安倍元首相と統一教会

安倍元首相殺害時 国民 皆さん同情

時間の経過とともに
安倍元首相と統一教会の関係 明らかに

安倍元首相も 票田が欲しかった
政治の闇に 陽が当たる

・・・ と思いきや 僅か2ヶ月
どのメディアも 深掘り中止のご様子
忖度の靄 ・・・ 霧 ・・・ 闇に葬るのでしょうか
 
 


7/257/30・・・8/28/38/58/78/98/10・・・8/118/138/148/178/188/198/20・・・8/218/228/238/258/268/298/308/31・・・
9/19/29/39/49/59/69/79/89/99/10・・・9/119/129/139/149/159/169/179/189/199/20・・・9/219/229/239/24・9/25・9/26・9/27・9/289/299/30・・・
10/110/210/310/610/810/910/10・・・
岸田首相の所信表明演説論評・・・カルト内閣・・・
 
 
 

 

●安倍元首相の国葬は統一教会の「マインドコントロール」に利用されるだけ 7/25
参議院選挙の応援演説中に銃撃されて殺された安倍晋三元首相の国葬を9月27日に日本武道館で行うことが、22日に閣議決定した。首相経験者の国葬は吉田茂元首相以来、2人目となる。
だが、そんなことをしたら、それこそ「統一教会」(現・世界平和統一家庭連合)のマインドコントロールに利用されるだけだ。
そもそも、この事件を語るテレビ情報番組のコメンテーターなどは、マインドコントロールがどういうものなのか理解もせず、いい加減なことを言い繕った挙げ句に、フェイク情報を垂れ流している。
マインドコントロールは我々の日常にも潜んでいる
安倍氏を殺害した山上徹也容疑者(41)が、「母親がある宗教団体にのめり込み、多額の寄付をして家庭が崩壊したことから団体に恨みを持ち、つながりのある安倍氏を襲った」という趣旨の供述をしていることが伝わると、統一教会が会見を開いて、母親が信者であることを公表。この母親が、家や土地を家族に無断で売って1億円近くを統一協会に寄付していることが報じられると、「母親がマインドコントロールにかかっている」と吹聴するメディアが続出していた。中には「洗脳」という言葉まで使う輩までいる。
まるで、マインドコントロールというものが、催眠術に「かかる」というような言い方で、人間が操り人形のように指示に従う状態になるとでも錯覚しているようだが、そうではない。もっと頻繁に私たちの日常で、ビジネスにも利用されているものだ。
自民党の安倍派で参院幹事長の要職にある世耕弘成参議院議員が、統一教会の学生組織である「原理研究会」の出身であるような書き込みをツイッターにされたことを、名誉毀損として訴えていることは、以前に書いた。訴状には「原理研や統一教会に対して、反社会的な団体であるとの印象を抱く者が少なくない」ことから、社会的評価を低下させるものであるとしている。
その世耕氏が理事長を務める近畿大学でも学生が統一教会系の団体に勧誘された事例を確認しているという。「反社会的な団体」から学生を守れないというのも糾弾に値するが、ここでもマインドコントロールのテクニックが用いられている。
対象を落とし抜け出せないようにさせるマインドコントールのテクニック
たとえば、大学に入学したばかりで新生活にも慣れていない時期であれば、あれこれ迷うことも少なくない。どの講義を選択したらいいのか、どこに行けばどんな施設があるのか、困っている時にアドバイスをくれる、相談にのってくれる相手が現れる。助かったと思ったり、嬉しかったりする。他人から良くされると人間は、こんどお礼やお返しをしたいと思うようになる。つまり「貸し」を返そうと考える。これを「返報性の原理」という。
これを巧みに利用して、いわゆるカルトと呼ばれる団体は勧誘してくる。優しく話を聞いてくれるだけでも「貸し」ができる。この「貸し」をつくることで、要求を受け入れさせるようにもっていく。それも「ローボールテクニック」といって、まずは小さくて受け入れやすい要求を投げてくる。最初から、団体名を名のるのでもなく、いきなり入会を勧めるのでもなく、「ちょっと30分だけ話をしないか」とか「今夜、空いてないか」などと近寄って連絡先を聞く。これが入口になって関係を築く。
次に「希少性の原理」を利用する。これは日常的に商売でも使われているもので、たとえば、スーパーマーケットでもタイムセールをやる。「いまだけ!」「限定○○個!」「残りわずか」と聞けば、つい手をだしたくなる。
これがカルトであれば「あなただけに伝える」「せっかくいい先生が来ているから」「月にたった1回しか会えない人だ」などと希少性を強調して「1時間だけどう?」などと声をかける。そうすると「まあ、1時間くらいならいいか」と誘いに乗ってしまう。
そこから団体名を言わないうちに、教義が教え込まれていく。統一教会や原理研究会であれば、友人として信頼を得た上で「聖書の勉強をしましょう」と持ちかけてくる。これがより組織的に行われていると指摘されてきたのが、やはり統一教会だった。
それでも怪しいと感じて誘いを断る。そうするとこんどは「あの時、こう言ったよね」「約束したよね」と持ちかけて、話が違うことを責める。人間は自分の発言や行動には一貫性をもちたい、宣言したことはやり遂げるべきだと意識を持つ「一貫性の原理」を利用するのだ。
こうしたことは、スーパーマーケットの例に限らず、一般のビジネスでも広く反映されていて、いわゆる悪徳商法はまさにこのテクニックを悪用して、いつの間にか騙される。
こうして人間の心理を巧みに利用した挙げ句、カルトと呼ばれる組織が最後に大きく異なるのは、「恐怖説得」を仕掛けてくることだ。「せっかくグル(宗教的指導者)に会えたのに」「こんなに大事な教えを知ったのに」という、いかにも慮る言葉から「ここで辞めたら地獄に堕ちる」「○○さんはここで辞めて事故にあった」などと脅して、抜け出せなくする。そうやって脅迫の構造を作り上げ、支配と服従の関係に持ち込む。
強烈な威力を発揮する「権威の原理」
そんな自分でも気付かないうちに絡め取られてしまうマインドコントロールのテクニックだが、そこにもうひとつ、どうしても忘れてはならないものがある。「権威の原理」だ。
原理研究会に関して指摘されてきたのは、大学の側にも問題があったことだ。同じ大学の教職員にもシンパがいて、あの教授がこう言っている、偉い先生が推薦している、と宣伝されると、学生も信じてしまう。つまり、「権威付け」が影響する。
オウム真理教では、教祖の麻原彰晃がダライ・ラマに面会したことから、教団を信じ、入信した信者も少なくなかった。いまも後継団体はそのことを利用しているという。
有名芸能人が悪徳商法の広告塔となったことを責められるのは、品行方正だったり清潔だったりするイメージがある種の「権威」となって、被害者を信用させるからだ。
安倍氏の国葬で最も得をするのは統一教会
山上容疑者が安倍氏を襲う決意をしたというのは、昨年の9月、統一教会の創始者である文鮮明の妻で、現在の教団の主宰者である韓鶴子が、やはり総裁の地位にあるNGO「天宙平和連合(UPF)」に送った安倍氏のビデオメッセージを見たことだった。
「韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」
安倍氏はそう明言している。どうしてそのようなメッセージを送ったのか、いまとなっては本人に聞くことも叶わないが、“元首相”というだけでも、これは明らかに「権威の原理」を発揮している。「安倍さんがそう言うのだから安心だ」という人だっているはずだ。
そしていま、安倍氏の国葬が決まった。私が統一教会の会員であれば、山上容疑者も見たとされる安倍氏のビデオメッセージを見せてから、こう言って勧誘する。
「日本の国葬になった人も教祖様に敬意を表しているのよ」
「だから家や土地を売ってでもお金を寄付しましょうね」
安倍氏の国葬でもっとも得をするのは統一教会のはずだ。なぜ、こんな単純なことに頭がまわらないのか。
今回の事件を発端に、あらためて統一教会の反社会性を指摘し、政治家それも自民党との関係を指弾する世論が溢れた。
統一教会の会員であることを知らずに、選挙活動にボランティアとして協力してくれたことを言い訳する政治家もいる。だが、それも「返報性の原理」からすると「貸し」をつくったことになり、いつか統一教会に政治力で「貸し」を返すとも限らない。だから、現実に被害者を出している「反社会的な団体」とは距離をおく必要がある。
岸田文雄首相が主導したとされる国葬の判断は拙速に過ぎる。むしろ個人的感情が先走ったようにも見える。こんなことでは、台湾有事ともなった場合に、首相として冷静な判断ができるのか、心許ない。
安倍氏の国葬を行うのであれば、まずは政府与党である自民党が統一教会との関係について総括すべきだ。
国費すなわち国民の税金を使って、国を挙げて執り行われる国葬。それがカルトのマインドコントロールに利用されるなど、こんなに愚かで、ふざけたことはない。 
 
 

 

●「勝共連合」会長が安倍元首相との“ビデオ出演”交渉の裏話を激白 7/30
「朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子(ハン・ハクチヤ)総裁をはじめ、皆様に敬意を表します」
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)のフロント組織UPF(天宙平和連合)主催の「神統一韓国のためのTHINK TANK 2022希望前進大会」で、安倍晋三元首相(享年67)がおこなった基調講演(ビデオメッセージ)。安倍氏は冒頭のように発言し、旧統一教会トップの韓鶴子を持ち上げて見せた。
今年4月、この「ビデオメッセージ」を見たのが山上徹也容疑者だ。この安倍氏の姿を見て、「殺すしかない」と暗殺の決意を固めたと供述している。
今回、筆者が入手した映像は、2021年10月17日に統一教会松濤本部・渋谷教会で行われた梶栗(かじくり)正義・UPF-Japan議長・国際勝共連合会長による日曜礼拝の説教「神のかたち」を収めたものだ。この映像の中で梶栗氏は、ひと月前の9月12日に韓国で開かれた「希望前進大会」に安倍氏がビデオ登壇した裏側を明かしていた。
梶栗氏の説教映像「元首相3人へもオファーした」
説教の冒頭、「去る9月12日の希望前進大会においてとんでもないサプライズがあった」と切り出した梶栗氏。彼は統一教会や国際勝共連合の会長を歴任した故梶栗玄太郎氏の長男で、UPF-Japan議長の他、国際勝共連合や世界平和連合の会長を兼任するエリート2世幹部だ。
「実際に9月12日以降、私たちは今後の信頼関係を守るためにいろいろと気を遣うのですが……」としながら、梶栗氏は本題に入った。
昨年夏ころ、各国首脳クラスのブッキングが決まる中、梶栗氏は日本からの登壇者が中々決まらずストレスを感じていたとしてこう明かす。
「私とてアプローチをいくつかしておりまして、その難しさをずっとお伝え申し上げている。ただ、決まらないものだから、どういうトーンになってくるかというと、日本においてそれを成すことがいかに難しいかという言い訳じみた報告になっているわけですよ」
元首相3人へのオファーしたものの、そのうちのひとつの事務所からはこう告げられたという。
「宗教団体のフロント組織でしょ?」
「結局あなたたちはわたくしどもの先生を宣伝材料に使いたいだけでしょ? 利用したいだけでしょ? あなたたちに利することがあって私どもの先生に利することはいったい何があるんですか? UPFと言ったってそんなのは家庭連合・宗教団体のフロント組織でしょ?」
フロント組織を隠れ蓑に政治家を広告塔として布教活動に利用してきた旧統一教会に対する厳しい批判だが、このことを梶栗氏が教団幹部に告げたところ、その幹部から返ってきたのは、「実際その通りだしな」という言葉だったと明かしている。
けっきょく3人の元首相からは断られたものの、世界宣教本部の尹(ユン)ヨンホ本部長から、トランプ前大統領の出演が決まったことを告げられたうえで、「例の取り組み」を始めるよう指示される。その「例の取り組み」こそ、安倍氏のブッキングだった。
梶栗氏は、安倍氏との間に「ずっと温めてきた信頼関係」があると誇ってみせる。実は昨年春、安倍氏との間でこんなやりとりをしていたという。
梶栗「これ先生、もしトランプがやるということになったら、やっていただかなくちゃいけないが、どうか」
安倍「ああ、それなら自分も出なくちゃいけない」
梶栗氏は、韓総裁に手紙でこのやり取りを伝えていたため、尹本部長から指示されたのだ。梶栗氏は再度説得に動き、8月末に安倍事務所から「やりましょう」との承諾を得た。そして撮影は9月7日に決まる。
元首相をブッキングした梶栗氏の自慢話は止まらない。
「あの皆さん、(安倍氏が講演で)語られた内容、覚えてますか? 本当に立派な内容を語られたんですよ。そこでね、言わんとされているのは、本当に私(安倍氏)が信頼し、ともに日本の再建のために信頼して一緒にできる団体はどこか、というね。こういう角度から私たちに対する信頼を深めてきたと」
そして梶栗氏は、安倍氏との信頼関係は「一朝一夕の話ではない」と強調して、自分がビデオ撮影のあと安倍氏を見送る際に見た「霊界の後押し」について語り始めた。
「8年弱の政権下、6度の国政選挙で……」
「(撮影が)終りまして、玄関からお送りするときに、私は深々と頭を下げました。本当にありがとうございましたと。ところがね、私の横に梶栗玄太郎と久保木修己(統一教会・国際勝共連合、初代会長)が一緒に頭を下げているんです。あ、いつの間にいたんだという感じで。
そしたら、先方も深々と頭を下げているんです。その横に岸(信介)先生と安倍晋太郎先生がね、深々と頭を下げているんです。もう私は鳥肌もんだったです。過去、現在、未来という時世が編み上げられた形で、奇跡的な瞬間は実現しました」
その光景を斜め上から故文鮮明氏が見守っていたという。
「お父様(文鮮明氏)が腕を組んでニッコニコニコニコされてんですよ。もう私もね、鳥肌もんだったんです」
「この8年弱の政権下にあって6度の国政選挙において私たちが示した誠意というものも、ちゃんと本人(安倍氏)が記憶していた。こういう背景がございました」
教団のトップは、表向き事件後に会見を開いた田中富広会長とされているが、筆者は最高幹部2世である梶栗氏が実質的なトップとみている。安倍元首相が暗殺されるきっかけとなったビデオメッセージの依頼主だと梶栗氏が認めていたことは少なくない波紋を呼びそうだ。
 
 

 

●岸・安倍家にとって旧統一教会は三代続くファミリービジネス 8/2
旧・統一教会と自民党の関係が世間を賑わせていますが、状況がどんどん進展するために語らずにはいられないのが実情です。今回は岸・安倍家と統一教会の関係が詳らかになってきていることについて取りまとめておきたいと思います。
統一教会は岸・安倍家にとって三代続くファミリービジネス
安倍元首相は、統一教会関連の問題を半ば公然の秘密としながら、墓場まで持っていくつもりだったのでしょう。
しかしながら、自身の襲撃・殺害を通じて、どんどん関連情報が吹き出し始めています。それも大親分がいきなり姿を消したことで、意外にも早いスピードで醜聞が沸きあがりはじめています。
統一教会の存在がメディアで報道されはじめたときから、戦後A級戦犯から辛くも米国に命を救われた岸信介が、国内において統一教会の設立とその後の分派組織である国際勝共連合の国内設立に全面協力をしたことは多く報じられました。
この教団との親密な関係は、三代を経た安倍晋三元首相にもしっかりと受け継がれ、「集票」と「資金提供」という両面で大きく貢献する岸・安倍両家のファミリービジネスとして、直近まで寄与する装置となっていたことが全面露見しはじめています。
統一教会の問題が顕在化したあと、会見に応じた安倍氏の実弟であり教団に所属する人物は、過去の選挙で支援を受けたと明かしています。しかもその団体が社会的に問題があることは認識していたと、悪びれることもなく語っていました。
これもまあ当たり前の話で、祖父の代から続くファミリービジネスのルートを利用しただけに過ぎず、「何が悪い?」と憮然とするのもよくわかるものがあります。
それぐらい浸透したビジネスなのでしょう。
安倍元首相は直近までこの集票ルートを最大活用
政治家が自らの政治の損得勘定から不思議な新興宗教と関わりを持つというのは、常に選挙での集票で落選を回避するという意味で、必死になるのも理解できるものはあります。
ですが、集票できれば相手はカルトでも強引な資金集めをする教団でも構わないとするのは、すでにこの時点で民主主義の選挙制度を壊滅的に破壊する行為であることは、議員も有権者も正確に認識する必要があり、一切ゆるされるものではありません。
統一教会側が発表している数字では信者数は56万人規模とされていますが、実際アクティブな信者はせいぜい8万から多くて10万人程度ということで、国政選挙の規模から言えばそれほど大きな影響を及ぼすものには見えません。
しかし、戦略的に特定候補だけに集中的な集票を行えば10万票〜16万票といえども、かなり効果的な結果を及ぼすことは間違いありません。
どうやら安倍元首相は自らこうした采配を行っていたことがすでに週刊誌のすっぱ抜き報道でも表にではじめています。
安倍元首相が当選させたい人を選んでいた?
ご本人は堅く否定していますが、元産経新聞記者で、2013年の参院選全国比例で初当選した北村経夫氏は完全にその1人であるように報道されています。初当選時、当時首相だった安倍氏が北村氏の選挙応援を教団に直々に依頼したことが教団の内部文書からすでに明るみに出ています。
どうやら当選ぎりぎりだったこの人物を教会に支援させて10万票程度上乗せさせたのは間違いなさそうで、ああこうやって統一教会の集票を有効利用するのだということが改めて理解できるものとなりました。
直近では安倍元首相の秘書官・井上義行議員も教会系集票候補のひとりであったようで、本人は賛同会員であるとしていますが、教会ではすでに信徒になったと信者には紹介される始末。案の定、この人物も比例代表という教会票を集中投下しやすい選挙区で立候補当選を果たしています。
一般的な素人考えでは、公明党という大きな宗教教団をバックにした政党との選挙協力がありながら、どうしてこんな泡沫カルト宗教と密接な関係を維持するのか?と疑問に思うわけです。
それも、首相自ら当選させたい個人を応援するには、統一教会のような機動力を発揮できる組織のほうが利用価値が高かったのではないかとさえ思えてくる状況です。
安倍氏は戦後の歴史で他に類をみないインタンジブル独裁者
安倍氏は今年6月に開催された自民党所属議員の会合で、1か月後には襲撃を受けて頓死するとも知らずに、首相として必要な素養を聞かれて「運と多少の人柄」と答えています。
また昨年末の茂木派のパーティにおいても、「同期一番の男前は岸田文雄、一番頭が良いのは茂木敏充、そして一番性格が良いのは安倍晋三と言われていた」などと、能天気な発言をしています。
実際、今回のカルト教団との密接な繋がりによる資金供給と集票活動の徹底利用を考えますと、もはやまともな民主主義のプロセスをぶっ飛ばす、戦後の歴史で他に類をみないインタンジブルな独裁者であったことが完全に露見しはじめています。
かつてのフィリピンのマルコスの場合は、完全に権力を掌握して私腹を肥やすといった、かなり判りやすい動きでした。
それがこの人物の場合、表面上は善人を装いながらお友だち資本主義を全面に押し出し、モリ・カケ・サクラでは一切の法律を無視し、役人は人事権を完全掌握させひれ伏させることを完全に実現した、ある意味でかなり新しいタイプの独裁者であったことが見えてきます。
しかも、それが死後1か月もしないうちに毒ガスのように噴出してくるのですから、その影響力がいかにバイアスのかかったものであったかも露見し始めています。
まあ一言で言えば、この御仁を国葬で送るなどもってのほかの状況です。
すでに自民党中枢部と有権者との壮絶な戦争ラウンドへと進展か
自民党の総理がこの調子で教会と接し、有効活用しているのが公然の秘密となってきたわけですから、党の所属議員が「みんなで渡れば怖くない」とばかりに統一教会との関係をもって選挙でも当選確率を高め、資金援助を受けることにまったく躊躇しなくなり、挙句の果てに指摘を受ければ逆切れまでして見せるという、一連の行為が随所で発覚するのはさもありなんといった状況です。
さすがにこの状況を国内の有権者は黙認できないレベルにまで陥っており、このまま時間が経てば元に戻るなどとはまったく思えないステージに突入しています。
岸田首相はこの状況をしっかり理解できているのでしょうか。
 
 

 

●安倍元総理と統一教会の“ズブズブ癒着”に新証言 8/3
文鮮明の釈放を懇願する文書
自民党と統一教会の関係が次々に報じられる中、選挙時の統一教会の支援対象は、安倍氏の一存で決まっていたという証言が。実際、統一教会内部の文書には、安倍氏の子飼い議員に対する選挙応援を〈首相からじきじき〉に依頼があった、との記述が見られるのだ。
日米安保条約改定で嵐吹き荒んだ政治の季節。岸信介政権下の1950年代末、渋谷区南平台にあった岸邸で幼き安倍晋三氏は周囲の喧騒をよそに「アンポ、ハンターイ」と言って、祖父を苦笑いさせたという。かように有名なエピソードが語られる岸邸の隣にかつて統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関連施設があった。そのことが岸家と統一教会を結ぶ一つのきっかけになったとされる。
そして2022年夏、その“ご近所付き合い”が、凶弾を放たれるきっかけになるとは――。岸家と安倍家の誰もが想像しえなかったに違いあるまい。
1968年に統一教会は「国際勝共連合」を設立。当時、岸氏の後ろ盾があったとされ、反共産主義の政治団体として活動してきた。また、「週刊新潮」7月28日号では、当誌の依頼でジャーナリストの徳本栄一郎氏がアメリカで発掘した1984年の知られざる書簡をご紹介した。それは当地で巨額脱税により実刑判決を受け、収監されていた統一教会の開祖・文鮮明の釈放を、岸氏がロナルド・レーガン大統領(当時)に懇願する内容だったのだ。
「安倍さんの一存で決まる」
こうした密接な関係は安倍晋太郎、そして晋三へと引き継がれ、自民党の議員も巻き込みながら、現在まで連綿と続くことになる。
「選挙で誰が統一教会の支援を受けるかは、安倍さんの一存で決まるといわれていました」と自民党のベテラン秘書。
「教会の組織票は約8万票といわれています。ただ、衆院選では1選挙区あたりの統一教会の票数はそれほどでもないので、参院の全国比例でその組織力が発揮されます。どの候補を応援するかは、安倍さんの意向がかなり反映される。落選しそうな意中の候補がいれば、安倍さんから“彼を頼む”といった具合です」
実際、過去に統一教会系の団体から推薦を受けた元議員はこう語る。
「推薦を受けるにあたって団体のトップと面談をします。そこでは、不倫スキャンダルや金銭トラブルがないことが条件で、さらに安倍元総理が応援している候補であれば、ほぼ確実に支援してもらうことができます。選挙の直前になると、統一教会系の施設で泊りがけの研修を行います。自分の場合は妻同伴で2泊3日でした」
安倍氏が選挙応援を教団に依頼
そうした安倍氏肝いりの候補の一人だったのが、元産経新聞記者で、2013年の参院選全国比例で初当選した安倍派の北村経夫参院議員だ。
カルト宗教に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏によれば、
「初当選時、当時首相だった安倍氏が北村氏の選挙応援を教団に依頼しているのです」
教団の内部文書にはこう書かれていた。
「〈首相からじきじきこの方(北村氏)を後援してほしいとの依頼〉〈まだCランクで当選には遠い状況です〉〈今選挙で北村候補を当選させることができるかどうか、組織の『死活問題』です〉と。19年の参院選でも統一教会内部で北村氏を応援するビラが出回っていました。当時、大宮で行われた演説会では国際勝共連合の関係者が仕切っており、300人以上が入れる会場に半分から3分の2くらいは信者が動員されていました」
自民党山口県連の関係者が後を受ける。
「北村さんはいずれの選挙も盤石な地盤を築いていたとは言い難く、安倍さんが選挙直前になって慌てて、統一教会に支援を依頼したといわれています。“統一教会のおかげで当選できた”と地元ではまことしやかにささやかれているのです」
北村事務所は、「旧統一教会から支援を受けたことも、見返りを求められたこともありません」と回答するも実際、統一教会の推薦が決まると手厚い支援が受けられるようで、「一般的に統一教会サイドから20〜30人程度のボランティアが連日手伝いに来てくれます。電話作戦やチラシ配り、ポスター張りなどの機動部隊となってくれるので、貴重な戦力です。15〜20人くらいの人員で選対事務所を切り盛りしているところもありますから、本当に助かります」(県連関係者)
細田衆議院議長の熱のこもったスピーチ
鈴木氏が再び言う。「議員側が統一教会の支援を受けるメリットの一つはこのマンパワーです。候補者は選挙の時の支援スタッフや事務所スタッフを賄える。ほかにも、いきなり国政は難しくても、息のかかった地方議員を育て、国政に打って出させるといったケースもあります」
統一教会の「政界汚染」はこうした例にとどまらない。
鈴木氏は、統一教会の関連団体のイベントへの出席歴や献金を受けたりした議員を独自に調査し、100人を超えるリストを公表している。そこには、麻生太郎自民党副総裁をはじめ多くの“重鎮”が名を連ねている。
例えば、元安倍派の議員では、女性記者へのセクハラ疑惑が報じられている細田博之衆院議長。19年10月に、統一教会系の天宙平和連合(UPF)が主催する会合に出席し、披露したのは、以下のような熱のこもったスピーチだった。
〈韓鶴子総裁の提唱によって実現したこの国際指導者会議の場は、大変意義が深いわけでございます。この会が大きな成果を上げ成功されることを念じまして、ごあいさつとさせていただきます〉
汚染は野党にも
ほかにも安倍元総理の「秘蔵っ子」と呼ばれた稲田朋美元防衛相は09年と10年に統一教会系の団体のイベントで講演を行っており、菅政権で官邸を仕切っていた前官房長官の加藤勝信氏は18年に関連イベントに秘書を代理出席させたほか、同氏が代表を務める自民党支部は関連団体に会費を支払っている。
汚染は野党にも及ぶ。国民民主党の玉木雄一郎代表は「世界日報」の元社長から計3万円の寄付を受け、前原誠司氏は統一教会系米紙「ワシントン・タイムズ」の全面意見広告に名を連ねている。
それぞれの事務所に見解を尋ねると、細田事務所は回答ナシ。稲田事務所は、
「両集会への参加は事実です。当日はひと言挨あいさつをし、途中退席しました。講演はしていません」
ほかの議員は、「慶事や行事などの案内などを受けることもあり、適宜事務所で判断して対応しています」(加藤事務所)
「賛同者として名を連ねたとありますが、前原にその認識はなく、(中略)統一教会の活動には一切関わりはございません」(前原事務所)
「(寄付は)いずれも事実です」(玉木事務所)
「見破れなかったこと自体が問題」
前出の鈴木氏が教団側の意図を解説する。
「統一教会が政治家と付き合うメリットは、内部統制の意味合いが強いと思います。信者の中には霊感商法や過度の献金などで教団に不信感を抱いている人もいる。そこで名のある政治家がメッセージを寄せれば、教団への信頼を担保することができるのです」
政治家としては前述した“見返り”を期待してのことなのだろうが、統一教会による被害に詳しい弁護士の紀藤正樹氏は手厳しい。
「統一教会には数えきれないほどの関連団体、友好団体があり、専門家でもすべてを見分けることは難しい。そうやって自分たちの正体を隠して政治家に接近するのが、カルト宗教の手口です。そうと知らずに協力してしまった政治家もいるかもしれませんが、見破れなかったこと自体が問題です。結果的に統一教会へのお墨付きを与える格好となり、社会全体としてカルトを糾弾する状況が生まれなかったのですから」 
●桜田淳子は「広告塔」として布教に貢献…教団内での現在の立ち位置は? 8/4
世間を驚かせた「合同結婚式」から30年──。
「広告塔」として旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の布教活動に貢献してきた歌手の桜田淳子(64)は、一連の事態をどう受け止めているのか。
1992年8月、桜田は所属事務所の反対を押し切って合同結婚式に参加し、芸能活動休止に追い込まれた。桜田が再び表舞台に姿を現したのは、2013年11月26日。デビュー40周年を記念した一夜限りのイベントが東京・銀座の博品館劇場で開かれ、約380人のファンが詰めかけた。20年ぶりにステージに立った桜田は、メドレーで曲を披露した。
17年には同じ博品館劇場で行われた音楽公演にゲスト出演。「いよいよ本格復帰か」と囁かれ始めたため、復帰を危惧した「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)は芸能活動再開反対の声明を発表した。
<桜田氏の家庭連合・旧統一教会信者としての諸活動によって、影響を受けた信者たちは決して少なくありません><家庭連合・旧統一教会の反社会的組織活動の支援、増長のための活動をしないことを誓約しないまま、タレントや芸能人などとして社会的影響をもたらす諸活動を行うことに、強く反対します。家庭連合・旧統一教会の被害者や元信者の方々からは、このような社会的責任に無自覚な桜田氏の言動は許せないという強い意見が広くあります>
桜田は教団内でどんな立場なのか。世界平和統一家庭連合に聞いた。
「特定の信者さまのプライバシーに関することを教団がお話しすることはありません」(広報部)
全国弁連の山口広弁護士がこう指摘する。
「山上徹也容疑者の母親など一般信者は例外なく、『献金、献金』といって搾り取られますが、桜田氏はそういうこともない。女性信者は既婚、独身問わず資金集めの経済部隊か伝道教育部隊に振り分けられ、何でもやらされるが、そういうこともほとんどやっていません。着物展に参加して販売を手伝うなど、特別扱いです」
幹部信者の桜田は資産や不動産を持つことを許され、現在は都内の億ションで夫とともに生活している。
歌や発言で活動を引き締めムードを盛り上げる
「主に団体活動の引き締めやムードを盛り上げて信者のやる気を上げるために、地方の集会に参加して話をしたり、歌を披露している。信者は『淳子さんも頑張っているんだから、私たちも頑張らなきゃ』と繰り返し言っていた。桜田氏は信者を前にして『(文鮮明は)素晴らしいお父さま』『真のお父さま』『神が遣わした再臨のメシア』という前提で話します。信仰に迷っている信者は、彼女の発言に確信を深め、信仰心のある信者はもっとやる気になる。同年代の信者には効果抜群です」(前出・山口弁護士)
桜田は来年、デビュー50周年を迎える。
2018年の「婦人公論」(3月13日号)で「この先10年間で今までの芸能生活の総括をしようと思っています」と語っていたが、広告塔として多くの被害者を生んだ責任は重大だ。 
 
 

 

●旧統一教会との関わりに自民苦慮…寄付・関与、安倍派に集中  8/5
自民党が、所属議員と「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)との関わりに頭を痛めている。安倍晋三・元首相が銃撃されて死亡した事件を機に議員と同連合の関係が次々に判明しており、世論の批判が高まれば政府・自民への打撃になりかねないためだ。
「今後は関係団体を含め、一切の関係は絶つことを明言したい」
下村博文・元文部科学相は4日、自民党本部での安倍派の総会後、記者団にこう強調した。下村氏は2016年に自身が代表を務める政党支部が、同連合の関連団体から6万円の寄付を受けていた。
同連合は15年、旧統一教会からの名称変更を文化庁に認証されたが、野党などから「名称変更で霊感商法などの実態が見えにくくなった」との指摘が出ている。12〜15年に文科相を務めた下村氏は「大臣の立場で政治的な指示はしていない」と認証への関与を否定しつつ、「今となったら責任は感じる」とも語った。下村氏は総会で、名称変更の経緯を詳しく説明した。
ほかにも岸防衛相や萩生田経済産業相など、同連合との関係が明らかになった議員は、安倍派に集中している。同派の塩谷立会長代理は総会後、首相官邸で岸田首相と会い、関係性の説明について「個々の議員の対応に任せている」と報告した。
議員と同連合や関連団体との関わりは、選挙での支援や寄付の受領など様々だ。党関係者は「旧統一教会が1968年に反共を掲げて設立した『国際勝共連合』を岸信介・元首相や福田赳夫・元首相が支援した。両氏の流れをくむ安倍派に多いのは、自然の流れだ」と話す。
茂木幹事長は再三、世界平和統一家庭連合との組織的関係を否定し、2日の記者会見では「個々人の活動については、それぞれの議員が適切に説明していくべきだ」と述べた。ただ、党内では「このままでは批判が強まり、支持率にも影響する」として、党による調査を行うべきだとの声も出ている。
9月上旬が見込まれる内閣改造・党役員人事にも波及しかねない情勢だ。党内には同連合との関わりが判明した議員の登用に否定的な意見があり、安倍派の処遇への影響は必至だとの見方もある。
野党も関係判明相次ぐ
立憲民主党は「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)との関わりについて、自民党への追及を強めている。小川政調会長は4日の記者会見で「世間の関心、社会の疑念が高まっている中で調査をしないのはあり得ない」と自民を批判した。
だが、立民を始めとした野党の議員も同連合との関係が相次いで明らかになっており、立民内では「自民への批判はブーメランのように返ってくる」との懸念も出ている。
立民の党内調査では中川正春・元文部科学相ら8人の国会議員が、関連団体の会合に祝電を送るなどしていた。日本維新の会も、馬場伸幸共同代表や藤田幹事長ら13人が関連団体のイベントに出席していたなどとする調査結果を公表した。
両党とも議員の自己申告による調査の結果、寄付や選挙の支援を受けた議員はいなかったとしており、立民は「(同連合が)支援団体ではないことは明白だ」(泉代表)と強調している。
立民は共産党などと合同で5日に関係省庁からのヒアリングを実施する予定で、党内では「また共産党と接近したという批判を受ける」(若手)との声が出ている。
 
 

 

●旧統一教会系と歩んだ安倍氏「3代」…スパイ防止法から闇を読み解く  8/7
続々と明るみに出る国会議員と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係。ただ、そもそもの話をお忘れではないか。安倍晋三元首相のケースだ。読み解くカギになるのが、いわゆる「スパイ防止法」。法制定を巡る経過をたどると、祖父の岸信介元首相、父の安倍晋太郎元外相、そして当人までの3代にわたり、教団系の政治団体「国際勝共連合」と共同歩調を取った過去が浮かんできた。政権中枢が絡んだ闇の深さこそ、目を向けるべきだ。
岸信介氏「あるときは内密に…」
「岸元首相は、本連合設立当初から勝共運動に理解を示し、陰に陽に支援、助言を行ってきた」
勝共連合の機関紙「思想新聞」の1987年8月16日付1面には、同月7日に亡くなった信介氏の評伝が掲載され、先の一文がつづられた。広辞苑によると、「陰に陽に」とは「あるときは内密に、あるときは公然と」の意。親密ぶりがうかがえる。評伝はこう続く。「スパイ防止法制定運動の先頭に立ってきた…」
この法律は、防衛と外交の機密情報を外国勢力に漏らせば厳罰を下す内容だ。信介氏は並々ならぬ思いを持っていたようだ。
57年に首相として訪米した際、米側から秘密保護に関する新法制定の要請を受けて「いずれ立法措置を」と応じていた。晩年の84年に「スパイ防止のための法律制定促進議員・有識者懇談会」が発足すると、会長に就いた。
岸氏、勝共連合、そしてCIA
勝共連合の「本気度」もすさまじかった。思想新聞によれば、78年には「3000万人署名」を行い、久保木修己会長は元検事総長や元最高裁判事、元韓国大使らとともに79年発足の「スパイ防止法制定促進国民会議」に参加。以後、勝共連合は全都道府県に下部組織をつくり、地方議会への請願運動を展開した。
思想新聞も連日、「国会への圧力を強めていこう」などと喧伝けんでん。87年の元日紙面では漫画で同法を解説しており、左派と想定した人物を博士風の男性が論破する流れになっていた。
日本のトップだった信介氏、韓国発祥の教団の流れをくむ勝共連合。スパイ防止法を求めたのはなぜか。
「根本的にはCIA(米中央情報局)」と話し始めたのは、御年89歳の政治評論家、森田実さんだ。「アメリカの政策は今も昔も変わらない。反共で韓国と日本の手を結ばせ、アジアを分断しながら戦いを挑ませる手法だ」
信介氏は「米共和党に最も近い人物」といい、旧ソ連と向き合う上で「日本の関連法制では整備が不十分という米側の意向をくもうとした」。勝共連合の方は「権力や金のために日本に食い込むには米側に取り入るのが一番早かった」。
晋太郎氏「自信たっぷりの笑顔で…」
スパイ防止法を巡り、勝共連合と共同歩調を取ったのは晋太郎氏もだった。
85年6月に自民党議員が法案を提出した時には外相で、このころの参院外務委員会では「審議について関心を持っている。そういう方向を打ち出すことも理解できる」と踏み込んだ。
思想新聞を読むと、勝共連合関連の会合に党代表や来賓として再三参加しており、「自信たっぷりの笑顔で『スパイ防止法成立に積極的に取り組みたい』と述べました」と報じられた。
その晋太郎氏は韓国と深い縁を持っていたようだ。
「安倍三代」の著者でジャーナリストの青木理氏によると、晋太郎氏の地元、山口県下関市は古くから朝鮮半島との交流の要衝だった。釜山行きのフェリーが行き交い、今も韓国との玄関口。在日コリアンが多く暮らし、地元の有力な韓国系の実業家も晋太郎氏を支援してきた。
全ては朝鮮半島との関係の中に
青木氏は「勝共連合の結び付きと土地柄は切り離して考えるべきだ」と念押ししつつ、「時代背景もあり、反共というイデオロギーを核に岸さんと旧統一教会が結び付き、晋太郎氏もそのまま引き継いだ事実は間違いない。戦前から戦中、戦後に続く朝鮮半島との関係の中に全てはある」と指摘する。
晋太郎氏は1991年に亡くなった。信介氏の時と同じように、思想新聞は1面で評伝を掲載した。やはり、この言葉で悼んだ。
「安倍氏はまた、故岸信介元首相や福田元首相と同様、陰に陽に本連合に対し支援、助言を行ってきた」
85年提案のスパイ防止法案は野党の強い反発などもあり、このころに成立することはなかった。
「世界情勢は成立へと推し進める流れになかった」。政治評論家の小林吉弥氏はそう話す。冷戦の終結や旧ソ連の崩壊があり「急いで成立させる必要性は薄れた」。信介氏が87年、晋太郎氏も91年と相次いで亡くなり、旗振り役が消えたのも一因という。
晋太郎氏に関しては、力を振るいにくい状況もあった。「外相こそ務めたが、当時首相だった中曽根康弘氏とは党総裁選で競った間。田中派に担がれた中曽根政権で、福田派の晋太郎氏はさほど重きを置かれず、政権中枢と距離があった」(小林氏)
晋三氏の登場と「特定秘密保護法」
晋太郎氏の死から15年たった2006年、晋三氏は首相に就いた。思想新聞はここぞとばかりに「スパイ防止法制定急げ」「法の再上程を」と必要性を訴える見出しを付けた。
安倍晋三政権は07年、海上自衛隊の情報流出疑惑を機に、「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」を米国と結んだ。米国と協定を交わした国が秘密軍事情報を共有する際、米国と同レベルの秘密保護が求められる。
短命の第1次政権後、晋三氏は12年末に返り咲いた。翌13年7月の参院選で衆参ねじれ国会が解消したのを受け、力に任せた政権運営を展開。衆参両院で採決を強行して成立させたのが「特定秘密保護法」だ。
防衛や外交の機密情報の漏洩ろうえいを厳罰化する同法は当時、スパイ防止法との類似点が指摘された。知る権利を侵す危うさをはらむが、思想新聞は「安保体制が大きく前進した」と持ち上げた。その一方、諜報ちょうほう活動をより強く取り締まる内容を盛り込んだスパイ防止法を制定するよう促した。
「教団系は自民党のいたるところに」
「晋三氏が秘密保護法を成立させたがったのは祖父、信介氏への思いの強さ、教団との関係性からかもしれない」
旧統一教会に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏はそう推し量る。
ただ、教団と必ずしも考えが完全一致していないとも。「秘密保護法は政府が探られたくないことを追及されないようにした。一方、教団がスパイ防止法で求めるのはより踏み込んだ内容。両者の関係はまだ分からないことが多い。さらなる解明が必要だ」と語る。
名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は、晋三氏が対米関係を考え、秘密保護法制定に動いたとみる。「スパイ防止法も秘密保護法も、政府による情報隠しを可能にし、戦争できる国づくりのための法。一気に進めると反発が大きいので、規制できる言動の範囲が限られる秘密保護法を足掛かりとしたのだろう」
共同歩調が浮き彫りになった安倍家と教団系の過去。右派色の強い教団と一国の首相との関わりに、飯島氏は警鐘を鳴らす。
「スパイ防止法が制定されれば、情報の入手はさらに制約される。基地監視はスパイ活動とされ、反基地運動が抑え込まれかねない。教団は自民党のいたるところに食い込んでいる。たださなければ、過去と似た動きが繰り返される」

陰に陽に勝共連合を支援したという晋太郎氏。死去から2年後、同じ山口県の選挙区から立候補したのが晋三氏だ。東京育ちで、選挙区との関わりは希薄。初当選を支えたのは父と縁深い面々だろう。では、勝共連合はどうか。恩返しのごとく、陰に陽に動いたのか。どうにも気になる。 
●安倍3代にわたる統一教会との蜜月関係を、なぜ大新聞は追及しないのか 8/7
腰抜けの大新聞やテレビは、今ごろになって自民党の政治家と統一教会との癒着構造や、安倍政権時代に統一教会から世界平和統一家庭連合への名称変更が認められたなどと寝とぼけたことを報じているが、週刊誌ははるか先へいっている。
この問題の核心は、岸信介、安倍晋太郎、安倍晋三と3代にわたって脈々と続いてきた安倍家と統一教会との「親しすぎる関係」にあることは間違いない。
週刊新潮(8月4日号、以下新潮)で自民党のベテラン秘書がこう言っている。
「選挙で誰が統一教会の支援を受けるかは、安倍さんの一存で決まるといわれていました。教会の組織票は約8万票。ただ、衆院選では1選挙区あたりの統一教会の票数はそれほどでもないので、参院の全国比例でその組織力が発揮されます」
推薦を受けるには、統一教会のトップと面談をする。そこで不倫や金銭トラブルがないかただされ、安倍元首相が応援している候補なら確実に支援してもらうことができるという。 
だが、選挙の直前になると教会の施設で泊まりがけの研修を受けなくてはいけないというから、この時に“洗脳”されるのかもしれない。そんな連中が政治家になり、統一教会の言うがままに便宜をはかってきたとすれば恐ろしいことである。
その大本が岸信介にあることはよく知られているが、新潮(7月28日号)が放った「『岸信介』が1984年に当時のロナルド・レーガン米大統領に送った『統一教会首領・文鮮明』釈放嘆願書」は、時宜を得たスクープだった。そこにはこう書かれている。
〈文尊師は、現在、不当にも拘禁されています。貴殿のご協力を得て、私は是が非でも、できる限り早く、彼が不当な拘禁から解放されるよう、お願いしたいと思います〉
文鮮明はその前に、アメリカで脱税容疑で逮捕・起訴され、84年4月には懲役1年6月の実刑判決を受けて連邦刑務所に収監されていた。つまりこの書簡は、日本の元総理がアメリカの現職大統領に宛てて、韓国人「脱税犯」の逮捕が不当だとして釈放を依頼するという、極めて異例の内容なのだ。
手紙の後半では、〈文尊師は、誠実な男であり、自由の理念の促進と共産主義の誤りを正すことに生涯をかけて取り組んでいると私は理解しております〉〈彼の存在は、現在、そして将来にわたって、希少かつ貴重なものであり、自由と民主主義の維持にとって不可欠なものであります〉。
このころには、統一教会の悪質な「霊感商法」が世の厳しい指弾を受けていたのである。
しかし、「昭和の妖怪」といわれた岸は引退後も政界に隠然たる力を持ち続け、統一教会との関係も、息子から孫へと受け継がれたことは間違いない。
だが、週刊誌はタレントたちの合同結婚式では報道合戦を繰り広げたが、政界の統一教会汚染にはあまり熱心ではなかった。探してみたが新潮(1992年7月30日号)が、「勝共連合が発表した勝共推進議員名簿には150人もの国会議員が名前を連ねている。ハッキリいって、自民党の代議士の半分以上が統一教会の恩恵にあずかっているといってもいいんですよ」(統一教会に詳しいジャーナリスト)ぐらいだった。
今度こそ、安倍元首相も含めて、統一教会と政治家の極めて不適切な関係にメスを入れなくてはいけない。 
 
 

 

●旧統一教会と安倍氏の闇 古賀茂明 8/9
「自民党として組織的関係がないことを既にしっかりと確認をしております」7月26日、自民党 の茂木敏充幹事長が、自民党と旧統一教会(以下、教会と呼ぶ)との関係について、こう断言する映像がテレビやネットで流れた。
そのわずか2日後、これを全面否定するようなニュースが報じられた。
「安倍さんが、『統一教会に頼んでちょっと足りないんだウチが』と言ったら『わかりました、そしたらちょっと頼んでアレ(支援)しましょう』ということで」
これは、伊達忠一元参議院議長の言葉だ(HTBの放送)。安倍さんとはもちろん、安倍晋三元首相のこと。伊達氏が2016年の参議院選挙で支援していた宮島喜文候補の得票が当選ラインに届かない状況だったので、安倍首相(当時)に頼んだら、安倍氏が教会の票を上積みしてくれたということを意味する。その結果、宮島氏は当選した。少なくとも、このケースでは、時の総理が、教会の票を割り振る役割をしていたということになる。
伊達氏は当時、細田派(現安倍派)に所属し、当選した宮島氏も同派に入会した。少なくとも、当時の細田派と統一教会は、組織的に結びついていた。そして安倍氏がそのトップとして君臨していたわけだ。
実は、それから6年後の今年、参議院選挙で奇妙なことが起きた。統一教会のおかげで当選したという宮島議員が、一度自民党の公認を受けたのに、なぜか、これを選挙前に辞退したのだ。極めて異例である。前出の伊達氏によれば、安倍氏から、今回の選挙では、教会の票を井上義行候補に割り振るので、宮島氏には回せないと言われ、それでは当選は難しいということで宮島氏が(表向き)自ら公認を辞退。立候補も取りやめたという。井上氏は、第一次安倍政権で安倍氏の秘書官を務めた人物だが、党内の評判はすこぶる悪い。しかし、安倍氏は、身内を優先して現職の宮島氏を切った。なんとも自分勝手な振舞いではないか。
安倍派のある議員に電話で話を聞くと、統一教会は、安倍派に限らず幅広く国会議員の選挙のボランティアをしているという。ただで一生懸命やってくれるので、誰も断る人はいない。しかし、組織的な票の割り振りまでやってくれるわけではない。
自民党の支持団体は、概ね派閥ごとの縄張りがあり、参議院選挙の場合は、ある団体が、常に同じ派閥を応援するケースや、3年ごとに二つの派閥を交替で応援するケースなどがある。統一教会は、安倍派の団体という仕切りで、参議院選挙では常に安倍氏の差配で教会側が票を割り当てることになっているという話だった。
自民党と教会の癒着の歴史は古い。しかし、今日のように、大手を振ってイベントに参加するなどの行為が横行したのは、時の総理がこの団体との関係を隠さず大っぴらにそれを宣伝する行為をしたことの影響が大きいようだ。ある議員は、総理が表で親密にしていて、選挙の応援までしてくれる団体から案内が来れば、これを断る方が難しい、問題があると知っていても、総理がやってるから大丈夫だろうという安心感もあったと語った。
これでも、岸田文雄首相は、安倍氏の国葬を強行するというのだろうか。
●統一教会は安倍晋三元首相の「雨天の友」だった 8/9
「統一教会の歴史は岸家、安倍家を抜きにしては語れない」
ジャーナリストの森健氏は、「安倍元首相暗殺と統一教会」(「文藝春秋」9月号掲載)のなかでこう書く。そして旧統一教会の政治団体「国際勝共連合」会長の梶栗正義氏が、安倍氏と会食した際、「教祖文鮮明と岸信介」「安倍晋太郎と梶栗玄太郎(正義氏の父)」「安倍晋三と自分」の写真を見せながら、「これは3代のお付き合い、3代の因縁である」と教会の日曜礼拝で話したというエピソードを紹介している。
だが、安倍氏と統一教会との関係は「3代の因縁」ばかりではなかった。梶栗氏は「この8年弱の政権下にあって、6度の国政選挙において私たちが示した誠意というのも、ちゃんと本人(安倍)が記憶していた」とも語っており、選挙での協力が安倍元首相との縁を深めたことを認めていた。
ただ、安倍元首相が一貫して統一教会と親密だったわけではない。
〈この若き政治家(安倍氏)に対し、統一教会側は当初手ごわい印象をもっていた。古参の幹部が振り返る。
「岸先生のお嬢さん(洋子氏、安倍氏の母)から注意されていたようなんです。またご本人(安倍氏)も『自分はあまり関わりたくない』と仰っていた。霊感商法で叩かれた後は祝電などお願いしても打ってくれませんでした。それでも北朝鮮の拉致問題などもあり、我々とは仕方なく関わってきたんです」〉(森氏の記事より)
安倍元首相と統一教会の関係が深まった経緯
では、なぜ両者の関係は深まったのだろうか。
2009年に統一教会は「新世事件」によって最大の危機に陥る。霊感商法に捜査のメスが入り、会長が辞任に追い込まれたのだ。森氏はこう記している。
この事件によって統一教会は二つの点で大きな方向転換を余儀なくされた。一つは霊感商法の見直し。もう一つは政治家との関係性の強化だ。全国弁連の弁護士渡辺博は7月12日の会見の際こう指摘していた。
「後に統一教会の機関紙で、統一教会の責任者が登場して、『政治家との絆が弱かったから、警察の摘発を受けた。今後は政治家と一生懸命つながっていかないといけない』と語った。それが彼らの反省点でした。我々が国会議員に『統一教会の応援をするのはやめてください』と呼びかけている理由もそこにあります」
〈そのとき統一教会が接近した政治家の一人が安倍だった〉
一方、新世事件からまもなく自民党は総選挙に敗れ下野する。民主党に敗れたのは麻生政権時代だが、その前に政権を投げ出した安倍氏の責任も厳しく批判された。
〈第一次政権までの安倍は統一教会と距離を置いていたと複数の議員関係者は証言していた。にもかかわらず、民主党政権で下野して以降、安倍は急速に統一教会と近づくことになった。それはなぜだったのか。安倍の後援会関係者は、やはり政権奪回、票のためだと見ている。「晋太郎さんは3回目の選挙で落選していて、晋三さんはその苦労を知っている。選挙で負けたらただの人以下、だから勝たないといけないというのが晋三さんのポリシーでした。民主党政権のときに、とにかく政権を取るために統一教会を使った」〉(同前)
「統一教会は安倍にとって『雨天の友』だった」
森氏は「統一教会は安倍にとって『雨天の友』だった」とみる。そして、この野党時代以来の関係が山上徹也容疑者の動機となった安倍氏のビデオメッセージ出演につながったとしてこう指摘している。
〈全国弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)の代表世話人山口広は統一教会に関わることそのものが、統一教会にエールを送ることに他ならないと強く批判する。「新世事件以降、統一教会は資金的に厳しい状態になっています。彼らは今でも伝道をやっていますが、以前のようにはできない。だから政治の力を借りようとする。今回の参院選で組織推薦候補(安倍の元秘書官井上義行のこと)を出したのもその一つ。我々はそう認識しています」その上でUPF(旧統一教会の関連団体)のイベントに安倍がビデオメッセージを送ったことには無念を覚えると言い添えた。「統一教会によって家庭を崩壊させられた人々にとって、その総裁(韓鶴子)に向かって元首相が『敬意を表します』と言うのは大変な衝撃です。ですから全国弁連は登壇後すぐに安倍事務所に抗議文を送りました。しかし受け取りは拒否されました」〉(同前)
●統一協会から目をそらす「安倍マンセー派」に小林よしのり氏が“贈る言葉” 8/9
一部を除く気骨あるメディアの追及により、次々と明らかになる安倍元首相を筆頭とした自民党と旧統一教会との「深すぎる関係」。しかし当の議員たちは反省する素振りもなく、安倍氏を支持してきた雑誌には疑惑発覚後も元首相に対する美辞麗句が並んでいます。そんな状況に疑問の声を上げるのは、『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』等の人気作品でお馴染みの漫画家・小林よしのりさん。小林さんは自身のメルマガ『小林よしのりライジング』で今回、耳を疑う発言を繰り返す自民党所属議員たちを強く非難するとともに、安倍元首相に対する強烈な「贈る言葉」を記しています。
ゴーマニズム宣言:安倍マンセーの方々へ
統一協会の話題を、テレビも週刊誌もどんどん扱っている。
先週の時点では、権力に忖度して沈静化していくのではないかと危惧していたが、統一協会を扱えば視聴率が上がる、部数が伸びるという現象に、もう各局・各誌とも抗えない状態になっているようだ。
安倍晋三があんなに無惨に殺され、しかもそのことによって安倍と反日・反社会カルトである統一協会の癒着関係が明るみに出されてしまうという事態は、「安倍マンセー派」にはとても耐えがたいことだろう。「私の心の中の美しい安倍晋三を汚さないで!」みたいな心の叫びが聞こえるようだ。
そんな、何が何でも安倍のことは美化しておきたい「安倍マンセー派」のために、「月刊WiLL」も「月刊Hanada」も「月刊正論」も、安倍追悼の大特集号を組んでいる。
そこでの安倍は「不屈の政治家」であり、「稀代のリーダー」であり「自由の守護神」であり「日本の宝」であり…と、賛美、賛美、賛美の嵐である。
まるで、文鮮明を「メシア」と賛美するかのように。
もちろん3誌とも安倍と統一協会の関わりなど一切触れず、そればかりか、銃撃の原因となったのは悪意ある安倍批判を繰り返した「アベガー」(サヨク)のせいだとする記事まで載っている。「愛する安倍さんの裏にそんな闇があったなんて、そんなこと見たくなーいっ!」といった状態である。
メディアでは連日、統一協会と安倍晋三・自民党の癒着関係が報じられているのに、ここは全くの異世界である。現実に対して徹底して目を塞いでいるその様子は、それこそが「信仰」であり「カルト宗教」であるとしか言いようがない。
そしてこれは信仰であるがゆえに、議論が一切通用しない。
首相時代の安倍があんなことをした、こんなことをしたといくら具体的に挙げても、「『アベガー』だ!」と言って、一切聞こうともしないのだ。
統一協会の信者が、「サタンの言葉だ!」と言って都合の悪い声に耳を塞ぐのと同じである。
だが、そんな安倍マンセー教信者にも、決して「『アベガー』だ!」では否定のできないことがある。
それは、安倍晋三が「戦後レジームからの脱却」を掲げながら、それを全てベタ降りしたことである。
安倍は第一次政権発足時に「村山談話」(侵略史観)を踏襲すると言い、「河野談話」(慰安婦強制連行)を踏襲すると言い、「東京裁判」に異議を唱える立場にないと言い、ついにこれを撤回することはなかった。
そして集団的自衛権の行使容認については、まずアメリカ議会で約束して、それから日本の議会での議論を開始した。
戦後レジームの根幹は、アジア侵略史観(自虐史観)とアメリカ追従である。安倍はこれから脱却すると言っておいて、より強化してしまったのだ。
これは決して否定のできない事実としてあるのだから、絶対に反論のしようがないことである。
しかもこの上に、統一協会の問題が加わるのだ。
ジャーナリスト・鈴木エイト氏が公表したリストによれば、統一協会と関係のある国会議員は112人で、うち98人が自民党議員、中でも安倍派が35人に上る。しかも、まだ公になっていない議員は他にもいると考えられるという。
明らかになっているだけで、自民党の国会議員の4分の1以上が関わっているというのだから、びっくり仰天である。
しかも、警察組織を管理する立場にある国家公安委員長までも、統一協会の関連団体が主催するイベントの「京都府実行委員会委員長」を務めていたことを認めている。全く狂気の沙汰であり、そしてそれは全て第二次安倍政権発足以降に顕著になったことなのである。
中でもわしが特に重視しているのは、2013年の参院比例で初当選した元産経新聞記者・北村経夫への選挙協力の件だ。
統一協会の内部文書には、安倍から直々に北村を後援してほしいとの依頼があったと記され、さらに「まだCランクで当選には遠い状況」だった北村を当選させることが「組織の『死活問題』です」と書かれていたという。
その結果、北村は当選。二期目を目指した2019年の選挙でも、初当選時と同様に盤石な地盤を築けていなかったにもかかわらず、安倍が選挙直前に慌てて統一協会に支援を依頼し、再選されたといわれている。
広告塔として利用されていたという程度なら「知らないうちに悪用されていた」なんて言い訳もできなくはないが、安倍が自ら直々に統一協会(カルト団体)に後援を要請し、票の差配をして当選したとなれば、致命傷ではないか?
公明党・創価学会に協力してもらうのが当たり前になって、完全に感覚がマヒしていたのかもしれないが。
いずれにしても、安倍晋三と統一協会の間には「ズブズブ」程度の言葉では言い表せないくらいの関係性があったのは間違いないし、このままいけばこれからも事実がどんどん明るみに出されるだろう。何しろ30年分の事実が眠っているのだから。
だが、否定しきれないほどの事実が出てきた時に、自民党・ネトウヨ・安倍マンセー派たちがどうするかは目に見えている。
居直り始めるのだ。森友学園の時のように。
どんな事実が出てこようと、「それくらいはよくあること」だの、「ちょっと名前を貸しただけ」だの、「悪用されただけ」だのと言い始めて、どれだけ非難の声が挙がっても「それが何か?」とばかりに、大したことではないかのように相対化していく。それを、世論が飽きて関心を失うまでひたすら繰り返すのだ。
森友学園の時は、結局はその手で乗り切ってしまった。自殺者まで出してしまったにもかかわらずである。自民党はそれに味を占めて、今度もその手で行けると高を括っているに違いない。
自民党の茂木幹事長は「自民党として、組織的な関係はない」と白々しく弁明したが、その一方で安倍の実弟・岸信夫防衛大臣は「旧統一教会の方と付き合いもあるし、選挙の際にも手伝ってもらっている」と、開き直って関係を認めている。
岸はさらに、「旧統一教会に手伝ってもらったというよりは、旧統一教会のメンバーに、ボランティアでお力をいただいたということだ。選挙なので、支援者を多く集めることは必要なことだと思っている」と言っている。
選挙のための、普通のことをやっているだけというような言い方までするのだ。
さらに福田達夫総務会長に至っては、「なんでこんなに騒いでいるのか、正直な話、よく分からないというのがあります。正直言います。何が問題なのか、分からない」とまで発言している。
この無神経が凄すぎる。なぜこんなことを平然と言えるのか?カルトとの関わりを何とも感じないのは、そいつもカルトだからだとしか思えない。
とにかく、こうして居直って相対化して、森友と同じように「普通のこと」にしてしまおうというのが連中の手口だ。
しかし、これを絶対に「普通のこと」にしてはいけない。もしそれを許してしまったら、30年前と同様に再び報道もなくなってしまい、ほとぼりが冷めたら政界にまたもや統一協会が正体を隠して浸透して来るということが繰り返されていくだろう。
この機会に、カルトは絶対に叩き出さないと、より一層の無法行為がまかり通ってしまう。
統一協会は普通の宗教ではない。カルトである。それも相当に悪質な、破壊的カルトである。
それは、暴力団と何も変わらない「反社会的勢力」である。むしろその悪質さ、その規模、一般人に与える被害の大きさ、どれをとっても暴力団を遥かに凌駕していると言っていい。
今は「反社会的勢力」と関わりを持つと、非常に重い社会的制裁を受ける。お笑い芸人が暴力団員と直接交際があったという理由で、引退を余儀なくされた例もあるし、暴力団がらみの「闇営業」に出たというだけで、長期間の謹慎を課せられた者もいる。
それなのに、政治家はこれだけ反社会的勢力と濃厚接触していてもお咎めなしなのか?政治家の社会的責任って、お笑い芸人よりも軽いのか?
統一協会のメンバーと付き合いがあり、選挙の支援を受けたことを認めている岸信夫は、霊感商法や献金強要被害などの問題について「そういうことが言われている団体だということは認識をしていた」と認め、「被害に遭った方がいることは大変な問題だと思っている」と言っている。
知ってて協力を受けていたのだ。即刻議員辞職しなければおかしい!
関係が明らかになった他の議員も全員議員辞職させ、統一協会を完全に排除した上で出直し選挙をするべきである!
安倍晋三の「国葬」は9月27日だ。
自民党、とりわけ安倍派が統一協会と癒着しまくっていた事実が今後どれだけ出て来ようと、「WiLL」「Hanada」「正論」は、何が何でも国葬が終わるまで安倍を賛美し続けるのだろう。だったらいっそのこと、わしが先に安倍への賛辞を書いてやろう。
偉大なる指導者、安倍晋三様、ありがとう!
あなたこそが、日本の宝でした!
朝日新聞を始めとする、これまでいくつもの政権を潰してきた反日マスコミに打ち勝って、史上最長の政権を築いたその栄光は決して消えません!
反日マスコミに勝つために、より強力な反日カルトと手を組むなんて、こんな大胆な逆転の発想があろうとは、さすがとしか言いようがありません!
政権を獲得し、これを維持するためなら、反日・反社カルトに国民を売ってもかまわないとは、ものすごい覚悟でした!だからこそ、どんなに不祥事を起こしても選挙となれば無敵だったわけです。こんなことが野党にできるわけがありません!この「売国力」こそが、誰にも及ばない安倍さんの並外れた力量だったのです!
安倍さんが目指した「美しい国」とは、かつて朝鮮を侵略したことを真摯に反省し、その贖罪のためにどこまでもお金を貢ぎ続ける国だったとは、思いもしませんでした!
普通はこんなことが明らかになったら、保守や右派の人たちから「裏切りだ!」と非難の嵐が巻き起こるはずなのに、安倍さんに対してだけは絶対にそれが起こりません。この人徳のすばらしさ!いい信者…じゃなくて、支持者に支えられて、最高の政治生活ができて、さぞ幸せなことだったでしょう!
志半ばで凶弾に斃れたことは不幸ではありましたが、これだけ立派な業績を残されたことですから、きっとその魂は文鮮明の待つ霊界に迎えられ、天国に行けることでしょう。統一協会の信者やその家族がどれだけ地獄を見ていようとも!
安倍さんはこれから国葬で送られます。これだけ国を売りまくって国葬をしてもらえるなんて、まさに前代未聞の偉業です。
安倍晋三の名は、21世紀の日本人がここまで信じがたいようなリーダーを担いでいたという事実と共に、後世の人々に驚愕の眼差しで見られることになるでしょう。 未来に、日本という国がまだ存在していればの話ですけれども。
「戦後レジームからの脱却」と言いつつ、アジアへの自虐と従米主義という「戦後レジーム」に逆戻りし、統一協会の「自虐史観」をテコにした日本人からの献金主義で家族の破壊を繰り返す。
こんな首相は、もう二度と出てこないことでしょう。出てきてほしくもありませんが!
空前絶後の稀代の宰相、安倍晋三様、マンセー(万歳)!マンセー(万歳)!! 
●旧統一教会、冷戦下に影響力拡大…反共産主義掲げ  8/9
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治は、どのようにして関わりを持つようになったのか。
旧統一教会と自民党とのつながりは古い。教会の歩みをまとめた「日本統一運動史」や創設者の文鮮明氏の自伝によると、安倍晋三・元首相の祖父・岸信介元首相と文氏は、約半世紀前から反共産主義の立場を通じて交流を持っていた。
韓国で創設された旧統一教会は1959年から日本で布教を始め、64年に宗教法人として認証された。教義として伝統的な家族観を尊重し、共産主義を強く否定していた。
68年には文氏が主導し、政治団体「国際勝共連合」を日本と韓国に創設。日本の初代名誉会長は、戦前に右翼政治家として活動した元日本船舶振興会会長の笹川良一氏だ。笹川氏は保守派の岸氏と関係が深く、岸氏に教会を紹介したという。
こうした縁で岸氏は、70年に東京の教会本部で講演。73年には文氏と面会した。80年代には韓国で開かれた見知らぬ信者同士の「合同結婚式」で、岸氏の祝賀メッセージが代読されたこともあったという。
立命館大の上久保誠人教授(現代日本政治学)は「東西冷戦下で、西側諸国では『共産主義の打倒』が叫ばれていた時代。共産主義の脅威から自由民主主義を守るため、保守系の政治家は教会を共闘できる相手とみていた」と説明する。
一方、旧統一教会は選挙で政治家に運動員を派遣したり、票の取りまとめをしたりしてきた。元信者の仲正昌樹・金沢大教授(政治思想史)は「教会は政治との関係作りを狙い、政治家は熱心に選挙を手伝う信者や組織票を当てにした。持ちつ持たれつの関係がずっと続いてきた」と話す。 
 
 

 

●旧統一教会と安倍晋三元首相の関係 8/10
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元最高幹部によりますと、1960年代以降、共産主義勢力の拡大に反対する立場から、創立者の文鮮明氏と、安倍晋三氏の祖父である岸信介元首相や父の安倍晋太郎元外相が近い関係になったといいます。
旧統一教会は1964年に日本で宗教法人の認証を受け、1968年に反共産主義を掲げる政治団体「国際勝共連合」を創設。
安倍晋三氏は、2021年に旧統一教会の関連団体にメッセージ動画を寄せています。 
●統一教会は信者獲得のためではなかった……政治に接近する理由 8/10
安倍晋三元首相の暗殺をきっかけに、多数の国会議員が選挙の際には統一教会(現・世界平和統一家庭連合)から協力を得ていたことが発覚した。国会議員は、票になりさえすれば宗教団体だろうと何でも利用するのはよく知られたことではある。一方、宗教団体は何のために政治に近づいて行くのか。宗教専門誌「宗教問題」の小川寛大編集長に聞いた。
小川:まず、戦後の宗教と政治について、大まかな話からしましょう。1964年、創価学会は自らを支持母体とする宗教政党・公明党を結党し、翌年の参議院選挙では早くも当選者を出しました。創価学会が宗教政党を作ったのは、今は公式に撤回したことになっていますが、創価学会を全国民に布教して、国立のお寺のようなものを作らせるのが目的でした。
――いわゆる広宣流布・国立戒壇というやつだ。
小川:そこまで言い切ったのは創価学会ぐらいでしたから、生長の家や立正佼成会といった新宗教団体が危機意識を持ったのです。そのためアンチ創価学会としての結びつきを強め、彼らも政界に進出していったという構図がありました。とはいえ、1970年代に創価学会は大バッシングを受けて、当時の池田大作会長が当初の目的を撤回しました。
――では、統一教会はどうなのか。
小川:最近の報道でご存知の方も少なくないと思いますが、元々、統一教会は韓国で生まれた宗教です。創始者で教祖の文鮮明は軍事政権の朴正煕大統領の軍事政権の下、反共産主義思想を展開して庇護されました。純粋に宗教の魅力で信者を増やすと言うよりも、政治家と一緒になって影響力を拡大させようというのは日本に来る前から行われていたわけです。
――教祖というよりも反共の活動家のようだ。
生長の家とのつながり
小川:統一教会は日本に来ても、「冷戦の最前線である韓国から来ました。我々は共産主義は嫌いです」といった売り方をするわけです。実際、文鮮明は朝鮮戦争の直前に、北朝鮮軍に捕まって牢獄に入れられたこともあるそうですから、一定の説得力もあったようです。当時は、左翼運動が盛んな時期でしたから、安倍元首相の祖父である岸信介や笹川良一も、これは使えると考えたのかもしれません。
――昭和の妖怪・岸、右翼のドンと呼ばれた笹川は、文鮮明が創立した反共主義の政治団体・国際勝共連合で結びついたと報じられている。だが、それだけではない。
小川:1960〜70年代、日本では左翼系の学生運動が盛んでした。これに対抗したのが保守派の全国学生自治体連絡協議会(全国学協)という組織です。中心となったのが生長の家の学生組織・生長の家学生会全国総連合であり、それと共闘したのが原理研究会でした。
――原理研究会といえば、統一教会が大学生を勧誘するための関連団体である。それが生長の家と繋がりを持っていたというのは意外だ。
小川:生長の家の古い信者に話を聞くと、統一教会とは非常に親しかったと言うんです。今でこそ、世間で右翼的な発言をする人は少なくありませんが、左翼運動が盛んな頃にそうした発言をする人はほとんどいませんでした。ですから、例えば大きな会場に2000人くらい人を集めなければいけないという時に、統一教会に500人くらい動員を頼んでいたと言うのです。生長の家信者だった自民党参議院議員、玉置和郎が勝共連合の顧問に入っていたことも象徴的です。その全国学協が流れ流れて、後の日本会議へと繋がっていったのです。
――日本会議は保守系団体では日本最大の組織といわれ、安倍元首相とのつながりもあった。
立正佼成会とのつながり
小川:現在、騒ぎになっている統一教会ですが、我々が思っている以上に政治との繋がりの歴史が長いのです。そうなると昔から付き合いのある政治家としては、統一教会はなかなか切りにくい組織なのでしょう。もちろん、霊感商法や高額献金などの負の側面が今問題視されているわけですが、政治家にすれば、「高額な壺を売っているから明日から来ないでくれ」とは言いにくいのでしょう。
――日本で統一教会の拡大に一役買った日本人がいる。
小川:1964年、統一教会は日本で宗教法人の認可を受けました。その時、日本の統一教会初代会長に就任したのが久保木修己という人でした。この人は、岸信介の前でも動じることなく、カリスマ的な存在感があったそうです。国際勝共連合の初代会長も務めました。ところが、この人、元々は立正佼成会の幹部だったんです。
――期せずして、アンチ創価学会の生長の家と立正佼成会が、ここでまたつながった。
小川:統一教会は、冷戦時代は反共で政治に関わろうとしていたと思います。しかし、今となっては、純粋な目的で政治に関わろうとは思っていないのではないかと思います。
――では、なぜ今も特定の候補者の選挙を手伝ったりしているのだろう。
広告塔の役割
小川:「芸能人や政治家が宗教団体の広告塔になる」という言葉をよく聞きます。広告塔というと、教団が新たな信者を勧誘する際のサポート役のようなイメージでしょう。しかし、今の広告塔は内向きで、すでに入会した信者に疑問を持たせないために必要なのです。例えば、母親が宗教団体に大金をつぎ込んでいるのを知った息子が止めようとしたときに、機関誌を見せて「安倍さんが来ているような団体がおかしいわけないじゃない」という使われ方がされます。もちろん2世3世の信者を逃がさないためでもある。統一教会に限りませんが、そのために、集会に来て下さい、祝電を打ってくださいと政治家と親しくなりたいと考えるのです。選挙活動を手伝ってもらっている政治家にすれば、断りにくいですからね。
――新たな信者獲得のためではなかったのか。
小川:いまどき、休日に家でゴロゴロしているときに、突然「こんにちは、統一教会です」と尋ねてこられて入信する人などいません。むしろ、飛び込みの勧誘は、度胸を付けるためと言われています。追い返されて泣きながら教会に帰ると、むしろ褒められ、益々離れられなくなるといいます。その際にも「国会議員の先生も応援してくれる団体なのだから、君の勧誘を断る方がサタンなんだ」という使われ方もするわけです。
――これで宗教法人とは……。
創価学会の場合
小川:ですから今となっては、統一教会は、宗教の教義をもって世の中を良くするとか、人間の完成を目指すといったことではなく、ただお金を信者から巻き上げるために活動している集団との認識が妥当なのではないかと思います。そのために、政治家が必要だったのです。政治家との縁が切れないように選挙を手伝っているとしか思えません。
――ならば、現在は自民党とともに与党を構成している公明党と、その支持母体、創価学会はどうなのだろう。
小川:最初に申し上げた、広宣流布・国立戒壇のような目標は現在はありません。実際、創価学会も高齢化が進み、会員も減っていますから、そこまでのパワーもありません。
――公明党の宗教政党としての存在価値とは? 
小川:現在は道路が綺麗になったとか、ゴミの集積所が増えたとか、全部の学校にクーラーがついたとか、給付金とかで生活が向上しているというのが、会員の会合などでアピールされています。
――かつてのパワーはなくなったものの、それでも学会員たちによる選挙活動は今も機能している。
小川:彼らにとって選挙はお祭りでしょう。地方選挙も含めれば、年に1回くらいは選挙があります。その際に会員を集め、候補者のポスターを貼り、電話をかけまくって支持を集める。全体の票数が減ったとはいえ、学会の票割りは見事なものですから、候補者は当選します。会員も応援した候補者が当選すれば嬉しいわけです。当選した議員も、学会員に「みなさんのおかげで」と感謝もするわけですから。彼らにとって、選挙は宗教行事の一環のようなものでしょう。
――創価学会員が「選挙をやれば功徳になる」とテレビのインタビューに答えたのは有名な話だ。
小川:だから自民党も公明党を頼りにしているのです。 
●安倍元首相、ESGの功績 8/10
2022年7月8日、安倍晋三元首相が遊説先の奈良市で銃弾に倒れた。通算3188日と憲政史上最も長く首相を務めた安倍氏は自身の名を冠した経済政策に注力。日米同盟を重視した外交・安全保障政策を進めた他、ESGの分野でも功績を残した。
15年9月、当時の欧州での難民問題や過激派組織「イスラム国(IS)」対策に加え「持続可能な開発目標(SDGs)」の策定が議題となった国連サミット。登壇した安倍氏は「(日本のSDGs推進の)羅針盤は一人ひとりの人間を大切にする人間の安全保障」と話した。
また、世界の人々が紛争やテロへの不安に襲われる中、誰もが公平に保健や衛生を享受できることや、特に女性の安全や権利が守られることなどの必要性を訴えた。
世界最大級のESG投資を表明
日本は、SDGs策定前から、その前身である「ミレニアム開発目標(MDGs)」の進捗や課題を政府主導で評価し、サミット開催を前にNGO(非政府組織)と産官学を挙げた議論を活発に繰り返してきた。16年には政府内にSDGs推進本部が置かれ、安倍氏が本部長となり、19年には再び国連でのSDGsサミットで進捗を報告した。
15年の国連サミットは日本におけるESG投資の転換点でもあった。安倍氏はスピーチで、SDGsの採択に賛意を示すとともに、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連の「責任投資原則」に署名したと話し、「1兆ドル規模の年金積立金を運用するGPIFが持続可能な開発の実現にも貢献することとなる」と表明した。
その後、GPIFは世界最大級の機関投資家として国内外のESG投資をけん引。22年3月末時点の運用資産は196兆5926億円に上っている。
また、日本の首相として初めて、長期的な気候変動戦略に言及した。第1次政権中の07年5月、「美しい星50」と称する方針を示した。
日本が誇る省エネなどの技術を生かしアジアなど世界でのCO2削減に貢献することや、50年までの長期で、世界で排出量を半減させることなどを盛り込んだ。
当時、長期戦略を掲げるのは、同60%削減の目標を掲げる英国くらいだった。こうした中、「環境対策はコスト。国際競争力をそぐ」と捉える企業と、「国内CO2削減の棚上げ」と指摘する環境NGOの双方から不満が噴出した。ただ、安倍氏が掲げた「技術力によって世界全体で温室効果ガスを総量削減する」という発想は今、日本、そして世界の前提となっている。
世界の指導者と親交を築く中で国際社会の課題に広く向け、日本を方向づけた。その政治家がかような最期を遂げたことが、平和で安全な世界を目指す時代の終わりではなく、さらなる進化の礎になることを願うばかりだ。 

 

●旧統一教会「不当な影響ない」 安倍氏国葬に理解求める―岸田首相 8/11
安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治のつながりが大きな関心を集める中、岸田文雄首相が10日、当初の予定を大幅に前倒しして内閣改造に踏み切った。記者会見した岸田首相は「旧統一教会が不当に自民党の政策に影響を与えたとは認識していない」と強調し、9月に予定される安倍氏の国葬にも理解を求めた。
モーニング姿の岸田首相は午後6時すぎから首相官邸で会見に臨んだ。旧統一教会について、自身は「関係がない」と明言。その上で「関係の点検と見直しを了解した者のみを(閣僚に)任命した」と説明した。安倍氏が旧統一教会の関連団体にビデオメッセージを送っていた点について問われると、「当時の安倍元首相の判断」としてコメントを避けた。
安倍氏の国葬について反対意見が増えているとの指摘には、東日本大震災からの復興や経済再生、外交面などでの安倍氏の実績を強調。「国内外から高い評価と幅広い弔意が寄せられている」と各国の対応を列挙し、「国の公式行事として各国代表を招く形式が適切」と語った。
会見は約45分で終了。記者からは「まだ質問がある」「短すぎる」などの声が上がったが、岸田首相はそのまま会見室を後にした。  
●前代未聞 統一教会のイベントに参加していた公明党参院議員の立場 8/12
公明党の石川博崇参院議員(48)が8月5日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体である「世界平和女性連合」のチャリティーバザーにかつて参加していたことを明かした。公明党議員にはあるまじき行為という声がもっぱらである。
公明党の石井啓一幹事長は、党の会合で、旧統一教会や関連団体の行事に参加した国会議員は石川議員だけだったと説明した。もっとも石川議員は、「世界平和女性連合」のバザーに短時間立ち寄っただけで挨拶などはしておらず、旧統一教会との認識もなかったという。
相容れない関係
「確かに統一教会と知らずに参加したのでしょうが、本来ありえない話です」と語るのは、創価学会に詳しいジャーナリストの乙骨正生氏。
「石川議員は、関西創価高校から創価大学へ進み、外務省に入省したエリートですが、脇が甘かったとしか言いようがありません」
石川氏は、在シリア、在オマーン日本大使館に勤務した後、2009年11月に退官。2010年7月、参院選挙に大阪府選挙区から出馬して、トップ当選。今年の参院選で3選を果たした。
「大阪は創価学会の牙城。そこを地盤としているわけですから組織からも期待されている人でしょう」
そもそも、統一教会と創価学会はどういう関係にあるのか。
「両団体は、昔から今に至るまで、まったく相容れない関係です。どちらも反共で、自分たちの教義だけが正しくて、他の宗教は認めない。一般の伝統的教団とは異なり、創価学会と統一教会は極めて独善性が強い団体。両者には近親憎悪の感情があるのでは。いくら知らなかったとはいえ、石川議員は深く反省しているはず」
ところが、この2つの宗教団体を頼りにしていた自民党の大物政治家がいた。
「安倍晋三元首相の祖父、岸信介です。岸信介と統一教会の文鮮明は昵懇の仲であることはすでに報じられています。岸の渋谷区南平台(現・松濤)の自宅の隣が統一教会の本部だったことで、岸は頻繁に統一教会に行き、講演もしています。1982年、文鮮明が脱税のためアメリカで服役した時、岸は当時のレーガン大統領に釈放のための嘆願書を送るほど関係は深いのです」
岸信介と戸田城聖
岸信介は創価学会とも親しくしていた。
「岸信介は、創価学会の2代目会長だった戸田城聖と親密な関係でした。1958年3月、戸田会長は静岡県の大石寺で広宣流布(法華経の教えを広く流布する)の模擬試験(広宣流布の成就を想定した模擬的な儀式)を行う際、岸信介が参加予定でしたが、側近から止められました」
岸信介の代理として参加したのが良子夫人、安倍晋太郎、洋子夫人(岸の長女)だったという。
「この儀式の際、戸田会長は池田大作をはじめとする創価学会の青年部に、宗教界の王は創価学会で、政界の王は岸首相だとして、今後も関係を維持していきなさいと命じるのです。その結果、何度も会っています。それを引き継いだのが安倍晋三元首相です。岸信介から3代にわたって創価学会と関係を深めていったのです」
広宣流布の模擬試験の1カ月後、戸田はこの世を去った。葬儀には、岸信介が参加したという。
「安倍元首相の事件で統一教会と自民党議員の関係がいろいろと問題になっていますが、公明党は政教分離の問題で自分のところに火の粉が飛んでくるのではないかと戦々恐々としています。石川議員は内部で処分されることはないでしょうが、彼だって学会が統一教会をどう思っているか十分承知しているはずですからね、学会や党に顔向けできないと思っているでしょう」
「野党は、公明党と創価学会の政教一致や、政権参画について改めて追及すべきですね。ただ、問題は、野党にそれをやるだけの根性があるかどうかですが」 

 

●旧統一教会友好団体 韓国で安倍元首相追悼「統一と平和のために尽力」 8/13
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の友好団体「天宙平和連合」が12日、ソウルで世界の平和などについて話し合う国際会議を開き、7月に街頭演説中に銃撃され死去した安倍晋三元首相の追悼が行われた。
イベントは15日まで予定されており、この日午前は、開会式が開かれた。安倍氏の顔写真が会場前方の大スクリーンに映し出され、「統一と平和のための運動にご尽力された」と説明があり、会場内に追悼が促された。世界各国から招かれた関連団体などの参加者が献花した。
安倍氏の死去を巡っては、安倍氏を手製の銃で襲撃し逮捕された山上徹也容疑者(41)が「母親が旧統一教会にのめり込み多額の寄付をするなどして家庭がめちゃくちゃになった」と供述。安倍氏は昨年9月、天宙平和連合のイベントにビデオメッセージを寄せていた。この日のイベントで事件と教団との関係については、一切触れられることはなかった。
日本では旧統一教会と政治家との関係に批判が高まっているが、その中での安倍氏追悼。旧統一教会の活動に詳しい前参院議員の有田芳生氏は、教団側の意図を「イベントは韓国の韓鶴子総裁らが主導している。日本の社会の状況などには一切配慮していない」と指摘。安倍氏の追悼は「自分たちはこれほどの地位にある人と関係があった、と世界中の信者に組織を大きく見せるためだけだ」とした。また「現状でイベントに出席する日本の政治家はいない。日本の政治家として安倍氏の追悼を利用したのだろう」と分析した。
同様に世界の要人との関係を示すかのように、トランプ前米大統領のビデオメッセージも流された。トランプ氏は「世界平和に尽力している韓鶴子総裁に感謝します。素晴らしい女性です」とトップを絶賛。安倍氏については「良き友人であり、偉大な人物であった。世界の全体にとって損失だ」と評した。
米国からはほかに、ペンス前副大統領がビデオメッセージを寄せ、ポンペオ前国務長官は会場に出席した。
旧統一教会の信者の献金額は日本が世界の多くを占めているとされる。有田氏は「トランプ氏らにはもちろん謝礼が出ており、そのお金は日本の信者から集めたものも含まれる」と話した。  

 

●安倍元首相を統一教会の関連団体がイベントで追悼… 8/14
12日、統一教会(現在は世界平和統一家庭連合)の関連団体が韓国でイベントを開催。その中で銃撃により亡くなった安倍晋三元首相(享年67)を追悼する時間が設けられ、日本では波紋を呼んでいる。
各メディアによると、開催されたのは統一教会の友好団体であるUPF(天宙平和連合)による平和を祈念するイベント。その開会式で安倍元首相の死去に触れ、「統一と平和のための運動にご尽力された」などとし、追悼の時間を設けたという。
「イベントでは安倍元首相の遺影がスクリーンに映し出され、参加者は献花したといいます。またアメリカのドナルド・トランプ前大統領(76)はこのイベントにビデオメッセージを寄せて『安倍氏の死は、世界にとって大きな損失』と語ったそうです」(全国紙記者)
統一教会の関連団体が安倍元首相へ深い弔意を表すいっぽう、日本では統一教会への厳しい目が向けられている。安倍元首相を銃撃した山上容疑者の母親は教団へ多額の献金を行い、破産し、家庭が崩壊。教団に恨みを抱く山上容疑者は、安倍元首相が昨年9月にUPFのイベントにビデオメッセージを寄せたことなどから、安倍元首相と教団の繋がりを疑い犯行に至ったことが報じられている。
こうした背景から、かねて信者による多額の献金などが問題視されてきた統一教会への関心が再び高まることに。数々の問題が指摘されている団体でありながら、多数の政治家の繋がりが明らかになり、批判の声は高まるばかり。
そんな状況下で統一教会の関連団体が行った安倍元首相に対する追悼と献花。改めて安倍元首相と教団の繋がりの強さが示された形だ。ネット上では、困惑する声が上がっている。
《冷静に考えて、信者でも無い安倍晋三氏にここまでする必要があるのでしょうか? ここまでするくらい、安倍晋三氏は統一教会に無くてはならない存在だったのであろう》
《安倍と統一教会はそれほど関係ないと言われてましたがズブズブですね》
《「山上容疑者が、安倍元総理が統一教会と関係あると思いこみ」と報道されてたけど、深く関係してた事を証明してるやん》 
●岸信介と統一教会を仲介したのは謎の「踊る女性教祖」? 8/15
なぜ統一教会の「政界汚染」が問題視されるのか。教団が社会問題を引き起こすカルト宗教だからである。それを裏付けるのが、警視庁公安部による「捜査ファイル」の存在。長い監視の末、蓄積されたリストには膨大な信者の情報とともに、政治家の実名も記されていた。
手元に一つの資料がある。「C」と名付けられたその膨大な量の書類には約2万6千人に及ぶ統一教会関係者の名前がずらっと並び、職歴や勤務先、教団内での地位などが細かく記載されている。
「これは警視庁公安部公安総務課のカルト担当の情報を元に作成された機密資料です」
と、明かすのは警察庁関係者である。CはChurch(教会)の意味で統一教会を指す警察内の隠語。このリストに記されている全員が信者というわけではないが、教団や関連団体での活動歴のある人物ばかりなのだ。
なぜ、警視庁公安部は統一教会やその信者を監視し、膨大なリストを作成してきたのか。
「それは統一教会が、法治国家を脅かすカルト宗教だと見られているからです」(同)
巷間、報じられているように統一教会が政治と癒着してきたのは、当局による捜査の手を逃れるためだったのか――。
「もしかしたらお会いしているかもしれません」
そのリストの詳細に分け入る前に、政界と教団を結び付けた原点を詳らかにするため、時計の針を少し巻き戻す。
舞台は東京・渋谷。
若者の街として知られる渋谷は文字通り、谷と尾根が複雑に交差する坂の町である。その渋谷駅から緩やかな道玄坂を登っていき、尾根筋である旧山手通りの手前を左に折れると「南平台」という地区に出る。
地名は明治期につけられた新しいもので、近くには南平坂という坂もある。起伏と緑に富んだその地は、かねて政財界の大物が居を構え、都内でも有数の高級住宅街として知られてきた。
「南平台に住んでいたのは小学校低学年の頃なので、もしかしたら(統一教会の方と)お会いしているかもしれません」
関係の原点が「南平台」
7月29日、防衛省で行われた岸信夫防衛相の会見。記者から南平台の岸信介邸の隣に統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関連施設があったことを問われ、安倍晋三元総理(享年67)の実弟でもある岸氏はこう答えた。同じく26日の会見でも、「統一教会の皆さんは何人かは存じ上げています。お付き合いもありますし、選挙の際にもお手伝いをいただいています」と、率直に教団との関係を認めたのだった。
安倍元総理が山上徹也容疑者に射殺された後、安倍家、そして祖父である岸信介元総理と統一教会との関係が取り沙汰されてきた。特に、岸の私邸の隣に教団施設があったことが“蜜月”の始まりといわれている。すなわち、両者の関係の原点が「南平台」というわけだ。
「踊る宗教」の教祖
岸が南平台の土地を買い求めるのは1950年のことである。同じころ、「歌う映画スター」と呼ばれた女優の高峰三枝子が岸の隣の土地を購入。56年、岸は手狭だった自宅に加え、空いていた高峰邸を借り、ひと続きの「私邸」として使用する。60年に総理の職を辞すと、岸は高峰邸を返却し、その後、64年11月から65年8月まで、なぜか統一教会本部がその邸宅を借り、岸の「お隣さん」となった。
事情を知る山口県政関係者は、「実は岸家と統一教会が親しくなったきっかけは、それだけではないんです」とこうささやく。
「岸信介さんと統一教会の出会いは1960年代の半ばのことといわれています。当時、それを“仲介”する人物がいました。それが安倍派の北村経夫参院議員の祖母、天照皇大神宮教の教祖で67年に亡くなった北村サヨさんだったんです」
天照皇大神宮教は、東京・数寄屋橋でサヨらが一心不乱に「無我の舞」を踊ったことから「踊る宗教」とも呼ばれる。そのサヨは岸の故郷である山口県田布施町で本部を立ち上げ、親交があった。岸が巣鴨プリズンに収監される際に、「3年ほど行ってこい。来年できる神の世の総理大臣に生かして使ってやる」と、声をかけ、予言を的中させたとされる。
統一教会の日本初代会長の著書にも…
統一教会の日本の初代会長・久保木修己氏の著書『愛天 愛国 愛人』(世界日報社)にはこんな記述がある。
〈六〇年代の中ごろ、Aさん(注・本書では実名)が山口県に開拓伝道に行った時、「踊る宗教」の教祖に会ったのです。(中略)そのころ、統一教会の本部は渋谷区南平台にあって、実は岸先生のお宅の隣でした。それでAさんがその教祖の紹介もあって、岸先生宅に通うようになりました〉
さらに、すでに統一教会の運動に共鳴していた戦後政界のフィクサー・笹川良一氏の勧めもあり、岸は教団との関係を紡ぎ、68年の国際勝共連合発足の際の発起人に名を連ねることになる。
統一教会の広報部は、教団と北村サヨとの関連を、「ご指摘の点は事実ではありません」と答える。だが、岸防衛相が先のような会見の受け答えに終始し、教団との「関係を断ち切る」と明言しないのは祖父のこうした逸話を踏まえれば、さもありなんなのだ。
さらに、同じ安倍派の所属で、特に統一教会との関係が深いとされるのが、下村博文元文科相(68)だ。
オウム真理教が契機に
下村氏が文科相在任中だった2015年8月、文科省は20年弱にわたり受理しなかった統一教会の名称変更の申請を突如、認可した。
「文化庁宗務課の担当者は、統一教会サイドからかなり強硬に迫られていたようでした。実は、宗教を扱う宗務課は、宗教団体と関連する議員ともやりとりがあり、どういう決定をしているかが不透明な“ブラックボックス”といわれます」(文科省関係者)
この決定に下村元文科相の関与が疑われている。
「下村さんは、統一教会サイドが何年もかけて籠絡した“政界の窓口”の一人とされてきました。永田町でも下村さんと教団の関係は有名で、世界日報社からの献金も過去に受けている。この決裁を下村さんが知らないはずはありません」(同)
当の下村事務所は、「特に私から指示することはありませんでした。事務方において法令等に従い適正に処理をされたのだと思います」
だが、統一教会が普通の宗教団体でないことは、火を見るより明らかだ。
冒頭に紹介した資料には膨大な信者の情報が含まれている。そこに記されているのは、例えば、合同結婚式の参加者、教団内や国際勝共連合の役職者、教団関連企業に勤めていた者、などである。そもそも統一教会とは、当局によって日常的に監視され、情報を収集されている宗教団体なのである。その経緯について、前出の警察庁関係者が続ける。
「もともと統一教会は、勝共連合との関係から警視庁公安部の中でも右翼担当の公安第3課の管轄でした。ところが、95年、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起き、世間的にもカルト宗教が注目された。それと前後して統一教会は公安総務課のカルト担当が監視することになりました」
捜査資料に登場する政治家の名前は
その理由については、「公安がマークしているのは、法治国家にとって危険な存在だとみなしているからです。カルト宗教は我々が守るべき法律よりも宗教団体内の“法”、つまり教義を優先してしまいます。教祖が絶対だからこそ、オウム真理教のような事件が起きてしまうわけですが、統一教会も同様の事件を防ぐために、組織の実態について全容解明をすべく、監視しています。総務課のカルト担当は『情報係』『視察係』『事件係』の三つに分かれています。情報係が情報を取り、視察係が教団関連の会合などの参加者をウオッチして面割りし、どのような人物が出入りしているのか、情報を蓄積していくのです」(同)
実はこの捜査資料には、複数の政治家の名前が記載されている。
95年に都内のホテルで行われた「朴普煕(パクポヒ)博士『希望の日』晩餐会」。そこに招待された政治家の面々の名だ。朴普煕は19年に亡くなっているが、統一教会幹部として知られた人物だった。
統一教会宣教師のイベント
「もともとKCIA(韓国中央情報部)の出身で、過去には文鮮明の息子に自身の娘を嫁がせています」と、全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士が朴について解説する。
「一時は文鮮明の右腕として甘い汁を吸うも、別の古参幹部に追いやられ失脚。00年代に統一教会の土地を巡る詐欺事件を起こし、有罪判決を受け、表舞台から姿を消しました」
朴は日本における信仰をさらに広めるため、「世界宣教師」として95年に来日し、「希望の日講演会」なる集いを全国各地で催した。
統一教会の文献によれば、95年度だけで全国73カ所、参加者は10万人を超えたという。そのような時期に政治家を招待する「意味」は自ずと浮かび上がる。
安倍派の現職議員でその晩餐会に招待されたのは、大臣経験もある衛藤晟一参院議員。衛藤事務所は、「全く記憶にありません」と答えるのみ。ファイルには、同じ安倍派、越智隆雄衆院議員の父である故・越智通雄元経済企画庁長官、中川秀直元官房長官も招待されたとある。
「福田赳夫さんの長女を妻に持つ通雄さんは、統一教会と関係が深いことで知られていました。一時期、地元事務所には統一教会から派遣された秘書が3人働いていたといわれます」(永田町関係者)
その秘書の一人は、「統一教会に派遣されたなどという事実はありません」と言うものの、安倍派と統一教会との関係の深さは疑いない。そして、実は統一教会による「政界汚染」は安倍派に限らず。この資料には総裁派閥である岸田派議員の名前も載っているのである。
政治家の参加を公安部が「視察」した記録も
派閥の番頭・根本匠元厚労相のことだ。
岸田派の事務総長を担い、閥務においては岸田総理の“側近”。根本氏も95年の晩餐会に招待されていたとして、警視庁からその動向を注視されていたというわけだ。
その真偽について当人に尋ねた。
――晩餐会に出席したのか。
「どうやって確認しているの? 出席していないよ、全く。向こうから案内があったけど、日誌で確認して、僕の日程でそうなっているから」
――案内があったということは統一教会と関係があったのか。
「知らないよ、そんなの。知らないよ。関わりがあるから案内が来るなんておかしいじゃないか。うちは何にもしていないのに」
実は捜査ファイルには、実際に政治家が関連イベントに参加し、公安部が「視察」した記録も載っている。
2001年に都内のホテルで開かれた天宙平和統一国日本大会に参加したとして、吉野正芳元復興相や故・三塚博元蔵相らの名前が記されている。他にも故・中曽根康弘元総理が01年、関連団体の集いに祝電を送っていたともある。
さらに、「文鮮明が12年に亡くなってから、後継をめぐるゴタゴタがあり、統一教会の幹部が度々来日していたことが分かっています」とはある警視庁関係者。
「都内高級ホテルのワンフロアを借り切り、宿泊していたのですが、そこに政治家が来訪する姿が確認されています。何かあった時のために双方の関係を強化するためで、政治家は現金を受け取っているとも聞きました」
文化庁がネックに
教団に詳しい北海道大学の櫻井義秀教授が指摘する。
「そもそも統一教会は日本を金のなる木として使って、日本の植民地支配を断罪し、贖罪させるという目標を持っています。これが日本の保守政治家と結びつくはずがないのです。政治家からすれば、選挙時のスタッフなど統一教会のマンパワーを使いたい。教団は政治家と近しくなることで、日本での活動をスムーズに進め、活動を拡大したい。そういった利害関係でつながっているに過ぎません」
こうした工作を繰り返しながら、着々と日本の政治に浸透してきた統一教会。
「09年に印鑑などを霊感商法で売りつけ、特定商取引法違反で摘発された関連会社の事件はあれど、これまで、教会本部に当局が切り込んだことはない。宗教法人を管轄している文化庁がネックになり、検察や裁判所も容易には捜索令状を認めないからです。無論、政治家とのつながりも障壁になりました」(警視庁関係者)
封印されてきた捜査ファイルが物語る「カルト集団」としての統一教会。それでもまだ、岸田政権と自民党は、彼らと蜜月関係を続けようというのだろうか。 

 

●旧統一教会系と歩んだ安倍氏「3代」…スパイ防止法から闇を読み解く  8/17
続々と明るみに出る国会議員と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係。ただ、そもそもの話をお忘れではないか。安倍晋三元首相のケースだ。読み解くカギになるのが、いわゆる「スパイ防止法」。法制定を巡る経過をたどると、祖父の岸信介元首相、父の安倍晋太郎元外相、そして当人までの3代にわたり、教団系の政治団体「国際勝共連合」と共同歩調を取った過去が浮かんできた。政権中枢が絡んだ闇の深さこそ、目を向けるべきだ。
岸信介氏「あるときは内密に…」
「岸元首相は、本連合設立当初から勝共運動に理解を示し、陰に陽に支援、助言を行ってきた」
勝共連合の機関紙「思想新聞」の1987年8月16日付1面には、同月7日に亡くなった信介氏の評伝が掲載され、先の一文がつづられた。広辞苑によると、「陰に陽に」とは「あるときは内密に、あるときは公然と」の意。親密ぶりがうかがえる。評伝はこう続く。「スパイ防止法制定運動の先頭に立ってきた…」
この法律は、防衛と外交の機密情報を外国勢力に漏らせば厳罰を下す内容だ。信介氏は並々ならぬ思いを持っていたようだ。
57年に首相として訪米した際、米側から秘密保護に関する新法制定の要請を受けて「いずれ立法措置を」と応じていた。晩年の84年に「スパイ防止のための法律制定促進議員・有識者懇談会」が発足すると、会長に就いた。
岸氏、勝共連合、そしてCIA
勝共連合の「本気度」もすさまじかった。思想新聞によれば、78年には「3000万人署名」を行い、久保木修己会長は元検事総長や元最高裁判事、元韓国大使らとともに79年発足の「スパイ防止法制定促進国民会議」に参加。以後、勝共連合は全都道府県に下部組織をつくり、地方議会への請願運動を展開した。
思想新聞も連日、「国会への圧力を強めていこう」などと喧伝けんでん。87年の元日紙面では漫画で同法を解説しており、左派と想定した人物を博士風の男性が論破する流れになっていた。
日本のトップだった信介氏、韓国発祥の教団の流れをくむ勝共連合。スパイ防止法を求めたのはなぜか。
「根本的にはCIA(米中央情報局)」と話し始めたのは、御年89歳の政治評論家、森田実さんだ。「アメリカの政策は今も昔も変わらない。反共で韓国と日本の手を結ばせ、アジアを分断しながら戦いを挑ませる手法だ」
信介氏は「米共和党に最も近い人物」といい、旧ソ連と向き合う上で「日本の関連法制では整備が不十分という米側の意向をくもうとした」。勝共連合の方は「権力や金のために日本に食い込むには米側に取り入るのが一番早かった」。
晋太郎氏「自信たっぷりの笑顔で…」
スパイ防止法を巡り、勝共連合と共同歩調を取ったのは晋太郎氏もだった。
85年6月に自民党議員が法案を提出した時には外相で、このころの参院外務委員会では「審議について関心を持っている。そういう方向を打ち出すことも理解できる」と踏み込んだ。
思想新聞を読むと、勝共連合関連の会合に党代表や来賓として再三参加しており、「自信たっぷりの笑顔で『スパイ防止法成立に積極的に取り組みたい』と述べました」と報じられた。
その晋太郎氏は韓国と深い縁を持っていたようだ。
「安倍三代」の著者でジャーナリストの青木理氏によると、晋太郎氏の地元、山口県下関市は古くから朝鮮半島との交流の要衝だった。釜山行きのフェリーが行き交い、今も韓国との玄関口。在日コリアンが多く暮らし、地元の有力な韓国系の実業家も晋太郎氏を支援してきた。
全ては朝鮮半島との関係の中に
青木氏は「勝共連合の結び付きと土地柄は切り離して考えるべきだ」と念押ししつつ、「時代背景もあり、反共というイデオロギーを核に岸さんと旧統一教会が結び付き、晋太郎氏もそのまま引き継いだ事実は間違いない。戦前から戦中、戦後に続く朝鮮半島との関係の中に全てはある」と指摘する。
晋太郎氏は1991年に亡くなった。信介氏の時と同じように、思想新聞は1面で評伝を掲載した。やはり、この言葉で悼んだ。
「安倍氏はまた、故岸信介元首相や福田元首相と同様、陰に陽に本連合に対し支援、助言を行ってきた」
85年提案のスパイ防止法案は野党の強い反発などもあり、このころに成立することはなかった。
「世界情勢は成立へと推し進める流れになかった」。政治評論家の小林吉弥氏はそう話す。冷戦の終結や旧ソ連の崩壊があり「急いで成立させる必要性は薄れた」。信介氏が87年、晋太郎氏も91年と相次いで亡くなり、旗振り役が消えたのも一因という。
晋太郎氏に関しては、力を振るいにくい状況もあった。「外相こそ務めたが、当時首相だった中曽根康弘氏とは党総裁選で競った間。田中派に担がれた中曽根政権で、福田派の晋太郎氏はさほど重きを置かれず、政権中枢と距離があった」(小林氏)
晋三氏の登場と「特定秘密保護法」
晋太郎氏の死から15年たった2006年、晋三氏は首相に就いた。思想新聞はここぞとばかりに「スパイ防止法制定急げ」「法の再上程を」と必要性を訴える見出しを付けた。
安倍晋三政権は07年、海上自衛隊の情報流出疑惑を機に、「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」を米国と結んだ。米国と協定を交わした国が秘密軍事情報を共有する際、米国と同レベルの秘密保護が求められる。
短命の第1次政権後、晋三氏は12年末に返り咲いた。翌13年7月の参院選で衆参ねじれ国会が解消したのを受け、力に任せた政権運営を展開。衆参両院で採決を強行して成立させたのが「特定秘密保護法」だ。
防衛や外交の機密情報の漏洩ろうえいを厳罰化する同法は当時、スパイ防止法との類似点が指摘された。知る権利を侵す危うさをはらむが、思想新聞は「安保体制が大きく前進した」と持ち上げた。その一方、諜報ちょうほう活動をより強く取り締まる内容を盛り込んだスパイ防止法を制定するよう促した。
「教団系は自民党のいたるところに」
「晋三氏が秘密保護法を成立させたがったのは祖父、信介氏への思いの強さ、教団との関係性からかもしれない」
旧統一教会に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏はそう推し量る。
ただ、教団と必ずしも考えが完全一致していないとも。「秘密保護法は政府が探られたくないことを追及されないようにした。一方、教団がスパイ防止法で求めるのはより踏み込んだ内容。両者の関係はまだ分からないことが多い。さらなる解明が必要だ」と語る。
名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は、晋三氏が対米関係を考え、秘密保護法制定に動いたとみる。「スパイ防止法も秘密保護法も、政府による情報隠しを可能にし、戦争できる国づくりのための法。一気に進めると反発が大きいので、規制できる言動の範囲が限られる秘密保護法を足掛かりとしたのだろう」
共同歩調が浮き彫りになった安倍家と教団系の過去。右派色の強い教団と一国の首相との関わりに、飯島氏は警鐘を鳴らす。
「スパイ防止法が制定されれば、情報の入手はさらに制約される。基地監視はスパイ活動とされ、反基地運動が抑え込まれかねない。教団は自民党のいたるところに食い込んでいる。たださなければ、過去と似た動きが繰り返される」

陰に陽に勝共連合を支援したという晋太郎氏。死去から2年後、同じ山口県の選挙区から立候補したのが晋三氏だ。東京育ちで、選挙区との関わりは希薄。初当選を支えたのは父と縁深い面々だろう。では、勝共連合はどうか。恩返しのごとく、陰に陽に動いたのか。どうにも気になる。 

 

●「反共」てこ、岸元首相と気脈 孫の安倍氏が関係継承―旧統一教会と自民 8/18
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との関係は半世紀に及ぶ。教団は1968年に設立した反共産主義の政治組織「国際勝共連合」をてこに、党内きっての反共親米派だった岸信介元首相と気脈を通じ、つながりを深めた。両者の関係は岸氏の孫、安倍晋三元首相に受け継がれたとみられる。
「偉大な指導者」
教団系の「光言社」が出版した「日本統一運動史」によると、教団は54年に文鮮明氏によって韓国で創設された。59年ごろから日本で布教を始め、64年に宗教法人として認証された。日本法人の初代会長は立正佼成会出身の久保木修己氏。67年には大学生らへの勧誘が「親泣かせ原理運動」などと報じられた。
勝共連合設立時には、「右翼のドン」とも言われた当時の笹川良一日本船舶振興会会長が名誉会長に就任。70年前後から笹川氏と親交が深かった岸氏や党幹部が教団本部を訪問したり、関連団体の会合に出席したりした。
教団は64年、本部を東京都渋谷区南平台町に移転。岸内閣時代には首相公邸として使用された場所で、隣には岸氏の自宅があったという。岸氏は再移転後の73年に教団本部を訪れた際、笹川氏から「統一教会に共鳴して運動の強化を念願」していると伝えられたことを紹介。「久保木君の情熱のこもった話は非常に頼もしい」などと語った。
74年の文氏訪日に伴う夕食会では、岸氏の後見を受けていた福田赳夫蔵相(後の首相)が「アジアに偉大な指導者現る。その名は文鮮明」と称賛。久保木氏は著書で「岸先生に懇意にしていただき、勝共運動を飛躍させる大きなきっかけになった」と述懐している。
80年代後半以降は、運動史に自民党議員に関する記述はほぼ見当たらない。霊感商法が社会問題化し、92年には日本の有名歌手も参加した合同結婚式が盛んに報じられたことなどが影響した可能性がある。
安倍氏の力の源泉
ただ、教団と自民党の関係は続いていた。「昭和から平成にかけて選挙事務所には勝共連合を名乗る人が大勢いた」。当時を知る党職員はこう語る。全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士は7月の記者会見で、「3桁の信者が野党を含む国会議員秘書になっていた。二十何年か前に調べたときは自民党が多かった」と明かした。
安倍氏の地元、山口県の政界関係者によると、教団とのつながりは岸氏から女婿の安倍晋太郎元外相、晋太郎氏から次男の晋三氏に受け継がれた。弁護士連絡会は晋三氏が小泉内閣の官房長官だった2006年と、首相退陣後の21年、関連団体の会合に祝電やビデオメッセージを送ったとして抗議している。
前出の関係者は「晋三氏が教団の票を差配していた。力の源泉の一つだったのは間違いない」と指摘。今回の参院選では、第1次安倍政権で首相秘書官を務めた井上義行氏の支援に回したとみる。井上氏は当選後、自身が教団の「賛同会員」だと認めている。
自民党の茂木敏充幹事長は2日の会見で、教団との組織同士の関係に関し「これまで一切持っていない」と否定。党としての内部調査には消極的だ。だが、党関係者からは「かつて党本部には勝共連合から送り込まれた職員がいた」との証言も出ている。
岸田文雄首相は世論の反発を受けて内閣改造・党役員人事を急いだが、閣僚、副大臣、政務官から新たな接点が次々に判明した。立憲民主党の馬淵澄夫国対委員長は17日、コメントを発表。「もはや一部の閉会中審査で済むものではない」として、次期臨時国会の早期召集と徹底審議を求める考えを示した。問題の収束は見えないままだ。
●「安倍元首相の功績を心から尊敬」国際勝共連合が安倍三代を応援した経緯  8/18
安倍晋三元首相と旧統一教会の蜜月――。日本中に衝撃を与えた殺害事件から1カ月を経た今も、このような言説がメディアをにぎわせている。
報道によれば、教団とのただならない関係は、祖父・岸信介元首相から始まり、父・安倍晋太郎氏を経て、孫・安倍元首相に引き継がれたという。事実なら、戦後政治を牽引してきた名門一族の背後には常に、旧統一教会が暗躍していたということになる。
この「安倍3代と旧統一教会ズブズブ疑惑」の鍵を握るのが、国際勝共連合、世界平和連合、UPF(UNIVERSAL PEACE FEDERATION=天宙平和連合)だ。これらの団体はすべて創設者が、旧統一教会の教祖・文鮮明氏ということから、「フロント組織」として政治家と教団をつなぐ役割を果たしてきた、と多くの有識者やメディアが指摘している。
そこで、3団体の会長を務める梶栗正義氏に今回の騒動後、初となるロングインタビューに応じてもらった。前編<「フロント団体と誤解されるのはしょうがないが…」旧統一教会と同一視される国際勝共連合会長の言い分>では、主に自民党や教団との関係についての「言い分」を紹介したが、本稿では、いまださまざまな情報が飛び交っている「安倍3代との本当の関係」について迫った――。
「安倍元首相の政治姿勢を支持していたのは事実」
――さまざまなメディアや有識者が、安倍晋三元首相と旧統一教会が「ズブズブの関係」だったと指摘しています。そして、その蜜月関係を構築していたのが、国際勝共連合やUPFだった言われています。実際、安倍元首相への選挙支援を通じて、教団との友好関係を構築していた部分もあったのではないですか?
【梶栗】まず、前回もご説明しましたが、国際勝共連合やUPFは現実社会の問題を解決するために創設された独立した団体であって、教団の布教活動とはまったく関係ありません。
国際勝共連合として、安倍元首相の政治姿勢や考え方を支持させていただいていたのは事実ですが、それはマスコミで言われているような「ズブズブの関係」などではありません。
「政治的な信念が近い政治家が安倍3代だった」
――そうおっしゃいますが世間では、やはり安倍元首相のような有力な政治家を応援することで、その見返りとして、教団側に何かしらの便宜を図ってもらうということもあったのではないかと考えます。
【梶栗】そのように誤解をされてしまうのは、私たちの団体の活動がまだ正しく理解されていないということですので、大変残念です。
ただ、ここで私がはっきりと申し上げたいのは、安倍晋三元首相というのは、戦後の日本において傑出した政治指導者であり、私個人としても、その功績は高く評価しており、心から尊敬しているということです。
実際、私もよく海外でいろんな国の人々とお話をしますが、日本の首相の顔と名前を認識してもらうことはなかなか難しいという現実があります。しかし、安倍元首相はその顔と名前が知れ渡っていました。また外交面においても、国際社会における日本の役割を国内外に明確に示した、という点でも大変な功績のある方です。
こういった日本のために尽力をされた政治家を尊敬して、その政治活動を応援するというのは、私たちのような政治団体でなくとも、国民にとって自然に湧き上がってくる感情ではないでしょうか。
――しかし、会長ご自身が「安倍3代にわたる関係」をお認めになっているという報道があります。文春オンラインの<統一教会は安倍晋三元首相の「雨天の友」だった>では、会長が教団の日曜礼拝で、岸信介元首相と文鮮明、安倍晋太郎と梶栗玄太郎(正義会長の父)、そして会長と安倍元首相の写真を見せて、「これは3代のお付き合い」だと説明したと報じています。教団内では、「安倍3代との蜜月」は常識になっているのではないですか?
【梶栗】日曜礼拝というのは信徒の皆さんに向けたものなので、どうしても信徒の方たちを鼓舞するようなお話の内容になっていますし、私の主観にかなり偏ったものです。その一部分だけを切り取って、すべてを論じられてしまうというのは正直、いかがなものかと思います。
私たちがいわゆる「安倍3代」の政治リーダーの政治活動を応援させていただいたのは事実です。しかし、それは岸家だからとか安倍家だからという理由ではまったくありません。前にお話をさせていいただように、国際勝共連合は創設時から党は関係なく、「反共」の意識の強い政治家を応援してきたという事実があります。岸信介先生、安倍晋太郎先生、安倍晋三元首相というのはいずれも反共の意識の強い政治リーダーで、私たちの活動にも理解を示してくださいました。
つまり、政治的な信念が近い政治家を応援し続けてきた私たちの活動を振り返ってみると、結果として「安倍3代」になっているというだけの話なのです。
「中曽根元首相やレーガン米大統領も応援」
――それはさすがに苦しい言い訳のような気がします。岸信介、安倍晋太郎・晋三という3代と関係が続いているのは「たまたま」だとおっしゃるわけですか?
【梶栗】ええ、しかもそこには「連続性」もありません。まず、岸信介先生に関しては前にお話をしたように、「国際勝共運動」とそれを実践する国際勝共連合のよき理解者でした。
しかし、安倍晋太郎先生と私たちの関係は「岸先生の娘婿だから」ではありません。安倍晋太郎先生が率いていた清和会の前任の会長である福田赳夫先生は非常にしっかりとした「反共」の考えを持っていて、やはり国際勝共連合のよき理解者でした。ですから、われわれも福田先生の政治活動を応援していて、その延長線上に安倍晋太郎先生がいらっしゃったわけです。
そしてわれわれが安倍晋三元首相をお慕いしていたのは、「安倍晋太郎先生の御子息だから」ではなく、先ほども申しげたように、傑出した政治指導者であり、国際社会での日本の役割を示してくれていたからです。
また、さらに言わせていただくと私たちが応援をしていたのは「安倍3代」だけではありません。例えば、中曽根康弘先生も反共の考えが強かった。また、首相になられて最初の外遊先が韓国ということもあって朝鮮半島の平和実現にも強い関心があり、アメリカ、日本、韓国が連携することで共産主義の拡張を防ぐという意識をお持ちで、私たちの考えと非常に近いものがありましたので政治活動を応援させていただきました。
また、中曽根先生と信頼関係を築いたロナルド・レーガン米大統領も反共の意識が強いということで、アメリカで文総裁が政治活動を応援していたという経緯があります。
このように、私たちとしては一貫して、「反共の意識の強い政治リーダー」を応援するという姿勢を長く貫いてきて、考えの近い政治家の方の活動を応援してきました。それがなぜか今は「安倍3代」にだけフォーカスが当てられている。どういう政治的意図があるのかわかりませんが、私たちとしては不思議な気がしています。
UPFは「政治と宗教の指導者が力を合わせる組織」
――ただ、安倍元首相は、他の政治家が「旧統一教会のプロパガンダになる」と参加を断った、UPFのイベントにビデオメッセージを送ったという事実があります。これを知った山上容疑者が犯行を決意したといわれているように、多くの人はこれこそが「安倍3代と教団の蜜月関係の証拠」だと感じています。これについてはどう考えますか?
【梶栗】実はそこが、私たちが安倍元首相の名誉のためにも声を大にして反論したいところです。マスコミの報道では、「安倍元首相が旧統一教会系団体のイベントにビデオメッセージを送って、教団トップの韓鶴子氏を持ち上げた」という話になっていますが、事実は全く違います。
安倍元首相は政治家としてUPFの活動を評価して敬意を示してくれただけであって、旧統一教会という教団の活動を応援する意図はまったくありません。
それをわかっていただくためには、そもそもUPFという団体と、安倍元首相がビデオメッセージを送ってくださったイベントについて正しく理解をしていただきたいと思います。
そもそも文鮮明総裁がなぜUPFを立ち上げたのかというと、教団の布教などは全く関係なく「国連の刷新」のためでした。
今のウクライナの現状を見てもわかるように、国連には国家間の紛争解決をすることがなかなか難しいところがあります。これはやはり大きいのが、ロシアや中国という共産主義・専制主義の国が、国連の安全保障理事会で拒否権を持っていることです。文総裁はこれを「国連の生まれながらの限界」とかなり以前から問題視していました。
そこで訴えられたのが、それぞれの国の利益を超越したもっと高い見地から、人類全体の利益、つまりは「人類益」を考える組織の必要性です。
各国の政治指導者が国連に集っても結局、自国の利益を代弁するだけで世界平和は実現できません。そこで文総裁は、国家にとらわれることなく人類社会全体の平和を目指すためにどうすべきかを論じるために、世界の精神世界の指導者たちが集うべきだと考えました。それが国連における上院のような役割を担って、現実世界の問題を解決する政治指導者と、精神世界の問題を解決する宗教指導者が力を合わせれば、世界平和を実現できるというわけです。
そのような理念の下で、1999年に「世界平和超宗教超国家連合(IIFWP)」が創設され、2004年に国連経済社会理事会の特殊協議資格のステータスを持つNGOとして認定されました。それが2005年に「UPF」となりました。現在、UPFは国連NGOの中で最もステータスの高い、総合協議資格を与えられています。
「国際社会では教団と同一視されることはない」
――いくら国連に認められているとはいえ、教団との活動と関係がないという根拠にはなりません。宗教指導者の影響力を強めるために設立した団体ならば、やはり「旧統一教会のフロント組織」だと指摘されてもしょうがない部分があるのではないでしょうか?
【梶栗】確かに、日本国内ではそのような見方をされる人もいらっしゃるでしょうが、国際社会では教団の活動と同一視されることはありません。各国の政治リーダーも、UPFの活動を純粋に評価したうえで、参加・賛同をいただいております。
例えば、安倍元首相がビデオメッセージを送ってくださったイベントについて、一部のマスコミでは教団を称賛するようなイベントだと誤解を与えるような報道をしていますが、あれは「シンクタンク2022」というUPF主催のオンライン国際会議です。朝鮮半島の平和がどうすれば実現できるのかというテーマで1年間にわたって世界で議論を続けて、各国の政治リーダーや有識者を招いた国際会議の一環として行われたのです。
例えば今年2月に行われた会合では、カンボジアのフン・セン首相と第8代国連事務総長の潘基文氏が共同で組織委員長を務めてくださって、お二人の連名で、世界中のVIPにこのイベントへの参加が呼びかけられました。
このイベントはオンラインとオフラインを合わせて行われましたが、カナダの28代首相だったスティーブン・ジョセフ・ハーパー氏、アメリカの副大統領だったマイク・ペンス氏、国務長官だったマイク・ポンペオ氏、国防長官だったマーク・エスパー氏、さらにはポルトガル首相、欧州委員会委員長を歴任した、ジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾ氏らが実際に韓国を訪問して行事に参加してくれました。
これらの世界的な政治リーダーたちがUPFのイベントに参加しても、「旧統一教会とズブズブの関係」などと批判されることはありません。みなご自身の政治信条に基づいて、UPFの取り組みを評価、賛同をして参加をしてくれただけなのです。
安倍氏の出演理由は「国際貢献への評価」
――これら海外の政治家というのは、UPFの活動を純粋に評価して参加しただけであって、「世界平和統一家庭連合」という宗教団体と親密な関係はないのですか?
【梶栗】そうです。「シンクタンク2022」でこれまで2年間にわたっておこなわれた、朝鮮半島の平和統一をめぐる議論には今、ご紹介したようにトランプ政権の閣僚を経験した政治家が複数人参加していただいております。
その流れで、歴史的な米朝会談を実現させたトランプ元大統領もビデオメッセージで基調講演をいただくことになりました。そこで、トランプ元大統領と盟友関係にあり、同じく朝鮮半島の平和実現に長く寄与してきた安倍元首相にもご参加いただけないかということで、ニューヨークに本部がある「UPFインターナショナル」と「ワシントンタイムズ」が連名で、安倍元首相側に打診をしたところ、「トランプ大統領が参加するのなら参加しよう」とお答えになって参加を快諾してくださったのです。
つまり、安倍元首相がUPFの「シンクタンク2022」にビデオメッセージを送ったのは、トランプ元大統領をはじめ、世界の多くの政治リーダーたちが評価をしてくださった、UPFの朝鮮半島の平和実現への取り組みを評価したからなのです。
そのメッセージの中で、韓鶴子総裁に敬意を示しているのも、教団トップだからではなく、UPFの総裁として、朝鮮半島の平和実現をはじめとした国際貢献に長年尽力をしてきたことについての敬意ですので、これをもってして「安倍元首相と教団はズブズブの関係だ」などというのはまったく事実に基づかない、言いがかり的なものではないかと私としては感じています。
――しかし、会長がいくらそのように主張をしても世間はなかなか納得しません。マスコミも旧統一教会はビジネス目的で多くの別団体を立ち上げていると指摘して、UPFや国際勝共連合についても、政治家を陰で操るための団体だと紹介しています。海外では多くの政治家が評価をするUPFなどが、なぜ日本ではそのような悪いイメージが定着してしまったのでしょうか。会長のお考えをお聞かせください。
【梶栗】まず、私たち国際勝共連合の運動、目指していることが実現してしまったら困る人たちというのは確実に存在していて、彼らからすれば、私たちの運動が広まらないよう、事実ではないことを触れ回って、「教団のフロント組織」とレッテル貼りをする「動機」はあると思います。
例えば、私たちは半世紀も前から、日本は「スパイ天国」になっているということを指摘して、他国の工作活動を罰するスパイ防止法の制定を訴えてきました。当然、「そんな法律はとんでもない」という立場の人や、他国のスパイ行為を助長しているような勢力は過去にも、私たちと反共的な信条をもつ政治家を離間させるため、いろいろな批判をしてきたということがあります。
私たちの団体や活動について、事実ではないことを触れ回っている人たちの中には、私たちの「勝共」という、共産主義を脅威として認識して、それを克服しようという運動ができないような環境をつくりたいという勢力もいるのではないか、と考えています。
「国民にご納得していただけるまで説明していく」
――8月10日に世界平和統一家庭連合が二度目の記者会見を催して、一部のメディア報道をヘイトスピーチだと批判して、信徒が脅迫などを受けていると訴えました。改造内閣でも、教団と関係のある人は閣僚から外されました。マスコミの中にも、「政治と旧統一教会との関係を完全に断ち切れ」という主張が多く聞かれています。このような“逆風”の中で、国際勝共連合の活動は今後どのようなものになっていきますか?
【梶栗】基本的には、この国を良くしたいという思いで運動をしていますので、国民の皆さんたちにも理解をしていただきたいという気持ちはあります。ですから、反社会的であるかのようなレッテルを貼られて、バッシングに晒されている今の状況は非常に残念です。
私たちの考えにご賛同をしていただいた政治家の皆さんが胸を張って政治活動ができるように、この国を守るためには必要な運動だと引き続きご説明してまいります。もし国民の皆さんが十分に納得できないというのなら、ご納得いただけるまで応対をしていかなければいけない、とも思っています。
繰り返しになりますが、政治団体である国際勝共連合、世界平和連合、UPFという国連NGOは、創設者が教団と同じなだけで、教団の布教活動とはまったく関係のない独立した組織です。「教団の関連団体」として括られるのには違和感があります。
政治活動に関しても民主主義に基づいて、民意を政界に届けるということをしているのであって、何もやましいことはしていません。それをぜひご理解いただけたらと思っています。
教団も今、一部マスコミから反社会的な団体のように報じられており、それに関しては教団側も真摯しんしに対応していくことでしょう。私たちも布教活動と同一視され、政治家との関係で教団の活動を後押ししているかのような誤解を受けていますので、そこは違うということはしっかりと説明させていただきたい。
私たちの団体が何をやっているのか、そしてその価値が少しでもご理解いただけるように、引き続き努力をしていきたいと思います。 
●「安倍元首相の"国葬"冷静に検証しても、今日に残る成果は見当たらない」  8/18
ケネディ大統領と安倍首相の類似点
安倍晋三元首相の「国葬儀」(国葬)が、2022年9月27日に日本武道館で営まれることが閣議決定された。費用は全額国費でまかない、無宗教形式の葬儀となるそうだ。戦後になってからの国葬は、皇族を除くと吉田茂元首相だけだった。
「安倍氏は国葬か、国民葬か」と議論されていた7月19日、自民党の茂木もてぎ敏充幹事長がおかしなことを発言した。立憲民主党などが国葬に反対することについて、「野党の主張は国民の声や認識とかなりズレている」と言ったのだ。自民党が「国葬」にすると独断で決定したのに、国葬か国民葬かは「国民の声」が決めると説明しているのは、頭が良いはずの茂木氏にしてはロジックがおかしい。自民党は国葬に決定した理由について、「史上最長政権だった」「外交が国際的に評価された」などと言っているが、基準が曖昧であり、結局は感情的に判断したのだろう。
安倍元首相が国葬に決まったのは、基本的には死に方の問題だ。あの残酷な銃撃で殺害されたことは、国民のシンパシーを買った。「モリカケ桜」問題など、安倍氏の批判をしてきた私でさえも哀悼したいと思うし、国民の気持ちは理解できる。
ただ、安倍氏の政治家としての評価に関する今の報道を見ていて思うのは、殺害のショックと政治家としての功績は区別して考えるべきだ、ということだ。安倍政治の評価はもう少し時間が経ってからのほうが良いだろうとは思うが、少し参考になる他国の事例などを交えて私の考えを述べたい。
今回のケースは、米国のジョン・F・ケネディ大統領が1963年に暗殺されたときと似た状況だ。ケネディ大統領は若くて格好が良く、ボストンなまりの英語がちょっと可愛くて、ものすごく人気があった。
しかし、大統領としての功績を挙げるとしたら、2つぐらいしか思い浮かばない。1つは、62年のキューバ危機だ。ソ連がキューバに核ミサイル基地を建設中とわかり、一触即発の事態となったが、最終的に建設を中止させた。もう1つはアポロ計画だ。ソ連に人工衛星(スプートニク)の打ち上げや有人飛行(ガガーリン)の宇宙競争で負けていたから、人類初の月面着陸を成功させようと計画を進めて成し遂げた。
どちらも記憶には残るが、その後に米国経済が強くなったなどの長期的な功績につながった事例は見当たらない。アポロ計画後のNASAは低迷し、今はイーロン・マスクのスペースXにロケットの打ち上げを頼んでいるぐらい弱っている。宇宙船もロシアが開発したソユーズに長年依存していた。
日本一の首相、米国一の大統領はダレ?
私から見て、第2次世界大戦後、最大の功績を残した米国大統領はドナルド・レーガン氏だ(在任期間は81〜89年)。米国が老大国になる瀬戸際の80年代、彼は金融、運輸、通信の3分野の規制撤廃を進め、世界を席巻する強い企業群をつくった。90年代以降のサイバー時代に米国経済が花開いた大きな要因は「レーガノミクス」のおかげだ。
確かに、レーガノミクスは痛みを伴う改革だった。規制を撤廃すれば、規制に守られていた既存産業が真っ先につぶれ、大量の失業者が出る。規制撤廃の怖さだ。政治家は次の選挙で負けるのが嫌だから、頭では必要だとわかっても痛みを伴う改革に踏み切れない。日本で今日に至るまで規制撤廃がほとんど進まない理由だ。
レーガン大統領も、在任期間の後半は「双子の赤字」問題などで評判を落とし、石もて追われるがごとく退任した。
レーガノミクスの恩恵を受けたのは、2代後のビル・クリントン元大統領(在任期間は93〜2001年)だ。長年の財政赤字が黒字に転換し、盆と正月が一緒にきたみたいな騒ぎだった。レーガノミクスから20年ほど経って、ようやく「米国産業が強くなったのはレーガンさんのおかげだ」とレーガン氏は再評価されるようになった。
「鉄の女」と呼ばれた英国のマーガレット・サッチャー元首相、ドイツのゲアハルト・シュレーダー元首相も同様に失業の山を築いて産業を強くした。どちらもやはり退任する頃の評判は悪かった。改革の恩恵を受けたのは後の首相たちだ。英国ではジョン・メージャー元首相やトニー・ブレア元首相であり、ドイツではアンゲラ・メルケル前首相の頃だ。
私が安倍氏を政治家としてまったく評価していないのは、日本に最も必要な「痛みを伴う抜本的な規制改革」を何一つ進めなかったからだ。一時的に失業の山を築いてでも、規制を撤廃して、衰退著しい日本の産業を立て直そうとしなかった。むしろ、規制を固める方向に進んだ。19、20世紀の古い経済学に基づいたアベノミクスも、高齢化し低欲望化した日本では成果は出なかった。史上最長の安定した政権だったはずなのに、労働生産性が上がることはなく、1人あたりGDPの世界ランキングは低迷し、日本人の給料も上がらなかった。
戦後の首相の中で国家への貢献が最も大きかったのは、安倍氏ではなく中曽根康弘氏だと思う。
私が中曽根康弘氏を高く買うのは、中曽根内閣(82〜87年)で三公社五現業(日本国有鉄道・日本電信電話公社・日本専売公社・郵便・国有林野・紙幣等印刷・造幣・アルコール専売)を民営化したからだ。痛みを伴う改革だから、すさまじい抵抗や妨害があったが見事に成し遂げた(日本郵政は、その後の小泉政権が実現)。
外交の功績も大きかった。特に日米関係を「イコールパートナー」にすることへの思いが強かった。中曽根氏が東京・日の出町の別荘(日の出山荘)にレーガン大統領を招いたときは「ロン・ヤス会談」といわれ、日本の地位向上など実績を多く残した。
国際的評価が高いというカラクリ
安倍元首相も、事件後の報道を見ると外交が高く評価されたといわれるが、冷静に振り返ると今日に残る成果はあまり見当たらない。
例えば、トランプ前大統領とは先進国の中では唯一、趣味のゴルフで仲よくなったようだが、日米関係は「イコールパートナー」というよりはむしろ、過剰にへりくだっていた。
安倍氏は首相就任当初は、「戦後レジームからの脱却」を唱え、憲法改正やGHQ占領時代の“評価”などを訴えていた。ところが、アメリカ政府から警戒されて距離を置かれ始めると、一転アメリカ政府のご機嫌を最優先するようになった。米国議会や真珠湾で「民主主義を教えてくれたのはアメリカだった」などと、アメリカ人がうっとりするような演説をする始末だった。首相引退後も、(軍需産業がバックにいる)アメリカ政府から「日本はもっと軍事費の負担をしろ」と言われれば、安倍氏は「対GDP比2%」の防衛費増額を声高に訴えていた。
また、ロシアのプーチン大統領と27回も首脳会談を重ねたことはよく語られる。しかし実態は、安倍氏は首相当時に「北方四島」を返してもらおうとしていたが、プーチン大統領とは会うたびに距離が開いていった。
ロシアからすれば、北方四島は第2次世界大戦の戦利品として、戦勝国が集まったカイロ会談、ヤルタ会談を経てもらったものだ。「この四島をください、と言われたら考えてもいいが、返せとは心外だ。北方“領土”という言葉はおかしい」というのが安倍政権のときに固まったロシアの主張だ。
だから、会談を重ねるうちに「北方領土返還」から「北方四島を一緒に開発しましょう」になり、やがて「日ロ平和条約を結んで実績が出てから話そう」と弱気になっていった。安倍氏が重用した外交官・谷内やち正太郎氏がラブロフ外相に「(返還されたら)日米安保の対象になりうる」と失言したことも相まって、会えば会うほど北方四島の返還は後退していったのだ。
日本の外交にプラスになった成果はない
現在のウクライナ情勢でも、「(プーチンと親しいんだから)出番だよ!」と外野に呼びかけられても、これまでのプーチン氏との関係を役に立てようと動くことはなかった。
前述の中曽根氏でいえば、90年の湾岸危機のとき、外国人を人質に「人間の盾」を築いたイラクのフセイン大統領(当時)に対して、自らイラクを訪問して直談判し、日本人の人質74人の解放を実現させている。
安倍氏は、隣国である中国、韓国、北朝鮮との近隣関係でもまったく成果はなかった。就任時に「優先順位が高い」と自ら宣言した北朝鮮による拉致被害者の返還問題も、成果は何もなかった。金正恩総書記に会うトランプ大統領に依頼したことはあっても、自ら動くことはなかった。
以上、冷静に振り返れば、日本の外交にプラスになった成果など私は1つも思い出すことができない。
冒頭の国葬の話に戻るが、そもそも私は、首相経験者は一律で「国民葬」にしたらいいと思っている。また、国費を使うのではなく、今ならクラウドファンディングで国民から寄付を募ればいい。葬儀の規模は亡くなった人次第だ。
寂しい葬儀もあるだろうが、裏返せば、与党は国のために成果を残せる政治家を首相に選ぶ責任があるのだ。そのことを再確認してほしい。 

 

●旧統一教会、反共産主義組織を利用 岸信介元首相から安倍元首相に継承 8/19
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との関係は半世紀に及ぶ。教団は1968年に設立した反共産主義の政治組織「国際勝共連合」をてこに、党内きっての反共親米派だった岸信介元首相と気脈を通じ、つながりを深めた。両者の関係は岸氏の孫、安倍晋三元首相に受け継がれたとみられる。
「偉大な指導者」
教団系の「光言社」が出版した「日本統一運動史」によると、教団は54年に文鮮明氏によって韓国で創設された。59年ごろから日本で布教を始め、64年に宗教法人として認証された。日本法人の初代会長は立正佼成会出身の久保木修己氏。67年には大学生らへの勧誘が「親泣かせ原理運動」などと報じられた。
勝共連合設立時には、「右翼のドン」とも言われた当時の笹川良一日本船舶振興会会長が名誉会長に就任。70年前後から笹川氏と親交が深かった岸氏や党幹部が教団本部を訪問したり、関連団体の会合に出席したりした。
教団は64年、本部を東京都渋谷区南平台町に移転。岸内閣時代には首相公邸として使用された場所で、隣には岸氏の自宅があったという。岸氏は再移転後の73年に教団本部を訪れた際、笹川氏から「統一教会に共鳴して運動の強化を念願」していると伝えられたことを紹介。「久保木君の情熱のこもった話は非常に頼もしい」などと語った。
74年の文氏訪日に伴う夕食会では、岸氏の後見を受けていた福田赳夫蔵相(後の首相)が「アジアに偉大な指導者現る。その名は文鮮明」と称賛。久保木氏は著書で「岸先生に懇意にしていただき、勝共運動を飛躍させる大きなきっかけになった」と述懐している。
80年代後半以降は、運動史に自民党議員に関する記述はほぼ見当たらない。霊感商法が社会問題化し、92年には日本の有名歌手も参加した合同結婚式が盛んに報じられたことなどが影響した可能性がある。
安倍氏の力の源泉
ただ、教団と自民党の関係は続いていた。「昭和から平成にかけて選挙事務所には勝共連合を名乗る人が大勢いた」。当時を知る党職員はこう語る。全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士は7月の記者会見で、「3桁の信者が野党を含む国会議員秘書になっていた。二十何年か前に調べたときは自民党が多かった」と明かした。
安倍氏の地元、山口県の政界関係者によると、教団とのつながりは岸氏から女婿の安倍晋太郎元外相、晋太郎氏から次男の晋三氏に受け継がれた。弁護士連絡会は晋三氏が小泉内閣の官房長官だった2006年と、首相退陣後の21年、関連団体の会合に祝電やビデオメッセージを送ったとして抗議している。
前出の関係者は「晋三氏が教団の票を差配していた。力の源泉の一つだったのは間違いない」と指摘。今回の参院選では、第1次安倍政権で首相秘書官を務めた井上義行氏の支援に回したとみる。井上氏は当選後、自身が教団の「賛同会員」だと認めている。
自民党の茂木敏充幹事長は2日の会見で、教団との組織同士の関係に関し「これまで一切持っていない」と否定。党としての内部調査には消極的だ。だが、党関係者からは「かつて党本部には勝共連合から送り込まれた職員がいた」との証言も出ている。
岸田文雄首相は世論の反発を受けて内閣改造・党役員人事を急いだが、閣僚、副大臣、政務官から新たな接点が次々に判明した。立憲民主党の馬淵澄夫国対委員長は17日、コメントを発表。「もはや一部の閉会中審査で済むものではない」として、次期臨時国会の早期召集と徹底審議を求める考えを示した。問題の収束は見えないままだ。 
●民主党政権でも、統一教会への捜査が止まった 8/19
統一教会問題を長年追及するフリーライターの鈴木エイト氏にインタビューした。取材当初は街頭でのキャッチセールス的な勧誘に興味を持っただけだったというが、取材をすすめるうちに政治と統一教会の深い闇に突き当たったという。その闇とは何だったのか? 
――2009年ごろ統一教会は「コンプライアンスを徹底した」と言っているが、どう変わったのか?
鈴木 念書や喜んで献金している様子を撮影するなど脱会した信者からの返金請求があった場合に、教団が有利になるような証拠を残すようになった。商品を直接介在させた霊感商法をやめ、献金収奪型に移行したため、警察の検挙も2010年以降はなくなった。
――長いこと教団を取材して嫌がらせなどはなかったか?
鈴木 尾行は随分前からあったし、宅配を装い「住所がわからないので」と言ってきて電話で住所を聞き出されたことはあったが、教団内で指名手配された以外、たいしたことはなかった。
――韓国に嫁いだ日本人女性の実体はどうなのか? ずいぶん、悲惨だと聞いたが。
鈴木 元女性信者の教会員になら話を聞いたことがあるが、古い情報はよく知らない。
――嫁不足の農家に嫁がされると聞いているが・・・。
鈴木 そのようなことは言っていた。
――取材をしたきっかけは?
鈴木 最初は街頭で「手相占いの勉強をやっています」と声をかける勧誘活動に興味を持った。
――「手相占いの勉強をやってます」というのは、私も新宿や渋谷などで声を掛けられた。「人生の転換期にある」と言われたのを覚えている。ついていくとどうなるのか?
鈴木 ビデオセンターに行ったのち、2ヶ月ぐらい合宿に連れていかれ、原理の教理などを叩き込まられる。
――元信者の多田文明氏が、「最初はバレーボールに誘われた」と言っていたが典型なのか?
鈴木 そういうケースもあるかもしれない。
――政治との関係はいつ関心を持ったのか?
鈴木 政治との関係は2010年に松戸市議選挙に信者の候補が無所属で出馬したりしたことからだ。結果は落選だったが。
――政治との関係を調べてどうか?
鈴木 共存共栄になっている人とそうでない人がいると思う。祝電を出す程度と、選挙手伝いや政治献金の見返りを求めている人とでは違う。
――名称変更は「見返り」と言えるか?
鈴木 そうと言える。
――警察に圧力をかけたりとか?
鈴木 それもそうだ。
――2009年の民主党政権時代はどうだったか? 自民党政権ではなくなったせいもあり、「09年にコンプライアンスを強化した」と言ったと思ったが。
鈴木 民主党政権にも幅広くアプローチをしていた。警察にも影響力を持っていたと思われる。09年に警視庁が教団本部に手入れをしようとしたが、政権からの警察への圧力で止まったと思われる出来事があった。
――もしや、○○代議士では(警察庁に影響力をもつ議員)?
鈴木 そうかもしれない。
――しかし、こんな日本人に害を与える教団と何故、岸信介がくっついたのか?
鈴木 金より思想の方が大きいと思う。「反共の同志」という。それに当初は、霊感商法などはなかったので、あくどい教団という認識ではなかったんだろうと思う。
――エイトさんが『日刊ゲンダイ』に発表した政治家以外に、教団と関係のある政治家はいるか?
鈴木 いると思う。
――派閥で言うと清和会以外に多いところは?
鈴木 無派閥が非常に多い。それ以外もある。
――呆れたのは、稲田朋美(安倍派)や野田聖子(無派閥)、石破茂(石破派)といったクリスチャン議員が統一教会に関わっていたことだが。
鈴木 そういう人たちは、何か便宜や利益供与をするとか深い関係ではなかったと思う。
――金銭のやりとりが具体的にあった議員はわかるか?
鈴木 リストにあげた中で政治献金のやり取りがあった議員はあげた。
――それ以外はわからないか? キャッシュ・オン・デリバリイ(現金の受け渡し)で領収書は一切不要の金を受け取っていた人は?
鈴木 そこはわからない。闇だ。
――私の住む兵庫の末松信介文部科学大臣はパーティー券を購入してもらっていた。彼の秘書官から話を聞いたが、「世界平和連合の方だと思っていたからお付き合いした。統一教会の人と知らなかった」と言っている。そんなことは有り得るのか?
鈴木 政治家の世界では勝共連合と世界平和連合は統一教会と別だという認識なのだろう。しかし、関連団体ということは有名だ。
――末松事務所が知らずに付き合っていた可能性はあるか?
鈴木 知らないわけがない。知っていたが、誰も言えなかったということだろう。
――政界では世界平和連合が統一教会系というのは常識のように思う。
鈴木 その通りだ。しかし、政治団体と宗教団体は別という認識なのだろう。
――つまり末松事務所は「統一教会系だったとは知らない」という嘘をついているというわけだ。                 
――今回の事件を契機にエイトさん自身もわかってきたことが多いと思うが、統一教会の権力に対する影響力はどうなのか?
鈴木 実はたいしたことがないと思う。たいしたことがない団体なのに、影響力があったように思われていると思う。その程度の団体がこれだけ世の中にはびこり、「わけのわからないカルト教団が政治を操っている」という認識はちょっと違うと思う。
――意外とエイトさんの見方は大きな影響力はないということか。今のマスコミ報道は「すごい黒幕」みたいな報道だが。
鈴木 そういう意図をもっているメディアは少ないのではないか、報道の受け止め方の問題だと思う。 

 

●自民党傍流派閥だった安倍派 支持基盤を旧統一教会の集票力に頼った 8/20
自民党が旧統一教会汚染の問題をいくらクリーンにしようとしても、最大派閥の安倍派を排除しない限り、それは難しい。今回の内閣改造で、岸田文雄・首相には全くその力などないことがはっきりした。自民党はこのまま、安倍派とともに沈むのか──。
安倍派の正式名称は「清和政策研究会」(略称・清和会)。安倍晋三氏の祖父、岸信介・元首相が率いた岸派を源流として福田赳夫・元首相が創設し、安倍氏の父・晋太郎氏へと受け継がれた名門派閥だ。
だが、自民党の派閥の歴史では、池田勇人氏が創設した宏池会(岸田派)や田中角栄氏の流れを汲む旧経世会(茂木派、平成研)が「保守本流」と呼ばれるのに対し、清和会(安倍派)は長い間、傍流の派閥とされてきた。
自民党と旧統一教会の関係は、傍流派閥だった清和会が、党内で力をつけるために結びつきを強めてきた経緯がある。安倍家と旧統一教会の接点は岸信介氏から始まるが、派閥としての関係に広げたのは自民党幹事長や外相を務めた安倍晋太郎氏だった。
安倍氏の生い立ちと安倍家の政治的系譜を描いた『安倍晋三 沈黙の仮面』の著者で政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。
「晋太郎さんはポスト中曽根の総裁選で当時の最大派閥・経世会を率いていたライバルの竹下登氏に敗れた。それからは『(総理になるには)やはり数だ』と口癖のように語り、派閥拡大のために新人発掘と選挙応援に力を入れた。しかし、当時は自民党の主要な支持基盤である建設業界票や郵政票、農業票は経世会がガッチリ握り、財界の名門企業は伝統的に宏池会(当時は宮沢派)支持だったから、傍流の清和会は支持基盤が少なかった。
そうしたなかで子分を増やすためには無理な票集めが必要になり、岸さん以来の関係があった旧統一教会の政治団体、国際勝共連合の集票力を大いに頼みにしなければならなかった。その支援もあって、晋太郎さんは1990年の総選挙で派閥の新人を20人以上当選させて勢力を増やしたが、翌年、志半ばで病で亡くなった」
この1990年総選挙で初当選したのが晋太郎氏の元秘書で、安倍晋三氏の大学の先輩でもある古屋圭司・元拉致担当相だ。古屋氏はかつて旧統一教会との関係について、〈故・安倍晋太郎氏の紹介で、セミナー、集会に参加。初選挙時、雑用係5人を受け入れた〉(『週刊現代』1999年2月27日号)と説明している。
改めて古屋氏に聞いた。
「選挙のお手伝いは記憶していますが、セミナー、集会の方の記憶はない。しかし、当時取材に答えているということは、記憶がないとはいえ、事実でしょう。その後は協力などを受けてはいません」(事務所回答)
元建設官僚で自民党参院幹事長を務めた脇雅史・元参院議員が旧統一教会に頼る「議員心理」をこう語る。
「岸さん以来の清和会の主要メンバーが統一教会と親密だったのだから、清和会の議員の面々が関係を結んでいくのは自然でしょう。親分から、統一教会関連の集会に『顔を出しておけ』と言われたら、子分が行かないわけにはいかない。とくに比例代表の候補は、『この団体の票をつけてやる』と言われることは多い。
私は建設業界の支援を受けていたから、『その票はいりません』と断わることができたが、いろんな分野の票をもらっている人は、統一教会の票を回すと言われたら『お願いします』となる」
岸氏から始まった旧統一教会と安倍・岸家の絆は、晋太郎氏の代に派閥との組織的協力関係に発展した。
清和会は晋太郎氏の死後、2000年の森喜朗内閣誕生で福田赳夫内閣以来25年ぶりに政権を奪回。そして森首相の退陣後に登場した異色の総理、小泉純一郎・首相の時代に旧竹下派を追い落として最大派閥の座を奪った。 
●故安倍晋三元首相を「国葬」とする霞が関の「総理の序列」 8/20
なぜ国葬なのか
9月27日に執り行われる予定の故安倍晋三元首相(享年67)の「国葬」に反対する声が高まっている。東京弁護士会が「国葬に反対し、撤回を求める」とする会長声明を出したほか、有識者からも反対意見が出ている。東京新宿では反対デモも行われた。
「法の下の平等に反する」と言った大上段に振りかぶった反対意見から、「弔意を強制するのは問題だ」と言ったものまで反対論は様々だ。
「戦前にはあった国葬令という法令が戦後は無くなっていることから、国葬を行う法的根拠がない」という指摘もある。岸田文雄首相は、内閣府設置法の所掌事務を定めた第4条第3項第33号に「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること」との規定があり、閣議決定で国葬を行うことは法的に問題はない、という答弁を行なっている。
そもそも、なぜ、安倍元首相は「国葬」なのか。
戦後、国葬が行われたのは、貞明皇后、吉田茂・元首相、昭和天皇の3例のみ。安倍元首相が4人目ということになる。岸田首相は、国葬を決断した理由として、憲政史上最長となる8年8カ月の長期政権であったことや、東日本大震災からの復興、アベノミクスをはじめとする経済再生、外交の展開など、さまざまな分野で実績を残したことを挙げている。
安倍元首相の事績を評価したから国葬なのだ、と言ってしまったわけだ。
筆者は、安倍元首相は外交で大きな成果を残し、経済政策も途中で腰が砕けたとはいえ、目指した方向は一定の評価ができると考えている。働き方改革として労働法制に手をつけようとしたことや、筆者と立場は違うが教育改革に着手したことなど、成果を上げたことは間違いない。
だが、それが吉田茂元首相以来絶えてなかった首相経験者の「国葬」に値すると言われると、やはり釈然としない。
霞が関の序列感覚
国葬にすることに関して、岸田首相の強い意志があったとは思えない。少なくとも霞が関が「国葬」に反対したのを首相が押し切った、という話も聞かない。つまり、霞が関は国葬に異論を唱えなかったわけだが、それはなぜか。
実は、霞が関には歴代首相の評価軸がある。それは首相経験者たちがどんな勲章をもらったかを見れば一目瞭然だ。
日本の勲章の最高位に「大勲位菊花大綬章」という勲章がある。この勲章を生前に授与された首相経験者は、吉田茂、佐藤栄作、中曽根康弘の3元首相だけだ。
他の首相の多くはその一格下の勲一等旭日桐花大綬章(現在は桐花大綬章)を生前もしくは死亡時にもらう。生前にこの勲章をもらった首相経験者が亡くなった場合、多くは大勲位菊花大綬章が追贈される。
生前、菊花大綬章を授与された吉田、佐藤、中曽根の3元首相には、死去に際して、さらにその上の「大勲位菊花大綬章頸飾」が追贈された。この頸飾は天皇陛下が即位した際に佩用する究極の最高位だ。
今回、安倍首相にはこの「大勲位菊花大綬章」と「頸飾」が同時に追贈された。その理由は吉田、佐藤、中曽根を超える8年8カ月の首相在任期間ゆえである。霞が関が最も重んじる「前例」に従って、安倍元首相に最高位の勲章が授与されたのだ。
余談だが、安倍元首相が凶弾に倒れていなければ、70歳になったあたりで、「大勲位菊花大綬章」が授与されたはずだ。中曽根元首相が「大勲位」と呼ばれてご満悦だったのと同様、政界の大重鎮になり、隠然たる影響力を持っていただろう。
ちなみに、こうした勲章が授与される「基準」は在任期間の長短であって、行なった政治の中味ではない。ごく短期間でも国家にとって影響の大きい事績を残した首相も、霞が関の評価基準では関係ない。というよりも首相の事績は歴史の中で評価が固まるもので、死去直後、あるいは生前に定まるものではないから、在任期間で測るというのも一つの見識だろう。
もちろん、他の勲章と同様、有罪判決を受けるなど不祥事に関与すると叙勲対象から外れる。しかし、醜聞によって総理の座を短期間で追われた宇野宗佑元首相も旭日桐花大綬章を受賞している。ただし、宮澤喜一元首相のように、叙勲を辞退している元総理もいる。
在任期間というシンプルな基準
ということで、葬儀に話を戻すと、生前に大勲位菊花大綬章を受けていた吉田、佐藤、中曽根の3元首相のうち、吉田元首相は国葬、佐藤元首相は「自民党、国民有志による国民葬」、中曽根元首相は、「内閣・自由民主党合同葬」だった。今回、突然、安倍首相が若くして亡くなったことで、どういう葬儀を行うべきか、霞が関は頭を悩ませたに違いない。
吉田元首相を「別格」とすれば、佐藤元首相と同格の「国民葬」にする選択肢もあっただろう。しかし、そうなると「憲政史上最長」の任期を務めた首相を吉田元首相より「格下」と「評価」することになる。それはそれで異論が出てきたことだろう。
官僚機構としては、在任期間という誰も異を唱えられない「基準」を用いておいたほうが、将来にわたって禍根を残さない。大きな勲章をもらうために人気取りの政策を行うといった衆愚政治家を生むリスクが幾分かでも小さくなるからだ。
だが、在任期間を基準にするデメリットもある。都道府県知事は4期務めて引退すると大臣と同じ旭日大綬章を受ける。知事では多選批判の議論が以前から繰り返されているが、3期務めた知事が4期目に出馬する動機のかなりの部分がこの勲章だと見られている。通常の知事より1格上がって旭日大綬章になると、天皇陛下から「親授」される栄誉に浴することができるからだ。
岸田首相も故人へと配慮から「成果」を並べたが、「在任期間が憲政史上最長だった」ことだけが基準だと言っていれば、ここまで反対論が盛り上がらなかったかもしれない。 

 

●22閣僚に接点、安倍派最多 旧統一教会問題 8/21
2017年11月発足の第4次安倍内閣から第2次岸田改造内閣までの閣僚のうち、少なくとも22人に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と何らかの接点が確認されたことが21日、分かった。銃撃され死亡した安倍晋三元首相を含むと計23人。いずれも自民党で、所属派閥は安倍派が最多の8人に上り、教団との関わりが目立つ。
すでに判明していた現内閣と改造前の閣僚計15人以外に、安倍氏を除く7人の接点が確認された。安倍派は安倍氏のほか、前経済産業相の萩生田光一政調会長、岸信夫前防衛相ら。二階派は武田良太元総務相ら5人、岸田派は林芳正外相ら4人、麻生派、茂木派、無派閥が各2人。 
●小泉政権で自民党の伝統的支持基盤が弱体化 その裏で台頭した旧統一教会 8/21
岸信介・元首相から始まった旧統一教会と安倍・岸家の絆は、晋三氏の父・晋太郎氏の代に派閥との組織的協力関係に発展した。
清和会(安倍派)は晋太郎氏の死後、2000年の森喜朗内閣誕生で福田赳夫内閣以来25年ぶりに政権を奪回。そして森首相の退陣後に登場した異色の総理、小泉純一郎・首相の時代に旧竹下派を追い落として最大派閥の座を奪う。
この時期、旧統一教会は霊感商法などが批判を浴びて活動は低調になっていたものの、実は、小泉政権時代に、後の安倍政権下で旧統一教会が自民党の“有力支持基盤”として台頭していく土壌がつくられたといえる。
経世会をぶっ壊す
現在のように自民党議員の多くが旧統一教会と関係を結ばざるを得なかったのは、小泉政権時代、自民党の伝統的支持基盤が崩壊したことに大きな原因がある。
「自民党をぶっ壊す」と首相に就任した小泉氏は、「派閥政治の打破」を掲げ、総選挙で小泉チルドレンと呼ばれる大量の無派閥の新人議員を当選させ、組閣人事では派閥の大臣推薦を受け付けない方針をとった。そのため、派閥政治家との印象は薄いが、実際には森内閣時代に清和会会長として政権を支えた生粋の派閥政治家だった。
小泉首相は政権につくと「構造改革」を掲げ、公共事業費を大幅に削減、道路公団や郵便、郵貯、簡保の郵政3事業を民営化し、地方自治体への補助金をカットした。これら小泉改革の標的にされたのは、建設業界、特定郵便局長会などいずれも清和会と敵対していた当時の最大派閥・旧経世会が利権を持つ業界ばかりだ。
その手法はまさに政敵の粛清だった。自民党内の造反で郵政民営化法案が参院で否決されると、小泉氏は衆院を解散して反対派議員に刺客候補を立てて落選させ、当選した議員には離党を強要して排除した。
元建設官僚で自民党参院幹事長を務めた脇雅史・元参院議員(旧経世会OB)が言う。
「小泉さんは権力闘争は得意だが、キチンとした政策論がないまま人気取りで改革を進めた。例えば、公共事業にしても骨太の方針でいきなり公共事業不要論に持っていった。その結果、本来必要な事業までいらないと印象づけられ、日本の公共事業、インフラは世界的に見ても遅れてしまった。最近になって国土強靭化で再びインフラ強化に取り組んでいるが、まだ遅れを取り戻せていない。小泉さんの改革はあくまで権力闘争の道具で、経世会を弱体化させ、清和会を強くする発想でしかなかった」
清和会OBの伊藤公介・元国土庁長官が振り返る。
「小泉さんの“自民党をぶっ壊す”という言葉は、結果的に経世会をぶっ壊すということになった。小泉さんがやろうとしたのは、自民党の支持基盤である各種団体の陳情を聞き、数の力で政治をする経世会の派閥政治の手法を変えることだったが、郵政民営化で経世会が弱体化してかわりに清和会が数を握ると、その清和会が数の力で政治を支配するようになっていった」
旧経世会との権力闘争に勝利した清和会は党内のヘゲモニーを握ったが、小泉改革は建設業界、郵政、農業票など自民党の伝統的支持基盤そのものを弱体化させ、高い支持率を誇った小泉氏が退陣すると、基礎票を失った自民党の力は急速に衰えて民主党への政権交代を招く。
そして民主党政権の失政で安倍氏が首相に返り咲いたとき、自民党の支持基盤はすでにガタガタになっていた。安倍氏の生い立ちと安倍家の政治的系譜を描いた『安倍晋三 沈黙の仮面』の著者で政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。
「安倍元首相は再登板してから国政選挙で6連勝したが、実は、自民党の得票総数はほとんど増えていない。かつての自民党の伝統的支持基盤が戻っていないことを示している。それでも選挙に勝ったのは野党が分裂、弱体化した結果です。安倍政権は壊れてしまった支持基盤を補うために、選挙で旧統一教会の集票力に頼らざるを得なかった。父の晋太郎氏と同じことをしたわけです」
いまや安倍派は傍流ではなく、自民党を支配する最大派閥だ。その“集票マシン”となった旧統一教会は自民党への浸透をより深めていった。 
●異常な過熱報道に対する注意喚起 世界平和統一家庭連合 8/21
現在、民放のワイドショーや報道番組、新聞・週刊誌記事を中心として、世界平和統一家庭連合(以下、当法人)および友好団体等に対する異常ともいえる過熱報道が続いております。
これらのメディア報道は、日本国憲法第20条で保障された「信教の自由」を無視した魔女狩り的なバッシング行為であり、当法人および友好団体等に対する著しい名誉棄損であると同時に、当法人の信者ならびに関係者に対する深刻な人権侵害に当たります。
また、当法人の関係施設および信者の自宅周辺で繰り返される強引な取材は、再三に渡る注意喚起にも拘らず、現在も断行され続けており、こうした強引な取材行為は当法人信者に深刻な不安と精神的ダメージを与え、身の危険を感じさせる程の恐怖となっております。当法人は、再度、報道機関に対して強行取材の停止を求めると共に、これまでの強行取材によって、当法人信者が被った心的被害に対する謝罪を要求します。
さらに、一部の民放ワイドショーが意図的にたれ流す元信者と称する人物の証言インタビューには、事実確認が行われたとは到底思えない内容が散見されます。それらの報道が視聴者に与える誤解、影響は甚大であり、報道によって誘発された差別・ヘイト感情はそのまま当法人の全国の教会にぶつけられ、現在までに寄せられた殺害予告を始めとした誹謗中傷の数々は、優に1万件を超え、街宣カーによる脅迫行為や教団施設への落書き行為等は日に日に増え続け、その影響は信者家庭における離婚騒動や親子断絶問題にまで発展しております。
一方、多くの報道機関が、政治家と当法人および友好団体等との関わりをテーマに「祝電を送った」「イベントに参加した」等、政治家が当法人および友好団体等と少しでも接点を持っていれば、まるで犯罪を犯したかのような取り上げ方を繰り返しております。また、一部の新聞社や通信社は政治家に対し、当法人および友好団体等との関係を炙りだすことを目的とした卑劣なアンケート調査を実施し、まるで「魔女狩り」や「踏み絵」を行うかの如き不当な追及を行ってきました。
仮に、当法人および友好団体等が、現在各種メディアで報じられているような「反社会的」で関係を持つことが許されないような団体だったとすれば、各報道機関はその調査能力を総動員して、過去から現在に至るまで当法人および友好団体等に全く関わらないように注意を払ってきた筈です。
しかし、これまでそのようなことは一切ありませんでした。それどころか、当法人および友好団体等が開催するイベントへの取材活動を始め、協賛、後援、寄付、ボランティア派遣等を通じて、実に多くの報道機関が密接に関わって来たことは疑いようのない事実です。
なお、現在、各報道機関と当法人および友好団体等とのこれまでの関わり等について、過去に遡って詳細な調査を進めております。調査結果がまとまり次第、全面的に公表させていただく予定です。
再三に渡り申し上げますが、各報道機関に於かれましては、事実に基づいた報道を心掛けていただき、無闇に当法人および友好団体等を陥れることを目的とした報道を行わないようお願いいたします。
今後は、事実に反する報道や不当に当法人等を貶める報道に対しては、法的手段を講じて厳重に対処させていただく所存です。 

 

●安倍さんは旧統一教会の広告塔だった 8/22
お盆の13日、テレビのニュース番組で、安倍元首相の顔が大きくクローズアップされて出てきた。韓国ソウルからだ。報道によれば、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の友好団体「天宙平和連合」が12日、ソウルで世界の平和などについて話し合う国際会議を開いた。その中で安倍さんの追悼が行われ、参加者が壇上に設けられたテーブルに花を手向けていた。
アメリカのトランプ前大統領もビデオメッセージを寄せ、「安倍氏は偉大な人物だった」と話していた。安倍さんは昨年、この団体の集会にビデオメッセージを送っており、銃撃事件の犯人もこの映像を見ていると伝えられている。
私はこのニュースを見て、安倍さんは統一教会の広告塔だった、持ちつ持たれつの関係だったんだ、と確信した。家庭連合の田中会長はその前々日の記者会見で、「私たちは共産主義と対峙(たいじ)しており、自民党の議員の方々とより多くの接点を持つ。より良き国づくりに向かって手を合わせてきた」と述べ、私の推測と符合する。
先月8日の奈良県内での山上某による安倍元首相銃撃事件は、我が国の社会を震撼させ、新聞、テレビ、雑誌などで連日報道され、それらは嫌でも耳目に届いてくる。そして、忘れていた統一教会や原理研究会、霊感商法、合同結婚式などの事柄を思い出させてくれている。
おびただしい報道の中で私が特に関心を持ったのは、週刊『AERA』にジャーナリストの青木理さんが寄せた記事だ。彼はテレビでも同じようなことを語っている。
「通信社の記者として公安警察を担当していた90年代、公安警察が統一教会への組織的捜査に乗り出すという情報を得たが、その動きがパタリと止まった。警察幹部に聞くと『政治の意向だ』と言われた。早い段階で教会に捜査のメスが入れば、被害は広がらなかったし、今回の事件も起きなかったかもしれない。統一教会と怪しげな蜜月を続けた政治の不作為、不適切な影響力の行使によって被害を拡大させた政治の責任が問われる」(8・15−22合併号)。そうだったんだ。
親分がそうだから、皆「イケイケどんどん」
もう一つは、教会の名称変更だ。統一教会は、そのやり方が以前から反社会的だと問題になっており、高額な献金や霊感商法などで被害も多く出、警察もマークしていた。1997年に教会は名称変更を文化庁に出したが、当時文化庁の宗務課長で、後に文部科学省事務次官になった前川喜平さんの手で阻まれた。
それから18年後の2015年。宗教法人の規則の変更は文化部長が決裁し、事務次官や文科大臣にまでは行かない。ところが、当時審議官だった前川さんのところを通り、下村大臣に報告、説明されたと前川さんは語っている。
このとき、全国霊感商法対策弁護士連絡会は文化庁に名称変更を認めないように求めていた。しかし、変更は認められた。平和、家庭という表現からは、旧統一教会とのつながりは連想されない。前川さんは、この話は間違いなく下村大臣から安倍首相のところまで行っている、と話している。
安倍さんがメッセージを送り、選挙でも票を振り分ける。親分がそうだから、皆「イケイケどんどん」。怖いもの知らずの政治が安倍派を中心に続けられてきたのだ。報道では、今回の岸田改造内閣のメンバーも旧統一教会と関わった人が多いとか。どうする、岸田さん? あなたは共同通信のアンケートに答えていないようだが。 

 

●安倍元首相は隠れ信者だった?統一教会系幹部が精神的支柱だった可能性 8/23
次々と自民党と統一教会の関係が暴かれています。安倍元首相は一定の距離関係を維持してきたように見えたことから、もっぱらドライでビジネスライクな関係を目立たぬように続けてきたのではないかと思われてきました。ところがここにきて、2012年の高尾山登山に今井元秘書官だけではなく統一教会系幹部も同行していたことが報道されています。まさかの隠れ信者なのか?少なくとも精神的支柱としてこの教団が機能していたのでは?という疑惑が強く高まってきています。
岸・安倍家にとって旧統一教会は三代続くファミリービジネス
安倍元首相が殺害されてからまだ四十九日も過ぎていないというのに、メディアには実に様々な情報が流出しはじめています。
安倍元首相が自ら統一教会との関係を仕切っていたであろうことは、日に日に核心的状況になろうとしています。
安倍家にとっては、三代におよぶ家業のような付き合いで統一教会との関係を維持してきているわけですから、その距離感はほかの手下の議員たちに比べれば一層、近しいものであろうことは容易に想像できるところ。
ある意味一定の距離関係を維持してきたように見えたことから、もっぱらドライでビジネスライクな関係を目立たぬように続けてきたのではないかと思われてきました。
しかし、最近の週刊文春の特集に登場した「安倍晋三元首相と統一教会《全内幕》」という内容を読みますと、結構、想像していたことと実態とが相当かけ離れていることに気づかされます。
2012年の高尾山登山に、今井元秘書官だけではなく統一教会系幹部も同行
第一次安倍政権を辞任後、安倍氏は病気もあってかなり精神的に弱っており、それを必死に励まし続けたのが経産省出身の今井尚哉秘書官であり、2012年の選挙前には安倍夫妻の高尾山登山に同行した話はあまりにも有名です。
実はこれに、統一教会の関連団体幹部や理事も同行していたという事実に、かなり驚かされた次第です。
安倍首相をそこまで統一教会幹部が精神的に支えて第二次安倍政権が誕生したというのは、統一教会信者にとっては美談なのでしょう。
再スタート前からそういう関係だったというのは、それまで伝えられてきたようにある程度距離を置いたドライな関係とはまったく別物で、当然のように翌年以降の例の「桜を見る会」にこうした幹部が招待されたのは、言うまでもない状況でした。
ビジネスライクな関係ではなく、隠れ信者だった?
この事実を見ると、安倍元首相はまさかの隠れ信者なのか?少なくとも精神的支柱としてこの教団が機能していたのでは?という疑惑が強く高まるところです。
もちろんドライでビジネスライクな関係なら問題ないと言っているわけではありませんが、現役の首相に対して、そこまでカルト教団が食い込んでいたという事実を突きつけられますと、今さらながらに驚きを隠せない状況です。
今は何も発言しない今井尚哉氏に、実際のところを正確に語っていただきたいところです。
『総理』などという提燈本を書いて強姦で豚箱入りするのを免れたTBSの元エース記者の方にも、「裏総理」だか「シン・総理」だかという新刊を統一教会への徹底取材で出版していただきたいものです。
それぐらい、事態は様子のおかしな事実を露見させ始めています。
大親分亡き後の安倍派の手下連中は、すでに教会との関係を説明不能の状態に
外部には洩れなかったものの、異常な親密関係を築いた大親分がいきなりいなくなり、残された安倍派の手下連中は、「大親分を真似て付き合っただけ」などと言うわけにもいかない状況でしょう。
すでに「統一教会とは知らなかった」とか「定義がわからない」など、ほとんど意味不明でなんの弁解にもならない発言を繰り返しています。
完全に馬鹿を装っている向きも登場する始末ですが、逃げ場のない関係が露見した議員は、すでに説明をやめて終始無言で嵐が過ぎ去るのを待つ構えのようにも見えます。
こうした厳しい状況下で、本当に国葬だか国葬儀だかを強硬して大丈夫なのでしょうか。
岸田首相が常に持ち歩く手帳は、巷では「デスノート」とも呼ばれているようで、ここに名前を書いた議員は必ず失脚するなどという悪い噂も耳にします。
もしかすると首相はご自身の名前をこのノートに書いて事態が推移するのを待っているのかもしれません。
それぐらい最悪の状況が進行中です。・・・  
●安倍晋三元首相の遺産とは:安全保障政策を振り返る 8/24
2022年7月8日、安倍晋三元総理大臣が凶弾に斃(たお)れた。安倍氏を悼む声は巷に満ちた。葬儀の行われた増上寺や、凶行の現場となった大和西大寺駅前には、多くの人が訪れた。若い人が多かった。よどんだ政治の下で、変わらない、変われない古い日本の殻を破ろうと、一人疾走した指導者だった。その姿は多くの日本人の心を打った。
安倍氏は、日本に何を残そうとしたのか。その遺産について、第二次政権の8年間の業績を外交安全保障政策を中心にまとめてみたい。
「自由で開かれたインド太平洋」構想
外交上の業績として、まず取り上げられるべきは、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想である。この構想は、瞬時にしてトランプ米大統領が踏襲した。ハワイの米太平洋軍は、インド太平洋軍に名称を変更した。オーストラリア、英国、フランス、ドイツ、欧州連合(EU)、東南アジア諸国連合(ASEAN)も次々と同様の戦略概念を打ち出した。
同構想の第一の意義は、21世紀前半の国際政治の戦略的枠組みの変貌を見事に言い当てたことである。米日・中の離間と米日・印の接近である。
現代国際政治の安定は、二つの戦略的三角形が組み合わさって実現されている。一つは、北米新大陸の米国を頂点にして、ユーラシア大陸の西端に北大西洋条約機構(NATO)、東端に日本、韓国、フィリピン、タイ、オーストラリアの同盟国を構える西側の三角形である。海洋大国系の三角形である。この三角形が取り囲むユーラシア大陸の内側には、ロシア、中国、インドの3大国が存在し、独特のダイナミズムをもった大陸国系の三角関係を構築している。
米国は、3大大陸国の関係を常に自らに有利に利用してきた。第二次世界大戦ではナチスドイツを潰すため、ナチスに侵略されたソ連を利用した。冷戦中期にはソ連と対峙するため、中ソ対立に入った中国を利用した。日本も追随した。敵の敵は味方である。米中・日中国交正常化は、デタント(緊張緩和)の時代を実現した。ただし、その副産物として、中国に1958年と62年に侵略されて対中警戒感の強いインドは、非同盟主義でありながらゆっくりとロシアに接近した。インドの兵器がかつて全てロシア製だったのはそのせいである。
今世紀に入り、米中の大国間競争の開始に伴い、インドはゆっくりとロシアから日米同盟側に旋回してきた。安倍氏は2007年8月、第一次政権時に首相としてインドを訪問した際、インド国会で「二つの海の交わり」という演説を行った。谷口智彦慶応大学教授が起草したこの演説は、太平洋地域とインド洋地域を一枚の戦略構図に書き入れ、価値観を共有するインドを西側の重要なパートナーと位置付けていた。
演説を聞いたインド国会は熱狂に包まれた。安倍氏は、この「二つの海の交わり」という構想を発展させて「自由で開かれたインド太平洋構想」を打ち出した。その中核の枠組みとして日米豪印(クアッド)を創設した。クワッドは、今や、インド太平洋地域の最重要な地政学的枠組みの一つとなりつつある。 
同構想の第二の意義は、インドとの連携が民主主義国家同士の連携であるという点である。ルーズベルトとスターリンの連携はヒトラーを潰すためであり、ニクソンと毛沢東との連携はソ連に対峙するためのものであった。所詮、毒を以て毒を制すという権力政治的な発想から生まれた便宜的なものであった。これに対し、ガンジーが生み、ネルーが育てた民主国家インドとの連携は、インド太平洋地域の沿岸部から南北アメリカ大陸の太平洋沿岸部へと広がる巨大で緩やかな民主主義連合の萌芽となり得る。
開かれたインド太平洋を支えるクアッドは、米豪日印という全く歴史的、文明的背景の違う大国が、普遍的価値観を共有することで結びついた枠組みである。米国、豪州は内なる人種差別を克服し、自由と民主主義を原理とした政治体制を成熟させた。日本は早期に近代化・民主化し、第二次世界大戦での敗戦後、再び自由と民主主義を奉じて復活した国である。インドは英国の植民地時代のくびきを外し、戦後にガンジーの精神的指導の下で独立を果たした。経済規模では早晩、日本を抜いていく国である。
安倍氏は世界的指導者の一人として、自由主義的国際秩序を支える責任を迷わずに引き受けた。「世界史を振り返れば、20世紀の百年を通じて、人類社会は良い方に向かってきた。人間の尊厳は平等であり、人はみな自由であり、だからこそ話し合ってルールを作る。この価値観は、今は普遍的で地球的規模に広がりつつある」という歴史観を戦後70年談話で披露し、日本国民の強い支持を受け、アジア諸国の共感を呼んだ。
自由で開かれたインド太平洋構想は、地域秩序の権力関係の安定に関する次元にとどまらない。それは普遍的価値に基づく地球的規模の自由主義的国際秩序を作るという大戦略なのである。
集団的自衛権の行使是認にかかわる憲法解釈の変更
安倍氏は、首相として平和安全法制制定に取り組み、長年の懸案だった集団的自衛権行使を是認した。日本はサンフランシスコ平和条約、日ソ国交正常化など、あらゆる戦後の基本的国際文書の中で、日本も集団的自衛権を保有することを明記してきた。しかし、その一方で、日本国憲法9条2項が陸海空軍の保持を禁じていた。それは、冷戦開始前の日本占領初期に、GHQ(連合国軍総司令部)が近視眼的に作った日本の完全非武装条項であった。
砂川事件に関する最高裁判決(1959年)は、日本が現行憲法下でも自衛権を保持することを是認した。しかし政府は、集団的自衛権については憲法上認められていないという解釈を生み出して自らの手を縛った。米ソ対立が国内に持ち込まれた日本では、集団的自衛権を行使して日米同盟を強化したい政府自民党と、非武装中立を唱える日本社会党が激突していた。冷戦中、集団的自衛権の行使が可能か否かは、常に国家を二分する論争であった。
安倍氏の祖父である岸信介首相(当時)が60年に改定した安保条約では、米国の日本共同防衛義務(第5条)に加えて、極東条項と呼ばれる地域安全保障条項(第6条)が創設されている。その内容は、米国が日本を後方拠点として、西側に残った旧大日本帝国領(韓国、台湾)と旧米領(フィリピン)を守るというものであった。
米国は日本の軍事勢力としての再台頭を恐怖した。当時は、日本は米国という瓶の中に閉じ込めておくべき小鬼と言われていた。そのため、日本独立後の自衛隊の創設(54年)も小規模にとどめた。
冷戦が終了し、ソ連が消滅した1990年代に、北朝鮮が核兵器開発に踏み切った。米国は北朝鮮に厳しい制裁を課すとともに、第二次朝鮮戦争を危惧した。冷戦後、北海道でソ連の重圧が消えた日本に対して米国から第一次朝鮮戦争同様の支援要請が来ることが予想された。当時、橋本内閣で日米ガイドラインが改定され、小渕内閣で周辺事態法が改定され、朝鮮有事には、日本は対米軍後方支援に入ることになった。しかし集団的自衛権を行使して戦闘行為に参加することは憲法上禁止されているとの立場は変わらなかった。
安倍政権が取り組んだ集団的自衛権行使是認の憲法解釈は、日本の存立が脅かされる事態、すなわち隣家の火事が母屋に移りそうな日本周辺の事態では、本土が攻撃される前に米軍と一緒に隣国を支援して武力行使を行うことを可能とした。母屋に火が移る前に降りかかる火の粉を払うということである。それは日米同盟の抑止力を大きく上げた。
それは北太平洋における地域防衛において、日本と米国の責任が、少なくとも理屈の上では対等になったことを意味した。
防衛態勢の刷新:南方重視の統合機動防衛力整備
安倍氏は首相として、日本で初めて国家安全保障戦略(2013年)を策定し、その下で防衛大綱、中期防(ともに13年、18年)を策定した。
防衛大綱・中期防では、従来の北海道・樺太、朝鮮半島といった戦略的焦点に加えて、台湾有事を念頭に南西諸島防衛を打ち出したのが特色である。国力を巨大化させ、台湾併合を狙う中国を相手にして、広大な東シナ海海域における日本島嶼(とうしょ)防衛及び台湾有事支援は至難の業である。水陸両用機動団(3000人の旅団規模)が創設され、また、サイバー、電磁波、宇宙といった新領域にも自衛隊の活動が拡大しつつある
防衛予算は、2012年の第2次安倍政権成立当時は4兆7000億円であったが、20年の退陣時には5兆5000億円(補正を含む)となった。しかし、中国は安倍政権時代に、経済規模が日本の3倍(米国の75%)となり、軍事費が日本の5倍(25兆円)に急伸した。日本もNATO標準であるGNP2%(10兆円)の防衛予算時代に入らねばならない。今年12月の国家安保戦略改定、新防衛大綱、新中期防では、防衛予算10兆円に向けて第一歩を踏み出すことが求められている。
そもそも自衛隊は、ソ連による北海道侵略に対して数カ月間戦うことを念頭に作られ、その後の戦闘は米軍と交代することが前提となっていた。そんな自衛隊を数年にわたり中国に応戦する実力を持つようにするには、GNP2%でも足りない。
自衛隊増強の必要性を、安倍氏は十分理解していた。その遺志を継いで、日本の防衛力整備を強力に推し進めるリーダーが求められている。 

 

●安倍総理と統一教会、報道への違和感 8/25
凶弾に斃れた安倍晋三元総理と統一教会について、わが国における大方のメディアの報道には受け入れ難い焦点ずらしがある。テレビ局も新聞社もおしなべて安倍氏と統一教会の関係が疾しいものであるかのように報じている。有権者は報道に影響され、岸田政権に疑惑の眼を向け、内閣支持率は急落した。統一教会の影の払拭が、岸田文雄首相が内閣改造に踏み切った最大の理由だとされている。
斯(か)くして新内閣が発足したが、「読売新聞」と「日本経済新聞」の世論調査で意外な結果が出た。通常、内閣改造は5ポイント程支持率を押し上げる効果があるといわれるが、今回は逆に下がった。統一教会の疑惑払拭が不十分と見られたのが原因だと紙上では分析された。
そこで感じる疑問は、安倍氏及び自民党は、メディアが非難するような「ズブズブの関係」を本当に統一教会と築いていたのかという点だ。事実関係を辿ればむしろ真実は正反対だ。
安倍政権は2018年、消費者契約法を改正した。消費者が「霊感商法」のような詐欺商法にひっかかって多額のお金を奪われたとき、お金を取り戻せるようにする改正だった。
安倍内閣の下、同年5月23日、衆議院本会議で永岡桂子自民党議員が立憲民主党、国民民主党、公明党、無所属の会、日本共産党及び日本維新の会の七派を代表して修正案を提出した。同修正案で霊感商法の被害者救済の道が開かれた。安倍氏が統一教会と親密な関係にあるとしたら、右の法改正はなかっただろう。
このように、安倍政権が統一教会の霊感商法取り締まりを厳しくしたことをメディアは殆ど報じない。逆に統一教会と安倍氏・自民党の関係を意図的に強調し、安倍氏を貶める報道が目立つ。その一例、8月3日の朝日新聞社説はこう書いた。
「国民の暮らしを守るべき政治家が、霊感商法や高額な献金が社会問題となっている教団の活動に、お墨付きを与えるようなことはあってはならない。岸信介元首相以来の付き合いといわれ、歴代の党幹部や派閥のトップが関わりを持ってきた自民党の責任はとりわけ重い」
一番の被害者
岸氏が統一教会系の政治団体である国際勝共連合と関わりを持った時代背景について一言の記述もないのはなぜだろうか。当時、韓国の朴正煕大統領、台湾の蒋介石総統、日本は現職総理の佐藤栄作氏らが勝共連合の会合にメッセージを送っていた。その中に元首相の岸氏もいた。大東亜戦争が終わり、朝鮮戦争で南北朝鮮は厳しいイデオロギーの対立期に入った。米ソは冷戦に入り、キューバ危機、ベトナム戦争、中華人民共和国の国連加盟があり、台湾の中華民国は国連から追い出された。自由主義陣営は拡大する共産主義陣営とせめぎ合っていた。勝共連合と岸氏らの関係はその時代のことだ。
7月22日の「言論テレビ」で、作家でジャーナリストの門田隆将氏が語った。
「1970年5月、国際勝共連合の国民大会が立正佼成会の普門館で行われました。立正佼成会も宗教団体ですが、勝共連合は宗教団体ということではなくて同じ価値観を有する組織と位置づけられています。そこに現職の大蔵大臣、福田赳夫氏が祝辞を送っています。『わが国にも目に見えない38度線がある。自由に行動し、自由に表現し、自由に思考し、自由に経済活動をしている。この自由な社会をひっくり返して、マルキシズムの名の下に少数の組織、統制の組織に作り替えようとする勢力が存在する。だから皆さん、この共産主義と資本主義陣営の戦いに負けてはなりません』と、現職の大蔵大臣が送ったのです」
このような全体像を示すことなく、岸氏と安倍氏のみを切り取って報じるのはフェアではない。
統一教会が資金集めのために霊感商法を展開するのはそれより後のことだ。統一教会はほとんど価値のない壺を数百万円で信者に買わせるなど、詐欺商法で多くの被害者を出した。そのことは絶対に許してはならない。だからこそ前述のように安倍政権は消費者を守るために消費者契約法を改正したのではないか。
安倍首相殺害犯、山上徹也は約20年前に母親が億単位のカネを統一教会に貢いで家族が悲惨な運命を辿ることになったと恨んでいるという。統一教会も悪いが、かといって山上が安倍氏を殺害する理由はどこにもない。メディアは本来、憎むべき殺人を犯した山上の罪を追及しなければならない。それが統一教会追及に焦点が移ってしまっている。結果として一番の被害者である安倍氏の名誉が不当に傷つけられている。本末転倒の報道ではないか。これこそ、本当におかしいではないか。
岸田氏は内閣改造で統一教会の疑惑払拭に注視したが、本来ならもっと深く政治と宗教の関係に切り込むべきだ。国会に特別委員会を設置してメスを入れるべき重要なテーマであろう。
創価学会と公明党
かつて共産主義と戦う勢力だった統一教会が、霊感商法や「合同結婚式」などカルト活動に集中した。では今、彼らのカルト的体質はどうなっているのか。安倍政権による消費者契約法改正でどこまで被害者を救出できるようになったのかなど、調べるべきことも打つべき対処も多いはずだ。
政治と宗教の関係を問うなら、創価学会と公明党についても考えるべきだろう。閣僚らがメッセージを送り、宗教団体がそれを利用して勢力を拡大し見返りに選挙活動等を手伝い、票もくれるという関係は、創価学会と公明党にも当てはまるのではないか。
日本キリスト神学院院長の中川晴久氏の指摘に耳を傾けたい。氏は教会で出会った23歳の女性のことがきっかけで統一教会の研究を始めたという。氏は、統一教会は国際社会から合同結婚式などで異端視されてはいるが、悪事を働くのは日本においてのみだと指摘する。統一教会が根本的に反日思想で動いているからだというのだ。
統一教会の『原理講論』では「日本はエバ国家(母の国)の使命を担って」おり、世界の母親としてたとえ自らは飢えたとしても世界の国々を保護し、経済的援助をして育てていく運命だとされているそうだ。
他方、韓国・北朝鮮はアダム国家(父の国)で、日本は朝鮮半島の南北統一のために生きなければならないとされているという。これは韓国に対する歴史的な罪滅ぼしのために日本はお金を文鮮明に貢ぎ、韓国に仕え、軍事力を持ちサタン(悪魔)の共産主義国と戦えと求めているものだと、中川氏は解説する。だから、統一教会はスパイ防止法にも憲法9条の改正にも賛成だが、それは全て韓国・北朝鮮のためでしかないともいう。
政治と宗教の問題は全体像をおさえた報道が必要だ。同時に山上の犯罪は本当に単独犯だったのか。安倍氏殺害事件の真実こそ、知りたい。 
●異常な過熱報道に対する注意喚起(2) 世界平和統一家庭連合 8/25
8月21日に当法人より「異常な過熱報道に対する注意喚起」と題したリリースを配信したばかりでしたが、ついに当法人信徒(20代後半・女性)による自殺未遂事件が起こってしまいました。
このような事態は、特定の報道機関による過激な偏向報道が原因であるとみられ、被害者家族および親族は困惑し、極めて深刻な状況です。現在、当法人では、被害者家族に対する精神的ケアをおこなうと同時に、全面的なサポートを行っております。
前回の注意喚起文において、今後、当法人ないし友好団体等に関わってきた報道機関に対して、順次公開させていただく旨を申し上げましたが、以下、その一例をお伝えします。
現在、民放の雄と言われる日本テレビが、同社ネットワークの総力を挙げて毎年取り組んでいる「24時間テレビ」ですが、当法人の女性信徒がボランティアスタッフとして7年間にもわたって関わり、番組ボランティアをまとめる中心的な立場で活躍していたことが分かりました。
この調査結果からも分かるとおり、現在、特定の報道機関が「反社会的団体」であるかのように報じている当法人および当法人信徒が、安倍元首相銃撃事件が起こるまでは多くの報道機関から確かな信頼を受けて、番組づくりに協力し、密接に関わってきたことは疑いようのない事実です。
自殺未遂事件の原因にまで発展した、特定の報道機関による過熱報道に対して、当法人は再度、事実に基づいた報道と、憶測に基づく偏向報道の停止を強く要求します。
注意喚起の意味を重く受け止めていただき、鋭意ご対応下さるよう宜しくお願い申し上げます。 

 

●「安倍元首相はまだ霊界で生きている」 国葬は旧統一教会に追い風か… 8/26
安倍晋三元首相の国葬(9月27日予定)は憲法に違反するなどとして、弁護士や学者らが8月26日、反対の声明を発表した。
声明の賛同者であり、旧統一教会の被害者救済にあたる郷路征記弁護士は、信者にとって安倍氏は「まだ霊界で生きていて、地上でのサタンの勢力と戦う統一教会を励ます存在」だと指摘。そのため国葬を実施すれば、教会を勢いづかせる可能性があると警鐘を鳴らした。
国葬は安倍政治批判の自由を奪うものと主張
この声明は「23期・弁護士ネットワーク」が法曹界に呼びかけ、賛同者数は118人にのぼった。
この日、記者会見を開いたメンバーの梓澤和幸弁護士は「銃撃事件は心より残念だが、国葬は安倍政治の歴史に対する批判の自由を奪い、弔意を強いることで自由な良心に踏み込むことであり、賛同できない」と呼びかけた。
声明の柱は4つ。
・国葬は国民に弔意を強制するもの
・国葬は岸田内閣による政治利用
・法律の根拠を欠くもの
・旧統一教会による被害拡大に手を貸すもの
これらの理由から国葬の実施は許されないとしている。
安倍元首相は天で生きていて、サタン勢力との戦いに加勢してくれる人…
旧統一教会に勝訴した「青春を返せ訴訟」の郷路征記弁護士もオンラインで参加し、国葬の開催に対する危機感を訴えた。
過去の裁判資料に基づき、旧統一教会と安倍氏の関係性を指摘しながら、「安倍元首相は統一教会にとっては、霊界で生きています。地上におけるサタンの勢力との戦いに天から助けてくれる人として位置づけられます」と説明した。
「したがって、国葬がおこなわれることは統一教会の違法な、あるいは社会的に不相当な行為を励ますために使われるのだろうという危惧を私は禁じ得ません」
二階氏の「国葬やらなきゃバカ発言」は本気
澤藤統一郎弁護士は「国葬は国民全体をたばねて国が代表して、安倍晋三という特定の政治家を弔うもの。半旗をあげろとか礼をしろとか細かいことを言わずとも、国葬することが憲法に違反するもの」と主張した。
自民党の二階俊博元幹事長が8月24日、国葬を実施することについて「当たり前。やらなかったらバカ」などと発言したことを受けて、澤藤弁護士は「本気でそう思っていて、国策を今さら元に戻せるかということがあるのでしょう。かつての戦争もそうでした」と繰り返し、国葬の実施に警戒感を表した。 
●立憲民主党に問う ―目指すは宗教弾圧か?― 世界平和統一家庭連合 8/26
立憲民主党(以下,貴党)は,「脱会支援者からヒアリング 党旧統一教会被害対策本部会合」と題する記事を貴党のWebサイト上に掲載しました。
同記事によると貴党の旧統一教会被害対策本部(本部長:西村智奈美衆院議員)が本年8月18日,第7回会合を国会内で開催し,「旧統一教会からの脱会を支援してきた」という宮村峻氏から,被害の実態と課題について話を聞いたとのことであり,冒頭,同本部事務局長の石橋通宏参院議員は,宮村峻氏を皮切りに具体的な話を聞いていきたいと挨拶し,「救済の在り方」等を知った上で「被害者の救済」等に資する立法措置を準備しようと議論を進めている旨述べたとのことです。
また同記事は,会合には,同本部特別参与の有田芳生氏(元共産党員)が同席し,宮村氏について1985年,87年当時からこの問題に関わり,「多くの信者の脱会に多大な力を尽くしてくるとともに,今メディア等で元信者が発言をしていること」にも,同氏の力が大きく働いたと述べたと報じています。
しかるに宮村氏は,長年に亘り当法人信者に対する強制的脱会説得に関与してきた人物であり,以下に詳述する通り,宮村氏の脱会強要の違法性は既に最高裁判決によって確定しています(平成27年(オ)第308号、平成27年(受)第385号)。
従って,立憲民主党がこうした人物を「多くの信者の脱会に多大な力を尽くし」た人物として会合に呼び「救済の在り方」等について聞くこと自体,極めて異常であると言わざるを得ません。のみならず,同氏らから「救済の在り方」等について聞いた上で立法措置を準備するという以上,同会合は,違法・違憲な脱会強要手法の法制化を目指すものであり,当法人のみならず他宗教の信者に対してまで信教の自由を侵害し,宗教弾圧をもたらすのではないかとの危惧を強く抱かざるを得ません。
しかし,このような方針は,憲法尊重擁護義務を負う国会議員においては断じて許されないことです。
したがいまして,当法人は,違法・違憲な脱会強要手法の法制化を目指す動きをみせる貴党に対し,ここに厳重な抗議を申し入れる次第です。以下詳述します。
1.最高裁で確定した違法性判断
1995年9月から2008年2月まで12年5ヶ月に亘る拉致監禁,脱会強要の被害を被った当法人信者後藤徹氏は,宮村氏ら加害者を提訴し,東京地裁,東京高裁,最高裁でいずれも勝訴しました。判決は,宮村氏が監禁中の後藤徹氏に対して脱会強要を行った事実を認定し,被告親族らに対して認めた損害賠償金2200万円のうち1100万円を連帯して支払うよう宮村氏に命じています。
以下,最高裁で確定した同事件原審東京高裁判決(平成26年(ネ)第1143号事件)の判示の要点部分を抜粋して掲載します(同事件原告の後藤氏は下記控訴審判決では「控訴人」,被告らは「被控訴人」と表現されています。また小見出しは当法人で付記したものであり,各マンション名は抽象化して表示しています)。
貴党には,宮村氏がいかに悪質な人権侵害に関与してきた人物であるのかを明確に認識して頂くよう求めます。
【監禁説得の違法性】
○ 日本国憲法20条1項は,信教の自由は,何人に対してもこれを保障すると定めているから,ある宗教の教義がどのようなものであったとしても,それが直接対外的に他の人々や他の団体等の権利や自由を侵書したり,危害等を加えたりするものでない限り,他から干渉されない自由が保障されている。
○ 控訴人は,昭和38年11月2日生まれの成人男性で,平成7年9月11日当時,既に31歳で,特に他者の介護や補助を受けなければ日常生活等に支障があるという状態ではなかったことは明らかであるから,親兄弟といえども,控訴人を別個独立の人格を有する個人として十分に尊重しなければならないことは当然のことであり,控訴人の信じている宗教の内容が親兄弟の考え方と異なるからといって,任意の説得の範囲を超え,有形力を行使して,その自由な意思や行動を制約し,強制的に統一教会からの脱会を迫ることは,もはや社会的に許されている親子兄弟による任意の説得の範囲を超えるものであって違法であり,客観的には監禁と評価されても致し方のないものであった。
○ 平成20年2月10日に荻窪のマンションから解放された時には,身長182センチと長身で約70キログラム程度あった控訴人の体重は,多くとも約50キログラム程度に低下し,全身筋力低下,廃用性筋萎縮症などと診断されるまでになっていたことが認められる。これらの事情は,被控訴人T(後藤氏の兄)らの控訴人に対する行動の自由の制約が,控訴人の体調等について十分に配慮してなされたものではなく,控訴人の健康を損なわせる結果になっていたことを示すものであって,荻窪のマンションにおける滞在についても,控訴人に対する行動の自由の違法な制約か継続し,拘束が長期化する中で,控訴人の体調等に対する管理や配慮が十分ではなく,違法性の高いものになっていたと認めるのが相当である。
○ 控訴人は被控訴人T(後藤氏の兄)らによって新潟に連れ去られた平成7年9月11日の時点において,既に31歳の成人男子であって,その意思能力や身体状況等において,被控訴人Tらが問題とする統一教会の信者であるという一点を除いては,特段の問題は認められなかったのであるから,これまで認定した被控訴人Tらの控訴人に対する行為は,控訴人の信仰を放棄させるためになされた有形力の行使であって,しかも,控訴人の任意の承諾に基づいてなされたものではないから,違法なものといわざるを得ない。しかも,被控訴人Tらの控訴人に対する監禁等は計画的なものであって,その後,平成20年2月10日まで,約12年5か月の長期間にわたって継続されたものであり,控訴人に重大な被害が生じたことも明らかである。
【宮村氏の脱会強要】
○ 被控訴人宮村は,披控訴人Tに対して荻窪のマンションを紹介するなどして,被控訴人Tらが長期間にわたって控訴人の拘束を可能とする場所の提供に関与しただけではなく,荻窪のマンションにおいて,平成10年1月頃から同年9月頃までの間,合計73回にわたり控訴人と面談し,統一教会の教義の誤りなどを指摘するなどして。控訴人に対して統一教会から脱会するように働き掛けたものである。
○ もちろん,被控訴人宮村自身が,荻窪のマンションにおいて,事実上,同所に監禁されている控訴人の状況を十分に認識した上で,極めて多数回にわたって控訴人と面談し,控訴人に対して統一教会から脱会するよう説得していたものであるから,被控訴人宮村においても,被控訴人Tらによる控訴人の拘束について,これを理解した上で幇助していたものと認めることかできる。
○ 被控訴人Tらの行為はもとより,その幇助とみなされる被控訴人松永や被控訴人宮村の行為についても,控訴人に対して統一教会の信仰を捨てることを強要していたものといわざるを得ない。
2.国際的機関からの指摘
当法人信者を監禁して行う脱会強要の手法は,密室で行われるものであるため,監禁中のレイプ事件やマンション高層階から脱出を図った信者が転落して瀕死の重傷を追う事件,長期監禁中に信者が脱会説得の専門家から包丁で脅迫を受ける事件, 監禁中の信者が苦痛に耐えかねて自殺する事件,精神病院への違法強制入院事件など,様々な悲劇を生んできました。
他方,監禁説得する側の異常性は止まるところを知らず,男性を妻子から引き離して隔離し,脱会させる事件や,夫婦を幼い子供達から引き離して監禁する事件,複数の患者を抱える医師を拉致監禁する事件,更には20名近くで教会を襲撃して信者を拉致する事件など,狂気の沙汰とも言える異常な人権侵害が継続しました。
更には,脱会した信者の中にも解放後重度のPTSDを患う者が複数現れ,大手出版社の月刊誌でも取り上げられました(講談社発行『月間現代2004年11月号』掲載「書かれざる『宗教監禁』の恐怖と悲劇」と題するルポライター・米本和広氏の長編ドキュメント)。同記事によれば,拉致監禁,脱会強要の結果PTSDに苦しむ元信者らは,「信仰の自由を強制的に奪われ続けた」こと(主治医の発言)の結果,今も奈落の底でもがき続けているとのことです。
こうした中,米国国務省は1999年以降, 2015年までの間,国際宗教自由報告書ないし国別人権実施報告書において当法人信者に対する強制的脱会説得問題についてほぼ毎年のごとく取り上げました。
また,国連の自由権規約人権委員会は2014年6月,日本政府に対しこの問題に対する憂慮を表明し善処を勧告するに至りました。
したがって立憲民主党が,宮村氏が行ってきた脱会説得の手法を元に法制化を試みているのだとしたら,国際社会からも重大な非難を浴びるであろうことは明らかです。
3.組織性・計画性,及び悪質性
上記「2」で述べた医師に対する拉致監禁,脱会強要事件にも,後藤事件で被告となった前記宮村氏及び新潟の松永牧師の両名が関与しています。同医師は自身の被害体験を陳述書にまとめて前記後藤事件に提出し,前記判決の認定材料となりました。同陳述書には,拉致監禁,脱会強要を行う側の内情を目撃してきた同医師の体験談が含まれているため,宮村氏らが行う拉致監禁,脱会強要の組織性・計画性,及び悪質性を知る上で極めて貴重な資料であると言えます。そこで同医師作成の陳述書の要点を以下に記します。
拉致監禁された当時平均35名の外来患者を担当し,入院患者も15名担当していたが,これら患者の中には瀕死の重篤患者も数人いた。ところが,実家を訪ねた際に突然20名近くに襲われ,都内のマンションの一室に拉致監禁された。同室には宮村氏が来て脱会強要を行った。患者の治療方針を録音したテープを病院に送りたかったが,宮村氏が反対したとのことで許されなかった。「人の命がどうなっても何とも思わない男なのか」と心底強い怒りと憤りを覚えた。
約1ヶ月後,同僚の医師らが裁判所に人身保護請求を申立てたが,宮村は監禁場所を新潟に移し,松永牧師の指導下,更に監禁が継続した。こうして1年3ヶ月間に亘って監禁され,その後もリハビリと称する監視下での生活を約半年間に亘り余儀なくされた。監禁中,解放されるためにやむなく偽装脱会をした。この結果,監禁中ないしリハビリ中に以下の行為を強いられた。
○ 宮村氏の指導により有田芳生氏による取材に応じさせられた。監禁されていた部屋に有田氏と記者とが訪れ取材を行い,有田氏の記事は週刊誌に掲載されたが,拉致監禁の事実は一切報じられなかった。
○ 宮村氏の指導により反統一教会報道を行うTBSの報道番組のインタビューに応じさせられ,テレビカメラの前で意に反して統一教会批判を行わされた。宮村氏は元信者に対して統一教会に対する敵愾心,憎悪,怒りを持つよう厳しく指導していたが,撮影当日もその場を取り仕切っていたため,真意に反して統一教会に対する敵愾心,憎悪,怒りをあらわに表現させられた。
○ リハビリ期間中,監禁された信者に対する強制的脱会説得に加担させられた。また,信者を拉致監禁するため準備中の父兄に対する勉強会やセミナーに元信者として参加させられ講義など担当させられたが,セミナーでは拉致監禁の指導や模擬訓練までもが行われた。
○ 宮村氏から全国霊感商法被害対策弁護士連絡会(全国弁連)の山口広弁護士及び紀藤正樹弁護士を紹介され,統一教会に対し請求する理由などないことを認識しつつ意に反して両弁護士に委任させられた。この結果,両弁護士を通して統一教会等に対する金銭的請求等が行われた。
○ 元信者が統一教会に対して献金返還等の損害賠償を求める「青春を返せ訴訟」が全国で起こされていたが,新潟の「青春を返せ裁判」の打ち合わせに5〜6回参加させられた。知る限りの原告は全て拉致監禁によって脱会させられた人達だった。会議では弁護士は熱心であったが,原告らは50名くらいのうち5名くらいしか参加しておらず,参加者も熱心ではなかった。これは,訴訟への参加が脱会の判断基準(踏み絵)としての機能を果たす中,元信者らは宮村氏や松永牧師から言われてやむなく訴訟に参加しているからではないかと感じた。
貴党の会合で有田氏は,「多くの信者の脱会に多大な力を尽くしてくるとともに,今メディア等で元信者が発言をしていること」にも,同氏の力が大きく働いたと述べたとのことですが,自身や提携する牧師が脱会させた元信者をメディアに登場させ,自身の意のままにメディアの前で発信させているわけですから,同氏の力が大きく働いたのはその通りです。
しかし,拉致監禁,脱会強要という違法な人権侵害を手段としてメディアが操られてきたことは重大問題です。そしてまた,統一教会を被告として提起する裁判についてまで,宮村氏ら人権侵害を繰り返して来た者達のコントロールが及んできたというのは,極めて忌むべき事態です。
貴党は,こうした違法な人権侵害によるメディアのコントロールや司法のコントロールに積極的に参入したいとの意向で宮村氏を招いたのでしょうか。だとすれば,貴党こそ,解散すべきであると思料します。
4.全国弁連の宮村氏に対する評価
全国弁連の東京の弁護士らも脱会した元信者を原告とする「青春を返せ訴訟」を担当しましたが,宮村氏が脱会させた元信者の代理人となった弁護士の中には,元信者から脱会時の経緯を聞く中で宮村氏の手法に疑問を持つ者も現れ,宮村氏の脱会説得の手法は「脱会活動に名を借りた金儲けであり,実態は拉致監禁であり,棄教強要に過ぎない」と主張して宮村氏を全国弁連から排斥すべきだと他の弁護士らに要求しました。同弁護士によると,この結果,少なくとも同弁護士が全国弁連に所属していた間は,宮村氏を排斥することができたとのことでした。
一方,後藤事件で宮村氏の代理人を務めた全国弁連の山口広弁護士は,平成27年6月15日に民事裁判の証人として出廷した際(東京地裁平成24年(ワ)第19029号),この件について聞かれると,前記弁護士から,「棄教の強要」「脱会活動に名を借りた金儲け」との露骨な発言があったか記憶にないと証言し,また宮村氏の活動をそういう活動とは認識していないと証言しつつも,全国弁連が牧師資格のない宮村氏を紹介するのはやめた方がよいとの議論があり,協議した結果,日本基督教団の相談窓口を紹介することに決めたと証言しました。
山口弁護士は宮村氏の代理人であった関係で,宮村氏に不利な発言は避けざるを得なかったものと考えられますが,いずれにしても,家庭連合に反対する全国弁連の内部においてすら,脱会説得の専門家として紹介すべきで無いとされた宮村氏を貴党がことさらに「多くの信者の脱会に多大な力を尽くして」来た人物として会合に招き,「救済の在り方」等を聞いた上で「被害者の救済」等に資する立法措置を準備しようと議論を進めているというのは,余りにも異常なことだと言わざるを得ません。
ところで,全国弁連が紹介先としたという日本基督教団においてすら,脱会説得の結果「心に傷を受けていく人」がいる事実や失敗事例を教団内で説く牧師が現れ,それまで「保護,救出」と称して一部牧師らが行っていた「隔離説得」をやめた経緯があります。
こうした過去の経緯も踏まえずに,貴党がいきなり宮村氏のような,脱会強要の違法性が裁判で認定された人物を「脱会支援者」として招いてヒヤリングを行うなど,もはや狂気の沙汰としか言いようがありません。
再度申し上げます。貴党の現在の動きは,まかり間違えば,違法・違憲な脱会強要手法の法制化を目指す危険なものであり,当法人の信者のみならずあらゆる宗教の信者の信教の自由の侵害,宗教弾圧を助長するものであって,到底許されざる行為です。こうしたことを自覚し,政党として良識ある行動を取るよう強く要望するものです。 

 

●統一教会への「歯止め」を決壊させた安倍元首相  8/29
「政治に友好団体が強い姿勢をもって関わってきた」「政治家と手を合わせてきた」
世界平和統一家庭連合(旧・統一教会、以下、統一教会)の田中富広会長は、8月10日の記者会見で、教団が政治と積極的に関わってきたと率直に語った。
統一教会と接点を持っていた議員は立憲民主党や日本維新の会など野党にもいる。しかし、規模、質の両面で深い関わりを持っていたのが政権党の自民党、なかんずく安倍派(清和政策研究会)所属の議員たちである。
統一教会はなぜ政治の世界に食い込めたのか。霊感商法や高額献金など反社会的な行為が問題視されてきた教団との接点を、政治家が断ち切れなかったのはどうしてか。特集「宗教を問う」の第1回目は、政治と宗教の関係について上越教育大学の塚田穂高氏(宗教社会学)に聞いた。
――8月10日の記者会見で、統一教会の田中富広会長は教団が「政治に、強い姿勢をもってかかわってきた」ことを認めました。この発言について先生の受け止めを教えてください。
自民党を中心とした政治家が「関連団体だとは知らなかった」などと関係が薄かったことを強調しようと努めているなかで、てっきり関係性を秘匿するのかと思っていました。しかし、実際は強い意識をもった関わりだったことが改めて確認されました。
結局は、「共産主義に対峙する」の名目のもとで、その姿勢に親和的な政治家とこうした社会問題性の強い団体とがずっと連携し続けてきたことが強く裏付けられました。
――安倍晋三元首相の銃撃事件を受け、統一教会と政治の接点がマスコミで大きくクローズアップされるようになりましたが、ここ30年間はほとんど報じられていませんでした。
1990年代前半までは、合同結婚式や霊感商法の被害がマスコミで大きく報じられ、社会は統一教会の問題に目を向けていました。ところが90年代後半以降、統一教会に関する報道の量は減り、世間の関心も薄れていきました。被害者や家族、被害救済にあたる弁護士らは声を上げ続け、一部のジャーナリストが追及し続けていたにもかかわらずです。
そういったなか、とりわけ2010年代に入り、自民党政治家と統一教会の関わりはさまざまな局面で強まり、目立つようになってきました。これにはまず教団側の思惑がありました。それに政治家・政権側が応じたかたちです。
それまで統一教会と接点を持つことに多少は慎重だった政治家も、次第に抑制しなくなり、イベントに祝電を送ったり、出席して挨拶まですることが積み重ねられていきました。選挙協力もそうです。また、統一教会系の右派学生団体「UNITE」が2016年ににわかに結成され、政権支持や改憲を訴えたのも象徴的でした。これは前年の安保法制反対運動時に注目された若者の団体SEALDsの向こうを張った動きで、政権側には都合がよかったでしょう。
自民党と統一教会のつながりはそれ以前からの持続的なものではありましたが、特に明らかな変化が質・量ともにあったのが、第二次安倍政権を含むこの十数年間だったと総括できます。
――この十数年で歯止めが決壊してしまったと。
そう言えると思います。
山上徹也容疑者に犯行を決意させたのは、2021年9月、統一教会の友好団体・天宙平和連合(UPF)のイベントに安倍元首相がビデオメッセージで登壇したことだったとされます。安倍元首相はそこでみずからの姿を見せ、文鮮明(ムンソンミョン)教祖の妻である韓鶴子(ハンハクチャ)総裁の名前を挙げて「敬意を表します」と肉声で語りました。
自民党の中でも歴史的に統一教会に近い安倍派(清和政策研究会)の長である安倍元首相が、ある意味、率先垂範して統一教会に関わるイベントに登壇したのです。極めてあからさまに、まるで「このような関わりをもっても何も問題がないのだ」と開き直るかのように。派閥のトップで、憲政史上最も長く首相を務めた人物が教団と密に関わることを隠さなくなっていたわけですから、そのもとにいる議員たちが統一教会と接点を持つことをためらわなくなるのは道理です。
政治家のこうした言動が教会とその信者にとって、またそれだけでなく被害者や悩みを抱える「宗教2世」らにとってどんな意味を持ったかも併せて考えなくてはなりません。もちろん犯行が正当化されることにはなりませんが。
やはりUPFイベントへの安倍元首相の登壇は、この十数年間の変化を象徴するシーンだったように思います。
――政治家が統一教会と接点を持つメリットは何でしょうか。
国政選挙ではあくまで限定的ですが、まずは票です。統一教会は選挙となれば数万から十数万の票を持っています。社会的に問題を抱えてきた教団であっても、選挙に強くない候補者にとってはとてもむげにできない。現に、安倍元首相はここ何回かの参院選で、当落線上にいる安倍派の候補者に統一教会の固い票を割り振ってきたとされています。教団の票がなければ落選していた議員が一定数いるはずです。また、地方議員にとってはより重みを持った可能性があります。
票だけではありません。統一教会の信者たちは熱心に選挙支援をしてきました。ポスター貼りからビラ配り、電話作戦まで、無私の精神で献身してきました。動員をかければ集会に大勢の信者がかけつけます。選挙に弱い候補者にとっては利用価値が高く、この面は特に大きかったと思われます。
――教団はかつて国会議員の事務所に信者を秘書などとして送り込んでいたとされます。
無償で熱心に働くわけですから政治家にとっては都合よくありがたい存在だったのでしょうが、そもそもなぜそこまで献身的なのかを考えてみるべきだと思います。何を「見返り」として求めていたのか。政治家周辺のみならず党内の情報などが得られていたでしょうし、他の事務所で働く信者秘書たちと情報を擦り合わせることで独自の情報網を築いていた可能性もあります。
――統一教会の教義には「韓国はアダム国家 日本はエバ国家」とあります。かつて韓国を植民地支配したエバ国家・日本は、その償いとしてアダム国家・韓国に尽くさなければならないと。歴史認識で言えば清和会(安倍派)は最右翼で、統一教会の教義とは相容れないように思えるのですが、なぜ統一教会は清和会人脈に食い込めたのでしょうか。
その点はちょっと複雑です。文鮮明が生まれた地域は現在の北朝鮮で、1991年に文鮮明が電撃訪朝し、北朝鮮の経済支援を始めたりしたのは文鮮明個人の中に朝鮮民族と南北統一への思いがあったからでしょう。日本が朝鮮半島を植民地支配したことへの国家的・民族的「恨み」があるのも無理はありません。
天皇や日本、日本人を自らに服従すべき存在だと低くみる姿勢は確かにあります。それらをひっくるめて、自らが唱える「統一原理」の下に、世界の宗教も政治も文化も統一されることを究極的な目標としています。ただそうした民族主義・ナショナリズムが教えのなかにあるという話と、それに基づき途方もない金銭を収奪してよいという話は別ものです。
一方で、文鮮明と統一教会が韓国や日本の政界に食い込もうとする時には、「勝共」「共産主義に対峙する」という旗印を掲げました。これも1954年の教団成立当初は必ずしも言われていなかったことで、1962年ぐらいからはじまり、朴正煕政権時代のなかでにわかに言い出されたこととされます。
都合よく使える尖兵部隊
日本の1960年の安保闘争では革新政党や学生、労働組合などが大々的に反対運動を展開しました。こうした反対勢力を、当時の岸信介首相らは共産主義勢力とみなし、強く警戒しました。岸氏や、岸氏と近かった笹川良一氏ら大物右翼の支援を受け、文鮮明は1968年に政治団体・国際勝共連合を設立します。学生や労働組合に直接対峙する、尖兵のような存在です。
岸氏ら保守政治家らにとって「反共」「勝共」を掲げる統一教会は共産主義に対する「防波堤」として、都合よく使える勢力だったのでしょう。このあたりが、その政治とのつながりの源流となります。こうした政治権力側にひたすらすり寄るようなスタンスは、岸氏の悲願とされた改憲をずっと唱えてきたことなどにもつながるでしょう。
――ソ連崩壊によって冷戦は終結し、イデオロギー対立の中にあった「反共」「勝共」という旗印は、もう力を失っているのではないでしょうか。
冷戦終結とともに「勝共」の看板を降ろす、とはなりませんでした。彼らなりの闘いは続けられます。私が見るに、政治活動としては「勝共」の「共」の枠が途方もなく拡大され、その中にさまざまなものが入れ込まれることで、「新たな敵」が設定されていったと考えています。家族や「性的」純潔を重視する教えからも、それらの「敵」とされた典型的動向としては、夫婦別姓や性教育、「ジェンダーフリー」、同性婚、LGBTなどの性的マイノリティー理解などが挙げられます。
彼らが考えるところの「共産主義っぽいもの」「左翼っぽいもの」を一緒くたに「勝共」の「共」に入れ込み、それらと戦うことで自分たちのレーゾンデートル(存在価値)を見いだし活動が続けられる。当事者の悩みや苦しみなどは蚊帳の外で、これらの動向は「文化共産主義」なり「新マルクス主義」なりの策動として捉えられます。
夫婦別姓や同性婚は家族を破壊すると思い込んでいるし、共産主義勢力による「性の革命」が押し寄せている、これに抗しなければならないというのが現在に至るまでの彼らの行動原理になっていると捉えられます。これらは自民党右派や、神社界、日本会議、右派論壇などとの主張や運動とも響き合い、一定の影響力を持った点が指摘できます。
――1970年代の中盤以降、「先祖が苦しんでいる」「先祖の因縁を解かなければ不幸が続く」といった宗教的・霊的な威迫をともなって高額な壺や印鑑を売りつける「霊感商法」が台頭しました。
これもポイントとなるのは、統一教会はこうした活動を途中から方針転換して、日本においてのみ行い始めた、ということです。韓国あるいは欧米ではいわゆる「霊感商法」を基本的にやってきていません。
キリスト教系新宗教としての独自の聖書解釈から、こうした考えや実践が自然に出てきたとは言えません。70年代中盤に文鮮明から送金命令が出て、その必要に駆られて出てきた手法です。「先祖の因縁」「霊と霊界の存在」「吉凶・開運」などは東アジアの宗教文化、日本人の宗教観に響くところがあったでしょう。そこをついて、不安や恐怖をあおるのです。霊感商法の「霊能師」役はあくまで「役」であり、修行などをするのではなく、トークマニュアルを学んでそれを演じるものでした。
統一教会のグローバルなネットワークの中で、日本は長らく資金源の役割を担わされてきました。まず正体を隠した布教で誘い込む。その先の企業形態を取る経済活動のなかでいわゆる「霊感商法」が行われ、金銭が収奪される。信徒としての献金も、「先祖の因縁」や「怨み」を解くという宗教的呪縛のなかで強要的に、時に破産に至るまでのレベルで行われる。それらが海外に送金される。そうしたことを長らく続けてきたのです。
教会本部まで捜査が及ばなかった
――2007年から2010年にかけ、霊感商法を行っていた会社が相次いで摘発されました。その多くが客を不安に陥れて高額な商品を売りつける特定商取引法違反でした。
重要な岐路となりました。しかし、裁判においては「相当高度な組織性が認められる継続的犯行」とされ、統一教会との関係性も認められたにもかかわらず、教会本部にまでは捜査が及ばないなど、その捜査は不徹底だったと思います。そこに政治家の介入がなかったかは厳しく検証されるべきでしょう。
田中富広会長は今回の記者会見で、2009年にコンプライアンスを強化したことによって訴訟件数は減ったと主張していますが、2009年以降も訴訟は起きています。そもそも、ある日コンプライアンスを宣言したとしても、それまでの教団の「負の側面」による被害が帳消しになるわけではありません。いずれにせよ、これほどの訴訟やトラブルを抱えてきた宗教団体は、法人解散となったものを除いてはほかに思いあたりません。
冒頭、統一教会と政治家の関係がこの十数年で密接になったことを指摘しましたが、変化の背景にはこの摘発があります。教団側はこのような「危機」をむかえたのは、政治家とのつながりが不十分であったと考え、それを強めることに注力したのです。守ってもらうためという動機です。結果的に教団と政治家は、もちつもたれつの依存関係を深めることとなりました。「転換期」となったわけです。
反省と決別宣言はセットであるべき
――岸田首相は第二次岸田内閣の閣僚や自民党に対して統一教会と距離を取るよう求めました。岸田首相の判断で、今後、統一教会と政治の関係はどのように変化すると思いますか。
対応としてはまだまだ生ぬるく、不明瞭ではないでしょうか。政治家としては、過去の関わりについての正確な状況把握、そうした「加担」が社会や被害者らに与えた影響についての反省、今後の決別宣言がセットであるべきです。
政治家が、そういった社会問題性が強い団体と距離を置き、自らの政治活動を清廉かつ透明性の高いものにアレンジしていくことは自由、というより責務でしょうし、何の権利の侵害にもなりません。この透明化・可視化を前提として、メディアや市民は継続的なウォッチとチェックができるようになります。
そして何より今回の問題で必要なのは、これまでの被害救済・回復の枠組みづくりです。明確なゴールを設定・共有し、早急に取り組みを進めてもらいたいです。
●旧統一教会関連団体トップに問う 教会と政治、安倍元首相との関わり 8/29
「UPFジャパン」と聞いて、すぐにどのような団体か理解できる人がどれだけいるだろうか。
一方で、そのUPFは「安倍晋三元首相がビデオメッセージを送った団体」といえば、理解できる人は多くいるはずだ。UPFは世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の友好団体であり、これまで旧統一教会は、「友好団体は別の組織として独立して活動している」との見解を示してきた。いずれも文鮮明氏が創設し、その一体性が指摘されているが、実態はどうなのか?そして、なぜ安倍氏はUPFにビデオメッセージを送ることになったのか。
そのUPFジャパンのトップ、梶栗正義氏が初めてテレビのインタビューに応じた。クローズアップ現代担当プロデューサーとの、90分に及ぶインタビューから見えてきたことは?
まず梶栗氏は「哀悼の意」を伝えた
安倍元首相銃撃事件で逮捕された山上徹也容疑者。「旧統一教会に恨みがあり、安倍元首相がこの団体と近しい関係にあると思い狙った」いう趣旨の供述をしている。山上容疑者がその認識を持った理由のひとつが、旧統一教会の友好団体UPFに送ったビデオメッセージの存在と言われている。
私は、今回の銃撃事件より前から旧統一教会について取材をしてきた。しかし、UPFジャパンの議長、梶栗氏に会うのは初めてだ。事前の本人との打合せもない。
8月26日、都内のホテルで行われたインタビュー。撮影の準備が終わり、梶栗氏が部屋に入ってきた。旧統一教会の第12代会長を務め、複数の関連団体の会長も歴任した梶栗玄太郎氏を父にもつ“2世エリート”として、教会内外から注目されている人物だ。
テレビカメラを前にしてのインタビューは初めてだと明かすと、やや緊張した面持ちで席に着いた梶栗氏。質問を始めようとすると、「その前に…」といってひとつリクエストをしてきた。
「私としての元首相に対する哀悼の意を表する機会を頂いてもよろしいでしょうか」
私は了解し、梶栗氏のインタビューはここから始まった。
「この度の事件に関しましては、私も国民の一人として大変大きな衝撃を受けました。あってはならない事件であり、事件そのもの、犯行そのものは許されることではないと思います。ご遺族の方をはじめ、多くの国民の皆様におかれましても今もなお深い悲しみの中におられることと思います。私自身といたしましても、事件当日から今日この日まで心休まる日は一日たりともございませんでした。安倍元首相を失ったということは、日本の国益を大きく損ねるばかりでなく、世界にとっても大変大きな損失であったとこのように考えております。心からのお悔やみを申し上げたいと思います」
こうした発言からも安倍氏に対する、梶栗氏の考えがわかる。そしてインタビューが始まった。
――ではインタビューを始めたいと思います。よろしくお願いします。
梶栗氏 / こちらこそよろしくお願いいたします。
――今回初めてテレビカメラの前でインタビューを受けると判断された、理由を教えていただけますか。
梶栗氏 / このたびの痛ましい事件を受け、山上容疑者が現在供述している内容の中に、殺害の動機は「UPFのイベントに安倍元首相がビデオメッセージを送ったことだ」という話がありました。私どもがどのような活動をして何を目指しているのか、皆様に知っていただかなくてはいけない。そして責任者として、私の言葉を国民の皆様にも届けなくてはいけないと考えたからです。
UPF活動資金の一部は「旧統一教会からの寄付」
実は梶栗氏はUPFだけでなく、国際勝共連合と世界平和連合という、旧統一教会の3つの友好団体のトップを務めている。それらの創設者はすべて、旧統一教会と同じ文鮮明氏。また梶栗氏自身も旧統一教会の信者であることを認めている。それぞれの団体は本当に旧統一教会から「独立」した組織なのか。
――旧統一教会と3団体の関連性について伺います。それぞれ組織としては独立して活動しているとしていますが、その独立性はどのようにして担保されているのですか。
梶栗氏 / 創設者が同一であるということで、「友好団体」の位置づけになっています。ただ規約および役員構成は全く異なっており、3つの団体はそれぞれの理事会で運営方針や活動方針を決め、それぞれの活動を展開しています。
―― 一方で、今回の事件の山上容疑者をはじめ、取材した関係者の多くが、これらの団体は一体のものであると見ています。(教会と)同一視されていることをどのように受け止めますか。
梶栗氏 / 一体と見られることがあるとは承知しています。しかし組織の規約及び活動内容が全く異なっており、私としては、具体的な活動をもってこれをご理解および評価をしていただきたい、という思いを持っています。
あくまで独立した組織であると説明する梶栗氏。そこで、複数の教会関係者への取材から得た情報をもとに問うことにした。
――私たちの取材によると、信者が納めている献金が関連団体の原資の一部になっているという情報もあります。そこはどうお考えですか。
梶栗氏 / まず世界平和連合と国際勝共連合は、宗教団体からの寄付はいただいておりません。UPFに関しましては、様々な個人・団体からいただいている寄付の中に、家庭連合(旧統一教会)からの寄付も含まれています。私たちとしては、家庭連合からの善意なる寄付と受け止めています。
UPFの運営資金に旧統一教会からの寄付が含まれていることをトップである梶栗氏自らが認めた。NHKの取材に対し、旧統一教会とUPFの資金面のつながりを初めて明かした瞬間だった。
―― UPFに教会からの寄付が入っているということは、その寄付の原資というのは、当然信者からの献金ということになりますよね。
梶栗氏 / それも含まれていると思います。
――となると教会に献金されたお金が、UPFの活動に充てられているということになると思います。それでも、あくまで独立されているというご説明になりますか。
梶栗氏 / 信者は教会に対してお布施をし、教会は私どもの活動を理解して支援・寄付をしていただくということですから、信者からの直接的な関係ではないと考えています。活動を評価して善意なる寄付をいただいているということであり、関連性はあっても独立性は担保されていると考えています。
政治との関係は
いま、与野党の政治家が次々と旧統一教会側との関係があったことを認めている。3つの友好団体は政治とどのような関わりがあったのか。
――政治との関わりについて伺います。政治団体の国際勝共連合について、どのような目的を持って政治家と関係を築いているのですか。
梶栗氏 / 国際勝共連合は、保守大同団結のために勝共理論という思想的な軸を立てて、共産主義の脅威から我が国の平和と安全を守るために、安全保障体制の確立をすることとともに、保守再生による憲法改正などを目的として活動を展開してきた団体です。私たちは、自由と民主主義の価値を守って平和を維持・実現するために、政治の役割が極めて大きいと考えております。それゆえに、積極的に関係を構築してきました。
――積極的に関係を構築というのは、具体的にどのように?
梶栗氏 / 政治家が掲げる政策面において、私たちの理念に合っているものに関しては、広く国民の方々にご理解いただくための勉強会を各地域で開催してきました。
――国政選挙の際、政治家から特定の候補者に投票をしてほしいなど、票の割りふりを依頼されることはあるのでしょうか。
梶栗氏 / 国際勝共連合では選挙応援をいたしません。一方で世界平和連合の立場では、活動の一環として選挙に関わることはありました。あくまで政治家との関わりの中で、応援する人をそれぞれの地域で決める、という形で関わっており、票の割り振りを依頼されることはありません。
――団体として組織的に(応援)行うということはありますか。
梶栗氏 / 世界平和連合として、私たちの目的とする国づくりに近い政治信条をお持ちの方を、推薦させていただくという形で、全国の事務局にお知らせすることはあります。
――事務局を通して知らせる対象に、教会および教会にいる信者は含まれますか。
梶栗氏 / 各支部において、教会のご理解をいただいて信者の皆様に向けて候補者のご紹介をする機会はあるかと思いますが、教会が組織的にこれをサポートするという形でないと思います。
NHKの取材からは、梶栗氏がトップを務める友好団体から、国会議員に対し秘書を派遣してきたという複数の証言があった。選挙の際の活動だけでなく、政治家と常日頃からどのような関わりがあったのか。
――過去に国会議員に対して秘書を派遣していたという証言が複数あります。その理由や目的を教えてください。
梶栗氏 / 例えば過去に、懇意にしている議員から秘書を紹介してほしいと依頼され、国際勝共連合や世界平和連合の会員、有能な適任者を探して紹介させていただく、ということはあったかもしれません。ただ、秘書として雇用するかどうかはあくまで相手側の国会議員の判断ですから、私どもが組織として派遣しているということにはならないと思います。
――最終的な判断は政治家の方がするが、こちらから積極的に推薦していくことはある、ということですね。
梶栗氏 / 政治家と関わり政治活動を応援する中で、場合によっては、求められたら紹介させていただくということです。
政治家から相次ぐ「関係を断つ」発言に対して
教会・関連団体とのかかわりが明らかになった政治家からは「関係を絶つ」という発言が相次いでいる。「霊感商法」など問題が指摘されてきた旧統一教会には、違法行為を認める司法判断が出されるなど、社会から批判の声が高まっていることが理由の一つだ。
――第2次岸田改造内閣では政務3役の少なくとも32人が、旧統一教会関連団体を含め関係を認めています。この状況をどのように受け止めていますか。
梶栗氏 / 私も報道を通して見ていますが、そのほとんどが祝電を送ったとか、雑誌のインタビューに答えたとか、ごく普通の関係であって何ら法的・倫理的に問題はないと思います。
―― 一方で政治家サイドからは「社会に問題が指摘されている団体との関係は一切持たない」などの方針が示されています。こうした対応には、どのようにお考えですか。
梶栗氏 / 政治家の皆様の発言については、重く受け止めております。一方で、「社会的に問題が指摘されている団体」という定義が明確でない中で、友好団体との関係断絶を迫る現在のメディアの姿勢には、少し疑問を感じています。私たちの掲げる反共、安全保障、平和、家庭といった理念に賛同しようとする政治家の、一体どこが問題なのか、疑問を禁じ得ません。
――政治家の方たちが関係を絶つと発言しているのは、報道のあり方が原因だと見ていると。
梶栗氏 / 少なからず、報道の影響は受けておられるのではないかと思っています。
――団体としての活動に瑕疵(かし)がないのであれば、(関係を絶つと表明している)政治家サイドに抗議や反論をしてもよいのではないかと思いますが、なぜしないのですか。
梶栗氏 / 適切な時と、向き合い方を模索しているところです。
――適切な、というのは?
梶栗氏 / それを今考えているところです。
岸信介氏、そして安倍元首相との関わりは
さらに、安倍元首相がUPFにビデオメッセージ送る経緯について詳しく聞いていく。そもそも、梶栗氏がトップを務める旧統一教会の友好団体と安倍元首相の関係は、いつ、どのようなきっかけで始まったのか。
――国際勝共連合としては、岸信介さん、安倍晋太郎さん、安倍晋三さんと3代にわたって応援してきた関係性を指摘されています。その理由をご説明いただけますか。
梶栗氏 /  結果としてそうなっていますが、「3代」だから応援をさせていただいたのではない、ということをご理解いただけたらと思います。岸信介先生は、古くから国際勝共運動のよき理解者であり、そのような立場から私たちは応援させていただきました。安倍晋太郎先生は岸先生の娘婿だから応援させていただいたのではなく、晋太郎先生の率いた清和研究会の前任者・福田赳夫先生を応援させていただいた延長線上に、晋太郎先生の政治姿勢を応援させていただいた。安倍晋三先生においても、晋太郎先生の息子さんだからというよりも、その政治的姿勢を評価して応援させていただいた。数ある反共意識の高い政治指導者を応援させていただいてきた中に、特に安倍家3代の皆様もおられたということだと思います。
――安倍元首相を具体的に応援するようになったのはいつ頃からなのか、その理由について教えていただけますか。
梶栗氏 / 自民党が政権復帰を果たした2012年頃から応援をさせていただいたと思います。理由は、安倍元首相の国家観、政治姿勢を高く評価したからです。
――そこに至った経緯について、詳しく伺えますか。
梶栗氏 / 私たちとしては、共産主義の脅威から国民の平和と安全を守らなくてはいけないという観点から、与野党を問わず反共意識の高い政治家を応援させていただいてきた歴史的経緯があります。安倍元首相については、反共意識が高い方が国のトップに立たれたということで引き続き応援させていただいた、ということになろうかと思います。政治家個人ということであれば、地元山口で、ひとりの衆議院議員として(以前から)応援させていただいてきたということは、間違いなくあると思います。
――関係はずっと続いていたと。
梶栗氏 / 先方がどのような認識をしておられたかわかりませんが、後援会活動の中で、私たちの会員の皆さんがそれなりの役割を果たしたのではないか、と思っています。
――2006年、UPFの会合に当時官房長官だった安倍氏が祝電を送っています。そのことが報じられ、安倍事務所は「誤解を招きかねない対応であるので、担当者にはよく注意した」というコメントを出しました。この対応についてはどのように受け止めていますか。
梶栗氏 / まず2006年は、私が代表に就任する随分前の話ですので、祝電を依頼した経緯について私は分かりかねます。安倍事務所の反応に関しましては、納得のできるものだと考えています。
――なぜ納得できるのでしょうか。
梶栗氏 / 山口の安倍事務所に祝電を依頼したのであって、あくまで「衆議院議員安倍晋三」先生として祝電を渡さなくはいけないところ、「官房長官」の肩書きで祝電を送ったことに対しての注意喚起であったと考えるからです。官房長官のお立場で祝電を送るということは政府が関わったような印象を与えるので、それは気をつけなくてはいけない、という意味だと思っています。
ビデオメッセージは梶栗氏が依頼
去年9月のUPF主催イベントへの出演を安倍氏に依頼した理由、それが実現に至った経緯を教えていただけますか。
梶栗氏 / そのイベントは、UPFインターナショナルが主催したオンラインによる国際会議です。これは2020年から約1年をかけ、朝鮮半島の平和のあり方が世界平和にいかに貢献できるのかというテーマで、世界の政治指導者・有識者の皆様で議論を積み重ねてきた成果としてオンラインで大会を行うというものでした。議論の中で、アメリカ共和党のポンペオ元国務長官やペンス元副大統領などからもメッセージをいただきました。その経緯について私から安倍元首相にご説明させていただく機会があり、「もしトランプ元大統領が出演することになれば、ぜひ安倍元首相にも出演をしていただきたい」とお願いをしました。実際にトランプ元大統領の出演が決まったことを受けて、UPFインターナショナル、そしてワシントンタイムズが正式に安倍元首相にレターを送り、これを受けられたということだと思います。
――その時のやり取りの内容について、どのように梶栗さんはご説明されて、安倍元首相はどのように答えられたのか、具体的に教えていただけますか。
梶栗氏 / 私としては、平和のあり方について議論してきた活動についてご紹介し、「ぜひ安倍元首相にも平和を実現するためにメッセージを語っていただけないか」ということをお願いしました。それ以上ではございません。安倍元首相は、「盟友であるトランプ大統領がもし参加されるのだったら考えてみるかな」というような反応だったと思います。
――その安倍元首相の反応は、2006年の時の対応とは全く異なるように見えます。その間の、安倍元首相との関係性に変化は感じますか。
梶栗氏 / 2006年の件との比較についてはよくわかりません。私どもUPFが国連NGOとして世界平和実現に向けて取り組んでいるということに対する、評価と理解が深まったのではないかと思います。
――今回の銃撃事件の容疑者は親が教会の会員であり、犯行の動機としてUPFに安倍元首相がビデオメッセージを送ったことを、供述の中で語っています。これについてはどのように受け止めていますか。
梶栗氏 / 安倍元首相の名誉のためにも私からはっきり申し上げなければいけないのは、まず安倍元首相は政治家として、UPFの平和運動の取り組みを評価し敬意を示してくださったのであって、教会の活動にお墨付きを与える目的・意図はなかったと思います。あってはならない事件、そして犯行そのものは決して許されることではないとは思います。しかし語られる動機の中に教会に対する恨みがあったという点、そして家庭の事情が大変複雑であったという点に関しましては、報道を見る限りではございますが、大変な感情を味わわれたのかなとは思います。家庭のあり方に対しては、教会としてもしっかりと向き合っていくべきだったのかなと思います。
――ビデオメッセージが、教会と安倍元首相との関係を繋ぐ1つのピースになっていると容疑者が受け取ったことについては、どのようにお感じですか。
梶栗氏 / このビデオメッセージと教会との関係を繋げるには、いささか距離があるように思いますので、私としては正直困惑をしています。
――ただ、実際にはそのような受け止めがあるということをどのように感じますか。
梶栗氏 / そのような受け止め方をされたということであれば、事実であれば、これは重く受け止めなくてはいけないものと考えます。容疑者の方の動機として語られている部分は、今も警察が捜査を継続中ですので、本当のところが明確になるまでは何とも言えないと考えています。
「私たちが示した誠意」発言の真意
安倍氏がUPFにビデオメッセージ送った翌月、梶栗氏は旧統一教会の日曜礼拝と呼ばれる信者の集会で、「私たちの誠意が安倍元首相に伝わった」といった発言をしたと報じられた。ビデオメッセージは、教会にとってどのような意味があったのか。
――梶栗さんは翌月の日曜礼拝の場において、「この8年弱の政権下にあって、6度の国政選挙において、私たちが示した誠意というものもちゃんと本人が記憶していた。こういう背景があったんだ」とお話されています。この発言の真意について教えてください。
梶栗氏 / 「安倍元首相が私たちの誠意を記憶していた」というのは、あくまで私の印象であって、安倍元首相からそのようなお話があったわけではありません。私たちが安倍政権をさまざまな形で応援させていただいてきた中で、私が信者の皆様にお話しさせていただいたということです。
――「示した誠意」というのは何を指すのでしょうか。
梶栗氏 / 安保法制など安倍元首相が掲げてきた政策に対して、理解を広めるためのさまざまな勉強会を各地で行い、また選挙においては、依頼された方を各地で応援をさせていただいたことが伝わったのかな、という私の印象の話です。
――「私たちが示した誠意」と信者に向かってお話しされていますが、この「私たち」というのは?
梶栗氏 / 当然、世界平和連合のことです。世界平和連合として、教会の方に依頼をして信者の方々に選挙の応援について話をさせていただく機会がありましたので。
――世界平和連合として示した誠意が伝わって、UPFのイベントに安倍元首相が出るということに至った、という繋がりでよろしいですか。
梶栗氏 / いや、世界平和連合とUPF、個々の活動に対する評価が繋がったんだと思います。
――UPFと世界平和連合の個々の活動と梶栗さんは仰いましたが、それを「私たち」として教会の信者に向かって語っています。その信者の中にも、選挙応援も含めた活動に関わっている人もいる。その繋がりを一連でとらえると、これは(教会と)一体となって活動していると受け取るのが自然だと思うのですが。
梶栗氏 / あくまで世界平和連合として、選挙応援を信者にも地元の皆様にもお願いした。それを私たちの努力と表現させていただいたということです。
教会・関連団体と政治の今後
――政治家との距離感、関係性について、一連の事件を受けて何か考えたことはありますか。
梶栗氏 / 政治家の皆様との関係に関しましては、まずは私どもの社会における信頼回復を図りながら、今後の適切な関係のあり方に関して模索をしていきたいと考えています。
――今お話しになった「私たちの信頼回復」の「私たち」というのは、どこを指していますか。
梶栗氏 / あくまでUPF、そして国際勝共連合、世界平和連合のことを指しております。家庭連合との関係性からこれを一体と見られているということがありますので。まずは私たちの活動というものを、その内容をもって理解をいただきたい、また評価をしていただきたい、ということにおいて国民の理解をさらに求めていかなくてはいけないという思いです。
――関連団体と教会との関係性を、見直したり改めたりすることはありますか。
梶栗氏 / 今後の検討事項だと思います。まだ、「社会的に問題の指摘されている団体」の定義が明確ではない段階ですので、いま私から何か申し上げることはないと思います。
――今後「社会的に問題のある団体」が定義され、教会がそれに該当するということであれば、関係性の見直しはありうるということですか。
梶栗氏 / あくまで仮の話ではありますが、そんなことがあれば、改めて私たちの運動のあり方については、全般的に検討しなくてはいけないと考えています。 教会との関係性から私たちの活動に制約が出てきておりますので、社会的な疑念払拭に教会としても努めていただく。その上で私たちの活動のそのものの理解、または評価を勝ち取っていくために、どのように皆様にご理解いただけるか、模索していくということです。

数々の疑惑に対して旧統一教会の関連団体トップが何をどこまで語るのか−。1時間半にわたって質問を重ねたが、ほとんど表情を変えることなく、淡々と答え続けた梶栗氏。政治家への支援の実態、安倍元首相との関わりについて明かし、教会と一部の関連団体との資金的なつながりを初めて認めた一方、自らが束ねる団体の活動の正当性については、終始一貫して姿勢を変えることはなかった。
“問題がない”としながらも、「関係を断ち切る」動きを強める政治家サイドに対しては、静観する構えをとっている。社会的に問題が指摘されている教会と、数十にも上るとされる関連団体は、どのような関係性で、何を目的に活動しているのか。教会側と政治、両者はどのように関わりをもってきたのか。取材班が行った100人を超える教会関係者や政治家の取材から浮かび上がってきた実態と、今回のインタビューには、まだ埋まらない溝がある。引き続き取材を重ねていきたい。
●安倍元首相の死を招いたか? 祖父・岸信介が二股“両岸”と呼ばれた理由 8/29
統一教会とのただならぬ関係を疑った犯人に撃たれ亡くなったた安倍晋三元首相。教団との縁を紡いだのは祖父の岸信介元首相だったと伝えられています。この岸信介という人物について、「思想や理想、宗教をあてにはしないが利用する」と手厳しく評するのは、評論家の佐高信さん。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、対極に位置する政治家として石橋湛山元首相をあげながら、“両岸”と呼ばれた岸元首相の政治姿勢を紹介しています。
二股の“両岸”岸信介
安倍晋三の祖父の岸信介が孫の統一教会との縁の出発点である。岸について、私が快哉を叫んだエピソードがある。
岸が首相の時だったかはわからないが、岸恵子が岸が開いたパーティーに招かれてそれを断ったという。そのことを先輩の高峰秀子に話したら、高峰はさらっと、「岸は岸でも向こう岸だものね」と言ったとか。
私は2人の女優に拍手を送ったが、岸信介は基本的には「向こう岸」でも“両岸”と呼ばれていたことを私は学生時代からの友人の岸井成格に教えられた。
『毎日新聞』の主筆も経験した岸井は、2006年に出した私との対談『政治原論』(毎日新聞社)で、岸が社会党(右派)から出ようとしたこともあると言い、その後をこう続けている。
「革新官僚のつながりで言うと三輪寿壮という東大新人会出身の政治家が社会党にいて、これが東大時代、岸の無二の親友なんだよ。うちのおやじ(岸井の父親も東大新人会)なんかも、三輪とはものすごく親しかった。三輪の葬儀で弔辞を述べたのは、確か自民党幹事長時代の岸だよ。彼らの中では、保革の人脈はけっこう入り乱れていたんだ」
しかし、岸と対極の位置に立つ石橋湛山は「思想」を利用できるものとは考えなかった。私は『湛山除名』(岩波現代文庫)を書く時に、岸にも触れた。
作家の伊藤整が「岸信介氏における人間の研究」(『中央公論』1960年8月号)で、国会で岸を観察した印象を書いている。
「その人物の物腰は、私が保守系の政治家にしばしば見ていた人間とは異質のものであった。また社会運動や演説や入獄などの体験などで鍛えられた左派の政治家とも違うものであった。つまりその男には、私たち文士とか学者とか、一般に知識階級人と言われている人間に近いものがあった」
私はこの指摘には全面的には賛成しないが、「人格、信念、思想、理想、宗教などというもののどれをもあてにしない人間」で「知識階級人のいやらしいタイプの1つ」という岸評には同意する。「あてにしない」けれども利用してきた統一教会というカルト宗教を憎む者に孫が撃たれてしまったのである。
ただ、同じ知識階級人でも湛山のように「人格、信念、思想、理想、宗教などというもの」に重きを置く人間も、少ないけれども存在する。そして、湛山やその同志の松村謙三は政治家という公職を私有して息子や孫に後を継がせるようなことはしなかった。
岸について城山三郎は「右翼に腿をさされたくらいで失神して……」と冷笑したことがある。刺した方の荒牧退助は後年、その時のことをこう述懐している。
「殺すつもりだったら殺していたよ。最初から殺すつもりはなかった」
岸は失神して失禁したのだったかもしれない。 
●統一協会 報道機関“恫喝声明”の読み方 「マスコミは完全無視」 8/29
8月21日、統一協会(現・世界平和統一家庭連合)が「異常な過熱報道に対する注意喚起」なる声明を発表した。教団に関する報道を続けるメディアに対し、過去からの関係を全面的に公表するというのだ。どうやら、それが脅しになると踏んでいるようだが、かつて統一協会の報道に関わった民放のテレビマンは、「当時とまったく一緒」と振り返る。
声明の一部を抜粋しよう。まずは、過熱報道により教団が被害者になったという現状と、法人としての権利を訴える。
《現在、民放のワイドショーや報道番組、新聞・週刊誌記事を中心として、世界平和統一家庭連合(以下、当法人)および友好団体等に対する異常ともいえる過熱報道が続いております。/これらのメディア報道は、日本国憲法第20条で保障された「信教の自由」を無視した魔女狩り的なバッシング行為であり、当法人および友好団体等に対する著しい名誉棄損であると同時に、当法人の信者ならびに関係者に対する深刻な人権侵害に当たります。》
過熱報道は視聴者に《差別・ヘイト感情》を生み、《その影響は信者家庭における離婚騒動や親子断絶問題にまで発展》しているという。ちなみに今回の声明文では、安倍晋三元首相を殺害した山上徹也容疑者の《親子断絶》には触れずじまいだ。
その上で、こう訴えるのだ。
《仮に、当法人および友好団体等が、現在各種メディアで報じられているような「反社会的」で関係を持つことが許されないような団体だったとすれば、各報道機関はその調査能力を総動員して、過去から現在に至るまで当法人および友好団体等に全く関わらないように注意を払ってきた筈です。(中略)現在、各報道機関と当法人および友好団体等とのこれまでの関わり等について、過去に遡って詳細な調査を進めております。調査結果がまとまり次第、全面的に公表させていただく予定です。》
昔から抗議はあった
桜田淳子らの合同結婚式をきっかけに統一協会が大きく報じられた1992年当時、番組制作に携わっていたテレビマンが振り返る。
「要は『お前らのところの社員にも、統一協会に関わっている者が少なからずいる。全部、こっちから公表してやるからな』ということなのでしょう。報道各社を壮大なブーメラン攻撃で自縄自縛にし、現在の報道を沈静化させたいのでしょう。しかし、例えば報道局長が統一協会の信者で、報道に手心を加えていたら問題ですが、それはない。メディアは統一協会を反社会的な団体と捉えたからこそ、総動員して取材に当たっているだけです」
脅しとも取れる声明により、テレビの報道は変わるのだろうか。
「しっかりとした事実確認や真実性はもちろんですが、公共性と公益性に則った報道の自由、言論の自由という大義名分がありますから、どこも相手にしないでしょうね」
92年当時も、こうした抗議があったという。
「今回の声名は統一協会のホームページで公表されていますが、92年当時はネットもスマホもなかったので、統一協会は報道各社に抗議文を送ってきました。時には、報道局長やデスクに面会を求めて、会社に足を運んできたこともありました。彼らの言い分としては、『我々はカルト集団ではなく、歴としたキリスト教系の宗教法人である。憲法で信教の自由は約束されている。そこをお間違いにならないよう』といったものでした。もちろんそれが報道されることもなかったので、一般の方はご存知ないと思います」
今回の声明と大差ないが、教団から訴えられたことはなかったのだろうか。
過熱報道はPRにも
「当時の統一協会は、訴訟合戦になるような泥仕合は望んでいなかったようです。むしろ、たとえネガティブな報道であっても、統一協会が大きく報じられることを喜んでいるかのような節がありました」
ソウルのオリンピックスタジアムで行われた合同結婚式には各局が乗り込み、参加者が教祖の文鮮明に向かい「マンセー!」と叫ぶ姿が大きく報じられた。
「五輪並の報道量となり、高視聴率も獲得しました。中でも日本テレビは、信者となった飯星景子さんを父で作家の飯干晃一さんと共に奪還するという報道で話題になりました」
それが現在の日テレ系「情報ライブ ミヤネ屋」(読売テレビ制作)の統一協会報道につながっていることは、デイリー新潮「統一教会報道で名を上げる『ミヤネ屋』 他の番組にはマネできない秘密が」(8月5日配信)で報じた。だが、当時の報道は長くは続かなかった。
「94年には松本サリン事件、翌年には地下鉄サリン事件、そして教祖・麻原彰晃の逮捕と、オウム真理教の報道に変わってしまったため、その後の統一協会には誰も注目しなくなったのです。結局、92年の統一教会報道は、彼らのPRに手を貸してしまっただけではないかという自責の念に駆られることもあります」
その後、統一協会は宗教法人の認可取り消しになることもなく、世界平和統一家庭連合へと名称を変更して現在に至っている。 
自民党は動けない
「手を替え、名も変え、自民党に忍び寄った結果が、萩生田光一政調会長に象徴されるのかもしれません。彼だって統一協会であることは当然知っていたとは思いますが、真如苑や立正佼成会などの宗教団体との関係を公言している議員もいますからね。『壺はもう売ってない』程度のノリで付き合っていたのかもしれません」
票にさえなれば、なんでもやるのが今の政治家だ。
「統一協会の目標は、創価学会のようになることかもしれません。学会を支持母体とする公明党をつくり、自民党と組んで政権与党に成り上がった。統一協会が政党を作るのは難しいとしても、自民党議員をバックアップすることで政界での影響力を行使したかったのでしょう。こんなことを言うと、『一緒にするな』と公明党が怒りそうですが、霊感商法は論外としても、同じ宗教法人である創価学会と統一協会が政治家を支援することは何が違うのか、説明は難しいのではないでしょうか」
統一協会との関係を断つと宣言する自民党議員も出てきたが、「そう簡単じゃないと思います。統一協会だって馬鹿じゃない。これまで選挙などで、どれくらい協力してきたか、記録に残していると思いますね。仮にそうしたものが全部暴露されたら、国会議員は終わりじゃないですか。それを分かった上で、今回の声明を出しているとみるべきでしょう。それくらい彼らは強かですよ。ですので、自民党議員が教団との関係を自ら調査して、完全に決別するなんて無理だと思います。《調査結果》の公表を一番恐れているのは、報道機関ではなく自民党議員でしょうね」 

 

●旧統一教会と政治 「難しい憲法の問題ではない」 憲法学者が指摘 8/30
安倍晋三元首相の銃撃事件を契機に、宗教団体・世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治家に関するニュースが相次いでいる。「信教の自由」や「政教分離」といった憲法の観点からどのような問題があるのだろうか。憲法学が専門である九州大の南野森(みなみの・しげる)教授に尋ねると、「難しい憲法上の問題と捉えるべきではないんです」と予想外の答えが返ってきた。
――旧統一教会と政治家に関する問題をどう捉えていますか。
旧統一教会の問題は1980年代から取り沙汰されていて、私が大学に入った89(平成元)年は旧統一教会が盛んに活動していた頃でした。知り合いでしつこく勧誘された人や、入会してしまった人もいて、そういう個人的な経験もあったことから、九州大に着任した20年前から学生に注意喚起を続けてきました。
ただ、メディアも、大学も、宗教が絡んでいるということで及び腰なところがあり、学生に十分な注意喚起ができていませんでした。今回の事件を機に、ワイドショーなどでもこの問題が取り上げられるようになったことはある意味で良かったと思っています。
一方で、安倍元首相の銃撃事件は許すことのできない暴力です。こういう事態が起きる前に、メディアも含めて旧統一教会の問題を何とかできなかったのかなという気はしています。
――私たちメディアも、そして社会も、感覚が鈍っていた部分があったのかもしれません。大学生の時の経験をもう少し教えていただけますか。
旧統一教会に入会したのは大学の先輩でした。プロテスタントの牧師さんのところへ連れて行くなど、説得活動を私も一生懸命やりました。その先輩の自宅に旧統一教会の人が来るというので、私のアパートにかくまったこともありました。それでも最終的にはどうしようもありませんでした。いつのまにか連絡も取れなくなってしまいました。
新興宗教は多かれ少なかれ、勧誘活動が激しいこともあります。けれども旧統一教会は他の宗教とは別です。違法行為・不法行為を繰り返していますし、自分たちが宗教であることを隠してアプローチしてくるところも決定的に他の宗教団体とは違います。
――私は無宗教ですが、憲法の「信教の自由」は大切な権利だと理解しています。一方で、この点が旧統一教会の問題を複雑にしている気もします。
まさにおっしゃるとおりです。(ですが)私は割と簡単な問題だと理解しています。一言で言えば、「信教の自由」は無制限ではないということです。宗教の儀式で人を殺せばその人は逮捕されるし、詐欺をやったら逮捕されたり、また損害賠償も請求されたりするでしょう。それだけのことです。外形的に法に触れる行為や反社会的行為があれば、制裁を受けるのは当たり前です。
大学の法学部で憲法を学ぶと「加持祈禱(かじきとう)事件」という判例が出てきます。ある僧侶が激しい加持祈禱をし過ぎて、女性がやけどなどのショックから心臓まひで亡くなる事件がありました。傷害致死罪に問われた僧侶側は「宗教行為だ」として「信教の自由」を主張したのですが、裁判所はそんな理屈は認めませんでした。
外形的、客観的に違法行為や反社会的行為をすれば、それは当然取り締まりや制裁の対象になります。「信教の自由」を錦の御旗(みはた)や隠れみのにして反社会的活動が許されることがあってはなりません。
例えば、旧オウム真理教も彼らの理屈としては殺人ではなく「ポアする」と正当化していましたが、問題は法に照らして客観的、外形的にそういう許されない行為をやっているかどうかですよね。最高裁判例が示しているように、「信教の自由」の保障は絶対無制限なものではないのです。
一方で、私たちは「旧統一教会の教えが間違っている」ということは言えません。そこは解釈の違い、信仰の違いであり、立ち入ることはできません。カトリックの教義からすればどうだ、ギリシャ正教の教義からすればどうだと言うことは言えるとしても、政府や裁判所が、特定の信仰や教義を正しいとか間違っているとか言うことはできません。
――自民党を中心に、多くの政治家が旧統一教会やその関連団体のイベントに出席したり、選挙協力を受けたりしていたことが指摘されています。家族観などで考え方が近い保守系の政治家は「票がもらえるならば」と付き合っている部分もあったのだろうと思われますが、宗教団体と政治の距離感についてはどう考えますか。
新興宗教でも伝統宗教でも、政治家が宗教団体と付き合うこと自体は問題ありません。信者から献金をもらう。選挙を手伝ってもらう。票をもらう。公選法や政治資金規正法などに違反しない限り、それは悪いことではありません。
ところが、旧統一教会については、一般的な宗教団体と政治家の関係としてくくるべきではありません。
それはなぜか。公明党の北側一雄副代表は旧統一教会について「反社会的な団体」と指摘していましたが、そうした団体の宣伝に利 ・・・
●旧統一教会関連の相談、安倍氏事件後に急増 6月8件→8月102件 8/30
安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、信者の親を持つ「宗教2世」の存在がクローズアップされている。中でも、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)信者の祝福結婚(合同結婚)式後に生まれた「祝福2世」は恋愛を禁止され、結婚相手を自由に選べないなどの生きづらさを抱える。(太田理英子、望月衣塑子)
自由恋愛禁止、貧しい子ども時代…「祝福2世」の生きづらさ
全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の代表世話人・山口広弁護士によると、祝福2世の子どもは自由な恋愛を許されず、教団側が決めた相手との結婚を強要される。「それが原罪から逃れる唯一の方法だと親から教え込まれる」と山口弁護士。既に相手がいたり、教団側が選んだ相手に抵抗がある場合、精神のバランスを崩したり、自ら命を絶ったりするケースもあるという。
その上、親が多額の献金を続けることで極端に貧しい家庭が多いとされる。山口弁護士は「同級生が買ってもらえる物を買ってもらえず、同級生からばかにされ、仲間外れにされていじめにつながる」とみる。
教団を巡っては高額献金など元信者からの被害相談も後を絶たず、全国弁連の吉田正穂弁護士は「献金強要や正体を隠した違法な勧誘は今も続いている」と指摘する。
全国統一協会(教会)被害者家族の会には、安倍元首相の銃撃事件後、献金を取り戻したいなどとする相談が急増。6月は8件だった件数は、今月は26日現在で102件に達した。
「コンプライアンスとは名ばかり」
旧統一教会は1980年以降、不安をあおって高額商品を販売する「霊感商法」が社会問題化。教団は2009年、信者らが霊感商法に関わったとして逮捕された事件を受けて「コンプライアンス宣言」を出した。だが、吉田弁護士は「コンプライアンスとは名ばかり」と反論する。
吉田弁護士が民事訴訟の代理人を務めた埼玉県の元信者の女性(79)は、16年まで20年以上にわたり、計1億円超の献金や念珠などの購入を続けた。女性は近親者を立て続けに亡くし、関連施設や教会に通い始めた。「ご主人の家系は罪深い」「善行を積む必要がある」と言われ、献金を重ねた。
生活苦などから教団に不信感を抱き、「夫と築いた財産のほぼすべてを失った」として18年、教団を提訴。教団側が解決金6000万円を支払う内容で昨年4月、東京地裁で和解が成立した。
こうした訴訟で手口の違法性を認定した判決もある。別の元信者3人が起こした訴訟の昨年3月の東京地裁判決は、複数の献金について「不安や恐怖心に乗じて献金するよう勧誘した」などと認定。教団に計約1億1500万円の賠償を命じ、確定した。
コンプライアンス宣言後は、壺つぼなどの物品販売よりも、既存信者から献金を搾り取る手法が目立つが、教団に返金を求めないとする「合意書」を書かされるケースも増加。神奈川県の70代女性は宣言直前に4000万円、宣言後に2600万円を献金し、公証役場で合意書を作成したという。
「アンケート名目など正体を隠した勧誘もなくなってはいない」と吉田弁護士は警鐘を鳴らす。
●統一教会とズブズブで安倍派は“悪の権化”呼ばわり 派閥議員から意外な声 8/30
安倍晋三元首相(享年67)が率い、自民党最大派閥として君臨する「清和政策研究会(清和会=安倍派)」の次期事務総長に、国会対策委員長の高木毅氏(66)が就任することが分かったという記事だった。
翌25日に開かれた派閥総会で正式に決まり、新聞各紙を中心に「安倍派の人事」が報じられた。
例えば、時事通信は同日、「安倍派副会長に岸信夫前防衛相 事務総長は高木毅氏」という記事を配信している。担当記者が言う。
「一般的に派閥の事務総長といえば、実質、派閥のナンバー2という位置づけです。つまり、『将来の自民党総裁候補』というわけなのですが、これに高木さんが選ばれたことで、安倍派内からも疑問の声が上がったのです」
高木氏を事務総長に推挙したのは、森喜朗元首相(85)だったという。安倍派の会長代理を務める塩谷立氏(72)に意向を伝えたことで、新事務総長が誕生した。
だが、この高木氏には致命的なスキャンダルがある。
デイリー新潮は2015年10月、「【独占スクープ】1億総活躍『安倍内閣』だから『下着ドロボー』が『大臣』に出世した!」の記事を配信した。週刊新潮のスクープ記事を元に構成したものだ。
謎の新設ポスト
8月24日の記事でも、他派閥の自民党議員が驚きの声を漏らしている。
《「清和はよほど人材が不足しているとしか思えない。だって高木さんっていえば、“パンツ泥棒”でしょう。そんな人物を事務総長って、どういう了見なんでしょうか」》
2015年に高木氏が復興大臣に就任した際、週刊新潮は、高木氏が30代の頃、一般女性の自宅に合い鍵を作って侵入し、下着を盗んでいた過去を報じたのだ。
表沙汰にならなかったのは、高木氏の父親が地元・福井県敦賀市の市長を務めていたから――という衝撃的な内容だった。
「パンツ泥棒の件はさておいても、高木さんの事務総長就任には疑問が残ります。なぜなら、高木さんは自民党の国対委員長です。国会運営のため野党と折衝する重要な役職。激務であることは言うまでもありません。派閥ナンバー2の事務総長との兼務など、不可能と言っても過言ではないのです」(同・記者)
パンツ泥棒の過去に、国対委員長との兼務──内部からも疑問の声が出たのか、安倍派は「事務総長代理」のポストを新設した。
「この新設ポストに就いたのは、前総務会長の福田達夫氏(55)、元文部科学相の柴山昌彦氏(56)、参院国対委員長の野上浩太郎氏(55)の3人です。文字通り、高木事務総長をサポートしなさいということなのでしょう」(同・記者)
統一教会との“癒着”
とはいえ、事務総長代理というポストが設けられること自体、前代未聞だという。なぜ、そんなポストを新設しなければならなかったのか。
「森さんの指示に反対できなかった塩谷さんの弱さが露呈していると言えます。要するに塩谷さんは、“信念の政治家”ではないということでしょう。おまけに、その尻拭いのため、派閥が混乱している様子も伝わってきます」(同・記者)
異例の人事はまだある。自民党政調会長の萩生田光一氏(58)だ。
「萩生田さんは安倍派の副会長就任が有力視されていましたが、蓋を開けてみると常任幹事という地味なポジションでした。統一教会(註)との関係を巡る報道が影響を与えたのは間違いありません。何しろ連日のようにワイドショーで取り上げられています。今、萩生田さんを重用するイメージを持たれるのは得策ではない、という判断でしょう」(同・記者)
俗に「前門の虎、後門の狼」という。「前門の虎」が高木氏の過去や塩谷氏の弱腰ならば、「後門の狼」は統一教会の問題だ。特に安倍派は直撃を受けている。
読売新聞オンラインが8月5日、「旧統一教会との関わりに自民苦慮…寄付・関与、安倍派に集中」という記事を配信したほどだ。
“悪の権化”
「萩生田さんを巡る報道が過熱しているのはご存知の通りですが、参議院議員の井上義行氏(59)は統一教会の賛同会員で、同じく参議院の北村経夫氏(67)や元防衛相の岸信夫氏(63)は選挙で協力を受けていたことを認めました。いわゆる“ズブズブの関係”です」(同・記者)
統一教会と関係がある安倍派の議員は、まだまだ他にもいる。文科相の末松信介氏(66)はパーティー券を購入してもらい、元文科相の下村博文氏(68)は寄付を受けている。また下村氏は、統一教会が名称変更したときの担当大臣としても注目を集めた。
「安倍派と言えば、ついこの間までは自民党の最大派閥として存在感を発揮していました。ところが今や、党内では“悪の権化”という扱いです。実は安倍派は“二重構造”になっていて、岸信介(1896〜1987)、安倍晋太郎(1924〜1991)、両氏の流れと、福田赳夫氏(1905〜1995)の流れがあるのです」(同・記者)
つまり安倍派の中には、「岸・安倍系」の議員と「福田系」の議員がいるということだ。
岸元首相は、統一教会の教祖・文鮮明(1920〜2012)と共に国際勝共連合を結成した過去を持つ。
「岸・安倍系」の議員にとっては、“悪の権化”扱いも仕方ないかもしれない。だが、統一教会との関係が比較的薄い「福田系」の議員には、納得がいかない者もいるようだ。
「看板を降ろしたい」
「安倍派は9月29日に行われる安倍さんの国葬までは、一致団結することを確認しています。しかし、その後は相当な激震が起きても不思議ではないでしょう。何しろ、いわゆる福田系の議員からは『もう安倍派の看板を降ろしたい』、『安倍派の名前を捨てられるのなら、塩谷派でも何でも構わない』という声が出始めています」(同・記者)
註 / 現在の名称は「世界平和統一家庭連合」だが、本稿では「統一教会」とした。
●旧統一教会問題で注目の紀藤弁護士『ほん怖』警告ツイートの深刻度 8/30
テレビの制作現場が頭を抱えている――。
安倍晋三元首相の銃殺事件に端を発した旧統一教会問題。追及の急先鋒である弁護士の紀藤正樹氏が8月20日放送のフジテレビ系『ほんとうにあった怖い話 夏の特別編2022』にクギを刺したのだ。
紀藤氏はツイッターで
《この種の番組を放送するのは辞めてほしい。いまだに続けているのがわからない。霊感商法に利用されるだけです。テレビは事実に基づき報道すべき》
と投稿。同番組には宗教家・霊能力者がスタジオ出演。再現ドラマに出てきた幽霊について解説し、心霊現象が起きたら盛り塩を玄関に置くと除霊できるとアピールし、除霊を正当化するような発言があった。
そうしたことから紀藤氏は別日のツイートで
《本当に困りもの。フィクション/非科学的な話とするなら徹底すべきで宗教法人の教祖を“心霊研究家”“宗教家”として演出する手法自体ミスリーディングで放送倫理にも触れる可能性があります》
と厳しく指弾した。
一連の旧統一教会問題では、信者の勧誘の仕方に
「先祖の霊が怒っている」「よくない霊がついている」
などと相手の不安を煽る手法が取り入れられている。安倍元首相を襲撃した山上徹也容疑者の母親も、旧統一教会入信のきっかけは、家族に関する不安を巧妙に刺激されたからだと言われている。
そうした背景もあり、紀藤氏はツイッターで異例の警鐘を鳴らしたのであろうが、これに顔面蒼白なのがテレビの制作現場だ。
「心霊番組では霊能力者による解説が一般的。これまでは全く問題になってこなかったが、旧統一教会の一件が騒がれたことで完全に潮目が変わってしまった。今後は細心の注意を払わねばならない」(テレビ局関係者)
ネット上でも旧統一教会問題が連日報道される中でのこの扱いに、
《なぜこのタイミングで出演を許可したのだろう》《フジはことの重大さを理解しているのか》
など、辛らつな意見が並ぶ。
紀藤氏は心霊番組を全否定しているわけではなく、霊能力者の“特別な力”にスポットライトを当てた演出は控えるべきだという考え。前出のテレビ局関係者は
「自称霊能力者の半生を紹介したり、除霊シーンの放送は厳しくなるでしょうね。除霊シーンは視聴者ウケも良かったのですが…番組の最後に『話の中にはフィクションも含まれます』などの注釈をつける必要も出てくるかもしれない」と語る。
Googleなどのプラットフォームでも、不安をかきたてる現象や陰謀論、詐欺の片棒を担ぎかねない情報は厳しく制限されている。怪談は夏の風物詩だが、同時に霊感商法に利用されてしまう危険もはらむ。
旧統一教会問題によってテレビ各局は新たな難問を突き付けられることになったようだ――。 
●旧統一教会の矛先が立憲民主党へ、日テレへの“自爆テロ”は不発 8/30
連日、メディア批判を繰り返している世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が、その矛先を立憲民主党に向けた。旧統一教会は26日、公式サイトに「立憲民主党に問う―目指すは宗教弾圧か?―」と題する抗議文を公開した。
「信教の自由を侵害し、宗教弾圧をもたらす」
立憲民主党が18日に公式サイトで配信した「脱会支援者からヒアリング 党旧統一教会被害対策本部会合」という記事に対する抗議文だ。記事によれば、会合には、旧統一教会からの脱会を長年支援してきた宮村峻氏や、立憲民主党元参院議員で、80年代から旧統一教会の問題を報じてきたジャーナリストの有田芳生氏が参加している。
旧統一教会は、宮村氏を紹介する有田氏の「多くの信者の脱会に多大な力を尽くしているとともに、今メディア等で元信者が発言をしていることも、宮村さんの力が大きく働いている」との発言を問題視。旧統一教会は、宮村氏について「長年に亘り当法人信者に対する強制的脱会説得に関与してきた人物であり、以下に詳述する通り、宮村氏の脱会強要の違法性は既に最高裁判決によって確定しています」としたうえで、立憲民主党の会合を「宗教弾圧だ」と猛批判する。
「立憲民主党がこうした人物を「多くの信者の脱会に多大な力を尽くし」た人物として会合に呼び「救済の在り方」等について聞くこと自体、極めて異常であると言わざるを得ません。のみならず、同氏らから「救済の在り方」等について聞いた上で立法措置を準備するという以上、同会合は、違法・違憲な脱会強要手法の法制化を目指すものであり、当法人のみならず他宗教の信者に対してまで信教の自由を侵害し、宗教弾圧をもたらすのではないかとの危惧を強く抱かざるを得ません。」
攻撃の焦点は『ミヤネ屋』の日テレ
一方、旧統一教会のメディアへの反撃も続いている。8月21日には、「異常な過熱報道に対する注意喚起」のタイトルの文書を発表。文書では、旧統一教会を巡る報道を「異常ともいえる過熱報道」と表現したうえで、一連の報道は名誉棄損、人権侵害だと指摘した。
「これらのメディア報道は、日本国憲法第20条で保障された「信教の自由」を無視した魔女狩り的なバッシング行為であり、当法人および友好団体等に対する著しい名誉棄損であると同時に、当法人の信者ならびに関係者に対する深刻な人権侵害に当たります。」
また、8月25日には「異常な過熱報道に対する注意喚起(2)」と題したリリースを配信。今度は報道機関全体ではなく、連日、旧統一教会批判を展開し、世間の評価を上げている『ミヤネ屋』を放送する日本テレビに的を絞って次のように攻撃した。
「現在、民放の雄と言われる日本テレビが、同社ネットワークの総力を挙げて毎年取り組んでいる「24時間テレビ」ですが、当法人の女性信徒がボランティアスタッフとして7年間にもわたって関わり、番組ボランティアをまとめる中心的な立場で活躍していたことが分かりました。」
リリースには、参加ボランティア団体として「世界基督教統一神霊協会・能登教会」を紹介する2014年の『24時間テレビ』のテロップ画像も添付されている。このテロップ画像は、日本テレビ系列のテレビ金沢(石川県)が当時放送したものを切り取った画像だ。
「うちと政治家との関わりを問題視する報道が続いているが、報道する日本テレビもうちと関わっていた」という、いわば“自爆テロ”のような攻撃だ。
“自爆テロ”不発、視聴率アップ!
この“自爆テロ”、効き目はどうだったのか。結論から言えば、日本テレビにダメージを与えるどころか、貢献している。まず、日本テレビは26日、「弊社の番組に関わるプレスリリースについて」という文書を配信。
『24 時間テレビ』のボランティアスタッフに、旧統一教会の女性信徒が関わっていたとされていることについて、真っ向から反論した。
「「24 時間テレビ」では、番組の趣旨に賛同していただける方にボランティアとして参加していただいております。一般的に、参加される方の個人的な思想・信条について確認することはいたしません。」
確かに、ボランティアスタッフにいちいち、信仰している宗教を聞くことはないだろうし、もし聞いていたとしたら、その方が問題だ。
そして29日に放送された『ミヤネ屋』では、「世界基督教統一神霊協会・能登教会」が表示されたテレビ画像について、テレビ金沢の反論を紹介した。
「この画像は、弊社が 2014年7月27日に放送した CMの一部画面を切り取って掲載されたもので、参加ボランティア団体を紹介する画像ではありません。当該 CM は「24時間テレビ」を応援していただく石川県内の企業・団体を募り、15秒CMの中で最大10社の企業・団体名を紹介したものの一つです。2014年7月26日(土)から 7月31 日(木)までの6日間で計10 回放送しており、旧統一教会の団体名が表示されたのは当期間のみです。」
女性信徒がボランティアスタッフになっていたことについては、日本テレビ同様、「参加される方の個人的な思想・信条について確認することはいたしません」とした。28日に配信されたデイリー新潮の記事によると、日本テレビ社内には「放っておけ」という空気が流れているという。
さらに、旧統一教会の自爆テロで『24時間テレビ』へ世間の関心が集まったのか、民放テレビ局で最も重要視される視聴率が、昨年より上昇した。今年の『24時間テレビ』の視聴率は、関東地区で個人8.1%、世帯13.8%だった。昨年に比べて個人で1.1ポイント、世帯で1.8ポイント上昇している。関東地区だけではなく、関西、北部九州、札幌といった各主要地区でも『24時間テレビ』の視聴率は軒並み上昇しているのだ。
なお、関東地区の個人8.1%、世帯13.8%という視聴率は、19日に放送された金曜ロードショー『となりのトトロ』とほぼ同率(個人8.7%、世帯13.7%)。昨今のテレビの平均視聴率からすると、十分、高視聴率と言っていい。
起きたことだけを並べて見ると、統一教会の攻撃がはからずも『24時間テレビ』の宣伝になった格好だ。そんな中、今回、旧統一教会は攻撃の矛先を立憲民主党に向けた。『24時間テレビ』の視聴率が上がったのと同様に、立憲民主党の政党支持率も上がるのだろうか? 

 

●なぜ政治家と旧統一教会は結びついたのか? 「切っても切れない関係」 8/31
大きな社会問題になっている世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治家の関係。全国霊感商法対策弁護士連絡会で被害者救済に取り組む紀藤正樹弁護士と元信者の仲正昌樹・金沢大学教授が意見を交わした。AERA 2022年9月5日号の記事を紹介する。
仲正:8月に韓国で行われたUPF(天宙平和連合)関連のイベントで、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係が話題になっている安倍晋三元首相の追悼イベントをやっていました。なぜいま、余計疑われるようなことをやるんだと日本の皆さんはいぶかしく感じたと思いますが、旧統一教会にとって「日本にどう思われるかはさほど大事ではない」ことをよく表しています。
霊感商法や高額献金などの問題の根っこはどこにあるか。旧統一教会にとって最も大事で関心を持つべきことは、教祖を中心に行われている、韓国と米国での教会の摂理を成功させるための活動です。彼らの最終目標は、象徴的には「南北朝鮮統一を文夫妻(創始者の故・文鮮明(ムンソンミョン)氏と現総裁の韓鶴子(ハンハクチャ)氏)の、真の父母の勝利という形で成し遂げる」こと。そのためにはすべてのことを犠牲にして手段を尽くす。それが旧統一教会の発想なんです。信奉者の立場から見れば、自民党の議員も安倍元首相も、おそらく道具にすぎないと思います。
紀藤:重要な指摘だと思います。ただ、その手段が時代によっていろいろと違ってくるんです。「反共」がお金と人を集められるときには「勝共連合」。1991年にソ連が崩壊して冷戦が終わり、「反共」ではなく「平和」がブームになると92年に「世界平和女性連合」を作る。「目的のための手段」だけに、機を見るに敏なんです。
そして次は地方政治に狙いを定めます。男女共同参画社会基本法が99年に施行され、続いて地方で推進条例を作る動きがありました。それに合わせて旧統一教会は「男らしさ、女らしさは必要なんだ」という運動を展開し、地方政治に深く食い込んでいく。
ここで旧統一教会は「女性」「家庭」「平和」を前面に押し出せばうまくいく、ということを覚えたんだと思います。その結果、2015年に「世界平和統一家庭連合」に名称を変更するんです。
「政治家の名前を借りる必要」(仲正昌樹)
仲正:手段と言えば、選挙の応援もそうです。摂理を何としても成功させるためには、政治家の名前を借りる必要がある。その手段として選挙を応援しないといけないから、直接の見返りの少なさや費用対効果の低さはさておいても、実行する。
紀藤:政治家からすれば自分の考えを何とか実現したい、例えば「この法律には反対したい」という野望があるときに、運動を無償で手伝ってくれる数千人単位がすぐに集まる団体というのはすごく利便性が高い。いわば「財布代わり」かつ「派遣会社代わり」です。選挙での手伝いもその延長線上にある。先輩議員がそれを使っていれば新人議員も断りきれない。でも使ってみたら利便性が高い。そして関係が断てなくなっていく。
仲正:信者にとっても、ふだんは「万物復帰」と呼ばれる訪問販売や「伝道」という勧誘活動を丸一日やって、やはり行く先々でいろいろ言われるのでひどく疲れきっている場合も多いんです。それに比べれば、政治家のもとに派遣された人は「休養をもらった」くらいの感じでしょう。「この議員さんはお父様(文鮮明氏)の摂理にとって必要な人なので君に行ってもらうんだ」とおそらく言われているので、政治家にも非常に便利な存在になるだろうと思います。
霊感商法や高額献金で稼いだお金は、日本国内の活動には最低限しか残らず、ほとんどは韓国と米国に送っているので、議員に何かしようにもお金の面ではできない。でも、従順な人材派遣だけは常にできる。お互いに切っても切れない関係が、長い年月の間にできあがっていたんでしょう。
ただ、教団は(今回批判されて)お金の面でかなり苦しくなっているでしょうし、騒ぎが収まったとしても議員との関係復活はおそらく当面難しい。そんなに長くは持ちこたえられないのではないかと予想しています。
「調査委員会を設置して」(紀藤正樹)
紀藤:そうかもしれません。でも、旧統一教会が「おのずから瓦解(がかい)することを待てないほどの被害」が、もう何十年もの間続いているわけです。80年代に統一教会が「霊感商法がもうかるということを発見」して全国的に広がり、月100億円のお金が集まるようになり、それが目標値になって現在に至っている。韓国には年に300億円くらいが送金されているわけですから、「日本の統一教会はもうできません」と泣き言を言える段階にはまだないでしょう。
カルト現象というものはなぜ生まれ、どういう被害が生まれ、なぜ国が防止しないといけないのか。政府や国会は今回のことを機に調査委員会のようなものを設置して検証作業を徹底し、法的な規制も含めて「旧統一教会による家族の被害をどうするか」を解決するところまでたどり着いてほしい。
仲正:家族の被害で言えば、旧統一教会が限界に来ていると私が感じるもう一つの点が、脱会したり、教団の活動から距離を取ったりする2世信者が多いことです。おそらく旧統一教会としては「2世の時代になったら教団の団結は強まる」と考えていたと思うのですが、この状況は予想外だったと思います。
紀藤:2世信者は確かに動揺しています。いまは、旧統一教会にしてみれば空襲警報が鳴っている時期。霊感商法の被害者だけでなく、信者の家庭の中で子どもたちが置かれている状況を考えると、早急に解決策を政府が提示しないと、かわいそうな子どもたちがどんどん生まれてきてしまう。現役信者の家族問題も含めて解決してほしいというのが、心からの願いです。
「1世の信者も動揺する」(仲正)
仲正:1世の信者もマインドコントロールされているとよく言われますが、常にロボットのようになっているわけでもなく、当然いろんなことを考えている。テレビで批判されているのを見れば、「そういうふうに思うだろうな」と動揺するんです。1世信者も人の親であり、自分の子どもたちが「ついてきていない」場合は、当然それもわかっているでしょう。彼らが旧統一教会以外の「外の世界」のことを考える余裕が持てる機会を、なるべく多く、特に2世信者を中心に作ってあげられたら、彼らの「心の鎧」をほどきやすくなる。「2世信者の将来」と、(安倍元首相を銃撃した)山上徹也容疑者=殺人容疑で送検、鑑定留置中=のように「多額献金をしてしまった人の家族」のことをどう考えるのか。早急に解決策を探る必要があると思います。
●旧統一教会との関係絶つことを自民党の基本方針に、岸田首相が表明  8/31
岸田首相は31日午前、「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)との関係を絶つことを自民党の基本方針とすると述べた。同党役員会後、首相官邸で記者団に語った。
首相は、安倍晋三・元首相の国葬について「様々なご意見、ご批判を 真摯しんし に受け止め、政権の初心にかえり、丁寧な説明を尽くしたい」と述べ、国会に出席し、質疑に応じる考えを表明した。
●安倍氏国葬、国会で説明へ 旧統一教会との関係陳謝―岸田首相 8/31
岸田文雄首相は31日午前、首相官邸で記者会見し、9月27日に行う故安倍晋三元首相の国葬について、国会の閉会中審査に近く自ら出席し、質疑に応じる意向を示した。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員の関係をめぐっては「国民から懸念や疑念の声をいただいている。党総裁として率直におわび申し上げる」と陳謝。その上で、今後は関係を絶つ考えを示した。
首相は国葬に関し、茂木敏充幹事長らに国会出席の調整を指示したと明かし、「丁寧な説明に全力を尽くす。私の決断について質疑に答える」と強調。世論の賛否が割れていることを踏まえ、「批判、意見を真摯(しんし)に受け止め、正面から答える責任がある」と語った。
国葬実施の理由については、安倍氏の首相在任期間が憲政史上最長となったことなどを、改めて挙げた。さらに、世界各国の首脳から多数の参列希望があるとして、「各国からの敬意と弔意に礼節をもって応えることが必要だ」と理解を求めた。
国葬の規模に関し、首相は「6000人程度の規模を見込んでいる」と説明。各府省に弔旗掲揚や黙とうを求める考えも明らかにした。
費用の全体像については「できるだけ早く示すよう努力する」と明言。参列する海外要人らと可能な限り個別に会談する意向も示した。
一方、旧統一教会の問題をめぐり、首相は「政治に対する国民の信頼が揺らいでいると深刻に受け止めている。私が先頭に立ち、政治への信頼回復に取り組まなければならない」と強調した。
●岸田首相 旧統一教会側との接点の調査も、安倍元首相亡くなり把握限界  8/31
岸田文雄首相(65)は31日、新型コロナウイルス感染による10日間の療養期間を終えて記者会見に臨んだ。
会見で岸田首相は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と閣僚らの接点が相次いで発覚している状況について謝罪し、今後は旧統一教会側との接点の有無を確認する調査を実施し、「その結果を党として取りまとめ、公表するように」と指示したことを説明した。
一方で今後、旧統一教会側との関係を断つうえで、安倍元首相との関係性を検証や追及しないのか、と問われると「ご本人が亡くなられた今、十分に把握するのは限界があると思っています」と述べるにとどめた。
そのうえで強調したのが「今日までの関係については、それぞれ点検するようにと指示をしている。点検の結果について党として取りまとめることが重要」と話し、「党としては方針に基づき、党全体の在りようについては、しっかりと取りまとめていくことが重要で、さらに大事なのは当該団体との関係を断つということ。従来はそれぞれ点検をし、見直しをするということだったが、それぞれに任せるのではなく、党の基本方針として断つということを明らかにし、党として所属国会議員に徹底させる。これを確認した、ここに大きなポイントがある。これから当該団体との関係について疑念を招くことがないように、徹底していきたい」と、今後について言及した。
●共産・志位委員長「安倍氏は統一協会と最も深刻な癒着関係」と調査要求! 8/31
共産党の志位和夫委員長が31日、自身のツイッターを更新。自民党に対し、安倍晋三元首相と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係を調査することを求めた。
岸田首相は31日の会見で、安倍元首相と旧統一教会の関係について「ご本人が亡くなられた今、十分に把握するのは限界がある」と述べた。
この発言に対し、志位氏は「安倍氏は統一協会と最も深刻な癒着関係にあった政治家であり、故人だからと絶対に曖昧にしてはならない」と断言。「自民党の責任においてその関係を徹底的に明らかにするべきだ。これができるかどうかは、自民党が本当に反省しているかどうかの最大の試金石になる」と主張した。
●首相会見 8/31
岸田文雄首相は31日、新型コロナウイルス感染による10日間の療養期間を終えて記者会見に臨み、安倍晋三元首相の国葬に関する国会の閉会中審査に出席する考えを表明した。「国民に弔意を強制するものではないが、説明が不十分との批判を受けている。実施を判断した首相として真摯に受け止め、正面から答える責任がある」と述べた。会見の詳報は以下の通り。

「おはようございます。国民の皆さまにもご心配をいただきましたが、本日から対面での公務を再開し、全身全霊、全力投球で仕事に取り組んでまいります。この間、官邸の医療スタッフをはじめ、多くの方のサポートをいただきました。おかげさまでオンラインで公務を進めつつ、体調も完全に回復をいたしました。皆さまのご協力とご理解に感謝を申し上げます。今回、コロナに感染して強く感じたことはワクチンの有用性です。ワクチンの4回目接種を済ませていたことで、軽い症状で済みました。自らの実体験も踏まえ、皆さまには引き続き、ワクチン接種にご協力をお願いするとともに、10月から開始予定のオミクロン株対応の新たなワクチンの接種について、その開始をさらに前倒しすることといたします」
「さて、思い返してみますと、今から1年前、私はわが国の民主主義を守る、信なくば立たず、こうした思いで自民党総裁選挙に出馬をいたしました。昨年10月、首相就任後は、国民の皆さんの声を聞き、丁寧に政治を進める中で、コロナ、ウクライナ侵略、また物価高などへの対応にあたってきました。この間行われた2回の国政選挙では、政権へのご信任をいただきました。国民の皆さまの期待に応え、山積する課題を一つずつ解決していかなければならない。そうした思いで有事対応と政策実行のための内閣改造を行いました。しかし今、率直に申し上げて、政治に対する国民の皆さまの信頼が揺らいでいると、深刻に受け止めております。改めて、総裁選出馬を決意した昨年の原点に立ち戻り、私が先頭に立ち、政治への信頼回復に取り組まなければならない、信頼と共感の政治に向け、決意を新たにしております」
「まず旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の問題です。われわれ政治家は、それぞれの政治活動において、可能な限り多くの方々と接し、その意見に耳を傾け、自分自身の考えもご理解いただく努力が不可欠です。また、信教の自由や政教分離は、憲法上の重要な原則として最大限、尊重されなければなりません。しかしながら、政治活動には責任が伴います。宗教団体であっても、社会の構成員として、関係法令を遵守しなければならないのは当然である一方、政治家側には、社会的に問題が指摘される団体との付き合いには厳格な慎重さが求められます。私の政権における大臣、副大臣、政務官については、自ら当該団体との関係の点検を行うとともに、関係を断つことの確約を得たところです。しかし、閣僚等を含め、自民党議員について、報道を通じ、当該団体と密接な関係を持っていたのではないか、国民の皆さまから引き続き、懸念や疑念の声をいただいております。自民党総裁として、率直におわびを申し上げます」
「国民の皆さまの疑念・懸念を重く受け止め、自民党総裁として、茂木(敏充)幹事長に対し、先週来、3点指示をいたしました。第1に、党として説明責任を果たすため、所属国会議員を対象に、当該団体との関係性を点検した結果を取りまとめて、それを公表すること。第2に所属国会議員は過去を真摯に反省し、しがらみを捨て、当該団体との関係を断つこと。これを党の基本方針として、関係を断つよう所属国会議員に徹底すること。第3に今後、社会的に問題が指摘される団体と関係を持つことがないよう党におけるコンプライアンスチェック体制を強化すること。自民党として説明責任を果たし、国民の皆さまの信頼を回復できるよう、厳正な対応をとってまいります。また、当然のことながら、政府としても、霊感商法等の被害者への対応に万全を期すため、法相を議長とする旧統一教会問題、関係省庁連絡会議や消費者庁に霊感商法等の悪質商法への対策検討会を設置しており、政府を挙げて被害者の救済に全力で取り組んでいきます」
「次に、9月27日に予定しております、安倍元首相の国葬儀について申し上げます。選挙遊説中の安倍元首相に対する凶行を受けて、私は国葬儀を実施するとの決断をいたしました。民主主義の根幹たる国政選挙を6回にわたり勝ち抜き、国民の信任を得て、憲政史上最長の8年8カ月にわたり重責を務められたこと。第2に東日本大震災からの復興や日本経済の再生、日米関係を基軸とした戦略的な外交を主導し、平和秩序に貢献するなど、さまざまな分野で歴史に残る業績を残されたこと。第3に、諸外国における議会の追悼決議や、服喪の決定。公共施設のライトアップを始め、各国でさまざまな形で、国全体を巻き込んでの敬意と弔意が示されていること。第4に、民主主義の根幹である選挙活動中の非業の死であり、こうした暴力には屈しない、という国としての毅然(きぜん)たる姿勢を示すこと。国葬儀を執り行うとの判断に至った理由を、このように説明をしてきました」
「諸外国からは各国王族、大統領など、国家元首、首脳レベルを含め、多数の参列希望が寄せられております。こうした各国からの敬意と弔意に対し、日本国として礼節を持ってお応えすることが必要だ、との思いを強くしております。もとより、今回の国葬儀の開催は、国民に弔意を強制するものではありませんが、さまざまなご意見とともに、説明が不十分とのご批判をいただいております。国葬儀の実施を判断した首相として、そういったご意見、ご批判を真摯に受け止め、正面からお答えする責任があります。政権の初心にかえって、丁寧な説明に全力を尽くしてまいります。そのため、国会の場で、閉会中審査の形で、私自身が出席をし、テレビ入りで国葬儀に関する私の決断について、質疑にお答えするという機会をいただきたいと考えております。1日でも早くこうした場を作るべく、与党幹事長、国対委員長に必要な調整を行っていただくよう、先ほどお願いをいたしました。野党の皆さまにもご協力を賜れば幸いです」
「最後にコロナ対策です。(流行)第7波の先、ウィズコロナの新たな経済社会に向けた対応として、専門家や現場の意見も踏まえ、全国ベースでの全数届け出の見直し、陽性者の自宅療養期間の見直し、健康フォローアップセンターを含めた新たな療養体制などの全体像は、おおむね固まっており、移行の準備を進めています。しかしまずは、高齢者をはじめ、リスクの高い方々の命を守り、第7波を乗り越えていくことが、優先です。そのため、8月24日に、緊急に講ずる国内感染対策について発表をいたしました。今後、感染状況の推移を見ながら、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行の全体像について、適切なタイミングで改めて公表いたします。他方、世界各国で国際的な交流が活発化しており、わが国も、そうした交流に参加するとともに、円安のメリットを生かす観点からも、水際対策について、9月7日より入国者数の上限を5万人に引き上げるとともに、全ての国を対象に、添乗員を伴わないパッケージツアーによる入国を可能にするなど、さらなる緩和を行います。また、(入国者健康居所確認アプリ)「MySOS」の改善により、空港での入国手続きの円滑化を行います。国内外に数十年に一度の大きな課題が山積しています。初心に帰って、何事も丁寧に説明をし、一つずつ、結果を出すことで、国民の皆さまからの信頼回復につなげてまいります」
原発「あらゆる選択肢を排除せず検討」
――新型コロナウイルス感染者の情報を特定する「全数把握」の見直し導入や水際対策の緩和は。
「全国ベースでの全数届け出、あるいは陽性者の自宅療養のあり方、こうしたことについては、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行の全体像の中で包括的にお示しした上で、円滑に導入していきたいと思っています。そしてお示しする時期ですが、もう少し感染の状況を見ながら確認した上で、時期を決定していきたいと思っています。そしてもう1つ水際対策については、本日お示しした通り、9月7日より入国者数の上限を5万人に引き上げるとともに、全ての国を対象に、添乗員を伴わないパッケージツアーによる入国を可能とするなど、さらなる緩和を行うことといたしますが、今後については、G7(先進7カ国)並みの円滑な入国が可能となるよう、内外の感染状況、さらにニーズ、また世界各国の水際対策、こうした観光等も勘案しながら、さらに緩和を進めていきたいと考えております」
――安倍晋三元首相の国葬について、内閣の一存で実施を決めたことは誤りだったのでは。見直す考えは。
「まず国民の皆さまの中にさまざまなご意見があるということ、これは私も十分承知をしております。その上で、先ほども申し上げたように選挙遊説中の安倍元首相に対する凶行を受けて、これまで内閣府設置法や閣議決定を根拠として国葬儀を実施することを決断し、そして国葬儀を執り行うこととした理由については、先ほども申し上げたような4点を挙げて説明をしてきたところですが、国葬議の開催については、さまざまなご批判とともに、説明が不十分というご意見をいただいているところです。この国葬儀の実施を判断した首相として、そうした批判、そして、ご意見を真摯に受け止め、正面からお答えする責任があるということを強く感じています」
「そのために、国会の場で、閉会中審査の形で、私自身が出席をし、テレビ入りで、国民の皆さんに見える形で国葬儀に関する質疑にお答えするという機会をいただきたいと考えており、1日でも早く、こうした場をつくるべく、幹事長、国対委員長に必要な調整をしていただくよう、先ほど、指示を出したところであります。政権の初心に帰り、丁寧な説明に全力を尽くして、国民の皆さまのご理解を得ながら、国葬儀を執り行っていきたいと思っております」
――先日のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、次世代革新炉の開発建設についての言及があった。原発の新増設を事実上認めたものだと解釈されている。
「昨今のエネルギーを巡る内外の情勢等を踏まえれば、国民生活や産業の基盤となるエネルギーを安定的に供給する体制を万全なものとしていく必要があると感じています。このため将来にわたってわが国のエネルギー安定供給を再構築するべく、あらゆる選択肢を確保しておくことが重要だと考えております。この観点からGX実行会議、要は、有識者の皆さまにもご参加いただいて、ぜひ、あらゆる選択肢を排除することなく検討していただきたい。こうしたお願いをしたところであります。その際、これまでと同様に安全性の確保を大前提とする、これは当然のことであると思います。次世代革新炉として、革新軽水炉、新型モジュール炉、高速炉などさまざまな研究開発が進んでいると承知をしておりますが、こうしたことについても専門家において、こうした技術研究について、しっかりと議論をしていただきたい、こうしたことをお願いした次第です。いずれにせよ、さまざまな要素を考慮しつつ、次世代革新炉の開発、さらには運転期間延長などについて年内をめどに専門家の皆さま方等にしっかりとご意見いただきたいと思っています。政府としてはそうした議論をしっかりと見た上で、今後の方針について、明らかにしていきたいと思っています。ですから、今回のGX会議においては、あらゆる選択肢を確保するという観点から、専門家、有識者の方々にご議論をお願いした、こういったことであるということをご理解いただければと思っています」
旧統一教会との関係「党の基本方針として断つ」
――安倍晋三元首相の国葬(国葬儀)に参列する各国首脳との会談が注目されている。
「国葬儀の機会に多くの海外要人が訪日することが見込まれており、国葬儀の前日から翌日にかけて、可能な限り集中的にバイ(2国間)会談を行うことを予定をしております。その際には、安倍元首相が培われた外交的資産をわが国として、しっかりと受け継ぎ、発展させるという意志を内外に示すとともに、相手国からわが国に示された敬意にしっかり応えていきたいと思っています。冒頭、国葬儀の開催について、さまざまなご意見やご批判があるということにも触れられましたが、その点については、先ほど来から申し上げているように、従来から説明は行ってきましたが、まだ不十分だという声にはしっかり応えなければならないということで、国会の場等において、引き続き丁寧な説明に全力を尽くし、国民の皆さまのご理解を得ながら、国葬議を執り行っていきたいと考えております」
――国葬の実施前に警備や接遇の費用の想定金額を示す考えはあるのか。
「式場設営にかかる費用のうち、式壇等については、中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬同様のものを見込んでいるところですが、それに加えて今回、一般献花を実施すること、また、中曽根元首相の合同葬の参列者約600名でしたが、今回の国葬儀は内外から出席者を受け入れ、約6000人程度の規模を見込んでいます。そして、それ以外にも海外から来られる要人のための同時通訳の手配ですとか、なんといっても、セキュリティー対策の経費、こういったものもかかります。そういったことで今回、費用として中曽根元首相の合同葬と比べて5000万円あまり金額が大きくなる、こういった説明をしているところですが、ご質問の趣旨は、それ以外にも警備や海外要人、要人の接遇、こうした費用がかかるのではないか。こういったことについて、どうかというご質問の趣旨だと思いますが、その部分については、毎年度の予算において、警備とか接遇の予算というのは計上しております。あの、今回のこの警備や、この接遇についても、これ過去の合同葬等とも同様でありますが、予算に計上している既定予算の範囲内で対応するということを想定しています。そうした、予算の扱いの中で考えていきたいと思いますが、その具体的な数字については、特に外国要人の方々、いろいろな国々からさまざまな申し出を受け付けているところですが、最終的に外国要人の数がどのぐらいになるかによって、接遇費用、そしてそれに対応する警備の費用、これは、この変わっていくわけですから、その状況をしっかり見極めた上でないと、そうした数字について明らかにするのは難しいというのが現状であると思っています。先ほど申し上げたように、既定予算の範囲内で対応しようと思っていますが、具体的な数字については、そうした外国要人の数等、具体的なものが確定してからでないと、数字を示すことができない。できるだけ早く示し、示すよう努力はしていく。こういった説明をさせていただいていると承知をしています」
――旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係を断つ上で、安倍元首相との関係を検証する考えはあるか。
「先ほど申し上げましたが、今日までの関係については、それぞれ既に点検するようにという指示を出しているわけですが、その点検の結果について、党としてしっかり取りまとめることが大事だということを申し上げています。その中で党として、それをどのように公表して国民の皆さまに説明をしていくのか、これが重要なポイントになってくると思います。ご指摘の点については、安倍元首相がどのような関係を持っておられたのか、ご本人が亡くなられた今、十分に把握するということについては、限界があるんではないかと思っています。ただ、いずれにせよ、党として先ほど申し上げました、方針に基づいて、党全体のあり様について、しっかりと取りまとめていくことは重要であると思いますし、さらに大事なのは、当該団体との関係を断つということ、従来はそれぞれ点検をし、そしてそれぞれが見直しをするという指示を出していたわけですが、それぞれに任せるのではなくして、党の基本方針として断つということを明らかにし、そして党として、所属国会議員に徹底させるということ、これを今一度、確認をした、ここに大変大きなポイントがあるんではないかと認識をしています。ぜひ、こうした点検の結果の取りまとめと併せて、これから当該団体との関係について、疑念を招くことがないように、党として徹底をしていきたいと考えております」
原発新増設「安全性の確保大前提」
――宗教団体の活動をきちんと監視すべきではないか。信仰を持つ親の下で生まれ育った「宗教2世、3世」の問題は
「政治家がそうした社会的に問題を指摘されている団体と、どのように付き合っていくのか、社会的な問題を指摘される団体との関係を断つということ、このことについてもしっかりと対応していかなければいけませんが、まさにもう1点の重要なポイントが、こうした団体によって被害を受けておられる方々に対して、政治、あるいは政府がどのように対応していくのか。これをしっかりと政府として、大きな問題を意識を持って対応していくということ、これがもう1つ、大変重要なポイントになるんだと思います。その後者の部分について、しっかり対応しなければならないという問題の指摘、これは全くその通りだと思います」
「だからこそ政府としましても、法相を議長とする関係省庁会議を立ち上げる。また、消費者庁において、この悪質商法をはじめとする問題についてしっかり対応するということを通じて、被害に遭われている方々に対する相談体制や、救済のあり様について、しっかり対応していかなければならないと思います。政府として、ご指摘の後者の部分についてはしっかり対応していくような努力をしていきたい」
――新型コロナウイルスの対策緩和を判断できる科学的な根拠を公表する考えはあるか。また、緩和後に感染が拡大した場合は再び対策を強化する考えはあるか。
「新たな段階への移行、全体像を示すということで、全国ベースでの全数届け出の見直しですとか、陽性者の自宅療養期間の短縮ですとか、こうした議論を行っているわけですが、あくまでも専門家の皆さんの提言、これを踏まえて検討しているということであります。そうした専門家の意見を無視して進めているというようなことは全くないということ、専門家の皆さんとも意思疎通を図りながら、こうした議論を行っているということ、これはしっかり強調をしておきたいと思います。これまでわが国において6回の感染の波を乗り越えてきました。さまざまな科学的知見、エビデンスが積み重ねられてきました。わが国全体として対応力は強化されていると思っています。併せて、諸外国においてもさまざまな知見が集積されている、こうした国内外において、蓄積された知見を踏まえて、感染防止と社会経済活動の両立、これを強化するべく取り組みを進めていきたいと思っています」
「専門家などによる提言についてもこの観点から行われているものだと認識をしています。もちろん、これは生命を守ることが最優先であり、仮に今後、新たな変異が生じ、新たな大きな変異が生じるとか、結果として、医療体制が逼迫するとか、そういった事態になる場合には、柔軟に対応していかなければならないと認識をしています。ご指摘のように専門家の意見、これもしっかりと取り入れた上で、政府としては、この感染防止と社会経済活動の両立に向けてしっかりと判断を行っていきたいと考えています」
――原発の新増設について。可能な限り原発依存度を低減していくとしていた従来の政府方針を撤回するのか。
「まず2番目の方からお答えすると、可能な限り原発依存度を低減するという方針、これは変わりません。この方針は徹底した省エネや再エネの最大限導入を進め、進めていく中で、震災前の原子力比率が約3割であった状況から可能な限り原発依存度を低減させ、2030年には原子力比率20から22%を目指し、さらには2050年にカーボンニュートラルを達成する、こういった趣旨で、可能な限り原発依存度を低減するというこの方針を打ち出していました。こうした方針は全く変わらないということであります。2030年、あるいは2050年、の目標を達成するために、今回原子力について、次世代革新炉の検討も含め、あらゆる選択肢を排除せず、有識者の皆さま方に検討してもらいたいということをお願いした次第であります。そして、一つ目の安全性の方の話ですが、そうした取り組みを進める際に、これまでと同様に安全性の確保を大前提とするということ、これは当然のことであり、これも変わらないと思っています。科学的な見知から、原子力の安全を確保していく上では、今後とも、独立性の高い原子力規制委員会が厳密に、厳格に規制を行っていくという方針、これは変わらないと思っております。ぜひこうした基本的な部分は維持しながら、エネルギーを安定的に供給する体制を万全なものとするために、あらゆる選択肢を排除せずに議論を行っていきたい、このように思っております」
国葬「時の政府が責任を持って判断」
――ロシアのゴルバチョフ元大統領が死去した。
「ゴルバチョフ元大統領のご冥福をお祈り申し上げたいと思いますが、ゴルバチョフ氏は、ソビエト連邦の最高指導者として第二次世界大戦後の欧州の分断と東西対立の克服に重要な役割を果たし、米ソ間では歴史上初めて、核兵器の削減に合意をし、冷戦を終結に導いた人物であると認識をしております。日本との関係でも、1991年に国家元首として初めて訪日した際に、長崎を訪問したほか、大統領退任後の1992年には広島を訪れており、核廃絶に賛同する世界のリーダーとして、大きな功績を残されていると承知をしています。大きな戦略的ビジョンと、果断な実行力を有していたゴルバチョフ氏が果たした役割、大変大きなものがあると思います。改めて、ゴルバチョフ氏のご功績を偲び、謹んで哀悼の意を表したいと思います」
――国葬儀について客観的な基準を決める予定はあるのか。
「安倍晋三元首相の国葬儀については、先ほども申し上げましたが、内閣府設置法、あるいは閣議決定、こうしたものを根拠として、実施することを決定したものです。そして、この理由についても、先ほど触れさせていただきましたが、憲政史上最長の8年8カ月にわたり、首相の重責を担ったこと、そして民主主義の根幹たる選挙運動中での非業の死であったこと、このことについては、他に例を見ないものであると思います。そしてさらに、先ほど申し上げた、東日本大震災からの復興、日本経済の再生、あるいは外交など、大きな実績を残された。そして、この海外からの評価ということについても、多くの国の議会で追悼決議を行う、あるいは政府が服喪に関する決定を行う、また公共施設のライトアップをはじめさまざまな形で、それぞれの国全体を巻き込んでの敬意と、弔意が表明されています。さらには各国要人から寄せられている追悼メッセージの多くは、日本国民全体に対する哀悼の意を表する、こういった趣旨となっています。こうした状況を踏まえて、わが国としても、敬意と弔意を表す儀式を催し、これを国の公式行事として開催し、国を挙げ、礼節を持って海外からの参列者をお迎えする形で葬儀を行うことが適切である。こうした判断を行ったという説明を行ってきたところであります」
「基準を設けるつもりはないのかというご質問の趣旨でありましたが、こうした状況について、そのときの政府が総合的に判断をし、それを決定するというのが、あるべき姿だと思います。基準をもともと準備をしておいて、それを当てはめるというのではなくして、こうした国際的な状況。あるいは国内における状況、さらには、こうしたお亡くなりになられるまでのさまざまな経緯、こうしたものを総合的に、時の政府が責任を持って判断をする。これがあるべき姿だと思っております。いずれにせよ、こうした理由であったり、経緯であったり、さまざまな手続きであったり、国民の皆さんのさまざまなご意見や、ご批判に対して、政府として、丁寧な説明に全力で努力を尽くしていきたいと思っております」
――冒頭の発言で初心に帰りたいと言及したが、初心を忘れていたという認識があるのか。また、政治に対する信頼が揺らいでいるとは具体的にどういうことか。
「具体的に自分自身が、自民党がどうかということよりも、何よりも国民の皆さんのさまざまな意見や反応を聞く中で、政治の信頼が今、揺らいでいるという雰囲気を感じている、このことを深刻に受け止めるということを申し上げております。初心に帰ってということで、昨年の8月、自民党総裁選挙への立候補、出馬の会見を行いましたが、その際に、信なくば立たず、こうした政治の信頼、何よりも大事だということを強調して、総裁選挙、立候補を表明しました。わが国の民主主義を守る、こういった言葉を使ったと記憶しています。あのときの思いを今一度思い返してこうした国民の皆さんの厳しい声にしっかり応えていく。この思いを新たにしなければいけない。このように思っているところです。ぜひそうした思いを形にできるよう、これから努力をしていきたい、このように思っています」
世論調査の下落「旧統一教会問題、国葬影響」
――旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題は内閣支持率の下落につながるなど政権運営にも影響を与える事態となっている。なぜここまで政治不信を高めることになってしまったのか。自民党の対応にも時間を要した。
「まず世論調査等で支持率が下がっていることについては、先ほど申し上げたように、旧統一教会の問題、国葬儀の問題などがあり、その中で、国の信頼が、失礼、政治の信頼が揺らぎつつある。こうしたことが大きいのだと思っています。旧統一教会の問題になぜ時間がかかっているかということでありますが、これは、世の中において、次々と指摘が行われているように、何十年にわたって長きにわたってさまざまな関係があった、こうしたこの長い関係について、今一度明らかにしていく、その際に自民党として時間がかかってきた。こうしたことではないかと思っています。宗教団体と政治の関係はどうあるべきなのか、こうした基本的な問題にも思いを巡らしながら、どうあるべきなのか、どうあるべきだったのか。こうしたことについて、実態を明らかにしていく、こうした取り組みが、今日まで続けられてきたと思っています。ぜひこうした実態について、党として取りまとめ、明らかにする、そして党の方針として関係を断つ、こうしたことを徹底していくことによって、信頼回復につなげていきたいと思います。合わせてこうしたことに真剣に取り組むのとあわせて、今、わが国は数十年に一度の大きな課題が山積しています。新型コロナウイルス、経済、外交、防衛力、あるいは、少子化問題、こうした重要課題についてしっかりと議論を積み重ね、そして見える形でその結果を出していく。こうしたことを行うことによって、信頼回復につなげていきたい」
――旧統一教会という団体固有の問題なのか。当該団体との関係を断つだけでは済まない問題なのでは。
「今の点、なかったというふうに捉えられたのであれば私の説明不足だったと思います。先ほど3点申し上げました。1点目は、点検した結果の取りまとめ、2点目が、当該団体との関係を断つことでありますが、3点目として、今後、社会的に問題が指摘される団体との関係を持つことがないよう、党におけるコンプライアンス、チェック体制を強化する。これは当該団体だけではなくして、今後社会的に問題がある団体との関係について、しっかりと判断ができる体制を党の中に作っていくという点を申し上げたつもりです。この部分において、ご指摘の点についてしっかり応えていくことは重要だと思いますし、宗教団体であっても、これは社会の一員でありますから、関係法令を遵守しなければいけない。これは当然のことでありますから、政府として、霊感商法等の被害者の対応に万全を期すこと、これももう1点の大きなポイントとして重要な点だと思っています。政治と団体との関係がどうあるべきかという課題と、もう1つは、実際この被害に遭っておられる方がおられる。こうした方々にどう寄り添うのか、相談を受け、そして、救済をするのか、これも政治の大きな役割だと思います。この2点目、後者の部分についても、政府としてしっかり力を入れていくことは重要だと思います。こういった切り口から、まずは、この当該団体との関係について、しっかりと整理しなければならないと思いますが、それ以外の社会的な問題を起こしている団体が、生じた場合にどう対応していくのか、こういったことについてもしっかり政治の責任を果たしていきたい」
――安倍晋三元首相の国葬(国葬儀)について政府は今回、各府省に弔意表明を求める閣議了解を見送った。判断に至った経緯は。
「まず閣議了解についての質問ですが、吉田茂元首相の国葬儀の際には、各省庁における弔意表明に加え、学校、会社、その他一般においても同様の方法により哀悼の意を表するよう協力を要望するため、地方公共団体や教育委員会等を所管する大臣を含め、閣議了解を行った。一方で、今般の国葬儀の実施に当たっては、国民一人一人に弔意の表明を強制するものであるとの誤解を招くことがないように、国において、閣議了解は行われず、地方公共団体や教育委員会等の関係機関に対する弔意表明の協力も、表明の協力方の要望も行う予定はありません。各府省における弔意表明については、葬儀委員長決定として、従来の各府省における弔意表明と同じく、弔旗をこの掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻に黙祷をする。このようにした次第であります」 
●24時間テレビが統一教会の協力を頼った理由…大手メディアと統一教会 8/31
安倍晋三元首相殺害事件の容疑者の“犯行動機”に端を発し、再認識された世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題。旧統一教会による霊感商法はかつて大きな社会問題になった。消費者庁は29日、「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」の第1回会合を開催した。会合はオンラインで行われ、同庁公式YouTubeチャンネル上で生放送された。
検討会は、河野太郎消費者担当相が音頭を取って設置したもの。メンバーは河上正二東大名誉教授(座長)、リンク総合法律事務所所長の紀藤正樹弁護士、前衆院議員の菅野志桜里弁護士、日本脱カルト協会代表理事の西田公昭立正大教授、独立行政法人国民生活センターの山田昭典理事長、日本弁護士連合会の芳野直子副会長、消費生活相談員の田浦道子氏の8人で、毎週開かれる予定という。
河野消費者担当相は「(霊感商法で商品購入を促す手法から、教団への)寄付のようなものに移り始めたという話もあるが、しっかり対応できていたのか。被害をどう未然に防止するか、どう救済していくか、事業者にどのように対応していけばいいか。積極的に、遠慮なく議論していただきたい」と述べた。
購入契機も紙媒体の広告からネット広告、ECへ
同庁の相談窓口に持ち込まれた霊感商法等に関する案件は、2017年度1424件、18年度1559件、19年度1312件、20年度1177件、21年度1435件と1000件を超える水準で横ばいとなっていた。
過去10年間で見ると、東日本大震災直後の2012年度が3267件と最多。以降、13年度2825件、14年度2533件と減少し、現在の水準に落ち着いたようだ。震災直後には、困窮する被災者に付け込む事例もあったという。
月刊誌で「3日以内に願いが叶かないます」と書いてある数珠の広告を見て購入した。数珠に同封されていた手紙に、「使い方の説明があるので電話をしてください」と書いてあったので業者に電話をすると、スクラッチクジを買うように指示された。クジを買ったが、外れだった。
業者にその旨を伝えたら、スクラッチクジを買うときの注意点を教えてもらった。その通りにしたが、また外れだった。震災被災者で仮設住宅に入っていることを伝えたところ、受けとった見舞金の額を聞かれ答えるとすぐに全額引き出すように言われた。
運気を上げるために水晶玉を送ると言われたので引き出した全額を振り込んだ。水晶玉とさらに数珠1つが送られ、言われた通り水晶玉に毎日手をかざして祈り、再度スクラッチクジを買ったが当たらなかった。
電話でその旨を伝えたら「財産に因縁がある。身のまわりをきれいにしないと金運がつかない。浄化石を送るので、現在、通帳にある全額を引き出してくるように」と言われた。もうやめたいと伝えたが、「娘の片腕が無くなったり、交通事故に遭ってもよいのか」と言われ、預金の全額(15万円)で石を買うことにしたが、生活費が無くなるのでやめたい。(2011 年 7 月受付・宮城県・50 代・女性・家事従事者)>(原文ママ)
相談窓口の事例報告を見ている限り、「雑誌の広告」や「新聞折り込みチラシ」などを見て巻き込まれるという事例が目立つ。前述の被災者の事例も「月刊誌の広告」が商品購入のきっかけのひとつになった。だが、最近は「購入契機」のデジタル化も進んでいるようだ。
直近5年間について、同会議で配布された資料「霊感商法(開運商法)に関する消費生活相談情報の分析」によると契約当事者は70歳以上が多く、商品は、従来型の訪問販売形式に加えインターネット通販形式の「占い・祈とうサービス」や「デジタルコンテンツ」の相談件数が相当数に上っていることが明らかになった。
こうした現状に、芳野日弁連副会長は同会合で「長年警告されていたにもかかわらず、なぜ続いてきてしまっているのか。きちんと検証したい」と語った。
教団とメディアの関り?
与野党は所属議員の「教団との接点」に関するスクリーニングに奔走している。大手メディアも連日それを報道し、教団に対する取材攻勢を強めている。そんな中、教団が21、26日公表したプレスリリース『異常な過熱報道に対する注意喚起』『異常な過熱報道に対する注意喚起(2)』がネット上で注目を集めた。教団は次のように述べる。
仮に、当法人および友好団体等が、現在各種メディアで報じられているような『反社会的』で関係を持つことが許されないような団体だったとすれば、各報道機関はその調査能力を総動員して、過去から現在に至るまで当法人および友好団体等に全く関わらないように注意を払ってきた筈です。
しかし、これまでそのようなことは一切ありませんでした。それどころか、当法人および友好団体等が開催するイベントへの取材活動を始め、協賛、後援、寄付、ボランティア派遣等を通じて、実に多くの報道機関が密接に関わって来たことは疑いようのない事実です。
なお、現在、各報道機関と当法人および友好団体等とのこれまでの関わり等について、過去に遡って詳細な調査を進めております。調査結果がまとまり次第、全面的に公表させていただく予定です」(原文ママ)
その第一弾として公表されたのが、『24時間テレビ』(日本テレビ系)のイベントに同教団の信者がボランティアで参加したという内容だった。放送直前の異例のリリースに、「教団報道の急先鋒である読売テレビの某番組への牽制ではないか」と一部報道もあった。
おおむね報道現場の記者や著名なジャーナリストらは、今回の教団の情報発信に「教団による問題の論点そらしだ」「ジャーナリズムはそんな脅しには屈しない」などと猛批判を展開した。だが、「まったく影響がない」というわけではなさそうだ。ある地方局の事業関連部門の担当者は漏らす。
「24時間テレビの件でいえば、教団から指摘されていた地方局からすれば『教団との関係の有無に関心がなかった』というのが現実でしょうね。
社の関連団体主催のチャリティーイベントに勝手連で協力してくれる学生やボランティアを選別することは業務として不可能です。それに『ボランティアをしたい』といって来る人たちに『特定の宗教に入っているか否か』を聞き、選別するというのは憲法問題になりかねません。
事務局の人員のみで、すべて回すのは不可能ですし、アルバイトを雇うというのも予算面から現実的ではありません。だから知人や地域のボランティア団体などに、ボランティア集めをお願いすることになるのですが、そこに教団の関連組織が入っていることは実際、多いのではないでしょうか。
例えば、“世界平和”や朝鮮半島をテーマにした国際交流、SDGs(国連の持続可能な開発目標)などをテーマとしたイベントなどでは、“いつも来てもらっているボランティアの知り合いの知り合い”といった感じで国連認定NGOでもある教団関連組織のメンバーが来ることは少なからずあると思います」
詐欺広告とメディアの歴史
前述の消費者庁の検討会で公表されていた「霊感商法」の事例にもあった、メディア広告と霊感商法の接点に関する点も気にかかる。地方新聞社の元広告局幹部は声をひそめる。
「歌手の桜田淳子さんが1992年に統一教会の信者であることを告白し、合同結婚式に出席したころ、霊感商法が社会問題化していました。当時は、“その手の広告”が間違っても紙面に掲載されないよう(現在の)公益財団法人広告審査協会といった業界団体をはじめ、各社の担当部門が厳しく審査していました。
ネット広告の隆盛、新聞購読者数の減少で、広告への出稿が減っているのは周知の通りです。新聞社は株式会社であり、営利企業です。当然、経営が圧迫されれば、対策を取らなければなりません。“貧すれば鈍する”で20〜30年前は(審査を)通らなかったような広告が最近では掲載されるようになりました。これは全国各地の地方紙に顕著ですが、全国紙でも同じです。
旧統一教会の霊感商法関連商品かどうかはわかりかねますが、かなり怪しげなサービスや商品の広告が掲載するようになりました」
ちなみに新聞に掲載された詐欺広告によって被害を受けたとして、詐欺被害者が各社を訴えた裁判としては「日本コーポ事件」(昭和59(オ)第1129号新聞広告掲載に伴う損害賠償請求事件)がよく知られている。
『別冊ジュリストメディア判例百選〔No.179〕』(有斐閣)によると、1969〜70年にかけて、朝日新聞社、日本経済新聞社、毎日新聞社の3社が発行する新聞に日本コーポのマンション分譲広告が掲載され、これを見た被害者らがマンション購入契約を締結。内金名目で相当多額の代金を支払ったが、日本コーポは倒産。マンションが建設されないまま、分譲マンションの引渡しを受けることも、代金の返還を受けることもできない状態となった。そのため、被害者らが、新聞3紙と広告代理店に対し、債務不履行と不法行為を理由に、損害賠償を求めて訴えを提起したのだという。
この裁判は最高裁まで争われたが、新聞社側の不法行為責任は否定された。しかしこれを契機に広告をチェックする業界団体(前述の広告審査協会の前身組織)が設立されたり、宅建業法の広告に関する項目が改正されたりした。
一方、1990年代には投資ジャーナルグループ提供のテレビ神奈川(TVK)の番組内広告が悪用され、詐欺被害に遭ったとして、被害者がTVKの不法行為責任を訴えるという事案も発生した。裁判の結果、それも否定された。一方、同じころ関西地方のタウン情報誌に掲載された広告の誤りから、第三者に損害が生じたケースで、出版社側の不法行為責任が肯定された裁判もあったようだ。
霊感商法においても被害発生の契機となる事が多いメディアの広告だが、詐欺広告については司法の場で古くから問われ続けているようだ。全国紙の営業部門社員は語る。
「メディアが企業として清廉潔白なんてことはないんじゃないですか。記者は『関係ない』『あくまで取材』というかもしれませんが、教団の機関紙である『世界日報』の記者やそこと関係のある有名アナリストから見解を聞いたり、付き合いがあったりする記者はたくさんいますよ。教団関係者の主張が直接記事になるわけではないにせよ、普段から話をしていれば記事を書く人間の“ものの見方”や思考に“影響がない”とは言い切れないでしょう。
また、それぞれのテーマで一般の人を対象にしたインタビューはたくさんありますよね。例えば、“外国人と結婚して、海外で暮らしている日本人女性”などという事例です。適任者を自分たちだけで探せないと、多方面に人脈がある営業部門に協力要請が来ます。そうして紹介した人の中に教団の関係者がいる場合もあるでしょう。
いずれにせよ、政治家同様の“みそぎ”を求め続けるのであれば、メディア側もノーダメージというわけにはいかないでしょうね。
また教団に限らず、新聞業界が“グレーな団体”とのつきあいが“一切ないのか”といえば……。例えば、ある地方紙では、連鎖販売取引で知られる世界的企業のイベントや会合に、会社の幹部が出席しています。公器をうたうメディアの幹部が出席するのだから、同社のビジネスに社会的信用を付与することになりますよね。
確かに連鎖販売取引は特定商取引に関する法律や無限連鎖講の防止に関する法律などを守っている限り違法ではありません。しかし、相手の了承を得ずに営業したり、勧誘目的を明示したりしない、『ルールと法律を守らないメンバーによりトラブルになった』という事例がネット上で盛んに指摘されていますが……」
政治家もメディア関係者も多くの人間と接点を持つ仕事だ。”教団との関係”の話題は今後も尽きなさそうだ。 

 

●統一教会と自民党 固定票と「悪魔の取引」 9/1
世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下「統一教会」と表記)と自民党議員の関係が、連日話題になっている。殺害された安倍晋三元首相と統一教会の関係はいかなるものだったのか。その究明は喫緊の課題である。
統一教会問題を追い続けて来たジャーナリストの鈴木エイトは、事件前に書かれた「安倍政権下でもたらされた統一教会との“歪(いびつ)な共存関係”の弊害」(『日本を壊した安倍政権』扶桑社、2020年)の中で、すでに両者の関係に注目している。
安倍元首相と統一教会の関係は、官房長官時代に事務所からイベントへの祝電を送った程度で、もともとは深くなかった。むしろ「安倍自身はアプローチを断っていた形跡がある」。しかし、その関係は、第一次安倍政権が崩壊後に変化した。民主党政権が成立し、自民党が下野すると、有力議員たちは政権奪還に向けて動き始め、安倍は二〇一〇年と一二年に、教団関連の政治団体・世界戦略総合研究所(世界総研)が主催した特別集会、シンポジウムに出席。講師やパネリストを務めた。
なぜ、この時期に両者の接近がなされたのか。
ここで重要なのは、安倍元首相の選挙戦略である。政治学者の中北浩爾は、『自民党−「一強」の実像』(中公新書、2017年)の中で、小泉純一郎元首相と安倍元首相の選挙戦術の違いに注目している。
小泉が重視したのは無党派層である。これまでの自民党の支持層を「既得権益」と批判し、「自民党をぶっ壊す」と連呼することで、無党派層の票を大量に獲得した。一方、第一次内閣の失敗を経験した安倍は、小泉の選挙戦術から距離をとり、固定票を積み上げる選挙戦術をとった。
安倍にとっての「敵」は、従来の自民党支持層ではなく、リベラル色の強い民主党だった。そのため、リベラル批判で一致する右派勢力が、安倍にとっての岩盤層となっていった。安倍が首相の座に復帰すると、選挙での勝利を重ねることで、長期政権の土台を築いていったが、この選挙を支えたのが、固定票だった。
中北はここで重要な指摘をしている。「無党派層を重視した小泉政権は、高い投票率の下でこそ勝利したのに対し、安倍政権は低い投票率の下で勝っている」
安倍自民党が勝利をおさめた選挙は、どれも投票率が低い。投票率が低ければ低いほど、野党に対して固定票で上回る与党が、圧倒的に有利になる。すると、おのずと固定票への依存度が高まる。ここに自民党と統一教会の共犯関係が生まれる素地ができあがる。
統一教会は組織票だけではなく、選挙運動を支える人員などを無償で提供した。これに対して安倍政権は、長年にわたって申請を拒んできた統一教会の宗教法人名の変更を、一五年、下村博文文部科学大臣のもと一転して許可した。このような相互関係を、鈴木エイトは「悪魔の取引」と表現している。
ここでポイントになるのは、参議院選挙である。『武器としての世論調査』(ちくま新書、2019年)の著者・三春充希は、「旧統一協会の組織票分布の推定」(note、8月8日公開)において、統一教会の参議院選挙における戦略を分析している。
三春は、統一教会の有権者を八万三千人程度と推計する。参議院の比例代表選挙で政党が一議席を獲得するためには百万票程度が必要となる。しかし、獲得議席がどの候補者のものとなるかは、個人名が記された票の数によって決まる。「自民党の場合、その際に必要となる票は十二万票程度であるため、旧統一協会の票を誰に乗せるかは、自民党の各派閥の中でどのように議席が分配されるかということに関わってくる」。つまり、統一教会のプレゼンス(存在)を最大化することができるのが、参議院比例代表選挙の「非拘束式名簿」なのだ。統一教会はこの方法を通じて、実質的な教団の組織内議員を与党の中に送り込み、政治的影響力を行使してきたと見られる。
統一教会と自民党の蜜月を生み出した背景には、低投票率と選挙制度のあり方がある。有権者もまた、この問題にかかわってきた当事者であることを、自覚しなければならない。
●旧統一教会をたたけば全てが終わるのか?  9/1
安倍晋三元首相銃撃事件の衝撃は、「旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と、誰が・いつ・どう関係したか」という魔女狩りにすり替わり、それも8月10日の内閣改造で一段落した。
しかしそれでは何も学ばないことになる。事件が意味するものは何なのか、政治システムと外交面から吟味してみよう。
あの事件は、戦前の日本で起きた首相・有力政治家の暗殺とは違う。戦前は、日本の行く末に大げさな使命感を持った連中が暗殺に走ったが、今回は個人、そしてその家族の生活を破壊された恨みが山上徹也容疑者を突き動かした。
しかし、旧統一教会の幹部ではなく自民党で旧統一教会の窓口だったとされる安倍元首相を撃ったことで、山上は日本の民主主義体制の暗部を白日の下にさらした。
旧統一教会に限らず、モラルや法に反する団体でも、政治家に票と運動員を提供することでお目こぼしを受けて繁栄し続けることができる。政党のトップに立つ者は、配下の議員たちとそれら団体の関係を取り持つことで権力を維持し、自分の政策を実現していける。
そしてここには、韓国への辛めの対応を主張する自民党の議員たちが、ほかならぬ韓国で発祥した旧統一教会の支援を受け、教団は日本人から資金を巻き上げるというねじれた構造も垣間見える。この構造のしわ寄せで家庭を破壊された者が、構造の頂点に立つ政治家を殺す。
ここでは山上も安倍元首相も体制の被害者に見える。安倍氏は私益のためというより、以前から続く利権構造の中で振られた役割を、清濁併せのむことで果たしていただけなのだから。銃撃事件はギリシャ悲劇のように、大きな運命にもてあそばれて滅んでいく人間たちの物語なのだ。
だが1つ分からないことがある。旧統一教会たたきの論理を突き詰めるなら、安倍元首相の責任も問われるべきだし、国葬の是非も吟味されるべきではないか。
旧統一教会への恨みを安倍元首相に向けるのは論理の飛躍だということで容疑者の山上は精神鑑定中だそうだが、それならば「旧統一教会と関係を持った者は全てバツ。しかし安倍元首相の国葬は不問」という論理も、鑑定を必要とするのでないか?
●自民党が旧統一教会と関係を続けてきた理由 教団信者「選挙パワーは随一」 9/1
自民党と旧統一教会の関係が、安倍晋三元首相に対する銃撃事件をきっかけに次々と明らかになった。両者を結びつけるものは何か。証言で解き明かす。AERA 2022年9月5日号の「自民党と旧統一教会」の特集記事から紹介する。
首都圏を選挙区に持つ中堅議員は、自民党が下野した2009年の衆院選で落選後、こう言って、後援会を実質的に解体した例がある。
「あれだけ一生懸命、後援会を作ったのにムダだった」
その議員は、いま、教団との深い関係が相次いで明らかになっている。
人手不足で教団と関係
もちろん中選挙区時代にも、岸信介元首相や中曽根康弘元首相のように教団と関係の濃い大物議員はいた。しかし、それは、現在の若手議員のように自らの弱い選挙基盤を補うものではなく、「日本に共産主義政権を樹立させない」という反共思想での共鳴が大きかった。
派閥間の力関係もあった。
自民党の派閥のうち、田中角栄の流れをくむ経世会(現平成研究会)や、池田勇人が創設した宏池会が「本流」とされる一方、岸に連なる清和会は「傍流」とされた。自民党関係者は言う。
「業界や財界など主要な団体は本流に握られ、傍流の清和会は宗教団体に頼るしかなかった」
岸の孫であり、清和会を引き継いだ安倍氏と教団の関係は、この流れにある。
しかし、現在、教団との関係が明らかになっている自民党議員は、かつての岸や中曽根のようなイデオロギー的同調も、安倍氏のような歴史的なつながりも薄いだろう。ポスター貼りや戸別訪問、電話作戦などの選挙活動のための人手が乏しい議員が、教団に頼るようになっているのが内実ではないか。
教団信者が選挙で見せるパワーは随一のようだ。元地方議員の証言で分かる。
民社党に所属した元地方議員の男性は、1990年代に初出馬した際、教団の支援を受けた。日米安保条約をめぐる対立で社会党から分裂して生まれた民社党は、自民党以上に右派的な議員もいた。それだけに、教団の支援に違和感はなかった。
民社党は、民間労組の支援が中心だった。男性は言う。
「労組の組合員も活動量は大きいが、教団信者は活動量に加え、活動力が抜群だった」
実動部隊を失う恐怖
組合員は選挙が告示されると、すべての公営掲示板に即座にポスターを貼ってくれる。駅頭でビラを配ることにも協力的だが、教団の力は、比較にならなかった。男性は振り返る。
「戸別訪問で、ポスターを貼ってもらう活動力に舌を巻いた」
10軒回っても、ポスターを受け入れてくれるのは1軒あるかどうか。費用対効果が悪く、組合員は嫌がる。しかし、教団信者はいとわず、次々とポスター貼りの依頼を成功させていた。
「霊感商法で培われた『セールストーク』や嫌がられてもお願いできる押しの強さがあった」
教団からは信者派遣の報酬を求められた。男性は言う。
「当選後に『使える』と思った政治家は無報酬だろうが、私のような野党議員は『使えない』という判断をしたのだろう」
教団との関係は最初の選挙だけ。その後、別の宗教団体の支持を得たが、選挙が近づくと、自分たちの施設内にポスターを貼ってくれる程度で、統一教会の信者ほどの熱量はなかった。
男性は、あちこちでポスターが貼られている議員をみると、こう考えてしまう。
「従業員が多い建設業者の支援を受けているか、お金で業者にお願いしているか、教団との関係が深いか。どれかだろう」
教団が全国に持つ票は、多く見積もっても10万票程度と言われる。宗教団体の創価学会を母体に持つ公明党は、衰えたとはいえ全国で600万票を下らない。自民党関係者は言う。
「教団票なんて、学会票に比べれば、たかが知れている。党として関係を全面的に断っても痛くもかゆくもない。ただ、弱い後援会しか持たない議員にとっては票数の問題ではない。教団と縁を切ることは死活問題。選挙の実動部隊を失う恐怖があるのだろう」
●創価学会が地方HPを相次ぎ閉鎖「旧統一教会問題と関係あるのか」真相直撃 9/1
「関西創価学会や北陸創価学会など、各地方で開設していたホームページの多くが、8月末で閉鎖されるそうですよ。何があったんだろうね。まさか統一教会問題と関係があるのか……」(自民党関係者)
8月下旬、永田町から “怪しげ” な話が飛び込んできた。
7月8日に発生した安倍晋三元首相の銃撃事件を受け、自民党議員と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の “親密すぎる” 関係に批判が集中。たまらず岸田首相は、「関係を断つことを党の基本方針」とすると宣言した。
旧統一教会への批判に敏感なのが、創価学会を支持母体とする公明党だ。山口那津男代表は、8月30日に会見で「この問題は政治と宗教、一般の問題ではない。社会的に問題を抱える、トラブルを多数抱える団体と政治のあり方、政治や政治家の関わり方の問題だ」 と発言。
“宗教” と “政治” の関係をめぐり、創価学会に火の粉が飛ばないよう釘を刺したタイミングでのサイト閉鎖だけに、何があったのか訝しむ声が出ているのだ。
本誌が、創価学会のサイトを確認してみると、そもそも地方のサイトは、北海道、東北、東京、第2総東京(多摩地域)、東海道、信越、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄と全部で14種類あった。
そして、関西創価学会のサイト「常勝ウェーブ」を開くと、冒頭に「【重要】サイト終了のお知らせ」のタイトルがあり、以下のような文面が表示されていた。
《当サイトは開設以来、多くの皆様にご利用いただきましたが、諸般の事情により、【2022年8月31日】を持ちまして関西創価学会ホームページ『常勝ウェーブ』を終了させていただきます》
サイト閉鎖は事実のようだ。他の地方サイトも見てみると、同様の文面で、8月末で閉鎖すると書かれていたのは、関西を含め東京、第2総東京、信越、中部、北陸、中国、四国の計8カ所だった。
ただし、終了の告知日は東京が6月13日、四国は6月22日、第2総東京は7月5日となっており、安倍晋三元首相が銃撃された7月8日以前にサイト終了が決まっていたことになる。
創価学会広報室にサイト閉鎖について尋ねると、広報室は文書で以下のように回答した。
「当会では、様々な情報を迅速かつ正確に発信するために、1996年1月に公式サイトを開設しました。以来、時代の進展にともないリニューアルを続け、コンテンツの充実を図っています。近年では2019年『聖教電子版』の開設、2020年『創価学会グローバルサイト』の新設、2021年『創価学会公式サイト』のリニューアル。また、各種SNS(YouTube、インスタグラム、Facebook)に公式アカウントを開設しています。各地のサイトについては、こうした刷新の一環として再編を検討しています」
つまり、今回のサイト閉鎖は “再編” の一環だということだ。創価学会関係者が補足する。
「これまでそれぞれの地域で発信していたニュースを、いまでは聖教新聞の電子版でほぼフォローできる。電子版で全部の地域のニュースや情報を見ることができるようになったので、2004年に開設された各地のホームページは、はその役目を終えたと判断したということのようです」
さらに創価学会に詳しいジャーナリストの乙骨正生氏はサイト終了の背景についてこう話す。
「以前、谷川佳樹主任副会長が、外資系コンサルタントを導入してポスト池田大作の創価学会の戦略策定をおこなった際、無駄な経費の見直しがおこなわれたと聞いています。創価学会は国政選挙における比例区票を自らの勢力を計るバロメーターとしています。2005年の郵政解散総選挙での公明党比例区898万票に比べると、昨年の衆院選、今年の参院選は711万、618万と激減しており、昨年暮れの寄付もコロナ禍の不況でかなり減少したと言われています。学会員が減少し、寄付も減少するなかで、無駄な経費を見直すという傾向は強まっています。その観点から各地域のサイトを見ると、聖教新聞の地方版の域を出るものはなく、デジタル化・SNS全盛のなかで有効な機能を発揮しているとは思えない。そこで、無駄を削り、新たなデジタル戦略を立て直す観点から終了になったのではないでしょうか」
信者からの高額献金や、霊感商法で “金儲け” するよりは、粛々と経費を削減するほうがよっぽど健全か。
●『仰天ニュース』統一教会問題を追及!関係暴露後も“攻めの姿勢”貫く日テレ 9/1
8月30日放送の『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)が、統一教会(現在は世界平和統一家庭連合)を特集した。統一教会から“付き合い”を暴露されても、追及の手を緩めない日本テレビの姿勢に称賛の声が上がっている。
安倍晋三元首相(享年67)の銃撃事件を契機に政治家とのつながりが次々と明るみになっていた統一教会。かねて問題視されていた統一教会による霊感商法や多額の献金についても再び注目が集まり、各メディアはその実態に迫ろうとしていた。
「なかでもどのテレビ局よりも“攻めの姿勢”で統一教会に関する報道を行っていたのが日テレ系列局の読売テレビが制作する『ミヤネ屋』でした。連日、ジャーナリストの鈴木エイト氏と全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹弁護士を招いて、舌鋒鋭く問題に切り込む姿勢は視聴者からも評判で、Twitter上では《#ミヤネ屋頑張れ》というハッシュタグまでできていたほどです」(社会部記者)
そんななか、8月25日に統一教会は【異常な過熱報道に対する注意喚起(2)】と題するプレスリリースを発表し、日本テレビへの“反論”を表明した。
日本テレビを代表する番組の一つである『24時間テレビ』について、《当法人の女性信徒がボランティアスタッフとして7年間にもわたって関わり、番組ボランティアをまとめる中心的な立場で活躍していた》と明かした。また、教会側が《番組作りに協力し、密接に関わってきたことは疑いようのない事実》とも主張したのだ。
統一教会を追及する立場から一転して、関わりを“告発”された日本テレビ。ネット上では「日テレアウト」「ブーメラン」といった批判の声が相次いだ。
統一教会側の“反撃”を受け、追及の手をゆるめるかと思いきや、日テレはそうはしなかった。30日放送の『仰天ニュース』で、統一教会にのめりこんだ女子高生のエピソードを紹介したのだ。
「番組では、統一教会の名前を実際に出した上で、セミナーに参加した女子高生が“自由恋愛は罪だ”という教団の教えに触れ、家族や恋人を捨てて教会の活動にのめりこんでいくという内容を放送。他の信者との共同生活や彼女が行っていたという霊感商法の実態も、詳細に伝えられました。
日テレは統一教会の暴露に対して、事実を否定した上で『一般的に参加される方の個人的な思想・信条について確認することはいたしません』と書面で真っ向から反論。局内でも、暴露に対しては『放っておけばいい』というような雰囲気だと聞いていますし、今後も追及していくと思います」(テレビ局関係者)
統一教会との接点を明かされていながら、情報番組や報道番組のみならずバラエティ番組でも統一教会の問題点を指摘し続ける日本テレビ。その姿勢にTwitter上では称賛や応援の声が相次いでいる。
《日テレは色々と覚悟を決めたのかもな。これから統一教会からの反論の暴露が出るかも知れないけど報道は負けないで欲しい》《すごい……統一教会のことやるのか!!せめるな、仰天、日テレ》《昨日の日テレの世界仰天ニュースは凄かった。統一教会に対抗する姿勢が素晴らしい。日テレには頑張ってほしい》 

 

●岸田内閣の支持率、急落47% 国葬・旧統一教会やコロナ対応が響く  9/2
8月末の朝日新聞の全国世論調査で、岸田文雄内閣の支持率は47%(前回7月調査は57%)に急落しました。不支持率は39%(同25%)に跳ね上がり、内閣発足以来最高だった2月の回答の30%を超えました。
内閣を直撃したのは、賛否が割れる国葬、後手後手にまわった宗教団体への対応。国民生活に直結する新型コロナウイルスや物価高への対応も、ボディーブローのように効いています。
そして夏の終わりに表明した原発新増設はどう受け止められたのでしょうか。世論調査をじっくり読み解きます。
安倍元首相の国葬「賛成」4割「反対」5割
8月27、28日に実施した朝日新聞の全国世論調査(電話)で、9月27日に実施される安倍晋三元首相の国葬について尋ねると、「賛成」は41%で、「反対」は50%でした。
男性は賛成45%、反対47%とほぼ並んだのに対し、女性は賛成37%、反対53%と差がありました。
年代別でも違いがあり、18〜29歳は64%:30%と賛成が倍以上だったのに対し、60代以上では逆に3割:6割と反対が倍になりました。
各メディアの調査は方法も質問文も異なるので、単純な比較はできないものの、岸田首相が国葬の実施を表明した7月の賛否の割合は、おおむね5割:4割という報道もありました。
しかし、8月に入ると、次第に反対が増える傾向がみられます。
朝日新聞の調査でも反対が多かったものの、圧倒的多数というわけではありません。
ただ、「国葬に反対」と答えた人の内閣支持率は29%と3割を切り、不支持率は60%に達しています。支持率低下に影響したのは間違いありません。
旧統一教会問題への対応「評価しない」65%
政治家と宗教団体の「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」を巡る問題への岸田首相の対応も政権に打撃を与えました。
対応を「評価する」人は21%で、「評価しない」は3倍以上の65%を占めました。「評価しない」人の内閣支持率は35%で、不支持率は53%にのぼります。
複数の政治家が、旧統一教会の関連団体のイベントに出席したり、選挙の支援を受けたりしていたことが連日メディアをにぎわせています。
特に自民党は、萩生田光一政調会長や閣僚らと教団との接点が問題になり、岸田首相は「自民党は、社会的に問題が指摘されている団体との関係を持たない」と表明せざるを得なくなりました。
今回の世論調査で、「政治家は旧統一教会との関係を断ち切るべきかどうか」を尋ねたところ、「断ち切るべきだ」は82%に達し、「その必要はない」の12%を引き離しました。
それでは、「自民党の政治家が、旧統一教会との関係を断ち切れると思うかどうか」と聞いたところ、「断ち切れる」は16%にとどまり、「断ち切れない」は76%を占めました。
岸田首相は、党として国会議員と教団との関係を調査する考えは持っていませんでしたが、批判に耐えきれず、急きょ8月26日になって方針を転換。
党として実態を把握するための通知を出しました。しかし、こうした後手後手の対応は国民にすっかり見透かされているようです。
政府のコロナ対応「評価しない」49%
朝日新聞の世論調査では、新型コロナウイルスが蔓延してからの2年半、ほとんど毎回、政府の対応の評価を問う質問をしています。
今回の調査では「評価する」は45%(前回7月調査は57%)で、「評価しない」は49%(同34%)でした。
「評価しない」は岸田内閣では過去最高だった2月の44%を上回りました。「評価しない」が「評価する」を上回ったのも初めてです。
第7波への対応に不満を抱く人たちの岸田内閣への批判は強く、「評価しない」人の内閣支持率は30%で、不支持率は倍近い58%でした。
これまで内閣支持率の動向は、政府のコロナ対応評価とリンクしていると見られてきましたが、今回もその通りになりました。
物価高への対応「評価しない」67%
一方、ロシアのウクライナ侵攻などを受けた物価高も収まる気配がありません。
物価高に対する岸田首相の対応については、「評価する」は21%で、「評価しない」は67%にのぼりました。
5月の調査でも、評価する23%・評価しない66%で、3人に2人が「評価しない」と答える状況は定着しつつあります。
さらに調査を詳しく見ると、内閣を見る目は明らかに厳しくなっています。
5月に「評価しない」と回答した人の内閣支持率は52%と5割を超え、不支持率は35%だったのに、8月に「評価しない」と述べた人の支持率は38%に低下、不支持率は50%に上昇しています。
原発の新増設に「反対」58%
野党から「無策無敵」と揶揄されることもある岸田首相が、前のめりになったのは、最近では安倍元首相の国葬の実施と原子力政策転換の決断でした。
首相は8月24日に突然、原発の新増設や建て替え(リプレース)について検討を進める考えを明らかにしました。
今回の調査では、原発を新設したり、増設したりすることに「賛成」と答えた人は34%で、「反対」の58%が上回りました。
電気料金が値上がりし、節電要請も出された今夏なら国民の理解を得やすい、と首相が思ったのかどうか分かりませんが、もしそうだとしたら、裏目に出た形になりました。
ただし、「反対」と答えた人の内閣支持率は46%で、不支持率は45%。今回の調査では内閣支持率に大きな影響を与えたとは言えません。
しかし、この問題を巡っては、男女差があり、男性は賛成が44%、反対が50%と賛否が接近しているのに対し、女性は賛成が24%で、反対は66%と倍以上を占めました。
岸田内閣の特徴の一つは、女性の支持率が比較的高めなことです。今回の調査でも男性の支持率は46%で、女性の支持率は48%でした。
その女性の支持が離れていくようだと、岸田政権にも黄信号がともり始めます。
物価高への首相の対応を「評価しない」と答えた人の内閣支持率が低下したのと同じような変化が、原発新増設を巡って生じる可能性もないわけではありません。
岸田首相「政治の信頼が揺らぎつつある」
今回の調査後の8月31日、岸田首相は各メディアが報じた支持率低下について「旧統一教会、国葬の問題などがあり、政治の信頼が揺らぎつつある、こうしたことが大きい」と言及。
国葬については「初心に帰って、丁寧な説明に全力を尽くす」、旧統一教会問題では「過去を反省し、しららみを捨て、関係を断つよう徹底する」と述べました。
政権を再浮上させられるかどうかは、まず、この約束を果たせるかどうかにかかっていると言えるでしょう。
●自民党の「絶縁宣言」で思い出される 安倍元首相が民主党に浴びせた言葉 9/2
「守ることができない議員がいた場合は同じ党では活動できない」
8月31日の党役員会で、所属国会議員に対し、今後は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を絶つよう徹底するなどとした基本方針を確認した自民党。茂木敏充幹事長は記者会見でこう説明し、方針を順守できない議員に離党を求める可能性に言及した。
同党は既に祝電送付や会合出席、選挙支援など8項目にわたり教団や関連団体との関係を尋ねるアンケートを所属議員に配布し、9月2日までに回答するよう求めている。
だが、アンケートはあくまでも各議員の「個別点検」によるもので、ネット上では、<旧統一教会系の秘書が「関係ありません」とアンケートに答えるわけ?>、<どこまで意味あるの>などと実効性に対する疑問の声が出ている。
岸田文雄首相(党総裁)は「所属議員は過去を真摯に反省し、しがらみを捨て当該団体との関係を絶つことを党の基本方針とし、徹底する」と指示していたが、選挙に勝つために「反社会的勢力」とも指摘されている教会と結んだ両者の「絆」は果たして断ち切れるのか。
そんな中、あらためてネット上で拡散しているのが、2016年3月の自民党大会での安倍晋三元首相のあいさつだ。安倍氏は翌4月の衆院北海道5区補欠選挙と夏の参院選を見据え、当時の民主党と共産党が共闘して戦うことについて、こうけん制していたのだ。
「選挙のためだったら何でもする。誰とでも組む。こんな無責任な勢力に負けるわけにはいかない」
ちなみに2016年の参院選で、安倍氏と近しい関係にあった旧統一教会の友好団体から支援を受けた、とメディアの取材に明かしていたのは自民党の前参院議員の宮島喜文氏だ。
<いやはや、まさに選挙のためだったらカルト教団とも手を組む張本人だったな>
ネット上では、安倍氏の発言を揶揄する言葉が続々と投稿されている。
●旧統一教会問題、幕引き見えず 「絶縁」宣言、実効性に疑問 自民 9/2
岸田文雄首相が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との「絶縁」を宣言した。
教団と党所属議員の関係が次々と明らかになり、内閣や党に対する世論の批判が強まっていることへの危機感からだ。ただ、具体的な対応策をめぐっては実効性を疑問視する声が早くも出ており、問題の幕引きにつながるかは不透明だ。
「自民党総裁として率直におわびを申し上げる」。先月31日、新型コロナウイルスの療養明けに合わせて記者会見に臨んだ首相は、テレビカメラの前で頭を下げた。
首相は会見で(1)党所属議員と教団の関係の点検結果をまとめて公表(2)関係を断つよう党内に徹底(3)社会的に問題とされる団体と関係しないよう党のチェック体制を強化―の3点を党に指示したと説明した。同じころ、茂木敏充幹事長も党本部で会見し、指示を踏まえた具体策を発表。「守れない議員は同じ党で活動できない」と強調した。
一連の段取りは先週来、首相が療養中に茂木氏と電話で連絡を取り合って練り上げた。「電話は1日1回ではきかないほどだった」(首相周辺)。
もっとも、自民党の対応策には早くも疑問の声が出ている。教団との関係点検は茂木氏も「調査ではない」と明言しており、各議員の自己申告任せなのが実情。実際、党内からは「教団関係と知らなかった団体との接点を報告するつもりはない」(中堅)との本音が漏れる。閣僚経験者は「点検が不十分なら、どんどん深みにはまる」と懸念を示した。
地方議員は点検対象になっておらず、立憲民主党の泉健太代表は1日、「不十分だ」と批判した。共産党の志位和夫委員長は、首相が安倍晋三元首相と教団の関係の検証に否定的だったことに触れ、「ふたをすることは許されない」と非難した。
関係断絶をどこまで徹底できるかも不透明だ。7月の参院選で教団から組織的支援を受けたとされる井上義行参院議員は31日、教団の賛同会員を辞めたと明かしたが、信者はボランティアなどとしてさまざまな陣営に入り込む。別の閣僚経験者は「選挙の手伝いに来てくれる人たちにいちいち信者かどうか確認するのか」と憤る。
ベテラン議員によると、地方には信者の議員も少なくない。「関係断絶を強く求めれば信教の自由に抵触しかねない」(党関係者)との指摘もある。教団以外の問題団体と関係を持たないようにするためのチェック体制をめぐっても、基準が不明確で「問題団体の線引きは難しい」(同)。
一方、野党は山際大志郎経済再生担当相に照準を合わせつつある。山際氏はネパールなどでの教団関連イベントへの出席について「出席したと考えるのが自然だ」などと曖昧な説明を繰り返している。
公明党の北側一雄中央幹事会長は1日の会見で「しっかり説明責任を果たしてほしい」と苦言を呈した。与党内では「山際氏は持つのか」との懸念も出ている。 
●自民党が旧統一教会に「縁を切る」と言えないワケ…「安倍家の血脈」 9/2
自民党の「旧統一教会汚染」が次々と明るみに出ている。だが議員らは「関係を断つ」となかなか言えない。それもそのはず、骨がらみの病巣は党の根幹に巣食っているのだ。当時を知る大物たちが語る。
弱い議員に目をつけて
「俺は(旧統一教会教祖の)文鮮明とも(その妻で現総裁の)韓鶴子とも会ったことはないが、警察で『裏公安』のトップを張っていたから、彼らの『反共思想』はよく知っていたよ。昔の自民党も反共を掲げていたから、多くの議員が警戒することなく応援してもらったり、『世界日報』(旧統一教会系団体が発行する新聞)の取材を受けていたんだ。
本当はもっと早く彼らを取り締まるべきだった。ただ憲法には信教の自由があるから、慎重にならざるを得ない。今はおとなしいが、創価学会だって昔は仏壇を壊したり、むりやり折伏(入信させること)したりしていた。宗教に国家権力が踏み込むのは、簡単なことじゃないんだ」
こう語るのは、昭和から平成の政界裏面史を赤裸々に記す『永田町動物園』(講談社)を昨年刊行した、元自民党政調会長の亀井静香氏だ。
名前を変えて生き延びた
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党との「ズブズブの関係」が国民に知れ渡り、政権支持率が急降下している。
自民党議員の多くは、旧統一教会を「反社会的団体とは知らなかった」「選挙で勝つため、詳しく知らずに協力してもらった」と語る。だが後述する通り、両者の関係は半世紀以上前まで遡る根深いものだ。中曽根康弘内閣で労働大臣を務めた山口敏夫氏が言う。
「旧統一教会と自民党は『複合汚染』なんだよ。頭の先からケツの穴までお互いに絡み合い、繋がっているということだ。当初は国際勝共連合と名乗り、反共を唱えてうまく取り入って人脈を作った。そこから統一教会、世界平和統一家庭連合と時代ごとに名前を変えながら、カメレオンの如く生き延びてきた。
バカなのは自民党結党時の指導部だ。文鮮明なんて本当は反日主義者なのに、反共という言葉にごまかされて、正体を見抜くことができなかったんだから」
最大の武器は「運動力」
彼らが自民党に食い込む上で最大の武器としたのが、選挙における圧倒的な「運動力」だ。安倍政権でIT政策担当大臣を務めた、元衆議院議員の竹本直一氏が明かす。
「私の選挙区がある大阪は旧統一教会の関係者も多かった。正月などのイベントで『挨拶だけでいいので、登壇してくれませんか』『そのかわり、選挙の電話作戦は任せてください』と言ってくるんです。特に('93年総選挙までの)中選挙区時代には、後援会が弱くカネがない議員は、他派閥の議員に勝つためにも、タダ働きしてくれる国際勝共連合(旧統一教会の関連団体)の人たちを頼っていた」
彼らは選挙に弱い議員に目をつけ、2人組で議員事務所を訪ねる。秘書が面会を渋ると、こうしつこく頼み込んでくる。
「勝共連合は、共産主義に打ち勝つため日々活動しています。共感していただけるなら、運動をまとめたビデオがあるので見ていただけませんか」「選挙で人が足りなければ、ウチが出します」
まさしく「選挙マシーン」
自民党候補者を政界へ送り込み、共産主義を打破する。それが神、さらには「お父様」と呼ぶ文鮮明師のための使命――そう心の底から信じている旧統一教会のスタッフは、永田町では「選挙マシーン」とみなされてきた。自民党ベテラン議員秘書が証言する。
「私も一緒に働いたことがありますが、彼らは朝から晩まで有権者に電話をかけまくり、罵倒されても絶対にめげない。ポスターも一人で何百枚と貼ってくれる。やっぱり霊感商法で信者を獲得するノウハウと根性が生きているんだろうな、と思ったものです。選挙カーや議員の移動の際の運転手として入る信者も多かったですね。一言も話さず黙々と運転し、暑い中で汗まみれになりながら、何時間でも車の中で待っているんです」
有力議員の事務所に信者が秘書として入り込む例が増えたのが、'80年代のことだ。具体的には当時、大蔵大臣や外務大臣を歴任した渡辺美智雄氏、自民党から新進党へ移った衆議院議員の新井将敬氏、建設大臣などを務めた同・大塚雄司氏などの事務所に、旧統一教会系秘書の姿があったと報じられている。
「中には各議員と教団とのパイプ役となる、やり手の秘書もいました。一方で、選挙で使う名簿を彼らが霊感商法に利用しているという噂も絶えずありました。党内にも問題視する人はいましたが、選挙に勝てばウヤムヤになるし、やっぱり統一教会はいい、強い、となる。そうして、なあなあで現在に至るというわけです」(前出の秘書)
安倍晋太郎からの電話
自民党内でも旧統一教会の力を最大限に活用していたのが、現在の安倍派=清和政策研究会である。最近も'13年の参院選で、安倍晋三元総理の地元・山口出身で比例区から出馬した北村経夫参院議員を、旧統一教会信徒が期日前投票で後押しした疑惑が報じられている。清和研元幹部の衆院議員が、匿名を条件に明かす。
「派閥内で旧統一教会の勢力が目に見えて大きくなったなと感じたのは、親分(会長)に(安倍晋三元総理の父である)安倍晋太郎先生が就いた'86年でした。先代の福田(赳夫元総理)さんから派閥を継いだ安倍先生は、求心力を高めて田中(角栄)派に対抗するため、選挙に力を入れたんです。
選挙が近づくと、安倍先生の秘書から各所属議員の選対秘書に連絡がきて『何人欲しい? 』と聞いてくる。旧統一教会系が10人くらい入っている事務所が多かったですね。ボスが自ら派遣してくれるんだから、みんな安心して受け入れる。しかも選挙では寝る間も惜しんでビラ配りやポスター貼りをしてくれるんだから、断る理由もないですよ」 ・・・
●金丸信氏が教祖入国≠主導、旧統一教会と政界の関係 9/2
旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と、政界やメディアなどとの関係が取り沙汰されている。先週末には、日本テレビ系「24時間テレビ」のボランティアスタッフとして、信徒らが7年間も参加していたことを教団側が公表した。
安倍晋三元首相は、旧統一教会に支持してもらっても、抑制的な接触に留めており、有利な計らいとも無縁だったようだ。「国葬(国葬儀)」を行うのだから、岸田文雄首相は国民に説明すべきだと思う。それをしないから内閣支持率も下がっている。
旧統一教会が、強い批判を浴びたのは1990年代前半である。冷戦下では北朝鮮を批判していたのに、91年に教祖の文鮮明氏が訪朝してから「南北統一」に転換した。このことで資金を必要としたのか、大規模な合同結婚式(92年)や霊感商法に走った。
文氏は、米国で脱税の罪で実刑判決を受けたため、日本に入国できなかった。ところが、宮沢喜一政権時代の92年、政治的判断で入国が認められた。当時、竹下登氏、小沢一郎氏とともに「金竹小」の3人組で、宮沢政権に力を持っていた金丸信氏の主導という。
金丸氏は90年、自民、社会両党の「金丸訪朝団」で北朝鮮を訪問し、金日成(キム・イルソン)主席と会談した。朝鮮労働党との3党共同宣言には拉致問題の記述はなく、北朝鮮に有利な国交回復で合意していた。
文氏が来日中に会談したのは、金丸氏と中曽根康弘元首相で、中曽根氏は前年の合同結婚式にも祝辞を送っていた。
このとき、岸田首相は、宮沢首相の側近で姻戚でもあった父、文武議員の秘書だった。安倍氏は父、晋太郎元外相が亡くなった後、立候補準備中であり、文氏の入国に関与していない(拙著『家系図でわかる 日本の上流階級』清談社)。
その後、旧統一教会に対し、「解散命令を含む厳しい措置がとられてしかるべきである」という国会の質問主意書が出された(94年6月23日)が、答弁書(94年7月12日)で、「反社会的な団体であるかどうかについて判断する立場にない」などと、何もしなかったのが、自民党と社会党、新党さきがけが連立した村山富市内閣である。
このとき、鳩山由紀夫氏や菅直人氏、枝野幸男氏らは新党さきがけ幹部だった。2012年12月にスタートした第2次安倍政権では、消費者裁判手続特例法と消費者契約法改正が施行され、霊感商法への規制強化が行われた。一方、民主党政権下では、こうした動きは見られない。12年以降、安倍氏が凶弾に倒れるまで、国会会議録検索システムでは衆参両院で「統一教会」が取り上げられたのは5回しかない。
いま安倍氏を厳しく批判している前川喜平・元文科事務次官の甥、自民党の中曽根康隆衆院議員と旧統一教会の関係も発覚した。前回衆院選前の21年9月、群馬県内にある旧統一教会の教会で開かれた激励会に出席していた。きっと、重大な問題とは思われていなかったのだろう。 
●旧統一教会問題 安倍氏調査が不可欠だ 9/2
岸田文雄首相(自民党総裁)が党所属議員と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との接点を調査する方針を表明した。しかし、故安倍晋三元首相に関しては否定的だ。教団との不透明な関係の中核にいた安倍氏について調べなければ、安倍政権の評価が定まらず、国葬の根拠を欠くのではないか。
首相は八月三十一日の記者会見で、教団との関係が国民の疑念を招いたとして「総裁として率直におわびする」と陳謝し、教団との関係を断つ考えを強調した。当然とはいえ遅きに失した判断だ。
自民党と教団との関わりの源流は岸信介元首相に遡(さかのぼ)り、孫の安倍氏まで引き継がれた。関係の深さを指摘される議員が安倍派に集中していることも偶然ではない。
安倍氏が教団側の組織票を自派の議員や候補に差配していたとの証言も党内に複数ある。
二〇一六年の参院選比例代表で当選した議員は今年七月の改選に当たり、安倍氏から前回のような教団の組織的な支援は難しいと伝えられて立候補を断念。代わりに第一次安倍政権の首相秘書官だった井上義行氏が教団の支援で参院議員に返り咲いた。
文化庁が教団の名称変更を認めたのも第二次安倍政権の一五年。安倍自民党が一三年の参院選、翌一四年の衆院選に連勝し「安倍一強」が固まった時期と重なる。当時の首相官邸や文部科学相らの関与や安倍氏への「忖度(そんたく)」がなかったのか、解明が必要だ。
そのためにも安倍氏と教団との関係を調査対象に加えなければ、画竜点睛を欠くのではないか。
首相は安倍氏と教団との関係調査について「本人が亡くなられた今、十分に把握することには限界がある」と述べた。関係が明らかになれば、安倍氏の国葬への反対論が強まりかねないと考えて調査を手控えるのであれば、教団と絶縁する決意を疑う。
首相は、安倍氏の国葬に関する国会の閉会中審査に自ら出席し、説明を尽くす考えを示した。
とはいえ、教団との関係も含む安倍氏の功罪、根拠法令のない国葬の是非、国会の議決を経ず、全体の金額さえ分からない多額の費用を税金から支出することの妥当性など、論点は多岐にわたる。
とても一日限りの閉会中審査では消化しきれまい。野党の要求に応じて臨時国会を早期に召集し、徹底的な審議が必要である。 
●「知事の立場では関係を絶つとは言えない…」 新田知事 9/2
国会議員や富山県内の自治体トップが相次いで旧統一教会との関係断絶を明言する中、新田八朗知事は2日の記者会見で、政教分離や県民にも信者がいることを理由に、知事の立場では関係を絶つという発言はできないとしました。
毛田千代丸キャスター「岸田総理が旧統一教会との関係を絶つことを党の基本方針として発表されました。知事としての受け止めをお願いします」
新田知事「そうですね。あれは自民党総裁としてそのようなご発言をされたのだというふうに思っております。私も党費を払っている党員ですので、ひとりの政治家としては、そういうようなことを受け止めたいと思っています」
毛田「消費者庁や法務省では調査が行われていますが、先日の会見では知事としては結果を見守りたいという発言がございました。ただこの調査というのは、霊感商法だとか多額の献金による家庭崩壊という社会的な問題にあるとの前提にもとづいて行われていると思うんですけど、国の厳しい対応と、いま関係性を明言しない対応というのは、一歩引いた対応になるのかなとも受け取れるんですけどもなぜでしょうか」
新田知事「憲法で政教分離の原則というのがあります。特定の宗教に対して、私の知事の立場で応援をしたり、助長したり、促進をしたり、ということはもちろんできません。一方で、例えばその宗教を圧迫したり、干渉したり、禁止をしたり、これもできません。よくチューリップテレビさんがおっしゃる、もっと強い表現で、力強く宣言しろ、おっしゃることは、私はこの宗教に対する圧迫にあたると理解をしております。ですから、そのような言い方をコンプライアンス上問題のある団体や組織とはお付き合いはもうしません、ということは8月9日から明言しているわけでありまして、ご理解いただきたいなというふうに思いますね」
毛田「弊社として問題意識を持っているのは、政治と宗教の問題ではなくて、富山市とか高岡市とかいろんな自治体のトップが、関係を絶つと明言されている中で、新田知事が踏み込んだ表現をされないというのは、県民に対して、疑念や不安を生じるのではないかということを申し上げています」
新田知事「ですから、チューリップテレビさんは政教分離と関係ないとおっしゃるかもしれませんが、それは関係あることなんです。関係を絶つとか、そういう言い方になりますと、私はこれはもう憲法で規制されてる圧迫になるというふうに思います。そのような言葉遣いは私としては、この場で私は知事として立っているわけですから、使うことはできません。また、いわゆる旧統一教会の信者の方も県民であられる方も、もちろんいらっしゃるわけですよね。ですから、私は現職の知事として、すべての県民の皆さんと、公平に、公正に、お付き合いすべきだというふうに思っています。一部の県民の方だけを切り捨てろというようなことだと思いますが、そういった発言は私はできないと考えております」
毛田「その理論で行くと、岸田総理をはじめ県内の各自治体のトップが切り捨てたということになりませんか」
新田知事「これは理論というか、私はそう思っているということで、あとはそれぞれご判断だというふうに思います。ただ、総理のことはおそれ多くてアレですけど、市長さん方とやっぱり県知事とは地方行政の長という意味では同じですけども、私は権限がかなり違うと思います。やっぱり県知事の権限はとても大きいので、影響力も大きいです。ですから私はその辺りの言葉遣いは慎重にさせていただきたいということ」
新田知事は2日の定例会見で、政教分離や県民にも信者がいることを理由に、知事の立場では旧統一教会と関係を絶つという発言はできないとしました。
新田知事「関係を断ち切るとまで言えとおっしゃるということは、私はその宗教団体への圧迫にあたるというふうに思っていますし、ということはそれを信じておられる方々をやっぱり断ち切るということにつながるんじゃないかと理解をして、私はこの立場でそういう発言はできませんと言っていることです」
一方、旧統一教会と直接結び付けて「コンプライアンス上の課題がある団体でもある」 と発言しました。
新田知事「もちろんおっしゃるように世俗的な部分ですね、商売とか商法とかそれについて、コンプライアンス上の課題がある団体でもあるわけですから、それにつきましてはコンプライアンス上の問題のある団体とはお付き合いはしませんと」
また、知事が先週の定例会見でチューリップテレビに対し印象操作のような映像を垂れ流し偏った報道をしていると発言したことについて、2日チューリップテレビは発言の撤回を求め、具体的にどこがそうした報道にあたるか確認しました。
新田知事「ご理解いただけないということで、私はこれはもう説明しても意味はないのではないかと思います。個別具体的に言えば、いろいろありますよ。でも、すべてチューリップテレビさんは否定されるであろうし、あれはこうだこうだという話になるでしょ。ですからそれは決して建設的なことにならないということを申しあげたので」
こう述べ、具体的な説明はありませんでした。 

 

●安倍元首相と旧統一教会系が共鳴した「家庭教育支援法案」の危うさ 9/3
自民党が制定を目指した「家庭教育支援法案」は、伝統的な家族観を重視してきた安倍晋三元首相らの肝いりの政策であり、保守系団体や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体が後押しをした。根強い批判の中で、地方では同じ趣旨の条例を制定する動きが進む。どんな内容か。
家庭は「愛の学校」うたう
「今こそ家族を守れ」「『家庭教育支援条例・基本法』で絆を取り戻せ」
教団関連団体「国際勝共連合」の月刊誌「世界思想」の18年2月号に、特集が組まれている。神奈川県内の議会に、法制定を求める陳情が相次いで出されていた時期と重なる。
記事は、家庭について「人間の心に腹の底からの幸せ感を体験させることができるようにする『愛の学校』なのだ」などと説明し、家庭教育支援の重要性を強調。国家による家庭への介入だとの法案への批判は「的外れ」と断じた上で、法制定を急ぐべきだと主張している。
「古い家族像」教団と共鳴か
法案は家庭の教育力の低下を根拠に、家庭教育を支援する施策の推進を目指し、国や学校、地域住民の責務や役割も盛り込んでいる。基になったのは、第1次安倍政権下で06年に成立した改正教育基本法だ。「保護者が子の教育に第一義的責任を有する」とし、国や地方自治体に家庭教育の支援施策に努めるよう定めた。
「教団は家長主義的な思想で、男女共同参画や性の多様性を否定してきた。法案には女性の社会進出の視点が欠け、古い家族像が前提となっており、教団が共鳴する内容といえる」。教団に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏は、関連団体が法案を推進する背景をそう指摘し、「日本会議などとも連動して地方議会から中央に意見書を出させ、法整備を働きかける動きは他の政策でも見られる」と話す。
支援名目で親を「教化」
法制化と並行するかたちで、地方では同じ趣旨の「家庭教育支援条例」が導入されてきた。昭和女子大の友野清文教授(教育史)によると、今年6月までに静岡県や茨城県など10県6市が制定。自民議員が提案するケースが多く「思想が近い親学推進協会(一般財団法人としては解散)や日本会議と連動して広がった」と友野教授は分析する。
法案や条例に対し、野党や各地の弁護士会は「家庭教育への公権力の介入を招く」と批判。法案は17年に提出を断念後、棚上げされているが、地方議会ではなおも立法化を求める意見書が昨年は5件、今年も8月までに2件が可決され、国会に提出された。岡山県議会は今年4月に条例を制定した。
友野教授は「支援という名の下に、特定の家族像に合うよう親を『教化』する意図が見える。子どもを権利の主体でなく、客体と捉えている。条例制定は、行政があるべき家族像や子ども像を押しつける危険をはらむ」と警鐘を鳴らす。
●旧統一教会系が神奈川の市町村議会に一斉陳情、「家庭教育支援法」 9/3
川崎市議会が2018年に可決した「家庭教育支援法の制定を求める意見書」に関し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体関係者が自民市議に意見書案の提出を働きかけていたことが分かった。神奈川県内では同じ時期、計23の市町村議会に同様の意見書を求める陳情が出され、同じ団体関係者が一部に関与していたことが判明。教団の価値観と親和性がある政策を、地方政治を通じて後押ししている実態が浮かんだ。(太田理英子、奥村圭吾)
「家庭教育支援法」は安倍晋三政権下で自民党が法制化を目指し、2017年に与党で法案を了承したが、公権力の家庭教育への介入を招くなどと野党が反発し、棚上げとなっている。
川崎市議会で可決された意見書は児童虐待の増加などを根拠に「行政のより積極的な家庭教育への支援が必要」として、法制定を求める内容だ。自民、公明両会派が18年3月に連名で提案し、賛成多数で可決。国会に送られた。
提案の経緯について、当時、議長だった自民の松原成文しげふみ市議は本紙の取材に「外部の団体から(依頼を)受けてやったと思う」と振り返った。教団の関連団体「世界平和連合」の関係者を名乗る男性との接点を挙げ「記憶はないが、当時の資料などから(依頼を受けたのは)私しかいない」と語った。
男性とは数年前から付き合いがあり、関連団体のイベントなどにも出席していたという。男性は教団関連の政治団体「国際勝共連合」の神奈川県本部代表を務めている。
市議に働きかけた男性「ノーコメント」「記憶にない」
さらに県内では同年、同様の意見書の提出を求める陳情が計23市町村議会に出されていた。少なくとも20件の陳情者は、県内の大学名誉教授(90)を代表とする「家庭教育を推進する神奈川県民の会」で、このうち3件では川崎市で働きかけた男性が実際に陳情の手続きを行っていた。
名誉教授は、会や陳情について「覚えがない」と述べたが、過去に教団や男性と交流はあり「名前を使わせてくださいと言われた覚えはあるので、貸したのかもしれない」と話した。男性は「ノーコメント」「記憶にない」と繰り返した。
相模原市議会への陳情者は、自身が信者だと認めた上で、市民団体の活動の一環だと主張した。
衆参両院には17年から今年8月までに、神奈川県内の5議会を含む全国計34議会から、同法制定を求める意見書が提出されている。
教団の広報担当者は「法人として法案に賛同する意思を表明したことは一度もない」とコメント。国際勝共連合と世界平和連合は期日までに回答がなかった。

家庭教育支援法案 / 「保護者は子の教育について第一義的責任を有する」とした改正教育基本法に基づき、「生活に必要な習慣を子に身につけさせる」などを基本理念として定める。国や地方自治体、学校や地域住民の役割も規定。自民党のプロジェクトチームが2014年に検討を始め、17年の通常国会に提出を目指したが、野党の反発などで見送られ、その後も目立った動きはない。
●元凶は安倍元総理の祖父…自民党と旧統一教会、60年前から続く 9/3
選挙の際、自民党候補者の事務所へと入り込み、ポスター貼りにビラ配りと圧倒的な「運動力」を見せる旧統一教会関係者。いつしか自民党は、その力を手放せなくなっていった。前編記事『自民党が旧統一教会に「縁を切る」と言えないワケ…「ズブズブ」の根源と「安倍家の血脈」』に続いて、両者の関係の「淵源」たる安倍元総理の祖父・岸信介氏と旧統一教会とのかかわりを追った。
「昭和の妖怪」が貸した土地
旧統一教会を単なる「選挙マシーン」にすぎないと見るのは間違いだ。政界に蠢く彼らの背後には、つねに「安倍の血脈」があった。
すでに安倍晋三元総理と旧統一教会の関係の深さは再三、報じられている。1度目の総理に就任する直前の'06年5月には、福岡県で合同結婚式と併せて行われた教団のイベント「祖国郷土還元日本大会」に祝電を寄せた。自民党総裁に当選した'06年と'12年の総裁選で、自民党員として旧統一教会信者が関与し、晋三氏を後押ししたのではないかとさえ疑われている。
疑惑の目で見られるのも仕方ない。自民党と旧統一教会の「ズブズブの関係」の淵源は、晋三氏の祖父であり、自民党創始者の一人にして「昭和の妖怪」と呼ばれた、岸信介元総理に他ならないのだから。
'57年に総理大臣となった岸氏は、'70年まで渋谷区南平台の邸宅で暮らしていた。隣には大物女優の高峰三枝子が住んでいたが、岸氏が高峰邸を借り受け、さらに'64年に旧統一教会(当時は原理研究会=原理研と呼ぶのが一般的だった)に貸し出し、そこが原理研初代本部となった経緯がある。
「右翼のフィクサー」の影
岸氏と原理研をつないだのは、戦前の右翼団体「国粋大衆党」総裁で、戦後は岸氏とともにA級戦犯容疑者として巣鴨拘置所に入った右翼のフィクサー、笹川良一氏だった。'73年に旧統一教会本部で講演した岸氏は「笹川君が統一教会に共鳴して、私に紹介してきた」「(旧統一教会初代会長の)久保木修己君の極めて情熱のこもったお話を聞き、非常に頼もしく私は考えた」と明かしている。
東西冷戦真っただ中の'60年代から'70年代にかけ、日本はアメリカにとって「反共の防波堤」だった。そして右派の岸氏は、反共の実働隊として旧統一教会を利用したのだ。
「'60年安保で、岸さんは右翼団体や暴力団を動員して学生運動を鎮圧したと言われていますが、'70年安保では原理研の若者たちを頼ろうと考え、勝共連合に接近したという話もある。旧統一教会は傘下の企業が開発した『鋭和B3』という散弾銃で財を築いていたから、資金面での支援もあったのかもしれません」(自民党清和研ベテラン議員)
岸氏だけでなく、その直系たる福田赳夫氏率いる福田派――のちの清和研を通じて、'70年代半ばに旧統一教会は自民党へ本格的な侵食を始める。'74年に旧統一教会が開催した「希望の日 晩餐会」では、岸氏が名誉実行委員長を務め、福田氏が文鮮明氏を「偉大なる指導者」と称えた。晋太郎氏や衆院議員の中川一郎氏ら福田派のホープも駆けつけた。
派閥闘争の果てに
福田氏や晋太郎氏が領袖を務めた時代の清和研は、田中派や宏池会の陰に隠れた「傍流」と見られていた。前編にも登場した、元自民党衆議院議員でIT担当大臣などを歴任した竹本直一氏が語る。
「医師会や農協など大きな支持母体は、田中派がみんな牛耳っていました。役人も、人事を握っている田中派議員の言うことは聞いても、清和研の議員は軽く見ていた。角福戦争を目の当たりにした晋太郎さんにすれば、派閥を強くしなければいけないという思いがあったはず。それが旧統一教会との急速な接近につながったのでしょう」
こうして岸信介氏、そして安倍晋太郎氏が抱いた権力への渇望が、現安倍派と旧統一教会との「共依存関係」を生み出した。それが今や、晋三氏とはライバルだったはずの宏池会会長・岸田文雄総理の後援会にさえ、教団関係者が入り込んでいたことが判明している。60年前にまかれた種は、すでに自民党全体に広く深く根を張っているのだ。
「審判」は選挙で下る
一方、元通産大臣で自民党総務会長も務めた深谷隆司氏はこう語る。
「私にとっては、旧統一教会は宿敵です。'76年の総選挙で、角栄さんの秘蔵っ子だった故・鳩山邦夫さんと同じ選挙区で戦ったのですが、実はこの時、すでに田中派にも旧統一教会が入り込み、鳩山さんを全面支援していたようなのです。彼らは選挙区内の私のポスターを一夜にして全部剥がした。相手を潰すためには手段を選ばない恐ろしさを感じました。
今はどのメディアも『自民党議員は誰もが旧統一教会とズブズブだ』と言わんばかりですが、それは違う。旧統一教会のほうが勢力拡大を狙って自民党に近づき、政権与党が自分たちを支持していると謳って信者獲得に利用したのだから、自民党が霊感商法の被害者を生んでいる、悪徳教団にお墨付きを与えているという論調は実におかしい」
確かに深谷氏のように、自民党内には旧統一教会と無関係な議員や、むしろ反目する議員もいるのが実態なのだろう。しかしだからといって、平成の政界を牛耳ってきた清和研、ひいては安倍政権のもとで栄華を誇った自民党の「権力の源泉」に、旧統一教会があったという事実は消せない。
その評価は次の選挙で国民が下すことになる。
●「政治と宗教」批判を懸念、公明が霊感商法対策を議論へ… 9/3
公明党は2日、「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の問題を巡り、霊感商法や法外な献金要求などの被害防止策を来週から議論すると発表した。問題に積極的に取り組む姿勢を打ち出す狙いがある。宗教団体の創価学会が支持母体で、「政治と宗教」の関係に批判的な世論が高まることに懸念を強めている。
「霊感商法や法外な献金の被害救済を我が党でも検討し、政府の対応とあわせ、課題解決に努力したい」
公明の山口代表は2日、岸田首相と首相官邸で昼食をともにした後、記者団にこう強調した。首相は会談で、旧統一教会と自民党議員の関係や安倍晋三・元首相の国葬(国葬儀)について「ご心配をおかけしている」と陳謝したという。
公明での議論は、党消費者問題対策本部(本部長・古屋範子副代表)で進める。消費者庁や被害者弁護団などから話を聞き、政府への提言をまとめる方針だ。
公明幹部は「社会的に問題のある行為が何かを明確化することで、『政治と宗教』の話と切り分ける必要がある」と訴える。
憲法は20条で「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」と明記しており、宗教団体や信者による政治活動は問題ないとされる。一方で、旧統一教会を巡っては、自民議員が選挙で支援を受けたり、関連団体の会合に出席したりしたことが問題視されている。
山口氏はこの日、政治家が関わりを控えるべき対象を「社会的な問題を抱える団体で、宗教団体に限らない」と指摘した。創価学会の支援を受ける構図が同列視されかねないことを危惧しているためだ。
石井幹事長も2日の記者会見で「宗教団体が政治活動を行うことは全く問題がない」と述べた上で、「旧統一教会の問題は、政治と宗教一般の問題ではない。社会的問題を指摘されている団体と政治との関わりだ」と強調した。
●広島市が「旧統一教会関連」公表 「関係持つべきでない」 9/3
広島市の松井一実市長は2011年7月に「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」との関連が指摘される団体が主催するイベントに公務で出席していたことを2日の定例会見で明らかにした。当時の認識について「資料がないため確認できない」としている。
このほか、市は昨年3月〜今年7月、関連が指摘される団体が申請した計3件のイベントについて後援を承認した。このうち今年7月の1件については市は関係を認識。安倍晋三元首相への銃撃事件後に、申請者側が取り下げたという。
市では今年1月に関連が指摘される団体から新型コロナウイルス対策の医療従事者支援として約30万円の寄付を受けており、市長は報告のため2月に相手側と面会していた。
松井市長は「悪質商法などの不法行為が指摘されている点を踏まえると、市が団体の活動に賛同していると誤解を与えてはならない。市民の不信や疑念を招かないようにする必要がある」と述べ、今後は関わりを持たないと表明した。市民活動を支援するウェブサイトにもこうした団体が紹介されていることについて、「相手との話し合いが基本だが、宣伝になるものは削除することで調整していく」とした。市長動静など記録としての記載は削除はしないという。 
●中国や韓国とも信頼関係を築いた「安倍外交」に学べ 岸田首相と林外相 9/3
中国や韓国を、毛嫌いする人もいるが、忌避するだけでは国益は守れない。安倍晋三元首相は在任中、遠慮せずに「中国の脅威」や「国際的包囲網の必要性」を世界に訴え、集団的自衛権の確立も含めて「国防力の強化」を実行した。
一方、中国の習近平国家主席に対しては、安倍氏は中国の利益のために何が必要かを親身になって説き、ドナルド・トランプ米大統領(当時)との付き合い方も伝授した。だから、「国賓」としての訪日も計画され、安倍氏の死去に際しても中国は丁重な弔意を表した。
韓国とは、朴槿恵(パク・クネ)大統領(同)の「告げ口外交」に感情的にならず対応し、慰安婦問題では米国も巻き込んで、「最終的かつ不可逆的な解決」を条件に譲歩して、韓国の顔を立て、日韓関係好転のシナリオを描いた。
それを反故(ほご)にした文在寅(ムン・ジェイン)大統領(同)には一歩も引かず、相手にしなかった。その後の政権交代は、「反日」が政治的得点に結びつくとはかぎらない好例となった。
岸田文雄首相と林芳正外相の外交は、大きな方向として間違っていないだろうが、メリハリがついてない。
首脳外交も立場が歩み寄ってから会う方針のようだが、首脳が没交渉であることは世界外交の場で不利だ。安倍氏の力の源泉は、世界の首脳の人柄をよく知り、信頼関係があることだった。
そういう意味で、原則論を断固崩さない一方、個人的な友情や信頼関係はつくる工夫もいるのではないか。例えば、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領とは就任前に会っておいてもよかったと思う。
林氏も「親中過ぎるのでないか」という批判に、拳拳服膺(けんけんふくよう=人の言葉などを、心にしっかりと留めること)などと抽象的に語るだけでなく、安倍氏のようにアピール力ある言葉で自分の考え方を発信してほしいと思う。
防衛力強化については、自民党は4月26日の安全保障調査会で、「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」をまとめた。相手領土内にあるミサイル発射台や司令部などへの「反撃能力」(敵基地攻撃能力を改称)を保有することや、防衛費は「対GDP(国内総生産)比2%以上」を念頭に5年間で増額するよう訴えた。政府は年末までに、国家安全保障戦略や防衛大綱などを改訂するとしており、岸田首相も「自民党の考え方をしっかり受け止めたうえで議論を進めたい」としている。
この提言をまとめた小野寺五典元防衛相は「党の方針として了承されたものだから、首相がこれをしっかり実行していただけるかだ」と語る。ここは、世界への意思表示としても、「日本の覚悟」を目に見えるかたちで示すことが重要だと思う。 
●金平茂紀氏 報道特集で皮肉「まさか国葬の実施に支障を」 9/3
ジャーナリストの金平茂紀氏が3日、キャスターを務めるTBS「報道特集」に出演。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党を中心とする国会議員の関係が問題になっていることについて、「故安倍晋三元首相についても調べなければならない」と指摘した。
この日の同番組では、統一教会が世界規模で行った献金ビジネスの実態について特集した。
そのまとめとして、金平氏は「日本国内の話をすれば、岸田首相の指示によって自民党所属議員と旧統一教会の調査が行われた」と話を国内に移し、「もっとも自民党は『調査』という言葉を使わずに『点検』という言葉を使っているんですが、きちんと調査してほしい」と要望。さらに「安倍元首相に関しては調査がまったくなされないと。教団との不透明な関係の中核に安倍元首相がいたんじゃないかという指摘がいくつもありますから、安倍氏についても調べなければ本当の関係、本当の実態は分からないのではないか」と指摘した。
金平氏は「まさか国葬の実施に支障をきたすと考えているということはないと思いたいですが」と皮肉たっぷり。「きちんと調査をしてほしいと思います」と再度、期待した。
金平氏は、10月からは不定期出演する特任キャスターとなる。 

 

●旧統一教会問題、国葬で与野党幹事長が論戦 9/4
与野党の幹事長らは4日のNHK番組で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題や安倍晋三元首相の「国葬」(国葬儀)をめぐって意見を戦わせた。自民党の茂木敏充幹事長は、党所属国会議員と旧統一教会との関係に関する点検結果を週内に公表する考えを示した。立憲民主党や共産党は点検では実態の解明に至らないと追及し、自民への攻勢を強めた。
茂木氏は番組内で「(旧統一教会は)自民とは関係がない。個々の議員と接点があり、これを断っていく。党としてやりとりし、旧統一教会が選挙の応援をしたことは一切ない」と強調した。
これに対し、立民の岡田克也幹事長は「自民は党として調査をするとは言っていない。関わりが深いとされる安倍氏(との関係)について、責任を持って調査すべきだ」と茂木氏に詰め寄った。
共産も自民と旧統一教会との組織的な関わりを疑っており、小池晃書記局長は「半世紀に及ぶ自民と旧統一教会との関係を徹底的に解明することなしに、被害の救済はできない」と指摘した。
茂木氏が「左翼的な過激団体と共産との関係をまったく調べないのも問題だ」と切り返すと、小池氏は「事実無根の話だ。撤回していただきたい。われわれは最も厳しく対峙(たいじ)してきた政党だ」と激怒した。
国葬をめぐっては、岡田氏が法的根拠が乏しいとして「内閣葬」での実施を要求。小池氏も「一律に国民に敬意を強制するやり方は許されない。死者の最悪の政治利用だ」と反対姿勢を鮮明にした。
茂木氏はこうした主張に「弔意の強制ではない。国内外から弔意が寄せられているのも確かで、(国葬の実施は)法的には問題ない」と反論した。
●旧統一教会「目的は『正体隠し』」名称変更の背景と政治家に与えたもの 9/4
安倍晋三元首相の銃撃事件から間もなく2カ月。現行犯逮捕された山上徹也容疑者(41)の供述をきっかけに、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治家、特に自民党国会議員との関係に注目が集まる。2015年、文部科学省が旧統一教会の団体名改称を認めたことで、「教団の正体が隠れ、関係が疑われる政治家に逃げ口上を与えてしまった」と話すのは、元文部科学事務次官の前川喜平さん(67)だ。自身も当時、文科省ナンバー3の文科審議官の職にあった。あらためてこれまでの経緯や背景、そして問題点について、聞いてみた。
旧統一教会との関係が指摘される自民党国会議員名を見ると安倍派、そして文科大臣の経験者が目立ちます。
「文科相のポストは、森喜朗さんのころから主に清和会が占めてきた経緯があります。安倍派はその系譜ですから、所属議員が就きやすかったんです。少しさかのぼりますが、1995年に宗教法人法が改正され、例えば旧統一教会のように国内各地に展開する宗教団体の所管が都道府県知事から、文科相に変わりました。担当は文化庁の宗務(しゅうむ)課です。宗教団体側からすれば、安倍派の文教族議員と親交を深めることで有利な取り計らいが期待できる。密接な関係になりやすくなったと言えます」
旧統一教会から初めて名称変更の相談があったのは97年です。前川さんは当時、窓口の文化庁の宗務課長でしたね。
「国民に衝撃を与えた、オウム真理教事件の2年後のことです。世間はカルト教団への警戒心が強かったし、宗務課内も同じ空気でした。それで旧統一教会からの申請相談を受け、部下に活動状況を調べさせたら、強引な信者勧誘、悪質な霊感商法は変わっていませんでした。元信者が教団相手に訴訟を起こしているとの報道もありました。実態が同じなのに、名前だけを変えるのは矛盾があると考え、『この活動内容では申請は受理できない』と先方に伝えました。私が宗務課を離れてからも何度か相談があったと聞いています。同時に被害者弁護団からの訴えも寄せられていましたから、宗務課では実態を把握し引き継ぐことで、申請を抑えてきました」
それが2015年になって、名称変更が認められました。文科大臣はやはり安倍派の下村博文氏で、前川さんは文科審議官でした。
「当時の宗務課長が『また申請の相談が出てきた』と言ってきたので、断るべきだと伝えました。でも、結果は逆になった。審議官だった私の意見を覆して判断できるのは、大臣と事務次官の2人だけです。このうち事務次官は旧科学技術庁出身で、これまでの宗務課の経緯には詳しくないから、踏み込んだ判断は難しかったと思いますよ。申請を受けて宗教法人審議会で議論し、識者の意見を聞く方法もありました。国民に過程を可視化する意味でもやるべきでしたが、そうならなかった。結果として、文科省が旧統一教会に屈したと言われても仕方がない格好になってしまった」
その影響をどう見ていますか。
「最初から、団体名変更の目的は『正体隠し』だと見ていました。今回、旧統一教会との関係が明らかになった国会議員の中に『教会の関係団体とは知らなかった』と言い訳をする人がいますが、団体名が変わったことでそんな口実を与えてしまった。元々、旧統一教会は別の団体名を使って新聞を発行したり、大学で若者を勧誘したりするのが常とう手段で、社会問題になっていました。接触した議員もそれぐらいは知っていたはずで、少し考えれば、怪しいと気付くと思うのですが」
「加えて、被害の実態も隠れてしまいました。平穏な生活を送っていた家庭が多額の献金で貧困に陥り、崩壊したケースがいくつもある。信者を親に持つ2世と呼ばれる子ども世代の生活苦も深刻で、団体名変更の判断が被害を拡大させた可能性は否めない。『統一教会』の名を消してしまった罪は重いです」
山上容疑者の家庭も貧困にあえいでいました。
「山上容疑者は母親の献金で経済的に困窮し、家族が孤立していった。追い詰められた末、私的制裁とも言える元首相の銃撃に及んでいます。規模の大小に関わらず、過去のテロ事件を見ても、不幸な境遇の人間が暴走して起きているケースは多いですよね。今回も背景をしっかり見据える必要があります。今回の銃撃事件は法治国家が機能していないことを示したとも言えます。政治や警察が早めに被害の実態を把握し、法的な手段を講じて悪質な活動を規制したり被害者の救済に対応したりしていれば、未然に防げたかもしれない」
事件後、消費者庁が霊感商法の被害対応検討会を開くなどの動きが広がっています。
「刑法を適用して犯罪性を明らかにしていくのならば、司法の助けが求められます。消費者庁だけでは問題の根幹に迫れないでしょう。岸田文雄首相をトップに、内閣府主導で省庁を超えたチームを組織する覚悟がいると思いますね。警察にも本腰を入れてほしい。やはり悪質な霊感商法が問題になった明覚寺事件では、2002年に裁判所が解散命令を出しています。今回も徹底的に闇を解明するべきです」
「カルト集団は、人の弱みにつけ込んでマインドコントロールし、金銭を搾取したり無償労働を強いたりする。実に悪質な手口です。旧統一教会はフランスでも問題になっていて、反セクト法という法律で規制しています。『セクト』は『カルト』と同じ意味で、評価したいのはマインドコントロールを犯罪とみなしている点です。この手法は、オウム真理教や旧統一教会のように大規模組織だけではありません」
確かに、公判中の福岡のママ友による5歳児餓死事件、12年の尼崎の連続変死事件でも見られます。
「貧困を生む要因にもなっています。マインドコントロールの取り締まりは、孤独が深刻化している現代社会が直面する課題ではないでしょうか。日本も刑法の適用を見据えた対策が必要な時期にきていると思います。私は文科省出身ですから、ずっと教育問題と向きあってきました。旧統一教会でも、経済苦から十分な教育が受けられない人が多いことが分かってきた。そんな人を救ってほしい、救いたいと思います。新型コロナウイルスの持続化給付金が旧統一教会の献金に使われた例もあるんですよ。本当に困っている人にダイレクトで届く救済、支援を実現するために、政治は本気でこの問題に取り組んでもらいたい」
●岸田首相が安倍晋三氏の死を機に豹変のナゼ…“お手本は”中曽根元首相? 9/4
「バカは隣の火事より怖い」立川談志がよく言っていた。岸田文雄首相を見ていると、なぜか、この言葉を思い出す。
突然、岸田首相は新型コロナウイルス患者の全数把握を見直せ、各自治体で判断しろと表明した。だが、自治体から猛反発を受けて方向転換せざるを得なくなった。第7波で感染者が激増しても何の対策もとらなかったのに、突然の世まい言。
もっと驚いたのが、電力事情逼迫(ひっぱく)やウクライナ戦争を理由に、原発の新増設や運転期間延長の検討を“決断”したことである。原爆被災地・広島の首相だというのに、原発を新しくつくるというのだ。それも議論を尽くしたとは到底思えない唐突で浅はかな大転換である。
内閣改造はしたが、蓋を開けてみれば“統一教会汚染内閣”といわれるほど、多くの閣僚や党の要職者が、教会と強いつながりがあることが明るみに出てしまった。さらに、岸田首相の熊本後援会長が、統一教会が推進している「日韓トンネル推進熊本県民会議」の議長をやっていたことも週刊文春(9月1日号)で報じられた。東京五輪をめぐる贈収賄事件で高橋治之元電通専務が逮捕され、森喜朗組織委会長(当時)をはじめ自民党議員の名前も取りざたされている。
朝日新聞(8月29日付)の世論調査で内閣支持率が47%になった。統一教会問題で岸田政権を評価しないが65%、評価するは21%。国葬については反対が50%、賛成41%。国民の岸田政権離れが激しい。
国民の声を聞くしか取りえがないと思われていた首相が、安倍元首相の死を機に、決断できる首相に“大変身”したかに見えるのはなぜか。
評論家の田原総一朗はサンデー毎日(9月4日号)で、「国内の支持率が低くなると、みなタカ派になる。ジョンソン英国首相、バイデン米大統領がそうだ」といっている。
昔から平凡で中身のない首相がやることは、誰かのサル真似
2011年10月21日号の週刊朝日は、当時、野党だった自民党の国対委員長になった岸田をこう評している。「岸田さんは政調会長代理レベルの知名度で、テレビ映えもしない。得意なのは、中身のない、長い挨拶ぐらいですよ」。田原もサンデー毎日で「平凡な男だ。首相になったらこれをやりたいというものもない」と言っている。
昔から、平凡で中身のない首相がやることは、誰かのサル真似をすると決まっている。中曽根康弘元首相は若い頃から、自分が首相になったらやることをノートに書き留めていた。岸田も昔からノートをつけていた。それほど高尚なものではないと自ら言っているが、中曽根をひそかにお手本にしていたのだろう。
中曽根が念願の首相になった時、「田中曽根内閣」とヤユされたように、田中角栄のカイライ政権だった。だが、田中が脳梗塞で倒れると、国鉄分割民営化をやり遂げ、日本の労働運動を窒息させてしまった。
岸田も、安倍がいる時は「安岸内閣」だと陰日なたで言われた。だがその安倍はいない。安倍がやれなかった原発推進、憲法改正をオレの手でやる。コロナに罹患(りかん)して怯えながら岸田はそう考えたのではないか。それとも、岸田の枕元に安倍の霊が現れ、「これだけはやれ」と岸田に迫ったのだろうか。談志の言葉をいま一度読み直してほしい。
●旧統一教会報道で独走するチューリップテレビ 富山政界の「闇」 9/4
旧統一教会問題への報道が過熱する中、富山のTBS系テレビ局「チューリップテレビ」が、事件直後から独自の報道姿勢で存在感を示している(特集「追跡!旧統一教会と富山政界 献金で家庭崩壊」)。
その理由は二つある。富山市議について政務活動費の不正受給を暴いた「調査報道」の素地があること。そして、30年前の統一教会報道を手がけた社員の存在だ。
事件から2カ月。県内政界と教会との関係を追及し続け、現在、教会との関係断絶を口にしない県知事に切り込む真っ最中である取材班に話を聞いた。
安倍元首相銃撃事件直後の土日に取材着手
7月8日の金曜日、安倍元首相が銃弾に倒れた。逮捕された山上容疑者が「特定の宗教団体に恨みを持っていた」と報じられたが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の名前はネット上でささやかれていた程度。11日の月曜に旧統一教会が会見を開くまで、大手メディアはその名前を報じなかった。
しかし、チューリップテレビは土日のうちに着々と準備を始めていた。
県内の元信者に接触、多額な献金の実態を早くも11日に報じた。
「チューリップテレビ」がツイッターのトレンドに登場、動画チャンネルTBS NEWS DIGのPV(閲覧数)は100万を超えた。
TBS系列のJNN全28局でPVがほぼ最下位だったのが、100倍に増え、JNN月間賞も受けた。
実は、銃撃事件の1週間前、チューリップテレビに武石浩明氏(55)がTBSから出向したことも大きかった。武石氏は、30年前の統一教会報道の際に、TBSで中心的に取材をした人物で、知識や人脈が生きたのだ。
若手も奮起 市議会追及で培った「調査報道マインド」
30年前に新米ディレクターだった武石氏は、当時、TBSで朝の情報番組を担当。統一教会をめぐり、ワイドショーが桜田淳子さんら芸能人の合同結婚式の話題で盛り上がる中、霊感商法のキャンペーンを行い、大きな反響を呼んでいた。
その際、TBSには無言電話が3万件近く殺到したという。全国霊感商法対策弁護士連絡会の山口広弁護士や紀藤正樹弁護士も、そのとき以来、様々な局面で取材を通じた長い関係だ。
武石氏がチューリップテレビに出向して感じたのは、若い記者やアナウンサーの熱意だった。自分自身も刺激を受けているという。
「若い記者はみんなやる気がある。ローカル局は人が足りないので、アナウンサーも記者と同じように取材をして原稿を書いている。編集まで自分でやらなくてはならないんです」
2016年に富山市議会の政務活動費の不正受給を追及する報道を主導したのはチューリップテレビだ。議会のドンといわれる自民党議員を辞任に追い込み、半年の間に14人が辞職する事態は、映画にもなった。
「みんなが勇気を出して、正しくないと思ったら政界にも切り込んでいきます。かつてのキャンペーンに見られるように、ここには権力に対峙する『調査報道』のベースがある」
県トップとの対立 地元紙は知事を批判せず
チューリップテレビは旧統一教会と県内政界との関係について、矢継ぎ早に報道を続け、UPFやピースロードといった関連団体の存在や、旧統一教会の元会長が富山大出身ということなども挙げながら、県内議員が選挙の応援を受けて、教会と深い関係になっていることを報じるのも速かった。今では他系列のテレビ局も追随している。
それは今、まさにヤマ場を迎えている。新田八朗知事が2020年の知事選で旧統一教会から支援を受けたことを認めたにもかかわらず、教会との関係について断絶すると明言せず、反社会的かどうかも明確に判断できないとしている点だ。
9月2日の会見でも、憲法の政教分離を引き合いに、特定の宗教を応援することも圧迫することもできないと説明。「知事の立場では関係を絶つという強い表現の発言はできない」と改めて強調した。
また、知事はコロナ補助金を不正申請していたチューリップテレビの不祥事を持ち出すなどして、記者と応酬。「印象操作をされるような映像を垂れ流している」「県民には偏った報道に決して惑わされることなくご安心をいただきたい」(8月25日の会見)と述べた。
チューリップテレビ側はどの部分が偏向報道なのかを確認するとともに、発言の撤回を求めたが、9月2日の会見で知事は「個別具体的に言えばいろいろありますよ。でも決して建設的なことにならない」などとして訂正や説明はしなかった。
地元紙の富山新聞は27日の社説で、知事に向けてこう書いている。
「しつこい質問、追及に辟易し、カチンと来る感情は分からぬでもなく、同情を禁じ得ない部分もある。ただ、記者の挑発に乗れば、その画像がまた繰り返し流されるだけのことだ。挑発に乗って得るものはなく、的外れだったり、あまりにしつこい質問を遮るくらいの毅然とした態度も必要だ」
武石氏の表情は厳しくなる。
「国政と違って知事に支持率調査はなく、国会議員よりも危機感が低いと思います。批判精神を忘れた地元紙は、為政者を監視する役目を果たせておらず、県内でいわばガラパゴス化しています。記者の質問を“挑発”と揶揄するのはジャーナリズムの死に値します。一方で、チューリップテレビの不祥事は早く全容を明らかにして責任の所在を明確にすべきです。報道については幸いにも県民から弊社には応援メッセージが届いています。これからも追及していきます」 
●岸田首相の理由説明なき「統一教会との訣別」は、更なる大混乱を招く 9/4
岸田首相の二つの「決断と実行」
「聞く力」を強調し、「検討」に終始してきた岸田文雄首相は、安倍元首相殺害事後間もなく、自ら、二つの「決断と実行」を行った。
一つは、「国葬儀」を閣議決定したこと、そしてもう一つは、統一教会問題での閣僚や自民党への批判の高まりを受けて、9月と予想されていた内閣改造を急遽前倒しして、新内閣を発足させたことだ。
しかし、この二つは、いずれも最悪で、それによって、岸田内閣は、重大な危機に瀕することになりかねないと、8月20日の拙稿で指摘した。
ちょうどその時、岸田首相は、8月16日から22日まで家族とともに休暇中だった。その後、コロナ感染もあり、内閣改造後初めて記者との対面で行った会見が、8月31日の首相官邸での記者会見だった。
ここで、岸田首相は、統一教会をめぐる問題については、閣僚などを含め、自民党議員が懸念や疑念を持たれていることを陳謝し、「党として説明責任を果たし、国民の信頼を回復できるよう厳正な対応をとっていく」と述べた上、以下の三つを指示したと述べた。
第1に、党として説明責任を果たすため、所属国会議員を対象に、当該団体との関係性を点検した結果を取りまとめて、それを公表すること。
第2に、所属国会議員は、過去を真摯に反省し、しがらみを捨て、当該団体との関係を断つこと。これを党の基本方針として関係を断つよう、所属国会議員に徹底すること。
第3に、今後、社会的に問題が指摘される団体と関係を持つことがないよう、党におけるコンプライアンスチェック体制を強化すること。
これを受け、自民党は、党所属の国会議員にこれまでの旧統一教会側との関係を報告させ、結果を公表することに加え、今後、関連団体を含め、旧統一教会側と一切関係を持たないとする方針を決定した。
国葬については、これまでと同様の開催理由を述べたうえ、「今回の『国葬儀』の開催は、国民に弔意を強制するものではないが、さまざまな意見とともに、説明が不十分との批判をいただいている。そうした意見、批判を真摯に受け止め、正面から答える責任がある。政権の初心に返って、丁寧な説明に全力を尽くしていく」と述べた。
二つの「決断と実行」によって生じた危機は、この首相会見で一層拡大させ、事態は収拾困難な方向に向かっている。
どういう理由で「関係を断つ」のか
まず、国葬については、殺害事件直後に、岸田首相自身が拙速に「国葬儀」を実施する方針を打ち出した時点で、社会の「分断」「二極化」が拡大し、不測の事態の重大なリスクに備えて膨大なコストがかかることを指摘していた。
予測していたとおり、世論調査では、国葬に反対する意見が多数に上る一方、岸田首相が当初から強調していた海外からの多数の弔意にもかかわらず、各国からの現職のトップの参列はほとんどなく、「弔問外交」が期待できるような状況ではない。国民に対して「弔意」を求めないとすると、明確な法的根拠もなく、閣議決定だけで「国主催の葬儀」を行う意味は一層希薄になる。岸田首相は「丁寧な説明に全力を尽くす」と言うが、そもそも説明できる内容がほとんどない。
「統一教会問題」については、内閣改造の時点で、何がどう問題なのかを全く示さないまま「厳正に見直す」として、個人の対応に委ねていたことに根本的な問題があった。今回の会見では、「所属国会議員は、過去を真摯に反省し、しがらみを捨て、当該団体との関係を断つ」と述べ、その後、茂木敏充幹事長が自民党としての「統一教会との訣別宣言」を行った。しかし、肝心の「統一教会の何がどう問題だから訣別するのか」という点は、岸田首相も、茂木幹事長も何も述べていない。
旧統一教会は、今も、宗教法人として国に認証され、法人格が認められ、税制上の優遇措置も認められている。自民党がそのような法人と「関係を断つ」というのであれば、それはいかなる理由によるのかを明確に示す必要がある。ところが、岸田首相は、それについて何も述べていない。
理由も明確にせず一方的に関係を絶とうとすれば、これまで、自民党議員の選挙等で献身的に応援してきた教団や信者側の反発を招く。それによって、「統一教会と議員の関係」が五月雨的に明らかになり、新たな批判の材料とされるだけだ。
また、所属国会議員は「関係を断つ」とされているが、その範囲も不明確だ。
秘書の扱いは? 信者候補を公認するのか?
国会議員の秘書が旧統一教会の信者であった場合、その秘書は解雇しなければならないのか。また、県議・市議等の自民党公認の地方議員の中には、旧統一教会の信者であることを公言している人もいるが、そういう人は、来年春の統一地方選挙で自民党として公認するのだろうか。
岸田首相は、所属国会議員を対象とする旧統一教会との関係性についての「点検」を行うよう指示したとしているが、単なるアンケート調査であり、質問項目も限定されている。「調査」を行うのであれば、第三者委員会か、少なくとも外部弁護士に依頼して行う必要があるので、「点検」という言葉を使ったのであろう。最初から、事実を明らかにする意思がないとしか思えない。
このアンケート調査は、2日が回答期限で、当初は、6日に結果を集計し、公表する予定だったが、9月3日付毎日新聞によると、多くの議員事務所から「正直に報告した者が罰を受けかねない」との不満が噴出し、「あいまいな記述が多く、確認作業が発生している。報告の再提出を求めている議員もいる」ため、公表を延期することになったとのことだ。何がどう問題なのかも示さず、その「問題行為」を回答せよと言われても、まともに回答できないのは当然だ。
しかし、萩生田光一政調会長、山際大志郎経済再生担当大臣、森雅子首相補佐官(【森雅子首相補佐官(元法相)、「統一教会」説明にも“重大な疑問”、自民党調査にどう回答するのか?】)のように、教団の会合・イベントへの参加などが報じられて「統一教会」との関係性が問題とされ、その説明が不合理で全く信用されていない議員については、このアンケートへの回答は意味が異なる。
国会議員、閣僚、政権幹部として説明の信頼性が問われているのであるから、その回答は、まさに議員としての資質を問うものとなる。これらの議員については、アンケートへの回答を全文公表するのが当然だし、質問にも答えさせるべきだ。そこに具体的事実が含まれているか、それらの議員の回答内容やそれについて説明責任を果たすかどうかで、アンケート調査実施に最低限の意味があったのかどうかが判断できる。
「社会的な問題が指摘される」団体は他にもある
岸田首相は、旧統一教会以外でも、「社会的に問題が指摘される団体」とは関係を持たない方針を示し、「党におけるコンプライアンスチェック体制」というような言葉を使っている。しかし、「社会的に問題が指摘される団体」とは、どういう意味なのだろうか。
組織や団体の活動に関しては、様々な「社会的な問題」が生じ得るのは言うまでもない。社会的問題を指摘されただけで「関係を持たない」ということになると、企業を含む世の中の多くの団体と関係が持てないことになり、政権与党としての政治活動は成り立たないはずだ。
しかも、宗教団体は、旧統一教会以外でも、布教や献金をめぐって信者や家族とトラブルを起こした団体も少なくない。自民党と連立政権を組んでいる公明党と一体の創価学会も、かつては、その勧誘や高額献金の反社会性が問題とされたことがある。
「社会的な問題が指摘される」などという漠然とした言葉で、「関係遮断」の方針を示しても、実行は不可能であり、コンプライアンス対応として全く意味をなさない。
岸田首相・自民党総裁の統一教会問題への対応で決定的に欠けているのは、何が問題なのか、という点についての岸田首相自身の、或いは自民党としての考え方を一切明らかにしていないことだ。マスコミや世の中の「統一教会批判」の流れに乗っかり、絶縁を図ろうとしても、これまでの自民党と統一教会との深い関係が、簡単に解消できるわけがない。
まず、統一教会について何が問題なのかを、整理することが不可欠だ。
宗教法人法による解散命令は至難
「統一教会問題」をめぐる問題は、大きく、以下のよう整理できる。
(1)1990年代を中心に壺等の物品を高額で販売する「霊感商法」や、合同結婚式等で厳しい批判を受けたこと
(2)2009年に刑事事件で摘発を受けた後の、現在の教団の実態の問題
(3)「統一教会」の教義の根本に反日思想があり、日本人の自虐史観によって罪責感を与え、「罪滅ぼし」の意識を利用して日本人に破滅的な高額献金をさせ、それを資金にして統一教会が世界的な活動を行ってきたという問題
(2)の「現在の活動」に「反社会性」が認められるのであれば、宗教法人法に基づく解散命令などの法的措置が検討されるべきで、訣別も当然ということになる。統一教会という教団の根本的な性格自体は変わっていないと思われるが、現時点で同法により解散命令が発出可能なような事実が法的手続で立証できるかと言えば、かなり難しいように思える。
一方、(1)は20年以上前のことだが、その事実自体の違法性にはほとんど争いがない。しかし、そのような過去の問題によって現時点で宗教法人法上の措置をとることは難しい。ただ、そのような過去の「霊感商法」等による経済的被害で現在も悩まされている人もいるだろうし、被害の相談が増えている「現在の統一教会被害」とも無関係ではない。
そういう過去の反社会的活動による被害がいまだに継続しているという「被害の実態」を問題にし、それに対して正面から向き合わない教団の在り方を問題にして、自民党としての訣別の理由にすることもあり得る。
(3)は、まさに、日本の保守政治家として容認できないもののはずだ。自民党として調査チームを設置して統一教会の教義を確認し、過去の高額献金の実態と、その資金がどのように流れたのかについての大まかな事実を把握することは、困難ではないだろう。
自民党として、「旧統一教会」と訣別するというのであれば、この3つの要素のうち、どの問題を理由として訣別するのかを明確にすべきだ。
これらの問題の整理を前提に、各議員、政治家が、このような統一教会の問題性について、どのように認識し、どのような関わりを持ったのかを具体的に明らかにして、対応を検討していくべきだ。
安倍元首相と旧統一教会の関係の解明を
今回の「統一教会問題」の発端となったのは、安倍元首相殺害事件であり、安倍元首相が統一教会を選挙の際に最大限利用し、国際行事でリモート演説を行って広告塔としての役割を果たしていたことが、犯行動機の形成に大きな影響を与えたとされている。
自民党が統一教会と絶縁するのであれば、その統一教会との関わりの「中心」にあった安倍晋三氏について、その関わりを具体的に明らかにし、それを踏まえて、国葬実施の是非を再検討するのが当然だ。ところが、岸田首相は、安倍元首相と旧統一教会との関係についての調査について、「ご本人が亡くなられた今、十分に把握するのは限界がある」などと、後ろ向きの姿勢を見せた。
しかし、安倍氏が亡くなったからと言って、旧統一教会との関係について把握することに「限界」などあろうはずがない。むしろ、安倍氏が存命中であった場合の方が、権力者の安倍氏への「忖度」から、調査など行い得なかったはずだ。
既に報道されている話を確認するだけでも、安倍氏と統一教会の関係は十分に把握できるはずだ。
8月20日の朝日新聞によると、2016年に旧統一教会の支援で当選した宮島喜文元参議院議員は、今年の参院選を控えた昨年11月、安倍氏との面会で、情勢が厳しいことを伝え、平和連合の支援を念頭に「前回と同じように応援票を回していただけませんか」と頼んだが、安倍氏は「もう少し頑張らないと」などと、はっきりした考えを示さなかったので、宮島氏は今年3月に再度安倍氏のもとを訪れたところ、安倍氏は「前回みたいな応援は難しい。6年間国会議員をやってきたのだから、自分で頑張れないか」などと告げたとされている。
その宮島氏や、代わりに統一教会票を割り当てられたとされる元首相秘書官の井上義行議員に話を聞けば、参議院選挙の際の、統一教会票の割当に安倍氏がどのように関わっていたのかを明らかにすることは容易なはずだ。
不祥事への拙劣な対応が危機を拡大する
連日、新聞でもワイドショーでも、反社会性が明白とされている旧統一教会と自民党議員との関係が大きく取り上げられ、党総裁たる首相が謝罪をせざるを得なくなっている現状は、自民党という組織にとっての一つの「不祥事」と言ってよいだろう。
みずほ銀行反社向け融資問題・阪急阪神ホテルズ食材偽装問題など、過去の多くの企業不祥事において、企業側の拙劣な「危機対応」によって、個別企業の不祥事が、経済社会を揺るがす「巨大不祥事」に発展した。
今回の「統一教会問題」でも、安倍元首相殺害事件直後に、岸田首相が行った二つの最悪の「決断と実行」によって顕在化したリスクは、8月31日の岸田首相の会見での「危機対応」の大失敗によって一層巨大化し、自民党組織を根底から揺るがす事態になることは避けられない。
岸田首相に現時点で採り得る手段があるとすれば、安倍元首相の国葬を「統一教会問題」を理由に取りやめ、内閣・自民党合同葬のような従来のやり方に変更することだ。
第二次安倍政権において、「選挙で勝つためには手段を選ばない」という安倍氏の姿勢が、「統一教会と自民党の関係の近さ」につながり、それが、銃撃事件の犯行動機にもなり、事件が契機となって旧統一教会の問題に社会の関心が集まった。
そういう意味では、「統一教会問題」の大きな原因を作ったのが安倍氏であり、それを理由に安倍氏の国葬を取り止めれば、この問題に一定のケジメを付けることにもつながる。
それによって、話の焦点は、被害者救済の在り方や、宗教法人法の改正等の議論に移る。それ以外に、岸田内閣にとっての最大の危機を打開する手立てはなくなっているように思える。

 

●統一教会の抗議でテレビは萎縮したのか?──テレビ報道量の推移 9/5
抗議を繰り返す旧統一教会
安倍元首相の殺害事件から2か月、世界平和統一家庭連合こと旧統一教会と政治家との関係が段階的に明らかとなってきた。教団系新聞の取材を受けただけのケースもあれば、萩生田光一自民党政調会長のように長年にわたって深い関係を築いていたケースも発覚した。
こうしたことを明らかにしてきたのは、ジャーナリストの鈴木エイト氏や報道機関だ。現在も旧統一教会についての報道は続いており、国民の関心も依然として強い。安倍元首相の国葬儀が終わり、岸田首相が幕引きをしても、来年以降に容疑者の裁判が始まれば報道はかならず再燃するだろう。安倍氏が首相在任時に得意としたような“忘却戦略”は、もはや通用しない。
一方、連日の報道が続く旧統一教会は必死だ。日本を最大の集金地としている教団にとって、現在は存亡の危機と言える状況なのだろう。そのため、報道機関に対して抗議を繰り返している。時系列では以下となる。
・7月12日:記者会見・田中富広会長
・8月10日:記者会見・田中富広会長
・8月21日:プレスリリース「異常な過熱報道に対する注意喚起」
・8月25日:プレスリリース「異常な過熱報道に対する注意喚起(2)」
なかでも25日の「注意喚起(2)」では、放送直前の日本テレビ『24時間テレビ』に対して、教団がテレビ金沢で7年にわたってボランティアスタッフとして関わってきていると明かした。「これ以上報道を続けると、いろいろバラすぞ」という脅しにも見える振る舞いだ。
『スッキリ』の積極性
では、こうした旧統一教会の抗議は報道機関に影響を与えたのだろうか。旧統一教会についてのテレビの報道時間を調査した(※)。重点的に見ていくのは、旧統一教会の抗議以降である先週・8月29日から9月2日までの番組だ。この間、旧統一教会関連のニュースには具体的に以下のものがあった。
・8月29日:消費者庁「霊感商法」検討の初会合
・8月31日:岸田首相が旧統一教会についての関係を謝罪、関係断絶を表明
・9月1日:韓国テレビ局・MBCに旧統一教会が抗議デモ
・ 〃  :自民党・井上義行議員が旧統一教会の賛同会員を退会
もっとも多く取り上げられたのは岸田首相の記者会見だったが、それ以外にはさほど大きな動きが見られない週でもあった。知られていなかった事実が概ね報道されつくされた、という印象もある。よって、その前の週(8月22〜26日)よりも全体的に報道量が減る傾向にあった。
まず午前の情報番組は、25日の2度目の抗議以降に番組によって差がついた。日本テレビ『スッキリ』は増加したものの、テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』とフジテレビ『めざまし8』は減少している。
『スッキリ』は、8月30日に山口広弁護士への取材を通して旧統一教会の霊感商法による被害についての問題を15分近く取り上げた。これは前日の消費者庁による霊感商法検討の初会合を受けてのものだ。
従来『スッキリ』は、報道だけでなくエンタテインメントにも多くの時間を割く番組構成だ。後半にはそのためのコーナーもあるので、相対的に時事報道の割合は小さくなる。だが安倍元首相の銃撃事件以降、旧統一教会にはしっかりと時間を割いている印象だ。
抗議にひるまない『ミヤネ屋』
午後の情報番組では、読売テレビ制作の『情報ライブ ミヤネ屋』が圧倒的な報道量を続けてきた。
8月29日から9月2日にかけては、それまでの7週と比較するともっとも少ない水準となったが、この間も毎日旧統一教会についての報道を続けた。7月12日以降、32日間連続である。
8月25日の旧統一教会の抗議は、おもに日本テレビ系列の『ミヤネ屋』を対象としているとの向きが有力だ。だが、連日報道を続けている『ミヤネ屋』にその影響があったとは感じられない。
29日の放送では、テレビ金沢(日本テレビ系列)の『24時間テレビ』に旧統一教会が関与していたことに対し、MCの宮根誠司氏が「説明不足」と意見する一幕もあった。
加えてこの日の放送では、読売テレビの姿勢として「現状教団とのかかわりについては把握していません。今後、新たな事実が明らかになれば、しっかりと速やかにお伝えしていきます」との声明を出した。読売テレビは明確に旧統一教会の抗議にひるまない姿勢を見せた。
9月2日の放送では、岸田首相の“関係断絶宣言”を受けて教団側にも独自取材をし、「残念に感じている」との言葉を引き出している。非常に積極的に報道する姿勢に変化は見られない。
TBS報道局の積極的な姿勢
夜のニュース番組では、TBSの『news23』が旧統一教会の問題についての時間を割き続けている。TBSは『報道特集』(土曜17時30分)やBS-TBSの『報道1930』(平日19時30分)でも入念な報道を続けており、報道局が重大な問題として捉えていることが伝わってくる。
NHKもより本格的に取り上げるようになった。公共放送という特殊性もあり、NHKの報道姿勢は民放よりも慎重で、かつストレートニュースに多くの時間を割く傾向にある。結果的に『ニュースウオッチ9』で割く時間は限られているが、より深掘りした内容を他番組でフォローする体制にもなっている。
なかでも、8月29日の『クローズアップ現代』では、実質的に教団トップの梶栗正義氏へのインタビューを放送した。驚くような内容ではなかったが、これまで報じられてきたことを旧統一教会側に確認できた(証言を得た)のは大きな価値がある。その内容の長尺版も、テキストによってNHKのウェブサイトで公開されている(8月29日「旧統一教会関連団体トップに問う 教会と政治、安倍元首相との関わり」)。
期待される調査報道
テレビ報道のこうした推移を見ていると、濃淡はありながらも重大な問題として報じてきたことが確認できる。ここまで取り上げてきた9番組の報道時間を足して日別で見ると、以下のようになる。
もっとも報道時間が長いのは、旧統一教会が2度目の記者会見をした8月10日だった。
この2週間ほどは減る傾向にあるが、これは前述したとおり既存のネタが出尽くしつつあるからでもある。たしかに抗議の後に報道時間は減っているが、これが抗議の影響であるかどうかは、今後の推移を確認しなければ判断つかない。
安倍元首相の殺害は、ジャーナリズムにとっては痛恨の事件でもあったはずだ。数年前まで史上最長の政権を続けていた首相とカルト宗教団体がズブズブの関係であり、それを見過ごしてきた(忘れていた)からだ。それを反省している報道関係者も少なくなく、今回の入念な報道はそれによるものでもあるだろう。
そして、今後さらに期待されるのは時間をかけた調査報道による事実解明だ。旧統一教会は、まるでウイルスのように日本の政治の中枢に入り込み、増殖したように見える。そのプロセスがどのような過程であったのか、歴史的なより細かい調査が求められる。
韓国のテレビ局・MBCは、8月30日の調査報道番組『PD手帳』で安倍元首相銃撃事件と旧統一教会の関係について網羅的な報道をした(9月1日のMBC前での旧統一教会の抗議はこの番組に対してだ)。
その多くは日本ですでに報じられている内容だが、韓国の旧統一教会本部への潜入や、韓国の二世信者(母親が日本人)への取材もあり、非常に充実した取材だ。また、韓国のカルト宗教団体と極右の安倍元首相が深い関係だったことが、訝しがられているのも印象的だ(番組はすべてYouTubeで観られる)。
もうひとつの方向として挙げられるのは、このようなカルト宗教団体と政治との関係は、果たして旧統一教会だけなのかということである。
たとえば神道をはじめとする宗教団体を母体とする極右系の政治団体・日本会議と安倍元首相との深い関係は、森友学園問題の時期に多く指摘されてきた。旧統一教会とは異なるケースだが、あらためて丁寧に比較検討する必要があるだろう。
日本では過去30年に、オウム真理教と旧統一教会のふたつの宗教団体関連の大きな事件が起きた。これは明らかに異常事態だ。メディアだけでなく、政治家を選んできた有権者も、この異常性を忘れずに噛みしめ続ける必要がある。
●佐倉市長、旧統一教会集会に出席 参院選の自民党候補応援、公務扱い 9/5
佐倉市の西田三十五市長が、7月の参院選に出馬を表明していた自民党候補の応援のため、宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の地域支部で行われた集会に出席していたことが4日、関係者への取材で分かった。出席は政治家としての政務ではなく、市民を代表する市長としての公務扱いだったという。初当選した2019年の市長選で、支援者に同団体の信者がいたことも判明した。西田市長は集会出席や市長選での支援を認め、今後は同団体と関係は持たないとした。
関係者によると、集会は参院選比例代表に同党公認で立候補表明していた井上義行氏の応援を目的に6月17日、京成臼井駅前にある同団体地域支部の佐倉家庭教会で開催。井上候補は当時、同団体の賛同会員として支援を受けたとされ、その後再選を果たしている。
西田市長は集会に出席した上、紹介を受けてあいさつ。井上氏が銃撃事件で死亡した安倍晋三元首相の首席秘書官を務めていたことから「(当選後は)佐倉市の発展のために力添えを」などと、井上氏が国と市のパイプ役になることを期待する発言をしたとされる。出席は市の業務に関連していることを理由に公務として扱われた。
千葉日報社の取材に、西田市長は集会への出席は参院選候補者の支援者から要請があったためとし「旧統一教会の施設とは認識していなかった」などと釈明。また、19年の市長選を巡り、同団体の信者の紹介で施設を訪問するなど選挙運動で手伝いを受けていたことを認め「(安倍元首相の事件があるまで)旧統一教会の信者とは知らなかった」と説明した。
今後については「集会への出席は主催者に問題がないか十分にチェックするなど適切に対応する。信者とは距離を置く」と述べた。
西田市長と同団体との関係を巡っては、21年8月に関連団体が開催した自転車イベント「ピースロード2021 in Japan 南千葉」に市を通じて要望を受けて出席し、あいさつしたことも明らかになっている。
●「無策無敵」「決断実行」の選択ミス 9/5
故安倍晋三元首相の「9・27国葬」まで1カ月足らず。参院選の最終盤だった7月8日の銃撃による安倍氏の突然の死は、岸田政権への重大な影響だけでなく、安倍氏との密接な関わりが指摘される世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の「底知れぬ闇」(閣僚経験者)を白日の下にさらした。「独断専行」で安倍氏の国葬を閣議決定した岸田文雄首相にとっても「想定外の事態」(側近)で、最新の世論調査では国葬への反対論拡大とともに内閣支持率が急落し、夏休み最終日に新型コロナウイルス感染が判明した首相を追い詰めている。
そもそも安倍氏が非業の死を遂げた際は、「民主主義への挑戦」との受け止めから首相らは「断固たる姿勢を示す」と、参院選最終日の翌9日は全国で選挙活動を展開、野党側もそれに呼応する状況だった。しかし銃撃犯が旧統一教会に対する個人的な恨みから、教団が広告塔として利用していた安倍氏を標的として付け狙い、奈良市での犯行に及んだとの経過が明らかになると、「民主主義への挑戦」という見方も変化。その一方で「安倍氏と教団の、長年の選挙を通じた癒着=v(立憲民主党幹部)が取り沙汰されるようになったことで、国民レベルでも国葬への反対論が急拡大した。
首相は窮状をリセットすべく、お盆直前の8月10日に内閣改造・自民党役員人事を断行したが、各メディアが新体制に起用された議員と教団の関係を集中的に取材した結果、安倍派を中心に何らかの関わりを持っていた者が次々と掘り起こされ、政権への逆風は一段と加速した。
「国葬」「人事」での大変身が裏目に
首相の電撃的な人事は、その時点では安倍派も含めて党内から一定の評価を得た。しかし「旧統一教会隠し」(共産党幹部)との批判などから、各メディアの世論調査では内閣支持率が下落傾向に。主要閣僚や党役員の教団との関わりが次々と露見した8月下旬には内閣支持率が急落し、支持と不支持が逆転する事態に陥った。そうした中でのコロナ感染で、首相は8月27日から出席を予定していた国際会議をリモート参加に切り替え、本格公務は31日から再開。まさに「泣き面に蜂」(周辺)の状態だ。
もともと首相は「『無策無敵』という政治手法で高支持率を維持してきた」(自民長老)とされる。ただ、この「無策無敵」という言葉には注釈が必要で、「無策」は「国民の反発を招くような余計なことはしない」、「無敵」は「あえて敵をつくらず味方に付ける」ことを意味する。安倍氏死去を踏まえ、首相はいずれも電撃的な「国葬」と「人事断行」を決断したが、これらは「本来の『無策』と『無敵』の双方に反する」(自民長老)との見方が支配的だ。
経過を知る側近は「『何も決めない検討使=xから『決断と実行のニュー岸田=xに大変身することで岸田1強≠アピールしようとした」と解説する。しかし、国民の間では「決断すべき問題が違う」との批判が高まる。収束が見通せないコロナ「第7波」の感染爆発への対応は「すべてが後手で中途半端」(閣僚経験者)と疑問視され、旧統一教会に関わりを持つ議員への対応も「本人に申告させるだけで、首相や党執行部は傍観している」(同)という野放し状態だからだ。だからこそ「今こそ『聞く力』を発揮し、コロナ対応や旧統一教会問題で決断すべきだ」(同)との声が広がる。
軽症の首相はリモートで公務をこなし、支持率急落にも「一喜一憂しない」(松野博一官房長官)となお強気だが、「9・27国葬」に向けての政治的後遺症≠フ重さは増すばかりだ。
●ワイドショーに屈服した岸田政権は、統一教会問題をどう収められるか 9/5
日テレの凄まじいバッシングの理由
先週、本コラムで「統一教会バッシングと国葬反対論が、なぜつながってしまうのか? その謎を解く」を書いた。
大胆にいえば、(1)安倍元首相の暗殺で、テレビが安倍元首相と統一教会の繋がりを繰り返し報じた後で、(2)テレビで統一教会をケシカランものだと報じると、(3)安倍元首相の国葬に反対する流れが出てきた。
世論調査をみれば、統一教会がケシカランとの回答をした人のほとんどが、安倍元首相の国葬に反対したのだろう。でないと、統一協会ケシカランの年齢別分布と国葬反対の年令別分布がそれほど似ていることを、なかなか説明できない。
筆者なりに調べると次の現象は興味深い。(1)を否定した意見(暗殺者の勘違い)つまり安倍元首相は統一教会を嫌っていたとの意見に対して、国葬反対派から猛烈な反論が出てくるのだ。安倍元首相は統一教会と関係が深いからビデオメッセージを送ったのだと。しかし、現実にはトランプ大統領が送ったから、トランプ大統領と同調しただけであることが知られている。
安倍元首相のお祖父さんである岸元首相が統一教会と関係があったのは事実だが、さすがに孫の代になると変わってきた。統一教会が北朝鮮と関係を深めていったことや、合同結婚式においていわゆる慰安婦問題を韓国の立場で賛同していたことに対して、安倍元首相が嫌悪感を持っていたのは確実だろう。
その証左として、統一教会にとって不都合な法改正(2013年消費者裁判手続特例法や2018年改正消費者契約法)が安倍政権によって行われている。これらについては、8月1日付け本コラム「統一教会の「名称変更」問題に潜む文科省の「歪んだ行政」」をみてほしい。そこには、霊感商法被害が近年少なっていることも書かれている。
となると、(1)を否定した途端に国葬反対派がしゃかりきになって反論する理由がわからない。統一教会バッシングを梃子にして国葬反対までもっていきたい勢力があるのだろう。
統一教会バッシングは、テレビのワイドショーが中心であるが、その中でも日テレが凄かった。
その理由は、読売グループの事実上のトップである渡邉恒雄氏に関係があると筆者は邪推していた。統一協会を叩くと、自民党内では安倍派の受けるダメージが比較的大きい。その典型は安倍元首相の実弟の岸前防衛相だ。
「魔女狩り」の行方
内閣改造について、8月15日付け本コラム「こんな馬鹿馬鹿しい内閣改造があるか? 岸田氏が断行した「脱安倍」昭和人事で防衛も経済も危ない」で酷評したが、安倍元首相の影響力をそぐという点で岸前防衛相を外すのが主眼の改造だった。実際、統一教会に関係している人は新内閣に選ばないといっていた。
その段階では、岸田政権の「後見人」である渡邉氏が、反安倍・脱安倍を主導したと筆者は邪推していた。渡邉氏が親財務省であるのは周知の事実であり、岸田周辺にも渡邉氏人脈で親財務省の人材が多い。そういう人たちから見れば、反財務省の政策を主張する安倍元主張は煙たい存在だった。そこで、内閣改造では反安倍・脱安倍人事を仕掛けたかったのではないか。
ところが、実際に蓋を開けてみると、「関係」というあいまいなところで線を引こうとしたことに無理があり、新閣僚にも統一教会との「関係」がある人が出てしまった。
このあたりから、マスコミの統一教会バッシングが制御不能となって、岸田政権にも「ブーメラン」となって返ってくるようになった。
もっとも、先週の本コラムに書いたが、8月27日、28日放送の日テレの看板番組「24時間テレビ 愛は地球を救う」で、統一教会からのボランティアがいたことが公表されると、日テレは、《一般的に、参加される方の個人的な思想・信条について確認することはいたしません。》と、これまでの過激な報道とは打って変わって、まともなコメントを出すことになった。
筆者は、これで騒ぎが一段落すると思っていたが、驚いたことに、8月31日、岸田首相は統一教会について「関係を一切断つ」と公表した。
これについて、筆者は、《魔女狩り。旧統一教会の行為は違法行為であれば法律で対処するのは当然だが、関係を絶つというのは魔女狩り。ワイドショーのいうことを聞く必要なし》
《全国の自民党議員の関係者の中に信者がいるのはほぼ確実だが、どうするのかねえ》
《踏み絵を踏まされ関係を絶った自民党関係者が、差別だと自民党を訴えたら、自民党はもたないだろう。日テレのほうがワイドショーでやりつつ、文書回答では相手の思想信条を問わないとしたのがまとも。自民党はまともでない》とツイートした。
自民党国会議員に絞っても、家族の中に統一教会信者がいる確率は52%だ。自民党国会議員の関係者となればほぼ確実にいる。その人と関係を絶つことを迫った結果、差別だと訴えられたらどうするのだろうか。魔女狩りや踏み絵といった、中世や江戸時代のようなことが今の日本で行われていることには、呆れるしかない。
自民党国会議員の調査をするとしているが、どのように確認するのだろうか。就職の採用時にも宗教を聞くのは、憲法違反の疑いさえ持たれる。臨時国会で、人権に熱心な野党は是非質問したらいい。
自民党がワイドショーに屈服したようで情けないが、筆者はこれにも冷ややかな見方をしている。岸田政権の後ろ盾は、読売グループの渡邉氏だ。そこのテレビのワイドショーに従うのは当然の動きだと筆者は見ている。これは岸田政権の本質でもある。
維新案の「事前規制」は現実化するか
最後にどうすべきかを書いておこう。閣内や野党の中にも、すでにその動きがある。
河野太郎消費者相主導で発足した消費者庁の検討会が開かれている。
8月26日、第1回「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」が開催されマスコミで大きく報道された。あまり報道されていないが、同じ日、第1回「消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者懇談会」も開催された。後者では、IT社会で高齢者などをどう守るかなどが検討されるようだ。
筆者からみると、具体的な対応策を練っていく後者の懇談会のほうが重要だ。
というのは、消費者契約法及び消費者裁判手続特例法の2022年改正での附帯決議では《消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)の創設について検討する》とされており、読み方によっては、宗教法人への寄付まで規制対象にしうるものだからだ。
一方、野党からも、事後救済でなく事前規制をするユニークな案が出ている。日本維新の会では、宗教法人に寄付制限を法律で規制する案が出ている。これについて、音喜多駿議員は、法案作成段階で参院法制局から憲法違反の可能性を指摘されたとしている。
これに対し、吉村共同代表は、違憲かどうかの最終判断権者は最高裁判所であり地裁判決では根拠にならないので、頑張れと檄を飛ばしている。
宗教に関する憲法上の規定は、20条と89条にある。それぞれ、《いかなる宗教団体も、国から特権を受け》ない、《公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便宜若しくは維持のため……これを支出し、又はその利用に供してはならない。》なので、寄付制限がどこに反するのか素人にはわからない。
というより、現状で税負担なしの特権さえ認めていることが、憲法上問題にならないのか不安に思ってしまう。
音喜多氏によれば、参院法制局とは、直接的な上限規制の他に、寄附者に「取り消し権」を付与することによる事後的な解決策・間接的な制限アプローチを議論しているという。
これは、参院法制局による、消費者庁の動向をも見据えたうえでの「大人のアドバイス」だろう。筆者としては、維新の事前規制が法案化するのを期待したい。
●旧統一教会問題、ニューヨークのアメリカ人「まだ信じてるの?」と驚愕した理由 9/5
日本の選挙運動や霊感商法に「?」
安倍元首相が殺害され、旧統一教会への恨みが犯行動機とわかってからも、ニューヨークにいるアメリカ人の反応は「よくわからない」という反応が大多数を占める。理由はいくつかある。1つは日本が途上国の村長選挙のような選挙運動(候補者の名前を覚えてもらうことに全力を注ぐ運動)を続けている日本の実態をアメリカ人が知らないこと。日本で旧統一教会の信者が“選挙ボランティア”で行っていた街宣車(選挙カー)からの拡声器による連呼、電話作戦、ポスター貼りなど、「候補者の名前さえ覚えてもらえればいい」とするような選挙運動はアメリカにはない。むしろ、そんな運動で候補者の名前だけを覚え、投票される政治のほうが恐ろしいからだ。
もう1つは、霊感(霊魂)をアメリカ人は信じていないので、先祖や故人の霊魂を沈めるための「霊感商法」といわれても理解が難しいことにある。例えば、あるアメリカ人が、親しい人が殺されたり不慮の事故で亡くなったりして、深く気分が沈んでいたとしよう。そこへ「これを買わなければその人の霊が浮かばれない」となにかを買わせようとしても、そのアメリカ人は「は?」となる。霊や魂を信じていないからだ。ある意味で旧統一教会は、日本人の脆弱性を突いてきている。
ニューヨークのワールドトレードセンターはテロにより多くの死者を出した。しかしワールドトレードセンターの跡地に「霊や魂がうごめいている」と考えているアメリカ人はほぼいない。ニューヨークは移民や外国人が集まっている都市なので、9.11では世界中の仏教国出身者からも死者を出した。ただし、元々の仏教に霊魂は認められておらず、多くは生まれ変わる(輪廻転生)と信じられている。だから世界の仏教徒からは気味悪がられることなく、深夜でもワールドトレードセンター跡地は開放されている。
日本の場合は世界とは違い「霊魂」について事情が違う(霊能者もテレビに普通に出てくる)ので、旧統一教会などによる「霊感商法」への対策が必要になってくるのだろう。被害実態も広範囲に及んでいる。個人的には霊感商法をする団体へのプレッシャーになるのであれば、どんな取り決めでも賛成したい。日本での宗教は“イベント事”のようになっていて、けして日本人は宗教に対する免疫が高いとはいえないからだ。断っておくが筆者はいかなる宗教にも傾倒しているわけではない。
消費者庁による「霊感商法等の悪質商法への対策の検討会」が始まっている。しかしながら、悪徳団体にとっては、本の価格が1冊400万円で「法外」と定められれば、1冊4万円の本を100巻セットで売ることもできるし、本自体は無償提供で400万円は寄付や献金である、と逃れることもできる。結局のところ、寄付や献金自体を「契約」のようにクーリング・オフできるかどうかが消費者庁の範囲になるのではないだろうか。当然、それだけで終わらせてはならない。
それに加え、国や政府に勘違いしてもらっても困る。国民が怒っているのは「旧統一教会による被害者たちへの『被害金の返還』に国が支援や協力しなかった」ことではない。与党である自民党の政治家たちと旧統一教会との関係がズブズブで、被害者や被害者家族の救済ができなかったことに怒っているのだ。間違っても問題を「宗教団体からの『被害金』の救済」という風にすり替えないでもらいたい。
「まだ信じてるの?」の声
アメリカでの旧統一教会については、「ムーニーズ(信者はムーニー)」と旧統一教会の蔑称で呼んでいるアメリカ人が多い。日本のことをよく知る韓国系アメリカ人は、今回の事件を受けて「まだ日本人にはムーニーズのことを信じている人がいるの?」と驚いていた。その韓国系アメリカ人は、コロンビア大学の教授だったこともあり、日本人の平均的な教養の高さや、高等教育を受けている割合が高いことを知っている。だからこそ、「それなのに……」という思いは強い。
旧統一教会の教義は「キリスト教として」おかしな点がアメリカでは指摘されている。私たちは日本語で旧統一教会と呼んでいるが、正式な旧名称は「世界基督教統一神霊協会」。アメリカで旧統一教会は、権威主義的な基督教(キリスト教)の新興宗教という捉え方だ。聖書に対して厳格なアメリカの福音派教会は、旧統一教会について「キリスト教と儒教が混ざり合った宗教」と分析している。儒教は厳密には宗教ではないが、中国が発祥であり、現在では日韓において儒教的な社会が実現している。
儒教の「孝」の思想は、亡くなった後の精神が子孫に受け継がれる、と信じられている。また儒教は、いつかこの世に帰って来る思想でもあるため、死んだ人(霊魂)を拝む。日本での位牌も本来の仏教にはなく、儒教から来ている。また社会においては、地位が低いという理由で我慢したり(させられたり)、先輩後輩、師匠弟子といった関係を維持したり(させられたり)、年齢による上下関係の秩序を守る(らさせる)ことが重要とすること自体、儒教の影響が色濃い。アメリカではこういった儒教的な感覚はなじまないので、旧統一教会の教義自体が奇異に映るのだ。
ただし、旧統一教会のアメリカでのビジネスの開拓はすさまじいものがある。日本から韓国経由の原資で、旧統一教会はアメリカに“投資”をしたのだ。旧統一教会の広告塔になった日本の政治家たちの影響の結果でもある。CMに出た芸能人のおかげで売れた商品のようなものだ。旧統一教会に警鐘を鳴らし続けているアメリカのフリーダムオブマインド・レスキューセンターの「旧統一教会のフロント企業・団体リスト」には、アメリカや世界での仰天するほどの数の旧統一教会の団体や企業が掲載されている。
フロントは1000以上
旧統一教会のフロント企業・団体は、アメリカだけで1千社(団体)以上あり、ニューヨークだけでも200社(団体)以上ある。そのリストはジャンル分けされており、アート、スポーツ、政治、宗教、霊気など各種団体、ビジネス(医療、水産、ホテル、レストラン、メディア、建設、音楽、旅行、自動車修理・部品、印刷、不動産など)、その他に国際・女性・平和などの名称が付く団体、など多岐にわたる。ちなみに、1975年に旧統一教会がマンハッタンのニューヨーカーホテルを買収したことは有名な話だ。ホテルでは合同結婚式が行われたこともあり、現在でもいくつかの旧統一教会系の企業・団体が同ホテルの住所を使用している。
仮に日本からの資金がストップしても、もはや旧統一教会はアメリカに根付いた企業や団体となっている。大昔であれば、日本人の寿司職人とアメリカ人を旧統一教会による合同結婚式で結婚させ、アメリカの日本食レストランで日本人の寿司職人を働かせていたこともあるだろうが、いまではアメリカで生まれた2世もいるので、わざわざ合同結婚式で寿司職人の「人材」を集める必要もない。日本では旧統一教会によるアメリカでの寿司関連の事業が一部で指摘されているが、もうすでに旧統一教会系の日本食レストランはほぼ全州にある。旧統一教会系のトゥルーワールド・グループのアメリカでの体制は、水産から物流まで整っており、全米の旧統一教会とは無関係のレストランにも食材を卸している。もう過去の“投資”が軌道に乗っている状態だ。
やはり、政治と旧統一教会の関係を断ち切らなければならない。8月に韓国で行われた旧統一教会の式典には、トランプ前大統領、ギングリッチ元下院議長、ポンペオ前国務長官らが出席した。すべて共和党でアメリカでは保守政党。1990年代半ばにジョージ・ブッシュ元大統領(共和党)が、日本で旧統一教会の集会で講演をしたが批判され、のちに約8万ドル(約1千万円)を慈善団体に寄付(返還)したことから、旧統一教会からの講演会料が逆算された(ワシントンポスト)。2006年には旧統一教会系のメディアである“ワシントンタイムズ”からジョージブッシュ大統領図書館に100万ドル(約1億3千万円)の寄付もされており、旧統一教会と保守政党である共和党との関係は長い。
旧統一教会は、世界中の保守政党や保守政治家との親和性が高いこともわかっている。日本でも「LGBT理解増進法案」や同性婚、夫婦別姓に反対の自民党と、旧統一教会との繋がりが明らかになった。旧統一教会は、フリーダムオブマインド・レスキューセンターのリストによると、現在50カ国以上にフロント企業や団体を持っている。そして保守派の政治家に食い込んでいくことが常套手段なのだ。旧統一教会が世界進出を果たすと、信者は無報酬で働くことをいとわず、報酬があっても旧統一教会に献金してしまう。その構造自体が被害を生んでいる。
前述の約1千万円の講演料は、元大統領にしては「安すぎる」という声がアメリカにある。日本に立ち寄った際なのでジョージ・ブッシュ元大統領は安く引き受けたのかもしれない。日本でも現在、旧統一教会と主に自民党の政治家との「お金」のやり取りは、政治家からの「自主的な公表」だけにとどまっている。旧統一教会での講演料がゼロだったという保証はない。通常であれば、宗教団体は政治家を海外に招待する際、渡航費やホテル宿泊費のほかに「基本的な滞在費」を渡すことが一般的でもある。名目が「講演会費」でなければいい、ということではないだろう。旧統一教会への捜査・調査がなければ今後も真相は闇の中だ。
マインドコントロールの危うさ
今回の悲劇(安倍元首相が殺害され旧統一教会と政治家との関係が明るみになり国葬へと繋がった)は、主に自民党が選挙時に「選挙協力」や「選挙ボランティア」の人員が必要だからこそ、政治家が旧統一教会の広告塔になっていたことにある。選挙期間中は手伝ってくれる人に報酬を与えてはならないから、タダ働きしてくれる「選挙ボランティア」を動員できる宗教団体がありがたかったのだ。しかしその裏には、自由に生きる権利とはほど遠い、宗教による不当な影響力 (マインドコントロール)化にある信者たちがいる。
今後、自民党の方針として、自民党議員は旧統一教会の関係先に「選挙ボランティア」の人員を頼むことは難しくなった。そうであれば、もう途上国の村長選挙のような選挙運動(候補者の名前を覚えてもらうことに全力を注ぐ運動)はやめたらどうなのか。現状のままだと「第2の旧統一教会」がまた選挙運動に入り込む余地がある。日本の選挙運動は、成熟した民主主義国家の選挙でもない。世界中を取材している筆者の知る限りでは、民主主義国家では東南アジアのタイで似たような形(街宣車のスピーカーで候補者名を叫ぶなど)がある程度だ。
日本は世界と比べて投票率が低い、とされてきているが、2021年のニューヨーク市長選の投票率は23%だった。ニューヨークでは街宣車が走ることもなく、候補者が街に立って握手をしたりすることもないので、観光客は選挙期間中であることに気づくこともない。しかしだからといって選挙が組織票で決まったりするわけではない。予備選があり、討論会もあり、テレビやインターネットでもその様子が配信されている。市民はそういった選挙戦を通じて投票するものと認識している。日本もそうなることで「名前」ではなく政策で政治家を選ぶことにも繋がるだろう。
また、2020年の大統領選のニューヨーク州の投票率は62%、2018年のニューヨーク州知事選の投票率は47%だった。市民の関心の高さによって投票率が変わっていることもわかる。日本では一律に投票率を上げるために投票を呼びかけているが、それが本当に正しいのだろうか。質の低い投票率を上げる必要はない。
名前を覚えてもらうことに全力を注ぐ選挙運動をしていては、超高齢化社会の日本で、若者や現役世代への政策が実施される可能性は低いだろう。なにより平日の昼に選挙運動をされても、現役世代は仕事や子育てに忙しいのだ。日本の将来を高齢者が決めてどうする。安倍元首相が銃撃された日は、金曜日の午前11時31分頃。候補者としては、人気があるかのように錯覚させる一瞬のテレビ映像のために宗教団体から街頭聴衆の動員(サクラ)をしてもらう。そこへ警備に当たる警察……。もういいだろう。
次の選挙まで解散がない限り約3年はある。今回、旧統一教会による“選挙ボランティア”が問題となったことをきっかけに、与野党による超党派で選挙制度の見直しをしたらどうだろう。そもそも10年後も同じ選挙制度のままで行くつもりなのか。
選挙期間中に奈良で演説に立った安倍元首相は、銃撃の直前こう呼びかけていた。「できない理由を考えるのではなく――」。宗教団体と政治は、できるだけ距離を置いたほうがいい。
●理解不能、統一教会との断絶公言しつつ教団と密接な元首相を国葬で讃える 9/5
統一教会(現・世界平和統一家庭連合)をめぐる問題に対応する政府の「旧統一教会問題関係省庁連絡会議」は、今月5日から30日までを「相談集中強化期間」として、フリーダイヤルの合同電話相談窓口を開設する。先週末の2日に、会議を主宰する葉梨康弘法務大臣が記者会見で明らかにした。
これで国を挙げて、統一教会のいわゆる霊感商法などの不法行為の相談や被害者救済にあたることになった。
「被害者救済」集中期間のさ中に国葬
ところが、この電話相談窓口を設けた「相談集中強化期間」も大詰めを迎える27日には、日本武道館で安倍晋三元首相の「国葬」が行われる。
その安倍氏は、ちょうど1年前の昨年の9月、統一教会の創始者である文鮮明の妻で、現在の教団の総裁である韓鶴子が主宰する関連団体「天宙平和連合」にビデオメッセージを送って、こう明言していた。
「韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」
国を挙げて集中的に国民の被害救済に取り組んでいる期間中に、その加害者団体の首領を称賛する首相経験者を「国葬」にする。こんなに頓珍漢な話もない。しかも、どちらにも国民の税金が使われる。日本国民を食い物にする日本の敵に味方して、宣伝にも使われたはずの人物に、国費を注ぎ込んで葬式を出す意味もわからなければ、その被害の尻ぬぐいを背負わされる。理不尽とはこのことだ。
こんな愚かで歪んだ状況を招いたのは岸田文雄首相であることはいうまでもないが、ところが本人はそのことに気付いてさえいないようだ。
これで「しがらみを捨て、関係を絶つこと」が可能なのか
岸田首相は、新型コロナウイルスに感染した療養明けの8月31日の記者会見で、まず統一教会に触れ、閣僚を含めた自民党国会議員との関係に疑念をもたれていることを「自民党総裁として率直におわびを申し上げます」とした上で、こう述べている。
「国民の皆様の疑念、懸念を重く受け止め、自民党総裁として茂木幹事長に対し、先週来、3点指示をいたしました。
第1に、党として説明責任を果たすため、所属国会議員を対象に当該団体との関係性を点検した結果を取りまとめて、それを公表すること。
第2に、所属国会議員は、過去を真摯に反省し、しがらみを捨て、当該団体との関係を絶つこと。これを党の基本方針として、関係を絶つよう所属国会議員に徹底すること。
第3に、今後、社会的に問題が指摘される団体と関係を持つことがないよう、党におけるコンプライアンスチェック体制を強化すること。
自民党として説明責任を果たし、国民の皆様の信頼を回復できるよう、厳正な対応を取ってまいります」
その第1にあげた党所属国会議員と統一教会との関係性の点検は、先週末2日までにまとめて公表するはずが、間に合わなかった。国会議員に提出を求めた調査票の回答にあいまいな記述が多く、確認作業が必要なためだとう。国会議員が、「過去を真摯に反省」していないことの証左だ。それで、「しがらみを捨て、関係を絶つこと」ができるのか、疑わしい。
安倍氏と教団の関係検証について「死人に口なし」との態度
岸田首相は会見で、統一教会についてそう述べたあと、舌の根も乾かぬうちに、安倍氏の「国葬」についての言及をはじめた。
「民主主義の根幹たる国政選挙を6回にわたり勝ち抜き、国民の信任を得て、憲政史上最長の8年8カ月にわたり重責を務められたこと。第2に、東日本大震災からの復興や、日本経済の再生、日米関係を基軸とした戦略的な外交を主導し、平和秩序に貢献するなど、様々な分野で歴史に残る業績を残されたこと。第3に、諸外国における議会の追悼決議や服喪の決定、公共施設のライトアップを始め、各国で様々な形で国全体を巻き込んでの敬意と弔意が示されていること。第4に、民主主義の根幹である選挙活動中の非業の死であり、こうした暴力には屈しないという国としての毅然たる姿勢を示すこと。国葬儀を執り行うとの判断に至った理由をこのように説明してきました」
「もとより、今回の国葬儀の開催は、国民に弔意を強制するものではありませんが、様々な御意見とともに、説明が不十分との御批判を頂いております。国葬儀の実施を判断した総理大臣として、そういった御意見、御批判を真摯に受け止め、正面からお答えする責任があります。政権の初心に帰って、丁寧な説明に全力を尽くしてまいります」
岸田首相のいうように「憲政史上最長の8年8カ月にわたり重責を務められたこと」すなわち政権を維持したことは、確かに「記録」ではあるが、いま問われているのはその実態だ。安倍氏が首相を務めた8年8カ月の間に、統一教会との関係が深まっていったとする様々な事情が指摘されている。私も知っている。疑念の根本はそこにある。
だが、岸田首相はこの時点で統一教会と「国葬」は切り離して説明している。
そこに記者からの質問が飛ぶ。統一教会との関係を絶つというのなら、安倍氏との関係を検証する、見直す考えはないのか、と。
それに対する岸田首相の返答は、以下の言葉に尽きた。
「御指摘の点については、安倍(元)総理がどのような関係を持っておられたのか、このことについては、御本人が亡くなられた今、十分に把握するということについては、限界があるのではないかと思っています」
つまり、その考えはない、ということだ。少なくとも、私にはそう聞こえた。もっと言えば「死人に口なし」と言っているようなものだ。
教団との関係、最も深かったのは安倍氏ではなかったのか
「国葬」に反対する主張としては、「国葬」の法的根拠が曖昧であったり、基準が定かでなかったり、予算についてもおよそ2億5000万円を予備費から支出することを閣議決定したばかりだが、ここに警備費や外国要人をおもてなしする接遇費が入っておらず予算規模が把握でいなこと、そもそも「国葬」を内閣府設置法に定める「国の儀式」にして閣議決定だけで推し進め、国会審議が尽くせていないことなどがあげられる。真面目なメディアはそちらを強調して、岸田首相もそのあたりのことを「丁寧な説明に全力を尽くして」いくつもりのようだ。
だが、世論調査を見ても明らかなように、当初は安倍氏の「国葬」に「賛成」が多かったものが、その後「反対」の声が大きくなっていったのは、安倍氏と統一教会の関係が表沙汰になったからだ。
安倍氏を襲った山上徹也容疑者(41)は、母親が統一教会にのめり込み、多額の献金をして家庭が崩壊。教団への恨みが、韓鶴子総裁を称賛する安倍氏のビデオを観たことによって、安倍氏への殺意に置き換わっていったとされる。そのことから、はじめのうちは“どこ吹く風”とばかりに教団との関係性を疎んじていた自民党も、世論の厳しい風当たりに、ここへ来て豹変せざるをえなくなった。それが前述の岸田首相の会見での“お詫び”に表れている。
「御本人が亡くなられた」から話を聞けないのではなく、もうすでに安倍氏が統一教会の首魁を表敬するビデオが白日の下に晒されている。自民党との関係を点検するのであれば、これほどわかりやすく明確な証拠はない。長期政権を担った立場や重責からしても、もっとも糾弾されるべきは安倍氏のはずだ。
表向きは「関係清算」でも実はしっかり「統一教会隠し」
自民党がいま実施していることは、現役の国会議員と統一教会の関係を確認して、清算することだ。そこには、秘書や事務所関係者は含まれない。まして、過去を総ざらいしないことには、政治に統一教会の影響がどこまで及んでいたか、未解明のままだ。たとえば、教団の名称変更について、当時の文部科学大臣政務官だった山本朋広衆議院議員の関与は検証されていない。それは、以前にも書いた。山本氏は韓鶴子総裁を「マザームーン」と讃えた人物だ。
問題の本質は、統一教会によって政治や政策が歪められたことの有無の検証にあるはずだ。日本の首相経験者が、日本国民を苦しめ、財産や魂までも略取する加害者団体のボスを称賛するようなことがあっていいはずがない。その被害者救済をいまごろになって国がやるとは、尻ぬぐいにもほどがある。
いま「国葬」について説明が求められているのは、その人物が「国葬」にふさわしいのかどうかだ。手続き論ではない。
安倍氏と統一教会の関係を「死人に口なし」で葬り去り、そこを無視して「国葬」に踏み切るのであれば、それこそ政府、自民党による最大の統一教会隠しである。
●旧統一教会の“擬装イベント” 「日韓友好」「SDGs」「医療者支援」名目で開催 9/5
政治家が言う「旧統一教会の関連団体とは知らなかった」は疑わしいが、全国で行なわれている一般向けイベントには、確かに教団関連とはわかりにくいものが紛れ込んでいる。
毎年全国の都道府県で開催されている「ピースロード」は、地域ごとの実行委員会が主催するサイクリングイベントだ。
「世界平和」「日韓友好」を掲げてそれぞれの地域内を自転車でめぐり、リーダーの青年が行く先々で平和のメッセージを読み上げる催しで、実行委員会には地元の政治家などが名前を連ねる。
この8月に実施された「ピースロード2022イン熊本」の実行委員には、木原稔・元財務副大臣など熊本選出の自民党国会議員3人が加わっていた。
だが、本当の主催者は旧統一教会の関連団体「UPF(天宙平和連合)」だ。ピースロードのホームページによると、中央実行委員長はUPFジャパンや国際勝共連合の会長を兼ねる梶栗正義氏が務め、佐賀県唐津市で行なわれた2021年のラストランにも参加したことが掲載されている。
20代後半の元2世信者の女性が語る。
「先頭をリードして走り、役所などを表敬訪問してメッセージを読むのは『青年』と呼ばれる若い信者の役目です。外部から見るとただのサイクリング集団で、統一教会とは思わないでしょう。イベントの横断幕に『朝鮮通信使のルートを走って日韓友好を実現しよう』といった標語が書かれていたりする部分に、教会の色がうかがえるくらいです」
もともとは2013年に2台の自転車で北海道から日本列島を縦断し、韓国まで繋いだことから始まったイベントとされ、以来、日本の各地で行なわれるようになっていった。
それが安倍晋三・元首相の銃撃事件後、事態は急変した。UPFが旧統一教会の関連団体であることが大きく報じられると、このイベントを後援していた各地の自治体で後援を取り消す動きが広がっているのだ。
熊本県、熊本市、八代市は8月2日に後援取り消しを発表した(イベントは実施)。八代市秘書広報課が説明する。
「ピースロードに対する後援は2018年から行なってきました。イベント企画書や規約などを見ても、承諾基準に反していないことから、後援名義の使用を承認しましたが、役所の人間が参加したり、見に行ってイベント自体を支援したことはない。これまでピースロードが旧統一教会系であるという認識はありませんでした。
旧統一教会系の団体の存在がクローズアップされ、議員との関係など新聞やテレビで報道されるようになり、それでわれわれも知ったし、市民の方々の不安も高まりました。そこで八代市として協議し、イベントの開催期間中ですが、8月2日時点で後援名義の使用を取り消すことを決めました。今後は申請があっても不承諾になると思います」
他にも鹿児島市、奈良市、天理市、西東京市などが次々に地元のピースロードイベントの後援を取り消し、香川県は後援取り消しとともに、知事が務めていた同イベントの実行委員会顧問の辞任も発表した。
このイベントの実施を賞賛する記事を報じていた新聞各社も、“証拠隠し”のように一斉に記事をウェブ上から削除したのである。
小学生と「SDGsすごろく」
コロナ対応に苦労する医療関係者を激励するという名目のイベントも開かれた。大阪・泉佐野市で昨年行なわれた「キャンドルナイト」だ。後援した泉佐野市の秘書課の担当者が語る。
「学生が手作りのキャンドルに灯をともすイベントで、会場でキャンドルを販売した売上をコロナで頑張っているりんくう総合医療センターに寄附するというものです。世界平和青年学生連合南大阪連合会という団体の主催で、30万円の寄附がありました。今後については、霊感商法など不透明な部分がクリアにならないと、市として後援名義使用は承認できない」
さらに見落とせないのは、子供向けイベントの存在だ。
旧統一教会の関連団体「北海道CARP」と札幌市の外郭団体「札幌市環境プラザ」が共催したのが『WAKUWAKU 4U Project』だ。
小学生の子と、その親を対象に環境について学ぶイベントで、「SDGsすごろく」や「もしこの世に電気がなかったら」体験、使い古しの油を使った石鹸作りなど、昨年11月から今年6月にかけて合計6回開かれ、大学生と子供たちが交流した。
「CARPとは旧統一教会信者の大学生サークルで、1960年代より全国各地の大学で活動している『原理研究会』と同一団体と考えてよい」(全国霊感商法対策弁護士連絡会の木村壮弁護士)
札幌市環境局環境政策課の担当者が開催の経緯をこう説明した。
「昨年7月に北海道CARPから札幌市若者支援総合センターに『SDGsに関する子供向けイベントをやりたい』と相談があり、札幌市環境プラザを紹介しました。北海道CARPが旧統一教会関連だということは、札幌市のほうでは認識がありませんでしたが、プラザのほうは途中で調べて、関連があることがわかったそうなんです。
ただ、イベントなどで彼らが布教をするわけでもなく、宗教活動を行なっているわけでもありません。施設管理の規定には宗教団体の関連団体を排除する定めはなく、他の宗教団体やその関連団体がプラザを使用している実績もありましたから、断わる理由がありませんでした」
札幌市が旧統一教会との関係を把握したのは、安倍氏の事件後だという。
「九州大学CARPの環境保全に貢献したとする過去2回の表彰を、福岡市が取り消したというニュースが7月25日にありました。それを知って市からプラザ側に確認し、北海道CARPも関連団体だと初めて知りました。懸念として、参加したお子さんの個人情報が渡っているのではないかということもありました。イベントでは布教を行なっていませんが、後からその名簿を基にやる可能性が考えられたからです。が、北海道CARPはお子さんの名前は聞いていましたが住所やその他の情報は得ていない。
札幌市には福岡市のように宗教団体を対象から除く規定はありませんが、今後イベントの実施を求められても、プラザの本来の業務に支障が出るということでご遠慮いただくことになります」(同前) 
●全国拉致監禁・強制改宗被害者の会がTBS「NEWS DIG」に抗議文を提出 9/5
9月1日、全国拉致監禁・強制改宗被害者の会の後藤徹代表がTBSに対して抗議文を送りました。
後藤代表は抗議文の中で、「8月27日付で『報道特集』と題する番組を放映し、元家庭連合の信者と称する5名を出演させました。しかるに、スタジオに座っていた5名のうち一番左に座っていた『洋子』と名乗る女性は私の兄嫁であり、私に対する12年5ヶ月に亘る拉致監禁、脱会強要という異常な人権侵害を行った加害者の1人です。」と「報道特集」の出演者のキャスティングの問題を指摘しました。
また、「私を監禁して異常な人権侵害を行い、その行為の違法性が最高裁において確定した人物を出演させながら、その非人間的な人権侵害について謝罪の弁を述べさせるなどのことは一切せず、家庭連合に対する一方的な批判をさせ、その発言を公共の電波で流しました。このような異常な人権侵害、違法行為については一切無視する一方、その実行行為者を動員して家庭連合叩きに奔走する貴社の報道は、公正中立な報道と言えるのでしょうか?」と抗議した上で、以下の4点について回答を求めています。
1.番組に出演した元信者5名の人選プロセス、特に宮村峻氏の関与の有無。
2.兄夫婦も拉致監禁され、無理やり信仰を捨てさせられた過去があるが、他の4名も同様に意に反する隔離を手段とした脱会説得によって棄教したのではないか?
3.家庭連合の国際合同結婚式を人権侵害などと非難しつつ(フリーアナウンサー膳場貴子氏の発言)、私を初めとする家庭連合の信者らが受けてきた拉致監禁、脱会強要という、最高裁で違法性が確定した人権侵害について一切報道しないのは何故か?
4.貴社は公共の電波を用いて宗教弾圧を行っているだけではないのか?また、そうではないというなら理由を説明されたい。
後藤代表はTBSに対し、9月8日までに質問事項の返答を求めています。 

 

●岸信介氏が“仲介役”に!統一教会が上皇ご夫妻に接近した 9/6
韓国の民族衣装を着た少女たちへ、にこやかにほほ笑まれる上皇さまと美智子さま――。
1971年1月8日に撮影された写真だが、当時の新聞記事はこの日の様子を次のように伝えている。
《皇太子ご夫妻は、秩父宮妃殿下とご一緒に、八日夜、東京・神田の共立講堂で開かれている韓国の「リトル・エンジェルス」東京公演をご覧になった。(中略)華麗な舞踊に、ご夫妻らは、盛んに拍手をおくられ、約二時間にわたって熱心に、ご覧になった》(『毎日新聞』1971年1月9日付朝刊)
だが実は、韓国の小中学生が伝統的な韓国舞踊をステージで繰り広げるリトル・エンジェルスは、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と密接な関わりを持つ舞踊団なのだという。長年統一教会の問題を取材してきたジャーナリストの有田芳生さんは、舞踊団の正体についてこう語る。
「リトル・エンジェルスは、統一教会の創設者である文鮮明氏が提唱し、1962年5月に設立された舞踊団です。『平和の天使』と標榜して、現在も活動を続けています。上皇ご夫妻や宮内庁は、リトル・エンジェルスがどういった団体なのか知らなかったはずです」
51年前に、美智子さまへ“魔手”を伸ばしていた統一教会――。
本誌が発掘した公演当日の写真には、安倍晋三元首相の祖父である岸信介元首相(1896年〜1987年)や、“日本の黒幕”などと昭和史に名を残す笹川良一・元日本船舶振興会会長(1899年〜1995年)の姿がある。岸氏と笹川氏は、文鮮明氏と親交があり、統一教会の日本での活動を支援してきたとされる。
「1954年に発足した統一教会は、共産圏と対峙していた西側諸国の保守派と協力関係を築き上げて勢力を拡大。その過程で文氏と笹川氏は接点を持ったといわれています。その象徴が、1968年に日本と韓国で発足した政治団体『国際勝共連合』です。初代会長には、統一教会日本法人の会長だった久保木修己氏が就いています。この勝共連合の名誉会長を1972年まで務めたのが笹川氏でした。笹川氏と岸氏は、ともにA級戦犯容疑者として収監された巣鴨プリズンで親交を深めました。1957年に首相となった岸氏と統一教会の関係を笹川氏が取り持っていたのです」(全国紙政治部デスク)
岸氏が作り上げた自民党と統一教会の蜜月の関係は、半世紀後の現在、孫である安倍元首相の暗殺事件によって再び国民の関心を集めている。
清濁併せ呑む政治手法から“昭和の妖怪”というあだ名で恐れられた岸氏に仲介させて、国民的な人気があった美智子さまへ統一教会が“魔手”を伸ばしたのは、いったいなぜなのか――。
各国のVIPとの関係を誇示して…
「現在も、リトル・エンジェルスのホームページには、公演をご覧になった上皇ご夫妻との写真のほかに、英国のエリザベス女王やアイゼンハワー元米大統領と交流する写真が掲載されています。世界的なVIPとのつながりを誇示することで、布教活動に結びつける“権威付け”を図っていたのでしょう」(皇室担当記者)
上皇ご夫妻のご成婚前、首相として皇室会議の議長を務めたのが岸氏だった。前出の皇室担当記者はこう続ける。
「上皇さまと平民出身の美智子さまとのご結婚には、皇族の中からも反対する声が上がりました。そうした状況で、お二人のご結婚を進めたのが岸氏でしたから、ご夫妻は岸氏に好印象を抱かれていたそうなのです。日韓国交正常化から5年ほどたった1971年当時に、韓国の子どもたちとのご交流ということで、岸氏側からご臨席願いが寄せられたのであれば、ご夫妻にはお断りになる理由はなかったと思います」
ある宮内庁関係者はこう話す。
「もしその当時に、教団への多額の献金が原因で家庭が崩壊した人々の存在を上皇ご夫妻、宮内庁が知るようなことがあったならば、お二人は強く心を痛められたでしょうし、公演ご臨席は実現しなかったでしょう。現実に、1970年代半ばには、統一教会による大学での布教活動や霊感商法がメディアに取り上げられるようになりました。それ以降、皇室はいっさい教団関連団体と関わったことはありません」
しかし統一教会は、信者に対して文鮮明氏の神格化を強めるエピソードとして、1971年の公演での出来事を独善的に利用していたという。前出の有田さんは、「リトル・エンジェルスの公演をご覧になった美智子さまに、教典である『原理講論』が手渡されたという“言い伝え”が教団内で語り継がれているそうなのです。教祖の文鮮明氏を『王の王』とする統一教会では、日本の皇族もその教義を学ばなければならず、皇族も国際合同結婚式に出なければならないとまで、信者たちは教えられています。統一教会の周辺組織について、上皇ご夫妻がご覧になった時代には日本社会ではあまり知られていませんでした。むろん、公演以後皇室との接点はありません」
半世紀も前に、日本の権力者を通じて皇室への侵食を図っていた統一教会。もし当時、美智子さまがその魔手をはねのけていらっしゃらなかったら……。そう想像すると慄然とせざるをえない。
●首相、徹底調査を要請 旧統一教会接点巡り自民 9/6
岸田文雄首相(自民党総裁)は6日の党役員会で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側との接点確認を求めた調査に関し、徹底的に取り組みを進めるよう要請した。結果の公表に向け「党として一致結束し、毅然とした対応をする」と強調した。自民は調査結果を週内に公表する方向で調整している。
役員会後、首相、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長ら政権幹部が党本部で会談。教団側との接点確認調査や、安倍晋三元首相の国葬に関する閉会中審査を巡り協議した。
自民は8月26日に国会議員を対象に調査を開始。首相は、結果を取りまとめて公表するよう茂木氏に指示している。
●岸田政権、旧統一教会問題で存亡の危機 世論調査で内閣支持率が下落 9/6
岸田文雄内閣の支持率が、各社の世論調査で軒並み大きく落ち込んでいる。旧統一教会と自民党の密接な関係が指摘されているためで、政権は危機的状況だ。AERA 2022年9月12日号の記事を紹介する。
国政選挙を乗り切って安泰だったはずの岸田文雄政権が存亡の瀬戸際に立たされている。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党政治家との関係が次々と発覚し、国民の不信が募っているのだ。背景には応援してくれる組織を十分チェックしない自民党の積年の体質がある。コンプライアンス(法令や社会規範の順守)が厳しく求められる時代との落差はあまりに大きい。岸田首相は自民党の「解党的出直し」を迫られている。
きっかけは7月8日の安倍晋三元首相銃撃事件だった。山上徹也容疑者が犯行の動機に関連して、母親による旧統一教会への多額献金で家庭が崩壊、旧統一教会の友好団体の集会にビデオ出演した安倍氏に殺意を抱いたと供述したという。この犯行は許されないが、旧統一教会と自民党との深い関係がクローズアップされた事件となった。
波紋は広がった。事件当時、経済産業相だった萩生田光一氏は旧統一教会系の会合に出席していたと発表、山際大志郎経済再生相も同じような会合に出席したと明かした。内閣支持率が急低下したことに危機感を抱いた岸田首相は、予定を早めて8月10日に内閣改造・自民党役員人事に踏み切った。
局面転換を狙ったのだが、(1)経産相から党政調会長に横滑りした萩生田氏が、参院選公示直前に立候補予定者と旧統一教会の施設を訪問(2)留任した山際経済再生相が、旧統一教会系の団体がネパールで開いた会議に出席していた、といった新事実が次々と判明。改造前には党総務会長を務めていた福田達夫氏が、旧統一教会に関連して「何が問題なのか分からない」と語り、多額献金などで苦しむ被害者たちから強い反発を浴びた。
内閣支持率はさらに低下。朝日新聞の調査(8月27、28両日)では岸田内閣を支持する人が47%で7月に比べて10ポイント下落。支持しない人は25%から39%に急増した。ほかの調査でも支持率は軒並み低下している。いずれの調査でも首相の旧統一教会問題への対応を「評価しない」が多数を占めており、この問題が政権を直撃していることが分かる。
●岸田政権が支持率急落でも「野党復権」は望み薄、光が見える唯一の政党? 9/6
安倍元首相の殺害事件をきっかけに、旧統一教会と自民党の関係が問題視されていることなどから、岸田内閣の支持率が急落している。岸田内閣は今後、支持率回復に向け、中小企業や個人への再配分といった「バラマキ戦略」を強化していくだろう。だが、こうした「労働者への分配」は、本来は左派野党が取り組むべき政策だといえる。自民党にお株を奪われることで、野党はさらに存在感を失っていく可能性が高い。その中で、自民党の対抗馬になり得る野党は現れるのか。歴史的背景を踏まえながら考察する。
「三つの要因」によって 岸田内閣の支持率が急落
岸田文雄内閣の支持率が停滞している。朝日新聞の世論調査では、7〜8月にかけて内閣支持率は57%から47%まで低下した。毎日新聞の世論調査では、同時期に52%から36%まで落ち込み、発足以降で最低の水準を記録したという。
大幅な下落の要因は、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員の関係」「安倍晋三元首相の国葬の是非」「新型コロナウイルス感染症の再拡大」の3点だと考えられる。
これらの要因に加え、もし今後、インフレーション(インフレ)が国民生活を直撃した場合、内閣支持率は30%台前半以下という「危険水域」まで落ち込む懸念がある。
では岸田内閣はこれから、支持率を立て直すためにどのような施策を展開するのか。
まず考えられるのは「景気対策」だ。内閣支持率が急落した政権が景気対策に取り組むのは常である。景気の安定が、支持率を維持していくベースとなるからだ。
足元では、円安の進行や資源価格の高騰でインフレが進んでいる。食料品、鋼材などさまざまなモノの価格が値上がりする一方で、国民の給料は物価に見合うほど上がらない。家計の負担は重くなるばかりだ。
岸田政権はその対応に、なりふり構わず全力を挙げることになるだろう。その証拠に、岸田首相はすでに物価対策に動きだしている。
具体的には、岸田首相自らが「物価・賃金・生活総合対策本部」の本部長を務め、「小麦の輸入価格上昇」「エネルギー輸入価格上昇」の対応策の具体化を要求している。また、地域の電気代の負担軽減に向け、「地方創生臨時交付金」における1兆円の増額を指示している。
岸田首相は今後、こうした経済対策を次々と打ち出していくことだろう。同首相は自らの経済政策のコンセプトとして「新しい資本主義」を掲げている。その内容は、アベノミクスが置き去りにした中小企業や個人への再配分を強化することだ。
今後は新しい資本主義の一環で、これまで以上に「予備費」を使った補正予算が編成されるはずだ。予算には、安倍政権以降実施されてきた「全世代への社会保障」「子育て支援」「女性の社会進出の支援」「教育無償化」などが盛り込まれるだろう。コロナ禍関連の給付金や補助金も続くだろう。
自民党の「さらなる左傾化」で お株を奪われた野党の行方は?
だが、「労働者への分配」は、本来ならば左派野党が取り組むべき政策だともいえる。
これらを推進する自民党の動きについて、筆者は「左傾化」だと指摘してきた。安倍政権以降に左傾化した自民党は、岸田政権の支持率対策によって、さらに「左旋回」するだろう。
ここで気になるのが、自民党にお株を奪われ、さらに居場所を失いそうな野党の動向だ。
確かに野党は今、自民党と旧統一教会をめぐるスキャンダルを受け、「千載一遇の好機到来」とばかりに攻勢を強めている。旧統一教会と自民党の接点を厳しく追及し、臨時国会の早期召集による徹底審議を要求している。
だが、それでも決して順風満帆とはいえず、次第に野党が抱える「深刻な問題」が明らかになるだろう。
岸田政権は前述の通り、本来野党が訴えるべき政策を次々と実行していくはずだ。野党がその中で、自民党との違いを国民に示すのは難しい。
野党が弱者救済策を求めたら、岸田政権は待っていましたとばかりに「野党の皆さんの要望でもあるので」と、さらにバラマキを拡大できるからだ。
だから野党は、岸田政権の支持率低下を手放しで喜べない。岸田政権を批判しているようでいて、実は自民党の「補完勢力」になり下がっているのが、「深刻な問題」の実態だ。
この問題は、はるか昔から存在していた。
「革新自治体」の政策を 自民党にコピーされた過去
私はかつて、社会民主党の政審会長だった伊藤茂氏とお会いしたことがある。伊藤氏は、「戦後、農地改革以降の経済政策は、全部革新が考えた。それを、保守政権がカネを付けて実行した」と自慢げに語った。
ここでいう「革新」とは、1960〜80年代にかけて全国に誕生した、野党、労働組合、住民団体などに支持基盤をおいた首長が率いる「革新自治体」を指す。
具体的には、蜷川虎三知事時代の京都府、美濃部亮吉知事時代の東京都、長洲一二知事時代の神奈川県、飛鳥田一雄市長時代の横浜市などである。
革新自治体は高度成長期に起きた、公害などの都市問題に取り組む住民運動の高まりの中で誕生した。そして、福祉・公害規制などで新しい政策を生み出した。
しかし、自民党政権はその成果を自らのものとした。環境庁を発足させ、「福祉元年」を打ち出したのだ。そして、革新自治体が実行した環境政策や福祉政策を「国の政策」とし、予算を付けて、全国の自治体で一律に実施したのである。
この流れが近年も続いているのは前述の通りだ。「女性の社会進出」「子育て支援」「LGBTQをはじめとするマイノリティーの権利拡大」など、安倍政権期に次々と実行された政策は、元々野党が先行して取り組んでいたものだ。
前原誠司・民進党代表(当時)が打ち出した「消費増税による教育無償化」と酷似した政策を、安倍首相が2017年総選挙で自民党の公約にしてしまったのは記憶に新しい。
そしてこの政策は、選挙に大勝した安倍政権によって実行されてしまった。
この連載では、野党が考案した政策を、予算を付けて実行してしまう自民党のしたたかさを高く評価してきた。
自民党は、英国の二大政党「保守党」「労働党」を合わせたような、政策的になんでもありの柔軟性と幅広さを持っている。それによって自由民主主義国では最長の長期政権を築いてきた。まさに最強の「包括政党(キャッチ・オール・パーティー)」なのである。
一方で、フェアに指摘したいのだが、野党が時代の変化を先取りして、革新的な政策に取り組んだことも軽視できない。野党が、政策的に自民党をけん引した部分は確かにあった。「保守」と「革新」の日本的な関係が機能してきたのだと、一定の評価をしたいのだ。
今後、こうした役割を果たす野党は再び現れるのか。また、前述した「支持率下落の3要因」以外に、「最強の包括政党」である自民党に死角はないのか。
これらの論点を整理するため、ここからは岸田政権の政策面の課題について考えていきたい。
岸田政権の「重点投資4分野」は 決して目新しくない
岸田政権の「新しい資本主義」には、「人」「科学技術・イノベーション」「スタートアップ」「グリーン・デジタル」の4分野に重点的に投資するという方針も含まれている。
だが、重点投資4分野は「新しい政策課題」ではない。欧米や中国などが何年も前に済ませている「古い政策課題」ばかりなのだ。それを岸田政権は「新しいことをやります」と胸を張ってアピールしている。これはいささかピント外れだし、傲慢(ごうまん)でもある。
例えば、「人」への投資では、これまで以上に「賃上げ」に取り組むとともに、非正規雇用も含めた約100万人に向けて能力開発や再就職の支援を行うとしている。
ただし、「賃上げ」は、これまで政府からさんざん民間企業に呼び掛けたが、思うような成果を上げられなかった。「同一労働同一賃金」の原則に基づく政策も、正規・非正規雇用の格差を解消したとは言い難い。
「科学技術・イノベーション」への投資では、大学を支援する10兆円規模のファンドを立ち上げ、人工知能(AI)や量子技術などの高度な研究活動に投資するとしている。
しかし、AIを国家戦略とするのは、諸外国では10年以上前から取り組まれており、目新しさはない。
「スタートアップ」の項目では、新興企業への投資額を5年で10倍に増やすことを視野に入れた「5カ年計画」を年末に策定するとしている。
だが、日本政府のスタートアップ支援は他の先進国に比べて相当に遅れており、今さら「新しいことをやっている」とアピールしていることに違和感を覚えざるを得ない。
「グリーン・デジタル」投資では、「脱炭素社会」の実現のために、今後10年間にわたって官民協調で150兆円の関連投資を行う計画だ。
だが現在の日本では、いまだに石炭火力発電所が多く運用されている。海外では、強大な力を持っていた「石油メジャー」が再生可能エネルギーに取り組み、「総合エネルギー企業」とでも呼ぶべき企業体への変貌を遂げている中、日本企業は脱炭素対応が遅れている。
実際に、脱炭素シフトが遅れている日本企業から「ダイベストメント(投資撤退)」を宣言する世界の投資家・金融機関が急増している。
私は本連載で、こうした自民党の政策の問題点を「Too Little(少なすぎる)」「Too Late(遅すぎる)」「Too Old(古すぎる)」だと批判してきた。
この問題の根底には、野党の政策構想能力が著しく落ち、自民党の対抗馬になり得る政策を打ち出せていないことがある。
デジタル化・脱炭素などの領域において、日本が諸外国からの後れを取り戻すためには、与党・自民党に新しい政策の構想を提供できる野党が必要だ。
だが、自民党の左傾化にのみ込まれて、補完勢力となり下がった立憲民主党、共産党などの「左派野党」にはまったく期待できない。特に立憲民主党は今後、「社民党化」して衰退していくだけだろう。
これらの政党よりも、まだ期待できるのは「右派野党」である「日本維新の会」ではないか。
「まだ期待できる」維新の会が 取り込むべき支持層とは?
維新は先日、代表選を実施し、馬場伸幸氏が新代表に就任した。初めて国会議員が代表に就任し、大阪を中心とした地方政党から全国政党への脱皮を目指している。
ただし現在のところ、維新の全国政党としてのアピールは、自民党よりもラディカルな「憲法改正」「安全保障政策」などにとどまっている。
改革を標榜(ひょうぼう)する政党なのはいいが、改革の中身は地方主権・行政改革・規制緩和という「90年代っぽさ」「古さ」を感じさせるものだ。自民党と異なる明確な「国家観」を構築できていないのも残念だ。
そんな維新の将来は、「政界の外」に存在する、自民党の「真の対抗勢力」を支持層として取り込めるかにかかっている。
この連載では、現代社会では伝統的な「保守(右派)vsリベラル(左派)」の対立軸ではなく、新たな対立軸が生まれていると指摘してきた。
その中で自民党の「真の対抗勢力」といえる集団は、SNSで活動する個人や起業家、スタートアップ企業のメンバーなどである。
彼らは今、市場での競争に勝ち抜いて富を得ようとしている。そのため普段は、政治への関心が薄い。競争の「勝ち組」である彼らにとって、格差是正は逆効果になるからだ。彼らの関心事は、日本のデジタル化やスーパーグローバリゼーションを進めることである。
しかし、彼らの活動は、時に「Too Little」「Too Late」「Too Old」な自民党政権に邪魔されることがある。前述した問題点によって、日本のデジタル化が世界に大きく遅れていることが、その代表例である。
普段は政治に興味がない彼らだが、政治を動かす必要があると判断すれば、現政権を批判する政党を時と場合に応じて支持する。
この前提を踏まえて大胆に言えば、維新は「右vs左」という古い対立軸の中で改革を訴えるのではなく、新しい対立軸に着目し、時代を切り開く人たちの政党となるべきである。
維新にそれができず、自民党を政策的にけん引する野党が現れない限り、自民党の政策は諸外国に後れを取ったままとなるだろう。 
●自民・茂木幹事長「共産党は左翼過激団体と関係」放言を撤回せず 9/6
自民党の茂木敏充幹事長(66)が4日、NHK『日曜討論』に出演し、旧統一教会(現在は世界平和統一家庭連合)問題について討論する中で「左翼的な過激団体と共産党との関係がずっと言われてきた」と発言する場面があった。これにネットで批判が殺到し、ツイッターでは「茂木幹事長」「事実無根」などがトレンド入りした。
同番組内で共産党・小池晃書記局長が「徹底的に解明することなしに被害の救済はできない」と、自民党と教団の関わりを追求したところ、茂木氏が「旧統一教会の問題だけではなく、社会的に問題のある団体すべてについて考えていかなくてはならない。例えば左翼的な過激団体と共産党との関係、ずっと言われてきました。そこについて全く調べないというのも問題だと思いますよ」と冒頭の発言が飛び出したのだ。
これに小池氏は激しく反論。「全く関係ありません。公共の電波を使って自民党の幹事長が全く事実無根の話をしないでください。撤回してください。過激な団体と共産党がいつ関係を持ちました? 我々は最も厳しく対峙してきた政党ですよ」と強い口調で発言の撤回を求めた。しかし、茂木氏はそれに応じず、茂木氏の視線を受けたNHKの司会者は「いいですね? はい」と話を打ち切った。
小池氏は5日の記者会見で「全く事実無根のフェイク発言。公党の幹事長が生放送の公共の電波を使ってデマ情報を流したということですから、厳しく改めて抗議したい」とし、「共産党が暴力集団と同一であるかのようなデマは、もともと統一教会が選挙の度に流してきたデマ。自民党が統一教会と一心同体であることを示す発言である。あまりに卑劣だと言わなければなりません」と批判。さらに、茂木氏の発言が旧統一教会と自民党との関係、とりわけ安倍元首相との関係を問い詰める質疑の中で出てきたとして、「こういうデタラメなことしか言えないぐらい、自民党が追い詰められているということを示すものではないか」と指摘した。
小池氏から猛批判を浴びた茂木氏だが、6日の会見で自身の発言について「撤回しない」と明言。それを受けて小池氏はツイッターで、《先日の「日曜討論」では、茂木幹事長は批判されると「具体例を出してください」とおっしゃられていましたね。ならば、この件でも、「左翼的な過激団体」と日本共産党が関係を持っていたということについて、「具体例を出してください」出せないなら撤回してください》と応酬する事態に。
この茂木氏の発言にネットでは批判が殺到。「#茂木幹事長に発言の撤回を求める」「#茂木幹事長は詭弁の大嘘つき者」などのハッシュタグも発生した。
《日曜討論での発言を撤回しない考えを示した。…なのに、具体例は示さない、というか、示せない、と…》
《これは本当に看過できない暴言。共産党=暴力集団のレッテルを貼り、党だけでなく支持者である「国民」まで攻撃する自民党は政権を担う資格すらない》
《「安倍元首相を調べないのか?」にうろたえてデマ発言してしまった茂木幹事長。安倍元首相と統一協会の関係の徹底究明を求めます》
《これ反論として成立してないでしょ?統一協会と過激な集団が同じ反社ってことになるし、同じような関係性があるってことになるし、自爆してない? さらに虚偽なら酷いね》
《統一教会は自民党と何の関係もないと豪語して実は恐ろしいほどズブズブ議員ばかり。そして次はデマ流し。本当にだめだ。他党をデマで批判するより己の党を何とかしてください》
「茂木氏の言う“左翼的な過激団体”が何を意味するのかわからないところもありますが、左翼過激派である、いわゆる“新左翼”であれば共産党は一貫して反対の姿勢を貫いてきました。共産党は1955年に暴力革命を正式に放棄し、過激派左翼とは決別しています。また、共産党が公安の調査対象であることが度々指摘されますが、実際には70年近く監視して暴力革命の証拠は見つかっていません。
昨年の衆院選前、八代英輝弁護士が昼の情報番組で『共産党はまだ暴力的な革命というのを党の要綱として廃止していない』と発言して、翌日に事実ではなかったと謝罪したのは記憶に新しいです。発言を撤回しないなら、根拠を示すべきではないでしょうか」(全国紙政治記者)
果たして、茂木幹事長の“誠意ある説明”を聞くことができるのだろうかーー。

 

●選挙目的で複数の宗教団体の「信者」のように振る舞う政治家の狡猾さ 9/7
安倍晋三元首相銃撃事件以降、マスコミ報道は世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下、統一教会)を中心とした「政治と宗教」の話題一色になった。
安倍氏を撃った山上徹也容疑者の母親は統一教会の熱心な信者で、教団に多額の献金などを行って家庭が崩壊、山上容疑者は「安倍元首相と統一教会はつながっている」と思い犯行に及んだと供述している。統一教会に注目が集まるのは当然だ。
実際、多くの政治家が統一教会と数々の接点を持っていたことが事件後に明らかとなった。このような報道に触れていると、一般有権者の中から「日本の政治は特定宗教団体の強い影響下にあるのではないか」といった不安が出てくるのも道理だろう。
しかし、「政治家と宗教団体」の関係を個別に吟味すると、少し違った状況が見えてくる。特集「宗教を問う」の第4回は、宗教専門誌『宗教問題』編集長の小川寛大氏が、政治家と宗教団体の「いい加減な関係」と、宗教団体の未来は決して明るいものではなくなっている現実を解説する。
政治家がつながる宗教団体は統一教会だけではない
統一教会との接点で注目を浴びた国会議員の一人に自民党の下村博文元文部科学相がいる。過去に統一教会関係の雑誌にインタビュー記事が掲載されたり、統一教会が現在の「世界平和統一家庭連合」へと名称変更された2015年時の文科相でもあることから、同教会との関係性が特別に濃いとされる人物だ。
ただ、下村氏が接点を持ってきたとされる宗教団体は統一教会だけではない。彼は同時に崇教真光やワールドメイトといった新宗教団体とも親密な関係を取り沙汰されてきた人物であり、何より選挙の際には創価学会を支持母体とする公明党の推薦を受けている。
同じく、自民党には山谷えり子参議院議員という国会議員がいる。彼女も過去に統一教会関係のメディアにインタビューが掲載されるなど、同教会との浅からぬつながりが指摘されている。しかし、山谷氏はそもそも神道の統括団体・神社本庁の関係政治組織である神道政治連盟の組織的なバックアップを受けて選挙を戦ってきた政治家であり、かつ、自身はカトリックを信仰するクリスチャンだと言っている。
今マスコミで「統一教会と接点があった」とされる政治家の「宗教事情」を調べてみると、彼らが実に多種多彩な宗教団体と接点を持ってきたことが浮かび上がる。こうした構図から浮上する疑問は、「彼らは特定の宗教団体に洗脳され、その強い影響下にあるのではないか」といったものより「彼らはいったい何教の信者なのか。いったい宗教を何だと思っているのか」というものではないだろうか。
一般有権者が憤る以上に、各宗教団体は自分たちが政治家から都合よく二股、三股≠かけられている現実に怒るべきであろう。もし仮に、自民党が統一教会から言われるがままの政治を行っているのだとしたら、創価学会にとっては「自民党との連立を解除せよ」と公明党に指示する理由にもなるはずだ。
にもかかわらず、現在「政治と宗教」の問題について明確な意見表明をする宗教団体はほぼない。なぜなら、政治家も宗教団体も「もちつもたれつ」の関係にあることを互いによく知っているからだ。政治家が宗教団体に近づくのは信仰心などではなく、票や選挙運動支援をアテにしているからであり、宗教団体が政治家をイベントに招いたり祝電を要請したりするのは「自分たちはこんな国会議員とつながっている」という箔付け、広告塔に利用できるからだ。だから、宗教団体は政治家のいい加減な態度を黙認してきたのだ。
「宗教票」は着実に減っている
政治家のいい加減な態度を黙認してきた果てに、とでも言っていいのだろうか、日本の宗教界は「国の政治を支配して操っている」どころか、足下の基盤が崩れかかっている。10〜20年後、果たして宗教界がどのような惨憺たる姿になっているか、想像もつかない状態だ。
1つのメルクマールとして、7月の参議院議員選挙結果を見てみよう。公明党が今回の選挙で全国から集めた比例票は618万票だった。公明党が国政選挙で集める比例票の数は2005年の衆院選における898万票を頂点に低落傾向にあるが、600万台前半に落ち込んだのは今回が初めてのこと。党本部が目標に掲げていた800万票には遠く及ばなかった。
自民党の一部から「公明票は昔ほどあてにならない」という声も上がるなか、岡山選挙区では自民・小野田紀美候補が公明の推薦を断って勝利。また京都選挙区では公明票のかなりの割合が野党側に流れるなど、自公連立のゆがみが、かつてなく見られた選挙でもあった。
また創価学会に次ぐ国内第2位の規模を持つとされる立正佼成会は、比例代表で推した白眞勲候補(立憲民主党)、藤末健三候補(自民党)のいずれもが落選する事態となった。立正佼成会が参院選比例で推薦した候補が全滅するのは、現行制度になって以降初めてのことである。
幸福の科学を母体とする幸福実現党も党勢の衰えが目立つ。今回の比例代表で集めた票数は14万。幸福実現党は2009年の結党以来、国政選挙で一度も当選者を出したことはないが、20万〜30万程度の比例票を集めてきた経緯がある。10万台前半にまで落ち込んだのは、やはり今回が初めてだ。
衰退傾向にあるのは伝統宗教も同じだ。前述した自民党の山谷参院議員(比例)は神道政治連盟の組織的なバックアップを受けてきたが、今回の選挙で彼女が獲得した票は17万。当選はしたものの2016年の前回選挙で得た24万票から7万票も減らした。
「宗教票」は着実に減っているのだ。
近年、「パワースポット」や「スピリチュアル」といった志向で神社仏閣に足を向ける若者が増えている事実はある。ただ、彼らは観光客的な目線で宗教的雰囲気を「消費」する人々であり、特定宗教団体に入信する例は少ない。
統一教会も安倍氏銃撃事件が起きたがゆえに世間の注目の的になってしまったが、票数としては数万票程度。創価学会票はおろか幸福実現党の票数にも遠く及ばない。2012年に教祖文鮮明(ムン・ソンミョン)が死去して以降は妻の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁と息子たちによる親族内争いが表面化し、教団の求心力は衰えていた。安倍氏の事件がなくとも、組織としては既に息切れし始めていたのだ。
参政党と福音派が議席を確保
ゆるやかに凋落してきた宗教界に、安倍元首相銃撃事件は衝撃をもたらしている。2022年の夏は、この国における「政治と宗教」の大きな転換点として記憶されるだろう。
それは、安倍元首相銃撃事件が宗教団体の衰退に一気に拍車をかけるという意味だけではない。「政治と宗教」の新しい形が垣間見えたのだ。
まずは国政選挙初挑戦で1議席を獲得した参政党の存在である。参政党は宗教政党ではないが、出馬した候補者たちに「宗教っぽい人々」が目立った。「聖書的保守主義を名乗る牧師」、「コロナ禍の到来を事前に予見したとする占星術師」、「他人の身体に触れることによって真なる健康と生命力を開花させると称するセラピスト」といった面々だ。
参政党の候補者が選挙を通じて自分たちの「信者」を募っていた状況は確認されていない。ただし、スピリチュアルな「宗教っぽい癒し」を求める人々の共感を集めたのは事実だ。現に議席を確保しており、日本人の新しい宗教観を反映した政党と言えるのかもしれない。
さらに、日本維新の会からは金子道仁氏というキリスト教福音派の牧師が比例で当選した。福音派は現在、世界的規模で存在感を増すキリスト教の一派で、政治的傾向は保守。特にアメリカのドナルド・トランプ前大統領の強力な支持基盤として知られた信仰勢力だ。キリスト教の地盤が薄い日本で、今後どこまで存在感を発揮していくかは未知数だが、福音派が日本の国会で議席を取った意味は小さくないだろう。
連日のマスコミによる統一教会批判は「宗教は怖い」という社会の空気を強め、宗教団体の力を削いでいくだろう。その裏側で、スピリチュアルな雰囲気に下支えされた新しい「宗教っぽい運動」や外来の宗教が台頭している現実を見逃すべきではない。
その意味でも2022年という年は、この国の宗教史の節目になるはずだ。
●NHKクロ現「旧統一教会2世特集」に賛否…3年間取材を“周回遅れ”放送のナゼ 9/7
NHKが5日放送したクローズアップ現代の「“宗教2世”旧統一教会・信者の子どもたち 知られざる現実」に、賛否が巻き起こっている。
クロ現は安倍元首相の銃撃事件後、旧統一教会の信者の子どもたちが相次いで声を上げていることを取り上げ、2世たちの「貧困や孤立」「恋愛・結婚の自由がない」といった“悲痛な声”に迫った。「親が信じる宗教によってなぜ自分の人生が壊されなければならないのか」と2世が思うのも当然だし、NHKがこの問題を取り上げた意義もあるだろう。
SNSでは《子は親を選べない。幼少期に宗教が身近にあれば生活の一部になっているし、信じる両親の否定は自分の否定にも繋がる。宗教は心身ともに成熟してから選択させてほしい》《辛くて涙が出た。2世のみなさん、勇気を出して証言してくれて、本当にありがとうございます》と、声を上げた2世とこの問題を取り上げたクロ現に共感の声が上がった。
山上徹也容疑者がお蔵入り寸前の報道を救った?
その一方で、今回のクロ現に対してこんな突っ込みも溢れた。
《本気を出したかNHK、と思って番組を見たら、『これは3年前からずっと取材してきたもの』とさりげなく言った。上からの圧力でお蔵入り寸前であった報道を、山上(徹也容疑者)が救ったのか……》
《3年間の取材、となっているが、なぜ今まで問題提起してこなかったのか? 報道機関として無責任ではないか。もっと前に放送していたら事態は変わっていたと思われる》
確かに番組公式サイトには、「私たちは事件が起きる3年前から、旧統一教会など複数の新宗教の2世とその家族の取材を続けてきた」と書かれている。
桑子真帆アナウンサー(35)も番組冒頭で、「取材班は事件が起きる前から、こうした宗教2世の取材を続け、これまでに70人を超える人たちから話を聞いてきました。多くの人が明かしたのは高額献金の実態と踏みにじられた人生についてでした」と語った。NHKはこれまでなぜ宗教2世問題を放送してこなかったのかと、不思議に思った視聴者も多かったはずだ。
「すべてはNHKの事なかれ主義のせいですよ。安倍元首相の銃撃事件後も、NHKは民放に比べて明らかに旧統一教会の関連ニュースに消極的な姿勢を続けてきました。8月に入ってようやく『旧統一協会問題のキャンペーンを張ります』と全国の報道局職員に通達が出ましたが、それも視聴者から『なぜNHKは旧統一教会問題やらないんだ!』とお叱りを受けたためです。周回遅れでようやく放送にコギつけたのが今回の『宗教2世特集』でした」(NHK関係者)
NHKでは「取材がようやく日の目を見た」と安堵する記者がいる一方で、「これではモチベーションが上がらない」と仕事に悩む記者も少なくないという。 
●「嫌韓」保守政治と「反日」旧統一教会の併存を生んだ日本政治の弛緩 9/7
安倍晋三元首相が7月8日、凶弾に倒れた。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に対する恨みを晴らす犯行と報じられたことから、「カルト宗教と政治家」の関係に社会の関心が集中。国葬実施の是非で国論が二分されるなか、8月10日に岸田文雄首相は人心一新の内閣改造に踏み切ったが、国民の厳しい視線は変わらず、内閣支持率が急降下している。
山上徹也容疑者が事件直前に投函した手紙や、2019年10月に開設したツイッターの投稿を見ると、彼の母親が1億円超の巨額献金を行って破産し、家庭が崩壊したことに対する積年の憎しみと復讐心が吐露されている。
昼の世界が突然闇の世界に暗転し主人公が魔物に襲われる映画『サイレントヒル』に自分を重ね合わせたのか、山上のツイッターアカウント名は「silent hill 333」だ。犯行時の冷静さと空疎ないら立ちを浮かべた彼の表情は、既に虚無の異界に足を踏み入れ、そこから現実世界を見ているような印象を与える。
他方で山上は「苦々しくは思っていましたが、安倍は本来の敵ではないのです。あくまでも現実世界で最も影響力のある統一教会シンパの1人にすぎません」とつづっている。
なぜ教団への憎しみが暗殺という凶行に結び付いたのか。この思考回路の短絡は論理の飛躍なのか、それともカルトと政治権力が交錯する磁場に内包された論理的必然なのか──。旧統一教会と政治家の関わり合いに注目が集まる背景には、こうした疑問が沈殿する。
「正義とサタン」の構図を暗転
統一教会(世界基督教統一神霊協会)は1954年、韓国・ソウルで文鮮明(ムン・ソンミョン)によって創設された。教祖を再臨主(メシア)とする特異な教義は伝統的キリスト教宗派から異端視される。日本では1964年に宗教法人として認証を受けたが、原理研究会(CARP)を通じた大学生の洗脳と社会的隔離、合同結婚式、霊感商法、偽装伝道などが社会的指弾を浴びてきた。
反社会的セクト性に加えて、統一教会を特異な存在にしたのが政治性である。マルクス主義をサタン思想と見なして反共活動を推進し、日本では安倍元首相の祖父・岸信介元首相の助けで国際勝共連合を設立。蜜月関係は岸の女婿である安倍晋太郎衆院議員を通じて、清和会を中心とする自民党保守派に引き継がれた。
アメリカでも主に共和党へ浸透していくが、それは統一教会の反共イデオロギーが米ソ冷戦下で「錦の御旗」になったからだった。
80年代末から90年代初めにかけて東西冷戦が終結すると、統一教会は反共の代わりに「世界平和」と「家庭」を前面に押し出し、1997年に世界平和統一家庭連合に改称する(日本での宗教法人名変更は2015年)。文鮮明が2012年に死去した後、妻・韓鶴子(ハン・ハクチャ)が後継するも教団は家族間で分裂。反共に代わる錦の御旗なき教団の影響力は減衰していく。
同じ2012年に安倍元首相は復権を果たし、第2次自公連立政権を樹立するが、政権支持の裾野は神道政治連盟や日本会議など幅広く保守層に広がりを見せていた。旧統一教会はその一端にすぎず、安倍元首相との関係は当初、先代からの残像効果による付き合い程度にとどまっていたとされる。
現在明らかにされている政治家と旧統一教会の関わりは主に教団側からの働き掛けが起点であり、行事出席や祝電、旧統一教会系メディアの取材対応、パーティー券購入や政治献金といった日常的政治活動と、選挙における人員支援や集票などの選挙活動に分けられる。
前者の日常的政治活動は、秘書の派遣など具体的便益が供与された冷戦下の蜜月期ならいざ知らず、近年では数多い組織・団体から受ける依頼と応答の1つとして処理されることが大半であり、「何が問題か分からない」という福田達夫・前自民党総務会長の発言はこの肌感覚に基づくものだろう。
しかし国民の多くは現在、政治が「リップサービス」や「お墨付き」を超えて何か「特段の便宜」を図ったのではないかとの疑念が払拭されていないと感じている。
後者の選挙活動は、選挙には「貸しと借り」が付き物であり、他の宗教団体との利害調整から慎重に扱われる半面、わらにもすがる心理で信徒を利用する場合もある。公職選挙法では選挙支援は無償で行うことを原則として規定しているため、選挙活動を手伝う信徒はそれだけで貴重であり、なおかつ宗教的情熱が選挙活動に親近性を有するからだ。
その濃淡は結局のところ選挙区情勢によるが、今夏の参議院選挙比例区では安倍元首相の秘書官だった候補者が旧統一教会の全面支援を受けて当選した。民主政の土台である選挙にカルトが直接影響を及ぼすことを有権者が見過ごさないのは当然だ。
問題の本質は、2012年以降の教団減衰期と重なる第2次安倍政権時代に、旧統一教会への警戒感が政治の側で「弛緩」したことではないか。
「天宙平和連合」や「世界平和女性連合」の要望に応える議員が多かったのは、旧統一教会色を薄めた名称の使用や霊感商法報道の減少、オウム真理教事件の風化という客観状況だけではなく、政治回路においてカルトに対する警戒ハードルが低下し、政教分離の緊張感が薄れていたという事情があろう。
2010年代後半、国の内外でQアノンやトランプ主義と呼ばれる陰謀論を含めた保守系ポピュリズムの言説が席巻し、日本では憲政史上最長となる安倍政権下で、岸・安倍家3代にわたる旧統一教会との関係への「忖度」が浸透。その一方で、戦後最悪とも言われるほど日韓関係は悪化し、竹島問題やGSOMIA(秘密情報保護協定)破棄などをめぐって日本での嫌韓世論はピークに達する。
にもかかわらず「エバ国家日本はアダム国家韓国に贖罪するべし」とする教義で日本信者からの金銭収奪を正当化していた旧統一教会が、ほかならぬ「戦後保守政治の最高峰」としての安倍政権下で政治への侵食を続けていた──。
北朝鮮とのパイプを持つ統一教会を拉致問題解決のために利用する意図があったとしても、容易には理解し難いねじれ現象である。
保守政治の「嫌韓」と旧統一教会の「反日」思想が矛盾することなく並存したのは、おそらく「イデオロギー」が現在の日本政治の要を実際には占めてはいないからだ。一強多弱の政治状況の下で野党の弱体化は際立ち、国の将来を憲法理念から問う国政論議は衰退する。
嫌韓姿勢が岩盤支持層と共鳴したこともあって安倍政権は国政選挙に連勝。長期政権の存続が、政治が本来備えるべき政教分離の緊張感や、政治原理を侵食するカルトへの警戒感を溶解させたのだ。
山上徹也がいら立ちを募らせたのはそうした政治の弛緩であり、天宙平和連合のイベントにビデオを寄せた安倍元首相の「鷹揚(おうよう)と融通無碍(ゆうずうむげ)」だったのかもしれない。そうだとすれば、山上の思考回路にあるのは論理の飛躍ではない。カルトと政治の結節点を強襲する銃弾の恐怖で旧統一教会が野放図に享受する「弛緩した政治回路」を反転させ、教団を一挙に「社会の敵」に突き落とす論理がそこにはある。
2019年に来日した韓鶴子の襲撃を断念した山上は、第三者である安倍元首相を犠牲にすることで「正義とサタン」の構図を暗転させる意趣返しを行ったのだ。
「一般人の基準」から見て疑念
「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」(20条)。日本国憲法は信教の自由を保障するとともに「公金支出の禁止」(89条)を含む厳格な政教分離を採用している。
しかし政教分離の在り方は多様だ。例えばデンマークは国民の4分の3以上が信徒である福音ルーテル教会を国教とし、国の支援義務を憲法で規定している。他方で2018年には、公共空間における宗教的着衣の装用が禁止された。
ブルカやニカブを着用する女性イスラム教徒を狙い撃ちした信教の自由の侵害だとする反対論は少数で、与野党多数が賛成したのは、公共空間で顔を隠すことはデンマーク社会の価値観と共同体意識にそぐわないとされたからだ。
共和国理念に基づく「ライシテ」という厳格な政教分離原則を有するフランスから生まれた事実上のイスラム規制は、ほかにもオランダ、ベルギーなど欧州諸国に波及している。世俗国家において、信教の自由に対する「配慮」と国家の理念および共同体意識からなる「要請」との間でいかにして「政教関係の調和」を図るか、その内実は各国の歴史と社会通念によって異なる。
戦後日本における政教分離は、連合国軍総司令部(GHQ)による1945年の神道指令に端を発する国家神道と政治の切断を主眼としてきた。それは天皇制の脱政治化を含意し、天皇との距離感こそが歴代自民党政権が細心の注意を払って維持してきた日本版政教分離の神髄でもある。
他方で、1999年以来20年弱にわたって自民党と連立政権を組む公明党は創価学会と密接な関係があり、政教分離の観点から批判も存在する。
しかし政教分離は、信教の自由を一層確実なものにする客観的法規範であり、特定宗教による政治権力掌握がもたらす弊害と国家の介入による宗教の堕落を共に防ぐ知恵でもある。従って謙抑的な政教関係が維持される限り、国家が宗教と一切関わっていけないわけでも、宗教団体による政治活動が禁止されるわけでもない。
公明党がバランサーの役割を果たすが故に外交・安全保障や福祉政策で現実的穏健性が担保されるとして、自公連立を戦後政治史の中で特筆される戦略的パートナーシップであると評価する声もある。宗教的思惟に支えられた人権と寛容の精神を政治過程に反映させることは、むしろ民主政の健全な土台を形成する。
わが国の司法は、靖国神社の公式参拝や玉串料公金支出などをめぐり、政教分離原則に抵触する国の宗教的行為をもっぱら「目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉になるか」を「一般人から評価できるか」という基準で審査してきた。
自民党議員による旧統一教会との関わり合いは、国による行為と同視できるわけではなく、目的が宗教的意義を持っていると言えないことが大半であり、政教分離違反とは言い難い。
しかし一般人すなわち有権者から見たら、著しい反社会性を持つカルトは信教の自由の保障から逸脱する存在であり、そのカルトとの関わりが忌避されることなく漫然と続いていた点に、単なる政治的付き合いの域を超えて、特定宗教に対する「援助、助長、促進」があったのではないかという疑念が生じている。
反カルト法は必要なのか?
神社本庁、創価学会、日本会議といった巨大団体が伝統的家族観などの点で与党の政策に強い影響力を及ぼしている現代日本の政治において、旧統一教会の存在感を過大評価してはならないが、さりとてオウム真理教と比較にならない政治との距離感を過小評価してもいけない。
長期にわたるカルトとの弛緩した関係が元首相暗殺の背景にあったことが国民的焦点になっているのだ。自民党が自らの不明と油断を反省するならば、カルトとの断絶を宣言するだけでなく、地方を含めて政党としてのコンプライアンスを抜本的に強化すべきだろう。
これに対して、カルト側からの政治への関与を放置してよいのか。反旧統一教会の世論を背景に、フランスの「セクト規制法」(アブー=ピカール法)のような反カルト法の導入について議論が始まっている。
「社会的少数者による結社の自由」と「信条を理由とする差別禁止」への配慮を前提とした上で、既にある宗教法人法の解散命令制度とは別に、例えば、不法行為による人権侵害を反復継続する反社会的「セクト性」が高い団体で、かつ「外国の影響」下にある団体を「特定対象団体」に指定し、当該団体について政治献金を禁止し、財務会計処理、特に国際資金移動の実態を透明化させる立法措置であれば、国民主権の見地からも許容されるだろう。
オランダの哲学者スピノザが言うように「宗教の礼拝及び敬虔の実行」は国家の「平和と利益に適合的になされなくてはなら」ない(福岡安都子訳)のだ。
政治と宗教という領域間で保たれてきた相互の尊重と市民的寛容の精神は、民主政の基本的土台である。カルトによって惹起された社会的混乱が民主政の土台を切り崩す「カルトによる負の弁証法」とも言うべき事態に対抗する政治回路を打ち立てなければならない。
それはテロのもたらした喪失と恐怖を乗り越えるためでもある。

 

●自民党と教団の関係 第2次安倍政権で「共鳴」から「共存」に進んだ 9/8
自民党と旧統一教会の関係が取り沙汰されている。両者はどのように関係を深めていったのか。旧統一教会問題を長年取材してきた鈴木エイトさんに聞いた。AERA 2022年9月12日号の記事を紹介する。
──7月に奈良県で安倍晋三元首相が銃撃されて以降、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の存在がクローズアップされている。教団を長年取材してきたジャーナリストの鈴木エイトさんが9月26日、『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)を出版する。インタビューは、鈴木さんが注視し続けてきた自民党と教団のつながりについて聞くところから始まった。
銃撃された安倍元首相と教団とのつながりをたどると、祖父の岸信介元首相に行き着く。1968年に設立された教団の政治組織「国際勝共連合」。設立には、岸氏の多大な貢献があったとされ、初代名誉会長には岸氏と親しかった笹川良一・日本船舶振興会会長(当時)が就任している。
「祖父から始まる流れが、父の安倍晋太郎元外相を経て、安倍元首相に受け継がれていたのは事実です。ですが、安倍元首相は、祖父や父に比べると教団から距離をおいていた形跡があります。私が教団と関わるようになった2002年ごろは、そのつながりは非常に細々としたものでした。
変化があったのは05年。『天宙平和連合(UPF)』の創設大会に祝電を打ち、翌06年にもUPFの地方大会に祝電を打ったことです。
安倍氏も「気をつける」
初めて明確なつながりが公になったわけですが、霊感商法などの被害が生じていた中での祝電は批判され、事務所は当時、『誤解を招きかねない対応であるので、担当者にはよく注意した』とのコメントを発表しました。安倍氏自身も後日、周囲に『あれは事務所が勝手に送ってしまった。以後、気をつけるよう注意する』と話しています。
旧統一教会と安倍氏は、まだそれほど深い関係ではなかったということでしょう。数ある宗教右派の中の一つで、ましてや選挙で組織票支援を頼むほどではありませんでした」
──同じころ、第1次安倍内閣が発足した。安倍元首相は「美しい国づくり内閣」と命名。ジェンダー平等や男女共同参画への反対、そして反LGBTを訴える強硬な右派議員が注目を集めるようになった。
「旧統一教会は自民党が政権与党であるから近づいた側面はもちろんありますが、政策面においても志を同じくしていた部分があります。ただ、ここで注意しなければならないのは、旧統一教会が自民党を操っていたという実態はありません。あくまで政策面で共鳴していたにすぎません。
そんな中、誰がどうつなげたのかが、まだ全容はわかっていないのですが、安倍氏本人はもちろん、自民党と教団との関係は確実に濃くなっていきました。
10年の参院選のとき、勝共連合が出した内部文書の中に、『安倍先生、山谷(えり子)先生なくして私たちのみ旨は成就できません』と安倍元首相の名前が出ていることがわかっています(同連合は否定)。自分たちの主張と対抗する候補者の有田芳生さんを落選させようとする文書でした。
12年12月、第2次安倍政権が発足。自民党と教団との関係は質と量ともに明らかに強くなっていました。自民党議員が勝共連合の新会長就任式などに出席するケースも目立つようになりました。なかでも、安倍元首相の周辺に統一教会と濃い関係を持つ議員が増えました。政策に共鳴する宗教右派の一つという位置づけが、共存関係に進んだと感じました」
おじさんを喜ばせる
──ただ、旧統一教会は小さな組織だ。信者数は公称56万人(15年、宗教情報リサーチセンター)。創価学会の会員世帯数827万と比べても、その小ささがよくわかる。政策に影響を与えるほどの存在ではなかったとみられている。
「旧統一教会の信者は、実際には10万人程度です。選挙権を持たない2世が約3万人とみられているので、組織票としてはわずか8万票ほどしかありません。地方議員選挙では数百票で当落が決まる局面があるので、有効な数字かもしれませんが、国政選挙に強い影響力があったとは考えにくい。
政策面においても、教団は自民党と主張の方向性は同じでしたが、実際の政策立案のブレーンであったわけではありません。福田達夫前総務会長が『何が問題か、僕はよく分からない』と発言し、批判にさらされましたが、その認識は間違いではないと思います。
今年7月の参院選で初当選した生稲晃子議員が公示前の6月、萩生田光一・現政調会長に連れられて教団の関連施設を訪問しています。これは『おニャン子世代』のおじさん教会員を喜ばせるために連れていっただけだと思いますよ。そこで票を伸ばそうという考えも少なからずあったとは思いますけど、萩生田さんの単純なサービス精神だったと思います。
生稲議員は『演説を聞いていた人から、仲間が集まっているので話を聞かせてもらいたい』と依頼されたと言っていますが、そんなわけはありません。
毎年、政治資金収支報告書をチェックしてきました。教団と金銭授受のある議員の多くが数万円のやり取りしか見えてこない。一方で教団の内部文書によると、07年、国会議員に対応する予算として毎月500万円を計上し、『足りなかった』と総括。その後、増額されているとみられます。お金のやり取りがあることで、政権に圧力をかけている面はあるでしょう。09年の霊感商法摘発の際にも、教団本部には強制捜査が入りませんでした」
●安倍氏と“統一教会”の関係「亡くなられた今、実態把握は限界ある」 9/8
衆院の安倍元首相の国葬をめぐる閉会中審査で立憲民主党の泉代表が「国葬は、総理と内閣だけで決められるのか。国葬反対の世論が増えている。」と指摘したのに対し、岸田首相は「説明が不十分だったということについては、謙虚に受け止めながら、国民の理解を得るため引き続き丁寧な説明を続けていきたい。」との考えを示した。
また、泉代表が、「統一教会と自民党との関係を考えた時に安倍元首相がキーパーソンだったのではないか。」と質問したのに対し、岸田首相は「ご本人の当時の様々な情勢における判断に基づくもの、亡くなられたこの時点において実態を十分に把握することには限界がある。」とした。
●「限界ある」岸田首相発言に皮肉 「じゃあ限界まで調べる?」 9/8
政治アナリストの伊藤惇夫氏が8日、TBS系「ゴゴスマ〜GO GO!smile〜」(月〜金曜後1・55)にリモートで生出演し、安倍晋三元首相の国葬をめぐる岸田文雄首相の説明について印象を語った。
この日午後に開かれた衆院議院運営委員会の閉会中審査で、岸田首相は国葬実施の根拠をあらためて説明した。伊藤氏は「冒頭、岸田総理が3分か4分説明しました。国葬にする根拠というのを4つほど並べられましたけど、非常に丁寧にこれまでの説明を繰り返していただけだなという印象ですよね」と辛らつに語った。
さらに伊藤氏は、「反対世論がどんどんどんどん高まっている背景には、統一教会問題があると思う」と指摘した。「今日も“安倍元総理と統一教会との関係について調べないの?”と質問があったんですが、岸田総理は前回の会見と同じ“亡くなったので調べるには限界がある”ということで逃げられてますけど、限界があるならじゃあ限界ギリギリまで調べるんですか?と言いたくなる」と皮肉を込めた。
国葬反対の世論は、国会を経ずに閣議決定したこと、会場絡み以外の警備費の概算公表を渋ったことなどから、政府への不信感とともにじわじわと上昇していったとみられる。伊藤氏は「そういう点も皆さんが反対に傾いている大きな要因なので、岸田さんも説明のしようがないんだろうなと、おそらく。頭を抱えている部分かなと思いますが。そういうあたりに対する姿勢なり、説明なりがないと、なかなか理解を得られないですね」と断じた。
●潤う統一教会、なぜ日本人信者は韓国人より多額の献金をしてしまうのか? 9/8
韓国と付き合うと否応なくつきまとってくるものの1つに、統一教会がある。
7月7日の安倍元首相暗殺事件を契機に、日本ではにわかにこの新興宗教団体が批判の矢面に立たされるようになった。そもそも凶弾に倒れた安倍元首相が、なぜ韓国の新興宗教団体と関係を持っていたのか。さらに、安倍首相だけでなく、少なからぬ自民党の議員が何らかの関わりを維持してきた。それは、あまりにも不可解に見えるに違いない。
今回の事件以前から、日本社会における統一教会のイメージは、決して良いものではない。
信者たちに巨額の献金をほとんど強要に近い形で納めさせているという話は、誰でも一度は聞いたことがあるのではないだろうか。あるいは、1980年代であれば「集団結婚式」と銘打って、信者たちに、その会場で初めて会ったまったく素性を知らない相手と人生の契りを結ばせてきた。当時、トップアイドルだった桜田淳子がこの集団結婚式に参加したことも語り継がれている。
なお「統一教会」とはかつての名称で、2013年以降「世界平和統一家庭連合」と改名したが、ここでは「統一教会」と表記する。
どの「教会」に通っているのか?
韓国で生活していると、統一教会は日常生活のなかできわめて身近に存在しているという印象を受ける。ソウルで暮らす日本人でも統一教会の信者は決して少なくはない。
ただし、韓国人の信者にしても、ごく親しい相手を例外として、他人に自分の信仰を打ち明けることはめったにない。韓国語でポピュラーに用いられる「教会に通う」という表現は、一般的にプロテスタント系のキリスト教会に通うことを意味する。ちなみに、ローマ教会に属するカトリック系の教会に通う場合は、「聖堂に通う」となる。そこの区別は、実にはっきりしている。
ここで問題なのは、「教会に通う」という人の場合だ。「教会」という場合には、主にアメリカなどから入ってきたプロテスタント系の教会のほかに、統一教会をはじめとする、韓国で生まれた異端派の新興キリスト教団体に通うことも含まれるからだ。
なぜ韓国社会に深く根を下ろしたのか
統一教会の信者が、自分の信仰を他人に打ち明けたがらないのは、韓国人でさえ、統一教会のことを批判的に見る人が少なくないからだ。
では、そのように見られている新興宗教が、なぜ韓国社会に深く根を下ろしたのだろうか。
韓国社会を語るときに、宗教を無視してはいけない。韓国は宗教色の強い社会風土なのだ。韓国人男性と結婚したばかりの日本人妻たちの間では、家庭内の宗教が頻繁に話題になる。教会や聖堂に通っているのかが、もっぱらの関心の的である。もしも通っていれば、週末のプライベートの時間が宗教関係の時間に費やされるからだ。
日本人女性が韓国人男性と結婚すると、家事などの面で義理の母親からかなりの干渉を受けてストレスになるという話をよく聞く。だが、それよりも深刻なのは、結婚相手の宗教なのだ。それくらい宗教色の強い社会であるからこそ、統一教会は深く根を下ろすことができたと言ってよい。
統一教会は韓国において社会とさまざまな形で関わることで、幅広く大掛かりな布教活動を展開している。
たとえば統一教会のホームページを開いてみると、いくつかの企業のリンクが張られている。それらの企業の経営者は信者であり、韓国人は「統一教会の企業」と呼ぶこともある。そのなかには、中堅メディアの国民日報や観光業界準大手の世一旅行社なども含まれる。
アダルト動画などから青少年を保護するという趣旨のNPO法人の職員たちと偶然話をしたときなどは、私が日本人だとわかったとたん、「エロ動画だけど」と、赤裸々な言葉で切り出した。「あれを垂れ流しているのは日本だよね。何とかならないの」と、初対面なのにため口で糾弾されてしまった。それからしばらく話して和んだ雰囲気になると、いま目の前にいる職員が全員統一教会に所属してるから、週末にでもNPOの事務局に来ないかと勧誘するのだ。
この瞬間、私には彼らの言動に合点がいった。この教団の教えによると、韓国は聖なる国であり、第2次大戦でその韓国を併合した日本はサタンの国である。彼らが最初私を糾弾したのは、サタンの国の忌まわしき文物が神聖なる韓国を毒している今の状況はけしからん、というわけだ。
これらの企業や団体は、普段から宗教色を出して活動をしているわけではない。統一教会が韓国社会に根付いてきた大きな理由はそこにある。韓国人はふだんの生活の中で、知らない間に統一教会と接触しているのだ。
それを後押ししているのは、創設者の文鮮明(ムン・センミョン)亡きあと、教団を率いている韓鶴子(ハン・ファクチャ)による「宗教と政治は一つでなければならない」という教えだ。
つまり、統一教会には政教分離の発想がない。統一教会はこれからも、韓国社会のさらに深くまで根を張り巡らせようと模索していくことだろう。そして、それは日韓関係においても何らかの影響を与え続けるであろう。
日本人の多額の献金は「贖罪」?
韓国では統一教会の活動を批判する社会的風潮はまだ大きくはない。だが、地上波MBCが「PD手帖」という番組で、統一教会を糾弾する特集を8月30日に放送した。主な内容は、強制的ともいえる献金による信者家族の貧困と、「日本の右翼の象徴」である安倍元首相や自民党議員との広く深い関係である。
この番組に対して、統一教会の信者たちがMBCの前で抗議集会を開いた。彼らからすれば、これだけ社会貢献をしているのに、そんなことを言われる筋合いはない、教団に悪いイメージが付くのはご免だというわけだ。
この番組では、とりわけ日本人信者から多額の献金がある点が指摘された。統一教会の本部で集会があると、日本人信者は韓国人信者の2〜3倍のお金を納めるのだという。これについてある識者は「第2次世界大戦に対する日本人の罪悪感を利用して献金をさせてきた」とコメントしていた。
実際に韓国の至るところに、給料の多くを教団に納めている日本人妻たちがいる。彼らの生活は貧しく見えるが、心のなかは満たされているそうだ。なぜなら、自分たちが苦難を背負うことで、大戦中に犯した日本の罪が償われるからだ。しかも、その償いが終わることはないという。
この番組「PD手帖」は、それでも例外的なものだと言ってよい。韓国では、安倍元首相の暗殺を契機に統一教会が日本で批判されているとの報道はあるが、国内で統一教会を批判しようとする動きはまだないと言ってもよいからだ。
ある研究者から聞いた話では、こうした日本人が韓国にどれだけいるのかについて、在韓日本大使館も把握できていないとのことだ。その実態を包み隠すかのように、統一教会の本部はまるでヨーロッパの宮殿のように豪華な建物である。
●小林よしのり氏がズバリ指摘。統一協会の信者が教義にダマされる理由 9/8
どのように読んでも説明を受けても、到底受け入れることができない旧統一協会の教義。なぜ10万人とも言われる日本人信者たちは、かような教えに嵌まりこんでしまったのでしょうか。今回のメルマガ『小林よしのりライジング』では、『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』等の人気作品でお馴染みの漫画家・小林よしのりさんが、その理由を明快な論理をもって解説。さらに「マスコミは統一協会の共犯者」であると断言しています。
なぜ統一協会の教義に嵌るのか?
安倍晋三が殺害されて間もなく2カ月になる。
月刊誌「WiLL」「Hanada」は先月に引き続き今月号でも、大々的に安倍の写真を表紙に配した特大追悼号を組んだ。
両誌とも表紙は同じ写真で、安倍の家族葬で飾られていた遺影を使っていて、必死に追悼ぶりを張り合っているようだ。
世間じゃ安倍晋三と統一協会の関係が明らかになるにつれ、追悼ムードというより、国葬反対で沸騰してしまっている。
安倍の国葬については、唯一賛成が反対を上回っていた読売新聞の世論調査でも、ついに逆転した(国葬実施を「評価しない」56%、「評価する」38%)。
岸田首相は国葬を決めた理由のひとつに「安倍元首相に対する諸外国の弔意と敬意」を挙げ、先月31日の会見でも「諸外国から多数の参列希望が寄せられている。国として礼節をもって応える必要がある」と言っていた。
ところが実際は、案内状の返事が8月中旬の締め切りを大幅に過ぎて9月になっても多くの国から届いておらず、外務省は困惑しているようだ。
米国のバイデン大統領、フランスのマクロン大統領、そしてドイツのメルケル前首相も参列を見送ることが決まり、中でもG7で一番長く一緒だったメルケルまで来ないことは驚きの目で見られているという。
この調子だと、「弔問外交」で安倍の権威付けを図った狙いも壮大な空振りになるのではないか。
国葬費用は2億5,000万円と発表されていたが、これには警備費用が計上されていない。ある見積りでは警備費用に35億円はかかるといい、昭和天皇の大喪の礼の警備費用24億円、今上陛下の即位礼正殿の儀の際の28億5,000万円を遥かに超えるのは確実だという。
この調子だと、オリンピックと同じでどこまで費用がふくらむかわかったものではない。昭和天皇の場合は葬儀と陵の造営までを含めて100億円だったそうだが、それを超えることだって起こりかねない。
左翼はあくまでも「国葬反対」でデモまでやったりしているが、安倍マンセー派は、どうせ「アベガー」の左翼が騒いでるだけと思っている。
わしとしては「勝手に国葬していいから、暗殺の原因を徹底究明して、統一協会を排除しろ」と言いたい。
暗殺の原因を徹底究明したら、浮上するのは安倍晋三本人だと判明するし、カルト団体が権力の中枢に入っているのは、国家の恥だとわしは主張している。これはあくまでも「保守」の追及の仕方であり、左翼と一線を画すことが出来る。
世間一般の安倍に対する冷ややかな反応に比べて、「WiLL」「Hanada」の相変わらずの熱狂的な「安倍マンセー」ぶりは、まるで別世界だ。
統一協会問題については、WiLL巻頭の櫻井よしこと門田隆将の対談で、櫻井が「天宙平和連合(UPF)なる統一教会の関連団体にビデオメッセージを寄せただけで、「広告塔」扱いされています」と、安倍を擁護。
「統一教会の関連団体にビデオメッセージを寄せただけで」って!
そういうのを「広告塔」っていうんだよ!!
これに門田はさらに、UPFにはトランプ前米大統領、フランス、インド元首相らもメッセージを寄せていて、安倍だけではないと擁護。
そのギャラは日本の女性信者から収奪したカネだというのに!
ふたりとも、これで世間を論破できたつもりでいるところがすごい。櫻井は自分が統一協会系団体で講演していた関係があるから、何があっても「問題ない」ことにしなければならないのだろうが、保身のために必死で嘘をついているという様子もなく、むしろすっかりカルトの思考に染まっているようにも見える。
これが「Hanada」になるともっとすさまじくて、「総力特集 統一教会批判は魔女狩りだ!」というページを組み、しかもその筆頭の記事の著者がなんと「世界日報特別取材班」だ!
いまや政治家は、過去に世界日報にインタビューが載っていただけでも「統一協会とつながりあり」と見なされて針のムシロに座らなければならないというのに、わざわざ「世界日報特別取材班」を、堂々と名乗らせて執筆させているのだから呆れる。
編集長の花田紀凱という人物は、どんなに人間的にモラルを欠いても商売人の嗅覚だけは鋭かったはずだが、ついにその鼻もカルトの毒にやられたらしい。
しかもそうまでして招いた世界日報による記事が言っていることが、「世界日報は統一協会の機関紙ではない」という、些細な問題に終始している。
前号の泉美木蘭さんの記事にあるとおり、厳密にいえば世界日報は統一協会の「機関紙」ではないが、「統一協会系新聞」であることは間違いなく、協会と一体であることに変わりはない。もちろん、泉美さんが前号で紹介した世界日報の闇の部分などには、一切触れてはいない。
花田は、こんなどうでもいい記事を載せることと引き換えに、自ら月刊「Hanada」は「統一協会の友好雑誌」であると宣言したのである。
「WiLL」、「Hanada」の安倍マンセー両誌には「安倍元総理の遺志をつぐ覚悟」だの「われ安倍イズムの継承者たらん」だのといった文言が並んでいる。しかも、藤井聡の「表現者クライテリオン」までが、表紙にデカデカと「岸田文雄は、安倍晋三の思いを引き継げるのか?」と打っている。
だが、「安倍晋三の遺志を継ぐ」って、なんだ?
わしに言わせれば、「完全な自虐史観屈服」、「完全な戦後レジーム追従」、それこそが「安倍イズム」であり、「安倍の遺志」ではないか!
安倍は「自虐史観の見直し」「戦後レジームの克服」を旗印にしていたはずなのに、第一次政権で首相に就任するや、河野談話を踏襲し、村山談話を踏襲し、東京裁判を見直す立場にないと表明した。さらにはアメリカに行って慰安婦は「20世紀最大の人権侵害」だと世界に向けて認めてしまった。
自虐史観の見直しが戦後レジーム克服の第一歩なのに、安倍はその第一歩から早々に全てベタ降りして、第二次政権においても一切見直すことはなく、そのまま死んでしまったのだ。
安倍が自虐史観の見直しをやらなかったのは、統一協会の教義に従っていたからだろう。そう見られても仕方がない。
特に一度どん底を味わった後の政権返り咲きと、その後の長期安定政権はまさしく統一協会のおかげだったわけだから、統一協会の教義を否定することになる自虐史観の見直しなど、絶対にやるわけがなかったのだ。
日本は戦前・戦中、アジアに悪いことばっかりやってきたサタン国家だ。特に韓国は併合までしてしまって、とんでもない悪を行ってしまった。
だから日本はその贖罪のために、韓国に永遠にお金を貢ぎ続けなければならない、という歴史観を安倍は恩義ある統一協会のために守り抜いたのだろう。
それで戦後レジームからの脱却なんかできるわけがなく、実際に安倍政権は、戦後レジームの通りのことしかやらなかったのである。
大将の安倍晋三が率先して統一協会と一体化していたから、自民党の議員はみんな平気で統一協会や関連団体と関係を結んでいたわけだし、一の子分の萩生田なんかは安心しきって統一協会の「家族」になっていたのだろう。そうして安倍晋三は自民党を、特に安倍派を統一協会とベタベタの関係にした。
そして、まさに統一協会の応援を得て戦っていた選挙戦の真っ最中に、安倍は凶弾に斃れたのだ。
こんな不測の事態さえなければ、今後も自民党と統一協会の関係は末永く蜜月の状態だったはずで、安倍が死んだからと言って、その途端にこれまでの関係を全て反故にしようというのは、それこそ安倍の遺志を蔑ろにする行為じゃないのか?
突き詰めれば、安倍の遺志とは「統一協会と癒着し、韓国に国を売ることと引き換えに権力を維持すべし」というものだ!安倍の遺志を継げというのなら、そうするべきじゃないか!
つまり、統一協会信者に雑誌を買ってもらって部数を維持しようと、全力で統一協会を擁護する「WiLL」や、世界日報記者の記事まで載せてしまう「Hanada」こそが、最も誠実に安倍晋三の遺志を継いでいることになるわけだ。
一方、さすがにそんな「保守」メディアとは違って、一般マスコミは統一協会の悪事に対する追及を続けているし、今後もその手を緩めないでほしいところではあるが、しかしそんなマスコミにも不満がある。
なぜ統一協会の信者たちはその教義にたやすく騙されたのかという、その肝心な部分を、マスコミは曖昧にして隠しているのだ。
なぜ統一協会の教義に人々が騙されたのかといえば、それは日本全体が自虐史観だからだ。
戦後の歴史観が「韓国に悪いことをしました」「日韓併合は悪いことでした」「日本は罪を負っています」と統一協会の教義そのままであり、これを日本中で教育によって子供のうちから刷り込んできたからである。
戦中派の人が日本社会の大勢を占めていた時代にはまだそこまで極端な歴史観ではなかったが、それを次第に歪めて空気を変え、文部省攻撃のキャンペーンなどを通じて歴史教育も自虐史観一色に染めていったのが、朝日新聞を始めとするマスコミだったのだ。
いわば、マスコミは統一協会の共犯者とも言えるのである。
マスコミ報道の中には、統一協会の教義が自虐史観であることを指摘し、なぜ安倍政権は歴史観では全く逆のはずの統一協会を支持していたんでしょうかと皮肉っぽく言っているものもあるが、そう言っている自分たちこそが統一協会の教義に賛同する「共犯者」であることからは、必ず目をそらしている。
未だに一般マスコミは左翼色が強く、自虐史観を見直そうとはしない。そして、自分たちが統一協会の洗脳に最も適した素地を作っているという都合の悪い事実については口をつぐんでおいて統一協会を非難するという、欺瞞を行っているのである。
このままでは、今後も「反日カルト」に簡単に騙される者は跡を絶たない。日本は悪いことしたもんなあ、戦中悪いことばかりやって韓国に迷惑をかけたからなあという刷り込みが残っている限り、統一協会の教義に触れた途端にガッチリ嵌って、あっという間に洗脳されてしまうことになるだろう。
産経新聞や「WiLL」、「Hanada」などの自称保守メディアは、そんな左翼メディアに対するカウンターとして存在しているはずだった。
さすがに「朝日新聞は廃刊しろ」とまで言い出したのはあまりにもヒステリックで、言論の自由を守るという立場からも全く賛成できなかったし、偽史まで使った「日本スゴイ史観」に嵌り込んでしまう危険もあったが、少なくとも自虐史観を否定し、自虐史観論者と戦うという姿勢だけは揺らがないだろうと思っていた。
ところが自称保守メディアは、極限の自虐史観を教義とする統一協会と癒着した安倍政権を全力で支持していたし、そのことが明るみに出ても一切反省もしないし、安倍を非難することもしない。
むしろ安倍を最大限に称賛し、統一協会を擁護しているのだ。
結局は、保守論壇の奴らもネトウヨも全員、別に自虐史観が嫌いなわけでも何でもなかったわけだ。
ただ安倍晋三が好きなだけで、安倍晋三が洗脳されて自虐史観だったら、自虐史観が大好きになってしまうのだ。
そんな連中が、自分を「保守」だと思っている。
そしていまでは「保守」はみんな、統一協会と「オール自虐史観」の連帯を組んでしまっている有様だ。
一貫して自虐史観とずっと戦い続けているのは、わしだけになっていた。
左を見れば、一応は統一協会を追及する報道をしてはいるけれども、元はといえば統一協会の共犯者。
右を見れば、なんと統一協会と一体化した「統一連合」となってしまっている。
「なぜ統一協会の教義に嵌るのか?」と問われれば、「戦後日本そのものが『統一協会の教義』だからだ!」と答えるしかない。
しかしそう言える保守は、プロではわし以外にはいないようである。
●統一教会「日韓トンネル計画」麻生太郎も顧問を務めていた 「事業にお墨付き」 9/8
票や選挙支援欲しさにイベントへの出席や祝電を繰り返す――。一連の騒動で明らかになったのは、そんな“選良”の姿だが、以下もその一端といえる。無謀なトンネル構想にも、大物政治家たちが群がっていた。
統一教会を巡る報道で近頃よく目にするのが「日韓トンネル」事業である。
この構想、ごくごく簡単に記せば、九州は佐賀県・唐津と韓国・釜山の間を、海底トンネルで結び、日韓交流を活発化させる、というもの。
統一教会の文鮮明開祖が1981年に提唱し、翌年には「国際ハイウェイ建設事業団」(現・財団)を設立。以来40年、同団は唐津市で試掘を、中継点に当たる長崎の壱岐島や対馬でも工事や調査を行うなど、プロジェクトを進めてきた。
しかし、トンネルの距離は実に200キロで、青函トンネルや、英仏をつなぐドーバー海峡・ユーロトンネルの4倍にも及ぶ。
献金を募る道具に
「荒唐無稽で、実現は不可能と言っていいでしょう」と言うのは、全国霊感商法対策弁護士連絡会・東京事務局長の、渡辺博・弁護士。
「唐津の現場でも、自分たちで買った土地をその範囲で掘っているだけですし、壱岐でも少し穴が掘られているというレベルで、とても実現に向かっているとはいえません」
それでも、なぜ教会はプロジェクトを大々的に宣伝し続けているのか。
渡辺弁護士が続ける。「壮大な事業を推進していると示すことで、信者を鼓舞するため。もう一つは、巨大プロジェクトのアドバルーンを上げることが、献金を募る道具として役立つからです」
過去には、1ミリ掘るために5万円が必要として、「1ミリ5万円献金」という運動を展開、中にはトンネル建設などのために3.7億円も寄付した信者がいて、裁判沙汰になったこともあった。
山拓も古賀も
そして例のごとく、このプロジェクトの周りでも政治家がうごめいている。
例えば、83年には、後の統一教会会長・梶栗玄太郎を理事長として、「日韓トンネル研究会」が設立されているが、現在の会長は、元法務大臣・野沢太三氏。ご本人に関与の経緯を聞くと、「耳が遠いので……」と述べるのみだった。
また、研究会の初代会長が監修した『日韓トンネルプロジェクト』なる書籍によれば、92年時点での研究会本部・九州支部の役員には、山崎拓、古賀誠など派閥の領袖や、太田誠一、久間章生、自見庄三郎ら閣僚経験者の各氏がずらりと名を連ね、その中には顧問として麻生太郎・元総理の名も見えるのだ。
「間接的に献金に力を貸している」
統一教会に詳しい、さるジャーナリストによれば、「麻生さんは政調会長時代の2003年、党の『夢実現21世紀会議』の議長を務めていましたが、その際、『日韓トンネル』について実現に向けた政策提言を発表した過去がある」というから、やはり事業への思い入れが強いのは間違いなさそうなのである。
当の麻生事務所に本件について質問したが、回答はなし。
前出・渡辺弁護士が言う。「この事業を名目に、信者に対して過酷な献金が強要されていたわけですから、加担するのは、あまりに無責任。事業にお墨付きを与え、間接的に献金に力を貸してしまっているともいえます」
一連の報道では、教会系新聞「ワシントン・タイムズ」に全面意見広告を出していたことも発覚した麻生元総理。
この方が副総裁なのだから、党とカルトとの「関係の見直し」など、簡単にできるわけがないのである。
●沖縄県知事候補と統一教会「隠しきれない」昵懇の仲 9/8
8月25日に告示され、今月11日に投開票が行われる沖縄県知事選。現職の玉城デニー知事に保守派の新顔二人が挑む選挙戦が繰り広げられていますが、その保守派候補二人ともが旧統一教会との浅からぬ関係を指摘される事態となっています。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、「教団まる抱え選挙」の展開を目論んでいた佐喜真淳候補と旧統一教会との、この時点までに判明している癒着関係を詳しく紹介。さらに自民党の国会議員と同様「今後は関係を断つ」という一言で問題行動の帳消しを図る、佐喜真氏の無責任極まりない姿勢を強く批判しています。
沖縄県知事選は「現職 VS 統一教会」
今度の日曜日、9月11日という、ある意味、米国を象徴する日に投開票が行なわれる沖縄県知事選ですが、今回の県知事選は、別の意味でも、現在の米国追従の自民党政権の実体を象徴しています。それは、共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦の現職、玉城デニー氏(62)以外の2人の候補者、自民、公明推薦の前宜野湾市長の佐喜真淳(さきま あつし)氏(58)と、前衆院議員の下地幹郎(しもじ みきお)氏(61)が、どちらも旧統一教会とベッタリ癒着している人物だからです。
たとえば、自民と公明が推薦する佐喜真淳氏の場合は、宜野湾市長だった2017年3月26日、宜野湾市で旧統一教会の関連組織「平和大使協議会」の「日韓トンネル推進沖縄県民会議」の結成大会を開催し、複数の自民党県議らと一緒に出席しています。2019年7月15日には、豊見城市で開催された旧統一教会の「平和と家庭の祭典」に来賓として出席し、お祝いのスピーチをしています。
2019年9月後半には、宜野湾市議会の保守系の市議らと台湾へ渡航し、「平和大使協議会」を視察し、9月29日に桃園市で開催された旧統一教会の「合同結婚式」にも出席しています。合同結婚式では、新郎新婦が長さ1メートルほどの「蕩減棒(とうげんぼう)」と呼ばれる木製の棒でお互いの尻を叩き合う儀式が行なわれました。この日は既婚の信者カップルを集めた「既成祝福式」も行なわれたのですが、佐喜真氏は来賓としてステージに上がり「素晴らしいです。私も非常に感動しております」と賞賛のスピーチしました。
2019年11月には、旧統一教会の関連団体の人物が沖縄市で行なった、同性婚を批判する講演会に出席しました。また、2020年1月5日には、旧統一教会の沖縄代表者が講師をつとめる「家庭講演会」に、複数の自民党議員と誘い合わせて出席しています。そして、その6日後の1月11日には、豊見城市で旧統一教会の徳野英治会長を迎えた講演会が開催され、この講演会に出席してお祝いのスピーチをしています。
2020年2月3日から5日に掛けては、安倍晋三元首相のビデオメッセージで知られるようになった旧統一教会の関連組織「天宙平和連合(UPF)」の大型イベントにも参加しています。佐喜真氏は、韓国の高陽市で開催されたUPFの「ワールドサミット2020」に、わざわざ日本から参加したのです。
そして、2021年1月8日には、旧統一教会の関連組織「沖縄県平和大使協議会」が開催した新春の青年フォーラムに、安倍元首相の飼犬として普天間飛行場の辺野古移設を容認した元県知事の仲井真弘多氏とともに出席し、それぞれ壇上で講演を行ないました。2021年4月11日には、うるま市で開催された旧統一教会の関連団体「世界平和連合」の講演会に出席し、中国の脅威などについて意見を述べています。
また、宜野湾市のコミュニティ放送「ぎのわんシティFM」には、旧統一教会の「那覇家庭教会」が提供する番組が9本もあるのですが、佐喜真氏はそのうちの1本「はごろもシティへめんそ〜れ!」に、2022年3月22日、ゲスト出演し、基地問題について玉城デニー知事を厳しく批判しました。ちなみに、この番組のパーソナリティーをつとめる女性は旧統一教会の信者であることを認めており、佐喜眞氏とは「長い付き合い」だと述べています。
ザッと挙げても、これだけ旧統一教会とベッタリ癒着している佐喜真淳氏ですが、先月8月5日、那覇市内のホテルで記者会見を開き、9月11日投開票の沖縄県知事選挙に出馬すると表明しました。そして、その会見の映像を見てみると、なんと、旧統一教会の関連組織「沖縄県平和大使協議会」の議長をつとめた西田健次郎氏が同席していたのです。出馬会見にまで旧統一教会の関係者が同席するなんて、これこそ自民党の十八番「教団まる抱え選挙」の始まり始まり〜という感じです。
しかし、ここから佐喜真氏の計画が大きく崩れて行くのです。それは、自民党議員の旧統一教会との癒着が次々と発覚し始めたことです。あまりにも根深い自民党議員と旧統一教会との癒着に、岸田政権の支持率はジェットコースターのように下がり始め、この癒着の構図は地方議員へも波及して行きました。
この状況では、とても「教団まる抱え選挙」などできません。しかしネット上では、すでに佐喜真氏が旧統一教会の怪しげなイベントに出席している映像などが拡散され始め、もはや「知らぬ存ぜぬ」は通用しません。すると佐喜真氏は、腹をくくったのか、8月25日の沖縄県知事選挙の第一声で、開口一番、次のように述べたのです。
「連日、旧統一教会の報道がなされております。確かに私は旧統一教会の関係団体の行事に参加をしてまいりました。ただし、会員であるとか、あるいはまた資金の提供を受けたとか、そのようなことは一切ございません。ただし、多くの方々に不安を与え誤解を招くような行動をしたことについては真摯に反省をしております。この場をお借りしまして、旧統一教会関連との一切の関係を今後は行なわない、断つということをお約束させていただきます」
おいおいおいおいおーーーーい!お前もかーーーーい!…というわけで、自民党の菅義偉氏も山谷えり子氏も萩生田光一氏も下村博文氏も山際大志郎氏も稲田朋美氏も、あれほど旧統一教会とベッタリ癒着していたのに、「今後は関係を断つ」と言えば、これまでのことはすべてチャラなのかーーー
たとえば一例として、稲田朋美氏の地盤の福井県では、稲田朋美氏が旧統一教会のイベントでスピーチしている写真を見せられて、それを信じてインチキ壺を240万円で買わされてしまったという被害者も出ているのです。一般の私人ならともかく、為政者という公人がカルト組織と関係を持てば、いくら「依頼されたから出席しただけ」などと言い訳をしても、その行動自体が「広告塔」として犯罪に加担したことになるのです。
「今後は関係を断つ」というセリフは、これまでの旧統一教会との癒着の責任を取った人物の言うべきセリフであって、この一言で過去の問題行動すべてがチャラになる魔法の言葉ではありません。まずは被害者へ謝罪し、次に議員辞職など最低限の責任を取り、それから初めて「今後は関係を断つ」と言うのが筋でしょう。
今回の沖縄県知事選は、現職の玉城デニー氏と、ここまで旧統一教会とベッタリ癒着して来た佐喜真淳氏、そして、2001年に「世界平和連合沖縄県連合会設立準備会」の集会に出席し、沖縄にカルト教団を招き入れる計画に加担した下地幹郎氏との戦いです。いくら「今後は関係を断つ」などと言っても、佐喜真氏も下地氏もこれまでの旧統一教会との癒着について何ひとつ責任など取っていないのですから、これは「現職 vs. 統一教会」という選挙戦なのです。カルト教団などに、断じて負けるわけには行きません。
●河野太郎大臣が旧統一教会関連団体の創設大会に祝辞を贈っていた! 9/8
その日、東京全日空ホテル(現ANAインターコンチネンタルホテル東京)の大宴会場は900名もの客で超満員だった。
在日同胞の統一は韓半島(朝鮮半島)の統一の始まり。そう謳う「平和統一聯合」の創設大会が始まり、来場者たちは快哉を叫んだのだが――会場で取材していた写真家でジャーナリストの伊藤孝司氏はすぐに違和感を覚えたという。
「在日コリアンのための平和団体だと聞かされていたのですが、主催者の挨拶などに『真の愛の精神』『天意に従う』という宗教用語が繰り返し使われていて、日韓トンネルの話まで出てきたところで、『これは統一教会(現世界平和統一家庭連合)傘下の団体だ』と気付きました」
伊藤氏があらためて大会パンフレットの来賓をチェックすると、統一教会の幹部(当時、以下同)や統一教会傘下の鮮文(ソンムン)大学総長などの名前があった。
「驚いたのは、自民党と民主党(当時)の代議士3人が壇上に並んでいたこと。司会者に紹介された後、挨拶した議員もいました。
実はこのイベントの1週間後に第20回参議院選挙が控えていた。選挙応援で多忙を極めているはずの議員たちがわざわざ出席するなんて、よほど政治的に重要なのだと思いました」(伊藤氏)
続いて、祝辞が読み上げられた。元農林水産大臣の玉澤徳一郎氏(84)に続き、現消費者担当大臣の河野太郎氏(59)のメッセージが代読された。
〈歴史的な平和統一聯合の創設を心よりお祝い申し上げます。ご参集の皆様の高い志に深い敬意を表します。在日コリアンの和合が半島の和合、さらにアジア、世界の和合へとつながると確信しております。またはるばる大韓民国よりお越しいただいたご来賓の方々に心より感謝申し上げます。この歴史的大会のご成功、そしてその運動のご発展を心から祈念申し上げます〉
他にも元国家公安委員会委員長の小此木八郎氏(57・自民)や日本維新の会で参議院幹事長を務める室井邦彦氏(75)らから祝辞が寄せられていたが、名前だけの紹介に終わった。
「河野氏が祝辞でわざわざ触れた”大韓民国からの来賓”は統一教会幹部などを指します。統一教会傘下団体のイベントだとよくわかったうえで、河野氏は祝辞を贈ったのでしょう。創設大会終了後に行われた晩餐会では、落選中の議員が選挙応援を呼びかけた後、割れんばかりの拍手に迎えられて桜田淳子さん(64)が登場。韓国語を交え、涙ながらのスピーチを行いました。桜田さんは文鮮明(ムンソンミョン)氏が語ったことを『御(み)言葉』として、何度も紹介していました。統一教会の合同結婚式に参加しただけでなく、熱心な信者であることがわかりました」(伊藤氏)
’04年7月のことである――。
「弊事務所では発信を確認できませんでした。いずれにしても、消費者庁としては被害の未然防止、救済に向けてしっかりとした対応をしていきます」
河野太郎事務所は本誌取材にこう回答した。ではなぜ、朝日新聞のアンケートに、旧統一教会および関連団体との一切の付き合いを否定したのか。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「この問題は根深い」と声を落とす。
「河野太郎よ、お前もか――という感じですね。『霊感商法等の悪質商法への対策検討会』を立ち上げるなど、河野大臣は積極的に動いている。宗教団体の解散も議論すると踏み込んでもいて、国民の期待は高いでしょう。うまく立ち回るタイプではなく、猪突猛進型。統一教会問題で自身の存在感を高めてやろうとは思っておらず、自民党では珍しく問題解決に意欲的。そこは評価しています」
ただ、厳しい対応をする一方で祝辞を贈っていたとなると話は変わってくる。
「河野事務所の政策秘書は長く仕えている人だからわからないはずがない。事務所の手抜かり、チェックミスだったとしても、最終的な責任は議員本人にある。朝日新聞に祝辞を贈ったことはないと答えているのだから、説明責任を果たさないといけない」(伊藤惇夫氏)
旧統一教会と関連団体との決別を宣言した自民党。潔白を主張し、問題追及の先頭に立っていた河野大臣の祝辞が、パンドラの箱を開けることになるか。
●旧統一教会”利用した”政治家と桜田淳子切った事務所社長の「差」 9/8
安倍晋三元総理が急死したことにより、再びクローズアップされた旧統一教会問題。霊感商法など悪徳商法を話し合う消費者の検討会議がもたれるようになった。
消費者庁が大学教授や長く被害者救済を訴え続けた弁護士らを招集して、意見を聞くシステム。旧統一教会の霊感商法はすでに30年以上前から大きな問題になっていて、広告塔の一員として韓国での合同結婚式にも参加した歌手の桜田淳子さんや体操オリンピック代表の山崎ひろ子さんなどが話題になった。
今回は芸能人でなく、旧統一教会の組織の会合やイベントに出席してスピーチし、寄付までしたという議員がたくさん現れ、話題になっている。国会議員も地方議員も旧教団の抱える信者らを中心に票の確保、電話連絡、ポスター張り、選挙カーのウグイス嬢など、数々の選挙応援をしてもらっていたというから驚きだ。
一票でも欲しいという立候補者の思いは分かるが、どんな方法で信者を集め、多額の献金をさせてきていたかは十分に分かっていたはずである。でも名前の出た議員さんのほとんどが「知らなかった」などと煮え切らない答えだ。なおかつ「今後は付き合わない」とほとんどの政治家が言う。信仰の自由は認められているし、接点を持つこと自体は不自然ではない。にもかかわらず、「どこが悪くて、何がいけないのか」とはっきりと話す政治家がいない。ただただ「二度と接点を持たない」と発言するだけだ。
そんな旧統一教会を利用し続けてきた政治家たちを見て思うのは、桜田さんを手塩に育てながらも教団に“取られて”しまった、所属事務所『サンミュージック』会長の故・相澤秀禎さんの“覚悟”だ。
桜田さんは今、幸せな結婚生活を送っているのかもしれないが、10年ほど前から芸能界の仕事をしなくなったのは事実だ。
「芸能界で仕事は無理だ」と、芸能界を去らせた相澤さんに、桜田さんは再び仕事をしたいと打ち明けた。当時、桜田さんの都内の自宅は、旧統一教会の信者のための教会のようになっていた。
「教会員の出入りも多かった」と、当時、同じマンションに住んでいたオレの知人が話してくれた。
相澤さんは彼女を芸能界に戻すことを断ったが、自分がスターにした愛着あるタレントを見捨てたわけじゃない。桜田さんの相談事を聞いてあげる担当者として、会社の役員を指名していた。
しかも、相澤さんは桜田さんの身内から200万円の壺を買った。彼女のためには何でもしてあげようという思いだったんだろう。
「うちに来た時から、淳子は純粋だったからね。彼女のために買ったんだよ」と相澤さんは話してくれた。だまされたと感じてる多くの被害者と相澤さんの思いは全く違うだろう。ただ、心の中は霊感商法イコール悪徳商法と感じていたんだろうな。
でも、これはあくまでも個人的な問題で、桜田さんが芸能界に戻ることは一切認めていなかった。それは相澤さんの遺言としても“統一教会にいるうちは、絶対にプロダクションとして関わらない”と厳命していると聞いている。
だから、彼女が相澤さんが亡くなった後に銀座博品館劇場でコンサートを開いた時も、新曲発売のイベントを行った時も、サンミュージックは一切、関わっていない。
政治家でもないプロダクションの社長が、旧統一教会の行動に目を光らせて、被害者を出さないようにしてきた。それは、桜田さんが芸能活動を続ければ、統一教会の広告塔として被害を拡大させてしまうという危機感からだっただろう。
それなのに、政治家たちは自分が「受かるための行動」として、自分で納得して旧統一教会を利用し続けてきたのだ。
芸能事務所だって利益団体だ。桜田さんを引退させなければ、あるいは復帰させれば、何億円という利益が生まれていただろう。それでも、“ダメなものはダメ”ときちっとケジメをつけた相澤さんの思いを、今の政治家たちに見習ってほしいものだ。 
●旧統一教会との接点確認作業は「点検」 安倍氏追及への予防線? 9/8
安倍晋三元首相を巡る8日の国会閉会中審査で、自民党総裁でもある岸田文雄首相は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と同党との関係についても答弁した。同党国会議員の団体との接点確認作業について「点検」との説明で通し、「調査」との表現を避けた。安倍氏を対象外としたい思惑がのぞく。
自民内の作業を巡っては茂木敏充幹事長も記者会見などで「議員それぞれの点検」と主張してきた。「点検」と表現することで「当事者の自発的な行為」に位置付け、ゆえに亡くなっている安倍氏は対象外と予防線を張り、追及の広がりを防ぐ意図がうかがえる。 
衆院議院運営委員会での審査で立憲民主党の泉健太代表から「団体の活動に関わってきた安倍氏をなぜ調査対象に含めないのか」と問われた首相は「活動の当時のご本人の判断があったと思うが亡くなられており、実態把握には限界がある」と説明。「国会議員への点検結果を取りまとめ、党としての説明責任を果たす」とし、自党で行っているのは「調査」ではなく「点検」との認識を強調した。
「岸田総理が『関係を断ち切る』とした団体と安倍氏は関係が深かった。そんな人物を国葬にするのは矛盾。自民との関係が切れるとも思えない」との共産党の塩川鉄也氏からの追及には「亡くなった方の実態把握は困難」と繰り返した。一方で、「しっかり点検を行う」と語気を強めて反論しつつ「各人の未来の活動へ向けた作業だ」と付言。未来なき物故者は対象外との見解を織り込み、さらに予防線を張った。
続く参院議運委の審査では共産党の仁比聡平氏から「安倍氏の行動が団体の広告となり被害を生んだ。政府や自民党が資料などをたどり行動に至った経緯を調査すべきだ」と迫られたが「議員それぞれが過去を点検して説明するのが原則」と調査を重ねて否定。安倍氏に関しても「本人が亡くなったので十分に把握するのは難しい」と繰り返した。
衆院では山口俊一議運委員長(自民)が旧統一教会関係の質問を「議題である国葬について聞いてほしい」と制する場面もあった。塩川氏らは議席から「当該人物の調査は国葬の根拠そのものではないか」などと反論。参院では立民の吉川沙織氏がやりとりを踏まえ「本来は(議題に拘束がない)予算委員会で行うべきだとわれわれは主張してきた」と苦言を呈した。
「事の沈静化には『点検』で通すしかない」とする自民党幹部は「首相は答弁に気を使い、その点では隙が無かった」と振り返り、「後は世論次第だ」と祈るように話した。
●安倍氏と旧統一教会の関係、調査せず 岸田首相「確認に限界ある」 9/8
岸田文雄首相は8日の衆院議院運営委員会の閉会中審査で、安倍晋三元首相と「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」との関係について、調査しない方針を明らかにした。立憲民主党の泉健太代表の質問に「お亡くなりになった今、確認するには限界がある」と答えた。
安倍氏は教団の友好団体が開いたイベントにビデオメッセージを寄せていたことなどから、その関係が焦点になっている。
泉氏は、先の参院選で安倍氏の側近だった候補者が教団の組織的支援で当選したと指摘。自民党と教団との関係では「安倍氏が最もキーパーソンだったのではないか」とただした。これに対し、首相は関係について「本人の当時の様々な情勢における判断に基づくもの。ですから、今の時点で、実態を十分に把握することは限界がある」と述べた。
共産党の塩川鉄也氏は「教団と深い関わりを持ってきた安倍氏を国葬とするのは矛盾している」と指摘したが、首相は国葬を決めた判断とは関係がないと強調した。
●安倍元首相は結局対象外 旧統一教会と議員の関係、自民が公表 9/8
自民党は8日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側と党所属国会議員の接点に関する調査結果を発表した。関係を認めたのは会派に所属する379人の半数近い179人に上ったが、実名の公表は選挙で支援を受けたり、会合に出席したりした121人にとどめた。秘書が派遣されているかは確認せず、最も結びつきが強いとされる安倍晋三元首相も対象から除くなど、調査の不十分さを指摘する声もあり、野党は「全容解明されたと思えない」と反発した。
調査は党が設定した8項目の質問に対し、対象者が自主的に点検した上で回答する方式。8日発表の結果によると、選挙で旧統一教会側の組織的な支援を受けるなどしたのは斎藤洋明衆院議員と井上義行参院議員の2人、ボランティアとして支援を受けたのは萩生田光一政調会長や、安倍氏の実弟の岸信夫前防衛相ら17人だった。このほか、関連団体を含めて主催会合であいさつや講演をしたり、会費支出など一定額以上の金銭のやりとりがあったりした議員は実名を明らかにした。
岸田文雄首相(党総裁)は8日、官邸で記者団に「結果を重く受け止め、国民の信頼回復に努力したい」と語った。茂木敏充幹事長は記者会見で「(接点のあった議員は)決して少ないとは思っていない。率直に反省し、一切関係を持たないことを党内に徹底していく」と述べた。
党籍あるのに衆参議長は対象外?
もっとも、今回の調査は国会の党会派に所属する現職議員を対象にしたため、教会側と党の「パイプ役」ともされる安倍氏は対象外だ。8日の衆院議院運営委員会では、立憲民主党の泉健太代表が安倍氏の秘書らを通じて具体的な関係性を調べるよう迫ったが、首相は「本人が亡くなった今、確認するには限界がある」と否定した。会派を離脱しているとして、党籍がある細田博之衆院議長と尾辻秀久参院議長にも回答を求めていない。
調査内容も、教会側との密接な関わりをうかがわせる秘書の受け入れなどは含まれていない。茂木氏は、地方議員との接点の点検に消極的な姿勢を示す。
立民「全容解明とは思えない」
党は今回の調査で幕引きを図る構えだが、立民の安住淳国対委員長は国会内で記者団に「自主申告で強制力のない調査なので、全容が解明されたとは思えない」と強調した。
日本大学の岩井奉信名誉教授(政治学)は「旧統一教会が自民に深く食い込んでいたことが分かったが、調査不足と言わざるを得ない」と指摘。回答結果そのものを公表し、地方議員にも対象を広げる必要があるとし、「安倍氏と教会との関係も過去にさかのぼって調べない限り、この問題の解決はなく、国民も納得しない」と語った。
●自民“旧統一教会と接点の国会議員は179人”うち121人氏名公表  9/8
旧統一教会との関係をめぐり、自民党は、所属する国会議員全体の半数近くにあたる179人が何らかの接点があったことを明らかにしました。また、選挙で支援を受けるなど、一定以上の関係を認めた121人の氏名も公表しました。
自民党は、衆参両院の議長を除く所属する国会議員379人に、旧統一教会側との関係について書面で報告させた結果を取りまとめ、8日夕方に茂木幹事長が記者会見して公表しました。
それによりますと、関連団体も含めた会合に祝電を送ったり、秘書が代理出席したりしたケースを含め、教会側となんらかの接点があったと報告した議員は、全体の半数近くにあたる179人だったとしています。
また、一定以上の関係を認めた121人については、氏名も公表しました。
具体的には、選挙で教会側から組織的な支援などを受けていたと報告した議員は、斎藤洋明衆議院議員と井上義行参議院議員の2人となっています。
井上議員は、先月末に旧統一教会の「賛同会員」をやめ、今後は一切の関係を断つとのコメントを発表しています。
また、選挙でボランティア支援を受けていた議員は、岸信夫 総理大臣補佐官や萩生田光一 政務調査会長ら17人となっています。
教会主催の会合に出席した議員は、柴山昌彦 元文部科学大臣や、磯崎仁彦・官房副長官ら10人となっています。
このほか、山際大志郎 経済再生担当大臣や村井英樹 総理大臣補佐官、生稲晃子 参議院議員など合わせて96人が、関連団体の会合に出席してあいさつを行っていたとしています。
茂木氏は「結果を重く受け止めている。率直に反省をし、今後は旧統一教会とは一切関係を持たないことを党内に徹底していく。被害の防止策、被害救済にも政府と連携し、しっかりと取り組んでいく」と述べました。
また教会側となんらかの接点があった議員が179人にのぼったことについて「決して少ないとは思っていない」と述べました。そのうえで「会合であいさつしたケースなどでは、大半の議員が、関連団体という認識はなかったとしている。どこまで社会的な問題なのかという認識も不足していたのだろう」と述べました。
そして、今後新たに教会側との関係がわかった場合は、追加で報告してもらうとしたうえで、各議員の対応について「かなり説明してきている部分もあると思うが、不足している部分については個々の議員がさらに説明を尽くすということだと思う」と述べました。
また、安倍元総理大臣と旧統一教会との関係を調査する考えがないか質問されたのに対し「お亡くなりになられた方について、本人抜きに事実関係を確認することは困難で、限界がある」と述べました。
自民党が公表した“一定以上の関係を認めた”121人の氏名
・統一教会関連団体の会合への出席「議員本人出席で挨拶有り」
<衆議院>逢沢一郎 赤澤亮正 東国幹 池田佳隆 石橋林太郎 石原宏高 石原正敬 伊東良孝 稲田朋美 井林辰憲 井原巧 大岡敏孝 尾崎正直 小田原潔 鬼木誠 菅家一郎 神田憲次 北村誠吾 工藤彰三 熊田裕通 國場幸之助 小寺裕雄 小林茂樹 小林鷹之 小林史明 坂井学 佐々木紀 柴山昌彦 島尻安伊子 鈴木馨祐 関芳弘 高木宏壽 高鳥修一 高見康裕 武田良太 武村展英 谷川とむ 田野瀬太道 田畑裕明 塚田一郎 土田慎 土井亨 中川貴元 中川郁子 中曽根康隆 中西健治 中根一幸 中野英幸 中村裕之 中山展宏 西野太亮 萩生田光一 鳩山二郎 平井卓也 深澤陽一 古川康 細田健一 宮内秀樹 宮崎政久 宮澤博行 務台俊介 宗清皇一 村井英樹 盛山正仁 保岡宏武 柳本顕 山際大志郎 山田賢司 山本ともひろ 若林健太
<参議院>青木一彦 生稲晃子 石井浩郎 井上義行 猪口邦子 上野通子 臼井正一 江島潔 加田裕之 加藤明良 北村経夫 古賀友一郎 こやり隆史 櫻井充 佐藤啓 高橋克法 豊田俊郎 永井学 船橋利実 星北斗 舞立昇治 三宅伸吾 森屋宏 山本順三 若林洋平 渡辺猛之
・統一教会関連団体の会合への出席「議員本人出席で講演」
<衆議院>赤澤亮正 甘利明 石破茂 伊東良孝 大岡敏孝 小田原潔 北村誠吾 木原稔 佐々木紀 谷川とむ 中谷真一 中山展宏 古川康 宮澤博行 務台俊介 山際大志郎 義家弘介
<参議院>井上義行 猪口邦子 衛藤晟一
・「旧統一教会主催の会合への出席」
<衆議院>逢沢一郎 上杉謙太郎 木村次郎 柴山昌彦 萩生田光一 穂坂泰
<参議院>磯崎仁彦 井上義行 三宅伸吾 森まさこ 
・「旧統一教会及び関連団体に対する会費類の支出」のうち、政治資金規正法上、要公開の対象議員
<衆議院>青山周平 池田佳隆 伊藤信太郎 伊東良孝 井上信治 上野賢一郎 大岡敏孝 奥野信亮 小田原潔 鬼木誠 加藤勝信 神田憲次 木村次郎 高木啓 高木宏壽 武田良太 田畑裕明 寺田稔 中川郁子 萩生田光一 平井卓也 平沢勝栄 松本洋平
<参議院>上野通子
・「旧統一教会及び関連団体からの寄付やパーティー収入で寄付もしくはパーティー収入有り」のうち、政治資金規正法上、要公開の対象議員
石破茂 下村博文 高木宏壽 山本ともひろ
・「選挙におけるボランティア支援」
<衆議院>岸信夫 木村次郎 熊田裕通 斎藤洋明 坂井学 高鳥修一 田畑裕明 田野瀬太道 中川貴元 中村裕之 深澤陽一 萩生田光一 星野剛士 若林健太
<参議院>北村経夫 こやり隆史 船橋利実
・「旧統一教会及び関連団体への選挙支援の依頼、及び組織的支援、動員等の受け入れ」
<衆議院>斎藤洋明
<参議院>井上義行
氏名公表の121人 派閥別の内訳は
   安倍派(97人)が最も多く37人
   麻生派(51人)が21人
   二階派(43人)が16人
   岸田派(43人)が15人
   茂木派(54人)が14人
   森山派(7人)が3人
   谷垣グループ(16人)が3人
   無派閥(68人)が12人となっています。
・斎藤洋明 衆議院議員
選挙の際、教会側から組織的な支援などを受けていたと報告した斎藤洋明 衆議院議員は記者団に対し「旧統一教会からの支援は去年の衆議院選挙が初めてで、私から『仲間を連れてきてほしい』とお願いし10数人程度の人たちに電話かけをしてもらった」と述べました。そのうえで「名称が統一教会の頃には社会的に問題があったとの認識はあったが、組織を改めてからは問題ない団体だと理解していたので支援をお願いした。しかしさまざまな問題が指摘されており、私の認識不足だったと思う。今後は関係を絶つ」と述べました。
・井上義行 参議院議員
選挙の際、教会側から組織的な支援などを受けていたと報告した井上義行参議院議員は「今後は私の掲げる国づくりを1つ1つ実現して、信頼を取り戻すよう努力していく」とのコメントを出しました。
・山本朋広 衆議院議員
教会や関連団体から、寄付やパーティーによる収入を得ていたなどと報告した、山本朋広 衆議院議員はNHKの取材に対し「私の認識の甘さで猛省しており今後は関係をすべて絶つ。国民から疑念を抱かれる個人や団体とつきあうことがないよう、自分自身を厳しく律していく」と述べました。そのうえで「政治資金収支報告書では2017年の衆議院選挙中に、関連団体から3万円を受け取っていた。霊感商法や献金の強制などで集められた資金が回っているおそれがあり、ことし8月5日付けで全額返金した」と述べました。
・萩生田政務調査会長 事務所がコメント
選挙の際、ボランティア支援を受けたなどと報告した萩生田 政務調査会長の事務所はコメントを発表しました。
この中では「関連団体の世界平和女性連合が開いた国政報告会に出席した際、先方から会場設営の手伝いを受けたため『選挙におけるボランティア支援』の項目に回答したが、教会や関連団体から選挙スタッフなどのボランティア支援の申し出を受けたことや、依頼した事実はない」としています。そのうえで「旧統一教会との間で被害を受け、いまだ苦しんでいる方がいる点などに思いが至らなかったことを率直に反省している。今後、関連団体も含めて関係を断ち、政務調査会長として政治の信頼回復、さらなる被害の防止に全力を尽くす所存だ」としています。
・岸 首相補佐官
選挙でボランティア支援を受けていた、安倍元総理大臣の弟、岸 総理大臣補佐官は「このたびの党の調査結果などについて真摯(しんし)に受け止め国民の皆様に疑念を抱かせることがないよう適正に見直していく」とコメントしています。
・稲田朋美 衆議院議員の事務所は
稲田朋美衆議院議員の事務所はNHKの取材に対し「記録を調べたところ党発表のとおりの結果がわかったが旧統一教会との認識は当時はなかった。今後は関係を持たないし、LGBTの人たちへの理解を進める法案の推進など旧統一教会とは政策的な方向が異なっているので、先方も関係を持たないと思う」としています。
・柳本顕 環境政務官
旧統一教会の関連団体の会合に議員本人が出席して、あいさつを行っていたと報告した、柳本顕環境政務官は、NHKの取材に対し「社会的な問題があるという認識を欠いていたことを真摯に反省する。今後は党本部の方針に従い、関係を断ち切って見直しを行う」と話しています。
首相 “チェック体制を強化し被害救済にも取り組む”
岸田総理大臣は記者団に対し「党の調査結果については重く受け止めている。今後、国民の不信を招くことがないよう、社会的に問題が指摘されている団体との関係を持たないことを党の基本方針とし、それを担保するチェック体制の強化を、徹底していきたい」と述べました。
また「被害救済にもしっかりと取り組む。政府では、法務大臣をはじめ関係大臣の省庁横断的な取り組みを進めているが、自民党としても党の消費者問題調査会のもとに小委員会を立ち上げ、対策の検討を進めていきたい」と述べました。
各調査項目で報告のあった具体的な人数や件数は
今回公表された所属国会議員の教会側との具体的な関係と、その人数・件数は次のとおりです。複数の項目で関係があったと報告した議員もいます。
・教会や関連団体に選挙支援の依頼をしたり、組織的支援や動員などの受け入れがあったりしたと報告したのは2人でした。
・選挙でのボランティア支援を受けたと報告したのは17人で、この中には「ボランティアの人たちの思想、信条などは確認していないのでわからない」という回答が一定数あったということです。
・教会や関連団体からの寄付やパーティー収入があったのは29人で、議員1人の1回当たりの平均はおよそ3万9000円だったとしています。このうち、政治資金規正法上、公開が必要な寄付などを受けていた4人について党は氏名を公表しました。
・教会や関連団体に対する会費などの支出があったのは49人で、このうち、政治資金規正法上、公開が必要な金額を支出していた24人について党は氏名を公表しました。1件当たりの会費は、1万5000円が多く、すべての議員のこの5年間の年平均の支出額はおよそ25万円だったということです。
・教会主催の会合への出席は10人でした。
・旧統一教会関連団体の会合への出席は、
   「秘書の出席」が76人245件。
   「議員本人が出席したものの、あいさつなどはなかった」のは48人98件。
   「議員本人が出席し、あいさつをした」のは96人。
   「議員本人が出席し、講演を行った」のが20人となっています。
・「広報紙へのインタビューや対談記事などの掲載」があったと報告した議員は24人48件。
・「会合への祝電・メッセージなどの送付」があったと報告した議員は97人328件。このうち20件はビデオメッセージだったということです。
立民 安住国対委員長
立憲民主党の安住国会対策委員長は、国会内で記者団に対し「自民党の発表は、党が責任を持った調査ではなく議員が自主的に点検したもので、信ぴょう性に欠ける。安倍元総理大臣の秘書や関係者から話を聞いたふしもなく、世間に向けて『やってます感』を出すだけのことで、真実ではないと断ぜざるをえない」と指摘しました。
また自民党の公表が、安倍元総理大臣の「国葬」をめぐる国会の閉会中審査と同じ日になったことについて、安住氏は「『マスコミが扱う量を小さくしよう』という魂胆が見え見えだ」と述べました。

 

●安倍元首相と統一教会の「原点」を示す文書を発見 9/9
安倍晋三元首相と統一教会の関係はいつから始まったのか――暗殺事件から2カ月を迎えようとする今もその謎は残っている。だが、ジャーナリストの鈴木エイト氏は最近、その謎を解く大きな手掛かりとなりそうな文書を入手した。
その資料とは、統一教会のフロント団体・天宙平和連合(UPF)が「21世紀 世界平和の為の 日本女性指導者セミナー」のために作成した冊子だ。
この冊子の38頁にはこうある。
〈現在の課題となすべきこと
(1)第二次5カ年計画(基本計画)においてジェンダーという文言を使用させない。(略)
・安倍晋三官房長官と山谷えり子内閣府政務官でチェックできるように関係省庁、議員に積極的に働きかける〉
最も初期の関係を示す冊子
「安倍晋三官房長官がチェックできるように……」とは、どういう意味なのか。鈴木エイト氏は「文藝春秋」10月号掲載(9月9日発売)の「統一教会“安倍派工作”内部文書」の中でこう書いている。
〈私は第2次安倍政権以降の安倍と旧統一教会の関係性を“共存共栄関係”と見立て、この9年間にわたり検証してきた。
だが、そもそも安倍と統一教会の関係がいつ始まったのかについてはまだ謎が残されている。祖父岸信介以来の「三代にわたる蜜月」とよく指摘されるが、安倍が第3次小泉改造内閣で官房長官になる頃まで関係は確認されていない。はっきりわかっているのは、2005年10月、官房長官に就任する直前に、UPFの創設記念広島大会に祝電を送っていたという事実だ。
今回入手した冊子は、安倍から祝電を受け取ったUPFが安倍の官房長官就任直後に作成したものとみられ、たしかに最も初期の関係を示すものと言えた。
冊子の同じページには、次のような記載もある。
〔・第三次小泉内閣において猪口邦子議員が男女共同参画担当大臣になる。
 ・ジェンダー概念に執着〕
冒頭で紹介した箇所とあわせるとこう読み解くことができる。
「ジェンダー概念に執着する猪口大臣が作成する5カ年計画において、ジェンダーという文言を使用させないため、官房長官の安倍、内閣府政務官の山谷がチェックできるよう関係省庁と議員に積極的に働きかける」
UPFが統一教会の信者や関係者にそう呼びかけていたということだ。
なぜ統一教会がジェンダーに反対するのか。なぜ安倍氏と山谷氏の名前を挙げるのか〉
安倍、山谷、萩生田の反ジェンダー
鈴木エイト氏は、当時の小泉内閣において進められていた男女共同参画基本計画の第二次5カ年計画に対して、この2人が反動的な動きをしていたことに注目する。
〈2005年4月、「自民党 過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」を結成し、当時幹事長代理だった安倍自身が座長に納まった(山谷は事務局長)。
結成の翌5月には、党本部8階ホールにおいて、「過激な性教育・ジェンダーフリー教育を考えるシンポジウム」を開催、安倍と山谷の二人はそろってパネリストとして登壇し、男女共同参画基本法やジェンダーを批判した。 山谷はこう発言した。
「ジェンダーフリーが間違っているとの国民的なコンセンサスがやっとできた。次には『ジェンダー』がどうなのか、大きなテーマだ。男女共同参画社会基本法そのものについても検討していきたい」
このシンポジウムの責任者として司会を務めていたのが現政調会長の萩生田光一だ〉
〈2005年10月に発足した第3次小泉改造内閣では、安倍が官房長官に就任し次期首相候補として注目を集めたが、そのとき内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画)に就任したのが元大学教授の猪口邦子だった。男女共同参画会議の議員や専門調査会の委員を歴任してきた猪口は、9月の衆院選で当選したばかりだったが、佐藤ゆかりと片山さつきとともに開いた外国特派員協会での会見で、「私たちがジェンダーバッシングを許さない」と発言、安倍や山谷の反動に対抗する意欲をみせていた〉
反ジェンダーの動きをはじめた統一教会
こうした“安倍派”の動きと連動するように反ジェンダーの動きをはじめたのが統一教会であり、その活動の一端を示したものがUPFの「21世紀 世界平和の為の 日本女性指導者セミナー」だったということになる(山谷事務所は「文藝春秋」の取材に「セミナーの存在は存じあげておりません」と回答した)。
安倍や山谷と統一教会の直接の接点はまだ不明ではあるものの、この時点ですでに「お互いの思想に共鳴し合う“共鳴関係”にあった」と鈴木氏は指摘する。
実際にこの共鳴関係は、その後「協力的なものへと発展していたことがうかがえる」(同前)。安倍氏はこのセミナーのあとに開かれたとみられる2006年5月のUPFの「祖国郷土還元日本大会」(福岡市)にも祝電を送り、2010年8月には、当時統一教会松濤本部・拉致問題担当委員長だった梶栗正義(現・UPFジャパン議長)が議員会館に安倍を訪ねているからだ。そしてこの関係は、暗殺事件へとつながって行く・・・。
●玉川徹氏、安倍元首相と旧統一教会の調査 「自民党以外のところで・・・」 9/9
テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」(月〜金曜・午前8時)は9日、衆院議院運営委員会の閉会中審査が8日に行われ岸田文雄首相へ立憲民主党の泉健太代表が「安倍元総理は自民党の中で最も統一教会との関係を取り仕切った人物じゃないか。自民党と旧統一教会との関係を考えた場合安倍元総理が最もキーパーソンではないのか」と質問したことを報じた。
これに岸田首相は「ご本人の当時の様々な情勢における判断に基づくもの。本人が亡くなられたこの時点で実態を十分に把握することは限界がある」と述べた。
岸田氏の「限界がある」との発言にコメンテータで同局の玉川徹氏は「自民党には(調査は)もう無理です、できませんと解釈するんであれば、自民党にできないなら自民党以外のところでやってくださいということです、国民としては」と指摘した。
その上で「権限を持った国会の中に第三者機関」を設置し「自民党にできないならそっちに託したらどうですか」と提言していた。
●「生ぬるい追及」…朝日新聞が認めない「統一教会側との談合」  9/9
いつもの社説も生ぬるい
朝日新聞が統一教会に怯えている。そんな“風評”が飛び交うのには理由がある。
7月8日、安倍晋三元首相暗殺事件が起きて、山上徹也容疑者の動機が宗教団体への恨みであると警察情報が伝えられると、ネットではすぐにその宗教団体が「統一教会」だと指摘された。
他のメディアも次々に報じ始めたのに、朝日新聞の紙面に統一教会が登場するのは7月12日付である。
ようやく社説で取り上げたのが7月22日。「旧統一教会 政治との関わり解明を」が掲載されるが、「選挙活動の組織的支援や政策への介入など、教団と政界の関係は種々取りざたされる。岸信介元首相以来の付き合いといわれる自民をはじめ、各党・各議員は自ら調査し、結果を国民に明らかにする必要がある。入信した本人、親族、いわゆる2世信者など、苦悩を抱える人は少なくない。問題の放置が被害を深刻化させてきた。支援の手をどう差し伸べていくか、社会が直面する重要な課題だ」と生ぬるい。
ツイッターでは「さよなら朝日新聞」が拡散
元朝日新聞記者の小森敦司氏がこうツイートしている。
《朝日新聞の声欄。8月1日から5日までの朝刊をチェックしたけど、統一教会をめぐる投書が一つも掲載されてない。たくさん寄せられていると思うのだけど、どうなっているんだろ》
内田樹氏も、《今の紙面を見て「じゃあ、これから朝日新聞を購読しよう」と思う人がいるでしょうか?政権翼賛記事を読みたいなら産経を読むし、政権批判を読みたいなら日刊ゲンダイを読むし、まともな報道を読みたければNew York Times かGuardianの電子版を読む。朝日より安いし》
ツイッター上に「さよなら朝日新聞」というハッシュタグまでが拡散し、朝日から他紙に乗り替える人が続出しているらしいのである。
しかし、朝日新聞といえば、1980年代に朝日ジャーナルが他紙に先駆けて統一教会批判キャンペーンを激烈に繰り広げたことで知られている。
ちなみに「霊感商法」と名付けたのも朝日ジャーナルで、当時の編集長は筑紫哲也氏。1986年12月5日号で「豊田商事をしのぐ冷血の手口 霊感商法の巨大な被害」を掲載。徹底追及を始めたのである。
このキャンペーンは大きな話題になり、ほかのメディアも追随した。その後、桜田淳子らが合同結婚式に参加するなど、統一教会に注目が集まったが、その後、1995年にオウム事件が起きると、メディアの関心は統一教会から離れてしまった。
そうした歴史を持つ朝日新聞が、30年ぶりに統一教会問題が大きな話題になっているのに、及び腰なのはなぜなのだろう。
35年前の「赤報隊事件」が関係している?
その“謎”を解くカギは、今から35年前の事件にあるのではないかと週刊文春(9月8日号)が報じている。
赤報隊事件である。1987年5月3日、午後8時15分頃、朝日新聞阪神支局が改造した散弾銃を持ち、目出し帽をかぶった男に襲撃された。
支局には3人の記者がいた。犯人は無言のまま、犬養兵衛記者を撃ち、次に小尻知博記者を撃った。
小尻記者は死亡し、犬養記者は重傷を負った。事件後送られてきた犯行声明で「赤報隊」と名乗り、朝日の論調への強い憎悪が書き連ねてあった。
仲間が言論テロの犠牲になった朝日では、赤報隊を探し出す特別取材班が組織された。犯行声明文にある文言を分析し、右翼思想の持ち主、それも新右翼ではないか。
もう一つは、当時、「霊感商法」や「合同結婚式」などで世間を騒がし、朝日ジャーナル誌上で批判キャンペーンをしていた統一教会が、朝日と激しい緊張関係にあった。この2つに絞り込み、警察顔負けの徹底的な取材を続けた。
だが公訴時効の15年も過ぎ、35年がたった今も犯人は特定できていない。
「『明日も喋ろう 弔旗が風に鳴るように』という、暴力にひるまず報道し続けようという言葉をデスクが揮毫きごうして飾りました」(辰濃哲郎元朝日新聞記者=週刊文春)
言論テロには屈服しない。この頃の朝日新聞にはその気概がみなぎっていたようだ。
ジャーナリストの樋田毅氏が語った「当時の朝日」
当時、取材班にいて、後に『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』(岩波書店)を著わした樋田毅氏は、新右翼を取材しながら、統一教会の可能性も探っていた。
私は月刊誌『エルネオス』(市村直幸編集長・休刊)で樋田氏と対談している。この対談は2018年4月号に掲載され、当時は編集部の判断で統一教会と国際勝共連合、世界日報をαとしている。だが、ここでは私の判断で統一教会、国際勝共連合、世界日報と明示することをお断りしておく。
【元木】襲撃事件が起きた数日後に会議があった時、N編集委員が「統一教会と国際勝共連合の取材に全力を注ぐべきだ」と発言したそうです。
当時、霊感商法などの問題を起こしている統一教会に対して、朝日ジャーナルが被害者救済に取り組む弁護士グループなどと連携して、詐欺的商法だと糾弾キャンペーンをやっていました。
事件から三日後の五月六日には朝日の東京本社に「とういつきょうかいのわるぐちをいうやつはみなごろしだ」という脅迫状も届いていて、使用済みの散弾容器二つが同封されていたそうですね。
【樋田】政治団体の国際勝共連合のほうは、中曾根政権が進めていた国家秘密法(スパイ防止法)を後押ししていて、朝日新聞に街宣車を繰り出していました。
二月二十六日付の消印で「社員のガキをひき殺す」という内容が書かれた手書きの脅迫文が、朝日ジャーナルの編集部宛に届いていました。これらが統一教会のものかは、定かではありませんが、朝日ジャーナルの批判記事を巡って、こういう脅迫状が書かれてもおかしくないほどの緊張関係があったことは確かです。
「サタン側に立つ誰かを撃ったとしても許される」
【元木】襲撃事件から十年間は、右翼とこの教会を、同時に取材していたそうですね。朝日ジャーナルの批判も含めて、朝日を憎んでいたということでは、こちらのほうの憎悪が強いし、右翼を装った犯行という可能性も高いような気がしますが。
【樋田】朝日ジャーナル誌上で霊感商法批判の記事を書いた記者は、信者とみられる複数の男たちによって四六時中監視されていたし、娘さんが幼稚園に通う際、これらの男たちが付きまとうので、家族や知人が付き添っていた時期もありました。
統一教会側も、大阪の各店舗では、連休明けに警察が入ってくるのではないかと言われていて、文書を処分し、緊張が高まっていたそうです。
【元木】その前から、南京大虐殺の報道に対して告訴したり、「朝日新聞の赤い疑惑」というビデオを作って、朝日への憎しみを掻き立てていたそうですね。
襲撃事件の前に、対策部長と名乗る男が、「サタン側に立つ誰かを撃ったとしても許される」と、信者の前で言っていたとも書かれています。
統一教会は、当時、全国に二十六の系列銃砲店を持ち、射撃場も併設していた。樋田さんたちは、「勝共連合の中に秘密軍事部隊が存在していた」と話す信者にも会っていますね。
編集委員が世界日報側から金をもらっていた
【樋田】あの『赤い疑惑』ビデオは見ましたが、本当にすごい。あれを見たらだれでも朝日が嫌いになる(笑)。
秘密軍事部隊のほうは、脱会した元信者の紹介で、学生時代の仲間で、やはり脱会していた夫婦から、「三年前に脱会する直前まで秘密軍事部隊にいて、銃の射撃訓練も受けていた」と打ち明けていたというので会いましたが、朝日の記者と名乗って話を聞いていないので、当時は記事にできませんでした。
しかし、記者たちが地を這はうような取材を続けている間に、社の幹部たちは驚くべき裏切り行為をしていたのだ。
【元木】統一教会と朝日新聞のことで、樋田さんが、社を辞めなくては書けなかったことがありますね。一つは、先の世界日報の元編集局長の部下だった人間が、彼の指示で定期的に朝日のN編集委員に会って、預かった五万円ないし十万円のカネを渡していたと話した。
それはN編集委員が被害者の父母の会の情報などを統一教会に流していたり、統一教会への批判記事を抑えてもらうことの報酬だったという……。
【樋田】朝日新聞は教団の学生組織の宗教活動で、子供が突然親に反抗したり、家出して信者になるという現象を取り上げて、教団が日本で布教を始めてから最初の批判記事を書いています。統一教会の取材の中心になってきたN編集委員(当時)が、教会から篭絡されていたというのは、到底信じられなかったですね。
キャップに話をすると「ここだけの話にしてほしい」
本人に確認しなくてはいけないのですが、既に九八年に亡くなっていたので、書かないという選択肢もあったかもしれませんが、統一教会ウオッチャーのフリージャーナリストも知っていたので、書かないわけにはいかないと考えました。
【元木】朝日の身内に、向こう側に内通している人間がいた。それもこの問題では信頼していた編集委員だったというのは、赤報隊事件を追いかけている記者の人たちにはやりきれなかっただろうと思います。
もっとひどいのは、現場が統一教会と戦争をしているのに、上の人間たちが、向こう側と手打ちの会合を密かに持っていたということです。
【樋田】朝日ジャーナル時代から統一教会批判を書き続けてきた記者に、阪神支局事件の翌年の六月初め、教団の広報部長から電話がかかってきて、誰にも知られないように会いたいと言ってきた。
「上層部の様子が変だ。うちのボスとお宅の幹部との間で何か動きがある」という。そこでその記者は、襲撃事件を担当している社会部遊軍キャップに話し、その遊軍キャップが社会部長を追及すると、「ここだけの話にしてほしい」と言って、最近、広報担当の役員と東京本社編集局の局次長の二人が、世界日報の社長や編集局長らと会食したことを認めたのです。
私たちが懸命に取材している時に…
【樋田】朝日のベテラン編集委員が仲介して、朝日と世界日報が批判し合っている問題について、「手打ちをしようじゃないか」と持ち掛け、朝日側は「そんなことを言っても」と言いながら、最初は世界日報側、次は朝日が費用もって会食をしたというのです。
社として手打ちをしたことはないと言っても、相手側は、朝日とそういう話をしたと受け取るだろう、と社会部長は話したというのです。これは、遊軍キャップだった記者が「コピー不可」と言って、私を含めた少数の取材班のメンバーに見せたのですが、私たちが懸命に取材している時に、上層部が敵側と談合した。社の幹部たちが報道機関としては決してやってはいけないことをやってしまったのです。
【元木】よくここまでお書きになりましたね。
【樋田】悩みましたね、それは悩みました。
【元木】そうして世界日報で連載していた朝日新聞批判の連載が終わり、偶然かもしれないが、赤報隊の攻撃がその頃を境に、朝日からリクルートや愛知韓国人会館へと移っていったそうですね。私には無関係だとは思えないのですが。
警察は新右翼の捜査は熱心にやってくれたようだが、統一教会への捜査は及び腰だったという。
「慰安婦誤報問題」以上の読者離れを恐れているのか
樋田氏はこうも話してくれた。
「明治大学の吉田忠雄教授から聞いた話ですが、元警察官僚で総理府総務副長官の経験もあった弘津恭輔氏が『勝共連合が少々むちゃをしても、共産党への対抗勢力だから許される』と発言したと聞いています」
こういう警察側の姿勢が、統一教会を追い詰められなかった大きな要因ではなかったか、そうした疑問は残る。
樋田氏の本は、朝日新聞の記者たちが、地を這うような取材で赤報隊事件を追いかけていたかを後世に残す貴重な記録である。
だが、そんな現場を無視して、社の幹部たちが取材対象と手打ちをしていたというのでは、記者たちは「ふざけるな」と思うのは当然である。
安倍元首相暗殺を機に、統一教会批判をメディアが競って報じているが、統一教会側も死に物狂いで正当性を訴え、メディア批判を露あらわにしている。
もし、統一教会が、1988年に行われたという、世界日報と朝日新聞の幹部たちの手打ちの内容をすべて明かしたら、朝日新聞の統一教会問題に対する姿勢を疑問視する声が巻き起こるに違いない。
朝日新聞批判は、慰安婦誤報問題以上に厳しくなり、今以上の読者離れを引き起こすことは間違いない。朝日新聞の統一教会報道に腰が引けて見えるのは、このことがあるのではないか、そう思えてならないのだ。
朝日ジャーナルで統一教会批判を繰り広げ、世論を喚起した筑紫哲也氏が生きていれば、今の朝日新聞に何といっただろう。
「二度死ぬ」ことになりかねない
かつて、TBSのプロデューサーがオウム真理教側に事前にビデオを見せていたことが大きな問題になった時、『NEWS23』(TBS)の『多事争論』で筑紫氏はこう語った。
「報道機関というのは形のある物を作ったり売ったりする機関ではありません。そういう機関が存立できる最大のベースというのは何かといえば、信頼性です。特に視聴者との関係においての信頼感であります。
その意味で、TBSは今日、死んだに等しいと思います。過ちを犯したということもさることながら、その過ちに対して、どこまで真正面から対応できるか、つまり、その後の処理の仕方というのがほとんど死活にかかわるということを、これまでも申し上げてきました。その点でもTBSは過ちを犯したと私は思います」〔筑紫哲也『ニュースキャスター』(集英社新書)より〕
筑紫氏が朝日新聞を退社したのは1989年。まだ在籍していた彼が、社の幹部たちが統一教会との手打ちをしていたと知ったならば、「朝日新聞は死んだ」といっただろう。
朝日新聞は今回の統一教会問題にどこまで切り込めるのか。それによっては「朝日新聞は二度死ぬ」ことになりかねない。 
●山上容疑者と20年付き合いあった旧統一教会元幹部が告白… 9/9
「安倍元首相銃撃2カ月 広がる事件の波紋」と題したNHK総合「かんさい熱視線」が9日放送され、山上徹也容疑者の母が通った世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元地元幹部男性へのインタビュー内容が明かされた。
この元信者の男性によると、昨年5月に山上容疑者からメールが届いていたという。「内容は、直接的に書いているわけではないのだが、統一教会を恨んでいるのなら一緒に恨みを晴らそうと感じさせる内容だった」とし、そのメールには事件後に気づいたという。「その時に気づいていれば、自分なりに対応できたかもしれない。申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と語った。
また、「山上徹也という人間は、統一教会を社会悪だと心底信じて、自分の人生をかけてそれを成敗するために悩んでいた。統一教会が悪いということをどこかで決心、確信したんだろう」と話した。
番組では、事件は肯定されるものでないとした上で、宗教社会学を専門とする櫻井義秀北海道大教授が「山上容疑者の絶望は非常に深かったんだと思う」と推測。「世界平和家庭連合というが、山上家に平和をもたらしたのか、ということ。私は統一教会を30年以上研究し、多くの被害者家族がバラバラになり、金銭的被害にあい、経済的に立ちゆかなくなる現実を見てきた」と語った。
また、「こうした団体が政治に積極的に関わり、政治家を通して宗教理念を日本社会に浸透させようとしてきた経緯がある。この行為が許容されるのか、政治家は真剣に考えてほしい」と訴え、「マイナスの効果、影響を断つために、教会にどう対応していくか検討していくことが必要」と述べた。
●若新雄純氏 自民党の旧統一教会調査に見る往生際の悪さ 9/9
慶大特任准教授の若新雄純氏が9日、TBS系「Nスタ」(月〜金曜後3・49)に生出演し、自民党が所属国会議員へ行った世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点に関するアンケート結果についてコメントした。
自民党の茂木敏充幹事長は8日、会見を開き、教団と接点があった国会議員は、379人のうち約半数の179人だったと公表した。若新氏は今回のケースを「一つの政党という村社会の組織が、どうなっていくかということに関して、おもしろいケーススタディーなんじゃないか」と見解を示した。
安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、教団と自民党との関係が脚光を浴び、接点を持つ政治家がメディア報道が先行する形で相次いで発覚した。若新氏は「村人の多くが“しちゃいけないことをしちゃったらしい”と。まだそれが明らかになる前に、自分だけやってましたと名乗り出ると、村の中で損をすると」と、党内を村社会になぞらえて解説した。
その上で「早い段階で村長みたいな人(岸田首相)が、みんな悪いことをやったことを認めて、ある時点でしっかり罰して変えていこうと言えればよかった」と指摘。「みんなが謝りだしたら結局、自分も謝ろうとなって、それに自民党という組織が今回、どれくらい耐えられるのか?国民の信頼を失ってしまわないのか?そこにすごい関心がありますね」と述べた。
党による調査、発表も「そもそも遅かったと思うし、みんな“ああ、バレるな。言うしかないか”というタイミングになってしまったと思う」とコメント。「現状でも、世の中が忘れてくれるんだったら最小限に留めておきたいという力学をちょっと感じます」と、往生際の悪さも感じずにはいられない様子だった。
岸田首相は当初、教団との関係性調査については各議員に一任する方針を示していた。若新氏は「各議員に任せると言っちゃったせいで、認識がありませんでしたという新しい逃げ文句が発明されちゃった」と指摘した。さらに「事実として、それ(接点)があったらNGなんだよということを早い段階でリーダーが決めて、“知らなかったけど、やっちゃってたんだ。すみません”と言える状態を早く作るべきだった。1回、皆さんに任せると言ってしまったためにズルズルいってしまった」と、岸田首相の判断に疑問符。「長期的に村のダメージは全体的にでかくなるだろうと思っています」と、政権への大打撃は免れないとの認識を示した。

 

●安倍元首相の死で破られた「統一教会」「五輪汚職」というタブー 9/10
7月8日、参議院選挙の遊説中に安倍晋三元首相が銃撃されて死去するという許しがたい犯罪が行われてから2カ月が経った。この2カ月間に、この事件がきっかけとなった問題で日本の政治が大きく揺らいでいる。
言うまでもなく、統一教会問題である。それは、安倍元首相の国葬にも波及し、反対が賛成よりも多くなっている。
海外に目を転じれば、ウクライナ戦争は停戦の見通しは全く立たず、エネルギーや食料品などの価格が高騰している。また、アメリカのFRBはインフレ対策のため、金融引き締めで公定歩合を高めに設定し続けているために、1ドル=144円という円安になっている。これもまた、輸入品の価格上昇を通じて、日本経済に打撃を与えている。
日本は内向きになっている暇はないのに、マスコミでも統一教会や国葬問題がトップの扱いになっている。
国葬、世論を見誤る
岸田首相は、7月14日の記者会見で、安倍元首相の葬儀を国葬とすると発表した。事件後、わずか6日目の決定である。翌日の新聞報道を見ると、たとえば日経新聞には、自民党の反応として、「国葬でなければ国内外の信用を失う」とか、「国葬にしなければ支持率に響く」とかいった文言が並んでいる。
事件の衝撃が大きく、突然命を絶たれた安倍元首相への哀悼心が、そういう世論の雰囲気を醸成したと岸田首相は判断したのであろう。しかし、この段階から、実は判断ミスがあったと言わざるをえない。政府寄りの産経新聞の世論調査(7月23、24日実施)ですら、賛成(国葬決定は「よかった」)は50.1%で、反対(「よくなかった」)が46.9%と拮抗していたのである。
産経新聞も、この事実を隠したかったのか、見出しには<自民支持層7割「国葬」評価、「よかった」若者ほど多く>と岸田首相の決定に胡麻をするような活字が踊っている。
細かく見ると、自民党支持層は賛成が73.3%、反対が25.1%である。事件から2週間後の時点で、自民党支持層の4分の1もが反対という結果のほうにこそ注目すべきなのである。
一部の声にしか耳傾けなかったツケ
野党が反対するのは当然であるが、与党の公明党支持層でも、賛成は43.9%、反対は56.2%であった。国葬決定に際して、岸田首相は連立のパートナーに相談したのだろうか。
世代別に見ると、18〜29歳は、賛成が67.3%、反対が31.4%で、30代、40代も賛成が反対を上回るが、50代以上は反対が賛成よりも多い。70歳以上は、賛成が39.1%、反対が57.0%となっている。
若い世代に賛成が多いのは、安倍政権以前の諸政権についてあまり記憶がなく、吉田元首相国葬の記憶など全くないことも一因であろう。国葬の問題点について、きちんと考えたこともなかったというのが実態であろう。したがって「賛成」といっても、気分的な反応であって、容易に賛否は変わりうるのである。
岸田首相は、自民党保守派の意見のみに耳をかたむけ、広範な世論の動向に注目することを初期段階から怠ってきたのであり、そのツケが今重くのしかかっているのである。
統一教会の闇
安倍元首相を狙撃した犯人は、自分の母親が統一教会の信者で、全財産を教団に貢いでしまい、家庭が崩壊したために、教団に恨みを持っていたという。最初は教団のトップを狙うつもりであったが、来日しないので、教団と関係の深い政治家として安倍元首相に標的を変えたのである。
警察によってこの犯行動機が伝えられると、統一教会に一気に注目が集まり、霊感商法、合同結婚式などの諸問題がマスコミで再浮上したのである。そして、教団やその関連団体が、主として自民党の議員の選挙を手伝ったり、献金したり、政治家側からイベントでスピーチをしてもらったり、祝電をもらったり、会費を受け取ったりしていることも明るみに出た。そして、それが、世論による大きな批判の的となったのである。
そこで、岸田首相は、教団と関連の深い議員を排除するために、急遽8月10日に内閣を改造したのである。しかし、入閣したり、残留したりした大臣、副大臣、政務官、そして自民党役員に教団との関連のある者が多数出てきた。そのため、普通は改造後に内閣支持率が上がるのに、今回は軒並み下がってしまい、内閣発足以来最低を記録するような状態になってしまった。
統一教会関連団体に祝電を打ったり、関連メディアのインタビューに応じたりというような場合は、団体が教団関係だということを知らなかった場合もあるであろう。まさにケースバイケースである。
しかし、全国で約8万3000票という教団票を、自民党が特定の候補に振り向けるようなことは、教団と党が組織的に密接な関係にあるということである。とくに、その票の動きを指示していたのが安倍元首相であったことが明らかになっている。
自民党は、所属の国会議員全員にアンケートを行い、9月8日の夕方に茂木幹事長が調査結果を発表した。それによると、教団と接点のあった国会議員は総数379人中、約半数の179人で、そのうち121人の氏名を公表した。
組織的な支援を受けていたのが斎藤洋明衆議院議員と井上義行参議院議員の2人、選挙でボランティアの支援を受けていたのが岸信夫総理補佐官、萩生田光一政調会長ら17人、教会主催の会合に出席した議員は柴山昌彦元文科大臣、磯崎仁彦官房副長官ら10人、関連団体の会合に出席して挨拶したのが山際大志郎経済再生大臣、村井英樹総理補佐官、生稲晃子参議院議員ら96人となっている。
産経や読売の調査でも「国葬に反対」が多数
自民党議員は、今後統一教会とは一切関係を持たないという方針を決定している。
問題は、その方針と国葬とが明らかに論理矛盾であるということである。それが、国葬に対する反対論を強めたようである。
8月中旬以降の世論調査を見てみると、8月20、21日に行われた毎日新聞の調査では、賛成が30%、反対は53%と驚くほど賛否の差が拡大した。同日に行われた産経新聞の調査では、賛成が40.8%、反対が51.1%で、賛否が逆転し、その差が10%を超えている。産経新聞ですらそうなのかというのが、私の率直な感想である。
8月27、28日に実施された朝日新聞の調査では、賛成が41%、反対が50%である。さらに、9月2〜4日に行われた読売新聞の調査によると、賛成が38%、反対が56%であり、賛否の差は18%にまで広がっている。
弔問外交についても、現職の首相の死ではないし、海外からトップクラスの政治家はあまり訪日しないのは当然である。弔問外交を期待するのはそもそも無理であり、それを国葬の理由にすることはできまい。
安倍元首相の死は、これまでタブー視されたり、無視されたりしてきた問題を一気に噴出させた感がある。統一教会問題がそうである。霊感商法など様々な問題が指摘されてきたにもかかわらず、30年間放置されてきたのは、やはり自民党との緊密な関係が背景にあったようである。
今回、このように全てが白日の下にさらされたことは、教団の被害者の救済にも繋がっていくであろう。
東京五輪汚職の闇
東京五輪の汚職問題もまた、これまで論じられることのなかった問題である。
東京地検特捜部の捜査によって、高橋治之元理事が受託収賄の容疑で逮捕された。贈賄側は、紳士服大手のAOKI、出版のKADOKAWA、広告代理店の大広、駐車サービス「パーク24」である。今後も、検察の捜査の対象となる企業が増えてくると思われるし、容疑は現職国会議員にまで広がる可能性もある。
検察の捜査によって、五輪のようなスポーツイベントを食い物にする利権の構造が明るみに出ている。この分野の政官業の癒着構造にメスが入れば画期的なことで、五輪の商業化に対する歯止めにもなるだろう。
安倍元首相が健在であれば、検察もここまで踏み込んだ捜査をしなかった可能性もある。大会組織委員会会長だった森喜朗元首相は、安倍派の元トップであるが、検察は任意で数回事情聴取をしている。特捜部も一定の配慮はしたと思われるが、今や安倍派に対する気配りは不要になったのである。
組織委員会は公益法人であり、情報公開の義務がない。したがって、組織委員会が解散した今、支出の細部を示すような資料は保存されていない。汚職の実態を解明するには、検察の捜査を待つほかないのである。
組織委員会の理事が「みなし公務員」とされるのならば、情報公開制度があるべきである。少なくとも外部監査制度が必要である。これまでは、そのような議論すらタブーであった、スポーツなら何でも許されるという甘えはもう終わりにしなくてはならない。
坂本龍馬ではないが、国民は「日本を今一度、洗濯いたし申し候」という思いである。
●「これで創価学会にケンカを売れるか?」自民党が宗教団体に逆らえない理由 9/10
「政治と宗教は原理的に分離されるべき」
宮崎 安倍晋三元首相暗殺事件を機に、政治と旧統一教会(世界平和統一家庭連合。以下、統一教会)の関係が改めて注目されています。そこで今日は近代日本における政治と宗教の関係について議論したいと思います。
議論を始める前に前提として私自身の基本的なスタンスを明らかにしておきます。それは「政治と宗教は原理的に分離されるべきだ」というもの。宗教がカヴァーする領域というのは、政治の扱う領域よりも深く、広いのです。宗教はそれを信じる者のアイデンティティの根幹を規定し、世界観総体を形成する。従って宗教には妥協とか譲歩というのはあり得ません。原理的には。
ただ共存はできる(笑)。近代社会においては政治権力が共存を強制しているからです。宗教勢力が宗派間闘争をはじめたり異端審問を行ったりすることは、世俗(政治権力)優位のこの社会では、許されないことです。
政教分離原則というのは、この政治権力の作用がすべての宗教に対し平等であるように、特定の宗教宗派の立場に偏らないようにするために設けられたものなのです。
まあこれが原理的なスタンスですが、リアルポリティックスはずっと複雑怪奇であり、「政」と「教」の関係も一筋縄ではいきません。統一教会や創価学会に限らず、多くの宗教が政治と関わってきた。問題はその関わり方だと思います。今日はその論点を追及したいと思います。
さて、まずは安倍元首相暗殺事件について一言。
「宗教の皮をかぶった集金マシーン」
小川 山上徹也容疑者の「特定の宗教団体に恨みを持っていた」との供述の第一報に触れ、おそらく統一教会だろうと予想がつきました。なぜなら日本の数ある宗教のなかでも、統一教会の高額献金や霊感商法の悪質さは群を抜いているからです。もはや宗教ではなく、宗教の皮をかぶった集金マシーンと言ったほうがよい。今回のような事件が起きうる土壌は以前からありました。
一方、安倍元首相は祖父の岸信介から3代にわたって、統一教会と親しい間柄にありました。被害者団体や弁護士が「付き合いを考え直してくれ」と申し入れても耳を貸さなかった。もちろん、だからといって殺人が正当化されるわけではなく、事件そのものは本当に痛ましい悲劇です。ただ正直、脇が甘かったのは否めません。
島田 容疑者の母親が「多額の献金をしていた」としか報じられていなかった段階では、私は他の新宗教も頭に浮かびました。奈良という土地からまず連想したのは、地元の天理教です。作家の芹沢光治良は自伝的小説『人間の運命』の中で、親が熱心な天理教の信者であり、全財産をなげうって布教にのめり込んだために塗炭の苦しみを味わったことを描いています。また、容疑者が元自衛官という情報から、かつて自衛隊内に信者組織を持っていた顕正会の可能性も考えました。顕正会は日蓮正宗系の新宗教ですが、日蓮正宗の国教化を目指すなど、過激な活動で知られています。
仲正 私は大学に入学した1981年から約11年半、統一教会の信者でした。元信者としての感覚からすると、なぜ安倍元首相が標的になったのか、いまひとつ腑に落ちないんですよ。怨念の対象は政治家ではなく統一教会の人間に向かうのが筋だろう、と。テレビのインタビューで「安倍元首相は身内のようなものだった」と言う2世信者の方もいますが、これはメディアに誘導された発言のように感じられます。統一教会の教義に照らせば、安倍元首相も「堕落した人間」のひとりに過ぎず、決して教会の身内とは言えません。
このように考えると、まだ解明されていない謎は多くあると思っています。
「創価学会・公明党は嵐が通り過ぎるのを待っている」
宮崎 自民党を中心に、国会議員と統一教会の関係が次々と明らかになっています。岸信夫・前防衛大臣や二之湯智・前国家公安委員長が内閣改造で外された後も、例えば山際大志郎・経済再生担当大臣や萩生田光一・政調会長の、教団との「濃厚な」つきあいが指摘されている。統一教会問題の処理の不首尾は、政権を揺るがす大問題に発展しています。
一方、創価学会・公明党はこの事態を前に、首をすくめて嵐が通り過ぎるのを待っているような状態です。
なぜ政治と宗教は癒着するのか? 統一教会は何故政治に接近したのですか?
仲正 政治家たちが最も期待しているのは、やはり選挙の際の支援だと思います。統一教会は創価学会などと比べると規模は小さいですが、信者たちはみな従順でよく働きます。派遣される信者たちは、選挙応援ぐらい軽くこなしますよ。普段から従事している布教活動や徹夜祈祷、「万物復帰」と呼ばれる物品販売の方が、よっぽどきつい(笑)。私も信者時代、万物復帰がうまくいかずに「売れるまで帰ってくるな!」とよく叱られていました。信者たちにとっては選挙支援なんて、むしろ休みをもらったぐらいの感覚なんです。
「実際の信者数は公称数とは相当な開きが」
宮崎 現在の日本国内の統一教会の信者数は?
島田 公称では56万人とされていますが……仲正さんの実感としてはどうですか?
仲正 実態よりはかなり多い印象です。私が信者だった1980年代でさえ、アクティブなメンバーは2万人もいないだろうと言われていました。その後、霊感商法が問題化した後、信者数は相当減ったはずです。
統一教会の中では、信仰歴が長く、ホームと呼ばれる拠点に専従する信者のことを献身者と呼んでいました。献身者は、イベントや選挙に呼ばれたら必ず参加します。また、それに準ずる信者を合わせて、2万人ほどだと。それ以外にも、自分の仕事を持ちながら礼拝などに定期的に通う一般信者がいます。そうした信者を合わせても、せいぜい6万〜10万人の間が妥当なところでしょう。
宮崎 公称とは相当な開きがありますね。ただ、政治家を取材してみると、数としてはそれほどではなくても、宗教団体からの票の支援は非常に固く確実であるため、「とても安心感がある」と口を揃えていいますね。
小川 宗教票に限らず、組織票というものは、全体の投票率がどれだけ下がっても必ず投票してくれる有難い存在ですからね。
自民党ベテラン議員が洩らしたホンネ
島田 集票マシーンとして最も強力な力を誇るのは、やはり創価学会でしょう。公称827万世帯が会員ということになっており、新宗教としては日本最大の勢力を誇ります。ただ、のちほど詳しく述べますが、これはかなり誇張された数字です。
小川 教勢としては、池田大作名誉会長が前面に出ていた頃に比べると落ちていることは明らかですね。ただ、自民党にとって創価学会の力は依然として大きい。
先日、自民党のベテラン議員が興味深いことを教えてくれました。その議員の選挙区では有権者の5%程度の創価学会員がいるそうです。5%というと少なく見えるかもしれませんが、投票率が五割程度の中、彼らは必ず投票に行くので、実際の選挙では学会票の比重は2倍の10%になる。さらに、野党が統一候補を立てて1対1の与野党対決型になる最近の小選挙区では、ほとんどの学会員は自民党に投票します。その結果、蓋を開けると自民党候補者の得票数の2割前後を学会票が占めることになる。「これで創価学会にケンカを売れると思うか?」と、そのベテラン議員は言っていました。
宮崎 教勢は落ちていても、小選挙区制と低投票率によって、政治的影響力がかえって高まった可能性がある。そういう構造は公明党もかなりはっきりと意識していて、今回の参院選では、例えば京都の選挙区では公明支持層の一部の票が自民の候補者ではなく、日本維新の会の候補者に流れました。こういう選挙区が他にも幾つかあった。この背景には個々の選挙区の事情もあって、一概にはなかなかいいにくいのですが、自民圧勝が予測されるなかで、与党内で公明党が存在感をアピールしたともいえるわけです。
小川 昔は労働組合や農協、郵便局なども手堅く票が見込めましたが、そうした団体はどんどん瓦解していった。創価学会はそれらに比べて縮小のスピードが緩やかでした。その結果、他団体よりも相対的に政治的影響力を強めた面はあると思います。
北朝鮮には統一教会、中国には創価学会
宮崎 統一教会はかつての「勝共」「反北(朝鮮)」という政治姿勢ばかりが強調されていて、冷戦構造崩壊後、この教団が大きく変質したという点は軽視されがちです。かつての看板だった「反共」を降ろしまではせずとも控え目にし、代わりに「統一」や「平和」の看板を強く押し出すようになった。
はっきりいえば、この30年間、統一教会は北朝鮮の政権と極めて友好的な関係を保ってきた。単にトップが懇意だというだけでなく、「平和(ピヨンフア)自動車」など合弁事業を行ったり、国際社会の場で北朝鮮を支援してきた。
教団の持つ、こうした北朝鮮とのあいだのパイプは、拉致問題の解決を掲げる日本にとって魅力だったと思います。とくに2014年のストックホルム合意を北朝鮮が事実上破棄してしまった後は、拉致問題はまったくスタックしてしまった。何とかこのルートに突破口を見出そうとしたのではないか。そういう観点から取材してみると、幾つかのこれに関連する動きがみえてきます。
もちろん一般の議員と教団との関わりは、あくまで組織票や選挙ボランティアが目当てだったのでしょうが、政権のトップに関わる人々と教団の関係にはそれとは違った要素、思惑もあったのではないか、と思われます。 
●10月臨時国会へ 政府、経済で反転狙うも旧統一教会問題焦点 9/10
政府は臨時国会を10月上旬に召集し、新たにまとめる総合経済対策を反映した令和4年度第2次補正予算案の早期成立を目指す方針だ。内閣支持率が下落傾向にある中、反転攻勢を図る。ただ、野党は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる問題で政権や与党への追及を強める構えで、岸田文雄首相にとっては試練の臨時国会となりそうだ。
政府は10月に取りまとめる総合経済対策に、物価高対策のほか、脱炭素に向けた企業支援など首相が掲げる「新しい資本主義」を進める施策を盛り込む考えだ。裏付けとなる補正予算を編成し、年内成立を確実にするため、10月上旬に臨時国会を召集する判断に傾いた。
政府・与党内には、旧統一教会の問題や安倍晋三元首相の国葬(国葬儀)に対する批判を受け、内閣支持率が低下傾向にある現状を打開したい思いがある。
自民党は今月8日、所属議員と旧統一教会の接点についての点検結果を発表した。27日には安倍氏の国葬が行われる予定で、政府関係者は「野党は旧統一教会と国葬を絡めて攻勢をかけている。国葬が終われば、世論の批判も下火になるのではないか」と語る。
しかし、立憲民主党の泉健太代表は自民の調査について「国民の疑念を解消する結果にはなっていない」と批判し、国会に調査委員会を設置するよう主張している。与党が拒否した場合に「及び腰」だと印象付ける狙いもみえる。国会審議では、旧統一教会との接点が明らかになった山際大志郎経済再生担当相ら閣僚への追及も予想される。
このほか、衆院選の「1票の格差」是正するため小選挙区定数を「10増10減」する公職選挙法の改正なども争点になるとみられる。
●旧統一教会との接点、自民党の自主点検リストに「あの面々」の名前なし 9/10
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と国会議員の関係を巡り、自民党が8日に公表した点検結果は消化不良感が強かった。自己申告に頼る手法は限界がある上、公表された文書に「あの面々」の名はなかった。受け止め方に困る点検で幕引きさせていいはずがない。となると、真相に迫る術すべをどう考えるべきか。一部で取り沙汰された「国会に調査委員会」は効果的なのか。改めて探ってみた。(特別報道部・宮畑譲、中沢佳子)
一部は氏名非公表、点検対象から除外も
「こんな『点検』を誰が信用するんだ」「こんなんで鎮火するつもりだったんですかね」「どこまで国民をなめたら気がすむんだ」
公表された自民党の点検結果に対し、SNS上では疑問や怒りの声が相次いだ。その中でも、山谷えり子参院議員の名前がなかったことに対する風当たりは強かった。
選択的夫婦別姓に反対するなど、山谷氏と教団の保守的な家庭観などは共通しており、自民党の中でも教団との関係が特に近い議員の一人とみる向きがある。ジャーナリストの有田芳生氏は、教団が山谷氏への投票を呼びかけたとされる内部文書を公表している。
今回の点検結果の文書に山谷氏の名前がなかったのはなぜなのか。
同氏の事務所に問い合わせると、教団と関係が深い日刊紙「世界日報」や月刊誌「Viewpoint」にインタビュー記事などが掲載されたことを申告したと認めた上で、「名前の公表については、党本部の方針によるので、党本部に確認願います」と回答。一方の自民党は「昨日、会見した通り」との答えだった。
自民党の点検で接点が確認された国会議員は計179人に上った。このうち、氏名が公表されたのは、選挙で支援を受けたり、会合に出席したりした121人に限られた。
しかも、政治と教団の関係が問われる発端となったと言える故・安倍晋三元首相は対象外とされ、同様に教団との関係が疑われる細田博之衆院議長についても点検から除かれた。
これだけでも首をかしげたくなるが、密な関係が疑われる他の面々の名がなかったことに疑問が湧く。
教団系の政治団体「国際勝共連合」は1986年と90年の機関紙「思想新聞」で、反共の運動に同調する「勝共推進議員」の名簿を掲載した。いまの党の重鎮でいえば、副総裁の麻生太郎氏、財務相や防衛庁長官を歴任した額賀福志郎氏、現閣僚では財務相の鈴木俊一氏の名があった。ところが今回の点検結果の発表に際し、氏名が公表されることはなかった。
3氏の事務所に事実関係を尋ねたが、麻生事務所は「思想新聞の件は確認しようがない。名前の公表については党本部に聞いてほしい」とし、額賀、鈴木両氏からは締め切りまでに回答はなかった。
いずれにせよ、議員の自己申告による「点検結果」では、不十分と突っ込まれるのは明らかだ。なのになぜ、自民党はそんな対応を取るに至ったのか。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「外部からちゃんとやられたら、まずいことになる、その前に早く幕引きをしたいという認識があるのだろう」とみる。
今回の点検は国会議員を対象にしたが、自民の地方議員が教団と接点があったことも明らかになっている。そうしたことを踏まえ、角谷氏は「やることはまだまだいっぱいある。税金で賄われている党がこの程度の点検でいいわけがない。一件落着というレベルではない」と憤る。
野党は国会に調査委設置を提案 どこまで全容解明できる?
消化不良を感じる点検結果。「これで幕引きなら、国民をなめている。国会に特別委員会を設けることを提案する」。れいわ新選組の山本太郎代表は「こちら特報部」の取材にそう訴える。「教団問題は国の根幹に関わる。教団がいかに政治をゆがめたか追及し、前職や元職、議員秘書も含めた参考人招致などで膿うみを出さなくてはならない」
8日に会見した立憲民主党の泉健太代表も似た考えを持っており、国会に調査委を設置するよう求めた。
国会の下に設けられた調査委といえば、東京電力福島第一原発事故を受け、2011年12月にできた国会事故調査委員会がある。法律に基づいて設置され、文書の提出請求権を持つなど、強い権限が与えられた。委員は有識者の10人。関係者延べ1167人に聞き取り調査し、事故発生時の首相だった菅直人氏ら主要人物を公開で聴取した。
ただ、事故の全容を解明できたわけでもない。12年7月にまとめた報告書もそう認める。委員の一人で元原子炉設計技術者の田中三彦氏は「活動を始めてから報告書を出すまで半年。調査期間は実質3カ月しかなかった。委員自ら調べ、徹夜で報告書を仕上げた」と振り返る。
7つの提言が実現されていないのも不満だという。「国会に原子力問題を扱う常設の委員会や、未解明部分の究明などに当たる第三者機関の設置を求めた。『原子力問題調査特別委員会』という組織はできたが、提言のイメージとは似て非なるもの。さらなる検証は不十分のままだ」
同じく委員だった崎山比早子氏は、教団を巡る調査委は人選が課題とみる。「どんな人を委員にするかとともに、委員を選ぶのが誰かも問題。自民党が人選したら、機能しない」
政治と教団の関係が取り沙汰される中、「何が問題か分からない」と言いのける政治家もいる。強く非難されたが、教団が抱える問題を政府が明確にしていないゆえの発言にも思える。裏を返せば、教団との関係を議論するには、教団の問題点をクリアにする必要があるとも言える。
大阪公立大都市文化研究センターの中西尋子研究員(宗教社会学)は金銭トラブルもさることながら、政治への影響に目を向ける。
「教義を政策に反映させたり、教団に対する追及を止めたりなど、議員が教団に便宜を図った疑いがある。教団の名称変更が認められたのも、その一つだ」
問題ある団体と濃いつながりを持つ議員ほど、背負う罪は重くなる。濃淡を判断する上で重要なのは何なのか。中西氏は、議員の命運を左右する選挙を挙げる。「教団は選挙運動を手伝い、組織票を入れてくれる。選挙や票集めでどんな支援を受けたかは、関係の濃淡をみるポイント」
宗教学者の島薗進氏は、求められれば祝電を打ち、会合に出る議員も疑問視する。「相手が国民生活にどんな影響を与える団体か調べるのは当たり前だ。票になればどんな団体も利用するなんて考えは、政治家のモラルとしておかしい」
島薗氏は重点的に検証すべき時期について「2009年以後」と指摘する。教団関連とされる会社の社長らを警視庁が逮捕した「新世事件」のころだ。
「刑事事件になったことで教団は政治家工作を強めた。自民は下野し、宗教団体の集票力を利用するようになった」と見立て、「このころからたどれば、党内の点検で接点なしとされた政治家の名前も浮かぶかもしれない。国民全体が問う問題について、時の政権に左右されずに判断する公的性格を備えた持続的組織が必要だ」と述べている。

「萩生田氏 際立つ関係」。本紙9日付朝刊にあった見出しの一つだ。ただ、点検結果は受け止め方が難しい。自己申告頼みゆえ、黙り込む議員は同氏以上の関係があっても表出しない。正直者がバカをみる社会。その縮図が自民党内にあるわけではないですよね、お歴々の皆さん。

 

●安倍元首相と旧統一教会との関係 自民「本筋にはいきたくない・・・」  9/11
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を20年以上、取材し続けているジャーナリスト鈴木エイト氏が11日、TBS「サンデージャポン」(日曜前9・54)に生出演。銃撃されて死亡した安倍晋三元首相と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係をめぐる自民党の姿勢について言及した。
党は8日、所属する国会議員379人に教団や関連団体との関係性についてのアンケート結果を公表。47%に当たる179人が過去に何らかの関係を持っていたことが判明した。しかし、今回の調査は国会議員が対象。安倍元首相は死去しているため、岸田文雄首相は「十分に把握するということについては、限界があるのではないか」として除外した。これについて立憲民主党の泉健太代表は「安倍元総理がどういうスケジュールで動いていたか、事務所、秘書は分かっているはず、なぜ今回自民党の調査では安倍事務所を外しておられるのか」と追及している。
これについて鈴木氏は「やはり安倍派に切り込みたくない、っていうところが見えるんですよね」と断言。「2016年6月に首相官邸に行って17年5月に自民党本部に統一教会の幹部が招待されているんですよ。そういうこともあるのに、そういうところまで今回のアンケート項目ないですよね。書けるところが。そういうところからも安倍派に切り込みたくない、本筋にはいきたくないっていうのが見えますよね」と分析した。
●自民党と旧統一教会の「関係は問題」89% 長野県民電話調査 9/11
信濃毎日新聞社が10日まとめた緊急の県民電話調査で、自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係について「問題があった」(「極めて」と「ある程度」の合計)とした人が89%を占めた。自民や党所属議員が旧統一教会との関わりを十分に説明しているか―との問いには、84%が「不足している」と答えた。
旧統一教会と政治の関わりは、安倍晋三元首相の銃撃事件を発端に注目を集めた。自民と旧統一教会との関係について主な政党支持層別に見ると、自民支持層でも「問題があった」が76%に上り、「問題ではない」(「それほど」を含む)の17%を大きく上回った。
公明支持層は84%が「問題があった」と回答。立憲民主支持層の98%、日本維新の会支持層の94%、共産支持層の95%、「支持する政党はない」とした無党派層の92%が「問題があった」とした。
旧統一教会との関わりについて、自民や党所属議員が「十分に説明している」は5%にとどまった。主な政党支持層別に見ても、自民の68%、公明の74%が「不足している」と回答。立民の96%、維新の84%、共産の91%、無党派層の88%が「不足している」と答えた。
岸田文雄首相は8日の衆院議院運営委員会の閉会中審査で、安倍元首相と旧統一教会との関係を調査することに否定的な見解を示した。この関わりについて検証するべきかどうか尋ねたところ、「するべきだ」とする回答が72%に上り、「する必要はない」の15%を大きく上回った。「どちらとも言えない・分からない」が13%だった。
与党支持層でも自民の46%、公明の37%が検証するべきだと回答。立民は90%、無党派層は75%が検証するべきだと答えた。
●太田光の発言「統一教会と安倍氏の関係はしっかり調 べた方がよい」 9/11
ジャーナリストの江川紹子さん(64)が11日、自身のツイッターを更新。この日放送されたTBS系情報バラエティー番組「サンデージャポン」で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と7月に銃撃され急逝した安倍晋三元首相の関係についてMCの爆笑問題・太田光が発言した内容を受け「太田さんも、統一教会と安倍氏の関係はしっかり調べた方がよい、というご意見のようですね」などと私見をつづった。
番組は、岸田文雄首相が8日に国会の閉会中審査で、安倍元首相が亡くなった時点で、実態を十分に把握することに限界があると説明したことを紹介。映像プロデューサーでタレントのデーブ・スペクターは「さらにまずい話がいっぱい出ると思って、非難も増えるからという計算だったと思うが、逆効果になった」とコメント。旧統一教会を長年取材するジャーナリストの鈴木エイトさんは「安倍派に切り込みたくない、本筋にはいきたくないという形跡が見える」と分析した。
太田は「安倍さんがどこまで意識していたのかということとか、そこもちゃんと詳しく考えないと安倍さんが逆にぬれぎぬというか、逆効果になって国民の反感をかってしまう」と切り出した。
さらに「森友問題でも自民党の調査の仕方の中に、要は公文書改ざんが安倍さんの指示だったか、指示じゃなかったかということを、(妻の)昭恵さんの名前があそこにあったのを、それを消したということを言いたくないがために。消したのは誰だったのかはまだ分からないわけだけど、その辺をうやむやにするから、余計安倍さんが全部指示したんじゃないかと。統一教会との考え方についてもエイトさんなんかは、(関わりに)濃淡があると言っていたけど、岸田さんは、何が何でも関係がある人は排除するんだって。複雑な問題なのに簡単にしちゃって、事なかれ主義になっているような気がする」と持論を展開した。
江川さんは太田の意見について「公文書改ざんについても徹底的に調べた方がよい、というご意見のよう。いずれも賛同します。そして、多くの安倍支持者の方々が太田さんの後に続いて声を上げることを期待します。政府は真相究明の努力を!」とつづった。
●デーブ、安倍元首相と旧統一教会の関係調査を要望 消極姿勢も批判 9/11
タレントでテレビプロデューサーのデーブ・スペクターが、11日放送の『サンデー・ジャポン』(TBS系)にレギュラー出演。安倍晋三元首相と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の関係調査に消極的な岸田文雄首相へ、「釈然としない」などと苦言を呈した。
自己申告にすぎないアンケート調査
自民党は所属国会議員へ教団との関係をアンケートで調査し、衆参両院の所属議員379人中、じつに半数を超える179人に接点があったことを8日に公表。
しかし、これはあくまで自己申告の回答であるため、イェール大学助教授の成田悠輔氏は「穴だらけの自己申告の点検」などと不十分さを指摘する。
教団の組織票が当選を左右
成田氏が選挙における信者の動員にも触れると、デーブは「誤解してはいけないのは、ボランティア足りないから送ってもらったとかそんな甘いもんじゃなくて、確実に信者に『(票を)入れろ』って言えるから、その計算で、僅差の場合は確実に(当選する)」と指摘する。
続けて、「どうですか? 選挙の結果が国政で変わったってことはあるんですか?」と、統一教会の問題を長年取材してきたジャーナリスト・鈴木エイト氏に質問。
鈴木氏はこれに「今回、アンケートに正直に答えた斎藤(洋明・衆議院議員)さんなんかは、前々回の選挙で50票差で負けてるんですよ。その後の選挙で(統一教会の)支援を受けて当選している」と、教団の動員が選挙結果を左右していると話した。
消極姿勢は「計算」と指摘
話題はさらに、岸田首相が国会で安倍元首相と旧統一教会との関係について、「亡くなられた時点において、その実態を十分に把握することは限界がある」と調査に消極的な姿勢を示した件へ。
及び腰な首相に対し、デーブは「さらにまずい話がいっぱい出ると思うんで、批判も増えるから、計算なんだと思うんです」と、蜜月を暴かれたくない意図があると指摘する。
「身内だけでやってる」
だがこの姿勢に対しては、「逆効果だと思うんですね。国葬のことで、是非論でただでさえかなりアンチが増えてるわけですから」「ここまで来たら、思い切って正直にやったほうがいいですよ。次の国政選挙まで3年もあるわけですから。それが頭が回っていない」として首相へ苦言。
「同時に、今後のために言っときますと、アメリカなんかのように、議会・委員会がもう少し権限持って、調査能力(を持って)やらないと」と続けると、「身内だけでやってるって感じで、なかなかこれは釈然としない」と重ねて調査を求めた。
●統一教会問題 自民党は安倍氏「清和会タブー」に触れず強制終了も 9/11
「結果を重く受け止めている。率直に反省し、今後は旧統一教会と一切関係を持たないことを党内に徹底していく」
9月8日、自民党は所属する議員にアンケートを行い、いわゆる統一教会と接点があった国会議員が179人に上ることを明らかにした。そのうち氏名を公表したのは121名だ。
アンケートは8項目で、最も接点が“濃い”とされる選挙支援を依頼または組織的支援を受けた議員としては、これまで判明していた井上義行参院議員に加え、斎藤洋明衆院議員の名前も公表。
井上氏に関しては統一教会の賛同会員だったが先日、茂木敏充幹事長が“関係を断てない議員を離党させる”と明言したことで慌てて賛同会員を辞めたのだ。斎藤氏に関してはこれまでさほど報じられていなかったが、選挙ボランティアに応援に来てもらい“電話かけ”などをしてもらったという。
「茂木幹事長が強調していましたが、これは党による“調査”ではなくあくまでも自己申告によるアンケートです。井上氏は選挙の映像も出回っていてバレバレのため、正直に答えるしかなかったと思いますが、斎藤氏は自分からよく正直に言ったなと思いました。信者が選挙ボランティアで支援していた議員なんてもっといますよ。
さらに秘書に信者を使っていた“真っ黒”の議員もいますが、8項目の中にそういった内容が入っていないので答えていない。自民党は本気で解明しようなんて気はない。あくまで自己申告なんでアンケート後に発覚しても自分で責任を取れというスタンスです」(テレビ局報道記者)
細田博之議員は衆院議長という中立的な立場のため、自民党から党籍を離脱しているためアンケートから外された。細田氏は統一教会の関連団体である『世界平和国会議員連合』の名誉会長を務めているほどズブズブな存在だ。これまで何度も記者やマスコミから質問されても、一度も統一教会との関係に回答したことはない。これにはもっと根深い問題があるようだ。
「細田氏が一切口を開かないのは安倍晋三元首相を守るためでしょう。清和会のトップだった安倍氏ですが、その前は細田氏がトップだった。安倍さんが統一教会の組織票を振り分けていたという報道や元議員の証言がたくさん出てきている中、細田さんはその実態を把握しているであろうキーマンです。
組織的に自民党が関わっていたことが明るみに出れば、安倍さんの国葬で国民から反感を買い、自民党にとって大打撃になる。だからこそ“本丸”である清和会に絶対にメスを入れさせないんです」(政治ジャーナリスト)
自民党の茂木幹事長は“統一教会と関われば離党”と言った。それは統一教会が決別しなければならないほど、霊感商法や高額献金が社会問題になっていることを意識しているからだろう。政府としても河野太郎消費者担当相が霊感商法対策を進めているほどだ。
「そんな関わるべきではない教団の関連団体にメッセージを送っていた安倍氏について、政府はどういうスタンスなのか。党として調査をしない、細田氏に証言させない、清和会にメスを入れない。これでは全て安倍氏を守るため、国葬を断行するための”アピール”と言われても仕方ないでしょうね」(同・政治ジャーナリスト)
国葬が終わってしまえば、政府は国民に納得してもらう必要がなくなる。”統一教会問題”は一気にトーンダウンする気がしてならない――。 
●旧統一教会との関係、知事選への影響は 公明県幹部「不信膨らんだ」 9/11
11日投開票された沖縄県知事選は、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」と候補者の関係がどう影響するかも注目された。
告示前に、自民党県連が擁立する前宜野湾市長の佐喜真淳氏(58)が、2019年9月に台湾であった教団の友好団体の会合に参加していたことがわかった。
佐喜真氏は「旧統一教会という認識はなかった」とし、教団の信者でも会員でもなく、政治活動に対して寄付を受けたこともないと説明。選挙戦初日には「今後は関係を一切絶つ」と宣言した。
ただ、自民幹部は「知事選にも少なからず影響するだろう」と見ていた。
公明県本部の幹部は「公明支持層の中でも、安倍晋三元首相の国葬の批判と合わせて、佐喜真氏への不信感がどんどん膨らんだ」と打ち明ける。

 

●旧統一教会と政治家の“ズレ”…本質は「社会の見方が変わっただけ」 9/12
安倍元首相銃撃事件の発生から2カ月。統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政治、とりわけ自民党との癒着を知らぬ人はいなくなった。ともに火消しに必死だが、底なし沼の様相だ。一連の報道をリードしてきたのが鈴木エイトさん。20年にわたる統一教会との攻防、そして現状について聞いた。
──モーレツな世間の風当たりに自民党も統一教会も大揺れです。自民党は全国会議員に教団との絶縁を求めてはいますが、いまだ調査に乗り出さず、議員の「点検」の「集約」で幕を引く構えです。
茂木幹事長名で議員に配布された2枚のペーパーの1枚目で「党として組織的な関係は一切ないことは既に確認済み」とクギを刺し、2枚目にまとめられた質問はたった8項目。「秘書などのスタッフ派遣を受けているか」「便宜を図ったことがあるか」「表に出せない資金提供を受けたことがあるか」「当局の捜査に待ったをかけたことがあるか」──など、聞くべきことが設問にない。自由記述欄もない。質問を超える報告は一切するな、組織性をにおわせることは決して書くな、と枠にはめ込んでいます。
──本気度の低さは隠せません。
統一教会との関わりが浅い議員については、この報告で終わりにしていいとは思います。ですが、関係が深いほど、自分の首を絞めるようなことを言わないし、言えない。欺瞞に満ちています。
──積極的な情報公開や後追い報道などにより、自民党国会議員の100人以上が統一教会と関わりを持っていることが判明。参院選で教団の支援を受けた井上義行議員は「賛同会員」をやめたと発表しましたが、スパッといけるものでしょうか。
萩生田政調会長の対応が典型的です。当初は「適切な対応をしていきたい」などと言葉を濁し、追い込まれて「教団との関係は断つ」と修正し、ゴマカシを重ねている。教祖の妻を「マザームーン」と呼ぶ山本朋広衆院議員、イベント出席でネパールへ飛んだ山際経済再生相にも言えることですが。萩生田氏の場合、現役信者も関係を証言しているのがポイントです。
──2003年に衆院議員に初当選する以前の八王子市議時代から「教団と付き合いがある」という証言ですね。
現役信者は統一教会からある程度コントロールされている。通常、マイナスになることは口外しない。なのに、なぜか? 教団の狙いは体制維持。宗教法人解散命令の請求に発展しないよう取り計らってくださいよ、というメッセージが込められている。さもなければ手持ちのカードを切る、ということでしょう。
──萩生田政調会長は文教族の代表格です。カードというのは?
教団は教会に出入りする萩生田氏の映像なんかも撮っているはずです。関わりを示す証拠として。もっとも、やり過ぎて政治生命を終わらせてしまったら共倒れになる。首根っこを押さえているのが今の状態です。萩生田氏は表では「関係を断つ」と言っていますが、裏で教団側と話し合った上で、カタをつけようとしている形跡があります。
──不利な情報が出てこなければ手打ち、出てきたら関係揺らぎのサインということですか?
そうです。自民党の政調会長は党の政策を取りまとめ、政府に強い影響力を持つ。要職の地位を維持した上で寄与してもらうのが統一教会にとってベスト。本来、疑惑の中心は安倍元首相ですが、亡くなった。今後は元首相におっかぶせて逃げようとする議員が出てくるでしょう。菅前首相は追及されていませんし。
コンビニ感覚で使い、使われてきた
──山際大臣や山本議員は菅前首相のお膝元でもある神奈川県が地元です。
山際氏は09年の落選で後援者が離れて統一教会とつながり、後援会は教団丸抱え、事務所スタッフはほぼ教団関係者だという情報がある。ワイドショーで「山際事務所に統一教会関係者がいるという情報がある」とコメントしたら、クレームをつけてきたようですが、裏付け情報は今後も出てくると思います。山本氏についてもしかりですが、コンビニ感覚で互いに気楽に使い、使われてきた。事件発生まで非難されなかったので関わりが問題なのではなく、社会の見方が変わっただけだと捉えているフシがあります。
──ズレはそこですか。
統一教会がメディアに圧力をかける理屈もそこなんです。反社会的団体とみなさず、普通に扱っていたじゃないか、と。それはそうなんですよね。関連団体が主催する「ピースロード」なんかは地方局が後援した例はザラにある。正体を隠していたのだから仕方ない面はあるし、問題が掘り起こされてから教団を追及することに矛盾はない。統一教会が鬼の首をとったように「関わりを公表する」と大騒ぎするのはお門違い。だいたい、都合が悪くなるとつじつま合わせに走る組織なんです。
──というと?
21年9月に教団のフロント組織「UPF」(天宙平和連合)が主催したイベントに安倍元首相がビデオメッセージを寄せた件をめぐり、1カ月後に統一教会本部で行われた日曜礼拝でUPFジャパンの梶栗正義議長が手柄話を披露したんです。「8年弱の政権下にあって6度の国政選挙において私たちが示した誠意というものも、ちゃんと本人が記憶していた」と。梶栗氏は教団の政治団体「国際勝共連合」の会長も兼務しています。
──元首相に依頼し、了承を得たのは梶栗氏だったという裏話。映像と関連記事を文芸春秋デジタルで公開していますね。
教団のオフィシャル映像を入手して配信したんですが、よほど具合が悪かったのか突然、著作権を主張し始めた。NHK「クローズアップ現代」(8月29日放送)のインタビューで梶栗氏は自分が内諾を得て、上部組織のUPFや関連媒体のワシントン・タイムズを通じて正式依頼したと釈明していましたが。教団との直接的な関わりを隠し、発言と矛盾しないように糊塗したんでしょう。
──子供だましです。
2世信者による正体隠しの街頭勧誘を報じて、統一教会から訴訟を起こされたこともありました。教団側が「家庭連合を名乗り、伝道活動だと明かしていた」と主張したので、未公表の撮影映像と文字起こしを法廷に提出して反論した。すると、「長髪の変な中年男がいきなり割って入ってきたら、本当のことを言うわけがない」とか言うんです。都合が悪くなるとコロコロ変わる。二枚舌、三枚舌の組織なんです。
カルトの滑稽さを取っ掛かりに
──俗な反論ですね。
安保法制に反対する「SEALDs」に対抗し、教団側は大学生の2世信者を中心に「国際勝共連合大学生遊説隊UNITE」を結成。改憲賛成の遊説をしていたんですが、実際には教団側が2世信者に行わせていたにもかかわらず大学生の自主的な活動だと称していました。これには政権の意向や指示があったとみています。実態を暴こうと取材を重ねる中で入手した内部メールには「エイトが来るかもしれない、、、、とのことですので、対策関連の内容です」「UNITEと勝共連合についての関係です。外的には二つの看板を背負っての活動です」などと書いてあった。なぜ2枚の看板が必要なのかという観点から安倍政権との関わりを記事にしたら、UNITEは晴れて勝共連合の傘下団体になった。そうやって取り繕うんです。
──身の危険を感じたのは一度二度ではないとか。
殴られたこともありますが、それほど怖い思いはしてないですけどね。02年に偽装勧誘の実態を報じるテレビ番組を見て、統一教会を追い始めた頃は尾行されましたが、真後ろをつけるので気づきましたし。交番を通り過ぎたあたりで振り返ると、あっちも立ち止まる。取っ捕まえて交番に突き出したら、「統一教会本部から言われてつけました」と白状するんですよ。
──一人一人の信者は真面目とは聞きますが……。
そうなんです。指示を実直に遂行している。だから、こっちもレジャーとしてやっている部分もある。最近はむしろ、政治家絡みの方がおっかない。教団と関わりが深い自民党議員の街頭演説の取材中にマイクを外した議員から「〇〇さん、早く××の家に帰った方がいいよ」と、僕の本名と自宅がある地域を言われたことがありました。自宅周辺を撮影していたり、大きな荷物を抱えて座り込む不審者がいることがあるので、地元の警察署に重点パトロールしてもらっています。鈴木エイトは誰も見向きもしなかったネタをストイックに追い続けてきた孤高のジャーナリスト──みたいな扱いをされるんですが、楽しんでもいるんです。カルト問題には滑稽な部分がある。おどろおどろしい面を強調すると一般の人は取っつきにくいので、ユーモアを交えて伝えているつもりです。カルトを笑い飛ばすことは脱会者のリハビリにもなる。フラッシュバックに苦しむほど恐ろしかった団体は、笑いの対象になるチンケな集団だと見直せる。それで楽になれることもあるんです。
●旧統一教会排除と国葬強行は「明らかに論理矛盾」 岸田内閣の失敗 9/12
前東京都知事で国際政治学者の舛添要一氏(73)が12日、自身のブログを更新。岸田内閣の支持率低下の原因を指摘した。
舛添氏は各マスコミの調査で、岸田内閣の支持率が下がっていること、及び安倍晋三元首相の国葬に関して反対が過半数になっていることを挙げて、「岸田首相は、統一教会問題と並んで、国葬問題も世論の動向を読み間違えたようだ」と指摘する。
旧統一教会に関する問題については「関連議員の内閣からの『排除』を徹底せずに、かえって問題の深さを白日の下にさらしたからである。世論の反応を見れば、内閣改造が大失敗だったことがよく分かる」と投稿。自民党が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)や関連団体と一切関係を持たないとする基本方針を決めているにもかかわらず「その方針と国葬とが明らかに論理矛盾」と述べ、「それが、国葬に対する反対論を強めた」と続けた。
また、旧統一教会と自民党との関係にも触れ、「自民党は関係ないと言い続けてきた。ところが、党、とりわけ安倍派が教団票を組織票として党の公認候補に割り振りしていた事実が明らかになってしまった。萩生田光一政調会長、山際大志郎経済再生大臣などの教団との『深い関係』が次々と判明するに至って、もはや内閣全体の信頼性が失われたと言っても過言ではない」とキッパリ。「最初の対応が曖昧すぎたことが、禍根を残すことになっている。中途半端、曖昧、不決断が際立っている。統一教会問題は、安倍元首相の国葬の正統性をも疑わせることになってしまったのである」とつづった。
最後に「私が疑問を感じるのは、反対論が多いことを考慮してか、各府省や自治体や公的機関に弔意表明を求める閣議了解を見送ったことである」と指摘。「弔意強制として世論が反発することを恐れてのことであるが、これなら国葬とは呼べない。この中途半端な対応が支持率を下げている」と断言した。
●統一教会の日本人女性が「韓国男性に尽くす」謎 9/12
安倍晋三元首相銃撃事件後にはじまった世界平和統一家庭連合(旧統一教会。以下、統一教会)に関するマスコミ報道を受け、8月18日、韓国ソウルでは韓国統一教会や信者たちによる抗議デモが行われた。
目を引いたのは、主催者たちの音頭に合わせて抗議の声を上げる日本人女性信者たちの姿だ。なぜ韓国に日本人信者たちが大勢いるのか――。
特集「宗教を問う」の第7回は、2001年から2008年にかけて韓国農村で暮らす統一教会の日本人女性信者たちに聞き取り調査して歩いた中西尋子・大阪公立大学都市文化研究センター研究員へのインタビュー。日韓の歴史問題を逆手に取った布教活動の実態とは。
渡韓した女性信者はおよそ7000人
――統一教会を批判するマスコミ報道を受け、韓国ソウルではたびたび抗議デモが起きています。目を引いたのは、抗議デモに参加する日本人女性信者たちの姿でした。なぜ韓国に日本人の女性信者がいるのでしょうか。
デモの参加者は統一教会の合同結婚式で韓国人男性と結婚し、現在も韓国で暮らしている日本人女性信者たちです。
合同結婚式は1960年の3組から始まりましたが、日本人と韓国人のカップリングが本格化したのは1980年代以降。とくに1988年、1992年、1995年に韓国人男性と日本人女性の「韓日祝福」カップルが多く生まれました。日本人男性と韓国人女性のカップリングなら「日韓祝福」と呼びます。「祝福」は統一教会用語で、結婚のこと。
統一教会のホームページによれば、1988年の合同結婚式では6516組が参加。(日本人男性と韓国人女性の)日韓カップルが1060組、(韓国人男性と日本人女性の)韓日カップルは1526組誕生しています。韓日カップルのほうがずっと多い形です。
ソウルのデモに参加していた日本人の女性信者たちの多くは、この時期の韓日祝福で韓国人男性と結婚した日本人妻たちだろうと思われます。
――数はどのくらいいるのでしょう。
韓国人男性と結婚し、渡韓した日本人女性信者はおよそ7000人といわれています。教団幹部が講演の中で語った人数や韓国統一教会の機関誌『本郷人』に掲載されていた数です。
――韓日祝福は、普通の「祝福」とは違うのでしょうか。
統一教会は韓日祝福を「最も理想的」としています。統一教会が目指すところは、理想世界「地上天国」の実現。「地上天国」は国境、民族、宗教が垣根を越えて一つになった世界とされ、その点で国際結婚に価値がおかれます。とりわけ最も理想的なのが「韓日祝福」なのです。
――なぜ、最も理想的なのでしょうか。
日本と韓国には植民地支配と被支配の不幸な歴史があるからです。不幸な関係にあった国や民族同士の結婚ほど理想的とされるのです。
さらに統一教会の教えでは、日本は「エバ国家」、韓国は「アダム国家」とされます。エバは蛇(サタンの隠喩)と不義の関係を持ったうえにアダムを誘惑し、人類堕落の原因をつくったとされます。
36年間にわたり朝鮮半島を植民地支配した日本は、人類堕落の原因をつくったエバと同じであり、アダム国家の韓国に贖罪しなければならないという理屈です。だから日本人女性が韓国人男性のもとに嫁ぎ、夫や夫の家族に尽くしなさいとなる。それが植民地支配したことへの贖罪であり、統一教会用語でいう「蕩減(とうげん)」(罪の清算)になります。
経済的苦労に加え、夫は「にわか信者」
――では、韓日祝福を受けて韓国人男性と結婚した日本人女性たちは、最も理想的な結婚生活を送っていることになると。
教義的には理想的な結婚ですが、実際の生活は大変です。統一教会は恋愛結婚を否定しており、合同結婚式では知らない者同士がカップリングされています。恋愛感情がない相手のもとに嫁ぎ、言葉や生活習慣が違う韓国で暮らすわけですから。
とくに農村部の韓国人男性と結婚した日本人女性信者の暮らしは過酷です。農村部で日本人女性信者たちに聞き取り調査をするようになって気付いたのは、経済的困難を抱えている人が少なくないことでした。目立った産業がある場所でないため、夫が安定した定職についているという人ばかりではありません。「月に給与が30万ウォン、50万ウォン(3万円、5万円程度)しかないときもある」と語る女性もいました。
さらに夫や夫の家族には統一教会の信仰がないか、あっても熱心ではないと語る人がほとんどでした。夫が礼拝に行かなかったり、教えでは禁じられている飲酒、喫煙をしていると語る女性もいました。
農村の電信柱に貼られた「結婚相談」チラシ
――夫たちは信仰する気がないのに、どうして統一教会に入信したのでしょう。
統一教会に入ると結婚できると認識されているからです。日本人女性との結婚を勧誘するチラシを農村で見かけました。
チラシには「日本女性 真の結婚」とあり、「短期大学以上の学歴」「心身・心の健康な方」「職業がたしかな青年」と書いてあります。その下には「純潔な価値観の理想的な配偶者 結んでさしあげます」とあります。
韓国では統一教会が「結婚勧誘」していることはよく知られたことです。チラシのどこにも「統一教会」と書いていませんが、これを見た人は統一教会のチラシだとわかります。地方の農村部における男性の結婚難は日本にも見られますが、韓国も同様です。なかなか結婚相手に恵まれない農村の独身男性や、その親はこのようなチラシをみて統一教会に行ってみようかとなります。統一教会に入信しても「にわか信者」といえます。
話を聞いた日本人女性信者たちも自分たちの夫が結婚目的で統一教会に入ったということを認識していました。
「結婚勧誘」は韓国農村部における男性の結婚難という切実な問題に統一教会が着目して始まった布教の方法といえるのではないでしょうか。
――つまり、韓国が抱える社会問題に目を付けたと。
韓国は朴正熙政権下(1963年―1979年)に「漢江の奇跡」と呼ばれる急速な経済成長を遂げました。都市部では所得が増え、生活水準が上がりましたが、地方の農村は経済成長から取り残され、都市と農村の経済格差が顕著になりました。
とくに1975年頃から農村から都市部への人口流出が進み、とくに結婚適齢期女性の流出が結婚適齢期男性より多かったようです。そこで生じたのが農村男性の結婚難です。
農村男性の結婚難が社会問題として表出した時期と、統一教会の韓日祝福が本格化していった時期は、ほぼ軌を一にしています。
「地上天国」実現のための結婚
――「理想的な結婚」ではなくても、日本人妻たちが異国での生活を継続できているのはどうしてでしょう。
なかには信仰を失い離婚、脱会して日本に帰国する女性もいますが、信仰を失わず、苦労の多い生活をしながらも韓国で暮らし続けている女性もいます。経済的に厳しい生活、信仰のない夫、それにもかかわらず、なぜ信仰を続け、韓国での生活を続けていけるのかは、そこに自己実現といえるようなものを見いだしたのだろうと思います。
彼女たちにとって統一教会の結婚は、理想世界「地上天国」実現のための結婚であり、世界平和への道と思われたのだろうと思います。統一教会の教えでは私たちはサタンの血統をもち、この世はサタンに支配された世界です。合同結婚式で結婚した夫婦から生まれる子どもは神の血統をもった無原罪の「神の子」とされます。「神の子」が子々孫々産み増えることにより、やがて「地上天国」が実現されると信じられています。
ですから彼女たちにとって韓国での結婚生活は「地上天国」実現のための社会変革運動と言えます。理想世界の実現のための結婚ですから、夫は「神の子」を産むために必要なだけであり、恋愛感情はなくても構わない。実生活では夫や夫の家族に尽くすことによって植民地支配の贖罪になる。韓国人男性と結婚することで家庭の中では国境を越え、子どもは生まれながらにして国境を越えている。家庭の中がささやかな「地上天国」になるのです。
彼女たちに贖罪の意識があることは、次のような信者の語りからわかります。
「韓国に嫁に来るのは植民地支配の恨みを解くため。嫁にいって、いい嫁になって、日本の嫁はいい嫁だ、日本人はいい人だというようになっていけばいい」(1978年生まれ)
「家事が下手、料理が下手など口うるさい夫に文句を言われてムカつくが、日本が犯してきた罪。罪滅ぼしで来ているんだろうな、と思って我慢している」(1972年生まれ)
生活苦で日本人女性が夫を殺害
――いくら信仰心があっても現実を受け入れるのが難しい局面もあるのでは。
悲劇的な事件がないわけではありません。
2012年、韓国の江原道春川在住の日本人女性(当時52歳)が、韓国人の夫(同51歳)の首を絞めて殺害する事件がありました(春川事件)。「中央日報」(2012年8月21日)日本語版サイトの記事には、日本人女性は「95年、ある宗教団体の斡旋で」夫と国際結婚し、韓国で暮らし始めたと書いてあるだけですが、1995年の合同結婚式で結婚した女性でした。
記事によれば、夫は結婚当時から無職で毎月30万ウォンほどの基礎生活受給費で生計を維持していました。しかし、事件が起きる10年前から腎不全による人工透析が必要になり、酒を飲んでは妻に暴力を振るっていたようです。妻は警察に「これ以上の治療費に耐えられず、自分も生きていくのが苦しくて(殺害)した」と供述。2013年、春川地裁で懲役9年の実刑判決が下されています。
――離婚、脱会して日本に戻れば楽になるのではないかと考えてしまいます。
先ほど韓国での暮らしが自己実現になったのではないかと言いました。もう少し別の視点からいえば、女性としての存在意義を見いだせたという点も、韓国での結婚生活にあると感じました。
聞き取り調査をした日本人女性信者たちは、日本で暮らしていた時代、およそ結婚に夢や希望がなく、仕事でも「女は損」だと感じることが多かったことがうかがわれました。
彼女たちの多くが1960年代生まれで、1986年の男女雇用機会均等法が施行された前後に社会人になっています。法の施行で性別に関係なく働けると期待したはずが、会社ではやはり男性の下におかれ、働き続けるためには妊娠や出産も歓迎されない。専業主婦の母親を見ても、家族からは「家事をやって当たり前」としか思われない。そんなことで「女は損」だと感じていたのでしょう。
身体が女性であることにより、セクハラの対象にもなりうる。労働力としては「女性であること」が歓迎されないのに、身体は性的対象にされてしまう。女性であることを否定的に捉えるしかなかった彼女たちにとって、たまたま出会ったのが統一教会でした。
入信・結婚生活が女性としての肯定感に
――女性として生きる道を統一教会が提供してくれたと。
統一教会での結婚はたんなる結婚ではなく、「地上天国」実現のためにあると述べました。男女は結婚して夫婦になってこそ完成した存在とされるので、男女に優劣はないとされます。出産や子育ては「神の子」を産み育てるという宗教実践。女性であることに積極的な意味を見いだせなかった彼女たちが、入信し、祝福を経て結婚生活を送ることで女性であることを肯定的に捉えられるようになったのです。
日韓関係の不幸な歴史がなければ、統一教会が日本をエバ国家、韓国をアダム国家と位置づけして日本に贖罪を求めることはできなかったでしょう。日本人女性が韓国人男性のもとに嫁いで夫や夫の家族に尽くして贖罪しなさいという統一教会の教えも成り立たなかったと思います。
韓日祝福だけではありません。霊感商法や高額な献金の問題も、背景には、エバ国家日本のお金をアダム国家韓国に差し出すのは当たり前だという歴史問題に根ざした教義があります。日本における統一教会問題は、日韓関係の不幸な歴史が根底にあると言っても過言ではないのです。 

 

●統一教会についての論点整理  9/13
統一教会(世界統一平和家庭連合)をめぐる騒ぎには、おもしろい特徴がある:その全盛期を知らない人ほど、統一教会が「巨悪」だと思い込んで騒ぐことだ。統一教会は文鮮明の死後、分裂し、今は信者6万人程度の零細な新宗教にすぎない。
しかし1990年代の霊感商法や合同結婚式は大規模だった。今ワイドショーに出ているのは、その時期までの「元信者」がほとんどだ。1988年の合同結婚式が、あたかも現在の教団の問題であるかのように延々と語られ、時系列がこちゃごちゃになっているので、ここで整理しておこう。
1.統一教会は安倍元首相暗殺事件に責任はない
今回の騒ぎのきっかけは、安倍元首相の暗殺犯人が「統一教会への恨みが動機だった」と供述した(といわれている)ことだが、そんなことはテロの理由にならない。したがって統一教会は、犯人の妄想には責任を負わない。テロの動機を詮索することは、「騒ぎを起こして統一教会を攻撃させよう」という犯人の目的を実現する結果になる。
2019年に起こったニュージーランドのモスクのテロで、アーダーン首相は白人の犯人をテロリストと呼び、その動機に言及しなかった。イスラム教は、この事件に責任を負わないからだ。アーダーン首相は「何かできることはないか」というトランプ米大統領の問い合わせに対して「ムスリムのコミュニティに同情と愛情を注いでください」と答えた。
安倍暗殺事件で統一教会を攻撃するのは、モスク爆破事件でイスラム教を攻撃するような倒錯である。問題は教団でも信仰でもなく、銃撃した犯人だけにある。彼の動機は黙殺することが、模倣犯を防ぐ上でも重要だ。
2.政治家との「接点」に違法性はない
自民党との「接点」をめぐる騒ぎも、お門違いだ。調査の結果、179人に接点があったというが、あったらどうするというのか。日本の法律では、宗教団体の応援を受けても刑事責任も民事責任も問われない。自民党の党規約にも違反しない。
接点があるというなら、公明党と創価学会の接点は、調査するまでもなく明らかだが、誰も問題にしない。公明党の議員は創価学会の圧倒的な影響を受けているが、それは憲法に定める信教の自由である。逆に国家権力が宗教に介入することは許されない。これを政治家が宗教といっさい関係をもたないことが「政教分離」だと誤解している人が多い。
3.統一教会は「反社」ではない
そういうと「創価学会は合法だが、統一教会は反社だから、それとつきあうことが違法だ」という人がいるが、これは誤りである。統一教会が政府や裁判所に「反社会的組織」と認定されたことはない。これは組織暴力団の別名であり、宗教団体に使われた前例はない。
統一教会は違法な団体ではない。2001年の「青春を返せ」訴訟では、詐欺的な布教の方法が違法だと裁判所が認定したが、これも北海道のローカルな話。統一教会の組織としての違法行為ではない。
唯一の刑事事件は2009年の「新世」事件で、当時の会長が辞任したが、ここで裁判所に認定された組織的犯行の責任は有限会社「新世」にあり、統一教会の責任は認定されていない。この当時も統一教会に解散命令を出すべきだという意見があったが、民主党政権は何もしなかった。
「世界統一平和家庭連合」に改称してからは、宗教法人として不法行為が認定されたのは民事の2件だけで、刑事事件はゼロ。
4.安倍氏は統一教会とは距離を置いていた
岸信介と文鮮明の深い関係はよく知られているが、岸が1987年に死去してからは、安倍家との関係はそれほど強くなかった。特に安倍晋三氏は、統一教会が慰安婦問題で反日的な主張を展開したことから、距離を置いていた。
政権としても統一教会の規制を強化し、第2次安倍内閣では消費者契約法を改正し、霊感商法を「不当勧誘」として取り消せる規定を設けた。
唯一の問題は、2021年のUPF(統一教会関連の国連NGO)にビデオメッセージを寄せたことだが、これについてはUPFジャパンの会長が「トランプが出るなら」という条件で引き受けてもらったと証言している。
このシンポジウムにはトランプも潘基文も文在寅もメッセージを寄せたので、安倍氏の行動がそれほど非常識なものとはいえない。少なくとも、それを理由に暗殺することは絶対に許されない。
5.現行の宗教法人法には不備がある
統一教会に解散命令を出すことは、現行法では不可能である。裁判所が解散命令を出したのは、オウム真理教と明覚寺の2件だけで、役職員が刑事罰を受けたときである。これは必要条件であって、刑事罰を受けた教団がすべて解散命令を受けたわけではない。
ただ宗教法人法には不備がある。これは1945年にGHQが出した神道指令と宗教法人令のなごりで、すべての宗教を同格に扱って国家神道を廃止することが目的だった。
このためすべての宗教法人が非課税で、認証後1年たつと認証を取り消せない。解散させるには、所管官庁が裁判所に申し立てて判決を受けなければならない。これが宗教法人の過剰保護になり、オウムのような反社の隠れ蓑になった。
これを改正すべきだという議論はオウム事件の直後にもあったが、村山内閣は規制を見送り、公明党が政権に入ってから宗教法人法はタブーになってしまった。今回は何も事件が起こっていないが、戦後レジームに聖域を設けないで見直すことは、安倍氏の遺志にも沿うだろう。
●旧統一教会めぐる電話相談 5日間で1000件超 金銭トラブル多い  9/13
旧統一教会をめぐる、いわゆる霊感商法などの問題で、葉梨法務大臣は、先週始めた被害者救済のための電話相談が5日間で1000件を超え、金銭トラブルに関する相談が多かったと明らかにしました。
旧統一教会をめぐる、いわゆる霊感商法などの問題で、政府は、法務省など関係省庁が連携し、被害者救済のため、今月5日から30日まで、電話の相談を集中的に受け付ける強化期間を設けました。
これについて、葉梨法務大臣は、閣議のあとの記者会見で、電話相談が今月5日から9日までの5日間で1002件寄せられたと明らかにしました。
内容は、金銭トラブルに関する相談が最も多く、生活困窮に陥ってしまったとか、親族に信者がいるがどうしたらよいかという相談もあったということです。
葉梨大臣は「体制を強化したことで、電話がつながりにくい状況はほぼ解消されつつある。まずは現行法を活用して被害者をどう救済できるか考え、典型的な事案を抽出して広く知らせることで、相談しやすくなる環境をつくりたい」と述べました。
相談窓口の電話番号は、0120-090-590で、今月30日までの平日午前9時半から午後5時までです。
●旧統一教会への対応「自己申告では調査不十分」自民 総務会  9/13
旧統一教会との関係をめぐる自民党の対応について、党の総務会で、出席者から、議員の自己申告によるもので完全な調査結果とは言えず不十分だといった指摘が出されました。
この中で、村上・元行政改革担当大臣は、所属議員と教会側との関係をめぐる党の調査結果について「議員の自己申告によるものであり、関係があってもないと報告すれば終わりになり、不公平だ。完全なものとは言えない」と指摘しました。
また、石破元幹事長は「今後、一切関係を断つという方針は正しい判断だと思うが、教会が、宗教法人として税制などの優遇を受けられる状況を維持しながら関係を断つというのは世の中の理解を得にくい」と述べました。
一方、石破氏は、安倍元総理大臣の「国葬」について「イギリスのエリザベス女王の国葬は議会の承認を取っている。今後実施する際は、国会の議決を考えたいという表明があれば国民の受け止めは変わるのではないか」と述べました。
このあと、遠藤総務会長は記者会見で「意見を引き取ったうえで、党として、どのような形で対応できるのか検討したい」と述べました。
●「旧統一教会の関係 政治家それぞれの責任で説明を」官房長官  9/13
旧統一教会との関係をめぐり、木原官房副長官が自民党に追加で報告したことに関連し、松野官房長官は、政治家それぞれの責任で適切に説明すべきだという認識を重ねて示しました。
旧統一教会との関係をめぐり、木原官房副長官は、6年前に関連団体が開いたアジアの安全保障環境などをテーマにしたパネルディスカッションに参加していたことが外部からの指摘で新たに確認され、12日、自民党に追加で報告したと公表しました。
松野官房長官は、記者会見で「木原副長官からは『外部からの指摘で自民党の調査への報告漏れが判明した。できるだけ早急に対応する』という趣旨の報告を受けている。岸田総理大臣にも同様に報告した」と説明しました。
そのうえで「旧統一教会との関係についてはそれぞれの政治家としての責任で適切に説明すべきものと考えている」と述べました。
自民党の遠藤総務会長は、記者会見で「教会側とは一切の関係を持たないようにしたうえで、これからも外部からの指摘に真摯(しんし)に耳を傾け、指摘があれば、そのつど政治家として説明責任を果たしてもらいたい」と述べました。
立憲民主党の泉代表は記者団に対し「自民党の点検で出てきたものは氷山の一角だ。ほかにも報告されてないものが多数存在しているのではないかと国民に疑念を抱かせる事例だ。自民党は、木原官房副長官が報告していなかったことを重く受け止めて再調査を行うべきだ」と述べました。
●自民スカスカ自己点検! 下村博文氏が旧統一教会から「選挙支援」の証拠 9/13
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係について、自民党が所属国会議員を対象に実施した自己点検。次々と“漏れ”が見つかり、批判が高まっている。とりわけ、いくら何でもヒドいのが文化庁が旧統一教会の名称変更を認証した時の文科相、下村博文衆院議員だ。
自民党の発表資料で下村氏の名前が登場するのは「寄付もしくはパーティー収入有り」の項目のみ。「講演」と「選挙支援」が報告されていない。
2012年の「講演」も報告せず
ジャーナリストの鈴木エイト氏によると、下村氏は旧統一教会系のシンクタンク「世界戦略総合研究所」の定例会で2012年4月26日に講演している。関連団体主催でも、本人が講演した場合は名前が公開される。下村氏は報告していないのだろう。
選挙支援については、下村氏が関連団体からの支援を受け入れた「動かぬ証拠」がある。昨年の衆院選直前の21年10月9日、板橋区立グリーンホールで開かれた「国政報告会」で、下村氏が旧統一教会関連団体からの推薦状をニコニコしながら見せる写真の存在が明らかになっている。
TBS系の「サンデーモーニング」の取材に、下村事務所は「推薦状については会場で突然渡されました。当該関連団体に対して支援や推薦の依頼をしたこともありません」と回答しているが、鈴木エイト氏は首をかしげる。
「旧統一教会の信者に勝手に選挙支援をされたという自民党議員はいます。しかし、下村氏の場合は関連団体からの推薦状を公の場で示している。下村氏本人が支援を喜んで受け入れる意思を公言したことになる。この姿を見た信者は下村氏を当選させようとの思いを強め、支援に動いたと考えるのが自然です」
それにしても、自ら推薦状を見せつけながら、「支援は受けていない」とはよくぞ、言えたものだ。
「この写真は自民党が点検結果を発表する前に、オープンになっていた。それでも下村氏は点検で『選挙支援』を報告しなかった。推薦状を受けながら支援はないと言い張れるくらいに、点検がズサンなことを示しています。名称変更時の大臣である下村氏と旧統一教会の関係は非常に重要。自己点検で幕引きは許されません」(鈴木エイト氏)
旧統一教会との“良好な関係”は、推薦状を手にする下村氏の笑顔が何よりも物語っている。
●文化庁が宗教法人と交わした「約束」の正体、統一教会・名称変更文書 9/13
「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会、以下、統一教会)は2015年に現在の名前に変更された。1997年に一度退けられていた名称変更の申請が、2015年に認証された背景に政治家の関与があったことが疑われている。
しかし、名称変更の経緯を明らかにするために、文化庁に対して開示が求められた文書の一部は「黒塗り」の状態だった。その背景には、過去に文化庁が宗教法人と交わしたある「約束」があることがわかった。
特集「宗教を問う」の第8回は、統一教会の名称変更や宗教法人の情報公開をめぐる歴史的背景について、文化庁で宗教法人を担当する宗務課長だった前川喜平・元文部科学事務次官に聞いた。浮かび上がるのは、宗教法人に対する政府の強い配慮だ。
「認証してもらえる」という見通しがあった
――1997年に宗務課長だった前川さんは、統一教会の名称変更を受け入れませんでした。名称変更の申請を受理しないのは「違法」ではないかという指摘が一部でありますが。
申請を出されたら必ず受理しなければならないのは当然のことだ。1997年当時、私は申請前の事前相談の段階で「認証はできないので、申請はしないでください」とお願いし、先方は納得のうえで引き下がった。そこに違法性はない。
宗教団体の名称も、宗教団体の実態(宗教団体性)を表す重要な要素だ。「世界基督教統一神霊協会」という名前で長年活動し、信者を集め、社会的な存在としても認識されてきた。実態と合わない名称変更は認められない。
それでも申請されれば、受理するしかない。受理したものを認証するかしないかは次の段階の話だ。申請を受理した後、認証しないケースに限って、主な宗教法人の代表者や宗教学者でつくる「宗教法人審議会」(以下、審議会)に諮問する。ところが、認証するときは審議会にかけなくていい。
不認証となれば、同じものをもう一度出したところで認証はされない。2015年の名称変更の際、統一教会が申請したのは「今回は認証してもらえる」という見通しを持っていたからだ。
――1997年、仮に審議会にかけられていたら不認証になっていたのでしょうか。
認証しないという方向で審議会に諮問したら、不認証を了解されていた可能性はかなり高かったと思う。審議会のメンバーは仏教やキリスト教、新宗教の代表者らで構成されており、統一教会に好意を持つ人はいない。
統一教会の立場からいうと、1997年の事前相談の段階で申請を出さなかったのは賢明な判断だった。申請を出して不承認になったら、元も子もないからだ。2015年の名称変更の際、認証してもらえるという確証をどこから得たのかが問題だ。認証するという保証が事前になければ、申請はできなかったはずだ。
――2015年の名称変更のとき、前川さんは文科相、事務次官に次ぐ審議官という立場でした。
当時の宗務課長が「統一教会の名称変更の申請がきているから認証する」と説明に来た。私が認証すべきでないと言ったら、宗務課長が非常に困った顔をしていたのを覚えている。しかし、結果的に認証はすることになったので、私の上の人が認証する意思を持っていたことになる。つまり事務次官か、大臣のどちらかだ。
認証時の事務次官は、認証直前に交代したばかりで名称変更については相談をあずかっていない可能性がある。事務次官は旧文部省出身者と旧科学技術庁出身者が交互に歴任し、科学技術系の事務次官のときは、その下にいる旧文部省系の審議官が事実上の事務次官として意思決定に関わる。名称変更時の事務次官は科学技術省系。つまり、名称変更の認証のとき、私の上には事実上大臣(下村博文氏)しかいなかった。
宗教法人法は「性善説」に基づく
――そもそも、なぜ宗教法人法では、認証しないときは審議会にかけるのに、認証するときには審議会にかけないのでしょうか。
宗教法人法は信教の自由を守るためのもので、「宗教法人は悪いことをしない」という性善説に基づいているからだ。だた、オウム真理教の事件以降、宗教法人の中には問題がある団体も紛れている可能性があるという慎重な姿勢になった。
そうした中で1996年に宗教法人法が改正された。改正前は新たに宗教法人を認証しても、その後は糸の切れたタコのように動向がわからない状態だった。神社本庁や仏教の○○宗のような「包括宗教法人」は改正前から文部大臣の所轄だったが、創価学会や統一教会のような「単立宗教法人」は都道府県の所轄だった。
それでは全国的に活動している宗教法人を把握できない。改正によって単立宗教法人の所轄は、都道府県から文部大臣に変わった。
もう一つの改正点は、宗教法人から毎年度、役員名簿や財産目録、収支報告書といった最低限の書類を提出してもらう義務を課したことだ。信教の自由に触れる危険性があるため、活動報告のような書類の提出義務はなく、あくまで外形的な書類に限る。それらを通して、宗教法人が健全に活動していることを確認するという趣旨だ。
宗教法人法改正は、当時の文部大臣であった与謝野馨さんのトップダウンによる意思決定だった。大臣官房に法律改正チームをつくり、与謝野さんの秘書官だった私もチームに入って改正作業に携わった。
「提出された書類は、一切外に出しません」
――改正には宗教団体がかなり反発したと聞きます。
仏教もキリスト教も新宗教も、ほとんどの宗教法人が反対でした。創価学会も強く反発した。
文部省はオウム真理教の反省から宗教法人を野放しにするわけにはいかず、最低限の実態確認が必要だった。特定の宗教団体を狙い撃ちにしたものではなかったが、当時は自民党と新進党(現在の公明党)が敵対関係にあったから、自民党の一部の議員が創価学会攻撃のために宗教法人法改正を利用しようとした。それで文部省と創価学会との関係が悪くなった。
宗教法人法改正は前出の審議会にも意見うかがいをしたが、宗教法人からは「信教の自由に触れるのではないか」と批判の声が上がり、審議会は荒れた。当時の文化庁次長が最後には頭を下げて「なんとかこれを了解いただきたい。伏してお願いします」と言っていたのを覚えている。
その際、宗教関係者たちに「提出された書類は、一切外に出しません」と約束した。
――宗教法人法改正で提出が義務化された収支報告書などについて、東洋経済は過去に情報公開請求をして提出書類の開示を求めています。しかし、文化庁は書類の存否も明らかにせず、不開示としています。原因は改正時の「約束」でしょうか。
その通り。それに関しては私に責任がある。1999年に成立した情報公開法が国会に出されたとき、宗教団体の関係者が怒り出した。提出書類は開示しないという約束があったから法改正をのんだのに、提出書類が開示請求の対象になるとはどういうことだと。
宗教法人側は「信教の自由」という言葉を不開示の理由として、情報公開法に入れるように求めてきた。
当時宗務課長だった私は、情報公開法案を準備していた総務庁(当時)と交渉したが、信教の自由だけを特別に不開示理由に入れることはできないと返された。そこで最終的には「権利」という言葉を情報公開法の条文に入れてもらうことにした。
――たしかに情報公開法の中にある不開示の理由の一つに、法人または個人の「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」と示されていますね。
当初、不開示理由の条文は「利益」だけだったが、「権利」という言葉が入った。その後、情報公開法を審議する内閣委員会で私は、不開示理由の権利には「信教の自由が入る」と答弁し、宗教法人の提出書類は不開示情報に当たると説明した。
つまり、宗務課長として「宗教法人法に基づいて提出された書類は不開示情報です」と釘を刺したわけだから、私に責任があるのです。
だからマスコミの皆さんが情報公開請求をしても、開示されることはない。
安易な開示は他の宗教団体の反発を招く
――共産党の宮本徹議員が、統一教会が文化庁に提出した名称変更の申請書の開示を求めたところ、名称変更の理由に当たる部分が黒塗りの状態で開示されました。
申請書も文化庁への提出書類の一種。書類を黒塗りにした理由は、統一教会の政治的背景が明らかになることを避けたわけではないだろう。
宗教法人が文化庁に提出した書類が安易に開示されると、他の宗教団体の反対を招く可能性がある。それを恐れたからだと思う。
――開示請求しても何も出てこない理由がわかりました。
自民党が公明党と連立を組んでいる間は開示されないと思う。
1999年の自民党と公明党の連立工作をしたのも与謝野さんだった。すでに都議会では自民党と公明党が組んでいた。都議会の公明党議員だった藤井富雄さんと自民党東京都連の与謝野さんが中心になって、国政レベルでの自公連立を実現させた。つまりこの時期、自公連立に向けて文部省と創価学会の関係が非常に大事だった。
宗務課長になったとき、与謝野さんに挨拶に行ったら「とにかく創価学会とは仲よくしてくれ」と言われた。先ほど言ったように、宗教法人法改正をめぐって文部省と創価学会は抜き差しならない対立関係になっていた。文部省としては創価学会に敵対心はない。その誤解を解くために、宗教法人法改正で提出が義務付けられた書類は一切出さないと約束した。
情報公開法以外でも宗教関係者に根回しする一環として、信濃町の創価学会本部に何度か足を運んで説明した。創価学会の秋谷栄之助前会長とも1回か2回、赤坂の料亭で与謝野さんと一緒に食事をしたことがある。
提出された書類は見たことがない
――自公連立を見越していい関係を築いていたということですね。
そうだ。与謝野さんからの秘密指令を受けて、とにかく仲よくした。「雨が降ろうと槍が降ろうと、自民党の大物政治家が文句を言ってきても、提出された書類は絶対に出しません」と。そうやって創価学会・公明党から信用してもらった。
――オウム事件を受けた宗教法人法改正は、文化庁が宗教法人の最低限の実態把握をするためのものでした。国民にはそう言いながら、宗教団体に対しては配慮をしていたと。
二枚舌だと言われればそうかもしれない。
――提出された書類をチェックする人はいるのでしょうか。
担当者はいる。収支計算書や財産目録の体をなしているかという最低限のチェックはするんだけど、それ以上のことはしない。宗務課長の私も一度も見たことがない。金庫に入れてしまってある。
●旧統一教会と接点 福田知事ら県内首長9人、いずれも自民党籍 9/13
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治家の関係を巡り、下野新聞社は12日までに、福田富一知事と栃木県内全25市町長を対象にアンケートを実施し、福田知事を含む9人が関連団体と接点があったと回答した。9人はいずれも自民党籍を持ち、5月に開かれたイベントに出席したり祝電を打ったりした。教団との関係性を知らずに応じたとの回答が目立った。
アンケートは8月下旬〜9月上旬、実施した。旧統一教会やその関連団体に関し、選挙支援を受けたことがあるかや、イベントに出席したり祝電を送ったりしたことがあるかなどを尋ねた。
自民党県連副会長の板橋一好県議が代表を務めていた関連団体「世界平和連合栃木県連合会」が5月に宇都宮市内で開催した催しに出席したと回答したのは、小菅一弥壬生町長。真瀬宏子野木町長と平山幸宏那須町長は、代理者が出席したと答えた。
祝電を打ったと答えたのは、福田知事と佐藤栄一宇都宮市長、金子裕佐野市長、福島泰夫那珂川町長、石坂真一真岡市長、花塚隆志さくら市長の6人。
福田知事は公務ではなく後援会で対応したという。「(教団の)関連団体との認識はなく、板橋氏の要請であったため対応した」と回答。小菅町長は「新聞報道を見て、関連団体の主催と認識した」と説明した。
福島町長も「関連団体の認識不足によるもの」と回答した。渡辺美知太郎那須塩原市長は、イベント出席や祝電の依頼の有無を聞く問いに「分からない」と答えた。
今後について福田知事は「旧統一教会や関連団体との関係性が判明したものには対応しない」とし、他の市町長も「依頼があっても断る」「主催団体を厳格にチェックする」などと回答した。
政治献金やパーティー券購入依頼は全員が「ない」と回答。選挙活動の協力を受けたことがあるかについては、相馬憲一大田原市長と佐藤宇都宮市長、福田知事が「分からない」と回答し、その他は「ない」と答えた。
●旧統一教会関連団体 市に「登録を取り消すべき」との市民の声 9/13
旧統一教会の関連団体が福岡市の施設にボランティア団体として登録されている問題で、今後も利用を認めるかどうかを審議する第三者委員会が設置されました。
この問題は、ボランティア団体などが無料で利用できる福岡市の施設「あすみん」に、旧統一教会の関連団体「世界平和女性連合」が2016年から登録されていたものです。
市には、「登録を取り消すべき」という市民の不安や懸念の声が寄せられていて、高島市長が「市民公益活動推進審議会」に対し、今後も利用を許可するかどうか諮問していました。
きょう開かれた審議会では、弁護士や大学教授らで構成する第三者委員会が新たに設置され年度内に答申をまとめる方針が確認されました。
●「旧統一教会との関与ない」と言っていたのに…自民党の国会議員、虚偽回答 9/13
自民党は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と接点がある党所属の国会議員が、379人のうち179人だったとする調査結果を8日に公表した。この結果を見て、旧統一教会と政治の問題を調べてきた共同通信取材班のメンバーは首をひねった。共同通信が7〜8月に実施した教団との関わりを尋ねるアンケート結果と「数字のずれ」を感じたためだ。
そこで、179人のうち、自民党が「一定の接点があった」として氏名を公表した議員121人が、共同通信のアンケートにはどう対応していたのかを調べてみた。すると、アンケートでは「旧統一教会との関与はない」と否定していた議員が(発表当日の9月8日時点で)5人いることが判明した。さらに、アンケートに答えてくれなかった議員は36人もいた。ほかに、アンケートに「分からない」と答えた議員は16人だった。
もちろん、議員が一報道機関のアンケートに答える義務はない。正直に答える義務もない。ただ、自民党のトップでもある岸田文雄首相はこれまで「政治家の立場から、それぞれ丁寧に説明していくことが大事だ」と繰り返し述べてきた。裏を返せば、これらの議員にとって旧統一教会とは、それほど隠したい、やましい関係だったのかと邪推したくなる。ちなみに、岸田首相自身もアンケートにはいまだに回答していない。
共同通信のアンケートでは集会の出席や献金、選挙支援などいずれにも「関与がない」と答えながら、党の調査では「関与がある」と認めた5人は次の面々だ。
若林洋平参院議員(静岡選挙区)、菅家一郎衆院議員(比例東北)、生稲晃子参院議員(東京選挙区)、盛山正仁衆院議員(比例近畿)、青木一彦参院議員(鳥取・島根選挙区) 5人とも会合であいさつしたことがあるという。盛山氏はアンケートの自由記述欄に「統一教会とおつきあいがなかったので実態がわかりません。案内のパンフレットを見ても統一教会の名前の記載がなく、わかりません」と記していた。
5人とは別に、東国幹衆院議員(北海道6区)は共同通信アンケートに対し、会合に出席したことはないと回答しつつ、自民党の調査には会合に出席してあいさつしていたと反対の回答をしていた。献金や選挙支援などについては「ない」とした5人と違い、「分からない、答えられない」と回答していた。また、共同通信アンケートに回答しない一方で、党の調査に対して教団側との接点を認めた議員は36人いた。この中には、7月の参院選で関連団体の支援を受けたとされ、教団側に「賛同会員」と呼ばれていると説明していた井上義行参院議員(比例)も含まれている。
共同通信アンケートは7月下旬から8月上旬に実施し、自民党は8月下旬から9月上旬に調査していて1カ月の差があった。このため、「アンケートの締め切りまでに調べきれなかったが、後で分かった」という可能性も否定できない。ただ一方で、アンケートの期限内に事務所に保管されている記録や推薦状などを確認し、答えてくれた議員も少なくなかった。回答の有無や記載内容の正確性は、問題への向き合い方を如実に映し出している。
自民党の調査に対しては、379人全員が回答し、結果からは教団側が政権与党に対して広範に接触している実態が判明した。もっとも、この調査自体、十分とは言いがたい。
なぜなら、結果はあくまで議員からの自己申告を集約したに過ぎず、第三者による聞き取りやチェックは経ていないからだ。質問には「秘書やスタッフの受け入れ状況」といった踏み込んだ内容はなく、地方議員も対象になっていないため、全容解明とは程遠い。有権者の判断材料にもなるのに、58人の議員名を公表しなかった対応にも疑問が残る。
また、379人には細田博之衆院議長と尾辻秀久参院議長が「党は離脱中」のため、含まれていない。細田氏について言えば、教団の友好団体の集会でのスピーチなど、複数の接点が指摘されている。亡くなった安倍晋三元首相についても気になるところだ。2021年9月、教団の友好団体「天宙平和連合」のイベントでは、ビデオメッセージを寄せていたが、自民党は、死亡を根拠に実態を十分に把握することには限界があるとして調査の対象外とした。 

 

●旧統一教会の“詭弁”に消費者庁が物言い 消費生活センターの「断り」 9/14
「仮に組織的に行われているのであれば、やめていただきたい」
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関係者が全国の消費生活センターに押しかけ、「(被害者の)相談事例を教えてほしい」と探りを入れていることに関して、消費者庁の新井ゆたか長官は8日、こうクギを刺した。これに対し、教団は訪問目的と関与についてこう釈明している。
「消費生活センターへの相談件数が増え、担当者さまにご迷惑がかかることが予見されるため、おわびとご挨拶にうかがったのが真意です。本部主導で『一斉に回りなさい』と言ったわけではない」(家庭連合広報部)
教団によれば2009年のコンプライアンス宣言後から、本部主導で各地の担当者が消費生活センターを訪問していたが、14年以降、やめることにしたという、そのいきさつをHPでこう説明している。
〈複数のセンターから「相談等があれば連絡しますので、訪問の必要はありません」との申し出があったため、センター訪問を取りやめました〉
消費生活センターからの「相談があれば連絡をする」という提案で訪問を取りやめたという言い分だが、そんなことがあり得るのか。
消費者庁地方協力課の担当者はこう話す。
「相談の段階で事業者に内容を伝えることはありません。『お答えできないので来ないでください』という対応をします。理解というか、受け止め方が違うのでしょう」
では教団が主張する「複数のセンター」とはどこなのか。
「いや、ちょっとそれが分からないんですね。いくつ? それも分からないんです。もしかしたら、『(センターは)あんまり来られても困るので』ということだったのかもしれませんが、窓口の方から『もう来なくていいですよ』と言われたという意味合いです」(家庭連合広報部)
消費生活センターの担当者は、相談内容を詮索する教団関係者にほとほと困っていたのだ。
●小林よしのりが断罪! 櫻井よしこら「自称保守」と統一教会のズブズブの過去 9/14
「いま左翼に『なんで保守が反日思想を認めるんだ』『不思議だね』と言われてしまう始末です。それを言われてしまってはおしまいですよ」
漫画家・小林よしのり氏(69)はこう嘆くしかなかった。
7月8日の安倍晋三元首相(享年67)の銃撃事件で逮捕された山上徹也容疑者(41)が、「安倍元首相と繋がりがあると思った」と語って以降、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の政治権力との“接近”がクローズアップされてきた。
しかし、櫻井よしこ氏(76)や小川榮太郎氏(55)といった安倍元首相に近い言論人たちから、続々と聞こえてきたのは“統一教会擁護”の主張だ。小林氏はそれを一刀両断する。
「“自称保守”は、今回の問題で『信教の自由』『暗殺事件からの論点ずらし』と言っていますが、大前提なのが『統一教会は反日カルトだ』ということですよ。カルト集団が生き延びる術として、権力に擦り寄っていく手法を取ってきたわけです。それをまんまと権力の中枢にまで反日カルトを入り込ませてしまったことに、日本の保守陣営は恥と感じないのか、ということがいちばんの問題です」
9月8日には茂木敏充自民党幹事長(66)が、同党所属の179人もの国会議員が統一教会と関係があったとする調査結果を公表したことが、この問題の根深さを物語っている。
「統一教会と関係があるのは、政権与党の国会議員だけではありません。彼らや安倍元首相の主張に強く賛同してきた言論人も同様です」
こう語るのは、小林氏が主宰する言論シンポジウム「ゴー宣道場」で師範を務める作家の泉美木蘭氏(45)だ。
銃撃事件以降、統一教会系日刊紙「世界日報」の関連団体「世日クラブ」での講演会に着目し、調査。それをもとに小林氏と泉美氏が執筆するメールマガジンで、統一教会の“広告塔言論人”を名指しして批判すると、実業家のひろゆき(西村博之)氏(45)が取り上げるなど、ネット上では大きな話題を呼んだ。
今回、小林氏、泉美氏の監修で掲載するのが、安倍元首相と公私において親しかった言論人たちの「世日クラブ」での講演回数のリストだ。
「かつては『世日クラブ』も家庭・教育関連、朝鮮半島やアジア情勢のテーマでの講演が多かった印象です。しかし、2000年代に入って安倍元首相が政権に関わると、だんだんと安倍政権が推し進めた憲法改正などのテーマが増えていき、元首相と関わりが深い論客が、頻繁に登壇しています。
それだけでなく、統一教会の主張と自民党の政策で言えば、憲法改正での『緊急事態条項の新設』と『自衛隊明記』が合致しています。さらに統一教会は、憲法での『家族保護の文言追加』を掲げているのですが、2012年に自民党が発表した改憲草案にも『家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない』と非常に似た条文が記されています。政権と関わるにつれて、統一教会は自分たちの主張を政策に反映させることができたのではないでしょうか」(泉美氏)
小林氏といえば、オウム真理教を徹底批判し、教団から命を狙われたことでも有名だが、統一教会も自身とは切り離すことのできない「カルト」のひとつだ。「SPA!」(8月16日・23日合併号)の「ゴーマニズム宣言」では、1993年に発表した「集金奴隷」が再録されたが、そこで描かれたとおり、自身の親族も統一教会に入信してしまい、“奪還失敗”した過去がある。
「統一教会の『日本は悪い国だから献金しなければいけない』という教えは、信者に自虐史観がなければ受け入れられません。それを擁護するのは、保守がずっと言ってきた『戦後レジームからの脱却』『戦後教育批判』と矛盾しています。橋下徹氏や三浦瑠麗氏は統一教会の信者獲得について、『宗教のひとつだ』『自己責任だ』と考えている節がありますが、純粋で信仰を求める人は、あっという間に騙されてしまいます。反日思想に洗脳され、カネ集めの命令だけを聞く奴隷になる。保守なら、日本人がその餌食になったことに対して、悔しいと思わないのか」(小林氏)
統一教会報道が過熱するにつれて、「Hanada」「WiLL」「正論」といったオピニオン誌は報道批判を展開し、「Hanada」に至っては「統一教会批判は魔女狩りだ!」という特集を組み、「世界日報特別取材班」の寄稿記事を掲載する始末だ。
「オピニオン誌だって、信者が買ってくれれば商業的にラクになるんだから、統一教会の主張に同調していきますよ。統一教会にとっては、言論人が“広告塔”となってくれることで生き残れるし、集金もやりやすくなる。
わしのゴー宣道場にも統一教会の信者並みの団結力があればいいのに……と思うことがありますよ(笑)。それくらい何かを作るというのはシビア。わしの漫画だって質が落ちたら買ってもらえないし、なんでもかんでも売れるというのはカルトじゃなければあり得ないことです」(同前)
泉美氏は「世日クラブ」の講演会としての“意義”に疑問を投げかける。
「聞きに来る会員は、基本的に信者だと思います。そこの会員にも統一教会から動員がかけられているとしたら、学問的な意義はなく、ただ『統一教会にはこんな知識人が来てくれる』という箔をつけているだけのイベントのように思えます」
最後に小林氏は今回の問題による言論界への影響を憂う。
「たとえば『LGBT』や『夫婦別姓』の問題で賛否いろんな意見が出てくるけど、わしはすべての意見にそれぞれの理屈があると思うんです。でも、統一教会と繋がりがある人の意見は『ただのプロパガンダだ』と思えて、もう信じられなくなった。今まで自称保守が皇室の『女性宮家反対』を唱えてきたけど、それは統一教会の反日思想のもとに皇室を消滅させようとしているんじゃないか…。結局、自称保守は統一教会を利用して自分たちのイデオロギーを浸透させようとした“反日邪教”に過ぎなかったんですよ」
●桜田淳子 2世信者をメーク講習会で指導 教会内部の結束固める特別な立場 9/14
9月8日、自民党は、党所属の国会議員379人と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係について調査結果を公表。179人が過去に接点を持っていたことがわかった。
安倍晋三元首相(享年67)の銃撃事件以降、政治家との関わりが次々に明るみに出るが、それ以前は“統一教会”と聞いて世間がまっさきに思い浮かべるのは、‘92年の合同結婚式だった。桜田淳子(64)ら有名人がこの合同結婚式に参加したことで、統一教会にまつわる当時の報道は過熱したが、いま再び注目が集まる現状に彼女は何を思うのかーー。
桜田は’92年に合同結婚式に参加し、いまも信者を続ける。世間を騒がせて以降は事実上の引退状態だったが、’13年に表舞台に立っている。
「’13年のデビュー40周年イベントで20年ぶりにステージ復帰。一時は芸能活動再開の動きを見せていたのですが、いまは再び沈黙しています」(芸能関係者)
また「’19年の5月ごろ、桜田さんから直接連絡をもらって読み聞かせなどをしていただきました」(秋田にある介護施設の職員)という証言があるように、’17年から’19年ごろには、故郷の秋田に頻繁に帰り、介護施設を慰問するボランティアに励んでいたという。
「実母が認知症を患い、施設に入所しています。それが慰問を始めたきっかけだったようです。実母は、統一教会には反対の立場でした」(前出・芸能関係者)
合同結婚式で結婚した夫との間には3児をもうけた。夫の母は’16年に逝去したが知人によると、
「嫁姑関係は良好でしたが、お姑さんは息子と嫁の桜田さんが統一教会に入信していることには複雑な思いを抱いていました」
周囲が反対し続けても教団にとどまる桜田。旧統一教会の問題に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏は、教団での彼女をこう語る。
「’15年には、教団本部で信者100人ほどを前に講演をしています。また5年ほど前ですが、桜田さんが2世信者にメークやファッションのレクチャーをする、講習会のようなものが開かれたこともあったと聞いています。彼女は教団の関連会社の化粧品のパンフレットにも出ています」
教団の“広告塔”の役割を果たしているといわれてきた桜田だが、
「現在の教団からはもはや桜田さんを“外向き”の広告塔として使おうという気配は感じられません。一方で、“内向き”の活動には積極的です。先述の講演や2世へのメークの講習会は、“あんなに有名な桜田淳子さんが信仰している宗教なんだから間違いないに決まっている”と信者に思わせることで、内部を固める意図があると考えられます」(前出・鈴木氏)
桜田は今後どうなるのか。鈴木氏が予測する。
「今回の事件に端を発して、教団に解散命令が出されたとしても、宗教法人でなくなるだけで実態は変わらない可能性はあります。当然、桜田さんも脱会はしないでしょう。桜田さんには献金ノルマが課されていないはずです。一般の信者とは違う、教団内でも特例のような立場で生きているのです」
桜田は来年、デビュー50周年。果たして公の場に登場するかーー。  
●「安倍氏の国葬反対、政治と統一教会のつながり解明を」 日本基督教団 9/14
京都と滋賀のプロテスタント教会でつくる日本基督教団京都教区は14日までに、安倍晋三元首相の国葬の実施に反対し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治のつながりの解明を求める声明を、岸田文雄首相に送付した。
同教区の今井牧夫議長ら4人の連名で「『国葬』は違憲であり、憲法上の理念とも相いれず、道義的にも手続き的にも納得できない」と批判し、「政界、政治家一人ひとりに根深く浸透している『旧統一教会』との関係を解明すること、政治と宗教の関わり方の議論を社会全体と共に行うことを強く要求する」としている。
●旧統一教会2世の「エリート」が学ぶ、旧統一教会が運営する大学とは 9/14
旧統一教会(世界平和統一家庭連合)発祥の地である韓国では、日本とは対照的に、旧統一教会に関する報道はほぼスルーされている。その背景には、旧統一教会の活動が韓国よりも日本で盛んに行われていること、多くの新興宗教が存在する韓国で旧統一教会はマイナーな存在であることが挙げられる。韓国で大学を経営していることもあまり知られていない。
旧統一教会の大学、著名人も多数
安倍晋三元首相の死去以降、旧統一教会と自民党を中心とした政治家との関係がクローズアップされている。国政のみならず地方政治にまで旧統一教会が深くかかわっていたことが次々と明るみになる中、日本国民の不信感が高まっている。
実は同組織が韓国で大学運営にかかわっていることは、日本ではあまり報道されていない。
その大学の名は鮮文(ソンムン)大学といい、ソウルの南約90キロに位置するアサン市にある。旧統一教会の創始者である故・文鮮明が1972年に大学の前進となる神学校を創立し、1992年に韓国の教育部から4年制大学として認可を受けた。
大学のホームページによると、2022年現在、大学に8242人、大学院には662人の学生が在学している。国際学部や外国語学部、社会福祉学部、神学部、看護学科、スポーツ科学科など幅広い学部・学科を持つ。
過去の在学生や卒業生の名前を見ると、歌手のフィソン(中退)やチョン・ドンハ、日本でも人気の「サイコだけど大丈夫」などに主要キャラとして出演していた俳優のオ・ジョンセといった芸能人やスポーツ選手もいることが分かる。
同大学は、「国際交流」や「グローバル人材の育成」を謳い文句に留学生の受け入れにも熱心で、日本からの留学生が最も多い。これは2世など旧統一教会関係がほとんどであると思われる。また、ベトナムや中国、アフリカ、中南米など世界各地からの留学生も学んでいる。
大学自体は宗教色を前面に出さず、信者であることが必須の入学条件ではない。韓国での位置付けも「地方の中堅大学」といった印象だ。
韓国で「2世」は生え抜きのエリート
30年前に世間を騒がせた芸能人も参加した「合同結婚式」や「霊感商法」に加え、今回の事件で注目されているのが「2世」と呼ばれる子どもたちの存在である。
日本では、山上徹也容疑者と同様に、親が旧統一教会にのめり込んだことで一家離散など家庭崩壊を招いたり、精神的なトラウマを抱えたりするケースなど、2世たちの苦しみの声が続々と取り上げられている。
しかし、韓国では、こうした問題はほとんど報道されていない。
筆者が韓国生活を送る中で、これまで多くの旧統一教会の信者と接する機会があった。韓国で生活する旧統一教会の日本人信者は、想像以上に多いと感じる。
特に印象に残っているのは、両親が旧統一教会に入信し、合同結婚式で結ばれ、生まれた子どもたちは、2世の中でも「生え抜き」として特に有望視されていることである。
教会や親の意向により、中学や高校で韓国に渡り、旧統一教会関連の施設で下宿をしながら現地の学校に通い、最終的に鮮文大学に進学したという2世も多く知っている。
卒業後は、韓国語が堪能であることを生かして、日本に進出している韓国系企業や旧統一教会系の企業に就職する。最終的には教会を通じて結婚する。こうした生え抜きの2世同士はつながりが深く、結束が固いというのも特徴である。
こうした話を聞いていると、「2世問題」も単純ではなく、2世の中にも差があるようだ。日本での反応が大きくなっている背景には、日本人の宗教アレルギーがあるのかもしれない。韓国では、新興宗教が多く、そのほとんどが会社を経営し、ビジネスを展開することも珍しくない。
「旧統一教会信者信者だから」「2世だから」という理由だけで、一方的な偏見や誹謗中傷はすべきではないだろう。その反面、旧統一教会に問題があることもまた事実だ。
いずれにせよ、加熱報道に煽られるのではなく、被害実態を明らかにし、政治と宗教の関係について今一度考える必要があると言えよう。
●教団との関係、自民内から「安倍・細田両氏を調べないのは不十分」 9/14
自民党が党所属国会議員に求めた「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」や関連団体との関係の点検と報告について、村上誠一郎元行革相が13日の党総務会で「不平等で不十分だ」と指摘していたことを明かした。村上氏が14日に取材に語った。
村上氏は総務会で、党本部が取りまとめて公表した今回のやり方が議員本人の申告に基づいている点を挙げ、「本人が関係ないと申告すれば表にはでない仕組みだ」と、調査として手法に問題があると指摘した。
さらに教団側との様々な接点が取りざたされている安倍晋三元首相や、関連団体の会合に参加していたことがわかっている細田博之・衆院議長が報告の対象外だったことも問題視。「調べ方が不十分だ」として、総務会に出席していた上川陽子幹事長代理に、改めて対応を検討するよう要請したという。
関係者によると、13日の総務会では安倍氏の国葬を決めた手続きや教団との関係見直しについて、石破茂元幹事長らから党執行部に注文や苦言が相次いでいた。
●旧統一教会に「解散命令」を 宗教法人法に基づき 立民・安住氏 9/14
立憲民主党の安住淳国対委員長は14日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)について「適格性に大変な疑念がある。(党内は)宗教法人法に基づいて解散の手続きを裁判所に起こすべきだとの意見が大勢だ」と述べ、解散命令請求を政府に求めていく考えを示した。
国会内で記者団の質問に答えた。
宗教法人法は、宗教法人が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などをした場合、文化庁などの請求により、裁判所が解散を命令できると規定。これまでに解散命令は、地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教など2例ある。

 

●銃撃事件後に増した宗教2世の「どこかおかしい」という感覚 電話相談 9/15
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の被害に関する政府の合同電話窓口の運用が今月5日から始まり、9日までの5日間で計1002件の相談があった。
内容は金銭トラブルの相談が多く、生活困窮に関するものや、親族に信者がいることへの相談などが寄せられた。相談者は現役信者、元信者、信者の家族など。運用開始当初は電話がつながりにくい状況だったため、態勢を強化して対応したという。電話相談は内容に応じて8つの省庁で分担し、専門の相談先を紹介している。
法務省人権擁護局の担当者がこう説明する。
「高価な物品を買わされたという相談なら消費者庁が対応し、詐欺や監禁被害なら警察庁です。児童虐待、生活困窮は厚労省で、信者の子どもという理由でいじめに遭っていたら、文科省になります。差別やネットの誹謗中傷などの人権相談や弁護士費用の立て替え、弁護士の紹介などの相談は法務省が受けています。総務省はどこに相談していいか分からないとか、全体を補完する位置付けです。先週はひっきりなしに電話がかかってきていましたので、それだけお困りになっている人が多いのだと思います」
これまで70人以上の旧統一教会の信者を脱会させてきた日本基督教団京葉中部教会の山本光一牧師がこう指摘する。
「相談件数はかなり多いですね。相談を受けている経験から言うと、相談者の多くが宗教2世だと思います。生活困窮者などはまさにそうです。宗教1世の家庭は経済的に悲惨な状態になっていますから。生活が苦しいという相談が増えているのは、銃撃事件以降の傾向です。その点では統一教会はかなり焦っているでしょう。追いつめられていると思います」
洗脳された1世とは明らかに違う感覚
宗教2世には、1世と違ったある特徴が見られるという。
「統一教会では、堕落した人間が再び神の側に戻ることを『蕩減復帰』と呼び、これを徹底的に教え込みます。いくつかある蕩減復帰のうち一番有名なのが『万物復帰』で、サタンに支配されているお金や財産をお父様・文鮮明に返します。そのため、信者は一生懸命献金を捧げ、霊感商法に金を使う。そうすればみんなが幸福になると、心から願っている。ところが宗教2世は『ちょっとおかしいぞ』『両親が信者で世間に迷惑をかけているのではないか』という感覚を持っているのです。中には『もし教祖の韓鶴子が本当にメシアだったらどうしよう』と、まだ気持ちの整理がつかない宗教2世もいますが、完全に洗脳された宗教1世とは明らかに違う感覚です。ただ両親を含め、周囲も同じような環境なので本人が疑問を抱いても、周りはそう思っていないので指摘できない。だから第三者に『おかしい』と言ってほしいのです。それが相談につながっています」(山本牧師)
次代を担う宗教2世に逃げられたら、旧統一教会にとって大打撃になること間違いない。
●統一教会が北朝鮮に献上した5000億円 文鮮明か金日成に「お兄さん・・・」 9/15
「反共」「勝共」を掲げ、日本の保守勢力と結びついた統一教会。しかし日本が北朝鮮による拉致被害などで制裁へと突き進む1990年代に同国への莫大な資金提供を繰り返す。取材から浮び上がる「偽りの保守」の姿とは。
北朝鮮と統一教会の関係
韓国・ソウルから車で約2時間。京畿道加平郡の山間部に聳える「清心平和ワールドセンター」は、合同結婚式の会場にも使用される統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の大型イベント施設だ。後に山上徹也容疑者の暴発を招いたとされる、安倍晋三元首相がビデオメッセージを送った教団関連団体の行事が開催された場所でもある。
今年の夏、同施設正面の外壁に、巨大な3枚の垂れ幕が掲げられた。ハングルで〈平和と統一の先駆者〉と綴られた中央の垂れ幕。その写真の中で、教団創始者の文鮮明氏と満面の笑みで抱擁を交わしているのが、北朝鮮の初代最高指導者・金日成氏である。
「2012年の文氏の死去から9月で10年。それに合わせて北朝鮮は、8月13日、国の対外関係窓口である朝鮮アジア太平洋平和委員会を通じ、文氏の妻で総裁の韓鶴子氏(79)ら遺族宛てに弔電を送っている。文氏の功績を称える内容で、今も北朝鮮と統一教会が良好な関係にあることを示唆しています」(外信部記者)
反共産主義を掲げてきた文氏の統一教会は、ある時を境に北朝鮮と手を結んだ。そこには、どんな思惑があったのか。
政治団体「国際勝共連合」を結成
文氏は1920年、現・北朝鮮領定州の農村で生を享けた。キリスト教長老派の信者だった文氏が北朝鮮で宣教を始めたのは、日本による朝鮮統治が終わった翌年46年5月。だが、その2カ月後、朝鮮共産党に南側(韓国)のスパイ容疑をかけられ、逮捕される。
文氏の生涯に触れた教団の動画では、当時の状況がこう紹介されている。
〈監獄では自白を強要され数限りなく殴りつけられました〉
興南監獄に収監され、重労働に服していた文氏は、50年の朝鮮戦争に乗じて出獄。54年、ソウルで統一教会を創始すると、5年後には日本でも同教団を設立する(宗教法人の認可は64年)。そして68年、韓国と日本で反共産主義を掲げた政治団体「国際勝共連合」を結成するのである。
迫害された恨みを根に反共を掲げてきた文氏にとって、同じ民族の北朝鮮、国を率いる金日成主席は、長らく打倒の対象だった。
「自由世界と韓国の名をもって、金日成と共産主義国家らを打ち倒すために命懸けで闘いましょう」(75年6月・ソウルでの演説)
勝共連合は、同じく「反共」の岸信介元首相ら日本の保守政治家と共鳴し、彼らとの関係を濃密なものにしていく。
北朝鮮の狙いとは
そこから劇的な転換を迎えたのは、91年のことだった。文氏が北朝鮮を電撃訪問したのだ。
朝鮮半島事情に詳しい研究者が解説する。
「91年は、ソ連と東欧社会主義体制が崩壊し、北朝鮮が国際的な孤立を深めていた時期です。北朝鮮出身の文氏としては、故郷に錦を飾りたい思いもあったでしょう」
文夫妻ら統一教会一行の訪朝は、同年11月30日から12月7日の8日間。約40年ぶりに故郷の地を踏んだ文氏は、生き別れていた姉妹ら親族と再会し、定州に残る生家も訪ねた。
だが、北朝鮮の狙いは統一教会の潤沢な資金にあった。一方の文氏も、冷戦終結を機に、打倒ではなく経済援助によって北朝鮮に食い込もうと目論んだ。
金正日の教育係になった文氏
当時を知る教団関係者が打ち明ける。
「極秘の予備交渉で、北朝鮮側は、文氏を受け入れる条件として1億5000万ドルの献金を求めました。統一教会側はその23倍にあたる総額35億ドルの資金援助を提示。当時の韓国政府も知らなかった文氏の平壌入りが実現したのです」
日本円にして、約5000億円。その原資が日本を中心とした信者の献金や霊感商法による利益であるのは言うまでもない。
そして12月6日に行われた金氏との会談で、文氏は北朝鮮の観光開発や経済協力等を約束。冒頭で紹介した垂れ幕の写真は、この時に撮影されたものだ。
歴史的な対面を果たした2人は、その場で義兄弟の契りを交わした。年齢は金氏が8つ年上。会談で交わされたやりとりを、統一教会の大江益夫広報部長(当時)は後々、小誌にこう明かしている。
「文先生は『私のお兄さんになってください』と言い、金主席が『いいでしょう』と答えたそうです。そこで文先生が『私たちは義兄弟です。お兄さんに頼みがある。これからはあなたの息子(金正日氏のこと)の教育を私たちに任せてください』と言いました。金主席は『分かりました』と答えたんです」(94年7月28日号)
当時、統一教会の信者だったジャーナリストの多田文明氏は、文氏の方針転換をこう受け止めたという。
「それまで北朝鮮は『サタンの国』という位置付けでした。統一教会には『恩讐を愛する』という教えがあり、金氏との会談は『そのサタンがメシアの愛によって屈服した。さすがメシアだ』というのが、当時の信者たちの感覚です。これを機に文氏が南北統一を果たすのではないかとすら思いました。実際はお金の力だったわけですが……」
文氏の故郷を訪ねる信者向けの“聖地巡礼ツアー”が盛んに
トップ会談を経て統一教会は、北朝鮮経済に深く浸透していく。平壌市にある国営の普通江ホテルや大型レストラン安山館の経営権を手中に収め、後に礼拝堂を完備した世界平和センターも市内に建設する。
「普通江ホテルは、韓国出身の女性実業家の『マダムパク』こと朴敬允氏が会長を務める『金剛山国際グループ』が経営していましたが、総支配人や従業員は統一教会の信者でした。91年に名古屋と平壌を結ぶ空路直行便を開拓し、北朝鮮政府に代わってビザを発給していたのも同グループです」(前出・教団関係者)
こうして90年代以降、文氏の故郷を訪ねる信者向けの“聖地巡礼ツアー”も盛んに行われるようになった。北朝鮮は新たな集金手段となったのだ。
「ツアーを担当するのは統一教会系の旅行会社で、旅費は当時30万円弱。“聖地”の近くに世界平和公園が造成され、文氏の生家には『聖金函』と書かれた献金用の壺が用意されていました。多い人だと、献金額は100万円程度。“聖地”が誕生した直後の90年代前半頃は、日本から年間約1000人の信者が訪れたとされています」(同前)
統一教会は「現在、平安北道定州巡礼ツアーは開催されておりません。世界的にコロナ感染症が蔓延する中、再開の目途も立っておりません。参加規模はその時々で異なり、開催自体不定期でしたので、頻度というかたちでお答えすることはできません」と回答した。
統一教会は宗教と産業の宗産複合体
一方、北朝鮮の軍事方面に統一教会の影がチラついたことも。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が「ロシアから北朝鮮に老朽化した潜水艦が売却される」と報じたのは、94年1月のことだ。この取引を仲介したのは、91年に設立された日本の小さな商社T。日本に帰化した韓国出身の社長以下、4人の役員全員が合同結婚式に参加している統一教会の信者だったのだ。
在日韓国人3世で、ジャーナリストの李策氏は話す。
「T社は仲介の目的を『スクラップにして、鉄くずを中国に転売する』と主張しましたが、この時、国内に持ち込まれたロシア製潜水艦の技術が、後の北朝鮮によるSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の開発に繋がったのではないかとも言われています」
その年7月8日、金氏が82歳で死去すると、北朝鮮政府は文氏に葬儀出席の招待状を送る。文氏は北京の北朝鮮大使館に弔花を届け、13日には側近で韓国『世界日報』社長の朴普煕氏が訪朝し、告別式と追悼式に参列。朴氏は、金主席の死去後に初めて訪朝した韓国人だった。
金正日体制に移行後も、統一教会との蜜月関係は続いた。ジャーナリストの有田芳生氏が指摘する。
「統一教会は、韓国では経済団体の側面が強い。宗教と産業の宗産複合体です。文氏は経済協力を約束して訪朝を果たしましたが、統一教会が出資して、北朝鮮との合弁企業『平和自動車』を設立したのは98年。社長に就任したのが統一教会幹部の朴相権氏でした」
北朝鮮で自動車を製造する
ベースは、イタリアのフィアット社製の小型セダン車。2002年4月、北朝鮮南浦市の工業団地に組み立て工場が完成し、操業が始まった。北朝鮮国産自動車第1号に命名されたのは「口笛(フィパラム)」。平壌市内に初の商業看板が設置され、話題を呼んだ。
他方、日本では1970年代から80年代にかけて、北朝鮮による拉致が繰り返され、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」が結成されたのは97年のこと。保守政治家はこぞって拉致問題を政治課題として取り上げるようになった。
「98年にテポドン1号が日本海に向けて発射されると世論は反北朝鮮で沸騰。食糧援助の凍結や経済交流の停止など、北朝鮮への独自の制裁に舵を切りました」(政治部記者)
その裏で、統一教会は日本人を中心に吸い上げた金を、北朝鮮に援助し続けていたのである。
だが、やがてダイナミックな連携もなくなり、2011年12月には、金正日氏が他界。翌12年9月3日、朝鮮半島統一を夢見た文氏も、92歳で生涯を終えた。
長らく掲げてきた「反共」は看板だけだったのか
金正恩氏が後を継いだ北朝鮮側は同7日、平壌の万寿台議事堂で文氏に「祖国統一賞」を授与する行事を開催。統一教会側からは文氏の7男・亨進世界会長が出席した。
「その2カ月後、平和自動車社長の朴相権氏は、会社の経営権を北朝鮮に無償譲渡し、自動車事業から撤退しました。統一教会が関わってきた普通江ホテルや安山館の経営権も、北朝鮮に戻しています」(前出・教団関係者)
以降は、文氏の死去から1年の13年、3年の15年、そして今年と、北朝鮮から統一教会側へ弔電を送る、形式的なやりとりが続いている。
「総裁の韓鶴子氏は、文氏ほど北朝鮮に関心がないようです」(前出・李策氏)
ただ、北朝鮮のロイヤルファミリーが3代にわたって、統一教会との関係を維持しているのは事実だ。13年には、金正恩氏から統一教会側に北朝鮮産の豊山犬2匹が贈られたことも分かっている。雌雄の犬は共に北朝鮮で生まれた文夫妻の故郷に因んで「定州」「安州」と名づけられた。
これまで対北事業に莫大な投資をしてきた統一教会。前出の多田氏が指摘する。
「統一教会は長らく反共を掲げてきながら、『愛』という理屈で北朝鮮と手を結んだ。そして、反日の立場でありながら、日本の保守政治家を支援し、味方につける。機を見るに敏ともいえますが、要はご都合主義なんです」
日本の保守が群がった文氏の「反共」は看板だけのものだったのである。
●山上容疑者の銃弾で変わった日本は「とっくにテロに屈している」という現実 9/15
山上容疑者の「一人勝ち」は「日本はテロに屈した」ということ
「まさか、ここまでうまくいくとは思わなかったな」と、拘置所の山上徹也容疑者はそんな風にほくそ笑んでいるかもしれない。
自分が事件を起こすまでは誰も見向きもしなかった旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の悪質性に国民の関心が集まり、激しく糾弾されるようになっているからだ。
安倍元首相殺害の動機については未だに明らかになっていないが、山上容疑者が自身の家庭を崩壊させた旧統一教会に深い恨みを抱いていたことは間違いない。その怨恨が事件にも影響を与えたと言われている。
つまり、旧統一教会を徹底糾弾する今の日本社会は、山上容疑者が夢にまで見た理想の世界なのだ。拘置所で新聞や週刊誌を読んだ彼は、自分が成し遂げた「完全勝利」に酔いしれているに違いない。
「あんな卑劣な犯行をして極刑だと言われているのに、勝ったも負けたもないだろ」と思うかもしれないが、安倍元首相の殺害から旧統一教会問題まで冷静に振り返ると、どう見ても山上容疑者の「一人勝ち」だ。
真相が明らかになればなるほど、教団だけではなく、日本政府、警察、政治家、マスコミなどが国民の信用を失っているのに対して、山上容疑者だけは評価が上がっているからだ。
同情論はもちろん、英雄視するような声まで出てきて、減刑の嘆願やカンパも日増しに増えている。また、手記の出版や、彼を主人公とした映画などの「メディア化」の動きも盛り上がっている。死屍累々の旧統一教会問題で、山上容疑者だけが「得」をしている。
これは、日本的にはこれはかなりマズい。「山上容疑者の一人勝ち」という現象は、「日本はテロに屈している」という事実を我々国民が受け入れてしまっていることでもあるからだ。
政治家は叩かれ、容疑者は同情されるという構図
現時点で犯行は思想信条によるものではないとされるが、旧統一教会に対する憎悪を社会に喚起するために関係の深い安倍元首相を殺したというなら「テロ」と言えなくもない。事件が引き起こした恐怖と衝撃で世論がガラリと変わって、自民党や政府も何十年も続けてきた教団との関係を見直さざるをえなくなった。誤解を恐れずに言ってしまうと、山上容疑者は「この国の不条理を変えるには、実は暴力が最も効果がある」と身をもって証明したのだ。
そんな「テロリスト」がこの国では「一人勝ち」となっている。冷静に考えると、民主主義国家としてこれはかなりヤバい事態ではないか。
テロの標的にされた政治家たちはボロカスに叩かれているのに、テロを起こした張本人は、家庭環境が不幸ということで「気の毒に」と同情され、多くのマスコミも「そこまで追いつめられるのもわからんでもない」と心情に理解が示されている。そんな社会はもはや「テロに屈している」と言ってもいい。
もちろん、「私は山上容疑者がやったことは絶対に許さないし、同情もしない」と主張される人も多いだろう。しかし、個々の感情はさておき、今の日本社会の状況を客観的に見れば、山上容疑者だけが「一人勝ち」している事実は否定できないだろう。
まず今回の問題で、日本政府と警察のメンツが丸つぶれになったことは説明の必要もない。元首相が背中から、至近距離で2回撃たれるというのは「平和ボケ」の謗りを受けてもしょうがない大失態だ。
また、取り繕うように「国葬」をぶちまけたことも事態をさらに悪化している。旧統一教会を「反社会的」と断罪しながら、そこと最も親密なイメージのある安倍元首相を「国家の英雄」に持ち上げるという矛盾は、多くの国民をシラけさせてしまっているのだ。
一方、自民党も大ダメージだ。岸信介元首相の時代からの旧統一教会とのズブズブの関係が明らかになったことを受けて、戦後政治の実績や、保守政党としての主張にも懐疑的な目を向けられている。アンケートで全議員に旧統一教会との関係を「点検」させたことも逆効果だった。
さらに、マスコミも同様で、紀藤正樹弁護士や鈴木エイト氏のように旧統一教会問題に地道に取り組んできた人々に注目が集まるほど、「で、これまでマスコミは何をしていたの?」と白い目で見られている。つまり、1990年代に芸能人の合同結婚式でお祭り騒ぎをした以降、この問題をスルーし続けて、むしろ、一部メディアなど教団の関連団体を好意的に扱うなどの「良好な関係」があったことが徐々にバレてしまっているのだ。
そんな感じで、深く追及すればするほど政治やマスコミのイメージダウンが進行していく旧統一教会問題の中で、唯一イメージが爆上りしているのが山上容疑者だ。
同情と人気で「第二の永山則夫」に?
事件直後、山上容疑者の不幸な家庭環境が明らかになると「殺人は決して肯定されるものではないが気の毒すぎる」と同情論が盛り上がり、「ハイスペックな塩顔イケメン」などと持ち上げる「山上ガール」なるファンまでできた。これまでの大事件の犯人のパターンでいえば、今後は熱心な支援者と「獄中結婚」をするはずだ。
さらに旧統一教会の高額献金や宗教2世の問題が注目を集めたことで、ついには減刑を求める署名活動がスタート、今月14日16時時点で8433人が賛同している。また、カンパも集まっており、時事通信が9月8日に報じたところでは、全国から100万円を超える現金が差し入れられている。
このような「山上人気」をメディアが放っておくわけがない。
もし山上容疑者が「なぜ僕は安倍元首相を殺そうと思ったのか」なんて手記を出せばベストセラー間違いなしだ。当然、多くの出版社が拘置所に「口説き」の手紙を送っていることだろう。手記には壮絶な少年時代や、家族が崩壊していくストーリーなども語られているはずなので、ドラマ化もありえる。テレビ関係者も熱い視線を送っているはずだ。
また、山上容疑者に対して、「不幸な境遇が犯罪に走らせてしまった」「犯行前に知人に送ったメールを見ると文才がある」なんて評価もあるので、純文学の作家としてデビューをさせることを考えている人々もいるだろう。
1968年に連続射殺事件を起こした元死刑囚・永山則夫のケースもあるからだ。
年配の方は覚えているかもしれないが、永山則夫も幼い頃からネグレクトを受けて、壮絶な貧困の中で育ったことで、逮捕後に一部から同情論がわき上がった。その後、獄中で数々の作品を執筆したことで、国際的にも高い評価を受けて、日本の死刑廃止論議にも大きな影響を及ぼした。
「旧統一教会さえなければいい人生を送っていたに違いない」と同情の声が多く寄せられる山上容疑者は、「第二の永山則夫」になるだけの条件はそろっているのだ。
そこに加えて、既に山上容疑者をモデルにした映画が制作されており、安倍氏の国葬当日から公開されるという。監督は「日本赤軍」の元メンバーということで、暴力革命的なことを遠回しに肯定しているのかと思いきやそうではなく、あくまで「国民的な議論」を活性化することが目的だという。
このような「山上コンテンツ」がこれから大量につくられていくはずだ。中には「やったことは悪いことだけれど」という前置きを付けながらも、「悲劇のヒーロー」という扱いをする作品も出てくるだろう。
すべて旧統一教会のせいにして「模倣犯」も擁護する?
「そんな風に持ち上げるのは特定のイデオロギーの人たちだけだろ」と思うかもしれないが、そんなことはない。マスコミもかなり山上容疑者を擁護している。
例えば、ワイドショーやネットメディアでは、旧統一教会への糾弾がキラーコンテンツとなっているので、少しでも異なる意見を言うと、「カルトを擁護するのか!」「被害者無視だ!」という嵐のようなバッシングを受ける。だから、有識者や専門家も面倒になり、沈黙し始めている。
本件にまつわる法整備がなされないのは、政治がさまざまな宗教団体の集票力に依存せざるを得ないという構造的な問題があるからだ。しかし、そういう複雑な話はスルーされて、「とにかく旧統一教会が悪い」「反日カルトを日本から追い出せ」というシンプルかつ、感情的なバッシングをすると、「さすが」とほめ称えられるムードが強くなっているのだ。
こうなると、山上容疑者のイメージはさらに良くなっていく。とにかく悪いのは旧統一教会なので、その悪事を世に知らしめた山上容疑者に対して内心、「手段は間違っていたが、やったことは正しいこと」と評価をする人が増えていっているのだ。
さて、ここまで「山上容疑者の一人勝ち」という状況を説明したが、なぜそれを筆者が問題視しているのかというと、「模倣犯」が増えていく恐れがあるからだ。
例えば今、自民党への怒りがおさまらないという人も多いことだろう。旧統一教会との関わりを「自己申告」でサラッと終えて、安倍元首相との関係は「お亡くなりになったので調べられません」とお茶を濁していることに、多くの国民が失望している。
そこで想像していただきたい。そんな社会ムードの中で、またしても山上容疑者のように旧統一教会によって人生を狂わされた人物が、自民党議員に対して「卑劣なテロ」をしたとしよう。
この人物も親が高額なお布施をして極貧生活を強いられてきた。社会の中で誰からも手を差し伸べられず、家族の中には自殺した人もいる。山上容疑者の犯行によって、自民党も変わってくれるに違いないと期待をしたが、今回の調査でガッカリした。そこで旧統一教会をさらに追いつめるために犯行に及んだ――と供述をした。
では、この人物を我々は「テロリスト」や「模倣犯」として断罪できるだろうか。
できるわけがない。ワイドショーのコメンテーターは山上容疑者の時と同じように、「暴力は絶対に肯定はできませんが」と前置きをして、自民党の自浄作用のなさ、旧統一教会への生ぬるい対応が招いた悲劇として、この人物を擁護していくのではないか。
これが筆者が先ほどから言っている、「テロに屈している」ということだ。暴力で物事を解決した人の心情に寄り添い、そこまで追いつめられたことに同情し、そこに一定の「正義」を感じてしまっているのだ。
一発の銃弾で変わった社会、国葬は大丈夫か
これまで旧統一教会と政治の関係をマスコミは沈黙していたが、週刊誌やネットでは割と当たり前に語られていた。山上容疑者もそういうところから情報を得ていたのだ。
ただ、そういうところで当たり前に語られていても、テレビや新聞では取り上げられないし、実際の選挙では「景気」や「介護」「教育」とか争点になるので、そんなことは誰も問題視しない。
そんな「日本社会の不条理」を山上容疑者は「暴力」によってガラリと変えた。安倍元首相を殺害することで、旧統一教会の問題はテレビや新聞が追いかけて、政府や自民党が謝罪に追われる最重要課題となったのである。
暴力によって世界は変えられることを、山上容疑者は証明してしまったのだ。
山上容疑者のように不幸な境遇で、社会の不条理に対してマグマのように怒りを抱えている人々にとって、こんな痛快な話はないだろう。「だったらオレも山上容疑者のように」と思い立つ人間がいてもおかしくはない。そして、これはマスコミの責任だと筆者は考えている。
海外では自爆テロ犯や、銃乱射事件の犯人などの心情などの内面をメディアは無責任に報道をしない。犯人の人間性に魅力を感じたり、共感をしてしまったりして、模倣犯を生んでしまうからだ。
しかし、日本のマスコミにそういう配慮はない。山上容疑者の心情に寄り添い、彼がどれだけ苦しみ、悩んだかを積極的に報じている。報道する側は「旧統一教会を糾弾するために必要な情報だ」と思っているのだろうが、実はそれは山上容疑者のような不幸な家庭環境や生い立ちの人々に「成功事例」を紹介して、「山上容疑者が許されるならオレだって」というテロ予備軍をつくっている恐れがあるのだ。
今、筆者が一番心配しているのは「国葬」だ。
賛成している人たちは「テロに屈しないということを世界に示すためにも国葬だ」と言うが、「社会の不条理を暴力で変えていこう」という発想の人からすれば、むしろ逆だ。旧統一教会と親密な関係があった安倍元首相を「国葬」にするということは、日本社会の不条理を象徴するような話だ。もしこの舞台で再び「暴力テロ」を起こせば、安倍元首相殺害と同等のインパクトを社会に与えることができる。
国家権力はもちろん、自民党や保守勢力などのメンツは丸つぶれだ。そして、もし犯人が山上容疑者のように、社会の不条理で苦しんでいるような弱者だったら、同情論も盛り上がる。今回の旧統一教会問題のように国民的議論に発展させていくことができる。
もちろん、杞憂に終わることを願っているが、「国葬」以降も油断はできない。
これから日本には第二、第三の山上容疑者が増えていくのではないか。
●旧統一教会めぐる報道否定 自民・下村氏「撤回求める」  9/15
自民党の下村元政調会長は14日、旧統一教会関係者からの陳情を党の公約に反映させるよう指示した疑いがあるとする報道を否定し、「断固抗議し、撤回を求める」と述べた。
自民党・下村元政調会長「統一教会系団体から陳情を受けた事実はなく、党公約に入れろといった指示もしていない」
「文春オンライン」は、下村氏が政調会長だった2021年、「旧統一教会の関連団体幹部から家庭教育支援法等の陳情を受け、党の公約に反映させるよう指示を出した疑いがある」などと報じた。
下村氏は、家庭教育支援法について、「2017年の公約に制定を目指すことがすでに明記されていた」と説明し、「この法案は統一教会本部または関係団体からそもそも要望もされていない」などと事実関係を否定した。
●反社会的な宗教規制、政権慎重 野党は法整備を主張―旧統一教会 9/15
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる問題に世論の批判が集まる中、フランスの「セクト規制法」を参考に、反社会的な宗教団体を規制する法整備を目指す動きが、野党内で活発化してきた。ただ、公明党は慎重な姿勢を崩さず、自民党もこれをおもんぱかってか議論に及び腰だ。
公明党の山口那津男代表は14日、法整備の是非について「効果的かどうか慎重に考えるべきだ」と記者団に言明。「今回は宗教団体に限らず、社会的な問題を抱える団体が問われている」と述べ、消費者契約法などで対応すべきだと強調した。
フランスでは、新興宗教の信者による集団自殺などが社会問題化したことを受け、2001年に規制法が制定された。カルト宗教を「参加者への心理的・身体的隷属を醸成、維持し、活用する法人」と規定。一定の条件を満たせば、入会勧誘制限や解散宣告を可能にしている。
公明党の竹内譲政調会長は14日の記者会見で「実際の解散宣告は1件もない」と指摘。信教の自由などにも触れつつ、「今ある法律で十分対応できる」と慎重論を唱えた。同党の支持母体は宗教団体の創価学会で、党関係者は「法規制の議論など困る」と漏らす。
自民党も消極的だ。連立を組む公明党に加え、自民党を支持する宗教団体への配慮が背景にあるとみられる。
自民党幹部は14日、新たな法整備について「難しい」と語った。岸田文雄首相も先の国会審議で「今の法令の中で何ができるか最大限追求した上で、議論を進めるべき課題だ」と述べるにとどめている。
これに対し、立憲民主党は「カルト被害防止・救済法案(仮称)」の国会提出を目指している。高額献金や霊感商法をめぐり、悪質な勧誘に刑事罰を科したり、契約を取り消したりできるようにする内容。13日の「次の内閣」で骨格を了承した。
立民の安住淳国対委員長は14日、記者団に「高額献金や霊感商法は規制し、大きな網をかけなければいけない」と強調。野党各党に共闘を呼び掛けており、日本維新の会の藤田文武幹事長は記者会見で「宗教団体を取り巻く法整備に着手すべきだ」と足並みをそろえた。
●嘘つき山際大臣を「生かさず殺さず」餌食に…現役信者の“告発証言” 9/15
現役信者による「点検漏れ」の告発だ。旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の信者が東京新聞の取材に応じ、教団側の指示で山際経済再生相の選挙を長年、ボランティアで支援してきたと明言。自民党が公表した所属国会議員と教団の接点に関する点検結果の「選挙支援」の欄に、山際氏の名前はなかった。なぜ信者は、山際氏が不利となる証言をしたのか。教団側の狙いを探る。
証言したのは、山際氏の選挙区(神奈川18区)内の川崎市に住む60代の男性信者。山際氏と個人のつながりはないが、初当選した2003年の衆院選から支援を始めたという。東京新聞は14日付の紙面で信者の告発をこう伝えた。
〈教団の関連団体「世界平和連合」を通じて街頭演説に動員され、山際氏の秘書の指示を仰ぎながら、自民党員と一緒にビラ配りをした。戸別訪問やポスター張りをした選挙もあった。選挙事務所で投票依頼の電話をかけた仲間もいた〉
昨年10月の衆院選でも、川崎市内の溝口神社での出陣式と東急溝の口駅前の街頭演説の計3回、平和連合の仲間と一緒に顔を出し、ビラも配布。平和連合からは「選挙区は山際氏、比例は自民党」と投票先の指示があったという。
教団の友好団体のイベント出席のため、ネパールまで飛んだ山際氏は党の自主点検で「関連団体の会合に出席し、あいさつ」「会合に出席し、講演」の2項目に「あり」と報告。名前も公開されたが、選挙のボランティア支援については「個人の内心の自由は最大限、尊重すべき」「どのような宗教を信じてらっしゃるかということは、今まで一度も確認したことはない」とゴマカシ続けてきた。
不利な証言に込めた教団側のメッセージ
まるで現役信者に“刺された”格好だが、気になる点もある。「当該団体とは一切関係を持たない」と教団との決別を宣言した山際氏に対し、男性信者は不利な証言をしながら〈信教の自由を保障してほしい〉〈私たちの理想はまだ実現していないので、山際氏への支援は続けたい〉とエールを送っていることだ。
「男性信者が旧統一教会のコントロール下にあることをにおわす発言です」と言うのは、旧統一教会問題を追及するジャーナリストの鈴木エイト氏だ。こう続ける。
「萩生田政調会長と教団との仲に関し、現役信者が『八王子市議時代から付き合いがある』と証言した際も感じましたが、今回も教団側の指示によるリークの可能性があります。狙いは教団の体制維持で、宗教法人解散命令の請求に発展しないよう取り計らってくださいよ、というメッセージ。証言した信者は指示を出した秘書と教団との関係や、選挙支援が『教団丸抱え』だったのかなど肝心な要素は明かしていません。教団側も決定的な材料を漏らし、山際氏の政治生命を終わらせてしまえば共倒れ。現役大臣の方が使いでもある。『点検漏れ』程度では党内の処分対象にならないと踏んで、山際氏を生かさず殺さず、教団側が首根っこを押さえている印象です」
日刊ゲンダイが山際事務所に改めて見解を問うと「自主点検には〈選挙におけるボランティア支援をして下さった方々の中に、関係者がいたかどうかは確認していないため不明〉と回答。また、関連団体から組織的に選挙活動の支援を受けたり、依頼したことはありません」と文書でコメントした。
秋の臨時国会で山際氏が集中砲火を浴びるのは必至。教団だけでなく、野党の「餌食」となる。 
●紀藤弁護士が旧統一教会対策の関係省庁連絡会議をバッサリ 9/15
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を長年追及しているリンク総合法律事務所所長の紀藤正樹弁護士(61)が15日、都内の日本記者クラブで会見し、与野党の旧統一教会問題への取り組みの現状を説明した。
安倍晋三元首相の銃撃事件後、旧統一教会の問題が再び脚光を浴び、紀藤氏はテレビやメディアに引っ張りダコになっている。国政政党からもこれまで立憲民主党、日本維新の会、公明党、国民民主党、共産党のヒアリングに協力し、問題の解決を訴えていた。
政府与党である自民党は河野太郎消費者相が主導する「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」に委員で加わっており、「検討会が政府自民党の調査の立てつけの中にある」(紀藤氏)として、この日までに3回の会議が開かれ、問題提起をしてきた。
検討会とは別に政府は旧統一教会問題の関係省庁連絡会議を先月設置し、内閣官房や法務省、警察庁、消費者庁でスタートし、その後、厚労省、文科省、総務省、外務省も入って、省庁横断的に対策に取り組んでいるかに見える。
紀藤氏は「関係省庁連絡会議という名前の元では役に立たない。オウム真理教の時に散々痛感した」と振り返る。オウム真理教の事件が起きた後も内閣官房、警察庁、公安調査庁など8省庁による横断的な関係省庁連絡会議は設置されたが機能しなかったという。
「結局、束ねる大臣がいないので、最後はバラバラになって、報告書を作って終わったが、共有されていないし、政策にも生きていない。全体の統一教会問題の担当大臣かカルト担当大臣を最低限つくらないとこの問題はバラバラに動くだけ。政府自民党、公明党にも求めていくし、野党にもお願いベースでしていくしかない」と話した。
●音声データ入手! 旧統一教会・田中会長が「内部会議」で衝撃告白 9/15
「この場で綺麗事言ってもしょうがないので、私としては皆様方に通ずる言葉で、ある程度のことは申し上げたいと思っております。もし失言・暴言があったとしたら、全部、澤田局長の責任にさせていただいて(笑)、皆様方と向き合う時間にしたいと思います」
司会役を務める澤田拓也総務局長から促されて登場した田中富広・旧統一教会会長(66)は、そう語り始めた。過去2回の会見(7月11日、8月10日)とはまるで違い、その語り口は感情豊かだ。
安倍晋三元首相銃撃事件から40日が過ぎた8月19日、世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)は全国の公職者に向けて「特別ネット会議」を開催。本誌はその音声データを独占入手した。
「公職者とは、全国各地にある教団支部の現場責任者クラスを指し、一般信徒がこの会議を見ることはできませんでした。今回のネット会議は、事前に現場から吸い上げた信徒たちの疑問や指摘に対し、本部のトップが答えることを目的として開かれた。霊感商法や献金問題について、信徒たちは率直に質問をぶつけました。しかしそれに対する本部の幹部たちの回答は、ほとんどが曖昧なものだった。教団の変革を期待する信徒たちからすれば、到底、納得できる内容ではありませんでした」(会議を視聴した信者)
田中富広会長(66)は、1時間20分に及ぶ会議の大トリとして登場。会見では教団側の主張を滔々と述べていた会長だが、身内に向けた会議では、驚きの「本音」を次々と暴露した。
まずはじめに強い警戒心を示したのは、8月に政府が立ち上げた「旧統一教会問題関係省庁連絡会議」の存在だ。
「いわゆる被害者の駆け込みですね。こういうものを国が準備しているということは、教団にとって向き合ったことがない未曽有の危機だと私は感じています。私が反対弁護士だったら、いま集まってきているすべての被害を全部この9月中に、この連絡協議会に向かって全部飛び込ませますね。そして、全国からあがってくる相談内容から、本当にこれは問題だというものを取り上げて、発表させる。
こちらに返金要求をしてくるような方々は、問題はないと思います。問題はないと言ったら失礼ですけども、まだ対応はできます。でも、こちらに最初から向き合うこともなく、まっすぐに被害弁連のほうに走った者たちは我々も気づいていない。どんな問題が噴き出てくるかわからない。そのぐらい緊張感走る危機意識が末端までないと、本当にどこからサタンが入ってくるかわからない」
続いて会長が取り上げたのは、世間からの批判が強い「霊感商法問題」である。
「私がこの前、第2回記者会見で『当法人は霊感商法をかつても今もやっていない』と。これに対しショックを受けた食口(シック、教会員)たちから、会長宛に何通か手紙が来ました。『私やってました』『ちゃんと霊感商法やってたじゃないですか』というメッセージがありました」
それらの疑問の声を受け、会長は教団が抱える事情を赤裸々に明かした。
「いわゆる霊感商法、これが信徒たちによって行われていたことは(裁判で)認められていますし、敗訴しています。ただし、“教会自体”が霊感商法はやっていないということは、一貫した私たちの主張であり、また裁判でもずっと続けられてきております。もし私が『教会は霊感商法をやっていました』と言った瞬間に、今までの裁判が全部ひっくり返ります。それぐらい大きなことです。
霊感商法そのものを法人がやったかと問われたら『やってなかった』としか言えない。ただ、信徒たちの行き過ぎた行動、トーク、色んなことを通じながら被害と思われる内容を感じ取った方々もおられるので、そこに対して真摯に私たちは向き合っていかなければいけない」
約30分にわたるスピーチで、率直に心境を吐露した田中会長。そのなかでは、会見での発言と矛盾するかのような霊感商法に関する衝撃告白や、山上家との関わりについての重要証言も飛び出した。
●参院選前、旧統一教会系応援希望アンケート 自民議員らに配布 9/15
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体と自民党議員らによる議員連合(議連)会合が今年6月、国会内で開かれ、7月の参院選で団体からの応援を希望するか議員らに問うアンケート用紙が配られていたことが分かった。自民党が発表した教団側との接点に関する調査結果で「組織的な支援や動員など」を受けていたと回答した国会議員は2人にとどまったが、選挙協力の根深さがうかがえる。議連幹部は取材に「議連はもう解散した」と述べた。
会合は6月13日に衆院第1議員会館で開かれた「日本・世界平和議員連合懇談会総会」。当日の出席者や配布資料によると、教団の関連団体「世界平和連合」会長で、教団系の政治団体「国際勝共連合」会長でもある議連顧問の梶栗正義氏が「世界の議員連合の状況」と題して講演した。議連の設立経緯などをまとめた資料が示され、梶栗氏からは「世界中に多数の教団関連議連があり、日本は遅れている」という趣旨の話があったという。
式次第によると、その後の懇談の話題は「参議院議員選挙について」。そこで配布されたアンケート用紙には「次期参議院選挙の地方区で、世界平和連合の応援を希望する議員がおられればお書き下さい」と記されていた。出席者は、団体側のアンケートについて、取材に「選挙まで1カ月を切っているのに、今から何ができるのかと思った」と振り返る。
総会で配布された役員案には自民安倍派、麻生派、岸田派などの現職、元職議員計30人以上が名を連ねた。議連の問い合わせ先は、安倍晋三元首相の差配により2016年参院選で初当選したとされる議連事務局長の宮島喜文参院議員(当時安倍派。7月の参院選に出馬せず引退)の事務所だった。
毎日新聞は梶栗氏に総会に出席した事実や何を話したかなどについてたずねたが、期限までに回答はなかった。
懇談会は昨年6月11日に第1回総会が開かれ、当時会長を務めた原田義昭元環境相(当時麻生派。21年秋の衆院選で落選)は自身のフェイスブックに「名誉会長に細田派(現安倍派)会長細田博之氏を迎え、心強く動けます。会員議員は約100人からスタートします」と投稿した。ジャーナリストの鈴木エイトさんが入手したこの時の記念写真には、細田衆院議長と梶栗氏、原田氏を中心に、議員約20人がガッツポーズで写っている。
議連に参加した議員の関係者は「教団側の担当者に執拗(しつよう)に頼まれ、仕方なく参加した」と話す。別の関係者は「地元の関係者に誘われた」と話した。出席者の一人は「旧統一教会は信者数も少ないし、選挙で票を期待したことはない」と強調した。
今年6月の総会時に会長代行を務めていた自民の奥野信亮衆院議員(安倍派)は15日、取材に「議連は既に解散した。私は旧統一教会には関わっていない」と述べた。

 

●“国葬”めぐる議論に橋下徹氏「感情で国家を動かすのは最悪」  9/16
今月27日に迫った安倍元総理の国葬をめぐり、10日のABEMA『NewsBAR橋下』では橋下徹氏と米・マイクロソフトでアイデンティティ規格アーキテクトとして活躍する安田クリスチーナ氏が議論を交わした。
8日、国葬決定後初めて国会で質疑に応じた岸田総理。橋下氏は「基準がない、根拠がない、費用がかかるという話ばかりで、“国葬とは何なのか?”という議論が抜けてしまっている。戦後に行われた国葬は吉田茂元総理だと言うけど、昭和天皇の大喪の礼も国葬だ。今回はそれに並ぶのか、どういう位置づけなのか。多くの人が“大喪の礼ほどではない”と感じているのであれば、準国葬なのか。安倍さんが凶弾に倒れて、確かに功績はすごくあるから、“国葬をやれ”と声をあげる政治家は勢いで言ったのでは。中身が伴っていない」と指摘する。
安田氏は「何らかの形で功績を残すのは必要だと思う」とする一方で、「パリで大学院に行った時に忘れられない図があった。首相の時系列で、フランスはけっこう太い枠、日本は1年ごとくらいに交代していた時期があって、“日本の政治はどうなっているのか”とバカにされた。その後に(安倍政権の)安定期が来て、国際的に見てもレガシーはあると思うが、ここまで今国民を割るのはどうかと思う。決め方には不安がある」という。
8日にイギリスのエリザベス女王が死去し、その国葬が現地時間の19日に行われる予定だ。橋下氏は「イギリスですら、前回国葬を行ったのは1965年のチャーチル元首相。エリザベス女王の夫のフィリップ殿下やダイアナ元皇太子妃も儀礼葬だった。やはり国葬は国家をあげて悼む、敬意を表する、お祀りするというものすごく重要なことなのに、日本はこの議論を飛ばしたから賛成・反対がこんなに割れてしまっていると思う。安倍さんに対する評価が割れるのは仕方ないが、この決め方に関しては僕も反対。感情で国家を動かすのは最悪なことで、ルールに基づかないとダメだ」との見方を示した。
自民党は8日、所属国会議員379人のうち179人が旧統一教会と何らかの接点があったとする調査結果を公表したが、安倍元総理は調査対象外だった。橋下氏は「自民党は“亡くなられているから”ということを理由にするが、事務所に記録は残っていると思う。とりあえず書類を見ること、確認することぐらいはできるのではないか」と指摘した。
●旧統一教会が韓国の新聞13紙で反撃広告 「安倍元首相を絶対に忘れません」 9/16
自民党が旧統一教会側と接点のある党所属国会議員の「点検結果」を公表した前日の9月7日、“本拠地”韓国では旧統一教会が全国紙に全面広告を展開していた。
〈世界平和統一家庭連合 声明文〉と題した意見広告では、韓国MBCの調査報道番組『PD手帳』(8月30日)で放送された「安倍元首相、銃撃犯、そして統一教会」の内容について〈明白な宗教弾圧であり、家庭連合に対する甚大な歪曲報道〉として旧統一教会の立場を明らかにするとしている。
在ソウルジャーナリストの柳錫氏が語る。「この意見広告は韓国の新聞13紙に掲載されました。日本でいう朝日、読売のような伝統ある全国紙から、新興のところまで網羅していました。これほどの数の全面広告は韓国でも見たことがなく、費用も相当かかっているはず。声明文では献金は自発的なものだと強調していますが、そうしたお金がこの広告費に充てられている可能性も否定できない。この意見広告については私が見る限りでは韓国で報道もされていませんし、あまり話題にもなっていません」
声明文では『PD手帳』の放送についての反論だけでなく、安倍元首相への思いも綴られていた。
〈平和運動を推進しながらも不意の逝去を迎えた安倍晋三元首相に対して深い哀悼の意を表します。韓半島の統一と世界平和のビジョンを提示し、前・現職首脳と共にその志を明らかにした安倍元首相の崇高なる犠牲を家庭連合は絶対に忘れません〉
柳氏はこう推測する。「安倍元首相は旧統一教会の友好団体にビデオメッセージを送ったこともあり、恩や助けを受けたということへの礼儀のようなものでしょう。声明文は教団内部の裁判や資産など、外部の人がほとんど知らない内容についても言及しているので、信者向けに内部結束させる目的があるのではないかと思います。安倍元首相を礼賛しているのは韓国人信者だけでなく、7000人ほどいるとされる、韓国人と結婚した日本人妻へのアピールもあるはずです」
死してもなお、旧統一教会の“広告塔”にされ続けるのだ。以下が、その全文である。
世界平和統一家庭連合 声明文
MBC PD手帳「安倍、銃撃犯、そして統一教会」の放送に対する立場
1954年5月1日、大韓民国ソウルで創設された世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下、家庭連合)は、「神の下の人類一家族」のビジョンの下、平和世界建設に全力を尽くしてきました。神を中心とした愛と平和の道の前に蔑視と冷遇、逼迫は義人の道のように当然のことと考え、70年余りの間、受けてきた数多くの苦難と逆境を黙々と乗り越えてきました。しかし、宗教の自由と人権、真実をごまかしたMBC「PD手帳」の歪曲した報道行為が度を越えていることに対して、重苦しい気持ちで次のように立場を明らかにします。
第一に、本放送映像の中で、日本で作られ挿入された映像は、真実かどうか検証されていないものであり、長い間家庭連合に反対してきた人々の一方的な主張に過ぎないことを明らかにします。最近、安倍元首相の銃撃事件を契機に、家庭連合に対して反対活動をしてきた日本の一部キリスト教徒と左翼思想を持った人々の主張だけを取り上げて、一方的な偏向報道をしている日本のマスコミの内容を、韓国の言論であるMBC「PD手帳」がそのまま客観的な検証をせずに同様に一方的に報道することは明白な宗教弾圧であり、家庭連合に対する甚大な歪曲報道です。
特に日本で偏向報道を主導した「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(以下、弁護士連絡会)は、特定の政治的意図を持って設立された団体で、家庭連合の友好団体である国際勝共連合が日本の共産化を防ぐために「スパイ防止法」制定推進運動を進めていたことに対して、その運動を阻止する目的で設立されました。
今日まで親戚を教唆し、家庭連合の信徒たちの拉致監禁を主導してきた一部キリスト教徒と脱会ブローカーが存在し、その拉致監禁事件の被害者が過去50年間で4300人を超えています。信徒たちが脱会するまで監禁を止めないため、約70%の信徒たちを脱会させました。弁護士連絡会は3千人余りの脱会した信徒を前面に立てて「家庭連合破壊」という明確な目的を持って活動してきました。拉致監禁は深刻な人権侵害であるにもかかわらず、彼らはこれを黙殺してきました。
第二に、真実かどうか検証されていない内容をあたかも「真実」であるかのように報道することは、公共放送においてはあってはならないことであることを明らかにします。安倍元首相襲撃事件の容疑者である山上氏を家庭連合「2世」と表現した点、「弁護士連絡会」が一方的に主張している客観的に検証されていない被害金額をそのまま報道した点、元統一教会信徒という人たちの歪曲された主張とこれを結びつけた数多くの意図的に歪曲された場面、2009年法律遵守のための宣言(コンプライアンス宣言)以後、大幅に改善されたにもかかわらず、今もコンプライアンス違反が過去と変わらず続いていると主張する偏向報道などは「魔女狩り」のような非難に過ぎず、このような報道は本連合の立場としては決して容認できるものではないことを明らかにします。
第三に、信徒たちの貴い献身と感謝による聖なる献金全体を不法な強要による否定的資金として歪曲報道し否定的なイメージだけを極大化して、本連合が追求してきた数多くの内外の活動を歪曲し貶めたことを明らかにします。本連合は他宗教と同様に、神の恩恵に感謝して捧げる礼物として自発的な献金生活を強調しています。しかし、PD手帳は、一部の脱会信徒たちのインタビューだけをもって、長い間にわたる日本信徒たちの善意による献金全体について、まるで法外な強制があったかのように罵倒することは、日本信徒たちを冒涜するものであり、悪意のある報道です。本連合は神の救援摂理とそのために展開された恒久的平和世界実現のために、創立以来、変わることなく全方位的な活動を真実性を持って行って来ました。このための献金は自発的に行われ、公的なものとして徹底的に管理され、透明性を持って使用されてきたことを改めて明確にします。
公的資産管理は、統一運動を支援するために設立された米国非営利法人UCI(Unification Church International)財団を中心に公的に管理されてきました。しかし残念ながら2009年当時、責任を負っていた郭錠煥氏は故文鮮明総裁の許可を得ずに、UCIの理事陣を勝手に交替し、定款を変更し、公的資産を勝手に処分私有化して、全世界の宣教地に大きな混乱をもたらしました。そして文鮮明総裁ご夫妻は、2011年5月25日当時、郭錠煥とその一族で構成されたUCIの理事陣に原状復旧を指示する公式宣布を内外に対して次のようにされました。「郭錠煥とその一族で構成されたUCIの理事陣は、韓国で展開している汝矣島聖地開発工事と関連するすべての権限を創始者である真の父母様に返還しろ。今まで真の父母様の許可なく公的資産を処分し所有してきたすべての財産を直ちに返還しろ」(UCIの原状復旧のための宣布文、2011年5月25日)
しかし、郭錠煥とその一族で構成されたUCI理事陣は、今も上記の宣言文に服従せず、この意志に正面から対敵しており、その後も彼らは全世界の信徒たちの献金で運営されたUCI傘下の数多くの公的資産を勝手に処分(韓国の汝矣島パークワン開発のために設立されたY22プロジェクト金融投資会社の持ち分、セントラルシティの持ち分、龍平リゾートの持ち分など多数)し、現在、UCI理事会の背任問題を巡り、本連合と関連した訴訟が米国ワシントンD.C.で進行中です。したがって、彼らが行う活動は、公的資産を不法略取した偽装平和運動であることを明確に明らかにします。
最後に、平和運動を推進しながらも不意の逝去を迎えた安倍晋三元首相に対して深い哀悼の意を表します。韓半島の統一と世界平和のビジョンを提示し、前・現職首脳と共にその志を明らかにした安倍元首相の崇高なる犠牲を家庭連合は絶対に忘れません。また、犯行を起こした山上徹也容疑者の家庭のやるせない事情を考える時、十分な対応ができなかったことを本連合は非常に遺憾に思い、今後このような事案が起こらないように、さらに努力することをお約束いたします。
しかし、安倍元首相の逝去後、憶測による歪曲報道と、これに便乗した一部マスコミの心ない偏向報道によって、本連合と信徒たちは言葉にできない苦痛を受けています。このような時期に全世界の信徒の名誉をひどく傷つけ、国民に深刻な誤解を招く報道をしたMBCに厳重に抗議します。事実確認をせず偏向した視点で編集された内容を放送したことは、本連合を貶めようとする明確な意図と目的がある行動に過ぎないことを知っているため、今後起こるかもしれない一切の事態に対して貴社に責任があることを明らかにします。今後も本連合は、不法な宗教弾圧とそれに関連した諸行為に対して厳格かつ明確な対応を続けていきます。国民の皆様の温かい関心と声援をお願いします。
   2022年9月7日 世界平和統一家庭連合
●本質的な部分が欠落した自民“統一教会チェック”が信頼度ゼロな理由 9/16
9月に入って行われた世論調査でも、支持率の低下が際立つばかりの岸田政権。有権者からの信頼失墜は、旧統一教会との不適切な関係と安倍元首相の国葬に起因することは明らかなのですが、なぜ岸田首相は適切な対応策を見出すことができないのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、自民党の「統一教会自己点検」が信用に値しない理由を記すとともに、首相が閉会中審査で説明を試みるも、明確な根拠を示すことができなかった国葬の強行を疑問視。さらに岸田首相の信念のなさを批判した上で、自民党が国民の信頼を取り戻すため何に取り組むべきかを提示しています。
統一教会と国葬で対応力不足が露呈。岸田政権は窮地に
統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党、とりわけ清和会(安倍派)との密接な関係が世間に知れ渡るにつれて、安倍晋三元首相の国葬への反対の声が高まり、それを強行しようとする岸田政権の支持率が落ちてきた。
さぞかし、岸田首相は後悔しているに違いない。今から思えば、なにも国葬にする必要はなかった、中曽根元首相や大平元首相らもそうだったように、内閣と自民党の合同葬でなんら不都合はなかった、と。
統一教会をめぐる轟々たる批判はおさまる気配がない。しかし国葬の期日は9月27日に迫る。あろうことか、国をあげて死を悼むその人物こそ、組織票を差配できるほどに統一教会と関係が深かったのだ。国葬は故人を神格化する、弔意の強制だ、国会の審議を経ずに大枚の税金を使うのか…などと声が上がり、反対運動も日増しに高まっている。
砲弾を浴びて非業の死を遂げた元総理への哀切の情が国中に満ちていた頃、岸田首相はいち早く国葬を閣議決定した。「何もしないから支持率が高い」と揶揄されるのに耐え忍んできた男が「決断力」をアピールできると信じて打った策だったが、裏目に出た。
閣議決定した以上、今さら変更しようものならメンツは丸潰れとなるだろうし、統一教会問題がからんで、にっちもさっちも行かない状況に岸田首相は追い込まれている。
自民党がこれといった対策を打ち出せないなか、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党は早々と統一教会との接点について調査をすませ、自民党の出方をうかがう作戦に出ていた。
外堀を埋められた形の自民党が、苦し紛れに実施したのが「調査」ではなく「あくまで議員個人による“自主的な点検”」(茂木幹事長)だった。組織的な関係はないと言い張ってきた手前、個人責任を強調したいがための自己申告だろうが、党が責任を持たない調査にどれほどの信用度があるというのか。
党所属国会議員379人が祝電・メッセージ送付など、統一教会との接点に関する8項目について回答した。179人に会合出席や会費支出など何らかの接点があることがわかり、選挙で支援を受けた19人を含む121人の氏名が公表された。
だが、教団から秘書の派遣を受けたのかどうか、教団側に便宜をはかったかどうかが調査項目にないのが、まずは不十分。会合に出席したり祝電を送った多くの議員が「旧統一教会や関連団体との認識がなかった」と書いて済ませており、簡単に言い逃れを許している。予想通り、実態解明にはほど遠い内容だった。
そもそも自己申告である。ウソの記入をして後でメディアにバレるのを恐れる人もいれば、あくまで隠し通そうとする人もいるだろう。
公表されたリストに名前が載っていない山谷えり子参院議員はジェンダーフリーの排撃で統一教会と“共闘”していた疑惑が、ジャーナリスト、鈴木エイト氏の入手した教団内部資料によって浮上している。山谷氏についてはかねてから統一教会との関係が報じられていたが、これまで一貫して否定している。
今回の「点検」で、安倍元首相と細田博之衆院議長は対象から外された。それが、この点検報告の信頼性を著しく損ねている。自民党と統一教会の関係の本質的な部分が欠落しているからだ。
どこに問題の根源があるのかを究明するための調査でなければ、ほとんど意味はない。安倍氏は亡くなっているから調べようがないというが、そんなことはない。秘書や事務所スタッフがいる。資料も残っている。
統一教会が清和会の支援団体とみられてきたことは、知る人ぞ知る事実である。そして、教会票を誰に割り振るか差配していたのが安倍氏だったことも、伊達忠一元参院議長の発言で明らかになっている。
自民党は統一教会について、どのような団体だと考えているのか。今まで一度も見解を示したことがない。「社会的に問題が指摘される団体」と言うばかりだ。
自分たちが問題だと思うのではない。社会的に指摘されるから、「関係を持たないという党の基本方針を徹底してもらう」(9月8日岸田首相答弁)と、なんとも受動的な姿勢なのだ。
本来なら、「関係を持たない」と決めた根拠を明らかにすべきだ。統一教会がどんな団体だと認識しているのかを、はっきりさせなくてはならない。たとえばこのように。
「人の恐怖心を煽り、高額な献金や物品購入によって救われると言って、日本の国民から巨額のカネを奪い取り韓国の本部に送金してきた教会に対し、我が党は何ら問題視しないどころか、選挙活動などを通じて協力関係を続けてきた。教会は議員を広告塔として利用し、信者のなかには自己破産、家庭崩壊にいたる人々が続出、社会不安を招いている。こうした事実を真摯に認め、反省するとともに、今後、教会との関係を完全に断ち切ることを約束する。」
真っ向から統一教会を批判し、自己反省するとともに完全なる決別を宣言したのが上記である。せめてこれなら、明確な意思表示となる。
ところが、そうはいかないのが自民党だ。点検結果が公表された9月8日の記者会見で、「社会的に問題があると指摘される団体とは」と問われた茂木幹事長は、こう答えている。
「社会的問題であるかどうかについては、被害の実態等に照らして判断をされるものだと、そのように思っております。その上で、悪質な寄付の勧誘などで被害に遭われた方がいらっしゃる。こういう事実関係も踏まえて、社会的な問題が指摘されている団体については関係を持たないというふうに説明をされていると理解しております」
なにを言っているのかよくわからない。根拠があやふやなままだから、仕方なく決別宣言したようにしか見えないのだ。むしろ、「これからは関係を持ちません」と言うことで、過去を水に流そうとする意図さえ感じられる。
安倍元首相の国葬にしても、根拠が明確ではない。岸田首相は説明不足を問われ、「丁寧に説明する」と、9月8日、衆参両院の議運閉会中審査にのぞんだが、その中身は従来と寸分も変わらなかった。
「憲政133年の歴史の中でもっとも長い政権を担い、外交に大きな実績があった。海外からの弔意は日本国民にも向けられている…」
後付けの理屈をいくつ並べても説得力はない。巨額の税金を注ぎ込むというのに、国会の議論を経ず、内閣府設置法を無理やり根拠法として拙速に決めてしまったのが本当のところだ。
ではなぜ、はやまったのか。二つの相異なる報道がある。一つは、麻生太郎主導説。
9月6日の「FLASH」は、無派閥の自民党議員の以下のような発言を伝えた。
「安倍さんが亡くなった直後は、内閣と自民党の合同葬を開く方向で話が進んでいました。それを巻き戻したのが麻生太郎副総裁で、“保守派が騒ぎだすから”と、岸田さんに3回も電話をしたそうです。最後は『これは理屈じゃねんだよ』と、強い口調だったといいます。国葬実施の方針が決まったのは、7月14日の会見の1時間前でした」
もう一つは、以下の岸田首相即決説だ。
「国葬は麻生さんが言いだしたことだと一部メディアが書いているが、そうじゃない。安倍元首相が亡くなったと聞いたその瞬間、俺が、国葬と決めた。…浅慮だった」岸田首相は、議員仲間や新聞記者に対し、はっきりそう言った。(9月10日FRIDAY)
麻生氏がうるさく言うから渋々ながら国葬にしたのか、そうではなくて、岸田首相が真っ先に決めたのか。情報をリークした人物の意図はともかく、前者なら、岸田首相の“聞く力”とやらが裏目に出たということになろうし、後者だと、岸田首相の軽薄さが浮き彫りにされる。
いずれにせよ、岸田首相に信念がないことは明らかだ。国民の信用をとり戻すには、統一教会に対して断固とした姿勢を示し、深い関係を続けてきた自民党所属議員に離党を促して、教会依存から脱却すべきである。
それで初めて「今後、旧統一教会及び関連団体とは一切関係を持たない」という党の方針が信ぴょう性を帯びるだろう。
●安倍晋三“暗殺前夜”の電話で口にした統一教会問題「私自身は…」 9/16
NHKの政治部記者として、小泉政権の官房副長官時代から安倍晋三元首相の担当を務め、以来20年にわたり取材を続けてきた岩田明子氏。その岩田氏が事件後はじめて筆を執ったのが本稿です。その日の夜、統一教会について岩田氏が問うと、安倍氏は言葉少なに……。
液晶には「安倍晋三」の4文字
その日、永田町からほど近いNHK千代田放送会館で原稿を書いていると、携帯電話が鳴った。液晶には「安倍晋三」の4文字。午後10時27分のことだ。
NHKの政治部記者だった私が、安倍の担当になったのは2002年、小泉政権の官房副長官時代からである。以来20年にわたり取材を続けているが、ここ数年、特にコロナ禍では、電話でのやりとりが日課と化していた。多いときは1日に複数回、取材のために電話をかけるときもあれば、安倍が情報収集や雑談するためにかけてくることもある。時間帯は決まって午後10時30分から深夜零時の間だった。
この日、最初の話題は、辞任を表明したばかりの英国のボリス・ジョンソン首相についてだった。安倍は2019年にジョンソン首相との首脳会談に臨み、G7などの場でも顔を合わせている。電話口の向こうで感慨深げにこう語った。
「ジョンソン首相の辞意は、今後のアジア太平洋地域への影響を考えれば残念だね。内政が相当きつそうだったから、仕方ないのかもしれない。北朝鮮による拉致問題への対応を真っ先に支持してくれたし、日本にとって貴重な友人だった」
一方の私は、あることで安倍に聞きたいことがあり、こう切り出した。
「井上さんが旧統一教会で『祝福』を受けたとの情報が入りました。事実ですか。どういう経緯だったのでしょうか……」
「井上さん」とは、第1次内閣で安倍の秘書官を務め、この7月の参院選に自民党比例代表の枠で出馬していた井上義行のことだ。この電話の2、3日前に、旧統一教会と接点が生まれたとの噂を耳にしていた。
「そうだね……」
言葉少なに安倍は答えた。
長きにわたり取材を続けてきたが、安倍の周囲で「旧統一教会」の名前を聞いたのはこの時が初めてだった。
「私自身は、さほど関与していないから……」
私はその時、表現しがたい違和感に襲われた。というのも、私が大学に入学した際、自治会や学部の先輩などが、旧統一教会の下部組織である「原理研」に対して、徹底した注意喚起を行っていたことが思い出されたからだ。
また当時、同級生とその家族が、同団体に苦しめられた経験も鮮明に蘇った。正直なところ、四半世紀以上の時を経ていたこともあり、団体の存在すら忘れていた。
安倍は私の問いにこう答えた。
「私自身は、さほど関与していないから……」
2021年9月、安倍は旧統一教会の友好団体「天宙平和連合」のイベントにビデオメッセージを寄せている。山上徹也容疑者はこの映像をみて「殺害を決意した」と供述した。安倍は、日ごろから、多忙を極める中でも会場に駆けつける場合と、逆にビデオメッセージだけで済ませる場合がある。こうした使い分けで交流関係に違いを出し、ある種の距離感を滲ませていた。
そのうえで安倍の言葉を振り返ると、祖父・岸信介の時代における旧統一教会との経緯や、米国との関係などを踏まえつつも、徐々に距離を置こうとしていた様子がうかがわれた。ただ、この話題は結局それ以上続くことなく、その他、参院選の情勢や、派閥「清和会」の現状などについて話をした。
「また明日」と言ったが……
この時、安倍は選挙や政局は生き物であり、常に急変の危険性を孕むことを指摘した。その言葉を聞いて気になった私は、つい第1次政権と第2次政権、過去2度の安倍の退陣がどれほど衝撃を与えたか、口にしてしまった。すると安倍は「心配しなくても、もう、そういうことはありませんよ」と早口で遮った。
ひとしきり話を終えると、安倍は「もうこんな時間だ。明日も遊説がある。また明日」と言って電話を切った。
これが生涯最後の会話になると、誰が予想できただろうか。
その翌日――。7月8日午前11時35分。安倍銃撃の一報を受けた瞬間、目の前が真っ暗になり、全身が脈打つような錯覚に襲われた。
安倍は政治家のなかでも屈指の強運の持ち主だった。伊勢志摩サミットなど、ここぞという場面では雨の予報を裏切って雲を散らし、晴天を呼び込んだ。
「志半ばで命尽きるはずがない」
冷静さを取り戻すために、何度も自分にそう言い聞かせた。第1次政権の退陣直後、失意による自殺説が流れたことがあった。その時も安倍は入院先からこっそり電話に出て、か細い声で応じた。きっとあの時と同じだ。「本当に大変だった。危ないところだった」と軽口を叩くに違いない。藁にもすがる想いで電話を鳴らし続けたが、二度と通じることはなかった。
警察への不満を口に
今になって安倍とは寿命や運命の話をしたことが思い出される。
「親父(晋太郎)は67歳で亡くなって、総理になる夢を見ながらも幹事長で終わってしまった。岩に爪を立てて登っている最中のまさに無念の死だった。親父から残りの運を授かったことで、私は総理になれたのかもしれない」
しかし、安倍もまた父と同じ67歳で非業の死を遂げた。「また明日」と、電話口で聞いた安倍の最後の言葉を頭の中で反芻するたびに、今回の事件を防ぎ、安倍の運命を変える手立てはなかったのかと考える。
四十九日法要の8月25日、杜撰な警備体制の問題点が検証結果として報告された。ただ、問題は、地方警察の警備の限界という点だけに集約されるのだろうか。安倍はこれまでにも、自宅に火炎瓶を投げ込まれたり、刃物やガソリンを持った人物が敷地内に侵入するなどの被害に悩まされ続けてきた。こうした事案の真相究明を進めているとは言い難い警察の体質に、折に触れて安倍が不満を口にしていたのも事実だ。
テロや無差別殺人事件が起こる際には必ず“前兆”がある。今回の事件も例外ではない。たしかに組織に属さないローンウルフ型と呼ばれる単独犯は事前に察知するのは難しいとされるが、山上容疑者はSNSで事前に犯行をほのめかしている。
たとえば諸外国が積極的に取り入れている「OSINT」(オープン情報分析)を駆使して、事前に危険性を察知していれば、また違う結果になっていたのではないか。テロの脅威が国際社会で深刻化する中、日本警察の情報分析や警備の遅れが悔やまれてならない。
上司に担当替えを直訴
先にも書いたように、私が安倍の番記者になったのは2002年、官房副長官時代からだ。ちょうど小泉純一郎が北朝鮮を電撃訪問する2カ月前。当時の安倍は対峙しても、こちらを一瞥するだけで多くを語らず、掴みどころのない政治家という印象だった。中々距離が詰まらないことに焦り、上司に「担当を替えてほしい」と直訴したこともある。
取材先から核心情報を入手できるようになることを、業界用語で「刺さる」と表現するが、当時の私には、安倍に「刺さる」ことは到底難しく、取りつく島もない状況だった。
ただ私がかつて法務省を担当し、当時、東京地検特捜部が手掛けていた坂井隆憲議員への捜査の読み筋などで若干の知見を得ていたことに、安倍は興味を示し始めた。それを契機に、少しずつ会話を交わす回数が増えていった。
結局、20年にわたり取材を続けることになったわけだが、膨大な回数の会話を重ねてきた。安倍は一度懐に飛び込むと気さくな素顔を見せる。ともに睡眠時無呼吸症候群に悩まされていた時は(治療機器の)CPAPの操作方法や翌朝の熟睡感などを細かく尋ねてきた。また電話中に突然、地震が起きると「きたきたっ、これはかなり揺れるぞ! そちら、家具は大丈夫?」と実況中継のような反応を見せたりもした。どの場面も鮮明に覚えている。
私が体調を崩して入院や手術などを経た際には「運動量を増やして筋肉をつけないとね」と健康を気遣ったり、最近では、取材で出会ってから20年の歳月が流れたことを懐かしむ言葉を口にすることもあった。そうした折、「岩田さんが私より先に逝ってしまった場合は、葬式を仕切ってあげるから、あまり将来を心配しすぎないほうがいい」と冗談めかして、温かみのある言葉をかけてくれることもあった。
死後多くの人が語っているが、愛嬌のある素朴な人柄が「人間・安倍晋三」の魅力だった。
日々の電話に加え、富ヶ谷の自宅や議員会館、総理公邸……、国内外あらゆる場所で取材を重ねてきた。それは第1次政権退陣後、5年にわたる雌伏の時期も間断なく続いている。そうした取材成果は「NHKスペシャル」や特番に加え、「文藝春秋」で折に触れて伝えてきた。七年八カ月に及ぶ歴代最長政権を築いた安倍の肉声を報じることは、今後の日本政治における重要な判断材料になると考えてのことだ。今回、志半ばで生涯を閉じた安倍の政治人生を書き残すことは、記者としての私の責務だと考え、筆を執ることにした。
●内閣支持急落、迫る「危険水域」 国葬・旧統一教会、支持層も不満 9/16
時事通信の世論調査で、岸田内閣の支持率は32.3%と急落し、政権維持の「危険水域」が目前に迫った。安倍晋三元首相の国葬や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題が最大の要因で、自民党支持層からも不満が漏れる。効果的な浮揚策は見当たらず、岸田文雄首相の政権運営は厳しさを増している。
首相は15日昼の岸田派会合で、臨時国会を10月に召集する考えを示し、「国内外に歴史を画する課題が山積している。緊張感を持って取り組み、国民の負託に応えたい」と強調。座長を務める林芳正外相は「臨時国会が正念場だ」と引き締めを図った。
危険水域は支持率30%が目安。これを割り込むと、首相の求心力低下に拍車が掛かり、政権維持が困難になるとされる。
世論調査は、首相が国葬について国会で説明し、自民党が所属国会議員と教団の接点に関する点検結果を公表した後の、今月9〜12日に実施した。内閣支持率は前月比で12ポイントも落ち込んでおり、一連の対応が世論の反発を和らげるどころか、裏目に出た格好だ。
深刻なのは、自民党支持層の理解も得られていないことだ。国葬をめぐり、賛成は47.3%と半数に届かず、反対は33.2%。旧統一教会に関する首相らの説明も、「納得できる」はわずか13.0%で、「納得できない」が63.9%と大きく上回った。
与党内は危機感に覆われつつある。自民党の森山裕選対委員長は森山派会合で「支持率が非常に厳しい状況になってきた」との認識を示し、二階派幹部は「歯止めがかからない。菅政権の末期と似てきた」と嘆く。首相の身内である岸田派中堅も「肌感覚で逆風を感じる」と不安を口にした。
「首相が何をしたいのか分からない」との不満も強い。小泉内閣は郵政民営化、安倍内閣はアベノミクスや憲法改正を打ち出して求心力を保ち、長期政権につなげた。岸田内閣は「新しい資本主義」を看板政策に掲げるが、自民党内ですら理解が広がっているとは言い難い。公明党ベテランは「政権の柱がない。全て対症療法で右往左往している」といら立ちをあらわにした。
国葬は27日に行われ、臨時国会は10月上旬にも召集される。自民党関係者は「国葬が終われば批判は落ち着く。政策で結果を出せば支持率は元に戻る」と指摘。物価高などに対応する総合経済対策を議論する臨時国会が、政権の分水嶺(れい)になるとの見方を示す。
公明党の山口那津男代表は15日、記者団に「『支持を得られていない』と謙虚に受け止め誠実に取り組むほかない」と語った。 
●松山市 旧統一教会関連団体の標柱撤去 9/16
松山市はボランティアで清掃活動を行う団体を募る事業で市道に設置している旧統一教会の関連団体の名前が書かれた標柱を15日すべて撤去したことを明らかにしました。
松山市はボランティアで市道の清掃活動を行う団体を募る「まつやまマイロードサポーター事業」を行っていて、清掃活動を1年以上行うなど一定の条件を満たした団体の名前を記した標柱を各地で設置しています。
このうち道後公園周辺の市道など7か所に設置している標柱に旧統一教会の関連団体「世界平和女性連合」の名前が書かれていたということです。
これについて、松山市は16日開かれた定例市議会の一般質問で、9月2日に団体側から辞退の申し出があったため、きのう団体の名前が書かれた標柱をすべて撤去したことを明らかにしました。
松山市によりますと、「世界平和女性連合」が旧統一教会の関連団体だと認識していなかったということで、市は今後、宗教法人との関わりについて、特定の宗教に対する援助につながらないよう判断していきたいとしています。
一方、松山市は撤去した標柱がいつから設置されていたかや、そもそも標柱が市内のどこにいくつ設置されているか全容を把握していないということで、今後、管理や設置のあり方について検討していくことにしています。
●旧統一教会、弁護士団体「国は解散命令を」 集会で声明 9/16
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題に取り組む全国霊感商法対策弁護士連絡会は16日、東京都内で集会を開いた。宗教法人法に基づく解散命令の手続きをとるよう国に求めることなどを盛り込んだ声明をまとめた。「教団により発生した被害を救済し、新たな被害を生み出さないようにすべきだ」と訴えた。
連絡会によると、安倍晋三元首相銃撃事件を受け7月9日以降、電話やメールで寄せられた教団に関する相談は9月14日時点で214件。同連絡会の山口広弁護士は「事件以前はひと月で10件足らずだった。2カ月たった今も相談が多い状態が続いている」と述べた。信者や元信者の家族からの相談が最も多いという。
声明では教団に対し「不安をあおって献金をさせたり、過大な支出をさせたりしたことが明らかになった場合は損害を賠償すべきだ」などと求めた。信者から金銭を受け取る場合は、金額などを明記した領収書を発行し、必要に応じて開示すべきだとも主張した。
霊感商法などによる被害については、川井康雄弁護士が「(消費者契約法など)現行法での救済は難しい」などと強調した。声明には政府への要望として「基本法の制定も視野に入れた法制度を整備し、対策を講じてほしい」と明記。宗教法人を所管する文化庁には、教団による過去の被害に関する調査・公表も求めた。
●「日韓トンネル視察」に20万円以上…北海道の自民党衆院議員ら4人 9/16
自民党の東国幹衆議院議員(54)=北海道6区選出が道議会議員だった2018年と2019年の2回、政務活動費を使って、旧統一教会が進めていた日本と韓国を海底で結ぶ「日韓トンネル」を視察していたことが分かりました。
このトンネルは旧統一教会=世界平和統一家庭連合が推進してきた事業のひとつで、佐賀県の唐津市から対馬を経て、韓国の釜山をつなぐトンネルを掘削しようという計画。
東議員は唐津市と福岡県を視察していて、交通費と宿泊費計約21万円が旧統一教会と関連があるとされる旅行会社に支払われていました。
東議員は1995年に旭川市議会議員選挙に初当選。
その後、1999年に道議会議員に当選し、2021年の衆院選で北海道6区から衆議院選挙に立候補し、初当選していました。
共産党が開示請求した資料によりますと視察後の「活動記録」には、「民間の団体が日本と韓国の間にトンネルを掘削しているとは思いもよらなかった。百聞は一見にしかず」としたうえで、「日韓の平和のランドマークになればと感じる」と成果を記していました。
開示請求した道議会議員で日本共産党北海道議団の真下紀子団長は「議会は自ら政務活動費の支出を調べたうえで、旧統一教会との関係を絶つということを表明する必要がある」と、しています。
東議員に視察理由について取材したところ、文書で「かつて私はサハリン稚内間トンネル構想というものを持論として推進しておりました。そこで実際に試掘をされているという"日韓トンネル構想"の現場に興味があり調査に赴きました」などと、回答しました。
東議員以外にも2017年から2021年までの間に、自民党の道議会議員3人が旧統一教会の関連団体に政務活動費を支出していたことが分かっています。
支出していたのは道見泰憲道議、檜垣尚子道議、大越農子道議で、東議員と合わせると支出額は約40万に上ります。
日韓トンネル構想視察の理由について
「かつて私は、サハリン、稚内間トンネル構想というものを持論として推進しておりました。間宮海峡を挟んで第2シベリア鉄道の建設、そして間宮トンネルの試掘は実際にスターリン時代に建設着手されておりました。その構想が、現在また復活されるという情報を得て、宗谷海峡のトンネル構想は夢ではないとも思いました。そこまでの私の想いは地元新聞社でも記事にして頂きました(余談ですが保守系、右寄りの団体から反発をうけましたが)。そこで実際に試掘をされているという「日韓トンネル構想」の現場に興味があり調査に赴きました。韓国までは長距離ゆえ、技術的なこと、費用の概算、工期のことなどの説明をうけ、理解を深めさせて頂きました。宗谷トンネルは日口両国が協力し合えば可能であることを確信できました。しかし現下の国際情勢を踏まえれば残念なことですが、青函第2トンネル、エネルギーの送電線である「北本連携線」など、今後の北海道は、海底トンネルの建設が必要であるゆえ、去る2回に渡る試掘現場の視察は有意義であったと考えています」

 

●自民党「旧統一教会」調査に大きな抜け道 隠蔽された関係議員33人の名前 9/17
自民党は旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に関するアンケート調査の結果、所属議員379人中、教団と接点があった121人の氏名を公表。だが、第2次安倍政権以来、3000日にわたって教団と政界との関係を追跡してきたジャーナリスト・鈴木エイト氏の取材結果と照合すると、関係があったのに自民党のリストには載っていない議員が33人もいた。鈴木氏が指摘する。「これは調査といえる代物ではない。そもそもアンケートは教団や関連団体の会合出席や祝電、会費支払い、寄附を受けたか、選挙支援など8項目に限定して、その有無と回数を記入させるやり方でした。しかも、公表されたリストには、各議員がどの会合に参加したのか、日時や場所が明記されていない。これでは私が各議員に取材し、旧統一教会の関連団体であると通告した後、懲りずに会合などに参加していたかどうかさえも検証できない。非常に杜撰です」
自民党のリストは、旧統一教会と関連団体の会合を分けて「議員本人出席で挨拶有り」「議員本人出席で講演」「寄付やパーティ収入有り」など教団とどう関わったかの内容別に分類して議員名を公表している。
だが、関連団体の会合で講演していた元安倍派会長の細田博之・衆院議長、関連団体イベントの代表世話人を務めた現職閣僚の西村明宏・環境相、世界日報元社長から献金を受けていた細野豪志・代議士などはどの分類にも名前がない。
調査で“見逃されている”議員もいる。
麻生太郎・自民党副総裁は教団系列の「ワシントン・タイムズ」に全面意見広告を出し、衛藤征士郎・元衆院副議長は教団が推進する「日韓海底トンネル推進議員連盟」の代表を務めた(現在は議連を解散)。だが、自民党アンケートの質問には該当する項目がないため、議員リストには名前が一切出ていない。
別掲の表は、鈴木氏の取材で旧統一教会との関係が浮上しながら、自民党の公表リストからは漏れている33人をピックアップしたものだ。
週刊ポストが33人に公表リストに名前がなかった理由を取材すると、自民党調査の問題点が見えてきた。
該当者たちの言い分を聞こう。
まずは三権の長の1人、細田議長だ。「議長なので自民党から離れており、今回の調査対象にはなっておりません。それ以上は差し控えます」(事務所回答。以下同)
麻生氏はこう言う。「意見広告の件は確認ができない。11年前のことなので資料もない。どういう広告かもわからない」
だが、麻生氏とともに同じ意見広告に名を連ねた長島昭久・衆院安全保障委員長はこう説明する。「意見広告に参加したのは事実です。知人の評論家から東日本大震災の米国の支援に感謝する内容だと聞いて、賛同した。自民党の調査票にも回答している」
一方、細野氏は調査票に記入しなかったと言う。「寄附を受けたのは事実です。ただ、党の調査では、企業・団体献金について質問しているので、この寄附は個人献金なので、党の調査には記載しませんでした。2015年の世界日報のインタビューは事実で、党の調査にも回答しています」
そんな“抜け道”が用意されていたのだ。
議員側がアンケートで教団との関係を回答したのに、自民党の判断で公表されなかったケースも。
教団関連団体の大会に祝電を打っていた船田元・代議士や城内実・代議士は、党の調査にそのことを回答したと説明し、「名前が出なかったのは、党の基準によるものです」(城内事務所)と言う。
自民党は各議員が教団との関係を報告しても、党側の裁量で多くの議員を「公表対象外」として教団と関係した人数をできるだけ少なく見せかけていることがわかる。
なかには関係を否定した議員もいた。田中和徳・代議士は、2016年に街頭演説で「世界日報」を配布したことについて「ご質問の事実は把握できませんでした」と回答し、2017年に教団幹部と会談したことについては「ご質問の事実はございません」と回答した。西村明宏事務所は関連イベントの代表世話人については認めたものの、2017年の「日本─アメリカ国会議員有識者懇談会」について「出席していません」と回答。武見敬三事務所は2019年、参院選中の演説会に教団関係者が関与したとの指摘について「(選挙支援を)依頼したこともありませんし、事実も確認できません」と答えた。
だが、田中氏は過去に「世界日報」は「誤って配った」と認め、会談についても「党からの要請で国際局長としてお会いした」と話していた。西村氏も過去の会見で「(懇談会の)冒頭に行って話をした」と答えている。武見氏については2019年の参院選の際、武見氏の演説会に教団関係者がいたことを鈴木氏が現場で確認している。
鈴木氏が語る。「自民党アンケートの最大の問題は、各議員が教団から秘書やスタッフを事務所に受け入れてきたか、教団側から陳情を受けたり、便宜供与を図ったことはないか、といった肝心な質問をしていないことです。これでは、教団がどう政治や政策に影響を与えたかがわからない。自民党は議員への質問状の1枚目に『党として組織的な関係性は一切ないことを確認済みです』と書いている。これは、議員側に“余計なことは書くな”と口封じしているように見える」
こんな調査で「旧統一教会とは関係を断ちます」などと言われても、国民が信用できるはずがないのだ。
●「文科省は統一教会の調査をしません」 霊感商法めぐる会長の発言が波紋… 9/17
インターネット掲示板2ちゃんねるの開設者で実業家の「ひろゆき」こと西村博之さん(45)が17日未明に自身のツイッターを更新。政治家との関係が報じられる世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の調査をしない政府の対応に「統一教会の信者が霊感商法をやってる事を認めていて、田中会長も暗に認めている証拠があるにも関わらず、文科省は統一教会の調査をしません」などと痛烈に指摘した。
ひろゆきさんは15日にFRIDAYデジタルが独自音声を入手して報じた旧統一教会田中富広会長の「教会自体が霊感商法をやっていないということは一貫した私たちの主張」などと発言したことに、SNS上で「信者が勝手に(霊感商法を)やった事にしている」などと厳しい声が相次いでいるとのWEB記事を添付した。
田中会長の発言が報じられた直後に「統一教会が霊感商法を組織的にやってた事を暗に認める田中会長」とツイートで指摘していたひろゆきさん。今回のツイートでも「過去の政治家と統一教会の関係よりも、現在の統一教会をどうするか? という話をする為に政府は調査するべきだと思うんだけどなぁ」と改めて私見を述べた。
●旧統一教会の元信者 「声かけ」「訪問販売」に追われた長野県の女性… 9/17
「“神様”に背いた罪悪感で、1年ぐらい精神が不安定な状態だった」―。大学時代に統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に入信していた長野県長野市の女性(53)が15日までに取材に応じ、当時の暮らしや、活動に疑問を抱いて寮から逃げ出した時の思いを明かした。街頭で受けたアンケートをきっかけに信仰を深めた女性。人間関係を構築して付け込む団体に対し「政治が規制するしかない」と語った。
街で声をかけられ…
福島県生まれで都内の大学に進学した。1人暮らしをしていた1年の夏、吉祥寺駅(東京都武蔵野市)近くで女性2人に声をかけられた。「いろんな大学の学生が入っているサークル」として関心事や悩みを聞くアンケートへの協力を求められた。それが「伝道」と呼ばれる勧誘活動だと知ったのは入信してからだった。
その日のうちにマンション一室に連れて行かれた。「ビデオセンター」と呼ばれ、複数の応接スペースと、半個室のような形でテレビモニターが1台ずつ置かれた場所があった。応接に入ると、テーブルを挟んで向かい合い、古里を離れた寂しさや学生生活、恋愛について親身に寄り添ってくれた。
統一教会と知ったのは3か月後 教会の「学生寮」に引っ越し
その後もセンターに通い、セミナーや合宿に参加。団体が統一教会だと知ったのは3カ月ほどたってからだった。「知識がなく、悪いうわさを知らなかった。(教義を)知らない人に伝えていく役割だと思い込んでいた」
年が明けるとアパートを引き払い、信者が入る「学生寮」に引っ越した。中央線沿線の駅から15分ほど歩いた場所にある木造2階建て。寮長、寮母の他、学生約20人が暮らしていた。信者が引っ越しを手伝ってくれたが、ベッドやテレビを売ったお金を女性が受け取ることはなかった。
1階には長机があり、食事や集会のスペースになっていた。2階には6畳ほどの2人部屋が並び、「祈祷(きとう)室」には「お父さま、お母さま」と呼んでいた統一教会創始者の故・文鮮明(ムンソンミョン)氏と、妻の韓鶴子(ハンハクチャ)氏の写真が飾ってあった。
月10万円の仕送りがあったが通帳は寮母が預かり、自由に使えなかった。寮生の当番が作る食事はもやし炒めや煮物など。「おかずが1、2品で満たされなかった」。入浴は週2、3回だった。
平日は声掛け、休日は訪問販売 「心はぼろぼろ」
平日は授業が終わると夕方から街頭で「伝道」活動。1日20人ほどに声をかけたがビデオセンターまで連れて行くことはできなかった。寮に帰ると寮長の講義を受けたり祈祷室で祈ったり。休日は「万物復帰」と呼ばれる訪問販売に従事した。ワゴン車で見知らぬ土地に連れて行かれ、箸や扇子を売り回った。怒鳴られることも多く「つらくて心はぼろぼろ。持って生まれた罪を清算する活動だと自分に言い聞かせた」。
意を決して「脱走」
日々の活動に追われ、大学の友人とも疎遠になった。自由のない生活に嫌気が差し、入寮して3カ月ほどたった日に脱走を決意した。
食事当番の日、スーパーで買い物をするふりをして駅に走った。所持金は食費用の財布からくすねた数百円。入場券を買って駅に入り、公衆電話で千葉県にいる姉に助けを求めた。電車内では「(信者が)追いかけてきたらどうしよう」と、恐怖にかられた。姉から連絡を受けた両親がその日のうちに車で迎えに来てくれて福島に帰った。
実家に戻った当初は「いけないことをした思い」にさいなまれた。一方で東京に戻る気にはなれず大学は除籍に。今でも履歴書を記入する際、「統一教会との関わりがなければ大学を卒業できたかな」との思いがよぎる。10年ほど前に、長野市に移り住んだ。
安倍晋三元首相の銃撃事件を機に、統一教会と政治家との関わりが明らかになってきた。「政治家が(関連団体に)ビデオメッセージを送れば信者にとっては信仰の後押しになる」と危ぶむ。その上で「政治は旧統一教会と決別すべきだ」と強調した。
●旧統一教会との関係「一線を画す」 三重県議会議長、会見で明言 9/17
前野和美三重県議会議長は16日の定例記者会見で、議長就任前に旧統一教会の関係団体が開いた行事に出席していたことについて「協会とは一線を画したいと思っている」などと述べ、今後は教会側の行事に出席しない考えを示した。
前野議長は2日の代表者会議で、協会の関係団体が開いた行事に「依頼を受けて政治家として顔を出したりしたことは現実にある」などと述べ、教会の関係団体と関わりがあったことを認めていた。
前野議長は会見で、教会側との関係について「あまり深い付き合いはない」とし、行事への出席は「案内に従って出席した程度」と説明。「催しがあったとしても参加しない方向でやっていきたい」と述べた。
代表者会議で「(教会側と)付き合わないと明言しては」と議員に問われた際に「信教の自由もある」と述べたことについて、前野議長は「(私は)信者ではない。宗教法人と直接の関わりはない」と説明した。
●旧統一教会対策集会 来られるわけなかった自民党議員 9/17
全国霊感商法対策弁護士連絡会が16日、都内で集会を開き、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)についてさまざまな角度から報告を行った。
同連絡会は各政党にも集会の案内を送付。秋の臨時国会では旧統一教会の問題が大きなウエートを占めることが予想されるなか、ほとんどの政党が参加。ところが、不参加の政党もあったのだ。
集会で同連絡会は声明を採択。内容は文科大臣に対して宗教法人法に基づき旧統一教会に解散命令を請求することを求めることなどだ。また、宗教2世への支援体制にも言及した。
元信者の講演もあり、勧誘の実態を告白。家族の命が危ないと恐怖をあおることで精神的な揺さぶりをかける手口が紹介された。また、フランスの反セクト法についての解説にも時間が割かれた。
同連絡会によると、この日は会場とオンライン合わせて約200人が参加。政党からは立憲民主党、共産党の議員が来場。オンラインでも社民党、国民民主党、日本維新の会の議員が議論を聞いていたという。
では、自民党はどうしたというのか。同党が8日に発表した調査結果によると、衆参両院で回答のあった所属議員全379人のうち、統一教会と接点があったのは179人にも上ったが…(その後も続々発覚)。
同連絡会の川井康雄弁護士は「自民党から出席者はいません。一応、自公には声をかけたんですけど、参加したくないのかもしれません」と明かした。
集会の案内は各党の党本部に送ったという。
「いろいろあるのでしようがないですけど、来てほしかったです。でも、あまり敵対するつもりはありません。次は来てほしいなと思っています」と川井氏は呼び掛けた。
もっとも自公、特に自民党には来づらかったかもしれない。集会ではジャーナリストの鈴木エイト氏の講演もあったが、それは26日発売の「自民党の統一教会汚染 追跡3000日」(小学館)をベースとしたものだった。
自民党と旧統一教会が濃厚な関係を築いていると示唆する内容で、自民党にとっては耳が痛すぎるはず。来られるわけはなかったか。
●「旧統一教会」関連団体との接点で実名公表の自民議員が語る"危惧" 9/17
自民党が実施した旧統一教会と所属国会議員の接点に関する調査結果。接点があったとされる179人のうち、121人の実名が公表されたが、このうち、関連団体への会合「出席」「講演」と「会費等の支出」の3つの項目で接点が確認された議員がいる。滋賀1区選出の大岡敏孝衆院議員だ。
9割近くの議員が旧統一教会との関連について「認識がなかった」(茂木幹事長)とする中、その関連を「知っていた」と語る、ある意味“少数派の議員”でもある。多くの議員が口を閉ざす中、あえて「取材に答える」というので、衆院会館の事務所を訪ね、改めて統一教会との関係や今の状況を聞いた。
まず、9割の自民党議員が旧統一教会の関連団体である認識がなかったとされる点について聞くと、大岡議員は「自民党は"素人の集まり"ということですか?それはありえないと思います」と率直に疑問を呈した。
大岡議員自身、関連団体(世界女性平和連合)の会合に出席しているが「呼び掛けたのは、地元の支援者であり(中略)世界平和連合の人たちであることはわかっていたし、旧統一教会の関係団体であることはわかったうえで対応した」と当初から認識があったことを認めた。
ただ最初に「旧統一教会がいままでやっていた霊感商法とか、社会的問題になったことはどうなっているのか?」と質したのだという。先方からは「過去には問題があったが、今はそれを反省して、そういうことは一切やっていない」という説明を受けたという。
だが実際には、旧統一教会は高額な壺などを買わせるかつての「霊感商法」から、高額の献金に対する見返りという形式に変わってきたといい、その手法は非常に巧妙化していると専門家は指摘している(ジャーナリスト鈴木エイト氏 よんチャンTVから)。
一方で大岡議員は「旧統一教会をかばう気もないし、擁護する気もない。過去にやってきたことを水に流すつもりもないし、被害に苦しんでいる人も多いと思うので、しっかりと支えたいと思う」とも語った。
自民・滋賀県連「地方議員の調査はしない」に抗議殺到
今、問題視されているのは、旧統一教会の活動が自民党の「政策決定」に影響を与えたのかどうかという点だ。大岡議員自身も会合などへの参加で、何らかの影響を受けることはなかったのか...この点について次のように強調した。
大岡敏孝衆院議員「伝統的な性別を大事にしているので(旧統一教会は)LGBTには反対しているが、私はLGBTの社会的な理解の増進が必要だと彼らに伝えたし、日韓トンネルにも『はっきりそういう考えはない』と。同じお金を使うなら、沖縄までトンネルを掘りますと言っていますから、そういう意味では影響はうけていない」と強調した。
一方、大岡氏が会長を務める自民党滋賀県連では9月11日、地方議員については旧統一教会との関係を「調査しない」ことを決めた。旧統一教会の地方政治への浸透が問題視される中、岸田文雄総裁は9月8日、地方議員についても「関係を持たない方針を徹底してもらう」と表明している。
大岡議員は「広く地域のお世話をするのが地方議員の役割」だと前置きしたうえで、「私たち国会議員は、組織として(旧統一教会と)一切の関係を断つ、相談には接触しないので『子供がいじめられてどうしたらいいのか』という相談にはもう組織としてのれない。ここは地方議員の出番で、地域で行き場をなくしている子供たちや親御さんがいれば、統一教会であろうとなかろうと相談に乗ってほしいと要請した」と語った。
また、地域活動の役員などに旧統一教会の信者がいる可能性はあるが、そこまでは調べきれないとし、憲法で保障されている「信教の自由」に抵触する可能性もあるとの見解を示した。旧統一教会の「宗教の問題」と「信者個人の問題」は切り分けるという姿勢だが、信者との関係を"半ば容認した"とも言え、事務所には多くの抗議電話が寄せられているという。
「旧統一教会の実態把握」が大事 民主主義から"はじかれる信者"に危惧
秋の臨時国会では旧統一教会問題がクローズアップされ、とりわけ「法整備」の行方に注目が集まっている。立憲民主党は「カルト被害防止・救済法案」を作成中で、野党ヒアリングには2世信者が呼ばれ「高額献金を規制するべきだ」と訴えた。日本維新の会も弁護士から被害実態のヒアリングを行うなどしており、信者らの所得に応じ、寄付の上限規制を設けることが可能か検討するなど、法案を準備中だ。自民党は岸田総裁が、党の消費者問題調査会の下に小委員会を立ち上げ、被害防止や救済について検討するというが、あくまで現行法下でできることを模索するという姿勢だ。(9月8日に行われた閉会中審査での総理答弁)
大岡議員は「必要な法改正は躊躇するべきではない」とする一方で、まずは旧統一教会の実態を把握することが大事だと訴えた。
さらに大岡議員は次のように今の状況が続けば"憎しみの連鎖"を生みかねないと独自の見解を語った。
大岡敏孝衆院議員「今の論調は、過去に何をやっていたのか、今何をやらせているのか、こういった事実認定や分析をしないまま、旧統一教会の信者やその関係者を『十把一絡げ(じっぱひとからげ)』にして、連座制を適用して"全員悪人"と、民主主義から排除すると。彼らは国民でありながら、民主主義政治にアクセスできないということになるので、今そういう方向に進みつつあるのを、私は危惧している」
確かに、旧統一教会問題の報道が続く中、現役信者がおかれている社会的な状況はあまり伝わってこない。
旧統一教会の問題を長年取材している鈴木エイト氏はMBSの取材に対して次のように答えている。
鈴木エイト氏「現役の2世信者のケアーなどをどうするのか、国や自民党は基準を出して、信者の人権を守った上で相談に乗るべきではないのか。カルト問題の本質は、中の人は"被害者でもある"という視点で、山上容疑者のような社会から隔絶された存在を増やしてはいけない」
実名が公表された自民党の議員から積極的な発信が乏しい中、あえて発言する大岡氏の意図はどこにあるのか。それは「壮大な言い訳」なのか、それとも「危機感の裏返し」か。旧統一教会をめぐる一連の世論に、一石を投じることになるだろうか。
●「旧統一教会」と「地方政治」との関わりは? 岡山・香川の知事・市町村長 9/17
「世界平和統一家庭連合=旧統一教会」と、「政治家」との関わりが問題視されています。旧統一教会を巡っては、「信者に対する高額な献金の強要」や、「不安をあおって高額な物品を売りつける『霊感商法』」が社会問題となっています。
RSKは、旧統一教会と地方政治の関わりについて、有権者の付託を受けている岡山・香川の両県知事と市町村長にアンケートをとりました。
質問は4つです。旧統一教会の関連団体、及びその関係者から
(1)運動員の派遣や選挙支援を受けたか?
(2)政治献金を受けたことがあるか?
(3)関連イベントへの出席や祝電の送付?
(4)団体と政治家が関わりを持つことについてどう思う?
です。
46人全員から回答を得ましたが、うち20人に接点があり、中には関連団体から「選挙支援を受けた」と答えた市長もいました。
今回のアンケートで「関連するイベントに出席、または祝電を送っていた」と答えた首長は20人いました。
岡山県では、岡山市の大森市長・津山市の谷口市長・笠岡市の小林市長ら8人の市長が。
香川県では、高松市の大西市長・丸亀市の松永市長ら8人の市長と、4人の町長に接点があったことがわかりました。
(アンケートより)「ピースロード2021の県内出発式へ激励に行っている」
このイベントは、「世界平和」や「日韓友好」を掲げ全国を自転車で巡るイベント「ピースロード」で、旧統一教会の関連団体が開いていました。
首長らによると
・イベントの後援を行う
・出発式への参加・関係者の表敬訪問を受けた
など多岐に渡る回答がありました。
高松市の大西市長は、合わせて3回の表敬訪問をうけたほか、2021年度からピースロードの後援を承認し、実行委員会の顧問にも就任。後援申請を受理した理由については、「公益性などに加え、周辺自治体の状況も判断材料とした」と話します。
大西秀人 高松市長「県選出の国会議員とか、あるいは県議会議員市議会議員が委員に入っていますし、後援もすべての市町で後援しているという状況」
アンケートによると、「政治献金を受けた」首長はいないということですが、丸亀市の松永恭二市長は、「運動員の派遣や選挙支援を受けたことがある」と回答しています。浮き彫りなった旧統一教会と地方政治の接点に、有権者は。
「問題のある団体と接触をもたれていると。繋がりがあるのかな、というのもありますし、間接的にその団体にお墨付きを与えることにもなりかねないので、控えた方がいいなと」
「公的な人があると、やはりおかしいなって」
記者「政治的に関係があったという回答も。どのように感じられますか」
「政治家失格だな」
「良心とか善し悪しの判断基準をちゃんともって、行政に携わってもらわんと」
接点があった首長のほとんどが、ピースロードを開催しているのが「旧統一教会の関連団体」という認識は無かったと答えています。
また「関連団体と政治家が関わりをもつことについて」46人中36人が「問題がある」との認識を示しました。
岡山で35年以上、元信者などの相談を受けてきた河田弁護士です。「自治体のトップが認識なく接点をもっていた事実を、首長は重く受け止めるべき」と指摘します。
河田 大本 寺山 共同法律事務所 河田英正 弁護士「あの市の市長も応援しているし、この市長も応援している。あの国会議員も応援していると『お墨付き』を与えてしまう。そうすると信者の人は、とことんその指示にしたがって一生懸命献金してしようとする」
「そんな被害がいまもあるということを、その被害に力を貸したことになるんだ、なったんだということを、しっかりと認識していただきたい」
アンケートで浮き彫りになったのは、「地方政治にも旧統一教会との接点がある」という現実です。有権者に丁寧な説明が求められます。
●旧統一教会は何も変わっていない “宗教2世”の本音を葉梨法務大臣に聞く 9/17
自民党は旧統一教会との過去のかかわりを調査するとしながら調査漏れ、申告漏れが相次ぐ。とはいえ今後は一切の関係を断つとした。つまり旧統一教会が関係を持つにふさわしくない団体であることを政府与党が公言したことになる。
一方、旧統一教会側は日本人信者からの金集めを控える様子はない。
同教会は韓国・清平に“天一国”なる理想郷を建設中で、2023年5月には中心施設となる“天苑宮“を完成させる予定だ。その完成までに日本の信者家族、一家族183万円の献金を求めている。金額の根拠は、完成時、文鮮明教祖が生きていたら103歳で、韓鶴子総裁は80歳になる。2人の年齢を足した数字だというからふざけている。
こうして、信仰という一種のマインドコントロールによって高額献金をさせる旧統一教会のやり方に生まれながらにして取り込まれている人たちがいる。信者の子供、宗教2世だ。旧統一教会の場合、信者の儀式“合同結婚式“で結ばれた夫婦の間に生まれた子供を“祝福2世“と呼んでいる。
番組では、実際に“祝福2世”として生まれ育った女性をスタジオに招き、生々しい実体験を語ってもらった。
「ただ貧乏なんだと思っていた。家に壺とか印鑑はありましたけど…」
スタジオに来てくれたのは、小川さゆりさん(仮名)26歳。
両親は合同結婚式で結婚。父親は元教会長で、両親ともに現在も熱心な信者だ。小川さんは6年前に“脱会”。信者ではない男性と結婚、子宝にも恵まれた。
今回、マスクをした姿とはいえ、顔を出し、音声を変えることもなく生出演に応じた。脱会後、SNSで宗教2世の話を聞き集めるうちに、自分より過酷な境遇の人たちがいることを実感し、“自分にも何かできないか”という思いからメディアで発言することを始めたという。まずは、子供時代の生活を聞いた。
旧統一教会を脱会した宗教2世 小川さゆりさん(仮名・26歳)
「両親が高額の献金をしていたので、ずっと貧しくて、がまん我慢の毎日でした。物を買ってもらえなかったり、髪は親が切っていたり、お小遣いがもらえなかった。お年玉など周りからもらったお金は親に没収された。服はお下がり、とにかく周りからの見た目でも貧しい感じ。それを理由に幼少期も長期にわたっていじめを受けたりした…。(中略)幼少期は、ただ貧乏なんだと思っていた。家に壺とか印鑑はありましたけど、そこまで高額なものとは知らなかった。家がもともと貧しいから我慢しなきゃいけないんだよって言われてきたから、そんな高額な献金をしているせいで貧しいとは気づけなかった」
「あなたたちは罪がある人で、しもべのしもべ」
子どもの頃の辛い記憶を淡々と語る小川さんに、番組が入手した旧統一教会の内部文書を見てもらった。表題は『二世の生活指針』。日常生活から人生にかかわることまで多岐にわたり何項目もの指導が羅列されている。例えば…
・この世の結婚は絶対にいけない(合同結婚式以外認めない)
・異性問題は毒薬であり「私」を殺す(恋愛禁止)
・男女は絶対同じ部屋に二人でいてはいけない
など、祝福2世は自由恋愛や恋愛結婚は罪悪と教え込まれるようだ。
旧統一教会を脱会した宗教2世 小川さゆりさん(仮名・26歳)
「二世信者っていうのは恋愛禁止っていうのがいちばんメインになっていた。普通の人が堕落するより罪なこととされ、自分も礼拝ではそれを重視して教育された。でも思春期になると好きな人ができたり、そういう感情が自然と湧いてくる。それを否定されるのが辛かった。親も教団の人も否定してくるから相談もできない…」
他にも『二世の生活指針』にはこんなものも…
・おへそが出るような服はサタンが好むので着ない
・絶対服従をする生活をしよう
旧統一教会を脱会した宗教2世 小川さゆりさん(仮名・26歳)
「そもそも教育で『あなたたちは罪がある人でしもべのしもべのつもりで生活しなければいけない』と。だからお祈りの時も信者はいつも『申し訳ございません』『お許しください』っていう内容が多い」
また、お金に関する教えも多い。
・神様のお金を自分のお金のように使う人は毒薬を飲むのと同じだ
つまり、自分で稼いだお金も神様のものであって、自分のものではないという考えか。
旧統一教会を脱会した宗教2世 小川さゆりさん(仮名・26歳)
「教会には“十分の一献金(所得の1割を献金する)”という言葉があってニュースでも聞くと思うんですけれど、あれは本来は十割、全額ささげなければならない所をたった十分の一ささげるだけで許してもらえる。サタン世界から稼いできたお金を十分に一、神様に返すだけで認めてもらえる。だから感謝しなければ…っていうような教えを受けてきた」
特殊な教育受け、貧しさに耐えたのは小川さんばかりではない。
「内緒で貯めていた貯金を勝手におろされて献金されてしまった」
9月4日、新宗教の宗教2世たちが集い悩みなどを語り合う会合があった。そこにも祝福2世がいた。
旧統一教会“祝福2世”の女性
「正直、2世で生まれて、いいことなんかひとつもなかった。(中略)私が教会と違う道を行きたいと言ったとき、両親にもの凄く怒られて『統一教会があったからこそ生まれてきたのに、教会を否定したら自分の存在を否定することになるじゃないか』と言われ絶望した」
他にも問題を抱える2世は少なくない。
「自分の奨学金を親が勝手に献金に回した」という30代の祝福2世もいた。スタジオの小川さんも、高校時代働いた給料も、卒業後の2年間の給料もすべて両親に取られ献金に回された。
旧統一教会を脱会した宗教2世 小川さゆりさん(仮名・26歳)
「自分の稼いだお金も使わせてもらえなかった。成人式にも、田舎だから車を買おうとしたけれどダメだった。
(中略)ストレスがピークに達し、心を病んでしまい精神病棟に入院した。その入院中、内緒で貯めていた貯金を母親に勝手におろされて献金されてしまった… (中略)それでも親を信じたい気持ちが少しあって脱会はできなかった。ところがある日、心を病んで部屋に引きこもっている私を親が“働かない”“お金を入れない”厄介者と思っていることを聞いてしまった。それで我慢の限界が来て、20歳で家を出て、脱会した」
日本に約5万人の2世がいると教会側は言うが、実は、教会に通わない人が増えているという。2014年のデータでは、2世大学生のうち教会に残っているのは30%だけだ。
教会にしてみれば、2世はいわば“純粋培養の信者”であり、献金を計算できる存在のはずだ。番組のニュース解説、堤伸輔氏があえて乱暴な表現でわかりやすく言ってくれた“手っ取り早い金蔓”と。しかし、SNSが発達した社会で、教会や両親の教育が世の中とはかけ離れていることを知り、両親との間の葛藤や悩みを逆に深くする若2世も増えることになる。どうすれば救えるのか…。
小川さんはひとえに、今この問題が熱いうちにしかできないだろう高額献金の禁止や、団体規制の法律の制定を急いでほしいと一緒に出演した葉梨法務大臣に求めた。今回、関係省庁を取りまとめて旧統一問題に取り組む組織の長にいる葉梨大臣。果たしてその答えは。
葉梨康弘法務大臣「家庭を破壊してまで 献金を要求するっていうような宗教団体は他にあまり知りません。ですから宗教団体というよりもやっぱり本当に献金を要求することによってその人の家庭とか子供を破壊してしまっていいんだろうか…ですからそういう意味で今回自民党も新しく統一教会との関係を断つということになったわけですが、そのような献金を要求してたという実態をみんなが知らなかったということはその 意味では私も 党としては反省をしなければいけない点はあるだろう というふうに思います」
このように述べたうえで団体規制や献金額規制など踏み込んだ対策について、こう締めくくった。
葉梨康弘法務大臣「今あの私は政府の閣僚の立場なので、方向性を今示すというよりは、むしろやはりいろんな方々からご意見をしっかりと承ってアンテナを広げていく段階だというふうに私は思っています。ただいずれにしてもこの 20年間この問題が放置されてきたという問題があります。しっかりアンテナを広げていくということが今最大限、注力しなければいけないことだと思っています。(法規制については)立法理由を積み上げていかないと結社の自由にも関わる問題でもありますから、そういった意味で私たちとして今まず現行法でどういう形の解決ができるのかを検討しています。しかし(法規制の)将来の検討については可能性として否定しているものではない、必要であればということです」 

 

●鈴木紗理奈が質問…「太田さんは統一教会、擁護派なんですか?」 9/18
TBS系「サンデー・ジャポン」(日曜・午前9時54分)は18日、旧統一教会を巡る問題でSNSで同番組のMCを務める「爆笑問題」の太田光の発言を受け「#太田光をテレビに出すな」がトレンド入りしたことを報じた。
同番組での太田の一連の発言が教団を擁護しているととらえる人も多くSNSは大炎上していると番組は伝えた。この事態にコメンテーターでタレントの鈴木紗理奈は太田へ「これはっきりさせておくべきだと思う」とした上で「太田さんは統一教会、擁護派なんですか?」と質問した。
これに太田は「いやいや…またそれも難しいやね」とした上で「今、現役の信者の人たちは、守らなきゃいけないなと思うから今の流れに危機感を感じているのは確か」とし「ただ統一教会自体が悪質なことをやっているのはやめた方がいいと思う」と明かした。
この答えに鈴木は「統一教会がちょっと悪いことしている団体。でも信仰の自由はあって、心底信じている方の自由は奪うべきじゃない。でも実際、献金とかによって苦しんでいる家族がいる」とし「まずは家族の被害者を救済した後にといっても信者の人たちも心底信じててだましているわけではなく、救いのために自由を守れるべきだよと順序で言うなら分かるんですけど、順序が違うのよ」などと指摘した。
これに太田は「まず救済っていうけど、その救済はそれほど簡単じゃないって意識がある。もちろん統一教会が悪質だってやっていくのはいいんだけど、世の中の人って理知的でわかる人ばかりじゃないじゃない?その間に副作用として現役の信者の偏見とか仲閭nズレにするとかみたいなことが起きていく不安があるから順番じゃなくて同時に発信すべきだと俺は思っている」とコメントしていた。
●旧統一教会系のイベント出席、推薦状… 自民の福島県議10人が接点 9/18
朝日新聞が全都道府県議を対象に「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)との関係を尋ねたアンケートでは、福島県議10人が教団や関連団体と関わりがあったことを認めた。10人全員が自民党議員。このうち9人が追加の取材に応じ、具体的な接点を明らかにした。
アンケートは県議56人全員が回答。うち10人は「旧統一教会や関連団体主催のイベントに関し、出席・祝辞・祝電等の関わり」を持ったことがあると答え、今後の関係は見直すとした。
佐藤郁雄県議(59)と鈴木智県議(49)は、県議選の直前や期間中に教団信者の前であいさつしていたと説明。佐藤県議は教団の友好団体「世界平和連合」から推薦状をもらったが、選挙を手伝ってもらったことはないとした。
西山尚利県議(57)は教団の集会などに出席し、関連団体から「平和大使」に任命されていた。佐々木彰県議(57)は教団のクリスマス会に出席したほか、願い事を書く短冊を購入していた。
取材に応じた9人によると、教団や関連団体と接点を持ったきっかけは、「選挙の時に『応援したい』と事務所を訪ねてきた」「地元市議の誘いで勉強会に行ったら教団関係だった」など様々だった。
教団や関連団体に対する認識は、多くが旧統一教会が前身だと知らなかったか、教団と関わりがある団体と知らなかったとした。
佐々木県議は「知人が信者だった。統一教会は改心したと思っていた」。鈴木智県議は教団側から「無理な献金は今はなく問題ない」と説明を受けたという。
坂本竜太郎県議(42)と渡辺義信県議(59)は明確な接点ではなく、それぞれ「事務所スタッフが似た名前の団体に祝電を出した記憶がある」「祝電を送った可能性がある」などとした。
教団のホームページによると、県内には福島市、郡山市、白河市、会津若松市、いわき市に教団の教会がある。
福島県議と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)や関連団体との関わり
・西山尚利(57)=福島市選挙区、4期= 教団の集まりやクリスマス会、友好団体のイベントに出席。関連団体から「平和大使」の任命も
・佐藤雅裕(56)=福島市選挙区、3期= ※アンケートで、教団や関連団体のイベントに関わりがあったことを認めた。追加の取材には応じず
・佐々木彰(57)=伊達市伊達郡選挙区、2期= 教団主催のクリスマス会に出席。主催イベントで使う願い事を書く短冊を購入
・先ア温容(48)=田村市田村郡選挙区、3期= 教団主催のイベントに出席
・長尾トモ子(74)=郡山市選挙区、5期= 関連団体の活動報告会(会費あり)に出席
・鈴木優樹(38)=郡山市選挙区、1期= 関連団体の記念講演で祝辞を述べた
・渡辺義信(59)=白河市西白河郡、5期= 「案内のあった会合に出席できない場合は祝電を送るのが慣例なので、送った可能性がある」
・鈴木智(49)=いわき市選挙区、3期= 関連団体のイベントに祝電。選挙前に信者にあいさつ
・坂本竜太郎(42)=いわき市選挙区、2期= 「事務所スタッフが教団と似た名前の団体に祝電を送った記憶がある」
・佐藤郁雄(59)=会津若松市選挙区、1期= 教団主催の復興関連イベントに出席や祝電。選挙前か期間中に信者にあいさつ。関連団体から推薦状も
●細田議長、党籍保有も対象外 自民「旧統一教会」点検 9/18
自民党が行った世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と同党議員の関わりをめぐる点検で、衆院の細田博之、参院の尾辻秀久両議長が対象外となり、野党を中心に批判の声が出ている。自民党は除外した理由を「党所属国会議員」ではないためとしているが、2人とも党籍を保有。細田氏は教団関連会合に出席しており、党の姿勢が問われそうだ。
衆参両院議長は中立性が求められるため、慣例で就任に当たり国会内の会派を離脱する。ただ、自民党籍は保有したままで、複数の党関係者が細田氏らの党籍は残っていると明言。党島根県連はホームページの議員一覧で細田氏を紹介している。
自民党側は、党籍保有と会派所属の二つが「党所属国会議員」の要件との立場。党総裁選でも衆参議長は国会議員票を投じる権利がなく、一般党員票しかない。
立憲民主党の泉健太代表は16日、自民党が細田氏を対象外としたことについて、「不合格だ。細田氏自身で点検して明らかにしてはどうか」と指摘。共産党も「自民党の政党助成金を算定する数には細田氏も入っている。都合が悪いと外すのはご都合主義だ」(小池晃書記局長)と批判する。
臨時国会は10月3日召集予定で、野党は旧統一教会問題などで政府・自民党を徹底追及する構え。このため、自民党内からは「議長も調査した方がいい。このまま国会を開いたら、絶対に批判される」(ベテラン)などと、懸念の声が上がっている。
●合同結婚式の相手選びもマッチングアプリ 宗教2世「登録するのが嫌で・・・」 9/18
本人には信仰心がなくても、親の宗教で人生が左右される「宗教2世」。今回話を聞いた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の2世は、親から日常的に暴力を振るわれ、信者との結婚を勧められていたのが嫌で姉弟で逃げたという。そして、旧統一教会が、結婚相手選びに独自のマッチングアプリを使っていることも明かしてくれた。
「今は信者同士のマッチングアプリで、合同結婚式の相手を選んでいることがよくあるようです」
そう話すのは、両親が旧統一教会の信者という宗教2世の女性Hさん(20代半ば)。
いまや旧統一教会もマッチングアプリを使って結婚相手を決めていると聞いて驚いた。
合同結婚式(2022年は祝福合同結婚式)といえば、霊感商法と並び、かつての旧統一教会の象徴的な行事であり、文鮮明氏が写真を見てさまざまな要素を「霊視」し、ふさわしい相手を決めていると紹介されていた。
それが、「俗世間」と同様のデジタルのシステムを採り入れ、アプリで選ぶというのは、どうにも違和感があるが……。
マッチングアプリの話は後述するが、幼少時代から宗教2世として生きてきたHさんが、父親らから受けてきた「虐待」にも触れておきたい。
取材で会ったときのHさんは、セミロングにブラウンのメッシュを入れた髪形で、ノースリーブのワンピースがよく似合っていた。
「こんな格好も教会にいるときはできませんでした」
と快活に話すその彼女が、「これ見てくださいよ」と左手の小指を見せた。
「こっそり彼氏と付き合っていて、お茶を飲んだくらいなのですが、それが父親に見つかると、殴られ、引きずり回されました。そのときに小指を骨折しました。今もまっすぐには伸びません」
たしかに、Hさんの左手の小指は湾曲したままで伸びない。
「親は教会に寄付ばっかりするものだから、病院で診てもらうお金がない。父親は『男と付き合うなんて、地獄に落ちるぞ』と吐き捨て、ほったらかし。2日ほど痛みに耐えたけど、どうしようもなくなって叔母に泣きつき、病院に連れていってもらいました。高校2年のときでした」
宗教2世は、旧統一教会でいうところの「祝福2世」。Hさんは、合同結婚式で両親が結ばれ、長女として生まれた。3歳下に弟がいる。
「小さいときから遊び場は教会でした。何かあれば教会に連れていかれ、見よう見まねで祈りをささげるのが日常でした。最初はそれが当たり前でしたが、友達とも遊べない状況が続き、小学2、3年生になると教会が苦痛で仕方ありませんでした。嫌がる私を両親は引きずるように連れていきました」
自由に遊べなかったというHさんは、「寒い冬、遊びたくて教会から逃げ出し、深夜まで街中を歩き続け、警察に保護されたこともあります。そのとき、『教会が嫌で逃げた』と警官に言いましたが、『早くお父さん、お母さんのところにお帰り』と説得されるばかりでしたね」 と振り返る。
今のHさんのファッショナブルな服装からは考えられないが、小中高とおしゃれとは無縁だったという。
両親は共働きで、母親は旧統一教会の「ダミー会社」にも勤務していた。稼ぎは大半を教会への寄付につぎ込み、食事は白飯と、スーパーの閉店間際で安くなっているときに買う「おつとめ品」の総菜が1、2品。服も教会から中古や、信者のおさがりをもらい、髪も理髪店に勤務した経験がある男性信者に年に数回、切ってもらうだけだった。
「ずっとダサイ格好だったので、小中学校ではいじめられました。中学では、私が旧統一教会の信者と知っている同級生がいて、『宗教の女』とからかわれ、本当につらかった。なぜなら、私はまったく旧統一教会を信じていなかったからです。両親に怒られるから、信じているふりをしていただけでした」
高校に進学すると、生活苦から逃れようとアルバイトをはじめた。
しかし、両親はHさんがアルバイト代を手にすると、「家計が苦しいからお金を入れて」 と全部取った。そこで、両親には内緒で別のアルバイトを掛け持ちし、コツコツとへそくりをはじめた。
そして、バイト先で彼氏と出会うことができた。
「彼のおかげで、世の中はこんなに自由なんだと、こんな服もある、化粧もある、おいしいお菓子もあるんだと知りました。夢のようでした。教会がいかに閉鎖的で、世の中から隔離されているかがよくわかりました」
だが、前述したように、彼氏の存在がバレて、父親から暴力を振るわれる日々が続いた。
高校を卒業すると、両親は旧統一教会のダミー会社で働かないかと打診してきた。それも霊感商法のような健康ビジネスをしている会社だったという。
しかし、Hさんは断り、自分の力で契約社員の仕事を見つけてきた。それでも、週末には教会に行った。行かないと大げんかになるからだ。
Hさんの弟も、「教会の外にこんな自由があると知ってびっくりでした」 と話す。
あるとき2人は、脱会を決意する。
「決断した大きな理由は、合同結婚式です。昔は文鮮明氏が相対者(結婚相手)を決めていましたが、今は信者同士のマッチングアプリをこっそり開発して、それである程度選べる仕組みになっています。信者ばかりですから、環境は変わりません。両親がさかんにそのマッチングアプリへの登録を勧めてくるので、早く逃げないと合同結婚式に無理やり連れていかれてしまうと思ったんです」
Hさんが続ける。
「実際、同じ教会の人が、韓国の合同結婚式に強引に参加させられて、帰国したらどこかに逃げてしまったのを知っていました。このままでは自分も弟も同じ運命をたどることになると。2人ともマッチングアプリに登録させられる前に脱会しようと行動に移しました」
そこで2人は親戚を頼り、両親の元から離れ、周囲の協力で脱会できたという。
冒頭でも触れたが、合同結婚式にマッチングアプリというのは驚きだ。そこで現役信者にマッチングアプリについて尋ねると、「私が聞いたところでは、日本の信者の会社がマッチングアプリを開発し、信者専用に使っているそうです。顔写真や生年月日、所属教会など細かくデータを入力するんです。20歳を過ぎると祝福2世たちは、『早めに登録を』などと言われたりもします」 と存在を認めていた。
旧統一教会幹部も、「今はマッチングアプリを介して合同結婚式というのはかなり多い」 と語っている。
コロナの感染拡大もあって、合同結婚式の大規模なものは2020年を最後に開かれていない。
「20年の合同結婚式でも、マッチングアプリで知り合ったというカップルがいましたよ。それなりに効果があるのかもしれません」(前出・現役信者)
Hさんの話に戻ろう。
脱会後のHさんと弟だが、コロナ禍でもなんとか仕事を見つけ、どこにでもいる若者のような生活を送っている。
山上徹也容疑者の安倍晋三元首相銃撃事件後、旧統一教会の問題が再燃していることに対しては、「山上容疑者のやったことは許せないけど、教会のことで絶望的になって、という部分は理解できます。私も曲がった小指を見るたびに悔しさがこみ上げてきます。教会をずっと恨んでいます」 との思いだ。そして、こう続けた。
「両親は今も私にカネの無心をしてきて、断ると『教会に戻らないと地獄に落ちるぞ』と脅してきます。それも安倍さんの事件後にですよ。この教会は宗教じゃない。自由を奪い、カネを根こそぎ奪っていく。早く国が、教会に断固とした措置をとってほしい」
●鈴木エイト氏が旧統一教会からあら探し≠ウれていることを暴露 9/18
作家でジャーナリストの鈴木エイト氏が18日、お笑いコンビお笑いコンビ「爆笑問題」(太田光=57、田中裕二=57)がMCを務める「サンデージャポン」(TBS系)に出演。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)からあら探し≠ウれていることを明かした。
長年にわたって旧統一教会関連団体の取材をしてきた鈴木氏は、この日も解説として登場。太田から「毎週オシャレになっていきますね。美容室に行ったらしいです」と紹介されると、「先週のサンジャポ終わりで、青山の美容院に」とさわやかに答えた。
旧統一教会については、宗教法人法に基づく教団への解散命令を求める声も上がっているが、鈴木氏は教団側の反応について「直接、政府・行政に圧力はかけられないので、国連であるとか海外メディアを通して、日本に圧力をかけようとする動きがありますね」と解説。その上で、「教団側が僕のスキャンダルを探しているらしいです。統一教会を追及する人間に、実は信用ならない人間だみたいなところを探しているようです」と、自身があら探し≠ウれているとの情報を暴露した。
鈴木氏が「ここ20年は何も問題ないと思います」と身の潔白を主張すると、その微妙な言い回しに田中は「20年って、余計その前は何があったんだ」と苦笑い。鈴木氏が改めて「ジャーナリスト活動してからは何もない。大丈夫だと思います」と落ち着いた口調で話すと、太田は「疑ってないですよ、我々は」と笑っていた。
●統一教会信徒が飛び込み営業にやってきて…「1時間で会員に・・・」と豪語 9/18
毎日、電車を乗り降りする人口が約250万人! 新宿、渋谷駅と競う喧騒の「池袋駅」から、徒歩10分弱のビル街に、20年間近く仕事場を構えてきた。築40年を優に超える老朽化した賃貸ビルである。
下宿時代にまでさかのぼると、池袋界隈に軸足を置いた暮らしがおよそ半世紀にも及ぶ。目をつぶって歩いても迷わないほど慣れ親しんだ土地。だが、この8月末についにグッバイすることになった。
広大な駐車場を含む1ブロックの区域が、都市開発に遭い、部屋の明け渡しを余儀なくされたからである。数年後には33階建ての商業ビルに変貌するという。
引っ越しの手配や粗大ごみの処分に汗を流していると、ふと走馬灯のように20年間の思い出が蘇ってきた。
できれば距離を置きたい怖いお兄さんたちや、「ちょっと寄らせてもらったよ」と、民族団体の会長も顔を見せ、昼からコップ酒を傾けた。
飛び込みセールスマンも多かった。スーツ、ネクタイを着用した20代の青年が、1箱3000円の「高麗人参茶」を抱えて来訪したことがある。一目見て統一教会員であることがわかった。
私は、目の前の男性が幼稚園の頃から統一教会員の物品販売を取材していた経験を持つ。そんな事情は話さずに、部屋に通して青年の売り込みに耳を貸した。1日に100軒ほど訪問していると語るが、韓国通でもある私は「高麗人参茶」は足りていた。
やがて相手は売り込みをあきらめ、話を統一教会の教義に切り替えた。
「私はね、今、ここに黒板と1本のチョークがあれば、あなたを1時間で会員にしてみせますよ」と言う。「韓国語を世界共通語に」と豪語していた教祖・文鮮明並みの大変な自信家だ。あいにく部屋には黒板もチョークもない。青年は仕方なく重い腰をあげて深々と頭を下げると、笑顔を残して部屋から出ていった。
統一教会の思い出といえば、もうひとつ。夕刻、入居ビルの玄関を出たとき、質素な身なりの若い女性が声をかけてきた。「シャチョさん、これ買ってください」とクセのある日本語で小物類を押し付ける。見境のないこの手の街頭セールスは、ほぼ統一教会信者とみて間違いない。100円ショップから買ってきたような貧弱な小型扇風機が1000円だという。
彼女の生活費になるのなら買ってあげてもよかったが、私は1000円が韓国に流れることを知っていたので「オジさん、日本語わからないよ」と言って断った。
あの若い男女は今どうしているんだろうか。意外と幹部になっているのか。それとも……。 
●旧統一教会と政治の問題… 9/18
長年、カルト宗教に関する相談や訴訟に携わってきた紀藤正樹弁護士が、富山市で開かれた講演会にオンラインで参加し、旧統一教会や霊感商法の実態について述べました。
旧統一教会と政治の問題の究明などを求める富山革新懇が開いたオンライン講演会には約100人が参加しました。
全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹弁護士が講演し、旧統一教会を始めとした霊感商法の被害の実態などについて語りました。
その中で、霊感商法に関する相談はこの30年ほどで全国で3万4千件以上にのぼり、相談のないものや被害者の親族なども含めると、日本の人口の2%ほどが何らかの形で霊感商法の被害を受けているのではないかと述べていました。
また、安倍元首相の銃撃事件や旧統一教会の政治の関係が明らかになっていることについて、紀藤弁護士は、「統一教会の問題が浮き彫りになった1980年代に一連の問題を総括してこなかったことが現状につながっている」とし、問題を放置してきた国の責任について言及していました。
●岸田内閣、支持率急落 不支持46.5%が初めて逆転 国葬反対6割超え 9/18
共同通信社が17、18両日に実施した全国電話世論調査によると、岸田内閣の支持率は40.2%で8月10、11両日の前回調査から13.9ポイント急落し、昨年10月の内閣発足以降最低となった。不支持率は岸田内閣として最も高い46.5%となり、支持率を初めて逆転した。安倍晋三元首相の国葬に「反対」「どちらかといえば反対」が計60.8%を占め、「賛成」「どちらかといえば賛成」の計38.5%を上回った。
自民党が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と党所属議員の関係を公表した調査を巡り、自民党の対応が「十分ではない」との回答は80.1%で、「十分だ」16.1%を大きく上回った。自民党と旧統一教会との関係について「関係を断つことができない」と思うとの回答が77.6%に上った。
安倍氏を国葬の対象に決めたことに関する岸田文雄首相の説明について「納得できない」は67.2%。「納得できる」は28.8%だった。
物価高に対する首相の対応を「評価しない」が70.5%、「評価する」は24.2%だった。
●3割切った内閣支持率 「岸田さんは自民党と統一教会の共倒れを望んで・・・」 9/18
「2ちゃんねる」創設者の西村博之(ひろゆき)氏(45)が18日、自身のツイッターを更新。内閣支持率が30%を切った岸田内閣と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係について言及した。
世論調査で岸田内閣の支持率が29%になったとする毎日新聞の記事を添付し、「71%の人が統一教会対応に不満を感じてます。統一教会の調査なりを政府として対応すれば支持率が上がるのは明確」と指摘。「ここまで何もやらない事から推測すると、岸田さんは自民党と統一教会の共倒れを望んでるのかも?」とつづった。
ひろゆき氏は同じく内閣支持率に触れた8月22日の投稿でも、「30%を切ると来年の統一地方選挙で自民党はかなり厳しくなります」とつづり、「統一教会対応をしないと支持率が下がるのはわかってるけど、ここまで何もしないのであれば、統一教会を切る事が出来ない関係性なのかも、、、」と見解を語っていた。
●竹中平蔵 “旧統一教会と関係=アウト”の自民&世論に反論 9/19
元総務相で経済学者のパソナグループ会長・竹中平蔵氏(71)が18日放送の読売テレビ「そこまで言って委員会NP」(日曜後1・30)に出演。旧統一教会と政治家の問題について語った。
番組では「政治家は旧統一教会との勝ち切れるか?」がテーマに。竹中氏は「今起こっていることを物凄く単純化して言うと、統一教会っていうのは悪い集団であると。で、そこに何らかの形で関わった人はみんな悪い政治家である、ということですけども、これね、法治国家としてあり得ない理論だと思うんですよ」と口に。「宗教の自由があって、宗教をやりながら政治活動をするのは自由ですよ。メルケルさんはキリスト教民主同盟だったし、日本には創価学会、公明党っていうのもあるわけだから、宗教の自由、信仰の自由と政治の自由っていうのはちゃんと守らなきゃいけないわけです」と訴える。
その上で、「じゃあ旧統一教会が本当に悪いのか、と。例えば刑法に違反してます、消費者なんとか法に違反してます。それはそれで取り締まったらいいんだけど、教会そのものが悪いかどうかということを認定する仕組みがこの社会にはないんですよ。これを突き詰めてやるならば、ワイドショーで統一教会が悪いものだということを大前提にしてますけど、そこまで議論するんだったら反セクト法をつくるしかないんですよ」と主張した。
反セクト法とは反社会的な団体を規制するフランスの法律のこと。竹中氏は「これは政治が、この宗教は良い、この宗教は悪い、ということを決めるわけですから、物凄い政治の宗教に対する介入になるわけで、フランスでも大論争があった」と説明。「そういうのを作ってこなかった政府が悪いという議論なら分かるんだけど、とにかくいろんなことを積み重ねて、印象も積み重ねて、週刊誌の記事も積み重ねて、“これが悪い集団だから、それと関わっている人は悪い”って、こんなの法治国家の議論じゃないですよ」と力説。最後に「新しいセクト法の議論を始めたらいい」と語った。

 

●旧統一教会 “宗教2世” の苦悩 「行政がやるべき仕事やっていない」… 9/19
安倍元首相銃撃事件を機に注目された、“宗教2世”と呼ばれる人たちの問題。宗教2世の被害やカルト規制について、カルト問題に詳しい立正大学教授の西田公昭さんと、元衆院議員で弁護士の菅野志桜里さんをお迎えして、考えていく。
“被害”に遭うも…「親を悲しませることできない」苦悩
Q.宗教2世たちから、さまざまな“被害”に遭いながらも、「親を悲しませることができない…」といった苦悩の声が上がっています。この問題に長く取り組んでこられた西田教授はどう思われますか?
立正大学教授 西田公昭教授: これまでは、児童相談所などが「児童虐待」と思っていなかったんだと思います。身体虐待、精神虐待、社会的虐待、経済的虐待、さらに性的虐待が入る場合もありますね。こういう問題なんだけど、児相からすると「信教の自由」「親権の強さ」に阻まれて、下手に口出しすると自分たちが訴えられかねない
Q.「親権の強さ」は通常の虐待事案でもハードルになりますが、「信教の自由」への何となくの忌避感というのは大きいのでしょうか?
立正大学教授 西田公昭教授: そうですね。また、一般に、虐待された側は訴えることができない。ボロボロになっているんですよ。そういう意味では、周りが見つけてあげるしかないと思います
児童虐待などの被害を生む前に、“カルト規制”などで事前にこういった事態を防ぐ必要がある。
旧統一教会は、これまでに民事裁判で問題行為を認定されている。
例えば2012年の札幌地裁判決では、「宗教性などを隠して勧誘することは不正」「家族などとの交流を断絶させ、"十分な金を出さないと救われない"と信仰を維持させることは不正」として、約2億7800万円の賠償命令が出ており、他にもさまざまな問題行動が認定されている。
解散を命じられた宗教法人はオウム真理教など2件だけ
しかし、旧統一教会は今なお、宗教法人として認定を受けている。
宗教団体は日本に18万以上あり、それぞれ固定資産税やお布施などの収入を非課税とするなど、税制上の優遇措置を受けている。宗教法人法では「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などがあれば、解散命令を出すことができるが、過去に解散を命じられたのはオウム真理教など2件のみだ。
Q.“著しく公共の福祉を害する”とありますが、解散命令がなかなか出ないのはなぜなんでしょうか?
菅野志桜里弁護士: 実際、刑事責任を問われた2件にしか解散命令は出ていないんです。ただ宗教法人法には「法令に違反して」とある通り、必ずしも「刑法」に限らない。旧統一教会は“正体隠しの伝道”や“高額な献金を脅し取るようなやり方”は民事上の違法行為という裁判例はあるんですが、解散命令には行き着いていないし、その前提の質問権すら行使されていない。行政の側が「政教分離」という言葉に自縛されて、やるべき仕事をやっていないという状況だと思います
Q.“著しく公共の福祉を害する”というのは、ふわっと表現することで、広く網をかける意図かと思ったのですが、結果、広すぎて網から抜けてしまっているということでしょうか?もう少し具体的に表記すれば変わりますか?
菅野志桜里弁護士: そうですね、もう少し具体的にすることもですし、あとは文部科学相だけでなく、他の大臣がトリガーを引けるような勧告権も考えられるかもしれません。さまざまな工夫ができると思います
●統一教会、安倍国葬、円安…この「三題噺」に象徴される日本の政治崩壊 9/19
世間でいま大きな関心事となっているのが、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党との癒着、安倍元首相の死去にともなう国葬の是非、深刻な物価高をもたらしている急激な円安でしょう。この「三題噺」は日本の政策状況のとんでもなさを象徴していると思います。まさに政治崩壊。愕然としています。
「統一協会噺」は、安倍晋三氏の死去により実態があからさまになりました。彼がひとつの役割を果たしたと言えるのかはともかく、特定の宗教団体、しかも非常に危うい思想性を持っている宗教団体に、自民党が牛耳られていることが分かった。
そんな政党が政権を握っているのは、絶対に許されないはずです。自民党の憲法改正草案の文言が、統一教会の政治部門とされる国際勝共連合の改憲案と一致している実態も明らかになった。政教分離の観点からも容認し難い事実であり、政党政治の崩壊を示しています。
そしてそれは、「国葬噺」や「円安噺」と無縁ではありません。
国葬を実施するという決定がいきなり飛び出し、当たり前のように進行していることに愕然とするのはもちろんのこと、問題になっている統一教会との関係を利用して自民党議員を選挙に当選させてきたのが安倍氏です。その安倍氏を国葬とするわけで、そこに矛盾があるのに、国民の理解を得ることも、伺いを立てることすらなく、ずんずん進めてしまっている。
そんなことをしたらどういう反発があるか、ということさえ気づかない感性になってしまっているのが自民党という政治集団だということも明確になってきました。国葬にする理由づけも、自分たちの都合や論理でしかない。しかも億単位の費用がかかり、16億円超と発表された金額はまだ膨らむ可能性がある。国民が納得できるようなものではなく、いずれも政党政治の体をなさない実態を表しています。
経済運営においても、背景に政治崩壊があるため円安がどんどん進んでいる。現象としては、世界の金融市場の潮目が変わり、各国が利上げに転じて内外金利差が拡大する中で、日本が置き去りにされ、その結果、円安になっているわけです。理由は、日銀が金融政策の担い手としての役割を果たさず、政府の言いなりになって金融の超大緩和を持続しているからですよね。ひたすら国債の利回りを上げないために動いている日銀の姿は、経済政策の機能不全を露呈し、政策責任を担える体制ではないということは明らかです。
やはり「三題噺」の底流はひとつ。政治崩壊なのです。我々はここから脱却しないと、さらにどんな変な噺が次々と加わってくるか分かりません。もはや国家的危機と言ってもいいかもしれません。
国家的危機をもたらしている自民党は政権政党失格です。政権を争う政党としての要件を欠いていると言わざるを得ません。野党には気概を見せてもらいたいし、ジャーナリズムの力でまっとうな日本を取り戻す、という雰囲気がみなぎってくれば、光が見えてくるのではないかと期待しています。
●英女王国葬で真価が問われる安倍「国葬」と自民党と統一教会の関係 9/19
今月8日に死去した英国のエリザベス女王の国葬が19日に行われる。NHKでも生中継するようだが、いうなればこれで先を越されたことになる安倍晋三元首相の「国葬」の真価がいま再び問われる。
国葬の理由にならない岸田首相があげる理由
国家元首でもない安倍氏を「国葬」にする理由について、決めた当人である岸田文雄首相は、ことあるごとに4点をあげて説明してきた。たとえば、8月31日の記者会見で岸田首相はこう指摘している。
(1)民主主義の根幹たる国政選挙を6回にわたり勝ち抜き、国民の信任を得て、憲政史上最長の8年8カ月にわたり重責を務められたこと。
(2)東日本大震災からの復興や、日本経済の再生、日米関係を基軸とした戦略的な外交を主導し、平和秩序に貢献するなど、様々な分野で歴史に残る業績を残されたこと。
(3)諸外国における議会の追悼決議や服喪の決定、公共施設のライトアップを始め、各国で様々な形で国全体を巻き込んでの敬意と弔意が示されていること。
(4)民主主義の根幹である選挙活動中の非業の死であり、こうした暴力には屈しないという国としての毅然たる姿勢を示すこと。
しかし、これはもはや理由になっていないはずだ。
教団と深く交わった安倍元首相
安倍氏は7月8日に、参院選で訪れた奈良市内での応援演説中に銃撃された。その場で逮捕された山上徹也容疑者(41)は、母親が統一教会(現・世界平和統一家庭連合)にのめり込み、家や土地を売ってまで多額の献金をして家庭が崩壊したことから、教団への恨みがあり、教団と関係の深い安倍氏を襲ったと供述。そこから世間の注目はたちまち統一教会に向かい、そして政治家との関係が問われることになった。
山上容疑者の恨みが安倍氏に置き換わったきっかけとなったのは、昨年の9月、統一教会の創始者である文鮮明の妻で、現在の教団の総裁である韓鶴子が主宰する関連団体「天宙平和連合」(UPF)に、安倍氏が送ったビデオメッセージで、こう明言していたことだった。
「韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」
このビデオメッセージを安倍氏に依頼したのが、UPF-Japan議長の梶栗正義氏とされる。梶栗氏は、やはり教団の関連団体の「国際勝共連合」や「世界平和連合」の会長を兼任していて、統一教会の実質的なトップとされている人物だ。
彼は安倍氏が応じたことについて、後日、信者たちを前にした説教で、こう述べている。
「この8年弱の政権下にあって6度の国政選挙において私たちが示した誠意というものも、ちゃんと本人(安倍氏)が記憶していた。こういう背景がございました」
これらは『文春オンライン』が内部映像といっしょに報じたものだが、奇遇にも岸田首相が掲げた「国葬」の理由の(1)については、統一教会の協力があってのものだ、と信者に説いている。統一教会だけで選挙結果を左右するものではないが、少なくとも選挙の度に組織として支援にまわっていて、それを安倍氏も承知していたことを物語っている。
当時から統一教会との関係が批判されていれば、そして教団組織の支援がなければ、6度の国政選挙を勝ち抜いて憲政史上最長の政権運営を担えたか、疑問が残る。少なくとも、岸田首相が関係を絶つことを党是とした統一教会と安倍氏の間に選挙協力があったことからすれば、長期政権も称賛に値するのだろうか。
理由の(2)についても、「歴史に残る業績」と呼べるものばかりだろうか。森友学園及び加計学園問題については、いまだに燻ったままだし、問題が指摘された首相主催の「桜を見る会」は中止されたままだ。その「桜を見る会」には、教団関係団体の幹部が招待されていた。2017年には、統一教会幹部たちが来日して、自民党本部や官邸にまで招かれていたという。
まして、統一教会が現在の「世界平和統一家庭連合」に名称を変更したのも、2015年の安倍政権下でのことだ。それまでの所轄庁の方針を大きく変えてのことだった。統一教会との関係を批判された自民党の国会議員の中には、「名前が変わっていて、統一教会だと気付かなかった」と言い訳する輩まで出てくる始末だ。
支持率急落の岸田首相との弔問外交に期待する海外要人はどれほどか
理由の(3)については、弔問外交を期待してのことだろうが、エリザベス女王の国葬がその8日前に入った。はっきり言ってしまえば、海外から弔問に訪れる外国要人の顔ぶれは比べものにならない。2週続けての「国葬」となれば、どちらかを優先することも考えられるし、その場合の優先順位は誰が見ても明らかだ。
しかも、海外から要人がやって来たとしても、支持率が急落して、早くも“次”が囁かれるような首相を相手にするだろうか。
時事通信が今月9日から12日に実施した世論調査で、岸田内閣の支持率は前月比12.0ポイント減の32.3%と急落。昨年10月の政権発足後最低となったばかりか、不支持率は同11.5ポイント増の40.0%で、初めて不支持が支持を上回っている。
朝日新聞の今月10日から11日の世論調査では、岸田内閣の支持率は41%だった。前回8月27日、28日の調査では47%だった。一方で、不支持率は前回39%から47%にまで増え、ここでも初めて不支持が支持を上回っている。
NHKが今月9日から3日間で行った世論調査でも、内閣支持率は先月の調査より6ポイント下がって40%、不支持率は12ポイント上がった40%だった。ここでも支持率は去年の内閣発足後の最低となった。
そして、毎日新聞が17日と18日にかけて実施した最新の調査では、岸田内閣の支持率は29%を記録。先月の調査から7ポイント下落した一方で、不支持利率は10ポイントも増えて、64%にまで達した。
この4つの報道機関の調査によると、安倍氏の国葬に「賛成」「評価する」と「反対」「評価しない」は、時事通信で25.3%と51.9%、朝日新聞で38%と56%、NHKで32%と57%、毎日新聞では27%と62%と、いずれも「反対」が大きく上回り、国民の半分以上が反対していることがわかる。
また、岸田首相の「国葬」の説明に「納得できない」「不十分だ」とする人は、6〜7割に及ぶ。首相の統一教会問題への対応や、自民党や国会議員の説明を「評価しない」「納得できない」「不十分だ」とした人も、やはり6〜7割に達していた。
「国葬」と統一教会が、内閣支持率を押し下げ、不支持を急伸させていて、この2つは密接に関連しているはずだ。
そんな「国葬」に海外から要人がやって来ても、政権も盤石でない首相と信頼関係など構築できるだろうか。弔問外交も期待は薄い。
「国民の弔意を強制するものではない」とする国葬とは…
理由の(4)は、確かに民主主義の根幹である選挙活動中にあってはならない、そして決して許される行為ではない。こうした暴力には屈してもならない。
だが、「国葬」の実施から予算まで閣議決定だけですべてを決めておいて、あとから国会で説明して済ますやり方が、民主主義の基本と言えるのか。エリザベス女王の国葬であっても、英国では議会の承認が必要だった。岸田内閣のやっていることは、むしろ中国共産党が某らの重要会議で決めたことだから、と事後伝達するのと同じだ。国民の支持が得られていないことは、報道各社の世論調査からも明らかで、説明にも納得していない。
岸田首相は統一教会との訣別を宣言して、被害者救済に関連省庁の連絡会議を設け、今月末までの無料電話相談窓口を置いた。
だが、これは繰り返し指摘していることだが、その一方で、どうして加害者団体の首領をビデオメッセージで称讃する首相経験者を「国葬」にしなければならないのか。いうなれば、日本国民を食い物にする日本の敵に味方して、宣伝にも使われたはずの人物に、国費を注ぎ込んで葬式を出す意味がわからない。
その説明がないままの岸田首相のダブルスタンダードが、いわば国民の混乱と怒りとなって世論調査に表れている。「国葬」を決めた4つの理由も意味を成さない。「丁寧な説明」をやたらに口にする岸田首相だが、同じことを丁寧に繰り返すだけでは、説明にすらなっていない。
それでいて、「国葬」は「国民の弔意を強制するものではない」と言いつつ、いまのところ16億6000万円の予算を注ぎ込んで、休日でもない日に、都内には交通規制が敷かれて、国民生活に不自由をかける。「国葬」に反対の半分以上の国民からすれば、迷惑な話だ。
世論の大勢は「国葬に反対」だが教団にとってはまたとない士気発揚の機会
ただ、それで喜ぶ人たちもいる。統一教会の幹部たちだ。前述のように、信者たちを前にした説教で、きっとこう語ることだろう。
「私たちが安倍政権に示した誠意と、安倍元首相がお母様(韓鶴子)に示した敬意が、ちゃんと『国葬』というかたちで報われました。間違いではなかったのです」
そうやって宣伝に利用することは、想像に難くない。
もっとも、エリザベス女王の国葬を目の当たりにして、ほだされた日本人が安倍氏の「国葬」に便乗してしまう可能性もある。それはそれで衆愚というものであり、醸成された空気の中で人の心が操られるのだとしたら、それこそ統一教会の手法にはまっているのといっしょだ。
●「旧統一教会問題」岸田総理と自民党幹部の間で生じる深刻亀裂 9/19
9月7日16時過ぎ。自民党本部4階の総裁応接室は重苦しい雰囲気に包まれていた。
「接点のあった全員の氏名を公表すべきではありませんか」
岸田文雄首相(65)がいつもの淡々とした口ぶりでそう切り出すと、やんわりとではあるが、険しい表情でこれを否定する「重鎮」がいた。
「なかなか難しい。議員が知らないうちに秘書が祝電を送った場合もありますから」
声の主は茂木敏充幹事長(66)。自民党のナンバー2である。
旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との「ズブズブの関係」が、自民党内で大きな問題となっているのはご承知の通り。「国民への丁寧な説明が大事」と考えた岸田総理は、自民党の全所属議員に「統一教会との接点」の調査を指示。接点があると答えた議員の名前を公表し、国民からの信頼を得ようとした。調査が終わった直後に、旧統一教会と所属議員379名との接点を公表する記者会見まで予定されていた。
ところが、だ。フタを開けてみれば、9月8日に行われた記者会見で、茂木氏が「接点がある」と公表した議員数は179名にとどまった。どうしてここまで「規模縮小」してしまったのか。
実は、自民党所属議員との接点の公表を巡り、自民党トップの岸田氏とナンバー2の茂木氏の間で、鞘当てが起きていたようなのだ。自民党関係者が明かす。
「自民党が急速に支持を失っている原因を、岸田さんは『自民党の説明が足りないからだ』と思っている。一方の茂木さんは逆の発想で、『たかだか統一教会に挨拶をしたぐらいの議員の名前まで公開すると、火が燃え移るばかりだ』と考えているようだ。その考え方の差が縮まらず、いびつな形の公開となってしまった」
調査・公開をめぐる二人の温度差は、この問題に火がついた直後から生じていたという。
「旧統一教会問題が発覚した直後の7月26日の会見で、茂木幹事長は『党としては一切関係がない』と組織的な関与をまっさきに否定し、立憲民主党や日本維新の会と同様に、所属議員への聞き取り調査をしなかった。その後、接点のあった議員が五月雨式に発覚し、調査や説明に後ろ向きな姿勢が強い批判を生んでしまった。総理は『幹事長の誤った判断のせいで、初動からミスをした』と考え、後手に回る幹事長の手腕に疑問を感じていた」(総理周辺)
膿を出し切り、反転攻勢につなげたい岸田総理と、全面公表は避け有耶無耶のうちに処理をしたい茂木氏の間で、何度も言葉が交わされたが、結局、二人の距離は9月に入っても縮まらなかった。
冒頭の会議の様子からも、二人の溝が決定的に広がっていることがわかるが、この会議には二人の他に、麻生太郎副総裁(81)、遠藤利明総務会長(72)、萩生田光一政調会長(59)、世耕弘成参院幹事長(59)らも同席。「全面公表か、一部公表か」で議論が続いたという。
「それでは、『旧統一教会の会合に議員本人が出席した』以上の議員を公表する。それ以下は非公表、でいかがでしょうか」
世耕氏がそう述べると「それがいい落とし所だな」として出席者から賛同の声があがった。これ以上の議論は、ただ両者の溝を広げるばかりだと判断したのだろう。かくして179名(重複を除くと121名)の氏名公表となった。
しかし、この「折衷案」がさらなる国民の不信を招くことになる。その翌8日の閉会中審査で、岸田総理は従来の見解を繰り返した。茂木氏の会見を含めても、数々の疑念を払拭するだけの説明はなされず、旧統一教会問題が「幕引き」とはならなかった。
「やはり、全員公表とすべきだった……」
そんな無念が、岸田総理の脳裏を駆け巡っているのではないか。8日夜、記者団から、「今回の調査で国民の理解は得られ、批判は解消されるのか」と問われると、岸田総理は疲れた表情でこう返した。
「調査結果を重く受け止め、信頼回復に向けて努力していく。詳細は幹事長に聞いていただきたい」
一説には「岸田が倒れたら次は茂木」という声があがるなか、茂木幹事長はあえて岸田内閣の失点となるような悪手を打ってるのではないか…などという声も聞こえてくる。その本心は、議員の名前と同じく公表されることはないだろうが、しばらく二人の「暗闘」は続きそうだ――。
●旧統一教会信者が選挙の“電話作戦”に協力 自民 「関係断ち切れない現状」 9/19
関係認めた議員は、半数近い179人
旧統一教会との関係をめぐり、自民党はアンケート調査の結果を発表した。一方で関係者に取材すると、簡単には関係を断ち切れない現状があることも分かってきた。
自民党・茂木幹事長の会見: 結果を重く受け止めてます。率直に反省し、今後は旧統一教会と一切関係を持たないことを党内に徹底していきます
自民党の茂木幹事長は9月8日、旧統一協会との関係について所属議員に報告させた「アンケート調査」の結果を公表した。 その結果、関係を認めた議員は全体の半数近い179人と判明した。またその9割が「旧統一教会関連」との認識がなかったという。
自民党・茂木幹事長の会見: 何らかの接点があったか、全くなかったに関わらず、今後は一切関係を持たないという党の方針を遵守して行くことが大切だ
「反共産主義の運動をしていれば、ぶちあたる」
しかし、この自民党が示した方針に困惑する党員もいる。現在、落選中の長尾敬 前衆院議員だ。
長尾敬 前衆院議員: 私も組織人なので党の決定には従わないといけない。同時に今回の決定を受けて、現場で有権者と接して行く中で、どうそれを履行していいか少々困惑している
2009年に民主党から出馬し初当選した長尾氏は、その後、安倍元首相から直接誘いを受けて自民党に所属を変えた。安倍元首相の銃撃事件後には、自身も旧統一教会の関連団体(平和連合・女性連合・勝共連合・勝共UNITE・UPF・世界日報社)の会合に参加していたことなど、関係があったことを公表した。
長尾敬 前衆院議員: 反共産主義の思想を持っておりますので、そういう運動していれば、自然と誰もがぶちあたると思う
見極めの難しさ…関係断ち切る”法的根拠”がほしい
Q. 霊感商法問題は?
長尾敬 前衆院議員: 承知していました。きっちり反省するところは反省されて、自浄作用を働かせて、社会的問題にならないように被害者が出ないように、努力していたのかなと思っていた
次の参議院選挙には出馬する意向だが、これまでも旧統一教会の信者から選挙活動の応援を受けることもあった経験から、その見極めの難しさを指摘する。
長尾敬 前衆院議員: 色んな方が出入りするので、一人一人に「どのような宗教を信仰していているのか?」と聞かないといけないのか。それぞれの人が信じているものについて、人権侵害に…私が先方の心を傷つけてしまうことがあるのではないか。そう思うと、どう現場で対応していいか少々困惑している
長尾氏は関係を断ち切る”法的根拠”がほしいと訴える。
長尾敬 前衆院議員: 反社会的団体とは何ぞや、そして社会的に排除するための法律をつくるべきだと思います。まずはそこからです
自民党元職員が内情明かす「“選挙に弱い”が漬け込まれる」
一方、旧統一教会と選挙活動の関係についてはこんな証言も。近畿地方のある自民党府県連で、数十年間にわたり職員として働いていた男性に話を聞くことができた。
自民党府県連の元職員: 国会議員の事務所は選挙前になると必ず、ほとんどの事務所には電話はいっていた。普段付き合いがないのに、選挙になったら急に「手伝うことありませんか」というのは統一教会だけ
信者たちは、有権者に電話をかけて自民党候補への投票を呼びかける「電話作戦」に協力していたという。
自民党府県連の元職員: 10人くらいいたうちの3〜4人が、統一教会の人単独ではなく複数で来られる。(団体名を聞くと)「家庭連合」とおっしゃっていた。自分も名称変更は知らなかった
さらに、旧統一教会側が近づく候補者には“ある特徴”があったという。
自民党府県連の元職員: 弱い候補者に受け入れてもらいやすかったんで、そういうところに集中していた。 しつこい、毎日のように「何かありませんか」って選挙事務所にかかってくる。新人だったり、普段から選挙活動していなくて、手伝ってくれる人が少ない”弱い候補者”や“比例でしかひっかからない候補者”は、結構すぐ頼んでいた
選挙に弱い、という所に漬け込まれる状況だったということだ。 これまで旧統一教会に選挙で長年"お世話”になっていた現実…。自民党はその関係を本当に断ち切ることができるのか。
●河野太郎 旧統一教会「解散命令」のカギを握る不貞騒動の元女性議員 9/19
安倍元首相の国葬などにより支持率ガタ落ちで、これに沖縄県知事選の大敗が追い打ちをかけ「崖っぷち状態」が指摘され始めている岸田政権。この危機を救うのは河野太郎消費者相だという声が、一部で急激に高まっているという。
自民党議員が言う。「旧統一教会問題も世論が厳しいため、一定の関係があった121人については氏名も公表してアピールしたが、いっこうに政権の支持率回復にはつながらない。結局、党の本気度が見えないということでしょう。では、どうしたら国民を納得させられるか。そのキーマンの一人に、河野さんの名前が挙がっているんです」
なぜ河野氏なのか。自民党議員が続ける。「霊感商法対策について話し合う消費者庁の有識者検討会(霊感商法対策検討委員会)が始まり、河野さんが自らその責任者になったからです。そのメンバーは、旧統一教会問題に取り組んできた紀藤正樹弁護士ら8人。そしてこの会合で、河野さんが音頭をとって教会に解散命令を出すよう文科省に勧告する可能性が高いとも言われている。事実、河野さんはテレビ出演の発言で断行を匂わせており、そうなれば世論もある程度納得し、支持率回復も望めるのではないか」
これについて野党議員の一部からは、「仮にそうした命令が出せても、信者らが法の網の目をくぐり新たな活動をする危険性は高く、意味がない」とする意見も出ており、「カルト規制新法」など広範囲な効果が期待できる新法の模索を勧める声もあるのだが、自民党内では「今ある法律で解決すべき」とあくまで即効性を求める動きが強いようだ。
前出の自民党議員も期待感を滲ませて、「河野さんが文科省に解散命令を出すまでこぎけるかどうかは、有識者検討会の委員になった元衆院議員であり元検事でもある菅野志桜里(山尾志桜里)弁護士の法知恵が欠かせない。キレ者の彼女も『真に必要な場面では』としながら『解散命令請求にも踏み込むべき』と発信し息巻いているようですからね。河野さんとの強力タッグは見ものです」
果たして、旧統一教会問題はどこで決着を見せるのか。 
●「安倍政権の問題を示す必要ある」 元首相国葬を考えるシンポ 9/19
安倍晋三元首相の国葬を考えようと19日、東京大の國分功一郎教授(哲学)の研究室が「国葬を考える」をテーマに、政治・哲学者、弁護士ら識者6人による議論をユーチューブで配信した。國分教授は「モリカケ・桜疑惑など、安倍政権の問題を国葬の開催前にはっきり示す必要がある」と指摘し、同時中継で約3200人(主催者発表)が視聴した。
東京大の石川健治教授(憲法学)は「組織法に加えて『国葬法』までつくらなくても、今回の国葬ぐらいはできる、というのが法制局の立場。有力な行政法学者も、服喪義務を課さない非権力行政なら、組織法だけでやっていいと考える。しかし、国家作用としての国葬が、本質的に重要事項だと考えれば、服喪義務を課さなくても法律が必要になる」と指摘した。
國分教授は「安倍政権は公文書を破壊、権力の及ばない人々を徹底批判した。国葬が開催されればこれらが黙認され、安倍政権の完成に手を貸すことになる」と批判した。
京都精華大の白井聡准教授は「(第2次安倍政権の)2012年体制を生んだ日本は排外主義者が横行し、日本会議や旧統一教会などの右派が活性化した」と指摘。「(旧統一教会との関係を騒ぎ立てるのは、安倍氏を銃撃した)山上徹也容疑者の思うつぼだとの批判があるが、暴力でなければ変えられないような状況を私たちが作ってしまった。テロが起きる前に我々の日本社会は腐り切り敗北していた。国葬は私たちの敗北していた社会をうやむやにし、否認することになる。許してはならない」と強調した。
同志社大大学院の三牧聖子准教授は「2017年のトランプ米大統領(当時)の初来日で日本は膨大な兵器購入の要望に応じた。トランプ氏は帰国後『軍事とエネルギーで大規模な発注があるだろう』とつぶやき、国民の頭越しに外交が行われた」とし、「安倍政権の日米蜜月の下で何が起きたか。安倍外交のレガシー(遺産)を再考する必要がある」と話した。
旧統一教会の元信者やカルト二世の救済にあたる山口広弁護士は「国葬を行えば、信者にとっては旧統一教会との関係を深めた安倍氏を国が認めたことになり、教団幹部が喜ぶ。信者の家族が苦しみカルト二世が苦しむ。なんとかこれ以上、彼らが苦しまないようにしてほしい」と訴えた。
●研修会で安倍氏の国家観を確認  統一教会問題が影 9/19
自民党最大勢力の安倍派(清和政策研究会、97人)は19日、東京都内のホテルで研修会を開き、死去した安倍晋三元首相の国家観や主要政策を引き継ぎ、結束して推進していくことを確認した。ただ、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題では同派が標的≠ニされる場面が目立つだけに、影響力の確保が課題だ。
研修会では冒頭、5月の同派パーティーで安倍氏が積極財政政策や防衛力の抜本的強化を訴えた際の動画が流れた。その後に所属国会議員らは安倍氏に黙禱(もくとう)をささげ、安倍氏の遺影に使われた写真が配られた。
会長代理の塩谷(しおのや)立(りゅう)元文部科学相は27日に予定されている安倍氏の国葬(国葬儀)について「(首相の)在位最長の中で大変な功績を残した偉大な政治家の死を悼み、粛々と行ってほしい」と訴えた。
研修会では、ジャーナリストの櫻井よしこ氏ら国家観や外交・安全保障、財政政策で安倍氏と考えが近い有識者が講師を務めた。塩谷氏は「安倍氏が取り組んだ政策課題、遺志をしっかり継いで結果を出していく」と述べた。
財政政策をめぐっては、同派に所属する萩生田光一政調会長や世耕弘成参院幹事長が物価高などを受けた30兆円超の経済対策が必要だとして歩調を合わせ、岸田文雄首相に対する要求を強めている。
一方、政治力のあった安倍氏の不在に加え、旧統一教会問題が影を落としている。塩谷氏は、野党や一部報道機関が旧統一教会側と安倍派が近いと主張しているのを念頭に「われわれが標的にされがちな状況の中で、悲しみ、辛さ、不愉快さも含め、皆さんが結束を乱さず耐え忍んでいただいている」と述べた。その上で、関係断絶や被害者救済が必要だとの考えを強調した。
●届かない社会の絶望、安倍元首相銃撃は「30年越しの時限爆弾」  9/19
日本を揺るがせた安倍晋三元首相銃撃事件。凄惨な殺人事件というだけでなく、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る被害や、教団と政治家の関係が明るみに出る契機となり、社会に多くの問いを投げかける。人間の欲望や社会の矛盾を鋭く洞察してきた作家の吉村萬壱さんは「この事件の深いところには、政治に対する『届かなさ』がある気がしてしょうがない」と、問題を長年放置してきた政治や社会の責任を指摘する。最新の小説「CF」(徳間書店)で責任とは何かを問い、新興宗教にも関心を寄せる吉村さんに、事件への思いを聞いた。
届かない言葉、消えない情念
吉村さんは現実社会と少しずれた奇妙な世界で生きる人々の姿を描き、人間の生の根源をえぐり出す。「CF」は現在の日本を思わせる社会を舞台に、あらゆる責任を「無化」する仕組みを開発した企業を巡る群像劇で、無責任な社会に憤る若者がテロを企てる様子も描かれる。6月の刊行後まもなく銃撃事件が起きたことから、その予見性にも注目が集まる。
「安倍政権をずっと見ていて、責任を取らへんなっていうのがすごくあった。何とか作品化できないかと思った」と吉村さん。安倍晋三元首相は「美しい国づくり」など耳当たりの良い言葉を多用する一方、森友、加計問題や「桜を見る会」問題を国会で追及されると、虚偽答弁を繰り返した。「きれいなことを言うけど内実がない。言葉が実態のないものにされていく過程を見せられ、われわれ国民の中で『自分たちの訴えは絶対に政府の中枢には届かない』という諦めのようなものが積み重なってきた。無力感を醸成してきた政権だったと思う」と振り返る。
積み重なったのは諦めだけではない。吉村さんは事件の背景に「政治に対する憤りや情念」があるとみている。「政治の空洞化が分かってしまっても情念は消えないので、どこかで爆発せざるを得ない。今回の事件は旧統一教会に関係して安倍元首相が銃撃された形だけど、もっと深いところに、政治に対しての届かなさ、『言葉が聞いてもらえない』ということが分かってしまった結果がある気がしてしょうがない」
爆発の素地はできていた
吉村さんは銃撃事件を、旧統一教会を巡る問題を放置してきたことによる「時限爆弾のようなもの」と表現する。1992年に行われた統一教会による合同結婚式を機に、教団による霊感商法などの問題が一時期盛んに報じられたが、被害救済や法整備はほとんど手つかずのままで約30年が過ぎた。
殺人容疑で逮捕された山上徹也容疑者は、母親が旧統一教会に多額の献金をした影響で家庭が困窮し、教団への恨みを募らせたとされる。「彼のように八方ふさがりの人はたくさんいる。(事件は)日本社会が彼らを放置し、追い詰め、政治も手を差し伸べなかったことへの暴発のような形。彼がやらなくても誰かがやっただろうし、相手が安倍元首相じゃなくても、何らかの形で30年の鬱積が爆発する素地は準備されていた」
問題が放置される一方、日本社会では盛んに「自己責任論」が取り沙汰されるようになった。「自分で選んだ信仰なんだから自分のせいでしょ、という自己責任論が一般の人たちに対してはある。ところが企業や政治では、責任が上の方に行くに従って曖昧になり、結局うやむやになる。自己責任論を負わされるのは末端の国民で、しかも、そのもっと下で被害者たちが苦しみの声を上げられずに埋没している」。だまされたら終わりで、誰も救ってくれない。そんな空気がまん延する中で銃撃事件が起き、被害者らが声を上げ始めた。
実態のないものを信じる動物
吉村さんは今こそ被害救済や法整備が必要だと強調する一方、信仰心というものに複雑な思いを抱えてもいる。
吉村さんは、親族と両親がある新宗教を信仰し、自身もその宗教を信じていた経験がある。大学進学で実家を離れ、宗教団体トップのスキャンダル報道に触れたことなどを機に吉村さんは信仰をやめたが、親族は亡くなるまで熱心に信じ続けた。「すごいお金もつぎ込んで、トップの写真集にうっとりしたりしていた。でも本当に一生懸命だった。その意味では魂の救いになっていたんだろうなと思う」。信じることは誰にも止められない。それが被害を広げる要因でもある。「周囲が愛情を持って『これはおかしい』と言い続けるしかない。一発逆転がない、息の長い闘いですね」
吉村さんは宗教に関心を寄せ、繰り返し小説にも描いてきた。「ちょっと詐欺っぽい新興宗教というのが興味深くてしょうがない。人間は(実態が)ないものを信じてしまう特殊な動物。宗教も政治も根っこは全部同じだと思うんです。新興宗教を肯定するわけではなく、そこに捕まった人たちを観察して描きたい」
「どうしたら」の問いに答えられるか
山上容疑者が旧統一教会への恨みを安倍氏に向けたことには、動機として「論理的飛躍がある」と指摘する専門家もいる。だが、吉村さんは「彼の生い立ちから追い詰められていく過程をたどっていくと、起承転結が理解できる。彼には選択肢がなかった」と言う。容疑者は事件前にツイッターなどで思いを吐露していたが、「『届いていない』と思っていたんじゃないか。SNSで発信しても、誰かに訴えても、警察や役所、政治家に言っても聞いてもらえないだろうと。言葉の限界を感じていた」
「彼は頭が良くて、立派な社会人になって幸せな家族がいる満ち足りた人生を何回も想像したと思うんです。でもそれが一つの教団のためになくなってしまったという喪失感。そして、それを誰も聞いてくれないという苦しみ、そういったものの中に彼は1人いた。その状況で『どうしたらいいですか』と問われた時に、誰が答えられるだろうか。そういう社会やと思うんですよ、今の日本は」
追い詰められているのは山上容疑者や教団被害者だけではない。「派遣切りに遭ったりして、大卒でホームレスをしている若者もいる。それにこのコロナ禍で、仕事はないし、めっちゃ暑いし、金はないし、人生真っ暗という人たちがいる。彼らは『世界なんかぶっ壊れてしまえ』と思っているのではないか」。本来はそういう人たちに目配りするはずの政治が機能していないと、吉村さんは憤る。
事件を機に、閣僚を含む多数の政治家と教団との関係が報じられ、岸田文雄首相が陳謝する事態になっている。「政治家は当選することしか考えていない。『選挙教』という一つのカルト教団のようなもので、倫理も何もない。それが今回のことで明らかになったと思う」
「この社会は地獄だけど、この社会しかない。われわれが救われるためにも何か変えていかなあかん。それはやっぱり選挙で、本当に苦しい人たちを見てくれる政治家に一票を入れるということかなと思います。じっくりしつこく地道にやっていかなあかんなっていう感じですかね、もどかしいですけどね」。
選挙も新興宗教もひとつの「熱狂」だと吉村さんは言う。パチンコ屋から出た瞬間に夜風に当たってわれに返った経験を笑って話し、「そういう熱狂に氷のように冷たい言葉を浴びせて冷やすのが自分の仕事かなと思っています」と力を込めた。

 

●山際大臣 旧統一教会 新たなイベント出席認める「率直に反省」 9/20
山際経済再生担当大臣は記者会見で新たに2018年に行われた旧統一教会主催のイベントに出席していたことを認めました。
山際経済再生担当大臣「2018年に2018神日本家庭連合希望前進決意2万名大会祝勝会という旧統一協会が主催する会合に私が出席したのではないかとのご指摘がありました。団体のホームページにその会合に私が出席している写真が掲載されており、私も出席を確認いたしました」
山際大臣は2018年に行われた旧統一教会主催のイベントへの出席を認め「党への報告も速やかに訂正する」と話しました。
その上で「団体のイベントに出席することでいわば団体にお墨付きを与えてしまうようになったことは率直に反省をしております。」と謝罪しました。
●“統一教会”イベント ウェブサイトに写真 山際大臣がまた...出席認める 9/20
旧統一教会との関係をめぐり、山際経済再生相は新たに、2018年に開催された旧統一教会が主催するイベントに出席したことを認めた。
山際経済再生相「団体のホームページに、その会合に私が出席している写真が掲載されており、私も出席を確認いたしました。あらためて、おわびを申し上げます」
山際経済再生相が出席を認めたのは、旧統一教会が主催する東京都内で2018年に開催したイベント。
団体のウェブサイトに掲載されている写真には、韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁とともに、山際経済再生相の姿が確認できる。
すでに自民党へ提出した調査報告書は、速やかに訂正するとしていて、自らの進退については、「今の経済状況では、経済対策を切れ目なく打つ必要があり、わたしに課された責任を果たさなくてはならない」と、大臣を続投する考えを示した。
●旧統一教会との関係「時機を見て追加分公表」自民 茂木幹事長  9/20
旧統一教会との関係をめぐり、自民党の茂木幹事長は党の調査結果を公表したあと、議員からの追加報告が相次いでいることから、時機を見て追加分を集約し公表する考えを示しました。
自民党は今月8日、所属する国会議員379人のうち半数近くにあたる179人が、旧統一教会と何らかの接点があったなどとする調査結果を公表しましたが、その後、議員から新たに接点が確認されたなどとして、追加の報告が相次いでいます。
これについて茂木幹事長は、記者会見で「各議員には、党からのお願いに沿って、追加報告してもらっている。結果の全体像に大きな変化が出ているという報告は受けていないが、時機を見て追加報告について集約し公表したい」と述べました。
また、来年の統一地方選挙を含め、地方議員の選挙で党の公認を出す際の考え方について「地方議員選挙の公認や推薦は、各都道府県連の決定事項だが、今回、旧統一教会や関係団体とは、今後一切関係を持たないということを党の方針として決めた。この方針は国会議員だけでなく、党全体にも徹底していきたい」と述べました。
●愛媛県議長、政活費で統一教会系書籍30冊 「議員活動のひとつ」 9/20
愛媛県議会の渡部浩議長(67)が「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」との関係が指摘される団体の催しにたびたび出席し、教団の友好団体に関する書籍をまとめ買いしていたことが分かった。2020年度と21年度の県議会の政務活動費(政活費)収支報告書で報告していた。渡部議長は「見聞を広めるための議員活動のひとつ」などとして、教団との個人的なつながりを否定している。
政活費は議員の調査研究などの活動経費として、給与とは別に県議1人あたり月額33万円が支給されている。2021年度は県議46人に計1億7952万円が支給された。収支報告書は県議会事務局で閲覧請求することができる。
記者が20年度と21年度の収支報告書を閲覧し、教団との関係が指摘されている団体関連の支出を確認したところ、渡部議長の報告書では該当すると思われる支出が計10回あった。
20年度の収支報告書によると、教団の友好団体の「国際ハイウェイ財団」が進める日韓トンネル構想に賛同する「日韓トンネル推進愛媛県民会議」の賛助会費に1万円を支出したほか、日韓トンネル書籍代として9千円(30冊分)を記載していた。
21年度では、教団の友好団体が関わる自転車イベント「ピースロード」関係の催しに2回行ってガソリン代を請求していたほか、教団の友好団体「世界平和連合」の機関誌「世界思想」の年間購読費として1万2936円を支出していた。教団関連団体の「県平和大使協議会」に1万2千円の年会費を払っていた。
渡部議長は教団との関係が指摘されている団体との交流について、「わたし個人は無宗教だし一切ない」と否定。教団と関連が指摘される団体の催しへの出席が数多くあったことについては、「自分の政治信条として家庭や平和を大事にしており、勉強になりそうな催しに参加した」などと説明し、「教団の関連団体との認識は一切なかった」と話した。今後については、「自民党員なので、党本部の方針に従う」とした。
また、日韓トンネル関係の書籍をまとめて30冊購入したことについては「こういう構想があることを知ってもらいたいと思い、小冊子だったと思うが支援者に配った」と話した。
渡部議長は自民党所属で、西条市選出の当選6回。今年3月から議長を務めている。
●「敬虔な信者の日常と組織の問題は切り分けるべき」絶対悪のイメージ 9/20
番組プロデューサー宛に寄せられた「自分の意思で所属している“祝福2世”の見方を提示したい」というTwitterのDMを受けて先月、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の生まれながらの2世信者から話を聞いた『ABEMA Prime』。
その放送を見た別の信者から「多角的に意見を取り入れてほしい」というメッセージが寄せられ、同番組ではテレビ朝日の平石直之アナウンサーと米イェール大学助教授で経済学者の成田悠輔氏を聞き手に、再び70分にわたって話を聞いた。
「国のトップがメッセージをくれる。理念に共感してくれる人が上の立場にいるのはうれしい」
出演を望んだのは、両親が1990年代に「合同結婚」をした祝福2世で、現在は学生のタブチさん(10代)。「生まれた時から聞かされてきた話や本で読んだ話と、社会で報じられている情報がかなり違うと感じている。どっちが本当なのか、自分が信じてきたことは正しかったのか」という違和感から、今回の取材を申し出たという。
「政治との関わりの部分などで誇張された表現が広がって、“統一教会は悪である”“韓国からきたカルト宗教である”と位置づけられているが、なかなか受け入れられない。中には正しい表現もあると思うが、“こういう可能性がある”ということがあたかも事実のように流されている」
そう話すタブチさんに、成田氏は「世の中では今、“平和などを謳っているのは表面上の話で、中身はただの宗教ビジネスだ”と思っている人が大多数だと思う。その人たちを説得するとしたらどう伝えるか?」と尋ねる。
タブチさんは「説得するのは難しいが……」と逡巡した後、「いろいろなイベントが開かれる度に、国のトップからメッセージが来る。日本だったら亡くなられた安倍元総理、アメリカならトランプ前大統領、カンボジアのフン・セン首相といった方から共感の声をいただいていて、教会が目指す方向に動いているのは間違いないと認識している。理念に共感してくれる人が上の立場にいるのはうれしい」と話した。
政治家による“関係を断つ”宣言に「断って何が起こるのか」
自民党は所属議員と教会との関係を調査・公表し、「関係を断つことを党の基本方針にする」としたが、タブチさんはこれにも違和感を覚えるという。
「関係を断つことによって何が起こるのか。これまで関わりがあった中で、社会全体に大きな問題があったかといえばなかった。他も含めて宗教団体が政治と関わっている部分は多いと思う。なぜ旧統一教会だけが関係を断たないといけないのか、社会がそういう風潮になりすぎている」
政治との関わりとして、毎週の礼拝やLINEなどで「次の選挙ではこの方を応援します」という案内は流れてくるものの、投票を強制されたり、特定の党を推すようなことはなかったそうで、「人で選んでいるのは間違いない。教会の理念に近いのは、自民党の人が多いのでないか」とタブチさん。
成田氏が「“この政治家は自分たちの側だな”と思うような人はいるか?」と切り込むと、「それこそ、亡くなられた安倍元総理。イベントや広報誌に出てくれるというところで、信者たちには安心感があったと思う」と答えた。
成田氏「敬虔な信者の方だという印象」「個人と組織の問題は切り分けるべき」
この他にもタブチさんから、社会的に問題となった霊感商法や多額の献金、家庭・恋愛についても話を聞く中で、成田氏は「重要な問題が1つある」と投げかける。
「彼はすごく普通の、敬虔な宗教の信者の方だという印象を受ける。旧統一教会と聞くと極端なイメージが浮かぶようになってしまっているが、多くの信者には日常であり、これは団体が組織として反社会的なことをしていたこととは別の問題だ。個人は悪者でもなければ、信仰をやめなければいけないわけでもない。2つを切り分けて、個人が被害を被らないようにどうしていくかは重要な問題だと思う」
タブチさんは「SNSを見ると批判的な内容ばかりで、ウソの情報から“悪だ”とつなげるものも多い。それに流される人が多い以上は、なかなかイメージはよくならないと思う。良いことをやっていると伝えないと印象は変わらないと思うので、そのきっかけの1つとして出演させていただいた。この番組を見たことで旧統一教会に対する風当たりが変わるかはわからないが、こういう意見もあるということを知っていただきたい」と訴える。
成田氏は「デフォルメ化、ゲテモノ化して扱いたがるのがメディアや人間の本性だと思う。被害や極端な事例に目が行きがちだが、その裏側には平穏な暮らしをしていて、信仰が心の拠り所になっている人がいるという当たり前の事実を振り返れたのはよかった。ただ、それが旧統一教会が持っているかもしれない問題をキャンセルすることにはならないというのも確かだ」と語った。
●モリカケよりひどい、統一教会との「接点」批判  9/20
宗教法人法に基づく解散命令を統一教会に対し発動しても、実際に行われることは宗教法人格の剥奪に過ぎず、任意団体として統一教会は存続するから同教会による霊感商法や政界工作の危険性は消滅しない。
統一教会が存続する以上、野党が非難する統一教会との接点問題は解消されない。統一教会を暴力団などの反社会的勢力と同一視し、反社対策を統一教会に適用し接点問題を解消すべきだという声が強いが反社対策とはあくまで反社会的勢力を営利団体と評価し経済的利益の提供を禁止することである。だから営利ではなく教義の実践を目的とする宗教団体に反社対策を適用しても意味がない。これについては既に書いた。
とするとやはり「結社の自由」という話になる。統一教会という結社を禁止する。統一教会への参加を禁止する。「統一教会の構成員」という事実を犯罪化する。
これは接点問題のシンプルな対策だ。統一教会の信者数は宗教学者によると2万人前後と推測されており統一教会の結社を禁止することは万人単位の人間を逮捕し刑罰に課す覚悟が求める。
刑罰といっても罰金や執行猶予では接点対策にならない。実刑を課し信者を社会から隔離しなければ意味がない。
もっとも実刑を課し社会から隔離したとしても刑期満了となり出所した場合、どうするのか。信者が教義を捨てない限り統一教会は再結社される可能性があるから刑期満了後も信者をなんらかの施設に収容する必要がある。出所後の施設収容については精神医療行政の知識が役に立ちそうだ。日本は心神喪失者等医療観察法に基づき殺人、放火等を行った心神喪失者・心神耗弱者で不起訴処分や無罪が確定した者を強制入院することを認めている。
これは予防拘禁に他ならない。あまり知られていないが日本は予防拘禁を認めている国なのだ。
日本国憲法は公共の福祉に反する権利の行使を禁止しており、これを目いっぱいカルト信奉者が青ざめるほど拡大解釈すれば「統一教会の構成員」という事実を持って彼らを逮捕・収監し、刑期満了後も施設収容できるかもしれない。
過激な措置と思う方もいるだろうが統一教会を民主主義上の問題と評価するならば思考停止すべきではない。ウクライナを見よ。ウクライナは自らの民主主義を守るために数カ月で万単位のロシア人を死傷させているのではないか。これに比べれば控えめだろう。一応、言っておくが筆者は明白な憲法違反と考える。
話を戻すが統一教会の接点問題を解消したければ「統一教会の構成員の全員逮捕・生涯隔離」は効果が期待でき接点問題のかなりの部分が解決できると思われる。注意してほしいのはあくまで解決できるのは「かなりの部分」であり全部ではない。
相手が宗教団体である限り理論上「団体未加入の信者」も存在する。人は宗教団体に所属して信仰を持つのではなく信仰を持って宗教団体に所属するのである。
団体への所属の有無は信仰とは無関係である。「原理講論」などの教義がある限り統一教会信者は消滅しない。「統一教会未加入の統一教会信者」が霊感商法や政界工作に従事しないという保証は何もない。
「統一教会未加入の統一教会信者」の存在を否定できない限り接点問題は解消されない。彼らの存在を野党・左派マスコミは意識しているとは思えないし、補足する手段も筆者は思いつかない。こう考えると統一教会との接点を断つなど無理な話だし、無理なことを要求する野党・左派マスコミによる接点批判の異常性はモリカケをはるかに超える。 
●安倍派研修会で飛び出した「我々が標的にされている」発言 9/20
9月19日、自民党最大勢力の安倍派(清和政策研究会、97人)は、東京都内のホテルで研修会を開いた。安倍派は、会長の安倍晋三元首相を7月に銃撃事件で亡くした後、複数の幹部による「合議制」で運営を続けている。
研修会の冒頭、安倍氏の生前の映像が流され、出席者が黙祷。挨拶に立った塩谷立(しおのや・りゅう)会長代理は「我々は安倍会長が取り組んだ政策課題、遺志をしっかり継いで結果を出していくことが大きな目的だ。そのためにも協力、結束をしていただきたい」と、安倍元首相の主要政策を引き継ぎ、結束して推進していくことを確認した。
一方で安倍派には、旧統一教会(世和平和統一家庭連合)との関係が確認された議員も多い。塩谷氏は挨拶で「我々が標的にされるような状況の中で、皆さん、結束を乱すことなく耐え忍んでいただいている」と指摘。「何が問題なのか、反社会的とはどういうことか議論し、明らかにして、そういったことに対しては(関係を)断絶しなければならない」と強調した。
「安倍派は、塩谷氏のほか、萩生田光一政調会長、下村博文会長代理、世耕弘成参院幹事長、高木毅国対委員長を中心に運営し、9月27日の安倍元首相の国葬まで、現在の集団指導体制を維持する方針です。
安倍氏は生前、派内の首相候補として、下村氏、萩生田氏、西村康稔経済産業相、松野博一官房長官の4人の名を挙げていましたが、頭ひとつ抜きん出た人物はいない。そのうえ萩生田氏は、旧統一教会との関係の濃さが指摘され、下村氏も、文部科学相だったときに申請された教団の名称変更問題が、尾を引いています。
自民党内最大派閥のため、『ポスト岸田候補』ともなる新会長選びで主導権争いが激化すれば、分裂は避けられないとの見方もあります。いまは動くに動けない状態で、波風を立てないよう、時間が経つのを待たざるをえないのが現状でしょう」(政治部記者)
だが、「待ち」の姿勢には批判的な見方も多い。
実業家のひろゆき氏は、19日に自身のTwitterで、塩谷氏がおこなったあいさつの内容を報じた記事を引用したうえで《統一教会問題を解決する気はなく、耐え忍ぶという被害者モードになっている自民党》とバッサリと切り捨てた。
ネット上でも、塩谷氏の「われわれが標的にされるような状況」との発言に、批判的な声が多く上がった。
《旧統一教会と故人との関係で自派閥が標的にされている旨の被害者意識があるなら、さっさと後継者を選任して派閥名を変更すればいい》《われわれが標的にされがちな状況の中で、とかなり気にされているようだが、標的になっている議員の方々が、はっきり関係を断つ声明文を出し、より深い関係を持った人は、一度議員を離れ次の選挙で出直す姿勢を出せば、安倍派もすっきりすると思うが?》《まるで被害者づらですが、あなた方のボスがしてきたこと、あなた方のボスが調査されないこと、あなた方のボスをわざわざ税金で弔おうとしてることに何も感じないのでしょうか?》《皆さんはひょっとして自分たちは「いじめ」にでも遭われているようなお気持ちでいらっしゃるんですか?そもそも身から出た錆でしょう?》
安倍元首相の国葬が終われば、10月には臨時国会が控えている。「耐え忍ぶ」だけで逃げ切れるほど、永田町は甘くない。
●旧統一教会の「解散請求難しい」 野党ヒヤリングで文化庁 9/20
立憲民主党など野党は20日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題に取り組む弁護士や2世信者を招いてヒアリングを実施した。弁護士らが採択した、宗教法人法に基づく解散命令の請求を行政に求める声明について議論したが、文化庁の担当者は過去の事例を挙げ「現状では難しい」と繰り返した。
全国霊感商法対策弁護士連絡会は16日に解散命令請求や被害抑止・救済のための法整備などを求める声明を採択。ヒアリングに出席した木村壮弁護士は「正体を隠した勧誘、献金活動が繰り返されている。違法な活動が継続しており、解散命令請求ができないことはないはず」と指摘した。
●旧統一教会の3関連団体 県がボランティア団体として登録 島根 9/20
「世界平和統一家庭連合」旧統一教会をめぐり、県は、20日の県議会で、3つの関連団体が河川整備などにあたるボランティア団体として登録されていたことを明らかにしたうえで、今後関係を持たない姿勢を示しました。
20日に行われた県議会の一般質問で、共産党の議員が、「世界平和統一家庭連合」旧統一教会と県との関係があるのかをただしました。
これに対して、県は、去年4月からことし7月までに行われた「世界平和統一家庭連合」やその関連団体の催しに、県が後援、もしくは職員が出席したことはなかったと答えました。
その一方で、3つの関連団体が、道路の掃除や河川整備などにあたるボランティア団体として登録されていたことを明らかにしました。
これについて、丸山知事は、「旧統一教会は霊感商法や献金強要などの被害が指摘されている。一般論として、県が反社会的と指摘される団体と関係を持ち、その接点を利用されると団体の信用を高めてしまい、被害を拡大させてしまうおそれがあるので避けなくてはいけない」と述べました。
そのうえで、「反社会的と指摘される団体が、新たな関連団体を別の名称で立ち上げた場合、県としては、今後、関係を持たない方針だ」と述べ、県の各部局で情報共有をして今後は関係を持たない姿勢を示しました。
●“統一教会”と「関係断つ」表明求め 成田副議長に富山市議会共産党会派 9/20
いわゆる“統一教会”との関わりを巡り、富山市議会の共産党会派が20日、市議会副議長で自民党の成田光雄市議に対し、関係を断つことを求める申し入れを行いました。
成田市議に申し入れ書を提出したのは、共産党の赤星ゆかり市議と吉田修市議です。
市議会で副議長を務める成田市議を巡っては、2019年6月とことし1月に議会棟に教団関係者を講師に招いた勉強会に参加したほか、去年5月には市内の教団施設に出向いて研修会に出席したことが明らかになっています。
また去年9月には、教団の関連団体が主催した講演会にも出席していました。
赤星市議らは申し入れ書で、副議長である成田市議が率先して“統一教会”との関わりを調査し結果を公表することと、“統一教会”やその関連団体と「今後、関係を断つ」と明確に表明することを求めました。
赤星ゆかり市議「藤井市長側は今後きっぱりと関係を断つとおっしゃいましたし、議会を代表する立場である一人の(成田)副議長さんが知らん顔して議長席に座っていていいのかなと」
申し入れを受けた成田市議はKNBの取材に対し、「個人で説明する立場ではない。関係を断つことに異論はない。会派で今後何らかの形で公表する」と答えました。

 

●旧統一教会の「宗教2世」「虐待」に声上げる 賛同者、銃撃事件後6万3000人  9/21
安倍晋三元首相銃撃事件で逮捕された山上徹也容疑者は、「母親が破産するほど旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に献金し、人生を破壊された」などと供述した。同様に旧統一教会を含む宗教に入信した親のもとで「宗教2世」として育てられたことで、一般社会と隔絶した価値観や人間関係、金銭的困窮に悩む人たちは多い。親が子に信仰を強制するのは「宗教虐待」だとし、法規制を求める声を上げ始めた宗教2世たちの思いとは。
宗教の名の下に子どもの人権が蹂躙されている
「宗教2世に信教の自由を」。両親が旧統一教会の信者で20代の高橋みゆきさん(仮名)が署名サイト「Change.org」で活動を開始したのは、安倍元首相銃撃事件が発生した翌日の7月9日。7万5000人が目標の署名は現在、約6万3000人に達した。
「生まれたときから価値観を刷り込まれて苦しんでいる。宗教を信じる親を持つ子どもには、信教の自由がない。旧統一教会だけではなく、他のカルト宗教の2世も同じ悩みを抱えている」と活動の理由を説明する。
宗教の名の下に子どもの人権が蹂躙されていると訴える高橋さん。生まれる前から両親が入信していた「祝福2世」で、物心ついた頃から家にはいくつも壺があり、教会に通っていた。教団では、自由恋愛による結婚が認められていないため、「教団によってお付き合いしていたパートナーと無理やり別れさせられた」との経験を明かし、「結局、教団が決めた信者と結婚して抜け出せなくなる仕組みだ」と話す。
「教えを心の底から信じたことは一度もありません」。幼少時、教会は友だちと遊べる「居心地のいい場所」だったが、思春期に世間や自分の将来などについて考えるようになり、違和感を覚えた。
「恋愛結婚するなら一家心中」、ストーカー化する親も
「教義では『家庭平和』などきれいなことを言っているが、実際は全然違う」。願いをかなえるためとして献金を求められる実態があり、「お金を払えば世界が平和になるのか。恋愛をすれば『地獄に行く』と言われる。人の心を傷つける行為や詐欺まがいの献金が教義と結び付かず、受け入れられなかった」。悪い霊をはらうため、歌いながら自身の体をたたく「役事」と呼ばれる儀式も「本当に異様な光景。科学的根拠もなく、空気感自体がおかしい」と本音を漏らす。
署名を始め、ツイッターなどで同じ境遇の2世から声が寄せられている。恋愛について、「『恋愛結婚をするなら一家心中する』と親に言われたり、ストーカー化して監視する親もいる。耐えきれずに親と絶縁した人もいる」と話す。また、教団から離れて恋愛結婚した人も「幼少期の刷り込みが抜けず『地獄に行くんじゃないか』とおびえる人が本当にいるんです」と問題の根深さを強調する。
「宗教虐待」の救済体制作りを
旧統一教会や他のカルト宗教の2世を巡る実態が「宗教虐待」だと訴える。「児童が宗教を理由に行政や児童相談所に相談しても門前払いされる。他の虐待と同じ基準を満たすのであれば、虐待として扱われるべきだ」。署名を関係省庁に提出し、まずは現行の児童虐待防止法などで救済できる体制作りを求める。さらに、カルト宗教が組織的に行う虐待行為を規制するよう法整備を働きかけていくつもりだ。
教団の田中富広会長は8月10日の会見で、霊感商法や高額献金、合同結婚式について批判が集まる現状が「信教の自由に反する」と訴え、活動に問題がないことをアピールした。特に、霊感商法については「過去においても現在も当法人が行ったことはない」と強調。高橋さんは「なぜあんなことが言えるのか理解できない」と不信感を強める。
「銃撃肯定できないが、問題知って」
安倍元首相銃撃事件は、信者である母親が高額献金で破産するなど家庭崩壊を経験した山上徹也容疑者が起こした。高橋さんは「事件は全く肯定はできない」とするが山上容疑者の置かれた立場に一定の理解も。「いくら宗教組織によって家族が崩壊したとしても、社会に訴えることができなかったんだろうな」
実は、署名活動は2年前にも実施したが、100人ほどしか集まらず断念した。政治家とのつながりや高額献金に比べ、宗教2世への信仰の強制は「家庭内の話」とされ、世間に響きにくいことを痛感していた。だからこそ高橋さんは、「いまこのタイミングしかこの問題の存在を世の中に知ってもらうチャンスはないんです」と力を込める。
衝撃的な事件によってしか、世間の関心を集められないほど、宗教2世の問題は不可視化されてきたのか。それはなぜか。
「本人が声を上げるのが難しいことに加え、世間のカルト問題への関心が薄まっていた」。旧統一教会の問題に詳しい立正大の西田公昭教授(社会心理学)は、こう分析する。
西田教授は宗教に起因する虐待の中でも、身体的な危害を加えるといった、明らかな不法、違法行為の多くは現行法でも対応できるとする。一方で、勧誘活動などを子どもに強制することは虐待として積極的に踏み込むべきだと考える。「日本では親権が強く、児童相談所や教師も『(親の)信教の自由があるから難しい』と避けてきた。虐待をした親にペナルティーを与えることと、信教の自由を禁じるのとは別の話だ」
行政悩ます「親権」との境目
現在、国は「宗教的虐待」という定義をしていない。厚生労働省は児童虐待を「身体的虐待」「性的虐待」「ネグレクト」「心理的虐待」の4つに分類。担当者は「原因が宗教かどうかは別として、現行制度の中で虐待は分類できると考えている。宗教と、単なる親の考えや習慣との境目、線引きは難しい」と話す。
全国霊感商法対策弁護士連絡会は16日、旧統一教会について、国が裁判所に解散命令を請求するよう求めるとともに、2世問題についても虐待と位置付け、施策を講じるよう訴える声明を出した。
声明の中で、2世に対する人権侵害の例として、
・生まれた時から両親の信仰を強制される(信教の自由の侵害)
・婚姻前の恋愛の禁止(幸福追求権の侵害)
・信者以外との結婚禁止(婚姻の自由の侵害)
・服装、外出などの生活の全てを管理(幸福追求権の侵害)
―――などを挙げる。
両親の信教の自由との関係では、「親が子どもに宗教教育を行う自由は認められているが、『児童に対しその発達しつつある能力に適合する方法』によらなければならない」とする。
同連絡会代表世話人の山口広弁護士は「これまで2世問題、宗教虐待に対し、行政は手付かずだった。児童相談所の対応に宗教虐待を類型化し、担当者の研修をするべきだ。児童虐待防止法の枠組みを変え、児童相談所を充実すれば、ある程度は対応できるはずだ」と話す。
壁は「信教の自由」
その際やはり、壁になりそうなのは「信教の自由」。だが、東京都立大の木村草太教授(憲法学)は「親権者には、子の最善の利益のために、宗教について教育したり、危険な宗教活動への参加を止めたりする責任がある。他方、親の信教の自由には、子に信仰を強制する権利は含まれておらず、布教活動への協力を強要したりするのは親権の限界を超える」と指摘する。
「2世の人たちが、どういうことで悩んでいるのか、みんなで共有することが大切。カルトではなくても、子どもの信教の自由を尊重しながら、宗教の意義をどう伝えるのか。子育ての仕方を考え直すという意味では、全ての人に関わってくる」

児童虐待などに対応するために来春発足する「こども家庭庁」。その名称をめぐり、虐待被害者は「家庭は地獄だった」と「家庭」の削除を求め、旧統一教会側と自民党右派は「家庭」に固執していた。同庁がどちらの側を向いているのか。宗教虐待問題への対応ではっきりしそうだ。
●安倍氏と教団、「調査に限界」という言い訳への苛立ち 江川紹子さん 9/21
「『限界がある』という表現は、一生懸命やったけれど目標や目的には達しなかった時に使ってこそ、理解が得られるものだろう。これを、何もやらない、努力をしないことの言い訳で言われても、『なるほど』とはならない」
9月8日配信の記事「安倍氏と旧統一教会の関係、調査せず 岸田首相『確認に限界ある』」に、ジャーナリストの江川紹子さんは、そうコメントした。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題をめぐっては、教団の友好団体が開いたイベントにビデオメッセージを寄せるなどした安倍晋三元首相と教団との関係が取りざたされている。だが、岸田文雄首相は9月8日の衆院議院運営委員会の閉会中審査で、立憲民主党の泉健太代表の質問に「お亡くなりになった今、確認するには限界がある」と述べ、関係を調査しない方針を示した。
江川さんはコメントで、亡くなった安倍氏から直接話を聞けなくなったとしても、安倍氏が「考えや思いを誰かに語ったり、書きのこしたりしていれば、考えを知る手がかりになる」と指摘。教団の支援を受けた議員や教団関係者に尋ねれば「安倍氏が選挙において果たした役割は、かなり明らかになるだろう」との見方を示した。
さらに、安倍氏の事件は民主主義の根幹である選挙中に起きたと首相が繰り返していることに着目。「その選挙において、有権者に知らされないまま、最大与党が反社会的な行為が問題になっている団体と協力関係にあった事実や、もしかしたらその関係が政策面にも影響を及ぼしたのではないかという国民の疑念を招いている状況を軽く見過ぎではないのだろうか。これはまさに、『民主主義の根幹』に関わる事態だと思う」。そして、こうコメントを締めくくった。
「様々な方法を駆使して十分調査したけれども、『限界』があって分からない部分が残った、というのであれば、仕方がない。ところが、ハナから『限界』を持ち出して何もやろうとしないから、見ていて苛立(いらだ)ちが募るのだ」
●統一教会関連団体が木原誠二官房副長官の後援会設立の疑い 9/21
統一教会(現世界平和統一家庭連合)の関連団体が、岸田首相の最側近・木原誠二官房副長官の後援会の設立に関与していた疑いがあることが、「週刊文春」の取材でわかった。木原氏の地元自民党市議が証言した。
木原氏は東京20区(東村山市、東久留米市ほか)の選出で、当選5回。財務官僚出身で、岸田首相の最側近として知られている。
統一教会との関係を巡っては、9月12日夜、関連団体主催のパネルディスカッションに2016年12月に参加していたとのコメントを発表した。木原氏は自民党の点検に対し、教団側との接点を報告していなかった。外部からの指摘で記憶が「呼び覚まされた」という。
だが、木原氏と教団側との接点はそれだけではなかった。
野島武夫東久留米市議がフェイスブックにアップした写真によれば、木原氏は2019年9月29日、地元・東久留米市の「成美教育文化会館」で行われた会合(演題は「緊迫する東アジア情勢と日本の進路」)に参加している。
主催は「誠世会」、後援は「西東京平和大使協議会」と「アジアと日本の平和と安全を守る東京都フォーラム」。「平和大使協議会」は統一教会の関連団体「UPF(天宙平和連合)」の付設機関、「アジアと日本の平和と安全を守る東京都フォーラム」は、教団の関連団体が主催しているとして木原氏が党に追加報告を行った2016年12月のイベント主催団体と同一の名称だ。
また、野島氏は木原氏の衆院選で東久留米の選対総務部長を務める一方、自身も平和大使協議会から「平和大使」に任命されるなど、教団側との関わりが深い。
では、「誠世会」とはどんな団体なのか。政治団体として届け出はなく、任意団体と見られる。
野島氏に話を聞いた。
――誠世会とはどんな団体か?
「誠世会は、木原誠二さんを応援する団体だと思うんです。だから、平和大使協議会のメンバー、その中でも木原さんを応援する人たちが作った組織だと思うんですね」
――名前の由来は?
「木原先生の名前(誠二)から文字を取ったのと、世界平和の『世』と伺ったことがあります。(設立は)2回ぐらい前の選挙からあると思いますけど」
――2017年?
「そうだと思います」
「(教会へ)挨拶回りでは行ったことがあります」
――選挙のために作った?
「選挙の応援っていうこともあるけれども、世界情勢を勉強する会、講演会を兼ねてるんだと思うんですね。木原先生も外務副大臣をやられていて、世界情勢について、世界平和大使の方々へのお話をする会で」
――木原氏が講師の勉強会?
「もともとはそうだと思います。あわさって選挙の応援も。コロナ前は、新年会とか暑気払いとか。そういう趣旨の集まりもあった」
――野島氏自身も平和大使に?
「平和大使に任命されています。岸田総裁が今後関わらないようにと言われ、関係を断ったので、今は活動していませんが……。(教会へ)挨拶回りでは行ったことがあります」
――次の選挙では誠世会は?
「任意の団体だから、例えばある懇親会をやろうって時の名前だから。こういうことになって、木原先生もそういうことはやらない、というか、参加しないと思いますよね。自民党の方針で、直接じゃないけど、旧統一教会、世界平和大使、その中の任意の人の集まりの誠世会。そう見られてしまいますから、そういう集まりはなくなると思いますけどね……」
西東京平和大使協議会の事務局長に事実関係の確認を求めたが、期日までに回答は無かった。
木原氏に事実関係の確認を求めたところ、弁護士を通じて以下のような回答があった。
木原氏の回答は
「これまで、議員を支持してくださる地元の有志の方々により無数の会合が作られており、議員は、それぞれの会合にできるだけ出席して、国政報告会を行っております。『誠世会』も、そのうちの一つと認識しております。
『誠世会』は、2016年夏頃、地元の有志の方から、『知り合いの地域の皆さんを集めて、政治経済の勉強会をやりたいので、その際、日程が許せば国政報告会を行ってもらいたい』との話が当事務所に寄せられ、その有志の方々によって設立されたものです。
したがって、当事務所として政治団体登録するようなものではなく、また、当該有志の皆様も不定期に開催される国政報告会として政治団体登録はされなかったものと想像します。名称については、特に当事務所に相談はありませんでしたし、その設立の経緯は存じておりません。議員に関連して地域の方々が立ち上げられた同趣旨の会としては、『誠至会』や『誠心会』などもあり、当事務所として特段違和感を持ったことはありませんでした。
その後、開催そのものが一度もなかった年を含め、不定期で7回程度、国政報告に出席しております。少ないときは10人程度、多いときでもせいぜい30人程度の方々が集まっておられました。2019年9月29日については、確かに議員が出席しており、事務所として、ご指摘を踏まえ現在詳細の把握に努めておりますが、これまでのところ、それ以外の会合と同様に、小規模の地元の方々がお集まりになった国政報告会であったと認識しておりました。同日の会合に、2団体の後援なるものがあったのか否か、事務所において確認中ですが、率直なところ、議員が数多く出席していたさまざまな国政報告会のうちの一つが、現在世間で問われている問題と関連があろうはずがないと事務所として認識していたというのが、実際のところです。
議員及び事務所としては、『誠世会』から要請があれば、国政報告に赴き、ひとしきりお話をするという形のお付き合いであり、『誠世会』の会合の設立、運営等については、事務所としては関知しておりません。なお、国政報告を求められて、謝礼を受けとったことは勿論一切ありません。『誠世会』に出席されている方々に選挙の支援をお願いしたこともありません。
前述のとおり、『誠世会』は、地元有志の方々の会で、議員が国政報告会を行う小規模な会合と認識しておりましたので、事務所としては、党による調査の報告対象となるべきものではないと判断しております。
平和大使協議会、旧統一教会関連団体から、組織的な支援を受けたことはありませんし、今後も、組織的なものと確認された場合、事務所として、当該支援を受けるつもりはありません。もっとも、これまで、事務所において、個々の支援者の方々に信仰を問い、信仰如何によって支持を受けるか否かの選別を実施したことはありません。反社チェックとは異なり、このような査問が憲法上の重大な問題を伴うものであることは、ご高承のとおりであります」
党総裁として、自民党の点検結果を「重く受け止める」とした岸田首相。自らの最側近の相次ぐ問題に対し、どのような対応を取るのか、注目される。
●統一教会の告白 「木原官房副長官の選挙支援を呼びかけ、そこに信者も」 9/21
事態は収束どころか、さらなる混迷へと向かっている。遅ればせながら自民党が発表した統一教会に関する調査結果を“点検”すると浮かび上がるのは、責任逃れのための「カラクリ」と「うそ」。
〈国際情勢の新展開と日本の安全保障〉そう題されたシンポジウムが都内で開かれたのは2016年12月18日のことだった。
師走でありながら秋のような陽気に恵まれたこの日、会場では4名のパネリストが登壇した。そこには元新聞記者、元海上幕僚長らに交じり、いまや官邸で権勢を振るう岸田文雄首相の最側近の姿があった。日本の将来を憂える者たちにより行われたかのように見えるこのシンポジウムを手掛けたのは、統一教会と太いパイプを持つ男性と教団の関連団体。しかし、いまに至るまでその事実は明るみに出ることはなかった――。
「俺は忙しいんだ!」
安倍晋三元総理が射殺されて2カ月が経った今月8日、自民党は統一教会と国会議員の関係についてのアンケート結果を公表した。直前に度々目撃されていたのは、責任者たる茂木敏充幹事長が記者らにそう吐き捨てる姿だ。
「調査ではなく点検」と威圧
その約2週間前には、自民党議員に対し、教団との関係についての調査票を送付している。質問は全部で8項目あり、統一教会や関連団体の会合への祝電送付や出席、選挙でのボランティア支援などを問う内容だった。
「今月2日に締め切られ、結果のとりまとめは党職員のほか、議員では茂木さんが先頭に立って行っていました。そのため、8日に公表するまでイライラを募らせていたんです」(政治部デスク)
この間、記者らには「調査ではなく点検だ」と威圧する一方で、「どの党よりも細かい報告を受けている」などと胸を張る姿がテレビで映し出されていた。
自民党所属の国会議員379人のうち179人が過去に統一教会と関係があったことを明らかにしたこの調査。茂木幹事長の自信とは裏腹に、議員からの回答はあいまいなものも多く、集約する作業は難航を極めた。一時は公表延期もささやかれ、6日、党本部で開かれた総務会ではこんな一幕もあった。
「その場に出席していた茂木さんが“できるだけ今週中に公表する”と発言したんです。これに党の重鎮議員がかみつき、“できるだけというのはおかしい。延期したら国民の失望を買ってしまう”と一喝しました。茂木さんは慌てて“必ず今週中に公表します”と訂正していました」(同)
「内容は極めて不十分」
しかし、公表結果はとても世論を納得させられる代物とは言い難かった。
「結果を見ると内容は極めて不十分です」と語るのは、全国霊感商法対策弁護士連絡会代表世話人の山口広弁護士。
「メディアなどで報道されている通り、関係性が明らかになっている議員でも名前が出ていない人が多くいます。例えば、細田博之衆院議長が点検対象から外れているのは明らかにおかしい。今後、本当に教団との関係を断てるのか、非常に心配です」
実名が公表されなかった麻生氏
加えて、この調査にはその正当性を揺るがすほどの大きな疑惑がある。茂木氏の独断で結果を“調整”したことで、首相側近や党の重鎮らが優遇されたのではないか、とされているのだ。
その一人として取沙汰されているのが、麻生太郎副総裁だ。今回、統一教会と関係があったとして実名が公表されたのは179人のうち121人だったが、その中に麻生氏の名前はなかった。
しかし、本誌(「週刊新潮」)は9月15日号で、警視庁公安部が極秘裏に作成していた「議員名簿」と題される資料の中に麻生氏の名前が取り上げられていることを報じている。そこには麻生氏について、〈勝共推進議員〉と記述されている。勝共推進議員とは国際勝共連合の理念に賛同する政治家のこと。その資料には麻生氏が平成11年2月18日、3月4日、13日に関連団体へ祝電を打ったことが記録されていた。さらに本誌が調査を進めると、新たな事実も明らかになった。統一教会の関連団体である国際勝共連合の機関紙「思想新聞」には麻生氏の名前が度々掲載されていたのだ。
公表・非公表のライン
例えば、1998年9月12日。福岡県内のホテルで開かれた統一教会の関連団体・世界平和連合福岡県連合会の福岡大会で麻生氏の祝電が披露されている。その前年にも同じ団体の大会に祝電を送っているほか、94年5月には、国際勝共連合の北九州市八幡支部が市内で開いた支部総会で麻生氏の秘書が来賓のあいさつを行ったことが紹介されている。
これらから浮かび上がるのは、麻生氏が統一教会および関連団体と継続的に関係を結んでいた、という実態である。にもかかわらず、麻生氏の名前が党の調査結果にないのはなぜか。
「秘書の代理出席や祝電送付は公表の対象にしなかったからです」とは先のデスク。
「会合への出席やその会合であいさつをした議員と違い、祝電送付程度であれば、教団との関与の度合いは薄い、という判断です。しかし、問題なのはこうした基準が事前に議員の間で漏れ伝わっていたことでした」
自民党関係者が継ぐ。
「8月末、茂木幹事長と副幹事長らが一堂に会した会議の席でこの“公表・非公表のライン”について話し合われていたそうです。そこでは、秘書の代理出席や祝電の送付については非公表の対象になるという話になり、出席した議員や派閥を通じて、伝わってきていた。そのためアンケートを提出した議員の中には、名前を出されないように、回答を祝電のみに絞った議員もいたのです」
「隠蔽しているととられかねない」
麻生事務所は、「秘書が退職したり、亡くなっている。記憶も記録もございません」
この点、統一教会問題に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏は手厳しい。「公表しなかった議員の中にむしろ教団と関係が深かったり、政権の中枢にいる議員が含まれるかもしれません。麻生さんは祝電を送っていることがすでに明らかになっているのに、名前を出さないのであれば、岸田さんと茂木さんが麻生さんと統一教会の関係を隠蔽しているととられかねません」
茂木幹事長はポスト岸田の座を狙う身。その際、安倍元総理亡き後、今や自民党の最高実力者で、麻生派の領袖である麻生氏の支援は必須だ。氏の名前が出ないようにしたのは、それを得るための“ゴマすり”だったのか。
公表の対象となる関連団体の会合への出席やあいさつ、講演の有無も、自己申告であるがゆえ“実態”を反映しているものとは到底言えない。
シンポジウムに登壇した木原官房副長官
その筆頭格が、最初に触れた宰相の最側近。岸田総理誕生の立役者であり、懐刀として知られる木原誠二官房副長官(52)の例である。
木原氏と統一教会との関係について、松野博一官房長官が会見で“木原氏の地元秘書が関係団体の会合に出席した”旨を明らかにしているものの、今回の調査では名前が記されていなかった。
しかし、首相最側近がひた隠しにしていたのは、統一教会関連の会合に出席していた過去だ。冒頭で紹介したのがその場面である。
東京都府中市で開かれたシンポジウムの主催となっているのは、「アジアと日本の平和と安全を守る東京都フォーラム」。後援は産経新聞多摩支局、そして西東京平和大使協議会とある。平和大使協議会は統一教会の関連団体で、天宙平和連合の付設機関である。
主催となっている団体も同じく教団の関連機関だ。この団体の上部団体と見られるのが「アジアと日本の平和と安全を守る全国フォーラム」で、所在地は東京都新宿区内の統一教会が所有するビルなのである。
出席者が言う。「その日、木原さんはあいさつや講演はしていたと記憶しています。同じくパネリストだったのは海上幕僚長だった人物で、読売新聞の元アジア総局長も登壇していました」
「記憶にないなあ」
議題は集団的自衛権だったという。参加していたかどうかについて、当の木原氏は、「記憶にないなあ」そう惚(とぼ)けるので、こちらからシンポジウムの概要を説明すると、「確かにパネリストとして出たね。いまお話を聞いて思い出したけど、まったく(統一教会関連という)認識がなかった。事務所に出てほしいという依頼があって。そのパネリストのメンバーを私が確認して、まあいいんじゃないか、と。内容も適切なので出席した、ということです」
しかし、問題はこれにとどまらない。このシンポジウムで木原事務所との窓口役を務めた男性が統一教会の関係者と見られているのだ。
永田町関係者が言う。「木原さんは初当選から統一教会の支援を受けているといわれています。このシンポジウムに限らず、何度も関連団体の会合に出席しており、手引きをしているのが木原さんの選挙区に住むこの男性で、信者ともいわれている。彼が地元の教団票を取りまとめているのです」
仲間に統一教会
つまり、木原氏は統一教会から選挙支援を受けていることになる。無論、党の調査における選挙支援の項でも、木原氏の名前は記載されていない。事実かどうか、その男性に質した。
「(シンポジウムは)アジアと日本の安全保障の会ということで活動していて、国際勝共連合や家庭連合(統一教会)とはまったく別でやっています。信者だけではなく、広い範囲でいろんな人が入っていると私は認識しています。当時のシンポジウムでは、木原さんが外交関係をやっておられるので受けていただいた、という感じです」
選挙支援に関しては、「支援というか、選挙区内に住んでいますから、個人的に応援しています。私は友人が多いので、家庭連合のシンパかもしれませんけど、(信者とか)そういうアレではありません。仲間に“選挙に行こうな”“応援しよう”という声かけはします。その仲間には確かに家庭連合の人もいます」
「外部からの指摘により思い出すことができた」
再び木原氏の談。
「(その男性と)シンポジウムのやり取りはしていませんし、私の知るところでは統一教会の信者ではないと認識しています」
――ご自身の選挙でその男性が声をかけている中には信者もいる。
「それは全然知らない。私にはどうにもならないことですよ、申し訳ないけど」
この取材の直後、今月12日深夜に木原氏はこの関連団体のシンポジウムへの参加と、党の調査で申告していなかったことを自ら発表している。概要を記した紙を官邸記者に配る妙な丁寧さで、「外部からの指摘により思い出すことができた」とした。この「外部からの指摘」とは本誌の取材のことを指す。教団との関係を隠そうとしながら、それが露見しそうになると、隠蔽ではないと子飼いの記者たちに報じさせる。官邸の要職に就くものとは思えぬ姑息さだ。
虚偽の報告を行った山際大臣
実は選挙支援に関しては、他の現職大臣も虚偽の報告を行っている。
秘書の中に信者がいるという疑惑と、その秘書へ高額家賃を支払っていた問題を本誌に取り上げられた山際大志郎経済再生相である。
「山際さんは統一教会の関連団体の会合に出席し、あいさつ、講演した、という項目で名前が明示されました。しかし、選挙支援に関しては名前が記されていません」(先の政治部デスク)
だが、山際大臣の古くからの支援者はこう証言する。
「事務所には統一教会の関連団体である世界平和連合の関係者が複数出入りしていて、彼らが選挙区内の信者を集めている。その信者に選挙期間もビラ配りなどをさせていました。中には秘書でもないのに選挙活動をバリバリ手伝う信者がいて、ボランティアの人が不審がっていた。その人は安倍さんの銃撃事件の後、姿を見せなくなりました」
山際事務所に問うと、「当該団体や関係者から組織的に選挙活動の支援を受けたり、依頼したりしたことはありません」
ご自身の手で真相を明らかにしようという気はさらさらないようだ。
取材へのウソが白日の下に
先の参院選直前に、立候補していた生稲晃子氏を伴って統一教会の関連施設に訪問していたことを本誌が報じた萩生田光一政調会長の場合、逆に、調査結果により、うそがバレてしまったケースである。
取材時、萩生田氏は本誌の取材にこう答えていた。
「ご質問の団体(注・統一教会)に選挙戦のお手伝いをしていただいた事実はありません」
だが、今回の調査結果では「選挙におけるボランティア支援」があったという議員の中にその名が見られた。つまり、本誌の取材には「うそ」をついていた事実が白日の下にさらされたのだ。
萩生田事務所はこう回答した。
「世界平和女性連合が開いた国政報告会に出席した際、先方から会場設営の手伝いを受けたため、『選挙におけるボランティア支援』の項目に回答しました」
「やるも地獄、やめるも地獄」
なぜ、かくも自民党調査はデタラメなのか。
「茂木さんは調査の結果を矮小化しようとしていた形跡があるんです」
そう解説するのは、前出の自民党関係者。
「茂木さんはアンケート結果に疑問がある場合は直接議員に電話をかけ、確認をするという作業を行っていました。例えば、会合への参加回数があいまいだった時は“何回なのか”と茂木さんが尋ね、なるべく少ない回数に調整しようとするんです」
さらに選挙支援に関しては、実際に「有」と答えていた事務所が非公表となっていたケースがあった。
「選挙支援は“事前に統一教会の支援と知っていたか”が裏の基準になっていた。つまり、事務所が“支援はあったが、統一教会とは知らなかった”と答えれば、非公表となりました」(同)
そうした「小細工」の数々が、調査結果の「うそ」を生み出したのだった。
欺瞞に満ちた自民党調査が今後の大きな火種になることは間違いあるまい。さらに、支持率急落を招く原因となった「国葬」が9月27日に待ち構えている。
官邸関係者によれば、「国葬への批判は岸田さんにとっては完全に誤算でした。実は安倍さんが亡くなった直後、麻生さんは周囲に“岸田に電話した。国葬にした方がいいってな”と話していた。保守派に配慮しろという意味ですが、岸田さんはそのアドバイスを真に受けて、国葬にすることを決めたのです」
政治アナリストの伊藤惇夫氏は、「国葬はやるも地獄、やめるも地獄です」と断じる。
「国葬への反対が国民の間で高まる中、やめれば閣議決定をひっくり返すことになり、政権がつぶれてもおかしくない事態に陥ります。世論を読まずに自民党の内側ばかり見ていたツケが岸田さんに回ってきているのでしょう」(同)
麻生氏の思惑は
無論、キングメーカー然として居座る麻生氏にも誤算だった。麻生派関係者は、「麻生さんは国葬を経て、支持率が安定すれば、早期解散を進言する肚(はら)でした」
これには麻生氏自身の事情もあった。側近の松本純前衆院議員の問題だ。現在は麻生氏の手引きで副総裁特別補佐の任に就くが、「昨年、緊急事態宣言中に銀座で飲み歩いていた一件を週刊新潮に報じられ、離党し、衆院選で落選しました。松本さんはその後、復党するも来年春、比例に重複立候補できなくなる73歳の定年を迎えます。すると、次の選挙は小選挙区で勝たなくてはならず、再選の確率がぐっと下がる。可能ならば、親分の麻生さんは、その前での選挙を狙っているのです」(同)
だが、この国葬騒動で支持率はガタ落ち。とても選挙どころではない。
主体性なきリーダーを裏で操る木原、麻生、茂木。不都合な事実を隠蔽し、我欲を押し通そうとする参謀たちは、自分たちの手で政権を瓦解へと導いてはいまいか。
●山際大臣 教団会合で「真のお父様」あいさつか…会見後“写真カット” 9/21
また新たな接点が明らかになりました。山際大志郎経済再生担当大臣が、旧統一教会のトップと会合に出席していたことが発覚し、謝罪しました。その数時間後、ホームページから山際大臣が写る写真が差し替えられる異例の事態となっています。
教団トップ会合に…「真のお父様」あいさつか
これまで、世界平和統一家庭連合の関連団体との関係が報道される度、会見で認めるという“後出しジャンケン”を繰り返してきた山際大臣。今回、またしても…。
山際大臣「団体のホームページに、会合に私が出席している写真が掲載されており、私も出席を確認致しました。党への報告も速やかに訂正致します」
2018年、都内で行われた旧統一教会のイベントの写真。子どもたちから花束を受け取っているのは、韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁。向かって左奥の舞台下には、笑顔で見つめる山際大臣の姿がありました。
ところが、20日の会見から数時間後、ホームページで確認すると、大臣が映っていた部分がカットされていました。
山際大臣「団体のイベントに出席することで、いわば団体にお墨付きを与えてしまうようになったことは、率直に反省をしております」
反省の弁を述べた山際大臣ですが、今月8日、自民党が公表した点検結果では、「主催イベントの出席」に名前はありませんでした。
しかし、協会の機関誌によると、このイベントには山際氏をはじめ2人の議員があいさつし、以下のような、祝辞があったといいます。
「真(まこと)のお父様のメッセージをお聴きした時、言葉を超えた真実を感じた」
この発言について、山際大臣の事務所は「そのような発言をしたことはないと思いますが、祝辞をしたかどうかを含めて、資料や記憶がないため不明です」と回答しています。
報告が遅れたことに関しても、山際大臣は、次のように説明しました。
山際大臣「何か調べろと言われても、私と私の事務所には、そのことには限界がございます」
一連の騒動に対して、茂木敏充幹事長は、次のように述べました。
茂木幹事長「追加報告については集約をして、公表したいと考えております」
●旧統一教会との関係指摘されている団体 地方議員が役員辞任へ 9/21
旧統一教会との関係が指摘されている団体の行事に熊本県教委などが名義後援していた問題で、県内の8人の地方議員がこの団体の役員を務めていたことがわかりました。8人はいずれも、団体に対し辞任する意向を伝えたということです。
旧統一教会との関係が指摘されている「熊本県平和大使協議会」などが、おととし10月に熊本市で行った「熊本県の使命と未来・2020フォーラム」では、県教育委員会と熊本市など県内の6つの市が名義後援していました。
県教委などは今後、この団体から申請があっても名義後援を認めないことを決めていますが、この団体の役員に県内の地方議員8人が役員を務めていたことがわかりました。
8人は、県、熊本市、水俣市、宇土市、荒尾市、氷川町、長洲町の議員で、いずれも「旧統一教会との関わりは把握していなかった」などと話し、団体に対し辞任する意向を伝えたということです。
このうち、団体の議長を務めていた熊本県議会の岩下栄一議員は「親しい人物から依頼を受け、形だけ引き受けるつもりで数年前から議長を務めた。旧統一教会との関わりは把握していなかった。団体から報酬を受け取ったことはない」などと話しています。
●旧統一教会「霊感商法」商品カタログ入手 返品されても損しない仕組み 9/21
広がる一方の旧統一教会問題。信者をだまして高額商品を買わせる「霊感商法」の被害が明るみになっているが、AERA dot.編集部は「霊感商法」で使われていた商品「カタログ」を入手した。高額の価格表もついている。元信者の証言では、商品を買わされた被害者がクレームを入れて返金があっても、教会が大儲けできる仕組みがあることもわかってきた。
「こういうカタログを片手に売り歩いていました。カネ持ちそうな人には、高い商品を売りつける。そう指導されていました」
と話すのは、旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)の元信者。手にしているのは、上質紙で製本された手のひら大の「BIBLE Series【聖書シリーズ】」と題されたカタログだ。
そこには、輝いたペンダントや指輪の写真が並んでいる。よくある宝飾品のカタログに見えるが、実は旧統一教会が霊感商法に使っていたものだ。
このカタログが使用されはじめたのは、1980年代から1990年代にかけて。旧統一教会の霊感商法が社会問題化した後だ。
「霊感商法と言えば、壺や印鑑、多宝塔などがその象徴です。旧統一教会の霊感商法は、S展と呼ばれる壺や多宝塔の展示会を口実に来てもらい、その人の資産などに応じて適当な値段をつけて売りつける手口でした。ちなみにSはストーン、壺を意味する旧統一教会の隠語です。『壺ではすぐに霊感商法、統一教会とバレてしまうから、宝飾品に』ということで、ペンダント、指輪などに変わったのです」
と元信者は話す。ちなみに、宝飾品の展示会は「ブルー展」と呼ばれていたそうだ。
カタログを見ていくと、「真の家庭・祈り」と題のついたペンダントと指輪がある。説明には、<中央のルビーは、すべてを溶かして和合させる愛の溶鉱炉です。ルビーを中心に4方向のダイアの流れがあります。上下は親子の通いあう心><「家庭」という小さな単位の天国が一つでも多くつくられることを願って、つくられました> などと記される。
「母子の愛」というペンダントは、<優しく広い母の心をローズクォーツが表し、その愛の深さをルビーが教えています> 「愛の訪れ」というペンダントは、<ルビーは天の祝福の訪れ。白蝶貝は、母の温かい愛の心>などと、まさに旧統一教会の創始者、文鮮明氏の「教義」がそのまま宣伝文句になっているようだ。
<聖書シリーズ 価格一覧表>を見ると、17点の定価が記されている。
最も高いのは「宴の時」で715万円、次いで「心情の泉」で540万円、「心情の華」250万円、「麗華」240万円、などとなっている。
全国霊感商法対策弁護士連絡会の加納雄二弁護士はこれまで、旧統一教会から高額でペンダントなどの宝飾品を売りつけられた被害者の代理人として裁判や交渉を進め、いくつもの「勝訴的な和解」を得ている。
加納弁護士が和解に至った被害者の一人は、カタログにも出ている「宴の時」など6つの宝飾品を買わされ、約1480万円もの被害にあった。
旧統一教会に内容証明郵便を送付したところ、「寄付については教会で対応する。宝飾品については販売会社に連絡してほしい」と告げてきた。だが、販売会社を調べると旧統一教会のダミー会社で、信者が社長のA社だった。
交渉の結果、宝飾品を返品し、1100万円、月々50万円、22回の分割返済で返金するという和解の内容でまとまったという。返金額は被害額の約75%だ。
旧統一教会のダミー会社が販売している商品なので、一般的な宝飾品の市場からみれば、資産価値に欠けるものばかりだ。それも一度売りつけた商品を、被害額の75%ほどで引き取っても大丈夫なのか?
元信者が説明する。「マスコミでも報じられていますが、壺は原価が1つ数万円ほどで、100万円とか200万円で売りつける。多宝塔も原価30万円ほどとされるものを5000万円で買わせた例を私は知っています。宝飾品に鑑定書はついていますが、それも旧統一教会の関係先のものです。高額の『心情の泉』で、原価は20万円から30万円と聞いた。だから、クレームが来て75%返金で折り合っても儲かるのです。おまけに、裁判になるまでに和解すれば弁護士費用などもいらない。私も売りつけた被害者から、弁護士を通じて返金を求められ、幹部が和解をしたことがあります。その時も『返金が7割ほどだから、結局は儲かった』と言っていました」
AERA dot.も8月15日の記事で、旧統一教会の「十八番」である壺や石塔の原価(1986年時点)について、<壺が約3万円、石塔が60万円程度>と報じている。
原価の何十倍もの高値で売るわけだから、クレームに応じて7割以上を返金しても教会は大儲けできる仕組みだ。宝飾品も同様に原価は激安だという。
「宝飾品はカタログにあるように定価が書かれているだけマシ。壺、多宝塔は相手の財産、貯金などで売値が変わっていた。クレームがあったときの返金の条件は、宝飾品の返品です。戻ってきた商品は、また霊感商法で別の人に売りつけるので、すぐに誰かの手に渡っていく」(元信者)
加納弁護士もこう話す。
「旧統一教会側は、返品する際に宝飾品の箱の角が破損していると、返金額を減らすように求めてきたこともある。返品したものを再販売するつもりで和解していたと感じた」
返品されたものを再販売するのだから、教会の儲けはさらに大きくなる仕組みだ。
ちなみに、安倍晋三元首相銃撃事件で逮捕された山上徹也容疑者は、母親の旧統一教会への多額の寄付が原因で家が破産に追い込まれたと供述している。山上容疑者の母親のことを知る別の元信者は、こう語る。
「山上容疑者のお母さんに誘われてご自宅にうかがったことがあります。その時、壺や印鑑、ペンダントがたくさんありました。教会にかなり買わされたのでしょう。それが家庭崩壊、山上容疑者の犯行につながったと思う」
山上容疑者の事件後、旧統一教会は一貫して、「霊感商法に関与したことはない」「信者の会社がやっていたこと」などと説明してきた。
だが、加納弁護士の訴訟資料などを見ると、宝飾品を販売していた会社の社長や役員は、旧統一教会の信者が大半だ。旧統一教会の幹部が、交渉相手の物品販売会社について、<物品については信者の会社であり、連絡先は以下の通り>と返答していることでも、「関与していない」という旧統一教会の主張が破綻している一端が読み取れる。
また、旧統一教会は、「2009年以降は、コンプライアンスを見直し、高額商品の販売はない」とも会見などで説明しているが、加納弁護士は言う。
「私が実際に手掛けた被害では、2016年に返金交渉をして、和解にいたったものもあります。今も大阪地裁で民事係争中の被害もあります。おそらく今も旧統一教会は何らか、霊感商法に匹敵するようなことをやっている可能性が高い。相手に嘘ばかり言って恐怖におびえさせ、3万円の壺を何百万円で買わせる、ペンダントや指輪を強引に売りつけるなど、反社会的行為。大阪では、高麗人参のお茶ががんに効くと売って、刑事事件で有罪になった事件もある。旧統一教会の記者会見の主張はまったく信じられません」 

 

●旧統一教会問題から考える国葬反対論 自民の新指針、安倍氏不問は・・・  9/22
安倍晋三元首相の国葬を考える際、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の件も見過ごせない。自民党は教団を「問題あり」とみなし、行動指針を改める方針を示した。となると、接点があった安倍氏は自民基準でも要注意人物にならないか。「最長政権を築いた」として現政権はたたえるが、教団側の手も借り、選挙強者になったと疑われるのが安倍氏だ。国葬に値するのか、やはり再考が必要ではないか。
「国葬実施は支離滅裂」
「黙って手を合わせて見送ってあげたらいい」
16日に放送されたTBSの政治対談番組。自民党の二階俊博元幹事長は無表情でそう言い放った。
3日後の19日。安倍派の総会で塩谷立会長代理は「粛々と行っていただくことを切に望む」と述べた。
国葬を既定路線とする党重鎮の2人。しかし彼らこそ、考えを改めるべきだ。
注目すべきは、自民党総裁でもある岸田文雄首相が肝いりで導入した党の行動指針。いわゆる「ガバナンスコード」だ。
岸田氏は昨秋の総裁選を前に、この指針を含む党改革案を発表していた。自民党は今年5月、政治資金の疑いがある議員らを念頭に置き、「社会規範の遵守」「透明性と説明責任」を柱にしたガバナンスコードを策定。そして8月下旬、岸田氏は教団を「社会的に問題のある団体」と捉え、「関係を断つ」と追記する方針を示した。
一方で安倍氏といえば、祖父の岸信介元首相、父の安倍晋太郎元外相と3代にわたり、教団側とのつながりが指摘されてきた。教団に詳しいジャーナリストの藤倉善郎氏は「岸氏から続く歴史的経緯は公然の事実。加えて、第2次安倍政権前夜から、勢力拡大を狙う教団側に呼応する形で、安倍氏は関係を強化してきた」と推し量る。
深い間柄が疑われる安倍氏に関し、今後まとめるガバナンスコードに照らすと、どう評すべきか。
藤倉氏は「党と教団側の関わりを築いた『本丸』。調査すべき最重要人物。問題がありながら、国葬は実施するというのは支離滅裂なことだ」と訴える。
倫理観が壊れた自民党だからこその「新たな規範」
ただガバナンスコードは、なじみが薄い言葉でもある。どう捉えるべきか、悩ましいところでもある。
経済評論家の森永卓郎氏は「もともとは、自分たちのことしか考えない米国型企業が組織内の不正や不祥事を防ぐために構築した制度」と説明する。
つまり企業向けの内部指針とされたのがガバナンスコードで、「ルールの遵守」「株主への説明」に重きを置き、取り組むべき項目を盛り込むのだという。
岸田氏の下で自民がこの指針をまとめた裏には、森友・加計学園や「桜を見る会」を巡る問題への反省を示す狙いがあったとされる。法的拘束力は持たないが、岸田氏にとっては党改革を知らしめる象徴になるはずだった。「倫理観が壊れた自民党だからこそ、新たな規範をあえて定める必要があった」(森永氏)
しかし、そんなガバナンスコードも形骸化しかねない事態が訪れている。
岸田氏には、教団側と安倍氏の関係を調べる気配はない。当然ながら、ガバナンスコードに照らす様子もない。都合良く運用を変えれば、肝いりの指針でも骨抜きになりかねない。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「岸田さんは説明、説明と強調するが、口だけにすぎない。ルール軽視が著しい。コロナ禍で強行突破した東京五輪と同じで、世論も一切お構いなしだ」と嘆く。
「黄金の3年」か「泥舟の3年」か
安倍氏の国葬を巡る是非を考える際、重要なのはその開催名目もだ。岸田氏は、安倍政権が「憲政史上、最長政権」だから「国葬に値する」と貫く。
だが、安倍氏は国政選挙の際、教団側の組織票を自民党の候補に差配していたとされる。明治大の西川伸一教授(政治学)は「教団側の票田を背景に、一人の参院議員の当落にまで影響を行使できるほど力を握っていた」とみる。
つまり安倍氏は、自らの信を問う選挙で教団側から票を回してもらうなどし、政権維持の下支えにした可能性がある。そうして築いた長期政権なら、評価に値するのか。西川氏は「税金をかけて国でたたえるなんてありえない。国葬は日本の恥を世界にさらすようなものだ」と一蹴する。
昨夏に東京五輪を強行した結果、支持率を急落させ、首相の座を追われた菅義偉前首相を重ね、「あの時と似ている。岸田氏にとって今後は『黄金の3年』ではなく『泥舟の3年』になる」と突き放す。
共同通信社が17、18両日に実施した全国電話世論調査では、安倍氏の国葬に「反対」「どちらかといえば反対」は計60.8%。「賛成」「どちらかといえば賛成」の計38.5%を大幅に上回る。その一方で気になるのが、国葬を巡る教団側の受け止め方、岸田氏に対する彼らの評価だ。
北海道大大学院の桜井義秀教授(宗教社会学)は「宗教団体とは概して、世間からの迫害や苦難に満ちれば満ちるほど結束力が高まる。自分たちに有利な物語を新たに作り出していく」と解説する。
そんな中で、いくら自民党が教団側と「縁切り宣言」したとしても、岸田氏が国葬を即断即決し、それを貫くことで、「『安倍元首相の偉大さを評価できる偉大な首相』として、岸田首相の評価がさらに高まる。縁切りどころではなくなるだろう」とみる。
実は因縁浅からぬ「日本武道館」
ちなみに国葬が開かれる日本武道館は、教団側と縁が深い。勝共運動の一環として1970年9月20日に開かれたWACL(世界反共連盟)世界大会の会場だったからだ。
同日付の「こちら特報部」は準備の状況を報じた。世界60カ国から約230人の代表、日本全国から1万人を集めると記したほか、大会を控えた教団側については「体当たり的街頭募金、ペタペタはりめぐらした宣伝ポスター」を背景に「とにかく『モーレツ集団』なのだ」と伝えた。
その数日前には前夜祭が開かれており、ある自民党議員は「万国博で日本人の忍耐強さに外国人が驚いたというが、わたしゃこの総会みて、もっと驚いたネ」と漏らした。
全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の紀藤正樹弁護士は「武道館は66年にビートルズがコンサートをし、世界的に有名になった場所。教団側は自分たちの権威付けのため、国際的に有名な場所でイベントをやりたがる。武道館を使わせた先人のミスとも言える」と指摘する。
安倍氏と教団側の関係は不確かな点も多い。同氏の評価には、さらなる検証が必要だ。しかし岸田氏は国葬にまい進する。
日本の戦後政治を見続けてきた政治評論家の森田実氏は、独断専行に傾く姿に危機を感じる。「ナチスドイツは選挙で過半数を取り、最初は社会主義的なニュアンスを保ったが、次第に行政権を盾にファシズムに突き進んだ。岸田さんも最初は穏健派とみられたが、目の上のたんこぶだった安倍元首相がいなくなった途端、本性を現した」
そして続けた。「日本は今後、『岸田ファシズム』へ翻るか、菅前首相のように挫折していくのか。国葬は日本の岐路になった出来事として刻まれるだろう」

弔う人物は、教団側と深い間柄が疑われる安倍氏。弔う場所は、教団側と縁深い武道館。弔う際には、半旗を掲げる場所があるかもしれないが、以前に紙面で触れた通り、教団側は日の丸掲揚を推してきた。一体、何のための国葬か。危うい意味付けがなされないか、心配でならない。
●元電通マン 国葬や統一教会、五輪汚職のすべてに関わる自民党議員 9/22
岸田政権の支持率を大きく下げる原因となっている、安倍元首相の国葬の是非と統一教会問題。一方で、政界の関わりも囁かれる五輪汚職について、東京地検特捜部による捜査が続いています。これらの全てが電通人脈で繋がっていると指摘するのは、人気ブロガーのきっこさん。きっこさんは今回の『きっこのメルマガ』で、その疑惑の裏付けとなる数々の「証拠」を記すとともに、国葬、統一教会、五輪汚職の全てに関わっている電通出身の自民党議員の実名を挙げています。
自民党の裏に電通人脈あり?
夏の参院選以来、支持率急落に歯止めが掛からない岸田内閣ですが、先週末17日、18日の両日に実施された毎日新聞と社会調査研究センターの全国世論調査では、1カ月前の前回調査より7ポイント下落し、とうとう「危険水域」と呼ばれる30%を割り込んだ「29%」となってしまいました。一方、不支持率は前回調査より10ポイント増の64%で、完全なるダブルスコアとなりました。
自民党の歴代内閣の支持率を見ると、「支持」が30%前後の場合、「不支持」は45%ほどで、「どちらとも言えない」が25%くらいのケースがとても多いのです。しかし、今回の岸田内閣の場合は、この「どちらとも言えない」が極めて少なく、多くの無党派層が明確に「不支持」と回答しているところが特徴です。つまり、多くの国民が「この内閣ではダメ」「この首相ではダメ」と、ハッキリと「ダメ出し」をしているのです。
世論調査の他の項目を見ると、旧統一教会問題に対する岸田首相の対応について、「評価する」が12%、「評価しない」が72%となり、自民党支持者でも半数以上が「評価しない」と回答しています。また、岸田首相が強行する安倍晋三元首相の国葬については、「賛成」が27%、「反対」が62%となっており、この2点が、内閣支持率を急降下させている大きな原因であることが分かります。
安倍元首相の襲撃事件を発端に表面化したのが旧統一教会問題なので、安倍元首相の国葬の是非と旧統一教会問題とに関連があることは周知の事実です。そして、岸田内閣の支持率を下げ続けているこの2つの問題とは、大きく距離を置いたところで並行的に進んでいるのが、東京五輪の汚職事件です。しかし実際には、この3つの問題が「電通人脈」という横のパイプで繋がっている疑惑が浮上しているのです。
東京五輪の汚職事件は、電通の元顧問で東京五輪組織委の理事をつとめていた高橋治之容疑者(78)の受託収賄容疑による逮捕で口火が切られました。紳士服大手のAOKI前会長、青木拡憲容疑者(83)が贈賄容疑で逮捕され、組織委の当時の会長だった森喜朗元首相(85)に「現金200万円を手渡した」と供述しました。この供述を受けて、東京地検特捜部は数回にわたり森元首相を参考人聴取しました。
続いて、出版大手KADOKAWAの会長、角川歴彦(つぐひこ)容疑者(79)も贈賄容疑で逮捕され、JOC前会長の竹田恒和氏(74)が任意の事情聴取を受けていたことも報じられました。他にも細かい流れはありますが、これまでずっと動かなかった東京地検特捜部が、安倍元首相が亡くなったとたんに、まるで水を得た魚のように、誰にも遠慮することなく動き出したように感じるのは、あたしだけでしょうか?
ま、それはそれとして、「五輪のドン」と呼ばれ、誰も逆らうことのできなかった主犯の高橋治之容疑者は、AOKI側から受け取った約2億3,000万円のうち、約1億円を中抜きし、その一部を自身のコンサルティング会社コモンズが運営する六本木のステーキ店「ステーキそらしお」の赤字補填のために流用していたと報じられました。
六本木のオフィスビル1階に入居する「ステーキそらしお」は、奥にVIP用の特別席があり、政治家や財界人などの接待に使われて来ました。今回の東京五輪汚職事件でも、高橋容疑者と青木容疑者の打ち合わせは、このステーキ店の特別席で繰り返し行なわれて来たと供述されています。過去の「首相動静」を確認すると、2015年10月19日には安倍晋三元首相が、2020年12月15日には菅義偉前首相が来店しています。
そして、このステーキ店の「常連」だったのが、2018年の第4次安倍改造内閣で内閣府特命担当大臣として初入閣し、翌2020年の菅内閣では新設されたデジタル改革担当大臣に就任した、自民党の平井卓也衆議院議員(64)なのです。平井議員は大学を卒業して電通に入社し、7年ほど勤めた後、元参議院議員の祖父が創業したラジオ四国の社長などの家業を経て、2000年の衆院選に無所属で初当選し、当選後に自民党に入党するという毎度おなじみのパターンの議員です。
あたしは、この自民党の十八番を見聞きするたびに、巨人が江川卓を獲得した「空白の一日」を連想してしまうのですが、そう言えば平井議員の名前にも「卓」という字が入ってますね(笑)…なんていう箸休めも織り込みつつ、電通出身の平井卓也議員にとって、電通の顧問だった高橋治之容疑者は大先輩というわけで、平井議員は六本木のステーキ店にセッセと通い続けました。そして、グルメサイト「Retty」に、「ステーキそらしお」について「フィレステーキが最高!」などと計9回もオベンチャラのコメントを投稿していました。
ちなみに平井議員は、数々のネット工作で悪名高い自民党の「J-NSC」の代表をつとめており、第2次安倍政権発足直後の2013年には、安倍人気を高めるためにスマートフォン向けゲーム「あべぴょん」を発案する一方で、ニコニコ動画で生放送された「ネット党首討論会」では、社民党の福島みずほ参議院議員に向けて「黙れ、ばばあ!」と投稿したことが問題視されました。また、2020年には、国会の質疑中にタブレット端末でワニの動画を見ていたとして批判されました。
ま、そんな些事はどうでもいいのですが、2015年から学生団体「SEALDs(シールズ)」による安倍政権への抗議デモが拡大すると、これに対抗するため旧統一教会の政治組織「国際勝共連合」は学生信者らによる「大学遊説隊UNITE(ユナイト)」を結成し、2016年からシールズを批判し安倍政治を賞賛するデモや演説を開始しました。これは安倍官邸の指示だったと言われていますが、この時、SNS上で「UNITE」の宣伝を行なっていたのが平井議員なのです。
平井議員は2016年、2017年、2021年と、地元香川で開催された旧統一教会の関連団体「天宙平和連合(UPF)」が主催するサイクリングイベント「ピースロード」の実行委員会の委員長をつとめています。また、2017年1月には、旧統一教会の香川支部などが高松市で開催した「真の父母様御聖誕記念礼拝」に出席しています。そして平井議員は、今年2022年6月13日、「天宙平和連合」が創設した「世界平和国会議員連合」にも複数の自民党議員とともに参加し、日本の議員連盟の幹事に就任しました。
さて、ここでちょっと話題を変えますが、このまま行くと60%を超える国民の声を無視して9月27日に強行されてしまう安倍元首相の国葬は、企画などの業務を大手イベント会社ムラヤマが1億7,600万円で落札しています。今回の落札について、岸田首相は「正式な手続きのもとに落札されたものだと認識している」と説明しましたが、ムラヤマは安倍政権下の2014年から2019年まで5年連続で「桜を見る会」の会場設営業務を落札している「自民党御用達」の企業です。
しかし「桜を見る会」と今回の国葬とでは、大きく異なる点があります。それは、日本テレビホールディングスがムラヤマの全株式を取得し、今年2022年3月31日付で、ムラヤマは日本テレビホールディングスの完全子会社となっていたのです。日本テレビと言えば筆頭株主は読売グループ、読売グループと言えば電通、電通と言えば自民党…というわけで、まるで絵にかいたような相互利権の構図が見えて来ました。
でも、これだけでは終わらないのが、絶対に断ち切ることなどできない自民党と旧統一教会とのディープすぎる癒着なのです。今回、安倍元首相の国葬が行なわれる日本武道館の現在の会長は、安倍元首相と同郷で自民党の憲法改正実現本部の最高顧問をつとめる高村正彦(こうむら まさひこ)氏ですが、その高村氏に旧統一教会から高級乗用車が無償提供されていたことが分かったのです。
安倍政権が旧統一教会の数々の要望を政策に反映させて来たことは、これまで何度も報じられて来ましたが、その集大成とも言えるのが「憲法改正」なのです。自民党の改憲草案は、旧統一教会の政治組織「国際勝共連合」の希望する改憲案がすべて盛り込まれていますが、安倍政権下でこの改憲草案を作成したのが、自民党の憲法改正実現本部の最高顧問、高村正彦氏なのです。
こうして見ると、安倍元首相の国葬、旧統一教会問題、東京五輪汚職事件という3つの問題のすべてに「電通人脈」が関わっていることが分かると思います。そして、そのキーパーソンとなるのが、すべての問題に関わっている元電通の平井卓也議員なのです。
平井議員はデジタル担当相だった2021年4月7日、五輪アプリの事業費に関する戦略会議の席で、共同事業体に参加していたNECに対して「NECには死んでも発注しない」「今回の五輪でぐちぐち言ったら完全に干す」などと暴力団員のような口調で述べ、さらには幹部職員にNECの会長の名前を挙げて「脅しておいた方がいい」と指示しました。そして、この時の音声データが流出したことで、謝罪に追い込まれたことは記憶に新しいと思います。
権力を傘に相手を恫喝し、自分の思い通りに物事を進めさせる。東京五輪汚職事件の高橋治之容疑者しかり、これが電通出身者の「通常運転」なのでしょう。しかし、私利私欲のための汚職事件ならともかく、日本国民すべての生命や財産にも関わる「憲法改正」がこのような手口で進められ、カルト教団の思い描く通りの内容に書き換えられてしまったら、この国は終わりです。今後は平井卓也議員の動向に注視しつつ、安倍派の操り人形と化した岸田文雄首相のことも監視して行きたいと思います。
●旧統一教会が“金欠”に…最大の収入減「合同結婚式」参加者激減 9/22
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)が「金欠」に喘ぎ始めている。大きな収入源だった「合同祝福結婚式」の参加者が減っているからだ。
2018年には、韓国の旧統一教会の本部がある「清心平和ワールドセンター」を貸し切りにして盛大に行われた信者同士の合同結婚式。ところが、4年後の今年4月16日、清平の教団施設「HJグローバルアートセンター」で開催された合同結婚式は、参加者が激減したという。
会場の参加者は350人、オンラインが2100組、そのうち日本人信者は1007人だった。日本人の参加者はほとんどが「2世信者」で、これまでにはない小規模なもの。
コロナ禍とはいえ、式が執り行われたのは安倍元首相の襲撃事件の前だったことから、いかに若者信者の「統一教会離れ」が加速しているかが分かる。
「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の渡辺博事務局長がこう指摘する。
「男性の2世信者は1世の親から自立できるケースが多いのに対し、女性信者は年老いた親のことが心配で親元を離れられない割合が少なくありません。結婚したくても教団の祝福を受けられないまま、適齢期を大幅に過ぎた2世の女性信者がかなりいます。統一教会はその問題を何度も機関誌で訴えています。教団は一般男性に『結婚ができます』とアプローチするなど、あの手この手を使って希望者を募っています」
教団のHPには若い家族やカップルの幸せそうな写真とともに、合同結婚式について詳しい説明がある。家庭連合の田中富広会長は8月10日、外国特派員協会の会見で、「祝福結婚が男女の意に反して強制されることは絶対ありません」と火消し。「現在はその祝福結婚のパートナーとの出会いも、大きく変わっています。ぜひ、当法人のHPをご確認下さい」と、ちゃっかり宣伝していた。
脱会した2世信者にも再アプローチ
合同結婚式の参加費は1人140万円。これとは別に衣装代や渡航費、宿泊費がかかり、すべて教団指定の業者が担っている。
式場では教祖・文鮮明の御言集「天聖経」を販売。それらがなくなるだけでも、教団の収入はガタ減りだ。
「2世同士の結婚が少なくなれば当然、3世の出生数も減り、教団にとって財政的にも大打撃です。半永久的に献金を集めることができなくなり、先細りしていくばかりか、将来の中核信者が育たなくなりますから。そこで今、教団から離れていった2世信者を取り戻そうと必死に運動しています。何といっても一番の収益源は中高年の女性ですから」(渡辺事務局長)
かつては信者が会場を埋め尽くした「結婚あっせん業」も風前のともしびだ。
●「最大の問題は旧統一教会だ」岸田内閣、支持率最低に… 9/22
岸田内閣の支持率に関するANNの世論調査が17日と18日に行われた。結果、「支持する」と答えた人は36.3%となり、先月より7.4ポイント下がり、政権発足以来最も低い数字となった。
安倍元総理大臣の国葬に「反対」と答えた人は54%で、岸田総理の説明に「納得しない」と答えた人は6割に上った。また、自民党の議員と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係について、調査が「不十分」と回答したのは65%で、「十分」を大きく上回る結果になった。
テレビ朝日・政治部デスクの千々岩(ちぢいわ)森生記者は、不支持率の上昇の背景について、こう語る。
「政権発足時は安定していた岸田内閣ですが、いまは旧統一教会、安倍元総理の国葬、物価高など、さまざまな問題が重なっています。ただ、世論に与える影響として、最大の問題はやはり『旧統一教会』です。来週には国葬も終わりますし、物価高は日本だけでなく世界全体に起こっていることです。しかし、統一教会の問題は終わりません。来春には統一地方選挙があり、これには地方議員も関係していますので、仮に問題が下火になっても火種が消えることはないでしょう」
「不支持」は今までで最も高い40.9%で、初めて支持を上回った。数字について、岸田総理や政権幹部はどのように受け止めているのだろうか。
「深刻に受け止める声がほとんどです。実際に岸田総理の周辺からも『反転攻勢は難しい』や『打つ手がない』といった声を多く聞きます。政治的に、タイミングも非常に悪いです。一般的に、国会の休会中、つまり7〜9月の夏場や、12月〜1月の冬場は、ひと段落して内閣支持率が持ち直す時期です。まさにその8月、9月に支持率が急落しています。来月から臨時国会が始まって野党の追及も厳しくなるでしょう。年内に支持率を浮上させるのは難しいと思います」
支持率の下落を受け、自民党内で「岸田おろし」のような動きはあるのだろうか。
「岸田おろしの声はありません。政局のタイミングではない。だいたい政局が起きるのは選挙前。菅総理も『菅総理では選挙を戦えない』という不満が噴出し、去年9月の自民党総裁選前に結果的に降りることになりました。岸田政権もおそらく低空飛行のまま来年に続いていくでしょう」
今後、岸田総理は支持率浮上のため、どのような行動を起こすのか。千々岩記者は「過去の支持率が高かった、長期政権を築いた内閣を見ると、大きな特徴がある」と話す。
「ポイントは短期間、特に最初の1年で結果を出すことです。まず小泉内閣。最初の1年、小泉内閣が何をやったか。『自民党をぶっ壊す』と言って、本当に自民党のしきたりにとらわれない人事をやり、党内で多くの“喧嘩”をしました。それを世論が喝采したのです。政権発足の翌年には、史上初めて、内閣総理大臣として北朝鮮を訪問しました。『拉致なんてしていない』と言っていた北朝鮮から、実際に拉致被害者が5人帰国しました。凄まじい結果です」
長期政権といえば、安倍元総理も自民党総裁に返り咲いた2012年以降、退陣まで7年8カ月、全国規模の国政選挙におけるすべてを勝利した人物だ。
「安倍内閣でも、民主党政権から安倍政権に変わった瞬間、アベノミクスで株価が2倍に高騰しました。当時、そんなことが起こると誰も思っていませんでしたから、驚きです。当時、私はアメリカにいましたが、雑誌エコノミストの表紙にスーパーマンの格好をした安倍総理が載り、話題を集めていました。欧米の高級紙の表紙になるほど、海外でも話題の総理大臣でした」
つい先日まで、中国に4年間いた千々岩記者。現地で日本の政治をどのように見ていたのだろうか。
「中国政府が見ているのは、日本の政権の安定性と長期政権になるかどうかです。習主席も、安倍元総理のことは一目置いていました。本当は、保守派の代表格の安倍元総理なんて、好きなはずありません。特に安倍さんは就任してすぐに靖国神社を参拝しています。それでも、一目置いていたのは、長期安定政権だからです。(当時は)安倍総理と話さないと、日中関係は動きませんから。逆に、安倍総理と話をつければ日本が動く。その信頼感が徐々に醸成されていきました。海外にいて、思ったのは、何よりも政権がコロコロ変わらないことが何よりも大事です。総理大臣が1年で変わることは、日本の国益から見れば最悪です」
●統一教会 虚像と実像 9/22
1 なぜ統一教会は今も「大きな影響力」を持っているように見えるのか
「旧統一教会とは、関連団体も含めて今後付き合うことはない。自民党としても関係を切っていくべきだ」
2022年8月、衆議院第二議員会館622号室――。応接間に深々と腰掛けた元文科大臣の下村博文は、そう断言した。渦中の人物である。
大臣在任中の2015年8月、統一教会の「世界平和統一家庭連合」への名称変更が認証されたことが疑惑を呼んだ。下村は2013〜2014年に統一教会系の日刊紙「世界日報」の取材や座談会に複数応じている。
発行元の世界日報社は当時、本社を彼の選挙区である板橋区に構え、2016年3月には下村が代表を務める自民党の選挙区支部に6万円を寄付していたことなども相まって、統一教会の悪質な行為を覆い隠すための名称変更に便宜を図ったのではという声が上がった。
注目されたのは文科省元事務次官、前川喜平の証言である。彼は事務方ナンバー2の文部科学審議官だった当時のこととして「(改名に)政治の強い意図が働いているのがわかったが、駄目だと言っても無理だろうと、抵抗できなかった」(東京新聞)と語ったが、下村側は否定した。
差し当たり重要なのは、双方とも決定的な証拠を欠いている点にある。疑惑を指摘する前川は、推論を語ってはいるが直接の当事者ではないし、証拠もない。下村の反論も、録音データや官僚のメモでの裏付けはない。従って、疑惑だけがくすぶり続ける。
ここに、この間の旧統一教会をめぐる問題が集約されている。安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者が教団への恨みを供述して以降、社会の関心は一気に旧統一教会が政治へ与えてきた影響や「つながり」に傾いていった。
下村は一連の報道の中でも、とりわけ「ズブズブ」だと指摘された政治家であり、教団が自民党に影響を与えた象徴的な事例として名称変更問題が取り沙汰された。
確かにカルト宗教を中心に政治を見れば、下村と統一教会の間に関係はある。濃淡で見ても濃いつながりがあったのは事実だ。他方で、下村がこうもあっさりと「切っていい」と語っているのもまた事実である。
現実を踏まえれば、統一教会は7万〜8万票程度しか動かすことができず、参院選の比例代表でいくつかの組織票を組み合わせてやっと1人を当選させることができる程度の集団にすぎない。公明党、その支持母体の創価学会が持つ約700万票と比べ、文字どおり桁違いに少ない。
下村が簡単に「切る」と言えるのも、当然といえば当然なのだ。
だが集票力が小さいことは問題がないことを意味しない。
政治家がカルトに「信用保証」として利用されたこと、選挙にプラスだからと利用したことも問題だった。政治家が悪質な勧誘や破産者が出るほどの高額献金、霊感商法など問題があるカルトに支持を求めてはいけなかった。支援や支持を得るのなら情報公開は必須だ。
最大の謎は、今はこの程度の集団が「大きな影響力」を持っているかのように見えることである。暫定的な解は、統一教会の歴代幹部たちは、歴史的な経緯を踏まえて自分たちを大きく見せる方法を知っていたというものだ。
彼らは政治とのつながりを完全に隠そうとせず、におわせていた。「におわせ」を否定しないことは、むしろ自らの力を大きく見せたい教団側のストーリーに乗ることを意味する。
政治家とのつながり問題ばかりを大きくクローズアップするだけでなく、今でも残り続けている問題を、現実を踏まえて解決しなければカルトの罠にはまってしまう。それは一体何か。歴史を振り返っていこう。
旧統一教会は、韓国人の文鮮明(ムン・ソンミョン)が創設したキリスト教系の新興宗教である。文は1920年、日本統治下の現在の北朝鮮に生まれた。
彼らは共産主義をサタンの最終思想と位置付ける。それに勝利し「統一」することも教義であった。「勝利」のために統一教会がこだわったのは、為政者とつながる道とカネだ。
ポイントとなるのは1968年の日本での創設以降、統一教会の政治部門を事実上担った国際勝共連合だ。反共を一致点に、文が安倍の祖父である岸信介ら保守系政治家と結託していたことは周知の事実だが、ここでは別のキーパーソンに注目してみたい。
その名を梶栗玄太郎という。現在、複数の教団関連組織のトップを担う梶栗正義の父で、晩年に統一教会会長職を務めた。
共産党相手のデモや演説で名を上げた運動家気質の信者だった梶栗は、合同結婚を果たした妻方の人脈をフルに活用する。彼の義父、熱海景二は旧制一高、東京大学の卒業生で、友人に福田赳夫元首相ら政財界の重鎮がいた。彼らの子供同士も昵懇(じっこん)で、梶栗の妻恵季子はのちの首相である福田康夫を若い時分から知っていた。
   統一教会は「500分の1」
梶栗は、義父の紹介で1970年から福田赳夫と関係を築く。典型的なロビイストであった彼の「成果」が、蔵相時の福田も出席した1974年の文の来日講演会だ。福田が「アジアに偉大な指導者現わる。その名は文鮮明」とスピーチした会合である。
首相就任後も付き合いは続き、当時の教団トップ久保木修巳と共に元旦から会い、運動を語り合っていたという。
梶栗自身も認めているが、統一教会が社会問題化した1980年代は、同時に勝共連合や関連団体にとってのピークでもあった。教団本体以外の多数の関連団体へと政治家や著名人の賛同を集めて権威と信用を調達し、信者からは団体運営の金を集めた。
文が構想し、彼らが最も実現にこだわる日本と韓国を海底トンネルで結ぶ日韓トンネル構想なども金集めの名目になった。アカデミズムの世界にも接近し、青函トンネルの調査に携わった北海道大学の佐々保雄や京都大学の数学者らが賛同者に名を連ねた。
もっとも、彼らの全盛期にあって、日韓トンネルには福田ですら賛意を示すことがなかった。
その後、梶栗らは福田から派閥を引き継いだ安倍晋太郎と関係を深めていった。「毎月会って統一運動について説明」しており、晋太郎もそれに応えるように教団票の配分をしていたと報道された。関わりは息子の晋三以上のものがあったと言っていいだろう。
現職首相と元旦に会い、次期首相候補と毎月会談し、長期政権を築いた中曽根康弘とのコネクションも持っていたのが、当時の統一教会や「友好団体」だった。
だが、たった一つの団体の意向が通るほど政界は単純なものではない。
政治学者、中北浩爾の『自民党「一強」の実像』によれば、自民には友好団体が2016年時点で実に500以上あり、グループ分けがされ、それぞれに対応する委員会が設けられている。
日本医師会のように独自に候補を擁立し、医療政策に深く関わる団体もある。統一教会は神道政治連盟などと共に保守系宗教団体の一部を構成してはいたが、「本流」の存在ではないのだ。
ここぞというタイミングで自民党政治家に圧力を依頼することはできたのだろうが、そこまでだ。梶栗は中曽根以降の日本政治を評して「神が準備された日本における基盤が、崩壊していきました」という言葉を残している。
彼らの希望は晋太郎首相の誕生だったが、巧妙な政治駆け引きによって、次期首相を後継指名できる状況を作り上げた中曽根がそんな願いを考慮するわけもなく、後継首相は竹下登に決まる。勝共連合も存在感は薄れていった。
   統一教会の秘書が地方議員に
当時の勝共運動を知る自民党関係者はこう述懐する。
「統一教会自体は気味悪い韓国の宗教という印象で、警戒していた。だが、歴代総理の経済指南番とも言われた木内信胤氏も勝共連合には賛同しており、付き合うのはいいという感覚だった」
この時代以降、彼らのロビー活動は迷走を続ける。1990年代は自民党リベラル系議員、2000 年代には野党第1党だった民主党にも接近している。
2004年には「AERA」が鳩山由紀夫と統一教会系団体の関係を報じている。同年に東京都内で開かれた「救国救世全国総決起大会」で鳩山は中曽根と共に登壇し、小山田秀生(当時の統一教会などのトップ)を、こう持ち上げてみせた。
「国を思う気持ちは民主党も同じだ。小山田さんには手取り足取り薫陶を頂いている身」
2009年に発足した鳩山政権には、勝共連合系の雑誌で「親しくさせて頂き、応援を頂きました」と語る亀井静香も入閣していた。昨今の基準に照らし合わせれば、自民党並みに「関係」がありそうなものだ。
だが、鳩山本人の認識ではそうではないらしい。2009年は、統一教会の関連会社が霊感商法の捜査を受けて、当時の会長が辞任にまで追い込まれた年である。
鳩山政権誕生時に、何か助けを請われていたか否か。鳩山事務所に取材依頼を送ったところ、インタビューは断るという回答と共に「そもそも同教会との係わりはありませんので、事実としてもあくまでも儀礼的なものであり、本人には正直記憶すらありません」と返答があった。
小山田の薫陶を受けていた鳩山ですら、関係を忘れたのだという。説明責任を果たそうという意思は感じられなかった。
冷戦終結以降、統一教会は実際の選挙運動にはどう関わっていたのか。首相候補としても名が上がった、自民党の国会議員Aの元秘書が取材に応じた。Aの選挙に携わっていた秘書、陣営関係者の証言によれば、Aの事務所には統一教会信者が私設秘書として入り込んでいた。その人物を仮にOとしておこう。
陣営には、Oから高額の壺の購入を勧められた、布教を受けたというクレームが支援者から入ることがあったが、不問に付されていたという。Oの働きが一定程度評価されていたからだ。当時、協力関係になかった公明党支持者の家も含めてくまなく歩き、ポスターを貼った。
「もともと2つあった後援会を足し合わせて、3つに分ける。そうすると1つ後援会が増えたように見える。自分が後援会を増やした、と報告して信用を勝ち得た」(Aの元秘書)
統一教会からの集票はOが担当していたが、票そのものは多くはなかった。重宝されたのは、献身的な働きであり、Oも統一教会も国会議員秘書の肩書を必要としていた。Oの狙いはその先の政界進出にあった。
彼は2000年代に入り、民主党系会派の地方議員に転じた。2期8年務めたが、3選を目指す選挙であっさり落選した。票の動きを見る限り、政党への「風」のほうが、団体票より当落への影響は大きかったようだ。
政治家にとって教団の支援を受けるメリットは、選挙区によって異なる。別の自民党議員秘書は言う。
「2010年代にも統一教会から派遣された秘書がいたが、高齢で交代要員らしい人もいなかった。話もかみ合わず、秘書ネットワークからも外れていた。大した票も持っていない統一教会を頼るのは選挙に弱い議員だけというのが共通認識だ」
選挙実務も取り仕切る秘書たちに聞く限り、かつてOのような存在は決して珍しくはなかった。だがこれから増えていくものとも思えない。
2 選挙応援「ダサい」、親への怒り、マッチングサイト...統一教会2世たちの苦悩
安倍が亡くなって日も浅く、関係者たちの口は一様に重いが、下村からは取材を受ける、と返事があった。
「マスコミの一つとして、世界日報の取材や座談会は引き受けた。社長からは『統一教会とは別の企業。記事は独立している』と説明を受けていた。私の選挙区でもある板橋区に本社を構えており、地元企業の社長の1人という認識だった。社長は私のパーティー券を買っていたが、名称変更について何か要望を受けたという事実はない。板橋区に統一教会の教会はないので、組織的なつながりや演説会もなかった」
――2015年に宗教法人の名称変更は7件あった。文科省からどのような説明があったのか。
「報告があったのは統一教会だけだ。文化庁の責任者から統一教会から名称変更の書類申請がきているとの報告があった。名称変更については、許認可ではなく書類上の不備がなければ受理することになること、そして受理を拒むことは行政上の不作為として違法性が問われる可能性があると聞いた。報告理由は、社会的に注目される宗教法人だからと説明された。決定に私は関与していない」
――何らかの責任を感じている?
「2世信者、被害者の方々が、名称変更が原因で何か困る状況を作ってしまったとするならば、私には対処する責任がある。カルト宗教の規制、被害者救済の政策作りを責任持って進めていかなければならない」
(編集部注:以下の「全国教育問題協議会」に関する質疑は誌面では紙幅の都合上、カットしたもの。「週刊文春」は同団体が統一教会の関連団体の一つだと報じているが、協議会側は否定している)
――関連団体も含めて陳情はなかった?
「全国教育問題協議会から6〜7人で陳情を受けた。そのなかに統一教会信者がいたという話があったが、代表者は違っていた。内容は教育に関するもので、名称変更に関するものではなかった」
――今後はどうする?
「過去に問題を起こしている上に、個別の選挙区ではほぼ影響がない。参院選の比例代表で票を必要とした議員がいたが、問題を起こした団体の支援を受ける必要はない」
下村があっさりと切ってもいいと言ったこと、法整備に言及したことに多少の驚きはあったが、こう語る背景も一定の理解はできる。自民党を支えてきた神社本庁、霊友会などの宗教票が信者数の減少で減るなか、統一教会も例外ではないだろう。
問題が起きれば、切ったほうが得だと判断される。それが統一教会票の現実だ。
だが、政治は結果責任である。下村の言葉がポーズで終わるのか、実行できるか、関わりがあった議員は、結果で証明することになる。例えば、下村が実例として挙げた2世信者の問題において......。
その日、東京は曇天だった。私たちは、駅から程近い百貨店の入り口付近で落ち合った。
彼は首都圏のある病院に勤務する医療従事者である。穏やかな口調で、自身の過去を語った。20代後半の彼は旧統一教会2世信者、正確には信仰心を失った元信者ということになる。
ただの信者ではない。両親は共に古参信者で、合同結婚式で結婚した日本人の父親と韓国人の母親の元で生まれ育ち、東京近郊で旧統一教会の青年組織幹部として、選挙運動なども仕切ってきた「エリート2世信者」だ。
「安倍さんはいろんな宗教団体につながりを持っていた方で、その一つが僕たちという認識でした。『安倍さんが応援している』と伝道(布教のこと)に使っていた人もいるのかもしれませんが、僕は『ダサいな』と思っていた。僕は山上容疑者の気持ちも少し分かります。僕みたいな2世信者が抱える苦しみをきっと彼も抱えていたんじゃないかって」
選挙運動もシンプルなものだ。教会に政治家がやって来て演説することもあった。自民党や今年7月の参院選ならば「井上義行」に投票を呼び掛けるLINEや、時に選挙応援が必要な場所が指定された案内が教会幹部から回ってくる。
彼は同世代の信者たちにLINEでボランティアに行こうと呼び掛け、活動に熱心ではない信者には「たまには一緒に話そう」と誘う役割だった。
応援内容は些細なものだ。旧統一教会から応援にやって来た、と名乗ると自民党の支持者からも警戒されるので、「世界平和連合」などを名乗り、他のボランティアと一緒にビラ配りや街頭演説の会場設営を手伝って1日で解散する。
名前も覚えていない政治家の選挙よりも、解散後に仲間内で話す時間のほうを大切な時間として記憶している。
それでも彼らはロボットではない。本当に自民党に投票するかは別の問題である。他の2世から「呼び掛けは無視ですね。『井上って誰だよ?』みたいな」「政策を聞いて判断しますね。別に自民党だけにこだわる時代でもない」という声も聞いた。
話を戻そう。韓国と日本で信仰生活を送っていた彼にとって、生活は貧しさと隣り合わせだった。収入の10分の1を教会に寄付していた父の収入はおよそ十分とは言えず、狭い家しか借りることができなかった。弟も含め、親子4人で寝室を共にした。
とりわけ熱心だった韓国人の母は、学校のイベントで女子と手を握ったというだけで罪を犯したと見なし、罪を清算しろと断食や百回の土下座を課した。早朝に起きて、経典を読む生活も続けた。
しかし、帰宅時間が少し遅くなっただけで母は彼を詰問し、一人だけ早起きをして「サタンに取りつかれてしまった息子を救ってほしい」と彼にも聞こえるように祈った。少年時代に打ち込んでいたスポーツを断念し、バイトをしながら学費を捻出していたにもかかわらずだ。バイト代のうち10分の1は献金し、イベントごとに要請される献金にも出せる範囲で協力していた。
両親が喜ぶのなら、と韓国に渡り晩年の文鮮明から「祝福」を受け、合同結婚も経験したが結局、信仰へのスタンスの違いから、祝福を受けた相手とは別れることになった。
彼と両親の間で決定的な亀裂が生まれたのは、祝福と前後して彼の奨学金を両親が勝手に受け取り、無断で教会に寄付したからだ。100万円単位の奨学金が教団に流れたことが判明した。これに彼は怒った。
「僕は自分の教育費を自分で出して、社会人になってから使ってもいない奨学金の返済もしました。信仰が自分の一部だった時期はありますが、今は積み重なった虐待だと考えています。信仰から離れたいと思っている2世の中には、声を上げられない人もいるでしょう。家庭から出たところで、どうせ社会で受け入れられないと思ってしまうからです」
今、最も恐れているのは自分の過去が、職場にバレてしまうことだという。その時は、いられないと思ってしまうからだ。
「あぁ、その怒りは分かりますね」と理解を示したのは、統一教会信者が起業した会社で働く20代の2世信者だ。
「僕はそれでも、信仰には大切なところはあると思っています。全部は信じていないけど、自分のアイデンティティーでもある」
断っておくと、彼の会社は違法行為には加担していないし、統一教会の支援の下で献金目的につくられたものでもない。信者以外の従業員も働いており、私が確認した範囲内ではあるが、内輪の勧誘活動もない。あくまで信者が自分のやりたいビジネスのために起業したというだけだ。
彼の親は数千万円以上の献金をしている。そんな親の姿を見て育ったせいか、彼やその周囲の2世は献金には冷淡で「全くしない無料会員」や「気が向いたらする」程度の信者も少なくない。
2世の中には韓国にある統一教会系の鮮文大学への留学組もいる。彼らは一般企業への就職を諦めざるを得なくなり、2世のコミュニティーの中で職を探したという経験をすることになる。
「だって、就職も結婚も普通には無理でしょ。僕も2世と結婚したいです。だって、普通の人と交際しても、いつかは信仰や家族を紹介しないといけないし、相手の親に説明も必要ですよね? この状況で、結婚が許されるとも思えません」
彼らの価値観に合わせたのか、教団の姿勢にも変化が見られる。
その象徴が結婚だ。文の死去以降、結婚は教団が作り上げたマッチングサイトに移行した。親同士が最初に会って当人たちが出会うかを決めたり、自分や相手に求める信仰の度合いを記したりするのが特色だが、基本的な中身は他のマッチングサイトと変わらない。
信仰の度合いは、最も熱心なのが「伝統」、平日は何もせず礼拝やイベントに顔を出す「自律」、ごくたまに活動する「妥協」の三段階に分けられている。当然といえば当然だが、平日早朝から儀式をする「伝統」を選ぶ割合は少なくなり、日常生活と折り合いをつけられる「自律」や「妥協」を選ぶ信者が多くなる。
昔は神の意思に反するとされていた離婚も認められるようになってきた。
彼は言う。
「統一教会も過去を反省して、偽装勧誘や高額献金、政治活動の問題点を明らかにしたほうがいい。僕たちはただ信仰と共に穏やかに暮らしたいだけだから......」
3 統一教会と関係を絶つとは何を意味するか。カルト対策に魔法の杖はない
取材できた2世は限られてはいるが、多くの場合、彼らは社会に受け入れられないと思っている。政治家に彼らの声は届いているのだろうか。
カルト信者の脱会支援を続けてきた瓜生崇も、「親と信仰から距離を取る2世信者のほうが多数だ」と話す1人である。彼が懸念しているのは、過剰なバッシングで信者そのものが社会から差別され、排除されることだ。
瓜生は新宗教親鸞会の元信徒で、現在は滋賀県で真宗大谷派の住職を務めている。統一教会問題で毎日新聞のインタビューに答えただけで「壺側(統一教会擁護派)」という批判がSNSに寄せられ、抗議する人が寺にまでやって来た。
これまでカルト問題に関心を持っていなかった人々が、地道に脱会支援を続けてきた者を侮蔑し、たたくなかにあって、彼は冷静だった。
「カルトの歯止めとなるのは、社会に対して開かれていること。有効な脱会支援は、カルトであっても信教の自由があるとまずは認めて、信者の迷いやもがきと向き合うことにある。統一教会が過去にやってきたことは全く支持しないが、全員が悪人というのもあり得ない発想」
ある宗教と関係を絶つとは何を意味するのか、と瓜生は問い掛ける。例えば、仏教団体は「死刑廃止」を掲げて政治家に近づくこともあれば、政治活動にボランティアで関わることもある。そうした自発的なボランティアに対し、政治家が思想、宗教をチェックすることはできるのか。
「政治活動は癒着ではないし、思想チェックは絶対に許されない。宗教が政治に訴えるのは自由です。統一教会が『反社会的』だから政治に関わってはダメだという主張もある。でも、伝統宗教だって寄付やお布施の問題はあるし、統一教会も2009年以降は霊感商法もかなり減っている。今、違法な行為に手を染めていない信者はどうなりますか? 暴力団と同じ扱いにするなら信仰を理由に銀行口座開設も許されなくなる」
特定の宗教を法人としてつぶしたところで、信者の信仰は続く。だが、届け出も登録もなくなってしまった宗教は地下に潜ってしまい、問題を起こしたとしても責任を取る主体すら明らかではなくなる。過激な言葉で統一教会を批判する人々は、どこまで考えているのかと瓜生は思う。
私が観測する範囲でも、霊感商法こそ減ってはきたが、被害はゼロではないし、身分を明かさない偽装勧誘はいまだに続いている。これをやめさせる必要があることには異論がない。
ただし、統一教会を批判する側にも、相手の実像を見極めるより深い思考が必要になる。
彼らは最初に記したように政治家の主張を巧みに利用して「大きな影響力」があるよう振る舞う。
最近は自民の保守系が好む家族観を強調するが、鳩山政権時には、鳩山がこだわる「東アジア共同体」は日韓トンネルを掘ることで近づく、と梶栗は説いていた。だが、現在の彼らの歴史観では、「民主党左翼政権と対決した」ことになっている。「悪夢の民主党政権」論に寄せたためだ。
結局、主張の整合性など彼らは大事にしていない。彼らは使えそうな政治家に合わせて、強調するポイントを変えるだけだ。結果として旧統一教会の主張のなかでいくつかが、時の政権の主張と重なっていたと見るのが実証的な視点である。
本質は文夫妻が主張してきた大目標、例えば南北統一を推進するために信者に「勝利に近づいている」感を出すことにあったのではないか。それは、目先の目標のために多少の妥協はやむなしという姿勢の政治家との相性は良かったのだろう。
   善悪の絶対化こそカルト思考
カルト対策として、日本でもフランスの「反カルト(セクト)法」が注目されている。これをテーマに論文を記した山形大学教授の中島宏(憲法学)によれば、フランス議会のセクト調査委員会は、カルトか否かを判断する「10の指標」、そして統一教会を含む173団体を名指ししたブラックリストを作成した。
10の指標には、「法外な金銭要求」「元の生活からの引き離し」「反社会的な説教」といった、いかにも統一教会を想起させる言葉が並ぶ。だがこの指標は裁判所で積極的に採用されているわけではないし、ブラックリストに至っては首相通達で否定されている。
指標で問題だったのは、基準が曖昧だったことだ。例えば、何をもって「反社会的」とするか。フランスにおいても疑問の声があることには注意が必要ではないか。
カルト的な団体や指導者が殺人や虚偽広告などで有罪判決を受けた場合には、裁判所が団体の解散を宣告し得ると規定されているが、中島が知る限りで解散に至った事例はない。
「反カルト法ができたときのフランス国内の世論は、今の日本と似ているかもしれない。リベラル左派の支持層にも、カトリック保守にも、『カルトは宗教ではない』、『カルトを取り締まろう』という主張は受け入れやすい。『カルトを根絶するぞ』と法を作ったものの、いざ取り組んでみると法律には曖昧な概念が多く含まれ、信教の自由との兼ね合いで慎重にならざるを得なくなった」
カルト対策に魔法の杖はない。フランスの対策から学ぶ点は、勢いよく反カルトを掲げても、結局は多くの宗教に「信教の自由」を認めた上で、個々の違法行為を厳しく取り締まっていくという方法に落ち着いた現実のほうにある。
その上で「子供が学校に行けなくなった家庭」に献金の返金を認めさせたり、違法行為が認定された宗教団体を教育現場で名指しして、入会をしないよう呼び掛けるといった具体的な方法の検討も必要だ。
カルトの罠は、「統一教会」の排除を欲望する側にもある。統一教会のようなカルトを弱体化させる効果的な方法は、信者を差別・排除せず、社会には多様な受け入れ先があることを示し続けることだ。排除は結束を生み、結束は極化を招く。
社会と折り合いをつけて穏やかな信仰を選ぶ2世信者が増えれば、教団の姿は変わらざるを得ない。今回の事件を受けて、自らの信仰と向き合う2世は少なくない。
いずれにせよ、社会が受け入れるために必要な蓄積は既に出そろっている。例えば、瓜生ら脱カルト支援の現場が培ってきたものの中に。最後に彼の言葉を記しておきたい。
「《自分たちは絶対善の正しい存在、相手は絶対悪》という思考こそがカルト的な思考なのです。社会がそれにとらわれてはいけない」 
●国葬や旧統一教会問題「首相自身が説明を」 支持率低下の政権に苦言 9/22
兵庫県の斎藤元彦知事は22日の定例会見で、報道各社の世論調査で軒並み支持率が低下している岸田政権について、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)や安倍晋三元首相の国葬を巡る問題を不支持の一因に挙げ、「岸田首相自身が説明し、国民の理解を得てほしい」と苦言を述べた。
円安や物価高が急激に進む状況にも触れ、「生活への影響が出始める中、『もっとしっかりやってほしい』という思いが(国民の間で)強まっているのではないか」と指摘した。
県は物価高対策として、県内飲食店で使えるプレミアム付き商品券を発行する「県版Go To イート」の費用などを盛り込んだ補正予算案を編成。斎藤知事は「まだ不十分という声もある」とし、「間もなく始まる臨時国会でしっかり議論して、早急に(追加の)経済対策を打ち出してほしい」と求めた。
●「過度な献金だった」 勅使河原本部長 合同結婚式で「テッシー」と話題 9/22
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は22日、東京都渋谷区の教団本部で会見し、安倍元首相銃撃事件の山上徹也容疑者(42)の母親の献金について「1億円以上とは確認が取れている」と認め、顧問弁護士が「過度な献金だったと思う」と話した。7月8日の事件以降、元信者らから献金について返金を求められ対応したケースが114件あり、信者の脱会表明も「何十件かある」とも説明した。
教団は今月、本部に設置したという「教会改革推進本部」などについて会見。本部長に就任した勅使河原秀行氏と、福本修也弁護士が出席した。山上容疑者の母親の献金については「正確な金額は分からないが、約1億円以上との確認は取れている。原資は生命保険、不動産の売却代金。過度な献金と思う」(福本氏)などと説明した。
事件後これまでに、元信者や家族らから、過去の献金について返金を求められ対応したケースを問われると「114件くらい対応。クレームがきて返金すべき問題だと判断して対応した」、信者の脱会表明については「100件以下、何十件かある」(勅使河原氏)などと答えた。勅使河原氏は一方で、コンプライアンス宣言を掲げた09年以降「献金などに対する民事訴訟は和解した4件計約3800万円だけ」と強調したが、訴訟にならないクレーム数などについては「分からない」とした。
会見では、献金や勧誘についてコンプライアンス宣言の再徹底を強調。勅使河原氏は「献金が生活を害するような過度なものになってはならない。指導していきたい」とし、「過度な献金」について「通常の社会生活を困難にする程度か、献金のために借金をすること」と新たに明示し確認して受け取るとしたが、確認方法など詳細はこれからという。方針に違反した責任者や職員は厳正に処分するなどの施策も説明した。
勅使河原氏は30年前の教団の合同結婚式で、メディアから「テッシー」などと呼ばれて話題になった人物。会見では、献金をめぐる報道について「収奪とか貢がせるとか表現されている。あたかも犯罪組織がだまし取っているような印象で、腹立たしい」などと語気を強める場面もあった。

 

●“統一教会”「霊感商法1件もない」「報道や左翼弁護士が国民をミスリード」 9/23
“統一教会”が22日、3度目の会見を開きました。かつて合同結婚式でメディアに登場した「教会改革推進本部長」と弁護士が、主張を展開。声を荒らげ、ヒートアップする場面もありました。被害者救済にあたる弁護士や元2世信者に、会見の印象を聞きました。
「テッシー」こと勅使河原氏が会見
「私の認識では、霊感商法は1件もないはずです。この2009年以降は」
世界平和統一家庭連合、いわゆる“統一教会”が22日、3度目の会見を開きました。ヒートアップする場面も見られました。
田中富広会長不在の会見には、かつて新体操元日本代表選手との合同結婚式などでメディアに度々取り上げられた、「テッシー」こと勅使河原秀行氏が出席。教団が新たに設置した、「教会改革推進本部」の本部長に就任しました。
本部長「献金は自由意思で尊いもの」
勅使河原本部長は、用意したフリップを次々と出し、教団の主張を続けました。
「あたかも家庭連合が毎年毎年、1500件前後の被害を引き続き継続して出しているような印象を与えるような記事は誠に遺憾であります」「宗教に対する献金は尊いものであり、聖なるものでありますから、それ(献金)は本人の自由意思に基づいてなされております」
声を荒らげ、「コンプライアンス宣言をした2009年以降、霊感商法は1件もない」と訴えました。
この主張に、政府の対策検討会メンバーで被害者救済にあたる紀藤正樹弁護士は「過去の事実に向き合っていない。2010年まで霊感商法店舗は摘発されていました。2009年以降は(霊感商法が)まるでないという主張は、明らかに誇張や言い過ぎがある」と断じました。
時折、手を震わせていた勅使河原本部長。「信者の経済状態に比して過度な献金とならないよう、指導を改めて徹底する」と強調しました。
献金「過度」の基準は?…質問相次ぐ
会見では、「過度」の判断について質問が出ました。
――誰がやるんですか?
「各教会です。教会長ないしはスタッフということになりますか」
「内輪でやってどれだけの効果があるんですか?」などと厳しい質問が飛び、教団側の弁護士も応戦しました。
福本修也弁護士「2009年にコンプライアンス宣言が出て、信者が経営する会社における物販活動は一切なくなっています。これは間違いありません。これ以降に、霊感商法だと言って“統一教会”を訴えて損害賠償を求めたものは一切ありません。この13年間ありません!」
――ならばなぜ、7月8日のようなこと(安倍元首相銃撃事件)が起きたんですか?
福本弁護士「よろしいですか。あの事件の(山上容疑者の)お母さんが献金されたのは1990年代です。90年代の話であって、コンプライアンス宣言以前、はるか以前の問題でございます。もう切ってください」
過度な献金の基準について、「通常の社会生活を困難にするような程度」などとする一方、具体的な金額については「個々の信者の経済状態によって異なる」と述べるにとどまりました。
――山上容疑者の家庭は「過度な献金」に当たる?
福本弁護士「(山上容疑者の母親は)1億円以上(献金)したと確認は取れています。私の感覚で言えば、過度な献金であったと」
紀藤弁護士「問題の根深さが見えた」
紀藤弁護士「問題の根深さが見えた」
――政府与党も含めて、教団との関係を今後は一切絶つと言っています。
勅使河原本部長「誠に残念なことだと思います。霊感商法が今でも行われているかのような報道、それを主導していると思える左翼弁護士の方々の影響が、多分に日本国民の皆様をミスリードしているんじゃないか」
紀藤弁護士は「自分たちが生み出した被害者に対する思いやりがないところが、“統一教会”問題の根深さが、垣間見える会見だったと思います」と指摘しました。
今後について「基本的には期待がまったくできないので、中立的な第三者を入れた、被害者も入れたほうがいいと思いますが、第三者委員会みたいなものが必要だと思います」と訴えました。
2世問題…「継承の努力も当然」
会見を聞いた、両親が1000万円以上の献金をしていたという元2世信者(40代)。「薄っぺらい改革案を世間に向けて言いたかっただけだな、というのが感想です」と受け止めを語りました。
会見では勅使河原本部長が、宗教2世問題について言及しました。
「思想・信仰の自由というものがありますので、どこまでも最終的な選択は個人であるべきだと考えております」「自分が正しいと信じる宗教的理念を子供や子孫に継承させようという努力も、一方で当然のことだと思います。信仰と社会性の調和は本来家庭の中でなされるべきだと考えます」
元2世信者「信仰しない自由なし」
これに対し、元2世信者は「僕は“統一教会”の教義から気持ちが離れるのが早かったんですけど、親に言われるのは『お前はサタン(悪魔)に引っ張られている』と」。信仰が親子関係に及ぼす影響の大きさを語りました。
「信仰しない自由があったかというと、間違いなくなかったですし。親子間の問題ではあるんですけど、そういう教義を親に対して指導しているのは“統一教会”なので」とも指摘しました。
高額な献金については「自分は家にお金がないせいで、大学進学も諦めた。(僕は)親が高額献金をした被害者ではあるんですけど、僕が(献金)したお金じゃないから、教会にお金を返せって言えない」と言います。
「数字に表れない高額献金の被害はたくさんあると思います」
●窮地の旧統一教会なりふり構わず反撃開始! 沈静化・国連巻き込む 9/23
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)が反転攻勢に出ている。20日には関連団体「UPF」(天宙平和連合)が一部メディアに対し、公開質問状を送付。〈家庭連合は「反社会的団体(反社会的勢力)」に当てはまると考えますか〉など4つの質問に答えろというものだが、意図が分からないばかりか、むしろ余計イメージが悪くなり、逆効果だろう。さらに21日は「教会改革の方向性」と題した文書を報道機関に送り付けた。追い詰められて、なりふり構わなくなってきた。
「日本が最後の陣痛を経験している。指導者たちは恐れるな、強く大胆に出て行け。悶着は過ぎ、希望に満ちた新日本が誕生するだろう」
韓鶴子総裁(79)が韓国・清平の教団施設で在韓日本人信者を前に、こんなゲキを飛ばしたのは8月18日のこと。韓国で暮らす日本人女性信者7000人のうち、3000人が動員され、同日午後、バスに分乗してソウル市内に移動。「家庭連合に対するヘイトスピーチをやめよ!」と書かれたプラカードを掲げ、抗議デモを行った。
9月7日には韓国の旧統一教会が、国内の新聞13紙に意見広告を掲載。旧統一教会に批判的な番組を放送した「韓国MBCテレビ」と「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)を糾弾した。
旧統一教会が反撃に出た背景には、「天一国(神様の理想が完成した国)の中央庁」と位置づける「天苑宮」の建立を来年5月に控えていることがありそうだ。総工費約300億円といわれる一大プロジェクトを完結させるため、教団は信者に1家庭当たり183万円の献金を求めている。韓鶴子総裁の年齢と創始者の故・文鮮明が生きていれば来年103歳になることから、足して183万円の金額になった。
「183万円はあくまで目安です。献金しましょうというよりは、教祖ご夫妻に対する思慕の思いです」(世界平和統一家庭連合広報部)
国連で人権侵害をアピールか
全国弁連の渡辺博弁護士がこう言う。
「天苑宮は統一教会にとって、世界の政治の中心であり、世界中の名だたる政治家がここを訪れて学びの時間を持つ場です。これを完成させることは統一教会、信者にとって今の最大の目標です。急ピッチで天苑宮建設の献金集めが行われていました。そんなさなか、安倍元首相銃撃事件をきっかけに、あらためて教団の問題点が浮き彫りになった。韓鶴子総裁が在韓の信者を集めて、メッセージを発信したのも焦りの裏返しです」
だからなのか、韓鶴子総裁は「日本で我々の側に立つ弁護士がいない。国連でやるしかない」と発言したという。
「これまで統一教会は多額の資金を使ったり、ロビー活動を通じ、国連が認可する団体、例えば世界平和女性連合など、国連の庇護のもとに伝道活動や宣伝をしてきた。脱会者の拉致監禁、人権侵害が行われていることを国連の機関で発表してきたのです。今回も国連を使って、『今、日本で宗教迫害が行われている』とアピールする狙いでしょう。韓鶴子総裁の発言を受け、日本の統一教会は急きょ、8人の日本人弁護士をかき集めたようです。反撃に出る準備を整えたと漏れ伝わってきます」(渡辺弁護士)
事態を沈静化させようと必死なのだろう。
●安倍氏と旧統一教会、首相また調査を否定 「心の中の判断に基づく」 9/23
岸田文雄首相は22日午前(日本時間同日午後)、訪問先の米ニューヨークでの内外記者会見で、亡くなった安倍晋三元首相と「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」との関係について調査しないのかを問われ、改めて否定した。
首相は「ご本人の心の中での判断に基づくものである以上、ご本人が亡くなられた今、その実態を把握することには限界がある」と語った。8日にあった国会の閉会中審査でも、首相は調査に否定的な考えを示している。
●生稲晃子議員 統一教会の替え歌応援に感涙…際立つ危機管理能力のなさ 9/23
《自民党豊島総支部の総会へ出席してきました。 鈴木隼人衆議院議員が総支部長に就任され新体制としてスタート。私も特別顧問として仲間入りをさせていただきました。豊島総支部の皆さま引き続きよろしくお願いいたします》
9月21日、Twitterにこう投稿したのは自民党の生稲晃子議員(54)。7月10日の参議院選挙で初出馬ながら当選して以降は、がん闘病の経験を活かしがん研病院を視察するなど、政治家として奔走する日々を送っているようだ。
そんな生稲議員だが、先日、話題の団体との関わりが明らかになっていた。「週刊新潮」が8月17日発売号で、参院選の選挙活動中だった6月に自民党の萩生田光一議員(59)とともに統一教会(現在は世界平和統一家庭連合)の関連施設に生稲議員が訪れていたことを報じたのだ。
記事によると、萩生田議員が生稲議員への支援を要請するために2人で施設を訪問したというが、同誌の取材に対して萩生田議員は訪問を認めたものの、支援要請は否定。生稲議員も、八王子での演説終了後に直接話を聞かせてほしいという要望を受けて、移動の合間に立ち寄った、と説明していた。
しかし、安倍晋三元首相(享年67)の銃撃事件以降、かねて多額の献金などによりその活動を問題視されていた統一教会と政治家との親密な関係が批判を浴びる中での報道とあって、生稲議員に説明を求める声が殺到。
生稲議員は8月18日、報道陣に対して「統一教会の関連施設という認識はなかった」と釈明した上で、こうコメントしていた。
「暑かったので顔を直すこととか、きちっと間違いないように喋らなきゃいけないとか、そういうことに必死で何も見ずに。いつもそんな感じの移動なものですから、その時は全く見ていなかったんですね。だから、知りませんでした」
それから1カ月、生稲議員の“施設訪問”に関して続報が。「朝日新聞デジタル」は9月22日、生稲議員が萩生田議員と統一教会の関連施設を訪れた際、集まった信者らがアニメ「巨人の星」の主題歌の替え歌に乗せて「行〜け行〜け〜晃子〜、どんと行け〜」と激励。応援を受けた生稲議員は、目頭をおさえて信者に感謝したという。
統一教会とは知らずに施設を訪問したものの、替え歌での応援に感涙したという生稲議員。全国紙の政治部記者は首をかしげる。
「萩生田議員と一緒とはいえ、立候補中に自身が素性も知らない団体の施設を訪問するのは脇が甘いと言わざるをえません。それでいて、替え歌で激励という風変わりな応援を受けて、感動しているにも関わらず、指摘されるまでどんな団体か知らなかったというのはいくらなんでも危機管理能力がなさすぎると思います。これがもし反社会的勢力だった場合でも、同じ言い訳が通用すると思っているのでしょうか」
ネット上でも生稲議員の危機管理能力について、疑問を呈する声が相次いだ。
《いくら萩生田に連れて行かれた新人とはいえ、コレは何かおかしいと思わんもんかね。どっちも場外級のアウト》《これで応援してくれた人たちが何者なのかも知らなかったというのは、とても通る理屈ではない》《巨人の星の思い出について語っていただけますか? SNSではなく報道陣の前で》 
●旧統一教会、対中関係改善… 訪米終えた岸田首相、続く内憂外患 9/23
訪米中だった岸田文雄首相は22日(日本時間23日)、帰国の途に就いた。国連総会では安全保障理事会改革を訴えるなど外交で存在感を示そうと腐心した。帰国後は世論の賛否が割れる安倍晋三元首相の国葬のほか、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題で野党の追及が予想される臨時国会が控える。中韓両国との関係改善など外交課題も山積しており、内憂外患が続きそうだ。
「今後とも国連及び多国間主義への日本としての強いコミットメント(関与)を示していきたい」。首相は22日の記者会見でこう語り、国連総会の一般討論演説で訴えた安保理改革や国連機能強化に改めて意欲を示した。
今回の訪米では、バイデン米大統領との立ち話で安保理改革への連携も確認し、一定の成果を上げた。韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領とも非公式ながら初めて対面で会談し、1965年の国交正常化以降で最悪と言われる日韓関係の改善に向けた糸口を探った。
外交面では、29日に日中国交正常化50年を迎えるが、沖縄県・尖閣諸島を巡る対立などで、対面での日中首脳会談は約2年9カ月にわたり途絶えている。首相は会見で関係改善に意欲を示し「しっかり意思疎通を行うことが重要だ。中国との対話について常にオープンだ。具体的な対話のあり方について日中で考え、調整していきたい」と語った。
内政面では、27日の安倍氏の国葬や、10月3日召集予定の臨時国会に向け、難しい対応を迫られそうだ。首相は会見で「一連の国葬儀行事が敬意と弔意に満ち、我が国への信頼を高めるものになるよう全力を尽くしたい」と述べる一方、旧統一教会との深い関係が指摘される安倍氏に関する調査を改めて否定。「心の中の判断に基づくものである以上、ご本人が亡くなられた今、実態を把握することには限界がある。その考えは今でも変わっていない」と述べた。
●岸田はおかしくなっている! 極右安倍応援団・小川榮太郎をブレーンに 9/23
ついに来週27日におこなわれる予定の安倍晋三・元首相の国葬。各社の世論調査では 軒並み反対が賛成を大きく上回っており、岸田内閣の支持率もダダ下がりという状態になっている。
一体どうして岸田文雄首相は国葬の実施を決断したのか。ネット上では麻生太郎・自民党副総裁が岸田首相に3回電話して「これは理屈じゃねえんだよ」と説得したという「Smart FLASH」の記事が拡散されたが、ここにきて新たな“キーマン”の名が浮上した。
なんと、岸田首相に国葬実施を決断させたのは、あの小川榮太郎氏だというのだ。
22日発売の「週刊文春」(文藝春秋)の記事によると、小川氏は安倍元首相が亡くなった7月8日に岸田首相と電話で会話。さらに11日にも電話をかけ、「国葬を早く決断しないと、保守が離れる」と進言した。その後、14日になって岸田首相が国葬の実施を表明している。もちろん、国葬の招待状は小川氏にも届いているという。
無論、小川氏の進言がどれほどの影響を与えたかはわからないが、問題なのは、岸田首相が小川氏と電話でやりとりするほどの関係にあることだ。
ご存知のとおり、小川氏といえば自民下野時に安倍氏を再び総理にするための草の根運動で事務局的な役割を担い、2012年秋の自民党総裁選直前に『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)という安倍礼賛本でデビューした熱心な安倍応援団のひとり。「放送法遵守を求める視聴者の会」なる団体を立ち上げて、政権批判報道に圧力をかけるなど、露骨な安倍政権アシスト活動をおこなってきた。
だが、一躍その名が知れ渡ったのは、自民党・杉田水脈衆院議員の“性的マイノリティには生産性がない”という差別言説を“性的マイノリティを認めるなら痴漢の触る権利も保障せよ”なるヘイトの上塗りで擁護した一件だろう。
さらに、小川氏は2019年に「月刊Hanada」(飛鳥新社)紙上において「性被害者を侮辱した「伊藤詩織」の正体」なる論文を発表。この論文のなかで小川氏は〈伊藤氏は妊娠の事実がないことを確認したにもかかわらず、山口氏に対して執拗に妊娠の可能性を訴え、金銭を取ろうとした〉と主張したり、伊藤氏の事件当日の下着についてあげつらうなど、さらなるセクシュアルハラスメントと誹謗中傷、陰謀論を書き連ねるというセカンドレイプをおこなった。
また、小川氏が書いた安倍元首相の擁護本『徹底検証「森友・加計事件」─朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(飛鳥新社)をめぐっては、朝日新聞社が小川氏、飛鳥新社を提訴。一審・東京地裁と二審・東京高裁の判決は、14箇所に真実性が認められないとして名誉毀損を認定し、「報道機関としての社会的評価を低下させた」と指摘。小川氏と飛鳥新社に200万円の支払いを命じた。
そして、トランプ前大統領や新型コロナウイルスをめぐってもトンデモ言説を発信している。
正気か? 差別とフェイクを撒き散らす小川榮太郎をブレーンにする岸田首相
このように、さんざんヘイトやデマや陰謀論を書き立てて安倍元首相を擁護してきた小川氏だが、まさか、このような人物が現役総理大臣の岸田首相に進言までおこなっているとは──。
しかし、「週刊文春」によると、小川氏は、岸田首相の“ブレーン”となっている、という。同誌では官邸関係者がこのように証言している。
「岸田氏にとって小川氏は、安倍氏を支持してきた右派の中では、ほぼ唯一と言っていい“ブレーン”。元々は政調会長時代に、安倍氏から紹介されたそうです」
たしかに、小川氏は7月14日にもFacebookに〈今朝、岸田総理と電話でお話をした。国葬の事も重々お話し、それ以外にも今できる限りの進言を申し上げた〉と投稿。首相動静によると、9月7日には首相官邸において「月刊Hanada」の企画で小川氏と対談を約1時間おこなっている。
しかも、「週刊文春」の直撃取材では、小川氏は「岸田さんとのことは何か政局上のキーマンと思われると、それは非常に間違った記事になる」と言いながら、「私はあくまで、純然たる政策の助言者。安倍さんの時と同様で、そういう助言者なのでね」などとも発言している。さらに「(岸田首相と)会う際には“裏動線”を使ったりすることも?」と尋ねられると、「それは裏動線は話しちゃいけないんで、ハハハ」と回答。暗に秘密裏に岸田首相と会談していることを匂わせているのだ。
つまり、安倍元首相と同様、岸田首相も小川氏と親密な関係を持ち、安倍応援団の代表として自身のブレーンに引き立てているというのである。
しかし、現在の小川氏に安倍応援団およびネトウヨをまとめられるような影響力があるのかは甚だ疑問だ。というのも、前述した「視聴者の会」においてはカネをめぐる“内紛”が勃発。会計処理を担当していた小川氏は、百田尚樹氏や有本香氏、上念司氏らと袂を分かっている。
いや、小川氏が「岸田首相のブレーン」であるとすれば、さらに重大なのは、小川氏と統一教会の関係だろう。
小川榮太郎のトンデモ統一教会擁護 安倍晋三と小川榮太郎の関係にも統一教会の影が…
小川氏は安倍元首相銃撃事件以降、統一教会を擁護するような主張を繰り広げている。たとえば、自身のFacebookには〈ある団体を恨んで殺意を抱いたという供述を真に受けるならその団体は被害者でしょう〉と投稿したほか、〈右派宗教団体潰しです。安倍氏を暗殺し右派団体の一つを潰す。まことに手回しのいい構想が存在していたと考えざるを得ませんね〉などという陰謀論まで展開。さらには〈近年の反日マスコミや週刊誌のカルト性、反社性、日本破壊の凄まじさと統一教会とどっちがひどいか、私に言わせたいか〉などとも記している。
統一教会は被害者、週刊誌などのマスコミこそ反社であり、安倍氏の暗殺事件は右派宗教団体潰しのための謀略だ……。このような主張を繰り広げている人物が岸田首相のブレーンを務めているとすれば、それだけで大問題だが、看過できないのは、小川氏自身が統一教会と関係している点だ。
小川氏自身、統一教会系メディアである世界日報の月刊誌「Viewpoint」に登場したり、世界日報の愛読者有志による団体「世日クラブ」で講演をおこなうなど統一教会と接点を持ってきた人物なのだが、注目すべきは、小川氏と安倍氏の関係のあいだにも統一教会の影が見え隠れすることだ。
たとえば、2012年2月に小川氏は“安倍首相復活のための団体”として「創誠天志塾」なる私塾を開いているのだが、この団体の前身となったのが「青年真志塾」で、小川氏はこの「青年真志塾」で幹事長を務めていた。「青年真志塾」とその母体である「日本経済人懇話会」は生長の家原理主義との関係も指摘されているが、「日本経済人懇話会」の会員企業には「株式会社世界日報」も名を連ねている。
そして、「青年真志塾」では2011年12月6日に「強い「経済」、美しい国「日本」〜元首相安倍さんが、今若者たちに伝えたい想い〜」と題したイベントを主催。安倍氏が基調講演をおこない、小川氏がイベントを取り仕切ったが、じつはこのイベントの共催には「世界戦略研究所」が入っていた。「世界戦略研究所」とは統一教会関連の政治団体とされ、日本維新の会も党の調査で「統一教会の関連団体」として位置づけている団体だ。
さらに、2012年4月30日に安倍氏は小川氏をはじめ、昭恵夫人や支援者らと高尾山の登山をおこなっているが、この登山には「世界戦略総合研究所」の事務局次長である小林幸司氏や筆頭理事の加藤幸彦氏が参加。ちなみに小林氏はその後、2013年〜2016年の「桜を見る会」に4回連続で招待されている。
安倍氏を再び総理大臣に返り咲かせるためにバックアップしてきた小川氏だが、そこに垣間見える統一教会との関係──。しかも、小川氏は「週刊文春」の直撃に対し、統一教会系人脈との関係を自らこのように明らかにしている。
「世界日報の社長と阿部会長と一緒の席はあった。阿部さんとは1年に何度か会うよ。(合同結婚式の)日本で8組目とか言ってたな。偉い人で、勝共(連合)の初代事務局長だよ。彼は文(鮮明)氏の直弟子の1人。(阿部氏は講演で)『私が喋ることは今日中に本部に伝わるだろうが、全部話します』とか言ってましたよ」
ここで語られている阿部正寿氏は「世界戦略総合研究所」の会長であり、安倍元首相と阿部氏が握手する写真も残されているが、小川氏はこの阿部氏と「1年に何度か会う」仲だというのである。
小川榮太郎が統一教会関連団体幹部を「桜を見る会」に推薦したとFBで自ら告白
さらに、「週刊文春」が前述した2012年の高尾山登山について報じた際、「キーマンは安倍夫妻と高尾山に登った関連団体幹部」として「世界戦略総合研究所」の事務局次長である小林幸司氏を取り上げたのだが、このとき小川氏はFacebookに小林氏のことを「K氏」と名前を伏せたかたちで、このように投稿している。
〈「キーマンは安倍夫妻と高尾山に登った関連団体幹部」という見出し。本文を見ると「安倍を支えるキーマンの一人」となっている。これは私の友人Kさんの事だ。彼は私を支えるキーマンの一人だったが、安倍氏とは面識ない。したがって安倍氏のキーマンであるはずがない。
安倍さんとの高尾山登山は私が仕切ったもので、その頃私の周囲の若者や友人数十人が日夜を分かたぬ安倍再登板運動を繰り広げていた。Kさんはその仲間の一人である。〉
〈桜を見る会に呼ばれたというが、私の安倍再登板運動を支えた諸氏は、私が推薦している。〉
安倍氏と統一教会をつなぐ重要人物として取り上げられた小林氏について、小川氏は「私の友人」「彼は私を支えるキーマンの一人」だとし、「桜を見る会」に4年連続で招待されたのも「私が推薦」したからだというのである。
このように、安倍氏と統一教会の関係を掘り下げると登場する統一教会系人脈と、小川氏が親密な関係にあることは、小川氏本人も認めている事実なのだ。
岸田首相は頑として安倍元首相と統一教会の関係について調査することを拒絶しつづけているが、自身のブレーン的存在としてこのような人物を重用しているとすれば、それも当然の流れだ。統一教会を擁護しつづけている小川氏が岸田首相に知恵を付けているのだから、膿を出し切ることなどそもそも無理な話だったのである。

 

●安倍一族このまま断絶か…後継候補に断られ「事務所閉鎖」「後援会解散」 9/24
安倍事務所が閉鎖に
故・安倍晋三元総理の地元、山口県下関市に9月14日、動揺が走った。後援会関係者が語る。
「安倍さんの元有力秘書・鮎川建司さんが、支援者の自宅を回り『12月いっぱいで安倍事務所を閉鎖することになった。後援会も解散します』と伝えたのです。事務所周辺に貼ったままだった安倍さんのポスターも剥がし、来年2月にある下関市議選の候補者のものに貼り替えた。安倍さんに近い人が(山口4区の補選に)出るなら、そのままにするはずなのに」
本誌が報じてきた通り、安倍氏の死後、妻の昭恵さんや弟・岸信夫前防衛大臣の息子などの名前が後継候補に浮かんでは消えた。安倍氏の元秘書で下関市長の前田晋太郎氏が有力とも言われたが、「『市政を投げ出すわけにはいかない』と固辞した」(山口自民党関係者)。
政界の「ゴッドマザー」と呼ばれる安倍氏の母・洋子さんのもと、元秘書らが後継者探しに奔走してきたものの、ついに万策尽きたのだ。
安倍家「断絶」の瀬戸際
「山口でも旧統一教会批判・国葬批判はかなり強まっています。補選は来年4月以降ですが、このまま自民党への逆風が収まらなければ、擁立見送りもあり得る。どのみち次の総選挙で区割りが変更され、現4区は新3区になるわけですし、自民党本部としては新旧候補者同士が対立するような面倒事は避けたいでしょう」(前出・後援会関係者)
かくして、安倍家は断絶の瀬戸際に立たされた。早くも動き出したのが、同じ下関を本来の地盤としながら、これまで安倍氏に譲ってきた元ライバル・林芳正外務大臣だ。
「9月10日、林さんが夫人と山陽小野田市で国政報告会を開きました。ここは区割り変更後に下関と同じ新3区になる地域で、地盤固めに余念がない。下関の林系自民党支持者の家には、夏まで安倍さんのポスターが貼られていましたが、それも全て剥がされている」(前出・山口自民党関係者)
数々の大物政治家を輩出してきた一族は、このまま消えてしまうのか。
●志位委員長「『断絶する』というなら、安倍氏の調査が試金石」 9/24
日本共産党の志位和夫委員長(68)が24日、自身のツイッターを更新。安倍晋三元首相と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の調査に及び腰の岸田首相を批判した。
岸田首相は22日、訪問先のニューヨークで記者会見し、安倍氏と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係を巡る調査に改めて否定的な見解を表明。「基本的にご本人の心の中での判断に基づくものだ。亡くなられた今、実態を把握することには限界がある」と述べた。
これに対し、志位氏は「首相、安倍氏と統一協会の癒着の調査について、『本人の心の中』の問題だから『本人が亡くなったら実態把握は限界』と」と前置きした上で、「安倍氏の『心の中』の把握はできなくても、彼がどう行動したかについての記録は無数にある。その調査をどうしてやらない?」と指摘。「『断絶する』というなら、安倍氏の調査が試金石になる」と述べて、安倍元首相と教会の関係調査を求めた。
●「次の総理」茂木幹事長の劇的ビフォーアフター…「スネ夫から出来杉くん」へ 9/24
「自爆解散」の報道まで
岸田内閣の支持率が急落している。
毎日新聞と社会調査研究センターが9月17、18日に実施した世論調査によれば、岸田内閣の支持率は29%と、1ヵ月で7%下落。不支持率は64%と1ヵ月で10%増加した。
支持率29%は歴代内閣の危険水準であり、もし今、国政選挙が実施されれば大惨敗してもおかしくない水準だ。メディアからは「自爆解散」を噂する報道まで飛び出している。
支持率低下の原因は「統一教会」問題、その「統一教会」問題に端を発した安倍元首相の国葬の是非だと言える。岸田官邸として、支持率回復のための有効な手立てが見出せないまま、ダラダラと支持率を下げているのが現状だ。
安倍政権と違い、岸田首相をなんとか応援したいという積極的な支持層がいないのが何よりの問題だろう。野党やメディア側の攻勢に、ただ下を向いて「この問題、早く終わってくれないかな」という態度が滲み出ているようだ。
総裁選の前倒しに困る「あの男」
「新しい資本主義」「分配優先」など、当初掲げていた政策は、もう見る影も無い。反対論が起こるとすぐに引っ込めてしまうのは、その場では正しい選択なのかもしれない。
しかし、そうなると、今夏に「原発再稼働」推進に突然政策を振り切ったことも、行き当たりばったりの政策に見えてしまう。私は、この政策を支持するが、岸田政権を支持しようとは思えなかった。
なにもかもが「その場しのぎ」で、なにもかもが薄っぺらく見えてしまう。世論に対する有効な手立てが打てないのも、政権発足当初に掲げた主要政策を放棄してしまったがために起きていることだろう。
こうなると支持率回復は絶望的にも思える。このままいけば来年の統一地方選挙は惨敗し、その後の広島サミットでの花道、つまり総辞職も永田町では噂されている。
全国紙デスクは、こう予測する。
「統一地方選挙の惨敗が確実視されていますが、大型国政選挙の直前まで自民党の国会議員は動かない可能性もあります。これは、菅政権で都議会議員選挙が思うような結果にならなくても、倒閣の動きがでなかったのと同じです。自民党の国会議員は、自身の政治家としての立場が危うくなってはじめて動く。
いずれにしろ、国政選挙の前に総裁選を前倒しするとなれば、困るのは統一教会と深い関わりを持ったと報道される総裁候補たちです。その代表は萩生田光一氏。清和研(安倍派)の掌握は時間の問題とされていますが、選挙で国民の負託をもう一度受けないと、総裁選に出馬するのは難しいのではないでしょうか」
経産相時代の評判が悪すぎて
では、岸田首相が辞意を固めたとき、岸田首相が「禅譲」する相手は誰であろうか。その筆頭が、茂木敏充自民党幹事長だ。
岸田政権発足直後の衆院選で、幹事長だった甘利明氏が選挙区で落選するというハプニングがあり、棚ぼた的に茂木氏に回ってきた幹事長職だが、今では麻生太郎副総裁と共に、岸田首相がもっとも頻繁に相談し、頼りにする人物となっている。
自民党第2勢力の茂木派をけん引する茂木氏は、麻生太郎自民党副総裁や岸田首相からの信頼も厚い。第3派閥の麻生派(志公会)、第4派閥の岸田派(宏池会)と共に「主流3派」を構成しており、将来の自民党総裁選出馬に強い意欲を示している。
しかし、主に経産大臣時代のエピソードをもとに、永田町や霞ヶ関ではあまりいい評判がないのも事実であろう。
これまでに報道されてきたエピソードは多いが、筆者の耳にも「経産官僚が紙をめくる音にも『うるさい』と一喝していた」などという噂話が入ってくる。この噂の真贋は不明だが、経産大臣時代には相当イライラ大臣として、官僚たちを困らせていたようだ。しかし、首相だったり、現在は麻生副総裁など、自分の「上司」から与えられたミッションには、全力を尽くし、全力を尽くした上で、手柄を「上司」に渡す。スネ夫キャラといえば、わかりやすいだろうか。
出木杉くんに「転生」
そんな茂木氏に転機が訪れたのは、外務大臣に就任したタイミングだった。
これまでのイライラした自分に対して、深い反省を行ったのか、「経産省からはものすごく取り扱いが大変な人だと聞いていたが、いつもニコニコして、非常に接しやすかった」(外務官僚)という評判が生まれたのである。
元来、頭の回転が非常にいいことでは知られていた人物だ。官僚が用意したペーパーも一読すると、全部頭に入ってしまうようで、レクの時間は極めてスムーズに進んでいったという。なにもかもを覚えてしまうので、官僚としては「それはそれで大変だった」(前出の外務官僚)のだという。
外務大臣の就任は、スネ夫から出来杉くんへの転機といえよう。アメリカとの外交交渉でも、アメリカ側の弱点を必死に調べて譲歩を引き出していった。本来、どう考えても対等な関係であるとは双方共に思っていない日米関係において、アメリカとの交渉は、やり込められるケースが頻発するものだ。
足りない2つの要素
しかし、茂木氏はTPP交渉においては、早く成果を出したいトランプ政権に対して、「トウモロコシの購入など、国内の反発を受けにくいものについて譲歩しつつ、早急な妥結を求めるトランプの足下を見た交渉を行った」(外務官僚)のだという。結果として、アメリカはTPPを批准しなかったが、茂木氏の手腕が光った瞬間だった。
ここまでの議論を振り返り、茂木氏が「首相を目指す」にあたって、いや自民党の内部抗争で首相は決まるものなので、「首相になり、長期政権を目指す」にあたって、不足しているものは、2つだろう。
1つは、庶民感覚だ。つまり、メディア対策だ。統一教会問題に対して、有効な手立てを茂木氏は打ち出すことはできなかった。総裁選でライバルになるかもしれない河野太郎氏は消費者担当大臣に就任直後に、「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」を立ち上げ、統一教会問題の急先鋒である紀藤正樹弁護士を委員に加えて評価を得ている。
この検討会なるものは、実効性のある何かをいまだに打ち出せてはいないし、私は今後もそうなのではないかと懸念しているが、世論はそれでも評価している。自民党として、なぜこういったPRをできなかったのか、ということだろう。「茂木政権」においては、この河野氏のPR手腕を真似ていくべきだ。
2つ目は、世論をリードできる哲学、思想であろう。新聞記者とコンサル出身の茂木氏は、そういったものに関心がないのではないか。しかし、強い哲学を持たなければ、茂木氏を積極的に応援しようという政治勢力が生まれないのも事実だ。党務に追われ、忙しいのはよくわかるが、大型選挙が直近にないのだから、やはり揺るがないビジョンを固めていく必要があるだろう。
岸田首相の二の舞にならないためにも、自身の思想に磨きをかけていくべきではないか。
●統一教会「勅使河原さん」30年ぶりに登場 実父が語った息子のエリート人生 9/24
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は9月22日、“教会改革”についての記者会見を開いた。そこに「教会改革推進本部本部長」という勅使河原秀行氏が登場し、ネット上は騒然とした。担当記者が言う。
「勅使河原さんは1992年7月、かつて新体操の選手として活躍し、タレントとしても人気を誇っていた女性の婚約者として、記者会見に登場したのです。後に女性は洗脳が解けて脱会しますが、当時は統一教会の信者でした」
勅使河原氏と女性は翌8月、ソウルで開かれた合同結婚式に参加した。この時、歌手の桜田淳子氏も参加しており、2組の夫婦は記者会見を開いた。
「勅使河原さんは京都大学を卒業し、当時は大和証券に勤務するエリートサラリーマンでした。人気タレントだった女性に相応しい夫として、統一教会が宣伝に使ったのです。しかし彼女は、93年に統一教会からの脱会と結婚の“破談”を記者会見で表明しました」(同・記者)
一方の勅使河原氏だが、婚約発表や合同結婚式だけでも、マスコミの注目を集めるには充分だった。それどころか、女性に“家出”されても、カメラの前で「彼女は改宗しない。必ず僕と結婚します」と大見得を切った。
これが話題にならないわけはなく、当時、勅使河原氏の姿はテレビのワイドショーを中心に連日のように報道されていた。
さすがに女性との結婚が破局してからは、テレビで近況が伝えられることはなかった。とはいえ、当時の視聴者に鮮烈な印象を残したことは間違いない。
昔も今も“客寄せパンダ”
そんな勅使河原氏が突然、「教会改革推進本部本部長」として記者会見に臨んだのだから、多くの人が驚きの声を上げたのは当然だと言える。ツイートを引用しよう。
《まさかこの人物が30年ぶりに登場するとは驚きだ》
《統一教会は離婚したら地獄に落ちると言われてたけど、勅使河原さん大出世したのね》
《テッシー、懐かしい(笑) 嫁さんになるハズの体操選手に逃げられた悲劇の人と思ってたら、本部長にのし上がってた》
民放キー局の関係者は「統一教会は会見に注目を集めようと、勅使河原さんを起用したのだと思います」と言う。
「40代以上なら誰でも、勅使河原さんのことが記憶に残っています。“改革”をアピールしたい統一教会にとっては、とにかく世間の耳目を集める必要があった。会見で彼を抜擢するとは、知恵者がいるなと思いました。しかし、それにしても勅使河原さんは、昔も今も“客寄せパンダ”の役割が期待されているんですね」
確かに世間の関心を集めることには成功したようだ。だが、それで騙されるほど視聴者は甘くない。勅使河原氏には批判が集中した。会見の内容については、統一教会の問題に詳しい有田芳生氏や弁護士の紀藤正樹氏も問題点を指摘した。
イタズラっ子
写真週刊誌「FOCUS」(新潮社・休刊)は93年5月、「『破断された』統一教会『勅使河原秀行』男の研究」の記事を掲載した。
勅使河原氏がどのような人物なのか、幼少期から遡って徹底的に取材したものだ。当時の記事を要約して紹介する。
勅使河原氏は愛知県一宮市の生まれ。3人きょうだいの長男で、弟と妹がいる。父親は大阪に本社のある繊維問屋の取締役で一宮支店長。ごく普通の中流家庭に育ったと言っていい。
「小学校の頃は、腕白でケンカもよくした。やんちゃで、学校でも指折りのイタズラっ子でした」(幼なじみ)
中学から剣道を始め、高校では副将として地区大会で団体準優勝もしている。
「スポーツマンだし、ユーミンやオフコースが好きでコンサートにもよく行っていた。統一教会なんて、当時の姿からはピンと来ませんね」(高校の同級生)
成績は常にトップクラス。
「ただ、女の子に対しては無頓着なタイプだった。身だしなみに気を使わないし、女の子に敬遠されるタイプでした。それに理屈っぽくて、どこまでも自分の考えを主張する奴だった」(他の同級生)
「24時間教会に身を捧げたい」
一浪後、京大の農学部農林経済学科に入学した。
「医学部を勧めたんですが、息子の希望で農学部にしたんです。本人は“何年か先、世界は食糧危機の時代が来る。人口も増加する一方だから、コントロールしないといけない。そのために勉強したいんだ”と言う。将来は国連で働きたいと言っていました」(父親)
その「理想主義」的なところが、統一教会に入信する素地になったのかもしれない。勅使河原氏は大学3年生の時から授業に出なくなる。統一教会の学生組織、原理研究会に入会したのである。
原理運動に熱中したせいか、勅使河原氏は4年生になっても卒業できず留年。「筋金入り」の原理研メンバーになっていた彼は、大学卒業後の進路について、「教会の職員になって24時間教会に身を捧げたい、と思っていた」(関係者)
が、両親が反対。
「“なんとか普通の会社に就職してくれ。3年経ってまだその時、原理をやりたいというのなら認めよう”と言いました。世間の波に揉まれたら考えも変わると思ったんです」(父親)
勅使河原氏は、この条件をのむ。
「仕方ないと諦めました」
「原理研の責任者に相談すると、“これからの時代は、信者はどんどん社会に出て行かないといけない”と言う。統一教会はグループとしてあらゆる企業を持っているが、金融関係はまだそれほど強くない。で、大和証券を選んだんです」(父親)
最初の勤務先は岐阜支店。
「仕事は一生懸命やった。全国の新人の中で売上はトップ・クラスだった。本社の営業本部長表彰も何度も受けたし、褒美でオーストラリア旅行にも行かせてもらいました。数年で証券アナリストの試験に受かり、東京本社に栄転になった。もっとも、岐阜支店時代は、給料のうち小遣い以外はほとんど献金していた。ボーナスなどそっくり全部献金していた。おかげで貯金なんて全然できなかったようだ。3年経ったところで、息子に統一教会のことを聞いたんです。すると“気持ちは変わらない”と言う。それで、もう仕方ないと諦めました」(父親)
その彼が、どうして教会の「宝物」の山崎さんの相手に選ばれたのか。
「表向きは文鮮明教主の“マッチング”によるものと言われますが、実際に選んだのは神山威名誉会長です。勅使河原さんは一流会社勤務のエリートサラリーマンだし、京大出で学歴も高い。統一教会が社会的認知を得るためにはいい。つまり、彼も“広告塔”としては適当だろう、ということで選ばれただけなんですよ」(関係者)
FOCUSの記事は最後、《統一教会に忠誠を誓うあまり、男として最低の屈辱を味わった勅使河原さん。婚約者に「破談」を言い渡され、その上会社の信頼まで失って、それでも教会に「殉ずる」のだろうか》と結んでいる。 
●岸田首相批判「国民の疑問に誠実に向き合う姿勢まったく感じられない」 9/24
フリーキャスターの膳場貴子が24日、TBS系「報道特集」に出演。安倍晋三元首相と旧統一教会とのかかわりを調査しない考えを示す岸田文雄首相に対して「国民の疑問に誠実に向き合おうという姿勢がまったく感じられない」と断罪した。
この日は、岸信介元首相、安倍晋太郎元外相、そして安倍晋三氏と、岸・安倍三代と統一教会との関わりを掘り下げた。
その上で膳場アナは、「教団と安倍氏の関わりについて、調査すべきだと思うんですが、岸田総理は、先日、ニューヨークで、これに対して、『調査はしない』という考えを改めて示しています。国葬前にこれ以上ことを荒立てたくないという考えなのかもしれませんけど、国民の疑問に対して、誠実に向き合おう、応えようという姿勢がまったく感じられなくて、残念です」と話した。
●「日本はとんでもない間違いをした」岸信介、安倍晋太郎、安倍晋三… 9/24
安倍元総理の国葬が3日後に迫るなか、旧統一教会はどう政界に入り込み、何を目指したのか。岸家・安倍家3代との関係性に焦点を当て、検証します。
旧統一教会と自民党の関係 起点となったのは…岸信介氏
81年前の開戦を宣言する詔書。ここに旧統一教会と自民党の深い関係の起点とされる人物の名がある。
当時商工大臣で、敗戦後はA級戦犯として収監されていた岸信介。安倍元総理の祖父である。
岸は復権を果たすと、1957年に内閣総理大臣に就任。一方、その翌年、教団は日本で布教を始める。6年後、宗教法人として認証されると、岸の自宅の隣に本部教会を移し、1968年には、反共産主義を掲げる政治組織「国際勝共連合」を設立。その活動を後押しした岸と共鳴していった。
岸信介氏(1980年取材)「世界で君、30年憲法を一字も変えないのは日本だけですよ。それほど変えてならんほどいい憲法かというと、そうでもない」
勝共連合が発行する思想新聞。一貫して主張するのは、自主憲法制定とスパイ防止法成立だ。自主憲法制定を訴える大会の記事には、必ず岸の存在がある。デモ行進に参加し、「憲法改正!」「マスコミの偏向を許すな!」と叫んでいたと書かれている。
岸は、たびたび教団を訪れ、信者に国際情勢などを話したとされ、教団の初代会長は、こう称えている。
「岸先生に懇意にしていただいたことが、勝共運動を飛躍させる大きなきっかけになったことは間違いありません」
岸が死去した際の思想新聞(1987年8月16日付)には、「勝共運動に理解を示し、陰に陽に支援、助言を行ってきた」とし、岸が文鮮明を「最も尊敬する一人」と呼んだと伝えた。
引き継がれる関係性 安倍晋太郎を変えた“思わぬ落選”
岸を引き継いだのは、娘婿・安倍晋太郎氏。安倍晋三元総理の父である。11回の当選を重ねたが、1963年、思わぬ落選を経験している。安倍家と50年にわたり親交がある元共同通信の野上忠興さんは、その時の様子をこう語る。
元共同通信・自民党キャップ 野上忠興さん「自宅に戻ったときに、家族全員集めてね。土下座して、土下座ですよ。今回はこんなことになったと申し訳ないと、泣きながらね、頭を下げた。後に私にも言ってましたけども、あれでね、俺は人が変わったと」
その後は別人のように、なりふり構わぬ戦いぶりが目立つようになったという。
1987年、晋太郎氏は、竹下登、宮澤喜一と3人で総裁選を争うが、所謂「中曽根裁定」で竹下政権が誕生することになる。
安倍晋太郎氏「さっぱりしましたよ。やるべきことはやった、ベストを尽くした」
しかし、こんな本音を野上さんに漏らしていた。
元共同通信 野上さん「1回落選したために総理大臣が持ってかれたという、被害者意識もあるわけですよ。僕にも晋太郎さんが言ったことありますよ。あの1回落ちたのが結果的にこういうことになったのかな、とかね」
そのとき、政治は数が力であることを思い知らされたという。
「やっぱり数だと、猛烈に動き出すわけですよね。入院中、胆汁を吸い取る管をつけながら全国を回って20何人も新人を当選させたりしてね、数を増やすわけですけどね。いまから思えば、そうか、教会との関係はあったんだなとも思いますよね。力がね」
そんな晋太郎氏について語る、文鮮明の言葉が残っている。
「中曽根の背後を引き継ぐために、その直系になれるのは、安倍さんしかいませんでした。選挙の時、安倍さんの派閥の議席数は13しかなかったんです。それを88名まで、全部教育して育ててあげました」
統一教が日本の国家宗教になるまで「何十年も遅れる」
元信者「総理大臣を文鮮明が決めていると言われてました。ちょうど中曽根総理大臣から、次の総理はだれになるかということで、安倍さんのお父さんが次の総理大臣になるというふうに言われたというところが、竹下さんになってしまったので、日本はとんでもない間違いをしたと。これで日本の復帰は何十年も遅れると」
日本の復帰。つまり、統一教が日本の国家宗教になるのが、晋太郎氏が総理に就けなかったことで何十年も遅れるといわれたのだという。
晋太郎氏は自民党幹事長として、勝共推進議員の集いに参加を続け、88年にはこう挨拶したという。
「勝共連合の皆さんには、わが党同志をはじめ大変お世話になっている」
「スパイ防止法制定のために積極的に取り組みたい」
晋太郎氏が死去した際の思想新聞(1991年5月26日付)には、勝共連合に「陰に陽に支援、助言を行ってきた」と、岸と同じように報じた。
安倍晋三氏にも引き継がれる関係性「新憲法制定を」
後を継いだ晋三氏は、官房長官時代の2006年、関連団体の全国大会に祝電を送っていた。
司会「岸信介元総理大臣のお孫様でいらっしゃり、現内閣官房長官、衆議院議員の安倍晋三様…」
参加した元信者は…
元信者「すごく驚きましたね。安倍官房長官と呼ばれた時に、その会場が一瞬どよめいていて、それで確か記憶に残っていたと思いますね。おじいさんの頃から関係があったので、教団と。安倍さん自身も教団と関係あるんだろうなと思っていました」
その年、一気に内閣総理大臣に上り詰めた晋三氏。思想新聞の見出しには… 「安倍政権で新憲法制定を」(2006年10月1日付)
「安倍元総理を“食口”にする」講義に含まれていた内容とは
その頃の戦略が書かれた関連団体の資料をみると、信者を意味する“食口”(シック)の議員を100人立てることが目標に掲げられている。
長年、関連団体で講師を務めてきたという男性は、講義の内容に安倍元総理を“食口”(シック)にすることが含まれていたと明かす。
旧統一教会関連団体 元講師 
――ご自身がそのようにして講義されたんですね?
「そうやって神の国が来るんだから頑張ろうっていうのは、私の洗脳していたやり方なんですよ」
第二次安倍内閣発足後、教団との関係はより深まっていった。そして…
安倍晋三氏(2021年9月 YouTubeより)「朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆様に敬意を表します。家庭の価値を強調する点を高く評価します」
「3代の因縁である」生前寄せられていた母からの懸念
安倍元総理の銃撃を山上容疑者に決意させたとされるビデオメッセージ。「天宙平和連合」の日本支部会長、梶栗正義氏は、信者に向けた配信映像の中で、複数の関連団体の会長を歴任した父親・玄太郎氏が、安倍家と関係が深かったことを述べている。
天宙平和連合日本支部 梶栗正義会長「アルバムを準備してお写真をお見せして、そのうちのひとつに、アボニム(文鮮明)と岸(信介)先生。それだけじゃなくて、(父の)梶栗玄太郎と岸先生の写真があると。安倍晋太郎先生と、梶栗玄太郎の写真があるんです。それをその次に入れて、私とこの方(晋三氏)とのツーショットの写真がある。それも一緒にして、見て下さい。3代のお付き合いだと、3代の因縁であると」
そして、安倍元総理が殺害された直後の思想新聞は、その死を「埋められない喪失感」と伝え、霊前に「勝共の使命貫徹の決意を捧げる」とした。
野上氏は、安倍元総理の母、洋子さんのこんな懸念を周辺から聞いている。
元共同通信 野上さん「母親の洋子さんがね、(7月の)参議院選挙の前に一言言ってるんですよ。『あんまり深く教会と関わらないほうがいいわよ』と言ってるんですよ。晋三さんに、安倍さんに」「だからそれを聞いた時にね、もう相当深い。つまり母親は知っているわけですからね。岸さんも、晋太郎さんもね。母親が言うから相当ね、密な関係があったということですね」

 

●旧統一教会側「09年以降、霊感商法1件もない」主張 9/25
ジャーナリストの鈴木エイト氏が25日、TBS系「サンデー・ジャポン」(日曜午前9時54分)に生出演し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題について言及した。
22日に会見を開いた旧統一教会側が、「09年以降、霊感商法は1件もない」と主張したことについて、鈴木氏は、「1件もないとドヤ顔で話していたんですけど、少なくともコンプライアンス宣言以降、つぼを、印鑑を因縁トークで売りつけられたっていう相談、報告が上がっているんですよね」と指摘。さらに「そもそも韓国の宣教本部から日本の本部に年間数百億円の献金指令がきて、日本の本部が各地区にこれだけの献金をしろって指示を出している。にもかかわらず、指示を受けている側にそれを指導するってベクトルがおかしいんですよね」と矛盾を示した。
●旧統一教会元信者の支援牧師が語る「宗教2世」の苦悩… 9/25
反省ゼロ、詭弁のオンパレード──。旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)が22日に開いた3回目の会見には元信者のみならず、多くの「宗教2世」も憤っている。親から信仰を押し付けられ、不自由な半生を余儀なくされてきたからだ。
「銃撃事件以降、『山上さんの気持ちがよく分かる』と話す2世は多いですね。『行為自体は肯定できないけど、自分もこんな悩みを抱えて生きざるを得なくなった。そんな人生を強いた教団が憎い』『両親のことは大切だけど、教団だけは許せない。自分も立場が違えば、山上さんのようになっていたかもしれない』と考える子どもたちがたくさんいます」
自身も旧統一教会の元信者で、37年間にわたって脱会支援活動を続けている日本基督教団白河教会の竹迫之牧師はこう話す。
一方、共感はしなくても「自分も周囲からテロリストとみられているのではないか」「信者の家庭に生まれただけで友達から縁を切られたり、社会的差別を受けたり、不利益を被るのでは」と強い不安を抱く2世は少なくないという。
2世は禁酒、禁煙、恋愛禁止に加え、肌の露出や異性と目を合わすことさえ許されず、同性愛などもってのほかという特異な環境で育てられる。毎週日曜日には礼拝。学校でクラスメートがアニメやアイドルの話題で盛り上がっていても、その大半を禁じられているため、話についていけない。孤立することが多く、時にはイジメの対象となる。「どうしてこんなつらい目に遭わないといけないんだろう」と思い悩むうちに、「家が統一教会に入っているからだ」という結論にたどり着く。
「ある2世は11歳の時、『サタンの誘惑が多いから』と禁止されていたネットで統一教会について検索した。書かれていたのは教団に対する罵詈雑言。これまで教えられてきたこと、信じてきたことと真逆の評価にショックを受けた。同時に自分自身の経験を振り返ると、思い当たることがいくつもあった。生きづらさを感じるようになるのです。これを多くの2世が10代前半に経験します」(竹迫牧師)
2世同士の合同結婚を求められることから、15歳ぐらいで結婚を意識させられる。
「2世は誠実な子が多いので、『統一教会に疑念を抱いている自分が教団を信じている相手と結婚して許されるのか』『まともな家庭を築けるのか』と自信を持てなくなる。2世は10万人ほどいると思われますが、合同結婚式に参加する2世は徐々に少なくなっています」(竹迫牧師)
洗脳された両親から自立して「普通の生活」を手に入れるには、長い時間と大変な労力を要する。
●旧統一教会との「決別」宣言、自民党内外から疑問の声 ずさんな自主点検  9/25
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との「決別」を宣言した自民党に対し、党内外から「本当にできるのか」と疑問視する声が上がっている。執行部は、党所属国会議員に教会側との接点を自主点検させ、党の運営指針(ガバナンスコード)に「今後は一切関係を持たない」と明記する方針。だが、点検のずさんさが露呈し、指針の実効性も見えない。識者は検証と反省が不十分と指摘する。
公表後にも相次いで表面化
「党として、わざと出さない(公表しない)ということはあり得ない」。自民の茂木敏充幹事長は20日の記者会見で、8日に自主点検の結果を公表した後、所属議員と教会側との新たな接点が相次いで表面化したことを受け、追加公表する考えを示した。その上で「(公表済みの)全体像に大きな変化が出ているという報告は受けていない」と主張した。
自主点検の結果では、衆参両院で計179人が教会側から選挙支援を受けたり、関連の会合で講演したりしていたと認定。茂木氏は「かなり詳細な項目について事実確認をした」と力説していたが、12日に木原誠二官房副長官が教会の関連団体の会合に出席していたことが新たに判明。川崎市の男性信者は本紙の取材に、教会側の指示で山際大志郎経済再生担当相の選挙を長年支援してきたと明かしたが、山際氏は自主点検では教会側からの支援は「なし」と党に申告した。
新たに分かった接点を集約して追加公表するとしても、そもそも確認作業を議員側に任せる自主点検であることに変わりはない。執行部は、教会側との関係が深かったとされる安倍晋三元首相、国会の自民会派を離脱している細田博之衆院議長らを対象にしない姿勢も崩していない。
識者「検証と反省、なお不十分」
党が「決別」の柱に掲げる指針の見直しでは、国会議員や地方議員に加えて、112万人に上る一般党員にも順守してもらう考え。守れない場合は「同じ党では行動できない」(茂木氏)として、除名などの厳しい処分もちらつかせるが、議員からは徹底するのは困難との見方が出ている。
若手議員は「地方議員や党員と教会との関係をすべて把握するのは不可能。(見直した)指針は単なる理念規定にとどまるだろう」と指摘。中堅議員は「国会議員の点検も不十分なのに、地方議員と教会の関係に口出しをすれば、地方組織との対立が生まれかねない」と漏らす。
指針の具体的な見直し内容や時期などは未定。来年の統一地方選をはじめ、各種の選挙にどう適用されるかも不透明だ。
旧統一教会の問題に詳しい上越教育大大学院の塚田穂高准教授(宗教社会学)は「教会側が、権力を持つ自民党に意図的に食い込んできた状況は明確。決別には、これまでの何が問題だったのかという検証と反省が不可欠だが、どちらも十分には見えない」と指摘。安倍氏や党の派閥レベルでの関係を調査し、より正確な実態を把握するとともに、党と支持団体とのつながりを第三者が確認できる体制整備も求めた。
●岸田首相、旧統一教会と国葬で支持率急落…「ミスター検討中」 9/25
パフォーマンス心理学の第一人者でハリウッド大学院大の佐藤綾子教授が各界著名人・トップリーダーの「伝える力」を分析する連載(不定期)の第4回。ここにきて内閣支持率の急落にあえぐ岸田文雄首相がテーマだ。7月の参院選で勝利を収めたのも束の間、昨年10月の政権発足以降で最大の危機を迎えている。その原因と対策を、独自の視点で読み解く。
内閣支持率の低下が目立っている岸田首相。旧統一教会問題や安倍元首相の国葬問題が急落の理由とされる。しかし、パフォーマンス心理学からは違う原因がみえる。
岸田首相は話し方が守り一辺倒で「検討する」との言葉が口癖のようになってしまい、「ミスター検討中」「検討使」とのあだ名までついた。
一方、ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は、それぞれマイナスとプラスの両サイドから強いインパクトがある。パフォーマンス学は鉄則として、人を引き付け説得するには根底に「万人に善(よ)きもの=大善」の存在が不可欠とする。この大善の意識があれば、言葉に自信がみなぎる。人がついてくる。
「悪意」の例としてのプーチン大統領のスピーチには、独裁国家指導者としての意思が鮮明だ。ただ、「大善」の意識はゼロ。彼が追求するのはロシアあるいは自分の権力への「善」だけ。人の目は引くが、共感は得られない。反対にゼレンスキー大統領は8月のこの連載で取り上げた通り、日本や米国など海外の各議会に向けたオンライン演説などで、各国それぞれの背景を踏まえた内容を盛り込んで共感を集めることに成功している。
●統一協会に関する決議案など自民系議員らが審議拒否 豊見城市議会 9/25
沖縄県豊見城市議会は22日、「反社会的カルト集団、旧統一教会と縁を切り市民の声が生きる政治を求める決議案」と「憲法に違反する『国葬』中止を求める意見書案」を議題とすることを自民党系議員らの反対で否決しました。
統一協会に関する決議案と安倍晋三元首相の「国葬」中止を求める意見書案は、日本共産党など市政与党会派が提出。この決議案と意見書案の審議を日程に追加して議題とすることについて採決しましたが、自民党系の野党議員が反対し、賛成少数で否決されました。
両案については、議会運営委員会で自民党系議員も含めて文言調整まで行ったものの、本会議では数の力で審議日程に追加しませんでした。
10月2日告示の豊見城市長選で自民党が擁立する徳元次人氏を応援する自民党系議員らは、自民党との癒着が問題となっている統一協会や反対世論が高まっている「国葬」について議論することすら拒否した形です。
●旧統一教会と歩んだ安倍晋三の政治家人生 9/25
幹部が明かした出演の舞台裏
「安倍元首相のメッセージ動画を見て統一教会とつながりがあると思った」
7月8日、安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者(42)は、犯行動機をこう語った。安倍氏は昨年9月12日、韓国で開催された旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の友好団体「天宙平和連合(UPF)」のWeb集会に約5分に及ぶビデオメッセージを寄せた。安倍氏が旧統一教会といかに関係が深かったかが、うかがえる。
安倍氏はビデオメッセージで、旧統一教会の韓鶴子総裁をこう称えた。
「ご出席の皆さま、日本国前内閣総理大臣の安倍晋三です。UPF主催のもと、より良い世界実現のための対話と諸問題の平和解決のために、およそ150カ国の国家首脳、国会議員、宗教指導者が集う希望前進大会で世界平和をともに牽引してきた盟友のトランプ大統領とともに演説の機会をいただいたことを光栄に思います。ここにこのたび、出帆した『シンクタンク2022』の果たす役割は大きなものがあると期待しております。今日に至るまでUPFとともに世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」
これが山上の目に留まり、後の安倍銃撃事件のきっかけとなった。
ビデオメッセージが流れた約1カ月後の10月17日、旧統一教会松濤本部・渋谷教会で日曜礼拝が行われた。ジャーナリストの鈴木エイト氏が入手した動画には、UPFジャパン議長で国際勝共連合会長の梶栗正義氏が説教をする様子が写っていた。その中で梶栗氏は信者たちに、安倍氏がビデオメッセージへの出演に応じた舞台裏を明かした。
「先生、もしトランプがやるということになったら、やっていただかなくちゃいけないけど、どうかと。『あぁ、それなら自分も出なくちゃいけない』という話をこの春にやりとりしていた。先方から『やりましょう』という答えが返ってきて私の耳に入ったのが、8月24日。この8年弱の政権下にあって6度の国政選挙において、私たちが示した誠意というものをちゃんと本人が記憶していた」
ビデオ撮影は、公開日5日前の昨年9月7日に行われた。
教団の組織票を差配
安倍氏が凶弾に倒れてから20日後の7月28日、伊達忠一元参議院議長が安倍氏に旧統一教会の票を依頼していたことを、北海道テレビ放送(HTB)が報じた。
伊達氏はHTBの取材に対し、「選挙でお世話になったお礼と、宮島喜文っていうのがいて、これをお願いして当選させてもらったんですよ。安倍さんに了解を取って」と語り、「喜文。長野から出てる。これを前回(2016年の参院選)で『どうだろう?』と安倍さんが。『統一教会に頼んでちょっと(票が)足りないんだウチが』と言ったら、『わかりました。そしたらちょっと頼んでアレ(支援)しましょう』ということで、まぁ、そりゃとにかく(票が)ナンボ入ったかわからんわね、そんなの。どっちにしても(宮島は)当選はしたんだわ」と言い放った。
さらに「今回(今年7月の参院選)は安倍さんは『悪いけど勘弁してくれ』と。『井上(義行)をアレ(支援)するんだ』という話になって、『いやいや、そんなこと言わないで。現職なんだから』と。井上も現職だったけど落ちたんだな、前回(19年)。『それじゃあ』っていうことで、宮島は辞退したんですよ、2期目。今回出なかったの。だから安倍さんのせいだとか、統一教会のせいだとはオレは言わないけどね。その票がなかったら自分は無理だと思ったんじゃないかい。(宮島は)1期で降りたんだ。そういう経過はありました」と赤裸々に証言した。
当の宮島喜文前参院議員は朝日新聞の取材に対し、「正直、当選できる自信はなかった」と振り返り、伊達氏から「党の支援団体の票をもらってきたと言われた」と答えた。団体名は「世界平和連合」と聞き、陣営幹部から旧統一教会と関係があると教えられ、戸惑ったという。
首相秘書官が前回の倍の得票で当選
宮島氏に代わって安倍氏に「統一教会票」を回してもらったのが、自民党の井上義行参院議員。安倍氏の元首相秘書官だ。19年の参院選では全国比例から出馬したものの、約8万8000票の得票で落選。今年7月の参院選は前回同様、比例で出馬し、3年前の2倍近い16万5000票を獲得、当選を果たした。
井上氏は選挙期間中の7月6日、さいたま市文化センターで開催された旧統一教会の集会「神日本第1地区責任者出発式」に参加。旧統一教会の幹部から「井上先生はもうすでに信徒となりました」と紹介されると、会場からは「うぉー」と大歓声が上がり、割れんばかりの拍手が送られた。井上氏は「私の政治活動は、しっかりとみなさんの考え方を堂々と言うように、判断を仰ぐ政策を前に進めるものです」と挨拶。信者から「井上義行コール」が沸き起こった。
銃撃事件から1カ月が経った8月12日、UPFは韓国・ソウルで「平和祈念イベント」を開催。世界中から1000人以上の要人や信者が集まった。会場の大型スクリーンには安倍氏の姿が映し出され、追悼メッセージが流れる中、参加者たちは次々と献花した。トランプ前大統領はビデオメッセージで「安倍氏は良い友人だった。偉大な人物だった」とし、死去については「世界にとって大きな損失だ。深い哀悼の意を表する」と悼んだ。
「選挙に強い」と言われ続けた安倍氏のそばには、祖父・岸信介、父・安倍晋太郎氏から連なる旧統一教会の存在がチラつき、旧統一教会と“歩んだ”政治家人生だった。  
●「最初は警戒していた」 “安倍氏と旧統一教会” 距離を縮めた背景とは 9/25
2日後に迫る安倍元総理の「国葬」。安倍氏と旧統一教会は、一体どのような関係だったのか。事務所の内情を知る人物が、番組のカメラに初めて語りました。
安倍元総理と“教団”の接点 知られざる内情
父・晋太郎氏の時代から30年にわたって支援してきた安倍元総理の後援会の元関係者が、匿名を条件に番組の取材に応じました。
Q.安倍元総理と旧統一教会はどういう関係だったのですか?
安倍氏の元後援会関係者「事務所にも旧統一教会系の機関紙があったり、(教団の)幹部の男性の方が定期的に事務所を訪れたり、(安倍事務所主催の)イベントに参加したりですね。『あの人たちはどういう方なんですか?』と秘書の方に聞いたら世界平和女性連合の方だと秘書の方は言われてましたけど」
教会の幹部や友好団体の関係者が晋太郎氏の代から事務所に出入りしていて、晋三氏が地盤を引き継いでからもそれは変わらなかったといいます。
安倍氏の元後援会関係者「今は場所が移転していますけど、以前は安倍晋三事務所から200mくらいのところに旧統一教会の支部、教会がビルの中に入っているのは聞いたことがあります」
20年ほど前に教団の下関教会が入っていたとされるビルは、たしかに安倍氏の事務所の目と鼻の先にありました。
安倍氏の元後援会関係者「(教団は)御用聞きみたいな形で『何か協力できることはありませんか』みたいな形で、事務所には来られている感じでしたけど。安倍先生本人が教団の方と会ったりとか、教団のイベントに参加することはなかったと思います。やはり最初のころというのは警戒をしてたと思います」
安倍氏が初当選した1993年は、ちょうど教団による霊感商法や合同結婚式などの問題が世間を騒がせていた時期。
安倍氏は教団と距離を置いており、選挙の支援などもなかったといいます。しかし…
安倍氏の元後援会関係者「第2次安倍政権の参議院選挙(2013年)、それくらいから(選挙支援に)来られていたと思います」
2013年の参議院選挙から、教団の関係者が山口県の選挙区支部にもなっている安倍氏の事務所を訪れ、選挙の手伝いをしていたといいます。
安倍氏の元後援会関係者「安倍先生の衆議院選挙はもちろんなんですけど、参議院選になると2、3人が交代で来られて自分たちの団体(旧統一教会)の名簿で推薦する議員をお願いするということで(安倍氏の)事務所が電話作戦の会場を開放するような…」
Q.教団の関係者はどんな方だった?
「(教会の)幹部の方は50代くらいの男性の方、世界女性平和連合といわれている方たちは40代くらいの女性の黒いスーツというかブレザー、同じバッジをつけられていたのであの方たちは保険の外交員の方かなって思っていたんですけど、すごく規律の良い方たちというか、他の主婦や婦人部の方とは違う、(選挙支援に)“慣れている”というか…」
安倍元総理と“教団  異変は“下野”で?
安倍晋三元総理大臣「参議院議員は北村(経夫)さん、衆院議員は安倍晋三 間違えないようにしていただきたい」
さらに去年の衆院選、安倍氏の街頭演説に行った自民党関係者は番組の取材にこう証言しています。
自民党関係者「統一教会の人たちも応援に来ていましたよ。下関教会の教会長はじめ10人ぐらいの人がいた」
教団関係者の事務所への出入りや選挙支援はあったのか?
安倍晋三事務所に尋ねましたが、回答はありませんでした。
世界平和統一家庭連合は「組織的に選挙事務所での電話作戦をしたという事実はありません」と回答しています。
一方、元後援会関係者は2009年からの3年間、安倍氏が味わった野党時代の苦渋が教団との距離を縮めた可能性があるとみています。
安倍氏の元後援会関係者「安倍晋三先生は非常に選挙というものに厳しい方だったので、特に第1次安倍政権、一回目の総理になられた時に体調不良で辞められて、自民党自体が野党に下野しましたから、非常にご本人が…私たちも落胆した部分はありましたけど、一番きつかったのはご本人だと思います。やはり、総理に返り咲くには選挙には絶対的に勝つこと、そのために力を誇示していく意味で『統一教会の8万票』というものに手を出してしまったと…」
これは安倍氏が野党時代、2010年8月に撮影された写真。一緒に写っているのは教団の友好団体UPFジャパン、世界平和連合などのトップを務める梶栗正義氏です。
ジャーナリスト 鈴木エイト氏「安倍晋三さんの事務所に梶栗正義さんが初めて訪問した時の写真といわれています。この2010年のファーストコンタクトを経て、この時期からだんだん少しずつ関係が深まったのではないか」
梶栗氏は「安倍氏とは2010年に初めて出会い」自民党が政権復帰を果たした「2012年頃から応援をさせていただいた」としています。
“教団票”割り振り?安倍氏はなぜメッセージを
安倍氏と同じ山口県が地元で2013年の参議院選挙で当選した北村経夫氏。
この選挙の際に出されたという教団の“内部通達”には、「首相からじきじきこの方を後援してほしいとの依頼があり」と書かれていました。
一方、2016年の参院選で当選した宮島喜文氏の時には…
伊達忠一元参院議長が教団の組織票の割り振りを安倍氏に依頼したと明かしています。
伊達忠一元参院議長「安倍さんに『統一教会に頼んでちょっと(票が)足りないんだと、うちが』と。そしたら安倍氏が『わかりました、ちょっと頼んでアレ(支援)しましょう』ということで」
ところが2期目を目指した今年の参院選では…
伊達忠一元参院議長「今回(今年の参院選)は安倍さんは『悪いけど勘弁してくれ』と。『井上をアレ(支援)するんだ』という話になって、『いやいやそんなこと言わないで。現職なんだから』と」
今年の参院選で教団の友好団体(世界平和連合)が支援したのは、かつて安倍氏の総理秘書官を務めた井上義行氏。
教団関係者「井上先生はもうすでに食口(信者)になりました。私は大好きになりました」
Q.統一教会に入信された?
自民党 井上義行参院議員「入信はしていません」
教団の友好団体(世界平和連合)は番組の取材に2013年と2019年の参院選では北村氏を、2016年には宮島氏、今年は井上氏を支援したと認めています。
安倍元総理が教団の組織票の割り振りを行っていた可能性が高まっています。
友好団体トップの梶栗氏は、去年9月に安倍氏がイベントにビデオメッセージを寄せた背景について「この8年弱の政権下にあって、6度の国政選挙において私たちが示した誠意というものもちゃんと本人が記憶していた」と述べています。
母親が高額献金…「国葬」前に元2世信者は
あさって開催される国葬をめぐって割れる世論。この状況を複雑な思いで見ている人がいます。
元2世信者デビルさん「神様が決めた人じゃない人を好きになると地獄に落ちちゃう」
3Dキャラクターの姿を借り、元2世信者らに向けた配信を行うデビルさん。自身も信者の母親を持つ元2世です。
デビルさん「家にお金がない。家のために働いていたけど全部献金されていた」
デビルさんの母親は20年以上にわたり、毎月30万円から50万円ほどを教会に献金してきたといいます。
デビルさん「1億円に届くかわからないですが相当いっています。アパートは1棟売って…(母親は)『献金をしていない』と嘘をつく。私は教会に献金したという確信があります」
デビルさんは大学進学を諦めざるを得ませんでした。
デビルさん「なんでこんな風にさ、苦しいわけ私は。そのお金をね、もっと学費に回してくれれば私だって大学行きたいし」
母「そうだよね」
母「いや間違ったなと思う」
デビルさん「じゃあなんで間違ったなと思うことを今でもやり続けてるの?」
母「私は生きる道がそこしかないかなと思って。だって頼るところがないもん」
デビルさん「じゃあ私たちが生きられなくなってもいいの?私たちが生きられなくなって不幸になってもいいわけ?お母さんの犠牲のもとじゃない全部」
母「うん、そうだよ」
デビルさん「うんそうだよじゃないわ」
デビルさんの母親が献金に加えて教会から求められたのは…選挙への協力でした。
2019年の参院選は、北村経夫氏。
デビルさん「『今度、教会で応援する人なのよ』って。」
そして、今年の参院選前には、井上義行氏の選挙応援マニュアルが配られました。
さらに、デビルさんはかつて母親と一緒に行った教会の行事で、安倍氏を見たとことがあるといいます。
デビルさん「教会のVTRに出てきて母親は『ほら見て安倍さんよ』って。まだ総理じゃなくて権威の象徴として使われるアイコンみたいな感じだった」
あさっての国葬をデビルさんは複雑な思いで見ています。
デビルさん「家族が統一教会の信者ですし、関わっていた者として自分が殺してしまったような罪悪感もある。国葬に賛成か反対かどちらかを考える余裕がない。賛成も反対もできないです。ただ悲しいです。」

 

●自民の旧統一教会問題に「党として関係断つなら、教団解散を検討すべき」 9/26
岸田政権は“絶体絶命”の状況に追い込まれつつある。法的根拠なき安倍晋三・元首相の国葬実施、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題、五輪汚職の「疑惑の3点セット」で国民の信頼を失い、新聞・テレビの世論調査では軒並み内閣支持率が急降下。最も低い毎日新聞の調査(9月17〜18日)では支持率29%とついに「政権の危険水域」と言われる3割を切った。
とくに国民の批判が強いのが安倍氏の国葬と旧統一教会問題だ。
岸田首相は2回も旧統一教会との絶縁を宣言し、自民党所属国会議員全員にアンケート調査で同教団との関係を自己申告させたが、結果公表後も“申告漏れ”の議員が次々に発覚するなど、調査の杜撰さが批判されて追加点検を余儀なくされている。
この調査を巡っては9月13日の自民党総務会で村上誠一郎・元行革相が、「議員の自己申告によるものであり、関係があってもないと報告すれば終わりになり、不公平だ」と不備を指摘するなど党内からも批判が噴出している。
政治ジャーナリスト・野上忠興氏が語る。
「自民党が7月の参院選に勝利した時点では、岸田首相は総裁任期の2024年9月まで政権安泰の“黄金の3年”に入ると言われたが、それからわずか2か月で支持率が20ポイントも急落。今では黄金の3年など見る影もない。自民党の歴代内閣の最後を見ると、第1次安倍内閣は支持率30%割れ、福田康夫内閣や麻生太郎内閣は20%割れで退陣に追い込まれ、ギリギリまであがいた森喜朗内閣も支持率一桁まで下がって退陣した。岸田首相も支持率がこのまま下がり続ければ内閣総辞職は避けられなくなるのではないか」
岸田政権にとって最大の鬼門は来年春の統一地方選だ。
自民党の旧統一教会汚染は国会議員だけではなく、全国の自治体の首長や地方議員にも及んでおり、各地の県議会などで関係が追及されている。
「全国には無所属を含めて自民党系の地方議員が1万人近くいるが、統一地方選では旧統一教会批判のあおりを受けて自民党系候補の苦戦は必至です。議席を大きく減らす可能性が高い。そのため、統一地方選が近づけば、全国幹事長会議などで地方議員側から同教団との関係にケジメをつけられない執行部への批判が噴き出し、岸田おろしに発展することが予想されます」(野上氏)
“禊ぎ解散”論の浮上
岸田首相は早晩、このまま座して死を待つか、あるいは解散・総選挙に打って出るかの選択を迫られることになりそうだ。
だが、支持率30%割れの現状で総選挙を行なっても敗北は見えている。では、どうするか。
全国霊感商法対策弁護士連絡会が旧統一教会に対する解散命令請求や被害者救済の法整備を求める声明を出すなか、自民党内からも、「口だけの絶縁宣言では信じてもらえない。法的にケジメをつけるべき」(若手議員)と、同教団への解散命令を求める声があがっている。
「党として関係を断つなら、旧統一教会の解散を検討すべきだ」
そう提起するのは石破茂・元幹事長だ。週刊ポストの取材にこう語った。
「自民党として旧統一教会との関係を絶つというが、なぜ絶つのかという説明がない。宗教法人というのは公益法人、つまり世の中のためになる法人だと法律で認めているわけです。世の中のためになると一方で言っておきながら、これから先、一切の関係を断つというのは整合性が取れない。今なお被害に苦しんでいる人が大勢いるから関係を断つんですというならば、そんな教団が公益法人になっていることの説明がつかない。
私は旧統一教会に解散命令を出せと言っているのではありません。宗教法人法の条文に解散命令請求の規定がある以上、これを適用されることの是非とかの議論がないことがおかしい。旧統一教会との縁を切るなら、政策論として宗教法人法上の措置を議論すべきだと言っている。その結果、たとえ宗教法人でなくなって、いろいろな税制上の特典がなくなったとしても、憲法で保障されている信教の自由が侵害されるわけではありません」
石破氏自身、旧統一教会の機関紙「世界日報」の元社長から献金を受けたことを党の調査でも認めている。
「個人献金を受けたのは事実で、世界日報で対談もしました。そういう団体とは知らなかったが、安全保障関係の会議だったと思うけど講演もしました。今後はそういうこともいたしません。ただ、自民党として完全に関係を断つというのであれば、対象は国会議員だけではない。自民党公認の県議や市議、町議会議員は山ほどいる。それをどうするのか。法的措置を講じたうえで、この団体は公益に値しない団体だから、推薦も公認もいけないというのであれば理屈は通る。本当にそこまでやるのかを議論すべきでしょう。“時がたてばみんな忘れるだろう”みたいなのは私は好きじゃない」
消費者庁の「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」委員でもある紀藤正樹・弁護士は解散命令請求は可能だと指摘する。
「宗教法人法81条には、『著しく公共の福祉を害する』などの事由があると裁判所が認めた場合、裁判所が職権で『その解散を命ずることができる』と定めている。裁判所に宗教法人の解散を請求できるのは、所管庁(文科省)と信者や債権者などの『利害関係人』、そして『検察官』です。自民党には請求権がないが、岸田首相は永岡桂子・文科相に指示して所管庁である文科省から東京地裁に解散命令の請求を行なえばよい。解散を判断するのは行政ではなく、あくまで司法であり、裁判所から解散命令が出ると、旧統一教会は宗教法人ではなくなります」
政府が教団の解散を裁判所に請求するかどうかは岸田首相の決断にかかっていると言っていい。
官邸内には、「総理のリーダーシップで裁判所に旧統一教会の解散命令請求を出し、“膿は全部出した。国民に信を問う”と起死回生の解散・総選挙を打つしか生き残る道はない」という“禊ぎ解散”論が浮上している。
●旧統一教会に“焦り” 日本からの送金に総裁「“少ない!”と怒っている」  9/26
安倍元首相の銃撃事件を受け、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による被害の防止と救済に向けた議論が本格化している。追い込まれていく教団は今後どう出るのか。30年以上にわたり闘ってきた全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)代表世話人の山口広弁護士に聞いた。
昨年までの約35年間で約1237億円。全国弁連が結成された1987年以降の霊感商法の被害額。信者がいかに食い物にされてきたかの一断面だ。
しかし、これまでのような集金は難しいとみられる。山口氏は、日本からの送金を最優先とする韓国の本部は「焦っていると思う。今までも問題が起きるたびに“組織を立て直せ”と言ってきた」とし、送金額確保へ何らかの指示が出ているとの認識を示した。
送金額捻出のため40億円ともされた運営コスト圧縮へ、リストラを含む経費節減が指示されたことも。陣頭指揮を執ったのは22日の会見に「教会改革推進本部長」として登場した「テッシー」こと勅使河原秀行氏(58)だという。リストラ断行で一定の評価を受け出世したようだ。
霊感商法が広くはびこった頃の送金指示額は半年ごとに500億円とされるが、ここ数年は100億円ほどに。「韓鶴子総裁が“少ない!”と怒っている」(山口氏)状況でクリアできず、日本の教団会長がクビにされたこともあったという。
山口氏が今、警戒するのは、日本人信者が数千人規模で参加する韓国での「先祖解怨式」。地獄で苦しむ先祖を救う儀式で、解怨料金は1代から7代までは70万円、それ以降は7代ごとに3万円。「430代前までさかのぼるケース」(山口氏)もあるという。ウィズコロナで往来制限が緩和される中でのシステム化に「地区ごとに参加者を競い合う動員合戦が心配」と話した。 

 

●国葬反対が急増も、統一教会問題が「安倍氏だけの責任」といえない理由 9/27
賛成派・反対派に世論が二分されたまま、安倍晋三元首相の国葬が実施される。国葬反対論が激しく広がった背景には、安倍元首相の暗殺事件で明らかになった旧統一教会と政治の不適切な関係がある。メディアが連日、自民党議員と旧統一教会との関係を報道したことで「旧統一教会と自民党の強いつながりの中心が安倍氏だったのではないか」という疑念が深まったことが、国葬への厳しい批判の背景にある印象だ。だが実際は、安倍氏だけに責任があるという単純な構図ではなく、旧統一教会と自民党の関係には根深い問題が潜んでいる。その実態を歴史的観点から解説する。
世論が分断されたまま安倍氏の国葬が強行される
安倍晋三元首相の国葬が、本日(9月27日)午後2時から実施される。しかし国葬を巡っては、賛成派・反対派に世論が二分されたままだ。
安倍氏が銃撃によって死去し、岸田文雄首相が国葬実施を決定した直後は「開催賛成」が多数派だったが、次第に反対派が増えた印象である。メディア各社による直近の世論調査では、「反対」「評価しない」が過半数を占めているようだ。
昨今は全国各地で国葬反対の集会やデモが行われたほか、国葬に反対する市民団体が、開催の差し止めを求める訴訟を相次いで起こした。それどころか、首相官邸の前で自らの体に火をつけて自殺を図り、国葬反対を訴える人まで現れた(当事者の意識は回復したと報じられている)。
国葬反対論が激しく広がった背景には、安倍元首相の暗殺事件で明らかになった旧統一教会と政治の不適切な関係がある。
メディアは連日、自民党議員と旧統一教会との関係を報道している。いわゆる「霊感商法」や過剰な寄付金集めによって、信者を破産に追い込むなど「反社会的」といえる団体と関わってきた自民党に、国民の厳しい視線が向けられている。
一連の報道によって、旧統一教会と自民党の強いつながりの中心が、実は安倍元首相だったのではないかという疑念が深まったことが、国葬への厳しい批判の背景にあるのではないだろうか。
だが実際は、安倍氏だけに責任があるという単純な構図ではなく、旧統一教会と自民党の関係には根深い問題が潜んでいる。本稿では、その実態を歴史的観点から解説していく。
旧統一教会は「集票マシーン」にすぎず 自民党と「ドライな関係」を保ってきた
私はこれまで、旧統一教会は自民党の「集票マシーン」にすぎないと主張してきた(本連載第309回)。自民党の党員は“神様”を熱心に信じているわけではなく、うまく調子を合わせながら、選挙で勝つための集票組織として教団を利用してきたというわけだ。
旧統一教会による政治活動もまた、自民党の支持団体としての社会的信用を得て信者を集めるための手段である。「日本会議」「創価学会」などの政治との関わり方と同様だ。
一方で、教団が主張する政策を自民党が実現したことはない。また、現在の法規制に照らせば、宗教団体が政治活動を行うこと自体は違法ではない。
政党は宗教団体を集票に利用し、宗教団体の組織的拡大を許してきた。だが、宗教団体側は政策の実現など政治的要求は控えてきた。基本的に、日本では「政教分離の原則」は守られてきたといえる(第309回・p5)。
しかし、旧統一教会が霊感商法などの「違法行為」を行ってきたことは事実だ。政治に関わってきたことよりも、問題視すべきはこちらの方である。
被害者の方々は手厚く救済されるべきだし、違法行為は徹底的に摘発されるべきだ。また、このような団体から支援を受けてきた自民党の道義的責任は厳しく問われるべきだ(第309回・p4)。
つまり、「宗教」と「違法行為」は切り離して考えるべきなのだ。宗教そのものへのバッシングは「宗教弾圧」につながる危険性がある。宗教自体への批判は避け、あくまで「違法行為」が罰せられるべきなのである。
だから私は、この問題を「政治と宗教」の話だとみなしたくないのだ。
むしろ、「日本型どぶ板選挙」「保守派の二枚舌」がはびこっているという、日本政治における長年の問題の実態が、旧統一教会を通して垣間見えたのだと捉えている。
勝てばOKの「どぶ板選挙」が旧統一教会とのつながりを招いた
このうち「日本型どぶ板選挙」とは、政治家が選挙で票を得るために、どんな所へでも訪ねていき、どんなことでもする選挙を指す。勝つためなら何でもありだ。その結果、さまざまな集票団体に「反社会的」な団体が混じったというのが、旧統一教会と政治の問題の根底にある。
日本で「どぶ板選挙」が行われてきた要因は、選挙制度改革前に長年採用されていた「中選挙区制」と密接に関係している。
簡単に説明すると、中選挙区制とは1つの選挙区で3〜5人が当選する制度である。各党は落選者が出る事態に備えつつ、より多くの議席を獲得するために、複数名の候補者を立てることが可能だった。
当時の自民党も、同じ選挙区に原則2人の候補者を立てており、他党の候補者に加えて党内でも競い合っていた。
政策に違いのない自民党候補たちが“同士討ち”を行う際、勝敗のカギになったのは利益誘導の多さだった。
当時の選挙では、政策よりも利益誘導が勝敗につながりやすく、国会議員の活動の多くが地元で行われた。
具体的には、個人後援会、支援団体、その他各種団体、地方自治体、地方議会議員などとの連絡や要望等の吸い上げ、中央官庁への陳情の媒介、冠婚葬祭への出席などであった。
また、議員の東京の事務所では、有権者向けの国会見学や東京見物などのツアーコンダクターのようなこともせねばならなかった。経費の大部分がそれらに費やされ、金額的負担も莫大であった。
議員はこれらの地元対応のための政治資金を確保するために散々に苦労していた。その結果、さまざまな「政治とカネ」の問題が起こってきたのだ。
選挙制度改革を経ても「利益誘導」の風習は継続
その後、90年代前半に入ると、選挙制度改革(小選挙区比例代表並立制の導入)や政治資金制度改革がなされ、選挙は利益誘導よりも政策を競うものに変化した。その結果、政治とカネを巡る政治家の問題も大幅に減少した(本連載の前身『政局LIVEアナリティクス』の第27回)。
しかしそれでも、安倍政権期にさまざまな閣僚が「政治とカネ」の問題で辞職したように、前時代的な不祥事は政界に残り続けてきた。「森友学園」「加計学園」「桜を見る会」の問題も、突き詰めれば、選挙で票を得るために支持者に便宜を図ろうとして起こったといえる。
なぜ利益誘導の風習が残っているかというと、政党や国会議員の活動には、今も日本社会の多くの人が関わっているからだ。大企業、中小企業、自営業、農協、町内会など、多くの組織はなんだかんだと自民党と関係があり、旧態依然とした集票活動の対象になり得る。
本人が直接の関係がなくても、所属する組織が関わっている人や、縁戚をたどればどこかで自民党とつながっている人は多い。それが日本社会なのである。
そうした背景もあり、「日本型どぶ板選挙」は、選挙制度改革後も日本社会全体を覆い続けてきた。旧統一教会と政治の関わりは、この「勝つためなら何でもあり」という慣行が消えてなくならないという大問題の一部分にすぎない。前述した「政治とカネ」の問題と根っこは同じなのだ。
そして、旧統一教会と政治の問題は、今の自民党の方針では何も解決しないだろう。
国会議員だけでなく地方議員も「宗教」と接点
岸田首相は、自民党と旧統一教会の間に「組織的関係はない」と強調している。一方で、茂木敏充党幹事長は「党所属議員が旧統一教会との関わりをそれぞれ点検して、適正に見直す」と述べている。
しかし、揺れる自民党をあざ笑うかのように、地方の首長・地方議員・地方自治体と、旧統一教会の関連団体との深い関係が次々と明らかになっている。
これに驚きはない。日本の選挙は、国会議員から首長、地方議員、地方のスタッフが一体で行う。国会議員が旧統一教会とつながれば、地方もつながるのは当然だ。旧統一教会は「日本型どぶ板選挙」の深い部分まで入り込んでいる。国会議員が絶縁を宣言すれば済むような簡単な話ではないのだ。
自民党だけがどんなに頑張っても、旧統一教会と政治の関係を完全に断ち切ることは無理なのだ。かといって、宗教法人法の改正や、フランスの「反セクト法」を参考にした新法の制定によって、旧統一教会を解散させることも現実的ではない。
旧統一教会は記者会見を何度も開き、「現在は霊感商法を行っていない」「反共産主義の政治家を支援する」と堂々たる主張を繰り返している。自民党との関係が断ち切られるはずないと自信を持っているようにも見える。それどころか、信者獲得の好機と捉えているのではないかとすら思える態度である。
「日本型どぶ板選挙」を食い止める本質的な方法とは?
私は、解決策は政治家が教団との関係を絶つこととは別にあると思う。先ほども述べたが、「日本型どぶ板選挙」が続くのは、地元の支持者が投票と引き換えに、政治家にさまざまな便宜を図ってもらう構図が残っているからである。ここに手をつけなければ問題は解決しない。
メディアやネットの世界では、スキャンダルが起こる度に議員個人を徹底的にバッシングし、議員が辞職したら「撃ち方やめ」を繰り返しているが、それだけでは本質的な問題は何も解決しないのだ。
「日本型どぶ板選挙」を終わらせるには、日本政治の歴史的経緯、政治文化、社会構造を見直して、国民が徹底的に議論を行う必要があるだろう。
端的に言えば、この問題の解決には、国民自身が変わらなければならない。選挙において、政党の政策や政治家の人物像を見極め、選択するのは国民である。
一人一人が有権者として責任ある投票行動ができるようになれば、「日本型どぶ板選挙」は終わるし、旧統一教会の問題は自然に解決していくだろう。
自民党保守派の「対韓国」における「土下座外交」も露呈
最後に、旧統一教会と自民党を巡る、もう一つの根深い問題である「保守派の二枚舌」について少し論じたい。
政府が安倍元首相の国葬を強行する理由は「保守層からの支持をつなぎ留めるため」という見方が強い。だが実際のところ、自民党保守派も旧統一教会と密接に関係している。
そのつながりは、朴正煕政権時代に韓国中央情報部(KCIA)の指示で、旧統一教会の開祖・文鮮明氏が日韓で「国際勝共連合」を創設した1968年にさかのぼる。
その時に日本で発起人となったのは、自民党に大きな影響力を持っていた大物政治家の笹川良一氏や、安倍元首相の祖父・岸信介元首相ら「保守派」だった。笹川氏は後に辞任したものの、勝共連合の名誉会長まで務めていた。
また岸元首相は、教団関連団体「世界反共連盟(WACL)」の日本大会推進委員長を担当したほか、旧統一教会主催の「希望の日晩餐会」の名誉実行委員長も務めた(しんぶん赤旗『統一協会 危険な二つの顔』参照)。
日本を「サタンの国」と呼ぶ教団と保守派が親しく付き合う矛盾
それから現在に至るまでの50年超にわたって、自民党保守派の内部では自浄作用を働かせることなく、教団と密接な関係を保ってきた。旧統一教会が「韓国を植民地支配した日本は『サタンの国』であり、日本人は贖罪のために寄付をしなければならない」と説いているにもかかわらず、だ。
加えて、自民党保守派は「従軍慰安婦問題」などに関して日本国内で「声高な主張」を繰り広げる一方、その主張を国外にぶつける努力を怠ってきたように思える。
韓国側の主張が世界に広がる中、外国の雑誌や新聞に論文を掲載したり、外国の政治家やマスコミを説得したりといった活動を積極的に行ってきたようには見えない。
保守派は国内で「自主防衛」を主張し、中国や韓国に罵声を浴びせるかのような強気な発言をしているが、一歩でも海外に出れば何も言えないのだ。長年にわたる「内弁慶」な姿勢はまさに、相手国の要求を無条件でのみ続ける「土下座外交」そのものである。
国内で強気な発言をする一方で、日本を「サタンの国」と呼ぶ教団と集票目的で親しく付き合い、「本業」の政治における外交では極めて弱腰になってしまう――。
支持層にとっては衝撃的かもしれないが、このように矛盾した「二枚舌」(厳密には三枚舌ともいえる)の姿勢こそが、「愛国」を叫ぶ保守派の真の姿ではないだろうか。
繰り返しになるが、「選挙に勝てば何でもあり」という政治の慣行だけでなく、保守という信条に反するにもかかわらず、旧統一教会との関係を見直さなかった自民党保守派の姿勢も「政治と宗教」の問題における根源的要因なのである。
●まさか「国葬」が済んだら統一教会追及も終わってしまうのか 9/27
きょう、安倍晋三元首相の「国葬」が行われる。
報道各社が9月に実施した世論調査によると、安倍氏の「国葬」に「反対」「評価しない」は軒並み50%を超えて60%に達する勢いなのに、「賛成」「評価する」は20〜30%台に留まる。つまり、国民の半分以上が「反対」の中での強行だ。
こうした背景に、安倍氏の襲撃事件から表沙汰になった統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係があることは言を俟たない。
統一教会問題がこれだけ議論されている中で教団と関わり深い安倍氏の国葬
安倍氏は昨年の9月、統一教会の創始者である文鮮明の妻で、現在の教団の総裁である韓鶴子が主宰する関連団体「天宙平和連合」(UPF)に、ビデオメッセージを送って、こう明言していた。
「韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」
これを見た山上徹也容疑者(41)が、安倍氏の襲撃を決意したとされる。山上容疑者が、母親が統一教会にのめり込み、家や土地を売ってまで多額の献金をして家庭が崩壊したことから、教団への恨みがあった、と供述したことは大きな衝撃だった。ここから世間の注目はたちまち統一教会に向かい、そして政治家との関係が問われることになった。
岸田文雄首相は統一教会との訣別を宣言して、被害者救済に関連省庁の連絡会議を設け、今月末までの無料電話相談窓口を置いた。
だが、これは今日まで繰り返し指摘していることだが、被害者救済を実施していていながら、どうして加害者団体の首領をビデオメッセージで称讃する首相経験者を「国葬」にしなければならないのか理解できない。いうなれば、日本国民を食い物にする日本の敵に味方して、宣伝にも使われたはずの人物だ。「国賊」「売国奴」と呼ばれてもおかしくはない。そこに国費を注ぎ込んで、葬式を出す意味がわからない。だからこそ、国民の反感を招いているはずだ。それが世論調査で続落する内閣支持率に反映されている。
辻褄の合わないのは、「国葬」実施の予算を決めた内閣の一員の河野太郎消費者担当大臣もいっしょだ。河野大臣は、統一教会をめぐって、いわゆる霊感商法への対応の強化を求める社会的な要請が高まっているとして、消費者庁に悪質商法への対策検討会を設置。先月29日にはオンラインによる初会合を開いている。
しかも、統一教会に対しては、「解散命令まで消費者庁が関わったり、解散命令まで踏み込めと文部科学省に働きかけたりすることになるかもしれない」とテレビ番組で発言するほど、威勢がいい。また、報道各社のインタビューに応じて、「委員には自由闊達にやってほしい」「最大限のスピードで、議論し残したところがないようにやってもらいたい」とも述べている。
だが、どこか勘違いしているようなので、「自由闊達」に言わせてもらう。国民の半数以上が反対する「国葬」の実施は、統一教会を喜ばせるだけだ。
統一教会側には安倍政権を支えてきた自負
安倍氏が教団側の依頼でビデオメッセージを送った事情を、教団幹部が礼拝で信者にこう述べていたことは、すでに報じられている。
「この8年弱の政権下にあって6度の国政選挙において私たちが示した誠意というものも、ちゃんと本人(安倍氏)が記憶していた。こういう背景がございました」
つまり、岸田首相が安倍氏の「国葬」の理由にあげる8年8カ月の憲政史上最長の政権運営も、統一教会側にしてみれば自分たちが支えていたという自負がある。しかも、その安倍氏が韓鶴子総裁を讃えている。その人物が「国葬」にされるのだから、喜ばないはずがない。いわば加害者側を奮い立たせているだけだ。それだけに、国民からすれば、こんなに歯がゆいこともない。
ひょっとすると、岸田内閣や自民党にしてみれば、「国葬」さえ断行してしまえば、統一教会をめぐる喧噪や糾弾の声も沈静化する、とでも目論んでいるのかもしれない。「国葬」と統一教会の議論が連動していればこそ、その可能性も高い。
そうすると、消費者庁の検討会も、国民受けを狙った河野大臣の威勢がいいだけで、尻すぼみで終わってしまうのではないか。そうであっていいはずもなく、そうならないように、むしろ検討会の奮起を促す意味でも、あえて苦言を呈しておく。
統一教会問題で引っ張りだこの紀藤弁護士
検討会のメンバーのひとりに紀藤正樹弁護士がいる。紀藤弁護士は全国霊感商法対策弁護士連絡会で統一教会の問題に取り組んできたとして、安倍氏襲撃事件以降は連日のようにテレビの情報番組に出演して、あれやこれや語り尽くしていた。それだけに認知度も増したはずだ。
かつてはオウム真理教事件に際しても、テレビ媒体に頻繁に登場し、解説を添えていたが、そこではやたらに事実と異なることを発言していた。
たとえば、最後のオウム手配犯だった高橋克也が2012年に逮捕されているが、その直前には日本テレビのニュース番組のインタビューに答えて、「高橋克也は教団でも大幹部のひとり」などと断言しているのを見て、ひっくり返りそうになった。高橋は、地下鉄サリン事件などで中心的な役割を果たした井上嘉浩元死刑囚の車の運転手だった。
また、フジテレビの情報番組では、1995年3月にオウム真理教の関連施設に強制捜査が入った当時の教団の機関誌を広げて、○○時○○分に××の施設に機動隊、△△時△△分に●●の施設の捜査着手、などと時系列を追った詳細な捜査手順の記載があることを理由に「教団は強制捜査の内部情報を事前につかんでいた」と主張して、ことさら教団の恐ろしさを強調していた。
だが、そんな詳細情報は新聞にも掲載されていたことだし、そもそも手にしたその機関誌は強制捜査が行われたあとに発行されたものだ。知っていて当たり前のもので、オウム事案に精通した弁護士やジャーナリストなら見向きもしない内容だった。少なくとも、私ほどには詳しくはなく、はっきり言って、虚報も少なくなかった。
もっとも、紀藤弁護士は事務所ぐるみでメディアの記者を集めて食事会を開くなど、取り巻きを作るのには熱心で、そのためテレビを中心に「カルト問題に詳しいといえば紀藤弁護士」というイメージは定着していった。
だが、私としては前述のような経緯から、紀藤弁護士発の情報や解説をあまり信用していない。
テレビ番組に出て、好き勝手なことをしゃべっているうちはいいが、政府の検討会の委員となれば事情が異なる。しかも消費者関連となればこそ、浮かぶ問題がある。
最近まで文鮮明誕生祭の広告がテレビ局のニュースサイトにも
紀藤弁護士は、安倍氏襲撃事件の直後からテレビ朝日の情報番組にも出演して、統一教会の問題点や反社会性を解説、糾弾していた。
そのテレビ朝日のニュースサイトに、統一教会の広告が表示されていたことは、以前に指摘したとおりだ。証拠画像も掲載している。
2年前の2020年2月に、私が閲覧したテレビ朝日のニュースサイトの2つの広告欄に、こんな文字が踊っていたのだ。
『文鮮明先生聖誕100周年』
『真の父母聖誕100周年記念』
広告には統一教会の創始者の文鮮明と妻の韓鶴子の写真が使われていた。つまりこれは、すでに死去した文鮮明の生誕100年を祝うイベントの広告。すなわち統一教会の広告であることは誰の目にも明らかだった。
これはGoogleのアドセンス広告によって、私に示されたものだ。アドセンス広告とは、サイトの運営者がGoogleやYahoo!などの大手検索サイトなどに広告表示を依頼。検索サイト側は取得した検索履歴などから、サイト閲覧者に見合った広告を表示するシステムだ。広告が表示され、閲覧者がクリックすれば、広告主から広告料が運営サイト側に入る。
この場合だと、少なくとも私に対して統一教会の広告が表示され、複数回はクリックしているのだから、テレビ朝日に統一教会から広告料が流れているはずだ。それ以前に、広告を請け負ったGoogleにも統一教会から契約金なり手数料なりが入っている。
このシステムを使った場合、サイト運営者にはどんな広告が表示されるのか把握できない。どのような広告を受注しているのか確認することも、この広告は排除してくれと選別することもできない。つまり“丸投げ”ということだ。
放送事業を担う報道機関が、サイト配信とはいえ広告のチェックもせず、丸投げでいいはずもない。ずっと社会的な問題の指摘されている団体の広告を載せておいて、知りませんでした、で済むことでもない。
まして、テレビ朝日に生出演して統一教会糾弾の熱弁を振るっていた紀藤弁護士の出演料の原資は統一教会から流れてきていたのだから、こんなに間抜けな話はない。カネに色はつかない。
統一教会「追及」を一過性の祭りで終わらせてほしくない
消費者庁の検討会の委員になった紀藤弁護士が、この事実を知らなかった、ではもはや済まされない。統一教会はアドセンス広告の盲点を利用してまで、消費者にアプローチしていたことになる。それだけ深刻だったということだ。その実態を知らずして、被害者から奪取したカネを受け取り、消費者対策を検討したところで、実効性が伴うのか甚だ疑問だ。
どこまで踏み込んだ議論ができて、具体的な問題解消につながるのか。「国葬」といっしょに、統一教会問題の追及もただの「祭り」で終わってしまうのであれば、30年前といっしょだ。国民受けを狙った威勢のよさだけの大臣のもとに集った、ただの目立ちたがり屋が騒いだだけのことで、国民を失望させて欲しくはない。
●国葬に一般弔問数万人 老若男女が献花、統一教会報道に「それはそれ」 9/27
安倍晋三元首相の国葬が27日午後、都内の日本武道館で行われる。これに先立ち、会場近くの九段坂公園で始まった一般向けの献花には早朝から長蛇の列ができた。
最寄り駅の九段下駅では、プラカードを持った内閣府のスタッフが立ち、行列を整理するため1駅隣の半蔵門駅へ弔問者を誘導した。午前10時過ぎには列が千鳥ケ淵から半蔵門駅まで折り返しながら数キロにわたって伸び、会場周辺は数万人にも及ぶ弔問者と警察官、報道陣などでごった返した。
朝7時から訪れたという都内の79歳男性は「すごい人で驚きました。国葬自体が初めての経験で、どんなものか興味があった。凶弾に倒れたという特別なニュース。これを教訓に、日本の治安をさらによくしてほしい」と話した。安倍氏の印象については「これだけ人が集まるのは人徳もある。統一教会問題が騒がれているが、それはそれ。戦後最長の任期ということで、それなりに感謝はしてますよ」と語った。
早稲田大学在学中の22歳の男性は「献花しようと思って来ましたが、午後からのバイトに間に合いそうにないので諦めました。安倍元首相は賛否両論ある人ですが、アメリカ、イタリア、リトアニアなどの外国人の友人に聞いてみても日本の国際的な地位を上げたという評価。誇らしく思います」と話した。
朝の新幹線で大阪から来たという近畿大学在学中の19歳女性は「メディアの報道では反対意見ばかりですが、実際に来てみたらすごい行列。総理としてやられてきたことは評価されるべきだと思います」とし「マスコミの仕事に興味があって、報道のされ方と実際のところがどう違うのか確かめにきた部分もあります。今日のうちに大阪に帰ります」と話した。
●米紙が報じる「安倍元首相の国葬に対して、なぜ日本国民は怒っているのか」 9/27
日本国民の賛否が割れるなか、安倍晋三元首相の国葬が9月27日、東京・日本武道館で行われる。
米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、国際社会で安倍元首相は「称賛を浴びた」と評価。国葬に関してなぜ日本で「怒りの声」が出ているのか、その理由を報じている。
容疑者の話に同情「最大の驚き」
日本で最も影響力があり、憲政史上で最も長く首相を務めた安倍晋三元首相が、白昼の街頭演説中に銃で撃たれて殺害されてから3ヵ月近くが経った。しかしその死は、予想外の形で今も反響を呼んでいる。
この暗殺事件を通じて噴出した怒りの矛先は、犯人や、銃規制が厳しい日本で銃を製造して使用した犯人の能力、もしくは安倍元首相を守れなかった警備ではなく、自民党と安倍元首相の国葬計画に向けられた。
岸田文雄首相は昨秋の党首就任以来、最悪の支持率に苦しんでいる。国葬については、多数の人々が抗議デモや反対する署名活動を行い、公費の無駄遣いで岸田首相と内閣によって一方的に押し付けられたものだと不満を表明。国民の弔意は薄れてきているようだ。
事件を通じて、自民党の政治家と宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の接点も次々と明るみに出た。安倍元首相を殺害したとして送検された山上徹也容疑者は、事件の前に教団と政治への関わりについて恨みを記していた。
そしておそらく最大の驚きは、山上容疑者が非難されるどころか、その話が国民の琴線に深く触れた点だ。往々にしておとなしい日本の報道機関は、容疑者の母親など弱者を食い物にして金銭的利益を得ているとして非難された教団と政治家との関係について、数週間にわたって掘り下げてきた。
こうした反発は安倍元首相の約8年にわたった首相在任期間に対する国民投票の色合いを帯びている。安倍元首相は世界的には称賛された一方、日本国内では激しい対立を生み、その右傾化政策に反対した人々は、政権運営について多くの不満を表明している。
国葬反対は生前の施策への批判
滋賀大学の田村あずみ准教授(社会学)は、国葬に批判的な人々は、安倍政権が政友に不適切な便宜を図り、新型コロナウイルスの大流行の初期の対応を誤ったとして非難し、多数の議論を呼んだ決定やスキャンダルに関与した政治家を不当に持ち上げるものだと考えていると述べた。
「今は、国民は『どうしてあのときもっと多くの人が怒らなかったのだろう』と考えているでしょう」と、田村は話す。「これらは安倍元首相の政権の足を引っ張る問題であったはずなのに、そうはならなかったのです」
有権者は安定性という名目のために自民党を支持し続けるかもしれないが、国葬に反対することで、安倍元首相の生前の行為に対する批判の声を上げている。
国葬に反対する9月19日の抗議活動では、東京・代々木公園に多数の人々が集まり、女性の地位向上や障害者の権利擁護、LGBTQ差別や原発、米軍基地への反対など、さまざまな主張を表す色とりどりの旗が掲げられた。
「こうして集まって思いを伝えることは大切だと思います」と、雨のなか参加したサトウ・シュウヘイ(42)は話した。「安倍元首相がやったこと、支持したこと、安倍元首相が傷付けた人々――。許されることではありません」
●安倍さんの宗教は何か:統一教会などかすりもしない  9/27
「統一教会とすぶすぶだった安倍元首相」とか、そこそこ教育もありそうな一般の人々が本気で信じて口にしている。どうも安倍さんが信者であるとかそれに近い存在だと勘違いしているらしい。
さすがにそんなことは、テレビでも言っていないのだが、「ずぶずぶ」とかいう表現で印象操作してそういうイメージを与えているらしい。
信者でなくとも教祖に敬意を払うのは、こちらは、世界の常識だ。さらに、日本人は信者でなくなくとも宗教についてけじめがない。教会で聖体拝領をするのは信者だけだが、日本人はそうでなくともありがたく戴いたりする。いくつもの宗教の信者になることも平気だし、とくに政治家はそうだが、安倍さんはそういう関係などでまったくない。
それどころか、まったく相容れないといってもよい。
安倍さんをよく知る人の何人かと安倍さんの宗教って何か議論したら、しいていえば神道だろうという。毎朝、神棚に参ることは欠かさなかったらしい。吉田松陰的なものだ。
安倍家の宗教はなにかといえば、芝の増上寺で葬儀を行ったことでもわかるように、長門市の浄土宗寺院の檀家らしい。
ただ、日本人の多くがそうであるように、八百万の神を崇拝し意味のあるものと考えていたようだ。
仏教関係者で話を聞くのが好きだった人もいるようだが、それは、神仏融合的なとらえ方のなかだったのではないか。
占いとか縁起を担ぐのは興味があって、今月の運勢がどうのこうのというのに、極端にこりはしないが、自信をもって何かをするためにそういう話を好んで聞いたし、予言が当たった人にすごいという感想ももっていた。
それに対して、キリスト教的なものについては、ほとんど接点もないし、思想的な影響も感じられないし、興味もなかった。そういう意味で、キリスト教的新興宗教である旧統一教会に惹かれたりするはずがないのである。
家族では、母親の安倍洋子さんが仏教系新興宗教の真如苑に興味をもっていると週刊誌報道ででたことがある。どの程度、熱心なのかは知らないが、交流はあるらしい。真言宗系である。Newsポストセブンには、以下のような紹介がのっている。
新宗教を取り巻く“逆風”の中で、増加傾向を見せているのが「真如苑」だ。信者数はこの10年で87万人から93万人に増加。このままのペースでいけば10年後には100万人の大台に乗る。
信者の活動は「接心」と呼ばれるカウンセリングがメイン。政治への関心は低く、“厳しい修行”や生活への縛りもほぼない「現代人のニーズにマッチした新宗教」と言われる。
芸能人に信者が多い宗教で、沢口靖子さんなどがよく知られている。
母親が信心してたとしても、安倍さんがとくに関係あったとも聞かない。もちろん、この宗教は旧統一教会とは犬猿の仲である。
昭恵夫人はカトリック系の聖心女学院卒だが、クリスチャンというわけでなさそうだ。
むしろスピリチャルな方向に興味をもっていることはよく知られて、下記のやはりNewsポストセブンにも出ている。
スピリチャルとは、目に見えないエネルギーとしての「Spirit」から生まれる体験の全般で、典型的にはパワースポットを信じるようなことをいう。
私はつゆも興味がないのだが、これが好きな人はいくらでもいるが、極端なことにならない限り、たいした問題は起きない。
安倍さんは、昭恵さんがこの方面が好きなのを微笑ましく見守りつつ、「自分はああいうの興味ないけどね」と親しい人にはいっていた。
いずれにせよ、一体全体、安倍さんが旧統一教会に共感をもっていたなど、およそありえない、というか、そういうものともっとも遠かったことは間違いない。
●安倍晋三は必ずしも人気のある指導者ではなかった 9/27
去る7月8日に奈良県内の遊説先で銃撃され、死亡した安倍晋三元首相(享年67)の国葬が9月27日に東京都心の日本武道館で行われる。参列予定者数は政府発表で約4300人。海外からはアメリカのカマラ・ハリス副大統領やインドのナレンドラ・モディ首相、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相など約700人が出席予定だ。
疲れを知らずに世界各地を飛び回り、21世紀の世界における日本の新たな役割を模索してきた故人にふさわしい顔触れがそろうと言える。
しかし各国の首脳から寄せられた深い弔意や故人に対する賛辞と、日本国民の抱く気持ちとの間には大きなずれがある。例えば日本経済新聞による直近の世論調査では、安倍の「国葬」に反対する人が60%で、賛成する人は33%にすぎなかった。
岸田文雄政権が閣議決定で(国会に諮ることなく)安倍の葬儀を国葬として行うと決めたのは7月22日だ。しかし、この決定が国民に広く支持されることはなかった。むしろ日がたつにつれて、岸田政権にとって政治的に深刻な重荷となってきた。現に首相の支持率は、国葬を前に急落している。
国葬にまつわる論争には、安倍をはじめとする自民党政治家と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係が明らかになったことが少なからず影響している。
統一教会をめぐる金銭問題があったからこそ、殺害犯の山上徹也は安倍を標的と定めることになった。自民党政治家は集票や選挙応援、資金集めなどで統一教会に依存する一方、教会による一部信者の搾取には目をつぶってきた。そのことに、自民党支持者も含め、有権者は憤りを感じている。
毎日新聞の世論調査では、岸田政権の不支持率が64%、統一教会スキャンダルに関する自民党の対応への不支持率が72%に達していた。さらに回答者の68%が、自民党は安倍と統一教会の関係についてきちんと調査すべきだと考えていた。
しかし党と教会の関係に対して世間の目が厳しくなる以前から、国葬という扱いに対する支持は高くなかった。
葬儀は政治家・安倍晋三のキャリアを締めくくるものだが、そのキャリアには絶えず物議を醸す要素があった。国葬扱いの是非をめぐって世論が二分されたのも、とかく分断を招きがちだったこの政治家にふさわしいのかもしれない。
安倍は日本の外交・安全保障政策を根本から変え、コンセンサス(合意)重視の日本政治に「数の力」で押し切るスタイルを持ち込み、トップダウンの指導体制を確立しようと努力した。だが、そうした新しい政治の在り方が必要な理由を、主権者たる国民に納得させることはできなかった。
つまり、統一教会の問題で国葬反対の声が高まったのは事実だが、日本国民の間にはずっと以前から、政治家・安倍晋三に対する賛否両論が渦巻いていたと言える。
安倍の構想は、戦後日本の政界における主流派のコンセンサスと相いれなかった。安倍は2006〜07年の第1次政権で「戦後レジームからの脱却」というスローガンを掲げたが、それは戦後の一時期に形成されたコンセンサスの破棄を意味していた。安倍にとって、そんなコンセンサスは過去の遺物にすぎなかった。
戦後の米軍による占領期は2つに分けられる。
まずは「民主化・非軍事化」の時期があり、そこで国民主権と戦争放棄を掲げる現憲法ができた。しかし占領後期には東西冷戦が始まり、日本を共産主義に対抗する防波堤とする必要が生じた。それで終戦時に追放され、あるいは傍流に押しやられていた保守派の政治家が復活することになった。
祖父・岸信介の思いを継いで
平和志向と冷戦志向。戦後の日本には、この2つの相異なるビジョンがあった。そして1952年の独立回復後の10年間、両者の間では時に激しい衝突が起きた。
そしてその年月の間に、当時の首相・吉田茂(戦後初めて国葬の栄誉を受けた人物だ)とその陣営が、その後長く続くことになるコンセンサスを形成した。日本の最優先課題は経済成長であり、日本は軍備を軽くしてアメリカと密接な同盟関係を保ち、平和憲法を維持するという合意だ。
だが、その時期に一貫して政権を担ってきた自民党は、そもそも改憲を党是としている。
安倍の祖父・岸信介は、自民党内にあって戦後コンセンサスにいら立ちを覚える反主流派の旗手だったが、冷戦時代にそれを覆すことはできなかった。だが孫の安倍は冷戦終結後に政界入りし、戦後世代の保守派政治家を率いて、祖父の果たせなかったミッションを完遂しようと決めた。
冷戦の終結、バブル崩壊と戦後経済モデルの失墜、いわゆる「55年体制」の終焉と1994年の小選挙区制導入。これらがそろったとき、ようやく戦後コンセンサスから「脱却」する可能性が見えてきた。
だから安倍は、その生涯を通じて訴え続けた。平和憲法の制約から解き放たれ、成熟した大国として行動できる、より強い国家としての日本を目指そうではないかと。
安倍は、このビジョンの追求が必ずしも国民に支持されるとは思っていなかった。しかし、それでも変化の必要性を信じて突き進んだ。
2006年の著書『美しい国へ』(文春新書)の序文で、彼は政治の世界を、どんな批判を受けても自分の信念を貫く政治家と、そうでない政治家に分けている。当然、自分は前者と考えており、マスコミや学界、野党、官僚、さらには自民党内の戦後レジーム擁護派と闘う覚悟でいた。
2002年に小泉純一郎首相を促して北朝鮮に行かせ、当時の金正日(キム・ジョンイル)総書記から日本人拉致被害者についての情報を引き出した。第2次政権ではアベノミクスを打ち出し、世界の注目を集めた。
それで人気が高まった時期もあるが、たいていの場合、安倍に対する評価は二分されていた。
自民党の保守系若手議員は安倍に強い忠誠心を抱き、2007年に彼が健康上の理由で辞任した後も忠誠を誓い続けた。その多くは波瀾万丈の第2次政権も支えた。
しかし安倍に反発する人々の敵対心も激しかった。まるで独裁者だという非難は絶えず、一部の政策に関しては大規模な抗議行動が繰り返された。
実際、第2次安倍政権に対する国民の支持は、お世辞にも熱烈とは言えなかった。野党よりは自民党のほうがましだと思い、自民党政権のもたらす安定を買っていたにすぎず、むしろ国民の過半数は安倍の進める政策を嫌い、政権末期に浮上した一連の疑惑に愛想を尽かしていた。
「国葬反対」が意味するもの
安倍の率いる連立与党が2012年、2014年、2017年の総選挙を続けて制したのは事実だが、これら選挙の投票率はいずれも戦後最低水準だった。安倍の率いる自民党は2012年の総選挙で政権復帰を果たしたが、そのときの得票数は惨敗に終わった2009年の総選挙より少なかった。安倍政権で最後の国政選挙は2019年の参院選だったが、このときの投票率は1995年以来初めて、50%を割り込んでいた。
つまり、安倍は選挙に勝ち続けたが、大多数の日本人に支持され、あるいは愛されていたとは言い難い。
いわゆる「戦後レジーム」とその象徴としての憲法が今も日本人に支持されているのか、あるいは安倍の強引で、時に独裁的な政治手法(数の力で押し切る議会運営や、批判に耳を貸さない姿勢)が嫌われたのかはともかく、安倍は決して人気のある指導者ではなかった。
安倍の思想、安倍の政治スタイルは確かに「戦後」を脱却していた。そして日本が21世紀を勝ち抜くには政治も経済も社会も変わらねばならないと熱く叫び続けたが、その主張を国民に売り込むことに成功したとは言い難い。
だから、国葬で安倍に敬意を表するという岸田首相の決定には各方面から異論が噴き出した。それは意外なことではない。むしろ明日への警告と言っていい。
安倍は一貫してアジアや世界各国との関係強化に努め、21世紀の新たな脅威に立ち向かう日本の安全と繁栄を守ろうとしてきた。そういう人物の国葬に世論の強い反対があるという事実を、岸田をはじめとする日本の政治家は真摯に受け止めるべきだ。
政治家がいかに変化の必要性を痛感していようと、国民の広範な支持という民主的正統性を欠く限り、日本が国際社会で、安倍の夢見た指導的な役割を果たすことは難しい。
軍事力を強化し、アメリカだけでなく他の地域大国との絆も深め、トップダウンの強い指導力で国を守り、繁栄を維持していく。生前の安倍は、そんな自分のビジョンを国民に丁寧に説明したいと語っていた。
その思いを受け継ぐ覚悟が、今の与党政治家にあるだろうか。
●岸田政権 旧統一教会と絶縁して“禊ぎ解散”なら、自公過半数割れ 9/27
安倍晋三・元首相の国葬への批判は増すばかりで、旧統一教会との関係が新たに明らかになる議員も後を絶たない。支持率が急落するなか、ついに「岸田おろし」の動きも出てきた。官邸内には、「総理のリーダーシップで裁判所に旧統一教会の解散命令請求を出し、“膿は全部出した。国民に信を問う”と起死回生の解散・総選挙を打つしか生き残る道はない」という“禊ぎ解散”論が浮上している。
汚染票の喪失
では、禊ぎ選挙で自民党は国民の信頼を取り戻せるのか。選挙情勢分析に定評がある政治ジャーナリスト・野上忠興氏が語る。
「岸田文雄・首相が本当に旧統一教会と縁を切って国民の信頼を取り戻したいのであれば、次の選挙で教団と関係が深い議員は公認しないといったケジメが必要でしょう。かつての郵政選挙の際、時の小泉純一郎首相は郵政民営化に反対した自民党議員を公認せず、新人の刺客候補を立てて大勝した前例がある。
しかし、岸田氏にそれほどの覚悟があるとは思えない。いくら関係を断ったと言おうと、現職の自民党議員の顔触れのまま選挙となれば、有権者の旧統一教会批判をまともに受けることになります」
もともと自民党で旧統一教会と関係を持った議員には、「選挙に弱い議員」が多い。同教団は信者の票そのものは多くないが、信者を無償の選挙ボランティアとして支援する議員の陣営に送り込み、戸別訪問などを熱心に展開して票を掘り起こす“集票マシーン”としての力で自民党に浸透してきた一面があるからだ。
データからもそれが裏付けられる。リストは、自民党調査で公表された旧統一教会と関係があった議員121人のうちの衆院議員について、前回総選挙での次点との得票数差を野上氏の協力でまとめたものだ。
内訳は、小選挙区で敗北して比例代表で復活当選した議員が27人、小選挙区で勝ったものの、次点との得票数差が「1万票未満」の大接戦だった議員が17人、次点との差が「1万〜2万票未満」の接戦が7人、選挙区で戦っていない比例単独議員が5人いる。
「次の総選挙では、旧統一教会に関係した議員は有権者の厳しい批判を受け、落選運動も起きるでしょう。そのうえ、絶縁宣言で教団からの支援はない。岸田政権発足直後の昨年の総選挙でさえ小選挙区で敗北したり、次点との得票数差が2万票未満の接戦だった議員51人は、次の選挙では当選が相当厳しいと予想されます。比例単独議員5人は公認が得られない可能性さえある」(野上氏)
自公過半数割れへ
“落選危機”の議員は56人にはとどまらない。
週刊ポスト・前号(2022年9月30日号)では、旧統一教会と自民党との関係を追跡してきたジャーナリスト・鈴木エイト氏の取材では教団関係団体と接点を持っていたが、自民党が公表した調査結果には名前がなかった議員が33人いることを報じた。
鈴木氏は、「自民党の調査は質問項目が教団や関連団体の会合出席や祝電、会費支払い、寄付、選挙支援などの項目に限定され、それ以外の方法で教団と接点があった議員は見逃されている」と指摘する。
その自民党調査で“お目こぼし”された教団関係議員33人のなかには、前回の総選挙ではわずか「654票」差で辛勝した衛藤征士郎・元衆院副議長など次点との得票数差「2万票未満」や比例組が11人いる(掲載のリスト参照)。
前述の56人と合わせれば、67人が落選危機となるわけだ。
大差で当選した議員も“次は安泰”とはいえない。教団との深いつながりが指摘されている萩生田光一・政調会長(東京24区)、下村博文・元文科相(東京11区)、山際大志郎・経済再生相(神奈川18区)などは前回選挙では大差で当選したが、都市部の選挙区は無党派票が多く、スキャンダルに敏感。前回大差でも、簡単にひっくり返るからだ。野上氏はこう分析する。
「禊ぎ解散となれば、前回大量得票した萩生田氏、下村氏、山際氏らであっても苦戦は免れない。
自民党は旧統一教会関係議員が軒並み落選し、現有261議席から60議席以上減らして200議席割れ。自公合わせても過半数(233)に届かず、政権を維持できないことが十分に考えられる」
たとえ岸田首相が旧統一教会に解散命令請求しようと、アリバイ調査だけで教団と関係を持った自民党議員の責任を見逃すなら、有権者は次の選挙で“汚染議員”たちに絶縁を突きつける。
●豪メディア「安倍氏は分断の遺産を残した」 9/27
安倍元総理大臣の国葬を巡り、オーストラリアのメディアは「安倍氏は分断の遺産を残した」などと報じました。
シドニー・モーニング・ヘラルドは、国葬の費用や、自民党と旧統一教会の関係から国葬反対を訴える声があることを挙げ、「安倍氏は海外では日本屈指の政治家として見られているが、分断の遺産を国内に残した」と指摘しました。
安倍元総理の国葬には、オーストラリアからはアルバニージー首相のほか、首相経験者3人が参列します。
アルバニージー首相は、安倍元総理が日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国の協力枠組み「クアッド」の設立に重要な役割を果たしたと評価し、「3人の元首相と私が日本に向かうのは、彼への敬意の表明です」とコメントしています。
●旧統一教会の本部で弔旗 「法人として安倍氏への弔意示すため」 9/27
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は、安倍晋三元首相の国葬に合わせて、東京都渋谷区内の本部ビルに弔旗を掲げた。普段、国旗の掲揚は祝日に限って行っているが、教団広報は「法人として、安倍元首相への弔意を示すため掲げた」としている。
●立民 辻元清美参議院議員も旧統一教会の勉強会に出席と発表  9/27
旧統一教会との関わりをめぐり、立憲民主党は、辻元清美参議院議員が、2012年に教会の関係団体の勉強会に出席し、同行した秘書と合わせて2人分の会費として2000円を支払っていたことが判明したと発表しました。
立憲民主党の国会議員で旧統一教会と何らかの関わりが確認されたのはこれで16人になりました。
岡田幹事長は記者会見で「辻元氏からは数日前に報告を受けた。細かいことでも党所属の議員と何らかの接点があると判明した場合は、今後も随時発表していきたい」と述べました。
●旧統一教会問題「信頼を回復」 自民・森山選対委員長インタビュー 9/27
自民党の森山裕選対委員長は26日、時事通信のインタビューに応じた。
同党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の根深い関係が明らかになったことに関し「信頼回復に努める」と強調した。主なやりとりは次の通り。
――衆院小選挙区数を「10増10減」する公職選挙法改正案は地方の声が国政に届きにくいとの指摘がある。
最高裁は2011、13、15年と衆院の区割りを違憲状態と判断したが、18年にアダムズ方式導入で合憲との判決を示した。しっかり尊重しなければならない。アダムズ方式は議席配分の変動が小さく、地方のためにプラスになっている。
――人口比以外の尺度を導入するための憲法改正は必要か。
これからの代表民主制や両議院の選挙区の在り方を考えた場合、人口比例のみを尺度として判断して良いのかも問われる。憲法審査会の場で議論が深掘りされることを期待する。
――公選法改正案が成立したら、自民党内の候補者調整をどう進めるか。
慎重にやらないといけないが、できるだけ早く済ませないと首相の解散権を縛ることにもなる。自民党はそのことを理解して事に当たる。
――公明党が都市部で候補擁立を狙っている。
連立を組んでいるから互いに腹蔵なくしっかり議論することが大事だ。
――山口県は定数減の対象だが、来春に見込まれる衆院山口4区補欠選挙に候補者を擁立しないことはあり得るか。
政権政党として無責任なことはできない。
――旧統一教会問題が来春の統一地方選に与える影響は。
自民党は旧統一教会および関連団体との関係を一切持たないと党のガバナンスコード(統治指針)に明記する検討に着手した。この方針は党全体に徹底する。これは茂木敏充幹事長が発言した通りだ。わが党は信頼回復に努め、統一地方選に全力で取り組む。
――地方議員と教団の接点も調査すべきか。
各県連の考えがある。県連でしっかり対応していただくことが大事だ。
――信者が地方議員になっているケースもあるとされる。
信教の自由は憲法で保障されているので尊重しなければならない。ただ、霊感商法みたいなことがあったのも事実だ。広告塔として国会議員や地方議員が利用されることはあってはならない。
●県議会議長 政務活動費で旧統一教会関連団体のイベントに出席 9/27
三重県議会の議長を務める前野和美議員が、平成30年からおととしまでの間、「世界平和統一家庭連合」旧統一教会の関連団体が主催するイベントに出席し、政務活動費から交通費などを支出していたことが明らかになりました。議長は、支出を認めた上で、今後はこうした団体と関係は持たない考えを示しました。
これは、三重県議会の稲森稔尚議員が26日行われた県議会の一般質問で、明らかにしたものです。
稲森氏の指摘や三重県議会が公開している政務活動費収支報告書によりますと、前野和美議長は、議長就任前の平成30年からおととしまでの少なくとも5回、旧統一教会の関連団体が主催するイベントに出席するため交通費や駐車場代などとして合わせて1万4665円を支出していたということです。
前野氏は、26日記者団に対し、詳細な記憶はないとする一方、「当時は旧統一教会の関連団体だという認識はなく、案内状が来て、人からも頼まれたので参加した」と述べ、一部のイベントに出席したことを認めました。
そのうえで、今後はこうした団体と関係は持たない考えを示しました。
また、すでに支出した政務活動費について、前野氏は「そのときには政務活動だという認識で活動していたので、今のところ、返還は考えてない」と述べました。
前野氏は現在県議会議員の5期目で、ことし5月から議長を務めています。 
●「世論分断」「旧統一教会」に焦点 安倍氏国葬めぐり海外メディア 9/27
27日の安倍晋三元首相の国葬について、海外メディアでは安倍氏の業績などを振り返る一方、世論分断や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる問題に焦点を合わせた報道が目立つ。AFP通信は安倍氏が「国際的な同盟関係を強化し『アベノミクス』と呼ばれる経済政策を推進したことで知られる」と紹介するとともに、国葬とした岸田文雄首相の決定が「議論と抗議を引き起こした」と伝えた。
米紙ニューヨーク・タイムズは「国葬をめぐり反発に直面する日本」と題する記事で、「国民の怒りは(安倍氏銃撃の)犯人や警備体制ではなく、自民党に向かった」と説明。国葬への賛否が「安倍政権を評価する『国民投票』になっている」と論じた。カナダ公共放送CBCは、安倍氏の生前の功績やスキャンダルに触れながら、旧統一教会との関係が論争となり、岸田内閣の支持率が落ち込んでいると報じた。
国営通信社の中国新聞社は27日、記者の解説動画で、世論調査で6割超が国葬に反対し、岸田内閣の支持率が下落していると報道。「葬式では死者が最も尊敬される」という中国のことわざを紹介し、「今回の安倍氏の葬儀では体現されなかった」と指摘した。上海市共産党委員会の機関紙、新民晩報(電子版)は、岸田首相が掲げる「聞く力」に言及し、「国葬をめぐっては、大多数の国民の声を聞かなかったようだ」と皮肉った。
「歴史修正主義者」と安倍氏への否定的感情が強い韓国では、日本での国葬反対の動きへの関心が高い。聯合ニュースは「東京で国葬に反対するデモが行われるなど反対世論が高まり、国葬が分裂を生んでいる」と報道。先進7カ国(G7)首脳の出席がゼロになったことで「弔問外交に活用するという岸田政権の構想は力を失った」と伝えた。
一方、安倍氏が「日本を代表する親台湾政治家」として広く知られ、熱心な支持者も多い台湾では、日本で国葬反対の声が高まっていることを不思議に思う人が多い。主要紙・聯合報は、国葬の費用、安倍氏の政治的遺産への複雑な評価、自民党と旧統一教会の関係について明確にされていないことが原因だと解説。「岸田首相は弔問外交を展開したい考えだが、国民を十分に納得させるには至っていないようだ」と指摘した。
●米CNN解説付け中継、海外メディア「論争」も報道 安倍氏国葬 9/27
27日に行われた安倍晋三元首相の国葬は、海外メディアにも広く報じられた。そのほとんどが、葬儀にとどまらず「世論を二分する議論」に視線を注いだ。
英BBCや米CNNは葬儀の開始からしばらくの間、会場の様子を中継した。CNNは日本の有識者ともオンラインでつなぎ、日本国内で国葬への批判があることや、安倍氏の銃撃事件を契機に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治家の関係に関心が集まったことなどについて、解説を求めながら報じた。
多くのメディアは同様に、葬儀と日本での論争を併せて伝えた。
シンガポールの主要紙ストレーツ・タイムズは安倍氏を「外交では巨人だが、国内では議論を呼ぶ存在」と評した。インドの民放放送局「NDTV」は、日米豪印の協力枠組み「クアッド」の構築に安倍氏が役割を果たしたとして「功績は記憶されるだろう」とたたえる一方、「日本では国葬開催に対する反対意見もある」と簡単に紹介した。
オーストラリアの公共放送ABCは「安倍氏は日本を再び普通の国にしようとした初の首相だ」とのアボット元首相の言葉を紹介する一方、旧統一教会と自民党との問題が注目されるようになったと指摘した。

 

●「国葬」後に始まる自民崩壊 官邸関係者「解散風の出元は菅氏周辺」 9/28
物議をかもした安倍晋三元首相の「国葬」実施は、岸田文雄政権を窮地に追い込む結果となった。旧統一教会との関係をめぐる問題にも解決策を見いだせない中、最大派閥である安倍派の後継者争いも激化が必至。揺れる自民党は「崩壊」に向かうのか──。
「今は耐えるしかないな……」
毎日新聞の世論調査の結果が事前に出回った9月18日午後、岸田文雄首相は側近の木原誠二官房副長官にうつろな表情でこうつぶやいたという。内閣支持率は、前月より7ポイントも低い29%。危険水域と言われる20%台まで初めて下落し、不支持率は60%を超えた。
凋落の一因は、国民の異論を無視して実施を決めた国葬にあることは間違いないだろう。加えて、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党議員との癒着についても次々と「疑惑」が噴出。解決の道筋が見えない中、10月3日には臨時国会が召集される。政治評論家の小林吉弥氏が語る。
「臨時国会は岸田政権にとってまさに薄氷を踏む場だ。教団との接点が次々と判明している山際大志郎経済再生相などは厳しく追及されるでしょうし、野党が教団関連の隠し玉を持っていたら、山際氏の首だけでは済まない厳しい状況に陥る」
危機管理体制の甘さがこの事態を招いたとも言える。政府関係者によると、官邸は8月10日の内閣改造を前に、内閣情報調査室や公安調査庁を中心に現職閣僚や閣僚候補者の身体検査を行った。その時点では、山際氏は「見落とされていた」のだという。その後、山際氏の地元事務所に勤める私設秘書が旧統一教会関係者ではないかと8月末に報じられた件については、同月中旬には官邸の耳にも情報が入っていた。山際氏は松野博一官房長官に「これ以上迷惑をかけられない」と一時は辞意を示したが、官邸としては「辞めると野党を勢いづかせてしまう。連鎖反応も心配だ」(政府関係者)として慰留した経緯もあるという。
岸田首相だけでなく、党内最多の97人を擁する安倍派も正念場に立たされている。党内では「旧統一教会といえば安倍派案件」(同)と言われ、党が実施した点検でも6派閥中最多の37人の名前が公表された。派閥の領袖候補である萩生田光一政調会長、下村博文元文部科学相らも名を連ねている。
安倍氏自身、国政選挙で教団票の割り振りを取り仕切っていたことが判明しており、派閥会長を務めた細田博之衆院議長も教団関連団体の会合に参加していたことが判明している。9月13日の党総務会では村上誠一郎元行革相が「安倍、細田両氏を点検対象から除外しているのは問題だ」と発言。その後、国葬には欠席することをメディアに公表するなど、ハレーションは収まらない。
そんな窮地の中、国葬後に本格化するとみられるのが安倍派の後継者争いだ。9月19日に安倍派が都内のホテルで開いた研修会では出席議員らにワイシャツ姿でほほ笑む安倍氏の遺影に使われた写真が配られ、改めて安倍氏の威光に頼らざるを得ない苦しい台所事情を見せつけてしまった。同派は現在、下村氏、萩生田氏、西村康稔経済産業相、世耕弘成参院幹事長、松野氏の「5人組」を中心に運営され、会長ポストは空席のまま。「党総裁候補」ともなる新会長選びで派内対立が激しくなれば、分裂は避けられないとの見方が強い。政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう語る。
「長期的に見ると安倍派はばらけていくでしょう。100人規模の派閥はカリスマがいないと持たない。清和会にとって安倍氏という存在が必要不可欠だったということです。安倍氏自身が後継を育ててこなかったツケが回ってきているのではないか」
難局を打開しようと、安倍派は9月から会長代理の塩谷立氏と下村氏を中心に、当選回数別の議員懇談会を始めた。ただ、これは中堅、若手議員にたまった不満や苛立ちの「ガス抜き」の要素が強い。安倍派中堅議員は「このままでは清和会は『馬糞の川流れ』状態でバラバラになっていくだろう」と自虐的に語った。
一方で、政治ジャーナリストの野上忠興氏は逆の見方をする。
「清和会では過去に三塚博元蔵相と加藤六月元農水相が争う『三六戦争』で派閥が分裂したが、そんなパワーがある政治家はもういない。次期衆院選で萩生田、下村両氏の当選が危ぶまれるような状況下で、派閥が割れるような事態にはならないでしょう。派内では、会長職は『年の功』で、70代の塩谷会長代理にやってもらう声が出て集約されつつある」
非主流派結託で岸田政権瓦解へ
ただ、仮に安倍派が分裂するような事態になれば、ゆくゆくは岸田政権の瓦解につながりかねないとの見方もある。
現在、岸田政権の中心は岸田派、麻生派、茂木派、安倍派の4派。中でも最大勢力の安倍派が分裂して一部が非主流派に転じ、岸田氏と「犬猿の仲」の菅義偉前首相と結託するような事態となれば、弱体化した岸田政権の脅威となりかねない。前出の伊藤氏がこう語る。
「岸田首相が一番恐れているのは、菅氏を中心に非主流派がまとまることです。岸田氏はちょっとでも隙を見せると足をすくわれる。安倍派の中では萩生田氏と菅氏の関係が良好です。今後は菅氏の動きが政局のカギになっていくでしょう」
9月上旬、永田町では「岸田首相が近々衆院解散に打って出るかもしれない」との臆測が流れた。ある官邸関係者は「解散風の出元は菅氏周辺」との見方を示す。昨年の衆院選から1年も経過していないのに解散すれば議席を減らす可能性が高いため「解散などするわけがない」(官邸関係者)のが常識的な見方だ。にもかかわらず、菅氏があえて観測気球を飛ばしたのは「政権を揺さぶって、自らの存在感を示すためではないか」(同)と受け取られた。9月に岸田首相と会食した財界人によると、「首相は菅氏の動向に非常に関心を示していた」。両者の水面下での神経戦が続いているようだ。
来年5月の地元・広島サミットまで「何としても政権を維持する」(周辺)のが最優先事項だという岸田氏。そもそも国民のためになる政治をしてくれることが、最大の延命策のはずなのだが……。
●“ブーメラン”返ってきた…立民・辻元清美氏 旧統一教会関連の勉強会 9/28
立憲民主党の辻元清美参院議員が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側と接点があったことが27日、明らかになった。同党の岡田克也幹事長が定例記者会見で公表した。立民は自民党と旧統一教会の関係を徹底追及する構えだが、辻元氏は政府批判の急先鋒(せんぽう)として知られるだけに10月3日に召集される見通しの臨時国会に向けて影響が懸念される。
岡田氏によると、辻元氏は2012年に教団の関連団体「世界平和女性連合」の勉強会に知人に誘われて参加。秘書と一緒に出席し、会費2000円を支払った。点検した結果、会費の領収書に団体名の記載があり、接点が判明。辻元氏は「公民館での小さな会で、領収証の内容を十分認識しないまま受け取っていた。今後、一層慎重に対応する」と自身のブログに記した。
くしくも公表のタイミングは、旧統一教会と最も関係が深い存在とされる安倍晋三元首相の国葬に重なった。辻元事務所は本紙の取材に「発表時期等については党の決定によるもの」と回答。22日に事実確認ができたため、同日のうちに党に報告した。これを受けて27日、党は常任幹事会を経て岡田氏が会見で公表した。ただ時期が時期だけに、党内からは「国葬を隠れみのにしていると見られても仕方ない」との声も上がる。
旧統一教会を巡って辻元氏は8月20日、ツイッターに「自民党と統一教会の闇は深い」と投稿。9月9日に国葬の欠席を表明した際にも「安倍元総理は統一教会と深い関係があったのでは?」と開催に疑問を投げ掛けていた。
党きっての人気議員に返ってきた“ブーメラン”。旧統一教会問題に対する追及姿勢に及ぼす影響について、岡田氏は「単純に接点があっただけで、自民党にものが言えなくなることはあり得ない」と強調したが、党関係者は「自民と同一視されかねない。丁寧に説明を尽くす必要がある」との懸念を示した。
岡田氏は「幅広く根を張っている旧統一教会なので、これからも出るかもしれない。正直に公表していく」とも語った。立民で接点が確認された国会議員は計16人。教団が与野党問わず政界にどれほど深く浸透しているかはまだ見通せない。
●“超後出し”辻元清美議員が旧統一教会と接点 自民批判から一転 9/28
27日、立憲民主党の辻元清美議員と旧統一教会との接点が明らかになった。
ちょうどそのころ、安倍元首相の国葬開催が迫り、武道館周辺では、一般献花に訪れた人たちで大行列。
デモ隊が近づくなど、緊迫したムードに包まれていた。
そんな状況の中で行われた、岡田幹事長の会見。
立憲民主党・岡田幹事長「新しい話で、一番下の辻元清美議員のところです。誘いを受けて出席して、同行した秘書と2人分の会費2,000円を支払ったと」
辻元議員は、民主党政権時代の2012年4月、旧統一教会の関連団体の勉強会に秘書と一緒に出席。
2人分の会費2,000円を支払っていたことを明らかにした。
辻元議員は、自身のブログなどで、当時の領収書を公表。そこには、「WFWP大阪10連合会」と書いてあった。WFWPとは、教団の関連団体「世界平和女性連合」のこと。
辻元議員はブログで、「勉強会の主催が、領収書に書かれていたWFWPとは、事前に認識していませんでした」と説明。関連団体とは知らなかったと釈明した。
超後出しともいえる公表となった、辻元議員。なぜ、このタイミングでの公表となったのだろうか。
辻元議員は、2021年の衆院選で敗れ議席を失ったが、2022年7月の参院選で当選し、国政に返り咲いた。
8月に初登院した時には、真っ白なスニーカー姿で意気込みを語った。
辻元議員「真っ白な初心の気持ちで、新しい参議院という場で頑張っていきたい」
そして、自民党議員の旧統一教会との関係を、徹底的に追及する姿勢を見せていた。
辻元議員「きちんと膿を出し切ることを自民党が率先してやっていただいて、国民の前に明らかにすべきだと思う」
辻元議員は、その後もたびたび、SNSなどで旧統一教会問題について言及。
(辻元議員のツイッターより)「自民党と統一教会の闇は深い」、「安倍元総理は統一教会と深い関係があったのでは? でも調査もせず全額国費『国葬儀』?」
国葬の案内状の画像を投稿し、「欠席します」と表明していた。
9月に行われた沖縄県知事選の応援メッセージでは、教団との接点が指摘された候補を強く非難していた。
(辻元議員のツイッターより、動画)「統一教会と関係しているそんな方を知事に選ぶこと、みなさん絶対、これは避けなければなりません」
政権追及の急先鋒として、これまでも、その発言が注目されてきた辻元議員。
その辻元議員が「関連団体とは知らなかった」と釈明している点について、日本維新の会の馬場代表は...
日本維新の会・馬場代表「まぁあの人は、ブーメランのプロですからね。うん、だからまぁ、またかと。率直な感想聞かれれば、そういう感じですね」
自民党議員からは、「国葬の日に発表したのは違和感がある」との声も上がっている。
辻元議員の事務所は、FNNの取材に対し、「教団との接点が判明したのは先週の木曜日」と回答している。
発表まで、なぜ5日もかかったのだろうか。
立憲民主党の関係者は、国葬の日と発表が重なった点について、「偶然だ。毎週火曜日に開いている幹部の会合に合わせたものだ」と説明した。
ブログで、「今後いっそう、慎重に対応していく」とした辻元議員。今後、「知りませんでした」と釈明することになるのだろうか。
●国葬で2万人超訪問の一般献花に「統一教会の動員で十分集まる」 9/28
漫画家の小林よしのり氏(69)が28日、ブログを更新。安倍晋三元首相の国葬で多くの一般人が献花に訪れたことについて「統一協会の動員で十分集まる」と指摘し、「統一協会の権力浸食問題は、そういう邪推や偏見を生んでも仕方がないということなんだ」と私見を述べた。
賛否が分かれていた安倍氏の国葬が営まれた27日、一般向けの献花台にはおよそ2万3000人が訪れ、長蛇の列ができた。小林氏は、この結果を受けた国葬賛成派の反応に言及し、「献花がたった2万人超なら、統一協会の動員で十分集まる」とした上で、「統一協会の権力浸食問題は、そういう邪推や偏見を生んでも仕方がないということなんだ。わしも統一協会が献花に来ないはずないと思っているがな」とつづった。
続けて「統一協会は政治に対する信頼を大きく欠損させる」と小林氏。「ただひたすら権力をコントロールして、商売をするのが統一協会だ。『自虐史観』の日本がまず資金源であり、無尽蔵に献金させるのは日本人からだけ。『反日カルト』なんだから当然だろう」と私見を述べた。
●岸田首相、韓国に妥協する余裕はない…首相の座さえ危険な状況 9/28
「現時点では今後の首脳会談については何ら決まっておらず、予断をもって申し上げることは控えますが、日韓関係を健全な形に戻すべく、我が国の一貫した立場に基づき、韓国側と意思疎通を続けていく考えであります」
日本の岸田文雄首相は22日(現地時間)、ニューヨークでの国連総会の成果を発表する国内外の記者との会見で、「どのような環境が整えば(韓国と)正式な首脳会談が開催できるのか」という質問にこう答えた。岸田首相が述べた「一貫した立場」は、強制動員被害者への賠償判決など両国間の重要懸案の問題について、韓国が先に解決策を用意しなければならないことを意味する。2018年10月に韓国最高裁の判決が出た後、日本の主な当局者は、韓日関係の改善の必要性に言及するたびに、この言葉を繰り返してきた。5月に尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が「屈辱外交」という残酷な内部批判を受けてまで推進してきた関係改善の努力に対しても、すぐには「誠意ある対応」をする意向はないことを示したわけだ。このような構図は、国連総会をきっかけに両国首脳が2年9カ月ぶりに困難の末に対面した後も変わらなかった。自民党で一番のハト派と目されている岸田政権が発足してから1年近くが経過したが、なぜ関係改善の糸口を探すことができないのだろうか。
最大の理由は日本政治の現実だ。27日に東京の武道館で開かれた安倍晋三元首相の国葬と自民党と統一教会の問題が、岸田首相を締めつけている。最近の各種世論調査では、岸田首相の支持率は急落した。日本経済新聞の今月の世論調査結果によると、内閣支持率は43%だった。1カ月前に比べ約14ポイント下がった。毎日新聞の調査では29%にまで低下した。
支持率が落ちる理由は明確だ。安倍元首相の死亡後に明らかになった自民党と統一教会の癒着疑惑と、性急に決定された国葬によるものだ。この二つの懸案をみる日本人の否定的な意見は60〜70%に達する。自民党のある幹部は朝日新聞に「どこで反転させられるか。このまま下がり続けると厳しい」と述べた。岸田首相が首相の座を脅かされるほど、現在の状況は普通ではないということだ。自民党内の少数派閥出身である岸田首相は、世論の動向にいっそう敏感にならざるをえない。
日本政界では、政権が交替させられる条件として「青木の法則」がよく議論される。政権No2といえる官房長官などを務めた青木幹雄元議員は「内閣支持率と政党支持率の合計が50%を下回ると、政権運営は難しい」という法則を主張した。長い経験から出てきた言葉で、日本政界では信憑性ある基準として受け入れられている。
菅義偉前首相の場合、昨年8月に行われた世論調査で、内閣支持率26%、自民党支持率26%が出た後、次期総裁選挙への不出馬と辞任を宣言した。安倍元首相も2020年5月に内閣と自民党の支持率が20%台を記録すると、8月に辞任を表明した。世論の支持を得られなくなり、政権を引っ張っていく動力を失ったのだ。
岸田首相は昨年10月の就任後、平坦な道を歩んでいくようにみえた。運命が変わったのは、7月8日に憲政史上最長の首相であり、保守・右翼勢力の求心点の役割を果たした安倍元首相が銃撃で死亡してからだ。ひとまず死亡直後に行われた参院選では圧勝した。すると、岸田首相の長期政権を予測する声が出てきた。しかし、安倍元首相が亡くなった主な原因だった統一教会と自民党の癒着疑惑が暴露され続けると、世論は揺れた。
支持率反転のため、岸田首相は先月、大幅な内閣改造を断行し、自民党も自らの調査を通じ、統一教会と関係があった議員の実態を発表した。しかし、世論は元に戻らなかった。新内閣でも統一教会の関係者が続々と明らかになったうえに、自民党の調査も中途半端なものだという疑惑が広がったためだ。
これに拍車をかけたのが安倍元首相の国葬だった。安倍元首相に対する世論の評価が割れるなか、岸田首相は法的基準が明確でない国葬を、国会での議論もせず閣議で決めてしまった。さらに、自民党が安倍元首相と統一教会の関係を調査しないことを明らかにし、国葬に反対する雰囲気が広がった。朝日新聞は、世論の反感を買った国葬は27日に終わるが、物価高騰や統一教会問題などが打撃になり続けば、岸田政権は危機に陥る可能性があると診断した。このようなきわどい状況では、岸田首相は韓国と妥協を試みると支持率はさらに低下せざるをえない。
そのため、両国とも早急に乗りだすより、時間をとる必要があるという指摘が出ている。慶応大学の西野純也教授(政治学・現代韓国研究センター長)は、本紙の電話インタビューで「韓日関係は外交問題であるとともに、国内政治にも密接につながっている。支持率が低い岸田首相の立場としては、よりいっそう慎重にアプローチする必要がある」としたうえで、「現金化問題は急いで解決しなければならない懸案だが、両国の国内状況をみると、時間はかからざるをえない」と診断した。あわせて、国連総会での面会がなされたので、11月の主要20カ国・地域(G20)首脳会議や来年5月の広島での主要7カ国(G7)首脳会議などで会談を繰り返し、信頼を積み上げていかなければならないと助言した。特に、尹大統領に対しては「現金化問題の解決策について、(韓国の)被害者と世論をどう説得するかにより多くの努力が必要だ」と述べ、現在の状況が続くのであれば、「合意はしたが問題は解決できなかった“慰安婦(韓日合意)の事例”を繰り返す恐れがある」と強調した。
●旧統一教会に183万円献金してもらえるのは「記念品」の小さなバッジだけ… 9/28
「信者への献金の奨励・勧誘行為はあくまでも信者本人の信仰に基づく自主性及び自由意思を尊重し、信者の経済状態に比して過度な献金とならないよう、十分配慮しなければならない」
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は「教会改革推進本部」を新たに設置し、本部長に就任した勅使河原秀行氏(58)が22日、今後は指導を徹底すると表明した。
そんな中、韓国・清平では来年5月の完成に向け、聖殿「天苑宮」(天地鮮鶴苑から改称)の建設が進められている。2012年ごろ計画が明らかにされた、総工費数百億円といわれる旧統一教会の一大プロジェクトだ。「天一国(神様の理想が完成した国)の中央庁」と位置づけられている。
建設にあたり、教団は信者に1家庭ごとに183万円の献金を求めている。183万円という献金額は、来年80歳を迎える韓鶴子総裁と、生きていれば来年103歳になる創始者・文鮮明の年齢を足したもの。
韓鶴子総裁は信者に対し、「天地鮮鶴苑は予定通り2023年にオープンしなければなりません。この建物の完成によって天の摂理は完成します。人類歴史の完成です」とハッパをかけている。これを受け、信者たちは今も献金集めに奔走している。
教団側は「過度な献金にならないよう配慮する」としているが、183万円でも十分高額なのではないか。勅使河原氏は、会見で10万人近い活動信者がいると明かしたが、仮に5万家庭が献金すると、915億円のカネが集まる。183万円の「ノルマ」を達成した家庭には、もれなく「記念品」が授与されるという。
借金できなくなると信者同士で貸し借り繰り返す
家庭連合広報部はこう説明する。
「金額はあくまで目安です。文鮮明総裁と韓鶴子現総裁を祝賀する意味で出てきた数字なので、教祖ご夫妻に対しての思慕の思いというか、原点回帰の思いを持ってお過ごしくださいという意味合いが強い。そういった話を信者さまにするのは教会長です。記念品? 小さなバッジのようなものみたいです。まだ作っていないみたいですけど」
全国霊感商法対策弁護士連絡会事務局長の渡辺博弁護士がこう指摘する。
「普通の暮らしをしている信者にとって183万円は高額で、それを『目安』とすること自体が強要です。その記念品が小さなバッジというのもバカにした話です。これまでも『真のご父母様への思慕』という名目で、散々高額献金をさせ、信者の生活は困窮しています。1年に何回も記念の日をつくって献金させ、今回はさらに特別なものです。借金をして献金させるとか、金融機関から借金できない信者は、まだお金に余裕がある信者から借りて献金をします。信者同士の貸し借りで献金させているんです。そういう事例がたくさんある。献金をしたらバッジをあげるというのは、文鮮明のサイン入りの聖典を手に入れるために3000万円の献金をさせたのと一緒の発想です」
バッジを信者に配るとは、どこかの国とそっくりだ。
●旧統一教会「信者向けネット会議」で飛び出した爆弾発言 9/28
「我が実家は霊感商法商品だらけです」
全国の現場幹部を対象に8月19日に行われた信者向け「ネット会議」のなかで、こう発言していたことが本誌報道で明らかになった、世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)の田中富広会長(66)。これまでの会見では「過去も現在も霊感商法はしていない」と断言していただけに、矛盾とも言えるこの告白に対する信者の衝撃は大きかった。
「フライデーに『ネット会議』の詳細が報じられ、教団内部には動揺が走りました。完全に内部向けの会議が流出したのは、信徒の間にそれだけ教団トップへの不信感が募っているということでしょう。会議を見ることができなかった一般信徒たちからも、『会見でも霊感商法についてきちんと説明すべきだった』という声があがっています。ちなみに、記事掲載以降の『ネット会議』はすべて中止になりました」(教団関係者)
だが、本誌が入手した「ネット会議」の音声データに残されていた「爆弾発言」はそれだけではない。
驚きだったのは、1時間20分に及ぶ会議の終盤に、天宙平和連合(UPF)の魚谷俊輔事務総長が登場したことだ。
これまで教団は、政治家による関連団体への祝電やイベント出席が取りざたされるたびに、「教団と関連団体は別組織である」という態度を一貫して取ってきた。別組織だから、教団とは一切関係がないという言い分である。
にもかかわらず、関連団体UPFの幹部である魚谷氏が教団本体の信者向け会議に出席。衝撃の発言を行っていたのである。魚谷氏は、
「これまでメディアや反対勢力からは、UPF、YSP(世界平和青年学生連合)、APTF(真の家庭運動推進協議会)などが家庭連合の隠れ蓑として用意されているフロント組織であるという批判が繰り返されています」
と前置きをした上で、図を示しながら、教団と関連団体の関係性についてこう説明した。
「今の状況をご説明するために、ファイヤーウォール、防火壁についてご説明したいと思います。何かトラブルがあったときにその責任が団体に及ばないようにするために壁を作っておくということで、真ん中に家庭連合、旧統一教会があって、その脇に二つの壁が作られています。左側の壁は、いわゆるトラブル、『霊感商法』『違法伝道』『高額献金』、そして一部の刑事事件などが起こったときに、その責任が宗教法人に降りかからないように作っている壁ということになります。で、右側のファイヤーウォールが何であるかというと、UPFにしても勝共連合にしてもその他団体にしても、教会そのものではなく独立してますよ、と。そこに閣僚や議員や首長は関わったのであって、統一教会そのものとは違うので、教会が起こした問題には責任がありませんよということで、この壁で議員たちや政治家が守られるように何とか機能させていたんです」
しかしそのファイヤーウォールが、安倍晋三元首相の銃撃事件を契機に崩壊したとして、魚谷氏はこう続けた。
「火の粉がすべてに覆いかぶさるように完全突破された状況になっております。ファイヤーウォールのことを強調して、関連団体にだけ関わっていたんですよということでは言い訳ができなくて追及される状態になっております」
魚谷事務総長のこれらの発言は、「ファイヤーウォールなる壁で隔てられているだけで、教団と関連団体は一体である」と受け取れる。長年教団を追及してきたジャーナリストの鈴木エイト氏が言う。
「“関連団体”の幹部であるはずの魚谷氏が教団の会議に出席し、しかも、ファイヤーウォールなどという言葉を用いて危機的状況を情報共有している。このこと自体が、教団とその他の関連団体が一体であることを示す何よりの証拠です」
魚谷事務総長が会議に出席した理由について、旧統一教会は本誌の取材に次のように回答した。
「『特別ネット会議』はメディア報道による被害状況を共有することを目的としていますので、その被害は当然、友好団体にも及ぶ恐れがありますから、(実際に及んでいる)友好団体を代表して、魚谷俊輔・UPF事務総長にも参加していただいています」
●長野市議4人が旧統一教会の関連団体のイベントに参加 9/28
長野市議会の最大会派に所属する4人の議員が「世界平和統一家庭連合」、旧統一教会の関連団体のイベントに参加していたことがわかりました。
これは、28日開かれた長野市議会の議会運営委員会で報告されたものです。
それによりますと、市議会最大会派、新友会の松田光平議員、北澤哲也議員、青木敏明議員、グレート無茶議員は、ことし7月までの1年間に行われた旧統一教会の関連団体が実施した自転車のイベントや清掃活動に参加していました。
また、松田議員のおととしの市政報告会に旧統一教会関係者が出席していたということです。
委員会で北澤議員は「法的に違反したものではないが旧統一教会との関わりを知らずに参加し軽率だった。真摯に反省していきたい」と述べました。
また、松田議員は、報道陣の取材に対し、「旧統一教会の関係者が市政報告会に出席していたとことし7月以降に分かったが、組織的に応援をもらったという気持ちはなく、選挙でも把握している限りでは来ていなかった。今後は関係を持つつもりはありません」と述べました。
4人は今後はいずれも旧統一教会との関わりは持たないとしていて、長野市議会のほかの議員は旧統一教会や関連団体との関わりはないとしています。 
●「AI安倍晋三」の裏に統一教会?ズブズブ自民議員の大絶賛で深まる疑念 9/28
安倍元首相「国葬」のタイミングに合わせたように「故安倍元総理追悼AIプロジェクト」というサイトが出現した(27日午後10時に公開終了)。そのサイトではAIが再現した安倍元首相そっくりの音声で、国民へのお別れのメッセージを聴くことができたのだが、このサイトを公開したのが「東京大学AI研究会」と名乗る団体だ。まるで東京大学の関連団体ような名称だが、東大電子情報工学科が「当学科の団体ではない」と否定したことで、この団体の正体に関して様々な憶測が広がっている。統一教会との関連を指摘する声もあるが実際のところはどうなのか?
「AI安倍晋三」を発表した「東京大学AI研究会」の正体は統一教会?
「故安倍元総理追悼AIプロジェクト」という特設サイトが出現したのは、国葬2日前の9月25日。 安倍元首相の声をシステムに学習させた上、新たにテキストを学習させて再現した「AI安倍晋三」というコンテンツが7本公開された。この特設サイトとYouTube上にアップされた合成音声動画は27日午後10時に公開終了し、現在は「こころより、安倍晋三元総理のご冥福をお祈りします。」というメッセージだけが残っている。
このAIプロジェクトを企画・主催した団体は「東京大学AI研究会」と名乗り、 悪質なことに東大電子情報工学科のサイトまでリンクされていた。誤解を恐れた東大電子情報工学科は「学科の団体ではない」と慌てて声明を発表した形となった。
そこで浮上したのが、統一教会やその学生下部組織である「原理研究会」(通称「原理研」)がこのAIに関与しているのではないかという疑惑だ。
原理研といえば古くから学生新聞の発行で知られるが、「東大新報」「京大生新聞」など、あたかも大学側が公式に発行しているかのような紛らわしい名称を使用する厄介な特徴がある。
これらの学生新聞はもちろんまがい物で、本物の国立大学の新聞サイトでは、「山形大学生新聞」「東北大学生新聞」などの紛らわしい名前で配布されている統一教会・原理研系新聞に注意を促している。
ちなみに、アメリカ本土で発行されている「ワシントン・タイムズ」という新聞も、権威と伝統のある新聞のように錯覚してしまうが、実は統一教会が発行している新聞である。
自らの正体を隠し、紛らわしい名称でそこかしこに潜り込むのは統一教会の常套手段だ。多くの人が「東京大学AI研究会」=「原理研」を疑ってしまうのも無理はない。
統一教会とズブズブの自民議員が“関係”示唆のキナ臭さ
実は、統一教会の関与が疑われる根拠はこれだけではない。
「AI安倍晋三」が公開されるや、安倍氏の実弟である岸信夫首相補佐官は、TwitterやFacebookでこのサイトをいち早く紹介。すると音声を聞いた自民党議員の義家弘介氏、松本尚氏、高木啓氏らは「優しさをありがとう」「声を聴いて涙が出てきました」などと肯定的な反応を示したのだ。これらの議員は、自民党が行った統一教会関連の調査でも名前があがっており、安倍元首相とも深い結びつきのある議員である。 ヤンキー先生こと義家弘介議員は、統一教会の関連団体「全国教育問題協議会」の懇談会で過去に3度も講演していたことが判明。昨年10月に当選した松本尚議員は、統一教会から「選挙期間中に応援します」との申し出を受けていたことを認めている。また、外務政務官の高木啓議員は、統一教会の関連団体会合に秘書が2回も代理出席していた。
きわめつけは杉田水脈議員で、自身のTwitterにてこのサイトを大々的に紹介している。
「私の古くからの友人の山田 六郎氏が、応援している学生さんが作っているサイトです。賛否両論あるようですが、これを作った若者達の想いを是非多くの皆さんに知っていただきたいと思います。(以下、引用)
幼い頃から僕らは安倍晋三元首相の演説や会見をテレビや ・・・」— 杉田水脈
杉田議員といえば、常日頃から彼女の脳内に生息するらしい「サヨク」を敵対視し、ジェンダーに関して問題ある公的発言ワースト1位の人物とされており、政治理念が統一教会の教義とぴったり一致する人物だ。
どうみても怪しい出所不明のAIを、リスク管理に長けた有名議員たちが手放しで絶賛したのはなぜなのか――今回の「AI安倍晋三」を作った「若者」たちの正体を勘ぐらずにはいられない。
統一教会の「ネット工作」にご用心
統一教会の問題で忘れてはいけないのが「ネット工作」だ。2015年5月、第二次安倍政権の安全保障関連法や憲法改正をめぐり、学生団体「SEALDs(シールズ)」が抗議デモをおこなうと、どこからともなく「別の学生団体」が現れ、安倍政治を称賛しはじめたのは記憶に新しい。
彼らは安倍官邸の指示で出動した学生団体「UNITE(ユナイト)」で、メンバーの大半が統一教会信者の学生と見られており、統一教会と関係が深い政治組織「国際勝共連合」傘下の団体である。
統一教会は以前からテレビ局への「電凸攻撃」などで知られているが、近年はこうした学生団体や信者を動員して、Twitterやヤフーニュース、YouTubeのコメント欄で組織的にネット工作をおこなっていると見られている。「AI安倍晋三」もネットやSNSを巧みに利用して拡散させており、その手口は統一教会の手法を彷彿とさせる。
統一教会の実態を暴くジャーナリストや、被害者を救済してきた弁護士たちは、こうした統一教会の「ネット工作」によって長年悪評をばら撒かれてきた。
9月22日の統一教会の会見では、勅使河原本部長が統一教会の被害を追及してきた弁護士たちを「サヨク」呼ばわりしていたが、SNSでも敵対相手を唐突に「サヨク」呼ばわりするユーザーが一定数存在するのは周知のとおり。彼らは以前から統一教会との関連を強く疑われており、ネットでは「答え合わせ完了」の声も多く聞かれるのが現状だ。
今回の「AI安倍晋三」疑惑といい、過去のネット工作といい、油断も隙もない統一教会。巧妙なネット工作で真実を歪めることのないよう、我々も注意して情報を見極める必要がありそうだ。
●安倍元首相の県民葬 県 重ねて開催への理解求める 9/28
27日の安倍元総理大臣の国葬に続いて、10月15日に行われる県民葬について、県は28日の県議会で国政や県政の推進に貢献し多大な功績を残したなどとして重ねて開催への理解を求めました。
28日開かれた県議会の一般質問では、野党系の議員から10月15日の県民葬の開催をめぐり質問が相次ぎました。
この中で県の内海隆明総務部長は、安倍元総理大臣は国政や県政の推進に貢献し、多大な功績を残したなどとして、県民葬の開催に重ねて理解を求めました。
その上で開催にかかる経費が過去の2倍以上になったことについて、会場が8か所にまたがることや警備態勢を強化したこと、それに物価の上昇などを挙げ、「執行段階で可能な限り節減を図るなど努力していきたい」と述べました。
また、27日都内で行われた国葬に合わせて、県教育委員会が県立学校に対して半旗の掲揚を求めたことについて、県側は個人に弔意を強制するものではなく問題ないという認識を示しました。
このほか、平成26年と28年に旧統一教会が関係している団体に県有施設をイベント会場として貸し出していたことを明らかにしました。
一方で、過去5年間にわたり旧統一教会と県の関係を調べた結果、知事や幹部職員が旧統一教会や関連団体の行事に来賓として出席したことはなく、後援や寄付の授受もなかったとしています。
●野党、臨時国会で細田衆院議長に旧統一教会問題の説明求める 9/28
岸田文雄首相が正念場を迎える。10月3日に召集される臨時国会は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治を巡る問題と安倍晋三元首相の国葬強行の総括が争点となるのは明らか。
28日午前、松野博一官房長官は衆参両院の議院運営委員会理事会に召集日は明示したが、会期や政府提出の法案も示さない異例の提案に野党側が猛反発し、休会となった。与党側は午後に12月10日まで69日間とする会期案を提示し、会期に関して野党側は了承したが、具体的な審議日程などは合意しておらず、5日後に迫った論戦へ緊迫ムードが漂っている。
野党側は論戦最大のテーマとして旧統一教会を巡る問題を掲げる。立憲民主党や共産党などとの野党共闘に距離を置く日本維新の会と国民民主も同調し、野党6党で旧統一教会との接点が指摘されている細田衆議院議長に対し、説明を求める方針で一致した。立民の安住淳国対委員長は「国権の最高機関である衆議院の議長として、旧統一教会とご自身の関係について説明する責任がある」などと厳しく指摘した。
これ対して細田氏は「29日にも一議員として何らかの対応をしたい」との意向を議院運営委員会に伝えたという。臨時国会前に火消しを図りたいところだが、説明次第では野党側は今後の日程調整などに応じない姿勢もちらつかせ、逆に炎上する可能性もある。細田氏は昨年11月の議長就任で自民党会派を離脱し無所属扱いとなり、自民党が今月8日に公表した所属国会議員に対する聞き取り調査の対象外となった。
細田氏は教団の関連団体の集会でスピーチを行うなど複数の接点が問題視されている。また自民党は30日に旧統一教会との関係について追加発表を行う予定だが、山際大志郎経済再生相ら現役閣僚からも、未申告の教団との関係が相次いで判明するなど泥沼の様相だ。
臨時国会へ向けた与野党間の交渉が緊張感を増す中で岸田首相はこの日、都内で講演した。「与野党を問わず、いろんな関係があったのは事実だ。教団との関係をしっかり断ち、実行することが何よりも大事だ」と改めて絶縁を宣言したが、山際氏らの任命責任も含め、難局を迎えている。
●「国葬という形で霊界に旅立たれる」旧統一教会信者 岸田首相は国葬断行 9/28
7月の参院選の応援演説中に銃撃され、この世を去った安倍晋三元首相の国葬が9月27日、日本武道館(東京都千代田区)で執り行われた。各社の世論調査などでも反対の声が多いなか、岸田文雄首相が決めた。
国葬への批判を高めていた理由の一つに、安倍元首相をはじめ、自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係がある。
安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者は、「旧統一教会に母親がのめり込み、多額の献金で家庭崩壊に追い込まれた。その恨みで、旧統一教会と近いと思った」などと犯行動機を説明していた。
この供述から、多額の寄付による家庭崩壊や過去の霊感商法などがクローズアップされ、国民の多くは、旧統一教会への不信感が拭えないなかでの安倍元首相の国葬に、納得がいかなかったのではないだろうか。
旧統一教会は22日、記者会見を開き、新設された「教会改革推進本部」の勅使河原秀行本部長が、「はじめに今回の安倍元首相の銃撃事件以降、さまざまな報道を通じて、世間をお騒がせし、日本国政府、そして国会議員の皆様に、大変なご迷惑をおかけし、心からおわび申し上げます。大変申し訳ありませんでした」と頭を下げた。勅使河原氏は1992年、旧統一教会が注目された際に、日本の元オリンピック選手との合同結婚式でのマッチングで注目を集めたことでも知られる。
そして、多額の献金については、「今後、過度な献金などがないようにする」などと話した。
世間を騒がしていることへの陳謝であり、霊感商法や合同結婚式などの被害者、二世信者らへの謝罪はなかった。
そして、自民党との関係や国葬についての質問に、「家庭連合として正式な見解は出していない。議論もされていないと思います。私の考えで言うと、個人的に安倍元総理を大変尊敬しておりました。歴史的に見ても、まさに偉大な政治家であったと私は思っております。そういう点においては、丁重に国を挙げて葬儀をするということに、私は賛成です」との考えを述べた。
安倍元首相が、旧統一教会の関連団体にビデオメッセージを贈っていたことや、旧統一教会に選挙支援や票の取りまとめを国政選挙で依頼していたといった話が銃撃事件後に報じられると、岸田首相は、自民党国会議員と教団との関係についての調査をし、「(旧統一教会との)関係を断ち切る」と述べた。
こうした政治とのかかわりについて、勅使河原氏は、「宗教団体が自分の政治信条を主張することは何ら問題ない。信徒さんたちが、私たちの考えと合う政治信条を持った政治家を応援するのは、当然あっていいこと」「(岸田首相の発言は)誠に残念なことだ。たとえば、霊感商法が今でも行われているような報道、それを主導していると思える左翼弁護士の方々、その影響が国民をミスリードしている」などと反論し、別の「敵」を設定するような対応だった。
9月末、近畿地方のある旧統一教会の教会であった日曜の礼拝に参加した現役信者はこう話す。
「記者会見の後で国葬の直前。どういう話があるのか注目していました。他の信者も同様だったと思います」と前置きし、礼拝で旧統一教会の幹部が語った内容を紹介した。
「批判もあるなかで、国をあげて安倍元首相の国葬をするというのは、家庭連合と強い結びつきがあったからに違いない。真のお父様お母様(旧統一教会の創立者故文鮮明氏と妻で現総裁の韓鶴子氏)が安倍元首相や、そのお父様(安倍晋太郎氏)、おじいさま(岸信介氏)と強く結びついていたからだ」
「安倍氏が総理になれたのは、我々がトップにつけるように祈っていたからだ。そのおかげで、国葬という形で霊界に旅立たれるのです」
「安倍元首相がもう少し長くトップにいれば、日本は家庭連合を国の宗教としたはずだ」
「安倍元首相は、総理をおやめになれば、食口(シック・信者の意味)になられるとも聞いていた」
などと主張していたという。
この現役信者は、選挙応援に借り出され、自民党の国会議員を支援したことがある。今年7月の参院選でも、問題になった自民党の井上義行参院議員に投票するように旧統一教会側から求められたという。
「岸田首相はわれわれと関係を持たないなどと言っているが、これまでどれほど自民党を助けてきたのか。同じ志を持つなら、われわれが自民党を応援して何かおかしいことがあるのか。岸田首相は恩知らずだ」と声を荒らげた。
現役信者は、「私は距離を置いて教会と付き合っている。しかし、そうではない人の多くは『安倍元首相は神様(文鮮明氏)に喜ばれるためにやってくれたんだ』『安倍元首相の政治はお父様の、み言(旧統一教会の教義)とよく似ていたのがわかった』などと感心して聞いていました。教会批判が強まるなか、安部元首相の国葬を利用して批判の方向を変えようとしているのではないでしょうか」と説明した。
全国霊感商法対策弁護士連絡会の加納雄二弁護士は、「旧統一教会の『み言』が政治と似ているなんて考えられないこと。旧統一教会は組織の防衛のためなら国葬も利用する。記者会見でも、相変わらず霊感商法との関係を否定し、マスコミと弁護士批判ばかり。謝罪するのも、自民党や国会議員に向けてでしょう。山上容疑者の動機は旧統一教会と語っており、被害者に最初に謝罪すべきではなかったのでしょうか」と指摘する。
●安倍氏暗殺は「日本有事」の狼煙 盟友・小川榮太郎氏 9/28
安倍晋三元首相を、第1次政権直後から支え、2012年12月の政権奪還による復活につなげ、第2次政権中も叱咤(しった)激励を続けた文芸評論家の小川榮太郎氏が、安倍氏の「国葬(国葬儀)」に合わせて特別寄稿した。激動する世界情勢のなか、安倍氏は世界の民主主義の危機や、日本の安全保障環境の過酷さを訴え続けていた。そして、民主主義の根幹たる選挙中にテロリストによって暗殺された。その事件の究明や危機の警鐘よりも、「安倍たたき」に狂奔する異常な一部マスコミ。小川氏は、安倍氏の暗殺は「日本有事の狼煙(のろし)だ」と喝破した。
ついに国葬儀の日を迎えたが、まだ安倍さんの死を実感できてはいない。突然の逝去、劇的過ぎる終焉(しゅうえん)、そして日本再生の同志としての身近さが相まって、まだ声を掛ければそこにいるとしか思えない。ふと、電話を掛けてももうあのお声が聞けないのかと思えば、改めて茫然(ぼうぜん)とするのである。
が、理由はそれだけではない。
死後も連日連夜繰り広げられ続けるマスコミによる「安倍たたき」。インターネットを立ち上げれば、元気な頃の安倍氏の肖像写真が真先に目に飛び込み、生前さながらの非礼かつ乱暴な表現で安倍氏がたたかれている。毎日このありさまでは、安倍氏が亡くなった実感を持つこと自体が不可能ではないか。
天に帰られた安倍氏は、あの寛大な苦笑を浮かべておられるかもしれない。
しかし、われわれは笑い過ごすわけにはゆかない。
暗殺の被害者に対する哀悼や、真相の究明でも、安倍政治の功罪でもなく、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題に国民の耳目を集中させる露骨な情報操作の一連の流れは、それ自体がもはや「有事の一環」に他ならないと思われるからである。
今年の大きな文脈に置き換えてみよう。
2月24日 ロシアによるウクライナ侵攻の勃発。
7月8日 安倍元首相暗殺事件。
9月8日 世界最長在位であられたエリザベス英女王の崩御。
10月16日〜 中国共産党大会で習近平国家主席の「異例の3選」が決まると目されている。
11月8日 米国の中間選挙では、ジョー・バイデン大統領率いる民主党がおそらく惨敗し、バイデン政権は弱体化すると目されている。
これらの点を大きくつないだとき、何が見えてくるか。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻は、第二次世界大戦後の不文律を犯した。イデオロギー対立に基づく、朝鮮、ベトナム戦争、中東などでの米ソの代理戦争を除き、大国による領土変更の戦争は過去の遺物だという不文律である。しかも、プーチン氏は戦術核の使用を「脅し」でないと明言している。
習氏の3選、バイデン政権の弱体化が現実のものとなれば、中国が台湾に軍事侵攻を決断する可能性は否定できない。
もし、ロシアに続き、中国が本格的な軍事侵攻を行い、日米安保条約が機能しなかったなら…。その時、本当の意味で「戦後」が終わり、むき出しの暴力が世界を支配し始めるであろう。
プーチン氏がウクライナ戦争を終結させる際、ほぼ世界でも唯一の仲介者は安倍氏だった。中国の台湾侵攻を最も抑止し得る政治家も、安倍氏にほかならなかった。
その安倍氏が、危機の進行する最中に暗殺されたのである。
そして、時あたかもヨーロッパのグランドマザーたるエリザベス女王が崩御された。ビクトリア女王の崩御は第一次世界大戦とロシア革命という巨大な地殻変動の端緒だった。安倍氏の暗殺、女王崩御に、私は世界の関節が外れる骨の軋みを聞く。
昨年末以来、安倍氏は「今、日本は世界で最も厳しい安全保障環境に置かれている」との認識を示し続けていた。その「最も厳しい安保環境」の中で、安倍氏自身が実際に暗殺され、没後にはその暗殺が国民の記憶から隠され続けているのである。
安倍氏の暗殺は、「日本有事の狼煙」と理解すべきだ。私たちは抑止に向け、最速で準備に入らねばならない。安倍氏への手向けは、それ以外にはない。

 

●“宗教2世”法整備など求め7万人以上の署名を国に提出 「組織的な虐待」 9/29
安倍元首相の銃撃事件をきっかけに注目された「世界平和統一家庭連合」いわゆる“統一教会”などの「宗教2世」の問題。この宗教2世の人たちが、「親から信仰を強制されるのは虐待にあたる」として、法整備などを求めた7万人以上の署名を28日、国に提出しました。
署名活動をするのは、両親が教団信者だという高橋みゆきさん(仮名・20代)です。
高橋みゆきさん「高額献金の話や政治家との癒着の話が巷(ちまた)では盛り上がっていますが、信者の子どもに対する宗教活動や信仰の強制という、これは宗教組織が仕組んだ組織的な虐待」
両親は「合同結婚式」で結婚し、現在も熱心な信者だといいます。高橋さんは安倍元首相の銃撃事件の直後から、オンラインで「宗教虐待防止のための法整備」を求める署名活動を開始し、集まった署名は7万人超えになりました。
28日、この署名を厚生労働省などに提出し、要望したのは――
高橋みゆきさん「児童虐待の条件に該当する被害を認知した場合は、たとえ信仰や宗教活動に起因するものであったとしても、一般の虐待と同様に被害児童を救済するということを求めています。警察だとか児童相談所とか学校の先生に相談したけど、宗教の問題に対しては『家庭の中で、ちゃんと自力で解決してね』と門前払いされてきた子どもたちが、たくさんいます」
さらに、児童虐待防止法などに「宗教虐待の定義」を追加することを求めました。
署名を集めるサイト「change.org」の「宗教虐待防止のための法整備」を求める署名のページには、賛同者から「私も同じような虐待を受けました」、「子どもの権利、自由を考えれば、ごく当たり前だと思う」といった声が寄せられました。
安倍元首相の銃撃事件をきっかけに注目された“宗教2世の問題”。
高橋みゆきさん「この数十年間苦しんできた(宗教)2世たちの声が、ようやく社会に訴えられるようになりつつあるんですけど、家庭内という閉じられた環境を悪用した子どもに対する宗教活動の強制というのは、“統一教会”だけの問題ではありません。日本全体での仕組み作り、ルール作りは確実に必要だと思っています」
今回の「署名提出」について、教団は「宗教2世の中に、そういった境遇の子どもたちがいることは存じ上げています。教会としては、一人ひとりの信者に寄り添ったケアをしていきます」としています。
高橋さんは「もしかしたら自分のクラスの子どもが、もしかしたら会社の同僚が、似たような苦しみを負っているんじゃないか。社会全体としての理解をしていただくことで、宗教2世が孤立してしまうことを防ぐことにつながるのかな」と訴えました。
●減税断固拒否で510億円の血税浪費 岸田政権のごまかし政策 9/29
岸田内閣の支持率が下げ止まらない。反対が賛成を上回っている安倍晋三元首相の国葬に加え、次々と明るみに出る旧統一教会と自民党議員のズブズブな関係ーー。
「聞く耳」を持つと強調しているが、実際は聞いたふり、同じ話の繰り返しなどごまかしばかりだ。国葬や統一教会問題以外にも、世論無視のごまかしが続いている。
1 減税逃れに510億円の無駄遣い
政府は20日、物価高騰とコロナ対応のため、’22年度予算の予備費から3兆5000億円の支出を決定。
その目玉として、住民税が非課税の困窮世帯に5万円の支給を決定した。しかし、手続きの事務手数料が、なんと510億円かかるとして波紋を呼んでいるのだ。
「対象世帯へ送る確認書の発送作業の人件費などに約164億円、問い合わせに対応するコールセンター設置に約254億円かかるそうです。こうした給付は、コロナ禍になって3回も行われているので、デジタル化を進めていれば、何百億円もの手数料は必要なかったはず」
そう指摘するのは、立憲民主党の衆議院議員で予算委員会の理事を務める後藤祐一さん。
さらに、“ガソリン補助金”にかかる事務費と、そのチェック体制も問題だ。後藤さんは続ける。
「政府は今年に入り、ガソリン価格の全国平均が168円以上になった場合、34社の石油元売り会社に1リットルあたり37円の補助金を出して店頭価格上昇を抑えました。9月までに1.9兆円、今回の補正予算で1.3兆円拠出していますが、事務費がそれぞれ59億円、18億円かかり、経産省が委託している広告代理店の博報堂に支払われています」
博報堂は、石油元売り会社の卸売価格が補助金分引き下げられているか確かめ全国のガソリンスタンドの販売価格も調査しているというが、合計77億円の事務費は果たして適切なのか……。
「外部からチェックできておらず万が一どこかで“サヤ抜き”されていてもわからないので、会計検査院に会計検査に入ってもらうよう求めています。消費者がガソリンスタンドで支払う“ガソリン税”をゼロにすれば透明性が担保できるのに」(後藤さん)
経産省の元官僚で経済評論家の古賀茂明さんは、このような焼け石に水の施策で「減税すべき」との世論をごまかしていると指摘。
「岸田さんは、財務省に操られているので税金を下げたくない。困窮者支援にしても、たった一回5万円を配るより、食料品や光熱費などの軽減税率8%を一時的にでもゼロにしたほうが効果的。他国は、軒並み減税しています」
2 防衛費のため消費増税も
増税をもくろむ岸田政権の姿勢は防衛費にも現れている。
「岸田首相は今年5月の日米首脳会談で、防衛費を5年以内にGDP比2%以上にあたる11兆円規模にすると約束してしまいました。“岸田降ろし”を避けるため、安倍派の支持を失いたくない。党内右派の安倍派が満足するまで防衛費を引き上げたいのでしょう」(古賀さん)
政府与党は先週、防衛費増額のために法人税や金融所得課税などに増税する可能性を示唆している。
「岸田さんは最終的には消費税増税を狙っています。しかしさすがに今はできないので、まずは法人税を上げて消費増税への布石にしたいのです」(古賀さん)
3 政権延命のために原発利用
防衛力を強化する一方で、攻撃されたら核兵器と同様のリスクがある原発の再稼働や新設まで打ち出した岸田首相。延命をかけて、奇策に出る可能性もあるという。
「来春から、さらに電気料金が値上げされます。東京電力は、『電気料金を値上げしないため』という理由で、来夏までに柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の再稼働を目指しています。しかし、同原発はテロ対策の不備が発覚し、原子力規制委員会から事実上、運転禁止命令が出ていて動かせない。そこで岸田さんは、『電力不足の緊急事態対応』『電気代の値上げ回避』などを掲げ政府権限で再稼働を認める特例法を来年1月の国会に提出し、野党が反対すれば、広島サミットが終了後の5月下旬にも原発再稼働の是非を問う“原発解散”に打って出る可能性もあります」(古賀さん)
電力需給が切迫するのは夏季と冬季のうちわずか数日で、しかも数時間。「節電で十分乗り切れる」と古賀さん。政権延命に利用してよいはずはない。
4 コロナ死者急増も医療費抑制
もうひとつ忘れてはならないのが新型コロナ対策だ。コロナによる死者数の累計は、9月22日時点で4万4000人を突破。うち半数を超える2万5696人が今年に入ってからの死亡者なのだ。
「治療法も確立され、早期診断・早期治療さえできればコロナは死ぬ病いではなくなりました。第7波が来る前に、政府が音頭をとって、すぐにPCR検査や診察が受けられる医療機関を増やしておけば、これほど死者は増えなかったはず。明らかな失政です」
そう憤るのは、倉持呼吸器内科クリニック院長の倉持仁さん。
元厚労省官僚は、「第1波から依然として続いているPCR検査の抑制などの背景には、医療費を抑制したい財務省や厚労省の思惑があるといわれています」と話す。
「岸田政権がやろうとしているのは、PCR検査より精度が悪い抗原検査キットを患者に配布し、陽性者は自分でコロナ患者用のサイト(My HER-SYS)に登録して自宅療養しろ、と。受診できる可能性があるのは、65歳以上、基礎疾患あり、妊婦、酸素飽和度が低いなど限られた人だけ。コロナ患者だけ国民皆保険制度から外され、適切な医療が受けられないという異常事態になっているのです」(倉持さん)
“重症化リスクは低い”と現状をごまかし、医療費抑制を狙っているが、死者数は増える一方だ。
ごまかしはいつまで続くのだろうかーー。 
●旧統一教会の相談窓口訪問、全都道府県で確認 「組織的」と消費者庁 9/29
「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の関係者が各地の消費生活センターを訪れ、「相談があれば連絡をしてほしい」などと求めていることを受け、実態調査を進めていた消費者庁は29日、教団関係者を名乗る訪問が47都道府県すべてで確認されたと発表した。
調査では都道府県を通じて、消費生活センターや消費相談窓口を設ける市町村に訪問の有無などを確認した。訪問は8月下旬〜9月上旬に集中しており、「相談がきたら自分に回してほしい」「相談情報を教えてほしい」といった内容が多かったという。
新井ゆたか長官は同日の定例会見で「全国的な動きと言っていい。時期的にも非常に集中しているので、一定の組織的な動きだったと考えざるを得ない」と話した。さらに、「個々の相談段階で事業者からの要請に基づいて相談情報をお伝えすることはない」と強調。教団や事業者全般に対して、「やめていただきたい」と述べた。
訪問の箇所数などについては「数が問題ではなくて、全国的にあったということが消費者庁としては問題だと思っている」と述べ、明らかにしなかった。
教団の広報担当者は9月上旬の朝日新聞の取材に対し、「(訪問は)各地で独自に行っている」と説明した。
●旧統一教会関係者「相談情報を教えて」全国消費生活センターに  9/29
消費者庁は全国の47の都道府県の消費生活センターに、旧統一協会の関係者を名乗る人物から訪問や電話があり「旧統一教会に関する相談があれば教えてほしい」などといった要請があったことを明らかにしました。
消費者庁は、旧統一協会の関係者を名乗る人物らが、各地の消費生活センターを訪問しているとの情報が寄せられていたことから、実態把握のために全国の都道府県に対して、調査を行ってきました。
調査結果によりますと、全国の47の都道府県すべてで消費生活センターに、直接の訪問や電話での問い合わせがあったことを確認したということです。
訪問や電話は先月下旬から今月上旬にかけて集中していて、大半は直接の訪問で「旧統一教会に関する相談が来たら自分に回してほしい」とか「相談情報を教えてほしい」などといった内容だったということです。
消費者庁の新井ゆたか長官は「すべての都道府県で情報提供をしていないことも確認した」としたうえで「要請があっても相談の内容を伝えることはないし、業務に支障がでるのでやめていただきたい」と話しました。
●紀藤弁護士、旧統一教会からの提訴に「恫喝訴訟の類」 9/29
全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹弁護士が29日、自身のツイッターを更新。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が同日、日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」とTBS系「ひるおび」にコメンテーターとして出演した弁護士の発言で名誉を傷つけられたとして、テレビ局と紀藤弁護士らに計約6600万円の損害賠償や謝罪広告をもとめて東京地裁に提訴したことに言及した。
紀藤氏は「私としてはカルト的団体から民事訴訟を提起されることは過去にもいくつもありますので(カルト的団体以外から訴えられたことはありません)粛々と訴訟には対応する予定」と述べる。
その上で「私への訴訟は言論への萎縮効果を狙った恫喝訴訟、SLAPPの類です。自らの正当性を言うなら国を訴えるのが筋でしょう。自らの非を改めず民間を訴えること自体が、統一教会の問題を良く現わしています」とつづった。
●旧統一教会、「ミヤネ屋」「ひるおび」で名誉棄損と民放2社・3弁護士を提訴  9/29
テレビ番組の発言で名誉を傷つけられたとして、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は29日、読売テレビとTBS、発言した弁護士3人に計6600万円の損害賠償などを求める3件の訴訟を東京地裁に起こした。
3人は同連合による被害の救済に取り組む紀藤正樹弁護士のほか、八代英輝、本村健太郎の各弁護士。同連合は訴状で、3人が7〜9月、読売テレビの「情報ライブ ミヤネ屋」やTBSの「ひるおび」で、同連合が犯罪行為を行ったり、違法活動をしたりする組織であると印象づける発言をしたと主張している。
読売テレビは「当社の考えは裁判を通じて申し述べる」、TBSは「訴状を受け取っていないので、コメントを差し控える」とした。
●旧統一教会がテレビ局と出演の3弁護士を提訴 「名誉毀損」と主張 9/29
テレビ番組での弁護士らの発言で名誉を傷つけられたとして、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」が29日、読売テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」に出演した紀藤正樹弁護士と本村健太郎弁護士、TBS「ひるおび」に出演した八代英輝弁護士と、各テレビ局に、計6600万円の損害賠償や謝罪放送などを求めて東京地裁に提訴した。
訴状によると、7〜9月の放送で弁護士らは「信者に売春させていた事件まである」「布教活動自体が違法だと裁判所で認定されている」などと発言。教団は、いずれも事実ではなく、教団の社会的評価を低下させたと訴えている。
「売春」発言について弁護士は「日本では細かく信者が分かれている」などと前置きしていた。会見した教団側によると、提訴前に「(教団本体ではなく)分派についての指摘だった」という説明を受けたが、「分派のことなのか教団本体のことなのか、分かりにくい表現だ」と主張した。
「布教が違法と認定」との発言に対しては「自主的に活動していた信徒の個別の伝道行為が違法だと認定されたが、教団の布教活動が違法だと認定されたわけではない」と述べた。
TBSは「訴状を受け取っておらず、コメントを差し控える」、読売テレビは「訴状を確認し対応を検討する」との談話を出した。

 

●旧統一教会の資金源の7割は日本…「日本人を食い物にする経営事情」 9/30
資金源の約7割は日本の信者からのものとされる旧統一教会の資金集め問題。なぜ日本はこんなにカモられるのか。ジャーナリストの鈴木エイト氏は歴史的背景として、教団による自虐史観的な刷り込みがあると指摘する。エイト氏とひろゆき氏が旧統一教会のお金の流れに切り込む――。
自民党は旧統一教会を支持母体として認めるのか
【ひろゆき】僕の認識だと、80年代に問題になった霊感商法が、その後あまり聞かれなくなったので、旧統一教会も創価学会のように社会になじんでいったのかなという認識に近かったんです。幸福の科学なども昔はかなりヤンチャしていたけれど、最近はそこまでトラブルを聞かなくなりましたよね。だから、昔はやらかした系の団体がわりと社会になじんでいるパターンかなと思っていたら、安倍元首相の銃撃事件後に次々と話が出てきて。全然終わっていなかった。
【エイト】そうなんですよね。2017年に山本朋広議員がマザームーン発言をしたときに、教団に対して「本当に皆様には、われわれ自民党に対し大変大きなお力を頂いています」と言いました。これでついに自民党は、創価学会と公明党のように、統一教会を支持母体としてお互いに認め合うのか、というツイートをしたんです。ところが、その後、山本議員や他の自民党議員に当てたら、全然違う反応が返ってきて。僕もあの時に一瞬、同じように感じたんですけど、でも実際には違っていた。やっぱりまだ隠すんだ、というのが2017年の時点でありましたね。
新宗教はどこもジリ貧
【ひろゆき】これだけ教団へのバッシングが強くなると、日本での布教活動も難しいだろうし、お金も集めづらい状況ですよね。そうすると、このまま縮小していく可能性はあるんですかね? 
【エイト】基本的には縮小しているんです。離れていく2世も多いですし、年間の献金ノルマも2010年ごろには年間500億、600億円だったのが、今は200億、300億円ぐらいで集金額もかなり減ってはいる。だから、旧統一教会に限らず、新宗教系はどこも2世が育っていないので、ジリ貧ではあるんですよね。そんな中で、いかに2世信者を離れさせずにうまく育てていくかと悩んでいるところだと思います。今回の件でこれだけ反社会的団体だと報道されたら、脱会する2世も多いだろうし。
旧統一教会がアメリカで成功しているビジネスとは
【ひろゆき】旧統一教会の人たちって基本、頭いいじゃないですか。そうすると、無茶をしないで、幸福の科学や公明党のようなポジションを取りにいったほうが長期的にも安定すると思うんですよね。なぜその安定を選ばなかったのかが、よくわからない。
【エイト】集金システムが必要だからかなと思います。つねに韓国から数百億円のノルマが毎年ある以上、普通の中庸な団体にはなりきれずに、かつ信者からお金を集めるシステムがあるので、どうしても反社会性を持ってしまうのかなと。
【ひろゆき】旧統一教会はアメリカでは、海産食品の卸業などの事業がうまくいっていますよね。
【エイト】たしかに、アメリカの統一教会インターナショナル(UCI)傘下のトゥルー・ワールド・フーズは、かなり成功しています。
【ひろゆき】そこまで優秀で、ちゃんと動くスタッフがいるのなら、普通に事業をやれば、それなりにうまくいく気もしますけどね。アメリカで事業を成功させているのに、なぜ日本で事業拡大というまっとうな道を進まなかったのか。
【エイト】その努力より、献金や霊感商法などで信者からお金を集めたほうが、手っ取り早く数百億円稼げるからという理由もあるのかもしれません。
【ひろゆき】たしかに。事業を立ち上げても年200億の利益を出せるのは相当先ですからね。
【エイト】そうですね。数百億円とされる資金は業績の悪い関連企業などの補塡に使われていたようなので、そのシステムがないと成り立たない教団系の企業群が一定数ある。その悪循環から脱することができなかったのかなと。
「日本は韓国に尽くす義務がある」
――旧統一教会の全世界の活動資金の約7割が、日本からの献金だとされています。なぜ日本人は、こんなにカモられてしまうんですか? 
【エイト】信者たちは、日本が過去、韓国にひどいことをしたからだ、という思想を刷り込まれているんです。韓鶴子氏も日本を、「人間的に考えれば赦(ゆる)すことのできない民族」エバ国家としてアダム国家である韓国へ「自分を顧みずすべてを惜しみなく与え」るよう何度も言っています。原爆が広島に落ちたことなどを引き合いに出して、悔い改めなければならないと自虐史観的なことを平気で言う。教団関連のイベントに出席した日本の議員は、それを目の前で聞いているはずなんですけど。韓国語で言っているから、わからないのかな。
【ひろゆき】(笑)
【エイト】ちなみに、「活動資金の約7割」という数字はワシントンポストが書いたんですが、実際はもっと多い印象です。いずれにせよ、こうしたお金の流れを絶たない限り、信者はずっと疲弊するでしょう。
【ひろゆき】僕は、日本の献金が多いのは、法律による処罰を日本がしないからだと思っていて。アメリカで組織的に献金をさせたら集団訴訟になったり懲罰的賠償になったりしますよね。組織としてやった以上は、それを返せと賠償金が何百億になる。だから、おそらくアメリカでは大々的にそれができないという理由があると思うんです。日本にはそうした規制がないので、民事裁判になったとしても、1件の損害賠償が数百万円で終わりですからね。あと、「先祖を敬わなければならない」という儒教的な概念を持つのは、日本や韓国、中国くらいで、キリスト教の人たちには、先祖を供養するといった概念は基本的にないですからね。そうした土着的な要素が日本に合致したという背景もあるんでしょうね。
【エイト】そうですよね。勉強になります。
【ひろゆき】法律的な部分と文化的な部分がすごくマッチするのが韓国と日本。その上、日本は法律による制限がないので、こんな状況になってしまった。
【エイト】たしかに構造的にそうですね。
【ひろゆき】そういう意味では、日本政府が法律なりで規制をしたら被害者も減るし、教団への献金も減るわけです。だから、早く法的な規制に手をつければいいと思います。
日本人からいかにお金を集めるか
【ひろゆき】旧統一教会の信徒が個人で韓国に旅行に行って、そこで直接献金するというツアーがありますよね。あれを制限するのは、かなり難しそうですね。
【エイト】あれも結局、日本の教団を通して韓国に献金させると途中で抜かれてしまうから、直接韓国にお金を納めるシステムを考えたようです。
【ひろゆき】そういう理由なんですか。
【エイト】日本の教団は、集めたお金を抜かないと経営が成り立たないという理由もあると思うんですが。中抜きされると韓国への献金額が減ってしまうので、韓国で先祖解怨(かいおん)式をやって、そこで日本人信徒が直接お金を納めるというしくみを作ったようです。
【ひろゆき】外為法には触れないんですかね? 
【エイト】外為法の上限の100万円に抵触しないかたちでやっているはずです。
【ひろゆき】そうなんですね。やっぱり頭いいですね。
【エイト】いかにお金を集めるか知恵を絞って、手練手管でやっていますよね。
信者はもともと優しくていい人が多い
【ひろゆき】教団幹部の中には、旧統一教会の教義はまったく信じていないけれど、お金が儲かるからやっているような、すごく優秀なビジネスマンみたいな人もいるんですか? 
【エイト】そういった経済ヤクザ系の人は、あまりいないんじゃないかと。
【ひろゆき】そういう意味で言うと、信者は普通にいい人が多いということなんですかね。
【エイト】最初に勧誘される時に、手相の勉強とかアンケート調査と言われて立ち止まってあげる人たちですからね。家に訪問伝道に来て、追い返さずに話を聞いてあげたりする、もともと優しい人が多いんですよ。「面倒くさいからいらないです」と言う人は、そもそも勧誘されないので。
【ひろゆき】この従順な人たちを利用してやろうと組織に入って、うまく立ち回って幹部になるような余地は、あまりないんですか? 
【エイト】あまりないと思います。でも、冷静に考えたら、これだけお金が集まっている組織だから、そういう人がいてもおかしくないんですけど。
韓鶴子の寵愛を受け教団の実権を握っている男
【ひろゆき】毎年200億、300億円の利益があるんだったら、頭いい人が入り込んで、毎年1億円ずつ引っ張るしくみを作っても不思議じゃないですからね。
【エイト】今、韓国で教団の実権を最も握っている尹煐(ユンヨン)鎬(ホ)・世界本部長が、そういうタイプかもしれません。もともと四男・文(ムン)国進(クッチン)が経済部門の代表をしていた時のサイバー部門の責任者だった人物です。サイバー部隊なので、いろいろな情報が入ってきて、不正蓄財しているような教団の幹部を洗いざらい調べて、どんどん追い出したんです。それで自分が代わりに、大規模なサミットでアフリカの要人などを招聘した時に払うお金を抜いたりして、甘い汁を吸っていると言われています。
【ひろゆき】ああ、アフリカに払ったと言って抜いても、わかんないですからね。
【エイト】そうやって教団内で経済的な基盤をどんどん築いてきた人物です。日本の教団にも尹煐鎬のことを面白く思ってない人は、少なくないでしょう。創始者と何の血のつながりもない若造が、韓鶴子の覚えがよくなって教団の実権を握っているので。実際に韓国の教団の税務上の資格証明書には、尹煐鎬が代表者だと記載されています。
【ひろゆき】へえ。
【エイト】総裁の韓鶴子に寵愛されているので、今は日本の幹部も尹煐鎬に従っているけれど、韓鶴子が亡くなったらどうなるのか。
【ひろゆき】韓鶴子氏は、もう高齢ですよね。
【エイト】今年79歳で糖尿病がひどくて、一人で歩けなかったり、目も片方見えなくなっていると言われています。
韓国と縁を切れば教団は変われる⁉
【ひろゆき】たとえば、日本の教団が韓国との関係を完全に断ち切って、もう韓国に献金しませんというのであれば、無理して信者から献金を集める必要もないので、普通の宗教団体として生き残ることができると思うんです。日本の教団内に、「お前らと縁を切る」と韓国に言える強さのある人はいないんですかね。
【エイト】そういう人が出てくると変わると思うんです。たとえば、2世の中から、本当の意味で教団を改革しようという、リーダーシップのある人が出てきたら、変わる可能性はある。ただ、教義の根本に真の御父母様とあって、どうしても韓国とのつながりはあるので、そのあたりの整合性をどう取るかですね。
【ひろゆき】でも、旧統一教会は自分たちをキリスト教の教団だと言っているけれど、日本のキリスト教団からは「キリスト教ではない」と言われていて、そもそも整合性が取れていないじゃないですか? 
【エイト】そのへんは、何とかうまくつじつまを合わせるのかな。本当の意味で高額献金などをやめさせて、カルト性を持たない、普通の教団として成り立つようなまともな指導者が出てくるといいのですが。
今の状況は教団存続の危機
【エイト】1978年に発表されたアメリカ下院のフレーザー委員会の報告書では、旧統一教会は多国籍企業的側面と準軍事組織的な側面もあると評価されているんです。
【ひろゆき】政治、経済団体として一番うまくお金を回せるのが、宗教法人の皮を被ることである、という。
【エイト】そうなんですよね。実際、日本でも霊感商法などでお金を集めて政界に近づいていった。そう考えると、今の日本の状況は、教団にとっては大きな危機ですよね。表向きは、政界と完全に切り離されそうになっている。教団存続の一番の危機だと思います。
【ひろゆき】日本からの“7割の献金”がなくなったら、立ち行かなくなりますからね。
【エイト】尹煐鎬はそれを恐れていて、日本でのバッシングで信徒に自殺未遂者が出ているというストーリーで、国連の自由権規約人権委員会に訴えています。もともと旧統一教会は国連に変な対抗意識があって、国連に代わる組織を作ろうと、いろいろなダミー団体を作ってきたんです。国連事務総長を務めた潘(パン)基(ギ)文(ムン)を取り込もうとしたり。
【ひろゆき】そうなんですか?  すごいですね。
【エイト】統一教会系の世界平和女性連合や天宙平和連合などは国連のNGOに登録されているんですよ。萩生田(光一)さんも、わざわざ「国連NGOの世界平和女性連合」と弁明しています。なぜ国連のNGOに登録できたのかと言うと、潘基文の存在が大きかったのではと言われています。事務総長が取り込まれたら、どうしようもないですからね。
【ひろゆき】世界でこんなに活躍しているから、すごい団体なんですと言われて、献金なり信者なりもあるわけですけど、お金の流れが止まってそうした活動もどんどん止まったら、教団はどんどん縮小しないんですかね? 
【エイト】たしかに、韓国へのお金の流れさえ止めれば、ある程度まともな団体になっていく可能性はあるでしょう。違法行為や悪質商法がなくなれば、宗教の中身は何でもいいので。お金の流れを止めて、日本で貧困に苦しむ信者や子どもたちが減るだけで、かなり違うと思うんですよね。
●旧統一教会が高額献金者を「高度危険者」と呼んでいた卑劣な理由 9/30
「あの事件のお母さんが献金されたのは1990年代です。90年代です。90年代の話であって、コンプライアンス宣言以前のはるか以前の問題です。もう(質問を)切ってください」
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)が22日、東京・渋谷区の教団本部で開いた記者会見。「なぜ7月8日のような事件が起きたのか」という質問に教団顧問弁護士の福本修也氏は語気を荒らげてブチ切れ、「09年のコンプライアンス宣言以降、同様のケースはない」と言わんばかりだった。
安倍元首相の銃撃事件後、信者による高額献金が明るみに出た旧統一教会は「09年のコンプライアンス宣言以降はない」というフレーズを強調しているが、本当に高額献金はなくなったのか。
「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の渡辺博弁護士が入手した、2012年に作成されたとみられる教団の内部文書「高度危険者に対する緊急対策の取組みフィードバック」によると、12年の時点で900人以上が億を超える献金をしていた。
渡辺弁護士が説明する。
「内部文書によれば、統一教会は山上被疑者の母親のような1億円を超える高額献金者を『高度危険者』と呼び、全国に911人いることが分かります。『AA』と『AAA』と分けてあり、『AAA』はおそらく10億円以上の献金者と思われます。911人の中には統一教会であることを隠して誘われ、脅され、だまされて家庭が崩壊状態になり、全財産を取り上げられた信者もいるはずです。そんな高額献金者に訴えられたら、教団は大変な事態になります。放っておくと危ない、何とか対策を講じなければいけないと考え、文書を作成した可能性があります」
1億円以上の献金者は全国に911人
資料を見ると全国を12のブロックに分け、1億円以上の献金者が796人、10億円以上の献金者は115人もいる。これまで多大な貢献をしてきた高額献金者を「高度危険者」扱いしている。
教会改革推進本部長に就任した勅使河原秀行氏は会見で「献金のために借金したりするような過度な献金にならないよう指導するなど、09年にコンプライアンスを強化した際の対策を改めて徹底する」と表明。
だが09年以降の過度な献金の額と件数を聞かれると「ちょっと分からない」と答えられず、献金額が高額かどうかの判断基準に関しては「各教会の教会長やスタッフがする」と、具体的な金額は明かさなかった。
渡辺弁護士が続ける。
「教団は高額献金者にこれ以上、献金させないようにストップをかけるのではなく、献金を続けさせているとみられます。そうなると家庭の崩壊や自宅の差し押さえ、自己破産などのリスクが増していきます。内部文書は『そういった問題が表面化する前に対策を考えろ』と、全国の各教会長に指示するためのものでしょう。例えば高額献金者との間で『献金は私の自由意思です』『献金の返金を求めません』という公正証書や合意書を作成する。統一教会を相手に損害賠償請求をできなくなるよう、あるいは訴訟しても無駄だと思わせるよう、あらかじめ手を打っておくのです」
勅使河原氏は「返金請求や被害を訴えるなどの申し出があった場合、一件一件誠意を尽くして対応し、自ら早期に解決を図る」と話したが、どこまで実行されるのだろうか。 
●高市早苗が注目発言連発 旧統一教会問題に経済安保… 9/30
安倍元首相亡き後、その遺志を継ぐと公言する高市早苗経済安全保障担当大臣。BSフジLIVE「プライムニュース」では高市氏を迎え、日本の保守政治の課題、旧統一教会問題、経済安保において国益を守るための方策について伺った。
旧統一教会問題 根本解決のため「反社」の定義を明確に
反町理キャスター: 岸田内閣の支持率は、世論調査で「支持しない」が「支持する」を超えた。支持率が下がってきた原因として、旧統一教会問題への対応に国民が不信感や疑念を抱いているという指摘も。高市さんはこの問題に対してとるべき姿勢をどう考えるか。議論を終わらせるには。
高市早苗 経済安保相: 旧統一教会問題が出てきたとき、当時の政調会長としてフランスの反セクト法、また日本の宗教法人法の条文を読み込んだ。そこで、これは旧統一教会に限らずさまざまな宗教団体で似たようなことがあるのかもと思った。実はうちにも謎の大黒さんがあって、母が亡くなった後に大変困った。
反町理キャスター: 本当の話ですよね。
高市早苗 経済安保相: いや本当の話。うちは先祖代々真言宗で、そこはちゃんとしているが、それと別に宗教法人格を持つ個人のお寺の人と母が話して大黒さんを買ったようで。私はそれを知らなかった。母が亡くなったあと、ある日知らないお寺から電話がかかってきた。うちにある大黒さんを遠くから拝んでくださっていて、毎月2万円かかるのだと。亡くなると口座凍結されるから、2万円が落ちなくなったという文句の電話。
反町理キャスター: (笑)。
高市早苗 経済安保相: お悔やみの言葉もなく。遠くから拝んで毎月2万円はありえないと思い、床の間の隅にいた大黒さんを宅配便で返したら、それを御供養して処分するお金が40万円かかると。縁を切りたいから泣く泣く40万円払ったが、今回の旧統一教会の話を聞いていたら、これは私も被害者なのではと。
反町理キャスター: 河野消費者担当大臣に問い合わせた方がいい。
高市早苗 経済安保相: 担当の葉梨法務大臣に、旧統一教会以外にもさまざま同様のことは起きていると、大黒さんの話をした。旧統一教会に限定せずきっちりと消費者を守り、信者さんを守る法体系が必要。宗教法人法に、不当な経済活動をしていると思われる場合に法人格をなくしてしまう条文があってもいい、ということを政調会長時代に整理していた。ただ、今のところ内閣としては法改正にまで踏み込む予定はないように見える。
反町理キャスター: なるほど。
高市早苗 経済安保相: 自民党としては今後、旧統一教会の関連団体も含めてお付き合いしないと言っている。私も自民党員としてこの方針をしっかり守る。だがそれでは根本的な解決にならない。反社会勢力とは何なのかという定義が欲しい。それに該当する団体や企業はどこなのか、国会議員、地方議員、そして国民の皆様にも周知してほしい。
反町理キャスター: そう! なぜその話をしないのかと何人かの自民党の国会議員に聞いたら、今の世論の風の中では言えないと。高市さんが初めて。
高市早苗 経済安保相: 基準がはっきりしないまま叩いている。また、関連団体まで全部の名前など覚えているわけがない。私も21年前に統一教会系の「ビューポイント」という雑誌に載ったと公表したが、関係を知らなかった。勝共連合の人とも選挙で戦ったし、韓国に対して散々厳しいことを言ってきた。その雑誌がなぜ私を載せたのかもわからない。そう考えると、「ここがこう法に反している」と反社会的団体の一覧表を配ってくれと思う。私もこれから細心の注意を払う。だが、やはり被害を受ける人を減らすことに没頭するのが政府の役目ではないか。
通常国会にセキュリティ・クリアランスの制度を入れた経済安保推進法を提出する
新美有加キャスター: 経済安保における日本の現状で一番危機感を覚える点は?
高市早苗 経済安保相: 経済安全保障推進法は5月に成立した。ここからいろんなことをやっていくが、今回の法律に欠落しているのはセキュリティ・クリアランス。
反町理キャスター: それは何ですか。
高市早苗 経済安保相: セキュリティ・クリアランスは、重要な情報にアクセスする資格。安倍元総理が一番苦労された特定秘密保護法では、国家公務員について定められている。一番欠けているのが、重要な情報を扱う民間企業について、例えば海外の政府調達に参加したり重要技術を持つ海外の民間企業と契約したい場合。整備しておかなければ、日本の優秀な企業が一緒に安全保障をやっていく同士国・有志国との取引からも、共同研究からもはじき出される可能性がある。経済安保推進法の改正案として、これを入れたものを出したい。これらの国が、安心して機微な情報を日本と共有しながら一緒にリスクの高い国と対峙していけるかどうかが鍵。
反町理キャスター: 法案として国会に提出するのはこの秋には間に合わないとして、通常国会を目指している?
高市早苗 経済安保相: 今、どういう場合にセキュリティ・クリアランスが必要か洗い出している。経済安保大臣に就任した日に言われたのは「中国という言葉を出さないでくれ」ということと、「来年(2023年)の通常国会にセキュリティ・クリアランスを入れた経済安保推進法を提出することは、口が裂けても言わないでくれ」ということ。
反町理キャスター: それは……(笑)。年明け早々にぜひもう一度うかがいたい。
高市早苗 経済安保相: 内閣府の長は内閣総理大臣。法律案を書くよう役所の方に命令する権利は私にはない。まずは岸田総理の説得からかかりたい。
「今より後の 世をいかにせむ」安倍氏から保守政治を継ぐ高市氏の決意
新美有加キャスター: 9月27日の安倍元総理の国葬には、どのような思いで参加されたか。
高市早苗 経済安保相: 涙が枯れるぐらい泣きました。もうこれでお別れだという寂しさもいっぱい、そして犯人に対する怒り。悔しかった。一番涙が出たのは菅義偉前総理の弔辞。共に戦った者としての話があった。TPP交渉に入ったときの話では、当時の安倍総理と菅官房長官は一体だと思っていたが、けっこう言い合いもしてはったんやなと。私もしょっちゅう安倍総理と言い合いになって。
反町理キャスター: そうなんですか。
高市早苗 経済安保相: トランプ大統領になりアメリカがTPPから抜けたとき、日本がリーダーシップをとるチャンスだと言ったら、日米関係を非常に重視される安倍総理は怒っていらした。新型コロナの給付金について、それからポスターに載せる自民党のキャッチコピーをめぐっても言い合いに。
反町理キャスター: けっこう安倍さんを不機嫌にするケースが多かったんですね。
高市早苗 経済安保相: とても多かった。ただ安倍元総理のいいところは、2〜3日、長ければ1週間ぐらい口をきいてくれなかったこともありますが(笑)、早ければその日の夜には「ちょっと今日は言い過ぎたよね」と電話をくださったり。ねっちょりしたところと、さっぱりしたところ、両方をお持ちの立派なリーダーでした。
反町理キャスター: 安倍さんは総裁選で高市さんを応援した。何を託したのか。日本の保守の将来に対する危機感を共有されていた?
高市早苗 経済安保相: こういう政策を言え、などということはなかった。ただ国家の究極の使命として、国民の皆様の生命と財産を守る、国家の主権と名誉を守ると私が申し上げたのは、安倍総理がずっと一生懸命やってこられたこと。長年それは同じだと思ってきた。
反町理キャスター: 日本の保守政治において「安倍ロス」がどの程度深刻なものかが、まだわからない。
高市早苗 経済安保相: 安倍総理の代わりなんているわけないが、やり残されたことはいくつかある。憲法改正、拉致被害者の奪還、防衛力、アベノミクスの完成。先立たれてしまい、これからどうするかというのが私たちの課題。菅前総理の弔辞、山県有朋の歌の引用にうるっときた。
反町理キャスター: 伊藤博文が亡くなったことへの「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ」。安倍さんがいない状況で、引き継いだ課題をどう達成していくか。総裁、もう一度狙いますよね?
高市早苗 経済安保相: それ今聞くん? 8月に岸田内閣の一員になりましたよ。
反町理キャスター: でも、決意のお話はまた別じゃないですか。
高市早苗 経済安保相: 私には私なりの決意があり、先ほど申し上げたことをやり抜くために政治家をやっています。べつに選挙に勝つことやポストを得ることが目標ではない。やり抜きたいことがあるから、どんな苦労があっても政治家をやっている。今は岸田内閣がしっかり結果を出すため、与えられた仕事を懸命にやらせていただく。
●旧統一教会問題 被害相談の7割は金銭トラブル 9/30
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題に対応する関係省庁連絡会議は30日、開設していた合同電話相談窓口に寄せられた被害相談のうち7割が金銭的トラブルに関するものだったという結果を公表した。今後、弁護士ら法律の専門家を含む支援体制の強化を図っていくとしている。合同電話相談窓口は10月以降も継続する。
東京・霞が関の法務省でこの日開かれた第2回会合で明らかにした。連絡会議は合同電話相談窓口を9月5日に設置し、30日までを「相談集中強化期間」と位置付けて相談を受け付けてきた。28日までの受付件数は2251件に上ったという。
このうち22日までに寄せられた相談の中で、旧統一教会による被害相談と分類した1317件を分析したところ、最多は「金銭的トラブル」の919件で7割に及んだ。具体的には「信者である家族が1億円を超える献金をしたため、自己破産した。返金を求めたい」「信者だった10年間、数百万円から10万円程度の献金を多数繰り返してきた。取り戻せるか」――などの相談例があったという。
窓口で相談員が紹介した対応機関としては日本司法支援センター(法テラス)が6割を超え、連絡会議は今後、法的支援体制の充実や日本弁護士連合会との連携強化も図っていく。また、消費生活相談への対応や違法行為に対する取り締まりも推進する。
●自民党 旧統一教会との追加調査公表 接点ある議員180人に 9/30
自民党は、さきほど所属する国会議員と旧統一教会との接点について、追加調査の結果を公表しました。
追加報告の結果、何らかの接点・関係があった議員は、これまでの調査から1人増えて、180人となりました。また、氏名公表対象の議員も、木原官房副長官ら4人増えて125人となりました。
自民党は今月8日、旧統一教会と所属議員との関係について、所属する379人のうち179人に何らかの接点があったとしたうえで、このうち、121人の氏名を公表しました。
しかし、氏名が公表されていなかった木原官房副長官が、旧統一教会の関連団体が主催の会合に出席したと発表するなど、新たな接点が明らかになっていました。
○今回新たに氏名が公表された議員
【衆議院】石井拓 木原誠二 今村雅弘 【参議院】比嘉奈津美
一方、追加調査の報告後、教団主催の会合に出席した議員のなかに山際経済再生担当大臣の名前が含まれていないことが分かりました。山際氏は会見で2018年に教団主催の会合に出席したことをあらたに認めていましたが、自民党は山際氏から追加での報告を受けていないとしています。
●旧統一教会に関する相談件数を公表 安倍元首相銃撃事件以降増加 9/30
消費者庁は30日、全国各地の消費生活センターに寄せられた旧統一教会に関する相談件数を公表した。
2012年度〜2022年9月までに寄せられた相談件数は1165件で、そのうち2012年度は229件と最も多く、以降は減少していた。
しかし、安倍元首相の銃撃事件以降、7月は57件、8月は98件、9月は123件と増加している。
また、2020年度から21年度で教団に支払った金額別件数でみると500万円以上と申告された件数が2件あった。
消費者庁では、個別の団体の相談について情報公表をしていませんが、河野大臣は「政府全体として対策を講じる案件であることや、過去の相談件数や内容が被害の防止対策の検討に資するという観点から、社会的な公益性があると判断した」と公表した理由を明らかにした。
この集計は、9月28日までに消費者庁のシステムに登録された相談のうち、事業者情報に「世界平和統一家庭連合」、「世界基督教統一神霊協会」、「統一教会」と記載のある相談をまとめたものだという。 

 

●命がけの帰国!サタンがとり憑いている!信仰2世の壮絶脱会体験 10/1
「あなたにサタンがとり憑いているからよ!」
こんな言葉を親から言われた、旧統一教会の2世信者たちの苦悩はどれほど深いでしょうか。
安倍元首相を銃撃したとされる山上容疑者も10代の頃、母親に連れられて教会にいき、教義を学んでいたとの報道も伝えられています。
家族を教団に奪われた恨み。それにより旧統一教会に対して、暴力など過激な行動に出てしまう懸念は、元信者としての目からみて充分に考えられることでした。しかし、まさか殺人行為にまで及ぶとは思っておらず、私は大変なショックを受けました。しかも容疑者が信仰2世として教義を学んでいた可能性もあり、二重の驚きでした。もしこれらが事実であるとするならば、一つの埋まらないピースを感じていました。
それは、恨みを募らせて殺害の凶行にまで考えが至るものだろうかという思いです。そこには何かもう一つの要素があるのではないか。
未成年期に学んだ教義から抜け出すのが難しい現実
彼と同じように、90年代に母親から教団に連れられて、教義を学び入信した女性(冠木さん)に脱会までの経緯を伺いました。みえてくるのは、未成年期に学んだことが成年になってもからも強い影響力を持ち続け、そこから抜け出すのが難しいという現実です。
冠木さんは、信仰2世として2度の合同結婚式(祝福)に参加しました。いずれの結婚の相手も韓国人でした。
一人目の韓国人男性からは、暴力を振るわれるなどして離婚。次に紹介された二人目の男性からは多額の借金を背負わされて、子供らを連れて命からがら日本に逃げて帰ってくるという大変な目に遭っています。2012年に文鮮明教祖の死の報を受けてマインドコントロールされている自分に気づき、翌年に韓国から帰国しています。
入信のきっかけは、高校時代
冠木さんの母親は天地正教という、旧統一教会の別組織から誘われて入信しました。そのうちに、高校生だった彼女も熱心に通う母親に連れられて天地正教を訪れています。
「そこは弥勒菩薩を本尊として祀っている小さな道場でした。キリスト教では再臨主(メシヤ)ですが、天地正教ではそれが弥勒仏になっています。そして罪を持って生まれた堕落人間は、弥勒仏を信じることで救われるという教えです」
私のような青年はキリスト教の教えを使って誘い入れられますが、彼女の母親のような主婦など、齢の高い方には、仏教を通じて誘い入れるようになっています。
母親からのしつこい勧めもあって、1992年の高校生の頃、ビデオセンターで統一原理を学び始めます。
高校卒業後、彼女は会社勤めをします。
「家から会社に通い、日曜日などに教会に通いました」
しかし家では常に信者として母親からの厳しい信仰指導、監視があったと話します。
「忘年会が終わり帰宅すると、夜中の零時を回っていました。私はお酒を飲むことはありませんでしたが、遅くなったからと男性上司が自宅まで送って下さったのです。すると、仁王立ちで母が待ち構えていて、叱責されました」
教団の教えでは、アダムとエバが神様の赦しも得ないままに、勝手に性的関係を結んでしまい堕落して、罪を犯したと説きます。それゆえに、神様の許さない恋愛行動は禁止です。それにつながるような行為を、信仰2世の親は徹底的に排除してきます。
「会社の後輩から告白されたこともあります。しかし、その男性からの電話は私に繋がれることはありませんでした。『二度とかけて来るな!』と言って切っていたようです」
母親は、彼女の行動を徹底的に規制して行きます。教団の教えを信じて反発することなく、親に従おうとする優しい子供こそ、心に大きな傷を残していくことになります。
最初の合同結婚式は36万双
会社勤めから1年が過ぎた20歳の頃、母親は献身を勧めます。これは教団に身も心も捧げる出家です。そして95年に行われる予定の36万組の合同結婚式(祝福)に彼女を参加させるために、教団側は21日間の修練会に参加させます。それにより彼女は職場を退職しなければならなくなります。
「最初の祝福の相手は私より2歳下の韓国人でした。しかし信仰心はなく、統一教会に入会すると日本人と結婚できるからと、合同結婚式に参加しただけの男でした。とりあえず信じたフリをして」と彼女は話します。
98年、韓国人男性は日本にきて彼女と生活を始めます。
「本来、教団では禁止されているお酒やたばこを彼は吸っていました。ついには、気に入らないことがあると、私の頬に平手打ちをする。顔を殴る、蹴りを入れてくるの暴力をふるいました。自分が殺されないようにするだけで精一杯でした」
暴力に耐えられず、家を飛び出しホテルに逃げたこともあります。すると翌日、彼女は母親から呼び出されます。しかし彼女を守ることなく、母親は「あなたの信仰が足りないからだ(サタンが侵入してしまい、暴力を受ける事態になっている)」と一喝して、夫の元へ戻します。
ところがその後、母親の前で男が彼女を激しく殴り始めたことがあったそうです。さすがに、それを見た母親は重大さを受け止めて、上の立場(アベル)である教区長に相談します。
教区長は「ひどいですね。大変でしたね」と同情しながらも、その韓国人夫との面談が終わると「とてもいい青年じゃないですか。表現の仕方が不器用なだけで問題ありませんよ」と言うのです。誰も彼女を守る人はいませんでした。その後も暴力は収まらず、離婚をすることになります。
2世の相談先は、紹介者である親、そして教団関係者のみ。それが彼女の悲劇を生んだともいえます。しかもこんなひどい目を受けても、高校生の頃から植え付けられた教団の思想は彼女の心から離れません。
2度目の合同結婚式
教団は2002年の4億双に向けて動き出していました。
冠木さんはある教区長から韓国人男性の紹介を受けて、2度目の合同結婚式を受けます。その後、渡韓して男性と一緒に暮らし始めます。しかしこの男にも信仰心はなく、多額の借金を重ねます。ついには彼女のクレジットカードを勝手に使い、彼女自身も多額の借金を背負わされます。そして、命からがら帰国し離婚をします。
ここでは安易に離婚という言葉を使いましたが、神様によって決められた相手との祝福を破棄するということは、信者にとって容易なことではありません。私も92年の合同結婚式に参加しましたが、文教祖によって決められた相手を拒否する(祝福を破棄する)ことは「サタン以下の存在になる」と教えられていたからです。よくぞ、一人そうした恐怖心を乗り越えて、離婚して脱会できたと思います。
冠木さんは大変な道のりを経て、マインドコントロールに気づき脱会をしました。
一方で同じように10代の頃、母親に連れられて教会を訪れた山上容疑者は心に若干の教義の禍根を残しながら、独自の考えに昇華させていったのではないかと考えています。
違いは、相談できる人がいたかどうか
「2人目の男が闇金融から多額のお金を借りてしまったため、その取り立てから逃れるために、ある滞在先にいました。そこで出会った韓国人のおじいさんやおばあさんに助けられ、なんとか生きてこられました。そして命からがら、男の手を逃れて韓国から帰ってくる時にも、相談にのってくれた韓国人の友人もいます」
そうした人たちの助けを借りて、冠木さんはなんとか無事に帰国できたといいます。
つまり、教団の信仰とは関係のない一般人の韓国の人たちの心の温かみに彼女が触れたことで、マインドコントロールを解き、脱会に向けての大きな一歩になったのではないかと思います。
一方で、山上容疑者は誰にも相談できずに、徐々に自分の心の殻の中に入ってしまったのではないでしょうか。その背景には、若干かもしれませんが、幼いころに学んだ教団の思想が残っていた可能性を考えます。
というのも、カルト思想の恐ろしい点の一つに、他者の意見を排除し孤立化して、社会の常識からは逸脱した行動をしてしまうことがあるからです。
教団への恨みから殺人の考えにまで至ったピースの一つ
旧統一教会もあれだけ「霊感商法問題」が世間から指摘されたにも関わらず、その意見を聞き入れず、排除して甚大なる消費者被害を生み出しました。
オウム事件を見てもわかります。彼らも他者の意見を排除して、自動小銃を作り、サリンをまき、自分たちの意に反するものの「死を奪う」発想をしました。
山上容疑者の安倍元首相を殺害するという絶対にしてはならない行為をみた時に、過去に学んだ思想が自らも意識しない中で残り続けて、独自のカルト的な考えにまで高めて行動してしまった結果の事件ではないだろうかと思うのです。
それこそが冒頭で話した足りないピースの一つだったのではないかと考えています。
親を信者に持つ2世の存在に目を向けてこなかった社会の責任
未成年の頃に触れた思いは心に残り続けるもの。しかも悩んだときに相談する先が母親や教団関係者といった限られた人となれば、本当の心を打ち明けられずに、殻に閉じこもり、自分自身でのみ解決するしかなくなります。
その結果、彼の心を恨みからの殺害にまでの思いに至らせてしまったとすれば、親を信者に持つ2世の存在に目を向けてこなかった社会の責任でもあると、自戒の念をこめて感じています。
当時は公に声すらあげることもはばかれました。こっそりとTwitterなどで書き込むしかなかった状況です。目立つ形で批判的な書き込みをすれば、教団からの組織的な攻撃を受けてしまうからです。
その点、今の元信仰2世、祝福2世の方々は、大丈夫だと考えています。なぜならSNSなどで声をあげて、教団に堂々とものを言える環境ができているからです。誰かに相談して、心を整理する場も増やそうとする社会の動きも出てきています。
もしそれを阻害するような行動があれば、私は絶対に許すことができません。
なぜ、2世の問題を深刻に考えなければならないのか。なぜ彼らに助けが必要なのかを、今一度、世の中の人たちが考える時がきています。
冠木さんは度重なる苦労から、韓国でパニック障害を起こしました。日本に帰り治療を受けようと思い、母親に連絡をすると次のように言われています。
「あなたにサタンがとり憑いているからよ!」
母親には悪気はないのかもしれません。しかしどれだけこの言葉が、2世の心に傷を与えているかわかりません。山上容疑者も母親から信仰2世として育てられてきた経緯が少しでもあるとすれば、こうした言葉も浴びせられてきたかもしれないのです。
今回、話を伺った冠木さんのように、山上容疑者も子供の頃に心に深い傷を負っていたことが考えられます。今後の裁判を通じて、彼から何が語られるのか、その言葉に注目しています。
●細田議長と旧統一教会 自らの言葉で説明して 10/1
細田博之衆院議長(島根1区)が、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側との関係を認める文書を公表した。関係団体の会合に計4回出席したほか、自身の選挙の際、支持者に関係者がいたことを明らかにした。ただ衆院議長ではなく、衆院議員の肩書を使ったA4サイズ1枚の文書には詳細が全く説明されておらず、野党側は「不十分だ」と反発。地元有権者からも不満の声が上がっている。
9万638−。昨年10月の衆院選で当選を果たした細田氏の得票数だ。得票率は56・0%。4年前の前回選より3・4ポイント下げたとはいえ、組織力を生かした盤石の戦いで、運輸相などを歴任した父の故吉蔵元衆院議員を超える11選を成し遂げた。
共に島根県選出衆院議員として長らく活動してきた竹下亘氏が衆院選前に亡くなっていただけに、地方の声を国政に届けるベテラン議員への期待は、より高まっていた。
選挙後、県選出国会議員では故桜内義雄氏以来、31年ぶりの選出で衆院議長に就任。人口減少で参院選では鳥取との合区になった島根選出の立場から「計算式によりただ地方の政治家を減らし、都会で増やすだけが能じゃない」などと、衆院選「1票の格差」是正を巡って作業が進む10増10減に再三、異論を唱えてきた。
今年5月には自民党議員のパーティーで、「議員を減らせば良いかどうか、この辺で考えた方がいい。1人当たり月額100万円未満であるような手取りだ。多少増やしても罰は当たらない」と発言し、インターネット上で炎上した。
衆院議長として中立な対応が求められるのは承知の上、地方の実情をアピールするため、批判も覚悟しての問題提起だったのだろう。物言う「三権の長」を頼もしく思う地元有権者も多かったはずだ。
ところがその後は一転して、物言わぬ「三権の長」になってしまった。原因は週刊誌報道。女性記者へのセクハラ疑惑に続き、陣営が昨年の衆院選で地元議員に支払った労務費が公職選挙法の買収に当たる疑惑があると報じた。セクハラ疑惑については事実無根で名誉毀損(きそん)に当たるとして、発行元に損害賠償や謝罪広告の掲載などを求めて提訴する一方、自らは口を閉ざし沈黙を貫いている。
そして今回の旧統一教会との関係を巡る問題。自民党は、議長就任による党派離脱中という理由で細田氏を調査対象から外していたが、3日に召集が迫る臨時国会の運営に支障を来しかねないと判断。細田氏自身による公表で火消しを図ろうとしたものの、不十分な内容で逆に火に油を注ぐ格好になった。野党の反発はもちろん、島根県内の自民党員からも「公表が遅い上に、文書自体が説明になっておらず、疑念が深まるばかりだ」と批判が上がっている。
もともと細田氏を巡っては、旧統一教会の関連団体の集会に出席した、など複数の接点が報じられていたが、取材にも応じていなかった。
沈静化が見えない状況を踏まえ、細田氏は30日、山口俊一衆院議院運営委員長らと会い、旧統一教会側との関係を巡り追加説明に応じる意向を示したという。ただ、野党側が求める臨時国会での説明に応じるかは見通せない。いずれにせよ、事実関係を自らの言葉で丁寧に説明しなければ、地元有権者の期待を裏切ることになる。
●細田氏と旧統一教会 これで議長務まるのか 10/1
島根1区選出の細田博之衆院議長がおととい、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点を初めて認め、公表した。
7月の安倍晋三元首相銃撃事件以降、旧統一教会との深い関わりを取り沙汰されながら沈黙を続けていた。野党の攻勢が一段と強まる中、3日に召集が迫る臨時国会の運営に支障を来しかねないと判断したのだろう。
ところが出てきたのは紙1枚。これまで報道されたことの追認ばかりで、自身の行動についての反省や旧統一教会との関係を断つ意思も示さなかった。遅い上に中身がない。改めて自分の言葉で説明するべきだ。それができないのであれば議長の職責は到底果たせず、「三権の長」の権威を揺るがす。
細田氏は関連団体のイベントであいさつする動画の存在が明らかになるなど、複数の接点が指摘されていた。とりわけ関係が深いとされる自民党最大派閥・安倍派の元会長であり、国政選挙では旧統一教会の票を差配していたとも言われている。
昨年11月の議長就任を機に自民党会派を離脱していた。このため自民党は接点調査の対象外としていたが、与党からも臨時国会を前にけじめを求める声が上がっていた。事態の沈静化を図ろうと公表したのが、題名のないA4判の紙。肩書は「衆院議員細田博之」としている。
旧統一教会の関与が指摘される議員連盟の役員を務め、関連団体の会合に4回出席したと明かしたが、具体的な説明はなかった。選挙支援についても「地元の関係団体が私を支持するとの意向があったことは事実だ」としながら、どんな内容か記さなかった。「今後、社会的に問題があると指摘される団体とは関係を持たないよう、適切に対応したい」の記述では関係を断ち切る決意が判然としない。
野党は「疑念が深まった」と反発している。臨時国会で徹底解明が必要だ。細田氏はきのう旧統一教会との関係を報道陣に問われ、「調査中」と述べた。まだ隠していることがあるのではと疑われても仕方あるまい。
細田氏は「1票の格差」を是正する衆院小選挙区の「10増10減」案に否定的な発言を繰り返した。女性記者へのセクハラ疑惑も週刊誌で報じられた。いずれも十分な説明をしていない。
与野党双方からの厳しい反応を受け、細田氏は補充説明をする意向を固めた。今度こそ国会や記者会見で質問を受け、説明を尽くさなければなるまい。
党会派を離脱中とはいえ、自民党にも責任があるのは当然だ。本人による説明の場を設けるよう求めるべきだ。
その自民党の調査では点検漏れが相次ぐ。木原誠二官房副長官や山際大志郎経済再生担当相が旧統一教会や関連団体の会合に出席していたことが次々と判明。安倍氏の国葬は旧統一教会との関係を不問に付して実施された。岸田文雄首相は「関係を断つ」と言うが、前提となる調査がその体をなしていない。
旧統一教会との関係はどれだけ広く深いのだろう。政策や教団の名称変更に影響を与えていないのか。政治家が広告塔になったのではないか。国民の疑問は膨らむばかりだ。
全容解明に向け、国政調査権を有する国会が調査を尽くさなければなるまい。第三者機関に委ねるのも選択肢になろう。
●岐阜県、旧統一教会系の催し後援 「現時点で取り消し考えていない」 10/1
「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の関連団体のイベントを岐阜県が後援していたことをめぐり、古田肇知事は30日の定例県議会で、後援の取り消しについて「現時点で考えていない」と述べた。また、旧統一教会をめぐる多額の献金や高額な商品の購入などの問題に対応するため、県民生活相談センターに専用の相談窓口を設置し、県弁護士会などと連携していくことを明らかにした。
県が後援したのは、昨年10月に岐阜市で開かれた家庭ビジョンセミナーなど2件。この日の一般質問で、中川裕子議員が「他県では過去の後援の取り消しの検討が始まっており、実際、取り消された事例もある」などと指摘した。
古田知事は「(後援の申請者から県に対して)終了後に提出された実施報告を見ても、基準に照らして取り消しに該当するような具体的事実が見当たらず、現時点で取り消しは考えていない」と答えた。
その上で、「もっと慎重にやるべきことは間違いない。今後、2度のケースを丁寧に振り返り、後援の承認手続きを見直していく」とし、「主催者、後援団体、実行委員会の構成員まで丁寧に調査して判断していきたい」と述べた。
●統一教会が提訴の『ミヤネ屋』局内は社長以下ますます本気モードに 10/1
“統一教会”(世界平和統一家庭連合)が9月29日に会見を開き、名誉棄損にあたるとして提訴した。
提訴したのは3つで、1紀藤正樹弁護士及び読売テレビ、2本村健太郎弁護士及び読売テレビ、3八代英輝弁護士及びTBSだ。
1 は7月20日放送の『ミヤネ屋』(読売テレビ制作、日本テレビ系)で紀藤弁護士が発言した、「信者に売春をさせてまで資金集めをさせている」というもので、2は9月2日放送『ミヤネ屋』で本村弁護士が発言した、「司法の判断として“統一教会”の活動は布教活動自体が違法であるとすでに認定済み。“違法な組織”と認定済み」というものだ。
3は9月1日放送『ひるおび』(TBS系)で八代弁護士が発言した「この教団がやっている外形的な犯罪行為等…」などという発言だという。
それぞれ2200万円の損害賠償とホームページや謝罪放送などと求めている。
テレビの中では『ミヤネ屋』が際立って統一教会を徹底的に追及してきた。会見で提訴の発表があった日も、内容を淡々と説明したうえで、司会の宮根誠司が、「番組としましては、私も含めスタッフ一同、これまで通り旧統一教会の過度な献金、被害者救済、政治家との関わりなどが指摘される教団の本質的な問題は、さまざまな声、意見を取り上げながら伝え続けていきたいと思います」と今後の方針を発表し、その直後に「続いてこちらです」と次のコーナーの紹介をすると、細田衆院議長と統一教会の関与を紹介するコーナーだった。この強気な姿勢にはSNSなどでは《ミヤネ屋頑張れ》がトレンドに入るなど、賞賛の声が上がっています。
「3つの提訴の内容を見てもわかる通り、統一教会は解散の可能性があるものだけに怯えているんです。万が一問題とされる行為が認定されれば所轄の文化庁が裁判所に解散請求を出すことができる。
政治家とのつながりなどはさほど気にしていなくて、解散の検討の機運が高まる可能性がある行為に関する発言のみ提訴している。要するに宗教法人格の死守に躍起になっていると思われます」(全国紙社会部記者)
この提訴はどれほど“報道の抑制”に有効なのだろうか。他山の石となり、各局の統一教会報道は収まるのか。
しかし『ミヤネ屋』率いる読売テレビは全く気にしていないどころか、さらに追及の手を強めるつもりだ。
「番組でも伝えた通り、基本的にはこれまで通り統一教会の報道をします。局の社長も了承済で、さらに本気モードと言った感じです。もちろん事実関係には今後さらに入念なケアが必要でが、統一教会の献金などに苦しんでいる人がいる中で正義感として報じなければならない。
というものの一方で統一教会ネタをやるとかなり視聴率が良いので、裏番組に差をつけられますからね。世間的にもミヤネ屋を応援してもらっているので“追い風”を感じています。提訴の会見の翌日には紀藤弁護士をゲストに呼びました(笑)」(読売テレビ関係者)
まさに、統一教会は『ミヤネ屋』に火に油を注いでしまった格好だ。
訴訟となれば当然、費用も時間もかかる。それでも強気に報じられるのは、そのウラに視聴者、そして国民の関心の高さがあることを、教団は理解しているのだろうか…。 

 

●統一教会 文鮮明7男は母親の韓鶴子を「魔女のような詐欺女」…大分裂 10/2
安倍晋三元首相が殺害されたことで、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)による被害は2世信者にも及んでいることが続々と報じられている。もっとも、皮肉なことに「2世問題」は、統一教会自身

も抱えている問題だという。ジャーナリストの藤倉善郎氏がレポートする。

教祖・文鮮明(ムン・ソンミョン=1920〜2012)が「理想家庭と世界平和を実現して幸福になるための道」(公式サイトより)として説いた「統一原理」を教義とする統一教会。しかし、教団は文鮮明の存命中から、霊感商法や高額献金、子供に信仰を強要する2世問題で、多くの家庭を破壊してきた。しかも「理想家庭」から程遠いのは、信者たちの家庭ばかりではない。そもそもその教祖一族からして、教団内での実権をめぐって骨肉の争いを繰り広げてきたのだ。
現在、統一教会を率いるのは、文鮮明の妻・韓鶴子(ハン・ハクチャ=79)。これに対して、主に2つの分派が存在する。1つは、教団を離れた3男・顕進(ヒョンジン=53)が率いる「家庭平和協会」。もう1つは、同じく教団を離れた4男・國進(クッチン=52)が支援し、7男・亨進(ヒョンジン=43)が指導者を務める「サンクチュアリ教会」だ。ジャーナリストの鈴木エイト氏が言う。
「分派の原因は後継者争いです。もともと文鮮明は、顕進氏を後継者としていました。しかし、亨進氏は自身が後継者であると主張し、文鮮明が亨進氏を後継として認める書面にサインする映像を撮影した。3男と7男の対立が表面化し、結局、顕進氏は後継者争いから脱落。ところが文鮮明の死後は、妻の韓氏が統一教会の総裁となって実権を掌握します。関連企業群を統括する経済部門『統一教財団』のトップだった國進氏や宗教部門のトップで後継者だったはずの亨進氏を要職から外しました」
顕進は米国内に複数の企業を擁する統一教会の資金管理団体「国際統一教会(UCI)」などを掌握し、2017年に「世界家庭教会」を設立して分派となった。亨進は2015年に「サンクチュアリ教会」を設立して分派。米国の銃器製造会社「カーアームズ」の創業者である國進がこれを支援している。
絡み合う親族間訴訟
「巨大コングロマリットである教団の資産や事業をめぐって、アメリカで訴訟も起こっています。顕進氏側がUCIの人事を変更したり、700億円以上の資産を移動させたことについて、現在では敵対している韓氏と亨進氏が提訴しています。一審では韓・亨進氏側が勝訴しましたが、今年8月の控訴審では一審判決が取り消され、差し戻し判決が下りました。今後もこの裁判は続きます」(鈴木氏)
顕進(家庭平和協会)に対する訴訟では共闘しているかに見える韓鶴子(統一教会本家)と亨進(サンクチュアリ教会)だが、両者間の訴訟もある。
統一教会における理想郷を意味する「天一国」という言葉を、2015年に統一教会側がアメリカで商標登録しようとしたため、サンクチュアリ教会側が商標審判部に申し立てを行った。今年6月、統一教会側が登録申請を取り下げると表明し、ようやく決着した。
また2018年には統一教会がサンクチュアリ教会に対し、統一教会の旧マーク(日章旗のような放射線を用いたデザイン)の使用中止と損害賠償を求めて提訴した。こちらはサンクチュアリ側が勝訴し、「家庭連合(統一教会)側は上訴権を放棄した」と言っている。
日本でも2つの分派が生まれると、一部の信者が統一教会本家を脱会して移籍している。
「2派とも日本でも活動しているのですが、たとえば2012年には3男(顕進=家庭平和協会)派が都内で集会を開こうとした際には、統一教会側が妨害を試みたこともある。7男(亨進=サンクチュアリ教会)派も、日本人信者が渋谷区松濤にある統一教会本部前で抗議活動をするなどしていた時期がありました」(鈴木氏)
2018年、7男派の男性が、統一教会本部前で抗議活動中に暴行を受けたとして、犯行は統一教会信者によるものだとするブログ記事を掲載。これを否定する統一教会は、仮処分を申し立て、ブログの削除が認められたと発表した。
文鮮明を崇拝するのは分派のほう?
「後継者争いの核心部分は、アメリカの訴訟等では財産や利権争いなのですが、信仰上の対立もあります。文鮮明の死から2年後の2014年、韓氏は自身を“無原罪独生女(ドクセンニョ)”と宣言する説法を行いました。さらに、韓国の統一教会の本拠地である清平(チョンピョン)に巨大な韓氏の石像も建てられた。2つの分派は、こうした点でも韓氏や現在の教団に反発しています」(鈴木氏)
もともと統一教会の教えでは、文鮮明こそが原罪のないメシアとされてきた。にもかかわらず、韓鶴子が文鮮明を差し置いて自らを神格化しようとしているというのだ。
実際、亨進は、今年6月に都内で開催した来日講演で、こんな言葉で韓を激しく罵っている。
「魔女のような詐欺女! 韓鶴子バビロン。アボニム(父・文鮮明のこと)の敵たち!」
この講演会場には統一教会本家の信者たちが潜り込んでおり、「お母様(韓鶴子氏)を悪く言うな!」などと大声で騒ぎ立て、スタッフによって会場の外につまみ出されていた。
「文鮮明色を薄め自らを神格化するかのような韓氏に対しては、分派だけではなく統一教会本家の中にも不満や不信感を抱いている信者がいるほど。教団を離れるほどではないにせよ、渋々従っている状態ではないでしょうか」(鈴木氏)
とはいえ、80年代から日本で社会問題化した霊感商法も、2007年に関連業者の刑事摘発を受け「コンプライアンス宣言」を行ってからも被害を出し続けた偽装勧誘や高額献金も、全て文鮮明の指導下で行われてきた。2つの分派は文鮮明を崇拝し、韓鶴子体制の教団を批判するが、その文鮮明こそが、霊感商法等で教団を築き上げてきた張本人である。
安倍元首相暗殺事件を受けて、韓国の統一教会の元ナンバー2、郭錠煥(カク・ジョンファン=86)が7月に記者会見を開き、「安倍元総理の死に責任がないとは思っていない」と謝罪した上で、高額献金問題も含め現在の教団を批判した。
実は郭氏は、統一教会本家と対立する3男派の指導的立場にある人物である。3男派では「郭グループ」と呼ばれる勢力もあるほどだ。
信者たちの家庭を破壊してまでカネを集め巨大化してきたのに、理想家庭を謳う教祖の一族が資産や教団内権力をめぐって骨肉の争いを繰り広げている。山上徹也容疑者もそんな統一教会に家庭を破壊された1人だが、彼の凶行の責任をめぐっても、統一教会本家と分派の対立が話をややこしくする。とことん罪深い一族だ。 

 

●Nスペ旧統一教会特集に視聴者ガッカリ…安倍元首相との関係に触れず 10/3
2日放送のNHKスペシャル「安倍元首相銃撃事件と旧統一教会 〜深層と波紋を追う〜」は、視聴者には"消化不良"だったようだ。
安倍元首相銃撃から3か月のタイミングでの特集は、前半に、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への恨みから犯行に及んだとされる山上徹也容疑者の親族や近しい教団関係者による証言や、韓国本部に所属していた関係者と教会改革推進本部の勅使河原秀行本部長のインタビューなどを取り上げた。後半の「教会側と政治」についてのパートでは、一橋大の中北浩爾教授(政治学)が、「ナショナリストの国民を大切にしなければならないはずの保守が日本の庶民を追い詰める統一教会と関係を持っていた。深刻で恥ずべき矛盾」などと自民党政治に厳しい意見を述べる場面もあった。
これには《政治も絡む問題の根深さを改めて確認するような内容だったが、ようやくNHKもここまで報道するようになったかと思う。》などと好意的な感想も見られたが、タイトルにもある安倍元首相と統一教会との関係には触れずじまい……。
また国葬後の放送であったこと、民放テレビ局の旧統一教会報道を超える内容ではなかったことから、《今夜のNスペ、やっと特集としての統一教会かよ。どうかしてる。もしかして国葬が終わるまでは放送する気がなかったとか? 日曜討論も今までろくにやらなくて今朝やっとちょっとやってたみたいだけど。今までのNスペならここまでやらないなんてありえないのに》 《やるタイミングがおかしい。もっと早くやるべき。まぁ国葬の前だと具合悪い内容だという事がわかった。内容も他の民放で見て知ってるものばかり。山上容疑者を取り上げるなら、殺された安倍前首相も掘り下げるべきでしょ?取り巻きばっかり調べて本質もなんもない。がっかり。》《今のところ、日テレ・TBSを始めとした民放で1ヶ月以上前から報道してる内容を超えるものがない…全部既出です》《やはり最後のトピック「政治との関係」は自民党に忖度したな。山上氏、統一、政治との関係なら銃弾に倒れた安倍との関係を特集すべき。下っ端国会議員、県議市議が選挙協力や政治的思想の合致で全国隅々まで結びついているのはわかったが、中枢の癒着度が肝心である。》《やっとNHKが多少マトモな報道したが、安倍や岸などの保守政治家やアメリカとの関係など本質的な問題については触れずじまい》《確かに2世問題などの解明は、あったが、とくに、政治との解明は、自民党の人数や、僅かな人についてであり、一番大事なのは、安倍元首相との関係は、一切報道は、なかった。NHKのメディアの限界か》といった具合で、手厳しい意見が相次いだ。

 

●安倍元首相と旧統一教会の関係調査 首相が改めて否定「限界ある」 10/6
岸田文雄首相は6日の衆院本会議で、自民党の安倍晋三元首相と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係について「ご本人の心の問題である以上、亡くなった今、十分に(関係を)把握することは限界がある」と述べ、調査する可能性を改めて否定した。共産党の志位和夫委員長の代表質問に対する答弁。
志位氏は関係者や書類などを通じた調査を求めたが、首相は「断片的にならざるを得ない。(安倍氏)本人が何も釈明・弁明できないなど、十分な調査はできない」と反論した。
また、2015年の教団名称変更に関し「政治家や大臣の政治的な関与や圧力はなかったと報告を受けている」と改めて説明し、再調査はしない考えを示した。一方、多数の自民党国会議員に教団との接点が確認されたことは「結果として当該団体の信頼を高めることがあった、との指摘は重く受け止める」と述べた。
●「旧統一教会に賛同する議員いない」 世耕氏が発言、野党は「えー」 10/6
自民党の世耕弘成参院幹事長は6日の参院本会議の代表質問で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と同党の関係について「多額の献金等を強いてきたこの団体の教義に賛同する我が党議員は一人もいません」と述べた。野党議員から「えー」などと否定する声が上がり、議場内はざわめいた。
安倍派に所属し安倍晋三元首相と近かった世耕氏は、教団との強いつながりが指摘されている安倍元首相について「戦後70年談話で『戦争に関わりのない世代に謝罪を続ける宿命を負わせてはならない』とした政治家」としたうえで「この教団とはまぎゃくの考え方に立つ政治家だった」と述べた。
さらに、同党は規模がさらに大きな多くの団体から支援を受けているとし、「党の政策に教団が影響を与えたことはない。信者数万人と言われる一宗教団体が政策決定に影響を与えることはない」とした。
野党からはヤジが飛び、議場内は騒然となった。こうした点について岸田文雄首相は答弁で言及しなかった。
●菅前首相の感動呼んだ弔辞と「旧統一教会」に混迷する政治 10/6
安倍晋三元首相の「国葬(国葬儀)」(9月27日)での、菅義偉前首相の友人代表の弔辞が感動を呼んでいる。
菅氏は、安倍氏の議員会館事務所の机の上に、読みかけの岡義武著『山県有朋』があるのを発見する。読んだ最後のページには、山県有朋が長年の盟友・伊藤博文に先立たれ、故人をしのんだ歌があり、安倍氏がマーカーペンで線を引いていた。
「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の世をいかにせむ」
菅氏は「今、この歌くらい、私自身の思いをよく詠んだ一首はありません」と2回読み上げて弔辞を終えた。
自らの死を予期していなかった安倍氏が死の直前に、図らずも山県の歌に目を留めていた。第二次安倍内閣以降、7年8カ月の長きにわたって内閣官房長官を務めた「盟友」の菅氏が、それを発見した。それらに因縁を感じざるを得ない。
「今より後の世をいかにせむ」との思いは、菅氏のみならず誰もが抱く思いだ。それくらい大きな存在を失った。実際、安倍氏亡き後、日本政治は混迷の度を深めている。参院選で大勝した岸田文雄内閣も支持率が急落だ。
安倍氏を狙撃した容疑者が、母親が旧統一教会の信者で高額献金によって家庭が破綻した。安倍氏が旧統一教会の広告塔と思って狙ったと供述したことから、容疑者に同情が集まり、逆に旧統一教会バッシングとともに関連団体を含めて「接点」のある政治家への批判が始まった。批判は安倍氏本人にも向けられている。
「接点」は与野党各党の国会議員にあったが、議席数自体が多い自民党に批判は集中した。当初は「党として関係がない」としていたが、メディアから多くの議員の「接点」が指摘され、批判に気押されて「社会的に問題が指摘される団体とは関係を持たない」と、旧統一協会とは関連団体を含めて関係断絶を宣言した。
従わなければ、離党を求める旨も表明した。国会議員には関係を自己点検させ、結果を公表したが、その後にも新たな「接点」が出てきては批判される無間地獄に陥っている。
旧統一教会には、高額献金などの問題があるとされ、関係者らの証言は報じられているが、公的機関が全体の実態を明らかにしたものではない。「社会的に問題が指摘される団体」とは、メディアや野党などがそう指摘している団体ということで、現時点で客観的基準とは思えない。
自民党は「臭いものにフタ」方式で、当面の批判を回避するために大急ぎで関係断絶を宣言したが、まず必要なのは「被害」の実態を把握するための検証だ。
問題があるなら司法判断し、法的な位置付けも見直せばよい。関係の是非はその過程で判断すべきことだ。順序を間違えている。
●なぜ「国葬」を統一教会は喜ぶのか│安倍元首相銃殺と旧統一教会問題 10/6
9月27日、安倍晋三元首相の国葬が行われた。事前の世論調査では、すべての媒体で反対が半数を超えたなかの実施だった。国葬の8日前、9月19日に東京大学國分研究室の主催で、東大駒場キャンパスで「国葬を考える」というシンポジウムが開催された。国葬の持つ意味とは何か、安倍元首相が国葬に値する人物だったのか。シンポジウムでの個々の発言を再録する。
弁護士として認識してほしい問題点
統一教会が持つ、他の宗教にない特色といいますか問題点にはいくつかありますが、まず2つだけご認識いただければと思います。
統一協会は単なる宗教団体ではありません。いくつかの部門を傘下に持っていまして、それによって「地上天国」実現を標榜する組織でございます。どういう分野かといいますと、ファンドレイジング、資金をつくるための経済組織、経済部門。それから政治家に食い込んで政治を動かす部門。それからアメリカのワシントン・タイムズ、日本の世界日報は大したことありませんが、韓国の世界日報(セゲイルボ)とか、それなりの言論出版の雑誌、定期刊行物をたくさん出版しておりまして、こういう部門その他たくさんの部門があるんですが、それを傘下にもって「地上天国」を目指すという、こういう複合体の組織です。
したがって外部から見ると、今よく「統一教会の関連組織」という言い方をされますが、我々から見るともう一緒じゃんと。単なる統一教会傘下の組織にすぎないというのが実状でありますが、やっぱりメディアのほうは気を遣いながら報道しているというのが実状です。
それから2つ目の特徴というか問題点としては、これはコリアン民族主義の教会です。日本は秀吉の時代から朝鮮半島に侵略してきたと。明治以降、朝鮮半島を日本軍が占領して様々な韓国・北朝鮮に人権弾圧をしてきたと。
その韓国人女性の怨念が、日本人の女性の子宮に取り憑いて子どもが生まれないとか不具の子どもが生まれるというそういうところまできているのだということを、文鮮明の今の妻のお母さん、文鮮明の熱狂的な信者であったのですが、その人が地上に降りてきてキム・ヒョンナムという天からの御言葉を伝える、「金持ちイタコ」みたいな女性がいるんですが、それに語らせるということをやっています。
「韓半島統一のために」日本人の信者は
皆さんだいぶお聞きになっていると思いますが、日本はエバ国家としての責任を果たせと。なぜかというと日本は戦前に韓国・北朝鮮に対して大変な罪を犯した。その罪滅ぼしをしなくてはいけない。そういう罪を負っているのだと。
統一教会の重要な観念で、罪感を植えつけるということがあります。まず一番重いのは原罪です。何が原罪かというと、我々人類はアダムとエバの時ならぬ時の、神が認めないセックスをしたことによって生まれたのが我々の先祖。したがって我々は色情因縁や様々な原罪を背負った人類だと。だからこそ我々の世の中はろくなものになっていない。そのため乱れた世の中になっている。
イエス・キリストは神が地上に遣わしたメシアだが失敗した。それを神様がそれを悲しんで地上に再臨のメシアということで遣わした。これが文鮮明なんです。そういうことで文鮮明あるいはその後継のハン・ハクチャは神が遣わした真のメシアだと。神が遣わした真のメシアの文鮮明あるいはハン・ハクチャが言うことは、神様の御言葉として受け入れなければならないと教えています。
そして、日本の信者はエバとしての任務を果たしなさいと言います。文鮮明は非常に下世話な男でございまして、韓半島は半島で男のシンボルだ、島国は女性であって女性のシンボルだ。この男と女の役割をきちっとわきまえなくてはならない。だから日本の信者たちは韓半島統一のために人材とお金を持ってこい。そう言っています。
死んだ後、霊界に行くのか、ゴミになってなくなっちゃうのか、あるいは天に昇るのか、それは皆さんそれぞれのお考えがあると思っていますがどう思いますか。統一教会の信者は、十月十日のお母さんのお腹の中は地上の80年間の生活の準備期間だと教えられます。これは当然でしょう。そして地上生活の80年は、肉体と心がありますが、この2つをともに育ててすばらしい愛情に恵まれる人間に育っていくための過程だと。
死んだ後どうなるか。肉体は土に還るけれども、心は霊人体となって永遠に霊界で生活することになる。これを何ヵ月もかけて死後霊界にあることを教え込みます。霊界は三層に分けられています。天国は義人・聖人が行くところ。中間霊界は真のために、みんなのために尽くした義人が行くところ。そして我々罪にまみれた人間は、色情因縁や財産の因縁や、あるいは殺傷の因縁などを抱えた、そういう我々の先祖は地獄で永遠に苦しみ続けている。
その地獄で永遠に苦しみ続けている我々の先祖はあまりの苦しさに、地上の我々に助けてくれと救いを求めている。その救いを求めて気が付いてほしいものだから地上の子孫に合図を送っている。その合図が交通事故にあったりガンにさせたり、あるいは不倫をさせたり結婚運に恵まれなかったり、様々な色情や罪やあるいは殺傷因縁。飛行機事故で死ぬのもそのせいなのだと。こういうことを教え込みます。
35年間、統一教会「被害」と闘って
これは決して馬鹿な話ではない。私自身、航空機の墜落事故の、日航機墜落事故や中華航空の墜落事故の遺族の代理人をしました。その時にやっぱり皆さん思うのは、なんで飛行機が落ちたか、それはわかった。しかしなんでよりによってあの時に私の愛する夫が、私の息子が、飛行機に乗らなくてはいけなかったのか。どうしても納得できないわけです。
その時に「それはね、あなたの先祖に因縁があって、それがこの事故に来たのよ。ご先祖が今霊界で苦しんでいらっしゃるから、あなたのご主人を助けるためにも真心を積みなさい。霊界で苦しんでいるご先祖を助けなさい」。こう言われた時に、100人に1人はひょっとしたらそうかもしれないと思うかもしれない。そういう話を延々と繰り返します。その中でやっぱり先祖のために尽くさなくてはいけない、私が素敵な男性と巡り合わないのはそのせいかもしれない、じゃあ頑張らなきゃだめだなと、そういう不安を長時間話をして植えつけるのが統一教会の本質です。
私どもは1987年(昭和62年)2月に東京で弁護士連絡会を設立して、活動を開始してもう35年になってしまいました。設立時に相談会をやったんですが、100人以上が2回の相談会においでになりまして、その被害相談が1回だけで10億円を超える相談がありました。
要するに印鑑を買わされ、その後に大理石の壺を買わされ、その後、多宝塔や釈迦塔を買わされ、1箱8万円の人参液、濃縮液を買わされその1箱8万円が100個で800万とか、200個で1600万とかのお金を払わされる。1人の平均被害額が4000万円位だったですね。そういう方々が弁護士会に押しかけられたわけです。
これはえらいこっちゃと。全国でも同じような相談会をやったらどんどん人が集まって深刻な被害を訴えられたものですから、私どもとしては5月に全国弁護士連絡会を発足して救済活動相談会を始めました。当時の弁護士会の会長などにも呼びかけて「とにかく日弁連でも取り組んでくださいよ」ということで要請しました。
その後、2007年から2010年にかけてやっと警察が動いてくれました。これは特定商取引法という法律の違反だということで、この禁止行為に違反した場合は刑事事件にもなる。罰金や軽い懲役ですが、それでも3年以下の懲役あるいは5年以下の懲役という刑罰があるんですけれども、この刑罰で30人以上の販売活動をしている女性信者幹部信者たちが逮捕拘留されました。
そういうこともあって統一教会としては不特定の消費者を街頭で呼び止めて、それで喫茶店やマンションに連れて行って、そこで長時間何回も説得して高額な商品を売りつけるということについては、さすがにやめざるをえなくなりました。
それで霊感商法をやめたかというとやめなかった。なぜかというと、韓国の幹部に支配された組織なんです。したがって韓国の幹部からエバ国家の使命としての資金をきちっと集めて韓国の組織にもってこいということを指示されますと、それは神様の指示ですから従わざるをえない。
安倍晋三氏の位置づけ
政治家との動きのことを簡単に申し上げます。まず勝共連合ということで共産主義に敵対するのだと、共産主義をぶっ潰すのだということで、統一教会の政治部隊は動くわけですけれども、じゃあ文鮮明は本当に反共産主義なのかというと本音のレベルではどうでもいいのだと。とにかく政界に食いついて浸透するための道具にすぎないという本音が彼の発言集には出ています。
2006年、安倍官房長官(当時)が福岡の集会で祝電を出したんですね。霊感商法でずいぶん統一教会の評判は悪かったですから、それまで表立って、政治家が名前を出して祝電を送るとかそういうことはあまりなかったんですが、安倍さんが名前を出して、しかも官房長官が祝電を出したというのは、我々としてもこれは大変だ、被害拡大になるということで抗議文を出したりもしました。
その後いろんなことがございました。いちいち抗議文を出したりもしていましたけれども、さすがに昨年2021年の天宙平和連合の9月のイベントで、トランプ大統領も動画を出しましたけれども、安倍晋三さんが動画メッセージを出した。その時に私自身これはまずいと思ったのは、「ハン・ハクチャさんに敬意を表します」という演説をされたんですね。
これの何がまずいのかというと、これを見た統一教会の信者は力づいてより頑張るようになりますし、「ちょっと疑問だな。金、金、金で、統一教会は付き合いかねるな」と迷いが生じていた信者たちも「ほら、見てごらん。安倍晋三さんですらこうやってハン・ハクチャさんを褒めているでしょう。それだけ統一教会は立派な組織なのよ。ナンバーワンの政治家からもこうやって認められている組織なのよ。地上天国実現は近いのよ」と言われるわけですよ。あるいは統一教会に入ろうかな、どうしようかなと迷っている人たちも、あの動画を見せられればその気になります。
安倍晋三さんに対して「先生の名誉のためにもこういうことについてはやめたほうがいいんじゃないですか。お願いだからこれ以上被害者が増えるようなことはしないでください」という心からのお願いをしました。しかしながら私どもの文書は受取拒否になりましたし、山口県の彼の事務所は受け取ってくれましたけれども何の返事もありませんでした。
まず私どもの立場としては、国葬についてどうこうと語る学識も私にはありません。けれども、私どもの共通の願いは何かというと、これ以上、統一教会の被害で苦しむ信者たちを増やさないでほしい。また統一教会の策動によって資金・献金集めのノルマ漬けになっている中で、信者たちの苦しみがこれ以上、金まみれで苦しむことを防いでほしい。
また、何よりも苦しいのはその家族たちなんです。全く理解できない奥さんの行動、あるいは母親の行動、あるいは子どもたちの行動で、本当に理解ができないものだから夫や子どもやあるいは母親や父親は苦しみ続けるわけです。そして家族に亀裂が生じて家庭が崩壊の危機になるんです。何とかこれ以上苦しまないでしてほしい。それが我々の本当に切実な願いです。
じゃあ国葬をするとどうなるか。統一教会の信者、統一教会の幹部は間違いなく喜びます。今、「安倍晋三先生は霊界の義人・聖人のいる高い位置にある」、統一教会の信者たちの中で間違いなくそう教えられています。その教えを今、国葬によって、日本国民全体が賛美した、認めたということになるんです。
そうすると信者たちはどう受け止めるでしょうか。あるいは信者の家族たちはそれによってどれだけ傷つくでしょうか。また子どもたちはどう思うでしょうか。それを考えると、国葬について私どもの立場から言うと悲しい。苦しいです。それをぜひ考えていただきたいです。

 

●安倍元首相と旧統一教会の“協力関係” 事務所関係者が語る 10/8
7月、突然の凶弾に倒れた安倍元首相。地元の山口県下関市では、多くの人がその死を悼んだ。今回の事件の動機とみられるのが、安倍元首相と旧統一教会の関係だ。
2021年、安倍元首相は旧統一教会の関連団体「UPF」の会合にメッセージを送っているが、実際にどれほどのつながりがあったのだろうか。安倍元首相の地元・下関市で20年に渡り選挙などに関わってきた人物が取材に応じた。
団体幹部が安倍事務所に出入り
安倍事務所の内情を知る人: 統一教会の下関の事務所が、安倍事務所から徒歩で200メートルくらいのところにあって。男性の幹部の方が定期的に事務所に出入りしていた。選挙戦になると電話作戦。イベントで動員をかけるときも、統一教会、世界平和統一家庭連合に何人か出してくれということで、事務所の方が声かけをして。事務所との協力関係にあった
この人物は、安倍事務所が旧統一教会と協力関係にあったと明言した。しかし、安倍元首相も当初は旧統一教会と一定の距離を置いていたという。
安倍事務所の内情を知る人: 関係者が事務所に来ることを拒むことはなかったけど、直接、安倍先生が(旧統一教会の)会合に出席することはなかった。30年前に報道があって、霊感商法の問題であったり、統一教会は反社会的勢力であると
「選挙に勝つため」保守政治と宗教
それにもかかわらず、なぜ安倍元首相は旧統一教会との関わりを深めていったのだろうか。
安倍事務所の内情を知る人: 特に親密になったのが、第二次政権の前くらいから。(第一次政権時に)いろいろとやり残したことがあると。特に憲法改正であったりとか、真正保守として再び日本を取り戻すという意味で、ご自分が総理大臣にまた返り咲きたいと
2007年、体調不良などを理由にわずか1年で総理大臣の職を辞した安倍元首相。その後、2009年の衆議院選挙で大敗した自民党は民主党に政権を明け渡し、野党となった。そして、保守政治と旧統一教会はつながりを深めていった。
安倍事務所の内情を知る人: 選挙には絶対勝たないといけない。そして政権与党でなければいけない。全国比例となると創価学会の票は公明党に行くわけですから、自民党の中で確実な宗教票、トップが指示を出せば動く、その確実な宗教票がそんなになかった
安倍事務所の内情を知る人: 統一教会は公表の信者数は8万人と言われていますが、実質は6万人。その信者のプラスアルファから得た統一教会の活動で取ってきた票を入れれば、8万を切る数字。第二次安倍政権を誕生させるために統一教会の力が必要だった。安倍晋三さんにしても自民党にしても、イデオロギーよりも、とにかく選挙に勝つことが(必要だった)
距離を置いていたが…政権続投へ強い思い
前参議院議員で、旧統一教会に詳しいジャーナリストの有田芳生氏は、安倍元首相が旧統一教会に接近した理由についてこう話す。
ジャーナリスト 有田芳生氏: 安倍さんが幹事長の時に「安倍さんの所に統一教会の人がしょっちゅう会いに来るんじゃないんですか?」と聞いたことがあるが、「いや、しょっちゅう来るんだ」と言っていた。「会うんですか」と尋ねたら「会わないようにしている」との返答だった
ジャーナリスト有田芳生氏: 当時、統一教会は霊感商法をやっていたので、安倍さんだけはなく多くの自民党員が統一教会と距離を置いていた。ただ、安倍さんは一旦下野をして、その後、第二次安倍政権になって、どうしても政権を続けたいという強い思いがあった。そういう時に支持してくれる人たちに近付くというのは、総理としての宿命だったと思う

 

●統一協会 安倍元首相と深いきずな 開祖供養行事で新たな祈り指示 10/9
統一協会(世界平和統一家庭連合)と安倍晋三元首相の関係について、岸田文雄首相は調査を拒否しています。ただ安倍氏との“きずな”は、統一協会内で周知の事実でした。信者らが見聞きした癒着の実態とは―。
安倍氏が銃撃されたのは7月8日。当時、統一協会は開祖、文鮮明の没後10周年の特別な供養期間中でした。事件の15日後、特別供養に新たな祈りを加えるよう信者に指示を出しました。
「食口(シック=信者のこと)が安倍元首相のご冥福と日本が一つになることを祈る」と。
子どものころから両親に信仰を強要されてきた元2世信者は、「政治家の冥福を祈るという指示は初めてみました」と驚きます。
担当者に注意
安倍氏と統一協会の関係はいつ頃から深まったのか―。
安倍氏は官房長官だった2006年5月下旬、集団結婚式を兼ねて開かれた「天宙平和連合(UPF)祖国郷土還元日本大会」に祝電を送りました。UPFは統一協会の開祖文鮮明の妻韓鶴子が総裁のダミー団体です。安倍氏は「岸信介元総理大臣のお孫さん」と紹介されました。
ただ当時の安倍氏は、現在ほど統一協会と密接な関係があるとはみられていませんでした。実際、祝電を送ったことについて安倍氏は「誤解を招きかねない対応であるので、(事務所の)担当者によく注意した」とのコメントを出しています。祝電はまずかった、というのです。
ところが安倍氏は昨年9月に、同じUPFが韓国で開いた大会にビデオメッセージを送ります。ここで安倍氏は「演説の機会をいただいたことを光栄に思います」と述べ、こんな発言をしました。
「今日に至るまでUPFとともに世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」
返り咲く前に
かつては秘書を注意したのに、一転して自ら韓鶴子総裁を大絶賛したのです。
この変化の裏に何があったのか―。
安倍氏は06年9月に初めて首相に就任したものの、わずか366日で退陣に。09年には自民党が政権から滑り落ちました。再び安倍氏が首相についたのは12年12月です。
統一協会関係者は言います。「国際勝共連合の梶栗正義会長が、安倍氏が首相に返り咲く前に接点をもっていた。うまく協会とつないだのだろう」。勝共連合とは統一協会の政治組織です。
ジャーナリストの鈴木エイト氏が入手し、全国霊感商法対策弁護士連絡会に提供した資料によると、梶栗氏は昨年10月に統一協会の日曜礼拝でこんな裏話を披露していました。
―安倍氏以外の首相経験者3人にアプローチしたが「布教のために利用したいだけでしょ」と断られた。安倍氏との信頼関係は一朝一夕でできたわけではない。
権力の座からすべり落ちていた安倍氏に対して、政権復帰前から接触してきたことが功を奏した形です。
安倍氏側近の選挙応援 “志を共にしている政治家”
本部のメッセージ 本紙入手
昨年9月、UPFの大会で、安倍氏のビデオメッセージを見た信者たちはどんな反応をしたのか―。
統一協会の日曜礼拝で梶栗氏は、こんな自慢話をしています。
―信者や教会長が「うわーこれどうなっているんですか」「何が起こっているんだ」「すごいことだ」と大騒ぎになった。
“親密さ”強調
さらに梶栗氏はビデオメッセージが、「日本の再建のために信頼して一緒にできる団体はどこか」と安倍氏が統一協会に信頼を寄せる内容だったと説明。信者に統一協会と安倍氏の“親密さ”を強調してみせました。
事あるごとに安倍氏との近い関係をひけらかす統一協会。内部で信者は安倍氏をどう見ていたのか―。
信者の両親を持つ元2世信者は、「信者だったときは安倍元首相を『統一協会を応援する人』『善なる人』ととらえていました。安倍氏の祖父である岸信介元首相、父親の安倍晋太郎元外相についても協会で教わりました」と証言します。
統一協会は安倍氏側近をも選挙で支援しました。今年7月の参院選で自民党比例候補だった井上義行議員です。井上氏は、第1次安倍政権で首相秘書官を務めました。派閥は安倍派です。一部報道では安倍氏側が統一協会に井上氏の支援を依頼したとされています。
本紙は統一協会本部が井上氏の応援を求めて信者たちに送ったメッセージを入手しました。
メッセージでは統一協会の理想世界を実現する「重要な取り組みとして、私たちと志を共にしている政治家の井上よしゆき先生を応援しています」と強調しています。
そして井上氏が安倍氏の首相秘書官だったことを紹介し、「井上先生をぜひ共に応援していただきたい」と要請。協会ダミー団体「世界平和連合」が主催する井上氏と青年代表とのトークセッションに参加するよう求めています。
役職者が指示
実際、統一協会元信者らからは、井上氏を応援するよう求められたという証言が相次いでいます。ある信者は井上氏を応援するよう協会の役職者から指示をうけたといいます。元2世信者は「信者の母親から電話で井上氏への支援を求められた」と語ります。
統一協会は安倍氏を最大の「広告塔」として使い、安倍氏側は統一協会を選挙の手足に使った―そんな癒着の実態が浮かび上がります。
安倍事務所に、安倍氏側が統一協会に井上氏の支援を要請したか質問しましたが、回答はありませんでした。
●「不誠実」「いつもの手口」旧統一教会の3度目会見 紀藤弁護士が一刀両断 10/9
9月22日、旧統一教会が会見を行い、「教会改革推進本部」を設置して「過度な献金」などがないように指導を徹底していくなどと説明した。
会見について、旧統一教会の問題に詳しい紀藤正樹弁護士に聞いた。
会見は「不誠実」で「いつもの手口」
安倍元首相への銃撃事件以降、3回目となった世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の会見。
新しく「教会改革推進本部」を設置し、本部長に就任した勅使河原秀行(てしがわら・ひでゆき)氏が出席し、改革の方向性として「威迫や困惑を伴うような勧誘行為をしない」「信者の経済状態と比べ、過度な献金とならないよう配慮する」など、2009年に発表した内容の指導を再度徹底するとした。
安倍元首相の事件で逮捕された山上徹也容疑者の家庭については、「過度な献金だった」と認める一方で、今後の具体的な改革の進め方については「これから詰めていく」として詳しく説明しなかった。
紀藤弁護士は、今回の会見を「“不誠実”で“いつもの手口”」とみている。
まず、今回の会見に出席した「教会改革推進本部」の勅使河原本部長について、「彼が会見で話すこと自体が不誠実。責任者でもなく、組織の実態も知らない。具体的な対応はできないのでは」と指摘する。
今後、国会で議論される「解散命令」を脅威に感じている
また、3回目の会見がこのタイミングで行われた理由については、「安倍元首相の国葬の前に火消しをしたかった。今後、国会でも議論される“解散命令”を脅威に感じているため、2009年のコンプライアンス宣言時と一緒で、社会問題化をかわすだけのひどい会見」という見方だ。
宗教法人法で、公共の福祉を害するような法令違反があった宗教法人には、裁判所が“解散命令”を出すことができる。現在政府は消極的だが、国会で野党が問題提起をするとみられている。
過度な献金などが問題視されている旧統一教会。改革本部設置で、本当に生まれ変わることはできるのか。

 

●旧統一教会から親族を奪還したジャーナリストが語る「説得のハードル・・・」 10/10
安倍晋三元首相の銃撃事件以降注目されている旧統一教会だが、信者の家族に与える影響は甚大だ。電話やメールで相談を受ける「全国統一協会被害者家族の会」に寄せられた相談件数は、今年の5月に6件、6月に12件だったが、安倍元首相銃撃事件が起きた7月は109件、8月は136件と急増している。旧統一教会問題を長く追及する紀藤正樹弁護士が語る。
「家族の相談で多いのは、子供が入会するケースと、夫婦のどちらかが入会するケース。子供の場合は急に連絡が取れなくなり、親が右往左往します。夫婦の場合は信者になった妻が家事をしない、家を空けがちになるなど、夫婦喧嘩が増えて家庭生活が成り立たなくなる。
また、どちらのパターンも高額献金などが家族の絆を引き裂きます。親族に信者が1人いるだけでそれまでの関係が悪化し、崩壊していく」
気づいた時にはすでに甚大な被害が発生している、というケースも見られる。
「一般の新興宗教は家族を勧誘する場合が多いが、統一教会は家族と揉めることを嫌がり、入会を家族に知られないようにする」(紀藤弁護士)
都内の60代男性・Bさんは2006年頃、突然の被害発覚に驚いた。
「親戚のひとりから突然『お母さんが大変なことになってるから、ちょっと話聞いてあげて』との連絡があったんです。実家に帰って確認すると、10年前に亡くなった父の退職金を含めて4000万円ほどあった口座の残高がカラになり、財布にはパンを買うお金もなかった。先に夫を亡くした母に、近所にいる統一教会の信者が取り入ったようで、気づいた時には母は一文無しで食べるものにも困っていました。
母は怒られるからと、親戚に『息子には言わないでくれ』と話していたらしいんです。地元の友人と楽しくやっていると思って放っておいたのがよくなかったのか……。話をした時には母はすでに脱会を決意していました。逆に言えば、母がそうなるまで気づけなかったということです」
ITジャーナリストの星暁雄氏は、1995年に親族を脱会させた経験を持つ。
脱会カウンセラーの牧師と数か月かけて準備し、「お祝い事をするから」と信者の親族をマンションに呼び出し、テレビのない部屋から一歩も外に出ずに保護説得に励んだ。
その過程で家族が激しくぶつかることがあった。
「話し合いの途中、本人が兄弟に対して『昔からいじめられていた』と不満をぶつけ、親に対しても『構ってくれなかった』と文句をぶちまけた。本人と家族が激しく言い合って喧嘩になり、お互いに涙を見せる場面もありました。家族に対する思いを吐き出すことで、関係を作り直す面もあったのでしょう」(星氏)
衝突が和解を生み脱会作戦は奏功したが、現在は脱会の困難がさらに増していると星氏は語る。
「当人を半ば強制的に保護するやり方は、2014年に裁判で不利な判決が出たこともあり、現在は合意の上で保護する方法が主流になっていて、説得のハードルは上がっている。また家族による保護説得は心身の疲労も時間的な負担も大きく、職を失うリスクもある」
●鈴木エイト氏 元2世信者会見の中止要求に見た旧統一教会の実態 10/10
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)について20年以上、取材を続けているジャーナリスト鈴木エイト氏が10日、日本テレビ系「情報ライブミヤネ屋」(月〜金曜後1・55)に生出演し、教団の元2世信者の女性が開いた会見中に教団側から中止を求める文書が届いた件についてコメントした。
今も両親が熱心な信者というこの女性は8日、日本外国人特派員協会で行われた会見で「生まれたころから自分の意思に関係なく礼拝参加や教義本訓読の強制、恋愛禁止などを教えられ、それらを破った場合、“地獄に落ちる”などと脅す教育を受けてきました」などと訴えた。献金のため貧しい生活を強いられ、身なりを理由にいじめを受け続けてきたという。
会見開始から50分ほどたったころ、会見に同席した女性の夫が、教団側からファクスが届いたと報告。その内容は、会見の中止を求めるものだった。ファクスには女性の両親の署名も入っていたが、教団側の揺さぶりにも女性はそのまま会見を続け、涙ながらに宗教団体への法整備などを訴えた。
番組によると、教団側はこの日、英語と日本語でそれぞれ、会見中止を求めるファクスを特派員協会側に送ってきたという。会見には世界中のメディアの日本特派員が出席。鈴木氏は「これまで統一教会はいろんな発信をしているんですけど、海外でこういう元2世信者の切実な訴え、教団の実態を何としてでも海外に配信されたくなかった。そこが一番大きいと思う」と、教団の思惑を推測した。
教団側からのファクスには、「彼女が言っている通り、彼女は精神に異常をきたしており、安倍元首相の銃撃事件以降、その症状がひどくなってしまっていて、多くのうそを言ってしまうようになっている」と、女性への人格攻撃とも取れる内容も含まれていた。鈴木氏は「今回、こういった形で元2世信者の訴えが海外に届いてしまう。そこを非常に恐れていた。海外の人権団体などを使ってそういうアピールを統一教会がしていたんですけど、そういうところが全部無に帰してしまうのではというところで、元女性信者の人格をここまで傷付けてまでこういうことをしてしまう教団側のひどさ、悪質さが如実に表れた出来事だと思います」と糾弾した。 
 

 

●岸田文雄首相の所信表明演説 10/3
1.はじめに
第210回国会の開会に臨み、日本を守り、未来を切り拓(ひら)く覚悟を新たにしています。足下の物価高への対応に全力をもって当たり、日本経済を必ず再生させます。多層的な外交の展開と防衛力の抜本的強化を通じて、アジアと世界の平和と安定を断固守り抜いてまいります。世界規模の物価高。急速に厳しさを増す、安全保障環境。2年半にもわたって世界を苦しめてきている感染症危機や、エネルギー・食料危機、さらには、温暖化による気候危機。半年以上も緊迫した情勢が続く、ロシアによるウクライナ侵略。国際秩序を揺るがす、地政学的挑戦。大きな変わり目を迎える、核不拡散体制。今、日本は、国難とも言える状況に直面しています。世界が、そして日本が直面する歴史的な難局を乗り越え、我が国の未来を切り拓くため、政策を、一つひとつ果断に、かつ丁寧に実行していきます。どんな困難も、皆が力を合わせ、一歩一歩前に進むことで、必ず乗り越えることができる。先日訪問した福島で、私はその思いを一層強くいたしました。長期にわたり、帰還が困難とされた区域への住民の帰還。55の国と地域のうち、43の国と地域での輸入規制の撤廃。産業創出の拠点となる、福島国際研究教育機構の設立。私に、復興に向けた強い思いを語ってくれた町役場の職員。福島を、「ワクワクするような地域にしていきたい」と語ってくれた移住してきた若者。多くの皆さんの力により、福島は、着実に、復興に向け、歩みを進めています。東日本大震災という未曽有の国難からも、立ち上がることができました。そうであれば、今我々が直面する困難も、必ずや、乗り越えていける。私は、そう確信しています。共にこの国の未来を見据え、歩みを進めていこうではありませんか。
2.政治姿勢
先週執り行った安倍元総理の国葬儀は、厳粛かつ心のこもったものとなりました。海外からお越しになった多数の参列者の方々から寄せられた弔意に対し、礼節をもって、丁寧にお応えすることができたと考えております。その際、国民の皆様から頂いた様々なご意見を重く受け止め、今後に活(い)かしてまいります。また、旧統一教会との関係については、国民の皆様の声を正面から受け止め、説明責任を果たしながら、信頼回復のために、各般の取り組みを進めてまいります。政府としては、寄せられた相談内容を踏まえ、総合的な相談窓口を設け、法律の専門家による支援体制を充実・強化するなど、悪質商法や悪質な寄付による被害者の救済に万全を尽くすとともに、消費者契約に関する法令等について、見直しの検討をいたします。国民の皆様からの厳しい声にも、真摯(しんし)に、謙虚に、丁寧に向き合っていくことをお誓いいたします。「厳しい意見を聞く」姿勢にこそ、政治家岸田文雄の原点があるとの初心を、改めて肝に銘じながら、内閣総理大臣の職責を果たすべく、全力で取り組んでまいります。
3.経済政策
日本経済の再生が最優先の課題です。我が国は、コロナ禍を乗り越え、社会経済活動の正常化が進みつつあります。しかし、足下では、ロシアによるウクライナ侵略と円安によるエネルギー・食料価格の高騰、世界の景気後退懸念が、日本経済の大きなリスク要因となっています。新しい資本主義の旗印の下で、「物価高・円安への対応」、「構造的な賃上げ」、「成長のための投資と改革」の三つを、重点分野として取り組んでいきます。
4.物価高・円安対応
まず、「物価高・円安への対応」です。我々は、食料品とエネルギーを中心に、生活に身近な商品の値上がりが続く事態に対し、機動的な対応を行ってきました。先月には、食料品やガソリンの値上がりを抑えるための追加策を取りまとめました。特に家計への影響が大きい低所得世帯向けに、緊急の支援策を講じました。間を空けることなく、今月中に、総合経済対策を取りまとめ、何としても、この物価高から、国民生活と事業活動を守り抜きます。食料品については、既に輸入小麦価格、配合飼料の負担を10月以降も据え置く措置を講じています。これから来年春にかけての大きな課題は、急激な値上がりのリスクがある電力料金です。家計・企業の電力料金負担の増加を直接的に緩和する、前例のない、思い切った対策を講じます。さらには、エネルギー安定供給の確保、再エネ・省エネの推進、農産物の国内生産を通じた食料安全保障の確保など、エネルギー・食料品について、危機に強い経済構造への転換に取り組みます。円安に対しては、これらの対応と併せ、円安のメリットを最大限引き出して、国民に還元する政策対応を力強く進めます。今月11日から、ビザなし渡航、個人旅行再開など、インバウンド観光を復活させ、訪日外国人旅行消費額の年間5兆円超の達成を目指します。全国旅行支援やイベント支援も再開し、コロナ禍からの需要回復、地域活性化を図ります。さらに、円安メリットを活かした経済構造の強靱(きょうじん)化を進めます。半導体や蓄電池の工場立地、企業の国内回帰や、農林水産物の輸出拡大などに取り組みます。
5.構造的な賃上げ
次に、「構造的な賃上げ」です。なぜ、日本では、長年にわたり、大きな賃上げが実現しないのか。そこには、賃上げが、高いスキルの人材を惹(ひ)きつけ、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げを生むという好循環が、機能していないという、構造的な問題があります。一たび、このサイクルが動き出せば、人への投資が更に進み、この好循環は加速していきます。そのため、賃上げと、労働移動の円滑化、人への投資という三つの課題の一体的改革を進めます。物価高が進み、賃上げが喫緊の課題となっている今こそ、正面から、果断に、この積年の大問題に挑み、「構造的な賃上げ」の実現を目指します。まず、官民が連携して、現下の物価上昇に見合う賃上げの実現に取り組みます。公的価格においても、制度に応じて、民間給与の伸びを踏まえた改善等を図るとともに、見える化を行いながら、看護、介護、保育をはじめ、現場で働く方々の処遇改善や業務の効率化、負担軽減を進めます。また、リスキリング、すなわち、成長分野に移動するための学び直しへの支援策の整備や、年功制の職能給から、日本に合った職務給への移行など、企業間、産業間での労働移動円滑化に向けた指針を、来年6月までに取りまとめます。特に、個人のリスキリングに対する公的支援については、人への投資策を、「5年間で1兆円」のパッケージに拡充します。あわせて、同一労働同一賃金について、その遵守(じゅんしゅ)を一層徹底してまいります。新しい働き方に対応するため、個人が、フリーランスとして、安定的に働ける環境を作るべく、法整備にも取り組みます。また、中小企業における賃上げに向け、生産性向上とともに、公正取引委員会等の執行体制を強化し、価格転嫁を強力に進めます。
6.成長のための投資と改革
そして、「成長のための投資と改革」です。社会課題を成長のエンジンへと転換し、持続的な成長を実現させる。この考えの下、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DXの4分野に重点を置いて、官民の投資を加速させます。第1の科学技術・イノベーションについては、国家戦略・国家目標の策定を進めてきた、量子・AI・バイオなどの分野において、官民の投資をこれまで以上に進めていくための方策を、早急に具体化します。また、文理の枠を超えて行う、成長分野への大学等の学部再編促進や、若手研究者の育成に向けた支援強化、処遇見直しを通じた教職員の質の向上にも取り組みます。第2のスタートアップについては、私自身、全国各地で、多くのスタートアップの創業者と意見交換を行ってきました。日本ならではの技術を用いた最先端のバイオものづくり。ITを活用しながらの地域課題の解決。東南アジアでの積極的な事業展開。福島の地でのロボットの遠隔操作技術の開発。いずれの皆さんも、この国の未来を切り拓いていくにふさわしい、大変頼もしい方々ばかりでした。第2、第3のトヨタ、ホンダ、ソニーは、彼ら挑戦者の中から生まれる。その強い思いから、本年をスタートアップ元年とし、スタートアップ5年10倍増を視野に、5カ年計画の策定に取り組んでいます。公共調達における優遇制度の抜本拡充、税制上の優遇措置や資金面の支援に加え、若く優れたIT分野の才能の発掘・育成、日本と海外のスタートアップ・エコシステムの接続など、スタートアップ人材への投資も進めます。第3に、グリーン・トランスフォーメーション、GXへの投資です。年末に向け、経済・社会・産業の大変革である、GX推進のためのロードマップの検討を加速します。その中で、成長志向型カーボンプライシング、規制制度一体型の大胆な資金支援、トランジション・ファイナンス、アジア・ゼロエミッション共同体。これまで申し上げてきた政策イニシアチブを具体化していきます。同時に、GXの前提となる、エネルギー安定供給の確保については、ロシアの暴挙が引き起こしたエネルギー危機を踏まえ、原子力発電の問題に正面から取り組みます。そのために、十数基の原発の再稼働、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設などについて、年末に向け、専門家による議論の加速を指示いたしました。第4に、デジタル・トランスフォーメーション、DXへの投資です。デジタル田園都市国家構想の実現に向けた取り組みを競い合う、「夏のDigi(デジ)田(でん)甲子園」を開催しました。多くの方に参加いただき、デジタル活用による地方創生に向けた期待の高まりが、感じられる大会となりました。DXの一層の推進に向け、マイナンバーカードについて、健康保険証との一体化など、利便性の向上を飛躍的に進め、おおむね全ての国民への普及のための取り組みを加速するとともに、地域でのデジタル技術の社会実装を重点的に支援していきます。また、メタバース、NFTを活用したWeb3.0サービスの利用拡大に向けた取り組みを進めます。産業のコメと言われ、大きな経済効果、雇用創出が見込まれ、経済安全保障の要でもある半導体は、今後特に力を入れていく分野です。熊本に誘致したTSMCの半導体工場は、地域に10年間で4兆円を超える経済効果と、7千人を超える雇用を生む、と試算されています。我が国だけでも、10年間で10兆円増が必要とも言われるこの分野に、官民の投資を集めていきます。今回の総合経済対策では、中核となる日米共同での次世代半導体の技術開発・量産化や、Beyond(ビヨンド)5Gの研究開発など、最先端の技術開発強化を進めます。規制改革にも取り組みます。2年で、アナログ的規制を一掃し、新産業の創出、人手不足の解消、生産性の向上や所得の増大につなげます。
7.新型コロナ
ここで、新型コロナ対応についても申し上げます。この1年、国民の命と健康を守りながら、社会経済活動を止めない。専門家の皆さんの意見を聞きながら、この二つの両立に全精力を傾けてまいりました。3年ぶりに、緊急事態宣言等の行動制限を行わずに、今年の夏を乗り切れたのは、国民の皆様お一人おひとりが、基本的な感染対策を徹底してくださったおかげです。また、日々の感染リスクがある中で、医療、福祉の現場を支えていただいている方々に、厚く御礼申し上げます。これから、秋が深まるにつれ、インフルエンザと新型コロナが同時流行した時の備えが重要となります。何よりも重要なのは、ワクチンによる予防です。先月から、オミクロン株に対応した新型ワクチンの接種を開始しました。今月末までには、対象者全員分の新型ワクチンが輸入される見込みです。年末年始に備えて、山場となる今月から11月にかけて、接種券の配布、会場確保など、1日100万回を超えるペースの体制を整備して、ワクチン接種を加速していきます。インフルエンザとの同時流行を想定した外来等の保健医療体制の確保も進めます。また、先月には、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行の全体像をお示ししました。科学的知見に基づきながら、できるだけ平時に近い社会経済活動が可能となるよう、取り組んでまいります。マスクについては、引き続き、屋外は原則不要です。近くで会話をしない限り、屋外でのマスクは必要ありません。基本的な感染対策はメリハリをつけて、マスクは場面に応じた適切な着脱に努めていただきたいと思います。これらの取り組みに加え、次の感染症危機に備え、法律に基づき、機動的かつ効果的な緊急時対応が可能となるよう、感染症法等の改正案を提出いたします。また、司令塔機能の強化、日本版CDCの創設にも取り組んでいきます。
8.災害対策
今年も、全国各地で、大雨、台風、地震、噴火などの自然災害が相次ぎました。お亡くなりになられた方々に、哀悼の意を表するとともに、被災された全ての皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。線状降水帯による豪雨など、災害が、激甚化・頻発化する中で、国民の生命・財産を守り、災害の被害に遭う方を、一人でも減らすことは、我々の使命です。5カ年加速化対策を推進するとともに、更なる取り組みのための新たな基本計画を策定し、中長期的かつ継続的に、防災・減災、国土強靱化に取り組みます。
9.包摂社会の実現
また、新しい資本主義を支える基盤となるのは、老若男女、障害のある方もない方も、全ての人が生きがいを感じられる多様性のある社会です。全世代型社会保障の構築を進め、少子化対策、子育て・こども世代への支援を強化するとともに、女性活躍、孤独・孤立対策など、包摂社会の実現に取り組みます。昨年の福岡に続き、静岡で、幼いお子さんが送迎バスの中に置き去りにされ、お亡くなりになるという痛ましい事故が再び起こってしまいました。二度とこうした悲劇を繰り返すことがないよう、送迎バスの安全装置の義務化と支援措置を含む、緊急対応策を講じてまいります。
10.経済対策
以上、申し上げてきた、日本経済再生、新型コロナをはじめとした山積する課題に対応するため、先日、新たな総合経済対策の策定を指示しました。今月中に取りまとめを行い、その内容を踏まえて、今国会に補正予算を提出いたします。全力で、国民の暮らしを守り、この国の未来を切り拓いていこうではありませんか。
11.外交・安全保障
ロシアによるウクライナ侵略が始まり、半年以上が経ちました。いわゆる「編入」の動きや、部分的動員令の発動により、新局面に入ることが懸念される事態となっています。ロシアの暴挙は、国際秩序の根幹を揺るがすものです。対ロ制裁、対ウクライナ支援を、引き続き強力に推し進めます。また、アジア唯一のG7メンバーとして、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化を、インドや東南アジア、アフリカ、中南米などの国々と共有する努力を重ねていきます。私は、「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」との強い危機感から、力による一方的な現状変更の試みは、世界のいずれの地域でも許されないと、繰り返し訴えてきました。東シナ海、南シナ海を含め、我が国周辺でも安全保障環境が急速に厳しさを増す中、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くため、抑止力と対処力を強化することは、最優先の使命です。その観点から、我が国防衛力の5年以内の抜本的強化に必要となる防衛力の内容の検討、そのための予算規模の把握及び財源の確保を、一体的かつ強力に進め、予算編成過程で結論を出します。これまで議論を進めてきている、新たな国家安全保障戦略等を本年末までに策定します。いわゆる「反撃能力」を含め、国民を守るために何が必要か、あらゆる選択肢を排除せず、現実的な検討を加速します。あわせて、海上保安能力の強化にも取り組みます。経済安全保障も重要な課題です。経済安全保障推進法の円滑な施行とともに、宇宙、海洋、サイバーなどの重要技術の育成に取り組みます。我が国の安全と繁栄にとって、日米同盟の強化がますます重要です。抑止力と対処力を一層強化し、地域の平和と安定及び国際社会の繁栄に貢献していきます。同時に、基地負担軽減にも引き続き取り組みます。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進めます。あわせて、強い沖縄経済を作るための取り組みを進めます。「自由で開かれたインド太平洋」を推進するため、日米豪印等も活用しつつ、実質的な協力を一層進め、ASEANや欧州、大洋州などのパートナーとの連携を強化します。そのための新たなプランを策定します。経済面でも、IPEF等の取り組みにおいて具体的な成果を目指します。先月、日中国交正常化50周年を迎えました。両国間には現在でも様々な懸案がありますが、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案も含め、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する、「建設的かつ安定的な関係」を日中双方の努力で構築していきます。ウクライナ情勢によって日ロ関係は厳しい状況ではありますが、我が国として、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持します。韓国は、国際社会における様々な課題への対応に協力していくべき重要な隣国です。国交正常化以来築いてきた友好協力関係の基盤に基づき、日韓関係を健全な関係に戻し、更に発展させていく必要があり、韓国政府と緊密に意思疎通していきます。最重要課題である拉致問題について、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で取り組みます。私自身、条件を付けずに金正恩(キムジョンウン)委員長と直接向き合う決意です。日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指します。先般のNPT運用検討会議において、ロシアの反対により、成果文書が採択されなかったことは極めて遺憾です。年内に広島で開催予定の「賢人会議」も活用し、「ヒロシマ・アクション・プラン」に沿って取り組みを進め、NPT体制を維持・強化することで、「核兵器のない世界」に向けた現実的な歩みを進めていきます。加えて、先日示した国連の理念実現に向けた日本の決意の下、安保理改革を含む国連の機能強化に取り組みます。来年、我が国は、安保理非常任理事国となり、5月には、G7議長国として広島でサミットを主催します。私自身が先頭に立ち、普遍的価値に立脚した国際的な規範や原則の維持・強化、地球規模課題への取り組み、そして、国民の命と暮らしを断固として守りぬく、新時代リアリズム外交を、引き続き、着実に推進していきます。
12.選挙制度・憲法
最後に、この国の根幹に関わる重要な課題として、選挙制度と憲法について申し上げます。衆議院議員の選挙区について、本年6月の衆議院議員選挙区画定審議会の勧告に基づいた改定を行うため、公職選挙法の改正案を、今国会に速やかに提出いたします。先の第208回国会においては、衆議院・参議院合わせて20回を超える憲法審査会が開催され、近年になく活発にご議論いただきました。このことを歓迎いたします。憲法改正は、最終的には、国民の皆様によるご判断が必要です。そのための発議に向け、国会の場において、これまで以上に積極的な議論が行われることを期待します。
13.結語
私は、この1年、多くの現場を訪問し、多くの皆さんと、直接、対話を重ねてきました。確かに、我が国は多くの困難に直面していますが、他方で、変化の芽、未来に向けた希望もまた、多く生まれ始めているとも感じています。冒頭触れた、福島の復興もそうです。全国のスタートアップの皆さんの活躍もそうです。デジタルの力を活用した地域活性化もそうです。若者、お年寄り、男性も女性も、多くの皆さんの力を結集し、胎動し始めた新しい動きを、大きな流れにして、この国の未来を切り拓いていきたいと思います。「信頼と共感」。この姿勢を大切にしながら、正道を、一歩一歩、前に向かって歩んでいく。この国の未来のために、これからも全身全霊で取り組んでまいります。ご清聴ありがとうございました。 
●岸田首相が所信表明 概要
物価対策に全力、旧統一教会「説明果たす」 10/3
臨時国会が3日に招集され、岸田文雄首相は所信表明演説で物価対策に力を入れると改めて表明するとともに、支持率低迷の一因である世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題について説明責任を果たすと言明した。
臨時国会の会期は12月10日まで。8月の内閣改造後初めての本格的な論戦で、野党は安倍晋三元首相の国葬や、政治と旧統一教会の関係について与党に説明を求める構え。値上げが相次ぐ中で経済対策の中身と規模、安全保障戦略の見直しを控える中で防衛力強化の財源も焦点となる。
岸田首相は衆院本会議で所信表明演説を行い、世論の賛否が割れた安倍元首相の国葬について「国民の皆様からいただいた様々なご意見を重く受け止め、今後に生かす」と述べた。旧統一教会との関係については「国民の皆様の声を正面から受け止め、説明責任を果たしながら、信頼回復のために、各般の取り組みを進める」と語った。
国内メディアが1─2日に実施した最新の世論調査で、岸田内閣は不支持率が軒並み上昇。読売新聞は9月上旬の前回調査から5ポイント上がって46%になった。支持率は5ポイント下がって50%だった。朝日新聞は不支持率が3ポイント上昇の50%、支持率は1ポイント低下の40%だった。いずれも国葬の実施や旧統一教会問題への対応が影響した。
この日の演説草案は当初、「現在社会的に問題が指摘されている団体」としていたが、3日朝に一部が差し替えられ、「旧統一教会」と名指しした。
電力料金「前例のない思い切った対策講じる」
物価対策については、来年春にかけて「急激な値上がりのリスクがあるのが電力料金」と指摘し、「家計・企業の電力料金を直接的に緩和する、前例のない、思い切った対策を講じる」と述べた。負の側面が指摘される為替の円安は「半導体や蓄電池の工場立地、企業の国内回帰や、農林水産物の輸出拡大などに取り組む」と語り、逆にプラス面を活用する方針を示した。
物価が上昇する中で賃上げを実現するため、「賃上げと、労働移動の円滑化、人への投資という3つの課題の一体的改革を進める」と強調した。「官民が連携して、現下の物価上昇に見合う賃上げの実現に取り組む」と述べた。特に中小企業の賃上げを進めるため、公正取引委員会などの執行体制を強化し、価格転嫁を強力に進める考えを示した。
事実上の国際公約となっている防衛力増強では「5年以内の抜本的強化に必要となる防衛力の内容の検討、そのための予算規模の把握および財源の確保を、一体的かつ強力に進め、予算編成過程で結論を出す」との従来方針を繰り返した。
その他の主な発言
・エネルギーの安定確保:原子力発電の問題に正面から取り組む。
・成長分野への学びなおし支援、5年1兆円に拡充
・同一労働同一賃金、一層徹底する
・半導体:日本だけで10年間で10兆円増が必要とも言われるこの分野に官民投資を集める。
・日中関係:建設的かつ安定的な関係を双方の努力で構築する。
・日ロ関係:ウクライナ情勢で厳しい状況ではあるが、領土問題を解決し、平和条約を締結する方針を堅持する。
・日韓関係:健全な関係に戻し、さらに発展させていく必要があり、韓国政府と緊密に意思疎通していく。
・日朝関係:拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化の実現を目指す。
・憲法改正:国会の場において、これまで以上に積極的な議論が行われることを期待する。
・衆院選区割り法案、今国会に速やかに提出
「厳しい意見聞く姿勢こそ原点だ」…物価対策や賃上げに全力表明 10/3
第210臨時国会が3日、召集された。岸田首相は3日午後、衆参両院の本会議で所信表明演説を行い、物価高対策や賃上げに全力を挙げる考えを表明した。政権への批判を意識し、「国民からの厳しい声」に謙虚に向き合う姿勢も強調した。
首相は演説で、経済再生を最優先課題に挙げ、〈1〉物価高・円安への対応〈2〉構造的な賃上げ〈3〉成長のための投資と改革――の三つに重点を置く方針を示した。
物価高対応では、値上がりが想定される電気料金について「前例のない、思い切った対策を講じる」と宣言した。円安の利点を生かし、新型コロナウイルス禍前を上回る訪日外国人旅行消費額年間5兆円超などの目標を掲げた。
賃上げについては、年功序列型の職能給から職務を明確にして専門性や能力を重視する「ジョブ型」の人事制度への移行など、具体策に関する指針を2023年6月までにまとめる考えを示した。デジタルなど成長分野への労働移動を促すため、個人の学び直し支援に5年間で1兆円を投じる計画も打ち出した。
経済成長に向け、スタートアップ(新興企業)など4分野に投資を集中させると表明した。新型コロナ対策では、オミクロン株に対応する新ワクチンの接種の加速や司令塔機能の強化に取り組む考えを示した。
外交・安全保障では、厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、防衛費増額や国家安全保障戦略など3文書の改定、「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有について、「国民を守るために何が必要か、あらゆる選択肢を排除せず、現実的な検討を加速する」と訴えた。
日中関係については、「建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築していく」と述べ、対話を重ねる姿勢を示した。衆院小選挙区を「10増10減」する公職選挙法改正案は、「今国会に速やかに提出する」と述べた。
自らの政治姿勢にも言及した。安倍晋三・元首相の国葬や「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)との関係を巡る批判について、「 真摯しんし に、謙虚に、丁寧に向き合う。厳しい意見を聞く姿勢こそ、政治家岸田文雄の原点だ」と語った。
●岸田首相所信表明 論評 10/4

 

「国難」への危機感薄い 10/4
臨時国会が召集され、岸田文雄首相は所信表明演説を行った。物価高、安全保障環境、感染症危機、エネルギー・食料危機、温暖化による気候危機などを列挙。「日本は国難とも言える状況に直面している」と述べた。それほどまでに危機的状況なら、なぜもっと早く国会を開かなかったのか理解に苦しむ。
立憲民主党など野党は憲法53条に基づき、8月中旬に臨時国会召集の要求書を衆参両院議長に提出。岸田首相が列挙した内容もその理由に盛り込まれていた。その要求には応じず約1カ月半後の召集。「国難」に対する危機感が薄いのではないか。
日本経済の再生が最優先課題であるとし、演説の約4割を物価高対策をはじめとする経済政策に充てた。目玉は高騰する電気料金の抑制対策。家計・企業の負担の増加を緩和するため「前例のない、思い切った対策を講じる」と表明した。
電気料金抑制対策の具体的な制度設計はこれからだという。ガソリンなどについては1月に石油元売り会社への補助金で価格抑制を始めている。9月には国会に諮ることなく、年末までの延長が決められた。原油価格が低落傾向となっても補助は縮小されず、総額3兆円を超えてなお終わりが見えない。
ガソリン価格抑制は一律で、本来手厚くすべき所へ十分行き届いているのか疑問がある。緊急対策のはずが長期間になり、総額が膨れ上がっている。その財源は国債発行だ。大盤振る舞いのツケを将来、国民が負うことを忘れてはならない。
物価高に拍車をかけている急激な円安に関しては対策を打ち出す気配はない。むしろ「円安のメリットを最大限に引き出す」とプラス面に目を向ける主張を繰り広げた。
野党側は国会召集を求める理由として、安倍晋三元首相の国葬問題や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員の関係解明なども挙げていた。両問題への岸田首相の言及は物足りないほどわずかだった。
1年前の発足以来、岸田内閣は共同通信の世論調査で高支持率を維持してきたが、先月は不支持が46・5%と初めて支持を上回った。要因として挙げられるのが国葬と旧統一教会の二つの問題だ。そこにしっかり答えないのでは岸田首相が繰り返す「丁寧な説明」に反しよう。
岸田首相は、直面する難局は「皆が力を合わせれば必ず乗り越えられる」と述べた。事例として福島県の東日本大震災被災地復興を挙げた。帰還困難区域への住民帰還などが根拠。だが東京電力福島第1原発の廃炉作業は進まず、処理水問題も全面解決とは言い難い。住民の実感と一致しているのか疑問だ。
国会論戦はあすから本格化する。閉会中のように予備費の充当で思うがままの政策遂行とはいかない。論戦では国民の胸にしっかり届くような岸田首相の誠意ある答弁を望みたい。
何を目指すのか見えない 10/4
政権発足から1年を迎え、今後どのような国づくりを目指していくのか。
岸田文雄首相の臨時国会での所信表明演説からは、その具体像が見えなかった。
物価高・円安への対応や、賃上げに最優先で取り組むと強調したが、目先の課題を列挙しただけだった。
年末に向けて国会で焦点となる防衛力強化は、予算規模と財源確保を「一体的かつ強力に進める」と述べるにとどまった。
首相の看板政策である「新しい資本主義」はトーンダウンが目立つ。「分配」の文言が消え、重点分野の一つに「成長のための投資と改革」を掲げるなど、アベノミクスとの違いが分からなくなった。格差是正への取り組みが後退したのは明らかだ。
内閣支持率急落の原因となっている世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を念頭に、「『厳しい意見を聞く』姿勢」が政治家としての原点だと訴えた。
だが、踏み込んだ調査には消極的で、真相解明に向けてウミを出し切る覚悟はうかがえない。
銃撃事件で安倍晋三元首相が亡くなった後、初の本格的な国会である。7月の参院選で自民が勝利し、安倍氏のくびきから脱却できるかが問われる局面だ。
首相は就任以来、重要政策の財政や防衛で、最大派閥を率いた安倍氏の意向に配慮しながら政権運営を進めてきた。党内で影響力の大きかった安倍氏の了解を得られれば、保守派の批判をかわすことができたからだ。
しかし、政策論争の中心にいた安倍氏がいなくなった途端、方向性を定められなくなるようならリーダーシップが問われる。
首相は演説で、昨秋の就任時に繰り返した「信頼と共感」を大切にすると力説した。
信頼を取り戻すには、まず理念を国民に向けて明確に語ることが必要だ。そのうえで野党の意見にも耳を傾け、幅広い合意形成を図らなければならない。
少子化への対応や持続可能な財政の確立など、中長期的に取り組まなければならない課題は山積している。与野党の開かれた論戦を通じて国の針路を示す。それが首相としての責任である。
消えた代名詞「分配」 低姿勢でもにじむ苦境 10/4
岸田文雄首相は3日の所信表明演説で、「政治姿勢」と題した異例の項目を前段に据え、「国民の厳しい声に向き合う」と低姿勢を演出した。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題や安倍晋三元首相の国葬断行により、内閣支持率は下降曲線を描き続け、国会論戦でも守勢に回るのは必至。ぎりぎりまで文言が調整された演説からは、政権が直面する苦境の深刻さも浮き彫りになった。
午後2時過ぎ、衆院本会議場の演壇に立った首相は、「日本を守り、未来を切り開く覚悟を新たにしている」と切り出した。昨年12月や今年1月の演説で見られた古典からの引用などはなく、「どんな困難も、皆が力を合わせ、一歩一歩前に進むことで、必ず乗り越えることができる」−。意味をかみしめるように、ゆっくりと言葉をつないだ。
終始原稿に目を落としがちだった首相が、一転して議場全体を見渡すそぶりを見せたのが、国葬や旧統一教会に言及した場面だった。
元々の原案に「旧統一教会」の文字はなかった。憲法が保障する信教の自由に絡め「特定の団体を名指しするのは演説にそぐわない」との慎重論が官邸内にあったからだ。だが与党からも「隠しているようで無用の批判を招く」との注文が。最終的に首相が引き取り、「関係を断つと言っているのだから入れよう」とゴーサインを出したという。
野党は、教団との関係が次々と明るみに出ている細田博之衆院議長や山際大志郎経済再生担当相に照準を合わせる。この日も野党席からは「(細田)議長に言ってくれ」などとやじが飛んだ。政権へのダメージを最小限に抑えるべく、「切るなら早い方がいい」(自民党ベテラン)との声も交じる。
8千字、30分程度に及んだ今回の演説。首相はその約4割を経済対策に割いた。「国民の関心が最も高い」(自民幹部)とされる円安による物価高騰対策や構造的な賃上げなどに重きを置いた形だ。とはいえ、「力強く進める」「加速する」と言及した施策のほとんどが具体策に欠け、生煮え感は否めない。
昨秋の自民党総裁選から首相が繰り返してきた「分配」のフレーズも今回の演説にはなかった。昨年10月には「分配なくして次の成長なし」と唱え、今年1月の施政方針演説でも多用していたが、「構造的な賃上げに包括される」(官邸関係者)として、あっさり引っ込めた。「分配より成長」を重視する党内に配慮したとの見方も出ている。
5日から本格論戦が始まる今国会は、首相にとって逆風のさなかで迎える初めてのケースとなる。4日で政権発足1年。「信なくば立たず。政治の根幹である国民の信頼が崩れている」と訴え宰相の座を手にした首相が、政治不信をどう打開するか。手をこまねくようであれば、先行きは明るくない。
信頼回復にこそ取り組め 10/4
臨時国会が召集され、岸田文雄首相が所信表明演説を行った。演説の大半を経済政策に割き、「日本経済の再生が最優先の課題だ」と協調した。しかし、この国会でまず取り組むべきは失った信頼の回復だろう。
発足して4日で1年となる岸田政権。首相は自民党総裁選に出馬表明した際に「国民の間には政治が信頼できないという声が満ちあふれている。民主主義が危機にひんしている」と述べた。今、岸田政権も同じような状況に陥っているといわれても仕方がないのではないか。
内閣支持率の急落は、安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに明るみに出た自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との深い関わりや、国論を二分する中で強行した安倍氏の「国葬」が原因であることは論をまたない。
だが、演説では「厳しい意見を聞く」姿勢を強調したものの、政治家と教団の関係を徹底調査したり、国葬の事後検証を国会で行ったりする考えは全く示さなかった。旧統一教会問題では悪質商法などの被害救済に「法令の見直しをする」と述べたのみで、国葬については「国民の意見を重く受け止め、今後に生かす」としか触れなかった。
これでは国民の不信を払拭できない。「日本は国難とも言える状況に直面している」と呼びかけ、時には国民に厳しい負担を求めることもある以上、政治には国民の理解と支持が欠かせない。だが、首相の演説からは支持率に表れている政治への不信を拭おうとの決意は伝わってこなかった。
力点を置いた経済対策にしても「物価高・円安への対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」を重点分野に挙げたものの、連ねた施策は社会人の学び直しやスタートアップ(新興企業)育成、脱炭素などで新味があるとは到底言い難い。策定を指示した総合経済対策にしても具体化はこれからだ。
年末に改定する「国家安全保障戦略」で焦点になる「反撃能力」の保有にしても「あらゆる選択肢を排除せず検討を加速する」としか述べなかった。防衛力の抜本的強化を口にしながら、財源などにも触れなかった。国会閉会後に改定を決定するとの姿勢は国会軽視の極みではないか。
首相は台風などの自然災害で犠牲となった人たちに哀悼の意を表したが、今年に入って新型コロナ禍で2万6千人超が亡くなったことには全く触れないばかりか、「この1年、二つ(国民の命と健康・社会経済活動)の両立に全精力を傾けてきた」と自画自賛の体。コロナなどの危機に耐えられる社会・経済の基盤強化こそが急務であり、国会論戦での深掘りを求めたい。
「意見を聞く」もはや空疎だ 10/4
目算が大きく狂い、最も当惑しているのは、この国の最高権力者ではないか。
臨時国会がきのう召集された。物価高騰と円安の悪影響が日本経済を直撃しているさなかだ。新型コロナウイルス対応を含め、国民生活に直結する課題を軸に、建設的な論戦を期待したいが、岸田文雄首相の政治姿勢が大きな焦点になるのは避けられまい。
安倍晋三元首相の国葬強行、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党国会議員の接点。首相は安倍氏の銃撃死から派生した問題の沈静化に追われている。
岸田氏は政権基盤が盤石ではない。内閣支持率の急落に伴い、求心力が弱点としてクローズアップされてきた。混乱を収拾できなければ、身内から政権担当能力に疑問符を付けられる可能性がある。
世論は1年前、安倍氏とその後を継いだ菅義偉氏による強権的な政治手法に嫌気を差し、柔和なイメージの岸田氏を好感した。
低姿勢を貫き「聞く力」で意見を集め、「丁寧な説明」を尽くす−。首相は表向きの対応を変えないものの、参院選で勝利を収め、「強さ」を出そうとしたのだろう。国葬を早々に決めたのは指導力を意識したからに他ならない。
銃撃事件直後は追悼ムードが優勢だったが、国会を通さずに決めたため「恣意(しい)的な判断だ」と反対論が台頭した。
判断の背景に最大派閥の安倍派や保守層を引き付ける狙いも読み取れるが、国葬をデモや批判の中で営むことになり、逆に不評を買ったきらいがある。
相手は教義で「サタンの国・日本」は「神の国・韓国」を植民地支配した罪を償わなくてはならないと唱え、献金が韓国に流れる仕組みを作った団体である。なぜ接点を持ったかの検証が終始逃げ腰で全く不十分だ。首相の判断はことごとく裏目に出ている。
所信表明演説で「『厳しい意見を聞く』姿勢にこそ、政治家岸田文雄の原点があるとの初心を改めて肝に銘じる」と述べた。聞く姿勢も必要だが、決断の理由と説明に説得力が欲しい。
政策面は電気料金の上昇抑止が喫緊の課題だ。首相は「前例のない思い切った対策を講じる」と強調した。ウクライナ戦争によるエネルギーと食料価格の高騰は世界景気を大きく後退させる恐れが出てきた。コロナ禍から復活し、その果実を味わう前に日本経済を失速させてはならない。
参院選で自民が大勝し、衆院を解散しなければ3年後の参院選まで大型選挙はない。首相が政局に神経を使うことなく、思う存分腕を振るえる「黄金の3年」を手にしたのはつかの間だったようだ。
支持率の低下は、世論が「岸田政治」に飽き足らなくなっていることの表れだ。首相は政治不信を増幅しかねない局面に立たされていることを自覚すべきである。
岸田カラーなぜ出さぬ 10/4
きのう開会した臨時国会で、岸田文雄首相が所信表明演説に臨んだ。安倍・菅政権とは異なり、国民の声を十分に踏まえた政権運営を期待されて就任し、はや1年。今夏の参院選まで高い数字を保ってきた内閣支持率が急激に下がった局面にある。
演説は、謙虚さを失っていたとして、自らの政治姿勢をただすことから始めざるを得なかった。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題と、安倍晋三元首相の国葬実施で見えたのは、岸田氏と国民との間に広がった距離である。
「『厳しい意見を聞く』姿勢にこそ、政治家岸田文雄の原点があるとの初心を改めて肝に銘じる」と言う。ならば目下、国難と位置付けた物価高への対処と、そのために欠かせない経済再生でも、国民の視点に立つ政策が求められよう。その実現こそが信頼回復の近道である。
国民の分断を招いた国葬について「さまざまな意見を重く受け止め、今後に生かす」と反省した。ただ、なぜ必要で、なぜ世論の反対を押して強行したのか、いまだに分からない。岸田氏は有識者の意見を聴取して問題点を整理する方針で、臨時国会で与野党が検証する。独断で決めた過程をつまびらかにした上で、議論を深めるべきだ。
旧統一教会問題では「悪質商法や悪質な寄付による被害者の救済に万全を期す」とし、消費者契約に関する法令などの見直しの検討を表明した。重要ではあるが、国民がなお厳しい目を向ける理由は、旧統一教会との接点調査を自己申告で済ませるなど自民党の対応が甘いにもかかわらず、岸田氏が徹底した調査に及び腰だからだ。選挙を通じ関係を深めた安倍氏への調査を避けたのは典型だろう。
岸田氏は党内基盤が盤石でなく、最大派閥の安倍派に配慮する姿勢が目立つ。政治手法や政策での「負の遺産」に関わるとなれば、なおさら慎重である。演説では、東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件について、ひと言も触れなかった。
最重要課題の経済政策でも、アベノミクス路線を変えてでも自らの「新しい資本主義」を貫く、との姿勢を感じない。
演説では、経済のリスク要因をロシアのウクライナ侵攻など国際情勢に求めたが、きっかけに過ぎない。アベノミクスは経済成長をもたらさず、賃金は長年、上がらない。急激な円安は大規模な金融緩和の副作用であり、国民生活は一層、追い込まれた。政治が招いた国難だと、もっと危機感を持つべきだ。
経済政策のうち物価高・円安への対応は、値上がりを続ける電気料金の負担緩和を「前例のない、思い切った対策」と強調した。制度設計はこれからだが、ガソリン価格を抑える補助金と同じく対症療法にとどまる。しかも出口は見えず、単なるバラマキに陥る恐れがある。
国民が求めているのは、アベノミクスに代わる岸田氏のビジョンだろう。主張してきた「成長と分配」のフレーズは今回、消えた。とても岸田カラーを出せているとは思えない。
1強政治とは違うと言いたいのだろうか、誰も排除しないと「包摂社会の実現」も示した。多様性のある社会は望むところだが、言葉だけ躍るようでは困る。臨時国会では国民の疑問にしっかり答えてもらいたい。
「守る」9回言及 苦境下、指導力アピール 10/4
岸田文雄首相は3日の所信表明演説で、物価高騰や新型コロナウイルス感染、エネルギー・食料危機、ロシアのウクライナ侵攻などの問題を列挙し、国民生活を「守る」との表現を9回用いた。安倍晋三元首相の国葬問題などへの対応に批判が集まり苦境にあえぐ中、指導力をアピールして信頼回復につなげたいとの思いがにじむ。
物価対策・賃上げに全力 政権批判、謙虚に受け止め―屋外マスク「原則不要」・岸田首相所信表明
冒頭で「日本は国難に直面している」と強調。かつて安倍氏が少子高齢化や北朝鮮の核・ミサイル開発を「国難」と訴えたのと重なる表現で、強い指導者像を印象付ける狙いもあるとみられる。
安倍氏の国葬、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題では「国民の皆さまからの厳しい声にも真摯(しんし)に謙虚に丁寧に向き合っていく。厳しい意見を聞く姿勢にこそ政治家岸田文雄の原点がある」と表明。各種世論調査で内閣不支持が支持を上回る状況を念頭に低姿勢を強調した。
首相周辺は「全ての政策を進める上で信頼が前提というメッセージだ。所信表明で触れるのは異例だがだいぶ踏み込んだ」と解説する。
とはいえ最も力点を置くのは経済政策だ。演説全体の4割近くを割き、電気料金の負担軽減などを通じて「国民生活と事業活動を守り抜く」と訴えた。当面は大型国政選挙が想定されず、着実な政策実現に全力を挙げる姿勢を鮮明にした。
字数は従来と同程度の約8000字。故事成句や偉人の名言は引用せず、「この国の未来のためにこれからも全身全霊で取り組んでいく」と締めくくった。
国民の批判に応える姿勢ない 10/4
臨時国会が召集され、岸田文雄首相が所信表明演説を行いました。安倍晋三元首相の国葬強行や、反社会的カルト集団・統一協会と自民党との癒着などで岸田政権への国民の不信は高まっています。しかし、首相の演説は従来の説明を繰り返すだけで、批判に応えるものではありませんでした。物価高騰対策やコロナ対応も、これまでの失政への反省はなく、消費税減税など抜本的な政策へ転換する姿勢も見られません。さらに沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設強行や大軍拡・改憲を推進する立場をあらわにしたことは重大です。
急落する内閣支持率
発足から4日でちょうど1年となる岸田内閣の支持率は軒並み急落しています。臨時国会の開幕当日の3日付の「朝日」調査は、内閣不支持率が50%と半数になる一方、支持率は過去最低の40%です。同日付の「読売」調査では、不支持率が5ポイント増の46%となり、同紙として初めて支持・不支持が逆転しました。国葬を行ったことを「評価しない」59%(「朝日」)、統一協会問題で岸田首相は「指導力を発揮しているとは思わない」80%(「読売」)などと国葬と統一協会の二つの問題で疑念を募らせていることは明らかです。
ところが所信表明演説で首相は、国葬の成果を誇る一方で、批判の声については「国民の皆様から頂いた意見を重く受け止める」と述べるだけです。安倍氏の国葬が憲法の「法の下の平等」や「思想・良心の自由」を踏みにじったという重大な問題には全く触れません。憲法違反の国葬に、巨額の税金を使ったことにも無反省です。
統一協会問題では「国民の声を正面から受け止め、説明責任を果たす」とは言うものの、最も深い癒着関係があった安倍氏についての調査に背を向けています。8月の内閣改造で留任させた山際大志郎経済再生担当相をめぐっては、統一協会とただならぬつながりが次々と判明しているのに、首相はだんまりを続けています。首相の任命責任が厳しく問われます。
所信表明演説では「日本経済の再生が最優先の課題」だと経済問題に大半を費やしました。しかしそのほとんどは、効果の出ていない対策の羅列に終始しました。アベノミクスの柱の一つである「異次元の金融緩和」が異常な円安を招き、物価高に拍車をかけ、実質賃金を目減りさせていることへの反省がありません。首相が「円安のメリット」を強調することは、国民の苦しみに目を向けない冷たい姿勢です。
100近くの国・地域で、コロナ対応などとして大型間接税(付加価値税)を引き下げています。岸田政権は、暮らしを支えるため、消費税減税などの抜本的な政策転換を図るべきです。
「意見聞く」は言葉だけ
原発の再稼働や新増設を打ち出し、ロシアのウクライナ侵略に乗じた大軍拡、辺野古の米軍新基地建設を進めるなどと表明したことは見過ごせません。改憲については「発議に向け」「積極的な議論」を促しました。民意に反する軍拡・改憲を許してはなりません。
首相の「厳しい意見を聞く」というのは言葉だけです。国民の声に耳を貸さず、行き詰まりを深めた岸田政権を包囲し、追い込むたたかいが重要になっています。  
  
  

 

 

 

●安倍新内閣はまるで“カルト内閣”…統一教会がらみ12人、日本会議系12人 2019/9
11日発足の第4次安倍再改造内閣は、党4役を含めると日本会議国会議員懇談会の幹部が12人もいる極右内閣。ところが実は、霊感商法問題で知られる宗教団体「統一教会」(現・世界平和統一家庭連合)がらみの大臣と党4役も計12人いる。
安倍晋三首相自身、官房長官時代に統一教会の大規模イベントに祝電を送り、首相就任後も教団幹部を官邸に招待するなどしてきた。菅義偉官房長官、麻生太郎財務相、高市早苗総務相、加藤勝信厚労相、下村博文選対委員長も、統一教会と関わりが深い。
さらに今回、初入閣13人の中にも6人もの“統一教会系大臣”がいる。統一教会問題に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏の解説。
「萩生田光一文科相は、2014年に都内での統一教会系イベントで来賓として挨拶に立っています。17年に統一教会系団体がワシントンで開いた日米韓の国会議員会議やニューヨークで教団が開催した大規模フェスティバルに参加していたのが武田良太国家公安委員長や竹本直一IT政策担当相、山本朋広防衛副大臣です」
衛藤晟一1億総活躍担当相も、14年に統一教会系団体で講演。議員会館使用の便宜もはかった。田中和徳復興相は16年に川崎駅構内での街頭演説の際、自身の名刺とともに統一教会の機関紙「世界日報」を配布した。菅原一秀経産相は自身が代表を務める自民党支部が17年に統一教会系の世界平和女性連合に会費を支払っている。
統一教会は16年に世界平和国会議員連合(IAPP)を設立。世界各国で大会を開き、現地の国会議員を巻き込んでいる。
「同年の日本での大会には、統一教会幹部らや自民党を中心とした国会議員63人が出席。そこに竹本大臣や御法川信英国交副大臣もいます」(鈴木エイト氏)
しかもIAPPの目的は「統一教会の日本の国教化」だという。
「教団は内部資料で、IAPPを“真の父母様(文鮮明夫妻)の主権によって国家を動かす”ための戦略としている。教団ではこれを“国家復帰”と呼び、日本を含め21カ国での実現を目指しています」(鈴木エイト氏)
知ってか知らずか統一教会国教化計画に加担している議員が、内閣に加わったということだ。
「武田大臣と山本副大臣は17年2月、韓国で開かれたIAPPの総会で韓鶴子から直接、国家復帰指令を受けた。昨年10月、東京での国際勝共連合(統一教会の政治組織)50周年大会にも出席しています」(鈴木エイト氏)
韓国との対立を深める安倍政権だが、韓国のカルト宗教とはズブズブ。まさに「カルト内閣」だ。 

 

●安倍晋三流の「トップ外交」はどう成功し、失敗したか 7/13
安倍晋三元首相の突然の死から5日。この偉大な外交戦略家を失った衝撃と喪失感は日に日に増すばかりだ。世界各地の友人たちから筆者に届く追悼メールを読むと、安倍氏が、米国はもちろん、欧州やASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国を含む世界各国でどれほど信頼、尊敬されていたかがよく分かる。こうした反響は、正直言って、筆者の予想をはるかに超えるものだった。
残念ながら、今の筆者に安倍外交の全貌を振り返る時間的、精神的余裕はない。されば今回は、対米国、中国、ロシア外交に絞って、安倍晋三氏という政治家がこれら大国のトップといかなる関係を築き、交渉し、結果を出したか(または、出せなかったか)を筆者なりに検証してみたい。今回、特に注目したのは3大国トップが発表した安倍元首相追悼メッセージの書きぶりである。
当然、どのメッセージも安倍氏とご家族や日本国民に対する哀悼の意に満ちている。その点については各国ともそれほど差はない。今回、筆者が取り上げるのは、各種メディアが報じたメッセージのうち、安倍晋三氏個人の人柄や仕事ぶりに触れた部分だ。これらの表現の行間から、各国トップと安倍氏との関係がにじみ出てくるのでは、と思ったのである。
「なぜ安倍首相はトランプ氏と良い関係なのか」
【トランプ前大統領】安倍氏がどれだけ素晴らしい人物、かつリーダーであったかを歴史が教えてくれるだろう。彼は、他に類を見ない一体感をもたらす人であり、何よりも彼の偉大な国である日本を愛し、守り育てた男だった。彼のような人は二度と現れないだろう。(8日 SNS投稿) / 安倍元首相は私の友人であり、同盟相手で、素晴らしい愛国者だった。彼は平和と自由、そして米国と日本のかけがえのない絆のために力を尽くすことを惜しまなかった。(8日  遊説演説の冒頭)
実に手放しの評価、トランプ氏の個人的心情が吐露されている。トランプ氏がここまで絶賛する要人は他にあまりいないだろう。G7(主要7カ国)諸国の友人からは「なぜ安倍首相(当時)はトランプ氏と関係が良いのか? その秘密を教えてほしい」とよく聞かれたものだ。筆者の答えはいつも同じだった。「安倍さんの人柄だよ。彼はトランプ氏の懐に飛び込んでいく天性の『人たらし』なんだから」と。
しかし、人柄やゴルフだけでトランプ大統領(当時)を制御することはできない。あの「アメリカ・ファースト」の大統領を黙らせるには、少なくとも、日本も同盟国として「米国を守る」と言えなければならない。それを可能にしたのが2015年の安全保障法制と憲法解釈の変更だった。トランプ氏の当選は2016年。幸いにも、安倍首相が取り組んだ周到な準備がぎりぎりで間に合ったのである。
【オバマ元大統領】友人であり長年のパートナーである安倍氏は、両国の特別な同盟関係に献身的に尽くしてくれた。共に同盟強化に取り組んだこと、広島や真珠湾へ心動かされる訪問をしたことをいつまでも覚えているだろう。(8日 ツイッター投稿)
安倍氏は、トランプ大統領に対するのとは別の意味で、オバマ大統領(当時)との関係維持にも苦労したようだ。その意味で、オバマ氏が広島と真珠湾に言及したことは注目に値する。確かに、日米両国は既に緊密な同盟関係にあった。だが実は、和解は必ずしも完全ではなかった。日本人は「米大統領は広島と長崎に来るべし」、米国人は「日本の首相は真珠湾に来るべし」とそれぞれ思っていたからだ。
このわだかまりは決して過小評価すべきではない。中国が台頭する中、安倍氏は「日米が真の和解に至ること」が日本の安全保障をより確実にすると考えたのだろう。安倍首相と岸田文雄外相(当時)は、G7伊勢志摩サミットと、オバマ大統領訪日を最大限利用し、オバマ広島訪問を実現。米国内に慎重論があったにもかかわらずである。その後、安倍氏は静かに真珠湾を訪問した。これこそ真の外交である。
バイデン副大統領は安倍首相の靖国参拝を懸念
【ブッシュ元大統領】安倍氏が2006年に初めて首相を務めた際に、私は彼を知る機会に恵まれ、思いやりのあるしっかりした人物だと感じていた。彼は国のために奉仕し続けたいと願う愛国者だった。(8日 メッセージ)
ブッシュ大統領との交流は第1次安倍政権だった。筆者は、安倍首相の初訪米に同行させてもらった。当時の安倍夫妻のブッシュ夫妻に対する心遣いと事前準備は、訪米の際のローラ夫人への贈り物からプライベートの会話の中身まで、実に周到かつ入念だったことを今も鮮明に覚えている。首脳外交のために「安倍さんはここまでするのか」と当時思った。今振り返ってみれば、あれが安倍晋三独特の外交スタイルだったのだと思う。
【バイデン大統領】ご遺族や日本だけでなく、世界にとっての損失だ。平和の人であり、判断力のある人物だった。(8日 在米日本大使館に弔問して記帳) / オバマ政権の副大統領時代に何度もやりとりした。安倍氏は日米両国の同盟関係を強化することや、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて真剣に取り組んでいた。大変尊敬している。(8日 演説冒頭)
バイデン大統領の発言は額面通り受け取ってよいだろう。だが筆者は、バイデン氏が触れなかった部分に注目した。2013年の秋、当時のバイデン副大統領は安倍首相が靖国神社を参拝するのではないかと懸念を深めていた。それにもかかわらず、同年年末、安倍氏は最終的に参拝を「強行」した。バイデン大統領がそのことを忘れているとは思えない。
しかし、筆者の見るところ、あの時の「靖国参拝」には安倍氏なりの理由があった。以上を前提に、中国の習近平国家主席の「弔電」を見ていこう。
習近平氏とは「ボタンの掛け違い」のまま
【習近平国家主席】中国政府と国民を代表し安倍氏の突然の死に痛惜を感じる / 私はかつて、中日関係の構築について安倍氏と重要な合意に達した / 岸田首相とともに、(1972年の日中共同声明など)4つの政治文書で示された原則に基づき中日両国の善隣友好の協力関係を発展させ続けることを望む(9日 岸田首相宛の弔電)
数ある外国要人の安倍氏追悼メッセージの中で、習国家主席ほど安倍氏に対する個人的な心情を封印した要人は他にいない。それは、形式が岸田首相に対する弔電だったから。いや、それだけではないだろう。習国家主席は最後まで安倍氏を「友人」とも、「偉大な指導者」とも呼ばなかった。「恐らく、それが中国側の本音だからではないか」と筆者は邪推している。
習国家主席の弔電に「私はかつて、中日関係の構築について安倍氏と重要な合意に達した」とある。その「合意」なるものの実態は日中間の「同床異夢」だった。2012年に発足した第2次安倍政権は、2006年に合意した「戦略的互恵関係」を再確認するよう中国に求めた。けれども、中国は逆に尖閣諸島に関する新たな了解を求めたため、合意に至らなかった。恐らく習国家主席氏も、安倍氏も相手を信用できなかったのだろう。
当時の安倍氏による「靖国参拝」には、「約束を履行する」という日本国内の保守勢力に対するメッセージと、尖閣問題をめぐる中国の姿勢に対する反発を示すという、2つのメッセージが込められていた――。筆者はこう理解している。以降、日中間で様々な関係改善の動きが模索されたが、結局はいずれも成就しなかった。その最大の理由は、2013年の「ボタンの掛け違い」であった。
安倍外交の戦略的意味を理解できなかったプーチン大統領
【プーチン大統領】私と晋三は定期的に連絡を取り続けた。その中で彼は、素晴らしい個人としての、またプロフェッショナルな資質を完全に発揮した。この素晴らしい人物の記憶は人々の心に残るだろう(8日 コメント)
ドイツのアンゲラ・メルケル前独首相を除けば、安倍氏ほど、ウラジーミル・プーチン大統領と会談を重ねた外国首脳は他にいないだろう。しかし、「なぜ安倍首相はプーチン大統領と仲が良いのか」と筆者に聞く友人は一人もいなかった。
恐らくプーチン大統領は、安倍氏だけでなく、他のどの国の首脳にも胸襟を開くことはなかった。そこが安倍・プーチン会談の限界ではなかっただろうか。
それでも、このコメントを読む限り、プーチン大統領が安倍氏の人柄とその外交的資質を正当に評価していたことだけはうかがえる。
ちなみに、北方領土問題をめぐる交渉の進め方について、筆者は珍しく安倍首相から個人的に直接、見解を求められたことがある。その具体的やり取りは明らかにできないが、筆者が安倍氏に伝えた内容は次の通りだ。
「安倍さん、問題の本質は、あなたがプーチン大統領を説得して、彼に戦略的判断をさせることですよ。ロシアにとって中長期的な真の戦略的脅威は、NATO(北大西洋条約機構)正面ではなく、中国になりつつある。このことをプーチン大統領が正確に理解すれば、ロシアは『外交革命』が必要だと悟る。中国に対抗すべく、日米との関係改善を模索し始めるはずです」
「同様の『外交革命』は1972年に起きました。中国が対米・対日関係を改善し始めたのは、当時のソ連が中国にとって戦略的脅威となったからです。もし、プーチン大統領が今の中国を戦略的脅威だと認識すれば、対米・対日関係を必ず修正します。もし、北方領土が返ってくるとすれば、その時ですよ」
安倍氏は笑って何も答えなかったが、反論もしなかった。
筆者の見立てが正しいかどうかは後世の歴史家が判断することだ。しかし、プーチン大統領が戦略的に懸念しているのが中国ではなく、やはり欧州NATO正面であることは、今回のウクライナ戦争が如実に示している。安倍氏による対プーチン外交は戦略的に正しかった。だが、プーチン大統領はその戦略的意味を正確に理解できなかった。筆者は勝手にこう考えている。
ちなみに、米国、中国、ロシア以外の国からも、安倍氏を知る要人から追悼メッセージが届いている。インドのナレンドラ・モディ首相は8日、ツイッターに次のように投稿した。「最も親しい友人の1人である安倍元首相の悲劇的な死去に、私は言葉にできないほどの衝撃を受け、悲しみを感じている。安倍氏は世界有数の政治家であり、卓越したリーダーだった。彼は日本と世界をより良い場所にするために人生をささげた」
さらに、フィリピンのドゥテルテ前統領も8日夜、「安倍氏は誠実な良き友人であり、私の政権の強固な支援者だった。彼の思いやりに満ちた支援と卓越したリーダーシップを忘れない。世界で最も影響力のあるリーダーの一人だった」と書いている。いずれも率直で心のこもったメッセージだと感心した。
安倍氏の死によって日本が失った外交的資産は想像以上に大きく、貴重なものだったようだ。改めて、安倍晋三氏という偉大な外交官に心から哀悼の意を表したい。 
 
 

 



2022/9-