菅首相の所信表明

所信表明演説
評価色々 分かれました

個々の案件を積み上げたものが全体です
勝手に全体を想像してください ・・・ 
 


 
 
 
 
●野党、首相の所信表明を批判 「社会像も夢もない」  10/26 
野党各党は26日、菅義偉首相の所信表明演説を受け「ビジョンや夢が全くなく、この先にどんな日本、社会があるのか全く分からなかった」(福山哲郎立憲民主党幹事長)などと一斉に批判した。日本学術会議の会員任命拒否問題への言及がなかった点も問題視した。
福山氏は「自らの言葉はまるでなく、政策の寄せ集めを読み上げただけだ。中身がない」と指摘。日本維新の会の馬場伸幸幹事長も「国民に夢や希望を持ってもらえるスローガンがない」と不満を漏らした。
任命拒否問題に関し、社民党の福島瑞穂党首は「首相から説明すべきだった」と強調した。 
●菅総理が初所信表明「脱炭素社会の実現」を 10/26
菅政権が発足して初めての臨時国会が26日に召集され、菅総理大臣が国会で所信表明演説を行いました。
菅総理は演説の目玉として「脱炭素社会の実現」を打ち出し、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を宣言しました。
「我が国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことをここに宣言いたします」
日本政府として明確に期限を示すのは初めてです。
菅総理は、「温暖化対策を行うことが産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながる」として、国と地方の総力を挙げて取り組むと強調しました。
また、新型コロナウイルス対策と経済再生の両立を目指すとした上で、「デジタル庁」の創設や不妊治療の保険適用など改めて看板政策を訴え改革姿勢を強調しました。
「携帯電話料金の引き下げなど、これまでにお約束した改革については、できるものからすぐに着手し結果を出して成果を実感いただきたいと思います。行政の縦割り、既得権益、そして悪しき前例主義を打破し、規制改革を全力で進めます」
菅総理周辺は演説について「奇をてらわずに具体的な政策を並べて堅実さを印象づけたかった」と話していて、まずは手堅く「菅カラー」をアピールした形です。 
●スカスカ…待った分だけ肩すかしの菅首相所信表明 10/26 
菅義偉首相(71)が26日、召集された第203臨時国会の衆参各本会議で、就任後初めて所信表明演説を行った。地球温暖化対策に関して2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする脱炭素社会の実現を目指すなどを宣言したが、就任から40日後と異例に遅れた初の所信表明で目新しい政策はなかった。日本学術会議の任命拒否問題には言及されず、野党側からは批判の声が上がった。
首相就任から40日後と異例の先送りとなった初の所信表明演説は、待たされた分だけ肩すかしの感が大きかった。安倍晋三前首相が多用した歴史上の人物やエピソードもなく、実直に基本政策や方針を語った。新型コロナ対策、コロナ禍の経済、自身が総務相時代に創設した「ふるさと納税」、来夏の東京五輪・パラリンピック、不妊治療、外交、携帯電話料金の値下げなど幅広い政策提言を約24分間、一気に読み上げた。
だが、いずれも9月の総裁選から訴えている耳慣れたものばかり。「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。脱炭素社会の実現を目指す」と宣言したが、具体的な工程表は示されず、秋晴れの清々(すがすが)しさの中、手応えのないスカスカ感が残った。
首相就任から40日後の所信表明演説は、01年以降では政権交代で誕生した民主党鳩山由紀夫首相と並ぶ。同じく政権交代した第2次安倍晋三内閣の31日後を上回る。政権交代以外では10日前後で行われるのが通例だけにベトナム、インドネシア訪問(18日〜21日)があったとはいえ、異例のスローペースだ。
野党の追及は厳しい。立憲民主党の福山哲郎幹事長は「20年以上、国会にいますがこんなに中身のない、そして何も感じられない所信表明は初めて」と酷評。「期待外れ。体温が低い印象」と国民民主党の玉木雄一郎代表も冷ややか。日本学術会議が推薦した任命を拒否した問題に触れなかった点に「都合の悪いことは隠蔽(いんぺい)する。言及しない。安倍政権を非常に悪い点で引き継いでいる」と福山氏は切り捨てた。
スローな所信表明演説でも政策を実行し、実効性あるものを、いつまでに実現できるのか。そのスピード感が求められている。 
●2050年までに温室効果ガス ゼロへ 学術会議言及せず 野党批判 10/26 
第203臨時国会が召集された。
菅首相は、衆参両院の本会議で、就任後初めてとなる所信表明演説を行い、2050年までに国内の温室効果ガスの排出をゼロにする方針を表明した。
菅首相「わが国は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。すなわち、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言する」
演説で菅首相は、新型コロナウイルスについて、「爆発的な感染は絶対に防ぎ、そのうえで、社会経済活動を再開して経済を回復する」と強調した。
菅首相「行政の縦割り、既得権益、そしてあしき前例主義を打破し、規制改革を全力で進める」
菅首相は、「行政のデジタル化の推進」と「司令塔となるデジタル庁の設立」、「行政への申請などでの押印の原則廃止」、「不妊治療の保険適用の早急な実現」など、目玉政策を強調した。
一方、日本学術会議については演説で言及せず、野党から批判の声が出ている。
立憲民主党・福山幹事長「都合の悪いことは隠蔽(いんぺい)する、言及しない。安倍政権の継承は、非常に悪い点で引き継いでいるのだろうと言わざるを得ない」
共産党・志位委員長「学術会議の『が』の字もない、驚いた。これは本当に異常なことだと思う。説明する意思がないのかと」
野党は、菅首相が日本学術会議の推薦候補6人を任命しなかったことについて、国会審議で厳しく追及する方針。 
●自民・岸田氏「堅実な所信表明」 菅首相の演説を評価 10/26 
自民党の岸田文雄前政調会長は26日、菅義偉(すが・よしひで)首相の所信表明演説について「極めて堅実な所信表明だった。安倍晋三政権の政策をしっかりと継承していくという内容だった」と評価した。国会内で記者団に答えた。
岸田氏は臨時国会での本格的な議論に向け、「デジタル化をはじめ、具体的な政策をどのように進めていくのかを国民に説明し、協力を呼びかける国会になることを期待したい」と強調。さらに、「首相には先頭に立ってしっかり説明責任を果たしてほしい」などと語った。 
●石破氏「具体論を語る感じが」菅首相の所信表明評価 10/26 
自民党の石破茂元幹事長(63)は26日、臨時国会で行われた菅義偉首相(71)の所信表明について「抽象論ではなく、具体論を語る感じが非常にした」と評価した。
「総裁選の時や総理に就任されてからも言っておられたことを、丁寧に説明されたと思います。それが菅総理のカラーだと思う」と話した。
また、菅首相は個別の政策の積み上げを重視し、目指すべき社会像が見えにくいとの指摘もある。石破氏は「それぞれのパーツの積み重ねが国家像になっていくとお考えなのでは」と推測した。
22日に自身が率いる石破派(水月会)の会長辞任を発表したばかり。後任について「鴨下(一郎)事務総長が『ボールは我々の側にある』と表明したのですから、あれこれ私が言うことではない」とだけ話した。 
●菅総理大臣による所信表明に関する中西会長コメント 10/26 
一般社団法人 日本経済団体連合会
本日、菅総理大臣が所信表明演説において、新型コロナウイルス感染症対策と経済活動の両立、デジタル社会の実現、グリーン社会の実現、活力ある地方の創生等について、力強い方針を示された。総理の強力なリーダーシップの下、前例にとらわれず、スピード感をもって、改革を遂行していただきたい。
なかでも気候変動対策をめぐっては、2050年カーボンニュートラル(CO2排出実質ゼロ)の実現を目指すことが宣言された。
激甚化する自然災害などにより、国際社会が気候変動に対する危機感を強めるなか、パリ協定が努力目標と位置付ける1.5℃目標とも整合する極めて野心的な目標を掲げることは、持続可能な社会の実現に向け、わが国の今後のポジションを確立する英断であり高く評価する。
2050年カーボンニュートラルは、言うまでもなく、達成が極めて困難な挑戦であり、経済成長との両立を図るうえでは、革新的技術の開発・普及、すなわちイノベーションが不可欠である。これは日本の産業競争力の強化にもつながるものである。脱炭素社会への移行に資するイノベーションの創出を国家戦略と位置付け、官民一体となって大胆な取り組みを一段と強化・加速していくことが極めて重要である。
経団連としても、「チャレンジ・ゼロ」の枠組み等を活用し、イノベーションを通じた脱炭素社会の早期実現に一層果敢に挑戦していく。 
●韓国への言及冷淡に? 菅首相演説「未来志向」消える 10/26 
菅義偉首相の26日の所信表明演説は、徴用工問題をめぐり韓国に善処を求める一方、安倍晋三前首相が期待を表明した「未来志向の関係」構築に言及しないなど、全体として同国に冷淡な印象となった。関係改善に向けた措置を取らない韓国政府への不満を反映したとみられる。
安倍氏は今年1月の施政方針演説で韓国を「基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国」と位置付けたが、菅氏は「極めて重要な隣国」に短縮。「健全な日韓関係に戻すべく、わが国の一貫した立場に基づき適切な対応を強く求めていく」と表明した。
これについて加藤勝信官房長官は26日の記者会見で「演説全体のバランス、最新の外交情勢を総合的に勘案した」と説明。ある政府関係者は首相の韓国に対する姿勢について「安倍氏以上に厳しい」と語った。  
●菅首相「50年までに脱炭素社会実現」宣言 学術会議に触れず 所信表明 10/26
第203臨時国会が26日召集された。菅義偉首相は同日午後の衆参各本会議で、就任後初めて所信表明演説に臨んだ。地球温暖化対策に関し「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した。携帯電話料金の引き下げなどの改革は「できるものからすぐに着手し、成果を実感いただきたい」と意欲を示した。日本学術会議の新会員候補6人を任命しなかった問題には言及しなかった。
首相は演説で「成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力する」とし、「積極的に温暖化対策を行うことが大きな成長につながる」と訴えた。脱炭素社会の実現に向けて「国と地方で検討を行う新たな場」を設ける方針も示した。省エネ徹底と再生可能エネルギーを最大限導入するのに加え、「安全最優先で原子力政策を進める」と強調。「長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換する」と表明した。
新型コロナウイルス対策に関しては、感染拡大抑止と経済活動再開を両立させる方針を強調した。東京オリンピック・パラリンピックは「来年夏、人類がウイルスに打ち勝った証しとして、開催する決意だ」と述べた。「大胆な規制改革を実現し、ウィズコロナ、ポストコロナの新しい社会をつくる」とし、デジタル庁設立へ準備を急ぐ考えを示した。
地方創生では「観光や農業改革などで地方を活性化し、日本経済を浮上させる」と主張。東日本大震災からの復興は「スピード感を持って取り組む」と述べた。
北朝鮮による拉致問題は「政権の最重要課題だ。条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意だ」と表明。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古移設工事は「着実に進める」と述べた。元徴用工問題で関係が冷え込む韓国は「極めて重要な隣国」としつつ、「健全な日韓関係に戻すべく、適切な対応を強く求める」と訴えた。
憲法に関しては「改正」の文言は使わず、国会の憲法審査会の議論に期待を示した。 
●初の所信表明演説 新型コロナ “爆発的な感染防ぐ” 菅首相 10/26
菅総理大臣は26日召集された臨時国会で初めての所信表明演説を行い、新型コロナウイルスの爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守り抜くとしたうえで、経済を回復させると強調しました。また、脱炭素社会の実現に向けて「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と表明しました。
菅内閣の発足後初めての本格的な論戦の舞台となる臨時国会が26日召集され、菅総理大臣は衆参両院の本会議で所信表明演説を行いました。
冒頭、菅総理大臣は「新型コロナウイルスの感染拡大と戦後最大の経済の落ち込みという国難のさなかにあって、国のかじ取りという大変重い責任を担うこととなった」と述べたうえで、爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守り抜くとともに、社会経済活動を再開し、経済を回復させると強調しました。
そして「行政サービスや民間でのデジタル化の遅れ、サプライチェーンの偏りなど、さまざまな課題が浮き彫りになった」と指摘し、デジタル化などの大胆な規制改革を実現し、ウィズコロナ、ポストコロナの新しい社会をつくる意欲を示しました。
そのうえで、改革を強力に実行する司令塔となる「デジタル庁」を来年設立することや、オンライン教育の拡大、行政への申請などの押印を原則廃止する方針を改めて示しました。
また、菅総理大臣は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする『2050年カーボンニュートラル』、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言する」と表明しました。
そのうえで、積極的に温暖化対策を行うことが産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要だと指摘し、国と地方で検討を行う場を創設するほか、石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換する方針を明らかにしました。
続いて、菅総理大臣は「雪深い秋田の農家に生まれ、地縁、血縁のない横浜で、まさにゼロからのスタートで政治の世界に飛び込んだ」とみずからの経歴に触れたうえで、観光や農業改革などにより地方を活性化し、日本経済を浮上させると訴えました。
そして、待機児童の解消を目指すとともに、不妊治療の保険適用を早急に実現し「オンライン診療」の恒久化を推進する考えを示しました。
また、東日本大震災からの復興について「被災者の皆さんの心に寄り添いながら、一層のスピード感を持って復興・再生に取り組む」と述べました。
外交・安全保障をめぐり、菅総理大臣は、北朝鮮による拉致問題は政権の最重要課題だとして、すべての被害者の一日も早い帰国の実現に全力を尽くし、条件を付けずにキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長と直接向き合う決意を示しました。
また、就任後初めての外国訪問としてベトナムとインドネシアを訪れたことに触れ、基本的な価値を共有する国々とも連携し、法の支配に基づいた自由で開かれたインド太平洋の実現を目指す考えを強調しました。
中国について、菅総理大臣は、ハイレベルの機会を活用し主張すべき点はしっかり主張しながら、共通の諸課題で連携していく考えを示しました。
ロシアとは、首脳間の率直な意見交換も通じて平和条約の締結を含む関係全体の発展を目指すほか、韓国は「極めて重要な隣国だ」として、健全な関係に戻すため日本の一貫した立場に基づいて適切な対応を強く求める考えを示しました。
そして、日米同盟の抑止力を維持しながら沖縄の基地負担軽減に取り組むとして、普天間基地の危険性を一日も早く除去するため名護市辺野古への移設工事を着実に進めていく考えを強調しました。
一方、東京オリンピック・パラリンピックについては「来年の夏、人類がウイルスに打ち勝った証しとして、東京大会を開催する決意だ」と述べました。
このほか、憲法について、与野党の枠を超えて建設的な議論が行われ国民的な議論につながっていくことに期待感を示しました。
みずからが目指す社会像について、菅総理大臣は「『自助・共助・公助』そして『絆』だ」とするとともに、携帯電話料金の値下げなど約束した改革で結果を出し、成果を実感してもらいたいという考えを示しました。
そして「行政の縦割り、既得権益、あしき前例主義を打破し、規制改革を全力で進める。『国民のために働く内閣』として、改革を実現し、新しい時代をつくり上げていく」と結びました。 
与野党の反応は…
小泉環境相「責任果たしたい」
菅総理大臣が所信表明演説で脱炭素社会の実現に向けて「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と表明したことについて、小泉環境大臣は記者団に対し「まだ日本では『脱炭素』ということばが浸透しているとは言えないと思うが、30年後のことではなく、いまから経済の構造、産業の在り方、われわれの生活の在り方をすべてを塗り替えていく大きな目標を打ち出されたと思う。環境省として新たな時代が来たと認識してしっかりと責任を果たしていきたい」と述べました。
自民 二階幹事長「国民に信頼感 伝わったと思う」
自民党の二階幹事長は記者会見で「非常に堂々と所信を述べた。国民にも信頼感が伝わったと思っており高く評価している。今後、野党から立派な質問があれば菅総理大臣から真剣な答弁があることを期待している」と述べました。また、菅総理大臣が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と表明したことについて「勇敢に言い切ったのだから、しっかりやるだろう。バックアップしたい」と述べました。
自民 岸田前政調会長「極めて堅実な演説」
自民党の岸田前政務調査会長は国会内で記者団に対し「極めて堅実な演説で人柄が出ていた。安倍政権の政策を内政や外交でしっかり継承していくのだと感じた。脱炭素社会の実現は今の技術や社会を考えると簡単ではないが強い決意で具体的な取り組みを積み上げてもらいたい」と述べました。
自民 石破元幹事長「具体論語ること 菅総理のカラー」
自民党の石破元幹事長は国会内で記者団に対し「自民党総裁選挙の時から言っていることを丁寧に説明したのではないか。携帯電話料金の値下げや不妊治療の保険適用の拡大など抽象論ではなく具体論を語ることが菅総理大臣のカラーであり、一つ一つのパーツの積み重ねによって国家像が描かれてくるという考えなのだろう」と述べました。
立民 枝野代表「ビジョン全く示されない 残念な所信」
立憲民主党の枝野代表は党の役員会で「覇気も、具体性もない所信表明演説だったと言わざるをえない。政策の見出しや目次を羅列したような中身で、それぞれのテーマをどう解決するのか、どういう日本や社会を作ろうとしているのか、ビジョンが全く示されていない残念な所信だった。こちらは、より明確なビジョンをしっかりと示して問いただしていきたい」と述べました。
公明 山口代表「具体的な政策目標 はっきり述べた」
公明党の山口代表は国会内で記者団に対し「目指すべき課題について、メリハリをつけて具体的な政策目標をはっきり述べていたことが印象的だった。具体的な課題の積み上げ無くして抽象的な国家像を語っても響かない点もある。一つ一つ実現し、国民とともに進んでいく歩みの中で次なる国の姿も見いだしていけるのではないか」と述べました。
維新 馬場幹事長「無難 守りの姿勢感じる」
日本維新の会の馬場幹事長は記者会見で「わりと無難で守りの姿勢を感じる所信表明演説だった。もう少し国民に夢や希望を持ってもらえる大目標を示したうえで、徐々に細かい施策に落としていくべきではないかという感想を持った。また、今後どのような経済分野を成長させていくのかという点がやや弱いような気がした」と述べました。
共産 志位委員長「日本学術会議の問題 説明なく異常だ」
共産党の志位委員長は記者会見で「大変驚いたのはみずからが引き起こした日本学術会議への人事介入の問題について、ひと言も説明がなかったことだ。本当に異常だ。徹底的に究明していきたい。新型コロナウイルスからどうやって命と暮らしを守るかもスカスカで中身が全くなく、きちんとただしていかなければならない」と述べました。
国民 玉木代表「個別の政策並べただけ 事務的な印象」
国民民主党の玉木代表は国会内で記者団に対し「国家像や社会像、菅総理大臣の政治的意思を明確に示す演説を期待していたが、個別の政策を並べただけで少し体温の低い、事務的な印象を受けた。新型コロナウイルスの影響が心配される中、追加の経済対策に具体的な言及が一切なかったことも非常に残念だ」と述べました。 
 
 
●所信表明 (演説全文) 10/26
 
 
一 新型コロナウイルス対策と経済の両立
このたび、第99代内閣総理大臣に就任いたしました。新型コロナウイルスの感染拡大と戦後最大の経済の落ち込みという、国難のさなかにあって、国のかじ取りという、大変重い責任を担うこととなりました。
まず改めて、今回の感染症でお亡くなりになられた全ての皆さまに、心からの哀悼の誠をささげます。
そして、ウイルスとの闘いの最前線に立ち続ける医療現場、保健所の皆さん、介護現場の皆さんをはじめ多くの方々の献身的なご努力のおかげで、今の私たちの暮らしがあります。深い敬意とともに、心からの感謝の意を表します。
6月下旬以降の全国的な感染拡大は減少に転じたものの、足元で新規陽性者数の減少は鈍化し、状況は予断を許しません。爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守り抜きます。その上で、社会経済活動を再開して、経済を回復してまいります。
今後、冬の季節性インフルエンザ流行期に備え、地域の医療機関で1日平均20万件の検査能力を確保します。重症化リスクが高い高齢者や基礎疾患を有する方に徹底した検査を行うとともに、医療資源を重症者に重点化します。
ワクチンについては、安全性、有効性の確認を最優先に、来年前半までに全ての国民に提供できる数量を確保し、高齢者、基礎疾患のある方々、医療従事者を優先して、無料で接種できるようにします。
私たちが8年前の政権交代以来、一貫して取り組んできたのが、経済の再生です。今後もアベノミクスを継承し、さらなる改革を進めてまいります。
政権発足前は極端な円高・株安に悩まされましたが、現在は、この新型コロナウイルスの中にあってもマーケットは安定した動きを見せております。人口が減る中で、新たに働く人を400万人増やすことができました。下落し続けていた地方の公示地価は昨年、27年ぶりに上昇に転じました。
バブル崩壊後、最高の経済状態を実現したところで、新型コロナウイルスが発生しました。依然厳しい経済状況の中で、まずは、雇用を守り、事業が継続できるように、最大で200万円の持続化給付金や4千万円の無利子・無担保融資などの対策を続けてまいります。
さらに、「Go To キャンペーン」により、旅行、飲食、演劇やコンサート、商店街でのイベントを応援します。これまで、延べ2500万人以上の方々が宿泊し、感染が判明したのは数十人です。事業者が感染対策をしっかり講じた上で、利用者の方々にはいわゆる「3密」などに注意していただき、適切に運用してまいります。
今後とも、新型コロナウイルスが経済に与える影響をはじめ、内外の経済動向を注視しながら、ちゅうちょなく、必要な対策を講じていく考えです。
 
二 デジタル社会の実現、サプライチェーン
今回の感染症では、行政サービスや民間におけるデジタル化の遅れ、サプライチェーンの偏りなど、さまざまな課題が浮き彫りになりました。デジタル化をはじめ大胆な規制改革を実現し、ウィズコロナ、ポストコロナの新しい社会をつくります。
役所に行かずともあらゆる手続きができる。地方に暮らしていてもテレワークで都会と同じ仕事ができる。都会と同様の医療や教育が受けられる。こうした社会を実現します。
そのため、各省庁や自治体の縦割りを打破し、行政のデジタル化を進めます。今後5年で自治体のシステムの統一・標準化を行い、どの自治体にお住まいでも、行政サービスをいち早くお届けします。
マイナンバーカードについては、今後2年半のうちにほぼ全国民に行き渡ることを目指し、来年3月から保険証とマイナンバーカードの一体化を始め、運転免許証のデジタル化も進めます。
こうした改革を強力に実行していく司令塔となるデジタル庁を設立します。来年の始動に向け、省益を排し、民間の力を大いに取り入れながら、早急に準備を進めます。
教育は国の礎です。全ての小中学生に対して、1人1台のIT端末の導入を進め、あらゆる子どもたちに、オンライン教育を拡大し、デジタル社会にふさわしい新しい学びを実現します。
さらに、テレワークやワーケーションなど新しい働き方も後押ししてまいります。行政への申請などにおける押印は、テレワークの妨げともなることから、原則全て廃止します。
マスクや防護ガウンの生産地の偏りなど、サプライチェーンの脆弱ぜいじゃく性が指摘されました。生産拠点の国内立地や国際的な多元化を図るとともに、デジタル化やロボット技術による自動化、無人化を進め、国内に医療・保健分野や先端産業の生産体制を整備してまいります。
 
三 グリーン社会の実現
菅政権では、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力してまいります。
わが国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。
もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です。
鍵となるのは、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、革新的なイノベーションです。実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進します。規制改革などの政策を総動員し、グリーン投資のさらなる普及を進めるとともに、脱炭素社会の実現に向けて、国と地方で検討を行う新たな場を創設するなど、総力を挙げて取り組みます。環境関連分野のデジタル化により、効率的、効果的にグリーン化を進めていきます。世界のグリーン産業をけん引し、経済と環境の好循環をつくり出してまいります。
省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立します。長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換します。
 
四 活力ある地方を創る
私は、雪深い秋田の農家に生まれ、地縁、血縁のない横浜で、まさにゼロからのスタートで、政治の世界に飛び込みました。その中で、「活力ある地方を創る」という一貫した思いで、総務大臣になってつくった「ふるさと納税」は、今では年間約5千億円も利用されています。
いわゆる東京圏、1都3県の消費額は全国の3割にすぎません。観光や農業改革などにより、地方への人の流れをつくり、地方の所得を増やし、地方を活性化し、それによって日本経済を浮上させる。インバウンドは政権交代時の約4倍の年間3200万人に、農産品の輸出額は政権交代時から倍増して年間9千億円となりました。
日本の農産品はアジアをはじめ海外で根強い人気があり、輸出額はまだまだ伸ばすことができます。年初以来、新型コロナウイルスの影響が出る中でも、直近は前年から11%の増加となり、回復の動きが出ています。
4月に農林水産省に発足した輸出本部の下で、関係省庁が一体となって相手国との交渉を行い、輸出用の加工施設の認定も急速に進みました。25年に2兆円、30年に5兆円の目標に向けて、当面の戦略を年末までに策定し、早急に実行に移してまいります。これまでの農林水産業改革についても確実に進め、地方の成長につなげてまいります。
新しい日常においても旅は皆さんの日常の一部です。日本に眠る価値を再発見し、観光地の受け入れ環境整備を一挙に進め、当面の観光需要を回復していくための政策プランを、年内に策定してまいります。
地方の所得を増やし、消費を活性化するため、最低賃金の全国的な引き上げに取り組みます。
 
五 新たな人の流れをつくる
新型コロナウイルスとの闘いの中で、地方の良さが見直される一方で、産業や企業をめぐる環境は激変しております。こうした状況を踏まえ、都会から地方へ、また、ほかの会社との間で、さらには中小企業やベンチャーへの新たな人の流れをつくり、次なる成長の突破口を開きます。
大企業にも中小企業にも、それぞれの会社に素晴らしい人材がいます。大企業で経験を積んだ方々を、政府のファンドを通じて、地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する取り組みを、まずは銀行を対象に年内にスタートします。
わが国にとって、海外との人の交流を行い、海外の成長を取り込んでいく必要性は、ポストコロナにおいても変わりはありません。
今月から、ビジネス関係者や、留学生について、全世界からの入国を緩和しました。入国時の検査能力を来月中に1日2万人に引き上げ、防疫措置をしっかりと講じながら、グローバルな経済活動を再開してまいります。
海外の金融人材を受け入れ、アジア、さらには世界の国際金融センターを目指します。そのための税制、行政サービスの英語対応、在留資格の緩和について早急に検討を進めます。
コーポレートガバナンス改革は、わが国企業の価値を高める鍵となるものです。さらなる成長のため、女性、外国人、中途採用者の登用を促進し、多様性のある職場、しがらみにとらわれない経営の実現に向けて、改革を進めます。
  
六 安心の社会保障
わが国の未来を担うのは子どもたちであります。長年の課題である少子化対策に真正面から取り組み、大きく前に進めてまいります。
政権交代以来、72万人の保育の受け皿を整備し、今年の待機児童は、調査開始以来、最少の1万2千人となりました。
待機児童の解消を目指し、女性の就業率の上昇を踏まえた受け皿整備、幼稚園やベビーシッターを含めた地域の子育て資源の活用を検討し、年末までにポスト「子育て安心プラン」を取りまとめます。男性の育児参加を進めるため、本年度から男性国家公務員には1カ月以上の育休取得を求めておりますが、民間企業でも男性の育児休業を促進します。
「共働きで頑張っても、1人分の給料が不妊治療に消えてしまう」。以前お話しした夫婦は、つらそうな表情で話してくれました。
こうした方々の気持ちに寄り添い、所得制限を撤廃し、不妊治療への保険適用を早急に実現します。それまでの間、現在の助成措置を大幅に拡大してまいります。
児童虐待を防止するため、児童相談所や市町村の体制強化など対策を強化します。ひとり親家庭への支援など、子どもの貧困対策に社会全体で取り組みます。
新型コロナウイルスにより、特に女性の雇用が厳しい状況にさらされていますが、こうした中にあっても、これまで進めてきた女性活躍の勢いを止めてはなりません。全ての女性が輝ける社会の構築に向けて新たな男女共同参画基本計画を年末までに策定します。また、厳しい状況にある大学生、高校生の就職活動を支援します。
同一労働同一賃金など働き方改革を進めるとともに、就職氷河期世代について、働くことや社会参加を促進できるよう、個々人の状況に応じた支援を行います。
障害や難病のある方々が、仕事でも、地域でも、その個性を発揮して活躍できる社会をつくってまいります。
人生100年時代を迎え、予防や健康づくりを通じて健康寿命を延ばす取り組みを進めるとともに、介護人材の確保や介護現場の生産性向上を進めます。
一方で、各制度の非効率や不公平は、正していきます。毎年薬価改定の実現に取り組むとともに、デジタル化による利便性の向上のため、オンライン診療の恒久化を推進します。
22年には、いわゆる団塊の世代が75歳以上の高齢者となります。これまでの方針に基づいて、高齢者医療の見直しを進めます。
全ての世代の方々が安心できる社会保障制度を構築し、次の世代に引き継いでまいります。
 
七 東日本大震災からの復興、災害対策
先月訪れた福島のふたば未来学園では、生徒の皆さんから復興に寄せる熱意、風評被害と闘う取り組みを伺う中で、未来を切り開き、世界に羽ばたく若者たちが育ちつつある、そうした思いを強くしました。
たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てについて避難指示を解除する決意は揺るぎません。
福島の復興なくして、東北の復興なし。東北の復興なくして、日本の再生なし。被災者の皆さんの心に寄り添いながら、一層のスピード感を持って、復興・再生に取り組みます。
この夏、熊本をはじめ全国を襲った豪雨により、亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、被害に遭われた皆さまに、お見舞いを申し上げます。
毎年のように甚大な被害をもたらす豪雨や台風への対策は、一刻の猶予も許されません。これまでは同じダムでも、水力発電や農業用のダムは洪水対策に使えませんでしたが、省庁の縦割りを打破し、全てのダムを活用することで、洪水対策に使える水量は倍増しました。7月の豪雨では、木曽川で新たに事前放流を行い、流域の町長さんから私宛てに感謝のお手紙をいただきました。堤防や遊水地の整備、大雨予測の精緻化などを組み合わせて、身近な河川の洪水から命を守ります。
自然災害により住宅に大きな被害を受けた方々が、より早く生活の安定を図ることができるよう、被災者生活再建支援法を改正し、支援金の支給対象を拡大いたします。
水害や地震などの自然災害が相次ぐ中で、防災・減災、国土強靱きょうじん化は引き続き大きな課題です。省庁、自治体や官民の垣根を越えて、災害の状況を見ながら、国土強靱化に取り組み、災害に屈しない国土づくりを進めてまいります。
 
八 外交・安全保障
総理就任後、G7(先進7カ国)、中国、ロシアなどとの電話会談を重ねてきました。米国をはじめ各国との信頼、協力関係をさらに発展させ、積極外交を展開していく決意です。
拉致問題は、引き続き、政権の最重要課題です。全ての拉致被害者の一日も早い帰国実現に向け、全力を尽くします。私自身、条件を付けずに金正恩キムジョンウン委員長と直接向き合う決意です。日朝平壌宣言に基づき、拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、北朝鮮との国交正常化を目指します。
厳しい安全保障環境の中、国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは政府の最も重大な責務です。イージス・アショアの代替策、抑止力の強化については、先月公表の談話を踏まえて議論を進め、あるべき方策を取りまとめていく考えです。
わが国外交・安全保障の基軸である日米同盟は、インド太平洋地域と国際社会の平和、繁栄、自由の基盤となるものです。その抑止力を維持しつつ、沖縄の基地負担軽減に取り組みます。普天間飛行場の危険性を一日も早く除去するため、辺野古移設の工事を着実に進めてまいります。これまでにも、沖縄の本土復帰後最大の返還となった北部訓練場の過半の返還など、着実に前に進めてきました。引き続き、沖縄の皆さんの心に寄り添いながら、取り組みを進めてまいります。
先日はベトナムとインドネシアを訪問しました。ASEAN(東南アジア諸国連合)、オーストラリア、インド、欧州など、基本的価値を共有する国々とも連携し、法の支配に基づいた、自由で開かれたインド太平洋の実現を目指します。
中国との安定した関係は、両国のみならず、地域および国際社会のために極めて重要です。ハイレベルの機会を活用し、主張すべき点はしっかり主張しながら、共通の諸課題について連携してまいります。
北方領土問題を次の世代に先送りせず、終止符を打たねばなりません。ロシアとは、首脳間の率直な意見交換も通じ、平和条約締結を含む日ロ関係全体の発展を目指します。
韓国は、極めて重要な隣国です。健全な日韓関係に戻すべく、わが国の一貫した立場に基づいて、適切な対応を強く求めていきます。
新型コロナウイルスにより人間の安全保障が脅かされており、国際連携の強化が必要です。保健分野など途上国を支援するとともに、多国間主義を推進していきます。安保理改革を含む国連改革や、WHO(世界保健機関)、WTO(世界貿易機関)改革などに積極的に取り組みます。
世界経済が低迷し、内向き志向も見られる中、率先して自由で公正な経済圏を広げ、多角的自由貿易体制を維持し、強化していきます。日英の経済連携協定を締結し、日系企業のビジネスの継続性を確保します。また、経済安全保障の観点から、政府一体となって適切に対応していきます。
来年の夏、人類がウイルスに打ち勝った証しとして、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催する決意です。安全・安心な大会を実現するために、今後も全力で取り組みます。
25年大阪・関西万博についても、新型コロナウイルス感染症を乗り越え、日本の魅力を世界に発信してまいります。
 
九 おわりに
国の礎である憲法について、そのあるべき姿を最終的に決めるのは、主権者である国民の皆さまです。憲法審査会において、各政党がそれぞれの考え方を示した上で、与野党の枠を超えて建設的な議論を行い、国民的な議論につなげていくことを期待いたします。
政権交代以降、経済を再生させ、外交・安全保障を再構築するために、日々の課題に取り組んでまいりました。今後も、これまでの各分野の改革は継承し、その中で、新たな成長に向かって全力を尽くします。
携帯電話料金の引き下げなど、これまでにお約束した改革については、できるものからすぐに着手し、結果を出して、成果を実感いただきたいと思います。
私が目指す社会像は、「自助・共助・公助」そして「絆」です。自分でできることは、まず、自分でやってみる。そして、家族、地域で互いに助け合う。その上で、政府がセーフティーネットでお守りする。そうした国民から信頼される政府を目指します。
そのため、行政の縦割り、既得権益、そして、あしき前例主義を打破し、規制改革を全力で進めます。「国民のために働く内閣」として改革を実現し、新しい時代を、つくり上げてまいります。
ご清聴ありがとうございました。  
 
 
●菅首相の所信表明 俯瞰的ビジョン見えぬ 10/27 
菅義偉首相がきのう、就任後初めての所信表明演説をした。凝った引用もなく、質実志向は伝わった。「共に…しようではありませんか」と繰り返し、与党席の拍手をあおった安倍晋三前首相との違いが際立つ。
半面、めりはりには欠けた。棒読みのような調子も手伝い、政策や課題の羅列に終始した感が拭えない。数少ないうたい文句が「国民のために働く内閣」。いまさら取り立てて言うことではあるまい。
出口の見えぬ少子化問題やコロナ禍にどう立ち向かい、ピンチをチャンスに変えるのか。その覚悟と羅針盤を示すことが、一国の針路を預かる首相に求められていたはずである。
コロナ後の社会に、勇気や希望をもたらす変化を期待する国民には、程遠い内容だったと言わざるを得ない。
唯一、目指す未来像らしきビジョンがうかがえたのは「グリーン社会の実現」だろう。2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにし、脱炭素社会の実現を目指す―と菅首相は宣言した。
ただ、世界の潮流からは大きく後れ、批判を浴びた揚げ句というのが実態である。環境省によれば、国内でも岡山、鳥取など22都道府県を含む164の地方自治体が、すでに同じ目標を表明済みだという。
遅まきながら、画期をなす可能性はある。高度成長の時代を引きずる産業構造や経済社会の「体質」転換につながることが期待されるからだ。
先を行く欧州が、コロナ後に移行すべき社会のビジョンに描くのは脱炭素社会だけではない。資源やエネルギーの地域内循環など、環境への配慮と両立させる復興「グリーンリカバリー」を目指している。
30年後までに必ず達成すると言うなら、どんな段階を踏んでゴールに至るかについての工程表も書き込んだ法案化を急ぐべきだろう。脱原発について、可能な限り依存度を低減させるとしてきた政府の煮え切らぬ姿勢も転換が求められよう。
菅首相はこの後、日本学術会議の任命拒否問題や森友学園問題での公文書改ざんなど、自身に不都合なことを巡って野党からの追及が必至である。
学術会議の問題から透けて見えたのは、異論や反論を許さず、納得いく説明もしないといった強権的な姿勢にほかならない。にもかかわらず今回、演説の最後にまたぞろ「自分でできることは、まず自分でやってみる」と持論を持ち出した。
コロナ禍で寄る辺ない生活困窮者に、どう聞こえるだろう。「自己責任」を強いられると受け取ったのではないか。
本来、所信表明で首相が指し示すべき自らの時代認識や世界観の言及が乏しかった。
とりわけ外交・安全保障については、現状をなぞってみせるにとどまった。前政権が力を入れながら進展のなかったロシアとの北方領土返還交渉も、「条件を付けず金正恩(キム・ジョンウン)氏と向き合う」と言いつつ進まぬ北朝鮮の拉致問題も、従来方針の検証抜きに展望は開けまい。
臨時国会は、あすから代表質問に移る。内政、外交ともに、俯瞰(ふかん)的なビジョンをどう描いているのか。論戦を通じ、菅首相には率直に、もっと語ってもらいたい。 
●菅首相の所信表明 / 国政の重大問題語らぬ無責任 10/27 
菅義偉首相の就任後初の所信表明演説を聞きました。政権発足から40日たって、ようやく行われた国会での演説です。首相は温室効果ガスの排出削減での新しい目標やデジタル化推進などを強調する一方、国民の批判が集中している日本学術会議への人事介入には触れませんでした。学問の自由という憲法に関わる国政上の重大問題について一言も説明しないというのは政権を担う資格そのものが問われます。国会論戦で菅政権を徹底的に追及することが重要です。
新しく就任した首相が、基本政策を明らかにする所信表明演説が、就任から1カ月以上も行われないのは異例です。
6月に通常国会を閉じて以降、新型コロナウイルス感染拡大への対応や経済の悪化、安倍晋三政権の退陣と菅政権の発足など、国会で論議すべき課題は山積していたのに、国会をないがしろにし、臨時国会の開催を拒んできた政府・与党の責任は重大です。
所信表明演説で何より驚いたのは、日本学術会議の会員6人の任命を拒否したことについて一切語らなかったことです。菅首相はこれまで、「総合的・俯瞰(ふかん)的な活動を確保する」ためなどとごまかすだけで、任命拒否の理由を全く説明していません。
どの世論調査でも、説明責任が不十分だという回答が圧倒的多数なのに、それを無視した首相の演説に国民は到底納得できません。
首相による任命拒否は、過去の政府の国会答弁を覆し、日本学術会議法に違反するとともに、学問の自由や思想・良心、表現の自由を根本から揺るがす大問題です。こんなことがまかり通れば日本は法治国家ではなくなります。国会で徹底追及し、任命拒否を撤回させることが不可欠です。
菅氏は「自助・共助・公助」を強調し、「自分でできることは、まず、自分でやってみる」と、国民に自己責任を迫る冷たい姿勢があらわです。コロナ禍で、感染拡大や暮らしへの不安を抱え、必死で頑張っている国民に向かって首相が言うべき言葉ではありません。政治の責任を投げ捨てる態度は改めるべきです。コロナの感染拡大は収束のめどが立っておらず、検査と医療をどう強めるのか、営業と雇用をどう守っていくのか、今後の国会論戦で、具体的対策を菅首相にただす必要があります。
「森友・加計・桜を見る会」などの疑惑に首相が言及しなかったのも不誠実で、政治への信頼を回復しようという姿勢ではありません。安倍政権の官房長官として一連の国政私物化に深く関わってきた菅首相には真相を語る責任があります。
首相は2050年までに温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にすると表明しましたが、実効性が問われます。原発への依存は許されません。県民の声に逆らう沖縄での米軍新基地の建設推進の姿勢も変えませんでした。安倍前首相が固執した改憲問題では、国会の憲法審査会で各党による「建設的な議論を行い、国民的な議論につなげていくことを期待」と主張しました。国民が望まない改憲を推し進めることはやめるべきです。
野党と国民のたたかいにより強権的で冷たい菅政権を倒し、政権交代を実現することが急務です。 
●実務型で「夢」がない?菅首相、所信表明の単語分析で透けた本音 10/27 
「進める」「改革」を多用
「来年3月から保険証とマイナンバーカードの一体化を始め、運転免許証のデジタル化も進めます」「(デジタル庁の)来年の始動に向け、省益を排し、民間の力を大いに取り入れながら、早急に準備を進めます」
菅首相の演説に登場したキーワードを調べてみると、マイナンバーカードの推進やデジタル庁の設立などで使った「進める」が最も多い26回。続いて「経済」が19回、「改革」「社会」がともに16回だった。
一方、安倍氏が今年1月に国会で行った施政方針演説では、「日本」が1位の24回だったほか、「世界」が2位の22回、「時代」が5位の19回あった。
明治大学の木寺元教授(政治学)は「安倍前首相は、日本、アベノミクス、1億総活躍など大きなテーマやフレーズで演説をまとめていたが、菅首相は『改革』を多用し身近な話題に目を向けている。具体的な政策が短冊のように並び、全体の国家像が見えにくい」と分析した。
「未来」「夢」は少なく
ほかのキーワードでも違いはあった。安倍氏は1月の演説で「オリンピック」「パラリンピック」の単語を8回使ったが、菅首相はともに1回だけ。また安倍氏は、「未来」や「夢」をともに9回ずつ使っていたが、菅首相は「未来」は3回、「夢」は0回だった。(菅首相と安倍前首相のキーワード分析は記事の末尾で紹介しています)
さらに木寺教授は両氏の演説から受けた印象をこう語る。「安倍前首相はエピソードを多用するなど聞き手をひきつけるような工夫をしていた。菅首相は淡々と語り、実務的、技術的な演説だ」
安倍氏は1月の演説の冒頭、「五輪史上初の衛星生中継。世界が見守る中、聖火を手に、国立競技場に入ってきたのは、最終ランナーの坂井義則さんでした」と切り出した。坂井さんが1945年8月6日に広島で生まれ、戦後復興の象徴だったことに触れつつ、2020年の五輪・パラリンピックの成功を呼び掛けた。また、地方創生で東京から島根県に移住したパクチー農家などのエピソードを情緒的に語っていた。
これに対し、菅首相の演説では、不妊治療に苦しむ夫婦が「共働きで頑張っても、1人分の給料が不妊治療に消えてしまう」と紹介したが、あとは自身が秋田から上京した身の上話や福島県で視察した高校生の姿などエピソードや語り口は控えめな印象だった。
また菅首相は、グリーン社会の実現に向けて、「わが国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と語った。ただ、この部分についても、木寺教授は「政策の大きな転換点となる話なのに淡々としていて、もっと感性に訴えれば、多くの人をひきつけたのではないか」と話す。
コロナ便乗型か注視を
一方、木寺教授は、菅氏の演説で気がかりな点が2点あったという。「改革」という言葉を16回使ったが、新型コロナの収束は見通せない状況だ。社会の不安定に便乗した形で改革を進めると、「規制緩和が格差や不平等を広げる可能性があり、弱者を救済するものかを注意深くみていく必要がある」と指摘する。
また、地方創生やデジタル化に向けた演説の内容が印象的だったという。「今後5年で自治体のシステムの統一・標準化を行い、どの自治体にお住まいでも、行政サービスをいち早くお届けします」
木寺教授は「全国の自治体が利用するような統一的なシステムを巨大なベンダーしか提供できない場合、一部の大企業が独占的に利益を得る懸念がある」とし、企業間の競争環境の確保ついても注視すべきだ、としている。  
●菅首相、初の所信表明演説 復興決意も処理水は触れず 10/27 
菅義偉首相は26日の所信表明演説で、「福島の復興なくして、東北の復興なし」と東日本大震災からの再生への決意を改めて表明した。東京電力福島第1原発の放射性物質トリチウムを含む処理水の処分には一切触れなかった。東北の与野党議員の受け止めは評価と批判が交錯した。
首相は先月訪ねた福島県広野町のふたば未来学園中高を取り上げ、「生徒の皆さんから復興に寄せる熱意、風評被害と闘う取り組みを聞く中で未来を切り開き、世界に羽ばたく若者たちが育ちつつあるとの思いを強くした」と述べた。
原発事故に伴う帰還困難区域に関し「たとえ長い年月を要するとしても、全ての区域の避難指示を解除する決意は揺るがない」と強調。「被災者の心に寄り添いながら一層のスピード感を持って復興、再生に取り組む」と意欲を示した。
新型コロナウイルス対応やデジタル社会の実現など9項目を掲げた演説の柱で、7番目に据えた震災復興は220字余りだった。
自民党の吉野正芳元復興相(衆院福島5区)は「避難指示解除の言葉が入り、原発被災地を理解しているとの印象だ。処理水は政府がきちんと判断すると思っており、あえて言わなかったと理解した」と話した。
立憲民主党の岡本章子氏(衆院比例東北)は内閣の基本方針から震災、原発事故の記述が消えた経緯を踏まえ、「散々たたかれたにもかかわらず、全く中身がなくてがっかりだ。震災に言及したというアリバイづくりのためだけの演説だ」と厳しく指摘した。 
●菅首相の所信表明/有言実行で改革の成果示せ 10/27 
臨時国会が召集され、菅義偉首相が就任後初めて所信表明演説を行った。政権発足から1カ月以上が経過し、新首相の基本姿勢、重点政策がようやく国民に示された。
菅首相は演説で「国民のために働く内閣」として改革断行への強い姿勢を強調した。看板政策のデジタル庁創設、不妊治療への保険適用拡大などの具体例を挙げ「できるものからすぐに着手し、成果を実感いただきたい」と訴えた。
ただ新型コロナウイルス対策や経済対策、地方創生など政策の大半は7年8カ月に及んだ前政権の政策を踏襲しており、新鮮さに欠けた印象は拭えない。国家観や長期的な政策について言及もなく、目前の課題へ迅速に対応する「実務型」をアピールしたといえる。
行政の縦割り、既得権益、あしき前例主義を打破し、規制改革を全力で進めるという決意は、多くの国民の共感を得られるところだろう。改革への過程や手法を国民に明らかにしながら、有言実行してもらいたい。
今回の演説で評価できるのは、地球温暖化対策として、温室効果ガス排出を2050年までに実質ゼロにすると宣言したことだ。次世代型太陽電池などについて、実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進すると公言した。
政府は脱炭素社会の実現に向け「福島は全国の自治体を先導するモデルになる」としている。県は40年をめどに県内エネルギー需要量に占める再生可能エネルギーの割合を100%にする計画で、浪江町には再生エネを活用する世界最大規模の水素製造拠点がある。
首相が目標時期を示したことで今後、再生エネの取り組みが進み、本県への注目度も高まるだろう。県内の再生エネ、水素エネの技術開発や普及に一層力を入れたい。
内閣の基本方針に記述がなかった、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興については「被災者の皆さんの心に寄り添い、一層のスピード感を持って、復興・再生に取り組む」と語った。
首相は将来的に帰還困難区域の全てで避難指示を解除する決意を示したものの、風評対策、処理水の処分方法、住民帰還の促進など具体的な課題に踏み込むことはなかった。間もなく丸10年の節目を迎える。約束した通りに、被災地の住民が復興を実感できるよう、政策を着実に前進させてほしい。
来夏の東京五輪・パラリンピックについては「人類がウイルスに打ち勝った証しとして開催する決意」と述べた。そのためには感染拡大を抑え、経済再生に全力を挙げて環境を整えることが急務だ。 
●「温室ガス50年ゼロ」宣言 菅首相 初の所信表明 任命拒否触れず 10/27 
第203臨時国会が26日召集された。菅義偉首相は就任後初めて衆参両院の本会議で所信表明演説を行い、行政のデジタル化や携帯電話料金引き下げなど具体的な政策を挙げながら「『国民のために働く内閣』として改革を実現する」と述べた。2050年までに国内の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることも宣言した。日本学術会議の会員候補6人の任命拒否問題には言及しなかった。
首相は冒頭、新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う経済の落ち込みを「国難」と表現。地域の医療機関でPCR検査などを1日平均20万件実施する能力を確保し、ワクチンは来年前半までに全国民分を確保するとした。需要喚起策「Go To キャンペーン」などの経済対策にも触れ「国民の命と健康を守り抜き、社会経済活動を再開し、経済を回復する」と強調した。
デジタル化では「今後5年で自治体のシステムの統一・標準化を行う」と表明した。デジタル庁を新設し、マイナンバーカードの普及に取り組むほか、行政手続きでの押印使用を原則廃止し「大胆な規制改革でポストコロナの新しい社会をつくる」とした。
温暖化対策に関連し「成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力する」と打ち出した。エネルギー政策は「安全最優先で原子力政策を進める」と原発堅持を明言。東京五輪・パラリンピックは「人類がウイルスに打ち勝った証しとして開催する決意だ」と述べた。憲法改正は目標期限を示さず、憲法審査会での「建設的な議論を期待する」との表現にとどめた。
外交では北朝鮮による日本人拉致問題を「最重要課題」と位置付け、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と「条件を付けずに直接向き合う」とした。対中国は尖閣問題を念頭に「主張すべき点はしっかり主張する」としたが、習近平国家主席の国賓来日には触れなかった。韓国については「極めて重要な隣国」との表現を踏襲し「健全な日韓関係に戻すべく、適切な対応を強く求めていく」とした。
臨時国会の会期は12月5日まで41日間。各党の代表質問は28〜30日に衆参両院で行われる。  
●学術会議、人選に「偏り」 任命拒否の理由明かさず―代表質問で菅首相 10/28
菅義偉首相の所信表明演説に対する各党代表質問が28日、衆院本会議で始まった。菅内閣発足後初の国会論戦で、首相は日本学術会議会員の人選について「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが見られる」と指摘し、見直しが必要だと主張。会員候補6人の任命を拒否した理由については「人事に関することで、お答えを差し控える」と説明を拒んだ。立憲民主党の枝野幸男代表への答弁。
枝野氏は、任命拒否を「明らかに違法」と非難し、首相の任命権を「形式的」とした1983年の国会答弁との整合性を追及した。首相は会議側の推薦通りに任命する必要はないとの認識を改めて示し、「内閣法制局の了解を得た政府の一貫した考えだ」と反論、違法性を否定した。
立憲の泉健太政調会長が任命拒否の撤回を求めたのに対し、首相は「今回の任命について変更することは考えていない」と応じなかった。
2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標に関し、枝野氏は原子力発電への依存が高まる可能性に懸念を示した。首相は、原発や再生可能エネルギーの活用を挙げ、「あらゆる選択肢を追求する」と表明した。
新型コロナウイルス感染拡大を受けた雇用調整助成金をめぐり、枝野氏は特例措置の延長を要請。首相は「今後の雇用情勢などを踏まえ、適切に判断したい」と述べた。
●菅首相「温室ガス削減、再エネ・原子力含めあらゆる選択肢検討」 10/28
菅義偉首相は28日水曜午後に行われた衆院本会議の代表質問で、所信表明で示した2050年の温室効果ガス・ゼロ達成について、立憲民主党の枝野幸男代表の質問に答弁し、簡単ではないとの認識を示しました。
ロイター通信が28日水曜、東京から報じたところによりますと、菅首相はその上で、実現のため、再生エネルギーや原子力を含めあらゆる選択肢を検討すると述べました。
日本学術会議の任命拒否問題では、6人を任命しなかった理由については回答を控え、「総合的・俯瞰(ふかん)的な活動、専門分野にとらわれず広い視野に立った活動を行い、国の予算を投じる機関として、国民に理解される存在であるべきということ。民間出身者や若手が少なく、出身や大学に偏りが見られ、多様性が大事だということを念頭に、私が任命権者として判断した」と説明するにとどめました。
また、福島第一原子力発電所の汚染水処理は「いつまでも先送りできず、適切な時期に責任を持って決める」としました。
そして、菅政権の政策の3本柱の一つである不妊治療では、男性不妊も保険適用の対象とし、既存の助成措置の大幅拡充も検討すると強調しました。
●国会 代表質問始まる「脱炭素社会」「学術会議」など論戦  10/28
国会では菅総理大臣の所信表明演説に対する代表質問が始まり、菅総理大臣は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指す政府の方針について、実現は容易ではないものの、再生可能エネルギーだけでなく原子力の活用も含めてあらゆる選択肢を追求する考えを強調しました。
「脱炭素社会」「日本学術会議」
立憲民主党の枝野代表は、脱炭素社会の実現をめぐり「2050年までの脱炭素社会実現を打ち出したことは歓迎するが、そのために原子力発電への依存を強めることがあってはならない」とただしました。
これに対し菅総理大臣は「徹底した省エネや再エネの最大限の導入に取り組み、原発依存度を可能なかぎり低減することが政府の方針だ。2050年の『カーボンニュートラル』は簡単なことではなく、温室効果ガスの8割以上を占めるエネルギー分野の取り組みが特に重要で、再エネのみならず、原子力を含めてあらゆる選択肢を追求していく。結論ありきではなく集中的に議論していく」と述べました。
また枝野氏は「日本学術会議」の会員候補6人が任命されなかったことについて「菅総理大臣自身の判断ではないのか。誰が、どんな資料や基準をもとに判断したのか」と述べ、理由や経緯の説明を求めました。
菅総理大臣は「『必ず推薦のとおりに任命されなければならないわけではない』という点は、内閣法制局の了解を得た政府としての一貫した考えだ。国の予算を投じる機関として国民に理解される存在であるべきということや、民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが見られることも踏まえて、多様性があることを念頭に、私が任命権者として判断を行った」と述べました。
「経済立て直し」「外交方針」「少子化対策」
自民党の野田聖子幹事長代行は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済の立て直しについて「依然としてわが国の経済は厳しい状況にある」として、具体策を明らかにするよう求めました。
これに対し菅総理大臣は「感染対策をしっかり講じたうえで『Go Toキャンペーン』の各事業を適切に運用して、ダメージを受けた観光、飲食、イベントなどを支援し、経済の回復につなげていく。経済再生のために不可欠な国際的な人の往来についても、国内外の感染状況などを踏まえながら、感染再拡大の防止と両立する形で段階的に再開していく」と述べました。
また、野田氏は菅政権の外交方針について「メディアでは『仕事師内閣』との評価がある一方、外交手腕は未知数との論評もあった」として、アメリカや中国などとどのように関係を構築していくのか質問しました。
菅総理大臣は「日米同盟はわが国の外交安全保障の基軸だ。米国の大統領選挙の結果いかんにかかわらず、北朝鮮などの地域情勢への対応をはじめ、幅広い分野で日米関係を一層深化させていく。中国との安定した関係は、両国のみならず地域および国際社会のために極めて重要だ。主張すべきはしっかりと主張し、共通の諸課題について連携していく。各国との信頼、協力関係をさらに発展させ、積極外交を展開していく決意だ」と述べました。
野田氏は不妊治療への支援を含む少子化対策について「仕事との両立など、安心して治療を受けられる環境を整えることが重要だ」と指摘しました。
菅総理大臣は「男性が子育てに主体的に参加するための環境整備が重要だ。今年度から男性国家公務員には1か月以上の育休取得を求めているが、民間企業でも男性が育児休業を取得しやすくする制度の導入を検討する。不妊治療についても、保険適用の実現による経済的負担の軽減に加えて、治療を受けやすい職場環境も整備していく」と述べました。
「IR施設の整備」
立憲民主党の泉政務調査会長は、外国人観光客向けの高級ホテルの建設やカジノを含むIR=統合型リゾート施設の整備について「外国人観光客が激減し、長期にわたり回復が困難だ」として、こうした施策を見直すべきだと指摘しました。
菅総理大臣は「長期滞在できる世界レベルの宿泊施設が不足しており、今後インバウンドが戻ってきたときに備えて、こうした施設を整備することは地域経済に大きな波及効果がある。日本型IRは家族で楽しめるエンターテインメント施設とする予定で、観光先進国となるうえで重要な取り組みであり、IR整備法などに基づき必要な手続きを進めていく」と述べました。
自民 野田幹事長代行「答弁内容の実行が大切」
自民党の野田聖子幹事長代行は記者団に対し「菅総理大臣はじめ各閣僚からも誠実に答弁してもらい感謝する。答弁の内容を実行していくことが大切だ」と述べました。
代表質問で取り上げた不妊治療への支援を含む少子化対策については「患者が望む不妊治療を受けられるような保険適用の在り方を党としても考えていきたい。菅総理大臣のもとで答えを出してもらいたい」と述べました。
自民党の岸田前政務調査会長は記者団に対し「菅総理大臣は政府の方針やみずからの考えをたんたんと誠実に答えていた。日本学術会議をめぐる答弁は従来の繰り返しだったが、表現を何度か変えて丁寧な答弁に努めようという姿勢が感じられた」と述べました。
自民党の石破元幹事長は記者団に対し「非常にたんたんとした代表質問と答弁だった。前の政権と違い、イデオロギー的なものを極力抑えた、各論の積み重ねが菅総理大臣のカラーなのではないか」と述べました。
記者団が「安倍前総理大臣の時の代表質問に比べて、やじが少なかったのではないか」と質問したのに対し、石破氏は「菅総理大臣からは挑発的なトーンの答弁がなかったので、ヤジも少ないのだろう」と述べました。
立民 枝野代表「支離滅裂の答弁を堂々と」
立憲民主党の枝野代表は記者団に対し「残念ながら、予想通りほとんど正面からの答えはなかった。日本学術会議の問題で菅総理大臣は『会員候補全員の名簿は見ていない』としているにもかかわらず『出身校などのバランスをとって自分が判断した』と言う。支離滅裂の答弁を堂々としたと言わざるをえない。これだけでも辞職ものだ」と述べました。
立憲民主党の泉政務調査会長は記者団に対し「重要な問題にあまり答えていただけなかったと思う。コロナ対策では追加支援が求められている局面で言及がほとんどなかった。日本学術会議についても、おそらく『失敗した』と思っているのに立ち戻れないのだろう。より強情に、より強引に、後付けの理由を増やしていると感じた」と述べました。
●菅首相、就任後初の代表質問 学術会議「多様性確保で判断」  10/28
菅義偉(すが・よしひで)首相の所信表明演説に対する各党代表質問が28日午後、衆院本会議で行われた。首相は日本学術会議の新会員候補6人の任命を見送った問題について「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りがみられることも踏まえて、多様性が確保されることを念頭に、任命権者として判断を行った」と述べた。
9月に菅内閣が発足してから初の国会論戦。最初に質問に立った立憲民主党の枝野幸男代表は、学術会議が推薦した会員を首相が任命しなかったのは違法だと批判した。
これに対し、首相は、憲法は公務員の選定は国民固有の権利と規定しているとしたうえで「必ず推薦の通りに任命しなければならないわけではないという点は、内閣法制局の了解を得た政府の一貫した考えだ」と強調した。
答弁中、野党側のヤジが相次ぎ、首相が「ちょっと静かにしてもらえますか」と話し、大島理森議長が「ご静粛に」と何度も呼びかける場面があった。
新型コロナウイルス感染症対策をめぐっては、首相は、経営が厳しくなっている医療機関の支援について「国民に必要な地域医療が確保できるよう、支援を検討していく」と述べた。
また、首相は不妊治療について、早急な保険適用に向けた検討を進めるとともに、保険適用まで現在の助成措置を大幅に拡大していく考えを改めて示した。
29日は衆参両院で、30日は参院で代表質問を実施する。 
●6人任命拒否は「内閣府と考え共有し判断」 菅首相 10/29
菅義偉首相の所信表明演説に対する代表質問が29日、衆参両院の本会議で行われた。首相は日本学術会議の会員候補6人の任命拒否について「最終的な決裁を行うまでの間に推薦状況は説明を受け、私の考え方は担当の内閣府とも共有し、それに基づき私が最終的な任命の判断をした」と述べた。(村上一樹)
首相はこれまで、学術会議側が作成した105人の推薦候補者名簿を「見ていない」と発言。名簿を見ずに6人除外を決めたと説明していることに対し、共産党の志位和夫委員長は「語れば語るほど支離滅裂だ」と追及した。
首相は、任命拒否が学問の自由を脅かしかねないとの懸念に「会員らが個人として有する学問の自由を侵害し、会議の職務の独立性を侵害することになるとは考えていない」と反論。「今回の任命を変更することは考えていない」と強調した。
衆院解散・総選挙の見通しを問われたのに対しては「新型コロナウイルス対策、経済再生が最優先。国民の政権への期待もそこそこにあると思う。まずは全力で取り組みたい」と答弁。「1年以内に行う必要があり、時間的な制約も前提にしながらよく考えていきたい」と述べるにとどめた。
来年1月の発効が決まった核兵器禁止条約への対応に関しては「抑止力の維持強化を含め、緻密に現実的に核軍縮を前進させる道筋を追求していくことが適切」と述べ、日本政府として加わらない方針を繰り返した。発効後の締約国会議へのオブザーバー参加も「慎重に見極める必要がある」と消極的な姿勢を示した。
●学術会議、疑問に答えぬ菅首相 論点ずらし、議場に怒号―代表質問 10/29
菅義偉首相就任後初めてとなる国会論戦が28日、幕を開けた。衆院代表質問で、野党側は日本学術会議問題を取り上げ、過去の政府答弁との整合性や任命拒否の理由について追及。これに対し、首相は従来の説明を繰り返した。さらに、学術会議の在り方にも疑問を投げ掛け、野党側は「論点ずらしだ」として、強く反発した。
「任命の理由は人事に関することであり、お答えを差し控えます」。首相がこう述べると、本会議場には「独裁者」などと怒号が飛び交った。
会員任命をめぐり、中曽根康弘首相(当時)は1983年に、「政府が行うのは形式的任命」と答弁。菅首相は会員候補6人の任命を拒否した理由を明らかにしておらず、立憲民主党の枝野幸男代表はこれらの点を「明確にお答えください」と迫った。
首相は「過去の答弁は承知しているが、公務員の選定は国民固有の権利だ」「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではないという点は、政府の一貫した考えだ」などと説明。これまで報道各社のインタビューなどで語った内容の域は出なかった。
枝野氏はさらに、「首相の判断の余地を認めたら、首相任命についても(天皇)陛下による実質判断の余地が生じる」とただした。これにも首相は「条文の文言のみで比較することは妥当ではない」とかわし続けた。
一方、首相は学術会議について「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を行い、国の予算を投じる機関として国民に理解される存在であるべきだ」と指摘。改めてその在り方に疑問を呈した。
説明を尽くす姿勢を見せない首相に、野党席は騒然となった。首相は大島理森議長を振り返って「静かにしてもらってください」と要請し、大島議長が三度にわたり「ご静粛に」と呼び掛ける場面もあった。
本会議後、枝野氏は記者団に、首相が推薦名簿を「見ていない」と語りながら、この日は「私が任命権者として判断した」と答弁したことを挙げ、「支離滅裂だ。これだけでも辞職ものだ」と怒りをあらわにした。
菅内閣発足から43日後にようやく始まった国会論戦。代表質問は29、30両日も行われ、11月2日からは衆院予算委員会も始まり、野党は引き続き徹底追及する方針だ。
論戦初日の代表質問では、首相は事前に用意した資料を読み上げ、野党の追及をかわした。ただ、首相の答弁能力は一部で不安視されており、首相官邸内からは「予算委は当意即妙のやりとりが必要。本人も気にしている」(関係者)との声が漏れている。
●学術会議任命「法に沿って行ったもの」菅首相 参院本会議  10/29
国会では、参議院でも菅総理大臣の所信表明演説に対する代表質問が始まり、菅総理大臣は、「日本学術会議」の会員候補6人が任命されなかったことについて、法律に沿って行ったものであり、解釈を変更したものではないという考えを重ねて示しました。
29日は、参議院本会議で、立憲民主党と自民党が質問しました。
立憲民主党の福山幹事長は、「日本学術会議」の会員候補6人が任命されなかったことについて、かつて中曽根元総理大臣が、国会で「政府が行うのは形式的任命にすぎない」と答弁したことなどを踏まえ、「元総理大臣のことばをりょうがする明確な根拠を聞かせてほしい。解釈を変更したのか」とただしました。
菅総理大臣は「元総理大臣の発言、答弁との関係だが、憲法第15条第1項は、『公務員の選定は、国民固有の権利』と規定しており、この規定に基づき、日本学術会議法では、会員を総理大臣が任命することとされている。今回の任命も、日本学術会議法に沿って行ったもので、法の解釈変更ではない旨は、国会において内閣法制局からも答弁しているとおりだ」と述べました。
自民党の世耕参議院幹事長は、新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、「欧米のような爆発的拡大には至っていないが、今こそ、次の波への備えを充実させておく必要がある」と指摘し、爆発的な感染をどのように防ぐのか、ただしました。
これについて、菅総理大臣は「爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守るという強い決意のもとに、早急に今後の感染拡大に備えた対策を講じていく。これまでの経験や科学的知見も踏まえて、クラスター発生時における、大規模、集中的な検査実施により、感染を封じ込める。検査医療提供体制の整備になどついても、地方自治体とも密接に連携して国が主導して万全の準備、対応を講じていく」と述べました。 立憲民主党の福山幹事長は、記者団に対し「日本学術会議の答弁は、いよいよ迷走し始めたという感じだ。全く説明にならない答弁を繰り返している。また、新型コロナウイルスに関する、いろいろな支援策の延長についても具体的に聞いたが、明確な答えは全くなく、現場の悲鳴にも似た声が、官邸には全く届いていないのではないか。非常に残念に思った」と述べました。 
●環境・デジタル化で成長 会員任命拒否「狙い撃ち」否定―菅首相 10/30
菅義偉首相は30日の参院代表質問で、新型コロナウイルス感染収束を見据えた経済政策として、脱炭素社会の実現とデジタル化を成長戦略の柱に据えると表明した。首相は「グリーン社会実現とデジタル化で経済社会を大きく変革し、経済成長を実現させる」と述べた。国民民主党の小林正夫参院議員会長への答弁。
日本学術会議の会員候補6人の任命を拒否した問題に関し、首相は「特定の分野の研究者であることをもって判断したことはない」と述べ、「狙い撃ち」を否定した。共産党の小池晃書記局長が「総合的、俯瞰(ふかん)的な観点に反する」と批判したのに反論した。6人はいずれも人文・社会科学系で、安全保障関連法などの制定に反対してきた。
首相は現在の会員の所属について、七つの旧帝国大が45%を占めるのに対し、その他の国公立大は17%、私立大は24%にとどまるとして旧帝大偏重を問題視。「多様性」を重視したと強調した。ただ、除外された6人のうち3人は少数派の私大に属している。任命拒否について「国会で説明できることは説明する」とも語った。
●首相、学術会議の会員「旧帝大が45%」 大学の偏り、データを説明 10/30
菅義偉首相は30日の参院本会議で、日本学術会議の新会員候補6人の任命を見送ったことに関連し、東大や京大など「7つの旧帝国大に所属する会員が45%を占めている」とのデータを明らかにした。首相は任命の可否を判断する際、大学や年齢などに偏りがあることを踏まえ、多様性を大切にしたことを重ねて説明した。
共産党の小池晃書記局長の代表質問に答えた。
首相は、旧7帝大以外の会員は国公立大が17%、私立大は24%に止まっていると言及。「産業界に所属している会員や49歳以下の会員はそれぞれ3%に過ぎない」とも強調した。そのうえで、「特定の分野の研究者であることをもって任命を判断したことはない」と語った。
また、首相は観光支援事業「Go To トラベル」に関し、「今後の感染状況、観光需要の回復状況、予算の執行状況を見つつ検討する」と述べ、来年1月末までの期限の延長に前向きな姿勢を示した。
新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた経済対策では、「躊躇(ちゅうちょ)なく必要な対策を講じる」と訴えた。首相は令和2年度第3次補正予算案の編成を11月10日の閣議で指示する方向で調整する。
与野党の論戦は2日から衆院予算委員会に舞台を移す。参院も予算委理事懇談会で、首相と全閣僚が出席する総括質疑を5、6両日に開くことで与野党が合意した。
●菅首相、「Go Toトラベル」延長に前向き 参院代表質問 10/30
参院は30日の本会議で、菅義偉(すが・よしひで)首相の所信表明演説に対する代表質問を行った。首相は観光支援事業「Go To トラベル」について「今後の感染状況、観光需要の回復状況、予算の執行状況を見つつ検討する」と述べ、実施期間延長に前向きな姿勢を示した。公明党の山口那津男代表の質問に答えた。
山口氏は「全国約900万人の雇用を抱える観光産業が新型コロナウイルスや豪雨災害などで大きな打撃を受けている」と指摘。「Go To トラベル」の実施期間を来年の大型連休まで延長したうえで、予算増額を検討するよう求めた。政府が年内に策定する政策プランにバスや鉄道など地域の交通事業者の支援策を盛り込むことも要請した。
日本維新の会の片山虎之助共同代表は、大阪市を廃止して4つの特別区に再編する「大阪都構想」の住民投票(11月1日投開票)を踏まえ、地方分権について首相の見解をただした。
●GoTo延長「状況見て検討」 五輪サイバー攻撃を注視 菅首相 10/30
参院は30日午前の本会議で、菅義偉首相の所信表明演説に対する各党代表質問を続行した。
首相は2021年1月末までを目安とする観光支援事業「Go To トラベル」について、「今後の感染状況、観光需要の回復状況、予算の執行状況を見つつ検討していく」と述べた。公明党の山口那津男代表への答弁。政府は来年2月以降も延長する方向で調整している。
東京五輪・パラリンピックをめぐり、ロシアの情報機関がサイバー攻撃を仕掛けていたと英政府が発表したことについて、首相は「重大な関心を持って情報収集、分析に努めている」と述べ、動向を注視する考えを示した。日本維新の会の片山虎之助共同代表への答弁。
首相は、携帯電話大手2社が割安な料金プランを発表したことを評価。「公正な競争環境の整備を通じて料金の低廉化に努める」と述べ、さらなる値下げ実現に意欲を示した。
●参院代表質問 新型コロナ対策や憲法改正めぐり論戦  10/30
国会では、29日に続いて、参議院本会議で菅総理大臣の所信表明演説に対する代表質問が行われ、新型コロナウイルス対策や憲法改正などをめぐって論戦が交わされました。
参議院本会議では、午前中、公明党と日本維新の会が質問しました。
公明党の山口代表は、新型コロナウイルスのワクチンの確保について、「安全で有効なワクチンを一日も早く、すべての国民に提供できるよう、引き続き、最重要課題として取り組んでもらいたい」と求めました。
これに対し、菅総理大臣は、「来年前半までに、すべての国民に提供できる数量の確保を図るべく、国内外を問わず、精力的に、企業との交渉を重ねるとともに研究開発への支援を行っている。円滑、迅速な接種に向けて、今国会で予防接種法の改正法案を提出するほか、接種順位の決定や、各自治体での体制など、準備も進めていく」と述べました。
また、山口氏は、地方のデジタル化について、「新型コロナウイルスの感染拡大は、地域経済にも甚大な影響を与えている。デジタル技術を駆使した『ポストコロナの地方創生』を強力に推進すべきだ」と指摘しました。
これに対し、菅総理大臣は、「役所に行かずとも、あらゆる手続きができる。地方にいながら、都会と同じような仕事や生活ができる。国民が当たり前に望んでいるサービスを実現し、利便性を実感できる社会を目指し、地方のデジタル化を推進していく」と述べました。
日本維新の会の片山共同代表は、憲法改正について、「現憲法は、策定時からこんにちまで73年間、国民投票も行われなかった。これは、現憲法にとって、致命的な欠陥だ」と述べ、見解を示すよう求めました。
これに対し、菅総理大臣は、「憲法改正は、国会でお決めいただくことであり、総理大臣としてお答えすることは差し控える。あえて申し上げれば、憲法改正は国会が発議し、最終的に国民投票により主権者である国民が決めるものだ。憲法審査会で議論を重ね、国民の理解を求めていくことが、国会議員の責任ではないか。国民投票法の改正も含め、与野党の枠を超えて、建設的な議論を行ってほしい」と述べました。
公明党の山口代表は、国会内で記者団に対し「菅総理大臣は、極めて実務的な視点で的確な答弁をしていて、われわれの提言なども十分に生かされているという期待感を抱かせるものだった。 国民の期待感が高いだけに、一つ一つの政策を形にして、成果を示していくことが重要だ」と述べました。
日本維新の会の片山共同代表は、記者会見で「地味だけど実があり、丁寧に質問に答えてくれたと思う。予算に関わるところは、すごく明確だった。『実務、実践、各論型』でスピードを非常に尊重している感じを受けるが、安倍政権のときと同じく、引き続き、是々非々で対応していきたい」と述べました。
●学術会議問題、すれ違い=菅首相、野党とも憲法基に主張―代表質問 10/30
菅義偉首相の所信表明演説に対する29日の各党代表質問は、28日に引き続き、日本学術会議をめぐる問題が大きなテーマとなった。野党は首相による会員候補の任命拒否が学問の自由を保障した憲法23条に抵触すると指摘。首相は、学術会議会員は国家公務員であり、憲法15条が定める公務員の選定罷免権は国民固有の権利と反論。双方が憲法の異なる規定を持ち出して主張を展開、議論はすれ違った。
共産党の志位和夫委員長は任命拒否に関し「憲法23条の学問の自由を侵害する。理由を明らかにしないままの任命拒否は個々の科学者に萎縮をもたらし、自由な研究の阻害となる」と批判した。
さらに、首相がこれまで15条を基に自らを正当化していることに触れ、「15条は公務員の最終的な選定罷免権が主権者の国民にあることを規定したもので、それをいかに具現化するかは国会で個別の法律で定められる」と指摘。「15条を持ち出して(任命拒否を)合理化するなど天につばするものだ」と訴えた。
これに対し首相は「会員らが個人として有する学問の自由、会議の職務の独立性を侵害することになるとは考えていない」と答え、23条に抵触していないと反論。また、志位氏の指摘を意に介さないかのように15条を引用し、「必ず推薦の通りに任命しなければならないわけではないという点は、政府として一貫した考え方だ」と強調した。 
首相は「必ず推薦の通りに…」と同じ答えをさらに2度繰り返し、志位氏の質問だけで計6回、15条を使って答えた。
首相は立憲民主党の福山哲郎幹事長の質問にも同じように回答。代表質問後、志位氏は記者会見で「公務員の選定、罷免は首相固有の権利だと誤読している。『朕(ちん)は国家なり』を想起した」と皮肉った。
 
 
●メルケル演説が示した知性と「ガースー」の知性の欠如 2020/12 
<新型コロナ危機のなか珍しく情に訴えたメルケルは、ウイルスというファクトから目を背けることはできないと言い、菅は「こんにちは、ガースーです」と言った>
ドイツのメルケル首相の演説が世界的に話題を呼んでいる。同国のコロナ死者数が過去最多の1日590人に上った12月9日。連邦議会において行われた演説で、首相はいつになく感情を剥き出しにして、クリスマスシーズンにおける市民の自粛を訴えた。例年のようなクリスマスを楽しめないことは「本当に心から残念なことではあるが」と首相は述べる。「1日590人の死は受け入れることができないというのが私の見解だ」。情熱的なスピーチは得意ではないとみられていたメルケルが、突如身振り手振りまで込めてコロナウイルスの拡散防止を訴える姿はインパクトがあり、その数分間は切り取られて、世界的に知られるようになった。
この演説では、コロナウイルス対策として12月中旬からの部分的なロックダウンおよびそれに対する財政支援なども説明されている。また、来年から始まるワクチン接種についてのロードマップの概要も首相は示した。
「私は啓蒙の力を信じている」
コロナの危機を訴える演説の途中で、メルケル首相にヤジが飛んだ。「(コロナの死者数が増えるという予測は)まったく証明されてないんだ!」ヤジを飛ばしたのは極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の議員で、同政党はコロナ禍における移動や経済活動の制限について全面的に反対している。世界各国の極右ポピュリズム運動・政党はコロナの危機を過小評価する傾向にあるが、それはドイツでも例外ではない。
メルケルは普段はヤジに反応することはないのだが、この日は違った。彼女は、以下のように応答したのだ。
「私は啓蒙の力を信じている。今日のヨーロッパが、まさにここに、このようにあるのは、啓蒙と科学的知見への信仰のおかげなのだ。科学的知見とは実在するのであって、人はもっとそれを大切にするべきだ。私は東ドイツで物理学を志した。しかし私が旧連邦共和国(=西ドイツ)出身だったならば、その選択はしなかったかもしれない。東ドイツで物理学を志したのは、私には確信があったからだ。人は多くのことを無力化することができるが、重力を無力化することはできない。光速も無力化することはできない。そして他のあらゆるファクトも無力化することはできない、という確信が。そして、それはまた今日の事態においても引き続き当てはまるのだ」。
メルケルは、反知性主義的なヤジに対して「啓蒙の力を信じている」と返した。人々の自由が政治によって弾圧されていた東ドイツにあって、いかなる政治も干渉することができない自由な領域が、彼女にとっては物理学の世界だった。自分自身の経験を通して、メルケルはこの社会における科学的知見の重要性を語るのだ。
通俗的な反近代主義者やポスト近代主義者は、啓蒙主義の精神を批判しがちである。しかし、彼らがそれに代わって社会が拠って立つべき指針を示すことはほとんどない。
メルケルが見せた知性への誇り
前例のないパンデミックで国家が常態ではいられなくなったとき、問われるのは国家のアイデンティティだ。メルケル首相は、演説の中でドイツについて「強い経済」と「強い市民社会」をもった「民主主義」国家だと定義している。そして彼女にとって、そのような国家のアイデンティティの前提にあるのが啓蒙の精神、すなわち知を愛することなのだ。演説の中でも、教育や学術への支援を首相は強く訴えていた。
ヨーロッパは東アジアに比べてコロナの流行が激しい。そうした状況下にあって、ドイツの取り組みも他のヨーロッパ諸国と比べると優等生ながら、必ずしもすべての政策が上手くいっているわけではない。しかし、メルケルが知性に拠って立ち、議会において市民に対してコロナの流行と「戦う」気概を示したことは、国家の首班としてふさわしい振舞いだった。
私権の制限を伴うロックダウンは、自由で民主的な体制と必ず衝突する。もしロックダウンを行うのであれば、いかにそれが公正に行われるかを、政府はオープンな議論のもとで市民に示す必要がある。いかにパンデミックのような緊急事態であろうと、政府がアカウンタビリティ(説明責任)を果たそうとせず、強権的な政治を行うのならば、それは独裁への道だ。
「こんにちは、ガースーです」
11月中旬以降、日本でも新型コロナウイルスの「第三波」が到来している。比較的感染者数が少ない東アジアにあって、現時点での日本は感染者数が多い劣等生の部類に入る。北海道や大阪ではすでに医療崩壊が起こっている。そして東京の感染者数が初めて600人を超えた12月11日、菅義偉首相は「ニコニコ動画」の生放送に出演し、「こんにちは、ガースーです」と笑顔をみせた。コロナ対策に関して、人々の移動を促し、感染拡大の要因のひとつと指摘されている「GoToキャンペーン」について尋ねられると、一時停止は「まだ考えていない」と述べた。
この菅首相の振る舞いは、9日のメルケル演説と対比され、SNSで話題を呼んでいる。メルケルの情熱的に市民に訴えかける振る舞いに対して、菅首相の姿勢はパンデミックの危機にあってあまりにも不誠実にみえるというのだ。
知性に対する態度の落差
もちろん、首相は演説が上手ければよいというものではない。いかにその言葉に真心がこもっているようにみえようと、それ自体はひとつのパフォーマンス以上のものではない。しかしここで再度強調したいのは、メルケルの「情熱的な」の中に込められた知性への誇りについてだ。啓蒙の精神を土台とした政策決定を行っていく姿勢をみせることは、単なるレトリックではない。そのような言明を首相がすることによって、科学的なものに裏打ちされた公正な政策について議論可能な土壌が、政治的につくられるのだ。
「こんにちは、ガースーです」の第一声のもとニコニコ動画に出演した菅首相に、そうした知性に基づいた政治を行う気概はあるのだろうか。政策決定の公正さについて、アカウンタビリティを果たす責任感はあるのだろうか。残念ながら、これについては悲観的にならざるをえない。菅政権発足直後に発生した日本学術会議に対する介入をみると、この政権が知性に対してどのような立場を取っているかを推察することができる。
なるほどメルケルが言う通り、人は多くのことを無力化することができる。学問の自由もその一つである。医療崩壊の渦中にある人々の悲鳴や、「GoToキャンペーン」を停止すべきだとする専門家の意見も、無力化することができる。しかしこれもまたメルケルが言う通り、残念ながらファクトは無力化することはできない。新型コロナウイルスの脅威もその一つだ。 
 
 
 
 
 


2020/10