骨細の方針

一般会計総額 107兆円

骨細の方針  お題目の羅列 
・・・ 運営の方針を示す
・・・ 基本方針を示す
・・・ 方向性を示す
・・・ 基本的な方針を示していく
・・・ 考え方を提示する
あくまで 「方針」 です 実行するかどうかは別ものです
財政健全化は棚上げ

財政は国家運営の基盤 いつになったら健全化にチャレンジ
険しい道も 一歩から ・・・
政治家の先生 日本の将来を考えてください

それとも 後は野となれ山となれ
・・・ 日本沈没
 


 
 
 
●新年度予算が成立 与党・国民など賛成 一般会計総額 107兆円余  3/22
一般会計の総額が過去最大の107兆円余りとなる新年度=令和4年度予算は参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党と国民民主党などの賛成多数で成立しました。
新年度=令和4年度予算案は、22日、参議院予算委員会で、締めくくりの質疑のあと採決され、自民・公明両党と国民民主党の賛成多数で可決され、参議院本会議に、緊急上程されました。
参議院本会議では、まず討論が行われ
自民党の堀井巌氏は「ロシアによるウクライナ侵略でエネルギーや食料品の価格がさらに上昇傾向となっている。迅速かつ切れ目のない対応を確実に実行して、国民の暮らし雇用や事業を守り抜き、経済の底割れを防ぐことが求められている。予算案を一日も早く成立させ、着実に執行させることが望まれる」と述べました。
立憲民主党の白眞勲氏は「ウクライナ情勢などの影響を受けて進行している物価高騰に対応する予算が、十分に確保されているとは言えない。日ロ経済協力プランに関する予算は、国際社会と足並みをそろえて、経済制裁を行っている今の姿勢と矛盾することから明確に削除すべきだ」と述べました。
このあと採決が行われ、新年度予算は、自民・公明両党と国民民主党などの賛成多数で成立しました。
新年度予算には、新型コロナウイルス対策のほか、看護や介護などの現場で働く人の賃金の引き上げに必要な費用なども盛り込まれていて、一般会計の総額は、107兆5964億円に上り、過去最大です。
新年度予算の成立時期としては、平成11年と12年、そして平成26年に次ぐ、戦後4番目に早い時期の成立となります。
「社会保障費」「防衛費」「国債費」は過去最大に
新年度・令和4年度予算は、一般会計の総額が過去最大の107兆5964億円となっています。歳出全体の3分の1を占める「社会保障費」は、今年度の当初予算より4393億円増えて、過去最大の36兆2735億円となりました。また、「防衛費」は今年度より542億円増えてこちらも過去最大の5兆3687億円です。過去に発行した国債の償還や利払いにあてる「国債費」は5808億円増えて、過去最大の24兆3393億円です。加えて、新型コロナに対応するため、国会の承認を得ずに機動的に使いみちを決められる「予備費」として、5兆円を盛り込んでいます。一方、歳入は税収が、新型コロナで落ち込んだ企業の業績が回復傾向にあることなどから、今年度を上回る過去最高の65兆2350億円としています。これに伴って、税収などの不足分を埋めるための新規国債の発行額は36兆9260億円と、2年ぶりに前の年度の当初予算を下回る見込みです。
新年度予算 その主な内容は
新年度予算には、新型コロナウイルスの感染対策のほか、岸田政権が掲げる賃上げなどの「分配政策」やデジタル化の推進に必要な経費も盛り込まれています。
新型コロナウイルスの感染対策
新型コロナの感染拡大を水際で防ぐため、検疫所の人員確保など、検査・検疫体制の強化にかかる費用として95億円。感染が拡大した場合に、保健所の支援に当たる専門人材を派遣する体制を強化するための費用などに6億円が計上されました。
看護や介護などの現場で働く人の賃金増加へ
看護や介護、保育などの現場で働く人の賃金をことし10月分以降、3%程度引き上げるのに必要な費用として、395億円が計上されています。内訳としては、看護職員分が100億円、介護職員分が157億円、障害福祉職員分が128億円、児童養護施設などの職員分が10億円となっています。大学や短大、高等専門学校などに通う住民税非課税世帯の学生らを対象に、授業料を減免したり、給付型の奨学金を支給したりする制度のための費用などに、6211億円が盛り込まれています。
脱炭素
「脱炭素社会」の実現に向け、車の電動化を促すため、電気自動車を購入する際の補助金の額を、これまでの2倍の最大80万円に増やすほか、プラグインハイブリッド車に最大50万円を補助するための費用などとして155億円。省エネ性能の高い住宅を新築したり、リフォームしたりする費用の補助などに1113億円が盛り込まれました。また、2030年度までに先行して脱炭素を実現する地域を設けるなど、脱炭素に意欲的な自治体を支援する新たな交付金として、200億円が計上されました。
「デジタル田園都市国家構想」の実現へ
デジタル化を進めて地方と都市の格差を解消し、地方活性化につなげることを目指す「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、自治体のデジタル技術の活用や普及を後押しするための交付金として1000億円が計上されました。
岸田首相 “円滑な予算成立に感謝”
岸田総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し「戦後4番目に速い、円滑な予算成立に向けて与野党をはじめ、多くの関係者の皆様方にご協力をいただいた。心から感謝を申し上げたい」と述べました。そのうえで「令和4年度予算では、新型コロナ対応に万全を期すことに加えて、デジタル田園都市構想の推進、気候変動問題への対応、イノベーション・科学技術への投資、さらには人への投資など、成長と分配の好循環による持続可能な経済の実現に向けた政策を重点的に実施していく」と述べました。
自民 茂木幹事長「スピード感を持って執行へ」
自民党の茂木幹事長は記者団に対し「極めて早期に成立することができた。予算には、コロナ対策はもちろん、デジタル、グリーン、人への投資などの重要な施策が盛り込まれており、スピード感を持って執行していきたい」と述べました。また、追加の経済対策については「ウクライナ情勢の緊迫化などにより、原油価格の高騰などの課題が顕在化しており、必要に応じて、しっかりした対策を機動的に検討したい」と述べました。一方、国民民主党が衆議院に続いて、参議院でも採決で賛成したことについて「予算はもちろん、さまざまな法案の重要性や必要性を野党にも説明しており、その姿勢は変わらない」と述べました。
鈴木財務相 「迅速かつ着実な執行を進める」
鈴木財務大臣は、新年度予算の成立を受けた記者会見で、「新型コロナに対して安心、安全を確保しながら経済をしっかりと立て直し、財政健全化に向けて取り組んでいくため、予算の迅速かつ着実な執行を進めていきたい」と述べました。その一方で、原油価格などの高騰をめぐり、与党内などから追加の経済対策を求める声が出ていることについては「ウクライナ情勢をはじめ先行きは不透明と言える。こうした状況の中で日本経済や国民生活に与える影響を最小化しなければならない。動向を注視しながら必要に応じて適切に対応していくことに尽きる」と述べるにとどまりました。
立民 泉代表「あげればきりがないくらい課題がある」
立憲民主党の泉代表は、党の常任幹事会で「新型コロナの第6波の感染拡大を許してしまったのは、政府が、本来、先にやっておくべき対策をやってこなかったからだ。また、介護や保育の現場で働く人たちの待遇改善など、新年度予算にはあげればきりがないくらい課題がある。これからは物価対策もやっていかなければいけない局面であり、可及的速やかに党としての経済対策を立案し、政府に訴えていきたい」と述べました。
公明 山口代表「補正予算案も視野に検討を」
公明党の山口代表は、記者団に「年度内のかなり早い成立で、新型コロナ対策や経済対策の予算上の裏付けが整ったことになり、速やかに執行できるよう、ほかの関連法案の成立も図ったうえで、国民に届けることが大事だ」と述べました。一方で「この予算は、ウクライナ情勢など、編成後に生じた事態に対する手当てがなく、物価の高騰に対応する措置がなされていない。今後、新年度予算の予備費はもちろん、状況によっては補正予算案も視野に入れながら検討していく必要がある」と述べました。
維新 馬場共同代表「第7波への備え 体制立て直しに全力を」
日本維新の会の馬場共同代表は、記者会見で「新型コロナやウクライナ情勢の問題で、日本経済にも大きな影響が出てくるため、予算審議には全面的に協力してきた。新型コロナ対策では、重症者が増えると病院のベッドが足りない状況が続いているので、第7波に対する備えとして、体制を立て直すことに全力をあげてほしい」と述べました。一方で、予算案に賛成した国民民主党との連携について「我々が共同で法案を提出することはかなり厳しい状況になった。国民民主党は野党の枠を超えて与党に行くべきだ。中途半端なことをするよりも連立政権入りすることが所属議員や支援者のためになるのではないか」と述べました。
国民 玉木代表「追加経済対策策定へ 次のフェーズに移る」
衆議院に続いて参議院でも新年度予算に賛成した国民民主党の玉木代表は、記者団に対し「自民・公明両党との実務者レベルの政策協議が始まるので、いわゆる『トリガー条項』の凍結解除を含む、総合的な追加経済対策の策定に向け、次のフェーズに速やかに移っていきたい」と述べました。また、今後の党の立ち位置について「『政策本位で与野党を超えて、連携、協力をすべきところはしていく』という党の方針どおり、これからもやっていく。現政権に対しては、いいものは前に進めていき、おかしなものは問題点を指摘をして、行政監視機能をしっかり果たしていくことを貫いていきたい」と述べました。
共産 小池書記局長「国民に冷たく危険な予算」
共産党の小池書記局長は、記者会見で「新型コロナ対策が不十分なうえ、社会保障や暮らしの予算を削減する一方で大軍拡を進める、国民に冷たく危険な予算だ。引き続き、岸田政権の政権運営や問題点を追及しながら、対案を示し、論戦に臨んでいきたい」と述べました。また、国民民主党が賛成したことについて「経済政策や社会保障など、あらゆる分野の課題について、岸田政権の全体像を信任したことになり、名実ともに与党であることがはっきりした。参議院選挙での協力の対象にする条件はなくなった」と述べました。
れいわ新選組 「緊急時でもドケチ予算と断じる以外ない」
れいわ新選組は「保育・介護、医療分野、就職氷河期世代など、景気停滞で真っ先に打撃を受ける人々を十分に救済しうる予算になっていない。また、エネルギー危機の打開には再生エネルギーの強化が極めて重要だが、ほぼ眼中にないようだ。今回の予算も、危機にひんした国民生活を政治が救う決意と覚悟が全く感じられない。緊急時でもドケチ予算と断じる以外ない」とする談話を発表しました。
後半国会の焦点は
夏の参議院選挙を前に各党が独自色を強めることが予想される中、後半国会ではウクライナ情勢に伴う物価の高騰や新型コロナの感染状況を踏まえた経済対策をめぐる議論のほか、経済安全保障の強化を図る新たな法案の審議などが焦点になる見通しです。
 
●22年度予算が成立 過去最大の107兆5964億円 3/22
2022年度予算が22日の参院本会議で与党や国民民主党などの賛成多数で可決、成立した。岸田文雄首相は月内にも予算に盛り込んだ予備費を活用し、当面の原油・食料高騰対策のとりまとめを指示する。22年度補正予算案の編成を伴う経済対策は6月にもまとめ参院選後の実施を見込む。
22年度予算は一般会計総額が107兆5964億円で10年連続で過去最大を更新した。成立日としては村山内閣時の1995年と並ぶ戦後4番目の早さだった。税制改正などの予算関連法も22日に成立した。
社会保障費は初めて36兆円を突破し、防衛費も台湾海峡など安全保障環境の変化に対応するため5.4兆円規模と過去最高になった。新型コロナウイルスの感染再拡大に備える予備費として、21年度当初予算と同じ5兆円を積んだ。
予算はロシアによるウクライナ侵攻に伴う物価上昇は想定していない。家計や中小企業に与える影響を抑える必要がある。
首相は月内にも政策パッケージの策定を指示し、ロシアへの経済制裁の強化により供給不足が懸念されるガソリンや穀物、食料品などの価格高騰に対応する。4月中にとりまとめ、参院選前の執行をめざす。
国際情勢の変化に機動的に対処するため、主な財源として22年度予算に盛り込んだ予備費を充てる。
政策パッケージではガソリン税を一時的に下げる「トリガー条項」などの扱いなどが焦点となる。自民、公明、国民3党の実務者での調整を急ぐ。現在は石油元売りに補助金を配って対応している。
公明党の石井啓一幹事長は同条項発動のための関連法改正を念頭に「4月下旬までに何らか対応をしないといけない」と指摘する。補助金や税制の仕組みを活用した総合的な支援策を視野に入れる。
与党が求めている年金受給者向けの臨時給付金も配るかどうか判断する。首相は22日の参院予算委員会で「物価高騰の状況など様々な観点に鑑みて様々な対策を考えていかなければならない。そのなかで扱いを検討したい」と述べた。
政府はそれに続く経済対策を夏の参院選後に打ち出す段取りを描く。6月に「新しい資本主義」の実行計画や経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)をまとめる。そこに盛り込む政策は22年度補正予算案を裏付けとする経済対策で実行する。
人への投資や賃上げ策のほかデジタル、科学技術立国、グリーン、スタートアップといった成長力の底上げに資する内容を想定する。
 
●総額107兆円で10年連続最大、新年度予算が成立… 3/22
2022年度予算は22日の参院本会議で自民、公明、国民民主3党などの賛成多数で可決、成立した。一般会計は総額107兆5964億円で10年連続で最大を更新した。3月22日の成立は戦後4番目の早さだ。
新型コロナ対策では、治療薬やワクチン開発に取り組む費用など14億円を計上。新たな変異株などに備え、5兆円をコロナ対策予備費として確保した。社会保障費(36兆2735億円)と防衛費(5兆3687億円)は、いずれも過去最大となった。
歳入では税収65兆2350億円を見込み、36兆9260億円の国債を発行する。
岸田首相は予算成立を受け、追加経済対策の策定を月内に指示する方向で調整に入った。原油をはじめとする物価高騰の影響を緩和するための包括的な対策を早急に打ち出す必要があると判断した。規模は必要な対策を検討した上で、今後精査する。
 
●107兆円の22年度予算が成立 10年連続最大、早さ3位 3/22
2022年度予算は22日の参院本会議で、与党と国民民主党などの賛成多数で可決、成立した。一般会計総額は10年連続で過去最大の107兆5964億円。現行憲法下では1999年度と2000年度予算の3月17日、14年度予算の20日に次いで3番目に早い成立となった。
22年度予算は、昨年12月に成立した21年度補正予算と一体で編成。年金・医療などの社会保障費に36兆2735億円、過去に発行した国債の利払いや償還に充てる国債費に24兆3393億円を、それぞれ計上した。軍事力を増強する中国や北朝鮮をにらみ、防衛費は最大の5兆4005億円となった。
 
 
 
 
 
 
 
●骨太の方針
現在では経済財政運営と改革の基本方針と呼ばれており、その発祥は小泉純一郎内閣において「聖域なき構造改革」の着実な実施のために、経済財政諮問会議にて決議させた政策の基本骨格であった。
首相が政治任用したブレーンが「骨太の方針」として総論を作成し、各論を各省庁(大臣)に作らせ諮問会議で発表させ、その各論の実施プロセスを工程表として提出させ、定期的にその進捗状況を報告させることで、政策実施の進行管理を行った。
骨太の方針とは、2001年6月に答申された「経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」の際に使われた言葉だったが、小泉首相の退陣後も「骨太の方針第○弾」として呼ばれ、政策の継続性が謳われている。
2001年、当時の宮沢喜一財務相が内閣府に設置された経済財政諮問会議の議論を「骨太」と表現したことから、骨太の方針と呼ばれるようになった。基本策を諮問会議で、具体策を財務省で決めることから、骨や軸がしっかりしている様を名前に込めたとされる。
背景​
「骨太の方針というのは大きな傘みたいなもんだ。総論をしっかり抑えてその下に各省の改革プログラムを組み込んでいく。そうすればみんないやでも改革案を考えざるを得なくなる」小泉純一郎  ・・・
それまで大蔵省が握っていた予算編成の主導権を内閣に移すため、2001年1月に内閣総理大臣を議長とする経済財政諮問会議が設置された。当時の内閣総理大臣小泉純一郎の政治手法とも相俟って、機能が発揮されてきた。経済財政諮問会議においては、毎年6月に経済政策・財政政策の柱となる本基本方針を答申しており、最終的に閣議決定される。
首相は「骨太の方針」が策定されたあと、各省の大臣に「骨太の方針に沿った改革を大臣自身が作成し、諮問会議で発表せよ」と命じた。飯島勲秘書官はこれを「総論でタガをはめ、大臣を抑え、官僚組織のトップを抑えることで各論での『骨抜き』を許さない手法」と表現している。
当初は2001年6月に答申された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」としてとりまとめられ、2007年版においては、2006年まで使用した「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」の名称を簡略にし、「経済財政改革の基本方針」と変更している。 
安倍内閣
2017年 第3次安倍第2次改造内閣は、平成29年6月9日、「経済財政運営と改革の基本方針2017〜人材への投資を通じた生産性向上〜」(骨太方針)を閣議決定した。
菅内閣
2020年​ マイナンバー制度の改善。健康データの一覧提供。Go To キャンペーンの実施。
●財政再建目標、堅持か緩和か 自民が2つの提言で対立 5/19
自民党は財政政策で2つの提言案をまとめた。総裁直轄の組織である財政健全化推進本部は19日、2025年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標の堅持を求めた。安倍晋三元首相が最高顧問を務める財政政策検討本部は17日に修正を要求した。
政府はPB黒字化を財政再建の目標に掲げる。自民党の提言を受け、政府は6月にもまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の調整に入る。
財政健全化推進本部が19日に示した文書案には「財政健全化の旗はおろさない」と記し、黒字化目標を維持する姿勢を打ち出した。最高顧問の麻生太郎副総裁は同日の会合で、ウクライナ情勢による国際金融市場の混乱に触れ「財政は国家の信用として最も大事だ」と強調した。
19日は提言案に様々な意見がでて、20日に再び会議を開く。
一方の財政政策検討本部は高市早苗政調会長の直轄機関として21年冬に発足した。積極的な財政政策を唱える幹部が多い。提言には「カレンダーベースでの目標設定がマクロ経済政策の選択肢をゆがめることがあってはならない」と指摘し「十分に検証するべきだ」と訴えた。
金融市場への認識にも触れた。「円安は日本経済にとって有利に働く。安定した円安傾向は国内投資を回復させ、国内への産業の回帰をもたらす」と盛り込んだ。
両本部は路線対立が鮮明にならないよう、文書作成にあたり安倍氏と麻生氏が意見を交わした。財政健全化推進本部の文書案にも黒字化目標について「内外の経済情勢を注視しながら検証する」と明記した。今後も検討を続けていくことでは一致した。事実上、結論を先送りにした形だ。
松野博一官房長官は19日の記者会見で黒字化目標について「政府の方針に変わりはない」と述べた。「今年1月の経済財政諮問会議において、現時点で目標年度の変更が求められる状況にはないことが確認された」と言及した。
政府が1月に示した中長期の財政試算では高成長が実現しても25年度は1.7兆円の赤字になる。内閣府は社会保障費の抑制などの歳出改革を通じて黒字化は達成可能と説明するが、高い経済成長が前提で現実的ではないとの指摘がある。
日本は新型コロナウイルス禍からの景気回復で米欧から遅れをとる。ロシアによるウクライナ侵攻によって、世界でエネルギー価格が上昇し経済はさらに不安定な状況に置かれている。
自民党は防衛費を国内総生産(GDP)比で2%に引き上げる目標を唱える。脱炭素の取り組みや半導体などの経済安全保障に関わる重要技術の支援など、政府の支出増加が見込まれる分野は多い。
積極財政派は黒字化目標が景気回復や防衛力強化の足かせになるととらえる。一方、財政再建派は目標がなくなれば国債の増発に歯止めがかからなくなり、必要性の薄い「ばらまき」が増えると懸念する。
政府が目標とする25年度までは3年の時間がある。政府内では変更が必要か否かの本格的な議論は来年以降になるとの見方が大勢だ。
 
●財政健全化目標の堅持、状況に応じ検証=首相直轄の自民議連 5/20
岸田文雄首相(自民党総裁)直轄で財政政策を議論する同党の「財政健全化推進本部」(最高顧問、麻生太郎副総裁)は20日、政府が6月に閣議決定する経済財政運営の基本指針「骨太の方針」を念頭に、歳出改革などに関する提言案を議論した。
国と地方の基礎的財政収支(PB)を2025年度に黒字化する現状の財政健全化目標の取り扱いについて、「財政健全化の『旗』を下ろさず、これまでの健全化目標に取り組む」と強調。同時に「内外の経済情勢などを常に注視しつつ、状況に応じ必要な検証を行っていく」と明記し、リーマンショックや新型コロナのような経済ショックが発生した際には躊躇なく財政出動する姿勢を明記した。
自民党内では、財政政策をめぐり高市早苗政調会長の下に「財政政策検討本部」も存在し、安倍晋三元首相が最高顧問を務めている。大規模な財政出動を重視する議員が多く、PB黒字化の2025年度達成について、年限を区切った目標設定の妥当性を検証するよう提言でまとめている。
財政政策本部側では当初、PB黒字化の達成年度の撤廃を求める議員もいた。しかし、今年夏の参院選を控え党内対立が目立つのは得策でないとの判断から、財政健全化本部、財政政策本部、双方が提言の表現で歩み寄りを見せつつある。
 
●「アベノミクス道半ば」自民・財政再建派が加筆 健全化目標は維持 5/26
財政再建方針をめぐる自民党財政健全化推進本部(本部長・額賀福志郎元財務相)の提言がまとまり、26日、党の政調審議会で了承された。財政健全化目標の堅持は原案通り維持する一方、内外の経済情勢によっては必要な検証を行うとした。来週にも首相官邸に提出する。
提言は19、20両日にわたり議論されたが、安倍晋三元首相ら党内の積極財政派でつくる「財政政策検討本部」(本部長・西田昌司政調会長代理)のメンバーから異論が出たため額賀本部長に一任となっていた。25日までに額賀氏が安倍、西田両氏らと協議を重ね、内容を確定させた。
原案にあった感染症の流行や大災害時に十分な支出ができるようにするため「平時からの財政秩序が必要」としていた部分は削除した。関係者によると安倍氏側から「今こそ十分な支出をするべき時だ」とする指摘が寄せられたという。
また、全体として「経済成長 ・・・
 
●「財務省の代弁者」西田昌司・自民財政政策検討本部長 5/30
「財政健全化推進本部は財政健全化という観点からしかものを言わない。はっきり言ってしまえば財務省の代弁者の方々がやっている」(2022年5月30日、自民党本部で記者団に)
自民党の財政政策検討本部の西田昌司本部長は30日、同本部の提言書を岸田文雄首相に手渡した。高市早苗政調会長の直轄機関で安倍晋三元首相が最高顧問を務める。西田氏をはじめ積極財政派が名を連ねる。
一方で財政健全化推進本部は対照的なポジションをとる。基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標の堅持を政府に求め、財政再建の旗を掲げ続ける。総裁直轄のこの本部の最高顧問には麻生太郎副総裁が就く。
西田氏は財政健全化推進本部の議論について「財政と民間経済の両方の視点」が欠けていると指摘した。新型コロナウイルス禍や物価高騰などによる経済活動への影響が長引く中で、党内では歳出拡大を求める声が一層高まっている。
 
●骨太案、財政健全化目標「25年度」明記せず 表現が後退 6/1
政府が31日に公表した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)案では、昨年までの方針で明記された2025年度の財政再建目標を堅持するとの明確な記述がなくなった。骨太の方針は年末の予算編成・税制改正に向けて、政策の方向性を定める文書だ。政府は目標そのものは変えていないと説明するが、財政再建の揺らぎをうかがわせる内容となった。
財政再建の目標は国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を25年度に黒字とし、国内総生産(GDP)に対する債務残高の比率を安定的に下げていくことだ。31日の案は「これまでの財政健全化目標に取り組む」とした。一方で「現行の目標年度により、状況に応じたマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」とし、「必要な検証を行う」と強調した。
経済情勢によっては目標を先送りして財政出動を優先すると読める。山際大志郎経済財政・再生相は31日の経済財政諮問会議後に記者会見し「財政健全化に対して方針を変えたわけではないし、後退させたわけでもない」と語ったものの、目標の位置づけは下がった。
積極財政派が集まる自民党の財政政策検討本部は、PB黒字化の目標年度が「柔軟な政策対応を妨げてはならない」とする提言をまとめていた。一方で総裁直轄の財政健全化推進本部は「健全化の旗は下ろさず」との姿勢を強調。それぞれの最高顧問である安倍晋三元首相と麻生太郎副総裁が、文言調整へ意見を交わした経緯がある。
BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「仮にPBの黒字化目標が棚上げになっても、日銀が金利を抑え込んでいるので、すぐ財政危機になるわけではない。だが金利の抑え込みに成功すると資源配分の効率が高まらず、成長率が上がらない悪循環が深まる」とみる。
 
●財政黒字化「25年度」明記せず=積極財政論で「健全化」後退 6/2
政府は5月31日、経済財政諮問会議(議長・岸田文雄首相)で経済財政運営の基本指針「骨太の方針」の原案を示した。国と地方の基礎的財政収支(PB)を黒字化させる財政健全化目標について、「2025年度」としてきた年限の記載がなくなった。目標自体は維持する姿勢を示したが、自民党内の積極財政派に配慮し、目標を「堅持する」と明記した昨年から表現が後退した格好だ。防衛費などの増額圧力が強まる中、財政健全化への道のりは険しさを増している。
積極財政派と再建派の折衷案
原案では「財政健全化の『旗』を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む」とも明記。一方で、「経済あっての財政であり、現行の目標年度により、状況に応じたマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」と指摘。「内外の経済情勢などを常に注視し、状況に応じ必要な検証を行っていく」とした。
これらの表現は、自民党内の財政再建派が主導する財政健全化推進本部(本部長・額賀福志郎元財務相)と、積極財政派が主導する財政政策検討本部(本部長・西田昌司政調会長代理)の提言内容を反映。双方の主張のいわば折衷案となった。
財政政策検討本部は5月17日に提言案を公表。25年度の黒字化目標について「カレンダーベースでの目標設定が柔軟な政策対応を妨げ、マクロ経済政策の選択肢をゆがめることがあってはならない」と強調。カレンダーベースでの目標設定の妥当性について検証を求めた。西田氏は記者団に「25年度のPB目標の廃棄を検討すべきだということだ」と語り、今後の党内議論に意欲を示した。
「参院選前に自民党が分裂しているという印象を持たれるのは良くない」(関係者)。財政政策検討本部の最高顧問を務める安倍晋三元首相、財政健全化推進本部の最高顧問に就いている麻生太郎副総裁らは両本部の提言の文言について事前に調整を重ねた。その結果、両本部の提言はいずれも現行目標の「検証を行っていく」という表現で足並みをそろえた。25年度黒字化目標の是非については結論を先送りしたとも言える。
防衛費増で目標見直し圧力
内閣府が今年1月公表した中長期の経済財政試算ではPBについて、社会保障費の抑制など従来の歳出改革の取り組みを続けることによるPB改善効果(年1兆3000億円程度)を織り込めば、25年度に2兆2000億円の黒字に改善するとされた。この試算を踏まえ、岸田首相が25年度黒字化目標の堅持を表明した。
山際大志郎経済財政担当相は5月31日の記者会見で「財政健全化に対し方針を変えたわけでも後退させたわけでもない」と強調した。ある政府関係者は「1月以降の税収動向を見ても今の時点で目標を見直す必要性はまったくない」と言い切る。一方で「年末に防衛費など来年度予算の規模が出てきた時点で25年度黒字化は難しいとなることも想定される」と指摘する。
防衛費をめぐっては、自民党が提唱する「5年間で国内総生産(GDP)比2%」を達成するには単純計算で毎年度の予算を約1兆円ずつ増額していく必要がある。自民党内には「25年度黒字化目標にこだわると必要な防衛費確保の妨げになる」との声が強まっており、目標見直しに向けた議論が活発化する可能性もある。
 
●政権占う「安倍・麻生・菅」…政策・人事 影響力健在  6/5
「私と麻生さんがやってきたことを否定するんですか」
5月23日、元首相の安倍晋三(67)は議員会館の自室に呼んだ元財務相の額賀福志郎(78)に険しい表情でこう迫った。
額賀をトップとする自民党の財政健全化推進本部がまとめた政府への提言案では、財政出動よりも財政再建に重きを置く表現が並んだ。安倍は副総理兼財務相だった麻生太郎(81)と共に推進した経済政策「アベノミクス」の正当性を打ち消す動きだと受け止めた。
5月19日の推進本部会合では、安倍に近い元外務副大臣の城内実(57)が提言案について、「随所に官僚的な表現がある。よもや財務省に丸投げしたとは思わないが……」と皮肉り、元財務副大臣の鈴木馨祐(45)が「失礼だろう」と猛反発する一幕もあった。
アベノミクスは財政出動と金融緩和、成長戦略の3本の矢からなる。特に、安倍は現段階では国の大胆な支出が重要で、基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化目標にこだわるべきではないとの立場だ。
安倍は、「私の顔を立ててくれ」とすがる額賀や、推進本部の最高顧問を務める麻生に配慮し、提言への黒字化目標の明記は最終的に受け入れた。ただ、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案からは、PBや「2025年度」の目標年限への言及が消え、政府への影響力を見せつけた。
安倍は防衛力の抜本的強化でも、骨太の方針に達成時期を「5年以内」と明記する必要性を訴え、政府にのませた。積極的な財政出動に向けては、さらなる表現の修正を求め、まだ矛を収めていない。首相の岸田文雄(64)周辺は「もっとどっしりと構えているべきなのに、何か焦りを感じる」と不審がる。
麻生も安倍に「政府への注文が露骨すぎる」との思いを抱くとされる。
2人には首相経験者としての哲学の違いがある。
麻生は現役の首相に対しては、前任者といえども最大限の敬意を払うべきだと考える。岸田が首相に就任すると、それまでの呼び捨てを私的な場でもやめた。麻生派と岸田派は池田勇人・元首相が創設した「宏池会」をともに源流としており、岸田を見る目は温かい。
一方、安倍は7年8か月余の最長政権を築きながら、最後は持病で退陣を迫られた。ロシアのウクライナ侵攻で激動する世界情勢を目の当たりにし、経済対策や安全保障政策で「まだ自分が取り組むべき課題は多い」との信念が強い。
安倍の言葉の激しさには、岸田の人事への不満も根底にある。安倍は閣僚起用が安倍派から4人だったのは少なすぎるとして、「次は派閥の数に見合う数のポストを取りにいく」と早くも参院選後の内閣改造をにらむ。
岸田を取り巻くもう一人の首相経験者が菅義偉(73)だ。菅は内閣支持率の低下で岸田に政権を明け渡し、岸田とは距離がある。新型コロナウイルスワクチンの接種進展など、在任中の仕事師としての成果が再評価され、存在感を取り戻した。
無派閥の菅が政策勉強会の準備を始めると、党広報本部長の河野太郎(59)や二階派で前総務相の武田良太(54)らが次々と参加に名乗りを上げた。
ただ、個別政策の実現を重視する菅は「大々的にやるつもりはない」と周囲に漏らし、勉強会は参院選後に先送りする考えだ。
菅は5月27日夜に麻生、31日夜に安倍からそれぞれ招待され、夫婦そろっての会食を楽しんだ。
「菅さんと麻生さんは大切です」
安倍は都内のフランス料理店で、自らの政権を支えた2人への感謝を口にした。「今から4人で麻生家に行きますか」と冗談を飛ばすと座は大いに盛り上がった。
菅は安倍、麻生の岸田に対する姿勢の違いは認めつつ、長年の盟友関係は今後も維持されるとみる。「2人とも大人だから壊れることはない」
岸田は自民副総裁でもある麻生は別格として、安倍、菅とも節目ごとに面会し、助言を仰ぐ。岸田派は第4派閥にすぎず、安倍、麻生派などを後ろ盾としつつ、非主流派に求心力のある菅への配慮も欠かせない。政権運営の安定に向け、岸田にとって今後も首相経験者3人の動きから目が離せない日々が続く。
 
●骨太方針、にじむ「安倍カラー」 岸田首相、財政・安保で配慮迫られ 6/6
岸田文雄首相が就任後初となる経済財政運営の基本指針「骨太の方針」策定をめぐり、自民党の安倍晋三元首相に押されている。
安倍氏は自身の路線を反映させようと、財政や安全保障政策に関して次々と発信。最大派閥を率い、保守派に影響力を持つだけに、首相も政権運営を考えて配慮せざるを得ない状況だ。
骨太は7日に閣議決定の方向。安倍氏がこだわった一つが防衛費の増額だ。骨太原案に目標の規模や年限が書き込まれていなかったことに対し、2日の安倍派会合で「しっかり国家意思を示すべきだ」と注文を付けた。
首相は5月下旬の日米首脳会談で、防衛費の「相当な増額」を表明した。ただ、防衛力の急速な強化に慎重な公明党の存在もあり、その後も具体的な数字は挙げず、国会答弁でも「まずは何が必要か積み上げる」と繰り返した。
安倍氏の要求を受け、政府が3日に示した修正版は「5年以内」と明示。さらに、安倍氏らが国内総生産(GDP)比2%を増額の目安としていることを踏まえ、北大西洋条約機構(NATO)諸国が国防予算をGDP比2%以上とする目標の達成を急いでいるという説明を本文に挿入した。
骨太原案は国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化に関し、昨年度の骨太にあった「2025年度」の目標年次を明記しなかった。「カレンダーベースの目標設定はすべきでない」との安倍氏らの主張を受けたものだ。
首相自身は財政政策の大きな転換に否定的。原案は財政健全化の「旗」は下ろさない、として目標を維持する形を取ったが、「現行の目標年度によりマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」とも記し、安倍氏の顔を立てた。
アベノミクスにこだわり
安倍氏が発信を強めるのは、自身の経済政策アベノミクスを継続させたい思惑があるためとみられる。現在の円安や物価高には「アベノミクスの負の遺産」との見方も出ており、政府関係者は「路線を修正させまいと必死なのだろう」と語る。
「君はアベノミクスを批判するのか」。安倍氏は5月中旬、骨太に関する自民党財政健全化推進本部の提言の取りまとめに当たった安倍派の越智隆雄元内閣府副大臣にこう迫った。提言の当初案には円安に批判的な表現が入っており、これに不満を抱いたもようだ。
防衛力強化や財政政策の議論は参院選後に本格化する見通し。安倍氏が一段と前に出れば、党内の路線対立につながりかねない。ある自民党関係者は「安倍氏と対立すれば政権は安定せず、首相にとっては『忍』の一字が続く」と予想する。  
●台湾を初めて明記 自民 骨太方針案を了承 6/6
自民党は6日の党政調全体会議で、政府が示した経済財政運営の指針「骨太の方針」の修正案を了承した。政府は7日に骨太方針を閣議決定する。
6日に出された修正案は、5月23日の日米首脳会談で、両首脳が「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」し、「両岸問題の平和的解決を促した」と注釈で紹介する形をとった。骨太方針に台湾が盛り込まれるのは初めてとなる。
このほか、令和5年度予算編成に向けた考え方として、今回の方針と(令和7年度の基礎的財政収支=プライマリーバランス、PB=黒字化目標を明記した)昨年の方針に基づき、「経済・財政一体改革を着実に推進する」と明記。一方で「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」とも盛り込んだ。 
●骨太の方針 “防衛力 5年以内強化”政府案 自民会合で大筋了承  6/6
ことしの「骨太の方針」をめぐり自民党の会合が開かれ、防衛費について、NATOの加盟国がGDPの2%以上を目標としていることを例示し、防衛力を5年以内に抜本的に強化するなどとした政府の案を大筋で了承しました。
政府案では、防衛費について、NATO=北大西洋条約機構の加盟国がGDP=国内総生産の2%以上を目標としていることを例示したうえで、防衛力を抜本的に強化する期限を「5年以内」と明記しています。
また、台湾をめぐる問題に関連して「ことし5月の日米首脳会談で両首脳は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促した」と本文の注釈に加えられました。
このほか、来年度の予算編成をめぐって、前回の会合で、歳出改革の内容を盛り込んだ「骨太方針2021に基づき」という文言を削除すべきだという意見が出されましたが、この表現は維持する一方「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」という一文が追加されました。
政府は、自民党内の手続きを経て、7日にも「骨太の方針」を閣議決定することにしています。
自民党政務調査会の木原稔副会長は記者団から「基礎的財政収支」の黒字化目標について見解を問われたのに対し「岸田総理大臣も『財政健全化の旗は降ろさない』と述べており、それに尽きる。経済あっての財政で、順番を間違えてはならないが、健全化の旗は立っていると認識している」と述べました。 
●厳正かつ「効率的な審査」明記へ、安全優先の原発推進=骨太で政府筋 6/6
政府は7日に閣議決定する経済財政運営の指針(骨太方針)で、原発再稼働について、新たに「厳正かつ効率的な審査」体制を構築すると明記する方針だ。ロイターが最終案を確認した。電力の供給不足が懸念される中、原子力規制委員会の厳しい規制基準は維持しつつ、再稼働可能な原発の速やかな審査を促すことが念頭にある。
最終案は原案を修正し、エネルギー安全保障の強化に向け「徹底した省エネルギーを進めるとともに、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する」との表現を追加した。
安全最優先の原発再稼働を念頭に、実効性ある原子力規制に「厳正かつ効率的な審査を含む」とも追記。ロシアによるウクライナ侵略を踏まえ、脱炭素の取り組みを加速させるとともに「エネルギー自給率の向上を図る」と盛り込んだ。
与党協議を踏まえて防衛力強化に関する記述も追加した。最終案では「外交・安全保障の強化が求められている」とし、「国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と記した。原案では時期を明記していなかった。
一方、原案で脚注に表記した、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が国内総生産(GDP)比2%以上の国防予算を目指しているとの記述について、最終案では本文に移した。
成長戦略に据えるスタートアップ(新規創業)への投資では、司令塔機能を明確化し、新たに「5年10倍増を視野に育成5カ年計画を本年末に策定し、スタートアップ政策を大胆に展開する」とした。
子育て支援に関し、最終案では「少子化対策・こども政策は、包摂社会の実現に向けて重要であるだけでなく、人への投資としても重要」とし、関連予算の増額を念頭に「強力に進める」ことも明記した。 
●単年度主義の脱却姿勢を評価 経団連会長、骨太方針で 6/6
経団連の十倉雅和会長は6日の記者会見で、政府が7日に閣議決定を予定する経済財政運営の指針「骨太方針」案に関し「前進した項目は単年度主義の弊害をなくそうとしたことだ」と述べ、政府の対応を評価した。脱炭素化投資や防衛費の増額が見込まれることを挙げ、「中長期的な計画を念頭に決めていくべきだ」と指摘した。
国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標として掲げてきた「2025年度」の時期を今回は明記しなかったことに関してはコメントを控えた。その上で「財政健全化の旗を降ろさないことが重要だ」と語った。 
●財務省の「猿芝居」に騙されてはいけない 「財政再建派」がやっていること 6/6
財務省の別働隊
5月23日付の本コラム「財務省の超エリート「次官候補」は何に追い込まれたのか?逮捕劇までに財務省で起こっていたこと」で、6月7日に閣議決定される予定の政府の「骨太の方針」を巡る自民党積極財政派と自民党財政再建派(これは事実上財務省の別働隊)との争いが背景になっていることを書いた。
逮捕された財務省高官は、世間から見ればとんだお門違いをしていた可能性があるが、財務省はまだ懲りないらしい。
先日の本コラムで紹介した自民党の若手の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」(共同代表:中村裕之農林水産副大臣)は、財務省の言い分もきちんと勉強して、しっかりした反論を行っている。自民党であっても、若手は財務省に騙されていない。
(1) 国債はすべて将来の税金で返済されなければいけない
(2) 日本国債残高が大きく将来世代にツケを残す
(3) 日本は財政破綻する
といった財務省のプロパガンダに対しては、的確に反論できる。本コラムの読者であれば、以下の反論は簡単なものだろう。
(1) 安倍元首相も言うように、半分以上の日銀保有国債では税金償還の必要はない
(2) 債務のツケでなく立派な資産を残せばいい
(3) バランスシートから見れば日本の財政破綻の確率は5年間で1%程度
自民党内でもベテラン議員ほど財務省に丸め込まれが、積極財政議連など若手では自分の頭で考え財務省の説明に疑問を持つ人が多くなっている。
筆者は、財務省の説明に30年前から疑問をもち、政府のバランスシートを作って周囲の政治家に説明してきたが、ここ数年、理解者が急増しているのを感じる。
「PB黒字化」を消えたように見せかけて
さて、骨太の方針はどうなっているのか。5月31日、骨太の方針の「原案」が出た。
前回の「骨太の方針」で明記していた財政健全化の「堅持」や、「2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化」といった文言が消えている。
これを、財政再建への姿勢が弱まったように報道するマスコミもあった。
しかし、これは財務省の「猿芝居」だった。たしかに「2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化」の文言は消えているが、その他の箇所で「令和5年度予算において、本方針及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する」と書かれている。「骨太2021」ではしっかりと「PB黒字化」が書かれている以上、何も変わりはないのだ。
かつてであれば、これで自民党もマスコミも騙されて終わる。今回、マスコミは相変わらず節穴だったが、自民党は違った。財政政策検討本部(本部長:西田昌司、最高顧問:安倍晋三)や責任ある積極財政を推進する議員連盟は、何も変更がないのをめざとく見つけている。
もっとも、財務省も「猿芝居」がバレたところで、必死に抵抗するだろう。というのは、親族に財務官僚が大勢いる岸田氏が総理だからだ。6月7日の閣議決定はどうなるのだろうか。
菅政権のときには、だんまりを決め込んでいた矢野康治財務次官が、岸田政権になった途端に月刊『文藝春秋』で持論を展開したことを記憶している読者も多いだろう。昨年10月11日付の本コラム「財務事務次官「異例の論考」に思わず失笑…もはや隠蔽工作レベルの「財政再建論」」で書いたが、あれほどの無知をさらけ出したのに、岸田総理は不問に付している。
弛みきった財務省
今の世界情勢では、安全保障に手を抜けない。財政再建路線を堅持した来年度予算案では、世界に太刀打ちできない。
1月17日付の本コラムで述べたように、今の財務省のいうPBは基本的に間違っている。一部の政府部門だけでPBを算出しており、すべての政府部門のPBを計算しないと、本当の財政の姿はわからない。
だが筆者のような包括的なPBによれば、既に問題のない「財政再建終了」の状態になっている。財務省のような間違った財政の見方で財政運営したら、国を滅ぼしてしまうだろう。
はっきり言って、最近の財務省は弛みきっている。先日の財務省高官の逮捕、国税庁職員による補助金詐取など、考えられない事態が次々に起きている。
財務省改革には、主計局の分離などいろいろなものがあるが、筆者がもっとも効果的と思うのは、国税庁を分離し、年金機構の徴収部門と合体させる「歳入庁」の新設だ。この考え方は、世界標準でもある。税と社会保険料は法的には同じであり、一緒に徴収するのが世界では当たり前だ。国税庁の財務省からの支配を取り除き、税の徴収のプロとしての人材有効活用にもなる。
この案は、かつて民主党政権で公約にもなっていた。ところが、財務省の巻き返しにより消えていった。これをどの党が実行できるかどうか、日本の今後を占うものといってもいいだろう。 
●「骨太方針」で財政健全化は骨抜きにされたのか  6/6
5月31日、2022年度補正予算が可決成立した。当初、参議院選挙前の補正予算編成に消極的とみられた岸田文雄首相だったが、公明党に押されて編成することとし、当初予算に計上された予備費の使用済み分を積み増すという極めて稀にみる補正予算となった。
その傍らで、財政健全化目標について、政府与党内での対立が浮き彫りとなった。2025年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を堅持するよう求める財政再建派と、その目標を覆そうとする積極財政派が、今年の「骨太方針」(経済財政運営と改革の基本方針)に盛り込む文言をめぐって対立したのだ。
「骨太方針」から重要な文言が消えた?
結局、「骨太方針2022」では、「これまでの財政健全化目標に取り組む」とだけ記し、「プライマリーバランス」や黒字化目標年度となる「2025年度」は明記しないという。
ただ、鈴木俊一財務相は、記者会見などで、ここでいう「これまでの財政健全化目標」には、2025年度のプライマリーバランスの黒字化を含んでおり、その方針に変更はない、と明言している。
表面的にみれば、財政健全化の姿勢は後退したと言わざるを得ない。ただ、もう少し実態的に踏み込んで、財政状況をみる必要がある。
注目すべき点は2つある。7月上旬には、2021年度の国の決算の概要が発表される。そこでの注目点は、2020年度からの繰越も含めた歳出と税収である。
2021年度の歳出は、史上稀にみる状況にあった。まず、2021年度の当初予算の一般会計歳出は、過去最高規模の106.6兆円を計上した。加えて、単独の補正予算としては過去最高規模の36.0兆円の歳出の追加を行った。ただでさえ、巨額の歳出予算となっているうえに、2020年度から30.8兆円もの歳出予算が繰り越されていた。つまり、これらを合計して173.4兆円もの予算が、2021年度に支出可能な状態になっていた。
財政出動を増やせと唱えるなら、この予算を、まずは使い切るように支出すればよい話である。ところが、実際には、予算を余らせるほどにしか使えていないのである。
一般会計の出納状況がわかる資料である財務省「国庫歳入歳出状況」によると、2021年度予算が2022年3月末までに払い出された額は139.3兆円だった。これは、2021年度に支出可能な予算173.4兆円の80.3%にとどまっている(本稿執筆時点での最新データ)。
その前の年の2020年度をみてみると、2021年3月末までに払い出された額は142.3兆円で、2020年度に支出可能な予算182.3兆円の78.0%だった。そして、決算を締めるまでに払い出されたのは147.6兆円で、30.8兆円が2021年度に繰り越された。3月末は、カレンダーどおりだと年度末だが、その後に出納整理期間という未決済の支出を整理する期間が残されているとはいえ、その期間に支払われる額は全体でみればわずかだから、3月末時点での執行状況で、決算がほぼ見通せるといってよい。
こうみると、2021年度も2020年度と似ており、結局のところ予算をてんこ盛りにしたが使い切れず、2年連続で数十兆円規模の繰越か不用(使わず予算執行を取りやめる)かのどちらかが生じることが見込まれる。勇ましく財政出動といいながら、使おうにも使い切れないというのが実態なのである。
特に、2021年度は、2020年度からの繰越予算が2021年度限りで失効するから、2020年度と違って翌年に繰り越せずに不用となる可能性が高い。不用となる歳出予算は、支出されないことから剰余金の増加要因となる。
予算の使い残しは財政健全化要因になる
歳入額から歳出額を差し引いた決算段階での残額を、歳計剰余金という。歳計剰余金のうち、翌年度に繰り越された歳出に充てるための財源などを除いた額を、純剰余金と呼ぶ。純剰余金のうち2分の1を下らない金額は、原則として翌々年度までに、公債や借入金の償還財源に充てなければならない、と財政法第6条で定められている。つまり、その剰余金の多くを、借金の返済に回さなければならないのである。
歳出予算を余らせて使わないことにすると剰余金が増えて、剰余金が増えることで、借金をより多く返済できる状況にある。これは当然、財政収支を改善させる。
東洋経済オンラインの拙稿「2021年度予算、『短期国債が4割』の異常事態」でも触れたように、ただでさえ、わが国の国債発行は短期国債に依存しなければならず、借りてはまた借り換えるという「自転車操業状態」に陥っているのだから、これを機に短期国債の返済を進めることが望まれる。
その観点から、2021年度の決算で、歳出予算をいくら使い残すのかが注目点である。
もう1つの注目点は、税収である。コロナ禍でありながら、消費税率を10%に引き上げたこともあって、一般会計税収は過去最高を更新している。2020年度決算では、バブル景気末期の1990年度の税収60.1兆円を超えて、60.8兆円となり過去最高を記録した。さらに、2021年度の補正予算後の税収見込みは63.9兆円としており、過去最高を更新することが確実視されている。しかも、決算段階での税収は、この過去最高を想定している補正後予算の税収見込みよりもさらに増えるという予想が出ている。
2021年度の歳出予算は、補正後予算の税収見込みを前提に組まれているから、もし2021年度の決算段階での税収が63.9兆円を超えれば、それは歳入超過として歳計剰余金を増やす要因となる。
税収増によって剰余金が増えると、前述のように、借金をより多く返済できて、財政収支を改善させる。2021年度の税収が、どこまで大幅増となるかが注目される。
プライマリーバランス黒字化の可能性はむしろ高まっている
この税収の大幅増の、プライマリーバランスに与える影響は大きい。東洋経済オンラインの拙稿「岸田内閣は財政健全化目標を先送りするのか」で詳述したように、より低い経済成長率などより保守的な経済前提でみても、経済予測の発射台(予測を始める前の年)での税収が多ければ、2025年度の税収も多くなると見込まれる。そうなると、プライマリーバランスの黒字化も実現可能性が高まる。使い切れない歳出予算を、無理に無駄遣いせずに不用とすれば、それだけ財政収支は改善するから、なおさらである。
さらに「骨太方針2022」には、2023年度予算において、「骨太方針2021」にも基づいて経済・財政一体改革
を着実に推進する旨が記されている。これは「歳出の目安」という歳出増を抑える具体的な方針を踏襲することを意味する。だから、2023年度の予算編成での歳出抑制には、コミットしているといってよい。
そうみれば、今般の「骨太方針2022」で2025年度のプライマリーバランスの黒字化を明記しなかったのは、目標の旗を降ろしたわけではなく、その達成が視野に入っている実態を反映したものなのかもしれない。 
●政府「新しい資本主義」実行計画と「骨太の方針」きょう決定へ  6/7
政府は7日「新しい資本主義」の実現に向けた実行計画と、ことしの「骨太の方針」を決定することにしています。個人の金融資産を貯蓄から投資に促すための「資産所得倍増プラン」を年末までに策定することなどを盛り込む方針です。
岸田総理大臣が掲げる「新しい資本主義」の実現に向けた全体構想と実行計画、そして、ことしの経済財政運営の指針「骨太の方針」は、いずれも岸田内閣では初めてまとめるもので、7日の臨時閣議で決定します。
「新しい資本主義」の実行計画などでは、官民が連携して気候変動やデジタルなど社会的課題の解決を図りながら経済成長を目指すとして「人」や「科学技術・イノベーション」などの4分野に重点的な投資を行うことを柱に掲げています。
このうち「人への投資」では、個人の金融資産を貯蓄から投資に促すため、個人投資家向けの優遇税制「NISA」や「個人型」の確定拠出年金=「iDeCo」の改革を含めた「資産所得倍増プラン」を年末までに策定するとしています。
一方、岸田総理大臣が先の自民党総裁選挙で言及した富裕層の金融所得への課税の見直しなどは盛り込まれない方向です。
また「骨太の方針」では、防衛費について、NATO=北大西洋条約機構の加盟国がGDP=国内総生産の2%以上を目標としていることを例示し、防衛力を5年以内に抜本的に強化すると明記します。
このほか、財政の健全性を示す指標「基礎的財政収支」をめぐって、2025年度の黒字化目標は、今回年限を明示しないものの維持することにしており、状況に応じて必要な検証を行っていくとしています。 
●「骨太の方針」と「新しい資本主義」の閣議決定 財政健全化後退の懸念 6/7
「所得再配分」から「成長」に政策の比重が移る
自民党内での熾烈な調整を経て、政府は7日午後の臨時閣議で、「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」と「新しい資本主義」の実行計画を決める。党内では、財政拡張路線と財政健全化路線が最大の対立軸となった。閣議決定までは、「政低党高」の岸田政権を特徴づける経緯を辿り、政府は調整役を担わされた感もある。
「骨太の方針」と「新しい資本主義」の実行計画では、従来の政府の経済政策の修正が顕著にみられた。岸田政権は発足当初から「所得と成長の好循環」を掲げたが、実際には税制変更を通じて賃上げを促し、企業と労働者の労働分配を変えることを目指す所得再配分に比重がかけられた政策姿勢だった。また、岸田政権は、企業に対する賃上げ要請に加えて、短期的に収益拡大を目指す企業の姿勢に否定的であるなど、「企業に厳しい政権」と印象づけられた。さらに、所得格差是正の観点から、株式市場の逆風となりえる金融所得課税制度の見直しも掲げていた。この点から、「株式市場に厳しい政権」との評価も固まっていたのである。
ところが、「骨太の方針」と「新しい資本主義」の実行計画では、より成長重視の姿勢が目立つ一方、「株式市場に厳しい政権」から「株式市場を味方につける政権」へと一気に方針転換した印象を与える。政策姿勢は大きく修正された。
「人への投資」、「脱炭素」など重要な政策項目が並ぶ
「骨太の方針」では、新しい資本主義を実現するために投資重点4項目を掲げる。その一つが、人への投資の拡大である。日本は海外と比較しても人への投資が不十分であることが長らく課題であった。政府は、転職やキャリアアップ支援のため2024年度までの3年間で4000億円規模の予算を投じる。教育訓練や転職、再就職などの支援で非正規雇用者を含む「100万人程度」が利益を受けられるようにする方針も示される。これらは、労働者が産業構造の変化、技術革新にキャッチアップすることで、労働のミスマッチ緩和や労働生産性向上に資するものとなるだろう。また、企業に男女の賃金差の開示を求め、人的資本に関する非財務情報については今夏に開示指針を策定すると書き込む方向だ。
脱炭素の実現に政府は10年間で20兆円規模の投資を行う方針であり、その財源としてGX経済移行債(仮称)の発行を検討する。また、再生可能エネルギーや原子力に関しては、「最大限活用する」との考えが記される見通しだ。
「骨太の方針」にはスタートアップ支援も盛り込まれる。創業時の融資を巡って、個人保証を不要にする案が検討されている。科学技術分野では量子や人工知能(AI)、バイオなどの分野への投資を手厚くする。これらは、岸田政権の経済政策が、所得再配分重視から成長戦略重視へと比重を移したことを印象付けるものであり、基本的には歓迎したい。
「株式市場を味方につける政権」に方針転換
さらに、「株式市場を味方につける政権」に方針転換した岸田政権は、新たに「資産所得倍増計画」を掲げ、幅広い世代の個人の資産を株式市場に向かわせるために、少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の拡充を検討している。年末までに策定する資産所得倍増プランに盛り込まれる方向だ。
個人の資金を株式市場に向かわせることは簡単ではなく、それを通じて資産所得の倍増させることは近い将来であれば現実味を欠く。しかし、個人の資金をリスクマネーとして企業に提供し、それを通じて企業の成長、経済の活性化を図ること、またそれが配当増加、株価上昇を通じて個人消費を刺激するなど好循環を目指す姿勢は正しいだろう。
ただし、制度変更だけでは個人マネーを株式市場に向かわせるには十分でなく、企業をより成長させる成長戦略の後押しが欠かせないのではないか。
財政健全化路線後退の懸念
このように、今回の「骨太の方針」と「新しい資本主義」の実行計画は、岸田政権の経済政策がより日本経済本活性化に貢献する方向へと軌道修正されたことを確認するものとなり、歓迎したい。
他方で、気がかりであるのは、冒頭で述べた、財政拡張路線と財政健全化路線の対立である。「骨太の方針」は両者のバランスをとって記述されたとはいえ、実際には従来よりも財政拡張路線の意見に寄った記述となったように思われる。それを最も象徴しているのは、「2025年度プライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化目標」という記述がないことだ。
骨太方針では、財政健全派が強くこだわった「骨太方針2021に基づき経済・財政一体改革を着実に推進する」との文言が入るが、他方で、「ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」と、柔軟な対応を可能とする前提を入れるべきとする財政拡張派の主張も取り入れた記述となる方向だ。
財政拡張派は、骨太の方針での財政健全化に関する記述が、参院選後の大型経済対策や防衛費増大の制約になることを強く嫌っているのである。そこで、「2025年度プライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化目標」に代表される財政健全化については、将来修正しうる目標に位置付けたいのだ。
財政悪化は成長戦略の効果を損ねてしまう
実際、骨太の方針を巡る自民党内での議論では、防衛費増額を求める意見が相次いだ。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、安倍元首相らからは「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」ことや、北大西洋条約機構(NATO)諸国の国防予算を念頭に「防衛予算の対GDP(国内総生産)比2%」といった言葉を盛り込むよう要求が相次いだのである。
「新しい資本主義」の実現に向けた各種施策は、歳出と歳入の一体改革を進めることで、しっかりとその財源を確保してから実施することが重要である。安易に、新規国債発行でそれらの施策を賄えば、成長戦略としての効果を自ら損ねてしまうことになりかねない。新規国債発行の増加は、将来世代の需要を前借りし、奪ってしまうものだからだ。
それは将来にわたる成長期待を低下させ、企業の投資、雇用、賃上げをより慎重にさせることで、日本経済の潜在力を押し下げてしまうのである。
財政健全化路線を堅持できるかどうか、岸田首相のリーダーシップと政治手腕に期待したい。 
●骨太の方針要旨 6/7
 「成長と分配の好循環を早期に」
●第1章 我が国を取り巻く環境変化と日本経済
新型コロナウイルス感染症、ロシアのウクライナ侵略、権威主義的国家による民主主義と自由主義への挑戦、気候変動など我が国を取り巻く環境に構造変化が生じている。
国内では資源価格高騰による海外への所得流出、コロナ禍でさらに進む人口減や少子高齢化など難局が同時に、複合的に押し寄せている。
課題解決と経済成長を同時に実現し、経済社会の構造を変化に対して、より強靱(きょうじん)で持続可能なものに変革する「新しい資本主義」を起動する。「成長と分配の好循環」を早期に実現する。
日銀においては2%の物価安定目標を持続的、安定的に実現することを期待する。
他のG7諸国並みの円滑な入国を可能とする水際措置の見直しなど水際対策緩和を進める。
●第2章 新しい資本主義に向けた改革
「人への投資」を抜本的に強化するため2024年度までの3年間に4000億円規模の予算を投入。デジタルなど成長分野へ移動できるよう強力に支援する。
今年中に非財務情報の開示ルールを策定するとともに、四半期開示の見直しを行う。
給付型奨学金と授業料減免を必要性の高い多子世帯や理工農系学生などの中間層へ拡大する。
現在35%にとどまる自然科学(理系)分野の学問を専攻する学生の割合は5割程度を目指すなど具体的な目標を設定する。
最低賃金は地域間格差にも配慮し、できる限り早期に全国加重平均で1000円以上を目指す。
少額投資非課税制度(NISA)の抜本的拡充や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)制度の改革など貯蓄から投資へのシフトを大胆に進める。年末に「資産所得倍増プラン」を策定する。
量子、人工知能(AI)、バイオ、遺伝子治療など国益に直結する科学技術分野で国家戦略を明示する。首相官邸に科学技術顧問を置く。
スタートアップの資金調達の困難さを解消するため、新規株式公開(IPO)プロセスの見直しを進める。個人保証や不動産担保に依存しない融資への見直しなど成長資金の調達環境を整備する。
50年のカーボンニュートラル実現へ、今後10年間に150兆円超の官民の投資を先導するため、十分な規模の政府資金をGX経済移行債(仮称)で調達することを検討する。
民間で公的役割を担う新たな法人形態の必要性の有無について検討する。
不妊症・不育症支援や妊産婦支援・産後ケアの推進に取り組む。出産育児一時金の増額をはじめとして経済的負担の軽減の議論を進める。
男女間の賃金格差の解消に向けて大企業に男女間の賃金格差の開示を義務付ける。
東京一極集中の是正や社会機能を分散した国土へ、デジタル田園都市国家構想の実現による地方の活性化を強力に進める。
デジタル推進人材を26年度末までに230万人育成する。
感染症後に向けた事業再構築を容易にするため、債務がその足かせにならないよう新たな事業再構築法制の整備を進める。
●第3章 内外の環境変化への対応
新たな国家安全保障戦略などの検討を加速し、防衛力を5年以内に抜本的に強化する。
スタンド・オフ防衛能力、無人化装備、宇宙・サイバー・電磁波領域を含む領域横断能力を強化し、AI、無人機、量子などの先端技術の研究開発を進める。
年末に改定する「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」を踏まえ策定される新たな「中期防衛力整備計画」の初年度にあたる23年度予算は、同計画での議論を経て結論を得る必要がある。予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずる。
半導体、レアアースを含む重要鉱物、電池、医薬品などの重要物資について支援措置を整備し、安定供給を確保する。内閣府に経済安全保障推進室(仮称)を設置する。
エネルギーの安定的かつ安価な供給の確保を前提に脱炭素の取り組みを加速させるため、徹底した省エネルギーを進めるとともに、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する。
資源のロシア依存度低減や供給途絶対策のためロシア以外の調達先の多角化や、主要消費国と連携した生産国への増産働きかけ、使用量低減対策を行う。
インド太平洋経済枠組み(IPEF)はパートナー国と連携して地域の繁栄と経済秩序の構築に取り組む。米国には環太平洋経済連携協定(TPP)復帰を働きかける。
対日直接投資残高を30年に80兆円とする目標達成に向け、投資先としての魅力を高める。
国土強靱化基本計画に基づき必要・十分な予算を確保する。
●第4章 中長期の経済財政運営
財政健全化の「旗」を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む。経済あっての財政で現行の目標年度により、状況に応じたマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならない。
感染症、物価高の影響、内外の経済情勢に注視する必要がある。状況に応じて必要な検証を行う。
コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う。
24年度中をメドに保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し、さらにオンライン資格確認の導入状況などを踏まえ、保険証の原則廃止を目指す。
生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討など歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む。
●第5章 当面の経済財政運営と23年度予算編成に向けた考え方
景気の下振れリスクに対応し、民需中心の景気回復を着実に実現すべく、賃上げや価格転嫁など「成長と分配の好循環」に向けた動きを確かなものとしていく。
23年度予算で本方針や骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する。ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない。
コロナ禍での補正予算の使い道や成果を見える化する。 
●政府「骨太の方針」決定 防衛力「5年以内」に抜本的強化を明記  6/7
政府はことしの「骨太の方針」を決定しました。焦点の1つとなっていた防衛費の扱いについて、NATOの加盟国がGDPの2%以上を目標としていることを例示し、防衛力を「5年以内」に抜本的に強化することを明記しました。
政府は、持ち回りの臨時閣議で、岸田内閣では初めてとなる、ことしの経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」を決定しました。
焦点の1つとなっていた防衛費の扱いについては、NATO=北大西洋条約機構の加盟国がGDP=国内総生産の2%以上を目標としていることを例示し、防衛力を「5年以内」に抜本的に強化するとしています。
そして台湾をめぐっては「日米首脳会談で両首脳は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促した」と本文の注釈に記されました。
骨太の方針に台湾に関する記述が盛り込まれるのは、初めてだということです。
また、新型コロナへの対応策では、◇感染が拡大した時に病床を増やすなどして確実に入院できる体制を整備し◇都道府県が臨時に設ける医療施設に、公立病院が医療人材を派遣するなど医療提供体制の充実を図るとしています。
さらに、◇出産育児一時金の増額をはじめ妊娠・出産に伴う経済的負担の軽減に向けた議論を進め、◇子どもを性犯罪から守るため性犯罪歴のある人が保育や教育の仕事に就くのを制限する「日本版DBS」の導入に取り組むとしています。
そして、財政健全化目標については「財政健全化の『旗』を下ろさずこれまでの財政健全化目標に取り組む」として、時期は明示しなかったものの、2025年度に基礎的財政収支を黒字化するという、これまでの目標を維持する方針を示しています。
一方で「経済あっての財政だ」としたうえで「状況に応じ必要な検証を行っていく」と明記し、自民党内の積極財政派のグループに配慮して、経済状況によっては目標の見直しにも含みを持たせた形となりました。
焦点の防衛費 岸田首相「将来にわたり国守り抜く防衛力構築」
防衛費をめぐって、岸田総理大臣は、経済財政諮問会議と「新しい資本主義実現会議」の合同会議で「将来にわたり、わが国を守り抜く防衛力を構築すべく、さまざまな取り組みを積み上げていき、そのうえで必要となるものの裏付けとなる予算をしっかりと確保していく。内容、金額、財源の3点セットで議論を行い、具体的な計画は、ことし末に策定する新たな国家安全保障戦略などとして、改めて内閣として閣議決定する」と述べました。
記者はどう見る 政治部 関口裕也記者が解説
焦点のひとつとなっていた防衛費の扱い、政府・自民党内でどんな議論があったのか?政治部関口記者は以下のように解説します。
「骨太の方針」の原案には「5年以内」という文言は入っていませんでした。原案になかったものが加えられた箇所は財政に関する部分も含めいくつかあります。これは政府が党の意向を踏まえて修正を重ねた結果です。
この背景には、安倍元総理大臣らの存在があります。安倍氏は、先週、防衛費のあり方をめぐって党の提言の内容を書き込むよう求めたほか、党内議論でも安倍氏に近い積極財政派の議員が声をあげる場面が目立ちました。総理大臣経験者が政府の原案に注文をつけるのは異例とも言えます。安倍・菅政権当時は「政高党低」とも言われた政府と自民党の関係が、岸田政権になって変化していると見る向きもあります。
野党側からは、いまの物価高は異次元の金融緩和によるものだとして、財政金融政策の見直しを求める声が出ていますので、夏の参議院選挙でも争点の1つになるものとみられます。
ことしの「骨太の方針」に盛り込まれた主な内容
   防衛
焦点の1つとなっていた防衛費については、NATO=北大西洋条約機構の加盟国がGDP=国内総生産の2%以上を目標としていることを例示したうえで、防衛力を5年以内に抜本的に強化するとしています。
こうした内容は、年末までの国家安全保障戦略などの改定に向けて、自民党がまとめた提言に盛り込まれていて、安倍元総理大臣など党内から「骨太の方針」にも明記すべきだという指摘が相次いでいました。
具体的には、敵の射程圏外から攻撃できる長射程の巡航ミサイルなどの防衛能力を強化するとともに、AI=人工知能や無人機など先端技術の研究開発を進めるとしています。
また、防衛装備品の輸出や移転に関する制度の見直しを含め、より踏み込んだ取り組みを検討するほか、弾薬の確保や装備品の維持整備、自衛隊員の宿舎の老朽化対策にも重点的に取り組むとしています。
そのうえで来年度=令和5年度予算の防衛費は、年末までに改定する国家安全保障戦略などの議論を経て、必要な措置を講ずるとしています。
このほか、台湾をめぐっては「日米首脳会談で両首脳は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促した」と本文の注釈に記されました。
骨太の方針に台湾に関する記述が盛り込まれるのは、初めてだということです。
   財政目標
財政健全化目標については「財政健全化の『旗』を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む」として、時期は明示しなかったものの、2025年度に基礎的財政収支を黒字化するという、従来の目標を維持する方針を示しました。
一方で、「経済あっての財政だ」としたうえで、「状況に応じ必要な検証を行っていく」と明記し、自民党内の積極財政派のグループに配慮して、経済状況によっては目標を見直すことにも含みを持たせた形です。
さらに、来年度の予算編成について、歳出改革の内容を盛り込んだ去年の骨太方針に基づいて「経済・財政一体改革を着実に推進する」とする一方、「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」という表現も盛り込みました。
   新資本主義
岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の実現に向けて、「人への投資」を重点分野に掲げました。
具体的には、給付型の奨学金や授業料の減免といった制度について、対象を、中間所得層のうち子どもの多い世帯の学生や理系の学生にも拡大します。
最低賃金について、できるかぎり早期に全国平均で時給1000円以上を目指し、引き上げに取り組むとしています。
   新型コロナ
新型コロナへの対応策としては、感染拡大時に病床を増やすなどして必要な人が確実に入院できる体制を整備するほか、都道府県が臨時に設置する医療施設に、公立病院が医療人材を派遣するなど医療提供体制の充実を図ります。
そのうえで、次の感染症危機に備えて、迅速・的確に対応するため司令塔機能の強化など必要な対応を今月をめどにまとめるとしています。
   社会保障
社会保障の分野では、マイナンバーカードの健康保険証としての利用を推進するほか、電子カルテの普及など医療分野のデジタル化を進めるため、総理大臣を本部長とする推進本部を設置するとしています。
また、国民すべてが生涯を通じて歯科健診を受けられるよう、具体的な検討を進めることも盛り込まれました。
   少子化・子ども政策
少子化対策として、出産育児一時金の増額をはじめ妊娠・出産に伴う経済的負担の軽減に向けた議論を進めます。
また、子どもを性犯罪から守るため性犯罪歴のある人が保育や教育の仕事に就くのを制限する「日本版DBS」の導入に取り組むとしています。
   経済安保
新たに国家安全保障戦略などを策定するにあたって、経済安全保障を重要な課題と位置づけたうえで、情勢の変化に機動的に対応するため、内閣府に「経済安全保障推進室」を速やかに設けて、関係する省庁の調整を行います。
   エネルギー
脱炭素の取り組みを加速させるため、徹底した省エネを進めるとともに、再生可能エネルギーや原子力などを最大限活用するとしています。
さらに「安全最優先の原発再稼動」を掲げ、実効性のある原子力規制や避難経路の確保など原子力防災体制の構築を進めるとしています。
また、化石燃料については、ウクライナ情勢を受けてロシアへの依存度を低下させるため、ロシア以外の調達先の多角化など国の関与を強めて、供給体制を強化する方針です。
自民 茂木幹事長「外交・安全保障体制の強化」を評価
自民党の茂木幹事長は、記者会見で「ウクライナ情勢が緊迫化し、安全保障環境が厳しさを増す中、外交・安全保障体制の強化は喫緊の課題であり、『骨太の方針』にしっかりと盛り込まれた。また、未来をつくる中核になるのが『新しい資本主義』であり、今回まとまった全体構想と実行計画を中心として、日本経済をもう一段高いレベルに持っていくことが極めて重要になる」と述べました。
自民 福田総務会長「党の政治力が発揮された」
自民党の福田総務会長は、記者会見で「自民党の強さや良さが出た。政治は結論を出して、実行に移さなければいけないことがわかっているからこそ、意見や物の見方に違いがあっても最後は1つに結論をまとめることができる自民党の政治力が発揮された」と述べました。そのうえで、防衛費の増額をめぐっては「現状の防衛費が十分とは思っていない。国民の理解も非常に進んでいて今、増やすことは友好な近隣諸国に、安心感をつくるものであり、心配を与えるものではない」と述べました。
自民 高市政務調査会長「エネルギーや食料安全保障へ強い意識」
自民党の高市政務調査会長は、与党政策責任者会議のあと「ロシアによるウクライナ侵略によってエネルギーや食料の安全保障に対する強い意識も出てきており、こうした事柄も盛り込んだ、しっかりとした『骨太の方針』に仕上がった」と述べました。また「基礎的財政収支」の黒字化目標の位置づけについて認識を問われ「財政健全化に向けた努力は前提だが、成長がなければ健全化ができない。2025年度の目標を明記したものではない」と指摘しました。
公明 山口代表 防衛費の増額「予算編成過程で検討進める」
また、防衛費の増額をめぐっては「安全保障環境の変化もしっかり捉えていく必要がある一方、負担を伴うものについては国民の理解を得ていかなければならない。今後、予算編成過程で検討を進めていく」と述べました。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


2022/6 
 
●経済財政運営と改革の基本方針2022
   新しい資本主義へ 
   〜課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現〜
   令和4年6月7日
●第1章 我が国を取り巻く環境変化と日本経済
1. 国際情勢の変化と社会課題の解決に向けて
我々はこれまでの延長線上にない世界を生きている。世界を一変させた新型コロナウイルス感染症、力による一方的な現状変更という国際秩序の根幹を揺るがすロシアのウクライナ侵略、権威主義的国家による民主主義・自由主義への挑戦、一刻の猶予も許さない気候変動問題など我が国を取り巻く環境に地殻変動とも言うべき構造変化が生じるとともに、国内においては、回復の足取りが依然脆弱な中での輸入資源価格高騰による海外への所得流出、コロナ禍で更に進む人口減少・少子高齢化、潜在成長率の停滞、災害の頻発化・激甚化など、内外の難局が同時に、そして複合的に押し寄せている。
我々に求められるのは、この難局を単に乗り越えるだけでなく、こうした社会課題の解決に向けた取組それ自体を付加価値創造の源泉として成長戦略に位置付け、官民が協働して重点的な投資と規制・制度改革を中長期的かつ計画的に実施することにより、課題解決と経済成長を同時に実現しながら、経済社会の構造を変化に対してより強靱で持続可能なものに変革する「新しい資本主義」を起動することである。こうして我々自身の資本主義をバージョンアップすることにより、自由で公正な経済体制を一層強化していく。
このため、本「経済財政運営と改革の基本方針2022」においては、
当面の難局を乗り越えるためのマクロ経済運営の方針を示すとともに、
成長と分配をともに高める「人への投資」を始め、科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップへの投資、グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資を柱とする「新しい資本主義」の実現に向けた重点投資分野についての官民連携投資の基本方針を示す。
あわせて、新しい資本主義が目指す民間の力を活用した社会課題解決に向けた取組や多様性に富んだ包摂社会の実現、一極集中から多極化した社会をつくり地域を活性化する改革の方向性を示す。
さらに、世界に開かれた貿易・投資立国であることをこれからも維持しつつ、厳しさを増す東アジア情勢や権威主義的国家の台頭など国際環境の変化に応じた戦略的な外交・安全保障や同志国との連携強化、経済安全保障等についての方向性を示す。
また、強靱で持続可能な経済社会に向けた防災・減災、国土強靱化の推進や東日本大震災等からの復興、国民生活の安全・安心に向けた基本的な方針を示していく。
その上で、これらの政策遂行の基盤となる強固で持続可能な経済・財政・社会保障制度の構築に向けた経済・財政一体改革の取組方針を示し、短期と中長期の整合性を確保した経済財政運営の方針と令和5年度予算編成の考え方を提示する。
2. 短期と中長期の経済財政運営
   (1)コロナ禍からの回復とウクライナ情勢の下でのマクロ経済運営
   ●当面のマクロ経済運営
我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による強い下押し圧力を受けながらも、持ち直しの動きを続けてきた。この間、医療提供体制の強化やワクチン接種の加速など経済社会活動回復のための環境整備を行うとともに、あらゆる政策を総動員して国民の所得や雇用を下支えし、特に、厳しい影響を受けた方々や事業者に対する金融措置を含む万全の支援を行うことにより、新型コロナウイルス感染症の影響から国民生活を守り、ポストコロナの持続的な成長に向けた基盤整備を進めてきた。その中で生じたのが本年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻である。
国際商品・金融市場を始め世界経済の不確実性が大きく増す中、我が国のマクロ経済運営については、当面、2段階のアプローチで万全の対応を行う。コロナ禍からの回復が依然として脆弱であることに鑑み、まずは、ウクライナ情勢に伴う原油・原材料、穀物等の国際価格の高騰や希少物資の供給懸念等に対する緊急対策1を講ずることにより、コロナ禍で傷んでいる国民生活や経済への更なる打撃をできる限り抑制し、厳しい状況にある方々を全力で支援する。これにより、経済の腰折れを防ぎ、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとしていく。
また、今後も感染症の再拡大やウクライナ情勢の長期化に伴う原油価格・物価の更なる高騰の可能性など予断を許さない状況は続くと見込まれることから、予備費の活用等により予期せぬ財政需要にも迅速に対応して国民の安心を確保する。
その上で、第2段階として、本基本方針や新しい資本主義に向けたグランドデザインと実行計画をジャンプスタートさせるための総合的な方策を早急に具体化し、実行に移す。これにより、中長期的な課題に対応しつつ、コロナ禍で失われた経済活動のダイナミズムを取り戻し、新陳代謝と多様性に満ちた裾野の広い経済成長と成長の果実が隅々まで行き渡る「成長と分配の好循環」を早期に実現する。あわせて、国際的な人の往来や観光需要の回復、対日直接投資の更なる推進等を通じて旺盛な海外需要を日本経済に取り込む。また、エネルギー分野を始め国際環境の変化にも強靱な経済構造に向けた改革を進め、世界の構造変化を日本がリードしていく。
今後とも、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進める経済財政運営の枠組みを堅持し、民需主導の自律的な成長とデフレからの脱却に向け、経済状況等を注視し、躊躇なく機動的なマクロ経済運営を行っていく。日本銀行においては、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。
   ●経済社会活動の正常化に向けた感染症対策
新型コロナウイルス感染症対策については、必要な財政支援や見える化等により医療提供体制の強化を進めるとともに、感染状況や変異株の発生動向に細心の注意を払いつつ、段階的な見直しを行い、一日も早い経済社会活動の正常化を目指す。
医療提供体制の強化について、国立病院機構等の公立公的病院に法律に基づく要求・要請を行うことによる新型コロナウイルス感染症の専用病床化とともに、個別の病院名を明らかにした病床の確保を行いつつ、感染拡大時には即応病床の増床や病床の使用率向上により、入院を必要とする者がまずは迅速に病床又は臨時の医療施設等に受け入れられ、確実に入院につなげる体制を整備する。
感染拡大時に臨時の医療施設等が円滑に稼働できるよう、都道府県ごとに医療人材派遣の協力可能な医療機関数や派遣者数を具体化するほか、公立公的病院においても都道府県に設置する臨時の医療施設等に医療人材を派遣する。
医療DXを推進し、医療情報の基盤を整備するとともに、G−MISやレセプトデータ等を活用し、病床確保や使用率、オンライン診療実績など医療体制の稼働状況の徹底的な「見える化」を進める。
ワクチン、検査、経口治療薬の普及等により、予防、発見から早期治療までの流れを強化して新型コロナウイルス感染症の脅威を社会全体として可能な限り引き下げる。マイナンバーカードを使ったワクチン接種証明書のデジタル化等により、入国時での効率的なワクチン接種履歴の確認など円滑な確認体制を進める。
国際的な人の往来の活発化に向け、感染拡大防止と経済社会活動のバランスを取りながら、他のG7諸国並みの円滑な入国を可能とする水際措置の見直しなど水際対策の緩和を進める。また、新たな変異株が発生する場合にはこれに機動的に対処する。
新型コロナウイルス感染症に関する罹患後症状(いわゆる後遺症)についての実態把握や病態解明等に資する調査・研究を進める。
その上で、これまでの新型コロナウイルス感染症対応を客観的に評価し、次の感染症危機に備えて、本年6月を目途に、危機に迅速・的確に対応するための司令塔機能の強化や感染症法2の在り方、保健医療体制の確保など、中長期的観点から必要な対応を取りまとめる。
   (2)中長期の経済財政運営
持続的な経済成長に向けて、官民連携による計画的な重点投資を推進する。これによる民間企業投資の喚起と継続的な所得上昇により成長力を高めつつ需要創出を促すとともに、今後の成長分野への労働移動を円滑に促す。また、省エネ・脱炭素を通じた国内所得の海外流出の抑制や同じ価値観を共有する国々との協力関係の強化を通じて、比較優位のメリットをこれまで以上に引き出すとともに国内投資を喚起する。さらには、インバウンドの再生、農林水産物・食品や中小企業の輸出振興といった取組を強化し、産業の構造変化を促す。
その際、危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期す。経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない。経済をしっかり立て直す。そして、財政健全化に向けて取り組む。
●第2章 新しい資本主義に向けた改革
1.新しい資本主義に向けた重点投資分野
   (1)人への投資と分配
デジタル化や脱炭素化という大きな変革の波の中、人口減少に伴う労働力不足にも直面する我が国において、創造性を発揮して付加価値を生み出していく原動力は「人」である。自律的な経済成長の実現には、民間投資を喚起して生産性を向上することで収益・所得を大きく増やすだけでなく、「人への投資」を拡大することにより、次なる成長の機会を生み出すことが不可欠である。「人への投資」は、新しい資本主義に向けて計画的な重点投資を行う科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DXに共通する基盤への中核的な投資であるとも言える。
こうした考えの下、働く人への分配を強化する賃上げを推進するとともに、職業訓練、生涯教育等への投資により人的資本の蓄積を加速させる。あわせて、多様な人材の一人一人が持つ潜在力を十分に発揮できるよう、年齢や性別、正規雇用・非正規雇用といった雇用形態にかかわらず、能力開発やセーフティネットを利用でき、自分の意思で仕事を選択可能で、個々の希望に応じて多様な働き方を選択できる環境整備を進める。
   ●人的資本投資
成長分野における重点投資等を通じた質の高い雇用の拡大を図りつつ、「人への投資」を抜本的に強化するため、2024 年度までの3年間に、一般の方から募集したアイデアを踏まえた、4,000 億円規模の予算を投入する施策パッケージを講じ、働く人が自らの意思でスキルアップし、デジタルなど成長分野へ移動できるよう強力に支援する。
企業統治改革を進め、人的投資が企業の持続的な価値創造の基盤である点について株主との共通の理解を作り、今年中に非財務情報の開示ルールを策定するとともに、四半期開示の見直しを行う。男女の賃金格差の是正に向けて企業の開示ルールの見直しにも取り組む。また、政府からの特に大規模な支援を受ける際には、人的資本投資などを通じ、中長期的な価値創造にコミットすることを企業に求める。
あわせて、社会全体で学び直し(リカレント教育)を促進するための環境を整備する3。学び直しによる成果の可視化と適切な評価、学び直し成果を活用したキャリアアップや兼業・副業の促進、学ぶ意欲がある人への支援の充実や環境整備、成長分野のニーズに応じたプログラムの開発支援や学び直しの産学官の対話、企業におけるリカレント教育による人材育成の強化等の取組を進める。
以上の人的投資に取り組む中で、雇用調整助成金の特例措置等については、引き続き、感染が拡大している地域・特に業況が厳しい企業に配慮しつつ、雇用情勢を見極めながら段階的に縮減していく一方で、人への投資や強力な就職支援を通じて円滑な労働移動を図り、成長分野等における労働需要に対応する。あわせて、同一労働同一賃金の徹底等を通じた非正規雇用労働者の処遇改善や正規化に取り組む。
少子化対策・こども政策は、包摂社会の実現に向けて重要であるだけでなく、「人への投資」としても重要であり、強力に進める。
   ●多様な働き方の推進
人的資本投資の取組とともに、働く人のエンゲージメント4と生産性を高めていくことを目指して働き方改革を進め、働く人の個々のニーズに基づいてジョブ型の雇用形態を始め多様な働き方を選択でき、活躍できる環境の整備に取り組む。
こうした観点から、就業場所・業務の変更の範囲の明示など、労働契約関係の明確化に取り組む。専門知識・技能を持った新卒学生や既卒数年程度の若者について、より一層活躍できるようにする観点から、その就職・採用方法を産・学と共に検討し、年度内を目途に一定の方向性を得る。裁量労働制を含めた労働時間制度の在り方について、裁量労働制の実態調査の結果やデジタル化による働き方の変化等を踏まえ、更なる検討を進める。フリーランスについて、事業者がフリーランスと取引する際の契約の明確化を図る法整備や相談体制の充実など、フリーランスが安心して働ける環境を整備する。
ポストコロナの「新しい日常」に対応した多様な働き方の普及を図るため、時間や場所を有効に活用できる良質なテレワークを促進する。労働移動の円滑化も視野に入れながら、労働者の職業選択の幅を広げ、多様なキャリア形成を促進する観点から副業・兼業を推進するほか、選択的週休3日制度については、子育て、介護等での活用、地方兼業での活用が考えられることから、好事例の収集・提供等により企業における導入を促進し、普及を図る。また、地域に貢献しながら多様な就労の機会を創る労働者協同組合についてNPO等からの円滑な移行等を図る。
国家公務員について、既存業務の廃止・効率化、職場のデジタル環境整備、勤務形態の柔軟化などを通じた働き方改革を一層推進するとともに、採用試験の受験者拡大やデジタル人材を含めた中途採用の円滑化、リスキリングなど人材の確保・育成策に戦略的に取り組む。
   ●質の高い教育の実現
人への投資を通じた「成長と分配の好循環」を教育・人材育成においても実現し、「新しい資本主義」の実現に資するため、デジタル化に対応したイノベーション人材の育成等、大学、高等専門学校、専門学校等の社会の変化への対応を加速する。このため、教育未来創造会議の第一次提言等に基づき、以下の課題について、必要な取組を速やかに進める。
新たな時代に対応する学びの支援の充実を図る。このため、恒久的な財源も念頭に置きつつ、給付型奨学金と授業料減免を、必要性の高い多子世帯や理工農系の学生等の中間層へ拡大する。また、減額返還制度を見直すほか、在学中は授業料を徴収せず卒業後の所得に応じて納付を可能とする新たな制度を、教育費を親・子供本人・国がどのように負担すべきかという論点や本制度の国民的な理解・受け入れ可能性を十分に考慮した上で、授業料無償化の対象となっていない学生について、安定的な財源を確保しつつ本格導入することに向け検討する5こととし、まずは大学院段階において導入することにより、ライフイベントも踏まえた柔軟な返還・納付(出世払い)の仕組みの創設を行う。官民共同修学支援プログラムの創設、地方自治体や企業による奨学金返還支援の促進等、若者を始め誰もが、家庭の経済事情にかかわらず学ぶことができる環境の整備を進める。
未来を支える人材を育む大学等の機能強化を図る。このため、デジタル・グリーンなど成長分野への大学等の再編促進と産学官連携強化等に向け、複数年度にわたり予見可能性をもって再編に取り組める支援の検討や、私学助成のメリハリ付けの活用を始め、必要な仕組みの構築等を進めていく。その際、現在35%にとどまっている自然科学(理系)分野の学問を専攻する学生の割合についてOECD諸国で最も高い水準である5割程度を目指すなど具体的な目標を設定し、今後5〜10 年程度の期間に集中的に意欲ある大学の主体性をいかした取組を推進する。また、あらゆる分野の知見を総合的に活用し社会課題への的確な対応を図る「総合知」の創出・活用を目指し、専門性を大事にしつつも、文理横断的な大学入学者選抜や学びへの転換を進め、文系・理系の枠を超えた人材育成を加速する。若手研究者と企業との共同研究を通じた人材育成等により大学院教育を強化する。
   ●賃上げ・最低賃金
今年は、ここ数年低下してきた賃上げ率を反転させたが、ウクライナ情勢も相まって物価が上昇している6。こうした中、賃上げの流れをサプライチェーン内の適切な分配を通じて中小企業に広げ、全国各地での賃上げ機運の一層の拡大を図る。
このため、中堅・中小企業の活力向上につながる事業再構築・生産性向上等の支援を通じて賃上げの原資となる付加価値の増大を図るとともに、適切な価格転嫁が行われる環境の整備に取り組むほか、抜本的に拡充した賃上げ促進税制の活用促進、賃上げを行った企業からの優先的な政府調達等に取り組み、地域の中小企業も含めた賃上げを推進する。新しい資本主義実現会議において、価格転嫁や多様な働き方の在り方について合意づくりを進めるとともに、データ・エビデンスを基に、適正な賃金引上げの在り方について検討を行う。
また、人への投資のためにも最低賃金の引上げは重要な政策決定事項である。最低賃金の引上げの環境整備を一層進めるためにも事業再構築・生産性向上に取り組む中小企業へのきめ細やかな支援や取引適正化等に取り組みつつ、景気や物価動向を踏まえ、地域間格差にも配慮しながら、できる限り早期に最低賃金の全国加重平均が1000 円以上となることを目指し、引上げに取り組む。こうした考えの下、最低賃金について、官民が協力して引上げを図るとともに、その引上げ額については、公労使三者構成の最低賃金審議会で、生計費、賃金、賃金支払能力を考慮し、しっかり議論する。
   ●「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」
我が国の個人金融資産2,000 兆円のうち、その半分以上が預金・現金で保有されている。投資による資産所得倍増を目指して、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充や、高齢者に向けたiDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など、政策を総動員し、貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進める。これらを含めて、本年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定する。その際、家計の安定的な資産形成に向けて、金融リテラシーの向上に取り組むとともに、家計がより適切に金融商品の選択を行えるよう、将来受給可能な年金額等の見える化、デジタルツールも活用した情報提供の充実や金融商品取引業者等による適切な助言や勧誘・説明を促すための制度整備を図る。
   (2)科学技術・イノベーションへの投資
社会課題を経済成長のエンジンへと押し上げていくためには、科学技術・イノベーションの力が不可欠である。特に、量子、AI、バイオものづくり、再生・細胞医療・遺伝子治療等のバイオテクノロジー・医療分野は我が国の国益に直結する科学技術分野である。このため、国が国家戦略を明示し、官民が連携して科学技術投資の抜本拡充を図り、科学技術立国を再興する。その上で、研究開発投資を増加する企業に対しては、インセンティブを付与していく。あわせて、総理に対する情報提供・助言のため、総理官邸に科学技術顧問を設置する。小型衛星コンステレーションの構築、ロケットの打上げ能力の強化、日本人の月面着陸等の月・火星探査等の宇宙分野、北極を含む海洋分野の取組の強化を図る。
イノベーション創出の拠点である大学の抜本強化7を図る。世界と伍する研究大学の実現に向け、競争的な環境の下で大学ファンドから支援を受ける国際卓越研究大学の持続的なイノベーション創出と自律化に資するよう、専門人材の経営参画等のガバナンス体制を確立するとともに、必要な規制改革等の対応を早期に実行していく。地域の中核大学等が、特色ある強みを発揮し、地域の経済社会の発展等への貢献を通じて切磋琢磨できるよう、産学官連携など戦略的経営の抜本強化を図る8。
イノベーションの担い手である若い人材に対する支援を強力に推進する。博士課程学生の処遇向上を始め、未来ある研究者の卵たちにキャリアパス全体として魅力的な展望を与え、研究に専念できる支援策を深化させる。寄附に基づく「トビタテ!留学JAPAN」9の発展的推進を含め、若者の世界での活躍を支援し、コロナ禍で停滞した国際頭脳循環の活性化に取り組む。
   (3)スタートアップ(新規創業)への投資
スタートアップは、経済成長の原動力であるイノベーションを生み出すとともに、環境問題や子育て問題などの社会課題の解決にも貢献しうる、新しい資本主義の担い手である。こうしたスタートアップが新たに生まれ、飛躍を遂げることができる環境を整備することにより、戦後の日本の創業期に次ぐ「第二創業期」の実現を目指す。このため、実行のための司令塔機能を明確化し、5年10 倍増を視野にスタートアップ育成5か年計画を本年末に策定し、スタートアップ政策を大胆に展開する。
具体的には、スタートアップが直面する資金調達の困難さの解消を図るため、新規上場の際に十分な資金調達を行うことを可能にすべくIPO10プロセスの見直しを進めるとともに、事業化までに時間を要するスタートアップの成長を図るためのストックオプション等の環境整備を行う。また、海外のベンチャーキャピタルの誘致も含めて、国内外のベンチャーキャピタルに対する公的資本の有限責任投資等による投資拡大を図るとともに、エンジェル投資家等の個人や年金・保険等の長期運用資金がベンチャーキャピタルやスタートアップに循環する流れの形成に取り組む。加えて、個人保証や不動産担保に依存しない形の融資への見直しや事業全体を担保とした成長資金の調達を可能とする仕組みづくり等を通じて、成長資金の調達環境を整備する。
あわせて、起業を支える人材の育成や確保を行う。具体的には、成長分野において前人未踏の優れたアイデア・技術を持つ人材に対する支援策を抜本的に拡充するとともに、家庭や学校とは別に子供の才能を発掘・育成する場の整備を支援する。情報開示等を通じた副業・兼業の促進等により円滑な労働移動を図るほか、大学等の研究者と外部経営人材とのマッチングを支援する。また、スタートアップの経営を支援する専門家等の相談窓口整備を推進する。
スタートアップの研究開発や販路開拓を支援するため、既存企業がM&Aや共同研究開発等によりスタートアップの有する知見を取り入れるオープンイノベーションの活性化を図るとともに、SBIR制度11の強化を始めとし、公共調達の活用を推進する。ベンチャーキャピタルとも連携した支援の拡充や創薬ベンチャーへの支援の強化を行うほか、革新技術の研究開発とスタートアップ創出を行う拠点づくりを海外の大学等とも連携し、民間資金を基盤として運営される形で進める。
以上のほか、起業拠点の整備を含めて大学等も存分に活用しつつ、知的財産の保護・活用の推進、規制・制度改革等を通じて世界に伍するスタートアップエコシステムを作り上げ、大規模なスタートアップの創出に取り組む。
   (4)グリーントランスフォーメーション(GX)への投資
脱炭素社会の実現に向けた官民連携の取組を一気に加速し、エネルギー安全保障の確保に万全を期しながら、国内投資を拡大しつつ新たな成長のフロンティアを開拓する。2050年カーボンニュートラル実現を見据え、官民連携の下、脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革への道筋の大枠を示したクリーンエネルギー戦略中間整理に基づき、年内にロードマップを取りまとめる。
今後10 年間に150 兆円超の投資を実現するため、成長促進と排出抑制・吸収を共に最大化する効果を持った、「成長志向型カーボンプライシング構想」を具体化し、最大限活用する。
同構想においては、150 兆円超の官民の投資を先導するために十分な規模の政府資金を、将来の財源の裏付けをもった「GX経済移行債(仮称)」により先行して調達し、複数年度にわたり予見可能な形で、速やかに投資支援に回していくことと一体で検討していく。
また、「規制・支援一体型の投資促進策」として、省エネ法12などの規制対応、水素・アンモニアなどの新たなエネルギーや脱炭素電源の導入拡大に向け、新たなスキームを具体化させる。
加えて、企業の排出削減に向けた取組を加速させるためのGXリーグの段階的発展・活用、民間投資の呼び水として、トランジション・ファイナンスなどの新たな金融手法の活用、アジア・ゼロエミッション共同体などの国際展開戦略も含め、企業の投資の予見可能性を高められるよう、具体的なロードマップを示す。
こうした新たな政策イニシアティブの具体化に向けて、本年夏に総理官邸に新たに「GX実行会議」を設置し、更に議論を深め、速やかに結論を得る。
エネルギーを起点とした産業のGXに向け、脱炭素投資を後押しする重点的な環境整備を行う。自動車については、将来の合成燃料の内燃機関への利用も見据え、2035 年までに新車販売でいわゆる電動車(電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車及びハイブリッド自動車)100%とする目標等に向けて、蓄電池の大規模投資促進等や車両の購入支援、充電・充てんインフラの整備等による集中的な導入を図るとともに、中小サプライヤー等の業態転換を促す。再生可能エネルギー13については、S+3Eを大前提に、主力電源として最優先の原則の下で、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入に取り組むための大胆な改革を進めるほか、送配電網・電源への投資14を着実に実施し、分散型エネルギーシステムなど真の地産地消にも取り組むよう促す。さらに、水素・アンモニア15やCCUS/カーボンリサイクル、革新原子力、核融合などあらゆる選択肢を追求した研究開発・人材育成・産業基盤強化等を進める。また、カーボンニュートラルポート等16の形成17や持続可能な航空燃料(SAF)等を含む船舶・航空・陸上の輸送分野の脱炭素化を推進する。
産業のエネルギー需給構造転換に向け、省エネルギー対策を徹底しつつ、エネルギー多消費型産業における非化石エネルギーへの転換を含む低炭素化投資等を後押しする。
脱炭素分野で活躍する人材の育成や中小企業・地域金融に対する脱炭素経営の能力向上支援18、資金供給19等を通じ、地域の脱炭素トランジションに向けた投資を含め、地域脱炭素の加速化を図る。ライフスタイルの転換に向け、ポイント制度等を通じて消費者の意識・行動変容を促すほか、省エネルギー対策を含む規制的措置の強化や省エネ住宅の購入・改修支援を含めたZEH・ZEB20等の取組を推進するとともに、森林吸収源対策等21を加速化する。また、資源制約克服や自律性確保の観点も踏まえ、プラスチック資源循環を始め循環経済への移行を推進22する。
これらのGXを実現するため、グリーンイノベーション基金による支援の拡充や規制改革、国際標準化など、社会システム・インフラ整備に取り組む。グリーンボンド等の環境関連商品が取引されるグリーン国際金融センターの実現を目指すほか、TCFD23等に基づく開示の質と量の充実やトランジション及びイノベーションへの資金供給の支援を進めるなど、サステナブルファイナンス市場の拡大に向けた早急な環境整備24を図り、国内外25のESG金融を呼び込む。また、グリーンGDP(仮称)などの研究・整備を進める。
   (5)デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資
デジタル時代に相応しい行政、規制・制度に見直すため、デジタル改革・規制改革・行政改革を一体的に推進する。今後3年間の集中改革期間において、「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」26に基づく目視規制や常駐専任規制等の法令等の見直しなどを行い、デジタル原則への適合を目指す。また、自動運転車や空飛ぶクルマ、低速・小型の自動配送ロボットの活用を含む物流・人流分野のDXや標準化、MaaSの推進のほか、センサー、ドローン、AI診断、IoT技術、ビッグデータ分析など、あらゆる技術を活用するためのテクノロジーマップを整備し、実装を加速させる。さらに、法人設立時の手続の迅速化・費用軽減を含む規制改革を推進する。行政の無謬性にとらわれず、デジタル技術も活用し、予算編成プロセスなどでEBPMに基づく意思決定を推進するなど、より機動的で柔軟な政策形成・評価を可能とする取組を進める27。加えて、ベンダーロックインなどの課題を解消するため、政府の情報システム調達の見直しに向けた検討を進める。
「サイバーセキュリティ戦略」に基づく取組を進める28。また、携帯電話市場における、公正な競争環境の整備を進め、料金の低廉化を図る。さらに、準天頂衛星等の更なる整備や地理空間(G空間)情報の高度活用及び衛星データの利活用を図る。
我が国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現に寄与するデジタル社会の形成に向け、デジタル庁を中心に、政府全体で、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」29に基づき、デジタル3原則30を基本原則としつつ、行政のデジタル化を着実に推進する。2022 年度末にほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指すとの方針の下、マイナンバーカードの利活用拡大等の国民の利便性を高める取組を推進するとともに、市町村における交付体制の強化に向けた支援を行うなど、適切な広報も含め、マイナンバーカードの普及に取り組む。
デジタル庁を中心に、デジタル社会の実現において不可欠なデータ基盤強化を図るため、「包括的データ戦略」31に基づき、医療・介護、教育、インフラ、防災に係るデータ・プラットフォームを早期に整備する。
マイナポータルの利便性向上など、個人や法人の税務始め各種手続の負担軽減に向けた検討を進める。また、困窮世帯への迅速・的確な公的給付実現のためマイナンバーを用いるなど、給付事務等への活用を念頭に行政機関間の情報連携を推進する。
また、総務省は、「自治体DX推進計画」32を改定し、デジタル人材の確保・ネットワーク強化やAI・RPA等のデジタル技術や自治体マイナポイントの活用など、国の取組と歩調を合わせた地方自治体におけるデジタル化の取組を推進する。
2.社会課題の解決に向けた取組
   (1)民間による社会的価値の創造
   ●PPP/PFIの活用等による官民連携の推進
民間の資金・ノウハウを公共施設等に活用するPPP/PFI33について、新しい資本主義の中核となる「新たな官民連携」の取組として、新たなアクションプラン34に基づき、取組を抜本的に強化する。今後5年間を、PPP/PFIが自律的に展開される基盤の形成に向けた「重点実行期間」とし、PFI推進機構の機能も活用・強化しつつ、関連施策を集中的に投入するとともに、幅広い自治体の取組を促す。その際、交付金等について、PPP/PFIの活用がより促進されるよう制度改善を検討する。
スタジアム・アリーナ、文化施設、交通ターミナル等へのコンセッション導入、指標連動方式35も活用した道路等のインフラの維持管理・更新での案件形成等活用対象の拡大を図る36とともに、水道、下水道、教育施設等の先行事例の横展開を強化する。
コロナ禍の経験等を踏まえ、リスク分担の検討等を進めつつ、原則として全ての空港へのコンセッション導入を促進する。
デジタル田園都市国家構想の推進力として活用し、地域交流の場である公園・公民館等の身近な施設への新しい活用モデルを形成するとともに、地域プラットフォームの全都道府県での設置促進、優先的検討規程の策定・運用支援、事業効果の見える化・情報発信等により、案件形成を強力に促進する。民間の創意工夫の一層の発揮に向け、提案者へのインセンティブ付与等民間提案制度の強化等に取り組む。
また、樹木採取権制度の活用を推進する。
   ●社会的インパクト投資、共助社会づくり
「成長と分配の好循環」による新しい資本主義の実現に向け、これまで官の領域とされてきた社会課題の解決に、民の力を大いに発揮してもらい、資本主義のバージョンアップを図る。寄附文化やベンチャー・フィランソロフィーの促進など社会的起業家の支援強化を図る。
従来の「リスク」、「リターン」に加えて「インパクト」を測定し、「課題解決」を資本主義におけるもう一つの評価尺度としていく必要がある。また、社会課題の解決と経済成長の両立を目指す起業家が増えており、ソーシャルセクターの発展を支援する取組を通じて、その裾野を広げるとともに、更にステップアップを目指す起業家を後押しする。
こうした観点から、新たな官民連携の形として、民間で公的役割を担う新たな法人形態の必要性の有無について検討することとし、新しい資本主義実現会議に検討の場を設ける。あわせて、民間にとっての利便性向上の観点から、財団・社団等の既存の法人形態の改革も検討する。休眠預金等活用法37施行5年後の見直しに際し、これまでの取組について評価を行い、出資や貸付けの在り方、手法等の検討を進め、本年度中に結論を得るなど、必要な対応を行う。SIB38を含む成果連動型民間委託契約方式(Pay For Success:PFS)を通じて、複雑化する社会課題の効率的、効果的解決を促進し、さらに、社会的インパクト投資資金を呼び込むための環境整備39に取り組む。ソーシャルボンド40について、プロジェクトの実施による社会的な効果を適切に開示できるようにする。ガイドラインの整備を図り、社会課題ごとに、発行主体の参考となる指標の例を示す。起業家教育に当たっては、社会的起業家を育成するシステムの強化を検討する。
NPO法41に基づく各種事務のオンライン化の促進を含め、NPO法人の活動促進に向けた環境整備を進めるとともに、官民連携による協働の促進を図る。
   ●イノベーションを促す競争環境の整備
社会経済の急速な変化に対応し、イノベーションや企業の成長を促す競争環境を整備するため、公正取引委員会が取引慣行や規制により競争が働いていない分野を調査し、取引慣行の改善や規制の見直しを提言するアドボカシー(唱導)機能の強化を図る。
   (2)包摂社会の実現
   ●少子化対策・こども政策
少子化は予想を上回るペースで進む極めて危機的な状況42にあり、児童虐待やいじめ、不登校等こどもを取り巻く状況も深刻で、待ったなしの課題である。このため、「こども家庭庁」を創設し、こども政策を推進する体制の強化を図り、常にこどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関する取組・政策を我が国社会の真ん中に据えていく。
結婚・妊娠・出産・子育てに夢や希望を感じられる社会を目指し、「希望出生率1.8」の実現に向け、「少子化社会対策大綱」43等に基づき、結婚、妊娠・出産、子育てのライフステージに応じた総合的な取組の推進、結婚新生活立上げ時の経済的負担の軽減や出会いの機会・場の提供など地方自治体による結婚支援の取組に対する支援、妊娠前から妊娠・出産、子育て期にわたる切れ目ない支援の充実、「新子育て安心プラン」44の着実な実施や病児保育サービスの推進等仕事と子育ての両立支援に取り組む。妊娠・出産支援として、不妊症・不育症支援やデジタル相談の活用45を含む妊産婦支援・産後ケアの推進等に取り組むとともに、出産育児一時金の増額を始めとして、経済的負担の軽減についても議論を進める。流産・死産等を経験された方への支援に取り組む。養育費の支払い確保と安全・安心な親子の面会交流に向けた取組を推進する。児童手当法等改正法46附則に基づく児童手当の在り方の検討に取り組む。
全てのこどもに、安全・安心に成長できる環境を提供するため、教育・保育施設等において働く際に性犯罪歴等についての証明を求める仕組み(日本版DBS)の導入、予防のためのこどもの死亡検証(CDR)の検討、未就園児等の実態把握と保育所等の空き定員の活用等による支援の推進、SNS等の活用を含めこどもの意見を政策に反映する仕組みづくり、学校給食などを通じた食育の充実、放課後児童クラブやこども食堂等様々なこどもの居場所づくり等に取り組む。こどもの貧困解消や見守り強化を図るため、こども食堂のほか、こども宅食・フードバンク等への支援を推進する47。
こどもの成長環境にかかわらず誰一人取り残すことなく健やかな成長を保障するため、児童虐待防止対策の更なる強化、ヤングケアラー、若年妊婦やひとり親世帯への支援、真に支援を要するこどもや家庭の早期発見・プッシュ型支援のためのデータ連携、医療的ケア児を含む障害児に対する支援、いじめ防止対策の推進等に取り組む。また、市町村における家庭支援機能の強化、里親支援の充実等家庭養育優先原則の徹底、社会的養育経験者等に対する自立支援の充実等改正児童福祉法の円滑な施行に取り組みつつ、認定資格の取得促進を含む児童相談所等の質・量の体制強化を推進する。
こども政策については、こどもの視点に立って、必要な政策を体系的に取りまとめた上で、その充実を図り、強力に進めていく。そのために必要な安定財源については、国民各層の理解を得ながら、社会全体での費用負担の在り方を含め幅広く検討を進める48。その際には、こどもに負担を先送りすることのないよう、応能負担や歳入改革を通じて十分に安定的な財源を確保しつつ、有効性や優先順位を踏まえ、速やかに必要な支援策を講じていく。安定的な財源の確保にあたっては、企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く負担していく新たな枠組みについても検討する。
   ●女性活躍
「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)」49に基づき、「新しい資本主義」の中核に位置付けられた「女性の経済的自立」を実現するため、男女間の賃金格差の解消に向けて大企業に男女間の賃金格差の開示を義務付けるとともに、「女性デジタル人材育成プラン」50を着実に実行する。また、同一労働同一賃金を徹底し、女性が多い非正規雇用労働者の待遇を改善する。女性の視点も踏まえた社会保障制度や税制等の検討51を進める。テレワーク等の多様な働き方を後退させず、コロナ前の働き方に戻さないことに加え、男性の育児休業取得促進や長時間労働の是正等働き方改革の着実な実施、男性が子育てに参画しやすくなるための環境整備等男性の家庭・地域における活躍を進めるとともに、登用・採用の拡大を含めた幅広い分野における女性の参画拡大や、ベビーシッター・家政士等の活用推進に取り組む。また、女性の健康に関する支援、困難な問題を抱える女性に対する支援、フェムテックの更なる推進、アダルトビデオ出演被害対策、性犯罪・性暴力対策、DV対策等女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現に向けた取組を進める。
ジェンダーバイアス解消のための総合的な理解の醸成と支援を図り、女子中高生のIT分野を始めとした理工系の学びや分野選択を促進するなどにより、理工系分野の女性教員及び女子学生の割合を向上する取組52を加速する。
   ●共生社会づくり
地域共生社会の実現に向け、重層的支援体制整備事業など市町村における包括的支援体制の整備を進める。加えて、コロナ禍によって顕在化した課題等に的確に対応するため、生活に困窮する者への自立相談支援等の強化を図る。生活保護基準の定期的な見直しについて、消費水準との比較による検証結果や社会経済情勢等を踏まえて対応する。
長生きが幸せと思える社会の実現のため、高齢者の豊富な人生経験が尊重され、心通う拠り所となり、誰もが繋がりあえる地域づくりを推進する。認知症施策推進大綱53に基づき、認知症サポーターが地域で活躍できる場の整備等認知症の人や家族に対する支援を推進するとともに、第二期成年後見制度利用促進基本計画54に基づき、成年後見制度を含めた総合的な権利擁護支援の取組を推進する。障害者の就労や情報コミュニケーション等に対する支援、難聴対策、難病対策等を着実に推進する。感染症による不安やうつ等を含めたメンタルヘルスへの対応を推進する。
性的マイノリティに関する正しい理解を促進するとともに、社会全体が多様性を受け入れる環境づくりを進める。
地域と学校が連携したコミュニティ・スクールの導入を加速するとともに、夜間中学の設置、医療的ケア児を含む障害のある子供の学びの環境整備55、障害者等の様々な体験活動やこれを含む生涯学習を推進する。
ユニバーサルデザインの街づくりや、交通事業者の接遇向上、高齢者障害者等用施設等56の適正な利用の推進などの「心のバリアフリー」57の取組を進めるとともに、利用者負担の枠組みも活用した鉄道等のバリアフリー化を推進する。
   ●孤独・孤立対策
「孤独・孤立対策の重点計画」58の施策を着実に推進するとともに、さらに全省庁の協力による取組を進める。実態調査結果を踏まえた施策の重点化と「予防」の観点からの施策の充実を図り、重点計画に適切に反映する。いわゆる「社会的処方」の活用、ワンストップの相談窓口の本格実施に向けた環境整備、食・住など日常生活での孤独・孤立の軽減、ひきこもり支援に資する支援策の充実とともに、アウトリーチ型のアプローチや同世代・同性の対応促進のための取組を推進し、確実に支援を届ける方策を講ずる。官民一体で取組を推進する観点から、国の官民連携プラットフォームの活動を促進し、複数年契約の普及促進等によりNPO等の活動を継続的にきめ細かく支援するとともに、地方における官民連携プラットフォームの形成に向けた環境整備に取り組む。あわせて、支援者支援など孤独・孤立対策に関するNPO等の諸活動への支援を促進する方策の在り方を検討する。
若者・女性の自殺者数の増加に対するSNSを含むきめ細かい相談支援など、見直しが予定されている「自殺総合対策大綱」59に基づき、自殺総合対策を推進する。
   ●就職氷河期世代支援
就職氷河期世代の就労や社会参加への支援について、今年度までの3年間の集中取組期間に加え、2023 年度からの2年間を「第二ステージ」と位置付け、これまでの施策の効果も検証の上、効果的・効率的な支援を実施し、成果を積み上げる。公務員等での採用を推進し60、地方自治体の取組も後押ししながら、相談、教育訓練から就職、定着までの切れ目のない支援を行い、民間企業での採用等を促すとともに、個々人の状況に合わせた、より丁寧な寄り添い支援に取り組む。第二ステージを含めた取組により、現状よりも良い処遇、そもそも働くことや社会参加を促す中で、同世代の正規の雇用者について30 万人増やすことを目指す。
   (3)多極化・地域活性化の推進
東京一極集中の是正、多極集中、社会機能を補完・分散する国土構造の実現に向け、デジタル田園都市国家構想の実現による個性をいかした地方の活性化を強力に進める。また、従来の地方創生にも取り組むとともに、分散型国づくりを進める。地方発のボトムアップ型の経済成長を通じ、持続可能な経済社会の実現や個人と社会全体のWell-being の向上、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」61を目指す。
   ●デジタル田園都市国家構想
「デジタル田園都市国家構想基本方針」62に基づき、(1)デジタルの力を活用した地方の社会課題解決、(2)ハード・ソフトのデジタル基盤整備、(3)デジタル人材の育成・確保、(4)誰一人取り残されないための取組、の4つを柱として取組を進め、「デジタル田園都市国家構想」の実現を目指す。
同構想の一翼を担うスマートシティは、EBPMに基づく取組の徹底や人材育成手法の開発等を推進し実装を加速する。GIGAスクール構想による全国どこでも誰一人取り残さない教育のための取組を進める。また、地域における情報通信格差が生じないよう5G・光ファイバを始めとした通信インフラの更なる整備、データセンター地方拠点/海底ケーブル等の整備、地域協議会の設置、デジタル田園都市国家構想実現ファンドの創設の検討、ポスト5G/Beyond5Gの2025 年以降の社会実装と国際標準化に向けた取組63、デジタル推進人材を2026 年度末までに230 万人育成する取組を進める。
あわせて、デジタル田園都市国家構想を先導することが期待されるスーパーシティ及びデジタル田園健康特区の取組を推進する。
   ●分散型国づくり・地域公共交通ネットワークの再構築
我が国の成長と国民生活を支えるサプライチェーンの強化や観光等による地域活性化に向けた環境整備のため、高規格道路、整備新幹線、リニア中央新幹線、港湾、漁港等の物流・人流ネットワークの早期整備・活用、航空ネットワークの維持・活性化、港湾の24時間化も念頭においたAIターミナルの実現、造船・海運業等の競争力強化等に取り組む。
リニア中央新幹線について、水資源、環境保全等の課題解決に向けた取組を進めることにより品川・名古屋間の早期整備を促進するとともに、全線開業の前倒し64を図るため、建設主体が2023 年から名古屋・大阪間の環境影響評価に着手できるよう、沿線自治体と連携して、必要な指導、支援を行う。
デジタル田園都市国家構想の実現に資する持続可能で多彩な地域生活圏の形成のため、交通事業者と地域との官民共創等による持続可能性と利便性の高い地域公共交通ネットワークへの再構築に当たっては、法整備等を通じ、国が中心となって交通事業者と自治体が参画する新たな協議の場を設けるほか、規制見直しや従来とは異なる実効性ある支援等を実施する。また、モーダルコネクト65の強化や自転車利用環境の充実、通学路等の交通安全の確保に係る対策の推進、バリアフリーの推進等に取り組む。
自動運転等の技術開発動向を踏まえたインフラ機能の充実を図る。
北海道知床で発生した遊覧船事故を受け、小型船舶を使用する旅客輸送における総合的な安全対策及び海上保安庁の救助・救急体制の強化に取り組む。
   ●多極化された仮想空間へ
より分散化され、信頼性を確保したインターネットの推進や、ブロックチェーン66上でのデジタル資産の普及・拡大など、ユーザーが自らデータの管理や活用を行うことで、新しい価値を創出する動きが広がっており、こうした分散型のデジタル社会の実現に向けて、必要な環境整備を図る。
そのため、トラステッド・ウェブ(Trusted Web)67の実現に向けた機能の詳細化や国際標準化への取組を進める。また、ブロックチェーン技術を基盤とするNFT68やDAO69の利用等のWeb3.070の推進に向けた環境整備の検討を進める。さらに、メタバース71も含めたコンテンツの利用拡大に向け、2023 年通常国会での関連法案の提出を図る。Fintech の推進のため、セキュリティトークン(デジタル証券)での資金調達に関する制度整備、暗号資産について利用者保護に配慮した審査基準の緩和、決済手段としての経済機能に関する解釈指針の作成などを行う72。
   ●関係人口の拡大と個性をいかした地域づくり
関係人口の創出・拡大や二地域・多地域居住、地方でテレワークを活用することによる「転職なき移住」の推進に向け、関係人口の実態把握とふるさと納税等の地域の取組の後押し、地方企業や地域人材との交流・連携の促進、全国版空き家・空き地バンクの活用、空き家や企業版ふるさと納税の活用等によるサテライトオフィスの整備等73を進める。地域への人材還流を促進するため、地域おこし協力隊等自治体への人的支援の充実やまちづくりの中核となる経営人材の国内100 地域への展開に取り組むとともに、「デジタル人材地域還流戦略パッケージ」に基づき、地域企業への人材マッチング支援等74を行う。地域の稼ぐ力の向上に向け、産学金官連携により地域の経済循環を担う地域密着型企業の立ち上げ等を促進する。
復帰50 年を迎えた沖縄が、「強い沖縄経済」を実現し、日本の経済成長の牽引役となるよう、改正沖縄振興特別措置法75等を最大限に活用し、観光を始めとする各種産業の振興、北部・離島地域の振興、子供の貧困対策、人材の育成、基地跡地の利用等の沖縄振興策を国家戦略として総合的・積極的に推進する。
ゼロカーボン北海道、食と観光を担う生産空間の発展、北方領土隣接地域の振興等、北海道開発を推進する。アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するため、ウポポイを拠点に取り組む。
過疎地域や離島、半島、奄美、小笠原、豪雪地帯などの条件不利地域対策に取り組む。
   ●中堅・中小企業の活力向上
地域の経済やコミュニティを支える中堅・中小企業の生産性向上等を推進し、その活力を向上させ、経済の底上げにつなげていく。感染症に加え、デジタル、グリーン等の事業環境変化への対応を後押ししつつ、切れ目のない継続的な中小企業等の事業再構築や生産性向上の支援、円滑な事業承継やM&Aの支援、伴走支援を行う体制の整備等に取り組む。これらの施策の活用によるサプライチェーン全体の付加価値の増大とその適切な分配を推進するため、「パートナーシップ構築宣言」の拡大に取り組むとともに、取引適正化を強力に推進76する。あわせて、2023 年10 月のインボイス制度実施を見据えて標準化された電子インボイスの普及促進等を行うほか、中小企業のサイバーセキュリティ対策を支援する。加えて、創業等の促進のため、官民金融機関・信用保証協会における経営者保証に依存しない融資を一層推進する。さらに、地域経済を牽引する事業の発展を推進するため、内外の価格動向など事業環境の変化も踏まえ、EC活用等を通じた中堅・中小企業の輸出力の強化や製品の試作・開発の支援体制強化を図るとともに、地域企業におけるDX実現や人材育成等の地域の主体的な取組を促進する。
   ●債務が増大している企業や家計への対応
新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業に対して資金繰り等の支援に取り組んできた中、企業債務が増大していることに加え、原油等の価格高騰の影響を受けている状況への対応に万全を期す。具体的には、地域の中核企業・中小企業・小規模事業者の実情に応じた収益力改善・事業再生・再チャレンジを図るため、返済猶予・資金繰り支援、経営改善・事業転換・再構築支援、資本基盤の強化、債務減免を含めた債務整理等に総合的に取り組む。
あわせて、感染症後に向けた事業再構築を容易にするため、債務がその足かせにならないよう、新たな事業再構築法制の整備を進める。
また、債務が増大している生活困窮者への対応として、2023 年1月から償還が始まる緊急小口資金等の特例貸付について、住民税非課税世帯に対する償還免除や償還が困難な借受人への相談支援等をきめ細かく行うとともに、そのための体制の整備を図る。
   ●観光立国の復活
我が国の成長戦略の柱の一つであり、地方経済・雇用を支える観光立国の復活を図り、地方創生を進める。
国内交流需要喚起のため、感染状況等を踏まえて引き続き注意深く検討を行い、旅行者等の安全を確保した上で、国内需要喚起策77を実施し、観光・交通事業者と連携して平日の旅行促進等を推進する。新たな交流市場を開拓しつつ、宿泊施設改修やデジタル実装等、観光地・観光産業の再生・高付加価値化について、基金化などの計画的・継続的な支援策が可能となるよう制度を拡充するとともに、法整備も視野に強力に推進し、また、持続可能な観光に向けた取組を進める。
国際交通を支える航空・空港関連企業の経営基盤強化を図りつつ、インバウンドの戦略的回復に取り組む。消費額増加や地方誘客促進のほか観光外交の推進78のため、きめ細かなプロモーションを実施し、CIQ等の受入環境の整備や水際対策、外国人観光客の民間医療保険への加入促進を進めつつ、サステナブルツーリズムやアドベンチャーツーリズム、新たな観光コンテンツの創出、国立公園等の滞在環境上質化、高付加価値旅行者の誘客、クルーズの再興と世界に誇るクルーズの拠点形成、カジノ規制の実施を含めたIR整備等を強力に推進する。日本酒、焼酎・泡盛等のユネスコ無形文化遺産への登録を目指す。
   ●文化芸術・スポーツの振興
ソフトパワーを含む我が国が誇る文化芸術資源の持続可能な活用を通じた経済・地域活性化を促進するため、統括団体等を通じた文化芸術団体・関係者の活動支援、文化芸術教育や子供の文化芸術鑑賞・体験機会の確保、クリエーターの創作活動の支援、国立文化施設や博物館の機能強化や日本博2.0 等の「WABI」の取組79を推進しつつ、インセンティブを付与した寄附を始めとする民間資金や文化DX80の一層の活用等により、文化財等の保存と活用の好循環や日本の文化芸術・コンテンツの魅力の国内外への発信、グローバル展開及び地方展開の着実な支援・収益基盤の強化を推進する。これらを通じ、アート市場活性化を含め文化芸術の成長産業化81を図る。これらも含めた次期文化芸術推進基本計画を本年度内に策定し、政府一体となって推進する。メディア芸術ナショナルセンターに関する構想に基づき、必要な検討を行う。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会を通じて創出された多様なレガシーを着実に継承・発展させる。スポーツツーリズムの推進を含め、日本らしいスポーツホスピタリティ82を取り入れた、スポーツ・健康まちづくりの全国展開の加速化等を通じ、誰もが気軽にスポーツに親しみ、その価値を実感できる、活力ある、絆の強い社会を実現する83。民間資金やスポーツDX84の一層の活用等により、指導者や活動団体の育成を通じて、スポーツの成長産業化やスポーツの発展を図る。運動部活動の地域移行と持続可能な地域スポーツ環境の一体的な整備に向けた取組を推進する。
   (4)経済安全保障の徹底
新しい資本主義実現のための基礎的条件は国家の安全保障である。第3章で詳述するように、エネルギーや食料を含めた経済安全保障の徹底は、国際環境の変化に応じた新しい資本主義の根幹となる。新しい資本主義では、外交・防衛のみならず、持続可能で包摂性のある国民生活における安全・安心の確保を図る。
また、権威主義国家の台頭に対しては、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を重視する国々が団結し、自由で開かれた経済秩序の維持・強化を進め、自由貿易を推進するとともに、不公正な経済活動に対する対応を強化する必要がある。
●第3章 内外の環境変化への対応
1.国際環境の変化への対応
   (1)外交・安全保障の強化
国際社会では、米中競争、国家間競争の時代に本格的に突入する中、ロシアがウクライナを侵略し、国際秩序の根幹を揺るがすとともに、インド太平洋地域においても、力による一方的な現状変更やその試みが生じており、安全保障環境は一層厳しさを増していることから、外交・安全保障双方の大幅な強化が求められている85。こうした中、同志国の集まりであるG7の政策協調が密接に行われるようになってきているとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力も一層重要になってきている。また、NATO諸国においては、国防予算を対GDP比2%以上とする基準を満たすという誓約へのコミットメントを果たすための努力を加速することと防衛力強化について改めて合意がなされた86。
我が国は、次期G7議長国として、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値に基づく国際秩序の維持・発展のための外交を積極的に展開する。ウクライナ侵略には経済制裁等により毅然と対応し、ウクライナ及び周辺国等への支援を強化する。「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日米同盟を基軸としつつ、豪印、ASEAN、欧州、太平洋島しょ国等の国・地域との協力を深化させ、日米豪印の取組等も活用するとと
もに、TICAD8を通じアフリカとの連携を強化する。安保理改革を含む国連の強化、法の支配の確立、国際機関邦人職員の増強、国際裁判を含む国際法に基づく紛争解決、コロナ禍からの回復を含む地球規模課題への取組を推進し、人権問題、人間の安全保障、核を含む軍縮・不拡散等の課題に取り組む。
北朝鮮との関係では、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を目指す。
これらの取組を推進するため、時代に即した国際協力の在り方を模索するとともに、国際機関とODAを通じた国際協力を適正・効率的かつ戦略的に活用しつつ、ODAを拡充する87ほか、偽情報対策・戦略的対外発信、親日派・知日派の育成、デジタル化・情報防護、情報収集・分析力の向上等を推進し、外交力の強化に取り組む。
その基盤として、人的体制、財政基盤、在外公館の整備を図り、邦人保護体制等を含め外交・領事実施体制を抜本的に強化する。
また、前述の情勢認識を踏まえ、新たな国家安全保障戦略等の検討を加速し、国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する。
特に、スタンド・オフ防衛能力や無人化装備、宇宙・サイバー・電磁波領域を含む領域横断能力、機動展開能力、指揮統制・情報関連機能を強化するとともに、政府の他の枠組みも活用しつつ、民生技術を取り込み、AI、無人機、量子等の先端技術の研究開発を進める。
あわせて、防衛力の持続性・強靱性を確保するとともに、現有装備品を真に有効に活用するため、必要な弾薬の確保、装備品の維持整備、隊舎・宿舎の老朽化対策への重点的な取組を進める。
加えて、装備品の取得に関し、国内の防衛生産・技術基盤を維持・強化する観点を一層重視するとともに、基盤強化のために装備移転に係る見直しを含めた所要の制度整備を行うなど、より踏み込んだ取組を検討する。
質の高い自衛隊員の十分な確保や処遇改善等を通じて人的基盤を強化するとともに、在日米軍再編及び基地対策の推進等を図る。
こうした様々な取組を積み上げ、将来にわたり我が国を守り抜く防衛力を構築する。
その際、本年末に改定する「国家安全保障戦略」及び「防衛計画の大綱」を踏まえて策定される新たな「中期防衛力整備計画」の初年度に当たる令和5年度予算については、同計画に係る議論を経て結論を得る必要があることから予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずる。
「海洋基本計画」88を改訂し、海洋観測・調査、海洋状況把握を含む海洋の安全保障等の取組を強力に推進するとともに、新たな国家安全保障戦略の策定の取組の中で、巡視船の増強、老朽代替の促進、無操縦者航空機を始めとした新技術の活用による監視能力の強化、人材育成等により海上保安体制を強化するとともに、海上保安庁と自衛隊の連携強化や海外の海上保安機関との協力体制の強化を図る。
   (2)経済安全保障の強化
国家・国民の安全を経済面から確保する観点から、経済活動の自由との両立を図りつつ、安全保障の確保に関する経済施策を総合的・効果的に推進する。新たな国家安全保障戦略等の策定に当たり、経済安全保障を重要な課題と位置付ける。基幹産業が直面するリスクを総点検・評価し、脆弱性を解消するための取組を定式化し、継続・深化していく。
経済安全保障推進法89を着実に施行すべく、速やかに基本方針を策定し、サプライチェーン及び官民技術協力に関する施策については、先行して可能な限り早期に実施する。
半導体、レアアースを含む重要鉱物、電池、医薬品等を始めとする重要な物資について、供給途絶リスクを将来も見据えて分析し、物資の特性に応じて、基金等の枠組みも含め、金融支援や助成などの必要な支援措置を整備することで、政府として安定供給を早急に確保する。基幹インフラの事前審査制度について、各省における事業者からの相談窓口の設置を含め円滑な施行に向けた取組を進める。シンクタンクを立ち上げるとともに、先端的な重要技術の育成を進めるプロジェクトを早急に強化し、速やかに5,000 億円規模とすることを目指して、実用化に向けた強力な支援を行う。特許出願の非公開制度について、必要なシステム整備を含め円滑な施行に向けた取組を進める。
外為法90上の投資審査について、地方支分部局も含めた情報収集・分析・モニタリング等の強化を図るとともに、指定業種の在り方について検討を行う。ロシアによるウクライナ侵略も踏まえ、新たな安全保障貿易管理の枠組みの検討も含めた先端技術を保有する民主主義国家による責任ある技術管理や、各種制裁の効果的な実施、経済的威圧への対応を含め、同盟国・同志国との連携を強化する。重要土地等調査法91に基づき、土地等利用状況調査等を着実に進める。
国際共同研究等における具体的事例の検証等を踏まえつつ、重要情報を取り扱う者への資格付与について制度整備を含めた所要の措置を講ずるべく検討を進める。先端技術・機微技術を保有するなど、次世代に不可欠な技術の開発・実装の担い手となる民間企業への資本強化を含めた支援の在り方について検討を行う。日米首脳での合意に基づき、先端半導体基盤の拡充・人材育成に加え、2020 年代後半に次世代半導体の設計・製造基盤を確立する。国際情勢の変化等を踏まえたサイバーセキュリティの確保に向けた官民連携や分析能力の強化について、技術開発の推進や制度整備を含めた所要の措置を講ずるべく検討を進める。政府が扱う情報の機密性等に応じたクラウドの利用方針を年内に定め、必要なクラウドの技術開発等を支援し、クラウド等に係る政府調達に反映する。
国家安全保障局を司令塔とした、関係府省庁を含めた経済安全保障の推進体制の強化を図るとともに、内閣府に経済安全保障推進室(仮称)を速やかに設置し、情勢の変化に柔軟かつ機動的に対応する観点から関係省庁の事務の調整を行う枠組みを整備する。インテリジェンス能力を強化するため、情報の収集・分析等に必要な体制を整備する。
   (3)エネルギー安全保障の強化
ロシアによるウクライナ侵略を踏まえ、エネルギー安全保障の確保が諸外国でも改めて重要課題に浮上する中、エネルギーの安定的かつ安価な供給の確保を大前提に、脱炭素の取組92を加速させるとともに、エネルギー自給率の向上を図る。そのため、徹底した省エネルギーを進めるとともに、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する。また、電力需給ひっ迫を踏まえ、供給力の確保、電力ネットワークやシステムの整備などを図るとともに、脱炭素のエネルギー源を安定的に活用するためのサプライチェーン維持・強化、安全最優先の原発再稼働、厳正かつ効率的な審査を含む実効性ある原子力規制や、道路整備等による避難経路の確保等93を含む原子力防災体制の構築を進めていく。
化石燃料・資源のロシア依存度低減や供給途絶への対策のため、ロシア以外の調達先の多角化や、主要消費国と連携した生産国への増産働きかけ、使用量低減対策を行う。また、石油備蓄放出の機動性向上やSS94事業者の経営力強化、特にLNGについて国による調達関与の強化等を通じて、燃料供給体制を強化する。
また、レアメタル権益の確実な確保に向けた支援措置95など安定供給体制の強化や、メタンハイドレート、海底熱水鉱床、レアアース泥等の国産海洋資源の確保に加え、金属鉱物資源等の安定確保に向けた資源循環の促進に取り組む。
   (4)食料安全保障の強化と農林水産業の持続可能な成長の推進
我が国の食料・農林水産業が輸入に大きく依存してきた中で、世界の食料需給等を巡るリスクが顕在化していることを踏まえ、生産資材の安定確保、国産の飼料や小麦、米粉等の生産・需要拡大、食品原材料や木材の国産への転換等を図るとともに、肥料価格急騰への対策の構築等の検討を進める。今後のリスクを検証し、将来にわたる食料の安定供給確保に必要な総合的な対策の構築に着手し、食料自給率の向上を含め食料安全保障の強化を図る。
気候変動に対応しつつ人口減少に伴う国内市場縮小や農林漁業者減少等の課題克服に向け、人材育成を始め農林水産業の持続可能な成長のための改革96を更に進める。
みどり戦略の実現に向け、2030 年目標やみどりの食料システム法97に基づき、新技術の開発、有機農業の推進、環境負荷低減の見える化等を進める。
国内生産の維持・拡大のためにも、改訂輸出戦略98等に基づき、オールジャパンで輸出に取り組む認定輸出促進団体、輸出産地・事業者を支援するGFP99、輸出支援プラットフォームの体制や活動支援等を強化する。
中山間地域等を含めた生産基盤の確保・強化、農山漁村の活性化に向け、スマート農林水産業の実装加速化、支援サービス事業の育成等の推進、改正基盤法100による地域計画の策定、農地バンクを活用した農地の集積・集約化、担い手等の確保等の推進、デジタル技術を活用した農山漁村の課題解決のための枠組みの創設を行う。土地改良事業により農地の大区画化や汎用化・畑地化を進めるとともに、鳥獣対策、家畜疾病対策を推進する。地域食材を活用した高付加価値化を始め食品産業の持続可能な取組を進める。
再造林促進や林道等の生産基盤整備等を含む木材の安定的・持続的な供給体制の構築、CLT101等の木材利用拡大を進める。
着実な資源管理、養殖業の成長産業化、漁業者の経営安定、漁船等の生産基盤整備、海業の振興等を進める。
   (5)対外経済連携の促進
   ●国際連携の強化
多国間主義重視の下、人権を尊重し、環境にも配慮しつつ、自由で公正な経済圏の拡大、ルールに基づく多角的貿易体制の維持・強化に取り組む102。同時に、資本主義に内在する課題を克服し、持続可能な経済社会を創り上げ、社会課題の解決を新たな成長の源泉とすることで、世界のSDGs達成に貢献する。
DFFT103の具体的推進に向け、国際的なルール作りを進めるとともに、2023 年日本で開催されるG7での一定の成果を目指す。また、WTO改革に積極的に取り組む。TPP11 の着実な実施及び高いレベルを維持しながらの拡大に向けた議論を主導するとともに、RCEP協定の円滑な運用及び履行の確保に取り組む。IPEF104については、インド太平洋地域への米国の強いコミットメントを示すものとして歓迎し、我が国は米国及びASEAN諸国・インドを含むパートナー国と連携して地域の繁栄と経済秩序の構築に取り組み、加えて、米国にはTPP復帰を働きかける。日米経済政策協議委員会(経済版2+2)等も活用し、米国との経済分野での連携を深めるほか、EU及び英国との経済関係を更に強化する。また、「総合的なTPP等関連政策大綱」105に基づく施策を実施する。投資関連協定やODA等106の活用、海外ビジネス投資支援室(仮称)の設置等を通じ、企業の海外展開を促進し、コロナ後の世界での成長力強化を図る。また、予見可能性を高める国際協調の下、企業のサプライチェーンにおける人権尊重の指針を策定する。
技術開発やインフラ整備、技術標準、クレジット活用を通じて、AETI107等を強化・具体化しつつ、アジア・ゼロエミッション共同体構想の実現を目指すなど、気候変動・エネルギー分野のリーダーシップをとる。プラスチック汚染対策では、我が国の技術を活用し、条約交渉及び「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を主導する。グローバルヘルス戦略に基づき、官民資金の拡充を図りつつ、感染症に対する予防・備え・対応の強化など世界の保健課題の解決に貢献し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成を目指すほか、WHOとの連携について協議する。また、薬剤耐性対策において市場インセンティブなどの薬剤耐性菌の治療薬を確保するための具体的な手法を包括的に検討した上で結論を出し、国際的な議論において主導的な役割を果たす。デジタル化、サプライチェーンの強靱化、質の高いインフラ、水循環、環境保全、女性等の分野でも取組を進める。上記の取組やスマートシティ等の案件形成支援、公的金融の機能強化を含め、「インフラシステム海外展開戦略2025」108に基づく施策を着実に進める。また、2025 年大阪・関西万博、2027 年国際園芸博覧会を始め、大規模国際大会等109に向け着実な準備を進める。
   ●対日直接投資の推進
旺盛な海外需要を取り込み、我が国経済の活力や長期的な成長力を高めるため、イノベーション創出やサプライチェーン強靱化等につながる対日直接投資を戦略的に推進する。対日直接投資残高を2030 年に80 兆円との目標達成に向け、投資先としての我が国の魅力を高める。あわせて、水際措置の段階的緩和のタイミングも捉えて、我が国のビジネス環境や技術の強み等についての内外への発信を強化する。
その際、海外企業が求める人材育成を強化するとともに、医療、教育等の面での外国人の生活環境の向上、行政手続のワンストップ化・デジタル化による効率化、法令・行政文書の英語化や理解の促進等の環境整備を進める。また、経済安全保障の観点にも留意しながら、DXやGXの推進、スタートアップの育成などに資する、プッシュ型の重点支援、日本企業の経営力強化のための外資誘致・活用等への支援、海外企業と地域の企業・大学等を結び付ける支援を行う。さらに、より多くの海外の金融事業者を我が国に呼び込むため、国際金融センターの機能を強化する。あわせて、国際仲裁の活性化を図る。
   ●外国人材の受入れ・共生
高度外国人材の受入れや活躍を推進するほか、特定技能制度の受入分野追加は、分野を所管する行政機関が人手不足状況が深刻であること等を具体的に示し、法務省を中心に適切な検討を行う。技能実習制度について人権への配慮等の運用の適正化を行う。これらを含めて、制度の在り方に関する見直しの検討を行う。さらに、人道的な観点から真に庇護すべき者を確実に保護するとともに、送還忌避・長期収容等の課題解消を図る法整備に取り組む。これに加え、外国人が暮らしやすい地域社会づくりのほか、在留カードとマイナンバーカードの一体化の検討、日本語教育の推進や外国人児童生徒等の就学促進110を含め、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」等111に基づき施策を着実に実施し、外国人との共生社会の実現に向けて取り組む。
2.防災・減災、国土強靱化の推進、東日本大震災等からの復興
   ●防災・減災、国土強靱化
切迫する大規模地震災害112、相次ぐ気象災害、火山災害、インフラ老朽化等の国家の危機に打ち勝ち、国民の生命・財産・暮らしを守り、社会の重要な機能を維持するため、「国土強靱化基本計画」113に基づき、必要・十分な予算を確保し、自助・共助・公助を適切に組み合わせ、ハード・ソフト一体となった取組を強力に推進する。中長期的な目標の下、取組の更なる加速化・深化のため、追加的に必要となる事業規模等を定めた「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」114を推進し、引き続き、災害に屈しない国土づくりを進める。
また、国土強靱化基本法115の施行から10 年目を迎える中、これまでの成果や経験をいかし、「5か年加速化対策」後も、中長期的かつ明確な見通しの下、継続的・安定的に国土強靱化の取組を進めていくことの重要性等も勘案して、次期「国土強靱化基本計画」に反映する。
近年の災害を踏まえ、盛土の安全確保対策の推進、災害に強い交通ネットワークの構築、豪雪時の道路交通確保対策の強化、建築物の安全性向上、無電柱化等を推進するとともに、激甚化・頻発化する水害・土砂災害や高潮・高波への対策として、流域治水の取組116を推進する。インフラ老朽化対策117やスマート保安を加速するとともに、DXの推進などによるTEC−FORCE118及び気象台等の防災体制・機能並びに消防団を含む消防防災力の拡充・強化、次期静止気象衛星やデジタル技術等を活用した防災・減災対策の高度化119、船舶活用医療120の推進、医療コンテナの活用を通じた医療体制の強化121、地方自治体によるタイムライン防災の充実強化を図るための気象防災アドバイザーや地域防災マネージャーの拡充、学校などの避難拠点等の防災機能強化や熱中症対策を含む環境改善、被災者支援等を担う人材の確保・育成122、要配慮者避難や災害ケースマネジメント123の促進等の地域防災力の向上や事前防災に資する取組を推進する。気候変動に伴う災害リスクへの対応に関するグローバルな新事業機会の創出を推進する。
   ●東日本大震災等からの復興
東北の復興なくして、日本の再生なし。復興庁を司令塔に、「「第2期復興・創生期間」以降における東日本大震災からの復興の基本方針」124等に基づき、被災地の復興・再生に全力を尽くす。地震・津波被災地域では、被災者の心のケアなど残された課題に取り組む。原子力災害被災地域の復興・再生には中長期的な対応が必要であり、今後も国が前面に立って取り組む。東京電力福島第一原発の廃炉及び環境再生を安全かつ着実に進める。ALPS処理水については、基本方針125及び行動計画126等に基づき、引き続き、地元等の声を受け止め、科学的知見に基づくモニタリング等を含む安全性への理解の醸成や漁業者等の事業の継続・拡大への支援など、必要な対策に万全を期す。住民の帰還促進と併せ、移住・定住の促進を図る。たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意の下、まずは、特定復興再生拠点区域の避難指示解除に向けて、引き続き除染やインフラ整備等を着実に進めるとともに、拠点区域外については、基本的方針127に基づき、2020 年代をかけて、帰還意向のある住民が帰還できるよう、避難指示解除の取組を進める。創業支援や実装フィールド整備、高専等と連携した地元人材育成等による福島イノベーション・コースト構想の具体化を図る。この構想の更なる発展に向けて、福島新エネ社会構想の実現に向けた取組を進めつつ、「創造的復興の中核拠点」となる福島国際研究教育機構の長期・安定的な運営に政府を挙げて取り組むとともに、研究開発や産業化、人材育成の取組を加速させる。あわせて、デジタル技術や映像・芸術等のソフトパワー等を活用した街づくりを推進する。また、災害からの復旧・復興に全力を尽くす。
3.国民生活の安全・安心
良好な治安確保のため、関係府省庁間で連携し、テロの未然防止やインテリジェンス機能の強化を含むサイバーセキュリティ対策等を着実に進める。また、有事に備えた国民保護施策を推進する。金融機関等の検査・監督強化等、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策を推進するとともに、国際基準に対応するための法案を早期に国会に提出する。
高齢運転者等の事故防止や自動車事故による被害者の支援、特殊詐欺等への対策に向けた取組を推進する。
本年度中に実効性のある次期「再犯防止推進計画」128を策定し、地方公共団体との連携強化等の施策を推進する。また、国内外の予防司法支援機能や総合法律支援の充実・強化、司法分野のデジタル化の推進、インターネット上の人権侵害への対策の強化とともに、「第4次犯罪被害者等基本計画」129を基として、取組の強化を推進する。法務分野でのASEANとの連携強化を始め、司法外交を外交一元化の下で推進し、国際法務人材を育成する。
消費者の判断を歪めるようなデジタル広告130に対応した制度整備、消費者団体訴訟制度の一層の活用促進131、消費生活相談のデジタル化やフードバンク支援を含めた食品ロス削減を始めとする消費者政策132を推進する。
●第4章 中長期の経済財政運営
1. 中長期の視点に立った持続可能な経済財政運営
第1章で述べた時代認識とそれに対して必要な取組や政策の方向性を踏まえ、持続可能な経済財政運営を行う。
まずは、急激な輸入物価上昇の中にあって、安定的な物価上昇の下での持続的かつ力強い経済成長の実現が重要であり、第1章で述べた経済財政運営に関する枠組みの下、「成長と分配の好循環」を拡大する。特に、資本主義のバージョンアップに向けて、社会課題の解決に向けた官民連携を成長の源泉とする。このための計画的な重点投資、規制・制度改革を通じて力強い成長を取り戻すとともに、分配戦略により成長の果実を幅広く行き渡らせる。
その際、予算の単年度主義の弊害を是正する。税制の将来にわたる効果を見据えた動的思考を活用する。また、成長と分配の好循環に資する官民投資に重点化し、構造変化を促すインセンティブ・仕組みを構築するとともに、個々の予算を効果的・効率的なものとし、成果の検証の強化を進める。
財政健全化の「旗」を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む。経済あっての財政であり、現行の目標年度により、状況に応じたマクロ経済政策の選択肢が歪められてはならない。必要な政策対応と財政健全化目標に取り組むことは決して矛盾するものではない。経済をしっかり立て直し、そして財政健全化に向けて取り組んでいく。ただし、感染症及び直近の物価高の影響を始め、内外の経済情勢等を常に注視していく必要がある。このため、状況に応じ必要な検証を行っていく。
   ●官民連携による計画的な重点投資の推進
持続的な成長には、需要創出と同時に、供給力を高める効果も持つ「投資」の拡大が不可欠である。世界的に不確実性が増大し、民間企業の投資への逡巡が懸念される中でこれを実現するには、政府が、民間の予見可能性を高め、民間投資の呼び水となる効果的・効率的な支出(ワイズスペンディング)を思い切って行うことで、これまで長期にわたり低迷してきた民間投資を喚起し、可及的速やかに経済を安定成長経路に乗せていく必要がある。
このため、投資促進に向けては、「人への投資」、「科学技術・イノベーションへの投資」、「スタートアップへの投資」、「GXへの投資」、「DXへの投資」を重点投資分野に位置付ける。計画的な投資と課題解決に必要な制度改革を含めたロードマップ133を官民で共有し、それに基づいて、必要な財源を確保しつつ、事業の性質に応じた基金や、税制も活用しながら、大胆な重点投資を、官民連携の下で中長期的かつ計画的に推進する。
   ●単年度予算の弊害是正
政策の長期的方向性や予見可能性を高めるよう、単年度主義の弊害を是正し、国家課題に計画的に取り組む。事業の性質に応じた基金の活用等を進めるとともに、年度末の予算消化などの予算単年度主義に起因する弊害についても、年度を跨ぐ予算執行が可能となるよう、柔軟かつ適切に対応する。
   ●持続可能な債務管理に向けて
我が国の債務残高は毎年の財政赤字が積み上がっており、今後も、安定的な国債の借換えのための環境を実現していく必要がある。また、債務残高対GDP比をコントロールしていく観点からも名目成長率を高めることが重要である。
   ●効果的・効率的な支出の推進とEBPMの徹底強化
今後これまで以上に歳出の中身をより結果につながる効果的なものとすることが重要となる。効果的・効率的な支出(ワイズスペンディング)の推進に向けて、国民各層の意識や行動の変容につながる見える化、先進・優良事例の全国展開、インセンティブ改革、公的部門の産業化、PPP/PFIや共助も含めた民間活力の最大活用などの経済・財政一体改革の取組を抜本強化する。また、コロナ禍での累次の補正予算について、その使い道、成果について、見える化する。
EBPMの手法の実践に向け、行政事業レビューシートを順次見直し、予算編成プロセスでのプラットフォームとしての活用等134を進める。また、政策立案・実施に投入するリソースの確保に向け政府の評価関連作業の合理化を進めるとともに、EBPMの取組を強化135するため、エビデンスによって効果が裏付けられた政策やエビデンスを構築するためのデータ収集等に予算を重点化する。
予算の単年度主義の弊害是正に向け、事業の性質に応じた基金を活用しつつ、重要な政策課題に取り組む基金についてEBPMの手法を前提としたPDCAの取組を推進する。また、計画的な投資と課題解決に必要な制度改革を含めたロードマップについても、こうした考え方に立って取組を進める。
政府向け及び一般向けの可視化等を含めた統計データのエコシステムの構築に向けて取り組むとともに、GDP統計等における無形資産の捕捉強化や、文化資源コンテンツの価値等のソフトパワーの把握・計測等、さらに各政策分野におけるKPIへのWell-being指標の導入を進める。また、公的統計の不適切な取扱いを繰り返さぬよう、集中的な統計改革を行う。
   ●税制改革
経済成長と財政健全化の両立を図るとともに、少子高齢化、グローバル化等の経済社会の構造変化に対応したあるべき税制の具体化に向け、包括的な検討を進める。
骨太方針2021136等も踏まえ、応能負担を通じた再分配機能の向上・格差の固定化防止を図りつつ、公平かつ多様な働き方等に中立的で、デジタル社会にふさわしい税制を構築し、経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を確保するため、税体系全般の見直しを推進する。納税環境の整備と適正・公平な課税の実現の観点から制度及び執行体制の両面からの取組を強化するとともに、新たな国際課税ルールへの対応を進める。
2. 持続可能な社会保障制度の構築
   ●全世代型社会保障の構築
全世代型社会保障は、「成長と分配の好循環」を実現するためにも、給付と負担のバランスを確保しつつ、若年期、壮中年期及び高齢期のそれぞれの世代で安心できるよう構築する必要がある。そのために、社会保険を始めとする共助について、包摂的で中立的な仕組みとし、制度による分断や格差、就労の歪みが生じないようにする。これにより、我が国の中間層を支え、その厚みを増すことに寄与する。給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、能力に応じて皆が支え合うことを基本としながら、それぞれの人生のステージに応じて必要な保障をバランスよく確保する。その際、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、後期高齢者医療制度の保険料賦課限度額の引上げを含む保険料負担の在り方等各種保険制度における負担能力に応じた負担の在り方等137の総合的な検討を進める。全世代型社会保障の構築に向けて、世代間の対立に陥ることなく、全世代にわたって広く基本的な考え方を共有し、国民的な議論を進めていく。
男女が希望どおりに働ける社会を構築するため、男性や非正規雇用労働者の育児休業取得促進や子育て支援138に取り組む。そして、子育て・若者世代が出産・育児によって収入や生活に不安を抱くことなく、仕事と子育てを両立できる環境を整備するために必要となる更なる対応策について、国民的な議論を進める。勤労者皆保険の実現に向けて、被用者保険の適用拡大の着実な実施や更に企業規模要件の撤廃・非適用業種の見直しの検討、フリーランス・ギグワーカーへの社会保険適用について被用者性の捉え方等の検討を進める。家庭における介護の負担軽減のため介護サービスの基盤整備等を進める。公的価格の費用の見える化等を行った上で、職種毎に仕事の内容に比して適正な水準まで賃金が引き上がり、必要な人材が確保されること等を目指して、現場で働く方々の更なる処遇改善に取り組んでいく。また、独居の困窮者・高齢者等に対する相談支援や医療・介護・住まいの一体的な検討・改革等地域共生社会づくりに取り組む。また、医療・介護提供体制などの社会保障制度基盤の強化については、今後の医療ニーズや人口動態の変化、コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築するため、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の国民目線での改革を進めることとし、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行うとともに、地域医療連携推進法人の有効活用や都道府県の責務の明確化等に関し必要な法制上の措置を含め地域医療構想を推進する。あわせて、医師の働き方改革の円滑な施行に向けた取組を進める。その他基盤強化に向けて、医療費適正化計画の在り方の見直しや都道府県のガバナンスの強化など関連する医療保険制度等の改革139とあわせて、これまでの骨太方針2021 等に沿って着実に進める。
これらの取組について、今後、生産年齢人口が急速に減少していく中、高齢者人口がピークを迎えて減少に転ずる2040 年頃を視野に入れつつ、コロナ禍で顕在化した課題を含め、2023 年、2024 年を見据えた短期的課題及び中長期的な各種の課題を全世代型社会保障構築会議において整理し、中長期的な改革事項を工程化した上で、政府全体として取組を進める。
   ●社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進
医療・介護費の適正化を進めるとともに、医療・介護分野でのDX140を含む技術革新を通じたサービスの効率化・質の向上を図るため、デジタルヘルスの活性化に向けた関連サービスの認証制度や評価指針による質の見える化やイノベーション等を進め、同時にデータヘルス改革に関する工程表にのっとりPHRの推進等改革を着実に実行する。オンライン資格確認について、保険医療機関・薬局に、2023 年4月から導入を原則として義務付けるとともに、導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する支援等の措置を見直す141。2024 年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し、さらにオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止142を目指す。「全国医療情報プラットフォーム143の創設」、「電子カルテ情報の標準化等144」及び「診療報酬改定DX」145の取組を行政と関係業界146が一丸となって進めるとともに、医療情報の利活用について法制上の措置等を講ずる。そのため、政府に総理を本部長とし関係閣僚により構成される「医療DX推進本部(仮称)」を設置する。経営実態の透明化の観点から、医療法人・介護サービス事業者の経営状況に関する全国的な電子開示システム等を整備する147とともに、処遇改善を進めるに際して費用の見える化などの促進策を講ずる。医療・介護サービスの生産性向上を図るため、タスク・シフティングや経営の大規模化・協働化を推進する。加えて、医療DXの推進を図るため、オンライン診療の活用を促進するとともに、AIホスピタル148の推進及び実装に向け取り組む。
経済安全保障や医薬品産業ビジョン2021 等の観点も踏まえ、医薬品の品質・安定供給の確保とともに創薬力を強化149し、様々な手段を講じて科学技術力の向上とイノベーションを実現する。がん・難病に係る創薬推進等のため、臨床情報と全ゲノム解析の結果等150の情報を連携させ搭載する情報基盤を構築し、その利活用に係る環境を早急に整備する。がん専門医療人材を養成するとともに、「がん対策推進基本計画」151の見直し、新たな治療法を患者に届ける取組を推進する等がん対策を推進する。大麻に関する制度を見直し、大麻由来医薬品の利用等に向けた必要な環境整備を進める。熱中症対策に取り組むとともに、OTC医薬品・OTC検査薬の拡大に向けた検討等によるセルフメディケーションの推進、ヘルスリテラシーの向上に取り組む。早期発見・早期治療のため、疾患に関する正しい知識の周知啓発を実施し、感染拡大によるがん検診受診の実態を踏まえ、引き続き、受診勧奨に取り組むとともに、政策効果に関する実証事業を着実に実施するなどリハビリテーションを含め予防・重症化予防・健康づくりを推進する。また、移植医療を推進する。
良質な医療を効率的に提供する体制の整備等の観点から、2022 年度診療報酬改定により措置された取組の検証を行うとともに、周知・広報の推進とあわせたリフィル処方箋の普及・定着のための仕組みの整備を実現する。バイオシミラーについて、医療費適正化効果を踏まえた目標値を今年度中に設定し、着実に推進する。新型コロナウイルス感染症対応の経験を踏まえ、コロナ入院患者受入医療機関等に対する補助の在り方について、これまでの診療報酬の特例等152も参考に見直す。国保財政健全化の観点から、法定外繰入等の早期解消を促すとともに、普通調整交付金の配分の在り方について、方向性を示すべく地方団体等との議論を深める。
全身の健康と口腔の健康に関する科学的根拠の集積と国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討、オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実、歯科医療職間・医科歯科連携を始めとする関係職種間・関係機関間の連携、歯科衛生士・歯科技工士の人材確保、歯科技工を含む歯科領域におけるICTの活用を推進し、歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む。また、市場価格に左右されない歯科用材料の導入を推進する。
3. 生産性を高め経済社会を支える社会資本整備
5Gネットワーク等の整備拡大による超高速・超低遅延・多数同時接続環境をいかし、大学・民間等の技術開発の促進に向けたインフラデータのオープン化・データ連携の推進、中小建設企業へのICT施工の普及支援等によるi-Construction の推進など、インフラ分野のDXを加速し、生産性を高める。
新技術の導入促進等による予防保全型メンテナンスへの転換や高度化・効率化、集約・再編等を通じた公的ストック適正化を推進するとともに、適切な維持管理の観点から、財源対策等について検討を行う。高速道路の更新事業等を確実に実施するための方策導入や、東北新幹線の脱線事故の検証を踏まえた新幹線等の防災・減災の推進に関する費用負担の在り方等の検討を進める。災害対応力の強化や生産性向上等に資するよう、費用便益分析の客観性・透明性の向上を図りつつ、ストック効果の高い事業への重点化を図る。その際、受益者負担や財政投融資も適切に活用する。
公共事業の効率化等を図るとともに、民間事業者が安心して設備投資や人材育成を行うことができるよう、中長期的な見通しの下、安定的・持続的な公共投資を推進しつつ、戦略的・計画的な取組を進める。その際、現下の資材価格の高騰の状況等を注視しながら適切な価格転嫁が進むよう促した上で今後も必要な事業量を確保しつつ、実効性のあるPDCAサイクルを回しながら、社会資本整備を着実に進める。
建設キャリアアップシステムや施工時期の平準化による処遇改善等や、全ての建設工事について安全管理の徹底を図ること等により建設産業の担い手の育成・確保を図る。
災害リスクや人口動態の変化を見据えた立地適正化を促進するとともに、建築・都市のDX153等を活用しつつ都市再生を促進し、公園の利活用等による人間中心のまちづくりを実現する。質の高い住宅等の流通等を図るため、IoT住宅の普及や不動産情報の活用等154の取組を総合的に進める。空き家等の利活用や基本方針155等に基づく所有者不明土地等対策を進める。
4. 国と地方の新たな役割分担
社会全体におけるDXの進展及び今回の感染症対応で直面した課題等を踏まえ、ポストコロナの経済社会に的確に対応する必要がある。このため、総務省は、地方制度調査会156における調査審議を踏まえ、将来の地域住民サービスの在り方を見据え、国・地方間、東京圏等の大都市圏を含む地方自治体間の役割分担や連携の在り方を明確化する観点から、法整備を視野に入れつつ検討を進める。
国が地方自治体に対し、法令上新たな計画等の策定の義務付け・枠付けを定める場合には、累次の勧告等に基づき、必要最小限のものとすることに加え、努力義務やできる規定、通知等によるものについても、地方の自主性及び自立性を確保する観点から、できる限り新設しないようにするとともに、真に必要な場合でも、計画等の内容や手続は、各団体の判断にできる限り委ねることを原則とする。あわせて、計画等は、特段の支障がない限り、策定済みの計画等との統合や他団体との共同策定を可能とすることを原則とする。
新型コロナウイルス感染症対応として行われた国から地方への財政移転について、事業実施計画や決算等を踏まえて、その内容と成果の見える化を実施した上で、成果と課題の検証を進めるとともに、感染収束後、早期に地方財政の歳出構造を平時に戻す。
5. 経済社会の活力を支える教育・研究活動の推進
多様な子供たちの特性や少子化など地域の実情等を踏まえ、誰一人取り残さず、可能性を最大限に引き出す学びを通じ、個人と社会全体のWell-being の向上を目指す。このため、コロナ禍を契機に進展した教育DX157におけるリアルとデジタルの最適な組合せの観点も踏まえつつ、あるべき資源配分の方向性を次期教育振興基本計画において示す。人と人の触れ合いも大事にしながら、1人1台端末環境を前提として、自分のペースで試行錯誤できる「個別最適な学び」と「協働的な学び」の具体化を早急に実現する。その際、教育DXと連動した教育のハード・ソフト・人材の一体的改革158を、家庭環境、学習環境の格差防止や個人情報保護、教師の勤務実態や働き方改革の進捗状況、教師不足解消に留意しながら、総合的に推進する。発達段階も踏まえつつ、同一の年齢・内容・教材等の前提に過度にとらわれず、全ての学校段階において、探究・STEAM・起業家教育等の抜本強化を図る。35 人学級等についての小学校における多面的な効果検証等を踏まえつつ、中学校を含め、学校の望ましい教育環境や指導体制を構築していく。
学びの基盤的な環境整備を進める。非認知能力の育成に向け、幼児期及び幼保小接続期の教育・保育の質的向上、豊かな感性や創造性を育む文化芸術、スポーツ、自然等の体験や読書活動を推進する。ICTも効果的に活用し、不登校特例校の全都道府県等での設置や指導の充実の促進、SC・SSW159の配置の促進等を通じた重大ないじめ・自殺や不登校への対応、特異な才能への対応や特別支援教育の充実160、国内同等の学びの環境整備及びその特色をいかした教育の推進等の在外教育施設の機能強化を図るとともに、公民館等の社会教育施設の活用促進により、地域の人材育成力の強化を図る。新しい時代の学びを実現する教育環境を整備161しつつ、組織的・実践的な安全対策に取り組むセーフティプロモーションスクールの考え方を取り入れた学校安全を推進162する。
官民連携による持続可能な経済社会の実現に向け、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」163及び分野別戦略164を着実に実行する。研究開発成果の社会実装と国際市場獲得のため、標準活用戦略を加速する。破壊的イノベーションの創出を目指し、初期の失敗を許容し長期に成果を求める研究開発助成制度165を推奨する。教育・研究・ガバナンスの一体的改革を推進し、国立大学法人運営費交付金について、客観・共通指標による成果に基づく配分の検証・見直しを不断に進めながら、私学助成等を含めた大学への財政支援の配分のメリハリを強化し、若手研究者の増加等につなげる。学校法人について、沿革や多様性に配慮しつつ、社会の要請に応え得る、実効性あるガバナンス改革の法案を、秋以降速やかに国会に提出する。国際性向上166や人材の円滑な移動の促進、大型研究施設の官民共同の仕組み等による戦略的な整備・活用の推進167、情報インフラの活用を含む研究DXの推進、各種研究開発事業における国際共同研究の推進等168により、研究の質及び生産性の向上を目指す。
●第5章 当面の経済財政運営と令和5年度予算編成に向けた考え方
1. 当面の経済財政運営について
現状、民需に力強さを欠く状況にある中、海外への所得流出を伴う物価高騰に直面しているほか、ロシアによるウクライナ侵略は、安全保障をめぐる環境を一変させた。こうした中にあって、経済財政運営においては、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の下、適切な実行を図るとともに、構造変化を牽引しつつ、「成長と分配の好循環」を拡大していく必要がある。
このため、第1章で示したとおり、2段階のアプローチで万全の経済財政運営を行う。
当面は、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を具体化する令和3年度補正予算及び令和4年度予算を着実に執行するとともに、令和4年度予備費等を活用した「コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」」を迅速かつ着実に実行し、景気の下振れリスクに対応し、消費や投資を始め民需中心の景気回復を着実に実現するべく、賃上げや価格転嫁など「成長と分配の好循環」に向けた動きを確かなものとしていく。
その上で、本基本方針や新しい資本主義に向けたグランドデザインと実行計画を前に進めるための総合的な方策を早急に具体化し、実行に移す。人への投資、デジタル、グリーンなど、社会課題の解決を経済成長のエンジンとする新しい資本主義を実現するため、官民が連携し、計画的で大胆な重点投資を推進することで、供給力強化と持続的な成長に向けた基盤を構築していく。
2.令和5年度予算編成に向けた考え方
1 前述の情勢認識を踏まえ、景気の下振れリスクにしっかり対応し、民需中心の景気回復を着実に実現することで、成長と分配の好循環に向けた動きを確かなものとしていく。
2 令和5年度予算において、本方針及び骨太方針2021 に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する。ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない。
3 新しい資本主義の実現に向け、「人への投資」、「科学技術・イノベーションへの投資」、「スタートアップへの投資」、「GXへの投資」、「DXへの投資」の分野について、計画的で大胆な重点投資を官民連携の下で推進する。
4 政策の長期的方向性や予見可能性を高めるよう、事業の性質に応じた基金の活用、年度を跨いだ予算執行が可能となる柔軟かつ適切な対応等により、単年度主義の弊害是正に取り組む。また、歳出について、その中身をより結果につながる効果的なものとするよう、コロナ禍での累次の補正予算の使い道や成果を見える化するとともに、EBPMやPDCAの取組を推進し、効果的・効率的な支出(ワイズスペンディング)を徹底する。
●注
*1 「コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」」(令和4年4月26 日原油価格・物価高騰等に関する関係閣僚会議決定)。
*2 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10 年法律第114 号)。
*3 「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について(第一次提言)」(令和4年5月10 日教育未来創造会議決定)に基づく。
*4 働き手にとって、組織目標の達成と自らの成長の方向が一致し、仕事へのやりがい・働きがいを感じる中で、組織や仕事に主体的に貢献する意欲や姿勢を示す概念。
*5 法制的な位置付けの検討を含む。
*6 2022 年4月の消費者物価上昇率(総合)は前年同月比2.5%の上昇。
*7 ソフト・ハード一体となった教育研究環境の整備等の共創拠点化の推進等。
*8 「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」(令和4年2月1日総合科学技術・イノベーション会議決定)に基づく。
*9 官民協働で海外留学を支援する取組。
*10 新規株式公開(Initial Public Offering)。
*11 中小企業技術革新制度(Small Business Innovation Research)。
*12 エネルギーの使用の合理化等に関する法律(昭和54 年法律第49 号)。
*13 エネルギー安全保障にも寄与できる自立した国産のエネルギー源である。
*14 ダムの高度運用による治水と水力発電の両立・強化を含む。
*15 国産水素・アンモニアの大量導入も見据えつつ、国内外サプライチェーン構築に向け、他燃料との燃料価格差を早期に縮小させる支援や、拠点整備支援を行う。
*16 産業集積地の脱炭素化を含む。
*17 洋上風力発電の導入促進を支える基地港湾の整備を含む。
*18 地域の金融機関や中小企業団体等の支援機関による中小企業の取組の後押しを含む。
*19 地域脱炭素移行・再エネ推進交付金や、地球温暖化対策推進法の改正により設置される脱炭素化支援機構の取組を含む。
*20 Net Zero Energy House 及びNet Zero Energy Building の略称。
*21 建築物等における木材利用促進や、ブルーカーボン(海洋生態系によって吸収・固定される二酸化炭素由来の炭素)の取組を含む。
*22 工程表・戦略の策定や、希少金属等の素材や生活用品等の製品のライフサイクル全体での資源循環の推進を含む。
*23 Task Force on Climate-related Financial Disclosures の略称。
*24 森林由来クレジットの創出拡大、森林リート市場の検討など森林分野等における民間投資促進のための基盤整備を含む。
*25 大手機関投資家のみならず、地域金融機関、個人投資家等の資金の出し手や、地方自治体等の資金の受け手を含む。
*26 令和4年6月3日デジタル臨時行政調査会決定。
*27 行政改革推進会議アジャイル型政策形成・評価の在り方に関するワーキンググループ提言(令和4年5月31 日)及び総務省政策評価審議会提言(令和4年5月31 日)に盛り込まれた各種取組。
*28 令和3年9月28 日閣議決定。人材育成、研究開発、攻撃把握・分析・共有基盤、安全かつ信頼性の高い通信ネットワークの確保等を含む。
*29 令和4年6月7日閣議決定。
*30 デジタルファースト・ワンスオンリー・コネクテッド・ワンストップ。
*31 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和3年6月18 日閣議決定)別紙。
*32 令和2年12 月25 日総務省策定。
*33 民間の資金・ノウハウを活用し、財政負担を削減・平準化しつつ、民間のビジネス機会を創出すること等が期待される。
*34「PPP/PFI推進アクションプラン(令和4年改定版)」(令和4年6月3日民間資金等活用事業推進会議決定)。
*35 民間事業者のサービスに対する対価等の一部又は全部が、サービスの水準に関する指標の達成状況で決まる方式。
*36 LABV(Local Asset Backed Vehicle の略で、地方公共団体等が公的不動産を現物出資して民間事業者と新たな事業体を設立し、公的不動産の有効活用を図る方式)の活用を含む。
*37 民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律(平成28 年法律第101 号)。
*38 Social Impact Bond の略称。成果連動型民間委託契約方式による事業を受託した民間事業者が、当該事業に係る資金調達を金融機関等の資金提供者から行い、その返済等を成果に連動した地方自治体からの支払額等に応じて行うもの。
*39 案件形成を含めた複数年にわたる支援の充実や、中間支援組織等との連携促進。
*40 調達した資金が社会課題の解決に貢献するプロジェクトのみに充当される債券。
*41 特定非営利活動促進法(平成10 年法律第7号)。
*42 出生数は2016 年に100 万人を下回った後も5年連続で減少を続け、2021 年の出生数(概数)は81 万2千人と過去最少となった。合計特殊出生率も2015 年に1.45 まで上昇するも6年連続で再び低下し2021 年に1.30 となった。
*43 令和2年5月29 日閣議決定。
*44 令和2年12 月21 日公表。
*45 SNSを活用したオンライン相談などアクセスしやすい妊産婦支援。
*46 子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律(令和3年法律第50 号)。
*47 その際、中間支援法人の活用も検討。
*48 また、子ども・子育て支援の更なる「質の向上」を図るため、消費税分以外も含め、適切に財源を確保していく。
*49 令和4年6月3日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部決定。
*50 令和4年4月26 日男女共同参画会議決定。
*51 女性活躍・男女共同参画の重点方針2022 参照。
*52 「Society5.0 の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」(令和4年6月2日総合科学技術・イノベーション会議決定)、教育未来創造会議の第一次提言等に基づく。
*53 令和元年6月18 日認知症施策推進関係閣僚会議決定。
*54 令和4年3月25 日閣議決定。
*55 特別支援学校の教室不足解消に向けた取組を含む。
*56 バリアフリートイレ、車椅子使用者用駐車施設等、旅客施設等のエレベーター、車両等の優先席など。
*57 様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うこと。
*58 令和3年12 月28 日孤独・孤立対策推進会議決定。
*59 平成29 年7月25 日閣議決定。
*60 国家公務員中途採用者選考試験(就職氷河期世代)を2024 年度まで継続するほか、既存の国家公務員の経験者採用等の取組も着実に継続する。地方でも、地方自治体の実情を踏まえた積極的な採用が行われるよう、国として要請していく。
*61 例えばキャッシュレス化が進展し、マイナンバーカードが広く利用され、シェアリングエコノミーなどの便利な新しいサービスが生まれているなど。
*62 令和4年6月7日閣議決定。
*63 その取組に当たり、超低消費電力の次世代通信の研究開発及び社会実装の推進を含む。
*64 リニア中央新幹線については、2016 年、建設主体の当時の2045 年の東京・大阪間の全線開業計画について全線開業までの期間の最大8年間前倒し(最速2037 年)を図るため、財政投融資を活用して2016 年、2017 年の2年間で3兆円の長期、固定、低利の貸付けを行った。
*65 高速バスや鉄道、乗用車、路線バスなどの交通モード間の接続。
*66 分散型台帳とも呼ばれ、特定の帳簿管理者を置かずに、参加者が同じ帳簿を共有しながら資産や権利の移転などを記録していく情報技術。
*67 特定のサービスに依存せずに、個人・法人によるデータのコントロールを強化する仕組み。やり取りするデータや相手方を検証できる仕組み等の新たな信頼の枠組みをインターネット上に付加するもの。
*68 Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略称。「偽造・改ざん不能のデジタルデータ」であり、ブロックチェーン上で、デジタルデータに唯一の性質を付与して真贋性を担保する機能や、取引履歴を追跡できる機能をもつもの。
*69 Decentralized Autonomous Organization(分散型自律組織)の略称。中央集権的な存在に支配されることなく、誰でも参加可能な組織であり、取引が自動的にブロックチェーン上に記録されるため、透明性と公平性に富んでいるとされる。
*70 次世代インターネットとして注目される概念。巨大なプラットフォーマーの支配を脱し、分散化されて個と個がつながった世界。電子メールとウェブサイトを中心としたWeb1.0、スマートフォンとSNSに特徴付けられるWeb2.0 に続くもの。
*71 コンピューターやコンピュータネットワークの中に構築された、現実世界とは異なる3次元の仮想空間やそのサービス。
*72 ステーブルコインに関する制度整備等の安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を含む。
*73 「第2のふるさとづくり(何度も地域に通う旅、帰る旅)」の普及・定着を含む。
*74 プロフェッショナル人材戦略拠点と、地域金融機関、株式会社地域経済活性化支援機構が緊密に連携して行う取組の強化等。
*75 沖縄振興特別措置法等の一部を改正する法律(令和4年法律第7号)。
*76 価格交渉・価格転嫁の促進、2026 年の約束手形の利用廃止に向けた取組等について、強力に推進する。
*77 2022 年度末まで執行可能な制度となっている。
*78 観光を通じた我が国の外交的プレゼンス向上。
*79 「「咲き誇れ!日本文化」戦略 WABI-Worldwide Art Blossom Initiative-」(令和4年5月12 日日本博総合推進会議)、国際的なアートフェアの誘致、文化財の匠プロジェクトや文化観光拠点等の整備及び日本遺産の推進、地域の伝統行事等の伝承等。三の丸尚蔵館収蔵品の地方展開も引き続き実施。
*80 デジタル技術を活用した文化芸術活動等の効果的・効率的な推進を指し、著作権制度改革を含む。
*81 映像作品のロケ誘致活動やeスポーツ(コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称)等、文化関連産業の振興を含む。
*82 「する・みる・ささえる」スポーツを行う人々が、そこに「あつまる」ことで、これまで以上に「より良く楽しむ」こと
を可能とする取組・行為全般を示す概念。
*83 「第3期スポーツ基本計画」(令和4年3月25 日文部科学大臣決定)に基づく。
*84 デジタル技術を用いてデータ利活用を拡大し、それに伴う資金循環システムの強化等も含め、スポーツ活動の変革を推進することを指す。
*85 2022 年5月23 日の日米首脳会談において両首脳は、日米同盟を強化することを改めて確認したほか、台湾に関する両国の基本的な立場に変更はないことを確認し、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促した。
*86 NATO諸国の中でG7メンバーでもあるドイツは、国防予算を対GDP比2%とすることを表明し、そのために憲法に相当する基本法を改正し、新規借入によって1,000 億ユーロの特別基金を設立しつつ、その償還方法については別途法律で定めることとしている。
*87 JICAによる人材育成等の協力を含む。
*88 平成30 年5月15 日閣議決定。
*89 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和4年法律第43 号)。
*90 外国為替及び外国貿易法(昭和24 年法律第228 号)。
*91 重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(令和3年法律第84 号)。
*92 第2章1.(4)の取組を含む。
*93 緊急時避難円滑化事業による避難の円滑化や高度被ばく医療の質の向上等を含む。
*94 サービスステーションの略称。
*95 石油天然ガス・金属鉱物資源機構による出資・債務保証など。
*96 「農林水産業・地域の活力創造プラン」(令和3年12 月24 日農林水産業・地域の活力創造本部改訂)等に基づく改革。
*97 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律(令和4年法律第37 号)。
*98 「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」(令和2年12 月15 日農林水産業・地域の活力創造本部決定)。2025 年までに2兆円、2030 年までに5兆円とする輸出額目標を実現するため、実行する施策をまとめた戦略。
*99 「農林水産物・食品輸出プロジェクト」(輸出に意欲のある生産者等に対し、コミュニティサイトへの登録を通じて、輸出訪問診断や輸出商社等とのマッチング、情報提供など各種サポートを行う取組。)。
*100 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律(令和4年法律第56 号)。
*101 Cross Laminated Timber の略称。直交集成板。ひき板を繊維方向が直交するように積層接着した重厚なパネル。
*102 UNCITRAL等でのルール形成を含む。
*103 Data Free Flow with Trust(信頼性のある自由なデータ流通)の略称。
*104 Indo-Pacific Economic Framework(インド太平洋経済枠組み)の略称。
*105 令和2年12 月8日TPP等総合対策本部決定。
*106 法制度整備支援を含む。
*107 アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブの略称。
*108 令和2年12 月10 日経協インフラ戦略会議決定。
*109 ワールドマスターズゲームズ2021 関西、第19 回FINA世界水泳選手権2022 福岡大会等。
*110 日本語教師の新たな資格制度及び日本語教育機関の水準の維持向上を図る認定制度に関する新たな法案の速やかな提出、地域の日本語教育の体制づくり、学校における日本語指導体制整備を含む。
*111 「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」において改訂される予定。あわせて、外国人との共生社会の実現に向けて今後5年間に取り組むべき方策等を示すロードマップを策定することとしている。
*112 南海トラフ地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震等(これらに起因する津波を含む。)。
*113 平成30 年12 月14 日閣議決定。
*114 令和2年12 月11 日閣議決定。
*115 強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法(平成25 年法律第95 号)。
*116 堤防・遊水地・ダム・砂防堰堤・下水道・ため池の整備、森林整備・治山対策、ダムの事前放流・堆砂対策等、内水対策等の事前防災対策、水害リスク情報の提供及び災害リスクの高い土地の利用規制と併せた安全な土地への移転誘導、線状降水帯・洪水等の予測精度向上、最新の気象予測技術を活用したダム運用の高度化、グリーンインフラの活用等。
*117 頭首工など農業水利施設の戦略的な保全管理の推進を含む。
*118 Technical Emergency Control Force の略称。緊急災害対策派遣隊。
*119 災害対応機関が活用する防災デジタルプラットフォーム、災害時などにドローン・センサー等を活用し現場の状況を収集する防災IoT、通信インフラ基盤の整備等。
*120 災害時等において民間船舶や自衛隊艦艇等を活用し、医療提供を行う取組。
*121 医療コンテナの導入状況の把握、活用促進の検討、情報発信等。
*122 地域の実情も踏まえた民間団体・行政等による連携・協働の促進、避難生活支援を担う地域のボランティア人材の育成、防災教育の実施等。
*123 一人ひとりの被災者の状況を把握した上で、関係者が連携して、被災者に対するきめ細やかな支援を実施する取組。
*124 令和3年3月9日閣議決定。
*125 「ALPS処理水の処分に関する基本方針」(令和3年4月13 日廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議決定)。
*126 「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた行動計画」(令和3年12 月28 日ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議決定)。
*127 「特定復興再生拠点区域外への帰還・居住に向けた避難指示解除に関する考え方」(令和3年8月31 日原子力災害対策本部・復興推進会議決定)。
*128 保護司・更生保護施設等の民間協力者と協働した満期釈放者対策等、矯正施設での適切な被収容者処遇の充実を含む。
*129 令和3年3月30 日閣議決定。
*130 ステルスマーケティング等を含む。
*131 改正消費者裁判手続特例法に基づく制度。
*132 消費者志向経営や若年者への消費者教育、食品表示のデジタル活用等を含む。
*133「人への投資」を強化する3年間で4,000 億円規模の施策パッケージ、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」、「スタートアップ育成5か年計画」、「クリーンエネルギー戦略」、「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」等。
*134 記載事項の検索のためのレビューシートのデータベース構築や補正予算のレビューシートの前倒し作成。
*135 経済産業研究所におけるEBPMセンター設置等の例がある。
*136 「経済財政運営と改革の基本方針2021」(令和3年6月18 日閣議決定)。
*137 これまでの経済財政運営と改革の基本方針や新経済・財政再生計画改革工程表に掲げられた医療・介護等に関する事項を含む。
*138 第2章2.(2)「(少子化対策・こども政策)」に記載されている内容を含む。
*139 中長期的課題として、現在広域連合による事務処理が行われている後期高齢者医療制度の在り方、生活保護受給者の国保及び後期高齢者医療制度への加入を含めた医療扶助の在り方の検討を深めることなどを含む。
*140 データヘルス、オンライン診療、AI・ロボット・ICTの活用など、医療・介護分野におけるデジタルトランスフォーメーションをいう。
*141 診療報酬上の加算の取扱いについては、中央社会保険医療協議会において検討。
*142 加入者から申請があれば保険証は交付される。
*143 オンライン資格確認等システムのネットワークを拡充し、レセプト・特定健診等情報に加え、予防接種、電子処方箋情報、自治体検診情報、電子カルテ等の医療(介護を含む)全般にわたる情報について共有・交換できる全国的なプラットフォームをいう。
*144 その他、標準型電子カルテの検討や、電子カルテデータを、治療の最適化やAI等の新しい医療技術の開発、創薬のために有効活用することが含まれる。
*145 デジタル時代に対応した診療報酬やその改定に関する作業を大幅に効率化し、システムエンジニアの有効活用や費用の低廉化を目指すことをいう。これにより、医療保険制度全体の運営コスト削減につなげることが求められている。
*146 医療界、医学界、産業界をいう。
*147 その際、補助金等について事業収益と分けるなど見える化できる内容の充実も検討。
*148 平成30 年度から開始した「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第2期(平成30〜令和4年度)においてAIホスピタル等の研究開発を推進している。
*149 医薬品産業ビジョン2021 では、医薬品産業政策の取組を継続していく観点からKPIの重要性について言及しており、創薬力の強化等に向け、KPIを設定し、取組を進める。
*150 10 万ゲノム規模を目指した解析結果のほか、マルチ・オミックス(網羅的な生体分子についての情報)解析の結果等を含む。
*151 平成30 年3月9日閣議決定。
*152 過去の収入に応じた支払いを含む。
*153 建築物の形状、材質、施工方法に関する3次元データ、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を推進するProjectPLATEAU やデジタル技術を用いた都市空間再編、土地や建物に関する固有の識別番号の活用等。
*154 不動産ID、土地・不動産情報ライブラリ、BIMの活用や関係府省庁で連携したベース・レジストリの整備等。
*155 「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」(令和4年5月27 日所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議決定)における地籍調査、登記所備付地図の整備の促進等。
*156 地方制度調査会では、「国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の関係その他の必要な地方制度のあり方について、調査審議を求める」ことが諮問されている。
*157 デジタル技術を活用した教育活動や学校運営等の効果的・効率的な推進と新たな価値の創出を指す。
*158 GIGAスクール運営支援センターの整備、デジタル教科書の普及促進や民間教育が生み出したEdTech の活用の促進、小学校における35 人学級や高学年の教科担任制の推進、外部人材の柔軟な確保・活用を含む教師が安心して本務に集中できる環境づくりや研修高度化を含む教師の資質向上等。
*159 SC:スクールカウンセラー、SSW:スクールソーシャルワーカー。
*160 特別支援学級との適切な選択など、通級による指導の円滑な運用を含む。
*161 教育環境向上と老朽化対策を一体的に行う長寿命化改修等を含む計画的・効率的な整備及び横断的実行計画の策定。
*162 「第3次学校安全の推進に関する計画」(令和4年3月25 日閣議決定)に基づく。
*163 令和3年3月26 日閣議決定。
*164 「第6期科学技術・イノベーション基本計画」において、AI、バイオテクノロジー、量子、マテリアル、環境エネルギー、安全・安心、健康・医療、宇宙、海洋、食料・農林水産業が戦略的な重要分野として位置付けられている。また、「医療用等ラジオアイソトープ製造・利用推進アクションプラン」に基づく取組を推進する。
*165 ムーンショット型研究開発制度、創発的研究支援事業等。
*166 沖縄科学技術大学院大学(OIST)の取組の例がある。
*167 生物・医学、素粒子物理学、天文学、情報学といった、世界の学術フロンティアなどを先導する国際的なものを含む。
*168 施設・設備・機器の共用化、競争的研究費の一体的改革、研究を支える研究職人材の活用促進、マッチングファンド方式の活用拡大、ステージゲートによる基金の機動的な資金配分見直し等。