財政健全化 麻生大臣

財政健全化 

真面目に取り組みましたか ・・・
派閥間の葛藤 妥協の繰り返し 

日本人一人当たりの政府債務は1,200万円
国民には理解できません

 


〜2020 / 2016/2/122017/3/92018/3/30・・・
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● 〜2020

 

●衆院財務金融委員会 異常な大企業優遇税制  2016/2/12
日本共産党の宮本徹衆院議員は12日の衆院財務金融委員会で、法人税率を引き下げ、外形標準課税を拡大する政府・与党の「税制改革」について、「もうかっている一部の大企業の内部留保をさらにつみあげるだけだ」と批判し、大企業優遇税制の転換を求めました。
宮本氏は、安倍政権発足後の3年間で大企業の利益は大きく増えているが、賃上げには回っていない実態を指摘。大企業の資産構成では、機械などの有形固定資産が減り、有価証券や現金など手元資金が増えていることも示し、「法人税を減税しても、賃金にも、投資にも回らない」とただしました。
麻生太郎財務省は「労働分配率は下がっている。給与分をもっと上げなくてはおかしい」と認めました。
さらに問題なのは、安倍内閣は法人税率引き下げの財源として、資本金1億円以上の企業に対する外形標準課税を強化しようとしていることです。
宮本氏は、2万3000社が課税対象となるが、うち赤字企業が6400社だと指摘。「(課税強化で)赤字企業にさらに増税することになる。これで、どうして賃上げや投資が進むのか」と、政府・与党の「税制改正」の支離滅裂ぶりを批判しました。麻生財務相は「利益を稼ぐインセンティブ(刺激)は高まる」と開き直りました。
宮本氏は、経団連が「税制改正」について「基本的に評価できる」としていることを示し、「経団連の要望を丸のみした税制を進めるのは、やめるべきだ」と求めました。
第190回財務金融委員会第2号 2016年2月12日 議事録
○宮下委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。通告してないですけれども、先ほど宮本岳志さんから消費税のことがありましたので、初めにそのことだけお話しさせていただきたいと思います。麻生大臣は、多分、書かれた答弁書を読まれたということですのでそういうことだと理解しておりますが、私自身、予算委員会では初めに二つ聞いているわけですね。一人当たり及び一世帯当たりどれだけ増税になるのかということ。これはなぜ聞いたかというと、軽減、軽減と軽減税率のことを言うから、いや、軽減じゃなくてふえるんでしょうということを、どれぐらい痛みが来るのかというのを明らかにするために聞いたわけですよ。もう一つは、低所得者対策、低所得者対策と言うけれども、実際は低所得者ほど負担が重いじゃないですかと言うために、所得階層ごとの負担率をお伺いした。この二つは別々の質問なんですよ。ですから、私、事前の財務省への説明資料の提供も、それぞれ分けて要求したわけですよね。所得階層ごとの負担率がどうなるのかという資料ももちろん要求しました。同時に、一世帯当たり、一人当たりがどれぐらいふえるんですかというのも、質問の前日にお願いして、いただいたわけですよ。それが事実の経過なんですね。ですから、そういう点では、きょうはお役所の書かれた答弁書をずっと読まれているわけですけれども、あらかじめ三通りの試算をしておきながら、私に対しては家計調査で答えた。それはまずかったというので参議院で謝ったという点では、私の質問時間が無駄になったということですから、その点については、よくなかったということぐらいはお認めになっていただければなと思います。
○麻生国務大臣 今、御意見のあったところですけれども、このときの宮本先生の話で、飲食料品と新聞以外の税率を一〇%にした場合、収入に占める税負担率は現行の八%と比べてどれだけふえるのか、収入が二百万円から二百五十万円の世帯のケースと一千五百万以上のケースについてお答えくださいという質問に対しましたので、私どもとしては、家計収入というあのサンプル以外に使えるものがありませんので……(宮本(徹)委員「それは二問目です。その前に一問目に」と呼ぶ)
○宮下委員長 済みません。席での発言はちょっと控えてください。
財務大臣、よろしいですか。
○宮本(徹)委員 それは、私が予算委員会でした二問目の質問についてのお答えなんですよ。一問目は、所得階級のことなんて何にも聞かずに、一世帯当たり、一人当たりどれだけ負担増になりますかということを聞いて、何の前提もつけずに聞いています。それは、財務省に対しても何の前提もつけない資料をお願いして、財務省の方から、赤旗の計算とはちょっと違う資料が出ますけれどもいいですかと言われて、いいですよというふうに事前にお話をして出てきた数なんですよね。そういう経過なんですよ。
○麻生国務大臣 今、一問目、二問目というお話でしたけれども、私どもは、基本的には、収入階級別の数字に関するお尋ねがありましたので、そういった意味で、データの制約上、家計調査によらないとお答えできないという状況にありますので、総世帯平均もこれと整合的なものにせぬといけませんので。そういった関係から、家計調査に基づくということを申し上げているということであって、試算をお示ししたものだというふうに御理解いただけないと、ちょっと、こっちの部分とこっちは質問が違うけれども、この部分とこれとを整合的なものにするためには、このサンプル調査のこれをもとデータにしないと私どもできないということだと存じますが。
○宮本(徹)委員 そうすると、あらゆるものを所得別と整合性をつけなきゃいけなくなったら、今度は、参議院でした答弁をもとに戻さなきゃいけないという話になりますよ、麻生大臣、今の説明だと。違うわけでしょう。何の前提もつけずに私は聞いたわけですよ。一番初め、一問目は。これ以上やったら、私の初めの質問、時間がなくなりますので、そこは、改めてちょっとお役所の方ともちゃんと整理しておいていただければというふうに思います。それで、大臣所信について質問いたします。まず、法人税についてきょうお伺いしたいと思います。大臣は所信で、経済の好循環を確実なものとする観点から法人税率を引き下げるんだ、税率を引き下げることで、投資や賃金引き上げに積極的に取り組むように促す、こうおっしゃいました。ですが、現実の日本経済の動きは政府の説明とは異なっっているわけですよね。この三年間でどうだったのかということで、配付資料を見ていただければわかりますけれども、財務省の法人企業統計から、資本金十億円以上の大企業、ちょっと間違いがあるので、直しながら言います。一番上が経常利益ですね。二〇一二年度から二〇一四年度まで四四・一%の伸びです。上から二つ目、一三・九%伸びているのが配当金です。上から三つ目、五・六%伸びているのが、これは一人当たりの役員報酬です。ちょっとこれはグラフに書いている字が間違っているんですけれども、一人当たりの役員報酬。その次が、三・四%伸びているのが従業員給与の総額です。そして、一・三%、これは一人当たりにした場合の給与の伸びということになっています。これが十億円以上の大企業の、法人企業統計から出てきたものであります。そして、右側に内部留保の伸びも載せていますけれども、配当は伸びた、役員報酬も伸びているわけですけれども、一人当たり給与というのは、この間議論になってきたとおり、実質賃金で見ればマイナスという状況で、その中で内部留保は大きく積み上がるということになったわけですね。ですから、こういう大企業に対してさらに法人税率引き下げということをやっても、内部留保がさらに積み上がるだけなんじゃないですか。
○麻生国務大臣 これは宮本先生、たびたび私の方がいろいろなところでほぼ同じような御質問に対して同様の答えをしていると存じますが、課税ベースの拡大等により財源をしっかりと確保しながらということで、法人税を下げている分だけこっちでふやしている分がありますので、外形標準課税等々、そういったものをやらせていただいておりますので、確保しながら税率を引き下げるという点が一点。それから、法人課税をより広く負担を分かち合うという構造への改革にしていくもので、もうかっているところだけから取るというだけではなくて、いろいろインフラストラクチャー等々を使っておられますので、そういったものへと改革していくということであって、企業が収益率を高めてもらって、さらに設備投資とか賃上げ等々、積極的に取り組むようにしてもらうのはもちろんのことなんです。もう一つ、何もそちらにお教えする必要もないと思うけれども、労働分配率というのはもっと問題なんですよ、私に言わせると。これは、あなたに言う必要もいかがなものかと思うけれども、労働分配率というのは明らかに下がっていますよ。これは、さっきの銀行やら何とかにしたって、皆同じことを知っていたと思うけれども、労働分配率は昔、七七、八あったはずでしょう。今、六七、八まで下がっていませんか。一番最近の資料を知りませんけれども。私らのときとは随分違ってきていますので、こういった意味では、私どもは、さらに現金をため込むとか、さらに内部留保をふやすというのは、これ以上ふやして何をするんですかということを私どもがいわゆる経済界と話をし合ったときに私どもからたびたび申し上げてきたところであります。したがって、今回の、一月の四日でしたか、経済三団体の長の話は、いずれもその種に関しては、これまで政府にやってもらった、これからは民間がやる番なんだということで、給与の話や賃金の話は、それぞれ正月に話をしておられますので、それなりの効果は少しあったのかとは思いますが、今言われたように、給料の分をもっと上げなくちゃおかしいというのは、私どもも基本的にそう思います。
○宮本(徹)委員 給料を上げなきゃいけないというのはそのとおりだということですけれども、問題は、実際は、今度の法人税率の引き下げ、外形標準課税の拡大なんであります。基本的には、もうかっている大企業ほど減税になって、それ以外は増税になるということになっているわけですけれども、もうかっている大企業のところには、利益もあれば内部留保もあるわけで、賃上げするための体力が既にあるわけですよ。体力があるところに減税の恩恵をばらまいても、やはり内部留保がたまるだけだと思いますよ。やる気があればできるんだから。そういう点でいえば、減税をさらにそういうところにやっていくというのは本当におかしな話だと思います。そして、法人税率を引き下げたら設備投資に回るのかということで、大企業に限ってみても、内部留保は昨年七―九月期で見ても三百兆円を突破しました。問題は、どういう形で内部留保がふえているのかということです。この三年間で、資本金十億円以上の大企業について、有形固定資産と、固定資産のうち投資有価証券と手元資金、それぞれどういう動向になったでしょうか。お答えください。
○冨永政府参考人 お答え申し上げます。財務省の法人企業統計四半期別調査によりますと、金融業、保険業を除く資本金十億円以上の大企業につきまして、有形固定資産は、二〇一二年七―九月期では百三十五・八兆円、二〇一五年七―九月期では百三十・六兆円、次に、固定資産のうち有価証券につきましては、二〇一二年七―九月期では百八十三・八兆円、二〇一五年七―九月期では二百十七・五兆円、また、手元資金は、二〇一二年七―九月期では五十八・五兆円、二〇一五年七―九月期では六十四・三兆円となっております。
○宮本(徹)委員 今数字を示していただきましたけれども、結局、機械などの有形固定資産というのはこの三年間で見ても減っているわけですよね。一方で、有価証券や現金など金融資産がふえている。はっきり言って、内部留保が余剰資金になっているということが言えるというふうに思います。それから、これは質問しないですけれども、参議院調査室の興味深い資料も出されておりました。吉田博光氏の試算によりますと、法人実効税率を一%引き下げた場合の設備投資の促進効果は、一九八〇年代から九〇年代でも〇・二七%だ、だけれども、直近まで含めた推計でいくと〇・一九%に低下していると。なぜか。内部留保や配当金がふえて設備投資が伸びない構図になっているんだ、だから、こういう中で法人実効税率を下げても、経済を活性化する原動力としての効果が余り発揮されない、こういう指摘が参議院の調査室の方からも出ております。ですから、法人税率をどんどん引き下げても、賃金にも投資にも回らないということだと思うんですね。私がさらに問題だと思うのは、今回、法人実効税率を引き下げる財源として外形標準課税を拡大するということになっている問題です。赤字企業は増税になります。外形標準課税の拡大で増税となる企業数の見込み、これは資本金規模別にどうなるでしょうか。お答えください。
○時澤政府参考人 お答えいたします。今回の外形標準課税の拡大によります一社当たりの負担の増減につきまして、資本金階級別の課税標準を二十五年度課税実績をもとに機械的に試算をいたしますと、欠損法人につきましては、一社当たり、資本金一億円超十億円以下で三百万円の負担増、十億円超五十億円以下で一千五百万円の負担増、五十億円超百億円未満で二千九百万円の負担増、百億円以上で一億五千五百万円の負担増でありまして、全体では一社当たり一千六百万円の負担増というふうになります。総務省といたしましては、資本金階級別の課税標準の合計の数字は把握しておりますけれども、個別の法人データを有しておりませんので、負担増となる法人数を計算することは難しいものでございますが、欠損法人につきましては、今回税率を引き下げることとしております法人事業税所得割を負担しておりませんので、一般的には負担増となるというものでございます。なお、外形標準の対象となりますのが二万三千社ございまして、うち欠損法人六千四百社、内訳では、一億円超十億円以下が四千八百社、十億円超五十億円以下が約九百社、五十億円超百億円未満が二百社、百億円以上が約四百社となっておるものでございます。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。二万三千社のうち六千四百社が赤字で、そういう企業は、今お話あっただけの相当な増税になります。ちなみに、読売新聞の報道によりますと、課税所得が小さい企業では、黒字であっても外形の部分が大きくなりますから増税になるということで、こういう報道も出ていました。課税所得が十億円以下の黒字企業でも、一社当たり五百三十万円の増税だということです。こういうものを含めると、二万三千社のうち二万社が増税になる。減税になるのは三千社だ、逆に言えば。そういう話が報道としても出ているわけですよね。ですから、今回の法人税改革で、賃金に回すんだ、投資に回すんだとお話しされますけれども、実際は、減税になるのは本当にもうかっている一部の大企業。資本金一億円以上の企業でも相当部分が増税になるというのが今度の法人税改革の中身ということになっています。麻生大臣は経営者の経歴もお持ちですけれども、こういうことになって、一体どうして賃上げや投資が進むんでしょうか。かえって賃下げだとかリストラの圧力になっていくんじゃないでしょうか。
〇麻生国務大臣 今言われましたように、これは、大法人につきまして、先ほど申し上げましたように、法人税を下げるところと上げるところと両方一緒にして一方的に法人税収入を下げるということはしませんということで、私どもとしては、国際競争ということを考えたときにおいては二九%台ということでさせていただきました。私どもは、これによって稼ぐ力というものの高い企業の税負担が減ると同時に、赤字の大法人にとりましても、これは黒字化した場合の税負担の増加というものが緩和されるということになりますし、企業にとりましても、いわゆる利益を稼ぐというインセンティブというものが必然的に高まるということになりますので、賃金の引き上げ等々を継続的、積極的にやっていってもらう体質に転換していってもらわないと、少なくとも、今までのようなままで、これだけもうかっているんだから、その分だけ内部留保だけふやしていって、いわゆる配当、労働分配率はそのままなんというんじゃ、これから人も雇えなくなりますよと企業の方にも何回も申し上げました。そういったところで、この二十年間でしみついている意識というものを少し変えていただかぬと、我々の世代に比べましても、労働分配率が一〇%以上下がっているというのはいかがなものかということを何回も申し上げておりますので、意識としても、そういった意識を持って対応していただかなきゃいかぬところだと思います。
○宮本(徹)委員 ですから、もうかっているところの問題じゃなくて、今は、外形標準課税の拡大というのはもうかっていないところが大変なわけじゃないですか。そういうところに、赤字のところに増税していったら、それで設備投資や賃上げが進むというのはやはり常識に反するというふうに私は思います。大体、外形標準課税の拡大は、当初、経団連でさえこう言っていました。業績が回復途上にある企業の税負担が重くなるデメリットがあると言っていたわけですよね。私がいろいろなところを回っていますと、今回、外形標準課税の拡大は資本金一億円以上ですけれども、それ以外の中小企業の皆さんからも、こういう法人税改革の方向が続くと、私たちのところまで今度は課税対象になるんじゃないかという心配の声を本当によく聞きますが、資本金一億円以下の企業への外形標準課税の拡大は今後やるべきではないと考えますが、麻生大臣はその点どうお考えでしょうか。
○麻生国務大臣 これは御存じのように、法人事業税というのは総務省の所管でありますので、私どもの所管ではありませんけれども、平成二十七年、二十八年度の税制改正において、大法人につきましては外形標準の拡大というものを進めていく一方、資本金一億円というものにつきましては引き続き外形標準課税の対象としておりませんのは、御存じのとおりであります。今後、適用法人のあり方については、与党の税制改正大綱等々においていろいろ検討されるんだと思いますが、地域経済とか企業経営への影響も踏まえながら引き続き慎重に検討を行うということとされておりますので、この方針に沿って対応していくことになるんだと存じます。
○宮本(徹)委員 慎重に検討ということですが、やらないということで対応していただきたいというふうに求めておきたいと思います。結局、法人税率を引き下げて外形標準課税を拡大していくというのは、私は、賃上げにもつながらないし、投資にもつながらないし、経済の好循環にはつながっていかない、さらに内部留保を一部の大企業に積み上げていくという結果になるんじゃないかというふうに思います。結局、今回の法人税率の引き下げというのは一部の大企業だけが減税になる。もっと言えば、経団連が下げてくれと言ったから、その部分だけ下がるように下げたんじゃないかというふうに私は思わざるを得ません。経団連は、税制改正要望で、法人税率を下げよということを言ってきました。企業の負担が実質的に増加することのないようにということを繰り返し言ってきたわけですよね。それで、税制改正大綱がまとまった際の経団連会長のコメントはこう書いていますよ。経団連の主張が受けとめられたということで、「法人実効税率が従来の計画より一年前倒しで平成二十八年度より二〇%台に引き下げられることになったことを歓迎する。」と。結局、経団連の要望をどんどん丸のみして税制改正を進めている、こういうことなんじゃないんですか。
○麻生国務大臣 今御指摘のあったところのほかにもちょっと読んでいただかないかぬと思いますけれども。政府としては、我々としては経団連の要望というものを丸のみしたとおっしゃりたいんだと思いますけれども、内容面をよく読んでいただくと、経団連が昨年九月に公表した提言をよく読んでいただくと、外形標準課税のさらなる課税というものは行うべきではないとされておりますし、また、減価償却の見直しについても慎重に検討することが必要とされておりましたが、二十八年度の税制改正においてはそれらの改革についても盛り込んでおりますので、今言われた御指摘は当たらないのではないかと思っております。
○宮本(徹)委員 丸のみしたわけではないと言いますけれども、説明のつかない、経済の好循環におよそつながるとは思えない、多分、麻生さんもそう思っているであろう今度の法人実効税率の引き下げを、これだけは経団連の要求をのんでいったということだと思います。経団連、財界は、これだけじゃなく、さらに法人実効税率を二五%まで下げてほしいということを繰り返し言っております。競合するアジア近隣諸国並みということを言われているわけですけれども、今回二〇%台に引き下げたことというのは、政府としては、国際相場に照らして今どういう水準だというふうに見ていらっしゃるのでしょうか。
○麻生国務大臣 日本の法人税のいわゆる実効税率というのは、諸外国に比べて高いと指摘をされてきておりますけれども、今回の改革で三十年度には二九・七四%まで下がることは決定しておりますので、フランスの三三・三三%を下回っておりますし、ドイツの二九・七二とほぼ並んでおりますので、私どもとしては、国際的に遜色のない水準へ移行できた、改革ができたというように考えております。
○宮本(徹)委員 ということは、経団連が言っている二五%に引き下げるべきだという立場には立たないということなのかなというように思いますので、その点は確認しておきたいというふうに思います。もうちょっと麻生さん宛ての質問も通告してあったんですけれども、初めに時間をとってしまったために、麻生大臣への質問はここまでにしておいて、最後に、残った時間で保育料の問題について取り上げさせていただきたいと思います。一年前、本委員会で、年少扶養控除廃止に伴ってそのみなし適用を保育料に限っては続けてきたものを、子ども・子育て新制度の発足に当たって年少扶養控除廃止のみなし適用をやめた、そのことによって保育料が上がります、大変なことになりますよ、多子世帯ほど上がりますよということを言いまして、値上がりにならないための対策をこの場で求めました。結果、どうだったかというと、対策をとらなかった自治体では多子世帯の保育料が上がりました。四人、五人、六人と、子供が多いほど大きな保育料値上げとなって、私も、直接、全国各地の方の悲鳴の声もその後伺うことになりました。メディアでも取り上げられました。NHKでも特集も組まれましたし、北海道テレビや関西のMBSなどでも繰り返しこの問題は取り上げられました。少子化対策、少子化対策といいながら、子供が多くいる世帯ほど保育料が上がる、こういうことになったわけですが、こういう少子化対策に逆行する事態が起きたことについて責任をどう感じておられるのかというのをお伺いしたいと思います。
○高鳥副大臣 宮本委員にお答えをいたします。子ども・子育て支援新制度における年少扶養控除のみなし適用の廃止につきましては、市町村の事務負担等を考慮しつつ、保育料の負担が改正前後で極力中立的なものとなるように配慮したところでございます。具体的には、夫、妻、子二人の世帯につきまして、年少扶養控除廃止前とおおむね同じ程度の保育料の負担となるよう、利用者負担額算定の基礎となる市町村民税所得割額を設定したところでございます。しかしながら、御指摘のとおり、子供が三人以上の世帯においては負担増となるケースがあり得ることから、市町村の判断により、既に入園をしている子が卒園するまでの間に限り、年少扶養控除等の廃止前の旧税額に基づく利用者負担額を適用する経過措置を講じることを可能といたしているところでございます。なお、市町村が経過措置を講じた場合には、当該経過措置の適用を前提とした国庫負担も行うことといたしております。
○宮本(徹)委員 だから、責任をどう感じているのかというのを私は聞いたわけですよ。経過措置をとることができるということをおっしゃったわけですけれども、とらなかった自治体もたくさんあるわけですよ。年少扶養控除の再算定をするのは大変だ、事務負担が大変だからやめさせてくれということを受けて、政府はそれをのんじゃったわけでしょう。原則これからはやらないこととする、だけれども希望する自治体については経過措置をとったら財源を手当てするよというのが政府のやり方だったわけですよ。だから、経過措置をとらない自治体で多子世帯ほど保育料が上がるということが起きたわけじゃないですか。この責任をどう感じているのかというのをお伺いしているわけですよ。
○高鳥副大臣 お答えをいたします。例えばですけれども、平成二十八年度の予算におきましては、先生よく御案内と思いますけれども、多子世帯の保育料負担軽減といたしまして、年収三百六十万円未満相当の世帯につきまして、多子計算に係る年齢制限を撤廃し、第二子を半額、第三子以降無償化を完全実施するとか、あるいは、一人親世帯の保育料負担軽減といたしまして、年収三百六十万円未満相当の一人親世帯等への優遇措置として、第一子は半額、第二子以降は無償とすることといたしておりまして、それぞれ所要の経費を計上したところでございまして、責任云々ということはございますけれども、政府としては全力で対応していると考えております。
○宮本(徹)委員 責任云々じゃなくて、本当に責任を強く感じてほしいと思うんですよね。本当に、保育料を払えなくて借金したという話まで私のところに来たんですから。多分、厚労省の担当者のところにもそういう話がたくさん来たんじゃないですか。きょうは内閣府に来ていただいていますけれども。そういうことが起きたわけですよ。先ほど、年収三百六十万までは今度は第三子以降は無料化するというお話がありました。もともと、幼児教育の無償化は、当初、五歳からという話が昔ありましたけれども、多子世帯からするというのは賢明な判断だと思いますけれども、問題は、三百六十万より上の人は、まだ上がったままの方がたくさんいるわけですよ、年収三百六十万より上の人が。東京でいえば、年収三百六十万円までの世帯というのは、大体全世帯の一五%ですよね。ですから、八五%の世帯は、今回値上がりした人は上がったままということになっております。ですから、本気で少子化対策と言うんだったら、第三子無料、第二子半額、この所得制限を撤廃するか、あるいは大幅に引き上げていくということが必要になるんじゃないですか。それと同時に、現に値上がりした自治体に対して、経過措置がとれるんだからちゃんと措置をとりなさいという働きかけも必要ですし、あるいは、経過措置をとった自治体でも、途中でやめている自治体がたくさんあるわけですよ。半年でやめました、今度の年度末でやめる自治体もあるというふうに私のところに話が来ております。ですから、そういう自治体に対しても、ちゃんと経過措置をとり続けなさいということを国として主導的に責任を持って働きかける必要があるんじゃないですか。お答えいただきたいと思います。
○高鳥副大臣 お答えをいたします。子ども・子育て支援新制度における保育料負担については、平成二十五年の幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議において定められた基本方向に基づいて、幼児教育の無償化に向けた段階的取り組みを進めてきたところでございます。もう先生御指摘のとおりでございますけれども、その所得制限等につきまして、多子世帯へのさらなる配慮につきましては、財政が非常に厳しい中ではありますけれども、幼児教育の無償化を段階的に進めるという文脈の中で、引き続き検討してまいりたいと思います。それから、自治体に対する、市町村に対する指導をもっと積極的にやった方がいいのではないかという御指摘だと思いますけれども、子ども・子育て支援新制度に基づきます事務は自治事務でございまして、経過措置を適用するか否かは、事務的な負担の観点等も踏まえまして、新制度の円滑な実施を図る観点から、それぞれの状況に応じてなされた市町村の判断を尊重することが適切であると考えております。
○宮本(徹)委員 市町村の判断なんて言っているわけですけれども、もともと市町村が値上げしてもいいような仕組みをつくったのは国なんですよ。国自身がもっと責任とらなきゃだめだということを厳しく指摘して、時間が参りましたので、私の質問は終わります。

 

●麻生太郎財務相「『シムズ理論』採用せず」 2017/3/9
麻生太郎財務相は9日の参院財政金融委員会で、積極的な財政出動でインフレを引き起こして国の借金を帳消しにするという「シムズ理論」に関し、「この内閣で私がいる間はそんないいかげんな話にならないと保証する」と述べ、採用しないと明言した。
麻生氏は、ノーベル経済学賞を受賞した米プリンストン大のクリストファー・シムズ教授が唱えるシムズ理論に対し、物価の急上昇を招きかねず、年金生活者に多大な影響が及ぶと強い懸念を示した。
●麻生財務相「シムズ理論はヘリマネ」  2017/3/9
麻生太郎財務相は9日午後の参院財政金融委員会で、金融政策よりも財政が物価の水準を決めるとのシムズ理論については、「ヘリコプター・マネー(ヘリマネ)」と指摘。「美味しい話は怪しいと思わなければいけない」とし、投資家のジョージ・ソロス氏が薦めに来たが「無責任なあなた方と異なり、私は1億2000万人の国民に責任がある」として拒否したことを明らかにした。
その上で「私が大臣の間、内閣にいる間、ヘリマネ、シムズ理論は採用しない」と言い切った。
平木大作議員(公明)への答弁。

 

●麻生氏「新聞には一行も…」は事実? TPP11署名 2018/3/30
麻生太郎財務相は29日の参院財政金融委員会で、米国を除く11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP11)が署名されたことについて「日本の新聞には1行も載っていなかった」などと述べたが、事実とは異なっている。
参院会派「国民の声」の藤末健三氏の質問に答えた。麻生氏はTPP11について「日本の指導力で、間違いなく、締結された」と説明した上で、「茂木大臣が0泊4日でペルー往復しておりましたけど、日本の新聞には1行も載っていなかった」と発言。さらに「日本の新聞のレベルというのはこんなもんだなと」「みんな森友の方がTPP11より重大だと考えている」とメディアを批判した。
しかし、TPP11はまだ締結されていない。国会で協定が承認され、関連の手続きを終え、協定寄託国であるニュージーランドに通知した時点で「締結」になる。また茂木敏充経済再生担当相が出席した署名式の開催地はペルーではなく、チリの首都サンティアゴ。署名式は8日午後(日本時間9日未明)に開かれ、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞などが9日付夕刊、翌10日付朝刊で報じた。
ただ、財務省が森友学園との国有地取引に関する決裁文書を改ざんした問題で、改ざん当時に同省理財局長だった佐川宣寿氏が9日夜に国税庁長官を辞任した。その結果、翌10日付朝刊はTPP11よりも佐川氏辞任の方が大きく報じられた。
これに対し、共産党の志位和夫委員長はこの日の記者会見で「森友事件っていう次元の低い問題をいつまでやっているんだと言わんばかりだが、全くこの問題の重大性を理解していない」と批判した。
○参院財政金融委員会でのやりとり
国民の声・藤末健三氏 私、TPPが非常に大きな起爆剤ではないかと。韓国もTPP入りを検討を始めていますので、おそらく日韓との関係においてはTPP、そして中国との関係においてはTPPプラスRCEPのような考え方で、ぜひ進めていただきたいと思います。おそらくアメリカとのバランスをとる上でも、中国と韓国との間の経済連携協定を進めるということをしていただきたいし(中略)外交的にはなかなか表だってできるものではないとは思いますけれど、一帯一路について、日中間の協力はあり得ると思いますので、民間ベースで。そういうことも含めて、ぜひお考えをお聞かせいただいてよろしいでしょうか。
麻生太郎財務相 おっしゃる通りに、この日韓関係の話に関連していくんだと思いますが、今、TPP11というのは、これは、日本の指導力で、間違いなく、締結された。この間、茂木大臣、0泊4日でペルー往復しておりましたけど、日本の新聞には1行も載っていなかったですもんね。まあ、本人としては、はなはだ憤懣(ふんまん)やるかたなかったろうと思いますけれども、まあ、日本の新聞のレベルというはこんなもんだなと思って、経済部のやつにボロカス言った記憶がありますけれども。みんな森友の方がTPP11より重大だと考えているのが、日本の新聞のレベル。政治部ならともかく、経済部までこれかとおちょくり倒した記憶がありますけれども。これはものすごく、私、大きかった条約締結の一つだと思っておりますが、少なくとも、これがまとまるとわかって以降、少なくとも習近平という人の口から春節、春のお盆じゃなかった、春のお祭り。あの日以来、春の春節って言うんですかね。あれ以来、習近平の口から一帯一路という言葉が出たことはないんじゃないですかね。聞いた人、いないと思いますよ。あれ以来、一回も出ていませんから。かなりTPP11というのは、大きかったのかなと思わないでもないですけど。いずれにしても、出ていないという現状。一帯一路どころか、今、あちこち、そんなところじゃなくなってきているのかなと思わないでもありませんけれども、いろんな話で、私どもとしては、こういった状況の変化に応じて、外交的、経済的にもいろんな対応を柔軟な目で見ていかなければいかんと思っております。 
[ 訂正 ]
署名式であり、TPP11はまだ締結されていない。
開催地はペルーではなく、チリの首都サンティアゴだった。
主要各紙は9日付夕刊、翌10日付朝刊で報じた。
9日夜に佐川国税庁長官が辞任、その結果、翌10日付朝刊はTPP11よりも辞任の方が大きく報じられた。
●麻生財務相 発言を陳謝 2018/3/30
麻生財務相発言に 各紙「載せてます」と反論
麻生太郎財務相が3月29日の参院財政金融委員会で、11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP11)が署名されたことについて「日本の新聞には1行も載っていなかった」などと発言した。これが新聞各紙や野党から反論され、釈明する事態となっている。
麻生氏は参院財政金融委で、米国抜きでの発足を目指すTPP11について「日本の指導力で締結された」と語り、「茂木大臣、0泊4日でペルー往復したが、日本の新聞には1行も載っていなかった」と発言。「日本の新聞のレベルはこんなものだと経済部のやつにボロカスに言った」「みんな森友の方がTPP11より重大だと考えているのが、日本の新聞のレベル」と語った。
これに対し、朝日新聞や東京新聞などが30日付朝刊で「署名式は各紙が9日付夕刊、翌10日付朝刊で報じている」と反論記事を載せた。東京新聞は「TPPの承認手続きはまだ進んでおらず、『締結』には至っていない」と、発言にあったもう一つの間違いも指摘した。
麻生氏ら閣僚が朝日新聞など政権と距離を置くメディアを批判することは、これまでもあった。目を引くのは、安倍政権に近い論調で知られる読売新聞も、2面に麻生氏の似顔絵付きで以下の記事を掲載したことだ。
「決裁文書改ざん問題を軽視するような発言に批判が集まりそうだ。
(略)麻生氏は、今月8日に行われた米国を除く11か国によるTPPの署名式について、「茂木大臣が0泊4日でペルー往復していたが、日本の新聞には一行も載っていなかった」とも批判した。しかし、読売新聞をはじめ、主要各紙は署名式を大きく報じており、事実とは異なる。署名式の開催地もペルーではなく、チリの首都サンティアゴだった。」
読売などの指摘通り、3月9日付夕刊から10日付朝刊にかけて、各紙はTPP11の署名を報じている。
批判が相次ぐなか、麻生氏は30日の金融財政委で「森友と比較したのがけしからんという点については、謝罪させて頂きたい」「1面トップを飾ってもおかしくない重要な仕事をした。もう少しきちんと扱われてしかるべきだと思い、ああいう表現を使った」と釈明した。 
麻生財務相、森友発言を「訂正」
麻生太郎財務相は30日の参院財政金融委員会で、森友学園に関する決裁文書改ざんと環太平洋連携協定(TPP)を巡る新聞報道に不満を示し、森友問題を軽んじているとの批判が出ていることに「そういった印象を与えたなら、その点は訂正する」と述べた。
これを受け、立憲民主党の枝野幸男代表は記者会見で「自分の役所でとんでもない不祥事が起きたという当事者意識を全く欠いた暴言。国民のためにさっさと地位を引かれるべきだ」と述べ、辞任を求めた。
麻生氏は29日の委員会で「森友の方がTPPより重大だと考えているのが日本の新聞のレベル」と発言していた。 
森友とTPP比較、麻生氏「謝罪したい」 発言を釈明
麻生太郎財務相が「森友の方がTPP11より重大だと考えているのが日本の新聞のレベル」と述べたことについて、30日の参院財政金融委員会で批判が相次いだ。麻生氏は「森友に関し、公文書を書き換える話は誠にゆゆしきことで遺憾の極み。軽んじているつもりは全くない。そういう印象を与えたのであれば訂正する」とし、「森友と比較したのがけしからんという点については、謝罪させて頂きたい」と述べた。
麻生氏は29日の同委員会で、米国を除く11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP11)が今月8日に署名されたことについて「日本の新聞には1行も載っていなかった」とも述べ、森友学園の決裁文書の改ざん問題を報じるメディアへの不満を示していた。この点について、麻生氏は「1面トップを飾ってもおかしくない重要な仕事をした。もう少しきちんと扱われてしかるべきだと思い、ああいう表現を使わせてもらった」と説明した。 
麻生財務大臣「反省」“日本の新聞レベル”発言で
麻生財務大臣は「森友の方がTPP(環太平洋経済連携協定)より重大だと考えているのが日本の新聞のレベル」と発言したことについて、30日の国会で「そういうつもりで申し上げたのではない」「反省している」と釈明しました。
麻生財務大臣:「森友と比べたというのがよろしくないというのはご意見として、私どもとしてそういうつもりで申し上げたわけではなかったんですけど。森友と比較したのがよろしくないという点に関しては反省致します」
また、麻生大臣は委員会に先立って、記者会見で「新聞は読まないようにしているから詳しく知っているわけではないが、何で載っていないのか」と森友問題に比べてTPPに関する報道が少ないことへの不満を示しました。ただ、実際には新聞紙面でTPP署名式は大きく報道されています。 
野党側が撤回要求 麻生財務相“報道批判”
国会では、森友学園の問題をめぐり、麻生財務相が決裁文書の改ざんに比べTPP(=環太平洋経済連携協定)の報道が少なかったと不満を述べたことについて、野党側は発言の撤回を求めた。 麻生財務相は「TPPの記事が出ないことが問題だと言いたかった」とする一方で、「誤解を招く発言があったとすれば謝罪する」と述べた。 立憲民主党・風間直樹議員「これはやはり佐川(前国税庁)長官の任命権者の大臣がおっしゃることじゃないと私は思います」「森友の方がTPP11より重大だと考えているのが日本の新聞のレベルと、このご発言につきましては、撤回をされた方がいいと思いますが」 麻生財務相「このTPPのことに関して、まったく記事が出ないというところが問題なんだという点を申し上げたかったんで、誤解を招くような発言があったとすれば、謝罪申し上げます」 また、民進党の古賀議員が発言の真意をただしたのに対して、麻生財務相は、「森友学園の問題を抱えているがTPPは日本にとって極めて大きな問題だということを表現した」と釈明した。 一方、立憲民主党の枝野代表は麻生財務相の辞任を求めた。 立憲民主党・枝野代表「いい加減なことをいってマスコミ批判すると。もうやる気がないんじゃないか。やる気がないんだったら国民のためにさっさと地位を引かれるべきではないか」 枝野代表は「当事者意識を全く欠いた発言だ」と厳しく批判した。 
麻生財務相 発言を陳謝
麻生財務相は、「森友問題の方がTPP(環太平洋経済連携協定)より重大だと考えているのが日本の新聞のレベルだ」と発言したことについて、30日の国会で、文書改ざん問題の軽視だと追及され、陳謝した。
民進・古賀参院議員「森友の問題を軽んじているのでは?」
麻生財務相「そういった印象を与えたというのであれば、訂正申し上げる」、「森友と比較したのがよろしくないという点に関しては、反省いたします」
発言の真意については、「TPP協定に署名したことが新聞の一面に載っておらず、正直理解できなかった」と釈明した。
麻生氏の発言をめぐっては、立憲民主党の枝野代表が、「やる気がないなら地位を引くべきだ」と、大臣の辞任を求めたほか、与党内からも、「たがが緩んでいる」と批判の声があがっている。  
●改ざん問題の麻生氏発言 重大性を全く理解していない 2018/3/30
日本共産党の志位和夫委員長は29日の記者会見で、記者団から、麻生太郎財務相が同日の参院財政金融委員会で発した「森友のほうがTPP11(米国を除く環太平洋連携協定)より重大だと考えているのが日本の新聞のレベル」だとの発言への感想を問われ、「森友学園」との国有地売却をめぐる公文書改ざん問題は「国民主権や議会制民主主義を壊す憲法違反の歴史的犯罪で、次元が違う問題だ」と強調し、「この事態の重大性を全く理解していない」と厳しく批判しました。
志位氏は、「わが党は他の問題――暮らしの問題、平和の問題、外交の問題も幅広く取り上げているが、今回の公文書改ざん問題は、戦前・戦後の日本の政治史のなかでもかつてない暴挙であり、こんなことを許していたら国民主権、議会制民主主義が成り立たないという次元の違う問題であり、最優先課題として追及しているのは当然のことだ」と強調。麻生氏の発言は「“次元の低い問題をいつまでやっているんだ”と言わんばかりだ」として、「改ざんを引き起こした財務省の責任者がそういうことを平気でいうのは、およそ反省がない、とんでもない発言だ。“政府・与党は、いつまで逃げまわっているんだ”というのが国民の怒りだと思う」と重ねて批判しました。

 

●送金・ビザ発給停止を例示 麻生氏、韓国への報復措置 2019/3/12
麻生太郎財務相は12日の衆院財務金融委員会で、韓国の元徴用工訴訟で賠償を命じられた日本企業の差し押さえ問題を受け、韓国への報復措置を例示し具体的に検討していると述べた。「関税に限らず、送金の停止、ビザの発給停止とかいろんな報復措置があろうかと思う」と語った。
日本維新の会の丸山穂高氏に対する答弁。麻生氏は「そういったものになる前の所で交渉しており、きちんとした対応をやっていかないといけない」と語り、報復措置の実施に至らないよう努力していると説明した。
ただ「事が進んで実害がもっと出てくると別の段階になる」とも話し、韓国の原告側弁護団が欧州などで日本企業の資産差し押さえを検討していることをけん制した。
日本政府は元徴用工問題について1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、「韓国国内での決着」を要請していた。しかし、原告による日本企業の資産差し押さえの手続きにまで発展。日本政府は韓国に同協定に基づく政府間協議の開催を促している。

 

●麻生大臣、自らの年金は「記憶ない」「心配したことない」 2019/6/14
老後資産をめぐる金融庁の2000万円報告書。「世間に著しい不安と誤解を与えている」ことを理由に、麻生太郎財務大臣は受け取らない方針を示した。また、自民党の森山裕国会対策委員長も「報告書はもうなくなった」と述べ、波紋が広がっている。
老後資金として2000万円が必要だとした金融庁の報告書を「受け取らない」と表明した麻生太郎財務大臣。
6月14日の国会では、野党の追及に対し、「選挙向けのパフォーマンスではない」と改めて強調。自分が年金をもらっているかどうかについては、「記憶がない」「心配したことはない」と答弁した。
麻生大臣は報告書の発表直後、「100歳まで生きる前提で退職金って計算したことあるか?普通の人はないよ。そういったことを今のうちから考えておかないといかんのですよ」と、その内容を支持するような発言をしていた。
しかし、この問題への動揺が広がると、麻生太郎財務大臣は「世間に著しい不安と誤解を与えている」ことを理由に、受け取らない方針を示した。また、自民党の森山裕国会対策委員長も「報告書はもうなくなった」と述べ、波紋が広がった。
6月14日の衆議院財政金融委員会では、麻生大臣に様々な質問がぶつけられた。
大串博志議員(無所属)は「選挙の前だからか何か知りませんけども、国民から注目が集まったので焦ったのでは」と指摘。
麻生大臣は「選挙向けのパフォーマンスというようなご指摘をなさりたいようにお見受けいたしましたけども、私どもとしては、そのつもりは全くございません」と回答した。
そのうえで、「我々としては公的年金は老後をある程度賄うものであるが、報告書では毎月5万円不足するとか足らないと述べているので、著しい誤解や不安を与える。我々の普段の政策スタンスと違う」と改めて強調。
受け取らないことについて、法令上の問題はないとした。
年金受給は「記憶がない」
また、78歳になる麻生大臣に対し、「年金を受け取っているか」「老後不安は」との質問も。大臣はこう答えた。
「受け取っていないと存じておりますが。受け取るとか受け取らないかはずいぶん前に秘書から聞いたので、任すということを言った以来、正確な記憶はございません。(この質問は)通告にはなかったんじゃないですかね」
「私自身は、年金がいくら入ってどうであろうかと、自分の生活として心配したことがあるかというと、ございません」
大串議員は「国民が思っている年金に対する不安やセンシティブな感覚に寄り添うような発言であったとは思えない」と苦言を呈した。
そもそも、報告書の内容は…?
参院決算委員会で麻生大臣が「冒頭しか読んでいない」と述べ、蓮舫氏が「5分で読める」と皮肉った報告書は56ページで、現在、金融庁のサイトで公開されている。
報告書が示した「老後2000万円」は、高齢夫婦無職世帯の毎月の赤字額とされた5万4520円を、単純に30年分にしたもの。
夫65歳以上、妻60歳以上の無職の夫婦世帯で、今後20〜30年の人生があるというシミュレーションになっている。
毎月の赤字額が約5万円になる根拠としては、厚生労働省のデータが使われている。その前提となる収入や支出は、2018年までの家計調査や全国消費実態調査などから計算されている。
金融庁の三井秀範企画市場局長は委員会で「配慮を欠いた対応」をお詫びし、反省を表明しているが、公的年金だけでは足りないという現実から目をそらすわけにはいかないようだ。

 

●麻生氏「3000万円も不適切」=老後資金の金融庁試算−参院委 2019/6/18
麻生太郎金融相は18日、参院財政金融委員会に出席し、老後資金として年金以外に30年間で「1500万〜3000万円必要だ」と金融庁が示した試算について、「誤解を招くものであれば、(2000万円が必要だと試算した金融庁審議会の報告書と)同様に不適切だ」と述べた。立憲民主党の蓮舫参院幹事長への答弁。
麻生氏は「途中経過の文書で、金融庁の公文書にはなっていない」と釈明。その上で「この資料を基にして政策を検討することは考えていない」と強調した。
2000万円問題をめぐり、麻生氏は「金融庁の対応は説明や配慮に欠いた(もので、)誤解や不安を感じさせたのが一番の問題だ」と指摘。蓮舫氏に「責任を役人に押し付けている」と詰め寄られると、「役人だけに責任を押しつける考え方はない」と語ったが、自身の責任については言及しなかった。
一方、金融庁の三井秀範企画市場局長は同委で、「(報告書は)公的年金だけでは老後30年で2000万円不足するかのように説明し、著しい誤解や不安を与えた」と謝罪した。

 

●「老後2000万円報告書」で最悪対応の麻生大臣が形勢逆転できる妙案 2019/6/19
政治的影響ばかりが注目されるが
参議院選挙が近いせいもあってか、「老後2000万円報告書」(「高齢社会における資産形成・管理」金融審議会市場ワーキンググループ〈6月3日付〉)をめぐる話題が止まらない。
国会でも連日取り上げられ、ついには金融庁の三井秀範・企画市場局長が14日の衆議院財務金融委員会で、老後資産の報告書が批判を集めている問題について「配慮を欠いた対応で、このような事態を招いたことを反省するとともに深くおわびする」と謝罪するに至った。行きがかり上、謝罪せざるを得なかったのかもしれないが、報告書自体に謝るような問題はなかったと思うので、お気の毒でならない。
筆者は、資産運用やファイナンシャルプランニングに関係する仕事をしていることもあり、この連載では本件を二度続けて取り上げているが、今回は、炎上騒動のその後の影響と、個人および政府はこれからどうしたらいいのかについて取り上げたい。
参院選を前に「争点化」したい野党と、金融を担当する麻生太郎大臣をはじめとする与党側の、率直に言って本質から外れた応酬ばかりが報じられているが、金融の世界にはそれなりに影響が出ているし、テーマ自体は重要な問題なので、これからどうなるのかは重要だ。
なお、本連載で筆者は、前々回には「報告書の方向性は悪くないけれども、金融機関のマーケティングに悪用されそうなことが心配だ」という趣旨の記事を書き、その後の異様な盛り上がりに驚いた前回は「この問題では、もっぱら麻生大臣の対応が悪い」と述べた。
話題になった分「所期の効果」は出ている!
さて、前回述べたように、政治の場でのこの問題の取り上げられ方には正直なところ「うんざりしている」と言わざるを得ないのだが、これだけ大きな話題になると、金融ビジネスの現場に影響が現れている。
個別の会社名は挙げないが、筆者の知り合いのある金融マンは、「正直なところ、例の『2000万円』が話題になってから、当社のiDeCoへの申し込みが急増しています」と言う。世間の「老後に備える資産形成」に対する関心が大いに高まっているようなのだ。
もともと、くだんの報告書には老後に向けた資産形成の必要性を訴え、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」といった制度の普及を促すことが中心的な意図としてあったと思われるのだが、別のかたちで問題が大きくなったことで注目度が一気に高まったのだ。
それはそうだろう。この問題のメディアでの取り上げられ方は異様なまでだったし、この露出具合を広告費に換算すると莫大なものになるだろう。
ある意味では「炎上商法」的な効果の出方なので、素直に評価はできないのだが、現時点で金融・運用業界の側では「結果的な効果」が大きく出ているようなのだ。
ただし、この問題が悪いかたちで注目されたことで、金融庁や厚生労働省といった関連官庁が萎縮してしまう心配は残っている。局長が謝罪に追い込まれた金融庁では個々の役人がこの問題に関わることに個人としての「リスク」を感じる可能性がありそうだし、報道によると厚労省筋では「自助」という言葉を慎重に避ける動きがあるという。
制度としてのiDeCo(厚労省管轄)も一般NISA・つみたてNISA(金融庁管轄)もまだまだこれから周知と普及が必要な段階だし、公的年金については今年が5年に一度の財政検証と「基本ポートフォリオ」その他の運用方針の見直しの時期に当たっている。
また、現在、「自助」の必要性とその具体的な手段に関する啓蒙が大切であることは言うまでもない。
あえて言うが、関係官庁の官僚の皆様には、今こそ萎縮することなく、政策の推進に大いに励んでいただくようお願いしたい。何といっても、このテーマがこれほど注目されているのだから、「今!」打つ手には効果がある。
やはり「報告書」が利用されている
こちらも名前は挙げないが、ある金融機関のホームページに次のような文章で始まる記事があった。
「(小見出し)備えは十分ですか?意外にお金がかかるセカンドライフ(本文)政府公表の資料によれば、2人以上の世帯の1ヶ月あたりの生活費は平均で27.9万円。これに対して、会社員における平均的な公的年金の支給額は、22.1万円となっており、年金だけでは、豊かなセカンドライフを送るのが非常に難しくなっています」
これはiDeCoを勧める記事で、この会社はiDeCoを扱っているのだが、「老後のお金が足りなくなると大変ですよ」と脅して、その「解決策として商品・サービスを売り込む」文脈の、典型的な金融広告のパターンであり、報告書が早速利用されている。
多くの人にとってiDeCoは有利で利用のしがいのある制度なので、結果的にこの制度の利用を勧めることは悪くない。しかし、「老後にお金が足りなくならないように」とか「資産寿命を延ばすために」といった理由でリスクを取った資産運用を勧めるのは感心しない。
「リスクを取る資産運用」は、それが有利だと思う人が資産を増やすための手段として試みるといいのだが、資産寿命を延ばす目的に割り当てられる手段は「計画的な支出のコントロール(=計画的な貯蓄と資産の取り崩し)」であるべきだ。リスクを取る運用で資産を膨らませることで資産寿命を延ばそうと考えるのは適切でない。
なぜなら、リスクを取る運用には結果の不確実性が伴う一方、個人の場合、結果が悪くても企業の年金基金が母体企業に損失の穴埋めをしてもらえるようなことを期待できないからだ。将来の運用益を当てにして、過剰支出・過小貯蓄に陥ってはならない。
麻生大臣に逆転の秘策あり!?
前述のように、筆者は前回の連載原稿で麻生大臣の対応を批判した。原稿のタイトルは「炎上する『老後2000万円』報告書問題、最悪なのは麻生大臣だ」なのだが、現時点ではこの論旨と結論に1ミリの変化もない。
しかし、ものにはさまざまな考え方がある。麻生大臣の立場に立って、これから彼がどうしたいいのかを考えてみたら、「いいこと」を思いついた。
撤回を求めた報告書に関して、自分の撤回の指示を撤回するのだ。
「俺はねえ、あの報告書をじっくり読んでみたんだ。するとだねぇ、よく読むとそんなに悪いことが書いてあるわけじゃねぇし、それなりに参考になるんじゃないかってぇことも書いてある。皆さんも、一度じっくり読んでみてはいかがなものだろうか」
「一度は受け取りを拒否しようと思ったんだが、このたび方針を改めて正式な報告として受け取ることにいたしました」
そうとでも言ってみるといい。「撤回の撤回作戦」だ。
「報告書をよく読んでくださいね」と毎回一言付け加えて丁寧に正しく質問に答えるなら、野党は全く攻めあぐねるだろう。また、報告書の内容に対して実は筋違いの苦言を呈した自民党の二階俊博幹事長や連立相手の公明党の山口那津男代表との立場も逆転するのではないか。
何よりも、これだけ注目を引きつけてから、「報告書をよく読んでください」と訴えるのだから、その広報効果は絶大だ。
「わが国における資産形成の普及にあって、麻生太郎氏ほど大きな役割を果たした人物はいない。あれはすごい作戦だった…」と後に振り返られることになるだろう。実際のところ、今の段階でも、良し悪しは別として、彼の対応が原因でこれまでにない数の国民が老後の資産形成に関心を持つようになった。

 

●麻生大臣、黒田総裁がMMT導入を明確に否定 2019/11/14
昨日の財務金融委員会で、私は最近の懸念の幾つかを麻生大臣に率直にぶつけてみた。そうしたところ、麻生財務大臣が日本におけるMMT導入を、強く明確に否定された。午前中、他の委員の方の質問に答えた日銀黒田総裁が明確にこれを否定した(ロイター参照)のと合わせ、政府における財政策のトップと中央銀行のトップの両者がMMT否定について明確なコメントを発したたことになる。
この意義は大きいのでご紹介する。なお、この機会にステーブルコイン(リブラ)、そして中央銀行バブルについても質問したので、補足として記載しておく。興味のある方は続けてご覧いただきたい。
【質問】
私、最近すごく心配しているのは、MMTと言われる理論、これに注目されることが、与野党の政治家を問わず、あるいは市民の方にも膨らんできている。ただし、日本においては、御承知のとおり、ここ七、八年、歳入面で六割から三割、国債に依存している状況にある。一方で、社会保障費は年々膨らむしかないような状況になっております。
こういった国が仮にMMT的な声が高まって国債依存度を高めれば、急にやめることは不可能なわけですから、大変な事態が起きる。ですから、私は、日本においては、MMT的な、余り国債に頼るような政策、それでもって景気を回復させていくという政策はとりにくいんだと思っておるんですけれども、これについて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
【麻生国務大臣】
MMTの言っていることは、自国の通貨で全て賄っている国、例えば、日本とアメリカとデンマークとスイスぐらいかな、今四カ国ぐらいだったと思いますけれども、自国通貨だけで通貨をやっておりますので、これはデフォルト関係ないんだから延々と出せるんだと、極端なことを言えばそういう話をしておられる。
アメリカで、一部の国会議員が強硬に主張されている。政府債務残高はどれだけあっても問題ないんだという話ですが、これを実行した国は一つもありませんので、その意味では、私どもとして、この実験を日本でやって、日本の金融マーケットを修羅場にするつもりは全くありません。
それから、財政がとめどなくなるという話ですけれども、きちんとマーケットというものが世の中には存在しますので、そのマーケットの反応というものが極めて大きな要素であって、その中において、この出しておる国債は必ず返済されるものだという信用があって初めてマーケットが成り立ちますので、そういった意味では、市場の信認を確保するということで、我々としては、二〇二五年(PB均衡目標)とかいろいろな形でそういった対応を続けていきますということを申し上げさせていただいておりますので、今の状況というものは、私どもは、MMTというような、余りよく、私どもから見ると極めて問題点の多い、そういった理論によって我々は財政運営をするつもりはございません。
(補足)
私のそのほかの質問要旨は以下のとおり。
1 リブラ
ご存知のとおり、リブラとはFacebookなどの巨大企業が連合して発行を企画している暗合資産。通貨バスケット(ドル、ユーロ、ポンド、円、シンガポールドル)とのペッグが予定されているのでステーブル・コイン(法定通貨を裏付けとしたデジタル通貨)の一種とされている。この構想に対して、G7、G20では強い警戒感が示され、合意によるコメントまで発表されている。コメントでは、表向きは個人情報やマネーロンダリングへの懸念が表明されているが、各国の 財政・金融当局の本音はどうだろうか。私には、通貨当局の懸念は、最近の行き過ぎとも思える通貨増発政策により世界中で通貨への信頼が失われつつあることに 対応してリブラが登場し、だからこそあそこまで各国が強調してこれを阻止しようとしているように見える。今まではドルが「世界通貨」の覇権を握り,発展途上国などで自国通貨への信頼が揺らいだ場合,ドルがまるでその国の通貨のような役割を担い,ドルでなければ受け取ってもらえない,品物と交換してもらえないという事態も生じてきた。ペッグの中に入っていない国々では,こういった事態がより容易に生じることとなる。自国通貨よりもリブラが嗜好される,すなわち通貨発行権益が失われる恐れがあるのだ。だが,リブラによって通貨発行権益が失われる恐れがあるのは通貨バスケットに入っている通貨を発行している国々にも一定程度共通する。バスケット内の通貨を発行する国家においても、為替レートの変動により自国通貨とリブラの交換比率に影響が出るため、通貨に対する信用(安定性)に対する不安があれば、自国通貨よりもリブラが流通の主役となることも考えられる。貨幣の主役がリブラなどの民間貨幣に移る可能性があるのだ。そして,それは現在は世界通貨となっている米ドルについても同じだ。だからこそ,ビットコインなどには鷹揚であった米議会やFRBが,公聴会を開いてザッカーバーグなどを激しく追及し,なんとかこれを阻止しようとしているのであろう。そして,そのような懸念をアメリカを始めとした各国財政・金融当局が抱かざるを得ないのも,自ら巻いたタネではないのか。アメリカ,ECB,日本などがこぞって行っている中央銀行の今の行き過ぎた通貨増発政策と,これによって支えられている各国政府の拡張的財政政策について、各国金融当局自身が不安を抱いていることが背景にあるのではないかと考えている。
麻生大臣からの答弁は概略以下のとおり(以下私が要約している部分あり)。
「たらればの話でありますけれども、このグローバルステーブルコインとか、セントラルガバメントの出しますデジタルコインとか、そういったものについて、今、各国の金融政策に対してどのような影響を与えるであろうかという仮定の質問なんですけれども、これは懸念があるのは事実だと思うんですね。それに加えて、それが出されたときにマネロン対策どうするのとか、また、金融市場のスタビリティーは、安定性はどうなるのとか、使った使用者、利用者の保護とか使われたデータの保護とかいった政策上とか規制上のいろいろリスクを生じさせるんじゃないのって、これはいずれも全部懸念を申し上げているんですけれども。こういった問題意識に立って、ことしの十月の、いわゆるワシントンDCにおいてのG20の会合においては、この種の、グローバルコインとか類似の商品というものの取組が生じさせるであろうリスクについては、このプロジェクトのサービスというものが仮に開始されるとするなら、その前までにきちんと吟味され、適切にそれを対応する方法というものをきちんとつくっておく必要があるということで、これはG20、中国、アメリカ、皆含めてこれを合意ということで、この意識は皆合意していますので、自分たちでそれをやった場合、自分たちにも影響が返ってきますから、ということで合意しておりますので。」
(答弁を受けての私の意見)
広い意味での通貨発行権益、つまり、国債などを発行して、例えば日銀なりFRBがこれを引き受けていくことができる、それが最後の支えというか担保になっているかと思うんですけれども、そこが侵されていく可能性がある。なので、やはり、グローバルコイン、ステーブルコイン、こういったものに対しては警戒が必要であるとともに、そういったものが国の発行する通貨よりも信頼されるような事態というのが生じるのを避けるというのは非常に重要なことだと思われる。
2 中央銀行バブル
今、ニューヨークの株式市場、どんどん史上最高値を地道に更新し続けている状況にある。それから、不動産市場も同じような状況だ。こういった、資産インフレともいうべき現物の上昇があり、金も値上がりを続けている。この原因は、通貨の異常な発行(増発)が続き、同時に異常な低金利が続いていることに関して、投資家が嫌気を差してほかに行くところがないから現物に流れ込んでいるんだ、こういう見方がある。つまり、これは見方を変えれば中央銀行バブルであるし、各国の財政赤字を基調とした財政政策というのは、こういった中央銀行バブルに支えられている反面がある。こういった懸念に関して、麻生大臣にお尋ねした。
麻生大臣からの答弁(要約あり)は概略以下のとおり。
「世界中で超低金利というような形の緩和的な金融環境によって、グローバルな世界においての現物資産というものが、バブルが生じているのではないかということだと思いますが資産価格というのは、企業や経済のファンダメンタルズというものの見通しで投資家がさまざまな形でつくっていきます。また、アメリカとか欧州の場合は、経済状況や金融スタンスはそれぞれ、スタンスがさまざまでありますので、資産価格全般については一概に申し上げることは困難です。その上で、日本について申し上げさせていただければ、少なくともこの七年間で、大胆な金融政策を含めて私どものやった結果、企業収益が向上したし、雇用も所得環境も改善もしたということによって、経済のファンダメンタルズというものの回復の中で、株価や土地というものも上昇傾向にあった。少なくとも、八千円ぐらいだったものが二万三千円まで上がってきているとか、いろんな形で、はっきりした形で数字でも出てきておりますので、そういった状況がこの七年間続いてきた。正直、税収も、おかげでバブル前までほぼ戻ってくるところまで来て、四十五兆ぐらいまで落ちたものが六十兆近くまで上がってきておりますので、結構なことだとは思いますけれども、しかし、まだ三万八千九百円には行っていないじゃないかと言われればまだ行っておらぬわけですから、そういった意味では、緩和的な金融環境というのが続いていく中ではありますけれども、資産の価格というものの動向を含めまして、金融面での脆弱性というものが、蓄積については、これは、金利を見ましても何を見ましても、国内外ともに、引き続きよく見ておかないかぬという大事なところなんだと思っておりますので、私どもは、この種のところは日本以外の国の動向を含めましてきちんと見ておかないと、最近はすぐ影響が出ますので、そこらのところもよく注視しつつ、対応をしてまいらねばならぬと思っております。」
(答弁を受けての私の意見)
バブルは終わってみなければわからないというような格言めいたものもございますが、バブルが急にはじけると大変な迷惑をやはり国民もこうむることになりますので、ぜひ、その辺、注視をお願いしたい。  

 

●「剰余金活用で財政健全化 遅らせることは考えてない」 2020/1/31
新たな経済対策を実行するための費用などが盛り込まれた、今年度の補正予算が30日成立したことを受けて、麻生副総理兼財務大臣は予算の迅速な執行に取り組む考えを示しました。
30日に成立した今年度の補正予算には、新たな経済対策を実行する費用などが盛り込まれ、追加の歳出は一般会計で4兆4722億円となっています。
麻生副総理兼財務大臣は31日の閣議のあとの記者会見で「経済の下方リスクに万全を期すために必要な施策を盛り込んでおり、迅速、適切に執行に取り組み効果をお届けしないといけない」と述べました。
また、昨年度・平成30年度の国の一般会計の剰余金が、30日、成立した特例法によって借金の返済ではなく、全額が新たな支出の財源に充てられることになったことで、財政健全化が遅れるのではないかと問われたのに対し、麻生大臣は「借金の返済を優先してさらに赤字国債を発行するか、剰余金を充てて国債の発行を減らすか、いろいろな考え方があると思うが、私どもとしては剰余金を活用することで財政健全化を遅らせることは全く考えていないし、そういうことにはならないと思っている」と述べました。

 

●WHOは「中国保健機関」麻生氏、国会答弁で  2020/3/26
麻生太郎財務相は26日の参院財政金融委員会で、世界保健機関(WHO)について「ワールドヘルスオーガニゼーション(世界保健機関)ではなく、チャイニーズヘルスオーガニゼーション(中国保健機関)に直せっていうのが、わんわん出ていた」と発言した。
WHOが政治的な中立を保てていないとして、インターネット上でテドロス事務局長の辞任を求める声があることを取り上げた野党議員の質問に答えた。
麻生氏はこれまでも記者会見などで、新型コロナウイルスを「武漢ウイルスなるもの」と表現したほか、中国が発表する感染者数を「信用しないのが正しいと思っている」などと発言している。 

 

●麻生氏の「民度違う」発言 度重なる失言「またか、で済ませてはダメ」 2020/6/6
過去に物議を醸す発言を繰り返してきた麻生太郎財務相が、日本の新型コロナウイルスによる死者数が欧米諸国より少ない理由を「国民の民度のレベルが違う」と述べた。外出自粛が効果を上げたと誇りたかったらしいが、アジアの中では日本の死者数は多い。「欧米諸国の民度が低い」とも取られかねず、「軽率すぎる。『また麻生氏か』で済ませてはいけない」との声が上がる。
発言が出たのは、四日の参院財政金融委員会。自民党の中西健治氏が、都市封鎖したフランスなどと比べて日本は緩やかな統制で感染を抑えたとし「自由を守り続けてきたのは価値が高い」と持ち上げた。答弁を求められた麻生氏は、外国から電話で問い合わせがあったとした上で「『おたくとうちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ』って言ってやると、みんな絶句して黙る」と応じた。
五日の記者会見で発言の趣旨を問われ、「(他国を)おとしめるというのは違う」などと釈明した。
札幌医科大の調査によると、四日時点の人口百万人当たりの死者数は、日本は七・一人。英国(五八五・二人)、フランス(四四四・六人)、米国(三二三・八人)より圧倒的に少ない。一方、アジアで比べると事情が異なり、韓国五・三人、中国三・二人、台湾とタイは一人未満にとどまっている。
そもそも、死亡率だけで対策の優劣を判断するのは難しい。同大講師の井戸川雅史医師(ゲノム医科学)は「国ごとに衛生環境が異なる。日本の死者数が欧米より少ない理由は科学的に明らかになっていない」と説明する。
麻生氏の失言は枚挙にいとまがない。昨年二月に福岡県で開いた国政報告会で、少子高齢化について「年寄りが悪いみたいなことを言う変なのがいっぱいいるが、間違ってる。子どもを産まなかった方が問題だ」と発言。二〇一三年七月には改憲の手法を巡り「(ナチスの)手口を学んだらどうか」との暴言が出た。〇七年七月には日本と中国とのコメの価格差を「アルツハイマーの人でも、これくらいは分かる」と語っている。
今回の発言を政治アナリストの伊藤惇夫氏は、外相も経験した麻生氏が人々の生活や文化の程度を示す「民度」という言葉を安易に使った点を問題視する。「国会で言ったのが驚きで、閣僚辞任ものだ。海外で国際社会への挑戦と取られ、日本に厳しい目が向けられる可能性もある」
伊藤氏は、度重なる失言から見える麻生氏の資質を「居酒屋での雑談のようなべらんめえ調子で話し、内輪話なら楽しく、座談の名手ともいえる。だが、公私の区別をつけられない」と切り捨てる。吉田茂元首相を祖父に持ち、福岡の実家が財閥という出自も影響しているとする。「恵まれた環境で育ち、発言を注意されたことがなかったのだろう。弱い立場にある人々への想像力が働いていない」
駒沢大の山崎望教授(政治理論)は「国内で飲食店の閉店や倒産が相次ぎ、失業者も増えている。麻生氏はそうした苦しんでいる人々に意識が向いていない。だからあんな発言が出てくる」と批判し、こう主張する。
「麻生氏が舌禍を繰り返しても安倍首相は責任を問わず、国民の間には『麻生氏だから』とあきらめのような雰囲気が生まれる。このこと自体が長期政権の弊害だ。発言を不問にすれば日本の民度こそ問われる」 

 

●参議院財政金融委員会における麻生大臣の所信表明 2020/11/17
はじめに
財務大臣兼金融担当大臣の麻生太郎でございます。
本委員会の開催に当たり、一言御挨拶を申し上げます。
日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方
日本経済につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にありますが、各種政策の効果等もあり、持ち直しの動きがみられます。政府としては、令和二年度第一次補正予算及び第二次補正予算を着実に執行するなど、雇用の維持や事業の継続、国民生活の下支えに力を尽くしています。さらに、十一月十日、総理より、ポストコロナに向け、経済の持ち直しの動きを確かなものとし、民需主導の成長軌道に戻していくため、新たな経済対策を策定するよう指示がありました。今後とも、新型コロナウイルス感染症の収束に向けてしっかりと取り組みつつ、感染拡大の防止と経済活動の両立を進めてまいります。
また、今回の危機を乗り越え、次の世代に未来をつないでいくことは、我々に課せられた責任です。少子高齢化に伴う構造的な課題に直面している日本の財政は、新型コロナウイルス感染症に対応する中で、より厳しい状況にあります。令和三年度予算については、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二〇」を踏まえ、「新経済・財政再生計画」の枠組みの下、これまでの歳出改革の取組みを続けてまいります。そして、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標の達成に向けて、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいります。
さらに、経済社会の構造が大きく変化する中、持続的な経済成長を維持・促進するとともに、経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を構築する観点から、引き続き、税体系全般にわたる見直しを検討してまいります。
今後の金融行政の在り方
金融行政におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響への対応と、ポストコロナの新たな経済社会の構築に、取り組んでまいります。
そのため、金融機関による資金繰り支援、経営改善や事業再生、事業転換の支援等に資する施策を、全力で進めてまいります。また、地域金融機関をはじめとする金融機関が、事業者支援を通じて地域経済に貢献し、自らも持続可能なビジネスモデルを構築していくよう、適切な対応を促してまいります。あわせて、大手銀行等の専門経験を有する人材と地域企業のマッチングを促してまいります。
加えて、金融機関に対する検査についても、日本銀行との連携を深化させ、金融機関の負担の軽減と効果的なモニタリングにつなげてまいります。
また、日本の金融資本市場を国際金融センターの一つとして発展させ、海外から金融事業者・高度人材を呼び込みます。企業の更なる成長のため、女性、外国人、中途採用者の登用を通じ、多様性の確保を促すなど、コーポレートガバナンス改革も進めてまいります。
さらに、金融デジタライゼーションを推進してまいります。昨今の資金移動業者の決済サービスを悪用した不正出金事案等を踏まえ、安心・安全や信頼の確保に努めるとともに、東京証券取引所において発生したシステム障害についても、原因究明と再発防止策の検証を行ってまいります。
むすび
今後とも、皆様のお力添えを得て、政策運営に最善を尽くしてまいる所存であります。
佐藤委員長をはじめ、委員各位におかれましては、御理解と御協力をお願い申し上げます。

 

 
 
 
 
 

 

● 2021

 

●第204回国会における麻生財務大臣の財政演説 2021/1/18
令和二年度第三次補正予算及び令和三年度予算の御審議に当たり、財政政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。
日本経済の現状と財政政策の基本的な考え方
日本経済につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあります。令和二年度第一次補正予算及び第二次補正予算の政策効果等もあり、持ち直しの動きがみられますが、新型コロナウイルス感染症が内外経済を下振れさせるリスクに十分注意する必要があります。
このような状況の下、昨年十二月八日に、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」を閣議決定いたしました。総合経済対策を通じて、雇用と事業を支えながら新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するとともに、ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現を図り、防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保を進めてまいります。
先般、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が発出されました。今後も感染状況や経済・国民生活への影響を注意深く見極め、引き続き、新型コロナウイルス感染症対策予備費を含めた累次の補正予算、令和二年度第三次補正予算及び令和三年度予算の着実な執行により、適切に対応してまいりたいと考えております。
日本の財政は、少子高齢化に伴う構造的な課題にも直面しております。「経済財政運営と改革の基本方針二〇二〇」等を踏まえ、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、引き続き、これまでの歳出改革の取組を継続し、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいります。
令和二年度第三次補正予算の大要
次に、総合経済対策の実行等のために今国会に提出いたしました令和二年度第三次補正予算の大要について申し述べます。
一般会計につきましては、歳出面において、総合経済対策に基づき、「新型コロナウイルス感染症の拡大防止策」に係る経費に約四兆三千六百億円、「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現」に係る経費に約十一兆六千八百億円、「防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保」に係る経費に約三兆千四百億円の合計約十九兆千八百億円を計上しております。
このほか、国税の減収に伴う地方交付税交付金原資の減額の補塡等を行うとともに、既定経費の減額を行うこととしております。
歳入面においては、租税等の収入について、最近までの収入実績や企業収益の動向等を勘案して約八兆三千九百億円の減収を見込んでおります。また、税外収入について、約七千三百億円の増収を見込むほか、前年度剰余金約六千九百億円を計上することとしております。
以上によってなお不足する歳入について、公債を約二十二兆四千億円発行することとしております。
なお、剰余金の処理につきましては、別途、所要の法律案を提出し、御審議をお願いすることとしております。
この結果、令和二年度一般会計第三次補正後予算の総額は、一般会計第二次補正後予算に対して歳入歳出ともに約十五兆四千三百億円増加し、約百七十五兆六千九百億円となります。
また、特別会計予算につきましても、所要の補正を行っております。
財政投融資計画につきましては、総合経済対策を踏まえ、現下の低金利状況を活かして、生産性向上や防災・減災、国土強靱化対策を加速するとともに、ポストコロナ時代の社会・経済構造変化に対応した民間投資を促進するため、約一兆四千三百億円を追加しております。
令和三年度予算及び税制改正の大要
続いて、令和三年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。
令和三年度予算は、令和二年度第三次補正予算と合わせ、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている国民の命と生活を守るため、感染拡大防止に万全を期すとともに、将来を切り拓くため、中長期的な課題を見据えて着実に対応を進めていく予算としております。
具体的には、感染症危機管理体制や保健所体制の整備等によって感染拡大防止に万全を期すとともに、予期せぬ状況変化への備えとして、五兆円の新型コロナウイルス感染症対策予備費を措置することとしております。また、デジタル社会・グリーン社会の実現や、全世代型社会保障の構築など、中長期的な課題にもしっかり対応するものとしております。
同時に、歳出全般にわたり見直しを行い、一般歳出等について、「新経済・財政再生計画」の目安を達成するなど、歳出改革の取組を継続しております。
一般歳出につきましては、約六十六兆九千億円であり、これに地方交付税交付金等約十五兆九千五百億円及び国債費約二十三兆七千六百億円を加えた一般会計総額は、約百六兆六千百億円となっております。
一方、歳入につきましては、租税等の収入は、約五十七兆四千五百億円、その他収入は、約五兆五千六百億円を見込んでおります。また、公債金は、約四十三兆六千億円となっております。
なお、特例公債の発行につきましては、別途、所要の法律案を提出し、御審議をお願いすることとしております。
次に、主要な経費について申し述べます。
社会保障関係費につきましては、職員の処遇改善にも配慮した介護報酬改定・障害福祉サービス等報酬改定の実施に必要な経費を確保しつつ、毎年薬価改定の実現等、様々な歳出抑制努力を積み重ねた結果、実質的な伸びを「高齢化による増加分におさめる」という方針を達成しております。
文教及び科学振興費につきましては、小学校三十五人以下学級の実施に向けて必要な教職員定数の措置及び合理化等を図るほか、大学改革、安全・安心な学校の施設整備等を推進するとともに、科学技術基盤を充実し、イノベーションを促進することとしております。
地方財政につきましては、国税及び地方税の税収の落ち込みに対し、地方の一般財源総額を適切に確保し、地方に最大限配慮することとしております。
防衛関係費につきましては、安全保障環境の変化に対応するため、中期防衛力整備計画に基づき、調達の効率化を徹底しつつ、宇宙やサイバーといった新領域を含め防衛力を着実に強化することとしております。
公共事業関係費につきましては、ハード・ソフトが一体となった防災・減災対策と維持更新コストの増加抑制の観点を踏まえつつ、国土強靱化の取組への重点化を図るほか、生産性向上のためのインフラ整備等を推進することとしております。
経済協力費につきましては、新型コロナウイルス感染症の国際的な収束に向け、保健分野での途上国支援を強化しつつ、ODAは予算・事業量ともに必要な額を確保することとしております。
中小企業対策費につきましては、生産性向上を促進するための設備投資や、事業再生・事業承継に対する支援を充実するほか、資金繰り対策にも万全を期すこととしております。
エネルギー対策費につきましては、再生可能エネルギーの主力電源化やカーボンリサイクルの推進など、イノベーションによる脱炭素化を推進するほか、災害等に強いエネルギー供給網の整備に取り組むこととしております。
農林水産関係予算につきましては、農林水産物・食品の輸出拡大、農業経営の生産性向上を進めるほか、グリーン社会実現に向けた森林資源管理や、改正漁業法を踏まえた適切な水産資源管理に取り組むこととしております。
東日本大震災からの復興につきましては、第二期復興・創生期間の初年度において復興のステージに応じたきめ細やかな取組を着実に実施するため、令和三年度東日本大震災復興特別会計の総額を約九千三百億円としております。
令和三年度財政投融資計画につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業・事業者及び地方公共団体への強力な支援、イノベーションの大胆な加速と事業再生・構造転換、低金利を活用した、生産性向上や防災・減災、国土強靱化等につながるインフラ整備の加速等のため、総額約四十兆九千百億円としております。
国債管理政策につきましては、借換債を含む国債発行総額が約二百三十六兆円と、過去に類のない規模となる中で、引き続き市場との緊密な対話に基づき安定的な国債発行に努めてまいります。
令和三年度税制改正につきましては、ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現を図るため、企業のデジタルトランスフォーメーション及びカーボンニュートラルに向けた投資を促進する措置を創設するとともに、こうした投資等を行う企業に対する繰越欠損金の控除上限の特例を設けることとしております。また、中小企業の経営資源の集約化による事業再構築等を促す措置を創設することとしております。さらに、家計の暮らしと民需を下支えするため、住宅ローン控除の特例の延長等を行うこととしております。
このほか、日本の金融資本市場を国際金融センターの一つとして発展させ、海外から金融事業者・高度人材を呼び込むことは、重要な課題です。政府一体となってこの課題に取り組み、所要の税制上の措置を講ずることとしております。
むすび
以上、財政政策の基本的な考え方と、令和二年度第三次補正予算及び令和三年度予算の大要について御説明申し上げました。
次の世代に未来をつないでいくためには、今回の危機を乗り越えるとともに、構造的な課題に着実に取り組むことで、経済再生と財政健全化の両立を進めていく必要があります。そのため、これらの予算及び関連法案の一刻も早い成立が必要であります。
何とぞ御審議の上、速やかに御賛同いただくとともに、財政政策について、国民の皆様及び議員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

 

●麻生財務相、在任3000日=国の借金2割増 2021/3/13
麻生太郎財務相の在任期間が13日、3000日に達する。2018年に戦後最長となり、既に戦前を含めても歴代3位で、在任が続くと今年10月には2位の高橋是清蔵相を抜く。2度にわたり消費税を増税したが、財政再建は遅々として進まない。新型コロナウイルス対策で大規模な財政出動に踏み切り、国債や借入金などを合計した「国の借金」は就任直後からの8年間で2割増加した。
麻生氏は第2次安倍晋三政権が発足した12年12月26日から財務相を務める。財務省内では「(政策の)経緯が分かっていて物事がスムーズにいく」(幹部)と安定感を支持する声が上がる。麻生氏は12日の閣議後記者会見で、在任3000日について、「こんなに長くやるつもりはなかった。(高橋是清蔵相らの)記録を目指すつもりはない」と語った。
消費税率は14年4月に5%から8%へ引き上げた。19年10月には10%へ増税し、同時に軽減税率を導入した。ただ、政府の財政健全化目標は先送り。さらに、コロナ禍が日本経済を直撃し、対策として新規国債発行を伴う財政出動を繰り返した。この結果、国の借金は20年12月末時点で1212兆円となり、麻生氏就任直後の12年12月末から215兆円増加した。
一方、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する文書改ざん問題で地に落ちた財務省の信頼回復も課題だ。国会審議では、自殺した同省近畿財務局職員、赤木俊夫さん=当時(54)=が改ざんの経緯を記したとされるファイルを提出するよう野党が要求。財務省側は遺族が国などに損害賠償を求めた訴訟中であることを理由にファイルの存否すら明らかにしていない。

 

●どうする財政健全化 「未来に責任」麻生大臣が決意 2021/4/7
新型コロナ対策で国の借金が増大するなか、有識者でつくる財務大臣の諮問機関「財政制度等審議会」が新年度初めての総会を開き、財政健全化に向けた議論を始めました。
麻生財務大臣:「未来に対して責任を負っているので、我々としては厳しいかじ取りではあるが、やっていかないといけない」
財政制度等審議会は経営者や大学教授などで構成され、中長期的な財政運営や予算編成についての意見書=建議を年に2回取りまとめます。
7日の総会で会長に再任された榊原氏は、新型コロナウイルスの対応で債務残高が増大し、社会保障の受益と負担のアンバランスの是正などがますます重要だとしたうえで、「財政が抱える構造的な課題にしっかりと切り込みたい」と抱負を述べました。

 

●麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見概要 2021/4/27
冒頭発言
昨日、浅川アジア開発銀行総裁、本年11月までの現在の任期が満了になりますので、再選を目指す意向を表明されておられます。浅川総裁は昨年1月に就任をされておりますので、それ以後のコロナ対応等、迅速に取り組まれておりますし、アジア開発基金の増資の交渉にも成功裡に取りまとめられるなど多くの実績を上げてこられております。今後アジア太平洋地域がコロナからの復興を目指していくに当たって、引き続き浅川総裁のもとでADBが中心的な役割を果たしていく必要があろうと我々は考えております。こうした観点から日本としては浅川総裁の再選を支持すると同時に昨日財務大臣談話を発表させていただいております。
もう1点、新しい五百円硬貨の発行というものを予定していますが、本年1月に2021年度上期を延期する方向で検討する旨を公表しておりますが、その後金銭機器メーカー等に市中の改修状況や今後の見通し等を確認した結果を踏まえて、本年11月を目途にすることにしております。
質疑応答
問)緊急事態宣言が発出されまして今回も休業要請などに応じて事業者向けの協力金など財政支援策が用意されております。一方でコロナ禍が長引くことで昨年度は100兆円を超える国債を発行しておりますし、今年度の当初予算でも11年ぶりに前年を上回る新規国債の発行が見込まれております。今回3度目の緊急事態宣言が発表されたこのタイミングを受けて、麻生大臣に改めて財政健全化、あるいは増発された国債の償還の財源をどこに求めるかなどについてお考えをお伺いできればと思います。
答)我々財務省としての基本的な考え方というのは、コロナ危機というんですかね、これを乗り越えつつという、乗り越えるために各国財政出動をやり、第二次世界大戦後ほとんど財政出動をしたことがないというドイツですら財政出動を今回は大きくやってなどして、私共それだけで約90兆ぐらいですかね、新しく財政出動というのをやらせていただいておりますけれども、これだけ財政を出動すると、普通、財政に対する信認というものが問われるというところだったと思いますけれども、幸いにしてマーケットとのあれもうまくいきつつあって、金利も大きく変化はせず、為替も大きな変化もなく、私共としては財政健全化というものと経済再生との両立をやっていかなければいけないという立場をずっと貫いておりますので、その意味では今回の対応は今までのところ、次の世代につなげていくということに成功していると思っております。ただこのコロナ、これはいつ終わるのかね。これまでウイルスで撲滅されたウイルスは天然痘だけだと思うね、知っている範囲では。天然痘だけがなくなったので、あとはSARSだってMERSだってみんな残っているんだから。それでうまくみんな付き合ってきている。ウイルスだって自分達が生き残るために変異していろいろやっていくわけだから。そういった意味でもいろいろな意味でこれからどうやってうまく付き合っていくかということなんだと思います。我々としてはこの財政の問題は少子高齢化という国難を抱えていますので、今のままでいくと少子の方が、若者の方の受益と負担で言えば負担が大きくなって、とてもじゃないけどということになりかねませんから、そういった意味ではどういった形で受益と負担の話をうまくバランスとりながらやっていくのかというのが厳しい財政状況を考える上で一番肝心なことだと思っています。引き続き2025年のプライマリー・バランス、これでやっておかないと延び延びになりますので、何となくいろいろなことがあり、プライマリー・バランスのターゲットが少しずつ延ばされてきています。今回も2025年という目標を立てて何としてもやろうというので、今回いろいろな対策をすればきちんと2025〜2026年にはできるんじゃないかというところまで来ています。今後も、歳出だけじゃなくて歳入の面も含めていろいろ考えていかなければいけないということだと思っていますので、こういった目標はきちんと立てて、それを達成していくような努力をみんなでしていかないとしようがないでしょうね、これは。そうは思います。

 

●財務省の決裁文書改ざん問題 財務相は再調査不要と強調 2021/5/11
財務省の決裁文書の改ざん問題で、自殺した近畿財務局の男性職員が経緯をまとめて職場に残したファイルの存在を国が認めたことに関連して、麻生副総理兼財務大臣は、再調査は必要がないという考えを改めて強調しました。
この問題で、国は、近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんが生前、文書改ざんの経緯をまとめて職場に残したいわゆる「赤木ファイル」の存在を初めて認め、赤木さんの妻が起こしている裁判で6月23日に提出する方針を示しています。
この「赤木ファイル」について、麻生副総理兼財務大臣は、10日の衆議院予算委員会の集中審議で「存在を知ったのはかなり前のほうだ」と述べましたが、11日の閣議のあとの会見では、「『赤木ファイルということばを耳にしたのはいつか』という質問だったので、1年前くらいだったのではないかと答えた。ただ当時、何を称して『赤木ファイル』と言うのか分からなかった」と述べました。
また、ファイルの存在を認め、裁判で提出することを決めた理由については、「裁判所から証拠調べの必要性がないとは言えないので、任意提出を検討してもらいたいという要請があった。このため検討し、これが『赤木ファイル』というものだろうとなり、提出することになった」と述べました。
そのうえで麻生大臣は「すでに調査報告書を取りまとめ、できるかぎりの調査を尽くした結果を示した。この段階で再調査を行うということを考えているものではない」と述べ、再調査の必要はないという考えを改めて強調しました。 

 

●“台湾有事「存立危機事態」にあたる可能性”麻生副総理 2021/7/6
中国が台湾に侵攻した場合の対応について、麻生副総理兼財務大臣は、安全保障関連法で集団的自衛権を行使できる要件の「存立危機事態」にあたる可能性があるという認識を示しました。
麻生副総理兼財務大臣は5日、都内で講演し、中国が台湾への圧力を強めていることを踏まえ「台湾で騒動になり、アメリカ軍が来る前に中国が入ってきて、あっという間に鎮圧して『中国の内政問題だ』と言われたら、世界はどう対応するのか」と指摘しました。
そのうえで「台湾で大きな問題が起きると、間違いなく『存立危機事態』に関係してくると言っても全くおかしくない。日米で一緒に台湾を防衛しなければならない」と述べ、中国が台湾に侵攻した場合「存立危機事態」にあたる可能性があるという認識を示しました。
「存立危機事態」は安全保障関連法で、集団的自衛権を行使できる要件として「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」などと規定されています。 

 

●麻生財務相「こんな場で考えられん」と言いつつも、河野大臣を評価 2021/9/7
麻生太郎財務相は7日の閣議後会見で、自民党総裁選の立候補の意向を固めている河野太郎行政改革相の評価について問われ、「閣僚が閣僚に対する批判をこの場でいうなんてことは考えられん」と述べ、言及を避けた。ただ、菅内閣の経済財政政策の総括に関する質問に答える形で、河野氏が主導した行政手続きでの押印廃止に言及。「はんこなしの書類が出てくることになった時代というのは、これは革命的な話に近いくらい。これによっていろんな意味での波及効果があった」と手腕を評価してみせた。
河野氏は麻生派に所属。菅義偉首相が自民党総裁選への不出馬を表明した後から、財務省にいる麻生氏をたびたび訪れ、総裁選立候補についての意見を交わしている。
会見では総裁選をめぐり、財務相として、財政健全化などの観点から立候補が取りざたされる政治家の政策をどう見るかも問われた。麻生氏は「経済の再生というものと財政の健全化とを両立させないかん。歳出とか、歳入とかいう両方の面を考えてしっかり取り組んでいくという人が一番いい」と回答。理由として、財政への信認が失われると、為替が急に円安になり、インフレがおきるなど国民生活への影響が出るためなどと説明した。

 

●麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣記者会見の概要 2021/9/29
【冒頭発言】
本日、G7の財務大臣会合がウェブで行われたので、国際課税についてずっと議論になっているので、この点で幾つかの合意が得られたということだと思っています。これで意見のすり合わせを行って、10月の最終合意に向けて臨むことにしたいと思っています。なかなか詳細を言えないのは、ほかの国、G7以外の国にしてみれば、ちょっと待てと。お前らだけで合意したって何の意味があるんだというような話になって、G7がフライング気味で何というのは避けたいと思っていますので、詳細についてちょっと言えませんので、幾つかの点で合意が得られたということ以上はちょっと、今日のことで言えることはありません。
【質疑応答】
問)法人税の改革についてなんですけれども、なかなか言えないお話もあるということだったんですが、今日、最低法人税率について具体的にどういう議論があって、今の段階でどういった課題が残されていると大臣は考えていらっしゃいますでしょうか。
答)ミニマム課税という話で例のパーセントの数字が出てくるんですけれども、たくさん出せという途上国と出す方の立場になる大きな会社を持っている国、日本もその一番のところかもしれませんけれども、そういったのでどの程度の数字が望ましいというのに関しては全く、出す方ともらえる方とじゃ意見が非常に大きく違っていますので、ちょっと具体的な数字がどの程度になるというのは今の段階では言えないということなんだと思っていますので、適用を除外するというものの水準なんていうのが一番、制度の全体としては大きなところなんですけれども、一時各国、法人税の引下げ競争というのをやっていましたからね。みんな自分で首を絞めているみたいな話はやめた方がいいんじゃないかという話を随分前に申し上げてスタートしたんですけれども、企業の公平な負担というのをしてもらわないと、こっちがつくった公共財を全部タダで使って、何の負担も、使った会社は全然負担していないということになっていますから、そういったのではやっぱり企業間の公平な競争というのに著しく反しているんじゃないのというところで、そういった競争状況をある程度確保するというのをやらないと今のようなデジタルを使ったビジネスということになると、そこはなかなか今の法律ではできないということだと思いますので、第2の柱の合意に沿った内容になっていくということで最終的に落ち着かせないかんところなんですよ。なんですけれども、取る方はもっと出せという話ですから、そこはなかなか簡単な合意は得られにくいということでしょうね。
問)先程、冒頭でG7で幾つかの合意が得られたというふうにもおっしゃいましたけれども、歴史的な合意に向けて今何合目ぐらいまで来ているとお考えですか。
答)こういうの好きだからね、皆さんは。言うとそれがあたかも、でき上がったように大きく書かれて、それが結果的に足引っ張ってぶち壊しになるみたいなところがあるから、なかなか言えません、今の話は。昔はそういうのによく乗らされてね、本当にえらい後で痛い目に遭いましたから、年食ったら大分すれてきました、こっちも。
問)今の関連になるんですけれども、隔たりといいますか、低課税国との間の意見の隔たりというところもあるかと思うんですけれども、そういった中で今回G7で会って話し合ったと。そうする中である意味でどうしていくかという方向性、交渉の進め方をある程度、合意ができていったと、そういう方向だと思うんですけれども、そのことによって最終合意に向けて手応えといいますか、どれだけ可能性が高まったというふうに思われますでしょうか。
答)前回に比べてさらに高まったね。それは間違いなく言えると思いますね。前回もウェブでやったときでしたけれども、あの頃はちょっとまだ幾つか問題点がありましたけれども、大筋で結構煮詰まってきたなという感じがしますから、何合目とかという話より表現は、定義が不明ですから、そういう話はちょっと乗れませんけれども、前回に比べればさらに話は詰まったなという感じはします。
問)G7後のぶら下がりであるということで誠に恐縮ではあるんですけれども、今日総裁選、岸田氏が選出をされました。このことについて大臣の受け止めを伺えればと思います。
答)総裁選の、そうですね、岸田候補が結果的に御社の予想よりはるかに差がついて勝ったね。私共としては岸田文雄、俺より長く、政調会長、俺は2年、あの人は3年ぐらいやっていないかね。外務大臣も、俺も2回やったけど、あちらは4年ぐらいやっておられるんだと思います。あんまり正確な記憶じゃないけど。党務もやっておられるし、内政も外政も明るい方ですし、この総裁選挙を通じて、今日の記者会見を見ても総裁の顔になっておられるなという感じはしましたけどね。私の正直な実感はそんなところですね。いずれにしても今、コロナの話にしても、経済の景気の気の部分を取り戻す話にしても、外交とか経済安全保障とかいろいろ今必要なことをさっと言っておられましたので、ああという感じがしたので、これから日本の舵取りをされていく立場の総理大臣をやるんですけれども、いい方が選ばれたんじゃないかなと、そういう感じがしますけどね。
問)重ねて恐縮なんですけれども、これまで河野さんも大臣の支援を求めておられたと思いますけれども、大臣は今日の総裁選の投票に当たっては岸田さんと河野さん、どちらを。
答)言うと思う? 答えです、それが。
問)重ねてで恐縮なんですが、前回のG7後の会見では河野大臣について、勝たない選挙なら勝ちに行かなきゃ駄目だよということをお伝えされていたかと思うんですけれども、河野太郎氏が今回負けてしまったことについてはどのように受け止めておられますでしょうか。
答)そうですね、あの、選挙というのは、これで2回目かな、あなたたちが知らないのがあるから3回目なんですけど、実質は。やろうとされたんですけど、うまくいかなかったということですけれども。選挙というのは負けるとやっぱり支援してくれた人達に迷惑がかかりますからね。やっぱりやる以上は勝たないかんというところで臨まないと、とにかくそういった意味では今回負けて非常に残念な思いをしておられるんだと思いますね。周りの支援された方も。実際負けたと。選挙というのは負けるとしんどいですよ。だからそういった意味では、いろいろな意味でいい勉強をされた、経験をされたんだと思います。総裁選挙をやることによっていろいろな課題が、国会で出てこないような課題が、みんな話をされて、議題になって広く国民の間で、自民党の中で例えば皇室典範の話にしても、エネルギーの話にしても、憲法の話にしても、いろいろな話が行われていますので、そういったのが結構表に出たかなというのはいいところなんじゃないんですかね。僕は総裁選挙というのは、国会の論議では出てこないところが多く出てくるところがいいところなんじゃないかと、僕はそう思っていますけどね。
問)たびたびで、かつG7以外のことで大変恐縮なんですけれども、「ゴルゴ13」のさいとう・たかをさんが亡くなられまして、大臣としてもし受け止めがございましたら伺いたく思います。
答)「ゴルゴ13」と言ったらデューク東郷というんだけど、何でデューク東郷と言うか知っている。 知らない。 何回か、あの人と飯食ったり対談したことがありますので、あれは弘兼憲史さんだったかな、誰かが一緒になったんだけど、全然勉強しなかったんだって。学校のときに全部、答案は白紙で出していたらしいんだな。おい、齊藤って。あれ本名だから、齊藤、お前、白紙で出すのは勝手だけど責任をとらないと駄目だと。名前ぐらい書けんだろう、書けといって怒鳴りつけた先生の名前が東郷さん。はい、知っていた人? みんな読んでいないね。そういう基礎知識ぐらい持っていた方がいいよ。そういうのをちゃんと対談したときに、文藝春秋か何かで対談したんだっけな、あのときは。そのときにしゃべって、あちこちで、いろいろな会合でも会いましたけれども、会ったりしていましたけれども、あれだけインターナショナルな小説ってあるかね。俺はあんまり小説を読んでいる方じゃないけど、新聞でもあれだけインターナショナルに新聞が構成されているものってあんまりないんじゃないかなと思っているのが1点と、もう1個は1989年に、冷戦というものが基本的に終わった、89年というのはそういう年ですよね、あのときは。ベルリンの壁が崩落したんですけれども、あのときに「ゴルゴ13」は終わるなと。あのとき俺はそう思っていたんだけど、ずっと続いて、以来20数年、別のインターナショナルな話題というのはいっぱいありますから、そういった話題をちゃんと、ずっと取り続けているというのはなかなかなもんで、あれだけインターナショナルなものというのは、最近「紛争でしたら八田まで」という漫画が出始めているけど、「紛争でしたら八田まで」を読んでいる人。1人もいないの。全然漫画を語るレベルが違うんだな。さいとう・たかをさんというのはそういう人だと思うけど、これだけインターナショナルなものにしたというのはなかなかなものだなと思いますけどね。普通、暗殺する人の、スナイパーの話ですから、暗い話で終わるはずだが、あまり暗くならないところもあの人の構想力のすごいところかなとは思いますけれども、いずれにしても惜しい人が亡くなったなという感じが正直なところで、外務省なんか随分版画を使わせてもらったりして、外務省なんかはあれをつかわせてもらいましたので、ああいった意味ではありがたかった人でしたね、本当。ちょっと残念な気がしますね。何か後が続くんだって言っていたね。
問)スタッフが引き続き続けるという話で。
答)プロダクションがあるんだろう、あれ。そこで続けるんだよ。  

 

●戦後最長の麻生財務相が退任、国際舞台で存在感も財政再建進まず 2021/10/1
戦後最長の約9年にわたり財務相を務めてきた麻生太郎氏(81)が、自民党の岸田文雄総裁による新内閣発足を機に退任する見通しとなった。首相経験者の麻生氏は国際舞台でも存在感を発揮してきたが、懸案の財政再建はコロナ禍などの影響で進まず、後任に託された。
新内閣の財務相に鈴木俊一元五輪相(68)を起用する方向で調整に入ったとFNNが伝えた。麻生氏は党副総裁に起用されるという。
麻生氏は2012年12月、安倍晋三政権の副総理兼財務相に就任した。18年2月には、財務相としての在任期間が宮沢喜一元首相を抜いて戦後最長となった。
安倍前首相の右腕として、大胆な金融政策と機動的な財政政策、成長戦略を3本柱とするアベノミクスを推進し、20年9月発足の菅義偉政権でも留任した。日本銀行と13年1月に2%の物価安定目標の早期実現に向けた共同声明、20年5月には新型コロナウイルス感染症への対応で共同談話を公表し、黒田東彦総裁と連携してきた。
日銀の異次元緩和は政府の利払いコストと大規模な財政出動のハードルを引き下げた面もあるが、麻生氏は経済再生と財政健全化の両立を常に主張してきた。自国通貨建て国債はデフォルト(債務不履行)しないとする現代貨幣理論(MMT)については、「日本をMMTの実験場にするつもりはない」と放漫財政を戒めた。
少子高齢化で増え続ける社会保障費を賄うため、在任中に消費税率を5%から10%へ2度引き上げ、年20兆円を超える最大の税収項目に育てた。それでも度重なる自然災害や消費増税、新型コロナへの対策に伴う財政出動の結果、債務残高が国内総生産(GDP)の2倍を超えるなど、財政は悪化の一途をたどった。
08年9月のリーマンショック対策として、麻生政権が支給した定額給付金は3割しか消費に回らず批判を浴びた。その教訓を踏まえ、コロナ対策では一律給付に反対したが、与党の公明党の強い要請もあり、安倍前首相は一律10万円給付に踏み切った。13兆円近い資金が投入され、貯蓄率上昇と財政悪化に拍車をかけた。
一方、麻生氏は国際金融分野で確かな足跡を残してきた。首相在任中の09年2月、国際通貨基金(IMF)への1000億ドル(約11兆円)規模の資金拠出を決定。経済のデジタル化に伴う国際課税ルールの見直しは、1世紀前に確立した原則を塗り替えるもので、13年5月の麻生氏の提案が契機となった。10月に20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれ、最終合意を目指している。
首相や外相なども歴任し、豊富な経験や人脈を国際舞台でも生かしてきた麻生氏。退任すれば、国際社会における日本の存在感に影響が生じるととともに、各国をまとめる重要なリーダーを失うことになると懸念する声が財務省内から出ている。

 

●麻生氏、退任会見の冒頭22分間、功績を誇る 戦後最長の財務相 2021/10/4
岸田文雄新内閣の発足で退任した麻生太郎財務相は4日、財務省での最後の記者会見に臨んだ。在任期間8年9カ月で数々の問題発言が物議を醸したが、この日は2度の消費税増税など22分間にわたって自身の功績を強調。森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんについても自らは話題に出さず、質問に対して「結論が出た話」として再調査を改めて否定した。
麻生氏は第2次安倍内閣が発足した2012年12月に財務相に就いた。在任日数は戦後最長となる3205日で、戦前を含めると松方正義の5302日、高橋是清の3214日に次ぐ3番目の長さだ。
18年3月には森友学園を巡り、民主主義の根幹を否定する公文書の改ざんが発覚し、対応に追われた。自身の問題発言で批判を受けることも多く、先月も改ざんの再調査について「読者の関心があるのかね」などと発言した。
退任会見ではこうした負の問題にはほとんど触れず、先進7カ国(G7)で国際的な法人課税改革の議論をリードしたことや消費税増税を挙げ「長くいなかったらできなかった」と自身を評価。増税については「消費税率を2回上げたが(内閣が)倒れず、支持率が上がった」とも述べた。
在任期間中の普通国債(借金)残高は、12年12月末に約691兆円だったが、今年6月末では約942兆円となり4割弱増えた。麻生氏も会見で「(財政再建の目標である)基礎的財政収支(プライマリーバランス)が悪くなったのは事実」と認めた。

 

●「財政健全化の旗降ろさず」 鈴木俊一財務相兼金融担当相 2021/10/7
――岸田文雄首相は年内に数十兆円規模の追加経済対策を策定する方針だが、歳出増圧力と財政健全化をどう両立させるか
「財政に対する市場の信認を確保することも必要だ。新型コロナウイルス禍のような危機発生時の対応余力を確保するために財政健全化の道筋を確かなものにする必要がある。しっかりと(財政健全化の)旗を降ろさず、令和7年度の基礎的財政収支黒字化に向けて取り組んで参りたい」
――9月の業務改善命令発出後もシステム障害が発生し、現在も検査中のみずほ銀行とみずほフィナンシャルグループへの対応は
「一連のシステム障害に関して、みずほ自らが徹底した原因究明、万全の再発防止を図ることが重要。みずほの対応をしっかりとフォローアップしていく。システムとガバナンス面の全般的な検証の結果を踏まえて必要な対応を行う」
――12日から始まる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で国際課税改革が議題となる
「7月に大筋合意がなされ、現在、最終合意に向けて詰めの協議が行われている。麻生太郎前財務相が主導権をとって議論を進めてきた経緯があり、100年ぶりの見直しが成就できるよう期待している」
――人口減少など厳しい環境にある地方銀行の経営改善への認識は
「地銀は地域経済にとって非常に大切だ。人口減少などで経営環境は非常に厳しさを増しているが、時間軸をもって、将来を見据えた経営改革に着実に取り組むことが求められている。金融庁として合併や経営統合をしやすい環境をつくってきた。個々の経営判断だが、(合併や統合は)経営改革の1つの選択肢なので、取り組みを促していきたい」(永田岳彦)

 

●麻生氏の3205日「戦後最長」が遺した物 2021/10/9
数々の問題発言で物議をかもしながら歴代3位、3205日の在任日数を誇った麻生太郎前財務大臣。「戦後最長」の財務大臣が遺したもの、その知られざる素顔とは?
「半径2メートルの男」
その日、麻生大臣はいつになく上機嫌だった。「消費税2回上げて、(内閣が)倒れず、支持率が上がったんですから」「新聞の予想とはえらい違うことになったね」。退任前、最後の会見で麻生大臣は2度の消費増税など、自らの功績を22分間にわたって上機嫌で披露した。
振り返れば、麻生大臣の会見は本当に厄介だった。最近では、先月7日の記者会見、「コロナは曲がりなりにも収束して、国際社会の中の評価は極めて高い」と発言。麻生氏の言葉を借りれば、「曲がりなりにも」、緊急事態宣言下での発言である。当然、野党の集中砲火を浴びた。
また、21日には森友学園をめぐる文書改ざん問題の再調査について聞かれると、「読者の関心があるのかねぇ」などと発言。財務省による調査は不十分との声もある中、批判が集中した。
舌禍の枚挙にいとまのない麻生氏だが、「半径2メートルの男」の異名をとるだけあって、霞ヶ関の評判はすこぶるいい。「鷹揚で器が大きく、こちらの言い分にもしっかり耳を傾けてくれて人間味があり、リーダーとして理想的」と、財務官僚も手放しの大絶賛なのである。
実際、麻生氏が財務省を去った日は好天にも恵まれ、財務省の職員ら数百人が見送った。大好きな紫色のネクタイに、紫色の花束を手にした麻生氏は満面の笑み。職員らは麻生氏が乗り込んだ車が見えなくなるまで、万雷の拍手で見送った。
3205日の“遺産”
戦後最長となった在任期間。麻生大臣が遺したものとは一体何だろう。
麻生氏は第二次安倍政権が発足した2012年12月に財務相に就任。副総理も兼務し、圧倒的な存在感を示してきた。
消費税は2014年と2019年に2度引き上げたものの、新型コロナウイルス対策で大規模な財政出動をおこなったこともあって、今や国の借金は1200兆円を超え、麻生大臣の就任時から22%あまりも増えた。実に、債務残高がGDPの2倍を超えるという、とてつもない財政悪化を招く結果となったのである。
「経済再生なくして財政再建なし」の旗印のもと、経済成長を実現すべく巨額の補正予算を組んで「アベノミクス」の第2の矢、財政出動を繰り返したが、第3の矢である成長戦略では、はかばかしい成果を得られず、状況は改善しなかった。むしろ、本予算に比べてチェックの甘い補正予算には不必要な費用がまぎれこむことも多く、財政規律は緩む一方となった。
財務省の“スティグマ”
財務省への信頼を決定的に傷つけることになったのが、森友学園問題をめぐる決裁文書の改ざん問題だ。
公文書改ざんは「財務省が背負い続けるスティグマだ」と幹部は話す。スティグマ、とは汚名や不名誉、負の烙印といった意味合いの言葉だ。
それを助長したともいえるのが、麻生大臣の「説明責任軽視」の姿勢だった。公文書改ざん問題について、麻生大臣は度重なる記者の質問をはぐらかし続けた。「質問するなら、きちっと知ってないと具合悪いよ」と記者をからかったかと思えば、しまいには「その程度の能力か」などと発言。
一人の職員を自殺に追い込んだ問題にもかかわらず、正面から向き合おうとしない態度に批判が相次いだ。結局、最後まで再調査はしないとの主張に終始した。この「説明責任軽視」の姿勢は政権のあり方と無縁ではないだろう。
財務省幹部は「安倍政権下でものごとが官邸を中心に決められていく中で、霞ヶ関はひたすら官邸の顔色をうかがうという思考停止状態に陥ってしまった」と反省をこめて振り返る。
今般、ノーベル物理学賞の受賞が決定した真鍋淑郎氏が「日本に戻りたくない理由の一つは、周囲に同調して生きる能力がないからです」と語った。「政権一強」「官邸主導」の政治状況の中、同調圧力に抗いきれなかった財務官僚の姿は、この国のありように通じるものがある。
突進する「タイタニック号」
いま、目前に迫る衆院選。岸田総理は数十兆円規模の経済対策をぶち上げた。国債発行による無駄なばらまきに終わらないか、不安が募る。
そんな中、財務省の矢野康治事務次官が雑誌に寄稿し、「本当に巨額の経済対策が必要なのか」と疑問を投げかけた。衆院選を控え、与野党が展開する「ばらまき合戦」にもの申し、経済成長だけで財政健全化するのは「夢物語」だとして、財政の現状を「タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものだ」と警鐘を鳴らした。
次官の主張は、財政健全化より経済再生が先だとする政権の姿勢とは食い違う。
財務省はこれから選挙を前にした「ばらまき合戦」に抗い、財政健全化に向け、確実な道筋をつけなければならない。その道のりは険しく、麻生前大臣が遺した宿題はあまりにも大きい。

 

●さよなら麻生さん…番記者が見た戦後最長財務大臣 2021/10/13
戦後最長となる8年9カ月にわたって財務省に君臨した麻生太郎前財務大臣。5年弱にわたって彼を追い続けた日本テレビ報道局の経済部デスクが、独特の「麻生節」に失言、官僚からの人気、そして実行した政策までを振り返り、戦後最長財務大臣が遺したものとはなんだったのかを考える。
麻生太郎氏から番記者がもらった直筆お手紙の中身とは…?
いきなり冒頭から個人的な話で恐縮だが、まもなく財務省を担当して4年半になる。記者クラブでは最長老の一人だが、その間、大臣はたった一人。第2次安倍政権の発足時から、実に8年9カ月という長きにわたって財務省に君臨したのが、麻生太郎・前副総理兼財務大臣だった。
この4月にかねて念願だった小説を上梓した。ぜひ大臣に読んでいただきたい、と大臣室にお持ちしたところ、まさかのお手紙が返ってきた。
筆文字の直筆、しかも封筒には「太郎ちゃんシール」が貼られている。トレードマークのボルサリーノの帽子に「TARO」と書かれた茶色い革製のアタッシュケース、右手には葉巻を手に、口元をゆがめた、なんともそっくり、かつお茶目なアイコン。便せんも「麻生太郎」のマークと落款が印刷されたオリジナルである。
さて、その手紙の内容は、というと、「新聞やテレビはなるべく読まない、見ないようにしてきた為、常識を維持できているとは思っていますが」との一文が…。「麻生節」健在、である。
麻生氏の会見が厄介だった理由  記者への逆質問に失言の数々
なにせ、麻生氏の会見は厄介だった。何か聞けば、必ずそれについての逆質問が返ってくるのだ。失言も枚挙にいとまがない。最近では、9月7日の記者会見が挙げられる。
「コロナはまがりなりにも収束して、国際社会の中の評価は極めて高い」
大臣の言葉を借りれば、「まがりなりにも」緊急事態宣言下での発言である。野党の批判が集中した。
東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出を巡っては、「飲んでも何てことはないそうだ」と発言。中国外務省の高官が「飲めるなら飲んでみてほしい」と反応すると、麻生氏は、国際基準に則した安全性を伝える意図だったと釈明した上で、「『太平洋はお前らの下水道じゃない』とか中国は言われますけど、じゃあ太平洋はあんたらの下水道かと。みんなのものという話になっちゃうかと思うんですけど」と海洋放出を批判する中国に不快感を示して見せた。
方向性がおかしくてもとんちんかんでも、やられたらやり返す、それが麻生太郎なのである。
麻生会見で筆者もひどい目に… 「つまんないこと聞くねえ」と鼻で笑われる
筆者も一度ならずひどい目に遭った。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて安倍晋三総理(当時)が小中高校と特別支援学校の臨時休校を要請したことに関連して、それに対応する親が働く企業への影響や、その際の費用負担についての見解を聞いたときのことだ。
「経費がかかるとかいろんなことについては、対応することになるんだと思います」と、麻生氏は政府の支出になるとの考えを示した。そこで、「具体的なスキーム(仕組み)はこれからか?」とさらに聞くと、「こちらは要請を受けて出すんですから、こちらが最初にいくらですよって決めて言うわけないでしょう」と回答。その後に、「つまんないこと聞くねえ」とばかにしたように鼻で笑ったのだ。
思わず「いやいや、国民の関心事ですよ」と返すと、「言われて聞くのかね?上から言われているわけ?かわいそうだねえ」と哀れむような、見下すような目でこちらを見た。「あ〜あ」である。書かれちゃいますよ、大臣…心の中でつぶやいてみる。
予想通り、多くのメディアが取り上げ、一部のメディアはやりとりのすべてをご丁寧に音声付きでネット上に公開。ママ友などからは「よく言った!」などの反応が寄せられ、多くの読者、視聴者からは麻生氏に対して「いつも上から目線」「何でそんなに偉そうなのか」などと批判が噴出した。ほら、やっぱり、である。
「半径2メートルの男」麻生氏を霞が関の財務官僚は絶賛
巷では強面の「ヒール役」で鳴らしてきた麻生氏だが、霞が関の評判はどうかというと、これがどうしてどうして、実は大の人気者なのである。
「半径2メートルの男」の異名をとる麻生氏は、周囲の人間にとても温かく、財務官僚は「鷹揚で器が大きく、こちらの言い分にも耳を傾けてくれて人間味があり、リーダーとして理想的」と手放しで絶賛する。
実際、麻生氏が財務省を去った日は、天候に恵まれたこともあり、財務省の玄関には数百人が見送りに集まった。大好きな紫色の花束を渡されると、満面の笑みで手を振り、車に乗り込んだ麻生氏。「戦後最長」の大臣をねぎらう職員らの拍手は車が見えなくなるまで続いた。
財務省を去る少し前、省の幹部らに退任のあいさつをした麻生氏は、岸田新内閣に対して「あちらはまだ何もしていないのに支持率が上がっているんだから。こっち(菅内閣)は立派な成績を出したって支持率が下がった」と愚痴って笑いを誘い、「岸田(文雄)氏はどう考えてもええ男、われわれはどう考えても『けんか買います』みたいな顔してますから、支持率は上がらんのですって」と独自の分析を披露。最後まで「麻生節」健在。期待を裏切らなかった。
戦後最長3205日の在任期間 「麻生財務大臣」が遺したものとは?
3205日という戦後最長の在任期間。「麻生財務大臣」が遺したものとは、なんだったのだろう。「経済再生と財政再建の両立」と言い続けた経済閣僚たち。筆者が兼務する内閣府の担当大臣も、石原伸晃氏から茂木敏充氏、直近の西村康稔氏に至るまで、判で押したように同じ言葉を繰り返した。
麻生氏は2012年12月、第2次安倍政権の副総理兼財務相に就任。常に安倍総理の傍らにいて、大胆な金融政策と機動的な財政政策、成長戦略を3本柱とするアベノミクスを推進した。
日本銀行の黒田東彦総裁と連携し、インフレ率2%の物価安定目標の早期実現に向けた共同声明に踏み切った。日銀の異次元緩和は政府の利払いコストと大規模な財政出動のハードルを引き下げたが、結果的に放漫財政を許してしまった。
麻生氏が「成果」とする2度の消費税引き上げは、年間20兆円を超える税収の稼ぎ頭に成長した。しかし、消費増税や新型コロナ対策に巨額の財政出動を行ったため、債務残高が国内総生産(GDP)の2倍を超えるというとてつもない財政悪化を招く結果となった。
「どう気持ちよく貯めた金を使うか」 麻生氏の退任時の言葉に、ちょっと待て
麻生氏自身、退任の挨拶の中で、経済再生のためには個人消費の回復が大事だとして、「豊かになった国民が、どう気持ちよく貯めた金を使ってくれるかということを考えていただきたい」と述べた。
ちょっと待て、である。「どう気持ちよく貯めた金を使うか」…。この物言いにもざらっとくる。麻生氏が言っているのは、約2000兆円あるとされる国内の個人金融資産のことだ。財務省によれば、半数以上の約1100兆円が現預金で、ゼロ金利環境の下で活用されていないという。
「金が回らなければいくらあったって、単なる置き物になっちゃう」と麻生氏は指摘。「お金を動かし、税収を上げる方法を考える必要がある」と述べた。おっしゃるとおり、お金は「あるところにはある」のだろう。だが、大多数の市井の人々の実感としては「気持ちよく使える金なんてない」というところではないか。
アベノミクスが生んだ負の遺産、それが「格差」だ。筆者が思い出したのは、かつて担当していた石原慎太郎元東京都知事が放った一言だ。
「映画のチケット代って、あれはいくらだ。3000円だったか?」
ものの値段も知らない殿上人が雲の上から下界を見下ろし、下々の暮らしをままごとのように操る…そんなイメージが浮かんだ。
コロナ禍で「格差」は広がり続けた。あおりを受けたのは、非正規労働者や女性など、社会の最もか弱い層だ。人々の間に「自分以外の誰かが得をしている」という嫉妬や猜疑心が広がり、社会の分断が起きた。少子高齢化に拍車がかかり、社会保障費は年々膨らみ続ける。
岸田新総理の富の再分配政策にも「ちょっと待て」、財源は?
そんな中、岸田新総理は「富の再分配」を打ち出した。これは世界の潮流でもあるが、やはりちょっと待て、である。
総裁選中は消費税率について「10年程度は上げることは考えない」と語り、年末までに数十兆円規模の経済対策を取りまとめると表明し、「令和版所得倍増計画」をぶち上げた。だが、その裏付けとなる財源は見えないままだ。日本の財政は先進国の中でも最悪の水準、一体どこに打ち出の小槌があるというのか。
麻生氏は「これから時間をかけ、皆さんが必死に考えないと、この国家、財政的には持たん。僕はそう思っています」と語り、義弟である次の財務大臣、鈴木俊一氏にバトンを渡した。
目の前には衆議院選挙が迫る。岸田新総理の「富の再分配」は国債発行による無駄な「ばらまき」に終わらないか、不安が募る。「アベノミクス」は「第三の矢」である成長戦略で成果を上げられなかった。新政権は格差を是正し、中間層を拡大して経済のパイを大きくし「分配」するに足る果実を摘み取ることができるのか…。その道のりは険しく、2人の総理と麻生氏が残した宿題はあまりにも大きい。  

 

●自民・財政再建派「党内世論盛り上げたい」 積極財政派に対抗? 2021/12/7
自民党の財政健全化推進本部(本部長・額賀福志郎元財務相)が7日、初めての役員会を開いて議論をスタートさせた。コロナ禍のもとで破格の財政出動が続き、党内で積極財政派が勢いづくなか、財政規律の重要性を訴えた。
同本部は11月に発足し、額賀氏や麻生太郎前財務相、旧大蔵省出身の宮沢洋一税調会長、財務副大臣・政務官も務めた森山裕・前国対委員長ら財務省色の濃いメンバーが名を連ねた。7日の会合には岸田文雄首相も出席した。
首相は会合の冒頭、「財政健全化について考えていく姿勢は、責任政党である自民党にとっても大切な使命だ」とあいさつした。新たな借金に頼らずに政策経費をまかなえるようにする「基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化」を2025年度に達成する目標をめぐる議論が近く始まることに触れ、「本部でも議論をしっかり深めてほしい」と述べた。
額賀氏は「財政再建の旗は下ろさず、経済再生、成長を成し遂げる基本的な考え方を発言してもらい誠に心強い」「党内世論を盛り上げたい」などと応じた。同本部で考えをまとめて首相に提言する意向という。
同本部最高顧問に就いた麻生氏は、一方の積極財政派の「財政政策検討本部」の最高顧問に安倍晋三元首相が就いたことに言及。「こちらが安倍総理でこちらが麻生太郎。この二つを面白く掛け合わせてやろうというマスコミや党内のエサになるのは断固避けないといけない」などと語った。
●自民に首相直轄の財政健全化推進本部、年明けにPB目標議論 2021/12/7
自民党は7日、岸田文雄首相(党総裁)直轄の財政健全化推進本部を立ち上げた。会合であいさつした首相は「財政は国の信頼の礎」と述べ、「コロナ対策と中長期的な財政健全化は決して矛盾はしない」と強調。年明けにも基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化を目指す財政健全化目標年度の検証議論を行うと述べた。
財政健全化推進本部は本部長に額賀福志郎氏、最高顧問に麻生太郎副総裁が就く。
消費税2度上げて安倍内閣支持率上昇─麻生氏
岸田氏は「国際社会で国の信頼を維持していく、そうした姿勢は政治にとって大きな責任、責任政党である自民党にとっても大切な使命」と指摘し、まずは足元のコロナ対策、経済対策を行い、その上で財政健全化について検討が必要との見解を強調した。
麻生氏は財政政策については自民党内でも国債の無制限発行を可能とする現代貨幣理論(MMT)の信奉者がいると指摘。それに対して日本の財政赤字が国内総生産(GDP)の2倍もありながら国が成り立っているのは資産があるおかげと説明。ただし「資産には売れるものと売れないものがある」と述べ、フローベースでの財政健全化の実現の重要性を強調した。また「安倍内閣で消費税率を2度引き上げ、支持率は上がった」と話した。
健全化決断、遠くない時期に来る─額賀氏
自民党内では1日、MMT推進派の西田昌司氏が本部長となる財政政策検討本部が初会合を開催し、最高顧問に安倍晋三元首相、顧問に高市早苗政調会長らが就いている。財政をめぐり、麻生、安倍氏がそれぞれ健全化、積極化を唱える議連の顧問に就いた格好。 麻生氏は「マスコミが、安倍・麻生と面白く書く餌食になるのは避けないといけない」と述べた。
額賀氏は「経済再生、経済成長、財政健全化の決断が必要な時が(遠くない時期に)来るだろう」としたうえで、「将来をきちっと岸田政権に切り拓いてもらう裏舞台を作るのが我々の役割だ」と強調した。

 

●自民党”財政本部”が2つ!? 新たな主導権争い勃発か 2021/12/24
“財政健全化”か、“積極財政”か。自民党内で財政をめぐる議論が活発になりつつある。今秋の自民党総裁選挙で争った総理大臣の岸田文雄と、政務調査会長の高市早苗。その2人のもとに財政政策を議論する2つの組織が発足した。岸田のもとにできた組織の最高顧問は党副総裁の麻生太郎、高市のもとにできた組織の最高顧問は元総理大臣の安倍晋三。財政を軸に展開される論争は、党内の新たな主導権争いにつながるのではないかという見方も出ている。自民党内のパワーバランスを読み解く。
攻める高市
「総理は、今回の国債発行額(22兆円)の規模は大きすぎるとお考えでしょうか」12月13日の衆議院予算委員会。トップバッターで質問に立った自民党政務調査会長の高市早苗は、総理大臣の岸田文雄に切り込んだ。かねてから財政規律よりも積極的な財政出動を求めている高市。岸田の所信表明演説に“財政健全化”の文言が盛り込まれたことの真意をただした。
岸田の答えは…「22兆円の国債発行は決して小さなものではないと思いますが、必要なものをしっかりと用意することが政治の責任だ」
秋の総裁選挙での戦いを経て、総理大臣と政務調査会長となった岸田と高市。
政権発足から2か月余りを経て、2人の路線に違いを感じている自民党議員は少なくない。その象徴とも言えるのが、財政政策だ。
2つの「財政本部」
この論戦の1週間ほど前の12月7日。自民党本部で2つの組織の会合が開かれた。
党総裁の岸田直轄の「財政健全化推進本部(=以下、健全化本部)」と、政務調査会長の高市のもとに設置された「財政政策検討本部(=以下、検討本部)」だ。
このうち「健全化本部」の初会合には、岸田本人が駆け付けた。政策を議論する党の会合に現職の総理大臣が出席するのは珍しい。
岸田は「経済あっての財政」だとして、コロナ禍で経済が傷んでいる今は財政出動を優先する考えを示す一方、「責任政党」ということばを使って、中長期的な財政健全化に向け議論する重要性を説いた。
「言うまでもなく財政は国の信頼の礎だ。国の信頼を維持し、財政健全化について考えていく姿勢は、政治にとり、責任政党である自民党にとっても大切な使命だ」
そして、政府は、プライマリーバランス=基礎的財政収支を2025年度に黒字化する目標の再確認に向けた動きを年明けから本格化させるとして、党でも議論を急ぐよう要請した。
岸田直轄の「健全化本部」は、名前の通り、財政規律を重視する議員の集まりと目されている。
この5時間半後。党本部の別の部屋で開かれたのが、もう1つの「検討本部」。最高顧問は安倍晋三。これに先立つ12月1日の初会合で安倍は積極的な議論を呼びかけ、財務省が重視するプライマリーバランスの黒字化だけによらない、新たな財政指標の検討に意欲を示した。
「(財政の)健全性という評価だけではなく、デフレ状況を改善していくマクロ政策的な目標の検討も必要だ」
「検討本部」では専門家を招いてのヒアリングを重ねている。積極財政を前面に出すことは控えつつ幅広く検討する立場を標榜しているが、これを額面どおり受け取る議員は少なく、党内では積極財政に軸足を置く議員の集まりと認識されている。
では、なぜ方向性の異なる2つの組織が党内に立ち上がったのか。取材を進めると財政をめぐる党内の駆け引きが垣間見えてきた。
最初の一手は積極財政派
高市のもとに設置された「検討本部」の本部長を務めるのは、党内きっての積極財政派で政務調査会長代理の西田昌司だ。
「自国通貨を発行できる国は、財政赤字が膨らんでも破綻しない」という「現代貨幣理論(MMT)」の主張を展開する西田は、衆議院選挙の直後に高市と面会した。
これまで政務調査会にあった「財政再建推進本部」の名称から「再建」の2文字を取り、新たな組織に変えるよう提案した。
「私は財政破綻するはずがないと確信的に思っていて、高市さんも同じように認識されている。申し出ると、高市さんは『それはいいわね』と。二つ返事で『やってください』となった」
西田は、高市の政務調査会長への就任に加え、総理大臣を退任した安倍が自由に発言できるようになったことを好機と捉え、党主導で積極財政について検討を進めるべきだと考えている。
「アベノミクスでもデフレ脱却は完全にはできなかった。理由は財政出動していないからで、安倍さんも総理退任後、それを嘆いていた。安倍さんに議論のバックボーンになってもらい、党内を引っ張っていけると思った」
折しもこの時期、政府の経済対策の検討が佳境を迎えていた。
およそ9年ぶりに派閥に復帰し、「安倍派」会長に就任した安倍は、西田の動きに呼応するように、躊躇ない財政出動を声高に求めた。
「真水ベースで30兆円を超える予算編成を行う必要がある」
財政再建派の危機感
高市や西田による新たな組織の立ち上げと名称変更の動きは、岸田やその周辺にも伝わっていた。
「与党である自民党が財政健全化の旗を降ろしたと思われかねない。国際社会へのメッセージとして心配だ」(政権幹部)同じ懸念は自民党内にもあった。
こうした声を耳にし、急きょ調整に動いたのが幹事長の茂木敏充だ。
岸田と連絡をとりあった茂木は、高市らが考案していた組織はそのまま立ち上げる一方、「財政健全化」の名を冠する新たな組織を、総裁の直轄機関として設置する案を伝えた。
岸田は茂木の提案を受け入れ、本部長には、財務大臣の経験があり、党内でも財政再建派の重鎮として知られる額賀福志郎に白羽の矢を立てた。最高顧問には、9年近くにわたり副総理兼財務大臣を務めた副総裁の麻生太郎を据えた。額賀は、これまで歴代の政務調査会長のもとで、財政再建の議論をとりまとめてきた。高市に対しても、財政健全化を検討する組織が必要だと訴えたという。
「再び財政再建推進本部が設置されると思っていたが、呼びかけがなかった。名称はともかく、健全化本部のようなものを作ってもらえるとありがたいと話した」結果的に、額賀に「健全化本部」の設置と本部長就任を打診したのは、高市ではなく、岸田だった。額賀は続けてこう話した。「総裁直属の機関となり、重みを増したと思っている。岸田政調会長時代から議論しているので、考え方や何を目指すかは互いにわかっている。緊急時に再び自信を持って財政出動できるようにするには、累積債務を少しでも減らしたほうが将来の負担にならない」
「国の借金」にあたる国債の発行残高は、新型コロナ対策などの積極的な財政出動で、今年度末には初めて1000兆円を超える見通しとなり、先進国の中でも突出した金額となっている。
岸田は、臨時国会の閉会に伴う12月21日の記者会見で、政府としてMMTは採用しない考えを明確にした。「自国通貨建ての国債を発行する国の政府は、いくらでも国債を発行し支出できるという意見の方もいると承知しているが、政府としてはこうした考え方は取っていない。道筋を大事にしながら、財政健全化についても考えていきたい」
路線の違いが表面化しただけ?
2つの本部の始動について、自民党内では、総裁選挙以来の岸田と高市の路線の違いが表面化したものだという受け止めがもっぱらだ。
加えて、岸田派の中堅議員は、似て非なる組織の並立を次のように解説する。「財政について検討するのは1つの組織で十分だが、両方のパワーバランスをとるということだろう。それぞれのカラーが分かりやすくチーム分けされていて、『自民党にはいろんな意見がある』という姿を見せるためではないか」
この「パワーバランス」とは何か。そこには、岸田政権における党内力学を読み解くカギがありそうだ。
岸田と安倍、そのバランス
9月の総裁選挙で、念願の総裁の座を手中にした岸田だが、党内基盤は盤石とは言いがたい。
岸田が率いる岸田派は、党内の派閥では5番目の勢力で、安定した政権運営のためには、最大派閥を率いる安倍の意向にも配慮せざるを得ないという見方は少なくない。
岸田が安倍派のパーティーに来賓として駆け付けた際の挨拶は、いい例だ。
「岸田内閣をど真ん中で安倍派の皆さんが支えて下さり、政治の安定で大きな意味を持っている。政策を決断できるのも政治が安定していればこそだ」
当選同期の岸田と安倍が親しい間柄にあるのは広く知られたところだ。
しかし、出身派閥の系譜を背景に、政策面では違いがあるという指摘もある。岸田派=宏池会は、岸田と同じ広島出身で、岸田が目標と公言している元総理大臣・池田勇人が創設した派閥だ。
軽武装・経済重視の立場をとり、昭和35年から4年余り政権を担った池田。「所得倍増計画」を打ち出した。
池田の路線に公然と異を唱えたのが、のちに総理大臣を務めた福田赳夫だ。福田が立ち上げた「党風刷新連盟」は安倍派の源流となっている。比較的リベラルとされる岸田派=宏池会に対し、保守色が強いのも特徴だ。
岸田と安倍の違いについて、岸田派のベテランは次のように話す。
「宏池会(=岸田派)と清和会(=安倍派)で考えの違いは大前提としてある。財政で言えば、宏池会は『コロナの影響があったので財政支出』という考えがあり、ずっと支出を続けようということではない。財政健全化の旗を降ろしたわけではまったくない」
安倍はこのところ、外交・安全保障でも発信を強めている。台湾への軍事的な圧力を強めている中国をけん制するとともに、来年の北京オリンピックへの政府関係者の派遣の是非についても、政府に早期の判断を求めた。
麻生・茂木と連携を密に
こうした中、岸田が会談を重ねているのが副総裁の麻生と幹事長の茂木だ。
第2次岸田政権の発足後、それぞれ派閥のトップでもある3人は、時には食事をとりながらたびたび会談し、政権運営をめぐって意見を交わしている。
党内の一部からは、こうした動きを、安倍派へのけん制ではないかと見る向きもある。
「安倍派は95人だが、麻生派・茂木派・岸田派を加えるとその人数を超える。まとまれば政権が安定するという見方もできるのではないか」(閣僚経験者)
2022年 岸田は
政権発足後、最初にして最大の関門だった衆議院選挙を乗り越えた岸田にとって、次なる課題は来年夏の参議院選挙だが、そこを無難に突破すれば、最長で3年間、本格的な国政選挙の予定がない「黄金の3年間」を手にする。それを見据える岸田派議員からは「今は安全運転の時期だ」という声も聞かれる。
夏から秋の政局を経て、派閥の存在感も大きくなる中、パワーバランスに気を配りつつ、党内をどう統べていくか。政策的な違いが、党内の“きしみ”とならないか。財政をめぐる党内論争は、岸田政権の今後を占う試金石になるかもしれない。

 

 
 
 
 
  

 

● 2022

 

●岸田自民の重しか不安材料か…独自の役割模索する元宰相、麻生氏 1/3
岸田文雄政権の発足とともに自民党副総裁に就き、自身の首相(党総裁)在任中以来、12年ぶりに党務に復帰した麻生太郎氏が、独自の役割を模索している。財政問題や憲法改正など重要課題を扱う党会合に顔を出し、首相の後ろ盾となる姿勢を示して党内基盤の安定に寄与する一方で、軽率な失言癖への懸念もなおつきまとう。
昨年12月24日。国会近くのホテルで麻生氏は、首相、松野博一官房長官、茂木敏充幹事長と昼食を共にした。10月の衆院選後、定例化しつつある政権中枢の4人が集う会合。新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」を巡り、首相が水際対策の厳格化措置を「しばらく続けたい」と口にすると、麻生氏は「他にやりようがないですからね」。うなずいてみせ、さらにこう続けたという。「思うようにやられたらいいんですよ−」
安倍晋三、菅義偉両政権で、ナンバー2の副総理兼財務相を戦後最長の3205日間にわたり務めた麻生氏。岸田首相のたっての依頼で党副総裁を受けてからは党本部4階に部屋を構え、そのドアを政財界の要人や業界団体の陳情団がひっきりなしにノックする。
首相も党本部に立ち寄る際、努めて麻生氏の元を訪れる配慮を欠かさない。「(麻生氏)本人にとっては、求められる立ち回り方を探る機会にもなる」「頼りにされて、悪い気はしない」と麻生氏周辺。高度な政治判断の腹合わせで、たとえ見解が一致せずとも、麻生氏は「政権運営に自信をつけてきたようだ」と首相を持ち上げる言葉を繰り返す。当初、副総理から副総裁へのスライドを「上がりポスト」「体のいい飾り棚」と勘ぐる向きも党内にあったが、ほとんど聞かれなくなった。

81歳を迎えてなお意気軒高な元宰相にもいつか、議員バッジを外す時が来る。麻生氏の胸中に宿題として残っているのは、かねて持論としてきた「大宏池会」構想。自身が率いる麻生派、首相がトップの岸田派などを大同団結させて党内本流となす機をうかがっているとの見方で、衆目は一致する。
片や首相からすると、人事などを巡り隙間風も指摘される安倍氏との間を、絶妙なバランスを保ちながら取り持ってもらう−。そんな役目を、麻生氏に望んでいると岸田派中堅は読む。自民の基盤である保守層が今も旗印と仰ぐ安倍氏との対立が決定的になれば、政権は立ちゆかないのが現実だからだ。肝胆相照らす盟友関係の麻生氏と安倍氏は、12月22日にも茂木氏を交えて3人で会食し、情報交換している。首相に助力して、いわば「貸し」をつくっておくことは、麻生氏の「大宏池会」を実現に近づけるベクトルに沿う。
とはいえ、麻生氏には度重なる舌禍で時の政権にダメージを与えてきたリスクがある。最近も昨年の衆院選期間中、北海道での街頭演説で「温暖化のおかげで北海道のコメがうまくなった」などと発言し、首相が慌てて謝罪する一幕があった。また、麻生氏に重心を傾け過ぎると、世論や党内に根強い長老支配への批判、世代交代論を刺激して勢いづかせかねない。
麻生氏に要石を委ねることについて、首相周辺は漏らす。「功罪相半ばする。次の政治決戦となる夏の参院選でも、不安材料だ」

 

●自民 財政健全化推進本部 小渕元大臣トップに小委員会設置  2/10
財政健全化を目指す自民党の推進本部の会合が開かれ、新型コロナの収束後を見据え、中長期的な財政運営の在り方を検討する必要があるとして、小渕・元経済産業大臣をトップとする小委員会を設置することを決めました。
今後の財政政策をめぐり、自民党内では、去年の衆議院選挙のあと、財政健全化を重視する立場と、積極的な財政出動を求める立場の2つの組織が設置されていて、10日は、このうち、財政健全化を目指す推進本部の会合が開かれ、30人余りが出席しました。
本部長の額賀元財務大臣が「財政健全化に向かうことが将来への責任を果たすことだ」と強調したほか、最高顧問を務める麻生副総裁は「財政健全化を確実にやってきた歴史があるからこそ、日本は信用を得られている。健全化を大前提に長期的に物事を見てほしい」と指摘しました。
そして、新型コロナの収束後を見据え、中長期的な財政運営の在り方を検討する必要があるとして、新たに小委員会を設置することを決め、小委員長には小渕・元経済産業大臣が就任することになりました。
小委員会では来週以降、本格的な議論を始め、政府が夏ごろにまとめる、ことしの「骨太の方針」に内容を反映させたいとしています。 

 

●動けない黒田日銀 金融政策正常化へ財政健全化を  4/15
日銀が金融政策の正常化に動きやすい環境を整える上でも、財政の健全化を今から真剣に議論する必要がある。
日米“真逆”の金融政策が招いた円安と物価上昇は、日本企業の業績と家計の台所を脅かしている半面、日銀の異次元緩和が国債の利払い費を抑制する効果を発揮してきた。日銀が金融引き締めに転じれば利払い費は膨張し、財政が圧迫される副作用を伴うことになる。
日銀が異次元緩和の“出口戦略”を模索する際、機動的に金融政策を講じられるよう、財政健全化で後押しする必要がある。財政健全化により社会保障の持続可能性が担保されれば、家計の将来不安が払拭(ふっしょく)され、個人消費を喚起する効果も期待できるはずだ。
コロナ禍対策やインフレ対策のための財政出動は当然だ。岸田文雄政権は効果的に予算を措置し、減速が懸念される日本経済を下支えしてもらいたい。
問題は、実現可能で現実的な財政健全化目標が存在しないことだろう。歳出をいかに減らし、歳入をどのような成長戦略で拡大していくのか、岸田政権は足元の課題に対処しつつ、中長期的な財政健全化の道筋も示すことが求められる。
日本の国債発行残高は2021年度末に1000兆円を超す見込みで、主要国中で最悪の財政事情にある。22年度から団塊世代が75歳以上となり、医療・介護などの社会保障関係費も膨張していく。一方、日本の20年の1人当たり国内総生産(GDP)は世界24位と生産性が低い。メリハリを利かせた歳出抑制を進めつつ、技術革新と生産性向上に資する施策を促進するほか、格差是正に向けた金融資産課税の見直し、分厚い中間層形成に向けた所得課税のあり方などの議論を通じ、歳入構造も修正する必要があるだろう。
日銀の黒田東彦総裁の任期満了まで1年を切った。良くも悪しくも政策にブレがなく、異次元緩和は最後まで修正されないとの市場の見方が有力だ。“ポスト黒田”が多様な政策の選択肢を駆使できるよう、環境は今から整備しておきたい。 

 

●「成長によって財政健全化」自民党が提言案 5/17
積極的な財政政策を支持する自民党の議員が会合を開き「経済を安定成長経路に乗せ成長によって財政健全化を実現すべき」とする提言案をまとめました。
積極的な財政政策を支持する自民党の議員が作る、「財政政策検討本部」は17日、会合を開き、政府への提言案をまとめました。
提言案では「政府は積極的に財政を活用すべき」、「日銀は金融緩和を継続し、2%の物価安定目標を達成すべく、緊密に政府と連携すべき」などと求めています。
また、2025年度までにプライマリーバランスを黒字化する政府の目標については「重要な指標ではあるが、必要かつ柔軟な政策対応を妨げるべきではない」とし、見直しも含めた検証を行うべきと強調しました。
一方、国債については「多額の残高を全て返すことは現実的ではない」、「安定した借り換えを実現する必要がある」と指摘しています。
この提言案は、財政健全化を重視する自民党議員の会、「財政健全化推進本部」のメンバーである麻生副総裁らと調整のうえまとめられたということで、近く政府に提出する予定です。 

 

●25年度PB黒字化を堅持 「状況に応じ検証」―自民・財政健全化本部 5/19
自民党の財政健全化推進本部(本部長・額賀福志郎元財務相)は19日の会合で、歳出改革などに関する提言案について議論した。提言案は、国と地方の基礎的財政収支(PB)を2025年度に黒字化する目標について、「財政健全化の『旗』を下ろさず、目標に取り組む」と強調。党内の積極財政派が目標時期を設定する妥当性の検証を求めたことに関しては、「内外の経済情勢などを常に注視しつつ、状況に応じ必要な検証を行っていく」と明記している。
同本部は、岸田文雄総裁(首相)の直轄機関。提言案の修正を検討した上で、20日にも取りまとめ、政府が6月に閣議決定する経済財政運営の基本指針「骨太の方針」に反映させるよう求める。  

 

●財政健全化目標の堅持、状況に応じ検証=首相直轄の自民議連 5/20
岸田文雄首相(自民党総裁)直轄で財政政策を議論する同党の「財政健全化推進本部」(最高顧問、麻生太郎副総裁)は20日、政府が6月に閣議決定する経済財政運営の基本指針「骨太の方針」を念頭に、歳出改革などに関する提言案を議論した。
国と地方の基礎的財政収支(PB)を2025年度に黒字化する現状の財政健全化目標の取り扱いについて、「財政健全化の『旗』を下ろさず、これまでの健全化目標に取り組む」と強調。同時に「内外の経済情勢などを常に注視しつつ、状況に応じ必要な検証を行っていく」と明記し、リーマンショックや新型コロナのような経済ショックが発生した際には躊躇なく財政出動する姿勢を明記した。
自民党内では、財政政策をめぐり高市早苗政調会長の下に「財政政策検討本部」も存在し、安倍晋三元首相が最高顧問を務めている。大規模な財政出動を重視する議員が多く、PB黒字化の2025年度達成について、年限を区切った目標設定の妥当性を検証するよう提言でまとめている。
財政政策本部側では当初、PB黒字化の達成年度の撤廃を求める議員もいた。しかし、今年夏の参院選を控え党内対立が目立つのは得策でないとの判断から、財政健全化本部、財政政策本部、双方が提言の表現で歩み寄りを見せつつある。

 

●自民財政健全化本部、PB目標堅持を提言 5/26
自民党の財政健全化推進本部(額賀福志郎本部長)は26日、政調審議会に提言を報告した。政府が掲げる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を2025年度に黒字化する目標を堅持する姿勢を示した。
「財政健全化の『旗』をおろさず、財政健全化目標に取り組む」と明記した。「内外の経済情勢などを常に注視しつつ、状況に応じ必要な検証を行っていく」とも強調した。近く首相官邸に申し入れる。
健全化本部は岸田文雄党総裁の直轄組織だ。幹部は額賀氏ら緊縮財政派が多い。麻生太郎副総裁が最高顧問を務める。
党内には高市早苗政調会長のもとに積極的な財政出動を主張する財政政策検討本部もある。安倍晋三元首相が最高顧問に就く。
提言作成にあたっては額賀氏と安倍氏らが文言の調整にあたった。関係者によると、原案にあった「アベノミクス」や防衛費に関する記述に安倍氏が反発し、大幅に文章を修正したという。
●財政健全化本部の提言を了承 自民 PB黒字化目標堅持 5/26
自民党は26日の政調審議会で、岸田文雄首相直轄の「自民党財政健全化推進本部」(本部長・額賀福志郎元財務相)がまとめた財政政策に関する提言を了承した。基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化目標の堅持を盛り込んでおり、推進本部は来週、首相に報告する。
提言をめぐっては、安倍晋三元首相が最高顧問を務める党内の「財政政策検討本部」(本部長・西田昌司政調会長代理)が積極的な財政出動を主張し、意見が対立していた。
双方が協議した結果、推進本部の提言はPBの黒字化目標について、「財政健全化の『旗』を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む」としつつ、「内外の経済情勢などを常に注視しつつ、状況に応じ必要な検証を行っていく」と明記した。
額賀氏は記者団に「西田氏と打ち合わせしながら、将来の日本、国際社会における日本を考えながら共通の思いを持って健全化本部としての提言を出した」と説明した。 

 

●岸田首相・麻生氏「財政再建」VS高市氏・安倍氏「積極財政」...路線対立 5/27
自民党内が「積極財政派」と「財政再建派」に割れている。国の借金は2022年度末に国内総生産(GDP)の約2倍の1026兆円に達する見込みで、先進国で最悪となっているが、今夏の参院選を前に思惑の違いが表面化し、党の会合では両派が激しく言い争う泥仕合になっている。その余波は霞が関にも及んでいるようだ。
2025年度の財政再建目標、堅持か否か
現在、両派の対立の焦点となっているのが「2025年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を黒字化する」という従来からの政府目標の取り扱いだ。
PBは、社会保障や公共事業などの「政策経費」を新たな借金なしで賄えるかどうかを示す指標。最新の財政試算(22年1月18日発表)では、25年度のPBは、名目3%の高めの経済成長を前提にしても5.5兆円の赤字。これを黒字化するのは至難の業だが、黒字化の旗を降ろせば一段と財政規律が緩みかねないことから、経済政策の論争の火種になっている。
自民党の積極財政派の拠点となっているのが、高市早苗政調会長の直轄機関である財政政策検討本部。安倍晋三元首相が最高顧問を務め、2022年5月17日には、財政拡大の壁となっているPB目標の修正を求める提言を出した。
これに対し、財政再建派が集結しているのが岸田文雄総裁(首相)の直轄組織である財政健全化推進本部。最高顧問は麻生太郎副総裁で、5月20日に目標堅持を掲げる提言をまとめた。
政府は自民党の提言を受け、6月にも経済財政運営の基本方針(骨太の方針)を策定。これに沿ったかたちで2023年度予算の編成作業に入るのが、例年の流れだ。
しかし、党内が真っ二つに割れる中、正反対の提言を出されては、政府内の調整は難しくなる。このため、両本部の事実上のトップである安倍氏と麻生氏が水面下で調整を重ね、提言内容の修正を重ねるなど、対立の激化を避けようとしてきた経緯がある。
実際、財政政策検討本部がまとめた17日の提言は「カレンダーベースでの目標設定がマクロ経済政策の選択肢をゆがめることがあってはならない」と指摘したものの、政府目標については「十分に検証するべきだ」とするにとどめた。「目標の凍結など過激な文言はあえて控えた結果だ」(関係者)という。
これに対し、財政健全化推進本部の提言の取りまとめはもめた。財政再建を前面に出した提言を取りまとめようとしたため、19日の会合が紛糾。財政政策検討本部の幹部も乗り込み「約束違反だ」と反発するなど一触即発の事態となり、提言の決定は翌20日に持ち越された。
自民党内の対立は財務省にとって悩みの種
背景には、財政に対する見方の違いがある。
安倍氏をはじめとする積極財政派は「政府はまだまだ借金ができる。心配はいらない」として財政再建は当面、必要はないと主張する。安倍元首相の「日銀は政府の子会社」発言(J-CASTニュース 会社ウォッチ2022年05月22日付「『日銀は政府の子会社』...安倍氏発言は本音か?焦りの表れか?」参照)も、積極財政路線の延長上のものだ。
これに対し、財政再建派は「日本の財政は既に危機的な水準だ」とみる。さらに財政を悪化させる財政積極派の主張はとても受け入れられない、というわけだ。
政府の腰も定まらない。
松野博一官房長官は5月19日の記者会見で、政府目標について「目標年度の変更が求められる状況にはない。方針に変わりはない」と強調してみせた。
しかし、岸田首相は物価対策などに赤字国債で大盤振る舞いするほか、来日したバイデン米大統領に防衛費の積み増しを約束するなど、財源の確保策を示さずに「ばらまき」に邁進する。財政をどうしたいのか、岸田政権としての明確な方向は見えてこない。
この状況に危機感を強めるのが財務省だ。永田町をまわり、財政再建をあおろうと必死だが、参院選が近づく中、財政拡大圧力をかわすのは難しい状況だ。
20日未明。衝撃的なニュースが永田町・霞が関を駆け巡った。財務省の小野平八郎・総括審議官(その後、官房付に更迭)が、東急田園都市線の車内で酒に酔って他の乗客を殴ったなどとして警視庁玉川署に逮捕されたのだ。
総括審議官は省トップの事務次官への登竜門と目される出世コース。永田町の政治工作もこなす要職だ。
将来を約束された財務官僚の逮捕の一報に、霞が関では「自民党内の対立は財務省にとって悩みの種。小野氏も対策がうまくいかず、深酒に走ったのではないか」という同情論まで飛び出す始末だ。
財政政策の方向感は定まらず、自民党内の対立も続きそうだ。

 

●日銀の独立性 政府の「子会社」? 安倍発言で波紋 5/31
日本銀行は政府の「子会社」なのか−。安倍晋三元首相の発言を機に、日銀の独立性に関心が高まっている。法律上は金融政策や業務運営の自主性が定められるが、国債の大量購入で財政を支える事実上の一体運営が実態だ。発言の裏には参院選後を見据え新型コロナウイルス禍で傷んだ財政の健全化を図る動きを牽制(けんせい)する意図が透けて見え、自民党内では積極財政派と財政再建派の溝が表面化している。
議決権は持たず
子会社発言は5月9日、大分市内で開かれた会合での出来事だ。安倍氏は「1000兆円ある(政府の)借金の半分は日銀が買っている」と指摘。「日銀は政府の子会社だ。60年の(返済)満期が来たら借り換えても構わない。心配する必要はない」と述べ、借金を恐れず積極的な経済対策を講じるべきだと主張した。
実際、日銀の金融緩和で長期金利は0%程度に抑えられ、日本の政府債務残高が先進国でも突出して高い水準にあるにもかかわらず、利払い費が財政を逼迫(ひっぱく)するのを防いでいる。コロナ禍での大規模な経済対策は両者の連携で可能になった。
ただ、岸田文雄政権は安倍氏発言に距離を置く。首相は25日の衆院本会議で受け止めを問われ、「日銀は金融政策や業務運営の自主性が認められており、政府が経営を支配している法人とはいえない」と述べた。
鈴木俊一財務相も「政府は日銀に対して55%出資しているが、議決権は持っていない。会社法でいう子会社には当たらない」と説明しており、発言が政府見解ではないと予防線を張る。
人事権は握る
政府から独立した中央銀行の存在は、金融市場の安定を保つために不可欠だ。先進各国と同様に、日本も法的に裏付けられている。
日銀法では「日銀の通貨や金融の調節における自主性は、尊重されなければならない」と規定がある。自主性が確保されなければ、政府が選挙前に景気刺激を優先し金利の引き下げを求めるといった圧力も生じかねない。経済活動に大きな影響を与える金融政策が恣意(しい)的に用いられた場合、市場も混乱が避けられない。
現在の日銀法は平成10年に施行されたもの。バブル経済崩壊をきっかけに、戦時中の昭和17年に制定された旧法の見直し機運が高まった。海外では当時、中銀の独立性を高める議論が活発化しており、日本も政府の監督権限を大幅に見直すことで足並みをそろえた。
とはいえ、日銀法が担保しているのは政策手段の独立性だ。デフレ脱却と2%の物価上昇を目指す大方針は政府との共同声明で定められ、正副総裁や審議委員の人事権も政府が握る。このため法律上の子会社ではなくとも、親会社に日常業務を任されつつ権限を握られた子会社と「立場上は同じ」との主張も一理ある。
次期総裁人事の行方
安倍氏も後に「比喩的に言えば子会社」と言い直した。発言の真意は、コロナ禍で肥大化した各種支援策の縮減や増税を模索している政府・与党内の動きを牽制することにありそうだ。
安倍氏が最高顧問を務め、自民党内の積極財政派が集まる財政政策検討本部は17日、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を令和7年度に黒字化する財政健全化目標の設定は「十分に検証を行っていくべきだ」との提言案を公表。目標を錦の御旗≠ノして歳出削減を進めるべきではないと強調した。
これに対し、首相直轄の党財政健全化推進本部は26日、「健全化の旗を降ろさず、これまでの目標に取り組む」との提言を決定。ただ、「経済情勢などを常に注視しつつ、状況に応じて必要な検証を行う」とも併記した。参院選を控え、両派が手打ちを図った形だ。
参院選が終われば来年4月に任期満了を迎える日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁の後任人事が本格化する。日銀を間に挟んだ積極財政派と財政再建派の対立はクライマックスを迎え、その行く末が今後の経済財政運営のカギを握ることになる。
出資割合 日銀法が規定
日本銀行は、日銀に対する出資の持ち分を示す有価証券「出資証券」を発行している。東京証券取引所の上場銘柄として実際に売買が行われ、毎日の値動きや売買高も公開されている。
日銀法は日銀の資本金を1億円と定め、「政府からの出資額は5500万円を下回ってはならない」と規定している。このため政府から55%、民間から45%の出資割合が保たれている。
一方、株式会社の株主総会に相当する意思決定機関は日銀になく、出資者に議決権は与えられない。営利法人ではないため値動きが少なく、配当率は5%を超えないという規定もある。このため、直接的な利益を期待してではなく、株式投資の「お守り」として出資証券を保有する人も多い。 

 

●日本でも財政健全化のためペイアズユーゴーの導入検討を 7/15
財政健全化の方針堅持が重要
参院選挙後の政府の財政政策で大きな注目点となるのは、補正予算編成を伴う物価高対応の大規模経済対策、来年度予算に向けた防衛費の大幅増額、新しい資本主義実現のための重点投資となる。いずれも新たな財源を確保しないで実施すれば、財政環境の一段の悪化を招く。
先般の骨太の方針策定に至る過程で、自民党内では2025年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化目標を修正し、歳出拡大の制約とならないようにする働きかけが強まった。現在、党内は財政拡張路線と財政健全化路線とで割れている状況だが、前者の力が高まってきている印象だ。
財政健全化のために大幅な歳出削減や大幅増税を実施し、経済に大きな打撃を与えることは現実的ではない。現在の国債発行残高の水準を見ると、ここまで悪化した財政環境を短期間で立て直すことは不可能だ。中長期の課題として財政健全化の方針をしっかりと堅持して、時間をかけて財政再建に取り組むことが現実的な方法だろう。
日本経済は非常事態ではなく実力に見合って低位で安定した状況
足元では、日本経済の置かれた状況が異常である、いわゆる非常事態であることを理由に、国債発行による財政拡張策を正当化する動きが強まっている。足元だけでなく、日本経済の非常事態を理由に、過去10年近くにわたって異例の金融緩和、財政拡張策が実施されてきたのである。
確かに日本経済はかつてと比べて成長する力を大きく失った状態にあるが、実力に見合って低位で比較的安定している状況と言えるだろう。現在の物価高は確かに消費活動の逆風ではあるものの、例えば過去の感染拡大時と比べれば、個人消費への打撃は相対的には小さい。こうしたもとで、国民の危機感をいたずらに煽って、異例の金融、財政政策を長く続けていれば、副作用が積み上がり、経済の力はさらに落ちてしまうだろう。
財政にフリーランチはないのであって、「国債発行で財源を調達すれば誰にも痛みは及ばない」と考えるのは誤解だ。国債発行による財源調達は、将来に向けた国民の負担となり、将来の需要を前借りするに過ぎない。さらに、財政の拡大は民間経済活動に悪影響を与えるクラウディング効果を生じさせる。その結果、経済の成長力は一段と低下し、国民生活を圧迫するようになってしまう。
「ペイアズユーゴー(Pay-As-You-Go)原則」など米国の財政健全化措置を参考に
米国では、1980年代のレーガン政権時に、軍事費拡大や積極減税策によって財政は大幅に悪化し、財政赤字と貿易赤字とが共存する「双子の赤字」の問題が、長期金利の上昇、ドル安、株価下落など金融市場を揺るがした。このように米国では、金融市場が警報を発する形で、財政健全化の重要性を国民が強く認識したのである。このことが、レーガン政権に続くブッシュ政権のもとで、財政健全化が迅速に進んだ背景にある。他方日本では、金融市場がそのような反応を示さないため、市場の力で財政を健全化させる自浄作用は働きにくい。
ブッシュ政権以降に米国でとられた財政健全化策は、日本でも参考にすべきではないか。ブッシュ政権時には「1990 年包括財政調整法」が成立し、「ペイアズユーゴー(Pay-As-You-Go)原則」と「キャップ制」が導入された。その後、1993 年1月に発足したクリントン政権でも、ブッシュ政権による財政再建の枠組みは踏襲された。また米国では1917年から、債務上限が法律で定められており、これも財政悪化に歯止めをかける仕組みである。
「ペイアズユーゴー原則」とは、新規の施策や制度変更を通じて義務的経費の増加や減税を行う場合には、同一年度内に他の義務的経費の削減や増税などの措置を行わなければならないとする制度である。十分な相殺措置がなされていないと判断される場合には、歳出が一定の割合で一律に削減がなされることになる。
「キャップ(Cap)制」 は、裁量的経費に上限を設ける仕組みであり、根拠法は「2011 年予算管理法」である。当該年度の歳出予算法における裁量的経費の総額が法定上限を超えた場合には、歳出の一律削減がなされることになる。
プライマリーバランスの黒字化目標は機能してこなかった
日本で現在議論されている歳出増加は、社会保障費など制度によって決まる義務的経費ではなく、裁量的経費である。裁量的経費を増額する場合には、その財源を新規の赤字国債の発行ではなく(建設的支出増加を建設国債の発行で賄うことは許容される)、他の裁量的支出の減額、あるいは増税によって賄うとする「ペイアズユーゴー原則」、あるいは裁量的経費に上限を設ける「キャップ(Cap)制」の導入を検討すべきではないか。また、近年では与野党の政治的駆け引きに使われてしまっている感は強いが、法定の債務上限についても、導入を検討する価値はあるのではないか。
米国よりも格段に経済規模で見た政府債務の水準が大きい日本で、財政健全化を促すこうした制度が導入されていないのはおかしい。プライマリーバランスの黒字化目標を掲げるだけでは、財政健全化に目立った効果を発揮してこなかったのが、今までの経験である。
財政の本質に立ち返れ
そもそも財政とは、国民から集めた資金を国民の意思に基づいて各種政府サービスに適切な割合で振り向けるプロセスに他ならない。しかし、予算つまり国民が負担できる金額には限りがあることから、どこに資金を振り向けるかを慎重に取捨選択する必要がある。
ところが、歳出拡大を新規の赤字国債の発行で安易に賄う傾向が強まると、こうした取捨選択のプロセスが疎かになってしまう。米国に範をとり各種の財政健全化の仕組みを導入すれば、それ自身が財政健全化を推進する効果を持つばかりでなく、限られた財源を適切に配分するという財政の本質を、国会、国民が思い出すきっかけともなるのではないか。
収入が不足していれば、買いたい物をあきらめるのが、通常の個人の消費行動だ。若年時には、将来の収入増加に期待して、あるいは将来の収入増加という信用力を使って、資金の借り入れを行い、それを通じて自動車、住宅の購入を行うのが普通だ。
日本経済の潜在力低下に歯止めをかけ将来の財政危機のリスクを減らす必要
しかし、既に成熟期に入った日本経済が、先行き成長力を大きく高め、税収増加で債務を確実に削減できると考えるのは適切ではない。現在の財政環境は、既に高年齢層に入った消費者が、大幅な資金の借り入れを通じて消費を拡大させ続けているのと似た構図ではないか。それは結局個人破産、政府で言えばデフォルトにつながるか、あるいは次世代、次々世代に借金を残すことになり、かなり無責任な行動となるだろう。既に、日本人一人当たりの政府債務は1,200万円前後に達している。
政府の債務と個人の債務は異なるとの議論もあるが、基本的には同じではないか。将来の国民が政府債務の返済を続けていきデフォルトは起こらないとの金融市場の期待が、現在の低金利を支えている。一度これが崩れれば、金融市場は大きく混乱し、経済の安定は損なわれる。他方、デフォルトが起こらないのであれば、将来世代は政府債務の返済を続けていく必要があり、その分民間需要は損なわれる。
日本経済の潜在力低下に歯止めをかけ、さらに将来の財政危機のリスクを減らす、また、世代間での不公平感を是正するという観点からも、岸田政権には新たな制度の導入を伴う形で、財政健全化の方針をしっかりと再確認し、それを強く推進する政策を進めていって欲しい。 

 

●麻生副総裁、甘利前幹事長の名前 親カルト「400人議員名簿」“驚愕”の中身 9/14
自民党は8日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)や関連団体との関係について、党所属国会議員379人から報告を受けた点検の結果を発表。半数近い179人に何らかの接点があったという。さらに今回、本誌(週刊新潮)は、副総裁・麻生太郎氏を筆頭として、骨の髄までカルトに侵食されていることを裏付ける警視庁公安部の捜査資料を入手した。
岸田政権の支持率低下に歯止めがかからない。自民党は統一教会と組織的には無関係だと主張したが、こうも所属議員の濃厚接触ぶりが明るみに出ては当然だ。
焦る岸田総理は8月31日、記者団に固い表情で教会と“絶縁”する決意を示した。
「(自民党の)所属国会議員を対象に旧統一教会との関係性を点検した結果を公表する。所属議員は過去を反省し、しがらみを捨て、団体との関係を絶つ」
この発言に先立ち26日には、茂木敏充幹事長が党の所属議員に〈旧統一教会及び関連団体との関係について〉と題する書面を配布。
「アンケート形式で、その用紙には関連団体が主催する会合への出席の有無など八つの質問項目が並んでいました」(政治部デスク)
だが、それも早々と骨抜きにされたという。
「秘書に信者が紛れていないかどうかを確認する項目もないなど、質問の穴が目立ちました。また、事務所同士で示し合わせて回答の仕方を調整し、教会との関係を全体として薄く見せる方法を模索する動きも。さらには“まともに回答するな”と申し合わせた派閥すらあったそうです」(同)
調査ではなく「点検」とした理由
一方、茂木幹事長はこう番記者らを威圧していた。
「(質問は)調査ではありません。正確に聞いていただきたいんですけれど、各議員に点検するように要請をしているわけです」
調査ではなく点検――。つまり、実態に分け入りはしない、ただざっと見渡して気になる点だけ申告せよ、というお触れだ。そもそもやる気がないうえに、後で問題が露見しても「点検レベルだったので」と言い逃れできる。しかも、
「本来、9月6日の午前中に公開される予定でしたが、回答の“修正”に手間取り、公表日を延期せざるを得なかった」(前出デスク)
とことん問題の矮小化を図る姿勢だ。こんな具合でどうやってしがらみを捨て、関係を絶てるというのか。
警視庁公安部の捜査資料
もっとも、次に紹介する“証拠資料”をひもとけば、そもそも自民党に自浄作用を期待するほうが土台無理な話なのだと合点がいく。
それは「議員名簿」と題された書類で、400名を超える国会議員と地方議員の名前が並ぶ。
リストに「現」とあるのは当時の現職、「元」とあるのは政界引退済みの元職、中には故人も含まれる。
作成者は誰か。危険団体の監視や外国勢力に対する防諜などを担う、警視庁公安部である。
「警視庁公安部は統一教会単独の動向だけではなく、政治家と統一教会の関係についても水面下で長年、監視してきました」
とは、さる警視庁関係者。この名簿はすなわち、警視庁公安部総務課の政界担当とカルト担当が極秘裏に作成、更新してきたものだ。
木村守男青森県知事(当時)や与謝野馨元財務相(2017年没)の名前がすぐ目につくが、中でも注目すべきは麻生太郎氏にまつわる記述である。
〈勝共推進議員 平成11年2月18日 前進大会東京大会に祝電を打つ 平成11年3月4日 前進化西東京大会に祝電を打つ 平成11年3月13日 勝共全国代表者会議に祝電を打つ〉
かくて麻生氏が、教会の関連団体主催によるイベントに何度も祝電を打っていた事実が記されている。
総理経験者に幹事長
本誌は9月8日号で、麻生氏が統一教会の提唱する「日韓トンネル」事業に賛意を示し、推進団体の顧問にも就任していたことを報じたが、
「麻生氏は各社の取材にもだんまりを決め込み、自ら教会との関係を公表してもいません。これまで11年に教会系の米紙『ワシントン・タイムズ』に東日本大震災への米軍の協力に謝意を示す米在住日本人による意見広告が載った際、そこに名を連ねていたことくらいしか報じられてきませんでした」(政治部記者)
麻生氏は副総裁として名実ともに岸田政権を支える立場にあり、いわば政府・与党の枢要。公安部の資料は、その麻生氏がひた隠す過去を白日の下にさらすのだ。
麻生氏に尋ねると、事務所を通じて回答があった。
「現状、確認できる範囲では記憶も記録もない」
だが、さらに機密ファイルをめくると、別の重鎮の名前も目に留まる。麻生氏の側近で麻生派のナンバー2、甘利明・前幹事長だ。
〈平成11年9月5日世界平和連合神奈川大会に祝電〉
これまた関連団体主催の大会に祝電を送っていたというのである。が、政治部記者によると甘利氏は、
「共同通信が実施したアンケートに対して、教団の関連団体が主催した時局講演会に1度だけ参加したほかに付き合いはないと回答しています。また、過去にイベントへ祝電を送ったことも一切否定しています」
甘利事務所にも事実関係を問い合わせたところ、
「資料も探しましたが、残っていないため確認することができませんでした」
統一教会問題に詳しい渡辺博弁護士は“腐れ縁”の清算など果たしてできるのか懐疑的だ。
「統一教会との関係は断ち切るべきですが、完全に関係を絶てば、教会側がそれまでの関係を全部暴露するかもしれない。それを思えば、どの程度のことができるのか疑うしかない」
イベントへの潜入捜査の結果
実際、両者の骨がらみの関係は、別の捜査資料からも読み取れる。
たとえば、同じく公安部の手になる「視察結果」と題されたA4判5枚つづりのペーパーには、こうある。
〈世界平和連合は、昨夜(1月19日)千代田区所在の〇〇〇〇〇〇ホテルにおいて「新世紀を考える新春有識者の集い」世話人会主催による『新世紀を考える新春有識者の集い』を開催、多数の国会議員の参加を確認した〉
先の警視庁関係者が言う。
「この資料は2000年1月19日、統一教会の関連団体『世界平和連合』が都内のホテルで開催したイベントを捜査員が視察、つまり潜入捜査して得た結果を報告したものです」
自民党有力者らが続々と来場
資料から伝わるパーティーの様子は生々しい。
会場にスタッフとして配置された信者は50名。ホールの入口付近の台には、参加者への土産物として手提げ袋が並べられている。
袋の中には、フランス菓子や関連団体のパンフレットに加え、大塚克己・日本統一教会/世界平和連合/国際勝共連合会長(当時)の著書『新世紀を拓く』も入っている。
大塚氏は当時、教会内で絶大な権力を保持していた。過去に日本で教団のトップを2度も務めたほか、のちには子息が教祖・文鮮明の孫娘と結婚している。
受付スタートは午後5時。やがて三々五々、自民党議員らが姿を現しはじめる。中川秀直元自民党幹事長、武部勤元自民党幹事長、中川昭一元財務相、松岡利勝元農水相といった有力者たちだ。
午後6時、開会を告げる発声に続いたのは10分ほどのビデオ上映会。世界平和連合の活動方針を示す内容である。その後、来賓あいさつ、祝電披露と続いたが、祝電の送り主たるやそうそうたる顔ぶれで、中曽根康弘元総理、橋本龍太郎元総理、三塚博元蔵相という、いずれ劣らぬ重鎮ばかり。
花束贈呈という大役
乾杯のあとは1時間ほど会食となり、その間に来賓の国会議員が紹介され、石井一元国家公安委員長や田中慶秋元法相ら民主党からも7人の名が読み上げられた。やがて午後7時35分から40分間にわたって大塚会長が「新世紀を考える」と題して講演。総勢200名の聴衆が聴き入った。
イベントのクライマックスは、越智通雄元経済企画庁長官の妻・和子夫人からの大塚会長への花束贈呈だった。この和子夫人が“大役”に任ぜられたのには理由がある。
「福田赳夫元総理の長女だからです。福田元総理は74年、文鮮明が帝国ホテルで主催した晩餐会に出席し、“アジアに偉大なる指導者現る。その名は文鮮明である”と持ち上げるなど、教会との関係の深さが知られています」(同)
こちらは父娘2代にわたる教会との固い絆というわけか。
およそ2時間半に及ぶ祝宴は午後8時20分にお開きとなったが、この報告書の最後に以下の文言が付されている点は見逃せない。
〈主催者側は、ホテルに対して、統一教会や世界平和連合の名を公表しないように申し入れした〉
なるほど、平たく言えば口封じである。当時から自民党と教会の関係は永田町界隈でこそ“常識”の範疇に属したが、00年は霊感商法や合同結婚式の問題が世上を騒がせた“負の記憶”もなお色濃く残っていたため、どうしても周囲の目を欺く必要があったのだ。
大村愛知県知事の名前も
一方で、並み居る党の実力者に交じって、当時まだ自民党の衆院議員1回生だった大村秀章氏の姿を捜査員が視認していたことにも触れないわけにいかない。氏は愛知県を地盤とし、現在は周知の通り愛知県知事をつ務めている。
付言するなら、大村氏の名前は前半で触れた「議員名簿」にも登場する。愛知県で99年9月に計2回、世界平和連合の大会が開催された際、秘書を代理出席させた記録がある。
「大村知事は19年に愛知県で開かれた教会のイベントに祝電を送っていたと報じられました。しかし“祝電の文言が改ざんされている”などと逆ギレし、あたかも自らが“被害者”だと言わんばかりです」(社会部記者)
大村知事の回答。
「当時の記録も残っておりませんのでわかりません」
以上のことから浮き彫りになるのは、統一教会が、総理を経験したのち政界を引退したお歴々から現職閣僚、自民党の大幹部、中堅、若手、さらには地方自治体首長から地方議員にいたるまで、あまねく浸潤している事実にほかならない。
全国霊感商法対策弁護士連絡会代表世話人の山口広弁護士は、こう語る。
「自民党の“点検”は自己申告制であり、質問も甘く、不十分なものだと言わざるを得ません。ただ本当に調査してしまうと、関係が次々に露呈し、党が潰れてしまうので腰が引けたのでしょう。要するにポーズでやっているだけ。統一教会との関係を真に絶ちたいなら、まずは政府が“統一教会は反社会的団体である”と明確に見解を示すところから始めるべきです」
世の関心が去るのを待つばかりでいいはずはない。  

 

●麻生副総裁が台湾有事に備え、我が国の"平和ボケ"に喝! 9/20
先月末、NHKを含めた各社の報道によると、麻生太郎自民党副総裁が自身の派閥研究会において、「中国が台湾への圧力を強める中、台湾有事が起きた場合は日本も確実に巻き込まれる」として、日米安全保障の抑止力をさらに整備する必要があると訴えている。
言うまでもなく、佐世保市には我が国にとって極めて重要な米国海軍・海上自衛隊・海上保安庁の基地があり、日米安全保障上の西の護りの要となっている。従って、習近平共産党政権に近い中国企業PAGによる「ハウステンボス買収」を許すことなどを含む今後の“長崎IR”を、国が承認することなど絶対にない。
一方、麻生副総裁の実弟でもある九州経済連合会名誉会長の麻生泰氏(九州IR推進協議会名誉会長)も、昨年4月「九州から日本を動かす気概をもって...地方創生モデルを形成し、この国の再興と新たな成長を目指す」として、当時の九州IR推進協議会発足時に挨拶をしている。中国・習近平政権の息のかかった企業をこの地に誘致するようなことは、だから絶対あり得ない。
ところが、先月26日に「第三回IR九州ビジネスセミナー」をウェブ上で開催、出席者は初代会長麻生泰氏を継承した、現在の九州経済連合会会長倉富純男氏(元西日本鉄道)、長崎IRの事業主体と称する九州リゾーツジャパン大屋高志氏、ならびに長崎県知事大石賢吾氏の3人である。この時点では、大石知事は「HISハウステンボス売却」の件は知らされていないし、多少の噂話を聞いた程度で、その内実を知ってもいなかった。おそらく、他の2人も同様であったろう。HIS澤田氏の賢い極秘戦略だったのだ。ちなみに、メディア各社の報道は8月31日。結果として、彼らは「片棒を担いだ」と言われかねない。誠にお粗末な話である。
麻生前会長から九州経済連合会・九州IR推進協議会を引き続いだ倉富純男会長(西日本鉄道会長)は、今回の「中国企業のハウステンボス買収」問題に今後どう対処するのだろうか。出身の西鉄、そして九州電力、JR九州、西部ガス、九電工などの九州経済連合会および福岡財界七社会のメンバーのうち5社がハウステンボス株主であり、今回、この5社はすべての持ち株をHTBに譲渡売却する。
つまり、同園との正式なつながりを放棄し、まったく関係がなくなることを彼らは選択しているのだ。なのに、この結果を踏まえた九州IR推進協議会会長としての発言はいまだ一切ない。
「九州IR推進協は、HTBの中国企業買収後にどう対応する?」
こうした状況下、「ハウステンボス売却転売」を決めたHISと PAGの契約完了日が今月末と報じられている。九州IR推進協議会はいつまで“ダンマリ”を決めて、コメントを差し控えるつもりなのだろうか。近い内、同組織は何らかの決断を迫られることとなるだろう。
いつまでも黙ってやり過ごすことはできない。なぜなら、本件に関しては、長崎IRの管轄行政責任者・長崎県知事と、その事業母体と称する九州リゾーツ代表者との会談が、ウェブ上で実施されたばかりだからだ。世間一般では、「HISの澤田は売国奴...」などSNS上で“炎上寸前”になっている。当然、契約完了時点では、より過激なネット書き込みとなり、各マスコミからの取材攻勢も激しくなるだろう。
このような環境で、九州IR推進協議会ならびに九州経済連合会会長として、倉富氏が「ハウステンボス所有者が中国企業に代わっても...長崎IRには一切影響しない」と、大石知事や朝長佐世保市長と同様のことを公に発言するかどうか。常識的に見て、それはないものと考えたい。
なぜなら、当地福岡が麻生副総裁の地元であり、実弟の麻生名誉会長から継承した組織の現責任者が、日米安全保障、日米経済安全保障、重要土地利用規制法等の観点と現在の政治的背景から、彼ら長崎IR関係者と同じ判断を下す筈など絶対に考えられないからである。当然の話ではないか。
さて、本紙でこれまでも具体的に解説してきたが、当地福岡IRは、約5年も前から熱い情熱の若い経営者たちによる民間企業組織によって、本件IR誘致開発事業に関する事前のすべての準備作業をしてきており、それもほぼ完了した。今年3月にホテルオークラで実施された米国ラスベガスの老舗「Bally's」による記者会見は、その最終段階での積極的な福岡進出を公に表明したものだ。
当然、今回の区域認定申請の一次締切日(今年4月末)には、最初からこのプランは折り込み済みであった。また、彼らは福岡政財界の各組織には、事前に、この件を正式な形で通知している。なお、上記の記者会見の模様などはYouTubeにアップされ、誰でも観ることができる。国際規格のアイスアリーナやリトルリーグの野球場等の併設提供など、IR事業だからこそ可能な事業であり、実に優れた内容だ。問題だらけの長崎IRとは比較にならない。
「ハウステンボスパッケージ」のIRは最初から基本的に難しいプランである。重ねて言うが、所詮「後背地人口の少ない地方の都市」では、彼らの行政能力も含めて、極めて実現困難なのである。これを簡単に言うと、福岡IRの集客計画数の約1・5倍も長崎IRに客が来るなどという計画を作成すること自体、「絵に描いた餅」であり、まったくあり得ない数値なのである。
もう、いい加減に彼ら組織人は何かに忖度するのを止めにすべきだ。ここまで準備してきた前途有望な若者たちにもっと敬意を表し、前麻生泰会長が言っていた「九州、福岡から日本を動かす気概...」を老若の関係者全員が共有し、本件IRについては、十分な市場性を有する“福岡IR”を一致団結して実施すべき段階にきていることを自覚すべきである。国際金融都市を目指すTEAM FUKUOKAの実現にとって、これが最高の付加価値となることは間違いない!  

 

●麻生氏「若者、強制なく並んだ」 国葬の意義強調 10/2
自民党の麻生太郎副総裁は2日、福岡市で講演し、安倍晋三元首相の国葬当日に多くの若者が会場周辺で弔意を示していたとして「人から強制されたわけでもないのに夜まで並んでいた。若い人たちの中に希望が見えると確信し、日本の政治に取り組む」と述べた。海外から国葬参列のため多くの人が訪れたと意義も強調した。
同時に「世界から日本への期待は極めて大きい。他の国々の政権が不安定な中にあって、日本は間違いなく安定している」と訴えた。 

 

●自民・麻生副総裁 国葬に並ぶ「若い人のなかに日本人育ちつつある」 10/3
先ほど、みなさまで黙禱をしていただきました安倍晋三元総理の暗殺、凶弾に倒れられるという事件以来、いろいろな警備体制も変わりまして。私の周りも、次に撃たれるのは麻生だろうという、そういう予想になっているのか知りませんけど、たくさんのおまわりさんについていただくことになりまして。
歩いていると昔の暴力団の組長でも、もっと控えめに人がついていたんじゃないかというほど、今いっぱいおまわりさんがついていただくことになりましたものですから、なんとなく町を歩くのも出にくい感じになりまして、消費促進を抑えておるなと自分ながらそういう感じもするところなんですが。
日本で少なくとも内閣総理大臣(経験者)が銃弾で倒れることなんて戦後1回もありません。そういう事態が間違いなく起きたのが現実でありますので、そういう意味で、色んなものの体制を考えなければいけない。(中略)
国葬に対しても色んな話がわんわん出てましたけど、(午後)2時に始まる国葬に(一般献花は)受け付け4時までというのに対し、5時6時7時8時9時まで、赤坂の前までずーっと人が並んでいた。少なくとも赤坂御所の前にいた人は9時ごろまで見かけられた。何時間かけて、ずーっと若い人なんかが並んで立っている。それが国葬における現場であって、その人たちの声がなんで新聞やマスコミには載らんのですか。
人から強制されたわけでもなんでもない国葬というのがある。あれだけの多くの人が延々と夜まで並んでいるという状況を見て、私は正直何とも言えない気持ちになって、本当に立ち止まってお辞儀をしてしまったのが正直な実感なんで。そういった日本人が今、若い人たちのなかに育ちつつある。若い人たちのなかに多くの日本人が育ちつつある。
そういった意味で、若い人のなかに希望が見える、そう確信して日本の政治に取り組んで参りたい。(福岡市の国会議員パーティーのあいさつで)
●麻生太郎氏「若い人のなかに日本人育ちつつある」発言に異論続出! 10/3
《さすがローゼン閣下。俺たちの気持ちを代弁してる!》、《ズバリ言ってくれた》
「称賛」の声以上にSNSでじわじわ広がっているのが、自民党の麻生太郎副総裁(82)の発言に対する批判的な見方だ。
コトの発端は麻生氏が2日に福岡市で開かれた講演で、安倍晋三元首相の国葬に振り返り、こう発言したことだ。
「あれだけの多くの人が延々と夜まで並んでいるという状況を見て、私は正直何とも言えない気持ちになって、本当に立ち止まってお辞儀をしてしまったのが正直な実感なんで。そういった日本人が今、若い人たちのなかに育ちつつある。若い人たちのなかに多くの日本人が育ちつつある」
発言が報じられると、当初はネット上の意見も、《安倍さんの盟友、よくぞ言ってくれた》と同意する声が目立ったが、次第に増え始めたのが、《ん?国葬に反対していた若い人は日本人ではないってこと?》、《国葬って、麻生さんが岸田首相にやれと言ったと報じられていたけど。自分の意見に賛成なら日本人、反対なら日本人じゃないと…》、《麻生さんの言う日本人以外の若い人は何者なんでしょうか》といった否定的な声だ。
麻生氏は何か勘違いしているのかもしれないが、国民世論は銃撃されて亡くなった安倍氏に追悼の意を表すことに反対していたわけではない。法的根拠もなく、国会同意も得ずに、一内閣が独断専行で国葬を決めたことに対して、個人崇拝につながりかねず、近代民主主義国家の在り方としておかしいーーと異論を唱えたわけだ。
あらためて国葬などにせず、歴代の首相経験者と同様、「内閣・自民党合同葬」にすれば無用な混乱は避けられたに違いない。
●自民 麻生副総裁 政権継続の必要性強調「G7でいちばん安定」  10/3
岸田内閣の発足から4日で1年になるのを前に、自民党の麻生副総裁は3日夜、千葉市で講演し、日本はG7=主要7か国で最も政権が安定していると指摘し、継続の必要性を強調しました。
この中で、麻生副総裁は「アメリカは11月の中間選挙で、ほぼ間違いなくバイデン大統領が率いる民主党が負けると予想され、新しい首相が誕生したイギリスでは、政府の政策に与党からも批判が出ており、G7=主要7か国の中で日本がいちばん政権が安定している」と指摘しました。
そのうえで「物価上昇率も、日本はアメリカの4分の1くらいで抑えられていて、最も頼りになる国というのが現状だ。安定した政権として、国際社会で日本の地位は間違いなく上がっていて、その期待に応えなければならない」と述べ、政権の安定を継続させる必要性を強調しました。
一方、麻生氏は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「ロシアは西の隣のウクライナに攻め入ったが、東の隣は北海道で攻めてこない理由などない。われわれが想定していなかった現実に国連は全く対応できておらず、国連自体の改革をしなければ対応できない」と述べました。
●岸田政権「世界的に一番安定」 麻生副総裁、首相を鼓舞 10/3
「世界情勢を見てみると、日本が政権としては一番安定している。自信を持ってこの国会に取り組んでいきたい」。
臨時国会召集日の3日に開かれた自民党役員会で、世論の逆風にあえぐ岸田文雄首相(党総裁)を、麻生太郎副総裁がこう鼓舞する場面があった。
麻生氏は、バイデン米政権は苦戦が予想される中間選挙を11月に控え、トラス英政権は発足早々に経済政策で批判を浴びていると指摘。「日本にも確かに物価高はあるが、欧米のインフレと比べるとまだある程度のレベルに抑えられている」と語った。 

 

●麻生太郎 韓鶴子主宰の「旧統一教会関連組織」への“所属疑惑” 10/6
「このパンフレットの中にはっきりと『Taro Aso』と記されている。麻生太郎副総裁が日本を代表して我々の活動に賛同してくれている証拠です」
そう言いながら、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の韓国人幹部は、私に『UPF(天宙平和連合)』のパンフレットを手渡した。UPFとは旧統一教会系の団体で、’05年に故・文鮮明(ムンソンミョン)と妻の韓鶴子(ハンハクチャ)総裁によって創設された。安倍晋三元首相がビデオメッセージを送ったことでも話題になった団体だ。活動資金の一部は旧統一教会の寄付、つまり信者の献金で賄われている。
その韓国人幹部は表紙に大きく『Think Tank 2022』と記されたパンフを指しながらこう続けた。
「安倍元首相だけでなく、日本のナンバー2である麻生さんも、我々の活動に理解を示してくれていることを日本人は知るべきです」
自民党議員と旧統一教会の関係が取り沙汰される中、自民党が全党員に対して旧統一教会や関連団体との関係について点検結果を発表したのは9月8日のこと。
「自民党の点検で麻生氏の名前は出てきていません。先日、共同通信が行ったアンケートでも麻生氏は『無回答』という答えだった」(政治部記者)
だが――。今回、本誌の取材で、このUPFのパンフレットに麻生氏の名前が掲載されていることがわかり、同団体の活動に深く関与している疑惑が浮上した。
UPFが『Think Tank 2022』なるグループを立ち上げたのは昨年のこと。UPFのウェブサイトによると、この団体は〈政治、経済、学術、宗教、メディア、芸術や文化など、幅広い分野の2000人以上の専門家による世界的なマルチセクター、国際的なネットワーク〉とある。
韓半島と世界の恒久的平和を追求するため、韓鶴子総裁をリーダーとして各国の専門家が連帯して作った組織だという。同組織は複数のグループで構成されており、その中の『世界平和頂上連合(ISCP)』というグループに属する唯一の日本人として、麻生氏の名前が記載されているのだ。
UPF日本支部によると、パンフレットは「UPF-Japanは編集・発行に関わっておらず、内容について一切承知していません」(事務総長)という。
麻生氏の事務所に事実関係を尋ねると、「その団体もパンフレットも知りません」と回答。「抗議や削除要請を行わないのか」と聞くと「削除してほしい気持ちはある」とだけ答えた。
麻生氏が自身の口で旧統一教会との関わりについて説明する日は来るのか――。
●麻生氏、茂木氏が周囲から白眼視される理由 身勝手人事で官邸と対立 10/6
安倍晋三元総理の死を契機に、岸田政権への強い影響力を手にしたとされる茂木敏充幹事長と麻生太郎副総裁。が、実態は“我が世の春”とはほど遠く、むしろ風当たりが強まる一方だ。
政治部デスクが言う。
「茂木氏は党所属の国会議員と旧統一教会との関係の調査を指示し、その結果を公表した。179人の議員名を明らかにしましたが、ホンネでは50人程度でお茶を濁したかったようです」
その後、多くの申告漏れが判明。茂木氏は追加の調査を明言するハメに陥った。
「一連の騒動で茂木さんが評価されたのは、最初に結果を公開した9月8日の記者会見でキレなかったことぐらい。導火線の短さは有名なだけに、総理が“茂木さんを見直したよ”と妙な褒め方をしていたほど」
10月3日に召集された臨時国会の重要テーマは衆院選における「1票の格差」の是正。小選挙区を「10増10減」とする公職選挙法の改正がそれだ。が、人口比を重視する現行の「アダムズ方式」では都市部の議席が増えるため、党の一部には「地方軽視だ」と見直しを求める声が燻(くすぶ)る。
国会の慣例を無視する麻生氏
自民党幹部が言うには、「実際、茂木幹事長もこの改革案には消極的です。臨時国会の前に党選挙制度調査会を仕切るベテランの逢沢一郎会長を交代させ、自分がイニシアチブを取りやすい後任を据えようとした。それが総理の反対で断念に追い込まれたんです」
アダムズ方式の採用が決定したのは、安倍政権下の2016年。逢沢氏は当時から選挙制度の議論をリードしてきた。その彼をこのタイミングでクビにすれば、党が“政権に改革の意志はない”と宣言するに等しい。
「岸田政権は安倍氏の国葬と旧統一教会の問題で青息吐息。そのうえ選挙制度改革をご破算にしたら、もはや政権は持ちません。まさか、幹事長は政権を潰すつもりだったのか……」
他方、昨年来、茂木氏と頻繁に会合を重ねてきた麻生氏にも批判の矛先が。
「麻生さんは国会の慣例を無視して、安倍氏追悼演説を麻生派の甘利明前幹事長にさせようと画策した。与野党からの批判で8月の臨時国会での実施は見送りましたが、いまも諦めていないようです」(政治部記者)
“自分の胸像を建てると言い出したら引き際だ”
麻生氏が白眼視される理由はこれにとどまらない。先の内閣改造の際、御法川信英国会対策委員長代理を交代させるよう、官邸に圧力をかけていたというのだ。
「今年2月に御法川さんが佐藤勉元総務会長らと麻生派を割って出たことを根に持っているんです。官邸は高木毅国対委員長の手腕を疑問視しており“他党との折衝がうまい御法川氏がいないと国会が回らない”と、何とか庇(かば)い切りましたが」(同)
そんな麻生氏の舌好調は相変わらずという。
「最近は周囲に“生きているうちに自分の銅像を建てろと言い出したら引き際だ”と嬉しそうに話しています」(自民党閣僚経験者)
この発言は、秋田県で計画されていた菅義偉前総理の胸像建立が延期になったと報じられた時期のもの。
「二階(俊博元幹事長)さんが動きそうにないいま、捲土重来を期するとされる菅さんは“岸田降ろし”のキーマン的存在です。麻生さんの発言は、それへの露骨な当てつけでしょう」
党内には「麻生さんも茂木さんも、自分から動いてうまくいったためしがない」との声が――。
●麻生派53人に、浅尾氏入会 自民、山東前議長も復帰 10/6
自民党の麻生太郎副総裁は6日、自身の派閥会合で、山東昭子前参院議長(比例代表)の麻生派復帰と、7月の参院選で国政に返り咲いた浅尾慶一郎氏(神奈川選挙区)の入会を明らかにした。所属は53人で、党内第3派閥は変わらない。
山東氏は2019年8月の議長就任に伴い、麻生派を離脱していた。 

 

●青年会議所会頭に麻生太郎氏長男 将豊氏「日本取り戻す」 10/8
日本青年会議所(JC)は中島土会頭の後任に、麻生商事(福岡市)社長の麻生将豊氏(37)を充てる人事を正式決定した。麻生氏は8日、大分市で開かれた全国大会式典で「世界に冠たる日本を取り戻す理念の下、全力でまい進する」と語った。麻生氏は自民党の麻生太郎副総裁の長男。
将豊氏は低迷する国内経済に触れ「日本のサービスや伝統、文化はまだ勝負することができる」と強調し、海外への魅力発信に尽力すると述べた。任期は23年1月1日から1年間。
麻生太郎氏も78年にJCの会頭を務めており、親子2代での会頭就任となる。全国大会は9日まで。将豊氏は7日の総会で会頭に選出された。 

 

●安保3文書改定の与党協議「麻生副総裁&北側副代表」ハイレベル協議会 10/13
国家安全保障戦略など安保関連の3文書改定に向けて、来週、自民党と公明党の協議が始動します。実務者による協議の場に加え、麻生副総裁、北側副代表がトップを務める幹部クラスの協議会が設置されました。その理由とは?
きょうの夕方、公明党の佐藤外交安全保障調査会長が自民党本部を訪れ、小野寺安全保障調査会長と会談しました。
年末までの3文書改定に向けた与党協議がまもなく始まるのを前にした打ち合わせです。
自民党・小野寺五典安全保障調査会長「年内という日程の条件がありますし、かなり深い議論になるということになれば、なるべく早く事務的に意見交換をしながら実際の議論がスタートできればいいかと」
ほぼ同じ時間帯には自民党と公明党の政調会長が会談。与党協議を来週18日に始めることや小野寺氏・佐藤氏らによる実務者レベルでの協議とは別に幹部らによるハイレベルな協議会を設けることで合意しました。幹部協議には自民党側が麻生副総裁をトップに茂木幹事長、萩生田政調会長ら5人が参加。公明党側は北側副代表をトップに石井幹事長、高木政調会長ら5人が参加します。
自民党・小野寺五典安全保障調査会長「大きなテーマについて議論をするということですから、高いレベル広い範囲でそれぞれ意見をすり合わせるということが必要だという判断ではないかと思います」
公明党・佐藤茂樹外交安全保障調査会長「防衛政策にとどまらず、日本の安全保障をどうしていくのかという高度な政治判断も政策判断も必要になってくるテーマも出てくるんではないかということで、両党のさらに上の幹部の皆さんに関わっていただくと」
複数の関係者によると幹部クラスの協議会が設置されたのは公明党側が防衛に詳しい議員以外が協議に加わることを求めたためです。
ある公明党の関係者は「実務者だけで議論したら防衛費が膨れ上がっていく」と述べ、防衛費の財源を議論することが狙いのひとつだと解説しています。  

 

●宮沢洋一税調会長の高笑い…ついに安倍路線を明確に否定した岸田政権 10/19
トップを失って迷走
安倍晋三元首相の死去に伴い「安倍銘柄」が狙い撃ちされている。これまで岸田文雄首相はキングメーカーとして権勢を振るう安倍氏に配慮し、自民党保守系議員を中心とする「安倍印」の主張に耳を傾けてきた。しかし、トップを失った最大派閥は迷走し、積極財政派の発信力も弱まる今、息を吹き返すのは財政再建派と財務省だ。安倍氏が長期政権で断行した税制改正や防衛予算の増加にも見直し論が高まる。岸田首相はいよいよ「安倍路線」の否定に動き出すのか。
安倍氏は首相退任後も保守政治家の代表格として積極的な発信を続け、外交・安全保障分野では台湾有事を念頭に入れた態勢強化や米国の核兵器を配備・共同運用する「核共有政策」(ニュークリアシェアリング)などの議論を牽引。財政・金融分野においては「アベノミクスの親」として積極財政と金融緩和の継続を唱え、財政規律を重視する「再建派」と財務省を強く牽制してきた。
その中でも力を入れて先導してきたのが防衛予算の大幅増だ。ロシアによるウクライナ軍事侵攻や覇権主義を隠さない中国に加え、核・ミサイル開発を進める北朝鮮といった脅威に対応するため、日本の防衛力強化を重ねて訴えてきたのだ。
「防衛予算は次の世代に祖国を残していく予算だ。私たちが今求められているのは予算において国家意志を示していくことだ」
4月14日、安倍氏は自らが率いる「清和政策研究会」(安倍派)の会合で、防衛予算の大幅増を提起。「北大西洋条約機構(NATO)加盟国並みの国内総生産(GDP)比2%という目標をしっかりと示し、検討してもらいたい」と強調している。安倍氏の下で一枚岩だった最大派閥の議員や保守系の高市早苗政調会長(当時)らは呼応し、防衛予算の大幅増は既定路線となった。
ジワリと浮上
実際、自民党の安全保障調査会は4月に「GDP比目標(2%以上)も念頭に、5年以内に防衛力を抜本的に強化するために必要な予算水準の達成を目指すこととする」と岸田首相に提言。首相も5月の日米首脳会談で「防衛費の相当な増額を確保する決意」を表明し、政府が6月に決定した「骨太の方針」には「国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と明記した。
高市氏がとりまとめた今夏の参院選公約には「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指す」と盛り込まれている。安倍氏が依然として自民党内で大きな求心力を保ち、首相も無視できないレベルだったのは間違いない。
だが、7月の安倍氏死去後から政府・与党内のパワーバランスは一変した。トップを失った最大派閥は後継会長をいまだ決められずに迷走し、「安倍印」だった高市氏も政調会長を離れた。安倍氏の最側近だった萩生田光一氏は政調会長に就いたものの、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題などで窮地に立たされ、発信力を失っている。
代わりにジワリと浮上してきたのは、安倍政権時代に「非主流派」として辛酸をなめてきた財政再建派の面々と財務省だ。年末の予算案編成と税制改正大綱の策定に向けて「安倍銘柄」を狙い撃ちにする構えを見せる。
防衛予算は2022年度当初予算でGDP比1%の5兆4000億円で、これを「2%以上」とするならば6兆円規模の新たな財源が必要となる。安倍氏が防衛予算の大幅増のため財源として念頭に入れていたのは、国債の発行だ。5月23日には「増額は国債で対応していけばいい」と述べ、建設国債を念頭に借金で賄うことを視野に入れた考えを示していた。「再建派」の党税調メンバーは安倍氏に「借金をすれば将来にツケを回すことになる」と苦言を呈していたが、安倍氏はかたくなだったという。
どんどん押し切れ
ただ、安倍氏の死去で「国債発行案」は急速に萎んだ。国家財政悪化を懸念する財務省は防衛予算の大幅増を容認するものの、代替財源を探すことを強く要求。「2%以上」とすることについても、海上保安庁の予算などを含めた「防衛関連費」として数字上の達成を目指すよう根回しに動いている。「真水」の防衛予算ではないという議論は、安倍氏が元気であれば生まれてもこなかっただろう。
岸田首相が率いる派閥「宏池会」に所属する自民党の宮沢洋一税調会長は10月14日、日経新聞のインタビューで「国債で対応するとの話はあまりにも無責任だ」と指摘している。さらに「それなりの税収が(財源として)期待されるのであれば、それなりの大きな税を考えていかなければならない」と述べ、財源として法人増税が選択肢になるとの考えを示した。
言うまでもなく、法人税は安倍政権時代に引き下げられてきたものだ。海外企業の日本誘致促進や国際競争力を高めることを狙い、「アベノミクス」の一翼を担ってきたと言っても過言ではない。地方法人税や法人事業税などを合計した実効税率は2013年度に37%だったが、14年度に34.62%、15年度に32.11%、16年度は29.97%へと引き下げ、18年度からは29.74%にまで低下した。
当時の安倍首相サイドは難色を示す党税調幹部と丁々発止でやり合いながらも、官邸主導で押し切った経緯がある。だが、現在は防衛予算を増加するのであれば財源確保の「ペイ・アズ・ユー・ゴー」原則を重視すべきとの財務省の主張は勢いを増しており、「国債発行案」に加えて安倍氏が実現した法人税率の引き下げも否定されそうな状況だ。
隣国では歴代政権の「成果」を消し去り、自らのカラーに染めていくことが日常茶飯事だ。しかし、よもや日本においても同様の動きが見られるとは安倍氏も思っていなかったに違いない。岸田政権は年末に「国家安全保障戦略」などを改定するが、安倍路線が否定されることになれば様々な面で国の外交・安全保障面に影響を及ぼすことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 
 
 
  
 
  
 
 

 

 
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 

 



2022/10