森友事件 自殺職員の「遺書」 

「すべて佐川局長の指示です」

「ぼくの契約相手は国民です」と語っていた真面目な公務員
公文書の改ざんを強いられ けじめに死を選ぶ

政権 支える 忖度文化
ほじくり返されたくない 「遺書」を無視
 


3/17「手記」
 3/183/193/20・・・
 3/213/223/233/243/253/263/273/283/293/303/31・・・
 4/14/24/34/44/5・・・
2018年昔話・・・
 
森友改ざん職員自殺 無駄死に
もりかけ 悪魔の証明
お役人 忖度文化誕生の起源
全局「海老蔵」 忖度テレビの怪
唯我独尊 隠蔽政治 加計学園問題
マスコミの踏絵 「加計学園疑惑」
「忖度」の証明 森友学園
忖度の「闇」
忖度の神敬う 安倍晋三記念小学校 教育勅語 
 
 
 3/17

 

●「すべて佐川局長の指示です」森友事件で自殺した財務省職員「遺書」入手 3/17
森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん事件に関連し、2018年3月7日に自ら命を絶った財務省近畿財務局管財部の上席国有財産管理官・赤木俊夫さん(享年54)が、死の直前、決裁文書の改ざんの経緯を詳細に記した「手記」を遺していたことがわかった。
大阪日日新聞記者で、森友学園問題を当初から取材し続けている相澤冬樹氏が遺族から「手記」全文、および関連する手書きのメモの提供を受けた。
「手記」と題されたA4で7枚の文書は、自殺当日まで書かれていたとみられ、「すべて、佐川理財局長の指示です」「美並近畿財務局長に報告したと承知しています」など、当時の財務省、および近畿財務局の幹部らの言動について実名で詳細に綴られている。また「財務省が国会等で真実に反する虚偽の答弁を貫いている」などと同省の対応を強く批判しており、赤木氏自身、そうした不法行為に加担させられて心身ともに苦しんだ様子もつぶさに記されている。
「手記」の最後には、こう書かれていた。
〈この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55才の春を迎えることができない儚さと怖さ) 家族(もっとも大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です。(中略) さようなら〉
公文書改ざんに直接かかわった人物の肉声が公になるのは初めてのこと。2018年3月2日に朝日新聞の報道で改ざんが発覚し、同3月7日に赤木氏が自殺した後に、財務省は調査を行い、幹部らを減給などの処分にしている。だが、手記には財務省が意図的に事実を隠蔽し、国会で虚偽答弁を行ったことを示す経緯が克明に綴られており、今後、論議を呼びそうだ。
「手記」に実名で登場する当事者の一人、美並義人東京国税局長(当時の近畿財務局長)に取材を申し入れると、「決裁文書の改ざんについては、2018年6月4日に調査報告書を公表している通りです。お亡くなりになられた職員については、誠に残念なことであり、深く哀悼の意を表したいと思います」 と財務省の広報室を通じて回答が寄せられた。
当時、財務省理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官にも、取材を申し入れたが、現段階で回答はない。
「ぼくの契約相手は国民です」と語っていた真面目な公務員は、なぜ公文書の改ざんを強いられ、死を選ばなければならなったのか。3月18日(水)発売の「週刊文春」では、「手記」全文と、妻の昌子さん(仮名)が相澤氏に語った赤木さんの人となり、自殺直前の様子、なぜ手記の公開を決意したのかなどを、記事、グラビア、あわせて15ページにわたって特報する。  
 
 

●自殺した財務省職員・赤木俊夫氏が遺した「手記」
平成30年2月(作成中)
はじめに
私は、昨年(平成29年)2月から7月までの半年間、これまで経験したことがないほど異例な事案を担当し、その対応に、連日の深夜残業や休日出勤を余儀なくされ、その結果、強度なストレスが蓄積し、心身に支障が生じ、平成29年7月から病気休暇(休職)に至りました。これまで経験したことがない異例な事案とは、今も世間を賑わせている「森友学園への国有地売却問題」(以下「本件事案」という。)です。本件事案は、今も事案を長期化・複雑化させているのは、財務省が国会等で真実に反する虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因でありますし、この対応に心身ともに痛み苦しんでいます。この手記は、本件事案に関する真実を書き記しておく必要があると考え、作成したものです。以下に、本件事案に関する真実等の詳細を書き記します。
1.森友学園問題
私は、今も連日のように国会やマスコミで政治問題として取り上げられ、世間を騒がせている「森友学園への国有地売却問題」(以下「本件事案」という。)を、昨年(平成29年)2月から担当していました。本件事案が社会問題化することとなった端緒は、平成29年2月9日、朝日新聞がこの問題を取り上げたことです。(朝日新聞が取り上げた日の前日の平成29年2月8日、豊中市議が国を相手に、森友学園に売却した国有地の売買金額の公表を求める訴えを提起) 近畿財務局が、豊中市に所在する国有地を学校法人森友学園(以下「学園」という。)に売却(売買契約締結)したのは平成28年6月20日です。私は、この時点では、本件事案を担当していませんので、学園との売買契約に向けた金額の交渉等に関して、どのような経緯があったのかについてはその事実を承知していません。
2.全ては本省主導
本件事案の財務省(以下「本省」という。)の担当窓口は、理財局国有財産審理室(主に担当の杉田補佐、担当係長等)です。杉田補佐や担当係長から、現場である財務局の担当者に、国会議員からの質問等の内容に応じて、昼夜を問わず資料の提出や回答案作成の指示(メール及び電話)があります。財務局は本省の指示に従い、資料等を提出するのですが、実は、既に提出済みのものも多くあります。通常、本件事案に関わらず、財務局が現場として対応中の個別の事案は、動きがあった都度、本省と情報共有するために報告するのが通常のルール(仕事のやり方)です。本件事案は、この通常のルールに加えて、国有地の管理処分等業務の長い歴史の中で、強烈な個性を持ち国会議員や有力者と思われる人物に接触するなどのあらゆる行動をとるような特異な相手方で、これほどまで長期間、国会で取り上げられ、今もなお収束する見込みがない前代未聞の事案です。そのため、社会問題化する以前から、当時の担当者は、事案の動きがあった際、その都度本省の担当課に応接記録(面談等交渉記録)などの資料を提出して報告しています。したがって、近畿財務局が、本省の了解なしに勝手に学園と交渉を進めることはありえないのです。本省は近畿財務局から事案の動きの都度、報告を受けているので、詳細な事実関係を十分に承知しているのです。
できるだけ後送りとするよう指示
(1)国会対応
平成29年2月以降ほとんど連日のように、衆・参議院予算委員会等で、本件事案について主に野党議員から追及(質問)されます。世間を騒がせ、今も頻繁に取り上げられる佐川(前)理財局長が一貫して「面談交渉記録(の文書)は廃棄した」などの答弁が国民に違和感を与え、野党の追及が収まらないことの原因の一つとなっています。一般的に、行政上の記録を応接記録として作成された文書の保存期間は、文書管理規則上1年未満とされていますので、その点において違法性はないと思いますが、実際には、執務参考資料として保管されているのが一般的です。この資料(応接記録)を文書管理規則に従って、終始「廃棄した」との説明(答弁)は、財務省が判断したことです。その理由は、応接記録は、細かい内容が記されていますので、財務省が学園に特別の厚遇を図ったと思われる、あるいはそのように誤解を与えることを避けるために、当時の佐川局長が判断したものと思われます。
(2)国会議員への説明
本件事案に関して、野党議員を中心に財務省に対して、様々な資料を要求されます。本省は、本件事案が取り上げられた当初の平成29年3月の時点では、全ての資料を議員に示して事実を説明するという姿勢であったのです。ところが、(当時)佐川理財局長の指示により、野党議員からの様々な追及を避けるために原則として資料はできるだけ開示しないこと、開示するタイミングもできるだけ後送りとするよう指示があったと聞いています。(現場の私たちが直接佐川局長の声を聞くことはできませんが、本省(国有財産審理室)杉田補佐からは局長に怒られたとよく言っていました。) また、野党に資料を提出する前には、国会対応のために、必ず与党(自民党)に事前に説明(本省では「与党レク」と呼称。)した上で、与党の了承を得た後に提出するというルールにより対応されていました(杉田補佐、近畿財務局楠管財部長などの話)。
(3)会計検査院への対応
国会(参議院)の要請を受けて、近畿財務局が本件事案に関して会計検査院の特別検査を、昨年平成29年4月と、6月の2回受検しました。受検時には、佐川理財局長の指示を受け、本省理財局から幹部職員(田村国有財産審理室長、国有財産業務課福地補佐ほか、企画課係長)が派遣され、検査会場に同席し、近畿財務局からの説明を本省幹部職員が補足する対応がとられました。
その際、本省の検査院への対応の基本姿勢は、次のとおりです。
1 決議書等の関係書類は検査院には示さず、本省が持参した一部資料(2〜3分冊のドッチファイルを持参)の範囲内のみで説明する
2 現実問題として、上記1のみでは検査院からの質問等に説明(対応)できないとして、田村審理室長が、近畿財務局に保管されている決裁文書等を使用して説明することはやむを得ないと判断して、1の対応が修正された
3 応接記録をはじめ、法律相談の記録等の内部検討資料は一切示さないこと、検査院への説明は「文書として保存していない」と説明するよう事前に本省から指示がありました(誰から誰に指示がされたかは不明確ですが、近畿財務局が作成した回答案のチェックを本省内関係課で分担され、その際資料は提示しないとの基本姿勢が取られていました)
(注)この時、法律相談の記録等の内部検討資料が保管されていることは、近畿財務局の文書所管課等(統括法務監査官、訟務課、統括国有財産管理官(1))の全ての責任者(統括法務監査官、訟務課長、統括国有財産管理官)は承知していました。
したがって、平成30年2月の国会(衆・予算委員会等)で、財務省が新たに議員に開示した行政文書の存在について、麻生財務大臣や、太田理財局長の説明「行政文書の開示請求の中で、改めて近畿財務局で確認したところ、法律相談に関する文書の存在が確認された」(答弁)は、明らかに虚偽答弁なのです。さらに、新聞紙上に掲載された本年1月以降に新たに発覚したとして開示した「省内で法的に論点を検討した新文書」について、本年2月19日の衆院予算委員会で、太田理財局長が「当初段階で、法務担当者に伝え、資料に気付く状況に至らなかった。法務担当に聞いていれば(文書の存在)に気付いていたはずだ」との答弁も全くの虚偽である。それは、検査の際、この文書の存在は、法務担当に聞かなくても、法務担当以外の訟務課・統括国有財産管理官は作成されていることを当然認識しています。これも近畿財務局は本省主導で資料として提示しないとの基本的な対応の指示に従っただけなのです。また、本省にも報告され保管されていることは、上記2に記載している本省と財務局との情報共有の基本ルールから明らかです。
詭弁を通り越した虚偽答弁が続けられた
(4)財務省の虚偽答弁
本省が虚偽の答弁を繰り返していることを再掲しますと、上記(1)国会対応、(2)国会議員、(3)会計検査院への対応の全ては、本省で基本的な対応のスタンスが決められました。特に、(3)では、本省から財務局に以下の対応の指示がありました。
〇資料は最小限とする
〇できるだけ資料を示さない
〇検査院には法律相談関係の検討資料は「ない」と説明する
この事案の対応で、先の国会で連日のように取り上げられた佐川(当時)理財局長の国会答弁の内容と整合性を図るよう、佐川局長や局長の意向を受けた本省幹部(理財局次長、総務課長、国有財産企画課長など)による基本的な対応姿勢が全てを物語っています。
(疑問)
財務省は、このまま虚偽の説明を続けることで国民(議員)の信任を得られるのか。当初、佐川理財局長の答弁がどこまでダメージコントロールを意識して対応されていたかといえば、当面の国会対応を凌ぐことだけしか念頭になかったのは明らかです。
3.財務省は前代未聞の「虚偽」を貫く
平成30年1月28日から始まった通常国会では、太田(現)理財局長が、前任の佐川理財局長の答弁を踏襲することに終始し、国民の誰もが納得できないような詭弁を通り越した虚偽答弁が続けられているのです。現在、近畿財務局内で本件事案に携わる職員の誰もが虚偽答弁を承知し、違和感を持ち続けています。しかしながら、近畿財務局の幹部をはじめ、誰一人として本省に対して、事実に反するなどと反論(異論)を示すこともしないし、それができないのが本省と地方(現場)である財務局との関係であり、キャリア制度を中心とした組織体制のそのもの(実態)なのです。本件事例を通じて、財務省理財局(国有財産担当部門)には、組織としてのコンプライアンスが機能する責任ある体制にはないのです。
4.決裁文書の修正(差し替え)
本年3月2日の朝日新聞の報道、その後本日(3月7日現在)国会を空転させている決裁文書の調書の差し替えは事実です。元は、すべて、佐川理財局長の指示です。局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。佐川理財局長の指示を受けた、財務本省理財局幹部、杉田補佐が過剰に修正箇所を決め、杉田氏の修正した文書を近畿局で差し替えしました。第一回目は昨年2月26日(日)のことです。当日15時30分頃、出勤していた池田靖統括官から本省の指示の作業が多いので、手伝って欲しいとの連絡を受け、役所に出勤(16時30分頃登庁)するよう指示がありました。その後の3月7日頃にも、修正作業の指示が複数回あり現場として私はこれに相当抵抗しました。楠管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局中村総務課長をはじめ田村国有財産審理室長などから楠部長に直接電話があり、応じることはやむを得ないとし、美並近畿財務局長に報告したと承知しています。
美並局長は、本件に関して全責任を負うとの発言があったと楠部長から聞きました。楠部長以外にも、松本管財部次長、小西次長の管財部幹部はこの事実をすべて知っています。本省からの出向組の小西次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ。」と調書の修正を悪いこととも思わず、本省杉田補佐の指示に従い、あっけらかんと修正作業を行い、差し替えを行ったのです。(大阪地検特捜部はこの事実関係をすべて知っています)
これが財務官僚機構の実態なのです。パワハラで有名な佐川局長の指示には誰も背けないのです。佐川局長は、修正する箇所を事細かく指示したのかどうかはわかりませんが、杉田補佐などが過剰反応して、修正範囲をどんどん拡大し、修正した回数は3回ないし4回程度と認識しています。役所の中の役所と言われる財務省でこんなことがぬけぬけと行われる。
謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さ
森友事案は、すべて本省の指示、本省が処理方針を決め、国会対応、検査院対応すべて本省の指示(無責任体質の組織)と本省による対応が社会問題を引き起こし、嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです。この事案は、当初から筋の悪い事案として、本省が当初から鴻池議員などの陳情を受け止めることから端を発し、本省主導の事案で、課長クラスの幹部レベルで議員等からの要望に応じたことが問題の発端です。いずれにしても、本省がすべて責任を負うべき事案ですが、最後は逃げて、近畿財務局の責任とするのでしょう。怖い無責任な組織です。
〇刑事罰、懲戒処分を受けるべき者
佐川理財局長、当時の理財局次長、中村総務課長、企画課長、田村国有財産審理室長ほか幹部 担当窓口の杉田補佐(悪い事をぬけぬけとやることができる役人失格の職員) 
この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55歳の春を迎えることができない儚さと怖さ) 家族(もっとも大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です。私の大好きな義母さん、謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さこんな人生って何? 兄、甥っ子、そして実父、みんなに迷惑をおかけしました。
さようなら 
 
●「黒川氏が望ましい」定年延長問題   
黒川弘務東京高検検事長の定年延長問題だ。安倍首相は2月13日の国会で安倍内閣として解釈を変更したことを明言した。
《定年延長は、政権に近く「お庭番」とやゆされる黒川氏の検事総長登用のためとされるが、弁護士出身の法相や法務省、人事院の答弁が、安倍晋三首相の主張に沿う形で迷走し、虚偽答弁の指摘も受けている。》
黒川検事長が定年延長になれば次期検事総長の道も開けてくる。読売新聞には今回の答えが書いてあった。
《政府関係者によると、次期検事総長の人選は、昨年末から官邸と法務省との間で水面下で進められた。同省から複数の候補者が提案されたが、安倍首相と菅官房長官は黒川氏が望ましいとの意向を示したという。》
安倍首相と菅官房長官の意向。この「逆算」にあわせるために周囲がドタバタしているとしか見えない。モリカケとまったく同じ構図。ちなみに「黒川弘務」の名は先ほどの籠池氏の本にも出てくる。
「8億円値引きと公文書改ざん」の件で財務省が告発されていた頃のこと。「不起訴」になるというメモ情報が法務検察から事前に漏れていたという。共著者の赤澤氏が取材報告として、
《わたしが、東京、大阪の両特捜部で働いたことのある元検事に聞いたところ、彼はこの「法務省」について、「これはズバリ黒川さんだよ」と言い切りました。このメモが出された当時、法務省事務次官だった黒川弘務氏のことだと言うのです。》
これを受けて籠池氏は《安倍さんの覚えめでたい黒川弘務氏は現在、東京高検検事長。法務検察の序列ではナンバー2である。事務次官から東京高検検事長というラインはエリートコースであり、黒川氏は次期検事総長の最有力候補なのだという。つまり日本最強の捜査機関のトップに立つ可能性があるのだ。ただただ暗澹たる気持ちにならざるを得ない。》と書いている。
見事に現在までつながっている。  
●揺らぐ“検察への信頼”〜検事長定年延長が問うもの〜  3/25 
「筋が通った説明ができないなら検察は死んだも同然だ」 「人事による事実上の“指揮権発動”だ」 これは東京高等検察庁の検事長の定年延長をめぐる現職の検察幹部のことばです。NHKは歴代検事総長などの検察OBや現職の幹部たちに徹底取材。危惧していたのは「検察の独立性」に対する信頼です。
検察内部の会議で異論
「不偏不党でやってきた検察に対する国民の信頼が疑われる。国民に対して丁寧に説明すべきだ」 2月19日、東京 霞が関の法務省。検察トップの検事総長や全国の地方検察庁トップの検事正らが一堂に集まる会議の終盤、参加した検事正の1人がこう声を上げました。会場には問題の渦中にいた東京高検の黒川弘務検事長、そして黒川氏とともに総長候補とみられている名古屋高検の林眞琴検事長が顔をそろえていました。会議で議題以外の意見が出るのは極めて異例。会場の雰囲気は凍りついたといいます。
総長候補のライバル
任官同期の2人は検事総長の「登竜門」とされる法務省のポストをそれぞれ歴任し、早くからライバルと目されてきました。検事総長の在任期間は2年前後が多く、現在の稲田伸夫検事総長はことし7月で就任から丸2年を迎えます。検察庁法で定められた検察官の定年は検事総長が65歳で、それ以外の検察官は63歳。このため黒川氏は63歳になる2月8日までに退官し、63歳の誕生日が7月30日の林氏が後任の検事総長に就任するとみられていました。ところが政府は誕生日の直前に黒川氏の定年をことし8月まで延長することを閣議決定。この定年延長で黒川氏が検事総長に就任する道が開けたのです。
突然の“定年延長” 検察に激震
定年延長が閣議決定された1月31日。取材した法務・検察の幹部の多くが驚きの声を上げました。「全く想定していなかった」 「定年延長なんてできるの?そんな法律があるのか?」 なぜ定年を延長することができたのか。政府は検察庁法ではなく、定年延長が可能な国家公務員法の規定を適用したと説明しています。国家公務員法の定年延長が審議された昭和56年の国会では人事院の幹部が「検察官はすでに定年が定められており、国家公務員法の定年制は適用されない」と答弁していました。しかし政府はこの法解釈を変更し史上初めて検察官の定年を延長したのです。政府は「検察庁法を所管する法務省が適切に法解釈を行いそれを政府として是とした。勤務延長させると法務省から建議されたことを決定した」としています。しかし政治家との調整役を担う法務省の官房長や事務次官を長年務め「官邸に近い」と見られていた黒川氏の定年延長について検察関係者の間では「官邸の意向で黒川氏を検事総長にするための措置ではないか」という見方が広がりました。NHKの取材に対し、検事総長経験者の1人は「検察は厳正中立でなければならず、人事も同様に運用されてきた。今回の人事は検察権の行使にも影響する介入にあたり、ゆゆしき事態だ」と不快感をあらわにしました。また検事長経験者の1人は「黒川氏は非常に優秀な人材だが定年延長というのは特別扱いが過ぎる」と述べました。
“定年延長”問題の核心は?
1人の公務員の定年延長がなぜここまで議論を呼ぶのか。背景には検察庁の職務や組織の特殊性があります。検察は捜査や公判を通じて権力の不正をチェックする役割を担っているため政治からの「独立性」や「中立性」が求められます。被告を起訴し、裁判にかける権限は原則、「準司法機関」である検察だけに認められ、田中角栄元総理大臣を逮捕したロッキード事件や、「濡れ手に粟」の未公開株が政治家や官僚にばらまかれ、竹下内閣の退陣につながったリクルート事件など、政権の中枢に切り込む汚職事件も手がけてきました。一方、検察庁は法務省に属する行政機関でもあります。このため、一般の検事の任命権は法務大臣が、検事総長のほか全国に8か所ある高等検察庁のトップ検事長などの任命権は内閣が持っていますが、実際には検察側が作成し、総長の了承を得た人事案を大臣や内閣が追認することが「慣例」とされてきました。
「定年制」こそが“政権の介入”からの防波堤
リクルート事件の捜査を担当した元検事の高井康行さんは、厳格に守られてきた「定年制」こそが、検察の独立性を守る防波堤だったと指摘します。
高井さん 「以前から政治は検察に影響を及ぼそうとするし検察は独立を保とうとする綱引きはあったが、これまでは何とかバランスを保ってきた。それを支えてきたのが検察庁法で規定された『身分保障』と『定年制』で、政権は懲戒などを除いて検事を罷免できず、逆に検事は定年が来れば必ず退官する。つまり政権は人事を通じて検察にアメもムチも与えることができず『定年制』こそが政権からの介入を防ぐ『防波堤』の1つになっていた。今回のいちばん大きな問題は政治がこの『防波堤』を勝手に動かしてしまったことだ」
もう1つの“防波堤”検事総長
元検事の高井さんが「定年制」のほかに、検察の独立を守る防波堤の役割があると指摘したのが「検事総長」という存在そのものです。
高井さん 「検事総長がもっとも存在意義を発揮するのは検察の独立性が脅かされる事態になったときだ」
検察庁法には法務大臣が個別の事件を指揮することができると定められ、「指揮権」と呼ばれています。ただしその対象は個別の検察官ではなく、トップの検事総長だけに制限され指揮権が発動された場合の対応は総長に委ねられます。検事総長経験者の1人はその意味を次のように述べました。
検事総長経験者 「『指揮権』には検察の独善を抑制するとともに政権から検察への不当な介入を排除するという両面の意味がある。政権が『指揮権発動』以外の形で検察の捜査に介入することは許されない。そして、指揮権が発動されそうになったとき大臣と対等に交渉し、反論できるのは検事総長しかいない」
“指揮権発動” そのとき検事総長は?
これまで指揮権が発動されたのは昭和29年の「造船疑獄」のただ1回。検察は与党・自由党の佐藤栄作幹事長(当時)を収賄の容疑で逮捕する方針でしたが、犬養法務大臣は、佐藤藤佐検事総長に対して指揮権を発動し、逮捕を阻止しました。佐藤総長はこの直後に、「前例のないもので遺憾だ」とする談話を発表。世論の批判は高まり、吉田内閣の退陣につながります。検事総長経験者の1人は当時の総長の判断をこう評価しています。指揮権はその後、60年以上、発動されていません。
検事総長経験者 「指揮権発動を公表することで結果として、内閣は崩壊し、検察の独立を守った。検察の独立は検察のためでなく民主国家のためにあるものだ」
検事総長たちの覚悟
後の検事総長で「ミスター検察」と呼ばれた伊藤栄樹は昭和38年に初版が出版された著書「検察庁法 逐条解説」で指揮権発動を受けた場合の検事総長の対応として、1 不服ながら従う、2 従わない、3 辞職するという3つの選択肢を記しました。その後、昭和58年になって「大臣の指揮権に従わない」という記述が自民党の国会議員から「非常に問題だ」と批判され、伊藤は総長就任後の、昭和61年に出版した新版では、これらの記述を削除しました。しかし伊藤はこの新版にも「大臣の指揮と、意見が食い違った場合、検事総長はこれに盲従するという態度をとることは許されない」という一文を記し、防波堤としての総長の“生き様”を示しました。今回、取材した複数の検事総長経験者は「指揮権が発動されれば辞める覚悟を持っていた」と話し、胸に秘めていた検察トップとしての矜持(きょうじ)を明かしました。歴代の検事総長が背負ってきた「検察の独立性」。検察幹部の1人は定年延長によってその独立性が侵されかねないと危機感をあらわにしました。
検察幹部 「今回は人事による事実上の指揮権発動ではないか。時の内閣が都合のよい総長を選べば、もはや大臣が指揮権を発動しなくても万事、政権に都合よく進むことになる」
国民への説明が不十分
法務・検察の現職幹部の間では政府の説明が十分でないことに不満や疑問を持つ声も相次いでいます。国家公務員法で定年を延長できるのは「退職によって公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるとき」と定められています。人事院は定年延長を認める例として 『名人芸的技能を要する職務に就いている場合』 『離島勤務で欠員補充が困難な場合』 『大型研究プロジェクトチームの構成員で退職によって研究の完成が著しく遅延する場合』などを挙げています。一方、森法務大臣は定年延長の理由について「重大かつ複雑、困難な事件の捜査や公判に対応するため」と説明していますが、「捜査機関の活動に関わる」として具体的な内容は明らかにしていません。幹部の1人は「これまでの国会での政府の答弁は国民が納得する説明になっていない。東京高検の管内で黒川氏の定年を延長しなければ処理できない事件とは何なのか、具体的に聞きたい」と述べました。
危惧されるのは“検察の独立性”への信頼を失うこと
現場の検察幹部からは「法と証拠に基づいて事件ができればトップは誰になってもよい」とか、「今回の人事で事件ができなくなることはないと思う」などの意見がある一方、「今後、政治がらみの問題を不起訴にすれば、すべて黒川さんがいるから不起訴にしたと見られてしまう。組織として非常にマイナスだ」と述べた幹部もいました。元検事の高井さんは、今回の定年延長でもっとも懸念されるのは検察の独立性への国民の信頼が失われることだと指摘します。
高井さん 「民主国家が健全に運営されていくためには、絶大な権力を持つ検察が『政治から独立している』と国民から信頼される必要がある。信頼がなければ正しい判断で不起訴にしても世間から『政治にそんたくした』と誤解され、正しい捜査をしても政権のためにやったと思われてしまう。国民の信頼を失うことは検察の組織運営を揺るがす障害になる」
黒川氏は総長になるのか?
今後は、黒川氏が検事総長に就任するかどうかが焦点になります。鍵を握るのは稲田検事総長です。稲田氏は検察庁法で規定された「身分保障」によって、懲戒などを除いて定年まで意思に反して職を解かれることはありません。稲田氏の65歳の誕生日は来年の8月14日でそれまではみずからの判断で総長の地位にとどまることができます。稲田氏が定年延長の期限のことし8月7日までに辞任しない場合、黒川氏が総長になるためには、内閣は再び定年延長などの措置をとる必要があります。稲田氏に対しては検察トップとして今回の混乱を招いた責任の一端があると指摘する声もあり、みずからの進退をどのように判断するかが注目されます。
岐路に立つ検察の“独立”と“信頼”
NHKが今月6日から3日間行った世論調査で、検事長の定年を延長する政府の決定について、適切だと思うか聞いたところ、「適切ではない」と答えた人が54%と半数を超え、「適切だ」は22%でした。多くの検察関係者が危惧する「国民からの信頼」はすでに揺らいでいるようにもみえます。不偏不党の立場から時に政権の不正にも切り込むことで民主主義社会の一翼を担ってきた検察。一方、政治との距離をめぐっては「国策捜査だ」などと世論の批判を浴びることも少なくなりません。検察の独立や信頼はどこへ向かうのか。今、岐路に立たされています。 
 
 
 

 

●森友自殺職員の「遺書」公開で批判が再燃か!? 3/17 
批判が再燃か!?
3月17日、文春オンラインで、森友事件で自殺した近畿財務局職員・赤木俊夫さん(享年54歳)の手記が「遺書」として公開されました。その中では、佐川氏を「パワハラ官僚」と呼び、「すべて佐川局長の指示」として、自殺に至る経緯が克明に記されています。
森友自殺職員”遺書”公開「すべて佐川局長の指示」
〈森友問題  佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰れもいわない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ、手がふるえる、恐い命 大切な命 終止府(ママ)〉 この文章は、財務省近畿財務局職員だった赤木俊夫さん(享年54)が死の直前に書き遺したもの。赤木さんは森友事件の公文書改ざんを上司に強要され、2018年3月7日、自ら命を絶った。赤木さんが何かを書き遺したという話は当時からあったが、詳しい内容はわからず、死を選ぶに至った事情は闇に隠れたままだった。ところが、彼の自宅には「すべて佐川局長の指示」などと記された詳細な文書が遺されていた。森友学園問題を当初から取材し続けている相澤冬樹氏が遺族から「手記」全文、および関連する手書きのメモの提供を受けた。そこには、近畿財務局で密かに行われた出来事が克明に綴られていた――。「ぼくの契約相手は国民です」と語っていた真面目な公務員は、なぜ公文書を改ざんし、死を選ばなければならなかったのか。 (文春オンライン)
手記のポイントは、次のとおりです。
男性職員の手記要旨 「差し替えは佐川局長の指示」
本省主導 / 本件は前代未聞の事案であり、近畿財務局が本省の了解なしに交渉を進めることはあり得ません。資料を文書管理規則に従って廃棄したとの説明は、財務省が判断したことです。当時の佐川(宣寿)理財局長が判断したと思われます。2018年2月の国会で新たに開示した行政文書について、麻生(太郎)財務相や太田(充)理財局長による「行政文書の開示請求の中で、改めて近畿財務局で確認したところ、法律相談に関する文書の存在が確認された」との説明は虚偽答弁です。
前代未聞の虚偽 / 2018年1月からの通常国会では太田局長が前任の佐川局長の答弁を踏襲することに終始し、詭弁を通り越した虚偽答弁が続けられています。違和感を持っていても、誰一人本省に反論しません。
決裁文書の修正 / 決裁文書の調書の差し替えは事実です。佐川局長の指示です。学園への厚遇と受け取られる箇所は修正するよう指示があったと聞きました。本省理財局幹部らが過剰に修正箇所を決め、近畿財務局で差し替えました。私は相当抵抗しました。本省からの出向組の次長は「元の調書が書き過ぎているんだよ」と悪いこととも思わず、あっけらかんと差し替えました。これが財務官僚機構の実態です。抵抗したとはいえ、関わった者として責任をどう取るか、ずっと考えてきました。最も大切な家内を泣かせ、人生を破壊したのは本省理財局です。みんなに迷惑をお掛けしました。さようなら
佐川宣寿の経歴
改めて、佐川宣寿の経歴を振り返ってみましょう。佐川氏は、1957年11月6日生まれの62歳です。出身は、福島県の平市(現在のいわき市)です。小学校は、平市立平第一小学校、中学校は、いわき市立平第一中学校。中学3年生のとき、父親が亡くなり、東京都内の中学校に転向。高校は、都立九段高校に進みます。その際の学費は、3人の兄が負担してくれたとのことです。大学は、東京大学文科二類に入学へ。経済学部に進学・卒業します(専攻は農業経済学)。
1982年、東大を卒業し、大蔵省に入省します。同期には、参議院議員の片山さつき、セクハラ問題で財務次官を辞任した福田淳一、理財局長・国税庁長官の前任を務めた迫田英典らがいます。佐川宣寿は、国税(税制)畑を中心にエリートコースを歩みます。
1982年4月 大蔵省入省(主計局総務課) / 2001年4月 財務大臣秘書官事務取扱 / 2003年9月 主計局調査課長 / 2004年7月 主計局主計官(外務、経済協力、経済産業係担当) / 2005年7月 主税局税制第三課長 / 2006年7月 主税局税制第二課長 / 2008年7月 主税局総務課長 / 2013年6月 大阪国税局長 / 2014年7月 国税庁次長 / 2015年7月 関税局長 / 2016年6月 理財局長 / 2017年7月 国税庁長官 / 2018年3月 辞職
森友学園問題
2016年6月に、同期の迫田英典の後を継いで、国有財産管理の責任者である理財局長に就任。政府参考人としての国会答弁では、野党の追及に対して、「記録は廃棄した」という強気の答弁で押し通しました。2017年7月には、財務省事務方のナンバー2である国税庁長官に就任。森友学園問題で安倍晋三首相を守り切った「論功行賞」だと言われました。他方、国税庁長官としては、慣例である記者会見を開かずに、批判を浴びました。
さらに、2018年3月2日には、財務省・近畿財務局が作成した土地取引に関わる決裁文書が書き換えられていた「文書改ざん」の問題が勃発。これを受けて、3月9日、佐川宣寿は減給20%、3ヶ月の懲戒処分を受け、当日、国税庁長官を依願退官しました。辞任を申し出た理由として、1理財局長当時の国会対応が丁寧さを欠いており、混乱をもたらした、2行政文書の管理について指摘を受けた、3書き換え疑惑のある決裁文書について、担当局長であった、の3点が挙げられています。なお、この減給処分は、額にすると約66万円の減給となり、退職金4999万円から同額が差し引かれることとなる、と国会で答弁されました。
退職後の3月27日には、証人喚問を受けて、自己の責任を陳謝。他方、刑事訴追を受けるの惧れを理由に証言を55回拒否しました。さらに、6月4日には、財務省の「森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書」の公表を受けて、懲戒処分相当(停職3か月相当)の処分を受けました。
佐川宣寿の現在
財務次官や国税庁長官といった財務省幹部のOBは、「天下り」で、優雅なセカンドライフを送るのが通常です。実際、同期で理財局長・国税庁長官の前任である迫田英典は、三井不動産やTMI総合法律事務所といった名門の顧問に就任しています。
他方、佐川宣寿については、公表情報で確認する限り、企業等の顧問、社外取締役等の「天下り」ポジションには就いていないようです。さすがに国民の批判が強いことを考慮したのでしょう。受け入れる企業としても、さすがに佐川氏は勘弁してくれ、ということだと思われます。なお、出身の福島県の「いわき応援大使」を務めていますが、これは、無給のボランティア的な仕事です。
佐川氏としてみれば、たまたま理財局長に就いたタイミングのせいで、批判を一身に浴びて「貧乏くじ」を引いている感があるかもしれません。
今回の「遺書」により、森友事件を巡る佐川宣寿・元国税庁長官への批判が改めて高まると思われます。

このスクープに続いて、自殺された元財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん(享年54歳)の奥さんが、3月18日、自殺の原因は改ざんを強制されたためだとして、国と佐川宣寿に対して合計約1億1,200万円の損害賠償を求めて、大阪地裁に裁判を起こしました。赤木さんは、森友学園問題を巡る国会対応に忙殺されたほか、佐川宣寿の指示で改ざん作業を強制された結果、長時間労働や連続勤務で心理的負荷が過度に蓄積した結果、2017年7月にうつ病と診断されて休職し、2018年3月7日に、自宅で手記や遺書を残して自殺に至りました。赤木さんの自殺については、財務局が民間企業の労災に当たる「公務災害」と認定しています。
奥さんは、「夫が死を決意した本当のところを知りたい。裁判で全てを明らかにするためにも、佐川さんには改ざんの経緯や真実を話してほしい」とコメントしています。亡くなられた職員の方の想いが無駄にならないよう、真実が明らかになることを望みたいです。 
 
 
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●森友文書改ざん “指示もと 佐川元局長と思う”自殺職員 手記  3/18 
財務省の決裁文書の改ざんに関与させられ、自殺した近畿財務局の男性職員が、改ざんの経緯などを書き残していた「手記」などを、遺族が弁護士を通じて公表しました。国会での追及をかわすため、財務省の本省が主導して、抵抗した現場の職員に不正な行為を押しつけていた内情が克明に記されています。
公表されたのは、森友学園に関する財務省の決裁文書の改ざんに関与させられた近畿財務局の職員で、おととし3月、改ざんが発覚した5日後に自殺した赤木俊夫さん(当時54)が書き残していた「手記」と「遺書」です。「手記」は2種類あり、自殺した日の日付の手書きのものには「今回の問題はすべて財務省理財局が行いました。指示もとは佐川宣寿元理財局長と思います。学園に厚遇したととられかねない部分を本省が修正案を示し、現場として相当抵抗した。事実を知っている者として責任を取ります」などと記されています。また、もう1つの「手記」はパソコンで7ページにまとめられたもので「真実を書き記しておく必要があると考えた」との書き出しで始まります。学園との国有地取り引きが国会で問題化する中、野党の追及をかわすために財務省本省が指示していた不正行為の実態について、財務局の現場の職員の視点で細かく記されています。この中では、実際には保管されていた学園との交渉記録や財務局内の文書を、国会にも会計検査院にも開示しないよう最初から指示されていたと明かしたうえで、事後的に文書が見つかったとする麻生財務大臣など幹部の国会での説明に対し、「明らかな虚偽答弁だ」という認識を記しています。
さらに「虚偽の説明を続けることで国民の信任を得られるのか」と財務省の姿勢に疑問を投げかける記述や「本省がすべて責任を負うべきだが最後は逃げて、財務局の責任にするのでしょう。怖い無責任な組織です」と組織の体質を批判する記述もあります。そして最後に手記を残す理由について「事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。55歳の春を迎えることができない儚さと怖さ」と締めくくっていて、死を覚悟してまでも自身の責任を果たそうとした赤木さんの思いが読み取れます。一方、「遺書」はすべて手書きで3通あり、家族に宛ててこれまでの感謝の気持ちを記したもののほか、1通は「森友問題」という書き出しで、「理財局の体質はコンプライアンスなど全くない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ。手がふるえる。恐い命 大切な命 終止符」と財務省への憤りが記されています。
「手記」の詳細
自殺した近畿財務局の職員、赤木俊夫さんが書き残した「手記」の主な内容です。
「手記」は手書きの2ページのものと、パソコンでまとめた7ページのものの2種類があります。このうち手書きのものは、赤木さんが自殺したおととし(平成30年)3月7日の日付になっています。
この中では 『今回の問題はすべて財務省理財局が行いました。指示もとは佐川元理財局長と思います。学園に厚遇したととられかねない部分を本省が修正案を示し現場として相当抵抗した。事実を知っている者として責任を取ります』などと記されています。
一方、パソコンでまとめた「手記」は「真実を書き記しておく必要があると考えた」という書き出しで始まります。
『はじめに私は、昨年(平成29年)2月から7月までの半年間、これまで経験したことがないほど異例な事案を担当し、その対応に、連日の深夜残業や休日出勤を余儀なくされ、その結果、強度なストレスが蓄積し、心身に支障が生じ、平成29年7月から病気休暇(休職)に至りました。これまで経験したことがない異例な事案とは、今も世間を賑わせている「森友学園への国有地売却問題」です。本件事案は、今も事案を長期化・複雑化させているのは、財務省が国会等で真実に反する虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因でありますし、この対応に心身ともに痛み苦しんでいます。この手記は、本件事案に関する真実を書き記しておく必要があると考え、作成したものです。』
「森友学園問題」が社会問題化する経緯を記したあと、籠池前理事長ら森友学園側との交渉は、現場の近畿財務局ではなく財務省が主導したとしています。
『全ては本省主導国有地の管理処分等業務の長い歴史の中で、強烈な個性を持ち国会議員や有力者と思われる人物に接触するなどのあらゆる行動をとるような特異な相手方で、これほどまで長期間、国会で取り上げられ、今もなお収束する見込みがない前代未聞の事案です。そのため、社会問題化する以前から、当時の担当者は、事案の動きがあった際、その都度本省の担当課に応接記録(面談等交渉記録)などの資料を提出して報告しています。したがって、近畿財務局が、本省の了解なしに勝手に学園と交渉を進めることはありえないのです。』
続いて、国会対応にあたった財務省の内情を明かし、佐川氏から野党の追及をかわすために財務局に保管されている文書を開示しないよう指示があったとしています。
『国会対応平成29年2月以降ほとんど連日のように、衆・参議院予算委員会等で、本件事案について主に野党議員から追及(質問)されます。世間を騒がせ、今も頻繁に取り上げられる佐川(前)理財局長が一貫して「面談交渉記録(の文書)は廃棄した」などの答弁が国民に違和感を与え、野党の追及が収まらないことの原因の一つとなっています。この資料(応接記録)を文書管理規則に従って、終始「廃棄した」との説明(答弁)は、財務省が判断したことです。その理由は、応接記録は、細かい内容が記されていますので、財務省が学園に特別の厚遇を図ったと思われる、あるいはそのように誤解を与えることを避けるために、当時の佐川局長が判断したものと思われます。佐川理財局長の指示により、野党議員からの様々な追及を避けるために原則として資料はできるだけ開示しないこと、開示するタイミングもできるだけ後送りとするよう指示があったと聞いています。(現場の私たちが直接佐川局長の声を聞くことはできませんが、本省国有財産審理室の補佐からは、局長に怒られたとよく言っていました。)また、野党に資料を提出する前には、国会対応のために、必ず与党(自民党)に事前に説明した上で、与党の了承を得た後に提出するというルールにより対応されていました。』
会計検査院の特別検査に対しても、保管されている記録を見せないよう、財務省本省の指示があったとし、この検査をめぐる財務省幹部の国会答弁は虚偽だとしています。
『会計検査院への対応国会(参議院)の要請を受けて、近畿財務局が本件事案に関して会計検査院の特別検査を、昨年平成29年4月と、6月の2回受検しました。この時、法律相談の記録等の内部検討資料が保管されていることは、近畿財務局の文書所管課等の全ての責任者(統括法務監査官、訟務課長、統括国有財産管理官)は承知していました。したがって、平成30年2月の国会(衆・予算委員会等)で、財務省が新たに議員に開示した行政文書の存在について、麻生財務大臣や、太田理財局長の説明「行政文書の開示請求の中で、改めて近畿財務局で確認したところ、法律相談に関する文書の存在が確認された」(答弁)は、明らかに虚偽答弁なのです。さらに、新聞紙上に掲載された本年1月以降に新たに発覚したとして開示した「省内で法的に論点を検討した新文書」について、本年2月19日の衆院予算委員会で、太田理財局長が「当初段階で、法務担当者に伝え、資料に気付く状況に至らなかった。法務担当に聞いていれば(文書の存在)に気付いていたはずだ」との答弁も全くの虚偽である。それは、検査の際、この文書の存在は、法務担当に聞かなくても、法務担当以外の訟務課・統括国有財産管理官は作成されていることを当然認識しています。これも近畿財務局は本省主導で資料として提示しないとの基本的な対応の指示に従っただけなのです。』
国会や会計検査院に対し、虚偽の説明を続ける財務省の姿勢に、赤木さんは赤い文字で「疑問」を投げかけています。
『(疑問)財務省は、このまま虚偽の説明を続けることで国民(議員)の信任を得られるのか。当初、佐川理財局長の答弁がどこまでダメージコントロールを意識して対応されていたかといえば、当面の国会対応を凌ぐことだけしか念頭になかったのは明らかです。』
『財務省は前代未聞の「虚偽」を貫く平成30年1月28日から始まった通常国会では、太田(現)理財局長が、前任の佐川理財局長の答弁を踏襲することに終始し、国民の誰もが納得できないような詭弁を通り越した虚偽答弁が続けられているのです。現在、近畿財務局内で本件事案に携わる職員の誰もが虚偽答弁を承知し、違和感を持ち続けています。しかしながら、近畿財務局の幹部をはじめ、誰一人として本省に対して、事実に反するなどと反論(異論)を示すこともしないし、それができないのが本省と地方(現場)である財務局との関係であり、キャリア制度を中心とした組織体制のそのもの(実態)なのです。本件事例を通じて、財務省理財局(国有財産担当部門)には、組織としてのコンプライアンスが機能する責任ある体制にはないのです。』
そして、みずからも関わることになった「決裁文書の改ざん」の経緯の説明に移っていきます。
『決裁文書の修正(差し替え)元は、すべて佐川理財局長の指示です。局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。佐川理財局長の指示を受けた、財務省本省理財局幹部、補佐が過剰に修正箇所を決め、補佐の修正した文書を近畿局で差し替えしました。第一回目は昨年2月26日(日)のことです。当日15時30分頃、出勤していた統括官から本省の指示の作業が多いので、手伝ってほしいとの連絡を受け、役所に出勤(16時30分頃登庁)するよう指示がありました。その後の3月7日頃にも、修正作業の指示が複数回あり現場として私はこれに相当抵抗しました。管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局の総務課長をはじめ国有財産審理室長などから部長に直接電話があり、応じることはやむを得ないとし、美並近畿財務局長に報告したと承知しています。美並局長は、本件に関しては全責任を負うとの発言があったと部長から聞きました。部長以外にも、次長ら管財部幹部はこの事実をすべて知っています。本省からの出向組の次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ。」と調書の修正を悪いこととも思わず、本省の補佐の指示に従い、あっけらかんと修正作業を行い、差し替えを行ったのです。(大阪地検特捜部はこの事実関係をすべて知っています)これが財務官僚機構の実態なのです。パワハラで有名な佐川局長の指示には誰も背けないのです。佐川局長は、修正する箇所を事細かく指示したかどうかはわかりませんが、補佐などが過剰反応して、修正範囲をどんどん拡大し、修正した回数は3回ないし4回程度と認識しています。役所の中の役所と言われる財務省でこんなことがぬけぬけと行われる。』
さらに森友学園をめぐる問題を主導した財務省の姿勢や、組織の体質への痛烈な批判が続きます。
『森友事案は、すべて本省の指示、本省が処理方針を決め、国会対応、検査院対応すべて本省の指示(無責任体質の組織)と本省による対応が社会問題を引き起こし、嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです。この事案は、当初から筋の悪い事案として、本省が当初から鴻池議員などの陳情を受け止めることから端を発し、本省主導の事案で、課長クラスの幹部レベルで議員等からの要望に応じたことが問題の発端です。いずれにしても、本省がすべて責任を負うべき事案ですが、最後は逃げて、近畿財務局の責任とするのでしょう。怖い無責任な組織です。』
そして『刑事罰、懲戒処分を受けるべき者』として佐川氏のほか、当時の財務省理財局の幹部らを名指ししています。
所属する組織の指示で、不正に加担させられた赤木さん。自らの死を覚悟してまで「手記」を書いた理由を綴っています。
『この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55歳の春を迎えることができない儚さと怖さ)家族(もっとも大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です。私の大好きな義母さん、謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さこんな人生って何?兄、甥っ子、そして実父、みんなに迷惑をおかけしました。さようなら』。
「遺書」の内容
自殺した近畿財務局の職員、赤木俊夫さんが残した3通の「遺書」の内容です。1通は「森友問題」という書き出しで「佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それに指示NOを誰も言わない理財局の体質はコンプライアンスなど全くない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ。手がふるえる。恐い命 大切な命 終止符」と手書きされています。ほかの2通も手書きで家族に宛てたもので、妻や義理の母親などに「これまで本当にありがとうゴメンなさい恐いよ。心身ともに滅いりました。ゴメンなさい大好きなお母さん」などと書かれています。
「手記」と財務省の調査報告書 食い違いも
「手記」には、決裁文書の改ざんや交渉記録の廃棄などの経緯が克明に記されています。この内容とおととし6月に財務省が公表した調査報告書の内容には、一部で食い違いも見られます。
(1)改ざんの指示
手記には決裁文書の改ざんについて「すべて、佐川理財局長の指示です」としたうえで、佐川氏の指示を受けた財務省理財局幹部が過剰に修正箇所を決め、3年前の2月26日から近畿財務局で改ざんが始まったなどと記されています。これについて財務省の調査報告書でも改ざんが始まったのは2月26日で、佐川氏が改ざんを事実上指示していたと認定しています。報告書によりますと、佐川氏は当時の部下の理財局の総務課長と国有財産審理室長から決裁文書の内容について報告を受け「そうした記載のある文書を外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきであると反応した」としています。そして2月26日に審理室長らが文書の改ざんを行い、同じ日に、財務省理財局から近畿財務局の職員に出勤を要請したうえで、別の決裁文書について改ざんするよう具体的に指示したとしています。
(2)近畿財務局の反発
手記には「その後の3月7日頃にも修正作業の指示が複数回あり、現場として私はこれに相当抵抗した」と記されています。これについて財務省の調査報告書でも近畿財務局の職員が本省理財局からのたび重なる改ざん指示に強く反発したことが記されています。報告書によりますと、3月7日の未明に理財局から2つの決裁文書の改ざんの案が近畿財務局に送られましたが、佐川氏も含めて議論した結果、翌8日にはさらに多くの記述を改ざんする案が改めて財務局に示されたということです。改ざんを指示された財務局の職員はそもそも改ざんを行うことに強い抵抗感があり、理財局からのたび重なる指示に強く反発したということで、この職員は3月8日までに上司の管財部長に相談をしたとしています。しかし財務省は、自殺した職員が改ざんを指示されていたのかや、改ざんに反発した職員だったのかどうかは明らかにしていませんでした。
(3)会計検査院への虚偽回答
手記には3年前の平成29年4月と6月に会計検査院の検査を受けた際の対応について「応接記録を始め法律相談の記録等の内部検討資料は一切示さず、検査院には『文書として保存していない』と説明するよう事前に本省から指示があった」と記されています。これについて財務省の調査報告書でも去年3月以降、国有地売却問題を検査していた会計検査院から廃棄していない交渉記録を提出するよう繰り返し求められていたにもかかわらず、国会で存在を認めていない文書を提出するのは妥当ではないと考え「存在しない」とする、うその回答を続けたとしています。
(4)法律相談記録では食い違いも
一方、財務省がおととし2月に公表した国有地売却に関する法律相談の文書をめぐっては手記と財務省の調査報告書の内容が食い違っています。財務省の調査報告書では法律相談の文書の保存が確認された時期について、情報公開請求への対応のため平成29年10月から11月にかけて関連文書を探索した結果、確認されたとしています。しかし、手記には検査院の検査を受けた平成29年4月と6月の時点で「法律相談の記録等の資料が保管されてていることは近畿財務局の文書所管課などのすべての責任者は承知していた」としていて、「おととし2月の国会で麻生財務大臣や太田理財局長が『行政文書の開示請求の中で改めて近畿財務局で確認したところ法律相談に関する文書の存在が確認された』という答弁は、明らかに虚偽答弁だ」などと記されています。
妻のメッセージ「佐川さん、本当のことを話して下さい」
赤木さんの妻は提訴に合わせて、手記や遺書を公表した理由やいまの心境をメッセージとしてまとめ、代理人の弁護士が記者会見で読み上げました。
「夫が亡くなってから2年が経ちました。あのとき、どうやったら助けることができたのか。いくら考えても私には助ける方法がまだ見つかりません。心のつかえが取れないままで夫が死を決意した本当のところを知りたいです。夫が死を選ぶ原因となった改ざんは、誰が何のためにやったのか。改ざんをする原因となった土地の売り払いは、どうやって行われたのか。真実を知りたいです。今でも近畿財務局の中には、話す機会を奪われ苦しんでいる人がいます。本当のことを話せる環境を財務省と近畿財務局には作ってもらい、この裁判で全てを明らかにしてほしいです。そのためにはまず、佐川さんが話さなければならないと思います。夫のように苦しんでいる人を助けるためにも、佐川さん、改ざんの経緯を、本当のことを話して下さい。よろしくお願いします」
弁護士「国は真相解明のため誠実に対応を」
提訴後に記者会見した原告の代理人の生越照幸弁護士は「真実を訴訟で明らかにするためには、国側が真相解明のために誠実に対応することが大前提となる。国は訴訟で旗色が悪くなるとすぐに認め、肝心の中身に入れないようにするケースが多い。今回は、国も佐川氏もきちんと対応するよう願っている」と話していました。松丸正弁護士は「亡くなった赤木さんは手記の最後に、『今の健康状態と体力ではこの方法しかとれなかった』と記している。本当は事実をみずから伝えたかったはずだ。この裁判で真実を明らかにしたい。裁判を通じて、今後、違法なことを命じられた現役の職員たちが、声をあげて抵抗できるような組織にしていきたい」と話していました。 
●「すべて、佐川理財局長の指示です」 3/18 
森友学園問題で、財務省近畿財務局職員の赤木俊夫氏が、2018年3月7日に自ら死を選んだ。安倍昭恵総理夫人が名誉校長を務めていた小学校への、国有地を8億円も値引きしての払い下げに関する公文書について、改竄を担当させられたことを苦にしてのものだった。2020年3月18日、赤木氏の遺族である妻が原告となり、国(代表者:三好雅子=森雅子法務大臣)と佐川宣寿氏(さがわのぶひさ:事件当時は財務省理財局長、のちに国税庁長官を経て退官)を相手取って、1億1000万円超の損害賠償の民事訴訟を大阪地方裁判所に起こした。提訴した18日、赤木夫人の代理人である、松丸正弁護士と生越照幸(おごしてるゆき)弁護士が大阪市内で記者会見を開き、訴訟内容について発表した。
会見では、訴状と、改竄の経緯を詳細に記載した赤木氏の手記、赤木氏の公務災害認定に関して財務省が人事院に提出した文書が公開された。「私は昨年(平成29年)2月から7月までの半年間、これまで経験したことがないほど異例な事案を担当し」「これまで経験したことがない異例な事案とは、今も世間を騒がせている『森友学園への国有地売却問題』です。本件事案は、今も事案を長期化・複雑化させているのは、財務省が国会等で真実に反する虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因でありますし、この対応に心身ともに痛み苦しんでいます」 赤木氏の手記には、赤木氏が意に染まない文書改竄を強いられて苦悩し、死を選ばざるを得なかった経緯が、手書きメモも含めて生々しくつづられている。「財務省の虚偽答弁」と題された項目には、「この事案の対応で先の国会で連日のように取り上げられた佐川(当時)理財局長の国会答弁の内容と整合性を図るよう、佐川局長や局長の意向を受けた本省幹部(理財局次長、総務課長、国有財産企画課長など)による基本的な対応姿勢が全てを物語っています」と記され、その下には「(疑問)財務省は、このまま虚偽の説明を続けることで国民(議員)の信任を得られるのか」と書かれている。さらに「決裁文書の修正(差し替え)」という項目には、「元は、すべて、佐川理財局長の指示です。局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。佐川理財局長の指示を受けた、財務本省理財局幹部、杉田補佐が過剰に修正箇所を決め、杉田氏の修正した文書を近畿局で差し替えました」と明らかにしている。
刑事罰、懲戒処分を受けるべき者
そして、「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」という項目には、「佐川理財局長、当時の理財局次長、中村総務課長、企画課長、田村国有財産管理室長ほか幹部 担当窓口の杉田補佐(悪い事をぬけぬけとやることができる役人失格の職員)」とあり、続けて次のように結ばれている。
「この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55才の春を迎えることができない儚さと怖さ) 家族(もっとも大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です。私の大好きな義母さん、謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さこんな人生って何? 兄、甥っ子、そして実父、みんなに迷惑をおかけしました。 さようなら」
この、赤木氏の手記で「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」と指摘された6人のうち、佐川氏は2017年7月、国税庁長官に、当時の理財局次長(中尾睦氏)は2019年7月、横浜税関長に、中村(稔)総務課長は2019年8月、駐英公使に、企画課長(冨安泰一郎氏)は内閣官房内閣参事官に、田村(嘉啓)国有財産管理室長は2017年7月、福岡財務支局理財部長に、それぞれ栄転している。
この6人に対する財務省の処分はそれぞれ、佐川氏が「停職・3カ月相当(すでに退職、懲戒相当)」、中尾氏が「戒告」、中村氏が「停職・1カ月」、冨安氏が「減給20%・3カ月」、田村氏が「減給20%・2カ月」の懲戒処分。また、杉田氏は「口頭厳重注意」の戒告という、軽い処分だった。
一方、大阪地検特捜部は2019年3月、佐川氏をはじめ、決済文書改竄に関わった財務省幹部らを不起訴処分とした。
他方で、赤木氏の自殺が公務被災であったことを示す人事院から渡された文書70ページは、ほぼ全ページにわたって全て黒塗りのものが渡されるという、前代未聞の事態となっていた。
「佐川さん、どうか改竄の経緯を、本当のことを話してください」!
会見の冒頭、代理人の生越弁護士が遺族である赤木氏の妻のメッセージを読み上げた。
「夫が亡くなって2年経ちました。あのときどうやったら助けることができたのか。いくら考えても、私には助ける方法がまだ見つかりません。心のつかえが取れないままで、夫が死を決意した本当のところを知りたいと思っています。夫が死を選ぶ原因となった改竄は、誰が何のためにやったのか、改竄をする原因となった土地の売り払いは、どうやって行われたか。真実を知りたいです。今でも近畿財務局の中には、話す機会を奪われ、苦しんでいる人がいます。本当のことを話せる環境を、財務省と近畿財務局が作っていただき、この裁判で、すべてを明らかにしてほしいです。そのためには、まず佐川さんが話さなければならないと思います。今でも夫のように苦しんでいる人を助けるためにも、佐川さん、どうか改竄の経緯を、本当のことを話してください。よろしくお願いします」
生越弁護士によると、今回の提訴の被告は国と佐川氏の二人。国に対しては1億712万8017円、佐川氏に対しては550万円の請求を立てている。訴状によると、財務省近畿財務局職員であった赤木氏は、佐川氏ら財務省幹部の指示にもとづき、森友学園に対する国有地売却の決裁文書を3回から4回にわたり改竄することを強制された。また、この文書改竄作業や国会対応にあたり、長時間労働・連続勤務を行った。こうしたことによる心理的負荷が過度に蓄積した結果、赤木氏は鬱病を発病し、自殺した。また、訴状によると、赤木氏の妻が国と佐川氏を訴えた目的は3つある。
第一に、赤木氏の自殺の原因とその経緯を明らかにすること。赤木氏が自殺に追い込まれた原因と経緯がうやむやにされ、自殺がなかったことにされるのは、到底受け入れられない。
第二に、行政上層部の忖度と保身で、現場の職員が苦しみ自殺する事が二度と無いようにすること。赤木氏の妻は、この訴訟を通じて行政内部の問題点が明らかになり、今後その問題点を踏まえて適切な対策がとられることを望んでいる。
第三に、誰の指示でどのように改竄が行われ、その結果どのように嘘の答弁が行われたのか、公的な場で説明すること。赤木氏は自殺直前に作成した手記に、「この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55歳の春を迎えることができない儚さと怖さ)」と書いている。生前、赤木氏は森友学園案件に関する文書改竄について、自ら説明したいと望んでいた。
生越弁護士は、訴状について会見で次のように述べた。
「改竄に至る経緯を、財務省の報告書や赤木氏の手記を元に訴状に書いた。その後には、鬱病になられてから、病気で休まれるまでに経緯を書いている。彼が苦しんだ状況が書かれている。その後は亡くなるまでの経緯で、捜査機関から任意の取り調べの話が来て、赤木氏が苦しむ様子が書かれている。資料の手記は、ワープロと手書きの遺書を3通公開している。それは自殺の直前の平成30年3月に書かれているのではないかと考えている。提訴に至った経緯、なぜ訴訟をせざるを得なかったのかということは重要だ。端的に言えば、財務局も財務省も赤木氏の死にちゃんと向き合ってこなかった。原告はどうやって夫が死んだか、佐川氏にも手紙を書いたし、話を聞こうとしたが、回答は返ってこなかった。原告はお墓参りにきてほしいと、麻生大臣と佐川さんに来てほしいと希望していたが、麻生氏は『遺族が来てほしくないと言った』と国会で答弁した。それにより原告は非常に傷ついた。提訴にいたった最後のダメ押しは、公務災害の認定を原告は受けており、それに関する情報公開請求を行なったが、出てきた資料が本当に過剰なまでに真っ黒で、何もわからない。原告はなぜ夫が死んだのかを、任意で尋ねても教えてもらえない。情報公開しても教えてもらえない。そうなると残された道は訴訟しかないということになった。佐川氏に対する損害賠償請求について、国家公務員は個人責任を負わないという最高裁判決があるので、佐川氏個人を訴えても不法行為の責任を彼は負わない。そこで佐川氏への請求は2段階になっている。1つは改竄を指示したことの違法性。公務員であった時の行為の過失を問うている。これは国家賠償法が適用されるだろう。2つ目は原告からの説明や謝罪に関して、公務員を退職してから要望が来ているのに、無視をし続けたことの違法性を問うている。この部分は公務員だという言い訳が立たない。我々が重視している『求釈明』。赤木氏の直属の上司の池田統括が、原告の自宅に焼香に訪れた際に、『赤木氏は改竄について詳細なファイルを作っていた。それを見れば、誰の指示でどこを改竄したのか、一目瞭然になっていた』と述べていた。『パソコンに改竄を記録したメモがあった』とも。なので、この訴訟では、そのファイルとメモの存在はまだ明らかではないが、上司が原告に話しているので、存在の蓋然性は高い。これを出せということを被告に求めている」
続いて松丸正弁護士が、人事院から開示された財務省大臣官房長あての「特定疾病の認定について(回答)」という、赤木氏の鬱病による自殺に関する行政文書について、次のように語った。
「過労自殺の遺族が知りたいのは、なぜ大切な人が亡くなったのかという理由だ。故人はまじめで、部下への他者配慮、部下をかばうためにいろんな抵抗をしていた。だから部下が改竄しないように自分で責任を負う形で改竄に加担した。しかも優良な官僚だった。赤木氏の鬱病による自殺は、公務上の災害に認定されたものの、その資料が真っ黒だった。平成29年7月10日に災害が発生し、鬱病を発病したが、それ以外の発病の理由や自殺の理由は、資料は真っ黒だった。赤木さんが死をもって抵抗し、守り訴えようとしたのは何か、認定理由に書いてない。それを訴訟の中で明らかにしたい。官僚組織の中に、是正をもとめて死に至った赤木さんのような官僚がいたことに感動した。官僚組織の中で声を上げる人を支える、公文書管理のコンプライアンス体制をつくるための力になりたい」
「ここまで真っ黒は、ひどい」弁護士も呆れる黒塗りの人事院文書!
以下は、記者会見での記者と代理人弁護士との質疑応答である。
記者「手記とメモについて、どういうところで見つかったか、説明を」
生越弁護士「平成30年2月(作成中)とある手記は、お亡くなりになった後、PCに保存されているのが見つかった。亡くなる直前まで更新され、最後まで書き続けておられたのだろう。手記の2つ目、30年3月7日、最後になぜか3月5日13時20分と書いてあるものは、もともとノートにあったが、ノートから切ってはずされたと聞いた。死後見つかった」
記者「自宅のパソコンか? 遺族が見つけたのか? いつ、つくられたのか?」
生越弁護士「自宅のパソコンで、そう認識している。いつ書いたかは不明だ。何度か遺書を作っていたと聞いた。時系列で、だんだん原告のことしか考えられなくなったようで、長いものは初めに書かれたのではないか」
記者「警察が押収して戻ってきたのか?」
生越弁護士「遺書は、警察は押収しないと思う。殺人など事件性はなく、警察が持って行ったとは聞いてない」
記者「警察も大阪地検特捜部も入手してないのか?」
生越弁護士「民事訴訟の代理人なので、捜査機関が見たかは関知してない」
記者「奥様が警察に提出したことはないか?」
生越弁護士「推測だが、手記自体が、文春にも書かれていたが、原告が誰にも見せずに持っていたので、捜査機関も見てない可能性はあるが、確認できない」
記者「財務省、財務局も見てないのか?」
松丸弁護士「見てないだろう。近畿財務局職員から『遺書があれば見せてほしい』と言われ、原告は非常に怒りを覚えたと聞いたので」
記者「手記ではさまざまな人が出てくるが、なぜ今回は(訴訟を)佐川氏だけに絞ったのか?」
生越弁護士「スタートは佐川さんで、下の人は個別関与の仕方を特定できてないからだ」
記者「週刊文春の記事で、手記を相澤記者(元NHK大阪記者で現大阪日日新聞論説委員・記者の相澤冬樹氏)に見せた後、妻が死を考えたとあるが、事実か? そこからどう変遷して提訴に至ったのか?」
生越弁護士「記事の真偽は不明だが、提訴せざるを得ない状況に追い込まれ、勇気を振り絞って提訴した。訴訟準備は短期間で、苦しい状況だった」
記者「情報開示の、非開示の理由はなぜ? 奥さんがご主人の死因を知りたくても、この処理は普通なのか?」
生越弁護士「一般労働者の労災は、発言者は隠すが、大枠のストーリーは出る。ここまで真っ黒は、ひどい」
松丸弁護士「『機密性2』と記載されており、これは行政に支障が生じるという意味。しかし、地方公務員、国家公務員なども含め、ここまで徹底しているケースは初めて見る。遺族にも黒塗りというのは私も初めて。理由さえ教えてくれない。遺族にとっては、2度殺されたに等しい」
生越弁護士「これでは長時間労働か何かも全くわからない。遺族の意志に反している。過剰に黒塗りしている」
松丸弁護士「黒塗りの説明はされないまま。何の根拠かもわからない。このままでは、もし公務外(災害)にされても争えない。今回は公務災害に認定されているが」
記者「赤木さんが抵抗していた、安倍政権下で安倍首相の2月17日の発言以降、首相の発言に沿った記録改竄をやらざるを得なかった、ということについて。現在も安倍政権が続いている中で、今回の黒塗りの、普段の公務災害の認定からして不自然な情報公開が起こったと先生は思っているか?」
松丸弁護士「(うなずく)」 ・・・  
 
 

 

●近財局職員の妻、国と佐川氏提訴 森友問題、改ざん強制され夫自殺 3/18
学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた財務省近畿財務局の男性職員が、佐川宣寿元国税庁長官(62)の指示で決裁文書改ざんを強制され自殺に追い込まれたとして、妻が18日、国と佐川氏に計約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。妻側は同日「決裁文書の差し替えは事実で、元はすべて佐川氏の指示です。パワハラで有名な佐川氏の指示には誰も背けない」と記された職員の手記や遺書を公表した。職員は、2018年3月に自殺した近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木俊夫さん=当時(54)。手記には「森友事案はすべて本省の指示」となどと記述されている。 
●森友問題 自殺職員の妻が国と元国税庁長官を提訴 3/18
学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、2018年3月に自殺した近畿財務局の男性職員の妻が18日、国と佐川宣寿・元国税庁長官に計約1億1000万円の損害賠償を求め、大阪地裁に提訴した。遺族は、自殺に追い込まれた原因を明らかにしてほしいと訴えている。
男性職員は、近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木俊夫さん(当時54歳)。遺族側は、赤木さんが残した手記や遺書を公表した。上司の指示で文書を書き換えさせられたとして「すべて佐川氏の指示だった」などとつづられている。
訴状などによると、赤木さんは国有地売買の交渉・契約を担当する部署に所属。大阪府豊中市の土地が大幅に値引きされて学園に売却された問題が発覚した17年2月以降、何度も指示を受けて改ざん作業をさせられた。手記には指示に抵抗した経緯が記され、「経験したことがないほど異例な事案」「財務省が国会等で虚偽の答弁を貫いている」などと書かれている。
赤木さんは体調を崩し、17年7月から休職。改ざんが報道で表面化した直後の18年3月7日、自宅で命を絶った。遺書には「手がふるえる 恐い 命 大切な命 終止符」などと記されている。
改ざんを巡っては、財務省が18年6月、理財局長だった佐川氏=発覚後に国税庁長官を辞任=が主導したとする調査報告書を公表。17年2〜4月にかけて文書14件が改ざんされ、安倍晋三首相の妻昭恵氏の名前などが削除されていた。
告発を受けた大阪地検特捜部は有印公文書変造などの容疑で捜査したが、佐川氏や改ざんに関与した財務省職員ら計38人全員を不起訴処分にした。 
●安倍首相「改ざんはあってはならない」 森友問題で自殺職員の遺書 3/18 
安倍晋三首相は18日、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の公文書改ざん問題を巡り、自殺した財務省近畿財務局の職員の遺書に佐川宣寿理財局長(当時)の指示だったと記されていたことに関し、「大変痛ましい出来事で、本当に胸が痛む。改めてご冥福をお祈りしたい」と語った。そのうえで「財務省で麻生(太郎)大臣の下で事実を徹底的に明らかにしたが、改ざんは二度とあってはならず、今後もしっかりと適正に対応していく」と述べた。首相官邸で記者団の質問に答えた。  
●財務省官房長「手記 報告書の内容と大きな齟齬(そご)ない」  3/18 
自殺した近畿財務局の職員の手記について、財務省の茶谷栄治官房長は参議院財政金融委員会で、おととし財務省が公表した改ざん問題に関する調査報告書の内容と大きな齟齬(そご)はないという認識を示しました。この中で財務省の茶谷官房長は、自殺した近畿財務局の職員の手記について「報道を通じて、今回初めて知ったところだ。問題の調査をしている最中にはわれわれはこの手記は見ていなかったが、調査では大臣官房の人事担当部局を中心に多数の職員から聞き取りをしたほか、関連文書や職員のコンピューターの確認をできるかぎり行った結果を取りまとめた」と述べました。そのうえで「報道された手記では、決裁文書の改ざんなどが財務省本省の主導で行われたという趣旨の記述が多く見られるが、調査報告書でも国有財産行政の責任者だった理財局長が方向性を決定づけるなど、一連の問題行為は理財局の指示により行われたものであり、近畿財務局の職員が理財局のたび重なる指示に強く反発したことをまさに認識している。この手記と調査報告書に大きな齟齬はないものと考えている」と述べました。
麻生副総理兼財務大臣は参議院財政金融委員会で、自殺した近畿財務局の職員の弔問に訪れるつもりがあるか対応を問われたのに対し「当時、ご遺族の了解をいただければ弔問させていただきたいと思っていたが、ご了解はいただけなかった。ご遺族の気持ちに反したことをしたいわけではなく、私たちとしては伺わせていただければという気持ちに変わりはないので、ご遺族の意向を直接きちんと伺いたい」と述べました。 
 
 
  3/19 

 

●元NHK相澤冬樹が放った渾身のスクープ 3/19 
「森友」で自殺に追い込まれた財務省職員赤木の遺書がもっと早く出ていれば安倍に大打撃になったのに!
相澤冬樹大阪日日新聞記者が大スクープを放った。媒体は週刊文春。タイトルは「森友自殺財務省職員 遺書全文公開『すべて佐川局長の指示です』」 2年前の2018年3月2日、朝日新聞が「財務省が森友の国有地取引関連の公文書を改ざんした疑いがある」と報じた。その5日後の3月7日、改ざんを命じられた近畿財務局職員・赤木俊夫(54)が自宅で首を吊って自殺した。当時、赤木の妻に遺書とメモが残されている、そこには文書の書き換えを指示されたとあり、佐川宣寿(のぶひさ)理財局長や麻生太郎財務相の名前が書かれているといわれた。相澤はNHKで司法を担当していて、森友学園事件を追っていた。彼がNHKを辞めてから書いた『安倍官邸VS.NHK』(文藝春秋)によると、ある記者が赤木のメモの内容を掴んできた。そこには、改ざんは財務局が勝手にしたのではなく、本省からの指示があったこと。佐川(前理財局長)の指示で書き換えたこと。決裁文書の調書の内容について、上から、詳しく書きすぎているといわれ書き直しをさせられた。このままでは私一人の責任にされてしまう、などと書かれていたというのである。早速、遺族取材を始め、赤木の父親、妻にあたるが、一切の取材を拒否されてしまう。「こうしてご遺族の取材は頓挫した」(同書より)のである。
安倍と近い小池NHK報道局長に疎んじられた相澤に赤木の妻から近づいた
森友学園取材を続ける相澤は、安倍官邸と近い小池英夫報道局長に疎んじられ、記者職から外されてしまう。相澤は、「森友事件は私の人生を変えた」と思い定め、この事件の深層を追うためにNHKを辞めて大阪日日新聞へと移るのだ。相澤とは2019年の2月に会って話を聞いている。彼は「森友事件は森友学園の事件ではない、国と大阪府の事件だ」といった。自殺した財務省職員については、「改ざんはなぜ行われたのか、どんなふうに行われたのか、亡くなった方はどうしてあそこまで追い込まれたのか。そういうことを解明して、彼の無念を晴らしてあげたい」といったが、この事件の闇は深いから解明には時間がかかる、「正直、一生かけてやっても、結局、最後の最後の本当のところは分からなくて、死ぬ間際に真相解明できませんでしたと言って死んでいくかもしれませんけれど、そのぐらい一生かけてやっていきますよという覚悟」でやるといい切った。それがこのスクープに結実したのである。
週刊文春の相澤の手記によると、森友学園事件を追って上司とぶつかり、NHKを辞めたことを知った赤木の妻のほうから「会いたい」と連絡があったという。赤木が亡くなってから半年余りが経った11月27日に、大阪・梅田の喫茶店で会った。彼女は、「これ、見たいですよね」といいながら、パソコンの中にあった夫の手記を手渡したそうだ。内容の重大性はよくわかったが、コピーもメモも写真も断られたという。後に彼女が相澤にこういったそうだ。この手記を相澤に渡して、そのまま自分も夫の後を追うつもりだった。だが、相澤の興奮する姿を見て、手記を渡すのも死ぬのもやめたそうである。今年の3月7日に赤木俊夫の三回忌を迎えたが、その間、財務省は彼女に対して、誠意のない態度をとり続けてきたという。そうしたことで、彼女の気持ちにも変化が出て、手記を公開することを決意し、それと同時に、3月18日、夫・俊夫が自殺したのは、「公文書改ざんに加担させられたからだなどとして、赤木さんの妻が18日、国と佐川宣寿・元同省理財局長に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした」(朝日新聞3月19日付)のである。
「森友問題 佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰もいわない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止符」 これは赤木が死の直前に書き遺したものである。「手がふるえる」という箇所に下線が引いてあるそうだ。手記では、2018年2月から7月まで、「これまで経験したことがない異例な事案を担当し」て、強度のストレスが蓄積して7月から病気休暇を取るに至ったことや、森友学園への国有地売却問題で、財務省が国会等で虚偽答弁を貫いていることが、この事案を長期化・複雑化させていると指摘している。さらに「佐川理財局長の指示を受けた、財務本省理財局幹部、杉田補佐が過剰に修正箇所を決め、杉田氏の修正した文書を近畿局で差し替えました」。「3月7日頃にも修正作業の指示が複数回あり現場としてはこれに相当抵抗しました」が、本省から来た出向組の小西次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ」と調書の修正を悪いこととは思わず、あっけらかんと修正作業を行ったというのである。赤木は「大阪地検特捜部はこの事実関係を全て知っています」と書いている。だが、大阪地検は全てを知りながら、全員不起訴にした。赤木の心の支えは、7月の人事異動で担当部署が変わることだったが、他の職員も上司も全員異動させられたのに、赤木だけが同じ職場に残されてしまったのだ。
「なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止符」
この当時、赤木は、自分も罪に問われる、検察に狙われていると怯えていたという。家で療養している赤木に、久保田検事から電話がかかってくる。「ぼくは職場に復帰したら検察に呼ばれる。検察は恐ろしいとこや。何を言っても思い通りの供述を取る。(中略)ぼくが何を言っても無理や。本省の指示なのに最終的には自分のせいにされる。ぼくは犯罪者や」 普通の生活を送ってきた公務員なら、検察の事情聴取と聞いただけで怖れ、震えるのは当然のことであろう。財務省が全ての責任を負うべきなのに、最後は逃げて近畿財務局の責任にする。「怖い無責任な組織です」(赤木) 手記の最後に、「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」の筆頭に、佐川理財局長の名前を書いている。だが、「この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することが出来ません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(五十五歳の春を迎えることができない儚さと怖さ)」、最後に「気が狂うほどの怖さと、辛さ こんな人生って何?」という言葉と「さようなら」で結ばれている。この手記を読んだ人間の何人かは、彼は弱い人間だ、何も死ななくてもいいのに、と思うかもしれない。私も読みながら、そう感じたことは事実である。だが、赤木俊夫という人間は、巨大な財務省という組織と闘うためには、死をもって告発するしかないと考えたのであろう。赤木の妻には失礼ないい方になるが、夫の死の直後に、これを公表していれば、安倍政権と財務省に大きな打撃を与えられたはずである。もちろん、今回のスクープを、コロナ騒動でうやむやにしてはならないこと、いうまでもない。森友事件も加計学園問題も、安倍首相と妻の昭恵の関与は明らかだと思うが、メディアは彼らを追い詰められていない。
朝日と東京は一面トップ。読売は第二社会面に小さく載せただけ
赤木の遺言を無にせず、第2、第3の相澤記者が出て来こなくては、彼も浮かばれまい。今朝の朝日新聞と東京新聞は一面トップでこれを報じていたが、読売新聞は第二社会面に小さく載せただけである。読売新聞はメディアとして恥ずかしくはないのだろうか。恥ずかしいといえば、今日発売の週刊現代を、迷った末に買うのをやめたのも、現代OBとして恥ずかしく感じたからである。今週の週刊文春を見て、週刊現代の編集部員たちは何も感じないのだろうか。時代と切り結べとまではいわないが、巻頭が「人生は最後に間違える」というヒマネタ特集では、週刊と名乗るのをやめるべきではないか。
コロナ関連はやってはいるが、「医者がためらいながらも出している薬」「偏差値70の有名私大ミスコン優勝者 初のAV現場」「涙は心の汗だ 僕らは青春ドラマで大きくなった」という特集を、部員たちは喜々としてやっているのだろうか。520円も出して買う読者がどれほどいるのだろう。今度こういう企画をやったらいい。「520円で買えるモノ大特集」。牛丼ならお釣りがくる。安い居酒屋なら、日本酒が2合と少し飲める。平野啓一郎の『マチネの終わりに』(文春文庫)はKindle版だと468円だ。いかに520円が"理不尽"な値段か、考えたほうがいい。
ところで、新型コロナウイルスの感染拡大は衰えを見せず、安倍首相の最後の悲願である東京オリンピック・パラリンピックも、開催、中止、延期で揺れている。週刊新潮は「五輪は消滅」とタイトルを打ち、IOCのバッハ会長やトランプ大統領の、「世界保健機関(WHO)の助言に従う」、「無観客で開催するよりも1年延長する方が良い選択肢だ」という発言で、「中止・延期」が現実味を帯びてきたと報じている。 
●森友改ざんで自殺の職員「佐川氏の指示」 手記・遺書公表 3/19 
学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん=当時(54)=が、佐川宣寿(のぶひさ)元国税庁長官(62)の指示で決裁文書の改ざんを強要され自殺に追い込まれたとして、赤木さんの妻が十八日、佐川氏と国に約一億一千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。妻は「元はすべて佐川氏の指示。パワハラで有名な佐川氏の指示には誰も背けない」とする赤木さんの手記や遺書を公表。代理人を通じて「夫が死を決意した本当のことを知りたい」と訴えた。
訴状などによると、当時財務省理財局長だった佐川氏は、安倍晋三首相が国会で国有地売却問題について「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁した後の二〇一七年二〜四月、「野党に資料を示した際、森友学園を厚遇したと取られる疑いがある箇所は全て修正するように」などと財務省幹部に指示。幹部は近畿財務局に改ざんを命じた。
近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木さんは二月二十六日、同局の上司から呼び出されたのを皮切りに、三〜四回にわたって決裁文書から安倍昭恵首相夫人や政治家らの関与を示す部分を削除する作業を強制された。
赤木さんは「こんな事をする必要はない」などと強く反発したり涙を流したりして抗議したが、本省や上司の指示のためやむを得ず従った。
この間、連続出勤や午前二〜三時までの長時間労働が重なり、七月にうつ病を発症して休職。十二月には大阪地検から電話で事情聴取を受け「改ざんは本省のせいなのに、最終的には自分のせいにされる」と心理的負荷が強まり、翌一八年三月七日に自殺した。
手書きの遺書には「これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる なんて世の中だ」などと書かれていた。
妻は国に対し「健康状態の悪化を容易に認識し、自殺を予見できた」として約一億七百万円を、佐川氏には「改ざんの強制で極めて強い心理的負荷を受けることは予見できた」として五百五十万円を求めた。
妻は提訴の理由について「死を選ぶ原因となった改ざんは誰が何のためにやったのか。土地の売り払いはどう行われたのか、真実を知りたい」と代理人を通じてコメントした。
財務省は「(訴状の)内容を確認していないことから、コメントは差し控えたい」としている。
政府は十八日、森友学園問題で決裁文書の改ざんに関わり自殺した財務省近畿財務局職員の手記公表を受け、改ざんの経緯などを改めて調査する考えはないとした。
安倍晋三首相は、官邸で記者団から手記に関する受け止めを聞かれ「財務省で事実を徹底的に明らかにした。改ざんは二度とあってはならず、今後も適正に対応していくものと考えている」と語った。再調査には触れなかった。自らの責任についての質問には、答えずに立ち去った。
財務省の茶谷栄治官房長は参院財政金融委員会で、二〇一八年六月に公表した調査報告書では、改ざんが行われた当時に理財局長だった佐川宣寿氏が方向性を決定付け、理財局が一連の行為を指示したと結論づけていると説明した。
自殺した職員が理財局からの度重なる指示に反発したことも認定したとして「新たな事実は見つかっていないと考えられる。再調査は考えていない」とした。
麻生太郎財務相は同委で「関与した職員に厳正な処分を行い、私自身も閣僚給与を自主返納した」として問題は決着済みと強調。「大臣の職責を果たしていきたい」と、改めて辞任を否定した。 
●近畿財務局・赤木俊夫上席国有財産管理官の遺した「手記」の衝撃 3/19
パソコンに遺された文書には財務省現職幹部の名前が
自ら命を絶つ前に文書を遺していたらしい。存在があるとささやかれていながら断片的にしか洩れ伝わっていなかった「遺言」ともいうべき手記の全文が大阪日日新聞の相澤冬樹記者により週刊文春2020年3月26日号で公開された。
森友学園事件が火を噴いた17年2月以降、財務省の佐川宣寿理財局長は国会での野党議員の質問に対し、「確認しましたところ、近畿財務局と森友学園の交渉記録というものはございませんでした」「本件につきましては、平成28年6月の売買契約締結をもちまして既に事案が終了してございますので、記録がのこっていないということでございます」と繰り返し、何度も質疑が紛糾した。
騒動がこのまま忘れ去られてしまうのかと思われた翌18年の3月2日、朝日新聞は森友学園の土地取引をめぐる財務省の決裁文書が改ざんされていたと報道した。その5日後に命を絶たれたのが近畿財務局の職員である赤木俊夫氏である。赤木氏が改ざん行為に深く関わっていたのではないかとも取り沙汰された。
3月9日、赤木氏の自殺が報じられるや、国税庁長官になっていた佐川氏は辞任を表明。3月12日に財務省は14の決裁文書で改ざんが行われていたと認め、6月4日になって改ざんに関する調査報告書を発表した。しかし、その内容はというと、命令過程について徹底的にぼかされていて、誰がどのように指示をし、いかにして行為に至ったのかまったく書かれておらず、霞ヶ関文学の極北のような悪質な記述に終始している代物だった。
財務省は決裁文書を改ざんしただけではない。その文書を国権の最高機関たる国会や憲法上の独立機関である会計検査院、さらには最強の捜査機関と目される大阪地検特捜部にまで提出していたのである。
国家の根本を踏みにじるような数々の行為に手を染めていたにもかかわらず、大阪地検特捜部は早々に不起訴処分を決めてしまった。公文書改ざんの原因や目的はおろか、誰の指示で行われたのかさえいまだ明らかになっていない。
うやむやなまま闇に葬られようとしている森友学園事件の真相。
そんななか、相澤氏の記事が放たれた。
赤木氏はやはり公文書の改ざんに巻き込まれていた。そして自宅のパソコンに「手記」と題した詳細な文書が遺されていたのである。
詳しくは記事を読んでもらいたい。
手記のなかで特に私が気になったのは財務省本省が近畿財務局に対し、会計検査院への検査忌避を明確に指示したと記載されていた点である。
憲法90条は国の収入支出の決算を対象に検査が行われること、内閣が作成する決算を検査する主体が会計検査院であること、そして会計検査院が検査報告を作成することを定めており、行政権の担い手である内閣に対して独立した地位の機関であることを示している。
財務省本省は近畿財務局に対し、これほど独立性の高い憲法上の機関へ「法律相談関係の検討資料は『ない』と説明する」などと嘘をつくよう指示していたというのである。
改ざん発覚後の18年11月22日に会計検査院が公表した「『学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について』(平成29年11月報告)に係るその後の検査について」において、「改ざんされた決裁文書が提出されたこと」および「交渉記録が隠蔽されていたこと」の2点において、財務省に会計検査法26条違反があったと断じている。しかし、同法31条第2項後段の規定に基づく懲戒処分については見送られた。
結局のところ、誰も責任を取っていないのである。
今回の手記はあらためて会計検査院の中立性や独立性に疑問を投げかけるものとなった。
もう一点、目にとまったのは公文書改ざん発覚当時の理財局長だった太田充氏の虚偽答弁について繰り返し言及していることだ。
実は赤木さんが亡くなられた後も太田氏は疑惑の残る国会答弁を続けている。例えば18年4月11日の衆議院予算委員会で川内博史氏から「決裁文書の調書の別紙『これまでの経緯』の中に安倍昭恵総理夫人の名前が3ヵ所記載されていることを中村稔総務課長は十分に知っていたということでよろしいでしょうか?」と尋ねられた際、「中村理財局総務課長に確認したところ、それは責任はありますが、正直に言うと、その時点においてそこまでちゃんと見ていなかった」と、自らの部下は文書の中身を確認しないまま決裁をしたなどという理解不能な答弁をした。
さらに太田氏については会計検査院の調査に介入すべく国土交通省航空局の蝦名邦晴局長(当時)と交わした機密メモも流出している。財務省は会計検査院に改ざん文書を提出するだけでは飽き足らず、口出しも画策していたのだ。
太田充氏の現在の肩書きは主計局長。財務省のトップである次官の地位をうかがう枢要な地位にある。果たして太田氏は財務省の舵取りを任せるに足る資格のある人物なのか。あらためて当時の彼の言葉の検証が待たれるところである。
また赤木氏は「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」として、佐川宣寿理財局長のほか、(中尾睦)理財局次長、中村(稔)総務課長、(冨安泰一郎)国有財産企画課長、田村(嘉啓)国有財産審理室長らを挙げていた。
赤木氏亡きあと、これらの幹部は順調に出世を遂げている。改ざん調査報告書で「中核的な役割を担っていた」と書かれた中村稔総務課長に至っては、その後、駐英公使に抜擢されているのであるから皮肉なものだ。
核心に触れる文書は隠蔽しつづけたままの財務省
20年3月18日、赤木氏の妻は「佐川宣寿元国税庁長官の指示で決裁文書改ざんを強制され自殺に追い込まれた」として、国と佐川氏に計約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。「なぜ夫が死ななければならなかったのか、裁判で追及して真相を明らかにしたい。賠償金は何らかの形で世の中のために役立てたい」と話しているという。
大阪の司法記者クラブで行われた代理人による記者会見のなかで気になるやり取りがあった。近畿財務局の上司・池田靖統括国有財産管理官が弔問に訪れた際、「赤木さんは改ざんを巡る詳細なファイルを作っていた」と明かしたのだという。ファイルは大阪地検特捜部に任意提出されたらしく、弁護士は「裁判ではそれを出させたい」と会見の席で語った。
もしそのファイルが開示され、そこに改ざんを巡る命令系統や指示内容についての記載があるならば、疑惑解明への糸口になるだろう。ただし、法廷という場で新たな事実が明らかにされるのかどうか、現時点ではハッキリとしない。
真相究明に向け、この民事訴訟以外にもやるべきことは残されている。
改ざんが明らかになった18年3月以降、国は数多くの書類を公開した。しかしまだまだ隠された文書があるのだ。
まず豊中の国有地が売却される前の近畿財務局の交渉記録(応接録)は17年5月23日に公開されたものの、籠池氏が近畿財務局側に昭恵夫人との写真を提示した14年4月28日のものはなく、書き換え前決裁文書に日付けの記載のある13年7月2日、10月15日、10月21日、14年1月9日などの交渉記録も見あたらない。また土地が売却された16年5月6月の文書が少なく、不自然極まりない。
土地が売却された後の近畿財務局の交渉記録(応接録)は改ざん調査報告書が提出された17年6月4日に公開された。しかし、安倍首相による「私や妻が関係していたということになれば、総理大臣も国会議員も辞めるとはっきりと申し上げておきたい」という国会発言の翌日である17年2月18日から籠池氏が小学校の認可申請を取り下げた3月10日の前日までのものが抜け落ちていた。公文書の改ざんが命じられ、実行に移された期間のものだけがスッポリ消えているのである。
また財務省本省と近畿財務局の交渉記録については、立憲民主党の川内博史衆議院議員が、17年2月15日から4月14日までの森友国有地に関する国会理財局内想定問答とともに、18年6月13日に開示請求したが、同年8月13日付けで不開示決定通知書が届いたため、総務省の「情報公開・個人情報保護審査会」に不服を申し立てた。同審査会が19年6月17日付けで財務省関連の2件について不開示は違法との答申を出したところ、財務省は19年11月6日になってようやく開示したものの、役所関連のやり取りのほぼすべてが黒塗りだった。
赤木氏は遺された手記のなかで「本省の指示(無責任体質の組織)と本省による対応が社会問題を引き起こし、嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです」と綴っている。
財務省は行政の公正性が強く疑われる事態を招いていることを肝に銘じ、改ざん指示の命令系統を明らかにすべく、すみやかに黒塗りを外したものを公開しなくてはならない。
今回の訴訟は佐川宣寿元理財局長が被告となっている。
ただしすべての責任は佐川氏個人に還元されるべきものなのだろうか。
赤木氏の手記を読んだ限りにおいて、佐川氏本人から直接指示を受けた形跡はない。「当時の佐川局長が判断したものと思われます」という推量の文言や「現場の私たちが直接佐川局長の声を聞くことはできません」といった表現もあった。
また財務省の改ざん調査報告書の中ほどには、「17年3月20日(月・祝日)に、佐川宣寿理財局長を含めて改めて議論を行うこととなった。その際、佐川宣寿理財局長からは『同年2月から3月にかけて積み重ねてきた国会答弁を踏まえた内容とするよう』念押しがあった。遅くともこの時点までには、佐川宣寿理財局長も、決裁文書の書き換えを行っていることを認識していたものと認められる」とある。
最初に決裁文書の書き換えが行われた17年2月26日の時点では、佐川氏は「改ざんが行われていた」ことを明確に認識していなかったともとれるのだ。
佐川氏が理財局長に就任したのは16年6月17日のこと。森友学園が国側と国有地の売買契約を締結したのは同年6月20日なので、土地取引に実質的な関わりはない。佐川氏や財務省理財局には公文書改ざんという常識外の行動に至る動機やメリットが見当たらない。
国家の根本を毀損する公文書改ざんという行為を決定・指示した真の人物は誰なのか。
この国の民主主義を守るために突き止めなくてはならないのはまさにこの点なのである。 
●公文書改ざんで自死した財務省職員の「遺書」 3/19 
週刊誌を読んで涙を流したことなど一度もないが、「週刊文春」に掲載された近畿財務局職員赤木俊夫氏の遺書と手記を読んでいるうちに涙が出た。そしてなぜ涙が出たのかを思った。自殺せざるを得ないところに追い詰められた赤木氏に同情したからか。それもあるだろうがそれだけではない。トカゲのしっぽ切りで追い詰められ自死した人を何人も知っている。だがその一つ一つに涙を流したことなどない。組織の非情な論理に命を奪われた人に同情するより、組織の非情な論理に対する怒りが勝っていたからだ。ところが今回はそれと違った。赤木氏の遺書には、公文書改ざんを命じたのは当時の佐川理財局長で、誰もその指示には逆らえなかったとあり、それがまかり通った財務省を糾弾しているが、私の目にはこれが一財務省の問題とは思えないのだ。
安倍政権の持つ体質というか、この国全体のありようと結びついて、赤木氏の悲劇は起きた。それが私の考えである。従って赤木氏は現在の日本社会の犠牲者で、責任の一端は日本社会を構成する国民にもある。私もその一人だ。その無念さが涙となって流れ出たような気がする。
これまで「森友問題」を巡ってブログに書いてきた要点を整理しながら赤木氏の悲劇を考えてみたい。まず私は財務省が国有地を特定の者に有利に払い下げる例はありうると思っていた。例えば大手新聞社はみな国有地を払い下げられて本社ビルを都心に構えている。従って「森友問題」が最初に発覚した時、「よくある話」の一つと思っていた。ところが問題は、その対象が安倍総理夫人が名誉校長を務め、子供たちに「教育勅語」を暗唱させる戦前回帰型の学校だった。それを国際社会に知られれば、安倍政権に対する各国の見方に影響が出る。そこで払い下げを見直すなど穏便な方法で収めるのかと思ったら、安倍総理は「私も妻も関係していたら総理も国会議員も辞める」と国会で全面否認に出た。これに私はびっくりした。「よくある話」が「相当にヤバイ話」が背後にあるとしか思えない対応だからだ。
安倍総理の答弁は自らが考えるより、秘書官たちから振り付けられたものであることは以前から分かっていたので、今井尚哉秘書官がこの問題に関与し、自分の関与が表に出ることを恐れ、全面否認という強硬姿勢を取ることで、問題の隠蔽を財務省に促す狙いがあったのではないかと思った。この総理答弁が赤木氏の悲劇の出発点である。 その後分かったことは、今井秘書官が通産省時代の部下を安倍昭恵氏の秘書官に付け、森友学園の理事長夫妻との面会などに同行させ、また財務省との連絡役もやらせていたことだ。森友学園の籠池前理事長は安倍昭恵氏の存在を財務省が知ったところから、国有地払い下げ交渉に「神風が吹いた」と語っている。私は当初、安倍総理側が籠池前理事長を「しっぽ切り」せず、囲い込んで口封じするのかと思っていたら、それも違った。「安倍ファン」を自認していた籠池前理事長を切り捨て、籠池前理事長の言うことを信用してはならないと国民に思わせるためか、大阪地検特捜部は補助金詐欺罪で前理事長夫妻を逮捕・起訴し、大阪地裁は前理事長に懲役5年という厳しい実刑判決を言い渡した。
安倍総理の国会答弁を受けて、財務省の佐川理財局長は「交渉記録はすべて破棄した」と国会で答弁する。それを「忖度」とメディアは表現したが、官僚が「忖度」するのは当たり前で、わざわざ言う必要もない。私は逆に財務省は2度も延期された消費増税から安倍総理が逃げられないようにする戦術として、この問題を使い始めたと思った。要するに安倍総理に貸しを作り、森友問題で守り抜くから消費増税をよろしくと言うためだ。その路線を忠実に実行したのが佐川理財局長である。徹頭徹尾「クロ」を「シロ」と言い続けたが、安倍総理を守るためではない。悲願の消費増税を実現するためである。その甲斐あって佐川氏は国税庁長官に上り詰めた。
ところが現場の近畿財務局には交渉記録が存在していた。しかもその記録には「筋の悪い案件」としての記載が随所に見られる。つまり現場の財務官僚は総理夫人との関係を誇示して値引きを迫る籠池前理事長に反発していた。それを押さえつけたのは、総理夫人の面倒を見ていた今井秘書官、そして消費増税を狙う財務官僚ではないかと私は考える。そこで「公文書改ざん」というやってはならない犯罪が現場に押し付けられた。抵抗しながらも逆らうわけにいかず、赤木氏は犯罪に手を染める。それだけなら自殺にまで追い詰められることはなかった。しかし自責の念に駆られる赤木氏が異動を希望したのに、異動はかなえられず、しかも国有地に関する資料がすべて職場から消えていた。 ・・・ 
 
 

 

●「悲しすぎる…」森友で自死職員の妻 麻生財務相「再調査せず」発言に 3/19
冒頭の写真は、財務省近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木俊夫さん。4年前、2016年の文化の日に、上野の東京国立博物館で開かれていた篆刻家の小林斗アンの展覧会に夫婦で訪れた時の写真だ。屈託のない笑顔を見せている。篆刻や書道、音楽、建築と幅広い分野に精通すると同時に、職場では真面目で明るい公務員として務めてきた赤木さんの人生は、この翌年2月、森友事件で暗転。公文書の改ざんを上司に強要され、心を病んで18年3月7日、自ら命を絶った。享年54歳。55歳の誕生日の3週間前だった。
自死職員の“魂の叫び”にも財務相「再調査しない」
この俊夫さんがのこした「手記」が、18日発売の週刊文春で初めて明らかになった。“遺書”であり“魂の叫び”であり不正を告発する文書である。これまで知られていなかった改ざんの経緯が生々しく綴られていた。その反響は大きく、マスコミ各社が大きく取り上げている。「手記」を掲載した週刊文春は近年にない売れ行きを見せ、完売に近い状態だ。翌19日の麻生財務大臣の閣議後記者会見でも、この件について質問が出た。すると麻生大臣、「新たな事実が判明したことはない。再調査を行うという考えはない」と突き放した。
「もう一度調査してほしいです」
これを知った赤木俊夫さんの妻、昌子さん(仮名)。ポツリと「悲しすぎます…」 そして「麻生大臣は夫の上司やったのに、こんな扱いされるんですね。新事実がなくても、もう一度調査してほしいです。どうして調査してくれないんですか?」 私は答えた。「調べたら自分たちに都合の悪いことがいろいろ出てくると思っているからじゃないですか?それ以外考えられないでしょう。『すべて、佐川理財局長の指示です』なんて、これまで出ていない新事実です。なのに『新事実がない』と言うのは、それこそ事実に反しています」 すると…「(手記には)新事実あるじゃないですか。私はこんな説明、財務省の人から受けていません。なんで調査してくれないんですか?」
組織の風土は「麻生さんの責任」
さらに麻生大臣は、赤木さんが死に追い込まれた原因について「役所内の風土と結論付けている」と述べた。これについて昌子さん、「組織の風土が原因なら麻生さんの責任だと思います」とズバリ指摘した。その上で、「今でも本当のことを話せない状態なんですね。風土はまったく良くなっていません。このままだと、また死人が出ると思います」と気をもんだ。
麻生大臣に来てほしい「再調査を直接お願いしたい」
昌子さんは夫・俊夫さんの死後、麻生大臣に弔問に来てほしいと財務省の職員に伝えた。ところがその後、麻生大臣が「遺族が来てほしくないということだったので伺っていない」と国会で答弁しているのを見て唖然とした。「私、そんなこと言ってないのに…」 今回の麻生大臣の「再調査しない」発言を知って昌子さんは改めて思ったという。 「やっぱり麻生さんに来てほしいです。トシくんの前でお参りしてほしい。そしたら私、直接麻生さんにお願いします。『再調査をしてください。なぜトシくんが亡くなったのか、私にわかるように説明してください』って」 昌子さんの決意は固い。「自分で決めてやったことなので大丈夫です。夫のことを思うと負けていられませんから。乗りきりますよ」
麻生財務大臣と安倍首相は遺族の願いにどう応えるのか?
さて、財務省の最高責任者であり指揮監督権者である麻生太郎財務大臣は、亡くなった赤木俊夫さんの妻、昌子さんのこの発言にどう応えるのだろう?遺族に「もう一度調査してください」と面と向かって言われても、「再調査しません」と答えるのだろうか? そして安倍晋三総理大臣は、どう応えるのだろう?「財務省のことは財務大臣に任せる」のだろうか?でも安倍首相は麻生大臣の任命権者であり、政府全体に責任を負うのだが。遺族が再調査を望み、大臣が「しない」と突き放したら、それを放置するのだろうか?  
●麻生財務相「再調査するつもりはない」 3/19 
「森友学園」をめぐる問題で自殺した近畿財務局の職員の手記が公表されたことについて、麻生財務相は19日朝、「手記にもとづいて新たな事実が判明したとは考えられないので、再調査するつもりはない」と述べた。麻生財務相「手記と調査報告書の内容に大きな乖離(かいり)があるであろうとは考えてはおりませんので、そういう状況では再調査を行うということを考えているわけではありません」
麻生財務相はこのように述べ、「森友学園」をめぐる文書改ざん問題で自殺した職員の手記から新たな事実が判明したとは考えておらず、財務省としては調査を尽くしたとして、あらためて再調査するつもりはないという考えを示した。また、自殺した職員の遺族が国と当時の佐川理財局長を相手取って損害賠償を求めて提訴したことについては、「残されたご遺族の方には謹んでご冥福をお祈りする。国を提訴したことについては、訴状が届いていないのでコメントできない」と述べた。  
●近財職員の妻、佐川氏と国を提訴 森友事件巡る自殺 3/19
学校法人「森友学園」に国有地が不当に値引きされた「森友事件」で、公文書の改ざんを迫られ命を絶った財務省近畿財務局の男性職員の妻が、改ざんを指示したと名指しされた佐川宣寿元財務省理財局長と国を相手に18日、総額約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。(3月19日1、2、22、23面に関連記事)
提訴したのは、近畿財務局管財部の上席国有財産管理官だった赤木俊夫氏=当時(54)=の妻。訴状などによると、赤木氏は2017年2〜3月、森友事件が発覚し国会で厳しく追及されていたさなか、国有地の取引について記した公文書を改ざんするよう繰り返し職場で迫られ、抵抗しても財務省幹部らに押し切られて何回も改ざんをさせられた。
これが精神的な負担となり、同年7月にうつ病と診断され休職した後も、現場の自分に責任が押しつけられるのではないかと恐れて病状が悪化し、18年3月に命を絶った。
これについて訴えでは、国だけでなく佐川氏も違法な改ざんを指示した責任がある上、死後に妻が弔問を求めても誠実に回答しなかったとしている。
提訴後に記者会見した弁護士は、冒頭で妻のコメントを読み上げた。
「夫が死を選ぶ原因となった改ざんは誰が何のためにやったのか、改ざんをする原因となった土地の売り払いはどうやって行われたか、真実を知りたいです」「そのためには、まずは佐川さんが話さなければならないと思います」
また、弁護士は「国と佐川氏は誠実に対応し、真相を明らかにする責務がある」と指摘した上で、赤木氏が残した「手記」と題された遺書で名前が上がっている佐川氏をはじめ、佐川氏の後任の理財局長だった太田充主計局長、近畿財務局長だった美並義人東京国税局長など、名指しされたすべての財務官僚らを証人として申請する考えを明らかにした。 
 
 
  3/20 

 

●森友自殺“遺書公開” スクープ記者が明かした「私がNHKを辞めた理由」 3/20 
「週刊文春」3月26日号に掲載された「森友自殺〈財務省〉職員遺書全文公開 『すべて佐川局長の指示です』」が大きな反響を呼んでいる。このスクープを取材・執筆したのは、大阪日日新聞の記者である相澤冬樹氏だ。長きにわたって粘り強く取材し、遺書公開にこぎつけたが、今回のスクープ、すべての始まりは相澤氏がNHKを辞め、自殺した財務省職員・赤木俊夫氏の妻と面会したことだった。相澤氏の来歴、そしてNHKを辞めるまでの経緯とは――。著書「安倍官邸 vs. NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」(文藝春秋)から「はじめに」を全文公開する。
NHKを辞めた日の出来事
この夏、2018年(平成30年)8月31日、私はNHKを辞めた。31年間、記者として勤めたNHKを退職した。この日、NHK大阪放送局の最上階、18階の局長室で、私は角英夫局長から退職辞令を受け取った。角局長は10年ほど前、私が大阪でニュースデスクをしていた時に大型番組の担当でお世話になった人。大阪の局長になってからも、司法担当記者としての私の仕事に理解を示してくれた。私は局長にお願いした。「最後に一緒に記念写真を撮らせてください」そして2人並んで写真に収まった。それから数時間後。上司を通して角局長から伝言があった。「あの写真はSNSなどにアップしないように」……もとよりそのつもりはなかったが、私は自分が思い違いをしていることに気づかされた。局長が理解を示してくれたのは、記者としてデスクとしてNHK報道の仕事に邁進していた私であって、記者を外され退職の道を選んだ私ではないということに。人はしばしば相手の置かれた立場によって態度を変える。心しなければ。では、なぜ私はNHKを辞めたのか? それは記者を外されたから。記者の仕事を続けるため、森友事件の取材を続けるため、私はNHKを辞めて大阪日日新聞に移った。
NHKに就職、阪神・淡路大震災に直面
1987年(昭和62年)。昭和の終わりに大学を出た私はNHKに就職。初任地・山口で記者の産湯をつかい、原発誘致で大揺れの上関町、瀬戸内海の密漁の実態、保守政界が真っ二つに割れた山口県知事選挙などを取材し、記者の基礎を学んだ。同時に、維新のふるさと長州で吉田松陰先生の思想に染まり、より大切な、人としての道を学んだ。次いで事件の本場・神戸でサツ回りの修業を重ね、95年(平成7年)、阪神・淡路大震災に直面。震災半年で避難所を閉鎖しようとする神戸市に対し、神戸局の記者が家族まで総出で避難所での聞き取り調査を行い、避難所を出られない被災者の思いを私が右代表でリポートした。NHK神戸ニュースの総力を挙げた調査報道だったと思う。
震災半年で異動 東京社会部から徳島へ
震災半年で異動した東京社会部では、介護保険制度創設、日の出町ごみ処分場の汚水漏れ、医療保険制度改革を取材。旧厚生省担当となり、初の脳死臓器移植を経験したほか、歯科医師国家試験漏洩事件で漏洩源を特定する特ダネを出して、13年間の記者生活にいったんピリオドを打ち、ニュースデスクとなって徳島へ。3年の徳島勤務では、なぜか3回の県知事選を経験する。1回目は通常の任期満了。2回目は現職知事が東京地検特捜部に逮捕されたことに伴う出直し選挙。そして3回目は、出直し選挙で誕生した民主党系知事に対する、自民党県議らの不信任決議による再度の出直し選挙。現職が再度立候補するのかどうか報道陣に問われ、徳島1区選出の民主党の仙谷由人衆議院議員(当時)が「男の子は売られた喧嘩は買わなきゃだめでしょ」と言い切ったのが懐かしい。対する自民党は総務省から徳島県庁に出向していた部長を擁立。大接戦の末、20万対19万で自民が激戦を制した。
大阪ではJR福知山線脱線事故を取材
その直後、私は大阪府警キャップに。ハンナンBSE補助金詐欺事件、奈良女児誘拐殺害事件の修羅場をくぐり、2005年(平成17年)に107人が死亡するJR福知山線脱線事故が発生。その日から脱線事故担当デスクとなり、さらにアスベスト健康被害問題、発達障害のシリーズ企画も担当。同和行政の問題を追及する番組では部落解放同盟と、部落差別の実態に迫る番組では、解放同盟と対峙し「部落差別は解消した」と主張する民権連=民主主義と人権を守る府民連合と、がっぷり四つに組んだ。脱北者の悲劇を描く番組では朝鮮総連と切り結び、在日差別発言訴訟では差別発言者と対峙。いずれも相手方の主張をはね返した。真実の報道を貫き、圧力に負けなかったと自負している。
志願して記者に戻り、森友事件に出会う
その後、取材現場を外れて東京でBSニュースの制作担当者の一人になるが、11年(平成23年)の東日本大震災で「やっぱり現場取材」と思い定め、翌年、志願して記者に戻してもらい、再度、大阪へ。子どもの自殺をなかったことにする学校現場と教委を告発する番組、大阪市立桜宮高校の体罰自殺事件、生活保護の現場の取材を経て、大阪府北西部の豊中市と近隣市町の地域担当に。そして16年(平成28年)7月、大阪司法担当キャップを任された。ここで森友事件と出会い、「これは天命」と感じて取材する。そして迎えた18年(平成30年)6月の人事異動……記者を外された私は、NHKを辞めて大阪日日新聞に移籍することを決意した。
「森友事件」は国と大阪府の事件である
森友事件は森友学園の事件ではない。国と大阪府の事件である。こう言うと違和感を持つ方が多いかもしれないが、おかしなことをしたのは森友学園ではなく、むしろ国と大阪府の方だ。なぜそう言えるのか? それを読者・視聴者に説明するのが私たち記者の務めだ。そのためには、根拠を示すことが欠かせない。この本で私は、自分が森友事件をどのように取材し報道したか、そのプロセス、つまり記者の企業秘密を明かすことにする。根拠を示すためにそれが欠かせないと考えるからだ。取材源の秘匿との兼ね合いに配慮しつつ、取材先や関係各方面の方々のご理解もできる限り頂いて、極力明かすことにする。そして、森友事件の報道の背後で何が起きていたのか、森友事件の真の問題点は何かを明らかにしたいと思う。 
●森友自殺遺書公開 安倍首相の「大きな言葉」と官僚の帳尻合わせ? 3/20
「森友自殺<財務省>職員遺書全文公開『すべて佐川局長の指示です』」(「週刊文春」3月26日号)。この記事はNHK出身で、大阪日日新聞記者の相澤冬樹氏によるもの。2018年12月に出版された相澤氏の『安倍官邸vs.NHK』を読んだとき、最も気になったのが「近畿財務局職員の自殺が残した謎」(第10章)だった。
自殺した「Aさん」(財務省近畿財務局管財部の上席国有財産管理官・赤木俊夫さん)が遺したメモには《改ざんは財務局が勝手にしたのではなく、本省からの指示があった。佐川(元理財局長)の指示で書き換えた》という情報があると。もしこれが公開されたらすごいことになる。その日は来るのか? 気になって仕方なかった。その詳細が書かれた「手記」が遂に今回公開されたのだ。
3年前の2月17日に何があったのか
では改ざんはなぜおこなわれたのか。籠池泰典・赤澤竜也の『国策不捜査 「森友事件」の全貌』にはこんな一節がある。
《2月17日、過熱する報道への対応策を協議するため、ボクは酒井弁護士の所属する「北浜法律事務所」を訪れていた。すでに日は落ちていて、あたりは真っ暗だった。そこには近畿財務局の池田さんと、A上席国有財産管理官もいた。Aさんは後に公文書改ざん事件発覚により、自ら命を絶つことになる人物だ。》
そのあと籠池氏はこう書いている。
《この日、ボクが感じたのは、「とにかく近畿財務局の担当者たちの様子がおかしい」ということ。挙動不審と言ってもいい。》
一体、「2017年2月17日」には何があったのか?
「私や妻が関係していたということになれば」
《安倍晋三首相は17日の衆院予算委員会で、国有地を格安で買い取った学校法人「森友学園」が設立する私立小学校の認可や国有地払い下げに関し、「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と述べた。》(毎日新聞WEB2017年2月17日)
この首相発言があったから官僚たちは「動いた」のではないか。ずっと言われていたことだが、今回公開された手記でその疑念は濃くなった。首相の「大きな言葉」に官僚たちが帳尻を慌てて合わせるという例。最近も「相変わらず」ある。
「黒川氏が望ましい」定年延長問題 
黒川弘務東京高検検事長の定年延長問題だ。安倍首相は2月13日の国会で安倍内閣として解釈を変更したことを明言した。
《定年延長は、政権に近く「お庭番」とやゆされる黒川氏の検事総長登用のためとされるが、弁護士出身の法相や法務省、人事院の答弁が、安倍晋三首相の主張に沿う形で迷走し、虚偽答弁の指摘も受けている。》(「モリカケ以上の忖度」日刊スポーツ2月24日)
黒川検事長が定年延長になれば次期検事総長の道も開けてくる。読売新聞には今回の答えが書いてあった。
《政府関係者によると、次期検事総長の人選は、昨年末から官邸と法務省との間で水面下で進められた。同省から複数の候補者が提案されたが、安倍首相と菅官房長官は黒川氏が望ましいとの意向を示したという。》(2月21日)
安倍首相と菅官房長官の意向。この「逆算」にあわせるために周囲がドタバタしているとしか見えない。モリカケとまったく同じ構図。ちなみに「黒川弘務」の名は先ほどの籠池氏の本にも出てくる。
「8億円値引きと公文書改ざん」の件で財務省が告発されていた頃のこと。「不起訴」になるというメモ情報が法務検察から事前に漏れていたという。共著者の赤澤氏が取材報告として、
《わたしが、東京、大阪の両特捜部で働いたことのある元検事に聞いたところ、彼はこの「法務省」について、「これはズバリ黒川さんだよ」と言い切りました。このメモが出された当時、法務省事務次官だった黒川弘務氏のことだと言うのです。》
これを受けて籠池氏は《安倍さんの覚えめでたい黒川弘務氏は現在、東京高検検事長。法務検察の序列ではナンバー2である。事務次官から東京高検検事長というラインはエリートコースであり、黒川氏は次期検事総長の最有力候補なのだという。つまり日本最強の捜査機関のトップに立つ可能性があるのだ。ただただ暗澹たる気持ちにならざるを得ない。》と書いている。
見事に現在までつながっている。 
 
 
 

 

●森友学園問題 財務省職員の遺書に残された“証言”  3/20 
森友学園問題をめぐり公文書の改ざんをさせられ自ら命を絶った財務省の職員が書き残した遺書が今週公開されました。 憤りや無念さがにじむ遺書からはこれまで政府が公表していた事実とは異なる証言も出てきています。 自ら命を絶った、その日に書かれた手書きのメモ。 【赤木さんのメモより】 今回の問題は、すべて理財局が行いました指示もとは、佐川元理財局長と思います。 最後は、下部がしっぽを切られる。 なんて世の中だ。 手がふるえる。怖い。 命 大切な命 終止符 これは、自殺した近畿財務局の職員赤木俊夫さんが書いた遺書です。 別のメモには、インクがにじんだ跡が。 そもそもなぜ公文書の改ざんが行なわれたのか… きっかけは、この発言でした。 【安倍総理】 私や妻が関わっていれば、総理も国会議員も辞める。 大阪・豊中市に建設予定だった小学校。 この国有地がおよそ8億円も値引きされ、売却されていたことが発覚。 学校の名誉校長が安倍昭恵総理夫人だったことから、 安倍総理や夫人の関与が疑われました。 そうした中での総理のこの発言。 この直後、財務省は土地の売却に関する文書の改ざんを始めたのです。 改ざんされた文書からは 安倍昭恵総理夫人の名前が消えていました…。 赤木さんが遺した手記には文書改ざんの経緯が詳細に記されています。 【赤木さんの手記より】 すべて佐川理財局長の指示です。 野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる 疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。 指示を受けた、財務省本省理財局幹部、補佐が 過剰に修正箇所を決め、補佐の修正した文書を近畿局で差し替えしました。 しかし、おととし、財務省がまとめた調査報告書には、 佐川氏が「文書を外に出すべきではなく、 最低限の記載とするべきだと反応した」のに対して、 総務課長らが「直す必要があると認識した」と書かれています。 改ざんは、「佐川氏が改ざんの方向性を決定づけた」とする一方、 具体的にどのような指示があったのかについては言及していません。 こうした、報告書には書かれていない新たな証言が この遺書からいくつか出てきたのです。 文書改ざんの経緯について、再び調査を行なうか、問われた麻生財務大臣は… 【麻生財務大臣】 手記と調査報告書の内容に大きな乖離があると思いませんので 再調査を考えているわけではありません。 しかし、野党は合同で「森友問題再検証チーム」を立ち上げ追及を強める構えです。 【柚木議員】 「財務省のお手盛りの報告書と真っ向から対立してますよ、新事実だらけですよ。 ぜひ再調査していただきたい。」 【原口議員】 「(佐川局長の)メールや指示書は?」 【財務省担当者】 「調査報告書読む限り、指示書があるとは書かれていない。 安倍総理は… 【安倍総理】 「検察ですでに捜査を行い、結果が出ていると考えている。麻生太郎副総理兼財務相の下、事実関係を徹底的に調査し、明らかにしたところ」 
●近財自殺職員「手記」 政府が「再調査」をしない理由 3/20 
学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた財務省近畿財務局職員が、決裁文書改ざんを何度も強要され自殺に追い込まれたとして、妻が2020年3月18日、国と佐川宣寿元国税庁長官に計約1億1200万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。原告側は「(改ざんは)すべて、佐川理財局長の指示です」などと書かれた手記と遺書も公開し、うやむやになっていた森友問題が「再燃」した形となった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に報道が集中する中で、国民の関心が高まるのかどうか。すでに調査報告と検察の不起訴で「解決」とする政府はどう受け止め、野党はどう対応するのか。手記公開後の与野党、関係者の発言を整理する。
「残された道は訴訟しかない」
財務省近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木俊夫さん(当時54歳)。18年3月に改ざんが発覚した5日後、みずから命を絶った。近畿財務局は19年2月、公務災害に認定している。
手記は、「真実を書き記しておく必要がある」との考えから作成したという。森友問題の最大の原因は「財務省が国会等で真実に反する虚偽の答弁を貫いていること」だと綴り、改ざんは「すべて、佐川理財局長の指示です」と断言する。
「野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました」などと具体的な指示内容にも言及し、「近畿財務局内で本件事案に携わる職員の誰もが虚偽答弁を承知し、違和感を持ち続けています。しかしながら、近畿財務局の幹部をはじめ、誰一人として本省に対して、事実に反するなどと反論(異論)を示すこともしないし、それができないのが本省と地方(現場)である財務局との関係であり、キャリア制度を中心とした組織体制のそのもの(実態)なのです」と現場の視点を指摘している。
報道によると、今回の裁判の目的について、原告代理人の生越照幸弁護士は記者会見で「原告としては、なぜ夫が死んだのか、任意で尋ねても教えてもらえない、情報公開しても教えてもらえない。そうなると残された道は訴訟しかない」と話している。
野党は「森友問題再検証チーム」発足
財務省は18年6月、佐川氏が国会審議の追及を極力避けるために、決裁文章の改ざんや応接録(森友学園との交渉記録)の廃棄を主導したとする報告書を公表。佐川氏ら20人を処分した。有印公文書変造などの容疑で、佐川氏や財務省職員ら計38人は告発もされたが、不起訴処分となった。
手記公表を受け、立憲民主党、国民民主党など共同会派は18日に「森友問題再検証チーム」を発足させ、野党からは森友問題の再調査を求める声が上がっている。
「報告書と手記内容がこれだけ違っているので、(中略)近畿財務局の統括国有財産管理官の配下職員を中心にもう一度この件に関して、しっかりと聞き取りをしてあげる。そのことが亡くなられた故人に対する一つの励みになるのではないか」(立民・那谷屋正義参院議員/参院財政金融委員会で)
「すべての発端は国会で、昭恵夫人の国有地取引への関与を聞かれた安倍総理が2017年2月17日、『私や妻が関係しているということになれば、間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということははっきり申し上げておきたい』と答弁したことから始まっています。この答弁を受けて、佐川理財局長が安倍総理夫人の名前が繰り返し記されていた公文書の改ざんを指示したということが、赤木さんの遺書から明らかになりました。国会に佐川元理財局長に証人としての出席を求める」(菅直人・立民最高顧問/ツイッターで)
また、森友学園を巡る補助金詐欺事件で実刑判決を受け、現在保釈中の籠池泰典氏もユーチューブで 「(手記をいち早く報じた)文春に続いてくという方向性を持って、号砲一発、安倍政権の自由民主党、維新の党、公明党の連立政権(発言ママ)を潰していかないと」 と語っている。
安倍首相「結果が出ていると考えている」
しかし、政府側は現時点で再調査はない意向で、次のような発言が相次いでいる。
「検察ですでに捜査を行い、結果が出ていると考えている。麻生太郎副総理兼財務相の下、事実関係を徹底的に調査し、明らかにした」(安倍首相/参院総務委員会で)
「手記と調査報告書の内容に大きな乖離があるであろうとは考えてはおりませんので、そういう状況では再調査を行うという考えはない」(麻生氏/記者会見で)
「関与した職員には厳正な処分が行われた」「(佐川氏の国税庁長官任命は)適材適所の人事」(菅義偉官房長官/衆院内閣委員会で)
首相の発言が発端となったとの疑惑が指摘される行政文書の改ざん問題は、国会ではなく、民事法廷という異例の場で真相が明らかになるのか。 
 
 
  3/21 

 

●「あなた方は調査される側で『再調査しない』と言える立場にありません」 3/21
けさ21日、1通のメッセージが携帯に届いた。財務省近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木俊夫さんの妻、昌子さん(仮名)からだ。俊夫さんは、森友事件で公文書の改ざんを上司に強要され、心を病んで自ら命を絶った。昌子さんは18日、真相解明を求めて佐川宣寿元財務省理財局長と国を相手取り裁判を起こした。同日発売の週刊文春は俊夫さんがのこした「手記」を初めて明らかにした。“魂の叫び”と言えるその手記には、これまで知られていなかった改ざんの経緯が生々しく綴られていた。ところが翌19日。安倍首相は国会で「検察ですでに捜査を行い、結果が出ていると考えている。麻生太郎副総理兼財務相の下、事実関係を徹底的に調査し、明らかにした」と答弁。森友事件と公文書改ざんについて再調査し真相を解明してほしいという遺族の願いを拒否した。また麻生財務大臣も「新たな事実が判明したことはない」「(2018年公表の)財務省の報告書に尽きる」「再調査を行うという考えはない」と突き放した。
「安倍首相と麻生大臣は調査される側で、再調査しないと発言する立場にない」
遺族の思いを拒絶するこれらの発言。昌子さんはメッセージで次のように綴っていた。「安倍首相は2017年2月17日の国会の発言で改ざんが始まる原因をつくりました。麻生大臣は墓参にきてほしいと伝えたのに国会で私の言葉をねじ曲げました。この2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場にないと思います。」 あまりにも理路整然とした見事な指摘に、私はしばしメッセージから目が離せなかった。そしてすぐに昌子さんに電話した。「素晴らしい言葉ですね。本来ならマスコミや評論家が口にしなければいけない言葉です。この言葉を記事で紹介してもよろしいですか?」 「はい、紹介してください。私は夫の死の真相が知りたいんです。どうして夫は改ざんを迫られなければならなかったのか?改ざんの原因は森友学園への土地売却ですよね。どうしてあんなに値引きして売らなければならなかったのかも知りたいです。夫の手記は新事実だと思います。もう一度調べてほしいんです」
新事実満載 赤木俊夫さんの「手記」
安倍首相と麻生財務大臣は「財務省が2年前に出した報告書で調査は尽きている」「自死した赤木さんの手記に新事実はない」と主張している。だが、そうだろうか?
〇すべて、佐川理財局長(当時)の指示です。
〇本省理財局中村総務課長(当時)をはじめ田村国有財産審理室長などから(近畿財務局の)楠部長に直接電話があり、(改ざんに)応じることはやむを得ないとし、美並近畿財務局長(に)報告したと承知しています。
〇美並局長が全責任を負うと言っていました。
〇(会計)検査院への説明は「文書として保存していない」と説明するよう事前に本省から指示がありました。
〇平成30年2月の国会で(中略)麻生財務大臣や、太田理財局長(当時)の説明(中略)は、明らかに虚偽答弁なのです。
これらは財務省の報告書にはなく、すべて新事実だ。ほかにも、改ざんに関わった財務省と近畿財務局の人物が実名で明らかにされている。新事実が満載なのだ。明らかに新事実があるのに「新事実がない」と言うのは、それ自体が虚偽であり、赤木俊夫さんがのこした「手記」を貶める印象操作だと批判されても仕方あるまい。
安倍首相の「心が痛む」に「それなら調査を」
安倍首相は「真面目に職務に精励していた方が自ら命を絶たれたことは、痛ましい出来事であり、本当に胸が痛む思いだ」とも述べた。この発言について昌子さんに尋ねた。すると… 「本当に胸が痛むんなら再調査しますよね。再調査しないのにこんなこと言われても…何だか白々しい感じがします」
相次ぐ激励のメッセージ
首相と財務大臣が再調査を拒む一方で、報道で「手記」や提訴のことを知った大勢の方から赤木俊夫さんと昌子さんに共感と励ましのメッセージが相次いでいる。私と毎月、ユーチューブで「メディア酔談」という配信をしている高校新聞部仲間でメディアコンサルタントの境治は、この話題をテーマにした20日の配信で「みんなで『#赤木さんを忘れない』というハッシュタグを広めよう」と呼びかけたところ、トレンド入りを果たした。その一人、東京新聞の望月衣塑子記者は次のようにツイートしている。またテレビ朝日「サンデーステーション」のキャスター、長野智子さんは、以下のようにツイートしている。電通で過労自死した高橋まつりさんの母、高橋幸美さんは次のような言葉をツイートした。久米宏さんはTBSラジオ「ラジオなんですけど」で文春の記事を読み上げてくれた。
私たちにできること
3連休が終わるあさって23日から再び国会審議が始まる。安倍首相と麻生財務大臣は何と答えるのだろう?また「新事実はない。再調査はしない」と答えるのだろうか? 「それはおかしい」と思うなら、誰にでもできることがある。与党・自民党、公明党に意見を届けることだ。党のウェブサイトには市民のご意見を受け付けるページがある。ここに意見を寄せるのだ。「再調査すべきだ」でも、「遺族の声に耳を傾けないのですか?」でも、「遺族が納得できるように真相を解明すべきだ」でもいい。私はこれまでの取材経験で、自民党にも公明党にも筋の通った人たちがいることを知っている。多くの市民の声が寄せられれば、そういう人たちが「これはいけない」と動きやすいようになる。最後に、私が一度訪れたことのある大阪のバーのマスターが、はてなブログに綴った文章の末尾をご紹介する。「私は、この日本と言う国が好きで、日本国民である事に、誇りを持っている。その気持ちが揺るがないような、国であって欲しいと、ただただ切に願う・・・」 本当にその通り。これぞ本物の愛国者だ。私も切に願う。  
 
 

 

●森友手記で佐川宣寿を告発した近畿財務局職員! 3/21
森友手記で佐川宣寿を告発した近畿財務局職員!
財務省近畿財務局の上席財産管理官だった赤木俊夫さん(享年54歳)。森友学園問題を巡る公文書改ざん事件に関与させられたことで追い詰められ、心を病んだ結果、2018年3月7日、自ら命を絶ちました。55歳の誕生日の3週間前の出来事でした。その赤木俊夫さんが、当時理財局長(その後、国税庁長官に出世し退官)した佐川宣寿について「すべて佐川局長の指示です」と告発する手記が公表され、大きな話題になっています。
〈森友問題 佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰れもいわない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。 なんて世の中だ、手がふるえる、恐い命 大切な命 終止府(ママ)〉
経歴
赤木俊夫さんは、1963年生まれ。出身は、岡山県です。高校卒業後、当時の国鉄に就職。1987年の国鉄の分割民営化の際に、財務省の中国財務局に採用され、鳥取財務事務所に勤務しました。以後は、関西各地で勤務されたそうです。いわゆる「ノンキャリア」の財務省・財務局職員として、現場の実務を担っていました。また、働きながら立命館大学法学部の夜間コースに通うなど、勉強熱心な方でした。亡くなられた当時、財務省近畿財務局で上席財産管理官という役職を務めていました。国が管理する土地などの「国有財産」の実際の管理を行う現場の取りまとめ役です。もっとも、赤木さんは、問題の国有地が売却された後に担当になっているので、実際の売却には関わっていません。赤木さんは、「ノンキャリア」として、公文書の改ざんという「尻ぬぐい」「汚れ仕事」を強いられ、その罪の意識に苛まれて、心を病み、最後は自死に至ってしまった訳です。
発言
次が、赤木俊夫さんの口ぐせです。
「ぼくの契約相手は国民です」
真面目で誠実な人柄が伝わってきます。性格も明るく、奥さんや職場に同僚にもとても優しかったそうです。また、趣味も、篆刻や書道、音楽、建築と幅広かったとのこと。そんな赤木俊夫さんが、佐川宣寿をはじめとする財務省「キャリア」官僚の指示で、不正に手を染めざるを得ず、検察の捜査もあり、精神的に追い詰められていきます。
「ぼくは職場に復帰したら検察に呼ばれる。検察は恐ろしいとこや。何を言っても思い通りの供述を取る。検察はもう近畿財務局が主導して改ざんしたという絵を描いている。そのストーリーからは逃れられない。ぼくが何を言っても無理や。本省の指示なのに最終的には自分のせいにされる。ぼくは犯罪者や」
「職場に復帰しないとお金がない。でも復帰したら検察に呼ばれる。」
「これまでのキャリア、大学すべて積み上げたものが消える怖さと、自身の愚かさ」
「家内や、家内の家族・親戚にも迷惑をかけることが本当に苦しい」
「まさに生き地獄」
「家内にそのまま気持ちをぶつけて、彼女の心身を壊している自分は最低の生き物、人間失格」
現場で真面目に仕事をした結果、権力や組織の論理に押し潰される。本当に、読んでいるだけで胸が締め付けられる気持ちになります。

次の写真は、2016年11月に、奥さまと東京上野を訪れたときの写真です。とても素敵な笑顔です。今回、赤木俊夫さんの手記をスクープした、相澤冬樹・大阪日日新聞記者(元NHK記者)が公表されたものです。
赤木さんの実直かつ優しい性格が伝わってきます。その翌年、2017年2月の森友学園への国有地売却問題で、環境が一変。公文書の改ざんに巻き込まれた結果、2018年3月には、自死に追い込まれてしまいます。そのような運命が待ち受けているとは、赤木俊夫さん・奥さんともに、想像もしていなかったことと思います。赤木俊夫さんの悲痛な魂の叫びが届き、森友学園問題の真相が明らかになることを期待したいです。赤木俊夫さんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。 
 
 
 3/22

 

●森友問題“遺書”スクープ 記者がNHKを見限った瞬間 3/22 
「週刊文春」3月26日号に掲載された「森友自殺〈財務省〉職員遺書全文公開 『すべて佐川局長の指示です』」が大きな反響を呼んでいる。このスクープ、すべての始まりは取材・執筆した大阪日日新聞記者・相澤冬樹氏がNHKを辞め、自殺した財務省職員の妻と面会したことだった。相澤氏がNHKを辞めるきっかけを明かした「週刊文春」2018年12月20日号掲載の「独占手記」を全文公開する。(相澤氏は「安倍官邸 vs. NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」(文藝春秋)の著者。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のもの)

「私は聞いてない。なぜ出したんだ」 電話の向こうで激怒する声が響く。声の主は、全国のNHKの報道部門を束ねる小池英夫報道局長。電話を受けているのはNHK大阪放送局のA報道部長だ。私はたまたまA部長のそばにいたため、電話の内容を知ることになった。「なぜ出したのか」と問われているのは、私が報じた森友事件の特ダネ。近畿財務局が森友学園に国有地を売却する前に、学園が支払える上限額を事前に聞き出していたというニュースだ。ところが、その特ダネに報道局長が激怒しているという。なぜか。NHK報道局で広く知られた言葉がある。「Kアラート」だ。Kは小池局長の頭文字。小池局長がニュースの内容に細かく指示を出してくることを指す。「また官邸から何か言われたに違いない」
Kアラートが出るたびに、報道局内ではそう囁かれている。政治部畑を歩み、政治部長も経験した小池局長。安倍官邸中枢に太いパイプがあるのは知られたところだ。Kアラートが出たということは、この特ダネは官邸が嫌がるニュースだったのだろうか。小池局長との電話が終わった後、A部長は苦笑しながら私に言った。「あなたの将来はないと思えと言われちゃいました」 その瞬間、それは私のことだ、と悟った。翌年6月の人事で私は記者を外され、考査部へ異動する。そして今年8月末、NHKを辞めることにした――。
原稿から削られた昭恵夫人の部分
NHK大阪報道部の司法担当記者だった私は、発覚時から森友事件を追い続けてきた。その間、感じてきたのは、事実をあるがままに報じようとしないNHKの姿勢だ。森友事件が公になったのは、昨年2月8日、木村真豊中市議による記者会見だった。学園の小学校用地として売却された国有地の金額について情報公開請求をしたのに、開示されないのは不当だと訴えたのだ。だが、私が最も驚いたのは、小学校の名誉校長に安倍昭恵首相夫人が就任していたこと。それがこのニュースの最大のポイントだろう。だから私は原稿に昭恵氏のことを書き、本文でも事実として明記した。ところが、デスクの判断でこの部分が削られてしまう。それでも関西では、当日夕方の報道番組でこのニュースが報じられたからまだよかった。私はこの原稿を「全中(全国ニュース)に送るべき」と進言したが、東京には送られなかった。昭恵氏の名誉校長就任が核心なのに、それゆえに放送を躊躇(ためら)ったとしか思えない。その2日後のことだ。鑑定価格9億5600万円だった国有地が、約8億2000万円も値引きされ、1億3400万円で売却されていたという驚きの事実が判明する。だが、この「8億円値引き」も放送は関西のみ。全国放送は報じない。NHKの森友報道は忖度で始まったのだった。
特ダネも書き換えられていく
それから1カ月余りが経った頃、取材を進める私は耳を疑う情報に接した。「国有地の売却前に、近畿財務局は学園側との売却交渉の過程で、学園が幾らまでなら出せるのか聞き出している。そして実際にその金額以下で売っている」 事実なら背任の可能性を強く窺わせる話だ。一本筋の情報では書けない。2カ月以上取材を重ね、ようやく事実の確認ができた。ところが、報道には大きな壁があった。4月に就任したばかりの小池報道局長。6月中は「国会中は局長のOKが出ない」、7月に入っても「局長を説得するのが難しい」。そんな状況がしばらく続いた。最後は「大阪地検特捜部もこの情報を把握して捜査している」という要素を付け足すことにした。小池氏を説得するには、検察当局も把握している事実だということに触れる必要があると聞いたからだ。そして昨年7月26日夜の「ニュース7」で、背任の実態に迫る特ダネを報じた。要約すると、以下のような内容だった。「財務局の担当者が購入できる金額の上限を尋ねたところ、学園側は約1億6000万円と答えた。一方、財務局側は、土地の土壌改良工事で国が約1億3200万円を負担予定で、これを上回る価格でなければ売れないと事情を説明した。その後、財務局はゴミの撤去費の見積もりを、大阪航空局に依頼するという異例の対応を取り、値引き額を約8億2000万円と決めた。結果、売却額は1億3400万円となり、財務局と学園が示した金額の範囲内に収まる形となった」
異変が起きたのはその夜のことだ。冒頭で記したように、小池氏が激怒したのだ。実はこのネタは大阪報道部を通さず、東京社会部から出したもの。A部長は直接関知していない。だが、A氏も政治部出身で、初任地は同じ鳥取。昔からの後輩で文句を言いやすいのだろう。最後に電話を切ったA氏が言った一言が、「あなたの将来はないと思えと言われちゃいました」 というものだった。このネタは翌朝用に続報が準備されていた。だが小池氏の怒りを受け、何度も書き直され、意味合いを弱められてしまう。翌朝の「おはよう日本」のオーダー(放送順)も、後ろの方へ下げられた。こうして忖度報道は本格化していったのだ。
“口裏合わせ”のスクープが……
しばらく世間の注目から逸れていた森友事件だったが、今年3月2日、朝日新聞が朝刊で「財務省が公文書書き換え」という特ダネを報じたのを機に、再び大きくクローズアップされる。NHKも動く。パラリンピックで休止中だった「クローズアップ現代+」(夜10時〜)が4月2日に再開されるのを受け、4日のクロ現で森友事件を取り上げることが決まったのだ。何か新ネタが欲しい。そこで私が掴んだのが、昨年2月、事件発覚直後に財務省が直接、学園側に「トラック何千台もゴミを搬出したことにして欲しい」と電話をかけていたという事実である。つまり、財務省の方が口裏合わせを学園側に求めていたという話だ。改ざん同様、行政のルールを歪めた行為と言っていい。私は東京の社会部デスクの助言に従い、このネタを大阪のデスク、そして報道部ナンバー2のS統括に伝えずに進めることにした。S氏からA部長、そして小池局長へと伝わり、介入される心配があるからだ。口裏合わせの電話をかけていたのは、財務省理財局のZ課長補佐(当時)。私はある日の朝、自宅近くで彼に接触を図った。「記者さんですか。何も言えませんよ」 そう答えるのは無理もない。そこで「私が喋りますから」と一方的に話を続けた。Z氏の人となり、仕事ぶり……。会話の感触が良くなってきたところで、用意した質問を繰り出した。
記者の問いかけにやっと頷いたZ氏
――Zさんは昨年2月20日に籠池泰典理事長に雲隠れを指示する電話をかけたと言われていますが、そういう電話はしてませんよね。籠池氏はこの頃、自宅を離れ、京都のホテルに滞在している。本人は「Z氏に雲隠れを指示された」と話すが、実際は違う。「雲隠れ」に近い発言を探せば、その3日前、2月17日に遡る。安倍晋三首相が国会で「私や妻が(売却に)関係していたということになれば、総理も国会議員も辞める」と答弁した日だ。これを受け、近畿財務局のI氏が「マスコミが押しかけてきて大変なことになります。ホテルにでも避難した方がいいんじゃないですか」という旨の話を学園側にしている。一方、Z氏も「対応は顧問弁護士に一本化し、籠池氏は対外的に発言しないでほしい」旨の電話をしている。弁護士から籠池氏にこの話が伝わる過程で「雲隠れ指示」と受け止めた可能性がある。そのことはおそらく記者では、私だけが気付いていた。
私の問いかけに、Z氏はやっと頷いた。――でも、別の電話をしていますよね。同じ日に。「トラック何千台でゴミを搬出したと言ってほしい」という電話。「知ってるんだ……」――Zさんはあの日、そのことをメールで省内の複数の人に報告したでしょう。電話をしたけどダメだったということを報告している。「なるほどね」――でも、私はZさんが自分からこういうことをしたとは思えない。上司の指示があったわけでしょう。中村稔総務課長(当時)ですね。「自分の判断でやりました……課長補佐だからね」――学園側に電話をしたのが2月20日、月曜日ですよね。それは当然、その前があるわけですよね。「(苦笑して答えず)」――土日を挟んで、金曜日。2月17日に安倍首相が「関係していたら総理も議員も辞めます」と言ってますよね。あれが大きかったんじゃないんですか? 「(地下通路の途中で立ち止まって笑顔で)そう思われるよね。……そこは捜査を受ける身なので、答えを控える、ということに」 確認としてはもう充分だろう。私たちは和やかに別れたのだった。
取材結果を報告したところ、翌4月4日のクロ現の放送に先立ち、ニュース7でも取り上げることが決まる。私は3日夜、Z氏に翌日のニュースで報じることを伝えたが、動揺した様子もなく、何も言うことはなかった。上司はZ氏に明確に指示はしなかったかもしれない。だが、彼が忖度してやらざるを得ない状況にあったのではないだろうか。
「なぜこのネタを出さないんですか!」
こうして「口裏合わせ」のネタは日の目を見ることになったはずだった。ところが4日夕方になって、社会部デスクから電話が入る。「放送できないかもしれません。民進党のO氏が『今日NHKが森友の特ダネを出すから見ろ』と言い回ってるらしいんです。そのことが政治部を通して報道局長に伝わって、局長が『野党に情報が漏れている』と激怒しているんですよ」 また小池氏か。私がO氏に漏らしたとでも思っているのだろうか。だがニュース7の放送まで残り10分という時間になって、再びデスクから電話があった。「ニュース7には出ます」 私は心底ほっとした。だが、その後に続くデスクの言葉に衝撃を受けた。「クロ現にこのネタは入りません。O氏が『ニュース7にもクロ現にも出る』と言っていたので、報道局長が『野党議員の言うままに放送できるか!』と」 私は、クロ現に新ネタを出したいという一心でここまで取材してきた。なのに、クロ現に出ない? 担当記者・ディレクターが集まる編集室で私は荒れた。「なぜこのネタを出さないんですか!」 誰も反論できない、と思いきや、大阪のS統括が反論してきた。「私たちはそんなこと聞いていませんよ。出さないというのは決定事項です」 ……あなたが信用できないから、言わなかったのだ。結局、「口裏合わせ」のネタは出た。だが、ニュース7の最後の項目。特ダネにもかかわらず、その日の暑さのニュースよりさりげなく目立たない形で。私は憤懣やる方なかったが、ウオッチ9では分厚く取り上げてくれた。それで満足するしかない。そして、ある予感がしたのだった。「いよいよ、次の人事では何かあるな」 4月に入り、焦点は特捜部の捜査の行方に移っていく。検察幹部にも最後まで立件の道を探る気概を見せる人がいた。起訴か不起訴かまだ分からない、というのが、4月半ば時点の私の判断だった。だが5月半ばには、起訴が厳しいという雰囲気に変わってくる。私が「記者を外す」という内々示を受けたのは捜査を巡る取材合戦の最中、5月14日のことだった。大阪放送局最上階にある局長応接室。私はA報道部長からこう告げられた。「次の異動で考査部へ行って頂きます」 記者を外される――。私の心は決まった。5月31日、〈森友事件で財務省関係者全員を不起訴 大阪地検特捜部〉という短い一報原稿を出し、その日の関西向けニュースでスタジオ解説を行ってNHK記者としての仕事を終えた。
8月29日、私はNHK放送センターの報道局長室を退職の挨拶に訪ねた。「記念写真を撮影してもよろしいでしょうか」 そう声をかけると、小池氏は快く応じてくれた。悪意のある人ではないと思う。ただ、細かすぎる。現場にあまりに細かく口出しするから、Kアラートと揶揄される。それは揶揄にとどまらず、NHKの報道を蝕んでいるのではないか。週刊文春編集部がNHKに取材を申し込んだところ、「報道局長の意向で報道内容を恣意的に歪めた事実はありません」 という回答だった。
文書改ざんは日曜日に始まった
NHKを辞めた私は大阪日日新聞記者として、再び森友事件の取材を始めた。ずっと頭に残っていたのが、今年3月7日に自ら命を絶った近畿財務局の上席国有財産管理官・Bさんの存在だ。彼はなぜ、どのように改ざんに関わったのか。財務省の調査報告書や関係者への取材を通じて、見えてきた新事実がある。前述したように、安倍首相が「私や妻が関係していれば、総理を辞める」と答弁したのは、昨年2月17日。その3日後の20日に行われたのが、財務省による「口裏合わせ」だ。そして24日、佐川宣寿理財局長(当時)が「保管期間が一年未満なので面会記録は廃棄した」と答弁。一方で、理財局の中村総務課長に対し、残っている記録があったら廃棄するよう指示している。この中村氏が実際に改ざんの陣頭指揮を執った人物だ。夏の人事で大臣官房の筆頭参事官に就任している。
近畿財務局による文書改ざんが始まるのは2日後の26日。日曜日にもかかわらず、本省理財局が近畿財務局の担当者に出勤を求めている。首相答弁や局長答弁によほど慌てたのだろう。どの公文書のどこをどう書き換えるのか、事細かく指示が出された。実は今まで報じられていないが、この日の夕方に呼び出された一人がBさんだった。近畿財務局には、3月7日にも「書き換え案」という形で改ざんの指示が届く。本省の中村課長らから指示を受けた財務局の管財部長が、Bさんに伝えたという流れだ。最初は小幅な書き換えだったが、翌8日にかけ、さらに追加の書き換え指示が来る。上席というポジションは本省からの指示と現場の摺り合わせが求められる役職だ。だが、Bさんは「これはおかしい」と意見するタイプだった。一方で経験豊富で仕事ぶりには上司からも一目置かれていた。そんなBさんゆえに、改ざんという不正に手を染めることが許せなかったのだろう。
財務省の調査報告書には「配下職員」という表現でBさんたちが改ざんに抵抗した姿が記載されていた。〈近畿財務局の統括国有財産管理官の配下職員は、そもそも改ざんを行うことへの強い抵抗感があったこともあり、本省理財局からのこの度重なる指示に強く反発し、平成29年3月8日までに管財部長に相談した〉 だが、結果は「書き換えは必要」と変わらなかった。Bさんはこれ以降、次第に体調を崩し、夏の人事での担当替えを強く希望していたがかなわず、休職に追い込まれてしまう。そして今年3月7日、朝日新聞が改ざん疑惑を報じてから5日後、苦悩の末に自ら命を絶つことになる。
なぜ国有地は格安で売却されたのか。その謎は解明されていないし、誰も責任を取っていない。小学校を無理に認可しようとしたのは大阪府だ。国と大阪府はなぜそこまでしてこの小学校を設立させたかったのか。森友事件は森友学園の事件ではない。国と大阪府の事件だ。国の最高責任者は安倍首相、大阪府の最高責任者は松井一郎府知事。2人は説明責任を果たしたと言えるだろうか。2人が説明しないなら、記者が真相を取材するしかない。私がNHKを辞めた最大の目的は、この残された謎を全て解明することだ。 
 
 

 

●森友改ざん提訴 首相主導で真相の解明を 3/22 
学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当し、2018年3月に自殺した財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん=当時(54)=の妻が、夫の残した手記や遺書を公表した。さらに佐川宣寿元国税庁長官(62)の指示で決裁文書の改ざんを強制され自殺に追い込まれたとして、国と佐川氏に計約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。
手記などには、問題の根幹である佐川氏の関与について「決裁文書の差し替えは事実で、元はすべて佐川氏の指示です。パワハラで有名な佐川氏の指示には誰も背けない」との記載があるなど、財務省が18年6月に公表した報告書とは異なる重要な指摘が含まれている。赤木さんが改ざんの強制によって精神的に追い詰められていった様子も詳細に示されている。
安倍晋三首相は、赤木さんの命がけの告発を黙殺せず、自ら主導して調査を再開し、真相と責任の所在を明らかにすべきだ。
訴状などによると、改ざんのきっかけは17年2月、国会で森友問題を追及された安倍首相が「私や妻が関係していたら首相も国会議員も辞める」と言い切った答弁だった。財務省理財局長だった佐川氏は、答弁直後の2〜3月に財務省幹部へ改ざんを指示した。指示の内容も「野党に資料を示した際、森友学園を厚遇したと取られる疑いがある箇所は全て修正するように」と具体的で、幹部もこれに沿って近畿財務局に改ざんを命じた。佐川氏の関わり方について、財務省の報告書は、佐川氏が「方向性を決定付けた」と認めているものの、「指示」の有無までは明記していなかった。赤木さんは「佐川氏の指示」と断定しており、この指摘は極めて重大だ。
赤木さんは、決裁文書から首相夫人の昭恵氏や政治家らの関与を示す部分の削除などを強制されたことで心理的負荷が過度に蓄積。うつ病を発症して17年7月から休職した。大阪地検特捜部の事情聴取などで病状は急速に悪化し、「検察は近畿財務局が主導で行ったという絵を描いている。最終的には自分のせいにされる」と周囲に話すようになった。手記などには、自ら命を絶つまでのこうした経緯も詳しく記されている。
しかし、麻生太郎財務相は手記と報告書に「大きな乖離はない」と述べた。安倍首相も「検察で既に捜査を行い、結果が出ている」などとして再調査を拒否。「改ざんは二度とあってはならない」と人ごとのような発言に終始しており、極めて不誠実だ。
赤木さんは意に反して不正行為を強いられ、公務員としての矜持も傷つけられた。遺書には「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」と無念さがにじむ。
安倍政権への忖度の有無など、改ざん強制の動機や経緯は明らかになっていない。一方で、政権は加計学園や桜を見る会の問題でも公文書を軽視してきた。提訴を機に首相主導で再調査しなければ、国民の不信は二度と拭えまい。 
●「真実明らかにして」 森友事件、本紙に激励相次ぐ 3/22 
学校法人「森友学園」に国有地が不当に値引きされた「森友事件」で、自殺した財務省近畿財務局職員の妻が、国などの提訴に踏み切った背景をいち早く報じた大阪日日新聞に対し、「真実が明らかにならんことを強く望む」と真相究明を求める激励の声が相次いだ。
「埼玉在住の一市民です」と本紙にメールを寄せた伊沢二朗さんは、「財務省と政治家どもの無責任ぶり、非人間性、理不尽さに激しい怒りを覚えました」と指摘。亡くなった職員の妻に対し、「審理の過程ではつらいお気持ちがよみがえることもあるでしょう。平穏な日常であらんことをお祈りいたします」との思いをつづった。
「奥さまの深い悲しみ、苦しみ、怒りは計り知れません」と記した東京都の団体職員、高瀬幸子さん(65)は、「勇気」ある妻の提訴を支援する思いを込めた。同じく都内在住のSさんも「奥さまを支援するような動きは起こっているのでしょうか。自分なりのわずかな志ではありますが、お示ししたいと考えています」とメールを寄せた。
高瀬さんは本紙の直接の問い合わせに「命がなによりも大切にされる社会を、大人の責任として守り、子どもやその後の世代に残していかねば。今が踏ん張り時と思っています」と答えた。
津市の小林昭夫さん(76)は「これからも正義と真実の報道をしてください」と期待を寄せた。
森友事件を巡っては、公文書の改ざんを迫られ命を絶った近畿財務局の赤木俊夫氏の妻が、残された手記や遺書を公表するとともに、国と佐川宣寿元財務省理財局長を相手に総額約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に18日提訴。本紙は同日の紙面でいち早く報じた。 
 
 
 3/23

 

●麻生氏、近畿財務局職員の墓参に後ろ向きな考え 「訴訟」理由に 3/23 
麻生太郎副総理兼財務相は23日の参院予算委員会で、森友学園に関する財務省決算文書改ざん問題で自殺した近畿財務局職員への墓参に後ろ向きな考えを示した。職員の妻による提訴を踏まえ、「原告と被告が裁判所以外で会うというのは難しい」と述べた。
職員の妻は18日、国などに対し計約1億1000万円の損害賠償を求め、大阪地裁に提訴した。職員が改ざん作業をさせられ、苦痛と過労でうつ病を発症し自殺に追い込まれたと主張。自殺に追い込まれた原因を明らかにしてほしいと訴えている。
麻生氏は、そもそも「遺族の意向」を理由に弔問していなかった。しかし、18日発売の週刊文春が職員の遺書や手記のほか、「大臣の弔問を望んでいた」とする遺族の意向を報道。これを受け、麻生氏は18日の参院財政金融委で「(弔問に)伺わせていただければという気持ちに変わりがない」などとしていた。ところが、23日の参院予算委では「弔問に伺いたいというのは一貫して申し上げている」と述べる一方で「(訴訟は)気持ちと別の話としてある」と答弁。今度は遺族の意向ではなく、訴訟を理由に挙げた。
質問した立憲民主党の福山哲郎幹事長は「何でも訴訟が起こったら訴訟(という理由)で逃げるのはやめた方がいい。これも安倍政権のひどい特徴だ」と非難した。 
●財務省職員の遺書による告発を、コロナ騒動で有耶無耶にしてはならない 3/23 
新型コロナウイルスで、世界中に暗雲が立ち込めているが、今週の文春は、目の覚めるようなスクープを放った。こういうスクープがあるから、週刊誌は楽しいのだ。この話はあとでやるとして、まずはアサ芸から。
NHKの看板女性アナが、3月30日から入れ替わる。『ニュースウオッチ9』の桑子真帆アナ(32)が、朝の『おはよう日本』に行き、朝の和久田麻由子アナ(31)が夜の顔になる。 和久田はやる気満々らしいが、桑子のほうは、「なんで……」とショックを隠せないようだ。それに桑子は、かなりの酒豪だと聞く。朝早くの番組では、深酒はできない。そこで桑子は、NHK出身の先輩である有働由美子に、フリー転身も視野に入れた相談をしたというのである。桑子は、結婚したが、すぐに離婚もしている。人生経験の豊富な桑子なら、民放でもやっていけるかもしれない。それに、アサ芸によれば、相当な「ロケット乳」だそうだ。まあ、売るなら若いうちだから、年明けぐらいから、桑子独立というタイトルが、週刊誌に載るかもしれない。
さて、アメリカの大統領選の話。民主党はバイデン前副大統領が、サンダースに大差をつけてリードしている。ニューズウイーク日本版によると、トランプに勝てる可能性が高い候補という有権者の思いが、バイデンを押し上げたそうだ。現在の世論調査では、バイデンとトランプの支持率はほぼ互角だそうだ。もしバイデンが勝つと、地球温暖化を人類文明最大の脅威と捉えているから、パリ協定に復帰する。温暖化対策のためにも再生可能エネルギーの利用拡大を図る。TPPを支持してきたから、改めて参加するだろうと見ている。バイデンが勝てば、トランプと親しくし過ぎていた安倍首相には脅威になるのではないか。
コロナの影響で、多くのイベントが中止に追い込まれているが、一番残念なのは、4月1日から東京と大阪で予定されていた、ボブ・ディランの公演が見られなくなったことだ。文春によると、全15公演中止で、チケット収入だけで約7億円が消えたことになるという。
サン毎の内田樹。民主主義について寄稿している。長いのでここだけ挙げておく。「民主主義というのはどこかに出来合いのものがあって、それを『おい、民主主義一丁おくれ』と言えば誰かが持って来てくれるというものではない。それは私たちが今ここで手作りする以外ないものなのである。いま日本の民主主義が崩れつつあるのは、私たちがそのことを忘れたからである」
さて、無観客で大相撲も行われ、白鵬が同じ横綱・鶴竜を破って44回目の優勝をやってのけた。すごいものである。だが、もし東京オリンピックがなくなると、五輪までは取っていたいといっていた白鵬だが、気力がどうなるか心配である。遠藤(29)という人気だけはすごい力士がいる。この男、昨年5月に一般女性と結婚していたのだが、そのことを誰にも話していなかったという。日大のドンといわれた田中英壽理事長にもいっていなかったそうだ。14年に発足した個人後援会「藤の会」というのがあるが、田中夫妻が中心になってできたそうだ。本場所前に後援会主催で激励会を開くと、500人から1000人が集まるという。会費は1万円。だがこの会が、解散状態だというのである。日大関係者によると、田中の妻から紹介された女性がいたそうだが、遠藤は彼女が知らないところで、その女性と別れ、今の女性と結婚をしてしまったというのである。田中理事長は「裏切られた」と激怒し、後援会を解散してしまったというのだ。FLASHが取材を申し込むと、結婚を公にしない理由は、「妻が一般人であり、披露宴の予定もなかったこともあって、ごく一部の方にしかご報告をしておりません」という返事が来たそうだ。今風で、私はいいと思うのだが、古いしきたりを守っている相撲界では、こういう生き方はなかなか難しいようだ。
お次は、新潮の大好きな秋篠宮家のお話。すっかり影が薄くなってしまった秋篠宮家だが、相変わらず、紀子妃の厳しさは変わらないようだ。職員は2倍に増えたのだが、重責に耐えかねた職員が、体に変調をきたしたり、依願退職を申し出るケースが多いのだそうだ。警察庁から出向していた30代の男性宮務官が、秋篠宮の不興を買ってしまって、依願免職になってしまった。立皇嗣の礼を控え、多忙を極めているのだろうが、こういう状態では、それも無事行えるか、心配になる。
羽賀研二(58)という男がいる。一時は、梅宮アンナと交際したり、モテ男ナンバー1だったこともあった。だが、知人男性に医療関連会社の未公開株の購入話を持ちかけ、3億7000万円をだまし取ったと、詐欺と恐喝で逮捕され、最高裁で実刑6年の判決を下された。生まれ故郷の沖縄の刑務所に入れられた。新潮に羽賀が、刑務所内での苦労話を語っている。出てからは時給850円の豚丼屋のアルバイトをしながら、細々と暮らしてきたそうだ。元妻ともまだ会ってはおらず、2人の娘にも会えていないという。羽賀が、「もしかしたら本当にオレは捨てられるかもしれない……そうなったら、オレは何もかも失ってしまうんです」といって涙を流したそうだ。チョッピリ可哀想な気もするが。
立憲民主党のかつての花だった山尾志桜里が、辞表を叩きつけ、立民を離れた。彼女の行き先を文春は、れいわの山本太郎のところに転がり込むのではないかと見ている。志桜里とは、いい名前である。東京の桜は来週が満開になる。彼女が、再び輝く時は来るのだろうか。
鈴木杏樹と不倫していた喜多村緑郎は、文春に懺悔告白をしている。妻の貴城けいは、家を出たきり、会えていないそうだ。喜多村曰く、妻は、自分が見てもらいたかった舞台も見に来ないので、どんどん妻への思いが冷めていった時に、杏樹と意気投合し、「独り身になるつもりでいる」といったのは、ウソではなかったという。だが今は杏樹と別れ、妻への謝罪と、どうしてこうなったのかを話し、やり直したいという気持ちはある。だが、妻が、やり直す気持ちがなければ、「それは彼女のジャッジに従おうと思っています」(喜多村)この夫婦、元通りというのは難しそうだ。文春が年下の女優と不倫していると報じた東出昌大は、まだ妻の杏と向き合えていないという。杏のほうは、弁護士を立てて離婚するというところまではいっていないが、「彼女がまだその時期ではないと考えている」(杏の知人)そうだ。杏の怒りは、浮気よりも、育児に追われる自分を横目に、家事もせずに夜遊びを繰り返してきた夫の裏切りを許すことができないという。そりゃそうだ。
さて、百田尚樹という作家がいる。安倍首相と昵懇の仲である。その百田が、最近の新型コロナウイルスの対応について、「安倍総理はこれまでいいこともたくさんやってきた。しかし、新型肺炎の対応で、それらの功績はすべて吹き飛んだ」 そうツイートしたことで、安倍批判派に転向したのではないかと話題だという。ポストで、ノンフィクション・ライターの石戸諭が、百田をインタビューしている。ツイッターで安倍批判を始めたのは?「百田 隣国で未知のウイルスが現れ、大量の感染者が出て、一千万都市が封鎖されている。そんな前代未聞のことが起こったにもかかわらず、入国制限の措置も取らない政府を批判するのは当然です」 そうした批判をしたにもかかわらず、安倍首相と有本香と3人で会食したのは、どうしてかと聞かれ、安倍さんから電話がかかってきた。有本に話したら、有本が安倍にメールをしたそうだ。そうしたら、急遽、2月28日に食事をという話になったそうだ。だが、インタビューを聞いていると、何のことはない、安倍礼賛なのである。出来レースかも知れない。これまで熱烈支持だった百田が、安倍を批判したようなツイッターをすれば、週刊誌が喰いつく。石戸というジャーナリストはなかなか出来る人間だと思うが、百田のような海千山千の男にかかれば、易々と術中にはまってしまう。まあ、百田が最後にいっているように、「政治は結果ですから。このまま新型コロナの感染が終息すればええけど、感染が拡大して、結果的に経済活動に大きな支障が出たとしたら、政権としては大失敗でしょうね」
東京オリンピックは延期のようだし、新型コロナウイルスの拡大はこれからだ。終わり悪ければ、すべて悪し。安倍首相の最後にふさわしい。
ところで加計学園というのは、どうしようもないところである。文春は、ここが韓国人受験者を、面接の点数を0にして全員を落としたと報じた。だが加計孝太郎理事長は、0にしたのは「日本語でのコミュニケーションが困難だったから」だといい訳していた。だが、文春が調べたところ、加計学園が2011年から毎年主催している「日本語弁論国際大会」で、落とされた中の韓国学生が見事優勝していたというのである。それも加計孝太郎が、「大変素晴らしい」と賞賛していたのだ。加計孝太郎よ、いい加減にウソをつき続けるのはやめろよ。
コロナ対策を検討する政府の専門家会議は3月19日夜、「欧州のように感染が爆発的に拡大する可能性がある。大規模イベントは引き続き自粛するよう」求めた。だが、こんな当たり前の見解は、加藤厚労相にだって出せる。会議のメンバーの1人である岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長が朝日新聞DIGITAL(3月18日17時00分)で、新型コロナウイルスは致死率1%前後だから、特措法を改正して、すぐに宣言するほどのものではないといっている。会見した尾身茂副座長がそういっていれば、ワイドショーに煽られ、必要以上に怯えている人たちがどれほど安心するかしれなかったのに。はっきりした指標を示さないから、大阪の吉村府知事のように、大阪と兵庫の間の往来を控えるようになどと、あほらしいことをいい出す人間が出るのだ。検査体制も進まない、重症患者が出ても収容する病院がないのでは、感染そのものはまだまだ広がることは間違いないだろう。とうとうIOCのバッハ会長も、延期を示唆する発言をし始めた。早急に画期的なワクチンを見つけない限り、今夏の東京五輪はないようだ。
3月19日発売の週刊現代を、迷った末に買うのをやめたのも、現代OBとして恥ずかしく感じたからである。今週の文春を見て、現代の編集部員たちは何も感じないのだろうか。時代と切り結べとまではいわないが、巻頭が「人生は最後に間違える」というヒマネタ特集では、週刊と名乗るのをやめるべきではないか。コロナ関連はやってはいるが、「医者がためらいながらも出している薬」「偏差値70の有名私大ミスコン優勝者 初のAV現場」「涙は心の汗だ 僕らは青春ドラマで大きくなった」という特集を、部員たちは喜々としてやっているのだろうか。520円も出して買う読者がどれほどいるのだろう。今度こういう企画をやったらいい。「520円で買えるモノ大特集」。牛丼ならお釣りがくる。安い居酒屋なら、日本酒が2合と少し飲める。平野啓一郎の『マチネの終わりに』(文春文庫)はKindle版だと468円だ。いかに520円が“理不尽”な値段か、考えたほうがいい。
ところで、新型コロナウイルスの感染拡大は衰えを見せず、安倍首相の最後の悲願である東京オリンピックも、開催、中止、延期で揺れている。新潮は、五輪は消滅とタイトルを打ち、IOCのバッハ会長やトランプ大統領の、「世界保健機関(WHO)の助言に従う」、「無観客で開催するよりも1年延長する方が良い選択肢だ」という発言で、「中止・延期」が現実味を帯びてきたと報じている。そこに、東京オリンピック招致に“尽力”した元電通で大会組織員会理事の高橋治之も、「1〜2年延期するのが最も現実的」といい出した。国士舘大学の鈴木知幸客員教授は、高橋の本音は2年延期だと見ている。それは「来年8月にアメリカで開催される世界陸上は電通が放映権を握っているから、そことバッティングさせるわけにはいかない」というのだ。再来年はカタールでサッカーW杯があるが、時期も11月から12月、W杯に出場する選手とは年齢層もかぶらない。それにその年には、北京で冬季オリンピックも開催されるから、「アジアが一丸となる」と謳うこともできる。私も延期論に傾いている。問題は選手だけではなく東京・晴海につくる選手村は、大会後に増改築して23棟のマンション、計約5600戸を売り出す予定だ。既に販売済みの物件もあり、予定通りに引き渡しができないと、「補償問題に発展する可能性もあります」(スポーツ紙記者) バカでかい新国立競技場も、ハコはできても、入れるものがないのでは、宝の持ち腐れである。これを機に、IOCの利権まみれになってしまった五輪そのもののあり方、運営の仕方について、世界の首脳たちが話し合う場を設けて、侃々諤々、とことんやりあったらいい。
コロナ汚染は、世界的な株の大暴落を招き、円も1ドル100円を切るほどの円高になっている。昨年秋の消費税増税がダブルパンチになり、日本経済は沈没しかねない。その上、新潮によれば、4月以降の「働き方改革」が働く人間たちの首を絞めることになるという。同一労働同一賃金の施行で、人件費の高騰に喘ぐ多くの企業では、正社員の収入を減らすことで、格差をなくそうとする企業が多くなるそうである。メスが入るのは手厚い各種の「手当」のカットだ。住居手当などがなくなり、過労死防止のため「残業規制」も行われる。繁忙期でも年間720時間を超える残業はできなくなるため、全企業に適用されると、残業代は年間8兆5000億円減少するそうだ。一人当たり年間14万円の減収となるそうである。冬のボーナスには今回のコロナの影響が出てくる。住宅ローンを抱えている家庭は大きな打撃を受ける。早速、保険、通信費、車などは見直すべきだという。
ところで日本が大慌てなのに、英国では、日本と対照的な政策をとっていると、新潮が報じている。ジョンソン首相は、今後さらにみなさんの愛する人を失うことになるだろうと、国民に覚悟を求めた。だが同時に、医療専門家などを同席させ、「科学に基づき、適切なことを、適切なタイミングでやる」と、国民に安心も植え付けたのである。さらに、政府の首席科学アドバイザーが、「全ての人の感染防止は不可能であるし、望ましいことでもない。なぜなら、人口の何割かの人々がウイルスに対して免疫を持つことが、将来、我々自身を守るために必要だからである」と語った。この意味は、「抗体保持者が60%を超えたあたりから彼ら自身がバリアとなり、感染を終息させるという考え方」(在英国際ジャーナリストの木村正人) 政府や専門家というのは、こうした科学的な説明をして、国民に安心感を与えなくてはいけないのだ。
さて、コロナ騒動でテレビに出ずっぱりで、「コロナの女王」といわれるのが岡田晴恵白鷗大教授(57)だ。特に『モーニングショー』(テレ朝系)でよく見かけるが、ぼそぼそと小さな声でしゃべる、普通のおばちゃんである。文春によれば、「物憂げな表情で『政府はとっとと医療機関にマスクを出してください!』などとズバズバ言うのが面白い」(民放関係者)そうで、彼女のおかげで『モーニングショー』は視聴率が絶好調だという。
私が知る限り、ここはコロナ一色で、コロナの恐怖を煽っている元凶だと思うのだが。彼女は感染研に勤めていて、医者ではないが亭主は医者で、同じ感染研で働いていたそうだ。その頃、スリットの深いチャイナドレス風の服を着て働いていたという。彼女の元同僚が、「岡田さんと上司の部長が“禁断の師弟愛”に陥った」と話している。それはウイルス第一部の田代眞人部長だという。田代部長の岡田寵愛ぶりは厚労省にまで知れ渡っていたそうだ。彼女のほうも、「部長命令です!」が口癖で、「部長は私に逆らえない」と公言していたという。彼女が書いた論文が、実験データの取り扱いが不適切と問題になったことがあったが、岡田は完全に無視し、田代部長宛に「捏造が疑われるので論文を取り消すべきではないか」と、所長が文書を出したそうだ。文春は岡田を直撃するが、「不倫なんかない」と答え、実験データの改ざんが問題になったことについては無言だった。真偽のほどはわからないが、テレビで売れると、“痛い過去”まで掘り起こされるというのだから、岡田オバサンには同情する。
さて第1位は文句なしのスクープである。文春に掲載されたが、これは、相澤冬樹大阪日日新聞記者、元NHK記者の大スクープである。タイトルは「森友自殺財務省職員 遺書全文公開『すべて佐川局長の指示です』」 2年前の2018年3月2日、朝日新聞が「財務省が森友の国有地取引関連の公文書を改ざんした疑いがある」と報じた。その5日後の3月7日、改ざんを命じられた近畿財務局職員・赤木俊夫(54)が自宅で首を吊って自殺した。当時、赤木の妻に遺書とメモが残されている、そこには文書の書き換えを指示されたとあり、佐川理財局長や麻生財務相の名前が書かれているといわれた。相澤はNHKで司法を担当していて、森友学園事件を追っていた。彼がNHKを辞めてから書いた『安倍官邸VS.NHK』(文藝春秋)によると、ある記者が赤木のメモの内容を掴んできた。そこには、改ざんは財務局が勝手にしたのではなく、本省からの指示があったこと。佐川(前理財局長)の指示で書き換えたこと。決裁文書の調書の内容について、上から、詳しく書きすぎているといわれ書き直しをさせられた。このままでは私一人の責任にされてしまう、などと書かれていたというのである。早速、遺族取材を始め、赤木の父親、妻にあたるが、一切の取材を拒否されてしまう。「こうしてご遺族の取材は頓挫した」(同書より)のである。森友学園取材を続ける相澤は、安倍官邸と近い小池報道局長に疎んじられ、記者職から外されてしまう。相澤は、「森友事件は私の人生を変えた」と思い定め、この事件の深層を追うためにNHKを辞めて大阪日日新聞へと移るのだ。
相澤とは2019年の2月に会って話を聞いている。彼は「森友事件は森友学園の事件ではない、国と大阪府の事件だ」といった。自殺した財務省職員については、「改ざんはなぜ行われたのか、どんなふうに行われたのか、亡くなった方はどうしてあそこまで追い込まれたのか。そういうことを解明して、彼の無念を晴らしてあげたい」といったが、この事件の闇は深いから解明には時間がかかる、「正直、一生かけてやっても、結局、最後の最後の本当のところは分からなくて、死ぬ間際に真相解明できませんでしたと言って死んでいくかもしれませんけれど、そのぐらい一生かけてやっていきますよという覚悟」でやるといい切った。それがこのスクープに結実したのである。文春の相澤の手記によると、森友学園事件を追って上司とぶつかり、NHKを辞めたことを知った赤木の妻のほうから「会いたい」と連絡があったという。赤木が亡くなってから半年余りが経った11月27日に、大阪・梅田の喫茶店で会った。彼女は、「これ、見たいですよね」といいながら、パソコンの中にあった夫の手記を手渡したそうだ。
内容の重大性はよくわかったが、コピーもメモも写真も断られたという。後に彼女が相澤にこういったそうだ。この手記を相澤に渡して、そのまま自分も夫の後を追うつもりだった。だが、相澤の興奮する姿を見て、手記を渡すのも死ぬのもやめたそうである。今年の3月7日に赤木俊夫の三回忌を迎えたが、その間、財務省は彼女に対して、誠意のない態度をとり続けてきたという。そうしたことで、彼女の気持ちにも変化が出て、手記を公開することを決意し、それと同時に、3月18日、夫・俊夫が自殺したのは、「公文書改ざんに加担させられたからだなどとして、赤木さんの妻が18日、国と佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした」(朝日新聞3月19日付)のである。「森友問題 佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰もいわない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止符」 これは赤木が死の直前に書き遺したものである。「手がふるえる」という箇所に下線が引いてあるそうだ。
手記では、2018年2月から7月まで、「これまで経験したことがない異例な事案を担当し」て、強度のストレスが蓄積して7月から病気休暇を取るに至ったことや、森友学園への国有地売却問題で、財務省が国会等で虚偽答弁を貫いていることが、この事案を長期化・複雑化させていると指摘している。さらに「佐川理財局長の指示を受けた、財務本省理財局幹部、杉田補佐が過剰に修正箇所を決め、杉田氏の修正した文書を近畿局で差し替えました」。「3月7日頃にも修正作業の指示が複数回あり現場としてはこれに相当抵抗しました」が、本省から来た出向組の小西次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ」と調書の修正を悪いこととは思わず、あっけらかんと修正作業を行ったというのである。赤木は「大阪地検特捜部はこの事実関係を全て知っています」と書いている。だが、大阪地検は全てを知りながら、全員不起訴にした。
赤木の心の支えは、7月の人事異動で担当部署が変わることだったが、他の職員も上司も全員異動させられたのに、赤木だけが同じ職場に残されてしまったのだ。この当時、赤木は、自分も罪に問われる、検察に狙われていると怯えていたという。家で療養している赤木に、久保田検事から電話がかかってくる。「ぼくは職場に復帰したら検察に呼ばれる。検察は恐ろしいとこや。何を言っても思い通りの供述を取る。(中略)ぼくが何を言っても無理や。本省の指示なのに最終的には自分のせいにされる。ぼくは犯罪者や」 普通の生活を送ってきた公務員なら、検察の事情聴取と聞いただけで怖れ、震えるのは当然のことであろう。財務省が全ての責任を負うべきなのに、最後は逃げて近畿財務局の責任にする。「怖い無責任な組織です」(赤木) 手記の最後に、「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」の筆頭に、佐川理財局長の名前を書いている。だが、「この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することが出来ません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(五十五歳の春を迎えることができない儚さと怖さ)」、最後に「気が狂うほどの怖さと、辛さ こんな人生って何?」という言葉と「さようなら」で結ばれている。
この手記を読んだ人間の何人かは、彼は弱い人間だ、何も死ななくてもいいのに、と思うかもしれない。私も読みながら、そう感じたことは事実である。だが、赤木俊夫という人間は、巨大な財務省という組織と闘うためには、死をもって告発するしかないと考えたのであろう。赤木の妻には失礼ないい方になるが、夫の死の直後に、これを公表していれば、安倍政権と財務省に大きな打撃を与えられたはずである。もちろん、今回のスクープを、コロナ騒動で有耶無耶にしてはならないこと、いうまでもない。森友事件も加計学園問題も、安倍首相と妻の昭恵の関与は明らかだと思うが、メディアは彼らを追い詰められていない。赤木の遺言を無にせず、第2、第3の相澤記者が出て来こなくては、彼も浮かばれまい。今朝の朝日新聞と東京新聞は一面トップでこれを報じていたが、読売新聞は第二社会面に小さく載せただけである。読売新聞はメディアとして恥ずかしくはないのだろうか。 
 
 
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●彼の無念晴らしたい 森友疑惑 自殺職員の元同僚 3/24 
学校法人「森友学園」への国有地売却に関する公文書改ざんなどを巡り、舞台となった財務省近畿財務局OBが本紙の取材に応じ、あらためて真相解明を訴えた。問題を巡っては、大阪第一検察審査会は三月に佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官らの「不起訴不当」を議決。大阪地検が再捜査している。国有地の大幅値引きや改ざんに首相周辺や政治家らの関与や忖度(そんたく)があった疑念は解消されていない。 (望月衣塑子)
このOBは、近畿財務局で国有財産の管理処分を担う管財部に長年在籍した喜多徹信さん(70)と田中朋芳さん(63)。財務省の指示で改ざんを強要されたという趣旨の遺書を残して昨年三月に命を絶った近畿財務局の男性職員=当時(54)=とは旧知の仲だった。
学園が取得した国有地が八億円余り値引きされていたことが発覚したのは二〇一七年二月。学園が建設を計画していた小学校の名誉校長に安倍晋三首相の妻昭恵氏が一時就任していた。
近畿財務局は本省と相談して学園に特例で国有地を貸し付け、その後に大幅値引きをした。喜多さんは「現場だけの判断でできるはずがない」と指摘。田中さんは「値引きの根拠となった地中のごみの処分量の口裏合わせも学園側に依頼していた。マル政(政治)案件だったからだとしか思えない」とみる。
財務省の調査によると、安倍首相が一七年二月十七日に「私や妻が関係していたなら首相も議員も辞める」と答弁したのを機に、本省理財局が記録や文書の確認を開始。近畿財務局も本省の指示を受けて、政治家関係者との応接録などを廃棄した。首相答弁の九日後には、本省理財局の要請で近畿財務局職員が政治家関係者の照会状況削除などの改ざんも行った。
そもそも改ざん前の文書には、昭恵氏との親密ぶりを強調する学園側の発言など、首相周辺や政治家に関する数々の記述があり、改ざんはのべ三百カ所以上に及んだ。
喜多さんは「普通はこんなに記録を残さない。大幅値引きの言い訳がつかないから、あれほどの説明が付されたのだろう。『政治的意図があったのに自分たちのせいにされてはたまらない』という抗議の意思表示だったのでは」と考える。
喜多さんらが職員に聞いた話では、改ざんを指示された男性職員は、職場の誰が見ても分かるほど顔つきがみるみる変わっていったという。喜多さんは「改ざんを命じられたときも相当抵抗したようだ。やっているのは犯罪。自分の信念や理に反して悔しかっただろう」とおもんぱかる。
昨年三月二日に公文書改ざんが発覚すると、男性は財務省側の聴取を受けた翌日の同月七日、遺書を残して自殺。前日に男性を見かけた職員は「ひと言でも彼に声をかけていたら」と泣きながら喜多さんに電話してきた。
公文書改ざんを巡る有印公文書変造・同行使容疑などについて検察審査会は、佐川氏ら当時の理財局幹部を不起訴とした大阪地検の判断を「不当」と議決。値引きを巡る問題でも、政治家らの働き掛けの影響について「さらに捜査を尽くすべきだ」と促した。
「佐川氏は国会で『学園側との交渉記録を破棄した』と答弁したが、土地代金の支払いが済んでいない段階で破棄するわけがない。佐川氏が改ざんを指示したのは官邸を守るためと考えるのが自然だ」との見方を示す田中さん。「前代未聞の改ざんなのに、最高責任者の麻生太郎財務相が辞任しないのはおかしい。真相を明らかにして、男性の無念を晴らしたい」と決意を語った。 
 
 
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●安倍晋三が赤木俊夫さん妻に謝罪。 3/25 
安倍晋三が赤木俊夫さん妻に謝罪
安倍晋三首相は、3月24日、公文書改ざんが原因で自殺に追い込まれた赤木俊夫さん(元財務省近畿財務局・上席財産管理官)の奥さんに対して、国会答弁で「首相として大変申し訳ない思いだ」と謝罪しました。
「奥さまにとっても、愛する方がああいう形で自らの命を絶たれ、本当に大変な思いをされたんだろうなと改めてお見舞い、お悔やみを申し上げたい」と述べています。
「首相、森友改ざん「大変な思い」 自殺の財務局職員妻に謝罪 / 安倍晋三首相は24日の参院財政金融委員会で、森友学園を巡る公文書改ざん問題に関し、自殺した財務省近畿財務局職員の妻に対する見解を求められ「首相として大変申し訳ない思いだ」と謝罪した。「奥さまにとっても、愛する方がああいう形で自らの命を絶たれ、本当に大変な思いをされたんだろうなと改めてお見舞い、お悔やみを申し上げたい」と語った。首相や麻生太郎副総理兼財務相が国会答弁で、職員が残した手記を受けた改ざん経緯の再調査を拒否したことに関し、妻は「夫が生きていたら悔しくて泣いている」などと抗議している。(共同通信)」
再調査の実施が故人の想いに応える道のはず!
しかし、安倍首相・麻生財務大臣は、森友学園問題の再調査については、引き続き拒否しています。赤木俊夫さんの奥さんが、相澤冬樹記者に託して、赤木さんが「すべて佐川局長の指示です」と佐川宣寿(元理財局長、国税庁長官)を告発する手記を公表したのは、夫の無念の死を巡る真実を知りたい、ということです。その強い気持ちは、奥さんの「安倍首相・麻生大臣は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではない」という抗議の自筆メモによく表れています。安倍晋三が、口先の言い訳ではなく、赤木俊夫さん・奥さんに対して、「大変申し訳ない思い」を持っているのであれば、すぐに森友学園問題を巡る再調査を実施するべきです。以前の記事でも書きましたが、森友学園問題については、未だに、次の3点に関する真実が不明です。
1 財務省の公文書(決裁文書)の改ざんを「誰が指示したのか」
2 公文書の改ざんが「なぜ行われたか」
3 国有地の売却に安倍晋三首相や昭恵夫人の「影響・関与があったのか」
2018年3月の証人喚問で、佐川宣寿は、刑事訴追を受ける惧れを理由に、証言拒否を繰り返しました。その後、検察の捜査で不起訴が確定し、佐川宣寿が刑事事件で被告人となることはなくなったわけです。その検察の判断が適切かは別としても、証言拒否の「言い訳」はなくなったわけですから、今こそすべての真実を明らかにすべき時です。安倍晋三・麻生太郎にとっても、真にやましいことがないのであれば、正面から再調査を行う方がよいのはずです。
再調査が行われ、赤木俊夫さんと奥さんの想いが報われることを心から期待しています。 
●森友自殺職員の遺書 3/25 
「すべて佐川局長の指示です」
――森友問題で自殺した財務省職員が遺した改ざんの経緯
「週刊文春」2020年3月26日号に掲載された大阪日日新聞記者・相澤冬樹氏による記事「森友自殺〈財務省〉職員遺書全文公開 『すべて佐川局長の指示です』」が大きな反響を呼んでいる。「週刊文春」編集部は完売により記事が読めない状況を鑑み、文春オンラインで全文公開する。真面目な公務員だった赤木俊夫さんに何が起きていたのか。森友問題の「真実」がここにある。

2年前の3月7日、近畿財務局職員・赤木俊夫氏(54)が自ら命を絶った。安倍昭恵夫人が関与する小学校への国有地格安払い下げが国会で問題となる中、起きた決裁文書の改ざん事件。真面目な公務員は、なぜ公文書を改ざんし、そして死を選ばなければならなかったのか。「財務省が真実に反する虚偽の答弁を貫いている」「最後は下部がしっぽを切られる」。A4で7枚の痛切な「手記」やメモには、その経緯が克明に綴られていた。「隠蔽の安倍政権」の真実がついに明らかに――。

森友問題 佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰れもいわない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ、手がふるえる、恐い命 大切な命 終止府(ママ)
ノートに走り書きされたこの短い文章は、財務省近畿財務局管財部の上席国有財産管理官だった赤木俊夫さん(享年54)が死の直前に書き残したもの。「手がふるえる」という箇所に下線が引いてある。実際、文字も震えているように見える。
闇に隠れ、世間から忘れられていった「手記」
赤木さんは、世を騒がせた森友事件の公文書改ざんを上司に強要され、自ら命を絶った。2018年(平成30年)3月7日のことだ。彼が何かを書き遺したようだという話は当時からあった。しかし厳しい情報統制が敷かれて詳しい内容はわからず、死を選ぶに至った事情は闇に隠れたまま、世間から忘れられていった。ところが実は、彼の自宅のパソコンには「手記」と題した詳細な文書が遺されていたのだ。A4で、7枚。そこには、近畿財務局で密かに行われた驚くべき出来事が克明に綴られていた。私がこの「手記」を初めて目にしたのは、赤木さんが亡くなって半年あまりがたった11月27日のことだった。大阪・梅田の喫茶店。そこで私は赤木俊夫さんの妻、昌子さん(仮名)と初めてお会いした。NHKで森友事件を取材していた私が、記者を外されNHKを辞めたことをどこかの記事で知り、会いたいという話だった。
「これ、見たいですよね?」
私は昌子さんを取材したことはなかったが、NHK時代に同僚記者から「取材を避けている」と聞いていた。また事前に昌子さんから「質問には答えられないと思います。マスコミと職場(注・夫の職場、近畿財務局)がとても恐いです。そこを理解してください」と伝えられていたので、すぐに取材にはならないだろうと考えていた。ところが昌子さんはあいさつを交わしてまもなく、カバンから数枚の紙を取り出した。「これ、見たいですよね?」。それが俊夫さんの「手記」だった。存在は語られていたが記者は誰も目にしたことがなく、詳細がわかっていなかった「手記」。それが今、目の前にある。こんな時、記者は興奮を抑えられない。少なくとも私はそうだった。私は声に出して文書を読みながら「この部分、すごいですねえ。こんなことが書いてありますよ」と昌子さんに語りかけた。昌子さんが周囲を気にして「声が大きすぎます」と注意するほど。ざっと読んだだけで内容の重大性はよくわかった。「これ、コピーを取らせて頂くことはできませんか?」「だめです」「写真は? メモは?」「どれもだめです。目で見て覚えてください」。最後に昌子さんは「手記」をしまうと「これは記事にしないでくださいね。相澤さんに裏切られたら私は死にます」と言い残して去った。
昌子さんは「手記」を託し、夫の後を追うつもりだった
だいぶ後にご本人から聞いたのだが、実はこの時、昌子さんは夫が遺した「手記」を私に託して、そのまま夫の後を追うつもりだったそうだ。ところが興奮する私の様子を見て「手記」を託すのをやめ、同時に命を絶つのもやめた。つまり私は重要文書入手という記者の仕事をしくじったのだが、知らぬ間に昌子さんが自死を思いとどまるという“けがの功名”をあげていたことになる。人生何が幸いするかわからない。当時、私は『安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』という本を文藝春秋から出す直前で、発売日に合わせて12月13日発売の週刊文春で関連記事を書くことになっていた。赤木俊夫さんの「手記」の話を聞いて文春編集部は色めき立った。「それはすごい。何としても出したい。ビッグニュースになります」 その通りだが、私は無理だろうと感じていた。「出したら死ぬ」と情報提供者が話しているものを無断で出すわけにはいかない。そして昌子さんがそうすぐに考えを変えて公表に同意するとも思えなかった。
誠意のない態度で亡き夫の職場への気持ちが変化
それから1年4カ月。今年3月7日に俊夫さんの3回忌を迎え、法要が無事終わった。詳しくは後述するが、この間、財務省と近畿財務局は昌子さんに誠意のない態度を繰り返した。亡き夫の職場を大切に思っていた昌子さんの気持ちも大きく変化した。こうして昌子さんは俊夫さんの「手記」の公開を決意するに至った。今、初めて世に出るその内容を詳しく見ていこう。そして、俊夫さんが死に追い込まれた状況、死後に昌子さんが味わった苦しみと悲しみを多くの方に知って頂きたい(以下、《》部分は赤木氏の手記からの抜粋。)。
《私は、昨年(平成29年)2月から7月までの半年間、これまで経験したことがないほど異例な事案を担当し、(中略)強度なストレスが蓄積し、心身に支障が生じ、平成29年7月から病気休暇(休職)に至りました。これまで経験したことがない異例な事案とは、今も世間を賑わせている「森友学園への国有地売却問題」です。今も事案を長期化・複雑化させているのは、財務省が国会等で真実に反する虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因でありますし、この対応に心身ともに痛み苦しんでいます。》
ここで書かれている「森友学園への国有地売却問題」が明るみに出たのは3年前の17年2月8日。この国有地だけ売却価格が明らかにされないことを不審に思った地元・大阪府豊中市の木村真市議が、情報公開を求め裁判を起こしたのがきっかけだった。この国有地には森友学園の新設小学校が建つ予定で、その名誉校長には、安倍晋三首相の妻、昭恵さんが就任していた。翌日、朝日新聞がこの問題を大きく報じたことで国会で火が付いた。野党の追及に財務省は、鑑定価格9億円余の土地を8億円以上も値引きして売却していた事実を明かした。
ターニングポイントは首相答弁
ターニングポイントとなったのは2月17日だ。この日、国会で昭恵夫人の国有地取引などへの関与を追及された安倍首相は、こう言い切った。「私や妻が関係しているということになれば、間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきり申し上げておきたい。まったく関係ない」 7日後の24日には、財務省の佐川宣寿理財局長(当時)が国会で「交渉記録はない」「売買契約締結をもって事案は終了、速やかに廃棄した」などと答弁。実際には、国有地取引の経緯を記した改ざん前の公文書には「安倍昭恵首相夫人」の名前が繰り返し記されていた。
手記が記す改ざんの経緯「すべて、佐川理財局長の指示です」
その2日後、これら公文書の改ざんが始まった。「手記」はその状況をリアルに記している。
《元は、すべて、佐川理財局長の指示です。(中略)学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。佐川理財局長の指示を受けた、財務本省理財局幹部、杉田補佐が過剰に修正箇所を決め、杉田氏の修正した文書を近畿局で差し替えしました。第一回目は昨年2月26日(日)のことです。当日15時30分頃、出勤していた池田靖統括官(注・赤木俊夫さんの直属の上司で、問題の国有地取引の実質的責任者)から本省の指示の作業が多いので、手伝って欲しいとの連絡を受け、役所に出勤(16時30分頃登庁)するよう指示がありました。》
「池田統括が困っているから、ぼく助けにいくわ」
この日のことを妻の昌子さんは今もはっきり覚えている。日曜日で、赤木さん夫婦は昌子さんの母親とともに自宅近くの梅林公園を訪れていた。その時、俊夫さんの携帯が鳴った。通話の後、俊夫さんは「池田統括が困っているから、ぼく助けにいくわ」と言い残し職場に向かった。昌子さんは語る。「トシくん(昌子さんは夫の俊夫さんをこう呼ぶ)は池田さんより年上だけど、池田さんのことを尊敬していて本当に好きでした。だから『助けに行く』と聞いても疑問に思いませんでした。まさかあんなことをさせられるために呼ばれたとは……トシくんも職場に行くまで知らなかったんでしょうね」 この日、俊夫さんは割と早く帰ってきたという。後に改ざんが発覚した時、俊夫さんは昌子さんに「あの日は(抵抗する)時間がないからやってしまったんや」と話していたそうだ。しかし俊夫さんが亡くなった後、弔問に訪れた池田靖統括国有財産管理官は、「彼は一回目から(改ざんに)抵抗していた」と明かし、「自分がやろうと思ったけど手が回らなかった。自分がやればよかった」と悔やんだという。ところが、改ざんは一回では済まなかった。
「まさに生き地獄」
――55歳の春を迎えることなく命を絶った財務省職員の苦悩
《あっけらかんと修正作業を行い、差し替えを行った》
《その後の3月7日頃にも、修正作業の指示が複数回あり現場として私はこれに相当抵抗しました。(注・近畿財務局の)楠管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局中村総務課長をはじめ田村(注・嘉啓)国有財産審理室長などから楠部長に直接電話があり、応じることはやむを得ないとし、美並近畿財務局長に報告したと承知しています。美並局長は、本件に関して全責任を負うとの発言があったと楠部長から聞きました。(中略)本省からの出向組の(注・管財部の)小西次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ。」と調書の修正を悪いこととも思わず、本省杉田補佐の指示に従い、あっけらかんと修正作業を行い、差し替えを行ったのです。(大阪地検特捜部はこの事実関係をすべて知っています)》
この記載から以下のことがわかる。現場の赤木俊夫さんは不正な改ざんに反対した。→それに上司の楠敏志管財部長もいったんは同調した。→しかし財務省理財局の中村稔総務課長(現・イギリス公使)らが圧力をかけ覆した。→最後は近畿財務局トップの美並義人局長(現・東京国税局長)が「全責任を負う」と述べゴーサインを出した。→大阪地検特捜部はすべてを知っていたが、全員不起訴にした。
「公務員として最低の人間や」
また、ここで批判的に書かれている近畿財務局管財部の小西眞次長について、昌子さんには忘れられないエピソードがある。17年5月14日、日曜日。俊夫さんはこの日も休日出勤。昌子さんもたまたま近くで用事があり、近畿財務局の最寄りの大阪メトロ谷町四丁目駅で降りて、職場までの坂道を連れだって歩いていた。すると前方に、同じように休日出勤する小西次長の後ろ姿があった。俊夫さんは「あっ、次長や。あの人、こんな時にもスポーツジムに通ってる。体力あるんや」と話した。そこで昌子さんが「声をかけたら?」と言うと、俊夫さんは不機嫌な顔になって「公務員として最低の人間や」とつぶやいたという。この日の俊夫さんのメモ帳には、「小西次長も同時刻出勤されていた 話しはせず」と書かれている。
《これが財務官僚機構の実態なのです。パワハラで有名な佐川局長の指示には誰も背けないのです。(中略)杉田補佐などが過剰反応して、修正範囲をどんどん拡大し、修正した回数は3回ないし4回程度と認識しています。》
俊夫さんは一人で不正な改ざんのかなりの部分を担わされた
俊夫さんの直属の上司だった池田氏は改ざんについて「自分がやればよかった」と昌子さんに話している。一方、俊夫さんは生前、若い部下二人には「やらせていない。そこはよかった」と話していたという。とすれば、俊夫さんは一人で不正な改ざんのかなりの部分を担った(担わされた)のだろう。その若い二人と俊夫さんは、改ざんに涙を流して抵抗したと、彼らの上司だった池田氏は後に昌子さんに話したそうだ。財務省の情報隠蔽はこれにとどまらない。森友学園への国有地売却問題を受けて近畿財務局が会計検査院の特別検査を二度にわたり受けた際、財務省は次のように対応したという。
《決議書等の関係書類は検査院には示さず、本省が持参した一部資料の範囲内のみで説明する。(中略)応接記録をはじめ、法律相談の記録等の内部検討資料は一切示さないこと、検査院への説明は「文書として保存していない」と説明するよう事前に本省から指示がありました。》
「絶対うまくいかない。絶対(検査に)合格しない」
会計検査院の一回目の特別検査は17年4月11日から13日にかけて実施された。俊夫さんの手帳にはこの3日間に「会計検査(森友事案)」という記載がある。マメな俊夫さんは退庁時間も手帳に書いていた。11日と12日は22時50分、13日は午前3時10分、タクシーで帰宅している。メモ帳の別の欄には、13日に「検査院応答録 修正作業」と記されている。昌子さんは語る。「あの頃、朝晩最寄り駅まで車で送り迎えしていたんです。トシくんは車内でいつもこぼしていました。『絶対うまくいかない。絶対(検査に)合格しない。絶対もう一度ある』って」 実際、検査は6月にもう一度行われた。この頃から俊夫さんは目に見えて元気がなくなっていった。以前はどんなに仕事が忙しくても残業が続いても平気だったのに。明るくてよく笑い、昌子さんにやさしく、けんかをしたこともほとんどなかったのに。昌子さんはこの年の4月に淡路島に行った時の写真を見せてくれた。「ほら、トシくん、笑ってないでしょ。いつもはにこにこしていたんですよ。超明るい人で。それが笑うこともしゃべることも減って。会計検査のころは本当に辛そうで、仕事への意欲も薄れていたんじゃないかと思います」
俊夫さん以外全員異動……一人だけポツンと残された
当時、俊夫さんの心の支えは、7月の人事異動で担当部署が変わることだった。そうすれば森友関連の苦行から逃れられる。直属上司の池田氏からは内々に「動かしてもらえるよ。大丈夫だよ」と言われたと、昌子さんに話していた。ところがふたを開けてみると、6月23日の内示の日、俊夫さんは異動しなかった。それどころか、同じ部署の他の職員は上司の池田氏も含め全員異動が決まり、彼だけがこの職場に残される形になったのである。しかもさらに追い打ちをかける出来事があった。問題の国有地の売買に関する資料がすべて処分されて職場から消えていたのだ。「それがとにかくショックやった」と俊夫さんは話したという。昌子さんは語る。「むっちゃ落ち込んでました。一人だけポツンと残されて、資料はすべて処分されて……あんまりですよね」 もちろん、あんまりだ。俊夫さんは問題の国有地が売却された後に担当になったから、実際の売買交渉の経緯は何も知らない。知っているのは上司の池田氏だが、池田氏はいなくなり、資料はない。となったら、後を引き継いだ人間はどうすればいいのか?俊夫さんのメモには、内示の5日後、6月28日のところに「18:30特捜部来庁」とある。これが資料の任意提出を受けに来たのだとしたら、その直前に関係資料がなくなっていたことは、どうとらえたらいいのだろう?
俊夫さんをさらに追い詰めた検察の捜査
この後、俊夫さんの精神状態は悪化する。7月15日に精神科を受診、うつ病と診断される。7月19日、夫婦一緒に外出先で昼ご飯を食べた時は、震えがすごく顔は真っ青だった。その時、俊夫さんは「森友のことだけやないんや」と気になる言葉を残している。そして翌20日から病気休暇に入る。結局、そのまま職場に戻ることはなかった。病気休暇に入って90日がたつと、その後は休職扱いとなり、給与が減る。俊夫さんはよくお金のことを心配していたという。「(職場に)戻れるかなあ。森友のとこじゃないとこに」と口にしていた。だが職場からは「問題事案の担当は外すが、部署は異動させない」と告げられたという。異動がなかったことに輪をかけて俊夫さんの心を乱したターニングポイントがある。検察の捜査だ。問題の国有地の値引きについて、この年の3月22日と7月13日に市民団体や弁護士らの団体から「国に損害を与えた背任だ」と告発が出ていた。同時に「取引記録は廃棄した」と繰り返し答弁する佐川氏らに対する証拠隠滅での告発も出て、いずれも大阪地検特捜部が捜査していた。
「内閣が吹っ飛ぶようなこと」
俊夫さんは国有地の売買には関与していないから背任は関係ない。だが証拠隠滅は? この頃はまだ公文書の改ざんは明らかになっていなかったが、心ならずも改ざんをさせられることになった俊夫さんは、自分も罪に問われることを恐れていた。ことあるごとに「大変なことをさせられた」「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」「最後は下っ端が責任を取らされる」「ぼくは検察に狙われている」とおびえていたことを、昌子さんはよく覚えている。その検察による最初の接触は11月17日に訪れた。職場を通しての事情聴取の要請だ。事情聴取は、容疑者扱いの取り調べとは違うのだが、不正な改ざんに関わった自覚のある俊夫さんには同じように感じられただろう。昌子さんは当時の様子について「震え上がっていました。怖くて怖くてしょうがない感じでした」と話している。そして12月25日、俊夫さんは震える小声で昌子さんに告げた。
「ドクターストップがかかってるのに、電話が来た」
「きょう、とうとう電話あったわ。医師は止めていたはずなのに。こんな辛いのに、ドクターストップがかかってるのに、電話が来た」 この日のメモ帳には「久保田検事より受電」とある。実はそれに先だって検事が俊夫さんの主治医に事情聴取が可能か尋ねていたことが、主治医の話でわかった。主治医は「病状が悪化する」と聴取を止めた上で「手紙かメールでごあいさつ程度に様子をうかがったらどうですか?」と話した。だが検事はすぐに俊夫さんの携帯に電話をかけて20分間も話したのだという。20分は挨拶のレベルを超えている。事実上の聴取と言われても仕方ないだろう。これをきっかけに俊夫さんの病状は極端に悪化した。「ぼくは職場に復帰したら検察に呼ばれる。検察は恐ろしいとこや。何を言っても思い通りの供述を取る。検察はもう近畿財務局が主導して改ざんしたという絵を描いている。そのストーリーから逃げられない。ぼくが何を言っても無理や。本省の指示なのに最終的には自分のせいにされる。ぼくは犯罪者や」 妄想も現れるようになった。「玄関の外に検察がおる!」と繰り返し叫んでいたという。昌子さんも辛かった。「壊れたみたいにずっと同じことを繰り返しているんです。職場に復帰しないとお金がない。でも復帰したら検察に呼ばれる。その板挟みが本当に辛かったんだと思います」
「まさに生き地獄」
この頃、俊夫さんは「苦しくてつらい症状の記録」という文書を書いた。そこには次のように記されている。「これまでのキャリア、大学すべて積み上げたものが消える怖さと、自身の愚かさ」 「家内や、家内の家族・親戚の皆様にも迷惑をかけることが本当に苦しい」 「まさに生き地獄」 「家内にそのまま気持ちをぶつけて、彼女の心身を壊している自分は最低の生き物、人間失格」 あれほど尊敬していた上司の池田氏についても批判を口にするようになる。「池田さんは仕事が雑や。池田さんがちゃんと(国有地を)売っていたらこんなことにならんかった。大学に売っとったらよかったんや」 大学とは大阪音楽大学のこと。問題の国有地の隣接地にあり、森友学園より先にこの国有地の購入を希望して7億円以上の金額を提示したとされるが、近畿財務局は売らなかった。それを森友学園には1億3400万円で売っている。そしてついに改ざんが明るみに出る日が来た。
朝日新聞の第一報
2018年3月2日、朝日新聞に記事が出たのだ。「森友文書 書き換えの疑い」「財務省、問題発覚後か」「交渉経緯など複数箇所」の見出しが躍った。昌子さんはこの日のこともよく覚えている。「朝、スマホで記事を見て、『この人のやったこと、これやったんや』とすぐわかりました。本人に見せたくなかったけど、結局、見てしまった。ものすごく落ち込んで『死ぬ、死ぬ』と繰り返してました。夜中にロープを持って出ていこうとしたので止めたんです」 翌3日、俊夫さんは外出中の昌子さんに「もうぼくは山におるからメールもしてこんで」とメールを送ってきた。この時は昌子さんが探しに行って連れ帰ることができた。6日には「死ぬところを決めている」と言って再び山に向かおうとした。そんな状況で彼はこの「手記」を書き上げた。なぜ自分が追い詰められなければならないのか? この不条理に対し最後の力を振り絞って、真実を書き残しておくために。
《役所の中の役所と言われる財務省でこんなことがぬけぬけと行われる。森友事案は、すべて本省の指示、本省が処理方針を決め、(中略)嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです。この事案は、当初から筋の悪い事案として、本省が当初から鴻池議員などの陳情を受け止めることから端を発し、本省主導の事案で、課長クラスの幹部レベルで議員等からの要望に応じたことが問題の発端です。いずれにしても、本省がすべて責任を負うべき事案ですが、最後は逃げて、近畿財務局の責任とするのでしょう。怖い無責任な組織です。》
「いってらっしゃい」ではなく「ありがとう」
手記の文面から、最後に書き上げたのは死の当日の3月7日と見られる。改ざん発覚の5日後だ。この日、昌子さんが出勤する際、いつもはぐったりしている俊夫さんが玄関まで見送りに来て言った。「ありがとう」……「いってらっしゃい」ではなく「ありがとう」。あれは死ぬ決意の表れだったのだろうと、今、昌子さんは思う。職場から昌子さんはショートメールを送った。最初は11時45分。「大丈夫かな?」というメッセージにすぐ「はい」という返事が返ってきた。ところが16時6分、「疲れるほど悩んでる? 悩んだらだめよ」というメッセージにはいつまでも返事が来ない。不安になった昌子さんは職場を早退し急いで自宅に戻った。すると……。昌子さんは自宅の部屋の窓を指しながら語った。「あそこの手すりにひもをかけて首をつっていたんです。普通ならまず119番しますよね。でも私は『財務局に殺された』って思いがあるから、つい110番に電話しちゃったんです」 俊夫さんの「手記」は次の言葉で締めくくられている。これは彼が命を絶つ直前に渾身の思いで書き残した“遺書”であり、不正の告発文書なのだ。
《◯刑事罰、懲戒処分を受けるべき者 佐川理財局長、当時の理財局次長、中村総務課長、企画課長、田村国有財産審理室長ほか幹部 担当窓口の杉田補佐(悪い事をぬけぬけとやることができる役人失格の職員) この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55歳の春を迎えることができない儚さと怖さ)家族(もっとも大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です。私の大好きな義母さん、謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さこんな人生って何?兄、甥っ子、そして実父、みんなに迷惑をおかけしました。さようなら》
これとは別に、妻に宛てた手書きの遺書もある。
《「昌子へ これまで本当にありがとう ゴメンなさい 恐いよ、心身ともに滅いりました」》
俊夫さんは死の前日、仲が良かった昌子さんの母に「あすは検察なんです」と話していたという。しかし今となっては、それが事実だったのかどうかはわからない。命日は3月7日。俊夫さんの誕生日は3週間後の3月28日。「手記」にある通り、彼が55歳の春を迎えることはなかった。
「トシくんは亡くなって、財務局は救われた。それっておかしくありませんか?」
――財務省職員の妻が提訴した理由
「ぼくの契約相手は国民です」
私が初めてご自宅に伺った時、昌子さんは俊夫さんの書斎を見せてくれた。今も生前のまま残されているその部屋には、本棚にハードカバーの書籍がびっしり並んでいる。哲学や思想などの本が多い。趣味も多彩だった。中でも書道は一生続けたいと考え、筆や墨などの高価な道具を多数買いそろえていた。棚にきちんと分類され整理されて並んでいる様は、几帳面な性格を表しているようだ。音楽や建築、落語にも造詣が深かった。仕事から帰宅すると、この書斎で本を読んだり落語を聞いたりコンサートのチケットをとったり。土日は部屋にこもって書道に集中した。建築家の安藤忠雄さんや、音楽家の坂本龍一さんのことがとりわけ大好きだった。1993年、まだ若い頃、近畿財務時報という部内誌に寄稿している。題は「坂本龍一探究序説」。その中に「逃避することのできない社会現象の不合理性や構造の矛盾」という言葉がある。今になってみると将来を暗示しているかのようだ。彼の人となりを昌子さんは懐かしそうに語る。「趣味が幅広くって、自分のために投資を惜しまない人です。私にも、私が何かを買おうとすると『最高の物を買って』と言ってくれました」 「自分の考えがしっかりあって、自分の生きる道を筋道立てて前に進んでいく。いいかげんには生きていない人でした。誠実で優しくて、けんかはほとんどしたことがありません。相談したら何でも答えてくれる、包容力もある、何でも一生懸命でした」 赤木俊夫さんは63年、岡山県の出身。高校卒業後、当時の国鉄に就職したが、87年の分割民営化で中国財務局に採用され、鳥取財務事務所に勤めた。その時、私がNHKから転職した大阪日日新聞の経営母体である鳥取の地元紙「日本海新聞」を愛読していたというから、意外なご縁がある。その後、立命館大学法学部(当時あった夜間コース)に進学するため近畿財務局京都財務事務所に移り、以後は関西各地で勤務した。口ぐせは「ぼくの契約相手は国民です」。まじめで明るい公務員だった。
近畿財務局の上司が「遺書があるなら見せてほしい」
しかし俊夫さんの死後、近畿財務局の振る舞いは昌子さんを大きく傷つけた。俊夫さんが亡くなった翌日、近畿財務局の上司にあたる楠管財部長が自宅を訪れ、「遺書があるなら見せてほしい」と昌子さんに求めたという。「私はものすごく怒りました。だって森友のことで死んだのは間違いないじゃないですか。はっきり断りました」 昌子さんの目の前で「赤木を殺したのは朝日新聞や!」と叫んだ職員もいた。でも昌子さんは「殺したのは財務省でしょ」と冷ややかに見ていた。「財務局で働きませんか?」とも持ちかけられたという。昌子さんは「佐川さんの秘書にしてくれるならいいですよ。お茶に毒盛りますから」と答えた。痛烈な皮肉に相手は沈黙した。
麻生太郎財務大臣をめぐる対応に唖然
さらに納得がいかないのは、麻生太郎財務大臣をめぐる対応だ。俊夫さんが亡くなって3カ月がたった6月、俊夫さんと親しかった財務省職員Fさんから電話があった。「麻生大臣が墓参に来たいと言っているがどうか?」と聞いてきたのだ。昌子さんは「来て欲しい」と答えた。ところがFさんは、昌子さんに黙って昌子さんの兄に電話をかけ、「妹さんは大臣に来て欲しいと言っていますが、マスコミ対応が大変だから断りますよ」と一方的に告げたのだという。昌子さんは次の日、Fさんからそのことを告げられて唖然とした。しばらくして麻生大臣が国会で「遺族が来て欲しくないということだったので伺っていない」と答弁しているのを見た。翌年にも同じように答弁している。それからまもなく、近畿財務局の美並局長(当時)がお供の人たちと自宅を訪れた。その際、美並局長は「大臣の墓参を断ってくれてありがとう」と述べたという。昌子さんは「私、そんなこと言ってないのに」と憤った。翌年19年2月、財務省の岡本薫明事務次官が自宅に弔問に訪れた際は、同行していた近畿財務局の職員から「一番偉い人ですよ。わかってます?」と言われた。こうした積み重ねが、昌子さんの心を財務省から引き離していった。「もともと夫の勤め先だから悪くいうつもりはなかったんですけど、あんまりひどいじゃないですか」
「トシくんは亡くなって、財務局は救われた。おかしくありませんか?」
俊夫さんの話題になると、昌子さんは毎回「トシくんがかわいそう」と涙ぐむ。夫はなぜ亡くならなければならなかったのか? それを知りたくて昌子さんは、俊夫さんの同僚だった人たちから話を聞こうとした。しかしなかなか会ってくれない。俊夫さんが心から信頼していた上司の池田氏は2回、自宅に来てくれた。だがすべてを正直に話してくれたとは思えない。去年の暮れのある朝、昌子さんから電話がかかってきた。「ひどいんです」と。池田氏が「もう二度と会えない」と伝えてきたのだ。「ひどくありませんか? 話が聞きたいだけなのに。トシくんがかわいそうで………」。時折声を詰まらせながら訴えるその口調は、抑えようがない憤りの気持ちを表していた。数十分間の通話で私は「昌子さんの言うとおりです」と答えるしかなかった。親友だったFさんは「近財(近畿財務局)は赤木に救われた」と話したことがあるという。昌子さんは思う。「それってどういうことですか? トシくんは亡くなって、財務局は救われた。それっておかしくありませんか?」 むろん、おかしい。そのくせ池田氏をはじめ近畿財務局の人たちはみんな昌子さんの周辺から遠ざかっていく。「もうこれ以上関わりたくない」という気持ちが如実に表れている。昌子さんは、俊夫さんが「手記」で改ざんの責任者と指摘している佐川氏についても弔問に来て欲しいと願っている。トシくんの仏壇の前で謝罪し説明してほしいと。だから弁護士を通じて去年2回、佐川氏の自宅に手紙を送り、来訪を求めた。だが返事は来ない。財務省の関係者から人づてに、佐川氏が手紙を「しっかりと読ませて頂いた」と話していると聞いた。でも、読んでどう感じたかの話はない。こうして次第に昌子さんの中で「真相を知るには裁判しかない」という気持ちが芽生えていった。夫の死には佐川氏も相当の責任があるだろう。だから裁判を起こすとしたら佐川氏も訴えたい。そうすれば法廷で佐川氏に問い質すことができるかもしれない。
弁護士と相談を重ね、佐川氏個人も被告に
通常、この手の事件では「国家公務員の行為は国が責任を負う」という国家賠償法の規定に基づき、国だけを相手に裁判を起こす。だがこのケースは、到底通常の公務とは言えない違法な改ざん行為をさせた責任を問うのだ。公務と言えないなら個人の責任だろう。しかも佐川氏は当然、謝罪と説明を行うべきだが、遺族の求めに全く応じていない。これはまさに佐川氏個人の責任だ。昌子さんは弁護士と相談を重ね、佐川氏個人も被告に加えることにした。
裁判の目的はお金ではなく真相究明
昌子さんとしては、お金のためではなく真相究明のための裁判だから、賠償金額はいくらでもいいと考えていた。しかし弁護士によると、安い金額では国が「認諾」と言ってこちらの主張を丸呑みして認めてしまう。請求額を支払うことで裁判をすぐに終わらせ、それによって遺族側に原因追及をさせないことが狙いだ。そうさせないためには、丸呑みできない金額で訴えるしかない。佐川氏と国に対し、総額1億1000万円余の賠償を求めるつもりだ。裁判はあくまで佐川氏を法廷に呼び出し、謝罪を求め、真相を追究するのが目的だ。訴状の冒頭にも「本件訴訟の目的は、第一に、なぜ亡俊夫が本件自殺に追い込まれなければならなかったのか、その原因と経過を明らかにする点にある」と明記されている。だから勝訴して得られた賠償金は、何らかの形で世のため人のために役立てたいと考えている。特に、二度と公文書改ざんなどという不正が起きないようにするために。
佐川氏の自宅を訪れると……
3月15日、私は東京都内の佐川氏の自宅を訪れた。室内に灯りがついている。誰かがいることは間違いない。インターホンを押した。一度、二度。反応はない。三度目、私はインターホンの前に俊夫さんの手記を掲げて言った。「佐川さん、これは近畿財務局の亡くなった赤木さんが遺した手記です。これを読んで頂けませんか?」……それでも反応はない。家の中で聞いているのか、見ているのかもわからない。最後に私は「手紙を郵便受けに入れておきますので、お読みください」と言い残し、その場を立ち去った。これを昌子さんに伝えると、「私も何度もピンポンされる恐怖を味わったので少し気の毒です」と話した。夫を追い詰めた佐川氏にも同情を寄せる心優しい人なのだ。現在62歳の佐川氏。2年前に国税庁長官を辞任した後は再就職もせず、財務省OBの集まりなどにも顔を出していないという。「全責任を負う」と言ったとされる美並氏にも取材を申し入れると、「決裁文書の改ざんについては、平成30年6月4日に調査報告書を公表している通りです。お亡くなりになられた職員については、誠に残念なことであり、深く哀悼の意を表したいと思います」と財務省の広報室を通じて回答があった。3月18日、昌子さんは大阪地裁に提訴する。被告となる国と佐川氏は、どのように応じるだろうか? さらに、責任があると名指しされた財務官僚たちは? 彼らを統率する責任がある安倍首相と麻生財務大臣は? そしてそもそもの発端となった森友学園の小学校の名誉校長だった首相夫人の安倍昭恵さんは? みな、赤木俊夫さんと昌子さんの訴えをどのように受けとめるだろうか? 
 
  
 3/26

 

●自殺した近財職員“遺書” 森友再来に怯える安倍首相夫妻 3/26 
ついに「パンドラの箱」が開くのか? 森友学園への国有地売却で財務省近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)が自殺したのは、公文書改ざんに加担させられたからだとして、赤木さんの妻が国と佐川宣寿・元同省理財局長に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。
自民党幹部はこうボヤく。「安倍首相はこれまで加計学園や桜を見る会など、多くのスキャンダルがあった。だが、最も痛手だったのは、森友問題。首相や妻の昭恵夫人が関与していれば、首相も国会議員もやめると宣言してしまった。今回の提訴で、問題が再燃すると大変なことになる」 森友問題が2017年、国会で追及されるさなか、赤木さんは文書の改ざんを命じられ、妻に「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」と打ち明けていた。同年7月にはうつ病と診断され、仕事に行けなくなり、「検察がいる」「僕は犯罪者や」などと繰り返し、18年3月に命を絶った。
一方、安倍政権にはこの当時、心強い「官邸の門番」がいた。定年延長問題で注目された東京高検の黒川弘務検事長が、法務事務次官だったのだ。
「森友問題では、首相、昭恵夫人や佐川氏ら財務省幹部が検察庁に刑事告発されたが、すべて乗り切っていた。しかし、黒川氏が東京高検検事長に転出すると、昨年末には秋元司衆院議員がカジノ疑惑で逮捕。3月には河井克行前法相、妻の案里参院議員の公職選挙法違反事件で秘書ら3人が逮捕された。官邸が強引に黒川氏を検事総長に据えようとしたことが、現場の反発を招き、逆効果となった。広島地検は案里議員の連座制の適用を求め、広島地裁に『百日裁判』を申し立てる可能性が高い」(司法関係者)
赤木さんの残した「遺書」と公文書改ざんの経緯を記した「手記」には多くの財務官僚の名前がある。裁判で新証拠が出れば、新たな告訴が出て検察庁が再捜査という展開もありうる。
「安倍首相は森友問題を突っ込まれると、過剰反応してしまう。コロナ対応も芳しくないし、展開次第で一気に政局になるかもしれない」(前出の幹部) 
●値引き8億円「問題ある」 売却当事者が“告白” 3/26 
森友学園に国有地が8億円も値引きされ販売された森友事件で、売却を担当した財務省近畿財務局の職員が、自殺した職員の妻に対し「8億の算出に問題がある」と打ち明けていたことが初めて明らかになった。売却の直接の担当者の“新証言”は、これまでの政府の説明や財務省の報告書の内容を覆す“新事実”であり、再調査を求める声が一層高まるものと予想される。
証言を行ったのは、財務省近畿財務局の池田靖氏。森友学園への国有地の売却を統括国有財産管理官として担当した。公文書改ざんを巡り自殺した赤木俊夫上席国有財産管理官の直属の上司にあたる。池田氏は昨年3月、赤木氏の一周忌の直後、赤木氏の妻の求めに応じて自宅を訪れ2時間にわたり話をした。その時の会話の詳細な記録を妻が残していた。
それによると、池田氏は国有地に埋まっているとされ、値引きの根拠とされたごみについて「どれだけ埋まっていて(撤去に)どれだけの費用がかかって、どれだけ売却価格から引かなければならないかということを、自分たちは最後まで調べようと努力したんです。でも大阪航空局(問題の国有地の管理者)は動かなかったんです」と述べた。そして「これは完全に国の瑕疵(かし)なので、それが原因で(この土地に建てられる)小学校の開設ができなかった時には損害賠償額が膨大になる。だから一定の妥当性のある価格を提示して、それで相手が納得すれば一番丸く収まる」「航空局が(撤去費用として)持ってきたのが8億だったということで、それを鑑定額から引いただけなんです」と述べ、値引きされた8億円は国土交通省大阪航空局が算定したと説明した。
その上で「この8億の算出に問題があるわけなんです。確実に撤去する費用が8億になるという確信というか、確証が取れてないんです」と発言し、8億円を値引きした根拠が薄いことを事実上認めた。さらに池田氏は「僕が向こう(森友学園側)に『いくらやったら出せんねん』と聞いた」とも述べ、相手が出せる上限額を、価格を決める前に聞き出していたことも認めた。
安倍晋三首相、麻生太郎財務大臣もこれまで、値引きには根拠があり適切だという見方を示し、公文書改ざんを受け18年にまとめられた財務省の報告書でも、問題はないという見解が示されている。 
●メディアは死んだ。森友問題で自殺した職員の訴えを無視する愚行 3/26 
森友学園を巡る文書改ざん問題で自殺に追い込まれた財務省職員の妻が、夫が残した手記を公開し事件の再調査を求めていましたが、安倍総理、麻生大臣がともに拒否し、その是非が話題となっています。両氏の対応を非難すると同時に、メディアの姿勢についても問題視するのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんはメルマガ『デキる男は尻がイイ−河合薫の『社会の窓』』に、そう思わざるを得ない理由を記しています。
報道機関の使命は「権力の監視」というのなら
「財務省が真実に反する虚偽の答弁を貫いている」 「最後は下部がしっぽを切られる」――。
2年前の3月7日、命を絶った近畿財務局職員の男性の手記とメモが、先日公表されました。A4で7枚。全文読みましたが、そこには公表に踏み切るまでの奥さまの心情も書かれていて、読んでいるだけで苦しくなりました。
と同時に、文書改ざんに至るまでの経緯、その時々の権力者たちの言動、男性が追い詰められていく状況が詳細に綴られていて、“権力”というものへの怒りと絶望、胸をかきむしられるような感覚を覚えました。
記事を書いたのは元NHKの記者の男性です。彼はNHKで森友事件を取材していたところ、記者を外されたことからNHKを辞職。財務局職員の男性の手記を初めて目にしたのは、男性が亡くなって半年あまりがたった11月27日のことだったといいます。
詳細は記事をご覧いただきたいのですが、論点だけまとめると以下のとおりです。
• 元記者に会った日、奥さまは「手記を元記者に託して夫の後を追おう」と考えていたが元記者の男性があまりに興奮して応じたため、「これは記事にしないでください」と言い残して、手記を持ち帰った
• それから1年4カ月。「夫の職場だから大切にしたい」という奥さんの気持ちを踏みにじるような態度を財務省と近畿財務局は繰り返した
• 「麻生大臣が墓参りに来たいと言っているがどうするか?」という財務省職員からの連絡に、「来て欲しい」と答えたにも関わらず、一方的に「マスコミ対応が大変だから断る」告げられた。
• 国会(当時)では麻生大臣が、「遺族が来て欲しくないということだったので(墓参りに)伺っていない」と答弁しつづけた
…これはごく一部ですが、その他にも多くの誠意のない言動が「当たり前」のように繰り返され、奥さんの気持ちも変化していきます。そして、「真相を知るには裁判しかない」という気持ちが芽生えていったのです。
つまり、「真相を知りたい」という一縷の望みをかけて手記を公表し、裁判を起こすことを決意したのです。
ところが、国会では、安倍総理大臣らは再調査はしない意向を示し続けました。「調査は行わない」「自分の発言が問題ではない」などと発言を繰り返しました。
こういった状況に対し奥さんが、以下のメッセージを元記者に送り、マスコミに公表されたのはご承知のとおりです。
「安倍首相は2017年2月17日の国会の発言で改ざんが始まる原因をつくりました。麻生大臣は墓参にきてほしいと伝えたのに国会で私の言葉をねじ曲げました。この2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場にないと思います。」
命を絶った男性の手記は実に丁寧かつ詳細にまとめれており、自筆のメモにはその時々の苦悩と怒りと絶望が描かれています。これを読んで「自分には関係ない」と言える人間が、もしこの世にいるとしたら…、それは「人」としてどうなのか?そんな「人」を許していいのか?
ただただ真面目に職務に向き合ってきた人が、追い詰められ、恐怖に震え、怯え、本当は生きたいのに、生きる力が萎える。そんな理不尽が見過ごされていいわけがない。そんな思いから、今回、メルマガで取り上げました。
「報道機関の使命は『権力の監視』です」とは、メディアの人たちの常套句です。では、その“まなざし”はどこにあるのでしょうか?おかしいことをおかしいと言えない空気。その空気を作り出したのはいったい誰なのか?殺人を犯したら裁かれるのに、権力があれば裁かれないのか?
もっとメディアは、男性の訴えに真摯に向きあうべきではないでしょうか。権力を持つこと自体は、決して悪いことではありません。しかしながら、自己制御力の低いリーダーが権力を持つと、その権力を組織のためではなく自分のために行使します。自己制御力のない権力者は、衝動的に権力を行使することも多く、彼らはしばしば他人に粗暴に振舞います。
自己を律する力(=自己制御力)なき権力者がリーダーとなった暁には、その先には暗雲が立ちこめていて、組織も悲惨な末路をたどる事になる。その末路を請け負わされるのは末端の、真面目で、職務に忠実な人です。「最後は、下部がしっぽ切られる。手がふるえる。怖い」―――。男性が残したこの言葉の真意を、この切なくて痛ましい言葉を紡がなくてはならかった心情を、もっと真摯に受け止めてほしいです。 
 
 
 3/27

 

●これでも安倍首相は無関係か。森友学園文書から消された「記述」 3/27 
先日掲載の「メディアは死んだ。森友問題で自殺した職員の訴えを無視する愚行」でもお伝えしたとおり、文書改ざんを巡り自殺に追い込まれた財務省職員・赤木俊夫氏の遺書と手記が公開され、大きな話題となっています。赤木氏の妻は改ざんを指示したとされる佐川元理財局長と国を提訴しましたが、これを「個人的な怨念」と受け止めてはいけないとするのは、元全国紙社会部記者の新 恭さん。新さんは自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、「ことは国家的犯罪の問題」とし、そう判断せざるを得ない理由を詳述しています。
真実を求め森友改ざん犠牲者の妻が提訴
近畿財務局職員だった赤木俊夫氏(享年54)を自殺に追い込んだ森友文書改ざん事件の真相を求めて、その妻、A子さんは3月18日、国と、財務省元理財局長、佐川宣寿氏に、計1億1,000万円余りの損害賠償を求める訴えを、大阪地方裁判所に起こした。
赤木氏は財務省の近畿財務局で上席国有財産管理官をつとめていたが、安倍首相夫妻の関与をうかがわせる公文書の改ざんを本省に強要され、自責の念と心身の疲労がもとで自殺した。
なぜ夫が、国家公務員にあるまじき違法行為を押しつけられて犠牲にならなければならなかったのか。一方で、改ざんの首謀者たちは、なぜ今も、のうのうとしていられるのか。
A子さんは提訴と同時に、俊夫さんが自宅のパソコンに保存していた「手記」と、自筆の遺書を公開した。俊夫さんの苦悩とともに、公文書改ざんを現場の職員に迫る財務省本省の動きが克明に書き込まれている重要資料だ。
提訴の手続きを終えて記者会見した代理人弁護士は、A子さんのコメントを読み上げた。
「夫が亡くなって2年…心のつかえがとれないままで夫が死を決意した本当のところを知りたいと思っています。夫が死を選ぶ原因となった改ざんは誰が何のためにやったのか。…今でも近畿財務局の中には、話す機会を奪われ、苦しんでいる人がいます。…佐川さん、どうか改ざんの経緯を、ほんとうのことを話してください」
A子さんは代理人を通じて佐川氏本人に手紙を送り、誠実な回答を望んだが、なしのつぶてだった。麻生財務大臣に墓参りに来ていただきたいと財務省職員を通じて頼んだが、麻生大臣は国会で「遺族の方が来てほしくないと言っているから伺っていない」と、なぜか事実と違う発言をして素知らぬ顔を決め込んだ。
訴訟に至った決め手となったのは、夫の自殺を人事院が公務上災害と認定したにもかかわらず、その認定理由などが記された資料の情報開示が適正に行われていないことだった。出てきた資料のほとんどは黒塗りにされていたのだ。
人事院は、A子さんから提出された「手記」と遺書、関係者からの聞き取りによって、事実認定を行ったとみられる。
「手記」には、当時の財務省理財局長、佐川宣寿氏から公文書改ざんの指示があったと、はっきり書かれている。その内容を認めたからこそ、人事院が公務上災害に認定したのではないのだろうか。「手記」の内容に目を凝らしてみよう。
赤木氏は、森友学園が「神道の小学校」を計画した大阪・豊中市の国有地を、2016年6月に国が払い下げたさいの契約にはかかわっていない。だが、豊中市議が売り渡し価格の公表を求めて提訴し朝日新聞などがスクープした2017年2月には、この問題の担当になっていた。
問題発覚から半年間。「その対応に連日の深夜残業や休日出勤を余儀なくされ、その結果、強度なストレスが蓄積し、心身に支障が生じ、平成29年7月から病気休暇(休職)に至りました」(手記より)
赤木氏が抵抗しながらも逆らいきれず、ついに手を染めてしまったのが決裁文書の改ざんだった。
「佐川理財局長の指示を受けた、財務本省理財局幹部、補佐が過剰に修正箇所を決め、補佐の修正した文書を近畿局で差し替えしました」(同)
初めて改ざん作業をしたのは2017年2月26日のことだ。日曜日を家族と過ごしていたところに、近畿財務局の池田靖統括官から「本省から指示された修正作業が多いので手伝ってほしい」との電話連絡を受け、午後4時半ごろ、登庁した。
その9日前の2月17日、衆議院予算委員会で安倍首相が繰り出したのが今や有名になったこの答弁。「私や妻はこの認可あるいは国有地払い下げに一切かかわっていない。もし、かかわっていたのであれば総理大臣をやめる」
2月24日には佐川理財局長が「(森友学園との)交渉記録はない」と答弁し、それに合わせるように2日後に始まったのが、赤木氏を巻き込んだ決裁文書の改ざん作業だ。
その後も修正の指示があるたびに、他の職員とともに抵抗したが、所詮、逆らい切れるものではない。
本省理財局の中村総務課長や田村国有財産審理室長からの電話を財務局管財部長経由で受けた美並近畿財務局長は「本件に関して私が全責任を負う」と言って、本省指示に従うよう促した。
改ざんされた決裁文書からは、以下のような記述が削除されている。
平成26年4月28日 (森友学園との)打ち合わせの際、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください。』とのお言葉をいただいた。」との発言あり。
産経新聞社のインターネット記事に森友学園が小学校運営に乗り出している旨の記事が掲載。記事の中で、安倍首相夫人が森友学園に訪問した際に、学園の教育方針に感涙した旨が記載される。契約交渉にあたった担当職員が、森友学園を特別扱いせざるを得なかった理由を決裁文書に残しておきたかったのかもしれない。佐川氏は決裁文書を読んで、そこまで書かれていることに驚愕し、抹消を命じたのだろう。
赤木氏の「手記」には、佐川氏への痛烈な批判が書き連ねられている。
「パワハラで有名な佐川局長の指示には誰も背けない…修正する箇所を事細かく指示したのかどうかはわかりませんが、補佐などが過剰反応して、修正範囲をどんどん拡大し、修正した回数は3回ないし4回程度と認識しています。…森友事案はすべて本省の指示…嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです」「野党議員からの様々な追求を避けるために原則として資料はできるだけ開示しないこと、開示するタイミングもできるだけ後送りとするよう指示があったと聞いています」
公僕たる国家公務員が、公文書に手をつける罪深さ。赤木氏の心の震えが伝わってくるようだ。
「手記」に安倍首相夫妻に言及している部分はない。しかし、安倍首相夫妻が森友学園の教育勅語を中心にした教育方針と小学校新設に興味を抱かなければ、森友学園の籠池理事長夫妻に小学校建設の野望が生まれることもなく、たとえ生まれたとしても、安倍首相夫妻が肩入れしている事実がなければ、財務省が、豊中市内の国有地を破格の条件で貸したり、売却したりすることはなかっただろう。
2018年6月4日に財務省が発表した「決裁文書改ざん調査報告書」にはこう書かれている。
17年2月17日の衆議院予算委員会で安倍首相が「私や妻がかかわっていたのであれば、総理大臣をやめる」と答弁したのがきっかけとなり、「本省理財局の総務課長から国有財産審理室長および近畿財務局の管財部長に対し、総理夫人の名前が入った書類の存否について確認がなされた。…理財局長はそうした記載のある文書を外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきであると反応した。具体的な指示はなかったものの、総務課長と国有財産審理室長は決裁文書の公表を求められる場合に備えて記載を直す必要があると認識した。
「報告書」は佐川理財局長から「具体的な指示はなかった」としているのに対し、赤木氏の「手記」は、佐川氏の指示があったと断言している。野党はこのため財務省に、身内ではなく第三者による「再調査」を求め、佐川氏を再び証人喚問するよう与党に働きかけていくかまえだ。
事件の輪郭はすでに多くの国民の目に明らかである。
安倍首相夫妻が、教育勅語を園児に唱えさせる森友学園の教育方針に感激し、小学校の建設を支援するため昭恵夫人が名誉校長に就任したこと。
大きな後ろ盾の存在をちらつかされた財務省と近畿財務局は国有地の異例値下げに応じ、タダ同然で払い下げたこと。
その疑惑まみれの取引がメディアに報じられ、国会で追及されるにおよび、安倍首相は無関係を装って「私や妻がかかわっていたのなら総理大臣をやめる」と国会で答弁したこと…。
当時の佐川理財局長が「交渉記録はありません」とウソをついて時間を稼ぎ、公文書の削除、改ざんを指示したのは、すべて安倍首相と自らの保身のためではなかったか。
これを、あくまで他人事であるかのように発言できるのが安倍首相の特質である。A子さんが提訴した3月18日、官邸を出るさいに記者から感想を求められて、こう語った。
「大変痛ましい出来事であり、本当に胸が痛みます…改ざんは二度とあってはならない」
なんという白々しいコメントだろうか。誠意のかけらもない政府の姿勢がA子さんを訴訟に駆り立てた面もあるだろう。
麻生財務大臣は国会で「再調査はしない」と答弁、安倍首相は「財務大臣の言ったことが政府としての考え」と述べた。財務省がすでに調査報告書を出しており、新しい事実は出ていない、というのがその理由だ。
A子さんは「この二人は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではないと思います」と怒りのコメントを発表した。
A子さんは夫の無念を訴訟という手段で晴らそうとしているように見える。しかし、われわれはそれを、個人的な怨念といったたぐいで、すませてはならないのではないか。公文書を改ざんしたことを財務省自ら認めているにもかかわらず、検察は誰一人として起訴しなかった。
その背後に、安倍官邸ベッタリの法務事務次官、黒川弘務氏の存在があった。いまは東京高検検事長である黒川氏が、法解釈の恣意的変更で定年を半年延長してもらい、次期検事総長の座をねらってるのは周知のとおりだ。
赤木氏が「手記」において、刑事罰、懲戒処分を受けるべき者として名指しした本省の佐川理財局長、中村総務課長、田村国有財産審理室長、担当窓口の杉田補佐のうち、マスコミの取材を逃れたい一心であろう佐川氏を除く面々はいずれも出世している。ちなみに中村総務課長、すなわち中村稔氏は現在、駐英公使だ。
もとはといえば、安倍首相夫妻の個人的教育観がもたらした問題である。それをなかったことにするために、国有財産を管理する部門のトップが部下に公文書の改ざんという犯罪的行為を命じ、実際にそれをやらされた地方の現場職員は良心の呵責から心を病み、自殺にまで追い込まれた。
幹部官僚人事を握る安倍官邸と、忖度に余念のない高級官僚、そして違法行為を押しつけられ、しっぽ切りの憂き目にあう現場の職員たち。この不条理な組織体質と政治の退廃は、目を覆うばかりだ。けっして、赤木夫妻の無念だけに矮小化してはならない。ことは国家的犯罪の問題である。 
●「8億円値引きは問題だった」森友事件 3/27 
森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん事件に関連し、2018年3月7日に自ら命を絶った財務省近畿財務局管財部上席国有財産管理官・赤木俊夫さん(享年54)。その直属の上司だった池田靖・同統括国有財産管理官(当時)が、森友学園への国有地の大幅値引き売却について、これまでの財務省の説明と異なる、新たな証言をしていたことが判明した。
昨年3月、赤木俊夫さんの一周忌の直後に池田氏が赤木さん宅を訪れた際、俊夫さんの妻・昌子さん(仮名)に国有地売却の詳細を打ち明けていた。今回、大阪日日新聞記者・相澤冬樹氏が昌子さんから詳細な記録の提供を受け、新たな重要証言を把握した。
森友学園は2016年、評価額約9億5600万円の国有地を、約1億3400万円で購入。3メートル以深の地中から新たにごみが見つかったため、その撤去費用などとして約8億2000万円を値引きした、とこれまで財務省は説明してきた。だが、池田氏は昌子さんに対し、「どれだけ費用がかかって、どれだけ売却価格から引かなければならないかということを、自分たちは最後まで調べようと努力したが、(国交省の)大阪航空局(問題の土地の管理者)は動かなかった」「この8億の算出に問題があるわけなんです。確実に撤去する費用が8億になるという確信というか、確証が取れていない」などと明かした。
当時、背任容疑について捜査した大阪地検特捜部は、値引きの根拠となったごみ撤去費の算出が不適正だと認定するのは困難として不起訴にし、捜査は終結した。
財務省に尋ねると、広報室より「地下埋設物の撤去・処分費用については、当時検証可能なあらゆる材料を用いて見積もりを実施したものであり、これまでも国会で説明している通りです」と回答があった。
だが、近畿財務局の売買を担当した職員も、8億円値引きに根拠がなく問題と発言していたことが明らかになったことで、今後、真相解明を求める声が高まりそうだ。
3月26日(木)発売の「週刊文春」では、森友事件の核心である国有地格安払い下げに迫りつつ、赤木さんが遺していた公文書改ざんの詳細なファイル、森友事件にかかわった官僚たちのその後、昌子さんの墓参の様子や俊夫さんの生前の新たな写真、各界有識者が赤木さんの手記をどう読んだかなど、グラビア含め計11ページにわたって詳報する。 
●森友事件で自死 財務局職員の妻がネットで再調査求める署名活動開始 3/27 
性暴力被害者への支援など様々なキャンペーンについてインターネット上で賛同の署名を募るサイトとして有名なChange.org(チェンジ・ドット・オーグ)。そこにきょう27日、新たな署名活動への賛同を求める呼びかけが登録された。その題は「私の夫、赤木俊夫がなぜ自死に追い込まれたのか。有識者によって構成される第三者委員会を立ち上げ、公正中立な調査を実施して下さい!」  そう、これは、森友事件をめぐる公文書改ざんを無理強いされて命を絶った財務省近畿財務局の上席国有財産管理官、赤木俊夫さん(享年54歳)の妻、昌子さん(仮名)が代理人の弁護士とともに立ち上げたものだ。昌子さんはこの活動で何を訴えているのか?全文を掲載する。
赤木俊夫さんの妻が訴える真相解明「二度と夫のような方が現れないように」
私の夫、赤木俊夫は2018月3月7日に自死しました。私は夫の自死によって体の半分をもぎ取られたような苦痛を受けました。その苦痛は今も続いています。優しかった夫がなぜ自死に追い込まれたのか、私には知る権利がありますし、知る義務があると思います。財務省は2018年6月4日に「森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書」を発表しました。しかし、この報告書の内容は曖昧で、なぜ夫が自死に追い込まれたのか、その経緯や原因を知ることはできません。私は、発表から4か月もたった後、この報告書を作成した職員から説明を受けました。その職員の方は、夫が遺した手記や遺書を読まずに報告書を作成したと仰っていました。しかし、夫の手記や遺書を読まずに作った報告書に信用性は無いと思います。
私は、2018年10月以降、佐川宣寿さんに対して3回、決裁文書の改ざんを指示した経緯に関する説明と謝罪をお願いしました。しかし返答はありませんでした。夫の自死は公務災害と認められましたが、自死に追い込まれた理由を知りたくて情報開示請求をしても、資料の大部分は真っ黒にマスキングされていました。やむを得ず、私は、2020年3月18日、夫がなぜ自死に追い込まれなければならなかったのか、その原因と経緯を明らかにするため、国と佐川宣寿さんを被告とする民事訴訟を提起しました。しかし、国や佐川宣寿さんが民事訴訟で私の請求をそのまま認めてしまえば、真相解明のための証人尋問や、夫が作成したとされるファイルについての文書提出命令の機会も与えられず、民事訴訟が終わってしまう可能性もあります。また、民事訴訟提起後の報道によると、安倍総理や麻生財務大臣は再調査はしないと仰っています。私は「この2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではないと思います」というメモを発表しましたが、それでも再調査が実施される見通しは現在のところありません。
このままでは夫の死が無駄になってしまいます。そこで、有識者や専門家(弁護士、大学教授、精神科産業医など)によって構成される第三者委員会を立ち上げ、公正中立な調査を実施して下さい。地方自治体や民間企業では、過労自殺が発生した多くのケースにおいて、第三者委員会を立ち上げ、公正中立な調査を実施しています。決裁文書の改ざんはなぜ行われたのか、誰のどのような指示に基づいて夫はどのような改ざんを行わざるを得なかったのか、改ざんにかかわった人達はどのような発言をして何を思ったのか、改ざんによる自責の念に苦しんでいた夫に対して財務省や近畿財務局は支援ができなかったのか、うつ病で休職していた夫をフォロー出来なかったのかなど、夫がなぜ自死に追い込まれなければならなかったのか、その原因と経緯が明らかになることを私は心から望んでいます。そして、夫もきっとそのことを望んでいると思います。
夫と同じように文書改ざんに多かれ少なかれ関与した職員や、改ざんに関与した職員でなくても現場で詳細を知っている職員がおられます。上司の内部調査では言えない方もかなりおられると聞いていました。公文書改ざんは「あってはならない」と安倍総理や麻生財務大臣が仰るのであれば、二度と夫のような方が現れないためには真実を解明することが、二度と「あってはならない」為の再発防止策であると考えています。二度と夫のような方が現れないように、どうか皆様の力を貸してください。宜しくお願い致します。
赤木さんの訴えに共感と賛同のメッセージ続々
この赤木昌子さんの訴えに対し、早くも続々と賛同の署名が寄せられているほか、応援のメッセージも書き込まれている。
〇国のために働いた一人の人間の死の真相を知りたいという思いを汲みとれる社会であってほしいと思います。
〇事実が闇の中に入り、まったくわからない。政府が全て白日のもとにさらすことを要求します。情けない。
〇赤木さんの様な、正直で仕事に真摯に取り組んでいた人が、なぜこんな風に亡くならなくてはならなかったのでしょうか。真実はひとつです。ぜひ、明らかにして欲しいと思っています。また、奥様の勇気には本当に敬服いたします。私も心から応援しております。
代理人弁護士「お金ではなく賛同の署名を」
赤木昌子さんの代理人で、署名の呼びかけ人にも名を連ねている生越照幸弁護士は次のように話す。「赤木さんを支援したい、裁判費用を援助したいという申し出が私のところにも多数来ています。ありがたいと思いますが、原告の赤木さんは金銭の支援を望んでいませんので、丁重にお断りしています。お金ではなく、ぜひ真相究明、第三者による再調査をしてほしいというこの署名活動に賛同してください。それが赤木昌子さんも亡くなった俊夫さんも一番喜ぶし励みになると思います」
週刊文春にもメッセージ多数 先週号は完売御礼
最初に赤木さんの手記を全文掲載した週刊文春編集部にも、大阪日日新聞にも、応援のメッセージが相次いでいる。手記と妻、昌子さんの思いを掲載した週刊文春の先週号は2年半ぶりに完売御礼となった。その後も「記事が読みたい」という問い合わせが相次ぎ、編集部は急きょ、先週号の記事「妻は佐川元理財局長と国を提訴へ 森友自殺<財務省>職員遺書全文公開『すべて佐川局長の指示です』」の全文について、文春オンラインでの無料公開を始めた。発売中のメイン記事を無料で全文公開するのは文春史上初めて。さらに文春オンラインは急きょ、昌子さんが求める公文書改ざんの再調査に賛成か反対か、アンケート調査を実施したという。その結果、回答総数939票で、再調査に「賛成」が824票(87.8%)、「反対」は115票(12.2%)。昌子さんの願いに共感が広がっているようだ。文春オンラインの読者アンケートでここまで結果に偏りが出ることはまずないという。何もかも超異例の事態が続いている。週刊文春の今週26日発売号では、森友事件の本丸と言える国有地の8億円値引き売却について、当時の売却担当者が「算出に問題がある」「撤去費用が8億になるという確証がない」と述べていたという新事実を紹介している。
「新事実はない」と言う安倍首相と麻生財務大臣は、これらの新事実を前にどう語るのだろうか?  
●森友自殺“遺書” 「財務省は再調査すべき」 アンケート結果 3/27 
『週刊文春』は3月26日号で大阪日日新聞記者・相澤冬樹氏による「森友自殺<財務省>職員遺書全文公開『すべて佐川局長の指示です』」を掲載した。さらに翌週4月2日号では近畿財務局「売買担当者」が「8億円値引きは問題だった」と新たな証言をしていたことを報じている。
文春オンラインでも無料で全文公開している財務省近畿財務局の赤木俊夫さん(享年54)が遺した「手記」。そこには「すべて、佐川理財局長の指示です」「学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示」「(会計検査院に)資料はできるだけ開示しないこと」など、当時の財務省、および近畿財務局の幹部らの言動が実名で詳細に綴られている。
赤木さんの妻は「自殺は同省幹部らの改ざん指示が原因」として、国と佐川氏に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。「なぜ亡き夫が自殺に追い込まれなければならなかったのか、その真相を究明する」のが裁判の目的だという。
「財務省の報告書に尽きる」「再調査を行う考えはない」
一方で麻生太郎財務相は記者団の問いかけに「新たな事実が判明したことはない」「(18年6月公表の)財務省の報告書に尽きる」「再調査を行う考えはない」と再調査を拒否。また安倍首相も国会で野党の追及を受け「検察ですでに捜査を行い、結果が出ていると考えている。麻生大臣のもと、事実関係を徹底的に調査し、明らかにした」と答弁している。
赤木さんの妻はこの拒否姿勢に対し、「悲しすぎます……」「もう一度調査してほしいです」と相澤冬樹記者の取材に応えている。そこで『文春オンライン』では、緊急アンケートとして「“遺書公開” 財務省改ざん事件『再調査』に賛成?反対?」を実施。4日間で総数939票、10代〜80代から回答が得られた。その結果を見ていきたい。
圧倒的な差がついた。財務省改ざん事件の「再調査に賛成」が824票(87.8%)を集める一方で、反対は115票(12.2%)にとどまった。文春オンラインの読者アンケートでここまで結果に偏りが出ることは異例。読者の声は「再調査せよ」で一致しているようだ(これを受けて#2「森友自殺“遺書”「私の記述はない」安倍首相の論理を88%再調査派は納得できる?」を公開中)。
では「再調査に賛成派」の具体的な声を見ていきたい。
なにより赤木さんが遺した『手記』に心動かされた人が多かった。
<「すべて佐川局長の指示です」という記事を読んで涙が出ました。全てを下の人に押しつけてトップを守る。なぜこんなことをしなければならなかったのか? 正直に一切を話して欲しいです。>(女性・77)
<あまりにも理不尽である。自死した方の無念はいかばかりか、記事には文書改ざんの経緯が赤裸々につづられており涙が出た。絶対再調査をして究明すべきである。>(男性・77)
<命をかけて真実を書き残してくれた赤木さんの遺志を無駄にしてはいけない。>(女性・43)
そして今回勇気を持って手記を公表した遺族へのエールも続く。
<「安倍首相と麻生大臣は調査される側で、再調査しないと発言する立場にない」(赤木さんのご遺族)これに尽きる。>(女性・57)
<もし、私の家族が同じ目にあったと考えると怒りを抑えられません。赤木さんの奥さんの気持ちを考えると涙が出ます。奥さんは「安倍首相と麻生大臣は調査される側で、再調査しないと発言する立場にない」とおっしゃっています。赤木さんの奥さんに真摯に向き合って欲しいです。>(男性・34)
<赤木さんの奥さんの立場に立ったら絶対に真相を明らかにすべき。今更全てがわかっても赤木さんは戻って来ないけど命を無駄にしてはいけない>(女性・39)
「手記」の内容は新事実ではないのか、そうであれば再調査すべきなのではないか、と問う声も多かった。
<当事者によるメモで、新たな事実であることは明白。その真偽も含めて、徹底的に国民が納得する様に調査し説明するべき。>(男性・57)
<自殺した職員が遺書で告発した内容は、佐川氏が国会で証言したことと食い違っており、改めて調査が必要だから。>(男性・52)
<この事件に関与した財務省職員の全てが不起訴になっている。今回公開された赤木さんの手記に改ざんにかかわった人間の実名や真相が書かれていることから新たな事実が見つかったと言えると思います。>(男性・65)
そして「再調査」に関して、従来のように財務省内部で行うのではなく、第三者が調査すべきという意見も目立つ。
<調査される側が作った報告書は全く信用できない。第三者機関が調査すべき。>(男性・67)
<以前行われた内部による調査ではなく第三者による徹底的な再調査を実施すべき。>(男性・59)
<条件つき賛成である。公平中立な第三者調査委員会の設置を望むものである。>(男性・64)
再調査反対派の理由とは? では数少ない「再調査反対派」の理由も見ていく。
現在のコロナ危機のさなかにおいては反対という声から。
<今は新型コロナの問題もあり、再調査には国民への負担が大きいと思うので反対です。>(女性・60)
<コロナで世界中が大変の中、再調査を優先するよりもやるべきことがたくさんある。>(女性・32)
そして再調査自体に期待できないという意見も。
<再調査で新事実が出るならいいけど出なさそう。>(女性・44)
<どうせ同じ答えしか返ってこない。もっと決定的な証拠がないと意味ない。>(男性・44)
また安倍首相や麻生大臣と同じ意見もあった。 
<既に一定の調査が終了しているため。>(男性・67)
<これまでにもほぼほぼ調査しつくしていると思うので。>(男性・61)
「88%対12%」で、再調査賛成派が圧倒した。安倍政権はこの声をどう受け止めるのか、今後の動きが注目される。
森友自殺“遺書”に「私の記述はない」 安倍首相の論理
ギョッとする見出しがあった。
「<新型コロナ>首相会見なし 『森友』追及避ける思惑か」(3/21) まさか……。
たしかに安倍首相は20日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けたイベント自粛や一斉休校を巡る対応について記者会見はしなかった。3連休で人出が多くなりそうだったが、国民に直接呼びかける会見はなかった。その理由が《再浮上した学校法人「森友学園」問題への追及を避ける思惑があったとみられる。》というのだ。さすがにそんなことはないだろうと思ったら、《政権幹部は「記者会見だと、コロナと関係ないことも聞かれる。対策本部会合で語ればいい」と、記者会見なしの背景に「森友」問題があることを示唆した。》 「政権幹部」が言っていたのである……。
私はこの振る舞いにこそ現政権の正体を見る。きちんと説明しない態度。それはずっと続く公文書クライシスとセットでもある。コロナ対応で、安倍政権が「記録」と「議事録」を巧妙に使い分けていると指摘する。しっかり記録を残すと強調する一方で、議事録が必要な会議を絞ろうという姿勢も垣間見えると。
「新型コロナ『歴史的緊急事態』で記録は消されるのか 見え隠れする『桜』の手法」(3/22)
モリカケや桜を見る会なんてどうでもいいと言う人もいるがコロナでもその「態度」は同じ。遂に私たちに直接影響が出る案件までつながったのだ。
私たちだけではない。子ども世代のことを考えたい。将来また新しいウイルスが出現したとき「あの時代にはどういう決断があり、議論の過程があったのだろう」と彼・彼女らが思っても参考にならない可能性が高い。未来の日本人にも迷惑をかけているのだ。過去・現在・未来をつなぐという誠実な態度が驚くほどない。自分たちの目先の損得だけでいいようにみえる。伝統破壊や歴史の分断をしている。常々思うのだけど今の政権は本当に「保守」なのだろうか? 私には保守政治家の態度には到底見えない。そうまでして守っているのは一体何なのだろう。そう考えると、コロナパニックでも88%が森友再調査に「賛成」なのはむしろ当然だ。コロナも森友も同じだからだ。なぜ森友問題で公務員の自殺者まで出してしまったのか。そこを再調査しないと「美しい日本」など悪い冗談である。
再調査しない理由について首相は「佐川氏が改ざんの方向性を決定づけたことなどが財務省の報告書に書かれている」ことを挙げている。さらに第三者機関を入れて調査委員会を立ち上げてはどうかと野党に提案されると「最強の第三者機関と言われる検察がしっかりと捜査をした結果がもうすでに出ている」と答えている。しかし、その検察に手をつっこんでいるのは(最近なら)黒川検事長の定年問題でわかる。そんななかしれっと「最強の第三者機関」と評価してみせた。怖さを感じた答弁だった。
首相は財務省の報告書も「評価」している。その評価から見えるものは何か。佐川氏がなぜ改ざんを指示したのか。ジャーナリストの立岩陽一郎氏は、《政権の中枢から彼に指示が出ていた可能性も否定できないが、仮にそうでなかったとしても、無言の指示が出ていたと考えるのが合理的だ。それが、2014年に安倍政権がつくった内閣人事局の狙いだからだ。官邸の意を受けて動かない役人は能力の有無にかかわらず出世できない。それがこの政権のつくり上げたシステムだ。》(3/25) と指摘する。「内閣人事局」というシステムを見直す必要があると。実際に佐川氏ほか、手記に出てきた官僚の面々は改ざん事件のあとにむしろ出世、栄転している。
実は安倍首相の言葉にも、このシステムのからくりが見えたのだ。赤木さんの生前の手記の中には「私の発言がきっかけだったという記述はない」という部分である。私の発言とは2017/2/17の国会での「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」を指している。これがきっかけだと手記には書いていないではないか、という論理である。この「直接書いていないから問題ない」は非常に巧妙だ。首相官邸の思惑を読んでいかに動くか、という現在の役人の生態を「信頼」しているから出る言葉ともいえる。今のシステムが成せる技なのだ。だからこそ、財務省自身による調査ではなく第三者機関を入れた調査が必要なのだ。外部の人間によって、官僚からその生態をじっくり聞き出さなければならない。そういう場でやっと放たれる小さな声はきっとある。五輪の前に森友再調査こそ「完全な形で」おこなわれるべきなのである。
最後に。3月24日に掲載された「赤木さんを死に追いやったのは、だれだ」(大谷昭宏)の最後の一節を紹介する。《なにより大事なことは、決して赤木さんの妻だけの戦いにしてはならないということではないだろうか。》 そう、これは決して赤木さんの妻だけの問題ではない。孤独な戦いにしてはならない。公文書や議事録をきちんと残すことを求めること、もしくは残さなかったり改ざんした理由をハッキリさせるのは、私たちや、未来の日本人のためである。 
●昭恵夫人、森友問題遺書公開や新型コロナのなか脳天気生活 3/27 
森友学園問題に関する財務省の公文書改ざんをめぐり、2018年3月7日に自殺した財務省近畿財務局職員・赤木俊夫さん(享年54)の秘められていた遺書が、3月18日発売の『週刊文春』に全文掲載された。遺書で赤木さんは、財務省の佐川宣寿理財局長(当時)が文書改ざんの指示を出し、ほかの幹部も文書改ざんに関与したと暴露した。
《森友問題 佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰れもいわない これが財務省官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止府》
遺書の公開と同時に赤木さんの妻は国と佐川氏を相手取り、1億1000万円余りの損害賠償を求める訴えを起こした。赤木さんの仕事ぶりはごく真面目で、「ぼくの契約相手は国民です」が口癖だった。その実直な公務員の魂の叫びに、安倍政権は冷淡だった。遺書公開直後の3月19日、安倍晋三首相(65才)と麻生太郎財務相(79才)が国会で再調査を拒否する姿勢を示した。23日にも安倍首相は「事実は明らかにした。検察がしっかりと捜査した結果がすでに出ている」と再調査を改めて拒否している。
そもそも森友問題の発端は安倍首相夫人である昭恵さん(57才)の振る舞いだった。
「籠池泰典理事長の森友学園が9億円以上といわれる国有地をタダ同然で手に入れた。その土地に建つはずだった小学校の名誉校長が昭恵さんだったので、安倍首相や昭恵さんの口利きが疑われました。2017年3月の証人喚問で籠池氏が“昭恵さんによる100万円の寄付”や“口利きの証拠となるFAX”という爆弾証言を連発し、昭恵さんの関与をほのめかしました」(全国紙政治部記者)
疑惑発覚以降、安倍首相は国会で「私や妻が関係しているということになれば、間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」と断言した。その発言を機に、“安倍首相を辞めさせられない”と忖度した財務省が無理を通し、道理をねじ曲げはじめ、文書改ざんを進めることになったとされる。
「赤木さんが自殺に追いやられた文書改ざん問題では、2014年4月に昭恵さんが籠池氏に“いい土地ですから、前に進めてください”と話したとされるくだりや、昭恵さんが森友学園の教育方針に感涙したことなどが財務省の文書からそっくり削除されていました」(前出・全国紙記者)
9億円もの国有地がタダ同然になったことに昭恵さんの関与が強く疑われる森友問題は「アッキード事件」と呼ばれるも、“首相夫人は私人”という屁理屈が押し通され、本人が説明責任を果たすことはなかった。それどころか騒動の渦中で目立ったのは、昭恵さんの「耐えがたいほどの軽さ」だ。
国権の最高機関である国会が森友問題で紛糾しても、昭恵さんはどこ吹く風。2017年5月15日に開かれた安倍首相の父・晋太郎氏を偲ぶ会ではこんな発言で出席者の度肝を抜いた。「騒動で有名になったので、おかげ様で(経営する)居酒屋UZUは繁盛しています。いい食材を使っているから、そんなに利益はないんですけどね(笑い)」
朝日新聞が文書改ざん疑惑をスクープした2018年3月2日にはフェイスブックにこんな投稿をした。《能舞台においてアジアのファッションショー。モデルの皆さんが全員足袋を履いているのが印象的でした》
さらに目を疑うのは、赤木さんの自殺が報じられた同月9日の言動だ。昭恵さんは、前日8日に開催された国際女性デーのイベントで日本酒の「鏡開き」をした写真をフェイスブックにアップした。「そこにはピンクのワンピースで満面の笑みを浮かべる昭恵さんの姿が写っていました。赤木さんが自殺したのは7日で、官邸を通して情報は入っていたはずなのに、あんな笑顔でお祝いの写真を投稿するなんて。いったいどういう神経をしているのか…」(政治ジャーナリスト) しかも、その日の夜には、銀座で開かれた知人の誕生日パーティーに出席していた。参加者の1人が振り返る。「神田うのさん(44才)や真矢ミキさん(56才)、中田英寿さん(43才)など多くのセレブが参加した華やかなパーティーでした。その日の昼に赤木さんの自殺が報じられ、当時国税庁長官だった佐川さんが辞職を表明し、夜には麻生財務相が緊急会見を開きました。そんな大変な時期に、にこやかにパーティーに出席した昭恵さんに周囲は驚くばかりでした」
今回の遺書公開でも昭恵さんは変わらなかった。コロナ騒動にもかかわらず、昭恵さんは福岡を訪れていたようだ。「遺書が報道された翌日、福岡在住の女性実業家が昭恵さんらセレブ女性8人とランチ会をしたことをインスタグラムにアップしました。その女性は、“夫人も大変な時期でしょうが頑張ってください”との応援メッセージを掲載しています」(地元紙記者) 
 
 
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●森友問題「再調査するつもりはない」 安倍・麻生の見苦しさ 3/28 
『週刊文春』3月26日号に掲載された大阪日日新聞記者の相澤冬樹氏のスクープ記事が轟々たる反響を巻き起こしている。あらためてクローズアップされた森友問題に関する発言をおさらいしたい。
赤木俊夫さん 近畿財務局職員
「財務省が国会等で真実に反する虚偽の答弁を貫いている」 「元は、すべて、佐川理財局長の指示です」
自殺当日まで書いていたと見られる手記
学校法人「森友学園」の国有地売却問題に関する公文書改ざんを指示され、2018年3月7日に自殺した財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん(当時54歳)の「手記」が公開された。安倍昭恵首相夫人が関与する小学校への国有地格安払い下げにまつわる、財務省の公文書改ざん事件。赤木さんは自殺当日まで書いていたとみられる手記の中で、「元は、すべて、佐川理財局長の指示です」「佐川理財局長の指示を受けた、財務本省理財局幹部、杉田補佐が過剰に修正箇所を決め、杉田氏の修正した文書を近畿局で差し替えしました」などと、公文書改ざんを行った当時の財務省、および近畿財務局の幹部らの言動について実名で詳細に明かし、強く批判している。
すぐさま「再調査するつもりはない」と反応
赤木さんの死後、麻生太郎財務相をはじめとする財務省、近畿財務局の幹部らの対応に不信感を持った赤木さんの妻は、国と佐川宣寿・元国税庁長官に損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。しかし、麻生財務相、安倍晋三首相の反応はというと……。
麻生太郎 副総理兼財務相 「手記にもとづいて新たな事実が判明したとは考えられないので、再調査するつもりはない」3月19日
麻生財務相は、『週刊文春』が発売された翌19日、閣議後の記者会見でいち早く再調査を否定した。その根拠は「手記と調査報告書の内容に大きな乖離があるであろうとは考えておりません」というものだった。
では、本当に両者には乖離がなく、手記には「新たな事実」がないのだろうか。
調査報告書と読み比べてみれば一目瞭然
2018年6月4日に発表された財務省の調査報告書によると、「特例申請」と「特例承認」文書の改ざんの経緯について、佐川理財局長は文書の位置付けなどを十分に把握しないまま、政治家関係者からの照会状況についての記載がある文書を外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきと反応。それ以上の具体的な指示はなかったとある。赤木さんの手記では、佐川氏が森友学園に関する資料(応接記録)はできるだけ開示しないこと、開示するタイミングもできるだけ後送りするよう指示したことが明らかにされている。決裁文書の改ざんについては、「局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました」とより具体的に記されていた。「すべて、佐川理財局長の指示です」とは、まぎれもない新事実だ。その他にも新事実は多い。調査報告書と手記を読み比べてみれば一目瞭然である。
“上意下達のパワハラ体質”が自殺の原因?
麻生太郎 副総理兼財務相 「まだ読んでいませんからわかりませんが」3月19日
各メディアではカットされていたが、会見をノーカットで報じたテレ東NEWSの映像を見ると、麻生財務相は手記をまだ読んでいないとはっきり発言していた。ならば、なぜ手記と調査報告書の内容に大きな乖離がないと言い切れるのだろうか。最初から結論ありきで話しているように見える。
麻生太郎 副総理兼財務相 「(赤木さんの自殺は)役所内の風土(が原因だ)と結論付けている」3月19日
同じ会見で赤木さんの自殺について問われた麻生財務相は、こう説明した。財務省の「風土」とは、「軍隊的な上意下達のパワハラ体質」のこと。省内にはパワハラ上司をランキングした「恐竜番付」というペーパーが出回っており、佐川氏はその常連だった。赤木さんの手記にも「佐川理財局長(パワハラ官僚)」と記されている。麻生氏の発言を聞いた赤木さんの妻は、「組織の風土が原因なら、麻生さんの責任だと思います」「風土はまったく良くなっていません。このままだと、また死人が出ると思います」と語っている。
安倍氏と麻生氏は「調査される側」だ
安倍晋三 首相 「財務省で事実を徹底的に調査して明らかにした。検察当局による捜査も行われた」3月20日
安倍首相は3月19日の参院総務委員会で、麻生財務相と同じく、再調査に否定的な考えを示した。発言を見ても、どこか他人事のようだ。しかし、赤木さんの妻からは強烈なカウンターが放たれる。
赤木俊夫さんの妻 「2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではないと思います」3月23日
安倍首相と麻生財務相の発言を受けて、赤木さんの妻が直筆のコメントを発表した。その通りと言うほかない。代理人の弁護士によると、第三者委員会による再調査を強く希望しているという。
赤木俊夫さんの妻 「安倍首相は17年2月17日の国会発言で改ざんが始まる原因をつくりました」 「(麻生氏については墓参りに来てほしいと伝えたのに)国会で私の言葉をねじ曲げました」3月23日
同じく赤木さんの妻のコメントより。安倍首相の発言が改ざんの原因だとはっきり指摘している。何度も取り上げられているが、あらためて紹介しよう。
“文書14件200項目超”の改ざんはこうして始まった
安倍晋三 首相 「私や妻、事務所は一切関わっていない。もし関わっていれば首相も国会議員も辞める」2017年2月17日
衆院予算委員会での発言。森友学園の設置認可や敷地の国有地払い下げに関与したのではないかとの指摘を受け、このように答えた。この発言がターニングポイントとなり、佐川氏の指示のもと、公文書の改ざんが始まった。改ざんは文書14件で200項目超に及ぶ。2017年2月22日には菅義偉官房長官が佐川氏、中村稔・理財局総務課長(現・駐英公使)、太田充・財務省大臣官房総括審議官(現・財務省主計局長)を呼び出して森友問題について報告をさせると、佐川氏は24日の衆院予算委員会で「近畿財務局と森友学園の交渉記録というのはございませんでした」と発言。赤木さんの手記によると、最初の改ざんは26日に佐川氏の指示によって行われている。改ざんによって決裁文書から安倍昭恵首相夫人らの名前が削除された。
安倍晋三首相の秘書官が佐川氏に渡したメモ 「もっと強気で行け。PMより」
「PM」とは「プライムミニスター(首相)」、即ち安倍首相を指す官僚たちの略語である。当時、佐川氏が国会で野党の質問攻めに遭っていたが、安倍首相が佐川氏を激励するためにメモをまわしたものとされている。また、このメモは冷え切っていた首相官邸と財務省の関係が森友問題を契機に強固なものに変わっていった象徴でもある。
赤木さんが批判した財務官僚たちは……
佐川宣寿 前理財局長 「忖度ってのはすいませんちょっと、どういう意味でございましょうか」2018年3月9日
安倍首相の「首相も国会議員も辞める」発言の前後、「忖度」という言葉が注目を集めた。渦中の籠池泰典氏も「安倍首相または夫人の意志を忖度して動いたのではないかと思っています」と発言している。2018年3月、赤木さんが自殺した2日後、佐川氏は国税庁長官を辞任した。このときだけぶら下がり取材に応じた佐川氏は、「国会答弁や文書管理で、政治への忖度はあったのか」と問われたが、このように記者に逆質問。最後まで「強気」を貫き通した。この日以降、佐川氏は公の場に出ていない。なお、赤木さんが手記で名前をあげて批判した6人の財務官僚は、佐川氏、近畿財務局長だった美並義人氏をはじめとしてほとんどが「栄転」を果たしていたことが明らかになっている。
自殺の2日後、麻生氏は笑っていた
麻生太郎 副総理兼財務相 「えっへっへっへっへ。いいですか、終わります」2018年3月9日
こちらも赤木さんが自殺した2日後、佐川氏の取材とほぼ同時刻に行われていた麻生財務相の記者会見での発言。「結果として(決裁文書の)書き換えがあり、(財務省が)組織的にやったと明らかになった時は、ご自身の進退も含めて考えるか」と問われたが、「仮定の質問には答えられない。何度も言ってんじゃん」と切り返し、笑って会見を切り上げた。
麻生太郎 副総理兼財務相 「佐川の(国会での)答弁と決裁文書の間に齟齬があった、誤解を招くということで佐川の答弁に合わせて書き換えられたのが事実だと思います」2018年3月12日
3日後の12日、麻生財務相が14件の文書に改ざん(当時は「書き換え」と表現)があったことを発表。麻生氏は改ざんが行われた理由について、佐川氏が森友学園との面会記録を「破棄している」、「価格を提示したこともない」などと国会で発言しており、それらの発言と矛盾しないように改ざんしたと説明した。改ざんの責任者についても、「佐川が理財局長だったから、その意味で理財局長となろうと思う」と述べた。6月4日に調査報告書が公表された際、佐川氏には退職金減額500万円の処分が下っている。
新たな「事実」を無視することはできない
安倍晋三 首相 「総理を守るために佐川さんが指示をした。そういう事実は全く認められていない」3月23日
2018年6月に公表された調査報告書によると、佐川氏が交渉記録の廃棄や公文書改ざんの方向性を決定したのは、国会審議の紛糾を回避するため(さらなる質問につながる材料を少なくするため)だったとされている。3月23日の参院予算委員会で安倍首相は調査報告書に書かれていた内容を繰り返し、自身の関与を全面的に否定した。佐川氏が忖度して指示を出したとしても、その証拠が残っていなければ安倍首相は「事実」とは認めないだろう。だが、安倍首相の発言を契機に、佐川氏が国会で強硬な発言を繰り返すようになったのは事実だ。近畿財務局での公文書の改ざんが始まったのも事実。その上、手記によって佐川氏がすべて指示を出していたことなど、新しい事実も明らかになった。安倍首相と麻生財務相が引き合いに出している財務省の調査報告書には、「今後、新たな事実関係が明らかになるような場合には、更に必要な対応を行っていくこととなる」と記されている。ならば、新たな事実をもとに、これまで明らかになっていなかった「事実」についてあらためて調査するしかあるまい。 
 
 
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●森友自死・赤木さん妻の提訴、「民事」で真相究明が実現する可能性は 3/29 
「どうか佐川さん、改ざんの経緯を、本当のことを話して」――。学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた元近畿財務局上席国有財産管理官、赤木俊夫さん(当時54)が自殺に追い込まれたのは、佐川宣寿元国税庁長官(62)の指示で決裁文書改ざんを強制され精神的に追い詰められたためとして、赤木さんの妻が18日、国と佐川氏に計約1億1000万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。この訴訟の真の狙いは賠償金ではなく、あくまで「真相の究明」だ。妻の代理人弁護士は記者会見で「手記に記録されている全財務官僚を証人として出廷を求める」としており、刑事で立件されなかった不法行為が民事で明らかにされる可能性が出てきた。
民事より厳格な立証求められる刑事
訴状によると、赤木さんは国有地売買を担当していた2017年2月、近畿財務局の上司に呼び出され、森友学園に国有地を売却した取引の経緯を記載した公文書から、学園を厚遇した部分の削除など改ざんを指示された。赤木さんは抵抗したが、複数回にわたり強要され、長時間や連続勤務で精神的負荷が過度に蓄積。同年7月にうつ病を発症して休職した。同11月に検察から任意聴取を打診されると病状が悪化し、自殺願望を口にするようになり、18年3月に自殺したとしている。赤木さんの記録や妻の手記、代理人弁護士の記者会見での主張は新聞やテレビ、そして『週刊文春』を読んだ方なら承知していると思うので、詳細は省略したい。そして、筆者の専門は政治ではなく事件なので、政治色は排してあくまでこの訴訟の行方がどうなるのかを考察してみたいと思う。実は刑事事件として不起訴や無罪になったものの、民事訴訟で「不法行為」が認定されるケースは少なくない。刑事には「疑わしきは罰せず」の原則があり、民事より厳格な立証が求められるためだが、だからといって民事の審理が杜撰(すさん)というわけではない。
名古屋の女性失踪で不起訴の“致死”認める
最近では元TBS記者山口敬之さん(53)から性暴力を受けたとして、1100万円の損害賠償を求めたジャーナリスト伊藤詩織さんのケースが知られる。伊藤さんは15年4月、就職先の紹介を受けるため、山口さんと会食した際に意識を失い、ホテルで性的暴行を受けたと主張。準強姦容疑で警視庁に被害届けを提出したが、東京地検が16年7月、嫌疑不十分で不起訴に。検察審査会に審査を申し立てたが同9月、不起訴を覆すだけの理由がないとして不起訴相当とした。一方の民事判決は昨年12月、「酩酊(めいてい)状態で意識がなく、合意がないまま性行為に及んだ」と認定し、330万円の支払いを命じた。この問題を巡っては、山口さんが伊藤さんの著書などで名誉が傷付けられたなどとして1億3000万円の賠償を求めて反訴。こちらの主張は棄却された。18年3月には、刑事で不起訴となった“傷害致死”を民事が認定したケースがあった。名古屋市中川区で12年4月、漫画喫茶で働いていた加藤麻子さん(当時41)が失踪し、13年4月に遺体で見つかった事件で、元漫画喫茶経営者夫婦が死体遺棄罪で起訴されたが、傷害致死容疑では不起訴となった。遺族が約2億円の慰謝料などを求めて提訴。判決は「暴行で腹部に出血が起き、死亡した可能性が高い」と結論付け、約6700万円の支払いを命じた。この事件では元経営者夫婦が逮捕直後から公判まで黙秘を貫いたが、加藤さんが失踪後に夫婦が捜査当局に提出した上申書の内容から「元経営者の夫が金属の棒で暴行した」と認められると判断した。
過去には“保険金殺人”を指摘した判決も
ほか鹿児島市で16年、準強姦罪で無罪になった男性に民事で女性の訴えを認めたケースもあった。この事件は06年12月、ゴルフの教え子で高校生だった女性に性的暴行をしたとして、強制起訴された当時50代だった指導者の男性が最高裁で無罪が確定。女性は男性に770万円の損害賠償を求めて提訴。判決は「女性の性的自由を侵害し、重大な精神的苦痛を与えた」と認定し、330万円の支払いを命じた。伊藤さんのケースは多くの人に知られているが、加藤さんの事件は刑事で立件できなかった“致死”を認定。当時高校生だった女性の事件は強制起訴で性犯罪の成立が争われたのが初めてだったこともあり、法曹関係者や司法担当記者も注目していた。変わったケースでは11年3月の名古屋地裁判決で、06年に米サイパンで海水浴中に水死した岐阜市の男性(当時22)の親族が、1億円の海外旅行保険の支払いを保険会社が拒否したのは不当と訴えた訴訟だ。1審判決は「(親族らが)保険金を得ることを目的で殺害をもくろみ、溺死させられたと推認できる」と“保険金殺人”だとし、支払いを認めなかった。2審は1審の事実認定には踏み込まず「契約したのは男性本人」として支払いを命じ、最高裁も追認して確定した。
「元はすべて佐川氏の指示」
それでは森友学園問題はどうなるのだろうか。刑事事件としては18年5月、大阪地検特捜部が市民団体などから受けた佐川氏を含む財務省職員ら計38人に対する決裁文書改ざんの虚偽公文書作成、国有地を不当に安く売却したとする背任など6つの容疑の告発を不起訴処分にした。いずれも刑事責任は問えないと判断し「容疑不十分」か「容疑なし」だった。検察審査会は佐川氏ら10人を「不起訴不当」と議決し、再捜査することになったが、19年8月、改めて不起訴処分とし、誰一人として刑事責任を問われぬまま捜査は終結した。一方、財務省は18年6月、調査報告書と計20人の処分を公表。佐川氏が改ざんを主導したと認定したが、改ざんした理由や指示の流れなどは明らかにされなかった。そして、佐川氏は何も語らぬまま辞職した。赤木さんの手記は財務省の報告書と経緯が合致し、改ざんに至った流れも矛盾なく詳細に記載している。財務省の報告書が外形だけの“抜け殻”だとすれば、赤木さんの手記は克明に記録された核心部分といえる。これは決定的な証拠といえるだろう。大阪地検特捜部もこの手記を入手していれば立件に踏み切ったかもしれない。それぐらい重要な位置付けで、これで“無罪判決”を出す裁判官がいるとは想像できない。「元はすべて佐川氏の指示」。手記にはこう記されている。佐川氏は国会で「刑事訴追の恐れがあるのでお答えできない」と答弁を拒否してきた。ならば、刑事訴追の恐れがなくなった今、本当のことを話すべきだろう。それとも、国税庁長官まで上り詰めたエリートキャリア官僚には、非を認め謝罪することなどプライドが許さないとでもいうのだろうか。公務員としての仕事に誇りを持ち「僕の契約相手は国民」が口癖だったという赤木さん。どちらが「高潔」で、どちらが「卑怯」なのかは、誰の目にも明らかであろう。
赤木さんとご遺族に心より追悼の意を捧げます。 
 
 
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●日本初の賛同20万人で最多最速新記録 森友改ざん自殺で再調査求める 3/30 
森友事件をめぐる公文書改ざんを無理強いされ命を絶った財務省近畿財務局の上席国有財産管理官、赤木俊夫さん(享年54歳)。その手記が初めて公開され大きな反響を呼ぶ中、妻の昌子さん(仮名)が27日午後、インターネット上のキャンペーンサイトChange.org(チェンジ・ドット・オーグ)で賛同者を募り始めた。「私の夫、赤木俊夫がなぜ自死に追い込まれたのか。有識者によって構成される第三者委員会を立ち上げ、公正中立な調査を実施して下さい!」 その呼びかけに賛同者が殺到。開始からわずか3日で20万人を突破した。Change.orgの運営担当者によると、これは日本で始まったキャンペーンとしては最も多く、最も速い新記録の達成だという。
日本の民主主義を信じたい、良くしていきたいという声と共鳴し広がっている
この事態に運営責任者は急きょコメントを出した。 「赤木氏のご遺族によって開始された本キャンペーンは、開始から3日弱で20万名の賛同を突破しました。これは、日本国内で開始されたキャンペーンとして最多の賛同数に、最短の期間で達しています。森友学園には、今日本で民主主義を信じる人々が関心を寄せずにはいられない、様々な要素が詰まっています。公共の財産を売却するプロセスを国民として知る権利。行政機関が記録を改ざんすることへの信頼性の問題。そして何より信条に背いた仕事を強いられた苦しみへの共感が、これだけの数の賛同を短時間に集めたのだと思います。残されたご遺族の『知りたい』という思いが、日本の民主主義を信じたい、良くしていきたいという声と共鳴し広がっているこの動きが、届くことを願っています」
赤木さんは「安倍首相と麻生大臣の気持ちが変わることを期待」
赤木昌子さんは次のようなコメントを寄せた。「たくさんの方々の応援をいただきました。この力を借りて安倍総理、麻生大臣の気持ちが変わることを期待します。これからもよろしくお願いします」 安倍首相と麻生財務大臣は、俊夫さんの手記公開を受けても、「新事実はない。再調査は行わない」という考えを示している。昌子さんは、20万人の思いを受けとめて、この考えを変えてほしいと願っている。  
 
 
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●「自殺した近畿財務局職員の手記でも懲りない高級官僚」 3/31 
森友学園事件で、財務省の佐川宣寿理財局長(当時)に決裁文書の改ざんを強要されて自殺に追い込まれた近畿財務局職員、赤木俊夫さんの遺書と手記が公表された。安倍晋三総理が国会で自身と昭恵夫人の関与を完全否定する答弁をしたため、その答弁に合わせて、佐川局長が部下に文書改ざんを命じた。現場でその悪事に加担させられた赤木さんは、最後は自殺することで財務省の不正を告発したのだ。赤木さんの悲痛な心の叫びを綴った手記を見て、多くの国民は同情し、憤りの気持ちを持った。
しかし、赤木さんのことを問われた安倍総理は、「ああいう結果になり、総理として大変申し訳ない」と形だけは謝罪したものの、赤木さんの告発に応えて再調査することは簡単に否定した。自分のせいで死に至った官僚の声を踏みにじる冷酷なその姿に、国民の多くは驚き、また二重の意味で怒りを感じている。
本件に限らず、安倍政権は、官僚を支配し、官僚はその意向を忖度せざるを得ないという見方が一般的だ。桜を見る会の事件ですぐに嘘だとわかる答弁を繰り返す内閣府の幹部官僚や検察官の違法な定年延長問題で虚偽答弁撤回に追い込まれた人事院の局長などには、同情する声すら上がる。
しかし、彼ら高級官僚たちの身の上を赤木さんに重ねて案じることは決してしてはならない。なぜなら、彼らには彼らなりの打算、すなわち、忖度して嘘をつき通せば、安倍政権は、出世や天下りで報いてくれるという損得勘定があって動いているからだ。
現に、佐川局長は国税庁長官に出世し、安倍政権の検察支配のおかげで牢屋行きも免れた。加計学園事件でも、大ウソで安倍総理を庇った経済産業省出身の柳瀬唯夫元総理秘書官は官民、内外問わず、多くの企業から引く手あまたで、悠々自適の天下り生活を送っている。
桜を見る会の事件で文書を改ざんした内閣府人事課長も、刑事罰はおろか国家公務員法上の処分もなく、内規による「厳重注意」だけだった。国公法の処分なら今夏昇進できないが、内規処分なら出世できる。安倍政権が夏の「出世」を約束したようなものだ。
官僚たちは、ただ隷従しているのではない。しっかり見返りを得ているのだ。
実は、こうした個別の「忖度への報酬」以上に官僚が安倍政権を評価していることがある。それは、安倍政権が官僚の利権にめっぽう甘いということだ。
最もわかりやすいのが、歴代内閣が常に掲げていた「行政改革」や「公務員改革」が、第2次安倍政権では「死語」と化したことだ。今や各省庁の天下りもやりたい放題と言ってよい。
今国会に提出された国家公務員法改正案も官僚は高く評価している。その内容は、「公務員の定年を65歳まで延長し、60歳まで役職定年なしで昇給を続ける。能力や意欲に関係なく65歳までは、60歳ピーク時給与の7割を保証する」というもの。まさに「役人天国」だ。年収1千万円でぶらぶらする60代官僚が続出するのは必至だろう。
一方、加計学園の獣医学部新設に抵抗した文部科学省に対して、安倍政権は天下り規制違反を理由に、前川喜平事務次官(当時)を辞職にまで追い込んだ。
「安倍政権にたてつくとただでは済まないが、そうでない限り官僚の利権は全て守る」。それが安倍政権と高級官僚の暗黙の了解だ。
安倍政権と官僚、どちらも国民を裏切る大罪を犯す共犯者と言うべきだろう。 
 
 
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●赤木さん妻「森友再調査」署名25万人突破に自殺以来「初めて幸せを感じた」 4/1 
公文書の改ざんを上司に強要されて心身を病んだ末、2年前の3月に自ら命を絶った財務省近畿財務局の上席国有財産管理官・赤木俊夫さん(享年54)。妻の昌子さん(仮名)が、相澤冬樹氏(大阪日日新聞)の取材に応じ、現在の心境を語った。
昌子さんは、夫の死の真相を知りたいと、国と佐川宣寿元財務省理財局長を相手取り、3月18日に損害賠償請求訴訟を提起した。しかし、安倍晋三首相や麻生太郎財務大臣は再調査しないと国会で答弁。そこで、昌子さんは3月27日から、キャンペーンサイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」で、「再調査」を求める賛同者を募った。
すると、翌28日には早くも15万人を突破。4日後の3月31日には、賛同者は25万人を超えた。運営側によると、これは同サイト史上最速、最多の数字だという。
昌子さんは、どれだけの人が賛同してくれるか、最初はドキドキだったという。この反響の大きさには、「(赤木さんが自殺した)あの日以来、初めて幸せを感じました。署名のニュースを見ると血液が沸き立つような感覚がします」。さらに、「20万の人が応援してくれる日がくることを、あの時(葬儀の時)の夫に教えてあげたい」とも明かした。
旧国鉄の分割民営化を受けて、国鉄マンから大蔵省(現・財務省)職員となった赤木さん。
「公務員に誇りを持っていました。普段から『ぼくの契約相手は国民です』と言っていましたし、同じマンションの方には『私の雇用主は日本国民なんですよ。日本国民のために仕事ができる国家公務員に、誇りを持っています』と話していたと、亡くなった後に聞きました」(昌子さん)
4月2日(木)発売の「週刊文春」では、赤木さんがどんな人だったのか、どのようにして昌子さんと出会い、どんな夫婦だったのか、かつて自民党支持者だった昌子さんはなぜ告発を決意したかなど、昌子さんの「全告白」を掲載する。また、幸せな夫婦の暮らしを物語る赤木さんの写真や、池上彰氏、後藤謙次氏などジャーナリストがこの問題について語ったインタビューを含め、12ページにわたって伝えている。 
 
 
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●「森友問題」再調査の必要性はない 4/2 
遺族による国家賠償請求訴訟提起
所謂「森友問題」の「決裁文書改ざん」に関与して自殺したとされる元財務省近畿財務局職員の遺族から、今般、国と佐川宣寿元財務省理財局長に対し、1憶1000万円の損害賠償を求める国賠訴訟が大阪地裁に提起された。訴状の詳細は明らかではないが、佐川局長が直接又は間接に当該職員に対し、違法な「決裁文書改ざん」を指示したことにより、当該職員をしてこれを苦にして自殺に至らしめた国家賠償責任を問うものとみられる。
国家賠償訴訟とは何か
国賠訴訟とは、「公権力を行使する公務員が故意又は過失により他人に損害を加えた場合には、国がこれを賠償するものとし、当該公務員に故意又は重大な過失があれば、国が当該公務員に対して求償する制度である」(国家賠償法1条)。したがって、当該公務員には国賠訴訟上の「当事者適格」はないから、佐川局長に対する請求は却下ないし棄却される。それでも、本件国賠訴訟において国に損害賠償責任を認めさせるためには、佐川局長の故意又は過失の存在について原告である遺族側に主張立証責任がある。
本件国賠訴訟の最大の争点
本件国賠責任の要件である「故意」又は「過失」による違法行為とは、本件「決裁文書改ざん」が「違法」であることを認識し又は認識が可能であるにも拘わらず、当該職員に「改ざん」を直接又は間接に指示した違法行為を意味する。本件「決裁文書改ざん」については、財務省による内部調査の結果、公文書管理上の「不適切性」が認められており、佐川局長をはじめ関係者に対する行政上の懲戒処分も行われている。したがって、訴訟上は佐川局長について「不適切性」にとどまらず、「違法性の認識」があったかどうかが最大の争点となる。よって、本件国賠訴訟では、「決裁文書改ざん」の「違法性」の有無及び程度、「決裁文書改ざん」の指示と「自殺」との「因果関係」の有無及び程度、佐川局長の「違法性の認識」の有無及び程度、佐川局長による「指示」の有無及び程度、などが重要な争点となる。原告が勝訴するためには、これらの要件事実について原告である遺族側に主張立証責任がある。裁判所による和解勧告に従い、国が遺族に相当の見舞金ないし賠償金を支払い訴訟上の「和解」をする可能性も否定できない。しかし、国が法的な損害賠償責任を全面的に争えば訴訟は予断を許さず長期化するであろう。
裁判所による請求認容の可能性
しかし、国が「和解」をせず、全面的に争った場合でも、本件事案は、刑事手続きでは「不起訴処分」となったが、民事手続きでは刑事手続きと同等の「厳格な証明」は必ずしも要求されない。事案の内容や原告と被告による主張立証の強弱、利益衡量などで勝敗が決まるのが民事手続きである。したがって、財務省の内部調査の結果、「決裁文書改ざん」の不適切性による佐川局長をはじめ関係者の懲戒処分が存在することは原告側に有利な事実であり、賠償額の多寡はあるものの、裁判所により原告の請求が認容される可能性は否定できない。
国会などによる「森友問題」再調査の必要性はない
野党は、遺族による本件国賠訴訟提起を奇貨として、早速「森友問題合同再調査委員会」なるものを立ち上げ、いわゆる「森友問題」を蒸し返している。安倍政権打倒のための「政局」にすることを狙い、自殺した職員の「遺書」「手記」「ファイル」等の内容は「新たな事実」であると主張し、安倍政権に対して第三者委員会による「再調査」を執拗に要求している。しかし、自殺した職員の「遺書」「手記」「ファイル」等の内容は「新たな事実」とは言えない。なぜなら、それらの「事実」は、すでに市民団体等から背任・有印公文書変造・同行使・公文書毀棄等の告発を受理し捜査を遂げた「第三者機関」である大阪地検特捜部で取り調べが行われているからである。そして、それらの「事実」をも含めて不起訴処分が行われている。そのうえ、上記の「遺書」「手記」「ファイル」等には自殺した当該職員の主観的認識や推測も含まれていることは否定できず、すべてが客観的事実であるとは限らない。よって、「新たな事実」が存在しない以上は、「再調査」の必要性はない。
大阪地検の本件「不起訴処分」の理由
なお、大阪地検は2019年8月9日佐川局長らの不起訴処分の理由について、「必要且つ十分な捜査をしたが、起訴するに足りる証拠がなかった」と説明した。法的に推測すれば、本件「決裁文書改ざん」は、もともと近畿財務局作成に係る本件「国有地取引に関する決裁文書」なるものには、本件国有地取引の内容との関連性や重要性に乏しい様々な政治家らによる働きかけ等の「余事記載」部分が多く含まれていたため、佐川局長ら財務省による当該部分の「抹消」「改ざん」には、刑法上の「可罰的違法性」が乏しいと評価されたためと思料される。 
●森友事件 「再調査で真相解明を」 妻ネットで呼掛け 4/2 
森友事件に絡み公文書改ざんを強いられた財務省近畿財務局職員の自殺を巡り、「真相解明のため再調査してほしい」と妻がインターネット上で呼び掛けたところ、過去最多最速の26万人の賛同が集まり、関係者を驚かせている。
呼び掛けたのは、近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木俊夫さん(享年54)の妻。3月18日、国と佐川宣寿元財務省理財局長を相手に裁判を起こし、併せて俊夫さんが書き残した手記を公表したことが、大きな反響を呼んでいる。
こうした中、妻が同27日、キャンペーンサイトChange.org(チェンジ・ドット・オーグ)で賛同を募り始めた。題は「私の夫、赤木俊夫がなぜ自死に追い込まれたのか。有識者によって構成される第三者委員会を立ち上げ、公正中立な調査を実施して下さい!」
この呼び掛けに賛同者が殺到し、開始から2日足らずで15万人を超え、今月1日には26万人を突破した。これは日本で始まったこのサイトのキャンペーンでは、過去最多で最も速いという。これを受けてChange.orgの担当者は異例のコメントを出した。
「残されたご遺族の『知りたい』という思いが、日本の民主主義を信じたい、良くしていきたいという声と共鳴し、広がっているこの動きが届くことを願っています」
これに応じて妻もコメントを出した。
「たくさんの応援の声を頂いています。今日(28日)は54歳で亡くなった夫の誕生日です。最高のプレゼントを皆さんから頂きました。本当にありがとうございます」
妻が俊夫さんの手記を公表し、裁判を起こすのにこの時期を選んだのは深い理由がある。3月7日が俊夫さんの三回忌、22日が自分の誕生日、28日が俊夫さんの誕生日。大切な日が続く3月に大きな決断に踏み切りたかったのだ。
一方、安倍晋三首相と麻生太郎財務大臣は、故人の手記が公表されても遺族が望んでも「新事実はない」と繰り返し、再調査はしないという考えを改めていない。赤木さんはいずれ、集まった膨大な賛同の署名を安倍首相と麻生財務大臣に届けるつもりだ。 
●赤木さんの妻 森友改ざん“極秘ファイル”が検察と近財の手で消されてしまう 4/2 
森友問題の決裁文書改ざんを強要され自殺した近畿財務局職員・赤木俊夫さんの妻が第三者委員会による再調査を求める署名を「Change.org」で開始、27日午後からはじまったこの署名が、わずか3日で20万人を突破したことが大きな話題となっている。
赤木さんの遺書と手記をスクープした元NHK記者の相澤冬樹・大阪日日新聞記者によると、これは日本で始まった署名キャンペーンでは「最も多く、最も速い新記録の達成」だといい、2日12時現在でも27万人を超え、署名数は増えつづけている。
さらに、本日発売の「週刊文春」(文藝春秋)では、赤木さんの妻の「全告白」と題した記事を掲載。遺書と手記が公表されたというのに、いまだに再調査を拒否しつづける安倍首相と麻生太郎財務相だが、赤木さんの妻は記事のなかで「安倍首相、麻生大臣の姿を見たり声を聞く時は身体中の血液が凍りつきます」と、亡き夫の最期の叫びを無視する2人への怒りを隠さない。
そんななか、いまもっとも焦点があたっているのは、赤木さんが遺書や手記とは別に、生前にまとめていたという「極秘ファイル」の存在だ。
じつは、この「極秘ファイル」について、3月30日放送の『バイキング』(フジテレビ)が紹介。相澤氏をゲストに招き、「極秘ファイル」の中身について解説したのだが、その際、赤木さんの妻も放送中に重要な指摘をおこなったのだ。
まず、この「極秘ファイル」とはどんなものなのか。先週発売の「週刊文春」4月2日号掲載の赤木さんの妻の証言によると、赤木さんが「極秘ファイル」を残していたことを明かしたのは、2019年3月9日に1周忌の直後に赤木さん宅を訪れた池田靖・統括国有財産管理官(当時)。そのとき、池田氏は赤木さんの妻にこう話したという。
「赤木さんはきっちりしているから、文書の修正、改ざんについて、ファイルにして、きちっと整理していたんです。検察がガサ入れに来た時(注・強制捜査ではないので、任意提出と思われる」、赤木さんは『これも出していいですか?』と聞いてきた。パラッと見たら、めっちゃきれいに整理してある。全部書いてある。どこがどうで、何がどういう本省の指示だったかって。修正前と修正後、何回かやり取りしたようなやつがファイリングされていて、パッと見ただけでわかるように整理されている。これを見たら我々がどういう過程で改ざんをやったのか全部わかる」
つまり、誰からの指示で、どういうふうに公文書を改ざんしたのか、その全容を赤木さんは詳細にわたって記録していた、というのである。『バイキング』で相澤氏は「改ざんのビフォー・アフターがすべてわかる」ものだと述べたが、これが改ざんの真相を探る上で重要証拠になることは疑いようもない。
実際、この「極秘ファイル」の存在について説明を受けた『バイキング』MCの坂上忍も、「これ、全部実名ですよね」と相澤氏に確認すると、相澤氏は「おそらくね。内部文書ですから」と返答。だが、問題は、この「極秘ファイル」の行方だ。
「極秘ファイル」の存在を明かした池田氏は、赤木さんとどんなやりとりをしたのか、赤木さんの妻にこう語っていた。
「赤木さんもそこは相手が検察なんで気になって『出しますか?』って。僕は『出しましょう、全部出してください』と言って持っていってもらったんです。全部見てもらって全部判断してもらったらいいという思いですから。僕ら的には改ざんなんかする必要は全くなかったですし」(前出・「週刊文春」4月2日号より)
ようするに、改ざんの全容が書かれたこの「極秘ファイル」は検察に任意提出されたものと見られるわけだが、番組内で相澤氏はこんな見立てをおこなっている。
「これ、いわゆるガサ入れの押収じゃなくて任意提出なので、普通に考えると普通、原本、絶対残すんですよ。もしくは原本を出すのならコピーを残すんですよ。全部持っていく必要ないので。だからたぶん、財務省(近畿)財務局に、そもそもあると思うんですね」
「普通はこれ、捜査終わったら、(検察は)証拠返します。時間だいぶ経ってるんで、普通でいえば返していると思いますが、ただこれもですね、返すときに普通、絶対コピー取りますよね。重要な証拠物ですからね、(コピーして)たぶん返しただろうと。だから私はおそらく、これは近畿財務局と、大阪地検の両方にあると思います」
改ざんの最重要証拠である「極秘ファイル」は、いまも近畿財務局に大阪地検に存在するはず──。もし存在するのならば、国民にそれをすみやかに明らかにし、その上で財務省が公表した調査報告書と食い違いはないのか、早急に調査をおこなうべきであることは言うまでもない。
だが、ここで疑義を呈した人物がいる。番組を観ていた赤木さんの妻だ。相澤氏は「問題は、一旦返ってきたものを、ちゃんと保管しているのかどうか。じつは番組を観ながらですね、奥さんがLINEを送ってきている」と明かし、相澤氏はその内容をこう伝えた。
「(スマートフォンを見ながら)『検察から返ってきたファイルを破棄したのではないのか』というふうなことを言っております。想像ですけどね。これは前段があるんですよ。『元は同僚だったのに財務省の夫の扱い方がひどいと思います』と。『検察から返ってきたファイルも破棄したのではないか』と、そういうふうに言っている」
赤木さんの妻によるこの推測は、誰しもが頷くものではないだろうか。そもそも、改ざんの全容が記された重要証拠が存在することを、財務省は調査報告書でも触れることはなく、一切公表してこなかった。調査報告書の内容と齟齬がないのであれば、本来ならば客観的証拠として「極秘ファイル」の記載に言及していたはずだ。だが、それをしていないということは、「極秘ファイル」の内容は財務省の嘘を暴くものになっているのではないのか。
となれば、財務省はどうするだろう。公文書を改ざんした挙げ句、今度は国民に明らかにできない改ざんの全容をまとめた「極秘ファイル」を闇に葬った──。そう考えるのは自然なことだ。
赤木さんは遺書と手記のなかで「すべて、佐川理財局長の指示です」と訴えていた。当然、この「極秘ファイル」には、財務省からの指示がどんなものであったか、そして佐川氏の動きも細かく記されているだろう。しかし、そんな重要証拠の提出を受けながらも、大阪地検特捜部は佐川氏をはじめとして財務省と近畿財務局の関係者を全員不起訴にした。ようするに、この「極秘ファイル」の中身が明らかになれば、財務省の嘘だけではなく、捜査のおかしさも浮き彫りになるはずなのだ。
国民が知るべき事実が、証拠が、握りつぶされてゆく──。赤木さんの妻が生放送中に投げかけたメッセージに呼応するように、コメンテーターのアンミカはこう述べた。
「公文書っていうものが、国民のみなさんも、ちょっと気持ち緩んでるというか、やっぱりみんなのものなんで、これは許さない、改ざんは許さないって声をあげて、政治家の方が脅威に思うほど声をあげていくっていうこともすごい大事だし、政治家もその声を受け止めるっていうふうな政治であってほしいと思うんですね。これ、もっとみなさん、声をあげていくこと大事じゃないですか?」
さらに坂上も、このように言及した。
「いま、コロナウイルスで一色になってますけど、それに埋もれていい話では絶対にないと、僕は思います」
「相澤さんのお話とか聞いて、ふと思ったのは、きょうは最初、新型コロナウイルスのニュースをお伝えさせていただきました。で、ふたつ目のニュースで、このニュース。これ逆にしてね、こっちのニュース、先にお伝えさせていただいて、その後に(新型コロナ対応の)安倍首相の会見見たら、どんな目で俺は見てたんだろうかって、ふと思ってしまって。まあ、つまるところ、やましいところがないのであれば、真実を明らかにしていただきたいというのが、多くの国民の声なんじゃないんでしょうかね」
「安倍首相は、2017年2月17日の国会の発言で改ざんが始まる原因をつくりました」と訴える赤木さんの妻の声に対し、安倍首相は「自分の答弁が改ざんのターニングポイントになったとは手記には書かれていない」などと強弁、再調査の拒否だけではなく、赤木さんの妻のコメントまでをも真っ向から否定しつづけている。そんな自分に都合の悪い事実は徹底して隠蔽し、闇に葬ろうとする安倍首相は、新型コロナという国民の生命にかかわる重大事でも、同じようなことをするのではないか……。つまり、安倍首相の公文書改ざん問題や赤木さんへの反応と、新型コロナ対応は、地続きの問題だ。そう坂上は訴えたのである。
赤木さんの妻は『バイキング』で、視聴者に向けてこんなメッセージを寄せていた。
「2017年2月17日に安倍首相が国会で発言したことが改ざんのきっかけだと夫は手記に残していません。それをもって安倍首相は再調査しないとおっしゃっています。それはおかしいです。」 「私は夫がもがき苦しみ死を選んだ理由が知りたいです。たくさんの方々の声がそろそろ届き安倍首相と麻生大臣が再調査する事を決断してくださると信じています。」 「夫が命がけで残した手記と遺書です。再調査していただけるまで私も命がけでお願いし続けていきます。」
命がけで再調査をお願いしていくという、赤木さんの妻の強い決意。赤木さんが死を賭けてあげた最期の声を無視することは絶対に許さない。今度はそう国民が声をあげるときだ。 
 
 
 4/3

 

●「職員の公文書管理の意識低かった」梶山経産相が陳謝 4/3 
経済産業省が関西電力に業務改善命令を出した際、職員が手続きのミスを隠すために意図的に文書の日付を変えていた問題について、梶山経済産業大臣は公文書管理の意識が薄かったとして、改めて陳謝しました。
経済産業省は、先月、関西電力に業務改善命令を出した際、必要な手続きを行っていなかったミスを隠すため、担当職員が上司の承認を得たうえで、意図的に文書の日付を変えていていました。
これについて梶山経済産業大臣は、3日の記者会見で、過去に公文書管理を担当する大臣を務めたというみずからの経歴に触れたうえで「こういうことが守られていないことにらみずから恥ずかしく感じている」と述べました。
そのうえで、森友学園をめぐる財務省の決裁文書改ざん問題を念頭に「再発防止のためにどうしたらいいのかという意識が薄かったということだ。おわびするしかない」と改めて陳謝しました。
また、関係した職員らに対する処分が戒告や訓告だったことについて、処分が軽いのではないかという指摘が出ていることについて「処分は、ほかの同様の事例と比較したうえで決定した。軽い処分とは考えていないが、しっかり意見は受け止めていきたい」と述べました。 
 
 
 4/4

 

●「森友」の職員手記 再調査拒否は政権の責任放棄 4/4 
国有地が不当な安値で払い下げられた「森友学園」問題で、公文書改ざんを強要され、自殺に追い込まれた財務省近畿財務局職員・赤木俊夫氏の妻が、国と佐川宣寿理財局長(当時)に損害賠償を求める訴訟を起こしたことを契機に、再調査と真相解明を求める声が広がっています。公表された赤木氏の手記は、佐川氏からの改ざん指示などについて重大な新事実を明らかにしています。ところが安倍晋三首相は「新しい事実はない」と言い張り、再調査に応じません。国政を揺るがす大問題が新展開を見せているのに、真相解明に背を向けることは通用しません。
赤木氏の妻が呼びかけた再調査を求めるインターネット署名への賛同者は約28万人にのぼります。市民団体が行っている佐川氏の国会証人喚問を要求する署名への賛同も10万人を超えました。いずれも短期間で一気に広がりました。共同通信の世論調査では、「再調査が必要」が73%を占めました(「東京」など3月29日付)。国民が真相解明を求めているのは明白です。
しかし安倍首相も麻生太郎財務相も、財務省が2018年6月に出した「調査報告書」と「大きなかい離はない」などと繰り返し、再調査を頑として拒んでいます。真実を手記に残した赤木氏の思い、その遺志を引き継いだ妻の気持ちを踏みにじるだけでなく、国民世論に真っ向から逆らう姿勢です。
17年2月に発覚した「森友」問題では、安倍首相や妻・昭恵氏の関与が国会などで追及され、首相は「私や妻の昭恵が関係していれば、首相も国会議員も辞める」と答弁し、佐川氏は文書を廃棄したなどと主張しました。昭恵氏らの名前が削除された公文書の改ざんはその直後から始まっています。
財務省の調査報告書は、極めて不十分な内容です。佐川氏の関与についても「具体的な指示はなかった」などとごまかしました。一方、赤木氏の手記は「すべて佐川理財局長の指示」「学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があった」と具体的に記しています。「大きなかい離はない」どころか大違いです。
手記は、「国会議員への説明」をめぐり、佐川局長から「原則として資料はできるだけ開示しないこと」との指示や、会計検査院の検査では、内部検討資料は「一切示さないこと」などの本省の指示があったことも明らかにしています。これらは国政調査権(憲法62条)の重大な侵害であり、会計検査院法にも反します。
手記は、改ざんという違法行為を強いられ、良心の呵責(かしゃく)にさいなまれ、苦しんだ当事者でしか書くことができない生々しさと説得力があります。財務省は調査報告書をまとめる際、赤木氏の手記は承知せず、読まなかったなどとしています。再調査をするのは安倍政権の最低限の責任です。
手記にある新事実を踏まえ、佐川局長をはじめとする財務省幹部と昭恵氏の証人喚問が必要です。
当時関係した財務省幹部が栄転していることも問題です。公務員として誇りを持って仕事をしていた赤木氏に改ざんを強い、死に追い込んだことに痛みを感じないのか。「真実を知りたい」。赤木氏の妻からの悲痛なメッセージは、国民共通の思いでもあります。 
 4/5

 

●森友問題・近畿財務局職員はなぜ死に追い込まれたのか 4/5 
TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。4月4日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、「森友問題」の公文書改竄(かいざん)に関わって自ら命を絶った財務省近畿財務局・赤木俊夫さんが書き遺していた「手記」をスクープした大阪日日新聞の記者・相澤冬樹(あいざわ・ふゆき)さんをお迎えしました。相澤さんのスクープ記事は、いままた森友問題に注目が集まるきっかけとなりました。
森友問題の発覚から取材
相澤さんは1962年、宮崎県生まれ。東京大学法学部を卒業して1987年、NHKに入社。記者として山口、神戸、東京に赴任したあと、徳島のニュースデスク、大阪府警キャップ、東京でBSニュースの制作を担当。2012年に再び大阪放送局に戻ると、2016年に司法担当キャップに就任。そして、2017年に「森友問題」をどこよりも早く報道し、この事件に深く関わることになったのです。ところが翌年、相澤さんは記者を外されてしまいます。何かへの忖度が働いたような人事です。取材を続けるため相澤さんはNHKを退職し、大阪日日新聞(新日本海新聞社)に転職して引き続き森友問題を追っています。奇しくもこの放送日(4月4日)は、2年前に相澤さんがNHKで最後の「森友」スクープを出した日と重なりました。
夫がかわいそすぎる
森友問題に関わる公文書の改竄を上司に強要され、命を絶った近畿財務局職員・赤木俊夫さん。彼が死ぬ前に何かを書き遺していたという話は以前からありました。その「手記」が「週刊文春」3月26日号と大阪日日新聞に掲載されました。記事を書いた相澤さんは、NHKを辞めて少し経った2018年10月に赤木さんの妻・昌子さん(仮名)に手記を見せてもらっていました。ただ昌子さんが当初、手記は公表しないと言っていたため、相澤さんは記事にしませんでした。ところが財務省と近畿財務局の誠意のない態度に昌子さんの気持ちは変わり、公表となったのです。「森友問題が表に出たのは2017年の2月8日のNHKのニュースが最初で、翌日の朝日新聞がそれを大きく書いたわけですが、赤木さんが自殺したのは2018年の3月7日。ということは、本当にあっという間に起きたことなんですね」(久米さん) 「公文書の改竄(かいざん)自体は2017年2月26日に始まっていますから、それから3月7日、8日ぐらいにかけてやっているんです」(相澤さん) 3年前の2月26日は日曜日でした。午前中、赤木さんはイタリア製ブランドのパンツを2本買いました。赤木さんはお洒落な方でした。服を買ってもすぐには身につけず、大切なことがある日やいいことがあったときに新品をおろすのでした。でも、その2本のパンツがおろされることはありませんでした。この日の午後、赤木さんは上司に呼び出され、改竄を命じられたのです。「結局、彼にとっては、改竄させられたあとはいいことはなかったんです。いいことどころかどんどん悪くなって、鬱病(うつびょう)になって休職して、結局命を絶ってしまうわけです。だから彼はあの日買ったパンツを履かないまま終わってしまっているんです。新品のまま残っているんです。奥さんは一時はそれを捨てようかと思ったそうです。見ているだけで辛いから。でも捨てずにとっておいてあるんです。奥さんは赤木俊夫さんのことを『トッちゃん』と呼んでいて、『トッちゃんがこれを履かずに亡くなってしまった。かわいそすぎるでしょ』って言うんです」(相澤さん) 赤木さんは自分は犯罪者だという意識だったと相澤さんは言います。決してやってはいけない改竄に手を貸した。それも何度も。そして翌年(2018年)の3月2日、公文書改竄の事実が朝日新聞で報じられると、5日後に赤木さんは命を絶ってしまいました。「俊夫さんが亡くなって、財務局の人たちが自宅に来るわけです。その中のひとりが『赤木を殺したのは朝日新聞や!』って叫んだそうです。でもそのときに奥さんは思ったんですよ、『殺したのは財務省でしょ』って。朝日新聞はたまたま改竄の事実を掴んで記事を書いただけであって、それを見て俊夫さんがもう終わりだと思ったというのは時系列としては事実なんだけど、そもそも朝日新聞に書かれるようなことを誰がさせたのって。そして、そのあとに誰も責任を取らずに、心病んでいる夫だけに責任を押しかぶせてみんな知らんぷりをしていた。その財務省の責任でしょうって」(相澤さん)
本分を忘れた官僚
赤木さんは自分たち国家公務員の使命は国民に奉仕することだと考えている人でした。「ぼくの契約相手は国民です」というのが口ぐせだったそうです。ところが森友問題で露呈したのは本分を忘れた官僚の姿でした。いまの日本は非常に危ないと久米さんは言います。「国に奉仕するという精神でやっているはずなのに、これほど時の政権に忖度して公務員が動くようになると…、いまや検事も動かそうなんていうような内閣がいるわけですけど。本当だったら大臣の首が4回くらい跳んだっておかしくないのに、ずっと同じ人が大臣をやっているわけです。こんなことって普通の国の常識としてはあり得ない話です。日本という国は危ないぞという警鐘だというふうに、ぼくはこの遺書を公開した奥さんの意思をそう受け取っています。こういう官僚たちがいまリーダーシップを執って新型コロナウイルスと戦っている。これはとても危険だという話をこの日の放送のオープニングでもしたんですけど、公務員のレベルがどうしてここまで下がったのか」(久米さん) これに対し相澤さんは、昔から公務員の腐敗はあるけれど、責任の取り方が曖昧にされていると言います。そして大きな組織の問題を指摘しました。「いまでも真っ当にやっている公務員の人はちゃんといらっしゃると思うんです。ぼくもNHKという大組織にいたから分かりますけど、NHKにも真っ当にやっている職員は当然いっぱいいます。むしろそちらのほうが多いです。たぶん役所もそうなんですよ。だけど、大組織って真っ当にやっている人をすり潰しちゃうところがあって、真っ当な意見がそのときどきの上層部の都合に押しつぶされちゃうということが起きる。そのときに下の人間がなかなか抵抗できない。赤木俊夫さんがまさにそうです。一度は『こんなことはすべきじゃない』と言って抵抗しているわけです。抵抗したんだけど結局、上のほうから『これはやりなさい』と言われて、やらされちゃうわけです。大組織の中で上役からの命令を本気で拒否しようとしたら、職場を辞めるしかないんですよ。職場を辞めるなんていう決断はなかなか簡単にできないじゃないですか。そうするともう涙を呑んで我慢する。そういう思いで俊夫さんもやったんじゃないかと思うんです。そういうことは大組織には起きがちですよね」(相澤さん)
森友問題の本質
森友問題は安倍政権批判とセットで取り上げられることが多いのですが、事件の本質は政権批判ではないと相澤さんは言います。「そもそもいちばん肝心なのは、この手記を公開した本人である昌子さんが、そんな意識はこれっぽちもないということです。彼女が求めているのはただひとつ。『夫はどうして死んだのですか』。その真相を知りたいです、財務省の報告書では全然分かりません、だから再調査してくださいと言っているだけで、政権批判も何も関係ないですよね。真っ当なことを言っているだけだと思います。そのことを記事にしているだけなのに、これが安倍政権に不利だというふうに受け止める人がいて、政権に対する有利・不利で判断して物を言っている人がいる。日本社会っていま完全に分断しているんですけど、どういう分断の仕方をしているかというと、実にけったいなんですけど、『安倍政権、是か非か』で分断しているんですよ。そんなことってあるのかなあと。例えば昔だったら『自民党、是か非か』という問題の立て方はあったと思うんです。いまはもうそうじゃないですよね。すごくおかしなことになっているなあと思いますよ」(相澤さん) 昌子さんが「手記」の公表に合わせて国と佐川宣寿元国税庁長官に損害賠償を求めて大阪地裁に提訴したのも、佐川さんを法廷に呼び出し、真相を追求するのが目的です。また昌子さんは、財務省とは独立した第三者委員会による再調査を求めています。ところが「手記」の公表したあと、麻生大臣は「新たな事実が判明したことはない」「再調査を行う考えはない」と突き放し、安倍総理も国会で「検察ですでに捜査を行い結果が出ていると考えている」「国会答弁が決済文書の改ざんのターニングポイントになったとは、手記には書かれていない」と答え、再調査を否定しました。これに対し、昌子さんは「2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではないと思います」というコメントを発表。さらに、再調査を求めてインターネットによる署名を呼びかけました。すると異例のスピードで賛同の署名が集まり、この日の放送の時点で28万人に達しています。「彼女が言っていることはたぶん誰も否定できないです。それはものすごくインパクトがありますよね。森友の国有地がどうのこうのというのは理屈の話です。それよりもぐっと心を惹きつける。だからすごい力があるんです」(相澤さん)
相澤冬樹さんのご感想
久米さんというと、ぼくは「ザ・ベストテン」なんですよ。正直言って「ニュースステーション」は見ていなかったので、そのイメージはあまりなくて。ザ・ベストテンの久米さんと一緒にラジオに出られることがすごく嬉しかったので、今日はその話をしようかなと思っていたら久米さんがいきなり本題に入ってしまったので、できなくて残念です。久米さんが矢継ぎ早に質問してくるので、出演している間はマラソンを走っている感じでした。でも、すごく上手に話をリードしていただいたなあと思います。いまの安倍政権はおかしくなっているということをどう思いますかという話がありましたけども、赤木さんの奥さんは純粋に真相を知りたいと言っているだけで、政治的な思惑でやっているわけではありません。それを勝手に政治的な色を付けているのは、それを受け止める側なんです。特に安倍政権を支持する人たちは、政権に不都合な事実が出てくるとすぐ「反安倍のためにやっている」と結びつけるんですけど、結果的に政権に不利になるかもしれませんけど、やっていることは事実の追求にすぎないわけです。私もそうしてきたし、彼女もそういうふうにしたいと思っているわけです。それは「安倍政権、是か非か」ではなく、むしろ与野党一致してちゃんと向き合ってほしいと思います。再調査を始めるというのもそうですし、証人喚問ももちろんそうです。国会でできることをぜひやってほしいと思います。今日はありがとうございました。  
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●自殺した近畿財務局職員の遺書公開 …「森友学園問題」はどう始まったのか 4/7 
「財務省による公文書改ざん」をめぐり、改ざん作業を強いられ、自ら命を絶った近畿財務局職員の遺書が初めて公開された。遺族は国と佐川宣寿・元財務省理財局長を提訴し、改ざんの詳しい経緯が明らかにされることを望んでいる。朝日新聞取材班が出版した『権力の「背信」――「森友・加計学園問題」スクープの現場』(朝日新聞出版)には、森友学園の国有地取引をめぐる問題から「公文書改ざん」に至るまでの取材記録が詳細に記されている。民主主義の根幹を揺るがす事態にまで発展した問題の、そもそもの「きっかけ」とは何だったのか。森友問題の端緒となる事実を掘り起こしスクープした、朝日新聞大阪社会部記者の吉村治彦が振り返る。

もう3年も前になる。森友学園への国有地売却に絡む問題を最初に報じたのは、2017年2月9日付朝刊だった。きっかけはその数カ月前の夕方、当時私が支局長を務めていた豊中支局(大阪府豊中市)に、取材先の女性からかかってきた、1本の電話だった。
「豊中市が以前、公園用地として取得を希望して断念した国有地が、ある学校法人に売却されたようだ。しかも財務省が売却金額を非公表にしている」
学校法人は森友学園。その土地で小学校の開設を目指していて、名誉校長には安倍晋三首相の妻の昭恵氏が就任していた。背景はよく分からなかったが、「何かありそうだな」と素朴な疑問から取材を始めた。
財務省近畿財務局に取材してみると、公共目的での利用で土地を売却する「公共随意契約」で、少なくとも過去3年間で価格を非公表にしているのは森友学園だけとのことだった。「学校運営に影響するので非公表にした」となんとも不可解な説明で、担当者は明らかにこちら側の取材を警戒している様子だった。
旧大蔵省理財局の通知では、公平性の観点から、国有地の売却価格は公表が原則とされている。国有地を購入して価格を公表されていた他の学校法人や社会福祉法人の担当者は「財務局からは、『国有財産なので公表しますね』と言われた」などと取材に答えた。売却価格を非公表にしたうえ、十分な説明もしない財務省の対応に、「何かおかしなことが起きている」と記者魂に火がついた。売却価格の開示を求めて財務省に情報公開請求もしたが、やはり非公開とする決定だった。
情報公開請求と並行して、国有地売却の際に開かれる財務省国有財産近畿地方審議会の過去の議事録や不動産登記などの資料を集め、地元の行政関係者や学校関係者への取材を重ねた。当初は10年以内の売買を約した定期借地契約だったが、その後、10年間の延納(分割払い)での売買契約に切り替わっていた。公共用に利用されない場合に国が土地を買い戻す特約が付されており、買い戻し特約の売買代金は「1億3400万円」と注記されていた。特約は売却価格と同額なのが通例だ。
森友学園が購入する6年前、豊中市は学園が取得した用地の東隣にあった、ほぼ同じ広さの国有地を購入していた。価格は14億2300万円。不動産鑑定士による評価額で、学園が取得した土地も路線価からみて10億円は下らないと推測できた。買い戻し特約の売買代金1億3400万円が売却価格だとすると、あまりに安すぎる。
購入した本人に事実関係を確認するしかないと、大阪社会部で同僚の飯島健太記者(現テヘラン支局長)と2人で、学園の籠池泰典(やすのり)・前理事長に直接取材することにした。電話で学園に申し入れたが、「悪く書かれるので結構です」と職員に断られたため、17年2月6日に、園児たちが帰ったころを見計らって、事前の約束無しで学園の幼稚園を訪問した。
「何かアポ無しやね」。そう言いながらも、籠池前理事長は取材に応じた。戦前・戦中の教育の根本理念となった「教育勅語」が掲載されている学園のホームページなどから、前理事長は先鋭的な保守思想の持ち主だと把握していた。しかし、本人と言葉を交わした印象は「ふつうの大阪のおっちゃん」。取材に関西弁でぽんぽんと答えた。こちらが登記簿謄本を示し、買い戻し特約の売買代金は売却価格と同額が通例だと指摘すると、前理事長はあっさりと売却価格は1億3400万円と認めた。価格決定の経緯も尋ねたが、「価格は国が決めた。こちらから提示していない」などと話した。
朝日新聞が問題を報じると、財務省は籠池前理事長の了承を得たとして、売却価格を一転して公表し、土地の鑑定価格約9億円からごみの撤去費として約8億円を差し引いたことを明らかにした。疑問は本当に8億円分のごみが埋まっているのかどうか。すでに国の費用で約1億3千万円をかけ、コンクリートの廃材などを撤去していたことも判明した。近畿財務局は問題が大きくなると、「財務省本省に問い合わせを」と取材を拒否するようになった。
大阪社会部の同僚記者らの粘り強い取材で、厳しい財務状況や教職員の不十分な態勢といった森友学園についての疑問点も次々とあぶり出した。また、国などへの補助金申請に絡み、虚偽の建築費を届け出た可能性があることも突き止めた。籠池前理事長は小学校の建設を断念し、用地は特約に従って国に買い戻された。
その後、籠池前理事長は国の補助金を詐取したなどとして妻とともに大阪地検特捜部に逮捕、起訴された。夫妻は当初、安倍首相を熱烈に支持していたが、問題発覚後に首相が籠池前理事長を「非常にしつこい」などと突き放すようになると、政権批判に転じた。
裁判でも「国策捜査だ」などと特捜部を批判したが、大阪地裁は今年2月、籠池前理事長に懲役5年、妻に一部の起訴内容を無罪としたうえで懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡した。夫妻と大阪地検の双方が控訴し、法廷闘争は当面続く。
一方、判決に先立つ18年3月、朝日新聞の報道により、財務省が森友学園との国有地取引の際に作成した公文書を改ざんしていたことがわかった。国有地取引をめぐっては、籠池夫妻と昭恵氏が国有地の前で撮影した写真を籠池前理事長が近畿財務局に提示し、「いい土地ですから前にすすめてください」と昭恵氏から言われた、と伝えていたことが改ざん前の公文書などで明らかになった。
籠池前理事長は昨年2月、朝日新聞の取材に「写真はとどめ。財務省のギアがひとつ変わったんじゃないですか。ガッと」と証言した。
なぜ財務官僚は改ざんに手を染めたのか。取材班で当時の近畿財務局の担当職員らに接触を重ねたが、みな一様に口は堅く何かにおびえているように感じた。国有財産を扱う管財部門に所属していた複数のOBにも取材した。OBたちは「私たちは誤字脱字でも、決裁を取り直して決裁権者に回すと教育された。僕らの常識を覆すことが行われていた」「公文書改ざんは、常識で考えたら刑法にも触れる話。公務員だけで決断したのか、疑問が残る」などと語った。
現役時代は取材拒否だったが、退職直後に応じてくれたあるOBは「直接改ざんに携わった職員は悩んでいるふうに見えた。現場としてはじくじたる思い。改ざんは、本省が(自分たちの)説明やストーリーに沿うようにしたかったからじゃないか」と打ち明けてくれた。
しかし結局特捜部は、佐川宣寿・元財務省理財局長を始めとして、告発された財務省関係者ら38人についての背任や虚偽有印公文書作成など、全ての容疑で不起訴にした。
国有地には校舎や体育館になる予定だった建物が残されたままだ。値引きの根拠とされた地中ごみの写真には、野党議員から「不鮮明で根拠にならない」と疑義が出ており、問題の決着はまだついていない。そして公文書改ざんも全容は明らかになっていない。真相を求め、今後も取材は続く。 
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●財務省と検察がひた隠す「赤木ファイル」の存在 4/8 
森友事件で自殺した元財務省職員の赤木俊夫さんの妻(昌子さん:仮称)が、赤木さんの手記を公表し、国と財務省の佐川宣寿元理財局長を提訴した。この問題をきっかけに、森友・加計問題から黒川弘務検事長の定年延長問題へと続く安倍政権による政治の私物化への批判が再び噴出している。公文書の改ざんを一人の職員に押し付けて自殺に追いやった責任を問う声や、残された妻の哀しみに向き合うことのない行政はいらないという声が、一人ひとりの国民を動かし始めたように見える。この動きの先を探ってみた。
「調査報告書」は、赤木さんの死に触れず
森友決裁文書の不法な改ざんを強要され、精神を病み、自殺に追い込まれた赤木さんの妻の訴えを報じた「週刊文春」(文藝春秋)は53万部が完売したという。昌子さんの民事訴訟は、「愛する亡俊夫が、なぜ自殺に追い込まれたのか」という真実を知り、赤木さんが自殺の直前に手記を残した願いに基づき改ざんの実態を公にしたいということが目的だった。
発売されたその日(3月18日)のうちに野党は「森友問題再検証チーム」を結成し、19日の参議総務委員会では国民民主党の森本真治氏の再調査を求める質問に、安倍晋三首相は「麻生太郎財務相の下で事実関係を徹底的に明らかにした。検察もすでに捜査を行い結論が出ている」と答え、麻生財務相も記者会見で「経過は調査報告書で明らかにした。それに尽きる」「手記と報告書で、事実関係に大きな乖離はない」と述べ、両名とも再調査を拒否した。
しかし調査報告書(※1)に書かれた事実関係には、今回の手記と大きな乖離があった。そもそもこの調査報告書には、赤木さんが自殺した事実すら書かれていない。当然哀悼の記述や一人の職員を自殺に追い込んだ経過や反省も書かれていない。それどころか、赤木さんについて「配下職員」としたうえで、次のようなおぞましい記述が続く。
「近畿財務局の統括国有財産管理官の配下職員は、そもそも改ざんを行うことへの強い抵抗感があったこともあり、本省理財局からの度重なる指示に強く反発し、(略)近畿財務局においては(略)配下職員はこれ以上作業に関与させないこととしつつ」「本省理財局が、国会対応の観点から作業を行うならば、一定の協力を行うものと整理された」(P.27〜28)
「強い抵抗感」「度重なる指示に強く反発」と、赤木さんについて冷たく突き放すような記述の後、「これ以上関与させないことにした」としている。ここに書かれているのは、「不法な仕事」を押し付けられ、精神を病むことになり、休職、そして最後には死に追いやられた職員が辿った事実経過ではない。まるで彼に押し付けられた仕事が、誰もがやらなければならない仕事を彼だけがさぼったような記述が書かれていた。赤木さんが残した手記によって、事実を再構成する必要がある。
安倍・麻生両名はこの調査報告書の内容を知らないまま、手記と調査報告書には乖離はないと軽率に発言し、昌子さんの要請を頭から拒否しているといえる。
再検証チーム座長・川内博史議員に聞く
再検証チームが3月26日に行われた3回目の合同ヒアリングの直後、座長の川内博史議員(立憲民主党)を取材した。
――再検証チームをどのような思いで立ち上げましたか?
川内氏「赤木さんの手記と遺書を読ませていただき、大きな衝撃を受けました。そもそも自死をされたということで、相当なプレッシャーを受けていたと皆は感じていたと思いますが、手記で生々しく紹介され、計り知れない衝撃を受けました。赤木さんの心中を思う時、手記と遺書は、真実を明らかにしてほしいという赤木さんの魂の叫びであると思います。財務省や政府は、真相を隠ぺいすると決意していると思いますが、私たちはその壁を破って赤木さんの思いに応えていかなければならないと考えました。」
――再検証チームは何人ぐらいで立ち上げられましたか?
川内氏「野党全体で立ち上げましたが、十数名が中心で動いています。」
――安倍首相や麻生財務相は、再調査は拒否すると早々と宣言し、問題が広がることへの火消しにやっきになっていますね、
川内氏「おふたりは、もともと真相を隠すという立ち位置です。なぜなら18年6月の財務省の調査報告書を発表した記者会見で、麻生大臣は記者会見で『なぜ文書改ざんが行われたのかのかが書かれていませんね』という質問に『それがわかれば苦労せんよ』と答え、真相が解明されていないことを自白しています。今回の手記が発表され、核心に迫る部分がわかった段階で、本来は再調査に入ると自ら言うべきだったのです。『新しい事実はない』『齟齬はない』というのは真相が明らかになると困るからでしょう」
――今回3回目の野党ヒアリングを経て、わかったことがありますか?
川内氏「書き換えを命じられた経過を詳細に綴った赤木ファイルが存在することが、ほぼわかりました。財務省理財局が近畿財務局に書き換え案を指示し、これまで一切が公表されていなかった、隠し持ったものが、あるということです。なぜあってはいけない文書改ざんが行われたのか、あってはいけない国有財産の値引きがあり、そこに大変な影響を行使した政治家の存在があり、だから改ざんが行われたという真実に近づく赤木さんの記録です」
――森友・加計問題から黒川検事長の定年延長問題を含め、安倍一強体制の問題が目立ちますが。
川内氏「あまりにも権力が大きすぎて、政治や行政、司法までが機能不全に陥りつつあると思います。世の中が一人の権力者の思いのままに動いてしまうことの問題です。しかし官僚は忖度するが、ウイルスは忖度しません。新型コロナウイルス問題でミスを犯しつつあるのではと思っていますが、権力の集中は世の中の危機をもたらす。そのことが森友・加計問題、黒川検事長問題で明らかになってきたと思います」
再燃した国会での追及に期待したい。
昌子さんが開いた真実に向けての扉
赤木さんの妻・昌子さんが提案した第三者委員会の設立と再調査の実施を求めるインターネット署名「change.org」は、1週間で約29万の署名を超えた。安倍首相と麻生財務相の心ない拒否発言は、逆に賛同者数を増やすことに働いたともいえる。「週刊文春」は翌週の4月2日号でも、大阪日日新聞記者の相澤冬樹氏がこの問題を報告した。赤木さんの直接の上司だった近畿財務局の元池田靖統括官が「8億円値引きに問題がある」と森友問題の核心に触れる点を語り、赤木さんが自身への指示内容を克明に記録したファイルをつくり、それを検察に提出していたことを昌子さんは明かした。以下、「」は「週刊文春」(4月2日号)からの引用。
「森友学園は、16年に評価額約9億5600万円の国有地を約1億3400万円で購入している。3メートル以深の地中にごみが見つかったため、その撤去費用として約8億2000万円を値引きしたというのがこれまでの財務省の説明だ」
そして記事によれば、池田氏は次のように語っていたという。
「地下埋設物(ごみ)がどれだけ埋まっていて、どれだけの費用がかかってどれだけの売却価格から引かなければならないかという事を自分たちは最後まで調べようと努力した」
「我々(近畿財務局)には(予算を取ってきて調査する)権限がない。これ(ごみが新たに見つかったこと)は完全に国の瑕疵なので、それが原因で小学校が開設できなかった時には、損害賠償額が膨大になる」
「だから一定の妥当性のある価格を提示して、それで相手が納得すれば一番丸く収まる(略)航空局が持ってきたのが8億円だった」
また、記事には次のようにも書かれている。
「ここで昌子さんが突っ込んだ」「夫が『航空局にだまされたんや』って言ってたんです。それがそのことなんですか?」
「これに池田氏は、思わず本音を漏らした」
「この8億円の算出に問題があるわけなんです。確実に撤去する費用が8億円になるという確証が取れてないんです」
「池田氏は、昌子さんに安倍首相や明恵夫人をはじめ政治家の影響で売却額を減額した」ことはないと「強調」し、「納得できない昌子さんは『じゃ誰が悪いのですか?』と問いかけた」という。
再検証チームに課せられた課題
池田氏は、当時国が貸し付け契約から売却契約に至る経過のなかで、近畿財務局の実務の上で中心にいた担当者である。「週刊文春」での発言の次の2点は、極めて重要な意味を持つ。
(1)財務省が8億円の値引きは国交省大阪航空局に任せ、大阪航空局が決めたとの話である。これは本当なのであろうか。いずれにせよ森友事件の核心点である8億円値引きには、財務省に加え、国交省も関与していたという重要な発言である。格安の売却や改ざんの行為には、両省が関与していたこと、両省ににらみが聞く政治家の関与が不可欠である事がわかった。
(2)もう一点、値引き金額の決め方である。ここでの池田氏の発言では、「ごみが新たに見つかった」が、「新たに見つかったのは、完全に国の瑕疵(ミス)なので」「損害賠償問題」として森友学園と話し合いの上で「一定の妥当性のある価格」で決めたということになっている。つまり、埋設ごみの量や撤去費用に関係なく決めたとなっている。
しかし財務省の調査報告書(※1)では、「不動産鑑定価格による地下埋設物の撤去費用を差し引いた価格で売り払うことにした」と報告されている。調査報告書では、差し引いた価格8億円は「撤去費用」だとしている。
このように、赤木さんの手記や遺書、そして昌子さんが聞き取った内容を見ると、明らかに調査報告書とは核心点において大きな齟齬がある。なお池田氏は、値引き額の算定自体は航空局が行い、「我々(近畿財務局)には(予算を取ってきて調査する)権限がない」と言っている。
しかし16年3月11日、森友学園から校舎のくい打ち工事中に、地下深部から新たなごみが見つかったとされ、その後、国は調査を行ったが、近畿財務局は3月30日、大阪航空局は4月5日に試掘調査し、それぞれ「17枚試掘写真資料」「21枚試掘写真資料」を出している。写真3は、近畿財務局が作成した17枚の写真資料であるが、写真4はその内の1枚で資料(10)には当の池田氏が写っている。権限がないどころか、実際に試掘調査を行いその写真の中に当人が写っているのである。
川内議員のインタビューにもあったが、その池田氏が語った赤木ファイルは検察に渡されたが、すでに不起訴になって用済みになったはずの赤木ファイルは、なぜ遺族に返還されていないのか。「検察が握りつぶした極秘ファイル」(週刊文春)の問題や、抵抗する赤木さんだけを残して人事異動が行われた問題など、真相究明しなければならない問題が残っている。第三者による調査委員会の調査が待たれる。 
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クロナショック
感染急拡大
森友問題 メディアテーマから消える
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●遺書に森友記述なし 自殺職員、親族に「常識壊された」 2018/3/13
学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る問題で、財務省近畿財務局の担当部署に所属し、神戸市内で自殺した男性職員の遺書に、同学園の問題に直接関係する記述はなかったことが12日、神戸新聞社の取材で分かった。
関係者によると、職員は50代で、7日午後、神戸市灘区の自宅で自殺を図り、救急搬送された。警察官が病院に駆け付けた時には死亡しており、兵庫県警は遺体の状態や遺族の話などから自殺と断定。遺族から確認した遺書は数行程度で、家族への言葉などが記されていたが、国有地売却や決裁文書の書き換えに触れた内容はなかったという。県警は事件性がないとして遺書は押収せず、自宅の現場検証もしていない。その後の遺族対応などは近畿財務局が引き継いだ。
近畿財務局は地中から見つかったごみ撤去費として約8億円を値引きし2016年6月、同学園に国有地を売却。17年2月に値引き問題が発覚した当時、男性職員は担当部署に在籍し、関係者によると、昨秋ごろから体調不良で欠勤しがちだった。同学園を巡る問題では大阪地検特捜部が背任容疑などの告発を受け捜査しているが、この職員は聴取を受けていないという。
また、男性職員の親族が12日、取材に応じ、職員が昨年夏に電話で「常識が壊された」と漏らしていたことを明かした。親族は詳しい内容を聞いていないとしつつ「実直な人なので、やるべきではない仕事をさせられたのではないかと思う」と語った。
職員は以前は仕事の話をほとんどせず、弱音を吐いたこともなかったが、昨年8月、心療内科に通っていると話した。電話で「毎月100時間の残業が何カ月も続いた」「常識が壊された」「異動できずつらい」とも打ち明けたという。その後、仕事を休んだ。昨年12月のメールでは、職場復帰の計画に触れながらも「心と体がうまくついていかない」と吐露。親族は「汚い仕事をさせられたのではないか」と疑念を強めている。  
●3月の自殺者は2人目だった!〜行方不明者は財務省女性職員  2018/3/15
データ・マックスでは今日の既報で「財務省職員で2人目の自殺者が出た情報がある」としていた。新しい情報で、今年1月か2月に、財務省国有財産係長の「青木隆(あおき・たかし)」氏が自殺していたことがわかった。森友学園問題での自殺者は、今月7日に近畿財務局の赤木俊夫上席国有財産管理官が初めてとみられていたが、2人目の自殺者だったことになる。また、今日現在も財務省の女性職員が「行方不明」になっており、報道関係者が情報収集にあたっている。  
●第二次安倍政権以降「自殺&不審死」 2018/3/16
「Aから『心療内科に通い出したんだ』と聞いたのは去年8月のことです。年末にも、『まだ体調はよくないけど、年明けから仕事に復帰しようかと思っている』と話していました。無理はしないほうがいいんじゃないかと言ったんですが……。彼は真面目で、途中で投げ出さない人間でした。私が思うに、今回はそれが裏目に出てしまったのかなと思います」
そう話すのは、財務省近畿財務局の職員だったAさんの親族の一人。Aさんは50代の男性で、3月7日に自殺したと見られている。学校法人『森友学園』との国有地取引を担当する部署に所属していたのはご存じの通りだ。
「神戸市内にある自宅で遺体が発見されたのは、3月7日の午後5時すぎ。半年ほど前から休職していたんですが、亡くなる数日前に突然、職場にやってきた。別室で幹部と話をしていたので、局内では『(Aさんは)朝日新聞に漏らしたと疑われているのかな』とウワサになっていたようです。そのとき、同僚たちには『(体調が)だいぶよくなってきた』と話していたそうですが、顔色は青白く、見るからに体調は良くなさそうだったようです」(財務省関係者)
Aさんは高校卒業後、働きながら関西の私立大学の夜間部に通い、国鉄(現・JR)に入社。国鉄民営化のタイミングで退社し、その後、大蔵省(現・財務省)に入省したという。妻と二人暮らしで、関西だけではなく、神奈川・横浜に住んでいたこともあった。’16年、森友学園への国有地売却の際、Aさんは上席国有財産管理官として交渉、契約に携わっていたと見られる。ノンフィクション作家の菅野完(すがのたもつ)氏が話す。
「’17年2月、私が森友学園についての取材の一環として近畿財務局に行った際に対応されたのがAさんだったんです。物静かというか、必要最小限のことしか言わない人というイメージです。おそらくAさんのことを指しているのだと思いますが、籠池(泰典)前理事長の妻の諄子(じゅんこ)さんが『あの人、いつも理屈しか言わへんねん。私、あの人のこと嫌いやねん!』と言っていました。諄子さんからすれば、記念小学校設立の流れに逆らう人、という印象だったのかもしれません」
Aさんの自宅からは「文書の書き換えを命じられた」という趣旨のメモが発見されたという報道もある。
第二次安倍政権発足以降、自ら命を絶った、あるいは不審な死を遂げた官僚や職員は実はAさん以外にも多数存在するのだ。下の表は、そのリストである。政権発足間もない’13年1月には、消費者庁の審議官が都内の自宅マンションから投身自殺を遂げた。さらに、’13年4月には内閣情報調査室の内閣参事官も練炭自殺した。他にも、’14年1月に韓国から「ゴムボートで日本に帰ろうとした」ため、北九州沖の海底から遺体で発見された内閣府のキャリア職員。’15年7月に屋久島で登山中に転落死した内閣府情報保全監察室の参事官など、不可解な”事故死”もあるのだ。
「’76年のロッキード事件など、これまでの疑獄事件でも、確かに自殺者が出ることはありました。しかし、それらは政治家本人やその秘書で、公務員が詰め腹を切らされるというケースは、聞いたことがありません。安倍政権が長期にわたって続いていることに加え、内閣人事局制度で局長以上の生殺与奪権を握っていることなどの弊害でしょう。官僚の中に、安倍政権を絶対的なものとして見るという習性が生まれてしまっているのではないでしょうか」(前出・菅野氏)
Aさんの親族の一人は「死人に口なしではなく、すべてを明らかにしてほしい」と話している。  
●森友書き換え「上から指示」 自殺の財務局職員がメモ  2018/3/16
学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざんを巡り、自殺した財務省近畿財務局の男性職員が、上からの指示で「書き換えをさせられた」との内容のメモを残していたことが15日、関係者への取材で分かった。財務省は決裁文書14件の改ざんを認め、理財局の一部職員の指示で近畿財務局に書き換えさせたと説明。理財局内の指示系統は調査中として明らかにしていない。検察は職員が改ざんを指示されたとみて詳しい経緯を調べるとみられる。
近畿財務局は約8億円を値引きして2016年6月、森友学園に大阪府豊中市の国有地を売却。17年2月に大幅値引きの問題が発覚した前後、職員は売却を担当する管財部に在籍していた。
関係者によると、職員は50代で、神戸市灘区の自宅で今月7日に自殺を図り、死亡した。遺族に宛てた遺書が見つかったが、これとは別に業務に関する内容で、パソコンで作成したとみられる複数のメモが残されていたという。昨年秋ごろから体調を崩し、欠勤しがちだった。親族によると昨年夏、電話で「常識が壊された」「異動できずつらい」と漏らしていたという。
財務省の富山一成理財局次長は13日の野党6党合同会合で、自殺した職員について「個人のことなのでコメントは差し控えたい」と述べていた。改ざんの指示系統に関しては「(自殺した職員が)関わったかどうかを含めて調査している」と述べるにとどめた。  
●財務省職員の自殺者2人目発覚 幹部失踪説も!止まらぬ不穏連鎖 2018/3/17
異常事態だ。森友学園の国有地払い下げを巡る決裁文書改ざん問題で、財務省職員の不穏情報が連鎖している。
記憶に新しいのは、今月7日に神戸市内の自宅で自殺した近畿財務局勤務の男性職員Aさん。一連の改ざんに関わったとされ、自宅からは「上からの指示で文書を書き換えさせられた」「自分1人の責任にされてしまう」という趣旨のメモが残されていた。改ざんは本省理財局の指示だった可能性が濃厚で、早ければ来週にも当時理財局長だった佐川宣寿氏(60)の証人喚問が開かれる。
さらに16日付の読売新聞は本省理財局国有財産業務課係長のB氏も1月29日に自殺していたと報じた。太田充理財局長は同日の参院予算委で、報道を認めた上で「森友(学園の)事案と関係なく、書き換えに一切関係していない」と述べた。
「Aさん同様、Bさんも一連の問題に関わっていたかが焦点だが、財務省は否定している。一方でB氏が佐川氏の国会答弁書類を作成していたという情報もある」とは永田町関係者。
これだけではない。16日には理財局勤務の女性職員C氏が「自殺未遂していた」という情報が駆け巡った。C氏は2月某日に失踪し、24時間以内に見つかったというが、発見時の状況については関係者も口ごもるという。森友問題との関連は現時点で薄いが、職員の生死にまつわる話がこれほど出回る時点で異常と言わざるを得ない。
ある野党議員の秘書は「改ざん作業と、その事後対応で理財局の職員が疲弊していたという話は聞いた。森友とは無関係でも、省内に息苦しさが充満していたのかもしれない」と語る。
14日には財務省の矢野康治官房長、林信光元理財局長の失踪説が流れるなど、永田町では不穏情報が連日飛び交っている。ガセであることの方が多いが、裏を返せば、マスコミを含めた全員が「また死人が出てもおかしくない」と敏感になっていることの証明でもある。闇は深い――。  
●永田町騒然…財務省職員、2人目の自殺者発覚  2018/3/18
決裁文書改竄(かいざん)問題で激震する財務省理財局の職員が1月末、自殺していたことが分かった。財務省は、今回の問題との関係を否定している。佐川宣寿前国税庁長官は理財局長時代、「パワハラ」で恐れられたが、悪しき体質が残っているのか。
「(故人は)森友(学園の)事案と関係なく、書き換えに一切関係していない」
財務省の太田充理財局長は16日の参院予算委員会で、こう答弁した。
改竄問題では、国有地売却を担当した近畿財務局の男性職員が7日、上からの指示で「書き換えをさせられた」とのメモを残して自殺している。2人目の自殺者発覚に、永田町・霞が関は騒然としている。
永田町関係者は「佐川氏は、上司の命令には100%従い、部下には極めて厳しい人物。理財局長時代、恐怖支配をしていた。部下は青い顔というより、緑色の顔をして仕事をしていた。今回の自殺者の原因は不明だが、現在の理財局にも、パワハラ体質が残っているのは間違いない」と話している。  
●「森友で残業100時間」上司への怨嗟が綴られた職員の「遺書」 2018/3/22
1年以上に亘ってくすぶってきた「森友問題」が、ここにきて爆発した格好である。自殺した50代の近畿財務局職員は遺書を残していた。そこに書かれていた中身、あるいは名前を巡って、財務省の当事者たちは戦々恐々だという。なぜ彼は、自らの命を絶つまでに追い込まれたのか。怒りの矛先はどこへ向かっていたのか。親族がその心中を代弁した。
職員について、「様子がおかしいのに気が付いたのは、昨年の8月でした……」 こう証言するのは、職員を幼い頃から知る、ごくごく近しい親族である。当初は取材を拒否していたものの、少しずつ重い口を開いてくれた。「ちょうどその頃、久しぶりに電話で話す機会があったんです。でも、いつもは明るく元気でハキハキとしているのに、その時は暗い声で、実は心療内科に通っていると言う。そして、“鬱の反応が出ている。薬も合わず、夜も眠れない”と」 「何でも愚痴っていいよ」 心中を慮り、親族はそう声をかけた。すると、職員は、「実は(月に)100時間を超える残業が続いていた。それも何カ月も」 と答えたというのである。親族が続ける。「公務員は毎年6月に定期異動があるそうで“それまでだと思って頑張ってやっていたけど、異動が出来なかった”“つらい”とこぼしていました」 そして、こんな決定的な一言も出たという。「常識を壊されるようなことがあった……」 
親族は、あえてこれが何を指しているか、問うことはしなかった。しかし、昨年2月、朝日新聞の報道によって、森友を巡る、不可解な土地取引が明らかになった。以後、国会は連日、森友追及一色で、担当の近畿財務局もその対応に追われていた。取引に関わっていた職員の忙しさも想像に難くないが、それにしても残業月100時間以上とは、電通の高橋まつりさんの例と変わりなく、過労死レベルを優に越えるのだ。付言すれば、改ざんが行われたのもちょうどこの時期に当たると見られている。「こちらも気になったので、1カ月に1度くらいは電話やメールで連絡をしていました。しかし、弱音を吐かない人がずっと“未だに元気がない”と言い続ける。おかしい、と思いました」 秋頃から、職員は休職していた。
「最後に連絡をしたのは、昨年12月。クリスマスの前です。その時は“心と身体がうまくついていっていない。でも年明けから復帰しようと考えている”とメールがありました」 一進一退ながらも、徐々に復帰への道筋を辿っていた職員。しかしそれが嘘だったかのように、3月7日、突然、自死を遂げるのだ。「遺書を巡ってはさまざまな憶測が流れています」 とは、さる自民党関係者。「ただ警察幹部が周囲に漏らしているのは、奥さんが財務省に激怒しているということ。つまり、森友問題を巡る一連の対応が、彼を追い込んだ。そして、それを招いた上司への怨嗟の声が遺書に書き込まれていたようです」 そして、「職場復帰を考えていたことから考えても、急な自殺は不自然。3月2日の朝日報道、そしてその後の国会での騒ぎが決定的な影響を与えたのは間違いない。また、自殺の一報後、佐川国税庁長官が急に辞職を決めました。遺書には、改ざんについても記されていたといいます」 と言うのである。
この点、先の親族も、「すごく辛い思いをしたんではないか、と。間違ったことをやる人間じゃないし、正義感が強かった」 として、こう言うのだ。「報道を見ていて思うのは、一番マジメな人が損をする組織作り、命令系統になっている。それが許されていいのか、ということです。(職員は)正義感が強いので、もし間違ったことをさせられそうになったら、絶対に抵抗しようとしたんじゃないのかな。実直な人間からしたらとても許されることじゃないことをやらざるをえなかったのではないか。私は今、そう感じています」 職員の心の叫びを聞くことはもうできない。  
●財務省自殺職員の父慟哭「総理はどんな神経しとるんか…」 2018/3/22
「まあ、自慢の息子じゃった。でも、これで息子ひとりが何か悪いことでもしたんじゃないかと、そう思われるのが心配です」 そうつぶやくと、ありし日の息子の姿が浮かんだのだろうか。父親(83)は、こみあげてくるものを抑えるように、遠くを見つめた――。
3月7日、神戸市灘区の自宅マンションで自殺しているのが見つかった、近畿財務局の50代職員Aさん。財務省が森友学園への国有地売却に関する決裁文書を改ざんした問題に、Aさんは上席国有財産管理官として関与。残されたメモには上からの指示で「書き換えをさせられた」と書かれていたことが、報道で明らかになっている。Aさんの実家は岡山県内にある。実家を訪ねると、ちょうど父親が家の前でマイカーを拭いているところだった。取材を申しこむと最初はためらいを見せたが、記者の質問にぽつぽつと語り始めた。父親の物腰は実直そのもの。亡くなったAさんの「生真面目だった」と知人が口を揃える人柄をしのばせた。
「まあ、“くそ真面目”がつくほうじゃろう。でも親に似ず、向こう気が強いところもあった。自分で死を選ぶようなことはないじゃろうと、そんなことは考えもせんかったですけどね……」 父親はあふれる涙を抑えるように、まばたきを繰り返す。
「親のことをいつもいつも思ってくれてました。やさしかったです。盆と正月はいつも帰ってきて。でも去年のお盆も、今年の正月も帰らんかった。最後に会ったのは去年の正月です。電車で帰ってきた息子が『今から神戸連れてったる』と言うと、この車で送ってくれたんです。私も年で、(神戸まで)1人で電車に乗るのは心細いんじゃろうと思ったんでしょう(笑)。あのころは息子は元気でふだんと全然変わらないころ。生田神社や名所を回って、映画もいっしょに見に行きましたよ。……いい思い出になりました」
だがその1カ月後の昨年2月、森友学園問題が初めて報じられる。それ以後、Aさんの里帰りはなくなった――。最初は取材に口ごもりがちだった父親は、思い出を語るにつれ、息子への思いを抑えきれなくなったようだった。
――そんな息子さんならば、上から書類の改ざんを命令されたとしたら、すごくつらかったでしょうね。
「それがいちばんいやだったんでしょう。とにかく、真っ正直一本の男でしたから。ああいう(役所の)仕事は息子ひとりでやっていたわけじゃないんで。何人かのグループで書類を作ったりしてたんじゃろうから。他の人たちは心臓が強いのか、うまいこと他に移ったのか知りませんが……。まあ、息子は世渡りがへたじゃったんじゃろう。べつに1人で責任を感じることはないのに、まあ気が弱かったんか、こんなことに……」
息子の死から8日め。ようやくテレビのニュースを見られるようになったという。
「ニュースで森友の文書のことをやってますね。それを見てると、昭恵さんは何も関わってないように言うてたのに、(書類には)『前に進めてください』と言ったように書かれてたみたいですね。総理大臣まで、これまで昭恵さんは何も言うてないと言ってたのに、ああいう人はどんな神経しとるんかなと。麻生(太郎)さんも全然知らんようなこと言って白切りよるでしょう。あんな上に立つような人が……。もう麻生さんも(大臣を)辞めりゃええような気がするけど、それこそ(国税庁長官だった)佐川(宣寿)さんも結局辞職せなあかんようにさせられてしまった」
野党が解明を求める昭恵夫人の関与の有無や文書改ざんの詳細についてはいまだ事実が明らかではないが、父親は無念の気持ちを抑えきれないように見えた。父親は、最後に乾いた笑いを見せた。「まあ、おそらく政治家の上のほうの人らは、これ(自殺)ぐらいのことは、何とも思うとらんのでしょう。ハハハ」 Aさんを死にまで追い詰めた森友学園問題も、いよいよ佐川前国税庁長官の証人喚問が決まった。その佐川前長官を「適材適所」と強弁して国税庁長官に任命し、公文書改ざんが明らかになるや切り捨てた麻生財務大臣は、いまも大臣の座に居座ったままだ。
Aさんの遺骨は、いま実家に安置されているという。いまだ「つらいだけで、息子にかける言葉は思いつかんです」という父親の慟哭に、この国はどう答えるのか――。  
 
 
●森友公文書改ざん、自殺した職員の父「正直やったから」 2018/9/28
今年2月、久しぶりに岡山県の実家に帰ってきた息子は、少し痩せて見えた。
こたつに入り、世間話をした。いつもと変わらぬ息子の大きな声だった。それが、財務省近畿財務局に勤めていた息子と語らった最後のひとときだった。
3月に入り、財務省が学校法人・森友学園(大阪市)との土地取引に関する決裁文書を書き換えた疑いがあると明らかになった。国会で追及が続いていた3月7日、息子は神戸市の自宅で自ら命を絶った。
父親宛てに7〜8枚の紙に印刷された遺書が残されていた。細かな内容は覚えていない。ただ、森友学園との土地取引の仕事に携わっていたこと、上司に指示されて決裁文書の改ざんに関わったことを苦にしていたことがつづられていた、と記憶している。
普段は仕事のことはあまり口にしなかったが、真面目に、一生懸命打ち込んでいたことは感じていた。初任地の書類も全て、段ボール箱にきっちり保管するほど几帳面(きちょうめん)な性格だった。
公文書に手を付けることが公務員にとってどれほど重大なことか、ぼんやりとしか分からない。でも、「正直やったから、それを一番苦にしたんやろう」と思う。
息子の死から約3カ月後、大阪地検特捜部が一連の文書改ざんに関わった財務省関係者を全て不起訴にしたのは意外だった。「何か、罪になるんやないかなと思っとった」
検察の不起訴処分が妥当かどうか、検察審査会での審査が続く森友問題。自殺した近畿財務局の男性職員(当時54)の父親(83)が26日に朝日新聞の取材に応じ、思いを語った。  
●真相を語りだした財務局OBたち 誰が職員を自殺に追い込んだのか 2018/11/2
解決済みとばかりにすっかり報道されなくなった森友学園を巡る文書改ざん事件に、新たな動きが出てきました。問題の渦中に自殺に追い込まれた近畿財務局職員を知るOBたちが立ち上がり、真相を語り始めたのです。元全国紙社会部記者の新 恭さんは自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』でこの動きを詳報するとともに、政府の隠蔽体質をいっそう強める安倍首相と麻生大臣の同盟関係を強く非難しています。
森友疑惑をめぐる前代未聞の財務省文書改ざん事件で、新しい動きが出てきた。安倍首相夫人らの関与の記録を公文書から消し去る不正行為を押しつけられ、54歳の近畿財務局職員が自殺に追い込まれたこの事件。トカゲの尻尾切りで幕引きをはかる政権の思い通りにさせてはならないと、近畿財務局のOBたちが立ち上がり、野党のヒアリングやテレビ局のインタビューに応じ始めたのだ。
テレビ東京が、OBら6人へのインタビューと、自殺した職員の父親の告白を9月25日に放映したのが発端となった。
10月25日には、立憲民主党など野党合同のヒアリングを受けたあと、6人の元職員がテレビ朝日に向かい、かつての同僚の死にまつわる財務省の不条理を告発した。
自殺した職員、Aさんは高校卒業後、国鉄に勤めたあと大蔵省に転職。本省勤務を経て近畿財務局に赴任した。亡くなった当時の役職は上席国有財産管理官。森友学園との間で国有地売却の交渉にあたっていた。この問題をめぐり、本省から指示を受ける窓口にもなっていたようだ。Aさんはおそらく、安倍首相夫人の名前を記録した決裁文書の書き手、もしくは記載に関わった職員であろう。それゆえに官邸の意向を怖れる佐川宣寿理財局長の怒りを買い、改ざんを押し付けられたのにちがいない。国有財産の鑑定などを担当したAさんの元同僚、喜多徹信氏はテレビ東京のインタビューで、現役の近畿財務局職員2人と電話で話した内容をこう証言した。
「(Aさんは)改ざんとかの仕事をやらされ、100時間を超えるような残業時間になり、ずっと追い詰められて、そして顔が変わってしまったと聞いた」 岡山県に住むAさんの父親にはレポート用紙7、8枚にわたる遺書が残されていた。父親は言う。「上司に言われた通り報告書を書き換えさせられたという内容が書いてありました。自分ひとりで別に責任を負う必要はないのに、なんで死なないといけなんだのか」
今年2月半ば、実家に帰省した息子とコタツで話したのが最後となった。それから間もない4月7日、Aさんは神戸市の自宅で命を絶った。
近畿財務局では昨年2月以降、決裁文書などの改ざんが進められていた。財務省によって今年6月4日発表された「決裁文書改ざん調査報告書」によると、昨年2月17日の衆議院予算委員会で安倍首相が「私や妻がかかわっていたのであれば、総理大臣をやめる」と答弁したのがきっかけとなり、「本省理財局の総務課長から国有財産審理室長および近畿財務局の管財部長に対し、総理夫人の名前が入った書類の存否について確認がなされた」という。佐川局長は、総理夫人の関与が疑われる文書の無いよう、祈るような気持ちで総務課長に確認を命じたであろう。だが、不安は的中した。近畿財務局の決裁文書のなかから下記の文面が確認された。
「平成26年4月28日 (森友学園との)打ち合わせの際、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」との発言あり。」
首相夫人の関与があったと思われても仕方のない内容だ。国有財産審理室長は総務課長に相談したうえで佐川理財局長に報告した。佐川氏の驚愕が次の記述から伝わってくる。
「理財局長はそうした記載のある文書を外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきであると反応した。具体的な指示はなかったものの、総務課長と国有財産審理室長は決裁文書の公表を求められる場合に備えて記載を直す必要があると認識した。」
「記載を直す」。すなわち決裁文書の改ざんだ。佐川理財局長が「最低限の記載にすべき」と言えば、そういう意味に受け取るだろう。総務課長らが佐川氏の言うことを聞かざるを得ない背景に、安倍首相の進退がかかっているという事情があった。筆者は、佐川氏が官邸の意思を確認し、その了解のもとに改ざんを命じたと見ている。テレビ出演した財務局OBの誰もが「官僚だけの判断で改ざんはあり得ない」と口を揃えた。彼らも最高権力の介入を感じたのだろう。改ざんに関ったのは、財務省理財局と近畿財務局合わせて10人くらい、といわれる。当初、近畿財務局の職員たちは本省の指示に反発した。「そんなこと、できるわけがない」。彼らの言い分が正論であることは本省の担当者にも痛いほどわかる。
しかし、結局は、首相夫人や政治家の名を挙げてあの異例な国有地売却の経緯を記録したことが「詳細すぎる」と問題になり、本省上層部の力に財務局が屈するかたちとなった。14の決裁文書のところどころに理財局側がマーカーで線を引き削除箇所を指示したという。
改ざんという不正作業の心労がたたって体調を崩したAさんは、昨年の秋頃から役所を休んでいた。真面目で正義感の強い人柄だったようだ。だからこそ、政治的圧力によって、異常な国有地取り引きを強いられた状況を決裁文書に記録として残しておきたかったに違いない。以下は、政治がらみの記載の一部だ。
「平成25年8月13日 鴻池祥肇議員秘書から照会。」
「平成26年4月25日、安倍総理夫人が森友学園理事長に「いい土地ですから、前に進めてください」と発言。」
「平成27年1月29日 平沼赳夫衆院議員秘書から財務省に相談。」
「平成27年2月17日 鳩山邦夫衆院議員秘書が近畿財務局に相談。」
このほか、籠池氏が日本会議のメンバーで、安倍首相や麻生財務大臣が日本会議国会議員懇談会の幹部であることにも触れている。改ざん文書では、こうした記述がすっぽり削り落とされた。歴史的資料となる公文書の改ざんは国民への背信である。コトの重大さを最も知っている職員の心的ストレスは計り知れない。改ざんについて、OBたちは「われわれの常識では、ありえない」「黒塗りにすることはあっても、元々を変えてしまうというのは考えられない」などと語った。前例のないことをAさんらはやらされたのだ。
国会で佐川・元理財局長は「交渉記録はない」「記録は廃棄した」と強弁し続けた。OBの一人は言う。「佐川さん、嘘ついたらあかんと。文書ちゅうんはそういうもんやない。そういう記録が全然ないなんていうことは。嘘つくなちゅうて、もう歯がゆい思いがして」 そんな佐川氏を処分しながら、退職金はほぼ普通に出し、「極めて有能だった」と評価した麻生太郎財務相の姿勢についても、OBたちは口々に批判した。
「国会を欺き、国民を欺き、犯罪行為に等しいことをしでかした人を有能な公務員として評価することがあったとしたら、亡くなった職員は一体、何だったんだ」 「麻生大臣があんな態度でずっと大臣であり続けるって、自殺した職員を知っている周りの人とか近財の職員、管財部の職員にとってみたら本当に耐えられない」 こうした声について考えを問われ、麻生大臣は答えた。
「そういった意見もあるということはうかがっておきます。それしか他に言いようがありません。そういった意見もある。そうじゃない意見もありますから」 この人にまともな答えを期待すること自体、馬鹿らしい。おそらく、麻生氏は安倍首相側近が自分の頭越しに佐川氏を操ったことを内心、快く思っていないだろう。俺はすべて知っているが、見て見ぬフリをしてやってるんだ、とでも言いたいのではないか。
世間からどんなに批判を浴びても、安倍首相が麻生氏に責任をとらせない理由のひとつは、こんなところにもあるにちがいない。彼らの腐れ縁ともいうべき同盟関係が、政府の隠蔽体質をいっそう強め、日本の民主主義を危うくしている。