ネコババ政治

安倍政権 末期症状
税金 借金の山 
予算の無駄遣い 癒着 談合 ネコババの種混ぜる

政治家先生 お役人さん
持ちつ持たれつ  巡り巡って ご利益期待
政治資金 票田 利権 天下り 役得 ご接待

官民癒着の闇
 


 
 

 

サービスデザイン推進協議会
●電通
電通 ネコババの「種」の育て役
企画はお手の物 膨らませます 大きくします 
   さすが  見てあげましょう
ついでに グループ企業にお裾分け
鞄d通
日本最大手、世界規模では5位の広告代理店である。2020年1月1日に純粋持株会社体制へ移行。
日本国内2位の博報堂DYホールディングスの売上高の約4倍と日本最大の広告代理店であり、「広告界のガリバー」の異名を持つ。その圧倒的なシェアゆえ、市場の寡占化が問題視され、2005年には公正取引委員会が調査を開始し、調査報告書において電通の広告業界における寡占化の進行の事実を指摘した上で「公平性、透明性の確保が必要」と結論づけた。近年では海外の広告会社を積極的に傘下に加えることにより規模を拡大し、広告代理店グループとして世界5位の規模となっている。
政財界・芸能界等の有力者子弟を社員として多く採用している。  
 
 

 

●お役人
お役人 「種」の作り役
議案作成 ネコババ方法 ご検討
   真面目です  見てあげましょう
電通のお礼 幽霊がご手配
天下り 役得 ご接待
 
 

 

●政治家先生
政治家先生 「種」の増やし役
議案に尾ひれ ネコババ量 増やす
    探して 見てあげましょう
電通のお礼 幽霊がご手配
政治資金 票田 利権 ご接待
 
 

 

ねこばば・ネコババ・猫糞
悪事を隠して知らんぷりすること。特に、拾った物を密かに自分の物にすること。
猫が糞に砂や泥をかけて隠すことから、悪事を隠すこと。転じて拾った物をこっそり自分の物にしてしまうこと。
猫が糞に泥をかけて隠すことからという。悪事をごまかして知らない顔をすること。特に、拾った物をひそかに自分の物にしてしまうこと。「財布をねこばばした」。
《猫が、糞をしたあとを、砂をかけて隠すところから》悪いことを隠して素知らぬ顔をすること。また、拾得物などをこっそり自分のものとすること。「拾った物を猫糞する」
猫が糞をした後に砂をかけて隠すことから喩えたもの。「糞(ばば)」は、大便など汚いものをさす幼児語である。江戸時代後期頃から用いられた語と思われ、それ以前に用例は見られない。一説には、猫好きの老婆が借金をなかなか返さなかったことから、猫好きの老婆が語源で「猫婆」を本来の形とする説もある。
他人のものをこっそり隠して自分のものにするという意味です。ネコババを漢字で書くと「猫糞」。猫がフンをした後に砂をかけて隠すことから、そういう意味で使われるようになりました。糞をババと呼ぶのは、江戸時代の幼児語で、今の言葉でいえば便をウンチと呼ぶ感じですね。ちなみに汚いものを「ばっちい」と言うのも、糞(ババ)から派生した言葉なのだそう。猫好きの老婆が借金をなかなか返さなかったことから、「猫婆」を語源とする別説もあるようです。
1.物を拾ひ取りて知らぬ顔で自分の物に為てしまふことを云ふ。猫は己の糞を隠すと云ふより、転じて隠して知らぬ顔してゐることに云ふ也。2.「猫の糞を踏んだやう」の略にて、悪しき所為を隠して知らぬふりすること。「猫糞をきめ込む」などいふ。3.他人の金品を隠匿して知らぬ顔をすることをいふ。猫が糞をする時には、地を掘つてなし、後で土砂をかけて置くからいつたもの。「ばば」は糞のことをいふ。「猫ばばをきめこむ」に同じ。4.他人の金品を隠匿して知らぬ顔をすることをいふ。猫が糞をする時には、地を堀つてなし、後で土砂をかけて置くからいつたもの。「ばば」は糞のことをいふ。「猫ばばをきめこむ」に同じ。5.他人の金品を誤魔化して知らぬ顔をして居ることをいふ。6.委託金品を横領費消すること。或は窃盗金品や横領金品を地中に隠匿なすこと。隠匿し知らぬ顔をしてゐるを「ねこばばをきめこむ」といふ。7.他人の金品を横取りして陰匿すること。ババは糞のことで、猫が糞をするときには地を掘り後で土砂をかけて置くことから出た語。8.他人の金品をごまかす。(横領) 江戸時代の中頃、猫の好きな一老婆が三匹もの猫を飼つていたが、この老婆はもの忘れをするのか、承知の上の欲張りからか、とかく人からものを貰つても返礼もしなければ、届け物を頼まれても途中で横取りする癖があつたところよりこの語あり。9.委託金品を横領消費することをいう。 
 
 

 

●給付遅れるコロナ「持続化給付金」 受託した法人の不透明な実態  5/28
新型コロナウイルスの影響で売り上げが半減した中小企業などに最大二百万円を給付する政府の持続化給付金で、給付遅れが相次いでいる。実際の給付作業は、大手広告会社の電通や人材派遣会社のパソナが設立した一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」に業務委託されている。約二兆三千億円の給付用資金を扱い、国から七百六十九億円の委託料が払われているが同法人は給付遅れに「回答を差し控える」とコメント拒否。実質的な運営形態も開示しておらず公共事業として不透明な面が目立つ。  経済産業省中小企業庁は持続化給付金の申請から支給までの期間を「二週間」と示している。東京都大田区のダンス講師女性は申請初日の五月一日に手続きしたが、給付まで三週間以上待たされた。「申請から二週間たって書類不備のメールが突然来た。どんな審査をしているのか」と憤る。
都内の顧客企業が多い温井徳子税理士も「大型連休明けに申請し、まだ入金されない企業も多く、みな月末間近で困っている」と話す。
給付遅れについて中小企業庁の担当者は「書類が確認でき次第、給付している」と回答するにとどまる。政府が二十七日決定した第二次補正予算でも給付金は一兆九千億円追加増額され、法人への業務委託費もさらに膨らむ公算だ。
同法人は定款などによると電通、パソナのほか、ITサービス業トランスコスモスが二〇一六年五月に設立した。本紙の取材に対し給付金業務について人員態勢などの説明を拒んだ。
中小企業庁は、法人が業務を電通に再委託していることを明らかにしたが電通も「経産省の事業なので、回答は控える」としている。
●経産省事業を4年で14件 「実態は電通の人に聞いて」  5/28
一般社団法人サービスデザイン推進協議会とはどんな団体か。ホームページに情報はほとんどなく、電話番号も公表されていない。十九日、登記簿上の所在地を訪ねると東京・築地の九階建ての小さなビルの二階に入居していた。インターホンに応答はなく、「お問い合わせは(給付金の)コールセンターまで」の張り紙があるだけだ。
登記簿情報から代表理事の男性に電話すると「私はアドバイザーで、詳しいことは不明。実態は電通の人たちがやっているので聞いてほしい」と述べた。電通は「回答を控える」とコメントした。
立憲民主党の川内博史衆院議員が中小企業庁に問い合わせると、作業は「少なくとも五千人以上で対応している」と回答したという。国が当初想定した申請は約百五十万件で、マンパワーが必要なため、電通以外にも再委託されている可能性がある。だが、中企庁は取材に「国が契約しているのは協議会。その先の再委託は公表しない」と回答。コールセンターの場所すら明かさなかった。
設立以降の経緯からは経産省との距離の近さが浮かぶ。法人の設立日は経産省が主導した優良ホテルなどの認定事業の委託者公募が始まったのと同日。法人は事業を受託した。以来、持続化給付金も含め、四年で計十四件の事業を経産省から受託。持続化給付金事業の入札には、もう一社が応札したが、法人は公募開始の二日前に持続化給付金のウェブサイト用アドレスをすでに取得していた。事業受託を見越したような対応だが、同法人は「受託できた場合に備えた」とした。
国税庁出身で中央大法科大学院の酒井克彦教授は「多額の税を使いながら持続化給付金の交付が滞っており、経産省には再委託を含めた委託先の業務の実態について国民に説明する責任がある。ブラックボックスのまま検証ができなければ問題だ」と話している。
●持続化給付金の事業費97%が電通へ 国から受託の法人  5/29
新型コロナウイルスで売り上げが減少した中小企業などに最大二百万円を給付する持続化給付金で、国の委託先である一般社団法人サービスデザイン推進協議会が広告大手の電通に対して、事業の大半を再委託していることが分かった。国の委託費の97%は法人経由で電通に流れる。実質的な給付事業は電通が行っているといえ、法人の実体の乏しさが鮮明となった。
経済産業省が立憲民主党の川内博史衆院議員に回答した。同省は法人に七百六十九億円の委託費を支払うことを公表している。今回、法人が電通に支払う再委託費が七百四十九億円に上ることが判明した。
法人は電通、パソナ、トランスコスモスが二〇一六年に設立した。約百五十万件を想定している膨大な給付件数を処理するには多くの人手が必要で、電通から他の企業に事業の外注が行われている可能性もある。
電通が設立した法人から電通へ「事業が丸投げされているのではないか」というこれまでの本紙の取材に、経産省中小企業庁は「迅速に体制をつくり、誰がどんな業務に当たるかを考える上で法人は大事だ」と回答している。
一方、法人や電通は「経産省の事業なので回答は控える」などとして、給付金事業の運営体制を明らかにしていない。
法人から電通への再委託について、財政が専門の小黒一正・法政大教授は「経産省は再委託を含めた業務の流れを承認している。法人が(電通への再委託額との差額にあたる)二十億円に見合った役割を果たしているのかどうかを説明する責任がある」と指摘している。 
 
 

 

●「給付金」委託費 電通、パソナなど法人設立3社で分け合う  6/2
中小企業に最大二百万円を支給する持続化給付金で、一般社団法人サービスデザイン推進協議会から事業の再委託を受けた広告大手の電通がさらに、人材派遣のパソナやIT業のトランスコスモスに業務を外注していたことが分かった。法人の設立に関与したこの三社が給付事業の大部分を担っており、実体に乏しい法人を経由して、国の委託費を身内で分け合う不透明な構図が浮かんだ。
経済産業省が一日、国会の野党合同ヒアリングで明らかにした。法人の職員全員が、三社を含む設立に関与した企業からの出向者であることも判明。給与は法人と元の企業の双方から出ており、野党議員からは法人の存在意義を問う声が強まった。
法人から七百四十九億円で業務の大部分の再委託を受けた電通は、給付金の申請の受け付け業務を四百五億円でパソナに外注、トランスコスモスにもコールセンターの運営を任せていた。給付金の振り込み業務についても、法人が電通子会社の電通ワークスに外注するなど複雑な取引関係が明らかになった。
電通やパソナはこれまでの本紙の取材に、「経産省の事業なのでコメントを控える」としている。
経産省は、電通の役割を「業務全体のコーディネート(調整)」と説明。だが、法人の役割についてもこれまで同様の説明をしてきており、電通と法人の役割が重複することで税金の無駄遣いになりかねない。野党議員は「なぜ法人を経ずにまっすぐ電通と契約しないのか」と批判した。
厚生労働省の元官僚で行政に詳しい神戸学院大学の中野雅至教授は「緊急性がある事業でも税金の無駄にならないようにしなければならない。法人の介在で税金を中抜きしているような構図になったことについて、経産省には説明責任がある」と指摘した。 
●給付金法人問題 経産省は情報出し渋り、事務所は応答なし  6/2
769億円の巨大事業を受託しながらも、一般社団法人サービスデザイン推進協議会の実態は明らかになっていない。事業の責任者である経済産業省も情報を出し渋り、持続化給付金の事業で明るみとなった取引の不透明さを助長させている。 
野党議員は1日午前、登記に記載のある事務所(東京都中央区)を訪問。だが、呼びかけに応答はなく、室内の電気はついておらず人けもなかった。
「(経産省)中小企業庁の委託事業であり、同庁まで問い合わせを」。ドアには1日付の報道関係者向けの紙が貼られていた。本紙が5月中旬に訪問した際、ドア横に設置されていたインターホンは取り外されていた。
その経産省も説明責任を果たすどころか、法人を守るばかりだ。同日午後の野党合同ヒアリングで、無所属の山井和則衆院議員は「769億円の税金が適切に運用されているかを確かめたい」と、法人の担当者との面会や電話での聞き取りを要求。同省は「私人に対応させるのは適切ではなく、政府が答える」と拒否した。
国民民主党の渡辺周衆院議員は「(聞き取りの対応者は)匿名でも構わない」と譲歩したが、同省はこれも拒んだ。公開情報である法人の理事のリストを出すように求められても「法人と相談する」と応じ、説明せずにやり過ごした。  
 
 

 

●給付金業務、「電通系」中心に回す 外注先の全容が判明  6/3
中小企業に支給する持続化給付金について、民間企業十一社と公益財団法人一つが、国から事業を受託した一般社団法人サービスデザイン推進協議会を通じて業務を担っていることが分かった。うち七社は電通グループの企業で、法人の設立に関与した電通を核に業務を回している実態が鮮明となった。 
経済産業省が二日、野党合同ヒアリングに提出した資料によると、法人から再委託を受けた電通が子会社の四社のほかに、同じく子会社の電通ライブに業務を外注。電通ライブは、同じく設立に関与した人材派遣のパソナなどに給付金の支給業務を発注している。
給付金事業七百六十九億円のうち、電通へ再委託される七百四十九億円を引いた二十億円について、経産省はうち約十七億一千万円が手数料などとして振り込みを担当するみずほ銀行に渡ると説明。想定申請件数は百五十万件だが、「振り込みエラーが発生する」などとして二百二万件に積み増した。手数料は一件七百七十円と見積もった。
七百四十九億円の詳しい内訳も開示された。最も高額なのは全国五百カ所以上の受け付け会場での申請支援で四百五億円、審査に百五十億円、広報に五十億円−などとした。
振込手数料をみずほ銀に流す以外に、法人が果たす役割について経産省は「全体の工程管理」などと説明。「総合的な管理・運営」を担うとする電通との業務の重複ぶりがにじんだ。
衆院経済産業委員会は三日、野党の要求で集中審議を開く。野党は、法人の実体や再委託の不透明さを追及する。
電通は二日、報道各社にコメントを出した。「全国五百四十一カ所の申請サポート会場や約三百五十人体制のコールセンターの設置と運営などを受託し、(外注先を含め)九千人以上で業務を進めている」とし、「業務完了後に実績を報告し、一般社団法人サービスデザイン推進協議会と経済産業省の検査を受けた上で精算支払いを受ける。引き続き迅速に対応できるよう全力で取り組む」と説明している。
<持続化給付金事業の再委託> 経済産業省中小企業庁は、新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業などに最大200万円を給付する持続化給付金で、一般社団法人サービスデザイン推進協議会に769億円で事業を委託した。委託費の97%が、法人からの再委託で電通に流れることが判明。電通はさらに業務をパソナやトランスコスモスなどに外注している。法人はこの3社が中心となって2016年に設立した。4年間で14事業(計1576億円)を同省から受託し、うち9件で設立に関与した企業を中心に再委託した。残り5事業でも、事業の大半を外注した例があった。「再委託」と「外注」は契約の種類で呼び方は違うが、外部に仕事を任せるという点では同じだ。 
 
 

 

●「電通隠し」政府正当化 持続化給付金、経産相の説明に矛盾  6/4
国は持続化給付金事業を電通と直接契約すれば良かったのではないかという指摘に対し、梶山弘志経済産業相は三日の衆院経済産業委員会で「(直接契約すると)電通の財務会計上の処理が複雑化する」と反論した。政府が、電通との間に一般社団法人サービスデザイン推進協議会を挟む「電通隠し」を正当化した格好だ。
梶山氏の発言は、給付金の巨額資金が一時的に電通に入ることで会計処理が混乱するのを嫌ったという趣旨だ。だが、企業会計に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は「預かり金などという形で資金を一時的に内部にとどめておく会計処理は日常茶飯事で、金額が多くなっても複雑になるはずがない」と批判。「会計の基本が分かっていない」と指摘する。
梶山氏は二日の閣議後会見では、給付金が電通から振り込まれたら受け取った人が驚いて電通に問い合わせが殺到する、との理由も挙げた。二〇一二年に電通が直接受託した国の事業でこうしたケースがあり、それ以来「電通は原則、直接受託しない」と説明した。
だが、三日の質疑では野党の質問に、振り込み名義は受託事業者名ではなく「ジゾクカキュウフキングチ」になることを中小企業庁の担当者が認め、梶山氏の説明の矛盾が露呈した。
 
 

 

●元電通の理事に「委任」 給付金受託法人の代表  6/6
新型コロナウイルス対策の「持続化給付金」事業を受託した一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」(東京)の笠原英一代表理事が6日までに共同通信の取材に応じ、電通への業務の再委託が問題視されていることについて「この案件の執行権限がなく、細かいことは分からない。元電通社員の理事に委任している」と話した。8日付で辞任するとしている。
電通が国から直接受託しなかった理由は「電通はいろいろ批判されていた。私の臆測だが、税金を使った事業なので、電通ではなく一般社団法人が振り込む方がよかったのではないか」と説明した。
●給付金事業 電通7社に154億円 パソナへの外注費は明かさず  6/6
国の持続化給付金で、一般社団法人サービスデザイン推進協議会から事業の大部分の再委託を受けた広告大手の電通と子会社六社がグループとして、少なくとも計百五十四億円を得る見通しであることが分かった。国からの委託費七百六十九億円が法人を通じ、電通グループ各社に配分される構図が浮かんだ。
五日の野党合同ヒアリングで、経済産業省が電通から外注先である子会社への発注額を示した。法人から七百四十九億円で再委託を受けた電通は、システム構築を担当する電通国際情報サービスに十九億八千万円、ホームページ制作の電通デジタルに十六億三千万円など、計六百四十五億円を外注している。
さらに、電通子会社の一部は、申請サポート会場の設置運営など大半の業務を人材派遣大手のパソナなどに外注。この外注分を除く少なくとも約五十億円が、電通子会社に渡る。
設立に関与した企業に外注を重ねることで、管理費が膨らむ構図になっている。野党議員からパソナなどへの詳細な外注費を示すよう求められたが、経産省は金額を示さなかった。
電通本体が「統合的な管理運営」の名目で得る金額についても、経産省は「百三億円」と明らかにした。同省は税抜き金額で記された資料に基づき、立憲民主党議員に外注費の金額を事前に説明していたが、五日のヒアリングではこの金額を「税込み」と説明。その結果、電通に渡る金額は三十八億円から百三億円と膨らむ形となった。子会社分を加えるとグループ全体には少なくとも百五十四億円が渡る。持続化給付金に関する委託費や外注費は補正予算に基づく数字で確定していない。
一方、法律で義務付けられた決算開示を怠っていた法人は五日、二〇一六年度から三年分の決算をホームページで公表した。 
 
 

 

●電通業績不振、コロナと給付金騒動が追い打ち 6/7
国内広告最大手・電通に逆風が吹いている。
まず、新型コロナウイルス対策の持続化給付金の手続き業務をめぐり、経済産業省から委託された民間団体「サービスデザイン推進協議会」が、業務の大部分を電通に再委託していたことが明らかになった。
経産省は給付金の業務委託先として、一般競争入札を経て同協議会と769億円で契約。その大部分を電通が749億円で再び請け負った。経産省と協議会、電通の関係や取引の透明性などについて、問題視する声が広がっている。
給付金の業務委託プロセスは適正だったのか。電通広報部は東洋経済の取材に対し、「業務執行に当たっては、経済産業省が定めるガイドラインを順守している。事業予算額が当社に支払われるとは限らない。ガイドラインに基づき、業務完了後、業務実績に応じて精算を行う。そのため、当社への支払額は未定だ」などと回答している。
電通に直接発注されなかったことで取引が不透明になったのではないかという指摘に対し、梶山弘志経産相は6月2日の記者会見で、「過去に電通が補助金などの交付事務を直接受託した際に、受け取り側の事業者が国の制度に応募したはずなのに振り込み元が電通になっているなどといった問い合わせが集中した。そうしたこともあり、電通は直接受託しない原則になったと聞いている」と説明している。
電通にとって、国や官公庁は重要な顧客だ。2020年1〜3月の顧客業種別売上高を見ると、「官公庁・団体」は328億円で全体の売上高4510億円の7%強を占める。情報通信、金融、飲料、外食に次ぐ5番目の大きさで、東京五輪関連の案件が膨らんだこともあるが、伸び率は前年同期比約7割増と全業種で最も大きい。
ただ、電通はこの問題だけに時間を取られている場合ではない。広告業界は今、コロナ禍で大打撃を受けているのだ。
持ち株会社である電通グループは5月27日、2月に発表した2020年12月期の業績予想を撤回し、「未定」に変更した。新型コロナの影響を受けた多くの企業で広告出稿を手控える動きが広がっているためだ。
「現在のマーケティング需要の減速は、かつて経験したことのないものだ」。同日開催した2020年1〜3月期の決算説明会で、電通グループの山本敏博社長はそう語った。実際、4月の売り上げは国内、海外ともに前年同期比で20%近く落ち込んだという。
コロナ禍以前から、電通グループは国内外で逆風にさらされていた。国内では売上高の3分の1強を占めるテレビ広告の減少が止まらない。2019年12月期は前期比4%減、この1〜3月も2.8%減に沈んだ。「ネットへの予算のシフトと言わざるをえない」(電通グループ幹部)。コロナの影響が本格化した4月以降はさらに落ち込む公算が大きい。
頼みのインターネット広告も冴えない。2019年12月期は前期比3割近い伸びを見せたが、2020年1〜3月は大口顧客の失注が響き、同2.7%の減少となった。コロナの影響は例外ではなく、出稿する広告主が減っているうえ、「(1クリック当たりなどの)広告単価が2割ほど下がっている」(電通グループ子会社幹部)。
電通がマーケティング専任代理店を務める東京オリンピック・パラリンピックの延期も痛手だ。1〜3月こそスポーツイベントの運営を担う子会社・電通ライブが聖火リレーなどの案件が重なって前年同期比約5割増と躍進したが、延期が決まった3月末以降、イベント中止の影響を受けている。
電通グループの国内事業を統括する電通ジャパンネットワークの五十嵐博CEO(国内の電通社長を兼任)は決算説明会で、「(五輪関連の)人件費に関しては今年終了できず、来年までかさむため注視する必要がある」と話す。電通は五輪開催に合わせて有期雇用者を相当数確保しており、1年の延期が大きな負担となる。
さらに深刻なのが海外だ。電通は2013年にイギリスの広告大手イージスを約4000億円で買収し、以降も毎年数十件のM&Aを実施しながら拡大を続けてきた。だが、2019年初めから中国やオーストラリアで大口顧客の失注が相次ぎ、アジア太平洋地域の売上総利益は2019年4〜6月以降、4四半期連続で2ケタの減少が続いている。
「中国では市場の成長を牽引する現地企業を取り込めていない。BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)との関係も不十分。オーストラリアは顧客だけでなく、この1年ほどで社員の流出も相当あった。ただ経営陣を刷新し、悪いスパイラルからは抜け出しつつある」(前出の電通グループ幹部)。
業績低迷を受け、電通グループは2019年12月期にアジア太平洋地域でのれんの減損約700億円を計上。さらに、中国とオーストラリアを含む7カ国で大規模なリストラを実施した。総費用約250億円をかけ、対象国の11%の人員削減やいくつかの拠点から撤退した。
これらの国では日本のマス広告のように、広告会社がメディアの枠を買って、広告主に売るという旧来型のビジネスモデルに偏っていた。さまざまな消費者に関するデータを活用したデジタルマーケティングへの対応が遅れており、それへの転換を急ぐ。
デジタルへの転換を業績にうまく結びつけられたのが北米だ。北米を含む米州は、9四半期連続で増収を続けている。特に電通が強くアピールするのが、2016年に約1000億円で買収したアメリカのデータマーケティング会社・マークルの存在だ。
同社は、広告主が持つ消費者の名前やメールアドレスを含むIDデータを活用し、そのブランドのファンになってもらうために広告や販促のターゲティングを行うためのツールを提供する。
2020年1〜3月の米州の売上総利益は前年比1.2%増だったが、マークルに関しては「1ケタ台後半の伸びだった」(電通グループの曽我有信CFO〈最高財務責任者〉)という。電通は、「CRM」(顧客関係管理)と呼ぶ、こうしたデータマーケティングを全世界に拡大しようとしている。
ただ、マークルの買収時には対価の一部を業績に応じて後払いする「アーンアウト」と呼ぶ手法を用いており、電通グループがマークルの経営陣などに対して支払う年数十億円単位の株式報酬が発生する。さらに4月には、CRM事業を加速させるため、当初2021年以降としていたマークルの完全子会社化を前倒しで実施(従来は66%出資)。それだけ同社に対する投資もかさんでいる。
国内の成長戦略としても、データを活用したデジタルマーケティングを中心に据える。
「テレビ広告が縮小する中、収益構造をどう変えていくのか」。5月27日の決算説明会の場で証券アナリストからこのように問われた電通ジャパンネットワークの五十嵐氏は、「ここ数年、収益源の多様化を進めている。象徴的なのはデジタルソリューションの領域だ」と応じた。
デジタルソリューションとは、法人向けシステム構築を手掛ける電通国際情報サービス(ISID)やネット広告の電通デジタルを中心とした事業だ。
ネット広告の制作や運用だけでなく、顧客のマーケティングの課題解決のためにデジタル活用法を提案するコンサルティングから、マーケティング施策としてのアプリ開発やシステム構築まで、一気通貫でデジタル化を手掛ける案件を増やそうというわけだ。「これは博報堂にはできないことだ」(電通グループ幹部)。
とはいえ、デジタルソリューションの売上構成比は国内で17%とまだ小さい。「テレビを重視する文化はいまだに根強い」(電通社員)という声も聞かれる中で、社員のスキルや意識改革をどこまで進められるかがカギとなる。
5月20日には株式時価総額でネット広告大手のサイバーエージェント(6713億円)が電通グループ(6670億円)を逆転した。リストラを終えた矢先のコロナ禍と五輪延期に見舞われる中、「広告の巨人」の底力が試されている。 
 
 

 

●給付金委託先法人に異例の「中間検査」 電通などにも  6/9
梶山弘志経済産業相は八日に記者会見を開き、国の持続化給付金事業を委託した一般社団法人サービスデザイン推進協議会に対し、業務の執行体制をチェックする「中間検査」を行うと発表した。監査法人など外部の専門家も交えて六月中に開始する。通常、外部への委託事業は年度末に人件費など資金の執行状況を検査するが、六月の段階で外部の専門家を交えた中間検査を実施するのは異例。
法人は七百六十九億円の委託費のうち97%を電通に再委託しており、資金と事業の流れが不透明だとの批判が高まっていることを受けた。梶山氏は中間検査とは別に外部委託のあり方を検討する有識者会議を設置することも表明。「中抜きや余分な経費があるなどの疑念が持たれている。これまでの支出の妥当性などを検査する」と述べた。
中間検査では、委託事業に不適切な執行や資金の無駄がないかを調べる。経産省が委託した法人だけでなく、法人が再委託した電通や外注先の電通グループ、パソナなども「厳しく検査する」としている。一方、有識者会議では、委託の透明性を高めるための議論を始める。メンバーや設置時期などは未定だが、早期に議論を始め、年内に意見を取りまとめるという。
他省庁は電話相談などの業務を複数の企業に委託することがあるが、経産省は一つの団体に一括委託することが多いとされ、委託費も高いとの指摘がある。有識者会議では、委託先の決め方や、再委託に対するルールの構築などが論点になる見通し。
一方、経産省は八日の野党合同ヒアリングで、電通子会社から外注先への発注額を明らかにした。人材大手のパソナに百七十億円、大日本印刷に百二億円、IT業のトランスコスモスに二十九億円、イベント業のテー・オー・ダブリューに百十五億円。支給業務や申請支援を担当している。
●769億円は…身内で外注を重ねムダ遣いの疑念  6/9
不透明な法人を通じて委託・外注が繰り返され、七百六十九億円の税金が見えない形で法人の身内の企業に配分される。予算の無駄遣いという疑念を晴らせず、経済産業省は持続化給付金の業務を終える前に、異例の支出チェックに追い込まれた。
もともと公表されていたのは、七百六十九億円で給付金の事業を一般社団法人サービスデザイン推進協議会が受託していたことだけだった。実際は法人が委託費の97%を支払い、電通にほぼ業務を「丸投げ」。予算上では、まず一億八千万円の国費が実体の乏しい法人に流れることが問題になった。
さらに電通は法人に隠れる形で子会社五社に業務を外注。子会社の一部も電通と同様に法人の設立に関わった人材派遣のパソナなどに、業務の一部を発注していた。委託・外注の回数が多くなれば、それぞれの企業で税金を「中抜き」されかねない。今回の構図では外注先も身内の企業ばかりなので、外注費を下げるような競争も働きにくくなっている。
経産省と法人との距離の近さも問題になった。経産省は法人設立から四年で十四件・千五百七十六億円の事業を委託。定款の作成など、法人の設立に役所自体が関与したという疑惑も浮上している。これまでの密接な関係を断ち切った厳しい検査を経産省が実施できなければ、無駄遣いの疑念はむしろ深まり、納税者の不信は高まることになる。 
●持続化給付金、1万件超が未払い 5月開始2日間の3・5%  6/10
経済産業省は10日の野党合同ヒアリングで、新型コロナウイルス対策の持続化給付金について、受け付け開始当初の5月1日と2日に申請があった約28万7千件のうち、約3・5%に当たる1万件超が未払いになっていると明らかにした。野党は、1カ月以上が経過しても支援を受けられていない中小企業などの経営悪化が深刻だと批判し、改善を要求。経産省は迅速な審査や支給に向け、態勢を強化する方針だ。
経産省によると、申請内容の不備に対しメールで通知しているが、申請者と連絡が取れないケースなどがあり、支払い遅れにつながっている。  
 
 

 

●給付金の受託法人、事務所また無人に 前日に報道公開  6/11
国の持続化給付金業務を受託した一般社団法人サービスデザイン推進協議会の東京都内の本部事務所は10日午後、無人だった。法人は前日9日、報道機関の代表取材に内部を公開したばかり。「実体に乏しい」という疑念の払拭(ふっしょく)に努める姿勢を示したが、訪れた野党議員は「パフォーマンスだった」と批判した。
事務所の入り口は民間警備会社の男性警備員二人が立ってふさぎ、「中には誰もいない」と説明。いつ戻るのかなどの質問に「分からない」と繰り返した。
本部事務所はこれまで無人が続いていたが、法人は9日、在宅勤務体制を緩和して本部の使用を再開したと説明していた。野党共同会派の山井和則氏(無所属)は「国民に虚偽の説明をしたことになる」と述べた。
法人の広報担当者は取材に「午前中は担当者二人が出社していた。午後に都内の別の事務所に外出して不在だった」と説明した。
9日の内部公開時には、電通やパソナなどから出向する職員五人が国へ提出する書類を作成するなどしていた。広報担当理事の武藤靖人氏は「この事務所では総務や経理、人事などを担当している。都内に複数の拠点があり、150人体制で支払い業務などを行っている」と説明していた。 
●給付金の審査現場は「素人が大半」 下請け派遣社員が証言  6/11
国の持続化給付金事業は、実体に乏しい一般社団法人を経由して委託・外注が重ねられ、業務の運営が不透明だとの批判が上がっている。「ひ孫請け」にあたる企業の子会社で給付金審査を担当する派遣社員は、無駄の多さや目まぐるしく変わる審査基準など現場の実態を語った。
「『資料を読んでください』と指示され、ほぼ一日、何もしなかった」。東京都北区にある審査現場で働いていた男性は、5月1日の申請初日から数日間のことを振り返った。後に、初日は申請が殺到したことで経産省中小企業庁のホームページにアクセスしにくくなっていたことが分かった。初日と2日の申請分のうち、一万件超の未入金があることが6月10日、明らかになった。
審査は次から次へと回ってくるのではなく、待ち時間の方が長い日もあったという。「時給が付いているのに居眠りする人もいて無駄が多い」と業務の進め方に疑問を持った。
男性は大日本印刷の子会社「DNPデータテクノ」への派遣社員。大日本印刷は元請けの一般社団法人サービスデザイン推進協議会から数えて、三次下請けとなるいわば「ひ孫請け」企業だ。広告大手の電通などとともに、法人の構成企業でもある。男性がいた北区以外にも、複数の審査拠点があるが、法人は一切公表していない。
男性ら関係者によると、審査を担当する人たちは複数の派遣会社に所属している。勤務は昼と夜に分かれ、時給は1000〜2000円台。机とパソコンが並ぶ部屋では100〜200人の派遣社員が作業をしている。作業内容は、全国各地から送られた確定申告書の控えや売り上げ台帳を照合し、本人確認書類などをチェックする。持続化給付金にちなみ、業務のことを「JK」と呼ぶそうだ。
豊島区の拠点で働く女性は、登録先の派遣会社から案内を受けて5月中旬から審査業務にあたっている。「経理の用語も何も分からない素人が大半で、本当に大丈夫なのか」と話し「罪悪感」すらあるという。
申請数に応じて審査基準が変わり、現場は常に混乱していると明かす。審査に必要な書類の画像が不明瞭な場合など、「SV」と呼ばれる上の立場にあたるスーパーバイザーに判断を仰ぐも、彼らも派遣で分からない場合が多い。「チラシの裏やふせんに走り書きしたような記録が通った時は驚いた」という。
持続化給付金の事業を巡っては、実体に乏しいとされる法人を通じた業務運営に批判が上がる。「一刻も早く給付金を求める人がいて、お金が届かない人が多いのはおかしい」と女性。事業の運営体制に疑問を持つ。 
●給付金の不透明な業務委託 安倍首相説明尽くさず 6/11
2020年度第二次補正予算案は10日、衆院を通過した。2日間の衆院予算委員会で焦点になったのは、新型コロナウイルス感染拡大で売り上げが減った中小企業などに対する持続化給付金の業務委託の不透明さや、過去最大の予備費10兆円の使い道など。安倍晋三首相は説明を尽くす姿勢を示さず、疑問は参院での議論に持ち越された。 
「残念ながら支援が届いていないという現状もあるのだろうと思う」。首相は10日の予算委で、持続化給付金の給付遅れを指摘され、そう答えた。首相の言葉からは危機感が伝わってこない。
持続化給付金事業は一般社団法人サービスデザイン推進協議会が委託を受け、電通にほぼ全て再委託した。野党は「丸投げ、中抜き疑惑がある」(立憲民主党の枝野幸男代表)と追及。自民党議員も「国民に誤解を与えるようなことがあれば信頼性が崩れる」(坂本哲志氏)と執行体制や再委託の経緯の説明を求めた。
それでも首相は「この団体自体について詳しく存じ上げない」などと答えを避け、梶山弘志経産相に答弁を回す姿が目立った。
予備費の使い道も疑問が残ったままだ。首相は「感染症によって起こり得るさまざまなことに対応する」と説明。さまざまとは何かを重ねて尋ねられても「予見し難い」と事業の例示すらしなかった。
立民の大串博志氏が「(使い道を)追及されるのが嫌で、国会を開かないため10兆円を積んだのでは」と迫ると、首相は「全く的外れな批判だ」と反発した。
首相は、これまでも国会で説明しているとした上で、今後も「求められれば説明責任を果たす」とした。それでいて17日までの国会会期延長は「国会で決めることだ」と事実上拒否。臨時国会開催も明言しなかった。
10日の委員会後、共産党の志位和夫委員長は記者団に、コロナ対策に加え、黒川弘務・前東京高検検事長の定年延長問題、沖縄県名護市辺野古(へのこ)での米軍新基地建設などを挙げ「国会を閉めている時ではない」と訴えた。
感染症対策の決定過程を巡っても、説明責任を果たそうとはしなかった。
首相は政府専門家会議の議事内容の公表に関し「議事録はないが速記録はあり、保存期間満了後は原則公開になる。何かを隠していることはない」と語った。だが「原則公開」は、保存期間の10年後。政府対応の検証や第二波への備えに役立てるには遅すぎる。
今後は会議の「議事概要」に発言者名を明記するものの、過去の議事概要の発言者は明らかにせず、詳しい発言内容が記録される議事録も作成しない。国民民主党の後藤祐一氏は議事概要では「どこが抜け落ちたかチェックできない」と指摘。野党は、引き続き議事録作成を求めていく。  
 
 

 

●「持ちつ持たれつ」経産省と電通 キャッシュレス事業も9割再委託  6/12
持続化給付金事業の委託の不透明さが指摘される一般社団法人サービスデザイン推進協議会が入札に負けた経済産業省の事業で、落札した別の一般社団法人が広告大手の電通にほぼ丸ごと再委託していた。元請けに隠れ電通が経産省の事業の核となる構図で、給付金と同じだ。広告不振で霞が関の仕事を増やしたい電通が、経産省の別働隊としての役割を果たす姿からは両者の蜜月ぶりが浮かぶ。 
「電通は広告会社ではない。(問題を解決する)ソリューション提供企業だ」
電通副社長の榑谷(くれたに)典洋氏は八日の会見で強調した。
電通が再委託を受けている事業は、今月末で終了するキャッシュレス決済のポイント還元事業。登録店舗でクレジットカードなどで買い物をすると、税込み価格の最大5%が還元される。二〇一八年設立の一般社団法人キャッシュレス推進協議会が落札し、一九、二〇年度に計三百三十九億円で事務を受託している。
事業の統括を担うはずのキャッシュレス推進協議会は、運営統括の名目で、電通に委託費の90%にあたる三百七億円で再委託。コールセンターや審査業務は電通から電通ライブを経由して、パソナやトランスコスモスに外注。ここでも給付金と同じ面々が登場する。
給付金事業で透明性が問題となっている法人もポイント還元事業に応札したが落札はできなかった。とはいえ、電通にとっては元請けが違うだけで、事業の核として外注を重ねる点では変わりはない。
経産省にとって電通は別働隊として、使い勝手がいい存在になりつつある。経産省元官僚の政策コンサルタント、古賀茂明氏は行政改革で公務員の数が減ったとして「官が民に外注するケースは多く、広報を担う電通とは持ちつ持たれつの関係になりやすい」と指摘。再委託という形では表に出てこないので、批判も受けにくい。
東京都中央区のビルには、給付金事業を受託した法人のほかに、経産省が電通に委託したさまざまな事業の事務局が入居。案内板には「中心市街地再生事業」「商店街インバウンド促進支援事業」などの名前が並ぶ。ビルを訪れた野党議員は「(このビルは)事実上の『電通公共政策部』だ。経産省と電通の仲の深さを示している」と批判した。
電通にとっても政府は収益の柱を担う「お得意様」となりつつある。新型コロナウイルスの感染拡大による経済ショックが襲った二〇年一〜三月期の売上高を業種別に見ると、「官公庁・団体」の伸び率は前年同期比70%増と全業種の中で最も高い。業種別の売上高では、全十五業種のうち十位から五位に躍り出た。
だが、双方にとってどんなに得でも、電通が隠れた状態で国の事業の再委託を受けることで納税者にはマイナスになりかねない。会計検査院OBで日本大の有川博客員教授は「国の事業で委託・外注が重ねられると、全体像が把握しにくいので利益の『中抜き』があっても分かりにくい」と指摘。「税金を使う立場である経産省は国民への説明責任を果たすべきだ」と強調する。
●給付金、入札前に面談3回 経産省が電通など優遇  6/12
持続化給付金事業の委託先を決める四月八日の入札公示前に、経済産業省が事業を委託した一般社団法人サービスデザイン推進協議会と面会した時間が他の二事業者に比べ三倍以上だったことが明らかになった。時間、回数とも法人を優遇していた。同事業を所管する同省中小企業庁の前田泰宏長官が、法人幹部の電通関係者と海外で会食していたことも判明し、入札の公平性が疑われている。
経産省は入札公示前の面会は、事業の制度設計の参考にするために行ったとしている。同省内規では公示前の企業との面会は複数で対応し、面会記録を付けることなどを条件に認めている。
経産省が国会提出した記録によると、法人とは三月三十、四月二、三の三日にわたり、それぞれ一時間ずつ面会した。いずれも再委託先の電通と、再々委託先の電通ライブの担当者が同席。法人の実体の乏しさを示した。
これに対し、入札で競争相手になったコンサル会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーとは一回一時間、面会したほか、電話で一回話したのにとどまった。入札に興味を示したものの参加しなかった別の事業者とは、公示二日前に十分間、面会しただけだった。
各社へ同じ分量の情報を提供することも事前面会の条件であるため、十一日の参院予算委員会では立憲民主党の蓮舫氏は「平等と言えるのか」と追及。前田氏は「各事業者に伝えた情報は同じ」と釈明した。
また、前田氏の会食問題は週刊文春が報じた。文春は、前田氏が二〇一七年、米テキサス州のイベントを視察した際、会場近くのアパートを借り上げ「前田ハウス」と称し毎晩パーティーを開いていたと報じた。前田氏は参院予算委でパーティーに、法人の理事で当時電通社員だった平川健司氏が参加していたことを認めた。前田氏は平川氏とは法人が設立された一六年以前から面識があるとも話したが、「国民の不信を招く行為はしていない」と反論した。
●電通に丸投げ、持続化給付金事業に疑惑続々 6/12
「申請から1ヶ月経っても振り込まれない」「コールセンターに何度かけてもつながらない」。対応に不満の声が上がる持続化給付金。新型コロナウイルスの影響で売上高が半減した中小企業等に最大200万円を支給する事業だが、民間委託の在りに疑義が生じている。
2020年4月、経済産業省は競争入札で一般社団法人サービスデザイン推進協議会への委託(769億円)を決めた。するとサービスデザインは大手広告代理店の電通に749億円で再委託。事業の97%を丸投げしていた。さらに子会社5社に再々委託し、電通子会社からは人材派遣会社パソナやコールセンター業務大手のトランスコスモス、大日本印刷などに外注されていた。
電通は「統合的な管理・運営」を行うとしているが、サービスデザインを挟んだ受託の構造に、「税金がピンハネされている」といった批判の声がやまない。
そうした中、サービスデザインは6月8日の理事会で代表理事を刷新。新しく大久保保裕一(電通グループ執行役員)、浅野和夫(トランスコスモス執行役員)、杉山武志(パソナ常務執行役員)がの3氏就任した。2016年の社団法人設立時から理事を務め、キーマンとされる平川健司氏(19年6月に電通を退社)は業務執行理事に再任となった。
電通とサービスデザインが8日に行った共同会見で、大久保氏は「説明責任を果たしてこなかったことをお詫びする」と頭を下げた。一方、平川氏はサービスデザインが電子申請を推進してきたことを強調し、「(持続化給付金は)われわれが幹事社としてやるべきだと思った」と、国から受託した趣旨を説明。
「IT導入支援」など経産省の補助金事業を数多く受託できている理由を問われると「競争力があるのかなと理解している」と口にした。だが、受託した事業を丸投げする社団法人に「競争力」があるといえるのか。
野党議員の求めに応じて国が開示した4月14日実施の「持続化給付金事務事業」入札調書によると、外資系コンサルティング会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社も入札を行っている。
ここで注目すべきは「等級」だ。企業の規模や対応力を示す入札資格の等級はデロイトがA、サービスデザインがCだった。国民民主党の斉木武志衆議院議員が政府から取り寄せた資料(競争参加者資格審査事務取扱要領)によると、等級Cの企業が入札に参加できる事業規模は300万円以上1500万円未満(Aは3000万円以上)。
しかし、経産省が「特に必要があると認める場合」は入札に参加できるという例外があり、巨額事業の入札でデロイトに競り勝った。
700億円を超す持続化給付金事務事業の落札率には不可解な点が残る。予算額776億円に対し、サービスデザインの落札率は98%超の764億円(税込み)。一般競争入札の趣旨は、企業間で価格競争をさせるところにある。事業費の抑制で、税金の無駄を省けるからだ。国会でこの問題を追及してきた立憲民主党の川内博史衆議院議員は「官製談合の疑いが極めて強い」と指摘している。
6月8日の会見で平川氏は、入札前に経産省から2回のヒアリングがあったと説明したが、「経産省から価格の話はなかった」としている。サービスデザインから経産省に入札価格の話を振ったのかと問うと「わからない。ヒアリングしてみる」とした。
実は、事業承継を補助する事業(平成29年度補正予算)についても、中小企業の事業承継を支援してきた全国商工会連合会と入札で競い、サービスデザインに軍配が上がっている。
なぜ、二十数名しかいない社団法人が国の事業を高い確率で落札できるのか。疑われるのは経産省との距離の近さだ。6月8日の会見ではサービスデザインの「定款」に関して質問が集中した。
設立時(2016年5月)の定款のPDFファイルでプロパティを見ると、作成者名は「情報システム厚生課」とある。これは経産省の内局組織だ。だが、平川氏は「定款を作ったのは自分」とした上で、経産省が設立に関与した事実はないと否定。作成の経緯をさらに問われると、「残念ながら電通を退社している。当時使っていたコンピュータが手元にないため、詳細はわからない」とはぐらかした。会見を開いたものの、その説明には釈然としない部分がいくつも残った。
梶山弘志経産相は、サービスデザインを通じた持続化給付金事業の不透明な再委託について、外部専門家で検査する意向を示した。疑惑の解明はまだ時間がかかりそうだ。 
 
 
 

 

●遍在する「補助金執行一般社団法人」 6/13
 サービスデザイン推進協議会と環境共創イニシアチブの正体を考える
はじめに
令和2年5月27日の週刊文春、28日の東京新聞、30日の朝日新聞。
これらの報道を皮切りに、次々とスクープが始まった「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」を巡る問題。国会での論戦と並行して野党ヒアリングも開催され、TBS(とりわけNews23)やテレビ朝日、NHKも「持続化給付金」をめぐる問題を地上波で報ずるなど、ことの検証がはじまりました。
闇の中にあった具体的な資金の流れやその経緯など、5月2日に第一弾の記事を書いたときには検証しきれなかった様々な事実が明るみになりつつあり、「足で稼ぐ」報道機関の凄みを感じているところです。
5月31日夕刻には産経新聞も報道の戦列に加わり、6月初頭には五大紙+1、在京六紙の全てが揃い踏みとなりました。この問題の本質が「国費の使いみち」に関するものである以上、各々のスタンスを超えて議論されたら良いな、と思っておりましたが、有難い限りです。
個人的には、毎日新聞の岡大介記者による調査報道など、興味深く読んでおります。
5月28日以来、実に10日以上に渡って1面掲載を継続しサービスデザイン推進協議会を追求してきた東京新聞の取材班は、おそらく第二次補正予算の成立後を待っていたのでしょう、6月13日の朝刊一面カタにおいて、この問題に新たなスポットライトを当てました。
記事の表題は「電通が省エネ事業でも再委託で受注 法人設立に経産省が関与か」。サービスデザイン推進協議会やキャッシュレス推進協議会以外にも電通が大規模な再委託を受けている国の事業があり、その再委託元の法人設立には経済産業省が関与した疑いがあるという記事です。上記のリンクにて全文が公開されています。
法人の名は、一般社団法人環境共創イニシアチブ。経産省関与の疑いをあぶり出した手法は、記事によれば「一三年当時の環境共創の定款をインターネットで調べる」という手法でした。
そう。その通りです。現代社会の良いところは、手元にパソコンさえあれば誰もがアクセスできる情報に溢れていること。その中で、第一弾・第二弾・第三弾の記事でお示しした調査手法を取っていただければ、隠れた黒幕をも暴くことが可能となり得るのです。
せっかくですので、私の方でもやってみましょう。
1 「過去の定款」を探し出す
試みに、現在の一般社団法人環境共創イニシアチブの定款を見てみると、見事なまでにプレーンなプロパティが広がっており、経産省の関与を裏付けるような情報はきれいに抹消されています。
とはいえ、こんな所で追求は終わりません。Wayback Machineに掛けてみましょう。現在の定款URLを検索窓に打ち込み、アーカイブ上に保存がないか、照会をかけてみます。
Hrm. 存在せず。なるほど現在アップロードされている定款のログは残っていない様です。しかしながら、そこで追求が終わるものでもありません。
お目当てのファイルが存在しないときに、これを探り当てる方法は「一歩下がって考える」ことです。当該のファイルにリンクを張っていたページ(仮にこれを「親ページ」と言いましょう)まで戻って、アーカイブを検索し、どこかの時点で生きているファイルがないかを探り出していきます。
ファイルへのリンク(URL)が変更となった可能性もありますし、親ページそのものの構成が変わる場合もある。親ページに存在しなければ祖父母のページへ、祖父母のページになければ曾祖父母のページへ。最終的には該当サイトのトップページに至るまで、生きているファイルが存在する可能性は広がっています。
しかし単純に帰納的な検索をしているだけでは、あまりに手間暇がかかり、現実的なリサーチとは言えません。そこで現在の情報にヒントがないか、再び立ち戻って考えてみましょう。
そして現在の定款を見てみると、この定款が「平成28年2月24日」に制定されたことが分かります。しかし、環境共創イニシアチブのHPによれば、同法人が設立されたのは「平成23年2月22日」のことでした。
つまり現在の定款は初期定款(原始定款)ではありません。
すると「平成28年2月24日」より前、現在の定款に改定される前の定款がネット上で生き残っている可能性がございます。すなわち、検索範囲は2011年2月22日から2016年2月24日。これにより、2011年から現在(2020年)に至る各種ログのうち、検索すべき範囲を半分(約5年)にまで絞ることが出来ました。
そして現在の定款の親ページのURLは「https://sii.or.jp/company/koukai/」です。このURLをウェイバックマシンにかけてみると・・・・。
2015年3月から2020年5月まで、26件のcapture(キャプチャー)記録が残っていることが分かりました。これで見るべき範囲は5年60ヶ月からさらに縮減し、2015年3月から2016年2月までのわずか12ヶ月分(8キャプチャー)にまで絞り込むことが出来ました。
あとは順次キャプチャーのページを開いていくのみです。
そして2015年6月7日のキャプチャーにある定款へのリンクを開いてみると・・・。
ビンゴです。東京新聞の述べていた「一三年当時の環境共創の定款」、平成25年(2013年)6月28日の定款が出てきました。
はやる手を抑え、「文書の情報」表示を呼び出し、実行をクリックします。そこに現れるのは・・・。
タイトル:「補助金執行一般社団法人(仮称) 定款(案)」
作成者:経済産業省「情報システム厚生課」
サービスデザイン推進協議会の定款と全く同じプロパティなのでした。
2 遍在する「補助金執行一般社団法人」
平成23年(2011年)設立の環境共創イニシアチブと平成28年(2016年)設立のサービスデザイン推進協議会。奇妙なことに、5年の時を経て設立された一般社団法人のプロパティが完全に一致しています。
しかもプロパティのみならず、条文の構成においても全く同じレイアウトが採用されており、ほとんどの条文は文言や句読点の位置まで一言一句、全く同じです。違うのは、昨今話題の公告(貸借対照表などの公告)に関する規定(第4条)や目的規定(第2条)くらいなものでした。
これは一体どういうことでしょうか?
奇しくもヒントを与えてくれたのは、経済産業省その人でした。
国会における論戦の火蓋が切られた5月22日の文部科学委員会(衆議院)の会議録を引用しましょう。質問者は川内博史 文科委員(立憲民主党)。答弁者(政府参考人)は経済産業省 中小企業庁の奈須野太 事業環境部長です。
※経済産業省中小企業庁 奈須野 事業環境部長(衆議院インターネット審議中継より引用)
ここで奈須野部長は川内議員の質問に対し、いささか不思議な答弁をしています。該当部分をスクリーンショットでお示しした上で、全文を引用いたしましょう。
「お答え申し上げます。私ども、経済産業省でございますので、業界団体とか企業コンソーシアムを形成しようとしている民間企業などから、その方法について、技術的な助言とか、あるいは情報提供を求めることは通常ございます。
本件でそのような経緯があったかどうかはちょっと私ども承知していないんですけれども、一般に、先方から、他の団体の定款の例を下さいとか、あるいはひな形を下さいということはございまして、その一環で提供したものが利用され、あるいは再利用される。これは、一旦役所から出ると転々流通してしまいますので、再利用はとめられませんので、そういう可能性はあるんじゃないかと思っておりまして、このこと自体は特段問題だと思っていません。
なお、文書のプロパティーでございますけれども、当時のシステムの設定上そうなっているということでございまして、当該文書が情報システム厚生課において作成されたということを示すものではございません。」
なるほど、経済産業省は各種民間団体・民間企業から助言を求められることがあり(第一段落)、その過程として役所の文書として定款の例やひな形を民間に示すことがある(第二段落)。とはいえ「情報システム厚生課」の名前は経済産業省の「当時のシステムの設定上」表示されていただけであって、実際に当該文書(今回の定款)を情報システム厚生課が作ったとは言えない(第三段落)という訳です。
つまり、ある時点(当時)において経済産業省が定款のひな形を出したことを自白しており、その作成者が「情報システム厚生課」では無いにせよ、「システムの設定上」のもとにあった経済産業省の誰かであることは認めてしまっているわけです。
そして、その「ある時点(当時)がいつなのか」については、経産大臣自らがお話になっていました。令和2年6月2日の梶山経済産業大臣による定例記者会見の内容を引用しましょう。
プロパティについて質問された梶山大臣はこう答えています。
「設立時のプロパティというのは、経産省はもう変わっているのです。以前に使っていたプロパティであることには間違いないのです。それが設立の3年前か、4年前ぐらい、ちょっと正式な数値は、期日は言えませんけれども、そういうことで3、4年前のプロパティだった」
サービスデザイン推進協議会の設立は平成28年(2016年)5月。その3、4年前というと、ちょうど平成25年(2013年)ころ。環境共創イニシアチブの定款改定時期です。
そもそも環境共創イニシアチブの設立は平成23年(2011年)でした。大臣の仰るプロパティ設定の変更時期を最大限さかのぼった「4年前」=平成24年(2012年)説を取るとしても、経産省の言う「ひな形を・・・提供した」時期から外れることはなく、バッチリ該当しています。
ただ調べてみると、この大臣説明は実際には虚偽説明でした。サービスデザイン推進協議会の設立が平成28年5月16日であったところ・・・。
国会図書館のWARPアーカイブ内に保存された平成28年6月9日付の文書のプロパティではやはり「情報システム厚生課」の名前が登場しています。平成29年11月29日付けの文書に至っては経済産業省の公式HP(meti.go.jp)において、サービスデザイン推進協議会の設立以後もプロパティ「情報システム厚生課」を用いていることが公開されており、いつでも確認することが可能です。
こんなちょっと調べれば分かるような嘘をつくあたり、かつて圧倒的な中間層の厚み(一億総中流)を実現し、世界に冠たる経済大国(ジャパン・アズ・ナンバーワン)を築き上げた「Mighty MITI(偉大なる通産省)」の絶望的な劣化を感じるところですが、ともかく経産省側の証言を全面的に信用したとしても、今回の定款が経産省発のものであることは明らかな訳です。
彼らの唯一の逃げ筋としては、奈須野部長の発言にもあった「転々流通」、サービスデザイン推進協議会の業務執行理事 平川健司氏が6月8日の記者会見で述べていた「ネットで拾った」など、デジタルファイルの流通性に着目してその流路を曖昧にする方法、言うなれば「木を隠すなら森の中」戦法ですが、いい加減、いたちごっこをするのも面倒です。逃げ道を塞いでしまいましょう。
ここで用いるのは第一弾の記事と同様、法人登記簿です。
3 「定款」は語り、「登記簿」も語る
サービスデザイン推進協議会の初期定款が明らかにした設立当初の役員(理事及び監事)は以下の5名でした。
代表理事:赤池学(株式会社ユニバーサルデザイン総合研究所)
理事:浅野和夫(トランス・コスモス株式会社)
理事:有村明(株式会社パソナ)
理事:平川健司(株式会社電通)
監事:古椀裕章(株式会社みずほ銀行)
赤池氏は平成30年に退任し、「これね 私はすみません 飾りです」などの数々の発言を残して令和2年6月8日に退任したばかりの笠原英一氏へと代表理事の座が引き継がれる訳ですが、注目したいのは平成30年ではなく、サービスデザイン推進協議会の設立当時。平成28年当時の理事・監事の構成です。
登記情報閲覧サービスを利用して、環境共創イニシアチブの平成28年当時のメンバーを確認し、サービスデザイン推進協議会の平成28年当時のメンバーと見比べてみましょう。
一般社団法人環境共創イニシアチブ
代表理事:赤池学(平成28年6月29日重任)
「重任」とは現職の人物が任期継続となった場合に付される表記です。このことから、平成28年6月29日より前の時点においても、赤池氏が代表理事であったことが分かります。また代表理事については個人住所が登記されるのですが、さすがにそれを公開することは望ましくないため、モザイクを付しております。
理事:浅野和夫(平成28年6月29日重任)
トランスコスモスの浅野氏はサービスデザイン推進協議会、環境共創イニシアチブともに、平成28年から現在に至るまで、現職の理事です。6月8日にはサービスデザイン推進協議会の共同代表理事に就任しました。業務執行理事の平川氏と並ぶキーマンと申せましょう。こちらも重複。
監事:古椀裕章(平成27年6月26日就任 平成30年3月31日辞任)
古椀氏は平成30年に辞任されている様ですが、サービスデザイン推進協議会の設立当時(平成28年5月)という観点でみれば、現職の監事です。そして、サービスデザイン推進協議会の登記情報と見比べてみると、同時期(平成30年の第2四半期)に同一人物へと監事の座を譲っているのでした。その同一人物とは、河野優加氏(同じくみずほ銀行出身)です。
5人中3人が重複し、しかも同一の職位にある。その地位を譲り渡す人間まで、両法人ともに同一です。
ところで電通とパソナはどこへ行ったのでしょうか?
その存否を考える上で重要な情報は、社団のオーナーである社員企業や社員団体です。
親切なことに、環境共創イニシアチブは現在の社員企業・団体の一覧を公式HP上で公開してくれており、それはこの様な具合でした。
電通、トランスコスモスにみずほ銀行。持続化給付金事業をめぐる再々々々委託で話題となった大日本印刷株式会社(DNP)も名を連ねています。やぁ皆さん、お揃いで!
一方で、人材派遣の業界からはパソナの代わりに株式会社アヴァンティスタッフ(アヴァンティ)とパーソルプロセス&テクノロジー株式会社(パーソル)が名を連ねており、理事・監事にパソナ出身者がいない訳が分かりました。
圧巻は電通グループの存在です。実にグループ4社が社員企業(構成団体)となっており、社員数で言えば、オーナー企業群の中でも圧倒的な割合を占めています。
そして、その内の3社は現在のサービスデザイン推進協議会の社員(オーナー企業)でもあるのでした。6月4日になってサービスデザイン推進協議会は初めて社員・会員の内訳を公開した(上記リンク)のですが、あら、大日本印刷さんもいつの間にやら社員になっていたのですね・・・。
これを元に再び平成28年の登記簿を見直すと・・・。やはり電通出身者の名前があるのでした。
理事:仙北屋亨(平成28年6月29日重任 平成31年4月22日辞任)
仙北屋氏のお名前でググっていただければ一目瞭然ですが、氏は現在の電通ワークス代表取締役社長です。
そして、電通ワークスは今回の持続化給付金委託事業における再委託先の一つなのでありました。これは果たして偶然なのでしょうか。
サービスデザイン推進協議会の設立時理事・監事(全五名)のうち一社(パソナ)は元々いないため除外するとして、残りの四社(四名)について言えば全員重複。出身企業で見た場合の的中率は100%です。
平成28年の設立当時、サービスデザイン推進協議会の役員の過半数は、環境共創イニシアチブの役員に就任していた。しかも両団体の定款はレイアウトまで全く同じく、彼らの真の名前は定款によれば、いずれも「補助金執行一般社団法人」です。
そして彼らは設立以来数年間、経済産業省の補助金事業ばかりを受託している。それは他ならぬ経済産業省が公開している法人情報サービスgBizINFOからも明らかです。外形的な名前がどうあろうとも、彼らの実態は文字通りの「補助金執行一般社団法人」なのでありました。
右:サービスデザイン推進協議会/左:環境共創イニシアチブ
ところで、ここで気になるのは、そのタイトルです。「執行」とは行政用語であり、一般的に受託側(民間)が使う用語ではありません。すなわち、このひな形は「タイトルまで含めて行政側が作出したひな形」であることが強く推認されます。
なるほど、奈須野部長の発言の通り、民間団体に定款ひな形を渡すことそのものは問題ありません(そもそも、経済産業省は社団財団法に関する専門的な所管を有するわけでもないのに、なぜ定款のひな形を提供するの…というツッコミどころはありますが)。
しかし、それが「補助金執行一般社団法人の定款ひな形」であればどうでしょう。補助金執行の委託事業者を先に決めておいて、その特定企業群に「補助金執行一般社団法人の定款ひな形」を渡し、補助金の受け皿となる「補助金執行一般社団法人」を作らせる。そして、公募段階においては競争入札をうたい、(価格以外のステータスによって落札者を左右できる)総合評価方式の穴をつく形で、実質的な随意契約を実現する。そして再委託の波の中で、国費はどこかへ消えて行く。
両者に共通する(括弧の位置まで一言一句同じの)タイトルの存在は、このひな形が、上記の様な脱法的行為を行う上での「秘伝のタレ」的な機能を果たしていることを、如実に連想させます。
官製談合防止法はその第2条第5項において、法律上禁止される「入札談合等関与行為」を定めておりますが、それは以下の様なものです。
そして同条第5項第2号は「入札談合等関与行為」として下記のものを明示しています。「契約の相手方となるべき者をあらかじめ指名すること その他特定の者を契約の相手方となるべき者として希望する旨の意向をあらかじめ教示し、又は示唆すること」。
上記の定款提供行為は、これにピッタリと該当する明瞭な国家犯罪なのでありました。
4 「サービスデザイン推進協議会問題」の今後
今回の「環境共創イニシアチブ」の定款発覚で見えてきたものは、サービスデザイン推進協議会の問題、持続化給付金の事業をめぐる問題がこの一件に留まるものではなく、あくまでも氷山の一角に過ぎないという現実でした。
複数個存在する「補助金執行一般社団法人」。そして「ひな形」という経済産業省側の言動。これらを総合すれば、二度あることは三度あると考えて差し支えないでしょう。第二・第三の「サービスデザイン推進協議会問題」は、ほぼ確実に起こり得ることなのです。
サービスデザイン推進協議会の問題を受けて、6月8日、経済産業省は中間検査の実施と今後の公共調達の見直し検討を含めた有識者会議の設置を表明。しかし、問題がここまで根深いことが判明した以上、膿を出しきらねば抜本的な解決は図れません。
もちろん、関係者は今後とも「偶然です!」「定款は拾いました!」「経済産業省様は関係ありません!」との強弁を繰り返すことでしょうから、自浄作用にはあまり期待できません。すると、行うべきは外的な圧力です。
可能性として考えられるのは検察による強制捜査。本件が明瞭な国家犯罪であることを合理的な疑いを入れないレベルにまで捜査し、立証し尽くせるのは彼らを於いて他にはありません。その導線となるべき「高度の蓋然性」の証明は、5月22日以降の国会質疑、5月27日以降のメディア報道によって十分に為されつつあるものと認識しています。
もう一方で考えられるのは、国会における継続的な追求と検証です。今回の問題がここまで明らかになったのは、国会における質疑の効力が大でした。現在、6月17日をもって閉会が予定されている第201回国会(常会)ですが、これが終わったとしても憲法第53条に規定のある臨時会が残っています。
臨時会は「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求」があれば召集可能ですから、仮に与党の賛同が得られなかった場合でも、立憲民主党・国民民主党をはじめとした野党各派が手を携えれば十分に実現可能な数字です。もちろん、臨時会の招集時期の決定権は内閣の影響下にあり、会期そのものも両議院一致の議決を要する(与党の意向に左右される)ため、そこまで長期間は開会できないでしょうが、「立法府として行政評価と行政監視を継続して行う」という姿勢を示す意味では、たとえ会期一日になったとしても意義を有するものと申せましょう。
準司法府と立法府。それぞれの意地に期待したい所です。
5 「補助金執行一般社団法人」はなぜ生まれたか
経済産業省OBの言動などを見ておりますと、おそらくこの問題の始まりは小泉改革(平成13年〜平成18年)にあったと考えることができます。"聖域なき構造改革"の名のもとに、郵政民営化のほか、国家公務員の定員数が純減され、マンパワーは「5年間で5%以上純減」を目標に大幅な削減が続きました。
この純減の嵐は平成21年の政権交代によって終わりを迎え、以降10年、国の行政機関の定員数は約30万人のラインで保たれています。しかし嵐の始まりから、それが収まるまでの間に10%超の定員が失われました。
こうした中で従前の行政機能を維持しようとした官庁が「補助金執行一般社団法人」を構想し、実行に移した。実際、朝日新聞が「経産省の民間委託」問題と題して配信している記事に出てくる経産省幹部の証言を見ると、そういった事情が垣間見えます。
そう考えると経産省の動機には一定の理解や同情ができるのですが、しかし、それが特定企業群との癒着や利益誘導に繋がったり、官製談合に当たるならば、話は別です。
「小さな政府」の導入に当たり、民力の活用は支持したとしても、そのような癒着や官製談合を支持した覚えはありません。
どうしても、その行政機能を維持するために癒着や官製談合が「必要悪」だと言うならば、本当にその行政機能が必要か否か、他の不要不急な行政機能を停止させて人員を回すことは出来ないか、一旦、本質論に立ち戻って議論を行う必要がございます。
どうしてもその行政機能が必要で、今後とも維持する必要があるならば、壊れた蛇口の様に公金を垂れ流す「委託事業」の形ではなく、再び公務員を増やす「大きな政府」に回帰することを考えなければなりません。一方で必要が無いならば「小さな政府」の本質を遵守して、必要のない行政機能を順次停止させねばなりません。そして、そのどちらでも無いならば、行政内部で行う事業も行政外部で行う事業も、それぞれに共通した管理運用が出来る様に、基盤づくりをしなければなりません。具体的には、全府省共通の法的拘束力を持ったルールの導入が考えられます。
共同通信の報道「事業の再委託、4省は上限5割 契約適正化で独自ルール」が明らかにした様に、現状のルールは法的拘束力を有さず、各府省が独自に策定・運用しています。少なくなった30万人の定員で、各府省がてんでバラバラな動きをしていては纏まるものも纏まらないのです。
今回の問題は、どの様に行政があるべきか、どの様に行政が運用されるべきか、日本という国のグランドデザインをもう一度熟考する、一つの機会にも思われるのでした。
そして、第二弾の記事で用いておりました行政事業レビューシートは、この問題を考える上で大いに役に立つ情報です。持続化給付金事業の再委託率が97%にも及ぶことが判明したのも、このシートあってのことでした。
6 行政事業レビューで見る「環境共創イニシアチブ」
せっかくですので環境共創イニシアチブ自体の実態も見ておきましょう。
政府法人情報基盤「gBizINFO」で環境共創イニシアチブに関する過去の委託実績を調べてみると、最近こそ環境省から計160億円ほどの事業の委託を受けていますが、やはり経済産業省およびその外局たる資源エネルギー庁からの委託が圧倒的です。
とりわけ2014年度から2015年度の実績は圧巻で、10件全てが経済産業省からの受託であり、2年間の受託総額は2,068億円に及んでいます。
第二弾の記事で論じておりました通り、gBizINFOの情報には誤登載や重複があり、また定額補助金の事業は受託側が総取り出来る訳ではありませんから、2,068億円の全額がどこかへ行ったという訳ではありませんが、それにしても大した金額です。
そして最も金額の大きい「平成26年度地域工場・中小企業等省エネルギー設備導入促進事業費補助金(定額補助金:交付額929.5億円)」の行政事業レビューシートを見てみると、「人件費、旅費等」を使途として34億4900万円が支出されています。委託費や外注費こそなく、サービスデザイン推進協議会とは異なる様に思えるものの・・・。
事務費(人件費、旅費等)の額34億4900万円を、採択件数で割った時、その異常性に気がつきます。
採択件数(交付事業件数)は3,716件。これに総額885億円が交付されていますから、一件あたりの補助金交付実績は平均2382万円です。この採択に掛かった全体の事務費は34億4900万円ですので、一件あたりの事務費を算出すると・・・。34億4900万円÷3,716件=93万円に及んでいます。事務局は1件あたり約100万円のマージンを得ている訳です。
もちろん採択されずに落とされた応募者や交付後の監査もあるでしょうから、その分も加味しなければなりません。しかし仮に採択率が50%だとしても、応募一件あたりのマージンは約47万円。工場や中小企業を対象とした大規模補助金と言っても、どんな人日を積めばこの額になるのか、非常に高額な手数料が掛かっています。
もっと単純な事業も見てみましょう。
省エネ設備を導入しようとする事業者に対し、資金借り入れの利子を補助する「平成27年度エネルギー使用合理化特定設備等導入促進事業費補助金(定額補助金:23億2600万円)」の行政事業レビューシートではいかがでしょうか。
343件分の利子を補給する事務費として出捐された金額は2800万円。
一件あたりの事務費は、2800万円÷343件=8万1633円。サービスデザイン推進協議会のIT導入補助金の事務費は1件あたり6万円超であり、それでも十分な高額でしたが、環境共創イニシアチブの事業では1件あたり8万円を超えており、比較的単純な事業でさえ、べらぼうなマージンが掛かっていることが分かります。
つまり環境共創イニシアチブの事業では、「人件費、旅費等」なる項目の比重が、その処理件数に比して異様な大きさとなっているのです。
発注者である経産省はこれらの事業に関する精算時の資料を持っているはずです。仮に「平成〇〇年度〜〜事業の精算に関する一切の資料」といった形で情報公開請求をかければ、十中八九、ありえないほど高額の人日単価か、あるいは法人内における下請け孫請けまがいのピラミッド型の事務費発生構造を(黒塗りでない限り)見出すことが出来るものでしょう。
サービスデザイン推進協議会の様に事務費の「使途・費目」をみれば資金の流出が一目瞭然というものもあれば、環境共創イニシアチブの様に一見では分からず、事業件数との対比で見て初めて異様な実態に気づくものもあります。サービスデザイン推進協議会については持続化給付金事務に当たって「9000人体制」を称しているものの、その末端の月給は手取り15万円程度と推定されることから、再委託だけではなく、人件費における中抜き構造をも掛け合わせている懸念があります。
ともあれ、様々な形で資金のブラックボックス化が図られており、不透明な実態ばかりが際立つ「補助金執行一般社団法人」群の事業なのでした。
環境共創イニシアチブについて言えば、2013年のBEMSアグリゲータ事件(復興予算を復興目的外に流用したことが発覚した事件。経産省が「既に執行済みで国庫返還不能」と公称していた額のうち、約7割に当たる225億円がプールされていた事が発覚した)の当事者であった訳ですから、この時点で膿を出す機会はあったのですが、残念ながら未全に終わりました。
予算を執行済みと称してプールする方法は、古くは裏金づくり、近くは各省手持ちの特別会計(経済産業省系で巨大なものといえば、年間総額約2兆円におよぶエネルギー対策特別会計)における"霞が関埋蔵金"づくりに用いられてきましたが、東日本大震災における復興予算でも、そんなことをしてしまうのか・・・と当時、心底呆れたものでした。
そして、今回の疫病禍では更にずさんな形での資金の流れが指摘され、国会における議論の対象となっています。3,000億円に及ぶ事務費が予定されていた「Go To キャンペーン」については、環境共創イニシアチブが公募前にヒアリングを受けていたことが判明し、またサービスデザイン推進協議会の問題もあって仕切り直しとなりました。時を追うごとにひどくなる官民の癒着。あまりにも不均衡な現状を、いい加減に清算すべき時かも知れません。
7 消された「定款」
ところで、現在の「一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)」の定款URLを見た時、強い既視感(デジャブ)を覚えました。URLの末尾に表記されたPDFの名前が「sii_teikan_h280224_2.pdf」となっているのです。
「_2.pdf」。第一弾の記事を書いた際、他ならぬサービスデザイン推進協議会の定款プロパティが削除・改ざんされた時と同じ現象が起きています。サービスデザイン推進協議会の時は、元々存在したPDF「SDEC_AOI_20161213.pdf」が削除・無効化され、代わりに「SDEC_AOI_20161213_20.pdf」となりました。今回は「_20.pdf」ならぬ「_2.pdf」の登場です。
試みにgoogleで「_2」を外したURL「https://sii.or.jp/company/koukai/file/sii_teikan_h280224.pdf」を検索してみると、あにはからんや、やはり元の定款PDFが存在した痕跡が残っています。グーグルの検索結果に残っているということは、グーグルのWebクローラーがページを収集した時点では、元の定款PDFがあったということ。
メインのリンク先は当然ながら「Not Found」が表示され、元の定款は削除されておりました。しかし、そう簡単には痕跡まで消せません。タイトル横の「▼(逆三角)印」をクリックし、キャッシュをスクロールしていくと、しっかりと定款の痕跡が残っているのでした。
相変わらず仕事が雑というか何というか、本当にデジタルリテラシー(ITリテラシー)をお持ちでないのだな・・・と少し悲しくなる事象でもありました。
そして、その削除時期についても、ある程度絞り込むことが可能です。
ウェブクローラーが定款に付した日にちは「2016/2/24」。削除の日は当然それ以降です。そして、検索結果の2番目に出てくる「2020/5/27」付の@megamouth_blog氏のツイートをみてみると、「_2」の付かない「sii_teikan_h280224.pdf」のURLを挙げて、「別の団体なのにタイトルが「補助金執行一般社団法人(仮称)定款(案)」になっているpdfをたまたま見つけたんだよなあ」と仰っているのでした。
2020年5月27日とは他ならぬ週刊文春による第一弾の記事が出た当日です。2016年から2020年5月27日までは存在した定款が、6月初頭の時点では突如「_2」に差し替えられ、プロパティもまっさらになり、経産省の関与を示すデータが削除されている。サービスデザイン推進協議会と環境共創イニシアチブ、経済産業省との間に関連を見出すな、という方が無理というものでしょう。
経済産業省自身の仕業か、サービスデザイン推進協議会と環境共創イニシアチブの裏側に潜むもの達(両者に共通するのは、電通、トランス・コスモス、みずほ銀行、大日本印刷など)の仕業か。あるいはその両方か。いずれの仕業によるものかは分かりませんが、削除の事実さえ満足にコントロール出来ていないのです。
数百万に及ぶ中小企業・個人事業主の売上その他の枢要な情報を扱わせ、その生命線となる「持続化給付金」の事務処理を行わせる団体として果たして的確なのか。再委託先が持っていると自称する「競争力」なるものの正体も含めて、疑問符が湧くところでした。
ひとまずのまとめ
5月2日に第一弾の記事を書いた時、公開初日の記事PV数は「5」でした。それから5週間が経った、6月13日現在の記事PV数は「502,491」。実に十万倍以上に増えており、第一弾から第三弾までを通算した全体ビュー数は100万PVに近づいています。
たった一人の小さな呟きが、本当に多くの方々のお力をもって、国会における質疑の俎上にのぼり、マスメディアの報道の対象となる様になりました。これは謙遜でも何でもなく実感として抱いている感想なのですが、この「うねり」を生み出したのは記事を読んでくださり、一緒になって考えてくださった、皆様ひとりひとりの力によるものです。
映画「シン・ゴジラ」ではありませんが「この国はまだまだやれる。そう感じるよ」と思う5週間でありました。
これまでの記事でお示ししてきた調査手法は、誰もが確認でき、誰もが用いる事のできる手法です。パソコンさえあれば誰もがイーブンな状態で情報にアクセスでき、事実に基づいて議論を深めることが出来る。そして令和2年(2020年)6月13日、東京新聞はまさにこの手法を用いて、新たな事実を明らかにしてくれました。
マスコミだけではありません。この手段は誰も彼もに開かれています。つまり、誰もが国家の主権者として、ファクトシートを吟味し、一方でこれを監視し、もう一方でこれを評価する、そういった時代が到来しているのです。
今回のサービスデザイン推進協議会をめぐる問題、持続化給付金をめぐる問題がどの様な決着を迎えるかは、まだ予断を許しません。5月の当初に持続化給付金を申請したはずの「初日組・2日組」のうち実に1万件を超える方々が未だ受給できていない事実も発覚し、足元の運用レベルの点でも問題は山積しています。
設立経緯や不透明な資金の流れについても、頬っ被りで解明されないままに終わる可能性は存在しています。しかし、諦める必要はありません。閉じられた箱は何度でも開け直せば良いのです。そして、その道具は既にお手元にあるはずです。インターネットがもたらした時代、21世紀に私達は住んでいます。(了)
追記 マイナポイントの怪
記事を書き終えて、「環境共創イニシアチブ」の名前の検索結果を見ていた際、一つの情報に気が付きました。
2020年9月にスタート予定の「マイナンバーカードを活用した消費活性化と官民共同利用型キャッシュレス決済基盤の構築事業」、通称「マイナポイント事業」の事務局に、一般社団法人環境共創イニシアチブが選定されていたのです。
省エネ、とりわけエネルギー特別会計(エネ特)の委託事業を主に受けてきたはずの環境共創イニシアチブがなぜ突然、マイナンバーポイント!? と思い、現在公開されている定款を見直したのですが、該当する目的規定は存在せず。環境・エネルギー市場に関する言葉が踊るのみで、個人番号カードの「こ」の字も、マイナンバーカードの「マ」の字も出てきません。
てっきり事業への応募(公示時期は令和元年12月6日でした)にあたって、目的規定を変えたのかな…と思って、最新の登記情報を閲覧しましたが、やはり記載なし。
民法は第34条において「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」と定めています。
そして目的外の行為については「範囲外の行為を目的とするものとして無効であると解する」のが最高裁判所の判例(南九州税理士会事件、最判H8.3.19 民集第50巻3号615頁)です。
この「目的」の解釈については、文言のみにとらわれない趣旨解釈が行われるのですが、環境共創イニシアチブの目的規定をどう好意的に捉えたとしても個人番号に関する委託事業が出てくる余地はなく、現状の定款をベースとする限り「環境共創イニシアチブは目的外行為を受託している(違法状態にある)」疑いがあると言うことが出来そうです。
定款の遺漏は、政府の布マスク配布事業の受注者であった「株式会社ユースビオ」でも見られた事象ですが、今回のマイナンバーポイント事業の事業費は、ユースビオの受注額4億円の比ではありません。
事業を所管する総務省の資料を見てみましょう。
令和元年(2019年)12月20日のデジタル・ガバメント閣僚会議に提出された資料の2ページ目によれば、この事業には、令和元年度補正予算で21億円、令和2年度予算で2478億円、締めて2499億円の予算が計上されています。
この内訳については、総務省の補助事業の募集についての公示が明らかにしているのですが、令和元年度補正「マイナポイント事業(準備事業)」も令2年度「マイナポイント事業」も同一の者が行うことを前提としているため、上記の約2500億円がまるごと事務局へと流れ込むことになります。
そして、その2500億円のうち、実際に国民に支給される金額について一つ上のスライドを再度確認すると、マイキーIDを設定した「4,000万人」に対しての「5,000ポイント」。1p=1円とのことですので、4000万×5000=2000億円となります。すると2500億円-2000億円=500億円が事務局の事務費となるわけです。
キャッシュレス推進協議会では316億円。サービスデザイン推進協議会では749億円。事務費の中から、現在判明している事業だけでも、これだけの金額が株式会社電通へと流れ込んだ訳ですが、果たしてこの500億円はどうなるのか。
いつの間にやら、この人達、(サービスデザイン推進協議会の過去の事業でたびたび登場した)経産省 商務・サービスGもマイナポイント事業へと動き出しており、いよいよもって同一の構図への危惧を感じるのでした。
「補助金執行一般社団法人」をめぐる事態は、国会の論戦の足元においても進行していたのです。
総務省におかれては総務省設置法に定められた任務規定(第4条)の通り、各行政機関の業務の実施状況の監視(同条第12号)および官民競争入札及び民間競争入札の実施の監理(同条第5号)を徹底し、適切な管理運用をしてくれると信じていますが、どうか「総務省よ、お前もか・・・」とは言わせないで欲しいと強く思うのでした。  
 
 

 

●給付金事業に群がったトンネル会社「サービスデザイン推進協議会」 6/22
血税中抜疑惑に説明責任果たさぬ政府
中小企業を救うべき持続化給付金事業が電通に喰い物にされていた。国は持続化給付金の事務事業を「サービスデザイン推進協議会」(以下、「協議会」)に769億円で委託し、協議会は電通に749億円で再委託した。だが「協議会」は電通や竹中平蔵が会長を務めるパソナが設立した法人であり、電通の自作自演で「幽霊企業」「トンネル会社」が血税を中抜きしたという批判が絶えない。
果たしてこの「トンネル会社」はいかなるものなのか? 『月刊日本7月号』では、「糾弾1 電通と結託する安倍政権」として糾弾特集を掲載。今回は本特集より、立憲民主党衆議院議員であり本問題を追及する大串博志氏へのインタビューを紹介しよう。
トンネル会社・「サービスデザイン推進協議会」
── 大串さんは、持続化給付金の事務事業をめぐる取引について追及しています。
大串博志氏(以下、大串):持続化給付金は、新型コロナで影響を受け、非常に厳しい状況にある事業者の皆さんに対して支援を行うという、第一次補正予算の中でも最も重要な施策です。この給付金を必要としている方々に確実に届けなければなりません。
ところが、受け付けを開始した5月1日と2日に申請された計約28万7000件のうち、約3・5%の1万件超が未払いになっています。給付金を必要としている方々は、固唾を飲んで支給を持っているのです。
しかし、持続化給付金の事務事業は、実態のわからない「サービスデザイン推進協議会」(以下、「協議会」)に769億円で発注され、「協議会」から749億円で電通に再委託されていました。問題は、この「協議会」に実態が見えないことです。我々は、6月1日に「協議会」の事務所を訪れましたが、部屋の中には誰もおらず、真っ暗でした。電話を鳴らしても、ベルを押しても誰も出てきませんでした。
ところが、「協議会」は6月9日にマスコミに対して事務所で仕事を行なっている様子をわざわざ公開しました。しかし翌10日に我々が訪問してみると、また閉まっていて、事務所には誰もいませんでした。マスコミへの公開は、「アリバイ作り」だったとしか見えません。そもそも、このような実態のない組織に経産省が委託すること自体が大きな問題です。
また、入札にも問題があります。経産省は4月8日に入札を公示しましたが、公示前の3月30日、4月2日と4月3日に経産省は「協議会」と電通を呼んでヒアリングをしていたのです。出来レースだったのではないかという疑いが生じます。
今回の入札には、「協議会」とともにコンサルティング会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーが参加していましたが、入札調書では、「協議会」は「C」ランクであるのに、デロイトは「A」ランクでした。もちろんランクだけでは決められませんが、経産省は「協議会」に発注した理由を説明する責任があります。
── 「協議会」は過去にも経産省から様々な事業を受注しています。
大串:2016年の設立以来、「協議会」は経産省から「おもてなし規格認証」、「サービス等生産性向上IT導入支援事業」など14事業、1500億円以上を受注しています。それらの多くが、持続化給付金事業と同じように、そのまま電通に再委託されています。電通のトンネル会社だという疑いは濃厚です。「協議会」の取引が適切かどうかを、過去にさかのぼってきちんと調査すべきです。
「権力に近い人が優遇される流れ」という疑い
── 「協議会」から再委託された電通は、さらに子会社に再々委託しています。
大串:電通ライブ595・7億円、電通テック7・8億円、電通国際情報サービス19・8億円、電通デジタル16・3億円、電通東日本5・5億円です。さらに電通ライブからパソナ、大日本印刷、トランスコスモスに再々々委託されています。これでは、誰がどの事業に対して、どのような責任を負うか不明確になってしまいます。問題が起こっても責任の所在が不明確では是正もできません。私は6月9日の衆議院予算委員会で梶山経産大臣に、このような運営の実態を把握しているかと問い質しましたが、大臣がきちんと状況を把握しているとは思われませんでした。国民の生き死にに関わる給付金業務を監督する立場として、あまりにも無責任です。
── 電通にも多額の委託費が落ちています。
大串:「協議会」から電通に再委託された749億円から、電通の子会社に再々委託された額を引くと、電通に104億円入っていることになります。電通にはこの額が適切なのかどうかを説明する責任があります。
── なぜわざわざ電通がトンネル会社を通して受注したのかが疑問です。
大串:「協議会」は796億円の委託費のうち97%を電通に再委託したことになります。経産省の示している委託契約のひな型には「業務委託の全部を第三者に委託してはならない」と書かれていますが、97%ということはほぼ全部だということです。電通の榑谷典洋副社長は6月8日の会見で「多額の公金を会社のバランスシートに反映させることは経理部門が不適切だと判断した」と述べていますが、そうしたことをやっている会社は他にもあります。株主にきちんと説明すればいいだけの話です。
今回の取引に関しては、不透明な部分が数多くあります。政府がきちんと説明責任を果たさなければ、給付金事業の事業体制が、「権力に近い人が優遇される流れの一環ではないか」という疑惑は払拭されません。  
 
 

 

●「持続化給付金」再委託問題 浮かび上がった4つの論点とは 6/26
新型コロナウイルスの影響で資金繰りに苦しむ中小企業などを政府が支援する「持続化給付金」の再委託問題は、事業を国から受注した一般社団法人サービスデザイン推進協議会(サ協)の不透明な実体が明らかになったことが発端だった。サ協はその事業を電通にほぼ丸投げ。身内への外注による予算の無駄遣いや、入札過程の不公平さなどの疑念は深まるばかりだ。一連の再委託問題から浮かび上がった主要な4つの論点を整理した。(桐山純平、森本智之、皆川剛、大島宏一郎)
[ 持続化給付金事業の再委託 経済産業省中小企業庁は4月30日、769億円で持続化給付金の委託先として一般社団法人サービスデザイン推進協議会(サ協)を決定。5月1日から給付金の受け付けを開始した。業務の流れは当初公表されていなかったが、実際はサ協が委託費の97%に当たる749億円で電通に再委託していた。電通からは、パソナやトランスコスモスなどサ協の設立に関与した企業に業務の外注が繰り返されていた。事業に関係している企業は判明しているだけで63社に上る。業務運営の不透明さや予算の無駄の疑念が晴れず、経産省はサ協に対して業務執行体制をチェックする異例の「中間検査」を行うと表明している。 ]
論点1 給付金事業を受注した法人の実体の乏しさ
問題の発端は、サ協が769億円で持続化給付金の事業を受注したことだった。当初、経済産業省はサ協から先の業務の再委託先や外注先を公表していなかった。 5月中旬にサ協の本部を訪れると、インターホンに応答はなく「お問い合わせは(給付金の)コールセンターまで」の張り紙が貼ってあるだけだった。電話番号は公表されておらず、ホームページの情報もほとんどない。サ協は法律で義務づけられている決算開示も怠っており、国の事業を担う実体の乏しさが鮮明となった。
サ協は委託費の97%に当たる749億円で、法人の設立主体である電通に事業をほぼ丸ごと再委託していた。委託費と再委託費の差額20億円がサ協に流れ、野党から「中抜き」批判が上がった。
この20億円について、サ協は給付金の振込手数料が大半と説明。電通やパソナなど設立に関与した企業からの出向者である職員21人の人件費などに1億8000万円かかるとする。国の事業に詳しい公認会計士は「一般論として、人件費に見合った勤務実績があるのか疑わしい事例も多い」と指摘する。
法人の設立には経産省が関与していたのではないかという疑惑も浮かぶ。法人の設立時の定款をインターネットで調べると、ファイルの作成者名に経産省部局が記されていた。タイトルも「補助金執行一般社団法人(仮称)定款(案)」となっていた。「執行」は役所の立場からの表現だ。
経産省は疑惑を否定するが、設立からわずか4年で14事業計1576億円の事業を受託するなどサ協が同省と密接であることは間違いない。
論点2 何層にも重ねられた外注
「トンネル法人」との批判も上がるサ協を抜けると現れるのが電通だ。電通も再委託額の86%に当たる645億円で、給付実務の全てを子会社5社に外注する。うち4社もまた外注を重ねる。特に、電通ライブは申請受け付け業務の99・8%をパソナや大日本印刷などに発注し、何のために名を連ねているのかという疑問は拭えない。 現時点でサ協や電通は4次下請け以降の詳細を明らかにしておらず、給付金業務に全部で何社が関わっているのか分からない。経産省は「末端の企業まで国が知る必要はない」(担当課長)として把握に消極的だったが、野党議員の再三の求めを受け、6月23日に「把握したい」と修正。少なくとも63社が関わっていると国会で説明した。
業務に対するチェックが隅々まで行き届いているとは言いがたい。
実際、給付金では申請から1カ月たっても支給されない事例が相次いだ。本紙の取材に審査業務に当たる派遣社員は「素人が大半」と証言する。
子会社や身内企業内での外注は、競争がなく費用が下がりにくい。経産省は外注費の高騰を防ぐため、発注先に相見積もりを取るなどのルールを定めている。だが、今回の委託で電通や子会社が費用を抑える手続きを取ったかどうかを調べ、公表することに後ろ向きだ。
論点3 入札が「出来レース」だった疑いも
電通が設立に関与したサ協が給付金事業の委託先に選ばれたことについて、安倍晋三首相は「入札のプロセスを経て落札された」と国会で述べ、適切だったとの認識を示す。だが、4月8日の入札公示前から、経産省がサ協を優遇していたことが判明。入札が「出来レースだ」という疑いが生じている。 入札には、サ協とコンサルティング会社・デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー(デロイト)が参加。経産省は事業の制度設計を目的に、公示前の3月30日から4月3日までにサ協とデロイトにそれぞれ面会した。面会はデロイトが1回で1時間だったのに対して、サ協は3回の計3時間。サ協との協議には、事業の再委託先となった電通も同席していた。
入札公示の2日前には、サ協はすでに給付金のウェブサイト用のアドレスを取得。受託の決定前に準備を着々と進めていた。
公示からわずか5日後の13日に入札は締め切られ、翌14日には経産省はサ協の落札を決めた。入札は価格だけでなく提案内容も審査される「総合評価方式」で行われ、双方はともに200ページ近い提案書を経産省に提出していた。入札制度に詳しい上智大の楠茂樹教授は「わずか1日で提案内容の評価を決めるのは難しい」と指摘し、複数の点で入札の公平さが疑われている。
論点4 経産省と電通の蜜月ぶり
取材を重ねる中で徐々に鮮明になったのは経産省と電通の蜜月ぶりだ。 バブル崩壊後に始まった一連の行政改革で国の公務員の数は減らされ、この20年で6割減の30万人になった。人が減ればこなせる業務量も減る。「官から民へ」の旗印の下、多くの業務で民間委託が進んだ。中でも政策実行の手足となる出先機関の乏しい経産省では民間との分業は必須になった。こうした中で電通は官公庁事業の売り上げを増やしてきた。
経産省によると、電通が本年度までの6年で一般社団法人を通じて経産省から受託した事業は72件ある。このうち59件にのぼるのがサ協より5年早く設立された先輩格の環境共創イニシアチブだ。
経産省や信用調査会社によると、設立は2011年。それまで省エネ関連事業を経産省から受注していた独立行政法人が民主党政権の事業仕分けにより受注を継続できなくなった。組織のスリム化が図られ、受注事業の選別を求められたのだ。
困ったのは経産省。そこで新たな受け皿として電通が設立に動いたのが環境共創だった。「渡りに船だった」と当時を知る省幹部は言う。
別の経産省職員によると当初、環境共創の職員は電通の名刺を使って省内で営業していたという。「そうでなければ無名の社団など誰も相手にしない」と電通と一般社団法人の一体ぶりを証言する。
いまや経産省と電通の関係は強固だ。これまでサ協に事業委託をしてきた担当課長は「難しい事業でもすばらしい実行力でこなしてくれた」と賛辞を惜しまない。持続化給付金問題で批判にさらされる中、環境共創の幹部の1人は取材にこう漏らした。「うちがやめると困るのは国の方だ」  
 
 

 

 
 

 

 
 
 

 

●昔話
●「震災でボロ儲けした電通、大損した博報堂」 2012/8
広告代理店・博報堂(博報堂DYホールディングス)――「広告界のガリバー」の異名を持つ、広告代理店国内トップの電通と双璧をなす存在だ。
連結売上高9783億円(2012年度)、マーケットシェアは約3割(電通に次ぐ2位)で、マスメディアに対して大きな影響力を持っており、「デンパク(電通と博報堂)」は広告代理店の代名詞ともなっているほどだ。一流上場企業をはじめ、政治、メディアにも広く深くネットワークを持つといわれる博報堂について、同社OBにして、著書に『大手広告代理店のすごい舞台裏』(アスペクト)もある本間龍氏に、「リアルな博報堂社内の実態」を語ってもらった。
――電通と博報堂の特徴の違いは、どのあたりにあるのでしょうか?
本間龍氏(以下、本間) わかりやすくいうと、電通はバイタリティにあふれ、ガツガツしている。一方の博報堂はクール。私がいた頃は、電通は会社の名前に誇りを持っているためか、はたまた自己顕示欲が強いせいか、胸にCED(コミュニケーション・エクセレンス・デンツーの頭文字)と書かれた社章をつけている社員が非常に多かった。一方の博報堂は、社章をつけていない方がほとんどです。博報堂がクールなのは、慶應義塾大学などの有名私大出身者が男女とも多いために、裕福な家庭の出身者が多く、給料レベル以上の服や車を持っていて、どことなく余裕のある感じがあるためかもしれません。
――代理店といえばコネ採用が多いといわれ、電通は通称「コネツー」ともいわれていますが、博報堂はどうでしょうか?
本間 広告代理店は何が明日の仕事につながるかわからないと、仕事に関して貪欲な電通は、得意先の子弟はもとより、政治家、スポーツ選手、タレント、作家など、各界の有名人の子弟を大量に入社させています。電通の場合、政治家のボンボンが多く、特に自民党とは関係が深い。このため、自民党の広報宣伝は、ずっと電通が担当しています。一方の博報堂は政治家よりも得意先の子弟が多く、男子の場合、毎年の新卒採用が約100人だとすると、コネは1〜2割です。大卒女子の場合は、20名程度のうち半分程度がコネ。ただし、博報堂の場合は、大得意先社長の子弟などでない限りは、基礎学力の低い者は2次試験までに落とされることがほとんどです。
しかも入ってからも、社内での出世は完全な実力主義で、能力がないと、子弟とはいえ本当にきつい。かといって、成績優秀な実力入社組にとっても、裕福な同僚に生活レベルを合わせる必要があるために、出費がかさむ。接待などでも身銭を切らざるをえないので、サラ金などで無用の借金をしてしまい、身を持ち崩す人もいましたね。一方のコネ入社組は、接待などで身銭を切っても平気ですが。
――接待でいえば、「タクシー券(タク券)」をめぐっても、両社の間で違いがあったとか。
本間 最近、ついになくなったらしいですが、以前の電通は営業フロアにタク券が積まれていて、平社員でもガンガン使えたそうです。片や博報堂は、昔から部長職以上でないと使えませんでした。この差は得意先との接待ではもちろん、合コンでもタク券をばらまけるかどうかで、大きな評価の差になったのです。ただ、合コンの席でも、電通マンは昼間の仕事同様に欲望丸出しでガツガツしていて、女性相手に上から目線で威張るために、評判は悪かった。そのおかげで、そういったことをしない博報堂が紳士的だと評価が上がることはありましたね。
あえて電通が受けなかった事業で、博報堂は大損?
――最近、本間さんは『電通と原発報道』(亜紀書房)という著書も執筆されました。同書によると、原発事故後の広告代理店のビジネスをめぐっても、両社の間では大きな特徴の違いがあるということですが。
本間 7〜8月にかけて全国11カ所で、エネルギー政策の意見聴取会がありました。聴取会で、電力会社の社員が参加して相次いで意見を表明して問題になり、「この運営を請け負っているのは博報堂だ」と報道されましたが、資料を見ると、あの資源エネルギー庁の入札に参加したのは電通と博報堂だけでした。電通の入札価格は1億2000万円、博報堂の入札価格は7480万円で落札しました。この結果を見て驚いたのは、電通と博報堂の入札価格の差です。というのも現在は、両社それぞれの協力会社(ビジネスパートナー)のレベルが上がっていて、内容に差がなければ、入札価格にもほぼ差がなくなってきています。にもかかわらず、今回の入札では、ほぼ5000万円の差になっていたのです。
経験者の目から見れば、全国11カ所で会場を借りて、数百人の応募がきたら、データの作成・分析・報告という面倒な作業が発生します。実際に意見聴取会の参加者を選ぶのは政府ですが、それをサポートする事務的な作業も必要になってくる。直接この業務に関わる社員は2〜3人。1カ所の正味原価500万円で、博報堂のマージンとされる最低15%を上乗せした価格として、1カ所700万円弱は妥当なところです。
一方で、電通の1億2000万円は高めの入札価格ですから、最初から今回の入札は捨てにかかっていたのではないでしょうか。確かに、今回の意見聴取会の仕事は回数が多く煩雑だし、広告代理店にとっては叩かれるだけでなんの得にもならない。そう考えて、電通は高めの価格を設定し、博報堂は愚直にも適正価格で入札して、世の中の批判を浴びてしまった。そこがマジメな博報堂らしいともいえるのですが、これだけ注目を浴びると、社員2〜3人では足らず、部長級、局長級の人間と、その関係するスタッフも含めると、10人以上は関わることになる。単体では完全に赤字でしょう。
――この入札と同日に、エネルギー政策に関わる、もうひとつの入札も行われました。8月に行われた討論型世論調査です。これはスタンフォード大が開発した手法を用いて、討論する前と後ではどのように人々は意見が変わるのか、という分析を行うことで、議論を深めたり、その結果を利用してメディアコントロールする手法です。
本間 討論型世論調査で原発比率を探ろうという試みだったようですが、「感情的」脱原発論者を「現実的」推進論者が説得する手法があるかどうかを探る目的があったのでしょう。非常にマーケ的であり、博報堂らしい仕事です。この入札では、博報堂が5500万円、アサツーディ・ケイが5900万円で入札し、400万円差で博報堂が落札しています。博報堂は意見聴取会と討論型世論調査をセットで落札しようと考えていたのでしょう。
震災ビジネスでも堅実に稼ぐ電通
――一方の電通は、しっかりと原発事故後のビジネスで儲けています。環境省「除染情報プラザ」事業です。環境省との単年度契約で、除染と汚染された災害廃棄物の処理についての広報を、同省が電通に運営委託。このうち、情報収集と専門家派遣を担当するのが「除染情報プラザ」(福島市)ですが、そのスタッフを、電通は人材派遣会社のパソナに委託。14 人のプラザスタッフはすべて派遣社員で、除染・放射能の専門家はゼロだったということが、朝日新聞の取材で明らかになっています。この業務の今年度の契約金は、約15億円です。
本間 電通の利益率は慣例で20%以上ですから、この事業での利益はざっと3億円とみることができます。入札しただけで実働はパソナに丸投げして利益3億なんて、(あくまでも予想ですが)さすが電通、実においしい商売ですよね。それを受けたパソナも派遣社員ばかりで専門家を1人も用意してないんだから、お手軽なものです。朝日新聞が電通・パソナ両社の名前を出したのも、あまりに安易に儲けすぎだと記者が憤慨したからではないでしょうか。
環境省には12年度、除染関連と合わせて30億円以上の予算が計上されていますから、単純に電通がすべて引き受けたとして計算すると、6億円の利益になるわけです。それだけのお金があるのなら、政府は電通に回さずに直接被災者のために使ってほしいものです。
本間氏によると、原発事故前の原発PR広告制作だけでなく、全国の原発所在地にある「電力(原子力)PR館」の施工から運営までも、広告代理店の重要な仕事だったという。原発事故後、東京電力を中心とした原発PRの広告が減った分、原発事故後のビジネスで儲けるという動きが電通、博報堂ともに始まったといえそうだ。 
 
 

 



2020/6