永年の無策 マイナス金利
日銀の円安政策 ご利益なし
退任する前に ちょっとだけ恰好をつけさせてください
「利上げします」
突然の発表 評価・意見 報道大混乱
2022/12/20・12/21・12/22・12/23・12/24・12/25・12/26・12/27・12/28・12/29・12/30・12/31・・・ 2023/1/1・1/2・1/3・1/4・1/5・1/6・1/7・1/8・1/9・1/10・・・1/11・1/12・1/13・1/14・1/15・1/16・1/17・1/18・1/19・1/20・・・ 黒田東彦・・・ |
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●日銀 金融緩和策修正 なぜいま?この先どうなる? 12/20
日銀は、いまの大規模な金融緩和策の修正を決め、これまで0.25%程度に抑えてきた長期金利の上限を0.5%程度に引き上げることになりました。 日銀が金利の上昇を許容することとなり市場では事実上金融引き締めにあたるという受け止めから円高ドル安が加速しました。 欧米の中央銀行が利上げを進める中でも動かなかった日銀がなぜいま動いたのか? ●Q.市場では事実上の金融引き締めと受け止めた A.金利の変動幅の上限を引き上げたわけですから、日銀は金利の上昇を容認したわけです。 市場の受け止めは当然です。 記者会見で黒田総裁は「利上げや金融引き締めを意図したものではない」と繰り返し説明しました。 ただ、日銀はこれまで、変動幅の拡大は「金融引き締めにあたる」と説明してきました。 ですから20日の決定は、唐突な印象が否めません。 多くの市場関係者も、サプライズだと受け止めて、激しく反応し、円高、株安が進みました。 ●Q.欧米が利上げのなか緩和策修正してこなかったがなぜ動いた? A.欧米の相次ぐ利上げで、日本でも長期金利に上昇圧力が高まっていました。 これに対して日銀は、強引に金利の上昇を抑えつけようと、大量に国債を買い続けてきました。 その結果、国債を売買する債券市場では、秋以降、さまざまな取り引きの指標にもなる10年ものの国債の取り引きが成立しない日が相次ぎ、ゆがみが目立ち始めていました。 日銀は、その副作用で、市場が正常に機能しなくなったことを、なんとか是正しないといけないと判断したのだと思います。 ただ、専門家も黒田総裁の説明だけでは、今回、なぜ修正したのか分かりにくいと指摘しています。 東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「非常にサプライズだった。金融政策によって市場はゆがんだ状況にあるため、変更すること自体は歓迎したいが、今までの説明とはずいぶん異なっており、とまどう市場参加者は多い」と話しています。 ●Q.いま金利が上昇して大丈夫なのか?景気はこの先どうなる? A.今回の政策修正で、円相場は円高に向かう可能性があります。 円安は、原材料価格の高騰の要因にもなっていただけに、短期的にはプラスの面がありそうです。 一方で、長期金利が上昇することになるため、専門家の間では、企業向けの融資の金利や住宅ローンの固定金利が上昇する可能性があるという指摘も出ています。 日本経済はコロナ禍からの回復途上にあります。 そして海外経済は、欧米の大幅な利上げでブレーキがかかり、この先、減速していくという懸念も強くなっています。 それだけに、今回の決定が、日本経済や金融市場にとって果たしてプラスになるのか、マイナスになるのか。 その影響を注意して見ていく必要があると思います。 |
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●日銀が「事実上の利上げ」 生活への影響は 12/20
経済ジャーナリスト・荻原博子さん「もしかしたら住宅ローンの金利も上がってしまうかもしれない。同じローンでも払うお金が増えてしまうということ」 日銀は、20日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和策を修正し、長期金利の上限幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に変更しました。短期金利は変更ありません。この政策転換が、生活にどう影響するのでしょうか。 荻原博子さん「自動車ローンもそうだし、教育ローンもそうだし、先々金利が上がればたくさん払うのは同じ。固定で借りていれば影響ないが、変動の場合、ローンを借りている方は今のうちに(短期金利が上昇する前に)しっかり繰り上げ返済した方が良い。あと、輸入のお肉などもピークの時よりはちょっと安くなったということが出てくるかもしれない、スーパーに並んだ時に」 急速な円安で食料やエネルギー価格が高騰し、家計にとってもかなりの痛手となっている事態。日銀による『事実上の利上げ』判断を受け、東京外国為替市場の円相場は急騰。また、日経平均株価は下げ幅が一時、800円を超える下落となりました。 |
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●日銀が緩和縮小、長期金利の上限0.5%に 事実上の利上げ 12/20
日銀は19〜20日に開いた金融政策決定会合で、大規模緩和を修正する方針を決めた。従来0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大する。20日から適用する。長期金利は足元で変動幅の上限近くで推移しており、事実上の利上げとなる。変動幅の拡大は21年3月に0.2%から0.25%に引き上げて以来となる。 黒田東彦総裁が20日午後に記者会見を開き、決定内容を説明する。 歴史的なインフレで海外の中央銀行が利上げに動くなか、日本の国債金利にも上昇圧力が強まっていた。日銀は金融政策で長期金利を人為的に押さえつけていたが、市場機能の低下が懸念されてきた。 日銀は「こうした状況が続けば企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼす」として、従来、0%からプラスマイナス0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%程度に拡大することを決めた。マイナス金利政策や上場投資信託(ETF)の買い入れ方針、政策金利のフォワードガイダンス(先行き指針)は据え置いた。 日銀は同日、長期国債の購入額を従来の月7.3兆円から月9兆円程度に増額すると発表した。購入予定の金額についてもレンジで示す形式に変更し、より弾力的に購入額を決められるようにする。10年物国債を0.25%の利回りで無制限に毎営業日購入する「連続指し値オペ」の利回りも0.5%に引き上げる。 日銀は黒田総裁就任直後の13年に「2%の物価安定目標を、2年程度の期間を念頭において、できるだけ早期に実現する」ことを目的に大規模緩和を始めた。日銀が世の中に供給するお金を2倍に増やすことを目的に、国債やETFの保有額を2年間で2倍に拡大する方針を掲げた。 ただ消費増税やエネルギー価格の下落などを要因に、物価安定目標の未達が続いてきた。16年には総括的検証で政策目標をマネタリーベースから金利へと切り替えた。このとき、短期金利をマイナス0.1%、長期金利の指標になる10年物国債利回りを0%程度に誘導するイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を導入した。 金融緩和をより長く続けるため、政策目標を量の拡大から金利へ戻す狙いがあった。その後、日銀は長期金利の変動許容幅を0.1%から0.25%に段階的に拡大してきた。 インフレを抑制するために欧米が利上げに動くと日本の長期金利にも上昇圧力がかかったが、許容幅の引き上げは「事実上利上げとなり、日本経済にとって好ましくない」として、市場で金利を押さえつけてきた。もっとも、日米の金融政策の方向性の違いを背景に10月には一時、1ドル=151円台まで円安が加速した。 当初、日銀は円安は日本経済にプラスとの立場を示していたが、為替相場の急激な変動が企業活動に及ぼす負の影響も無視できなくなっている。足元の消費者物価の上昇率は3%台半ばに達している。政府・日銀が定める2%の物価安定目標を上回って推移していた。 円安が資源高に拍車をかけ、電力料金や生鮮品など幅広い品目で値上げが進む構図が鮮明になっている。事実上の利上げに踏み切ることで海外との金利差が縮小し、為替相場の急激な変動を抑える効果も期待できる。 |
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●日銀がサプライズ“事実上の利上げ”住宅ローンどうなる? 12/20
日本銀行は金融政策決定会合で事実上の利上げを決めました。市場ではサプライズと受け止められ、円高・株安が進んでいて、住宅ローンなどの金利にも影響が出てくる可能性があります。 「(事実上の利上げに)戸惑ってます」「なんでこのタイミングなんだろうっていう」「ようやくきたなと。今まであまりにも金利が動かなかったから」 日銀は金融政策決定会合で、現在の金融緩和策の一部修正を決めました。これまで長期金利について「プラスマイナス0.25%程度」の変動幅で推移するよう調節するとしてきましたが、これを「プラスマイナス0.5%程度」まで拡大するとしました。 市場で事前に予測されていなかったサプライズでの政策の見直しです。ただ、黒田総裁は金融緩和は変わらないと強調しました。 日本銀行 黒田東彦総裁「利上げではありません。景気には全くマイナスにならないと思いますし、引き締めるつもりはありません」 欧米の相次ぐ利上げで日本の長期金利にも上昇の圧力が強まるなか、金利の上限を日銀が0.25%にとどめていることで「市場のゆがみ」が高まっていると説明。利上げや引き締めではないと否定し、むしろ今回の見直しは景気にはプラスだと強調しました。 しかし、市場は「事実上の利上げ」とネガティブにとらえ、大きく反応しました。 外国為替市場の円相場では、日本の金利が上がるとの見方から会合終了後に一気に円高に振れ、一時132円台をつけました。また、東京株式市場は一時800円を超える値下がりとなりました。 私たちの生活には、どのような影響があるのでしょうか。10月の消費者物価指数は40年ぶりの上昇幅に達していますが、物価高が抑えられる可能性があるといいます。 また、住宅ローンについては、(30年などの)固定型は金利が上がる可能性がありそうです。一方で、変動型の金利はすぐに変化しないとみられています。 また、国の財政運営では、金利の上昇が今後も続けば、国の借金の利払いが将来的には増えることも予想されます。 黒田総裁は、これまで政策変更の可能性を示唆してきませんでした。任期満了が来年4月に迫る中、なぜ、このタイミングで政策変更に踏み切ったのでしょうか。 第一生命経済研究所 熊野英生首席エコノミスト「次の総裁の政策に縛りがないように、次の総裁が変動幅の上限を上げるんだったら自分のうちにやっていこうと、次の総裁へ交代するための準備のために今やってるんじゃないか」 ただ、黒田総裁は路線変更はしていないと何度も強調しました。 日本銀行 黒田東彦総裁「出口戦略の一歩とか、そういうものでは全くありません。具体的に論じるのは時期尚早である」 年明けからは黒田総裁の後任を選ぶ人事が本格化することになります。 |
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●事実上の利上げ、黒田総裁「賃上げしやすくなる」…住宅ローン金利上昇 12/20
日本銀行は20日の金融政策決定会合で、長期金利を0%程度とする金利政策の変動幅を従来のプラスマイナス「0・25%」から「0・5%」に修正した。大規模な金融緩和そのものは維持し、黒田 東彦はるひこ 総裁は記者会見で「利上げではない」と説明した。金融市場では発表後、長期金利が急騰し、事実上の利上げとの受け止めが広がった。 短期金利をマイナス0・1%とする政策は維持した。声明文では、長期金利の変動幅の拡大について市場金利を動きやすくすることで「金融緩和の持続性を高める」とした。企業が社債などで投資家から資金を集めやすくなると判断した。一方で、急激な金利上昇を防ぐため、国債買い入れ額を来年1〜3月は現在の月7・3兆円から9兆円程度に増額する方針を示した。 金融市場は、日銀が金利上昇を容認したとして、金融緩和策の修正とみなした。発表直後、長期金利は従来の上限である0・25%程度から一時0・460%まで上昇した。金利上昇は企業や家計の利払い増加につながる。今後、住宅ローン金利などに影響が及ぶ可能性がある。 黒田氏は9月の大阪市内での記者会見で、変動幅拡大は金融引き締めにつながり、「金融緩和の効果を阻害する」と話していた。20日の記者会見では、市場機能の改善によって「金融緩和の効果をより安定的に発揮でき、賃上げがより行いやすくなる」と説明し、立場を修正した。 国内の消費者物価の上昇率は4%に迫る勢いで、日銀の目標2%を上回る。市場では、金融政策を正常化する出口戦略に日銀が向かうのではとの観測があるが、黒田氏は「『出口戦略』について、具体的に論じるのは時期尚早だ」と、否定した。 |
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●追い詰められた「日銀」、事実上の利上げの"次" 12/21
金融市場と日本銀行の戦いは、どちらが勝っているのだろうか。12月20日、日銀は市場の圧力により、10年物日本国債の上限金利を0.25%から0.5%に引き上げるというやりたくもないことをやらざるをえなかったのは間違いない。しかし、これが今後の金利の動き、円の価値、金融市場の安定にどのような意味を持つのかは、今のところ誰にもわからない。 例えば、円は日銀が動く前の1ドル=137円から、翌日のニューヨークでは131円まで跳ね上がった。しかし、その多くは、今回の金利上昇に続いてさらに金利が上昇することに賭けるトレーダーによるものである。 金融市場は、ビッグサプライズに反応して大きく変動することが多い。したがって、市場が債券トレーダーと日銀の戦いを見極めながら、今後数週間から数カ月の間に円/ドルがどのような状態になるかはまだわからない。 ●低金利政策からの「脱却」ではない 日銀の黒田東彦総裁は、たんに「蒸気弁」を開けて圧力を逃がしながら、超低金利を維持し続けることができると考えている。この動きは「利上げではない」と黒田総裁は記者会見で語り、むしろ 「市場機能の改善 」を目的とした技術的な措置であったと述べた。 同氏が動いたのは、日本国債の市場におけるいくつかの歪み(以下で説明)が、社債市場や、他の一部の金融市場に波及しているためだ。金利の引き上げは、日銀の10年にわたる戦略からの脱却の第一歩ではないと黒田氏は主張する。「金利を上げるつもりも、金融を引き締めるつもりもまったくない」。 日銀の上層部は、金利を上げても大丈夫と考える前に、少なくとも年3%の賃金の上昇を持続的に見たいと繰り返し発言している。今年の春闘交渉で連合が5%の賃上げを要求したのは、賃金情勢が変わりつつあることを意味すると期待する関係者もいる。しかし、エコノミストの予測通り、アメリカとヨーロッパが2023年に景気後退に入る可能性が高いとすれば、日本企業が賃金を大幅に引き上げるとは考えにくい。 すべてではないが、多くのトレーダーは、黒田総裁がこのスタンスに固執することはないとみている。一度決断を迫られた日銀は、市場の圧力によって、おそらく数カ月先には再び決断を迫られる可能性がある。日銀は10年来の黒田政策から事実上の離脱を始めたというのがこうしたトレーダーの見立てだ(日銀はまだ気づいていないとしても)。彼らがは、次の動きは3月の黒田総裁の任期満了前か、次の総裁の下で行われる可能性があると見ている。 ●市場の「歪み」に対応せざるをえない こうしたトレーダーは、自分たちの見方を正当化するために2つの事実を指摘している。1つは、日銀は10年物国債に対してのみ行動を起こしたが、下図に見られるように、いわゆる「イールドカーブ」に沿って金利が上昇した。イールドカーブは、1年物から40年物までの日本国債の金利を表している。年限の長い国債の金利がマイナスであった年初に比べ、金利ははるかに高くなっている。 2つ目は、日銀の「イールドカーブ・コントロール(長期金利操作)」政策が、国債と社債の両市場に大きな歪みをもたらしているという指摘だ。通常、図の最下段にあるように、債券の満期が長くなればなるほど、イールドカーブは右肩上がりになっていく。 ところが、日銀は10年物国債の金利しか守らなかったため、ここ数カ月、市場は8年物、9年物の国債の金利を10年物国債の金利より高い水準に押し上げることができたのである。トレーダーは、この「歪み」は12月20日の動き以降も存在し続けていると指摘する。したがって、この歪みが一度日銀を動かしたのであれば、再び日銀を動かさざるをえないのは必然であると主張しているのだ。 どちらが正しいかはわからないが、結果を左右するいくつかの要因を見ることができる。 まず、日銀が十分な資金を投入して全期間の日本国債を購入するのであれば、金利を抑えることができる。実際、日銀は国債の買い入れ額を月7.3兆円から9兆円に増やし、金利が0.5%を超えないように必要なだけ10年物の国債を購入すると発表したばかりだ。 しかしこれは、すでに日本国債全体の半分以上を所有している日銀が、さらに多くの国債を所有することを意味する。加えてこの動きは、収入源として債券を保有する必要がある保険会社や年金基金にとって、さらなる問題を引き起こすことにもなる。保険会社や年金基金の全資産のうち日本国債の占める割合は、黒田総裁就任時の39%から現在では35%以上になっている。銀行も融資需要の鈍化に伴い日本国債を買い増し、2012年には銀行資産の18%まで増えていたが、現在は6%まで下がっている。 もう1つの要因は、金利の急激かつ大幅な上昇は、深刻な結果をもたらすという点だ。金利が上がれば、銀行、年金基金、保険会社などの保有する既発債の価値が下がり、バランスシートが圧迫される。 一方、四半世紀に及ぶゼロ金利は、日本企業にタダ同然の資金を供給してきた。現在、銀行融資の37%が金利0.5%以下、そのうち半数が0.25%以下である。融資需要が低迷する中、国債金利と連動して銀行貸出金利がどの程度上昇するかは不明である。 仮に銀行貸出金利が1ポイントでも2ポイントでも上昇すれば、数百万人の従業員を抱える多くの企業の支払能力は一気に低下することになる。その多くは、中小企業全体の約40%に信用保証と直接融資を行っている政府による救済を受けなければならなくなるだろう。これらはGDPの約11%に相当する。しかし、信用保証の対象は最大でも80%なので、銀行は不良債権の急増に悩まされることになるだろう。 ●円とインフレという要因 円の価値、という問題もある。過去1年半の急激な円安は、日本のインフレ率を上昇させる大きな要因となっている。実際、この間の物価上昇の9割は輸入集約的な食品とエネルギー部門によるものだ。それが消費者の購買力を大きく低下させた。円の価値がある程度回復すれば、インフレ圧力が弱まり、日銀の利上げ圧力も弱まるだろう。 これは、他の地域のインフレと金利の動向に大きく依存する。インフレがピークに達したという兆候もあるが、そうであれば他国の金利は下がるはずである。その結果、円は多少回復するだろう。しかし、インフレの修正に時間がかかるようであれば、円安圧力は続く可能性がある。 インフレの進行も要因となる。黒田総裁は、日本のインフレのほとんどは円安とサプライチェーンの遮断の影響によるものだと考えており、それは正しい。それゆえ、日本の現在のインフレは一時的なものであると主張している。 実際、日銀は10月の「経済・物価情勢の展望」で、2022年度に2.9%上昇した後、2023年度と2024年度のインフレ率はわずか1.6%まで減速すると予測した。これは日銀の目標である2%をも下回っている。 もし日銀の予想が正しければ、日銀への利上げ圧力は緩和される。しかし、日銀の予測にはいい実績がない。例えば、わずか3カ月前の7月の展望では、2022年度のインフレ率は10月に予測した2.9%ではなく、2.3%になると予測していた。2023年について日銀が間違えば、日銀はより大きな圧力に直面することになる。 日本の諺に「一寸先は闇」というのがある。金融市場と日銀の政策にも同じことが言えるようになった。 |
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●日銀の利上げ、金融緩和修正って? 銀行の株価アップ、なぜ? 12/21
●「アベノミクス」「異次元緩和」の修正? 日本銀行が20日、これまでの金融緩和策を一部見直して、長期金利の上限を「0.25%程度」から「0.5%程度」へ引き上げました。安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」の一環として2013年春から続けてきた「異次元緩和」の修正で、事実上の利上げと受け止められています。これを受けて長期金利は急上昇し、大幅な円高、株安となりました。ただ、異次元緩和の「マイナス金利」政策で苦しい業績が続いた銀行の株価は軒並み上がりました。歴史的な円安が招いていた物価高が落ち着く可能性がある一方、経済が悪くなるリスクもあります。金融政策の変更は銀行など金融機関だけでなく、あらゆる企業の事業に大きな影響を与えます。と言われても、何のことだかピンとこない人もいると思います。いったいどうして、何をどう修正して、何が起きたのか、これからどうなるのか。ちょっと難しい金融政策の話をわかりやすく解説します。 ●そもそも利上げ、利下げとは? そもそも金利とは、という話から。日銀など各国の中央銀行は、お金の貸し借りの時に発生する金利の水準を上げ下げすることで経済や物価に働きかける役割を担っています。一般的には金利が低いとお金を借りやすいので、会社が新しい機械を買ったり、個人が住宅ローンを組んだりしやすくなって経済活動が活発になります。各国の中央銀行は、景気が悪いときには金利を低くして世の中にお金が回りやすくします。これを「金融緩和」と呼びます。逆に、景気が過熱してインフレ(物価高)が起きると金利を高くします。「金融引き締め」ですね。 日本経済は長く低成長が続いたため、日銀はこれまで企業の投資や家計の消費を促すため、金利を極端に低く抑える政策を続けてきました。 ●物価高招いた「悪い円安」で ロシアのウクライナ侵攻などで昨年から世界で急激なインフレが進みました。米国やヨーロッパ各国の中央銀行はインフレを抑えようと金利を引き上げてきましたが、欧米ほど景気が良くなっていない日本では日銀が金融緩和で景気を支えるため長期金利を据え置いてきました。この結果、金利の低い円を売ってドルを買う動きが加速し、今年10月には32年ぶりに1ドル=150円台を記録するなど歴史的な円安水準となり、物価がどんどん上がりました。流行語大賞のトップ10に選ばれた「悪い円安」とはこのことですね。 そこで今回、事実上の利上げが行われたのですが、少し具体的に説明します。国が借金のために発行する国債のうち、返済期間10年の利回りが長期金利の指標になっています。日銀は2013年4月からの大規模な金融緩和で、金利を低く抑えるために国債を大量に買い入れています。2016年9月から「ゼロ%程度」を長期金利の誘導目標にした後、2021年3月からは上限を引き上げて「0.25%程度」になるように国債を買い入れてきました。その上限を「0.5%程度」にしたのが今回の見直しです。 ●一気に円高・株安に 金融緩和策の修正が金融市場に伝わると、国債を売る動きが加速しました。これまでおおむね0.25%で推移していた長期金利は一時、一気に0.46%まで上昇。円安の一因になっていた日米の金利差が縮小するとの見方から、円相場は一時5円ほど円高が進み、1ドル=131円台になりました。円高で輸出企業を中心に企業業績が悪化するとの懸念も広がり、日経平均株価は一時9約00円下がりました。 日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は「金融緩和の効果を円滑にするためのもので、利上げ、金融引き締めではない」と説明していますが、金融政策の誘導目標である長期金利の水準を引き上げただけに、金融市場の関係者は「事実上の利上げ」と受け止めているのです。 異次元緩和で日本経済の好循環を生み出そうという狙いは10年近くたっても実現できていません。日銀が長期金利を抑え込むために行ってきた国債買い入れは大きく膨らみ、発行済み国債の5割以上を日銀が保有する異例の状況になっており、日銀の内部でも政策転換論が浮上しているといいます。黒田総裁の任期は来年春まで。今回の政策修正が「ポスト黒田」への出口戦略の一歩、との見方もあります。 ●もうけ復活へ? 銀行の株価は急上昇 私たちの生活や企業にはどんな影響があるのでしょう。10月の消費者物価は前年に比べ3.6%上昇し、日銀が目標にする2%を大きく上回る水準でした。日銀は、来年度半ばには輸入インフレが落ち着き、上昇率が低下するとみています。ただ、住宅ローンや企業の借金の金利は長期金利を参考に決まっているので、長期金利が上がれば個人や企業の負担が増える可能性があります。企業の設備投資などが鈍って景気が減速するかもしれません。 円安の恩恵を受けて最高益をたたき出した多くの輸出系企業にとって、利上げと円高は逆風になりかねず、多くの企業の株価は急落。一方で金利が上がれば貸出金利と預金金利の利ざやによるもうけが復活する銀行業界の株価は20日、業績回復への期待感から急上昇しました。ほかにも、円安によるコスト増に苦しんできた内需型の企業にとっては、追い風になる可能性があります。日銀による金融政策で上下する円相場は、企業の業績を大きく左右します。みなさんの志望企業が輸出中心か、内需中心かで影響は全く異なります。企業研究の一環として調べてみましょう。 |
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●円相場 値上がり 日銀の金融緩和策の修正受け 12/21
21日の東京外国為替市場、日銀が20日に突然、金融緩和策を修正したことがドル売り円買いを招き、円相場は値上がりしました。債券市場では長期金利が7年5か月ぶりの水準まで上昇しました。 日銀が21日に長期金利の変動幅を0.5%程度まで引き上げたため、外国為替市場では日米の金利差の縮小が意識されて円高が加速しました。 円相場は20日のニューヨーク市場で、およそ4か月半ぶりに1ドル=130円台まで値上がりしたあと、東京市場では131円台から132円台の円高水準で取り引きが続き、午後5時時点の円相場は、前日と比べて83銭円高ドル安の1ドル=131円75銭〜78銭でした。 また、ユーロに対しては、前日と比べて61銭円高ユーロ安の1ユーロ=140円9銭〜13銭でした。 ユーロはドルに対して、1ユーロ=1.0632〜34ドルでした。 一方、日銀が長期金利の変動幅を0.5%程度に引き上げたことに債券市場も反応し、長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りは、21日、2015年7月以来およそ7年5か月ぶりに0.480%に上昇しました。 市場関係者は「きょうは売られたドルを買い戻す動きもみられたが、日米の金利差の縮小が意識され、円高が進みやすい状況になっている」と話しています。 |
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●ドル/円、今年の円安が半分以上消えた・・・日銀が突然利上げ! 12/21
今年のドル/円の安値は1月24日の113.47円、高値は10月21日につけた151.95円だ。高値と安値の50%(半値)は132.70円。そしてこの日の終値は131.71円。9ヵ月もの期間をかけてせっせと積み上げてきた円安貯金は、たった2ヵ月でその半分以上が消えてしまった。 12月20日(火曜)のドル/円は大幅に「円高」。 1日のレンジは130.57円から137.48円。値幅は6.91円。 2022年252営業日目は136.79円からスタート。いつものように日銀会合は無風通過との思い込みでドル/円の押し目買いが優勢となり、東京時間昼前に前日の高値(137.16円)を超え137.48円をつけた。 ところが、日銀が「事実上の利上げ」を決定したことに不意打ちを食らったドル/円は137円台から一気に133円まで急落。海外市場でもじりじりと値を下げ続け、未明には130.57円をつけた。終値はやや円安に戻して131.71円(前日比▲5.22円)。 日本銀行は20日の金融政策決定会合で、突如として大規模金融緩和政策の修正を決めた。2016年9月から導入しているYCC(イールドカーブ・コントロール)の、0%程度に誘導している長期金利(10年国債金利)の上下の変動許容幅を、従来の0.25%から0.5%程度に拡大する。 短期の政策金利(日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用)は据え置いたが、日銀が長期金利の上昇を認めたことで、事実上の利上げと受け取られた。 日銀のこの政策変更は、市場とのコミュニケーション不足によってFX市場や金利市場、そして株式市場を必要以上に不安定にしたとの批判もある。 |
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●『利上げか、利上げでないか』論争が続く日銀のYCCの柔軟化措置 12/21
●メディア、金融市場は「事実上の利上げ」と評価 日本銀行が12月20日に決定したイールドカーブ・コントロール(YCC)の長期国債利回りの変動幅拡大は、金融市場に大きな衝撃を与えた。YCCの柔軟化策自体は、金融政策の柔軟性を高め、金融緩和の副作用を軽減するものと評価したい。ただし、サプライズ戦略がとられた2016年1月のマイナス金利導入決定時と同様に、直前まで否定していた政策を突如実施したことで、市場に大きな混乱を生じさせたことは問題だ。 為替市場では、海外時間に移ってからも円高ドル安の流れが続き、円は一時1ドル130円台を付けた。今年8月以来の円高水準である。1日の変動幅は7円にも達したが、これは、10年国債利回りが0.2%台から0.4%台まで上昇したことだけの影響としては、やや大きかったとの印象である。YCCの長期金利変動幅拡大が、さらなる追加措置につながるもの、との認識が市場にあるためだろう。 翌21日の主要各紙には、「異次元緩和を転換」、「実質利上げ」、「事実上の利上げ」などの見出しが見られた。日本銀行は2%の物価目標の達成を目指した金融緩和の枠組みを堅持しており、黒田総裁は今回の措置が利上げでなく、また出口戦略の一環ではないことを強調したが、そうした考えは金融市場やメディアには受け入れられていないのである。 ●最初に「実質利上げ」と説明したのは日本銀行 YCCの長期国債利回りの変動幅拡大は、2016年9月にYCCが導入されて以降、段階的に実施されてきたことを踏まえれば、今回の措置も実質利上げではなく、YCCの一連の柔軟化策の一環と言える。 しかしながら、今回の措置が「実質利上げ」と評価されるのも、また理解できるところだ。YCCの変動幅拡大を通じた長期国債利回りの上昇を「実質利上げ」と説明し、景気を悪化させることから実施しないと説明してきたのは日本銀行自身であるからだ。それが、今回の措置について日本銀行は、「利上げではない」、「経済に悪い影響を与えない」と説明していることは、多くの人を大きな混乱に陥れている。 ●「実質利上げ」の名に値するかどうか 実際には、「実質利上げ」との表現が妥当となるかどうかは、10年国債利回りがどの程度の水準で落ち着くかによるだろう。新たな変動幅の上限である0.5%近辺に張り付くようであれば、実質0.25%ポイントの利上げと言えるかもしれない。 ただし、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ姿勢の変化を受けて、米国の長期国債利回りが低下基調にある中、その影響を受けて日本の10年国債利回りも0.3%台などに落ち着くかもしれない。その場合には、利回りの上昇幅は比較的小幅にとどまり、「実質利上げ」の名に値しないかもしれない。 他方、「実質利上げ」かどうかの基準を、景気抑制効果という観点で考えれば、10年国債利回りの上昇幅が最大0.25%ポイントとなっても、経済に与える悪影響は比較的小さく、「実質利上げ」の名に値しないかもしれない。 ●経済への影響は円高を通じたチャネルがより重要に 今回の措置が経済に与える影響を考える際には、10年国債利回りの上昇を通じた影響よりも、円高を通じた影響の方がより重要だろう。円高は、輸入物価の押し下げを通じて個人消費には追い風となる。他方で、急速な円高となれば、輸出企業の収益や競争力を悪化させ、設備投資や雇用に打撃を与える。さらに、円高進行は株価の下落をもたらし個人消費にも悪影響が及ぶ。 緩やかな円高であれば経済への悪影響は限られるが、急速な円高となれば、急速な円安と同様に経済には打撃となる。この点から、今回の措置が急速な円高につながるのであれば、それは「実質利上げ」の効果を生じさせると言えるのではないか。実際のところ、その可能性は小さくないだろう。 ●円の中長期のトレンドは実質値で円安、名目値で円高 貿易相手国との物価格差を調整し、日本企業の価格(国際)競争力を示す実質実効円指数は、90年代以降、下落傾向で推移している(図表)。これは、日本の国力低下、技術力の低下などを背景としていることが考えられる。 他方、日本のコアCPI(消費者物価)上昇率の過去20年の平均値は、米国よりも2.4%ポイント低い。購買力平価の考え方に照らせば、ドル円レートの名目値は、年間2.4%程度の円高のトレンドにあると考えることができる。 一方、同様に過去20年間の実質実効円指数の低下ペースは、年間1.8%程度である。この点から、円の中長期のトレンドは、実質値では1.8%程度の円安、名目値では0.6%程度(2.4%−1.8%)の緩やかな円高と考えられる。 ●過去10年の過度な円安は修正へ ただし、過去10年の実質実効円指数は、10年移動平均値から大きく下方に乖離しており、均衡水準よりも円安水準が維持されてきたことが分かる(図表)。これは、2013年に導入された日本銀行の金融緩和の影響と、今年のFRBの急速な利上げの影響の2つが重なったものだ。そして、足元ではFRBの利上げ姿勢の変化が意識され始めたことに加えて、今回のYCCの柔軟化措置によって、先行きの日本銀行の金融政策の正常化も意識され始めたのである。この2つの要因がともに変化し始めたことから、過去10年にわたる過大な円安は修正される方向にあると考えられる。 実質実効円指数の10年移動平均値から推察されるドル円レートの均衡値は、1ドル110円程度である。FRB、日本銀行ともに政策修正が意識され、また実行される中では、この1ドル110円程度が向こう数年の円の戻りの目途となるのではないか。 ●金融政策の正常化観測定着で円高進行 来年4月に日本銀行が総裁交代で新体制に移行しても、マイナス金利解除などの正常化措置は、直ぐには実施されないことが見込まれる。景気情勢が悪化し、円高リスクが高まる中、日本銀行は短期金利の引き上げには慎重となるはずだ。特に、FRBの利下げが意識される中で日本銀行が短期金利を引き上げれば、逆方向となる金融政策が急速な円高ドル安を生じさせる可能性があり、それは金融政策の選択肢とはならないだろう。 日本銀行のマイナス金利解除は2024年半ば以降と現時点では見ておきたいが、「実質利上げ」と広く受け止められた今回のYCCの柔軟化措置によって、金融政策の正常化観測は今後金融市場に定着することになるだろう。それは円高進行のリスクを高め、来年年末に円は1ドル120円にまで達するとみておきたい。2024年には、さらなる円高が見込まれる。 |
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●住宅ローン金利や物価はどうなる? 金融緩和修正は暮らしにどう影響する 12/21
日銀が大規模な金融緩和策を修正し、長期金利の上限を従来の0.25%程度から0.5%程度に引き上げると決めました。事実上の利上げとみられますが、暮らしにどんな影響が出るのでしょうか。 ●Q 金利が上がれば住宅ローン金利にも影響が出ますか。 A 住宅ローン金利は固定と変動があります。影響が出るのは長期金利を参考にして決まる固定で、これから借りる人が対象です。世界的な金利上昇を受け、金融機関は先取りする形ですでに固定金利を上げ始めています。今回の政策修正は1月以降に反映され、固定金利の上昇に拍車をかける可能性があります。 ●Q 変動金利はどうでしょうか。 A 変動は短期金利を参考にして決まります。今回の修正で直ちに上昇することは考えにくいです。ただ、修正をきっかけに日銀が利上げを進めれば、将来的に短期金利が上昇することも考えられます。 住宅ローンの基準金利(店頭金利)から、一定の条件を満たした場合に一定幅を引き下げる「優遇幅」を設けている金融機関も多いです。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎さんは、長期金利の引き上げで、「金融機関がこうした『優遇幅』を縮小するなどすれば、間接的に変動金利に影響する」と話します。 ●Q 企業の借入金利への影響は。 A 企業は、工場建設などの設備投資や資金繰りなどで金融機関から借り入れており、借入金利が上がればコスト増となります。また「将来負担が増えるのでは」という不安感などから、設備投資などを見送る動きが出るかもしれません。 ●Q 財務基盤の弱い中小企業が心配です。 A 新型コロナ禍で実質無利子・無担保の資金支援を受けて踏みとどまってきたような中小企業は、利上げのインパクトは大きく、資金繰りに行き詰まり破綻することも警戒する必要があります。 ●Q 期待されるメリットはありますか。 A 今年大幅に進んだ円安は、日米の金利差の拡大が一因でした。今回の修正は金利差の拡大ペースを落ち着かせ、円安進行に一定の歯止めとなりそうです。原材料など輸入品を中心に上昇一辺倒だった物価にもブレーキがかかるとみられ、電気料金などエネルギー価格も「3カ月以上の時間差はあるが、値上げ圧力を弱める効果が期待できる」(第一生命経済研究所・熊野英生さん)としています。 |
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●日銀の金融緩和修正で市場との対話に課題−「信頼失った」との苦言も 12/21
日本銀行が20日に踏み切った想定外の金融緩和政策の修正は市場との対話に課題を残した。市場関係者の間では、日銀の市場とのコミュニケーションの欠如を指摘する声が相次いでいる。一方で、一段の政策修正もあり得るとして、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の廃止も指摘されている。 日銀が金融政策決定会合で決めた長期金利の許容変動幅の拡大は、世界的な物価上昇や円安が急速に進行する中で、以前から政策修正の手段として市場が想定していたメニューの一つ。しかし、会見や国会答弁などで可能性を問われた黒田東彦総裁ら日銀幹部は事実上の利上げであり、金融緩和効果を阻害するとして否定的な見解を繰り返していた。 黒田総裁は会合後の記者会見で、変動幅の拡大決定について「市場機能を改善し、緩和効果をより円滑に波及させる」ことを理由に挙げ、「利上げではない」と繰り返した。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは、前言撤回とも言える発言に、日銀は「コミュニケーションに関する信頼を失った」と苦言を呈した。 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員も、「黒田総裁の発言をもう誰も信じない」とし、「これは日銀にとって大きな損失だ」と指摘する。 決定を唐突と受け止めた直後の市場では長期金利と円相場が急上昇し、株式相場は大きく下落した。翌日も債券市場で新発2年国債利回りが約7年ぶりにプラス圏に浮上。事実上の利上げと受け止めた市場では、さらなる政策修正に対する臆測が広がっている。 ●マイナス金利解除も ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦エコノミストは、「日銀が市場機能改善の必要性を従来よりも大々的にフィーチャーしてきた点に鑑みれば、マイナス金利政策の解除を実施する可能性は以前より相応に高まった」と分析。市場機能改善を目的とした変動幅の拡大は今回が最後とみているが、次の政策変更は「長短金利政策目標の変更、もしくはYCCそのものの解除という大きなものとなる」と予測している。 長期金利をターゲットにするYCCは事前に市場に織り込ませようとすると、長期金利を必要以上に不安定化させ、金融市場調節を困難にする可能性が大きい。元日銀理事でみずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫エグゼクティブエコノミストは、「YCCを変更する決定はサプライズにならざるを得ない。次のステップではYCCの廃止を検討する可能性もある」とみている。 日銀がこのタイミングで政策修正に踏み切った背景には、来年4月8日に黒田総裁が任期満了を迎えることから、新体制下での金融政策運営の自由度を確保するためとの見方が多い。 SMBC日興の丸山氏は、「事実上の脱YCCを開始したことで、2023年における日本銀行の金融政策運営は自由度が広がる」と指摘。新体制における金融政策の点検・検証や、政府との共同声明の見直しを急ぐ必要は薄れたとしている。 IMFアジア太平洋局局長補で日本担当ミッション・チーフのラニル・サルガド氏は声明で、「日銀のYCC修正は、賢明な措置だ」と評価した。一方で、「金融政策の枠組みを調整する条件に関する意思疎通が改善されれば、市場の観測を抑え、日銀のインフレ目標達成に向けたコミットメントの信頼性を強化するのに役立つだろう」と述べ、情報発信が最適ではないことを示唆した。 20日の会見で市場とのコミュニケーションについて問われた黒田総裁は、「金融資本市場や経済・物価の動向が変われば、それに応じたことをやるのは当然」としつつ、「金利の引き上げでないということは十分市場関係者にもお伝えしたい」と語った。 |
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●日銀がついに金融緩和政策修正 / 変動金利上昇に備えての対策は 12/22
日銀は12月20日に開いた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和政策の修正を決めた。これまで超低金利の恩恵を受けていた住宅ローンだが、仮に変動金利が大きく上昇したら、あなたはローンを返せるだろうか? 変動金利が上昇したときの対処法を専門家に聞いた。 ●ついに日銀が動いた! 超低金利国・日本。その低金利の恩恵を受けているのが住宅ローンです。民間金融機関で住宅ローンを借りた場合、全期間固定金利なら0.9〜1.8%程度、変動金利なら0.3〜0.7%程度で借りられます。 しかし昨今、諸外国での金融引き締めの影響によって「住宅ローンの変動金利が急激に上がるのでは?」という心配がされているのも事実です。 そして12月20日、日銀は金融緩和を見直し、長期金利の上限を従来の0.25%程度から0.5%程度に変更するとしました。突然の発表に驚いた方も多いことでしょう。 今まさに変動金利でローンを借りている人は、どう対応したらよいのでしょうか。また、これから住宅を購入しようとしている人は、今購入しても本当に大丈夫? 複数物件を所有する不動産オーナーであり、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の風呂内亜矢さんにうかがいました。 ●「住宅ローンの変動金利が今すぐ急に上がる」…は嘘⁉ ――欧米を中心に金利の引き上げが行われています。その影響で「住宅ローンの変動金利が大きく上がるのでは?」という声も聞きますが、それは本当なのでしょうか。 風呂内 難しいところですが、金利が急上昇する可能性はかなり低いと思います。金利を上げるべき局面では、国内で物価や給与などが上昇し、景気が過熱しているのが一般的です。しかし今の日本では、物価上昇は起きていても給与水準は上がらず、景気もよくありません。 また、日本は国債を多く発行しているので、その利回りが上がるのは好ましくないでしょう。今金利がすぐに大きく上げられてしまうた要素は少なく見えます(※)。 ※2022年12月20日に行われた日銀の金融緩和見直しで、長期金利の変動幅が±0.25%から±0.5%に拡大。固定金利の住宅ローンについて新規借入金利が上がる可能性が出てきました。今回は長期金利のみの見直しのため、直近での変動金利の住宅ローン金利への影響は少ないと考えられます。 ――ということは、変動金利の利用者はしばらく安心していてよいと…? 風呂内 そこまではいえないですね。そもそも変動金利は「変動する可能性が常にある仕組み」なので、金利変動リスクは否定できません。今は金利がどんどん上がっていくような可能性は低そうだけれど、絶対に上がらないとはいえないのです。 そのため「もし金利が上がったら返済できるのか」ということは下調べしておく必要があると思います。 ●返済額は125%しか上がらない。 その代わり「未払利息」が発生するかも ――金利の上昇に耐えるために、まず何から確認したらよいのでしょうか。 風呂内 まず確認してほしいのが、変動金利の見直しルールです。ここでは、多くの方が利用している「元利均等返済」という返済方法のルールを説明します。 変動金利は通常半年ごとに金利が見直されます。一方、返済額は5年間固定され、5年経ったあとに返済額が変更されます。つまり、金利と返済額が変わるタイミングは異なることが多いのです。また、返済額が増える場合でも、前回の返済額の125%までしか上がらない「125%ルール」が適用されています。 ――125%ルールがあると、返済額が極端に増えることがないので安心できる気がします。デメリットはあるのでしょうか。 風呂内 毎月の返済額の内訳は、借りたお金の「元金部分」と、金利によって変わる「利息部分」とで構成されています。変動金利が上がった場合、利息の割合が増えて元金の割合が減り、なかなか元金が減らないという状態に陥りやすくなりますね。 金利の上昇が激しく継続した場合などでは、月々の返済額では元金の返済までたどり着かず、利息部分も全額返済できないケースもあり得ます。そうして返せなかった元金はもちろん、利息も「未払利息」となり、返済義務が残ってしまうのです。 未払利息は、その後金利が減少して返済額内の割合に余裕ができたら支払いが進みますが、最悪の場合は完済時まで残ることがあるため、注意しておくとよいでしょう。 ●変動金利が上がっても困らないために、今できること ――もし変動金利が2%まで上がったら、どれくらい返済額が増えるのでしょうか。 風呂内 例えば、あなたが5,000万円の35年ローンを組み、変動金利が0.3%だったとします。現状の返済額は12.5万円です。 そのあと3年経過後に変動金利が2%まで上がった場合、本来の返済額は約16.1万円になります。しかし125%ルールがあるので、実際は15.6万円に抑えられます。以前よりも3.1万円アップです。 こういった返済額のシミュレーションは、家電量販店などで販売されている「金融電卓」や、インターネット上の試算サイトで計算できます。金融電卓は積み立てなどの複利計算もできるので何かと便利ですよ。まずは試算して、金利が上がったときに耐えられそうか確認してみてください。 ――金利上昇に備えて、他にできることを教えてください。 風呂内 今できることは、主に2つあります。 1つ目は、資金の余裕を作っておくことです。住宅ローンを借りる際、変動金利にするか固定金利にするかで迷いませんでしたか? もし上記の条件で1.0%の固定金利で組んでいたとしたら、毎月の返済額は14.1万円でした。 「本来は14万円ほど支払っていたのだから、毎月1.5万円は貯金しておこう」などと考え、多めに貯蓄しておくのがおすすめです。そして金利が上昇したタイミングで繰り上げ返済を行えば、返済額を下げたり未払利息の発生を防いだりできますよ。 2つ目は、固定金利の推移をチェックしておくことです。変動金利が上がってきた場合、固定金利への変更を考えると思いますが、実は、変動金利よりも固定金利の方がまめに調整されています。そのため「いざ固定金利にしようと思ったら、固定金利も相当上がっていた…」ということが起こり得るのです。 よって変動金利だけでなく固定金利の推移も定期的に確認しておき、金利上昇の気配を感じたら、固定金利への変更を本格的に検討するとよいでしょう。 ――これから住宅購入を検討している人もいますが、今は購入してよいタイミングなのでしょうか? 風呂内 購入するタイミングは、住宅価格や住宅ローン金利の動向、住宅ローン控除の変更などの「外的要因」よりも、その人のキャリアや家庭環境、住宅に求める要素などの「内的要因」によって決めたほうがよいと思います。 例えば、都内の住宅価格は高騰しているため、買うには難しいタイミングかもしれませんが、住宅ローン金利は低い状況です。こうした状況を「買い時」だと捉えるかは、その人次第ですし、そもそもコントロールができません。また極端な話、どんなに外部要因がよい状況だったとしても、申込人が転職直後だったり病気をしていたりしたら、希望する金額は借りられないかもしれません。 住宅には「資産性」と「居住性」の二面があります。住宅を資産として捉えるなら、住宅価格が高いときに買うべきではないですし、住宅ローン金利は低いほうがよいでしょう。 しかしその家に住むことを重視するなら、自分のライフスタイルを叶えるエリアにあり、自分が満足できる物件なのか、自分の家計バランスを考えたときその住宅ローン返済額で妥当なのか、といったことを満たせば、自分にとってはよい選択になるでしょう。 「今、自分は家を買うタイミングなのか」「家に何を求めるのか」といった視点で検討してみてはどうでしょうか。 |
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●日本生命:超長期債投資増額を検討、日銀は正常化へ一歩と評価 12/22
日本生命の都築彰理事・財務企画部長は21日のインタビューで、日本銀行の長期金利の変動幅拡大を受けて超長期債投資の増額を検討する方針を示した。今回の政策修正は金融政策の正常化に向けた一歩と前向きに評価している。 都築氏は超長期債について、タイミングは別にして市場は一定程度政策修正を想定していたとして「われわれも含め国内機関投資家の需要もあり、金利がどんどん上がることは想定していない」と述べた。それでも30年債金利が1.5−2%に上昇すれば投資しやすいとして「低利の国債の入れ替えも含め、少し厚めに投資することも検討しなければならない」と語った。 日銀は20日の金融政策決定会合でイールドカーブコントロール(YCC)の長期金利許容幅をプラスマイナス0.25%から同0.5%に拡大した。市場では日銀の次のステップはマイナス金利解除との見方もあるが、都築氏は「あくまで金融緩和を続ける中での微修正」と冷静に受け止め、金融政策を平常に戻すための小さなステップだと評価した。 野村証券の中島武信チーフ金利ストラテジストは、日銀の突然の政策修正を受けてさらなる政策修正観測が高まる中、「生命保険会社が超長期債をしっかり購入する姿勢を示したことは他の投資家にとっても非常に大きな安心材料になる」と述べた。 ●景気減速と円高 都築氏は2023年について、世界的に景気が減速して為替も円高に振れるとみて、追加的な政策修正の「ハードルは高い」と予想した。米国のインフレが一段と進んで海外金利が上昇し、海外投資家が再びYCCへの攻撃を強めた場合、日銀がもう一度変動幅引き上げを検討する可能性はあるとしながら「今のところそこまで想定していない」と語った。 外国債投資には慎重姿勢を維持している。ヘッジコストが長期金利を上回る状態がしばらく続くとして「ヘッジ付き外債への投資は難しい」と語った。為替も来年にかけて円高を予想して、為替ヘッジなしのオープン外債も「なかなか投資が難しい」とした。 海外クレジット債投資はスプレッド(米国債に対する上乗せ金利)が結構乗っているとして「スプレッド込みの金利からヘッジコストを引いた金利が日本国債並みかそれ以上確保できるのであれば、分散投資の観点からも引き続き力を入れてやっていきたい」と語った。 |
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●金融緩和修正で不動産投資は要注意…相場調整なら「REITが買い・・・」 12/22
20日、日銀の金融政策決定会合で長期金利の上限を0.25%程度から0.5%程度に引き上げる金融緩和の修正が決まった。 「今後、さらに引き締められると、株や不動産に流れ込んだ資金が逆回転する恐れがあります。そのため1ドル=150円台まで進んでいた円安が133円台まで戻すなど、為替が敏感に反応しました」(経済ジャーナリスト) そんな中、岸田文雄首相の「資産倍増計画」によって実現しようとしているのが、少額投資非課税制度(NISA)の恒久化と投資枠拡大。家計の金融資産のうち約1100兆円の現預金を投資に振り向けようという意図で投資熱は高まっているが、株や不動産はいまだ高値圏で推移している。 低コストの投資信託の長期積み立て投資ならともかく、円安や低金利を背景に海外投資家から人気の不動産投資については、「金融緩和も実施から10年が経過し、そろそろ金利上昇を警戒すべき段階です」と、不動産アナリストの長谷川高氏も様子見を勧める。 来年4月に任期を終える日銀の黒田東彦総裁だが、後任が今後どの程度修正に舵を切るかは不明のため、不動産への影響は未知数だ。 「1990年代のバブル崩壊のように長期低迷するのか、リーマン・ショックのように比較的短期で回復するかは引き締めの度合いで変わってくるでしょう。今後の金利上昇で不動産相場が大きく調整すれば、REIT(不動産投資信託)が買いのチャンスかもしれません」(長谷川高氏) ●金融緩和修正で要注意の不動産投資 投資家から集めた資金で購入したビル、物流倉庫など、不動産からの賃料収入を分配する仕組みで、日本でも「J-REIT」が01年からスタート。 「REITは投信なのでNISAが利用できます。実物の不動産を買うより投資金額が少額で済み、分散が利いています。個人が投資するようなアパートよりも物件の規模やグレード感が圧倒的に優れていて、固定資産税などもかかりません」(長谷川高氏) 現在分配金の利回りは4%程度で、株と同様、価格は全体的にコロナショック前の8〜9割まで戻しているという。 「ミドルリスク・ミドルリターンといわれますが、リーマン・ショックやコロナショックの際は狼狽売りされているので、緩和の大幅な見直しがあれば同様の事態は免れないでしょう。これから購入するなら積み立て投資のように少しずつ買うことが賢明です」(長谷川高氏) とはいえ、REITも玉石混交。不動産が高騰する今、資産価値に疑問符がつく物件を、親会社から購入するなど“ゴミ箱”化しているREITもあるため、注意が必要だ。 |
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●日銀、実質利上げ 物価安定、後手に回った 12/22
日銀は大規模な金融緩和策を修正し、長期金利の上限を従来の0・25%程度から0・5%程度に引き上げる事実上の利上げを決めた。海外で金融引き締めが進む中、従来の大規模緩和は急速な円安の要因となり、物価高が進んで家計を圧迫している。日銀の対応は後手に回ったと言わざるを得ない。 円安是正が期待される半面、住宅ローン金利や企業の借入金利の上昇、国債の利払い費の増加などの影響も懸念される。今後もメリット、デメリットをよく見極めながら、状況に応じた効果的な金融政策を素早く講じていくことが求められる。 大規模緩和は2013年、安倍政権下でスタートした。短期金利をマイナス0・1%、長期金利を0%程度に誘導することが柱。海外発の金利上昇圧力により、長期金利は日銀が上限とする0・25%に張り付いて推移していた。今回は上限を0・5%程度とし金利上昇を認めた。 10月の消費者物価指数は前年同月比3・6%の伸びで、約40年ぶりの高い上昇率だった。インフレを抑制するため米欧の中央銀行は大幅利上げを進めているが、日銀は大規模緩和を維持。内外の金利差が円安を招き、輸入物価の高騰につながって家計や企業経営を直撃している。 日銀の責務は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することだ。多くの国民にとって、日銀の方針転換はあまりに遅かったのではないか。 大規模緩和で日銀は、長期金利の指標である10年物国債を無制限に買い入れ、超低金利を保ってきた。だが、国債金利の決定は本来市場に委ねるべきものだ。10年物国債は市場での取引が低調で、終日取引が成立しない日が相次いでいた。日銀の黒田東彦総裁は実質利上げの目的について「市場機能を改善」することを挙げた。さらなる機能改善の取り組みが求められる。 黒田氏は今回、長期金利の上限引き上げについて「利上げではない」と説明した。9月の会見では利上げに当たるとの見解を示し、「金融緩和の効果を阻害するので考えていない」と明言していた。説明を一変させた理由は明らかにしていない。 市場が予想していなかった「サプライズ」の実質利上げにより、円高が進み、長期金利が上昇、株価は続落した。黒田氏の一貫性のない発言は国内外の投資家やエコノミストの日銀に対する信用を低下させ、金融政策の効果を弱める恐れもある。黒田氏は方針転換についてしっかり説明し、市場と国民の理解を得る責任がある。 現在の国債残高は1千兆円超。日銀の保有分はその半分以上で、大規模緩和前の13年3月末比約5・7倍に上る。大規模緩和が政府の財政規律を緩めているとの指摘もある。大規模緩和からの出口戦略も視野に、今後の責任ある金融政策を政府と日銀は明示する必要がある。 |
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●円が131円台後半に反発、さらなる日銀政策修正リスクを意識 12/22
東京外国為替市場では円が1ドル=132円台半ばから131円台後半に反発。日本銀行による予想外の金融緩和策修正を受け、さらなる修正や政策変更の可能性が意識される中、円の押し目を買う動きが優勢となった。 野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは日銀政策修正の円相場への影響について、「日米の金利差縮小だけでいくと133円でも結構良いところだったが、想定よりもインパクトが大きくなっている印象」と指摘。「YCC(イールドカーブコントロール)撤廃などまで織り込まれてしまうリスクが意識されている」と話した。 日銀による長期金利の許容変動幅拡大を受け、円は20日に137円台から一時130円台まで急伸。その後円の上昇は一服し、21日の海外市場では132円台半ばまで小反落していた。 三菱UFJ銀行の鈴木悠太調査役(ニューヨーク在勤)は「135−137円台のロング(ドル買い・円売りポジション)の損切りはいったん130円のところで終わり」、日銀の決定についてもいったん消化したと説明。「ドル・円は大きく下落したので、自律反発的に132円台を回復したという印象」と話していた。 一方、今回の予想外の政策修正を受けて、市場では日銀政策に対する疑心暗鬼が広がっている。 みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストらは「日銀サプライズ」により、今後も追加修正期待が高まりやすくなったとし、ドル・円相場の予想をドル安・円高方向に修正したことをリポートで明らかにした。23年末の予想は122円で、従来は130円だった。 野村証の後藤氏は、今回の政策修正により「日銀に対するクレディビリティー(信頼性)が相当低下してしまっている部分がある」と指摘。日銀政策に関して円高的な思惑が高まりやすくなったことで「ドル・円が130円を割り込むタイミングが少し早まり、早ければ年内や来年の早い段階での可能性が高まっている」と話した。 |
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●物価上振れなら日銀の次なる政策修正観測に拍車も−23日に全国CPI 12/22
日本銀行による突然の金融緩和策の修正を受けて、市場には日銀の次の一手に対する思惑が広がっている。今後の物価の動向によっては、さらなる緩和修正の観測に拍車が掛かる可能性がありそうだ。総務省は23日に11月の全国消費者物価指数(CPI)を発表する。 生鮮食品を除くコアCPIの前年比上昇率は足元で日銀が物価安定目標で掲げる2%を大きく上回って推移している。ブルームバーグの調査によれば、11月は同3.7%(前月3.6%)とさらに伸びを高める見通し。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは20日付リポートで、12月には4%前後まで上がる可能性があるとの予想を示した。 大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、今後の物価の上振れは「海外勢を中心に、日銀によるさらなる政策修正の思惑を高めやすい」と指摘。政府の物価対策もあり、年明け以降は2%を割り込んでいく可能性はあるとしながらも、来年4月以降は公共交通機関の値上げやサービス価格の改定などで想定より物価が下がらない可能性があるとみる。 日銀は20日の金融政策決定会合で、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策における長期金利(10年国債金利)の誘導水準を0%程度に維持しつつ、変動許容幅を従来の上下0.25%程度から同0.5%程度に拡大することを決めた。事実上の利上げと捉えた市場では長期金利と円相場が急上昇し、株式相場は大幅に下落した。 黒田東彦総裁は決定会合後の会見で、YCC政策の運用を見直した理由について、市場機能の改善によって金融緩和の持続性を高めるためと説明した。上昇する物価動向と切り離すことで、「利上げではない」ことを正当化した格好だ。 黒田総裁は現段階で「2%の達成は見通せない」と繰り返したが、予想物価上昇率の上昇によって実質金利が下がり、景気刺激効果は強まっていると説明。「賃金・物価に動意が見られるようになってきたというのは事実」との見方も示した。先行きの物価動向次第では、賃金上昇を伴う形での2%物価目標の実現性が高まり、日銀の政策修正観測が強まる可能性がある。 日銀の現在のコアCPI見通しは2022年度こそ2.9%上昇だが、23・24年度はいずれも1.6%上昇と鈍化を見込んでおり、これが金融緩和を継続する根拠となっている。しかし、最近の物価動向は日銀の見通しから上振れているとみられる。鍵を握る賃上げ動向や足元の円高進行を踏まえ、1月中旬公表の新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示される物価見通しへの注目度も高まっている。 |
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●ドル・円は弱含みか、米減速懸念は一服も日銀政策にらみ円買い継続 12/22
22日の欧米外為市場では、ドル・円は弱含む展開を予想したい。米国内総生産(GDP)が底堅い内容なら、景気減速懸念のドル売り後退の見通し。ただ、日銀による一段の政策修正への思惑は継続し、円買い基調に振れやすい地合いとなりそうだ。 21日発表された米消費者信頼感指数は強い内容となり、前週から続いていた減速懸念のドル売りは収束。ユーロ・ドルは直近の高値圏である1.06ドル半ば付近から値を下げ、ドル・円は131円半ばから132円半ばに浮上した。ただ、本日アジア市場で日経平均株価や上海総合指数などアジア主要指数は強含み、株高を好感した円売りが先行。一方、米株式先物の堅調地合いで、ドルはリスクオフの売りが優勢となった。 この後の海外市場は手がかりが乏しいなか、景気動向が注視される。米7-9月期GDPは3期ぶりにプラスへ浮上し、今晩の確定値は上方修正の改定値から横ばいの見通し。21日の消費者信頼感同様、景気減速懸念を弱められればドル売りは縮小しそうだ。ただ、日銀は金融政策決定会合で長期金利の許容変動幅を拡大しており、目先も緩和政策縮小を進めると警戒される。円買い圧力が続き、主要通貨を下押しするとみられる。 |
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●日銀、なぜ突然「緩和修正」を決定? 酷評あっても「日銀の作戦勝ち」 12/23
年末で金融市場が閑散とする中、日銀は予想外にイールドカーブコントロール(YCC)の修正に踏み切った。筆者の知る限り、今回の政策修正を事前に予想していた市場関係者はいなかった。ニュースヘッドラインを“二度見”した市場関係者が多かったことは容易に想像がつく。日銀が政策修正に踏み切った背景とは。そして2023年の金融政策はどうなるのか。 ●10年金利の変動幅を拡大、金融環境への悪影響を危惧 今回の決定はあくまでYCCの「修正」であり、政策金利の誘導目標そのものを「変更」するものではなく、短期金利はマイナス0.1%、長期金利は0%程度で据え置かれた。今回、修正が施されたのは10年金利の「変動幅」である。従来のプラスマイナス0.25%とされていたものが今回プラスマイナス0.50%へと拡大された。 念のため解説しておくと日銀が定める10年金利の誘導目標は「0%程度」、その「程度」の定義が今回「プラスマイナス0.50%」に変更されたというわけだ。政策修正の狙いの一つに、市場機能の復活がある。 2022年入り後、海外の主要中央銀行が金融引き締めを急ぐ中で世界的に長期金利が上昇していたのをよそに、日本の10年金利は日銀が上限と定める0.25%で頭打ち感となっており、本来の意味での “金融市場”から隔離された状態になっていた。 通常、長期金利はその国の体温(≒経済・物価動向)を示すものであるが、それがYCCによって著しく機能が損なわれているとの指摘は多くあり、日銀自身もそれを自覚していたことから、長期金利の変動幅拡大に踏み切ったとみられる。 日銀は今回の決定の背景について「債券市場では、各年限間の金利の相対関係や現物と先物の裁定などの面で、市場機能が低下している。国債金利は、社債や貸し出し等の金利の基準となるものであり、こうした状態が続けば、企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼすおそれがある」と記載し、YCCによる市場機能低下を認めた。 ●黒田総裁「利上げではない」と強調 長期金利の変動幅拡大は事実上の利上げに相当するが、黒田総裁は記者会見で「利上げではない。金融引き締めではまったくない」と繰り返し、また声明文にも「金融緩和の持続性を高める」目的であるとの旨が明記された。 端的に言えば、「事実上の利上げはしたけれども、それによって緩和的な金融政策が長く続けられるようになるのだから、そう考えれば金融引き締めではない、むしろ緩和的だ」という論法だ。 こうした情報発信は日銀が過去に引き締め方向の政策修正(たとえば2021年3月のETF買い入れ方針変更)を決定した際にも用いられていたからもはや驚きはないが、改めてその説明が「巧」であることを痛感させられた。今後、日銀がマイナス金利の撤回を含めた金融引き締め方向への政策変更に踏み切る際は、こうした巧みな説明で過去の発言と整合性を確保していくとみられる。 ●なぜ突然、金融緩和修正が決まったのか? 今回の決定はその唐突感が話題となった。予想を外した専門家は「市場との対話を軽視している」あるいは「予測不可能な金融政策は中央銀行としての信頼を損ねる」などと酷評するが、筆者が思うに今回は日銀の作戦勝ちである。というのも、YCCの修正は「いきなり感」が不可欠であるからだ。これは(国債を買い入れる)オペ運営の実務を考えれば当然である。 事前に市場参加者とのコミュニケーションを重ねることは金融政策の常道であるが、YCC(長期金利コントロール)に限っては、事前に利上げ観測が広がってしまうとオペに売りが殺到してしまい、かえって混乱を招いてしまうという事情があるためだ。もし、仮に今回の政策修正が1カ月前に予測可能な状態になっていたとしたら、国債を保有する投資家は可能な限り多くの国債を0.25%の利回り(≒高い債券価格)で日銀に売却したはずであり、オペが持続不可能になっていた可能性がある。 「黒田総裁の任期中に政策変更はないだろう」というある種の油断がまん延していたこのタイミングを逃さなかった日銀が一枚上手だったと筆者は考える。今後、YCCの10年金利操作を撤廃あるいは引き上げるタイミングは、多くの市場参加者が油断する時になるのではないか。 ●2023年新体制の日銀、次の注目点は○○ では、来年日銀は新体制でどういった方向にかじを切るのか。まずポイントになるのは新型コロナウイルスの感染状況にひもづいている現在のフォワードガイダンス(将来の政策指針)を修正するタイミングだ。 「当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。」 これは新型コロナウイルスまん延の初期段階にあたる2020年4月のパニック時において緊急対応的に導入されたものである。今後、日本でも欧米のような経済活動再開が期待される中、いつまでもコロナを理由とする緩和継続方針を掲げておくことは正当化されなくなるだろう。新総裁は着任早々にこのフォワードガイダンスを見直し、その時の賃金・物価情勢を踏まえ、金融政策を策定していくとみられる。 筆者は2023年の賃金・物価動向が、日銀の政策転換を促す方向に動くとみている。その点で注目しているのは企業の価格設定スタンス。中でも筆者が重視する非製造業の販売価格判断DIは大企業がプラス28、中小企業がプラス26と共にバブル時の頂点に比肩する勢いで上昇し、値上げの裾野拡大を印象付ける領域に達している。 これまで企業はコストプッシュ型のインフレに直面した際に十分な価格転嫁ができず、結果的にそれは賃金の下押し要因になってきたが、深刻な人手不足と投入物価の上昇に直面する企業は、最後まで値上げを我慢してシェアを守ろうとする消耗戦に距離を置き始めたようにみえる。 人手不足が構造的な色彩を帯びる下で、一人あたりの賃金は上昇基調を強めており、今や毎月勤労統計の所定内給与は前年比プラス1%を安定的に上回るようになってきた。もちろん春闘の結果次第ではあるが、2023年もこうした賃金上昇を伴った物価上昇が観察されるようだと、日銀は出口戦略にかじを切る可能性が高まる。 新総裁が決まっていない現状、正確な予想を示すのは難しいが、23年春〜夏ごろにはマイナス金利撤回に向けた議論が本格化しているのではないか。 |
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●過去最大更新の23年度予算、日銀緩和修正で超低金利依存から脱却急務 12/23
政府は23日、過去最大規模となる2023年度当初予算案を閣議決定する。日本銀行による予想外の政策修正を受けて市場は来年以降の利上げを織り込み始めており、異次元緩和による超低金利に依存した財政政策からの脱却が急務となる。 ブルームバーグが入手した資料によると、23年度予算案の一般会計総額は114.4兆円程度と防衛費を中心に22年度当初予算から約6.8兆円増え、11年連続で過去最大を更新。税収の増加で新規国債発行は35.6兆円程度と22年度当初の36.9兆円から抑制するものの、国債残高の累増に伴い、国債費は25.3兆円程度と22年度当初から0.9兆円増える見通しだ。 日銀は20日、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策における長期金利(10年国債金利)の誘導水準を0%程度に維持しつつ、許容変動幅を従来の上下0.25%程度から同0.5%程度に拡大した。黒田東彦総裁は「利上げや金融引き締めではない」としたが、唐突な政策修正だったこともあり、日銀が再び豹変(ひょうへん)するリスクを市場は意識せざるを得ない状況だ。 21日の債券市場では一時、2年国債利回りがマイナス金利導入前の15年以来のプラス圏に浮上。ブルームバーグのデータによると、先行きの金融政策に対する市場の見方を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS、2年)は0.25%程度と08年のリーマンショック直後以来の水準に上昇している。 S&Pグローバルマーケットインテリジェンスの田口はるみ主席エコノミストは、「日銀は利上げではないと言っているが、正常化に向けた流れだとの見方が市場で強まっている」と指摘。「そろそろ政府の方も国債費が増え続けていく可能性に注意を払うべき時期に来ている」との見方を示した。 財務省によると、日銀による金融緩和の長期化によって普通国債の加重平均金利は低下を続け、17年度末に1%を割り込み、21年度末は0.78%まで低下している。一方で国債の利払い費は2000年代半ばを底に緩やかな増加傾向にあり、超低金利下にもかかわらず、国債残高の累増が徐々に財政を圧迫しつつある。 金利が上昇しても発行済みの国債の表面利率は変わらず、利払い費が直ちに急増するわけではないが、残高1000兆円を超える国債が次第に高めの金利に入れ替わるインパクトは小さくない。財務省は、金利が予算編成上の想定(10年国債利回り)よりも1%上昇した場合、国債費は23年度に0.8兆円、24年度に2.1兆円、25年度に3.7兆円増加すると試算している。 「ミスターJGB(日本国債)」と称される財務省の斎藤通雄理財局長は8月のインタビューで、日銀の大規模な国債買い入れと超低金利政策が「未来永劫(えいごう)続くわけではない」とした上で、「発行当局としてできることは何か、何が残っているのか総点検を行い、市場を整備していく必要がある」と述べた。 来年の春闘で相応の賃上げが実現すれば、さらなる異次元緩和の修正も視野に入ってくる。仮に2%の物価安定目標の実現に近づいたにもかかわらず、日銀が緩和政策の継続に固執すれば、今度こそ「財政ファイナンス」との批判から逃れられない。政府と日銀は後手に回らないよう、金融市場の安定確保に向けた一層の連携が必要となる。 岸田文雄政権はこのほど、30兆円近い一般会計の追加歳出を伴う総合経済対策を取りまとめたばかり。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、今回の対策のような大きな財政拡大はなかなか続けられないとし、「長期政権をにらんで政権基盤を強くしていくならば、財政再建は必須だ」と語った。 |
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●動いた日銀 緩和修正を読む・・・ 銀行の灰色債権、60兆円超 12/23
日銀が大規模緩和の修正に動いたことで、過剰債務を抱える企業は利払い負担の増加という問題に直面する。破綻予備軍と呼ばれる要注意先向けの融資残高(銀行などの灰色債権)は今年、9年ぶりに60兆円を突破し、さらに膨れあがる可能性が高い。一方で、金利上昇は運用環境の改善や円安の抑止につながる。家計などへのプラスの効果も見逃せない。 灰色債権とは、返済条件の変更や元利払いの猶予などが必要になった企業(要注意先)向けの債権だ。金融庁によると、2022年3月末の残高が60.1兆円となり、新型コロナウイルス禍が広がる前の19年3月末と比べて15兆円、約3割増加した。新型コロナの長期化で企業の事業環境は厳しい状況が続いた。米リーマン・ショック後のピークの約70兆円に迫りつつある。 状況はさらに悪化する可能性がある。新型コロナ対策で導入した実質無利子・無担保融資(通称、ゼロゼロ融資)の返済と、日銀の政策変更を受けた融資金利の引き上げが二重の負担となるためだ。企業全体の債務残高は9月末で479兆円と約22年ぶりの水準まで膨らんでいる。 ゼロゼロ融資の返済は一部で始まっているが、23年から返済が始まる分の企業に要注意先が多いとされる。金融庁幹部は「今返済できている企業は余裕のある正常先。これから返す企業はそうではない。利上げが始まれば、不良債権化するリスクが高まる。23年は正念場の年だ」と語る。 灰色債権が企業の倒産などで不良債権に変われば、体力に劣る地域金融機関の経営を圧迫する。米長期金利の上昇(米債価格は下落)で、99地銀のうち6割が9月末時点で有価証券の含み損を抱えている。不良債権処理が追い打ちになれば、地銀の貸し出し姿勢などにも影響しそうだ。 もちろん、借金ゼロで現金などを潤沢に抱える企業にとっては、金利上昇は必ずしもマイナスではない。借り入れ状況などで企業の明暗が分かれる可能性が高い。 家計にはプラスの効果も期待される。10月末に1ドル=151円台まで下げた円相場は、米利上げの減速や日銀の緩和修正で130円近くまで戻した。円安が収まれば輸入物価の上昇にブレーキがかかり、家計の負担感は和らぐことになる。 みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介氏によると、円安が進んだ22年度は前年度比で9.6万円の負担増となる。ただ、日銀の緩和修正で円相場が130円程度で落ち着けば、23年度はもともと想定していた負担増(3.9万円)から、3000〜4000円程度の負担減に転じる可能性があるという。 運用環境も改善しそうだ。日本生命保険は15日、契約時に保険料をまとめて納める一時払い終身保険の予定利率を23年1月1日以降、0.25%から0.60%へ改定すると発表した。引き上げは約16年ぶり。予定利率が上がれば、同額の保険金を得るのに必要な保険料が少なくなる。たとえば60歳男性が保険金を500万円受け取る場合、現在は497万円を払い込む必要があるが、23年1月からは466万円で済む。 日銀が緩和修正を決める前から30年物の国債利回りなどが上昇したことによる措置だ。今後金利上昇が進めば、資産運用を目的に加入することが多い保険商品で似た動きが広がる見込みだ。明治安田生命保険も同様の商品で、16日に予定利率を0.43%から0.50%へ引き上げた。 銀行の預金金利は当面、据え置かれそうだ。日銀は長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げる一方、短期の政策金利はマイナス0.1%に据え置いたためだ。 銀行が支払う利息はゼロ金利政策を導入した1999年の年4兆8千億円から、足元では20分の1の約2400億円まで減少している。大規模緩和からの出口が本格化して預金金利が引き上げられれば、個人消費などにもプラスに働くとみられる。 |
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●日銀 10月金融政策決定会合で“政策変更は好循環妨げる”指摘 12/23
日銀がことし10月に開いた金融政策決定会合で、政策委員から、政策の変更は物価と賃金の好循環を妨げるリスクがあるといった指摘が相次いでいたことがわかりました。ただ、日銀は今月20日の会合で、一転して金融緩和策の修正を決めていて、修正の理由などについて丁寧な説明が求められることになりそうです。 議事要旨によりますと、会合では、すべての政策委員が、金融調節でのさまざまな工夫によって、国債の利回りの動きは日銀の方針に沿った形になっているという認識を共有したということです。 また、ある政策委員は「長期金利が変動幅の上限に張り付いていることは、市場機能にマイナスの影響を与える面もある」などと、金融緩和の副作用を指摘した一方、長期金利が低い水準で推移していることは経済に与えるメリットが大きいという見方も示しました。 そして、複数の委員から「中途半端な政策の変更は物価と賃金の好循環を妨げるリスクがあるため、時間をかけて粘り強く金融緩和を行う必要がある」といった意見が相次ぎ、このときの会合では大規模な金融緩和の維持を決めました。 ただ、日銀は今月20日に開いた会合で、一転して金融緩和策を修正し、長期金利の変動幅の上限を0.5%程度に引き上げることを全員一致で決めました。 この修正について日銀は金融引き締めではないとしていますが、市場からはこれまでの説明を覆したという指摘も出ていて、修正の理由などについて丁寧な説明が求められることになりそうです。 |
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●過去最大の23年度予算、日銀緩和修正で超低金利依存から脱却急務 12/23
政府は23日、過去最大規模となる2023年度当初予算案を閣議決定する。日本銀行による予想外の政策修正を受けて市場は来年以降の利上げを織り込み始めており、異次元緩和による超低金利に依存した財政政策からの脱却が急務となる。 ブルームバーグが入手した資料によると、23年度予算案の一般会計総額は114.4兆円程度と防衛費を中心に22年度当初予算から約6.8兆円増え、11年連続で過去最大を更新。税収の増加で新規国債発行は35.6兆円程度と22年度当初の36.9兆円から抑制するものの、国債残高の累増に伴い、国債費は25.3兆円程度と22年度当初から0.9兆円増える見通しだ。 日銀は20日、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策における長期金利(10年国債金利)の誘導水準を0%程度に維持しつつ、許容変動幅を従来の上下0.25%程度から同0.5%程度に拡大した。黒田東彦総裁は「利上げや金融引き締めではない」としたが、唐突な政策修正だったこともあり、日銀が再び豹変(ひょうへん)するリスクを市場は意識せざるを得ない状況だ。 21日の債券市場では一時、2年国債利回りがマイナス金利導入前の15年以来のプラス圏に浮上。ブルームバーグのデータによると、先行きの金融政策に対する市場の見方を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS、2年)は0.25%程度と08年のリーマンショック直後以来の水準に上昇している。 S&Pグローバルマーケットインテリジェンスの田口はるみ主席エコノミストは、「日銀は利上げではないと言っているが、正常化に向けた流れだとの見方が市場で強まっている」と指摘。「そろそろ政府の方も国債費が増え続けていく可能性に注意を払うべき時期に来ている」との見方を示した。 財務省によると、日銀による金融緩和の長期化によって普通国債の加重平均金利は低下を続け、17年度末に1%を割り込み、21年度末は0.78%まで低下している。一方で国債の利払い費は2000年代半ばを底に緩やかな増加傾向にあり、超低金利下にもかかわらず、国債残高の累増が徐々に財政を圧迫しつつある。 金利が上昇しても発行済みの国債の表面利率は変わらず、利払い費が直ちに急増するわけではないが、残高1000兆円を超える国債が次第に高めの金利に入れ替わるインパクトは小さくない。財務省は、金利が予算編成上の想定(10年国債利回り)よりも1%上昇した場合、国債費は23年度に0.8兆円、24年度に2.1兆円、25年度に3.7兆円増加すると試算している。 「ミスターJGB(日本国債)」と称される財務省の斎藤通雄理財局長は8月のインタビューで、日銀の大規模な国債買い入れと超低金利政策が「未来永劫(えいごう)続くわけではない」とした上で、「発行当局としてできることは何か、何が残っているのか総点検を行い、市場を整備していく必要がある」と述べた。 来年の春闘で相応の賃上げが実現すれば、さらなる異次元緩和の修正も視野に入ってくる。仮に2%の物価安定目標の実現に近づいたにもかかわらず、日銀が緩和政策の継続に固執すれば、今度こそ「財政ファイナンス」との批判から逃れられない。政府と日銀は後手に回らないよう、金融市場の安定確保に向けた一層の連携が必要となる。 岸田文雄政権はこのほど、30兆円近い一般会計の追加歳出を伴う総合経済対策を取りまとめたばかり。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、今回の対策のような大きな財政拡大はなかなか続けられないとし、「長期政権をにらんで政権基盤を強くしていくならば、財政再建は必須だ」と語った。 |