特別国会

特別国会
岸田総理大臣 第101代総理大臣に指名

与党 お約束の経済対策
臨時国会
目指すは バラマキ補正予算成立


既定路線です


11/1-511/611/711/811/9・・・
11/10特別国会11/1111/12・・・
11/1311/14-特別国会と臨時国会・・・
 
 
 
 
 
 

 

●麻生氏「功労者はあなただ」 鼓舞するも…翻意させられず 11/2
1日午後、自民党本部。約2時間に及んだ岸田文雄首相(党総裁)の慰留交渉は、実を結ばなかった。固かった甘利明幹事長の辞意。未明に小選挙区での敗北が確実になった後、安倍晋三元首相を加えた3人で「3A」の異名を持つ麻生太郎党副総裁も再三にわたり「こんなことで辞めてどうすんだ。今回の選挙の功労者はあなただ」。甘利氏を鼓舞したものの、翻意させられなかった。
公示前勢力から微減とはいえ、衆院選で国会運営を完全支配できる絶対安定多数(261)を単独確保した自民。甘利氏に対し、党内からは「実質的に勝ったと言えるのだから、続投すればいい」「選挙指揮を執る立場でありながら比例復活に甘んじた『けじめ』として辞任が当然だ」と両論が出ていた。一方で、自身の現金授受問題が尾を引き、選挙戦にも少なからず負の影響を与えた。「辞任は、野党にとって追及材料が一つなくなることを意味し、メリットの方が大きい」(政府関係者)との見方も聞かれる。
首相が重きを置く経済安全保障分野など政策面をリードしつつ、「3A」の結束を背に党内融和の「要」としてにらみを利かせ、党人事の際には首相に代わり登用を告げる電話をかけていた甘利氏。吉と出るか、凶と出るか、その離脱が実質的に始動したばかりの岸田政権を揺さぶったのは間違いない。
「話を頂いたばかりでこれから考えるが、ワンチームとしていろんな問題に取り組む」。首相から後任の党ナンバー2を打診され、受諾した茂木敏充外相は1日夕、報道陣に戸惑い気味に語った。
衆院選の結果責任の混乱に陥っているのは、野党第1党の立憲民主党も同じだ。投開票前は躍進との一部予測もあったが、ふたを開けてみれば公示前から14議席も減少。党内からは「こんな大敗で続けられるわけがない」(中堅)と、党執行部を突き上げる声が噴出している。
1日、福山哲郎幹事長はカメラの前で深々と頭を下げ「私自身は腹を決めている」と引責辞任を示唆。枝野幸男代表も「僅差の選挙区で競り勝てず、結果的に議席を減らした。残念で申し訳ない」と表情をこわばらせた。来夏の参院選へ向け、自身の進退を含む今後の党方針を2日の執行役員会で示すというが、合意に達するかは見通せない。
「共産党との関係(共闘)で現場は混乱した。しっかりした総括が必要だ」
この日、立民最大の支持母体・連合の芳野友子会長は、衆院選の報告に訪れた枝野、福山両氏にきつくくぎを刺した。連合は当初から、立民と共産の接近に違和感を表明してきた。午後の記者会見で、芳野氏は衆院選を「連合が戦いづらかったのは事実。共産や市民連合との共闘で、現場の組合員の票が行き場を失った」と振り返り、参院選では同様の選挙協力は容認できないと警告した。連合幹部の憤りは止まらない。「どれだけの労組票が離れたと思っているのか。政権批判の受け皿になれていないのを、立民は気付いていない」
これに対し、共産の志位和夫委員長は「野党共闘は大きな歴史的意義があった。参院選は揺るぎなく共闘を発展させたい。この道しかこの国は変えられない」と主張し、今後、立民にさらなる「進化」を求める構え。3議席増やした国民民主党の玉木雄一郎代表は「改革中道の路線をぶれずに貫く」とし、共産との協力を否定する。
誰の目にも確かな成果を導くことがあたわなかった野党共闘。非自民勢力を結集しようとの試みは、早くも曲がり角に立ったように映る。 
●特別国会を10日に召集、与野党に伝達…第2次岸田内閣が発足へ  11/5
松野官房長官は5日午前、衆院の与野党の各派協議会と参院議院運営委員会理事会に出席し、特別国会を10日に召集することを正式に伝えた。会期は12日までの3日間となる。
岸田首相は、10日の首相指名選挙で第101代首相に指名された後、ただちに組閣し、第2次内閣を発足させる。10日の衆院本会議では、新たに議長と副議長が選出される。
●特別国会10日召集へ 衆院議長選出、首相指名も  11/5
松野博一官房長官は5日午前、衆院各派協議会に出席し、衆院選を受けた特別国会を10日召集とする日程を伝えた。参院議院運営委員会理事会にも伝達。特別国会では10日中に衆院の新しい正副議長を選出。首相指名選挙で岸田文雄首相が再び指名される。
特別国会の会期に関し、与党は12日までの3日間とする方向で調整している。新型コロナウイルス経済対策を盛り込む2021年度補正予算案は年内に改めて臨時国会を開いて成立を図る。
新たな衆院議長は第1会派の自民党から、副議長は第2会派の立憲民主党から選ぶ。議長には自民党の細田博之元幹事長が就く方向だ。
●特別国会 10日召集 総理大臣指名選挙へ  11/5
衆議院の解散・総選挙を受けた特別国会は、来週10日に召集され、その日のうちに総理大臣指名選挙が行われることになりました。
5日開かれた衆議院の各会派の代表者による協議会には、松野官房長官が出席し、衆議院の解散・総選挙を受けて、総理大臣指名選挙などを行う特別国会を、来週10日に召集することを正式に伝えました。
これを受け、与党側は会期について、来週12日までの3日間にしたいと提案したのに対し、野党側も受け入れる考えを伝えました。
また、協議会では召集日の午後に衆議院本会議を開き、新たな議長・副議長を選出するのに続いて、総理大臣指名選挙を行うことで合意しました。
一方、参議院議院運営委員会の理事会でも松野官房長官が特別国会を10日に召集することを伝えました。
10日には参議院でも総理大臣指名選挙が行われる見通しで、岸田総理大臣は、衆参両院の本会議で第101代の総理大臣に指名され、その日のうちに第2次岸田内閣を発足させる運びです。
また、政府・与党は年内に臨時国会を改めて召集し、今月中旬に策定する新たな経済対策を盛り込んだ今年度の補正予算案を提出して成立を図りたいとしています。
●立民 “代表選挙は臨時国会前には行いたい” 福山幹事長  11/5
立憲民主党の代表選挙について、福山幹事長は党の会合で、10日からの特別国会の閉会後、年内に改めて召集される見通しの臨時国会の前には行いたいという考えを示しました。
立憲民主党は、枝野代表が衆議院選挙で選挙前の議席を確保できなかった責任をとって辞任するのを受けて代表選挙を行うことになり、具体的な期日の検討を進めています。
こうした中、福山幹事長は5日、会派の参議院議員総会で代表選挙について10日から12日までの特別国会の閉会後、新たな経済対策などの議論のため年内に改めて召集される臨時国会の前には行いたいという考えを示しました。
一方、議員総会では衆議院選挙の結果をめぐり「しっかり分析したうえで党の立て直しを図っていく必要がある」などという意見が相次ぎました。
そして、参議院の会派としても今回の選挙結果を総括したうえで来年夏の参議院選挙に向けた態勢作りを進めていく方針を確認しました。
 
 
 
 
 

 

●岸田首相、就任後初めて静養 11/6
岸田文雄首相は6日、東京・赤坂の衆院議員宿舎で静養した。首相が終日、宿舎で過ごしたのは10月4日の首相就任以降初めて。首相は10日の特別国会で第101代首相に選出される見通しで、第2次岸田内閣発足に向け、英気を養った。
首相は就任10日後に衆院を解散、1カ月足らずで総選挙に臨み遊説に奔走した。衆院選の投開票日直後の今月2日には国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に出席するため、0泊2日の強行日程で訪英した。
 
 
 
 
 

 

●国民 玉木代表 “9日にも維新と幹事長・国対委員長会談へ” 11/7
今週10日に召集される特別国会を前に、国民民主党の玉木代表は、9日にも、日本維新の会との間で幹事長と国会対策委員長による会談を行い、今後の国会対応で一致できる点がないかなどについて協議する考えを示しました。
国民民主党は、先週4日、これまで法案審議への対応を決めてきた立憲民主党や共産党など野党の国会対策委員長の会談に参加しない方針を決めました。
これに関連し、国民民主党の玉木代表は、7日朝、フジテレビの番組「日曜報道 THE PRIME」に出演し「公約の実現のためには、あらゆる勢力と協力していきたいと」と述べ、今後は、すべての政党と政策ごとに協力を模索していく考えを重ねて示しました。
そのうえで、日本維新の会と定期的な協議の場を設ける考えはないか問われたのに対し「あさってくらいに両党の幹事長、国対委員長で最初の顔合わせをする。どういうところで協力して前に進めることができるのかという話をスタートさせたい」と述べました。
●18歳以下一律10万円給付策にどうも違和感ある訳 11/7
「自民は“やるやる詐欺”」維新と国民が改憲論議促進で一致
先の衆議院議員選挙で躍進した日本維新の会の吉村洋文副代表(大阪府知事)と、同じく議席を伸ばした国民民主党の玉木雄一郎代表が、7日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』に出演した。両氏は憲法審査会などで憲法改正論議の促進を目指す考えで一致した。また、コロナ禍を受けた給付金の支給について、マイナンバーと金融機関の口座をひも付けている人に限り給付する案に、両氏は賛同する考えを示した。
憲法改正論議をめぐり、吉村氏は「維新の会は改憲勢力だ。自民党は憲法改正を党是といいながら、実は一部の保守層のガス抜きのためにやっているようなもの。本気で憲法改正をやろうと思っていない。自民党のやるやる詐欺に付き合うつもりはない」と述べ、憲法改正論議を進めない自民党の姿勢を批判した。
玉木氏も「自民党は本当にやる気があるのかと思うことが多々ある」と同調した。そして「憲法審査会は毎週開いたらいい。われわれは議論するために歳費をいただいている。(審査会を)開くことがすごいみたいになっていること自体、その文化を変えていかなければいけない」と強調した。
一方、コロナ禍を受けて、公明党が政府に申し入れる予定の「18歳以下一律10万円給付」案をめぐり、玉木氏は「子育て世代の支援であれば、ワンショットではなく恒久的にやるべきだ。困窮世帯支援であれば、子どものいない困窮世帯や独身者は救われない」と述べ、政策目的が曖昧だと指摘した。
吉村氏は「所得制限はつけるべきだ。(公明党案だと)僕は(収入が減っていないにも関わらず)30万円、橋下徹さんは40万円もらえる。これが本当にコロナ禍の政策として正しいのか」と疑問を呈した。
レギュラーコメンテーターの橋下徹氏(元大阪市長・元大阪府知事・弁護士)が、マイナンバーと金融機関の口座をひも付けた人に限り、10万円を給付する案を提起。吉村、玉木両氏に対し、国民からの批判覚悟で実現に取り組んでほしいと求めた。
これに対し、吉村氏は「ひとつの方法だ」と応じ、玉木氏は「賛成だ。世帯単位でしか配れないと、DVの被害を受け、別居している人を助けられない」と述べた。
玉木氏は、維新と国会対応や政策での協力拡大を協議するため、特別国会召集前日の9日にも両党の幹事長・国対委員長会談を開催すると明らかにした。
立憲民主、共産両党との国会運営上での協力関係を白紙に戻した玉木氏は、維新との協力関係に期待を示し、「改革中道で自民党に対抗できるまともな野党勢力を作りたい」と表明した。
以下、番組での主なやりとり。
右に左に偏らない改革を
松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):今回の選挙の結果、国民民主党も議席を伸ばした。それを受けて玉木代表はこれまでの野党国対の枠組みから外れることを表明した。維新と国民民主で、保守中道的な別の野党のかたまりをつくって自民党と対峙するという考えはあるのか。
国民民主党・玉木雄一郎代表:はい。今回の選挙で、私が全国回って主に訴えたのは2つ。やはり改革中道のポジションが大事だと。日本の政治にとり、改革中道、右に左に偏らないで改革を進めていく、この立ち位置が重要だということ。それと「対決よりも解決」ということを訴えた。コロナの中でこれからどうしていくのかと国民は示してもらいたい、求めているということに正面から経済政策を中心に訴えた。国民に約束した公約の実現のためにはあらゆる勢力と協力していきたい。改革を進めていくというところは維新に賛同するところも多い。さまざまな形で国会でコミュニケーションをとり、一緒に進めるところは進めていきたい。
松山キャスター:一緒に進めるという意味では、例えば、国民民主と維新との間で、いま自公両党がやっているような幹事長・国対委員長らを合わせた「二幹二国」という会合をやっているが、そういった定期協議の場を設けて、連携を深めていくということになるのか。
玉木氏:週明け特別国会が開く前、火曜日(9日)にも両党の幹事長・国対委員長でどうしていくか、顔合わせ、話し合いをスタートすると聞いている。どういうところで一緒に協力して前に進めることができるのか、という話をスタートさせたいと思っている。
松山キャスター:吉村さんに聞く。憲法改正など一緒にやれる分野があると思うが、憲法改正に向けた憲法審査会を維新と国民民主で共に働きかけていく、連携していくということもありえるか。
日本維新の会・吉村洋文副代表:はい。国民民主の皆さんと連携できるところは連携していきたい。個々の政策、法案などで国民民主の皆さんと非常に価値観近いところもあるので、実現するために協力していくことが非常に重要だ。
松山キャスター:憲法審査会を開くということでも立場を一にして、自民党への働きかけをしていくのか。
維新と国民民主の連携はあるか
吉村氏:はい。われわれ、維新の会は改憲勢力、改憲について賛成の立場だ。ただ、憲法改正は自民党が本気にならないと憲法改正の国民投票までは絶対にたどりつかない。自民党は憲法改正を党是と言いながら、実は、単に一部の保守層のガス抜きのためにやっているようなもの。実際本気で憲法改正をやろうと思ってないというのが僕の考え、見立てだ。本気で自民党が憲法改正をするというのであれば、われわれも本気で付き合うが、単に自民党のやるやる詐欺に付き合うつもりはない。スケジュールを決めることをしっかりやらないと成り立たない。井戸端会議になる。これまでずっと議論してきたわけで、自民党も維新の会もそれぞれ憲法改正の項目は出している。例えば、来年の参議院選挙に国民投票をやるというスケジュールを決めて、その先でもいいが、スケジュールをきちんと決めて、そこから逆算してやっていこうということを自民党はやらない。結局、全員の合意がない限り進めるのはやめましょうというのが基本的に自民党の姿勢。憲法改正について国民はまだ一度も国民投票をしたことはない。大阪では大阪府と大阪市を1つに合体させて東京のような都政を敷くという大阪都構想を実現させるために住民投票を2回やった。われわれは死ぬ気で、必要だと思ってやってきた。この死ぬ気でもやる覚悟が自民党の憲法改正にはない。(改憲論議を)後押しできたらいいと思うが、ただこれは本当に自民党の本気度、そこをぜひ知りたい。
松山キャスター:吉村さんは、自民党改憲がやるやる詐欺で、もっとケツたたけみたいな話されているが、玉木さんはそれに同調して一緒にやろうという考えはあるか。
玉木氏:そもそも憲法審査会を開くか開かないか、開いたらいいんだ、毎週。議論するのが国会で、そのためにわれわれは歳費をもらっているので、そもそも(議論)しないという選択肢はないと思う。各党各会派さまざまな考え方があり、賛成反対も改憲項目も違う。議論を否定する国会が当たり前だと、それ(審査会)を開くことがなにかすごいみたいになっていること自体、その文化を変えていかなければいけない。吉村知事が言ったことと同じで、自民党は本当にやる気あるのかなと思うことも多々ある。例えば、憲法53条、これ4分の1衆議院・参議院の議員の要求があれば、臨時国会開かなきゃいけないと、野党はこれを要求する。でも、(与党は)開かない。なぜかというと、期限を定めていないから。2012年の自民党の憲法改正草案は「20日以内」と書いてあるのであれば、これ、野党も反対する人いないと思う。そういうところからまずやってみるとかね。自民党も4項目を決めていて大切かもしれないが、立法府と行政の関係を正していくとか、こういうことで合意できるところからやるっていうのであれば、そういうところからまず始めるとか。いずれにしても議論をきちんととやることは極めて重要だ。
梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):公明党が8日、政府に対して申し入れる予定の新型コロナの支援策。18歳以下の子どもに一律で現金10万円を給付。所得制限は設けないとしている。さらにマイナンバーカードを保有する全国民を対象に3万円相当のポイントを付与。今週から政府与党内で本格的に協議される見通し。
松山キャスター:公明党案では所得制限なしということだ。玉木代表は困窮世帯全体が救われるわけではないと批判している。この案についてどこがどう問題だと考えているのか。
玉木氏:まず政策目的をきちんと整理した方がいいと思う。子育て支援であれば、所得制限は設けないほうがいいと思うが、コロナで今非常にまだ苦しい人がいて、困窮世帯をどう支援するのか、ということが今重要だ。その意味ではちょっと中途半端だ。子育て世代の支援なら、ワンショットではなくて恒久的にやるべきだ。困窮世帯支援であれば、子供のいない困窮世帯や独身者は救われない。別途、そのためには別の制度をつくる、早くて給付は来年の春の桜の花の咲く頃という、とても年末越せないわけだ。だからもう少しこれ考えた方がいい。私はマイナンバー制度が全銀行口座にひもづいて、イギリスのように1カ月単位で国がある程度所得の変化を把握できるようになっていれば、困窮世帯にさっと配ればいい。だが、日本の場合ずっと一年間も前から問題なのは、だれが困っているかわからないこと。であれば、いったん配ったのちに課税時に所得の減っていない人、あるいは高所得者からは逆還付という形で戻してもらうということしかないのかなと思っている。
松山キャスター:所得制限をかけるべきかどうかということについて、先ほど視聴者投票の結果が出た。
所得制限の有無について
梅津キャスター:5万4,000を超える人に投票いただいた。「所得制限はあったほうがいい」という人41%、「所得制限ないほうがいい」が21%、「給付は不要」という人は38%いる。
橋下徹氏:国民は賢明だ。永田町の感覚と国民の感覚はやはりこういうところでずれている。永田町ではとにかく現金を配ればいいと思っているのかわからないが、やはり国民はこうなんだ。玉木さんともさまざま議論あったが、やはり高所得者にはそんな給付をする必要はない。ただ、一斉に配るのであれば、まずは配って玉木さんが言うように、後から課税というのが筋だが、(公明党案の)政策目的がとにかくわからない。維新と国民民主は改革政党なのであれば、政府が言えないことを言ってもらいたい。マイナンバーに口座を届け出た人に現金を配るぐらいのことをやる。これは批判が出る。プライバシーの問題でやりたくない、口座を届け出なければ10万円もらえないのか、と言って批判はくる。けれども、その批判を受けたうえで将来の日本のシステムのことを考えたら、口座とひもづけた人だけ10万円給付とやれば、これは別の意味でデジタル社会への第1歩ということで目的達成できる。これぐらいのことを、維新と国民民主とで批判覚悟で言ってもらいたい。
吉村氏:所得制限はつけるべきだ。これだけ莫大な財源を使うのに政策の信念がない。要は何のためにこれやるのかというのがよくわからない。コロナ禍で経済的に厳しい状況の人がいるので、そういう人たちに支給をするのは大賛成で、これはやるべきだ。でも、この制度はそうなってない。何のためにこれをやるのかというのが非常に不明確。マイナンバーで本来は所得を把握できるようにしておいた方がいい。これをやろうとすると、「いや、個人のプライバシーだ」とか、よく反対する側の人たちがいるが、反対する側の人たちはよく「弱者救済だ」というが、本当の意味で経済的に厳しいと、国が支援していくためには所得を把握できるような仕組みを作った方がこういう時に迅速に対応できる。だから、これは本来やるべきだと思っている。ただ、今その制度がない中でどうするべきかと考えた時、一律にこの18歳以下全員に配るよりは、例えば、一人親家庭は非常に厳しい家庭が多い。あるいは住民税非課税世帯はわかっているので、そこに配る。この政策目的は、収入が非常に厳しくなった人のためにやるだというのを明確にする。基本的には何でこれをするのかというのを国民にきちんと説明するということが決定的に不足していると思う。
橋下氏:吉村さん、口座を登録した人だけに10万円給付するような大胆な提案はできないか。
吉村氏:そういったことをやるのもひとつの方法だ。
橋下氏:玉木さんはどうか。登録した人だけ10万円給付と、これ批判出ると思うが。
玉木氏:賛成だ。今、吉村さんが言った通り、いわゆるリベラルの人にも私ずっと言っているが、例えば、去年も世帯単位でしか配れないと。つまり世帯主が申請権者であり、受給権者だ。そうすると、DV被害を受けて別居している人は助けられない。だから、個人で管理するマイナンバーをもっと活用しないと。その困っている人、弱い人を助けようと言っている人が実は、それを助ける制度を妨げているところがある。維新の皆さんと協力して進めていかないと。政策インフラは10年間何も進んでいない。その都度、こういうことの議論を繰り返しているの。日本はもうこんなことやっていたらだめだ、本当に。だからそこを改革したい。
吉村氏:橋下さんが言うように、マイナンバーをひもづけたところに支給をするというのも当然の方法として僕はやるべきだと思う。今、本当に(経済的に)厳しい家庭が多い。特に1人親家庭は厳しいところが非常に多い。所得関係なしに18歳以下全員に配るのは、何を目的としているのかわからない。たとえば、ぼくも30万円もらえる。コロナだからといって収入は減っていない。大阪府・市の職員4万人いるが、収入は1人も減っていない。でも、子どもがいれば全員10万円もらえると。橋下さんだって収入は減ってないと思うが、(もらえるのは)40万か50万か。
橋下氏:40万。
吉村氏:橋下さんが40万円で、僕が30万円もらえる制度とは、これが本当にコロナ禍の政策として正しいのか。ここに国民は疑問を感じていると思う。
 
 
 
 
 

 

●衆院議長に細田博之氏、副議長に海江田万里氏…与野党が合意  11/8
衆院の各派協議会が8日、国会内で開かれ、議長に自民党の細田博之・元官房長官、副議長に立憲民主党の海江田万里・元経済産業相をそれぞれ選出することで合意した。10日召集の特別国会本会議で正式に選ばれる。
●衆議院 新議長に自民 細田氏 新副議長に立民 海江田氏選出へ  11/8
10日に召集される特別国会で、衆議院の新しい議長に、自民党の細田博之元幹事長が、新しい副議長に立憲民主党の海江田万里元経済産業大臣がそれぞれ選出される見通しとなりました。
衆議院選挙を受けて、総理大臣指名選挙などを行う特別国会が10日に召集され、召集日の午後には、衆議院本会議で新たな議長と副議長が選出されます。
これを前に、8日に開かれた衆議院の各会派の代表者による協議会で、与党第一党の自民党が、議長に細田博之元幹事長を、野党第一党の立憲民主党が、副議長に海江田万里元経済産業大臣をそれぞれ推しました。
これに対し、ほかの会派から異論は出されず、10日の衆議院本会議で、細田氏と海江田氏が議長と副議長にそれぞれ選出される見通しとなりました。
細田氏は、島根1区選出の当選11回で、77歳。官房長官や自民党の幹事長などを歴任し、党内最大派閥・細田派の会長も務めてきました。
一方、海江田氏は、比例代表東京ブロック選出の当選8回で、72歳。経済産業大臣や旧民主党の代表などを歴任しています。
●国民、独自路線へ傾斜 維新と協力協議 11/8
先の衆院選で議席を増やした国民民主党が独自路線へと傾斜し始めた。立憲民主党を中心とする政権追及型の野党協調より、選挙で訴えた対案重視の「政策先導型」が支持されたと自信を深めているためだ。既に立民を中心とする野党国対の枠組みからの離脱を決定。国会対応や政策調整で与野党と等距離を保ち、存在感をアピールする構えだ。
「国民に約束した公約実現のためには、あらゆる勢力と協力したい」。国民の玉木雄一郎代表は7日のフジテレビ番組で、今後の党運営の方針をこう表明。日本維新の会との間で幹事長・国対委員長会談を9日に初開催することも明らかにした。
昨年9月の結党以来、「対決よりも解決」を掲げ、政府が決定するより前に新型コロナウイルス対策の一律10万円給付、孤独担当相設置などを相次いで提案。衆院選ではこうした「実績」を前面に出し、事前の厳しい議席予測を覆して公示前の8議席を上回る11議席を獲得した。
党幹部は「われわれの路線は若者や無党派層から支持された。改革中道路線は正しかった」と分析。「政策実現のためには与党への協力も惜しまない」とし、独自路線を党勢拡大につなげたい考えだ。
ただ、年内に予定される臨時国会、来年1月召集の通常国会で野党共闘を維持したい立民は困惑している。立民関係者は「和を乱すような勝手なことをされては困る」と顔をしかめる。
国民の動きは、来年夏の参院選に向けた野党各党の戦略にも影響しかねない。勝負のカギを握る改選数1の「1人区」で国民が独自に擁立を進めれば、野党候補の共倒れを招きかねないからだ。
逆に国民も野党協調路線に背を向けることで、現職が改選となる山形、大分2選挙区に関し、立民などとの競合を誘発するおそれもある。共産党幹部は「共産も参加した枠組みで山形、大分も勝利した。変なことをするなら状況は変わる」と国民をけん制した。
●立憲民主党の代表選挙日程や方法 準備本格化へ 11/8
立憲民主党は、枝野代表の後任を選ぶ代表選挙について、年内に召集される見通しの臨時国会の前には行いたいとしていて、今週末に枝野代表が正式に辞任することを踏まえ、具体的な日程の調整や実施方法の確認など準備を本格化させることにしています。
立憲民主党は、枝野代表が衆議院選挙で選挙前の議席を確保できなかった責任を取って辞任するのを受けて、党員らも参加する形で代表選挙を行うことにしています。
これについて福山幹事長は先週、党の会合で、今週10日に召集される特別国会の閉会のあと、新たな経済対策などの議論のために年内に改めて召集される見通しの臨時国会の前には行いたいという考えを示しました。
党では、特別国会の閉会日の今週12日に枝野代表が正式に辞任することを踏まえ、代表選挙の具体的な日程の調整や実施方法の確認など準備を本格化させることにしています。
代表選挙をめぐっては、去年の代表選挙で枝野氏と争った泉政務調査会長を推す声がある一方、小川国会対策副委員長が立候補に意欲を示しているほか、大串役員室長も立候補の検討を続けていて、候補者擁立に向けた動きもさらに活発になりそうです。
●中谷・元防衛相、人権問題担当の首相補佐官に 中国の動きを牽制か 11/8
岸田文雄首相は8日、人権問題担当の首相補佐官を新設し、自民党の中谷元・元防衛相(64)を起用する方針を決めた。10日に召集される特別国会での首相指名を受け、第2次岸田内閣が発足するのに合わせて任命する。中国の人権状況が国際社会で懸念されるなか、人権問題に積極的な姿勢を見せて中国側の動きを牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。
首相は8日午前、首相官邸で中谷氏と会談し、補佐官に任命する意向を伝えた。会談後、中谷氏は記者団に「国際的な人権問題に対処するため、首相の指示に基づいて対応したい」と語った。首相は9月の自民党総裁選で、中国の新疆ウイグル自治区での人権問題や香港での人権弾圧などを念頭に、人権問題担当補佐官を新しく設ける考えを明らかにしていた。
中谷氏は衆院高知1区選出で当選11回。防衛相や党安全保障調査会長などを歴任し、4月に発足した「人権外交を超党派で考える議員連盟」の共同会長を務める。外国で起きた人権侵害に制裁を科す「日本版マグニツキー法」制定の必要性を訴えている。
●安倍元首相、11日に派閥復帰 「安倍派」へ 11/8
安倍晋三元首相が11日にも自民党細田派(清和政策研究会)に復帰し、同派の次期会長に就任する見通しとなったことが8日、派閥関係者への取材で分かった。同派は現会長の細田博之元幹事長が10日に衆院議長に選出されることに伴い、9日に派閥幹部らが後任の会長人事について意見交換する。その後、安倍氏の派閥復帰と次期会長就任を打診し、安倍氏の承諾を得られれば、11日の派閥会合で正式決定する予定。
8日に国会内で開かれた衆院各派協議会では、衆院議長に自民党の細田氏、副議長に立憲民主党の海江田万里元経済産業相をそれぞれ充てる方針が報告され、了承された。議長は与党第1党、副議長は野党第一党から出すのが慣例から選出するのが慣例。特別国会が召集される10日の衆院本会議で細田氏が選出されるのを受け、後任の会長に安倍氏が就任するかどうかが焦点となっていた。
●お前はもう死んでいるとばかりに…岸田首相が安倍元首相に“嫌がらせ” 11/8
権力の欲望が渦巻く永田町に秋風ならぬ、すきま風が吹いている。舞台の主役は政権与党の頂点に立った岸田文雄首相と、自民党最大派閥の影響力を背景に「令和のキングメーカー」となった安倍晋三元首相だ。主要メディアの予想を覆す勝利を総選挙で手にした岸田自民党だが、2人の最高権力者の間に生じた微妙な距離感に不安を抱く声は少なくない。
「3A」──。9月末の自民党総裁選で岸田氏の勝利に貢献したといわれる安倍氏、麻生太郎元首相、甘利明元経済再生相の3人の「A」は、歴代最長の5年以上も幹事長職に君臨した二階俊博氏にかわる「キングメーカー」として、岸田政権で圧倒的な存在感を放つ。
実際、岸田氏は自民党第2派閥の麻生派(49人)から麻生氏を党副総裁に、甘利氏は党ナンバー2の幹事長に任命。安倍氏が絶大な影響力を持つ最大派閥・細田派(87人)からは松野博一官房長官、福田達夫党総務会長、高木毅国会対策委員長を起用し、首相自ら率いる岸田派(41人)を含めた主要派閥で政権基盤を安定させる道を選択した。
だが、政権発足から1カ月も経たず、強固に見えた首相と「3A」との関係に亀裂が生じたという。決定打となったのは、総選挙で敗北(比例復活)した責任をとって幹事長職を辞任した甘利氏の後任人事である。
自民党担当のテレビ記者が解説する。「安倍氏ら細田派には党役員・閣僚人事や衆院選の公認調整などで『岸田―甘利体制』に不満がありました。その甘利氏が事実上失脚したので、同派の萩生田光一経済産業相の幹事長起用か、安倍氏に近い高市早苗政調会長の横滑り人事を期待していたわけですが、それも岸田氏に無視されてしまい……。お前はもう死んでいる、とばかりに2度までもコケにされて安倍氏の面子は丸つぶれですよ」
「福田総務会長」をめぐり…
元々、安倍氏は最側近の萩生田氏を官房長官に、幹事長には高市氏の起用を期待していた。しかし、実際に官房長官に就いた松野氏は細田派であるものの、甘利氏が結成した派閥横断グループ「さいこう日本」のメンバーという「甘利印」でもある。選挙公約などを取り仕切る政調会長に高市氏が就任したが、党内屈指の政策通といわれる甘利氏が幹事長の立場から自民党や政府の施策に口をはさむことが予想された。
さらに安倍氏の機嫌を損ねたのは、当選3回の福田氏が党3役の総務会長に任命されたことだ。小泉純一郎首相時代の2003年、官房副長官から当選3回で幹事長に抜擢された安倍氏としては、若手からの大胆な抜擢は驚くことではない。福田氏が細田派に所属していることも歓迎すべきことである。だが、福田氏の父は安倍氏と犬猿の仲である福田康夫元首相。小泉政権で上司だった康夫氏とは北朝鮮による日本人拉致問題への対応などをめぐり確執が生まれ、陰に陽に批判をし合ってきた関係にある。
両者の関係を知る閣僚経験者が語る。「岸田氏から『福田総務会長』プランを聞かされた安倍氏はおもむろに不機嫌になり、再考するよう求めたそうです。岸田氏とのパイプ役は萩生田氏に任せ、首相経験者としての矜持から露骨にアレコレ言うことは控えていた安倍氏ですが、さすがに『嫌がらせをされているようだ』と怒るのも無理はありませんよ」
党総裁選の決選投票で、先頭に立って支援した高市氏陣営の勢力を岸田氏に加勢させ、岸田政権誕生の立役者である安倍氏の苛立ちは隠せそうにはない。
友情もあるが勝負は別
だが、物事には表と裏がある。いずれも岸田氏サイドから見れば、その風景は大きく違う。国民の人気が高い河野太郎前ワクチン担当相への危機感から、総裁選で支援を求めたものの安倍氏には高市氏の全面支援に回られ、1回目の投票結果は高市氏が国会議員票で岸田氏(146票)に次ぐ2位の114票を獲得。
「安倍氏は『河野潰し』で岸田氏を勝たせるために高市氏を担いだとも言われましたが、本気で高市氏を勝たせようと全面支援していた。下手をすれば、岸田氏と順位が逆になっていた可能性もありました。岸田、安倍関係には友情もありますが、勝負はまた別ということでしょう」(自民党中堅)との声もあがる。
振り返れば、岸田氏はたびたび安倍氏に苦汁を飲まされてきた。直近では、昨年の党総裁選をめぐる対応があげられる。2018年の総裁選で立候補を模索した岸田氏は、長期政権を築いていた安倍氏からの「禅譲」を期待して出馬を見送った。「ポスト安倍」の筆頭格として意欲を示し続け、安倍氏や麻生氏と良好な関係を維持してきたのも「次」に両氏の支援を期待してのものだ。
しかし、2020年8月に安倍氏が体調悪化を理由に首相辞任を表明。岸田氏が当然の流れとして次期総裁選での支援を求めた際、安倍氏は首を縦に振らなかった。安倍路線を継承した菅義偉氏らとの総裁選は、菅氏が377票、岸田氏は68票。一時は「政治生命を絶たれた」といわれるほどの大敗を喫している。
30万円給付で赤っ恥
他にも苦い記憶がある。新型コロナウイルスの感染拡大で苦しむ国民への支援策として、自民党政調会長だった岸田氏は「困窮世帯への30万円給付」案をとりまとめ、政府に実現を求めた。この案は当時の安倍首相と決めたものだったが、二階幹事長や公明党の反対から急きょ方針転換を余儀なくされ、党内での求心力が急落する「赤っ恥」をかかされている。
「普通に考えれば、あれだけ期待していた『後継指名』を袖にされ、政治家として終わりかける危機を強いられれば、安倍氏に対して良い感情はないでしょう。本音では何度も裏切られたと感じていると思いますよ」
全国紙政治部デスクは、こう岸田氏の複雑な胸中を探る。党役員・閣僚人事で安倍氏の意向を忖度せず、総選挙の群馬1区の公認争いでは、安倍氏が「公認候補でなくなることはあり得ないと思っている」と公言していた尾身朝子氏(細田派)ではなく、中曽根康隆氏に軍配をあげた。
成長と分配、新しい資本主義を掲げてアベノミクスからの修正を目指す岸田氏。自民党第3派閥の竹下派で会長代行を務める茂木敏充元外相を新幹事長に迎え、岸田派・麻生派・竹下派という主要3派で政権運営を安定させたいとの思惑も透けて見える。年末に控える来年度予算案の編成や税制改正大綱の策定、国家安全保障戦略の改定などで「岸田カラー」は打ち出せるのか。寒風が訪れる季節、2人の関係がさらに冷え込むことを不安視する向きは多い。
●現金給付で苦杯の過去 首相、二の舞回避なるか 11/8
8日に自民、公明両党の調整が本格化した18歳以下の子供への一律10万円相当の給付金をめぐり、岸田文雄首相の対応が注目されている。昨年4月、新型コロナウイルス対策で当時党政調会長だった首相が主導した減収世帯への支援策が公明の主張を受け入れる形で覆った苦い経験があるためだ。自公で隔たりのある給付金の協議は首相の調整力の試金石となる。
「連立政権なので、お互いしっかりと詰めていく。歩み寄りも必要ではないか」
8日夜、自民の高市早苗政調会長は自公協議についてこう述べた。協議では10万円相当の支援の必要性では一致したが、給付対象は「自民はどちらかというと低所得」(茂木敏充幹事長)の人を対象とし、一律給付を目指す公明とは隔たりが大きい。給付金は分配政策を掲げる岸田政権の目玉だが、与党内の調整に手間取れば、首相にとって「悪夢」の再来となりかねない。
昨年4月、緊急経済対策として生活困窮世帯に1世帯当たり30万円を給付する案を政調会長だった首相がまとめ、財源の裏付けとなる令和2年度補正予算案を閣議決定した。当時、この方針の決定にあたり「大企業や年金生活者などコロナの打撃がない人に配るのは不公平」と訴えた財務省の意見が反映されたといわれている。
ところが、所得制限に伴い受給手続きが複雑になるとして公明から再考を迫られた首相官邸が土壇場で決定を撤回。全国民への一律10万円給付を決め、補正予算案の閣議決定をやり直す異例の事態をたどった。矢面に立った首相の調整力が疑問視され、「ポスト安倍」が遠のいた。
今回、首相の対応が焦点になっているのは、コロナ対策で大型の財政出動を求める自民内の一部から首相が「財務省寄り」とみられていることもある。月刊誌への寄稿で与野党の政策論争を「バラマキ合戦」と批判した矢野康治財務事務次官について、党内には「辞めさせなければ政局だ」(重鎮)と更迭を求める声がくすぶる。首相周辺は更迭には慎重だが、首相と財務省との距離が今後の政局の火種になりかねない。
首相が公明党の攻勢に屈する形で給付金の詳細設計を決めたと映ればバラマキ批判が再燃し、逆に、所得制限などで支給対象が狭まれば来夏の参院選で公明党の協力が得にくくなるリスクを伴う。首相の「聞く力」の真価が問われそうだ。
●岸田首相と火花散らす安倍氏 天敵・林芳正氏の外相起用阻止に動いた 11/8
総選挙の善戦で政権基盤が安定するかに見えた岸田政権だが、どっこいそうはいかない。自民党では選挙が終わるや否や来年夏の参院選をにらんで新たな権力闘争が始まった。
きっかけは小選挙区で敗北した甘利明・前幹事長の“失脚”と後任人事だ。キングメーカーの安倍晋三・元首相周辺からは選挙応援で功績があった高市早苗・政調会長の幹事長就任を求める声があがったが、岸田文雄首相は要求を振り切って旧竹下派会長代行で外相の茂木敏充氏を幹事長に起用した。
首相は選挙戦を通じて高市氏の脅威をひしひしと感じていた。それを象徴するのが兵庫県西宮市での応援演説。高市氏は「自民党の選挙公約は高市公約そのままだ」という批判があることに「その通りでございます」と自信満々に笑みを浮かべ、こう力説した。
「公約は私のパソコンで作りました。岸田総裁から『なにがなんでも5日以内に作ってくれ』(と言われて)3日間徹夜をした。自分の総裁選挙の公約をコピペした後、岸田総裁の総裁選の政策を、原本のデータがないから自分で打ち込んだ」
岸田首相や甘利氏が応援で目立たなかったのとは対照的に高市氏は引っ張りだこ。そのうえ、選挙公約づくりの“丸投げ”まで暴露されて面目を失った。来年夏には参院選を控えている。
「目立ちたがり屋の高市を幹事長にしたら岸田総理の存在感は食われてしまう」(岸田派ベテラン)
だからなんとしても、岸田首相は「高市幹事長」を阻止しなければならなかった。茂木氏の後任の外相選びでも岸田VS安倍は火花を散らした。
岸田首相が安倍氏の“天敵”で岸田派座長の林芳正・元文科相を外相に据えようとしたことだ。この人事に自民党タカ派から、「日中友好議連会長の林氏を外相にすれば、日本は親中路線に転換すると間違ったメッセージを送ることになる」という反対論があがり、首相は人事をいったん保留して外相不在のまま英国での国際会議に出発するという異例の事態となった。
林氏は60歳と政界では若いが、防衛相、経済財政担当相、農水相(2回)、文科相を歴任するなどすでに閣僚経験5回。今回の総選挙では参院議員から河村建夫・元官房長官を押しのけて衆院山口3区に鞍替えして圧勝し、「岸田派のプリンス」として総裁をうかがうポジションにつけた。
安倍氏とは地元・山口で親子2代にわたってライバル関係にあり、次の総選挙では同じ選挙区でぶつかる可能性が高い。
それというのも、「1票の格差」是正のために次の総選挙までに全国で10増10減の定数是正が行なわれ、山口県は現在の4選挙区から3選挙区へと定数1減になる。
新たな区割り案は政府の区割り審議会でまとめられるが、位置的に安倍氏の山口4区と林氏の山口3区の一部が統合されて「新3区」になるのはまず間違いない。安倍氏と林氏の公認争いは避けられない。政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。
「安倍氏の山口4区はもともと下関市を中心に路線バスやガス会社などを経営する林家の地盤です。そのうえ、林氏は今回の選挙で3区でもどんどん地盤を固めて圧勝した。3区の一部と4区が合区になれば林氏のほうが有利。安倍氏が選挙区を奪われる可能性は十分あります」
林氏が重要閣僚の外相に就任して脚光を浴びれば、安倍氏の地元での立場はますます不利になる。そこで安倍サイドは「林外相就任」阻止に動いたものの岸氏に押し切られた格好になった。
安倍氏の性格は意地っぱりで執念深い。岸田首相の一連の動きに“そこまでオレを潰したいのか”と深く遺恨を抱いたと見て間違いなさそうだ。
●「財務省の言いなり」予算編成に警戒せよ…岸田政権「公約破り」の懸念 11/8
不安だらけの補正予算
今週10日に特別国会が召集される。この特別国会で、岸田自民党総裁が内閣総理大臣として指名されることになる。
また、補正予算は待ったなしだ。総選挙で約束した大型景気対策をやってもらわないと困る。一方で財務省は、事業費を膨らませても真水を少なくしたり、前年度の使い残しの振替等の予算手法で可能な限り真の予算規模を小さくしたいだろう。
あまりに財務省の言いなりになると、自民党は公約を実行しないという批判がおき、来年の参議院選挙は岸田政権では戦えないという自民党内の意見も出てくるかもしれない。
補正予算の規模は、真水ベースで30兆円以上だ。というのは、GDPギャップは35兆円程度あるからだ。
しかし、10月11日の筆者記事〈財務事務次官「異例の論考」に思わず失笑…もはや隠蔽工作レベルの「財政再建論」〉でも手厳しく批判した矢野康治事務次官はおとがめなしで、補正予算編成に従事しているようだ。となると、本当に国民が総選挙で臨んだ補正予算ができるかどうか、心許ない。
そもそも、矢野氏には申し訳ないが、会計学の基本すら危ういレベルなので、きちんと仕事ができるのかというレベルだ。安倍晋三元首相も、月刊誌「WILL」21年12月号において、矢野氏は「(手法と主張の)二つの間違いがある」としている。
財務省に任せきりなのは大きな課題
国会においても、矢野氏の資質について野党は大いに追及すべきである。事務次官は国会答弁に立たないという国会運営上の慣行があるが、それは政府の決めたことではない。実際には、国会が求めて事務次官も答弁したこともある。2014年6月3日の参議院厚生労働委員会における村木厚子厚生労働事務次官(当時)だ。
ここで、与党が矢野次官の答弁を拒否すれば、国民の目にも誰が庇護者であるのかがはっきりわかるだろう。
来年度の予算編成に残された時間もほとんどない。9月から自民党総裁選、そのまま総選挙に突入して、財務省に予算の中身もスケジュールもすべておんぶに抱っこという状態なので、これもある意味では大きな課題だ。
いずれにしても、補正予算と来年度予算をどうするかは内政における大きな課題だ。下手をすると、岸田カラーはほぼなく、財務省色一色になる可能性もある。これは、来年の参院選を控えて大きな火種になる可能性がある。
外政においては、総選挙期間中、中ロ艦隊が日本一周したのは看過できない。岸田政権の動きを探るために計画的された行動だ。それに対して、岸信夫防衛大臣はまともに反応したが、岸田首相の発信力は心もとない。緊急記者会見くらい開くべきだ。
今回多くの国民に明らかになったのは、かねてから指摘されてきた日本の領海法の不備だ。10月25日の本コラム〈立憲民主、公明、共産の「お花畑」議論にもううんざり…大切にして欲しい「リアルな議論」〉 でも書いたが、40年間以上前、津軽海峡、大隈海峡等を領海にせず公海(国際海峡)にしたのは不味かった。
津軽海峡は本来日本の「領海」だが、その中に「公海」があるのは、まるで家の中に「公道」があり誰でも通っていいようなものだと筆者は書いた。理屈上、そこで軍事的な行動をされても文句を言えない。今回の中ロ艦隊の行動は事実上軍事的行動であるが、まともな抗議すらできない。
津軽海峡などを公海としている根拠は領海法附則なので、一刻も早く削除し、これらを日本の領海とすべきだ。これは、総選挙後の国会で行うべき法改正だ。津軽海峡等を日本の「領海」としても、外国籍船舶には無害通航権があるので、その範囲で対処すればよく、通常の航行には支障が生じない。
共産党との連携を解消すべき
衆院選で議席を減らした立憲民主党は枝野幸男代表が辞任することになったが、来年の参院選や次回の衆院選に向けて、野党第一党として立ち直るには何が必要なのか。
立憲民主党が総選挙で負けたのは、共産党との選挙協力だった。いくら閣外協力といっても、自衛隊違憲、日米安保条約破棄の共産党とは組めないという感覚はないようだ。
「立憲共産党」と揶揄され、実際、連合やトヨタ労組はアレルギー反応を示した。その結果、立憲民主党は議席を大きく減らした。
岸田政権がいまいちピリッとしない中、立憲民主党は、共産党との選挙協力をしなければ、大幅な議席増が望めたが、共産党との選挙協力という禁断の果実に手を出したばかりに、千載一遇のチャンスを逃した。結果として選挙協力がかえってアダになるのだ。そもそも世界の先進国では共産党が議席を持っている国は少なく、非合法化している国も多い。
立憲民主党の打開策は、共産党との関係を元に戻すことであるが、個別の選挙区事情もあり、そう簡単ではない。首相指名選挙が行なわれる特別国会の閉会後、立憲民主党の代表選も行われるが、その際、共産党の距離感が争点になるだろう。何にもまして、共産党との連携を白紙に戻すくらいでないと、立憲民主党の立ち直りは期待できないだろう。
かつては同じ民主党だったが、希望の党の設立で立憲民主党と分かれた国民民主党は、今回の総選挙を受けて、「改革中道」「対決より解決」の立場で、いわゆる野党合同ヒアリングにも参加しないとした。興味深い動きだ。
イメージ戦略が奏功した
衆院選で日本維新の会が大きく議席を増やした。
その背景と、今後の国政でどのような存在感を発揮するのか、維新の政策が反映される可能性はあるのか。
維新は、公示前11から41へと大躍進だった。議席増30は、自民、立憲民主、共産のそれぞれ議席減15、14、2をそっくり吸収した結果だ。安倍政権から岸田政権になってやや左傾化し、立憲民主と共産は労働組合などから呆れられた。空いた保守層とリアルな選挙民層を、保守系の維新がいただいた格好だ。
また、岸田政権となって、規制改革などに代表される「改革派」の影が薄くなり、株式市場関係者などから夢がなくなったという不満が出ていた。維新は、既存政党の中で唯一「改革」を標榜しており、この点でも不満層を上手く取り込んだ。
安倍・菅政権は改革路線であったので、維新は差別化できずにそれほど議席数を伸ばせなかったが、岸田政権になって改革色がなくなったため、改めて見直されたとも言えるだろう。
維新内でのイメージ戦略も功を奏した。大阪都構想での敗北で、橋下徹前大阪市長が政界引退し吉村洋文大阪府知事が維新の表看板になった。その結果、大阪小選挙区では、維新は公明に配慮し候補者を立てなかった4つを除き15で勝利した。自民は全敗だ。
さらに、大阪では、府と多くの市で首長を抑えており、議会もかなり維新系議員が多い。彼らが選挙ではフル稼働するので維新勢力は強い。今回の総選挙では、大阪以外でも小選挙区で勝利するなど全国にも勢力を伸ばしている。これまで国政政党で一時の風で人気を集めた政党はあったが、下部組織までしっかりとしたものはなかった。その意味で、維新は初めての国政政党になろうとしている。
維新が今後国政でどうなるか。まず、規制改革でその存在感を出すだろう。なにしろ、岸田首相は所信表明としては40年ぶりに規制改革に言及しなかった。衆院選公約集の中にも盛り込まない方針だったが、自民党党内の改革派からの要求で入れたらしい。
憲法改正に持ち込むことはできるか
次に憲法改正だ。マスコミは、自公で改憲勢力というが不正確だ。公明党は改憲に熱心でなく、実際憲法審査会の運営に消去的だった。
今回維新が、自民、立憲民主に次いで第三党になった。しかも、改憲に前向きな自民261議席、国民民主11議席と合わせると313議席となり、公明抜きでも衆院の3分の2、310議席を超える。
となると、憲法審査会の議論は進むと期待できる。コロナ対応、国際情勢で日本が改憲しなかったために適切な対応ができなかったが、一刻も早く憲法改正に向けて議論すべきだ。 
●「切れ者」の政治家、茂木自民党幹事長 強みと課題 11/8
衆院選に勝利した岸田文雄首相は、小選挙区で落選し辞任を申し出た自民党の甘利明前幹事長の後任に茂木敏充前外相(66)を起用した。永田町や霞が関での茂木評をまとめると、実務能力や状況判断、先読みに優れた「切れ者」の半面、周囲に厳しく怒りっぽい面もある。「ポスト岸田」を目指すには、中堅、若手議員や官僚との距離を縮めて「茂木ファン」を増やし、ソフトで「切れる」政治家となることが課題のようだ。
茂木氏は東大卒業後、丸紅、読売新聞政治部記者、米ハーバード大大学院、マッキンゼー社コンサルタントを経て、1993年の衆院選で旧栃木2区から細川護熙氏が結成した日本新党公認で初当選し、当選10回。同党の当選同期には、立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の前原誠司元外相らがいる。
自民党で茂木氏の能力を買い、最初に目をかけたのは、菅義偉前首相の「政治の師」である梶山静六元官房長官。梶山氏は、栃木県連としっくりいっていない茂木氏のため、地元に赴き、組織固めの会合に出席している。梶山氏が長官在任中、茂木氏以外で激励に行ったのは、菅氏や平沢勝栄前復興相くらいだ。また、茂木氏は、梶山氏が夏休みを利用して親しい議員と開催した北海道ゴルフツアーにも参加している。
しかし、98年の総裁選で梶山氏が旧小渕派を離脱し、小渕恵三元首相と対決すると、同派の方針に沿って小渕氏を支持。梶山氏や同氏を支持した菅氏と、たもとを分かった。茂木氏は小渕政権下、官房長官を務めた野中広務氏の薫陶を受け、第2次小泉内閣では当選3回ながら沖縄・北方担当相で初入閣。福田改造内閣では金融担当相で再入閣を果たした。
もっとも、茂木氏が、実力者として認知されるようになったのは、2012年12月に第2次安倍政権が発足してからだ。同年9月の総裁選で安倍晋三元首相は決選投票の末、石破茂元幹事長らを破り総裁に返り咲いたが、この時、茂木氏は石原伸晃元幹事長を支持した「負け組」。本来なら、当分は「冷や飯」を強いられるところだが、安倍政権でいきなり経済産業相に就任した。
組閣に当たり、官房長官に内定していた菅氏が「仕事ができる」と要職での起用を安倍氏に進言した結果とされる。以降、選対委員長、政調会長、経済再生相、外相を歴任。安倍政権で内閣、党の要職に起用され続けたのは、いずれのポストでも成果を残し、安倍氏に評価されたから。菅政権、岸田政権でも外相を続投。甘利氏の辞任に伴い、党ナンバー2の幹事長となった。
この間、茂木氏は所属する旧竹下派で会長代行にも就任。安倍、石破両氏の一騎打ちとなった18年の総裁選では、引退後も同派に影響力を残す青木幹雄元参院議員会長の意向で、参院側の多くや衆院の一部が石破氏を支持したのに対し、茂木氏は安倍氏を支持。これも含めた一連の経緯から、安倍氏、菅氏、麻生太郎副総裁ら重鎮との関係が良好なのも強みだ。岸田首相が茂木氏を幹事長に据えたのは、総裁選で支持を得た同派に人事で配慮し、政権の安定化を図る狙いがあるのは間違いない。茂木氏は、岸田政権と距離を置く菅氏とのパイプ役も担うことになろう。
実務能力などに優れ、党内重鎮から評価される一方で、弱点とされるのが目下の人との付き合いだ。茂木氏に仕えたある官僚によると、短時間で次々と仕事をこなす能力があるがゆえ、レクの際には、ポイントを簡潔に説明し、質問されたら、即座に手短に答えるのが鉄則。集中して資料を読み込んでいる時に不用意に音を立てて「静かにしてください」と厳しく注意されたこともあったという。ある役所では、「大臣レクで質問された場合、3秒以内に答え始め、説明は簡潔で短く。原則5秒以内で終えること」などと注意を促すメールが流れたこともある。茂木氏は朝が弱いため、閣議後会見前の朝のレクで、ナーバスになりがちだったという。
また、若手議員の面倒を見ることを課題に挙げる声もある。実際、旧竹下派内で、茂木氏の腹心、側近として党内で広く認知される議員は聞かない。次なる高みを目指すなら、シンパの議員を増やして派内を固めることが必要だろう。
もっとも、クレバーな茂木氏だけに、自身の評判も耳にしているようで、ソフト路線に「自己改造中」との指摘がもっぱら。以前と比べると、感情を表に出すことが少なくなったという。旧竹下派を創設した竹下登元首相は「汗は自分でかきましょう。手柄は人に譲りましょう」が口癖で、気配りの人で知られた。いつもニコニコしていて、声を荒らげることもなく「最近怒ったのはいつですか」と聞かれ、「かれこれ40〜50年は怒ってないわな」と笑いながら答えることもあった。改造のお手本は、派の創設者かもしれない。
衆院選をまずは乗り切った岸田首相にとって、次なるハードルは来年夏の参院選。これも無事越えれば、最長で3年間国政選挙はなく、少なくとも総裁任期の24年9月までの長期政権が視野に入る。そのためには、衆院選で約束したことの着実な実行が必要。新型コロナウイルス対策に万全を期すとともに、成長の果実を末端まで届け、所得を増やすことが欠かせない。
とは言え、岸田首相が唱えた「成長と分配の好循環」は、歴代政権が目指しながら成しえなかったことだ。参院選までの9カ月弱の間に、一定の成果を示せなければ、逆風が吹きかねない。橋本龍太郎元首相や第1次政権の安倍氏のように、参院選で敗北し退陣した例もある。
当然、参院選で敗れれば、選挙の責任者である茂木幹事長の責任は免れない。その意味では、茂木氏は岸田首相と運命共同体だ。政権を支え続けることで、次のステップにつながる。重要閣僚を歴任した経験を生かし、政策面でも成果を上げることを迫られている。安倍、菅両政権で菅氏が主に担ったように、公明党との関係を強化し、政策調整を円滑に進めることも課題と言えそうだ。
●コロナ対策「一律給付」はやはり高所得者の丸儲け 11/8
11月10日にも特別国会が招集され、第2次岸田文雄内閣が発足する見込みである。第2次岸田内閣の最初の仕事は、経済対策の取りまとめとなろう。経済対策については、岸田首相が自民党総裁選時に数十兆円規模の経済対策を策定することを掲げていた。ちなみに、衆議院選挙時に、自民党が出した選挙公約には、「数十兆円規模の経済対策」とは一言も盛り込まれていなかった。経済対策には、追加の新型コロナ対策や、Go Toキャンペーンの再開、個人や企業を対象とした給付、ポストコロナを見据えた経済刺激策などが盛り込まれると予想されている。
公明党が掲げた子育て世帯への一律給付
個人向けの給付として、衆院選時に、公明党は18歳以下の子どもに1人10万円の一律給付を公約に掲げていた。一律の給付では、高所得世帯の子どもにも給付することとなり、予算がかさむ割には所得格差を助長することになるとして批判がある。
これに対して、所得制限を付けて給付するとしても、所得制限以下なのか否かを行政が見極めなければならず、給付事務が繁雑になるという難点がある。
そこで、ひとまず一律で給付した後で、高所得者ならば所得税として課税すれば、低所得者は給付を受けたままにしつつ、高所得者には課税する形で返してもらえるから、所得格差は是正できるという考え方がある。
はたして、一律に給付した後に課税することが、わが国でできるだろうか。
確かに、給付金を課税対象とする仕組みは、わが国にもある。例えば、コロナ禍においても、収入が減少した事業者に対して1事業者に最大200万円を支給した持続化給付金や、休業要請に応じた事業者に対して支給された休業要請協力金は、課税対象となっている。これらを受け取った事業者は、納める所得税を計算する際に、これらの給付額を所得に算入しなければならない。
だから、「給付金を課税対象にすることは可能である」と思ってしまう人も多いだろう。
しかし、税制や税務を深く知っていれば、なぜ持続化給付金や休業要請協力金なら課税対象にできるかが理解できる。これらの給付金が課税対象にできる理由は、受給した個人はほぼ、確定申告するからである。
具体的に言えば、課税対象としたこれらの給付金は、大半を事業所得や雑所得として得ている人に配られたのであって、給与所得しか得ていない人には配られていない。給与所得しか得ていない人の大半は、確定申告をせず、所得税を源泉徴収されて納税が済んでいる。
確定申告をする人を前提とした給付金であれば、給付金の受け取りをきちんと経理したうえで、納める所得税の額を算出して、書類を税務署に提出する。だから、給付金を課税対象にできる。
しかし、所得税を源泉徴収されて確定申告しない人に、給付金を配って、それを課税対象とすることは、実務的に極めて困難である。
もちろん、源泉徴収で納税が済んでいる人にも確定申告を求めれば、給付金を課税対象にできる。しかし、給付金をもらうために、これまで源泉徴収で済んでいた人に確定申告を求めれば、多くの人にとって面倒極まりないこととなる。加えて、わが国の税務署の今の態勢では、多くの納税者に確定申告を求めれば、税務署の業務がパンクする。電子納税が進んでいるとはいえ、確定申告の内容を確認するのは人である。
年末調整では対応できないか?
では、源泉徴収される人には年末調整で対応するというのはどうだろうか。
そもそも、給付金を受け取るには、受給申請をしなければならない。つまり、対象者全員に自動的に支給されるわけではない。そのうえ、確定申告しない人は、多くの場合、勤務先で年末調整をして、年間の所得税額を確定させる。その際に、勤務先に自らが給付金を受け取ったことを示す書類を提出しなければ、給付金を課税対象に含めることはできない。
申請なしに自動的に給付されるならば、対象者は全員給付を受けているはずだと見なして、年末調整に該当者の給付金を課税対象として計算すれば簡便に作業が済むものの、給付金は受給申請しなければもらえないから、給付金を対象者全員が受け取ったと見なすわけにはいかない。年末調整の作業は、勤務先での経理担当の負担によって成り立っているわけで、給付金を課税対象にすることによって、その作業負担を過重にするわけにもいかないだろう。
このように、源泉徴収が広く定着しているわが国において、給付金を課税対象とすることは、実務的に極めて困難なのである。
加えて、18歳以下の子どもに一律給付といった場合、その給付は誰の所得と見なすのか。この給付金を課税対象とするなら、そうした問題も生じる。
結局、このような仕組みの繁雑さから、給付金を課税対象にしないことにすると、一律の給付は高所得者もそのまま受け取ってしまうことになり、所得格差を助長する。
児童手当の仕組みを使うべきだ
やはり、所得格差を助長しないようにするには、給付を入り口の段階で一律ではなく所得制限を付けるしかない。特に、子どもへの給付となれば、現行制度として、児童手当がすでに存在する。児童手当の仕組みを使えば、所得制限を付けて子どもを対象として給付ができるし、児童手当の受給申請がすでに済んでいるから、追加して手続きする必要なく受け取れる。
子どもへの追加給付ということなら、児童手当の臨時増額をすれば目的は十分に達成できる。所得制限のある児童手当の臨時増額ならば、追加の手続きが不要なのに、わざわざ一律給付にするために追加的な受給申請が必要というのは、何とも皮肉なことである。
わが国は、デジタル化が進む前から源泉徴収という簡便な仕組みを普及させてきた。デジタル化を進めるために、納税手続きや受給申請などでも、利便性を高める必要がある。ただ、デジタル化をさらに進めるにあたり、源泉徴収という仕組みをなくす必要があるのかについては、さらなる国民的議論が必要だ。 
 
 
 
 
 

 

●衆院予算委員長に根本氏起用で調整進む 自民、特別国会で決定 11/9
衆院解散・総選挙を受けた国会の委員長人事を巡り、衆院予算委員長に根本匠元厚生労働相(70)=福島2区=を充てる方向で自民党内の調整が進められていることが8日、分かった。国会の委員長人事は、10日に召集される特別国会で決定する。
予算委員会は国会論戦の主な舞台となることから、委員長は閣僚経験者が担う花形ポストの一つ。委員長には議事を整理する権限があり、首相や閣僚の答弁に不服があれば再答弁を要求することもできる。テレビ中継が入ることも多く、公平公正な議事さばきが注目される役職でもある。
根本氏は当選9回で、復興相や厚労相、衆院東日本大震災復興特別委員長などを歴任した。岸田文雄首相が率いる岸田派事務総長を務め、首相との関係が深い。充実した予算審議は政策実現の要となることから、根本氏の調整能力を期待して委員長への起用案が出ているとみられる。
●第2次岸田内閣、10日に発足 特別国会召集、首相指名へ 11/9
衆院選を受けた第206特別国会は10日召集される。岸田文雄首相(自民党総裁)は衆参両院での首相指名選挙で第101代首相に選出。首相は直ちに組閣に着手し、皇居での首相任命式と閣僚認証式を経て自民、公明両党連立の第2次岸田内閣が発足する。夜には記者会見に臨み、新型コロナウイルス対応や格差是正を含む財政支出30兆円超とされる経済対策を巡り説明する見通し。自民党は9日、衆院の常任委員長人事を内定し、政権の陣容が固まった。
与党は衆院選で国会運営を主導できる絶対安定多数を確保した。首相は19日の経済対策決定と、21年度補正予算案の編成に全力を挙げる意向だ。
●維新が科学技術特別委の廃止など提案へ 統廃合主導 11/9
衆院特別委員会の統廃合を目指している日本維新の会が、次の臨時国会に向け、委員長ポストを獲得した科学技術・イノベーション推進特別委の廃止や改変などを提案することが9日、分かった。自ら身を切る姿勢を示す狙いがある。複数の党関係者が明らかにした。
与野党は同日の会合で、10日召集、12日閉会の特別国会では現行の9つの特別委を設置することで合意した。野党からは立憲民主党に沖縄および北方問題に関する特別委、維新に科学技術・イノベーション推進特別委の委員長ポストがそれぞれ割り当てられた。
ただ、維新は統廃合に強いこだわりを見せており、臨時国会に向けて科学技術・イノベーション推進特別委の廃止・改変などを提案する方針だ。
出席した立民の小川淳也衆院議員は、統廃合について記者団に「新たに発足する議院運営委員会で協議し、近々何らかの結論を得ようという方向感での合意となっている」と説明した。
●憲法議論活性化で一致 歳費法改正案、共同提出へ 維・国 11/9
日本維新の会と国民民主党は9日、国会内で初の幹事長・国対委員長会談を開き、憲法議論の活性化へ連携していくことで一致した。
両党は憲法改正論議に前向きで、衆参両院の憲法審査会の定例日開催を与党側に求めることも確認した。
会談は、10日召集の特別国会を前に維新側が呼び掛けた。両党は年内に召集される臨時国会に、新型コロナウイルス感染拡大を受けて実施していた国会議員歳費2割削減のための歳費法改正案を共同提出することでも合意。今後も必要に応じて幹事長・国対委員長会談を開催することも申し合わせた。 
●安倍元総理 最大派閥「細田派」次期会長へ 11/9
安倍元総理大臣が、自民党の最大派閥「細田派」の次期会長に就任する見通しとなりました。
9日、自民党議員87人が所属し、党内の最大派閥である細田派の会合が開かれました。派閥の会長を7年間務めた細田元官房長官が、10日に開会する特別国会で衆議院議長に選出される見通しで、会合では、後任の会長に安倍元総理を推すことを全会一致で決めました。
自民党細田派・西村事務総長「細田会長から後任の会長人事について、10年近く総理をされていた、そして長年清和会でも活動されてこられたということで、安倍(元)総理を会長に、是非なってもらいたいというお話がございまして」
10日、安倍元総理に就任を依頼し、安倍氏が了承すれば11日に正式に「安倍派」が発足する見通しです。
●自民 細田派 安倍元首相への派閥復帰と会長就任要請を確認  11/9
自民党細田派は、細田元幹事長が新しい衆議院議長に選出されるのに伴って派閥の会長を退くことから、安倍元総理大臣に、派閥への復帰と後任の会長への就任を要請することを確認しました。
自民党最大派閥の細田派は、9日夕方、党本部で幹部らが会合を開きました。
この中で、会長を務める細田元幹事長は、10日召集される特別国会で新しい衆議院議長に選出されるのに伴って派閥の会長を退く意向を示しました。
そのうえで、みずからの後任について「現在は派閥を離れているが、長年、ともに活動してきた安倍元総理大臣が望ましい」と提案しました。
これに対し、出席者から異論は出ず、安倍氏の派閥への復帰と会長への就任を要請することを確認しました。
そして、10日幹部が安倍氏のもとを訪れ、本人の了解が得られれば、11日の派閥の総会で正式に安倍氏の会長就任を決めることになりました。
会合のあと、派閥の事務総長を務める西村前経済再生担当大臣は、記者団に対し「安倍氏には会長就任を受けていただけると期待している。さまざまな経験も生かしながら将来に備え、日本を引っ張っていく政策研究会でありたい」と述べました。
●岸田首相「成長を実現し中期的に財政も改善」経済財政諮問会議  11/9
政府の経済財政諮問会議で岸田総理大臣は、可処分所得の引き上げなどを通じて、経済を持続的な成長軌道に乗せるとともに、中期的に財政を改善させる考えを強調したうえで、政策課題に計画的に対応するため「財政単年度主義」の弊害の是正などに取り組む方針を示しました。
政府は9日、総理大臣官邸で、岸田政権の発足後初めてとなる経済財政諮問会議を開きました。
この中で、民間議員は新たな経済対策は経済の下支えと成長力の強化に十分な規模と内容にすることや、継続的に物価と賃金が上昇する環境にすることなどを求める提言を行いました。
これを受けて岸田総理大臣は「『成長と分配の好循環』に向けて、官民が協力して民間投資と可処分所得を引き上げ、経済を持続的な成長軌道に乗せていく。成長を実現し、中期的に財政もしっかり改善させていく」と強調しました。
そのうえで重要な政策課題に計画的に対応するため「財政単年度主義」の弊害の是正なども含め、制度や規制の改革に取り組む方針を示しました。
また、岸田総理大臣は新たな経済対策について「3回目のワクチン接種や医療体制をはじめ安心基盤を徹底して整備する。コロナで厳しい影響を受けた方々への万全の支援と、傷んだ経済の立て直しに全力を尽くし、国民の安心を確保する」と述べました。

●安倍元首相が怒り心頭! “天敵”林芳正氏の外相起用 11/9
いま頃、怒りまくっているのではないか――。岸田首相は10日、第2次岸田内閣のスタートに合わせて、林芳正元文科相(60)を外相に任命する方針だ。
林氏は防衛相や経済財政担当相、農相(2回)を歴任するなど、すでに閣僚経験5回。東大法―ハーバード大大学院という政界屈指の大秀才だ。現在、岸田派の座長、派内ナンバー2のポジションにいる。今回、当選5回を重ねた参院議員を辞職し、衆院山口3区から出馬して当選している。総理総裁を目指しているのは間違いない。
予想通り、林氏の外相起用に対し、安倍晋三元首相がカンカンになっている。週刊現代によると「党の反対を押し切って強引に鞍替えした人が、いきなりポストを得るのはおかしい」と文句をつけているそうだ。
もともと、安倍元首相と林氏は地元山口で親子2代にわたって対立してきた“天敵”同士。嫌いなヤツが外相就任でスポットライトを浴びるだけでも不愉快なのだろうが、このままでは林氏に選挙区を奪われかねないと危機感を強めているらしい。
「山口県内では“林総理”への期待が強く、安倍さんは“過去の人”になりつつあります。今回の選挙でも、安倍さんは地元に張りついてガムシャラに選挙運動をやったのに前回から2万票も減らしている。ややこしいのは、次期衆院選から山口県の選挙区は定数4から定数3に1減になることです。恐らく、林さんの山口3区と安倍さんの山口4区が統合され“新3区”になるはず。安倍VS林の公認争いが勃発するのは間違いない。もし、2人とも無所属になってガチンコで戦ったら林さんの方が強いと思う。次回、安倍さんは選挙区を手放さざるを得なくなる可能性があります」(政界関係者)
安倍元首相の怒りの矛先は、当然、岸田首相に向かっているはずだ。そのためか一時、林外相を断念し、小野寺五典元防衛相を外相に起用するプランも取り沙汰された。岸田首相は安倍元首相の怒りを十分承知しながら、林氏を外相に就ける判断をしたとみられている。
「どう考えても“林外相”は安倍さんを挑発していますよ。これまでも岸田さんは、<高市幹事長―萩生田官房長官>という安倍さんのリクエストを無視している。ああ見えて岸田さんは、政局に絶対の自信を持っている。なにか狙いがあるのかも知れませんね」(自民党事情通)
この先、キングメーカーを気取る安倍元首相がどう出てくるのか見ものだ。

●甘利落選は幸運だった…?岸田首相「持ってる男」説が漂うワケ 11/9
甘利明氏の「選挙区敗北」でまさかの幹事長交代……今回の衆院選で思わぬ異常事態に見舞われた岸田政権だが、トータルで見れば選挙は「勝利」と言っていい内容。「全体安定多数(261議席)」を自民党単独で確保した岸田首相に、「実は持っている男なんじゃないか」という評判が立ち始めている――。
今回の選挙で石原伸晃元幹事長、野田毅元自治相、平井卓也前デジタル相、桜田義孝元五輪担当相など閣僚経験者が続々小選挙区で落選したが、なかでも現職幹事長の小選挙区での落選は史上初。投開票日の夜、甘利氏は岸田文雄総理・総裁に辞任を申し出た。
客観的に見れば幹事長の落選は党の大失態。党首の責任問題に及んでもおかしくはないのだが、自民党内では「選挙によって、早いうちに甘利さんを切れたのは、ラッキーだったのでは」という声が聞こえてくるのだ。
「甘利幹事長はキングメーカーである安倍晋三、麻生太郎両氏と近く、『ウラ総理』『影の首相』と呼ばれ、岸田総理の人事に口を挟んでいました。政治家としての実力はあっても、『岸田政権は俺たちが牛耳ってやる』という野心がほとばしっていた。甘利さんの落選時こそ、岸田自民党の危機になると思われたが、選挙が終わってみれば、有権者は甘利さんの落選のことなどすぐに関心ごとではなくなった。予想よりはるかに早く『甘利ショック』が収束したので、『あの落選はむしろ政権にとっては幸運だったのでは』という評価になっています」(岸田派の中堅議員)
目下の懸念として挙がっているのは、環境大臣の山口壯氏の「スキャンダル報道」だという。
「山口大臣の秘書給与ピンハネ疑惑やパワハラ疑惑が相次いで報じられています。岸田政権としては早く火消しをしたいところだが、実は山口環境相も甘利氏のゴリ押しの結果、入閣した人物。万が一大臣を辞任するような事態になっても、一時的には混乱するだろうが、長い目で見ればプラスになるのでは、なんて声もあるほどです。甘利さんが失墜したことで、そのあたりの判断にも気を遣う必要がなくなった」(政治部記者)
内閣が「純化」されることで、岸田首相はこれから本当にやりたかったことに着手できる、と前出の岸田派中堅議員は言う、
「岸田派で財務官僚出身の木原誠二官房副長官は、緊急時は別としても基本的には財政拡張政策に否定的。アベノミクスを推進してきた甘利一派との間で『アベノミクスの出口戦略』の綱引きが続いていた。岸田政権の成り立ち上、アベノミクスの否定はご法度だったが、今後はタイミングを見計らい、大企業の内部留保資484兆円への課税や富裕層への課税強化を打ち出し、中間層に分配する。
安倍・菅政権では富裕層への恩恵策や貧困層への最低限の手当はあったが、中間層への支援は抜け落ちていた。中間層に恩恵を与え、所得を上げることで『岸田カラー』を出していく予定です」
岸田政権が安定感を増す一方で、野党第一党の立憲民主党には「お家芸」ともいえる内部争いが勃発している。
「これもまた、岸田さんにとっては幸運。野党がまとまらないなか特別国会は乗り切れそうで、来夏の参院選に向けて、ゆとりも生まれます。
岸田会長の持ち味である安定感は、平時のなかでこそ活きてくる。COP26で外交デビューとなったが、外務大臣を戦後最長の4年8か月務めた経験があるため、世界の首脳とファーストネームで会話でき、おどおどした様子もない。
以前のように会長にショートメールを送ってもすぐに返事はこなくなったが、岸田派内で、『会長は持ってる』『長期政権となるかも』と期待もあがっている」(同中堅議員)
今回の総選挙の結果を、米ニューヨーク・タイムズは「カリスマ不足で知られる岸田文雄総理を選んだにもかかわらず、自民党が勝利した」と報じた。
98年の就任時、支持率32%と人気のなかった小渕敬三総理は、米メディアから「冷めたピザほどの魅力しかない」と酷評された。しかし、その後小渕総理は金融危機を乗り越えるなど着実に成果を出し、人気を博した。ビートたけしは「冷めたピザ」と酷評された小渕総理のことを「海の家のラーメン屋」と評した。期待せずに食べてみたら思いの外、美味しかった、という意味だ。「岸田家のラーメン」はどのような味となるか。
●対中国包囲網での日本の役割 〜第2次岸田政権の今後の外交・安保政策 11/9
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月9日放送)に自由民主党・参議院の佐藤正久が出演。第2次岸田政権と今後の外交・安保政策について解説した。政府は衆議院議員選挙を受けた特別国会を11月10日に召集する。この特別国会では総理大臣の指名選挙が行われ、岸田総理大臣が再び指名される見通しで、第2次岸田内閣が発足する。
飯田)岸田内閣の今後について、外交・安保を中心に、自由民主党の参議院議員で自由民主党外交部会長である「ヒゲの隊長」こと、佐藤正久議員に伺います。
佐藤)おはようございます。
飯田)衆院選では、全国を飛び回って応援されていらっしゃいましたが、どうご覧になりましたか?
佐藤)いまは平時ではなく非常時なので、みんなが安定を求めたということが大きかったと思います。意外だったのは、前回よりも若い方が話を聞きに来ているという状況が散見されたことです。若い方はテレビや新聞よりも、ネット中心に情報を得ています。若い方は自民党に入れた方が多かったという調査も出ていますので、ネットを無視できない時代に来たのだと思います。
飯田)この先の話も含めて政策を訴えて来ましたが、若い人たちがその辺を重視しているという感じはありましたか?
佐藤)特に安全保障関係については、ネットやSNSの方がはっきり論調が出ますから、こういう部分は無視できないのかなと思います。
飯田)本格的に始動する岸田政権において、「外交はどうなって行くのだろう」というところです。中国シフトなのかどうかと言われますけれども、佐藤さんはどうご覧になっていますか?
佐藤)今後、対中国がメインになるのは間違いないと思います。自由主義陣営でいかに対中国包囲網的なものをつくれるかと。日米で役割分担が必要になるとは思いますけれども、よく言われるような、日米豪印のクアッド、あるいはG7の先進首脳国。それに加えてAUKUSという、イギリス、アメリカ、豪州の軍事的な枠組みもできました。そういうものを使いながら今度はTPP、あるいは自由で開かれたインド太平洋(FOIP)を上手く組み合わせつつ、包囲網をつくることが大事です。特にASEANが鍵になると思います。中国包囲網というと、ASEANは警戒感を持っておりますので、うまく色を出さないような形でジワリジワリと持って行くのが日本の立ち位置としては重要だと思います。
飯田)色を出さないというのは、自由や法の支配など、価値観を前面に出すということですか?
佐藤)そうですね。アメリカは明確に「自由で開かれたインド太平洋」を「対中国」と言っていますし、もともとTPPも対中国としてつくったものです。だからアメリカはそう言っていいと思いますが、日本はあえてそう言わなくても何となくわかりますし、ASEANをこちら側に引き込む仲介役という観点では、あまり軍事的な色を出さずにうまく引っ張り込んで、結果的に対中包囲網をつくれればいいと思います。
飯田)スタジオには有本香さんもいらっしゃいます。
ジャーナリスト・有本香)外交部会長は引き続き、佐藤さんがおやりになるという理解でいいですか?
佐藤)きょう(11月9日)の総務会で決まるようですけれども。(編集部注:11月9日の自民党総務会により、佐藤正久氏の外交部会長継続が決定)
有本)対中包囲網的なものは、第2次安倍政権がスタートしたときから継続してやって来たことだと思いますけれども、外務大臣が林芳正さんに変わります。ネット上では、「かなり中国寄りなのではないか」と懸念されていますが。
佐藤)議連の会長ですからね。
有本)日中友好議連の会長です。お話ししにくいかも知れませんが、どのようにお感じでしょうか?
佐藤)心配には及ばないと思います。全体的に外交は外務省だけではなく、官邸中心にやるという色合いも強いですし、安倍政権のとき以上に党が強くなると思います。前の外務大臣が幹事長になりましたし、高市政調会長も政策中心で、総裁選挙や総選挙でも、あのような主張をされていましたので、いままでより党が強くなります。自民党の方も対中政策については、国益を中心に考えて行く。特に価値観に関して、譲ってはいけない部分であります。人権問題担当補佐官に中谷先生が内定されたようですから、いろいろな面で外務省単独では動きにくい環境だと思います。オールキャストで対応して行くことが大事だと思います。
有本)台湾海峡の緊張感が非常に高まっていて、台湾は防空識別圏に中国軍機が入って来ても、対応すらできていない状況になっています。フランスの議員団が台湾を訪れたりしていますけれども、近い将来は一触即発の事態も考えられると思います。台湾と中国における在留邦人の退避について、日本は現実的な対応を取れる状況でしょうか?
佐藤)これからだと思います。韓国からの邦人退避についても、韓国とほとんど調整がとれていない状況です。ましてや台湾とは国交がありませんので、これからの課題になりますし、中国本土になるともっとハードルが高くなります。まさにこれからの大きな課題です。有本さんが言われたように、台湾海峡の安定は日本の経済安全保障にも、エネルギー安全保障にも直結する問題ですし、地政学的にも距離が近いですから、「台湾有事は日本有事」と考えた方が素直だと思います。台湾の方々の意識も段々高まっています。
飯田)台湾の人たちも。
佐藤)先日、中国の軍用機が台湾の防空識別圏にたくさん来ましたよね。あそこを抜けてバシー海峡の方まで行っているのです。そこでは日本を含めた6ヵ国の海軍の軍事訓練が行われていました。それに対する威嚇・偵察という部分もあったのでしょう。1ヵ国ではなく、欧州まで入れた多国間で中国に向き合うということを、中国は嫌がっているのです。ですから、そういう形をつくるのが経済面でも、安全保障面でも、台湾海峡の安定には大事だと思います。ヨーロッパを巻き込むと同時に、微妙な立ち位置にいるASEANをどうするかということが鍵になると思います。
飯田)岸田政権で国家安全保障戦略の改定が言われていますけれども、中国に対しての踏み込み、あるいは敵基地攻撃能力等々も盛り込まれるのではないかと、11月9日の新聞などでは報道されています。どうお考えですか?
佐藤)避けては通れないと思います。これだけ総裁選挙や総選挙でも言われていますから、その辺りには踏み込まなければいけないと思います。そのときは公明党との調整が1つの鍵となりますので、来年(2022年)の12月につくるというのであれば、1年間かけて公明党との調整が必要になると思います。敵基地攻撃能力は北朝鮮だけではなく、対中国を考えた場合も極めて大事で、ミサイルの数あるいは射程範囲を考えれば、北朝鮮よりも圧倒的に中国ですから。
有本)比ではないですよね。
佐藤)地上のミサイルだけでも2000発以上が日本を射程に収めています。これは地上発射式なので、弾数が半端ないのです。船や航空機から撃つのではなく、地上から撃つものが2000基以上ありますから、アメリカでも対応できません。第一列島線のどこかに地上発射式のミサイルを置けないのかという指摘がよく出ますが、そういうことなのですよ。地上には地上でないと抑止が効かないということです。
飯田)最終的には憲法問題にまで入って来ることになるかも知れませんが、その辺も含めて、これから積極的にやって行くということですか?
佐藤)先制攻撃でなければ憲法問題にはなりませんから。少なくとも総理が言われるような反撃という範疇であれば、敵の基地を叩いても憲法問題には抵触しない可能性は高いです。
有本)自衛権の行使だということですね。
飯田)座して死を待つというものではないわけですよね。
●安倍氏と菅氏“敵の敵は味方”タッグ結成なら「高市早苗総理」誕生も 11/9
キングメーカーの安倍晋三・元首相は総選挙で岸田文雄首相を十分脅かせる「数の力」を維持した。自民党の善戦で安倍チルドレンの多くが生き残り、「魔の3回生」も9割が4回生となった。そしていよいよ悲願だった最大派閥・細田派の会長に就任し、名実ともに「安倍派」へと衣替えさせる日が近づいている。11月10日に召集される特別国会で、細田派会長の細田博之氏が衆院議長に就任することが内定し、派閥の代替わりのチャンスが来た。
議長は政治的中立を保つために離党するのが国会の慣例で、同時に派閥を離脱する。前衆院議長の大島理森氏も議長就任時に大島派会長を退任し、山東派(現在は麻生派に吸収合併)に衣替えした。
実は、安倍氏には簡単には会長を継げない事情があった。政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。
「安倍氏は最初の首相就任時に清和研を離脱して以来、派閥に戻らなかった。2012年の総裁選では派閥から止められながら出馬して当時の清和研会長だった町村信孝氏と争い、首相に返り咲いても意趣返しで官房長官に無派閥の菅義偉氏を起用するなど細田派を重用しなかった。だから派内のベテラン組には安倍氏の派閥会長就任に強いアレルギーがある」
そこで安倍氏は今回の総選挙で細田派候補の選挙区を重点的に応援に回り、恩を売って会長就任に向けた地ならしをしてきた。総仕上げが、細田氏を議長に祭りあげて会長の座を空けさせる人事だ。細田派中堅は、「細田議長就任後に開かれる派閥総会で安倍さんの復帰と会長就任が正式に承認される見通し」と言う。
そうなれば、安倍氏は最大派閥の領袖としての発言力と、派閥横断的な安倍チルドレン勢力への影響力という2つの「数の力」を持つ。「大安倍派」の誕生だ。
今の安倍氏は「大田中派」を率いて“闇将軍”と呼ばれた田中角栄氏と重なると指摘するのは、角栄氏の番記者だったジャーナリストの田中良紹氏だ。
「田中角栄は最大派閥の力で鈴木善幸、中曽根康弘を次々に首相に担ぎ上げたが、キングメーカーに甘んじるのではなく、自らの総理復帰を念頭に置いていた。だから総理は“ボロ神輿”で力が弱いほうがいいし、派内にも後継者、総裁候補をつくらなかった。
安倍氏も同じだ。9月の総裁選には細田派から安倍氏と近い下村博文氏が出馬に動いたが、協力しなかったばかりか、無派閥の高市早苗氏を担ぎ出した。派内から総裁候補が出る動きを挫くのは自身3度目の首相登板を考えているからでしょう」
だが、かつての角栄氏は田中派が141人と勢力最大になった途端、竹下登氏と金丸信氏に派内クーデターを起こされて病に倒れ、時の中曽根首相は角栄氏の影響下から独立した。
安倍氏の誤算も、“傀儡”にするはずだった岸田文雄・首相が本気で独り立ちに向けて動き出したことだ。
「岸田首相が人事で甘利明氏や麻生派を重視してきたのは、岸田派、麻生派、谷垣グループが1つになる大宏池会構想で最大派閥の細田派に対抗し、安倍氏の力を削ぎたいという考えがある。
今回の茂木敏充氏の幹事長起用も旧竹下派を味方に取り込むためです。安倍氏には、そうした岸田首相の行動がかつて“総理にしてくれた恩人”の角栄排除に動いた中曽根と重なって見えるから一層不信感と警戒感を強めている」(同前)
安倍側近として知られる青山繁晴・自民党参院議員は、岸田首相と安倍氏の抗争の舞台裏をこう語る。
「大宏池会構想というものがあって、岸田派と麻生派と谷垣グループを統合し、大きな大宏池会にして、安倍さんや細田さんの派閥よりはるか上に行ってしまおうというものです。そういう派閥次元のことを岸田さんも考えていると党内で言われていて、それで宏池会の中心人物である林芳正さんを外務大臣に持って来ると。
しかし、そうすると総理も外務大臣もすべて大宏池会に向かっての動きになるから、派閥抗争につながるわけです。とくに安倍さんは黙っていないですよね」
安倍氏が「数の力」を強めれば、岸田首相も総選挙で善戦したことで党内求心力が強まる。選挙が終わると同時に起きた岸田VS安倍の“見えざる戦争”は今、天秤がどちらに傾くかの均衡点にあるといっていい。
注目されるのは、安倍氏が「切り札」の高市氏をどのタイミングで使うかだろう。
「総選挙で思いのほか議席を得た岸田首相の力はこれからそれなりに強くなる。時間を置けば安倍氏は次第に押しやられ、不利になっていく。
政治スケジュールを見ると、来年夏には参院選がある。総選挙で善戦したとはいえ、自民党内は現職幹事長だった甘利氏を落選させた岸田首相が選挙に強いとは思っていないから、安倍氏が高市氏を担いで“岸田降ろし”を仕掛けるなら参院選前のタイミングでしょう」(前出・田中氏)
一方の岸田首相には大きな不安要因がある。新たな敵の出現だ。今回の総選挙では9月の自民党総裁選で“再起不能”に追い込まれたはずの菅前首相をはじめ、河野太郎氏、小泉進次郎氏、石破茂氏の「小石河トリオ」が全国を応援に回り、高市氏と並ぶ存在感を発揮した。“オレたちはまだ終わっていない”と反主流派が復権の糸口をつかんだ。
これまでは安倍氏との権力闘争に全力を傾けることができた岸田首相だが、参院選を前に安倍―高市の“岸田降ろし”に連動して小石河が反岸田で動けば、腹背に敵を受けることになる。岸田VS安倍の権力闘争の最終場面では、この第3勢力の動きが鍵を握ることになる。
ポイントは自民党内の権力バランスが総裁選当時と完全に変わっていることだ。
「小石河連合を数の力で打ち破った3Aトリオのうち甘利氏は失脚、大宏池会構想の提唱者の麻生太郎氏は岸田首相を支持しており、いまや3A体制は崩壊して敵味方に割れている。そこに岸田降ろしが起きたとき、菅氏や河野氏らが岸田首相側につくとは考えられない」(同前)
反主流派のキーマンの菅氏にとって一番の政敵は政治手腕を全く評価していない岸田首相だ。3Aは自分を政権から引きずり降ろした敵ではあるが、もともと麻生氏や甘利氏とは肌が合わなかったのに対して、安倍氏は自分を官房長官、首相へと引き立ててくれた恩人でもある。
3A体制が崩壊したことで、今度は安倍氏と菅氏が“敵の敵は味方”と手を組めば、まさかの来年6月政変、高市総理誕生のウルトラCもありうる。
●岸田首相、“親中”林外相起用で習氏の「国賓」来日再燃も!? 11/9
岸田文雄首相は、茂木敏充前外相の自民党幹事長就任に伴う新外相に林芳正元文科相を起用する方針だ。林氏は、防衛相や農水相を歴任した政策通だが、政界屈指の「親中派」であり、超党派の日中友好議員連盟会長を務める。自由主義諸国が、中国の軍事的覇権拡大や人権問題を警戒・対峙(たいじ)するなか、日本に「親中派」外相が登場するのは、国内外に間違ったメッセージを与えないか。党内にも「中国に近すぎる」との懸念がある。岸田政権はまさか、習近平国家主席の「国賓」来日を進めるつもりなのか。
「林氏は日中友好議連会長で、(中国の巨大経済圏構想)『一帯一路』への支持を明確にするなど、中国にとっては“特別な人”だ。ウイグル人権非難決議でも毅然(きぜん)とした態度がとれるとは思えない。中国からすれば、『どうにでもなる人』とみているのではないか。岸田首相はこの人事で、中国に『私たちは貴国と仲良くやっていきます』というメッセージを送った。習主席の『国賓』来日は進みかねないが、中国が最も嫌がる憲法改正は期待できない」ジャーナリストの門田隆将氏は、こう語った。
岸田首相は2日、英北部グラスゴーで、ジョー・バイデン米大統領と直接会って短時間会談した。両首脳は日米同盟をさらに強化し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け緊密に連携していくことを確認した。
この背後で、岸田首相は林氏の外相就任を検討していた。党内から異論が出たため、自身が「外相を兼務」して調整を進め、起用を内定したという。
林氏は、政策通で、岸田派でナンバー2の座長を務める。米政界に太いパイプを持つ一方、父の義郎元蔵相とともに、親子2代で日中友好議連会長を務めるなど、党内屈指の「親中派」として知られる。
その対中姿勢は、月刊誌「文芸春秋」11月号の「次の総理はこの私」というインタビューにも表れている。林氏は、評論家の宮崎哲弥氏に「脱中国の強硬姿勢を支持する人が多いですが」と聞かれ、こう答えている。
「単純な強硬姿勢だけでは巧くいかないでしょう。日本と中国の経済は切っても切れないほど絡み合っており、『明日から日中貿易をゼロにします』というわけにはいきません」
「科学技術分野においても中国の成長は無視できない」「研究開発やイノベーションの進歩には、自由で民主的な体制・環境が不可欠だと言われてきました。ところが中国のような専制国家であっても、科学技術が発展することが証明されたのです」
中国は、サイバー空間などでの情報収集に加え、海外の企業や大学の優秀な研究者を集めるプロジェクト「千人計画」などを実行してきた。米国防総省は2018年6月、米下院軍事委員会の公聴会で、「千人計画」について「米国などの知的財産を獲得する(=盗み出す)ことにある」と警告している。
林氏は先のインタビューで、「千人計画」などには言及していない。
欧米などの自由主義諸国は、中国の軍事的覇権拡大を厳重警戒しているうえ、中国当局によるウイグルでの人権侵害を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」だと非難している。来年2月の北京冬季五輪についても、「外交的ボイコット」を主張する声がある。
習氏は「台湾統一」をあきらめておらず、台湾の防空識別圏(ADIZ)に多数の軍用機を進入させている。「台湾有事」は「沖縄有事」「日本有事」に直結する。沖縄県・尖閣諸島周辺海域にも、海警局船が連日のように侵入している。
林氏は8日夜、BSフジの番組「LIVE プライムニュース」に出演した。中国の人権問題について、「どう考えても深刻に懸念すべき問題だ。中国でも基本的人権が保障されないといけない」と強調した。
さらに、林氏の外相就任に自民党内で「中国に寄り過ぎるのではないか」という懸念があるとの指摘に対し、林氏は「『知中派』はあってもいい。『媚中』ではいけない。交渉するうえで、相手をよく知っているのは知らないよりはいい」と主張した。
習氏の「国賓」来日について、今年4月に公表された2021年版の「外交青書」では、「日程調整をする段階にはない」と記述されている。だが、日中は来年、1972年の日中共同声明から50年の節目を迎える。
このタイミングで、岸田首相が「親中派」外相の起用をする「真意」は何なのか。岸田外交は大丈夫なのか。
政治評論家の屋山太郎氏は「林氏は、文芸春秋のインタビューで、『一般的な貿易と経済安全保障の線引きが重要になってきます』と語っていたが、これまで失敗してきた親中派政治家と同じ発言だ。(厳しい安全保障環境で)やわな気持ちでは外相は務まらない。茂木氏の幹事長起用から、外相人事に時間を要したのは安倍晋三元首相や麻生太郎副総裁らの懸念があったからではないか。岸田政権は現時点で支持率が高いが、今回の人事は国民の失望感を強め、支持率を悪化させるおそれもある」と語った。
●「人権問題補佐官」創設で期待される「脱・人権軽視国ニッポン」 11/9
11月10日に第2次岸田内閣が組閣されるのに合わせて、官邸は新たに「人権問題担当の総理大臣補佐官」ポストを作ることになった。初代補佐官には元防衛相の中谷元氏が予定されている。岸田政権が中谷氏を「人権問題担当補佐官」に起用するということは、日本政府が対中国を念頭に強硬姿勢に転じる、少なくともその姿勢をアピールするという大きな意味を持つ。中谷氏は自民党内の対中国強硬派の有力議員の一人で、超党派の「対中政策に関する国会議員連盟(JPAC)」の共同議長を務めている。JPACは2020年7月に中国政府による「香港弾圧」に抗議するために発足した議員グループで、香港弾圧やウイグル人弾圧など重大な国際人権法違反を「特定人権侵害問題」と位置づけ、国会で「特定人権侵害問題対処法」(通称「日本版マグニツキー法」)の成立を目指す。国際的な政治家グループ「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」とも連携している。JPACは中谷氏と当時、国民民主党議員だった山尾志桜里氏が共同議長で牽引してきたが、国会内で主導権をとれるほどの勢力ではなかった。2021年6月には中国の人権弾圧を非難する国会決議の採択も見送られている。
日本だけが「弱腰」だった対中国の裏側
日本政府は安倍政権時に、対中国経済安全保障を念頭に「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を打ち出したことで強く中国に対処しているとのイメージが一部にあるようだが、実際には香港やウイグルの人権問題で欧米諸国が非難声明や制裁などを出した際にも、しばしば参加を見送ってきた。中国を刺激したくなかったからだ。中国を刺激したくないのは、もちろん経済的な不利益に対する懸念があるからで、そうした声の中心は経済界である。さらに外務省(有力OB含む)、二階俊博元幹事長ら自民党内の有力議員、公明党らも中国に対しては彼らなりの国益の観点から、比較的融和路線を志向していた。安倍政権も、新型コロナの流行で直前に延期決定するまで、習近平の2020年4月の国賓招聘を予定していたほどだ。しかし、中国はとくに2014年以降、習近平政権が軍事力増強、強引な対外進出、国内の人権侵害を急速に進めており、近年さらに加速している。それを受けて米英が対中国強硬路線を進めてきたが、さらに2021年夏以降、EUも対中国強硬路線に転じている。西側有力国で日本だけが、中国に対して「腰が引けている」状況になっていた。だが、とくに米バイデン政権やEU諸国が人権問題をクローズアップするなか、日本だけスルーし続けるわけにもいかない。そうした国際的な環境での今回の岸田首相の決断は歓迎できる。
「人権問題補佐官」に寄せる期待
その背景には、自民党内で対中国強硬派の意見が強まっていたこともある。たとえば今回の衆議院選挙公約でも、日本政府がこれまで避けてきた「中国を名指ししての非難」がしっかり明記されている。今後、人権問題担当補佐官の創設が名前倒れにならないよう、大いに期待したい。人権問題担当補佐官の創設では、さらに期待したいことがある。中谷補佐官(予定)が中国の人権侵害を非難していくだろうことは歓迎できるが、世界にはそれ以外にも人権侵害を行っている国がいくつもある。それらの問題にも、ぜひ斬り込んでほしいのだ。じつは日本は、国際社会では「人権軽視国」といわれてもしかたのない国だ。対中国非難声明・制裁に後ろ向きだったことは前述したが、他にもロシア、ベラルーシ、ミャンマー、イランなどの人権問題でもそれは同様だった。西側主要国が連帯してこれらの国々の人権侵害を非難したり制裁したりする際にも、しばしば参加を見送ってきた。国際社会の大勢に同調して参加する場合も、目立たないように末端に名を連ねる程度で、対ロシアなどでは事実上制裁を骨抜きにするような動きもしてきた。近年、西側主要国はG7外相会合をこうした人権侵害非難の場に使うことが多く、日本の外相もG7外相声明に名を連ねているが、なるべく大事にしたくない意向なのは、日本国内での発表を、ほぼ外務省報道官談話だけで済ませていることからも伺える。外務省サイドとしては、そうした国に対しては、高圧的な態度で迫るよりも融和姿勢で臨んだほうが逆に効果が高いということだろうが、これまで実際には日本政府の融和姿勢がこれらの国の人権侵害緩和に結びついた例はない。こうした国々の施政者は自らの人権侵害を自覚しており、甘い態度は単に利用されるだけに終わっている。
戦後日本の「ことなかれ主義」
それでも日本が他国の人権問題に対して一貫して融和的な態度をとってきたのは、戦後日本の歴代政権が伝統的にとってきた対外的「ことなかれ主義」の延長ではないかと筆者は考えている。戦後日本は、米国の同盟国として安全保障を確保しつつも、主体的な政治的主張はひたすら控え、経済的な利益を優先してきた。政治小国として振舞い、経済成長後はODAばら撒きによって、他国とのトラブルを避ける。日本外交にとっての「良い外交」とは、諸外国から気に入られることで、相手が人権侵害国であっても例外ではない。それが日本外交の歴史的な「文化」になっているのだ。なにより日本政府のそうした姿勢は、海外に進出する日本企業にとってはありがたい。友好国の企業という立場であれば、現地でも商売がしやすい。外国の人権侵害は日本政府の責任ではないし、苦しむ現地の人々のことなど無視してしまえば、日本経済には好都合だ。
人権は「人類全体」の問題だ
しかし、人権問題は人類全体の問題である。国際社会がそれを問題視しているときに、日本だけ「見ないふり」をしていていいのだろうか。岸田政権の人権問題担当補佐官創設を機に、そうした世界全体での人権問題に積極的に関わっていくことはできないだろうか。そこで指摘しておきたいのは、外務省だけでなく政治の世界でも、一部の政治家にとくにミャンマーとロシアで、人権侵害政権との関係があることだ。たとえば対ミャンマー外交では、日本ミャンマー協会(会長・渡邉秀央元郵政相)や笹川平和財団/日本財団などが、ミャンマー問題とかねて深く関わってきた経緯がある。そのなかでもとくに、前者に関与する一部の自民党系政治家や日本企業は、ミャンマー軍事政権とも深い人脈がある。
日本政府・外務省はこれまで国際社会でも、主要国としては明らかに突出してミャンマー軍事政権に甘い対応をしてきているが、人権問題に関しては、他のG7諸国並みに毅然とした態度を望みたい。
「プーチンへの忖度」で領土は戻らない
対ロシアでも、これまで突出した融和路線でやってきた。とくに安倍晋三元首相の、プーチン大統領に対する長年の「親愛感アピール」は、国際社会でもかなり際立っていた。こうした日本の親ロシア姿勢の背景には、もちろん北方領土返還問題がある。領土交渉を進めるために、プーチン政権を刺激したくないという発想だ。しかし、そんな「対プーチン忖度」が、領土交渉に1ミリもプラスになっていないことは、これまでの経緯からも明らかだ。そもそも領土問題と人権問題は別の話であり、人権問題で日本だけが「見ないふり」をすることは、諸外国からどう評価されるかをよく考えるべきである。ベラルーシやシリアの人権問題でも、日本政府はきわめて消極的だが、それらを批判することは、黒幕であるプーチン批判に通じるためだろう。とにかく外交問題でプーチン大統領の機嫌を損ねないというのが、日本政府のこれまでの政策だったが、その方針転換こそ必要ではないかと思う。ただし、対ロシア外交においても、外務省や、安倍政権で対露融和政策を主導してきた官邸の経産省出身総理秘書官(当時)などだけでなく、これまでプーチン大統領を「信頼できる人物だ」と強く主張してきた森喜朗元首相や、鈴木宗男参議院議員(日本維新の会)など一部政治家の影響力は大きい。それになによりも、プーチン批判は親密な関係を誇示してきた安倍元首相に対する間接的な批判にもなり得るため、自民党議員にはそれなりに高いハードルでもある。
世界の自由と民主主義を守る政権に
しかし、プーチン政権はロシア国内で反体制派を弾圧するに留まらず、国外で反体制派を暗殺したり、ウクライナやシリア、リビアなどで直接的な弾圧・殺戮に加わったり、中国と組んでベネズエラのマドゥロ政権や北朝鮮の金正恩政権など世界中の人権侵害独裁国を実質的に外交支援したり、フェイク情報を拡散して欧米民主主義社会の分断を扇動したりするなど、世界の民主主義を破壊する行為を繰り返している。ロシアの人権問題をスルーすることは、大げさではなく、世界の自由と民主主義にダメージを与えることと同義だ。「人権問題担当補佐官」の創設が、真に日本政府の国際的人権問題への取り組みになるかどうかは、対中国だけでなく対ロシア外交でも人権問題を重視できるか否かで判断できるだろう。もちろん中谷補佐官ひとりで対ロシア政策の大きな転換はできないので、そこは岸田首相の決断に、強く期待したい。
●支持基盤離れも反省なき「立民」 目先の票欲しさの“野党共闘”は敗北 11/9
立憲民主党のサイトを開くと、「衆院選2021 選挙結果」の文字の下に「変えよう。」との大きな文字が記されている。思わず「結果は変わりませんよ」と呟いてしまった。
2日の執行役員会において、枝野幸男代表が遅ればせながら辞意を表明し、特別国会後に代表選が行われる見通しだ。「政権選択選挙」と位置づけながら、議席数を減らす結果となったのだから当然の話である。
枝野代表のあいさつを読むと肝心なことが一切語られていない。
「残念な結果」「ひとえに私の力不足」「大変申し訳なく思っている」との常套(じょうとう)句が繰り返されるが、なぜ、国民の支持を得られなかったのかについての分析や反省が一切見られなかった。
投開票日(10月31日)の記者会見の際には、野党共闘に関して、「一定の成果はあった」と述べた。だが、実際に敗北を喫している以上、説得力はない。
最大の支持組織である連合の芳野友子会長が1日の記者会見で、「連合の組合員の票が行き場を失った。受け入れられない」と批判したが、正鵠(せいこく)を射ている。元来、共産主義とは明確な一線を画してきた労働組合の会員にとって、自らが支持する政党が共産党と連携するなど、驚天動地の事態に他ならない。
立憲民主党の執行部は、目先の票欲しさに共産党と連携する道を模索したが、元来の支持層を失う結果となった。枝野氏は潔く「野党共闘の失敗」を認めるべきであった。
代表選では「野党共闘の是非」が論じられるであろうが、抜本的な見直しが図られるのかは疑わしい。立候補に関して前向きとされる小川淳也元総務政務官は野党共闘派とされる。
彼が世間の耳目を集めたのは、自らの選挙区に日本維新の会が候補者を擁立すると決定した際だ。約束もなしに維新の会の代議士会に押しかけ、野党候補の一本化を懇請したのである。野党共闘に参加していない日本維新の会に野党共闘を呼びかけることもおかしいが、私には「恥も外聞もなく、自らの当選のために動く政治家」という印象が強烈に残った。
小川氏は、報道ステーションのインタビュー(2日放送)に、次のように語っていた。
「自民党政権は長く続き、権力の私物化のような状況が目に余る。しかし、あなたたち野党も本当に私心なく、私利私欲なく国民のために無私の姿勢でやってるのかと。第一に、無私の姿勢…」
「無私の姿勢」とは、ほど遠い政治家に思えるのだが、私の解釈が誤っているのだろうか。立憲民主党は「共産党とは政策が異なる」と強調する。しかし、野党共闘は正しいと主張する。申し訳ないが、国家よりも自分の議席を優先しているようにしか思えない。
●報ステの解説が酷い!岸田首相「化石」演説 「火力ゼロエミ化」強調 11/9
「日本だけでなくアジア全体で、化石燃料と同様に水素とアンモニアを燃料としてゼロ・エミッション(排出ゼロ)化を推し進める」―イギリスのグラスゴー市で開催中の温暖化対策の国際会議COP26で、今月2日、岸田文雄首相は、温室効果ガス排出削減での日本の取り組みや国際社会での貢献をアピールした…のだが。岸田首相の演説は、温暖化対策に後ろ向きであるとして、国際NGO「気候行動ネットワーク」から不名誉な賞である「化石賞」に選ばれてしまった。その一方で、テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」は、岸田首相のCOP26での演説やその背景を解説。その内容がまた酷いものであった。
「火力のゼロエミ化」という詭弁を垂れ流し
温室効果ガスであるCO2を大量に排出してしまう火力発電。そのゼロ・エミッション化は、一見、良いことのように思える読者の方々もいるだろう。この「火力のゼロエミ化」を、報ステが取り上げ、テレ朝のYouTubeチャンネルにも、"「旗色が悪い印象?」COP26総理演説を記者解説(2021年11月2日)"として、動画を公開した。これらは、岸田首相の演説の言う「火力のゼロエミ化」について「火力発電した時に発生したCO2を回収して地中に埋めたり、燃やしてもCO2を排出しないアンモニアを石炭に混ぜて燃やすことで、発電所が排出するCO2を削減する取り組み」「地中に埋めることは、すでに取り組みを始めているが、アンモニアについては、実証実験の段階」と解説している。
だが、「気候行動ネットワーク」が見抜いたように、岸田首相の演説は欺瞞に満ちたものであった。火力発電所からのCO2を地中に埋めるCCS(二酸化炭素回収・貯留)は、まだ日本国内では技術が確立されておらず、世界的にも火力発電所からの排出に対応できるCCSの事例はない。報ステの解説では、日本政府がCCSについて「すでに取り組みを始めている」としていたが、控えめに言っても誤解を招く表現だ。石炭にアンモニアを混ぜての混焼も、多少減少するとは言え、CO2が大量に発生すること自体は変わらないのでゼロエミ(排出ゼロ)ではないし、仮に火力発電施設でアンモニアのみの専焼を行ったとしても、強力な温室効果ガスであるN2O(一酸化二窒素)が発生する。仮に、N20発生を抑える技術が確立したとしても、そもそもアンモニアを化石燃料からつくる際にCO2が発生する。再生可能エネルギーを使って生産した「グリーンアンモニア」を専焼するならともかく、石炭を混ぜたらゼロエミとは言えない。水素とLNG(液化天然ガス)の混焼については番組中では触れていなかったが、問題の構図は、N20発生以外はアンモニアと石炭の混焼とほぼ同じものだ。
脱石炭しない日本政府を擁護
「火力のゼロエミ」という欺瞞を代弁するだけにはとどまらず、ご丁寧にも、報ステは「日本が石炭火力発電からの脱却できない理由」まで、日本政府を擁護している。火力発電の中でも、特にCO2排出が多い石炭火力発電の全廃は、温暖化対策の中でも最優先に行われるべきことで、実際、COP26開催国イギリスのジョンソン首相も脱石炭声明を呼びかけ、今月3日の発表時点で、欧州各国や韓国、インドネシアなど46の国と、米国の一部の州等が賛同したが、日本はこれに加わっていない。
日本の脱石炭への後ろ向きぶりについて、上述の報ステの解説では、テレビ朝日政治部・官邸キャップの山本志門記者が「今後、地理的な制約を考えますと、一気に、再生可能エネルギーに舵を切るわけにはいかない」と、日本政府関係者の話として語った。この解説の中で「地理的な制約」とは何かは語られなかったが、これは、日本の再エネ普及が遅れていることへの弁明で経産省や大手電力等がよく使う詭弁である。つまり、「日本は平地の面積が狭く、太陽光パネルを置く場所がない」というものであるが、これは明らかな誤りだ。環境省の報告書(令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開等に関する委託業務報告書)によれば、農地と共存し耕作放棄地を活用する太陽光発電、いわゆるソーラーシェアリングは、理論上、日本の総電力需要に対応するポテンシャルがあるとされている。
それ以外にも陸上・洋上風力のポテンシャルも極めて大きい。再エネの不安定さも大規模蓄電施設や、余剰電力を活用したグリーン水素の生産とその活用で補える。「地理的な制約」どころか、日本は再生可能エネルギー大国になり得るのだ。むしろ、既存の化石燃料を使った火力発電施設に固執する大手電力やプラントメーカーへの配慮こそが、日本政府が石炭火力発電から脱却できない理由であろう。
人類存亡の危機とメディアの役割
政権の詭弁を見抜き批判するのが、本来、報道に求められているチェック機能なのであるが、報ステの解説は、政府の詭弁を拡散する「広報」になってしまっている。これらの論点について、筆者はテレ朝広報部に問い合わせた。だが、テレ朝側は「ご指摘の放送はいずれも取材に基づいた解説であり、個別のご質問には、回答は差し控えさせていただきます」とのFAXを送ってきただけだった。
今回の報ステの解説及び質問への回答には失望させられたが、筆者としてはテレ朝や報ステを叩くことは目的ではない。人類の存亡すらも左右しうる危機にまで発展しつつある地球温暖化(=気候危機)について、もっとまともな報道が増えてほしいだけである。問題ある報道は、テレ朝のみならず、他のキー局も「地理的な制約」だの、「火力発電の高効率化」だの、政府や大手電力の詭弁を、批判的分析もないままに垂れ流している。Yahoo!ニュースも、専門的視点を欠いたスポーツ紙の「こたつ記事」を掲載するなど、フェイク拡散に加担してしまっている。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)によれば、地球温暖化の破局的な影響を防ぐためには、あと10年以内に世界の温室効果ガスを半減させることが必要であり、温暖化対策は時間とのたたかいだ。メディア関係者の意識も変革が必要なのである。
 
 
 
 
 

 

●きょう特別国会召集 第2次岸田内閣発足へ 11/10
第206回特別国会がきょう召集され、第2次岸田内閣が正式に発足します。特別国会は、きょうからあさってまでの3日間の会期で行われます。
午後の衆議院本会議では、自民党の細田元官房長官が衆議院議長に、立憲民主党の海江田元経済産業大臣が副議長に選出される予定です。その後、衆参両院で総理大臣指名選挙が行われ、岸田総理が改めて第101代の内閣総理大臣に選ばれる見通しです。
自民党・茂木幹事長の就任で空席となっていた外務大臣のポストに、林芳正元文部科学大臣が就任する予定ですが、それ以外の閣僚は全員再任となる見通しです。
岸田総理と新閣僚は皇居での親任式と認証式に臨み、今夜、第2次岸田内閣が正式に発足します。
政府は年内に臨時国会を開き、新型コロナウイルスの経済対策を盛り込んだ2021年度補正予算案の成立を目指す考えです。
●岸田内閣が総辞職 第2次内閣発足へ  11/10
政府は、午前9時すぎから閣議を開き、岸田内閣は総辞職しました。岸田総理大臣は、午後の衆参両院の本会議で、第101代の総理大臣に選出される運びで、10日中に第2次岸田内閣が発足する見通しです。
先の衆議院選挙を受けた第206特別国会が10日召集され、午前9時すぎから総理大臣官邸で開かれた繰り下げ閣議で、岸田内閣は総辞職しました。
午後開かれる衆参両院の本会議で総理大臣指名選挙が行われ、岸田総理大臣が第101代の総理大臣に選出される運びで、これを受けて岸田総理大臣は、総理大臣官邸で公明党の山口代表と会談したうえで組閣本部を設置し、直ちに組閣人事を行うことにしています。
岸田総理大臣は、自民党幹事長に茂木 前外務大臣を起用したことから、新たな外務大臣に岸田派の林芳正 元文部科学大臣をあて、このほかの閣僚は、内閣の発足から1か月余りしかたっていないことを踏まえ、再任することにしています。
そして、皇居での総理大臣の親任式と閣僚の認証式を経て、10日中に第2次岸田内閣が発足する見通しです。
これを受け岸田総理大臣は、18歳以下を対象とした10万円相当の給付などを盛り込んだ新たな経済対策を来週19日に取りまとめたうえで、来月にも臨時国会を召集し、経済対策を盛り込んだ今年度の補正予算案の早期成立を目指す考えです。
●きょう第2次岸田内閣発足の方針 来月にも臨時国会を召集  11/10
特別国会が、10日召集され、岸田総理大臣は衆参両院の本会議で第101代の総理大臣に指名され、第2次岸田内閣を発足させる方針です。
来週、新たな経済対策を決定した上で、来月にも臨時国会を召集し、今年度の補正予算案の早期成立を目指すことにしています。
先の衆議院選挙を受けた第206特別国会が10日召集され、岸田総理大臣は、午後、衆参両院の本会議で行われる総理大臣指名選挙で、第101代の総理大臣に指名される運びです。
このあと岸田総理大臣は公明党の山口代表と会談した上で、直ちに第2次岸田内閣を発足させる方針で、外務大臣には新たに岸田派の林芳正・元文部科学大臣を起用し、そのほかの閣僚は再任することにしています。
第2次岸田内閣の発足を受けて岸田総理大臣は、12日新型コロナ対策の全体像を示すとともに、新型コロナの影響を受けている人たちを支援するため、18歳以下を対象とした10万円相当の給付などを盛り込んだ新たな経済対策を来週19日に取りまとめることにしています。
そして、来月にも臨時国会を召集し、経済対策を盛り込んだ今年度の補正予算案を提出し、早期成立を目指す方針です。
さらに岸田総理大臣は、みずからが掲げる「新しい資本主義」の実現に向けて、デジタルを通じた地方活性化を推進する「デジタル田園都市国家構想実現会議」など、新たに設置した会議で具体策の検討を進め、スピード感をもって実行に移したい考えです。
●安倍元首相、派閥復帰と会長就任を受諾 幹部に伝達 11/10
自民党の安倍晋三元首相は10日、国会内で細田派(清和政策研究会)の幹部と面会し、派閥への復帰と会長就任の要請を受諾すると伝えた。11日の派閥総会で第10代の会長に就任し「安倍派」に衣替えする。現会長の細田博之元幹事長は10日の特別国会で衆院議長に選出された。
西村康稔事務総長ら派閥幹部5人が国会内の安倍氏の事務所を訪れ、派閥復帰と会長就任を打診した。出席者によると安倍氏は「みなさんの期待にこたえたい。伝統ある清和研を責任を持って発展させていく」と語った。
●蓮舫氏 マイナポイント付与政策に怒り「単なるバラマキです」 11/10
立憲民主党の蓮舫参院議員が10日、自身のツイッターを更新。自民・公明両党が新型コロナウイルス感染拡大に対応するための経済対策のうち、マイナンバーカード保有者への「マイナポイント」付与について調整に入ったとの記事を引用し、批判した。
この日、「もはや経済対策でもコロナ対策でもない、単なるマイナンバーカード普及のためのバラマキです」とつづった蓮舫氏。前日夜にも、自民・公明が18歳以下に10万円相当を給付することで大筋合意したことについて、「子どものいる家庭、いない家庭の線引きは何故なのか。何故18歳なのか、も」と問いかけ「2段階、現金とクーポン給付は子育て支援なのか消費喚起の経済対策なのか。わからないことが多すぎます」「私たちは特別国会に最も急がれる困窮世帯と1人親支援への給付法案を出します」とつづった。
●吉村知事「まともな野党として自民党にガチンコでぶつかる」布告 11/10
日本維新の会の副代表の吉村洋文大阪府知事(46)が10日、府庁で取材に応じ、特別国会で岸田文雄首相(自民党総裁)が第101代首相に選出されたことについて「日本にはまともな野党がないので、まともな野党として自民党にガチンコでぶつかっていきたい」と意気込んだ。
維新は公示前の11議席から4倍近くの41議席と躍進した。多くの新人議員も誕生した。「国会で大暴れしてほしい。国会の古い枠にとらわれるのではなく、国会の非常識に対し、正面から取り組んでほしい」とエールを送った。
さらに「他の国会議員の顔色を見て、小さく、賢くまとまるのではなく、おかしなところはおかしいと正面から大騒ぎしたらいいと思う」と熱弁した。
●最年少29歳の馬場雄基議員が初登院「謙虚に素直に勉強させて頂きたい」 11/10
衆議院選を受けた特別国会が10日、召集され、当選した議員の中で、最年少29歳、平成4年生まれの立憲民主党の馬場雄基氏が初登院した。
馬場氏は福島県2区で立候補し、比例代表で復活した。馬場氏は「現場の悩みを解決するのが政治の役目だと思っています。今日がスタート。皆さんと一緒に悩んで、笑って、前に進めていけるような政治家になりたい」と語った。最年少議員となったことについては「謙虚に素直に、勉強させていただきたい。29歳が若いとはあまり思わないが、がむしゃらにできることがあると思いますので全力を尽くしたい」と話した。
●初当選組はテレ朝、フジ、朝日新聞…メディア出身者多数 11/10
特別国会が10日召集され、先の衆院選で初当選した議員が登院した。初当選組で目立つ首長やメディア出身者だ。
「国会は久しぶりだが、30年近く通って、歴代首相を取材した」と話すのは鹿児島2区で当選した無所属の三反園訓氏(63)。昨年まで元鹿児島県知事で、その前まではテレビ朝日のコメンテーターとあって、腕をぶす。
首長経験者では新潟5区で無所属で当選した米山隆一氏(54)は元新潟県知事。過去国政には4度チャレンジしながらも敗れ、首長を経ての初当選の異色組だ。同区で元県知事、前知事、市長の首長経験者による三つどもえで、米山氏が妻で作家の室井佑月氏(51)の助けも得て、勝ち上がった。この日も室井氏は一人、地元でのあいさつ回りに追われているという。
メディア出身者では立憲民主党の独壇場となった。比例北海道ブロックで復活当選した大築紅葉氏(38)は元フジテレビ政治部記者、東京9区の山岸一生氏(40)は元朝日新聞政治部記者、宮崎1区の渡辺創氏(44)は元毎日新聞政治部記者で、いずれもかつて知ったるフィールドに違った立場からのカムバックで、意気上がっていた。
●初当選の議員 国会議事堂で意気込み語る 「重み感じる」 11/10
特別国会が開会した10日、衆院選初当選の京都、滋賀の議員3人が初登院した。有権者の負託を受けてバッジを付け、東京一極集中の是正や子育て政策など取り組みたいテーマを掲げた。
伊吹文明元衆院議長の議席を継承した自民党の勝目康氏(京都1区)は「国会議員になった重みを感じる。その一言」と引き締まった表情。総務官僚としての実務経験を踏まえ「地元の声にしっかり耳をそばだてて、東京一極集中の是正、少子高齢化の問題に正面から取り組みたい」と語った。
京都1区で勝目氏と競い合った日本維新の会の堀場幸子氏(比例近畿)は京滋で唯一の女性衆院議員で、2人の子どもを育てるシングルマザー。「いろんな環境の人が挑戦できるユニバーサルな政治を考えたい」と、子育て関連の政策に注力すると誓った。
滋賀1区から立候補し比例復活を果たした国民民主党の斎藤アレックス氏は、かつて秘書を務めた国民の前原誠司元外相(衆院京都2区)と国会議事堂正面玄関前で会い激励を受けた。36歳のフレッシュさを感じさせ、「前原さんとは県境を挟んで隣の選挙区。しっかり連携して地元の課題を国会に伝えていきたい」と意気込んだ。
●自公の10万円分給付案にれいわ・山本議員「貴族的な発想。論外だ」 11/10
れいわ新選組の山本太郎衆院議員は10日、自民公明両党が、18歳以下の子どもに対し年内に現金5万円を支給し、来年春に向けて5万円相当のクーポンを支給することで合意した新型コロナの支援策に関して「論外だ」と苦言を呈した。
特別国会招集日の今日、初登院時に取材に応じた山本議員は、与党の“10万円分給付”への考えを問われ、「事態が全くわかっていない、人々の生活がどうなっているかがわかってない、貴族的な発想からの“与えてやってもいいぞ”というような感覚だと思う」と指摘。
給付は区別をつけずに全員に、大至急必要だとし、「『来年の春をめどに』とかそんな眠たいことを言ってる場合じゃないと思う。大急ぎだ。命に関わる給付金というものをコンスタントに出していくことが必要だと思う。なので、論外。10万円を現金とクーポンにしていくという話なんて全く筋違いというか、意味不明。意味ははっきりあって、クーポンにすることによって、何かしらの利益を享受できるような団体もあるだろうし。人々の命を救うための給付金だったとしても、そのような自分たちの利害関係を満たすというものが第一目的にあること自体がありえない」と批判した。
また、10万円を給付する予算へ話が及ぶと、「10万円(給付)の予算どころではない。今25年のデフレ、その中にコロナがやってきたということを考えるならば、少なくとも100兆円を超えるぐらいの補正予算を大胆に回していくということをやらなければ、このコロナという部分の終息に向けて、そして25年のデフレからの脱却は不可能と考えている」とした。
●安倍元首相 自民 最大派閥会長就任へ 「安倍派」となる見通し  11/10
自民党の安倍元総理大臣は、出身派閥の細田派の幹部から、派閥への復帰と会長への就任を要請されたのに対し、受け入れる考えを伝えました。11日正式に会長に就任し、細田派は「安倍派」となる見通しです。
自民党最大派閥の細田派は9日、会長を務める細田元幹事長が、衆議院議長への就任に伴って派閥の会長を退くことから、安倍元総理大臣に、派閥への復帰と、後任の会長への就任を要請することを確認しました。
これを受けて10日、塩谷元文部科学大臣や世耕参議院幹事長ら派閥幹部が、安倍氏と国会内で会談して正式に要請したのに対し、安倍氏は「当選以来、派閥にお世話になってきたし、総理大臣在任中も一貫して支えてもらった。会長になることで恩返しになるなら、期待に応えたい」と応じました。
安倍氏は、11日開かれる派閥の総会で正式に会長に就任し、細田派は「安倍派」となる見通しです。
●特別国会召集 10万円給付「年収960万円」所得制限で合意 11/10
きょう召集された特別国会。岸田総理が改めて第101代内閣総理大臣に選ばれました。今夜、第2次岸田内閣を発足させます。
一方、政府・与党が検討している子育て世帯などへの給付についても、大きな動きが・・・。総理官邸では、岸田総理と公明党の山口代表が会談。協議が続いていた「18歳以下の子供への10万円の給付」については、「年収960万円」の所得制限を設けることで正式に合意しました。
公明党 山口那津男代表「960万円で所得制限を設けるということで、合意を致しました。大部分を対象にできるということで、大きな分断には繋がらないと、このように判断をいたしました」
これまで公明党は所得制限を設けない「一律給付」を求めてきましたが、山口代表は会談後、対象世帯のほぼ9割がカバーでき、児童手当の仕組みを使用することで速やかに給付することができると強調。早期に現金5万円を給付した上で、来年の春に向けて子育てに使えるクーポン5万円相当を支給するとしています。
また、会談では、住民税非課税世帯に対する1世帯当たり現金10万円の給付の他、マイナンバーカード保有者への「マイナポイント」の付与についても合意しました。新たにカードを取得した人に5000円分、健康保険証として使うための申請をした人に7500円分、預貯金口座とひも付けをした人に7500円分、あわせて「最大2万円分」を支給するとしています。
岸田総理は今夜、会見を開いて、今後の経済対策や、コロナ流行の「第6波」に備えた対策などについて説明する予定です。
●コロナ対策、入院体制は「3.5万人以上」に 岸田首相が方針表明 11/10
岸田文雄首相は10日夜、首相官邸で記者会見を開き、新型コロナウイルスにかかわる医療体制について、「(感染者が)確実に入院できる体制を11月末までにつくる」との方針を表明した。今夏の「第5波」と比べて「3割増の3・5万人以上」の患者数にも対応できるよう準備を急ぎ、軽症者向けの宿泊療養施設も「1万室以上増やす」と述べた。
また、3回目のワクチン接種については12月から開始し、18歳以上の希望者全員を対象にする考えを明らかにした。さらに、現在は接種対象ではない12歳未満についても「薬事承認された後、接種を開始する」と語った。開発が進む経口薬は「(薬事承認後)速やかに合計60万回分を医療現場に提供する。さらに100万回分を確保して万全を期す」と説明した。
また首相は、これまでの新型コロナ対応を検証したうえで、「来年の6月までに司令塔機能の強化も含めた感染症危機管理の抜本的強化策を取りまとめる」との考えを示した。

岸田文雄首相は10日の記者会見で、憲法改正について「(衆院選の)結果を踏まえ、党内の体制を強化するとともに、国民的議論のさらなる喚起と国会における精力的な議論を進めるよう(党に)指示した」と語った。
首相は「国会の議論と国民の憲法改正に対する理解、この二つは車の両輪」と指摘。「この両方がそろわないと憲法改正は実現しない」との考えも示した。
衆院選で改憲議論に前向きな日本維新の会、国民民主党が議席を増やしたことを踏まえて、国会での協力について問われたが、「政党の枠組みでどうこうというのではなく、結果を得るためにどうするべきなのか検討し、努力をしていきたい」と述べるにとどめた。
●コロナ病床「夏から3割増、11月末までに」 岸田首相会見 11/10
岸田文雄首相は10日夜の記者会見で、新型コロナウイルスの「第6波」に備えた対策として、コロナ病床について「この夏に比べて3割増となる3・5万人以上の人が確実に入院できる体制を11月末までに作る」と表明した。来年6月までにコロナ対策の司令塔機能の強化を含めた危機管理策をまとめる方針も示した。
軽症者向けの宿泊療養施設に関しても、首相は「今夏と比べて2割増、1万室以上増やす」と述べた。感染拡大時に無症状者へのPCR検査も無料化し、感染拡大に備える。いずれも12日に発表する感染対策の全体像に盛り込む方針だ。
首相はまた「成長と分配の好循環」に向けた成長戦略に言及。科学技術立国を目指し、10兆円の大学ファンドを2021年度内に創設すると改めて表明した。経済安全保障の確立に向け、半導体などのサプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化を推進する法案策定の準備も加速化する。
地方活性化を図る「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、来年の通常国会に自動運転による自動配送サービスを可能とする法案を提出することも明らかにした。
●来年春闘での「賃上げ促す」と岸田首相、早期訪米にも意欲 11/10
岸田文雄首相は10日夜の第2次内閣発足を受けて記者会見し、成長と分配の好循環に向け、2022年春闘での賃上げを労使代表に促すと表明した。日米同盟のさらなる強化や自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、年内を含めできるだけ早期に訪米する考えも示した。
岸田首相は会見の冒頭、「国民の声にこれまで以上に耳を傾け、丁寧で、寛容な政治を行っていく」と述べた。政治空白は許されないとの考えも示し、「スピード感を政策実行に発揮すべく、全力を挙げていく」とも語った。
新型コロナウイルス対応では「(感染者数が)2倍になっても対応できる医療体制をしっかり確保する。病床使用率を8割以上とし、3.5万人以上が確実に入院できる体制を11月末までにつくる」とした。12月から新型コロナワクチンの3回目接種を始める考えも改めて示し、「18歳以上の希望する全ての方が接種できるようにする」と述べた。
年収960万円超の世帯を除く18歳以下を対象とする10万円相当の給付に関しては「予備費も活用して年内にプッシュ型で現金給付する」と、早期実現に意欲を示した。「厳しい経済状況にある学生にも、10万円の緊急給付金を支給する」ことも新たに表明。非正規労働者など経済的に困窮している世帯への10万円の給付も明らかにした。
一方、事業者向けでは「持続化給付金並みの支援を11月から3月までの5カ月分を支援する」と語った。近くまとめる数十兆円規模の経済対策で、原油高に苦しむ農業、漁業者への支援を盛り込む考えも示した。
●本格論戦は臨時国会 維新・国民民主伸長で変化も 11/10
衆院選を受けた特別国会が10日、召集された。与野党の本格論戦の舞台は、12日に閉会した後の12月初旬にも召集される臨時国会となる。政府与党は今月19日に決定する大型経済対策のための令和3年度第1次補正予算案を臨時国会で成立させる方針で、衆院選で勢力を伸ばした日本維新の会と国民民主党にも協力を求める考えだ。議席を減らした立憲民主党は臨時国会前に選出する新代表の下、国会での対応方針を決めることになる。
岸田文雄首相は10日の衆参両院本会議で第101代首相に選出された後、あいさつに訪れた維新の控室で、同党幹部とこんな会話を交わした。
首相「岸田文雄です」
遠藤敬国対委員長「存じ上げております」
馬場伸幸幹事長「憲法改正をよろしくお願いします」
首相「しっかりと頭に入れて努力いたします」
維新は9日、衆院選でともに議席を増やした国民民主と初めて幹事長、国対委員長会談を開催し、立民や共産党の消極姿勢で滞る衆参の憲法審査会を毎週開くよう求める方針で一致した。自民も維新、国民民主の要求をテコに憲法論議を進める構え。また、補正予算案の早期成立を期すためにも、「是々非々」を掲げる両党の協力を得たい考えだ。
維新と国民民主は衆院で合わせて52議席あり、連携すれば予算措置を伴う法案の提出が可能な勢力へと成長した。第三極としての存在感が高まれば、与党が、両党の主張に配慮しながら国会運営に当たる局面も生まれそうだ。 一方、立民は新しい体制においても、国会での共産との連携を維持するとみられる。ただ、審議拒否など予算案や法案の成立を遅らせるための日程闘争を展開した場合、「議論しないオールド野党」(維新幹部)といった批判を受けたり、衆院選で共闘した関係からも「立憲共産党」と呼ばれたりする可能性があり、難しい対応を迫られそうだ。
●岸田首相の看板政策で会議乱立 役割曖昧、混乱の恐れも 11/10
岸田文雄首相の看板政策実現に向けた政府の会議が乱立気味だ。先に立ち上げた「新しい資本主義実現会議」に続き、9日には四つの会議を設置した。首相は来夏の参院選に向けて実績づくりを急ぎたい考えだが、各会議の役割分担は曖昧なため混乱が生じる恐れもある。
松野博一官房長官は9日の記者会見で、デジタル田園都市国家構想実現会議、デジタル臨時行政調査会、全世代型社会保障構築会議、公的価格評価検討委員会の4会議の設置を発表した。この後、社会保障の会議が早速開かれ、首相は有識者に「忌憚(きたん)のない意見をお願いする」と要請した。
新しい資本主義実現会議は、首相が自民党総裁選や衆院選で掲げた「新しい資本主義」や「成長と分配の好循環」を具体化する組織だ。首相が議長を務め、関係閣僚や有識者で構成する。
デジタル田園都市国家構想実現会議はデジタル技術による地方活性化が目的。デジタル臨調はデジタル、規制、行政の3改革を一体的に進める。全世代型社会保障構築会議は社会保障全般を検討し、その下部組織の公的価格評価検討委員会は看護・介護・保育の現場の収入アップを目指す。
もっとも、各会議は公的価格評価検討委員会を除き対等で、役割の線引きは不鮮明だ。「成長と分配の好循環」は新しい資本主義実現会議だけでなく、経済財政諮問会議でもテーマとなる。
デジタル分野では2会議の新設に加え、菅内閣からデジタル社会推進会議を受け継ぐ。それぞれ重なる部分があることは否定できない。デジタル臨調の役割は規制改革推進会議、行政改革推進会議と完全に重複するとの見方も出ている。
政府内からは「各会議の違いをどう出せばいいのか分からない」(内閣府関係者)と戸惑いの声も漏れる。松野長官は会見で「しっかり連携して一体で議論を進めたい」と強調したが、与党からも「一体何がしたいのか。岸田カラーが全く見えてこない」(竹下派中堅)と懸念の声も出ている。
●「中日関係の推進を」中国外務省、岸田内閣に期待表明 11/10
中国外務省の汪文斌副報道局長は10日の記者会見で、同日発足した第2次岸田内閣について「新時代の要求に見合った中日関係の構築を共に推進したい」と述べ、関係の改善に期待を示した。
中国では日中国交正常化に貢献した大平正芳元首相も会長を務めた自民党宏池会(現岸田派)を率いる岸田文雄首相の登板に期待が広がっている。汪氏は「日本が中国と同じ目標に向かって歩み寄り、それぞれの分野での連携を深め、意見の違いをよくコントロールするように希望する」と話した。
中国メディア関係者は「林芳正外相は日中関係に精通しており、関係の立て直しにつながるだろう」と話す。中国は米国や欧州、オーストラリア、インドなどとの関係が悪化しており、日本を遠ざけるのは得策ではないとの判断もあるとみられる。
●阿川佐和子 / 岸田総理に「聞く力」を聞く 11/10
阿川 お久しぶりです。
岸田 5年前の対談(『週刊文春』2016年2月18日号「阿川佐和子のこの人に会いたい」)以来ですね。
阿川 テレビで拝見して、おや、目が充血してるぞって思う時もありますが、お疲れではないですか? 
岸田 大丈夫です。元気にやっております。
阿川 まずは御礼を申し上げようと思って。私は2012年に『聞く力』という本を出したんですが、岸田さんが総裁選の時に「自分の持ち味は聞く力」と強調してくださったおかげで、この度、増刷が決まりました。
岸田 それはよろしゅうございました。
阿川 増刷帯の惹句を「『聞く力』は大事です。ね、総理?」と、勝手に書かせていただきました。
岸田 こちらこそ、宣伝していただいて(笑)。
阿川 ちなみに……総理も拙著をお読みになって、「聞く力」をキャッチフレーズに? 
岸田 すみません、直接のきっかけではなかったんですが(笑)。この本のことは、なんか覚えていますよ。
阿川 「なんか覚えている」?  (尋問調で)ほう、では読んではいらっしゃらない? 
岸田 すみません(苦笑)。でも、この本はよく売れて話題になりましたよね。
阿川 無理にほめてくださらなくても(苦笑)。じゃ、「聞く力」と言うようになったのはいつから? 
岸田 昨年の総裁選の前から持論としてありました。政治家というのは聞く方ではなく、しゃべる方で競い合うもの。口八丁手八丁、滔々と語る人が多いけれど、自分はそこで競ってもなかなか分が悪い。
阿川 私がレギュラーの番組『ビートたけしのTVタックル』には政治家の方もよくゲストに来られますが、たしかに、みなさん、他の方が発言している時も割り込んで、誰も人の話を聞きませんね。
岸田 人の話をじっくり聞ける政治家って少ないでしょ。30秒黙るのすら我慢できない人もいますから。
阿川 例えば誰が一番話を聞かないんですか? 
岸田 いやいや(笑)。誰というか、たくさん居ますよ。
阿川 たくさんね(笑)。安倍さんは? 
岸田 安倍先生はバランス感覚あるほうですよ。
阿川 それで、岸田さんは一方的にしゃべるだけではダメだと思われた? 
岸田 しゃべるためには、インプットも必要です。だから自分なりに考えて、私は「聞く力」だなと。そもそも国会議員のことを「代議士」と言いますよね。代わりに議論する。誰の代わりに議論するか。それはやっぱり国民の声をしっかり聞いて議論しないといけない。「二」の付く人のイメージが悪かった? 
阿川 今回は二度目の挑戦でしたが、昨年の総裁選に敗れてから、何を考えて過ごしてこられたんですか。
岸田 去年の総裁選は力不足でした。負けてみるとやっぱり世の中の評価は厳しかったですよね。
阿川 「政治生命は終わった」「頼りない」とか? 
岸田 そういう声もいっぱいありました。最初は「もうダメかな」と思ったこともありましたが、自分を見直すいい機会だと前向きにとらえるようにしたんです。それで1年間、厳しい声にも耳を傾け、耐え続けてきた。これでだいぶ鍛えられたと思います。
阿川 ボコボコにされて、「もともと政治家なんか好きじゃなかったんだから辞めてやる!」とか思わない? 
岸田 いえ、ここまで来たなら何としても踏みとどまってやろうと思いました。
阿川 でも、政治家って嫌なやつが多いな、とか。
岸田 まあまあ、程度の問題ですけれどね。
阿川 たとえば誰ですか?  具体的に。
岸田 いやいや(笑)、いっぱいいます。
阿川 なかなか口がお堅い(笑)。では今回、再挑戦を決意したきっかけは? 
岸田 なにより、国民の政治不信が高まっていたことが最大の理由です。「政治家の言葉は心に響かない」「政治家の声を聞こうという気にもならない」といった声を耳にし、国民との乖離は深刻な状況でしたから。とくに地元の広島に帰った時には痛切に感じました。
阿川 広島といえば、いろいろな問題がありましたもんね。2019年の参院選広島選挙区の大規模買収事件で自民党から河井案里元議員側に1億5000万円が振り込まれた問題は、いまだにはっきりしてないし。
岸田 他の地域でもIR(いわゆるカジノ)を巡る汚職事件などが政治不信につながっています。そもそも日本全国に共通する問題として、コロナで国民の心が傷ついている。それなのに、国民の声がなかなか政治に届かない。それから、自民党の中で、一部の有力な政治家が全て物事を決めているようなイメージもありました。
阿川 「二」の付く方ですか? 
岸田 いやいや(笑)、ハイ。
阿川 えっ?  「ハイ」? 
岸田 いや、いろんな方々がおられました。ちょっとそのあたりもイメージがよくなかった。
阿川 そうですね。怖かったです。
岸田 そんな折、3年ごとにある総裁選がめぐってきた。本来の自民党はバラエティある人材が居て、多様な意見があって、若い人たちの声もしっかりと聞き取れる包容力のある政党です。それを党内外に示すことが私の役割だと思い、総裁選に再挑戦すると決意しました。  ・・・
●安倍氏が台湾訪問を調整中 岸田首相・林新外相ら“親中”をけん制 11/10
ゴッドマザーも駆けつけた式典
安倍晋三元首相が、首相経験者として初めて台湾を訪問する計画が持ち上がっているという。安倍氏は超党派で作る親台議連「日華議員懇談会」の顧問を務めており、その動きは、中国との距離が近いとされる岸田文雄首相や林芳正外相へのけん制と指摘する声も少なくない。
安倍氏は産経新聞のインタビュー記事(7月29日付)で、2020年7月に逝去した李登輝元総統について「状況が許せばお墓参りをしたい」と語り、これに対して台湾側も手放しで歓迎していた。
また最近では、2年ぶりに開かれた中華民国建国記念日(10月10日)を祝う台北駐日経済文化代表処(=大使館)主催の式典に安倍氏は欠席したが、ゴッドマザーこと洋子さんが駆け付けている。
「来年にもと言われるこの訪台計画は、中国との距離が近いと言われる岸田さんや新しく外相になった林さんへのけん制と言われています。2人は共に伝統的に党内リベラルの宏池会所属で、特に林さんは日中友好議員連盟会長。就任直後に出演したBS番組で、中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区などの人権問題に関して、“どう考えても深刻に懸念すべき問題”と指摘していましたが、対中姿勢について、安倍さんや弟の岸信夫防衛相とは水と油でしょう」と、政治部デスク。
林さんは火中の栗を拾わされている
この中国の人権問題をめぐっては、担当の首相補佐官を新設し、中谷元・元防衛相(64)の起用が決まった。
「9月の自民党総裁選で訴えた目玉政策の1つです。中国に言うべきことはただす、親中や媚中などではないとアピールしたかったのだと解説されていますが、正直、新疆の人権問題は看過し難いもので、『言うべきことはただす』といったレベルははるかに超えていると思いますがね」(先のデスク)
もちろん岸田氏の対中姿勢についてはお手並み拝見というところなのだが、その一方で、安倍氏が林氏を警戒する理由は別にもある。
「安倍さんは林さんの能力を高く評価し、首相在任中に林さんを農水相や文科相で登用してきましたが、どういうわけか起用されるタイミングが、いつも省内がバタついている時だったりしました。そのため地元での長年の遺恨があって、林さんは火中の栗を拾わされているとよく言われたものです」(同)
その遺恨については説明が必要だろう。
今回の衆院選で山口3区(宇部市など)から当選した林氏は、もともと山口4区の安倍氏と同じ下関市を拠点としてきた。中選挙区時代は林氏の父・義郎元蔵相と安倍氏の父・晋太郎元外相とは共生してきたが、1996年の衆院選で小選挙区制が導入されるにあたって勢力図が書き換えられたのだ。
ガチンコで戦えば林氏の方が強い
別のデスクに聞くと、「下関市を含む山口4区からは、前の選挙で晋太郎氏から地盤を受け継いでいた安倍氏が出馬することになり、義郎氏は比例代表中国ブロックから出馬することになりました。以降、林氏には地元に衆院の選挙区がなく1995年に参院議員に。地元の首長選では安倍家vs林家の仁義なき戦いが展開されていくことになります」
それから林氏は河村建夫元官房長官の牙城・山口3区を手に入れるべく、浸透を画策。今回の衆院選で不出馬に追い込んだのだった。
「林氏の衆院転身計画は実現までに10年以上かかりましたが、次の衆院選では山口県の定数が1減って区割りが見直される見込みです。山口は1区に高村正彦自民党前副総裁の地盤を継いだ子息の高村正大氏、2区に岸信夫防衛相が陣取っている中で、候補者調整がさらに必要になってくる。3区と4区が合区される可能性が高いとされ、実際ガチンコで戦うことはないものの、万一そうなったら林氏の方が安倍氏より強いとも言われている。2度首相をやった人と、これからやろうとしている人との期待感の違いも当然あります」(同)
安倍氏は細田派に復帰して次期会長に就任。また岸田首相の依頼を受けてのことだが、12月上旬にマレーシアに特使として派遣されることが固まったりするなど、徐々に表立った活動を再開している。
十八番の安倍外交で点数を上げやすいように
このデスクは、「今回の林氏の外相就任は、岸田氏が彼を次期首相の有力候補と見ていることの表れでしょう」とし、こう続ける。
「安倍氏がキングメーカーとして影響力を発揮できているなら宏池会が続けて政権を運営しようがなんてことはないはずですが、どうもそこまでではない。まして林政権となれば安倍氏は冷遇されるのは間違いない。とにかく存在感を高め、求心力をキープし続けなければ今回の河村氏のようになってしまうことを安倍氏はもちろんよくわかっている。岸田首相としては安倍氏をあまり追い込んで敵対するのは得策ではないと考え、十八番の安倍外交で点数を上げやすいように、マレーシアへの特使派遣というカードを切ってきたのでは。とすれば、なかなか岸田首相は人の心が読めているとも言えますね」
●高市政調会長“公明粉砕”で高笑い 「10万円給付」所得制限 11/10
公明党が衆院選で掲げた目玉公約「18歳以下への一律10万円給付」は結局、実施されないことになった。9日、自民党の茂木幹事長と公明党の石井幹事長が国会内で会談し、18歳以下を対象に10万円「相当」を給付する方針で一致。自民は所得制限も提案し、「一律給付」を掲げる公明のメンツは丸潰れとなった。前日、「自民党の公約と違う」と公明案に食って掛かっていた高市政調会長は、自分の主張がそのまま通り、今ごろ高笑いしているに違いない。
自民と公明が合意した「10万円相当」の中身は、年内に現金5万円を先行給付し、来春までに残る5万円を子育て関連のクーポン券で配るというもの。公明党が掲げていた「18歳以下への一律10万円給付」とはまったく違うモノになった。ネット上では現金10万円給付を期待した人から〈何がしたいのか、さっぱり意味がわからない〉〈小学生のお年玉かよ〉などの批判が相次いでいる。
8日の幹事長会談で「一律(給付)が我々の考え方」(石井幹事長)と譲らなかった公明に対し、自民は9日の会談で年収960万円の所得制限を提案。公明側が持ち帰って協議継続となったが、岸田総理と公明党の山口代表が10日に会談し、給付について「年収960万円」の所得制限を設けることなどで正式に合意した。
“公明案”潰しを決定づけたのが、高市政調会長だ。公明党の「一律10万円給付」について、7日の日曜日、自身のツイッターに〈自民党議員の事務所に抗議が殺到しているようです〉と投稿し、8日には記者団に「自民党の(衆院選)公約とはまったく内容が違う」と念押ししている。
連立を組んでいる公明相手なら、いくらでも水面下で調整できたはずなのに、わざわざツイッターに〈抗議が殺到〉と投稿するのは異例だ。さすがに、公明党のなかからも不満の声があがっている。結局、高市発言の翌日、公明案は潰れている。
自民党のなかからは、高市氏に対して「あの目立ちたがり屋はなおらない。本気で総理を狙っているのだろう。岸田首相も内心、困っているのではないか」との見方も出ている。
「高市さんは総選挙の時、『自民党の選挙公約は高市公約そのままだ』という批判があることに対し、『その通りでございます』と自信満々に笑みを浮かべて語り、『私のパソコンで作りました』と猛アピールしていた。岸田首相を立てるつもりはまったくないのではないか」(自民党関係者)
高市氏に比べて岸田首相は、総選挙で勝利しても影が薄いままだ。政策通を自負する茂木氏を幹事長に起用したのは、安倍元首相の意向で勝手に動く高市氏の動きを封じ込める狙いがあったとも解説されたが、茂木氏の動きも目立たない。いずれ高市氏が暴走する可能性もあるのではないか。
●ヨシマサは長州9人目の総理になれるか 林芳正新外相の課題 11/10
長州はすでに大騒ぎになっている
林芳正氏が参院から衆院に鞍替えして当選し、さらに外相に就任することになり、地元の山口県では「安倍さんに続いて長州9人目の総理が誕生する!」と大騒ぎになっている。
長州人は政治好き、議論好きだが、たとえば国会議員に対しても大変厳しく、「大臣やってもおつかれさまとは言ってもらえない、総理をやらないとダメ。」という話もあるくらいだ。
だから伊藤博文に始まり、山形有朋、桂太郎、寺内正毅、田中義一、岸信介、佐藤栄作、そして安倍晋三とこれまで8人の首相を輩出した長州の人達はこの数年、「ヨシマサはいつになったら衆院に鞍替えして首相を目指すのか」とイライラしながら待っていた。
今回林氏が衆院山口3区への立候補表明をし、現職の河村建夫元官房長官との公認争いになった時、全国メディアは「最大の注目区」と騒いだが、長州人は「これでやっとヨシマサも首相か」とすでに別次元のことを考えていたのだ。もちろん河村氏は文科相も務めた大変立派な政治家だ。ただ長州では閣僚だけではダメなのだ。首相にならないと、おつかれさまとは言ってもらえない。
東京に負けたくない
ちなみに首相輩出1位の山口県に続く2位は高橋是清、近衛文麿、東条英機、鳩山一郎、菅直人の東京都である。山口は次の選挙から小選挙区が1つ減り3になってしまうが逆に東京は5増えると見られている。だから長州人はいずれ2位の東京に抜かれるんじゃないかとドキドキしている。
僕も長州人を名乗っているが、山口には父の転勤で4歳の時に引っ越してきた外様だ。父は関西、母は九州出身で山口にもともと縁はない、ニセ長州人である。だが長年、長州人たちと付き合ううちに後天的に長州DNAが刷り込まれてしまった。だから「菅直人は山口生まれで高校生の時までいたから長州出身の首相に数えていいんじゃないか」とか「ヨシマサは正統派だから絶対いけるだろ」とか本物の長州人たちと一緒になって大騒ぎしている。
実際のところ林氏は首相になれるのか。まず今の岸田首相だが、この衆院選では予想を覆して単独で絶対安定多数の議席を確保、一方の立憲は100議席を割り枝野代表は辞任してしまった。政策の重なるところの多い維新が躍進したこともあり、岸田氏の政権運営は大変やりやすいものになった。
来年の参院選は与党で15議席減らせば過半数割れとなるが、改選議席は121しかないのでなかなかそこまで負けることは考えにくい。もし参院選も勝ったら翌年は選挙はなく、岸田氏は総裁任期の3年間は首相を続けるのかもしれない。
課題は安倍元首相との関係改善
そうなるとポスト岸田への移行は「岸田おろし」とかそういう激しい形ではなく、もっとスムーズに行われるような気がする。今回総裁選に出た河野太郎氏と高市早苗両氏を軸に、茂木敏充、加藤勝信、萩生田光一、西村康稔氏らとともに当然林氏の名前も挙がることになる。
林氏にとって最大の課題は今やキングメーカーとなった安倍晋三元首相との関係である。安倍氏と同じ選挙区だったため60歳を過ぎるまで衆院に出られなかった。2人の仲はあまりよくないと言われているが、安倍さんは周辺に「僕は何とも思ってないが後援会がうるさい」と言っている。林氏は直接聞いてもニタッと笑うだけ。
長州人はもちろん安倍氏のことを高く評価しているし、7年8カ月も首相を務めたのだから「おつかれさま」と思っている。だが長州人はせっかちだ。安倍氏が辞めてまだ1年しかたってないのにもう「次はヨシマサだ!」と騒いでいる。この長州人のパッションを安倍さんもむげにはできないと思うのだが。

 

●第2次 岸田内閣
総理 岸田文雄(64) 党政調会長、外相、党国対委員長(衆(10)広島1、岸田派)
総務 金子恭之(60) 党政調会長代理、国交副大臣(衆(8)熊本4、岸田派)
法務 古川禎久(56) 衆院拉致特別委員長、財務副大臣(衆(7)宮崎3、竹下派)
外務 林芳正(60) 文科相、農相(衆(1)山口3、参(5)、岸田派)
財務・金融 鈴木俊一(68) 党総務会長、五輪相、環境相(衆(10)岩手2、麻生派)
文部科学 末松信介(65) 党参院国対委員長、国交副大臣(参(3)兵庫、細田派)
厚生労働 後藤茂之(65) 党政調会長代理、法務副大臣(衆(7)長野4、無派閥)
農林水産 金子原二郎(77) 参院予算委員長、長崎県知事(参(2)長崎、衆(5)、岸田派)
経済産業 萩生田光一(58) 文科相、党幹事長代行、官房副長官(衆(6)東京24、細田派)
国土交通 斉藤鉄夫(69) 党副代表、党幹事長、環境相(衆(10)広島3、公明)
環境 山口壮(67) 党筆頭副幹事長、外務副大臣(衆(7)兵庫12、二階派)
防衛 岸信夫(62) 外務副大臣、防衛政務官(衆(4)山口2、参(2)、細田派)
官房長官・拉致問題 松野博一(59) 党総務会長代行、文科相、厚労政務官(衆(8)千葉3、細田派)
デジタル・行政改革・規制改革 牧島かれん(45) 党青年局長(衆(4)神奈川17、麻生派)
復興・沖縄/北方 西銘恒三郎(67) 経産副大臣、総務副大臣、国交政務官(衆(6)沖縄4、竹下派)
国家公安・防災 二之湯智(77) 党参院政審会長、総務副大臣(参(3)京都、竹下派)
少子化・地方創生 野田聖子(61) 党幹事長代行、総務相、党総務会長(衆(10)岐阜1、無派閥)
経済財政・経済再生 山際大志郎 (53) 党政調会長代理、経産副大臣(衆(6)神奈川18、麻生派)
経済安保・科学技術 小林鷹之(46) 防衛政務官(衆(4)千葉2、二階派)
ワクチン・五輪 堀内詔子(56) 環境副大臣、厚労政務官(衆(4)山梨2、岸田派)
万博 若宮健嗣(60) 外務副大臣、防衛副大臣、防衛政務官(衆(5)比例東京、竹下派)  
●第2次岸田内閣 副大臣人事 臨時閣議で決定 26人中 女性は1人  11/11
第2次岸田内閣の発足に伴って、政府は11日の臨時閣議で副大臣の人事を決定しました。副大臣に決まったのは自民党から23人、公明党から3人の合わせて26人で、このうち女性は1人です。自民党の副大臣は、いずれも再任です。
デジタル副大臣に、小林史明氏。小林氏は内閣府副大臣を兼務します。
復興副大臣に、冨樫博之氏、公明党で参議院議員の新妻秀規氏。
内閣府副大臣に、大野敬太郎氏、黄川田仁志氏、参議院議員の赤池誠章氏。
総務副大臣に、田畑裕明氏、参議院議員の中西祐介氏。
法務副大臣に、津島淳氏。
外務副大臣に、小田原潔氏、鈴木貴子氏。
財務副大臣に、公明党の岡本三成氏、参議院議員の大家敏志氏。
文部科学副大臣に、田中英之氏、池田佳隆氏。池田氏は内閣府副大臣を兼務します。
厚生労働副大臣に、古賀篤氏、公明党の佐藤英道氏。佐藤氏は内閣府副大臣を兼務します。
農林水産副大臣に、武部新氏、中村裕之氏。
経済産業副大臣に、細田健一氏、参議院議員の石井正弘氏。細田氏と石井氏は、内閣府副大臣を兼務します。
国土交通副大臣に、中山展宏氏、参議院議員の渡辺猛之氏。渡辺氏は内閣府副大臣と復興副大臣を兼務します。
環境副大臣に、大岡敏孝氏、務台俊介氏。務台氏は内閣府副大臣を兼務します。
防衛副大臣に、鬼木誠氏。鬼木氏は内閣府副大臣を兼務します。
副大臣に決まったのは、以上の26人です。
●第2次岸田内閣 政務官28人決定 自民25人 公明3人 女性は4人 11/11
第2次岸田内閣の発足に伴って、政府は、11日の臨時閣議で、政務官の人事を決定しました。政務官に決まったのは、自民党から25人、公明党から3人の合わせて28人です。このうち、女性は4人です。
デジタル政務官に参議院議員の山田太郎氏。山田氏は、内閣府政務官を兼務します。
内閣府政務官に小寺裕雄氏、宮路拓馬氏、宗清皇一氏。宗清氏は、復興政務官を兼務します。
総務政務官に鳩山二郎氏、渡辺孝一氏、参議院議員の三浦靖氏。
法務政務官に参議院議員の加田裕之氏。
外務政務官に上杉謙太郎氏、本田太郎氏、参議院議員の三宅伸吾氏。
財務政務官に高村正大氏、藤原崇氏。
文部科学政務官に公明党の鰐淵洋子氏、参議院議員の高橋はるみ氏。高橋氏は、内閣府政務官と復興政務官を兼務します。
厚生労働政務官に深澤陽一氏、参議院議員の島村大氏。島村氏は内閣府政務官を兼務します。
農林水産政務官に公明党の参議院議員の下野六太氏、参議院議員の宮崎雅夫氏。
経済産業政務官に参議院議員の吉川有美氏、岩田和親氏。吉川氏は内閣府政務官を、岩田氏は内閣府政務官と復興政務官を兼務します。
国土交通政務官に、加藤鮎子氏、木村次郎氏、泉田裕彦氏。泉田氏は、内閣府政務官と復興政務官を兼務します。
環境政務官に公明党の中川康洋氏、穂坂泰氏。穂坂氏は、内閣府政務官を兼務します。
防衛政務官に参議院議員の岩本剛人氏、中曽根康隆氏。中曽根氏は、内閣府政務官を兼務します。
●岸田内閣 基本方針 11/10
一人一人の国民の声に寄り添い、その多様な声を真摯に受け止め、かたちにする、信頼と共感を得られる政治を実現する。そのために、政権運営の基本として、国民との丁寧な対話を大切にし、以下の三つを約束する。
第一に、国民の声を丁寧に聞き、政策に反映させていくこと。
第二に、個性と多様性を尊重する社会を目指すこと。
第三に、みんなで助け合う社会を目指すこと。
これらの約束を果たすとともに、この度の総選挙において、国民から頂いた信任の下、スピード感を持って以下の5つの政策に取り組む。
1. 新型コロナウイルス対策
新型コロナ対応の全体像を早急に示し、ワクチン、検査、飲める治療薬の普及による新型コロナの予防、発見から早期治療までの流れを更に強化するとともに、最悪の事態を想定し、医療提供体制を確保するなど感染拡大に備える。同時に、これまでの対応を徹底的に分析し、何が健康危機管理のボトルネックになっていたのかを検証し、我が国の感染症危機管理の抜本的強化に取り組む。また、国民の生活を支え、事業者が先を見通せるよう、速やかに経済対策を講じる。
2. 新しい資本主義の実現
新しい資本主義を起動し、成長を実現し、その果実を国民一人一人に実感いただける経済をつくり上げる。そのために、成長のための投資と改革に大胆に取り組むとともに、分配のための新たな仕組みをつくり、動かしていく。成長戦略として、科学技術立国、デジタル田園都市国家構想の具体化による地方活性化、経済安全保障を三つの柱とし、分配戦略として、民間の給与引き上げ促進、公的価格の在り方の抜本的見直し、勤労者皆保険の実現など全世代型社会保障の構築を三つの柱として、施策の具体化を急ぐ。あわせて、こども庁の創設などの少子高齢化対策に取り組むとともに、交通・物流インフラなど地方を支える基盤づくりへの積極的な投資や、農業、観光、中小企業など地方を支える産業の支援に万全を期す。
3. 国民を守り抜く、外交・安全保障
日米同盟を基軸に、世界の我が国への「信頼」と以下に掲げる「三つの覚悟」の下、毅然とした外交・安全保障を展開し、「自由で開かれたインド太平洋」を強力に推進する。
(1)自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜く覚悟
(2)我が国の領土、領海、領空及び国民の生命と財産を断固として守り抜く覚悟
(3)核軍縮・不拡散や気候変動問題など地球規模の課題に向き合い、人類に貢献し、国際社会を主導する覚悟
中国に対しては、対話を続けつつ、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求める。北朝鮮の拉致、核、ミサイル問題を包括的に解決し、国交正常化を目指すとともに、北方領土問題を解決し、日露平和条約の締結を目指す。一層厳しさを増す我が国の安全保障環境に対応するため、国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の改定を行う。
4. 危機管理の徹底
万一、大規模な自然災害やテロなど、国家的な危機が生じた場合、国民の生命と財産を守ることを第一に、政府一体となって、機動的かつ柔軟に全力で対処する。そのために、「常に最悪を想定し」平素から準備に万全を期す。
5. 東日本大震災からの復興、国土強靱化
東北の復興なくして日本の再生なしとの強い思いの下、被災者に寄り添い、被災者支援、農業・生業の再生、福島の復興・再生に全力を尽くす。また、災害に強い地域づくり・国土強靱化を一層推進する。
●首相会見 11/10
岸田文雄首相は10日夜、第2次岸田内閣の発足を受けて記者会見した。
    ●「総選挙で叱正もいただいた」
「本日、第101代内閣総理大臣に指名され、引き続き重責を担うこととなった。改めましてどうぞよろしくお願い申し上げます」
「先の総選挙では、岸田政権にわが国の舵取りを引き続き担うようにとの民意が示された。私は厳粛な思い、身の引き締まる思いでこの民意を受け止めている。多くの選挙区で接戦が相次いだ今回の選挙結果、私は自公連立政権に対する期待と同時に、国民の皆さんからのご叱正もいただいた。このように感じている。国民の声にこれまで以上に耳を傾け、現場で起こっている問題に正面から取り組み、国民の信頼と共感を得ながら、丁寧で寛容な政治を進めていく。この道以外に国民からの信任を保っていく道はない。そうした覚悟を新たにしながら、第2次岸田政権の政権運営を進めていく」
「新型コロナウイルス対応、経済政策、外交安全保障。どれも状況は緊迫しており、政治空白は一刻も許されない。そうした思いで、総裁選、そして組閣、総選挙と最大限のスピードで駆け抜けてきた。これからは、このスピード感を政策実行にそのまま発揮すべく全力を挙げていく」
「新型コロナ対応は引き続き最優先の課題だ。今週中に新型コロナ対応の全体像を取りまとめ、国民の皆さんにお示しする。まず今後、感染力が2倍になった場合にも対応できる医療体制をしっかり確保する。公的病院の専用病床化をはじめ、新たな病床を確保し、病床使用率を8割以上とする。この夏に比べて3割増しの3・5万人以上の方が確実に入院できる体制を11月末までに作る。軽症者向けの宿泊療養施設についても、今年の夏と比べて2割増、1万室以上へ増やしていく。すべての自宅、宿泊療養者に遅くとも陽性判明の翌日までには連絡を取り、健康観察や診療を実施できる体制を確保する」
「これらの取り組みに加え、ワクチン、検査、飲める治療薬の普及による予防。発見から早期治療までの流れをさらに強化する。ワクチンは12月から3回目のブースター接種を始める。2回目接種完了から、おおむね8カ月以降のタイミングで、18歳以上の希望する全ての方が接種を受けられるようにする。12歳未満の子供も、薬事承認された後接種を開始する。いずれも専門家の意見も踏まえた上で対応していく」
「検査については、感染拡大時に無症状者でも無料で検査が受けられるようにする。感染が拡大した場合でも、ワクチン検査パッケージを活用することで行動時の安全安心を確保する」
「今後の切り札となる飲める治療薬については、年内実用化を目指す。2倍以上の感染力に対応できるよう、薬事承認が行われれば、まず速やかに合計60万回分を医療現場に提供する。さらに100万回分を確保し、今後に万全を期していく。これまでの新型コロナ対応を徹底的に検証し、来年の6月までに、司令塔機能の強化も含めた感染症危機管理の抜本的強化策を取りまとめていく」
「来週中に数十兆円規模の経済対策を取りまとめる。年内のできるだけ早期に補正予算を成立させ、国民の皆さんに一刻も早くお届けする。総裁選のときから、非正規、女性、子育て世帯、学生をはじめ、コロナで困る皆さまへ給付金を届けると申し上げてきた」
「個人向け給付金について、本日公明党の山口那津男代表と、基本的な方向性で合意をした。非正規など経済的にお困りの世帯に対し、1世帯当たり10万円の現金給付を行う。コロナ禍で、厳しい経済状況にある学生にも就学を継続するための10万円の緊急給付金を支給する。困窮している方々には、このほか生活困窮者自立支援金の拡充など、さまざまなメニューを経済対策で用意する」
「子育て世帯に関しては、年収960万円を超える世帯を除き、18歳以下に1人当たり10万円相当の支援を行う。予備費も活用し、年内にプッシュ型で5万円の現金給付を始める。その上で、来年春に向けて5万円相当の支援を行う。子育てに有効に活用いただけよう、クーポン、バウチャー方式を原則とした仕組みとする」
「事業者向けの給付金は、昨年の持続化給付金並みの支援を事業規模に応じて、11月から3月までの5カ月分まとめて一括で給付する。雇用調整助成金は、感染が拡大している地域、業況の厳しい事業者の方々向けの特例を3月まで延長する。また、最近のガソリン灯油価格の高騰を踏まえ、農業、漁業など関係業界やお困りの方々に対する支援を行う」
    ●「賃上げ企業は控除率を大胆に引き上げ」
「続いて経済政策だ。新しい資本主義の起動に向けた議論を本格的に動かし始めた。新しい資本主義実現会議で取りまとめた緊急提言の内容を経済対策にもしっかりと盛り込む。成長のための投資と改革を大胆に進め、その成長の果実を国民の皆さん一人一人に実感していただきたいと思う。そのための新しい分配の仕組みを作り、動かしていく」
「まずは経済を成長させる。科学技術立国を目指し、10兆円の大学ファンドの年度内の創設と新たな大学のガバナンス構築のための法改正。ワクチン、そして治療薬の国内開発生産支援。クリーンエネルギーへの投資に取り組んでいく。経済安全保障も重要な成長戦略の柱だ。人工知能、量子などの分野で研究開発を複数年度にわたって支援する基金を設け、先端的な重要技術を育成していく。サプライチェーンの強靱化や基幹インフラの信頼性確保を進める法案の準備を加速する」
「成長戦略の中で特に私が力を入れているのがデジタル田園都市国家構想だ。デジタルの力を取り込み、地方から新しい時代の成長を生み出す。この具体化に向け、デジタルを活用した地域活性化への交付金を大規模に展開いたします。さらにデジタルインフラに対する投資を進めていく」
「デジタルを活用する際に、障害となる規制改革にも果敢に取り組む。次期通常国会に、自動運転による自動配送サービスを可能とするための法案を提出する。明日以降設置するデジタル田園都市国家構想実現会議およびデジタル臨時行政調査会において議論を行い、年末以降、具体策を示していく」
「そして成長の果実を分配していく。官民挙げ、国民一人一人の給与を引き上げるための具体的アクションを起こす。まず民間部門による分配の強化に取り組んでいく。給料を引き上げた企業を支援する賃上げ税制について、控除率の大胆な引き上げなど制度を抜本的に強化し、賃上げを後押しする。月内に行う次回の新しい資本主義実現会議で、来年の春闘に向け賃上げの議論をスタートさせる。私が労使の代表と向き合い賃上げを促していく」
「企業の成長と給料の引き上げを両立する鍵は人であり、人への投資だ。働き手がデジタルなどの新しい時代のスキルを身につけられるよう、人への投資を抜本的に強化するための3年間の施策パッケージを設ける。予算を大胆に投入し、職業訓練や能力開発、正社員化や処遇改善への支援を拡充する。女性や高齢者が活躍しやすい職場環境作りを進めていく」
「同時に公的部門での分配を強化する。民間における賃上げに先んじて、看護、介護、保育、幼稚園などの現場で働いている方々の給料を増やしていく。公的価格評価検討委員会において検討を進めるとともに、まずは経済対策において先立って、必要な措置を行い、前倒しで引き上げを実現していく。また教育、住居費負担の軽減など子供子育て支援策を強化する。皆で支え合う、持続可能で安心できる社会保障の構築に向け、全世代型社会保障構築会議の議論を進めていく」
「次に外交安全保障だ。私の対面外交は先週、英国でのバイデン米大統領との懇談から始まった。バイデン氏とは早期に再会し、じっくり話そうということを確認した。年内を含め、できるだけ早く米国を訪問し、日米同盟のさらなる強化、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け連携していく。今後も首脳同士の往来に加え、国際会議の機会や電話会談も活用し積極的な首脳外交を展開していく」
「ASEAN(東南アジア諸国連合)や欧州の首脳との電話会談など、普遍的価値を共有するパートナーとの関係強化に取り組んでいく。中国やロシアとの関係では、主張すべきは主張し、毅然とした外交を進めていく」
「拉致問題は最重要課題であり、すべての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃さず、全力で取り組む。私自身、条件を付けずに、(北朝鮮の朝鮮労働党総書記の)金正恩(キム・ジョンウン)委員長と直接、向き合う覚悟だ。私が指示した国家安全保障戦略などの改定は、国家安全保障会議で徹底的に議論を行っていく。ミサイル防衛能力、AIなどの最先端技術、宇宙、サイバーなどの新たな課題にスピード感をもって対応し、防衛力の強化に取り組んでいく」
    ●「憲法改正へ自民内の体制強化」
「先週参加したCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)で議論された気候変動問題、そして中間層の伸び悩み、格差の拡大。現代の経済社会システムがもたらした負の側面を乗り越え、長期的に持続可能な経済社会を構築していこうという議論がグローバルに行われている。私が提唱する新たな資本主義の実現に向けた議論を世界に発信し、課題解決に向けて、わが国が先導的な役割を果たしていく」
「これまでも何度も約束した通り、私は国民の皆さんとの丁寧な対応を行い、皆さんの声を政策に反映させていく。そのために、今後も車座対話は続けていく。これからも積極的に現場に出向き、国民の皆さんと対話しながら、あるべき政策を考え実現していく。この丁寧な対話を基礎に、若者も高齢者も障害のある方も、男性も女性も、全ての人が生きがいを感じられる多様性が尊重される社会を目指していく」
「自民党総裁としては、これらの政策対応に加え党改革と憲法改正が重要な課題であると考えている。自民党は責任政党として大胆なガバナンス改革を進め、中堅若手の積極的な登用、多様な人材の活躍、国民との開かれた対話、中長期的な政策立案を行い得る政党へ進化していかなければならない。このため、茂木敏充幹事長のもとスピーディーに検討を進め、実行していく。今回の総選挙の結果を踏まえ、党是である憲法改正を進めるため、党内の体制を強化するとともに、国民的議論のさらなる喚起と国会における精力的な議論を進めるよう指示した」
「私は最初に内閣総理大臣としての指名を受けた日に、『この内閣は新時代競争内閣である』と申し上げた。自民党はその後の選挙戦において、『新しい時代を皆さんとともに』というキャッチフレーズを掲げ戦った。新型コロナ、気候変動や格差の問題など、グローバルで議論されている既存の経済社会システムのゆらぎ。一層厳しさを増す国際情勢。わが国は大きな変化の時を迎えている。われわれはこうした変化に対応し、新しい時代を作り上げていかなければならない。私一人では、そして政府だけでは、この極めて厳しいミッション、難しいミッションを達成することはできない。国民の皆さんの力が必要だ。心から皆さんのご理解とご協力をお願い申し上げる」
――新しい資本主義実現会議がまとめた緊急提言には、これまでの政権も重視してきた政策もある。岸田内閣として、成長と分配の好循環をどのように実現するか
「従来との違いということで質問を頂いたと思うが、従来の取り組みにひと工夫ふた工夫加えることによって、具体的な結果に結びつける。こうした努力が重要であると思っている。例えば科学技術イノベーションという取り組みについても、10兆円の大学ファンドを設けて支援すると申し上げた。従来のファンドは4・5兆円程度しか積み上がっていなかったので、これを10兆円に拡大した」
「しっかり支援の体勢を作ることは大事だと思うが、それに加えて、資金を受ける大学時代のガバナンス改革もしっかり進めていかなければならない。例えば、研究と経営の分離と言った大学改革を進めることによって、若手研究者がより研究に専念できる体制を作っていくことができると思っている。こうしたファンド等における資金の援助と合わせて、大学改革等の組織制度の改革も合わせて行うことによって、結果につながっていく。このように思っている」
「それ以外にも、例えばクリーンエネルギーについても資金面での支援を引き続き申しあげているが、資金面で支援するだけではなく、例えば、蓄電池や水素、さらにはアンモニアといったこの新しい課題におけるマーケット。市場。これはどういった方向性でどのくらいの規模を考えているのか。こうした大きな枠組みについて、政府としてもしっかりと示していく。さらには、CO2(二酸化炭素)もどういった規制を考えているのか。具体的な内容をしっかり示していくことが、資金的な支援と相まって民間の投資をより大きくしていく。こういった結果につながるのではないか。このようにも思っている」
「さらには経済成長を考えた際に スタートアップが大変重要であると申し上げてきた。これは従来言われてきたし、これからも大事だと思う。スタートアップの支援もファンドとか、大企業の支援もちろん大事ですが、例えば、今の上場制度を考えても、十二分に、このスタートアップ自身が資金調達を、結果を得ることができていないのではないか。さまざまな改正が必要ではないか。こういった指摘がある」
「このスタートアップ自身の資金調達のために、上場制度も見直していく。こういった取り組みを加えることで、結果つながっていく」
    ●Go To トラベル「仕組みを抜本的に見直し再開時期を見極める」
「さらには賃上げについても、民間の皆さんにしっかり努力いただくために、賃上げ税制を見直すと申し上げた。従来賃上げ税制あったではないかという指摘もあるが、従来の賃上げ税制は人件費総額に視点を当てて、評価して、そして控除を行う。こういった仕組みだったが、それでは一人一人の賃上げにはつながらない。よって人件費総額ではなく、その給与の平均、一人一人の給与の平均の引き上げを評価して、さらに控除額をさらに大きくする」
「こういう形で賃上げ税制もバージョンアップすることによって、より民間の協力を促すことができるとか、それから赤字企業に対するさまざまな補助金についても賃上げを一つ条件にするとか‥。そういった形で、従来にも増して民間の皆さんの協力を得られる。そして何よりもそれに先駆け、公的価格。国が主導できる賃金について、国が率先して引き上げることによって、民間の努力をさらに促していく。こうしたあの従来の取り組みに、ひと工夫ふた工夫加えることによって、それぞれの課題、具体的な結果につなげていく。その全体をつなぎ合わせることによって、成長と分配の好循環を実現する。このように考えている」
――敵基地攻撃能力の保有に公明党は否定的だ。防衛費の「GDP(国内総生産)比2%以上」も疑問視している。どう理解を進めるか。いつまでに取り組むか。
「まず大事なことは、国民の命や暮らしを守るために必要なものは何なのか。こうした現実的な議論をしっかり突き詰めていくことだと思っている。ミサイル防衛を考えても、超音速滑空兵器や変則軌道で飛来するミサイル。ミサイルに関する技術も急速なスピードで変化し、進化している。その中にあって、国民の命や暮らしを守るために、あと何が求められるか。その際に、あらゆる選択肢を排除せず、現実的にしっかり考えなければいけない。このように思う」
「また、それ以外にも島嶼(とうしょ)防衛や宇宙・サイバーといった新しい課題が大きな議論になり、そして現実、動いている。その中にあって、国民の命や暮らしを守るために何が求められているのか。これを冷静に現実的にしっかり考えていく。こういった議論を進める中で、国民の皆さん、そして与党、公明党の皆さんにもしっかりと理解をいただき、その結果が予算の額になるんだと思っている。まずは現実をしっかり見つめ、変化の中で何よりも政治にとって大切な国民の命や暮らしを守るために何が必要なのか。こういった議論をしっかり突き詰めることによって、国民や公明党の皆さんの理解を得て、具体的な予算をはじめとする結果につなげていきたいと思っている」
「タイムスケジュール等にも質問があった。これは今、言ったような議論を丁寧に進める中で理解をいただいた部分から、順次、予算等に組み入れられるものは組み入れていくということで、議論の結果を形にしていくという姿勢で臨んでいきたいと思っている」
――観光支援策「Go To トラベル」の再開や外国人観光客の入国制限の緩和などはどう考えるか
「Go To トラベルについては、まずワクチンや検査も活用して、より安心・安全な形の仕組みをしっかり考えていただければいけない。新たな、安心な制度を作っていくことが大事であると思っている。ぜひ、そうした仕組みを抜本的に見直した上で、準備を進めた上で、時期については専門家の皆さんの意見も聞きながら、感染状況をしっかり見極めて、(再開)時期を決めていきたい。このように思っている」
「まずはGo To トラベル。昨年の経験を踏まえて、より安心・安全なもの。さらには制度として中小零細の業者に裨益(ひえき)する制度を考えるべきではないか。さらには平日をより活用する制度にすべきではないか。いろんな議論もある。その辺も含めてしっかりと制度設計、制度を準備した上で、タイミングについてはしっかり考えていきたい」
「観光客の入国・水際対策についてだが、まず年内に団体観光の行政管理、行動管理の実行性能について検証を今、行おうとしている。こういった実証実験を行った上で検討を進めていきたいと思う。年内においては、ぜひ観光目的の入国について実証実験、検証を行いながら、タイミングを図っていく。こういった姿勢で臨んでいきたいと思っている。感染状況、今、収まっているが、決して楽観視してはならない。慎重に状況を見ながら今言った準備をしつつ、タイミングを図っていきたいと思っている」
    ●「大学生らにもう1回10万円給付する」
――人権問題担当の首相補佐官を新設した。人権侵害は中国だけでなく世界的な課題だ。日本でも名古屋出入国在留管理局に収容中だったスリランカ人が死亡した。こうした問題にどう対応するか
「具体的な案件に対する対応は、就任した中谷元・首相補佐官にしっかりとこれから検討し、調整してもらわなければならないと思っている。基本的にわが国において、外交のみならずさまざまな課題において普遍的な価値、自由や民主主義とともに、こうした人権。こういったものをしっかり順守しながら取り組みを進めていく。こうした基本的な方針は大変重要だと思っている」
「そしてその際、ご指摘のように、人権の課題は外務省や一定の役所だけではなく、法務省をはじめさまざまな役所にまたがる課題だ。そういった幅広い課題について、人権担当の補佐官には、しっかりと各省庁とも連携しながら全体を見つつ、あるべき政府の方針について考えてもらう。それを補佐してもらう。こうしたことを期待しているところだ」
――18歳以下への給付金に全面的に賛同する意見は、ネットをはじめあまり見受けられない。首相から、国民に納得の得られる給付のあり方を提示する考えはないか
「おっしゃるように国民の皆さんに納得していただくことは大事だと思う。今回の自民、公明両党での合意、取り組みについても丁寧に説明をし納得していただく努力は大事だと思っている。今回の給付、経済対策において、私自身は総選挙のみならず(自民党)総裁選の時点から非正規、女性あるいは子育て世帯、学生、コロナによって困っておられる皆さまへの給付をお届けすると申し上げ続けてきた」
「そういった観点から、今回の経済対策の中に非正規など経済的にお困りの方に対し、1世帯当たり10万円の現金給付を行った。ご指摘の18歳以下の子供に対する給付だが、18歳以下を対象とする。これはすなわち、子育て世代に対する支援につながるというものでもあると思っている。さらには、なんで18歳までなのかという声もあるやに聞いているが、支援策の中に、大学生あるいは専門学校生、こういった方々にも10万円の給付を行う。これは昨年1回やったわけだが、これをもう1回、この大学生や専門学生の方にも給付する。これも経済対策の中に盛り込んでいる」
「こういった形で、より困った方に焦点を当てながらも、18歳以上の方々に対する支援も全体の中に盛り込んでいる。この全体像をぜひ、しっかり丁寧に説明することによって、国民の皆さんに納得していただくよう努力を続けていかなければならない。このように思っている」
――首相は総裁選に出馬するとき「民主主義の危機。国民の信頼が壊れている」と発言した。現在、危機は脱したと考えるか。「モリカケ桜」といわれる安倍晋三、菅義偉両政権の負の遺産について、今でお再調査などに否定的か
「私は引き続き民主主義の危機の中にあると思っている。民主主義の危機にあると申し上げたのは、コロナ禍の中で、国民の皆さんの心と政治の思いがどうも乖離(かいり)してしまっているのではないか。こういった声を多く聞いたということを挙げて、民主主義の危機ということを申し上げた。国民の皆さんの思いが政治に届いていないのではないか。政治の説明が国民の皆さんの心に響かない。こういった状況をもって民主主義の危機だということを申し上げた。自民党が国民政党として国民の声をしっかり受け止められる政党であることをしっかり示さなければならない。こういったことも危機を前にして申し上げた。こういったことだ」
「よって、先程も申し上げたし、今までも何度も申し上げているように、国民の皆さんとの対話。意思疎通。丁寧で寛容な政治。こういった姿勢をこれからも取り続けることが国民の皆さんと政治の距離を縮める大変重要なポイントであると思い、これからも努力を続けていきたいと思う」
「自民党の党改革についても冒頭申し上げた。自民党が若手をしっかり登用できる。多様性をしっかり受け入れることができる、国民との対話ができる政党であることを示すために、党改革を進めるということも冒頭申し上げた。引き続き危機を感じているからこそ、こうした努力を続けていかなければいけない、このように思う」
「そして、モリカケ桜問題だが、これも従来申し上げているように、行政であったり会計検査院であったり、あるいは検察であったり、さまざまな機関で調査が行われ、報告書が出されている。そういったものをしっかりと見ていただいた上で、なおかつ足りない部分があれば、政治として説明をさせていただく。こういった姿勢をこれからも大事にしていきたいと思っている」
    ●「改憲議論と国民理解は両輪」
――国際人権問題担当の中谷元・首相補佐官は、外国での重大な人権侵害行為に制裁を科す日本版「マグニツキー法」の制定に積極的だが、首相の考えは
「中谷補佐官は、ご指摘のように超党派での活動などに参加し、法改正の議論にも参加していた。ただ、政府として人権の補佐官としてご活躍いただく以上は、政府全体の方針にしっかりと協力していただかなければならない。ご指摘の法改正については、超党派の議論は続いていると思う。その辺の状況はしっかり見た上で、政府としてしっかり判断していかなければならない。政府としてどう判断するか、しっかりと確認した上で、中谷補佐官にもしっかりその方針に従って行動してもらうこと期待したい」
――労働運動に対し、どのように向き合うか。働く人たちの声をどう政策に反映していくか
「私が申し上げている新しい資本主義とは、経済を成長した上で、その成長の果実をさまざまな地域の現場で働く方々一人一人に広く分配し、生活の豊かさを実感してもらう。そして、それが消費につながることによって成長と分配の好循環を実現しようというのが基本的な考え方だ。よって、この好循環を実現するためには、やはり地域、現場において、しっかり汗をかいておられる方々の声をしっかりと受け止めながら、現実の政策を進めていかなければならない」
「労働組合や現場で働いている方々の声も幅広く国民の皆さんの声として耳を傾け、丁寧で寛容な政治を進めていくことが重要だ。そういった姿勢の中で労働組合の皆さん、現場で働いている皆さんとも丁寧な対話を重ねながら、寛容で丁寧な政治を進めていく。こうした姿勢を大事にしながら向き合っていきたい」
――憲法改正について自民党に指示した体制強化とは、具体的にはどのようなことを想定しているのか。また、国民との対話を促す取り組みで具体的なものはあるか
「当然のことながら従来、自民党の中において憲法改正について議論する組織が存在するが、新しい内閣がスタートしたことを受け、また今回の衆院選の結果を受けた上で、より憲法改正についてしっかりと取り組んでいかないといけない。こうした声は党内にも高まっていると受け止めている」
「そういった方々とお話しする中で、従来の組織も大事な組織だが、より国会の議論ともしっかり連動する形で、そして国民の皆さんとの対話も重視する形で、党内の体制をしっかりと拡充することができないだろうかといった議論を今行っている。ぜひこうした議論をしっかり行った上で、党内体制についても考えていきたい。そういった思いを先ほどの発言の中に込めた次第だ」
「そして、国会の議論と、国民の皆さんの憲法改正に対する理解の二つは車の両輪であると思っている。この両方がそろわないと憲法改正は実現しない。ともにしっかりと進めていかなければならないと思っている」
「さらに言うと、この二つは両方進めることも大事だが、大変、関連する。国民の皆さんの理解が国会の議論を後押しするなど、関連する議論でもあると思っている。そういったことから、私も以前お話ししたが、自民党政調会長時代に地方を回りながら、憲法改正の議論を地域の多くの市民の皆さんと対話を行う形で行った。あのときの手応えを大事にしながら、これからも国民の皆さんとの対話の中で、国民の皆さんの憲法改正に対する思いを盛り上げていただく工夫を、党としても行っていくことが大事であると認識している」
「こんなことも今、党内の憲法改正に熱心に取り組んできたメンバーとも話し合っている。これが現状だ。こういった思いをぜひ形にしたいと思っている」
    ●憲法改正「与野党の枠超えて賛成得るべく努力」
――COP26では、日本がNGOから「化石賞」を受賞する一幕もあった。2030年以降も石炭火力を維持しようとすることに厳しい指摘もあった。新しいエネルギー基本計画で、2030年度に石炭を19%使うとの方針は変えないか。日本の努力が正当に理解されていないと考えるか
「まず私自身、現地に行って議論する際に、わが国の100万ドルの追加支援等は主催国の英国、米国をはじめ関係国から高く評価された。これはもう強く実感したところだ。しかし、その中で『化石賞』を受けた。化石賞、毎日3カ国、指摘される中の2日目の3カ国の1つに日本が入ったということで化石賞を受けた。こういったことだ。NGOの評価ということだった。こうした指摘があることも、もちろん謙虚に受け止めなければならない。そしてその中で、ご指摘のように石炭火力に対する厳しい目があるということ、これはしっかり受け止めなければならないと思う」
「石炭火力も、日本としては地域のさまざまな事情に配慮した上で、アンモニアや水素、最新の技術をしっかり活用することによって、石炭火力の負の側面をしっかりと押さえていく。こういった方針についても説明をした。こうした技術に対する説得力もよりしっかり高めていかなければ、国際社会の皆さんの十分な理解にはつながらない。より努力しなければいけない点ではある。こんなことも感じてきた」
「地球温暖化に対する取り組み、さまざまな課題がある。そのさまざまな課題の中で、日本の取り組みが評価されている部分もある。一方で、指摘をされている部分もある。この辺を冷静に整理した上で、吟味した上で、これからの日本の方向性について考えていく。こうした冷静な取り組みをわが国としてもしっかり進めていき、全体として日本の取り組みを評価される。こうした結果につなげていくよう努力は続けていきたいと思う」
――見直す予定はないということか
「今の方針はすでに明らかにしている通りだ。この方針をしっかり進めていき、なおかつ、先程いった最新の技術等を活用することによって、より理解される結果につなげていく。努力は続けていきたいと思っている」
――憲法改正で(国会発議に必要な)3分の2以上の勢力を確保するため、日本維新の会や国民民主党などに積極的に協力を求めていくか。それとも数合わせのような協力は否定的なのか
「国会の議論においては、まず自民党としては自公政権の体制のもとに国会論戦に臨むわけだが、野党との議論は是々非々で臨む。これが基本であると思う。一方、憲法改正議論には、改正を実現するためには与野党の枠を超えて、3分の2以上の賛成が得られるようにしっかりと努力を続けていくことが大事であると思っている。だから、結果として3分の2以上の賛成を得るべく努力をするということだ。ご指摘のように、政党の枠組みでどうこうというのではなく、結果を得るためにどうすべきなのか。しっかりと検討し、努力をしていきたい。このように思っている」 「いずれにしろ、国会での発議のために、国会の議論を進めていかなければいけない。そのためにも、先ほど申し上げた国民の皆さんの幅広い理解と相まって、こういった議論を進めることが大事だと思っている。両方しっかり進めていくことが基本であると思っている」 
 
 
 
 
 

 

●岸田内閣が基本方針「信頼と共感の政治実現」 11/11
第2次岸田文雄内閣は10日夜の初閣議で、内閣の基本方針を決めた。「一人一人の国民の声に寄り添い、多様な声を真摯(しんし)に受け止め、信頼と共感を得られる政治を実現する」と明記した。その上で1国民の声を丁寧に聞き、政策に反映2個性と多様性を尊重する社会を目指す3みんなで助け合う社会を目指す―を政権運営の基本として約束した。
新型コロナウイルス対策は対応の全体像を早急に示し、最悪の事態を想定して感染拡大に備えるとした。「新しい資本主義」により成長を実現し、成果を実感できる経済をつくると明言。成長戦略、分配戦略について「施策の具体化を急ぐ」とした。
外交は日米同盟を基軸とし、中国とは対話を継続しながら責任ある行動を求めるとした。東日本大震災をめぐっては「東北の復興なくして日本の再生なし」と明記し、福島の復興・再生に全力を尽くすと強調した。
●初大臣政務官会合 11/11
令和3年11月11日、閣議において第2次岸田内閣の大臣政務官が決定しました。
岸田総理は、総理大臣官邸において大臣政務官に対して辞令交付を行った後、記念撮影を行い、初大臣政務官会合に出席しました。
総理は、冒頭の挨拶で次のように述べました。
「大臣政務官会合に際して、一言御挨拶を申し上げます。昨日、第2次岸田内閣が発足いたしました。この度の総選挙において国民の皆様から頂いた多様な声を真摯に受け止め、形にする、信頼と共感を得られる政治を実現していくことが重要です。引き続き、第1次内閣の発足時にも述べた国民の皆様に対する3つのお約束を果たすとともに、国民の皆様から頂いた信任の下、スピード感を持って政策に取り組んでまいります。まず、新型コロナ対応と経済対策に取り組みます。同時に、新しい資本主義を起動し、成長を実現し、その果実を国民一人一人に実感していただける経済を作り上げます。そのために、成長のための投資と改革に大胆に取り組むとともに、分配のための新たな仕組を作り、動かしていきます。また、日本の平和と安全を守り抜き、世界に貢献する外交、安全保障を推進してまいります。各大臣政務官におかれましては、岸田内閣の一員として、こうした基本方針を肝に銘じ、政策の実現に邁進(まいしん)していただきたいと思います。その際、大臣、副大臣をしっかりとサポートし、官僚との適切な信頼関係の下、各府省の力が十分に発揮できる環境づくりに取り組んでいただくよう、お願いいたします。国民の皆様と新たな時代を切り開いていくため、それぞれの分野で持てる力を存分に発揮し、全身全霊を捧(ささ)げて職務に当たっていただきたいと思います。」
●経団連 岸田新内閣に「成長と分配の好循環」の実現を求める 11/11
経団連は第2次岸田内閣に対して、政権が掲げている「成長と分配の好循環」の実現などを求めました。
経団連は「新内閣に望む」と題した要望書をまとめ、この中で、安倍・菅両政権下における成長戦略を発展的に継承し、経済の底上げを目指した成長主眼の「成長と分配の好循環」の実現を求めました。また、官民協力のもと、現下の難局を乗り越える政策課題の解決に迅速果敢に取り組み、産業の国際競争力の向上によって、安定かつ力強い経済成長を実現することや、安心・安全で国際的に信頼できる国として存在感を発揮することなどを要望しています。
経団連の十倉会長は11日午後、経済同友会の櫻田代表幹事、日本商工会議所の三村会頭らと総理官邸を訪れ、岸田総理に要望を伝えました。
●第2次岸田内閣が本格始動 菅前首相に協力要請 11/11
第2次岸田内閣は11日、発足から一夜明けて本格始動した。
午前9時すぎに首相官邸入りした岸田文雄首相は、官邸を訪れた菅義偉前首相と約20分間会談。新型コロナウイルスの新規感染が抑えられていることを念頭に、前政権のコロナ対応に謝意を表明。「気になることがあったら言ってください」と政権運営に協力を求めた。
肝煎り政策の実現にも早速、取り掛かった。岸田首相は小林鷹之経済安全保障担当相を呼び、通常国会に提出を目指す経済安保法案の策定を急ぐよう指示。この後「デジタル田園都市国家構想実現会議」に出席し、「成長と分配の好循環」に向け、構想を早期に具体化する考えを示した。
第2次内閣発足に合わせて起用された林芳正外相も外務省で記者会見。「身が引き締まる思いだ。普遍的価値や日本の平和と安定を守り抜く覚悟を持って、外交を展開したい」と意気込みを語った。
●安倍氏、李登輝氏墓参で訪台に意欲… 11/11
自民党の安倍元首相は11日、昨年7月に死去した台湾の李登輝・元総統の墓参を目的とした訪台に意欲を示した。党本部で記者団に「日本にとって大切な人だった。お墓参りは機会があればしたいと考えてきたし、今も考えている」と述べた。ただ、「岸田内閣が船出したばかりで、あまり波風を立てるべきではない」とも語った。
昨年9月の台湾での李氏の告別式には、森喜朗・元首相が参列。安倍氏はメッセージを寄せた。
●岸田内閣発足に祝意 台湾総統 11/11
台湾の蔡英文総統は11日、ツイッターに日本語で投稿し、第2次岸田内閣の発足について、「心からお祝いを申し上げます」と祝意を表明した。その上で、「全人類の健康や地域の安全を脅かす要因が存在し続けていますが、東アジアの安定と平和、繁栄のために、民主主義と人権などといった普遍的価値を共に守り続け、台日関係がより強固に発展することを期待しています」と日本側に呼び掛けた。
●林芳正氏、日中友好議連会長を辞任表明 「無用の誤解を避けるため」 11/11
第2次岸田内閣で外務大臣に就任した林芳正氏が、超党派の「日中友好議連」の会長職を辞すると表明した。11月11日、外務省で行った就任会見で明らかにした。
その理由について、林氏は「外務大臣としての職務遂行に当たって無用の誤解を避けるため」と説明した。「様々なご意見等が間接的に報道等を通じて寄せられているということを承知しております」とも述べた。
林氏の外務大臣起用をめぐっては、日中友好議連の会長を務めていることから「親中派」だとして自民党内から慎重論が出ていた。
こうした声を背景に、林氏は外相就任前の11月8日のBSフジの番組で、外相について「『知日派』という言葉があるように『知中派』であってもいい」「『媚中』ではいけない」と語っていた。
●1年生議員が初登院「引き締まる思い」 衆院選後初の国会 11/11
衆議院選挙を受けた特別国会が10日に召集され、自民党の岸田文雄総裁が第101代総理大臣に選出されました。
栃木県内からは比例で復活当選した2人の新人議員が緊張した面持ちで初登院しました。立憲民主党の藤岡隆雄議員です。栃木4区から4度目の挑戦で比例で復活当選しました。まだ薄暗い5時半から地元のJR小山駅前に立ち、利用者らに感謝の言葉を述べたあと、始発の新幹線で東京駅に出発。
国会議事堂前では正門が開く午前8時前から全国各地の戦いを勝ち抜いた議員らが開門を待ちました。
大勢の報道陣も詰めかける中、藤岡議員は開門と同時に門をくぐりました。一方、栃木2区から出馬し比例復活した自民党の五十嵐清議員は9日、都内に入りました。午前9時ごろ知恵夫人とともに正門に到着すると地方の声を国に届けたいと背筋を伸ばしました。
今回の衆議院選挙では97人の新人が当選していて、議員バッジを受け取ると再選を果たした議員らとともに次々と初登院しました。
●公約どう実現するか 11/11
衆院の解散総選挙を受けての特別国会が十日、召集された。特別国会は三日間の日程だが、年内にも開会見込みの臨時国会は国民の信任を受けた議員の本格論戦の場となる。選挙中に掲げた公約や主張をどう実現していくのか。有権者として各党が打ち出す政策や、各議員の発言を注視していきたい。
今回の衆院選で、公明党と連立を組む最大与党の自民党は議席を減らしたものの、追加公認二人を含め、全ての常任委員会の委員長を押さえ、国会運営を主導できる絶対安定多数(二百六十一議席)に単独で達した。ただ、現職幹事長が選挙区で敗れ、辞任に追い込まれる大きな痛手を負った。四党が共闘を組んだ野党は主軸の立憲民主党が伸び悩み、代表はじめ執行部が退陣する事態に追い込まれた。
与野党双方に勝利の高揚感のないまま国会に臨むことになるが、論戦が低調では有権者の評価はますます下がるばかりだ。こうした時こそ国民に対して、より丁寧な説明が求められる。最大の焦点は、現在は落ち着いている新型コロナウイルス対策となるだろう。対策は感染防止から、疲弊した観光業や飲食業など経済への対応、子育て家庭への支援など幅広い。
政府・与党は経済対策の財政支出を三十兆円超とする方向で調整を始めた。十八歳以下の子どもに対する十万円相当の給付のほか、観光支援事業「Go To トラベル」の再開、介護士や保育士、看護師らの処遇改善などを盛り込む見通しだ。事業の裏付けとなる補正予算案の財源も含め、分かりやすい議論に期待したい。
野党も選挙中には積極的な経済政策を打ち出している。感染の推移を見ながら、誰を助けるために、どこに力点を置き、何に最優先に取り組むのか。柔軟な対応とともに、早期に合意点を見いだすよう求めたい。
福島民報社が選挙期間中に実施した県民への電話世論調査では、次期政権に望む新型コロナウイルス対策のトップは41・7%の「治療薬の開発」だった。「医療体制の充実」が18・2%で続き、「Go To トラベルなど経済対策の充実」の6・8%を大きく上回った。
政府・与党は経済対策を重視しているが、県民には「第六波」といわれる爆発的感染の再来への懸念が強い。衆院選では、医療体制の強化や病床確保に向けた議論は深まらなかった。これまでの経験を踏まえ、医療崩壊を起こさない具体的な対応策の明示も必要だろう。
●第2次岸田内閣発足 すでにおぼろげな「独自色」 11/11
新型コロナウイルス禍にあえぐ国民生活と経済を回復させる重責を担い、自民党の岸田文雄総裁がきのう、首相に再び選出され、第2次岸田内閣を発足させた。
岸田首相は就任10日で衆院解散に踏み切ったため、本格的な政権運営はこれからだ。第1次岸田内閣で初入閣した13人全員が再任され、閣僚として初めて資質が問われる。
衆院選で与党は国会運営を主導できる絶対安定多数を確保した。首相は続投へ信任を得たが、独自色が薄らいでいることは看過できまい。
「令和版所得倍増」をはじめ、「金融所得課税の見直し」、感染症対策として創設を打ち出した「健康危機管理庁」(仮称)など、岸田氏が総裁選で掲げた政策は党公約に明記されなかった。
「成長も、分配も」を唱えた岸田氏の看板政策だった所得倍増は、耳目を引くためのキャッチフレーズにすぎなかったのか。「党役員任期は1期1年、連続3期まで」とうたった党改革も党の公約から抜け落ちている。総裁選からわずか1カ月余り。「岸田カラー」は政権の本格始動を前に、すでにおぼろげだ。
今月中旬にまとめる大型経済対策が最初の関門だ。
衆院選で各党とも即効性を重視し、「分配」の名を借りた「現金ばらまき」で有権者を引き付けようとした。
与党が合意した18歳以下の子どもに現金5万円と5万円相当のクーポンを給付する案は、全国民に一律10万円を配った昨年の給付金をベースとし、使い勝手を工夫したようだ。だが、現金給付はそもそも、消費を刺激し景気を浮揚させる効果は限定的だ。ましてや10万円程度では家計の急場しのぎにしかならない。
感染の大波に繰り返し襲われ、国力は消耗している。経済的な格差が拡大する中、最も成否が問われるのは、首相が唱える「新しい資本主義」の具体化策だ。
賃金を上げた企業に対する法人税の負担軽減、看護師や介護士、保育士の給与引き上げにつながる仕組みの導入などが検討されている。デジタルやグリーン、人工知能(AI)など先端技術の研究開発への投資といった成長戦略と合わせ、所得拡大に向けて政策を総動員する方針だ。
競争重視の新自由主義的な政策を転換し、経済成長の果実が中間層に配分される好循環を生むことができるかどうか。経済対策の財源の裏付けとなる2021年度補正予算案の編成が試金石となる。
「医療難民ゼロ」の公約もあいまいにしてはならない。ワクチン接種率が7割を超え、重症化予防薬も開発された。医療逼迫(ひっぱく)のリスクは低減しているが、臨時施設など医療体制の整備はいまだ途上だ。
今夏の「第5波」は医療の弱点をさらけ出した。感染が沈静化している今こそ、施策を総点検し、医療の構造改革を断行すべきだ。
●第2次岸田内閣 説明と対話の姿勢忘れるな 11/11
岸田文雄首相が第2次政権の内閣をスタートさせた。先月の衆院選で、自民党は引き続き絶対安定多数を確保し、岸田政権は国民の信任を得た。選挙戦で掲げた「新しい資本主義」など国民生活に関わる政策をどのように実行するか、これからの政権運営で真価が問われよう。第2次内閣の閣僚は、自民幹事長に転出した外相のポストを補充した以外は、すべて再任した。本格政権へ踏み出したといえる。ただ、衆院選に先立つ党総裁選では、経済政策などで前任の安倍晋三・菅義偉両政権と異なる路線を示しながら、選挙公約に金融所得課税強化の記載を見送るなど、主張を後退させる面も目立った。安倍・菅政権とは違う新しい政権の姿を明確に示せるかどうか。国民はそこを注視している。これまでの政権に足りなかった説明を尽くし、国民と対話する姿勢が欠かせない。得意という「聞く力」を生かすことができるかだ。看板政策の「新しい資本主義」の内容は、はっきりしていない。分配に着目し、分厚い中間層の復活を主眼としていたはずだ。
看護師や介護士、保育士の収入増に向け、国が決定する「公的価格」を見直す方向をさっそく打ち出したのは一歩前進といえる。しかし、賃上げに積極的な企業を税制などで優遇したり、先端技術への投資強化で企業活動をけん引したりする手法は、成長を重視してきた従来の路線とも似通う。岸田氏の政策が、中間層の育成や経済格差の解消にどうつながるかは分かりにくい。アベノミクスの総括も含め、政策効果を具体的に語ることが必要だ。政策を裏打ちする財源論への目配りも欠かせない。新型コロナウイルス対策で巨額の財政出動がなされたこともあって、国の借金は1200兆円超に膨らんだ。目の前の困窮者を救う政策は必要だが、借金以外の財源確保に関する議論はほとんどなされず、財政規律は棚上げされている。近く示す30兆円規模の経済対策も借金に頼ることになりそうだ。財政の持続可能性や債務膨張のリスクを見据えることなしに責任ある政策は打てないことを、岸田氏は認識すべきだ。コロナ感染は下火になっているが、再流行に備えて病床や医療人材の確保に向けた取り組みを着実に進めたい。国民の生命と健康を守ることが政治の大きな役割であることを忘れてはならない。歴代政権が先送りしてきた社会保障制度の再構築は、切迫した問題だ。団塊の世代が75歳になり始める2022年が間近だ。6月に成立した医療制度改革関連法で一部高齢患者の窓口負担引き上げが決まったが、現役世代への恩恵は乏しく、本格的改革には遠い。議論に本腰を入れる時だ。負担と給付の在り方は中間層の暮らしに密接に関わる。岸田氏には避けられないテーマのはずだ。外交は難しい局面にある。米中対立が激化する中、日本は安全保障面で米国に依存しながら、経済的には中国との関わりも無視できない複雑な立ち位置にある。対立を深める2大国の間で、新たな戦略を練り直す必要がある。
対中国では、香港や新疆ウイグル自治区での人権弾圧を念頭に、担当の首相補佐官を置いた。経済活動と併せて、人権問題を重視する日本の姿勢を明確にできるかどうかが試される。冷え込んでいる日韓関係や北朝鮮の核・拉致問題の打開に向けた手だても問われる。世界的な気候異変が深刻化する中、温室効果ガス削減への具体策づくりは喫緊の課題だ。開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、岸田氏は石炭火力発電廃止の道筋を示せなかった。このままでは世界の潮流に遅れてしまう。炭素税の検討や原発の扱いも含め、エネルギー政策の転換に踏み込む必要がある。衆知を集めて実効性ある解を探るべきだ。衆院選の結果、改憲に積極的な勢力が議席を伸ばした。憲法問題が改めて俎上(そじょう)に上ってきそうだ。岸田氏は護憲色が強い自民派閥「宏池会」を率い、かつては9条改正に慎重な発言をしていた。それが総裁選では9条への自衛隊明記を含む改憲に前向きな姿勢を示し、専守防衛を逸脱しかねない敵基地攻撃能力保有にも言及した。
ただ、自衛隊明記などを巡る国民的議論は進んでいない。共同通信が今月初めに行った世論調査では、衆院選で最も重視されたのは経済政策で、次が年金・医療・介護。改憲を挙げた人はわずかだった。国民にとって優先すべき政治課題は何か、よく見極めなければならない。安倍・菅政権では巨大与党が国会を支配し、立法府が政権の追認機関のようになっていた。衆院選が戦後3番目の低投票率となったのは、数に任せて多様な意見を封じてきた国会の在り方に対する不信感の表れにも思える。与野党とも国会の役割を認識し直し、地道な議論を積み上げる場にしてほしい。
●松野博一官房長官 安倍元首相をイラつかせた再入閣 あだ名はつくのか? 11/11
新聞各紙の「閣僚の横顔」では〈地味〉〈目立つ存在ではない〉と存在感の薄さを何かと書かれた。入閣は5年ぶり2回目。自民党政調会長時代の岸田首相に会長代理として仕え、信頼関係が就任の決め手になったと解説される。それで面白くないのが安倍元首相だ。松野氏は安倍元首相が牛耳る党内最大派閥の細田派所属、要職の事務総長をこなすベテランなのだが……。
「岸田総理・総裁の生みの親を自負する安倍元総理は、『萩生田官房長官、高市幹事長』を求めていた。フタを開けてみればいずれもかなわずイライラというわけですが、細田派幹部はむしろ松野長官を大歓迎。松野さんは派閥を取り仕切る事務総長として汗をかいてきたし、当選回数も萩生田さんより2期も上ですから」(清和会関係者)
細田派「四天王」
細田派をめぐり、安倍元首相が2017年に「四天王をつくりたい」と発言。文科相だった松野氏のほか稲田防衛相、下村幹事長代行の名前をあげたが、なぜか3人どまりだった。「ポスト菅」選びが現実味を帯びてきた6月、月刊誌で総裁の「有力な候補者」として萩生田文科相、西村経済再生相に並んで松野氏にも言及した。総理・総裁に必須の「選挙強さ」に欠ける。立憲候補と7度目の対決となった総選挙は約4万票差で制したが、戦績は5勝2敗。一目散に地元入りした公示日に北朝鮮が弾道ミサイルを発射して大慌て。岸田首相おも東北遊説中で官邸ツートップが都内におらず、危機管理意識の低さを露呈した。
松下政経塾9期生
千葉県木更津市生まれ。早大法学部を卒業後、ライオンに入社するも2年ほどで退社。松下政経塾入りした。党内では秋葉賢也衆院議員が政経塾9期生。性交同意発言で立憲を追われ、辞職した本多平直元衆院議員も同期。そもそもは森元首相に連なる文教族で、ライフワークは教育問題。第2次安倍政権で念願の文科相として初入閣した途端、加計疑惑がはじけて矢面に立たされた。「安倍元総理の再登板をめぐって、派内が割れた経緯などもあり、元総理との距離を指摘する人もいますが、関係は悪くない。温厚な人柄の松野さんを悪く言う声は聞こえてこないし、性質が似ている岸田総理とのコンビは、想像以上にうまくいくんじゃないか。ただ、支えすぎると派内で疎まれる懸念もある」(中堅議員)
日本会議と慰安婦問題
日本会議国会議員懇談会のメンバー。12年に米紙に掲載された慰安婦問題を否定する意見広告に賛同する国会議員として名を連ねた。「村山談話」「河野談話」の見直し、9条改憲に賛成する。
「ガースー」「たわし」に続くあだ名はつくか。
●第2次岸田内閣 負託に応え政策実現を 11/11
就任から1カ月余り、衆院選で国民の信任を得た岸田首相が第2次内閣を発足させた。自民党単独で絶対安定多数を獲得した「数の力」におごることなく、安倍・菅政治の反省に立った公平・公正な政権運営を通して、負託に応える政策の実現に努めねばならない。
喫緊の課題である新型コロナ対策では、すでに次の流行に備えた骨格を発表し、週内に全体像を示す予定だ。全国の感染状況は現在、収まっているが、油断はできない。実効性のある対策に万全を期してほしい。
菅前首相は携帯料金の引き下げや不妊治療への支援など、個別具体的な政策を打ち出す一方、全体を貫く理念や社会像が見えないと批判された。それとは対照的に、首相は「新しい資本主義」や「デジタル田園都市国家構想」など、大きなビジョンを掲げているが、今のところ、スローガンの域を脱していないと言わざるを得ない。
いち早く衆院選の最中に立ち上げた新しい資本主義実現会議は先日、政府の経済対策に向けた緊急提言をまとめたが、従来の施策の延長線上にとどまった。「新しい資本主義」と銘打つのなら、じっくりと腰を据え、会議に参加する有識者にとどまらない衆知を集めて、議論を深める必要がある。
政府はこのほかにも、デジタル田園都市国家構想実現会議、デジタル臨時行政調査会、全世代型社会保障構築会議、公的価格評価検討委員会などの設置を決めた。経済政策の司令塔としては、既存の経済財政諮問会議もある。お互いがどう役割を分担し、首相のビジョンを肉付け、具体化するのか。検討の器はそろっても、中身はすべてこれからである。
第2次内閣では外相以外の閣僚はすべて再任された。外相だった茂木敏充氏は、小選挙区で落選し、自民党幹事長を辞任した甘利明氏の後任となり、新しい外相には農林水産相、文部科学相などを歴任した林芳正氏が就いた。
林氏は首相が率いる岸田派の幹部で、超党派の日中友好議員連盟の会長を務める。日本の外交・安全保障政策において、台頭する中国にどう向き合うかが重い課題となるなか、その経験や知識を生かしてほしい。
組閣にあわせ、人権問題担当の首相補佐官が新設され、人権外交を超党派で考える議員連盟の共同会長を務める中谷元・元防衛相が起用された。人権という普遍的な価値を外交の軸に据えることには意義がある。ただ、人権侵害は中国の香港や新疆ウイグル自治区のみの問題ではない。中国を牽制(けんせい)するためだけの存在であってはならない。
●第2次岸田内閣発足、長期政権への鍵は「知力」の結集 11/11
岸田文雄首相は10日の特別国会で第101代首相に選出されたが、課題は山積だ。新型コロナウイルス対策、自民党改革に加え、経済対策や対中国政策も待ったなしだ。首相による早期訪米と訪中も検討課題に上るだろう。長期政権を見据え、首相は来年1月からの通常国会を乗り切り、夏の参院選勝利を目指すが、そのためには政権にどれだけ「知力」を結集できるかにかかっている。(共同通信=内田恭司)
自民はさらなる議席増も
岸田首相の政権基盤は当面安泰だ。自民党総裁として臨んだ先の衆院選で大幅減との下馬評を覆し、追加公認を含めて公示前の276議席から15減の261を得たからだ。公明党を加えると与党で293と、過半数(定数465)を大幅に上回った。自民党は細野豪志元環境相ら3、4人の保守系無所属議員の入党や会派入りも見込まれる。
政権の布陣も固まった。小選挙区敗北を受けて辞任した甘利明氏の後任幹事長に茂木敏充外相を充てた。茂木氏は「人望がない」とも評されるが、経済産業相や党政調会長などを歴任した次世代の実力者だ。旧竹下派(平成研究会)の会長代行を務め、跡目を継ぐとも目される。安倍晋三元首相や麻生太郎副総裁との関係もいい。
平成研と、岸田派の源流となる宏池会は元来、政策的な距離が近い。この両派と、宏池会から分かれた麻生派の三大派閥が主流派となって政権を運営していくことになる。
主流3派は初当選組の勧誘を優位に進めている。ベテランの引退や会長本人の落選などで存続の危機にある石破派や石原派からメンバーの移動もあれば、勢力はさらに増す。
首相はこの態勢の下、最大派閥の細田派を継ぐ安倍氏に配慮しつつ、距離を保つことで政権運営の自由度を得ようとするだろう。総裁選で争った河野太郎党広報本部長と、支援に回った菅義偉前首相、非主流派に転じた二階俊博元幹事長に対しては、政局封じのために警戒とけん制を続けていくとみられる。
政策活動費の透明化が焦点
さて本格始動した岸田政権の課題としてまず挙げるべきは、コロナ対策と、総裁選の公約に掲げた自民党改革だろう。
コロナ対策だが、ピーク時に比べて新規感染者数が激減したとはいえ、冬場の第6波襲来に備えて、後手に回ることなく対策を講じる必要がある。肝要になるのは、ワクチンの3回目接種の円滑実施と、経口型治療薬の早期普及だろう。特に経口型治療薬は「ゲームチェンジャー」とも言われ、コロナを「普通の風邪」に変える可能性を秘める。
開発は米国が先行しており、岸田政権は確保と国内での開発に全力を挙げなければ、ワクチン不足で批判を招いた菅政権の二の舞いになりかねない。
自民党改革は茂木氏の手腕によるところが大だ。岸田首相は、権限の集中をなくすため、幹事長ら党役員の任期制導入を掲げたが、改革のポイントはそこではない。
幹事長の力の源泉は人事権もさることながら、一手に握ることになる党の潤沢な政治資金であり、その中核をなすのは「政策活動費」だ。
政策活動費は、政治活動全般に支出できる資金だが、支出の目的や対象は極めてあいまいだ。政治資金収支報告書をめくると、党から幹事長に対して、政策活動費として1回に数千万円、年間で計数億円もの支出があったりするが、使途については一切の記載がない。官房機密費なみの「闇金」と言っていい。
この政策活動費の透明化こそが党改革の焦点だと指摘したい。法改正で罰則導入にも踏み切れるだろうか。茂木氏の問題意識が問われる。
政官5人で財務省チーム
コロナ対策と党改革について触れたが、岸田政権における政策実行の「本丸」は、やはり経済政策と対米、対中外交だろう。政権が前面に出す経済安全保障も絡む。岸田首相は、これらの分野を官邸主導で進めるため、足元に永田町と霞ケ関から人材を集めた。
首相側近で岸田派の木原誠二官房副長官と村井英樹首相補佐官、小林鷹之経済安保担当相の政治家3人をはじめ、嶋田隆筆頭首相秘書官、宇波弘貴、中山光輝、荒井勝喜、中込正志各首相秘書官らがそうだ。秋葉剛男国家安全保障局長と滝崎成樹官房副長官補も官僚出身として列に連なる。
この10人のうち、政治家3氏と宇波、中山両氏の計5人が財務省出身だ。秘書官の2氏は政治家3氏より年次が上で、ともに主計畑を歩んできた。宇波氏は主計局次長を経ての官邸入りで、5人のリーダー格となる。経産事務次官を務めた嶋田氏の秘書官就任は異例だ。荒井氏は同省商情報政策局長からの転身となった。
秋葉氏も外務事務次官を経験した。外務省アジア大洋州局長だった滝崎氏は、2016年のG7広島外相会合準備事務局長として、ホスト役だった当時の岸田外相を支えた。中込氏は秘書官として岸田外相の手足となった。
ポイントは積極的な外資導入
岸田首相は経済政策の理念として、「分配と成長」のための「新しい資本主義」を打ち出し、「令和版所得倍増計画」と「デジタル田園都市構想」の推進を掲げてきた。「財務・経産チーム」の課題はその具体化だ。
内容は明確にならないが、岸田派関係者によると、首相が表明した金融所得課税の強化は、結局は一般投資家が対象の大衆課税になるので導入は簡単でないという。
では計画や構想の柱は何か。一つ挙げるとすれば、関係者は「大規模な外資導入がポイントになる」と指摘する。岸田政権は経済安保に絡み、半導体など海外先端企業の工場誘致を進める。1兆円の投資なら最大で半分を支援する方向で、近くまとめる30兆円規模の大規模経済対策と21年度補正予算案に盛り込む構えだ。
「自前主義は捨てる。積極的な外資導入は日本の大きな方針転換だ。工場は地方に立地するので、現地に先端企業の集積と雇用を生む。外資導入が本格的に進めば、各地にデジタル田園都市ができ、所得水準は上がっていく」。関係者によると、具体化しているものを含め、東北や中国地方、九州などで計画が動きだしているという。
北京冬季五輪で訪中?
外交はどう進めていくのか。ポイントは岸田政権の外交チームに中国通がそろったことだ。林芳正外相は日中友好議連会長で、秋葉氏は駐中国公使、滝崎氏は所管局長を務めた。来年の日中国交正常化50年を見据えると、2月の北京冬季五輪開会式に合わせた岸田首相訪中が、喫緊の外交課題として上がってくるのではないか。
日中間には、尖閣諸島を巡る問題や南シナ海問題など、さまざまな懸案があるからこそ首脳間対話が必要だというのが首相の立場だ。
だがそのためには、インド太平洋構想を進め、中国への強硬姿勢を強める米国と、対中政策を綿密にすり合わせる必要がある。安保面や通商分野を含め、中国に対話を通じて何を要求していくのか、日米間で詰めた上で訪中しなければ、国内外からの批判は免れない。
首相が早期訪米を目指すのは、バイデン氏と対中戦略を確認する目的があるのは間違いない。12月が日米ともに日程がタイトなことを考えると、臨時国会前の11月中の訪米もあり得る。
第6波防げなければ正念場に
岸田首相にしてみれば、立憲民主党の枝野幸男代表が衆院選敗北の責任を取って辞任を表明するなど、野党勢力が態勢立て直しを迫られている状況は、政権運営にとって想定外の追い風だ。代表選の結果次第では、立民・共産党中心の野党共闘が白紙化する可能性は否定できない。逆に共闘継続なら立民内に亀裂が入り得る。
躍進した日本維新の会と国民民主党は独自色を強めており、参院選が多党乱立になれば、それこそ自民党に有利な展開となり、首相は長期政権が視野に入る。
だが、それはあくまでも政権運営が順調に進んだ場合だ。コロナの第6波を防げず、党改革も尻すぼみになるなら、岸田政権への期待はしぼむ。経済対策に新味がなく、官僚任せのものになれば、看板倒れとの批判を招くのは確実だ。対中外交の腰が定まらずに迷走した場合、得意の外交でのアピールは不発に終わる。
内閣支持率や政党支持率が低迷し、自民党内で「岸田首相では参院選は戦えない」と受け止められれば、1年もたたずに首相にとっての正念場がやってくる。政権の命運は、一にも二にも政策の着実な推進に懸かっているのは言うまでもない。 
 
 
 
 
 

 

●第206特別国会 天皇陛下をお迎えして開会式 きょう閉会  11/12
第206特別国会は、12日参議院本会議場で、天皇陛下をお迎えして開会式が行われました。特別国会の開会式は、午前11時から参議院本会議場で行われました。
最初に、衆参両院を代表して、新たに就任した細田衆議院議長が「われわれは、決意を新たにし、内政、外交の当面する諸課題に対処して、適切な施策の推進に万全を期さなければならない」と述べました。
このあと、天皇陛下が「衆議院議員総選挙による新議員を迎え、全国民を代表する皆さんと一堂に会することは、わたくしの深く喜びとするところであります。国会が、当面する内外の諸問題に対処するに当たり、国権の最高機関として、その使命を十分に果たし、国民の信託に応えることをせつに希望します」とおことばを述べられました。
特別国会は12日閉会します。
自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「国会運営全体を見通しながら会期が決まり、開会式の日程もいろいろな要素を踏まえて決められるものだ。開会式はできるかぎり、早い時期に行われたほうがいいが、各党や各会派の代表が集まる場に、天皇陛下にお越しいただき、おことばをいただくことも極めて重要だ」と述べました。
立憲民主党の安住国会対策委員長は、党の代議士会で「来年の参議院選挙に向けた戦いはもう始まっている。自民党は来月の臨時国会から、社会保障対策だ、景気対策だと言って、どんどんお金をつけてくるが、明らかに選挙対策だ。しかし、文句を言いながら勝ちきれないのもわれわれの非力さだ。野党の真ん中にいるわれわれが強くなければだめだ」と述べました。
日本維新の会の馬場幹事長は、党の代議士会で「世論調査で党の支持率はいい数字が出ているが、ご祝儀相場で、普通はこれからどんどん落ちていくので、キープして、できれば上げていくことを目標にやっていきたい」と述べました。一方で、先の衆議院選挙で初当選した議員に対し、「今後、取材を受ける機会が増えると思うが、絶対に党内のネガティブなことは言わないようにしてほしい。地元の忘年会や新年会などあらゆる場に赴いて、顔や名前を売れるよう努力してほしい」と呼びかけました。
国民民主党の玉木代表は、党の両院議員総会で「特別国会は、3日目のきょうで終わるが、きょう開会式が行われる。これは正直、天皇陛下に失礼なのかなと思う。初日に開会式を行うのが普通でこうしたことも含めて国会改革が必要だ」と述べました。
●たった3日間の特別国会、非生産的な拘束時間… 11/12
こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。今日は会期3日間の「特別国会」の中日。参議院は特に議事日程がなく、事務作業やアポイントなどをこなす1日でした。新人議員の方々は、昨日の首班指名選挙や議長・副議長の選出(記名投票方式)に「長い」「非生産的」という感想を持たれた方が多いようですが、まったくその通りだと思います。
国会初登院の維新・守島議員「マジ長いっすね」首班指名の手続きで「生産的でない税の使い方改めたい」
私も2年も経つと(地方議員から合わせると約9年経つと)儀礼的なものを「仕方ないか」と受け入れてしまいがちですけど、特にコロナ禍の昨今、こんな非生産的な集まりに時間をかけるのはおかしいですよね。
「今日から3日間の特別国会が始まりました!…といっても、参議院は明日は何もナシ。明後日は最終日なのに開会式≠ェ行われて、数分でシャンシャンな委員会ホッピングと本会議が行われて終了予定。相変わらずナンジャソリャ!な国会を総勢56名に増えた維新議員で変えていきます!」— 梅村みずほ 日本維新の会 参議院議員
儀礼的なもののすべてを否定はしないまでも、やはり「メリハリ」をつけるべきだと思います。例えば、天皇陛下がご臨席される開会式のような場合は、感染症対策をしながらもできる限り集まる。一方で、委員長・理事の専任や継続審査の承認など、ごく形式的なものについてはオンライン採決や持ち回り開催で集まらずにやる。首班指名選挙も電子投票でやればOK。そして特別国会として集まらざるを得ないのであれば、たった3日間で再び閉会するのではなく、臨時国会をくっつけて速やかに補正予算審議に入るべきではなかったか。大きく会派構成が変わった衆議院では、ぜひこうした過去の慣例を打ち破る国会改革を議論してもらいたいと思いますし、私からも党内で提案をしていきます。
参議院でも改革を進められるポイントは沢山あります。
「本日、科学技術・イノベーション推進特別委員会の委員長を拝命致しました。ただ、当面は我が党の遠藤議運理事と共に主導して、この特別委員会を廃止をする方向で交渉する事であります。」— 井上英孝 衆議院議員
衆議院ではすでに維新は「特別委員会」の統廃合を提案していますが、これを参議院の方でも議論しなければなりません。参議院にも7つある特別委員会は、ほとんど質疑が行われていないものもあります。にもかかわらず、「委員長ポスト」には手当や車がつく。「委員長ポスト」というのは、どうやら政治家には喉から手が出るほど欲しいもののようですが、そんなポジションのために形骸化している特別委員会を存続させることは不合理です。参議院における特別委員会のスクラップ・アンド・ビルドについても、具体案が固まり次第、また皆さまにお示しさせていただきたいと思います。
●安倍政権の看板部署廃止 「岸田内閣の政策進める」  11/12
松野博一官房長官は12日の記者会見で、安倍政権の看板政策を進めた四つの部署を廃止したと発表した。1億総活躍、働き方改革、人生100年時代、統計改革を推進した4室。松野氏は統廃合の理由を「岸田内閣の政策を進めるためだ」と説明した。
感染症対策を担う内閣官房組織も統廃合した。「新型コロナウイルス感染症対策推進室」「新型インフルエンザ等対策室」「国際感染症対策調整室」の三つを「新型コロナウイルス等感染症対策推進室」に一本化した。
●特別委改革 臨時国会で実現なるか 躍進維新が主張 11/12
特別国会は12日、3日間の会期を終えて閉会した。政府与党は新型コロナウイルス対応を含む経済対策を盛り込んだ令和3年度補正予算案を成立させるための臨時国会を12月6日召集で調整。先の衆院選で躍進した日本維新の会は委員長ポストを獲得した衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会の廃止・改変を提案し、臨時国会では年来の主張である衆院特別委員会の改革を進める構えだ。
「地方議会出身の私から見ても、国会は本当に無駄だらけという感じだ。沖縄北方、拉致、震災復興特別委などは実際の議論をしたのがたった2回だった」
元堺市議の維新の馬場伸幸幹事長は今年の通常国会をこう振り返る。維新は長年、衆院特別委の構成の見直しを訴えてきた。開催実績が乏しく、所管テーマが他の委員会と重複する特別委があるためだ。
特別委は本来、各国会のたびに設置される決まりだが、ここ数年は一部例外を除き、災害対策▽倫理選挙▽沖縄北方▽拉致問題▽消費者問題▽科学技術▽震災復興▽原子力▽地方創生−の9つが衆院で「常設」されている。
維新が通常国会の会期(1月18日〜6月16日)の各特別委の開催状況を調べた結果、委員長や理事の互選といった手続きだけを行う会議を除いた実質的な開会回数と時間は、沖縄北方2回2時間13分、拉致問題2回3時間12分。震災復興2回5時間2分だった。遠藤敬国対委員長は「多くは全く機能していない」と主張する。
また、委員長には国会開会中は開催回数と関係なく、日額6千円の手当てが支払われ、専用の公用車が充てられる。今回の特別国会で委員会質疑はなかったが、委員長には互選された11日以降の2日分の日当が支払われる。
維新は国会のたびに所管事項が重なる特別委の廃止や統合を主張し、委員長の待遇も不必要だとして金銭的な無駄を省く観点から見直しを訴えてきた。他の政党は具体的な動きを見せてこなかったが、維新が衆院選を経て選挙前の約4倍となる41議席に躍進したことで、状況は変わりつつある。
維新は今回の特別国会で、科学技術特別委の委員長ポストを獲得。今後「数の力」を背景に同委の廃止や原子力特別委への統合を与野党に提案し、自らの委員長ポストも事実上返上する形で臨時国会で改革を実現させたい考えだ。
●最大派閥「安倍派」発足でも消えないストレス…スーツぶかぶか元首相 11/12
「げっそりしたんじゃないか」
こんな声が政治記者からも上がっている。10日に召集された特別国会で、本会議場を歩く安倍元首相はスーツがぶかぶか、お疲れのようすだった。
11日、自民党最大派閥の清和会が細田派から安倍派に衣替えした。安倍元首相は9年ぶりに派閥に復帰し、会長に就任。総会へ拍手で迎え入れられると、「党内最大の政策集団として責任を果たしていく決意だ」と挨拶、8分間にわたって、ご執心の改憲や安全保障についてスピーチした。
名実ともにキングメーカーとして清和会の実権を握った。さぞや意気軒高かと思いきや、痩せてしまったのか、この日もスーツのゆったり感が少し気になった。ワイシャツの首元もユルユル。どうやら、ストレスをため込んでいるらしい。
安倍元首相の会長就任は「全会一致」と伝えられている。だが、安倍元首相が「派閥の総意」を要望したから表向きそう説明されているだけで、内実は違う。
「会長だった細田さんが役員会で、『安倍さんに会長を継いでもらいたい』と表明した時も、拍手がなくシーンとしていた。『総理までやったのに、今さら派閥会長か』という冷ややかな視線がある。安倍さんが派閥に戻ったら、高市さん(政調会長)も戻るのか、という反発もある。稲田さん(元防衛相)なんて、酔った勢いで安倍さんに電話して『冗談じゃないわよ。高市さんとは一緒にやれないわよ』と直接伝えたらしい」(細田派事情通)
9月の総裁選で安倍元首相が高市を全面支援しただけに、派内は、稲田氏に限らず、下村前政調会長、西村前コロナ担当相、萩生田経産相ら“ポスト岸田”狙いのメンメンが安倍元首相に疑心暗鬼を抱き、権力闘争を始めている。党三役に起用された派閥のプリンス、福田達夫総務会長がエースに躍り出る可能性だってある。派内は、福田系と安倍系の2つの流れがあり、岸田首相の福田抜擢は、安倍元首相にとって面白くない人事だった。
「さらに安倍さんをイラつかせているのは、林芳正さんの外相就任です。安倍さんは難色を示したのに、岸田総理が押し切った。安倍さんと林さんは地元山口で長年、敵対してきたうえ、山口は選挙区の区割り変更で、現状の4から次回は3に減らされるので、対立が激しくなるのは必至。ただでさえ安倍さんから林さんに移っている地元の求心力が、ますます離れそうで、安倍さんはかなり焦っている」(自民党関係者)
ジワジワと安倍離れを試みる岸田首相に対し、最大派閥のボスとしてどこまで圧力をかけ続けられるか。会長就任でストレスは増しそうだ。
●岸田首相 “デジタルなどのスキルを” 3年間で4000億円投入へ  11/12
人への投資を強化するため、岸田総理大臣は、働く人たちがデジタルなどの新しい時代のスキルを身につけられるよう、3年間にわたって支援する施策に4000億円を投じる考えを明らかにしました。
岸田総理大臣は12日夜、東京都内で、人材育成や業務の効率化に積極的な企業の経営者らと車座で意見交換し、デジタルを活用した技術継承の取り組みなどを聴き取りました。
このあと、岸田総理大臣は記者団に対し、先に策定を表明した働く人たちがデジタルなどの新しい時代のスキルを身につけられるよう支援する「3年間の施策パッケージ」を実施するため、4000億円を投じる考えを明らかにしました。
そのうえで「政府が一方的にパッケージの中身を決めるのではなく、民間企業や個人からアイデアを広く募り内容を決めたい。非正規の人たちや子育てを終えた女性など、あらゆる方々にパッケージを活用してもらい具体的な結果につなげたい」と述べました。
一方、岸田総理大臣は、原油価格の高止まりへの対応策を、来週決定する新たな経済対策に盛り込むよう関係閣僚に指示したと説明し「原油高が経済の足を引っ張らないよう、しっかり所要の措置を講じなければならない」と述べました。
●“3回目接種予定 早期に提示を”全国知事会など岸田首相に要望  11/12
新型コロナウイルスの第6波に備えた対策の全体像がまとまったことを受け、全国知事会などは、ワクチンの3回目の接種などの具体的なスケジュールを早期に示すよう岸田総理大臣に要望しました。
総理大臣官邸で開かれた「国と地方の協議の場」には、政府側から岸田総理大臣や関係閣僚が、地方側からは全国知事会など地方6団体の代表が出席しました。
この中で、岸田総理大臣は、12日決定した新型コロナウイルスの第6波に備えた対策の全体像について説明し「3回目のワクチン接種、無料検査の拡大などにあたり、現場には多大なご苦労をお願いすることとなる。地方とよく連携しながらコロナ対策をしっかりと進めていきたい」と述べ、協力を求めました。
これに対して、全国知事会の平井会長は「全体像は非常に力強い内容だ。経済社会を立て直していくために観光や事業者の支援にも踏み込んでいく必要がある」と応じました。
そして、自治体の負担軽減のため、3回目のワクチンが届く時期や量など、具体的なスケジュールを早期に示すよう求めました。
さらに地方側は、政府が来週取りまとめる新たな経済対策に、2兆円規模の地方創生臨時交付金を盛り込むよう要望しました。

令和3年11月12日、岸田総理は、総理大臣官邸で令和3年度第2回国と地方の協議の場に出席しました。会議では、地方創生及び地方分権改革の推進、新型コロナウイルス感染症対策について協議が行われました。総理は、冒頭の挨拶で次のように述べました。
「本日は地方6団体の代表の皆様方には、御出席いただきましたこと、心から厚く御礼を申し上げます。また、日々、新型コロナ対策に御尽力いただいていることに、心から感謝を申し上げます。まず、最優先の新型コロナ対応については、本日、全体像を決定いたしました。保健・医療提供体制確保計画の策定などに当たって、御尽力、御協力いただきましたことにつきまして、厚く御礼を申し上げます。今後、感染力が2倍になった場合にも対応できる医療体制をしっかりと確保するとともに、ワクチン、検査、飲める治療薬の普及による、予防、発見から早期治療までの流れを更に強化してまいります。引き続き、病床の確保を始めとする医療提供体制の運用、3回目のワクチン接種、無料検査の拡大などに当たり、現場には多大な御苦労をお願いすることとなります。今後も、地方の皆様と一体となって、よく連携しながら、この全体像に沿って、コロナ対策をしっかり進めていきたいと思っておりますので、御協力をお願い申し上げる次第です。そして19日に、数十兆円規模の経済対策を取りまとめます。年内、できるだけ早期に補正予算を成立させ、地方の皆さんに御協力いただきながら、国民の皆さんに、一刻も早くお届けしたいと考えております。その上で、新しい資本主義の起動に向けた議論を進めていきます。成長のための投資と改革を大胆に進め、まずは経済の成長を実現いたします。特に力を入れているのがデジタル田園都市国家構想です。デジタルを活用した地域活性化への各種交付金の大規模な展開や、デジタルインフラへの投資のほか、規制改革にも取り組み、地方から新しい時代の成長を生み出してまいります。そして、成長の果実を、国民の皆さんお一人お一人に分配するための具体的アクションを起こします。まずは、民間部門の分配強化に取り組みます。賃上げ税制を抜本的に強化するとともに、私自身が労使の代表と向き合い、賃上げを強力に促してまいります。さらに、職業訓練や能力開発など、人への投資を抜本的に強化いたします。同時に、公的部門の分配も強化いたします。看護、介護、保育・幼稚園などの現場で働いている方々の給与を増やすため、公的価格評価検討委員会において検討を進めるとともに、まずは、経済対策において必要な措置を行い、前倒しで引き上げを実現いたします。地方の皆さんとともに、こうした成長と分配を実現し、新しい経済社会を創り上げていきたいと考えております。本日は、岸田内閣として最初の国と地方の協議の場です。地方に関わる重要政策課題については、国と地方が連携して取り組んでいくことが大切です。本日は忌憚(きたん)のない御意見を頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。」
●新型コロナウイルス感染症対策本部 11/12
令和3年11月12日、岸田総理は、総理大臣官邸で第80回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催しました。会議では、新型コロナウイルス感染症への対応について議論が行われました。総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。
「本日、新型コロナ対応の全体像を取りまとめました。足元の感染状況は落ち着いていますが、まず重要なことは、最悪の事態を想定し、次の感染拡大への備えを固めていくことです。こうした観点から、今回の全体像において、今後、感染力が2倍になった場合にも対応できる医療体制を早急に確保することといたしました。具体的には、公的病院の専用病床化を始め、新たな病床を確保するとともに、病床使用率を8割以上とすることにより、この夏と比べて3割増の約3万7,000人の入院を可能とします。この夏の4倍弱増、約3,400人を受け入れることができる臨時の医療施設等も確保し、11月末までに、必要な方が確実に入院できる体制を作ります。軽症者向けの宿泊療養施設についても、この夏と比べて約3割増、1万4,000室増やすとともに、自宅で療養する方が必要な診療を受けられるよう、全国で、のべ約3万2,000の医療機関等と連携し、オンライン診療・往診等を行う体制を構築いたします。こうして強化した医療体制については、12月から、一つ一つの病院ごとの確保病床数を公表するとともに、ITを活用して、稼働状況を徹底的に見える化いたします。さらに、感染力が3倍となるなど、それ以上の感染拡大が生じた場合の具体的措置もお示ししました。次に、今回の全体像の第2のポイントは、ワクチン、検査、飲める治療薬の普及により、予防、発見から早期治療までの流れを強化し、早期対応を可能にするとともに、重症化リスクを減らすことです。具体的には、ワクチンについては、12月から3回目の追加接種を始めます。専門家の意見も踏まえ、2回目接種からおおむね8か月以降に、18歳以上の希望する全ての方が接種を受けられるようにします。治療薬については、今後の切り札となる経口薬の年内実用化を目指します。そして、薬事承認が行われれば、速やかに合計60万回分を医療現場にお届けします。更に100万回分も確保しており、今後とも必要な量を確保し、万全を期してまいります。検査も抜本的に拡充します。健康などの理由でワクチン接種できない方が、予約無しに、無料で検査を受けられるようにするとともに、感染拡大時には、ワクチン接種者を含め、無症状者でも無料で検査を受けられるようにいたします。これとあわせ、年内には、ワクチン接種証明書をデジタル化し、活用を進めることで、通常に近い経済社会活動を取り戻していきます。最悪の事態を想定した医療体制の確保、そして、予防・発見から早期治療までの流れの強化。これらの取組によって、感染拡大が生じても、国民の命と健康を損なう事態を回避することが可能となり、感染リスクを引き下げながら経済社会活動を継続できるようになります。各大臣におかれましては、本日決定した全体像に基づき、今後のコロナ対策に万全を期してください。」
●岸田首相 政府税制調査会に公平で中立的な税制に向け議論要請  11/12
岸田総理大臣は就任後最初の政府の税制調査会に出席し、みずからが掲げる「新しい資本主義」を実現するため、正規、非正規の働き方にかかわらず、公平で中立的な税制の具体化に向けた議論を行うよう要請しました。
総理大臣の諮問機関、政府税制調査会は12日、岸田総理大臣の就任後初めて会議を開きました。
この中で岸田総理大臣は「『新しい資本主義』を実現するため、具体化を進めていく。税制についても、新しい経済社会の在り方にふさわしいものとしていただきたい」と述べました。
そのうえで、持続的な経済成長と財政健全化を両立させるため、正規、非正規の働き方にかかわらず、公平で中立的な税制の具体化に向けた議論を行うよう要請しました。
これに対し、政府税制調査会の会長を務める東京大学大学院の中里実教授は「要請に応えられるようしっかりと議論していきたい」と述べました。
一方、来年度=令和4年度の税制改正に向けて、今月下旬にも始まる見通しの与党の税制調査会では「成長と分配の好循環」を生み出すため、民間企業に対して賃金の引き上げを促す税制の在り方なども議論される見通しです。
政府税制調査会の会長を務める、東京大学大学院の中里実教授は「分厚い中間層がいることが先進国の定義だと思っている。中間層が分厚いことで民主主義の安定性や経済成長、消費の拡大などが担保されてきた。これについて深く検討するよう諮問されたと理解している。『成長と分配の好循環』は非常に重要な視点で、私たちが常に考えていかなければならない問題なので、きちんと議論したい」と述べました。

令和3年11月12日、岸田総理は、総理大臣官邸で税制調査会(第5回総会)に出席しました。会議では、総理挨拶及び諮問、新たな国際課税ルールに関する合意等についての審議が行われました。総理は、挨拶で次のように述べました。
「政府税制調査会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。岸田内閣では、新しい資本主義を実現するため、成長と分配の好循環とコロナ後の新しい社会の開拓というコンセプトの下、新しい経済社会のグランドデザインを示すとともに、その具体化を進めてまいります。税制についても、新しい経済社会の在り方にふさわしいものとしていただきたいと考えております。こうした観点から、政府税制調査会においては、持続的かつ包摂的な経済成長の実現と財政健全化の達成を両立させるため、公平かつ働き方等に中立的で、新たな時代の動きに適切に対応した、あるべき税制の具体化に向け、包括的な審議を行っていただくことをお願い申し上げます。その際には、新しい資本主義実現会議等とも連携し、コロナ禍で浮き彫りになった様々な課題への対応の在り方も含め、幅広い政策分野にも目を配っていただきたいと考えております。中里会長を始め、委員の皆様に充実した御審議をお願いし、私の御挨拶とさせていただきます。皆様よろしくお願い申し上げます。」
●安倍氏の派閥復帰でささやかれる高市問題 11/12
10日召集の特別国会で、自民党細田派(清和政策研究会=清和研)会長の細田博之元官房長官が衆院議長に選ばれた。議長は慣例により会派を離れ、無所属となるため、細田氏は党内派閥から離れ、後任は安倍元首相が就いた。
安倍氏は2012年に首相就任に伴いいったん派閥を離脱した。昨秋、首相を退いた後、一部に派閥復帰待望論が出たが、戻らずじまいだった。もっとも、首相経験者として派閥への影響力は絶大で、細田派は事実上の安倍派と見られてきた。安倍氏が望めば派閥会長就任は”既定路線”だ。
「安倍氏の復帰は既定路線だとしても、そうなると安倍氏とセットで高市早苗政調会長も戻ってくることになるだろう。派閥を出る時に後ろ足で砂をかけて出て行った高市氏を派閥幹部の多くは歓迎していない。高市氏が派閥の総裁候補となるのも、もってのほかだが、他に適当な総裁候補もいないのが悩ましいところ」(細田派関係者)
9月の自民党総裁選では、安倍氏は自らの思想信条に近く、自身の政策を丸ごと踏襲してくれる高市氏の最大の応援団長だった。しかし、細田派は決して高市支持で一枚岩になることはなく、岸田文雄首相を支持する勢力に割れた。特に派閥幹部らは、右寄りすぎる安倍・高市路線には距離がある。
そうしたことから、岸田政権の閣僚・役員人事でも、細田派は安倍氏の意向を聞きつつも、安倍氏の望む通りには動かなかった。安倍氏の希望は「高市幹事長、萩生田光一官房長官」だったが、細田派が岸田首相に高市幹事長を要望することはもちろんなく、官房長官についても、萩生田氏を推薦せず、松野博一氏の起用を了とした。
清和研の源流は安倍氏の祖父・岸信介元首相だが、派閥創設者は福田康夫元首相の父であり、達夫総務会長の祖父である福田赳夫元首相だ。派内には厳然と「安倍系」と「福田系」が存在し、政策的な路線の違いもある。岸田政権で重要ポストに起用されている松野氏と福田氏はいずれも福田系だ。
「細田氏が議長に就任して派閥を離れた後について、福田系の一部に『一旦、会長不在の集団指導体制にしたらどうか』という意見もあった。ただ、派閥を離れる細田氏は、安倍氏の派閥復帰と後継会長就任に傾いていた」(前出の細田派関係者)
一方、安倍氏は自ら会長を奪いに行っているように見られたくないため、「派内から派閥復帰と会長就任の待望論が沸き起こるのを待っていた状況」(安倍氏周辺)だったというから、安倍氏にとっては思惑通りに進んだ。だが、この先は高市氏が派閥復帰を求めると確執が生まれかねない。
衆院選後の派閥流動化の動きは細田派だけのことではない。
最も深刻なのは石原伸晃会長が落選した石原派だ。選挙前の段階でも10人しかいない弱小派閥だったが、3人が引退・落選して、現状は7人。そこで、幹部数人が投開票の2日後に集まり、派閥の今後について話し合った。結論は出なかったものの、派閥を存続させるのは困難として、7人がまとまって他派閥へ移るか、各人がそれぞれの判断で別の派閥に入会することになりそうだという。
総裁選で岸田氏を支持せず、非主流派に転落した二階派には再編の蠢きが燻る。菅義偉前首相の菅グループの合流だ。菅グループとともに武田良太前総務相ら二階派の多くが、総裁選で河野太郎氏を推した。そう考えれば、さらに石破派が合流してもおかしくない。
竹下派も竹下亘氏死去後、会長不在。茂木敏充幹事長が会長代行を務めるが、竹下派にいまも影響力を残す参院のドン・青木幹雄元参院議員会長は小渕優子氏を将来的には会長にしたがっており、茂木氏の会長就任には首を縦に振らない。そうしたことから、竹下派と石破派の合流説が頻繁に浮上する。
いずれにしろ、自民党内の最大派閥は細田派であり、第二派閥は麻生派。安倍氏が細田派を継いだことで、「数は力」の自民党で安倍・麻生支配という景色が当分、続くということだ。
●APEC首脳会議の実施結果 11/12
11月12日、午後7時59分(日本時間)から約3時間の予定で、APEC首脳会議がテレビ会議形式にて開催されています。ジャシンダ・アーダーン・ニュージーランド首相が議長を務め、日本から岸田文雄総理大臣が出席したところ、これまでの概要は以下のとおりです。
1 首脳会議では、本年の議長であるニュージーランドが掲げた、「共に参加し、共に取り組み、共に成長する」というテーマの下、全ての人々及び将来の世代の繁栄に向けた新型コロナからの回復について議論を行っています。議論の総括として首脳宣言が発出されるほか、「APECプトラジャヤ・ビジョン2040」を実施するための行動計画が採択される予定です。
2 岸田総理大臣は、世界において健全な民主主義の中核である中間層を守り、気候変動等の地球規模の危機に備え、企業と政府が大胆な投資をしていく動きがあることを指摘し、日本として「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとする新しい資本主義の実現を目指していく旨紹介しました。その上で、コロナ後の成長に必要な重点要素として、以下の3点を述べました。
(1) 貿易・投資
ア 強靭なサプライチェーンの構築と、経済回復を強化する自由で公正な貿易・投資環境の実現のため、公正な競争条件(レベル・プレイング・フィールド)を確保し、市場主導で、自由で、公正かつ無差別な貿易・投資環境を推進することが重要である。この観点から、11月末の第12回WTO閣僚会議において、新型コロナ対策やデジタル経済のルール作り等、新しい課題における前進を示すことが不可欠である。
イ TPP11は、不公正な貿易慣行や経済的威圧とは相容れない、21世紀型のルールを規定する協定。日本は、他の参加国と連携し、市場アクセス、ルールの両面でTPP11のハイスタンダードを維持し、この地域における自由で公正な経済秩序の構築に引き続き貢献する。また、質の高いインフラ投資の普及・実践、包括的な地域経済統合、デジタル技術を用いた貿易円滑化等の推進を通じて、地域の連結性を強化する必要がある。
ウ 日本は、保健危機において特に必要不可欠な物品の流通、それを支えるサービスの円滑化等を迅速に進めるため、COVAX等を通じたワクチン供給、「ラスト・ワンマイル」支援としてのコールドチェーン整備を推進している。
(2) イノベーションとデジタル化
ア 「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」を推進し、国際的なルール作りに積極的な役割を果たしていく。
イ 科学技術の恩恵を取り込み、スタートアップ支援や、人材育成を促進し、最先端科学技術の研究開発に大胆な投資を行う。
(3) 包摂的で持続可能な成長
ア アジア太平洋地域の持続可能な成長、脱炭素化に向けた取組を牽引していく。具体的には、6月に表明した5年間で官民合わせて600億ドルの支援に加え、アジア開発銀行等と協力しながら、アジア等の脱炭素化支援のための革新的な資金協力の枠組みの立上げ等に貢献し、新たに5年間で最大100億ドルの追加支援を行う用意があることを改めて表明する。これらの支援により、世界の経済成長のエンジンであるアジア全体のゼロエミッション化を力強く推進する。
イ 持続可能な成長を進める上で、原油価格高騰等による世界経済への影響も懸念される。APECで連携して、増産を含め十分な供給を通じた国際原油市場の安定化を図ることが重要である。
3 岸田総理大臣はまた、2023年の米国、2024年のペルーのAPEC議長立候補を心から歓迎する旨述べるとともに、本年のニュージーランドAPECの成果を礎に、アジア太平洋地域の更なる発展につなげるため、来年議長を務めるタイを始めとするAPECエコノミーと引き続き緊密に連携していく決意を表明しました。

[参考1]APEC参加国・地域(21エコノミー)
ニュージーランド(2021年APEC議長)、日本、豪州、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、香港、インドネシア、韓国、マレーシア、メキシコ、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、台湾、タイ、米国、ベトナム。(注)APECには、香港は「ホンコン・チャイナ」、台湾は「チャイニーズ・タイペイ」の名称で参加。
[参考2]APECプトラジャヤ・ビジョン2040
(1)貿易・投資、(2)イノベーションとデジタル化、(3)力強く、均衡ある、安全で、持続可能かつ包摂的な成長、という3つの経済的推進力により、「全ての人々と未来の世代の繁栄のために、2040年までに、開かれた、ダイナミックで、強靱かつ平和なアジア太平洋共同体とすること」を目指すことを定めた文書。併せて、APECの制度的枠組みの継続的な改善に取り組むことを確認している。
●NTTコモの「home 5G」が8万契約に ほか 11/12
1. 岸田内閣で本格化するデジタル社会に向けた検討会議
政府は社会のデジタル化を加速させることを念頭に置いた「デジタル臨時行政調査会(臨調)」と「デジタル田園都市国家構想実現会議」の民間有識者を発表した(ITmedia)。デジタル臨調の会長は岸田総理大臣、副会長を松野博一官房長官と牧島かれんデジタル大臣が務める。有識者として、慶應義塾大学の村井純教授、KADOKAWAの夏野剛代表取締役社長をはじめ、大学、産業、地方行政の立場から8名が就任した(発表名簿)。報道によれば「デジタル化を遅らせる要因となっている法規制の見直しや、オンライン診療の普及策などを議論。国と地方自治体とのデータ共有の円滑化策も検討する」としている。デジタル田園都市国家構想実現会議は議長に岸田総理大臣、副議長に牧島かれんデジタル大臣ら3名、構成員として関係省庁の大臣、竹中平蔵慶應義塾大学名誉教授、増田寛也東京大学公共政策大学院客員教授、村井純慶應義塾大学教授のほか、80代でスマートフォンアプリを開発したことでも知られている若宮正子氏らが就任している(発表名簿)。会議では「地方での第5世代(5G)移動通信システムやデータセンターの整備など、地方からデジタル化を進める構想を検討する」としている。会議とメンバーが決まったことで、来春に向け、さまざまな具体的な政策が立案され、議論が進むものと期待される。さらに、デジタル庁では、デジタル社会の実現に向けた道しるべとなる「新重点計画」の策定について議論を進めていて、「新重点計画の構成イメージ案」を公開し、意見募集を実施している(Impress Watch)。
2.「Beyond 5G国際カンファレンス 2021」で語られたモバイル通信事業者の取り組み
総務省とBeyond 5G推進コンソーシアムによる「Beyond 5G国際カンファレンス 2021」が開催され、Beyond 5G推進に向けた取り組みの共有や、必要な研究開発等の要素について議論された。NTT持株会社からは澤田純社長が、モバイル通信事業者からはNTTドコモの井伊基之社長、KDDIの橋誠社長、ソフトバンクの宮川潤一社長、楽天モバイルの山田善久社長が登壇し、各社の取り組みについてのプレゼンテーションが行われた(ケータイWatch)。各社とも、Beyond 5Gが社会の基幹インフラになるということから、基礎技術の開発はもとより、さまざまなユースケースについての検討や実証が進みつつある。もちろん、国際競争も激しくなり、技術的な優位性のみならず、いかにリーダーシップを取っていくかということも重要となる。それに加えて、省エネルギーなどの要素も考慮する必要もあり、企業の研究開発力だけでなく、国としての総合力が求められる段階に入りつつあると感じる。
3. NTTコモの「home 5G」が8万契約に
今年の夏、NTTドコモが発売をしたホームインターネットサービス「home 5G」はこの9月末時点で8万契約になったと報じられている(ケータイWatch)。home 5Gは宅内からインターネットを利用するための光ファイバーのような固定回線を引き込まなくても、5Gのワイヤレス通信網を使って、大容量のデータ通信を利用できるというサービスで、専用端末「home 5G HR01」が必要となる。料金は月額4950円(端末別だが、端末は各種の割引キャッシュバックのキャンペーンもある模様)と、十分に光ファイバーの代替ともなり得るサービスである。ただし、留意すべきは「移動して使えない通信サービス」であるということ。「基地局の在圏情報(どの基地局の配下にいるかどうかの情報)や端末のGPS機能を使って、移動を検知すると通信をストップする」という仕組みが内包される。引っ越しにあたっては事前の手続きも必要になる(ITmedia)。しかし、集合住宅など、光ファイバーケーブルの引き込みが困難な場合、宅内の配線が困難な場合など、ワイヤレスのメリットを生かせる場面は多くある。一方で、使用環境(場所や時間)による回線速度の違いがあることはいうまでもない。こうしたポイントを踏まえたうえで、物理的なケーブルの引き込みを伴わない方法として、普及する可能性がありそうだ。
4. AR開発プラットフォームが続々
「Ingress」や「Pokémon GO」で知られる米国ナイアンティック社は、AR開発者向けプラットフォーム「Lightship」の国際展開戦略について発表した(ケータイWatch)。日本では、ソフトバンクや集英社、LIFULLなどがパートナー企業として名前を連ねている。記事によれば、Lightshipは「同社が手掛けてきたAR(拡張現実)技術をもとに、より多くの企業や開発者がARコンテンツを展開できるようにするプラットフォーム」であるとしている。パートナー企業である集英社では、XR事業開発課を新設し、XR事業「集英社XR」を開始すると発表した。「ARやVRに限らず、5Gやそれ以降の未来のインターネット技術を使い、社会におけるXR(超越現実)体験の提供を目指す」という(ITmedia)。いよいよ各社から、得意分野を生かした本格的なARコンテンツやサービスが登場してくることになりそうだ。
5. 記事の文意・文脈をAIで解析――「コンテクスチュアルターゲティング」広告
朝日新聞社は「朝日新聞デジタル」などのデジタル媒体向けに、「コンテクスチュアルターゲティング」という「記事の文意・文脈をAIで解析し、関連する広告を表示する」広告手法を開始すると発表した(CNET Japan)。ターゲティング広告はこれまでCookie(クッキー)を利用することで実現してきたが、時代の流れとともに、国際的にもCookieに対する制限が強まる傾向にある。また、個人情報保護を目的とした法的な規制も今後は加わる。コンテクスチュアルターゲティング広告はこうした状況を踏まえて開発された手法で、「日本のメディアで初めての展開」としている。記事によれば、事前の検証でもノンターゲティング広告との比較において、十分に広告効果は高く、個人情報にも配慮した新たな広告技術として推進していくとしている。
今後は各社からもさまざまな手法も発表されていくことになると予想される。
 
 
 
 
 

 

●衆院新人議員の文書通信交通滞在費『任期1日で満額100万円』… 11/13
吉村洋文大阪府知事(46)が13日、ツイッターを更新。10月31日に投開票された衆議院議員総選挙で当選した新人議員に、わずか1日の任期で領収書不要の文書通信交通滞在費が満額の100万円が支給されたことに驚き「これが国会の常識。おかしいよ」と厳しく指摘した。
吉村知事が副代表を務める日本維新の会の新人議員、小野大輔衆院議員が12日、自身のnoteで「国会の常識、世間の非常識」として、特別国会初日に月給に当たる歳費と文書通信交通滞在費が支払われ、歳費は日割り計算(約3万円)だったが、文書通信交通滞在費は満額が支払われたことを明かした。衆議院事務局に問い合わせ、法律上1日でも任期がかかると満額が出る仕組みとの説明に「問題提起をして、制度を変えていかなくては」とつづった。
吉村知事は「維新の新人議員、小野さんから。なんと10月分の文書通信交通滞在費100万円が現金で満額支給されたとのこと。10月分? 選挙の投開票日が10月31日なんだけど。どうやら1日だけでも国会議員の身分となったので、10月分、100万の札束、満額支給らしい。領収書不要。非課税。これが国会の常識。おかしいよ」と強く憤った。
●岸田首相、「聞く力」は看板倒れ? 特別国会は3日で閉幕 11/13
第206特別国会は12日、閉会した。3日間の会期中、首相指名選挙や常任委員長の選出といった手続きを進めただけ。先の臨時国会に続き、岸田文雄首相らと野党が丁々発止のやりとりをする予算委員会などは開催されなかった。政府・与党は次期臨時国会を12月6日召集の方向で調整しており、10月4日の第1次岸田内閣発足から、2カ月も本格論戦が行われない事態となる。
旧民主党が政権を奪取した2009年以降の例を調べたところ、衆院選を受けた新内閣発足後、早くて1カ月弱、遅くとも1カ月半後には全閣僚が出席する予算委などの本格論戦が行われている。
岸田首相は第1次内閣を立ち上げた後、自身の所信表明演説と、それに対する衆参本会議での一方通行の各党代表質問を終えると衆院を解散。衆院議員の任期満了が迫っていた事情はあるが、もう少し会期を延ばし、野党が求めた予算委を開くことはできた。
今回も同様だ。特別国会は憲法の規定に基づき、衆院選を受けて首相や議長を決めるのが最大の目的とはいえ、引き続き会期を確保して論戦の場を設けることは可能だった。だが、政府・与党は経済対策の策定や裏付けとなる2021年度補正予算編成を優先し、早々に閉会させた。
これまで首相以外で国会答弁したのは牧島かれんデジタル相、斉藤鉄夫国土交通相ら4人だけ。菅内閣から外相続投となった茂木敏充氏は、岸田内閣では質疑がないまま自民党幹事長に転身した。野党からは「一問一答の質疑で初めて本質が見えてくる。予算委をやらないと、閣僚がその任にあるのかわからない」(立憲民主党の安住淳国対委員長)という声も漏れる。
事実と異なる答弁を繰り返したり、詳しい説明を拒否したりして批判された安倍・菅政権を意識して、首相は対話重視の「聞く力」をアピールするが、今のところ「看板倒れ」の印象は否めない。
立民の福山哲郎幹事長は12日の記者会見で、国会の本格論戦は菅内閣だった6月の通常国会閉会以来、行われていないと指摘。菅義偉前首相も国会出席に消極的だったとして、首相が代わっても「国会から逃げている姿勢は変わらない」と言い切った。
●APEC会議 岸田総理「大胆な投資や改革で貢献」 11/13
岸田総理大臣はオンラインで開催されているAPEC=アジア・太平洋経済協力の首脳会議に参加し、大胆な投資や改革を行って地域の経済成長に貢献していく考えを強調しました。
岸田総理大臣:「我が国は成長に向けた大胆な投資や改革を行うとともに分配によって所得を増やし、日本経済を新たな成長軌道に乗せ、アジア太平洋の成長に貢献していきます」
また、岸田総理はTPPについて「不公正な貿易慣行や経済的威圧とは相容れない協定だ」と述べ、加盟を目指す中国を暗に牽制(けんせい)しました。
また、地球温暖化対策では新たに5年間で最大100億ドルの追加支援を行う考えを改めて表明しました。
●岸田首相 APECで中国念頭に演説「TPPは経済的威圧と相いれず」  11/13
岸田総理大臣は12日夜、APEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議で演説し、中国がTPP=環太平洋パートナーシップ協定への加入を申請したことを念頭に、不公正な貿易慣行や経済的威圧とは相いれない協定だとけん制しました。
首脳会議はオンライン形式で開かれ、岸田総理大臣やアメリカのバイデン大統領、中国の習近平国家主席らが参加しました。
この中で岸田総理大臣は「日本として『成長と分配の好循環』と『コロナ後の新しい社会の開拓』を基本的な概念として、新しい資本主義の実現を目指していく」と強調しました。
そのうえで、強じんなサプライチェーンを構築するための公正な貿易・投資環境の推進や自由なデータの流通に向けた国際的なルール作りに積極的な役割を果たしていく考えを示しました。
また、中国がTPP=環太平洋パートナーシップ協定への加入を申請したことを念頭に「TPPは不公正な貿易慣行や経済的威圧とは相いれない協定だ」とけん制し、自由で公正な経済秩序の構築に貢献していく考えを示しました。
●6期目のスタート−特別国会召集  11/13
10日、先の衆議院総選挙の当選者465人が初めて集う特別国会が召集されました。私たち立憲民主党の仲間は、総選挙の前から13人減って96人となりました。落選者の中には、著名な政治家や、党の重鎮など、私が慕ってきた先輩方もいます。
本会議場の議席は、最前列から当選回数の少ない順番に席次が決まります。私も新人の時は最前列にいましたが、徐々に先輩方が少なくなり、今回6期目の私は、後ろから3分の1ぐらいの位置となりました。議席からの風景の変化に、時の流れと責任の重さを感じます。
その中で、見事に初当選を果たした仲間の議員が16人います。そのうち小選挙区で当選した方は7人で女性は2人しかいません。その一人、「吉田晴美」さんは、東京8区で自民党の大物議員と日本維新の会の新人を相手に回し、比例復活を許さない見事な勝利でした。
ただし、ここに至るまでには大変な苦労がありました。初めて国政選挙に挑戦したのは2013年の参議院選挙で、岩手選挙区から立候補しました。当時は民主党でしたが、今以上に党は危機的状況にあり、前年の衆議院総選挙の直前に党が分裂し、選挙後の議席数は57に激減していました。そのような中、参議院岩手選挙区で民主党の公認候補に内定していた現職議員が突如離党し、選挙直前になっても候補が決まらない異例の事態となりました。
当時県連代表を務めていた私が、手を尽くしてやっと探し当てた候補が「吉田晴美」さんでした。無所属となった現職候補以外にも、与野党から候補者が乱立する中で、彼女は国政初挑戦で知名度ゼロ、しかも山形県の出身で岩手県との縁も深くなかったことから、厳しい選挙戦を強いられました。しかし、逆境にひるむことなく、持ち前の明るさと情熱で訴える姿が、支援者の共感を集めていました。
その後、惜しまれつつ衆議院の東京8区に活動拠点を移し、前回2017年の総選挙に立憲民主党から立候補しましたが、この時も希望の党や共産党など野党候補が競合した結果、惜敗。その後、4年にわたって地道な活動を続け、ようやく当選が見えてきた今回の総選挙でも、直前にれいわ新選組の山本太郎代表が立候補する動きがありました。
並みの候補者であれば挫折してもおかしくない逆境の連続でしたが、それを乗り越えての今回の勝利は本当に立派です。彼女の事務所にお祝いを伝えに行くと、「筋を通すことを考えました」と明るく語ってくれました。立憲民主党も逆境にあり、枝野代表の後継者を決める代表選挙が間もなく始まります。政権交代を目指す野党第一党にふさわしい、太い筋が一本通るような代表選挙にしなくてはなりません。
●林芳正氏、どんな人? 「ポスト岸田」の1人が外相就任 11/13
第2次岸田内閣が11月10日に発足し、外務大臣に林芳正・元文部科学大臣(60)が就任した。外相を務めていた茂木敏充氏が自民党幹事長に起用されたためで、林氏以外は第1次内閣の閣僚が再任された。岸田派に所属し、「ポスト岸田」候補の1人ともいわれる林氏。一体どんな人?
政治家としての歩みは?父・祖父・高祖父が国会議員経験者
林氏は、山口選挙区選出で参院議員を26年務めた。
10月31日に投開票された衆院選で山口3区から自民党公認で立候補し、立憲民主党の公認候補に6万7千票以上の大差をつけて圧勝した。
衆院への鞍替えをめぐっては、山口3区選出の自民党現職だった河村建夫元官房長官(79)と党の公認を争っていたが、河村氏は公示直前に引退する意向を固め、保守分裂とはならなかった経緯がある。
林氏が衆院へ鞍替えしたのは、「将来の総理総裁」を目指すためだ。参院議員でも国会での首相指名選挙で選出されれば首相になれるが、これまでに参院議員が首相になったことはない。
林氏は、父・祖父・高祖父が国会議員経験者という政治家一家に生まれた。
ただ、当時民主党の衆院議員だった津村啓介氏との共著『国会議員の仕事』では、「『二世議員』とか『四代目』だとかのレッテルを張られるのには、以前から強い抵抗感を禁じえなかった」とつづっている。
東大法学部を卒業後は三井物産に入社。「とにかく、海外に出る仕事がしたかった」といい、タバコの輸入に関する部署で海外の産地を回り、ネットワークを構築したという。5年間勤めた後、政治家になることを決意し、退社した。「未知の時代に直面している日本の進路を、政治家の立場で考え動かしていくことには、別の大きなやりがいがあるのではないかと感じたから」という。
その後、アメリカ・ハーバード大に留学。下院議員や上院議員のもとで働き、アメリカの政府の役人が日本の官庁で実地研修を行える制度を提案し、制度として実現させたこともある。こうした海外経験もあり、英語が堪能で、「政策通」とも評されている。
帰国後は衆院議員だった父・林義郎氏の秘書を経て、1995年に参院山口選挙区で初当選。参院外交防衛委員長、内閣府副大臣を経て、防衛大臣、農林水産大臣、文部科学大臣とキャリアを重ねた。
同郷・安倍元首相との関係は…?
林氏にとって「天敵」「仲が良くない」などと揶揄されるのが、同じ山口県選出の安倍晋三元首相だ。
安倍氏の選挙区である山口4区は、林氏の父・義郎氏の郷里である下関市が選挙区だ。中選挙区制が廃止され、小選挙区制が導入されてからは、安倍氏が連勝している。
林氏が衆院に転じたことで、安倍氏と同じ選挙区となる可能性があることから、その関係がさらに注目されている。
「1票の格差」是正のため、衆院の小選挙区の区割りが見直され、2022年にも15都県を対象に「10増10減」になる見通しで、山口県では4選挙区から定数が1減となる。
新たな区割り案は2022年6月までに区割り審が固め、首相に勧告する予定だが、安倍氏の山口4区と林氏の山口3区の一部が統合される可能性があるためだ。
今回、林氏は重要閣僚の外務大臣に就任し、「ポスト岸田」に一歩近づいたと言える。
一方で林氏の外務大臣への起用をめぐっては、日中友好議連の会長を務めていることから、自民党内から「親中派」とみられるとして慎重論が出ていた。林氏は共著『国会議員の仕事』の中で、過去に月刊誌へ「小泉外交には戦略がない」という論文を寄稿し、首相の靖国参拝に反対の意を表明したこともあるとつづっている(『論座』2005年7月号)。
こうした懸念を打ち消すため、林氏は11月11日に会長を辞任すると表明。党内の保守派に配慮した形だ。
ある日本政府関係者は、「日中間の“友好”が出てしまうと、アメリカとの関係がよくなくなる可能性もある。外務大臣が特定の国を贔屓しているようにみられることはよくない」と語る。
「頭のいい穏やかな人」評価の一方、過去には「公用車でヨガ通い」報道も
林氏を知る政府関係者は、林氏について「頭のいい人で、激しい態度をとることもなく、穏やかな人」と評する。
防衛大臣、農水大臣、文科大臣と歴任し、「『困った時の林さん』と言われるほど、何でも器用にこなす」という。国会議員で作るバンド「G i ! n z」(ギインズ)では、ボーカルやピアノも担当している。
一方、過去にはこんな報道もあった。文科大臣だった2018年4月、公用車を使ってヨガに通っていたと週刊文春が報じた。加計学園の獣医学部新設を巡り、国会で問題が噴出している中だった。
林氏はその後、公務と公務の間であり、公用車を使ってもルール違反ではないとしつつ、「公私のけじめはしっかりつけるべきだったと反省している」と釈明した。
●「日当5000円問題」渦中の岸田派議員に浮上したもう一つの疑惑 11/13
第二次岸田内閣が発足、議員たちが国会に戻ってきた。戻れなかった「元議員」もいる。そして、激しい選挙戦のあった選挙区では危機感ゆえの「いきすぎた選挙運動」が指摘されている。
なかでも衝撃だったのは、茨城6区の自民党公認、国光文乃議員の「日当5000円」問題だろう。岸田文雄首相、安倍晋三元首相が応援に入った10月26日、27日の街宣活動の際、大規模な「サクラ」の動員がなされ、日当として「1人5000円」が支払われたという。『smart FLASH』『週刊文春』が相次いで「証拠の領収書」を添えて報道している。
この問題は、支援団体が選挙活動で現金を配布する「公職選挙法違反(有権者買収)」の疑いが強い。日当支払いを明記した案内状や領収書が先のメディアで公開されたうえ、複数の有権者が現金授受を認めて「投票依頼と受け止めた」と答えている。
ワクチン接種で「おばあちゃん、私のこと知ってる?」と
そして「選挙不正疑惑はこれだけではない」という茨城6区からの告発がFRIDAYデジタルに届いた。証言するのは小美玉市の有権者だ。国光議員は医師免許を持っていることがウリの一つだが、
「今年の6月だったと思います。国光文乃さんが、市のワクチン接種会場にいたんです。医師免許をもっている国光さんが『問診担当の医師』として、白衣を着て。で、有権者であるお年寄りに問診をする際『おばあちゃん、私のこと知っている? 私の名前覚えてくださいね』とやっていた。その『活動』を、周囲にいた市民やスタッフたちが何人も聞いているのです。これはまずいのではないかと、小美玉市役所に問い合わせました」
この件を知った総務省キャリアは、こう警笛をならす。
「選挙活動とは『特定の候補者の当選を目的として、投票を得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為』をさし、選挙運動の期間は『候補者の届出のあった日から当該選挙の期日の前日まで』(公職選挙法第129条)と定められています。つまり、これ以外の期間の『活動』は、この規定に抵触している可能性があります。なお、違反した者は、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処することとされており(公職選挙法第239条第1項第1号)、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第1項・第2項)』」
岸田派「落下傘候補」の焦り
岸田派のホープ、国光氏は、山口県周防大島町出身。長崎大学医学部卒、東京医科歯科大学大学院博士課程修了という秀才だ。厚生労働省勤務を経て政界進出。2017年に初当選した。新型コロナの感染拡大期には、医師としての知見を駆使してコロナ対策にも意見してきたという。
とはいえ、落下傘候補の国光氏。地元に縁が薄く、野党統一候補の青山大人氏と激しい選挙戦を強いられていた。陣営にはサクラ動員に「日当5000円」を払ってでも…という危機感があったのだろうか。安倍元首相のサクラ問題を想起させる疑惑は、自らの食い扶持を確保するためには何でありの「自民党=自分党」の「王道」なのだろうか。
岸田首相は、自身の地元参院広島選挙区で起きた「河井案里の買収事件」の責任を、当時の二階幹事長に強く迫った。今、自らの街宣に「動員」がかかり、「日当」が支払われたという今回の「集団買収」をどのように受け止めているのか。国民からすれば、どうにも釈然としない出来事である。
気さくに声がけをして…
なお、国光氏の「白衣を着た活動」は、一度ではなかったという。
小美玉市の健康増進課に問い合わせると、
「国光先生には、3回、ワクチン会場でお手伝いをいただきました。6月24日14時から17時に、市の小川文化センターアピオス会場。7月15日と29日には、それぞれ13時から15時の2時間、生涯学習センターコスモスの会場です。このころは、おもに高齢者の接種をしていました。気さくで威張ったところのない先生だったときいています。小美玉市としてお願いするなんてそんな大それたことはしていません。国光先生のほうから『行きますよ』とお声がけいただいたので、お願いしました。業務としては、接種前の予診をしていただきました。市内のあちこちにポスターがあるので、国光先生だと気づいた方も…いたかもしれませんね。謝礼というかお支払いは、計7時間分を時給計算でしました。金額は…。医師会の規定額です。市の接種件数も減っていますし、今後こちらからお願いすることはないかなと思います」
茨城県県南部の「接種相場」は「1時間あたり1万7000円」だという。「日当5000円」に比べると、だいぶ高額だ。それはともかく別の市職員は、こう言って「違和感」を訴える。
「衆院任期満了が間近な時期で、菅義偉政権の支持率が低下、自民党への不満が噴出していた6月、7月のころです。国光さんの行為は、医師であることを武器にした、小美玉市のワクチン接種『協力』という名目の『押しかけ参加』でした。国光さんの選挙区である旧玉里村地区の接種会場で、胸に『国光あやの』と書かれた大きな名札をつけて自分の名前を伝え、『覚えてくださいね』と声がけしていたんですから、選挙活動と感じない人はいないと思います」
国光議員の事務所に、事実確認の取材を申し込んだ。直接取材はかなわず、送られてきたファックスには「地元医師会から派遣されワクチン接種に従事」したことを認めたうえで「邪推されるような事前運動ではない」との「回答」があった。選挙の事前運動、選挙違反にあたるかどうかは、公職選挙法の定めに添うべきだろうが、「日当ひとり5000円」問題を抱える国光議員は今、それどころではないのかもしれない。
電光石火でスタートした岸田内閣が臨んだ総選挙。新内閣の「ご祝儀支持率」も期待できなかったなか、全国で激戦が繰り広げられ、いわゆる「大物」が何人も落選した。現職の法務大臣が選挙違反を行った自民党だ。今回の総選挙、「公職選挙法違反」疑惑があるのは、はたして茨城6区だけなのだろうか…。
●最大派閥・安倍派の誕生で岸田、麻生両派は大宏池会構想で対抗か 11/13
自民党最大派閥「安倍派」が誕生した。清和政策研究会(旧細田派)は11月11日に総会を開催。会長だった細田博之氏が衆院議長に就任したことで安倍晋三元首相が新会長となり、安倍派に衣替えした。
安倍氏は第10代会長で父で自民党幹事長などを歴任した安倍晋太郎氏が第2代目会長だ。その頃からさかのぼると、30年ぶりに安倍派が復活したことになる。
挨拶に立った安倍氏は、前会長の細田氏に謝意を伝え、こう訴えた。
「清和政策研究会は半世紀にわたり日本の背骨を担い、ひたすら政策を鍛え、磨いてきた。さらに実践のため、団結して汗を流し続けたい」
得意の外交安全保障や憲法改正についても熱弁をふるった。
「外交安全保障であります。総選挙が公示された日、北朝鮮がミサイル発射。中国は近年、急速な軍事費を背景に台湾に軍事的威圧をかけている。厳しい環境を直視することが求められている」
「憲法改正であります。維新も国民民主党も憲法改正の議論については前向きです。議論の先頭に清和会が立とうじゃないですか」
安倍派は衆院選で所属議員数人が落選したが、それでも数は89人。第二派閥、麻生派は50人なのでダントツの数を誇る。
そして竹下亘前会長の逝去で会長不在だった旧竹下派は茂木敏充幹事長が次期会長に内定した。自民党幹部がこう言う。
「今回の衆院選では261議席を獲得と善戦した。ただ、派閥単位でみれば、どこも人数を減らしている。これから、派閥再編の中で次の総裁候補をどう育てるのか、それが最大のポイントだ」
麻生派は9月の総裁選に立候補し、人気の高い河野太郎氏を擁する。旧竹下派もこれまで加藤勝信元官房長官、小渕優子元経産相など「次の」争いが注目されたが、茂木幹事長が次期会長に決まった。
「次の総裁候補に一応の決着がつき、茂木氏の下で一致結束を図る」(旧竹下派の国会議員)
一方、苦戦が続くのが、石原派、石破派、二階派だ。
石原派は会長の石原伸晃氏が落選、議席を失ったことで7人にまで減少。石破派も13人となり総裁選出馬への推薦人20人には届かない。
そして安倍、菅政権で「キングメーカー」となった二階俊博元幹事長が率いる二階派は、衆院選後に47人から37人と激減した。
「大臣経験者の桜田義孝氏まで小選挙区で敗退し、比例復活当選。次の会長の有力候補である武田良太氏も閣僚から去った。9月の総裁選で、勝ち馬に乗れず所属議員が10人も減った。無所属の新人議員や石原派や石破派、菅義偉前首相のグループに声をかけて、数を増やそうとやっているが、すぐにまとまる話ではないので厳しい」(二階派の所属議員)
そして、安倍派も最大派閥ながら悩ましい問題があるという。安倍氏の再々登板も噂される中で、次の総裁候補が乱立し、まとまらないというのだ。萩生田光一経産相、下村博文元政調会長、世耕弘成参院幹事長、西村康稔元経済担当相、稲田朋美元防衛相など総裁候補者は数多い。
しかし、9月の総裁選で安倍氏が無派閥の高市早苗政調会長を推したことで、さらに混沌としているという。安倍派の国会議員は厳しい現状をこう話す。
「なぜ安倍氏の再々登板という話が出るのかといえば、切り札がいないからです。萩生田氏、下村氏、西村氏、稲田氏と言ってもピンとこないでしょう。世耕氏は参院議員ですしね。高市氏は以前、清和会所属だったから戻れば、総裁候補の一番手となる。だが、他の有力者から待ったの声がかかるのは必至。参院選が来年7月に迫り、最大派閥として一致団結して推せる総裁候補がほしいところなのです」
その中で一番うまく立ち回ったのが、岸田首相だ。総裁派閥・岸田派は衆院選で所属議員を42人に減らしたが、林芳正氏が参院から衆院に転出して、外相に就任。岸田氏の次の総裁候補にのし上がった。
衆院選で自民党が261議席確保したことで、岸田政権は来年夏の参院選さえ乗り切れば、長期政権になるという見方もある。
「今の状況なら、岸田首相の後継は河野氏、林氏、茂木氏という感じですよね。安倍派はまたもキングメーカーにまわるのか、高市氏が派閥に戻って総裁候補として一本化するか……。安倍氏は『高市氏を女性初の総裁に』と衆院選の時も語っており、自分の再々登板には乗り気でないようだ」(清和会所属の国会議員)
総裁派閥の岸田派、麻生派は「大宏池会構想」を掲げて最大派閥・安倍派に対抗していくとみられる。麻生派の国会議員はこう語る。
「派閥の数で言えば、安倍派1強です。対抗できるのは、岸田派、麻生派、谷垣グループと宏池会を源流とするグループが合併する大宏池会構想しかない。まとまれば、最大派閥になります。次の総裁候補の切り札がない安倍派に対して、大宏池会構想を掲げ、林―河野連合で戦い、岸田政権後も政権を取りに行く。今回の総裁選で麻生氏は岸田首相を支持した。だが、次は派閥をあげて河野氏を支援し、総裁の椅子を取りに行くはず。大宏池会構想は安倍氏に対抗できる力を持つ、麻生氏が元気な間でしか、まとまらない。麻生氏も保守本流の大宏池会構想はやり遂げたいはずだ」
自民党閣僚経験者の公設秘書を長く務め、派閥事情に詳しい政治評論家の藤川晋之助氏はこう話す。
「安倍氏は高市氏に力を入れていますね。憲法改正というテーマもあり、田中角栄のような闇将軍ではなく、表のキングメーカーとして影響力を保持していくとみています。それに応戦できるのは、岸田首相と麻生氏が連携する大宏池会構想でしょう。首相になるには財務相、外相、幹事長、官房長官のいずれかのポスト経験が必須です。河野氏、林氏はクリアしているが、高市氏はまだ未経験です。今後の政局は安倍派と大宏池会が激突する展開になるのではないか」
 
 
 
 
 

 

●純白スニーカーにはかま、あの大物は車で登場 衆院議員初登院・人生模様 11/14
先月の衆院選で初当選した新人議員97人を含む国会議員の「初登院」が、特別国会召集日の11月10日に行われた。新人議員にとっては初日の恒例セレモニーだが、今年はコロナ禍での初実施だった。
「開門!」の合図で国会の正門があくのは毎回、午前8時。早朝(または前夜)から一番乗りを目指す議員や大勢のメディアが集まる。今回もメディアの数だけは「密状態」だったが、例年なら正門の中に入ることができる親族などの同行者の数はかなり制限されたようだ。親族や秘書は1人ずつ。正門前で記念写真を撮影した後、議員を見送るだけの支援者や親族も多かった。
国政選挙で当選した議員の初当選をこれまで何度も取材してきたが、それぞれの思いや決意をコスチュームに託す人も多い。
はかま姿で登場したのは、選挙違反事件の連座制適用前に辞職以来、実に17年ぶりの国政復帰となった立憲民主党の鎌田さゆり氏(56=宮城2区)。百人一首競技かるたの元準クイーンで、はかまはタイトル戦での「正装」だ。「戦いに臨む際の、私にとっての正装です。(17年ぶりの国会は)初心にかえった気持ち。ただ緊張している初心ではなく、『やったろう』というような初心」。
純白の白が際だつスニーカー姿だったのは、れいわ新選組で初当選した大石晃子氏(44)。大阪府職員時代、当時の橋下徹知事にもの申したことでも知られる。今回は選挙区(大阪5区)で敗北し、近畿比例ブロックで復活当選。全議員の中でいちばん最後に議席が確定した。白いスニーカーを選んだのは「国会でフットワークよく活動したいから。スーツにはヒールと思ったけれど、靴下とスニーカーじゃないと走れません」。れいわ山本太郎代表のネクタイも、党カラーのピンクが入ったレジメンタルだった。
そんな中、新人の衆院議員ながら「大物」も。河村建夫元官房長官との自民党内公認政局をくぐり抜け、参院議員から鞍替えで衆院初当選した林芳正外相(60)。ほかの新人が徒歩やタクシーでやってくる中、大型ワゴンでさっそうと正門前に乗り付け車を降りた。
実は参院と衆院は、バッジの色が異なる。悲願の衆院鞍替えで「ポスト岸田」の正式な資格も得た林氏は「新しいバッジをいただいて有権者の付託の重さを感じる」と、感慨深げな表情だった。
新人議員以外は、正門ではなく別の門から車で入ってしまう議員がほとんどだが、「初心」に戻るためか、ベテランたちも正門を入る。日本維新の会とともに、キャスティングボーダーになりつつある国民民主党の玉木雄一郎代表(52)は、なぜか超短髪になっていた。「選挙の疲れが出て散髪中、ずっと寝ていて、気づいたらこんなことに」と笑いつつ「心機一転、初心にかえって頑張りたい」。
一方、議席減で辞任した枝野幸男前代表の後任を選ぶ立憲民主党代表選に、出馬の意欲をみせる「なぜ君」小川淳也氏(50)は、正門から国会の中に入ることができないフリー記者らの呼びかけに応じ、1度門の中に入りながらわざわざ戻ってきた。「(代表選出馬に必要な推薦人)20人のハードルは低くない。あまり前のめりにならず、着実に」。まじめすぎるのが弱点ではないかと問われると「よく自覚しています」と苦笑しつつ「短所を、新しい時代の強みにしたい」と応じ、再び門の中に入っていった。
衆院議員の任期は4年。しかし、衆院は「常在戦場」で、いつ次の衆院選が行われるか、解散権を持つ時の首相しか知らない。次の選挙の後、再び新たな任期を得て、国会議事堂に戻れる保証は、どこにもない。今回、快晴下での初登院では、さまざまな人生模様がみられた。新たな任期での初登院は、恒例のセレモニーである半面、次の衆院選へのスタートが切られた、緊張の瞬間でもある。
●本維新の会 朝礼で「ネガティブなこと言うな!」と厳命… 11/15
11月12日、第206特別国会が閉会した。第49回衆議院議員総選挙を受けて、11月10日に召集された国会議員たち。97名が初当選議員として、国会議事堂に登院した。
なかでも、ひときわ盛り上がりを見せていたのが、今回の総選挙で公示前の11議席から30議席増の41議席を獲得した「日本維新の会」だ。初当選議員も27名と多い。
国会内の控室について「従来の部屋では狭すぎる」と “嬉しい悲鳴” も聞こえてくる。以前まで立憲民主党が利用していた部屋を新たな控室として確保するという。
そんななか、12日の特別国会開会前には、その狭すぎる控室に議員が集結する “朝礼” が開かれた。
緊張した面持ちで椅子に座る新人議員たちの前で、声をかけるのは日本維新の会の馬場伸幸幹事長(56)だ。
「マスコミにはネガティブなことは言わないようにしてください。何か起きたら、すぐに上の人間に相談するように……」
議員が “爆増” した日本維新の会の集まりをひと目見ようと、この朝礼を見学した報道陣も多かった。その目の前で、所属議員たちにメディア対応について、厳しく命じたのだった。
ベテランの政治記者は、この光景を見て、思い出したことがあったという。
「2009年の総選挙で民主党が大躍進を果たし、『民主党政権』が誕生した際も、開議前の朝礼が定番だったんです。
当時、民主党では150名近くの新人議員が誕生しましたが、ほどなくして鳩山由紀夫氏や小沢一郎氏の “政治とカネ” の問題が浮上しました。そのとき、朝礼などで新人議員たちに『マスコミ露出は控えるように』と厳しく言っていたんです。
加えて、民主党も党内で班を作って、『なにか起きたら班長に報告』という仕組みを作っていましたし、今回の維新の朝礼は非常に似ていると感じました」
8月21日に日本維新の会の松井一郎代表は、自身のTwitterで蓮舫参議院議員(53)のツイートを引用する形で、こうつぶやいている。
《蓮舫さん、野合談合選挙互助会の野党議員調査会で大阪市に調査に来て下さい。お待ちしています。民主党政権よりはましな行政運営をしておるつもりです。僕が知事に就任した時は民主党政権でしたが反面教師として参考にさせてもらっています。》
皮肉にも急増した新人議員の取り扱い方は “反面教師” と一緒になってしまったようだ。今後の政党運営で、旧民主党と差別化を図れるのか――。
●岸田首相 仏大統領と電話会談 安全保障面での緊密連携で一致  11/15
岸田総理大臣は、フランスのマクロン大統領と就任後初めて電話会談を行い、ことし5月にフランスの練習艦隊が日本に寄港するなど、両国の安全保障面での協力が近年飛躍的に深まっているとして、引き続き緊密に連携していくことで一致しました。
電話会談は日本側の申し出で、15日午後5時半すぎから30分余り行われました。
この中で岸田総理大臣は「太平洋にも領土を持つフランスは、この地域における極めて重要なパートナーだ」と述べ、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、連携を強化していきたいという意向を伝えました。
これに対し、マクロン大統領は、岸田総理大臣の就任への祝意を伝えたうえで「両国関係の強化に向け協力していきたい」と述べました。
そして両首脳は、ことし5月にフランスの練習艦隊が日本に寄港するなど、両国の安全保障面での協力が近年飛躍的に深まっているとして、引き続き緊密に連携していくことで一致しました。
また、岸田総理大臣は、先にEUが発表したインド太平洋戦略の策定に、フランスが主導的役割を果たしたと評価したうえで、来年前半にEUの議長国を務めるフランスとの連携を通じて、日・EU間の協力も進展させたいという考えを示しました。
●岸田首相“気候変動対策 国内体制整備加速を” COP26閉幕受け  11/15
気候変動対策の会議「COP26」が閉幕したことを受けて、岸田総理大臣は、会議に出席した山口環境大臣と会談し、気候変動対策を進めるための国内の体制整備を加速させるよう指示しました。
イギリスで開かれていた国連の気候変動対策の会議「COP26」は、日本時間のきのう、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求することなどを盛り込んだ成果文書を採択し、閉幕しました。
岸田総理大臣は15日午後、総理大臣官邸で、会議に出席し、15日朝に帰国した山口環境大臣と会談し、成果などについて報告を受けました。
この中で岸田総理大臣は「歴史的なCOP26となった。これから長い道のりだが、引き続き頑張ってやってほしい」と述べ、気候変動対策を進めるための国内の体制整備を加速させるよう指示しました。
会談のあと山口大臣は、記者団に対し「日本の貢献が大きかったことも含めて会議の結果はよかった。世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求すると盛り込めたことも大きな成果の1つだ」と述べました。
●「新自由主義の生命力」が日本で根強すぎる理由 11/16
新自由主義が死なない理由
中野:岸田総理は「小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換する」と述べ、「改革」という言葉を使うのを躊躇しました。しかし、新自由主義は靴の裏についたガムのように、日本社会や日本人の精神にべったりとこびりついています。昔、『ダイ・ハード』という映画がありましたが、新自由主義も「なぜダイ・ハード(なかなか死なない)なのか」と言いたくなるほど根強い力を持っています。私は新自由主義からの転換を歓迎していますが、他方で、新自由主義を乗り越えるのはそう簡単ではないことは認めざるをえません。なぜこれほど新自由主義の生命力は強いのか。その原因はどこにあるのか。この問題について議論していきたいと思います。
施:これはどの国にも共通していることだと思いますが、右派も左派もそれぞれ新自由主義と親和性を持っています。日本で右派と言えば、読売新聞や産経新聞などがそうですが、彼らは冷戦時代の意識を引きずり、日本の共産化を防ぐためには市場経済を守らなければならないと考えています。そして、市場経済を擁護するあまり、どんどん新自由主義に突き進んでいき、ついには新自由主義を批判する人たちを単純に左派や共産主義者だとみなすようになってしまいました。他方、左派が新自由主義を批判できないのは、経済学者の野口悠紀雄さんの「1940年体制論」に代表されるように、総力戦論の影響が大きいと思います。総力戦論とは簡単に言ってしまえば、戦後の護送船団方式をはじめとする調整型の政治は、戦時中の総力戦体制の名残だとする議論です。この議論が出てきたことで、左派はすっかり思考停止してしまいました。国家が介入して国民各層の利益調整を行うことが戦時体制に由来するものなら、そういう政治はやめなければならない。このように考えるようになったのです。この流れに乗ったのが、朝日新聞や毎日新聞などの左派系の新聞です。彼らは国家の介入を厳しく批判し、どんどん新自由主義化していきました。本来なら左派こそ貧困層などへの利益分配を訴えなければならなかったはずなのですが、国家の介入を批判している以上、そうした議論ができなくなり、格差を放置することになってしまいました。このように、右派も左派も新自由主義をきちんと批判する論理を持ち合わせていません。それゆえ、新自由主義が根強いのは当然なのです。
佐藤:おっしゃる通りです。戦後日本の右派、ないし保守は親米が基本線。アメリカは自由主義の総本山みたいな国ですから、いかんせん新自由主義に弱くなります。おまけに戦時体制になる前の日本は、格差が大きく、福祉の水準も低い新自由主義的な社会でした。したがって戦前の再評価をめざしても、やはり新自由主義肯定に行き着いてしまう。逆に左派が新自由主義を批判できないのは、平和主義の影響です。第1回でも述べたとおり、戦後日本では「政府の行動を制約するのが民主主義」と見なす発想が強い。再び戦争をしでかさないように、というわけですが、するとどうしても小さな政府志向になる。戦争のときは、どんな政府も国債を発行して費用を調達しますからね。現に1965年、佐藤栄作内閣が戦後初めて赤字国債を出したとき、野党第一党だった社会党は「赤字財政は戦争につながる」と言って反対しました。いわく、公債発行の原則禁止を定めた財政法第4条は、戦争準備を許さないという平和主義の縛りである。それをくつがえすとは何事か。この道はいつか来た道、赤字国債出すべからず!左派の発想だと、積極財政、ないしインフレ(=経済の拡大)は戦争と結びつくんですよ。すると平和に結びつくのは緊縮財政とデフレ。私の本のタイトルではありませんが、『平和主義は貧困への道』です。政府が需要を創出して経済を引っ張るとか、インフラを整備するなどといったことは、彼らの眼中にないんですね。そのくせ左派は、弱者救済や福祉充実にはこだわる。つまり福祉国家志向でした。しかし「福祉国家志向の小さな政府」など存在しえない。だから「それは矛盾だ、小さな政府がいいのなら社会保障はあきらめろ」と言われると、反論できなくなってしまう。こうして保守系の新自由主義者にたいし、塩を送る次第です。
世界中を席捲した戦時体制論
柴山:野口悠紀雄の『1940年体制』が出版されたのは、私が大学生だった1995年のことです。当時のことはよく覚えていますが、あの本が出たころから日本型経済システムに対する評価が大きく変化していきました。もともと1980年代までは日本型システムは高く評価されていました。日本経済はアメリカのような個人主義で無秩序な資本主義ではなく、チームワークを重視し、政府と民間がうまく協調して最大のパフォーマンスをあげていると言われていました。たとえば、1982年にチャルマーズ・ジョンソンが『通産省と日本の奇跡』を出版し、戦後日本の経済成長の要因はディベロップメンタリズム(開発主義)だと指摘しました。開発主義とは、通産省が行政指導を通して産業を育成するなど、官僚主導によって産業政策に取り組むあり方のことです。これは明治時代から続く「上からの改革」だと見られていました。ところが、『1940年体制』が出版されたころから、戦後日本の発展は戦時経済の延長だという見方が広まっていき、「日本型システムが日本をダメにしている」と言われるようになりました。それで、戦時体制を否定することこそ日本が真に反省することにつながるという話になり、左派も構造改革を後押しするようになった。私が大学生のころはみんな日本型を礼賛していたのに、大学院に入るころにはみんな日本型を批判するようになっていた。「これはいったい何なんだ」と思ったものです。実はこれは日本に限った話ではありません。同じような動きは諸外国でも見られました。最近イギリスの事例を調べていたのですが、イギリスでも日本と同じような戦時体制論が唱えられていました。サッチャーも、イギリスの資本主義は本来はもっと自由で独創的で個人主義的なはずなのに、戦時体制の名残のせいでイギリス経済はダメになってしまったと批判しているんですよ。
中野:イギリスは日本と違って第2次世界大戦に負けていませんが、ほとんど負けかかっていたので、戦時体制に対してあまり良い思いがないのかもしれませんね。
柴山:そういうことだと思います。彼らからすれば、この体制を維持している限り、自分たちは負け続けるということになるわけです。それで新自由主義が採用されることになった。また、アメリカはアメリカで、80年代は日本に経済的に負けてしまったので、いまの体制のままではダメだという話になって、新自由主義に突き進んでいった。どの国も従来の体制を戦時体制の延長と捉えていたのです。
日本の発展は官僚主導だったのか
柴山:しかし問題は、本当に戦時体制論が正しいのかということです。戦後日本の発展は、本当に官僚主導のものだったのか。当時民間企業で働いていた経営者にヒアリングしたことがありますが、彼らが共通して言っていたのは、もちろん官僚がいろいろサポートしてくれたことは間違いないが、やはり民間の競争が大きかったということです。実際、あのころは過当競争が問題になっていましたからね。戦後の経済発展が官僚主導だったという認識は間違いだと思います。
中野:その通りです。だいたい、官僚がそんなに強くて優秀だったら、官僚批判や構造改革を許すはずがありません(笑)。官僚の力がそれほど大きくなかったから、官僚批判を止められず、新自由主義が広まっていったんですよ。
佐藤:開発主義論の根底にあるのは、一種の発展段階説です。最初のうちは権威主義体制のもと、政府主導で開発を進めるほうが効率的でよろしい。しかし、ある程度豊かになれば、人々は必ず政治的自由を求める。よって政治体制も、正当性を維持すべく、自由主義的なものに移行する。日本や韓国、台湾を見ろ、というわけです。香港問題の本質も、これを踏まえるとわかりやすい。一国二制度はもともと、2047年までの50年限定でした。とはいえ当初、香港の人々は、半世紀もあれば中国のほうが民主化されると安心していたのではないか。向こうがこっちのようになるから大丈夫だと。ところが中国は、政治的な自由を制限したまま経済大国の地位を確立する。すると一国二制度も、香港の自由がなくなる形で解消されるしかありません。不安や不満が高まったのも必然ですが、こうなると自由に執着する姿勢も生まれやすくなる。またもや、新自由主義が望ましく思えてくるのです。
柴山:実際、90年代には開発主義に対する懐疑的な見方が唱えられるようになっていました。国際政治経済学の分野では、アメリカのピーター・エヴァンスらが日本は開発主義ではないと主張していた。日本には非常に高度で中立的な官僚システムが存在し、それが業界団体とのつながりなどを通して社会に埋め込まれているというのが、エヴァンスの議論でした。
中野:日本型システムは官僚たちが意識的に設計したものではなく、歴史的な経緯によって偶然できたものだという見方ですね。
柴山:その通りです。試行錯誤を重ね、利害調整しているうちに、いつの間にか出来上がったシステムだということです。官僚主導というほど単純なものではなかった。ところが、エヴァンスの議論は日本ではほとんど無視されました。いまだに翻訳がありません。
中野:われわれが学生のときからそうですね。そういうエヴァンスのような研究を勉強しようと思って大学に入ったのに、全然勉強できず、独学するしかありませんでした。
柴山:おかげで、いまだに戦後日本の発展は官主導の開発主義の結果だと見られているわけです。この認識は非常に根強い。それがいまでも新自由主義的な改革を求める要因になっています。この認識を改めない限り、新自由主義を乗り越えることは難しいと思います。
疎外論に陥る学生たち
柴山:新自由主義が根強い理由をもう一つあげると、いろんな人が指摘していることですが、大学進学率も無視できないと思います。どの国も1980年代から急激に大学進学率があがっていき、新興エリートがたくさん誕生しました。しかし、彼らは思うように社会で活躍できたわけではありません。そこで、自分たちを阻む既得権益層がいると考え、既得権益を批判する新自由主義に吸い寄せられていったのだと思います。新興エリート層の自己不安や自己不満に、新自由主義的言説がうまくはまってしまったということです。その結果、どういう状況が生まれたか。たとえば、いま現代思想を学んでいる大学院生の間では、新型の疎外論がブームになっているんですよ。自分の人生を自分で管理できているという感覚が失われ、「なんで私はこんなに満たされないのだろうか」という思いにとらわれているのです。彼らの意識は社会に対してではなく、自分の内側に向かっています。みんなで団結して何かを変えようといった意識には向かわない。だから、新自由主義的な現状を変えようという動きも起こりにくいのだと思います。
施:その点は私も同意見です。いまこの場に集まっている私たちは1960年代後半とか70年代前半生まれですよね。あのころは労働組合などが力を持っていて、自分たちの意見を通すために積極的に社会運動に取り組んでいました。しかし、最近の若い人たちと話しているとわかりますが、彼らはそうした運動を見たことがないんですよ。もちろん、自分が運動に参加した経験もない。いまは大学でも自治会を作りませんからね。留学生や外国人労働者が増えているので、学校でも社会でも一緒に協力して組織を作ることが難しくなっているという面もあると思います。若い世代の多くは何か目標を達成するために話し合ったり、複数の主体の利害を調整したりしたことがなく、目標は誰かに設定してもらうものだと思っているように感じます。これはトップダウンで意思決定を行うということと同じですので、まさに構造改革が目指していたものそのものですよね。最近流行りのSDGs(持続可能な開発目標)なんてその典型でしょう。自分たちで自分たちの社会や組織の独自の目標を設定するのではなく、上の人間が目標を外部から定めているわけですから。
中野:学生のころからそうした習慣が身についてしまうと、改革路線から抜け出すことは難しくなりますね。
官僚化する教育現場
中野:古川さんは大学改革に関する論文を書かれていますが、教育現場の現状と新自由主義の生命力の強さの関わりについてどのように見ていますか。
古川:先ほどの施さんの話は、まさに教育現場の現状そのものです。私は仕事柄、小中学校の先生方と話す機会が多いのですが、彼らには教育の目標を自分たちで話し合って考えていこうというような姿勢は皆無と言っていい。文科省から下りてくる学習指導要領をバイブルのように崇め奉っていて、自分たちの仕事はその目標をいかに効率的に達成するかを考えることなのだというマインドが骨の髄まで染みついています。いわゆる戦後教育にはもちろんいろいろ問題はありますが、それでもそれが出発したころは、現場の教員たちには、これから自分たちが新しい日本を作っていくのだという熱い思いがあふれていました。だから、自分たちでいろいろ考えて新しいカリキュラムを作ったりして、まさに自ら目標を設定するという、主体的な取り組みを行っていました。しかし、残念ながらこれを徹底的に潰してきたのが自民党なのです。いわゆる55年体制が成立して以降、文部省が告示する学習指導要領に法的拘束力が付与されて、要するに現場は自分たちで目標を考えるのではなく、国が与えるミッションに従って、それを効率的に達成するプランだけを考えよ、ということになってしまった。
中野:上から降ってきたミッションを達成するために、数値目標を掲げてプランを遂行するというのは、マックス・ウェーバーの言う官僚制の典型です。
柴山:教育現場まで官僚化しているということですね。
古川:それに関連して、私は「PDCAサイクルは『合理的』であるか」という大学改革批判の論文を書いたことがあります。PDCAサイクルというのは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4段階をサイクル状に回転させ続けるマネジメントシステムです。まさに「目標(ミッション)」は上から降ってきて、現場はそれを効率的に達成するための「計画」だけをひたすら追求するという、典型的なトップダウン型の経営管理です。これが今日の教育改革や大学改革の方法としても強制されているのです。ところが、このPDCAサイクルの提唱者とされているアメリカのデミングという経営学者の経営管理論をみてみると、彼自身が唱えていたPDCAサイクルは、むしろまったく正反対のものだったことがわかります。たとえば、デミングは1980年代に日本の企業経営の成功要因を分析し、それをもとにアメリカの経営改革を提言する論文を書いているのですが、それをみると「社員への達成目標や数値目標の割当を廃止せよ」「年次の業績評価や人事考課を廃止せよ」といったことが書いてある。今の日本の政府や企業がPDCAサイクルの名のもとに導入しているものを、デミングはむしろ「廃止せよ」と言っているのです。そういうトップダウンの経営管理は、労働者の誇りやモチベーションを奪ってしまうから、そんなことはやってはダメだ、むしろ生産性が下がってしまう、と。
近代主義の本質とは
佐藤:近代、ないし近代主義の本質は、合理性に基づく効率の追求です。これにこだわるかぎり、トップダウンが一番いいという話になる。ところがトップダウンを続けていると、組織内での議論がなくなってしまう。人々の自主性が失われるせいで、しばしば効率まで損なわれます。近代主義者たちはこのパラドックスがわかっていない。
中野:近代主義を推し進めていけば、自分たちの足元が崩れ、自滅してしまうということですね。そのことを理解せずに近代主義を推進しているのが改革派であり、近代主義を食い止めようとするのが保守派です。その意味で、岸田総理がやろうとしていることはまさに保守的な政策であり、実は、非常にチャレンジングなことだと評すべきではないでしょうか。
 
 

 

●特別国会は臨時国会と違う?衆院総選挙後にしか開かれない「特別国会」とは
第206回国会(特別国会)が、第49回衆議院議員総選挙を受けて今日召集されます。報道などでお気づきの方も多いとは思いますが、この国会は、毎年1月に開かれる通常国会(常会)や、秋に開かれることの多い臨時国会(臨時会)と異なり、「特別国会(特別会)」という特殊なものです。常会や臨時会と異なる点を条文と一緒にみていきたいと思います。
常会・臨時会・特別会とは
国会には、通常国会(常会)、臨時国会(臨時会)、特別国会(特別会)の3つの国会があります。このうち通常国会(常会)は年1回毎年1月に開かれるもの、臨時国会(臨時会)は内閣が召集するものとされていますが、特別国会(特別会)は、日本国憲法と国会法に次のように定められています。
日本国憲法第五十四条
1 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
国会法第一条
(中略)
2 常会の召集詔書は、少なくとも十日前にこれを公布しなければならない。
3 臨時会及び特別会(日本国憲法第五十四条により召集された国会をいう)の召集詔書の公布は、前項によることを要しない。
すなわち、特別会は衆議院が解散して行われた総選挙のあとに憲法54条に基づいて開かれる国会のみを指します。そのため、毎年1回開かれる常会や、年に数回開かれることもある臨時会と異なり、開かれる回数はそう多くありません。
特別国会では、議員は国会正面玄関から登院する
それでは、特別会は常会や臨時会と何が違うのでしょうか。
まず、特別国会は衆議院議員総選挙のあとに開かれる国会のため、登院してきた人物が当選した議員であるかどうかを確認する必要があります。また、議員バッジ(議員記章)をつける必要があることから、議事堂の中央玄関から登院することになります。(通常は、議員会館との地下連絡通路や通用門を使うことがほとんどです)。
このような細かいことについて憲法・法律に定めがあるわけではありません。しかし衆議院には衆議院内でのルールについて「衆議院規則」を定めているほか、これらに定めていないことも「先例集」としてまとめており、これらが踏襲されることとなっています。
衆議院先例集
七二 議員は、衆議院議員の総選挙後の国会の召集日には、議事堂中央玄関から登院する。
七三 議員は、総選挙後の国会の召集日において当選証書の対照を受ける。召集日に登院しなかった者は、初めて登院したとき当選証書の対照を受ける。
四五八 記章を帯用しなければ議院に出入することを許さない。
また、先例集には、「記章を帯用しなければ議院に出入することを許さない。」ともあります。それゆえ、特別国会では議事堂の中央玄関から登院し、当選証書の対照の上、議員記章をつけることで、議院に出入することができるようになるのです。なお、衆議院の議員記章の裏には当選回次が刻印されており、(着用している間はわからずとも)裏をみればどの選挙で当選したときのものかはわかるようになっています。
特別国会では、冒頭で内閣が総辞職をする
衆議院議員総選挙の後の特別国会が召集されたときには、内閣は総辞職をすることとなっています。
日本国憲法第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
これは、辞職する理由の有無にかかわらず、法律の要求事項です。従って今回の岸田内閣のように、(議席をやや減らしたものの)議員数から岸田首相が内閣総理大臣として首班指名されることが濃厚であっても、再度首班指名をすることとなります。なお、内閣総理大臣の回数はカウントされるため、岸田文雄氏の「第100代内閣総理大臣」の任期は今日までとなり、改めて岸田文雄氏が特別国会の首班指名で指名されれば、「第101代内閣総理大臣」に就任することとなります。当然、組閣も再度行うことになります。
特別国会では、議長・副議長を選挙する
また、この特別会では議長・副議長の選挙も行われます。これまでの衆院議長・副議長が今回はいずれも選挙に出馬しなかったことから、現在、空席となっています。
先ほど説明した内閣総理大臣の指名は、ほかのどの議案よりも優先される議事です。一方、内閣総理大臣の指名をするにしても、議長や副議長が決まっていなければ議事進行はできず、またその前に議員がどの議席に座るかが決まっていなければその議事進行もできません。これらのことから、今日の本会議では議長の選挙、副議長の選挙、議席の指定、会期決定、議院運営委員の選任ならびに委員長の選挙の後に首班指名選挙となります。
このように、国会運営は憲法や国会法のほか、衆(参)議院規則や先例集など様々なルールに従って運営されています。解散総選挙後にしか開かれない、文字通りの特別国会、今回の会期は12日までのわずか3日間ですが、その独自のルールもぜひ注目をしてみて下さい。 
 
 

 



2021/11
 
●臨時国会 きょう召集 衆議院選挙後初めての本格的な論戦の舞台 12/6
先の衆議院選挙後、初めての本格的な論戦の舞台となる臨時国会が6日、召集されます。政府・与党は、新型コロナの影響を受けた人などへの支援策を盛り込んだ経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案を早期に成立させたい考えです。一方、野党側は、18歳以下への10万円相当の給付に必要な事務的経費のかけ方などを取り上げ、岸田政権の政治姿勢をただす方針です。
第207臨時国会は6日に召集され、会期は12月21日までの16日間となっています。
6日は午後、天皇陛下をお迎えして開会式が行われたあと衆参両院の本会議で、岸田総理大臣の所信表明演説が行われます。
岸田総理大臣は、新たな変異ウイルス「オミクロン株」など新型コロナに細心かつ慎重に対応することや、「新しい資本主義」の実現に向け地方から国全体へボトムアップの成長を実現する考えを示すことにしています。
これに対する各党の代表質問は、8日から3日間、衆参両院で行われます。
また、政府は6日、経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案を国会に提出することにしていて、来週から予算委員会で審議が始まる見通しです。
政府・与党は、補正予算案には、新型コロナ対策をはじめ、影響を受けた人や企業を支援するための経費などが盛り込まれているとして、審議を着実に進め、早期に成立させたい考えです。
野党側は、18歳以下への10万円相当の給付を現金とクーポンに分けることで、事務的経費がおよそ900億円高くなることや、新型コロナの水際対策などを取り上げ、岸田政権の政治姿勢をただす方針です。
岸田総理大臣は就任後初めて、一問一答形式の予算委員会で、野党側との本格論戦に臨む一方、立憲民主党の泉代表は、批判一辺倒の党のイメージからの脱却を目指していることから、どのような論戦になるかも焦点になる見通しです。 
●第207回臨時国会における有村治子参議院議員副会長代表質問 12/9
自由民主党の有村 治子です。私は、自由民主党・国民の声を代表し、岸田内閣総理大臣の所信等に対し、質問を致します。
中国・武漢での新型の感染症が報告されてから、丁度2年が経とうとしています。差し迫る公衆衛生の問題として、世界各国が、相次ぐ変異株を警戒する中、政治・経済の文脈においても、日本や世界が、感染症発生源である中国とどう向き合うのか、重い命題を突き付けられています。
コロナ禍におけるこの2年、私は特に、経済安全保障、尖閣諸島をはじめとする国境離島や沖縄・台湾を含めた海洋政策、科学技術政策について、アンテナを張って参りました。経済安全保障、科学技術政策、海洋安全保障の3分野はいずれも、米国と中国の緊張が高まる分野であり、日本の安全と繁栄を堅持するために、避けては通れない分野だと考えています。
同時に、統治の在り方として、自由・民主主義、法の支配、人権やプライバシーの尊重という価値観と、専制主義、覇権拡張主義、監視統制を強める効率重視の価値観が相克し、日本の立ち位置や真価が試される重要分野でもあります。
深刻な危機に直面する時にこそ、各国の国柄や特徴、その本質が凝縮して浮き彫りになることがあります。我が国に関して言えば、平時日本は、世界で最も治安が良く、自由で豊かな国ではあるものの、ひとたび、誰も予想だにしていなかったレベルの危機が生じると、結構もろい、少なからずの脆弱性を抱えていることが露呈しました。
平時の社会機能が安定し充実していることは日本の強みではありますが、ともすると平時の感覚や惰性から抜け出しにくく、機動力ある有事の対応が打ちにくい難しさがあります。「世界中が欲しがり、各国が囲い込みに動き、法外なお金を積み増し、頭を下げてでも入手したい、できれば自国で内製化しておきたい製品」を戦略物資と定義するならば、昨年はこのマスクが戦略物資となりました。
「一番安く、効率的に生産できる国に量産させ、できるだけ安価でタイムリーに輸入すれば良い」という経済合理性を重視してきた日本において、従来数円で入手できていた汎用品でさえ、他国に囲い込まれ、生産や流通をコントロールされてしまう現実を前に、「医療安全保障」という概念が、切実な政治課題となりました。国民の命と健康を守るための急所を、他国に依存するわけにはいかない、という警鐘です。
そこで国産ワクチン開発について伺います。歴史に鑑みれば、破傷風菌、ペスト菌などの研究で国際的にも大きな功績を残された北里柴三郎氏など、かつて日本は感染症研究において世界に貢献できる実力を有していたはずです。事実今でも、薬を自国で開発できる能力を持つ、世界有数の創薬国の一角を占めます。にもかかわらず、《なぜ日本で、国産ワクチンや治療薬がまだ開発できていないのか》国民の多くが持たれる疑問です。
幸い、日本にはまだ経済力があり、米国や欧州諸国から、国民に必要な量のワクチンを何とか購入することができてはいるものの、国民一人あたりのワクチンを一体いくらで買わされているのか、その価格を公表してはならないと、契約で厳しく規定されています。
例えばヨーロッパで作られたワクチンを域外に持ち出すことに審査を課したEUの囲い込みもあり、ワクチンがいつ、どのくらい日本に入ってくるか、そのメドが立たないことで、大規模接種・職域接種等に協力して下さった国民皆様の善意が落胆に変わり、一時は内閣支持率を下げるほど、綱渡りの時期もありました。
安全性・効果への信頼性に長けたワクチンの開発・量産に、いち早く成功したフロントランナーは、莫大な利益を手にし、《誰にいつ・どのくらいのワクチンを・いくらで供与するのか》、その裁量権を持つ国や企業が、世界に対して強大な交渉力、発言力、外交力を持ちます。ゆえ、先進国はこぞって、強い政治的意思と意図を持って、ワクチンの開発・量産に、巨額の公費を投入してきています。
世界各地に軍隊を駐留させる米国は、感染症対策を一貫して重視しており、米中をはじめとする各国は、生物化学兵器・テロへの対応力を含めて、まさに国の安全保障の一環として、自国でのワクチンの開発を継続的に進めています。同時に主要国は、国民の富を創る成長分野として、自国の創薬力を上げる産業政策にテコ入れをしています。
その一方日本においては、そもそも公衆衛生のレベルが高く、他国を襲ったSARS、MERSのようなパンデミックが幸いにも国内で発生せず、また炭疽菌によるテロも起こっていません。皮肉にも、このような負の経験がなかったことが、結果として感染症に国家として備えるという力・警戒心を弱くしていた、という反省があるかもしれません。
日本のワクチン開発がアメリカ・イギリス・中国・インドなどに後れを取った背景には、一体どんな要因があったのか?
感染症対策を、純粋に「公衆衛生の問題」としてしか認識していなかった日本と、これを安全保障を基盤とする産業政策と捉え、日々怠りなく精励してきた国々との根本的な認識の違いが、危機に際しての機動力に差を付けたのではないでしょうか?
経済合理性と危機管理のバランスをどのように調整し、国民の理解を得るのか、政治と行政の真価が問われているようです。ワクチンの開発は、安定した製品を最初に開発したトップランナーが、格段に大きな利益を得る、「先行者利益」が激しい特徴があります。トップランナーとなった企業や国は、国内外で大規模治験の協力を得ることができ、同時にワクチンの副反応や、性別・年代・人種や民族による効果の違いや効力持続期間など、膨大なデータを集めることができます。
このデータ自体が宝の山であり、当該製品が世界で使われれば使われるほど、データの信頼性も上がり、製品の価値がさらに上がる。トップランナーが、技術力、交渉力、資金力のみならず、データにおいても覇権を握ってしまう構図を垣間見るにつけ、このワクチン開発や創薬が、生き馬の目を抜くような熾烈な国際競争と国際協調の場であることを、思い知らされます。
投入する予算の規模、研究主体の競争優位、緊急時の政治・行政の意思決定スピード、使命感・公益性をかけた産学官の連携など、まさに国家としての総合力が問われている分野であり、日本が、このチャレンジを受けて立つ体制を構築できるかどうかの分岐点に立っているのではないでしょうか。
自由民主党は、先の衆議院選挙に向けた公約の大きな柱として、経済安全保障の強化を掲げて選挙に臨み、自民党の各部会で、その具体案を論じてきました。今回、ワクチン開発および安定的な生産能力の確保・構築に向け、5,000億円規模の予算を計上した国の意志を、明確に支持致します。その上で、経済安全保障担当大臣に伺います。ワクチン開発において、日本がなぜ遅れをとってしまったのか、政府はこの手痛い経験を、どう分析されておられるのでしょうか。また、先行者利益が大きいワクチンの開発において、現在後塵を拝している日本が、それでもなお、将来に向けて、国産化にこだわっていく動機はどこにあるのか、納税者の理解が進むように、ご説明下さい。
加えて、この度の5,000億円に上る予算によって、今後何がどう変わり、将来的に、いかなる果実が国民にもたらされるのか。経済安全保障、医療安全保障の観点から、以上3点、小林大臣に伺います。
自衛隊の任務とワクチン接種について伺います。今年7月、静岡県熱海市で大規模な土石流災害が発生した際には、延べ9千7百人の自衛官が現地に派遣され、救援活動等に従事されました。被災された方々、犠牲になられた御霊を悼み、救助に当たって頂いた皆様に、心をこめて感謝の念を強めます。
この時、熱海に派遣された自衛官のワクチン接種率は、わずか1割でした。猛暑の中、腰までつかるほどの泥やぬかるみと戦い、ただひたすら行方不明者の捜索やご遺体の収容等を行った自衛官が、接種を受けられないまま感染リスクが高い三密での救助活動を続けられたと思うと、何とも忍びない思いです。度重なる雨で地盤が緩み、二次災害の危険もある中で人命救助に当たる自衛官すら、優先接種の対象となっていなかったことが、果たして適切だったのでしょうか。
自衛隊の第一義的な任務は、我が国の防衛です。寝食を共にして警戒監視を続ける艦船や潜水艦は閉鎖空間が多く、より徹底したコロナ対策が必要なはずです。例えば、急遽の代替要員が確保しにくい中で国境監視を続ける海上保安官、長期にわたり洋上で離島防衛の任務に就く自衛隊艦船の乗組員、災害救助の前線に立つ自衛官等の緊急度・必要度を精査し、優先接種の仕組みを整えるべきだと考えます。自衛隊の最高指揮官であり、危機管理の先頭に立たれる総理のお考えを伺います。
続いて、自衛隊の任務について伺います。日本をとりまく安全保障環境が、厳しさを増す昨今、主たる任務以外の業務で、自衛隊に負荷がかかりすぎていないでしょうか。例えば口蹄疫や豚熱における牛や豚の埋却や、鳥インフルエンザにおける何十万羽もの鳥の殺処分、冬季国体スキー会場等への雪の設営。自衛隊にあれもこれもと、出動を依頼することが、半ば当たり前のようになってきていることを案じます。
自衛隊派遣には、規律ある原理原則があるはずです。自衛隊ならではの国防任務の重要性と、大規模災害等での貢献に鑑みれば、自衛隊の主たる任務から遠く離れて、相当な負荷を現場に強いる業務に自衛隊員を借り出すことは、慎重に勘案されるべきだと考えます。どのような基準で、自衛隊派遣を考えれば良いのか、防衛大臣のご見解を、私達国民にお聞かせ下さい。
日本の稼ぐ力、国際競争力の凋落が指摘される今、岸田総理は、成長戦略のトップに、科学技術・イノベーション分野を明示されました。平時において今ほど、科学技術力が、国家の盛衰を規定する時代は、かつてなかったのではないかと感じてしまうほど、先進国はこぞって、科学技術分野に大胆な投資をしています。技術覇権と、自国に有利な技術やシステムの国際標準化を狙う米国・中国・欧州はもちろんのこと、各国は大学院博士号を取得した優秀な人材を競い合って獲得しています。
人口100万人あたりの博士号取得者数はイギリスが375人、ドイツが336人、韓国は296、次いで米国が281、その遥か後塵を拝する日本は、米国の半分以下であり、トップを走るイギリスの三分の一以下となる、120人です。この20年間で主要国が皆、国の繁栄をかけて、博士号取得者を増加させている一方、日本だけが、博士号取得者数を減少させています。
なぜこのような厳しい状況に陥っているのか? そもそも日本においては、博士課程に在籍する人を、「正当な対価を支払うべき専門家、社会の価値を創出する金の卵」だと認識しているのか、それとも、「授業料を払ってくれる学生、安く使える労働力」と見なしているのか、即ちお金を払う対象なのか、お金をもらう対象なのか、多くの人にヒアリングを重ねても、いまだ判然としません。
私自身、最近ふと気が付き、痛感をしているのですが、日本には、博士号取得者をどのくらい養成し、その専門性を国の活力ある未来のために、どのように活用するのかという定見、ビジョンとも言うべき国家戦略が見当たりません。だからこそ、ポスドク問題のような、研究者の深刻な就業問題が生じており、高度人材の海外流出も顕在化しています。国家公務員制度においても、博士号を取得した人材を積極的に登用し、その優れた専門性を行政組織の刷新に主体的に活かすインセンティブは、ほとんど機能していないように見受けられます。
日本の科学技術力の下落に危機感を持つ自民党は、昨年から政府各府省に熱意を持って働きかけ、世界に伍する大学を支援する10兆円ファンドという新しい枠組みが創設されました。その一環で、このたびの経済対策においても、博士課程に学ぶ学生が研究に専念できる環境を実現するための予算が計上されており、この10兆円ファンドは、日本の科学技術力の再起に向け、何としても実効性を上げ成功させたい、希望の礎だと認識しています。
日本が引き続き先進国の一角を占め、科学技術立国を名乗ろうと決意するのであれば、特に理工系の博士号取得者を大学研究職に限定せず、能力に見合う処遇で産業界や公官庁でも活躍できる、皆に見える確かなキャリアパスを、産学官が必死になって築くべきです。「いやいや博士号取得者なんて頭が固くて使いづらい。まだ、修士号取得者の方が、つぶしが効いて使いやすい」との従来通りの社会認識が続くようであれば、日本は科学技術の先頭集団から脱落し、中進国に甘んじることになるのも時間の問題だと認識します。
経済安全保障の主要課題は、
科学技術の戦略的優位を磨くこと、
技術力を稼ぐ力に進化させ、実際に富を生んでいく仕組みを廻すこと、
日本や同盟国の先端機微技術が、他者他国から窃取されることを防ぎ、知的財産や国際競争力、軍民両用に使われうる技術を守りぬくことです。
これらを担う頭脳に、各国は、学術的な訓練を積んで高い課題解決能力を持つ博士人材を充てています。
小林大臣、なぜ日本だけが博士号取得者が減り続けているのでしょうか。日本の大学が、大学研究職のみならず、社会のニーズに応え、実業界でも通用し高く評価される博士人材を輩出できるよう、抜本的に進化を遂げるためには、一体何が必要だとお考えでしょうか。また、博士号を取り巻く極めて厳しい現状を直視し、日本が再び科学技術立国として、世界に冠たる先端技術や産業競争力を回復するために、小林大臣のもとで、博士号に対する国家ビジョンを明確に打ち立てて頂きたいと提案致しますが、いかがでしょうか。科学技術担当大臣に伺います。
今年6月11日、この参議院本会議場において、「世界保健機関(WHO)の台湾への対応に関する決議」が採択されました。国権の最高機関である国会において、参議院を構成する全会派、すなわち自由民主党・国民の声、立憲民主・社民、公明党、日本維新の会、国民民主党・新緑風会、日本共産党、沖縄の風、れいわ新選組、碧水(へきすい)会、みんなの党、そして会派に属しない議員も含めた総意として、全会一致で決議を可決しています。私自身も、筆頭発議者として決議案を提出し、与野党の心ある同僚議員とともに、各会派の合意形成に向けて主体的に動きましたが、感染症の収束を願い、参議院が一致して国際防疫という世界的価値に向けての台湾参画の意義を訴え、意志を明確にできたことは、本当に良かったと思っています。
この決議は、日本政府に対し、「台湾がWHOの年次総会にオブザーバーとして参加する機会が保障されるよう、関係各国に強く働きかけること」を求めています。立法府の参議院が全会一致で日本政府に求めた重い要望を、総理はどのように受けとめられ、外務大臣は、関係各国にいかに働きかけて下さるのか、ご見解と方策を伺います。
近年、この参議院決議と同じような趣旨で、台湾WHO参加を支持する決議や、中国政府による人権侵害に関する決議等が、各地の地方議会において採択されています。その後、当該地方議員や議会関係者が、中国大使館の参事官や中国領事館の副総領事、政治部主任等を名乗る人物から、直接抗議や名指しで威圧されていることが報じられており、私自身も、複数の議会関係者から証言を得ています。
日本は思想信条の自由、表現の自由を尊ぶ民主主義国であり、国会であれ地方議会であれ、議会の正統な手続きに則った意志表明は、他国の干渉や圧力を一切受けることなく、あくまで自由意志に基づいて行われなければなりません。そうでなければ、他国政府による内政干渉を恒常的にゆるすことになり、これは健全な議会運営を毀損し、民主主義を脅かします。地方議会で不安を覚えながら、奮闘している議会人に対する威嚇の実態を政府として把握し、中国当局によって行われている威嚇の実態を、国民の前に公表すべきだと思います。地方議会の自由意志と安全を守り抜く日本政府の毅然とした態度こそ、我が国の民主主義や独立主権を堅持することにつながると確信いたします。総理のご賢察を伺います。
日本は6852の島々から成る海洋国家です。島が存在していることによって、我が国の排他的経済水域が形成され、人々が安心して島に住むことで、日本の領土・領海が保全され、国境や漁業権が守られていることを考えれば、島の数を正確に把握し、所管することは国益に関わる大事な行政です。
では沖縄に島はいくつあるのでしょうか?沖縄県のHPには、《160の島々が点在する》と記述されている一方、海上保安庁調査に基づく政府見解では、沖縄の島の数を《363》と発表しています。現在、島の数え方に、ダブルスコア以上の乖離が生じています。
海洋国家日本の領土領海を守り、また国際法で担保されている我が国の排他的経済水域における権益を維持するためにも、私はこれまで、政府発表と地元自治体で、公表する島の数に大きな乖離があることは健全ではなく、見解を一致させるべきだと幾度となく訴えてきましたが、正式な回答がなかなか頂けません。 そこで、沖縄県は、一体、いくつの島から構成されるのか、政府の確立した最終・統一見解を、総理に伺います。
次に私がライフワークとしている保育・幼児教育、子育て支援について伺います。このたび総理は、「新しい資本主義」の実現に向けた分配戦略の一環として、看護、介護、保育・幼児教育などの現場で働く方々の収入の引上げを打ち出され、保育士等を対象に収入を3%、月額9千円引き上げることを表明されました。
幼子の命と健康を日々守っておられる保育の現場は、感染症対策の三密を意識しながらも、泣く子をおぶって、抱っこして、離乳食を口に入れて、嘔吐物の衛生管理も徹底しながら、人の濃密な関わり合いによって運営されています。
多くの国民が新型コロナウイルスに怯えていた昨年最初の緊急事態宣言下、全国の学校一斉休校の時でさえ園を開き続け、エッセンシャルワーカーの子女を含めて子供の心身を守った現場の貢献には、本当に頭が下がるものがあります。総理が強いこだわりを持って打ち出された今回の国主導の処遇改善は、実際に先生方お一人お一人の手元に行き渡るような制度設計にして頂くべく、切にお願い申し上げます。
加えて、経済的な処遇改善だけではなく、幼児教育・保育に携わる先生方に対する社会的敬意が向けられるよう、引き続き、社会を担う専門職に敬意を持った、前向きな発信をして頂きたいと存じます。合わせて総理のご見解を伺います。
さて日本は、来年5月15日、沖縄が日本本土に復帰してから丁度50年という節目を迎えます。先の大戦末期、戦闘を続ける力も果てた沖縄戦において、大田實(おおたみのる)海軍司令官は、東京の海軍次官に宛てて最後の打電をし、自決されました。「沖縄県民かく戦えり。県民に対し後世特別の御高配を賜らんことを」と記された電文には、兵士のみならず、非戦闘員である老若男女が、着の身着のまま、必死に戦われた様子が克明に記されており、沖縄戦の熾烈さを今に伝えています。
吉田茂首相が署名し、昭和27年4月28日に発効したサンフランシスコ講和条約によって、それまで米軍に代表される戦勝国によって占領統治を受けてきた日本は、晴れて独立国家としての地位を回復し、国際社会に復帰しました。日本の独立主権を回復した政治的、歴史的な日です。
同時に、講和条約が発効したこの4月28日は、沖縄が奄美や小笠原と共に、引き続き米国統治下に置かれ続けることが決定的になった日でもあり、沖縄においては、複雑なお気持ちがあることにも、真摯に心を添わせます。沖縄は、この日から更に20年間、戦後から数えると、実に27年もの長きにわたり、米国の施政下に置かれました。
昭和39年の東京オリンピックでは、米国統治下の沖縄から聖火リレーが始められ、翌40年、内閣総理大臣として戦後初めて沖縄を訪れた佐藤栄作総理は、「沖縄の祖国復帰が実現しない限り、我が国にとって戦後は終わりません。この思いは日本国民全ての気持ちであり、本土の同胞を代表して、これを皆さんにお伝えしたくて、私は沖縄訪問を決意致しました」と那覇飛行場で演説されています。
沖縄においても祖国復帰期成会や祖国復帰協議会等が結成されて復帰への機運が高まり、国民的悲願であった沖縄の本土復帰は、遂に昭和47年(1972)5月15日に実現しました。この沖縄復帰によってこそ、日本は47都道府県全てにおいて主権を回復したことになり、これは真の意味で、日本が国家としての主権回復をやっと成し遂げられた歴史だと言えるかもしれません。
戦中・戦後に沖縄がたどった歴史に想いを致し、沖縄と日本全体がお互いに深甚な努力を続けて実現したこの歴史を深く記憶に留め、来年の本土復帰50年の節目が、真に国民的理解のある沖縄繁栄の新たな出発点となるよう願っております。
今月に入り、沖縄県議会においても、又吉清義(またよし・せいぎ)議員や島袋大(しまぶくろ・だい)議員が沖縄復帰50年の在り方について、質問に立たれています。日本政府におかれては、沖縄県の意向に真摯に耳を傾け、沖縄としっかり手を携え、日本の意志として、沖縄本土復帰50年の記念式典を、最高位の真心をもって開催して頂きたいと考えます。
また、沖縄が琉球時代から培ってきた高い文化や、戦中・戦後にたどった歴史への国民的理解を深めるため、政府におかれては、例えば記念切手の発行など、この数年で各省庁が実行できる記念事業をご検討頂きたいと提案致します。総理のご見解を伺います。
以上様々な分野の質問を重ねましたが、全ての質問に共通するのは、かけがえのない、守るべき価値を、しっかりと守り抜く日本の態勢が構築できているかどうか、そのための私達の努力に不足なかりしか、という素朴で根幹的な自問です。
心休まる時もなく、日々コロナの難しい国家の舵取りに向き合っておられる総理と岸田内閣のご活躍を念じ、日本の未来に向けて共に責任をおう与党自民党の役割を自らに言い聞かせ、自由民主党・有村治子の質問を終わります。ありがとうございました。 
●臨時国会で紛糾する子ども給付の議論 12/8
現在開かれている臨時国会の補正予算審議では、18歳以下を対象にした一人当たり10万円の子ども給付金制度が、与野党間での最大の争点となりそうだ。10万円のうち5万円は、既存の児童手当の仕組みを活用して年内に現金で支給を始め、残りの5万円は来年春に向けてクーポンを基本に給付する方針だ。問題は、クーポンの給付に1,000億円近くの事務費がかかることが明らかになったことである。これが「無駄」な設計になっているとして、制度の見直しを求める声が高まっている。実際のところ、クーポンでの給付には問題が多い。
この子ども給付は、コロナ禍で所得が大きく減少した個人あるいは世帯を支援するという、本来のコロナ対策としての個人向け給付金の考え方に照らしておかしい設計となっている。子どもを給付の基準とするのではなく、働く人の所得が、コロナ問題でどの程度減少したかを基準にすべきであった。そして、所得が大きく減った個人、世帯に集中して支援する設計とすべきであった。
政府は、当初、全額クーポンでの給付を考えていたのではないか。それは、昨年の一律給付金、2009年の定額給付金などが、その大半が貯蓄に回り、個人消費につながらなかったとする批判に応えるためだ。そこで、教育、子育て関連の支出に使えるクーポンで支給すれば、確実に消費に回ると考えたのだろう。ただし、クーポンの支給には時間がかかることから、半分は現金として年内支給を目指したのである。
しかしそれは誤解である。本来、働いて得たお金で買おうとしていた教育、子育て関連の必要な商品を、クーポンで買えば、その分浮いたお金が、貯蓄に回るだけの話である。期限があるクーポンを使うことで、教育、子育て関連の支出が幾分前倒しされる可能性もあるが、将来の支出を加えた支出総額は変わらない。
他方、買いたいものがクーポン利用の対象にない場合、個人にとってクーポンの総額は、同額の現金よりも価値が低くなる。この点から、子ども給付金の給付対象となる個人、世帯は、すべて現金で受け取ることを望むはずだ。
こうした個人の効用の観点から考えても、クーポンでの給付は問題である。筆者は、既にみたように子ども給付制度に大きな問題があると考えているが、仮に実施するのであれば、クーポンをやめてすべて現金で行うべきだと思う。
一方、クーポンの給付に1,000億円近くの事務費を民間業者に支払うことについては、予算の無駄使い、との声が多い一方、それも経済効果を生むと評価する声も一部にはある。確かに、その事務費に相当する景気浮揚効果(GDP押し上げ効果)が生まれることが期待できる。
しかし、その効果は僅かなものである。そもそも子ども給付の最大の狙いは、個人、家計の支援策、セーフティーネット強化策であるはずだ。それを踏まえると、事務費相当の景気浮揚効果の有無や是非を議論すること自体、おかしなことだ。 
●第207回臨時国会における茂木敏充幹事長代表質問 12/8
自由民主党の茂木敏充です。会派を代表して岸田総理の所信表明演説ならびに財政演説について質問します。
この臨時国会前、10月の総選挙で、自民党は絶対安定多数261議席を獲得することができました。国民の皆様から大きな信任を得ることができたと考えています。今後とも、国民との丁寧な対話を続け、政策の実現力、改革の実行力で国民の期待に応えていくことが何より大切だと思います。
古代ギリシャの英雄アレクサンダー大王、わずか10年でギリシャから東はインダス河に至る巨大な帝国を築いた「力」の象徴、若きアレクサンダーが、こんな言葉を残しています。「剣によって得たものは長続きしないが、優しさと節度によって得たものは永遠である」。まさに、岸田総理が強調されている寛容、そして信頼と共感。これこそが、今、政治に求められているのではないでしょうか。
コロナ対策
まず、コロナ対策についてお聞きします。昨年の初め、中国・武漢から始まった新型コロナ感染症は世界中に拡がり、世界各国がかつてない危機に直面しました。今年の4月には世界全体の1日の感染者が89万人と過去最大になりましたが、現在ではその半分以下、40万人程度となり、米国やヨーロッパでの感染再拡大や新たな変異株の影響が懸念されているものの、世界全体では、また日本でも、感染はやや落ち着きを見せています。
特に日本の場合、ロックダウンなどの強制的措置を取らない中でも、感染者や死亡者は低い水準に抑えられてきました。これは、ワクチンの接種の加速に加え、日本人の高い公衆衛生意識、医療現場の皆さんの献身的な対応、そして国民の皆様や様々な事業者の協力があってこそだと考えています。もちろん、今後も新たな変異株の海外からの流入を食い止める水際対策、今回のオミクロン株に対する水際措置のような厳格かつ機動的な対応が極めて重要であり、「批判は私が全て負う覚悟」とした総理の決断を支持します。
その上で、新型コロナは未知の感染症であり、日本ばかりか世界各国が試行錯誤で対応に追われてきたのは事実です。そこで、新型コロナが落ち着きを見せている今こそ、これまでのコロナ対応を総合的に検証し、反省点や課題を今後の対策に反映していくことが重要だと考えます。まさに、マサチューセッツの夏、JFKの「屋根を修理するなら、日が照っているうちに限る」です。
反省点、いくつかあると思います。まず感染拡大の初期に、流行1カ月から2カ月で新規感染者が何百倍に増える、といった感染拡大の予測数値・予測モデルが乱立し、一人歩きしたこと。これらの予測が適切な感染対策にどこまで役に立ったのか、大いに疑問です。
全国レベルで何倍になるということより、むしろ、自治体単位での感染状況・トレンドやどこにコロナ病床の空きがあるかなどの実態を「見える化」した方が、医療関係者などにとって、より有益な情報だったのではないでしょうか。これは、台湾のオードリー・タン・デジタル政策担当大臣が先頭になってマスクの流通状況などの情報を積極的に公開した台湾の好事例を見ても明らかだと思います。
また、一時提案された「新しい行動様式」にしても、「横並び一列で会食する」といった提案など、人間行動学的に初めから定着するのが困難なものがあったと思います。
さらに、当初、感染が急拡大する状況では現場の判断、保健所の判断に依存せざるを得なかったのは確かだったと思いますが、知見や経験の集積とともに、現場任せではない、より統合された指揮命令系統を作り上げていくべきではなかったでしょうか。強調したいのは、これらの反省点を踏まえて、今後のコロナ対策をどう進めていくかです。これに関連して、総理に3点お伺いします。
まず指揮命令系統について。総理は「来年6月までに感染症危機管理の抜本的強化策をとりまとめる」と表明されており、危機管理では「最悪の事態を想定した対応」が何より重要だと考えます。その上で、医療提供体制の強化、例えば、病床数をどこまで確保するかやワクチンの接種などについて、基本方針は国が明示する。一方、地方自治体や保健所はその実施に集中し、これを国や都道府県が支援する体制に転換していくべきと考えますが、この基本的な方向性について総理の見解を伺います。
そして、2点目。円滑な実施を進めるための仕組み作りも不可欠です。例えば、病床の増強については、3つのステップの準備が必要です。まず(1)患者導線や陰圧室などの整備、次に(2)病床そのものを患者のいない空き病床として確保する、そして最後に(3)コロナ患者を実際にそこに受け入れる。今回の経済対策にも都道府県による病床の確保に活用できる「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」として2兆314億円が措置されていますが、いま進められている病床の拡大確保に当たっても、これら3つの段階それぞれに応じた補助金としていくことが適切だと思います。
また、単に病床を準備するだけでなく、そこに十分なスキルを持った医師・看護師などの人材を配備しなければ意味がありません。そこで、
(1) 人材を拠出した病院への補填とともに、施設基準についても柔軟に対応すること
(2) 都道府県単位で、人材登録を行うこと
(3) 医療機関等に対し、待機報酬・危険手当に対応できるような支援策を拡充し、感染症対応の実習、研修も行うこと
こういった実際にコロナ病床や人材供給の増加につながる取組、仕組み作りが必要ではないでしょうか。総理の見解を伺います。
最後にワクチンの開発・製造について。今後、国産ワクチンの開発・製造が経済安全保障の観点からも極めて重要であり、今回の経済対策でも7,355億円の予算が確保されています。同時に、新たなウィルスのワクチン開発にどの国、どの企業が先行するかは、なかなか予測困難です。今回のワクチン開発でも米国と英国が先行しましたが、アストラゼネカはオックスフォード大学と共同研究し、製薬大手の米国ファイザーはドイツの医薬品ベンチャー・ビオンテックと組んでワクチンを開発しました。
ワクチンの開発に関し、世界中のシーズを最も早く見い出す産学官のネットワーク力の強化や業態・国境を越えた共同開発も視野に入れた取組が必要ではないでしょうか。さらに、私も外務大臣としてEU域内で製造されたワクチンの日本国内への調達に携わり、ギリギリの交渉も行いましたが、今後、(1)海外で開発されたワクチンの調達力強化、また、(2)開発後に国内で生産能力を一気に拡張するための、例えば平時は医薬品、緊急時はワクチン製造に使えるデュアルユースの生産設備の整備、大幅拡充といった対策が必要ではないでしょうか。感染症克服の鍵を握るのは、やはりワクチンです。3回目の接種も、8カ月を待たず、前倒しすべきです。以上、ワクチンに関する今後の取組みについて、総理の見解を伺います。
コロナからの回復
経済対策に入ります。昨年の新型コロナ発生後、政府は3度にわたる補正予算を編成し、財政支出150兆円を超える対策を行ってきましたが、その主体は、コロナの影響から暮らしや事業、雇用を守るための政策でした。
今後必要になるのは、「攻め」の経済政策です。生活支援、事業支援に止まらず、たとえ次の感染の波が来たとしても、十分な医療提供体制や治療薬を確保し、「ウィズコロナ」の下でも経済をしっかりと動かせる体制をつくっておくことです。
コロナ前の成長トレンド、2022年から23年に実質GDP560兆円を超える成長軌道に戻していくには相当思い切った対策が不可欠です。先月、政府の経済対策が取りまとめられました。財政支出は過去最大の55.7兆円、事業規模は78.9兆円にのぼる大胆かつ総合的な経済対策だと受け止めています。この新たな経済対策によって、日本経済をどのように成長軌道に乗せていくのか、総理が描くシナリオと、その実現に向けた重点政策について、ご説明ください。
日本経済を新しい成長軌道に乗せるに当たっては、単に成長率を引き上げるだけでなく、それを広く国民が実感できるよう、成長の裾野を広げる「より幅広い成長」と、成長の果実を「より速く、より多く、より隅々まで」分配できる「成長と分配の好循環」を目指していくことが大切だと思います。
我々は、成長戦略によって、デジタル、グリーンなど成長分野への投資を加速し、そこで生み出された利益が国民、すなわち消費者にまわり、それがマーケットの拡大、そして更なる投資へとつながる好循環を作っていきます。これこそ、まさに資本主義なのですが、ただ、我々は「新自由主義」と言われるような競争一辺倒で、もうこれ以上消費できない「勝ち組」と意欲を失ってしまう「負け組」をつくるような市場原理主義には組みしません。
一方、「分配」と言うと、資本家、大企業からお金を吸い上げて労働者に回すというような、社会主義的なゼロサムゲームを思い浮かべるかもしれませんが、我々の目指すものは全く違います。ウィンストン・チャーチルも資本主義と社会主義の違いについて、「資本主義に内在する悪徳は、幸運を不平等に分配することだ。社会主義に内在する美徳は、不幸を平等に分配することだ」と語っています。
資本主義をより適正に機能させる。「神の見えざる手」が及ばない、マーケットに任せておくだけではうまく行かない、例えば、正規・非正規の壁や看護・介護の公定価格など、マーケットが機能しにくいところを官が補完することで、より多くの受益者、アクティブ・プレーヤーを生み出す。そういう分配政策が必要です。
イギリスのエコノミスト誌では「新しい資本主義」のことを「ニューモデル・オブ・キャピタリズム」と表現しています。自動車も何年かに一度はモデルチェンジが必要ですし、蒸気機関からガソリンへ、そして電気自動車へといった、より大きなシフトも進みます。私たちの資本主義も、時代のニーズやトレンドに合わせてモデルチェンジや更なる進化を図っていくべきだと考えます。
自民党でも先月、「新しい資本主義実行本部」を立ち上げました。政府の「新しい資本主義実現会議」と車の両輪で、検討作業を加速していきます。そこで、岸田総理の描く「成長と分配の好循環」、そして「新しい資本主義」について、そのビジョンと実現への道筋について、お聞かせ下さい。
総理は、成長戦略の柱として、「デジタル田園都市国家構想」を打ち出されました。発想の源泉は、1970年代末、当時の大平総理が打ち出した「田園都市国家構想」だと思います。当時、日本は高度成長期を終え、安定成長期へ、「成長」から「暮らしの豊かさ」に国民のニーズがシフトする時代環境でした。そんな中、大平総理は、都市の活力と田園のゆとりを結合させる「田園都市国家構想」を打ち出しました。
キーワードは、都市と地方の長所の「結合」だと思います。特に今の時代、デジタル技術を活用すれば距離は問題にならず、場所が制約にならない時代になっています。ネットショッピング、オンライン教育や遠隔診断で、地方にいながら都会同様に最先端で多様なサービスを享受することができます。
「デジタル田園都市」、国民にとってはまだなじみのない言葉だと思います。総理が目指す「デジタル田園都市国家構想」について、わかりやすくご説明下さい。
東日本大震災の発生から10年が経ちました。被災地の復興、再生に向けた歩みは着実に進んでいます。自民党はこれからもお一人お一人に寄り添いながら、被災地の復興と再生に向けた取組を続けるとともに、福島県に整備する国際教育研究拠点をはじめ、被災地の新しい発展に向けた取組を加速します。
さらに、近年、気候変動の影響により自然災害が頻発、激甚化する一方で、高度成長期に整備された我が国のインフラは、大規模な補修や改善が必要となっています。壊れてから直すのではなく、壊れる前に、センサーやデジタル技術をフル活用して、先手、先手の対応を行っていくことが大切です。
今回の経済対策にも、国民の安全安心の確保に向け、防災・減災、国土強靭化に2兆7,432億円の対策が盛り込まれています。政府には、デジタル時代にふさわしい賢いインフラ整備を進めてもらいたいと思います。また、デジタル技術は農林水産業での担い手の確保や生産基盤の強化、そして中小企業の生産性向上にも活用が期待されます。防災・減災、国土強靱化の推進、さらにコロナの影響を受けている農林水産業や中小企業・小規模事業者への支援策について、総理の決意を伺います。
外交・安全保障
外交、安全保障の話に入ります。国際政治学者グレアム・T・アリソンは、新興勢力が台頭し支配勢力と拮抗するようになると衝突の危険性が高まる、いわゆる「トゥキディデスの罠」を指摘し、注目を集めました。そして、その危険を回避するためには「最大限の想像力と慎重さ、柔軟さを駆使する」必要があり、「途方もない政治的手腕が求められる」と述べています。
我が国を取り巻く安全保障環境も、厳しさと不確実性が増しています。日本の周辺には、大きな軍事力を有する国家が集中しており、軍事力の更なる強化や軍事活動の活発化の傾向が顕著になっています。まさに、わが国の「政治的、外交的手腕」が試されています。
中国による透明性を欠いた軍事力の拡大や、東シナ海・南シナ海における一方的な現状変更の試みは、日本を含む地域と国際社会の安全保障の強い懸念となっています。尖閣諸島周辺の日本の領海で独自の主張をする中国海警船の活動は明らかに国際法違反であり、日本の領土・領海・領空を断固として守り抜くとの決意の下、今後とも、冷静に、そして、より毅然と対処していくことが重要です。
岸田総理は、就任翌日にバイデン大統領と日米首脳電話会談を実施し、日米同盟の一層の強化を確認されました。また、総選挙直後に、英国、グラスゴーでのCOP26に出席し、バイデン大統領との間で、早期に首脳会談を実現することで一致しました。
本年4月の日米首脳会談では日米同盟の強化や「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力を確認するとともに、台湾問題について実に52年ぶりに、共同声明に「台湾海峡の平和と安定」という要素を盛り込みました。両岸関係について、軍事バランスは全体として中国側に有利に変化していると見た方がいいのではないかと思います。この台湾をめぐる情勢の安定は、日本の安全保障にとってはもとより、地域や国際社会の安定にとっても重要であり、一層緊張感をもって注視、対応していく必要があると考えます。
そこで、今後の日米同盟強化に向けた抱負、5年前のTICAD6で日本が提唱し、今や日米豪印「QUAD」の協力、ASEANやEUとの連携に発展している「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取り組み、さらに今お話しした台湾問題への対応について総理のお考えを伺います。
北朝鮮による核・ミサイル能力の向上はじめ、わが国が直面する安全保障環境に鑑みれば、日米同盟の抑止力、対処力の向上が必要不可欠です。また、わが国自身の防衛力の強化が重要であり、「GDP比1%枠」といった従来の考え方にとらわれるのでなく、現実の安全保障環境に対応した防衛費の拡充が必要だと思います。ミサイル技術が発達する中で、「迎撃能力を向上させるだけで本当に日本を守れるのか」という問題意識の下、「敵基地攻撃能力」、厳密な言葉で言えば「敵基地反撃能力」、その保有は有力な選択肢であると考えます。今後、専守防衛の考え方、また、日米の基本的な役割分担を維持しつつも、このような能力の保有について検討を加速すべきと思いますが、以上、総理の見解をお聞かせ下さい。
「自由で公正な経済圏の拡大」について伺います。世界で保護主義や内向き志向が強まる中、日本はTPP11以降、日EU・EPA、日米貿易協定、日英EPA、RCEPと、自由貿易の旗手として「自由で公正な経済圏の拡大」にリーダーシップを発揮してきました。また、デジタル分野の新たなルール作りでも、日本は議論を主導してきました。
一方、中国はこの分野で"BIG Elephant in The Room"と呼ばれています。中国は「世界最大の途上国」を自称し、国際的な枠組みにおいて主要国が負うべき責務を回避し、恩恵だけを享受し続けています。その一方で、経済的手段を用いた圧力、国際ルール・スタンダードの枠外での開発金融によって、影響力の拡大を図っています。
これらの分野で中国にどう対応し、また、「自由で公正な経済圏の拡大」や新たなルール作りで日本としてどうリーダーシップ発揮していくのか。さらに先端半導体など「戦略物資」の確保、サプライチェーンの強靭化はじめ、新たな課題である「経済安全保障」に、今見えるものだけでも中長期的な視点も含め、どう取り組んでいくのか、総理の考えを伺います。
気候変動への対応
近年、世界各地でこれまでになかったような極端な大雨や、記録的な猛暑が続いています。日本でも、ここ数年、「これまでに経験したことのない」と形容される気象現象が頻発しています。気候変動問題への対応は、もはや待ったなしの課題です。
先日のCOP26において、岸田総理は、パリ協定の目標に向けて、「5年間で最大100億ドルの国際的な支援を行う」という日本の新たなコミットメントを発表し、アジアを中心とした脱炭素社会の構築を通じて、世界全体の気候変動対策に貢献していくことを表明されました。
世界の投資は、今後、DX、デジタルトランスフォーメーションとともに、GX、すなわちグリーントランスフォーメーションへと一気に向かっていきます。世界経済の成長エンジンとして発展が期待されるアジア諸国にとっても、このGXのうねりは、経済成長と脱炭素化を両立させるカギになります。
その際重要なことは、これまでの様々な国際課題への対応が先進国と途上国の分断を生んだように、先進国の時間軸や手法だけを押しつけるのではなく、アジア各国などの置かれた状況や課題を踏まえ、現実的に気候変動問題に取り組んで行くことです。高い目標を掲げつつ、それぞれの実情にあった最も有効な対策を講じていくことが、最終的に途上国も含めた地球規模の温室効果ガスの大幅削減につながると考えます。
今後、この気候変動問題に日本として「どういう立ち位置で取り組んでいくのか」、また、「どのような"日本らしい"貢献をしていくのか」、改めて総理のお考えを伺います。
憲法問題
日本国憲法の制定から今年でちょうど75年。わが国を取り巻く国際環境や気候変動などの自然環境、さらに社会構造や国民意識も大きく変わってきています。この1、2年に限っても、新型コロナ感染症の拡大という危機に直面し、「緊急事態」というものへの切迫感も高まっていると思います。自民党は「緊急事態対応」を含む4項目を中心に憲法改正の条文イメージを提示しており、国会での活発な議論を期待しています。
一方、一部には「改正を前提とした審議はしない」というご意見もあるようです。決して真意ではないと思いますが、聞きようによっては「議論のための議論ならやってもいい」とも取れます。一体、これで我々国会議員の責務、憲法の改正原案を策定し、国民に発議する権限と責任を有する国権の最高機関、国会の役割を果たしたと言えるのでしょうか。
総理は、かつてわが党の政調会長として、この場で「憲法のありようについては、時代の変化の中で、常にどうあるべきか考えていかなければならない」と述べられました。感染症による新たな緊急事態、厳しさを増す安全保障環境など、時代は大きな転換点を迎えています。今こそ我々国会議員が、広く国民の議論を喚起し、国民に選択肢を示すべきではないかと考えますが、総理のご所見を伺います。
まとめ
「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」チームワークで困難な課題解決に取組むという岸田総理の考えを共有します。
中国史上最高の名君と謳われた唐の二代皇帝、太宗はその言行録「貞観政要」の中で、「チームの力」を強調し、「諫言に耳を傾けよ。さすれば国はよく治まる」と語っています。まさに、総理が重視する「聞く力」だと思います。
同時に、太宗は事を成す時間軸を持つことの大切さを強調しています。「中庸」の中にある「遠きに行くに、必ず邇きよりす」にも通じます。岸田総理が、わが国が直面する内外の重要課題に明確な時間軸のもと、1つ1つ結果を出して行くことを期待し、自民党として「チーム力」でそれを支え、国民の皆様の期待にお応えしていくことを約束して私の代表質問といたします。