いの劣悪さにも驚かされた。 「どこの陣地もひどい環境で、いくらなんでもこれでは戦意を保てないだろうと感じました。食料は全部缶詰で、野菜などは食べていないでしょう。戦場での唯一の楽しみである食事がとても貧しいうえ、泥だらけの塹壕の中でおびえながら何カ月もいたら、さすがに戦うのが嫌になるはずです」 一方、ウクライナ兵は一定期間、前線で任務につけば休暇をもらえるという。休暇中はレストランで食事をしたり、インターネットで外の世界とつながったりすることもできる。 「食事については快適で、どこに行っても困らないどころか、おいしい肉やチーズを堪能しました。結構田舎でも寿司が食べられたりする。この差は大きいと思いますね」 豊かな自分たちの国を守ろうと戦っているウクライナ軍の兵士と、無理やり劣悪な環境に送り込まれて戦っているロシア軍の兵士では、士気に大きな差があるのは当然だと感じた。 ●相手がロシア兵は危なすぎる しかし、だからといって、ロシア軍が弱いとは横田さんはまったく思わない。むしろロシア軍に感じるのは西側の常識がまったく通用しない、不気味さだ。 「今、激戦が行われているバフムートなんか、ロシア軍は1人のウクライナ兵を倒すために、10人のロシア兵をおとりにおびき出して攻撃する。それが成功したら、また別の10人を送り出す。いったい、いつの時代の戦いだよ、と思うような戦い方をしている」 ロシア軍は伝統的に兵士の命を粗末に扱ってきた。それがウクライナの戦場でもまったく変わっていないことを実感した。 横田さんは以前、シベリアの奥地を訪ねた際、ロシア人の文豪ドストエフスキーがシベリア流刑を経て描いた不条理な世界が現代にも脈々と受け継がれていることを目の当たりにして衝撃を受けた。 「あれを見たことは大きいですね。だから、今回の戦争が始まったとき、ウクライナへ取材に行くのは嫌だった。相手がロシア兵では危なすぎると思いました。ものすごく怖かった」 横田さんは戦争取材の際、前線に足を運ぶことが多く、しばしば周囲から「無謀だ」と言われてきた。 「でも本当は、ぼくはすごくビビりなんです。逃げられないところには絶対に行きたくない。ここは無理だ、と思う場所には行かないようにしています」 昨年5月からウクライナを取材するようになった理由は、戦いの焦点にあったキーウがロシア軍に包囲される可能性がなくなり、退路が確保されたことと、取材費の援助が得られたことが大きいという。 ●地面が凍っている2月に動き 今回、このタイミングでウクライナに入るのは冒頭に書いた報道需要もあるが、2月になれば、何が起こるかわからない恐ろしさがあるからだという。 「雪が解けると、ウクライナの土は本当にぐちゃぐちゃになります。昨年9月にもぬけの殻となったロシア軍陣地まで畑の中を歩いて行ったとき、足にまとわりつくような泥を体験しました。この状態で戦うのは無理だな、と感じました。なので、戦況に大きな動きがあるとすれば、地面がまだ凍っている2月だろうと、いろいろな人が言っています。危ないときに行くのは嫌なので、2月の前に行って、帰ってくる」 別れ際、横田さんは近所の保育園にウクライナ避難民の子どもが通っていることを口にした。 「言葉はできないし、大丈夫かな、と思っていたら、すぐにうちの娘と仲良くなった。ぼくはウクライナ人と関わりがあるし、娘もウクライナ人の友だちができた。すごい時代になったなあ、と思いますね」 数日後、横田さんからメールが届いた。 <キーウに着き早々、ミサイルの洗礼を受けました。危ないので早く前線へ向かいます> |
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●ウクライナ軍、ソレダルからの撤退を認める 反撃に備えたものと説明 1/20
ウクライナ軍が、激戦の続いていた東部ソレダルからの「撤退」を認めた。ロシア軍は先週、ソレダルを占領したと主張していた。数カ月にわたって撤退を繰り返していた同軍にとって久しぶりの大きな勝利となった。 しかしBBCが取材したウクライナ兵士らは、計画されている反撃に備え、統制のとれた戦術的な動きとして引き下がったのだと述べている。 ソレダルと近隣のバフムートの間で前線となっている、作物の刈り取られた灰色の畑では、激しい銃撃と砲撃による戦いが続き、自動小銃の長い銃声が響いていた。 長身のウクライナ部隊指揮官アンドリイさんは、破壊されたコテージの陰から東部に広がる暗い木々を見据えながら、「敵はとても近い、1キロぐらいだ」と話した。 何が起きているか、確信を持つのは不可能だ。だが、頭上で鳴る自動小銃の銃声と、絶え間ないロケットや砲弾の爆発音が、ロシア歩兵部隊が近くにいることを示唆していた。我々に同行している第46独立空中強襲旅団の報道官によると、前線は常に変動しており、予測できず、1日に数キロ移動することもあるという。 がれきの中にうまく隠された司令部に入り込む直前、アンドリイさんは「状況は厳しい」と認めた。彼のチームは先ほど、自軍のドローンから、ロシアの装甲兵員輸送車(APC)の詳細な情報を受け取ったばかりだった。少ししてから、そのAPCを標的に、イギリスから供与された軽砲で3発が発射された。 「我々は毎日、敵を50〜100人破壊している」と、アンドリイさんは話した。 ソレダルと周辺での戦闘は、この戦争が始まって以来最も激しいものとなった。ロシア軍は「ワグネル・グループ」の雇い兵と募集に応じた受刑者たちを先頭に、大きな損害を被ったものの、最終的にはこの丘の上の小さな町を占領した。ソレダルは今、攻撃を受けた建物とがれきばかりの荒れ地だ。 一部のウクライナ兵は内々に、異なる部隊の連携がうまくいかなかったことがソレダルでの敗北につながったとしている。その上で、ロシアが現在、ここの南に位置する、はるかに大きく戦略的重要性も高いバフムートを包囲する優位な立場にあると認めた。 しかし、ロシア軍から数百メートルしか離れていないパラスコウィウカ村などの前線にいるウクライナ部隊には、静かな自信が満ちている。ウクライナの怒りが込められた空爆や砲撃が、北側や南西側からバフムート近郊へ向かうロシアの動きを阻止しているようにみえる。 「これは制御された状況だ」とアンドリイさんは話す。 「私は司令官を信じている。時には(中略)反撃し敵を撃退するために、退いた方が良い場合も本当にある。我々は毎日、敵の陣地を破壊している」 ●「いつ戻れるか?」 今週のある曇った朝、バフムートの北の端にある雪に覆われた田舎道は、軽い雪解けで泥道と化した。冬の間、木立や低木による貴重な目隠しがほとんどない中、多くの道が露出し、ウクライナ側の車両がロシアの砲撃にさらされた。 我々が小さなコテージに身を潜めていると、300メートルほど後方の道に砲弾が落下した。我々の同行者は、戦闘はさらに激しくなっていると話した。数秒ごとにロケット弾の爆発音や砲撃が聞こえる中、負傷兵を野戦病院へと運ぶウクライナの救急車両のサイレンが鳴り響いていると言った。 「銃で撃たれた傷も、砲弾の破片によるけがもある。ここでは特に激戦になっているようだ。それから凍傷やインフルエンザといった症状も起きている。そして人々は疲れている」と、第46独立空中強襲旅団衛生中隊のアンドリイ・ゾロブ医師は話した。 だが、兵士の士気はなお高いと言う。 「みんな疲れて、寒くて、けがをしている。それなのに『先生、いつ戻れますか?』と聞いてくる。誰も『けがをしたから休める』とは言いたくない。兵士たちの心はまだ燃えているし、私たちもするべき仕事がある」 ゾロブ医師は、兵士の肩から砲弾の破片を摘出する動画を見せながらそう語った。 バフムートに近づくと、頭上をウクライナのジェット機がうなりを上げて飛んで行った。地上では、目立たないよう隠された戦車や大砲がロシア軍への攻撃を続けていた。 |
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●習近平とプーチンが握手をし、台湾侵攻の準備が整いつつある事の意味 1/21
●ロシアと中国は仲たがいさせるべきだが 1949年の中国建国以降、ソ連は同じ共産主義国家として支援を行った。だが、この関係は当初からずれがあり、中国から見ればソ連は「兄貴分」であった。しかし、逆にソ連は中国を、朝貢国のような「子分」として扱った。 「中華思想の国」を率いる毛沢東からすれば不快なことではあったが、ヨシフ・スターリンの独裁は彼の手本でもあり、耐え忍んで友好関係を維持していた。 だが、1956年のソ連共産党第20回大会においてニキータ・フルシチョフがスターリン批判を行ったことが毛沢東を激怒させた。スターリンの「コピー」ともいえる毛沢東は、自分も批判されたと感じたのだ。 そして1969年には、珍宝島事件(中ソ国境紛争)が起こった。 さらに、1991年にソ連邦が崩壊した後、ロシアの経済的地位は暴落し今や韓国と同程度である。それに対して、中国はその頃から大躍進を遂げ、今や世界第2位のGDP大国である。 かつてほとんど何も持たず自国(旧ソ連)が支援した国が急成長し、国際社会でわが物顔で振舞っていることをどのような気持ちでロシアは見ているであろうか。 このような関係のロシアと共産主義中国を仲たがいさせる方法はいくらでもある。そうなれば、彼らの脅威はそれほどでもないであろう。 だが、外交・軍事音痴の民主党の流れを引き継ぐバイデン政権は、昨年3月7日公開「プーチンは米国を見透かしていた? ウクライナの悲劇はだれの責任か」、同3月18日公開「プーチンだけが悪玉か―米国の『幅寄せ、煽り運転』がもたらしたもの」で述べた問題を引き起こしてしまった。 ●世界はジャイアンに辟易しているのだ さらに、その後の「経済制裁」は、まさに昨年6月24日公開「ナポレオン大陸封鎖令の大ブーメランに学ぶ経済制裁で自滅する歴史」のデジャブである。このおかげで「2023年、『確率50%』の5大予測-米景気崖落ち、EU分裂、ウクライナ敗戦、バイデン不出馬、習近平暴発で台湾有事」の「2. ユーロ崩壊、EU分裂」が益々現実味を帯びている。 これらの愚策は、露中接近だけではなく、インドも含めた昨年3月29日公開「まさかRIC=露印中が大同団結? 『第2次冷戦』の世界の本音とは」という恐ろしい事態を引き起こしかねない。さらには、OPECの盟主サウジアラビアと米国の関係も微妙になっている。 世界中の多くの国々が、昨年5月29日公開「戦争と米国の存在感の時代こそ日本は『のび太+ドラえもん』で行こう」で述べた米国のジャイアンのようなふるまいに怒っているのだ。 さらに、習近平氏とプーチン氏が昨年12月30日にオンライン会談を行った。両首脳の会談は、同9月15日にウズベキスタンのサマルカンドで行った対面会談以来だ。 中露の間の意思疎通は、バイデン民主党政権の愚かな政策のおかげで、残念ながら極めて風通しが良いものになった。「敵の敵は味方」であると思わせてしまったのだ。両者の会談では、当然ウクライナ戦争と台湾有事について話し合いが行われたであろう。 中国とロシアが手を組んで「対米共闘」を行えば、かなりの力になる。 ウクライナ侵攻はあくまで「他国」への侵略と国際社会でとらえられている。しかし、1971年のアルバニア決議案によってすでに、「中国」の代表は共産主義中国であると国連を含めた国際社会が認めてしまっている。 昨年12月12日公開「与しやすいバイデンがいる間に〜習近平の台湾侵攻が2023年の理由」5ページ目「結局、中国は『内政問題』と突っぱねる!?」と予想されるので、米国は国連を始めとする国際社会への「大義名分」という点でも弱い。 実際、例えば慶應義塾大学経済学部教授・八嶋由香利氏の「カタルーニャ独立問題」や英国の北アイルランド問題などの火種を欧米を含む多くの国々が抱えている。 ●RICとOPECプラス 露中接近は、単純に2つの国だけの問題だけではない。例えば、ロシアはOPECプラスの一員である。 サウジアラビアなどの中東諸国は、米国の「イスラエル優遇政策」などから歴史的に反米感情が根強い。さらには世界史の中でも最大級の蛮行である「十字(虐殺)軍」のことを中東の人々は忘れてはいない。はるか昔のことではあるが、被害者は受けた仕打ちを忘れないものだ。したがって、冷戦時代、憎き欧米と対峙したソ連の流れを引き継ぐロシアは彼らの好感度が高い。 逆に、日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を破った東郷平八郎の人気は海外、特にロシアから圧迫を受けていたトルコ(オスマン帝国)で高い。エルトゥールル号事件と並ぶ、彼らが親日である理由だ さらに、アフリカやアジアの多くの国々も欧米の植民地にされ、昨年12月24日公開「世界の分離・独立、『自国民ファースト』の流れは止められない」3ページ目「苛烈だった植民地支配」を経験している。例えば、米国のかつての奴隷制度はその派生形にしか過ぎない。 国連の加盟国の中では、過去に欧米の植民地として蹂躙されたり米国のジャイアン的振る舞いを苦々しく思ったりしている国々が非常に多い。 しかもバイデン民主党政権は、金融制裁において中央銀行の資産にまで手を出すという愚行を犯してしまった。このことにより「米国は信用できない」という認識が広まり、ドルなどでの決済を排した「非米国経済圏」の構築が急速に進んでいる。 もちろん、この「非米国経済圏」をけん引するのは、世界第2位のGDPを誇る共産主義中国である。 それに対する米国は、1月4日公開「バイデン・ゼレンスキーはもう手詰まりか〜交戦中の訪米首脳会談の意味は」4ページ目「ベトナム戦争当時よりも弱っている米国」と言う状況だ。 そのように下り坂で世界中から嫌われている米国だけを、台湾有事を含めた「日本の安全保障の要」として考えたままでよいのであろうか? ●台湾有事はウクライナ戦争とはけた違いの危機 私がかねてから恐れているのは、「米国を上回る核弾頭を保有するロシア」と「GDP世界第2位の大国である中国」が結束することである。日本だけではなく世界の安全保障に関する重大な脅威だ。 例えば、北方領土(本来は日本の領土)南端である歯舞群島の貝殻島から根室半島の納沙布岬までの距離がたったの3.7kmである、ロシアが関わるウクライナ戦争も見過ごせない脅威である。だが、現在戦場となっているウクライナから日本は遠く離れている。 それに対して、与那国島と台湾の距離は111キロしかない。F-15戦闘機の最大速度で飛べば2〜3分の距離に過ぎないのだ。台湾が戦場となることが、どれほど日本の安全保障を脅かすのかがよくわかる。 さらに、「大原浩の逆説チャンネル<第2回・特別版>安倍元首相暗殺事件と迫りくるインフレ、年金・保険破綻」で触れたように、昨年7月8日に安倍元首相が卑劣な手段で暗殺された。 台湾有事の際に、安倍晋三氏が首相あるいは影響力のある政治家として存在していることは習近平政権にとって大きな障害であったはずであるから胸をなでおろしたであろう。 岸田文雄首相であれば、赤子の手を捻るのも同然だ。さらに、米国ではいまだに疑念が燻る2020年の大統領選挙でトランプ氏の再選が阻止された。 西側陣営の外交にとって、この2人を失った事実は大きく、バイデン大統領や岸田首相では、到底その穴埋めをできない。逆に言えば、優れたリーダー不在の西側は、習近平氏やプーチン氏に対して前記「与しやすいバイデンがいる間に〜習近平の台湾侵攻が2023年の理由」で述べたような「攻め込むための未曽有のチャンス」を提供していることになる。 しかも、前記記事冒頭で述べたように、選挙での惨敗の責任をとって蔡英文氏が党主席辞任を表明している。 ●米国に「おんぶにだっこ」はやめよう ウクライナはかつて核保有国であったが、1996年に米英露の圧力に抗しきれずに核を放棄した(詳細は前記「プーチンは米国を見透かしていた? ウクライナの悲劇はだれの責任か」5ページ目「核の抑止力」参照)。だが、現状を見れば、その時の米英を含む大国の「ウクライナを守る」という約束は果たされていないと言える。核戦争を回避するために直接参戦を回避しているのは明らかだ。 日本はこれまで米国の「核の傘」に守られていると信じていたが、果たしてどうであろうか? 台湾、尖閣、さらには沖縄が侵略された時に米国は「核の傘」で守ってくれるであろうか? 1月7日公開「岸田首相が防衛費を増税で賄うことを推し進める背景に米国の『相手に手を出させる』いつもの『お家芸』が」6ページ目「日本のどこまでが防衛ラインか」の状況を考えると、沖縄でさえ米軍の守備範囲から離れつつあるように思える。 現代の戦争において「核兵器」は、「実際には使えないかもしれないが極めて重要な装備」である。北朝鮮は、大みそかに続いて元旦にもミサイルを発射した。あまりにもミサイル発射が繰り返されるので日本国民は不感症になってしまっているが、それこそが敵の狙いである。この多数のミサイルの打ち上げ費用はどうしているのか? 台湾侵攻を狙う隣国から何らかの「援助」があると考えても不自然ではない。 また、北朝鮮は、今年の目標に「戦術核兵器」の大量生産を掲げた。日本はそれを手をこまねいて見ているべきなのだろうか? 「核の抑止力」という防衛手段を持たない日本が、ロシア、中国、北朝鮮という核保有国に囲まれているのである。岸田政権が高らかに宣言した(通常兵器の)防衛費の増額だけでは日本は守れない。 残念ながら、現代の戦争は「核兵器」なくしては語れない。「核の抑止力」を手に入れてこそ、「日本の防衛」が完成するのである。 |
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●露、モスクワ市内に対空防衛システム設置か 1/21
ロシア国防省が、モスクワ市内の複数箇所にミサイルなどの撃墜が可能な対空防衛システムを設置したと、ロシアの独立系メディアが報じました。 20日、モスクワの国防省庁舎の屋上に、対空防衛システムとみられるものが設置されています。去年の映像には映っていませんでした。 ロシアの独立メディア「ビヨルストカ」などによりますと、対空防衛システムの「パンツィリS1」が、国防省など市内3か所とプーチン大統領の公邸がある郊外の村に設置されたということです。また、モスクワ市内には、地対空ミサイル「S400」も2基配備されたとしています。 この報道について大統領府のペスコフ報道官は、「国防省は、国と首都の安全に責任を持っている」と答え、間接的に認めています。 去年12月、モスクワから200キロにある空軍基地が、ウクライナ側によるとみられるドローン攻撃を受けたことで、首都の防空網の強化を図っている可能性があります。 |
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●ロシア軍がウクライナに最新型戦車「T-14」を投入できない理由 1/21
Newsweek日本版は1月10日、「ロシアの最新鋭戦闘機は怖くてウクライナ上空に飛べない──英国防省」との記事を配信した。記事のタイトルから、ある程度の内容は推察できるが、軍事ジャーナリストは「陸上の戦闘でも同じことが起きています」と指摘する。 陸上戦で何が起きているのかを解説する前に、まずはNewsweekの報道を確認しておこう。担当記者が言う。 「Newsweekの記事は、イギリス国防省が発表した最新の報告書を元に、ロシアの戦闘機Su-57について報じています。同省はSu-57を《ロシア最新鋭の第5世代超音速ジェット戦闘機》と位置づけ、ロシアにとっては“虎の子の最新戦闘機”であるため、撃墜のリスクを恐れてウクライナ戦争では使用できないというジレンマを指摘したのです」 軍事ジャーナリストは「同じことは陸戦でも起きています。ロシア軍は“虎の子の最新戦車”の出撃を躊躇しているようなのです」と言う。 「ウクライナ戦争の緒戦では、ロシア軍の戦車部隊は1992年に正式採用されたT-90が中心でした。ところが予想外の激しい抵抗を受け、甚大な被害が出たのです。2015年にデビューした最新鋭のT−14は生産台数が充分ではないため、少数を早い段階で投入すると思われていました。ところがロシア軍は、1961年に試作品が完成したT-62を最前線に送ったのです。世界中の軍事関係者やジャーナリストが、『あんな骨董品がまだ残っていたのか』と驚きました」 ●戦車部隊の大損害 オランダの軍事情報サイト「Oryx」は、SNSなどに公開された画像や動画からロシア軍とウクライナ軍の損害を計算し、発表している。 デイリー新潮は2022年10月、「ロシア兵は戦場から自転車でトンズラ…じつはロシアがウクライナの最大の武器支援国という真実」という記事を配信した。 この時、Oryxは《ロシア軍の戦車1280両のうち、734両が破壊》、《ウクライナ軍に鹵獲されたものは442両》と発表していた。鹵獲(ろかく)とは《敵の軍用品・兵器などを奪い取ること》(デジタル大辞泉)という意味だ。 では最新の数字をチェックしておこう。1月18日にOryxを閲覧すると、《ロシア軍の戦車1619両のうち、951両が破壊》、《鹵獲されたものは536両》との調査結果が掲載されていた。確実に数字が増えていることが分かる。 「ロシア軍の戦車部隊が敗北を重ねていることが分かります。にもかかわらず、最新型のT-14は投入されていません。NATO(北大西洋条約機構)陣営のイギリスは、チャレンジャー2のウクライナ軍への供与を決めました。西側が主力戦車の投入を発表したのですから、ロシアは今こそT-14を投入すべです。T-14が“ゲームチェンジャー”になり得る可能性もあるのです。それでもロシア軍がためらっているのは、Su-57と同じ理由だと考えられます」(同・軍事ジャーナリスト) ●高性能のT-14 T-90は「びっくり箱」という不名誉なあだ名がつけられている。回転式砲塔の内部に多数の弾薬を搭載しているため、攻撃を受けると誘爆しやすく、大爆発が起きると砲塔部分が「びっくり箱」の中身のように飛び出してしまう。 「T-14は、この『びっくり箱』を防止する設計になっています。砲塔部分は無人で、3人の戦車兵が入るスペースはカプセルで守られています。最大出力も最高速度もT-90を上回り、125mm戦車砲からは長射程のミサイルを発射することも可能です。同時期に発表された自走砲や兵員輸送車と車体プラットフォームを共用しており、いわゆる戦闘車体のファミリー化も実現しました。まさにロシア軍が心血を注いだ最新鋭の戦車なのです」(同・軍事ジャーナリスト) T-14は2015年の「モスクワ戦勝記念日パレード」で初めて公開されたのだが、西側諸国には当初、発表された高性能を疑う声すらあったという。 「国威発揚のためのニセ兵器で、パレードに登場した戦車もハリボテではないのかという推測もあったほどです。しばらくすると実在する戦車だと分かりましたが、ロシア軍はずっとT-14を“ベール”で隠してきました。機密保持という目的もありますが、『かなり高性能の戦車らしい』という一種の神格化も狙っていたと考えられます」(同・軍事ジャーナリスト) ●“プレゼント”の危険性 T-14の投入をロシア軍が躊躇するのは、「無能な戦車兵」の存在も大きいという。Oryxの調査から浮かび上がるのは戦車の損失だけではない。それを動かす戦車兵にも多数の犠牲が出ていることが考えられる。 「ベテランの戦車兵が不足していることは明らかです。いくら最新型の戦車でも、経験の浅い戦車兵が使えば“豚に真珠”でしょう。おまけにロシア軍は、400両を超える戦車をウクライナ軍に鹵獲されるという大失態を犯しています。通常、戦車が敵軍に奪われる可能性が生じたら、なるべく自分たちで破壊するというのが戦場のセオリーです」(同・軍事ジャーナリスト) 専門家でさえ首を傾げるのは、ロシア軍の兵士は緒戦の時点から戦車を乗り捨てる傾向があったことだ。 簡単な修理で動くどころか、無傷の戦車さえ少なくなかったという。しかも、戦車を操縦していたのは熟練兵が中心だった。にもかかわらず、破壊を試みることはなく、みすみすウクライナ軍に“プレゼント”してしまった。 「経験不足の戦車兵となれば、鹵獲のリスクはさらに上昇するでしょう。最新のT-14で出撃させ、これまでと同じように無傷でウクライナ軍に鹵獲されてしまえば、最高の軍事機密をみすみす西側諸国に公開することになってしまいます」(同・軍事ジャーナリスト) ●世界中が注視 戦争だけでなく、経済の視点からも懸念があるという。T-14を最前線に投入すると、“戦後のロシア経済”に致命的なダメージを与える可能性があるというのだ。 「軍事産業はロシアの基幹産業の一つです。中でも戦車は、その商品価値が評価され、中東や中南米、アフリカ、東南アジアなどへの輸出実績を重ねてきました。ロシアはT-90を看板商品と位置づけ、セールスに注力してきたのです」(同・軍事ジャーナリスト) T-90を売るために、ロシアはプライドすら捨て去った。「他国の部品と交換してもOKです」という方針を明らかにしていたのだ。 「『もしロシア製の電装品が信用できないのなら、フランス製やイスラエル製の電装品と交換しても大丈夫』とPRしていたのです。そこまで譲歩して、1台でも売ろうと努力を重ねてきました。ところがウクライナ戦争でT-90の大敗が明らかになり、兵器マーケットでの商品価値が大暴落してしまったのです」(同・軍事ジャーナリスト) ウクライナ戦争に勝とうが負けようが、いつか必ず“戦後”は訪れる。ロシアは戦時体制をやめて、通常の経済活動を復活させなければならない。 「うかつにT-14をウクライナ戦争に投入し、T-90と同じように大敗したら、『大切な戦車だから輸出せず、自国防衛に充てる』と考えていたT-14ですら、マーケットでの価値は暴落します。T-90だけでなくT-14も商品価値がゼロになってしまうとなれば、もう売る兵器はなくなってしまいます。ロシアの軍事産業は壊滅の危機に瀕するでしょう。今後、ロシア軍はT-14を戦場に投入するか否か、世界の軍事関係者が注目しています」(同・軍事ジャーナリスト) |
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●ウクライナ侵攻に抗議 在日ロシア人ら “ストップ プーチン” 1/21
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、日本に住むロシア人らが都内で集会を開き、侵攻を続けるプーチン政権に対して抗議の声を上げました。 抗議集会は、日本に住むロシア人のグループがSNSなどで呼びかけて開いたもので、JR渋谷駅前にはおよそ20人が集まりました。 参加者たちは「戦争反対」などと書かれたプラカードや、侵攻に反対する運動のシンボルとなっている白・青・白の旗を掲げて、抗議の意思を示しました。 そして「ウクライナに平和を」とか「ストップ、プーチン」などとシュプレヒコールをあげて、ロシア軍の一刻も早い撤退と侵攻の終結を訴えていました。 日本に5年住んでいるという女性は「市民が亡くなるのは本当に最低なことです。ロシア出身者として責任を感じていて、抗議の声をあげ続けるとともにウクライナの人たちを支援していきたい」と話していました。 また、日本でおよそ6年働いているという男性は「ロシア国内では当局の取締りにより抗議行動がやりにくくなってきている。こうした人たちのためにも自分たちが訴えていきたい」と話していました。 |
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●ゼレンスキー大統領…「プーチン生存を確信できない」爆弾発言 1/21
ウクライナのゼレンスキー大統領がプーチン露大統領について「まだ生きているとは確信できない」と述べた。 20日(現地時間)のキーウインディペンデント、ビジネスインサイダーなどによると、ゼレンスキー大統領は19日、スイスで開催中の世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)にオンラインで参加し、「ウクライナはロシアと平和交渉ができるのか」という質問にこのように答えた。ゼレンスキー大統領はこの日、プーチン大統領の健康異常説を強調するような発言を続けた。 ゼレンスキー大統領は「私は彼(プーチン大統領)がまだ生きているのか、特に意思決定をする人が彼なのか、または誰が意思決定をするのか、どんなグループの人たちが意思決定をするのか知らない」と述べた。続いて「ロシアから誰が対話のパートナーとして出てくるのか分からない」とし「私は(ロシアメディアに登場する)その人がプーチンなのかよく分からない」と主張した。 ゼレンスキー大統領は背景など映像の一部を任意に変えるクロマキー技術にまで言及し、プーチン大統領の生存に関する疑問を表した。キーウインディペンデントによると、ゼレンスキー大統領は「誰と何について話をすべきかも分からない。私は時々、クロマキー画面を通じて登場するという疑惑があるロシア大統領が本当にその人なのか分からない」と語った。 ゼレンスキー大統領が言及したプーチン大統領のクロマキー合成論争は、昨年3月に米オンラインコミュニティーReddit(レディット)で初めて提起された。作成者は低解像度で録画されたプーチン大統領の会議場面を載せ、シルエットにクロマキーの緑の背景が映ると主張した。プーチン大統領が実際の会議の現場には出席せず、合成を通して登場したということだ。 しかし高解像度の映像からは特に問題点は見つかっていない。レディットもこの掲示物が誤った情報を広めたとして削除した。 現在までプーチン大統領が死亡したと考えられるほどの明確な証拠は発見されていない。ビジネスインサイダーはゼレンスキー大統領の発言がプーチン大統領が主要政策決定に参加していないようで批判しようとしたのか、本当にプーチン大統領の死亡説を示唆するためのものか不明だと説明した。 一方、ロシア大統領府はプーチン大統領の健康異常説が浮上するたびにこれを全面的に反論した。18日にはプーチン大統領がサンクトペテルブルクの第2次世界大戦記念碑を訪問するなど日程4件を消化したとし、写真を公開した。 ただ、大統領府はこの日、プーチン大統領の氷水浴写真を非公開とし、健康不安説は続く雰囲気だ。プーチン大統領は健在を誇示するように毎年、上着を脱いで氷水浴をする写真を公開してきた。この日、ロシア大統領室はロシア衛星通信社を通じて「19日午前、プーチン大統領が正教会の公現祭の行事のためモスクワで氷水浴をした」という事実だけを伝えた。 |
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●ウクライナ、ドイツと戦車供与めぐり「率直な議論」交わす 1/21
ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相は20日、同国がロシア軍に対抗するために緊急に供与要請しているドイツ製戦車「レオパルト2」について、ドイツ側と「率直な議論」を行ったと明らかにした。 ドイツにある米軍のラムシュタイン空軍基地では20日、アメリカなど西側諸国の代表による、ウクライナへの軍事支援に関する会合が開かれた。 会合では、ウクライナに装甲車や防空システム、弾薬を追加供与することで合意した。 ウクライナはドイツ以外の多くの北大西洋条約機構(NATO)加盟国から、兵器を確保できることになる。 レズニコフ国防相は会合後、「我々はレオパルト2について率直な議論を行った。今後も議論は続く」と述べた。 現時点ではポーランドとフィンランドが、所有するレオパルト戦車をウクライナに供与すると表明している。ただ、実行するには製造国ドイツの承認が必要。 ドイツ政府は、レオパルト戦車をウクライナへ供与するか、第三国が供与するのを認めるよう、国内外から圧力を受けているが、これまでのところいずれの判断も示していない。 レオパルト2はウクライナにとって、形勢逆転につながる「ゲームチェンジャー」になる可能性があると考えられている。整備が容易なのに加え、ウクライナ侵攻に投入されているロシアのT-90戦車への対抗手段として、特別に設計されているためだ。 ドイツのボリス・ピストリウス国防相は、レオパルト戦車の供与をめぐって意見が分かれているとし、独政府がそうした動きを妨げているわけではないとした。 ドイツの輸出法では、同戦車の供与を表明しているポーランドやフィンランドなどの国々は、独政府の許可が出ない限り実際に供与することはできない。 ●「決断を下さなければならない」 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はNATOのパートナー国の軍事支援を称賛しつつ、「近代的な戦車を供給してもらうためにはまだ戦わなければならないだろう」と述べた。 「代替手段はない。そして戦車について決断を下さなければならない。これを我々は連日、より明白に示している」 ウクライナが現在使用する戦車のほとんどは旧ソ連型で、その数や火力でロシア軍に劣っている。 欧州各地の倉庫には2000台以上のレオパルトが保管されている。ゼレンスキー大統領は、そのうち約300台がロシアを倒すのに役立つと考えている。 ドイツのピストリウス国防相は、独政府は同盟国間で合意に至った場合に迅速に行動できるよう準備をしているとしたが、戦車に関する決定がいつ下るのかは分からないと述べた。 ドイツはかつて、紛争地に武器を送らないという政策をとっていたが、昨年2月にロシアのウクライナ侵攻を受けてそれが一変した。 NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は昨年末、ドイツは現在、大砲や防空システム、マルダー歩兵戦闘車などを供給し、「ウクライナに最も多くの軍事的、財政的および人道的支援を提供している同盟国の1つ」となっていると述べた。 ただ、レオパルト戦車については、アメリカの強力なM1エイブラムス戦車を含む、より幅広いNATOの支援パッケージの一部として供与することが望ましいとして、難色を示している。アメリカ側は、エイブラムス戦車はメンテナンスが難しくコストもかかるため、ウクライナ軍には実用的でないとして供与を拒否している。 ドイツに戦車を供与させるため、アメリカに戦車を送るよう圧力をかける動きもある。 ロイド・オースティン米国防長官は、独政府はアメリカが先に動くのを待っているわけではないとし、「私の考えでは、ロックを解除するという概念が問題なのではない」と述べた。 ドイツも第2次世界大戦でのナチス時代の惨状にとらわれており、オラフ・ショルツ独首相はウクライナでの状況のエスカレーションに関わることには慎重だと考えられている。 独野党・キリスト教民主同盟(CDU)のヨハン・ヴァーデプール氏は、レオパルトに関する政府の「拒否政策」はドイツの国際的評判に影響を及ぼすと非難。「ショルツは何を待っているのか」と述べた。 ポーランドのズビグニェフ・ラウ外相も、ドイツの消極的な姿勢を批判した。 「ロシアの侵略を撃退するためにウクライナを武装することは、ある種の意思決定作業ではない。実際にウクライナ人の血が流れている。レオパルトの供与をためらったことの代償だ。我々はいま行動を起こす必要がある」と、ラウ外相はツイートした。 西側諸国は他の兵器支援に数十億ドルを投入している。しかし、戦車へのドイツのコミットメントがなければ、ウクライナが期待する結果にはつながらない。 |
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●ロシア ウクライナに軍事侵攻 21日の動き 1/21
●バルト三国外相が一斉にドイツに戦車供与求める ドイツがドイツ製戦車「レオパルト2」のウクライナへの供与について判断を先延ばしにするなか、バルト三国のエストニア、ラトビア、リトアニアの外相は21日、ツイッターでドイツに対しただちに供与するよう一斉に求めました。3か国の外相が同じ内容の文章をほぼ同じ時刻にツイッターに投稿する形で「ロシアの侵略を止め、ウクライナを支援し、ヨーロッパに早く平和を取り戻すために必要だ」と指摘し、ドイツに供与を求めています。 ●“3つの前線で一進一退の激しい攻防” イギリス国防省 イギリス国防省は21日、ウクライナの主に3つの前線で一進一退の激しい攻防が続き、全体として戦況はこう着状態にあるという分析を示しました。このうち東部ルハンシク州のロシア側が支配するクレミンナでは、ウクライナ軍が奪還に向けて前進する動きがみられ、南部ザポリージャ州では双方が部隊を集結させ、砲撃が行われたとしています。一方、東部ドネツク州のウクライナ側の拠点のひとつバフムトの攻防については「ロシア軍と民間軍事会社ワグネルは近郊の町ソレダールを掌握したあと部隊を再編していて、バフムト周辺ではロシア側が前進する可能性がある」と指摘しています。 ●“北朝鮮がロシアの軍事会社に兵器を提供” 米ホワイトハウス アメリカ・ホワイトハウスは20日、北朝鮮がロシアの民間軍事会社、ワグネルにウクライナで使用する兵器を提供していると非難したうえで、兵器を積んだとする貨物列車を捉えた衛星写真を公開しました。公開されたのは去年11月18日に撮影された2枚の写真で、ロシアの貨物列車だとする5両編成の車両が写っています。このうち1枚は両国の国境のロシア側、もう1枚は北朝鮮側を撮影したものだとしています。ホワイトハウスは去年12月、ワグネルが北朝鮮から歩兵用のロケット弾やミサイルを調達していると非難していて、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は20日の会見で、写真に写っている列車にこうした武器が積まれているという見解を示しています。そのうえで、現時点では輸出された武器は戦況を大きく変える規模ではないとしています。また、ワグネルがウクライナなどで残虐行為や人権侵害を続けているとして、国際的な犯罪組織に指定し、制裁を科すことも明らかにしました。 ●ドイツに避難 ウクライナ人がデモ “ドイツ政府は戦車の供与を” ウクライナへの軍事支援についての会合に合わせ、ドイツの首相官邸の前では20日夜、ドイツに避難している数十人のウクライナ人や支援者などが集まり、ドイツ政府に戦車の供与を決断するよう求めました。多くの参加者がウクライナ国旗を身につけ、ドイツ製戦車の「レオパルト2を提供しろ」と声をあげたり「ロシアをウクライナから追い出せ」などと書かれたプラカードを掲げたりしていました。デモに参加したドイツ人の女性は「戦争で勝つため、ひどい戦争を終わらせるためにウクライナが必要な武器をまだ入手できないことに失望している。もっと戦車が必要だ」と話していました。 ●ゼレンスキー大統領 「戦車を供与以外の選択肢ない」 欧米各国によるウクライナへの軍事支援の会合についてウクライナのゼレンスキー大統領は20日、公開した動画で「今回話し合われたことが、われわれの力を強化すると結論づけることができる。われわれの勝利のために必要なかぎりウクライナを支援するというパートナーたちの姿勢は確固たるものだ」と一定の評価を示しました。一方で「最新の戦車を供与してもらうために、われわれはまだ闘わなければならないが、戦車に関する決断を下す以外の選択肢がないことは日々、明らかになっている」と述べ、会合でドイツ製戦車の供与について結論が出なかったことを踏まえ、改めて戦車の供与の重要性を強調しました。 ●米軍制服組トップ「ことし中にロシア軍を追い出すことは困難」 アメリカ軍の制服組トップ、ミリー統合参謀本部議長は20日、ドイツでの会合のあと記者会見し、ウクライナ国内で激しい戦闘が続いているとしたうえで「ロシアが占拠したウクライナの地域には多くのロシア軍が残っている。ことし中にウクライナからロシア軍を軍事的に完全に追い出すことは非常に困難だ」と指摘しました。そして、ミリー氏は「前線で安定した防衛を続けることはできる。ウクライナが領土をできるだけ多く解放するため大規模な攻撃作戦を展開することも可能だ」と述べました。また、ミリー氏はロシア側の死傷者数は10万人を大幅に超える一方、ウクライナ側も市民が多く犠牲になっていると指摘し「遅かれ早かれ、どこかの時点で事態を収束させるため交渉を行う必要がある」と述べて最終的に外交を通じた解決が必要になるという認識を示しました。 ●ロシア国内でウクライナの犠牲者を追悼する動き ウクライナ東部のドニプロで今月14日、9階建てのアパートがロシア軍によるミサイル攻撃を受け、子どもを含む40人以上が亡くなったことを受けて、犠牲者を追悼する動きがロシア国内でも出ています。このうちロシア第2の都市で、プーチン大統領の出身地サンクトペテルブルクでは、ウクライナの国民的な詩人シェフチェンコの像に多くの花やぬいぐるみが手向けられ、ロイター通信が配信した映像では、リボンにロシア語で「ごめんなさい」と書かれています。追悼に訪れた男性は「犠牲者はごく普通の人たちだった。大統領に聞きたい。なぜこのようなことが起きるのか」と述べ、プーチン大統領への怒りをあらわにしていました。首都モスクワでも市民が追悼する姿が見られましたが、ロシアの人権団体は、警察がこうした人たちを拘束したと伝えていて、国内で反戦の動きが広がることに政権側が神経をとがらせている様子もうかがえます。ドニプロで起きた惨事について地元の州知事は19日、亡くなった人が46人に増えたほか、11人の行方が依然として分かっていないとSNSで明らかにしました。 ●IAEA ウクライナ国内の全原発に専門家が常駐へ IAEA=国際原子力機関は20日、グロッシ事務局長が19日にウクライナの首都キーウを訪れ、ゼレンスキー大統領やシュミハリ首相と会談したと発表しました。IAEAは去年9月以降、ロシア軍が占拠を続けるウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所に専門家を常駐させていますが、IAEAによりますと、今週、さらにリウネ、南ウクライナ、そして廃炉作業が続くチョルノービリの原発でそれぞれ2人の専門家の常駐が始まったと明らかにしました。また、西部にあるフメリニツキー原発にも数日以内に専門家が派遣され、これでウクライナ国内のすべての原発に専門家が常駐されるとしていて、グロッシ事務局長は「ウクライナ全域で深刻な核事故を防ぐためのIAEAの現場支援が大幅に拡大した。重要な一歩を踏み出した」と強調しました。一方、戦闘が続き、安全性への懸念が広がっているザポリージャ原発をめぐり、IAEAは原発周辺を安全が確保された区域に設定するため、ウクライナとロシアの双方と協議を続けていますが、グロッシ事務局長は「非常に複雑な交渉だ。実現するまで、ウクライナとロシアと集中的な協議を続けていく」としています。これについて、ロシア大統領府は20日「プーチン大統領がグロッシ事務局長と会う予定は現時点でない。外交官や原子力企業ロスアトムが対応する」としています。 |
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●米軍制服組トップ「今年中に全てのロシア軍を追い出すのは困難」… 1/21
米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は20日、ドイツでの記者会見で、ウクライナでのロシアによる占領地域について、「軍事的に、今年中に全てのロシア軍を追い出すのは非常に困難だ」と述べ、領土の奪還にはさらなる長期戦が避けられないとの認識を示した。 侵略に伴うロシア軍の死傷者数については、雇い兵らを含め「10万人をはるかに超えている」との見方を示した。 |
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●欧米諸国、武器供与で温度差=戦車の合意見送り―ウクライナ支援会議 1/22
20日にドイツ南西部ラムシュタイン米空軍基地で開かれたウクライナ軍事支援会議では、参加した欧米諸国を中心に50カ国超が今後も団結して支援を加速させる方針を確認した。しかし、ウクライナが本命視していたドイツ製主力戦車「レオパルト2」の供与では合意が見送られた。ロシアによるウクライナ侵攻は来月で1年を迎えるが、支援の度合いを巡り温度差が生じ始めている。 ●独、軍事的責任負えず ピストリウス独国防相は20日、レオパルト供与の決定について「ドイツだけが邪魔をしているという印象は誤りだ」と述べ、他の支援国の中にも異論があることを示唆した。供与に向けた協議が継続されるが、具体的な決定の時期などは示されていない。 ショルツ独首相は、供与の決定には米国の後押しが必要との意向を示してきた。レオパルト投入で戦局に響きロシアの矛先が北大西洋条約機構(NATO)に向かうことを警戒しており、米国を巻き込んでけん制する狙いがあったもようだ。ドイツ自体も米国の「核の傘」に守られており、軍事的な責任を負いきれない側面もある。 米国は独側にレオパルト供与を勧めつつ、「ドイツが独立して決めることだ」(米軍)と深入りは避けた。ロシアが対応をエスカレートさせるのを回避したい考えは米国も同じだ。 一方、ウクライナと国境を接し、ロシアの脅威にさらされるポーランドは前のめりだ。本来必要とされるドイツの承認なしに自国のレオパルト2を引き渡す考えを示唆した。AFP通信によると、ブワシュチャク国防相は20日、15カ国がレオパルト供与の実現に向けた連携を協議したと明かし、ドイツへの圧力を強めた。 ●停戦への思惑も ウクライナの戦況はこう着状態が続いているが、東部の激戦地では多数の犠牲者が出ており、ミサイル攻撃で市民への被害も相次いでいる。ゼレンスキー大統領は20日夜の声明で、「戦車について決定を下す他に選択肢がないことは、日に日に明白になっている」と決断を促した。 米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は20日、支援国による武器の追加供与や訓練の提供を踏まえて「前線の守備が安定する可能性は大いにある」としつつも、年内に軍事力で圧倒することは「極めて難しい」と認めた。 年明け早々にフランスが「軽戦車」供与を表明したことを皮切りに、主要国はこれまで供給してこなかった米欧製の戦闘車などの提供を相次ぎ決めた。だが、ウクライナが強く求めてきた主力戦車は英国の14台にとどまり、長射程ミサイルについては供与を表明した国はなかった。支援国はロシアとの全面衝突を避けつつ、ウクライナを優位に立たせた上で停戦に持ち込みたい思惑があるとみられ、難しい調整を迫られている。 |
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●「レオパルト2」供与めぐり関係国の駆け引き激化か 1/22
ウクライナへの軍事支援をめぐり、ドイツ政府は20日、ウクライナが供与を求め、焦点となっていたドイツ製戦車「レオパルト2」について供与するかどうかの判断を先延ばしにしました。 これに対し、21日、ウクライナのポドリャク大統領府顧問がツイッターで「優柔不断さは、より多くの人々の殺害につながる」と投稿し、一刻も早く戦車の供与に踏み切るよう促しました。 また、バルト三国のエストニア、ラトビア、リトアニアの3か国の外相は21日、同じ内容の文章をほぼ同じ時刻にツイッターに投稿する形で「ロシアの侵略を止め、ウクライナを支援し、ヨーロッパに早く平和を取り戻すために必要だ」と指摘し、ドイツに供与を求めています。 これに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は20日、欧米側のウクライナへの軍事支援はさらなる緊張の拡大を招くと批判したうえで、戦車の供与については「ロシアが軍事作戦の目標を達成するうえで何の変化ももたらさない」と主張しています。 アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は20日、「クレムリンは緊張の拡大を持ち出して、軍事支援について欧米側の意欲を弱体化させようとしている」として、戦車の供与を議論する欧米諸国に対し、今後も情報戦を仕掛けていくとの見方を示していて、関係国の駆け引きが激しくなるとみられます。 |
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●地下室の夫婦たち ウクライナ侵攻で深まる絆、時にあつれきも 1/22
ウクライナ東部ドンバス地方では、戦闘と厳しい寒さから、多くの夫婦たちは長い時間を狭い地下室の中で共に過ごさざるを得ない状況に置かれている。これにより絆が深まる人もいれば、関係がぎくしゃくする人もいる。 オレクサンドル・ムレネツさん(68)と妻リュドミラさん(66)は侵攻以降、1日に2人で過ごす時間が、40年の結婚生活の中で最も長くなっており、あつれきが生じ始めている。 ある朝、リュドミラさんが自家製ウォッカを作る際に必要な水の量を説明していると、ムレネツさんが「お前はしゃべり過ぎだ」とちゃちゃを入れた。 こうしたいさかいは、採鉱の町シベルスクのアパートの狭い地下室に10か月も閉じこもるうちに日課になってしまった。かつて前線だったシベルスクは、激しい砲撃で町の面影がほぼ消え失せ、現在でも昼夜を問わず砲撃の衝撃音で窓が鳴る。 侵攻以前は鉄道車両の修理工として働いていたムレネツさんは「以前は2人とも出勤して、顔を合わせるのは夜だけだった。今では口げんかが増えた」と話した。「ときどき『黙れ』と言うが、黙らないんだ」とうんざりした様子。 複数回にわたりシベルスク制圧を試み、失敗したロシア軍は昨年夏、町にミサイル、ロケット攻撃を浴びせ続けた。 ウクライナ軍はロシア軍を押し返す事に成功したが、町の民家や学校、工場は廃虚と化し、侵攻前に1万2000人いた住民もほとんどが去った。 2人はいつミサイルが飛んでくるか分からない恐怖におびえながら、電話もなく、飲料水もほとんどない暮らしに耐えなければならない。熱源といえばまきを使うストーブだけだ。 冬の寒さが厳しくなると、リュドミラさんはSF小説に心の平穏を求めた。本を読んでいる間は夫と口論しなくて済むからだ。 リュドミラさんは天井を指しながら「わたしたちの部屋が近くて助かる」「簡単に他の本を取りに行ける」と話した。 ●「自分一人だったら耐えられなかった」 オレクサンドル・シレンコさんとタマラさん夫婦は、まきを割り、それを積み上げることをストレス解消法としている。まきはいくらでも必要だ。 それでも8か月も2人で地下室にこもっていれば影響はある。 シレンコさんは「最初はもちろん、ひたすら一緒にいることが苦痛だった。『毎日かゆを食べれば、数日後にはスープが欲しくなる』という格言があるように」と語った。 だが真剣な声で、タマラさんがいなければもっと悲惨な生活になっていただろうと言う。 「たとえ妻がずっと不平不満を漏らしているだけでも、少なくとも地下室に誰かがいる。そうでなければ、何も聞こえず、しゃべらず、じっとしているだけになる」 シレンコさんは毎日、糖尿病を患っているタマラさんのむくんだ足に包帯を巻く。シレンコさんは妻を介助できるのを誇りに思っているようだった。 「彼女は、自分が冗談ばかり言うやつだって知っている。戦争中でもそうでなくても、誰にでも冗談を言う。(妻を)落ち込ませたりはしない」 タマラさんも「自分一人だったら耐えられなかった」と同意した。 口論になる時はあるものの、夫婦のどちらかを亡くした人たちよりも自分たちははるかに幸運だと2人はうなずき合った。 |
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●ロシア“囚人兵”4万人投入…NATO軍事支援加速 1/22
ロシア国防省は18日、軍突撃分遣隊の志願兵が、ウクライナ東部ドネツク州バフムト近郊の集落・シル占領を発表した。バフムトでは、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」が数カ月にわたり、ウクライナ軍と消耗戦を展開する。今回のロシアによるシル制圧は、要衝バフムトを拠点とするウクライナ軍を包囲するための作戦と見られる。 英国防省は18日、ウクライナ軍が東部ドネツク州ソレダルから撤退し、西側に新たな防衛線を構築した可能性があるとの分析を示した。米安全保障会議のカービー報道官は20日、「両軍によるバフムト、ソレダルの争奪戦が継続しているが、ウクライナ軍は2つの町を放棄していない」とウクライナ撤退を否定する。 ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の存在感が際立つ。今回のシル制圧などウクライナ激戦地の掌握を自ら公表する一方、創設者のプリゴジン氏は、ロシア劣勢の戦況をめぐり、軍幹部の批判を繰り返してきた。侵攻が長期化して消耗戦になる中、ロシア軍は作戦を続けるために「ワグネル」に依存する実情が明らかになっている。昨年10月、「ワグネル」は、プーチン大統領の故郷であるサンクトペテルブルグに本社を開設、法人化するなど表舞台の活動を展開する。 一方、米ホワイトハウスは20日、財務省が「ワグネル」を「国際犯罪組織」に指定したと公表すると同時に、北朝鮮による「ワグネル」への兵器提供の証拠となる衛星写真を公開した。米安全保障会議のカービー報道官は、「ワグネル」が4万人の囚人をウクライナに配備していることを指摘した上で、「ワグネル」の傭兵採用を巡り、難色を示すロシア国防省との間に、緊張関係があることを明らかにした。 米国防総省は19日、ウクライナ向けの25億ドル規模の追加軍事支援を発表した。装甲兵員輸送車「ストライカー」90台を供与する。「ストライカー」はイラク戦争で展開され、都市部での侵入困難な場所でも対応が可能となり、戦地での機動力が評価されている。 英国は地対空ミサイル「ブリムストーン」600発の供与を発表した。また、スウェーデンは、ロシアの侵略に対抗するため、「アーチャー自走榴弾砲」を提供することを明らかにする。 |
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●露前大統領「大戦になれば勝つのは我々」 戦車供与巡り皮肉る 1/22
ロシアのメドベージェフ前大統領は21日、欧米諸国がウクライナへのドイツ製戦車供与を決められなかったことを皮肉るメッセージを通信アプリ「テレグラム」に投稿した。そのうえで「(欧米との)戦争が起これば、(ロシアにとって)新たな祖国防衛戦争となり、1812年や1945年のように勝つのは我々だ」と息巻いた。 ウクライナに兵器を支援してきた関係国は20日の会合でドイツ製戦車の供与について結論を出せなかったが、欧州連合(EU)のボレル外務・安全保障政策上級代表(外相)は20日の記者会見で「いくつかの欧州の国々はウクライナに重戦車を供与する用意ができている」と述べた。 メドベージェフ氏はテレグラムで、この会見を念頭に「ボレルの生気のない表情は傑作だった」とやゆした。さらに帝政ロシアやソ連が、侵攻してきたナポレオン時代のフランスやナチス・ドイツを撃退した歴史に言及。「ウクライナのナチストや西欧はロシアと戦ってきた勢力の直接の後継者だ」として、新たな大戦に発展した場合でも自国が勝利すると書き込んだ。 ロシア首脳部や閣僚は欧米諸国がウクライナを背後で操っていると主張し、ナポレオンやヒトラーが自国に侵攻してきた歴史との類似性に繰り返し触れている。 ラブロフ露外相も18日の記者会見で、米国がロシア包囲網を築いていると指摘。そのうえで、ナチスがユダヤ人の撲滅を試みた「最終的解決」を持ち出し、「これはロシアに関する問題への『最終的解決』だ。ヒトラーもユダヤ人に関する問題を最終的に解決しようとした」と語った。タイムズ・オブ・イスラエル紙によると、イスラエル外務省は「現在起きている出来事とヒトラーの『最終的解決』を比較することは歴史の真実を損なわせる」と非難する声明を出した。 |
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●ロシア無人機で偵察強化か ウクライナ軍はミサイル攻撃を警戒 1/22
ウクライナ軍は、軍事侵攻を続けるロシアが無人機を使った偵察活動を強めているという見方を示し、新たなミサイル攻撃の準備を進めているとみて警戒を強めています。 ウクライナ軍は22日、東部ドネツク州のウクライナ側の拠点バフムトに向かってロシア軍が攻撃を繰り返しているという認識を示し、東部などで一進一退の攻防が続いているものとみられます。 また、ロシア側が無人機を使ってウクライナ側の軍事施設を偵察する活動を強めているという見方を示し、ロシア軍が重要インフラなどを狙った新たなミサイル攻撃の準備を進めているとみて警戒を強めています。 こうした中、ウクライナのレズニコフ国防相はイギリスが供与した軍用ヘリコプター「シー・キング」がウクライナ南部の黒海周辺に届いたと21日、SNSに投稿しました。 ウクライナの通信社によりますとあわせて3機が届けられ、主に捜索や救難などの任務にあたるということで、レズニコフ国防相は「両国は引き続き協力し、ともにヨーロッパ全体の海と陸を守っていく」と連帯を強調しました。 一方、ロシア議会下院のボロジン議長は22日、「ウクライナへの攻撃的な武器の提供は世界的な大惨事につながる」などとSNSに投稿し、戦車の供与を巡って議論が進む欧米各国をけん制しました。 |
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●ロシア軍の“嘘の戦果報告”が次々発覚…“大本営発表”を続ける苦しい事情 1/23
ロシア軍はウクライナ戦争で数々の“あり得ない大戦果”を発表し、世界中の軍事専門家やメディアの失笑を買っている。例えば、YAHOO! ニュースのマイケル・ワイス記者は1月13日、皮肉たっぷりのツイートを投稿した。日本語に訳すと以下のような感じだろう。 《ロシア国防省のイゴール・コナシェンコフ報道官は、『ロシア軍はウクライナ国内で、すでに4両のブラッドレー歩兵戦闘車を破壊した』と発表した。これは実に並外れた戦果だろう。なぜなら、まだ戦闘車はウクライナに到着していないからだ》 1月9日には「BBC NEWS JAPAN」が、「ロシアがウクライナ兵600人を殺害と発表、ウクライナは『プロパガンダ』だと否定」との記事を配信した。担当記者が言う。 「ウクライナ軍は1月1日、ロシア軍の宿舎をHIMARSのロケットで攻撃しました。年越しのパーティーに興じていた徴集兵など約400人が戦死したと発表し、親ロシア派の軍事ブロガーもその信憑性を認めました。この報復としてロシア軍は8日、ウクライナ軍の宿舎をロケット攻撃し、600人を殺害したと発表しました。ところが、現地で取材をする複数の記者が、すぐに信憑性を疑う記事を配信したのです」 BBCも現地の様子を撮影した写真を配信した。大きな爆発が起きたことは確認できるが、《建物2棟がひどい爆撃を受けたことや、ロシアが主張するような規模の大量死があったという視覚的証拠はない》と伝えた。 ●ロシア軍の焦り 「ロシア軍の8日の発表は、実際にロケット攻撃で爆発が起きたことは事実です。一方、コナシェンコフ報道官の12日の発表は、そもそも戦闘車が存在しなかったわけです。ネットの発達でファクトチェックは迅速になりました。『なぜロシア軍は、すぐにウソだとバレる発表をするのだろう?』と誰もが首をひねっています」(同・記者) 軍事情報の総合ニュースサイト「ミリレポ」は1月14日、「ロシア国防省がウクライナにはまだ無いブラッドレー歩兵戦闘車の破壊を発表! 過去にもあった虚偽の戦果報告」の記事を配信した。 この記事ではロシア軍の虚偽発表として、他にも「44両のHIMARSを破壊したという嘘」と「ウクライナ空軍の兵力より多い撃墜数」の2点を指摘している。 軍事ジャーナリストは「戦史を紐解けば『敗色が濃厚な国は嘘の発表をすることが多い』という事実が浮かび上がります」と言う。 「旧日本軍の大本営発表はもとより、ベトナム戦争ではアメリカも事実と異なる発表を繰り返しました。ウクライナ戦争でロシア軍は多大な被害を出し、その焦りから嘘の戦果を発表しているのでしょう。ウクライナやNATO(北大西洋条約機構)諸国は冷静に事実と照らし合わせ、ロシア軍がどれくらい追い詰められているのか分析を重ねていると考えられます」 ●嘘が通用するロシア社会 ただし、戦いを有利に進めている国が常に正確な発表を行うとは限らない。戦果発表はまさに情報戦だ。劣勢の国だけでなく優勢の国も、戦果は大きく伝え、被害はなるべく隠す。 「ウクライナもロシアも“虚偽すれすれ”の発表を繰り返しています。ロシアの場合は、プーチン大統領の岩盤支持層に高齢者が多いことも大きな影響を与えていると考えられます」(同・軍事ジャーナリスト) ロシアの高齢者にはネットを使いこなせる者が少なく、欧米メディアの報道に触れる機会もほとんどない。そのため、ロシア軍の“大本営発表”を信じてくれる。少なくとも信じようとはしてくれる。 「ロシア軍は嘘がNATO側にバレるのを承知の上で、岩盤支持層である高齢者の戦意を高揚させるために虚偽の発表を繰り返しているに違いありません。現場では嘘の積み重ねで感覚が麻痺し、チェック機能が低下した結果、『存在しない戦闘車を破壊した』という赤っ恥の発表を行ってしまったのです」(同・軍事ジャーナリスト) NATOがロシアの暴走を恐れ、ロシア領内には攻撃しないよう、ウクライナに釘を刺していることも重要だという。 「大多数のロシア国民にとってウクライナ戦争は、今も“対岸の火事”です。高齢者も口コミなどでロシア軍の劣勢を把握していて不思議はありません。それでも自分や子供、孫に被害が出なければ、虚偽発表に怒ることはないでしょう。ロシア国内が空襲でもされない限り、ロシア軍が嘘をつきやすい状況は続くはずです」(同・軍事ジャーナリスト) ●目を背けたい現実 何より最も大きな理由として、もしロシア軍が真実を国民に発表すれば、国民が激しく動揺することが挙げられる。 「もしロシア軍が『実はウクライナ軍の激しい抵抗で、我々には深刻な被害が生じています』と公に認めたらどうなるでしょうか。国民は、これまでの不満を爆発させるはずです。一気に大規模な反戦デモ、反政府デモが発生し、プーチン政権の信頼度は地に墜ちます。最悪の場合は保守派と改革派で国内が内戦状態になるかもしれません」(同・軍事ジャーナリスト) ウクライナで何が起きているのか──人によって差はあるだろうが──ロシア国民も様々な情報は得ている。だからこそ“嘘の大本営発表”が必要になってくるという。 「制服を着た偉い軍人が『我が軍は戦果を挙げています』と発表することで、ロシア国民がギリギリで踏みとどまっているという側面もあると思います。老若男女、誰だって自国が崩壊してしまうのは嫌でしょう。現実から目を背けるため嘘の戦果を必要としているのは、ロシア軍だけでなくロシア国民も同じなのです」(同・軍事ジャーナリスト) |
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●米独が主力戦車をウクライナに供与できない本当の理由 1/23
●レオパルト2供与を躊躇する理由は何か ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナへの戦車支援をめぐって米国とドイツが正面衝突している。 ドイツ西部にあるラムシュタイン米空軍基地で1月20日、ロイド・オースティン米国防長官(軍人出身)などおよそ50か国の代表が参加して、ウクライナへの軍事支援について協議する会合が開かれた。 焦点となったのは、欧州各国が保有する攻撃力抜群のドイツ製戦車、「レオパルト2」(1両574万ドル=約7億4000万円)をドイツはじめ保有国がウクライナへ供与するかどうか、を決めることだった。 8回行われた会合でも結論は出なかった。 実は、ポーランドはすでに供与することを表明、フィンランドもドイツ政府の許可が得られれば、レオパルト2を供与するとしている。 レオパルト2は、ドイツ以外にポーランド、フィンランド、カナダなど15か国が保有しており、その数はあわせて2000両を超える*1。 *1=ドイツはこれまでレオパルト2を3600両製造し、328両保有、ポーランド347両、ギリシャ353両、スペイン327両、トルコ316両、フィンランド200車両などがそれぞれ保有している。 問題は、供与には製造国のドイツ政府の再輸出許可が必要で、ドイツが供与に踏み切るか、また、ほかの国の供与を認めるか、だ。 就任したばかりのドイツのボリス・ピストリウス国防相*2(中道左派・社会民主党、前内相)は1月20日時点では判断を先延ばしした。 *2=前任者のクリスティーン・ランブレヒト氏(社会民主党)は、ショルツ閣僚は男女同数にする「公約」で女性国防長官になったが、行政能力が問われたうえ、息子を軍用ヘリに搭乗させるなどでマスコミに叩かれ、辞任に追いやられた。ウクライナ侵攻直後にヘルメット5000個を供与すると宣言して国内外から批判を浴びたこともある。 攻撃力の高いドイツ製戦車レオパルト2のウクライナ供与については、ドイツは条件を付けてきた。 中道左派・社会民主党(SDS)のオラフ・ショルツ独首相は米国も主力戦車の「エイブラムズ」(1両621万ドル=約8億円)をウクライナに提供することを条件としていると、ドイツ紙に報じられたのだ(ドイツ政府は否定している)。 報道によると、ショルツ氏は1月17日のジョー・バイデン米大統領との電話会談でこう述べた。 「米国からエイブラムズが提供される場合に限って、レオパルト2を供与したい」 こうした動きに対してウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は1月19日、憤りを隠さなかった。 「『別の誰かが提供するならば』と言ってためらっている場合ではない。ことは急を要するのだ」 ●ドイツの「国防体制大転換」は大嘘? なぜ、ドイツがそこまで供与を躊躇しているのか。 米シンクタンク、「グローバル・パブリック・ポリシー研究所」(ベルリン)のソーセン・ベナー所長はずばりこう指摘する。 「ウクライナへのレオパルト2供与は、ドイツにとっても重大なステップだ」 「高い機動性を有するレオパルト2がウクライナの戦場に投入されることで戦闘はエスカレートし、ロシアがドイツに対して報復に出る可能性は十分考えられる」 「ドイツは、供与した後の米国からの最大限の保証が欲しい。ショルツ氏は躊躇する理由について具体的な言及は避けているが、ロシアがドイツを標的にするのではないか、と恐れている」 さらに別の米シンクタンクのドイツ問題専門家P氏は次のように分析する。 「ドイツは自分が直に供与することは言うに及ばず、ポーランドやフィンランドがウクライナに供与するのを承認することにも消極的だ」 「供与によってウクライナに対する武器支援の拡大が、遅かれ早かれ北大西洋条約機構(NATO)とロシアの全面衝突につながりかねないことを懸念しているのだ」 「とくに社会民主党は過去20年間、平和主義を掲げてきた。自分たちが武器支援拡大の先駆けになることだけは避けたい」 「ウクライナ問題はいずれ収拾するだろうし、その時になって自分たちが独ロ関係に致命傷を与えた張本人にはなりたくない」 「そこで、自らは先頭には立たずに、米国を巻き込みたいのだろう」 ドイツ世論もウクライナへのレオパルト2の供与については、賛成47%、反対37%と二分されている。 ショルツ氏は、ロシアがウクライナを侵攻した3日後、戦後ドイツの平和主義への傾倒との決別、『Zeitenwende』(転換点)と宣言し、米国を喜ばせた。 それがレオパルト2の供与では及び腰になっている。まさに総論賛成各論反対だ。 米国との国家安全保障関係を深化させるドイツに強い警戒心を抱いてきたロシアもほっとしているのではないのか。 それよりも何よりもレオパルト2という「恐るべき助っ人」の導入をめぐる新ウクライナ陣営のごたごたは、2月以降に大攻勢を準備しているロシアにとっては朗報だ。少なくとも時間稼ぎにはなる。 ●米国内で上がるウクライナ支援批判の声 ウラジーミル・プーチン大統領を喜ばせているのは、ドイツの狼狽ぶりだけではない。今ロシアが重大関心を持って見守っているのは米国内の「変化」だろう。 それは、ドイツが条件に出している米主力戦車「エイブラムズ」供与には御託を並べて躊躇していることに現れている。 コリン・カール米国防副長官はこう述べている。 「25億ドル(約3200億円)の追加支援の中に『エイブラムズ』の供与は含まれていない」 「今回米国が供与する武器には甲装車『シャストライカー』90門、歩兵戦闘車『ブラッドレー』59車両、防空ミサイル・システム『ナサムス』用追加砲弾、移動式防空システム『アベジャー』8基が含まれている」 「同戦車はターボ・エンジン稼働で燃料費が嵩む。ウクライナには向いていない」 また別の米国防総省高官はこうも言っている。 「エイブラムズ戦車のメンテナンスは複雑で、ウクライナ軍兵士が操縦を習得するにも時間がかかりすぎる」 一連の言い訳には裏がある。 先の中間選挙で下院を共和党に明け渡したバイデン民主党の政局運営、とくに予算編成は多難だ。 ウクライナへの追加軍事支援のめどは全く立っていない。 共和党、とくに保守強硬派の間にはウクライナへの「ブランク・チェック(金額欄が空白のまま振り出された小切手)は認めない」という意見が台頭。 軍事費を審議する下院歳入、軍事、外交各委員会の委員長*3には対ウクライナ支援に対する慎重派大物が勢揃いしている。 *3=予算委員長にはローレン・ボーバート(コロラド州選出)、軍事委員長はマット・ゲーツ(フロリダ州選出)、外交委員長はティム・バーチェット(テネシー州選出)各議員が就任。 一方、軍事通のダン・ビショップ(ノースカロライナ州選出)、ジョシュ・ハウレー(ミゾーリ州選出)、JD・バンス(オハイオ州選出)3議員は、サンドラ・ヤング行政管理予算局長に書簡を送り、ウクライナに対する軍事支援の詳細について全断面的な報告書を公表するよう要求した。 書簡では「議会における今後の予算審議に賢明な判断をするため」とダメを押している。 こうした共和党の対ウクライナ支援に対するスタンスを、軍事外交専門家たちも取り上げ、メディアを賑わしている。 戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・キャンジアン上級研究員は、こう指摘する。 「ウクライナはロシアと戦うために今後も武器弾薬を必要としている。NATO加盟国も軍事支援しているが、その規模では米国が抜きん出ている」 「長期的には備蓄量が減り、米国は新たに製造せねばならない。だが製造には時間がかかり、まさかの時には間に合わない」 「短期的には旧式の兵器や弾薬を供与することになる。問題はそれを第三国から回すことだ。すでに弾薬などでは始まっている」 「だがこれらの武器・弾薬は同盟国との法的約束事として供与されているものだ。米国家安全保障エスタブリッシュメント内で予算上のプライオリティ(優先順位)について真剣な論議をすべき時期に来ている」 ●嘉手納基地の弾薬もウクライナに移送? キャンジアン氏の見解を敷衍すればこうなる。 米国は、すでに在韓米軍が備蓄している弾薬をウクライナに移送、またイスラエルに供与した弾薬の一部をウクライナ向けに当てているとの情報がある。 沖縄の嘉手納基地からは移送されている可能性は十分あり得る。ウクライナ軍事支援は対中戦略にも影響を及ぼしかねない。 つまり、共和党保守派がウクライナ支援に消極的になっている理由の一つは、まさにこの点だ。 「このままズルズルとウクライナ支援を続ければ、米国および米国の同盟国の武器・弾薬の在庫は目減りしてしまう」というキャンジアン氏の主張そのものと言える。 米シンクタンク「クウィンシー・インティチュート」のウイリアム・ハーティング上級研究員はこう強調している。 「米国が2022年2月以降、ウクライナに行った軍事支援額はアフガニスタン戦争のピーク時を超えている。長期的には対イスラエル軍事支援よりも多い」 「ウクライナ国内に存在する2つの国家のうち、その一つの国の戦闘力強化を図るというユニークなケースだ」 そして軍事外交サイト「SPRI」の共同創設者、ステファン・セムラー氏は、バイデン政権の対ウクライナ軍事支援政策を厳しく批判する。 「ウクライナに対する軍事支援は、戦闘の早期終結を目的として始まったはずだ。軍事支援を続ける中で停戦、終結に向けた容赦なき外交努力がなされるべきだった」 「ところがバイデン氏は外交的解決を目指すようなシグナルは一切出していない」 「対ウクライナ軍事支援は米国防費の一部だ。終わりなき支援は、史上最高額に達している米国防費を青天井のリスクに陥れる」 話を本題に戻すが、エイブラムズ供与にオースティン国防相が首を縦に振らない理由は、共和党内に勢いを増す「ウクライナ・ファティーグ(ウクライナ疲れ)」と無関係ではない。 このまま新たな追加予算を議会に要求してもそう簡単には通らないことを百も承知なのだ。 1月18日、対ナチス戦勝の地となったサンクトペテルブルク(旧レニングラード)で演説したプーチン氏は、ドイツに歴史認識を思い起こさせ、返す刀でバイデン氏のアキレス腱を蹴り上げたつもりだろう。 |
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●ザポロジエ州で砲撃戦 露が「優勢」と主張もウクライナは否定 1/23
ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ南部ザポロジエ州で、両軍による前線での砲撃の応酬が続いている。ロシア国防省は22日、ロシア軍がザポロジエで陣地を拡大させるなど戦況が有利に進んでいると主張したが、ウクライナ側は否定している。 ロイター通信によると、ロシア国防省は22日「ザポロジエでの攻撃作戦で、東部軍管区の部隊がより有利な地点を確保した」と主張。ウクライナの戦闘車両や榴弾砲(りゅうだんほう)、米国製の高機動ロケット砲システム(HIMARS)などを破壊し、ウクライナ側に死傷者が出たとした。ウクライナ側は「ロシアの主張は誇張だ」と反論している。 英国防省は21日、同州での戦況について「ロシア、ウクライナ両軍が大規模な部隊を編成し、砲撃戦や小競り合いを繰り返しているものの、大規模な攻勢は回避されている」との分析を示した。 ウクライナ南部では、ロシア軍が昨年11月にザポロジエ州の西隣ヘルソン州の州都ヘルソン市から撤退して以来、双方とも足踏み状態が続いている。一方、ウクライナ東部ドネツク州北部の要衝、バフムト周辺では、同地を拠点とするウクライナ軍が、民間軍事会社「ワグネル」を中心に部隊を構成するロシアとの消耗戦を繰り広げている。 ロシアは今月13日、バフムト包囲作戦の一環として北東に約10キロ離れたソレダルを制圧したと発表したが、この地域全体の戦況への影響は限定的とみられている。 |
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●ウクライナ 東部に加え南部でも戦闘激化し一進一退の攻防か 1/23
ロシア軍が侵攻を続けるウクライナでは、東部に加えて南部でもロシア側のミサイルや少人数の部隊による攻撃にさらされるなど戦闘が激化し、ウクライナ軍との間で一進一退の攻防が展開されているとみられます。 ウクライナ東部では、22日も各地で激しい戦闘が続きました。 ウクライナ軍は、ドネツク州のウクライナ側の拠点バフムトに向かってロシア軍が攻撃を繰り返しているという認識を示したほか、ルハンシク州のハイダイ知事も地元メディアに対し「非常に激しい戦闘が続いているが、一歩ずつ解放されている」と述べました。 また、ロシア国防省は22日、ウクライナ南部のザポリージャ州で部隊を前進させているなどと主張しました。 これに対しウクライナ軍は、ロシア側のミサイルや少人数の部隊による攻撃にさらされ、一部でロシア側の前進を許したものの、多くの場所で押し返しているとしており、東部に加えて南部でも戦闘が激化し、一進一退の攻防が展開されているとみられます。 一方、ウクライナへの軍事支援をめぐって、ドイツは今月20日、焦点となっていたドイツ製戦車の供与についての判断を先延ばしにしましたが、ショルツ首相は22日、訪問先のフランスで「ウクライナへの支援は必要とされるかぎり続けていく」と強調しました。 こうした中、ロシアの前の大統領で安全保障会議のメドベージェフ副議長は「ウクライナへの武器の供与は、われわれを破壊しようとする行為にほかならない」などとSNSに投稿し、欧米側を改めてけん制しました。 |
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●ワグネルのトップ、「ラスプーチン」と比較の英紙記事に反応 1/23
ウクライナ侵攻に兵士を派遣しているロシアの民間軍事会社「ワグネル」創設者のプリゴジン氏は22日、帝政ロシア末期に皇帝ニコライ2世の妻に取り入って陰の実力者となった僧侶ラスプーチンと自らの類似性を指摘した英紙の記事に反応した。 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の記事について、ラスプーチンの歴史には詳しくないと前置きした上で「ラスプーチンの重要資質は若い王子の流血を呪文で止めたことだ」と指摘。「残念ながら、私は流血を止めることはしない。私は呪文ではなく、直接的な接触によって祖国の敵に血を流させる」と主張した。広報担当が発言内容を公表した。 ワグネルはこれまで、概して反政府勢力と戦うアフリカの国々に部隊を派遣してきた。ここ数カ月は、プリゴジン氏がロシアの刑務所の受刑者をウクライナで戦う兵士にスカウトしている動画がインターネット上で出回っている。 |
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●ドイツ、ウクライナへの戦車供与で玉虫色<vーチン氏の脅しに逃げ腰か 1/23
ウクライナの対ロシア大規模反攻で焦点となるのが西側各国による戦車の供与だ。だが、「世界最強」といわれるドイツ製戦車「レオパルト2」をめぐって決断を迫られるドイツの「玉虫色」が目立つ。プーチン大統領らロシア側の脅しに腰が引けているのか。 レオパルト2をめぐっては、保有するポーランドなどが供与を表明しているが、製造国ドイツの承認が必要となる。 ウクライナのゼレンスキー大統領は「ドイツのリーダーシップの強さは変わらないと信じている」と期待を示すが、ドイツで20日に開かれたウクライナ防衛に関する関係国会合では結論に至らなかった。 22日にはフランスとドイツ両政府がパリで合同閣議を開き、ウクライナへあらゆる分野で支援を続ける方針を確認した。しかし、ドイツのショルツ首相はレオパルト2の供与に関しては「既に武器供与を拡大し、全ての決定はフランスや米国など重要な同盟国と密接に調整してきた。将来も連携することが重要だ」と従来の立場を強調し、今後の供与の可否には言及しなかった。 ロイター通信によると、ドイツのベーアボック外相は同日、ポーランドがドイツの承認なくレオパルト2を供与した場合にどうなるかと仏テレビに問われ、「現時点で質問は受けていないが、質問された場合、邪魔はしない」と述べた。 一方、ピストリウス国防相は同日、戦車供与について近く決定するとの見方を示しつつ、「性急な決定はしない」と慎重な姿勢を崩さない。 ロシアのウォロジン下院議長は同日、ウクライナへの攻撃的兵器の供与は「グローバルな破滅を引き起こす」と述べ、欧米側を強く牽制(けんせい)した。ドイツの決断が戦況を左右しそうだ。 |
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●ロシア、ウクライナ侵攻で18万人死傷 ノルウェー軍試算 1/23
ノルウェー軍制服組トップのエイリク・クリストファーセン(Eirik Kristoffersen)司令官は22日、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う人的損失について、ロシア側の死傷者は18万人、ウクライナ側は兵士10万人が死傷、民間人も3万人が死亡したとの試算を明らかにした。 司令官は同国テレビ局TV2のインタビューで、「ロシアの死傷者は約18万人に近づきつつある」と述べた。試算方法は示さなかった。 また、「ウクライナ側の死傷者は10万人以上だろう。民間人約3万人もこの悲惨な戦争で命を落とした」と語った。 ロシア、ウクライナ両国とも、自国の損失について明確な数字を出していない。 米軍制服組トップのマーク・ミリー(Mark Milley)統合参謀本部議長は昨年11月、ロシアの死傷者は10万人以上で、ウクライナ側にも同程度の死傷者が出ている可能性があると指摘していた。 クリストファーセン氏は、ロシアの動員能力と武器生産能力に言及し、同国は多大な損失を被っているにもかかわらず「長期にわたって(戦争を)継続することが可能だ」と述べた。 |
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●ウクライナ軍、東部ソレダルから「撤退」報道…ロシアが占領地域拡大 1/23
ウクライナの英字ニュースサイト「キーウ・インディペンデント」は22日、東部ドネツク州ソレダルからウクライナ軍が「既に撤退した」と報じた。 ソレダルは同州の要衝バフムトの北東約10キロ・メートルにあり、露国防省が13日、露軍が制圧したと発表していた。ウクライナ軍やウォロディミル・ゼレンスキー大統領はソレダル陥落を公式には認めていないが、キーウ・インディペンデントの軍事専門記者は「ソレダルの戦いは終わった」と指摘した。英BBCも19日、現地司令官の話として、ウクライナ軍が「将来的な反撃を視野にソレダルから戦術的に後退した」と報じた。周辺での激しい戦闘は続いているという。 露軍にとっては昨年7月にルハンスク州の全域制圧を宣言して以来の占領地域の拡大となる。ロシア軍は、露民間軍事会社「ワグネル」戦闘員に加え、年明け以降、精鋭部隊を投入していた。 ドネツク州の全域制圧を目指す露軍は約半年前から、幹線道路が交差するバフムトを攻略しようとしてきた。露国防省は20日の発表で、バフムト南方約5キロ・メートルの集落も制圧したと主張しており、南北からバフムトに進軍する狙いとみられる。 |
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●ロシア 外相が南ア訪問など 欧米対抗で関係強化の動き活発化 1/23
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは、ラブロフ外相が南アフリカを、また、プーチン大統領の側近がイランを訪問するなど、ウクライナへの軍事支援を進める欧米に対抗した関係強化の動きを活発化させています。 ウクライナでは東部や南部で戦闘が繰り返されていて、ロシア国防省は22日、南部ザポリージャ州で部隊を前進させていると主張したのに対し、ウクライナ軍は多くの場所で押し返していると主張し、一進一退の攻防が続いているとみられます。 こうした中、ロシアのラブロフ外相が南アフリカを訪問し、23日には外相にあたるパンドール国際関係・協力相と会談します。 ロシアは、ことし7月にロシア第2の都市サンクトペテルブルクで、アフリカ諸国との首脳会議や経済フォーラムを開催する予定で、BRICS=新興5か国のメンバーでロシア寄りとされる南アフリカとの関係強化を図るねらいがあるものとみられます。 さらに、プーチン大統領の側近でロシア議会下院のボロジン議長をはじめとする議員団がイランを訪問し、イランの国営通信は、議会関係者の話として、23日に議会の議長と会談したあと、ライシ大統領とも面会する予定だと伝えました。 ウクライナで電力インフラなどへの攻撃を繰り返すロシアは、イランから無人機を獲得するなど、軍事面での連携を強めているとみられ、ウクライナへの軍事支援を進める欧米に対抗した関係強化の動きを活発化させています。 |
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●ポーランド、ドイツ戦車供与を正式申請へ=米国から加勢の動き 1/23
ポーランドのモラウィエツキ首相は23日、自国軍が保有するドイツ製戦車「レオパルト」について、ウクライナへ引き渡す許可を独政府に正式に申請すると発表した。欧州諸国が保有するレオパルトは計2000台程度。製造国である独政府がポーランドの申請を認めれば、他の保有国が続き、ウクライナへの供与が加速する可能性がある。 ベーアボック独外相は22日、ポーランドから正式な要請があれば「道をふさぐことはしない」と容認する姿勢を示唆していた。ただ、ショルツ首相は同日の記者会見で「武器供与は米国やフランスとの緊密な協議が引き続き重要だ」と従来の主張を繰り返した。ショルツ政権を支える連立与党間の温度差も表面化しており、ポーランドの申請が承認されるかは予断を許さない。 独政府が決定を先延ばしする中、供与を後押しする動きも活発化している。マッコール米下院外交委員長(共和党)は22日、米ABCテレビのインタビューで「米国が戦車一台でも差し出せば、ドイツはレオパルトを解放する」と述べ、米国として戦車を提供するようバイデン政権に要請した。 |
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●EU、ウクライナに710億円の追加軍事支援 1/24
欧州連合(EU)は23日、ブリュッセルで外相会合を開き、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対し、新たに5億ユーロ(約710億円)の軍事支援を行うことで合意した。 昨年2月の侵攻開始後に始めたウクライナ支援の7回目。「欧州平和ファシリティー」(EPF)と呼ばれる基金から支出する。会合後に記者会見したボレル外務・安全保障政策上級代表(外相)によると、この枠組みによる支援総額は約36億ユーロに達することになる。 |
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●ロシア大統領府、プーチン氏24年再出馬の可能性にコメントせず 1/24
ロシア大統領府(クレムリン)のペスコフ報道官は23日、プーチン大統領が現在の任期が終了する2024年に再選を目指すかどうかについて、コメントを避けた。 ロシアのメディアでは、憲法の規定で次期大統領選が開かれる24年に関し、プーチン氏の去就が取り沙汰されている。 ペスコフ氏はプーチン氏が再出馬する意向か問われ「大統領はこれに関して、まだ何も発表していない」と応じた。 |
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●プーチンは天候にも見放された…記録的暖冬で「貴重な収入源」失ったロシア 1/24
●ウクライナ侵攻前の価格まで下落した天然ガス価格 ヨーロッパの天然ガス価格が下落している。指標となるオランダTTFの天然ガス価格(図表1)は、昨年2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことを受けて急騰し、8月21日週の終値で339.195ユーロ/MWhまで上昇した。その後、天然ガス価格は下落に転じ、昨年の最終週の天然ガス価格は76.315ユーロ/MWhまで落ち着いた。 【図表1】ヨーロッパの天然ガス価格(オランダTTF) 年明け以降も天然ガス価格の下落トレンドは続いており、今年1月15日週の天然ガス価格は66.900ユーロ/MWhとなっている。ロシアがウクライナに侵攻する直前の昨年2月13日週の天然ガス価格が73.760ユーロ/MWhであったから、ヨーロッパの天然ガス価格はロシアによるウクライナ侵攻前の水準まで落ち着いたことになる。 ヨーロッパの天然ガス価格が安定した理由にはさまざまな要因が考えられる。まず、天然ガスの消費量そのものが減少したことがある。EU(欧州連合)の閣僚理事会(各国の閣僚からなる政策調整機関)は昨年7月、今年3月までに各国で天然ガスの消費量を15%削減することで合意した。その後、各国は天然ガスの節約に努めてきた。 ●記録的な暖冬に救われたEU EU統計局(ユーロスタット)によると、最新時点(昨年10月)におけるEUの天然ガスの域内消費量(inland consumption)は前年比23.2%減と、3カ月連続でマイナス幅を拡大させた。もちろん、後述のようにロシアから天然ガスの供給が絞り込まれた影響も大きいが、EUはEUとして天然ガス消費の節約に努めてきたのである。 加えて、ヨーロッパが年末年始に記録的な暖冬となったことも、天然ガスの消費の抑制につながったようだ。中東欧にあるハンガリーの首都ブタペストの元日の最高気温は実に18.9℃と、春並みの気温になった。フランスでも年末の気温が過去最高を記録し、地中海の都市には元日に夏日(25℃)となったところもあるようだ。 温暖化対策に注力するEUは、脱炭素化と脱ロシア化の両立を図っている。いわばEUは「二兎にとを追う」戦略に出たわけだが、脱ロシア化の観点からすれば、少なくとも今年の冬に限っては温暖化がプラスの方向に働くという皮肉な結果となっている。 とはいえ年明け以降、ヨーロッパの気温は例年並みに低下しており、天然ガスの消費量は相応に増えたと考えられるので、今後、天然ガスの消費量がどの程度減っていくのかは不透明だ。 ●天然ガスの供給再開をチラつかせるロシアの意図 すでに述べたように、主要先進国からの経済・金融制裁に反発するロシアは、ヨーロッパに対するガス供給を絞り込んできた。主要なパイプラインによるロシアからヨーロッパへの天然ガスの供給量は、ノルドストリームとヤマルパイプラインによる供給の停止を受けて、ウクライナ侵攻直前の5分の1程度にまで減少している(図表2)。 【図表2】主要なパイプラインを通じたロシアからヨーロッパへの天然ガス供給量 そのロシアは、EUに対して天然ガスの供給再開を持ちかけているようだ。昨年12月25日付でロシア国営の通信会社タス通信が伝えたところによれば、ロシアのアレクサンドル・ノバク副首相は、ベラルーシとポーランドを経由するヤマルパイプラインを通じた天然ガスの供給に関して、それを再開する用意があると発表した。 ヤマルパイプラインによる天然ガスの供給が停止された背景には、ガス料金の支払いに関するロシアとポーランドの交渉の決裂があった。ロシアによるルーブルでの支払い要求をポーランドが拒否したため、ロシアがヤマルパイプラインを通じたガスの供給を停止したのである。ではなぜこのタイミングで、ロシアは再開を持ちかけたのだろうか。 ●国家財政は火の車になっている 最大の理由は、ロシアの国家財政が急速に悪化していることにあると考えられる。ロシアの昨年10〜12月期の連邦ベースの財政収支は▲3兆3608億ルーブルと、赤字幅は7〜9月期(▲1兆3192億ルーブル)から1.5倍に増えた。前年比でも、昨年10〜12月期の赤字幅は一昨年から2倍に膨らんでいる(図表3)。 【図表3】ロシアの連邦財政収支 歳入は堅調に増えており、特に石油・ガス収入といわれる資源企業からの税収は3兆796億ルーブルと近年にない高水準だった。にもかかわらず財政が悪化しているのは、歳出がそれ以上のペースで増えているためだ。歳出の細目はまだ不明だが、その増加をもたらしているのは、ウクライナとの戦争に伴い急増が続く軍事費であろう。 軍事費が膨張しているにもかかわらず、兵士への報酬は支払いが停滞し、士気を低下させているようだ。ロシアの独立系メディアThe Insiderは昨年11月2日、ウリヤノフスク州にある軍事施設で給与の未払いに抗議した兵士による100人規模のストライキが発生したと報じている。つまり、軍事費の多くは兵器など資材の調達や訓練の費用に充てられているのだろう。 ウクライナとの戦争が長期化すれば、軍事費のさらなる膨張は避けられない。政策的経費である軍事費が膨張すれば、経常的経費(通常の行政サービスを提供するための経費)が圧迫され、政府による公共サービスが劣化を余儀なくされる。目に見えるかたちで市民の生活が悪化すれば、ロシアの厭戦えんせんムードは一段と強くなる。 とはいえ、ウクライナとの戦争がすぐに停戦に向かう展望は描けない。中国やインドに代表される新興国向けに石油やガスの輸出を増やしたところで、歳入を増加させるには限度がある。こうした状況に鑑みて、切れるカードは切っていくという観点から、ロシアはEUに対してヤマルパイプラインの再稼働の可能性をチラつかせているのだろう。 ●ロシアのもくろみは外れることになる EUはロシアの提案には乗らない公算が大きい。EUはこの間、天然ガスの使用量の削減に取り組むとともに、ロシア以外からの天然ガスの調達を増やしてきた。このこと自体は、ロシアも想定していたはずだ。そしてロシアは、この動きは緩やかに進むか、あるいは限定的なレベルにとどまると想定したと考えられる。 しかしながら、EUの天然ガスの脱ロシア化は、ロシアの想定以上のペースで進展した。もちろん、ロシアからの天然ガスの供給に依存していたドイツや中東欧の内陸国の天然ガス需給は厳しいままだが、一方で米国産を中心とする液化天然ガス(LNG)の輸入は、地中海や大西洋に面した国々を中心に、着実に増加しているようだ。 それに経済・金融措置の報復として、ロシアがヨーロッパに対してパイプラインによる天然ガスの供給を削減したことで、EUはロシアに対する不信感を一段と強めた。EUもまた、ロシアからの天然ガスの供給が完全に停止する事態を恐れていたが、それが現実味を帯びたことで、EUはむしろ腹をくくったものと考えられる。 もちろん、EU側にも懸念される要素が多い。今冬の天然ガス需給は逼迫ひっぱくを免れるだろうが、来冬は分からない。引き続き消費の節約を試みたところで、厳冬となれば天然ガスの消費量は増加する。それに、再気化や貯蔵のためのターミナルを増やしていかなければ、第三国からのLNGの調達を増やすことはできない。 こうした状況に鑑みれば、ヨーロッパのエネルギー事情は引き続き不安定であり、そのためディスインフレ(インフレ率の低下)も順調には進まないであろう。こうした点がヨーロッパの経済の圧迫要因となるが、とはいえEUが天然ガスの脱ロシア化を見直すとはまず考えにくく、ロシアのもくろみは外れることになるのではないだろうか。 |
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●ゲラシモフ総司令官任命はロシア軍崩壊への序章か? 1/24
ロシアのウクライナ侵攻開始から間もなく1年が経過する中、ロシア軍を取り巻く状況が混迷の度を増している。昨秋以降のウクライナ軍の反撃を受け、東部戦線でも目立った戦果を出せず、ロシア国内では私兵集団を率いる強硬派が台頭して軍への批判を平然と行う状況に陥っている。 プーチン大統領は1月、軍制服組トップのワレリー・ゲラシモフ参謀総長をウクライナ侵攻の総司令官に据える異例の人事に打って出たが、補給面での問題も抱える戦局を打開できる見通しは立っていない。今後実施が予想される総攻撃で失敗すれば、ロシア軍はさらに危機的な状況に追い込まれるのは必至だ。 ●なぜ、ゲラシモフが任命されたのか 「ゲラシモフ氏の総司令官任命は、プーチン大統領が誤った認識≠フもとで達成しうると考えた軍事作戦を達成するために実施されたと推察される」。米国の軍事シンクタンクは1月上旬、ゲラシモフ氏の総司令官任命の問題点を端的に表現した。 ゲラシモフ氏はサイバー攻撃や正規の戦闘などを組み合わせた「ハイブリッド戦」を提唱した人物として知られ、2014年に起きたロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合や、その後の中東・シリアでのロシア軍の軍事作戦を成功させた軍功を持つ。ソ連時代からのエリート軍人で、ショイグ国防相が軍務経験を持たないなか、実質的な軍トップの立場に立つ人物だ。 ただ、総司令官としてのゲラシモフ氏の先行きを楽観視できる要素が多いとは言い難い。 ロシア軍は昨秋にウクライナ軍による東部ハリコフ州の奪還を許して以降、南部ヘルソンでも撤退し、東部戦線においてもこれまで目立った戦果があげられないままでいる。武器・弾薬の補給もままならない状況が続き、不十分な装備で戦闘に送り込まれる兵士の士気も低下していると国内でも批判されている。 ゲラシモフ氏の下には、前任の総司令官だったスロビキン大将ら3人が副司令官として任命されたが、彼らの具体的な役割なども判然としていない。兵站が不十分な状態が続き、10万人規模ともいわれる死傷者を出す中、ロシア軍が組織上の変更だけで事態を急激に好転させられる可能性は低い。 そのような状況にもかかわらずゲラシモフ氏が総司令官に任命されたのは、戦略上の妥当性ではなく、急速に台頭する私兵集団を率いる強硬派からロシア軍を守ろうとするプーチン氏による政治的判断があったとみられている。 ●超法規的な存在が主役≠ノ 「ここにロシア軍の兵士はいない。ソレダルで戦っているのは、ワグネルの戦闘員だけだ」 1月上旬、SNSのテレグラム上で衝撃的な内容の告発を行ったのは、民間軍事会社「ワグネル」の代表者であるエフゲニー・プリゴジン氏だった。 ウクライナ東部ドネツク州の戦闘でロシア軍が攻略を目指す交通の要衝、バフムトをめぐり、ロシア軍はバフムトに隣接する都市ソレダルを陥落させ、そこからバフムトに攻勢をかける狙いだとみられている。プリゴジン氏は、そのソレダルでの戦闘に参加しているのは、ワグネルの傭兵だけだと暴露した。 プリゴジン氏の発言には信ぴょう性がある。ロシア国防省は1月中旬、ソレダルを掌握したと発表したが、そのわずか6時間後に発表内容を変更し、その戦闘には「ワグネルの志願兵」が加わっていたと認めた。当初の発表はワグネルに言及しておらず、それがプリゴジン氏らの逆鱗に触れたためとみられている。 変更された国防省の声明は、ワグネルはあくまでもロシア軍とともに作戦を実行していたという主張だったが、それでもロシア軍が発表した内容を自ら訂正し、ワグネルに言及せざるを得なかった事実は重い。 この事象が示すのは、乏しい戦果をめぐる奪い合いがロシア国内で起きているという問題にとどまらない。重要なのは、ワグネルという超法規的な存在の傭兵集団が前線において正規のロシア軍よりも重要な役割を担っていると主張し、それを裏付ける事実が浮かび上がっているという実態だ。 民間軍事会社であるワグネルはもともと、その存在℃ゥ体が否定された影の組織だった。表立った活動が指摘されはじめたのは、14年のロシアによるクリミア併合がきっかけだった。 ロシア南部ソチで冬季五輪が閉幕した直後、クリミアでは国の記章を着けない正体不明の兵士らが空港や議会を占拠し、クリミア併合作戦が始まった。プーチン大統領は当初、彼らを「ロシア軍の兵士ではない」と主張していたが、後にロシアの関与を認めた。この正体不明の兵士らに、ワグネルの戦闘員らが加わっていたとされる。 ほぼ同時に起きたウクライナ東部での親ロシア派勢力による軍事活動にも、ワグネルの兵士らが参画していたとされる。中東シリアにおいて、アサド政権軍を支援したロシアの軍事作戦にも、ワグネルが参加していた事実が明らかになっている。 ●受刑者を招集 ワグネルが受刑者を戦闘に参加させている事実も広く知られている。昨秋にはプリゴジン氏自らがロシア国内の刑務所に赴き、受刑者らにワグネルの参加を呼びかけたとされる動画が拡散し、世界に衝撃を与えた。 「私はお前たちをここから出すことができる。しかし、再び生きて戻ってこられるかどうかの保証はできない」。プリゴジン氏が受刑者の前でそう演説する中、刑務所の職員らは脇に並び、その内容を聞いていたという。 プーチン大統領はワグネルへの入隊者に対し、秘密裡に恩赦を与えていたと指摘されている。さらにワグネル加入後に戦地から生きて帰還できれば、過去の罪状は問われない。ウクライナでどのような蛮行を行っても一切無罪となる。 ワグネルへの入隊は、「私たちは存在しない」という前提で行われるからだ。ワグネルをめぐっては、ウクライナで戦う海外の傭兵から見ても、高い給与が支払われているとされる。 このような私兵集団がロシア側の軍事作戦の中枢を担っているという事実は、ロシア軍の能力に深刻な疑問を投げかける。さらにロシア国内では、ワグネルは愛国者集団≠ネどとして評されているという。 傭兵に依存する構図はウクライナ軍も同様だが、世界最大規模の軍事力を持つとされたロシア軍がすでに、軍としての体をなしていない実態が浮かび上がる。 ●チェチェン首長も ロシア軍を公然と批判する強硬派はプリゴジン氏だけではない。侵攻開始当初に、民間人の虐殺が判明したキーウ近郊のブチャなどでの作戦に参加していたことでも知られるチェチェン共和国の私兵集団を率いるラムザン・カディロフ首長も同様だ。 カディロフ氏は昨秋、ロシア軍がウクライナ東部リマンから撤退した際には「前線から150キロメートル離れた場所でどうやって軍の状況が分かる。司令官を即座に降格させて、最前線に送りこめ」などと主張した。さらに、小型核兵器の使用を主張し、「米国の目を気にする必要などない」とも発言していた。 カディロフ氏が率いる私兵集団もまた、装備に恵まれ、ロシア軍よりも高い士気を持つと指摘されている。プーチン氏には忠誠を誓うカディロフ氏だが、ロシア軍幹部に従う意思は弱いとされ、仮にウクライナ紛争を契機にプーチン氏が失脚するような事態が起きれば、カディロフ氏が再びロシアに反逆する可能性も否定できない。 ●組織として崩壊状態に陥る危険性 私兵集団を操る強硬派にロシア軍が批判を浴びるさなかで、プーチン氏が強行したゲラシモフ参謀総長の総司令官任命は、そのような批判を封じ込め、ロシア軍を立て直す意図が強く伺える。前任のスロビキン大将がわずか3カ月で副司令官に降格された背景には、スロビキン氏がプリゴジン、カディロフの両氏と緊密過ぎたからだとみられている。 ただ、ロシア軍をめぐる状況がここまで厳しくなるなか、ワグネル、チェチェン兵らを押しやる形で形勢を立て直せるかには疑問符が付く。ロシア軍は間もなく総攻撃に打って出るとの見方もあるが、武器・弾薬の補給面で深刻な問題を抱える中、その成否は見通せない。 大規模攻勢をかけて失敗するような事態になれば、ロシア軍が受けるダメージは単に兵力の損失という次元では済まない。ロシア軍は組織として立ち直りが効かないほどの打撃を受けることは確実だ。 |
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●「戦後最大の困難」認める 露参謀総長、ウクライナで 1/24
ロシア軍制服組トップのゲラシモフ参謀総長がロシア紙「論拠と事実」と会見し、ウクライナ侵攻について「現代のロシアがこのレベルの集中的な軍事行動を取ったことはなかった」と述べ、ロシア軍が第2次大戦以降で最大の困難に直面していることを認めた。同紙電子版が24日に伝えた。 国家の主権と領土の一体性保持のため「持てるあらゆる手段を講じる」と強調。プーチン大統領の指示に従い軍事作戦の目的を達成する決意を示した。 ゲラシモフ氏は、ウクライナ軍への攻撃と状況の安定化、昨年9月にプーチン氏が一方的に併合を宣言したウクライナ東部・南部4州の防衛のため30万人規模の部分動員を迫られたとし「このようなことは第2次大戦以来だった」と述べた。 ゲラシモフ氏は今月11日、ショイグ国防相によりウクライナでの作戦の統括司令官に任命された。 |
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●「プーチンはクレイジーだ」 中国が露を見限り欧米との関係修復を始める 1/24
1月24日で開戦から11ヶ月となるウクライナ紛争。西側諸国はウクライナへのさらなる武器供与を表明していますが、ロシアはこの先どのような動きを見せるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、最新の戦局とロシア軍が「活路」を見出した戦術を紹介。さらにプーチン大統領が、何があっても敗戦だけは避けなければならない理由を解説しています。 ●プーチンの逆襲。ロシア軍は「人海戦術」で優位に バフムト・ソルダーの攻防戦で、ロ軍は、人海戦術でウ軍を押し切ったことで、ロ軍は人海戦術で戦うようである。今後を検討しよう。 ロ軍は、1ケ所に大量の歩兵を集めて、波状攻撃をする人海戦術で成果が出たことで、その戦術を実行し始めた。このため、ウ軍の弱い部分を見つけて、そこに歩兵での大量攻撃を実施している。 ●バフムト・ソルダー方面 ロ軍・ワグナー軍はソルダーを占領し、ウ軍は撤退している。ソルダーの西にあるシイル鉄道駅を中心としたエリアに陣地を作ったが、ワグナー軍はそこに攻め込み、ウ軍はT1503号主要道の西側まで後退して、今、シイルを越して、バフムトカ川の付近までロ軍・ワグナー軍はきている。 大規模な人的損害を出しても、波状攻撃でウ軍を攻めているので、どうしても人的損害を出したくないウ軍は押され気味である。 ブラホタデやクラスノ・ホラなどのバフムトの北側にもワグナー軍は人海戦術で攻撃してきている。損害も大きく、1日800人程度の戦死者を出している。負傷兵は戦死者の3倍とすると3,200人前後が戦線離脱していることになる。1ヶ月で10万人もの戦線離脱者が出ることになる。このため、ロ軍は、第2次動員が必要になる。 ロ軍兵の戦死者は5月までに22万人を超える可能性があり、戦死者数を隠すために移動式火葬場を発注したともいう。戦死者数は1ヶ月で2万5,000人であり、5ヶ月12万人であり、今までの戦死者数の10万人であることから頷けることになる。何人死なすのであろうか? バフムトの南側のクリシチウカ、アンドリウカへもワグナー軍が攻撃し占領したようであり、イワビフスクにワグナー軍が攻めてきたという。このまま行くと、バフムトが包囲される状況であり、そろそろ、バフムトからウ軍を撤退させる可能性が出てきた。 この地域に、ロ軍とワグナー軍が兵力を集めて、人的被害を無視した攻撃で戦局を開くようであり、他のドネツク方面の攻撃がなくなっている。 ロ軍の勝てる方法は、損害無視の人海戦術しかないようである。それを見つけたという段階であり、砲弾も一部地域に優先的に補給しているようである。砲弾の枯渇しているので、攻撃地を絞っているようだ。 このため、ワグナー軍の経費は非常に高く、人海戦術での攻撃では、ロシア人の動員で安い人員をかき集めるしかなく、プーチンもロ軍の立場をとるしかない。ワグナー軍のフリゴジン氏の立場でロ軍全体を貶すことにプーチンも付いていけなくなっている。 このため、プーチンはプリゴジンン氏と対立関係のペトロフスク州のベグロフ知事と会い、プリゴジン氏の意見で解任したラビン大将を陸軍参謀長に任命している。 このため、プリゴジン氏を支持する強硬派は、クーデターなどをする可能性もあり、逆にプリゴジン氏を暗殺になる可能性も出てきた。 ●スバトボ・クレミンナ攻防戦 一歩一歩と前進しているが、ロ軍も大量の人員と装備を集めているので、ウ軍も前進するスピードが遅くなっている。ロ軍を押しているが、攻撃時の損害を少なくするために、無理をしていない。 ソノフイの高地を制圧して、スバトボ市街地を見通せるポイントを押さえるべく、攻撃をしているが、ロ軍も分かっているので、防備を固めている。塹壕を作り防衛しているが、精密砲撃で、損害が大きくなっている。 クレミンナ包囲網も徐々に狭まってきているが、ロ軍は防御に集中して、攻撃をしなくなっている。停滞状況である。 ●ロシアとウクライナの状況 ウ軍は大規模攻勢ができずに、停滞している。一方、ロ軍は200万人動員計画もあり、ウクライナより多い人的資源を使い人海戦術で、押しきる戦術を見出した。現在、戦争の主導権は、ロシアに傾いたようである。 このため、プーチンは、ゲラシモフ総司令官に、「3月中に東部ドンバス地方を占領して、戦争を止める」とした。中国の習近平主席からの手紙で、「いつまで戦争をしているのか。戦争終結までのスケジュールを明確にしてほしい」ときた。 このため、メドベーシェフを送り、対話を促進するとしたが、それもできずに、No..2のパトリシェフも中国に送り釈明している。 しかし、直近のロシアのラブロフ外相と中国の秦外相の電話会談では、「中露関係の成り立つ基礎」として、「同盟しない、対抗しない、第3国をターゲットとしない」という「3つのしない」方針を提示したという。 これは、中国はロシアと同盟関係にならないし、敵対もしないし、中露で米国を敵対視しないということであり、明確に中国は、ロシア離れになってきた。中国は、ロシアのプーチンをクレイジーだと言っているようであり、明確に欧米との関係修復方向になった。 このため、ロシアは、同盟国通貨と思い、貯め込んだ手持ちの人民元を売り、ルーブルに変えた。しかし、生活必需品の供給を中国に依存するロシアは、それ以上の対抗処置は取れない。 このような中国の動きを見て、セルビアのヴチッチ大統領は、「私たちにとって、クリミアはウクライナであり、ドンバスはウクライナだ。今後もそのままだ」と発言。ロシアに近いセルビアも、明確にロシア離れになっている。セルビアは、ウクライナに電源修理の機器を援助したことでウクライナ側と明確にした。 同盟国と思い、ワグナーはセルビアで、要員募集をしていたが、セルビア人が国外の紛争に参加するのは違法だ。このため、セルビアのヴチッチ大統領は、憤慨して「なぜワグナーは、私たちの規則に違反すると知りながら、セルビア人に呼びかけるのか」とした。 イラン外相も「イランとロシアの関係は良好だが、ロシアによるクリミア半島・ルハンスク州・ドネツク州等のウクライナ占領地の併合を我々は認めない。我々は国際法の下で各国の主権と領土保全を認めている」とした。しかし、ドローンとSu-35の交換は行うようである。政治的にはロシアの味方ではないが、ビジネス上での関係はあるということであろう。 このような状態になり、国際的孤立が深まるロシアも戦争を終結させないといけない状態になってきた。 このため、150万の軍隊を作り、人海戦術でウ軍を圧倒することであり、今、ロシアのできることは、国民を戦場で大量に殺しても、戦局を有利にして停戦に持ち込むしかない。 これに対して、ウクライナは、ロ軍の人海戦術で停滞した戦況を転換するために、レオパルト2戦車と装輪装甲車、F-16戦闘機、アパッチヘリやATACMSなどの長射程爆弾などの迅速な攻撃ができる兵器・弾薬やロ軍のインフラ攻撃防止の防空システムの供与を欧米諸国に要請している。 この要請に対して、「前線を突破する必要がある。詳細は言えないが、現下の状況では、われわれはそうした必要性を認めている」と、コリン・カール米国防次官(政策担当)は、記者団に語った。「この挑戦をウクライナがどう克服するか、われわれは熟慮しなければならない」と。 このような欧米攻撃兵器がウクライナに提供されると、ロシアは負ける可能性が出る。このため、「通常戦争での核保有国の敗北は、核戦争の引き金になり得る」とロシアのメドベージェフは、けん制の発言をしている。 ウ軍は、ポーランドから提供された200両のPT-91などの攻撃兵器を温存してきたので、戦局転換の攻撃をしようとしたが、カール米国防次官から、米国による新たな兵器供給と訓練が完了するまで、ロ軍に対し大規模な攻撃を展開することを控えるよう提言された。 人的損害を少なくして、効果的に戦局を転換した方が良いということである。このため、ウ軍は攻撃に必要な兵器や弾薬のリストを作り、武器供与の第8回支援国会合が20日、ドイツ西部ラムシュタイン米空軍基地で開かれたが、その会合前にリストを提出した。 この会合で、オースティン米国防長官は会議の冒頭で、ウクライナ紛争に転換点が訪れていることを宣言した。防御から攻撃への転換という意味だ。 しかし、ドイツは、米国がM1エイブラムス戦車を供与しない限り、レオパルド2戦車の提供を承認しないという。ドイツのボリス・ピストリウス新国防相も、この件はショルツ首相次第だと指摘した。 政治資金援助をロシアから受けていたので、ショルツ首相はロシアからの非難を受けたくないので、ドイツの認可を取らずに、ウ軍に提供してほしいようである。 このため、ポーランド政府は、ドイツの許可なしにレオパルド2戦車をウ軍に供与するとした。 そして、ホーランドの他に、フィンランド、デンマーク、ポルトガルは既に供与を表明しているが、チェコとスロバキアも供与すると表明した。これらにより、レズニコフ国防相が要請した300両のレオパルド2戦車が、手に入る目算は立っている。 後は、ドイツの承認かドイツの承認なしの提供かのどちらかでの実行が必要なだけになっている。 フランスは「ルクレール」戦車の提供を表明、スウェーデンはCV90装甲車、アーチャー自走砲の供与、英国は精密誘導弾ブリムストーン600発を提供するとした。デンマークはカエサル自走榴弾砲19台の提供、オランダはF-16戦闘機の供与を検討し、多数の国から大量の攻撃兵器の供与をウ軍は受けることになる。 特に、射程150kmのGLSDBが供与されると、ロシア国境地域まで届き、軍物資集積所を破壊できることになる。また、ロ軍は、物資集積所をこのロケット弾の届かない場所に移すことが必要になる。 このように、大量の攻撃兵器がウ軍に渡ると、ロ軍の勝ち目がなくなるので、最新鋭のT14アルマータ戦車の戦場投入した大規模攻勢を近く始めるようである。キーウへの再攻撃もあるかもしれない。 そして、このような攻撃兵器がウ軍に渡っても、ミリー米統合参謀本部議長は、「今年中に、ウクライナの隅から隅まで軍事的にロ軍を駆逐することは極めて難しいだろう」とした。2024年まで戦争は続く可能性がある。 それでも、ロシアの戦争犯罪を裁く国際特別法廷を設置することをEU会議で決議し、EUの特別検察官からも、国際的な特別刑事検察官を設けるべきとの意見が出ている。しかし、国際的な法廷設置には、国連の決議が必要であり、まだ道のりは長い。しかし、ロシアが敗戦になると、プーチンを始め、今のロシアの指導者は、すべて死刑になることが確定している。 このため、トルコのエルドアン大統領は、ゼレンスキー大統領との電話会談で、ロシアとウクライナの仲裁を行うという申し出を改めて伝えた。ロシアとしては、ドンバスとクリミアを確保することで、停戦したいようである。戦争を止めるには、クリミアとドンバス確保で諦めるしかない。その他の地域からの撤退でも、戦争には負けていないとするようだ。それと、停戦で国際法廷を阻止するしか、ロシア指導者の生きる道はない。 そして、キッシンジャー元米国務長官も、停戦の条件として「ロシアが侵攻前の境界線に達したとき」というので、ロシアも戦争を終結させるために、その辺りを目指すしかないようである。 もう1つが、ベラルーシのプリビトキ空軍基地にS300が設置されていて、このS300から発射されたミサイルは、キーウまで2分しかかからない。防空ミサイルでは撃ち落せない。 このため、ウ軍は、このS300を破壊する必要になる。しかし、ロ軍の早期警戒機やMIG31などの戦闘機、ka-52戦闘ヘリなどがいる。ウ軍ミサイルが空軍基地に着弾すると、ベラルーシも参戦するしかなくなる。そして、キーウへの大規模攻勢になる可能性もあり、このS300は、要注意である。 もう1つ、戦争の推移では、ウクライナの航続距離1,000kmの無人機「キジバト」やTu-141などがあり、これらから守るために、モスクワのプーチン大統領官邸から10キロの地点に防空システムを設置した。 徐々にロシア国内を攻撃する手段がウ軍も独自で持ち始めたことで、「目には目を、歯には歯を」ということになる。インフラ攻撃には、インフラ攻撃。キーウ攻撃にはモスクワ攻撃になる。 余談であるが、現在、10人弱の日本人義勇兵がウ軍で戦っている。多くは元自衛官であり、米英の義勇兵よりも信頼厚い。まじめな戦いぶりと生活態度が高く評価されているようだ。 この義勇兵で、日本の評価も高いことになっている。ガンバレ日本人義勇兵たちよ。 ●世界の状況 米国は、傭兵企業「ワグナー」を「国際犯罪組織」に指定した。 もう1つ、心配なのが、イスラエルとサウジが連合して、イランとの中東戦争である。イランは、Su-35戦闘機を手に入れて、シリアでの戦争と同じような通常戦争でも負けないと見たら、イスラエルやサウジに攻撃を仕掛けることになる。 イスラエルは、在イスラエル米軍の30万発の弾薬をウクライナに送ることを了承した。イランのドローン対応策にもイスラエルは積極的に機器の提供を開始した。 米国は、イランのドローン工場の破壊を依頼した可能性もあり、この2ヶ国の戦争になると厄介である。 |
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●軍事侵攻11か月 ロシア大規模攻撃準備か ウクライナ戦車求める 1/24
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから24日で11か月となります。ロシア軍は新たな司令官のもとで大規模な攻撃に向けた準備を進めているとみられるのに対し、ウクライナは攻撃能力の高い戦車の供与を欧米諸国に訴え、反転攻勢を目指しています。 ウクライナへ侵攻するロシアは、1月、軍の制服組トップ、ゲラシモフ参謀総長を新たに軍事侵攻の司令官に任命し指揮系統の立て直しを行い、大規模な攻撃に向けた準備を進めているという見方が出ています。 ロシア軍は、東部ドネツク州や南部ザポリージャ州などで攻撃を続けているほか、1月16日からはウクライナ北部と隣接するベラルーシで合同演習を実施し、軍事的な揺さぶりを行っています。 また、ロシアのラブロフ外相は23日、訪問先の南アフリカで「ウクライナで起きていることはハイブリッド戦争ではなく、もはや本物の戦争となっている。欧米側はロシアのすべてを破壊しようとしている」と述べ、ウクライナを支援する欧米側を強くけん制しました。 これに対し、ウクライナは、反転攻勢のため攻撃能力が高く、ヨーロッパ各国が保有しているドイツ製戦車「レオパルト2」の供与を求めるなど欧米諸国にさらなる軍事支援を訴えています。 「レオパルト2」をめぐってはドイツ政府はウクライナに供与するかどうかの判断を先延ばしにしましたが、バルト三国のエストニア、ラトビア、リトアニアの外相が直ちに供与するようドイツに呼びかけたほか、ポーランドのモラウィエツキ首相は23日、自国が保有する「レオパルト2」の供与に向けてドイツに対し許可を求める考えを示しました。 今後、「レオパルト2」がウクライナに供与されるかどうかが焦点となっています。 ●専門家「双方が次の大攻勢のタイミング見計らっている」 ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の長谷川雄之研究員は、現在のウクライナの戦況についてこう着状態にあるとした上で「ロシア、ウクライナ双方が、次の大攻勢に出るタイミングを見計らっている段階だ」と指摘しました。 ロシア側が掌握を目指す、東部ドネツク州のウクライナ側の拠点の一つ、バフムト周辺での攻防について「ロシア側は、じりじりと占領地域を拡大している。ウクライナ側は、どの程度、この地域に戦力を割くのか難しい選択を迫られている」と分析しました。 一方、ウクライナと北部で隣接するベラルーシに、ロシア軍が合同演習の名目で部隊を展開していることについて「首都キーウとゼレンスキー政権にプレッシャーをかけて、ウクライナ軍を北部に配置させるねらいがあるとみられる」として、ウクライナ側の戦力の分散を図り揺さぶりをかけているという見方を示しました。 今後の見通しについて、長谷川研究員は、ロシア側は軍事侵攻の指揮を執る新たな総司令官に軍の制服組トップ、ゲラシモフ参謀総長が就いたことを注目点に挙げ「ゲラシモフ氏はロシアの軍事戦略の新たな概念を提唱し、実現してきた人物で『最後の切り札』ともいえ、彼の失敗は許されない。プーチン大統領に対してアピールするような象徴的な作戦を実施する可能性がある」として、ロシア軍が明らかな戦果を求めて激しい攻撃に出る可能性を指摘しました。 一方、ウクライナ側について「さらに長期化すると、国際世論の関心を高い水準で維持し続けることが徐々に難しくなる。欧米の軍事支援が続く限られた期間のなかで大きな成果をあげる必要がありゼレンスキー政権においても焦りがあるのではないか」と指摘しました。 そのうえで「ウクライナはいま、欧米の軍事支援を本格化してほしいと以前よりもさらに強いトーンで呼びかけているし、欧米側もこれに沿う形でより高次の軍事支援を始めている」と述べ、ウクライナ側が準備を進める春の大規模な奪還作戦に向けて、欧米側が、戦車の供与などどの程度まで軍事支援を進めるかがカギになると指摘しました。 |
●ロシアは多くの国家に分裂し、中国の弱い属国になる 1/24
ウクライナがロシアに勝利すれば、私たちが知る「ロシア連邦」は崩壊することになるかもしれない──あるエコノミストはこう指摘した。 イギリスのシンクタンク「王立国際問題研究所(チャタムハウス)」の客員研究員であるティモシー・アッシュは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とロシア軍がウクライナに敗れるのは避けられないと考えている。ロシアによる軍事侵攻が始まってから11カ月目を迎える今、ロシア政府にのしかかる真の問題は、プーチンのロシアがどうなるのか、そして歴史は繰り返すのか、ということだと彼は言う。 ウクライナとロシアの問題をめぐる政策について、複数の政府に助言を行ってきたアッシュは、1月21日付のウクライナの英字紙「キーウ・ポスト」に論説を寄稿。その中で、戦争に敗北すればロシアは複数の国家に分裂することになるだろうという考えを示した。これはプーチンが約1年前にウクライナに軍事侵攻を開始した時に目指した「大ロシア」再生とは真逆の結末だ。 「プーチン時代の終わりを目の当たりにすることになる可能性は十分にあるし、1991年のソ連崩壊の時のように、ロシア連邦が崩壊して数多くの新国家に分裂する可能性もあると思う」とアッシュは論説の中で述べた。 ●領土拡大の野心が裏目に 現在のロシア連邦は89の構成主体──21の共和国、6つの地方、2つの連邦直轄都市(モスクワとサンクトペテルブルグ)、49の州、1つの自治州と10の自治管区──によって構成されている。これを基に考えると、ロシア連邦が崩壊した場合、20の国家が誕生する可能性があるとアッシュは予測する。 「プーチンはロシアの領土拡大を狙ってこの戦争を始めたが、それによってかえってロシアが縮小することになるかもしれない」 1991年のソビエト連邦崩壊で、主権国家としてのソ連はその存在を終えた。それがウクライナに独立をもたらし、そこからロシアとの対立の歴史が始まった。 ロシア崩壊の可能性を予想する専門家は、アッシュだけではない。 米ラトガーズ大学ニューアーク校の政治学教授で、ウクライナとロシアの問題に詳しいアレクサンダー・モティルは、1月7日のフォーリン・ポリシー誌の論説の中で、プーチンが権力の座を去った後には「熾烈な権力闘争」が起き、「中央集権制が崩壊し、ロシア連邦が分裂する」可能性が高いと指摘した。 「その場合は誰が権力を握っても政権は弱体化し、ロシアは戦争遂行にかまけてはいられなくなるだろう」とモティルは述べた。「この混乱を生き延びた場合、ロシアは中国の弱い属国と化す可能性が高いし、生き延びられなければ、ユーラシアの地図は大きく変わる可能性がある」 フランスのシンクタンク「モンテーニュ研究所」の地政学専門家であるブルーノ・テルトレも、ウクライナ戦争が「二度目のソ連崩壊」をもたらす可能性が高いと指摘した。 テルトレは昨年12月に、「プーチンはロシア世界(ルースキーミール)の統一に失敗しただけではない。今回の戦争によってロシアに最も近い複数の隣国も『脱ロシア』を望むようになった」と書いている。 米シンクタンク「ジェームズタウン財団」の上級研究員であるヤヌシ・ブガイスキは、西側の政策立案者たちは「差し迫る」ロシア崩壊に向けた備えがまったく出来ていないと警告する。 ブガイスキは1月12日発行のポリティコ誌に寄稿した論説の中で、次のように述べた。「西側の当局者たちは、ロシア崩壊の影響に備えたり、ロシア帝国主義の崩壊につけ込んだりする代わりに、冷戦後の過去に戻れると信じたがっているように見える」 |
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●プーチン大統領と側近・プリゴジン氏の間で“深刻な対立”か 1/24
アメリカのシンクタンクは、ロシアのプーチン大統領と、側近で民間軍事会社「ワグネル」のプリゴジン氏との間で深刻な対立が生じていると指摘した。 アメリカの「戦争研究所」は22日、「ワグネル」のプリゴジン氏がドネツク州のバフムトを攻略しきれなかったため、プーチン大統領が正規のロシア軍を重視するようになったと指摘した。これを機にプーチン氏への影響力が衰退し始めたとしている。 一方、イギリスの調査報道機関「ベリングキャット」は、プリゴジン氏が「ワグネル」の兵士の期待に応えるためにプーチン氏への要求を強めていると述べ、政権内の対立が深まる可能性を指摘している。 |
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●ロシア政権内の対立深まるか プーチン側近・プリゴジン氏の影響力衰退 1/24
ロシアのプーチン大統領の側近で、民間軍事会社『ワグネル』創設者のプリゴジン氏について、アメリカのシンクタンクは22日、影響力が衰退し始めたと指摘した。 「プリゴジン氏が、自身の手でバフムトを攻略しきれなかったため、プーチン氏が正規のロシア軍を重視するようになった」(アメリカのシンクタンク・戦争研究所) 一方、調査報道機関『ベリングキャット』のジャーナリストは、プリゴジン氏がプーチン氏への圧力を強めているという見方を示した。 「プリゴジン氏は、プーチン氏を攻撃し続け、より多くの権力を取り戻そうとするだろう」(ベリングキャットのジャーナリスト) 今後、ロシア政権内の対立が深まる可能性を指摘している。 |
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●プーチン邸に防空システム配備、と報道。西側の長距離兵器を警戒? 1/24
ロシアの防空システム「パーンツィリ-S1」が最近、ウラジーミル・プーチン大統領邸の近くに配備されたと、ロシアの独立系報道機関が1月23日に伝えた。 2021年創設の調査報道サイト「アゲンツトヴァ(Agentstvo)」はテレグラムに、ロシア西部のノヴゴロド州にあるプーチン邸の近くにパーンツィリが配備されたというメッセージを投稿した。プーチンの家を守るために設置されたパーンツィリだという写真も付いていた。 1月19日以降、モスクワにある複数の主要政府機関の屋上に設置されたパーンツィリだとする写真や動画が拡散していた。ロシアの首都であるモスクワに防空システムを配備するこの動きは、2022年末にロシア領内の標的に向けたドローン攻撃が実施された後に起きたものだ。 アゲンツトヴァによれば、ノヴゴロド州に配備された防空システムも、数週間前、前述したドローン攻撃の直後に設置されたものだという。地元住民の話では、パーンツィリは迎撃体制にあり、少なくとも3人の兵士が配置されているという。 ●S-400地対空ミサイルも全土に 12月にロシア領内で発生したドローン攻撃について、ウクライナは関与を認めていない。ただし、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領率いるウクライナ軍は、アメリカからロシア領内に到達可能な兵器をさらに受け取る予定だと報じられている。 パーンツィリ防空システムは、対空機関砲とミサイルで構成されており、7キロ圏内に入ったミサイル、ならびに20キロ圏内の戦術航空機を迎撃する能力を持つ。アゲンツトヴァによると、ノヴゴロド州にあるプーチンの邸宅は、パーンツィリが配備された場所から6キロの距離にある。 パーンツィリがモスクワの政府機関の屋上に配備されていることを示す証拠がネット上で拡散すると同時に、地対空ミサイルシステム「S-400」もロシア全土で目撃されている。S-400は、最長250キロ先の標的を撃ち落とす能力を持ち、弾道ミサイルも60キロ先で迎撃できる。 ロシア政府報道官のドミトリー・ペスコフは1月20日、ロシアの戦略拠点にミサイル防衛システムが配備されたことに関して明言を避けた。防空システムの目撃情報について記者から質問が飛ぶと、ロシア国防省に問い合わせるようにと述べた。 アゲンツトヴァの記事によると、ノヴゴロド州の町、ヴァルダイにあるプーチンの邸宅は、同大統領の公邸の1つと考えられている。プーチンはこの建物を、親戚や友人、セレブなどをもてなすための別邸として使っているというのが定説だと、アゲンツトヴァは記している。 |
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●ロシア ゲラシモフ参謀総長“前例ないレベルの軍事行動展開” 1/24
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから24日で11か月となります。今月、侵攻の総司令官に就いたゲラシモフ参謀総長は、ロシアの新聞のインタビューで、前例のないレベルの軍事行動を展開しているとしたうえで、「あらゆる手段を講じる」と述べ、ウクライナ側は警戒を強めています。 ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は今月、制服組トップのゲラシモフ参謀総長が軍事侵攻の総司令官に就き、大規模な攻撃に向けた準備を進めているという見方が出ています。 ゲラシモフ参謀総長は24日、ロシアの新聞「論拠と事実」の電子版に掲載されたインタビューで、軍事侵攻について「現代のロシアでこれほどの軍事行動のレベルと激しさは前例がない。ロシアは事実上、西側諸国の全体から敵対行為を受けている」として、前例のないレベルの軍事行動を展開しているという認識を示しました。 そのうえで、「最高司令官が定めた目標を成し遂げ、国の軍事的な安全を確保するために、あらゆる手段を講じる」と述べ、プーチン大統領の指示に従って、作戦をさらに進めていく構えを強調しました。 ●ウクライナ国防省 “ドンバス地域で戦闘一層激しくなる”と警戒 一方、ウクライナ国防省の情報総局の幹部は23日、ウクライナメディアに対して、ロシア軍が再編成される中で、来月から3月にかけて東部ドンバス地域でロシア軍が大規模な攻撃を仕掛け、戦闘が一層激しくなるという見通しを示し、警戒を強めています。 ゼレンスキー大統領は23日、ロシアによる軍事侵攻の開始から24日で11か月になることについて、「ウクライナの勝利のために力を結集する日だ」と述べ、国民に改めて結束を呼びかけたうえで、欧米諸国にさらなる軍事支援を求めました。 ●軍事侵攻の長期化 子どもたちの心のケア一層重要に ロシアによる軍事侵攻の長期化に伴って、ウクライナの子どもたちの心のケアが一層重要になっています。 首都キーウにある学校では、子どもたちの異変を察知し、支援につなげようという取り組みが進められています。 およそ200人の子どもたちが学ぶ私立学校では、防空警報が出た際も授業が続けられるよう教室も兼ねたシェルターが地下に整備されています。 また学校では、ロシア軍の攻撃が続くなかでストレスを感じる子どもが急増しているとして、心のケアを重視しています。 心理学を学んだ専門のカウンセラー5人が常駐し、去年5月から子どもたちの心の状態を把握するため「アートセラピー」の講座を開いています。 絵を描くことで心をいやす効果が期待されるほか、どのような絵を描くかで心理状態を把握することにもつながるということです。 カウンセラーは黒など暗い色を多く使って絵を描いた子どもなどに対しては異変がないか話を聴くようにしています。 学校によりますと、絵を描いた子どもたちのうち、およそ50人について心理状態に問題がある可能性があるとして、カウンセリングを行ったということです。 このうち4人については、PTSD=心的外傷後ストレス障害などの可能性もあるとして、医師の診察を受けるよう助言したとしています。 学校では、侵攻から1年となる来月からはドイツのNGOとも協力し、こうしたセラピーを週2回、ウクライナ国内の別の場所からキーウに避難してきている子どもたちにも受けてもらえるようにするということです。 カウンセラーのクズメンコさんは、「絵を描いている間は、感情を発散して、いくらかリラックスできると思いますが、本当の意味でよくなるには、長い時間が必要です。また、絵だけでは戦争との結びつきが分からなくても、話してみると不安を抱えていることがわかることもあります」と話していました。 またティホノワ校長は、「子どもは国の未来であり、外の世界で何が起ころうと、教育は絶対に止めてはいけないと考えています。心のケアのためには、絶え間ないコミュニケーションとサポートが必要です」と話していました。 |
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●ウクライナ侵攻11カ月、増え続ける両軍の死者数 今年に入り急増か 1/24
ロシアによるウクライナ侵攻から24日で11カ月を迎える。終わりの見えない戦争で、前線の兵士の死傷者の数は増え続けている。ただ、正確な数はウクライナ、ロシアとも明らかになっていない。 ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は昨年12月、地元テレビで、ウクライナ軍の兵士の死者数について、「公式な評価」として1万〜1万3千人と述べた。一方で、ロシア軍兵士の死者数は10万人に上ると強調した。英BBCによると、ポドリャク氏は6月の時点では、毎日100〜200人のウクライナ兵が亡くなっているとしていた。 死傷者数をめぐっては、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長がロシア軍の死傷者について「10万人以上」とし、ウクライナ軍についても「恐らく同様である」と述べている。 一方、ロシア政府は死者数について、9月に「5937人」とした以降に明らかにしていない。 BBCがロシアの独立系メディア「メディアゾナ」と調査したロシア兵の死者数は、名前が確認できた者だけで1月6日時点で1万1009人に上る。最も少ない推定でも2万2千人以上としている。 今年に入り、東部ドネツク州などでの攻防戦が激化しており、両軍での死傷者が急増している可能性がある。 CNNは今月11日、同州の激戦地ソレダルで戦うウクライナ兵の発言として、「(死者が多いため)誰も何人が死亡したのかを数えていない。誰も分からない」と伝えた。一方、同州マキイウカでは同月1日未明、ロシア軍の臨時兵舎をウクライナ軍が高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」で攻撃。ロシア国防省は、ロシア兵89人が死亡したとしているが、ウクライナ側はロシア兵の死者は約400人、負傷者約300人と発表した。 |
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●ロ参謀総長「戦後最大の困難」 ウクライナ高官、解任続く 1/24
ロシア軍制服組トップのゲラシモフ参謀総長はロシア紙が24日報じたインタビューで、ウクライナ侵攻について「現代のロシアがこのレベルの集中的な軍事行動を取ったことはなかった」と述べ、ロシア軍が第2次大戦以降で最大の困難に直面していると認めた。24日で侵攻から11カ月となった。 一方、ウクライナ国防省は、軍の食料調達を巡る汚職疑惑が報じられたことで、後方支援担当のシャポワロフ次官を解任。人道支援用に寄付された車を私的に流用したと指摘されたティモシェンコ大統領府副長官も23日付で解任された。汚職疑惑による高官の相次ぐ引責は、ゼレンスキー政権に打撃となりそうだ。 |
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●ロシアの対空防衛は世界最高水準=プーチン大統領 1/25
ロシアのプーチン大統領は24日、ウクライナ軍から定期的に攻撃を受けているロシア南西部ベルゴロド州の知事とのテレビ会談で、ロシアの対空防御は世界最高水準だと述べた。 会談で、知事はプーチン大統領に対し、ウクライナ戦争が始まって以来、砲撃により地元市民の25人が死亡、96人が負傷したと伝えた。 |
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●ロシア参謀総長「大戦以来の危機」、作戦の継続強調… 1/25
ロシア軍のウクライナ侵略作戦を指揮するワレリー・ゲラシモフ参謀総長は、露有力紙が24日に公開したインタビューで、侵略作戦に関し「現代ロシアが経験したことがない規模と激しさになっている」と述べ、困難に直面しているとの認識を示した。侵略の目的達成のため「あらゆる手段を講じている」と述べ、24日で開始から11か月となった侵略作戦を継続する姿勢を改めて強調した。 露週刊紙「論拠と事実」に語ったもので、ゲラシモフ氏は「西側がほぼ一体となって我が国と軍に敵対している」と主張し、ロシアは、前身のソ連がナチス・ドイツを破った第2次世界大戦以来の「脅威」にさらされていると説明した。 プーチン政権はウクライナ侵略を、ロシアで「大祖国戦争」と呼ばれる独ソ戦になぞらえて、国民の協力を得ようと腐心しており、ゲラシモフ氏の発言は、その一環とみられる。 露治安当局は反戦運動の封じ込めも続けている。露独立系人権団体「OVDインフォ」などによると、治安当局は21日、モスクワ中心部にあるウクライナ詩人の銅像付近で、「ウクライナは私たちの敵ではなく、兄弟だ」とのプラカードを掲げた女性を拘束した。 女性は、46人が犠牲になった今月14日のウクライナ東部ドニプロの集合住宅への露軍のミサイル攻撃に抗議したものとみられる。 ドニプロの集合住宅の被害を露国営メディアはほとんど報じていないが、ウクライナゆかりの像や記念碑に花束を置く動きは、治安当局の監視下にもかかわらず続いており、モスクワ以外でも確認されている。 北大西洋条約機構(NATO)加盟国ノルウェー軍の司令官は22日、地元テレビで、ロシアの侵略開始以降、露軍兵士は約18万人が死傷し、ウクライナ軍の死傷者数も約10万人に上るとの推計を明らかにした。根拠は明示しなかった。ウクライナの民間人約3万人が死亡したとの見方も示した。 一方、ウクライナのドミトロ・クレバ外相は23日、公共放送で、ロシアの戦争犯罪を裁く「特別法廷」の設置に向け、来週にも複数の関係国が会合を開く見通しを明らかにした。 |
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●ロ大統領側近が兵士のネガティブ報道の規制を依頼 1/25
ロシアのプーチン大統領の側近が、自ら創設した民間軍事会社に所属する兵士のネガティブ報道を規制するよう求めた。 ロシアの民間軍事会社「ワグネル」を創設したプリゴジン氏は24日、自身の会社のSNSで、ロシア下院議長宛てに文書を出したと明らかにした。 プリゴジン氏は文書の中で、「公然と兵士をおとしめるメディアやブロガーがいる」と指摘。 兵士の中に、殺人や性犯罪などの元受刑者が含まれていることから、「メディアはネガティブな情報を探し出し、われわれのために命をささげてくれている兵士たちを悪人のように見せている」としたほか、「社会の一員となるチャンスを与えず、彼らの功績を故意に軽んじて、一般市民との対立を生み出している」と批判した。 そして、ロシア刑法に新しい項目を盛り込み、兵士のネガティブな報道や、過去の犯罪歴に対する批判に5年以下の禁錮刑を科すべきと提案した。 ロシアでは、ウクライナへの軍事侵攻後、軍や国家を陥れるような報道を禁じる法律が成立し、違反者には最長禁錮15年が科される。 プリゴジン氏の指摘で、ロシアで報道の自由がさらに縛りつけられる可能性がある。 |
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●原発に西側兵器なし ロシアの主張を否定―IAEAトップ 1/25
国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は24日、ブリュッセルの欧州議会で、ウクライナ国内の全ての原発敷地内を確認し、西側諸国から提供された兵器は発見されなかったと明らかにした。ロシアが兵器の存在を主張していたが、これを真っ向から否定した。 グロッシ氏はこの日、ウクライナ国内のIAEA支援チームに対して、ウクライナの施設管理者と共に全原発を確認するよう指示したという。「点検の結果(兵器は)なかった」と述べた。 |
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●アメリカ 主力戦車をウクライナに供与検討 複数メディア伝える 1/25
アメリカの複数のメディアは、バイデン政権がロシアによる軍事侵攻が続くウクライナへの軍事支援としてアメリカの主力戦車を供与する方向で検討していると伝えました。 アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルなど複数のメディアは24日、アメリカ政府当局者の話として、バイデン政権がアメリカの主力戦車「エイブラムス」をウクライナに供与する方向で検討していると相次いで伝えました。 早ければ今週中にも発表する可能性があるとしています。 アメリカ国防総省のライダー報道官は24日、記者会見で、現時点で発表することはないとした上で「ウクライナが緊急に必要とする安全保障上の支援についてウクライナや同盟国などと緊密に連絡を取り合っている」と述べました。 ウクライナへの戦車の供与をめぐっては、ドイツの複数のメディアが24日、ドイツ政府がドイツ製の戦車「レオパルト2」を供与する方針を固めたと一斉に伝えました。 ドイツやアメリカはこれまで戦車の供与に慎重な姿勢を示していたことから両国が供与に踏み切れば足並みをそろえた可能性があります。 |
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●ドイツ、ウクライナに戦車供与を「決定」 米も最終調整 1/25
独誌シュピーゲルは24日、ドイツのショルツ政権が同国製主力戦車「レオパルト2」をロシアの侵攻を受けるウクライナに供与することを決定したと報じた。ポーランドなどレオパルト2の保有国による供与も承認するという。欧米の軍事支援がより攻撃的な兵器にレベルが上がり、ウクライナ東部や南部での地上戦が激化する可能性がある。 一方で、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルも同日、複数の米政府関係者の話として、バイデン米政権が米軍の主力戦車「M1エーブラムス」をウクライナに提供する方向で最終調整していると報じた。ドイツの判断を後押しするとともに、強力な火力を持つ兵器の提供で足並みをそろえる狙いがあるとみられている。 ウクライナ軍はロシアに占領された領土奪還に向けた地上戦のため、欧米の戦車の供与を再三求めてきた。欧州では十数カ国がレオパルト2を計2000両以上保有する。各国が融通すれば負担は少なく、整備や訓練も柔軟にできることからウクライナに提供する最適な戦車とされている。 ポーランドやフィンランドはすでに自国が保有するレオパルト2をウクライナに提供する意向を示していた。しかし、供与には製造国ドイツの承認が必要。ポーランドのブワシュチャク国防相は24日、ドイツに対し供与の承認を正式に要求したことを明らかにしていた。 ショルツ政権はロシアと北大西洋条約機構(NATO)の全面的な対立につながることなどを懸念し、供与や承認に慎重だった。しかし、欧州各国からはドイツに早期の決断を迫る声が強まり、供与に踏み切ったとみられる。米独メディアは、これまでにショルツ首相が供与の条件として、米政府もエーブラムスの提供に踏み切ることを挙げていると報道していた。 一方で、米国防総省はこれまでエーブラムスの提供には消極姿勢を示してきた。レオパルト2などと使用する燃料が違い、維持管理も難しく、訓練にも相当の時間を必要とすることから「合理的な選択肢ではない」(同省のシン副報道官)と説明していた。 |
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●ウクライナ侵攻のロシア、春にも大規模攻撃か 米研究所 1/25
米シンクタンクの戦争研究所は24日までに発表した戦況分析で、ロシアがウクライナに対して数カ月以内に決定的な行動を起こす可能性があると指摘した。ウクライナ当局も、春か初夏にロシア軍が大規模な攻撃を仕掛ける準備をしているとみている。ウクライナが欧米諸国に軍事支援を求める中、ドイツが主力戦車の供与を認めるかどうかが注目されている。 戦争研究所は、ロシア軍が大規模な攻勢に備えてウクライナ東部ルガンスク州などで軍備の再編を進めていると分析した。「ロシアの新たな軍事作戦に対してウクライナが主導権を失わないようにするには、西側諸国のパートナーによる支援が引き続き必要だ」と指摘した。 英国などが戦車や装甲車のウクライナへの供与を決める中、ドイツの対応が注目されている。同国製の主力戦車「レオパルト2」を保有するポーランドなどが供与する意向を示しているが、ドイツの承認が必要だ。ショルツ独首相は「ロシアと北大西洋条約機構(NATO)の戦争になるのを避ける」と繰り返し述べており、武器供与で目立つことには慎重な立場だ。 一方、タス通信などによると、ベラルーシのルカシェンコ大統領は24日、ウクライナから不可侵条約を締結する提案があったと述べた。ベラルーシはロシアの侵攻に協力しており、ウクライナにはベラルーシ軍が参戦することへの警戒感がある。 |
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●ベラルーシ大統領「ウクライナから不可侵条約締結の提案」 否定的な姿勢示す 1/25
ロシアと同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領は、ウクライナから不可侵条約締結の提案があったと明らかにしました。 ロシアメディアなどによりますと、ルカシェンコ大統領は24日、ロシアの侵攻を受ける隣国ウクライナから互いに領土を侵さないことを約束する不可侵条約締結の提案があったと述べました。 詳しい内容や提案の時期については触れておらず、詳細は不明です。 ルカシェンコ氏は「なぜそうした提案があったのかわからない。一方ではウクライナ領土に軍を送るなと言いながら、他方でベラルーシの過激派を武装させている」などと主張し、否定的な姿勢を示しています。 ベラルーシにはロシア軍との「地域合同部隊」が駐留するほか、来月1日にかけて空軍の合同軍事演習が実施されていて、ウクライナ側からはベラルーシが侵攻への関与を強めるのではとの見方も出ています。 ロシアのペスコフ大統領報道官は24日、不可侵条約締結の提案について「何の情報も持っておらずコメントできない」としています。 こうした中、侵攻を指揮する総司令官に今月就任したゲラシモフ参謀総長は24日、ロシアの新聞のインタビューで「現代のロシアにおいてこれほどの軍事行動のレベルと激しさは前例がない。我々は事実上、西側諸国全体から敵対行為を受けている」と述べました。 そのうえで「軍事作戦の目標を達成し、わが国の安全を確保するためにあらゆる手段を講じる」として、侵攻を継続する姿勢を示しています。 また、ラブロフ外相も訪問先の南アフリカで「ウクライナで起きているのはハイブリッド戦争ではなくもはや本物の戦争だ。欧米はロシアの全てを破壊しようとしている」と主張、ウクライナへの軍事支援を続ける欧米を強くけん制しました。 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、条約について直接の言及はしなかったとみられますが、「私たちは攻撃するつもりはない」「ベラルーシが独立性を失わず、この恥ずべき戦争に参加しないことは重要です」と呼びかけています。 |
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●ウクライナの子供たち、連行疑い多発 ロシア軍占領地で今何が? 1/25
ロシアが侵攻するウクライナで、露軍の占領地からウクライナ人の子供がロシア領に連行された疑いのある事案や、ロシアに行った子供が露領内で留め置かれるケースが多発し、国際的に非難の声が上がっている。露軍占領地の子供たちに何が起きているのか。 「迎えに来てくれるの? いつ来られるの? お母さん、今どこにいるの?」 東部ハリコフ州クピャンスク近郊の村に住むリュドミラ・コズルさん(48)は昨年8月、約3週間の予定で次女ベロニカさん(13)をロシア南部ゲレンジークで行われるサマーキャンプに送り出した。だが、当初のキャンプ終了期日を過ぎてもベロニカさんは帰国のめどが立たない。代わりにベロニカさんから迎えに来てほしいという声が電話などでコズルさんに届いた。「何度もそう言われるのが一番つらかった」というコズルさんは「子供を連れ戻すことができない。そう思うと恐ろしくてたまりませんでした」と振り返る。 村はロシアとの国境から約40キロ。昨年2月24日の侵攻開始とともに露軍が一帯に侵入し、翌25日には露軍が制圧。9月9日にウクライナ軍が奪還するまで約半年間ロシアに占領された。 占領下の5月ごろ、ロシアで行うサマーキャンプに無料で参加できるという情報が学校などを通じて広がり始めた。ロシアに送る不安はあったが、近所の子供たちの中には参加して無事に帰ってきた子もいたので安全だと思えた。周辺で続く砲撃の音などを嫌がったベロニカさんはキャンプに行きたがった。説明会にも行き、夫と話し合った末、行かせることに決めた。 8月28日、地域の200〜300人の子供が5台のバスで出発した。参加者によると、露領内に入るとバスの前後をロシア警察の車両が挟んで移動したという。 しかし9月9日、ウクライナ軍は占領地域であるこの村を奪還、露軍は撤退した。ロシア側のキャンプ管理者に連絡すると、戦況を承知しているので10月10日までキャンプ期間を延長すると言われた。 キャンプの運営側は参加した子供の親がキャンプまで直接迎えに来れば帰す姿勢を示した。しかし危険な前線を越えてロシアに向かうのは難しい。迂回(うかい)してポーランドなどを経由するしかないが、大金がかかる。最終的にコズルさんら地域の母親14人はNGOの支援を受け、12月に陸路でポーランドとベラルーシを通過しロシアに入国。コズルさんは南部アナパのキャンプに移動していたベロニカさんと再会し連れ戻すことができた。「キャンプに行かせたことをとても後悔しています。もうどこにも行かせません」。コズルさんは取材にそう涙を浮かべた。 それでもコズルさんたちは運が良かった方かもしれない。コズルさんらと一緒にキャンプに行き、娘のダーシャさん(15)を取り戻したタイシア・ポジダエバさん(32)によると、そのキャンプにはまだ51人の子供が取り残されていた。一方で、侵攻後にウクライナからロシアに移住した親に対しては既に子供が引き渡されていた。 ウクライナ政府の推計では、キャンプ参加者も含め、侵攻後にロシア側に「移送」された子供の数は1月23日段階で少なくとも1万4450人で、ウクライナ側に戻れたのは126人だけという。欧州連合(EU)は「ロシアは不法行為をやめ、子供たちを直ちに安全に帰国させなければならない」と批判する。 |
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●ロシア 兵器増産し侵攻継続姿勢 ウクライナでは要人解任相次ぐ 1/25
ロシアのプーチン政権は、軍需工場に兵器の増産を指示するなどウクライナへの侵攻を続ける姿勢を示しています。一方、ウクライナではゼレンスキー大統領の側近など政府の要人が解任される事態が相次ぎ、反転攻勢への影響が懸念されています。 ロシア軍のウクライナへの侵攻から11か月となるなか、イギリス国防省は23日、ロシア軍が侵攻以降に掌握した領土のうち、ウクライナ軍がおよそ54%を解放したと指摘しました。 また、クリミアなど国際的に承認されたウクライナの領土のおよそ18%が、いまもロシア側の支配下に置かれているとしています。 こうしたなか、ロシアの前の大統領で、安全保障会議のメドベージェフ副議長は24日、ロシア中部のイジェフスクにある軍需工場を視察しました。 そして、欧米などがロシア軍の兵器不足を指摘しているのに対し「彼らを失望させたい。すべてが十分にそろっていて、年初から兵器や弾薬などは部隊に供給されている」と強調した上で、特に無人機の需要が高まっているとして兵器の増産を求めました。 一方、ウクライナでは、政府の要人が解任される事態が相次ぎ、このうち、ゼレンスキー大統領の側近で大統領府のティモシェンコ副長官と国防省の幹部が24日までに解任されました。 また、地域発展省の幹部が、前線への物資の調達をめぐって賄賂を受け取っていたなどの疑いで逮捕され22日解任されたほか、成人男性の国外への渡航が原則禁じられている中で、検察の幹部がスペインで休暇をとっていたことが明らかになったあと解任されました。 ゼレンスキー大統領は、綱紀粛正の徹底を図る姿勢を示していますが、政府の要人が次々に解任される事態に、地元メディアは、政府が早急に対応をとる必要性を強調していて、反転攻勢への影響が懸念されています。 |
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●ウクライナ大統領府 “ティモシェンコ副長官解任”の大統領令 1/25
ウクライナ大統領府は24日、ティモシェンコ副長官を解任したとする大統領令を公表しました。 これに先立ち、ティモシェンコ氏は自身のSNSでゼレンスキー大統領に対し、辞表を提出すると明らかにしていました。 ティモシェンコ氏は、ウクライナでの戦況などについて、たびたびSNSなどで情報を発信してきました。 大統領府が副長官を解任した理由は明らかにされていませんが、地元メディアはティモシェンコ氏をめぐるスキャンダルを報じていました。 |
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●ロシア「避けられない傷 残す」 独や米の“戦車供与方針”に 1/25
ウクライナへの軍事支援をめぐり、複数のメディアは、ドイツやアメリカ政府が、焦点となっていた主力戦車を供与する方針を固めたなどと伝えています。 これに対し、ロシア側はこうした欧米側の動きを強くけん制しています。 ドイツの有力誌シュピーゲルなどは24日、ドイツ政府が攻撃能力が高いドイツ製の戦車「レオパルト2」をウクライナに対して供与する方針を固めたと伝えました。 また、アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルなどは、バイデン政権がアメリカの主力戦車「エイブラムス」をウクライナに供与する方向で検討していると報じています。 ドイツのショルツ政権は、戦車の供与について戦闘が一層激化するという国内の懸念などを背景に、慎重な姿勢を示してきましたが、アメリカなどとの協議も踏まえたうえで、どのような決断をするのかが焦点となっています。 ウクライナ軍は、近く大規模な反転攻勢を目指しているとみられ、ウクライナ軍のザルジニー総司令官は先月、イギリスメディアのインタビューに対し「300両の戦車や600から700の歩兵戦闘車などが必要だ。そうすれば軍事侵攻前までの領土の奪還が現実的になる」と述べています。 これに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は24日、ドイツ政府が供与を決定した場合「将来の両国関係にとってよいことにはならず、必ず避けられない傷を残すことになる」として、強くけん制しています。 また、ワシントンに駐在するロシアのアントノフ大使も「供与が決まれば、アメリカの戦車は、ほかのNATO=北大西洋条約機構の兵器と同様、破壊されるだろう」としています。 ●米 戦争研究所 “欧米諸国の供与 領土奪還に貢献” アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は24日、イギリスが主力戦車「チャレンジャー2」を供与する方針を示しているのに続き、ドイツやアメリカが主力戦車をウクライナに供与する方針を固めたなどとメディアが伝えているとしています。 さらにフランスも、フランス製戦車「ルクレール」を供与する可能性を排除しないという立場を示していると指摘しています。 そのうえで「欧米諸国のウクライナへの主力戦車の供与は、ロシア軍を打ち負かし、領土を奪還することに貢献するだろう」として、戦況がこう着する中、ウクライナ軍が主導権を握る可能性があると分析しています。 ●ロシア大統領府 米の戦車供与の可能性「ばかげた計画」 ロシア大統領府のペスコフ報道官は25日、アメリカの主力戦車「エイブラムス」がウクライナに供与される可能性について「ばかげた計画であり、技術的な側面から失敗するだろう。明らかに過大評価されている。他の戦車のように燃え尽きることになる」と強くけん制しました。 また、戦車「レオパルト2」を供与する方針を固めたと伝えられていたドイツ政府とロシアは対話を行っていないと主張しました。 そして、アメリカの科学雑誌が「人類最後の日」までの残り時間を象徴的に示す「終末時計」で、これまでで最も短い「残り1分30秒」と発表したことについて質問されたペスコフ報道官は「ヨーロッパと世界情勢は極めて緊迫している。アメリカが主導するNATO=北大西洋条約機構が選んだ路線によって、緊張緩和が見通せていない」と欧米側を批判しました。 |
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●ロシアで一部医薬品が不足、備蓄の必要ある=プーチン大統領 1/25
ロシアのプーチン大統領は24日、国内で増産努力にもかかわらず一部医薬品が不足しているとして、需要に応えるため一般用医薬品の備蓄に踏み切る可能性を示唆した。 ウクライナ侵攻に対する西側の対ロシア制裁は処方薬を対象外としている。だが、業界のデータを見ると、戦争やその他規制による輸送や保険、税関面の障害でロシアへの納品が打撃を受けている実態が表れている。 プーチン氏は当局者との会議で、「昨年初めから第3・四半期までに医薬品生産は約22%増えているが、一部に不足が生じている。市販薬の60%は国内製だが、それでも一部に不足が見られ、価格が上昇している」と発言。ロシアは医薬品輸入を規制しておらず、今後も海外製造業者と協力していくと述べた。 その上で、「一定期間内に最も使われ医薬品の供給を確保する必要がある」とし、冬季に備えたガス備蓄と同様の方法でインフルエンザ流行期に向けて医薬品備蓄を行う可能性を示唆した。 |
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●「こんなにウクライナに力いれていいのか」 森元総理が政府に苦言 1/25
ロシアによるウクライナ侵攻を巡る日本政府の対応について、自民党の森元総理大臣は「こんなにウクライナに力を入れていいのか」などと持論を展開しました。 森元総理「こんなにウクライナに力入れちゃっていいのかなと。どっちかが勝つ負けるっていう問題じゃない。ロシアが負けるってこと、まず考えられない。そういう事態になれば、もっと大変なことが起きる」 森元総理はこのように述べたうえで、ロシア側とのパイプの維持を念頭に「その時に日本が大事な役割を失ってはいけない。それが日本の仕事だ」と指摘しました。 森元総理は総理大臣当時、大統領に就任したばかりのプーチン大統領と親交を深め、ロシア外交を進めてきたこともあり、ウクライナ支援を強化する方針の政府の対応に苦言を呈した形です。 |
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●露「米欧戦車を破壊」と強弁も…滲む焦りと苛立ち 1/25
ドイツが主力戦車「レオパルト2」のウクライナ供与を決め、米国も主力戦車「エイブラムス」を供与する見通しとの報道にロシアは反発している。ロシアは「米欧の戦車が供与されれば破壊する」「戦況に影響はない」などと強弁しながらも、実際には主力戦車の供与がウクライナによる将来的な反攻の加速につながることを危惧。ロシアの反発の背後に、焦りといらだちがあるのは確実だ。 米欧の主力戦車の供与に関し、アントノフ露駐米大使は「仮に供与された場合でも露軍に破壊されるのは確実だ」と強調。「戦車の供与を『防衛兵器』だとの名目で正当化することはできず、ロシアへの新たな挑発になる」とも警告した。タス通信が25日伝えた。 露下院国際問題委員会のスルツキー委員長も24日、交流サイト(SNS)を通じ、「前線で露軍が優勢になりつつあることに米欧が懸念を深めている証拠だ」と主張。その上で、米欧が供与してきた携帯型対戦車ミサイル「ジャベリン」や高機動ロケット砲システム「ハイマース」などは露軍の作戦を停止させられず、大半が破壊されたとも主張し、米欧の主力戦車も「同じ運命をたどる」などと述べた。 しかし現実には、ジャベリンやハイマースなど米欧供与の兵器は露軍の前進を遅らせ、各地でのウクライナ軍の反攻を可能にした。 露軍は最前線に旧式戦車を投入するなど戦力の低下が進んでいるとされ、米欧の主力戦車への対抗手段は限られているのが実情だ。米シンクタンク「戦争研究所」は24日、主力戦車の供与は「ウクライナ軍が露軍を敗退させ、領土を解放するのを助ける」と評価した。 ロシアはウクライナ侵略の開始当初から「ウクライナへの軍事支援は対露参戦とみなす可能性がある」と米欧を威嚇し、兵器供与を停止させようとしてきた。それにもかかわらず米欧が兵器供与を拡大し続けていることにもロシアはいらだちを強めている。 ウクライナは米欧の主力戦車を東部や南部の前線に投入し、領土奪還を進めたい構え。ただ、旧ソ連製兵器を主力としてきたウクライナ軍にとって、北大西洋条約機構(NATO)規格の主力戦車が実際に供与された場合、習熟訓練や修理・補給態勢の構築に一定の時間が必要となる。主力戦車が実戦投入される前に戦果を拡大しようと露軍がさらに攻勢を強める可能性も排除されない。 |
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●「中国国営企業がロシアに非殺傷軍事・経済支援」を確認…米が警告 1/25
ロシアのウクライナ侵攻に関連し、中国の国営企業がロシアを支援している状況を米国政府が確認して中国側に警告したと米ブルームバーグ通信が24日(現地時間)、報じた。 ブルームバーグ通信はこの日、事情に精通した複数の消息筋を引用して「バイデン政府が最近、中国の国営企業がロシアに対して意図的に『非殺傷軍事支援および経済的支援』をしたとの証拠を確認し、このような動きの意味を評価している」と伝えた。消息筋はメディアに「中国企業の関与がロシアに対する(米国など西側の)制裁を全面的に回避する手前の水準」としながら「このような行為がロシアに対する戦争物資支援を意味することになるという点を米政府が中国側カウンターパートに警告した」と明らかにした。中国企業が具体的にどのような物資をロシア側に渡していたのか等の詳しい内容は確認されなかった。 中国の国営企業が中国共産党の影響力下にあるという点で、バイデン政府は今回の事態を慎重に検討しているという。「中国がウクライナ侵攻を支援している」という結論がくだされればロシアと中国の両側に対する米国の政策変化に重大な影響を及ぼしかねないためだ。 習近平国家主席は昨年2月ロシアのウクライナ侵攻以降、プーチン大統領とのオン・オフライン会談で直接的にロシアの肩を持つような言動はしたことがない。それでも「これまで以上に中露関係は密着している」というのが米政府の評価だ。戦争を前後して欧州・米国など西側諸国はロシアに対する経済制裁を断行したが、ロシア産石油・天然ガスの輸出物量の相当数は中国とインドに流れて行ったことが確認された。中国とインドのロシア産原油輸入量は昨年3月基準で欧州連合(EU)27カ国を超えた。中国のロシアに対する輸入は昨年基準で50%増加し、輸出は13%増加した。 ブルームバーグ通信は「バイデン政府が今回のことで、中国政府が直接関与するか、少なくとも国営企業の支援を黙認していると判断するなら、米中関係において完全に新しい次元のリスクが発生する」と指摘した。 米中は台湾問題と先端産業サプライチェーン問題で鋭く対立しながらも正面衝突を回避するためにあらゆる力を動員している。昨年11月バイデン大統領と習主席が初めて対面会談したことに続き、新年に入って高官交流を活発に継続している。今月18日ジャネット・イエレン財務長官が劉鶴・国務院副首相と会談したほか、来月5〜6日にはブリンケン国務長官が中国を訪問する予定だ。このような流れの中で米国側が中国政府に中国企業のロシア関与問題を取り上げた可能性がある。 一方、ブルームバーグ通信は今回のことに関連して米国家安全保障会議(NSC)と国家情報局(CIA)が公式論評を拒否したと付け加えた。在ワシントン中国大使館もブルームバーグの質問に答えなかった。 |
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●ウクライナ、より長距離のミサイルを要望 ロシアは過去の失敗から学ぶ 1/25
ウクライナの当局者らはロシアが戦場での失敗から学び、弾薬集積所や兵站(たん)拠点へのミサイル攻撃を難しくする措置を講じているとの見方を示す。ウクライナがロシア国内を射程に収める、より長距離のミサイルを必要としている理由はそこにある。 当局者らはロシアのゲラシモフ参謀総長がウクライナ侵攻の総司令官に任命された人事にも触れ、軍の序列を何度も入れ替えてきたロシア政府による最後の賭けだとの見方を示した。 ウクライナ国防情報総局の幹部バディム・スキビツキー氏は23日、CNNに対し、ロシアが「ロシア連邦内の各地」に軍事物資を分散させ始めたと指摘。 特に、ロシアのロストフ州にある兵站拠点から「あらゆる物資がクリミア半島を通って南部へ運ばれている」との見方を示した。 このため、ロシアの占領下にあるクリミア半島だけでなく、「ロシア連邦内の施設」に対しても攻撃を行う必要が出てきている。 スキビツキー氏によれば、ロシアの兵站施設は前線から80〜120キロ離れた地点に置かれている。つまり、ウクライナがこうした施設を狙うには今より長射程の攻撃システムが必要になる。 長距離火力が必要な理由は他にもある。複数のウクライナ当局者はロシアの増援部隊の装備が整い、移動可能な状態になる前に反攻に出たい考えを示したが、そのためにはより長い射程が必要だ。 「反攻や攻勢作戦を準備するには、多くの施設を破壊する必要がある。前線だけでなく、敵の戦線から100〜150キロ離れた奥深くにある施設を攻撃しなければならない」(スキビツキー氏) 昨年夏に行われたウクライナ南部ヘルソン州の占領地への攻撃では、米国製の高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」がこうした拠点の排除に高い効果を発揮した。だが、ハイマースの射程ではロシア領に届かない。 バイデン米政権はこれまでのところ、ロシア国内に届くシステムの供与に慎重な姿勢を崩していない。 |
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●ウクライナ軍、ソレダル撤退認める ロシア軍「制圧」から10日余り 1/25
ロシアからの侵攻を受けるウクライナの東部軍の報道官は25日、激戦地だった東部ドネツク州のソレダルから撤退したことを認めた。 同国の公共放送が伝えた。ロシア側が13日までに「制圧」を発表したが、ウクライナ側は「戦闘は継続中だ」としていた。 同放送によると、報道官は「軍の人員の命を守るためソレダルを離れ、事前に準備したラインにそって部隊を強化した」と述べた。 同州の交通の要所バフムートに近いソレダルの攻防では、ロシア側の主力となった民間軍事会社「ワグネル」のエフゲニー・プリゴジン氏が11日に「掌握」を表明。ロシア軍も13日に制圧を発表したが、ウクライナのゼレンスキー大統領は「激しい戦闘が続いている」などとしていた。 |
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●「じきにロシアは革命、内戦、破綻」…プーチンが青ざめる「恐るべき調査」 1/26
●衰退が免れないロシア アメリカの安全保障分野を扱う有名シンクタンク「大西洋評議会」(Atlantic Council)は、世界を代表する167人のグローバル戦略家に実施した調査『Global Foresight2023』を1月9日、公開した。 その調査結果で、ウクライナ戦争によって、地球上で最大の核兵器保有国であるロシアに、重大な動揺がもたらされる可能性が指摘されている。ウクライナ戦争によって、世界の安全保障はどう変わるのか。ロシアは、今後どうなっているのかを考えていこう。 ロシアによるウクライナへの侵略戦争は、もう少しで1年を迎えようとしている。ロシアによる攻勢は、侵略から半年で鳴りを潜める結果となり、ウクライナの反転攻勢が続いていた。ロシアは、この戦争を「特別軍事作戦」として、あくまで「通常の戦争」とは違うことを強調しているが、敗走が続き、ロシアにおける兵員動員や産業政策は、すでに「大規模な戦争」と同等のものとなっていることが、米シンクタンク・戦争研究所(ISW)によって指揮されている。 同研究所によれば、ロシアは、このウクライナ戦争における主導権を取り戻し、一連の軍事作戦を「成功」として終わらせるべく、準備をおこなっているのだという。早期に終わらせることができなければ、ロシアの衰退は免れないだろう。現在、ロシアには世界各国から厳しい経済制裁が課されていて、半導体が輸入できないことから、外資系企業が撤退したり、制裁で金融機関の経営環境が厳しくなったりと、多くのロシア人は所得が減少している。 ●民間軍事会社「ワグネル」とは ロシアの戦況打開のためにキーとなることが、2つある。一つは、民間軍事会社「ワグネル」。もう一つは、ウクライナ民間施設、住居への無差別攻撃だ。 ロシアのウクライナ侵攻では東部ドネツク州の北部バフムト一帯の攻防が激しさを増していて、ロシア側は民間軍事会社「ワグネル」の部隊が主力となっている。ウクライナにとってバフムトは重要な戦略拠点ではないとされているものの、敗戦つづきのロシア軍にとって、バフムトでの大善戦は久々の明るいニュースとなっている。ウクライナ民間人や民間インフラへの無差別とも思える攻撃もあわせて、ウクライナ国民の気持ちを萎えさせようということなのだろう。 しかし、ウクライナが(局地的にはあるものの)劣勢とみるや、ヨーロッパ各国がこれまで供給していなかった戦車をウクライナへ供与するようになった。特にイギリスは、英国陸軍の主力戦車「チャレンジャー2」、大型の自走式砲であるAS90を納入している。 他にもポーランドはドイツ製のレオパード戦車14両を送る予定で、1月初め、ドイツと米国はフランスと共にウクライナに装甲戦闘車を送ることで合意した。これらは、ウクライナの戦場での軍事力を大幅に高めると考えられている。さらに、アメリカでは、ウクライナ兵が、パトリオットミサイルの発射訓練をしているところだ。ロシアが企図しているかもしれない大規模攻勢への備えは、進んでいる。 ●ロシアが破綻国家に… 「強力な武器をどうせ送るのだったら戦争当初から送ってあげなよ…」と内心思ってしまわないでもないが、ロシアの立場に立ってみると、ウクライナに対して戦場で優勢に立てば立つだけ、西側諸国がより強力な武器を送ってこられるというのは、厄介な問題だろう。どんなに頑張ったところで、侵略の意思を捨てない限り、戦争の大規模化と長期化が想定される事態になりつつあるためだ。プーチン大統領は激怒し、ロシア国民の失望は大きいものとなるかもしれない。 冒頭の調査に戻ろう。 調査によれば、グローバルストロテジスト(国際戦略家)167人の半数近く(46%)が、2033年までにロシアが破綻国家になるか、崩壊するかのどちらかになると予想している。5分の1以上(21%)が、今後10年以内にロシアが破綻国家になる可能性が最も高いと見ており、これは次に多いアフガニスタンの2倍以上の割合だという。また、回答者の40%が2033年までに革命、内戦、政治的崩壊、あるいはその他の理由でロシアが内部分裂すると予想していることである。 ロシアのウクライナ侵攻は、国際安全保障を強化するための制度の限界を明らかにした。グローバルストロテジスト167人は、台湾をめぐる紛争、ロシア国家の脆弱性、ロシアによる核兵器使用、パンデミックや経済危機の増加など、今後10年間に人類の安全保障にとって様々な主要課題が発生すると予測しているが、世界の安全保障の構造はほとんど変わらないと考えているようだ。 例えば、回答者の82%が、今後10年間、NATOは相互の安全保障に基づく北米と欧州の国々の同盟であり続けると考えている。NATO加盟国の国民である回答者の85%が同盟の現在の形態が維持されると考えており、その他の国の回答者でも71%が同じように考えている。 ●役に立たない国連 この調査から、対ロシアの戦略について、このNATOという集団安全保障体制の枠組みが機能していることが窺い知れる。 プーチン大統領やロシアの有力者が演説で繰り返す「西側=悪魔」論に与するつもりはないが、ロシアはNATOを恐れていて、手出しができないものとなっている。調査の回答者もロシアがNATOやアメリカと直接戦闘を行うリスクは小さいと見ているようだ。 この調査から考えると、やはり日本もロシアや中国を封じ込めることができるような軍事同盟を日米を中心に広げていくことが必要だろう。 ウクライナ戦争では、ロシアや中国が常任理事国として拒否権を持つ国連が何一つ役に立っていない。読売新聞の元旦社説は、「強制力はなくても、国連緊急特別総会では対露非難決議などが圧倒的多数の賛成で採択されていることは、注目に値する。国際世論の高まりが、穀物輸出の封鎖、原子力発電所への攻撃などの最悪事態を部分的ながら回避させ、改善策が講じられてもいる。国際世論は無力ではないのだ」などと主張しているが、このような無能な組織をアテにするほうがおかしいというものだ。 自分の国は自分で守る、という基本原則はありつつも、ロシアや中国が攻めて行きたくなくなるような強固な軍事同盟が必要なのだ。 |
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●ロシア正教とも亀裂か…ますます怪しいプーチン氏の精神状態 1/26
「プーチンの戦争」が始まってから11カ月が過ぎた。ウクライナのゼレンスキー大統領は徹底抗戦の構えを崩しておらず、無謀な侵略に終止符を打てるのはロシアのプーチン大統領にほかならない。だが、その精神状態はいよいよ危ぶまれている。 タフな指導者を売りにしてきたプーチン氏は釣り、乗馬、狩猟などさまざまなシーンでマッチョな肉体を誇示。「強い男」をアピールし、求心力を高めてきた。真偽は怪しいが、野生のアムールトラに襲われたカメラマンを救出するため、素手で野獣を倒したとも喧伝されている。 そうしたプロパガンダの中でも重要なのが、ロシア正教の「神現祭」(主の洗礼祭)だ。キリストが洗礼を受けたとされる日にあわせ、毎年1月中旬に各地で信者らが極寒の海や川で沐浴する伝統行事。敬虔な信者として知られるプーチン氏も氷点下20度を下回る屋外で聖水に漬かり、その姿は毎年テレビで流されていた。それが、ウクライナ侵攻の前年を最後にパッタリ。今年もプーチン氏の沐浴は報じられなかった。ロシア正教との持ちつ持たれつの関係に、ついに亀裂が生じたのか。 「ロシア正教会最高位のキリル総主教は昨年10月、70歳を迎えたプーチン氏を称賛し、健康を祈るよう聖職者に呼びかけた。侵攻を支持する姿勢に表向きの変化はありません。ソビエト時代の無神論によって迫害されたロシア正教は、プーチン体制下で息を吹き返した。その見返りとしてお墨付きを得たプーチン氏は、皇帝のごとく振る舞ってきた。互いに政治的に利用しあってきたわけですが、もともとプーチン氏のやり方に眉をひそめる高位聖職者は少なくなく、侵攻への批判もくすぶっている。体調不安による判断力の低下を疑われるプーチン氏は、心のよりどころでもある宗教にも見放され、平常心を失いつつあるともみられています」(外交関係者) 筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)もこう言う。 「プーチン氏はキーウ攻略を諦めてはいない。地獄行きの運命を悟り、道連れとばかりにトンデモない行動に出る可能性は否定できません」 心身ともにむしばまれ、異様な歴史観に取りつかれた独裁者の脳裏にあるのは、まさか「死なばもろとも」なのか。 |
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●ロシアの「ワグネル」批判報道に禁錮刑も 下院議長が検討指示 1/26
ロシアの民間軍事会社に所属する兵士の信用を失墜させる報道を規制する法律について、ロシア下院議長が検討するよう指示した。 ロシア下院は25日、ボロジン議長が下院の国防委員会などにワグネル兵の信用失墜に対して責任を定める改正刑法の可能性を早急に探るよう指示したことを発表した。 これはプーチン大統領の側近で、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」を創設したプリゴジン氏が24日にボロジン議長に文書で提案したことを受けたもので、成立すれば、信用を失墜させる報道や兵士の犯歴情報に対する批判に対し、5年以下の禁錮刑を科すことになる可能性がある。 プリゴジン氏は「ワグネルの兵士ら国を守るすべての人々は英雄だ。彼らは敬意を持って扱われなければならない」と主張していた。 |
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●アメリカ、ウクライナに主力戦車供与へ 軍事支援は新たな段階に 1/26
バイデン米大統領は25日、ホワイトハウスで演説し、ロシアの侵攻を受けるウクライナに米軍の主力戦車「M1エーブラムス」を供与すると発表した。ドイツも同日に主力戦車の供与を表明しており、これまで慎重だった戦車の供与で米独が足並みをそろえた。ウクライナの領土奪還に向けて米欧の軍事支援は新たな段階に進んだ形だ。 バイデン氏は同日に英独仏伊の首脳と電話協議し、ウクライナへの全面的な支援に向けて緊密に連携することを確認した。演説では「米欧は支援で十分に、徹底的に、完全に結束している」と強調。春に向けてウクライナ軍が反撃の準備を進めているとし「機動力を向上させ、ロシアの侵略を抑止し防衛する永続的な能力が必要だ」と説明した。 供与する予定のエーブラムスは31両で、ウクライナ軍の戦車大隊1個分にあたるという。ウクライナ兵に対し、維持管理や操縦の訓練などをウクライナ国外で実施する。ただ、米軍の余剰在庫から供与する緊急の支援ではなく、米政府が新たに戦車を調達する形をとる。そのため、実際にウクライナ側に引き渡されるのには数カ月以上かかるとみられている。 米政府に先だって、ドイツのショルツ政権も欧州で広く保有されているドイツ製戦車「レオパルト2」の供与を表明。ポーランドなどの保有国による供与も承認した。高い攻撃力を誇る戦車の供与は戦闘を激化させ、反発したロシアと米欧との直接的な衝突につながりかねない。ドイツのみが突出して供与に踏み切ることを懸念したショルツ政権は条件として、米政府によるエーブラムス供与を挙げていたとされる。 バイデン政権もこれまでウクライナ側から再三要請がありながら、供与は控えてきた。特に国防総省は、高性能のエーブラムスは維持管理が難しく、訓練にも相当の時間がかかるとして慎重な姿勢を見せていた。しかし、レオパルト2の供与に二の足を踏むドイツに対して北大西洋条約機構(NATO)内から批判の声もあがっていたことから、バイデン政権は米欧の同盟関係に亀裂が入るのを避けるため方針転換した。 |
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●ドイツ ウクライナに戦車供与を発表 ロシアは強く反発 1/26
ドイツ政府はウクライナに対してドイツ製の戦車「レオパルト2」を供与すると発表するとともに、戦車を保有している国がウクライナへ供与することを認める方針も示しました。ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは強く反発しています。 ドイツ政府は25日、ウクライナに対してドイツ製の戦車「レオパルト2」を供与すると発表しました。 2個大隊を速やかに編成することを目標に、第1段階としてドイツ軍から14両をウクライナに供与する方針で、ピストリウス国防相は25日、最初の戦車を3か月後に届けられるという考えを示しました。 またドイツのメディアは国防省の報道官の話として来月にもウクライナ軍の兵士向けの訓練が始まると伝えています。 さらに発表ではポーランドなどヨーロッパ各国が保有する「レオパルト2」についても、ウクライナに供与することを認める方針をあわせて示しました。 攻撃能力が高いことで知られる「レオパルト2」のウクライナへの供与についてドイツは慎重姿勢から転じた形で、ショルツ首相は議会の演説で「われわれは国際社会と連携し、戦車の供与がドイツにとってリスクにはならないよう行動している」と国民に理解を求めました。 ドイツ政府の発表についてウクライナのイエルマク大統領府長官は25日「最初の一歩が踏み出された」とSNSに投稿して歓迎した上で、各国から多くの戦車が供与されることに期待を示しました。 これに対してウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは強く反発していて、ドイツに駐在するネチャエフ大使は25日、声明を出し「極めて危険な決定は紛争を新たな対立のレベルにまで引き上げるものだ」と主張しました。 ●ロシア専門家「ロシアにとって極めて深刻」 「レオパルト2」をはじめとする欧米からの戦車の供与について、安全保障に詳しいロシアの専門家、ドミトリー・ソロンニコフ氏は25日、NHKのオンライン取材に応じ「ロシアにとって極めて深刻で、かなり真剣に対応する必要がある。ロシア軍にとっては困難な挑戦で、最大限集中して対応すべき課題となる」と述べ、これまで同じ旧ソビエト製の戦車を相手にしてきたロシア軍は厳しい戦いを強いられるという見方を示しました。 その上で戦車の供与が戦況に与える影響については「ウクライナ軍は明らかに、春の終わりから初夏にかけて攻撃に打って出ようとしている。南部の都市メリトポリやクリミアの方面に向かうことが目標だ」として、ウクライナ軍が戦車を活用し、ロシア軍が掌握している南部の都市の奪還などに向け、反転攻勢を強めようとすると分析しました。 また今後のロシア側の対応については「ウクライナへの兵器の供与を止めるため、作戦を変える必要がある。ロシアはこれまでのところウクライナの輸送インフラを破壊できていない」として、欧米からの戦車の供与を妨害するため、ロシア軍がウクライナ国内の鉄道など戦車の輸送ルートへの攻撃を強めていく可能性があると指摘しました。 |
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●日本がウクライナに戦車を送れない理由 1/26
日本は一国平和主義から脱却して、ウクライナに歩兵戦闘車(89式装甲戦闘車)を供与すべきである。 2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、解決の糸口を見いだせぬまま来月で1年となる。 ウクライナ軍のザルジニー総司令官は2022年12月15日に英エコノミスト誌のサイトで公開されたインタビューで、ロシア軍が2023年1月末から3月にかけて新戦力で大規模な攻勢をかけるとの見方を示した。 攻撃は東部ドンバス地域や南部で始まり、首都キーウにまで及ぶ恐れもあるとみている。 ウクライナは反攻作戦を視野に、ロシア軍との地上戦に有効な戦車や装甲車の供与を欧米に要請している。 既に東欧などの旧東側諸国は旧ソ連製の戦車を供与していたが、欧米諸国は、ロシアとの軍事的緊張の高まりを恐れ西側製の装甲車や戦車の供与に慎重だった。 ところが、2023年1月4日、米国は「M2ブラッドレー」歩兵戦闘車を50台、フランスは「AMX10RC」歩兵戦闘車(台数不明)を、同6日にはドイツが「マルダー」歩兵戦闘車を40台、ウクライナに供与すると明らかにした。 さらに、1月11日、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は、ウクライナに対しポーランド保有のドイツ製の主力戦車「レオパルト2」を供与する方針を明らかにした。これにはドイツの承認が必要となる。 また、1月14日、英首相官邸は、数週間以内に英軍の主力戦車「チャレンジャー2」14両をウクライナに供与する方針を発表した。 現時点のウクライナ戦争の焦点は、ドイツがポーランドの「レオパルト2」のウクライナへの供与を許可するかどうか、および米・仏・独が自国の主力戦車をウクライナに直接供与するかどうかである。 ところで、話は変わるが、ロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まった2月末、岸信雄防衛大臣宛に、ウクライナのオレクシー・レズニコフ国防相から、「防御用の兵器、兵站、通信、個人防護品」などの支援要請が届いた。 そして、日本がウクライナに送ったのが、防弾チョッキとヘルメットである。 「ウクライナはこんなひどい目に遭っているのに、なぜ日本は武器を支援しないんだ。普通の国(normalcountry)とはいえない。価値(value)の判断もできない国なのか」と、欧州のある国の外交官は2022年春、日本の外務省幹部を非難した。 外務省幹部は「価値判断という表現は『善悪すらわからない国』という意味に感じた」と振り返る。(出典:日経新聞「「普通の国」と戦後民主主義」2022年10月22日)。 今、湾岸戦争の教訓を想起すべきである。 1990年8月2日、イラクによるクウェートへの軍事侵攻で始まった湾岸戦争は、冷戦後の世界が経験した最初の国際危機であった。 この危機に際し、日本の貢献は130億ドルの資金的貢献のみであった。日本が莫大な資金的貢献をしたにもかかわらず、クウェート政府が米国の主要英字紙に掲載した感謝国30カ国には日本の国名がなかったことは日本人に大きなショックを与えた。 ウクライナ戦争におけるウクライナの勝利は、欧米諸国からの兵器の供与にかかっている。戦後、ウクライナが、軍事支援しなかった日本を感謝国に加えるとは思えない。 筆者は、日本が一刻も早く「一国平和主義」から脱却し、ウクライナに兵器を供与することを願っている。 日本がウクライナを支援する理由の一つは、今回のロシアの力による一方的な現状変更の試みを国際社会が許してしまえば、アジアでも同じような事態が起こりかねないということである。 以下、初めに一国平和主義からの決別について述べ、次にウクライナへの防弾チョッキ供与の顛末について述べ、最後に防衛装備移転三原則の撤廃について述べる。 ●1.一国平和主義からの決別 本項の前段は、元在リビア特命全権大使小河内敏郎氏著『変わらざる合衆国と変われない日本』(桜美林大学北東アジア総合研究所2016年)を参考にしている。 筆者は、日本の一国平和主義の源流は、敗戦後、昭和20年代に7年2カ月にわたり首相の座にあった吉田茂氏の軽武装・経済重視の、いわゆる吉田ドクトリンにあると見ている。 戦後日本が、日本の防衛・安全保障は米国任せとし、通商問題を最優先する経済中心主義国家への変身を決意したのは、当面の方針としては最も現実的な選択だった。 日本は、日米安保を基軸とした経済中心主義のもとで、持ち前の正直さと勤勉さに不断の努力を重ねて、独立から30数年後には経済超大国といわれるまでに日本の国際的地位を押し上げることができた。 こうした通商国家としての成功は、それまで当面の方針だった経済中心主義を際限なく続けさせることとなった。 だが、冷戦後まもなく国際政治の怒涛が日本を襲ってきた。 新たな世界秩序が依然見えてこない情勢の中で湾岸危機が発生し、湾岸戦争へと発展した。 そこで判明したことは、日本には絶対に守らなければならない国の理念も、すべての判断の基準となる原則も、自らの行動に対する信念も日本が果すべき役割に対する使命感もない、精神的バックボーンのない国になってしまっていたということだった。 同盟国が血を流して戦っているとき、日本には対処すべき指針も備えもなかった。結果、ただ右往左往する様だけが目立ってしまった。 日本が必要とする石油の約90%を依存していた中東地域の死活的重要性を考えれば、日本は何をもたもたしているのかと罵声が浴びせられるのも仕方なかった。 このとき戦後初めて、日本は国際安全保障の軍事面においても経済力に見合った責任を果すことを真剣に求められていること、さらには同盟国が血を流して戦っている事態において、最も重要なことは、コストの分担ではなく危険の分担だということを思い知らされた。 このときのショックは日本国民の目を半分開かせる効果があった。 ちなみに、多国籍軍への国際貢献として日本が行った130億ドルの支援は、クウェート政府の注意と感謝を引き出すことすらできなかった。このときすでに、日本の経済中心主義の立回りは限界に達していた。 こうなるまで、戦後、日本の政治は一体何をしてきたのだろうか。 日本が最優先したことは、一つは何をおいても戦争や武力衝突に捲き込まれることへの危険を回避することであった。 もう一つは防衛・安全保障問題に関する限り、日本をとりまく危険も、世界と地域の戦略環境の変化についても、正面からの議論は極力避け、ひたすら憲法9条に抵触することにならないか、ただこの一点を議論し政治的紛糾を避けることだけだった。 あとは米国との関係をうまくやってさえすればよかったからである(以上が前段である)。 第2次世界大戦後、米国が世界の警察官である間は、それで何ら問題がなかった。 米国の一極時代が終わったのは2008年のリーマンショックを契機とした世界的な金融危機であろう。 そこにBRICs(Brazil、Russia、India、Chinaの頭字語)の台頭が重なり、米国の「相対的衰退」が指摘されるようになった。 中国が、日本を抜いて世界第2位の経済大国となったのは2010年である。そして、バラク・オバマ大統領が戦後の米大統領として初めて「アメリカは世界の警察官ではない」と表明したのは2013年9月である。 日本では、2012年12月26日、第2次安倍晋三内閣が発足した。2013年1月、安倍首相は所信表明演説で「地球儀を俯瞰する外交」という理念を外交上の基本方針とすることを明言した。 そして、我が国が「一国平和主義」への決別を宣言したのは2013年12月17日に策定された「国家安全保障戦略(2013年)」である。 同戦略で、「我が国は、国際政治経済の主要プレーヤーとして、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していく」と宣言した。 2014年7月1日、政府は集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を閣議決定した。 2016年8月に、安倍首相は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を提唱した。この戦略に基づく枠組みであるクアッド(QUAD=日米豪印戦略対話)も発足した。 2022年12月16日、政府は、反撃能力を明記した「国家安全保障戦略2022年」を閣議決定した。 また、同閣議で2027年度には防衛費をGDP(国内総生産)比2%、11兆円に増額するとし、この5年間で総額約43兆円とすることを決定した。 防衛費のGDP比2%増額は、米を含むNATO加盟国との連帯の表明である。 以上のように我が国は、「一国平和主義」から決別したはずであった。 ところが、ウクライナへの支援を巡り、防衛装備移転三原則が円滑な支援の妨げとなっていることが明らかとなった。次項で、その右往左往振りを述べる。 ●2.ウクライナへの防弾チョッキ供与の顛末 本稿は、NHK政治マガジン「防弾チョッキ提供ウクライナに武器輸出?」(2022年3月23日)を参考にしている。 2022年2月末、岸信夫防衛大臣に1通のレターが届いた。差出人は、ウクライナ国防相のレズニコフ氏である。内容は次のようなものであった。 「ウクライナ国民とウクライナ軍はロシアからの全面侵略を撃退している。親愛なる閣下に対し、この機会に、ウクライナへの最大限の実用的な支援、すなわち防御用の兵器、兵站、通信、個人防護品の物品供与をご検討いただけないか、お願いする」 「ウクライナ軍は、特に対戦車兵器、対空ミサイルシステム、弾薬、電子戦システム、レーダー、通信情報システム、無人航空機、防弾チョッキ、ヘルメットが深刻に不足している。私は日本とウクライナの連帯が強固であることを信じている」 岸防衛大臣は当初、日本ができる支援の枠組みを超えるものばかりだと感じたという。 岸防衛大臣が、「何かできることがあるはずだ。できることを探せ」と指示した背景には、ウクライナへの前例のない軍事支援に乗り出す世界各国の姿があった。 3月18日現在、NATOの加盟国を中心に23の国とEUが、ウクライナに軍事支援を行っている。 軍事支援の中心的な兵器が、対戦車ミサイル「ジャベリン」や、携帯型の地対空ミサイル「スティンガー」だ。 これまでの防衛政策を大きく転換した国々もある。 ドイツは、ロシアによる侵攻開始のおよそ1か月前の1月26日、ヘルメット5000個を送ることを表明。 しかし、ウクライナやドイツ国内の失望や不満を招いたことなどを受けて、その後、紛争地に武器を送らないという原則を転換し、2月26日には対戦車ミサイルやスティンガーなどの供与を発表した。 NATO非加盟で中立国でもあるスウェーデンやフィンランドも、対戦車兵器の供与を相次いで発表した。 アジアでは、韓国が軍服や装具類を、台湾が医薬品や医療器材の支援を表明した。 岸防衛大臣の命を受けて始まった政府内の検討で、いくつかのハードルをクリアする必要性が浮上した。 その一つが「自衛隊法」だった。 自衛隊法の116条の3(開発途上地域の政府に対する不用装備品等の譲渡に係る財政法の特例)は、開発途上にある国などに、自衛隊の装備品を譲与したり、廉価で譲り渡したりできるとする条文だ。 しかし、条文には、譲渡できる装備品等から武器(弾薬を含む)を除くとなっている。武器・弾薬を除いて、何を送ることができるのか。 候補として絞られたのは次の物資だった。 〈第1優先〉防弾チョッキ、ヘルメット、テント、発電機、防寒服、毛布、軍用手袋、カメラ、ブーツ。 〈第2優先〉医療器材、白衣、医療用手袋。 しかし、簡単にはいかない。問題になったのは、「防衛装備移転三原則」だった。 「防衛装備移転三原則」では移転を禁止する場合が明示されている。 その第1原則では、赤字表記したように「紛争当事国」への移転は禁止されている。 ロシアの軍事侵攻に対して武力で立ち向かうウクライナは、「紛争当事国」に見える。 しかし、外務省によると、防衛装備移転三原則で定義する「紛争当事国」は「国連安保理の措置を受けている国」である。そこで、ウクライナは「紛争当事国」ではないとして、防衛装備品を送れる可能性は残された。 しかし、「運用指針」に引っかかることが分かった。「運用指針」には、移転を認める得る案件が明示されている。 ロシアによる軍事侵攻が続いているウクライナは、どのケースにも当てはまらなかった。運用指針“違反”となるため防弾チョッキとヘルメットは送れない。 そこで、浮上したのが、運用指針の変更だった。 政府は2022年3月8日、ロシアの侵攻が続くウクライナに自衛隊の防弾チョッキを無償提供するため、条件付きで武器輸出を認める「防衛装備移転三原則」の運用指針を改正し、上表の赤字表記の(オ)項を追加した。 政府は、ウクライナを「国際法違反の侵略を受けている」国と明記し、その上で、今回のやむを得ないケースに限定するという形をとり、運用指針に新たな1項目を加える案をひねり出し、防衛装備品の防弾チョッキを送れるようにしたのだった。 ちなみに、ヘルメットは、防衛装備品の「軍用ヘルメット」に該当しないと政府は判断した。 今回、ウクライナに送った「88式鉄帽」というタイプのヘルメットは、民間で類似の物が販売されていることなどが、その理由とされた。 ●3.防衛装備移転三原則の撤廃 元来「武器輸出三原則」は、輸出を行うことを前提として、その際の注意事項を定めたものであった。 しかし、三木武夫内閣時に、これが拡大解釈される形で、全面的に禁止されたことにより日本は自らの首を絞めることになってしまったのである。 武器輸出三原則等の時代は、官房長官談話を発表することで例外措置を重ねてきたが、それが限界となった。 そこで、移転できる範囲を厳密に決めて、『これ以降、例外措置を設けない』ということで防衛装備移転三原則と運用指針ができた。 それなのに、今回いとも簡単に運用指針が改正されてしまった。このことは、武器輸出を規制すること自体の限界を示している。 また、防衛装備移転三原則は輸出促進を狙ったものだったが、現実には完成品の輸出はフィリピンへの防空レーダー1件しかない。 将来の共同開発された次期戦闘機の輸出を視野に入れた場合、遅からず防衛装備移転三原則を撤廃しなければならないであろう。 以下、初めに武器輸出規制の経緯を述べ、次に防衛装備移転三原則の撤廃について述べる。 ●(1)武器輸出三原則等 日本は、1967年に佐藤栄作内閣で、次の3つの場合には武器輸出を認めないという「武器輸出三原則」を制定した 1共産圏諸国向けの場合 2国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合 3国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合 これらの原則は、本来、上記3つの原則に合致した場合に武器を輸出することを禁止することを示したものであって、決して武器の輸出そのものを禁止したのではなかった。 ところが、1976年、三木内閣で次の原則を打ち出し、実質的に全地域向けに武器輸出は禁止ということになった。 1三原則対象地域については「武器」輸出を認めない 2三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする 3武器製造関連設備の輸出については「武器」準じて取り扱う この佐藤内閣、三木内閣の原則を総称して、「武器輸出三原則等」と言われる。 ●(2)武器輸出三原則等の緩和 1983年、米国政府から日米間の防衛分野における技術の相互交流の要請を受けた中曽根康弘内閣は、米国の日米防衛技術相互交流の要請に応じ、対米武器技術供与に限って、初めて武器輸出三原則等の例外とすることを決定した。 この「対米武器技術供与」を皮切りに、2010年までに18件が内閣官房長官談話や関係省庁了解により「例外化措置」として積み上げられ、徐々に三原則が緩和されてきた。 また、2011年12月27日、民主党政権の野田佳彦内閣は、武器輸出三原則等を個別に例外化してきたこれまでの措置を改めるため、「防衛装備品等の海外移転に関する基準」(いわゆる「包括的例外化措置」)を内閣官房長官談話として表明した。 この基準は、防衛装備品等の海外への移転について、これまで個別に例外化してきた手法を改め、 1平和貢献・国際協力に伴う案件 2我が国の安全保障に資する防衛装備品等の国際共同開発・生産に関する案件 これらについて包括的に例外化措置を講じるものである。 ただし、我が国の事前同意なく、目的外使用や第三国移転がないことが担保されるなどの厳格な管理が行われることが前提となった。 ●(3)防衛装備移転三原則と運用指針 安倍内閣は、2014年4月1日、国家安全保障会議および閣議において、従来の「武器輸出三原則等」に代わる防衛装備の海外移転に関する新原則として「防衛装備移転三原則」を決定した。 また同日、国家安全保障会議において「防衛装備移転三原則の運用指針」を決定した。 「防衛装備移転三原則」と「防衛装備移転三原則の運用指針」の概要は上記のとおりである。 ちなみに、「防衛装備」とは、武器および武器技術をいう。 「武器」とは、輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号)別表第1の1の項に掲げるもののうち、軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるものをいい、「武器技術」とは、武器の設計、製造又は使用に係る技術をいう。 ●(4)防衛装備移転三原則の撤廃 佐藤内閣の「武器輸出三原則」は、ココム・リストの順守など国際社会との連携を表明したものである。 三木内閣の「三原則」は、一国平和主義そのものである。 衆議院予算委員会(1976年2月27)において当時の三木首相は次のように述べている。 「武器の輸出については、平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため、政府としては、従来から慎重に対処しており、今後とも、次の方針により処理するものとし、その輸出を促進することはしない」 では、憲法改正、自衛軍の創設、自主防衛などを唱えていた中曽根内閣と安倍内閣は、なぜ、「武器輸出三原則」等を撤廃しなかったのであろうか。 内的要因と外的要因が考えられる。 内的要因には、防衛産業は「死の商人」のレッテルを張られることを嫌った。そのため、政府も防衛産業も輸出に積極的でなかったことが挙げられる。 政府が輸出推進を言い出したのは最近である。その背景には防衛産業の衰退がある。 外的要因には、米国の意向があったのではないかと筆者は見ている。 筆者の憶測であるが、米国は「FS-X」の国産を認めなかった。それは日本の防衛産業が力をつけることを警戒したからである。 米国が日本を信頼できる同盟国と見るようになったのは2014年に集団的自衛権の行使を容認した頃ではないかと筆者は見ている。 今、米国は、日本が「防衛装備移転三原則」を撤廃し、防衛産業を強化することを支持するであろう。 さて、話は変わるが、日本国憲法は日本の武器輸出を禁止していない。 佐藤首相は、三原則提議した同じ委員会で「武器輸出を目的には製造しないが、輸出貿易管理令の運用上差し支えない範囲においては輸出することができる」と答弁している(衆議院予算委員会1967年4月26日議事録)。 今、日本には、武器輸出で他国の武力紛争に加担したくないという国民もいるだろう。逆に、困っている国を積極的に支援したいという国民もいるだろう。 そこで、日本国民に、日本がウクライナに武器供与などの支援をすることに賛成か反対かを問えば、多くの国民は賛成するであろう。 一方、日本がロシアに武器供与などの支援をすることに賛成か反対かを問えば、多くの国民は反対するであろう。 このように、ウクライナへの武器輸出は良くて、ロシアへの武器輸出はダメだという価値判断が必要である。それは国家安全保障会議で審議すればよい。 筆者の結論は、現行の防衛装備移転三原則を撤廃し、武器輸出については、ケースバイケースで、国家安全保障会議において価値判断すればよいと考える。 ●おわりに 岸田首相は、今月9日から15日の間、G7の議長国として欧米5か国を歴訪した。欧米諸国の現時点の最大の関心は、G7サミットの成功よりもウクライナへの戦車供与の問題であろう。 この件について日本は蚊帳の外である。 2022年2月24日、ロシアがウクライナ侵攻を開始した3日後、岸田首相は次のようにロシアを批判した。 「力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為である。明白な国際法違反であり、断じて許すことはできない。今こそ国際秩序の根幹を守り抜くため、(国際社会は)結束した行動しなければならない」 国際社会が結束しなければならない今、日本がなすべきことは何か。 「防衛装備移転三原則」を撤廃して、欧米のように戦車とは言わないが、欧米諸国より一歩下がり、歩兵戦闘車(89式装甲戦闘車)をウクライナに供与してもよいのでないか。 政府は、日本には平和憲法があるので兵器は供与できませんというのであろうか。 そして、政府は欧米諸国からの「(日本は)普通の国とはいえない。価値の判断もできない国なのか」という非難を甘んじて受けるつもりでいるのであろうか。 |
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●「モスクワ・ヘルシンキ・グループ」に解散命令 ロシア最古の人権団体 1/26
東西冷戦期に米ソの緊張緩和などに尽力してきたロシア最古の人権団体「モスクワ・ヘルシンキ・グループ」が25日、首都モスクワの裁判所から解散命令を受けた。プーチン政権下では人権団体の活動停止や解散が相次いでいる。 同団体は解散命令の取り消しを求めて上訴する構えで「人権保護活動への攻撃は、ロシアにとどまらず世界に対する深刻な一撃だ」と憂慮を示した。当局は昨年12月、同団体が許可されたモスクワ以外で活動したとして、裁判所に解散を申し立てていた。 1975年にフィンランドで米欧ソの首脳らが「国家主権の尊重」「紛争の平和的解決」「人権と自由の尊重」を掲げる「ヘルシンキ宣言」を採択したのを受け、同団体は翌76年、物理学者オルロフ氏やサハロフ氏らによって設立された。 ロシアでは2021年末、ソ連時代の粛清の歴史を発掘してきた人権団体メモリアルが解散命令を受けたが、22年にノーベル平和賞を受賞している。モスクワでリベラル派の活動拠点となっていた「サハロフセンター」も今月24日、当局から退去を求められたと明らかにした。 |
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●ロシア軍が空爆、11人死亡 戦車提供巡りけん制 ウクライナ 1/26
ウクライナの首都キーウ(キエフ)など各地に26日朝(日本時間同日午後)、ロシア軍の空爆があった。 全土で空襲警報が発令され、非常事態庁によれば、11人が死亡。飛来したミサイルは50発以上といい、イェルマーク大統領府長官は通信アプリ「テレグラム」で「ロシア軍のミサイルを撃墜した」と明らかにした。 米独両政府は25日、主力戦車のウクライナへの提供を発表したばかり。ロシアはさらなる反転攻勢を狙うゼレンスキー政権をけん制したとみられる。 ロシア国防省は26日、ウクライナ各地で米国が供与した榴弾(りゅうだん)砲などを破壊したと一方的に主張。しかし、ウクライナ側はエネルギー施設などが狙われたと説明し、ザルジニー軍総司令官はフェイスブックで、飛来したミサイル55発中47発を迎撃したと強調した。 フランスのコロナ外相が訪問した南部オデッサにも攻撃があった。オデッサの歴史地区は25日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録が決まっており、ウクライナのクレバ外相は「これがプーチン大統領のユネスコへの対応だ」とツイッターで非難した。 |
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●ロシア検察庁 独立系メディア「メドゥーザ」の国内での活動を禁止 1/26
ロシアの検察庁は独立系メディア「メドゥーザ」のロシア国内での活動を禁止する措置を講じました。プーチン政権によるメディア統制が一段と強まっています。 検察庁は26日、メドゥーザの活動が「憲法秩序の基盤とロシア連邦の安全に脅威を与える」として「望ましくない組織」に指定しました。 2021年春から指定を受けている「外国エージェント」より、さらに厳しい措置となります。 メドゥーザはロシア国内での活動を完全に停止しなければならず、違反を繰り返すと最大4年の懲役刑となります。 また、他のメディアや読者がメドゥーザの記事をロシア国内で引用したり、拡散することも罪に問われることになります。 活動を支える寄付も最大5年の罪に問われる可能性があります。 メドゥーザは「望ましくない組織」の指定を受け、SNSで「ロシア当局は独立系メディアを破壊しようとしているが、何もできない。メドゥーザも閉鎖しない」と報道を続けていく姿勢を強調しました。 |
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●ロシア戦争犯罪のキーマン 亡命求め保護も 一転逮捕 1/26
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」。刑期中の犯罪者をスカウトし、ウクライナで戦闘を行わせているとされている。そのワグネルで、指揮官を務めていた人物が脱走。ノルウェーに亡命を求めたとのニュースが、先週、世界を駆けめぐった。 元指揮官は、ワグネルから脱走した当時の様子について...。元ワグネル指揮官・メドベージェフ氏「フェンスを乗り越えて、森へと逃げ込みました。背後で犬がほえ、ライトを持った人たちが、わたしを追いかけてきました。発砲の音も聞こえました」 ノルウェーでは、当局が提供する場所に滞在していたという元指揮官。ところが、海外のメディアが「警察に逮捕された」と報じた。何があったのだろうか。元指揮官は、ワグネルの創設者で、プーチン大統領の側近であるプリゴジン氏が、数千人の殺害に関与したことを証言する準備があるとしている。海外のメディアによると、元指揮官の弁護士は、「警察が『非常に危険な状況にある』と判断した」とコメント。逮捕されたことで、警備がより厳重になるとしていて、立場は、これまでと変わらないとしている。一方、そのプリゴジン氏は、「彼はとても危険な人物なので、気をつけてほしい」と話している。 真実は、どこにあるのだろうか。 |
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●ドイツは戦車提供を決断「日本はウクライナの核施設からロシアを撤退させて」 1/26
ウクライナの政策専門家やNGO(非政府組織)代表でつくる女性だけの政策提言グループ「ウクライナの勝利のための国際センター(ICUV)」のハンナ・ホプコ元最高議会議員が24日、筆者のZOOMインタビューに応じ、今年、先進7カ国首脳会議(G7サミット)議長を務める岸田文雄首相に「ウクライナの核施設からロシアを撤退させて」と訴えた。 ●「東京を訪れ、核の安全について協議してきた」 キーウのウクライナ市民活動ネットワークに参加していたホプコ氏は、親露派のビクトル・ヤヌコビッチ大統領を追放した2014年のユーロ・マイダン革命後の最高議会選挙で当選し、外交委員会の委員長を務めた。ホプコ氏はICUVなどでつくる代表団の一員として来日し、外務省や防衛省、首相官邸、国際協力機構(JICA)、企業関係者にさらなる支援を要請した。 「東京を訪れ、世界の核の安全について協議してきたばかりです。次のG7サミットは広島で開催されます。先の大戦では広島の市民に原子爆弾が使用されました。いまロシアは原子力を使って世界を恫喝しています。それを阻止しなければなりません。ロシアを止める必要があります」とホプコ氏は話し始めた。 5月にお膝元の広島市でG7サミットを開く岸田文雄首相は「核兵器による威嚇、その使用を断固として拒否」する姿勢を鮮明にしている。 ホプコ氏は「日本はロシアに対して、ウクライナの核施設でのすべての行動を直ちに停止するよう求めた国際原子力機関(IAEA)の決議を履行して、ザポリージャ原発から撤退するよう要求することができます」と強調する。 ●「ロシアのウクライナに対する戦争に膠着状態はない」 「日本にはロシアが戦術核兵器の使用をちらつかせて世界をゆすることを阻止する道義的権威があります。日本はG7、20カ国・地域(G20)に働きかけてロシアに圧力をかけ、厳しい制裁を科す一方で、ウクライナにもっと武器を提供するよう求めることができます」 ホプコ氏は日本が今後2年間、国連安全保障理事会非常任理事国を務めることにも注目する。 「国連安保理における日本のプレゼンスを利用して核の安全に関する解決策を採択し、ロシアや中国、その他の核保有国に対して、核の威嚇を諦めるよう要求することも重要です」(ホプコ氏) しかし米欧首脳はウラジーミル・プーチン露大統領を追い詰め過ぎたら核兵器を使いかねないという核エスカレーションのシナリオに取り憑かれている。 「ロシアのウクライナに対する戦争に膠着状態というものはありません。激しい戦闘が東部ドネツク、ルハンスク両州の前線に沿って続いています。ロシアの占領軍は町や村を物理的に破壊しています。彼らがウクライナの村落でしていることは悪夢以外の何物ではありません」(ホプコ氏) ウクライナ軍発表ではロシア軍の死者は12万2170人。英大衆紙は米情報機関の話としてロシア軍の犠牲者は18万8000人と報じたが、真相は藪の中だ。米マサチューセッツ工科大学(MIT)のバリー・ポーゼン教授は米外交誌フォーリン・アフェアーズで「米国の推計によれば当時も今もロシアとウクライナの犠牲者の比率は1対1だ」と指摘している。 ●昨年、ロシア軍に攻撃された医療機関は747件 ホプコ氏によると、ロシアは意図的にウクライナの都市やコミュニティーで産科産院、子供病院を攻撃している。病院や軍事病院を破壊し、医師が負傷兵を治療できないようにしている。 「マリウポリの小児科・産科病院への爆撃で多くの犠牲が出たのを覚えておられるでしょう。これは人道に対する戦争です。ロシアはテロ国家です」と憤る。 世界保健機関(WHO)の監視システムは昨年2〜12月にロシア軍の攻撃を受けたウクライナの医療機関は747件にのぼると報告している。 「ロシア軍は組織的に国際人道法に違反し、現実に人道的大惨事を引き起こしています。医療関係者や医療施設にも攻撃を加えています」とホプコ氏は糾弾する。 「ロシア軍はウクライナ国民へのテロを続けています。私は1カ月前にキーウにいましたが、常に大規模なロケット攻撃が行われていました。ロケットとミサイル攻撃、カミカゼ・ドローン(自爆型無人航空機)を組み合わせて重要なエネルギーインフラを破壊し、ウクライナ国民を凍えさせようとしています」 「ウクライナ軍がさらに多くの武器、戦車、戦闘機を求めているのは東部戦線で戦うためだけでなく、ロシア軍の新たな攻勢に備えるためです。ロシアはウクライナでより多くの人を殺すために動員をかけています。100万人が追加動員されると予想されています。南部や東部だけでなく、北部のベラルーシから再びロシア軍が攻めてくる恐れもあります」 ●「独政府がウクライナにレオパルト2を送ることを決定」 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は春から初夏にかけて予想されるロシア軍の攻勢に備えるため、ドイツ製の主力戦車レオパルト2と米国製の主力戦車M1エイブラムスの提供を要求している。複数の独メディアは24日「ドイツ政府が同盟国(ポーランドとフィンランドか)とともにウクライナにレオパルト2を送ることを決定した」と速報した。 ドイツがレオパルト2の提供をためらってきたのは、ロシアの勝利は避けたいものの、ウクライナが勝利すれば追い詰められたプーチン氏が核兵器を使うかもしれないという恐怖心が根底にある。北大西洋条約機構(NATO)加盟国の中で突出してウクライナを支援するのは回避したいという政治的な配慮も働く。 結局、ドイツ政府は14両のレオパルト2を送ると表明した。レオパルト2を保有するポーランド、フィンランドのほか、スペイン、ノルウェーも提供する可能性がある。米国は30両以上のM1を提供するとみられている。 「ドイツは集団で決定するのを待っていました。米国がM1を提供することが必要だとの議論もありました。ドイツはウクライナにレオパルト2を提供すれば、ロシアが戦争をエスカレートさせることを恐れていたのでしょう。しかし現実には戦車や戦闘機が不足しているためウクライナは兵士を失い、ロシアは新たな攻撃を準備しているのです」 「韓国の戦車でも英国の戦車でも構いません。ロシア軍の新たな攻撃から国民の命を守るには戦車と戦闘機が必要です。ドイツはロシアの石油やガスに依存してきましたが、現在はそれを止めています。戦車がなければウクライナが交渉に応じると期待している人がいるのかもしれませんが、わが国民の96%がこの戦争に勝っていると信じているのです」 ●「私たちはロシアを打ち負かしたい」 ホプコ氏は「日本がエネルギーシステムを提供してくれたことや約2000人のウクライナ避難民を受け入れてくれたことに感謝します。ウクライナの領土保全と主権を支持し、財政支援もしてくれました。ロシアに制裁も科しました。私たちはロスアトムを含むロシアの原子力産業を制裁し、原子力技術分野でのロシアとの協力を止めるよう求めています」と語る。 日本は先の大戦や2011年の東日本大震災のあと見事な復興を遂げた。ロシア軍のミサイル、ロケット攻撃を受けたウクライナでは多くの瓦礫が発生したため、日本から洗練された瓦礫の処理方法を取り入れている。ホプコ氏はG7議長を務める岸田首相にウクライナへの財政・人道支援、武器供与、対ロシア制裁の強化を世界全体に働きかけるよう求める。 ホプコ氏は「私たちはロシアを打ち負かしたい」と力を込めた。しかし、その道のりは険しい。ロシア軍は東部ハルキウ州と南部ヘルソン州から戦略的に撤退した。短くなった接触線に沿って防御陣地を掘り、コンクリート製障害物や掩蔽壕(えんたいごう)を築いている。地雷も敷設しているだろう。ウクライナ軍が防御陣地を突破するのは並大抵ではない。 ウクライナ戦争を終わらせる方法について、ホプコ氏は「ロシアの敗北によってしかこの戦争を終わらせることはできません。ウクライナ領土からロシア軍を無条件に撤退させ、あらゆる損害に対する賠償を含む国際的に誤った行為の全ての法的結果を負担しなければならないという国連総会決議を履行するよう岸田首相にはG7で指導力を発揮してほしい」と訴える。 「より多くの武器をより早く受け取ることができれば、ウクライナ軍はより良い装備で反攻作戦を継続し、さらに領土を解放することができるようになります。西側諸国がその責任を理解し、より多くの武器を提供してくれることを期待しています。ロシアにもっと厳しい制裁を与え続けることが重要です」 G7議長としての岸田首相の責任は重大だ。 |
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●ウクライナへの戦車供与、米欧の直接関与示す=ロシア大統領府 1/26
ロシア大統領府のぺスコフ報道官は26日、米独がウクライナへの戦車の供与を決定したことについて、米欧が紛争への直接的な関与を強めていることを示すと述べた。 ぺスコフ氏は記者団に、戦車を含むさまざまな武器をウクライナに送ることは紛争への関与を強めることを意味しないとの発言が米国や欧州諸国から聞かれると指摘した。 「われわれはこれを完全に否定する」とし、こうした行為は紛争への直接的な関与であり、関与を強めるものだと非難した。 インターファクスによると、プーチン大統領の最側近の1人であるパトルシェフ安全保障会議書記は、米国と北大西洋条約機構(NATO)が紛争に参加し、これを長引かせるつもりであることはこれまでの経緯で明らかと主張した。 「ウクライナ戦争が終わってもアングロサクソン世界はロシアと同盟国に対する代理戦争を止めることはない」と述べた。 |
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●米独 ウクライナに戦車供与表明 ロシアでは批判的論調広がる 1/26
アメリカやドイツが相次いで主力戦車をウクライナに供与すると表明しました。これに対してロシアでは批判的な論調が広がっています。 ロシアが軍事侵攻を続けるウクライナに対してドイツ政府は25日、戦車「レオパルト2」を供与すると発表し、この戦車を保有する国々からウクライナへの供与を認める方針も示しました。 また、アメリカのバイデン大統領も25日、主力戦車「エイブラムス」を供与すると発表しました。 これについて、ロシアでは各メディアが大きく報じていて、26日付けの政府系「ロシア新聞」は議会上院のコサチョフ副議長の寄稿を掲載しました。 この中でコサチョフ副議長は、ドイツがアメリカの圧力に屈して戦後歩んできた平和路線を放棄する過ちを犯したと批判しました。 コサチョフ氏は「ショルツ首相は面目を保とうとしたのかもしれないが、ドイツの歴史的な功績だけでなくヨーロッパの文明的で平和な未来まで失われかねない」と主張しました。 また、有力紙の「ベドモスチ」は、アメリカとドイツはNATO=北大西洋条約機構の分裂を招かぬよう方針転換を余儀なくされたという見方を伝えました。 さらに「戦況を好転させることにはつながらない」とする専門家の主張も伝えています。 アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「ロシア側が戦車供与を脅威と受け止めていることの表れとみられる」と分析しています。 ●戦車供与 各国の動き ウクライナに対しては、これまでポーランドやチェコがソビエト時代の戦車を供与していました。 ウクライナ側が攻撃力の高い戦車の供与を求める中、今月11日、ポーランドのドゥダ大統領はウクライナを訪問した際、自国が保有するドイツ製の戦車「レオパルト2」を供与する意向を表明しました。 ドイツ政府は25日、戦車を保有する国からの供与を認める方針を示しました。 こうした状況の中、フィンランドとノルウェーが自国が保有する「レオパルト2」の供与を表明したほか、各国メディアの報道によりますと、スペインやオランダ、ポルトガル、それにカナダも供与を検討しているということです。 このほか、イギリスのスナク首相は今月14日、陸軍の主力戦車「チャレンジャー2」の供与を表明しました。 フランスも今月供与を表明した大型の砲を備えた装甲車に加え、フランス製戦車「ルクレール」を供与する可能性を排除しないとしています。 ●ロシア “欧米各国は紛争へ直接的関与” アメリカやドイツがウクライナへの戦車の供与を発表したことについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は26日、記者団に「欧米各国は、兵器の供与が紛争への関与を意味するものではないと繰り返し主張するが、全く同意できない。すべてが紛争への直接的な関与とみなされ、われわれは、これが拡大していると見ている」と述べ、欧米をけん制しました。 また、ロシアの国営通信社によりますと、プーチン大統領の側近のパトルシェフ安全保障会議書記は26日、会合で「アメリカなどNATOが紛争を長引かせようとし続け、その当事者になったことを示している」と主張したということです。 欧米によるウクライナへの軍事支援の強化をめぐっては、ロシアのラブロフ外相も23日、「ウクライナで起きていることはハイブリッド戦争ではなく、もはや本物の戦争となっている」と述べています。 |
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●バイデン氏、米欧関係の亀裂懸念か 戦車供与へ方針転換 1/26
米国のバイデン大統領は25日、ホワイトハウスで演説し、ロシアの侵攻を受けるウクライナに米軍の主力戦車「M1エーブラムス」を供与すると発表した。ドイツも25日にドイツ製戦車「レオパルト2」の供与を表明しており、これまで慎重だった戦車の供与で米独が足並みをそろえた。ウクライナの領土奪還に向けて米欧の軍事支援は新たな段階に進んだ形だ。 バイデン氏は25日に英独仏伊の首脳と電話協議し、ウクライナへの全面的な支援に向けて緊密に連携することを確認した。演説では「米欧は支援で十分に、徹底的に、完全に結束している」と強調。春に向けてウクライナ軍が反撃の準備を進めているとし「機動力を向上させ、ロシアの侵略を抑止し防衛する永続的な能力が必要だ」と説明した。 供与する予定のエーブラムスは31両で、ウクライナ軍の戦車大隊1個分に当たるという。ウクライナ兵に対し、維持管理や操縦の訓練などをウクライナ国外で実施する。ただ、米軍の余剰在庫から供与する緊急の支援ではなく、米政府が新たに戦車を調達する形をとる。そのため、実際にウクライナ側に引き渡されるまでには数カ月以上かかるとみられている。 米政府に先立って、ショルツ独政権も欧州で広く保有されているレオパルト2の供与を発表。ポーランドなどの保有国による供与も承認した。高い攻撃力を誇る戦車の供与は戦闘を激化させ、反発したロシアと米欧との直接的な衝突につながりかねない。ドイツのみが突出して供与に踏み切ることを懸念したショルツ政権は条件として、米政府によるエーブラムス供与を挙げていたとされる。 バイデン政権もこれまでウクライナ側から再三要請がありながら、供与は控えてきた。特に国防総省は、高性能のエーブラムスは維持管理が難しく、訓練にも相当の時間がかかるとして慎重な姿勢を見せていた。しかし、レオパルト2の供与に二の足を踏むドイツに対して北大西洋条約機構(NATO)内から批判の声も上がっていたことから、バイデン政権は米欧の同盟関係に亀裂が入るのを避けるため方針転換した。 一方、ショルツ政権の供与発表を受け、欧州各国は25日、レオパルト2をウクライナに供与する意向を相次いで表明した。 ロイター通信によると、スペインのロブレス国防相は地元メディアに対し、同国が保有するレオパルト2を供与することを表明。ウクライナ軍に操縦方法を訓練するほか、装備の維持についても協力する方針を明らかにした。オランダのルッテ首相も、レオパルト2の供与を準備すると述べた。ドイツから借りている戦車を購入した上で供与することを検討するという。ノルウェーのグラム国防相も供与に協力するとした。 欧州では十数カ国がレオパルト2を計2000両以上保有している。ドイツ政府は25日、総計で約100両をウクライナに供与する目標を掲げ、まずは14両を供与すると明らかにした。最も早く供与の意向を表明していたポーランドも最大14両を供与するという。 ウクライナ軍は同国東部などでの地上戦を優位に進めるため、欧米に戦車の供与を求めてきた。クレバ外相は25日、ツイッターで「できる限り多く」のレオパルト2を提供してほしいと各国に呼び掛けた。また、「皆が実現は難しいと思っていた戦車連合が結成された。ウクライナとそのパートナーに不可能はない」と強調した。 |
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●ウクライナ・オデーサ、世界遺産に ロシアの侵攻で「危機遺産」にも指定 1/26
ウクライナの港湾都市オデーサの歴史地区が25日、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産に登録された。ロシアによる侵攻で普遍的価値を損なう重大な危機にさらされているとして「危機遺産」にも指定された。 ユネスコは今回の決定について、オデーサの「卓越した普遍的価値」を認めたものだと説明した。 ロシアは「政治的動機によるもの」だと批判した。 「黒海の真珠」と称されるオデーサは、昨年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、何度も空爆を受けてきた。 住民たちは市内の記念碑や建物を保護しようと、急いで土嚢(どのう)を積み上げた。 ユネスコのオードリー・アズレ局長はオデーサを世界遺産に登録することは重要な一歩だとした。 「まず、この都市は世界遺産に属し、私たち全員に関わるもので、私たち全員が注目し、私たち全員がその歴史と遺産への貢献を認識しているという象徴的側面があった」とアズレ氏は述べた。「これがすでに、重要な象徴的側面なのです」。 また、今回の決定はロシアを含むユネスコの全加盟国が世界遺産に「意図的な破壊をもたらさない」義務を負っていることも意味しているとした。 今回、オデーサの一部地域が「危機遺産」リストにも登録されたことで、「ウクライナがその財産を確保し、必要であればその復興を支援するために要求できる」技術・財政支援にオデーサがアクセスできるようになったと、ユネスコは説明した。 ●ロシアは反発 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は今回の決定を歓迎し、「ロシアの侵略者の攻撃から我々の真珠を守る手助けをしてくれるパートナーたちに感謝する」と述べた。 オデーサの世界遺産登録をめぐる投票の実施を繰り返し遅らせようとしたロシアは、ウクライナが自国の記念碑を「破壊している」と非難した。 ロシア外務省は、ウクライナの申請書類に不備があったと非難。投票は「西側からの圧力のもと」で「手続き上のルールを無視して」行われたと主張した。 「ユネスコの現在の高い基準を尊重することなく、急いで準備されたものだ」と、同省は指摘した。 ウクライナでは首都キーウの聖ソフィア大聖堂や西部リヴィウの歴史地区など、オデーサ以外に7件が世界遺産に登録されている。 |
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●ロシア プーチン政権高官 欧米を相次いで批判 1/27
ロシアのプーチン大統領に最も近い側近の1人、パトルシェフ安全保障会議書記らロシアの高官は26日、ウクライナを支援する欧米を相次いで非難した。 パトルシェフ書記は、ロシア第二の都市サンクトペテルブルクでの海軍などとの会合で、「アメリカとNATO(北大西洋条約機構)が軍事紛争を長引かせるよう仕向けている」としたうえで、「ウクライナでの紛争の“激戦期”が終わったとしても、アメリカはロシアとその同盟国に対する代理戦争を止めないだろう」と指摘している。 ペスコフ大統領報道官も26日、「我々はNATOや欧米が行っていることは全て紛争に直接関与しているとみなしている」と述べ、ヨーロッパとアメリカの両方が、戦車を含む兵器をウクライナに供与したことについて批判した。 |
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●「ロシアは負けない」森喜朗氏また出た残念発言 1/27
元首相と呼ぶのが残念なほど、またもあきれた発言だ。森喜朗氏(85)が25日に東京都内で開かれた会合で、ロシアのウクライナ侵攻を巡る日本政府の対応について「こんなにウクライナに力を入れてしまってよいのか。ロシアが負けることは、まず考えられない」と公言した。 さらに「せっかく(日露関係を)積み立てて、ここまで来ている」とも。自らの功績をちらつかせて、暗にこのままでは日露関係が崩壊しかねないとの認識を示した。百歩譲って、ロシアとウクライナの戦力を比べれば森氏のように認識する向きもあろう。しかし、民主主義の西側諸国が対露制裁で団結している現実に、冷や水をかける発言だ。 しかも、ドイツが世界最強の戦車をウクライナに供与することを決めたばかり。製造国のこの決断で、欧州各国の保有する同じ戦車も、大量にウクライナへ供与される見通しとなった。ロシア軍が近く大攻勢をかけるという予測が広がる中での英断。それだけに、西側諸国の日本への信頼を落とすきっかけにもなりかねない。 元をたどれば、森氏が首相を務めた2000年当時、1期目のロシア大統領に就任したプーチン氏(70)が来日。2人は盟友とも呼ばれる関係を築き、日露外交を進めた。しかし、今のプーチン氏は人相も悪くなった。フィリピンにいて「ルフィ」などを名乗り、遠隔操作で実行犯を操る広域強盗事件の首謀者と同類。残虐な冷血漢にしか見えない。 もしも戦争被害者が身内にいれば、森氏も黙ってはいられまい。プーチン氏と直接会えなくとも、手紙やSNSなどでまず「侵略はやめよう」と強く諭すべきだ。和して同ぜず。それが真の友情だろう。 |
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●米、ロシア軍事会社ワグネルを国際犯罪組織に指定 追加制裁 1/27
米政府は26日、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」について、ウクライナに侵攻しているロシア軍を支援しているとして「国際犯罪組織」に指定し、追加制裁を科した。 財務省は、ロシアの戦争遂行能力の低下を目的とした措置の一環として、ワグネルを「重要な国際犯罪組織」に指定したと表明。制裁措置の下、ワグネルの米国内の資産が凍結され、米国人がワグネルに対し資金、商品、サービスを提供することが禁止される。 イエレン財務長官は声明で、ワグネルに対する今回の追加制裁措置により、ロシアのプーチン大統領の戦争遂行能力が一段と妨げられると述べた。 米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は先週、プーチン大統領は軍事行動を巡りワグネルに一段と依存していると指摘。ワグネルとロシア国防省との間の緊張が高まっていることを示唆する兆候が出ているとし、「ワグネルはロシア軍やロシア省庁の対抗勢力になりつつある」と述べていた。 カービー氏によると、米政府はワグネルが現在、約5万人の人員をウクライナに送り込んでいると見なしている。このうち1万人が契約社員で、残りの4万人はロシア国内の刑務所から集められた囚人という。 |
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●戦車供与、地上戦激化へ ロシア反発、背景に独ソ戦 ウクライナ侵攻 1/27
ロシアの侵攻を受けるウクライナに対し、米国とドイツが主力戦車を供与すると発表し、西側諸国の兵器支援は新たな段階に入った。 ウクライナのゼレンスキー大統領は歓迎する一方、ロシアのプーチン政権は「極めて危険な決定」(ネチャエフ駐ドイツ大使)と反発。多大な死傷者を出している地上戦は、さらに激しさを増しそうだ。 ロシアのペスコフ大統領報道官は26日、兵器支援は「紛争への直接関与」と警告。一方で「特別軍事作戦」という位置付けは変えず、西側諸国との全面戦争を避けたい考えもにじませた。 ドイツとロシアは第2次大戦の独ソ戦で、史上最悪の地上戦を繰り広げ、市民を含む双方の計約3000万人が死亡。ロシアは19世紀のナポレオン戦争(祖国戦争)に続く「大祖国戦争」と位置付けており、戦車供与を巡るドイツの慎重姿勢にも影響した。 くしくもロシアは、ウクライナ侵攻の理由について「非武装化」「中立化」から「祖国防衛」にすり替えを図り、長期戦に布石を打った。プーチン大統領は18日、80年前のレニングラード包囲戦で「多くの欧州諸国が封鎖に参加し、罪を犯した」と独自の歴史観を披露。今回の侵攻も「(西側諸国が仕掛けた)戦争を終わらせるためだ」と主張した。 一方、主力戦車として「最も成功したモデル」(英シンクタンク)とされるドイツの「レオパルト2」を前に、ロシアが最新の兵器で応じられるかは不透明だ。 プーチン政権は戦意高揚の「プロパガンダ」(英国防省)を狙い、初の実戦として少数のT14主力戦車の展開を検討中とされている。ただ、英国防省は25日の戦況報告で、T14の「不十分な状態」を理由にロシアは投入に迷いがあるようだと分析した。 東部ドネツク州では激しい攻防が続く中、ロシアの「頼みの綱」は民間軍事会社「ワグネル」だ。戦車戦ではなく、捨て身の突撃作戦で、重要拠点バフムト近郊の製塩業の町ソレダルを制圧した。独立系メディアによると、元受刑者の戦闘員約5万人のうち残る兵力は約1万人とされ、人的損害は甚大だ。 米CNNテレビは24日、ロシアが20万人の追加動員を検討中だと報じた。ペスコフ氏は否定に追われたが、人数が伏せられた昨年9月の動員令が今も有効だという見解を表明している。 |
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●バイデン氏、来月の欧州訪問を検討 ウクライナ侵攻1年 1/27
バイデン米大統領は来月、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1年を迎える時期に欧州を訪問することを検討している。2人の政権高官がCNNに明らかにした。 訪問はまだ確定しておらず、詳細もまとまっていない。だが高官の1人は候補に上がっている訪問先の1つはポーランドだと述べた。北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるポーランドには何千人もの米軍兵士が駐留しており、ウクライナへ西側諸国の武器を送る拠点にもなっている。また、米軍はポーランドでウクライナの軍隊の訓練を行っている。 高官によると、安全上の懸念からバイデン氏がウクライナを訪問する可能性は極めて低いという。 米政権はここ数週間、バイデン氏の演説などを含め、ウクライナ侵攻開始1年をどのような形で迎えるかを検討している。開戦時、多くの人がウクライナは数日でロシアの手に落ちるだろうと予想したことに触れてウクライナ国民の力強さを強調したい考えだ。 バイデン氏が欧州訪問を検討しているニュースは米NBCテレビが最初に報じた。 |
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●苦戦と屈辱が続くも 「プーチンの戦争」は今年も終わらない 1/27
もし1年前の今頃、その後にウクライナで起きたことを正確に言い当てていた人がいたとしても、誰もその言葉を信じなかっただろう。 世界2位の強大な軍隊を擁するロシアが隣国のウクライナに猛攻を仕掛け、その全土を支配下に置こうとした。ところが、ウクライナは11カ月にわたりロシアの攻撃を持ちこたえただけでなく、首都キーウ(キエフ)からロシア軍を追い払い、さらにはハルキウ(ハリコフ)やヘルソンでも反転攻勢に成功している。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(侵攻前の時点では支持率が極めて低迷していた)は今も健在であるばかりか、世界で尊敬を集める指導者になった。 ウクライナ戦争は、これまで多くの人の予想を裏切り続けてきた。この先の展開を見通すことも難しい。報道によると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナでの軍事作戦を指揮する総司令官として、これまでのセルゲイ・スロビキンの代わりに、軍制服組トップのワレリー・ゲラシモフ軍参謀総長を任命した。 これは、ロシア軍が近く大攻勢をかけるために、軍の制服組トップを責任者に据えたと解釈すべきなのか。それとも、民間軍事会社ワグネルを率いる実業家エフゲニー・プリゴジンの増長ぶりが嫌われて、プリゴジンとは犬猿の仲として知られるゲラシモフが総司令官に任命されたとみるべきなのか。 戦争開始直後の私がまだモスクワに滞在していた頃、初期の攻勢に失敗したためにゲラシモフが解任されたという噂が広がったことがあった。開戦後1週間もたたずにキーウが陥落するだろうというのが世界の情報機関の大方の予測だったが、実際にはロシア軍が敗走する結果になっていたからだ。 ●核のボタンは押されるのか ロシア寄りの軍事ブロガーですら、現代の戦争の歴史で最も無能な司令官だとゲラシモフを嘲笑していた。それに対し、スロビキンは、シリアでの残忍な戦いを指揮したことで名をはせ、今回の戦争でもウクライナ軍の反撃の勢いを止める成果を上げた人物だ。このロシア軍人事をどのように理解すればいいのだろうか。 プーチンは、この戦いを「特別軍事作戦」と一貫して呼び続けてきた。しかし、軍参謀総長の職にあるゲラシモフを総司令官に任命したということは、これが本格的な戦争であると正式に認めたと見なせるだろう。 この戦争のとりわけ恐ろしい点の1つは、プーチンが諦めることはないということだ。自身をロシア帝国の創始者であるピョートル大帝になぞらえるプーチンにとって、敗北は許されない。ウクライナを征服して支配下に置くことの意義とてんびんにかければ、途方もない数の死者が出ても大した問題ではないと考えかねないのだ。 核戦争に発展するのではないかという不安の声も高まっている。実際、ロシアの軍事ドクトリンでは、ロシアの国家存続が脅かされれば核兵器による攻撃が許される。 アメリカや西欧諸国は、ロシアが戦術核を使用したとしても、核兵器で対抗することはしないという方針を示唆している。エスカレーションを避けるという意味では理にかなった姿勢だ。しかし、皮肉なことに、核による報復がないと見切ったプーチンが核のボタンを押しやすくなるという側面は無視できない。 現在、プーチンが自身の手柄と位置付けてきた2つの歴史的業績、すなわちロシア経済の再生とクリミアの併合が覆されかねない状況になっている。欧米などの経済制裁がいよいよ効果を発揮し始めており、しかもウクライナは東部の奪還に成功している(ことによるとクリミアも奪還するかもしれない)。 このような状況で、プーチンがロシアの国家存続が脅かされていると判断し、核兵器の使用を正当化しないと言い切れる人はいないだろう。核兵器の使用にまでは踏み切らないとしても、ロシア軍の攻勢がさらに激化する可能性は十分にある。 ロシアは、既に国際社会で孤立している。国際世論の厳しい非難を浴びても失うものはほとんどない。しかも、戦争の結末がどうなるにせよ、ロシアはこの戦争により屈辱を味わっている。強大だったはずのロシア軍が張り子の虎にすぎなかったことが白日の下にさらされたのだ。 ロシア人のアイデンティティーの多くの部分を占めるのは、勇猛果敢な強さへの誇りと、近隣諸国に対する優越意識だ。私の知人のロシア人の中には、今回の戦争に強く反対し、抗議してロシアを離れた人たちもいる。しかし、彼らですら、ロシア人よりもウクライナ人のほうが聡明で勇敢だという評価には、いら立ちをあらわにする。 自国より圧倒的に弱いはずの隣国に戦場で敗れるようなことがあれば、近隣諸国に対する優越意識を保つことは難しい。 ●西側の分析は非現実的? あるロシア人研究者は私にこう語った。「ロシア人の精神を支えてきたのは、(第2次大戦でナチス・ドイツの侵攻をはね返した)『大祖国戦争』の記憶だ。英雄的な行動と犠牲心と高い能力により、多くの人命を救ったことを誇りにしていた。ところが、チェチェンやウクライナでは、戦闘に勝つことができず、町を瓦礫の山に変えただけだった。私のアイデンティティーは崩壊した」 ロシアにとって最良のシナリオは、2014年に奪った領土を拡大することだが、そのために10万人をはるかに超えるロシア兵の命が失われる公算が大きい。さらに無数の子供や母親を殺したロシアの行為に対し、欧米では民間人虐殺の悪評が定着している。シリアやチェチェンと同様に多くの犠牲を伴う勝利を収めたとしても、ロシアは経済成長や国民の繁栄のためではなく、欧米に接近したウクライナを罰するためだけに残虐行為を行ったことになる。 ほぼ欧米の手で設計され、運営されている国際社会で、プーチン政権はどうやって地位を保つのか。残り少なくなった同盟国でさえ、ウクライナ侵攻とその犠牲を積極的に支持しているわけではない。 ただし、欧米の解説や分析には問題が1つある。ロシア側の苦戦を過度に強調していることだ。あるロシアの友人は、欧米の非現実的な戦争の評価をこう嘲笑する。 確かにウクライナは屈服していないが、まだ1年しかたっていない。ウクライナの国土はイラクより40%近く大きく、後ろに控える世界最強のNATO軍はウクライナ軍の訓練に10年近く費やしてきた。まだ完全に屈服していないことがそんなに不思議か。ならばアメリカはアフガニスタンでどうなったか――。 実際、プーチンは欧米のどの指導者よりも国内での人気が高く、ロシア経済は制裁を何とか耐えてきた。また、ウクライナでの傀儡政権の樹立というロシアの至上命題が未達成でも、まだウクライナを徹底的に破壊してロシアへの脅威を除去するという2次的、3次的目標がある。 昨年、ウクライナのGDPは少なくとも30%以上減少した(ロシアは4%未満)。国外に脱出した何百万人ものウクライナ人が戻ることはなく、ロシアへの難民(強制であれ自発的であれ)は、ロシア軍の死者の10倍いる。一方、侵攻当初に国を離れたロシア人は帰国しつつある。 ロシアの管理下にある天然資源は、クリミアを併合した14年よりも増えている。たとえヘルソンやハルキウを奪えなくても、1月13日に制圧したとされるソレダルの豊富な塩は手に入るかもしれない。 ●言語と文化を傷つける行為 元教え子のロシア人はSNSへの投稿で、ロシア軍は少数民族やイスラム教徒の兵士が多く、戦死者の割合も高いので、人口構造の補正ができていると主張した。だからロシア人が今後20年間で支配的地位から転落する可能性は低いというのだ。 プーチンの精神分析を行う識者が最もよく語る「驚き」の1つは、明らかに負けているのに、どうして自信満々なのかというものだ。だが、本当に負けているのだろうか。 実は時間はロシアの味方だ。23年中にウクライナが決定的勝利を収めなければ、24年には欧米の国々が選挙の年を迎える。そこで現職以外が勝てば、ウクライナが戦争を継続する能力の見通しが一変する可能性もある。欧米の全面的援助がなければ、ウクライナは武器も食料も自力では調達困難だ。次期米大統領を当てる賭けサイトでは、ジョー・バイデン現大統領の支持率は32%にすぎない。 だが、戦争賛成派のロシアの友人にも痛恨の出来事が1つある。たとえ軍事的に勝利しても、文化的な威信が大きく傷つくことだ。私は彼に、あるヨーロッパの空港で私の幼い娘がロシア語を話したら、周囲の視線が集中したという話を伝えた。生まれたばかりの妹と遊ぶ天使のような2歳児が、ロシア語を話しただけで刺すような視線を向けられたのだ。 14年にウクライナからクリミアを奪ったプーチンは、併合を正当化する理由の1つとしてロシア語話者とロシア文化の保護を強調した。だが、今後はウクライナ語が苦手なロシア語話者でさえ、たとえコミュニケーションがうまく取れなくてもウクライナ語だけを使うようになりそうだ。 エストニアやラトビアでも同様の動きが起きている。ラトビアは最近、20のロシア語テレビ局の放送免許を取り消し、ナチスに対する勝利を祝う首都の記念塔を取り壊した。 23年のプーチンは大方の予想を裏切り、想定以上の戦争目的を達成するかもしれない。だがウクライナでさらなる軍事的成功を収めても、未来の歴史書がロシアの言語と文化に対するプーチンの貢献を評価することはなさそうだ。 |
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●蜜月も終了?プーチンを「気が狂った」と批判を始めた中国・習近平 1/27
中国とロシアが裏で繋がっていることはロシアのウクライナ侵攻でも強く感じられることになりました。しかし、今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、 現在の中国はプーチンへの信頼を失ったとして、その理由を解説しています。 ●プーチンは「気が狂った!」中国はプーチンへの信頼を失った 私が『中国ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日』という本を出版したのは16年前、2007年のことです。 今なら、「中国ロシア同盟」という言葉、誰でも受け入れることができるでしょう。ところが当時は、「中国ロシア同盟?????そんなものは、どこにも存在しない!」という感じでした。 私は、「事実上の中国ロシア同盟は、2005年に成立した」と見ています。だから、07年にそういう名前の本を出したのです。どういう話でしょうか? プーチンは、2000年に大統領になると、当時の有力新興財閥二人を征伐しました。一人は、「クレムリンのゴッドファーザー」と呼ばれていたベレゾフスキー。もう一人は、「ロシアのメディア王」と呼ばれ、「世界ユダヤ人会議」の副議長だったグシンスキー。ベレゾフスキーはイギリスに、グシンスキーはイスラエルに逃げました。 石油最大手ユコスのCEOだったホドルコフスキーという男がいます。彼も、上記二人と同じくユダヤ系。彼は、ベレゾフスキー、グシンスキーがアッという間にプーチンにやられたのを見て恐怖します。それで、何をしたか? まず、イギリスのジェイコブ・ロスチャイルドに接近しました。そして、共同で「オープンロシア財団」を立ち上げたのです。なんだか「陰謀論」みたいな話ですね。ここでは細かい証拠を挙げるスペースがありません。詳細に興味がある方は、拙著『プーチン最後の聖戦』をご一読ください。 もう一つ、ホドルコフスキーは、ネオコンブッシュ政権に接近しました。そして、ホドルコフスキーは、「自分を守ってくれれば、ロシアの石油最大手ユコスをアメリカに売る」と約束したのです。実際、エクソンモービル、シェブロンテキサコとの交渉がはじまっていました。 ロシアにとって、石油、天然ガスは最大の収入源です。プーチンは、それをアメリカに売ろうとするホドルコフスキーを許すことができなかった。それで、ホドルコフスキーは、脱税、横領などの容疑で03年10月に逮捕されたのです。彼はそれから、10年間刑務所にいました。 その後、プーチンが「ロシアの勢力圏」と考える「旧ソ連諸国」で相次いで革命が起こるようになっていきます。03年、ジョージアで。04年、ウクライナで(オレンジ革命)。05年、キルギスで。 プーチンは、「これらの革命の背後にアメリカがいる」と確信。「このままでは、ロシアでも革命が起き、俺も失脚させられる!」と恐怖したプーチンは05年、「中国との同盟」を決断したのです。そこから中国とロシアは、ず〜〜〜〜〜っと、「事実上の同盟関係」にあります。 ●プーチンは、習近平の「成功モデル」だった さて、近藤大介先生によると、習近平には尊敬する人が3人いるそうです。 一人は、お父さんです。習近平の父親、習仲勲は、国務院副総理などを務めた大物でした。 2人目は、毛沢東。毛沢東は、天才的な戦略家でしたが、国内政治は破滅的ダメでした。大躍進政策、文化大革命などで、数千万人が犠牲になった といわれています。習近平は中国経済を発展させたトウ小平ではなく、毛沢東を尊敬している。そのことが、中国の未来を暗くしています。 3人目がプーチンです。プーチンは、習近平にとって、「成功モデル」でした。習近平がトップになった2012年、プーチンは大統領就任から12年が過ぎていました(正確にいうと、2000〜08年大統領。08〜12年は首相でしたが)。習近平は、「プーチンをモデルにして、長期独裁政権をつくろう!」と考えたのです。 ちなみに私は、プーチンを現代のムッソリーニ、習近平を現代のヒトラーと呼んでいます。ムッソリーニが首相になったのは1922年、ヒトラーが首相になったのは1933年。ヒトラーにとって、ムッソリーニは、「成功モデル」だった。 同じように、習近平にとってプーチンは、「成功モデル」だったのです。しかし…。 ●習近平は、プーチンへの信頼を失った 「The Moscow Times」1月10日は、「中国がプーチンへの信頼を失った」と報じています。 重要ポイントを要約してみましょう。 ・中国指導部は、プーチンへの信頼を失っている ・中国の指導部は、プーチンの決定の冷静さと、ウクライナでの冒険の罠から抜け出す能力を疑っている ・中国は、ロシアはウクライナに勝てない可能性があると考えている ・そして、ロシアは戦後、国際社会で政治的、外交的に弱体化した、とるに足らない国家になってしまうと考えている ・中国の当局者は、プーチン個人に対する不信感を認めている ・プーチンは、ウクライナ侵攻の意図について、習近平に話していなかった ・プーチンは、ウクライナがロシア領を攻撃し、人道的惨事を引き起こした時は「措置をとる」といっただけだった (註 / 皆さんご存知のように、ウクライナはロシア領を攻撃していません。ウクライナ侵攻当初、プーチンは、「2〜3日で終わる」と考えていました。だから、ウクライナ侵攻を「戦争」と呼ぶことを禁じ、「特別軍事作戦」という用語を強制したのです。習近平と話した時は、「措置」といった。つまり、「戦争とか大げさな話ではないのですよ」と。プーチンは当時、そう見ていたのでしょう) ・ある中国の当局者は、ファイナンシャル・タイムズに、「プーチンは、気が狂った!」といった ・さらに「侵略の決定は、ロシアの非常に少数の人々によってくだされた。中国はロシアを理解できない」とも ・中国は今、西側との緊張を緩和し、欧州での地位を強化することを望んでいる ・中国は、停戦の仲介の役割を担うだけでなく、ウクライナの戦後復興に参加する準備もできている。 この記事を読んで、習近平の最近の発言の意味が理解できました。というのも、習近平は、プーチンを批判するようになっているからです。たとえば2022年11月5日のNHK NEWS WEB。 中国の習近平国家主席はドイツのショルツ首相と会談し、ウクライナ情勢を巡って「国際社会は核兵器の使用や威嚇に共同で反対すべきだ」と述べました。 習近平はショルツに、「一緒にプーチンの核兵器使用や威嚇に反対しよう!」と提案した。さらに2022年11月15日の産経。 両氏は、ウクライナ侵略を続けるロシアによる核兵器の威嚇・使用に反対すると強調した。 両氏というのは、バイデンと習近平のことです。習近平は、はっきりとプーチンを批判しています。 ●これからの中国、ロシア関係 さて、これから中国とロシアの関係はどうなっていくのでしょうか? 今は、「ロシアーウクライナ問題」がメインですが、その後世界は再び、「米中覇権戦争」を軸にまわっていくようになるでしょう。その時、中国が陸続きの資源超大国ロシアとの関係を切るとは思えません。中国が台湾に侵攻する際も、国連安保理常任理事国で拒否権を持つロシアが味方だった方がいいでしょう。さらに、台湾侵攻時、ロシアが軍事的サポートをしてくれれば完璧です。 というわけで、中国とロシアは、「アメリカの覇権を終わらせる」という共通の目的をもった事実上の同盟国でありつづけるでしょう。あるいは、ロシアが弱体化し、「中国の属国」になるか。 ただ、プーチンが核でウクライナや西側を脅迫したり、「俺たちは悪魔主義者と戦っている!」とトンデモ発言をするので、習近平は、「同類に見られたくない」ということなのでしょう。 プーチンはかつて、習近平にとって「成功モデル」「メンター」でした。しかし今は、「失敗モデル」「反面教師」になっています。習近平は、プーチンの失敗から教訓を得て、台湾侵攻を永遠に止めてほしいと思います。 |
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●対ロ制裁打撃なし プーチン氏報道官 1/27
ロシアのペスコフ大統領報道官は27日、ウクライナ侵攻に絡んで日本政府が追加経済制裁を発表したことについて「(ロシアに)悪影響は及ぼさない」と述べ、自国への打撃にならないとコメントした。 ただ「既にひどい状態となっている2国間関係のさらなる悪化は避けられない」という認識を示した。 |
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●ロシア、独立系メディアの活動禁止 厭戦の機運恐れ 1/27
ロシア検察当局は26日、バルト三国ラトビアに拠点を置く独立系露語オンラインメディア「メドゥーザ」を、露国内での活動を禁じる「望ましくない組織」に指定した。メドゥーザはプーチン政権の強権統治を批判し、ウクライナ侵略でも露政権が隠蔽する露軍の損害やウクライナ市民の被害などを伝えてきた。侵略の「戦果」が乏しい中、露政権は自身に不都合な情報を封殺し、国内に厭戦(えんせん)機運が高まる事態を防ぐ思惑だとみられる。 タス通信によると、露検察当局は、メドゥーザの活動が「露憲法秩序と国家の安全への脅威になると確認された」ため指定したと主張した。 露経済紙コメルサントによると、「望ましくない組織」の運営者や従業員には刑事罰や行政罰が科される。関係者でなくても、組織が作成した記事や資料を拡散したり、金銭的に支援したりした場合は刑事罰などの対象となる。 メドゥーザは露国内の協力者とともに取材や記事執筆をしているほか、スポンサーや読者からの寄付を運営費の柱にしているとされる。組織指定により、報道活動の継続や資金確保が困難になると予測される。 メドゥーザの記事を引用しただけでも罰則対象になるとされ、ロシアの言論状況のさらなる悪化は確実だ。 組織指定を受け、メドゥーザは26日、声明を発表。「記者や取材相手、寄付をしてくれる読者に害が及ぶことを恐れている」と懸念を示す一方、「私たちはロシアの民主化を信じている」とし、指定後も活動を続ける方法を模索する意向を表明した。複数の露ジャーナリストや人権団体からは指定を非難する声が上がった。 メドゥーザはプーチン政権による言論統制の強まりを危惧したロシア人記者らが2014年に設立。政権側の汚職や人権侵害を追及する調査報道で高い評価を得たほか、政権によるデモ弾圧や反体制派指導者ナワリヌイ氏の拘束などを非難する報道を展開してきた。 露政権は21年、メドゥーザをスパイと同義の「外国の代理人」に指定した。スポンサー離れを引き起こし、メドゥーザの資金状況を悪化させて活動停止に追い込もうとしたとの観測が強い。 さらに露政権はウクライナ侵略後、「虚偽情報」を拡散したとして、複数の他のリベラル派メディアとともにメドゥーザのウェブサイトへの接続を遮断。それでもメドゥーザは、規制を回避できる「VPNアプリ」の使用によるサイトの閲覧を読者に呼び掛けたほか、匿名性が高い通信アプリ「テレグラム」を使って侵略の実態を伝えてきた。 メドゥーザのテレグラムアカウントの登録者数は120万人超に上り、政権側に検閲されていない報道を求める露国民にとって貴重な情報源となってきた。 プーチン政権は近年、デモ規制の強化など言論統制を進めてきたが、ウクライナ侵略の開始後はさらに厳格化。政権や軍への批判を事実上禁止し、リベラル派メディアを相次いで活動停止に追い込んだ。 |
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●ウクライナ各地にロシア軍のミサイル攻撃、11人死亡 米独の戦車供与の翌日 1/27
ウクライナ各地で26日、ロシアによるミサイル攻撃が相次ぎ、11人が死亡した。ウクライナをめぐっては前日にドイツとアメリカが戦車を供与すると発表していた。 ウクライナ軍のヴァレリー・ザルジニー総司令官は、ロシア軍が空と海から計55発のミサイルを発射したと発表。首都キーウ周辺に飛来した20発を含む47発を撃墜したと付け加えた。 ウクライナ国家緊急事態庁によると、一連の攻撃で11人が死亡し、11人が負傷した。合わせて35棟の建物が破壊された。 住宅への被害が最も大きかったのはキーウ州だったという。 また、オデーサ州のエネルギー施設2カ所にも攻撃があった。 これに先立ち、ウクライナ空軍は、ロシア軍がウクライナ南部のアゾフ海から発射したイラン製攻撃ドローンの一団を撃墜したと発表した。 キーウ南部では非居住用建物が攻撃を受け、男性(55)が死亡、2人が負傷したと当局は発表した。 ウクライナ最大の民間電力会社DTEKによると、電力系統のひっ迫を緩和するためにキーウなど一部地域で緊急停電が実施された。 今回の攻撃の前日には、アメリカとドイツがそれぞれ、戦車を供与すると発表。これについてロシアは、西側諸国がウクライナでの戦争への「直接的関与」だと受け止めているとしていた。イギリスもすでに、陸軍の主力戦車「チャレンジャー2」の供与を決定している。 ●カナダも戦車供与を発表 ウクライナへの戦車供与をめぐり、数週間にわたり国際的圧力を受けてきたドイツのオラフ・ショルツ首相は25日、ドイツ製戦車「レオパルト2」14台をウクライナに供与すると発表した。レオパルト2は最も効果的な戦車だと広く受け止められている。 同戦車は3月下旬から4月上旬にウクライナに到着する見込み。 アメリカのジョー・バイデン大統領も同日、米軍の主力戦車「M1エイブラムス」31台を供与すると発表した。米国防総省は長らく、M1エイブラムスはウクライナの戦場での運用には適さないとしてきたが、この主張を一転させた。 26日にはカナダも、同国が保有するレオパルト2を4台、数週間のうちに供与すると約束した。専門家によるウクライナ兵への操作訓練も行うとした。 ●「戦車連合」に12カ国参加と ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は26日、同氏が「戦車連合」とするものに12カ国が加わったと述べた。 しかし、300〜400台の戦車がなければ戦闘での形勢を逆転する「ゲームチェンジャー」にはならないと、ウクライナ国防省顧問ユーリ・サク氏はBBCラジオ4の番組「トゥデイ」で語った。 「西側の兵器を使って戦場でロシアを打ち負かす時期が早ければ早いほど、我々はより早期にこのミサイルテロを止め、平和を取り戻すことができるだろう」とサク氏は述べた。 同番組には北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長も出演。ウクライナに戦車を送ることで、戦争で勝利するためのウクライナ側の能力に大きな違いをもたらすことができると述べた。 ストルテンベルグ氏はまた、ロシアが新たな攻撃を計画していると警告した。ちょうどそのころ、夜間のドローン攻撃の後にミサイル攻撃を受けたとの報告がウクライナ側から出始めていた。 ●ロシアの雇い兵組織を犯罪組織に指定 こうした中、アメリカは26日、ウクライナに数千人の雇い兵を投入しているとされるロシアの民間組織「ワグネル・グループ」を国際犯罪組織に指定した。 ジャネット・イエレン米財務長官は声明で、「(ロシアのウラジーミル)プーチン大統領の戦争マシンの武装をさらに妨げる」ために、ワグネルとその関係者に新たな制裁を科したと述べた。 |
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●政府 ロシアへ追加制裁措置 資産凍結対象に新たに36人と3団体 1/27
ウクライナ情勢をめぐり、政府は、27日の閣議で、ロシアに対する追加の制裁措置を了解しました。資産凍結の対象にロシア政府関係者ら36人と3団体を、新たに加えるなどとしています。 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いていることを受けて、政府は、G7=主要7か国と連携して圧力を強める必要があるとして、ロシアに対する追加の制裁措置を、27日の閣議で了解しました。 具体的には、日本国内にある資産を凍結する対象として、ロシア政府の関係者やウクライナ東部や南部の親ロシア派の関係者ら、合わせて36人と3団体を新たに加えるとしています。 また、日本からの輸出を禁止する対象として、ロシアの飛行機修理工場や無線工場など49団体を加えるとともに、禁止する物品の範囲も催涙ガスやワクチン、ロボット、レーザー溶接機など合わせて40品目と関連する17の技術、それに35の化学物質を加えるとしています。 木原官房副長官は、閣議のあとの記者会見で「平和と秩序を守り抜くため、G7をはじめとする国際社会が結束し、断固たる決意で対応していく必要がある。引き続き国際社会と連携し、対ロ制裁とウクライナ支援を強力に推進していく」と述べました。 ●ロシア大統領府報道官「対抗策を検討」 日本政府がロシアに対する追加の制裁措置を閣議で了解したことについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は27日に「われわれは制裁のもとでの生活に適応している。新たな決定は何の効果もない」と強気の姿勢を示しました。 その上で「当然、自国の利益を最優先に対抗策を検討することになる」と述べ、制裁への対抗措置を講じる考えを示唆しました。 |
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●ロシア軍のあまりの無能さは「驚き」であり「謎」...戦争の現状と教訓 1/28
「将軍は常に過去の戦争を戦う」という格言がある。だが目を向けるべきは、これからの在り方だ。ウクライナ戦争は、世界秩序をどんな形で再編成しているのか──。 イラク・アフガニスタン駐留米軍司令官を務めたデービッド・ペトレアス元CIA長官と、ニューアメリカ財団CEOで元米国務省政策企画本部長のアンマリー・スローターに、フォーリン・ポリシー誌のラビ・アグラワル編集長が話を聞いた。 ――アメリカ史上、最長レベルの戦争で軍事戦略を指揮した将軍として、ウクライナ戦争に意外な点はあるか。 ペトレアス 意外だったことは多い。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、これほど(第2次大戦当時の英首相ウィンストン・)チャーチル的な人物であるのには感心し、少しばかり驚いた。 戦略的リーダーは目的を正しく把握し、効果的に伝え、その遂行を監督し、どう改善するかを決定しなければならない。さらに、このプロセスを繰り返す必要がある。(ゼレンスキーは)見事にそれを実行している。一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はもちろん、そうではない。完全に失敗している。 ロシア軍の無能さには本当に驚かされた。欠陥があるのは分かっていたが、(ウクライナ侵攻前の)演習期間に何もしていなかったらしいという事実は意外だった。 普通なら、ただ戦車を送り込むようなことはしない。戦車の前方に歩兵隊を配置し、対戦車ミサイルの攻撃を防ぐ。迫撃砲などで援護し、防空体制を敷き、電子戦で相手の通信を妨害する。進軍中に障害物や爆発物に遭遇する可能性に備えて、工兵隊や爆発物処理隊も派遣する。だがロシア軍は絶望的なほどお粗末だ。 対ウクライナ国境地帯での演習期間に何をしていたのか、謎だ。私だったら、研ぎ澄まされた状態で侵攻に臨めるよう、訓練していただろう。 それだけではない。作戦計画が極めて不適切だった。指揮統制が構造的に混乱していて、現代化も衝撃的なまでに進んでいなかった。ロシア軍の作戦行動は、予測していたよりひどい。準備期間があれほどあったことを考えると、本当に驚きだ。 ――アンマリー、あなたにとって意外だったことは? スローター 最大の驚きは、特にインド、ブラジルや南アフリカの反応だ。ジョー・バイデン米大統領が掲げる「民主主義国と独裁国の戦い」という新たな構図の下、アメリカはこれらの国に積極的に接近してきた。太平洋地域で中国と向き合うなか、インドに対しては、クアッド(日米豪印戦略対話)などの数多くの話し合いに引き込む努力を傾けてきた。 それでもインドは立場を明確にすることをあからさまに拒絶し、今もロシア産石油を輸入し、ロシアから武器を購入する用意もある。欧米の大半のアナリストの評価よりも、はるかに大きな変化が世界秩序に起きていることを示すシグナルだ。 20世紀の非同盟運動とは事情が異なる。インド、ブラジル、南アフリカ、ASEAN諸国という重要国の一団が「これはもう私たちの戦争ではない。私たちが本当に懸念しているのは、私たち自身の地域内紛争だ」と主張している。 ――軍事面の話に戻るが、世界各国はウクライナ戦争からどんな教訓を学んでいるのか。 ペトレアス 重要なのは、これは未来の戦争ではないと認識することだ。むしろ、冷戦の最盛期に逆戻りしたような戦いだ。私が旧東西ドイツ国境地帯に駐留する米軍旅団の少佐だった当時、戦争が勃発していたら、こんなふうだったのではないか。 未来型の戦争の要素はあるが、非常に限定的だ。例えば、アメリカがウクライナに供与した高機動ロケット砲システム(HIMARS)は80キロ先の食卓を標的にできる。これは大きな変革だ。ロケット砲の射撃目標を観測するのは、今やドローン(無人機)だ。とはいえ、これはインド太平洋地域で紛争が発生した際、想定される国際的な情報・監視・偵察活動の在り方とは異なる。 これから起きる劇的な変化として考えられるのは、無人システムの利用の激増だ。そうしたシステムは遠隔操作型に、それどころかアルゴリズムで管理されるものになるかもしれない。そうなれば(攻撃や殺害の)最終的判断は、マシンに状況判断や決断を行う能力を与えるアルゴリズムの設計者が下すことになる。 「見えるなら攻撃可能で、攻撃できるなら殺害可能だ」という冷戦時代の格言がある。では、全てが可視化されたら? 地上や上空、海上だけでなく、海中や宇宙空間も無人システムでカバーできる未来を想像してほしい。見えるものは攻撃できるし、全てが見えるようになる。その意味については、ごく慎重になるべきだろう。現実に待ち受けている未来は、今とは全く違うもののはずだから。 ――ウクライナ戦争に対する中国の見方はどうか。中国はどんな教訓を得ているのか。 スローター 中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は「友人にこんなことをされるなら、敵だとどうなるか」と思っているのではないか。現状はほぼ確実に、わずか1年ほど前、北京冬季五輪開催に合わせて訪中したプーチンと会談し、無制限のパートナーシップを約束し合ったときに習が思い描いたものとは懸け離れているからだ。 ロシアの行動のせいで、中国は極めて難しい立場に置かれている。今や(中ロは)とても居心地の悪い関係だ。この点で、米政府の「民主主義国対独裁国」という戦略には疑問を感じる。アメリカは中国をロシアの側に押しやっているからだ。 だが実際には、欧州各国が気付いているように、中国がコストに目覚める確かなチャンスがある。親ロ路線が経済制裁の面や、ロシアの行動を後押ししているイメージがもたらすコストだ。アメリカはより微妙な戦略を採り、中国と接触を図る方法を探るべきだ。 台湾に関しては、中国の思惑を予測すべきではない。台湾を(防空ミサイルで)「ハリネズミ化」して、少なくとも攻撃した際の中国のコストを上げることは可能だ。非常に効果的な兵器を島全体に擁することで、台湾は中国と中国軍、中国社会にとってのコストを引き上げられる。さらに、極めて効果的な制裁計画があれば、習が(台湾侵攻を)先延ばしする理由になるだろう。 |
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●ロシア国民からも湧きあがる民主化議論 地政学の新展開 1/28
周知の通り、ロシアの民主化に向けて既に運動が始まっている。政治犯として服役中のアレクセイ・ナワリヌイ氏はワシントンポスト紙に投稿し、「ロシアは議会制民主主義を実現し、今までの権威主義を止め、問題を生むのではなく、問題を解決する良き隣人になるべきだ」と論じた。 今回、世界的な人権活動家として知られるチェスの元世界チャンピオンであるガルリ・カスパロフ氏と政治犯罪者として英国に亡命中のロシアの大富豪ミハイル・ホドコルスキー氏が連名で2023年1月のフォーリン・アフェアーズ誌で論じた議論は注目に値する。 ●2023年ロシアは民主化する? 彼らはプーチン政権の全体主義を拒否する「ロシア行動委員会」の名の下でおよそ次のように論じている。ウクライナ戦争でプーチン政権はいずれ近いうちに崩壊する、プーチン以降のロシアは議会制連邦共和国に移行する――。 ウクライナは国際的に認められた1991年当時の領土を回復し、プーチンの侵略によって生じた損害を正当に補償され、すべての戦争犯罪者に責任を取らせると論じている。そしてロシアを「ならず者独裁国家」から議会制連邦共和国に変身させるとしている。 彼らは更に、「米国はプーチン支配の終焉は核武装したロシアが混乱に陥ることになり、中国が強大化すると恐れているが、それは間違いだ。プーチン支配の継続こそ、その危険が増大する。むしろウクライナの勝利とロシアの民主化こそが世界中で民主主義の大義を後押しすることになるのだ」と議論を展開している。 この二人の議論の重要な論点は1991年の国境線は国際的に認められたものだとして、その維持を前提としているところだ。そして、プーチン大統領の「失われたロシア帝国の再建」の試みは失敗する運命にあり、民主主義への移行と地方への権力委譲の機は熟している。従って何よりも大統領がウクライナで軍事的に敗北することが必要だと論じている。 この論考は、「法の支配、連邦制、議会制、明確な三権分立を目指し、抽象的な『国益』よりも人権と自由を優先する」という原則のもとに、ロシア国家の再生を目指す青写真を描きだしている。 「私たちのビジョンは、ロシアが議会制共和国であり、中央政府には外交・防衛と国民の権利の保護に必要な権限だけを残し、それ以外の統治権限は地方政府に移管する。ロシアはそういう連邦国家となる」と論じている。 更に、プーチン政権が崩壊して2年以内に、ロシアは小選挙区制を採用し、新しい憲法を採択し、新しい地方機関のシステムを決定する。しかし、短期的にはその前に、立法権を持つ暫定的な国家評議会が必要であり、それが臨時のテクノクラート政府を監督する必要がある。その核となるのは、法の支配にコミットするロシア人だとし、ロシア新政府はプーチン派を排除し、迅速に行動し、西側諸国と協力して経済の安定化を図るとしている。 国家評議会はウクライナと和平協定を結び、91年の国境を認め、プーチンの戦争による損害を正当に補償する。また、旧ソ連諸国の親プーチン派に対する支援を停止するなど、ロシア内外でプーチン政権の帝国主義的な政策を正式に否定する。そして、ロシアが長年続けてきた西側との対立を終わらせ、代わりに平和、パートナーシップ、欧州・大西洋制度への統合に基づく外交政策に移行するとしている。 ●ユーラシア地政学上の重要な展開 この論考の重要な点はロシアが民主化する時、直面する根本的な問題を抉り出し、ユーラシアの地政学的見地からロシアにとって正しい方向性を示そうとしていることだ。どういうことか? 仮にロシアが今回のウクライナ侵攻を契機にして、内部的な大混乱に陥れば、隣接する大国中国や多くの民族共和国などが自己利益推進のため行動を起こすことは目に見えている。周知の通り、中国は「極東の中国領150万平方キロが、不平等条約によって帝政ロシアに奪われた」と理解している。 中国はある日突然、ウラジオストクを「中国固有の領土」として返還を要求しかねないのだ。多くの非スラブ自治共和国もその混乱に乗ずる可能性がある。そうなると、ユーラシア全体が名状しがたい大混乱に陥る危険がある。 この論文はその危険を完全に察知していて、正直にこう論じている。「プーチンの軍事的敗北の後、ロシアは中国の属国となるのか、それともヨーロッパとの再統合を目指すのかを選ばなければならない」。そして「大多数のロシア人にとって、平和、自由、繁栄を選択することは自明である」と。 そして、民主化するロシアはウクライナと共にヨーロッパの一部となって平和と自由と繁栄を選択するべきだと明快に述べている。これは91年のソ連崩壊後の国境が国際的に承認されていることを確認しつつ、ロシアと云う国全体の地理的継続性を維持し、それを欧州社会に統合し、民主的繁栄を確保する姿勢を表したものだ。ユーラシア地政学上の非常に重要な展開を目指している。 このフォーリン・アフェアーズ誌の論考が論じている「限定的な中央集権と強力な地方政府」の具体的内容はこれから議論されて行くだろう。しかし、非常に重要なことはこの提案が、ロシアの現在の地理的一体性を維持しながら民主化し欧州社会に統合して行くと云う方向性を明白に打ち出していることだ。 二人の著者は問題の本質を正しく理解し、国としての一体性を堅持して民主化を図ろうとしていることだけは明らかだ。要するに、ロシア人は自分たちが正しく行動しなければ、中国がユーラシアで勢力を伸ばす可能性があることを明確に意識しているのだ。 ●ロシアの民主化が生み出す地政学上の地殻変動 まず何よりも、ロシアが民主主義の価値体系の下で行動し始めれば、北大西洋条約機構(NATO)との関係は根本的に変化する。ロシアは極東ロシアを含めて欧州民主主義圏の一員となる。 このようにして、ロシアはNATOの敵対国でなくなるので在欧米軍などはアジア太平洋地域に移動できるようになるだろう。西側の安全保障上の基本構造が変わることになる。日本自体の安全保障の上でも大きな前向きの展開だ。 その上、民主化するロシアは中露専制強硬同盟から離脱するので、中国は地球上で唯一の強硬専制国家と云うことになる。国連の安保理事会でも常任理事国ロシアはその行動を一変させるので、国際政治の議論と雰囲気は一変する。さらに多くの変化が生まれてくるに違いない。 地政学的には殆ど歴史的な地殻変動と云うべき事態が生まれてくる。 ロシアが議会制連邦共和国として西欧社会の一部になろうとするなら、西側諸国全体で民主ロシアを全面的に支援するだろう。それは西側には過去への強い反省があるからだ。 ソ連崩壊当時、西側はロシアの民主化を支援する行動を取らなかったのだ。米国内の冷戦思考が災いしたためだ。 連合国側が第二次大戦後ドイツと日本の民主化には大きな資源を投入したのとは大きな違いだった。これがロシアにプーチン的な独裁を生んだという有力な議論がある。 この反省もあって、今日の欧米ではロシアが民主化するなら全面的に支援しようとするモメンタムが非常に強くなっている。欧州では欧州の繁栄はロシアの繁栄と表裏一体と云う観念が横溢している。それが大きなダイナミズムを生み出す気配である。当然日本は隣国としてロシアの民主化とその経済的発展に大規模に支援をしていくべきだ。 ●しかし本当にロシアは民主化するのか? 勿論ロシアの将来、特に民主化の可能性について、楽観視は禁物だ。プーチン政権の専制が20年も続いた。この国の専制の歴史は長い。ロシアの民主化は簡単ではない。 何よりも国の地理的な図体が大きく、民族や文化も多様だ。統治するにも余程しっかりした価値体系と指導力が無ければ上手く行かないだろう。中国などと渡り合う時は特にそうだ。 この関係では西側諸国間の意見調整とロシアへの協力も大切だ。ロシアが歴史的な方向転換を図るにしても、西側諸国は上手に且つ賢明に協力する必要がある。その為には、西側諸国の政策当局者がよく話し合わなければならない。何が有効なアプローチかを議論していく必要がある。 しかし今やロシアの民主化は勿論可能だとする議論は非常に数多くある。今回のこの著名な二人のロシア人の論考はロシア社会に広く流れている強い願望、帝政時代から苦難に苦難を重ねてきたロシア人の心の奥底にある強い願望、発言を封ぜられてきたロシア人の心の叫びとでもいうべきものを文字にしたものだ。 外ならぬ「フォーリン・アフェアーズ誌」はそこを理解してこの記事を世界中に発信した。そう受け止めたい。 |
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●米欧の主力戦車供与でウクライナ戦争が変わる 1/28
開始からもうすぐ1年。ウクライナでの戦局が大きな曲がり角を曲がった。アメリカとドイツが2023年1月25日、ついに両国の主力戦車をウクライナへ供与することを決めたからだ。この決定が意味するのは大きく分けて2つある。 1つは、ロシアに占領された領土奪還を目指し、大規模な反攻作戦をこの近く始める構えのウクライナ軍が地上戦での本格的な攻撃能力を得たこと。もう1つは戦争のエスカレーションを懸念し、攻撃能力の提供に慎重だった米欧が「ウクライナを防衛面だけでなく、攻撃面でも支援する」との政治的意思を曲がりなりにも表明したことだ。 一方で、ロシアのプーチン大統領にとって今回のアメリカとドイツによる決定は、軍事面はもちろんのこと、国内政治的にも極めて大きな打撃になった。なぜか。ロシアでは、戦車が「大祖国戦争」と呼ばれる第2次世界大戦でのソ連勝利のシンボル的存在だからだ。 ●ロシアにとって「戦車」の意味 2019年、ロシアでは「T34」という戦争映画が大ヒットした。ソ連時代の主力戦車T34が活躍するアクションもので、おまけに監督はプーチン氏の盟友であり、今回の侵攻も強く支持するミハルコフ氏だ。この映画の制作にあたっては、国民の愛国心を刺激し、プーチン氏の求心力を高めるという狙いがクレムリンにあったことは間違いないところだ。 1943年にソ連軍が勝った「クルスクの戦い」は「史上最大の戦車戦」ともいわれ、ソ連の最終的勝利につながった記念碑的出来事だ。つまり、ロシアでは今でも「戦車=ナチドイツに対する戦勝」というのが社会の根底に横たわる強固な固定観念の1つなのだ。 こうした経緯を考えれば、欧州各国からの提供分も含めると、約100両ものドイツの主力戦車レオパルト2が旧ソ連地域、それも大祖国戦争で大きな戦場になったウクライナの広大な平原でロシア軍戦車部隊と対峙するという事態は、極めて衝撃的なことなのである。 仮に今後、戦闘でロシア軍の戦車がドイツ製戦車に多数破壊されることになれば、国民が大きな屈辱感を抱くのは確実だ。ずらっと並んだ大戦車部隊を前面に進軍する。これが今までロシア軍の地上戦戦術を象徴するイメージだが、これが一挙に崩れることになる。 2014年にクリミアを一方的に併合し、「戦勝」という誇りを国民にもたらし、高い支持を集めたプーチン氏に対する幻滅感や批判が広がる可能性もおおいにありうる。 プーチン氏はウクライナ侵攻の苦しい大義名分の1つに、ネオナチ的なゼレンスキー政権を打倒するという「非ナチ化」も挙げている。それなのに、ナチスドイツを否定する現代ドイツが、直接兵士部隊を送るのではないにしろ、戦車部隊を送ってくる事態をどう説明するのか。プーチン氏は苦しい説明を求められるだろう。 ●あせり、いら立つプーチン 侵攻から1年の節目となる2023年2月24日を控えた2023年明けから、プーチン政権は国民に誇示できる勝利を挙げるべく、近く大規模な攻撃を開始する計画を進めており、準備は最終段階にあるとみられている。 攻勢に向けた軍指揮系統の再編成も行った。2023年1月11日には、ロシア軍制服組トップであるワレリー・ゲラシモフ参謀総長を現地の統括司令官兼務にする異例の人事を断行したのだ。侵攻開始以来、拙攻が続くロシア軍に業を煮やし、ゲラシモフ氏に直接、侵攻作戦の直接指揮を命じたもので、プーチン氏のあせりやいら立ちを感じる。 そのあせりの背景には2つの「日程」がある。1つは2023年5月9日の対独戦勝記念日だ。ロシアで最大の祝日であり、モスクワの赤の広場では軍事パレードが行われ、軍最高司令官でもあるプーチン大統領が毎年、演説を行う最重要イベントだ。 しかし、2022年9月に一方的にロシア領への「編入」を宣言したウクライナの東部・南部4州でさえも、ウクライナ軍の反攻により完全制圧ができないままにいる。このままでは、プーチン氏としては勝利宣言もできないとの観測もあるほどだ。 もう1つの日程は、2024年3月に予定されている次期大統領選だ。クレムリン内ではすでに選挙の準備も始まったとロシアのメディアが伝えている。プーチン氏自身は出馬の意志をまだ示していない。通算5期目に向け出馬の構えと見られていたが、このままでは出馬宣言もできないとの見方も出ている。 ウクライナの軍事専門家である、ジュダノフ氏は、ウクライナ軍情報部の情報として、プーチン氏がゲラシモフ氏に対し「(2023年)3月までに東部ドネツク州の完全制圧を命じた」と話す。これを裏付けるように、別の軍事筋は「ロシア軍がベラルーシに配備していた自軍兵力の一部を今ドネツクに向け移動させている。ドネツクでの攻撃の準備だ」と指摘する。 このロシア軍の大規模攻撃計画について、ウクライナ側では脅威と受け止める見方がある一方で、撃退できるとの強気の見方が根強い。その根拠の1つがロシア軍の戦闘能力への疑問だ。 ジュダノフ氏は「侵攻に投入された約20万人規模のロシア兵部隊のうち、約10万人が死傷した。このため、今後ロシア軍が兵力を増強しても戦場での経験不足は否めず、戦力は大幅にダウンする」と分析する。ジュダノフ氏によると、ロシア軍が兵力を増強する動きがあるものの、兵器・弾薬不足のため「新たな師団を編成できない」という。 東部ドネツク州の要衝バフムト攻撃などでウクライナ軍を苦しめ、正規軍と比べ比較的高い戦闘力を発揮した民間軍事会社ワグネルの部隊も戦力が急速に落ちているという。ジュダノフ氏によると、ワグネルが服役者から志願者を集めて編成した「受刑者部隊」は当初5万人規模いたが、その後は戦死者、脱走兵、あるいはウクライナ軍への投降などで減っていき、今では1万人規模となっているという。 しかも、攻撃作戦をめぐりロシア軍最高指導部内で大きな対立が発生する異常事態が起きていることもプーチン氏にとって懸念材料だ。それは、2023年1月末、ロシア軍空挺部隊のチェプリンスキー司令官が解任されたのだ。作戦会議の場でゲラシモフ氏を公然と批判したためという。 SNSに流れた情報では、チェプリンスキー司令官は大規模攻撃の柱として、首都キーウへの空挺部隊による急襲作戦を提案したゲラシモフ氏に対し、自分の部下をいたずらに死なせることになると大反対したという。 ●ロシア軍の大規模作戦は2月か いずれにしても、大規模攻撃作戦の開始時期について、前ウクライナ大統領府長官顧問のアレストビッチ氏はまだ決まっていないとの見方を示す。「クレムリンでは2つの意見で対立している。早期に大規模攻撃作戦を始めて、並行して30万人を新たに動員する、という意見がある。もう1つはまず30万人を動員してから攻撃すべきという意見だ」と指摘する。 他方で、ウクライナ軍も2023年2月以降に大規模反攻作戦の開始を計画している。ゼレンスキー政権としては、領土奪還とロシア軍に侵攻継続を断念させるために、2023年夏の戦場での決定的勝利と今秋での事実上の戦争終結を目指している。「最後の戦い」がウクライナ政府内での合言葉になっている。 この流れの中で今回決まった米欧からの大量の武器支援のうち、アメリカ軍主力戦車エイブラムス31両について、アメリカ政府はウクライナに到着する時期を曖昧にしており、実際は早くても2023年末になる可能性もある。ドイツ側はレオパルト2戦車については3〜4カ月かかるものの、一部は3月末には届く可能性があるとしている。 しかしウクライナの軍事筋は、武器供与全体のスケジュールについて「一部公表されている時期は表向きで、実際の到着はもっと早くなる」と明かす。ウクライナ軍が機甲作戦の先頭に立つと期待しているアメリカ軍の主力軽戦車ブラッドリーについては「早ければ、2023年2月初めに前線に配備される可能性がある」と語る。イギリスが供与する主力戦車チャレンジャー2も同様に一部が2月初めに前線に到着するとの見通しを示した。 一方で、今回の供与決定を前に、ウクライナとアメリカの間で実はさざ波が立っていた。ウクライナの反攻作戦に関し、バイデン政権から反転攻勢の開始を遅らせるようにとの予想外の提案が来たからだ。要請してきたのは2023年1月半ばにキーウを極秘訪問し、ゼレンスキー大統領と会談したバーンズ中央情報局(CIA)長官だ。 バーンズ氏とゼレンスキー氏との詳しい会談内容は公表されていないが、ウクライナの軍事筋によると、バーンズ氏の要請は以下のような趣旨だった。アメリカ政府の情報ではロシア側では近く大規模な攻撃を行う作戦計画が完成している。攻撃は逼迫している。このため、ウクライナにとって必要なのは、しっかりした防御作戦だ。この攻勢をはね返すことが先決だ。撃退できなければ、この戦争は長期化が避けられない。戦争終結は遠い将来の話になる。撃退できれば、ウクライナ軍は反転攻勢を始められるし、戦争の結果も見えてくる。 ●領土奪還作戦でアメリカと溝 つまり、本格的反転攻勢は、米欧が供与する攻撃用兵器が到着し、ウクライナ部隊への訓練が完了した段階で始めるべきとの提言だ。夏までに決定的な勝利を果たし、年内に戦争を終結することを目指しているゼレンスキー政権としては、計画の修正を迫られた形だ。ウクライナ軍のブダノフ情報局長はすでに、ウクライナ軍の反転攻勢開始を前提に「3月に戦闘は最も熱いものになるだろう」と言明していたほどだ。 アメリカ側の提案について、ウクライナがクリミア半島奪還に向け攻撃を急ぐ構えなのに対し、アメリカ軍はまず東部ドネツク州などでロシア軍の大規模攻撃をはね返すことが先決と勧告した可能性がある、と筆者はみる。 もちろん「さざ波」は今回のアメリカ、ドイツの主力戦車供与発表以前の段階の話だ。ゼレンスキー大統領が米欧の戦車供与決定をロシアと戦うための「自由の拳」と大歓迎したことを考えると、ウクライナがアメリカ軍の今回の「防御先決提案」を受け入れる可能性もあると筆者は見る。 しかし、いずれにしてもウクライナとアメリカとの間で領土奪還作戦をめぐりまだズレがあるのは事実だろう。アメリカ国防総省制服組トップのミリー統合参謀本部議長が、ウクライナへの軍事支援問題を協議した2023年1月20日の関係国会合後の記者会見で、ウクライナ側に対し、年内終結戦略を見直すよう半ば促すような発言をしていたからだ。 「軍事的観点からいえば、2023年中にロシア軍をウクライナ全土から軍事的に追い出すことは極めて難しいというのが私の意見だ」と述べた。議長はこう付け加えて、ウクライナ側に配慮も示した。「決して不可能と言っているわけではない。しかし、極めて難しい」と。 2023年内の全占領地奪還を目指して士気が高いウクライナに対し、米欧が共同で軍事支援するという団結姿勢を誇示したアメリカのバイデン政権。だが、その間には微妙な温度差が残っていることを理解しておく必要があるだろう。 |
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●北朝鮮 キム・ヨジョン氏がアメリカの戦車供与など強く非難 1/28
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記の妹、キム・ヨジョン(金与正)氏は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり初めての談話を発表し、アメリカが主力戦車をウクライナに供与することについて「戦争の状況をエスカレートさせている」と強く非難しました。 国営の朝鮮中央通信を通じて27日に発表された談話で、キム・ヨジョン氏は「ウクライナに天文学的な金額の軍事装備を譲り渡している」とアメリカなどによる軍事支援を批判しています。 そのうえで「帝国主義連合勢力がいくらあがいても強い精神力を備えたロシア軍と人民の英雄的な気概をくじくことは絶対にできない」と強調しています。 北朝鮮の報道を分析しているラヂオプレスによりますと、キム・ヨジョン氏が、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について談話を発表するのは初めてだということです。 北朝鮮は、ウクライナへの軍事侵攻をめぐりロシアを擁護する立場を侵攻当初から鮮明にしています。 一方、朝鮮半島情勢をめぐり、ロシアは、弾道ミサイルを発射する北朝鮮を擁護していて、北朝鮮としては核・ミサイル開発を加速させる中、両国の関係をさらに強化したい思惑があるとみられます。 |
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●ロシア軍 ウクライナ各地を攻撃 欧米の戦車供与けん制か 1/28
ロシア国防省はウクライナ各地をミサイルなどで攻撃して欧米からの兵器などの輸送を断ち切ったと主張しました。ウクライナへの戦車の供与を決定した欧米諸国をけん制したい思惑もあるとみられます。 ウクライナでは26日、首都キーウや南部オデーサなど各地でロシア軍によるミサイルや無人機の攻撃がありました。 ウクライナ政府は、あわせて11人が死亡したと発表し、電力会社によりますと各地の電力インフラも被害を受けたということです。 これについてロシア国防省は27日「上空や海上から大規模なミサイル攻撃を行った。この攻撃で、NATO=北大西洋条約機構から供給されたものを含め、戦闘地域への兵器や弾薬の輸送を断ち切った」と主張しました。 ウクライナに対してはイギリスやドイツ、アメリカなどが相次いで主力戦車の供与を表明していて、ロシアにはこうした支援をけん制したい思惑もあるとみられます。 一方、ウクライナに戦車「レオパルト2」を供与することを決めたドイツ政府は27日、ウクライナ軍の兵士が戦車を扱えるようにするための訓練を、来月はじめにドイツ国内で開始する予定であることを明らかにしました。 また、戦車「チャレンジャー2」を供与するイギリスも26日、国防省の高官が来週30日からイギリス国内でウクライナ軍の兵士に対して、戦車の操縦や整備についての訓練を開始する見通しを示しました。 ドイツ・イギリス両政府ともに戦車は3月末にもウクライナに届くとしています。 ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、イギリスのテレビ局「スカイニュース」のインタビューで反転攻勢には少なくとも300両の戦車が必要だと強調したうえで「戦車を供与する決定に感謝している。しかし、われわれはまだ受け取っていない。われわれが戦場で兵器を使って初めて安心できる」と述べ、迅速な支援を訴えました。 |
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●プーチン氏、ウクライナ戦争の長期化に身構え−新たな攻勢も準備 1/28
数週間で決着を付けるはずだった侵攻から1年近くがたつ中で、ロシアのプーチン大統領はウクライナで新たな攻勢を準備している。同時にロシア国内では、自身が今後何年も続くとみる米国やその同盟国との衝突に身構えさせようとしている。 ロシアの狙いは、数カ月にわたって劣勢続きの軍が再び戦争の主導権を握れることを誇示し、ロシアが現在支配する領土が認められる形でのある種の停戦に合意するよう、ウクライナとその支援国に圧力をかけることだ。事情に詳しい政府の当局者や顧問、関係者が述べた。 非公表の内容だとして匿名を条件に語った関係者によると、当初占領した面積の半分以上を失い、プーチン氏ですら自身が数十年かけて作り上げてきたロシア軍の弱さを否定できなくなっている。後退続きでロシア政府の多くが短期的な目標についてより現実的にならざるを得なくなり、現在の占領地を維持するだけでも成果だと認めている。 だが、プーチン氏はこれまでの失敗にもかかわらず、規模に勝る軍と犠牲をいとわない姿勢がロシアを最終的な勝利に導くとなお確信している。米国や欧州の見積もりによると、ロシア軍の死傷者数は既に数万人に上り、第2次世界大戦後のどの紛争よりも多い。ロシア大統領府関係者は、新たな攻勢は2月か3月にも始まる可能性があると述べた。ウクライナとその支援国も、米国や欧州が新たに約束した戦車が届く前にロシアが攻勢を開始する可能性があると警戒している。 プーチン氏が示す決意は、戦争が再びエスカレートする前兆となる。一方でウクライナも国土からロシア軍を駆逐する新たな攻勢を準備しており、ロシアの占領維持を認める停戦協定には応じない姿勢だ。関係者によると、プーチン氏はロシアの存亡を懸けて西側と戦っているとの認識で、戦争に勝利する以外に選択肢はないと信じている。新たな動員が今春行われる可能性もあるという。ロシアは経済や社会を二の次とし、戦争のニーズを最優先する性格をますます強めている。 |
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●アフリカ諸国と関係深めるロシア プーチン政権の狙いは 1/28
ウクライナへの侵攻を続けるロシアは、国際的な批判に対応するため、アフリカ諸国との関係強化に力を入れている。ラブロフ露外相は23〜26日にアフリカ4カ国を訪れ、ウクライナ侵攻での自国への支援などを訴えた。ロシアは軍事協力を通じ、アフリカでの影響力拡大も図っている模様だ。 ラブロフ氏は南アフリカ、エスワティニ、アンゴラ、エリトリアを訪問。ロシアは7月にアフリカ各国首脳を招いたサミットを予定しており、ラブロフ氏は下準備として訪問先の首脳らと意見を交わした。ロシア紙RBKによると、ラブロフ氏は2月にもチュニジアなどへの訪問を予定している。 ロシアの前身であるソ連は欧米諸国に対抗する狙いから、アフリカで積極的に活動していたが、ソ連崩壊後は影響力が低下していた。近年のプーチン政権はアフリカ政策に注力しており、2019年に初めてのサミットを開催。今回のサミットでは、食糧の安全保障▽資源の安全保障▽医療▽技術移転――を主要議題に掲げている。 ラブロフ氏は25日、アンゴラのロウレンソ大統領との会談で「西側がウクライナを利用して、ナチズムの思想と実践を促進しようとしている」点などを協議したと主張。今回のアフリカ訪問で関係国から理解が得られたとの説明を繰り返した。 一方で、南アフリカを訪れた際の記者会見では、記者から「ロシア軍はミサイルや無人機を用いて、ウクライナの民間インフラや民間人を攻撃している」と指摘されると、ラブロフ氏が「我々は民間インフラを攻撃していない。この点は広範に確認されている」と反論する場面もあった。 ラブロフ氏のアフリカ訪問を通じ、各国がロシアと軍事面で協力を維持している側面も見られた。南アフリカはラブロフ氏の来訪に先立ち、2月17日から東部ダーバンを拠点に中国、ロシアと海軍の合同演習を実施することを発表していた。開催時期がロシアのウクライナ侵攻開始から1年のタイミングに近いこともあり、国内では政府を批判する声も出ている。 南アフリカのパンドール外相は会見でこの点を問われると、「世界的に全ての国が友好国と軍事演習を実施している」と反論。同席したラブロフ氏も「三つの独立国が国際法に違反せずに演習を実施する」と援護した。 近年のロシアはアフリカ諸国に対し、兵器輸出に力を入れるほか、民間軍事会社「ワグネル」の部隊を派遣するなど、軍事面での関与を強めていると伝えられている。 |
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●世論調査に振り回される「孤独な独裁者」...戦争を終わらせないで延命 1/28
[ロンドン]ウラジーミル・プーチン露大統領によるウクライナ全面侵攻から間もなく1年。「死傷したロシア側の兵士は18万人に近づき始めている。ウクライナ軍の死傷者はおそらく10万人以上だろう。加えて約3万人の市民が殺害された」。ノルウェー軍の事実上の最高司令官エイリク・クリストファーセン氏は22日、同国のテレビ局TV2に明らかにした。 米マサチューセッツ工科大学(MIT)のバリー・ポーゼン教授は米外交誌フォーリン・アフェアーズで「ロシア軍は多くの間抜けなことをし続けたし、実際今でもしている。しかし軍事戦略全般に関して言えばモスクワはより賢くなったようだ」との見方を示し、「米国の推計によれば当時も今もロシアとウクライナの犠牲者の比率は1対1だ」と指摘している。 ロシア軍はウクライナ東部ハルキウ州と南部ヘルソン州から戦略的に撤退した。これで間延びした前線が大幅に短縮され、守りやすくなった。前線に沿って防御陣地を掘り、コンクリート製障害物や掩蔽壕(えんたいごう)を築く。地雷も敷設する。プーチン氏はクリミア半島とロシア本土を結ぶ「陸の回廊」を確保するのを優先しているように見える。 これに対して「プーチンの料理番」と呼ばれるロシア民間軍事会社ワグネル・グループ創設者エフゲニー・プリゴジン氏と、2014年の東部ドンバス紛争で親露派分離主義武装勢力を指揮したロシア民族主義者イゴール・ガーキン元ロシア軍司令官はプーチン氏の戦争のやり方を批判し始めた。 ●「世論調査はロシアの政治的意思決定の主要部分を占める」 プリゴジン氏とガーキン氏は対ウクライナ戦争を支持するタカ派政治家を味方につけようとしている。米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は、露国防省を批判するロシア民族主義者はロシア軍の退役軍人、自分の傭兵部隊を持つ民族主義者、ロシアの軍事ブロガーと戦争特派員の3グループに分裂していると分析する。 ガーキン氏は退役軍人を代表しており、プリゴジン氏は傭兵部隊を持つ自称・民族主義者。2人は醜い主導権争いを繰り広げている。プーチン氏は戦争を終わらせないことで自分の延命を図り、ミサイルやロケット、カミカゼドローン(自爆型無人航空機)攻撃でウクライナ市民を疲弊させ、泥沼の消耗戦に持ち込み米欧に厭戦ムードを醸成しようとしている。 棒が垂直にそびえ立ったような極端な独裁体制を確立したプーチン氏だが、「世論調査や国民感情の評価がロシアの政治的意思決定の主要部分を占めている」と英シンクタンク、王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャック・ワトリング上級研究員は指摘する。ワトリング氏はロシア連邦保安庁(FSB)が実施した世論調査などの機密情報を入手し、分析してきた。 そもそもウクライナ侵攻に踏み切ったのも世論調査の結果が一因をなしていたとワトリング氏はみる。なぜプーチン氏とその取り巻きたちがいとも簡単にウクライナを占領できると思い込んでしまったのか。侵攻直前の昨年2月、旧ソ連諸国での情報活動を担当するFSB第5局が裏で糸を引く形で、ウクライナ各地で世論調査が行われた。 ●世論調査で大別されるロシア国民の5グループ それによると、ウクライナ人は将来に悲観的、政治に無関心であり、政治家や政党、国家機関の大部分を信頼していなかった。67%がウォロディミル・ゼレンスキー大統領に不信感を抱いており、外国の侵略に抵抗するかどうかについては40%が「ウクライナを守らない」と答えていた。地域別に見ると、東部と南部ではウクライナ国家への信頼度がかなり低かった。 生活に困窮する東部と南部の住民の多くは占領当局がサービスを提供してくれるなら、進んで受け入れる用意があることを示唆していた。こうした調査結果を鵜呑みにしたプーチン氏とその取り巻きたちが、キーウのゼレンスキー政権さえ追い落とせば、東部や南部は簡単に支配できると過信した様子が浮かび上がってくる。 ワトリング氏はRUSIのホームページに掲載された論評の中で「世論調査はロシア人を5グループに大別する傾向がある。コスモポリタン、ニヒリスト、ロイヤリスト、グローバリスト(外向き)愛国者、万歳(内向き)愛国者だ。コスモポリタンは人口の12〜15%を占め、積極的な反対派の中核を形成するとみられている」と指摘する。 コスモポリタンの半数弱はウクライナと個人的なつながりがあると評価されている。人口の10%強を占めるニヒリストは政府に批判的だが、無関心で、受動的とみられている。残りのグループは程度の差こそあれ、いずれも政府を支持すると考えられている。しかし人口の20〜25%の万歳愛国者は戦争に深く関わっているため、失敗には厳しく反応する可能性がある。 ●ロシア人も核戦争を懸念している 昨年5月と8月に実施された世論調査ではウクライナ戦争に対する高い支持とごく限られた懸念が示された。しかし9月に部分動員を宣言した後は戦争についてより広く議論されるようになり、幅広い層の人々が、自分たちの見通しとロシアへの経済的影響の両方に悲観的であることが示されたが、その多くは戦争の成功をもたらす方策に賛成していた。 調査で最も懸念されていたのは核戦争で、回答者は核戦争の可能性を減らす手段を講じることに賛成していた。「ロシアが核兵器使用をちらつかせるのは、ウクライナや米欧を威嚇するのと同程度に、ロシア国内の恐怖心を高める狙いがある。その恐怖を低減するためには政府を支持する必要があると思い込ませるのだ」とワトリング氏は分析する。 今のところ万歳愛国者の批判は特定の司令官や地方行政官の動員対応、社会の態度に向けられている。しかし、こうした批判がプーチン氏に向けられ始めたら、ロシアで最も不満を抱いている層が「ポスト・プーチン」を模索することになるかもしれない。しかし世論は5グループに分かれ、その中の万歳愛国者は3つに分裂している。 プリゴジン氏とガーキン氏が対立している限り、プーチン氏は安泰だ。戦場で死傷者が出ても非難の矛先が自分に向かってくることはないと高を括っている。「世論調査から読み取れるのはクレムリンが戦争の損失を維持できるということだ。世論に与える影響が少ないため、クレムリンは戦争の長期化に安住しているように見える」とワトリング氏は指摘する。 |
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●ロシアが「併合」したウクライナ4州、モスクワ時間に切り替えへ…実効支配 1/28
ロシアの産業貿易省は27日、ロシアが昨年9月、一方的に併合を宣言したウクライナ東部と南部の4州について、近く、モスクワと同じ時間に切り替えると発表した。モスクワは、ウクライナより1時間進んでいる。ウクライナ側の反発は必至だ。 プーチン政権は4州に対し、ロシアの行政や経済、司法制度を段階的に導入し、実効支配を強める構えだ。 東部ドネツク州とルハンスク州では、2014年に一方的に「独立」を宣言した親露派武装集団が、実効支配地域をモスクワ時間にすると主張してきた。ロシアは、14年に併合したウクライナ南部クリミアでも、モスクワ時間に切り替えている。 |
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●「使い捨ての突撃兵」 ワグネルの過酷な戦術、ウクライナ諜報で明らかに 1/28
ウクライナ東部におけるロシアの攻勢で使い捨ての歩兵となっているワグネルの戦闘員。だが、CNNが入手したウクライナ軍の諜報(ちょうほう)文書からは、バフムート周辺のワグネルがいかに効果的な部隊かが浮かび上がる。そして、彼らを相手に戦うのがいかに難しいかも――。 ワグネルはオリガルヒ(新興財閥)のエフゲニー・プリゴジン氏が経営する民間軍事会社だ。プリゴジン氏はこのところ前線で非常に目立つ存在となっており、ロシア軍が前進すればすかさず、自らの功績だと主張する。ワグネルの戦闘員はバフムートの北東数キロにあるソレダルや周辺地域の奪取作戦に深く関与した。 ウクライナ軍の報告書は昨年12月のもので、ワグネルが近接戦闘で類を見ない脅威になっていると結論。死傷者数は膨大だが、「ワグネルの兵士が何千人死亡しようとロシア社会には関係ない」と指摘している。 「突撃部隊は命令なしでは退却しない。無許可でチームを退却させたり、負傷せずに撤退したりすれば、その場で処刑されうる」 ウクライナの情報筋が入手してCNNと共有した電話の傍受記録からも、戦場での情け容赦ない姿勢が浮かび上がる。傍受記録の一つでは、兵士の一人がウクライナ側に投降しようとした別の兵士について言及する声が聞こえる。 「ワグネルの関係者は彼を捕まえ、局部を切り取った」と、この兵士は語っている。 CNNは昨年11月のものとされる当該の電話について独自に真偽を確認できていない。 負傷したワグネルの戦闘員は戦場に何時間も放置される場合が多い。「突撃歩兵は自分たちで負傷者を戦場から運び出すことを許されていない。彼らの主任務は目標達成まで突撃を続けることだからだ。突撃が失敗しても、撤退は夜にしか許されない」 冷酷なまでに犠牲に無関心なワグネルだが、ウクライナの分析はワグネルの戦術について、「ろくに訓練を受けていない動員兵にとって効果的な唯一の戦術だ。ロシアの地上部隊はそうした動員兵が多数を占める」との見方を示す。 ロシア軍が戦術を修正してワグネル化を図っている可能性もあり、「ロシア軍の従来の大隊戦術グループに代わり、突撃部隊が提案されている」という。 そうなれば、伝統的により大規模な機械化部隊に頼ってきたロシアにとって大きな変化になる。 ●ワグネルの戦い方 ウクライナの報告書によると、ワグネルは十数人以下の機動部隊で戦力を展開。ロケット推進擲(てき)弾(RPG)や、無人機からリアルタイムで届く情報を活用している。 このほか、ワグネルの兵士は米モトローラ製の通信機器も使用しているとされる。 モトローラはCNNに対し、ロシアへの販売はすべて停止しており、ロシアでの事業も閉鎖したと述べた。 ワグネルによって数万人規模で採用された囚人たちは多くの場合、攻撃の第1波を担う。最も大きな損害を被るのは彼らで、ウクライナの当局者によると、損耗率は8割に上る。 その後、熱線映像装置や暗視装置を装着した経験豊富な兵士たちが続く。 ウクライナ軍の側でも、塹壕(ざんごう)に擲弾攻撃が浴びせられる事態を防ぐため、ドローンの情報が不可欠になる。今回の文書には、ドローンが前進するワグネルの部隊を発見したおかげで、RPGの発射前に守備隊による排除に成功した例が記されている。 ワグネルの兵士は陣地の奪取に成功すると、火砲の支援を受けながら蛸壺(たこつぼ)を掘り、獲得した陣地を固める。ただ、こうした蛸壺は開けた場所での攻撃に対してぜい弱だ。そしてウクライナの傍受によると、ここでもワグネルとロシア軍の調整不足が目立つ。真偽の確認はやはり不可能だが、傍受されたある電話では兵士が父親に、所属部隊が誤ってワグネルの車両を破壊したと語っている。 プリゴジン氏はロシア軍にとって数カ月ぶりの戦果となったソレダルや周辺集落の制圧をめぐり、ワグネルの戦闘員の功績だと繰り返し強調。「ワグネル以外の部隊はソレダルへの攻撃に関わっていない」と主張する。 ワグネルの戦いぶり次第で、プリゴジン氏はより多くのリソースを確保する道が開け、ロシア軍の既得権益層との争いに利用できるようになる。プリゴジン氏は軍の既得権益層の無能さと腐敗を批判する場面が多い。 ロシア国防省がさえない戦いぶりを続ける限り、プリゴジン氏は彼らにかみつき、ワグネルへのリソースを増やすよう要求するだろう。 ワグネルが兵器を獲得する手段は他にもあるとみられる。米当局者は先週、ワグネルが北朝鮮から兵器を調達していると指摘。米国家安全保障会議(NSC)のカービー報道官は「先月、北朝鮮がワグネルの使う歩兵用のロケットとミサイルをロシアに輸送した」と明らかにした。 ●新たなラスプーチン? プリゴジン氏は野心に事欠かない。先週ソレダル入りした際には、ワグネルはおそらく「現在の世界で最も経験豊富な軍隊だ」と豪語した。 プリゴジン氏は、ワグネルが既に多連装ロケットシステムや自前の防空システム、火砲を手にしていると主張する。 また、ワグネルとトップダウン式の硬直したロシア軍をそれとなく比較し、「現場の全員の意見が尊重されている。指揮官は戦闘員と話し合い、PMC(民間軍事会社)の経営陣は指揮官と話し合っている」とも述べた。 「ワグネルが前進してきた理由、今後も前進を続ける理由はここにある」(プリゴジン氏) カーネギー国際平和基金のシニアフェロー、アンドレイ・コレスニコフ氏は2カ月前、プリゴジン氏の拡大する影響力を皇帝ニコライ2世の宮廷におけるグレゴリー・ラスプーチンの影響力になぞらえ、カレントタイムTVの取材に「プーチン氏はなりふり構わず軍事的有効性を求めている」との見方を示した。 「(プリゴジン氏には)悪魔的な負のカリスマがあり、ある意味で、そのカリスマはプーチン氏に匹敵する。いまのプーチン氏はこうした役割、こうした形のプリゴジン氏を必要としている」(コレスニコフ氏) プリゴジン氏自身、ラスプーチンとの比較に興味をそそられているようだ。ラスプーチンはニコライ2世の息子の血友病を治療した神秘的な人物として知られる。ただ、先週末に自身の会社「コンコルド」が公開した発言で、プリゴジン氏はそこに持ち前のひねりを加えてみせた。 「残念ながら、私は出血を止めるわけではない。祖国の敵に血を流させるのが私の仕事だ。それも祈とうではなく、敵との直接接触によって」 |
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●ウクライナ “ロシア軍が極超音速ミサイル使用 大規模攻撃も” 1/28
ウクライナは、ロシア軍が今月26日に各地で行った攻撃で、極超音速ミサイルも使ったと明らかにするとともに、侵攻が始まって1年になる来月24日までに再び大規模な攻撃を仕掛けてくるとみて、警戒を強めています。 ウクライナで今月26日、首都キーウや南部オデーサなど各地でロシア軍によるミサイルや無人機の攻撃があり、ウクライナ政府などによりますと合わせて11人が死亡したほか、電力インフラにも被害が出たということです。 ロシア国防省は27日、「この攻撃でNATO=北大西洋条約機構から供給されたものを含め、戦闘地域への兵器や弾薬の輸送を断ち切った」と主張し、ウクライナに対して主力戦車を供与すると相次いで表明する欧米側をけん制するねらいもあるとみられます。 26日の攻撃をめぐって、ウクライナ空軍のイグナト報道官は27日、ロシア軍が極超音速ミサイル「キンジャール」も使ったと地元メディアに明らかにしました。 キーウや南部ザポリージャ州の重要インフラが標的だったとしたうえで、今のウクライナ軍には「キンジャール」を迎撃する能力がないという認識を示しました。 また、ウクライナの国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は、メディアのインタビューで、ロシアが軍事侵攻を始めて1年になる来月24日までに東部ドンバス全域の掌握をねらって、再び大規模な攻撃を仕掛けてくるとみて警戒を強めています。 |
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●ウクライナの穀物生産量 今年さらに減少と業界団体が推計 1/28
ウクライナの今年の穀物の生産量について、ロシアによる軍事侵攻の影響で大幅に減少した去年から、さらに下回るとの推計を業界団体が明らかにしました。 ロイター通信によりますと、「ウクライナ穀物協会」は26日、2023年の穀物と油用種子の生産量について、およそ5000万トンになるとの推計を明らかにしました。 協会によりますと、2021年の生産量はおよそ1億600万トンでしたが、去年はロシアによる軍事侵攻の影響で、およそ6700万トンに減少、今年はこれをさらに下回るとの推計です。 ウクライナは小麦やトウモロコシなどの穀物の世界有数の輸出大国でしたが、軍事侵攻後、黒海に面する南部オデーサの港をロシアが封鎖したことなどにより輸出が停滞。 その後、国連とトルコの仲介で輸出が再開していますが、協会によると今季の穀物と油用の種子の輸出量はおよそ3000万トンに留まっているということです。 |
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●ウクライナへの「戦車供与」に折れたドイツの苦悩 1/29
2022年2月24日のロシアのウクライナ侵略を機に、ドイツはそれまでの平和外交や対ロシア宥和姿勢から、「安全保障政策の転換」(ドイツ語で「時代の変わり目」Zeitenwende=ツァイテンヴェンデと呼ばれる)を成し遂げたはずだった。 しかし、戦車供与をめぐる逡巡を見れば、安保面でヨーロッパを主導するにはまだ限界があることは明らかだ。 ●欧州諸国の批判に押された ショルツ・ドイツ首相は1月25日、ドイツ軍の改良型「レオパルト2A6」14台(1個中隊相当)、弾薬、保守整備をウクライナに供与すると発表した。ウクライナ戦車兵の訓練をドイツ国内で行い、欧州諸国に配備されているレオパルト2のウクライナへの供与も承認する。合わせて2個戦車大隊(1個大隊は戦車44台)を編成できる見通しという。 冬季に入りウクライナ戦争が膠着状態となる中、戦局打開の切り札として議論されてきた戦車供与問題は一応の決着を見たが、西側諸国の結束の難しさが明らかになるとともに、供与をためらったドイツに対する不信感が残る結果となった。 毎年恒例のダボス会議(1月16〜20日)、ドイツ南西部ラムシュタイン米空軍基地で開かれたウクライナ軍事支援を話し合う国防相会議(20日)で、ドイツの供与表明に期待が集まった。 しかし、ショルツ・ドイツ首相、ピストリウス国防相とも供与を明言せず、欧州諸国の批判が高まった。ドイツ政府の急速な政策決定がこうした圧力に押されてのものだった印象はぬぐえない。 ドイツ製戦車は、ウクライナが2022年3月にドイツに示した供与希望の武器リストにすでに入っていた。この数カ月、ロシア軍が近く大攻勢をかけるとの情報が伝わる中、ロシア軍を押し戻し、領土を奪回するには、ロシア軍戦車に性能が勝る西側の戦車が不可欠として、ウクライナは要求のトーンをあげていた。 レオパルト2は、1978年に生産が開始された第3世代の戦車だが、その後も改良が加えられ、世界で最も強力な戦車の1つに数えられる。これまでに3500両が生産され、ドイツをはじめ欧州諸国を中心に世界14カ国で使用されている。 旧ソ連製戦車の砲撃に耐えられる装甲を持っており、ロシア軍の塹壕を突破するなど威力を発揮すると見られている。欧州諸国に多数配備されていることから、政治決定があれば供与は比較的容易だ。 ●シュルツ氏に反戦世論の手紙やメール ショルツ氏が戦車供与をしない理由をはっきり説明してこなかったことが、ドイツに対する不信感を高める結果となった。ただ、公共放送ARDやシュピーゲル誌の報道などを総合すると、以下のことが言えそうである。 これまでにショルツ氏は、ウクライナ兵器支援に関する3つの原則を挙げている。 1ウクライナは断固として支援されねばならない 2ドイツとNATOは戦争に引き込まれてはならない 3(国際社会でのドイツの)単独行動(Alleingang=アラインガング)はあってはならない このうち戦車供与をためらう理由となる原則は2と3である。 日本と同様、第2次世界大戦の敗戦国であるドイツには根強い反戦平和主義がある。ショルツ氏が自ら明らかにしたところでは、彼のもとには、国民から毎日、ドイツが戦争に巻き込まれることを懸念する数百通の手紙やメールが届いているという。世論調査では、戦車供与への賛否はほぼ拮抗しているが、ショルツ氏としては国内の反戦世論にも配慮する必要がある。 ショルツ氏の政党であるドイツ社会民主党(SPD)は、歴史的にドイツの反戦運動の担い手の1つである。党内左派は平和主義に加え、親ロシアの傾向も強く、依然として影響力がある。 中心人物がミュッツェニヒ連邦議会(下院)議員団長で、欧州配備の米戦術核撤去や兵器輸出、国防費増額に反対してきた。ピストリウス国防相もかつて、2014年のクリミア併合に対する対ロシア制裁の見直しについて言及したことがある。 ●親ロシア傾向の党内左派に配慮 SPD議員団は1月12日にウクライナ戦争の外交的解決を訴える文書を採択した。ショルツ氏とプーチン・ロシア大統領の電話会談などで、ロシアとの対話の可能性を閉じてはならないとする一方、すでにウクライナへは多量の装備や兵器を供与してきたとして、戦車供与に関しては言及していない。 SPD議員からは、戦車供与が決まれば、次は戦闘機、その次は戦闘部隊と、戦争がエスカレートする事態への懸念が表明されている。また、そうしたエスカレーションの中で、プーチン氏が核使用に踏み切る可能性も否定できない。 ショルツ氏自身はSPD党首を兼ねていないため党内基盤が弱く、左派に余計に配慮しなければならない事情もある。ロシアの出方やドイツ国内のさまざまな意見を見極めて一歩一歩進む、彼の慎重な政治スタイルも大きいだろう。ドイツ・メディアはしばしば、ショルツ氏のコミュニケーションのまずさをやり玉に挙げている。 3の「単独行動はあってはならない」という原則は、ナチ・ドイツが欧州を侵略した反省から、アメリカや他の欧州諸国との多国間協調を重視し、単独行動はしないという戦後(西)ドイツ以来の外交方針で、今でも何かにつけて強調される。 今回もその原則に盾に、アメリカと共同して戦車を供与すると主張した。ただ、ドイツが率先して供与すると、ロシアからことさら敵視される恐れがあり、それを避けるための口実に使っていた面は否定できない。英国、ポーランド、フィンランド、フランスなどが相次いで戦車供与を表明し、「単独行動を避ける」という口実は有名無実になっていった。 ●アメリカの戦車供与が後押し ドイツからM1エイブラムス戦車の供与を求められていたアメリカは当初、「欧州に配備されていないので大西洋を運ばねばならず、ガスタービンエンジンのジェット燃料補給が難しい」と消極的だった。しかし、最終的にはドイツの供与を促すという「軍事的判断というより政治的判断」(ARD)で、アメリカもM1エイブラムスを供与することを決断した。 アメリカが供与に同意し、リスクの分散が可能になったと説明できるようになったからこそ、ドイツがレオパルト2供与に踏み切ったと見られている。 ドイツ国内では、これまで戦車の早期供与を主張してきた連立与党の緑の党、自由民主党(FDP)、野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は、ショルツ氏の決断を歓迎しているが、「もっと迅速に行うべきだった」という留保付きである。 確かに、依然として軍事に関する忌避感があるドイツとしては、火砲、対空砲、歩兵戦闘車といったこれまでの供与実績だけでも、侵略前はとても考えられなかったタブーの破壊と言えるだろう。 しかし、「緩慢な意思決定は時間を無駄にした。ドイツは常に新たな理由をつけて兵器供与に同意せず、それでも結局は供与する、という印象を植え付けてしまった」(ARD)という批判も出ており、欧州の安全保障に主導的役割を果たすにはまだほど遠いドイツの姿をさらしてしまったことは否めない。 ドイツのウクライナ戦争に対する姿勢は今後も問われ続けることになるだろう。 すでにウクライナ政府の閣僚などから、ドイツなどに配備されているトルネード戦闘機の供与を求める発言も出始めている。しばらくすれば、新たな兵器供与の是非をめぐる議論が浮上しそうである。 |
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●ウクライナへ戦闘機供与か 戦車に続き、紛争激化懸念 欧米諸国 1/29
ロシアの侵攻を受けるウクライナへ欧米諸国が主力戦車の提供に踏み切ったことで、「次の段階」の支援として戦闘機供与が浮上している。 攻撃性の高い戦車供与で「タブー」が破られ、先進兵器の本格支援に道が開かれた形だが、戦闘力のさらなる増強は紛争激化につながると懸念も根強い。 米国とドイツは25日、それぞれの主力戦車「エイブラムス」と「レオパルト2」をウクライナに送ると発表した。レオパルト2を保有するポーランドやフィンランドなども追随。英国も先に「チャレンジャー2」の供与を表明し、各国の戦車は3月ごろから供給が開始される見込みだ。 戦車供与に慎重だった米欧が方針転換したことで、軍事支援は新たな局面を迎えた。領土奪還を目指すウクライナは、戦車決定から時を置かずに一層の支援拡大を要請。報道によると、ウクライナ国防相顧問は25日、「当初西側は重砲や高機動ロケット砲システムHIMARS(ハイマース)、戦車の供与を望まなかったが実現した」と述べた上で、「戦闘機が次の大きなハードル」と指摘。戦車と並び戦況に影響する可能性の高いF16戦闘機などが手に入れば「戦場での利点は巨大だ」と提供を改めて呼び掛けた。 戦闘機に関しては、米独とも現段階では供与計画を否定している。しかし、英紙フィナンシャル・タイムズによれば、欧州防衛当局者の間で既に「初期段階」の協議が進められ、米ロッキード・マーティン社もF16増産を準備中。オランダの閣僚も議会審議で、保有するF16の提供検討を表明するなど、「かつて不可能とみられたF16のウクライナ上空飛行は今ならあり得る」(英スカイニューズ)状況になりつつある。 ただ、戦闘機の提供は戦争を泥沼化させるリスクをはらむ。戦車供与発表から間もない26日、ロシアはウクライナ各地に空爆を仕掛けており、戦闘機が送られれば反発を一層強めるのは必至だ。ロシアと西側の直接対立につながる恐れも否定できず、関係国は極めて慎重な判断を迫られる。 |
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●ウクライナ侵攻 軍事会社の参戦 残虐行為は露政府の責任 1/29
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」がウクライナで残虐行為を繰り返しているとして、国際社会から非難を浴びている。 露実業家のプリゴジン氏が2014年に創設し、中東やアフリカの紛争地でも活動してきた。 元兵士を雇い入れてきたほか、刑務所で高額報酬など有利な条件を提示して受刑者をリクルートしている。今では戦闘員約5万人のうち8割が受刑者とされる。 ウクライナ東部のドネツク州ソレダルを陥落させ、露国防省から「ワグネル志願兵の行動で制圧に成功した」とたたえられた。 ウクライナ政府によると、首都キーウ(キエフ)郊外ブチャでの大量殺害にも関与した。ノルウェーに逃げたワグネルの元指揮官も組織の残虐性を証言している。 米政府は「残虐行為と人権侵害を続けている」として国際犯罪組織に指定した。欧州諸国でも批判が高まっている。北朝鮮から武器を提供されたとの指摘もある。 民間軍事会社は冷戦終結後、兵員の削減を補うため、米欧などで設立が相次いだ。メンバーの多くは武器の扱いに慣れた元兵士だ。 2003年からのイラク戦争では、米軍事会社の警備員が市民を殺害し国際的な問題となった。 米欧の軍事会社が、要人警護や物資輸送など後方支援に携わっているのに対し、ワグネルは実際の戦闘に参加している。 国際人道法では、正規軍の兵士が民間人を殺害した場合、兵士だけでなく、命令を下した上司や派遣国の責任が問われる。 一方、民間軍事会社の行為については想定されておらず、国は責任がないと主張する余地がある。 ロシアは法律で民兵組織を禁じ、ワグネルについても公式には軍事組織と認めていない。政府や軍の幹部が自分たちに責任が及ぶのを避けるため、隠れみのに利用しているとも指摘されている。 プリゴジン氏はかつて、露大統領府の食事サービスを請け負うなど、プーチン大統領と関係が深いとされている。 ロシアが侵攻して始まった戦争だ。受刑者が参加していることからも、当局者の関与は否定できない。ワグネルの残虐行為に関しては、プーチン政権が責任を負わなければならない。 |
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●ロシア軍の攻撃続く ウクライナは供与戦車が300両超と明かす 1/29
ロシア軍は今月26日の大規模な攻撃のあとも東部や南部で攻撃を繰り返し、市民の犠牲が増え続けています。 こうした中、欧米からウクライナへの戦車の供与をめぐって、フランスに駐在するウクライナの大使は、供与される戦車の数があわせて300両を超えたことを明らかにしました。 ロシア軍は、今月26日にウクライナ各地でミサイルや無人機による大規模な攻撃を行ったあとも、東部や南部で攻撃を繰り返しています。 東部ドネツク州の知事は28日、ウクライナ側の拠点の1つ、バフムトからおよそ20キロ西にあるコスチャンチニウカの住宅地でロシア軍による砲撃があり、市民3人が死亡し、少なくとも2人がケガをしたとSNSで明らかにしました。 ウクライナ側は、ロシアが軍事侵攻を始めて1年になる2月24日までに再び大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性があると、警戒を強めています。 こうした中、フランスに駐在するウクライナのオメリチェンコ大使は27日、現地のテレビ局に対し、欧米からウクライナに供与される戦車の数があわせて321両になったことを明らかにしました。 一方で、各国が供与する戦車の数の内訳や具体的な型式などは、明らかにしていません。 ゼレンスキー大統領は27日、イギリスのテレビ局スカイニュースのインタビューで「300から500両の戦車が必要だ」と述べていて、今後も戦況に応じて引き続き軍事支援を求めていくものと見られます。 |
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●ロシア軍攻撃続く ゼレンスキー大統領 “長距離ミサイル必要” 1/29
欧米からウクライナへの戦車の供与が相次いで決まる一方、ロシア軍は東部や南部で攻撃を繰り返し、市民の犠牲が増え続けています。ウクライナのゼレンスキー大統領は「十分なミサイルがあれば、このロシアのテロを止めることができる」と述べ、長距離ミサイルなどさらなる武器の支援を各国に求めています。 ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナにむけて欧米各国は主力戦車の供与を相次いで表明していて、フランスに駐在するウクライナのオメリチェンコ大使は27日、現地のテレビ局に対し、欧米から供与される戦車の数があわせて321両になったことを明らかにしました。 一方、ロシア軍は、ウクライナの東部や南部で攻撃を繰り返していて、ゼレンスキー大統領は28日、公開した動画で、東部ドネツク州のウクライナ側の拠点のひとつバフムトからおよそ20キロ西にあるコスチャンチニウカの住宅地でロシア軍による砲撃があり、市民3人が死亡、14人がけがをしたと明らかにしました。 ウクライナ側は、ロシアが軍事侵攻を始めて1年となる2月24日までに再び大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性があると、警戒を強めています。 ゼレンスキー大統領は「ウクライナ軍に十分なミサイルがあれば、このロシアのテロを止めることができる。ウクライナには長距離ミサイルが必要だ」と述べ、アメリカが供与に応じていないより射程が長いミサイルなどさらなる武器の支援を各国に求めています。 |
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●元NATO軍事委員長がチェコ大統領に 西側とのつながり強化 1/29
チェコで28日に大統領選の決選投票が行われ、退役将軍で元北大西洋条約機構(NATO)軍事委員長のペトル・パヴェル氏(61)が、アンドレイ・バビシュ前首相に勝利した。 パヴェル氏の得票率は57.6%だった。2017〜2021年にチェコの首相だったバビシュ氏は、結果発表後すぐに敗北を認めた。 現職のミロシュ・ゼマン大統領は、3月に退任する予定。 パヴェル氏は結果発表後、真実や誠実、敬意、謙虚といった価値観が勝ったのだと述べた。 「チェコ国民の大半がこの価値観を共有している。今こそこの価値観を『城』と政治に戻すべきときだ」 チェコの大統領府はプラハ城に置かれている。パヴェル氏の支持者らは、1989年11月に共産党政権が崩壊したビロード革命で使われたスローガン「ハヴェルを城へ!」にちなみ、「パヴェルを城へ!」と叫んだ。 チェコの大統領職はほとんど儀礼的なものだが、影響力は大きい。首相や中央銀行総裁を任命するほか、外交方針に関与できる。 ●ウクライナ支援も争点 今回の決選投票は、大衆主義者で少数独裁的な政治を行ってきたバビシュ氏か、リベラルな民主主義政治を掲げるパヴェル氏かの2択だと目されていた。 パヴェル氏はチェコを欧州連合(EU)やNATOに留めおきたい考え。ロシアのウクライナ侵攻に関しては、ウクライナへの軍事支援を強く支持していた。2015年から2018年には、NATO軍事委員長として、加盟30カ国で構成する軍事機構のトップを務めていた。 一方のバビシュ氏は今週初め、NATO加盟国が攻撃された場合、その国を守る義務を果たすつもりはないと示唆して批判を浴び、撤回を余儀なくされた。 バビシュ氏はテレビ討論会で、「私は平和を望み、戦争は望まない」として、「どんな状況でも、我々の子供や、女性の子供たちを戦争に送るわけにはいかない」と述べていた。 ●西側の一員 ヴァーツラフ・ハヴェル氏は、革命後に共和制となったチェコの初代大統領。チェコのEUやNATO加盟を強く後押ししてきたパヴェル氏は、ハヴェル氏の精神を引き継いでいると言われている。 パヴェル氏の大統領選出により、チェコが西側の一員となることがあらためて確認されたと受け止められている。 欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、パヴェル氏の当選を祝福し、「我々、欧州の価値観への強い寄与」を歓迎した。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領やコソヴォのヴィヨサ・オスマニ大統領も、ソーシャルメディアでパヴェル氏を祝った。 同じく西側寄りでリベラル派のズザナ・チャプトヴァ・スロヴァキア大統領は、結果が発表された数時間後にチェコを訪れ、パヴェル氏と対面した。 ●偽情報と殺害予告 選挙中、両陣営は鋭く対立した。殺害予告や偽情報の拡散も、選挙戦に影を落とした。 先週には、ロシアのヤンデックスのサーバーを使った偽のウェブサイトや電子メールが、「パヴェル氏死亡」という偽情報を拡散した。パヴェル氏はツイッターでこれを否定しなければならなかった。 バビシュ氏はこの偽情報を非難。自身も匿名の殺害予告を受けたため、数日前から全ての対面の選挙活動をとりやめていた。 バビシュ氏率いる「ANO」の事務所では、職員が笑顔を浮かべていたものの、落胆の色は明らかだった。 バビシュ氏は記者団に対し、パヴェル氏の勝利を祝福するとともに、ネガティヴ・キャンペーンを行ったことを否定した。 また、ツイッターにいる大勢の反対派への返答として、「バビシュのいない世界をお迎えください。バビシュのことは忘れて、バビシュなしで生きてみてほしい」と語った。 「バビシュを憎みながら朝を迎え、バビシュを憎みながら眠りにつくのはやめよう」 |
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●退陣願う「プーチンの遺灰」 ロシアの反政権バンド、新曲動画を公開 1/29
プーチン政権への批判を続けるロシアのパンクバンド「プッシー・ライオット」が28日、新曲のビデオクリップを公開した。「プーチンの遺灰」と題し、プーチン氏の早期退陣を願ってつくったとしている。 約3分の新曲の動画では、目出し帽をかぶった女性たちが「ウラジーミル・プーチン氏を無力化する」と書かれた赤いボタンを運んでいる。ボタンが押されると、女性たちは3メートル四方のプーチン氏の肖像画を呪文を唱えながら燃やす。 動画の説明などによると、撮影は昨年8月に行われ、ロシア、ウクライナ、ベラルーシなどの女性12人が出演しているという。 メンバーのナジェージダ・トロコンニコワさんは2012年、他のメンバーと共にモスクワの「救世主キリスト聖堂」でプーチン氏を批判するゲリラ演奏を行い、暴徒行為罪で自由剝奪(はくだつ)2年の実刑判決を受けた。 現在、主要なメンバーはロシアを脱出して活動しているという。新曲の発表に際し、トロコンニコワさんはSNSに「私たちの自由を奪えても、私たちを黙らせることはできない」と投稿している。 |
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●ロシアから中国向けの天然ガス供給拡大 その狙いは? 1/29
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは、中国向けの天然ガスの供給を拡大しています。先月には東シベリアにロシア東部最大のガス田が操業を開始し、中国へのパイプラインが全面的に開通しました。ロシアの天然ガスをめぐる状況は? プーチン政権の狙いは何か? 最新の状況などをまとめました。 ●新たなガス田とは? ロシアの政府系ガス会社ガスプロムは、去年(2022年)12月21日、東シベリアのイルクーツク州にあるロシア東部最大のコビクタ・ガス田の操業を開始しました。 ガスプロムによりますと、このガス田で採掘可能な天然ガスの埋蔵量はおよそ1兆8000億立方メートルで、計画では、2026年以降、年間270億立方メートルを生産するとしています。 ガスプロムは、式典に先だってコビクタ・ガス田の生産拠点をロシアのメディアに加え、中国メディアやNHKに公開しました。 現場は、冬には気温がマイナス60度まで下がることもある極寒の地にあります。 ガスプロムの担当者は厳しい環境下にもかかわらず、ロシアの技術でプロジェクトを実現できたと強調していました。 ここで産出された天然ガスは「シベリアの力」と呼ばれるパイプラインを通して中国に輸送されます。 「シベリアの力」は、ロシアから中国へ直接ガスを送る一大プロジェクトで、2019年に別のガス田からの供給を始めていましたが、今回、このガス田とパイプラインがつながったことでおよそ3000キロにわたって全面的に開通したことになります。 コビクタ・ガス田の操業開始の式典にオンラインで出席したプーチン大統領は「ロシアのガス業界、経済全体にとって、特別で記念すべき出来事だ」と意義を強調しました。 ●別のパイプライン計画も さらに、ロシアは、モンゴルを経由して中国にガスを送るパイプライン「シベリアの力2」の建設計画も進めています。 ロシア国営のタス通信によりますと、2024年から建設が始まる可能性があるとして、完成すれば、年間500億立方メートルの天然ガスをさらに中国に輸送できると見込まれているとしています。 ロシア政府でエネルギー問題を担当するノバク副首相は去年(2022年)9月、国営テレビのインタビューで「シベリアの力2」について、ロシアとドイツを結ぶ「ノルドストリーム2」の年間輸送能力に匹敵するとして「ノルドストリーム2の代替になる可能性がある」と述べ、開発への意欲を示しました。 プーチン大統領は、12月15日に開いた政府の会議で天然資源の供給先について「ヨーロッパよりも有望なパートナーを探していく」と述べ、制裁を科すヨーロッパ側をけん制する一方、中国などとの連携を強調し強気の姿勢を示しています。 ●ロシアのガスに依存していたヨーロッパは 天然ガスなどのエネルギー供給で、ロシアに大きく依存してきたのがヨーロッパです。 ヨーロッパ最大の経済大国ドイツは、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始める前までは、輸入する天然ガスの50%以上をロシア産が占め、EU=ヨーロッパ連合全体でも2021年の時点でおよそ40%に上っていました。 侵攻後、EUは、ロシアに対して石炭や海上輸送される原油の輸入禁止など制裁を科すとともに、2030年までにエネルギーでロシアに依存してきた状況から脱却する方針を示しています。 一方、ロシアは、ドイツ向けの天然ガスパイプライン、ノルドストリームによるガスの供給を大幅に削減し、ヨーロッパでエネルギー価格の上昇を引き起こしました。 ロシアとしては、制裁を科すヨーロッパに揺さぶりをかけるねらいがあるとみられます。 ドイツやフランスなどユーロ圏の消費者物価指数では、エネルギー価格が大幅に上昇していて、去年の9月から10月には2か月連続で前の年の同じ月と比べ40%を上回る値上がりとなりました。その後、上昇はやや緩やかになっていますが、家計や企業にとって負担となっています。 ドイツの首都ベルリンで市民に話を聞くと「ガス代がこれまでの3倍になりました。光熱費以外はすべての出費を抑えています」という声や「暖房の温度を低くしたり、シャワーの時間を短くしたりして節約しています。この先の天然ガスの確保にも不安を感じます」といった声が聞かれました。 ●専門家「ロシアと中国、インドなど 連携強まっている」 ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の長谷川雄之研究員はウクライナへの軍事侵攻後のロシアの経済・エネルギー戦略について「欧米側とは違う世界で生き延びようとしている」という見方を示しました。 また「ロシアと、中国やインド、トルコ、中東諸国などとの経済的な連携は、軍事侵攻以降ますます強まっていて、欧米の制裁には一定の限度があることに留意する必要がある」と指摘しました。 またロシアが中国へのガス供給を拡大している状況については「侵攻を受けて、中国は、ロシアから少し距離をとるような態度を示したこともあるが、エネルギーの協力関係をより深めている。ロシアはますます経済的・軍事的な面で、中国への依存を強めている関係にある」としました。 その上で「中国やほかの国とのエネルギーの協力関係が深化していけば、やはりロシアの戦費の確保であったり、さまざまな物品の調達に役立つ可能性がある」として、欧米の制裁強化にもかかわらず、ロシアが軍事侵攻を続ける資金源となる可能性があると指摘しました。 |
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●国外脱出するロシアの高官たち、支援者が語る亡命の実態 1/29
ウラジーミル・オセチキン氏は、自宅の食堂のテーブルに向って歩いていた。手には子どもたちが食べるスパゲティーの皿。その時、赤いレーザーの光が壁の上で閃(ひらめ)くのに気づいた。 次に何が起きるかは分かっていた。 すぐに照明を消し、妻と共に子どもたちを床に伏せさせる。姿を隠しながら、別の部屋へ急ぐ。数分後に暗殺者が発砲する。慌てて駆け付けた警察官を、狙っていたロシアの反体制派と間違えたのだ。 その後30分間、妻と子どもたちは床に伏せていたと、オセチキン氏はCNNに語った。妻はぴったりと子どもたちに寄り添い、さらに発射される弾丸から彼らを守った。それが昨年9月12日に起きた襲撃の様子だ。 「この10年間多くのことをして、人権と他の人々を守っている。しかしこの瞬間に、他人を助けるという自分の使命が極めて大きな危険を家族にもたらすのだと理解した」。オセチキン氏はCNNの取材に対し、フランスからそう語った。2015年にロシアを脱出し、亡命申請を行って以降、同氏はフランスで暮らしている。現在は常時警察の保護下にある。 今では、西側へ逃れてくるロシアの高位当局者らを支える立場だ。そのような当局者の数は増える一方となっている。背景にあるのはロシア政府によるウクライナでの戦争に対する反発であり、元将官や情報機関の捜査官が脱出するケースもあるとオセチキン氏は明かす。 ロシアのプーチン大統領は、政府が国外の敵とみなす人物らを捕まえる決意を表明。オセチキン氏はロシアで不在のまま逮捕され、現在はロシア当局の「指名手配リスト」に名を連ねる。フランスは保護を提供してくれているが、身の安全を確保するのは全く容易なことではない。 調査ジャーナリスト、また反汚職の活動家として、オセチキン氏はロシア国家の秘密をつかむ仕事に携わってきた。それはある程度役に立っている。同氏によると過去に2度、極秘に入手した情報のおかげで自宅に迫る殺し屋から逃れたことがあるという。 「ウラジーミル、気をつけろ」。昨年2月には、本国を離れて暮らすチェチェン人の情報筋からこんなメールが届いた。「もうオファーが出ている。お前を消せば報酬が上乗せされる」。 オセチキン氏の返信は恐ろしく冷静だ。「どうも。すごい話だな。それで、俺の白髪頭にいくら払うって?」 同氏は現在、フランス当局の派遣する武装衛兵の保護を受けながら生活する。住所や日々の行動は秘密となっている。 ●強力な敵を作る 影響力を持つ人権活動家でありジャーナリストであるオセチキン氏は、長年にわたってロシアの権力者たちを悩ませてきた。ロシア国内での汚職や拷問を標的にした人権団体「グラーグ・ネット」を11年に創設してからは、注目を集める調査に相次いで関わり、政府機関及び省庁の犯罪を糾弾した。 プーチン氏がウクライナに対するいわゆる「特別軍事作戦」を開始した昨年2月24日以降、ロシアの当局者らが母国を去る「大波」も発生したと、オセチキン氏は語る。今では毎日、誰かが自分たちに助けを求める状況だという。 多くは階級の低い兵士たちだが、中には閣僚経験者や元将官クラスといった大物もいる。CNNはこれまで、ロシア連邦保安局(FSB)の元将校や民間軍事会社「ワグネル」の傭兵(ようへい)がロシアを脱出した事例を確認した。 今月、オセチキン氏はワグネルの元戦闘員1人を支援した。この戦闘員は国外脱出した後、徒歩で隣国ノルウェーに入り亡命申請していた。ワグネルとの契約更新を拒否して以降、命の危険を感じたためだという。 オセチキン氏のネットワークを通じてロシアから逃れた当局者らは、ロシア政府の内部情報の提供に合意する。その中には欧州の諜報(ちょうほう)機関の手に渡る情報もある。こうした機関とは定期的に連絡を取っていると、オセチキン氏は話す。 FSBの元上級将校で、オセチキン氏が欧州での支援に携わっているエムラン・ナフルズベコフ氏の用意した情報は、欧州でのスパイ活動に関するFSBからの指令だった。 「FSBの上司は欧州の工作員に対し、ウクライナに向かうとみられる『傭兵』について探るよう求めた。ウクライナのために戦おうとする義勇兵を、彼らはテロリストと呼んだ。私はそうした内容のやり取りを保持していた」。ナフルズべコフ氏はCNNの取材にそう答えた。 助けた人々の情報の中には、たとえ軍事機密であっても自身の人権団体にとってそれほど利益にならないものもあると、オセチキン氏は認める。しかし西側の諜報機関は、全く異なる優先順位を持っていた。 フランス軍の元将官で、北大西洋条約機構(NATO)の作戦の副司令官を務めたミシェル・ヤコフレフ氏はCNNの求めに応じ、オセチキン氏が入手した複数の軍事ファイルを精査した。それによると、軍の司令官にとっての重要性はあまりないかもしれないが、「断片的な情報は含まれており、個別ではさして興味をそそられないとしても、集まれば1つの構図が浮かび上がる。それこそが情報を収集する上での利益になる」という。 ●ファイルから浮かぶ秘密 ヤコフレフ氏にとって、文書の中身だけが亡命者のもたらす価値ではない。 「本当に問題になるのは、その人物がどの階級にいたのか、どれだけ信用できるのか、周囲で信頼を置いていたのは誰か、どの情報に対してどういった種類の経路を持っていたのかということだ」「ファイル自体ではなく、当該の人物がどれだけそれにアクセスしていたかに関心がある」と、同氏は説明する。 オセチキン氏によると、上記のファイルを提供したロシア軍の元将官は、軍内部の汚職に関する情報も伝えた。さらに引き渡した秘密の記録からは、軍隊さえ陰で操るFSBの実態もうかがえるという。 もう1人の亡命者、マリア・ドミトリエワ氏(32)は、FSB上層部内の秘密とされる情報を携えて国外に脱出した。CNNの取材に対し、FSBの医師として1カ月間勤務したと明かす。亡命の準備として、患者たちの会話を密かに記録していたという。彼らの症状に国家の秘密が隠れていることがあるからだ。 患者のうち、悪名高いロシア軍参謀本部情報総局(GRU)に所属する工作員はマラリアにかかっていた。公表されていないアフリカでの任務の後で発症したという。別の会話からは、チェチェンの当局者らに対して司法上の免責が与えられていることが分かったと、ドミトリエワ氏は指摘。ロシア軍の汚職について議論する当局者もいたとしている。 CNNはこうした内容の真偽を独自に確認できていない。 ドミトリエワ氏は現在、フランス南部で亡命を申請中だ。家族とボーイフレンドはロシアに残してきた。同氏によるとボーイフレンドはロシアの情報機関に関係する仕事をしている。今回提供した情報で、自身への永住許可が保証されるのかどうかは確信が持てないという。 ●脱出の理由 FSBの当局者だったナフルズベコフ氏は、ウクライナでのロシアの勝算が絶望的となった現状に突き動かされ、同僚の多くが脱出を図っていると主張。「もはやFSBに頼れる者はいない。誰もがロシアから逃げたがっている」「彼らは既に、ロシアがこの戦争に決して勝つことがないと理解している。無理にでも何らかの解決策を見つけようとするだろう」と述べた。 ドミトリエワ氏にとっても、ウクライナでの戦争が引き金だった。今期待するのは、自らの行動によって体制の内部にいる人々が触発され、プーチン政権を弱体化させることだ。 「プーチン氏とその取り巻き、この戦争を容認する全ての人々は殺人者だ。なぜこの国を苦しめるのか。30年間うまくやってきたのに」(ドミトリエワ氏) 内部告発者たちを支援してきたオセチキン氏によると、ロシア当局者の多くが有するウクライナのルーツと家族の絆が国外脱出の際に重要な役割を果たしているという。 同氏はまた、ウクライナへの侵攻によってプーチン政権下でのロシアの安定が失われたとの思いも口にした。 「プーチン氏は自身の体制の内部に数多くの敵を抱えている。彼らはプーチン氏と共に20年以上働いてきた。安定や富を手に入れ、優雅な生活を次世代に残すためだ。ところがここへ来てプーチン氏は、こうした彼らの人生の展望を台無しにしてしまった」(オセチキン氏) |
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●ロシア・ワグネル「バフムト近郊の集落制圧」 東部で攻勢継続か 1/29
ロシアによるウクライナ侵略で、露軍側で参戦している露民間軍事会社(PMC)「ワグネル」トップのプリゴジン氏は29日、最前線である東部ドネツク州の要衝バフムト近郊の集落ブラゴダトノエを同社部隊が制圧したと交流サイト(SNS)で主張した。露軍側は今月、バフムト近郊ソレダルの制圧を発表し、ウクライナ軍も同市からの撤退を認めるなど、露軍側の攻勢が続いているもようだ。 これに先立ち、露国防省は28日、バフムト方面で「露軍部隊が前進に成功し、有利な陣地を確保した」と主張していた。ウクライナのゼレンスキー大統領もバフムト方面での戦況が「深刻だ」としている。 露軍は同州全域の制圧を主目標に設定。州の中心都市クラマトルスクへの進出ルート上にあるバフムト方面では過去数カ月間にわたって激戦が続いてきた。露軍はバフムト周辺の拠点を確保することで、同市を防衛するウクライナ軍を孤立させ、同市の制圧を達成する狙いだとみられている。 一方のウクライナ軍は、バフムト方面で露軍に損害を強いることで将来的な反攻につなげる方針を示しており、同方面での攻防が改めて焦点化している。 |
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●“ロシア軍が民間施設砲撃で市民に死傷者” ウクライナ国防省 1/29
ウクライナへ侵攻を続けるロシア軍は、東部や南部で攻撃を繰り返し、市民の犠牲が増え続けています。ウクライナ側は、ロシアが再び大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性があると警戒を強めていて、ゼレンスキー大統領は長距離ミサイルなどさらなる武器の支援を各国に求めています。 ロシア軍はウクライナの東部や南部で攻撃を繰り返していて、ウクライナ国防省は29日、東部ドネツク州や南部ヘルソン州の民間施設が砲撃を受け、死傷者が出ていると発表しました。 このうちドネツク州のキリレンコ知事はSNSで、28日にウクライナ側の拠点の1つバフムトと、およそ20キロ西にあるコスチャンチニウカなどでロシア軍による砲撃を受け、合わせて市民5人が死亡、15人がけがをしたとしています。 一方、ロシア国防省は28日、東部ルハンシク州の支配地域にある病院がウクライナ軍の攻撃を受けて14人が死亡したと発表し、アメリカがウクライナに供与した高機動ロケット砲システム=ハイマースによる攻撃だと主張しています。 この攻撃について、ウクライナ側は関与したと発表をしていませんが、ルハンシク州のハイダイ知事は、SNSに「ロシアの差別主義者らが治療を受けていた病院で何か悪いことがあったようだ」と投稿し、攻撃をほのめかしているという見方もあります。 またウクライナ側は、ロシアが再び大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性があると警戒を強めています。 こうした大規模な攻撃について、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は28日、「ロシア軍が東部や南部でウクライナ軍との戦闘に対応しながら、複数の大規模攻撃を行うのに必要な戦闘力が不足しているようだ」とする分析を発表し、ロシア側にこれまでの戦闘で多大な人的被害が出ていて、攻撃に影響する可能性もあるとみられます。 欧米各国はウクライナに対して、主力戦車の供与を相次いで表明していますが、ゼレンスキー大統領は「ウクライナには長距離ミサイルが必要だ」と述べ、アメリカが供与に応じていない、より射程が長いミサイルなど、さらなる武器の支援を各国に求めています。 |
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●ウクライナのもう一つの戦争、汚職……ゼレンスキー氏の対応は 1/29
これは普通とは違う内閣改造だ。 私がこの記事を書いている時点で、11人の政府高官が、汚職撲滅を目指すウクライナ政府の取り組みの一環として、辞任あるいは更迭された。 このためアメリカでは、ウクライナへの支援を制限すべきだと言う政治家も出ている。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、一刻も早く世間の信頼を取り戻そうとしている。しかし、汚職疑惑の内容は深刻で、タイミングも悪かった。 汚職の指摘のいくつかは、現地メディア「ウクラインスカ・プラウダ」の調査報道記者、ミハイロ・トカチ氏のおかげで、表面化した。 トカチ氏は最近、とある政府高官のパーソナル・トレーナーの会社が、ロシアの侵攻開始以来、数百万ポンドを受け取っていた疑惑を伝えた。ウクライナ大統領府のキリロ・ティモシェンコ副長官の汚職についても報じた。 ティモシェンコ氏が大手デベロッパーの邸宅に家族を引っ越しさせていたとトカチ氏が報じた2カ月後、ティモシェンコ氏は辞任した。 トカチ氏はさらに、ティモシェンコ氏が高額なポルシェに乗っていると様子に見える動画を公開している。ティモシェンコ氏は、自分は何も問題のある行動はとっていないと主張している。 「資金の出所がはっきりしない資金について、政治家や政府関係者は、その資産を近親者名義にすることが非常に多い」と、トカチ氏は話す。 「これは、不透明な手口を示すものだ。今は政府関係者の一挙手一投足が、社会に明示されるべき時なのに」 トカチ氏は、汚職が横行するのはよその国も同じだ認めた上で、何より大事なのは、汚職にどう対応するかだと言う。 首都キーウ近郊ヴォルゼルでパン屋を経営するイワンナさんは、政府が無名の会社と水増し価格の取引に合意していたことや、政府高官が35万ドルの賄賂を受け取ったとされること、さらには政府幹部が高級車を乗り回したりしていたことなどに、あきれていた。 夫のヴィヤチェスラウさんが店の奥でパンの種をこねている間、イワンナさんは「そういうのは嫌いです」と語った。 「そのお金が、ウクライナのためになることに使われる方がよかった」 「何年も職にとどまっている政治家たちをみんな排除すべきだ。汚職が当然になって、汚職でおなかをいっぱいにしている」 ウクライナが軍事、人道、財政面で数十億ドルの支援を受け取ることには、責任が伴う。監視の目も厳しくなる。 一方で、こうした資金が間違った相手にわたる可能性も増している。 「我々はウクライナの存在について話している」とトカチ氏は話す。 「ウクライナにとってこの1年は、ありきたりのものではなかった。ゼレンスキー大統領が引き起こした、大勢の辞職は、事態の重みを認める大切なもので、必要な対応だった」 31年前に独立を宣言して以来、ウクライナでは公共事業と政界のほとんどに汚職が蔓延(まんえん)してきた。 2014年にはなんとしても民主化を求める国民の反政府デモによって、親ロ派のヴィクトル・ヤヌコヴィチ大統領が失脚した。 それ以来、ウクライナ政府はさまざまな政治改革に取り組んできた。ロシアはウクライナに軍事介入を繰り返すようになったのが、改革への大きな原動力となった。西側から継続的な支援を受けるためにも、ウクライナには改革が必要とされた。 新しい反汚職機関が設置され、公金の使い方にはに新しいシステムが取り入れられ、警察組織が再編された。政治家は資産公開を求められ、時につらくなるほどの蓄財ぶりが明らかになった。 ウクライナ議会の反汚職委員会で副委員長を務めるヤロスラフ・ユルチチン議員は、「我々には結果が重要だ」と語った。 「確かに、過去の汚職の残りがまだある。だが少なくとも今は、それについて黙っていない。次の段階は汚職防止だ」 ユルチシン議員は、西側諸国からの支援が危うくなったとしても、今回の政府高官の違法行為発覚は最高のタイミングだったと話す。 「西側のパートナーは、ウクライナが2つの戦争を戦っていることを知っている(中略)ひとつはロシアとの戦争、もうひとつはウクライナの将来に向けた内部の戦争だ」 昨年2月にロシアが全面侵攻してくる以前、欧州連合(EU)やアメリカはウクライナの反汚職対策に満足していなかった。 2023年に持ち上がった疑惑がゼレンスキー大統領にどのような政治的ダメージを与えるかは不明だが、今回の大統領の対応は、アメリカから「迅速かつ断固としている」と評価されている。 今後、さらに複数の汚職疑惑が浮上すると予想される。それだけにゼレンスキー氏としては、アメリカ以外の支援国からも同様の好意的な反応が欲しいところだろう。 |
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●「プーチン、ハイヒール履いていた」嘲弄…カメラに捉えられた「超大型ヒール」 1/30
最近、ロシアのプーチン大統領が「ハイヒール」並の高さの靴を履いて公式席上に登場した姿がカメラに捉えられた。 プーチン大統領は25日、ロシア学生の日を迎えてモスクワ州立大学を訪問した。プーチン大統領はこの日、学生と一緒に立ったままの姿の写真を撮ったが、両足をハの字に開く姿勢を取ったため、カメラの位置から靴のヒールの様子がひと目で分かる状況になった。 これについて英デイリー・メールは26日(現地時間)、「身長170センチのプーチンがモスクワの学生と写真を撮るためにハイヒールを履いた」と報じた。 続いてプーチン大統領が普段からマッチョ的イメージに執着してきたとし「1999年の執権以降、そのイメージを徹底的に統制してきた」とした。 一例として、プーチン大統領は2009年シベリア南部で休暇を過ごしていた時に上半身に何も着用しない姿で乗馬している様子が写真に撮影されて話題になった。 2015年英国日刊デイリー・エクスプレスはクレムリン宮の消息筋を引用して「プーチンは身長が高い人という印象を与えるため、身近に置く警護員の身長はいつも低かった」と報じた。プーチン大統領は2017年自身を「ゲイピエロ」に描写した風刺イメージをシェアすることも極端主義の宣伝として禁じたことがある。 デイリー・メールは「プーチン大統領と閣僚はプーチンの大衆的イメージを管理してきたが、人々は彼が身長を高く見せようとしてかかとに細工している場面を目撃することになった」と嘲弄にした。 英国日刊メトロも「クレムリンのトップは若者たちとポーズを取るために『超大型ヒール』の靴を履いた」とし「数年間プーチンがこのようなヒールを履いている姿が確認されてきたが、今回のことは今まででも最も大きなものとみられる」と皮肉った。 |
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●プーチン大統領、北極海の大陸棚延長巡り高官らと協議 1/30
ロシアのプーチン大統領は27日、北極海における大陸棚の外側の境界を合法的に延長する取り組みの現状について安全保障当局者らと協議した。 ロシアは2021年、未開発の石油・ガス資源が豊富に存在するとされる北極海における自国の大陸棚の延長を国連に申請した。この地域で独自の権利を主張するカナダやデンマークにも影響を与えることになる。 ロシア大統領府によると、会議にはショイグ国防相やナルイシキン対外情報局長官ら複数の高官が出席した。それ以上の詳細は公表されていない。 ロシアによる昨年2月のウクライナ侵攻を受け、隣国は戦略的に重要な北極圏でのロシアの野心に警戒を強めている。 |
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●囚人を「強制自爆」、「遺体の山」で銃撃回避…最悪の傭兵集団「ワグネル」 1/30
●バフムトの占領に固執する理由 ここ数ヶ月、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」は、ウクライナ東部ドネツク州のソレダルとバフムトの占領を執拗に試みている。ロシアにとってこの2都市は「戦略的価値」が低いにもかかわらず、莫大な損失を出しながら撤退を拒否し、ジリジリと包囲を固めている。 軍事アナリストのマイケル・クラーク氏がイギリスニュースサイト「Express.co.uk」に語ったところによれば、ロシアがこうした小さな町を征服しようとするのは、戦略的利益ではなく、ロシアのプーチン大統領の個人的な関心を集めようとする高官同士の「象徴的な内部権力闘争」に基づいているのだという。ドネツクの小都市に頑なに固執することによって、ロシア軍の「戦略を横取り」し、前線の他の兵士を犠牲にしてこの「戦略的袋小路」(strategic blind alley)に目を振り向けざるを得なくしているそうだ。 バフムートは、ウクライナ戦争の前には、8万人の住民がいたが、いまは1万人程度が街の残っている程度で、両軍の激しい戦闘によって焼け野原、ほぼ廃墟しかない地域になってしまった。ウクライナにとってもロシアにとっても、軍事戦略上の意味合いはなく、象徴的な意味合いしかない。 ワグネルのリーダー・プリゴジン氏は、ケータリング会社を経営していた時に、プーチン大統領と親しくなったことから、「プーチンのシェフ」と呼ばれている。2016年のアメリカ大統領選挙に介入した罪でFBIに指名手配されている。プリゴジン氏は、ロシア国防省の戦争の運営方法に対する国内批判派の急先鋒となっている。最近、プリゴジン氏は、ロシア政府内での評判が悪くなっているという報道もあり、この都市を攻略できないと失脚するというリスクがあった。 ●「遺体の山」を利用 他方、ウクライナは、ゼレンスキー大統領が12月に訪れたことから、この地域をロシアにとられることは心理的な打撃になるかもしれないという指摘がある。 いずれにしろ、あまり戦争の勝敗にとってはあまり意味はなさそうだが、すでに数千人の兵士が死んでしまった。 ウクライナ国防情報部長のキリーロ・ブダノフ氏は12月末のインタビューで、2つの都市で死亡した兵士の数があまりにも多くなったため、ワグネルは、地元の銃撃から身を隠すために「遺体の山」を利用するようになっていると述べた。 ワグネルの戦場での戦いについては、まさに「人柱」ともいえるような人海戦術を採用していることが、オーストリアの軍事専門家トム・クーパー氏に明らかにされている。 <彼(プーチン大統領)はこの戦争で何人殺されるかなんて気にも留めていない。彼は皮肉屋で、遅かれ早かれ「ロシアの刑務所にいる最悪の人間のクズを空にする」と自慢し始めるだろう - ワーグナー(ワグネル)が集めた囚人の多くがこの戦争で殺されるから... したがって、犠牲者がプーチンに対する深刻な内乱を引き起こすようになった場合のみ心配するかもしれない。今のところ、ロシア国民はその地点から「何光年も」離れており、これがすぐに変わるとは思えない> <GenStab-Uのリリースから推測すると、ワグネルとロシア軍はこの地域(ドネツク)だけで毎日400-600人の兵士(死傷者等)の損失を被っていることになる。この種の、あるいはこのような ビデオを考えると......まあ、驚くにはあたらないが......> ●囚人を「自爆テロ」に利用 ワグネルは具体的に以下のような戦術を用いているようだ。 まず、囚人を中心とするほとんど訓練もされておらず士気も限りなく低い新兵たちで突撃隊を結成する。この突撃隊に、ウクラナイの前線部隊に対し、自爆テロを敢行する(ただし、突撃隊に、自分たちが自爆テロの集団であることを伝えているかは別だ)。ウクライナ軍は、この突撃隊に対して、反撃をするが、当然ながら、貴重な弾薬を使い、疲弊もする。 ウクライナ軍に、消耗を強いたところで、最も訓練された傭兵部隊が、第2波、第3波として、攻撃を加えるのだ。この人柱戦術がよほど効果的と考えているのか、最近になって、ロシア軍は「突撃隊」の数を補強しているのだという。 戦略的には無意味な拠点を「人柱」によって奪取する攻撃と占拠を、ワグネルは自ら「成功」と評し、ワグネルを率いるプリゴジン氏は「ワグネルのほうが正規軍よりも効率的だと主張し、ロシア大統領への圧力を強めている」「クレムリン(ロシア政府のこと)に、領土を奪える唯一の将軍は自分だと主張しようとしている」(軍事アナリストのマイケル・クラーク氏)のだという。 民間組織でありながら、敗走を続けるロシア国軍を罵倒し、国家権力の一部も任されているワグネルのプリゴジン氏を、プーチン大統領はどう考えているのだろうか。いまや、ワグネルはロシアの囚人を人柱として活用することもできる。 ●プリゴジンの「評判」とは イスラエルに永住する慈善家で(元ロシアの)大富豪レオニード・ネフジリン氏は、ウクライナのオンラインメディア「Obozrevatel」のインタビュー(2022年12月17日)でこう解説している。 <ワグネルを国家という視点を通してみると、何が起きているかを説明するのは難しいし、間違った結論に達するだろう。しかし、ワグネルをマフィアの視点から分析すれば、理解できる。弱っているプーチンには、自分が強いということを示すお気に入りが必要なのだ。プリゴジンは、海外でも国内でも戦場でも、プーチンの命令をなんでも実行し、問題を解決するという役割を担っている。プーチンより若く、狡猾です> <プリゴジンは今、まさにマフィアの執行者、警備主任の役割を担っている。彼はドンバス、アフリカ、シリアで何万人もの傭兵を雇っていることで有名である。重武装で、危険で、自分の力の及ぶ範囲内で敵をやっつける。そして、彼が嫌いな内部の人間にとっても、彼が嫌いな外部の人間にとっても、危険な男なのだ> <しかし、プーチンがプリゴジンを常に必要としているかという質問であれば……違うと思います。プリゴジンが常にプーチンを必要としているとは思いません。なぜなら、プーチンが弱くなったからこそ、プリゴジンが強くなった。現在、プリゴジンは世間の注目を浴びる明るい存在である。彼の発言は筋が通っている。クレムリンの腐敗したエリート、役人にとって、プリゴジンは間違いなく「問題を解決する人」なのです> ロシアは、1月13日、ロシア軍がソレダルを制圧したと発表した。これは数か月に及ぶ敗退の中では初めての勝利宣言だ(ただし、ウクライナは「戦闘が続いている」としてロシア側の発表を否定)。ロシア国防省は、その前日に、ソレダルの「解放を完了した」と発表し、この勝利はドネツク地域におけるさらなる「攻撃作戦の成功」に道を開くとし、また別の声明で、ソレダルを襲撃した傭兵グループ「ワグネル」は「勇気と無私の部隊」だと賞賛した。これは、ワグネルとロシアの正規軍との間の内紛や対立が取り沙汰される中、異例ともいえる評価であった。 この動きについて、ロシア軍がワグネルを懐柔にでたとも捉えることができようが、歴史で繰り返されてきた教訓から考えれば、そんなことで飼い慣らされるワグネルではなかろう。いま、ワグネルの動向に世界中の注目が集まっている。 |
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●ウクライナへの戦車供与を急げ 交渉にも軍事支援は不可欠 1/30
1月7日付のワシントン・ポスト紙で、コンドリーザ・ライス元国務長官とロバート・ゲーツ元国防長官が、ウクライナ側に時間の猶予はない、米国を含む北大西洋条約機構(NATO)諸国はウクライナに戦車などの武器を緊急に供与すべきだと主張している。 プーチンは、ウクライナをロシアの統治下に置くことを決め込んでいる。彼は、ウクライナ国民の戦意を挫くことができ、米欧の団結とウクライナ支援はいずれ崩壊すると考えている。プーチンは辛抱強く自らの運命を達成しようとする。 ウクライナは英雄的に反撃しているが、その経済は壊滅し、何百万の人々は逃避、インフラは破壊され、豊かな鉱物資源や産業力、農地の大半はロシアに支配されている。ウクライナは、今や西欧からの生命線に全面的に依存している。 今交渉をすれば、ロシア軍は自分の都合の良い時に何時でも侵略を再開できるような強い立場を残したままに停戦になる可能性がある。これは受け入れられない。 こうしたシナリオを回避する唯一の道は、米国と支援国が緊急に対ウクライナ軍事物資供与と軍事力支援を劇的に増大し、ロシアの再攻勢を阻止し、ウクライナが東部と南部でロシアを押し返すことが出来るようにすることしかない。 米国などは、ウクライナが今必要とする追加的な軍備、特に装甲車両を供与すべきだ。1月5日の米国によるブラッドレー歩兵戦闘車供与の決定は遅きに失するが、評価できる。戦車については、ドイツなどが供与すべきだ。NATO諸国は、長距離ミサイル、先進ドローン、相当量の弾薬・砲弾、偵察監視能力などの物資を供与すべきだ。これらの能力は、ここ数週間に必要となる。 われわれは、ロシアとの直接対決は回避するとのバイデン政権の決定には同意する。しかし、大胆になったプーチンは、そのような選択をわれわれに与えないかもしれない。ロシアとの直接対決を避けるためにも、ウクライナによる侵略者排除を支援すべきだ。これこそが歴史の教訓であり、遅すぎることにならないために緊急に行動せねばならない。 ライスとゲーツは、今最も重要なことはウクライナへの武器供与を緊急に行うことだと主張する。両者の意見は重要だ。その立場は、当面軍事的有利を確実にすることが最重要との考えに立っている。中途半端な停戦は「受け入れられない」旨の主張や、米国などNATOはウクライナが必要とする装甲車両、長距離ミサイルやドローン、偵察監視物資などを緊急に供与することが必要との主張は、理屈に合っている。 両者は、米国のブラッドレー歩兵戦闘車供与決定について、それを評価するも、遅すぎたと批判する。さらに米露直接対決の回避を図るとのバイデン政権の立場に「同意する」と述べつつも、将来に火種を残すような解決では将来再び戦闘せねばならない、その場合米露直接対決回避の選択はなくなるかもしれないと示唆する。 しかしこの2人が最終的な外交的解決を全く排除しているとは思えない。交渉のためには、ウクライナの軍事的立場をもっと優位なものにすることが不可欠と考えているのであろう。 こうした考え方は、プーチンと渡り合った過去の経験と、プーチンはウクライナの支配を自分の歴史的運命と考えているとの確信から来るのであろう。2人は、プーチンは決してウクライナを諦めないと分析している。 ●4州併合を認めよと迫るプーチン 実際、ロシアの発表によれば、1月5日にプーチンはエルドアンとの電話会談で、「新しい領土の現実を受け入れるのであればロシアは真剣な対話にオープンだ」と述べ、ロシアが併合したウクライナの4つの州をロシア領と認めることが交渉の条件だとの立場を示したという。しかし侵略の結果を「現実」として認めよと言うのは全く不当だ。 日本は今年、主要7カ国(G7)の議長国となり、国連安保理非常任理事国になった。ウクライナ戦争に対する反対とウクライナの支援につき西側の結束を維持するために良い役割を果たしていくことが期待される。 ウクライナの戦場は冬に入り、目下東部ルハンシク州のバフムトとその近郊の町ソレダールで激しい戦闘が起きているようだ。戦況は重大な局面に入っているように見える。NATO側は、米国(ブラッドレー50両)やフランス(AMX-10RC装甲車)に続き、英国(チャレンジャー2戦車14両)が戦車など重装備のウクライナ供与を決定し、ドイツも戦車「レオパルト2」を供与する覚悟を決めた。 1月14日、ロシアはウクライナ東部ドニプロの集合住宅をミサイル攻撃し、多数の死傷者が出た。市民への攻撃は正当化されず、ロシアの責任は重大だ。また翌15日、ベラルーシは、ロシアとの空軍合同演習を1月16日から2月1日まで実施すると発表した。警戒が必要である。 |
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●ジョンソン元英首相、「プーチン氏からミサイル攻撃の脅迫受けた」 1/30
イギリスのボリス・ジョンソン元首相は、30日放送予定のBBCのドキュメンタリー番組の中で、ウクライナが侵攻される前に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領からミサイル攻撃の脅迫を受けていたと明かした。 ジョンソン氏は番組で、ウクライナ侵攻が始まる直前の2022年2月2日に行われた、プーチン大統領との「異例の」電話協議について語った。ジョンソン氏はこの前日、ウクライナでウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談していた。 ジョンソン氏は「非常に長い」電話の中で、プーチン氏に対し、戦争は「まったくの惨劇」になると警告したという。 また、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟することは「当分」ないと話し、ロシアのウクライナ侵攻を阻止しようとしたという。 ジョンソン氏はさらに、「(プーチン氏は)電話の中で私を脅迫した。『ボリス、君を傷つけたくはないが、ミサイルを使えば1分もかからない』というようなことを言った。まったく」と、当時の やりとりを説明。 「だが、彼のとてもリラックスした口調や、どこか冷静で無関心な様子から思うに、私が彼を交渉に応じさせようとするのを、適当にあしらっていただけなのかもしれない」と振り返った。 その上で、この「最も異例な電話」の中で、プーチン氏は「とても打ち解けた様子だった」と、ジョンソン氏は述べた。 プーチン氏の脅迫が真実なのか、確かめる手段はない。 しかし、2018年に英ソールズベリーで起きた元ロシアスパイ殺人未遂事件など、近年のイギリスに対するロシアの攻撃を背景に、ジョンソン氏はロシア指導者からの脅迫を、それがどんなに軽いものであっても、深刻に受け止める以外の選択肢がなかったことがうかがえる。 この電話から9日後の2月11日、イギリスのベン・ウォレス国防相はモスクワに飛び、セルゲイ・ショイグ国防相と会談した。 BBCのドキュメンタリーでは、ウォレス氏がこの会談で、ロシアはウクライナに侵攻しないとの確約を得たものの、双方ともそれがうそだと知っていたことも明らかになった。 ウォレス氏はこれについて、「横暴や強さのデモンストレーションだった。『私はうそをつく。あなたは私がうそをついていると知っているし、私も、あなたが私がうそをついていると知っていると分かっているが、それでも私はうそをつくつもりだ』ということだった」と話した。 「『自分たちは強い』と言いたかったのだと思う」 ウォレス氏は、「かなり恐ろしい、直接的なうそ」から、ロシアが侵攻するという確信を得たと話した。 さらに、会談の後、ワレリー・ゲラシモフ参謀長から、「我々は二度と屈辱を受けない」と言われたという。 ●侵攻の夜にゼレンスキー氏から電話 この会談から2週間もしない2月24日、ロシアの戦車がウクライナ国境を越えた。ジョンソン氏は真夜中にゼレンスキー大統領から電話を受けたという。 「ゼレンスキーはとても、とても落ち着いていた(中略)それでも、ロシアがそこら中を攻撃していると言っていた」と、ジョンソン氏は当時を振り返った。 ジョンソン氏は、ゼレンスキー氏を安全な場所へ移動させる支援を申し出たが、断られたという。 「彼は申し出を受けず、英雄的にその場にとどまった」 |
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●「ミサイルなら1分で済む」 プーチン氏から脅し 元英首相 1/30
ジョンソン元英首相はロシアのウクライナ侵攻前の昨年2月、プーチン大統領から電話会談で「あなたを傷つけたくないが、ミサイルならたった1分で済む」と脅されたと語った。 ジョンソン氏がプーチン氏に対し、侵攻は大惨事になると警告した直後の発言だったという。 英BBC放送が30日に放映するドキュメンタリー番組の概要で明らかにした。 ジョンソン氏は電話会談で、ウクライナに侵攻すれば西側諸国はより厳しい対ロシア制裁を科すとけん制。ロシアとの国境に北大西洋条約機構(NATO)軍を増派することにつながると強調したという。一方で、ウクライナのNATO早期加盟はないと説明し、侵攻を思いとどまるよう説得を試みたとも主張した。 ただ、ジョンソン氏はプーチン氏が「リラックスした口調、ある種の無関心な雰囲気で、私が彼を交渉に引き込もうとするのをあしらっていただけだと思う」とも語り、脅迫の真意は不明だ。 ジョンソン氏は電話会談の直前、ウクライナの首都キーウ(キエフ)でゼレンスキー大統領と会談していた。 |
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●ドイツ製戦車供与に対抗のロシア《世界経済の麻痺作戦》か 1/30
―――ドイツ製の戦車「レオパルト2」のウクライナへの供与が決定しました。これに対してロシアはどう動くのかについて、佐々木正明教授の解説です。教授によると、欧米諸国に対してロシアは「世界経済全体を麻痺させる作戦」例えば小麦でやエネルギー、日本もやはり影響を受けるということになりそうです。(佐々木正明・大和大学教授 元産経新聞モスクワ支局長、ゴルバチョフ元大統領に3度直接取材した経験がある) 昨年7月ぐらいに小麦の輸出が止まって、アフリカ諸国が食糧危機に陥りかけましたよね。やはり戦況で劣勢になりますと、ロシアは小麦やエネルギーを使って世界経済を麻痺させ長期化させて、ロシア側になびく国を集めようとする、それがおそらく戦略だと思います。例えば昨日もですね。イギリスとドイツで、サイバー攻撃がありました、そういったことも警戒しなくてはいけない。 ―――もう一つ、EU内でも足並みの乱れがある。 ドイツ国内でも、戦争に巻き込まれたくないと戦争当事国になりたくないという声はかなり多いです。ハンガリー、セルビアは親ロ派的な政策をとっておりますので、欧州の分断を図ろうとする揺さぶりをかけてくる可能性がありますね。 (三澤肇解説委員)特にハンガリーのオルバン政権は、特徴を持ってまして、昔から接点だったという歴史的経緯もありますし、相当な右派政権で、EUの概念とはちょっと違うことをやったりします。セルビアもロシアの影響力を受けていますし、そこら辺を巧みにロシアは突いてくるってことですね。 ―――ロシア国内はどうなんですか?「第2の動員令」で国内脱出を阻止するとの情報もあるということですが。 第1の動員令は去年9月下旬に出ましたね。その際に動員を避けようとして、多くのロシア国民の健康な男子が数十万人隣国に逃れた経緯があります。これはプーチン政権にとっても諸刃の剣です。動員やれば反発が起こる。そうしますと、何らかの理由が必要なんです。 ●森元総理の発言 ロシアウォッチャーはこう見る 「第2の動員令が出る」おそらく1月や2月に出るのではないか、といった憶測や観測がロシア国内でも12月ぐらいから出てるんです。おそらく主力戦車の供与というものが一つの理由になるんではないか、これが使われるということになりますと、戒厳令を敷いて戦時態勢を強めて、「ロシアはこの戦争に負けると国家の命運がかかっている」ということを言って第2の動員令をするんではないか、というふうな可能性があると私は考えています。 ―――日本国内の話ですけれど、皆さんこの発言はどういうふうに思われますでしょうか。森喜朗元総理です。「今のロシアの問題もそうです。せっかく積み立ててここまで来ているのに、こんなにウクライナに力入れちゃっていいのかな。」こうとも言いました。「ロシアが負けるってことはまず考えられない、そういう事態になればもっと大変なことが起きる。そのときに日本がやっぱり大事な役割をしなきゃならない、それが日本の仕事だと思います」と話しました。 これは、私も真意がちょっとよくわからないです。「ロシアが負けることがまず考えられない」っていう言葉が、1人歩きする可能性もありますし、ウクライナでは昨日キーウで爆撃があって11人が死亡している。毎日のように戦争犯罪が積み重なっている状況の中、やはりロシアを支援するような言葉というのはなかなか考えられないなと、私自身は考えます。 ただですね。私自身が思うのは、かばうわけではないですけども、ロシアが戦闘で勝っても、もう既に国際社会での地位は低下しておりますし、これは敗色濃厚だと思いますが、負けるということになりますとなかなか負けない。そのように負ける前にですね、様々なことをして、揺さぶりをかけたり、エネルギーを使ったり、様々な手を使って、負けない戦争をしてくるんではないか。そうなりますと森元総理何を言ったかはわかりませんけども、そこのポイントっていうのは少しあるんではないかなというふうにも考えます。 ●現役閣僚は「G7の主要議題なのにとんでもない」 ―――現役閣僚は「G7の主要議題なのにとんでもない」。自民党のベテラン議員は「サービス精神で、ああなっちゃうんだよな」と話しています。 (三澤肇解説委員)また出たな、という感じはしましたけど、これ場所が日印協会っていう日本とインドの協会のレセプションだったんですね。インドっていうのはロシア非難に乗らず、一線を画してきた外交をやってきましたよね。それに対するリップサービスで、森さん流のリップサービスでもあるということと、やっぱり自身がプーチンさんと親しくしてきたということと、和平交渉等々で日本が間に入りたいというような意図もある中での発言だと思うんですが、今G7の議長国やっててですね。この発言はちょっと、っていうのが正直なところです。 ―――そして岸田総理はウクライナ訪問を検討。国会で自民党の茂木幹事長は「G7広島サミットでは、ウクライナ支援がテーマになる、総理のウクライナ訪問が望ましい」と発言しました。岸田総理は「現時点では何ら決まっていないが、諸般の状況も踏まえ検討していく」と話しています。佐々木教授によると、可能性ゼロではないと。 私はウクライナ訪問するのは、かなり確率が高いと思います。よっぽどのことがない限り、治安上の問題、諸事情がない限りですね、私はこのドイツの訪問の際にですね、ウクライナに寄るんではないかと考えています。ウクライナ側は「復興力」を期待してるんですね。日本のテクノロジー、震災等でうちひしがれた街を蘇らせる力というのはありますので、この復興力を期待して、ウクライナと岸田さんとの会談はあるんじゃないかなというふうに考えております。 |
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●ショルツ独首相、ウクライナ支援巡り南米諸国と温度差 1/30
ドイツのショルツ首相は、南米歴訪の機会を利用してウクライナへの支援強化を実現させようとしているが、アルゼンチンのフェルナンデス大統領が武器供与を否定するなど、ウクライナ支援を巡りドイツと南米諸国の温度差が浮き彫りになっている。 ショルツ氏はアルゼンチン、チリ、ブラジルの3カ国が昨年の国連総会でロシアによるウクライナ軍事侵攻を非難したことに言及し、南米諸国との結束を強調しようとしている。 ただ、欧米諸国による対ロシア制裁で食料やエネルギー価格が高騰し、南米地域にも影響が及んでおり、ウクライナ戦争を巡る欧米の姿勢に疑問が生じている。 アルゼンチンのフェルナンデス大統領は28日、首都ブエノスアイレスで行ったショルツ氏との共同会見で、ドイツ同様、ウクライナの早期和平達成を支援することを望んでいると述べた。ただ、武器供与について質問されると、「アルゼンチンや中南米諸国がウクライナやその他紛争地域に武器を送る計画はない」と否定した。 チリのボリッチ大統領は29日のショルツ氏との共同会見時に発表した声明で、ウクライナ戦争には言及せずに商品部門などにおける2国間協力を強調した。 ショルツ氏は30日にブラジルのルラ大統領と会談する予定。 |
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●ウクライナ南部へルソンにロシア軍砲撃、9人死傷 戦車供与への報復か 1/30
ウクライナ政府は29日、南部ヘルソンの中心部がロシア軍の砲撃を受けて3人が死亡、6人が負傷したと発表した。東部ハリコフでも同日、ロシア軍のミサイルが住宅地に着弾し、女性1人が死亡した。いずれも、米欧がウクライナへの戦車供与を決めたことに対する報復攻撃とみられる。ロシアはウクライナの反転攻勢に警戒を強めており、戦闘はさらに激しさを増している。 ウクライナのゼレンスキー大統領は29日の演説で、ロシアが戦闘を長引かせてウクライナを疲弊させようとしているとの見方を示し「武器供与のスピードが戦争の鍵になる」と欧米の軍事支援の加速を求めた。ウクライナは欧米から300両超の戦車の供与を受けるほか、米軍の地対地ミサイル「ATACMS」などさらなる支援強化を要請している。 ウクライナメディアによると、ウクライナ兵が同日、主力戦車「チャレンジャー2」の供与を決めている英国に到着した。近く戦車を扱うための訓練を開始する見通しという。 一方、ロシアメディア「ウラ・ル」は30日、ロシアが米欧に武器供給を思いとどまらせるため、核兵器の大規模実験を近く再開するとの政治評論家の見方を報じた。ロシアのネットメディアでは、米国がウクライナに対し、クリミア半島奪還のための長距離ミサイルを新たに供与するとの観測が出ている。 ロシア政府は29日、「併合地」と主張するウクライナ東部ルガンスク州の病院が、米国製の多連装ロケットシステムによるウクライナ軍の攻撃を受け、14人が死亡したと主張した。プーチン政権は侵攻の長期化を受け「米欧はウクライナを操り、ロシアに戦争を仕掛けている」との政治宣伝を強めている。 |
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●プーチン氏、サウジ皇太子と協議 原油価格安定維持への協力巡り 1/31
ロシアのプーチン大統領は30日、サウジアラビアのムハマンド皇太子と電話会談を行い、原油価格の安定維持に向け、石油輸出国機構(OPEC)およびロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」の枠組みにおける協力を巡り協議した。ロシア大統領府(クレムリン)が声明を発表した。 |
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●侵略1年を前にプーチン氏演説か 「戦局好転」背景 1/31
ロシアのタス通信は30日、下院関係者の話として、プーチン大統領がウクライナ侵略の開始から1年の節目を迎える直前の2月20日か21日に上下両院に外交や内政の方針を示す年次教書演説を行う見通しになったと報じた。露軍の攻勢が伝えられる中、プーチン政権は戦況が好転したと判断し、年次教書演説の実施を決めた可能性がある。 プーチン氏は年次教書演説を原則として年1回行ってきたが、昨年は国民との対話行事や年末恒例の大規模記者会見とともに実施を見送った。露軍の苦戦などを受けた措置とされる。同氏自身も昨年12月、演説の見送りについて「情勢が変動しており、ある時点での結果や近い将来の計画を取りまとめるのは困難だった」と認めていた。 露軍は今月に入り、大きな損害を出しつつも、最前線である東部ドネツク州バフムト近郊の都市ソレダルを制圧するなど一定の前進を果たした。 ウクライナ国防省情報総局は、プーチン氏が3月までにドネツク州全域を制圧するよう露軍に指示したとみる。演説が行われれば、同氏は東部ドンバス地域(ドネツク、ルガンスク両州)全域の制圧という作戦目標を完遂する意思を改めて表明するとみられる。 一方、露経済紙ベドモスチ(電子版)は30日、露大統領府に近い筋の話として、2月下旬に中国の王毅前外相がモスクワを訪問し、プーチン氏と会談する可能性があると伝えた。プーチン氏は昨年12月、中国の習近平国家主席とのオンライン会談で、今年春にも習氏をロシアに招待する意向を表明。同紙は、王氏が習氏の訪露に向けた調整を行う見通しだとした。 |
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●ロシア軍パニック♂「米結束、ウクライナに主力戦車321両供与 1/31
ロシアによるウクライナ侵攻に対峙(たいじ)するため、米国とドイツは先週末、主力戦車の供与を表明した。これに対し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、軍事作戦が「ネオナチとの戦い」だと改めて侵攻を正当化した。米ブルームバーグ通信は、欧米の戦車がウクライナに到着する前の2月か3月、ロシアが新たな攻勢をかける可能性があるとの見方を伝えている。追い込まれたプーチン氏の逆襲の一手と、日本の危機とは。ジャーナリストの加賀孝英氏が最新情報を報告する。 「ロシアの敗北は確実だ。『プーチン氏の極秘亡命工作は失敗した』という情報がある。18万人以上のロシア兵が死傷し、経済は破綻状態で、ロシア国民の怒りは爆発しつつある。側近たちが裏切り始め、暗殺やクーデターの動きがある。プーチン氏は狂乱し、クレムリンは崩壊寸前だ」 外事警察関係者は、こう語った。 ジョー・バイデン米大統領と、ドイツのオラフ・ショルツ首相は25日、米軍の主力戦車「M1エイブラムス」31両と、ドイツ軍の主力戦車「レオパルト2」14両をウクライナに供与すると、それぞれ発表した。 M1エイブラムスは、1991年の湾岸戦争で、当時「無敵」といわれたイラク軍戦車部隊を壊滅した。イラク軍の主力戦車はソ連製だった。レオパルト2は、「世界最強」とされる攻撃力と防御力を誇る。 外務省関係者は「バイデン氏は発表前、ショルツ氏と、英国のリシ・スナク首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、イタリアのジョルジャ・メローニ首相と電話会談を行った。『ウクライナの勝利まで支援を継続する』と決意を確認し、『われわれは完全に団結した』と宣言した。これは西側陣営が結束した歴史的決意表明だ」と語った。 防衛省関係者は「ロシアは水面下で、米国やNATO(北大西洋条約機構)に対し、『ウクライナへの戦車の供与は止めろ。核戦争になる』と脅してきた。それを完全に拒否して、ロシアへの全面対決を宣言した。この決定に、12カ国以上が賛同した。戦車は百数十両になる。ロシアはパニックに陥っている」と語った。 《ウクライナのオメリチェンコ駐フランス大使は27日、欧米が供与表明した戦車が総計321両になったと明らかにした。フランスのテレビでの発言を、ロイター通信が報じた》 そのロシアで、異常事態が勃発している。 ロシア独立系メディア「モスクワタイムズ」が一部報じたが、今月に入って、首都・モスクワなどで、プーチン氏の複数の住居(=隠れ家も含めて)を中心に5カ所以上、対空ミサイル防衛システムが極秘配備された。 ウクライナ軍は昨年12月、攻撃用無人機(ドローン)で、国境から約400〜700キロ離れたロシア国内の複数の軍事基地を攻撃した。ウクライナの首都キーウからモスクワまでは約700キロ。対空ミサイル防衛システムの配備は、ウクライナ軍の攻撃に備えたものとみられた。 以下、日米情報当局関係者から入手した驚愕(きょうがく)情報だ。 「プーチン氏は『西側諸国が、自身の斬首(暗殺)計画を発動させている』と異常におびえている。セルゲイ・ラブロフ外相は昨年12月、国営タス通信に『米国防総省の高官が、斬首攻撃を実行すると脅迫してきた』と明かした。実は、ロシア情報機関の反プーチン一派が、西側情報機関に対し、『プーチン氏の居場所』『本物か影武者か』をリークしている。ウクライナ侵攻を早く終わらせるためだ」 ●暴走するロシア「日本を標的」の危機 さらに衝撃情報がある。昨年12月、「ウクライナ攻撃の秘密作戦会議」があったという。日米情報当局関係者の情報はこうだ。 「高官の一人が諜報機関の情報として、『ウクライナ軍の特殊部隊が、ロシア本土とクリミア半島を結ぶクリミア大橋を完全破壊する極秘攻撃計画を立てている。Xデーは2月だ。クリミア大橋が完全破壊されれば、ロシアは敗北するしかない』と報告した。プーチン氏は逆上して、核の使用を口にした。ただ、賛同者はゼロだった。米国やNATOは、ロシア高官に『核攻撃を行えば、ロシア軍を殲滅(せんめつ)する。ロシアは崩壊する』『プーチン氏の暴走を止めろ』と水面下で説得していた」 バイデン政権は「1962年のキューバ危機以来、最大の核危機だ。第三次世界大戦前夜だ」と警戒している。 そのロシアが「日本を狙っている」との情報がある。 苦境を打ち破るため、日本に卑劣な攻撃を仕掛け、日本を恫喝(どうかつ)・屈服させて、「日米同盟と西側陣営の結束を崩す」というものだ。中国と北朝鮮も危ない。連動した日本攻撃の危険がある。 事態は想像以上に緊迫している。政府は、国家安全保障会議(NSC)の開催を含め、あらゆる事態を想定した対応策を、早急に準備すべきだ。 |
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●日本大使、ロシア外務次官と会談 ウクライナ、四島漁業巡り 1/31
上月豊久駐ロシア大使は30日、ロシアのルデンコ外務次官と会談した。モスクワの日本大使館によると、日ロ関係やウクライナ情勢を巡って意見交換したほか、北方四島周辺水域の日ロ政府間協定に基づく日本漁船の操業が一日も早く実現するよう求めた。 |
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●要衝付近の集落巡り情報交錯 ロ側「制圧」、ウクライナ軍は否定 1/31
ウクライナ侵攻に加わっているロシア民間軍事会社「ワグネル」が、東部ドネツク州の要衝バフムト近郊の集落を制圧したと主張した。だが、ウクライナ軍はこれを否定し、情報が交錯している。ロシア側が制圧を急ぐバフムトと周辺地域で激戦が続き、詳しい情勢の確認は困難な状況だ。 ロイター通信によると、米国から「国際犯罪組織」に指定されたワグネルは28日、通信アプリ「テレグラム」を通じ、バフムト北方の集落ブラゴダトノエを制圧したと発表した。州全域の制圧を目指すロシア側にとって、集落確保は重要な足掛かりとなる。 これに対し、ウクライナ軍参謀本部は29日の戦況報告で「ブラゴダトノエ周辺で、占領者の攻撃を退けた」と主張。それ以外に州内の13集落でロシア側を撃退したと発表した。現地の情勢に関し、ロシア国防省は論評していない。 東部では連日激しい攻防が繰り広げられ、ロシア側は特にバフムト一帯に集中攻撃を仕掛けているもようだ。ウクライナの地元当局によれば、28日にバフムトと近郊で住民4人が死亡し、17人が負傷。ゼレンスキー大統領は先週末、現地の戦況に関し「極めて深刻だ」と警告を発した。 昨年11月にウクライナ軍がヘルソン州の州都ヘルソンを奪還して以降、それまで大きな戦闘の動きが見られなかった南部でも交戦が激化。ゼレンスキー氏によれば、ヘルソンは29日、ロシア軍の激しい砲撃に一日中さらされ、少なくとも3人が死亡した。一方、南部ザポロジエ州の親ロシア派は、ウクライナ軍が29日に州内の鉄道橋を爆破し、4人が死亡したと主張した。 |
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●米欧の戦車供与 1/31 ロ軍撤収への道筋にしたい 昨年2月24日にロシアの軍事侵攻で始まったウクライナ戦争が、1年を迎えるのを前に新たな段階に入った。米国とドイツがこれまでの消極姿勢を転換し、世界最強とされる主力戦車のエーブラムスとレオパルト2をウクライナに供与する。 主力戦車の供与はロシアのこれ以上の侵攻を防ぐとともに、ロシア占領地域をウクライナが取り戻すのに道を開くものだ。 また米国とドイツの転換は、強力な軍事支援を示威することで戦争継続に利がないことをプーチン・ロシア大統領に分からせる狙いもありそうだ。英国も既に戦車の供与を発表し、また米国とドイツの決定を受けて欧州各国やカナダも戦車の供与を発表。ウクライナ軍の戦力が大幅に向上する見通しだ。 プーチン大統領は戦争が長期化すれば、支援疲れから欧米に亀裂が生じ有利に立てると判断しているようだ。だが核使用の示唆やエネルギー制裁による混乱にもかかわらず、ウクライナを支援する自由民主主義陣営の結束は依然維持されている。 ロシアはこの戦争には勝機がないとの結論に達し軍を全面的に撤収すべきだ。これ以上のウクライナへの残虐な攻撃と破壊、人道危機、世界経済の混迷をもたらしても望む勝利が得られないのは明らかだ。 米国とドイツは、ウクライナ軍には高性能の戦車を使う能力がなく、またロシア領を攻撃し戦争がエスカレートする恐れを挙げて供与にこれまで消極的だった。核を使ったロシアと北大西洋条約機構(NATO)の全面戦争も懸念された。 今回の供与決定でも、ナチス・ドイツによる侵略の歴史を踏まえショルツ・ドイツ首相は一時ためらったが、国際的な圧力にさらされ米国によるエーブラムス供与を条件に合意した。バイデン米大統領は供与に反対した国防総省に対し、米欧が結束する意義を強調して決断した。 現在表明された戦車の供与総数はウクライナが求めていた300両には到達したものの、訓練には時間が必要だ。米国のエーブラムスはこれから製造されるものが供与される。 だが、昨年までの対戦車、対空ミサイルやロケット砲の供与に比べて、今年に入って決まった歩兵戦闘車や戦車などの兵器は、ウクライナ軍が今後地上戦で反転攻勢をかける展開を予想させる。 日本は今年は先進7カ国(G7)議長国である。日本には軍事面での支援は限界があるが、民生面での支援やロシアに対する制裁徹底などでG7の結束を強化する責任がある。同時にロシアに軍事力で対抗するのがいかに不毛であるかを説得する役割も担う必要がある。 |
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●冬の攻勢はロシア軍最後の賭け 1/31
●戦車提供とロシア軍の攻勢 ロシアがウクライナに侵攻して間もなく1年を迎えようとしている。ウクライナは粉砕されると予想されたが実際は逆襲に成功。ウクライナ北部のロシア軍は敗走しウクライナ東部と南部で戦線が膠着した。 ウクライナは欧米からの軍事支援でロシア軍に対抗し、時には反転攻勢を成功させる。ロシア軍はウクライナ軍よりも数は多いが、損害を出すことを繰り返している。だがウクライナ東部でロシア軍は徐々に攻勢を増す。第一次世界大戦型の塹壕戦が再現されるが損害無視のロシア軍が前進を始めた。 そんな時に、1月25日にアメリカはエイブラムス戦車をウクライナに30両提供することを公表。その後ドイツもレオパルト2戦車をウクライナに提供することを公表。これでレオパルト2戦車を保有する国はウクライナに提供することが可能になった。その後ロシアはウクライナに対してミサイル攻撃を実行した。 ウクライナ東部ではロシア軍の攻勢が続いている。欧米からの軍事支援が強化されるニュースが流れるほどロシア軍の攻勢は激しくなっている。レオパルト2戦車がウクライナに到着するのは早くて3月。さらにウクライナ軍が実戦運用できるのは早くて7月。これでロシア軍は勝利を急ぐことになった。 ●ウクライナが求めていた300両 ウクライナは以前から欧米の戦車300両以上を求めていた。この数字は戦車師団であり戦略単位の戦力を求める意味を持っている。基本的に戦術の最小単位は一個大隊。戦車であれば約50両。戦車200両で戦車連隊であり400両で戦車師団。一個師団は戦術の最大単位であり戦略の最小単位になる。 このため戦術で影響を与えるのは戦車50両の一個大隊から。そして戦略で影響を与えるのは戦略の最小単位である一個師団からになる。ドイツ製戦車レオパルト2はA4・A5・A6と型式が異なる。このため同じレオパルト2戦車だがA4・A5・A6で性能と装備が異なる。兵站・訓練・整備で負担になるが、今後提供されるレオパルト2戦車はA6に改修されると思われる。何故なら、そうでもしなければ兵站・訓練・整備でウクライナ軍の負担になる。少しでも負担を軽減するなら型式を統一することが望ましい。これは製造元のドイツが担当するので今後のサポートで対応できる。 アメリカはエイブラムス戦車30両、イギリスはチャレンジャー2戦車14両をウクライナへ提供する。両国合わせて約一個大隊になる。現段階ではレオパルト2戦車が大半を占めるが全体で321両。国ごとに編成が異なるが概ね一個師団の戦力になる。これでウクライナ軍は戦略を左右する駒を獲得したので、今後の戦局を左右する権利を獲得した。 だが直ぐに問題が解決するわけではない。最初のレオパルト2戦車がウクライナに到着するのは3月からで、一個大隊から運用できるのは早くても夏からだ。さらに300両の戦車で運用するなら早くても冬からになると推測する。 ●ロシア軍の焦りと賭けの攻勢 ロシア軍はウクライナ東部で攻勢を行ったが長らく膠着状態が続いた。だが1月になりウクライナ東部のバフムト付近でロシア軍が前進を開始。ロシア軍の攻勢は損害を無視したものだが、もしかすると欧米の軍事支援を察知したので攻勢を急いでいる可能性がある。 ウクライナの春と秋は泥濘期。泥濘になると道路以外は機動が困難。このため泥濘期では攻勢は困難。そうなると攻勢を行うなら冬と夏になる。欧米の軍事支援として戦車がウクライナに到着するのは3月から。さらに訓練と数が揃うのは7月以降になる。到着する戦車は300両以上だから、7月以後からウクライナ軍の戦力は増強され、ロシア軍よりも優勢になることは明白。 つまりロシア軍は、ロシア軍から攻勢が行えて、ウクライナ軍の戦力が増強される2月末までにウクライナ軍に対して致命的な損害を与えなければならない。しかも最低でも一個師団をウクライナ軍から消し去る必要に迫られている。 3月からは泥濘が始まるからロシア軍は春の攻勢を行えない。仮に夏に攻勢を行うとウクライナ軍は欧米の戦車で強化されている。秋になると泥濘になり攻勢は行えない。では冬に攻勢を行うとウクライナ軍はさらに強化され300両の戦車師団になっている可能性がある。 こうなるとロシア軍の選択肢は一つだけ。2月末までにウクライナ軍を撃破すること。これができなければロシア軍に勝利はない。だからロシア軍はウクライナ東部のバフムト付近で損害無視の攻勢を行っている。バフムト付近ではロシアの民間軍事会社ワグネルが囚人兵を投入している。 ワグネルの囚人兵5万人が投入され残ったのは1万人。4万人は戦死・脱走・捕虜に該当するが、それだけ損害無視で攻勢を行っている証し。ならばロシアは欧米の軍事支援が強化されることを知っていた可能性が高い。だから春までに損害を無視した攻勢で前進を行う理由になる。 同時にロシア軍最後の攻勢であり、賭けの攻勢だ。今年の2月までに勝利できなければ7月からウクライナ軍が優勢になるのは明白。今後アメリカはF-16戦闘機をウクライナに提供する可能性が示唆されており、仮に実現すればウクライナ軍は航空優勢を獲得できる。戦闘機は20機から戦力になるので、20機以上の機体数になればウクライナ軍が主導権を持つことになるだろう。 ●ロシア軍の賭けとプーチン大統領の決断 ウクライナ情勢は2月までの戦闘が戦局を左右する。ロシア軍がウクライナに対して致命的な損害を与えればロシア軍が勝利する。もしくは欧米からの軍事支援があっても膠着状態になる。だがウクライナ軍が遅滞行動で損害を軽減すればロシア軍の敗北が決定する。 今のウクライナ軍は損害回避を選んだ遅滞行動か、ウクライナ南部の攻勢でロシア軍を撃破することもできる。ウクライナ軍に選択肢はあるがロシア軍にはない。ロシア軍は2月末までに勝利を得られないと敗北が確定する。だから損害無視で前進するしか道はないのだ。 ロシア軍には悲壮な最後の賭けになった攻勢だが、プーチン大統領には最後の決断になるかもしれない。何故ならウクライナ軍が7月から強力になるのは明らか。そうなると戦場はウクライナからロシアに変わる。これではプーチン大統領は失脚するか亡命。最悪の場合はクーデターで殺害される未来が待っている。これを回避するためにプーチン大統領は、ロシア軍が2月末までに結果を出せないなら戦術核を使う可能性がある。これは2月末までに判明するが、世界の運命をプーチン大統領が握っている。 |
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●F16戦闘機は供与せず 米大統領明言、ウクライナに 1/31
バイデン米大統領は30日、ホワイトハウスで記者団の取材に応じ、ロシアの侵攻を受けるウクライナにF16戦闘機を供与しないと明言した。1月に米国などが主力戦車の供与を発表したことで、次の武器支援は戦闘機だとの見方が強まっている。 ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、ドイツで開かれたウクライナ軍事支援会議でオンライン演説し、F16の供与を呼び掛けていた。しかし、バイデン氏は供与するかを記者団に問われ、「いいえ」と即答した。 |
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●バイデン氏、ウクライナへのF16戦闘機供与「ない」 1/31
ジョー・バイデン米大統領は30日、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの軍事支援として米国製のF16戦闘機を供与することはないと述べた。 バイデン氏はホワイトハウスで、ウクライナの指導者らが求めているF16を提供するかとの記者団の問いに対し、「ノー」と答えた。 西側諸国は、北大西洋条約機構軍標準の主力戦車の対ウクライナ供与問題をめぐって立場が二分していたが、今月ようやく提供することでまとまった。 ウクライナとしては、西側からさらにF16が提供されれば、旧式の空軍力も強化できると期待しているが、西側諸国の間では議論が続いている。 一方バイデン氏は、ロシアのウクライナ侵攻開始から1年となる2月24日を控え、日程は未定としながらも「ポーランドへ行くつもりだ」と語った。ウクライナの隣国ポーランドは、東欧における米国の主要な同盟国としてウクライナ支援の中心的な役割を果たしている。 |
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●日本の軍事大国化をめぐる不都合な真実 1/31
軍拡競争と複合危機の悪循環 市民社会が軍縮公論化に乗り出すべき 日本が反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有と5年以内に防衛費2倍引き上げを骨子とする新たな国家安全保障戦略を採択したことを受け、韓国でも様々な声があがっている。まず尹錫悦(ユン・ソクヨル) 大統領は「頭上でミサイルが飛び交い、核が飛んでくるかもしれないのに、それを防ぐのは容易ではない」とし、これに対応するための日本の軍備増強について「誰もとやかく言えないだろう」と述べた。 一方、韓国内の中道・革新陣営では日本の軍事大国化とこれを擁護する尹錫悦政権に対して批判の声を高めている。日本が平和憲法と専守防衛の原則を無視し、攻撃能力の保有を試みること自体が問題だという主張だ。野蛮な植民統治と慰安婦および強制徴用など歴史問題の解決に消極的な日本を見てきた韓国国民にとって、日本の軍事大国化について不快感を抱くのは当然といえる。また、日本は有事の際、韓国の同意なしに北朝鮮を攻撃できるという立場を示しているが、これは北朝鮮を領土と明示した大韓民国憲法を無視するものだという批判もある。 しかし、国内ではあまり取り上げられない、しかし直視しなければならない不都合な真実もある。まず、北朝鮮は国連加盟国であり159カ国と国交を結んでいる。厳密に言えば、国際法的には主権国家である。また、南北の和解協力と平和共存および統一の大前提は、互いの体制を認めることにある。国際法的に主権国家であり、北朝鮮政策の上で認めるべき対象である北朝鮮を韓国領土だと主張し、日本の敵基地攻撃論を批判することに果たして説得力があるのかという問いは、ここから始まる。韓国も北朝鮮の核使用の兆候を把握した場合、先制攻撃を認める軍事戦略を採択しているため、なおさらそうだ。 現実的にはさらに重要な問題もある。世界のほとんどの国は自衛力を求めており、その要となるのは抑止力であり、抑止力を強化するためには攻撃力を備えなければならないという立場だ。こうした傾向は米中戦略競争の激化、ロシアのウクライナ侵攻と戦争の長期化、そして北朝鮮の核武力の強化などと相まってさらに強まっている。韓国もその先頭グループにいる。米国の軍事力評価機関「グローバル・ファイヤーパワー」によると、韓国は2021年から3年連続で世界6位の軍事大国となっている。一方、日本は今年の順位が8位に落ちた。韓国が日本の再武装を批判することが、日本に不快感を抱かせるかもしれない理由だ。 むろん、これらは日本の軍事大国化とこれを事実上支持している尹錫悦政権の態度を擁護するためではない。韓国のリベラル勢力が朝鮮半島や韓日関係の特殊性を掲げて批判ばかりしていては、国際社会から疎外されかねないという点を指摘するためだ。さらに重要なのは、普遍的価値に基づいた新たな代案の公論化の必要性を強調するためだ。 こんにちの世界は「複合危機」に直面していると言われている。安全保障危機、暮らしの危機、そして気候危機などが同時多発的に現れているためだ。新たな代案の出発点はこれらの危機の相互関連性に注目することにある。例えば、激しい軍拡競争は安全保障ジレンマを激化させ、安保危機を煽り、貴重な資源の無駄遣いを招き、庶民の暮らしをさらに困難にし、炭素排出の増加と国際協力の低下で気候危機を深化させる。 このような複合危機の悪循環に注目すれば、代案の公論化も可能になる。多国間による軍拡統制と軍縮がまさにそれだ。ちょうど5月には日本の広島でG7サミットが開かれる。また、9月には新しい気候サミットの開催が推進されている。もちろん、主要国の政府が自発的に軍縮に乗り出す可能性はほとんどない。そのため、国際市民社会が乗り出さなければならない。「何が重要なのか」を問いかけ、軍縮を公論化することに力と知恵を集めなければならない。 |
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●反プーチンの指導者は「殺されるか刑務所入り」 加速する弾圧の実態 1/31
ウクライナへの侵攻開始から間もなく1年も経つというのに、攻撃を続けているロシア― その国内では、今年に入ってから、我々外国メディアもニュースソースにしていた独立系メディア「メドゥーザ」が国内での活動を完全に禁止されるなど、政権の主張にそぐわない「異論」の封殺がますます激しくなっている。反論は沈黙させられ、急速に多様性が失われている。 いま、ロシアの社会で何が起こっているのだろうか? ●モスクワの新年は厳戒 赤の広場は閉鎖 路地裏には機動隊 2022年12月31日、深夜のモスクワ― 新年をむかえる街には色鮮やかなイルミネーションが随所で輝き、一見、隣国に武力侵攻している戦時下の国とは思えない。例年、モスクワっ子の多くは、自宅や郊外の別荘で家族や友人とともに新年を迎えるが、若者や地方からの旅行者たちは「赤の広場」に集まってシャンパンで乾杯して新年を迎える。 プーチン政権は、多くの人が一カ所に集中し不測の事態が起きることを警戒したのだろうか。この年越し、31日の夜から1日にかけて「赤の広場」は閉鎖された。当局は閉鎖について事前からSNSやニュースを通して周知を図っていた。しかし、知ってか知らずか、多くの人々が中心部に詰めかけている。警察や治安部隊が赤の広場の手前で拡声器を使い引き返すように促している。その時、赤の広場に通じる目抜き通りのトベルスカヤ通りで、異様な光景を目にした。 路地裏に機動隊が息をひそめて隊列を組んでいるのだ。いざというときに出動するのだろう。通りでは警察犬も周辺を嗅ぎまわっている。独立系メディアによれば、この時、ただ歩いているだけで拘束された人も多かった。 ●政府関係者「いまのロシアは『ポチョムキン村』」 煌びやかな装飾の一方で、路地裏で息をひそめる治安部隊。その強烈な対比は、あるロシア政府関係者が耳打ちした言葉を思い出させる。 「いまのロシアは『ポチョムキン村』のようなものです」 1787年に女帝エカテリーナ2世がクリミア半島を旅した際、グレゴリー・ポチョムキン公は、自分が治める地域がみすぼらしくあってはならないと考え、エカテリーナ2世の一行が通る道に面した家々の外壁だけを豪華絢爛に飾り立てたという。見せかけだけ取り繕った美しいものの意味で使われる「ポチョムキン村」の逸話は、今のロシアの国全体にも当てはめることができるというのだ。 ●プーチンの政治システムはツァーリの統治の影響か 「悲しいことかもしれませんが、これが私たちのシステムです。それが現実です。物事を決定できるのは、プーチン氏だけです」その政府関係者は、なかばあきらめたようにそう告白する。合意形成に不可欠な議会は形骸化し実質的な権限はほとんどない。ロシア人の多くは国会議員や地方議員のことを「純粋な名目上の存在」だとみなしていて、期待する人はほとんどいない。さらにプーチン氏は、憲法も改正し最長で2036年まで大統領の座に居座ることを制度上可能にした。このような統治が可能なのは、ロシアが伝統的にツァーリ(皇帝)によって統治されてきたことにも影響されていると言われている。単純化していえば、ロシア人は強いリーダーに指示されることを望み、自分の身を預けてしまいがちなのだ。 プーチン氏が2000年に大統領に就任して以来、ロシア経済が上向いたこともあり、ソ連崩壊後の「悲劇の90年代」といわれる時代を知る人々は「今の不自由ない生活はプーチンのお陰だ」と口を揃える。プーチン氏の強力なリーダーシップが政治的な停滞を打破し、成長を生み出したと考え、プーチン氏に進んで身を預けてきた。プーチン氏が推し進める権力集中を容認してきたともいえる。 ●侵攻で浮き彫りになったプーチン政治の恐ろしさ ただ、ウクライナへの侵攻をめぐり、ロシア国内で誰もプーチン氏を止めることができないという現実を目の当たりにして、プーチン政治の恐ろしさが改めて浮き彫りになった。政策決定に影響力を持てるオリガルヒ(富豪)やエリートたちさえ止めることはできず、むしろ身の危険を感じて早々にロシアを去った。不審な死を遂げた者もいる。ロシアの独立系メディアなどは、「エリートの多くは大統領に不満を抱いているが、その決定に反対する手段をもはや持っていない」と指摘している。 いま、声高にプーチン大統領が嫌がるような主張を表立って展開するのは、昨年来、昨年来、一連の記事で指摘し続けているように、より強硬路線を突き進む民間軍事会社「ワグネル」を束ねるプリゴジン氏らだけという事態は深刻だ。 ●政権の限界? 見送った「ホットライン」と「大規模記者会見 一方で、プーチン氏の統治に限界が迫りつつあるとも考えられる事態が生じている。昨年、「国民とのホットライン」と「年末の大規模記者会見」という2つの重大な恒例行事を見送ったのだ。 「ホットライン」はプーチン氏とロシア全土の住民とを直接テレビ電話でつなぎ、毎年6月に放送されてきた。 「工場の煙が健康に悪い」「給与が遅滞している」といった住民が訴える不満に対してプーチン氏が生放送の場で対応を約束する。時には目の前で官僚に指示を出し、ロシア人特有の「救済願望」を満たし、ツァーリのように振舞うことで求心力を維持してきた。 年末恒例の「大規模記者会見」も同じだ。外国メディアも参加するが、プーチン氏にとってより重要なのはロシア国内の地方からの記者が多いことだ。ここでもプーチン氏は、地方から出張でやってきた記者の質問に丁寧に答え、地方の問題に真剣に取り組んでいることをアピールしてきた。 なぜプーチン氏は国民への求心力を維持するために重視していた2つのイベントを行わなかったのか? あるロシア政府関係者はこう指摘する。「国民はいつ『特別軍事作戦』が終わるのかと思っている。これに明確に答えられない限り、国民と向き合うことは難しいだろう」。指摘の通り、動員令などにより積もりつつある国民の不安や不満は、終結の見通しを示す以外に解消できない。 ●厳しい弾圧 失われる多様性…… では今後、高まりつつある国民の不満にプーチン氏はどう対処するのだろう? プーチン氏は、国民と向き合うのではなく、力で不満を封じ込めようとしている。1月18日、サンクトペテルブルクの兵器工場を訪れたプーチン氏は「勝利は確実だ。疑いはない」と述べた。プーチン氏は一歩も引きさがる様子はなく、その態度はむしろ硬直化している。異論を封じ、社会を画一化させ突き進もうとしているのだ。 モスクワの新年のイルミネーションにさえ「我々はともに」というスローガンがならぶ。一方的に併合を宣言したウクライナの東部4州がロシアと一体だという意味と同時に、ロシアはプーチン氏を中心に一つにまとまらなければならないという意味も読み取れる。 プーチン氏の決断に異論を唱える存在は「テロリスト」ないしは「外国エージェント」と見なされ、弾圧される。その動きは年が明けてから、加速しているようにも見える。 1月14日、ウクライナ中部ドニプロの集合住宅攻撃で多数の死傷者が出るとモスクワでは、ウクライナの詩人で作家のレーシャ・ウクラインカの記念碑の前に追悼の思いを込め自然発生的に花が添えられた。人権団体はそこにやってきた人が拘束されたと報告している。 1月26日には、独立系メディアの中では最大規模の「メドゥーザ」を「外国エージェント」よりもさらに厳しい「望ましくない組織」に指定し、ロシア国内での活動を完全に禁止した。 ロシアで最も古い人権団体「モスクワ・ヘルシンキ・グループ」は1月25日に解散命令を受けた。また、その人権団体の創設者でノーベル平和賞受賞者のサハロフ氏の功績と理念を顕彰する「サハロフセンター」も建物からの退去を求められている。 弾圧は反戦・反体制派に留まらない。たとえば、この半年でLGBTへの弾圧は厳しさをまし、関連する本も販売に制限がかけられている。今のロシアでは、少数者による意見表明は、社会的な混乱を生み出すとみなされ、徹底的に排除されることが正当化され、社会の多様性は急激に失われている。 ●それでも民主化しかない… 弾圧の中、反戦の声を上げ続けるサンクトペテルブルクの地方議員ニキータ・ユフェレフ氏はANNの取材に、プーチン氏が20年かけて、反体制派を弱体化させる一方で、480万人にのぼる治安部隊を築き上げたと指摘する。「私たちの指導者たちは殺されるか、刑務所に入れられています。資金も絶たれています。抗議活動を行えば強力な治安部隊によりすぐに阻止されてしまい、ロシア社会には、路上での大規模な抗議行動は何にもつながらないというコンセンサスができてしまいました」 プーチン政権を前にリベラル勢力は歯が立たないという。では、ロシアはこの先プーチン体制が続くしかないのだろうか? あるいは、別の道があるのだろうか?その質問に対し、彼はきっぱりとこう答えた。 「ロシアは民主化しなければなりません。他の道はありません」 議員は、無力だと認めつつ、それでも抵抗の火を絶やしてはならないといい、身の危険を覚悟で発信を続けている。 |
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●独ソ激戦80年「スターリンの町」へ プーチン氏、祖国防衛にすり替え 1/31
タス通信によると、ロシアのペスコフ大統領報道官は31日、プーチン大統領が2月2日に南部ボルゴグラード(旧スターリングラード)を訪れると明らかにした。この日は、第2次大戦で最も激しかったスターリングラード攻防戦(1942〜43年)の終結から80年に当たる。 スターリングラードは「(ソ連の独裁者)スターリンの町」を意味し、攻防戦はナチス・ドイツに対するソ連勝利への分岐点となった。プーチン氏は最近、ロシアが開始したウクライナ侵攻の説明を「(西側諸国が仕掛けた)戦争」とすり替えている。過去の戦勝をアピールすることで、現在の「祖国防衛」を国民に強く訴える狙いがあるとみられる。 地元メディアは、民間軍事会社「ワグネル」創設者プリゴジン氏や、南部チェチェン共和国の独裁者カディロフ首長も、攻防戦の記念式典に出席する可能性があると報じている。両者は「強硬派」として侵攻を支持する一方、高級軍人を「弱腰」と批判し、ロシアの内部に不協和音を生む要因となった。同席が実現すれば、ウクライナに対する「一枚岩」を強調する場となる。 一方、タスなどは下院関係者の話として、延期されているプーチン氏の年次教書演説が2月20日以降に行われる公算が大きいと伝えた。同月24日の侵攻開始1年の当日はないという。プーチン氏は上下両院議員を集めてメッセージを発し、長期戦をにらんで国内の引き締めを図るとともに、侵攻の正当性を改めて主張する見通しだ。 |
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●中国はプーチン大統領のウクライナ戦争から学ぶ−NATO事務総長 1/31
中国はロシアがウクライナで行っている戦争を注視し、そこから教訓を得ていると、ストルテンベルグ北大西洋条約機構(NATO)事務総長が述べた。この教訓が中国の将来の決定を左右する可能性があると指摘し、台湾への圧力など中国の行動を強く警告した。 ストルテンベルグ氏は31日、岸田文雄首相と東京都内で会談した後の共同記者会見で語った。ロシアの「プーチン大統領がウクライナで勝利すれば、独裁主義の体制が暴力によって目的を達することができるというメッセージを送ってしまうことになる。欧州で今日起きていることが、明日の東アジアで起こり得る」と話した。 会見でストルテンベルグ氏は、「大西洋の両岸とインド太平洋地域の安全は深く結びついている」との見解にNATOと日本は同意していると説明。インド太平洋地域で「起こることはNATOにとっても関心事だ」と付け加えた。 さまざまな分野で中国による安全保障上の脅威が増していることを欧州各国はますます強く感じつつある。ストルテンベルグ氏は中国の軍事力と核兵器の増強をあらためて警告し、近隣諸国・地域に対する強圧的な行動や偽情報の拡散、重要インフラ支配の取り組みにも警戒感を示した。 岸田首相は日本とNATOの協力を新たな水準に引き上げることを確認したと述べ、サイバー分野の連携に言及。インド太平洋地域へのNATOの関心と関与に歓迎を表明した。日本はNATO連絡事務所を設置し、NATOの各種会合に定期的に参加することも検討すると、首相は付け加えた。 共同声明では日本とNATOの協力強化方針を説明し、「ロシアと中国の軍事協力拡大への懸念」を強調。「東シナ海において武力やどう喝によって現状を変更しようとする一方的な試み全てに強く反対する」と言明し、「中台間の問題の平和的な解決」を呼び掛けた。 日本やオーストラリアなどアジア太平洋地域のパートナーも参加した昨年6月のNATO首脳会議は、中国が「体制上の挑戦」だとの認識で一致し、中国とロシアの戦略的パートナーシップ強化について警告していた。 |
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●深刻化するアフリカ食糧危機、プーチン大統領の目論見は? 1/31
世界は大きなうねりの中にある。 まもなくウクライナ戦争の開戦から1年。現在も収束の兆しはなく、刻々と変化する戦況に世界中が揺り動かされている。 昨夏には各国で深刻な干ばつや大水害が起こり、世界中が極端な異常気象に見舞われた。 一方で、コロナ禍によるさまざまな制限が少しずつ緩和され、世界を行き来する自由も戻りつつある。 戦場カメラマン・渡部は昨年、ウクライナを中心に世界を撮り続け、「1000枚の戦場」としてシンクロナスで発表してきた。 戦場のリアルを見続けてきた渡部が語る、2023年の世界情勢を紹介する。TVなどでは報道されない、喫緊の“世界のうねり”――。 ●2023年も続く、ウクライナの苦しみ こんにちは、戦場カメラマンの渡部陽一です。 今回は、世界を回るなかで僕が感じた、2023年に注目するべき国際情勢、ウォッチしていきたい国、それらの予想や展開をお伝えしたいと思います。 まず、2022年は「ウクライナ戦争」によって、世界情勢が引きずり込まれ、悲しい時間を突きつけられてきました。2023年も、ウクライナ戦争が尾を引く、または悪化することも想定しています。 こちらの美しい写真は、ウクライナの首都キーウにある「ウクライナ正教会」の教会です。 こういった教会は街中にいくつも点在しており、たくさんのオペラ劇場や、伝統的な建築技法の街並みが広がり、それこそ世界中の人々が、その美しい建造物をひと目見ようと足を運ぶ芸術の都です。誇り、尊厳、美しさ、歴史など、さまざまな魅力あるウクライナですが、今は戦争の苦しみの真っ只中です。 ●核弾頭保有数 世界第一位の「ロシアの圧力」 ウクライナのゼレンスキー大統領と国民が連帯し、欧米諸国から武器の供与、戦略・戦術などの後方支援を受けながら、ロシア軍に対して少ない兵力で効果的な戦いを繰り広げていることは事実です。 ただ、絶対的な兵力を持ち、約5800発という核弾頭保有数世界第一位のロシアは、核による抑止力を使ってきています。ウクライナ北部のベラルーシで長距離弾道ミサイルの軍事演習を行ったり、ロシアの陸海空軍が、ロシア全域で同様の軍事演習を繰り返しています。 これらは、欧米諸国、特にアメリカ、ドイツ、フランスなど、対ロシアとして軍事支援を行う国々に対する「核の圧力に向き合うのか?」というメッセージ。 2023年、ロシアのプーチン大統領は、ゼレンスキー大統領をなにかしらの方法で排除し、勝手な大統領選を行い、ロシア寄りの大統領を立て、ウクライナをロシアの完全同盟国に落とし込もうとするだろうと、僕は想定しています。 それは、隣国のポーランド、ルーマニア、ハンガリーなどのヨーロッパ諸国が、ロシアの国境と直接向き合わないように、まるでサンドイッチのように、ウクライナを軍事的な緩衝地帯とすることが、プーチン大統領の戦略的イメージだと見ています。 一方で、ウクライナ側の軍事的圧力や、欧米諸国の外交圧力、経済制裁による効果が、2023年には表に出てくるのではないかというメッセージも現場では広がっています。ウクライナ戦争、2023年もつばぜり合いが続くと僕は感じています。 ●「食糧危機」から生じる、暴動、デモ、テロ組織 ウクライナ戦争は、世界中の国々にも大きな悪影響を及ぼしています。特に「世界食糧危機」が深刻さを増しています。 穀倉地帯であるウクライナ。トウモロコシ、サトウキビ、ひまわり油、特にパンやパスタの原料となる小麦は、世界トップクラスの産出量を誇っています。 ウクライナ産の小麦に頼ってきた中東やアフリカ大陸の国々は、戦争によって小麦が入ってこないため、食料の価格、特にパンの価格が高騰しています。生活が厳しいだけでなく、主食であるパンも買うことができない。生活そのものが成り立たなくなっていく。 不安定な情勢によって、国民の怒りが暴動となり、国家を揺さぶるほどの大規模なデモ、反政府抗議活動が広がっていく可能性が指摘されています。 さらに情勢が不安定になると、政権そのものを崩壊させようと、国際テロ組織といった世界情勢に関わる武装組織が、それぞれの国や地域で暗躍。武器をみせ始める時期を迎えているのでは、と感じています。 ●SDGsを掲げ、世界規模でアンテナを向けたい「砂漠化」 この写真、映画『アラビアのロレンス』のワンシーンのような砂漠の地平線。これは、インドとパキスタンの国境に広がるタール砂漠です。 パッと見れば美しい風景ですが、僕が世界を回っていて強く感じた変化が「砂漠化」です。 パキスタンやインドでは、タール砂漠が町を飲み込んでいく状況が続いています。ほかにも、アフリカのサハラ砂漠や、中国北西部のタクラマカン砂漠など、世界中が砂漠化によるさまざまな影響を受けていると強く感じています。 砂漠化が進めば、水の問題や、穀物の産出に影響を及ぼし、緑地化を進めていた場所までもが壊されてしまいます。 今、世の中で大きなうねりとなっている持続可能な開発目標「SDGs」。豊かな地球環境、限られた資源を、国境、領土、民族、国籍問わず、皆で支えていく。そういった地球規模での連携や支援が広がってきています。 ただ、それらの支援が必要になった要因は、人間が自然環境に強烈な負荷をかけ、破壊し、自然を無視した開発や、戦争による締めつけによるものであると、世界中の前線を回っていくなかで感じました。 SDGsという開発目標を掲げながら、環境破壊を止め、見つめていくなかで、この「砂漠化」というものにも、世界規模でアンテナを向ける必要があると感じています。 |
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●ポーランド、国防費を大幅増 ウクライナでの戦争を受け 1/31
ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相は30日、国防予算を大幅に増加させると発表した。ウクライナでの戦争を受け、変革が必要だと説明した。 ロシアがウクライナを侵攻して以降、ヨーロッパの国々は軍事支出を増やしている。ポーランドはその最新例となる。 同国の軍事予算は現在、国内総生産(GDP)の2.5%弱となっている。 モラヴィエツキ首相は、これを今年増やすと表明。「ウクライナにおける戦争を受けて、私たちは軍備拡大をさらに加速させる。そのため、今年は前例のない努力をする。GDPの4%をポーランド軍に充てる」とした。 また、国防予算のGDP比4%は、「北大西洋条約機構(NATO)加盟国で(中略)最高比率かもしれない」と付け加えた。 ポーランドは、北部でロシアの飛び地カリーニングラードと接している。 これまでに、アメリカのエイブラムス戦車116台の購入を明らかにしており、最初の納入が今年春に始まる予定。 ロシアによるウクライナ侵攻では、モラヴィエツキ首相はドイツに対し、同国のレオパルト2戦車をウクライナに供与するよう強く呼びかけた。 ●欧州諸国の軍事費増の動き ロシアがウクライナを侵攻してから、多くの西側諸国が軍事費を見直した。そして多くの場合で、大幅に増加させた。 NATO加盟国は、2024年以降はGDPの2%以上を軍事費として支出することで合意している。NATOは長年、この2%を目標にしてきた。 フランスは最近、ウクライナでの戦争も理由に、軍備を大幅増強させる計画の概要を発表。2024〜2030年の7年間の予算を4130億ユーロ(約58兆円)に増やすとした。直前の7年間の予算は2950億ユーロだった。 スウェーデンとフィンランドは、NATO加盟に向け、軍事予算の大幅増を発表している。 ドイツは、昨年2月にロシアが侵攻を開始した数日後、軍予算を1000億ユーロ上積みすると宣言した。 イギリスは昨年6月、当時のボリス・ジョンソン政権が、GDPの2.5%に軍事支出を増やすと約束した。 |
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●プーチン氏、アルジェリア大統領と電話会談 エネルギー市場での協力巡り 2/1
ロシアのプーチン大統領は31日、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」およびガス輸出国フォーラム(GECF)における世界のエネルギー市場での協力について、アルジェリア大統領と電話会談を行ったと、ロシア通信(RIA)がロシア大統領府(クレムリン)の発表として報じた。 |
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●アルメニア首相、プーチン氏にナゴルノ巡る危機打開を要請 2/1
アルメニアのパシニャン首相はロシアのプーチン大統領に対し、アゼルバイジャンとの係争地ナゴルノカラバフにおける人道的危機について伝え、打開に向けてロシアが必要な措置をとることの重要性を「強調」した。アルメニア政府が31日、発表した。 声明で「ナゴルノカラバフにおけるロシアの平和維持軍の活動について言及した」と指摘。ナゴルノカラバフとアルメニアを結ぶ唯一の陸路「ラチン回廊」におけるアゼルバイジャンによる封鎖をロシアの平和維持軍に止めさせるよう要請したという。 ナゴルノカラバフはアゼルバイジャン領内と国際的に認められているが、12万人の住民は主にアルメニア人となっている。 ラチン回廊においては環境活動家を名乗るアゼルバイジャンの民間人が12月12日以降、ロシアの平和維持軍と対峙。アルメニア政府は、抗議者たちは政府の支援を受けた扇動者と指摘する一方、アゼルバイジャン政府は回廊封鎖を否定し、一部の援助物資などの運搬を認めているとしている。 ロシア大統領府(クレムリン)は「ロシア、アルメニア、アゼルバイジャンの指導者による三カ国間合意全体の一貫した実施の重要性に重点を置きながら、ナゴルノカラバフにおける現在の状況が議論された」とした。 その後、ロシアのラブロフ外相がアゼルバイジャンのバイラモフ外相との電話会談で「ラチン回廊周辺の状況を解決する方法」について協議。ロシア外務省の発表によると、ラブロフ外相は、ロシアにはこの対立を仲裁する用意があると述べたという。 |
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●「違法動員」の9000人が帰宅 ロシア検事総長 2/1
ロシアのクラスノフ検事総長は31日、「違法に動員」された9000人余りが帰宅したとプーチン大統領に報告した。 クラスノフ氏はクレムリン(ロシア大統領府)でプーチン氏と会談し、監視の取り組みにより、健康上の理由など、いかなる場合であっても動員されるべきでなかった人を含めて違法に動員された民間人9000人余りが帰宅したと伝えた。 クラスノフ氏は、ロシアでは長い間、動員は行われていなかったが、今回の動員で多くの重要な問題が明らかになったと述べた。 クラスノフ氏によれば、防弾チョッキや制服を前線に供給する問題は大部分が解決された。 動員された兵士に対する冬服の支給や、適切な倉庫の構築とその安全性について、管理ができているという。 ウクライナに派遣された兵士から基本的な装備でさえ不足しているとの声が出たことを受けて、ロシアの民間人は兵士に装備を送るためクラウドファンディングを利用していた。 ロシア軍がウクライナで立て続けに後退を余儀なくされたことを受けて、プーチン氏は昨年9月、「部分的動員」を発表していた。 |
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●実は日本も関わっている、ロシアの「勢力圏」中央アジアの「法と制度」 2/1
●ロシア「勢力圏」にある中小国のしたたかさ 「ロシアは父、ウクライナは弟、タジキスタンは息子」 筆者はタジキスタン駐在中、ロシアとその他旧ソ連諸国との関係性について、タジキスタン人が半ば自嘲気味にこう言及するのを幾度か耳にした。 「父と子」の関係性に対する「子」の積年の不満は、2022年10月にカザフスタンの首都アスタナで開催された独立国家共同体(CIS)首脳会合における、タジキスタンのラフモン大統領からロシアのプーチン大統領への次の発言から看取される。 「ソ連時代のような宗主国的振る舞いをしてほしくない、中央アジアの小国であっても敬意を払ってほしい」と。公の場でロシアに対する不満を表明するのは異例のことであり、同発言は中央アジア諸国のロシア離れとして日本のメディアでも報じられた。 もっとも、その真意をめぐっては諸説あり、ロシアの苦境を機に投資や援助等を引き出そうとする外交上の駆け引きといった見方も示されている。 しかし、ロシアの家父長的ないし大国主義的な振る舞いに不満や恐れを抱く人々がいる一方で、概して中央アジアでは、ロシアへ親近感を持つ人々も少なくない。また、現在の格差社会を嘆き、ソ連への郷愁の念を口にする者もいるのも事実だ。 『アステイオン』97号「特集 ウクライナ戦争──世界の視点から」 では、ウクライナ戦争について、国際政治学、国際経済学、地域研究、歴史学など多様な角度から議論が展開され、示唆に富んだ様々な論点が提示されている。 なかでも、竹森俊平氏のロシア強権主義の原点を経路依存性に求める見方は、比較法、法と開発を研究する筆者の問題意識とも重なり大いに刺激を受けた。 そこで以下では、国際協力実務経験を素材にロシアの「勢力圏」とみなされる中央アジアから見た冷戦終結後の制度変化の素描を通じて、この見方を比較法および法と開発研究の視角から掘り下げてみたい。 ●社会におけるゲームのルール「制度」と体制転換 冷戦終結後、開発援助機関は、市場経済化と民主化を旗印に旧ソ連諸国、中・東欧諸国の体制転換に向けた大規模な支援を実施してきた。そこでは「制度」こそが経済パフォーマンスの決定要因であると仮定され、支援に際して、新制度派経済学を理論的支柱に「制度」が重視された。 ここで言う「制度」とは社会におけるゲームのルールである。これにより、「法」は体制転換という制度変化を促す原動力としてにわかに注目を集めるようになった。 ●ロシア法というレンズを通しての理解 実はこの「法」と「制度」に日本も関わっている。日本の法分野への国際協力(以下、「法整備支援」と称す)は、旧ソ連諸国についてはウズベキスタンを中心に中央アジアで2000年代初め頃から開始され、筆者自身も2005年10月から2011年3月まで日本の政府開発援助(ODA)によるウズベキスタンでの法整備支援プロジェクト等に従事した。 当時、計画経済から市場経済移行のための主要な法制定は、ロシア法経由でひととおり整備されたところであった。 ロシア法の移植に加えて、裁判実務においてロシア法の解説書が参照され法学教育でロシア法の教科書が用いられるなどロシア法の影響は大きく、当時筆者がウズベキスタンで目の当たりにしたのは、まさにロシア法というレンズを通した市場経済化や民主化、あるいはその理解といっても過言ではなかった。 民商事法をはじめとする基本的なビジネス法が整備されれば、経済活動が円滑に進むかというと必ずしもそうはいかない。 世界銀行グループの国際金融公社(途上国の民間セクター開発を専門とする開発援助機関)が当時年次刊行していた『ウズベキスタンにおけるビジネス環境』によれば、頻繁な行政調査や、行政庁による営業の許可およびその取消しといった行政行為の恣意性および不透明性が中小企業の経済活動を阻害していた。 このような状況下で、行政行為の透明化・適正化を図る日本の法整備支援プロジェクトが始まった。ところが、ソビエト法をほぼそのまま引き継いだウズベキスタン行政法には、「行政行為」という法概念がそもそも存在していなかったのだ。 「行政行為」とは、行政庁が法令に従って、国民の権利義務を具体的に決定する行為のことである。行政庁による営業の許可やその取消しは日常的に行われていたが、「許可」や「取消し」を一般化した法概念(行政行為)は存在しなかった。 法令が定める「許可」や「取消し」の審査基準はブラックボックスであることが多く、行政庁には巨大な裁量が認められていた。行政庁は、免許の取消しのような国民にとって不利益な処分を下す場合において、国民へその理由を開示することもほとんどなかった。 さらに、ウズベキスタンにおける行政法は、日本や欧米諸国のように行政による侵害からの国民の権利保護を目的とするものではなく、端的に言えば、行政上の義務違反によって公共の秩序を乱した者の責任を追求し処罰するための法と理解されていた。 ソビエト法においては行政と国民の利益が対立しうるという発想に乏しい上に、行政に対する司法審査を十分に制度化していなかった。したがって、行政行為を不当とする者が取りうる法的な救済手段の第一は、裁判へ訴えるのではなく、ソビエト法の遺制である行政機関への訴願であり行政の自己規律に依っていたのだ。 このような行政法理解や救済の仕組みには、ソ連時代の社会主義的な国家権力観が色濃く残っている。すなわち、ソ連では、国家権力は一体不可分のものとして把握され、国家権力が憲法に拘束されるという発想は希薄であった。 そして国家権力と国民は、政府と共産党こそが国民にとって公益が何たるかを熟知しているというパターナリスティックな関係にあった。 論考「二つの神話の崩壊とエネルギー地政学の復活」を寄せた竹森氏は、このような強権主義の原因について、ロシア政治史専門家のリチャード・パイプス氏等に依拠しながら、中世西欧に成立したような封建制度が歴史を通じてロシアに確立しなかったことに求める。 ソ連解体後に導入された「国家権力が憲法に拘束される」という立憲主義は、「行政行為」と同じく、ロシアや中央アジア諸国にとって外来の馴染みのない法原則であった。比較法の研究対象である法移植論では、馴染みのない法の移植は当該社会に根付く難易度が高いとされている。 ●依然として残ったソビエト法的思考回路 上述の日本の国際協力による行政行為の透明化・適正化を図る法整備支援プロジェクトが開始された2005年には、ソ連解体から14年経過し、憲法には権力分立が定められ、市場経済に適合的な民商事法が制定されていた。 しかし、ソビエト法的な国家権力観は行政法だけでなく人々の法的思考に依然として残っていた。その大きな原因は、法学教育では法律の暗記が中心であり、体制転換後の法制度運用に必要な法的思考を教授できる学識者が圧倒的に不足していたことにある。 ●経路依存性を有しない法の移植とその運用のために 法整備支援プロジェクトの支援対象の一つであった行政手続法は、行政による侵害から事前に市民の権利や利益を保護する性格を有することから、ソビエト法的な国家権力観に自ずと変更を迫るものであり、日本だけでなくドイツや米国の開発援助機関も支援していた。 同法は、日本の法整備支援プロジェクト期間中に制定されることはなかったが、2017年12月に国会で採択、2018年1月に大統領に裁可され、2019年1月に施行されるに至った。起草に着手してから約15年の年月が経っていた。 経路依存性を有しない法を当該国が内発的に制定するには時間を要する。さらに、移植された法を運用するには、その法の根底にある価値や原理を理解し、法的思考方法を身につけた法律家の厚い層が求められよう。 多数の法曹を輩出しているタシケント国立法科大学に、日本の支援で設置された日本語で日本法を教育する名古屋大学・日本法教育研究センターがある。 筆者は同センターの学生へ講義したとき、彼らの知への渇望に圧倒された。これら学生の中には日本の大学院へ留学し、後に母国で行政法研究者となった者もいる。筆者をその知的好奇心で圧倒した学生の一人は、今や、共同研究仲間となった。 法を運用するのは結局のところ人である。とすれば、上述のような法律家を自前で養成できるよう、法学者ないし学識者を育成する長期的視野に立った息の長い支援──例えば留学、教科書・学術書作成など──こそが効果的ではないだろうか。 |
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●ロシア・ウクライナ、節目巡り心理戦 大規模攻勢「2月24日説」 2/1
ロシアのウクライナ侵攻は2月に差し掛かり、24日の丸1年の節目が間近に迫る。 プーチン政権が一方的に「併合」した東・南部の戦闘と並行し、双方のどちらが戦争の長期化に耐え得るかを巡る心理戦が展開されている。ロシア軍による都市部への空爆や砲撃が続き、民間人の死傷にも歯止めがかからない状況だ。 「プーチン政権は新たな大規模攻勢を準備し、2〜3月にも踏み切る可能性がある」。米ブルームバーグ通信は1月27日、クレムリン(大統領府)関係者の話を伝えた。昨年秋から劣勢と撤退が続く中、戦局の主導権をウクライナから取り戻すのが狙いという。 侵攻1年の節目に攻勢があるとウクライナ側で警戒されてきたが、今回の報道は「クレムリンが認めた」という点で異例だ。ウクライナ国家安全保障・国防会議のダニロフ書記も2月24日説について「彼らが言う通りで、秘密でも何でもない」と指摘した。 ウクライナのゼレンスキー大統領は、敵軍撤退を柱とする10項目の和平案を国際社会に提示。実現に向け、国連本部での「平和サミット」開催を目指すが、ロシア包囲網の強化が目的なのは明らかだ。ロシア側が攻勢の準備をほのめかす背景には、ウクライナの計画を頓挫させる思惑もありそうだ。 「ロシアは長期化させ、われわれの戦力を消耗させようとしている」。ゼレンスキー氏は1月29日の動画でこう述べ、西側諸国の兵器支援を急ぐよう訴えた。本命視するドイツ製の主力戦車「レオパルト2」は保有国から順次引き渡される予定だが、運用が難しい米国の主力戦車「エイブラムス」は今年中に間に合わない可能性もあると伝えられている。 |
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●フランス、ウクライナに榴弾砲を追加供与 戦闘機も「排除せず」 2/1
フランスのルコルニュ国防相は31日、ロシアが侵攻を続けるウクライナへの軍事支援として、自走榴弾(りゅうだん)砲12門を追加供与すると発表した。これまでに18門を提供している。パリを訪れたウクライナのレズニコフ国防相との共同記者会見で明らかにした。 ルコルニュ氏は、仏軍関係者150人をウクライナの隣国ポーランドに派遣し、ウクライナ兵の訓練に当たる方針も示した。 一方、マクロン仏大統領は30日、ウクライナに戦闘機を送る可能性について「排除されない」と発言。ただ、戦争を拡大させないことなどが条件だとも強調した。ウクライナは西側諸国に、戦闘機や長射程ミサイルの供与を求めている。 |
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●ウクライナへ戦闘機供与 英報道官「現実的でない」 2/1
ロシアが侵攻するウクライナへの軍事支援として、戦闘機を供与するかどうかについてイギリスの首相官邸の報道官は「供与は現実的ではない」と話し、消極的な考えを示しました。 イギリスメディアによりますと、首相官邸の報道官は31日、「イギリスの戦闘機は非常に高性能で、操縦方法を習得するのに何か月もかかる。それを考えると、戦闘機のウクライナへの供与は現実的ではない」と述べたということです。 その一方で「ウクライナへの軍事支援は継続・加速し、要望には注意深く耳を傾ける」と強調しました。 |
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●「プーチンは戦争から手を引いた」──元ロシア軍情報将校 2/1
ロシアの軍事ブロガーでウクライナにとってはテロリストのイーゴリ・ギルキンは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領のウクライナ侵攻の進め方を痛烈に非難する見解を発表した。 イーゴリ・ストレルコフという名でも知られるギルキンは、元ロシア軍情報将校で、2014年のロシアのクリミア併合で重要な役割を果たし、ウクライナ東部ドンバス地域の紛争でドネツク人民共和国の武装勢力を組織した。 ●ADVERTISING ウクライナにおけるロシアの軍事的失敗や、プーチンと軍司令官たちの欠点についてギルキンは鋭く、手厳しい評価を下した。 1月30日にSNSの「テレグラム」に投稿した動画で、ギルキンはロシアのいわゆる「特別軍事作戦」は、動員が進まないために「失敗」に終わることを2022年5月の時点で予測していたと語った。 この戦争の間に、海外からの物資の供給が途絶え、ロシアの製造業は「崩壊した」と彼は述べた。そして、戦争を遂行しているロシアの「将官と官僚」を非難した。彼の見解によれば、このような連中のもとでは、「本当の意味で動員も準備も行えないし、戦争もできない」 ●昨年夏と同じ泥沼へ プーチンは昨年9月に動員令を発表したが、召集には「ブレーキ」がかかっている。総動員令を発令せずに部分動員に留めたからだ。ロシア軍は現在の兵員ではやっていけない、とギルキンは考えている。 「だからプーチンは特別軍事作戦の指揮から完全に手を引き、セルゲイ・ショイグ国防相に委任したが、ショイグの戦争準備はひどいものだった」とギルキン氏は言う。「あれを準備と呼べるかどうかさえ、わからないが」 「すべてが昨年の夏と同じ道をたどっている」とギルキンは言う。当時ロシア軍はウウライナの反撃で手痛い挫折を味わった。「戦いの場が(東部ドネツク州の)ピスキーではなく、バフムトになっただけだ」 昨年8月、ロシア軍はピスキーを掌握したと発表したが、ウクライナ側はこれを否定した。バフムトをめぐる戦いはもう数カ月にわたって続いている。 ウクライナのアントン・ゲラシチェンコ内務省顧問はギルギンの動画をリツイートし、「テロリストのギルキン=ストレルコフが、戦争の準備を怠ったロシア指導部とロシア軍を批判し、ロシアが戦争に負ける運命にあると予言している」とコメントした。 ●愛国で反プーチン 2014年に始まったウクライナ東部ドンバス地方での戦争の首謀者の一人として、ウクライナはギルキンを誘拐と殺人容疑で起訴している。また、2014年のマレーシア航空17便撃墜事件で乗員乗客298人全員を殺害した容疑でも訴追され、2022年11月にはオランダの裁判所に終身刑を言い渡されている。 ロシアでは昨年、政府の軍事作戦に対する批判を厳しく禁じる法律が施行されたが、ギルキンはプーチンやロシア国防省を非難しても罰を免れている。 それは、キルギンの見解は退役軍人を含むロシア軍や治安組織内のかなりの勢力の意見を反映しているものの、「彼自身はそれほど重要な存在でないからだ」と、ロシア専門家でコンサルタント会社マヤク・インテリジェンスのディレクター、マーク・ガレオッティは、1月29日のポッドキャスト番組で述べた。 「ロシア政府はキルギンを殉教者にするのではなく、安全弁として利用するのが最善だと判断したのだろう。勢いを増すこうした愛国主義の反プーチン勢力が何を考えているか、まったくわかっていないのだろう」 |
●「ロシアは勝てないが、ウクライナも勝てない」──「粘り勝ち」狙いのプーチン 2/1
ロシアのウクライナ侵攻が始まって11カ月。8年も続く紛争の最終段階でもあるこの侵攻が、近いうちに終わることはまず期待できない。 昨年2月24日の侵攻開始後まもなく停戦交渉が始まったが、双方の要求に決定的な隔たりがあり協議は難航を極めた。しかもウクライナでは、首都キーウ(キエフ)郊外からロシア軍が撤退した後、むごたらしい住民虐殺の証拠が見つかると、徹底抗戦を求める声が一気に高まり、4月までに交渉は完全に頓挫した。 戦争を終わらせるには交渉が必要なことは双方とも認めるが、ウクライナとロシアの現実認識は大きく懸け離れている。ウクライナが望むのはロシア軍の全面撤退と領土の完全回復、賠償金の支払い、ロシアの戦争犯罪が国際法廷で裁かれること、NATO加盟によりロシアの軍事的な脅威から自国が守られることだ。 一方、ロシアは部分的に占領したウクライナの4地域の「併合」を正式に承認するよう国際社会に求めるとともに、ウクライナの「非武装化」と「非ナチス化」を引き続き作戦目標に掲げている。 ウクライナは昨年11月、10項目から成る和平案を提示し、2月に国連を巻き込み「平和サミット」を開催することを提案した。いずれも既にロシアは拒否しているが、ウクライナはこの2案に西側の主要国の賛同を取り付け交渉の枠組みを設定したい考えだ。 もっともロシアは春に大規模な攻勢を開始するとみられ、ウクライナも反撃の準備を進めている。どちらも交渉のテーブルに着くどころではなく、「長丁場になると覚悟すべきだ」と、イボ・ダールダー元米NATO大使はクギを刺す。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はロシアのウラジーミル・プーチン大統領に「腹を割った会談」を呼びかけたこともある。だがゼレンスキーの顧問ミハイロ・ポドリャクの見方は厳しく、プーチンは「責任を逃れたいだけで、交渉などする気はない」と吐き捨てている。 ウクライナが和平の条件として挙げた10項目には、ロシアが占領したザポリッジャ原子力発電所周辺を安全保護区に指定することや、捕虜と連行された人たちの解放などが含まれる。加えてNATOに代わる新たな安全保障の枠組みづくりも提案している。 これらの要求は「ウクライナだけでなく世界全体にとっても非常に重要なものだ」と、ウクライナ内務省の顧問を務めるアントン・ゲラシュチェンコは本誌に語った。 しかし和平の条件をあまり高く設定すると、裏目に出る恐れがあると、ロシア専門家のニコライ・ペトロフは警告する。「ロシアはこの戦争に勝てないが、おそらくウクライナも勝てないだろう」 勝者なき状況ではロシア軍の完全撤退は「非現実的」な要求だと、ペトロフは言う。 ●プーチンの描く勝ち筋 ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はウクライナの10項目の提案を「ただの幻想」だと一笑に付した。ロシアは今も侵攻時に掲げた戦争目的を撤回する気配を見せておらず、ゼレンスキー政権打倒も含め全ての目的を完遂する構えだ。 プーチンは持久戦に持ち込んで「我慢比べ」をするつもりだと、ペトロフは言う。「今はロシアもウクライナも(春の)大攻勢に向けて準備を進め、双方とも今より支配地域を広げるつもりでいる」 そのため現段階ではどんな形にせよ交渉が始まることは期待できない、というのだ。 プーチンが譲歩することはどう考えてもあり得ないと、ペトロフは断言する。「プーチンはウクライナが劣勢に追い込まれ防衛能力を失うまで辛抱強く待つ気でいる。持久戦になればロシアにはるかに勝ち目があるとみているのだ。その見方には一理ある」 粘りに粘ってずるずる戦争を続ければ、ウクライナと西側は精根尽きて、ロシアは「まずまずの勝利」を挙げられる。それがプーチンの狙いだと、ペトロフはみている。 もっとも、今のところウクライナを支援する西側諸国に「支援疲れ」が広がる兆しはない。アメリカなどで極右のノイジー・マイノリティー(声高な少数派)が終わりの見えないウクライナ支援に不満を唱えているだけだ。 プーチンは西側の一部に見られるこうした不満が組織化され、支援つぶしの一大勢力になることを期待していると、ペトロフは言う。「大規模な支援をしているのに一向に状況が好転しなければ、世論は支援を続けることに意味があるのかと騒ぎ出すだろう」 プーチンが失墜すればどうなるか。たとえトップの首がすげ替わっても、いきなり方針が変わることはまずないと、元米NATO大使のダールダーは予想する。 彼によれば、プーチンの命運は作戦の成功に懸かっている。 「失敗したらロシアはおしまいで、プーチンもおしまいだ。もしもプーチンが失敗したら、後を継ぐのはさらに強硬な連中だろう。(クレムリンには)ハト派はいない......いたら投獄されている」 昨年12月にゼレンスキーはワシントンを訪問。ジョー・バイデン米大統領は、2人は戦争の終結について「全く同じビジョンを共有している」と語り、2014年以降にロシアに占領された全ての領土を奪還するというゼレンスキー政権の目標を支持していることを示唆した。 ゼレンスキーの訪米を受けてロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、「ワシントンの会談で、ウクライナもアメリカも平和を求めていないことが分かった」と批判した。「彼らは戦闘を継続することだけを考えている」 米政府関係者は、ウクライナとロシアの交渉の再開はほとんど期待していない。一方で、アメリカがウクライナの要求を軟化させようとしている節もある。マーク・ミリー米統合参謀本部議長は11月に、14年にロシアに併合されたクリミア半島を、ウクライナ軍が近く解放できる見込みは「高くない」と述べている。 アメリカはウクライナの限界を認識する必要があると、ダールダーは言う。「ウクライナが勝つ可能性は低い。現実としてロシア軍はかなり深く食い込んでおり、少なくともウクライナ軍がハルキウ(ハリコフ)やヘルソンで行ったような戦略的な方法で彼らを追い払うことは、非常に難しいだろう」 ●開かれた扉のジレンマ NATOとEUの指導部は、ウクライナが定義するウクライナの勝利を、引き続き支持することを明確にしている。イエンス・ストルテンベルグNATO事務総長とウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長は1月10日に共同の記者会見で、加盟国にウクライナへの武器供与を継続するように促した。 ただし、NATOとEUへの加盟というウクライナの究極の野望は、より複雑な状況に直面している。ゼレンスキーは加盟について「迅速な手続き」を求めたが、加盟諸国から非現実的だとして退けられた。ウクライナが欧州大西洋圏の仲間入りを果たすまでには、公には温かい言葉を投げかけられているが、長い道のりが待ち受けている。 NATOとEUの加盟を目指す方針はウクライナの憲法に明記されている。昨年6月にはEUの加盟候補国として承認され、9月末にNATO加盟を正式に申請した。 1月中旬に発表された新欧州センターの世論調査では、ウクライナ人の69%が自分たちのNATO加盟を排除するような和平交渉は考えられないと答えている。NATOは加盟を望む国への「開かれた扉」政策を断固として守り、ウクライナを排除しろというロシアの要求を拒否している。 一方、EUの主要国はロシアとの対話にも扉を開き続けるとしており、ウクライナをいら立たせている。 フランスのエマニュエル・マクロン大統領とドイツのオーラフ・ショルツ首相はその先頭に立ち、ヨーロッパの大国が和平の名の下に、ウクライナに代償の高い譲歩を強いるのではないかという懸念を生んでいる。ただし、両首脳はここ数カ月、ウクライナへの軍事支援を大幅に拡大している。 NATOにとって、ウクライナの加盟は頭の痛い問題だ。ハンガリーとウクライナのような厄介な2国関係や、NATOが将来、ロシアとの対立に引きずり込まれるのではないかという懸念から、加盟30カ国が全て積極的に賛成することはないだろう。 ウクライナ大統領府は昨年9月、アナス・フォー・ラスムセン前NATO事務総長ら専門家と取りまとめた「キーウ安全保障協定」を提唱した。 これはNATO加盟までの防衛力強化として、欧米やカナダ、トルコ、オーストラリアなどと法的拘束力のある条約を結ぶというものだ。ウクライナをNATOの武器で武装したハリネズミに変えて、今後ロシアが侵略してきた場合はさらなる武器供与と懲罰的制裁が行われることになる。 安全保障協定の提案は、NATO加盟国の人命を危険にさらすことなく、ウクライナの長期的な安全を確保するための枠組みを示しているかもしれない。これが加盟への進入路になる可能性もある。 NATO諸国が戦車や装甲車、防空システムの供与を新たに約束したことは、ウクライナにとって心強く、西側の結束がプーチンやその同盟国が期待したようには弱まっていないという証しでもある。 「新たな武器の供与について発表があったということは、西側はプーチンの野望に終止符を打たなければならないことを理解したと言える」と、ウクライナ内務省顧問のゲラシュチェンコはみる。 ウクライナ政府関係者は、14年にロシアが侵攻して以降の東部のように停戦後も緊張状態が続く「凍結された紛争」は、受け入れ難いリスクだと警告する。「戦争が長引くことはウクライナ経済だけでなく、ヨーロッパや世界の経済にとってもグローバルな脅威となる」と、ゲラシュチェンコは言う。 西側は決して訪れない平和を待ってはならないと、ダールダーは言う。「ほとんどの戦争は、勝利や平和で終わるのではない。戦争は断続的に続く。だからこそウクライナの欧州大西洋圏への統合が優先されるべきだ」 NATOは無条件でウクライナを加盟させるのではなく、腐敗の撲滅や民主主義と法の支配の強化などの改革を求めるだろうと、ダールダーは言う。それでも(加盟申請中の)フィンランドとスウェーデンを除いて、申請時に現在のウクライナほど準備が整っていた加盟国はないという。 「ロシアが核保有国であるという現実と、ウクライナ支援とロシアとの対立激化を避けたいというバランス取りが、足かせになっている。そのバランスは常に変わり、NATOをめぐる議論に影響を与えている。だから誰も話したがらない。でも遅かれ早かれ議論しなければならないのだから、今、始めるべきだ」 |
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●ムハンマド皇太子、プーチン大統領と電話会談を実施 2/1
サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は1月30日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との電話会談に応じた。1月30日付サウジアラビア国営通信(SPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、サウジアラビアとロシアの2国間関係や多くの分野の関係発展の道筋についてレビューを行うとともに、多くの相互の関心事について話し合いを行った。 一方、ロシア大統領府外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、政治、貿易、経済、エネルギー分野の2国間協力のさらなる発展や、世界の石油市場の安定をもたらすためのOPECプラスグループ内での協力について議論されたと発表した。 次回のOPECプラスの共同閣僚監視委員会(JMMC)は2月1日にオンライン形式で開催が予定されている。 |
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●ロシア軍、バフムト包囲戦を強化 ウクライナ東部の要衝 2/1
ウクライナ軍事侵攻を続けるロシア軍が、ウクライナ東部の交通の要衝バフムトの包囲戦を強化している。主力部隊を投入し、1日には東部2州にあるロシア占領地の複数の幹部が、実質的に包囲したと主張した。ウクライナ軍は同日朝、ロシア軍をバフムトなどで撃退したと発表しており、激しい攻防が続いているもようだ。 東部ドネツク州のロシア占領地の幹部は1日、ロシア国営テレビで、同州北東部のバフムトを巡る戦況について「実質的に包囲し、包囲網を狭めている」と語った。ルガンスク州幹部も同日、ロシア政権系のテレビで「3方向から包囲した」と指摘した。 これに対して、ウクライナ軍参謀本部は1日朝、SNS(交流サイト)のフェイスブックで「(バフムトなど東部の前線で)ロシア軍は攻撃を止めていない」と発表した。バフムトやブラゴダトノエなどで「(ロシア軍を)撃退している」と強調した。 ロシア側によると、ウクライナ軍との攻防は特に、最後の主要な補給ルートとされるバフムト西方のチャソフ・ヤルとバフムトを結ぶ幹線の支配権を巡って激しさを増しているもようだ。 ウクライナ軍参謀本部は1日朝、過去24時間にロシア兵920人以上を壊滅させたと明らかにした。1日で900人を超えたロシアの側の人的損失について、ウクライナの通信社ウニアンは「記録的だ」と報じた。 ロシア側は、攻撃の主力だった民間軍事会社ワグネルの部隊が大きな損失を被ったことを受け、正規軍の主力部隊や東部占領地で招集した兵力の投入を急いでいる。 米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は1月31日の戦況分析で、バフムトのウクライナ軍司令官の話として、ロシア軍が空挺(くうてい)部隊など正規軍を投入していると伝えた。 ISWはまた「ウクライナの司令部は容認しがたい損失のリスク(にさらされる)よりも撤退することを選ぶかもしれないが、バフムトがロシア軍により直ちに制圧されるとは予想しない」との見方を示した。 |
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●東部ドネツクの集落制圧、プーチン大統領がボルゴグラードで演説へ… 2/1
ロシア国防省は1月31日、ウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムト北方約10キロ・メートルの集落を制圧したと発表した。州都ドネツクの南西ウフレダルなどでも攻防の激化が伝えられている。プーチン大統領は2日、第2次世界大戦の激戦地だった露南部ボルゴグラード(旧スターリングラード)で演説する予定で、露軍は演説を前に戦果を誇示している。 バフムトのウクライナ軍司令官は、露軍について「戦闘力の非常に高い正規軍兵士が、民間軍事会社(ワグネル)の戦闘員を支援している」と米CNNに述べた。米政策研究機関「戦争研究所」は1月31日、「バフムトが直ちに陥落する可能性は低い」としながらも、過去に示した「露軍の攻撃は停滞する」との分析を修正した。 露大統領報道官によると、プーチン氏は2日、ロシアの前身・ソ連がナチス・ドイツに勝利する転機となったスターリングラード攻防戦の終結80年の記念式典に出席する。タス通信とロシア通信は1月末、プーチン氏が2月24日の侵略1年に先立つ20日か21日に、年次教書演説を行う方向で調整していると報じた。戦果を求められる露軍が今後、攻勢を強める可能性が高まっている。 |
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●「ウクライナ甘く見た」 プーチン氏にNATO事務総長 2/1
欧米の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長が1日、東京都港区の慶応大で講演し、ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領について「大きなミスをしている。ウクライナ国民の勇気を甘く見た。そしてNATOと同盟国を甘く見ている」と述べた。学生の質疑に答えた。 1月31日に岸田首相と官邸で会談したストルテンベルグ氏は、ウクライナ侵攻や中国の軍事活動拡大に関する日本との共同声明に触れ「力による支配が世界に広がるのを防ぐため、NATOと日本は力を合わせて対抗するべきだ」と強調。「安全保障は地域単位ではなく地球規模で考えなくてはいけない」と訴えた。 |
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●「我々は防弾盾だった」…脱走ロシア傭兵、戦場の惨状を暴露 2/1
「数えることができない。遺体が増えるほど、私の下により多くの囚人が補充されるということが繰り返された」。 ロシア傭兵企業ワグネルグループから脱走してノルウェーに入国した元傭兵アンドレイ・メドベージェフ氏(26)は先月30日(現地時間)、米CNN放送のインタビューで自身が率いた兵士の数を尋ねられると、このように答えた。 メドベージェフ氏は軍服務経歴があったため、昨年6月に傭兵契約を結んだ直後、激戦地の一つ、バフムトに投入され、現場指揮官として活動した。 メドベージェフ氏は「最初に自分の下に配置された人員は10人にすぎなかったが、その後、囚人を戦争に動員しながらその数が急激に増えた」と説明した。これはプーチン露大統領の側近、エフゲニー・プリゴジン・ワグネルグループ代表がロシア各地の矯正施設から囚人を傭兵として迎えて戦線に投入したからだ。 しかしメドベージェフ氏によると、このように補充された兵力の多数は作戦指示もまともに受けられないまま戦場に送り出されて犠牲になった。メドベージェフ氏は「実質的に戦術などはなかった。我々に下された命令にはただ敵の位置程度しかなく、どのように行動するかという明確な指示はなかった」と話した。メドベージェフ氏は自身を含むワグネルグループの傭兵を「防弾盾」と呼んで自嘲した。 こうした状況にもかかわらず、ワグネルグループの上層部は士気が落ちた傭兵を脅しながら操ったという。メドベージェフ氏は「彼らは戦闘を望まない人たちを取り囲んで新兵の目の前で銃殺した。戦闘を拒否した囚人2人をみんなの前で射殺し、訓練兵が掘った塹壕の中に埋めた」と伝えた。 メドベージェフ氏はワグネルグループを創立したプリゴジン代表とロシア軍特殊部隊将校出身のドミトリー・ウトキン氏に直接報告することもあったとし、この2人を「悪魔」と呼んだ。 また、プリゴジン代表がウクライナの戦線で戦死した囚人の傭兵の遺族に1人あたり500万ルーブル(約8700万ウォン、約920万円)の慰労金を支払うと約束したが、実際には「誰もそのようなお金を払うことを望まなかった。(戦死者の)多数はただ行方不明者として処理された」と主張した。 結局、昨年末に部隊から脱走したメドベージェフ氏はロシア内に潜伏し、最近国境を越えるのに成功してノルウェーに亡命を申請した。メドベージェフ氏はこの過程で10回以上も逮捕の危機に直面し、最後には白い服を着て凍結した川を渡ったと説明した。 メドベージェフ氏は自身の陳述がプリゴジン氏とプーチン大統領を法廷に立たせるうえで役に立つことを望むとし、「遅かれ早かれロシアでは宣伝戦が通用しなくなるはずで、民衆が蜂起して新しい指導者が登場することになるだろう」と主張した。 プリゴジン氏はCNNに送ったメールの声明で「現在までワグネルグループが保険金を支給しなかった事例は1件も記録されていない」とメドベージェフ氏の主張に反論した。 ワグネルグループが所属傭兵を防弾盾のように扱って即決処刑を繰り返したというメドベージェフ氏の発言に関しては「軍事上の事案」として言及を拒否し、「ワグネルグループは現代戦のすべての規範を遵守する模範的な軍事組織」と強調した。 |
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●逃亡者は局部を切られ元凶悪犯の兵士4万人が消えた… 内紛勃発 2/1
前線にいた「ワグネル」の兵士約4万人が姿を消した――。 1月23日に独立系メディア『メデューサ』は、ウクライナでロシアの民間軍事会社「ワグネル」の被害が拡大していると報じた。全兵力5万人のうち前線で戦っているのは1万人で、残り4万人は死亡したかウクライナ軍に投降、もしくは逃亡したという。 「『ワグネル』は非エリート集団を自称し、プーチン大統領と親しいプリゴジン氏が創設した集団です。性質は横暴で残酷。プリゴジン氏はみずから刑務所におもむき、殺人やレイプを犯した凶悪犯を兵士として採用しています。彼らは半年ほどの契約で『ワグネル』に参加しているそうです。今年1月に一部の凶悪犯が前線から戻った際、『ワグネル』は彼らと幹部が握手する動画を公開しました。 幹部は、こう言って凶悪犯をねぎらっています。『君たちは半年間アドレナリンを使ったので、1ヵ月は事件を起こさないだろう。酒を飲み過ぎないように。ドラッグを使わないように。もうレイプをしないように』と。一方で逃亡兵に対しては、見せしめとして局部を切断するなど残忍な処置もとっているそうです」(全国紙国際部記者) ●「失態続きの司令官は裸で前線に送れ」 ロシアでは傭兵を認めていない。「ワグネル」は非合法的な集団だが、正規軍でできない拷問や虐殺など残酷な手口で、一時ウクライナ東部のソレダルを掌握するなど華々しい戦果をあげたとされる。昨年末に動員された予備兵の敗退が続く中、ロシア内での存在感が増していたという。 「プリゴジン氏は、ロシア当局の幹部たちを『快適な生活を続け彼らの子どもたちは決して軍に動員されない』と批判します。一方で凶悪犯を『良心的だ』と絶賛。『失態続きのエリート司令官は裸で前線に送れ』と、過激な発言を続けたんです」(同前) しかし欧米の最新兵器を次々に投入するウクライナ軍に対し、最近は「ワグネル」も大苦戦しているとされる。前線には「ワグネル」の兵士のものとみられる墓地が大量に出現。冒頭で紹介したとおり、兵士5万人のうち4万人が逃亡するなどして姿を消したというのだ。 「ロシア軍内では、内紛が勃発しているといわれます。囚人を動員してエリートを批判し、結果を出すためなら手段を選ばないプリゴジン氏への反発が大きいんです。以前は『ワグネル』を重用していたプーチン大統領も、苦戦続きのため徐々に正規軍へ重きを置くようになったといわれます。今年に入ってから『ワグネル』に代わり、精鋭の『空挺軍』を前線に投入していますから。 ただ、これまで自分たちがロシア軍を支えてきたという自負のある『ワグネル』も黙っていないでしょう。自分たちが軽視されていると自覚すれば、正規軍に公然と反発するかもしれません。ロシア軍が内部から分裂し、崩壊する可能性があるんです」(同前) 残忍な手段で戦果をあげてきた「ワグネル」。その凋落は、統制がとれていないロシア軍の現実を如実に表しているのかもしれない。 |
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●ロシアが新STARTに違反し査察拒否 米当局者が指摘 2/1
米国務省の報道官は1月31日、ロシアが新戦略兵器削減条約(新START)に基づく査察を受け入れず、同条約に違反していると指摘した。 同報道官は声明で、ロシア側が拒否しているために米国は新STARTに基づく重要な権利を行使できないと主張。また、ロシアは同条約が定める日程に沿った二国間協議の開催にも応じていないと述べた。 新STARTは米ロ間で2011年に発効し、21年に5年間延長された。核関連施設の相互査察を義務付けているが、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)により、査察は20年から停止している。 二国間協議は昨年11月末にエジプトでの開催が決まっていたが、突然中止された。米国務省報道官は、ロシア側が一方的に中止を決めたと述べた。 ロシアのリャブコフ外務次官は30日、ロシア国営RIAノーボスチ通信とのインタビューで、新STARTが26年に後継条約のないまま期限切れとなる可能性に言及し、「非常に可能性の高いシナリオだ」と語った。 ロシアのプーチン大統領は昨年12月、ウクライナでの軍事衝突は「しばらく時間がかかる」との見通しを示し、核戦争の脅威増大を警告。核先制使用の可能性を全面的には否定しないまま、自国が保有する核兵器は挑発でなく抑止のためとする認識を示した。 |
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●G7首脳会議、24日開催へ 侵攻1年、ウクライナ支援 2/1
日本政府はロシアのウクライナ侵攻開始から1年を迎える24日に合わせ、先進7カ国(G7)首脳によるオンライン会議を議長国として開催する方向で調整に入った。実現すれば、岸田文雄首相が今年のG7議長として臨む初会合となる。対ロ制裁強化やウクライナ支援継続を確認。首脳声明を発表し、G7が結束して国際秩序を守り抜く決意を発信する方向だ。ウクライナのゼレンスキー大統領への参加要請も検討している。複数の政府関係者が1日、明らかにした。 ウクライナ情勢を巡っては、ロシアが春にも大規模攻勢を仕掛けるとの見方があり、米欧諸国はウクライナに戦車を供与するなど軍事支援を強めている。戦況が新たな局面に入るのを前に、G7でウクライナへの連帯を示す狙いがある。首相にとっては、5月の広島サミットでの議論に向けた環境整備の意味もある。 オンライン会議では、ロシアによるウクライナのエネルギー施設など重要インフラへの攻撃を「非人道的」と非難。ロシアを孤立させるため、国際社会が結束して制裁を強化する必要性を訴える見通しだ。 |
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●スナク英首相、ウクライナ侵攻の膠着は「ロシアを利するだけ」 2/1
英国のスナク首相は1月31日、ロシアとウクライナとの紛争の「長期的な膠着(こうちゃく)状態」はロシアを利するだけだと述べた。発表された閣僚会議の内容から明らかになった。 スナク氏によれば、今回の結論に至った背景として、昨年10月に首相に就任して以降、英国の紛争への取り組みを検証したためだと説明。これを受けて、英国によるウクライナ支援を「加速させるための機会」だと判断したと述べた。 支援強化によって、ウクライナ政府に対して、ロシアが劣勢に立っている機会を最大限に利用し、成功の好機を与えることができるという。 スナク氏は、支援を加速させる英国の新しい戦略には、外交努力の強化や戦後の再建計画も含まれると述べた。 |
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●ウクライナの前線は「肉弾戦」 逃亡のワグネル元指揮官が証言 2/1
ロシアが侵攻するウクライナの前線を離れ、北欧ノルウェーに逃れ亡命を求めているロシア民間軍事会社「ワグネル」の元指揮官とされる男性が、1月31日にノルウェー国営放送NRKが報じたインタビューで、前線は戦車にマシンガンで戦う「肉弾戦」だったと証言した。 男性はアンドレイ・メドベージェフ氏(26)。ウクライナで4カ月ほど戦闘に加わった後、今年1月13日にロシア国境を越えてノルウェー北部に入国した。ノルウェー警察当局が不法入国の疑いで身柄を拘束したが、1月下旬に釈放された。NRKによると、ノルウェー当局が亡命申請を審査している。 |
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●ウクライナ高官 “今後2-3週間でロシア軍の大規模攻撃も” 2/1
ロシア軍が侵攻を始めて1年となる2月にも大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性があると指摘されていることについて、ウクライナ政府の高官は「今後2、3週間でそのシナリオになることを排除しない」と述べ、警戒を一層強めていると明らかにしました。 ウクライナでの戦況をめぐってアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は31日、ロシア軍はウクライナ東部のドネツク州で、ウクライナ側の拠点の一つバフムトの最前線に戦力を投入し、作戦の主導権を維持していると分析しました。 また、この戦闘では、これまで存在感を示してきたロシアの民間軍事会社のワグネルにかわり、ロシアの正規軍が主力を担おうとしているという見方を示しています。 一方、ウクライナの国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は31日、イギリスメディアのインタビューで、ロシア軍が侵攻を始めて1年となる今月にも大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性があると指摘されていることについて「今後2、3週間でそのシナリオになることを排除しない」と述べ、警戒を一層強めていると明らかにしました。 また、ダニロフ書記は「大きな戦いの時はまだ来ていないと認識しているが、2、3か月以内に起きるだろう。それが戦争の今後数か月の行方を決定づけることになるだろう」と述べました。 ウクライナ軍は、欧米諸国から戦車に続き戦闘機の供与も求めるなど、さらなる軍事支援を訴えていて、ことし春以降に計画しているとみられる、大規模な反転攻勢に向けて戦力を整えたい考えとみられます。 |
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●ウクライナ 欧米に戦闘機の供与も訴え ロシアは反発強める 2/1
ウクライナは領土の奪還に向けて欧米諸国から戦車に続き戦闘機の供与も求めるなど、さらなる軍事支援を訴えています。これに対し、ロシアは欧米の支援の動きに反発を強めています。 ロシア軍はウクライナ東部のドネツク州で、ウクライナ側の拠点の一つ、バフムトに加え、州都の南西に位置するウフレダル周辺でも部隊を前進させたとみられ、激しい戦闘が続いています。 一方、ウクライナのクレバ外相は31日、欧米諸国から供与される戦車をめぐり「第1弾として、最新型の欧米の戦車120から140両を受け取る」と述べました。 ●ポーランド首相「戦闘機供与はNATOとの協調が重要」 ウクライナは戦車だけでなく戦闘機の供与も求めていて、ポーランドのモラウィエツキ首相は30日、記者会見で戦闘機の供与について聞かれ、NATO=北大西洋条約機構の加盟国と協調して行うことが重要だとの考えを示しました。 ●リトアニア大統領「欧米は戦闘機供与に踏み切るべき」 また、バルト三国のリトアニアのナウセーダ大統領は30日、地元テレビ局のインタビューに対し、欧米側は戦闘機の供与に踏み切るべきという考えを示しました。 さらに、フランスのルコルニュ国防相は31日、ウクライナのレズニコフ国防相とパリで会談したあとの記者会見で、ウクライナに戦闘機を供与するかどうか質問されたのに対し「タブーはない」と応じました。 ロシア大統領府のペスコフ報道官は31日「バルト三国とポーランドは非常に攻撃的だ。さらなる対立を引き起こすためには何でも行う構えだ」と述べ、反発を強めています。 |
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●ロシア領土への砲撃の可能性排除が「最優先」 プーチン氏 2/2
ロシアのプーチン大統領は1日、ウクライナ軍による砲撃からロシア領土を守ることを優先するよう国防省に命じた。 プーチン氏は住宅インフラの復旧に関するビデオ会議で演説し、同国内のベルゴロド、ブリャンスク、クルスクの各州、そして2014年にロシアによって違法に併合されたクリミアの住宅がウクライナ軍によって「損傷し、破壊された」と述べた。同氏はウクライナ軍について「ネオナチ軍による砲撃」と言及した。 また「もちろん、最優先課題は砲撃のあらゆる可能性をなくすことだが、これは軍事部門の仕事だ」とも述べた。 さらに、多くの人が困難な状況にあり、「家を失い、親戚の家か仮住まいに移ることを余儀なくされ、水や暖房、電気のない状況に直面している」と付け加えた。 ウクライナ軍はロシア領土への砲撃を公式に認めていない。 |
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●ウクライナからのロシア領内への砲撃阻止すべき=プーチン氏 2/2
ロシアのプーチン大統領は1日、ロシア軍はウクライナからのロシア領内への砲撃を阻止すべきだと述べた。砲撃により多くの人々が家を失い、停電が発生しているという。 ウクライナと国境を接するロシア南西部の地域で破壊された住宅やインフラの復旧に関する政府の会合で演説し「もちろん、砲撃の可能性を排除することが最優先課題だが、これは軍事部門の仕事だ」とした。 ウクライナ側はロシア領内への砲撃を認めていないが、ロシアは侵攻によってウクライナの都市を破壊し、エネルギーインフラを組織的に狙い、冬季の停電や断水を引き起こしているため、ロシア領内への砲撃は「カルマ(報い)」との見方を示している。 プーチン氏は、住宅が被害を受けたり破壊されたりした地域として、ベルゴロド、ブリャンスク、クルスクのほか、2014年に併合したクリミアを挙げた上で、市民らが「非常に深刻な」問題に直面しており、修理や補償が必要とした。 |
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●ウクライナでの戦争と文化戦争の交差 2/2
筆者はしばらく前から、安全な距離を置いて文化戦争をながめてきた。 文化戦争にからむ問題は興味深いこともある。だが、たちが悪く、人のキャリアを終わらせる論争の性質のために、実際に議論に加わることはやめた。 そのため自分の地政学的なレーンにとどまり、トランスジェンダーのトイレのような爆発的な題材を避け、ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)や核戦争といった比較的物議にならないトピックを取り上げてきた。 ●西側は悪魔崇拝? ところが今、不本意ながら、自分の安全空間である地政学が文化戦争と融合していると判断している。 ウラジーミル・プーチンの演説を見るといい。 ウクライナ侵攻を正当化するためにロシア大統領が挙げる理由は、安全保障や歴史だけに根差していない。 プーチンはますます、ウクライナでの戦争を文化戦争の一環として描くようになっている。 ロシアによるウクライナ4州併合を祝った昨年9月30日の演説では、プーチンは西側が「悪魔崇拝に向かっている」とか「子供に性的倒錯を教えている」と批判した。 さらに「我々は子供たち、孫たちを、彼らの魂を変えようとするこの実験から守るために戦っている」と主張した。 ●プーチンのロシアに引かれる文化的保守 こうした主張はロシア国民だけに向けられたものではなく、主にロシア人を目がけているわけでもない。 プーチンは西側の重要な構成要素とも戯れている。自国社会の退廃とされるものを嫌悪するあまり、プーチンのロシアに引かれる文化的保守派だ。 ウクライナでの戦争が勃発する直前に、ドナルド・トランプの首席戦略官を務めたスティーブ・バノンは自身のポッドキャスト番組で「プーチンはウォーク(woke、意識が高い系)じゃない。反ウォークだ」と語った。 これに対し、インタビュー相手のエリック・プリンスは「ロシアの人たちはまだ、どちらのトイレを使うか分かっている」と返した。 (編集部注:エリック・プリンスは民間軍事会社ブラックウォーターの創業者で共和党エスタブリッシュメントと深い関係がある) 同じ頃、恐らく米国で最も影響力が大きいトランプ派テレビ司会者であるタッカー・カールソンは視聴者に向かって、次のように自問するよう呼びかけた。 「プーチンは私を人種差別主義者と呼んだことが一度でもあるか。キリスト教を根絶しようとしているか」 ●「対ウォーク戦争」が共和党政治の核に 「対ウォーク戦争」は今、間違いなく共和党政治の中核をなしている。 こうした問題について、多くの共和党支持者は民主党よりもプーチンの方に親近感を覚える。 保守米国の鋭い分析で鳴らすジェイコブ・ハイルブランが最近筆者に語った言葉を借りると、共和党の極右は「プーチンのことを、伝統的なキリスト教の価値観の擁護者、LGBTQの反対派、トランスジェンダーの反対派、そして西側の台頭に貢献した男性的美徳の弱体化の反対派と見なしている」。 2021年には共和党上院議員のテッド・クルーズが、筋骨隆々とした丸刈りの兵隊でいっぱいのロシアの兵士募集広告と、レズビアンのカップルに育てられた女性兵士を取り上げた米国の広告とを比較した動画をリツイートした。 そしてクルーズは「多分、ウォークで去勢された軍隊は最も優れたアイデアではない」とコメントした。 ウクライナでのロシア軍の悲惨な戦績は、クルーズに返す言葉を示唆している。多分、自国の軍隊を容赦なく酷使し、砲弾の餌食かのように扱うことは最も優れたアイデアではない。 ●「男が男」だった過去への郷愁 だが、プーチンのロシアを礼賛することは今やそれほど流行しなくなったとはいえ、米国の右派は文化戦争における味方として、外国の別の権威主義者に飛びついた。 昨年5月、ハンガリー首相のオルバン・ビクトルは米国保守派の大規模集会「保守政治活動会議(CPAC)」のホスト役を務め、「ウォークさの夢に酔っている急進的なリベラル派やネオマルクス主義者、ジョージ・ソロスにカネで雇われている連中」に対する共通の戦いを仕掛けるよう呼びかけ、「彼らは西洋の生活様式を滅ぼしたいと思っている」と言った。 オルバンはプーチンに最も同情的なEU首脳と見られている人物だ。 ナショナリズムと反ウォーク運動が重なり合ったのは偶然ではない。 両者は国家的な偉大さと文化的な均質性の神話化された過去、「男が男」であり、女性と少数派がそれぞれの分をわきまえていた時代への郷愁によって結び付いている。 米国第一を掲げるトランプのナショナリストたちが、ハンガリーやロシアの仲間のナショナリストに親近感を覚えるのは意外ではない。 ●戦線には大きなズレ だが、ウクライナでの戦争とウォークとの戦いの戦線が重なるとしても、決して同一ではない。 ポーランド政府は性的少数派のLGBT問題についてはオルバンと似た見解を取るが、ウクライナとロシアについては全く異なる路線を取る。 西側の味方と目される人々に近づこうとするプーチンの努力には、極端に不器用なものもあった。 プーチンはかつて、ロシアの運命を英国人作家のJ・K・ローリングの運命になぞらえようとし、ロシアが「キャンセル」されていると訴えた。 これにはローリングが辛辣な言葉を返し、「西側のキャンセルカルチャーの批判は多分、現在民間人を虐殺している人たちによってなされるべきではない」とコメントした。 ●分断をまたぐイスラエル イスラエルはこの分断をまたいだ国の興味深い例で、文化戦争の問題では左に傾き、ナショナリズムについては極右の路線を取った。 イスラエル人は時折、「ピンクウォッシング」を批判される。 パレスチナ人に対する厳しい政策を覆い隠すために、LGBT問題についてのリベラリズムを利用しているというわけだ。 このアプローチは「ガザを無視し、我々の『ゲイ・プライド・パレード』を見よ」という言葉で要約できるかもしれない。 だが、ベンヤミン・ネタニヤフがトップに立つ現在の連立政権は、この慎重な両にらみを危険にさらしている。 政権には、医師は同性愛者の患者の診療を拒むことを許されるべきだと主張する宗教右派政党出身の閣僚がいる。 ネタニヤフは過去に、オルバンやプーチン、ゲイ叩きで鳴らしたブラジル前大統領のジャイル・ボルソナロと緊密な関係を育んだ。 だが、恐ろしいウォークなリベラルが確かに存在するホワイトハウスとの関係を維持しなければならないことも知っている。 文化戦争は今日の地政学的闘争の一部になった。だが、こうした紛争で重複する連合は、奇妙な同志を生み出している。 |
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●ロシアとウクライナのはざまで揺れるIOCの苦悩 バッハ会長の手紙 2/2
国際オリンピック委員会(IOC)が1月25日に声明を出した。ウクライナとの連帯、オリンピック休戦を破ったロシアとベラルーシへの制裁、そして同国選手の立場について、IOC理事会がまとめた形だ。 IOCバッハ会長がゼンレンスキー大統領と会談 2034年五輪はウクライナで決まりか? ●ロシア選手の五輪復帰を検討すると声明を出したIOCだが… 衆目が集まったのはロシアの選手がパリ五輪に出ることができるかどうかだった。来夏に迫るパリ五輪の予選は始まりつつあり、もしロシアとベラルーシの選手に門戸を開くとしたら、このタイミングでIOCは決心を表明する必要があったのである。 昨年、北京五輪終了直後にロシアがウクライナに侵攻したことで、IOCは隘路に陥った。スポーツで世界平和構築を唱えるオリンピズムに真っ向挑んだロシアに対する制裁は必然でも、その国の選手たちのオリンピックへの道を閉ざすことはオリンピズムに反する。しかし、現実に試合会場でロシアとウクライナの選手が戦うとすれば、戦時下では戦う相手国を強烈に意識せざるを得ない。背後に戦火で失われた友人が見えたりするだろう。IOCは国際競技連盟に対して、主催大会にロシアとベラルーシの選手を参加させない要請をしていた。 戦争をなくす手段としてのオリンピック休戦の思想を真摯に考えるべき時期に来ていると思った私は、昨年4月にバッハ会長に手紙を書いた。五輪憲章改正の提案である。要約すれば、「オリンピック休戦を破った国のオリンピック委員会は資格剥奪(五輪に代表を派遣できなくなる)。ただし、選手は参加資格宣言の署名によって五輪参加資格が得られる。その宣言には戦争反対が記載される」というものであった。 ●プーチンとゼレンスキーのはざまで揺れる 五輪参加意思のある国は必然的に休戦を守らなければならず、選手は自らの平和遂行意思を五輪参加によって達成できる。 10月に入って長文のレターが届いた。 「そのとおりだが、それを規定化する中で、戦争を起こした国の選手の危険性を回避できないジレンマがある」 ロシアでは戦争反対表明が15年の禁錮刑になるという。 IOCの今回の声明は私の主張をくみ取ってはいる。ロシアやベラルーシの選手が参加する道は示しつつ、彼らは国旗も国歌も国を示すものが一切ない状態で、IOCの平和使命を尊重しなければならない。ロシアからは「国の代表として認めろ!」という叫びが聞こえる中、IOCとしての精いっぱいだったのだろう。すると今度はゼレンスキー大統領から「IOCの偽善を正す。激しい戦火にバッハ会長を招待する。中立というものが存在しないことを自らの目で見ることができるだろう」と強烈に非難された。 プーチンとゼレンスキーのはざまで揺れ動くIOCの苦悩は続く。「奇麗事を言っている場合か?」ということだろう。ならばバッハはゼレンスキーの招待に応えてウクライナを再び訪れるべきかも知れない。昨年7月に訪れた時は、ウクライナ選手救援基金を250万ドルから750万ドルに引き上げると約束した。今度は五輪憲章改正を伝えたらどうだろう。ジレンマを打ち破り、「戦争反対を表明する者のみが五輪に参加できる」と。 そうなるとプーチンはもちろん、ゼレンスキーも五輪から排除されることになる。 |
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●「プーチンのレッドラインはモスクワ攻撃だ」──ロシア元外務次官 2/2
ロシアの元政府高官が、最近出演した国営テレビの番組の中で、ウクライナもしくはその同盟国によるモスクワ攻撃は「避けられない」との見通しを示した。 元外務次官で、ロシアの首相および副首相の顧問を務めたアンドレイ・フェデロフは、ロシアの外交政策アナリストであるマクシム・ユシンが司会を務める、国営テレビNTVの討論番組に出演。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が西側諸国にジェット戦闘機の供与を求めていることについて、ほかの有識者らと議論した。 その中であるパネリストがフェデロフに、ウクライナ軍に対する戦闘機の供与は、ウラジーミル・プーチン大統領の「レッドライン(越えてはならない一線)」を越えることになり、彼が戦闘をエスカレートさせる引き金になるだろうかと質問。これに対してフェデロフは、戦闘機の供与はロシア政府の「レッドライン」には含まれないと答えた。 ではロシア政府は何を「レッドライン」と見なすか知っているか、と尋ねられると、フェデロフは「知っている」と答えた。具体的には「モスクワの司令部への攻撃だ」という。 それは「(ロシアに対する)攻撃を試みる」という意味かと問われると、「試みではなく実際の攻撃だ。今後行われることになる攻撃は、レッドラインと見なされることになる」とフェデロフは述べた。 ●以前もモスクワ攻撃を予想 ウクライナ内務省の顧問であるアントン・ゲラシュチェンコは、一連のやり取りの動画をツイッター上で共有した。 フェデロフがモスクワへの攻撃の可能性について、このような断定的な口調で予想を述べたのは、今回が初めてではない。 昨年10月にウクライナ軍が東部ドネツク州の要衝リマンをロシア軍から奪還したことを受けて、フェデロフや、NTVの同番組に出演しているほかの有識者たちは、ウクライナ軍の強さに驚きを示していた。 ウクライナ侵攻をロシアのテレビがどのように伝えているかを紹介しているYouTubeチャンネル「ロシアン・メディア・モニター」の創設者である、ジャーナリストのジュリア・デービスは、2022年10月1日に、リマンが解放されたことに対するフェドロフの反応を収めた動画を投稿した。 この動画の中でフェドロフは、「急激な変化が起きつつある。ロシアがこれらの地域を占領した、あるいは『併合』したから、ウクライナがこれらの領土を解放するための戦争を始めた」と述べてこう続けた。「特別作戦の類ではない。これは戦争だ」 彼は続けて、ウクライナ軍は今後、ロシア国内に攻撃を行う可能性があると指摘。モスクワが標的になる可能性を問われると、「もちろんある」と答えている。 ●首都攻撃に備えるロシア ロシア政府が既に、ウクライナによるモスクワ攻撃に備えていると示唆する報道も一部にある。 1月には、モスクワの複数の建物の屋上に対空ミサイルシステム「パーンツィリS1」が設置されている様子を捉えたとする写真や動画が、ソーシャルメディア上に出回った。それと同時期にロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官が、西側諸国がウクライナに対して、ロシア国内を攻撃可能な長距離兵器を供与すれば、ウクライナでの戦闘がエスカレートすることになると警告していた。 |
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●ウクライナ東部住宅に“ミサイル直撃”3人死亡 ロシア軍は“フーリガン”も動員 2/2
ウクライナ東部で1日、ロシア軍のミサイルが住宅に直撃し、3人が死亡しました。ロシアが今後、「追加動員」を行うと見られる中、ロシアメディアは、ロシア軍がサッカーの応援で過激な行動に出る「フーリガン」や、スポーツ選手を含む部隊を結成したと報じました。 1日夜、ウクライナ東部クラマトルシクの住宅をロシア軍のミサイルが直撃しました。警察によると、これまでに3人が死亡し、20人がケガをしました。まだ、がれきの下に閉じ込められている人がいる可能性もあり、必死の捜索活動が続いています。 ウクライナのゼレンスキー大統領は、「これが私たちの国で日々、起きている実情だ」とロシアを非難しました。 「戦況を好転させるためには武器が必要だ」と訴え続けている『ゼレンスキー大統領は、この日もSNSで―― ウクライナ ゼレンスキー大統領「必要な武器の入手を支援してくださるみなさまに感謝します」 今、ウクライナが期待しているのが、欧米から供与される戦車です。ドイツのピストリウス国防相は、主力戦車「レオパルト2」を視察。「ウクライナが生き残るためにできることをすべて行う」として、今後、ドイツ国内で訓練を行い、早ければ3月末にもウクライナに配備できるとしています。 一方、ロシアと同盟関係にあるベラルーシは、ロシアから購入した短距離弾道ミサイル「イスカンデル」を配備したと発表しました。核弾頭も搭載可能なミサイルで、核戦力を誇示することで、欧米各国をけん制する狙いがあるとみられます。 また、イギリス国防省やロシアの独立系メディアは、ロシアが今後、「追加動員」を行う可能性を指摘しています。 さらにロシアメディアは、兵力増強を目指すロシア軍が新たな部隊を結成したと報じました。サッカーの応援で時にスタジアムで火をつけるなど、過激な行動に出ることで知られる「フーリガン」や、国際大会で活躍するスポーツ選手を含む部隊で、偵察や襲撃などの訓練を受け、戦闘地域に送られるということです。 ロシアでは2日に第二次世界大戦中にナチス・ドイツに勝利した最大の激戦から80年を祝う式典が行われます。式典に出席する予定のプーチン大統領が、何を語るのか注目されます。 |
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●「侵攻1年」前にロシア攻撃激化か ウクライナ北部・東部で7人死亡 2/2
ウクライナ東部と北部で1日、集合住宅などがロシア軍の攻撃を受け、計7人が死亡した。ウクライナのゼレンスキー大統領は1日夜のビデオ演説で「攻撃が増加し、状況は激化している」と述べ、ロシア軍が24日の侵攻開始1年の節目に向けて戦果を急ごうとしていると指摘した。 東部ドネツク州知事らによると、同州クラマトルスクで1日、集合住宅がロシア軍のミサイル攻撃を受け、3人が死亡、18人が負傷した。北部チェルニヒウ州でも住宅への攻撃で4人が死亡したという。 ダニロフ国家安全保障防衛会議書記は1月31日、英メディアのインタビューでロシア軍が最大規模の攻勢を準備していると指摘。侵攻1年の節目に北部、東部、南部の各方面から攻撃を仕掛ける可能性もあるとし、「今後2、3週間はいかなるシナリオも排除しない」と警戒感を示した。 |
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●国連専門家、ロシアの復帰を評価 軍事侵攻でIOC検討 2/2
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は1日、ウクライナ侵攻でスポーツの国際大会から除外されたロシアとベラルーシ選手の復帰を「中立」の立場などの条件付きで国際オリンピック委員会(IOC)が検討する方針について、専門家が評価したと発表した。 国連の人権理事会から特別報告者として任命された専門家2人は「私たちがその方向で決断するよう、さらに国籍に基づいて選手が差別されることのないよう促した」と談話を出した。「戦禍に苦しむウクライナ選手を支持したいという願望は理解する」としつつ「IOC、さらに五輪を取り巻くスポーツ界は差別を禁じる国際人権の規範に従う責務がある」とした。 |
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●ウクライナ侵攻1年で安保理閣僚級会合へ “クレバ外相の出席も検討” 2/2
ロシアによるウクライナ侵攻から今月24日で1年となるのにあわせ、国連の安全保障理事会で閣僚級の会合が開催されることが決まりました。 今月の国連安保理の議長国を務めるマルタの大使は1日、記者会見し、軍事侵攻から1年となる24日にウクライナ情勢をめぐる会合を開くと発表しました。会合は安保理理事国の閣僚級が出席して行われる予定で、関係国としてウクライナの代表なども参加する見込みです。 ウクライナの政府関係者はJNNの取材に対して、「クレバ外相が出席する可能性も検討しているが、国内の戦況や訪問に伴う警備状況などを踏まえて最終的に判断する」と話しています。 |
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●ベラルーシ、ロシア製の短距離弾道ミサイルを配備 ウクライナ侵攻に警戒高まる 2/2
ウクライナの隣国、ベラルーシの国防省はロシア製の短距離弾道ミサイル「イスカンデル」を配備したと発表した。 ベラルーシ国防省は1日、ロシアでの習熟訓練を終え、国内に「イスカンデル」を配備したと明らかした。 「イスカンデル」は核弾頭の搭載が可能なミサイルで、ロシアのプーチン大統領がベラルーシへの配備を急ぐ考えを示していた。 ベラルーシでは1月中旬から、空軍がロシア空軍との合同演習を実施していて、ウクライナ侵攻にベラルーシも加わるのではないかという警戒感が高まってる。 一方、ドイツのピストリウス国防相は、ウクライナへの供与を決めた戦車「レオパルト2」の部隊を視察した。 ピストリウス国防相は「ウクライナがこの戦いで生き残るためにあらゆることをするのが我々の仕事だ」と強調した。 |
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●ロシア、ウクライナの「ネオナチ」に勝利 プーチン氏ボルゴグラードで演説 2/3
ロシアのプーチン大統領は2日、第2次世界大戦で旧ソビエト軍がナチス・ドイツ軍に勝利した「スターリングラード攻防戦」80年を記念する演説で、ウクライナでの戦争を巡りロシアが再びドイツと対峙(たいじ)していると述べた。 プーチン大統領は、1961年までスターリングラードと呼ばれていた南部のボルゴグラードで行われた式典に出席。ドイツが同国製戦車「レオパルト2」をウクライナに供与する決定を非難した上で、ロシアは80年前と同じようにウクライナで勝利すると確信していると言明。核兵器を含むあらゆる兵器を使用する用意があると改めて表明した。 プーチン氏は演説で「ナチズムのイデオロギーが現代的な形になり、再びロシアの安全を直接脅かしている」とし、「われわれは繰り返し、西側諸国の集団的な侵略に対抗しなければならない。信じられないことだがこれは事実だ。ドイツのレオパルト戦車に再び脅かされている」と述べた。 スターリングラード攻防戦は第二次世界大戦における独ソ戦の決定的な転換点となったが、ソ連軍は100万人を超える死者を出したほか、5カ月に及んだ戦闘でスターリングラードは廃墟と化した。 プーチン大統領は、スターリングラードの戦いが「わが民族の不滅」の象徴になったとし、ロシアがウクライナで勝利すると考える理由を説明するためにスターリングラードを防衛したソ連兵の精神を想起。 「ドイツを含む欧州諸国をロシアとの新たな戦争に引き込み、ロシアに勝利することを期待する者は、現代におけるロシアとの戦争が全く異なるものになると理解していないようだ」とし、「ロシアは彼らとの国境に戦車は送らないが、対応する手段を持っている。装甲車の使用にとどまらないことを誰もが理解しなければならない」と述べた。 |
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●プーチン大統領「再びドイツに脅かされている」侵攻継続を強調 2/3
ロシアのプーチン大統領は第2次世界大戦で旧ソビエト軍とナチス・ドイツ軍が激戦を繰り広げたロシア南部の都市で演説し「再びドイツの戦車に脅かされている」と述べ、ウクライナでは欧米側が全面的な戦いを仕掛けているとして批判しました。そのうえで、不屈の精神で祖国を守り抜いたとする歴史を引き合いにウクライナ侵攻を続ける姿勢を強調しました。 プーチン大統領は2日、第2次世界大戦で旧ソビエト軍とナチス・ドイツ軍が激戦を繰り広げたロシア南部のボルゴグラード、かつてのスターリングラードで演説しました。 このなかで「ナチスのイデオロギーが現代的な形を装い、再びわれわれの国の安全保障に対して直接的な脅威をもたらしている。再びドイツの戦車レオパルトに脅かされている」と述べ、ウクライナでは主力戦車レオパルト2の供与を決定したドイツなど欧米側が全面的な戦いを仕掛けているとして批判しました。 そして「ドイツを含むヨーロッパ諸国をロシアとの新たな戦争に引きずり込み、ロシアを打ち負かすことを期待しているものがいる。われわれは彼らの国境に戦車を送ってはいないが対応する手段がある。それは装甲車の使用にとどまるものではない」と述べ、ロシアの軍事力を誇示して欧米側をけん制しました。 そのうえでプーチン大統領は「スターリングラードを防衛した人々の不屈の精神はロシア軍やわれわれすべてにとって最も重要な道徳的な指針であり、兵士や将校はそれに忠実だ」と述べ、不屈の精神で祖国を守り抜いたとする歴史を引き合いにウクライナ侵攻を続ける姿勢を強調しました。 |
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●独ソ戦80年、プーチン氏「再びドイツ戦車の脅威」と演説…侵略を「祖国防衛」と 2/3
ロシアのプーチン大統領は2日、第2次世界大戦の激戦地だった南部ボルゴグラード(旧スターリングラード)を訪れ、ロシアの前身、ソ連がナチス・ドイツに勝利したスターリングラード攻防戦の終結80年に合わせて演説した。プーチン氏は「祖国や真実のため、不可能に挑む血が我々には流れている」と述べ、ロシアのウクライナ侵略を独ソ戦に重ねて国民に結束を訴えた。 プーチン氏は演説で、独ソ戦の勝利につながった分岐点とされる攻防戦について「不屈の象徴」と偉業をたたえ、ウクライナ侵略での「勝利を確信している」と語った。しかし、ロシアが自ら始めた侵略を、ソ連がナチス・ドイツに攻め込まれて始まった独ソ戦と同一視するプーチン政権の手法は、国際社会から強く批判されている。 プーチン氏はドイツがウクライナに主力戦車「レオパルト2」を供与することに触れ、「我々は再びドイツの戦車に脅かされることになった。ナチズムが現代の装いで、我々の安全保障を脅かしている」と主張した。 2日、ロシア南部ボルゴグラードで、記念式典に参加するプーチン大統領=ロイター2日、ロシア南部ボルゴグラードで、記念式典に参加するプーチン大統領=ロイター 独ソ戦で米英の支援を受けた事実には言及せず、「再び集団的な西側を撃退しなければならなくなった」と述べた。ウクライナ侵略を「祖国防衛」の戦いにすり替え、国民に侵略への協力を呼びかける姿勢を鮮明にした。 一方、ウクライナのオレクシー・レズニコフ国防相は1日、フランスのテレビ局とのインタビューで、ロシアが侵略1年となる24日頃に「大規模な攻撃を試みる」との見方を示した。 |
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●プーチン氏、核使用示唆 戦車供与に「対抗手段あり」 2/3
ロシアのプーチン大統領は2日、露南西部ボルゴグラード(旧スターリングラード)で演説し、ウクライナへの戦車供与を決定した欧米諸国について、「ロシアは彼らとの国境に戦車を送らないが、対抗手段がある」と述べた。「ロシアに勝利できると考えている者は、ロシアとの現代戦が(過去とは)別物だと理解していない」とも発言。核兵器の使用を示唆し、ウクライナや米欧を威嚇した。 演説は、第二次大戦で激戦の末に旧ソ連軍がナチス・ドイツ軍を撃退した「スターリングラード攻防戦」の戦勝80周年を記念する式典で行われた。 ロシアは米欧の主力戦車について「戦況を変えられず、脅威にならない」と主張しているが、実際は戦車が前線に投入され、露軍が劣勢に陥る事態を危惧しているとの観測が強い。プーチン氏の威圧的な発言の背後には、米欧によるウクライナ支援の拡大を阻止したい思惑があるとみられる。 プーチン氏はドイツが戦車供与を決定したことに関し、「十字が描かれたドイツの戦車が、ウクライナでヒトラーの末流の手によりロシアを再び脅かすとは信じがたいが、事実だ」と指摘。「ナチズム思想が現代もロシアの安全保障を脅かしている」とも述べ、ウクライナ侵略を対ナチス戦になぞらえて正当化した。 プーチン氏は昨年2月24日の演説で、ウクライナを「ナチ国家」だと一方的に断じた上で、同国の「非ナチス化」などを掲げて軍事作戦の開始を宣言した。 |
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●プーチン氏、西側への対抗示唆 「戦車以外のもの」で 2/3
ロシアのプーチン大統領は2日、西側諸国がドイツ製の戦車「レオパルト」で「またも」ロシアを脅かしていると批判した。 ロシア南部のボルゴグラードで開催された、第2次世界大戦のスターリングラードの戦いでの旧ソビエト軍の勝利80周年を記念する式典での演説で述べた。 プーチン氏は「ドイツを含む欧州の国々をロシアとの新たな戦争に引きずり込み、特にこれを既成事実と無責任にも宣言している人々、戦場でロシアを打ち負かすことを期待している人々は、ロシアとの現代の戦争は完全に異なるものであることをどうやら理解していない。我々は国境に戦車を送らないが、彼らに対抗する別のものを持っている。装甲車の使用では終わらないだろう」と警告した。 ウクライナのオメリチェンコ駐仏大使は先月、欧米諸国がウクライナに戦車300両超を供与するとの見通しを示した。 オメリチェンコ氏は「今日時点で多くの国が計321両の戦車をウクライナに供与することに正式に同意した」とフランスのメディアに述べた。 オメリチェンコ氏は供与される戦車の国別の数やモデルは示さなかったが、米国は「M1エイブラムス」31両、ドイツは「レオパルト2」14両、英国は「チャレンジャー2」14両を提供することを決めている。 |
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●ウクライナ「ナチスの精神的後継者はロシア」…プーチン氏「祖国防衛」演説 2/3
ロシアのプーチン大統領は、2日に露南部ボルゴグラード(旧スターリングラード)で行った演説で、ドイツがウクライナに戦車「レオパルト2」の供与を決めたことについて、「我々は再び脅かされている」と主張した。ウクライナ侵略を「祖国防衛」の歴史にすり替える演説に対し、ウクライナ側は批判を強めている。 演説は、ソ連がナチス・ドイツと戦った第2次大戦の独ソ戦(1941〜45年)で、勝利への転換点となったスターリングラード攻防戦の終結80年に合わせて行われた。 プーチン氏は演説で、レオパルト2の供与を批判し、「ナチズムが現代の装いで出現し、再び我々の安全保障を脅かしている」と主張した。プーチン氏は「ロシアとの現代の戦争は全く異なるものになる」としたが、具体的な方針については言及しなかった。 ロシアの侵略を巡り、途上国などが経済制裁に慎重な姿勢をとっていることについて、プーチン氏は「我々には世界中に多くの友人がいる」と主張した。 これに対し、ウクライナ国防省は、「ナチスの精神的後継者であるロシアは、ウクライナの都市を地上から消し去っている。ロシアにとってスターリングラードは敗北を思い起こさせるものとなるだろう」とツイッターで反発した。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2日夜のビデオ演説で、「ロシアの戦略的な敗北はすでに明らかだ」と強調した。ゼレンスキー氏は「戦術的に見れば、ロシアはまだ攻撃的な行動を試みる資源を持っている」とも述べ、さらなる武器供与が必要との認識を示した。 |
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●ウクライナにいるロシア軍兵士、大半が戦争は誤りと認識 元ロ軍尉官 2/3
ロシア軍の元尉官がCNNの取材に応じ、ウクライナで戦うロシア軍兵士の多くは戦場への準備ができておらず、兵士らを取り巻く環境は悲惨だと語った。 コンスタンティン・エフレモフ氏は「彼らは訓練されておらず、現地でどんな恐怖が待ち受けているかに気づいてもいない」と述べ、兵士は軍人ではなく便利屋だと語った。 ロシアのプーチン大統領は昨年9月、戦場で大きな後退が続いたことを受け、部分動員令を出した。当局者は11月に30万人動員の目標が達成されたと発表した。 エフレモフ氏は、ロシア軍のほぼ全員がこのミッションは誤っているとわかっていて、「ウクライナからの侵攻の脅威に関するプーチンの作り話を信じていない」と語る。 それでもウクライナに兵士がいるのは他に選択肢がないからで、「自分たちの家族や子どもが路上に追われるか、自分たちが塹壕(ざんごう)の中に入るかのどちらかだ」と説明する。 兵士らは招集された人員のため、辞めれば刑務所行きに直面するという。「だから基本的には選択肢はない。そこに残るか、逃げ出す方法を探すかのどちらかだ」と述べ、兵士らの状況は悲惨だと続けた。 エフレモフ氏はまた、副司令官が戦争捕虜を拷問したり、性暴力を振るう脅しをかけていたのを見たとも語った。報復を恐れて誰もそれを止めようとしなかったという。 「彼はウクライナ人の戦争捕虜を撃ったように、自分や意見を異にする人なら誰でも容易に撃っただろう」 エフレモフ氏は先月ロシアを脱出し、米国での亡命受け入れを希望している。 |
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●暗躍するロシア“民間”軍事会社「運営は国家予算で」 元傭兵が証言 2/3
ロシアによるウクライナ侵攻では、戦果をアピールする露民間軍事会社「ワグネル」の存在が注目されている。同社の傭兵(ようへい)だったと明かすロシア人男性、マラート・ガビドゥリン氏(56)が1月下旬、長期滞在先のフランスで毎日新聞の取材に応じた。謎が多いワグネルについてガビドゥリン氏は、純然たる民間会社ではなく国家予算で運営されていると明言したうえで、「ロシア指導部にとって帝国的な野望を実現するための道具の一つだ」と指摘した。 ●「ロシア指導部の野望の道具」 ワグネルは、プーチン露大統領に近い新興財閥オーナー、エフゲニー・プリゴジン氏と、露軍参謀本部情報総局(GRU)元中佐ドミトリー・ウトキン氏らが2014年に創設した。同年春に始まったウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク、ルガンスク両州一帯)での紛争で親露派武装勢力に加勢してきたほか、シリアなどの中東、アフリカ諸国でもロシアや自社の利益に沿う形で軍事活動を展開する。ワグネルとその関係者は、欧米の制裁対象となっている。 ガビドゥリン氏は空挺(くうてい)部隊出身の元露軍中尉で、15年にワグネルに参加。19年の脱退までにルガンスク州とシリアに派遣され、一時はロシア北西部サンクトペテルブルクでプリゴジン氏を補佐する仕事もしたという。 ガビドゥリン氏はワグネルについて「法律で規定されていないが軍同様の武力組織であり、国家予算で運営され、国防省や軍の兵站(へいたん)に依存している」と述べ、プーチン政権との密接な関係を明らかにした。 ●「プロパガンダは全てうそ」 ウクライナでは露軍の劣勢も報じられる一方、ドネツク州ソレダルなど戦略拠点をワグネルが制圧したという戦果が伝えられてきた。これに対し、ガビドゥリン氏は「ワグネルが最前線の(兵力の)半分を支えているといった誤った印象が生まれているが、実際は前線の一部分のみで活動している」と分析、プリゴジン氏らの宣伝による誇張との見方を示した。 ウクライナの戦争が長引く中、ワグネルには大勢の受刑者が採用され、戦線に投入されていると報じられる。この点については「志願者が既に足りず、(戦闘による)人的損失が大きくなっているからだ」と述べ、苦戦を示唆した。 「私たち(ロシア)のプロパガンダは全てについてうそをついている」とプーチン政権を批判したガビドゥリン氏は、2月下旬で開戦1年となるウクライナでの戦争に対して「ロシアにおける帝国主義の表れと言える。露指導部による全ての(開戦の)口実がこじつけであると理解していないのは愚か者だけだ」と断言。今後については「ロシアがどうにか状況を勝利と呼べる状態にまで修正できたとしても、その勝利は悲惨な結果へと至るだろう」と述べ、ロシアにとって暗い未来を予想した。 |
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●プーチン大統領が演説で軍事侵攻正当化 ウクライナは強く反発 2/3
ウクライナはロシアのプーチン大統領がウクライナへの軍事侵攻を、第2次世界大戦中のナチス・ドイツとの激戦に重ね合わせる形で正当化したことに強く反発し、徹底抗戦の姿勢を改めて強調しました。 ウクライナ東部では激しい戦闘が繰り返されていて、ハルキウ州の知事は、3日の未明にロシア軍が住宅地に砲撃を行い、住民2人が死亡したとSNSに投稿しました。 また、南部ヘルソン州の当局は3日、過去24時間でロシア軍の砲撃によって、合わせて2人が死亡し、5歳の子どもを含む9人がけがをしたと発表しました。 ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は2日、第2次世界大戦中に旧ソビエトがナチス・ドイツと激戦を繰り広げたロシア南部の都市で演説し「ナチスのイデオロギーが現代的な装いで再びわが国の安全保障に直接的な脅威をもたらしている」と述べ、過去のナチス・ドイツとの戦いと重ね合わせる形でウクライナ侵攻を正当化しました。 これに対してウクライナ国防省は2日「ナチスの精神的な継承者であるロシアは、ウクライナの都市を地上から消し去ろうとしている。占領できない都市は廃虚と化している」とSNSで強く反発したうえで、徹底抗戦の姿勢を改めて強調しました。 ウクライナでは3日、ゼレンスキー大統領とEU=ヨーロッパ連合の首脳との会談が行われる予定で、ウクライナが目指しているEU加盟や支援について意見が交わされる見通しです。 |
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●中国の台湾侵攻準備に警鐘 ウクライナ戦況、あと半年が重要―米CIA長官 2/3
米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は2日、ワシントンのジョージタウン大で講演し、中国の習近平国家主席が台湾侵攻の準備を指示したとして、「習氏の台湾に対する真剣さと野心を裏付けている」と警鐘を鳴らした。また、ウクライナに侵攻したロシア軍の攻撃が最近激化していることを踏まえ、「今後6カ月が重要だ」と語った。 バーンズ氏は、習氏が人民解放軍に対し、2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう指示したことを「情報として知っている」と主張した。習氏がロシア軍の苦戦ぶりに「動揺」し、「(台湾侵攻にも)少し冷静になった」と述べる一方、「CIAとして習氏の野心を過小評価しない」と強調した。 |
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●侵略から1年 ロシアへの厳しい声が最多に 内閣府「外交に関する世論調査」 2/3
ロシアのウクライナ侵攻から今月24日で1年となります。政府の世論調査で日ロ関係を「良好だと思う」と答えた人の割合は、わずか3.1%と調査開始以来、最も低くなったことが分かりました。 いまだウクライナへの軍事侵攻をやめないロシアに対し、日本の国民感情が極めて悪化していることが今回の調査で裏付けられる結果となりました。 内閣府が行った「外交に関する調査」によりますと、ロシアに「親しみを感じる」人が5.0%、今後のロシアとの関係発展を「重要だと思う」人が57.7%と、いずれも調査開始以来、最低となりました。 都内のロシア料理店で働くカリナさんは言葉を慎重に選びながら、悔しさを語りました。 都内で働くロシア人女性・カリナさん:「これは残念。今、ロシアのイメージが悪くなっていてすごく残念だと思うので。今までずっと友達だったし、原因は皆、分かっていますので、戦争をなくせば原因もなくなるんじゃないですかね」 また、今回の調査では、中国に対しても「親しみを感じる」が17.8%、日中関係が「良好だと思う」が11.0%と、前年より低下しました。 中国政府の新型コロナウイルスへの対応や、尖閣諸島や台湾を巡る強硬姿勢などが影響したとみられます。 さらに、北朝鮮については何に関心があるか聞いたところ、「ミサイル問題」と答えた人が過去最高の割合で、「日本人拉致問題」と答えた人を上回りました。 一方、日韓関係については「良好だと思う」が前年の調査から10ポイント近く増加するなど、肯定的な意見が増えました。尹(ユン)政権が誕生し、徴用工問題を含む懸案解決への期待が高まったことが要因の一つとみられます。 |
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●「勝利を確信」プーチン大統領 独ソ激戦の地で団結訴える 2/3
ウクライナ侵攻1年を前にロシアのプーチン大統領は第2次世界大戦の激戦の地で演説し、「勝利を確信している」と強調しましたが、多くの戦死者を出す地元市民の一部からは冷ややかな反応も聞かれます。 記者「ボルゴグラードを象徴する高さ85メートルの母なる祖国像です。このあと、プーチン大統領が訪れるということで、辺り一帯が封鎖され、物々しい警戒態勢が取られています」 JNNのカメラが捉えたプーチン大統領が乗っているとみられる専用車。 記者「市内一帯では、朝からこのようにインターネットの接続が制限されています」 厳戒態勢のなか、プーチン氏は2日、第2次大戦の激戦地であるロシア南部ボルゴグラードに姿を現しました。 独裁者スターリンの名を取り、かつて「スターリングラード」と呼ばれたこの地では、80年前、旧ソ連軍が激しい攻防の末、ナチス・ドイツ軍を撃破しました。 その記念式典でプーチン氏が訴えたことは。 ロシア プーチン大統領「信じられないことだが、これは事実だ。ドイツの戦車が再びロシアを脅かしている」 「ナチスのイデオロギーが現代によみがえり、我々を脅かしている」と主張。ウクライナへの軍事侵攻から近く1年となるのを前に、ウクライナに対し、主力戦車の供与を決めたドイツを名指しし、軍事支援を強める欧米を批判して見せたのです。 「万歳、万歳」 軍事パレードには、第2次大戦当時の戦車やウクライナ侵攻で使用されている主力戦車なども登場。会場の一角には、子供たちが戦車に触れることのできるコーナーも設けられました。市民に話を聞くと。 市民「パレードは素晴らしかったです。これは市民全員のお祝いです。なぜなら、どの家庭にもあの戦争の戦死者がいるのです」「ウクライナ国民と我々は兄弟です。ただ、そこにファシズムがあることを知っています。プーチンが我々のための戦いだというのは正しい」 「愛国心」高揚の場となった式典でプーチン氏は、再び勝利を呼びかけました。 ロシア プーチン大統領「我々には対応する能力があり、それは戦車にとどまらないことを理解すべきだ」 かつてのナチスドイツとの戦いと侵攻を重ねるかのように国民に団結を訴えた今回の動き。ただ、ボルゴグラード州は侵攻での戦死者がこれまでに350人以上と推計され、ロシアの中でも多い地域の一つです。 現地では、こんな声も聞かれました。 市民「このような形で解決すべきではありません。すべての男性が哀れです。神様、動員はもうしないでください」「戦争はいつの時代でも悪いことです。『グレート・ウォー』という言葉があるが、戦争が偉大なはずがありません」 一方、EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長は2日、ウクライナの首都キーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談。ロシアの戦争犯罪の証明に向けた「国際センター」をオランダ・ハーグに設置すると明らかにしました。 EU フォンデアライエン委員長「ロシアはこの憎むべき犯罪について、法廷で責任を問われなければならない」 ウクライナ侵攻から24日で1年となるなか、欧米は連携を強めていますが、今後、ロシアによる大規模な攻撃も懸念されています。 |
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●ロシア ウクライナに軍事侵攻 4日の動き 2/4
●ゼレンスキー大統領「ドネツク州で厳しいまま」 ウクライナのゼレンスキー大統領は3日夜、新たに公開した動画で「前線の戦況は、特にドネツク州で厳しいままだ。敵の激しい圧力に耐えているすべての兵士に感謝する」と述べ、前線で戦う兵士たちを鼓舞しました。またアメリカが発表した追加の軍事支援について「バイデン大統領やすべてのアメリカの人々に感謝する」としたうえで「これらの支援が、ウクライナにできるかぎり早く届くようわれわれは協力しなければならない」と訴えました。 ●米 射程距離150キロのロケット弾供与へ アメリカのバイデン政権は3日、ウクライナに対しておよそ22億ドル、日本円にして2850億円の追加の軍事支援を行うと発表しました。この中には、GLSDBと呼ばれる射程がおよそ150キロのロケット弾が含まれ、これまでアメリカがウクライナに供与してきたロケット弾に比べ2倍近い射程になるとされています。GLSDBは、アメリカがすでにウクライナに供与している高機動ロケット砲システム=ハイマースなどから発射することができるということです。これによって、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部のクリミアなども射程に入るとみられ、国防総省のライダー報道官は3日の記者会見で「ウクライナが長い射程の攻撃能力を手にすることで自国を防衛し、領土を取り戻すことができるようになる」と述べています。 ●仏伊 共同開発のミサイル ことし春にウクライナへ供与で合意 フランスのルコルニュ国防相とイタリアのクロゼット国防相が3日、電話で会談し、両国が共同で開発した地対空ミサイルシステム「マンバ」をことしの春にウクライナへ供与することで合意しました。フランス国防省によりますと、この地対空ミサイルシステムは移動式で、弾道ミサイルや航空機、それに無人機などの迎撃が可能で射程はおよそ100キロだということです。フランス国防省は、この地対空ミサイルシステムについて、今月1日にウクライナへの供与を発表したレーダー「グランド・マスター200」と組み合わせて使うと、より大きな効果を発揮でき、ロシア軍の攻撃に対する迎撃能力の向上に役立つとしています。 ●EU・ウクライナ首脳会談 支援継続を強調 ロシアによる軍事侵攻から1年になるのを前に、EUのミシェル大統領とフォンデアライエン委員長が3日、侵攻後、初めてそろってウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領と会談しました。会談のあと開かれた会見でミシェル大統領は「ウクライナの未来はEUとともにある」と述べてウクライナとの連携を強調し、支援を継続していくことを改めて示しました。またフォンデアライエン委員長は、ロシアによる軍事侵攻から1年となる今月24日までにロシアに対してミサイルや無人機に使用される技術などを対象にした追加の制裁を科す意向を示しました。 ●ウクライナのEU加盟へ向けたスケジュールは示されず ウクライナはEUへの加盟を申請し去年、加盟交渉開始の前提となる「加盟候補国」に認められていて、会談ではこれについても話し合われました。会見でゼレンスキー大統領は「われわれの目標は明確だ。加盟に向けて手続きを加速させていく」と述べました。これに対しフォンデアライエン委員長は「ウクライナが達成しなければならないゴールがある」と述べ、さらなる改革が必要との認識を示したうえで加盟に向けた具体的なスケジュールは示しませんでした。 ●ロシア軍 死傷者20万人に迫る 米有力紙 軍事侵攻を続けるロシア軍はウクライナ東部のドンバス地域の掌握をねらい、戦闘を激化させているとみられています。一方、アメリカの有力紙は当局者の話としてロシア軍の死傷者が20万人に迫っているという見方を示しています。特に、ドネツク州のバフムトや近郊のソレダールをめぐる戦闘で、ロシア側は訓練が不十分な新兵や刑務所の囚人などを戦闘員として投入し、甚大な損害が出ていると指摘しています。ただ、プーチン大統領は2日も第2次世界大戦中のナチス・ドイツとの激戦に重ね合わせるかたちで、ウクライナ侵攻を続ける姿勢を強調していて、ニューヨーク・タイムズはロシアの専門家の話として「人命の損失がプーチン大統領の戦争の目的を抑止する可能性は低い」とする見方を伝えています。 ●“侵攻さらに半年以上続く”68% ロシア世論調査 ロシアの独立系の世論調査機関はロシア国内で行った調査で、ウクライナへの軍事侵攻がさらに半年以上続くと予想する人が68%にのぼり、これまでで最も多くなったと発表しました。独立系の世論調査機関「レバダセンター」は、毎月下旬に全国の1600人余りを対象に、対面形式で調査を行っていて2日、1月の調査結果を発表しました。それによりますと、侵攻が「今後どれだけ続くか」という質問に対して、「1年以上」と答えた人が43%、「半年から1年」と答えた人が25%で、合わせて68%がさらに半年以上続くと予想しています。これは去年11月から4ポイント増えて、最多となっていて、2月で軍事侵攻から1年となるものの長期化は避けられないという見方が、ロシア国内で広がっていることがうかがえます。また「ウクライナをめぐる情勢に注目しているか」という質問に対して、「まったく注目していない」、もしくは「あまり注目していない」と答えた人は合わせて43%にのぼりました。これは、予備役の動員が始まった去年9月から10ポイント増えていて、「レバダセンター」はロシア国内での関心が次第に低下していると指摘しています。一方、「レバダセンター」が今月1日に公表したプーチン大統領の支持率は82%と依然、高い水準が続いています。「レバダセンター」は、政権から「外国のスパイ」を意味する「外国の代理人」に指定され、圧力を受けながらも、独自の世論調査活動や分析を続けています。 |
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●バイデン大統領、プーチン大統領に「ウクライナ領土20%受けて終戦を」提案 2/4
バイデン米大統領が先月、プーチン露大統領にウクライナ領土の20%を受ける条件での終戦を提案したが、実現しなかったという報道があった。 2日(現地時間)、ドイツ語圏メディアのノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)はドイツ高官の発言を引用し、米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官が先月、極秘でモスクワを訪問し、バイデン大統領の平和提案を伝達したと報じた。 これに先立ちワシントンポスト(WP)はバーンズ長官がウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と会った事実を伝えていた。しかしバーンズ局長のロシア訪問事実が伝えられたのは今回が初めて。 バイデン大統領が提案した「ウクライナ領土の20%」はプーチン大統領が欲を見せてきたドンバスの面積とほぼ同じ。この提案なら、終戦時にロシアは2014年に違法に占領したクリミア半島に続いてウクライナ東部地域まで掌握することになる。 しかしバイデン大統領の提案をロシアとウクライナの双方が拒否したと、NZZは伝えた。ウクライナは領土分割の意思がなく、ロシアは長期的に戦争で勝利すると考えているからだ。NZZは「終戦の提案を双方から拒否された米国がウクライナにM1エイブラムス戦車の支援を決めることになった」と伝えた。 現在、米政府内ではウクライナ戦争の解決策をめぐり意見が分かれている。バーンズ長官とジェイク・サリバン米国家安全保障担当大統領補佐官は、戦争を早期に終えて外交力を中国との対決に集中しようという立場だ。 半面、ブリンケン国務長官とオースティン国防長官はウクライナに対する軍事支援を増やしてロシアに対抗すべきという立場を見せている。ウクライナへの主力戦車支援が決まったことでブリンケン・オースティン長官案が採択されたと把握されると、NZZは伝えた。 一方、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)の副報道官とCIA関係者はNZZの報道について「正確でない」と話したと、米ニューズウィークは伝えた。ロシアのポリャンスキー国連次席大使もニューズウィークに「NZZの記事は興味深いが、推測性の報道だ。これには言及できない」と述べた。 |
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●選手やコーチ231人死亡 ウクライナ外相IOC批判 2/4
ウクライナのクレバ外相は3日、ロシアの侵攻でウクライナの選手やコーチ231人が死亡したとツイッターで明らかにした。国際大会から除外されたロシアとベラルーシの選手復帰を中立の立場などの条件付きで検討している国際オリンピック委員会(IOC)を「(中立を示す)白旗でロシアの犯罪を隠蔽するのをやめるべきだ」と批判した。 クレバ氏は「この大量虐殺の戦争はプーチン(ロシア大統領)が命じたものだが、通常のロシア人たちが実行した」と訴えた。選手やコーチはほかに15人が負傷、28人が拘束され、4人が行方不明だとしている。 |
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●EUとウクライナがロシアの軍事侵攻後初となる首脳会議 共同声明を発表 2/4
EU(=ヨーロッパ連合)とウクライナは、ロシアの軍事侵攻後、初となる首脳会議を開き、EUが軍事面や財政面の支援を強化することなどを盛り込んだ共同声明を発表しました。 首脳会議は3日、キーウで開催され、EU側からはミシェル大統領とフォンデアライエン委員長が代表として参加しました。 共同声明では、EUはウクライナを「必要な限り支援する」とした上で、軍事面でウクライナ軍の兵士およそ3万人を訓練するほか、財政面では総額およそ7兆円を支援するなどとしています。 ウクライナのEU加盟については、「多くの努力を認める」としながらも、政治や経済の分野などで、加盟基準を満たすよう更なる改革を求めています。 EU・フォンデアライエン委員長「(EU加盟の)スケジュールが厳密に決まっているわけではないが、達成すべき目標はある」 一方、ゼレンスキー大統領は、「EUへの加盟は不可逆的だ。我々は加盟プロセスを加速させる」と強調しました。 EUは軍事侵攻から1年となる今月24日までにロシアに追加制裁を科す考えも示しています。 また、ドイツ政府の報道官は3日、主力戦車「レオパルト2」のほかに、旧型戦車「レオパルト1」の輸出を許可したことを明らかにしました。 提供される時期や戦車の数などの詳細は「今後、数日から数週間のうちに具体的になるだろう」と述べています。 |
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●米、ウクライナに長射程のロケット弾供与 「ハイマース」射程2倍に 2/4
米国防総省は3日、ロシアの侵攻を受けるウクライナに高機動ロケット砲システム「ハイマース」で使用できる長射程のロケット弾などを含む約21億7500万ドル(約2850億円)の軍事支援を発表した。ロイター通信によると、ロケット弾は「地上発射型小直径弾(GLSDB)」で、初供与となる。従来提供されてきた砲弾よりも射程が2倍長く、ロシア軍の後方に下がった補給線や指揮拠点の攻撃に効果を発揮するとみられている。 バイデン政権は、提供する兵器がロシア国内への攻撃用に用いられないように配慮して軍事支援を実施している。ハイマースの最大射程は300キロだが、これまでは射程70〜80キロの砲弾に制限して提供してきた。ロイター通信によるとGLSDBの射程は約150キロ。ウクライナ東部のロシア軍の全補給線とロシアが2014年に一方的に併合した南部クリミア半島の一部を射程に収めることになるという。 今回の軍事支援は他に▽追加の155ミリ砲弾▽耐地雷伏撃防護車(MRAP)181台▽対戦車ミサイル「ジャベリン」250発――など。ウクライナ側は射程約300キロの地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」などの提供を繰り返し要求しているが、今回の軍事支援には含まれていない。 米国によるウクライナへの軍事支援は昨年2月24日の侵攻開始以降、293億ドル以上にのぼる。 |
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●バルト3国首相 いかなる条件もロシア選手 五輪出るべきでない 2/4
ウクライナへの軍事侵攻で、国際大会から除外されているロシアと同盟関係にあるベラルーシの選手の復帰をめぐり、バルト3国の首相たちは、いかなる条件でも認めるべきではないという考えを強調しました。 IOC=国際オリンピック委員会は、ウクライナへの軍事侵攻で国際大会から除外されているロシアと、同盟関係にあるベラルーシの選手について、国を代表しない中立の立場とするなどの条件付きで、復帰を検討すると1月発表しました。 バルト3国の首相たちは3日、エストニアの首都タリンでの記者会見で、これについて、認めるべきではないという考えをそろって示しました。 このうち、ラトビアのカリンシュ首相は「この戦争のさなかに、いかなる形であれ、参加が認められることは道徳的に非難されるべきものだ」と述べました。 また、エストニアのカラス首相は「参加は間違いだと、同盟国を説得することに力を注ぐべきだが、次のステップはボイコットだ」と述べ、ロシアやベラルーシの選手の復帰が認められた場合、国際大会への参加をボイコットすることも辞さないと強調しました。 ●ウクライナ五輪委「現時点でのパリ五輪ボイコット決定見送り」 ウクライナのオリンピック委員会は3日、オンラインで開いた臨時総会で、軍事侵攻を理由に国際大会から除外されているロシアとベラルーシの選手が復帰した場合の対応を協議し、現時点での来年のパリオリンピックのボイコットの決定は見送りました。 IOC=国際オリンピック委員会は1月、ウクライナへの軍事侵攻を理由に国際大会から除外されているロシアとベラルーシの選手について「いかなるアスリートもパスポートを理由に競技への参加が妨げられてはならない」として復帰を検討すると発表しました。 これを受け、ウクライナのオリンピック委員会は、両国の選手の復帰が認められた場合、来年のパリ大会をボイコットする可能性について各競技の国際競技連盟と協議を始める方針を示し、3日、オンラインで臨時総会を開きました。 会合後、ウクライナの青年スポーツ相も務めるオリンピック委員会のワジム・フトツァイト会長は「まだ、ロシアとベラルーシの国際大会への参加が正式に認められた訳ではない」と話し、現時点でのパリ大会のボイコットの決定は見送り、引き続き協議する考えを示しました。 この臨時総会に先立つ2日、IOCはコメントを発表し、オリンピックをボイコットすることはオリンピック憲章に違反するとしたうえで「時期尚早な段階で、ボイコットの脅しで議論をエスカレートさせることは極めて遺憾だ」としました。 また、今回の復帰の検討についてはパリ大会への参加を前提としたものではなく、この夏などにアジアで行われる国際大会に両国の選手が出場してもアジア勢の出場枠などに影響はないという見解も示しました。 |
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●クリミア攻撃なら報復 「ウクライナ炎上」警告 ロシア前大統領 2/4
ロシアのメドベージェフ前大統領は、米政府がウクライナに供与すると発表した長距離ロケット弾が、ロシア支配地域の南部クリミア半島に撃ち込まれれば「(ゼレンスキー政権が統治する)ウクライナ全域が炎上するだろう」と報復を警告した。 4日に通信アプリで公表された親政権派ジャーナリストのインタビューで表明した。 欧米では自らの軍事支援の結果、ウクライナに有利な条件で停戦交渉にロシアを引き込めるという見方がある。これについて、メドベージェフ氏は「正反対の結果になる。行われるのは交渉ではなく、報復攻撃だけだ」と主張。プーチン大統領が言及した通り「あらゆる対抗手段がある」と指摘し、脅威次第で核兵器を準備する考えを示した。 |
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●ロシア新興財閥の没収資産をウクライナへ初の移譲、米司法省 2/4
米国のガーランド司法長官は3日、ロシアのプーチン政権に近いとされる新興財閥(オリガルヒ)から没収した資産を初めてウクライナへ移譲し、同国の支援用途に充てると発表した。 米司法省でウクライナのコスチン検事総長と共に臨んだ記者会見で述べた。 資産を剥奪(はくだつ)されたオリガルヒはコンスタンチン・マロフェーエフ氏で、同長官は昨年4月、米国の対ロシア制裁に違反した容疑での訴追を発表。同月には被告自身も制裁対象となり、米財務省は当時、被告は直接的あるいは間接的にロシア政府のための行動などに関与していたと説明していた。 同年6月にはマロフェーエフ被告が保持する米国内の銀行口座にあった数百万ドル規模を押収していた。 ガーランド長官によると、没収した資産はまず、米国務省へ引き渡され、 ウクライナ国民を支援する方途に使われるとした。「ロシアの戦争犯罪人に米国内での隠れ家はない」とも強調した。 コスチン検事総長によると、米国務省へ提供された没収資産は540万米ドル(約7億740万円)相当で、ウクライナの復興支援に回される。米国の断固たる努力と支持への謝意を示し、「ウクライナ国民は決して忘れないだろう」と述べた。 |
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●侵攻継続ならロシア国家崩壊≠ヨの内戦も 元将校が衝撃発言 2/4
ロシアの先行きについて衝撃的な発言だ。24日のウクライナ侵攻開始1年に向けて攻勢を強めるロシア軍だが、軍元将校が、侵攻が継続した場合、「国家の崩壊を招くほどの内戦が起こる」と述べた。プーチン大統領ら「体制派」と「強硬派」「民主派」の3派の争いに加え、ロシア連邦を構成する共和国の反乱に発展すれば、領土の現状維持も容易ではないとの見方もある。 元将校はイーゴル・ガーキン氏。ウクライナのヘラシチェンコ内相顧問が投稿した動画で、ガーキン氏は「あらゆる種類の内戦がある。冬場の3日間でわれわれの国を滅ぼすような内戦もある」と発言。数百万人の犠牲者が出る可能性にも言及した。 ガーキン氏はウクライナ東部の親露派「ドネツク人民共和国」で「国防相」を務めた。2014年にウクライナ上空でマレーシア機が撃墜され298人が死亡した事件では、地対空ミサイルを配備したなどとしてオランダの裁判所に有罪判決を言い渡されるなど悪名高いが、プーチン政権の表も裏も知る人物だ。現在は軍事ブロガーとして活動している。 ロシア軍では、民間軍事会社「ワグネル」創設者で、「強硬派」のエフゲニー・プリゴジン氏が発言力を増してきた。これに対し正規軍はゲラシモフ参謀総長を統括司令官に任命するなどさや当てが始まっている。 筑波大の中村逸郎名誉教授は「ウクライナでロシアが敗北した場合、ワグネルと国防省が主導権を争って武力衝突に発展する可能性はゼロではない。オリガルヒ(新興財閥)もどちらの支持に回るかで分裂し、全土を巻き込む事態も想定される」とみる。 「第3極」と目されるのが野党指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏だ。「プリゴジン氏が国民の支持を獲得するため、ナワリヌイ氏を解放する動きも想定されている。政権の求心力が低下し、反プーチン議員が増えているとみることもできる」と中村氏。 米国の専門家も多くがロシアの将来に悲観的だ。米シンクタンク、大西洋評議会がロシアの将来について外交・安全保障の専門家に尋ねたところ、約46%が「今後10年間に破綻国家になるか、崩壊する」と予想した。 米ラトガーズ大のモティル教授(政治学)は米外交誌フォーリン・ポリシーへの寄稿で、「タタールスタンや、バシコルトスタン、チェチェン、ダゲスタン、サハなど連邦を構成する共和国が自治拡大を目指すだろう」という展開を予測した。 中村氏は「反戦機運の高まる地方で自治拡大や独立を目指す反乱が起こる可能性もある。その場合、戦争の舞台がウクライナからロシア国内に移行する」と強調した。 |
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●フィンランドはロシアの脅威にどう立ち向かう 歴史的な政策転換… 2/4
去年2月のウクライナ侵攻後、わずか3か月でNATO=北大西洋条約機構への加盟申請という歴史的な政策転換を決断したフィンランド。その舞台裏を、駐日フィンランド大使のタンヤ・ヤースケライネン氏に聞いた。 ●ロシアの隣国フィンランド…ウクライナ侵攻の衝撃 ――フィンランドはロシアと約1300キロにわたり国境を接していて、観光や貿易などの繋がりも深いですね。ロシアのウクライナ侵攻はフィンランドの人々にどのような衝撃を与えたのでしょうか。 フィンランドの人々は、ロシアが国際的なルール・秩序に反する恐ろしい行為に踏み切ったということ、このようなことが私たちの身近で起こりうるということに、とてもショックを受けたと思います。ご指摘のとおり、フィンランドには多くのロシア人観光客が訪れていました。パンデミックやウクライナ侵攻が起こるまでは、年間100万件近くの入国ビザをロシア国民に発給していましたし、私たちはロシア国民と交流することにとても慣れていたのです。 ―― 一方で、フィンランドはロシアの脅威に備えて軍事力を維持してきましたね。 ロシアは以前からフィンランドに対して、領空侵犯や移民の道具化など、さまざまな影響力を行使してきました。ですから、私たちは万が一の事態に備えて準備を重ねてきたのです。フィンランドは長年にわたって非常に強力な軍隊を維持していて、軍隊は自国を守るというとても強い意志を持っています。私たちにはこのような備えがありますが、それでもウクライナ侵攻は多くの国民に衝撃を与えました。 ●歴史的な政策転換…NATO加盟申請を迅速に決断できたワケ ――ウクライナ侵攻から約3か月後、フィンランドはNATOへの加盟を申請しました。 私たちはウクライナ侵攻後すぐに、欧州全体の安全保障環境がこれからどのように変化していくのかということを分析し、4〜5週間で報告書を書き上げました。その結果、NATOに加盟する、あるいは加盟を申請することで、フィンランドやバルト海、欧州全体の安全保障環境がより良くなるだろうという結論に達したのです。 ――ご自身も外務省幹部として加盟申請に携わられましたが、歴史的な政策転換を迅速に決断できたのはなぜなのでしょうか。 理由の1つとして、プロセスが非常にオープンかつ透明だったことが挙げられます。私たちは完成した報告書を国会に提出し、国会では専門家も招いて議論が行われました。入手可能な情報はすべてまとめられ、誰もが確認できるようになっていました。同時に、フィンランドの人々がウクライナ侵攻を受けて、NATO加盟についての意見を変え始めていることに気づきました。侵攻前はNATO加盟の重要性など誰も口にしませんでしたし、加盟に賛成する人々は全体の約30%でした。しかし、その数字は侵攻後上昇に転じ、最終的には80%程度に上ったのです。国民が加盟を広く支持していたために、プロセスを迅速に進めることができたと言えるでしょう。 ●正式加盟までの道筋は…ロシアとの国境にフェンスを設置する計画も ――トルコやハンガリーがフィンランドのNATO加盟に難色を示していますが、加盟への道筋について教えてください。 NATO加盟のためにはすべての加盟国の批准が必要ですが、去年6月のNATOサミット以降、記録的な早さで28カ国の批准を得ることができました。これほど多くの国が迅速に批准したのは歴史上初めてで、とても喜ばしいことです。そしてご指摘の通り、私たちはトルコとハンガリーの批准を待っているわけですが、この2つが揃えばあとは非常に迅速かつ円滑に手続きが進められるでしょう。 ――フィンランドは、ロシアとの国境にフェンスを設置する計画を進めていますね。 はい、政府は国境の一部にフェンスを建設することを決定しました。国境の全長は約1300qですから、もちろんすべてに設置するわけではありません。国境検問所とその周辺に集中させ、全長の15%にあたる約200qに設置されることになるでしょう。まずは今年、リスクの高い地域で試験的にプロジェクトが進められる予定です。 ●フィンランドに女性リーダーが多いワケ…大使も“3児の母” ――最後に、マリン首相をはじめ、フィンランドに女性リーダーが多いのはなぜなのでしょうか。大使ご自身も3人の子育てとキャリアを両立されていますが、秘訣を教えてください。 それは私の秘訣というより、フィンランド社会の「レシピ」と言ったほうが良いかもしれません。「生活の平等」と「男女の平等」は、ごく自然な価値観として社会に定着しています。男性も含めて誰もがこの平等の恩恵に気づいていますし、女性を含むすべての人が社会に貢献する必要があると考えられているのです。国の経済力や競争力を考えたときに、労働市場における人口の50%を無視することはできませんよね。ですから、私のキャリアは特例ではなく、「平等」を実現しているフィンランド社会を反映したものと言えるでしょう。 |
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●米が追加の軍事支援発表 ロシア「紛争をエスカレート」と反発 2/4
ウクライナの東部や南部で激しい戦闘が続く中、アメリカがウクライナに射程の長いロケット弾を含む追加の軍事支援を発表したことに対して、ロシア側は「アメリカは意図的に紛争をエスカレートさせようとしている」と反発しています。 ウクライナの東部や南部では激しい戦闘が続き、ウクライナ国防省は、東部ハルキウ州と南部ミコライウ州の民間施設が攻撃を受け、市民に犠牲が出ていると4日、SNSで発表しました。 こうした中、アメリカのバイデン政権は3日、ウクライナに対しておよそ22億ドル(日本円で2850億円)の追加の軍事支援を行うと発表しました。 この中には「GLSDB」と呼ばれる、射程がおよそ150キロのロケット弾が含まれ、これまでアメリカがウクライナに供与してきたロケット弾に比べ2倍近い射程になるうえ、すでに供与されている高機動ロケット砲システム=ハイマースから発射することができます。 これに対して、ワシントンに駐在するロシアのアントノフ大使は「ウクライナに強力な武器を供与することで、アメリカは意図的に紛争をエスカレートさせようとしている」と3日、SNSで反発しました。 欧米が相次いでウクライナへの軍事支援を強化する中、ロシア国防省は3日、北西部レニングラード州の演習場で最新鋭の戦車「T90M」を使った射撃訓練を行ったと発表し、欧米をけん制するねらいがあるとみられます。 またロシアの国営通信社によりますと、ロシア国防省は、一方的に併合したウクライナの4つの州について、南部ロストフ州に司令部がある南部軍管区の管轄下に置くことを決めたということです。 これについて、イギリス国防省は4日の分析で「ロシア軍が新たに占領した領土を長期的な戦略態勢に統合しようとする考えが浮き彫りになった」と非難しています。 |
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●米 ウクライナに射程約150キロのロケット弾供与を発表 2/4
ウクライナ東部でロシア軍とウクライナ軍の激しい攻防が続く中、アメリカがウクライナに対し射程およそ150キロのロケット弾の供与を発表するなど欧米諸国の間で軍事支援をさらに強化する動きが広がっています。 ウクライナ東部ドネツク州のウクライナ側の拠点の1つバフムトでは、包囲をねらうロシア軍とウクライナ軍の間で激しい攻防が続いています。 ウクライナのゼレンスキー大統領は3日開かれた記者会見で「誰もバフムトを手放さない。われわれはできるかぎり戦う」と述べ、徹底抗戦を続ける姿勢を強調しました。 こうした中、アメリカのバイデン政権は3日、ウクライナに対しておよそ22億ドル(日本円にして2850億円)の追加の軍事支援を行うと発表しました。 これにはGLSDBと呼ばれる、射程がおよそ150キロのロケット弾が含まれ、これまでアメリカがウクライナに供与してきたロケット弾に比べ2倍近い射程になるとされています。 国防総省のライダー報道官は3日の記者会見で「ウクライナが長い射程の攻撃能力を手にすることで自国を防衛し、領土を取り戻すことができるようになる」と述べています。 以前から射程が長いミサイルなどの供与を求めていたウクライナのゼレンスキー大統領は3日夜、公開した動画で「バイデン大統領やすべてのアメリカの人々に感謝する」としたうえで「これらの支援が、ウクライナにできるかぎり早く届くようわれわれは協力しなければならない」と訴えました。 また、フランスとイタリアも3日、両国の国防相が電話で会談し、弾道ミサイルなどの迎撃が可能な移動式の地対空ミサイルシステムを供与することで合意するなど、軍事支援をさらに強化する動きが広がっています。 |
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●ロシア ウクライナに軍事侵攻 5日の動き 2/5
●ゼレンスキー大統領「前線の状況はますます困難に」 ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、新たに公開した動画で、東部ドネツク州のウクライナ側の拠点の1つバフムトなどについて「占領者がわれわれの防御を突破するために今、より多くの部隊を投入してきている。前線の状況はますます困難になっている」と述べました。一方、4日、イギリスのスナク首相と電話会談したことを明らかにし「重要な会話だった。彼と極めて重要なことを準備している」と述べました。また、イギリスが供与を決めている主力戦車「チャレンジャー2」をウクライナ兵が扱うための訓練がすでにイギリスで始まっているとしたうえで、「戦場では大きな意味を持つことになるだろう」と述べ、戦車の投入が戦況の流れを変えることに期待を示しました。 ●ロシア前大統領 再び核戦力ちらつかせ威嚇 ロシアの前の大統領で安全保障会議のメドベージェフ副議長は4日、ロシアの記者の質問に文書で回答した中で「われわれは核抑止力の原則に従い、脅威の性質に応じてあらゆる種類の兵器を使う用意がある。その対応は迅速で厳しいものになる」と主張し、再び核戦力をちらつかせて威嚇しました。メドベージェフ氏は、これまでも強硬な発言を繰り返し、欧米によるウクライナへの軍事支援をけん制しています。 ●ロシア外務省「欧米の努力はむだに終わる」 ロシア外務省は、EU=ヨーロッパ連合が、ウクライナへの支援を継続していく姿勢を改めて示したことについて、4日、報道官のコメントを発表し「欧米の努力はむだに終わる。ロシアの軍事作戦の目的は完全に達成される」として、軍事侵攻を続ける姿勢を重ねて強調しました。 ●ゼレンスキー大統領 米追加軍事支援「軍の機動力向上」 アメリカが追加の軍事支援を発表したことを受けて、ウクライナのゼレンスキー大統領は3日「われわれはアメリカとともに、テロに立ち向かう。射程の長い兵器はウクライナ軍の機動力を向上させ、ロシアの残虐な侵略を早く終わらせるだろう」と自身のツイッターに投稿し、バイデン政権に謝意を示しました。 |
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●ロシア・ウクライナ戦争終結の鍵を握るのは「中立国」だ─ 2/5
開戦からまもなく1年たつが、ロシアとウクライナの戦争は混迷を深めるばかりだ。先の見えないこの戦いを終わらせるには、トルコやインドといった中立国が和平交渉に積極的に関与すべきだと、米経済学者のジェフリー・サックスは主張する。 ロシアもウクライナも、現在進行中の戦争で決定的な軍事的勝利を収められそうにない。それどころか両国とも、この争いをエスカレートさせる可能性が高い。 ウクライナと西側の同盟国が、南部クリミア半島と東部ドンバス地方からロシアを駆逐する見込みは低い。一方のロシアも、ウクライナを降伏に追い込めそうにない。 バイデン米大統領が2022年10月に指摘したように、この戦争が「過激化のスパイラル」に陥れば、「核兵器によるアルマゲドン (最終戦争)」の可能性は、60年前のキューバ危機と同レベルにまで高まるだろう。 戦場とはまた別の次元で、他の国々も苦境に陥っている。欧州の景気は後退しているし、途上国は飢えと貧困に苦しんでいる。米国では国内経済が悪化しているにもかかわらず、武器メーカーや大手石油会社が棚ぼた的に利益を得ているが、サプライチェーンの混乱や核の脅威にさらされた世界は不安定化している。 戦争の当事国は、自分たちが敵より軍事的に優位だと信じて、戦い続けるかもしれない。その場合、少なくとも一方が間違っている。いや、おそらく両方が間違っているのだろう。消耗戦は両陣営を荒廃させるだけだ。 ●世界が恩恵を受ける「和平合意」を結ぶには だが戦争が、別の理由で続く可能性もある。戦争の当事国が、強制力のある和平合意に同意しない場合だ。 ウクライナは、戦闘を中断すればロシアがその隙に再軍備すると考えているし、ロシアもまたNATO(北大西洋条約機構)がウクライナの軍拡を加速させると踏んでいる。ゆえに彼らは、いま戦うことを選ぶのだ。あとでより強くなった敵に対峙するより、そのほうがいいと考えている。 戦争の当事国が納得できて、かつ強制力も信頼性もある和平合意を結ぶ方法を見つけなければならない。ウクライナを「永遠の戦場」にしないため、そして当事国と世界の利益のため、もっと多くの人が和平交渉に関する議論に関心を払うべきだろう。 多くの国・地域が恩恵を受ける和平合意を成立させるためには、中立国を巻き込まなければならない。これには、確固たる根拠がある。 和平合意の信頼性を高めるには、すべての戦争当事者の安全保障上の利益を満たす必要がある。1963年、ジョン・F・ケネディ元米大統領は旧ソ連と部分的核実験禁止条約を成功裡のうちに結ぶ過程で、こう述べている。 「条約の規定する義務が自国の利益になるものなら、最大の敵国同士も、その義務を受け入れて遵守するだろうとお互いを信頼できる」 和平合意を結ぶためには、ウクライナに主権と安全を保証しなければならないし、NATOには東方への勢力拡大を断念してもらわなければならない。NATO陣営は自分たちを「防衛的な同盟」と称する。だが、ロシアは明らかにそうは見ておらず、NATOの勢力拡大に断固として反対している。 クリミア半島とドンバス地方については、一定期間、停戦して非武装化するなど、いくらかの妥協が必要になるだろう。西側は、ロシアへの制裁を段階的に解除しなくてはならない。加えて、紛争で被害を受けた地域の復興にロシアと西側が協力する合意が得られれば、和平はさらに持続可能なものになる。 和平合意の成功は、その交渉と履行に誰が関わるかに左右されるだろう。戦争の当事者だけでは、このような和平を成立させることはできない。第三者の関与が必要だ。 ●どちらの国も勝利しそうにない アルゼンチン、ブラジル、中国、インド、インドネシア、南アフリカなどの中立国は、これまでに交渉を通じた戦争終結を繰り返し呼びかけてきた。こうした国々は、ロシアとウクライナが和平交渉の際に合意した条件を遵守することを助けるだろう。 これらの中立国は、反ロシアでもなければ、反ウクライナでもない。また、ロシアのウクライナ支配も、NATOの東方拡大も望んでいない。 NATOの東方拡大は、ロシアだけでなく他の国々に対しても「危険な挑発」になると考える向きは多い。米国の強硬派が中国と対抗するよう同盟国に求めた結果、NATOの東方拡大に対する中立国の反発は強まった。 2022年6月に開催されたNATO首脳会議では、本来なら「北大西洋」の代表だけが顔を合わせるはずだった。だが、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドといったアジア太平洋地域の指導者たちも出席したことに、中立国は驚きを隠せなかった。 中立国は、ロシアとウクライナの和平交渉において、重要な役割を果たすだろう。ロシアの経済と軍事力は、中立国との強力な外交関係と国際貿易に依存している。西側がロシアに経済制裁を課した際、インドなどの中立国はそれに追随しなかった。こうした国々は、どちらかの肩を持つことを望まず、ロシアとの強固な関係を維持し続けた。 主要中立国は、世界経済でも存在感を発揮する。IMF(国際通貨基金)の統計によると、アルゼンチン、ブラジル、中国、インド、インドネシア、南アフリカの2022年の購買力平価GDPの合計は、全世界の約32%に相当する51.7兆ドル(約6634兆円)だった。これは、G7(米英仏独伊日カナダ)の合計を上回る。 中立国はG20の議長国を4年連続務めるほか、主要な地域機関でも主導的立場についており、グローバル経済のガバナンスにおいても重要な地位を占める。ロシアもウクライナも、これらの国々との関係を失いたくはない。ゆえに中立国は重要な「平和の保証人」 になるだろう。 中立国のなかには、ブラジルやインドのように国連安保理の常任理事国になることを長年、望んでいる国もある。彼らにとって和平交渉への参加は、外交上の信頼を得られるという利点もある。 ロシアとウクライナが和平協定を結ぶとすれば、国連安保理といくつかの主要中立国がそれを共同で保証する形が考えられる。先に言及した国々のほか、信頼できる「共同保証国」の候補としては、ロシアとウクライナの会談を巧みに仲介したトルコ、永世中立国のオーストリア、2023年の国連総会の議長国であり、戦争終結に向けた交渉を繰り返し呼びかけてきたハンガリーが挙げられる。 国連安保理と共同保証国は、和平合意に違反したあらゆる当事者に対して、国連で合意した貿易・金融措置を科すことができる。これに対し、違反した当事者が拒否権を行使することはできない。安全保障上の目的を達成し、平和を取り戻したいのなら、ロシアとウクライナは中立国の公正な判断に従わなければならない。 この戦争を続けるのはナンセンスだ。ウクライナの国土は荒廃し、ロシアは多くの人命と財を失う。世界中に損害を与えているこの戦争では、どちらの国も勝利しそうにない。 中立国こそが国連と連携し、新しい平和と復興の時代の共同保証国の役割を果たせる。世界はこの戦争が、激化のスパイラルに陥るのを見過ごしてはならない。 |
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●米シンクタンク 「米国に中国と戦争する余裕はない」…その理由とは 2/5
米国は、ウクライナに支援した武器や弾薬を補充する上で困難に見舞われるほど防衛産業基盤が弱体化しており、中国と戦争をする準備はできていない、という分析が登場した。 米国の代表的な外交・安全保障シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は、1月23日(現地時間)に発行した「戦時環境において空になった弾薬箱(Empty Bins in a Wartime Environment)」というタイトルの報告書で、米国の防衛産業基盤は現在の複雑な安全保障環境に対し十分な備えができていない、と診断した。 CSISは、米国の防衛産業は平時に適合した状態にあり、台湾海峡での中国との戦争など大規模な地域紛争が起きたら弾薬の需要に耐えられないだろうと指摘した。ロシアによるウクライナ侵攻後、米国は取り急ぎウクライナに武器を支援しようとしたが、米国の在庫自体があまりなく、急に武器を大量生産する余力もなかった点があらわになったのだ。特にスティンガー地対空ミサイル、155ミリ曲射砲および砲弾、ジャベリン対戦車ミサイルなどの在庫が足りなかった。 CSISは、米国が昨年8月までにウクライナに提供したジャベリンは7年分の生産量に当たり、スティンガーは過去20年間に米国国外へ販売した量に相当する規模だと推定した。また、今月までに155ミリ砲弾107万4000発を提供したが、量が足りなくなったことから、代わりに105ミリ曲射砲とその砲弾での支援を始めた。加えて、武器・弾薬を生産するには長い時間がかかるが、米国防総省が防衛関連企業と新たな購入契約を結んだのはウクライナに支援した一部の武器についてのみだった。 CSISは、ウクライナは問題の一部に過ぎず、インド・太平洋などで起き得る未来の戦争に備えることがより大きな課題だと指摘した。「米国と中国の競争激化から、ロシア・イラン・北朝鮮の引き続き存在する脅威に至るまで、米軍は少なくとも一つ、または二つの大規模戦争を進める準備を整えるべき」としつつ「強力な防衛産業と十分な武器・弾薬の在庫が、中国の行動を抑制する上に非常に重要だが、米国は戦争をする準備ができておらず、抑制力も減少した」と述べた。 またCSISは、中国がいつ台湾に侵攻するか予測は難しいが、武器の生産を増やすのに必要な準備期間を考慮すると、生産拡大が手遅れになる可能性が高い、と指摘した。CSISが台湾海峡で米中戦争の状況をシミュレートした結果、米国は開戦から3週間以内に5000発以上の長距離ミサイルを使った。特に、中国の防空網の外から艦艇を攻撃できて非常に有用な長距離対艦ミサイル(LRASM)は、わずか1週間で全て撃ち尽くした。LRASMを生産するのにほぼ2年かかるが、米国の2023会計年度の国防予算は、88発の購入に必要な予算を配分するにとどまっている。 CSISは、米国だけでなく英国など欧州の同盟国も武器の在庫が十分でない、と指摘した。また、同盟国は米国の武器に大きく依存しているが、米国が外国政府に武器を販売する際に適用する対外軍事販売(FMS、有償援助)と国際武器取引規則(ITAR)の手続きはあまりに複雑で、武器を引き渡すのに時間がかかりすぎるという。FMSは、米国の防衛関連企業が米国政府外の顧客を確保し、営業基盤を維持して単位当たりの生産コストを下げる前向きな効果を有しており、主要同盟国に対して関連手続きを簡素化する必要がある−とCSISは主張した。 逆に中国は、弾薬生産に大規模な投資を行い、最先端の装備を米国より5−6倍早く確保すると分析された。 CSISは、防衛関連企業が武器・弾薬の生産に必要な施設などに長期投資する誘因が生じるように、米国政府が企業と多年契約を結ぶなど、安定的な需要を創出すべきだと勧告した。続いて、中核となるパーツや材料の調達元を増やすなど、防衛産業界のサプライチェーンを強化し、主な武器・装備を戦略的に備蓄することを提言した。これとともに、国防総省は戦時の需要を予測し、戦争が起きた場合に武器の生産と取得の手続きを簡素化できる非常計画を樹立すべきことを主張した。 このほかCSISは、米国が日本・オーストラリアとSM6迎撃ミサイルの部品やトマホーク巡航ミサイルを共同生産している事例に言及しつつ、米国が主要同盟国と武器を共同生産して「規模の経済」を実現する「アライ・ショアリング(ally-shoring)」を勧告した。 |
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●利用される“歴史” なぜプーチン大統領は「ナチス」発言を繰り返すのか? 2/5
ウクライナ侵攻が始まって、まもなく1年。ロシアのプーチン政権は、過去の歴史を戦争に利用するような発言を繰り返しています。 ●スターリングラード攻防戦から80年 ロシア・プーチン大統領「ナチズムから世界を解放したスターリングラードの戦いを過小評価したり、歪曲したりすることは許されないー」 2月2日、プーチン大統領が訪れたのはロシア南部のボルゴグラード。かつて独裁者スターリンの名を冠し「スターリングラード」と呼ばれました。 第2次世界大戦で、ナチス・ドイツと旧ソ連が戦った独ソ戦の中でも、熾烈を極めた市街戦となった「スターリングラード攻防戦」。 ソ連軍が勝利したことで、ナチス・ドイツが降伏に至る転換点になったといわれる戦いの終結から、ちょうど80年となる記念日でした。 ●“ナチス”との戦いを訴えるワケ 前日にはスターリン像の除幕式が行われており、プーチン大統領は、その勝利の歴史を称え、改めて「ナチス」との戦い、祖国防衛を訴えたのです。 ロシア・プーチン大統領「ナチズムのイデオロギーが現代的な形になり、再びロシアの安全を直接脅かしている。我々は繰り返し、西側諸国の集団的侵略に対抗しなければならない」 振り返れば、まもなく1年となるウクライナへの軍事侵攻。それはこの宣言から始まりました。 ロシア・プーチン大統領「キーウ政権によって8年間いじめられ大量虐殺を受けた住民を守るために、ウクライナの非武装化と『非ナチス化』を目指す」2022年2月24日 プーチン大統領は、今回の「特別軍事作戦」の目的の一つに、「ロシア系住民を迫害するナチスからの解放」を掲げ、ウクライナ侵攻を正当化しました。 以来、プーチン大統領は、国内向けの演説などで、「ナチス」という言葉を度々登場させます。なぜプーチン大統領は「ナチス」を強調するのか。小泉悠さんは… 小泉悠さん(東京大学先端科学技術研究センター専任講師)「ロシアの社会にとって、『ナチスとの戦い』は極めて特別の意味を持っている。ですから、プーチン政権が最大公約数的に人々に訴えかけられると考えたのは、『ナチスという人類悪を我々は倒した仲間だ』ということだったんです。要するにロシアの言うことを聞かない奴はナチスだと。転倒した論理が生まれてしまい、戦争の正当性として利用されている」 ●強制収容所解放から78年 プーチン大統領が、勝利の歴史を国民に思い起こさせようとする中、1月27日、ポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所で解放から78年となる追悼式典が開かれました。 ナチス・ドイツが、ユダヤ人110万人以上を虐殺したアウシュビッツ強制収容所。ここをはじめ各地の収容所を解放したのは旧ソ連軍でした。 しかし今回初めて、この式典にロシアは招かれませんでした。その訳を式典の主催者は… アウシュビッツ・ビルケナウ博物館・シウィンスキ館長「第二次大戦中に各地で大量殺戮が行われました。そして今、(ウクライナの)ブチャ、マリウポリ、ドネツクなどで、またしても罪のない人々が、大量に命を奪われているのです」 これに対し、プーチン大統領は主催者などにあてた電報で抗議。「わが国の偉大な勝利への貢献を見直す試みは、ナチス復活の道を開く。ウクライナのネオナチによる民族浄化がまさにその証拠だ」 ●欧米にも“ナチス”を利用して非難するプーチン政権 ナチスとの戦争を持ち出して、ウクライナ侵攻を正当化するプーチン政権。対立する欧米に対しても― ロシア・ラブロフ外相「欧米各国はウクライナを利用して、ロシア問題の最終的解決として戦争を仕掛けている。ヒトラーがユダヤ人に行った虐殺のように」 また主力戦車「レオパルト2」の供与を行ったドイツに対しても、「ナチスの犯罪を巡る歴史的責任を放棄した」と非難したのです。 ウクライナ情勢の中で、歴史を利用するプーチン政権。その一方で、今や本来の歴史の記憶が薄らぎつつあります。 ●広がるホロコーストの風化 アンネの日記で知られるアンネ・フランクの隠れ家があったオランダ。調査によれば、「ナチスが600万人のユダヤ人を虐殺したことを知らない」人が、いまや若者の6割近くに達したといいます。 歴史の風化が進む中、それを利用するプーチン政権に、小泉さんは… 小泉悠さん「一言で言うと『歴史の政治化』と言っていいと思う。歴史をどう描くかということは政治そのもの。歴史観の政治化の仕方によっては、『戦争を肯定する』とか、『虐殺なんかなかったんだ』という方向に向かってしまう。だから、痛みを伴うんだけど、きちんと(歴史を)直視する、それができる社会が、本当は強いんだと思うんです」 歴史と向き合う姿勢が、いま改めて問われています。 |
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●ロシア、3月までにドンバス全体の攻略狙う ウクライナ諜報 2/5
ウクライナ軍情報総局は5日までに、ロシアのプーチン大統領は「今年3月までに」ウクライナ東部ドンバス地方全体の攻略をもくろんでおり、東部での戦闘は今後数カ月にわたって激化するだろうとの分析を示した。 同情報総局のユーソフ報道担当者が公式サイト上で発言した。その上でこの計画は機能しないだろうとし、制圧の目標期限も既に多数回延ばされていたとも明かした。 ドンバスで現在起きている激しい戦争はこの計画を完遂させるための反映と指摘。「人員や装備での損失は勘定に入れず、敵は独裁者の仕事を実現させることを試みている」とした。「ウクライナ軍は座視しているわけではない」とも述べた。 ドンバス地方はドネツク、ルハンスク両州から成る。 一方、ウクライナ国防省情報総局のチェルニャク報道担当者も先に、ユーソフ氏と同様の見立てを表明。 ロシア軍が追加の攻撃部隊、兵器や装備を東部へ再配置していることに気づいていると説明。ウクライナ軍の諜報(ちょうほう)に言及し、「プーチン(氏)は3月までにドネツク、ルハンスク両州の(残る)地域を押さえることを命じた」と述べた。 |
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●“世界最強”の軍事同盟NATOトップ訪日の目的? ウクライナ侵攻の口実にも 2/5
NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長が来日し、岸田総理と会談しました。今なぜNATOは日本と連携を深めようとしているのでしょうか?そもそも軍事同盟NATOとは?プーチン大統領を苛立たせウクライナ侵攻の口実にもなったNATO拡大の経緯とは?手作り解説でお伝えします。 ●NATOのトップが日韓歴訪 今回、日本と韓国を訪問したNATOのストルテンベルグ事務総長。韓国に対しては、ウクライナへの「武器提供」を求め、日本に対しては、安全保障の協力強化を確認しました。欧米諸国の軍事同盟であるNATOのトップが、日韓に協力を求めてきた背景には、何があるのでしょうか。 ●NATOとは そもそもNATOは、ソ連に対抗する軍事同盟として1949年に発足しました。アメリカが主導していて、当初の加盟国はこちらの12ヶ国です。「集団防衛」という考え方に基づき、加盟国が攻撃を受けた場合、それをNATO全体への攻撃とみなして反撃などの対応をすることになっています。一方のソ連側も、1955年、東ヨーロッパ8ヶ国による軍事同盟、ワルシャワ条約機構を作ってNATOと対峙していました。 ●NATOの東方拡大 しかし、ソ連が崩壊すると、ワルシャワ条約機構はなくなり、民主化された東欧や旧ソ連諸国など14の国が雪崩を打ってNATOに加盟していきました。現在では、加盟国は30ヶ国、兵力はおよそ331万人に上ります。NATO軍の主な軍事行動としては、1990年代後半、旧ユーゴスラビアを巡る紛争での空爆や、2011年、カダフィ政権のリビアに対する空爆があります。 ●ロシアとNATO こうしたNATO拡大に不満を募らせたのがロシアのプーチン大統領です。ウクライナがNATOに接近したこともあり、そうした状況を口実にウクライナ侵攻へと踏み切りました。そして今、ロシアの脅威を前に、新たにスウェーデンとフィンランドもNATOへの加盟を申請。プーチン大統領をさらにいら立たせています。NATO加盟国からはウクライナに対し戦車など攻撃力の高い兵器の供与も決まり、ロシアとの緊張は高まるばかり。 一方で、NATOのストルテンベルグ事務総長は、「ロシアと対決すれば待っているのは破滅だ」と明言。アメリカのバイデン大統領も、「ロシアとNATOの間の戦争は求めない」として、直接の衝突を避ける難しいかじ取りを迫られています。 ●NATOトップ、日韓歴訪のねらい こうした中で、NATOトップの日韓歴訪には、どんな狙いがあるのでしょうか。「ロシアに接近を強める中国も見据えた動きだ」と指摘するのは、安全保障問題に詳しい小谷哲男(明海大学)教授です。「中国は、サイバー攻撃などでも欧米諸国の大きな脅威となっていて、NATO軍だけでは対応が難しいため、日韓と連携を強めて、中国をけん制したい」思惑があるといいます。冷戦のような枠組みが、再びよみがえりつつあるのでしょうか。 |
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●ロシア、「併合」4州を南部軍管区の管轄下に…既成事実化進める狙いか 2/5
タス通信などは、ロシア国防省が、ロシアが一方的に併合したウクライナ東・南部4州を露軍の南部軍管区の管轄下に組み込んだと報じた。プーチン政権が、併合の既成事実化を進める狙いとみられる。 報道によると、露国防省のホームページで3日、露南部ロストフ州に司令部がある南部軍管区の地図にドネツク、ルハンスク、ヘルソン、ザポリージャの4州が加えられた。タス通信によると、南部軍管区の広報担当者は「管轄地域の拡大はロシアによる4州の併合宣言などによるものだ」とコメントした。これまではロシアが2014年に併合した南部クリミアだけを南部軍管区に含めていた。 英国防省は4日、「露軍が、新たに占領したウクライナ領を長期的に戦略体制に統合しようとする考えだ」と非難した。 一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4日のビデオ演説で、ロシア軍が、ドネツク州北方の要衝バフムトや州南西ウフレダルなどに「戦力を次々と投入している」と明らかにした。ウクライナの国防次官は4日、露軍が昨年秋に撤退したドネツク州北方のリマンに向けても「強力な攻撃」を開始したとSNSに投稿した。 |
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●ウクライナ国防次官 「ロシア占領地で人権侵害」領土奪還の決意 2/5
ウクライナのハンナ・マリャル国防次官が「BS朝日日曜スクープ」の独自取材に応じた。2023年1月29日の放送で特集したが、今回は、その発言をウクライナ語で動画公開(日本語翻訳テロップ付き)。ウクライナ国防省の中枢メンバーが日本メディアを通じて発信した、領土奪還の決意を改めてお伝えする。 ●マリャル国防次官の主な発言内容 マリャル国防次官は日曜スクープの取材に対し、ロシアに占領されているウクライナ領について、深刻な人権侵害が横行していると指摘。「占領された地域には、多くのウクライナ国民が残っており、人権侵害が行われている。ロシアは支配地域で国籍の付与、パスポート登録などのロシア化を進めている」と語った。さらに、占領地での子どもたちへの教育について、「幼稚園や学校は、子どもたちのためではなく、軍隊のために使われている。占領した地域で、無理矢理にロシア教育を行っている。学校では、ロシアの教科書に変わり、ロシアに都合の良い歴史などの教育を子供たちに行っている」として、ロシア化の強要を批判した。 子どもたちへの人権侵害は、教育にとどまらない。ウクライナは、去年2月の侵攻以降、約1万4000人の子どもがロシアに連れ去られたとしている。マリャル国防次官は、「ロシアは、ウクライナの領土からロシアに連れて行った子どもたちをすぐに養子にできるよう新しい法律を作った」と語り、ロシアが養子縁組を容易にするための法整備などを進めていることを明らかにした。さらに、マリャル国防次官は、ソ連時代のスターリン体制に言及し、「スターリン時代の1930年から40年代、多くの民族が強制移動させられるなど、ロシアは同じようなことを行った。まさに今、ウクライナの占領された領土で行われている」と、ロシアを非難する。 欧米から戦車の供与が決まったが、ウクライナは各国からの軍事支援をどのように受け止めているのか。マリャル国防次官は、「ウクライナ人は十分勇敢で、もちろん最後まで戦いますが、私たちの勝利は、他の国のパートナーなしではできないのです」と、各国に対する謝意を強調。日本からの支援にも感謝の言葉を続け、「特に医療器具や薬、医療に関しては日本から頂いたものに非常に感謝しています」と述べた。希望する戦車の台数や供与の時期については「具体的な話を言ってしまうと、交渉がうまくいかなくなる場合もある。どんな支援でも感謝したい」と語るにとどめたが、「民間人への残酷さに驚いています」と、 民間施設に1日約100発ものミサイル攻撃が起きていると改めて説明。防空システムや長距離兵器の必要性を訴えた。 マリャル国防次官はインタビューの最後、侵略阻止に対する国際的な理解と結束を熱弁した。「私たちは皆、同じ地球に住んでいる。戦争・侵略を止める方策を見つける必要がある」「宇宙まで行ける高い技術を使っている時代に、戦車で隣国に入り、破壊と人殺しを続ける人たちも存在する。私たち自身が(ロシアを)止めるために団結しなければならない」 |
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●煮え切らない中国、焦るプーチン 露中経済関係の実情 2/6
今を去ること約1年前、2022年2月4日の北京冬季オリンピック開会式には、30ヵ国ほどの国家元首が出席したと言われている。その中で、明らかにV.プーチン・ロシア大統領は別格の大物であった。欧米日等が外交的ボイコットを実施する中で、曲がりなりにも大国であるロシアの出席を得たことは、中国としても最低限の面目を保った形であった。 プーチン訪中の機会を捉え、習近平国家主席との首脳会談が開催された。会談後に出された共同声明には、「北大西洋条約機構(NATO)をこれ以上拡大しないことなどを法的に保証するよう、ロシアが米国などに求めていることについて、中国側は共感し、支持する」との文言があった。むろん、ロシア側も、「『1つの中国』の原則を改めて支持するとともに、台湾を中国の不可分の領土と確認し、いかなる形の『台湾の独立』にも反対する」と、中国の国益への最大限の配慮を示してみせた。 このように、北京五輪の際には、露中がお互いの中核的国益を擁護し合っていた。国際場裏において両国が共同戦線を張っていることを、強く印象付けた。 それからほどなくして、プーチン・ロシアは2月24日に、ウクライナへの軍事侵攻に踏み切った。欧米とは決定的に対立し、網羅的な制裁を科せられた。それでは、こうした難局でロシアは、当初期待したような支援を中国から受けられているだろうか? 今回のコラムでは、経済面から、露中関係の実情を考察してみたい。 ●輸出入とも確かに拡大 ウクライナへの軍事侵攻開始後、ロシアは貿易統計を国家機密扱いとし、一切公表しなくなった。したがって、露中貿易の動向を知るには、中国側の統計を紐解くしかない。 図1は、中国の貿易統計にもとづき、2021〜22年の中国の対ロシア輸出入額を、月別に跡付けたものである。実は22年2月の開戦ショックで対露輸出が落ち込んだのは、中国も同じであった。 中国は対露制裁に加わらなかったものの、送金や輸送の不確実性が大きすぎ、多くの中国企業が出荷を見合わせたからだった。ようやく7月くらいから対露輸出が上向くようになった。一方、対露輸入は、侵攻直後の3月から増加に転じ、年間を通じて高い水準を維持した。 結局、22年の中国の対ロシア輸出は761億ドルで、前年比12.7%増であった。対ロシア輸入は1141億ドルで、前年比43.9%増であった。確かに、国際的なロシア包囲網が形成される中で、中国は悪目立ちしている。しかし、中身を見ると、若干印象が変わってくる。 図2は、中国の対露輸出の商品構成を、21年と22年とで比較したものである。なお、図中でたとえば「84.機械・設備」とあるのは、国際的に用いられている商品分類のHSコードにおける第84類の商品であることを意味する。図2を見ると、主要品目の輸出で、目立って伸びているのは自動車くらいであり、他の品目の拡大はそれほど顕著ではない。 自動車に関して言えば、22年にChery(奇瑞汽車)、Haval(哈弗)、Geely(吉利汽車)などの中国車がロシア市場で大幅な販売拡大に成功したことは事実である。ロシアの乗用車販売市場に占める中国ブランド車のシェアは同年、18.1%にまで拡大した。ただ、これは欧米日韓のブランドがロシアから撤退したため、消去法的に中国車が選択されたものである。 先進国に制裁の包囲網を敷かれたロシアは、電子部品、とりわけ半導体の不足に苦しむことになった。注目されたのは、中国が抜け穴となり、ロシア向けの電子部品供給を拡大するのではないかという点であった。 電子部品はHSコードでは第85類に分類される。図2を見ると、2022年に中国はロシアへの第85類の輸出をむしろ減らしている。今のところより詳細なデータが得られないので、断言はできないが、中国がロシア向けに電子部品輸出を大幅に増やした様子は見られない。 ハイテク分野で象徴的だったのは、中国の通信機器大手・ファーウェイの対応である。先進諸国の制裁で、ロシアにおける通信機器確保に不安が広がる中で、ファーウェイは22年末をもってロシアにおけるBtoB事業を打ち切ったのである。中国は対ロシア制裁に加わっていないにもかかわらず、ファーウェイは二次制裁の懸念などから自主的にロシアへの通信機器供給から手を引いた形であった。 もっとも、米ウォール・ストリート・ジャーナルが今般報じたように、中国企業が水面下でロシアに軍需部品、汎用品を供給しているとの疑いは否定できず、それには第三国経由の輸出も含まれる可能性がある。今回のコラムで筆者は、公開された中露二国間の貿易統計から一次的な考察を試みたが、本格的な実態解明にはより多角的で精緻な分析が求められる。 一方、中国の対露輸入の商品構造を21年と22年とで比べたのが、図3である。そもそも、中国の対露輸入は大部分が第27類エネルギーから成り、22年の輸入総額の急拡大をもたらしたのもまたエネルギーだったことが分かる。22年には、ロシアからのエネルギー輸入が59.5%も伸びたのに対し、エネルギー以外の品目は11.6%しか伸びなかった。 ●バーゲン価格で石油を買った中国 このように、22年の中国の対露輸入増は、ほぼエネルギー輸入増に尽きると言って過言でない。 ロシアがウクライナ侵攻を開始すると、米国はすぐにロシアからの石油輸入を禁止し、欧州もロシア石油からの脱却を打ち出した。行き場を失った石油のはけ口となったのが、インド市場と並んで、中国市場であった。 中国もロシアによる侵攻開始当初は、あからさまにロシアを支援しているように見られて自国の国営石油大手が制裁を食らうのを恐れ、ロシアからの石油購入を見合わせたようだ。しかし、しばらくすると、対応を変えた。ロシアのウラル原油は国際価格から1バレル当たり30ドルほどもディスカウントされて売られるようになり、中国としても価格の安さに抗えなかったのだ。 中国によるロシア原油のタンカー輸入は、21年には日量80万バレル、22年第1四半期には75万バレルだったが、それが5月には過去最高レベルの110万バレルに跳ね上がった。これ以外にも、元々中国は東シベリア太平洋(ESPO)パイプラインを通じて日量80万バレル程度の原油を輸入しており、両者を合わせると最盛期には日量200万バレル近くの石油がロシアから中国に向かうこととなった。 結局、22年通年では、中国によるロシア産原油の輸入は8625万トンに上り(日量172万バレルに相当)、前年から8%拡大した。首位となったサウジアラビアの8749万トン(日量175万バレル)に次いで、ロシアは僅差の2位となった。 ロシアから中国向けには、19年12月に天然ガスパイプライン「シベリアの力」が稼働し、それを利用したガス輸出が年々拡大してきている。輸出量は、22年に155億立法メートルとなり、ロシアのパイプラインガス輸出全体の15%ほどを占めるまでになっている。 このほか、22年にはロシアから中国への石炭および液化天然ガス(LNG)の輸出も顕著に拡大した。 ●「シベリアの力2」は正式決定せず 22年には、石油だけでなく天然ガスについても、ロシアは主力の欧州連合(EU)向けの輸出を激減させた。問題は、中国がそれに代わる市場になれるかであるが、タンカーによる海上輸送が可能な石油に比べて、液化しない限りパイプラインで運ぶしかないガスは、市場シフトの難易度がはるかに高い。 露中が「シベリアの力」で合意しているピーク時の供給量は、年間380億立法メートルである。これまでその供給源はサハ共和国のチャヤンダ・ガス田のみであったが、22年12月にイルクーツク州のコビクタ・ガス田もこれに加わり、380億立法メートル達成に一歩近づいた。また、22年2月のプーチン訪中の際に、さらに100億立法メートルを追加で供給する旨の契約が結ばれたが、本件は供給源のサハリン沖のガス田が米国による制裁の対象となっており、先行きが不透明である。 いずれにしても、ロシアの主力ガス産地は西シベリアのヤマロ・ネネツ自治管区であり、そこからアジア方向へのパイプラインを新規建設しない限り、ロシア産天然ガスの本格的な東方シフトは不可能だ。ロシアはヤマロ・ネネツから中国に至る「シベリアの力2」という新パイプラインを検討中で、年間500億立法メートルの輸送能力を予定している。 ただ、本件は経由国となるモンゴルとは合意済みだが、肝心の中国はまだ最終的なゴーサインを出していない。おそらくロシアとしては、22年9月にウラジオストクで開催した「東方経済フォーラム」でシベリアの力2合意をぶち上げ、「ロシアは欧州ガス市場なしでもやっていける」とアピールしたかったのではないか。しかし、出席した中国共産党ナンバー3の栗戦書全国人民代表大会常務委員長は、本件につき明言を避けた。 ●ロシアが息を吹き返す唯一のシナリオは…… 22年12月30日にプーチン大統領と習近平国家主席のリモート首脳会談があった。その席でプーチンは、22年の露中貿易は25%ほど伸びており、このペースで行けば24年までに往復2000億ドルの貿易額を達成するという目標を前倒しで実現できそうだと、手応えを口にした。 しかし、上で見たとおり、22年の露中貿易の拡大は、国際石油価格が高騰する中で、中国が割安になったロシア産原油を積極的に買い増したという要因にほぼ尽きると言っていい。シベリアの力2をめぐる駆け引きに見るように、中国はプーチン・ロシアに救いの手を差し伸べているわけではなく、経済協力を進めるにしても、自国にとっての利益を最優先している。 このように頼みの中国が積極的に支えてくれないとなると、筆者が以前のコラム「プーチンによる侵略戦争はいつ終わるのか」、「2023年ロシア経済を待ち受ける残酷物語」で論じたように、ロシア経済が中長期的に衰退に向かうことは、やはり不可避であろう。 ただし、一部で警鐘が鳴らされているとおり、もしも近いうちに中国が台湾に軍事侵攻するような事態となれば、話はまったく違ってくる。その場合、中国はロシアとのより強固な同盟関係を構築するはずなので、経済面で相互補完性の強い中露が支え合って、ロシアが息を吹き返す可能性が出てくる。 |
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●プーチン大統領「ウクライナ侵攻設計者」再び呼んだ…彼が最初にしたこと 2/6
「ウクライナ侵攻の設計者が帰ってきた。すなわち大攻勢が始まる恐れがある」。 ロシア軍の最高指揮官であるゲラシモフ参謀総長が先月11日にウクライナ戦総司令官に任命されると外信は一斉にこのように報道した。ゲラシモフ参謀総長は昨年2月24日にロシア軍が南部、北部、東部の3面から攻め込む全面戦争を画策した張本人だ。 彼をはじめとするロシア首脳部は2日でウクライナを掌握できると豪語した。だがロシア軍が最低の成績を繰り返し戦争は1年近く続いている。それにより戦争を設計したゲラシモフ参謀総長解任説が飛び交った。ロシア政府は明言しなかったが、彼に向けられたプーチン大統領の強力な信頼は落ちたものと観測された。そんな彼が約10カ月ぶりに前面に再登場した。 これに対しプーチン大統領がゲラシモフ参謀総長を後押しするとの分析が支配的だとニューヨーク・タイムズが伝えた。これに先立ち最近までプーチン大統領はロシアの民間軍事会社ワグネルグループの傭兵部隊を率いるエフゲニー・プリゴジン氏、悪名高いチェチェン共和国部隊を指揮するラムザン・カディロフ氏らなど非政府要人を頼った。 ところが彼らが囚人まで動員して人海戦術を展開するのにもウクライナ東部でこれといった成果が出ず、プーチン大統領はゲラシモフ参謀総長を再び選択した。ロシア安保専門家のマーク・ガレオッティは「いまやロシアのすべてはゲラシモフ参謀総長にかかっている。彼は『毒入りの聖杯』をあおった」と評した。 ●「頭からつま先まで軍人」…ウクライナでも尊敬 ゲラシモフ参謀総長と会った人たちは彼を無愛想でいかつい人物と描写し、天生の軍人だと表現する。ロシアのショイグ国防相は彼を「頭からつま先まで軍人」と話した。ゲラシモフ氏は1955年にロシア連邦所属のタタール共和国の首都カザンで生まれた。平凡な労働者家庭で育ったが、早くから軍人を夢見た。16歳でカザンのスボロフ軍事学校に入り2年後に優秀な成績で卒業した。その後高等戦車司令部学校(1974〜76年)を出て1977年に22歳でソ連軍に入隊した。 1991年にソ連が解体されロシア軍に編入し、その後将軍参謀軍事学校(1995〜97年)を出てモスクワ軍区副司令官を務め出世の道が開かれた。1999年の第2次チェチェン戦争に参戦して活躍し2001年に司令官になった。2009年から2012年まで戦勝記念日の軍事パレードを指揮し、2012年11月に57歳で参謀総長に就任して世界2位の軍事大国を率いる最高階級になった。その後10年以上にわたりプーチン大統領のそばを守っている。 |
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●各国のウクライナ支援、15兆円超 米独の戦車供与にロシア反発 2/6
ロシアの侵攻が続くウクライナに対し、西側諸国は相次いで支援を表明した。キール世界経済研究所(ドイツ)のまとめでは、これまでの支援表明額(2022年11月20日時点)は、軍事支援・人道支援・財政支援の3分野を合わせて少なくとも計1080億ユーロ(約15兆3000億円)に上る。 国別では、米国が479億ユーロで、全体の4割強を占める。このうち軍事支援が229億ユーロで最も多く、財政支援151億ユーロ、人道支援99億ユーロと続く。米国はこれまで、高機動ロケット砲システム(HIMARS)や耐地雷装甲車「マックスプロ」など多くの武器を供与し、ウクライナ軍への使用訓練も実施して戦局に影響を与えてきた。地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」や主力戦車「M1エーブラムス」の供与も表明し、引き続き軍事支援をリードしていく姿勢を示している。 欧州各国の軍事支援は英国が41・3億ユーロ、ドイツ23・4億ユーロ、ポーランド18・2億ユーロ――など。ドイツは1月、欧州で広く保有されている自国製主力戦車「レオパルト2」を供与すると表明した。ポーランドなどの保有国もこの戦車を供与する方針で、ロシアは猛反発している。 |
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●ウクライナ国防相「ロシア軍が2月中に大規模攻撃の可能性」 2/6
ウクライナのレズニコフ国防相は5日、記者会見で、同国への侵攻を続けるロシア軍が2月中に大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性があるとの見方を示した。ロイター通信が伝えた。 レズニコフ氏によると、大規模攻撃は、露軍が完全制圧を目指す東部ドンバス地方(ドネツク、ルガンスク両州一帯)か、2014年に一方的に併合した南部クリミア半島の周辺で始まるとみられるという。ただ、レズニコフ氏は、露軍の装備や物資は十分に整っていないと分析し、「我々は攻撃を食い止めることができる」と主張した。 一方、英国防省は5日、露軍が激戦地となっているドネツク州の戦略的要衝バフムトの包囲を徐々に強めているとする戦況分析を発表。ウクライナ軍はなお複数の補給路を確保しているものの、「バフムトは孤立を深めている」と指摘した。 |
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●世界はウクライナを見捨てはじめた。隠せない「綻び」と支援疲れの現実 2/6
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、一気に崩れてしまった国際社会の均衡。世界はこの先、どちらに向かって進むのが正答で、そのために私たちはどのような行動を取るべきなのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、現在我々が直面している問題を改めて整理し各々について解説。その上で、今後各国が遵守していく新ルールと秩序の「あるべき姿」について考察しています。 ●綻びが進む国際秩序‐ウクライナ戦争の泥沼化と世界の不安定化 「ロシア政府内でもプーチン大統領の方針とロシア軍の体たらくに対する非難が顕在化してきた」と報じる欧米メディア。 「ロシアからの攻撃は相変わらず衰えることを知らないが、ドローン兵器による攻撃などは悉く撃ち落とした」と主張を繰り返すウクライナ政府。 「プーチン大統領によるウクライナ侵攻は世界にショックを与えたが、ロシアは結果的に失敗することになる」という論評。 「この戦争は長期化の様相を呈してきた。両リーダーが和平に向けた動きを取っている兆しは見られない。ロシアの企てが通用しないことを示すために、NATOはさらなる軍事支援をウクライナに提供する」という来日中のストルテンベルグNATO事務局長の言葉。 ウクライナでの戦争(ロシアによるウクライナ侵攻)の現状および見通しについて、いろいろな発言がありますが、皆さんはこれらの発言をどれだけ信用しているでしょうか? 「IT技術が発展し、まさに事が起こると同時に動画で世界に配信できるようになった今、情報をでっちあげることはできないだろう」というご指摘を今でも耳にすることが多々ありますが、実際には“今でも”戦時に提供される“当事者”からの情報の多くは、大本営発表的な性格のものであり、自身が優位に立っているようなイメージを創り出すか、さらなる支援を得るための材料として負の部分が強調され、cry for help的な形式で使われており、実情は伝えていないと言えます。 ロシア軍は思いのほか、ウクライナ軍に押し返されていて苦戦していますが、武器弾薬の量、動員できる兵士の数、そして戦略的な武器の種類と攻撃能力においてはまだまだ余力を残している上に、イランや中国などからの支援も受けていて、まだまだ戦闘執行能力は高いと言われています。 欧米諸国・NATOからの軍事支援が予定通りにウクライナに供与されているという前提でいうと、ウクライナの戦力は質が量を上回る傾向になってきていますが、それが本格的に作動して、ロシアを苦しめると予想されるのは、まだ数か月先のことです。もし、予定通りに、約束通りに供与されるのならば。 ロシア軍によるウクライナの民間施設・生活インフラ、そして補給路に対する集中的な攻撃は、ウクライナ国民の生存を脅かし、確実に戦意を削ごうとする戦略が見え、それによってリーダーシップへの反感を煽るように仕向けられています。 攻撃は確実にウクライナの力を削いでいますが、ウクライナ軍による反転攻勢はウクライナ国民と政府に勇気を与えているため、まだゼレンスキー大統領とその周辺への反感は高まってはいないようです。 このような状況下で見えてくるのは、ロシアもウクライナも多大な犠牲を払いながらも、まだ自分たちは負けてはおらず、和平プロセスについて話し合う段階ではないという思惑です。 プーチン大統領も、ゼレンスキー大統領も、和平について口にするものの、常に強調されるのは「私が出した条件に沿う内容であれば」というBig Ifであるため、実際には「話し合うことはない」というメッセージになってしまいます。 つまり戦争はまだまだ続くという見込みが立ってしまいます。 戦争の長期化は確実に支援疲れを起こし、戦争への非当事者による関心の薄れが顕著になり、各国民の関心事は「自分の生活の改善」といった内政に向き始めることで、ウクライナを世界が見捨てざるを得ない状況を作ってしまうかもしれません。 それを引き留めるためにストルテンベルグ事務局長の発言のように欧米による支援の強化と維持が必要という内容が繰り返されるのでしょう。 しかし、今月24日には開戦から1年を迎えることになってしまう“ロシアによるウクライナへの侵攻”は、確実に国際秩序を変えてしまい、国際協調の下に成り立っていた世界は崩壊したと言えます。 それは「領土の不可侵」、「法の支配」、「航行の自由」、「自由貿易」、そして「恐怖からの自由」といった国際社会が長年にわたり相互に遵守し、尊重してきた国際ルールを踏みにじり、代わりに世界の分断と混乱を鮮明化し、相互不信を高めたと考えます。 シリアでの内戦は継続していますし、イエメンも泥沼の内戦状態です。これらの内戦に対する国際社会の関心は薄れ、調停努力も進んでいません。 さらにはミャンマー国軍によるクーデターで、民主化の試みが砕かれたと思われるミャンマーも、クーデターから2年経った今も、国軍はまだ人心を掌握できておらず、民主派グループの武装勢力(PDF)による反転攻勢に直面して、各地で戦闘が繰り返されて治安状態は悪化の一途を辿っています。 結果として国民には強いAnti国軍感情が生まれ、経済活動もままならない中、欧米諸国の企業が早々と撤退した中、我慢強く操業を続けてきた日系の企業もついに撤退を決断しなくてはならない事態になっています。 そしてミャンマー国軍にとって重要な後ろ盾だったロシアは今、ウクライナでの戦争に忙殺されており、ミャンマーへのコミットメントは大きく低下しています。中国については、“隣国”という地政学的な位置づけもあり、ミャンマーの安定は大事なマターではあるものの、その安定の担い手は誰でもよく、あまり国際社会からの風当たりを強くしたくない習近平指導部は、あまり露骨なコミットメントを控えるようになってきています。 結果として経済は低迷し、雇用も失われる中、ミャンマーは再び忘れられた国となってしまい、困窮を極めるという悲劇を生んでいます。 UNによる調停も不発ですし、ASEANからも見捨てられた感が強い中、ミャンマーは行き先を失っているように見えます。 こじつけかもしれませんが、ロシアによるウクライナ侵攻が生んだ国際分断の被害者と言えるかもしれません。 以前、このコーナーでも取り上げたエチオピアにおけるティグレイ紛争も、最近はあまり報じられなくなったので解決したのかと思われがちですが、実際にはまだ継続しており、首都アジスアベバはかろうじて平静を保っていると言われていますが、多民族・多宗教国家でもある性格上、ティグレイ紛争を機に、国内のintegrityにほころびが出てきています。 ロシアによるウクライナ侵攻が起きるまでは、国連安全保障理事会でも特別会合を開いて取り上げるほどの注目度でしたが、その国連安保理が真っ二つに割れて機能不全を起こしている今、エチオピアで起きている悲劇と、その影響が飛び火して不安定化してくる東アフリカの懸念にコミットする余裕がなくなっています。 そして北東アジアでは北朝鮮による威嚇がエスカレーション傾向にあり、核の脅威は高まっていると思われますが、こちらについても今、口頭での非難や懸念の表明はあっても、実質的な措置を取るための基盤が存在しない状況になっています。つまり北朝鮮のやりたい放題になりかねない事態です。 そしてイラン絡みの緊張は今、広域アジア地域に新しい戦争の火種を作っているように見えます。 以前から懸念されている核開発問題にかかる分断はもちろんですが、ウクライナでの戦争の裏で、イスラエルとイランの間の緊張がこれまでになく高まっているようです。 未確認情報ではありますが、今週、イランの複数都市の軍事施設がミサイル攻撃を受けたと伝えられましたが、規模と精度から見て恐らくイスラエル軍による攻撃と思われるようです。イスラエル政府は肯定も否定もしていないようですが、イランは確実にイスラエルへの報復攻撃を準備しているようで、そうなった場合は報復攻撃の応酬に繋がり、その戦争が一気にアラビア半島全体に飛び火することになりそうです。 このようなシナリオが実現してしまった場合、国際社会はウクライナ・ロシアと広域アジア両面で起こる戦争に対応しなくてはならず、ここに噂の台湾情勢が絡んでしまった暁には、冗談ではなく世界第3次大戦に繋がりかねません。 イラクやアフガニスタンでの大失敗を経験するまでは、旧ソ連崩壊後、唯一の超大国として世界中の治安維持に直接乗り出していたアメリカが出てくる状況だったのですが、すでに間接的にではありますが、ロシアとウクライナの戦争にどっぷりとコミットしていると同時に、アメリカ軍の直接介入を嫌う国民感情に押されて、アメリカが助けてくれる時代は終わってしまいました。 今回のウクライナでの戦争に対しても、武器弾薬の供与は行っても、アメリカ軍を派遣することはなく、NATOという枠組みの下、欧州の戦争は欧州が対応すべきと考えて動いているのと同じく、その他の地域でのいざこざも、その地域で解決すべきという姿勢に変わってしまっています。 結果、当事国が自ら解決するという枠組みが出来上がり、それが各地で起こる戦争の火種になっていると思われます。 私も参加している調停グループでも、多くの案件が持ち込まれますが、実際に調停トラックを走らせるためには当事者全員の同意が必要で、なかなか調停の実施には至りません。 国際社会の分断そして国際秩序の崩壊はすでにロシアによるウクライナ侵攻前から進行していたと思いますが、これまでの相互承認による国際ルールが踏みにじられ、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、欧米諸国とその仲間たちが実施した対ロ制裁の実施は、確実に世界の分断を決定的にしてしまいました。 しかし、国際社会の関心がロシアによるウクライナ侵攻に集まり、結果、他の火種に手が回らなくなっているという恐ろしい現状を前に各国も呆然としているだけではありません。 ウクライナでの戦争が長期化の様相を呈する中、新しい国際ルールとそれに基づく新国際秩序づくりの動きがスタートし、広がってきています。 どのような要素が加えられるのかはまだ方向性が見えませんが、一つ確実に見えてきていることは、これまでのような欧米型民主主義の押し付けは、世界の大多数の国々と地域の支持・参加を生むことは難しいということです。 アジアには一党独裁の国もあれば、王政の国もあります。同じアジアでも中東に目を向けると王族による支配と宗教思想をベースにした統治形態も存在します。アフリカでは、比較的民主主義的な統治形態は広がっていると思われますが、部族・民族ベースの統治形態もまだ根強く存在します。そしてラテンアメリカでは、ポピュリズムもあれば、左派もありますし、社会主義的な統治も存在し、必ずしも欧米型の民主主義を受け入れてはいません。 このような多種多様な統治形態と思想を持つ国々が署名して参加できるようなルール作りとそれに基づく新国際秩序づくりは大きな混乱が予想されますし、激論が交わされることは容易に予想され、その道のりは難航が予見できますが、これまでのルールが踏みにじられ、秩序が崩壊する状況に直面する今、早急に議論・協議を始める必要があるという認識では、多くの国々が一致しています。 具体的な参加国についてはあまり触れないようにしますが、個人的に嬉しいニュースとしては珍しく日本がそこにスタートから参加し、かつ主導的な役割を果たそうとしているということでしょう。 私的には、これはこれまで携わってきた紛争調停グループの拡大版と位置付けており、多くのメンバーも参加していますが、今、議論を急ぐ中、結論を急ぐのは、「誰(どの機関)が音頭を取るのか?」そして「どこで行うのか?」、さらには「いつまでにそれなりの方向性を示すのか」という要素です。 国際社会における主体・アクターが、旧来からの国家・政府はもちろん、市民セクターなど非政府組織にも広がってきていることを踏まえると、どこかの国が主導するのは難しいかと思いますが、数か国で(またはマルチセクターの代表たちで)まとめ役を務めるのは可能かと思います。 その場合、私個人としてはUN(国連)が話し合いの場を提供すべきではないかと考えています。 今回のウクライナ問題への対応のまずさから、すでに権威も存在意義も失墜していますが、場の提供には適していると思われます。 私はグティエレス事務総長を個人的に敬愛していますが、ロシアによるウクライナ侵攻の際には遅きに失した対応しかできず、その影響力と威光は地に落ちました。昨年には再任され、あと5年の任期を与えられましたが、個人的には再任に臨むべきではなかったのと考えています。それはまた別の機会にお話ししたいと思いますが、国連が場を提供する際、大事なのは、国連事務総長をはじめとするUNオフィシャルが決して前面に出ないことです。 各国や非政府系のアクターの意見集約に奔走し、整理し、議論を進める手助けをするという裏方に徹することが出来るかがカギです。 安保理や総会という常設の古い枠組みではなく、あくまでもアドホックな場・箱(特別委員会やタスクフォースなども一案)を用意して、できるだけフラットな環境での議論が必要だと考えます。 もし、このような試みを通して、大枠でも新しい国際ルールの形を示し、それに基づく国際新秩序のイメージを作り上げることが出来れば、恐らくそのタイミングでロシアとウクライナの戦争に対する調停および和平協議が実施できる素地が整うのではないかと感じています。 もうすでに見えてしまったように、従来の国際ルールは崩壊し、国際秩序も崩壊したため、旧来の考えに基づいた紛争の解決は、世界を二分・三分することになったロシアとウクライナの戦争に対しては不向きです。 大国間の代理戦争の様相を示す地域戦争も、内戦も、そして、世界を終焉させかねない大国間の直接対決も、この際古い国際秩序の悪しき例として葬り去り、代わりに国々がそれぞれの違いを超えて協力し、遵守していく新ルールと秩序が今、必要になってきているのではないでしょうか? ここ数週間ほどですが、この世界的な取り組みに関わることが出来て、とても光栄ですし、非常に刺激を受けていますが、その裏側で日々多くの犠牲が生まれ、罪なき一般市民の安寧が奪われているという悲しい現実に衝撃を受け、一日も早い解決を手助けしたいと考えています。 |
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●東部ハルキウにミサイル着弾 “ロシア軍が2月に大規模攻撃か” 2/6
ロシア軍は東部ドネツク州のウクライナ側の拠点の掌握に向け激しい攻撃を続けています。ウクライナのレズニコフ国防相はロシア軍が2月、大規模な攻撃を仕掛けてくるという見通しを示したうえで徹底抗戦する姿勢を強調しました。 ロシア軍が侵攻するウクライナでは東部のハルキウで5日、市内中心部に2発のミサイルが撃ち込まれ、このうち1発は集合住宅の近くに着弾しました。 ハルキウ州のシネグボフ知事によりますと、集合住宅では複数のけが人が出ているということです。 さらにロシア軍は東部ドネツク州のウクライナ側の拠点の1つバフムトの掌握に向けて激しい戦闘を続けています。 アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は4日、ロシア軍が東部ルハンシク州の州内西部とドネツク州のバフムトで決定的な攻撃を行うため、部隊や兵器を集中させていると指摘しました。 こうした中、ウクライナのレズニコフ国防相は5日、記者会見を開き「2月にロシアが攻撃を仕掛けてくる可能性がある。象徴的な理由からで軍事的には論理的ではなく、ロシアも準備ができているわけではない。それでも彼らは来るだろう」と述べ、侵攻から1年となる今月に合わせロシア軍が大規模な攻撃を行うという見通しを示しました。 そのうえで「欧米側の兵器がすべて間に合うとは限らない。しかしわれわれは準備ができている」と述べ、徹底抗戦する構えを強調しました。 |
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●プーチン氏、地震被害のトルコとシリアに支援申し出 2/6
ロシア大統領府によるとウラジーミル・プーチン大統領は6日、同日早朝発生したマグニチュード(M)7.8の地震で壊滅的な被害を受けたトルコとシリアに対し、支援を申し出た。この地震ではこれまでに両国で計1400人以上の死者が報告されている。 プーチン氏は、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領とシリアのバッシャール・アサド大統領にそれぞれメッセージを送り、犠牲者への哀悼の意を表するとともに、「必要な支援を提供する用意がある」と述べた。 またロシア国防省も、セルゲイ・ショイグ国防相がトルコのフルシ・アカル国防相に電話で弔意と支援提供の意思を伝えたと発表。「医療支援を含め、軍部を通じて必要なあらゆる支援の提供を申し出た」と述べた。 |
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●中国がロシアに軍事援助、「ウクライナ侵攻を支援」との見方 2/6
中国の気球が米国本土の上空を飛行していた問題や、その後のブリンケン国務長官の北京訪問の中止など、米中間の緊張が高まる中、中国は米国主導の制裁措置に反してロシアに軍事援助を行っていることを、2月4日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。 WSJが入手したロシアの税関記録によると、中国の国営軍事企業は、ロシアにナビゲーション機器や戦闘機の部品などの軍事装備を発送している。 今回のニュースは、中国の馬朝旭外務次官が先週ロシアのラブロフ外相と会談し、中国の当局者が「ロシアとの相互の政治的信頼を強化した」と発言した翌日に明るみに出たとロイターは報じている。さらに、ブリンケン国務長官が、モンタナ州上空に中国のスパイ気球が浮かんでいるとの米当局の報告を受け、予定していた中国訪問を突然中止したタイミングとも重なった。 米当局は先週、対ロシア制裁を拒否しているアラブ首長国連邦とトルコに対しても、ロシアへの輸出を抑制するよう迫ったと複数のメディアが情報筋の話として報じた。両国から輸出された物資は、ロシア軍がウクライナへの侵攻を進めるために使用される可能性があるという。 ここ数カ月、ウクライナ軍は東部および南部のロシアによる占領地域を奪還したが、ロシアはウクライナの主要都市へのミサイル攻撃を続けている。米国当局は、気候が暖かくなるにつれてロシアの攻勢が勢いを増す可能性があることを警告し、米国は新型戦車エイブラムスを、ドイツはレオパルト2の供与を決定した。一方、バイデン大統領は、中国がロシア軍を支援していることを示唆する証拠を米当局が発見したと報じられた後、中国企業がロシアに軍事装備を供給することに懸念を表明したと1月24日のブルームバーグは報じていた。 プーチン大統領は2022年9月、ウズベキスタンで中国の習近平国家主席と会談し、ロシアのウクライナ侵攻について中国が「疑問と懸念」を抱いていることを認めていた。中国は、西側諸国がロシアのエネルギーを締め出す動きを見せているにもかかわらず、ロシアからの石油の輸入を増やしており、昨年2月のウクライナ侵攻の開始前にはロシアとの「無限大の信頼関係」を宣言していた。 |
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●ワグネル創設者プリゴジン、バフムトでの苦戦を認める 2/6
ロシアの民間軍事会社ワグネルを率いるエフゲニー・プリゴジンは2月5日、激戦が続くウクライナ東部の要衝バフムトの戦況について、ウクライナ軍を退却させるに至っていないことを認めた。ウクライナ軍は撤退も近いと言われたが、それは嘘だったのだろうか。 「状況を明確にしたい。ウクライナ軍はどこからも撤退はしていない。ウクライナ軍は最後の最後まで戦い続けている。アルチョモフスク(バフムトのこと)の北部ではすべての街路、すべての住宅、すべての吹き抜け階段で、激しい戦闘が行われている」と、プリゴジンはテレグラムに投稿した。「もちろん、メディアがウクライナ軍の撤退を期待するのはありがたいが、北部でも南部でも東部でも(撤退は)起きていない」 バフムトは数カ月間にわたってロシア軍の集中攻撃の対象となり、無数の砲撃にさらされてきた。バフムトの制圧を目指すロシア軍は、今年に入り同じドネツク州の小さな町ソレダルを奪取し、さらに前進していると伝えられるが、勝利宣言するには至っていない。 米シンクタンクの戦争研究所が5日に発表したレポートによると、ロシア部隊は「バフムトとブフレダルの周辺では攻勢を続けているが、ドネツク市西郊における攻撃のペースは落ちている」という。 ●包囲されても戦う理由 またレポートは「ロシア軍の正規部隊、予備役、ワグネルを合わせ、バフムトの制圧に向けて(合わせて)数万人規模の部隊が投入されているが、すでにかなりの人的被害が出ている」としている。 米シンクタンク、ディフェンス・プライオリティ―ズで大規模戦略プログラムのディレクターを務めるラジャン・メノンは5日、本誌にこう語った。「ワグネルとロシア正規軍の合同部隊は何カ月にもわたってバフムトとソレダルを攻略しようとしてきたが、人数と火器、特に砲撃力に勝っているにも関わらず、最近になってようやくソレダルを制圧できたに過ぎない」 「世界第2の超大国と呼ばれてきた国としてはいい成績とは言いがたい。特にワグネルは大きな人的被害を出している。中でもプリゴジンが恩赦を約束して戦いに駆り出した不運な元受刑者たちの犠牲が大きい」 「目下、ロシア軍はバフムトを3方向から包囲しているように見える。ならばなぜウクライナ軍はここまで踏ん張っているのか。ウクライナ軍の狙いは、この戦いをできるだけロシア軍にとって犠牲の多いものにすることと、(敵の)部隊を足止めしてよそで使えないようにするなり、ドンバスの西側のウクライナ支配地域まで追いやることだ。血みどろの戦いだが、ウクライナ軍の士気を高めるとともに、ロシア軍の軍事的能力の低下につながっている」 |
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●ウクライナには戦闘機Su-27があと何機残っているか 2/6
ウクライナはここ数週間でようやく同盟国に北大西洋条約機構(NATO)スタイルの戦車を提供するよう説得した。戦車は同国に向かいつつあり、ウクライナは次に最も必要としているものに目を向けている。それは新しい戦闘機だ。 ウクライナ当局者らは米国や欧州が所有する余剰の戦闘機F16、あるいはフランス製の戦闘機ミラージュさえ求めている。その要求にどれほどの緊急性があるのか、問う価値はある。 ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻して以来11カ月間に、ウクライナの戦闘機や攻撃機が52機以上破壊されたことが外部のアナリストによって確認されている。しかし、開戦時にウクライナ軍は何機の戦術戦闘機を持っていたのか。また、損失を補填するために飛べない機体を何機修理したのだろうか。 ウクライナの当局以外は誰も正確なことは知らないが、推測は可能だ。しかしSu-27は特に把握が難しい。 ウクライナ空軍は、ロシアの侵攻時に戦闘機MiG-29を50機ほど保有していたとみられる。この軽量の超音速戦闘機のうち少なくとも16機は大破したが、ひとまずのところ失ったものと同数のMiGを修理したか、外国から入手したようだ。 ウクライナ空軍は1年前、超音速爆撃機と偵察機であるSu-24を24機ほど保有していた。ロシア軍は少なくとも13機のウクライナ軍のSu-24を破壊したが、おそらく古いSu-24が非常に多く保管されており、ウクライナの技術者は失った分を補充することに何の問題もなかった。 戦前、ウクライナが所有するSu-25は約30機だった。2022年2月以降に失ったのは15機。NATO加盟国は自国が所有する亜音速のSu-25を計18機供与した。これは戦闘での損失を補って余りある。 ウクライナ軍は、ロシア軍の攻撃前にMiG-29、Su-24、Su-25を計約105機保有していたようだ。それから1年、これらの機種はまだ105機ほどある。 つまり、主要な戦闘機は超音速で飛び、迎撃能力があるSu-27のみとなる。これらの数を把握するのは最も困難だが、それはもっともだ。高速で機動性に優れ、適応性のあるSu-27はウクライナで最も有用な戦闘機かもしれない。 ロシア機のパトロールを行い、かなりのリスクをともなう爆撃を行い、ロシア軍の防空に向けて米国製の対レーダーミサイルを発射することさえある。 ロシアはSu-27を破壊したい。ウクライナは維持したい。ウクライナの同盟国はSu-27を所有していないため、この戦闘機の1機、1機が非常に貴重なものとなっている。代替機の明確な外部供給源はない。 ウクライナ空軍が戦前にSu-27を何機保有していたかは、よく議論される問題だ。1991年にソビエト連邦が崩壊したとき、ウクライナは当時新品だったSu-27を74機受け継いだ。その23年後に現役で活躍していたのはわずか24機だった。 2014年にロシアがウクライナのクリミア半島に侵攻したことが、ウクライナ政府にSu-27の数を拡大させる動機となった。36機もの飛行不可能な機体が保管されていた可能性がある。そして少なくとも1人のアナリストは2016年までに、確認可能な「ボート」番号が機首に記されたウクライナのSu-27を57機数えた。 もし57機すべてが飛行可能であれば、ウクライナがすべての機体を復元したことになるかもしれない。 ウクライナ空軍は過去11カ月間に少なくとも7機のSu-27と少なくとも5人のパイロットを失った。最初の喪失の1つは、ウクライナの人々にとって最も悲劇的なものだった。 2月25日、キーウ上空をパトロールしていたSu-27が爆発した。ロシア軍が長距離地対空ミサイルで撃墜した可能性がある。また、ウクライナの防空部隊がロシア機と間違えた可能性もある。 いずれにせよ、航空ショーで有名なパイロット、オレクサンドル・オクサンチェンコ大佐はこの撃墜で死亡した。もしオクサンチェンコがいつものSu-27に搭乗していたら、ウクライナはほぼ間違いなく最も有名な彼の機体も失ったことになる。 ウクライナ軍は理論上50機のSu-27を保有しているが、その数を確認するのはますます難しくなっている。番号と迷彩柄の組み合わせは特定のSu-27を識別する最も簡単な方法だが、空軍はそのことを知っており、ボート番号を塗りつぶし始めた。 現在でも時折、特にSu-27、そして23や24といった有名な戦闘機を正面からとらえた公式写真やスマートフォンの動画を見つけることができる。 24のパイロットは訓練飛行で低空飛行し、道路標識をすくい上げたことがある。23のパイロットは現在展開されている戦争の初日、哨戒中にロシア軍のミサイル集中砲火で滑走路が損傷したため、やむなくルーマニアに想定外の着陸をした。 ウクライナのSu-27を正確に数えることは不可能だ。もしウクライナが最大限の努力をしていたら、この強力な戦闘機のうち50機がまだ飛行可能な状態にある可能性がある。 しかし、ウクライナが失ったSu-27はすべて代替できないSu-27だ。そのため、新しい戦闘機がウクライナにとって調達を最も優先すべき武器となっているのだろう。結局のところ、戦争がすぐに終わると信じるに足る根拠はない。 |
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●北からの奇襲に備える守備隊 ウクライナ国境は警戒態勢 2/6
ベラルーシ国境、ウクライナ、2月6日 (AP) ― ベラルーシとの国境に沿って広がる樹林帯の奥深くに隠れた陣地から、ウクライナ軍は1日に数回偵察用のドローンを飛ばして、空と陸を偵察、隣国領内のロシア軍の動きを逐一監視している。 ほぼ1年前、首都キーウ陥落を狙った北方からの侵攻は失敗に終わったが、ロシア軍の奇襲を想定して、ウクライナ軍は湿地と森林に囲まれた約1000キロの国境地帯の情報収集を怠っておらず、油断はない。 昨年夏以降、ウクライナ軍は北方からのロシア軍の春季攻勢を予測して、森林地帯の防御陣地を補強、塹壕を構築と拡張、地雷の敷設などを進めてきた。 西側の軍事専門家や情報筋は、ロシア軍による北からの新たな奇襲攻撃はないと見ているようだ。現に英国防省は1月11日、ベラルーシ領内で演習を実施しているロシア軍航空機と陸上部隊が、「信頼できる攻撃部隊を構成する可能性は低い」とツイートした。 現地報道によると、ベラルーシ当局は国境沿いの部隊配備を「戦略的抑止力」と見ており、航空偵察、国境の共同パトロール、物資の搬入などの合同演習は2月1日で終了した。 また、同国のルカシェンコ大統領は、昨年はベラルーシ領内からのロシア軍の侵攻を許可したが、自国の兵士をウクライナに派遣することはないと主張している。 これに対してウクライナ当局は、モスクワが今後数カ月間にどんな手を打ってくるか誰にも分からないとして、国境地帯での警戒態勢を緩めてはいない。 そのため、これからも国境を挟んだ両側でドローンのゲームが続くことになりそうだ。 |
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●レオパルト2戦車供与は長期戦覚悟の証拠 2/6
米国とドイツなど欧州諸国が戦車をウクライナに供与することを決め、米欧の対ウクライナ軍事支援は新しい段階を迎えた。長期戦を見据えた決定であり、戦争は何年も続くかもしれない。 昨年2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻して以来、米欧諸国は段階を踏んでウクライナに軍事支援を供与してきた。対戦車ミサイルのジャベリン、携帯式防空ミサイルのスティンガー、そしてハイマース(M142 高機動ロケット砲システム)、地対空ミサイルのパトリオットと続き、今度は主力戦車だ。 残るは戦闘機と長距離ミサイルのATACMS(エイタクムス)。戦争のエスカレーションを懸念して控えてきたのだが、戦闘機については舞台裏で協議が進んでいるともいう。今後も新たな軍事援助の供与とロシアの反発が繰り返されるのだろう。 ドイツ政府は25日、同国が誇るレオパルト2 / Leopard 2*戦車をウクライナに供与することを決めた。とりあえず14両を供与する。ポーランドなどすでにレオパルト2を保有している国がウクライナにそれらを供与することも承認した。ドイツほかの欧州諸国から届けられるレオパルト2は約80両になると現時点で見積もられている。 ドイツ製のレオパルト2は1979年に実戦配備され、これまでに4つの型式が製造されている。細かな仕様の説明は各紙に任せるとして、射撃能力、機動性、防御性に優れ、使い勝手がよく、軍事の世界で高く評価されている。欧州諸国やカナダなど19カ国で3500両以上が配備されていると言われる。 この戦車をドイツのほか、ポーランド、スペイン、ノルウェー、オランダ、フィンランドなどが手持ちの中から供与する見通し。 別途、英国は今月、自前のチャレンジャー2戦車14両の供与を決定、フランスも主力戦車のレクレールの供与を検討している。 一方、ジョー・バイデン米大統領はドイツの新方針発表と同じ25日に最新鋭のM1エイブラムズ戦車31両をウクライナに送ると発表した。 こうして米欧が主力戦車の供与で足並みをそろえた。 ドイツのオラフ・ショルツ首相は従来、ウクライナからレオパルト2供与の強い要請を受け、ポーランドなどからも供与するようにとの強い圧力に晒されながらも慎重だった。 戦争のエスカレーションを招くのではないかと懸念、さらにドイツの軍事援助が突出するとの印象を国内に与えたくなかったようだ。 ショルツ首相は今回の決断に際して米国と緊密に協議、米国が最新鋭のエイブラムズ戦車の供与に踏み切ることを条件にしていたと伝えられている。 バイデン政権はつい先週までエイブラムズ戦車の供与を強く渋っていた。あまりにハイテク過ぎて保守修理が難しく、操作技術の習得に時間がかかる。燃費効率が悪く、燃料の補給が簡単ではないといった理由を挙げていた。 このため、米独間では厳しいやり取りがあったが、バイデン大統領はNATOの結束を重視し、エイブラムズの供与を受け入れたという。 戦争のエスカレーションの危険、つまりロシア軍が首都キーウの官庁街を狙うとか、ウクライナの隣国ポーランド内の戦車の輸送基地を攻撃する可能性、さらには戦場核の使用といったエスカレーションの可能性については、米国とドイツの首脳は高くないと判断したのであろう。 ドミトリー・ペスコフ・ロシア大統領報道官は25日、米独はそれら戦車の能力を技術的に過大評価していると一蹴した。ロシアの戦力に自信があり、戦車の供与をあまり重大視していないようでもある。 米欧の優秀な戦車の投入は戦局を大きく変えるのか、変えないのか、西側の軍事専門家はどうみているのか。彼らも控え目のようだ。 レオパルト2やエイブラムズがウクライナ軍の戦力を高めることは間違いない。だが、問題はどの程度かだ。それはまず、いつ、どのくらいの数の戦車をウクライナ軍が駆使できるかにかかっている。 レオパルト2は操縦しやすいと言っても、訓練には数週間、場合によっては数カ月かかる。ドイツ国防省によると、6週間をめどに直ちに訓練を始め、第1四半期の終わり、つまり3月末までにはウクライナに引き渡すという。ただし、それは14両にとどまる。 ほかの欧州諸国の戦車がいつ、どのような形でウクライナに届くのかは現時点では明確ではない。計約80両のレオパルト2がウクライナに実戦配備されるまでには、長い時間を要するのだろう。 米国のエイブラムズ戦車に至っては、訓練時間や兵站の整備などを考慮すると、実際に引き渡せるのは1年後だという見方もある。 それに戦車もほかの重兵器同様、本体を運び込めば、継続的に使い続けられるわけではなく、保守修理、燃料補給などの体制の構築が重要だ。レオパルト2はそうした課題を比較的克服しやすいというが、予想されているロシア軍の春の攻勢に間に合うのかどうか。ロシア軍は戦車の配備が本格化する前にウクライナ軍を叩いておこうとするかもしれない。 多くの軍事専門家は、戦車だけで戦局が大きく変わることはないだろうとの見解を取る。 NATOの欧州連合軍最高司令官のクリストファー・カボリ陸軍大将は、すべての兵器システムのバランスが取れていて初めて戦車も機能を発揮できると指摘する。つまり戦車とほかの火砲、歩兵戦闘車両、対空システムを組み合わせる必要がある。 米軍退役将校で現在CSIS(国際戦略研究所、ワシントンDC)研究員のマーク・カンシアンは、ウクライナが得られる戦車の数が限られるだろうことも考えて、戦車だけでロシア軍に苦戦を強いることは難しいとみる。 それに戦車は万能の兵器ではなく、空からの攻撃を受けやすいし、対戦車歩兵部隊の攻撃も受ける。 ウクライナ戦争は昨年2月24日のロシア軍の侵攻開始以来、紆余曲折の末、現在はドンバス地方の西側でほぼ膠着状態にある。ウクライナ軍は戦車の投入で前線を東に押し戻したいと考えている。米欧はその作戦を主力戦車の投入で後押しすることにした。長期戦を考えていることは間違いない。 ウラジーミル・プーチン大統領は、これまでNATO諸国が軍事支援を追加するたびに、この戦争はウクライナを舞台にしたNATOとの戦争だとの認識を明らかにしてきた。これはロシアがNATO諸国を攻撃することもあり得るという警告だろう。昨年10月27日、内外のロシア研究者や国際政治学者が参加したフォーラム「バルダイ討論クラブ」での発言がその例だ。 似たような発言は他の高官からも聞こえてくる。 セルゲイ・ラブロフ外相は今月23日、訪問先の南アフリカ共和国で、ロシアと西側諸国の対立は「ほとんど真の」紛争になったと述べた。 NATO諸国ではNATOの兵士がウクライナ戦争に直接参戦していないから、ロシアがNATO諸国を直接攻撃することはないと思われているかもしれない。しかし、ロシアの認識は異なるようでもある。戦争がエスカレートする可能性が徐々に高まる中で、和平は無理にしても停戦をめざした接触くらいは持ってほしいと思う。 |
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●ロシア、シリアとトルコに救助隊派遣 地震受けプーチン氏が電話会談 2/7
ロシア大統領府は6日、トルコ南東部のシリア国境付近で発生した大規模地震への対応支援に向け、シリアとトルコ両国に救助隊を派遣すると発表した。 ロシアのプーチン大統領はシリアのアサド大統領、およびトルコのエルドアンと電話会談を実施し、両国に対し救助隊の派遣を申し出た。ロシア大統領府によると、両国はプーチン氏の申し出を受け入れた。 ロシアはシリアにタルトス海軍基地などの軍事施設を設置しているが、ロシア国防省によると地震の被害は受けていない。 また、ロシアの国営原子力会社ロスアトムによると、ロシアがトルコ南部で建設中のアックユ原子力発電所にも地震の被害は出ていない。 |
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●ロシア、トルコとシリアに救援の意向 大規模地震で軍輸送機を準備 2/7
ロシアのプーチン大統領は6日、大規模な地震に見舞われたトルコのエルドアン、シリアのアサドの両大統領と相次いで電話で協議し、必要に応じてロシアの救援チームを両国に派遣する意向を伝えた。欧米諸国と対立するロシアはトルコと多方面で協力関係を深めているほか、内戦が続くシリアには2015年から軍事介入し、アサド政権を全面支援している。 ロシア大統領府によると、プーチン氏はエルドアン、アサド両氏に対し、地震で生じた人的、物的被害を見舞う言葉を伝えた。ロシアメディアは、ロシアが両国での救援活動に向け、軍の輸送機イリューシン76を飛行させる準備を整えていると報じた。 ロシアはシリア西部のタルタスに海軍基地、フメイミムに空軍基地を持つが、これまで地震による被害は伝えられていない。タス通信によると、ロシアのショイグ国防相は6日、シリアに駐留する軍に対し、救援活動に当たるように指示したという。 |
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●ロシアとウクライナ、指導者の支持率はいずれも上昇 2/7
ロシアとウクライナの指導者は、数字の上では国民から高い支持を得ている。プーチン露大統領はウクライナ侵攻後、80%前後の高い水準を維持しており、政権基盤は揺らいでいない。一方、ウクライナの世論調査結果でも、徹底抗戦を支持する姿勢が鮮明となっている。 ロシアの独立系世論調査機関レバダセンターの調査によると、プーチン氏の支持率は侵攻前の2022年1月時点では69%だったが、侵攻開始後の3月の調査では83%に上昇。9月に30万人規模の予備役を招集する部分的動員令に署名した後は77%まで下落したが、12月には81%に回復した。 一方、ウクライナの世論調査機関レイティングによると、「ウクライナはロシアに勝利する」と考える人は、22年3月時点で88%だったが、11月の調査では97%に達した。また、85%の人が、ロシアが14年に一方的に併合したクリミア半島と同年から戦闘が続く東部ドンバス地方の奪還が、この戦争の「勝利」を意味すると考えていた。ウクライナ軍は9月以降、東部ハリコフ州や南部の都市ヘルソンなどを奪還しており、戦局の好転が世論にも影響した可能性がある。別の世論調査によれば、侵攻前に40%台だったゼレンスキー大統領の支持率は6月時点で91%に上っている。 |
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●「北方領土の日」ロシア側は北方領土で愛国心高める動き 2/7
ロシアが事実上管轄する北方領土ではロシア人の島民がウクライナへの軍事侵攻を支持する活動を行っていると伝えられるなど、ロシアへの愛国心を高めようという動きがみられます。 ロシアメディアは、北方領土の島々で軍事侵攻を支持する象徴にもなっている「Z」の文字を記した車が列になって島を走る様子や島民が戦地にいるロシア軍の兵士へ支援物資を送ったとする動きを伝えています。 また、島民が軍事侵攻に兵士として参加し、死亡した事例も相次いでいるとみられ、このうち、択捉島では1月、ウクライナ東部ドネツク州の激しい戦闘が続くバフムトで島出身の兵士が死亡し、葬儀が行われたと伝えられています。 また、色丹島では去年12月にウクライナで死亡した島出身の兵士を「英雄」としてたたえるとする特別授業も学校で行われたということです。 ロシア側は軍事侵攻に関する動きを通じて北方領土においてもロシアへの愛国心を高めようとする狙いがあるものとみられます。 北方領土をめぐってはウクライナへ軍事侵攻を始めたロシアに日本が欧米と歩調を合わせるかたちで制裁を科したのに対してロシア側は反発し、去年3月には北方領土問題を含む平和条約交渉の中断を一方的に表明するなど、強硬な態度を示しています。 ●元島民らと交流重ねてきたロシア人島民は ロシアはウクライナへの軍事侵攻をめぐり制裁を科す日本に反発し、北方領土の元島民らによる「ビザなし交流」と、元島民らが故郷の集落などを訪問する「自由訪問」について、日本との間の合意を破棄したと去年9月、一方的に発表しました。 北方四島との交流事業は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2020年から中断されたままで、さらにロシア側による一方的な停止の発表で再開の見通しは立っていません。 これまで日本人の元島民などと交流を重ねてきたロシア人の島民からは日本による制裁に反発する声があった一方で、交流事業の再開などを望む声も聞かれました。 このうち、第1回目の「ビザなし交流」からおよそ30年にわたって交流に携わってきた択捉島に住むナタリア・エフトゥシェンコさんは中断している現状について「日本側が踏み込んだ制裁を発表したからロシア側もすぐに対応した」と主張しました。 ただ、今後の交流については「互いに良い関係を維持すべきで、双方とも制裁など必要ない」と話し、ウクライナへの軍事侵攻が交流事業に影響することには反対だと話しました。 また、択捉島の地元紙「赤い灯台」の編集長オリガ・キセリョワさんは交流事業は互いを知る重要な役割を果たしてきたと指摘した上で、「日本の友人たちに会えず、さみしい。『ビザなし交流』は友好的で強い結びつきであった。政治状況はかわったが、人々はかわらない」と話し、島民の中にも交流事業の再開を望む声もあると明かしました。 |
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●「北方領土の日」根室で住民大会開催へ 交流事業は中断続く 2/7
2月7日は「北方領土の日」です。北海道根室市では、3年ぶりに一般の参加者を入れて住民大会が開かれます。一方で、ロシアが事実上管轄する北方領土では、ロシア人の島民がウクライナへの軍事侵攻を支持する活動を行っていると伝えられるなど、ロシアへの愛国心を高めようという動きがみられます。 「北方領土の日」は、1855年2月7日に、北方四島を日本の領土とする条約が、日本とロシアの間で結ばれたことにちなんで定められ、北海道根室市の総合文化会館では、7日正午から、3年ぶりに一般の参加者を入れて住民大会が開かれます。 北方領土をめぐっては、ロシアが去年3月、ウクライナへの軍事侵攻に対する日本の制裁措置に反発して、北方領土の問題を含む平和条約交渉を中断する意向を表明しているほか、ビザなし交流などの交流事業も中止されたままです。 住民大会では、元島民や地元の高校生の代表などが、北方領土返還に向けた決意表明を行うほか、新型コロナウイルスの道の感染対策が緩和されたことを受けて、返還を求めるシュプレヒコールも、参加者全員で声を出して行う予定だということです。 ●北方領土の島から兵士として参加し死亡の事例も ロシアメディアは、北方領土の島々で軍事侵攻を支持する象徴にもなっている「Z」の文字を記した車が列になって島を走る様子や島民が戦地にいるロシア軍の兵士へ支援物資を送ったとする動きを伝えています。 また、島民が軍事侵攻に兵士として参加し、死亡した事例も相次いでいるとみられ、このうち、択捉島では、先月、ウクライナ東部ドネツク州の激しい戦闘が続くバフムトで島出身の兵士が死亡し、葬儀が行われたと伝えられています。 また、色丹島では、去年12月にウクライナで死亡した島出身の兵士を「英雄」としてたたえるとする特別授業も学校で行われたということです。 ロシア側は、軍事侵攻に関する動きを通じて、北方領土においてもロシアへの愛国心を高めようとする狙いがあるものとみられます。 北方領土をめぐっては、ウクライナへ軍事侵攻を始めたロシアに、日本が欧米と歩調を合わせるかたちで制裁を科したのに対して、ロシア側は反発し、去年3月には北方領土問題を含む平和条約交渉の中断を一方的に表明するなど、強硬な態度を示しています。 ロシアはウクライナへの軍事侵攻をめぐり制裁を科す日本に反発し、北方領土の元島民らによる「ビザなし交流」と、元島民らが故郷の集落などを訪問する「自由訪問」について、日本との間の合意を破棄したと去年9月、一方的に発表しました。 北方四島との交流事業は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、3年前から中断されたままで、さらにロシア側による一方的な停止の発表で再開の見通しは立っていません。 これまで、日本人の元島民などと交流を重ねてきたロシア人の島民からは、日本による制裁に反発する声があった一方で、交流事業の再開などを望む声も聞かれました。 このうち、第1回目の「ビザなし交流」からおよそ30年にわたって交流に携わってきた、択捉島に住むナタリア・エフトゥシェンコさんは、中断している現状について「日本側が踏み込んだ制裁を発表したから、ロシア側もすぐに対応した」と主張しました。 ただ、今後の交流については「互いに良い関係を維持すべきで、双方とも制裁など必要ない」と話し、ウクライナへの軍事侵攻が交流事業に影響することには反対だと話しました。 また、択捉島の地元紙「赤い灯台」の編集長オリガ・キセリョワさんは、交流事業は互いを知る重要な役割を果たしてきたと指摘した上で「日本の友人たちに会えず、さみしい。『ビザなし交流』は友好的で強い結びつきであった。政治状況はかわったが、人々はかわらない」と話し、島民の中にも交流事業の再開を望む声もあると明かしました。 |
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●プーチン政権も被災地支援 ウクライナから反発の声―トルコ地震 2/7
トルコとシリアを6日に襲った大地震では、ウクライナ侵攻を継続するロシアのプーチン政権も緊急援助隊を被災地に送った。インタファクス通信によると、モスクワ郊外の空港から同日夜、非常事態省の輸送機3機がトルコへ、1機がシリアへと出発した。 プーチン政権は被災地支援の一方、ウクライナ各地に空爆を続け、民間人を多数死傷させている。インターネット上では「ロシア軍のミサイル攻撃で大地震と同じように住宅の崩壊が生じている」と反発するウクライナ人もいる。 トルコには野戦病院を設置し、支援活動を展開。シリアではロシア軍が駐留する北西部ヘメイミーム空軍基地から軍人・軍医を派遣することになった。 プーチン大統領はこれに先立ち、両国首脳と電話会談。「心からのお見舞い」と支援の用意を伝えたところ、謝意を表明されたという。 トルコは、プーチン氏が敵視する北大西洋条約機構(NATO)加盟国でありながら、ロシアと比較的良好な関係を維持し、ウクライナ穀物輸出合意などを仲介。一方、シリアのアサド政権は、2015年に内戦に軍事介入したロシアの後ろ盾を得て巻き返しに成功した経緯がある。 プーチン政権が西側諸国から制裁を受けて孤立する中、被災国がトルコとシリアだったこともあり、トップ会談を通じた支援の調整がスムーズだったもようだ。 ロシアは周辺国での大規模な災害のたびに、非常事態省の緊急援助隊を派遣。メドベージェフ政権時代の11年、東日本大震災の津波被害を受けた宮城県石巻市でも支援活動を行った。 |
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●プーチンの頭の中の世界 2/7
いったいどんな考えをすれば21世紀にこのような無謀な侵略戦争を起こすことができるだろうか。1年前にロシアのプーチン大統領が始めたウクライナ侵攻の話だ。ニューヨーク・タイムズのウクライナ戦争企画報道でプーチンの頭の中を類推するのに役立つ部分を探した。 「プーチンは16カ月間西欧の指導者らとただの一度も直接対面しなかった。代わりにどこかわからないミステリーな場所でオンライン会談だけした」。また別の一節。「プーチンに会う人たちはまず3日間隔離した後、15フィートの距離を置いて対面できた」。プーチンが対面接触に鋭敏だったのは新型コロナウイルスのためとみられる。 自発的であれ強要されたのであれ孤立は代償を要求する。孤立は歪曲された信頼の螺旋効果を強化する。外部との疎通を避けるほど自分たちだけの世界がすべてになり、自分の信じるものだけがさらに真理になり偏見と意地が螺旋のように頭の中に食い込む。反対に外側では門番権力が政事を思うままにして公式システムを跳び超える。 孤立を選択したプーチンが頭の中に作った世界、これを「プーチンユニバース」と称するならば、その最初の柱は「外部の脅威」だった。プーチンはウクライナ侵攻を半年ほど控えた2021年7月に発表した『ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について』という論文で、ウクライナで「反ロシアプロジェクトが進行中」と主張した。「ウクライナ国内のロシア人がルーツと先祖を否定しロシアを敵と考えるよう強要されている」と憤怒した。彼はウクライナのNATO加盟を西欧の包囲と考えた。 彼の2番目の柱は「純潔なわれわれ」だ。プーチンは同じ論文でロシアとウクライナとの関係を「精神的つながり」と描写した。「われわれの精神的一体性が攻撃を受けている」と規定した。これに対し彼に西欧は道徳的に混濁した。「男女平等政治により母親と父親が『親1』と『親2』に代替された」というのがプーチンがしばしば取り上げた西欧批判だった(NYT)。 プーチンユニバースの3番目の柱は義を重んじた戦争だ。外側の悪の勢力に対抗し精神的なつながりを守る聖戦だ。プーチンは旧ソ連が悪の勢力「ナチスドイツ」と戦争をしたとすればいまはウクライナを飲み込もうとするネオナチと戦わなければならないという論理を作った。彼は論文で「急進主義者らとネオナチがますます無礼に野心を表わしている。官僚組織と地域土豪が彼らを保護している」と主張した。 2021年10月にイスラエルのベネット首相(当時)がプーチンと会い、ウクライナのゼレンスキー大統領がプーチンとの会談に関心があるという話を切り出したという。するとプーチンは「この人と話す言葉はない。ゼレンスキーはいったいどんなユダヤ人なのか。この人はナチスの助力者」(NYT)と非難した。ユダヤ人であるゼレンスキーがユダヤ人の敵であるナチスに附逆するとは理解できないという憤怒が込められている。だがゼレンスキーが「ユダヤ人ナチス附逆者」なのか。 こうして見ると、プーチンの世界はハリウッドアクション映画やSF映画を思い起こさせる。善良な私たちと悪党という二分法の中で悪党追放に向けた対決の構図だ。だが現実は複雑系で見る位置によって見える像が変わる。「東欧に1インチも拡張しない」という西欧の約束が旧ソ連衛星国のNATO加盟で破られているのは事実だが、西欧の東進は根本的に「ロシアクラブ」より「西欧クラブ」がより魅力的なので広がっているものだ。 政治で最も危険なことはスターウォーズリーダーシップだ。世界を不正な帝国軍と苦痛を受ける抵抗軍に分けた後に無法的で堕落した者を振り払って正義を実現しようというリーダーシップは現実を分かつ盲目的支持を量産したりする。善と悪、純潔と堕落は絶対者である神と不完全な自分との関係で追求する信仰の領域に残しておかなければならない。 プーチンと追従者にウクライナ侵攻は荘厳な戦争かもしれないが世界はこれによって苦痛を受け試験を受けている。ウクライナ侵攻でロシアが得るものがあるのかも不透明だ。ロシアが地上軍を動員してウクライナの首都まで進撃したのに反ロシア政権が健在な状態で戦争が終わる場合、ロシアの失敗だ。 その上ロシアがウクライナで後ろ盾である米国と戦争しながら国力を注ぎ込んだがその戦いの利益を中国が取る可能性が出ている。苦労はロシアがして利益は中国が得るというケースだ。ロシアのウクライナ侵攻で台湾侵攻の名分を作った中国が欧州で力を投射し気力がなくなった米国を相手に両岸で正面対決を行うシナリオだ。 |
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●ロシア・ウクライナ戦争の重大局面「春季攻勢」、夏以降は「政治の季節」か 2/7
12月に次回大統領選の公示、9月に統一地方選を控えるプーチン大統領は、8月までに一定の戦果を誇示する必要がある。目下の焦点である「春季攻勢」は、南部を現状維持として、東部ドンバス地方の完全制圧を目指す公算が大きい。一方、米独の主力戦車やHIMARSを超えるミサイルシステムの導入でもウクライナが状況を打開できなかった場合、米国内の政治交渉論が力を持つ可能性がある。 2月24日で満1年になるロシア軍のウクライナ侵攻は、双方に決め手がなく、長期化の様相を呈している。ロシア軍は春季攻勢に着手しつつあり、特に東部ドンバス地方の完全制圧を目指す構えのようだ。 一方、ウクライナ側は、ドイツ製「レオパルト2」などの主力戦車が到着する4月以降、失地回復を狙った大規模な反攻作戦に出る模様だ。春から夏にかけての戦況が重大局面となる。 来年3月17日に予定されるロシア大統領選も注目点で、秋以降のロシアは政治の季節に入る。夏までの展開が戦争の行方を左右しそうだ。 ●長期化はロシアに有利 ウォロディミル・ゼレンスキー大統領とウラジーミル・プーチン大統領の新年ビデオ演説は、ゼレンスキー大統領が「今年の勝利」を訴えたのに対し、プーチン大統領は「長期戦」を示唆している印象を与えた。 ゼレンスキー大統領は17分間の動画で、「私たちは戦うし、これからも戦い続ける。最も重要な『勝利』のために」と述べ、今年を「兵士が家族の元へ、捕虜が自宅へ、難民が自国へ、占領地がウクライナへ、生活が元の日常へと戻る『帰還の年』にする」よう訴えた。 プーチン大統領は「軍人」をバックにした9分間の演説で、ウクライナ東・南部4州の併合を正当化し、「ただ前進し、家族や祖国のために戦って勝利する」と述べたが、今年の目標は示さなかった。 米紙「ワシントン・ポスト」(1月8日)は、「ウクライナ側は今年の勝利を呼び掛け、ロシア側は長期戦への準備をさせている」と指摘。「ウクライナが大きな突破口を開けなければ、戦争がプーチンに有利な長期戦に持ち込まれる危険がある」とする米専門家の分析を伝えた。 米国では、長期戦になれば、潜在力のあるロシアに有利に働くとの見方が強まっている。コンドリーザ・ライス元国務長官とロバート・ゲーツ元国防長官は「ワシントン・ポスト」(1月7日)に「時はウクライナに味方しない」と題する共同論文を発表。「ウクライナの対応は英雄的であり、軍もすばらしい活躍をしたが、経済は荒廃し、何百万もの国民が脱出し、インフラは破壊され、工業能力や多くの農地がロシアの支配下に置かれた。ウクライナ軍の大躍進と成功がない限り、軍事的膠着が続き、欧米の停戦圧力が高まる。ロシアは停戦が成立しても、いつでも侵略を再開できる」と警告した。 ●新型兵器供与で失地回復へ 米独両国が1月25日、主力戦車をそれぞれウクライナに供与すると発表したのは、膠着状態に陥る前にウクライナ軍の攻勢を支援し、「大躍進」を可能にさせるためとみられる。ドイツは欧州諸国がドイツ製戦車「レオパルト2」をウクライナに供与することも認めた。 ロイター通信(1月31日)によれば、米政府は射程150キロの地上発射精密誘導ロケット弾「GLSDB」を含め、総額20億ドル以上の追加支援を行う方針という。従来の射程80キロのロケット弾を発射してきた高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」から発射が可能で、これもウクライナ軍の攻勢に道を開くことになる。 ちなみに、ハイマース及び現在使用されているロケット弾は世界最大の軍需企業ロッキード・マーチンが生産して戦果を挙げたが、より精度が高いGLSDBはボーイング社が製造しており、ボーイングが国防総省や議会国防族に売り込んで巻き返したとの情報がある。 ウクライナ側が新型兵器を駆使し、春以降の大規模攻勢で失地をどこまで回復できるかが焦点だ。 ●ロシア大統領選は11人が出馬の意向 長期戦を想定するプーチン政権にとっても、来年3月の大統領選に向けて国民に勝利を誇示する必要がある。 ロシアの有力紙「コメルサント」(1月13日付)は、クレムリンがプーチン氏の5選に向けて大統領選の準備に着手したと報じた。次回大統領選は今年12月に公示され、2024年3月17日投開票の見通し。プーチン大統領は出馬の意向をまだ表明していないが、出馬しなければ戦争指導が困難になるだけに、出馬は既定路線だろう。 政府系紙「イズベスチヤ」(1月23日)によれば、来年の大統領選に向けて、前回2018年大統領選に立候補して2位だった共産党の農園経営者、パベル・グルジーニン氏、同4位の女性改革派ジャーナリスト、クセニア・サプチャク氏、柔道家のドミトリー・ノソフ氏ら既に11人が出馬の意向を表明し、準備を進めているという。 下院に議席を持つ5政党以外の候補の擁立は、推薦人集めなど困難を伴うが、候補者乱立はプーチン氏の求心力を弱める。ウクライナ戦争が争点に浮上しかねないだけに、政権にとって得策ではない。 プーチン大統領は秋には与党・統一ロシアの候補として出馬宣言するとみられ、8月までに一定の戦果を誇示する必要がある。9月にはモスクワ市長選など統一地方選があり、秋以降のロシアは微妙な「政治の季節」に入る。 ●ゲラシモフ総司令官起用の意味 プーチン政権が1月11日、ウクライナ侵攻を指揮するセルゲイ・スロビキン総司令官を事実上更迭し、後任に制服組トップのワレリー・ゲラシモフ参謀総長を任命したのは、春季攻勢を成功させるため、背水の陣を敷いた可能性がある。 ウクライナ軍情報部によれば、プーチン大統領はその際、ゲラシモフ氏に対し、東部ドネツク州を3月までに完全制圧するよう命じたという。 総司令官交代は、プーチン大統領が民間軍事会社ワグネルと正規軍の対立で、ワグネルを遠ざけ、軍を擁護したともとれる。ワグネルの創始者、エフゲニー・プリゴジン氏はSNSで参謀総長を口汚く罵るなど、軍との対立が先鋭化していた。 クレムリンの内情に通じた謎のブロガー「SVR(対外情報庁)将軍」によれば、プーチン大統領はワグネルが前線で大量の犠牲者を出し、消滅しかねないこと、国防省内部にプリゴジン氏への反発が強いことを報告され、プリゴジン氏に近いスロビキン総司令官の更迭を決断した。大統領はその際、ゲラシモフ氏に「3カ月以内に期待に応えれば、侵攻当初の失敗は忘れる」と伝えたという。 逆に言えば、「春季攻勢」に失敗すれば、参謀総長更迭の可能性もある。ロシア軍にすれば、主力戦車など新型兵器が届く前に叩きたいところだ。 ●ドンバス完全制圧が至上命題 プーチン大統領は春季攻勢で、ドンバス地方の完全制圧を目指す一方で、南部のヘルソン、ザポリージャ両州は現状のままでいいと考えている形跡がある。ロシア軍は昨年11月、ヘルソン州の州都ヘルソンから退却。ザポリージャ州もドニプロ川南方を押さえ、州都を含む川の北部は制圧していない。 大統領は昨年2月の侵攻後、「ドンバス地方の完全制圧」を何度も命じたが、南部2州の境界線には言及していない。ドミトリー・ペスコフ大統領報道官も昨年10月、ロシアが想定する「国境」について、東部2州は「州境だ」としながら、南部2州については、「地域住民と協議を続ける」と説明。政権にも定見がないことを示唆した。 ロシアは昨年9月の住民投票で4州を一方的に併合し、憲法にロシア連邦領として書き込んだが、東部は「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」としながら、南部は「ヘルソン州」「ザポリージャ州」と規定し、差別化している。 南部2州については、ドニプロ川を渡河して攻略するのは困難で、当面あきらめた可能性がある。 ロシア軍は昨年末からベラルーシ領内に再集結して軍事演習を実施しており、首都キーウ攻略を目指すとの見方もあるが、ベラルーシ領にいた約2万の兵力の多くは既に東部に移り、5000人に削減したと報じられた。 昨年2、3月のキーウ攻略作戦失敗の衝撃が大きく、再度首都攻略を目指すとは思えない。 ただ、ウクライナ軍情報部によれば、1月末にロシア軍空挺部隊のミハイル・テプリンスキー司令官が解任されたのは、キーウ攻略作戦をめぐってゲラシモフ参謀総長と対立したためとされる。ゲラシモフ氏が首都キーウへの空挺部隊投入を指示したのに対し、司令官は「部下を無駄死にさせる」として反対したという。事実なら、キーウ攻略で軍内部に対立があり、春季攻勢の作戦計画は明らかでない。 ●米国内に政治交渉論 プーチン大統領にとっては、来年3月の大統領選から逆算して一定の政治的成果を挙げる必要がある。その場合、「ドンバス地方完全制圧」を最優先し、南部は現状のまま防衛を固めて、停戦に持ち込みたい意向かもしれない。 ワグネルが半年前からドンバス地方のバフムトやソレダルで大量の犠牲を出しながら攻撃を続けたのも、ドネツク州制圧の一環だろう。バフムトなどは戦略的要衝ではないものの、「ドンバス完全制圧」には攻略が不可欠になる。ロシア側はルハンシク州をほぼ制圧しているが、ドネツク州は6割程度にとどまる。現在は、ワグネルに代わってロシア軍空挺部隊がバフムトに投入された模様で、今後、ドネツク州の攻防が激化しそうだ。 これに対し、ウクライナ側はクリミア半島を含む失地回復を掲げており、ウクライナがこれで停戦交渉に応じることはあり得ない。 しかし、外交筋によれば、プーチン大統領はこの春に中国の習近平国家主席の訪露を要請しており、中国に仲介を依頼する可能性もある。ただし、対米戦略を最優先する中国がロシアの側に立って調停に奔走することは考えられない。 一方、国防総省に近い米シンクタンク、ランド研究所は1月末、「戦争長期化の回避を」と題する報告書を発表し、「領土の奪還はウクライナにとって重要だが、米国にとっては最重要の要素ではない」「ロシアとの戦争や核使用を阻止し、長期戦を回避することが最優先だ」と指摘。「米国が領土の線引きを調整する能力は限られているが、ウクライナの方針に一定の影響を与えることは可能だ」と指摘した。 マーク・ミリー米統合参謀本部議長も昨年11月、「ウクライナ軍が軍事力でロシア軍を国外に物理的に駆逐することは極めて困難であり、近いうちに達成される可能性は低い」とし、「政治的にロシア軍を撤退させる方法もある」と政治交渉に言及していた。 ウクライナ軍の春・夏攻勢が成果を挙げられない場合、政治交渉の可能性が浮上するかもしれない。 |
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●ロシアの平野レミ≠ェプーチン批判で資産没収および懲役9年の刑に 2/7
ロシアのナイジェラ・ローソン≠烽オくは日本風にいえばロシアの平野レミ≠ニして有名な料理研究家がプーチン大統領を批判したとして、欠席裁判で全財産没収および懲役9年の判決を下された。英紙デーリー・スターが7日までに報じた。 ウクライナ侵攻中のロシアは厳しい言論弾圧を行っている。現在、フランス滞在中のロシアの人気料理研究家ベロニカ・ニカ・ヴェロツェルコフスカヤさん(52)はSNSでプーチン氏と戦争への批判を繰り返してきた。モスクワ裁判所は6日、ヴェロツェルコフスカヤさんが法廷に不在のまま、ロシア政府の行動に対するすべての批判を禁止する法律≠ノ違反した罪で、ヴェロツェルコフスカヤさんの全財産没収と懲役9年の判決を下した。モスクワ裁判所はすでにヴェロツェルコフスカヤさんと家族がロシアに所有する家と土地を押収している。 ヴェロツェルコフスカヤさんはSNSで「正直に言うと、何よりも赤いボタン(核ミサイルのスイッチ)が怖い」「プーチンは絶対的な純粋の悪」「ロシア軍による子供の殺害、マリウポリの小児病院の爆撃、ブチャの民間人殺害」などと記してきた。 特にプーチン氏を怒らせたのは、ヴェロツェルコフスカヤさんの「帝国を再興しようというプーチンの野心が18歳から20歳までの少年たちをひき肉にしている」「私はウクライナの人々を敵とは考えていません。兄弟姉妹だと思っています」「この不必要なクソ戦争が毎日、巨大な憎しみを生み出している」という発言とみられる。 判決を知ったヴェロツェルコフスカヤさんはSNSで「これまでの発言で、二度とロシアに戻れない可能性が高いと思っていた」としている。 |
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●次の決戦の場は北極圏か?──ロシアが狙うカナダと北欧諸国への牽制 2/7
この1月、日中でも氷点下のいてつく演習場でアメリカ各地の州兵(連邦軍の予備役)が大規模な砲撃訓練を行った。 初めてのことではないが、今年はヨーロッパからラトビア軍の兵士も参加した。ロシアのウクライナ侵攻が始まって1年、北方でもロシアとの緊張が高まり、武力衝突に発展する恐れがあるからだ。 演習はミシガン州北部のグレイリングで1月20日から29日まで実施され、予備役を統括する陸軍大将ダン・ホカンソンが指揮を執った。 今のアメリカは北極圏の防衛態勢を一段と強化している、と語るのは米シンクタンク北極研究所のモルティ・ハンパートだ。 「第3次世界大戦への備えではないが」とハンパートは言う。「アメリカはロシアが基本的に敵性国家であり、北極圏でも牙をむく可能性があることを理解している」 NATOの一員であるノルウェーだけでなく、スウェーデンやフィンランドも、いざロシアとの対決という事態になればアメリカが支援してくれるものと期待している。そして米軍は、もちろんその期待に応えるつもりでいる。 今のロシアはウクライナ戦で手いっぱいに見えるかもしれないが、実は北極圏の軍備強化にも励んでいる。昨年末のCNNの報道によれば、新たなレーダー基地や滑走路の建設も確認されている。 米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、ロシアは北極圏でもハイブリッド戦術を駆使しており、ドイツ向けの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」の破壊工作にも関与した疑いがある(ロシア側は否定している)。 アメリカ政府も昨年10月に、ロシアのウクライナ侵攻によって「北極圏の地政学的緊張」が高まり、「意図せぬ紛争の生じるリスク」が高まったと発表した。 ●北極圏は天然ガスの宝庫 それでもCSISは、北極圏におけるロシアの軍事的活動はもっぱら防衛的なものだとみている。 フィンランドとの国境に近いコラ半島のムルマンスクには原子力潜水艦の基地があるし、液化天然ガス(LNG)や石油精製の大規模工場もある。地球温暖化によって通年の航行が可能になりそうな北極海航路の防衛という目的もありそうだ。 だが、それだけではなく、北極圏におけるロシアの軍事力強化には攻撃的な側面もあるとCSISは指摘する。北極圏に接するカナダや北欧諸国などを牽制し、「可能性は低いが、あり得ないとは言えない」NATOとの全面対決に備えるためだ。 「死活的に重要なコラ半島の核戦力を守るためなら、ロシアはノルウェーやフィンランドへの限定的な侵攻に踏み切る可能性もある」。CSISは今年1月の報告書で、そう警告している。 それに、北極圏は今でも全世界のLNG生産量の約8%を占めている。だから経済的にも戦略的にも、ロシアの未来は北極圏における権益の維持に懸かっている。 北極圏の資源争奪で戦争が始まる可能性は低いとしても、よそで起きた紛争の火の粉が北極圏まで飛んでくるシナリオは十分あり得る。北極研究所のハンパートは言う。 「今となっては、もう2022年以前の北極圏には戻れない」 |
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●ロシア 今月中旬以降 東部で大規模攻撃か 弾薬不足との分析も 2/7
ウクライナでは、ロシア軍が今月中旬以降、東部の掌握を目標に大規模な攻撃を仕掛けるという見方が出ています。一方、イギリス国防省はロシア軍は弾薬などが不足し、攻撃に向けた部隊の戦力が整っていないと分析しています。 ロシアが侵攻を続けるウクライナでは、東部ルハンシク州のハイダイ知事が6日、地元メディアに対し、ロシア軍の部隊が、前線の森林地帯に装備品を隠したり、弾薬の使用を控えたりする動きがみられるとして、新たな攻撃に備えている可能性があると指摘しました。 そして「今月15日以降攻撃が予想される」と述べ、ロシア軍が今月中旬以降、東部の掌握を目標に大規模な攻撃を仕掛けてくるとみて警戒を強めています。 ロシア軍は、東部ドネツク州でもウクライナ側の拠点バフムトの掌握に向けて攻撃を激化させています。 アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は6日、バフムト周辺の幹線道路で攻防が続いているとし「ロシア軍はバフムトの包囲にはまだ成功していない」と分析しました。 また「ウクライナ当局は、ロシア軍が今月中旬から下旬にかけて東部で大規模な攻撃を開始する準備をしていると分析している」と指摘しています。 さらに、イギリス国防省も7日「ロシア軍の目標が東部ドネツク州の全域を掌握することなのは、ほぼ確実だ」と指摘しています。 一方で「ロシア軍は1週間で数百メートルの領土しか掌握していないが、これは必要な弾薬と機動部隊を欠いているからだ。ロシア指導部は圧倒的な進展を求める可能性が高いが、今後、数週間の間に必要な戦力を増強できる可能性は低い」として攻撃に向けた部隊の戦力が整っていないと分析しています。 |
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●ロシア戦争犯罪の証拠、「数百点」収集 独検察 2/7
ドイツ連邦検察のペーター・フランク検事総長は5日、ウクライナにおけるロシア軍の戦争犯罪の証拠「数百点」を収集したことを明らかにした上で、ロシア指導者を裁くため、国際的な取り組みを呼び掛けた。(写真は資料写真) フランク氏は、独紙ウェルト日曜版に掲載されたインタビューで「現時点では(ウクライナの首都キーウ近郊の)ブチャでの大量殺害および民間インフラ攻撃に焦点を合わせている」と語った。 フランク氏はまた、証拠の大半はウクライナ避難民からの聞き取り調査に基づくものと説明。今後は「ドイツ国内もしくは他国との共同方式での裁判、あるいは国際裁判に備える」と述べた。 ただしドイツ国内で戦争犯罪者を訴追するには、容疑者が国内にいることが前提となると認めた。 アナレーナ・ベーアボック外相も先月、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり特別法廷の設置を呼び掛けた。 国際刑事裁判所(ICC)は昨年、ロシアの戦争犯罪について独自の調査に着手したが、ロシア、ウクライナ両国はICCに加盟していないため、原則的にはロシアの容疑者を訴追できない。 ブチャでは昨年3月、ロシア軍の撤退後に数百人の遺体が見つかった。これを受けて国際社会では非難と戦争犯罪追及の声が高まったが、ロシアは繰り返し犯罪行為を否定している。 |
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●ウクライナ紛争の拡大危惧 国連総長 2/7
国連(UN)のアントニオ・グテレス事務総長は6日、ウクライナ紛争がエスカレーションの末、世界を巻き込んだ「広範な戦争」へと発展する可能性を危惧していると述べた。≪写真は国連のアントニオ・グテレス事務総長≫ ロシアのウクライナ侵攻開始から24日で1年を迎える。国連総会で演説したグテレス氏は「和平の公算は小さくなる一方だ」と指摘。「私が恐れているのは、世界が無意識のうちにではなく、意識しながら広範な戦争に突入することだ」と語った。 グテレス氏はまた、人類が滅亡するまでの残り時間を象徴的に示す「終末時計」の針が先月、過去最短となる「残り90秒」に設定されたことについて、警告のサインと受け止めていると述べた。 その上で「2023年は課題山積の、未曽有の危機的状況の中で始まった」とし、「われわれは目を覚まし、対処しなければならない」と強調。ウクライナ危機以外にも、パレスチナ紛争やアフガニスタン、ミャンマー、アフリカのサヘル地域、ハイチにおける情勢などが世界の平和にとって脅威になっていると語った。 |
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