新型コロナ「日本の奇跡」 

新型コロナ

家に閉じ込められる
ちょっとだけ 散歩 陽に当たる
 


 
 
●BCG仮説
「日本の奇跡」 奇跡ではありません
さすが科学者
新型コロナウイルスとBCG 因果関係ありやなしや
 
 
●新型コロナウイルス感染症に対する BCG ワクチンの効果に関する見解 4/3
日本ワクチン学会
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の広がりが、国内外で医学的、社会的に大きな問題となっています。国内でも感染者数と共に死亡者数が日増しに増加している状況ですが、一部の国と比較しますと、現時点では爆発的ではなく、緩やかなカーブを描いているように思われます。この原因は、これまでの政府および各地方自治体による様々な施策が功を奏していることと、国民一人一人の自制の効いた行動と心掛けによるところが大であるとまずは考えられます。
一方で、国内外より、幼少期の BCG ワクチンの接種の有無が各国の患者数や重症者数の多寡に関与しているのではないかという仮説が提唱されています。国外では、医療従事者における BCG ワクチン接種の有効性を確認するための臨床研究も準備されているということです。
これを受けて、一般に新型コロナウイルス感染症による重症化のリスクが高く、BCGワクチンの接種歴がない世代の方々より、接種を希望する声が医療機関に届き始めているようです。 こうした動きに対しまして、日本ワクチン学会の見解として、留意すべきポイントを下記のようにまとめました。
〇 「新型コロナウイルスによる感染症に対して BCG ワクチンが有効ではないか」という仮説は、いまだその真偽が科学的に確認されたものではなく、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もされない。
〇 BCG ワクチン接種の効能・効果は「結核予防」であり、新型コロナウイルス感染症の発症および重症化の予防を目的とはしていない。また、主たる対象は乳幼児であり、高齢者への接種に関わる知見は十分とは言えない。
〇 本来の適応と対象に合致しない接種が増大する結果、定期接種としての乳児へのBCG ワクチンの安定供給が影響を受ける事態は避けなければならない。
新型コロナウイルス感染症に対しては、現時点までに蓄積された科学的知見をもとにした対応がなされていくことが第一義であると考えます。これと並行して、治療薬の開発、予防のためのワクチンの開発が早期に進むよう、本学会としても果たすべき役割を認識するところであります。 
 
 
●新型コロナとBCGワクチン 4/4
皆様、こんにちは。年末年始と新型コロナウイルスの影響からずいぶん更新を怠っておりました。新型コロナウイルスの現状に対して泌尿器科専門医の立場から発信するべきなのかなと思い今回書かせて頂かことにしました。
最近患者様からよく、新型コロナウイルスとBCGワクチンの関係についてどう思うか?や、当クリニックでワクチン摂取ができるのか?と聞かれます。(当クリニックでは残念ですがBCGワクチン接種は行っておりません)
なんのことだろうと思って先日ネットや文献を調べてみました。そうしたら現在BCGと新型コロナウイルスの関係についてネットではわりと騒ぎになっているようです。
なぜBCGと新型コロナの関係が騒がれるようになったか、その経緯をまとめます。
1 新型コロナウイルスによる日本人の致死率、感染率の圧倒的な低さ
イタリアやスペインは100万人に対して200人以上死亡しているのに対して日本人は100万人に対して0.5人です。(4月13日の時点では日本人の死亡者数100人弱に対して世界全体での新型コロナウイルスによる死者数は10万人を超えてます。日本の人口は世界全体の1/50程度に対して死者数は世界全体の1/1000です。全く感染が広まっていない国もあるのに対して、日本はかなり感染が広まっております。それにも関わらず20倍近くの差が出ているのです。)
日本人の感染者数に対しての致死率は4月13日時点で1.6%ですが、皆さんご存知の通り症状あるけど検査してないという方は無数に存在しております。何故なら保健所や相談センターに電話すると、軽症なら家で過ごしてくださいと言われるからです。結局その方は感染者としてはカウントされません。なので1.6%という致死率はかなり高く見積もられています。4月13日時点では緊急事態宣言も出されておりますが。それでもなお日本人の危機感の薄さも皆さんご存知の通りだと思います。しかし実際にお亡くなりになられている方は諸外国に比べて圧倒的に少ないのが現状です。2週間という長い潜伏期間の影響もあり、もしかしたらこれからお亡くなりになる方が異常に増加するのかもしれません。これからイタリアやスペインやアメリカのようになるのかもしれません。しかし、私はそのような経過をたどらないのではないかと思っています。何故ならそれらの国は日本と同時期に新型コロナウイルスが入ってきているのです。それにも関わらずこの死亡者数の差が出ているのには何か理由があるはずです。
2 仮説 BCGワクチンを接種しているから日本人はコロナに強いのではないか。
ここ数日、上記のようなことが言われております。BCGワクチン接種は国ごとによって判断が違います。スペインやイタリアやアメリカはBCGワクチンを義務化しておりません。日本では1949年よりBCGワクチンの接種を義務化してます。そしてスペインの隣国であるポルトガルは死亡者数が200人との報告であり、スペインの1/60程度です。ポルトガルはBCGを推奨している国です。
だからBCG接種したことが新型コロナウイルスに有効なのかと言うのはかなり短絡的で医学的ではないと思われます。私が有効なのではないかと納得出来たその理由を下記に述べます。
3 BCGワクチンとは
BCGは皆さんご存知のように結核予防に使われるワクチンです。ヒトに対する毒性のない牛から作られた結核菌を打つことで結核に対する抗体を体内に作るのです。つまり毒性の無い結核菌で免疫、白血球を刺激して本物の結核菌に対して対抗出来るような強靭な身体ににするんです。それを日本では1歳までに行ってます。しかし、それが、何故新型コロナウイルスと関係あると言われているのでしょうか。
4 膀胱癌の再発予防にもBCGが使われる
早期の膀胱癌の経尿道的な内視鏡手術の後に再発予防としてBCGワクチンを膀胱内に注入します。私自身、この意味が泌尿器科研修医時代には訳がわかりませんでした。何故結核予防のBCGが膀胱癌の再発に使われるのだろうと。
この答えはBCGによる免疫の賦活化・活性化でした。つまり、BCGワクチンによって膀胱内が毒性の無い結核菌にさらされる⇨膀胱内の免疫・白血球が刺激される⇨癌の再発予防につながる、ということです。癌と免疫がイマイチ繋がらないかもしれませんが、初期の癌細胞は白血球が食べて消してくれるのです。健常な方にも癌細胞は出来ます。ですが白血球が食べてしまっているため癌細胞が増えて腫瘍・固まりにならないのです。
もちろん膀胱癌に対してのBCG膀胱内注入療法は保険適応であり、再発予防に効果があるとしっかり結果が出ております。私が手術を現役でしていた頃も、BCGワクチン注入を選択した方とそうでないと方との再発率の差は明らかでした。
5 BCGワクチンが新型コロナウイルスに対しての抵抗力をくれたのではないか。
結核菌に対するワクチンで白血球・免疫が活性化され癌の再発予防に効果がある、という事実と、BCGワクチンの接種を義務化している国とそうでないと国で重症化率、致死率の圧倒的な違いが生まれていることから、上記のような仮説が生まれました。これはあくまで仮説です。ですが、膀胱癌治療をしてきた泌尿器科医の私からするとかなりしっくりくる仮説であり信じたい仮説です。
実際オーストラリアではBCGワクチンと新型コロナワクチンに対しての研究を開始しているようです。
この仮説をスタッフや患者様にお話すると、少し安心した、なんか元気がでた、確かにそうだよね〜、とおっしゃられます。ネガティブなことを考えがちな昨今、少しでもポジティブな方向に皆様の思考が向いたらなと思い、この記事を書いてみました。
この仮説は個人的な見解です。
BCGワクチンを大人に対して打つことを推奨しているわけではございません。基本的にBCGワクチンは生後1歳までに打つことを推奨されております。
この仮説があるから外出しても良いということには決してなりません。緊急事態宣言も出されております。今後も引き続き新型コロナウイルスに対する感染対策を行っていきましょう。当院も新型コロナウイルスに対しての徹底した感染予防対策を行なっております。
当院では大人も子供もBCGワクチン接種を行っておりません。当院は消化器科専門医、泌尿器科専門医による診療を行なっているクリニックです。 
 
 
●コロナにBCGは「有効」なのか? 4/13
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。国によって死亡率に差があることから、BCGワクチンの接種が「有効」ではないかという仮説が広まり、一部の国で臨床研究が始まった。BCGはコロナとどう関係するのか。東北大副学長東北大学副学長で、東北大学大学院医学系研究科の大隅典子教授に、緊急寄稿してもらった。
100万人当たりの死者が多いスペイン、イタリア
 新型コロナの死亡率に国別で差がある理由はなぜか
4月7日に緊急事態宣言が発せられた。日本はあと1カ月で新型コロナウイルスに打ち勝つことができるのだろうか? こんな時期だからこそ落ち着いて考えてみたい。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界の感染者数は178万人を越え、死者数は10万人を超えた。現在、感染者数がもっとも多いのは米国で53万0006人、次いでスペインが16万6019人、イタリアが15万2271人と続く。
一方、重症化して死に至る人の数でみると、米国が2万人を超え第1位に。次いでイタリアで1万9468人、スペインが1万6972人、フランスが1万3832人となっている。
感染者数は新型コロナウイルス陽性者なので、検査数によって大きく異なる可能性がある。また、死亡者数も国の人口と比較する必要がある。そこで問題となるのが死亡率だ。
Our World in Data というサイトのCOVID-19情報(図1参照、4月11日時点)によれば、人口100万人に対する死者数の割合の上位3国はスペイン(338.8)、イタリア(311.7)、フランス(202.1)。米国では56.7、日本は0.69となっている。
当初、COVID-19の蔓延は中国、韓国に限局した感染症と捉えられていた。しかし3月以降、欧州や米国での感染爆発の方がはるかに凄まじい。従って死亡率も時系列に沿って見ていく必要がある。
コロナの死者数と結核感染率やBCGワクチン接種率は負の相関?
札幌医科大学フロンティア医学研究所の有志によって、世界の国々の報告をもとに人口100万人あたりの感染者数や死亡者数を時系列にグラフ化したサイトが立ち上げられている。このインタラクティブなグラフから主要な国を抽出したものが下の図2だ。
死亡者が初めて報告された時期や、最新の人口100万人あたりの死亡者数は異なるものの、グラフの“傾き”の大きい国と緩やかな国があることが一見して分かる。
傾きが急であることは、COVID-19感染によって死亡者が急増しやすい国であることを意味する。やはり、イタリア、スペイン、フランス等の欧州諸国や米国の傾きはきつく、中国や韓国、そして日本(茶色)の傾きは緩い。
なぜ国によってこのような違いがあるのだろうか。
そもそも、普通の風邪にせよ、季節性のインフルエンザの場合にせよ、周りで感染症が流行っていても発症しない人がいる。COVID-19の場合も、重症化する感染者は2割程度とみられ、特に高齢者や基礎疾患のある人のリスクが高いと思われた(最近では若い感染者も増加しつつある)。
従って、感染者数や死亡者数を国別で比較した場合には、人口構成比で高齢化率の高い国の方がCOVID-19に対して脆弱になることは容易に想像できる。そして日本は代表的な超高齢化国だ。
ただ日本では、挨拶のときの接触が少なく、風邪をひいたときや花粉症の予防などを目的としてマスク着用が一般的である。このような生活習慣などに加え、それぞれの国の医療制度やその充実度などの要因も、国による死亡率推移の差としてあるだろう。
また生物学的な要因としては、いわゆる“人種”の差を生み出すゲノム情報の差異が考えられる。移民の問題も加味されると状況はさらに複雑だ。
そうこうする間に、国ごとのCOVID-19による死亡率の違いは、古典的な感染症である「結核」の発症頻度や、関連したBCG接種のポリシーによる差が関係するのではないか、という話題がSNS上で盛り上がってきた。これは各種のデータがウェブ上に公開され、誰でも見られる時代となったからだ。
WHOのデータによれば、結核が撲滅された欧米諸国では人口10万人あたりの結核感染者数は25人未満だ。その一方で、欧米のCOVID-19の死亡者は急増中だ。
これに対し、中国や韓国では25人以上、100人未満。モンゴルでは結核の感染者数は人口10万人あたり300人以上報告されているが、なんとCOVID-19の死亡者はまだいない。
では、日本はどうかというと、戦前の死因の第1位は結核だった。「肺病」とも呼ばれた一般的な疾患で、死に至ることも多かった。だが現在では人口10万人あたりの結核感染者数は25人未満。にもかかわらず、COVID-19の死者数の割合は非常に少ないのだ。
ここでさらに「BCG接種」という要因が登場する。
BCGとは、結核予防のためのワクチンで、結核菌を弱毒化したものだ。日本では、かつてはツベルクリン反応(ツ反)検査で陰性の(つまり、まだ結核菌に感染していないと考えられる)人にのみ接種されていたが、現在は生後1歳未満の赤ちゃんを対象に接種が義務付けられている。あの「9本針のスタンプ注射」の接種率は98%に上る。
欧州諸国はほとんどの国でBCG接種のプログラムがない。ドイツと国境を接するポーランドではBCG接種が為されているが、図2のカーブの傾きはポーランドでは他の欧州諸国より立ち上がりが若干緩いように見える。
まだ査読が済んだ段階ではないが、「プレプリント」としてmedRxivというサイトに公開されている分析結果では、BCGの接種プログラムのない高所得国のCOVID-19による死亡者の割合は、高齢化率を加味してもBCG接種が義務付けられている中〜高所得国より高いとされている。
これは単なる偶然の一致なのだろうか?
BCGには結核予防以外の効果もある? 自然免疫を“訓練”する可能性
ほぼ100年の歴史があるBCG接種。実は疫学研究者は、このワクチン接種が結核予防以外の効果があるらしいことに気づいていた。例えば、BCG接種によって小児の結核以外の理由、特に呼吸器感染症による死亡率も減少するという報告が、発展途上国だけでなく多数ある。
また、約3000人を60年間フォローアップして得られた米国のデータでは、幼児期のBCG接種が成人期以降の肺がんの発生リスクを下げる効果があると示されている。さらに興味深いことに、BCG接種は膀胱がんの進行を抑えるという報告もあり、多数の臨床研究が進められている。
いったいどのようにして、結核に対するBCGワクチンが、それ以外の疾患に対しても効果を発揮する「オフターゲット効果」を示すのだろう?
そもそも細菌やウイルスが体内に侵入した場合に、生体はそれを排除する仕組みを備えている。そのやり方には2つある。
まず、「獲得免疫」とは、血液の中を循環しているT細胞やB細胞といった免疫系の精鋭部隊の細胞たちが、病原体が侵入したことを“記憶”。次回の進入時には、記憶したターゲットを狙い撃ちする「抗体」を素早く産生することによって病原体を排除する優れたシステムだ。ただし、このシステムが病原体ではなく花粉に対して過剰に働くと、花粉症のようなアレルギー反応を引き起こしてしまう。
一方、生体には“あらかじめ備わっている”免疫システムもある。外来の病原体が侵入すると、マクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞といった免疫系の別の細胞たちが働き、ただちに「炎症性サイトカイン」と呼ばれる物質を分泌して対応する。
BCG接種は、どうもこの「自然免疫」を刺激するらしいことが分かってきた。2012年にオランダのグループが行った研究では、BCGワクチンは、インターフェロンγの産生を促すだけでなく、ヒトの免疫系細胞の1種である「単球」(マクロファージや樹状細胞に分化する細胞)を活性化し、種々のサイトカインを分泌させることがわかった。
この研究グループは、BCGのこのような効果を「訓練免疫(trained immunity)」という新たな概念として提唱している。つまり、自然免疫が働きやすくなるように“訓練された”状態になるというのだ。
さらに彼らは、BCG接種を受けた健常人血液に含まれる単球の“遺伝子スイッチ”の状態(専門用語では「エピゲノム」の状態)を全ゲノムレベルで調査。一回のBCG接種でサイトカインや様々な増殖因子を分泌しやすくなる方向に、スイッチの状態が変わっていることを18年に報告した。
つまり、「訓練免疫」とは、いわば「自然免疫」がパワーアップした状態と考えられる。BCG接種により、未知の病原体に対する抵抗力が高まる可能性があるのだ。
欧州で医療従事者のBCG接種の臨床研究開始
 接種率98%の日本とは状況が異なる
このような背景から、BCG接種プログラムを持たないドイツ、オランダ、オーストラリアでは、医療従事者の新型コロナウイルス感染・重症化予防のためにBCG接種を行う臨床研究を開始した。
この情報はワイドショーでも取り上げられたために、成人に対して誤って皮下注射され、発熱やじんましん、血尿などの健康被害が届いたと聞くが、これは絶対禁止である。BCGは子どもの数に合わせて生産されており、必要な子どもに接種できなくなっては元も子もない。前述のように、日本の事情は欧州諸国とまったく事情が異なることは注意したい。
実は日本では03〜04年にかけて、老人の肺炎予防を目的に、BCG接種の効果についての臨床研究が実施されている。当時、東北大学の老年内科のグループは、高齢者介護施設に入所中で日常生活動作の低下した155名の高齢者を対象に、まずツ反検査を実施して陽性群と陰性群に分け、陰性群の約半数にBCG接種を試みた。
BCG接種4週間後に再びツ反の判定を行い、その後2年間にわたり肺炎の発症率を追跡調査したのだ。その結果、ツ反が陽転しなかった群では42%に新たな肺炎が発症したが、陽転した群や、もともとツ反陽性群では、それぞれ15%、もしくは13%しか肺炎を発症しなかった。すなわち、BCG接種は免疫反応性の低下した寝たきり高齢者において、肺炎発症の予防効果を有することが明らかにされたのである。
ただし、この場合の肺炎の原因は新型コロナウイルスではないので、BCG接種が実際にCOVID-19感染症予防に功を奏するかどうかは、欧州のBCG接種の結果を待たなければならない。
BCG接種は、有効なワクチンや新薬が開発されるまでの”繋ぎ”の対応ではあるが、もし欧州でBCG接種の効果が確かめられれば、今後、BCG接種プログラムを持たない国において、COVID-19感染症予防のために大人に対してBCG接種を行うという可能性はあるだろう。
一方、日本では現在、BCGの接種率は98%となっているため、引き続き、COVID-19感染症予防の原則は“物理的隔離”と“化学的除去”となる。前者は、いわゆる「3密」を避けることの徹底であり、後者は界面活性剤やアルコールを用いた手洗いや手指衛生である。
マスクの効果については、厳密な科学的エビデンスは少ないが、無症状の感染者が呼気等に含まれるエアロゾルを介してウイルスを撒き散らすことを防いだり、ウイルスに触ってしまった手指で鼻や口を触ることを避けたりすることで、結果として上気道へのウイルス新入を防ぐことになるだろう。
また、基本的な健康維持として提唱される快眠・快食、適度な運動は自然免疫を保つ上で極めて重要である。ただし、自然免疫を強化することを謳った便乗商法には気をつけなければならない。 
 
 
●日本の新型コロナ死者数の少なさは、BCG接種が関係? 4/13
BCGワクチンが新型コロナウイルス感染症の予防に役立つかもしれないという仮説があります。BCGワクチンは他のワクチンと違って接種方法が独特で、「ハンコ注射」と言えばわかってもらえると思います。普通の注射針ではなく、9つの針がついた「管針」でハンコを押すように接種します。日本では定期接種なので乳児期に全員が接種の対象になっています。腕にBCGの跡が残っている方もいらっしゃるでしょう。
BCGワクチンの本来の目的は結核の予防で、とくに小児期の重篤な結核に対して有効性が高いとされます。ただ、麻疹や風疹のワクチンとは違って、BCGワクチンが定期接種になっていない国も多くあります。結核に感染している人が少ない地域ではBCGワクチンの必要性が小さいからです。世界的にみて、日本は結核の中等度の蔓延(まんえん)国です。
結核の予防以外にも、BCGワクチンが効く(かもしれない)病気はいろいろあります。有名なところでは膀胱(ぼうこう)がんに対してBCGの注入療法が行われています。あるいは、花粉症などのアレルギー疾患や結核以外の感染症にも予防的に働くという研究もあります。歴史の長いワクチンで知見が積み重なっていることに加え、生きた菌を使用しており、精製されたワクチンと比べて免疫系の反応が複雑であることが、こうしたさまざまな仮説が生み出される原因だと思います。
さて、新型コロナウイルス感染症とBCGワクチンとの関係です。世界各国の新型コロナの感染の広がりのスピードは、国によって大きく違います。アメリカ合衆国、イタリア、スペインでは非常に早く感染が広がり、死亡者も多い一方で、日本や韓国、シンガポールでは比較的感染者数も死亡者数も少ない傾向にあります。なぜか? その理由の一つがBCGワクチンではないか、という仮説が提唱されたのです。
すでに述べたように、BCGワクチンの必要性はその地域の結核の流行の程度によります。アメリカ合衆国やイタリアではBCGワクチンが定期接種だったことはなく、スペインでは1981年に一律の接種が中止されています。これらの国では新型コロナウイルス感染症の勢いが強く、BCGワクチンが定期接種されている日本や韓国、シンガポールでは勢いが弱いです。BCGワクチン接種が免疫系になんらかの影響を与え、新型コロナウイルスに対する防御力を強くしている可能性があります。
きわめて興味深い仮説ですが、これらの国々ではBCGワクチン接種以外にもさまざまな要因が異なります。人種・民族の遺伝的な差異、気候、感染防御目的のマスク着用の習慣、握手やハグといったあいさつの習慣などなど。流行しているウイルスのタイプが異なっているかもしれません。BCGワクチン接種以外の要因が似ている国があれば参考になりますが、そうした国にスペインとポルトガルがあります。ポルトガルでは現在でもBCGワクチン接種を行っていて、スペインと比較すると新型コロナの流行は穏やかです。これはBCG仮説を支持する証拠です。
一方でBCG仮説に否定的な証拠もあります。フランスは2007年という比較的最近までBCGワクチン接種を行ってきました。しかし、ご承知の通り流行は激しいです。ヨーロッパで最初に流行の中心地となった北イタリアに地理的に近いがゆえにフランスの流行も激しいのかもしれませんが、それを言うならスペインとポルトガルの違いも地理的な理由かもしれません。BCG仮説を支持する証拠も、否定的な証拠もあるのです。
決着をつける手段の一つは、BCGを接種していない人を多く集めて、ランダムにBCG接種群と対照群に振り分け、新型コロナにどれぐらい感染するのか、重症化はどれぐらいなのかを調べることです。ランダムに振り分けることでBCG接種以外の要因を均等にして、BCG接種の効果だけを評価できます。こうしたランダム化比較試験はすでにオランダやオーストラリアなどで計画されています。
現時点では、新型コロナが怖いからとBCGワクチンを接種しに行くことは、おすすめしません。まだ研究段階で効果があるかははっきりしません。ワクチン接種はネットを通じて行うわけにいかないので、外出する必要もあります。BCGワクチンを接種しに出かけるぐらいなら家にいましょう。それに、急にはワクチンの増産はできません。ワクチンが不足して本来必要な乳児に接種できないなんてことになると本末転倒です。 
 
 
●BCGと新型コロナの関係 4/14
最近、「BCGワクチンを接種すると、新型コロナウイルスの感染リスクが下がる」といった話題を目にします。「赤ちゃんのとき打ったから大丈夫?」「今からでも打ったほうがいいの?」など、疑問や不安を持つ人も多いでしょう。小児科など医療機関への問い合わせも増えているといいます。BCGワクチンと新型コロナの相関を示す仮説について、順天堂大学医学部の小林弘幸教授(総合診療科)は「研究はまだ始まったばかり。冷静に、慎重に行動してください」とコメントしています。
BCGと新型コロナの関係性とは
   「はんこ注射」がコロナに効く?
現在、国内外において、「BCG ワクチンの接種の有無が、新型コロナウイルスの患者数や重症者数と関係があるのではないか」という仮説が散見されています。新型コロナウイルスのワクチンや治療薬がない状況で、こうした情報が「一筋の光明」に見えてもしかたありません。医療機関には「BCGワクチンを受けたい」という希望者の声が届き始めているといいます。しかし、ほんとうにBCGワクチンを接種すれば、新型コロナウイルスに感染せずに済むのでしょうか。
   BCGとは?
結核を予防するワクチンの通称です。ウシの結核菌の毒性を弱めて作られたワクチンで、フランス語の ‘カルメットとゲランの菌’、Bacille de Calmette et Guérin の頭文字をとってBCGと呼ばれます。接種すると9本の針が並んだ注射器の痕が長年残ることから「はんこ注射」として知られています。日本では敗戦直後から国民への接種が進められ、現在は1歳になるまでに接種することとされています。実際に自分が接種したかどうかは、上腕部の接種跡や母子手帳で確認できます。
   BCG接種をしていない国もある
2011年に学術論文として発表されたBCG接種に関する世界地図があります。地図は3色に分かれていて、黄色=現在、BCGの予防接種プログラムが実施されている国 / 紫=以前は誰にでもBCG予防接種を推奨していたが、現在は推奨されていない国 / オレンジ=BCGワクチンの普遍的な接種プログラムがない国 となっています。
例えば、スペインとポルトガルは隣り合っていますが、スペインはBCGの接種プログラムがなく、ポルトガルは実施されています。そして、新型コロナウイルスの感染者数は、4月8日時点で、スペイン148,220 人、ポルトガル13,141人です(数字はJohns Hopkins UniversityのCOVID-19マップに基づく)。スペインの人口は約4,693万人、ポルトガルは1,027万人なので、人口比でもスペインで感染者が多いことになります。こうしたことから、「BCGを接種していれば、新型コロナウイルスの感染リスクが抑えられる」という説が出てきたのでしょう。
ツベルクリンとは
   BCGの前にツベルクリンを受けなくてもいいの?
2005年4月から、ツベルクリン反応検査は廃止になりました。現在は、1歳までにBCGを直接接種することになっています。ツベルクリン反応検査とは、結核菌を培養・殺菌・濾過した液を注射し、結核の感染の有無を調べるものです。結核に感染したことのある人は、注射した箇所が発赤したり、硬くなってしこりになったりします。日本では、発赤の長径が0〜10mm未満ならば陰性、10mm以上ならば陽性と判定し、陰性者にのみBCG接種を行っていました。
   ツベルクリンはなぜ廃止になったの?
まず、乳幼児のツベルクリン反応検査では、結核患者の発見率がきわめて低かったことが挙げられます。また、ツベルクリン反応で擬陽性の場合、再度ツベルクリン反応検査や精密検査を受けたり、予防のための薬を飲んだりすることになり、負担が小さくありませんでした。さらに、擬陽性のためにBCG接種の機会を逸するケースもあったため、2005年に廃止となったのです。
海外で研究が始まっているが……
   4ヵ国で臨床試験を開始
世界で特に権威がある学術雑誌の一つ『サイエンス』では、3月23日のオンライン版で、「BCG予防接種が新型コロナウイルスに対する効果について検討するための臨床試験が、オランダ、オーストラリア、イギリス、ドイツの4ヵ国で準備されている」と報じました。このうち、オランダのラドバウド大学のミハイ・ネテア教授のチームは、すでにオランダ国内の8つの病院で医療従事者を対象に臨床研究を始めていて、対象者は1500人に上る予定とのこと。ワクチンを接種したグループと接種していないグループに分け、感染の割合などを分析することにしています。また、オーストラリアの臨床試験は、メルボルンにある小児医療研究所「マードック・チルドレンズ・リサーチ・インスティチュート」が発表したものです。オーストラリア各地の医療従事者4000人を対象に行われるといいます。(4月7日のAFP通信より)
   研究者も接種を推奨していない
しかしながら、実際にBCG予防接種が新型コロナウイルスに有効かどうかは、臨床試験の結果を待たなければなりません。ちなみにオランダのラドバウド大学の研究は、最初の結果が出るまでには3〜6ヵ月かかるということです。さらに、ラドバウド大学のミハイ・ネテア教授は、「現時点で、新型コロナウイルスに対する効果を目的に、一般の人がBCGを接種する理由は何もない。研究結果が出るのを待つべきだ」と指摘しています。つまり、現時点ではBCGワクチンの有効性は全く示されておらず、研究者も接種を推奨していないのです。
   「冷静な行動を」
BCGワクチンと、新型コロナウイルスとの相関について、順天堂大学医学部の小林弘幸教授(総合診療科)は、以下のように解説しています。「厚生労働省や日本ワクチン学会、日本小児科学会が広報しているように、BCGワクチンは乳児のためのものです。成人の皆さんが 、副反応のリスクを負ってまで 接種することに意味はないでしょう。乳児にBCGが行き渡らなくなくなるような事態は、絶対に避けなければなりません。そもそも BCGワクチンの接種が、新型コロナウイルスの感染リスクを下げるというエビデンスはなく、海外での研究がやっと始まったばかりです。私たちにできることは、今までどおりしっかり手洗いをすること、不要不急の外出を避けること、規則正しい生活をすることです。冷静に、慎重に行動してください」(小林弘幸教授)
大人がBCG接種をしてはいけない理由
   乳幼児のワクチンが足りなくなる
BCGワクチンは、日本では1歳までに接種することになっています。乳幼児に接種することで、結核の発症を52〜74%程度、重篤な髄膜炎や全身性の結核に関しては64〜78%程度予防できると報告されています。しかしながら、成人がBCGを打った場合の効果は証明されていないため、推奨されていません。BCGは、乳幼児にこそ価値があるのです。BCGワクチンは、毎年国内で生まれる乳児の分しか製造していません。さらに、ワクチンを作るためには8カ月ほどかかり、すぐには増産できません。想定外の利用が相次ぐと、必要な乳児にワクチンが届かなくなってしまいます。
   副反応の危険性も
高齢者は新型コロナウイルスに感染して重症化することが多く、BCGに関心を持つ人が多いと思います。しかし、高齢者へのBCG接種は、思わぬ副反応を引き起こす可能性があり危険です。BCGワクチンの禁忌の1つ、「結核の既往のある者」に当てはまる可能性が高いためです。BCGワクチンの義務化前に生まれた人は、接種を受けていないケースも多いでしょう。しかし、日本における結核は「国民病」といわれたほどで、感染者や、感染しても発症しなかった人が少なくないと考えられるのです。また一般に、高齢者は免疫力が低下しています。BCGワクチンは、毒性を弱めているとはいえ、生ワクチンを体内に入れる予防法です。体に負担がかからないとはいい切れません。さらに、成人がBCGワクチンを接種すると、皮膚にケロイドを生じやすくなることがわかっています。これらのことから、成人がBCGワクチンを接種しても効果は見込めず、副反応の危険性が高いことがわかります。
まとめ
BCGワクチンの予防接種と新型コロナウイルスとの関係は、まだ研究が始まったばかりです。感染リスクを下げるエビデンスはありません。それどころか、副反応のリスクのほうが高いといってもいいでしょう。また、厚生労働省(Twitter)や日本ワクチン学会(PDF)、日本小児科学会(PDF)は「ワクチンには余りがなく、このままだと乳児の接種が制限されるおそれがある」として、慎重な行動を呼びかけています。これまでどおり、丁寧な手洗い・3密(密閉空間、密集場所、密接場面)を避ける・十分な栄養と睡眠を心がけ、感染を防ぎましょう。 
 
 
●BCGワクチンは新型コロナウイルスに効果があるのか? 臨床試験への期待 4/27
新型コロナウイルスに対して結核ワクチンのBCGが有望かもしれないと話題になっている。1920年代に開発されたこのワクチンの接種に新型コロナウイルス予防との間で強い相関関係がある可能性が、複数の査読前論文で示されているのだ。すでにオーストラリアとオランダの研究者が医療従事者を対象に臨床試験を始めており、その進捗に世界が注目している。だが、楽観視すべきではないと専門家は言う。
新型コロナウイルスの感染者は世界で約300万人、死者は20万人を超えた。世界は感染拡大を抑えようと必死に闘っている。新型コロナウイルス感染症「COVID-19」に対するワクチンの実用化には1年以上かかり、いま臨床試験が進められている治療薬の効果が実証されるまで数カ月はかかる。
科学者が競って新型コロナウイルスの治療法を探し求めているなか、古くからある結核ワクチンのBCGが有望かもしれないと話題になっている。BCGワクチンは、細菌性の肺感染症である結核を予防する目的で1920年代に開発された安価で安全なワクチンだ。
開発者の名前を冠した菌「Bacille Calmette-Guerin(カルメット-ゲラン桿菌)」を利用したワクチンで、結核への感染率が低下して集団予防接種が不要になった2005年まで、英国の学校ではすべての子どもたちが接種していた。現在、BCGは発展途上国を中心に結核がまだ蔓延している国で主に使用されており、毎年1億3,000万人以上の新生児がBCGの接種を受けている[編註:日本ではBCGワクチンによる結核予防接種が1949年に法制化されている]。
免疫システムの能力を高める可能性
この100年前に開発されたBCGワクチンが、最近になって再び脚光を浴びている。医学分野のプレプリントサーヴィス「medRxiv」で多くの研究が発表され、メディアが注目した結果だ。複数の査読前論文では、BCGワクチン接種と新型コロナウイルス予防との間の強い相関関係が示されている。
過去10年間に収集された証拠から、BCGワクチンの集団接種が「オフターゲット効果」をもたらし、特に幼児期に結核を引き起こすヒト型結核菌以外の病原体と戦う免疫システムの能力を高める可能性があることがわかっている。11年に発表された西アフリカのギニアビサウ共和国で実施されたランダム化比較試験の報告では、BCGを接種した新生児は、接種していない新生児よりもほかの呼吸器感染症で死亡する可能性が40パーセント低いことが示された。BCGの予防効果は時間とともに弱まるが、初期の膀胱がんの治療で免疫療法として使用されている。
問題は、この小児期ワクチンが新型コロナウイルス感染症に対しても効果があるか否かだ。特に重症化しやすい大人や高齢者に対する効果が問題になる。
結核と新型コロナウイルス感染症は大きく異なる疾患だ。結核は細菌によって引き起こされ、新型コロナウイルス感染症はウイルスによって引き起こされる。3月28日にプレプリントが発表されたある研究では、新生児がBCGワクチンを定期接種する国は、国策としてのBCGワクチン接種を中止した国やBCGワクチン接種を実施したことのない国と比較して、報告されている新型コロナウイルスの感染者数と死者数が少ないことが指摘されている。
例えば、乳児のBCGワクチン接種を義務づけているポルトガルでは、確認された新型コロナウイルス感染者のうち死亡例は3.2パーセントである。これに対して隣国のスペインでは、10.5パーセントが死亡している。
過去のデータ頼みの本質的な限界
しかし、BCGワクチンが新型コロナウイルスによる危機を解決する特効薬だと、誰もが確信しているわけではない。BCGワクチン接種との相関を指摘する新たな研究の多くが分析の根拠としているのは、約10年前に結核研究者のマドゥカー・パイが同僚とともに作成した、予防接種の政策と実施に関するオンラインデータベース「BCG World Atlas」だ。
カナダのマギル大学国際結核センターで所長を務めるパイは、次のように語る。「報道が過熱して、あらゆる分野の研究者、データサイエンティスト、および人工知能(AI)専門家が2次データを精査して、BCGワクチンの予防接種政策と新型コロナウイルス感染症発生率の関係を見出そうとしています」
さらに、このような生態学的研究では、取得した各国の集計データからそこに住む個人について推論するため、本質的に限界があるとパイは説明する。国家レヴェルで見られる相関関係は、若者が圧倒的に多い低所得国に住んでいる裕福な大人に必ずしも当てはまるとは限らない。
世界保健機関(WHO)が4月12日に発表した科学的な概要説明でも、BCGに関する新しい研究に対して注意を促している。そして、「このような生態学的研究では、国内の人口構成や疾病負担の違い、新型コロナウイルス感染症の検査率、パンデミックの段階の差異などの多くの交絡因子からバイアスが起きやすい」と指摘している。実際に一連の分析がオンライン投稿されて以来、新生児にBCGワクチンの定期接種が実施されている多くの低所得国では、大規模な新型コロナウイルスのアウトブレイク(集団感染)が起きている。
始まった臨床試験
相関関係は因果関係を意味するものではない。BCGと新型コロナウイルス感染症の因果関係を実際に検証する唯一の方法は、臨床試験の実施だ。オーストラリアとオランダの研究者は、感染予防を個人防護具(PPE)だけに頼っている状況の医療従事者を対象に、BCGワクチン接種の効果を臨床試験している。BCGワクチンが自然免疫システムを改善し、結果的に成人の新型コロナウイルス感染率の低下または疾患の重症度の軽減が起こるかどうかを調査しているのだ。
オーストラリアでこの臨床試験を実施しているマードック児童研究所とメルボルン大学の感染症臨床医および研究者であるナイジェル・カーティスは、次のように説明する。「何年も前に接種したBCGに何らかの予防効果があるのかという疑問と、いまBCGを接種すると自然免疫の訓練強化に役立つかという疑問はまったく異なるものです。後者がわたしたちが関心をもっていることであり、今後数カ月で効果が現れる可能性があります」
この臨床試験への参加を志願する病院職員は、季節性インフルエンザと結核の予防接種を受けるグループとインフルエンザの予防接種のみを受けるグループにランダムに振り分けられる。参加者の約40パーセントが小児期にBCGワクチンを接種していることから、2回目の接種で免疫システムが強化されるかどうかをこの研究で実証できる可能性がある。BCGワクチン接種では小さな傷痕が残り、接種グループが一目瞭然になることから、この臨床試験ではプラセボワクチンは使用されない。
楽観視すべきではない
進行中の厳密な臨床試験を、結核研究者ののパイは歓迎している。個人レヴェルのデータが得られ、交絡因子を減らすからだ。
しかし、結果が発表されるまで、どの国もBCGが新型コロナウイルス感染症の予防に役立つかもしれないと楽観視すべきではない。そして子どもを結核から守るため、そして膀胱がん患者のために必要なワクチンを買いだめすべきではないと、パイは強調する。
「BCGに効果があるなら、(新型コロナウイルス感染症に対する)ワクチンが手に入るまでの応急処置になるかもしれません。でも繰り返しになりますが、過度の期待を寄せる前に、まずは臨床試験のデータを待ちましょう」と、パイは語っている。 
 
 
●新型コロナ BCGワクチンに効果? 4/28
新型コロナウイルスの予防ワクチンや治療薬の開発が待ち望まれている中、いま注目されているワクチンがある。「BCGワクチン」だ。結核の予防が目的のBCGワクチンは、日本では赤ちゃんを対象に定期接種が行われ、「はんこ注射」とも呼ばれている。このBCGワクチンが、新型コロナウイルスの感染予防や重症化を防ぐ効果と関係があるのではないかという指摘が海外の研究者からあがり、 一部の国では新型コロナウイルスとの関係を調べる臨床試験も始まっている。BCGワクチンを巡る動きを取材した。
各国の専門家が注目
新型コロナウイルスとBCGワクチンの関係。それを見ていく上で、興味深い研究資料がある。カナダのマギル大学が2017年に公開した世界各国のBCGワクチンの接種状況だ。日本や韓国をはじめとしたアジアの国や、ロシア、中南米などが含まれている水色の地域は、一定の世代を対象にしたBCGワクチンの接種を実施している。これに対し、赤紫色の地域では、過去にそうした広範な接種を行っていたが、現在は実施していない。この中には、新型コロナウイルスによる死者が増え、深刻な状況のイギリスやフランスが含まれている。そして、さらに注目すべきは、緑色の地域だ。ここは、これまでにBCGワクチンの広範な接種を行ったことがない。この中には、新型コロナウイルスによる死者が世界で1番多いアメリカと2番目に多いイタリアが含まれているのだ。(数字はジョンズ・ホプキンス大学まとめ 4月28日12時現在)。
免疫学の世界的な権威で、ドイツのマックスブランク研究所のシュテファン・カオフマン教授は、この研究資料から見えてくる新型コロナウイルスとBCGワクチンの関係に注目している。「アメリカ、イタリアなどはBCGワクチン接種を行っていません。そこに直接的な関係があるとは言えませんが、BCGワクチンの効果を調べる価値はあると思います」。カオフマン教授によると、BCGワクチンは近年の研究で、ヒトがもともと持っている免疫を刺激し、一定程度、高めることがわかってきたという。
こうした中、オランダやオーストラリアでは、新型コロナウイルスとBCGワクチンの関係を調べる臨床試験が始まっている。このうちオランダのラドバウド大学では、1,500人の医療従事者の協力を得て、BCGを接種したグループと接種していないグループで、新型コロナウイルスへの感染の割合などを分析することにしている。ラドバウド大学のミハイ・ネテア教授は次のように答え、臨床試験の結果に期待を寄せている。
「世界全体を見ると、 BCGワクチン接種を行う国は、死者の数が少ないと言えるかもしれません。効果があるのかどうかは臨床試験ではっきりするでしょう」(ラドバウド大学 ミハイ・ネテア教授)。
WHOは冷静な対応を呼びかけ
BCGワクチンへの関心が高まる一方で、WHO=世界保健機関や日本国内の学会は、冷静な対応を呼びかけている。BCGワクチンに効果があるかないか、科学的な実証はまだされていないからだ。WHOは今月(4月)12日、ウェブサイトの中で次のように見解を示した。「根拠がない今の段階では、予防のためにBCGワクチンを接種することはすすめない」(WHOウェブサイトより)。
臨床試験を進めているラドバウド大学のネテア教授も接種を希望する人の急増がワクチン不足を引き起こしかねないと懸念を示している。「希望者へのBCGワクチン接種を急げば、結核を予防すべき人たちのワクチンが不足してしまう。まずは臨床試験の結果を待つべきだ」(ラドバウド大学 ミハイ・ネテア教授)。
そして、日本の小児科医の水野泰孝医師は次のように訴える。
「なかには、どんなにお金を払ってでもいいからBCGワクチン接種をしたいという方がいるが、お金の問題ではない。感染症予防は自分だけが予防できればよいわけではない。いまでも結核という非常に重要な感染症があるんです。」
実は、新型コロナウイルスの感染拡大で多くの人が不安になる中、日本でも大人でBCGワクチンの接種を希望する人が増えている。しかし、日本でBCGワクチンを製造しているのは1社。しかもBCGは生まれてくる乳児の数に合わせて日本国内で製造されていて、急に接種する人が増えると、乳児への安定供給が滞るおそれがあるのだ。
どうなる?ワクチンと治療薬の開発
では、新型コロナウイルスのワクチンの開発はどうなるのか?WHOのテドロス事務局長は先月(3月)末の記者会見で、ワクチンの開発には、少なくとも1年から1年半かかると述べているが、WHOの最新の報告によると、世界では現在、合わせて70のワクチンの開発が進められている。そして、このうち3つが、ヒトで安全性や効果を確かめる臨床試験の段階に入っている。
臨床試験は3段階あるが、このうち第2段階まで進んでいるのが、中国で開発されているワクチンだ。これは、もともとエボラ出血熱のワクチンとして開発が進められていた技術を応用したもので、有効性などの確認はこれからだ。また、第1段階にある、ほかの2つのワクチンは、遺伝子を使った新しいタイプのワクチンで、アメリカで開発が進められている。「DNA」や「mRNA」(メッセンジャーRNA)を使ったこれらのワクチンは、従来型のワクチンに比べて開発のスピードが速いことなどが特徴だ。
そして、治療薬の開発も期待されるが、ビル・ゲイツ氏の財団などが、 WHOへの報告などをもとにまとめた特設サイトによると、現在、世界各地で約600の臨床試験(4月21日時点)が行われているという。
これらの中には、別の病気の薬で、新型コロナウイルスにも効果があるものがないか調べているものも少なくない。なかでも、国内外でよく耳にするのは3つ。日本でもよく知られているインフルエンザの治療薬の「アビガン」(一般名「ファビピラビル」)。海外では、エボラ出血熱の治療薬として開発中の「レムデシビル」。トランプ大統領がたびたび会見で触れているマラリアの薬「ヒドロキシクロロキン」(米FDA=食品医薬品局は今月24日、処方や使用の際に注意を呼びかける文書を公表)。このうち「アビガン」は、肺炎の症状などを改善させる効果が認められたとして、中国が治療薬の1つとして使用を勧めていく方針を示している。また、「レムデシビル」も、治療効果が認められたとする論文がある。またほかにも、エイズの発症を抑える薬や免疫の働きを高める薬なども臨床試験が進められている。世界で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、一刻も早く、より効果がある薬が見つかることを期待したい。 
 
 
●安倍政権が隠す新型コロナ「日本の奇跡」の原因 5/1
5月6日で終わる緊急事態宣言は、7日以降も延長される方向らしいが、その根拠は何だろうか。4月7日に安倍首相が記者会見で宣言を発表したとき「東京でこのペースで新型コロナの感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1カ月後には8万人を超える」と述べた。しかし緊急事態宣言から2週間たった4月21日の東京の累計感染者数は累計3300人。これはニューヨーク州の約3万人の1割で、新規感染者数は減っている。当初は嘲笑していた海外メディアも、最近は「日本の奇跡」と呼ぶようになった。その原因は何だろうか。
日本の新型コロナ死亡率は驚異的に低い
安倍首相が緊急事態宣言を発令したとき、東京の累計感染者数は約1200人、死者は31人だった。当時はアメリカでは感染爆発が始まり、ニューヨーク州では毎日700人以上が新型コロナで死亡していた。「ニューヨークは2週間後の東京だ」と海外在住者がネットで騒ぎ、マスコミも野党も「安倍政権の対応は後手に回っている」と批判していた。もし感染爆発が起こったら、2400人、4800人、9600人・・・という指数関数的な増加で1万人を超えることは論理的にはありうる。
しかし感染爆発は起こらなかった。4月29日の新規患者数は47人。ピーク時のほぼ2割に減った。感染はピークアウトしたように見える。これを「自粛のおかげだ」という人は、次の図を見てほしい。
   ---G20諸国の新型コロナ死亡率---
この図はG20諸国の新型コロナ死亡率(人口100万人当たり)の推移を示したものだが、大きく2つのグループにわかれている。対数グラフなので差が小さく見えるが、最上位のイタリアの452人に対して、日本は3人と150倍の差がある。この大きな差を「自粛のおかげだ」とか「日本人はきれい好きだから」などという原因で説明することはできない。死亡率が最小なのは、きれい好きとは思えないインド(0.7人)である。この差は何らかの生物学的なものと考えるしかない。
やはり有力なのはBCG仮説
この図からわかる特徴は、アジアの新型コロナ死亡率が低いということだ。局地的に感染爆発が起こった中国も韓国も今では約3人で、日本とほぼ同じ。インドネシアも(この図にはないが)タイもベトナムも、東アジア・東南アジアの国はほとんど3人以下である。これを「アジア人とヨーロッパ人の免疫の遺伝的な違い」とする説は、ほぼ反証されている。多様な民族の集まるアメリカでは、アジア系の死亡率は低くないからだ。原因として第1に考えられるのは、中国との交流が多いアジア諸国に新型コロナと似た種類のウイルスが拡散したことだ。2009年の新型インフルエンザのとき日本人の死亡率が低かった原因は、遺伝子配列の似たウイルスに対する免疫ができる交叉反応だったといわれるが、今回はまだ確認できない。
第2の原因としては、ウイルスの変異が考えられる。新型コロナウイルスはRNA(リボ核酸)なので変異が速く、15日に一度、遺伝子配列が変わるといわれる。武漢で発生した初期の新型コロナウイルスは強毒性で、それが変異したものが周辺のアジア諸国に入ったという説もあるが、これもまだ確認されていない。こういう説では、メキシコ(12人)やロシア(6人)は説明できない。東欧や南米の死亡率も、西欧の1/10から1/100である。これを説明できるのは、4月3日のコラムでも紹介したBCG仮説だけである。これはそれほど荒唐無稽な説ではなく、今まで肺炎などではBCGの有効性が確認されている。BCGが人体の非特異的な自然免疫の機能を活性化させ、感染しても重症化しないという説もある。これについて世界中で、毎日のように論文が発表されている。そのほとんどは査読前の論文なので、今の段階で確たることはいえないが、BCG接種を義務づけている国の新型コロナ死亡率が低いという相関関係は統計的に有意だという結果が多い。
安倍政権が「人工不況」からの回復の鍵を握っている
今の段階で確実にいえるのは、日本の驚異的な死亡率の低さの原因は緊急事態宣言ではないということである。日本の自粛より厳格なロックダウン(都市封鎖)をやっている国はたくさんあるが、 死亡率は日本よりはるかに高い。スペインは519人、フランスは369人である。したがって死亡率3人の日本が「緊急事態宣言を解除すると感染爆発が起こってスペインやフランスのようになる」という説は、今から激増するメカニズムを説明しない限り、空想というしかない。この100倍以上の差は偶然ではありえないが、政府はこれについて今まで公式にコメントしたことがない。BCG仮説についても、菅義偉官房長官が一度「厚労省が検討している」とコメントしたきりである。もし日本の新型コロナ死亡率の低さの原因がBCGなどの免疫要因だとすると、クラスター追跡やPCR検査などの日本の対策は無駄だったことになる。緊急事態宣言を解除しても、それほど感染は拡大しない。それがBCGをタブーにしている理由だろう。
だが防疫対策に莫大なコストが浪費され、緊急事態宣言で多くの企業が廃業に追い込まれて失業が増えると、数千人の自殺者が出るだろう。「金は後から取り戻せるが命は取り戻せない」というのは錯覚である。自粛で今回の大不況を作り出したのは安倍政権であり、これは史上初めての人工不況だが、それを回復させる力も政権にある。ここで緊急事態宣言を段階的に縮小し、死者が増えるかどうか注意しながら自粛を緩和すれば、経済は先進国で最初に回復し、日本は世界のトップランナーに復帰できるかもしれない。 
 
 
●新型コロナウイルスとBCG仮説 5/7
新型コロナウイルスによる日本人の致死率、感染率が低い要因として、BCGワクチンの有効性が注目されている。4月23日にMedRxivに投稿されたShivendu Shivenduらによる「Is there evidence that BCG vaccination has non-specific protective effects for COVID 19 infections or is it an illusion created by lack of testing?」(プレプリント)では、「BCGワクチン接種がCOVID19疾患の発症に与える影響」に関する最近の7つの研究結果がレビューされている。
「BCG仮説」に肯定的な研究は、国家予防接種プログラムでBCGをカバーしている国では、症例数と死亡率が大幅に低いことを示す十分な経験的証拠があると主張している。Shet et al、Berg et al、Hegarty et al、Miller et alによる分析に加え、「BCGワクチンは新型コロナウイルスに有効か?」で紹介した「Association of BCG vaccination policy with prevalence and mortality of COVID-19」もその一つである。
一方、「BCG仮説」に否定的なものもある。冒頭のペーパーは、独自の研究部分で、検査が考慮されていない場合、COVID 19に起因する死亡率と国の予防接種プログラムに含まれている国のBCGワクチン接種との関係については他の研究と同様の結果が得られるが、検査の次元を追加すればこの関係はなくなるとした。
また、香港科技大学の川口氏は、BCG開始年、終了年といった境界では、症例数の非連続な低下は見られなかったとして、BCG仮説は支持されないとの見方を主張している。愛知学院大学の浅原氏は、ダイヤモンド・プリンセス船内と世界各国の国毎の比較解析をすることで、感染症がその国に広がり始めたタイミングで補正をかけると、先行研究の大きな効果は消えるか、かなり減少すると主張している。臨床研究の結果が出ていない中での仮説提唱にも否定的な見方が示されている。 
 
 
●BCGは新型コロナに有効か、ひとつの答え 5/7
新型コロナとBCGワクチン
緊急事態宣言が延長され、新型コロナウイルスの感染者と死亡者の数に鈍化の傾向は見られるものの、予断は許されない。
5月5日の段階で感染者数は1万5066人で死者数は566人。気になるのは死者数が増加して致死率(死者数÷感染者数)が上がっていること。現在、約3.8%である。
ただ、それでも欧米に比べると致死率は低く、感染者数104万人、死者数6万人のアメリカが約5.9%、以下、感染者数順に、スペイン約10.2%、イタリア約13.3%、イギリス約15.7%、ドイツ約4.0%となる。
ドイツの致死率については、医療体制の充実などで説明されているが、それとは別に、「結核予防のためのBCGワクチンを接種している国の致死率は低いのではないか」という説がある。
「不治の病」だった結核予防のために、約100年前に「近代細菌学の祖」であるルイ・パストゥールの研究所で開発された結核菌を弱毒化させた生ワクチンがBSGワクチン。
日本では乳幼児の段階で接種、結核患者は激減したが、国によってBCG対応はさまざまだ。
アメリカとイタリアは接種なしで、スペイン、ドイツ、イタリアは接種を中止。日本は今も継続。ちなみに継続中の韓国は、感染者数1万765人、死者数247人で、致死率は約2.3%である。
BCGワクチンが新型コロナに抵抗力を与えている、という説は、既に日米の学者などが論文を発表している。
その根拠と背景も含めて、吉川敏一ルイ・パストゥール医学研究センター理事長に話を聞いた。
「全世界的問題なので、今後、疫学的な究明が必要」(吉川氏)ということになるが、臨床医として最前線に立つ一方、京都府立医科大学前学長として医師を育成、数々の学会で役員を務める吉川氏の話は、「ポストコロナ」を見据えた示唆に富むものだった。
新型コロナへの効果は…?
――BCGワクチンの接種が感染者数や死者数を減らしている、という説があります。
「解明されていない部分は多いのですが、日本で培養された日本株は、ワクチンに含まれる生菌が多く、それが免疫力を高めている可能性があります」
――免疫力が高いか低いかは、どうやってわかるのでしょうか。
「結核菌に感染したかどうかはツベルクリン反応を見ます。その時、反応が良く、パッと陽性になった人は免疫力が高い。ガン患者の免疫力を調べる際にもツベルクリン反応を使いますし、ガン患者の免疫療法としてBCGが用いられることもあります」
――BCGワクチンは乳幼児の時に接種します。免疫力は持続するのでしょうか。
「それもツベルクリン反応でわかるのですが、年齢を重ねると反応しなくなります。つまり結核菌と戦えないわけで、それはコロナウイルスにも抵抗力がないことを意味する」
――では、予防のためにBCGワクチンを年配者が追加接種して効果はありますか。
「新型コロナに効果があるかどうかは仮説ですから、まず疫学的な解明、究明が欠かせません。副作用もあればショックもある。現段階で接種は勧められません」
予算と人が圧倒的に足りない
――コロナショックによって、感染症対策などで不備が多く見られました。何が欠けていたのでしょうか。
「予算と人です。感染症対策は軽く見られ、医療費削減の流れのなか、感染症対策の中核を担う国立感染研究所は、予算、人員とも削られています(19年度で予算は約62億円で研究者数は307人)。今後も新たなウイルスが出てくるのは確実で、拡充強化は不可欠でしょう。医者の目は感染症に向けられるし、医師志望者もガンやゲノム、再生医療といった花形分野だけでなく、疫学、細菌、感染症などの志望者が増えるでしょう。後は、政府が予算的にサポートする必要があります」
――日本の医療体制も問題で、ICU(集中治療室)の不足も指摘されています。
「確かにICUは、欧米各国に比べても不足しています(人口10万人当たりのICU病床数は、アメリカ35床、ドイツ29床、イタリア約12床に対し、日本は5床)。ICUはもともと外科の範疇で、手術数と日時を調整できるからそれほど多くは準備していません。重篤化すれば、すぐに対応する今回のような感染症を意識していなかった。また、人口呼吸器や人工心肺装置を扱える人材も揃っていません」
――医療費削減は病院全体に及び、昨年11月、国立病院機構の30病院を含む424病院の統廃合を迫られたばかりでした。
「診療実績が少なく、赤字だから統廃合するというのですが、地域医療の担い手に、『赤字だからダメ』では、医療が成り立たず、地方はますます疲弊します。新型コロナ拡大防止の観点から、再編・統合は見送られましたが、現体制を維持すれば、東京の重篤患者を地方の病院で診ることも出来る。そんな“余裕”が医療には必要です」
――そうしたなか、医療崩壊は免れているのでしょうか。
「現場の医療従事者の責任感、熱意、苦労によって支えられています。医師や看護師などの犠牲的精神といっていいでしょう。退院した芸能人などが、『本当に、お世話になりました』と、心を込めていうのは実感です。パチンコやサーフィンに興じている人たちは、一度、現場を見て、そこが戦場であることを知るといい。遊びになんて行けなくなる」
「One Health」という概念
――医療体制の充実のほかに、予防医学的な観点から必要なものはありますか。
「私は、パストゥール研とともに生命科学振興会の理事長も引き受けています。そこで普及に努めているのが『One Health』という概念です。『人間の健康を保つには、人だけでなく、動物や環境の健康も維持すべきだ』というものです。人間の都合だけで地球環境を破壊すれば、動物が生きづらくなり、それは人にもリスクとなる。新型コロナやエボラ出血熱などの感染症は、微妙なバランスで成り立っている生態系が崩れたところから始まり、動物から人へ、人から人へと感染します」
――新型コロナの発生源については、コウモリ、センザンコウなど諸説あります。
「それは、今後、解明されるでしょうが、間違いないのは、ウイルスが共存できる環境が失われたことでしょう。ウイルスを生命体というかどうかは議論が分かれますが、棲みづらくなれば変異して移動します。宿主がコウモリだとして、それが環境の変化で生命力が弱くなれば、別の生命体に乗り換えようとし、それが人かも知れません。新型コロナが引き起こす肺炎で人が死ぬ時、早く移らないと生きていけないので、ウイルスの感染力は凄く強くなります。従って、One Healthは、人間の在り方を見直す契機にもなるわけで、『ポストコロナ』は医療体制にとどまらず、社会に変革をもたらすような気がします」
ウイルスも生き延びようとする――。
ロックダウンもオーバーシュートも、いつの間にか我々は、横文字のまま危機を認識するに至ったが、遺伝子がタンパク質で覆われているだけの100ナノメートル(ナノは10憶分の1)前後の生物ともいえないような物体が、グローバル化を含めた人間社会の“進歩”の歴史に大きく立ちふさがり、路線変更を求めているのだけは間違いない。 
 
 
●新型コロナ BCGワクチン“予防効果なし” イスラエル研究G  5/14
結核を予防するBCGワクチンを受けた人が新型コロナウイルスに感染しにくいかどうか調べたところ、接種した人と接種していない人で陽性となった割合に差はなく、予防効果は認められなかったとする研究結果をイスラエルの研究グループが発表しました。
BCGワクチンの定期接種を行っている国や地域では、新型コロナウイルスへの感染者や感染後に死亡する人が少ないという指摘があり、各国で検証する研究が進められています。
イスラエルのテルアビブ大学の研究グループは、イスラエルでは1982年までBCGワクチンの定期接種が行われていたことに注目し、接種を受けた世代と受けていない世代で感染する割合に差があるか解析した結果を「アメリカ医師会雑誌」に発表しました。
それによりますと、イスラエルでことし3月から4月初めにかけて新型コロナウイルスのPCR検査を受けた人のうち、BCGワクチンの接種が行われていた1981年までの3年間に生まれた3064人では、11.7%に当たる361人が陽性でした。
これに対して、接種を受けていない1983年以降の3年間に生まれた2869人では、10.4%に当たる299人が陽性でした。
研究グループは、統計的に明確な差はなく、BCGワクチンの予防効果は認められなかったとしています。
一方で、研究の対象となった比較的若い世代では重症化したケースが少なく、重症化や死亡に至る割合との関連についてはまだ分からないとしています。 
 
 
●BCG有無でコロナ死亡率「1800倍差」の衝撃 5/14
日本や台湾で死者少ない「非常に強い相関」
結核の予防接種「BCG」の接種の有無で、新型コロナの死亡率に大きな差が見られた。中でも、日本から広がった「日本株」という株を接種している国の死亡率が極めて低い。ウイルスと免疫の最前線に迫った。

「現段階ではあくまで相関関係が見られるとしか言えませんが、だとしても非常に強い相関があるということになります」
大阪大学免疫学フロンティア研究センター招聘教授の宮坂昌之さんがそう指摘するのは、米ニューヨーク工科大学の研究者らが3月末、「BCGワクチンが新型コロナに対する防御を与えているのかもしれない」と結論づけた論文についてだ。
各国の新型コロナの感染者数や死者数の人口比と、BCGワクチンの接種状況を調べたところ、感染率や死亡率は、接種していないイタリアやベルギー、米国などで接種している国々よりも統計学的に有意に高かったとしている。
新型コロナの感染や致死率とBCGワクチン接種の関連を継続的にフォローしている宮坂さんは言う。
「人口100万人あたりの死者数でみれば、よりクリアに相関が浮かびます」
人口100万人あたりの死者数は、集団接種を行ったことがない米国が227人、イタリアが490人。過去に広く接種していたものの現在はしていないフランスは396人、スペインは553人。一方、BCGを広く接種している中国は3.2人、韓国が5.0人、日本は4.4人。台湾に至っては0.3人にとどまる(いずれも5月7日現在)。台湾とスペインでは1800倍超の差がある計算だ。
BCGワクチンの接種の有無によって死亡率にケタ違いの差が出ており、宮坂さんによると、この傾向は検査数が増えるにつれ、より明らかになってきたという。偶然の一致では片付けられない──。そう思わせるデータだ。
BCGは、結核菌を弱毒化させた生ワクチンだ。細い9本の針痕が腕に残る「はんこ注射」といえば、思い出す人も多いだろう。日本では、1943年にワクチンの結核予防効果が確認されて以降、接種が始まり、48年に結核予防接種が法制化された。現在は全ての乳幼児が接種対象だ。
ただ、集団接種を行っている国の中でも、100万人あたりの感染者数や死者数には開きがある。その背景として宮坂さんが着目するのは、BCGワクチンの「株」の種類だ。
1921年に仏パスツール研究所で開発されたBCGは、結核の予防効果が確認された後、生きた菌が各国に「株分け」された経緯がある。
「最も初期に分けられたのが日本株とソ連株です。デンマーク株はそれから10年ぐらいたってから、パスツール研究所からデンマークに供与されました」(宮坂さん)
日本株は台湾やイラクなど、ソ連株は中国など、デンマーク株は欧州各国などにそれぞれ分配されたという。株による死亡率の違いはなぜ生じるのか。カギとなっている可能性があるのが、ワクチンに含まれる「生菌数」と、「突然変異」だ。
生菌とは生きたままワクチンに含まれている菌のことで、日本株とソ連株は生菌数が他の株より多いという。突然変異について宮坂さんはこう説明する。
「人間が年をとるとがんになりやすくなるのは、細胞が分裂するにつれて遺伝子に突然変異が必ず一定の割合で起きるからです。細菌も同様で、培養期間が増えれば増えるほど突然変異が起きやすくなります」
日本株やソ連株とほかの株で結核に対する予防効果は変わらないものの、遺伝子変異によってそれぞれの株に含まれる細胞膜の成分に差異が生じているという。
「もしBCGが新型コロナに効いているのだとしたら、こうした性状の違いが寄与していることが推察されます」 
 
 
●BCGワクチン接種の有無でコロナ死亡率に差があるというけれど・・・ 5/15
BCGワクチン接種の有無を国際的に比較すると、新型コロナウイルスの対人口比死亡率に差があるとの報道が話題になっている。そもそも、BCGは結核を予防するワクチンである。
筆者が、別件の研究で分析をすべくデータを探していたところ、自治省『昭和37年版地方財政白書』に、偶然にも興味深い表が掲載されていたのを見つけた。その表が、冒頭の表「第71表 結核死亡率の状況」である。本稿では、これを皮切りに話を進めたい。
昭和30年(1955年)から昭和35年(1960年)の結核死亡率は、低下傾向にあるが人口10万人対比で30(人口100万人対比で300)を上回っている。この率は、今の新型コロナウイルスの比ではないほど高い。前掲のBCGワクチンがらみの国際比較にもあるように、わが国の現時点での新型コロナウイルスの対人口比死亡率は、人口100万対で4.4である。
ちょうどこの時期は、わが国では東京タワーが1958年12月に完成した頃で、それこそ映画「三丁目の夕日」の背景となった時代である。その頃の結核死亡率はこれほどに高かった。この頃には、結核の治療薬であるペニシリンもストレプトマイシンもわが国で使えるようになっていた。
新型コロナウイルス感染症の死亡率で、人口100万対で300を上回っている国は、スペイン(553)、イタリア(490)、イギリス(445)、フランス(396)といったところである(数字は、前掲記事参照)。
また、当時のわが国における結核の新規感染者(新登録患者)数は、年に50万人前後と、今の新型コロナウイルスとは比にならないほど多かった(厚生省『伝染病統計』による)。
加えて、わが国が目下とっている国民皆保険制度は、1961年に始まった。だから、冒頭の表の時期はまだ国民皆保険ではなかったわけで、医療へのアクセスが今と比べ物にならないほど悪かったのも、死亡率が高かった一因といえよう。
そんな状況下でも、ロックダウンなどはせず、時は高度成長期で映画「三丁目の夕日」に描かれたように人々は暮らしていたのだから、今と昔に死生観の差がずいぶんあることを痛感する。
ちなみに、1961年に国民皆保険制度が始まって、結核死亡率はどうなったか。統計によると、人口10万対で1961年に29.6、1964年に23.6、1965年に22.8と低下してはいるが、依然として高かった。また、結核の新登録患者数は、まだ30万人を超えている状態だった。
そんな中でも、1964年には東京五輪が開催された。
さて、ひるがえって現代。わが国の結核死亡率は、人口10万対で1.7(人口100万対で17)程度である。あれほど高い死亡率は過去のものとはなったが、前掲の現時点での新型コロナウイルスの対人口比死亡率よりも高い。相対的には、高齢者の方が高い。
それより、わが国で近年問題視されているのは、結核罹患率が他の先進国よりも高いことである。日本は2017年に人口10万対で13.3と、先進国の中で突出して高く、「中蔓延国」とみなされている。人口10万対10以下の「低蔓延国」となるべく、取り組みが進められている。
2013年度から、BCGワクチンの接種時期を変更するなどして、結核の予防効果を高めようとしている。近年ではBCG接種率も90%超である。
ただし、そもそも、BCGは結核のワクチンである。しかも、わが国でBCGワクチン接種を強化したのは、1999年に「結核緊急事態宣言」を発して以降であり、結核罹患率は、依然として他の先進国よりも高く、特に高齢者の罹患率が高い。
わが国で、新型コロナウイルスの対人口比死亡率が低いことと、結核罹患率が高いこととが、BCGワクチン接種とどう関連付けられるのだろうか。ここは、医学の専門家にお伺いしたいところである。 
 
 
●対コロナ・ミラクル日本の立役者はBCG日本株 5/20
京阪神も緊急事態宣言から脱しそうであり、欧米から不思議の目で見られるコロナ対応。囁かれたBCG接種の対新型コロナ免疫効果が、日本株で歴然と効いていると数字に現れました。ミラクル日本の秘密が解けました。日本株接種国は人口百万人当たりの感染者が概ね百〜2百人、百万人当たり死者はことごとく一桁で済んでおり、死者で数百にもなる欧米各国と桁が二つ違います。新型コロナ感染上位20とBCG日本株接種国の一覧を《BCG World Atlas, 2nd Edition》を基本に、《COVID-19とBCG接種(その4)》や《BCGワクチンの国際参照品制定とWHO基準改定について》などで得た接種データを加え作成しました。統計はロイターまとめを採用し日本株全員接種国を色分けしました。
国別に感染者実数、同百万人当たり、死者実数、同百万人当たり、BCGの接種情報を並べました。一時期は全国民BCG接種し、まだ7割くらい接種経験者がいる英仏などで感染者、死者が多く、過去に全員接種なしの国と大差ありません。欧州でBCGはデンマーク株が主流で、これには対新型コロナ抑制効果は無いようです。感染者急増して2位になるのに、人口百万人当たり死者が「19」と一桁少ないロシアが疑われています。しかし、中国のような極端な統計操作は無いようであり、百年前、日本株と同時期にフランスから分与された古いロシア株を全員接種し続けた効果のようです。ロシア株はインドやブルガリアのメーカーを通じていくつかの国に渡っています。ブラジルのモロー株も古く、少しだけ日本株に似た性質を持ちます。
オリジナルBCGに最も近いと言われるのが日本株「BCG Tokyo 172」で、副作用が無く生菌数がずっと多い特徴があります。接種国ではサウジアラビアの百万人当たり感染者が「1647」と多めですが、これは社会の下支えになる外国人労働者に多発したためでしょう。他の日本株接種6国は「214」から「88」でしかなく、2千〜5千の欧米とは別世界です。百万人当たり死者はサウジ「9」が最高で、次いでフィリピンの「8」、日本の「6」です。イラクの百万人当たり「3」で実死者「127」は隣国イランの大流行、死者「7057」と対照的であり、驚異的と受け止められました。必ずしも豊かでなく医療充実でない国が並んでいます。
先日の《対コロナ社会防衛意識、大阪が東京より強烈》で指摘したように日本人の自他を思いやるマナー、連帯意識は新型コロナウイルス感染症抑制の大きな武器になっています。さらにこの一覧で他の日本株接種国もそろっての抑制健闘を見れば、BCG日本株に重症化抑止・死者を抑えるだけでなく、感染抑制効果があると考えざるを得ません。機序として自然免疫の強化や訓練免疫といった新たな知見が唱えられています。強制措置もなしに緊急事態宣言も解除が近い、なぜ日本は悲惨な欧米のようにならないのか、「ジャパニーズ・ミラクル」と言われたりして海外メディアも不思議でならないようですが、守護神BCG日本株の存在は意外に見落とされていると思います。
BCGの新型コロナ抑制効果について、オーストラリアやオランダで医療関係者に接種して比較する検証テストが始まっています。しかし、上で見たようにBCGデンマーク株で比べても意味は無いと思われます。カナダが2012年から日本株を一部に接種しており、対象が先住民や結核への高リスク者で、医療関係者が含まれます。一国で数千人から1万人以上の医療関係者コロナ感染を出している欧州諸国に比べてカナダがどうなっているのか、騒ぎが収まったら比較できるでしょう。今のところカナダで医療関係者感染増についてのニュースは見た事がありません。
BCG日本株の安全性は確立されています。訳が分からない新型コロナワクチンを各種開発してむやみに試す前に、BCG日本株を量産して世界中で接種する方が賢い気がします。BCG日本株は現状では各国で使用が予定された子供の分しか在庫はありません。 
 
 


2020/5