コロナ ワールドショック

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コロナウイルス情報 / デマ情報拡散ネット偽情報10の偽情報世界でデマ拡散バカ者の拡大デマ否定偽情報デマSNSで拡散怪しげな統計・・・・ブラックマンデー
 
 
 
 1/18-28

 

●「新型肺炎は愛国ウイルス」中国ネットで拡散 1/18
中国・武漢から日本、タイにも飛び火した新型コロナウイルス関連肺炎。この1週間、中国では新たな患者が確認されない一方で、日本で1人、タイでは2人の発症が判明したことから、中国のSNSでは「新型肺炎のウイルスは、海外にしか出て行かない“愛国ウイルス”」との言説も急増している。だが、1月18日になって武漢市衛生当局が4人の患者増加を公表。国民の大移動が始まる春節を目前に、収束モードに暗雲が立ち込めている。
中国で武漢以外に拡大しない不自然さ
日本では1月16日に、武漢から帰国した男性の新型コロナウイルス感染が明らかになり、一気に不安が高まったが、中国では11日の「41人が新型肺炎を発症」という発表を最後に、患者は増えていなかった。武漢市当局は毎日、公式サイトで「新規増加なし」と情報を更新、2人の死者が出たものの、多くが治癒に向かっていると強調し、収束モードが漂っていた。一方、今週になってタイと日本で武漢からの入国者の感染が分かり、ネットではこの奇妙な状況への反応が少なからず出ている。17日からSNSのウェイボ(微博、Weibo)で目立ち始めたのが、「新型肺炎のコロナウイルスは、愛国ウイルスだ」といった言説だ。同日午後、タイで2人目の感染が確認されると、「このウイルスは愛国なので、武漢から他の都市には広がらず、海外に出国する」「ウイルスに感染した人を国外に出す」などの投稿が拡散するようになった。中国のSNSが政府によって監視され、情報規制が敷かれているのは周知の事実。この投稿には冗談だけでなく、「海外で患者が出ているのに、中国では武漢に患者が封じ込められている」不自然さへの疑問も含まれているとみられる。海外SNSでは家族が新型肺炎に感染したことを訴えるウェイボの投稿がアカウントごと削除されたとの情報も拡散しており、中国のSNSでも多くはないが、「政府は本当の状況を公開してほしい」という声が挙がっている。
1週間ぶりに患者4人増加で再び警戒感
武漢市の衛生当局は18日、新たに4人の患者が確認されたと公表した。新型肺炎の感染の強さに対しては、さまざまな投稿が交錯する。「重症化しにくいから、心配することはない」という呼びかけがあれば、「マスクはしよう」「武漢には行かない方がいい」との投稿もあり、「人から人への感染」への懸念が広がりつつある。そんな中、18日になって武漢市の衛生当局は新たに4人の患者が確認されたことを発表。41人で止まっていた累計患者数は45人に増えた。当局はパニックを避けるため、4人とも5〜8日に発症し、8日から13日にかけて入院、現在は快方に向かっていると説明しているが、メディアは18日朝から患者の増加を一斉に報道。17年前に大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)とコロナウイルスの類似性が海外の研究者から相次いで指摘されていることを受け、SARSの病原体となったコウモリが今回も関わっているのではという疑いに、再び関心が集まっている。  
 
 
 1/20
●この先も相次ぐ「中国発」新型コロナウイルスの潜在的な脅威 1/20
中国の武漢市で新型コロナウイルスの感染が確認された。この記事を書いている1月19日現在、判明していることは以下だ。
中国国内の患者数の合計は62人。このうち、8人が重症と判断され、2人が亡くなっている。1人は進行した肝疾患を抱えた61歳の男性。ウイルス感染が基礎疾患を悪化させた可能性が高い。もう1人は69歳の男性で、基礎疾患の有無は明らかではない。
中国国外で診断されたのは2人だ。1人は1月12日にタイで診断された61歳の男性。武漢からの旅行者で、5日に発症していた。もう1人は30代の日本人だ。16日に報告された。6日に武漢から帰国し、同日に医療機関を受診した。10日に入院し、15日に軽快、退院している。
では、このウイルスの毒性は、どの程度だろうか。2003年3月に中国広東省から広まった重症急性呼吸器症候群(SARS)の致死率は9・6%、13年5月にサウジアラビアで発生した中東呼吸器症候群(MERS)は34・4%だった。いずれも今回と同じコロナウイルスだが、現時点では、このようなウイルスよりは毒性は低いと考えられている。
ただ、これはなんとも言えないと思う。もし、69歳の死亡例が健常人であれば、楽観視できない。重症と言われている8人の全てが亡くなれば、致死率はSARSを上回る。
次の問題は感染力だ。注目すべきは、中国国内で診断された62人の多くが武漢の海鮮市場で働いていたことだ。この中に妻も感染したケースが含まれる。この妻は海鮮市場に出入りしていないから、職場と家族内で一気に拡散したという見方もできるし、感染している動物と接触すると容易に感染するが、家族内での感染が少ないことを考慮すれば、人から人への感染リスクは高くないのかもしれない。
ちなみに、タイと日本の患者は、この市場との接触はない。感染経路は不明だが、彼らが普通の会社員であれば、感染動物と接触し、うつった可能性は低いだろう。以上の事実は、ヒト・ヒト感染を起こす可能性を示唆している。
現在、厚生労働省や有識者の多くが「過剰に心配する必要はない」と主張している。そして、国民の多くが、毒性も感染力も低いと考えている。私は、このような希望的な観測には賛同できない。
そもそも計64人の感染者のうち、8人が重症化したのだから、毒性はそれなりに強いだろう。彼らの多くは市場で働いていた現役世代だ。介護施設に入っているような高齢者ではない。免疫を持っていない状態で罹患すれば、かなりの確率で重症化しそうだ。
ただ、私は現時点では危険とも安全とも言えないと考えている。このまま収束する可能性もあれば、将来的に大流行する可能性も否定できない。現時点で「過剰に心配する必要がない」のは、発症から時間が経っていないため、まだ拡散されていないからだ。感染者と接触する可能性は低いため、その意味でインフルエンザの方がはるかに「危険」だが、このことが新型ウイルスについて何も心配しないでいいと保証するものではない。
現に英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者たちは、武漢市内の感染者は推計で既に1723人にのぼると報告した。上海や深圳でも疑い例の存在が報じられている。
では、どうすればいいのか。私は正確な情報を世界でシェアすることだと思う。まずは遺伝子配列のデータを一刻も早く公開することだ。世界中の専門家が様々な意見を学術論文という形で述べるだろう。また、医療現場でやるべきは、正確に診断することだ。そのためには医療現場、特に最初に受診する開業医に診断手段を提供しなければならない。
具体的には、彼らが普段使っている検査会社に普通にオーダーずれば、結果がすぐに返ってくるようにすることだ。国立感染症研究所に申し込み、サンプルを自分で送るようでは、多忙な医師は対応できない。
専門家の中には、後日、保存された血清などを用いて、疫学的な調査をすればいいという人もいるだろうが、これでは患者が置き去りだ。医療機関を受診する患者の中には「新型ウイルスにかかっているのではないか」と悩む人もいるだろう。彼らの不安に全く対応していない。政府や専門家がやるべきことは、国民と医療現場を統制することでなく、彼らを支援することだ。
これは2009年の新型インフルエンザ流行の反省だ。このときもそして現在も、厚労省は新型ウイルスの流入を水際で食い止めるといい、メディアもこの方針に疑問を呈さない。
数カ月間かけて世界を旅する大航海時代ならいざ知らず、現在、こんなことは不可能だ。日本と中国は飛行機でわずか数時間の距離で、潜伏期間の患者はどんな方法を使っても食い止められないからだ。
09年の新型インフルエンザ流行の際には、最初に診断された症例は神戸の住民で、海外渡航歴はなかった。地元の医師が感染を疑い、特別に検査したところ感染が判明した。当時、厚労省は検査する患者の基準を定めており、この患者は厚労省の基準を満たしていなかった。熱意ある医師が何とか関係機関と調整して、検査をしてもらったのだ。
その後、新型インフルエンザが国内で大流行したのは、ご存じの通りだ。今回、この教訓は活かされるのだろうか。ここまでは、その兆候はない。
なぜ、やらないのだろうか。もし、財源が必要なら、加藤勝信厚労相や安倍晋三総理に正確な状況と費用を説明して、リーダーシップを発揮してもらうことだ。せっかく、検査体制を整備しても、もし流行しなかった場合は、カネは無駄になる。それはそれでいいではないか。国民の命がかかっているのだから。
この問題は今回の流行だけに限らない。新型ウイルスに対する危機管理体制を確立するのは、日本にとって喫緊の課題だ。なぜなら、今後も中国発の新型ウイルスが出現し続けるからだ。この問題は、今こそ議論すべきだ。
新しいウイルスは突然なにもないところから生まれてくるわけではない。多くは動物に感染するウイルスで、何らかの突然変異が生じ、動物からヒトに感染するようになる。そして、さらに変異が生じ、ヒトからヒトに感染するようになる。
例えば「はしか」は、元はウシやイヌの感染症だ。家畜化の過程でヒトの感染症へと変異した。ヒトのみに感染する天然痘は、元は齧歯(げっし)類のポックスウイルスから進化したと考えられている。人類社会が発展し、ネズミと「共生」するようになったため、ヒトに感染する変異体が生まれた。
現在、新型ウイルスが最も生まれやすいのは中国だ。二つの理由がある。一つは中国には大量の家畜が存在することだ。2017年に世界で9億6700万頭のブタが飼育されていたが、このうちの45%は中国だ。2位のアメリカの7・6%を大きく引き離して断トツのトップだ。
ニワトリは全世界で228億羽飼育されているが、21・3%が中国だ。これも2位のインドネシアの9・5%を大きく引き離す。もう一つの問題は飼育場所が人間の生活圏と近接し、家畜を生きたまま販売する習慣があることだ。
この点は以前から危険性が指摘されてきた。『サイエンティフィック・アメリカン』誌の編集長を務めたフレッド・グテル氏は著書『人類が絶滅する6つのシナリオ』の中で、「食肉用の動物を生きたまま販売する」伝統を紹介している。
例えば、「広東省の市場では、ニワトリが一羽ずつ入ったかごがいくつも積み上げられているのが普通」という感じだ。このような家畜は狭いところで、密集して生活しており、一旦感染症が流行すると、容易に伝搬する。そして、消費者や労働者にもうつる。これが中国から新型ウイルスが生まれ続ける理由だ。今後も状況は変わらないだろう。中国は日本の隣国だ。われわれは、今回のような事態を繰り返し経験し続ける。今こそ、患者目線で現実的な対応を議論すべきだ。 
 
 
 1/24
●マスクは有効? ウイルスの感染拡大を防ぐには 1/24
ウイルスの流行と切っても切り離せない光景、それはマスクを着用した人たちの姿だ。感染を防ぐためにマスクを付ける習慣は世界中で見られるが、特に中国で盛んだ。大気汚染に加え、現在は新型コロナウイルスの流行で、マスクを着けている人が多い。空気感染については、ウイルス学者はマスクでの予防効果を疑問視している。一方、手から口へのウイルスの伝染を防ぐ点では、効果があると示唆する証拠はいくつか出ているという。医療用のマスクは、18世紀後半に病院で導入された。しかし一般には、1919年に5000万人以上が亡くなったスペイン風邪が大流行するまで、使用されていなかった。
英ロンドン大学セント・ジョージ校のデイヴィッド・キャリントン博士はBBCニュースの取材で、「一般向けのマスクは、空気によって運ばれるウイルスやバクテリアの予防には効果がない」と指摘する。一般向けのマスクは隙間が多すぎ、空気フィルターもなく、目も防護されないためだという。またキャリントン博士によると、「ほとんどのウイルス」が空気によって運ばれる。一方で、くしゃみやせきの「噴出」に直接触れないことでウイルスの感染リスクを下げたり、手に付着したウイルスを口から体内に入れてしまうのを防いだりすることはできるという。2016年に発表された研究によると、人間は1時間に平均23回、手で顔を触っている。
英ノッティンガム大学のジョナサン・ボール教授(分子ウイルス学)は、「病院環境で十分に制御された状態で行われたある研究では、インフルエンザ感染の予防には、顔を覆うマスクと専用呼吸器が同じくらいの効果を発揮した」と述べた。こうした呼吸器には通常、特注の空気フィルターがついており、空気で運ばれる有害な物質から体を保護してくれる。しかしボール教授も、「一般的な環境でのマスクの効果については、データもそれほど芳しくない。長い間マスクを着用し続けることは非常に難しいことだ」としている。
手洗いの方が効果的
ベルファストのクイーンズ大学にあるウェルカム・ウルフストン実験医学研究所のコナー・バンフォード博士は、「簡単な衛生対策を行う」方がより効果的だと指摘した。「くしゃみをするときに顔を覆うこと、手を洗うこと、洗う前の手で顔を触らないこと。こうした手法がウイルス感染のリスクを下げることにつながる」 イギリスの国民保健サービス(NHS)は、インフルエンザなどのウイルス感染を防ぐ方法として、以下の3つを消化してている。
◾ぬるま湯と石けんで定期的に手を洗う ◾なるべく目や鼻を触らない ◾健康的な生活を維持する
イングランド公共衛生庁で新興感染症・人獣共通感染症部門を束ねるジェイク・ダニング博士は、「マスクの着用が有効かもしれないという見方があるが、実際には、病院環境以外での使用で大きな恩恵があるという証拠はほとんどない」と説明した。また、マスクできちんと効果を得るには、正しく着用し、小まめに取り替え、安全に取り外すことが重要だと話した。「さらに、マスクを長期間着用することで、推奨されている予防方法を守らなくなっていくという研究結果もある」 その上でダニング博士は、ウイルス感染を懸念する人は手を清潔にし、自分自身の衛生環境に注目する方が良いだろうと述べた。 
●武漢市、空港・駅を封鎖 新型肺炎被害広がる中国 1/24
新型コロナウイルスによる肺炎の被害が全土に広がっている中国で、発生源とされる湖北省武漢市は23日、市外への感染拡大を防ぐため、空港や鉄道駅を閉鎖する措置を取りました。市当局は、「特別な事情がなければ武漢から離れない」よう市民に要求。武漢は長江と支流の漢江が交わる大都市で、人口は約1100万人です。
武漢市内全域の地下鉄やフェリー、バスなどの公共交通機関の運行も23日午前10時(日本時間同11時)から停止されました。国家交通運輸部も同日、緊急通知を出し、武漢へ入る公共交通機関の一時運行停止を命じました。
中国全土で確認された新型肺炎の感染者は23日夕までに600人を超えました。死者は23日午前0時までに17人となりました。
湖北省は省内の高速道路の入り口の封鎖を決定。春節のため北京から同省の実家に帰省した女性は「早く収まってほしいが、しばらく滞在する準備をしなくてはいけない。北京には予定通りに戻れそうにない」と本紙に不安を語りました。
中国では24日から1週間、春節(25日、旧正月)の大型連休が始まり、前後40日間でのべ30億人が国内を移動するとされます。北京市は春節連休中に多くの人が集まる廟会(びょうかい=縁日)の開催をとりやめました。 
 
 
 1/29-2/2

 

●新型肺炎はなぜ広がったか、検査受けられない武漢の実態 1/29
ヤン・ツォンギ(53)さんは発熱の症状が見られてから2週間過ぎても、まだコロナウイルスの検査を受けられずにいた。息子のツァン・チャンチュンさんによると、医師たちは密かに家族に対し、感染はほぼ確実だと告げていた。 ヤンさんだけでない。中国湖北省武漢市の住民の多くは、なかなか新型コロナウイルスの検査や治療を受けられずにいる。検査と治療の遅れが、この病気の拡大の一因となっている可能性がある。息子のツァンさんによれば、ヤンさんは入院を認められず、悪化する肺の症状を治療するため、市内4カ所の病院の非隔離区画で点滴を受けているという。「兄と私は毎朝、6時や7時に病院に行き、1日中並んでいるが、新しい回答は何も得られない」と、ツァンさんは言う。「ベッドが足りない」、「政府から通達が来るまで待って」、「状況がどうなっているかニュースに注意してくれ」──。入院できないことに対し、病院の返事はいつも同じだった。「医師たちもみな非常に苛立っている」と、ツァンさんは語る。
デマを流したと8人逮捕
新種のコロナウイルスは、正式には「2019−nCoV」と呼ばれている。このウィルスを原因とする死亡例が最初に確認されたのは1月10日、武漢に住む61歳の男性だった。このとき中国は、ウイルスの遺伝子情報を他国に提供した。日本やタイなど一部の国は3日も経たないうちに、中国からの旅行者の検査を開始した。だが、湖北省疾病管理予防センターの職員によると、ウイルス検査キットが武漢市内の一部の病院に配布されたのは、最初の感染死亡が確認されて10日ほどたった1月20日ごろのことだったという。武漢の保健当局によれば、それ以前はサンプルを北京の研究所に送って検査を行っており、結果が出るまでに3─5日を要したという。武漢保健当局のデータをロイターがまとめたところ、この空白期間に市内の病院で医学的な経過観察を受けた患者の数は、739人からわずか82人に減少した。この間、中国国内では新たな症例は報告されていない。武漢市内で信頼性の高いデータも検査体制も確保できなかったにもかかわらず、中国当局は、ウイルスが確認されてから数日間、広範囲に感染するものではないと市民を安心させようとした。ここ数週間、ネット上では感染状況に関する悲観的なコメントが検閲され、「風説の流布」容疑で8人が逮捕されている。チェンという姓を名乗る45歳の女性は、「医師はマスクをしておらず、どうやって身を守ればいいのか分からない。(略)誰も教えてくれない」と話す。彼女の叔母は、入院から5日目の1月20日に感染が確認されたという。「(中国のソーシャルメディアである)微博に叔母の写真を投稿したら、警察が病院当局に来て、私に投稿を削除しろと命じた」。
武漢市長の言動も厳しく制限
ロイターは、コロナウイルスの感染拡大にどう対処しているのか、全国・地域・都市レベルの保健当局にコメントを求めたが、回答は得られなかった。中央政府の当局者は記者会見で、初動の治療方法にいくつか「見落とし」があったと述べた。武漢市のツォウ・シアンワン市長は27日、中国の国営テレビに対し、「あらゆる当事者が、我々の情報開示に満足していないこと」を承知していると発言。市長は、自身の言動が省政府・国家首脳から厳しく制限されていることにも触れている。「地方自治体では、私のもとに情報が届いても、許可を得なければ公表できない」と、ツォウ市長は言う。市長は26日の記者会見で、まだ検査を受けていない患者の数から考えて、武漢市内ではさらに1000人がコロナウィルス感染と診断される可能性があると語った。
検査キットも薬も不足
中国は先週、過去最大規模の「検疫・隔離作戦」により、湖北省の感染地域を封鎖した。また、感染者の治療のため、2カ所に新たな病院を建設中だ。習近平国家主席は、感染拡大に対処するため特別委員会を創設した。ウィルスの遺伝子情報を迅速に解読した点で、中国は国際的に称賛されているが、検査体制強化の遅れは問題視されている。ジョンズホプキンス大学医療安全保障センターのアメシュ・アダルジャ上級研究員は、ウイルスが特定でき次第、「(化学分析に用いる)すべての試薬サンプルをきちんと確保して、検査を行いたい場所に配布する必要がある」と話す一方、「現地では検査キットや医薬品も足りないようだ」と話す。また、ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院のジョン・エドマンズ教授は、感染発生の直後以降、中国は詳細なデータを十分に伝達していないと指摘する。検査キットの不足や中国側からの当初の情報発信の不足は、2003年に大流行して約800人の死者を出した重症急性呼吸器症候群(SARS)の教訓をきちんと学んでいないのではないか、という批判を呼び呼んでいる。「ウイルスの遺伝子を解読する、新たな病院を即座に建設するといったハードサイエンスの面では改善があったが、情報管理や住民への対応といったソフトサイエンスの面ではまだまだだ」と、ミシガン大学中国研究センター長を務めるメアリー・ギャラハー教授(政治科学)は指摘する。管理職レベルの市職員は、党レベルの上司に問題を持ち込もうというインセンティブがほとんどない。湖北省で新規のウイルス感染例が1件も報告されなかった週は、ちょうど旧正月(春節)への準備や、全国人民代表者会議・中国人民政治協商会議に向けた湖北省内の会議の時期に当たっていた。
重い患者も検査リスト外
湖北省CDCの職員によれば、武漢市最大級の病院のうち7カ所にはすでにコロナウィルス検査キットが配布されており、理論上は1日以内に結果が出るという。だが、ロイターの取材に応じた4人は、検査プロセスには病院、地区及び市の保健当局、CDC当局者が関与する複雑な報告体制が伴うことを理由に、検査を断られたと話す。患者が検査を受けるには、発熱・肺炎の症状などいくつかの基準を満たすことが必要とされるが、武漢市疾病管理・予防センター当局者によると、患者が急増しているため「検査をすぐに行うことは不可能」になっているという。「症状の重い患者でも、最終の検査リストから外されている例がある。もう治療できないと分かっているからだ」と、ある病院の職員は話す。「実際の死亡数はもっと多い」 ロイターは、この職員の証言の裏付けを取ることができなかった。武漢市の保健当局にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
検査での感染確認は5%程度
母親が検査待ちを続けているツァンさんによれば、武漢市内の病院3カ所の医師たちは家族に対し、コロナウイルスに感染していることはほぼ確実だ、と非公式に告げたにもかかわらず、このうち2カ所の病院は検査キットが不足していると言い、残りの1カ所は、検査を受けさせるための空きベッドがない、と伝えたという。ロイターでは病院にコメントを求めたが、回答は得られなかった。69歳のスー・エネンさんは、1月8日から熱と肺感染の症状が出ていたが、武漢市内6カ所の病院で検査を断られた。ロイターの取材に応じたスーさんの娘によれば、ベッドが空いていないというのが理由だったという。このところスーさんの症状は悪化しており、呼吸困難に陥りつつあるという。娘が父の症状について微博に投稿した後、彼は1月22日になってようやく、武漢市の漢口病院で検査待ちの列に加わることを認められた。英ランカスター大学の研究者らは、武漢市内の感染者のうち、検査によって確認されているのは5.1%にすぎないと試算している。その試算によれば、年初から1月21日までに、武漢市のコロナウイルス感染者は合計1万1341人に達しているという。同市の保健当局によれば、武漢市内では3万人以上が経過観察の対象となっている。武漢市に住むリュウという姓の33歳の女性は、「我々が望んでいるのは、症状がウイルスによるものか確認することだけだ」と話す。彼女の父親は、1月14日から病院で人工呼吸器をつけているが、27日の時点でまだ検査を受けていない。「少なくとも、ウイルスであると確認できれば方向が見える」と、女性は言う。「何の方向も与えられなければ希望もない」  
●武漢滞在の外国人が続々避難 中国で新型ウイルスの死者増える 1/29
中国・武漢で新型コロナウイルスの感染者や死者が増加する中、同市に滞在していた何百人もの外国人が避難を始めている。また中国政府は29日、国内で確認された死者が132人になったと発表した。日本やアメリカ、欧州連合(EU)、オーストラリア、韓国などはすでに、市民の帰還に乗り出している。中国の習近平国家主席は、このウイルスは「悪魔」だが、中国はこれを打倒すると話している。中国の国家健康衛生委員会によると、これまでに国内で確認された感染者は5974人、死者は132人。このほか、少なくとも16カ国で感染者が確認されたが、国外での死者は報告されていない。同委員会の専門家は、あと10日ほどで流行はピークを迎えるだろうと述べた。この新型ウイルスは、湖北省武漢市の魚市場で違法に取引されていた野生動物から発生したと考えられている。深刻な呼吸器感染症を引き起こすが、現時点でこのウイルスに特化した治療薬やワクチンはない。
日本へは約200人帰国
日本では29日、武漢から約200人が政府のチャーター機で東京の羽田空港に到着。計約650人が帰還を希望しているという。日本政府は残る人たちの帰国用にさらに旅客機を用意する方針を示している。日本の複数メディアによると、熱やせきなどの症状がある人たちは病院に搬送され、症状のない人も機内での検疫後、政府が用意したバスで都内の国立国際医療研究センターに移動。一般患者と離れた場所でウイルス検査を受け、陰性と確認されるまで政府が用意した宿泊施設や自宅で待機することになっている。日本政府はさらに、帰国者に1週間は外出せず、その後1週間も不要な外出を控えるよう求めている。オーストラリアのスコット・モリソン首相は、帰還する国民は検疫のため2週間、クリスマス島で隔離する方針を発表した。同島の施設は不法移民対策のものとして知られているため、国内では反発の声も上がっている。29日には、アメリカ領事館の職員や一部のアメリカ人も、武漢を離れた。CNNによると、アメリカへの帰国者は最大2週間、空港格納庫に隔離される可能性がある。イギリスの外務省は、武漢を離れたいとしているイギリス人約200人のために避難計画を準備している。しかし、帰還のための支援が足りないとして、政府を批判する声も出ている。これとは別に、EU市民の帰還に向けて旅客機2機の運航が予定されている。最初の1機では、フランス人250人が帰還する予定。韓国は今週、4機で約700人の市民を帰還させるとしている。香港自治政府は、自治区への越境を禁じる措置を発表した。武漢市および湖北省では厳しい通行制限が敷かれ、事実上の封鎖状態となっている。中国のいくつかの都市では、公共の場でのマスク着用が義務付けられた。
ピークは10日後か
ドイツとヴェトナム、台湾、日本ではヒトからヒトへの感染も確認され、感染拡大への懸念が広まっている。呼吸器疾患専門家で今回の新型ウイルス対策チームを率いる鐘南山氏は新華社通信の取材で、「感染は1週間から10日でクライマックスを向かえ、それ以降は大規模な拡大はないと考えている」と指摘した。中国政府は、WHOからの専門家を受け容れ、ウイルスへの理解や世界的な対応策などで支援を受けることに合意した。習国家主席とWHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は北京で会談。習国家主席は「このウイルスは悪魔だが、我々は悪魔が隠れることを許さない」と話した。 
●新型肺炎、米メディアが報じた「研究所が発生源」説 1/29
中国から全世界へと感染が広がる新型コロナウイルスの発生源は、中国湖北省武漢市にある国立の病源体研究機関かもしれない──米国メディアがそんな可能性を報じた。報道では、その研究所が中国人民解放軍の細菌兵器開発に関わっているとの疑惑も呈している。今のところこの可能性に確証はない。だが、もし事実だった場合、今回のウイルスの感染拡大の意味が大きく異なり、中国の国家としてのあり方が根幹から問われることになるだろう。
この可能性を報じたのは、米国の戦略動向や米中の軍事動向に詳しいベテランジャーナリストのビル・ガーツ記者である。記事は、米紙ワシントン・タイムズ(1月24日付)に大きく掲載された。ガーツ氏はこの記事で、「ウイルスに襲われた武漢には中国の生物戦争計画に関わる2つの実験所がある」と指摘し、武漢市で発生した新型ウイルスの肺炎が同市内に存在する「武漢国家生物安全実験室」から漏れたウイルスが原因である可能性がある、と記していた。
武漢国家生物安全実験室は2015年に建設が開始され、2017年に完成した毒性の強いウイルスの研究機関である。これまでエボラ出血熱やニパウイルス感染症などのウイルス研究にあたってきたという(筆者注:本実験室の存在は、英科学誌のネイチャーなどによっても伝えられている。参考:「世界で最も危険な病原体を研究するウイルス実験室、中国で誕生へ―英メディア」レコードチャイナ)。ガーツ氏の記事によると、同実験室は中国当局が今回の新型コロナウイルスを最初に発見したとする海鮮市場から30キロほどの距離にある。 
●新型コロナウイルスと習近平 1/29
「中国の新型ウイルス肺炎の広がりは中国に破局的な惨禍をもたらせば、中国共産党の独裁体制と習近平国家主席の個人崇拝的な絶対支配が非難され、崩れることにもなる」――アメリカの識者から現在の中国での謎の伝染病の広がりを習近平氏の下での異様な独裁体制と結びつける厳しい批判が表明された。
中国の武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎はいまや全世界へと拡大した。1月29日の段階で中国本土での感染者が5,974人、死者が132人と発表された。全世界では中国以外では日本を含め17の国と地域で感染者が出た。日本でもこれまで7人の感染者が出て、うち2人は中国を訪れたことはなく、来日した武漢出身の中国人と接触しただけだという。この結果、香港やシンガポールなどが中国からの訪問者の入国を大幅に制限し、北朝鮮やモンゴリアのように全面禁止とする国も出てきた。だが日本では武漢を含めて中国各地からの来訪者の入国にまったく制限をつけておらず、政府の対応の甘さが国際的にも顕著となってきた。中国政府が武漢からの他国への飛行を制限し、中国から海外への団体観光客の出発を禁止したことも伝えるなかで、日本政府の措置は異様なほど緩やかにみえる。
さてこうした現実のなかでアメリカの大手新聞ウォールストリート・ジャーナルは1月26日付に「中国の検閲がウイルスの拡散を助長した」という見出しのオピニオン記事を掲載した。同記事の筆者は国際関係の専門家でジョンズホプキンス高等国際関係大学院の元学長ポール・ウォルフォウィッツ氏とワシントンの大手研究機関AEIの上級研究員マックス・フロスト氏である。ウォルフォウィッツ氏は先代ブッシュ政権で国防副長官を務めた共和党保守派の重鎮政治家でもある。同オピニオン記事は今回の新型ウイルス肺炎がこれほど急速に広まった原因は中国共産党の習近平独裁政権が「中国国民の福祉よりも社会の管理を重視する」ためにこの新型の伝染病の発生と拡散についての情報を開示しなかったことが大きい、と批判していた。同記事は伝染病に関する情報が隠されることがいかに危険かの実例として第一次世界大戦中の1918年から19年にかけて世界中で大流行した狂暴インフルエンザの「スペイン風邪」について報告していた。この「スペイン風邪」では全世界で感染が約5億人、死亡が約5,000万人に達したが、その大流行の主要因は戦争を遂行していた各国がこぞってその病気の情報を秘密にしたことにあったとされた。確かに今回の新型ウイルスによる肺炎も中国内部では昨年12月8日ごろに武漢での感染者のケースが非公式のネットで最初に伝えられたものの、当局は秘密にして、中国の官営メディアが初めて報道したのが今年1月9日だった。習近平国家主席が新型コロナウイルスによる肺炎で初めて指示を出したのは1月20日だった。習主席はこのとき、「断固としてウイルスの蔓延を阻止するように」と命令し、情報の即時公開などを指示した。病気の最初の発生から40日以上が過ぎていたわけだ。ウォルフォウィッツ氏らの記事はこうした経緯を踏まえて、以下のような骨子を述べていた。
〇 中国では政府や共産党から独立したメディアは存在しないため、今回の大事件も当局の意思で秘密にされ、地元の武漢の官営新聞がこの肺炎について報道したのは実際の発生が起きてから3週間以上も後だった。
〇 病気の発生が明らかになった後の1月10日にも、当局の意向を受けた“医療専門家”が国営テレビで「この病気はもう防止された」とか「その症状は軽い」という根拠のない楽観論を語っていた。
〇 現実にはこの新型ウイルス肺炎は100万人単位の住民が再教育収容所に入れられている新疆ウイグル自治区にも広まった。また同様に中国政府が世界保健機構(WHO)への加盟を阻む相手の台湾でもすでに患者が出始めたのだ。
〇 中国政府のこの秘密主義は明白に習近平独裁体制下の異様な統制のためであり、この病気が中国に破局的な惨禍をもたらせば、共産党の独裁体制と習近平国家主席の個人崇拝的な絶対支配がその原因として非難され、崩れることにもなる。
以上のように、この記事は今回の異様な伝染病の広がりを習近平独裁といういまの中国の異様な支配状態に結びつけて批判と警告を発していた。ウォルフォウィッツ氏はトランプ政権にも近い論客であるため、その見解の発表には同政権の認識も滲んでいると言えそうだ。 
 
 
 1/31
●新型コロナめぐる中国経済「最悪のシナリオ」 1/31
新型コロナウイルスによる肺炎について、世界保健機関(WHO)は1月30日夜に「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」を宣言しました。中国以外にも感染が広がっている事態を受けたものです。日本でも中国・武漢への渡航歴がない日本人の感染が確認され、武漢滞在中の206人がチャーター機で帰国。日本政府や企業も対応に追われています。新型肺炎は中国経済に、ひいては世界経済にどんな影響を与えるのか。具体的な懸念や想定される「最悪のシナリオ」について、みずほ総合研究所の三浦祐介主任研究員に詳しい話を聞きました。
中国の観光産業に「大打撃」、個人消費も
—— 中国・武漢が発生源とされる新型ウイルスによる新型肺炎で、中国はもちろん、日本やその他の国の経済への影響が懸念されています。こういうリスクは、日常から想定できるものでしょうか……?
いえ、正直なところ驚いています。実は今回のウイルスとは別の話で、11〜12月頃に中国北部で腺ペストの患者が報告されていました。「疫病リスクも頭の片隅には入れておいたほうが良いかもしれないな」と思ってはいましたが、それとは別にこれほど大きな問題が起こるのだなと……。
—— 今回の新型肺炎の流行は、中国経済にどのような影響を与えるでしょうか。
今のところ通年的な影響が続くことはメインシナリオとしては想定されていませんが、少なくとも3月ごろまでは景気の下振れ圧力が高まると思います。いくつか想定されますが、最も直接的なものは中国国内の観光産業ですね。中国では海外からの観光客もさることながら、中国の人々が国内を旅行するケースが多く、生活水準の向上からその規模は年々拡大しています。そのため、新型ウイルスの影響が続けば、中国の国内観光産業がまず打撃を受ける可能性が高いと思われます。また、中国経済を支える個人消費にも影響が現れやすい。これだけ新型ウイルスが広まりつつあることで、中国政府も武漢を事実上封鎖したり、主要な観光地や映画館は営業中止になっています。公共交通機関では防疫対策が強化されるなど、厳戒態勢が敷かれて、交通規制も始まっています。ショッピングモールなども閑散としており、小売業や飲食業への影響もあるのではないかと見ています。
影響は「少なくとも3月までは続く」
—— 世界保健機関(WHO)も、このウイルスが世界に及ぼすリスクが「高い」としています。今後、中国経済ではどんなシナリオが想定されますか。
中国政府によると、感染拡大を防ぐために強力な対策が取られている状況ではあります。当初1月末までだった春節の休暇が2月2日まで延長されたり、春節明けの営業再開を延期する企業も出てきました。2002〜2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)と比べても対策の規模は大きいでしょう。ただ、休業期間が長引けば、工場の生産や建築作業などはストップし、企業ではオフィスに出勤できない日々も長くなります。つまり、営業日が短くなるわけで、経済活動への影響は起こりうる。3月頃までは、こうした影響が企業の業績などにも現れそうです。SARSよりも感染規模が大きくなるのではないかと指摘する専門家もいるので、予断は許しません。現時点では、6〜7月頃になれば感染者数も落ち着き、収束に向かっていくことになるのではないかと想定されています。ただし、「収まる」のがどのタイミングなのか、現時点ではなんとも言えないですね。
「チャイナ・リスク」への懸念は
—— よくメディアでは「中国経済は“世界経済の牽引役”」などと表現されます。もしも新型コロナウイルスの影響が長引き、中国経済が失速すれば、世界的な不況を引き起こす可能性はあるのでしょうか。
仮に世界中で「パンデミック」と言われるような事態になれば大きな問題になるとは思いますが、世界の経済全体が「恐慌」に陥るような深刻な事態に発展する可能性は、現時点では低いと思います。ただ新型ウイルスとは別に、「チャイナリスク」という言葉があるように中国特有の政治的・経済的な状況から、金融面が脆弱な状況にあることは問題としてあります。
—— 具体的にはどのような問題が。
中国経済をめぐって、一時期は「シャドーバンキング」問題が騒がれたりしていました。銀行がリスクの高い金融商品を販売したり、国有企業や地方政府が無茶な投資をして債務を拡大したり、そういった懸念もあったんですね。ただ近年、中国政府はこういう状況に手を打ってきました。シャドーバンキングを規制したり、地方政府など資金を調達する側への規制を強化したりしています。銀行の不良債権の認定基準を強化したり、地方銀行の再編にも乗り出しました。こうしたことから中国政府の金融安定発展委員会は「金融リスクは収束に向かっている」との見解を表明しています。つまり、構造改革がゆっくりとではあるが実施されている状況ではある。中国政府が想定しているペースでやれば、経済的に大きな問題になるとは考えにくいです。
最悪のシナリオは「ドミノ倒し」の景気後退
—— 一方で、「最悪のシナリオ」としてはどんなことが想定されますか。
2019年のようにアメリカとの貿易摩擦が激しくなったり、新型ウイルスの問題がさらに深刻化すると悪影響が心配です。2019年は、アメリカとの貿易摩擦が起こってしまい、互いに輸出入で関税をかけ合う貿易戦争に発展。中国では対米輸出の落ちこみが顕著でした。ですが、なんとか米中貿易摩擦は小休止し、2020年は一安心というとことでした。そこに新型肺炎の問題が出てきたので、中国経済にとっては泣きっ面に蜂。タイミングが悪いというしかないですよね……。貿易摩擦にせよ、新型ウイルスにせよ、中国政府にとって想定外の外的ショックで景気や金融が悪くなり、ドミノ倒しのようにさらに景気を後退させるというリスクが、中国経済にとっては最悪のシナリオになります。具体的には、中国国内の企業業績が悪くなり、それが銀行に波及して貸し渋りが起こり、企業の資金繰りが苦しくなることで中国の実体経済がいっそう悪くなる……という、悪循環のスパイラルです。こうした事態が発生する可能性も完全には否定はできません。中国経済は確かに成長は続けていますが、2019年のGDP伸び率は+6.1%。ここまで前年を2年連続で下回り、29年ぶりの低い数字となっています。成長はしているが、その足腰は決して強いわけではなく、ちょっとしたショックで悪化しやすい。例えるならば、思わず転んだ拍子に複雑骨折するような可能性があるわけです。こうした点は、中国経済の下振れリスクとして当面は留意しておく必要はあると思います。今回のような予想外の事態にどう対応していくのか、習近平体制にとっても課題になるでしょう。 
 
 
 2/1
●“コロナショック”拡大の一途 日本の医療求め中国人が大量入国か 2/1
日に日に拡大する新型コロナウイルスによる肺炎感染者。全世界で感染者は2002〜03年に蔓延した「重症急性呼吸器症候群」(SARS)を超えてしまった。“震源地”の湖北省武漢市からは、既に多くの中国人が脱出している。パニック状態の中国全土から、今後、日本に大挙して向かってくる可能性がある。
人けがなく閑散としている人口1100万人の武漢市。事実上の封鎖状態になる前に、500万人が市外に出たとされる。「中国国内では500万人の行方に注目が集まっている」(在中ジャーナリスト)という。
中国メディアの分析では、1月10〜22日に6〜7割が省内の別の都市や周辺の河南省、安徽省などに向かった。航空機の移動をもとにした調査では、昨年12月30日から1月22日に約6万人が北京に向かったという。国外に“脱出”したとみられる人も大勢いる。移動先については、タイやシンガポールに加え、日本も名前が挙がっている。成田空港には約9000人が移動した可能性があるというのだ。
「医師不足の武漢市では、症状があっても病院に受け入れてもらえない状況です。また、都市部の病院はもともと患者が多すぎ、医者不足が常態化しているので、早晩受け入れ不能になるでしょう。現状だと、中国国内で発症してしまうと満足な治療を受けられない恐れがある。医療体制が整っている日本に注目が集まっており、発症していなくても『とりあえず日本に逃げよう』と考える富裕層が多いとみられています」(前出の在中ジャーナリスト)
中国政府は海外への団体旅行を禁止したが、個人旅行は禁じていない。一方の日本政府は、新型肺炎を「指定感染症」に指定する政令が施行される2月7日まで、入国を拒否したり、強制的に入院させるといった「強い措置」をとることができない。前倒しの検討には入ったというが、政令の施行までは、中国からの個人観光客が日本の医療を求め、続々と来日する可能性が高いのだ。
そもそも中国では、日本の医療は大人気。日本にとっては、「医療ツーリズム」は「売り物」のひとつでもある。日本政府は11年から、医療目的での来日を促すため、「医療滞在ビザ」の発給をスタート。これをきっかけに、日本への「医療ツーリズム」が中国人観光客にバカ受けした。発給数は右肩上がりで増え、18年は全1650件のうち84%が中国人向けだった。「体調を崩したら日本へ」と考えるだけの素地が出来上がっているのだ。中国事情に詳しいジャーナリストの姫田小夏氏はこう言う。
「中国では医療保険制度が日本ほど充実しておらず、頻繁に医者にかかると高額な費用を自己負担しなければならなくなるケースが多い。国民の不満が高まっている状況です。普段からあまり医者にかからないように意識しているところに、新型肺炎の流行で現地は混乱しています。丁寧で質が高い上、費用も一定程度で済む日本の医療を受けたいと考える人が、今後出てきても不思議ではないでしょう」
すでに日本に滞在している、まだ発症していない“ステルス感染者”の存在も気がかりだ。出入国在留管理庁は、封鎖状態で武漢に帰れない中国人観光客の短期滞在ビザの更新を認めた。27日に国外への団体旅行が禁じられる直前に入国した人が多いとみられる。新型肺炎の潜伏期間は最大14日間だから、これから続々と発症するケースも考えられる。いよいよ、日本国内でのパンデミックが現実味を帯びてきた。 
 2/3-9

 

楽しいクルーズ船旅行
暗転
●香港で新型肺炎発症の男性、日本のクルーズ客船に乗船 2/3
クルーズ客船で香港に戻った男性(80)が新型コロナウイルスに感染したことが確認されたことを受け、客船運営会社「カーニバル・ジャパン」(東京)は3日、男性が同社のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗っていたと明らかにした。同船は4日朝に横浜に入港するという。同社によると、クルーズ船の乗客定員は約2700人、乗組員は約1100人。男性は1月20日に横浜でクルーズ船に乗り、25日に香港で下りた。船は1月22日に鹿児島、2月1日に那覇に寄港した。下船客の有無などは明らかにしていない。 
●ダイヤモンド・プリンセス 新型コロナウイルスに集団感染 2/5
横浜港沖に停泊中の豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗員乗客のうち10人に2月5日、新型コロナウイルスの感染が確認され、神奈川県内の医療機関へ搬送されたと厚労省が発表した。国内で新型コロナウイルスの集団感染が確認されたのは初めて。残りの乗客乗員についても健康状態を確認するため、厚労省はウイルスの潜伏期間が過ぎる14日間程度、船内に待機してもらう方針だ。ダイヤモンド・プリンセスは、どんな船なのかを調べた。
日本人リピーターが多い理由とは?
ダイヤモンド・プリンセスは、2004年に三菱重工業長崎造船所で建造された。造船当時は姉妹船の「サファイア・プリンセス」と並んで、日本で建造された客船としては史上最大だったという。全長は290メートル、総トン数は11万5875トンの威容を誇り、乗客定員は2706人、乗組員数は1100人。巡航速度は22ノット(時速約41キロ)だ。半世紀以上の歴史があるアメリカのクルーズ会社「プリンセス・クルーズ」が運航しており、2014年からは日本発着クルーズを開始した。日本人リピーターが多いことでも知られており、2014年の大規模改装で大浴場「泉の湯」、寿司レストラン「海(Kai)寿司」などが登場。日本発着の際には日本語ができるクルーが約100人乗船するなど、日本語サービスも充実していることが背景にあると言われている。さまざまなイベントが開かれる三層吹き抜けのアトリウムがあるほか、夜間には映画を上映する屋外プールもある。劇場、カジノ、屋外シアター、フィットネスセンターなど豪華な設備が盛りだくさんだ。
16日間の「東南アジア大航海」中に集団感染
今回、ダイヤモンド・プリンセスは「初春の東南アジア大航海16日間」に出航中だった。1月20日に横浜を出港、22日鹿児島、25日香港、27日ベトナム・チャンメイ(ダナン/フエ)、28日ベトナム・カイラン、31日台湾・基隆、2月1日那覇、4日午前に横浜に帰港するスケジュールだった。1人あたりの旅行代金は25万円〜138万2000円だという。1月20日に横浜から乗り、25日に香港で下船した80歳の男性乗客が、新型コロナウイルスによる肺炎と確認された。これを受けて、2月3日から検疫官が乗り込んで乗員・乗客計約3700人の健康状態などの聞き取りを続けていた。朝日新聞デジタルの2月5日の報道によると、乗客乗員3711人のうち、発熱やせきなどの症状がある人とその濃厚接触者など273人の検体をとり、感染の有無を確認した。2月5日朝までに31人の検査結果が出て、うち日本人3人を含む10人の感染が確認された。検査はまだ途中で、今後さらに感染者が増える可能性もあるという。 
●クルーズ船、新たに感染者10人 県内5病院に搬送へ 2/6
横浜港に停泊中のクル−ズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での新型コロナウイルスの集団感染を巡り、厚生労働省は6日、ウイルス検査で新たに乗客10人が陽性と確認したと発表した。感染者は計20人となり、さらに増える可能性もある。県によると、新たな感染者は、県内の感染症指定医療機関5病院に搬送する。5日には乗客乗員10人を4病院に搬送しており、連日受け入れる病院を含め県内の指定医療機関全8病院が感染者を受け入れる。それぞれの医療機関は感染症のまん延防止機能を備えており、別の患者らと出入り口を分けるなどして対応しているという。クル−ズ船は6日朝、横浜港の大黒ふ頭に着岸した。食料などの物資を補給するという。 
●クルーズ船 薬が足りず 2/8
新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で待機を余儀なくされた乗客らの中には持病があり、服用薬が足りなくなった人も多い。厚生労働省は六日の横浜港への着岸以降、医薬品搬入を始めたが、種類によっては入手しにくいものも。乗客からは「頼んだ薬がいつ届くか分からない」との声が上がる。「くすり ふそく」。クルーズ船の船首側に七日、日の丸の白地部分に黒色の文字で書かれた旗が掲げられた=写真。午後には「しんこく」と書き足され、薬を求める乗客らの苦悩がうかがえた。厚労省によると、持病がある乗客らに船医がリストを配布。氏名や必要な医薬品名、服用量や緊急性などを記載してもらう。 
●クルーズ船で新たに3人感染 新型肺炎計64人に、厚労省発表 2/8
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の新型コロナウイルス集団感染で、厚生労働省は8日、新たに乗客3人の感染が確認されたと発表した。これまでに船内の有症者ら279人を対象に検査を実施。感染が確認されたのは計64人となった。国内全体で報告された感染者数は89人。厚労省によると、脳梗塞などが理由で下船した米国人や、6日までに感染が判明した人の濃厚接触者6人を対象に新たに検査を実施。このうち3人から陽性反応が出た。3人は米国籍の70代男性と60代の女性、中国籍の30代女性。米国の2人は同じ部屋で過ごしていた。既に神奈川県内の医療機関に搬送され入院している。 
●クルーズ船内の百人が体調不良 厚労省、ウイルス検査を実施へ 2/9
新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の船内に残っている乗客乗員百人程度が発熱などの体調不良を訴えていることが8日、関係者への取材で分かった。新たにウイルス検査対象となる方向。これとは別に、厚生労働省は、これまでに感染が判明した患者らに濃厚接触するなどした数十人の乗客乗員らの検査を行っていることも明らかにした。厚労省によると、8日正午現在、クルーズ船の乗客乗員3711人のうち71人は感染が確認されるなどしたために船外に出ており、3640人が船内に残っている。 
 
 
 2/20-23

 

引き金
中国からの旅行者 ?
全世界規模の災害になる
 
●乗客死亡、下船者「ショック」 2/20
新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客2人が死亡した。客室に待機してから14日間の健康観察が終わり、19日に下船が始まったばかり。船内で過ごしていた人たちは「ショック」「怖い」と、絶句した。19日に下船したさいたま市の男性(77)は「船内はいつ感染してもおかしくない状況だった。もしかしたら、自分だったかもしれないと思うと怖い」。夫婦で乗船していた男性(64)は「人ごとではない。船内での感染防止対策の不備がこのような結果を招いたのではないか」と憤った。 
●新型肺炎、クルーズ船「旗国主義」だと英国に責任 厚労相は適切な対応強調 2/20
加藤勝信厚生労働相は20日の衆院予算委員会で、新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」内の感染防止策について、適切な対応を取っているとの認識を改めて示した。「感染症の専門家チームに入ってもらい、オペレーションについて指摘してもらっている」と述べた。クルーズ船内に入った神戸大の岩田健太郎教授が感染防止が徹底されていないとインターネット上に公開した動画で批判したことに反論した形だ。
加藤氏は、船内でウイルスに汚染された危険区域と、安全な区域を区別する措置を実施していたと強調。乗組員に対しても、ウイルス検査で陽性だった人や発症した人との濃厚接触者らには業務を外れてもらったことを説明した。菅義偉(すが・よしひで)官房長官も記者会見で「感染管理の専門家が常駐している」と述べた。一方、国際法には公海上の船舶の保護は船籍国の責任で行うべきだとする考え方があり、クルーズ船の船籍国の英国が対処すべきだとの指摘もある。加藤氏は予算委で「洋上にある船に誰がどういうふうに管轄権を持つか明確になっていない」と述べ、整理する必要性を指摘した。また、加藤氏は、岩田氏について「災害派遣医療チーム(DMAT)の業務に従事する約束で18日の午後3時すぎに乗船してもらったが、業務を適切にしてもらえなかったため午後5時すぎに下船してもらった」と説明。菅氏は岩田氏の動画が削除されたことに関し政府の関与を否定した。 
●クルーズ船乗客下船、日本の新型肺炎対策の限界 2/22
横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から死者が出た。新型コロナウイルスに感染して体調を崩していた80代の日本人の男女2人で、2月20日に確認された。同船からのはじめての死者で、これで日本人の死者は3人になった。厚生労働省によれば、80代の女性は5日から発熱、9日に症状を訴え、10日に医師の診察を受け12日に搬送された。他にも症状のあった乗客を順番に搬送していたようだが、アウトブレイク(突発的感染拡大)によって患者が一極集中すると、手がまわらず処置の遅れる典型だ。そのクルーズ船からは連日、感染者が確認されている。それも日を追うごとに数十人単位の規模で数が増えつづけ、2月19日には新たに79人が、20日には13人が確認されて、約3700人の乗客乗員のうち634人が感染したことになった。にもかかわらず、19日から日本政府は当初の予定どおり、乗客の下船をはじめた。2月5日から14日間の経過観察を経て、検査で陰性が認められた乗客に「上陸許可証」を発行。21日に完了するまでに970人がクルーズ船から解放されている。下船した人の多くは用意されたバスで最寄りまで移動し、そこから公共交通機関で自宅に帰った。
日本のクルーズ船対応に疑念が残る
だが、下船した乗客は、本当に感染していないのか。結論から言えば、これはもはや感染拡大の懸念も内在する「ギャンブル」に近い。検査に用いられるPCR法には感染が見落とされるケースがあることは知られている。また、下船者の中には2月4日に検査を受けて陰性と判断されただけの者もいる。その後に感染していたとしてもおかしくはない。だが、厚生労働省は下船から数日の電話連絡はとるものの、行動制限はしていない。前日の18日には、災害派遣医療チーム(DMAT)の一員として同船に入った神戸大学の感染症内科の岩田健太郎教授が、船内ではグリーンゾーンとレッドゾーンが区分けされてないなど、感染対策が不十分とする内容をYouTubeに投稿して話題になった。これに厚生労働省や政府関係者が反論。20日には同教授によって投稿動画は削除されたが、それでもクルーズ船から確実に感染者が増え続けていることからすれば、明らかに感染対策は失敗していることを示している。20日には、船内で作業にあたった内閣府と厚労省の職員2人が感染していることが判明。目も当てられない状況だ。
2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が中国から香港や世界に拡散したきっかけはホテルだったことは、以前にも書いた。中国広東省で発生した新型肺炎の治療にあたっていた医師が宿泊した、同じフロアの同宿者に感染してウイルスは広まっていった。そのホテルでは医師の泊まった9階とその上下階を閉鎖している。「海に浮かぶホテル」であるクルーズ船では、感染者の出たフロアを閉鎖することもできなかったはずだ。アメリカでは、同船を下船しても14日間は入国を認めない措置をとった。先にチャーター機で帰国した乗客も14日間は隔離される。カナダやオーストラリアなど他国も同様で、つまりは日本を信用していないことになる。東京都内のタクシー運転手への感染は屋形船の宴会からだったが、今度は大型客船から感染が広がるのなら、洒落にもならない。すでに日本国内でも、東京、神奈川、千葉、和歌山、愛知、沖縄、北海道などに次いで、福岡でも感染者が確認されて21日には106人になった。感染ルートがはっきりしていないものも少なくない。そこへ福岡市の地下鉄では、マスクをしていないのに咳をしている乗客がいる、と非常通報ボタンを押して停車させる“事件”まで起きている。疑心暗鬼がパニックになっている。海外ではそんな日本を冷ややかに見ている。韓国、台湾では日本への渡航の注意喚起や自粛を求めているのに加え、タイも日本への渡航自粛を呼びかけた。タイは訪日観光客数6位の”上客”で、日本の観光業への影響は大きい。しかも21日にはアメリカCDC(疾病対策センター)が日本への渡航注意を呼びかけている。逆に日本人が渡航しても、「日本人は来るな」と迷惑がられるのが関の山だ。
これから日本でもアウトブレイクが起きると…
それは、2003年当時にSARSが蔓延した当時の香港、台湾と同じ状況に置かれているといえる。このまま日本で都市型のアウトブレイクが進めば、まさにその当時の香港、台湾の轍を踏むことになる。例えば、台湾にある日系企業のオフィスではこんな対策がとられていた。まず、建物の入り口で検温され、異常がないと手をアルコール消毒し、中に入れる。そのままオフィス階に上がると、また手をアルコール消毒して、閉じられた扉の奥の会議室に通される。そこではじめて担当者が「ここは消毒が行き届いている部屋ですので、マスクを取りましょう」と言って、マスクを脱ぐ。そして、通常の会話が始まった。
テレワークとまでは言わないまでも、当時も電話やメールで本社や関係取引先と連絡はとれた。だが、人の往来は著しく制限される。「商談をするにも、人と会うと会わないとでは、ぜんぜん違う」と言った。盛り上がりに欠けたり、その場の雰囲気というものが違うという。おのずと仕事の効率も落ちる。企業活動の停滞は否めない。SARSでも、そして今回の新型肺炎でも、中国のある村では住民以外の立ち入りを禁じる看板を掲げて、村人が見張りに立つ風景があった。日本国内でも、これに似た対応をする地域が出てくる可能性はある。2003年のSARS流行時の香港では、子どもたちがマスクをして集団登下校していた。SARSは子どもには罹りにくい、罹っても軽症とされたが、それは結果であって、当時は子どもたちを守ることに懸命だった。今回の新型コロナウイルスも、子どもにどう影響するかわからない。すでに和歌山では10代の感染者が出ているし、北海道ではラベンダーで知られる中富良野町で21日に10歳未満と10代の男子児童の感染も確認された。小学生の兄弟で、弟が先に発症している。海外渡航歴もないという。さらには、武漢からのチャーター便で父親と帰国した埼玉県在住の未就学の男の子にも感染が見つかっている。帰国当時は陰性であったにもかかわらずだ。これから受験シーズンが本格化し、卒入学シーズンへと向かう。人の集まる機会も増える。受験生にとって、インフルエンザ対策は例年のこととはいえ、今回はまったく違ったウイルスだ。
致死率が低くても感染者数は非常に多い
WHO(世界保健機関)によると致死率は2%と、SARS(致死率9.6%)よりも低いとされる。毎年流行するインフルエンザでも、日本国内で近年は約3000人が命を落としている(致死率0.1%)。感染者の数が増えれば相対的に死者の数も増えることになるし、そんなウイルスが国内に入ってこなければ、インフルエンザで死なずに済んだはずが命を奪われることにもなりかねない。これから日本人は不自由で手間のかかる生活を送らなければならい。すでに東京マラソンの一般参加が取りやめになるなど、大規模イベントの中止も相次いでいる。その中で各自がウイルスから身を護らなければならない。日本国内で感染経路不明な市中感染が広がっている今、仮に自分が感染したとしても、誰のせいにもできないし、誰かに責任を押しつけることなどできない。処置が遅れたとしても文句も言えない。その段階にきている。 
●新型コロナ クルーズ船乗客で香港に戻った男性の感染確認  2/23
香港の衛生当局は、新型コロナウイルスへの集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から下船し、チャーター機で香港に戻った男性1人について感染が確認されたと発表しました。香港の衛生当局によりますと、男性は68歳で、「ダイヤモンド・プリンセス」から下船し、政府が手配したチャーター機で香港に戻りました。その後、経過観察のため、香港政府が指定した検疫施設で隔離されていましたが、発熱やせきの症状が出たため、改めて検査したところ、23日になって感染が確認されたということです。香港では「ダイヤモンド・プリンセス」から下船して、香港に戻ったおよそ200人が14日間の経過観察を受けています。 
 
 

 

●コロナウイルス報道
概要
・コロナウイルスの報道は2019年12月31日13時41分が最初
・死者の話題は1月20日発生、現在までのピークは2月14日だった
・WHOに関する記事は1月8日から目立ち始め、1月23日からより活発化
・1月30日まで武漢の話題が多く、以降は中国の他の地域の話題に広がる
・クルーズ船は1月21日より記事が出現する。当初は中国当局が発行する「健康カード」をクルーズ船に適用するというもの
・プリンセスクルーズの記事は2月2日に香港の感染者がクルーズ船で来日したことから始まり、その後増え続け2月20日には1日の記事数が1000を超えている
・アメリカについてはインフルエンザの話題と同時に掲載されることが多く、株価や円安など経済の話題も多い
・マスクについては、1月15日から中国国内のマスク不足が報じられ、その後日本からの支援物資に対する感謝の記事へ変遷した / 1月31日から日本国内のマスク不足が目立つようになり、その後転売に関する記事が増えている
・リモートワークについては、1月26日IT企業の在宅勤務報道を皮切りに増加。それまでは小泉環境省の育休に伴うリモートワーク対応など、コロナウイルス以外の話題が多かった
武漢について
コロナウイルスは武漢で原因不明の肺炎として発表されていたことから、報道初期は武漢市の話題が多かったのですが、 同市の閉鎖と並行して感染者の状況が周辺地域に拡大していくにつれ、1月30日を境に他の地域の話題が多くなっています。とはいえ、注目を集める地域であることから、現在も一定数の記事数が毎日掲載されています。
WHOについて
1月8日に新型ウイルスとWHOが認定してから発表や報告のたびに記事数が出現しています。特に、緊急事態宣言を見送った内容が大きな注目を集めたことから、1月23日、1月24日の記事量が多くなっています。
クルーズ船について
主要な話題の一つになっているクルーズ船についての報道ですが、1月21日に初めてコロナウイルスに関連した記事が出現しました。当初は福岡や沖縄に寄港するクルーズ船への対応についての話題でしたが、香港の感染者が横浜と香港を移動するクルーズ船に乗っていたことから大きな注目が集まります。2月3日、感染者が乗っていたクルーズ船が乗客を横浜で下船させられなかったことから、話題が大きく広がっていきます。以降、支援物資の話題や政府の対応など、毎日記事数は増え続け、コロナウイルス報道の主要な話題となっています。
アメリカ、中国以外での海外の反応について
1月15日、アメリカ国務省がコロナウイルスを巡り米国民へ注意を呼びかけたのが始まりで、その後トランプ大統領の発言など受けて徐々に記事数が増えています。2月2週めまでの記事では、コロナウイルスの影響がアメリカの経済や貿易、外貨におよぶという記事が多かったのですが、2月3週から、アメリカで猛威を振るっているインフルエンザがコロナウイルスだったのではないかという記事が増えています。その他海外では、渡航禁止やクルーズ船受け入れといった話題が多くを占めています。
リモートワーク 在宅勤務について
感染を防ぐ目的で企業のリモートワーク導入や出社停止が広まっていますが、こうした話題はコロナウイルス報道が増え始めた1月上旬にはありませんでした。その当時にいくつか出ていた在宅勤務に関連する報道は、小泉環境相やオリンピックにまつわるものでした。しかし、1月26日にIT企業GMOが2週間の在宅勤務とすることを報道することを皮切りに、感染回避のための企業対応が記事として増えています。以降、工場の稼働停止など、国内外問わず企業の動向が多く記事になっています。
マスク不足 転売について
1月15日から中国国内のマスク不足が報じられ、それを受けて日本の自治体などが中国を物資支援する報道されました。その後中国からの感謝を伝える記事が報道されています。2月8日にコンビニや飲食店など接客業のマスク着用について記事が出ており、今では働く店員がマスクをしている姿が当たり前になりました。世界的なマスク不足が報じられる傍ら、マスクの転売について取り上げる記事も増加しています。 
 
 
 2/24-25

 

●「今後1〜2週間が瀬戸際」国の専門家会議が見解 2/24
新型コロナウイルスへの感染の報告が相次ぐなか、国の専門家会議は、今後1〜2週間が感染拡大のスピードを抑えられるかどうかの瀬戸際だという見解を示しました。一般の人ができることとして、多くの人と近い距離で対面する場所を可能な限り避けることや、かぜなどの軽い症状の人は自宅で療養することなど対策への協力を求めています。国の専門家会議が示した「見解」のポイントは
〇 国内の感染が急速に拡大しかねない状況にある。
〇 これから1−2週間が、急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となる。(グラフの赤の線に進むか、青の線に進むかの分かれ道に)
〇 感染症予防の観点からは、全ての人に新型コロナウイルスの検査をすることは、有効ではない。また、設備や人員の制約のため、全ての人に新型コロナウイルスの検査をすることはできない。
〇 風邪や発熱などの軽い症状が出た場合には、外出をせず、自宅で療養を。ただし、目安の症状がある場合には、決して我慢せず相談を。
〇 心配だからといって、すぐに医療機関を受診しないで。
〇 これからとるべき対策の最大の目標は、感染拡大のスピードを抑制し、可能な限り重症者の発生と死亡を減らすこと。
〇 症状のない人も、それぞれが一日の行動パターンを見直し、リモートワーク、オンライン会議などのできうる限りの工夫を。  
●株価急落に初の倒産 政府対応遅れがコロナショックを深刻化 2/25
新型コロナウイルスの騒ぎが拡大している。2月25日には株価が急落し経済の先行きに不透明感が強まった。外国人観光客の急減で倒産する企業も出ている。イベントの中止も相次ぎマスクの不足も深刻。「コロナショック」の襲来に、政府の対応は遅れ気味だ。2月25日の東京株式市場では、コロナショックによる企業業績への影響の懸念が強まり、株式が売られた。株価の指標となる日経平均株価の終値は前週末より781円33銭安い2万2605円41銭となった。約4カ月ぶりの安値で、取引時間中には一時、値下がり幅が1千円を超えた。米ニューヨーク株式市場でも24日、大企業の株価指標であるダウ工業株平均が、前週末より1031・61ドル値下がりした。下げ幅は史上3番目となった。複数のアナリストは、「コロナショックはすぐには収束せず株価低迷が長引く恐れがある」と指摘している。
観光地では中国人らの姿が消え、宿泊施設でもキャンセルが続出。経営に行き詰まるところが出てくるのではないかと心配されていたが、それが現実となった。民間調査会社の東京商工リサーチによると、愛知県蒲郡市の観光旅館が事業を停止し、破産申請することになった。中国からの団体ツアーのキャンセルが相次いだことが理由の一つで、新型コロナウイルスによる初の経営破綻だという。「新型コロナウイルスによる影響は急速に広がっています。中小企業は資金調達が難しく、いずれ経営破綻するところが出てくると心配されていました。国内の個人消費は伸び悩み、各企業とも外国人観光客を取り込んで、なんとか生き残ろうとしていた。消費増税もあって倒産が全体的に増加傾向にあるなか、コロナウイルスが追い打ちをかけたのです。経営破綻するところは今後も出てきそうです」(東京商工リサーチ情報本部情報部の後藤賢治課長)
加藤勝信厚生労働相は、対策の基本方針を発表する2月25日の会見で、こう述べた。「現在国内の複数の地域で感染経路が明らかでない患者が散発的に発生し、小規模な患者の集団が把握されている。まさに今が今後の国内での健康被害を抑える上での極めて重要な時期です」 その上で、新型コロナウイルスの特徴を踏まえて国民に次のような呼びかけをした。
○感染の不安から、適切な相談を行わないまま医療機関を受診することがないようにする。 ○感染しやすい環境に行くことを避ける。手洗いやせきエチケットを徹底し、風邪の症状があれば外出を控える。やむを得ず外出する場合は必ずマスクを着用する。 ○休暇の取得やテレワークについて、企業や団体の協力も必要となる。 ○患者の集団が確認された地域では、関係する施設やイベントなどの自粛を検討してもらう。
このように述べた上で、「引き続き先手先手の対応を進めていきたい」と強調した。だが、基本方針といっても、これまで呼びかけていたものとほぼ同じ内容。具体性に乏しく、外出やイベントの自粛などについて、個人や企業の判断に委ねる姿勢が目立つ。そもそも、国内で初の感染者が確認されたのは1カ月以上前。政府は、国内での感染拡大の恐れは少ないとして、移動制限などの抜本的な封じ込め策をとってこなかった。国内の感染者は2月24日正午現在で144人にまで増えている。政府の対応を巡っては、後手に回ったとの指摘が相次いでいる。
マスクの確保もできていない。ドラッグストアなどでは売り切れが続き、個人が買おうと思ってもできない状況だ。ネットなどでは便乗値上げも目立つ。政府はメーカーがフル生産することで、品不足は2月17日以降は解消に向かうと説明していた。だが、世界的な需要の高まりから輸入は難しく、国内の生産だけで確保できるめどは立っていない。せきなどの症状がある人はマスクをするように政府は呼びかけているが、そのマスクが手に入らないのだ。
政府が早期に徹底した対策をとれなかったのは、中国への配慮と東京五輪・パラリンピックへの影響を避けたかった思惑があると指摘されている。政府が中国からの入国制限を拡大したのは2月13日になってからだ。感染の有無の検査を受けられるのは当初、中国の流行地への渡航歴がある人らに限定していた。発熱などの症状があっても検査を断られた人もいて、感染者の発見が遅れた。今では渡航歴がなくても医師の判断で受けられることになっているが、実際は保健所で対象外とされるケースも相次いでいる。霞が関のある官僚はこう分析する。「中国の習近平国家主席の訪日を4月にも控え、全面的な来日拒否はしにくかった。感染の検査については積極的にしていない国も多い。日本だけが早くからやると、国内の感染者数が世界の中で突出し、五輪の開催が危ぶまれる。政府としては、水際対策で乗り切れると思っていたんです」 希望的観測は状況を悪化させた。水際対策は失敗し、国内での感染封じ込めはすでに難しくなっている。政府の専門家会議は2月24日の見解で、「一人ひとりの感染を完全に防止することは不可能」と認めた。米国が日本への渡航警戒レベルを、「注意を強化」に引き上げるなど、世界的にも日本への警戒感が強まっている。
大型クルーズ船での集団感染も問題となった。横浜港に停泊しているダイヤモンド・プリンセス号には約3700人が乗船していた。19日までに延べ3011人が検査を受け、そのうち621人の感染が確認されている。約5人に1人という高い割合で、感染を抑えるために船内で隔離したはずなのに、かえって被害を拡大した疑いがある。下船前の検査に漏れがあったことや、下船後のチェック体制の不備も指摘された。乗客のうち4人の死亡が、2月25日までに確認されている。船内業務にあたった厚労省職員やスタッフらの感染も次々に判明。政府は感染防止策は適切だったと主張しているが、早期に下船させて充実した施設で隔離できなかったのかなど、疑問は深まる。クルーズ船は英国船籍で、米国やカナダなどの乗客も多く、帰国後に感染がわかるケースもあった。日本政府の対応は失敗したのではないかとの疑念が、国際的に強まる。
不信感を招く閣僚の行動も発覚している。小泉進次郎環境相と森雅子法相、萩生田光一文部科学相が、新型コロナウイルス感染症対策本部の2月16日の会合を欠席。地元での新年会など私的会合を優先していた。3閣僚とも国会で反省は表明したが、明確な謝罪はなかった。失敗を素直に認めない姿勢で、本当に感染拡大が防げるのか。対策本部長でもある安倍晋三首相の対応が問われている。
今後の焦点は、夏の東京五輪・パラリンピックへの影響だ。すでに多くのスポーツ大会やイベントで、中止や延期、規模縮小が広がっている。加藤厚労相は今後の展開によっては、開催に影響が出る可能性を否定していない。今回の流行が夏まで続けば、開催の延期や縮小、無観客試合などに追い込まれる可能性が高まる。最終的に判断するのは日本政府ではなく、国際オリンピック委員会(IOC)や国際パラリンピック委員会(IPC)だ。五輪開催で支持率を上げたい安倍政権としては“強行突破”したいのかもしれないが、決定権は日本にはない。 
●中国メディアが新型肺炎で日韓を批判「後手で信念欠く」 2/25
新型コロナウイルスの感染が急速に広がる日本や韓国などに対して、感染源となった中国の官製メディアがより強硬な防疫措置をとるよう要求している。共産党機関紙、人民日報系の環球時報は25日付社説で「国を挙げた動員」による対応を検討すべきだと訴えた。一方、中国政府は、中国からの入国制限措置を発動した米国に対して「悪い前例をつくった」と批判し、一部の国の水際対策を「過剰反応」と反発してきた。渡航制限をしないよう各国に圧力をかけたことが世界規模の感染拡大を招いた側面もある。
社説は感染者が800人を超えた韓国の対応について、地下鉄など公共交通機関の運行規制が進んでおらず「措置が脆弱(ぜいじゃく)だ」と指摘した。中国国内で感染者の増加が続く湖北省は「完全な封鎖状態」にあり、同省以外の地域は感染拡大をほぼ押さえ込んだと主張。「状況が深刻な数カ国は、対外的に感染拡大させるリスクが中国よりはるかに大きくなった」と論じた。同紙は24日の社説でも、日韓などの措置は「不足」し、「行動が遅い」と懸念を表明した。中国政府系英字紙チャイナ・デーリーも25日付社説で、日韓などの当局の対策について「ほとんどが後手で信念を欠いている」と批判した。 
 
 
 2/26

 

●首相、今後2週間のイベント中止要請 新型コロナ拡大で  2/26
安倍晋三首相は26日、新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、今後2週間は全国的なスポーツや文化イベントの中止や延期、規模縮小を要請した。「この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要」と述べた。韓国の大邱(テグ)市と慶尚北道清道郡に滞在歴のある外国人の入国を拒否するとも表明した。政府が25日に公表した新型コロナ対策の基本方針では、イベント開催について一律の自粛要請はしないものの、開催の必要性を改めて検討するよう求めていた。首相は「多数の人が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については大規模な感染リスクがある」と指摘したうえで「今後2週間は中止、延期、または規模縮小等の対応を要請する」と強調した。「地方自治体、医療関係者、事業者、国民と一丸となって、新型コロナウイルス感染症対策をさらに進めていく」と呼びかけた。韓国・大邱からの入国拒否の措置は27日午前0時から実施する。入国申請前の14日以内に当該地域に滞在歴のある外国人を対象にする。これまで中国湖北省と浙江省を対象にしており、対象国を中国以外に広げるのは初めて。韓国国内では新興宗教団体「新天地イエス教会」の大邱市内の教会で起きた集団感染が周辺地域にも拡散している。 
●安倍首相発言の嘘 コロナ、IR汚職めぐる検事の定年延長 2/26
さすがに国民も気づき始めたことだろう。安倍晋三首相の言葉に、「誇張」や「フェイク」、「大風呂敷」が交じっていることを。振り返れば今に始まったことではない。政権復帰からの7年間、首相とその周辺は、嘘に嘘の上塗りを重ねてきたのではないか。そして今、塗り固められたはずの“嘘の壁”が崩れ落ちようとしている。
チェコスロバキアの共産党支配を無血で打倒した「ビロード革命」の中心人物で、劇作家でもあったハヴェル大統領は、地下出版された著書『力なき者たちの力』の中で全体主義体制下の社会をこう描いている。〈権力はみずからの嘘に囚われており、そのため、すべてを偽造しなければならない。過去を偽造する。現在を偽造し、未来を偽造する。統計資料を偽造する…〉(阿部賢一訳)。そして人々はそれを信じているように振る舞わなければならず、〈それゆえ、嘘の中で生きる羽目になる〉と。いつの間にか、日本も「権力者の嘘」の中で人々が生きて行かなければならない国になっているのではないだろうか。安倍首相は息を吐くように嘘をつく。新型コロナウイルスの対応に批判が高まると、自民党議員との会合でこう胸を張った。
「WHOも(日本の対応を)評価している」(2月21日) そのWHO(世界保健機関)の進藤奈邦子シニアアドバイザーが、新型コロナの緊急セミナーで、「中国は光が見えた。今、世界中が心配しているのは日本」(2月14日)と警鐘を鳴らしているのは聞こえないらしい。国会中継では、総理大臣がついたひとつの嘘を守るために、役人たちが嘘をつき、嘘が嘘で塗り固められていく様子をリアルタイムで見ることができる。その嘘は東京地検特捜部のIR汚職事件の政界捜査をストップさせた異例の人事をめぐって飛び出した。安倍首相は捜査が自民党の複数の議員に向かうと、国家公務員法の規定を使って政権寄りの黒川弘務・東京高検検事長を次の検事総長に据えるために定年延長を閣議決定し、特捜部ににらみを利かせた。
ところが、この閣議決定には“法律違反”の疑いがある。従来の政府の法解釈では「国家公務員法の定年延長規定は検察官には適用されない」とされ、野党の追及に人事院の松尾恵美子・給与局長も「現在まで同じ解釈を続けている」と認めた。黒川氏の定年延長の法的根拠が崩れたのである。窮地に立たされた安倍首相は、松尾答弁の翌日、国会で大胆な嘘をつく。「今般、国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」(2月13日) 法解釈を変えて黒川氏の定年延長に適用できるようにしたという苦しい説明だが、人事院側の答弁と180度食い違う。折れたのは松尾局長だった。「言葉が正確ではなかった」と自分の国会答弁を撤回したのだ。法務省と人事院はその後、法解釈を変更した証拠として協議文書を国会に提出したが、作成日が明記されていない怪しい代物だった。行政文書で日付がないなどありえない。国民の目には、総理の嘘を守るために官僚たちが役所をあげて「嘘の正当化」に走っているように映る。 
●中国が野生動物の食用を全面禁止 「悪習」を根絶 2/26
肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大で、中国の全国人民代表大会(全人代=国会)の常務委員会は24日、野生動物を食べる「悪習」の根絶や違法取引の全面禁止を決めた。湖北省武漢市の市場で扱われていた野生動物が、感染源になった可能性が指摘されているためで、取り締まりを行うなど管理を強化する。全人代常務委員会の決定により、ウサギやハトといった人工的な繁殖技術が確立された一部を除いて、陸上の野生動物の食用が全面的に禁止された。違反して野生動物の捕獲や取引などを行った場合には厳しく処罰するという。
国営新華社通信は「公衆衛生上の安全意識を高める上で重要な意義がある」という全人代常務委員会の担当者の発言を伝えた。中国では感染拡大を受け、当局が1月26日に野生動物の取引を一時的措置として禁止。中国メディアによると、野生動物保護法の改正にも動いているほか、各地では野生動物の違法取引の取り締まりにも乗り出しており、中国当局の今月11日の発表によると、1月23日以降に全国の公安当局が押収した野生動物は3万8190匹に上った。全人代常務委員会の決定でさらに対応を本格化させる。中国では野生動物を食べるのは「野味」と呼ばれ、北京などでは一般的ではないが、主に南部を中心とした食習慣とされる。2002〜03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)では、食用として売られていたハクビシンから人に感染したとの説が有力視された。そのため、ハクビシンなどの野生動物の取引が禁止されたが、その後まもなく解禁された経緯がある。
中国の専門家は今月24日の記者会見で、コウモリが新型コロナウイルスの宿主で、希少動物の「センザンコウ」が中間宿主であるという可能性を指摘している。これまでに、野生動物も売られていた武漢の海鮮市場から感染が広がったとされているが、現時点では感染源についてはっきりとしていない。 
 
 
 2/27-28

 

●安倍首相、全小中高校に臨時休校要請 新型肺炎、新法案準備も指示 2/27
安倍晋三首相は27日、首相官邸で開かれた新型コロナウイルス感染症対策本部で、私立を含め全国全ての小中学校、高校、特別支援学校に、3月2日から春休みに入るまで臨時休校とするよう呼び掛けた。また、感染拡大抑制などのため、必要な法案を早急に準備するよう関係閣僚に指示した。地域を限定せずに政府が全国の教育機関に休校を呼び掛けるのは極めて異例。7月からの東京五輪・パラリンピックを控える中、感染爆発への強い危機感を示した形だ。首相は要請の理由について「流行を早期に終息させるためには、徹底した対策を講じるべきだ。ここ1〜2週間が極めて重要な時期だ」と指摘。「多くの子どもや教員が日常的に長時間集まることによる感染リスクに備える」と説明した。また、入試や卒業式を終えていない場合は、感染防止策を取ったり、必要最小限の人数に絞ったりするよう依頼。行政機関や企業には子どもを持つ職員・社員への配慮を求め、「こうした措置に伴って生じる課題には責任を持って対応していく」と強調した。首相の要請は国公私立の全学校が対象となる。学校現場の感染拡大防止に向けては、北海道と千葉県市川市が先に全公立小中学校などの休校を決定。政府は25日にまとめた基本方針で、休校の判断は地域に委ねる方針を示していた。首相は対策本部で、新型ウイルスに対応するための法案について「既存の各種対策の実効性をさらに高めるとともに、感染拡大を抑制し、国民生活や経済に及ぼす影響が最小となるようにする」と説明。スポーツジムなどでの感染拡大を防ぐため、対策を至急取りまとめることも求めた。 
●新型コロナウイルス 武漢最初の患者“海鮮市場には行っていない” 2/27
新型コロナウイルスによる肺炎で、感染が最も深刻な湖北省武漢市で最初に新型肺炎を発症したとされている患者が、ウイルスの発生源とされる海鮮市場には「行っていない」と話していることがわかりました。中国メディアを通じて武漢市の当局が明らかにした情報によりますと、武漢市の記録上、最初に発症したとされている患者がウイルスの発生源とされる海鮮市場には「行っていない」と話しているということです。患者は去年12月8日に発症し、すでに退院しているということですが、詳しい行動履歴や市場の関係者と接触したのかなどはわかっていません。一方、中国政府系機関などの研究グループの論文では、「去年11月下旬にはヒトからヒトへの感染が始まっていた可能性がある」としたうえで、「ウイルスは別の場所から市場に持ち込まれた」との推論を発表しています。 
●コロナショックの先に待つ4つの最悪シナリオ 2/27
ニューヨークダウ平均が2日連続で1000ドル前後の下げを記録するなど、いよいよ新型コロナウイルスによる感染拡大の影響が経済にも波及してきた。加えて、韓国やイタリアでも感染拡大が起きており、中国・武漢から始まった今回の新型コロナウイルス感染拡大の恐怖を、世界中が認識し始めたと言っていいだろう。一方で、日本の危機管理はその甘さが際立っている。日本への渡航自粛を求める国も現れ、7月に行われる東京五輪の代替地としてロンドンが名乗りを上げるなど、今や日本の経済を根底から覆しかねないリスクも顕在化してきている。そんな中でささやかれ始めてきたのが、新型コロナウイルスによる経済への影響の深刻さだ。リーマンショック級とも、東日本大震災級とも言われる景気後退リスクに対して、日本政府は対応できるのか。そしてまた、われわれ国民もどんな準備をしていけばいいのか。現実には起こってほしくないが、新型コロナウイルス禍によって起こりうる最悪シナリオは4つある。失敗した安倍政権の危機管理!日本が第2の“武漢”に!?
【シナリオ1】 首都圏マンションはバブル超え? 東京五輪中止で“五輪バブル”の崩壊
2020年は、さまざまな意味で日本経済にとっては重要な1年である。そのハイライトとも言えるのが7月から開催される東京オリンピックだ。その東京五輪の開催が、今回の新型コロナウイルス感染拡大によって中止に追い込まれる可能性が出てきている。
感染爆発の度合いにもよるが、すでにアメリカでは日本に対して渡航注意のレベルを1つ上のレベルに引き上げており、イスラエルでは日本と韓国からの渡航者を入国拒否とした。
それに対して、日本では2月24日現在、外務省の対応は中国の湖北省全域、浙江省恩州市に対しては「渡航中止勧告」となっているが、それ以外の中国は「不要不急の渡航中止」となっている。
外国人に対しての入国規制は、日本の場合かなり曖昧で外務省がきちんとアナウンスしているわけではない。春節の前に中国の新型コロナウイルス感染拡大が明らかになっていたにもかかわらず、外務省は何も手を打たずに莫大な数の中国人観光客の来日を認めた。
クルーズ船の受け入れに対しても、日本人乗客が多い、日本人乗組員も100人いるといった事情を鑑みて入港を認め、検疫という名目で14日間留め置き、その間に600人を超す感染者をクルーズ船の中で発生させてしまった。
問題は、この状況次第で日本国内に感染爆発が起こるかどうかだが、日本が数千人単位の感染者を出した場合には、世界各国が日本への渡航を控えるようになり、最悪7月の東京オリンピックの開催に間に合うぎりぎりの期限とも言われる5月までに、現在の感染拡大が収まるかどうかが問われることになる。
イギリス・ロンドン市は東京開催が中止になった場合、「代替地」として立候補すると表明しており、その可能性はゼロではない状況だ。
仮に東京五輪が中止となれば、どの程度の経済的損失が発生するか。
東京五輪の経済効果は、東京都の発表で「32兆円」という途方もない数字が発表されているが、この数字には交通インフラの整備やバリアフリー促進といった間接的な経済活動も入っている。いわゆる「レガシー(遺産)」効果だ。
施設整備費や大会運営費、放映料と言った「直接的効果」は約5兆2000億円で、レガシー効果はその5倍の約27兆1000億円。とりあえず、直接的効果だけを考えれば、約5兆円の損失。日本のGDPが約500兆円とすれば、その100分の1を失うことになるわけだ。
1990年代のバブル期を上回る「五輪バブル」
実際に、帝国データバンクが昨年の11月に行った調査によると、東京五輪開催が日本の持続的な経済成長のために「有効だと思う」と回答した企業は半数に満たない46.8%にとどまっている。国内企業の半数しか東京五輪の需要を当てにしていないということだ。業界別で見た場合、プラスと答えている企業は、サービス(17.5%)、金融(16.8%)、運輸・倉庫(15.8%)、製造(15.5%)となっている。経済効果は、東京都で約20兆円、大会開催に伴う雇用誘発効果は東京都で130万人、全国で194万人と試算されている。壊滅的な経済危機に陥る、といった見方をする人もいるが、思ったほど大きくないかもしれない。ただ問題なのは、東京五輪開催というアナウンス効果によって、過剰な投資を生み、「五輪バブル」に陥っていることだ。不動産経済研究所が発表した2020年1月の首都圏マンションの1戸当たりの平均価格は8360万円。1月だけ突出した価格ではあるものの、この価格はバブル期の1990年11月(7497万円)を上回り過去最高になった。2019年の首都圏マンションの平均販売価格は5980万円となり、過去7年、平均で1500万円の上昇となっている。まさに東京五輪を起爆剤とした「不動産バブル」が再燃しようとしていると言っていい。放映権などの影響で東京五輪を10月とか11月に延期するとか、あるいは1年遅らせるといった延期の可能性は低い。そう考えると、やはり4月までには現在の感染拡大が収まることを祈るしかないだろう。
【シナリオ2】 消費は半減? 東日本大震災級の景気落ち込み! 能天気な「緩やかな景気回復」の化けの皮が剥がれる?
東京商工リサーチがこの2月20日に発表した『新型コロナウイルスに関するアンケート調査』によると、「現時点ですでに影響が出ている」と答えた企業が2806社(22.72%)、「現時点で影響は出ていないが、今後影響が出る可能性がある」は5401社(43.74%)、「影響はない」と答えた企業は、4141社(33.54%)となっている。
65%超の企業が「影響が出てくる」とみているわけだ。実際に、新型コロナウイルス感染拡大によって、さまざまな分野で影響が出ている。2月24日時点でわかっている影響を紹介すると次のようになる。
〇 札幌雪まつり……来場者数は前年に比べて202万人と71万人の減少
〇 インバウンド……三越伊勢丹では春節にあたる2月4〜10日の売り上げが昨年比2割減
〇 東海道新幹線乗客数……2月1〜19日の新幹線乗客数は対前年比で1割減
もともと日本経済は2018年末辺りから、景気が落ち込んでいると言われており、例えば民間設備投資の先行指標である「機械受注統計」では、2019年12月の数字が前月比12.5%と大きく下落した。機械受注は変動幅の大きな統計だが、コロナウイルスの感染拡大の影響を受ける前に、すでに2ケタの減少になっている。
日本経済が弱含みのときに、この新型コロナウイルスショックに襲われたわけだ。
最低でも3〜4カ月間、激しい落ち込みを覚悟すべき
一方、2月20日に発表された「月例経済報告」では、雇用や所得の環境が底堅いとして個人の消費は回復傾向にあり「景気は穏やかに回復している」と景気の見通しを発表している。西村康稔・経済財政再生相は「能天気に持ち直していると言っているわけではない」と釈明したものの、市場関係者の多くは「能天気でなければうそをついているのでは……」という印象を持ったはずだ。日銀が何もできないために、景気後退を隠蔽しようとしているのではないか、と考える専門家が多い。このままの状況で行けば、経済的なダメージはSARSなどの例を参考にするのではなく、東日本大震災のケースを参考にしたほうがいいのかもしれない。例えば、2011年3月11日に発生した東日本大震災直後の総務省統計局の「消費動向」を見ると、全体では約2割の減少となり、東京電力による関東地方を中心とした計画停電時には、教養娯楽費などが瞬間的に6割台にまで減少している。乗用車新規登録・届け出台数なども最大4割近い水準まで落ち込んだ。つまり、日本で感染爆発が起きた場合には最大で5割前後、消費が落ち込むことを想定しなければならない。ちなみに、東日本大震災では1カ月後には、全体的にみて通常の消費支出に戻っている。しかし、新型コロナウイルスではそうもいかないだろう。最低でも3〜4カ月の期間、激しい落ち込みを覚悟する局面もありえる。世界の動きはどうなるかわからないが、日本の景気後退はかなり大きくなりかねない。
【シナリオ3】 1ドル=125円超は悪性インフレへの入り口か?
ニューヨーク市場では、2月24日からの2日間で2000ドル近い下落となり、株式市場がいよいよ新型コロナウイルスのリスクを意識し始めたと言っていいだろう。アメリカ市場の流れを受けた2月25日の東京市場では、日経平均株価が一時1000円超下落した。
今後もしばらくは、株価が大きく下げることになりそうだが、日本の場合、こうした株価の下落は瞬間的なものでは終わりそうもない。日本は、消費税率アップや大型台風などの影響で2019年10〜12月期は、実質GDPが年率換算でマイナス6.3%となった。
そして、次の2020年1〜3月期もよほどのことがなければマイナス成長になるはずだ。2期連続でGDPがマイナスになると、いわゆる「リセッション(景気後退)」となり、海外投資家を中心に、日本の株式は大きく売られることになりかねない。ヘッジファンドや投資信託のファンドマネージャーやAI(人工知能)は、「リセッション=売り」とインプットされているからだ。
厚生労働省が、新型コロナウイルスのPCR検査の保険適応をいまだに認めていない現状を考えると、医療システムの崩壊を招くような感染爆発が起こる可能性もある。
そうなると、日本への飛行機の渡航が世界中から止められ、世界からの物資なども供給されなくなる。株価は大きく下落し、円が売られ、金利が上昇(債券価格の下落)することになる可能性が高い。
円安の影響で金融緩和すべき日銀にその余力はもうない
とりわけ心配なのが、新型コロナウイルス感染の世界的な拡大で、本来であれば安全資産であるはずの「円」が買われて円高になるはずが、2月に入って以降、逆の円売り=円安に進んでいることだ。安全資産であるはずの円だが、感染爆発が起これば1ドル=120円台まではあっという間に行くことになるかもしれない。その場合、円安の「分岐点」になるのは「1ドル=125円」だろう。かつて、日本銀行の黒田総裁が「1ドル125円以上の円安は望まない」という趣旨のコメントを出したことがある。「黒田ブロック」とも呼ばれているが、日本経済が許容できる円安の目安とも言われている。これを超えてくるようであれば、アベノミクスにとっては、未知の領域に入っていく。プラス要因としては、日本の製造業、とりわけ輸出産業は潤うことになるが、問題はそのときに世界が旺盛な需要を保っているかどうかだ。とりわけ日本が得意としている電子部品など工業製品の需要がどうなっているのか不安だ。マイナス要因としては、輸入物価の急激な上昇だ。日本は世界から莫大な量の食料品や石油などのエネルギーを輸入しているが、これらが円安の影響で急騰することになる。本来であれば、こういうときこそ日銀が金融緩和をすべきなのだが、現在の日銀にはその余力がない。マイナス金利拡大は、かえって社会を混乱させる可能性が高い。SARSのときは、日銀は2回金融緩和を実施できたものの、いまその余地は少ない。打つ手を持たない日銀のために必要なのは、政府はイタリアや韓国がやったような積極的な感染症対策だろう。厚生労働省が、新型コロナウイルスのPCR検査の保険適応をいまだに認めていない現状は、感染者を野放しにしておくのと一緒だ。
【シナリオ4】 日本の「武漢化」で全土が封鎖!健康保険、年金資金が枯渇する?
このシナリオが最悪のケースと言える。安倍政権の対応が遅れて、日本に感染爆発が起こり、医療システムが崩壊。日本のあちこちが中国・武漢と同じような状況になってしまうというシナリオだ。サプライチェーンの停滞で海外からの物流は途絶え、食糧不足などの物資不足に陥ることになる。
それどころか、日本中で企業活動が滞り、観光や娯楽といったサービス業も壊滅的なダメージを受けることになりかねない。海外からのヒト、モノ、マネーも遮断され、日本の輸出入もストップしてしまう。日本経済にとっては、まさに正念場となり、株価は底なしで下落する可能性がある。
ちなみに、医療システムの崩壊が指摘されている武漢市の致死率は4.9%、中国全体の平均致死率2.1%を大きく超えている。国土が狭く、人口密度の高い日本で感染爆発が起これば、まさに大惨事になるわけだ。
日本で限定的な感染爆発が起きた場合、経済的な損失は計り知れない。ただ、東日本大震災があった2011年のGDPは、震災被害の規模を16兆〜25兆円、GDPを最大0.5%押し下げると、当時の内閣府が震災直後に発表した。
実際には、2011年度のGDPはプラス0.4%となり、かろうじてプラスを保っている。リーマンショックは、2008〜2009年にかけて最大マイナス3%程度まで下落しており、金融危機のほうが実体経済に与える影響は大きいことを物語っている。
一方、新型コロナウイルスの感染爆発は別の不安を生み出す。医療システムの崩壊など国民の生活が壊滅的なダメージを受ける可能性があるのだ。
日本で感染爆発が起これば株価が大暴落し、その株式市場に莫大な資金を投資していた年金資金などクジラと呼ばれる公的資金が致命的な打撃を受ける。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も莫大な損失を出してしまうかもしれない。
高齢者の生活を支えている年金制度が資金不足となり、年金制度の崩壊=国民の生活が破綻するということだ。
「自民党」が戦後初めて迎えた試練
本来であれば、もう少し具体的な数字やシミュレーションを通して、最悪のシナリオを示したいのだが、現在の状況ではあまりにも不透明な部分が多く、将来の見通しが立たない。ひょっとしたら来月の今頃は、感染者数が激減して通常どおりの状況に戻っていくというシナリオも考えられる。ただ感染症の専門家が指摘するように、現在の状況ではここ2週間程度が感染者数増加の山場になるわけだから、その間の国内外の金融市場では何が起こるかわからない。想定外の事態をある程度考える必要はあるだろう。最大の問題は、安倍政権というよりも自民党政権が、こうした危機管理にあまりにも弱い体質が浮かび上がったことだ。振り返れば東日本大震災のときは、自民党ではなく旧民主党政権だった。クルーズ船で4000人の対応に苦慮していた自民党政権に比べて、数十万人単位の被災者が出た東日本大震災では、市町村、都道府県にある程度の権限を委譲して、対応できたことを考えると、現在の自民党の姿は国民不在の姿勢が目立つ。自民党政権が目指すような中央集権型の危機管理には限界があると言っていいだろう。そういう意味でも 今後の日本の行方は極めて不透明と言っていい。PCR検査も、安倍政権を擁護する評論家などが「パニックになるからダメだ」という表現をしていたが、東日本大震災時と同様の危機感をいかに持てるか。まさに危機管理の問題だ。ここでの対応を誤れば、もっとすさまじいパニックになることも想像したほうがいい。 
●NY株1100ドル超下落、コロナショック止まらず 2/28 
新型コロナウイルスの感染拡大に対する警戒感から、ニューヨーク株式市場の続落が止まりません。27日、ニューヨーク株式市場では、ダウ平均株価が6営業日連続で続落しました。取引終了直前に記録した下げ幅は、1200ドルに迫る1190ドル95セントで、最終的には、2万5766ドル64セントで取引を終えています。下げ幅が1000ドルを超えるのは今週に入って2度目で、今週だけで3000ドル以上も値を下げた格好です。一連の株価の続落に危機感を強めるトランプ大統領はこれまで、「アメリカ国内に対するリスクは低いままだ」と強調し、火消しに走っていましたが、感染拡大が続くことによる世界経済への警戒感と市場のリスク回避の動きに全く歯止めがかからない状況です。  
 
 
 2/29

 

●“焦り滲む”安倍首相の新型コロナ2つの大決断の背景と本音 2/29
「基本方針」策定直後の“追加要請”について会見で説明へ
新型コロナウイルスをめぐり、2月25日に感染拡大防止のための「基本方針」をまとめてから一転、翌26日の「大規模イベントの中止等」と翌々27日の「全国の小中高校などの臨時休校」というかつてない2つの“要請”に踏み切った安倍首相。これらの表明は、政府の対策本部での発言という形で行ったが、きょう29日午後6時から、いよいよ記者会見という形で、国民に向けた説明に臨む。この場において、「唐突」「場当たり」などという批判も受けた2つの決断についてどう説明するのだろうか。
1つ目の要請…イベント中止要請は「社会の空気感が変わったから」
25日に政府が感染拡大防止のために策定した総合的な「基本方針」には、「イベント等の開催について、現時点で全国一律の自粛要請を行うものではない」と明記されている。しかしその翌日に「多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については、大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は、中止、延期又は規模縮小等の対応を要請する」と方針を一転させたことについて、官邸担当の記者からは政府高官に対して「朝令暮改感がある」との指摘も出た。もちろん基本方針には「今後の感染の広がりなどによって適宜見直す」と記されているが、総合的な「基本方針」と題していただけに、“転換”への国民や企業の戸惑いは大きかった。政府高官は「『基本方針』を示したことで、企業や社会の空気感や受け止め方が変わったから、“要請”の度合いを強めた」と説明したが、岡田官房副長官は翌日の会見で「全国一律の自粛要請を行うものではないという点では変更はない」と基本方針の一貫性を主張するなど、政府内でも要請の位置づけは複雑なものとなっていた。
2つ目の要請…全校休校という異例の決断に側近らも戸惑い
2つ目の“要請”である「全国の小中高校等に対する臨時休校」について、安倍首相は27日の対策本部で、北海道や千葉県市川市が公立中学校などの休校を決めたことを取り上げ、「子供たちの健康安全を第一に考え、多くの子供たちや教員が日常的に長時間集まることによる感染リスクにあらかじめ備える観点からだ」と説明した。先のスポーツ・文化イベントの中止については、サッカーのJリーグが、政府の要請に先立って公式戦計94試合の中止・延期を決めていたが、この休校についても一部の地方自治体がとった措置に政府が追随するという類似した構図になっているが、電撃的に「全国の学校」を対象にしたことの衝撃度はより大きかった。
新型コロナウイルスの感染が国内で確認された当初から危機管理にあたっている政府高官も「27日の朝、聞いた。まさか『全国』に休校をするとは思わなかった」とこぼし、政府内で議論を重ねた結果ではなく、安倍首相周辺のごく一部による決断であるという認識を示した。またこの安倍首相の方針表明では具体的な中身の説明がなく、詳細については詰まっていなかった点も浮き彫りになった。臨時休校の期間については、3月2日から「春休み」までという曖昧な表現になっていたが、安倍首相の側近でもある萩生田文科相は、対策本部終了後、記者団に対し「私は目安として2週間くらいということを会議の中では発言したが、(総理の発言は)ちょっと(休校期間の)幅が広かったので、その辺どうしようかなと・・・」と言葉を選びながら官邸を後にした。
ある与党関係者は「萩生田文科相は、総理に『少し落ち着いて』と止めていた」と明かしたが、詳細を擦り合わせきれなかった総理発言に戸惑いつつの記者対応だったのかもしれない。
なぜ「基本方針」に2つの“要請”を盛り込まなかったのか?
これら2つの“要請”を「基本方針」に盛り込まなかった理由について政府筋は、「まさに社会の受けとめ方・空気が変わった。そんな中で、『今だ』というタイミングをみて、総理が政治判断をしたのではないか」と述べている。また、国会で野党から「後手後手の対応だ」と批判されていたことや、「この2週間が感染拡大防止の正念場」という専門家の知見も後押したとみられる。一方で、安倍首相の決断の背景には、支持率低下への危機感があると見る向きもある。24日に報じられたFNNの世論調査では内閣支持率が8ポイント以上急落し、36.2%に落ち込んだ。ある与党関係者は「衝撃的な数字」と語っていた。
そうした中での今回の2つの思い切った決断について、官邸関係者は「総理周辺が相当動揺して焦ってる印象。支持率下落を受けた場当たり的対応と見られても仕方ない状況になってきた」と明かした。今回のような「危機管理」に関する案件は、安倍政権にとってこれまで強みとしてきた分野だ。そして支持率を支える要因の一部になっていた。それだけに、きょうの記者会見は、安倍首相にとって、今回の決断に至った決意を示すことで国民からの危機管理面での信頼を回復し、支持率を上昇させるためにも重要な場となりそうだ。果たしてどんな言葉で国民に説明し、理解を得ようとするのか注目される。 
●新型コロナウイルス、大地震…。想定外の危機に必要な為政者の心構え 2/29
新型コロナウイルスの感染拡大への対応をめぐり、安倍晋三政権がこの7年余の長期政権下でかつてないほどの本質的な批判にさらされている。中国からの入国者の規制から、感染者が大量発生した大型クルーズ船に対する検査・隔離、あるいは感染防止のための暮らしの規制に関する指針づくりに至るまで、実効性のある初動対応を怠ったとの批判である。官邸主導が極まったことの反作用といえようか、菅義偉官房長官ら内閣官房に懸案処理が集中し、厚生労働省をはじめ現場との結節点に立つ組織の現実対応が後手に回る状況も否めない。その結果、危機がいつまでどこまで続くのか、国民が先を見通せず、不安を募らせるといった悪循環に陥っている。
一斉に噴出した長期政権の歪み
事実、たとえば日本経済新聞社の世論調査によれば、初動の屋内避難指示が批判を浴びた2016年の熊本震災の直後、政府の対応を「評価する」が53%で「評価しない」が35%だったのに対して、今回の新型肺炎に関しては、「評価する」40%、「評価しない」50%と逆転する。さらに熊本震災の場合は、内閣支持率を押し上げる効果がみられたが、今回はそれも真逆である。つまり、長期政権を下支えしてきた「危機管理」の確かさ自体が揺らいでいるのだ。くわえて、これも政権が選択した消費増税の影響もあり、昨年10〜12月期のGDP(国内総生産)は予想を超えるマイナスを記録。さらに、国際市場も軒並み株価を下げ、もうひとつの身上だった「アベノミクス」も揺らぐ。「桜を見る会」や検察の定年延長問題をめぐっても、国会で疑惑は晴らされることはなく、ここにきて長期政権の歪(ひず)みが一斉に噴き出した観がある。
新型肺炎の不安除去を求める世論
このままでは、悲願の憲法改正はもちろんのこと、自民党総裁「4選」を含め、首相の政権戦略は根底から覆ることになろう。だいいち、これまで状況をリセットし政権をテコ入れして来た衆院解散・総選挙さえも、自在にその時期を選ぶ能力を失ってしまうに違いない。もっとも直近の世論調査を見れば、内閣支持率は急落するものの、立憲民主党など野党の政党支持率は一向に上がる様子はない。世論は無党派層の増大という「踊り場」に依然としてとどまる。どの政党の誰が、この政権に代わって新たな将来への道筋を示し得るか、安倍政権が立ち直る可能性はないのか――。世論は全体状況を冷静に見極めようとしているように見える。政権の打倒や擁護といった極端な政局論は別にして、なにより世論はいま、景気と深く連動し始めた新型肺炎危機への不安を除去する確かな方策を希求しているはずだからだ。ならば、この局面で為政者に必要な心構えとは何か、それを見定める必要があろう。
阪神大震災を仕切った2人の官房副長官
そのための教材、そして教訓が、近年の日本にはある。ひとつは1995年の阪神大震災だ。同年1月17日午前、地震発生から数時間後の首相官邸。社会党の村山富市氏を首相に担いだ自社さ連立政権にあって官邸を取り仕切ったのは、2人の官房副長官だった。事務方のトップである石原信雄氏と、新党さきがけの園田博之衆院議員(故人)だ。2人には一昨年、平成政治史を振り返る企画でインタビューをした(詳細は論座「二人の官房副長官が語る平成政治史」で読める)。想定外の危機に臨んで為政者が何に悩み、いかに判断したかがありありと浮かぶ、生々しい回顧談である。
石原氏は証言する。「午前10時からの閣議の前に月例経済関係閣僚会議があり、予定してた案件について議論していたんですけど、秘書官か誰かから死者が100人か150人出たという情報が途中で入ってきたので私は席を外して、当時の国土庁防災局長を呼んで聞いたら、たいした情報が入っていない。そのうち警察庁から、大変な状態だと、死者が相当な数がのぼると。なぜ国土庁に情報が入って来なかったかというと、兵庫県の防災用の電話がひっくり返って通じないわけですよ。通常の行政ルートの電話は来ないが、警察ルートは別なんです。警察電話で人的被害がどんどん入る。そこで急きょその日の閣議は震災にどう対応するかの話に変わった。すぐ必要な手段を取ろう、何でもやらなきゃいかんとなった」 「被災地で消防は現地にいるから救助活動がテレビに映るが、自衛隊が全然映らなかった。私の部屋にも電話で随分抗議が来た。村山さん(富市首相)が社会党の左派出身だから自衛隊嫌いで出してないんじゃないかと。そんなことないよとだいぶ言ったんですけど。村山さんはとにかく何をさておいても自衛隊にやってもらわにゃいかんというので、私は防衛庁に電話した。防衛庁で中部方面 総監部から姫路駐屯地の部隊に命じて出動させたが、かなり時間がかかった。神戸まではかなり距離があり、近づくと道路が寸断状態で車両が止まったりしてな かなか到着できなかった」
一方、園田氏の証言はこうだ。「朝8時から経済関係の政府与党会議がありましたが、話題は二信組問題。 震災はぜんぜん話題にならなかった。9時から閣議があり、担当大臣の小沢潔さんが『死者は2人』と報告したが、さすがに閣僚の間から『こんなところにいちゃまずいんじゃないのか』という声が上がり、現地に向かうことになった」 「そうしたら昼休みに、竹下登(元首相)さんから私に電話があった。『亡く なった人が500人を超えた。国の一大事だ。総理記者会見をしないといけない。国を挙げて取り組まないといけない』と言う。すぐ執務室まで行って村山さんに伝え、午後2時から記者会見をすることになりました」
こちらから、「今ならそういう情報は官房長官に集約され、官房長官から総理に伝えると思いますが、そうではなかったのですね」と聞くと、園田氏はこう答えた。「だから、その後、法律も変えたし、官邸の中に危機対応のチームをつくった。そういうシステムになっていなかったので、自民党官邸だったとしても同じようなものでしょう」
改正された災害対策基本法
政府の災害対策本部の立ち上げも情報収集の方法も自衛隊の災害派遣も、平時に定められた煩瑣な手続きがあり、想定外の危機には限界があった。ただ、ここで想起すべきは、その年の暮れに災害対策基本法が改正された事実である。骨子は以下の通りだ。
○ 災害が「著しく異常かつ激甚な場合」は、これまで必要だった「災害緊急事態の布告」がなくても、全閣僚による緊急災害対策本部を設置できる。
○ 県知事の持つ自衛隊の出動要請権を事実上、市町村長にも認める。
○ 災害現場では、自衛官に警戒区域設定や土地・建物の一時使用などの権限を認める。
○ 国会閉会中でも海外からの支援受け入れに必要な政令を制定できる。
いずれも、危機対応を現実に合わせようとする行政と立法府の努力の末の「果実」であった。
忘れられない東日本大震災後の国会議員対談
もうひとつは、菅直人民主党政権下だった2011年3月11日の東日本大震災である。震災発生からほぼ1カ月後、筆者は田原総一朗氏が司会をするBS朝日の番組に呼ばれ、被災地である宮城県選出の民主、自民両党の国会議員2人の対論に立ち会った。一人は内閣府副大臣だった平野達男参院議員、もう一人は後に防衛相に就く小野寺五典衆院議員である。このときの対論は、自分の政治記者体験の中でも忘れることのできない豊かなものだった。語られたのはすべてが現場の体験に基づく具体論であり、政局臭は微塵もなかった。「これはぜひ今後の反省点にしていただきたい」と断った小野寺氏が、「(震災発生の)翌日、車で入った時にガソリンスタンドが全部しまっていて、オーナーに聞いたら『政府が緊急車両以外に販売するなという指示が出ています』と。給油待ちの車の列ができて緊急車両が通れなかった」と指摘。そして、高速道路も緊急車両以外は通れず、現場は重機の油がない。自家発電に頼る病院では重篤患者が亡くなりかねない瀬戸際だった、と続ける。
これに対し、平野氏は「当初は灯油も売らなかった。政府に電話して元売りに働きかけてすぐに放出してもらった。緊急車両を優先したのは一つの危機管理の考え方だと思うが、ガソリンスタンドで当初売らなかったのは私もいきすぎだと思う」と語り、さらに「最初の5日間は小野寺さんが言われるように、官邸は原発対応で精一杯だった」と認めたのである。さらに、小野寺氏が「家族の遺体を確認したいが車がないので中古車屋で買おうとしたら、車庫証明と住民票がないと売れない、と。かけあってようやく3日前、無くても買えることになった」と言うと、平野氏は「私も役所は今回の震災の凄まじさ、異常さを認識していなくて通常モードで仕事をしていたと思う」と応じた。なかでも驚いたのは、政権の危機対応組織の新設とトップ人事に、自民党が知恵を出した一件だった。
小野寺氏が「実は仙谷由人官房副長官(故人)に被災者支援対策本部長になってくれと申し入れたのは自民党。原発対応と震災対応を分けてやったらどうか、窓口を作って下さい、と。大島理森副総裁に同行し官邸に行って、この仕組みが出来た」と明かした。平野氏はどう答えたか。「自民党さんから言われたのは本当にありがたい。私どもも同じことを考えていた。このままでは窓口も分からない、必要なものを送り届けることが出来ない、と」。そして、「自民党さんとは政策協議をやって小野寺さんの言うように方向はほとんど一致している。政党の垣根を越えていろんなことが出来る可能性は高い」と言い切ったのである。
超法規措置は最低限。法整備を遅滞なく施す
石原、園田両氏が証言したように、想定外の危機に際して、為政者は二つの命題の狭間で厳しい選択を迫られる。何でもありとばかり超法規措置をなし崩しで連発するようでは、法治国家の原理原則は損なわれる。さりとて平時に定められた法制度に依拠するばかりでは危機は取り返しのつかない規模に拡大してしまう。あれかこれかでは、国民の不安を払拭(ふっしょく)することはできまい。むろん、そこに簡便なマニュアルなどあろうはずがない。ひとつ言えるのは、絶対的に必要な場合でも、超法規措置は最小限にとどめ、そのうえで遅滞なく法整備を施す、あるいは施す意思を明らかにする。そうした二枚腰の姿勢こそが、二つの命題の矛盾を解きほぐす道ではないか、ということだ。そのときに、政権・与党と野党に必要な姿勢は、平野、小野寺両氏の言葉に明らかである。すなわち、野党は将来に向け政権担当能力を示すうえでも、具体的かつ現実的な問題提起と対案をぶつける。政権・与党は自らの限界を深く認識し、野党の提起に耳を傾ける余裕を持って、オールジャパンの総合力を目指す――。教訓とすべきは、政党政治の本質に戻ることなのだ。
党利党略ではなく政党政治の本道を
実はあの時、背景に民主と自公の大連立を策する動きがあった。民主には政権延命の、自公には政権復帰という政局上の目論みはあっただろう。だが、危機に臨んでそうした党利党略が国民の心を掴(つか)むはずもなく、菅首相が乗り出した途端に、大連立の動きは雲散霧消した。党利党略では危機は乗り越えられない。繰り返すが、必要なのは、政党政治の本道を貫くことに尽きる。もちろん、それは目の前にある危機にも当てはまる。今からでも遅くはない。 
 
 
 

 

●新型ウイルスの特徴は? WHO調査報告書 2/29
新型コロナウイルスの感染が広がっている中国で、WHO=世界保健機関などの専門家チームが行った共同調査の報告書が公表され、感染者の症状の特徴や致死率などについて詳しい分析を明らかにしました。この報告書は、WHOが派遣した各国の専門家や中国の保健当局の専門家らによるチームが現地で調査にあたり、2月20日までに中国で感染が確認された5万5924人のデータについて分析しています。
感染者からみられた症状
▽発熱が全体の87.9% ▽せきが67.7% ▽けん怠感が38.1% ▽たんが33.4% ▽息切れが18.6% ▽のどの痛みが13.9% ▽頭痛が13.6%などとなっています。また、感染すると平均で5日から6日後に症状が出るとしています。感染者のおよそ80%は症状が比較的軽く、肺炎の症状がみられない場合もあったということです。
重症患者
呼吸困難などを伴う重症患者は全体の13.8%、呼吸器の不全や敗血症、多臓器不全など命に関わる重篤な症状の患者は6.1%だったということです。重症や死亡のリスクが高いのは60歳を超えた人や高血圧や糖尿病、それに、循環器や、慢性の呼吸器の病気、がんなどの持病のある人だということです。
子ども
逆に子どもの感染例は少なく、症状も比較的軽いということで、19歳未満の感染者は全体の2.4%にとどまっていて、重症化する人はごくわずかだとしています。子どもの感染について報告書では多くが家庭内での濃厚接触者を調べる過程で見つかったとしたうえで、調査チームが聞き取りを行った範囲では、子どもから大人に感染したと話す人はいなかったと指摘しています。
致死率
一方、5万5924人の感染者のうち死亡したのは2114人で、全体の致死率は3.8%でした。致死率は高齢になるほど高く、80歳を超えた感染者の致死率は21.9%と5人に1人に上っています。特に合併症の患者は致死率が高く、▽循環器の病気がある人は13.2% ▽糖尿病が9.2% ▽高血圧が8.4% ▽慢性の呼吸器の病気が8.0% ▽がんが7.6%となっています。また、感染拡大が最も深刻な湖北省武漢は、致死率が5.8%なのに対し、その他の地域では、0.7%と大きな差が出ています。さらに、ことし1月1日から10日までに発病した患者の致死率は17.3%となっているのに対し、2月1日以降に発病した患者の致死率は0.7%と低く、感染拡大に伴って医療水準が向上した結果だと分析しています。 
 
 

 

●2019新型コロナウイルス 
一本鎖プラス鎖RNAウイルスで、コロナウイルスの一種である。SARS関連コロナウイルスに分類される。人に対して病原性があり、急性呼吸器疾患(COVID-19)を引き起こす。2020年(令和2年)2月現在、中国武漢市での肺炎の流行をはじめ、世界各地で感染が拡大している。
名称
正式名称は2020年2月11日に国際ウイルス分類委員会(ICTV)によってSARS-CoV-2と命名された。世界保健機関(WHO)は暫定的な名称として「2019 Novel Coronavirus」の略称、2019-nCoVを推奨している。ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生学センターは2019-nCoVを使用している。また、アメリカの科学者(正式名称発表以前の2月上旬時点)や日本の厚生労働省では、単に「新型コロナウイルス」と呼んでいる。
名称については、不適切な非公式の呼称が広がる前に統一的な暫定名や正式名称を付ける必要があり、2009年に流行したH1N1亜型新型インフルエンザでは「豚インフルエンザ」という呼び名が流布したため、養豚業界への悪影響やエジプト政府が飼育豚を全頭殺処分する事態も起きた。一方、正式名称や一般的な呼称(通称)が問題をはらむ場合もある。WHOは地域の名称や地名と結びついた中東呼吸器症候群(MERS)やスペインかぜ、エボラ出血熱、ジカ熱などの呼称に批判的な見解を示しており、2015年に策定されたWHOの「名称決定についてのガイドライン」では、新たなヒト感染症・ウイルスの名称に地理的な位置、人名、動物や食品に関する名前、特定の文化や産業に関する名前を含むべきでないとしている。
発見
新型コロナウイルスは、2019年11月に発生が確認され、同年12月31日に最初に世界保健機関(WHO)に報告された。その後2019年〜2020年にかけての中国武漢でのアウトブレイクにおいて肺炎患者の核酸検査陽性患者サンプルにより、 ゲノム配列が決定された。
2020年1月20日、病原体を調査している中国・国家衛生健康委員会(NHC)専門家の鍾南山グループ長は、広東省でヒトからヒトへの感染(ヒト - ヒト感染)が確認されたと発表した。武漢市内での人獣共通感染症である可能性は否定されていない。新しいコロナウイルスに対する特定の治療法はないが、既存の抗ウイルス薬を流用することはできるとしている。
このコロナウイルスは2019年-2020年中国武漢における肺炎の流行の原因ウイルスとなっており、2020年1月下旬時点での主要なアウトブレイクは中国大陸に限局されていたが、その後は東アジア・東南アジアを中心とし世界各地に拡散しつつある。
特性
このウイルスの完全ゲノム配列は上海公共衛生臨床センター、武漢中心医院、華中科技大学、武漢市疾病予防控制中心、中国疾病予防控制中心感染症予防管理所、中国疾病管理予防センター、シドニー大学らの協力によって解読され、シドニー大学のエドワード・C・ホルムズ教授の協力の下、上海公共衛生臨床センターの張永振教授によって2020年1月11日に Virological.org 上に公開された。
その後、1月14日には国際核酸配列データベースGenBankで正式に公開されている。他種のコロナウイルスと比較すると、中国浙江省舟山市のコウモリで発見したSARSウイルスに一番近く、コウモリSARSウイルス、ヒトSARSウイルス、ジャコウネコSARSウイルスとも80%近くの類似度を持つことが、香港大学微生物学科感染症専門の袁国勇教授により報告されている。
分類
中国版CDCである中国疾病預防控制中心、病原体生物学研究所、武漢市金銀潭医院(Wuhan Jinyintan Hospital)から5種類の新規コロナウイルスのゲノムが単離および報告されている。RNA配列の長さは約30 kb。
武漢で分離されたベータコロナウイルス(英語版)(Beta-CoV)の配列は、コウモリに見られるベータコロナウイルスとの類似性を示している。ただしこのウイルスは、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS-CoV)や中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV)など他のコロナウイルスとは遺伝的に異なる。SARS-CoVと同様に、Beta-CoVのB系統(lineage B)に属する。
2020年2月11日、国際ウイルス分類委員会(ICTV)は、このウイルスはSARSコロナウイルス(SARS-CoV)と同じベータコロナウイルス属のSARS関連コロナウイルス(SARSr-CoV)という種に属すとの見解を示した。また、SARSコロナウイルス(SARS-CoV)の姉妹系統であるとし、SARS-CoV-2と分類、命名された。
ただ、SARS-CoV-2はSARS-CoVの子孫には当たらない。SARS-CoVとSARS-CoV-2は75-80%の相同性しかなく、それぞれ独立してヒトに伝播したものであると考えられている。
人に重大な疾患を引き起こすベータコロナウイルスは、他にMERSコロナウイルス(MERS-CoV)も知られているが、こちらは別種でありやや離れている。
感染の拡大
この株による最初の既知のヒトへの感染は2019年11月下旬に発生した。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の拡散は、2019年11月中旬に中国湖北省武漢市で最初に発生し、感染源はおそらく単一の感染動物に由来すると考えられている。その後、このウイルスは中国の全ての省に蔓延し、またアジア、ヨーロッパ、北米、アフリカ、オセアニアなど他の20以上の国にも拡散した。このウイルスのヒト - ヒト感染による拡散は、アフリカを除くこれらすべての地域で確認されている。
2020年1月31日、このウイルスの感染拡大が懸念されることから世界保健機関(WHO)は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)を宣言した。なお、季節性疾患による自然終息のシナリオが発生当初の見通しであり、この点は未だ議論されていない。
同年3月1日時点で、86,986人の感染が確認されており、そのうち79,826人は中国本土内である。ある数学的モデル予測によれば、1月25日の時点で、武漢市だけで感染者数は75,815人いたと推定された。中国本土以外における殆ど全ての症例は、武漢市からの旅行者、またはそれらの地域からの旅行者と密接な接触があった者である。感染率、すなわち感染確定数、または臨床上診断可能な感染者数に繋がる割合は依然として不明のままであるが、2月20日(15時30分 (UTC))までの新型コロナウイルス感染による死亡者数は 2,130人であった。死亡者数の95%は武漢市のある湖北省に局在している。
同年3月1日現在、世界中で86,986件の患者が確認されており、そのうち2,979人が死亡している。
院内感染ほか
2020年2月7日、武漢大学病院で検出された感染者数のうち4割は、同大学病院で院内感染したものだと言う内容の論文が発表された。
病原体
基本再生産数
SARS-CoV-2の基本再生産数(R 0)の見積もりに関する未査読の多くの研究は、数字の差異および評価が分かれているが、1.4 - 3.9と推定されている。これは無防備な状態では、SARS-CoV-2は通常、感染者1人当たり1.4から3.9人の新規感染者を生じさせるという意味である。これにより、SARS-CoV-2は少なくとも4人を連鎖的に感染させる事が確認されている。
他の未査読の研究では、基本再生産数を3.30 - 5.47とするもの、2.13 - 4.82とするものがある。
変異
2020年1月22日、日本感染症学会の記者発表会で館田理事長は「パニックになることがないよう、対応していかないといけない」と呼びかけ、「新型コロナウイルスが変異を起こしたら、SARSのようになるという可能性は否定できない」と述べ、今後も注視する必要性を強調した。
一方、中国・国家衛生健康委員会(NHC)の李斌副主任(次官級)は同日の会見で、「ウイルスが変異した可能性があり、さらに拡散するリスクがある」と明らかにした。中国本土では、人口動態予測に基づいた変異の可能性は極めて濃厚であり今後の対策が急ピッチで進められている。
疾患
特徴
中国の研究者が報告した主症状は2020年1月21日判明分で、40℃程度の高熱(98%)、乾いた咳(76%)、息切れ(55%)などである。他に、全身倦怠感、吐き気、筋肉痛等を催すと報告されている。顕著な合併症は肺炎である。しかし症状がないまま濃厚接触をしてしまう事が度々ある。
他のコロナウイルス科ウイルス感染症との鑑別は外観所見上からは難しい。ただし、発熱せずに死亡した患者もいるので、発熱検知装置だけで検出できない可能性もある。また、無症候キャリアが感染能を持つ可能性もある。
入院患者では呼吸困難や胸の圧迫感も多い。また、入院時のバイタルサインは比較的安定している。
感染対策
国立感染症研究所(NIID)は、2020年1月10日に特設サイトを設け、院内感染対策、積極的疫学調査をはじめとする対応を行っている。
院内感染対策 - インフルエンザ等の一般的な呼吸器感染症の病原体の微生物学的な検査を行いつつ、疑似症サーベイランスの届出について保健所へ相談する。
積極的疫学調査 - 「患者(確定例)」と「濃厚接触者」について、基本情報・臨床情報・推定感染源・接触者等必要な情報を収集。患者(確定例)対面調査を行う際は、眼の防護具、長袖ガウン、必要に応じてサージカルマスクではなく N95マスクを着用すること、としている。
検体採取・輸送マニュアル - SARS・MERSに対する病原体診断を参考に、鳥インフルエンザ A(H5N1 / H7N9)に準じた検体の採取を行い、「病毒を移しやすい物質カテゴリーB」を取り扱う輸送業者を利用して送付。
日本国政府は2020年2月1日施行の政令第十一号および政令第二十二号で新型コロナウィルス感染症を感染症法第六条第八項の指定感染症に指定し、「わが国に入国しようとする者が感染者である場合には入国を拒否するとともに、感染者であることを確認できない場合であっても入国管理を強化すべく、速やかに運用を検討する」としている。
予防
手など皮膚の消毒を行う場合には、消毒用アルコール(70%)を、物の表面の消毒には次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)が有効であることが分かっている。
物の表面に付着したウィルスはどの程度の期間生存できるか、各機関で意見が分かれており、WHOは数時間、ドイツ研究は4〜5日間、中国人民銀行は14日間とした。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、中国からの輸入品において新型コロナウイルスに感染するリスクは非常に低いとしている。
治療
日本内科学会の緊急寄稿文によれば、現在、効果を示す薬剤が発見された旨の報告はなく、暫定的にHIV薬とタミフルを併用しての治療が行われているが、国を挙げて専用ワクチンの開発も並行して行われている。
   医療現場の抱える問題
感染症発生初期において医師などの医療従事者への罹患、及び長時間労働などによる疲弊といった問題も浮上してくる。局所的地域感染から広域に拡大するにつれ同定された問題も増加する傾向にあり、医療現場の過酷化する環境にも配慮が必要である。
   感染症と社会構造
発達した情報通信環境において、ソーシャルメディアによる情報の拡散は情報確度を担保しうる反面、誤った情報も伝搬しうる二律背反を構築している。  
 
 

 

●新型コロナウイルス・ニュース
WHO(世界保健機関)は、日本時間の31日未明「緊急事態宣言」をしました。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が中国国外へと広がり、医療制度が整っていない国への感染をふくむ、さらなる感染拡大の危険を懸念しての判断となったようです。この記事では、これまでの新型コロナウイルス(COVID-19)に関するニュースを時系列で振り返ります。
日本時間の31日未明、世界保健機関(WHO)の緊急委員会は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」だと宣言しました。この発表を受け、日本政府は31日、新型コロナウイルス感染者の入国禁止を行う方針を官房長官会見で示しました。なお、関連して政府が派遣したチャーター機で帰国した日本人に対し、1人あたり8万円を請求するとしていましたが、これも政府が負担する方向で調整が行われているとのことです。
1月28日、日本政府は、新型コロナウイルス(COVID-19)を「指定感染病」とする閣議決定を可決させました。また同時に「検疫感染症」に指定するための政令も決定されています。当初は周知期間を十分に設けるため2月7日からの施行を予定していましたが、緊急事態宣言を受け2月1日に前倒しとなりました。
2019年
〇 12月31日、中国当局からWHO(世界保健機関)へ原因不明の肺炎の発生が報告
2020年
〇 1月1日、海鮮市場(華南海鮮城)を閉鎖
〇 1月5日、武漢市衛生健康委員会が感染者数5、うち7人重症と発表
〇 1月9日、新型肺炎に関する初の死亡例が中国で確認
〇 1月12日、中国国内の感染者のうち7例が退院、6例が重症
〇 1月13日、タイで最初の感染症例を確認
〇 1月16日、日本で神奈川県内で感染症例を確認
〇 1月19日、広東省深セン市で1人の感染確認
〇 1月19日、韓国で最初の感染症例確認
〇 1月20日、中国の深圳市や北京市にて新型コロナウイルス関連の肺炎の感染者確認(深圳市1名、北京市2名)
1月22日
〇 米国 中国・武漢からの渡航者の入国を5つの空港に制限
〇 WHOが緊急会議
〇 北朝鮮、中国からの観光客の受け入れを全面停止
〇 台湾、台湾と武漢間の団体旅行を一時停止
1月23日
〇 WHOが緊急事態宣言を見送り
〇 武漢市閉鎖、空港・鉄道・フェリーなどの交通機関が運行を全て停止
〇 全日空など複数の航空会社が武漢への運行を停止
1月24日
〇 台湾、中国大陸全土への団体旅行を中止
〇 日本 中国湖北省(武漢含む)への渡航を中止勧告へ(渡航レベル3に引き上げ)
〇 フィリピン 武漢からの観光者500人を強制送還(コロナウィルスを受け)
1月25日
〇 上海ディズニーランド 閉鎖
〇 米国シカゴで2例目の感染症例確認
〇 ネパールで初の感染症例確認
〇 フランスで初の感染症例確認(3人)
〇 日本で3例目の感染症例確認
〇 中国政府は海外旅行を事実上禁止を決定
1月26日
〇 香港ディズニーランド 閉鎖へ
〇 中国国家衛生健康委員会は新型肺炎の潜伏期間は平均で10日前後と発表。潜伏期間中に拡散させている可能性指摘。
〇 日本で4例目の感染症例確認
1月27日
〇 香港 湖北省からの入境を禁止へ
〇 日本 新型肺炎を「指定感染症」に指定すると発表
1月28日
〇 「新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する厚生労働省対策推進本部会議」を立ち上げ
〇 WHOは世界リスクを「高」に訂正
〇 米国 国立衛生研究所 新型肺炎のワクチン開発に着手
〇 北朝鮮 中国からの入国者は一ヶ月間隔離措置へ
1月29日
〇 日本政府が派遣した武漢への民間チャーター機で206人が帰国
〇 「厚生労働省健康フォローアップセンター」設置
〇 オーストラリア 新型コロナウイルスの培養に成功
〇 英国 ブリティッシュ・エアライズ 中国発着便を全便欠航
1月30日
〇 日本政府が武漢に派遣したチャーター機、2便目が日本到着
〇 WHO 2度目の緊急会議へ
1月31日
〇 WHO 緊急事態を宣言
〇 新型肺炎の感染者 計9,692人 死亡者 213人に
〇 仏 エールフランス 中国発着便を全便欠航
〇 フィリピン 武漢市含む湖北省からの旅行客の入国を禁止
2月1日
〇 フィリピンで男性が死亡。中国国外で初の死者
〇 武漢市からチャーター便で帰国した日本人の中から、新たに3人の感染が確認される。うち1人が再検査で陽性が判明し、再検査での感染確認は初の事例
2月4日
〇 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の清水港寄港中止
2月5日
〇 ベルギーで初の感染者を確認
2月7日
〇 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の感染者4人が、静岡県の病院に搬送される
〇 アウトブレイクの可能性にいち早く警鐘を鳴らしていた中国人医師が死亡。自身も新型コロナウイルスに感染していた
2月8日
〇 武漢市で入院中だった日本人男性が死亡。新型コロナウイルスの疑い
2月10日
〇 韓国政府が日本含む6国・地域への渡航自粛を要請
2月11日
〇 中国の新型コロナウイルス死者が1,000人を突破。
〇 WHOが新型コロナウイルスの正式名称を「COVID-19」と命名
2月12日
〇 新型コロナウイルスの影響により、世界最大のモバイル機器見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」の中止が決定
2月13日
〇 崎陽軒がクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」にシウマイ弁当を寄付するが、乗客に届かず
2月14日
〇 アフリカで初の新型コロナウイルス感染者が確認
〇 CP+(シーピープラス)2020 開催中止の決定
2月15日
〇 エジプトで初の感染者を確認
2月16日
〇 第36回 国技館5000人の第九コンサート中止発表
2月17日
〇 東京マラソン2020、一般ランナーによる参加中止を発表
〇 天皇誕生日の一般参賀の中止発表
2月18日
〇 米アップル、新型コロナウイルスの影響により、2020年1月に行った決算報告の財務見通しは無効と発表
〇 西武、新型コロナウイルスの影響により、歓迎セレモニー中止を発表
2月19日
〇 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から、新型コロナウイルス陰性の乗客の下船が開始
〇 関西インバウンド交流会2020が延期に
2月20日
〇 経済産業省、新型コロナウイルス対策検討自動車協議会の立ち上げを発表
〇 福岡市で初の新型コロナウイルス感染者を確認
〇 イラン・イスラム共和国で初の感染者確認
2月21日
〇 サンリオピューロランドが臨時休館を発表
2月22日
〇 レバノン共和国とイスラエルで初の感染者を確認
2月24日
〇 NY株が新型コロナウイルスの影響で約2年ぶりの下げ幅を記録
〇 日本国内の専門家会議が「今後1〜2週間が瀬戸際」との見方を示す
〇 クウェートで初の感染者確認
〇 WHOは記者会見で潜在的なパンデミックの可能性があるとし、できる限りの備えをする必要があると強調
2月25日
〇 新型コロナウイルスの影響でキャンセルが相次ぎ、中国人向けの愛知の老舗旅館が廃業
〇 Jリーグが試合の延期を発表
〇 長野県で初の新型コロナウイルス感染者を確認
〇 IOCのディック・パウンド委員が、東京オリンピック開催判断の期限を5月下旬と言及
〇 中国での死者が2,715人、感染者が7万8,064人となる
〇 イタリアで新型コロナウイルスによる死者が11人となる。
〇 新型コロナウイルス対策で政府が基本方針を発表
〇 アフガニスタン・イスラム共和国、バーレーン王国、イラク共和国、オマーンで感染者確認
2月26日
〇 四国で初の感染者を確認。ダイヤモンド・プリンセス号から下船した徳島の60代女性
〇 韓国の感染者が1,146人に
〇 日本政府が、韓国・大邱市からの入国拒否の方針を固める
〇 日本政府が、今後2週間のスポーツ・文化イベント、中止や延期を要請
〇 アルジェリア民主人民共和国、オーストリア共和国、クロアチア共和国、スイス連邦でCOVID-19の症例が報告
2月27日
〇 政府が3月2日から春休みまで、臨時休業を行うよう要請
〇 新たにブラジル連邦共和国、デンマーク王国、エストニア共和国、ジョージア、ギリシャ共和国、ノルウェー王国、パキスタン・イスラム共和国、ルーマニア、北マケドニア共和国でCOVID-19の症例が報告
〇 申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限が4月16日まで延長
2月28日
〇 東京ディズニーランド・東京ディズニーシー・ユニバーサル・スタジオ・ジャパン 2020年2月29日〜2020年3月15日 休業を発表
〇 新たにベラルーシ共和国、リトアニア共和国、オランダ王国、ニュージーランド、ナイジェリア連邦共和国で新たにCOVID-19の症例を確認
〇 WHO(世界保健機関)は感染が広がる新型コロナウイルスについて、世界的な危険性の評価を「高い」から「非常に高い」に引き上げ
〇 「#感染隠し」がTwitterのトレンド入り
〇 トイレットペーパーやティッシュなどが品薄になるとデマ情報が出回り買い占めが起こる
〇 東京オリンピック開催まで「あと147日」、「オリンピック中止」「中止だ中止」がトレンド入り
2月29日
〇 メキシコ合衆国とサンマリノ共和国でCOVID-19の症例を確認
〇 首相が緊急記者会見 
 
 
 3/1

 

●日本国内の感染状況 3/1
日本国内   感染 228人 死亡 5人
クルーズ船  感染 705人 死亡 6人
チャーター機 感染  14人 死亡 0人
合計        947人    11人
 (日本国内は、クルーズ船・チャーター機の帰宅後の確認を含む)
[ 感染確認者数 都道府県別の内訳 (3/1 am10 現在) ]
北海道 70人 / 東京都 37人 / 愛知県 29人 / 神奈川県 22人 / 千葉県 13人 / 和歌山県 13人 / 石川県 6人 / 熊本県 5人 / 大阪府 4人 / 沖縄県 3人 / 長野県 2人 / 岐阜県 2人 / 京都府 2人 / 福岡県 2人 / 宮城県 1人 / 栃木県 1人 / 埼玉県 1人 / 新潟県 1人 / 静岡県 1人 / 三重県 1人 / 奈良県 1人 / 徳島県 1人 / 高知県 1人 / 厚生労働省の職員や検疫官など 9人 / 計228人  
 
 
 3/2

 

●イラン 感染者1000人に近づく 歯止めかからず 新型ウイルス  3/2
イランでは、新型コロナウイルスの感染者が確認された地域は首都のあるテヘラン州を中心に全国31州のうち27州にのぼり、感染者の数は1000人に近づいていて、感染拡大に歯止めがかかっていません。イラン保健省は1日、新型コロナウイルスへの感染が確認された人が前の日より新たに385人増えて978人となり、死亡した人も11人増えて54人になったと発表しました。死者の数は中国を除くと世界で最も多くなっています。国営通信によりますと、感染者が確認されたのは全国31州のうち27州とほぼ全土にわたっていて、このうち首都のあるテヘラン州が最も感染者が多く、全体の3分の1以上の350人に上っています。イラン政府は対策として、各地で多くの人が集まる金曜礼拝を行わない措置をとっているほか、ナマキ保健相も1日、国民に対して、大規模な集会などを開かず、不要な外出を控えるよう呼びかけていますが、感染拡大に歯止めがかかっていません。 
●日銀総裁が談話 “市場に対し潤沢な資金供給に乗り出す” 3/2
新型コロナウイルスの感染拡大で、株価が急落するなど金融市場の動揺が続いているため、日銀の黒田総裁は2日、市場に潤沢に資金を供給するなどとした異例の談話を発表しました。市場から国債やETF=上場投資信託の買い入れを積極的に行う方針です。新型コロナウイルスの感染が広がる中、先週の東京株式市場では12年前のリーマンショックの時以来となる記録的な株価下落に見舞われ、2日も株価の下落が続いています。また、外国為替市場ではドルが売られて1ドル=107円台まで円高ドル安が進み、金融市場の動揺が続いています。こうした中、日銀の黒田総裁は2日午前10時前、臨時の談話を発表しました。黒田総裁は「最近の内外の金融資本市場では、新型コロナウイルスの感染拡大による経済の先行きに対する不透明感が強まり、不安定な動きが続いている」としています。そのうえで「日銀としては、今後の動向を注視しつつ、適切な金融市場調節や資産の買い入れの実施を通じて潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく方針だ」として、今後、市場に十分な資金を供給し、金融面からの対応を強化する姿勢を強調しました。日銀が金融市場の混乱に対して総裁談話を出すのは異例で、今後、市場から、国債や数多くの株式をまとめてつくるETF=上場投資信託の買い入れを積極的に行う方針です。日本と同じく株価が急落したアメリカでも先月28日、中央銀行にあたるFRB・連邦準備制度理事会のパウエル議長が緊急の声明を出して追加の利下げの可能性を示唆しています。新型コロナウイルスの感染拡大に端を発した世界的な金融市場の混乱に、日米の中央銀行がそろって警戒感を示した形です。 
●感染拡大は空気がよどみがちな閉じた環境 新型コロナウイルス  3/2
新型コロナウイルスの集団感染について厚生労働省の専門家のチームが国内のデータを詳しく分析した結果、感染した人の75%はほかの人にはうつしておらず、つぎつぎと感染が広がったのはほとんどが空気がよどみがちな閉じた環境だったことが分かりました。分析した専門家は「屋内の狭いスペースなどに人が集まるのを避けることで、感染の拡大を防げる可能性がある」と指摘しています。これは「クラスター」と呼ばれる感染者の集団が発生するのを防ぐために設置された厚生労働省の対策班の研究者グループがまとめました。グループは先月26日までに感染が集団で発生した10の事例を含む、国内の感染者110人について詳しく分析しました。その結果、75.4%にあたる83人は調査時点で誰にもうつしておらず、二次感染が確認された27人についても、半数以上で感染の広がりは1人にとどまっていました。一方で、1人から別の2人以上に感染が広がった11の事例はほとんどが屋内に多くの人が集まる閉ざされた環境で起きていて、中には1人から9人、12人に感染が広がったケースもありました。屋外など空気のとおりがよい環境では、2人以上に感染の広がりが確認されたのは2つの事例だけで、4人以上に広がったケースはありませんでした。感染症の流行は1人が別の人にうつす人数が1人を下回ると終息に向かうとされていて、グループによりますと空気の流れがよどみがちな閉じた環境が、感染の広がりに影響を与えている可能性があるということです。分析を行った1人で、北海道大学の西浦博教授は「現時点での分析だが、換気していても空気がよどみがちな屋内の狭いスペースに人が集まるのはリスクがある。特に軽くてもかぜの症状がある場合は、絶対に人が近距離で会話する環境に行くのを控えることが必要だ。今は屋内で密に集まるのを避けることで感染拡大を防ぐことができる可能性があるので、こうした環境のイベントなどは必要性を含めて開催するかどうか検討してほしい」と指摘しています。 
●中国 武漢 企業活動停止で大気汚染物質 大幅低減  3/2
新型コロナウイルスの感染がもっとも深刻な中国の武漢では感染拡大を防ぐため、工場の操業など企業活動が停止したことを受けて、上空の大気汚染物質の濃度が去年の同じ時期と比べて大幅に低下していたことがNASA=アメリカ航空宇宙局などの調査でわかりました。これは大気汚染を監視するNASAとESA=ヨーロッパ宇宙機関の衛星が捉えた中国・武漢周辺の地図で、二酸化窒素の濃度の変化を色分けして表しています。オレンジ色が濃いほど、自動車や工場などから排出される二酸化窒素の濃度が高いことを示しています。去年の図では中国の旧正月で春節の連休にあたる1月末から2月上旬までの間、二酸化窒素の濃度が一時的に低下したものの、その後、2月下旬にかけて、再び濃度が高まっている様子が伺えます。一方、ことしの図では、春節が終わった後も二酸化窒素の濃度に変化が見られないばかりか、春節が始まる前の年初と比べてもさらに濃度が低くくなっていることが見てとれます。NASAは過去15年以上にわたって収集してきたデータを見てもことしのような状況は例がなく、春節の影響や気候条件の変化だけでは説明がつかないとして、新型コロナウイルスの感染拡大で武漢が事実上封鎖され、工場の操業など企業活動が停止したことが影響しているのではないかと分析しています。 
●コロナ感染の運転手、小倉南区周辺で乗務 3/2
北九州市小倉南区に住むタクシー運転手の60代男性が新型コロナウイルスに感染したことに関し、男性はタクシー大手の第一交通産業の曽根営業所(同区)に勤務していたことが分かった。2日午後、同社が会見し、詳細を説明する予定。同営業所によると、男性は2月14日から20日までインフルエンザで仕事を休み、21、22、24の3日間は日中に小倉南区周辺で乗務していた。北九州空港(同区、福岡県苅田町)には行っていないという。21、24の両日は腎疾患による人工透析のため通院した。同営業所はタクシー26台が配置されており、約50人が勤務。他に体調不良を訴える従業員は確認されていない。営業所の消毒を終え、約2週間の営業自粛とし、従業員は自宅待機を指示したという。 
 
 
 

 

●今月上旬が「収束できるかの瀬戸際」 3/2
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が対策の基本方針をまとめた。政府の対策専門家会議(座長=脇田隆字・国立感染症研究所長)によれば、今月上旬ごろまでが「事態が収束できるかの瀬戸際」という。私たちが当面取るべき対応の要点をまとめた。
感染経路が分からないケースが多いが、ウイルス学的には、飛沫(ひまつ)感染と接触感染による場合が大半だ。感染者がせきやくしゃみで飛ばした痰(たん)や唾液、鼻水のしぶきを、口や鼻から吸い込んだり、知らずにそれに触れた手で食事をしたり、口や鼻、目をこするなどしたりして体内に取り込むケースだ。飛沫は会話でも1メートル、せきをすれば2〜3メートル、くしゃみなら5メートルは飛散する。発熱など症状が出ていない感染者でも、会話やせき払いで人にうつすことはあり得る。空気中に漂う、もっと小さな飛沫による空気感染は今のところ「起きていないと考えられる」(専門家会議)とされており、「せきなどが続く感染者と密閉空間に居続けない限り、さほど神経質にならなくていい」(新潟大大学院の斎藤玲子教授)という。市民レベルでできることは、まず頻繁な手洗いだ。マスクは、医療用の特別な物を除きウイルスを遮断する機能は低い。ただ、他人の飛沫を口の周囲に付着させないといった物理的バリアーにはなる。手作りのガーゼマスクでも、口や鼻を覆うなど正しく使えば付着物防止には役に立つ。毎日洗って清潔に保ちたい。マスクなしでも手洗い時に洗顔すると無意識で顔に触れた手からの付着物を除去できる。人混みに行った後は、洗顔とともにシャワーも浴びたい。
ドアノブなどの消毒には速乾性のアルコール消毒液が有効だ。除菌ウエットティッシュも含め入手難が続いているが、家庭用の漂白剤でもウイルスの外殻を壊す働きがあり、一定の効果が期待できる。水で薄めて使い、乾いた布やキッチンペーパーで拭き取りを。
風邪の症状が出たら、専門家会議は「外出せず自宅療養」を求めている。仕事や学校を休めないからと病院に行って症状を抑えてもらいたくなる気持ちは理解できるが、今は自重し、重症化する恐れのある人たちの治療が優先される環境づくりに協力したい。自宅では家族にうつさないよう気を付け、部屋の換気も心がけたい。もちろん、持病のある人や人工透析を受けている人などは、その限りではない。かかりつけ医に電話相談し指示を仰いでほしい。
イベントの自粛も相次いでいるが、専門家会議は「互いに手を伸ばして届くような距離で一定時間以上の会話を多数の人と交わす」ような環境、例えば宴会や立食パーティーなどを避けるよう求めている。過去、ある大学でインフルエンザが大流行し、疫学調査で、学内の学生サークルが一斉に催したコンパで感染が起こり、各クラスに広がった状況が判明したという。短期で終息させるためには、我慢のしどころと言えそうだ。福岡県透析医会の感染症対策委員を務める村石昭彦医師は「未知の感染症なので『正しく恐れる』ことは難しい。みんなで『謙虚に備える』ことが大切だと思う」と話している。 
●新型コロナウイルス 中国での死者2912人 感染者8万人超  3/2
感染が広がっている新型コロナウイルスについて、中国の保健当局は3/1日、湖北省で42人の死亡が新たに確認され、中国での死者は2912人になったと発表しました。また中国での感染者の数は新たに202人増え、合わせて8万26人となり、8万人を超えました。 
●中国専門家 新型ウイルス 初期段階 診断難し 3/2
新型コロナウイルスについて中国の保健当局の専門家チームのトップを務める鍾南山氏らが論文を発表し、感染者の中には入院時に発熱がなく、エックス線を使った診察で異常がみられなかった人も少なくなかったとして、これらの要因が初期の診断を難しくしていると指摘しています。この論文は先月28日にアメリカの医学雑誌のホームページ上に掲載されたもので、ことし1月29日までに新型コロナウイルスに感染した中国各地の患者1099人の臨床データを分析したということです。この中で入院期間中に発熱した人は88.7%にのぼった一方、入院した時点で半数以上の患者には発熱の症状がみられなかったことを明らかにしています。また重症ではない患者877人のうち17.9%にあたる157人がエックス線を使った診察などでも異常がみられなかったということで、こうした要因が初期の段階の診断を難しくしていると指摘しました。また分析の対象となった人の入院期間の平均は12.8日だったということです。論文では分析の対象になった患者の致死率は1.4%だったとしたうえで、感染者の早期の隔離や早い段階での診断と治療が致死率を引き下げる可能性があることを指摘しています。 
●NY外為:方向感探る展開、米株上げ幅縮小、ダウ一時300ドル超高 3/2 
NY外為市場では方向感を探る展開が続いた。各国当局による景気刺激策への期待が強まり投資家心理が改善。ダウは寄り付き後一時300ドル超高となったが、その後、50ドル高付近まで上げ幅を縮小。米10年債利回りは1.04%付近から1.1%まで上昇した。ドル・円は107円54銭から107円85銭で推移。ユーロ・円は119円68銭から120円10銭で推移した。ユーロ・ドルは1.1164ドルまで上昇後、1.1108ドルへ反落した。 
●日経平均6日ぶり反発、目先底入れかそれとも… 3/2 
週明け2日の東京株式市場は日経平均株価が安くスタートした後、プラス圏に切り返した。日銀の黒田総裁が緊急談話で潤沢な資金供給に向け前向きなコメントを出し、世界的な協調緩和に対する期待感が、空売り筋の買い戻しを誘う形となった。ただ、自律反発ともいえる戻りで上げ幅は小さくトレンドそのものが変わったようには見えない。ここでの投資スタンスはどうあるべきか、第一線で活躍する市場関係者に意見を聞いた。
「行き過ぎた悲観相場にとりあえず歯止め」
東京株式市場は、朝方はリスクオフの売りに晒される展開で始まったが、米国ではパウエルFRB議長が利下げの可能性を示唆したことに加え、日銀の黒田総裁もきょうの緊急談話で協調利下げに前向きともとれる発言を行っており、これによりとりあえず行き過ぎた投資家の不安心理に歯止めがかかった格好となっている。
今後の見通しとして、当然ながらきょうの値運びで下値リスクが解消したとはいえないが、日経平均がPBR1倍の水準である2万700円どころを下回ることなく反発に転じたことは評価でき、中期的にも底入れを果たした可能性はゼロではない。前週末の米国株市場ではNYダウが350ドルあまりの下落をみせたとはいえ、一時1000ドル超の下げをみせていたところからは大きく切り返した。2万5000ドルを割り込んだところでいったん目先の底に届いた感触もあり、米国株がここで立ち直れるのであれば、日本株もそれに追随する展開が想定される。
安倍首相は新型コロナウイルスに関する緊急対策の第2弾として2700億円の予備費活用を打ち出し、インパクトに見合うだけの必要かつ十分な経済財政政策を明言している。これがリーマン級の事態に陥らないためのなりふり構わぬ政策発動であるならばポジティブだ。日経平均は昨年の3月末2万1205円、あるいは月中平均2万1414円を意識した戻り売りをこなしつつ、当面の戻りメドとしては200日移動平均線が横に走る2万2200円近辺が意識されそうだ。 
 
 
 

 

●リーマンショックの再来か?「コロナ危機」にFRB利下げ示唆 3/2 
2月28日金曜日も、米国株式市場は値を下げ、7営業日連続して下落した。また、安全資産として米国債は買われ続け、10年米国債利回りは市場最低を更新し、1.16%まで低下した。28日の日中取引終了時間の直前になって、パウエル米FRB(連邦準備制度理事会)議長は、新型コロナウイルス感染拡大が米国経済の成長を脅かすリスクであるとの認識を示し、必要に応じ、政策金利を引き下げる用意があることを発表した。
1月28、29日のFOMC(連邦公開市場委員会)では、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標は1.50〜1.75%と、金融政策を維持していた。しかし、パウエル議長は今回の声明で「米国経済は足元で依然強さを維持している」としながらも、「新型コロナウイルス感染拡大のリスクが変質していることから、FRBは今後の展開と経済見通しへの影響を注視」しており、必要に応じて政策金利を引き下げる用意があると表明した。
世界的な株売りの展開のなか、資金逃避先を求めて安全資産に飛び付く動きが強まったことから、金利は急速に低下した。ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)は、同日、一日の下げとしては過去10年で最大の数値を記録した。3ヵ月物LIBORは1.46275%と前日比11.8BPS(=0.118%)低下した。また、フェデラルファンド(FF)金利先物相場は、2020年内に0.25ポイントの利下げなら、3回に相当する程度まで利下げを織り込んでいる。3月17-18日開催予定のFOMCで、0.25%の利下げが実施されることも織り込まれている状況である。
昨年難航した米中通商協議を経済成長のリスク要因と見るや、果断に金融政策スタンスを変更したFRBが、新型コロナウイルス感染拡大の影響をリスク要因と捉えて、再び積極的なペースで緩和を進めるとの見方を、市場が織り込みつつある。そして、パウエル議長の声明も、それに符合する。
実体経済への影響は、すでに指標にも出てきている。中国国家統計局が29日に発表した製造業購買担当者景気指数(PMI・2月)は35.7と、1月の50.0から大幅に悪化した。新型コロナウイルス感染拡大の影響を反映し、好不況を判断する節目とされる50を大幅に割り込んだ。これはリーマン・ショック直後の水準よりも低く、過去最低である。新型コロナウイルス感染拡大が、中国経済に大きな打撃を与えたことを示した。
特に生産動向指数が1月の51.3から27.8に低下し、新規受注指数も51.4から29.3に落ち込んだ。中国政府の感染抑止対策で、工場の操業再開が後ろ倒しとなったことや、人的な移動の制限により工場での人手不足が続き、操業ができなかったことが響いている。なお、サービス部門の景気指数も、非製造業PMIが1月の54.1から29.6に大きく落ち込んだ。
こうした実体経済への影響が出始めていることを受けて、新型コロナウイルス感染拡大対策として各国がどのような財政政策・金融政策を発動するかに注目していく段階に入るだろう。すでに、暫定的・初動的な対応策が出始めているが、経済成長が落ち込むリスクに対応して、どのよう政策を打ち出すかは、全体像がまだ見えていない。
金融政策では、パウエル議長の声明を待つまでもなく、緊急避難的な流動性供給や資金繰り支援の信用補完的な対応に加えて、大幅な金融緩和は検討されることになるだろう。恐らく、QE(量的金融緩和)に等しいものになる可能性が高い。財政面では、中小企業支援のための企業補助や減税措置、消費刺激のための賃金保証などが打ち出されるだろう。それは、リーマン・ショック後、金融緩和と財政政策の活用による需要創造が世界経済を支えた構図と同じである。
初期のアベノミクスやトランプ大統領による財政金融政策を総動員したマクロ政策が発動された過去とだぶる。新型コロナウイルスの感染拡大は、そうした政策が再び正当化される理由を与えるようにも見える。
リーマンショックとの違いは、現時点では、金融機関のバランスシートがそれほど傷ついていない点にあるだろう。リーマンショックは、サブプライムローンやクレジット・デリバティブによるレバレッジが、金融機関のバランスシートを極端に歪めたことが先進国経済の傷を深くした。いわば構造的な問題が事態を複雑化したのである。
しかし今回は、実体経済に世界的に広範に影響があり規模は大きいが、レバレッジが効いているわけではない。バランスシートの健全性を極端に損わなければ、リーマンショックほど長期の経済的な停滞にはつながらず、むしろ世界各国がリンクする政策を発動することよって、相対的には短期間の危機に終わる可能性があることも頭に入れておくべきではないかと考えている。
もちろん、一部の国ではバランスシートの傷みを抱えている国もある。イタリアは相変わらず金融機関の不良債権比率は高いし、韓国でも金融機関の脆弱さは否めない。日本も、公的部門の債務の大きさは、他国の比ではない。企業部門も世界的には債務比率が高まっていて、それがリスクシナリオになる可能性がないわけではない。そして、新型コロナウイルスの流行がいつ終わるのかが見えない点は、もちろん気がかりである。
だが今回の危機が、以前ほど構造的な問題とはいえず、実体経済への影響がリーマンショック時のような複雑骨折を引き起こすものでないとのシナリオに立てば、過度にリアクションを取るよりも、次の動きに対して準備していくことも重要ではないかと考えている。  
●ティッシュ・トイレットペーパー“買い占め” 3/2 
SNS上に投稿されたデマが原因で、スーパーやドラッグストアなどでトイレットペーパーやティッシュ—ペーパーが売り切れになる店舗が続出し、フリマアプリで高額出品されたり、ドラッグストアではこれらを求めて早朝から並ぶ人の姿も見られるなど、一種のパニック状態に陥っているのだ。
「2月24日ごろから、“トイレットペーパーやティッシュは製造元が中国で、生産元が生産していないから品薄になる。早めに買っておいた方が良いかもしれない”といった情報がSNSに複数投稿され、瞬く間に拡散していきました。すると、時を同じくして《近所のドラッグストア、トイレットペーパー売り切れてた》との書き込みも多く見られるようになったのです」(フリージャーナリスト)
こうした事態受け、2月28日に製紙メーカーの業界団体・日本家庭紙工業会は、「トイレットペーパー、ティシューペーパーについてはほとんどが国内工場で生産されており、新型コロナウイルスによる影響を受けず、現在も通常通りの生産・供給を行っております」と声明を発表。同日には岡田直樹官房副長官も買い占めや転売をしないよう呼びかけている。
しかし、現在もなおトイレットペーパー、ティッシュペーパー、さらにはキッチンペーパーまでもが店頭からは消えた状態で、公衆トイレや飲食店のトイレからペーパーが盗まれるという事態にまで発展している。なぜ、SNSの情報がデマとわかっていながらも、このような状況になってしまったのだろうか。
「マスク不足が恐怖心を助長させたのではないでしょうか。多くの人がマスクを買いたくても買えない状況が前提となり、ティッシュなどの不足の情報はデマだとわかっていても“もし他の人が信用して買い占めたら、マスクと同じように買えなくなってしまうかもしれない”という心理に陥り、自らが買い占めを行っているのです。SNSやメディアでティッシュなどの棚が空になった画像や映像が拡散していることも、これに追い打ちをかけ、デマがいつの間にか事実になってしまった。こうなった以上、在庫が潤沢であるということを、アナウンスではなく目の前の売り場で見られる状況にならなければ、買いだめする人は後を絶たないでしょうね」(経済ジャーナリスト)
“わかっていても”の心理が最も厄介のようだ。  
 
 
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●リーマンショックと新型コロナウイルスの違いと、金暴落の可能性フラグ 3/3 
リーマンとコロナでは日本の経済状況は全く違う
「今回の下げ幅はリーマンショック並み」とメディアが連呼していますが、リーマンと今回の新型コロナウイルスでは経済の状況が全く違います。その理由と、今後金を含めてどうなるのかを説明していきます。経済状況で考えていきましょう。リーマンショック前まで、日本はデフレ経済に苦しんでいました。現在はデフレこそ脱却し、満足できる状況ではありませんが言葉の意味ではインフレ経済になっています。リーマンショック前までは、アメリカのサブプライム層が住宅を購入することができ、住宅価格などの上昇から全世界で好景気を謳歌していたのですが、結局、住宅価格の軟化からサブプライム層がローンを返済できなくなっていたことから、アメリカ経済が破綻しました。きっかけは、リーマンブラザーズという証券会社の破綻です。つまり、アメリカや世界が絶好調の中、日本だけは取り残されていたので、株価の下げは大したことではなかったのです。それでも23%程度の下げでした。絶好調だったアメリカ株の下げは50%以上の大暴落しました。
なぜ今このような説明をするのか?
今回のコロナウイルスの初動時、本国である中国の被害が一番大きいのはもちろんですが、周辺国の被害もひどいのは確かです。その順位が1位香港、2位台湾、3位ベトナム、ほかはタイやシンガポール、マレーシアだという識者、専門家と称する人たちがほとんどでしたが、大きな誤りです。これはリーマンショックのときにも通じる話であり、日本もリーマンで農工中金などの金融機関が被害を受けましたが、欧米に比べると被害は少ないので日本の株価は大して下がらなかったという評価が一般的です。言われればその通りですが、本当の評価は違います。その直前まで日本株は大して上昇をしていなかったから、あまり下がらなかったのです。これに対してコロナウイルス初動時は、香港が一番影響が大きかったとやっているのですが、大きな間違いになります。
激しく落ち込むのは香港ではなく…
香港は去年何がありましたか?逃亡犯の引き渡し条例を発端に、最終的には民主化運動になりました。その間、町のスーパーや小売店は閉鎖です。このような状態で香港経済が良化するかといえば、そうなるわけがありません。香港の経済が上昇をしていないのに、経済地盤が沈下するわけがないのです。ゆえにコロナウイルス初動時に東南アジアで最も落ち込みが激しいのは、2019年に経済が好調であったシンガポールやタイです。短絡的に考えると、地理的には台湾や香港ですが、そもそも民主化運動や総統選挙で経済が停滞、横ばいだったものですから、大した落ち幅ではありません。リーマン時に日本の株価が23%しか落ちなかったのは、そもそも株価が上がっていなかったからでした。今回の場合はどうなのかを、こういった観点で考えなければいけません。
今回のケースで日本はどうなる?
今回の日本は、2013年からアベノミクスがスタートして、株価は新値近辺に行っています。アメリカなどは史上最高値を連日更新していたので、シンガポールやタイと同じことになります。つまり、高値追いをした市場は下げも半端じゃないということです。日本が2万3000円だった株価が現在、2万1000円くらいですが、9%程度の2000円の下げで済むと思いますか?リーマン時の欧米は、軒並み最安値を3ヵ月で更新したんですよ。経済好調のリスクとは、それによって高値になったものが叩き落され、必要以上に売られることなのです。
金はどうなるの⁉
金は言うまでもなく、リスクの最先端にあります。今年に入って最高値を何回更新しましたか?このコロナでリーマンと同じように株価が50%以上下がった場合、1500ドルでは済まず、1200や1300も現実路線になります。でも、その後は各国が低金利に誘導するでしょうから、また上昇しますよね。リスク回避だから金が上昇するなんてことを言っているのではなく、暴落する可能性があるのです。リーマンのときはドル安によってその前まで金は急騰していました。今回の場合は金利安で急騰です。しかし、債券の現金化が進行した場合、債券価格は下落し金利は急騰します。その場合、金は大急落になります。現在、債券価格は安定、金利も低下で、2月28日は50ドルほど急落しましたが、こんなものは金利が急騰したら最悪の展開になる可能性もあるということを覚えておいてください。少なくともリスクの一つとしてカウントしたほうがよいでしょう。金価格が史上希に見る高値の今こそ、金を売るベストタイミングです。  
●米アップルのクックCEOが新型コロナの状況を楽観視する理由 3/3 
米CNBCやロイター通信などの2月28日〜29日付報道によると、米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は新型コロナウイルスの感染拡大について、中国では状況が収拾しつつあるとの見方を示した。新たな感染者の数が日ごとに減少していることを踏まえ、ここ最近の中国の状況を楽観視していると述べたという。
また中国のiPhone製造工場はすでに操業を再開しており、通常の生産体制への回復に向けた第3段階にあるとしている。中国の直営店は8割が営業を再開しているとも述べたという。
その一方で今後同氏が注視していくのは、感染が急速に拡大している韓国とイタリアの状況だという。「我々にとって中国のサプライチェーン(供給網)は他国のそれよりも重要だ。しかし、韓国とイタリアにも重要なサプライヤーや取引先がある。状況を見守る必要がある」と述べたという。
アップルは、韓国のサムスン電子とLGディスプレーや、イタリアに工場を持つ欧州の半導体大手、STマイクロエレクトロニクスから主要部品を仕入れているとロイターは伝えている。
アップル、19年10〜12月の業績が回復
米CNBCなどは2020年1月、クックCEOの2019年度(2018年10月〜2019年9月末)の報酬が前年度を下回ったと、アップルの米証券取引委員会への提出資料を基に報じた。その要因は売上高の半分以上を占めるiPhoneの販売が低調だったためだと言われている。
ところが、同社が2020年1月下旬に発表した2020年度第1四半期(2019年10〜12月期)の決算は、売上高が前年同期比9%増の918億1900万ドル(9兆9000億円)、純利益が同11%増の222億3600万ドル(2兆4000億円)で、いずれも四半期の過去最高を更新。iPhoneが5四半期ぶりに増収となったほか、腕時計型端末「Apple Watch」の販売も好調だった。
中国工業情報省(工情省)傘下のシンクタンク「中国情報通信研究院(CAICT)」も、2019年12月の同国におけるiPhoneの推計出荷台数が前年同月比約18%増の320万台となり、iPhoneの中国販売が回復した報告していた。また米調査会社のIDCは、アップルの2019年10〜12月期における世界スマートフォン出荷台数は7380万台となり、サムスンを抜いて首位に浮上したと報告した。
工場閉鎖の延長と中国直営店の全店閉鎖
新型コロナウイルスの感染拡大による影響が顕著に現れたのはこの頃だ。アップルは2月1日、中国本土の直営店「Apple Store」全42店の一時閉鎖を決定。オフィスと顧客サポート窓口も閉鎖した。同国では春節(旧正月)に合わせた連休が延長され、多くの都市で2月9日まで工場の操業再開が禁止された。
iPhoneの組み立てを請け負う台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)は敷地面積140万平方メートル(東京ドーム約30個分)の施設を河南省の省都、鄭州市に持つが、ここでも同様の通達が出された。英フィナンシャル・タイムズによると、ホンハイは他の十数の省にも大規模な工場を持つが、いずれも同様の規制が設けられた。河南省のほか、浙江省や広東省などの感染者の多い省は、いずれもテクノロジー企業にとって重要な製造拠点。「今回の事態は明らかに大問題だ」と投信調査会社モーニングスターのアナリストであるドン・ユー氏は述べたという。
その後、アップルは2月24日までに上海や南京、広州などの一部のApple Store、計29店を再開した。ただし、多くの店は今も短縮営業中だ。アップルの中国サイトによると、北京では通常の営業時間が午前10時から午後10時であるところ、現在は午前11時〜午後6時で営業中。サイトでは「公衆衛生と予防の考慮事項に基づき、一部の小売店を一時的に閉鎖しています。再開した店舗に入る前にはマスクを着用し、体温検査を受けてください」と告知している。
アップル、売上高予想未達の見通し
アップルにとって中国は製造と販売の拠点であり、新型コロナウイルスの感染拡大は同社の業績にも影響が及ぶと指摘されている。こうした中、アップルは先の決算発表の電話会見で630億〜670億ドル(6兆8000億〜7兆2000億円)としていた2020年1〜3月期の売上高予想を達成できない見通しだと明らかにした。
その理由は2つあるという。1つは、iPhoneの全世界向け供給が今後一時的に制限されること。最初に感染が広がった湖北省には同社製品の中国工場はなく、すべての工場が操業を再開しているという。しかし生産能力の回復が当初の予想よりも遅く、売上高に一時的な影響を及ぼすという。もう1つは、中国市場におけるアップル製品に対する需要の低下だ。中国国内の店舗が一時閉鎖や短縮営業を余儀なくされ、来店客が著しく減少したと同社は説明した。
1月の中国スマホ販売36.5%減
中国情報通信研究院によると、同年1月の中国スマートフォン販売台数は前年同月比36.5%減の2040万台と、大きく落ち込んだ。感染拡大の影響で消費者需要が圧迫されたという。ロイターやCNBCの報道によると、影響を大きく受けたのは米グーグルのOS(基本ソフト)「Android」搭載のスマートフォン。その出荷台数は前年同月比39%減の1810万台だった。これに対し、iPhoneの出荷台数は200万台と、同ほぼ横ばいだったという。
スイス金融大手UBSのアナリスト、ティモシー・アーキュリー氏はこの統計を基に、1月のiPhoneの中国販売台数は同5%増となり、他のスマートフォンと比較し著しい成長を示したと報告した。ただ、同氏は、2月は状況が変わるとみている。店舗の営業再開や生産能力回復の遅さが2月の業績を悪化させる可能性があり、先行きは不透明だとアーキュリー氏は指摘している。
米調査会社のIDCも2月27日に公表したリポートで同様の報告をしている。それによると、2020年上半期の世界スマートフォン出荷台数は前年同期比10.6%減少する見通し。最も打撃を受けるのは中国市場だが、他の主要市場も影響を受けるとしている。その理由は、サプライチェーンに生じている部品不足や工場閉鎖、物流遅延といった混乱だ。これにより2020年通年のスマートフォン世界出荷台数は前年比2.3%減の13億3980万台にとどまり、市場がプラス成長に転じるのは2021年以降だとIDCは予測している。  
●“クラスター”か ともに参加の展示会で夫が感染 妻の思い  3/3 
北海道北見市で新型コロナウイルスの感染者10人が参加し、「クラスター」という集団の感染が発生したとみられる展示会に夫とともに参加し、2日に夫の感染が確認された女性がNHKのインタビューに応じ、「展示会の会場は人が多く、換気もほとんど行われていなかった。自分も感染している可能性があるので不安だらけです」と胸の内を明かしました。
NHKの電話インタビューに応じたのは、北見市の60代の女性です。女性は自営業の夫とともに先月14日と15日の2日間、市内で開かれた住宅設備関連の展示会に参加していましたが、その後、展示会にいた女性の夫を含む10人が新型コロナウイルスに感染していたことが確認されました。参加者はおよそ700人がいた展示会の状況について、女性は、年齢層は高齢者や若者も含め幅広かったとしたうえで「入り口は1か所しかなく、換気はほとんど行われていなかった。商談相手に近づいてテーブル越しに話すこともあった」と説明しました。
夫は先月22日に37度6分の熱が出て、3つの医療機関を受診したあと入院し、2日に感染が確認され「解熱剤を飲んでもまた発熱していた。深く息をするとコンコンとせきがでる程度だった」と述べました。保健所に電話で相談すると、当初は「肺炎症状がないから新型コロナウイルスではない」と回答していたということで「夫の感染が判明したときはショックで、2人で黙り込んでしまった。自分も感染している可能性があるのでこの先どうなるのか、不安だらけです」と胸の内を明かしました。
女性の夫など感染者10人が参加していたこの展示会について、北海道は「クラスター」という集団の感染が発生したとみて、女性を濃厚接触者として今月14日まで経過観察にするとともに、ほかの参加者にも感染者がいないか詳しく調べています。 
 
 
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●米FRB 緊急利下げを決定 ウイルス感染拡大で  3/4 
新型コロナウイルスの感染拡大への懸念から株価の急落などが続く中、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は3日、緊急の追加利下げに踏み切りました。G7=主要7か国で打ち出した協調姿勢を受けた形ですが、金融市場の動揺を食い止められるかどうかは、なお不透明です。FRBは3日午前(日本時間3日夜)、臨時の会合を開き、追加の利下げを全会一致で決めました。利下げ幅は0.5%と通常よりも大きく、政策金利を1%から1.25%の範囲にしました。FRBが、臨時の会合を開いて利下げを決めるのは、いわゆるリーマンショック直後の2008年10月以来、約11年半ぶりのことです。感染が拡大する新型コロナウイルスの世界経済への影響を懸念し、ニューヨーク市場での株価の記録的な値下がりなど、世界の金融市場の動揺が続く中、日本時間3日夜、G7=主要7か国の財務相・中央銀行総裁が電話会議を開き、景気への影響を抑えるため協調姿勢を打ち出しました。アメリカの緊急利下げはこうした動きを受けたものですが、今月17日から予定されている定例の会合を待たずに、異例の対応を迫られた形です。ただ、利下げ後の株式市場の値動きは依然不安定で、金融市場の動揺を食い止められるかどうかはなお不透明です。
緊急利下げの直後に記者会見したFRBのパウエル議長は「ここ数週間で変化したのは新型コロナウイルスの感染が、より広範囲にわたっていることやアメリカでも少しずつ広がり始めたことだ。経済の先行きにリスクがあると判断し、行動することにした」と述べました。そのうえで、パウエル議長は「新型コロナウイルスの感染の拡大は、観光や旅行、グローバルのサプライチェーンに依存する産業から懸念が出始めていて、影響は極めて不確実だ。状況が改善するのにどれくらいの時間がかかるかは誰も分からない。金利の引き下げが感染を減らすわけではない」と述べ、先行きは不透明だという認識を強調しました。
アメリカのトランプ大統領は3日、演説の中で触れ、「FRBがやっと利下げをした。他の国の金利はもっと低く、負けないようにするべきだ。とても簡単な話だ。FRBの金利は高すぎる」として、FRBの措置は不十分だという認識を示し、さらなる金融緩和を要求しました。 
●米FRB緊急利下げ リーマンショック以来 3/4 
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、アメリカの中央銀行にあたるFRB(=連邦準備制度理事会)が3日、緊急の利下げに踏み切った。FRBはリーマンショック後以来となる緊急の利下げに踏み切ったが、ニューヨーク市場ダウ平均株価はその後も売りが優勢な展開となり、速報値で788ドルあまり値を下げて取り引きを終えている。FRBパウエル議長「(新型コロナウイルスの)感染拡大は多くの国の経済活動を混乱させ、金融市場に大きな影響を与えた」 パウエル議長はこのように述べ、政策金利を0.5引き下げて、1%から1.25%とした理由を説明した。新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済の先行きに不安が高まっており、FRBは定例の会合を待たずに緊急の利下げに踏み切った。緊急利下げはリーマンショック以来11年半ぶり。パウエル議長は「利下げが経済を促進すると信じている」と述べたが、追加の利下げなどには言及せず、ニューヨーク市場では、会見中から売りが進んだ。また、10年物の国債の金利が史上初めて1%を割り込んだことも売りを加速させ、ダウ平均は一時1000ドル近く値を下げた。最終的には、前の日より速報値で788ドル62セント下げて、2万5914ドル70セントで取り引きを終えている。 
●国民民主党・玉木代表が新型コロナ対策で危惧 3/4 
「リーマンショック級の大恐慌も」
国民民主党の玉木雄一郎代表は4日、国会内で記者会見をして、主に新型コロナウイルス対策について説明した。まず玉木代表は、なぜ政府は改正を議論する前に新型インフルエンザ等対策特措法を使わないのかと疑義を呈した。特措法では重大な被害の恐れがある新型インフルエンザが国内で発生、急速なまん延の恐れがあると政府が判断した場合、緊急事態を宣言する。自治体はあらかじめ定めた計画に沿って対応するとなっている。
玉木代表は、「新型インフルエンザ等対策特措法の改正について、我々はいち早く適用すべきだと言ってきたので協力はしたいと思う。中身について、よく見た上でどうするか判断したい」と説明。「我々としては現在の特措法をそのまま適用できると思っている。1月31日に矢田わか子議員が参院予算委員会で一番最初に指摘した。いずれにしても政府の対策は後手後手に回っている印象。国家の一大事であるので、最大限努力していきたい」と述べた。
さらに玉木氏は、「景気が相当悪いという認識をあらためて総理に申し上げたい。大規模な予備的・予防的な緊急経済対策を講じるべき。東日本大震災、あるいはリーマンショック級の経済危機になる可能性がある。GDPが2〜3%減少するくらいの見通しをもって、10兆から15兆円規模の家計部門の減税を中心とした大規模な経済対策を求めたい」と、景気動向の悪化を危惧。「東日本大震災の時にあった、与野党の責任者が政府と一緒になって、上がってきた要望を伝え、国を挙げて取り組んでいける、与野党政府合同会議のような仕組みをもうけていただくよう要請をしていく」と提言した。
記者から安倍首相の学校一律休校について問われると、「学校の一斉休校や個人の行動の自粛要請は、特措法32条に基づく『緊急事態宣言』を発して、初めて45条以下でできる仕組み。今回総理がやったのは、緊急事態宣言を発することなく、発した後にやるメニューをつまみ食い的にやっているので、非常に法的に不安定だし、それに伴う経済的補償が不明確」と述べた。つまり、特措法の緊急事態宣言がありながら、安倍首相は発令しないまま強権的な学校一律休校をやっているため、法的根拠がひどく曖昧になっているわけだ。安倍首相が特措法を改正するのか、それとも現行法の下でやるのか。動向が注目されている。 
●新型コロナショック、いよいよ日本経済に迫る「タイムリミット」の正体 3/4 
新型コロナウイルスの感染が急速に拡大していることから、経済への深刻な影響が懸念されはじめた。感染症が拡大した場合、経済が打撃を受けるのは避けられないが、状況を整理した上で対処すれば、影響を最小限にとどめることができる。
すでに外食から小売に影響が拡大
日本はコロナウイルスによる感染が広範囲に拡大するかどうかの瀬戸際となっており、政府は全国の小中学校、高校に対する一斉休校要請に乗り出した。日本の場合、全国的な検査態勢が整っていないということもあり、本当のところ何人の感染者が国内に存在しているのかという疫学的な基礎データを入手できない。
このため、対策についても推測をもとに立案するしかない状況だが、現時点において数万人以上の潜在的な感染者が存在するのはほぼ間違いなく、多くの国民にとってもそれが共通認識といってよいだろう。
一般的に感染症が拡大した場合、最初に影響を受けるのは観光業である。観光業が影響を受け始めると、間もなく航空業界にもその影響が及んでくる。全体的に外出が減ってくるので、イベントの延期などが相次ぎ、やがて外食産業や小売店にも影響が及び始め、モノ全般が売れなくなると、いよいよ製造業が生産縮小モードに入る。地域によっては、人の移動や物流に制限が加わるので、サプライチェーンが混乱し、早い段階から品不足や欠品といった事態が発生する。
整理すると感染の拡大に伴って、(1)観光業、(2)航空業(運輸業)、(3)イベント業、(4)外食産業、(5)小売業、(6)製造業の順番で影響を受けることになる。これはあくまでも全体的な動きを示したものなので、小売りでも、日用品とは正反対にある高級品関連は(1)、(2)の段階から失速する可能性が高く、製造業もサプライチェーン混乱の影響を受ける企業の場合、早期の段階で出荷が難しくなる。
2月中旬時点で、観光地は目に見えて人が減っていたので、この業界はかなりの打撃となっているはずだ。政府は2月26日にイベントの自粛要請を行ったことからPerfumeやEXILEの公演が中止になるなど、大規模イベントが軒並み中止や延期になっている。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは2月29日から東京ディズニーランドとディズニーシーを休園しており、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンも同日から休園に入っている。
各地の飲食店ではキャンセルが増えており、この原稿を書いている3月2日現在において、日本経済はすでに(4)の段階に入ったと考えられる。中国との間でサプライチェーンを構築している消費財などの分野では、すでに在庫切れといった事態が発生していることに加え、これから生産の縮小を検討する企業も出てくるので、3月以降は小売店や製造業にも影響が及び始めると考えた方がよいだろう。
製造業にも影響が及ぶと長期化は必至
すでにアパレル業界では、サプライチェーンが混乱している関係で、春物商品を準備できないメーカーが増えており、第4四半期の業績への影響が懸念されている。建築やリフォーム業界でも、一部建材の供給が途絶えており、案件に着手できないケースが出てきている。建築やリフォームの場合、ひとつの案件が停止した場合、建築資材だけでなく、電設関係、インテリア、家電など多くの業界に影響が及ぶ可能性があるので注意が必要だ。
一連の影響が製造業全般に波及した場合、日本経済は広範囲にわたって大きな打撃を受ける。特に国内消費にはかなりのダメージとなるほか、設備投資の回復までに時間がかかるので影響の長期化は必至となる。
もともと日本経済は賃金の低下が進んでいたことから消費が著しく低迷しており、昨年10月の消費増税によってさらに状況は悪化した。2019年10〜12月期のGDP(国内総生産)成長率は、物価の影響を考慮した実質(季節調整済み)でマイナス1.6%(年率換算マイナス6.3%)と予想を超える下落となった。
個別項目では、個人消費がマイナス2.9%、設備投資が3.7%のマイナス、住宅がマイナス2.7%と、あらかじめ支出額が決まっている政府支出を除き、ほぼ壊滅状態だった。
これまで消費増税などによって個人消費が冷え込んでも、企業の設備投資はそこまで落ち込まないことが多かったが、今回は設備投資のマイナス幅も大きい。速報値の段階では需要側のデータが入らないので精度に限界があるが、改定値でも設備投資の下落が大きかった場合、企業がかなり悲観的になったことを意味している。
2020年1〜3月期については、この状態にコロナウイルスの影響が加わるのでかなり悪い数字を予想しておいた方がよい。製造業に本格的に影響が及んだ場合、一部の生産ラインでは雇用調整が行われる可能性があり、これが消費悪化に拍車をかける結果となるだろう。
こうした事態を受けて株式市場では株価の下落が進んでいる。2月24日から28日の1週間で、ダウ平均株価は約3700ドル、率にして13%というリーマンショック以来の記録的な値下がりとなった。ちなみに2002年から2003年にかけて発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染拡大では、香港株式市場のハンセン指数が最大で19%下落、ダウ平均株価は18%下落、日経平均株価も18%下落している。
これはSARSが流行した全期間を通じての下落幅だが、今回はわずか1週間でダウが12%下落したので、当時よりも事態は深刻といってよい。ちなみにSARSの時には、株価が底を打ったのはハンセンが翌年4月、ダウが翌年3月、日経平均が翌年4月であった。市場の本格回復にはかなりの時間がかかると思った方がよい。
消費者、生活者に対する支援が必要
国内での感染拡大を受けて政府は、ワクチンの開発促進などを目的とした153億円の緊急対策を決定したほか、日本政策金融公庫などを通じて5000億円の緊急貸付・保証枠を設定し、観光産業など中小企業の支援に乗り出している。だが、国内経済への影響が深刻になっている現実を考えると、さらに大規模な支援が必要なのは言うまでもない。
こうした企業に対する支援策に加えて、重要となるのが生活者や消費者に対する支援である。
すでに企業の現場では、非正規労働者を無給で自宅待機させたり、派遣の雇い止めを行うといった事例が頻発している。企業に対する各種支援策を通じて、こうした事態を防ぐというのは、教科書的には正しいのだが、今はある種の非常事態なので価値観を転換する必要がある。
もともと経営が苦しい企業の場合、政府からの支援策があっても、それを従業員には還元せず、単なる会社の延命に使ってしまう可能性があり、経済的に弱い立場の人を中心に生活困窮者の急増が予想される。不当解雇などはあってはならないし、支援策の適正な運用ができるよう指導するのも政府の役割だが、非常時にはそれにも限界がある。
(不当解雇を正当化するつもりは毛頭ないが)一部の企業が不当解雇などに走ってしまうことを前提に、生活が極度に困窮した人には直接的な支援を実施できるよう政策パッケージを準備する必要があるだろう。実際、香港やシンガポールでは、企業に対する経済支援とは別に、低所得者に対する一律の現金支給や電子マネーへのチャージ、公共料金の払い戻しといった施策が行われている。
消費者の生活が極度に悪化し、消費経済が破壊されてしまうと、仮に感染が終息しても、経済を元に戻すのは容易ではない。経済というのは需要と供給で成立しており、内需型経済にシフトしつつある日本では、これまで以上に、需要側、つまり生活者・消費者に対する支援が重要である。
3月中の封じ込めに失敗した場合は…
ちなみに、SARSは2002年11月に感染拡大が始まり、WHO(世界保健機関)が収束を宣言したのは2003年の7月なので、完全収束まで8カ月を要している。今回、すでにSARSの規模を上回っているという現実を考えると、疫学上の完全収束にはそれ以上の時間がかかるかもしれない。しかし、現実の経済は、疫学上の完全収束よりも早い段階で回復することが多く、SARSの時にも春以降、経済はかなり良くなっていた。
もし国内の感染対策が功を奏して3月中にある程度の封じ込めに成功すれば、1〜3月期のGDPを犠牲にするだけで、夏以降は何とか回復軌道に乗せられるかもしれない。だが3月中の封じ込めに失敗した場合、設備投資という長いサイクルの支出に影響するので、経済への悪影響は2020年度いっぱい続くと考えた方が自然だ。
加えて筆者が気になっているのは、日本にとってもっとも重要なオリンピックについて、政府が「開催予定に変更はない」とうオウム返しのような説明に終始していることである。
刻一刻とタイムリミットは近づいており、最悪の事態も含めて明確な方向性を示しておかないと、それこそ日本の国際的な信用が失墜してしまう。もしそうなってしまったら、日本経済そのものに対する不信任となり、オリンピック開催の是非どころの話ではなくってしまうだろう。  
 
 
 3/5

 

●コロナショック「株・為替の先行きは?」 3/5 
世界の株式市場が新型コロナウイルスの直撃を受け、乱高下している。マーケットアナリストの豊島逸夫氏は「東京オリンピックが延期もしくは中止になったら、日経平均株価は1万8000円台をつける可能性がある」と指摘。ただ、年後半は米中の景気刺激策を先取りしてマーケットは持ち直すと予想する。ドル円レートは当面、日米の金利差縮小などを材料に円高傾向が続くものの、その後は「リスク回避の円高」という教科書通りの動きをするとは限らないと見る。
西野志海(日経プラス10サタデー・キャスター、以下、西野):始まりました。いつもよりオープニングの拍手が多いですね。
山川龍雄(日経プラス10サタデー・メインキャスター、以下、山川):それは当然です。きょうは西野さんが進行役を務める最後の回ですから。
西野:そうなんです。ニューヨークに転勤することになりました。後ほど、ご挨拶させていただきます。
このコンテンツはBSテレ東で土曜朝9時から放送している「日経プラス10サタデー ニュースの疑問」という番組でお送りしきれなかったことを改めてインターネットで配信するものです。今回のテーマはこちら。コロナショック「株・為替の先⾏きは?」 収録しているのは2月29日土曜日ですが、28日までの1週間は世界中の株価が大幅に下落しました。ダウ工業株30種平均(以下、NYダウ)は前週末比で12.4%も急落し、リーマン・ショック以来の下落幅を記録しています。この先の展開をどう読むべきか。専門家にうかがいます。マーケットアナリストの豊島逸夫さんです。よろしくお願いします。
豊島逸夫氏(豊島&アソシエイツ代表、以下、豊島氏):よろしくお願いします。
山川:最初にお断りしておきます。お話をうかがってから記事や動画を掲載するまでに5日ほど間隔が空きます。こんなとき、株や為替の予想を聞くのは心苦しいのですが……。
豊島氏:いいですよ。何でも思ったことを言います(笑)。
西野:まず、最初の疑問です。
株急落 世界で何が 起きている
山川:世界地図に、主要国のここ1週間の株価の下落幅を表示しました。2月28日までの1週間で日経平均株価も約10%下げましたが、欧米はもっと下がっています。アメリカ、ドイツが12%、イタリアが11%と下げ幅がきつかった。一体何が起きているのでしょう。
豊島氏:一言で言えば、コロナショック。とりわけアメリカで感染経路が不明な陽性者が確認されたことが大きかった。アフリカ大陸や南米に感染が広がったことも、不透明感が高まる要因となりました。ただ、来るべき調整局面を迎えたと見ることもできます。NYダウは昨年から上がりっぱなしで、最高値を更新し続けていました。自分だけ置いていかれたくないという、いわゆる「持たざるリスク」を恐れて、全員参加型で上昇したのが実情です。誰もが警戒しているところをコロナショックが直撃したわけです。
西野:NYダウは直近の高値から見ると、14%の下落になります。
豊島氏:下がったとはいえ、2万5000ドル台。しばらくは乱高下すると思いますが、この程度の下げ幅であれば、大したことはありません。俯瞰(ふかん)してみれば、この1〜2年の中ではまだ高い水準にありますから。
山川:日経平均もNYダウに連動して下げ幅がきついですね。
豊島氏:日本人としては残念ですが、現在の日経平均はほぼ9割方、前日のニューヨーク市場で決まっています。為替も同様です。以前、山川さんとBSの報道番組「日経プラス10」でご一緒したときに、放送中に3円も上昇したことがあったでしょう。あれも日本の夜間でしたから、実際はニューヨーク市場が動かしていたのです。
山川:そうでしたね。小谷真生子キャスターと3人で話している最中に、テロップのドル円表示が信じられないような動きを見せて、一瞬言葉を失ったことを覚えています。
豊島氏:懐かしいですね。では、ニューヨークで誰がそんなに円を動かしているかと言えば、それはAI(人工知能)なんです。
西野:AI?
AIが相場を振り回す
豊島氏:そう。人間ではありません。トレーディングのプログラムが動かしているのです。あらかじめ組み込んだ売買アルゴリズムを基に、ニュースの見出しに反応して注文を出す。例えばトランプ大統領がツイッターに書き込んだ発言の内容や、新型コロナウイルスの感染者の状況などを手掛かりに、高速売買を繰り返す。
西野:市場を動かしているのはコンピューター?
豊島氏:そうです。AIがマーケットを揺さぶり、人間は解説役に回っている。何か物悲しいですね。ニューヨークではウォール街の地盤沈下が進んでいます。伝統的な投資銀行が支配する市場とは別に、巨大なコンピューターで注文を繰り返す人たちの存在感が高まっています。彼らはウォール街の少し北側、マンハッタンの20〜30丁目あたりに、ビルのワンフロアを借りてコンピューターを置いています。典型的なのは、親から巨額の資産を相続したユダヤ⼈が若者中心に5〜6⼈雇っているケース。雇われた人たちは円を扱っていても、日本経済のことは知らない。
西野:コンピューターのことは分かっても、経済に関する知見はあまりない?
豊島氏:そう。そもそも高速取引は100分の1秒単位でオーダーを出しますから、人間の判断が介在する余地はありません。100分の1ということは、24時間で従来の1カ月分くらいに相当します。日本人はその実態をあまり知りません。ニューヨークから見ると、日本人は知識レベルが高過ぎて、理詰めで考えないと納得しない。
山川:考えすぎて、逆に間違ってしまう?
豊島氏:そう。今回はAIが売り注文を出すきっかけが新型コロナウイルスだったわけで、それ以上、理詰めで考えようとしてもキリがありません。
西野:もともと調整を必要としていたマーケットだったとすれば、この先は心配する必要はないのでしょうか。
豊島:現時点では調整局面と捉えてよいでしょう。ただ悩ましいのは、相手はウイルスだということです。バイオリスクは市場関係者にとって未知の経験です。2002〜2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の問題が起きましたが、明らかに今回の方が影響は大きい。しかも先ほども申し上げた通り、当時とは市場を動かす主体が変わっています。日本のマーケット関係者は、2003年と比較したがりますが、あまり経験則は通用しないと思った方がいい。
山川:SARSのときはイラク戦争とも重なって一時的に世界の株価が急落しましたが、すぐに元の水準まで回復しました。
豊島氏:それにあのときは、トランプ大統領はいませんでした(笑)。これは大きいですよ。
西野:次の疑問に行きましょう。やはり気になるのはこの先の展開です。どのくらいを株価の下限と見るべきでしょう。
リーマン級 コロナショックの 危険度は
豊島氏:「恐怖指数」と呼ばれる米国株の変動性指数(VIX)で見ると、2月28日につけた高値が49。89だったリーマン・ショックにはまだ遠い。今後、感染の拡大次第で、50を超える可能性はありますが、それでもリーマン・ショック級とは言えません。
山川:ただ一方で、2001年のニューヨーク同時多発テロやアジア経済危機とは、ほぼ同じ水準です。
豊島氏:その意味では調整局⾯ではあります。そして過去の事例と決定的に違うのは、ウイルスという目に見えないものを相手にしていることです。この先の感染拡大について、確信を持って予想できる人はどこにもいない。この不安感こそが今回のショックの最大の特徴なのです。金融システムリスクであれば、どんな商品が問題となっており、どんな人たちが関与しているのか、ある程度の予測がつきます。しかし今回は金融関係者にとって、専門外であるところが震源地となっている。
西野:ただ、それでも豊島さんには、見通しを聞きたい(笑)。
豊島氏:はい。トレーダーは、売るか買うか、どちらかしかないわけですから、こういう状況でも自分の意見は持たなくてはいけません。私は感染の問題そのものは秋まで長引くかもしれないと覚悟しています。当初は気温の上昇とともにウイルスの活動が止まり、遅くとも6月には収束するだろうと楽観視していました。しかし最近、シンガポールやナイジェリア、ブラジルなど気温の高い地域でも、感染が確認されています。もう少し先まで長引くことを頭に入れておく必要がある。
山川:確かにアフリカや中南米で感染者が出たのは気になりますね。
豊島氏:それともう一つ、いったん陰性になった人が、再び陽性に戻るケースが相次いでいます。これだと世界保健機関(WHO)も終息宣⾔を出しにくい。いったん4⽉くらいに収束が⾒えてきても、その後、また感染者が出てきて、終わりが見えないという展開もあり得ます。そうなると、マーケットも落ち着かない。
山川:豊島さんにはこれから年末までの日経平均の見通しをグラフにしていただきました。
五輪次第で2万円割れも
山川:5月くらいが底値で、その後は回復するという見立てですね。
豊島氏:オリンピックが延期ないし中止になれば、日経平均は相当売り込まれると思います。私のメインシナリオは1年の延期。それが決まったときが底値で、下限が1万8000円〜1万9000円。そこで材料出尽くしとなり、その後は上昇するという展開を予想しています。年後半になると、中国がなりふり構わぬ金融再生支援策を打ってくるでしょう。トランプ大統領も選挙を意識して、米連邦準備理事会(FRB)に利下げの圧力をかけるはずです。財政出動を繰り出すことも考えられます。そうなると、買い材料がそろいます。
山川:新型コロナの問題が長引いても、市場はその前に反転すると。
豊島氏:マーケットは常に先取りして動きますから。中国政府は3月5日に開幕する予定だった全国人民代表大会(全人代)を延期しました。次に開くときには「経済テコ入れ」がテーマになるでしょう。そこで景気のいい話が出てくるはずです。ニュースの見出しに、AIが飛びつくでしょう。注意点は、中国経済にはいずれツケが回ってくるということ。この先さらに金融緩和を続ければ、地方政府や民間企業、金融機関などの債務がさらに増え、来年以降のリスクが高まります。
山川:コロナショックからは少し離れますが、アメリカ大統領選の民主党候補者指名争いでは、左派のサンダース氏がリードしています。このままサンダース氏が勝利すると、マーケットはネガティブに反応しますか。
豊島氏:サンダース氏だと、20%程度下がると見る向きもあります。
山川:そちらの方が、コロナショック以上に大きいですね。
豊島氏:一貫して「アンチ・ウォール街」を唱えてきた人ですからね。株の取引や売買益に税を課すといった、投資家が最も嫌がる施策を打ち出してくる可能性があります。ただ、サンダース氏では民主党が勝てない、つまりトランプ氏有利という連想が働いて、株価にポジティブと見る向きもあります。ウォール街は表向き「アンチ・トランプ」を口にする人が多いのですが、1対1で話すと、本音では「今回はトランプ氏に勝ってほしい」と打ち明ける人は多いですよ。総合すると、ウォール街では、7対3くらいでしょうか。つまり、サンダース氏が候補になると株価が下がると見る人が7割。
経済の 教科書もはや 役立たず
西野:さて、最後の疑問です。ここまで株価の行方を聞いてきましたが、もう一つ気になるのが、為替です。本来株が売られる局面では円高が進むというのが通例でした。ところが今回は現時点ではあまり円高に振れていません。また、このグラフが示す通り、ドル円の動きはVIXと相関関係があると言われています。その意味では、もう少し円高になってもおかしくないのですが、現状ではそこまで円が急伸しているわけではありません。必ずしも教科書通りには動いていないように見えるのですが、これはどう考えたらいいでしょう?
豊島氏:確かに通常であれば、これだけ株価が急落すれば、一時的に1ドル=102〜103円になってもおかしくありません。
山川:いわゆるリスク回避の円買いですね。
豊島氏:そう。今回はそれが今のところ起きていない。円高神話が必ずしもあてにならなくなっています。今はとにかく投資家の一時避難先は、ドルに集中しています。
山川:円安というよりも、ドル高ということですね。
豊島氏:そう。それに教科書通りに行かないというのは、先ほど申し上げた通り、AIの売買が影響しています。人間の思考とは異次元の反応をしている。それから、新型コロナウイルスの問題だけでなく、米中交渉や中東情勢など、あまりにもリスクが多過ぎて、トレーダーやアナリストがどのリスクを重視すべきか迷っていることも理由の1つでしょう。数学でも変数が4つ以上になると、方程式を解くのが難しい。それと同じです。
西野:それでも豊島さんには、予想を聞きたい(笑)。
山川:この先は円高を予想する人が多いのですが、必ずしもそうとは限らない?
日本円の見切り売り?
豊島氏:中長期では、逆に円の見切り売りという展開もあり得ますよ。消費増税の影響が残っているところにウイルスの問題が追い打ちをかけたわけですから。
山川:目の前の動きについてはいかがですか。
豊島氏:これが配信されるのが3月5日の予定ですよね。そのときの私の予想は1ドル=107円程度。
山川:当面はやや円高に振れていく?
豊島氏:ゴールドマン・サックスは基本シナリオとして、上半期3月から6月の間に0.75%ポイントの利下げを予想していますから……。
山川:そうすると日米の金利差が縮小して、円買い要因となる?
豊島氏:そうです。あくまでも金利差要因で円高が進むというのが、目先のメインシナリオです。ただ、その先は分かりません。「これが法則です」と確信を持って言えるような時代ではありませんから。
西野:難しいですね……。
山川:では、そろそろ西野さん、転勤の挨拶をしましょうか。
西野:はい。これが連載最後の川柳となります。アメリカに 転勤します さようなら……
山川:西野さんは今後、テレビ東京のニューヨークスタジオから「Newsモーニングサテライト」などに出演し、アメリカの市場の動きを伝えることになります。
豊島氏:まさにマーケットの中心じゃないですか。
西野:豊島さんは現地に精通されています。ぜひご指南ください。
豊島氏:アドバイスというよりも、まず西野さんは幸運ですね。自分が担当する時期にこれだけマーケットが動いているわけですから。
西野:はい。大統領選挙もありますし。
豊島氏:今年は後世の歴史に残るような動きがあるかもしれませんよ。同じ担当するのだったら、静かなときよりも、大きく動く方がエキサイティングですよ。アドレナリンが出っぱなしで、肉食系になると思います(笑)。帰国する頃には一段と……。
山川:いや、そもそも肉食系だと思います(笑)。
西野:なんてこと言うんですか、まだ嫁入り前です(笑)。
豊島氏:メディア関係者を気の毒に思うのは、現地に赴任しても簡単にはマーケットの中に溶け込んでいけないことです。私の場合、スイス銀行時代の友人がヘッジファンドや政府系ファンドにいるので、すぐに連絡を取って意見を交わすことができます。ただそこまでいくのに10〜20年はかかりました。日本から赴任してすぐに価値ある情報に触れるのはとても難しい。アドバイスとしては、あまり日本人同士で群れないことです。日本人駐在員に招待されると、マンハッタンの日本料理屋に行くことが多いのですが、そこには銀行や商社、メディア関係者などが集まっていて、日本語で情報交換しています。ただそれなら日本にいてもできます。とてももったいない。だから西野さんにはできるだけ外にネットワークを広げることをお勧めします。
山川:先ほど豊島さんが話してくれた、貸しビルの一室で高速取引をしている人を取材すれば、面白いのでは。
豊島氏:ニューヨークに出張したときにはご案内しますよ。彼らはウォール街とはまるで文化が違う。服装もジーンズ姿などラフな格好をしています。人間的にはむしろ面白いですよ。ウォール街は金太郎飴(あめ)でどこを切っても同じですが、彼らは個性があります。金融業界のスタートアップですから。
西野:ありがとうございます!山川さん、数年後、豹変(ひょうへん)して戻ってくる私を楽しみにしていてください(笑)。
山川:もちろんですよ。この番組は時期を見て西野さんの後任のアナウンサーと続けたいと思っています。ただ「もっとみたい!」というタイトルは変える必要がありますね。西野さんの名前とかけてあるから(笑)。
西野:私がいなくなった後もこの番組をどうぞよろしくお願いいたします。視聴者、読者の皆様、本当にありがとうございました。 
●コロナショックの世界株安は「ミスプライス」である可能性が高い理由 3/5 
前回の2月8日配信記事では、「新型コロナウイルスが市場に与える影響もピークアウトが近いのではないか」と述べました。しかし、とんだ見当違いでした。ピークアウトが近いと考えた理由は、感染が拡大する中、米国株が高値を目指す値動きとなっていたからです。実際、S&P500はその後も上昇を続け、2月第3週の半ばには史上最高値を更新しています。ところがその直後から急に崩れ始め、足元の大暴落へとつながりました。2月第4週のNYダウ平均は3,600ドル近くも急落。史上最大の下げ幅を記録しました。前の週には史上最高値、翌週には史上最大の下げ幅と、あまりに展開が急です。相場の予想は難しいと改めて思いますが、その一方で今回の大幅な株安も過去の急落局面と共通する動きを指摘することができます。それは、あることをきっかけに、ひとたび相場が大きく崩れると、そこから先はそもそも下げの要因となったこととは関係なしに「株価そのもの」が材料になる点です。
欧州総崩れで株価下落のスパイラルに
下がるから売る、売るから下がるという悪循環に陥ってしまう――。こうした足元のような状況を、著名ヘッジファンド創始者のジョージ・ソロス氏は「リフレキシビティ」と名付けました。前述の通り、S&P500が史上最高値をつけたのは2月第3週の半ばでした。そこまで堅調だったのに、いきなりその週末から崩れ、翌週には記録的な大暴落となったのです。何がきっかけだったのでしょうか。イタリアでの感染者急拡大で、イタリア株をはじめとする欧州株が総崩れになったことです。それが米国にも波及しました。その後、米疾病対策センター(CDC)が、新型コロナウイルスについて「国内のコミュニティーで感染が広がるのは時間の問題だ」と強く警告したり、実際に米国内で感染者が出たりしました。米国株がそれまでの堅調さから一転、大暴落に転じたのは、コロナウイルスの感染拡大は中国やアジアの「対岸の火事」とみていたら、自分の足元にも脅威が迫ってきた不安の高まり……という解説がありますが、そんなことがあるでしょうか。
世界株安の本当の原因とは?
株式市場は「半年から1年先の景気や業績を映す鏡」と言われます。新型ウイルスの問題が表面化した当初から、これだけグローバル化が進んだ現代では世界的な感染拡大は避けられないと言われていました。株式市場は世界的な感染拡大は織り込んでいたでしょう。今さら「世界的感染拡大を懸念」というのは、違和感があります。では、何が足元の株安の原因でしょうか。もちろん、根底には新型ウイルス感染拡大による経済への打撃を警戒があるのは間違いないところでしょう。ただし、これだけ連鎖的な株安が続くのは、もっと別なメカニズムによるものです。それが、前述した「株価そのもの」の動きです。株価が大きく下がると、それだけで売らなければならない運用ルールが多数あります。ロスカットの売り、CTA(商品投資顧問業者)のトレンドフォローの売り、リスク・パリティ(ポートフォリオの各資産のリスクを均等にする投資手法)のポジション調整、アルゴリズムのプログラム売りなど、文字通り、機械による「機械的な」売りが市場の下げを複合的に増幅させているのです。これは2015年のチャイナショックの時も、2018年10月初頭からクリスマスにかけての急落時にも見られた現象です。 
●世界に広がるコロナショック、旅行関連業界に深い傷 3/5 
避暑地としても有名なイタリア北部のコモ湖には例年、春になると観光客が戻ってくる。しかし今年は、新型コロナウイルスの影響で客足が途絶えることを現地ホテル業界は心配している。イタリア北部で新型コロナの感染が拡大したのを受け、この地域のホテルでは先週の3日間で予約の半分以上がキャンセルされた。宿泊業界には重要な夏の繁忙期に向けても暗雲が漂い始めている。「過去にも浮き沈みはあったが、ここまでは初めてだ」と、現地ホテル運営者協会のロベルト・カッサーニ会長(58)は語った。
新型コロナは発生源の中国で感染スピードが減速しているとはいえ、韓国とイタリアなど他の国・地域では拡大しており、世界の感染者は9万3000人を超えた。国連世界観光機関(UNWTO)によると2018年の国際観光輸出額は総額1兆7000億ドル(約183兆円)だったが、その巨大市場が危機にさらされている。ビジネス旅行の業界団体グローバル・ビジネス・トラベル・アソシエーション(GBTA)は、新型コロナによる業界への打撃は1カ月当たり約470億ドルに上る可能性があると指摘。国際航空運送協会(IATA)は売上高への打撃を約300億ドルと試算している。
旅行業界向けオンライン予約ソフトを手掛けるアマデウスITのアナ・デプロ最高財務責任者(CFO)は「この状況がどれだけ続くか予想できない」と述べた。ドイツの旅行会社TUIも新型コロナによる業績への影響は予測がつかないとして、採用の凍結を発表した。航空会社や旅行会社、ホテル業界は新型コロナ発生前から、オンライン予約や格安航空会社の台頭を背景とした旅行形態の変化と格闘していた。急速な業界再編に動いた航空会社への打撃を緩和していたのが、中国人旅行者の急増を含む旅客数の増加だった。航空業界は今、危機に向かいつつある。
観光に依存する国や地域の経済にとっては、新型コロナの打撃は広範に及ぶとみられる。旅行の予約キャンセルはホテル業界や航空業界のみならず、パリの高級ブティックからアジアの屋台に至るまで無数の業種に逆風となるからだ。普段は観光客でにぎわうシンガポールのブーンタット通りでは、商売が70%も落ち込み、重症急性呼吸器症候群(SARS)感染拡大以来の静かさだと屋台店主が話す。
経済協力開発機構(OECD)は先に、誰もいない空港の手荷物受取所の写真を表紙に使った経済見通し中間報告を発表。「コロナウイルス:世界はリスクにさらされている」と題した同報告で、2020年の成長率予想を昨年11月時点から0.5ポイント引き下げ2.4%とした。これは09年以来の低成長となる。 
●コロナで日本経済は壊滅…「令和恐慌」招く安倍政権の失策 3/5 
新型コロナウイルスの影響で、日本経済には激震が走っている。日経平均株価は2月24日からの5日間で2,243円(9.6%)も下落。下げ幅はリーマン・ショック直後の'08年10月以来の大きさだ。
さらに、国際オリンピック委員会(以下、IOC)の重鎮、ディック・パウンド氏が「(3カ月あとも事態が終息していなければ)おそらく東京五輪の中止を検討するだろう」と、中止の可能性に言及するなど、東京五輪の中止が現実味を帯び始めている。
新型コロナによる消費減少という大打撃に加え、東京五輪まで中止となれば、日本経済には甚大な損失が発生することに――。しかし、京都大学大学院の藤井聡教授は、コロナショック以前の“政府の失策”に大きな原因があると話す。
「そもそも、安倍政権が昨年10月に消費税を8%から10%へ引き上げたことで、日本経済はすでに大きく冷え込んでいました。10〜12月のGDP(国内総生産)は6.3%のマイナス。東日本大震災の冷え込みに匹敵するほどのひどい落ち込みでした。景気動向指数も激しく下落しており、かつ、その下落幅は過去の消費税率引き上げの時よりもさらにひどい。ところが、総理はこの状況を『ゆるやかな回復』と主張している。これは明らかな嘘です」
2月21日には、愛知県の老舗旅館が経営破綻。中国人旅行客の激減が決定打となった模様で、ついに“コロナショック”による倒産第1号となった。さらに北海道のコロッケ製造業者、神戸市のクルーズ船運航会社など、新型コロナウイルス関連の倒産が相次いでいる。
リーマン・ショックが起きた'08年、日本では1万5千件以上の企業が倒産。上場企業の倒産は戦後最多の33件となった。日経平均株価は一時、7千円を割り込んでバブル後最安値を記録。2カ月でほぼ半減した。'09年には失業率も過去最悪の5.6%となっている。
消費増税直後という最悪なタイミングでの“コロナ恐慌”は、リーマン・ショックをも上回る“大倒産時代”を招きかねない――。
「今後さらに、コロナ騒動で内需も外需も落ち込むでしょう。そのうえ五輪が中止になれば、観戦のために来日する外国人による経済効果といった“オリンピック景気”も期待できないのです。このままでは、令和2年の日本経済は奈落の底にたたき落とされることになります。安倍内閣がこのまま何の景気対策もしないのなら、間違いなく“令和恐慌”が日本を襲うでしょう」(藤井教授)
経済産業省は28日、新型コロナウイルスの感染拡大で被害を受けている中小企業への金融支援を拡充すると発表した。しかし藤井教授は、さらに抜本的な対策を決断すべきだと主張する。
「今すぐに、消費税率を5%に引き下げる。それが内需を回復させる、いちばん簡単な手段です。安倍内閣がすべきことは、嘘をつかずに正しく景気判断を行い、対策を行うことです。消費税を5%に戻すのも、決して難しいことではありません。たとえば軽減税率の制度を使えばすぐにでもできるはずです」
迫り来る“新型コロナ恐慌”の悪夢。はたして感染拡大を食い止め、日本経済の窮地を救うことができるのだろうか――。 
●新型ウイルス 「クラスター」の8割は家庭内で WHOなど調査  3/5 
新型コロナウイルスについて、WHO=世界保健機関と中国の保健当局が共同で行った中国での調査の報告書によりますと、ヒトからヒトへのウイルス感染は主に家庭内で起きているとしています。中国では複数の地域で「クラスター」と呼ばれる感染者の集団についての調査が現在も進められていて、広東省と四川省で1308人が感染した344のクラスターについて調べたデータでは、さまざまなクラスターがあるうちの8割程度は家庭内だとしています。 
 
 
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●「SARSの教訓」が街全体に、香港の新型コロナ対応を見た 3/6 
「SARSがまた来るらしい」という噂を最初に聞いたのは2019年の年末だったろうか。反政府運動と警察の衝突が泥沼化していた香港で、12月の地区選挙で民主派が圧勝したことで、やっと街に明るさが戻り始めていたところだったので、「そんな泣きっ面に蜂のようなことがあっていいのか」と半信半疑だった。
徐々に武漢の惨状が伝わり始めたとはいえ、1月25日からの旧正月を迎える準備で街に華やぎが見えてきて、過去半年の壮絶な不景気で青息吐息だった飲食関係の友人たちも「最近客足が戻り始めた。旧正月後はもう大丈夫だ」と安堵の表情を見せていたのだ。
残念ながら、1月25日から始まる旧正月を目前にした1月22日に、中国本土からの観光客2人が香港初の新型コロナウイルス感染者となってからは、そんな希望的観測はあっという間に崩れ去った。日に日に感染者が増えていき、大型イベントは次々とキャンセル。街からはすっかり人が消えた。
全校一斉休校をどう受け止めたか
1月27日、「全学校一斉休校」の通達が教育省から届いた。香港では旧正月を含めた1週間は毎年休暇になる。その終盤に休暇が延長される形で休校になったのを皮切りに、2週間や1カ月ごとに延長されていき、現在のところ春休みにあたるイースター休暇が終わる4月20日までの延長が決まっている。
我が家の次男はインターナショナルスクールに通う高校三年生で受験生。学校の授業内容が5月の最終試験に直結する仕組みであるため、休暇延長の1週間後には学校がオンライン授業を開始して現在に至り、先生も生徒もすべて自宅から参加している。先生との対話が普段の授業のようには行かないものの、無いよりはずっとましという状態で、このまま進めるしかないようだ。去年にも反政府デモで荒れた時期にも休校があったので、彼の高校三年はほとんど学校に通えず終わってしまうのは残念で仕方ない。
ちなみに休校の知らせとほぼ同時に、ディズニーランド、オーシャンパークなどのテーマパークや、博物館、美術館、スポーツ施設から近所の公園の遊具まで、休暇中の子どもが行きたいような場所が一斉に閉鎖になった。香港マラソンも旧正月のパレードの中止も即断即決。その後、3月のアートバーゼルが中止になってオンライン開催となり、ラグビーセブンスは延期など、香港の経済を支えるはずの大きなイベントが次々と変更されている。
「日本に帰った方が安心だろうか」、その考えはすぐに翻った
香港にいながら、日本のニュースやSNSを追ったり、日本の友人とチャットしたりしていて、ずっと感じていたのが香港との温度差。最初は「大陸と地続きの香港より日本に帰った方が安心だろうか」とも考えたりしたが、感染が広がる中、その考えはすぐに翻り、2月初旬の時点で「感染者は今のところ香港が多いけれども、街中での感染の可能性がこちらの方が低そうだ」と感じるようになった。そして今や、感染者数も日本と香港では逆転している。
中国本土への忖度なのか、諸外国と比べて中国本土からの入国制限が生ぬるいことは、日本と香港の両政府に共通していて、香港内では最前線で感染リスクに晒される医療関係者によるストライキなど、入境制限を要求するための抗議が続いた。香港と中国の間には空港、高速鉄道や電車の駅、フェリー埠頭、橋など13カ所の入境ポイントがあり、政府は利用人数の少ない方から少しずつ閉鎖していた。現在、空港を含む3カ所が今も開いているものの、本土からの入境者は2週間強制隔離という条件が加わったため、実質的に激減している。
一方、政府の中でも教育などの関係省庁の決定は素早いし、香港人や企業の自衛意識と迅速な反応は賞賛に値する。
「SARS経験の差だ」と香港人は言う。香港内での感染が広がる予感がした時点で、ただちに街行く人の9割以上がマスクを着用し始めたし、頻繁に手のアルコール消毒もしている。
私が香港に移住したのはSARSから3年後の2006年だったので、まだ当時はその爪痕が生々しく人々の心に刻まれていた。SARSの反省から、それまでじか箸が当たり前だったレストランで、取り分け用の箸が出される習慣ができたそうだし、当時からマンションや商業ビルのエレベーターボタンにビニールシートが取り付けられ、当時から今までコロナとは関係なく、2時間ごとの消毒を続けていたビルも多く、感染対策というものが身近になっていた。
SARS経験は、医療体制に確実に生きているので、検査や隔離のノウハウは現場で浸透していて、危なっかしさは少ない。ただ、政府による医療従事者への保護が不足しているという不満が、抗議運動にもつながっている側面はある。
個人情報保護より優先される感染者情報公開
「お互いに身を守ろう」という気合いが、街全体から感じられる安心感。そしてひとたび感染者が出ると、個人情報など容赦なく、家族構成、年齢、住所、勤務先や学校、移動経路などが晒され、全香港内の感染者隔離マップが日々更新されている。それを見て私も、近所に感染を疑われて自宅隔離されている人が1人いると知った。親戚一同で火鍋をしていて感染した一家は「火鍋家族」とメディアやSNSでニックネームをつけられて揶揄されているのを見ると、いつかは感染してしまうのかもしれないけれど、この目立つ時期はできたら避けたいな、と切実に感じてしまう。
去年は敵対していた親中派と民主派の市民が入り乱れて、街中に隔離施設を設けようとする政府への抗議活動をしているのを見たりすると、不謹慎かもしれないが、一時的に社会の分断が薄まった気もして、少しほっこりしてしまった。
なお、新型コロナに伴う経済打撃へのテコ入れとして、2月26日に発表された「18歳以上の香港ID保持者に1万香港ドル(約14万円)を一律支給」というニュースは、日本でも報道され話題になった。それを目玉に、所得税減額、老人や障害者への補助金増額や低所得層の公共住宅家賃減免、法人税や事業登録費用の免除など、約1200億香港ドル(1兆6800億円)が、個人や法人の財政支援に回されるという。
これ自体はもちろん歓迎なのだが、受領できるのは半年以上先らしいのに加えて、昨年、市民との軋轢で反感を買っている香港警察の予算が、対デモ対策装備や取り締まり人員増強のために約258億香港ドル(約3612億円)も増額されることも判明しており、「一時金は人気取りの目くらまし」という冷めた反応が周囲には多い。  
●米雇用者数、2月は予想上回る27.3万人増−新型コロナの影響前 3/6 
米国では2月、雇用者数が大幅に増加し、2018年5月以来最大の伸びとなった。新型コロナウイルスの感染拡大が加速する前の段階では、米労働市場は特に堅調だったことが示唆された。
〇2月の非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比27万3000人増
   〇ブルームバーグ調査のエコノミスト予想は17万5000人増
   〇前月は27万3000人増(速報値22万5000人増)に上方修正
〇家計調査に基づく失業率は3.5%に低下(前月3.6%)−予想中央値は3.6%
〇平均時給は前年同月比3%増−予想と一致
   〇前月は3.1%増
雇用者数の大幅増は、新型コロナを巡る懸念が強まる中でも雇用が底堅さを保ったことを示唆している。ただ今回の統計は2月半ばまでの状況を反映したものであり、これは諸外国での混乱や国内での感染拡大の影響が広がる前の段階だ。
〇市場関係者の見方
FSインベストメンツのチーフ米国エコノミスト、ララ・レーム氏 / 「ここで重要な明るいニュースは、極めて強い不確実性に直面する中でも、米経済はドイツや日本などと比べずっと強靱(きょうじん)さを見せているということだ」
クレディ。スイスのチーフエコノミスト、ジェームズ・スウィーニー氏 / (新型コロナに伴うリスクについて)「労働市場に対する下振れリスクは、今後4週間に明確になる」
〇詳細
平均時給は前月比では0.3%増−予想と一致 / 前月は0.2%増
政府部門の雇用者数は4万5000人増と、前月(5万1000人増)に続き高い伸び / 州・地方自治体で特に大きく増加 / 連邦政府は8000人増−うち7000人は今年の国勢調査のため臨時で雇用した職員 / 政府は国勢調査のため、年内に最大50万人のパートタイム職員を臨時で雇用する計画
建設業は4万2000人増(前月4万9000人増)。小売業と卸売業は減少した
製造業は1万5000人増−市場調査では前月に続き減少が見込まれていた
週平均労働時間は34.4時間(前月34.3時間)
労働参加率は63.4%で前月から変わらず
「U6」と呼ばれる不完全雇用率は7%に上昇−前月6.9% / U6にはフルタイムでの雇用を望みながらもパートタイムの職に就いている労働者や、仕事に就きたいと考えているものの積極的に職探しをしていない人が含まれる 
●新型コロナウイルスには「2つの型」が… 3/6 
新型コロナ 新たにわかった特徴は…
国内で感染が拡大する新型コロナウイルス。3月6日には北海道で新たに7人、千葉県では新たに2人の感染が確認された。感染拡大を防ぐ策が講じられる中、ウイルスの研究や感染者の治療を通し、新たにわかってきたこともある。「Live News it!」では、感染症に詳しい昭和大学医学部の二木芳人氏に解説してもらった。
加藤綾子キャスター / 安倍総理の休校要請を受け、休校が実施されてから5日間、日ごとの感染者数をまとめてみました。潜伏期間があるので感染拡大防止に効果があったかわかるのはしばらく後になると思うのですけれども、やはり感染者数は増えていますよね
二木芳人氏 / ですが、例えばヨーロッパで今急激に感染が拡大しているドイツやフランスに比べると、1日の患者さんの数はまだそれほど多くありません。休校ですとか、イベントの自粛。そういうものの効果が出ているんじゃないかなと考えたいですね
WHOがインフルエンザと比較した新型コロナウイルスの特徴は以下のようなもの。
・感染力はインフルエンザが1人→1.4〜4人に対して、新型コロナウイルスは1.4〜2.5人。
・致死率はインフルエンザが1%未満に対して、新型コロナウイルスは3.4%。
・新型コロナウイルスはインフルエンザよりも重症化しやすい
二木芳人氏 / 現時点で集積されているデータを見るとこの通りだと思うのですが、まだこの疾患の全貌が明らかになったわけではなくて、私たちが一番気にしているのは症状がないけれども感染している方々、あるいは非常に症状の軽い方が結構いるようですので、今から検査を進めてそういう人たちの数が増えてくると感染力もちょっと高くなるだろうし、逆に今度は致死率、重症度も下がってきますので、これらのデータは変わってくるかもしれない。
加藤綾子キャスター / なぜ新型コロナウイルスは重症になりやすいのでしょうか。
二木芳人氏 / インフルエンザも状況によっては、特にお年寄りなどは毎年日本でも1000人、2000人が亡くなりますので、これも一概に重症化しやすいとも言えないです。
集団(クラスター)感染リスクの高い場所とは?
特に密閉空間でクラスター(集団感染)が発生している新型コロナウイルス。クラスターが確認された場所は北海道のさっぽろ雪まつりと展示会、東京都の屋形船と病院、千葉県のスポーツジム、神奈川県の病院、新潟県の卓球スクール、愛知県のスポーツジム、大阪府のライブハウス、和歌山県の病院など、わかっているだけでも国内で10か所に及ぶという。
加藤綾子キャスター / やはり密閉空間で猛威を振るうということなのでしょうか?
二木芳人氏 / そうですね。密閉空間、比較的狭いところにたくさんの人が入って距離が近いということが非常に重要で、そういうところでは飛沫感染あるいは接触感染も非常に起こりやすいので、やはりここに挙がっている場所だけじゃなくていろんなところで気をつけていただきたいというふうに思います
加藤綾子キャスター / 飛沫感染という言葉が出ましたけれども、飛沫感染だけではなくて新たな事象も次々と明らかになっているんです
ヒトからペットへの感染も?
加藤綾子キャスター / まずはペットへの感染。5日、香港政府の発表によると、新型コロナウイルスに感染した60代女性のペットの犬から低レベルの感染が確認されたということで、これは飼い主からペットに感染した可能性があるということなんです。香港政府は「過剰な心配は抱かないように」ということなのですが、今後ペットを通して感染することも考えられるのでしょうか?
二木芳人氏 / そうですね。ウイルスは大体感染症を起こす相手は決まっているわけですから、動物にウイルスがつくということがありますけれども、動物が感染症という病気を起こしていないので一時のこと。ただし重症化しやすいような方はそういうところからウイルスをもらう可能性がありますので、動物に関してもやはり病気のある方は少しの間接触を避けた方がいいかもしれませんね
加藤綾子キャスター / 続いては排泄物なんですけれども、中国政府が発表した例では喉や鼻の検体で14回ウイルス検査をしても陰性だったのにもかかわらず、大便の検査で陽性となった。これはどんなことに注意していけばいいですか?
二木芳人氏 / もともとコロナウイルスというのは腸が好きなんですよね。SARSコロナのウイルスは腸から出てきて下痢もよく起こしたんですが、このウイルスに関しては下痢の症状も比較的少ないですからそこから感染するリスクは比較的低いと思いますけれども、そういうものにもウイルスがいるということを意識しておく必要があります
治療法に関する新たな報告
感染が広がる中、治療法に関する新たな報告も増えている。1つ目がぜんそくの治療薬「シクレソニド」。この治療薬をクルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの乗客で新型コロナウイルスに感染して酸素吸入を行っていた3人に対して投与したところ、2日程度で改善してうち1人は退院したという。もう1つが、人工心肺装置を使った治療。重篤な肺炎患者に人工心肺装置を使い治療したところ、少なくとも15人のうち4人に回復傾向が見られたという。
加藤綾子キャスター / 新型肺炎というぐらいなので、肺炎とか喘息と同じような特徴と考えていいのでしょうか?
二木芳人氏 / このシクレソニドというのは、吸入用のステロイドです。これを比較的重い患者にも使っているのですが、今のところたった3人のデータでも良い感触があります。実は国立感染研の方から「ウイルスをやっつける力があるのではないか」というものがあったので試してみたところ一定の効果が出たということです。まだ3人ですのでもう少し慎重に評価する必要があるかと思いますが、こういうものが効けば非常に有望ですね
ウイルスに「L型とS型の2つの型」
加藤綾子キャスター / そしてウイルス自体の「型」についても新たにわかりました。「L型」「S型」ふたつの型があり、「L型」の方が感染力が強いということなのですが、一度L型にかかって次にS型にかかるというなんてこともあるんでしょうか。
二木芳人氏 / まあそういうものもあったという報告ですね。これは今流行っているコロナウイルスを集めて遺伝子解析をして、どういうウイルスが流行っているのか調べてみるとこの2タイプがあると。S型の方が古いタイプ、動物から来た形に近い。そこからおそらく進化したのがL型で、こちらの方が感染力が強いということも分かっています。
面白いのは、武漢から出てきたウイルスはほとんどL型なんです。ところがその後いろんなところで見てみるとS型が少し優勢になってきている。その理由はいろいろ考えられますけれども、変わってきているんです。今後どちらが優勢になるかは見ていかなきゃいけませんね。 
 
 
 3/7

 

●新型コロナウイルスの国内感染者、1日で過去最多の50人超−厚労省 3/7
厚生労働者によると、6日に全国の自治体から報告を受けた新型コロナウイルスの国内感染者は59人となった。クルーズ船を除けば、1日での報告者数としては過去最多。安倍晋三首相は大規模イベントの中止・延期や小中高校の臨時休校などを要請しているが、現段階では感染者数の増加に歯止めがかかっていないようだ。
6日に報告されたのは患者が53人で、無症状の病原体保有者が6人。国内感染者は、空港の検疫で確認された1人を含めて408人となった。
政府は2月25日に対策の基本方針を公表。安倍首相は「この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要」として26日に大規模イベントの中止や延期、27日には全国の小中高校の臨時休校を要請。3月5日には中国や韓国からの入国者に対して指定場所において2週間の待機を要請することも決めている。
ただ、感染者数は拡大傾向が続いており、3月4、5両日は30人超の感染者が厚労省に報告された。
安倍首相は7日、視察先の福島県で、来週にも新型コロナウイルスに対する第2弾の緊急対応策をとりまとめるとし、「国民生活・経済への影響を最大限緩和するために、あらゆる対策を講じていく」と語った。政府は7日夕にも、対策本部の会合を開催する。首相発言はNHKがウェブサイトで中継した。 
●新型肺炎で日本経済「9年ぶりマイナス成長」に 3/7 
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年の成長率見通しが相次いで引き下げられている。中国のサプライチェーン混乱による輸出減少に加え、インバウンド観光需要や日本人の国内消費が急激に落ち込んでいる。野村証券の美和卓チーフエコノミストは、「2月中旬に当社の予測値を改定したが、事態はそのベースシナリオを上回って悪化した。今は3段階の真ん中である悪化シナリオを通り越し、最悪シナリオに近づきつつある」と語る。
図のように、野村証券が予測する2020年の実質GDP成長率は、前年比1.1%のマイナス成長。仮にそうなれば、東日本大震災があった2011年のマイナス0.1%以来、9年ぶりのマイナス成長となる。なお、金融危機が起きた1998年はマイナス1.1%、リーマンショック後の2009年の成長率はマイナス5.4%だった。マイナス1.1%成長の主な前提は、中国での現在の封鎖措置が6月末まで続き、中国以外の国でもウイルス拡大が加速し、3月までに感染率(人口比)が中国と同程度になるほどの深刻な影響を及ぼすというものだ。美和氏は「そこまで悪化すると、東京オリンピック・パラリンピックの中止も考えなければならない。五輪中止を織り込むと、第3四半期(2020年7〜9月)の経済活動もストップし、2020年のマイナス成長幅は1.5%程度まで拡大する可能性がある」と話す。
当面の焦点は、イベントの中止や消費自粛、学校の休校などによって国内消費がどこまで落ち込むのかだが、これまで景気拡大を牽引していた訪日外国人観光客の落ち込みも気にかかる。訪日観光客数は日本銀行の大規模金融緩和によって円安が進行したことを契機に、2003年以降に急拡大した。外国人旅行者が日本滞在中に支出した宿泊費や飲食費、土産物代など(サービス収支・旅行)に、日本への往復旅客輸送運賃を加えた「サービス収支/観光関連サービス」という統計が公表されている。
長いこと1兆円台で推移してきた観光関連サービスの受取額(訪日外国人による支出額)は毎年拡大を続け、2019年にはついに5.3兆円に拡大した。観光関連サービスの急落は、2008年のリーマンショック時に当時の景気牽引役だったアメリカ向けの自動車輸出を中心に、輸出が急減した動きと似ている。2012年に発足した安倍政権は円安誘導を続けたが、結果的に輸出はさほど増えず、円安で日本旅行が割安になったことから、インバウンド観光需要が急増した。ただ、今回の外国人客の急減は、リーマンショック時に輸出が急減したケースほど、日本経済にとってダメージを与えないと予想される。一つは、貿易収支上の輸出や輸入はそれぞれ70兆〜80兆円(2019年)規模であるのに対し、観光関連サービスの受取額や支払額(日本人による海外旅行支出)はそれぞれ5.2兆円、3.1兆円と1桁少ないからだ。
GDPの計算上、輸出から輸入を差し引いた貿易収支(輸出が多いなら貿易黒字)や受取額から支払額を差し引いたサービス収支がプラスならGDPは増えることになる。東日本大震災以降、日本の原子力発電所の多くが停止し、石油や天然ガスの輸入が増えたために日本の貿易収支は赤字に転落した。2016年以降、貿易黒字に転じたものの、米中貿易摩擦の影響で輸出が低迷したため、再び貿易黒字幅は縮小している。その結果、2019年の貿易黒字が約5500億円なのに対し、観光関連サービスの黒字幅は約2.1兆円と貿易黒字額を凌駕している。
新型コロナウイルスの影響を考えると、日本が得意とする中間素材などの対中輸出は減少する一方、中国からの消費財などの輸入も同様に減る可能性が高い。つまり、GDPの計算上、貿易収支の影響は短期的にはニュートラルになる可能性がある。一方、観光関連サービスは、日本人の海外旅行が減少する一方、中国や韓国などアジアからのインバウンド観光の減少はそれ以上に大きいことが予想される。その結果、観光関連サービスが悪化し、GDPにマイナスの影響を与えそうだ。最悪のケースとして、現在の観光関連サービスの黒字幅2.1兆円が仮にゼロになるとすると、リーマンショック時の貿易黒字の減少幅が約8兆円だったので、その4分の1のインパクトを与えそうだ。とはいえ中小経営の多い宿泊業、飲食サービスでは資金繰り悪化が必至であり、政府の対応は急務になっている。なお、名目GDPが4000億ドル(約43兆円)以上の国(27カ国)のうち、国際観光収入がGDPに占める割合をランキングすると、断トツの1位はタイ。スペインやフランス、アメリカなどと比べて国際観光収入の金額は小さいが、タイ経済にとって国際観光の存在感は大きい。今回のコロナウイルスショックが観光産業を通じて与える影響は国によって多少異なるだろうが、経済への影響度を測る1つの目安になりそうだ。 
●新型コロナ感染者10万人突破−米フロリダ州で初の死者 3/7 
新型コロナウイルスの感染拡大は広がり、確認症例数は世界で10万1300件を突破した。死者数は3400人を上回っている。トランプ米大統領は対策として、78億ドル(約8200億円)規模の緊急歳出法案に署名した。
米カリフォルニア沖に停泊しているクルーズ船「グランド・プリンセス」で少なくとも21人が、新型コロナウイルス検査で陽性反応が出た。ペンス米副大統領が6日、明らかにした。 一方、テキサス州で予定されていた文化とテクノロジーの祭典「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」は30年ぶりの中止が決まった。
米国ではケンタッキー、ネブラスカ両州で初めて感染者が確認され、これで25州に感染が拡大。フロリダ州では初の死者2人を同州衛生当局者が確認したほか、カリフォルニア州のスタンフォード大学は冬季期間の最後の2週間、教室での授業を休講とした。同大の医科大学院で教職員の1人が感染した。
シアトルを中心都市とするワシントン州キング郡では60代の男性が5日死亡し、同郡での死者は11人に増えた。ニューヨーク州の感染者は新たに11人が確認され、計44人になったと、クオモ知事がツイッターで明らかにした。
中国では死者数が28人増えて3070人となった。感染者数は99人増の8万651人。韓国では新たに483人が確認され、計6767人が感染している。日本時間7日夕方の聯合ニュースによれば、その後さらに274人増えて計7041人となった。
新型コロナの感染拡大はSXSW以外の予定にも影響を与えている。ミルケン研究所の世界会議は7月まで延期されると関係者が明らかにした。当初は5月2−6日にカリフォルニア州ビバリーヒルズで開かれる予定だった。同研究所の広報担当ジェフリー・バウム氏は「今のところ、研究所の計画について共有すべき情報はない」とコメントしている。
中南米ではコロンビアとペルー、コスタリカで感染者が初めて確認された。ブラジルとチリでも感染者は出ているが、この地域で死者は報告されていない。
米マスターカードはブラジルのサンパウロにあるオフィスを閉鎖した。同オフィスで働く社員1人が感染したためで、この社員が出張したニューヨーク州パーチェスのオフィスも閉めた。米衣料品チェーン大手ギャップも従業員1人の感染を受け、ニューヨーク市のオフィスを閉鎖。同社の本社はサンフランシスコにある。
世界保健機関(WHO)の緊急事態プログラム責任者マイク・ライアン氏は6日、新型コロナが「インフルエンザのように夏になれば消えると期待するのは間違っている」と述べ、積極的な対応を呼び掛けた。 
●中国の1−2月輸出、ドル建て17.2%減ー新形コロナで予想以上に減少 3/7 
中国の1−2月の輸出は予想以上に減少した。新型コロナウイルスの感染拡大で春節(旧正月)の連休が延長されたほか、工場生産が落ち込み、輸送や移動が全国的に妨げられたことが背景で、輸入も減った。
税関総署の7日発表によると、1−2月の輸出はドルベースで前年同期比17.2%減少、輸入は同4%減。これにより、同期間の貿易赤字は71億ドル(約7480億円)となった。エコノミスト予想では輸出が16.2%、輸入が16.1%それぞれ減少すると見込まれていた。1−2月を合わせた発表は今回が初めて。
1ー2月は毎年、中国では春節の連休があるため、経済活動の変動が激しくなるが、特に今年は新型コロナの感染拡大で異例な展開となった。連休延長のみならず、隔離措置などで数週間にわたって経済活動の大半が事実上ストップし、移動や生産、輸送が混乱した。税関総署はウェブサイトでの発表文で、輸入への影響はそれほど大きくなかったとの認識を示した。
中国政府は現在、企業に事業活動再開を促しているが、新型コロナ感染拡大前の水準への復活は容易には進まない。
UBSグループのシニアエコノミスト、張寧氏(香港在勤)は貿易統計発表前に、「中国の貿易活動は3月末か第2四半期の早い時期までに段階的に正常に戻るかもしれない」とした上で、「下振れリスクは向こう数四半期での新型コロナ感染の世界的拡大、つまり世界的大流行だ。そうなれば、世界の需要と中国の輸出を抑えかねない」とコメントした。    
●米国 株は続落、終盤に下げ渋りー原油は10%安 3/7 
6日の米株式相場は続落。S&P500種株価指数は一時4%下げたが、取引終了にかけての1時間で急速に下げ渋った。新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が腰折れするとの懸念から、同指数は週間でも荒い値動きとなったが、結局は0.6%高で終えた。米国債相場は急伸。
米国株は続落、終盤に下げ渋る / 米国債は急伸、10年債利回りは0.78% / NY原油は急落、減産協議が決裂で / NY金先物は続伸、感染拡大への懸念が長引く
米国債利回りは過去最低を更新。10年債利回りは一時0.66%まで低下した。
航空会社は欠航を相次いで発表、全米でイベントが延期されている。財政支出に消極的な一方、一段の行動を求めて金融当局に圧力をかけるトランプ政権の姿勢では景気浮揚には不十分との懸念が強まっている。
S&P500種は前日比1.7%安の2972.37。ダウ工業株30種平均は256.50ドル(1%)安の25864.78ドル。ナスダック総合指数は1.9%下落。ニューヨーク時間午後4時42分現在、米国債市場では10年債利回りが14ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の0.78%。
TDアメリトレードの取引戦略マネジャー、ショーン・クルーズ氏は電話インタビューで、「感染者が増え続ける限り、市場ではボラティリティーが高まるだろう」と発言。「センチメント悪化や実体経済への影響を巡る不安を弱めようと、協調的な対応が見られる」と述べた。
今週はウイルス感染の悪影響を緩和するための主要中央銀行と政府による協調対応で株価が上昇する場面もあったが、リスクを回避し安全な資産に資金が向かった。欧州やイランで感染者が増え、世界の感染者数は10万人を突破した。
2月の雇用統計はほとんど材料視されなかった。雇用者数はほぼ2年ぶりの大幅増。今回の統計は、感染拡大が全米に広まり、世界のサプライチェーンを揺るがし始める前の状況しか反映していない。
ニューヨーク原油先物相場は3日続落。2014年11月以来の大幅安となった。石油輸出国機構(OPEC)加盟国とそれ以外の主要産油国で構成するOPECプラスが追加減産で合意できず、協議が決裂したことを嫌気し、売りが膨らんだ。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は4.62ドル(10.1%)安の1バレル=41.28ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント5月限は4.72ドル(9.4%)安の45.27ドルと、08年以来の大幅安。
ニューヨーク金先物相場は続伸。新型コロナウイルス感染拡大に対する長引く懸念を背景に買いが優勢になった。ただ、株式市場で発生した追い証をカバーするための換金売りで下げに転じる場面もあった。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は0.3%高の1オンス=1672.40ドルで終了。週間では約4年ぶりの大幅高となった。 
 
 
 

 

●NY外為 ドル下落、週間で2018年来の大幅安−対円一時105円割れ 3/7 
6日のニューヨーク外国為替市場では、ドルが下落。ドル指数は週間ベースで約2年ぶりの大幅安となった。一方、円とスイス・フランは上昇。新型コロナウイルスの感染者数が世界で10万人を突破する中、安全資産の需要が強まった。
〇米30年債利回りは低下し、過去最低を更新。一方、株価は下落したほか、米信用市場では懸念が大きく高まった。米雇用統計は強かったものの、市場の不安を和らげるには至らなかった
〇主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.3%安。一時は0.5%下げる場面もあった。週間では1.3%安と、2週連続下落
〇スイス・フランと円は主要10通貨に対して上昇。フランは対ドルで約2年ぶりの高値、円は6カ月ぶりの高値となった。フランは週間では、主要通貨で上昇率上位
〇ユーロは2019年半ば以来の水準に上昇。ポンドはほぼ2週間ぶりの水準に上昇
〇ニューヨーク時間午後4時33分現在、ドルは対円で0.7%安の1ドル=105円40銭。一時は104円99銭を付ける場面もあった
〇ユーロは対ドルで0.6%高の1ユーロ=1.1304ドル  
●ボストン連銀総裁、幅広い資産購入検討を−リセッションに備え 3/7 
ボストン連銀のローゼングレン総裁は6日、利下げと債券購入ではリセッション(景気後退)対応措置として不十分な場合、さまざまな資産購入を政策当局は許されるべきだとの認識を示した。
10年物の米国債利回りが既に過去最低の現状では、典型的な量的緩和は2008年の金融危機時のようには機能しないかもしれないとし、米金融当局にも日本や欧州のような柔軟対応が求められるだろうと説明した。
ローゼングレン総裁はニューヨークでの講演で、米金融当局に「幅広い証券あるいは資産の購入を認めるべきだ」と発言。その上で、「そのような政策を実施するには米連邦準備法の改正が必要になるだろう」と付け加えた。
同法の下、米金融当局が購入できる資産は現在、米政府機関が直接発行ないしそれら機関が元利払いを完全保証する債券に限られる。このため、米国債と政府系機関が発行する債券、政府系住宅金融機関のモーゲージ債に限られている。
一方、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は同じイベントでの講演向け原稿で、米金融当局が量的緩和(QE)を通じて膨らませてきたバランスシート拡大は金融安定への懸念を高めるとし、そのコストの可能性も決して十分には理解されていないとの認識を示した。
ジョージ総裁は資産購入のプラスは明らかというのが社会通念だが、「バランスシート政策の長期的コストが十分考慮されているのか、自分には明瞭でないままだ」と語り、「これらの効果に政策金利が長期にわたり歴史的低水準にとどまるとの認識が加わると、実体経済にいずれリスクをもたらす金融の不均衡が高まり得る」と述べた。 
●新型コロナショック!? 経済悪影響下で、個人投資家がとるべきスタンスは? 3/7 
新型コロナウイルスによる新型肺炎が世界中に拡大しています。日本経済や世界経済に与える悪影響も今後どの程度大きくなるのか、現状ではまだ計りきれません。世界の株式市場でも先行き懸念からの売りが優勢となり、大きく下落しています。まさに「新型コロナショック」と呼んでもいい状況になりつつあります。今回は、NISAやiDeCoなどを利用している個人投資家の取るべきスタンスについて考えてみることにしましょう。
日本の株価の指標のひとつである日経平均株価は、連休前の2月21日(金)に2万3,386円だったものが、1週間で2万1,000円前後にまで値下がりしました(2月28日現在)。アメリカのNYダウも先週末(2月21日)の2万9,000ドル台だったものが、今週は2万5,000ドル台にまで急落しています。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が経済に与える悪影響を懸念して、「とりあえず売っておこう」という投資家の動きが強まっているのだと思われます。そして、1日や2日の下落で止まらずに1週間にわたる下落が続いている理由は、今回のこの騒動の終わりがまったく見えてきていない状況であることと、様々なスポーツやイベントの中止や延期が決まり、企業活動も制限されるような状況になっていることなどから、予想以上に事態の収束に時間がかかりそうで、経済への悪影響がかなり大きくなる可能性が高まってきているからでしょう。
3月に入ってからもこの動きが続くとすると、これまで様子見をしてきた投資家からのパニック的な売りが出始め、さらに急落するようなことにもなりかねないでしょう。NISAやiDeCo、また、企業型DC(確定拠出年金)などを通じて投資をしている一般の個人投資家の人たちにとっても、自分たちの資産の評価額が急減するのは見ていて気持ちのよいものではないはずです。何らかの行動に出たほうがいいのか、迷い始めている人も多いことでしょう。そのような一般の個人投資家の方に筆者からアドバイスをするのであれば、「気にしない!」のひとことです。特に、老後の資産形成のためにiDeCoや企業型DCを利用している人ほど、株式市場の下落は、「安いところを買えるチャンス」くらいに思っておけばよいでしょう。今回の騒動も、いつかは必ず治まるはずです。これ以上、感染が拡大しないこと、経済への悪影響が大きくならないことを祈りつつ、様子見を続けていればいいと思います。もちろん、先行きは誰にもわかりません。結果的には、あのとき早く売っておいたほうがよかったということになる可能性もあります。しかし、絶妙なタイミングなど、誰にもわからないのです。もったいないのは、「もう値動きのある商品を保有しておくのは怖い。定期預金に替えておこう」などと、元本確保型商品に切り替えてしまうことです。10年ほど前のリーマンショックのときのことを思い出してください。
図のような過去30年間の日経平均株価の動きを見ても、1年の間に1、2回は大きく変動するときがあるだけでなく、数年に1度は急落する場面もあるのです。それでも、平成バブルのピークの4万円近かったときから毎月1万円を投資していたとして、2019年12月まで積立投資を続けていた場合の平均購入単価は、まだ1万4,000円台です。今回の急落で仮に2万円を割り込んだとしても、まだまだ利益が出ている状態なのです。20年、30年といった長期での資産形成、運用を考えられる人は、とにかく短期的な変動に一喜一憂せずに、下がったところを買えるチャンスが来ているくらいに考えて、今回の騒動を落ち着いて見守るのが無難だと思われます。それでも、自分の組んだポートフォリオの割合が当初から大きく崩れていて、その崩れたバランスを元に戻すリバランスをしたほうがいいかどうかを悩むのであれば、リーマンショックのときのように、国内株式や外国株式が年間で40%以上下がるような動きになってから考えればよいでしょう。とにかく、「急いては事を仕損じる」です。落ち着いて慎重に検討することが重要だと思います。 
●3月6日の海外株式・債券・為替・商品市場 3/7 
NY外為 ドル下落、週間で2018年来の大幅安−対円一時105円割れ
6日のニューヨーク外国為替市場では、ドルが下落。ドル指数は週間ベースで約2年ぶりの大幅安となった。一方、円とスイス・フランは上昇。新型コロナウイルスの感染者数が世界で10万人を突破する中、安全資産の需要が強まった。
〇 米30年債利回りは低下し、過去最低を更新。一方、株価は下落したほか、米信用市場では懸念が大きく高まった。米雇用統計は強かったものの、市場の不安を和らげるには至らなかった
〇 主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.3%安。一時は0.5%下げる場面もあった。週間では1.3%安と、2週連続下落
〇 スイス・フランと円は主要10通貨に対して上昇。フランは対ドルで約2年ぶりの高値、円は6カ月ぶりの高値となった。フランは週間では、主要通貨で上昇率上位
〇 ユーロは2019年半ば以来の水準に上昇。ポンドはほぼ2週間ぶりの水準に上昇
〇 ニューヨーク時間午後4時33分現在、ドルは対円で0.7%安の1ドル=105円40銭。一時は104円99銭を付ける場面もあった
〇 ユーロは対ドルで0.6%高の1ユーロ=1.1304ドル
米国株・国債・商品 株は続落、終盤に下げ渋りー原油は10%安
6日の米株式相場は続落。S&P500種株価指数は一時4%下げたが、取引終了にかけての1時間で急速に下げ渋った。新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が腰折れするとの懸念から、同指数は週間でも荒い値動きとなったが、結局は0.6%高で終えた。米国債相場は急伸。
〇 米国株は続落、終盤に下げ渋る
〇 米国債は急伸、10年債利回りは0.78%
〇 NY原油は急落、減産協議が決裂で
〇 NY金先物は続伸、感染拡大への懸念が長引く
米国債利回りは過去最低を更新。10年債利回りは一時0.66%まで低下した。
航空会社は欠航を相次いで発表、全米でイベントが延期されている。財政支出に消極的な一方、一段の行動を求めて金融当局に圧力をかけるトランプ政権の姿勢では景気浮揚には不十分との懸念が強まっている。
S&P500種は前日比1.7%安の2972.37。ダウ工業株30種平均は256.50ドル(1%)安の25864.78ドル。ナスダック総合指数は1.9%下落。ニューヨーク時間午後4時42分現在、米国債市場では10年債利回りが14ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の0.78%。
TDアメリトレードの取引戦略マネジャー、ショーン・クルーズ氏は電話インタビューで、「感染者が増え続ける限り、市場ではボラティリティーが高まるだろう」と発言。「センチメント悪化や実体経済への影響を巡る不安を弱めようと、協調的な対応が見られる」と述べた。
今週はウイルス感染の悪影響を緩和するための主要中央銀行と政府による協調対応で株価が上昇する場面もあったが、リスクを回避し安全な資産に資金が向かった。欧州やイランで感染者が増え、世界の感染者数は10万人を突破した。
2月の雇用統計はほとんど材料視されなかった。雇用者数はほぼ2年ぶりの大幅増。今回の統計は、感染拡大が全米に広まり、世界のサプライチェーンを揺るがし始める前の状況しか反映していない。
ニューヨーク原油先物相場は3日続落。2014年11月以来の大幅安となった。石油輸出国機構(OPEC)加盟国とそれ以外の主要産油国で構成するOPECプラスが追加減産で合意できず、協議が決裂したことを嫌気し、売りが膨らんだ。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は4.62ドル(10.1%)安の1バレル=41.28ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント5月限は4.72ドル(9.4%)安の45.27ドルと、08年以来の大幅安。
ニューヨーク金先物相場は続伸。新型コロナウイルス感染拡大に対する長引く懸念を背景に買いが優勢になった。ただ、株式市場で発生した追い証をカバーするための換金売りで下げに転じる場面もあった。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は0.3%高の1オンス=1672.40ドルで終了。週間では約4年ぶりの大幅高となった。
欧州債:ドイツ債上昇、10年債と30年債利回りは過去最低を更新
6日の欧州債市場ではドイツ債が上昇した。米国債が急伸する中、ドイツ債の10年債、30年債利回りは過去最低を更新した。特に長期債への買い意欲が取引終盤まで続いた。
〇 新型コロナウイルスの経済への影響が一段と懸念されており、リスク回避の動きが強かった
〇 英国債は上昇。ドイツ債は米国債を下回るパフォーマンスとなり、米国債とドイツ債のスプレッドは148ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、2016年以来の最小
〇 ドイツ10年債利回りは3bp下げてマイナス0.72%、イタリア10年債利回りは1.07%で変わらず、英10年債利回りは10bp下げて0.23% 
●NY株式市場 値下がりも終値では先週末と比べ450ドル余上昇  3/7 
6日のニューヨーク株式市場は、新型コロナウイルスの感染拡大への懸念から、ダウ平均株価は前日に続いて、値下がりしました。今週は、乱高下を繰り返しましたが、終値で見ますと、先週末に比べて450ドル余り上昇して、今週の取り引きを終えています。
6日のニューヨーク株式市場ダウ平均株価の終値は、前日に比べて256ドル50セント安い、2万5864ドル78セントでした。
新型コロナウイルスの感染拡大が、世界経済に深刻な影響を与えるのではないかという懸念から、この日もダウ平均株価は大きく値下がりして始まり、アメリカ政府の緊急予算の決定やG20による声明も、大きな材料にはなりませんでした。
ただ、一時900ドル近く値下がりしたものの、取り引き終了にかけて、値下がり幅は大幅に縮小しました。
金融市場では、先行きへの不安感から債券や金など、より安全とされるものに資金を移す動きが根強いままですが、株価は、先週の記録的な下落に比べると、今週は大幅に上昇した日もあって、ダウ平均株価の6日の終値は、先週末に比べると450ドル余り高くなっています。
市場関係者は、「この週末も感染拡大が予想される中、投資家の慎重姿勢は依然強いままだが、一部では、値下がりした銘柄を買い戻す動きも出ている」と話しています。 
 
 
 

 

●北海道で新たに8人感染 展示会"クラスター"感染者の濃厚接触者も… 3/7 
道内感染者98人に
北海道は3月7日午後5時から会見を開き、道内で新型コロナウイルスの感染者が新たに8人確認されたと発表しました。これで北海道内の感染者は98人となります。
北海道が詳細を公表したのは、91例目と92例目の2人で、いずれも既に発表されている感染者と濃厚接触していたということです。2人とも症状は軽いという事です。
道によりますと、91例目は滝川市内の40代の女性で、2月27日に感染が確認された46例目の滝川市内の40代男性の濃厚接触者でした。また92例目は北見市内の60代女性で、2月28日に感染が確認された60例目の北見市内の60代男性会社員の濃厚接触者でした。
60例目の男性は、クラスター感染が起きた北見市内の展示会に参加していたことがわかっています。
また道は、これまで感染が判明した90人のうち、55人が治療中、32人が退院、3人が死亡したと発表しました。 
●クドロー氏、「タイムリーで的を絞った」措置を支持−新型コロナ対応 3/7 
クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、新型コロナウイルスの経済への影響に対処するため、ホワイトハウスは的を絞った措置に取り組んでおり、迅速に実施される可能性があると述べた。
クドロー氏は6日、ブルームバーグテレビジョンで「タイムリーで的を絞った細かい措置を講じたい」と指摘。「数千億ドルも費やすような大規模かつ広範な措置で、長期的に刺激効果がなく成長にも影響を与えない」ような取り組みは支持しない考えを示した。
措置の詳細については、自宅にとどまることを余儀なくされ給与の支払いを受けられない人や小規模事業者、新型コロナの影響で打撃を受ける航空など一部業界への支援が含まれる可能性があると説明。より詳細な情報は来週中に明らかになる可能性があるとも述べた。 
 
 
 3/8

 

●愛知の感染広げる2つのクラスター 3/8 
3/8pm9時点  国内で確認された感染者 / 1190人  死者 / 14人
愛知県内で新型コロナウイルスの感染拡大が続き、7日夜までに感染者は69人に達した。関係者によると7日時点で、二つの高齢者デイサービス事業所の利用者などから17人の感染が確認されるなど、感染者の集団(クラスター)が発生。さらに感染経路が確認できない人もおり、名古屋市などは「静かに感染が広がりつつある状況」とみて警戒を呼びかけている。
愛知県内での感染者は、1月下旬に中国からの渡航者2人で確認されてからいったん止まったものの、2月中旬から急増した。これまでの感染者の状況から、つながりが確認された患者の集団が二つあることが見えてきた。
一つは、名古屋市緑区の病院で2月末、入院中の同市の70代女性の感染が確認されたことがきっかけだった。翌日、同居する80代女性の感染が判明。この女性が利用していた高齢者デイサービス事業所で、新たに5人が感染していたことが分かった。さらにこの5人のうちの80代女性が利用する別の事業所でも8人の感染を確認。7日には、さらに3人の感染が確認された。計17人のうち、40代女性1人を除くと、60〜90代だ。もう一つの集団は、ハワイから…  
●「クラスター」発生か 4つのライブハウス利用者 大阪府 3/8 
大阪府で8日、新たに14人が新型コロナウイルスに感染したことがわかった。大阪府の会見によると新たに感染が確認されたのは20代から60代までの男女14人で、いずれも現在は軽症ということだ。これで府内の感染者は55人になった。このうち10人は先月、すでに多数の感染が確認されている大阪市都島区のライブハウス「大阪京橋ライブハウスArc(アーク)」や北区のライブハウス「ソープオペラクラシックス梅田」を訪れていた。また、すでに陽性が判明している30代の女性が先月17日と18日、複数の感染者が出た大阪市北区の別のライブハウス「LIVE HOUSE Rumio」を訪問していたことがわかった。大阪府は同じく感染者が確認されている大阪市中央区の「americamura FANJ twice」を含む4つのライブハウスで集団感染「クラスター」が発生した可能性があるとして、参加者に対し保健所に連絡するよう呼びかけている。 
●新型コロナウイルス、北海道で感染者100人超える 3/8 
新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。北海道では8日、新たに3人の感染が判明し、感染者が100人を超えました。北海道は8日、新たに3人の感染を確認したと発表しました。感染が確認されたのは、北海道岩見沢市に住む無職の60代男性と70代女性、そして、旭川市の70代男性です。岩見沢市の男女は、濃厚接触があったということです。これで北海道内の感染者は合わせて101人となり、都道府県別では初めて100人を超えました。 
 
 
 3/9

 

●中国 新型コロナウイルス 感染者40人増 計8万735人に  3/9 
中国の保健当局は8日、中国国内で新たに確認された新型コロナウイルスの感染者は、40人だったと発表し、1日に確認された感染者の数としては2日連続で50人を下回りました。
中国の保健当局、国家衛生健康委員会によりますと中国国内で新型コロナウイルスに感染して死亡した人は、8日湖北省を中心に、新たに22人確認され、合わせて3119人になりました。
また、新たに確認された感染者は、40人で、中国国内の感染者数は合わせて8万735人となり、1日に確認された新たな感染者の数としては、7日に続き2日連続で50人を下回りました。
新たな感染者のうち36人は、感染の深刻な湖北省の武漢で確認され、残る4人は、いずれも外国から入国してきた人でした。
中国では、このところ、外国からの入国者の感染が確認されるケースが相次いでいて、当局が警戒を強めています。
一方、国営の中国中央テレビによりますと、武漢では、治療を終えて退院する患者が増え、体育館などに臨時に設けていた14か所の医療施設は、10日ころまでにすべて閉鎖される見通しだということです。
ただ、武漢を含む湖北省内では、依然、1万5000人余り入院しているということで、今後は、指定病院を中心に、患者の治療を進めていくとしています。  
●コロナショック 世界が陥る「封鎖のパラドックス」  3/9 
コロナショック 世界が陥る「封鎖のパラドックス」
新型コロナウイルスの感染拡大が世界規模で広がり、金融・証券市場の動揺が続いている。日経平均株価は1年2カ月ぶりに一時2万円の大台を割り込み、円相場も一時1ドル=101円台と約3年4カ月ぶりの円高水準になった。原油相場も1バレル30ドル台に急落。新型コロナショックは、世界景気の悪化懸念に結びつき、マネーが逆回転する動きが止まらない。「ロックダウン・パラドックス」。市場でこんな言葉が出始めた。
コロナショックに円高、原油安も…東京市場は大荒れ
急速な株安・円高が進んでいます。東京株式市場で日経平均株価が1年2カ月ぶりに2万円の大台を割り込み、下げ幅は1200円を超えました。東京株式市場は新型コロナウイルスに加えて円高、原油安のトリプルパンチで荒れに荒れています。日経平均株価は先週末よりも1276円安い1万9473円で9日午前の取引を終えています。新型コロナウイルスの感染がアメリカなどで拡大し、世界景気への懸念が強まり、株は売り込まれています。一方で、安全資産とされる円が買われ、為替市場では急速な円高が進んでいます。1ドル=101円台に突入する場面もありました。円高は輸出企業にダメージが大きく、日本株が一層売られる要因となっています。さらには産油国の協議がまとまらず原油価格も急落していて、マイナス要素が連続しています。市場関係者は先の見えない悪材料続きだと肩を落としていて、不安感が広がっています。
新型コロナショック、急激に株安・円高の衝撃 
週明け9日の東京金融市場は、新型コロナウイルスの感染が世界的に広がっていることへの懸念から、急激な株安・円高が進んでいる。日経平均株価(225種)は一時、前週末終値から1200円超下落し、取引時間中としては2019年1月以来、約1年2か月ぶりに2万円を割り込んだ。円相場では一時、1ドル=101円台まで円高・ドル安が進行した。新型コロナウイルスの感染者が世界で10万人を超えるなど感染拡大に歯止めがかからず、世界経済に深刻な影響を及ぼすとの懸念が強まった。前週末のニューヨーク株式市場でダウ平均株価(30種)が一時、900ドル近く下落したことも嫌気され、東京株式市場は取引開始直後から全面安の展開となった。日経平均の午前の終値は前週末終値比1276円68銭安の1万9473円07銭だった。鉱業や鉄鋼など景気の動きに敏感な銘柄を中心に売り注文が膨らんでいるほか、円高が進んだことで自動車や電気機器といった輸出関連銘柄も大幅に値下がりした。
東京外国為替市場は、比較的安全な資産とされる円を買い、ドルを売る動きが膨らみ、円相場は一時、前週末(午後5時)に比べて約4円の円高・ドル安となる1ドル=101円台後半をつけた。101円台は、トランプ米大統領が大統領選で勝利した16年11月以来、約3年4か月ぶりとなる。円相場は午前11時現在、前週末(同)比3円57銭円高・ドル安の1ドル=102円22〜30銭で取引されている。対ユーロでは、同2円06銭円高・ユーロ安の1ユーロ=116円79〜88銭で取引されている。東京債券市場でも安全資産とされる国債が買われ、長期金利の代表的な指標となる新発10年物国債の流通利回りは一時、前週末終値比0・055%低い年マイナス0・200%まで低下(価格は上昇)し、19年10月以来の低水準となった。  
●新型コロナ 市川2施設で集団感染か 3/9 
新型コロナウイルスの感染者が市川市内で相次いでいることから、「県・市川市合同対策チーム」が設置され、八日に市役所で初会議を開いた。市内ではスポーツクラブと高齢者向け福祉事業所で複数の感染者が判明しており、県は事実上、小規模な集団感染(クラスター)とみて「クラスター対応している」と説明。会議では、仮に他の通所介護事業所などへと感染が広がった場合、利用者向けサービス提供の縮小を事業所に要請することにした。
合同対策チームの会議に出席したのは、厚生労働省や国立感染症研究所で組織するクラスター対策チームの同研究所職員と県、市、市川保健所の職員ら計二十四人。市内や集団感染とみられる二施設での感染者の発生状況、今後の対応策などを協議した。
会議では、市内に百二十五カ所ある通所介護事業所に、具体的な感染防止策を盛ったチェックリストを送付することを決定。他の通所介護事業所でも感染者が見つかるなど感染が拡大した場合、利用者の利用回数を減らしたり、要介護度の高い人を優先するよう要請することにした。県健康福祉部の神部真一次長は会議後、「全面的にサービスを休止すると混乱する」と説明した。
県内での新型コロナウイルス感染者数は今月七日までに、無症状の二人を含め計二十四人。市川市内が十人を占めており、スポーツクラブで四人(ほかに東京都在住の一人)、福祉事業所で四人の感染が判明している。
県内で最初に感染者が確認されたのは一月三十日。以来、中国・武漢市から日本政府のチャーター便で帰国した二人と、集団感染したクルーズ船から下船した二人を含め、無症状の二人を除く二十二人の感染患者の内訳は男性十三人、女性九人。年代別では五十、六十代が各五人、二十代が四人、四十代が三人、七十、八十代が各二人、三十代が一人となっている。 
●新型コロナウイルス感染症対策 3/9 
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が昨年中国で発生し、現在、日本を含めた各国に感染が拡大しています。新潟大学の学生、教職員の皆さんは見識をもって、正確な認識のもとに、自分の安全と日本の未来のために、現在行っている対策にご協力いただきたくお願い申し上げます。このウイルスの感染の特徴は、3月2日に厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下「専門家会議」)から出された見解に示されていますが、
1.症状の軽い人からの感染拡大が起こっていること。特に、若い人は感染しても症状が軽いことが多く、その人たちが活動することで、結果として中高年層に感染が及んでいること。
2.感染者の約80%は他の人に感染させていないが、一定の条件を満たす場所において一人の感染者が複数人に感染させる事例が報告されていること。すなわち、ライブハウス、スポーツジム、ビュッフェスタイルの会食、スキーのゲストハウスなど、屋内の閉鎖的な空間で、人と人とが至近距離で、一定時間以上交わることによって、患者集団(クラスター)が発生すること。
3.「クラスター」が次の「クラスター」を生むことが、感染の急速な拡大を招くと考えられること。
が指摘されています。その点で、「専門家会議」から全国の若者の皆さんに対して「人が集まる風通しが悪い場所」を避けてほしいという呼びかけがされていることを、十分理解してください。これは皆さん自身の感染リスクを最小限に抑えるために重要ですし、自分自身がスプレッダー(感染源)になって、他者に感染させないためにも大切なことです。この時期の居住地域を越えての移動も、自身の感染のリスクが高まると同時に、全国に感染を広げることにつながりかねません。
新型コロナウイルス感染症のリスクを考えるには二つの観点があります。
1.新しい感染症であること:新型コロナウイルスは、従来のコロナウイルスとよく似た症状を示しますが、新しい感染症で、特効薬や特別な治療薬がありません。従って、重症化した場合でも対症的な治療しかないため、死亡する確率が高くなっています。また、新型コロナウイルス感染では、高齢者や基礎疾患のある人で重症化しやすいことで、10〜40代では致死率が0.2%程度であるのに対し、50代では1.3%、60代では3.6%、70代では8.0%、80歳以上は14.8%と急速に上昇することです。この致死率は、インフルエンザが全体で0.01〜0.1%程度であることを思うと、いかに高率であることがわかります。もちろん、ワクチンや特効薬の開発が現在急速に進められていますが、実用化には1年ほどかかることが予想されます。その点で、感染をできるだけ予防し、重症者を増やさないことが現在必要なことです。
2.パンデミックの可能性があること:感染症の流行にはアウトブレイク(集団発生)、エピデミック(流行)、パンデミック(世界的大流行)の三つの段階があります。新型コロナウイルスの現在の流行はエピデミックの段階からパンデミックになる臨界点にあると考えられる極めて重要な時期にあります。それは、エピデミックを最小限にし、感染者や重症者に対応できる医療体制を整えるための時間作りという点でも重要です。
今回の学校閉鎖や集会イベントの中止も、移動の自粛もすべて一緒に行わないと効果が出ないことが予想されています。単に自分が感染しなければいいという問題ではなく、日本全体の問題であり、日本人の見識が問われることです。
以上のことから、皆さんには以下のことをお願いします。
1.石鹸での手洗いや消毒剤を使った手指衛生を励行し、咳エチケットを守ってください(咳・くしゃみが出るときはマスクをする、ティッシュで口・鼻を覆う、袖で覆う)。
2.不特定多数の人々が集まる風通しが悪い場所を避けてください。特に、多くの人々が近距離で話し合う宴会やイベント等は避けてください。
3.感染者が拡大している地域への不要不急の移動は控えてください。
4.咳、熱、だるさなどの症状があったら、自宅待機をしてください。これは他の人にうつさないようにするためです。4日ほどしても治らないようであれば新潟市の場合は、新潟市保健所に電話して病院を紹介してもらってください(新潟市保健所 025−212−8194)。その際に大学(学生は所属部局の学務係、教職員は所属部局の庶務・総務担当係)にも申し出てください。
3月中は、現在の「封じ込め」の対策が続くことになると思いますが、2月末からの「封じ込め」の効果は来週あたりから見えるのではないかと期待しています、一方で、感染の拡大が続くのであれば、政府が「非常事態宣言」を出すということもありえますし、その場合は、今以上に制限されます。また、最悪の事態はパンデミックになることです。いずれにしても、大きな変化がない限り、3月中は今の対策に準じることになりますが、その間、3月末までに4月以降の対応方針をお示しするようにします。
なお、特に学生の皆さんには、さまざまな自粛のために、どのように日々を暮らせばよいか悩んでいる人も多いのではないかと思います。しかし、ピンチはチャンスという言葉があるように、この時期は、これまでの社会や生活など、今まで普通だと思ってきたことを考え直してみる絶好のチャンスです。ぜひ、有効にこの時間を使ってもらいたいと思います。
インターネットには、多様なニュースが流れており、その中にはフェイクニュースもたくさんあります。マスコミの論調も偏っているものもありますが、新潟大学の皆さんは、どうか自分の目で事実を見極めて、冷静に対処していただきたいと思います。また、いたずらにおびえたり、逆に危機感をあおったり、他人に偏見をもって接することのないようにお願いします。
補足
新型コロナウイルス感染症についての必要最小限の知識と、今行われている対策の意味を学生、教職員の皆さんに正しく知ってもらいたいと思います。そこで、医歯学系の教員のご助言を得ながら、文系理系の様々なバックグラウンドの方々が読むことを念頭に、ごく基礎的な知識から、感染防止対策、現在の国の対策、それに対応する新潟大学の対応の意味についていろいろ記しましたので、それぞれの方が必要と思われるところだけを読んでもらえたらと思います。
ウイルスとウイルス感染症とは?
「ウイルス」は、遺伝情報をもつ核酸(DNAやRNA)をたんぱく質と脂質が取り囲んだごく微小な粒子です。その大きさは100nm(1mmの1万分の1)程度ですから、普通の顕微鏡では見えないほど小さいものです。ウイルスは単独では自己複製ができないのですが、細胞に感染(寄生)して、細胞の中の装置を使って増殖することができます。この感染により私たちの体の中の細胞が破壊されて起こる病気が「ウイルス感染症」です。
ウイルスにはいろいろな種類があり、それぞれの名前がついています。このうち、インフルエンザウイルスが感染した場合はインフルエンザ感染症といい、ノロウイルスが感染した場合はノロウイルス感染症、コロナウイルスが感染したものがコロナウイルス感染症です。それぞれのウイルスは、我々の体の中で、感染しやすい場所・増殖しやすい場所(細胞)があります。例えばノロウイルスは胃腸の細胞に感染しやすいので急性胃腸炎をおこします。コロナウイルスは喉や気道、肺の細胞に感染し増殖しやすいので、咳やのどの痛み、さらに肺炎を起こします。
新型コロナウイルス感染症とは?
新型コロナウイルス感染症は、昨年(2019年)12月に中華人民共和国湖北省の武漢において認識され、以来、中国を中心に感染が国際的に広がりを見せているウイルス感染症です。
日本国内では今年(2020年)1月15日に武漢市に渡航歴のある肺炎患者からこの新型ウイルスが最初に検出されました。
一般に、ウイルスは感染する動物を選ぶことが多く、人に感染するものと他の動物に感染するものが異なります。コロナウイルスも同様で、これまで人に感染するタイプのコロナウイルスは、その遺伝子配列の違いから6種類知られていました。このうちの4種類は一般の風邪の原因の10-15%を占めるもので、多くは咳がでたり喉が痛かったりしたあとに軽症で終わります。残りの2種類は2002年に発生した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」と2012年以降主に中東で発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」の原因ウイルスです。新型コロナウイルスは、これら6種類とは異なる遺伝子配列をもった新しいコロナウイルスです。
一般に人以外の動物に感染するウイルスは人に感染しませんが、まれに動物由来と考えられるウイルスが人に感染することがあります(人獣共通感染症)。その場合、感染した人から別の人に、そのウイルスが感染することはありません。しかし、何らかの理由でそのウイルスの遺伝子配列が少し変わることで、ヒトからヒトに感染する新しいウイルスができあがることになります。新型コロナウイルスの発生原因はまだわかりませんが、こうした動物由来のコロナウイルスのなかでコウモリ由来のコロナウイルスに近い遺伝子配列をしていることが指摘されています。
新型コロナウイルスはどのように感染するのか?
新型コロナウイルス感染症は、一般的なコロナウイルス感染(いわゆるウイルス性の風邪)と同じ呼吸器感染症です。したがって飛沫(ひまつ)感染と接触感染の二つが考えられます。
1.飛沫感染:感染した人の飛沫(くしゃみ、咳、つば)と一緒にウイルスが放出され、周囲の人がその飛沫を口や鼻から吸い込むことで感染します。会話では1メートル、くしゃみ・咳をすると2−3メートルほど飛沫が飛ぶと言われています。そのため、感染者がマスクをすることで、周囲への飛沫を最小限にすることができます。その点で、感染者ないし感染を疑われる人がマスクをすることは有効です。
2.接触感染:感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後で、その手で周囲の物に触れると、感染者のウイルスがそこに付着します。この後に未感染者がその部位に触ると、その手にウイルスが付着してしまうことになりますが、これに気づかずに手で自分の鼻や目をこすったり、大皿から同じ食べ物を食べたりすると、感染がおこります。その点で、手洗いをこまめにすることに効果があります。特に、コロナウイルスはアルコール(70%以上)や界面活性剤(いわゆる石鹸)に弱いことが知られているので、アルコール消毒や石鹸による手洗いが有効です。
なお、空気感染(ウイルス粒子そのものが空気中に浮遊して感染すること)は起きていないと考えられています。一方で、今回の新型コロナウイルスにおいては、換気の悪い狭い閉鎖空間に多数の人が近距離で声を出すような状態が続く環境で、感染者がいると、咳やくしゃみがなくても複数の人に感染がおこることが知られてきています(「クラスター」感染、後述)。そのため、屋内でのサークル活動やコンサート、体育館での運動などが問題となってきています。
新型コロナウイルス感染症の症状は?
新型コロナウイルスに感染した人の多くは、3日〜14日ぐらいの潜伏期間(症状を示さない期間)を置いてから発熱・呼吸器症状(喉の痛み、咳)などの感染症状が認められるようになります。37−38度の発熱や呼吸器症状が1週間前後持続き、強いだるさ(倦怠感)を訴える人が多いのが特徴だとされています。インフルエンザにくらべて軽めの症状がだらだら続くことが多いようです。
年齢によって異なりますが、全体でいうと80%ぐらいの人は軽症で終わり、1週間ぐらいで症状が軽快します。その点で、こうした場合は特に治療の必要はなく、自宅で安静にしてくことで十分です。むしろ他人に移さないように、家族や身近な人に移さないように気を付けながら、自宅待機していることが効果的です。
一方で、4日〜1週間ほどたっても熱が続く場合や、呼吸が苦しくなってきたり、咳が悪化した場合は、肺炎を起こしている可能性がありますので、「帰国者・接触者相談センター」等に相談する必要があります。新潟市の場合は、新潟市保健所に電話をしてください(025−212−8194)。そこから受診する病院を紹介されます。
新型コロナウイルスのもう一つの特徴は、高齢者や基礎疾患のある人で重症化しやすいことで、10〜40代では致死率が0.2%程度であるのに対し、50代では1.3%、60代では3.6%、70代では8.0%、80歳以上は14.8%と急速に上昇することです。
なお、ごく最近の調査からわかってきたことに次の点があります。
1)発症早期は37度ぐらいで高い熱が出ない人もいる。一週間ぐらい熱が上がったり下がったりする。このため、熱があってもいつもとおり行動できる。
2)子供では咳だけの症状の人も確認されている(若いほど症状が軽い傾向にある)
3)潜伏期間は早いと3日ぐらいだが最長14日くらいの人がいる(十分な健康観察期間が必要)
新型コロナウイルス感染症の予防法は?
新型コロナウイルスにはまだ特効薬や特別な治療薬がありません。そこで、一般的な感染予防対策に従って、感染しないようにすることが大切です。新型コロナウイルスは、通常のコロナウイルスと同様に主に飛沫感染と接触感染により伝播するので、次のような点に注意が必要です。
手洗い:ウイルスで汚染した手指を介して、目や口の粘膜から感染することのないように、手洗いを徹底することが重要です。階段やエスカレータの手すり、つり革、ドアノブなどに感染者が触ったことにより付着したウイルスは最低でも数時間は生存する可能性があるといわれています。その点で、外出先から戻った時の手洗いの徹底は予防に有効です。
マスクの着用:咳が出る人がマスクをすることは、もしも自分が感染していた場合に、飛沫による汚染を他人に及ぼさないために意味があります。もしもマスクがない状態で咳やくしゃみをする場合は、手で口を覆わないで、肘でくしゃみを受け止めることが重要です(咳エチケット)。一方で、健常者がマスクをすることは、直接飛沫を浴びないという点では意味がありますが、通常のマスクで必ずしも飛沫を完全に吸い込まないようにすることはできないことも注意すべきことです。
こうした基本的な感染症の予防対策のほかに、閉鎖空間における近距離の会話や、会食における飛沫感染には十分注意する必要があります。
クラスター感染とは?
日本で発生している新型コロナウイルスの解析から、「クラスター」感染という現象がわかってきました。「クラスター」は小規模な集団感染という意味です。これは風通しが悪く人が密集した場所に感染者がまぎれると、一気に感染が広がるという現象です。これについては3月2日に出された「専門家会議」の見解が極めて重要ですので、是非原文を読んでいただきたいと思います。要約すると、
1)症状の軽い人からの感染拡大が起こっていること。特に、若い人は感染しても症状が軽いことが多く、その人たちが活動することで、結果として中高年層に感染が及んでいること。
2)感染者の約80%は他の人に感染させていないが、一定の条件を満たす場所において一人の感染者が複数人に感染させる事例が報告されていること。すなわち、ライブハウス、スポーツジム、ビュッフェスタイルの会食、スキーのゲストハウスなど、屋内の閉鎖的な空間で、人と人とが至近距離で、一定時間以上交わることによって、患者集団(クラスター)が発生すること。
3)「クラスター」が次の「クラスター」を生むことが、感染の急速な拡大を招くと考えられること。
です。その点で、「専門家会議」から全国の若者の皆さんに対して、「人が集まる風通しが悪い場所を避けてほしい」という呼びかけがなされました。
国レベルの新型コロナウイルス感染症対策はなぜ必要なのか?
新型コロナウイルス感染症のリスクを考えるには二つの観点があります。
1)新しい感染症であること:新型コロナウイルスは、従来のコロナウイルスとよく似た症状を示しますが、新しい感染症で、特効薬や特別な治療薬がありません。従って、重症化した場合でも対症的な治療しかないため、死亡する確率が高くなっています。また、新型コロナウイルスに感染した場合、1〜2%死亡するとされ、特に高齢者や基礎疾患のある人で重症化しやすく、日本国内の死亡者も70−80代に集中しています。もちろん、ワクチンや特効薬の開発が現在急速に進められていますが、実用化には1年ほどかかることが予想されます。その点で、感染をできるだけ予防し、重症者を増やさないことが現在必要なことです。
2)パンデミックの可能性があること:感染症の流行にはアウトブレイク、エピデミック、パンデミックの三つの段階があります。
アウトブレイク(集団発生)またはエンデミック:コミュニティや地理的に狭い一定の地域での集団発生で、季節性インフルエンザの流行などがこれに属します。
エピデミック(流行):特定地域や集団において、予測レベルを超えた感染例の増加が突発的にみられる場合をエピデミックといい、地域や国を越えて広がることがあります。
過去の例では重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行がこれに属します。
パンデミック(世界的大流行):複数の国や大陸で感染が同時期に発生し拡大するものです。もっとも大きなパンデミックは1918〜19年に流行したスペイン風邪ですが、2009年のH1N1型インフルエンザの流行もWHOがパンデミック宣言をしました。パンデミックになると世界経済も混乱を招き、医療も限界を超えることになります。
専門家の見方によると思いますが、新型コロナウイルスの現在の流行はエピデミックの段階からパンデミックになる臨界点にあると考えられることから、各国、とくに中国以外では、感染が拡大しつつある韓国、イタリア、イラン、日本の対応が注目されているわけです。
政府の「基本方針」について
日本政府は2月25日に「新型コロナウイルス感染症の基本方針」を公表しました。なぜこの時期に、と思う人が多いのではないかと思います。
一般に海外に新規の感染症が発生した場合、国がとる対策は、1)国内への侵入防止、2)これを防げなかった場合の国内での感染拡大防止、3)さらに感染が拡大した場合の重症化防止、という3段階に整理することができます。
今回の新型コロナウイルス感染症は中国で発生したので、まずは国内への侵入防止の対策が取られました。その取り組みが正しかったかは後に検証されると思いますが、ダイヤモンド・プリンセス号の隔離政策は、この段階での対応でした。しかし、侵入防止策にも関わらず、1月末から国内の複数地域で、感染経路が明らかではない患者が散発的に発生しはじめ、2月21日には国内感染者(ダイアモンド・プリンセス号の感染者を除く)が100名を超えるにいたりました。その点で、感染の拡大防止の段階に入り、感染の流行を早期に収束させる重要な時期に入ったわけです。
一方で、この新型コロナウイルスは未知の感染症で、その特効薬もこれからの課題です。現状で行わなければならないことは、「感染者の増加数と増加のスピードを極力抑えること」にあります。それは、エピデミックを最小限にし、感染者や重症者に対応できる医療体制を整えるための時間作りという点でも重要です。
こうした観点から、個人の感染症対策の徹底とともに、「クラスター」防止のための戦略が出てきたということができます。新型コロナウイルス感染症は、これまでに経験をしたことのない感染症なので、どのような対策が成功するかは難しく、専門家の意見も分かれるところです。医学的エヴィデンスが集まるまでにはまだ時間がかかりますから、過去の経験に頼ることも必要です。過去にパンデミックを起こしたスペイン風邪(1918-19年)では、学校閉鎖と集会やイベントの中止を徹底した米国の地域において、しなかった地域よりも死亡者数が少なかったという記録があるそうです。また、今回の学校閉鎖や集会イベントの中止も、すべて一緒に行わないと効果がでないことが予想されています。さらに、居住地域を越えての移動は、自身の感染リスクが高まると同時に、全国に感染を広げることにもなりかねないので、皆さんの旅行の自粛もきわめて重要になります。つまり、こうした自粛対策は単に自分が感染しなければいいという問題だけなのではなく、日本全体の問題であり、日本人の見識が問われることです。
たいした数の感染者もいない新潟市で、ここまで大げさに、と考える人もいるかもしれません。しかし、WHOが感染拡大を懸念している韓国、イタリア、イラン、日本のなかで、実は現在唯一、日本の感染拡大が緩やかなのも事実です。日本ではコロナウイルス感染症に対する国民の関心が高く、マスクの着用、手洗いの励行、イベントの中止などに勉めているからだと思われます。その点でも、今の段階で徹底した対策を行うことで、感染拡大を食い止めることの希望があると思います。今がもっとも大切な時期ですので、卒業式の中止や、集会の自粛を始め、どうかご理解をよろしくお願いします。
今後はどうなるのか?
3月中は、現在の「封じ込め」の対策が続くことになると思います。2月末からの「封じ込め」の効果は今週あたりから見えるのではないかと期待しています、一方で、感染の拡大が続くのであれば、政府が「非常事態宣言」を出すということもありうると思います。その場合は、今以上に制限されることになります。また、最悪の事態はパンデミックになることです。いずれにしても、大きな変化がない限り、3月中は今の対策に準じることになりますが、その間、3月末までに状況を見きわめできるだけ早く4月以降の対応方針をお示しするようにします。
●新型コロナウイルス感染拡大で なぜ円高ドル安に?  3/9 
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、なぜ円高ドル安が進むのか。一つはアメリカで感染拡大が続き、世界最大の経済大国の景気落ち込みを懸念したドル売りが起きているためです。
新型コロナウイルスの感染拡大は当初、中国などアジアに限られ、長期化しないだろうといった見方をする投資家もいました。ところが先月下旬、アメリカ国内で感染が相次いで確認されると市場の雰囲気が一変し、アメリカ経済が先行きが不安視されるようになりました。特に、ここ数日、ニューヨーク州などで相次いで非常事態宣言が出されたことで投資家の懸念が一気に強まり、9日の東京外国為替市場では、ドルを売って円を買う動きが加速。
一時、1ドル=101円まで円高ドル安が進みました。また、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が3日に決定した緊急の利下げも背景の一つです。FRBが、市場の動揺を抑えようと大幅な利下げを決めたことで、外国為替市場では金利の低くなったドルが、以前よりも売られやすくなっています。
さらに、国際的な原油価格の急落が市場の動揺に拍車をかけました。
きっかけは、OPEC=石油輸出国機構と非加盟のロシアの協議が不調に終わり、協調減産の継続で合意できなかったことですが、東京商品取引所では、原油の先物価格が先週末に比べて1万円余り、率にして30%を超える値下がりを記録しました。中東の産油国に加え、世界有数の産油国でもあるアメリカ経済にも打撃になりうるとして、リスクを避けたい投資家がドルを売り円を買う動きを加速させる形になっています。
こうした要因が重なって急速な円高を招いています。  
●トイレットペーパー品薄、まもなく解消 店への配送続く 3/9 
全国のスーパーやドラッグストアで、ティッシュやトイレットペーパーの品薄が続いている。メーカーはフル生産で対応し、在庫も確保しているが、すぐに売り切れてしまうため、配送が間に合わないという。だが、そんな状態も、まもなく解消に向かいそうだ。
製紙会社でつくる日本家庭紙工業会によると、ティッシュやトイレットペーパーは大半が国産で、生産も順調だ。「エリエール」のブランドで知られる大王製紙も「フル生産」(広報)だといい、大量の製品が順次、出荷されている。
実は、スーパーやドラッグストアが持つ大型倉庫には、製品が届いている。問題は、そこから各店舗に配送するトラックが十分に確保できていないのだ。
ドラッグストア大手のキリン堂ホールディングスによると、物流拠点には在庫が十分あるという。だが店舗からの発注が急増したため、さばききれなくなり、一定の数量を各店舗に割り当てる方法に改めた。広報担当者は「需要が多い店では品薄になってしまう可能性がある」と説明する。
また、紙類はかさばるため、小さな店ではトイレットペーパーだと20パックほどしか置けないところもある。卸売会社からの配送回数を増やせばいいが、店舗によって「毎日1回」「週3日」などとあらかじめ決まっており、ドライバー不足もあって対応が難しい。
今回の品薄は新型コロナウイルスの感染拡大で「ティッシュやトイレットペーパーが今後なくなる」とするデマが発端だった。生活必需品で腐らないため、デマと知りつつ買いだめに走る人も多かったようだ。
とはいえ、自宅に大量の「在庫」を抱えていても、かさばるだけで、使い切るのも時間がかかる。日本家庭紙工業会の担当者は「買いだめはこの10日ほどで一通り終わった。(工場や倉庫に)在庫が十分ある以上、店の品薄状態が解消されるのは時間の問題だ」とみる。 
 
 
 3/10

 

●新型ウイルス 国内感染者は計510人に(クルーズ船など除く)  3/10 
各地の自治体や厚生労働省によりますと、10日はこれまでに兵庫県で2人の感染が発表され、午前10時半現在、日本で感染した人などは、合わせて510人となっています。このほかクルーズ船の乗客乗員が696人、チャーター機で帰国した人が14人で、合わせて1220人です。
このうち死亡したのは、国内で感染した人が9人、クルーズ船の乗船者7人の合わせて16人です。
日本で感染した人や中国からの旅行者など510人のうち、北海道は108人、愛知県は86人、東京都は64人、大阪府は55人、神奈川県は41人、千葉県は22人、兵庫県は18人、和歌山県は14人、京都府、高知県は12人、新潟県は8人、埼玉県、石川県、奈良県は7人、熊本県は6人、長野県、山口県、福岡県、沖縄県は3人、秋田県、栃木県、山梨県、岐阜県、愛媛県は2人、宮城県、福島県、群馬県、静岡県、三重県、滋賀県、広島県、徳島県、大分県、宮崎県は1人、厚生労働省の職員や検疫官、それに空港の検疫で感染が確認された人などが合わせて11人です。
また厚生労働省によりますと、重症者は9日の時点で国内で感染した人などが33人、クルーズ船の乗船者が23人の合わせて56人となっています。一方、国内で感染が確認された人のうち、9日までに症状が改善して退院した人などは、クルーズ船の乗客乗員を含めて合わせて346人となっています。 
●新型コロナ、国内死者16人に 感染も拡大 3/10 
東京と神奈川で新型コロナウイルスの感染が確認されていた2人が死亡しました。これで国内での死者は、クルーズ船に乗っていた人を含め16人となりました。
東京都は、先月28日に発熱した90代の男性が肺炎のため死亡したと発表しました。男性には、慢性心不全の基礎疾患があり、外出は、自宅とその周辺に限られていたということで感染経路は分かっていません。また、神奈川県でも感染が確認された1人が死亡したということです。
一方、日本航空は、千葉県に住む客室乗務員の50代女性の感染を発表。女性は、現地時間先月25日のシカゴ発成田行きの便に乗務していて、同僚の客室乗務員12人が濃厚接触者として自宅待機している一方、乗客に濃厚接触者と判断された人はいないということです。
また、千葉県では既に複数の感染者が確認されている市川市の介護事業所で男性職員の感染が新たに発覚。この男性は、柏市の施設リフレッシュプラザ柏で先月26日から今月2日までトレーニングのインストラクターも務めていました。その6日間、1日あたり平均130人ほどがトレーニングしていたということです。
尼崎で初の新型コロナ 感染判明の伊丹の施設勤務  3/10
兵庫県尼崎市は10日、同市内に住む1人と伊丹市内在住の1人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。尼崎市内で感染者が確認されたのは初めて。尼崎市によると、同市在住の1人は、7日に感染が判明した80代女性が利用していた伊丹市内のデイケア施設に勤務していた。伊丹市在住の1人もこの施設の利用者だった。
新潟市で新たに3人感染確認 新型コロナウイルス  3/10
新型コロナウイルスの感染者が新潟市で10日、新たに3人確認されました。このうち1人はほかの感染者とのつながりが見当たらないことから市が行動歴などを調べることにしています。新潟市の中原市長は午後1時から市役所で記者会見し、市内で新たに3人の新型コロナウイルスの感染が確認されたと発表しました。感染が確認されたのは同じ会社に勤める60代の男性と30代の男性、別の会社に勤める30代の男性の合わせて3人です。このうち同じ会社に勤める60代の男性と30代の男性の2人は、9日に感染が確認された40代の男性の同僚の濃厚接触者だということです。一方、別の会社に勤める30代の男性はこれまで確認されたほかの感染者とのつながりが見当たらないことから、市が行動歴などを調べることにしています。この男性は発熱が続き、新潟市内の医療機関を受診していましたが熱が下がらなかったということで、8日に本人から「帰国者・接触者相談センター」に連絡があり検査したところ、陽性だったということです。これで新潟県内で感染が確認されたのは11人になりました。中原市長は「これまでの感染者は卓球教室の関係者とその濃厚接触者だったが、10日に確認された人のうちの1人は現時点で感染者の濃厚接触者ではなく、心配をしている」と述べました。
姫路で新たに2人の感染確認、院内感染か 看護師と患者が陽性 3/10
兵庫県姫路市では市内の病院に勤務する看護師と入院患者の感染が新たに確認されました。2人は、8日に感染が確認された看護師と同じ病棟にいたということで、院内感染とみられています。新たに感染が確認されたのは市内にある全人会「仁恵病院」で、8日感染が確認された看護師と同じ病棟に勤務する40代の女性看護師と、その病棟に入院する60代の男性患者です。男性患者については一時発熱があったということですが、現在は2人とも目立った症状はないということです。「院内感染をまずは考えるべきかと」(姫路市の会見) 男性患者は数年間この病院に入院していて、2月以降、面会もなかったということで、姫路市は院内感染の可能性が高いとみて調査を進めています。
千葉で新たに1人陽性確認、トレーニングのインストラクターも 3/9
千葉県は、新たに男性1人が新型コロナウイルスに感染していたと発表しました。新たに感染が確認されたのは松戸市在住で市川市の介護事業所で非常勤として勤める40代の男性です。千葉県によりますと、この介護事業所では50代の男性職員や80代の女性利用者と、女性の息子夫婦の感染も確認されています。今回、感染が確認された40代の男性は既に感染が確認されている男性職員と先月24日と25日に一緒に勤務していて、県は、この事業所でクラスター感染と呼ばれる集団感染が起きたとみています。
また、柏市によりますと40代の男性は、柏市の健康増進施設「リフレッシュプラザ柏」で先月26日から今月2日までトレーニングのインストラクターとしても勤務。その6日間で、1日あたり120人から160人余りがトレーニングをしていたということです。また、先月28日と今月6日には、同じく柏市の「南部近隣センター体育館」を利用していたということで、市は、これらの施設の利用者に周知を行っていくとしています。  
●トイレットペーパー購入「店頭 or 転売」に次ぐ、第3の選択肢 3/10 
トイレットペーパーやティッシュペーパーが品薄の状況
新型コロナウイルスの影響で、小売店の店頭において品薄の状態になっているものの1つが、トイレットペーパーやティッシュペーパーである。
当初は「中国からの輸入が滞り、マスクや消毒液のように品薄になりそう」という口コミや、SNSにおける情報の拡散がきっかけになったようだが、業界団体やマスコミが「国内で流通しているものの9割以上は国産で大丈夫!」と呼びかけたことで、パニック的な状況は終息したと見える。
とはいえ、スーパーマーケットや量販店などで、品薄状態になっている状況に変わりはない。この週末も近所の商店街やディスカウント店に行って、棚がカラカラになっているとか、「1家族につき購入は1つまで」という張り紙を見て、「買わなければ!」という意識を強く持った方は少なくないだろう。
もともと、トイレットペーパーやティッシュペーパーは、かつての「オイルショック」の際に同様の状況が起きたと日本人には強く「インプットされている(摺りこまれている)」ため、「非常事態が発生したら、まず買わなければいけないもの」の代表格という印象があるのかもしれない。
トイレットペーパーやティッシュペーパーは日用必需品であり、なければなくても構わないというものではない。特に、新型コロナへの防御として、衛生状態にはより一層配慮しなければならず、ちょうど花粉症の時期でもあって、その使用量はどの家庭でも普段より増えている状況であろう。
ふるさと納税の返礼品にしている自治体もある
ここにきて、小売店やインターネット通販からの購入以外でトイレットペーパーやティッシュを調達できる手段の1つとして、「ふるさと納税」に注目が集まっている。
ふるさと納税とは、生まれた故郷や応援したい自治体に寄付ができる制度だ。手続きをすると、寄付金のうち2,000円を超える部分については所得税の還付、住民税の控除が受けられる。いちばんの魅力は、寄付した自治体(地域)の名産品などがもらえる点で、肉や魚介類など、さまざまな返礼品がある。
ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」で、「返礼品:トイレットペーパー」、「寄付金:10,000円以下」と入力して調べると、36件が該当した。その1つが岩手県北上市であり、「寄付金5,000円でティッシュペーパー5箱4セット」や「寄付金10,000円でトイレットペーパー(ダブル)12個×6セット」などがある。
3月上旬に伝えられた一部報道では、北上市への2019年2月のトイレットペーパーへの返礼品申し込みが60件ほどだったのに対し、2020年は2019年の100倍にあたる6000件近くの申し込みがあったとされる。
北上市には市内にトイレットペーパーの製造工場があり、製品を返礼品の1つにしている。調べると、王子製紙の工場がある北海道苫小牧市、日本製紙の工場がある宮城県石巻市、大王製紙の工場がある愛媛県四国中央市なども同様に、返礼品にトイレットペーパー、ティッシュペーパーがあり、覚えておくと、今後の「異常時」の際に役立つだろう。
株主優待制度に採用している企業もある
もう1つ、小売店からの購入以外でトイレットペーパーやティッシュを調達できる手段として、株主優待制度がある。
日本製紙、大王製紙、日本紙パルプ商事、特種東海製紙など、紙・パルプ各社が自社製品を株主優待制度として採用し、株主に配布している。この中で、マネー雑誌などで評判が良いのは小津産業という会社の株主優待だ。
5月末時点で小津産業の200株を保有していると、2,500円相当のティッシュペーパー・トイレットペーパー詰め合わせがもらえる。2019年の実績では、高級ティッシュペーパーが6箱、高級トイレットペーパーが12ロールだった。いずれも高品質のものであり、富裕層が使っているとか、高級なホテルなどで使われているとか、個人投資家のブログなどで紹介されている。
すぐにもらえないという点は留意すべきだが…
なお、ふるさと納税も株主優待品も、インターネット通販での購入とは異なり、すぐにもらえるものではないという点は留意すべきである。
ふるさと納税は申し込み数や在庫の状況によって返礼品の配送が遅れる可能性があり、株主優待は、株主総会後などのように送られてくる時期が決まっている。前項で例に挙げた小津産業では例年、8月の株主総会後に優待品が送付される。
「それでは、今回の新型コロナによる品薄の状況に対応できない」と思われるかもしれないが、ご自宅のストック用として有効といえる。新型コロナウイルスの影響が、たとえ、夏にいったん終息するとしても、有効なワクチン、治療薬が開発されていない現状、来年以降に再燃するリスクはある。
そのほかにも、近年は自然災害によって流通が滞り、小売店から生活必需品がなくなるといったこともしばしば起きており、ふるさと納税、株主優待品という「選択肢」も覚えておきたいところだ。 
●ウイルスより人が怖い ドラッグストア店員を襲う暴言 3/10 
新型コロナウイルスの感染拡大の余波でマスクなどの品薄が続く中、ドラッグストアの店員らに客からの問い合わせや苦情が殺到している。中には連日暴言を浴び、体調を崩した店員も。ウイルスより、目に見える人が怖い――。ツイッター上には店員を名乗る人たちの悲鳴が上がる。「朝、開店前に行列ができていると、もう気持ちがふさぐ。胃が痛むんです」 栃木県のドラッグストアに15年以上勤めている30代の女性店員はこう漏らす。
感染拡大のニュースが増えた1月末ごろから、急にマスクが売れ始めた。当初は、仕入れた商品が飛ぶように売れていくことにやりがいを感じていたという。だが、その速さは予想を超え、品薄のうわさが出回った除菌グッズや紙製品にも飛び火。店は急きょ購入制限を設けた。マスクは1家族1個。トイレットペーパーやティッシュ、消毒液などは1人1個。だが、客からのクレームが相次いだ。会計を終えた客が商品を車や自転車カゴに置いて再び並ぶ。店長が購入制限を伝えると「1人2個買えないなら、明日は安くしなさいよ」。別の日には「従業員はマスクしてていいよね」と言われた。「自分が守ってきた売り場が崩れていく気がした」 常連客の態度も一変した。普段、雑談をするほど仲の良か…  
3/9 現在
●イタリア、移動制限を全土に拡大 新型ウイルス対策で 3/10 
イタリアのジュゼッペ・コンテ首相は9日、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、北部地域に限定してきた移動制限措置を、10日から全土に拡大すると発表した。集会は禁止され、仕事や家族の緊急事態における移動のみ認められるという。イタリア全土での移動制限は、10日から適用される。コンテ首相は、社会の中で最も弱い立場の人々を守るためだと説明した。イタリア国内での新型ウイルスによる死者は、9日に97人増え、計463人に跳ね上がった。新型ウイルスが発生した中国に次ぐ人数となった。
イタリア政府によると、感染者数は9日時点で9172人に上っている。前日8日の7375人から24%増えた。イタリア全20州で新型ウイルスの感染が確認されている。世界の感染者数は11万1000人以上に上り、約3890人が死亡した。こうした状況で世界保健機関(WHO)は9日、新型ウイルスが世界的に流行する「パンデミック」になる恐れは「きわめて現実的」なものだと述べた。WHOのテドロス・アダノ・ゲブレイエスス事務局長は9日の記者会見で、「ウイルスがこれほどたくさんの国で足がかりを得た今、パンデミックの恐れはきわめて現実的だ。しかし、制御できる史上初のパンデミックになる」と言い、「私たちはこのウイルスを前に決して無力ではない。それが大事なことだ」と強調した。
コンテ首相はこの日のテレビ演説で、イタリアの「習慣は変わらなければならない」とした上で、住民にとって自宅に留まることが最善の方法だと述べた。「我々は、新型コロナウイルスの感染者数(中略)および死者数の重大な増加に直面している」と首相は言い、「誰もがイタリアのために何か犠牲を払わなければならない。まさにたった今。全員が協力し、この最も厳しい措置に順応するのが、唯一の方法だ」と強調した。首相はさらに、「だからこそ、事態悪化を食い止めるために、(中略)そして全市民の健康を守るために、今まで以上に強力で厳格な措置を導入することにした」と説明した。コンテ首相によると、国内全域の移動制限措置に伴い、サッカーの試合を含むすべてのスポーツイベントが停止されるという。コンテ首相は以前、現地紙レパブリカのインタビューで新型ウイルスのアウトブレイク(大流行)について、「最近私は、(ウィンストン)チャーチル氏の古い演説について思い巡らせている。我々にとって一番苦しい時期だが、我々はやり遂げるだろう、という演説を」と述べた。
制限の内容は
コンテ首相が「自宅に留まる」措置と呼ぶイタリア全土での移動制限は、公共の場での集会を禁止している。「ナイトライフはもうない。感染の機会になるので、もう許可できない」と、コンテ首相は述べた。今回の移動制限は、新型ウイルスの影響を最も受けている北部地域で導入済みの措置と同様のもの。ミラノがあるロンバルディア州やヴェネツィアなど14県は、4月3日まで封鎖されている。イタリア政府によると、国内全域での移動制限では、仕事や家庭の正当な理由がある場合にのみ移動が許可されるという。短期滞在者を除き、空路での出国を予定している人については、空路で入国する人と同様に、その正当性を示す必要がある。鉄道の駅では、体温を計る措置が取られている。クルーズ船については、各地で港への入港が禁止されている。
刑務所の面会停止、受刑者が反発
北部エミリア・ロマーニャ州モデナのサンタンナ刑務所では、新型ウイルスの感染拡大を受け、家族などのすべての面会が停止されると知らされた受刑者が反発した。9日早朝、この暴動で受刑者6人が死亡した。報道によると、3人は刑務所で、ほかの3人は刑務所から移送された後に死亡した。死者のうち少なくとも2人は、ヘロイン代用薬メサドンを目当てに刑務所病院を襲撃した後、薬物の過剰摂取で命を失ったとみられる。
当局によると、ミラノのサン・ヴィットーレ刑務所では、受刑者が同施設の6棟のうちの1棟にある独房棟に火をつけた。その後、窓から屋根へ上り、横断幕を振り始めたという。南部プーリア州フォッジャの刑務所では、少なくとも20人の受刑者が抗議の最中に脱獄に成功した。その多くはすぐに拘束されたと、イタリアのアンサ通信が報じた。同国北部の複数の刑務所や、ナポリや首都ローマの複数施設でも暴動が起きた。
世界各地の状況は
世界の感染者数は11万1000人以上に上り、約3890人が死亡した。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は9日、同国への渡航者全員に14日間の自主隔離を義務づけると発表した。イランでは、過去24時間で新たに43人の死亡が確認された。イランでは2月中旬以降、少なくとも237人が死亡しているほか、7161人が感染している。一方で、実際の人数は発表されている人数よりもずっと多いとみられている。中国は8日、新たに確認された感染者は40人だったと発表。1日あたりの感染者数としては、1月20日以降で最小となった。これは新型ウイルスの中国での広まりが減速しつつあることを示しているものの、複数の政府高官は、警戒感の低下に警鐘を鳴らした。  
●イタリア 感染者9000人超 移動制限を全土に拡大  3/10 
新型コロナウイルスはイタリアでの感染者が9000人を超えて韓国やイランをすでに上回り、イタリア政府は人の移動を制限する措置を全土に広げると発表しました。WHO=世界保健機関は、世界的な大流行を意味する「パンデミック」の脅威がより現実味を帯びてきたという認識を示す一方、制御は可能だとして各国にさらなる対策を求めました。新型コロナウイルスはイタリアでの感染者が9100人余りに増え、韓国やイランの7000人余りをすでに上回り、感染の拡大が続いています。またイタリアで亡くなった感染者は韓国やイランを上回る463人となっています。イタリア政府は北部に限定してきた人の移動を制限する措置を10日から全土に広げると発表しました。来月3日までの間、緊急の際や健康上の理由、仕事や必要な場合を除いて外出を控え、自宅で過ごすよう求めるとともに、屋外で人が集まることを禁止するとしています。
こうした中、WHOのテドロス事務局長は9日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染が100以上の国と地域に広がっていると指摘し、「パンデミックの脅威は非常に現実的になってきた」と述べて、世界的な大流行を意味する「パンデミック」の脅威がより現実味を帯びてきたという認識を示しました。一方で、テドロス事務局長は「われわれの決断によってウイルスの広がりを遅らせ、感染を抑えることができる」と述べ、制御は可能だとして各国にさらなる対策を求めました。そのうえで感染が確認されたこれら100以上の国と地域のうち79では感染者の数が100人以下にとどまっていると指摘し、「パンデミック」の判断にはなお状況の見極めが必要だという認識を示しています。
菅官房長官は閣議のあとの記者会見で「イタリア全体では『在留届』と『たびレジ』登録の数としてはおよそ2万人程度の在留邦人が見込まれる。現時点のイタリアの状況はチャーター便を出した中国・湖北省とは異なって、在留邦人や渡航者が自分の意思で域外に出られない状況ではないと認識している」と述べました。そして菅官房長官はイタリア北部を中心に渡航中止の勧告などを行っていると説明したうえで「在留邦人や渡航者に対し、現地の状況が悪化する可能性も念頭に、現地の最新情報の収集と感染予防に万全を期すよう呼びかけている。今後、状況の推移を注視し、適時、適切に対応していきたい」と述べました。 
 
 
 

 

●世界各地で株価急落、金融危機以来 ニューヨークは一時取引停止 3/10 
世界各地の市場で9日、株価が全面安となった。新型コロナウイルス懸念ですでに動揺していた株式市場は、原油価格の急落に反応した。「ブラック・マンデー」の呼び名も飛び交っている。
東京株式市場では10日午前、日経平均株価は一時、1万9000円を下回り、2018年12月以来の水準まで大幅続落して始まった。その後は一時1万9500円台まで回復し、前日比293円19銭(1.49%)安の1万9405円57銭で午前の取引を終えた。
原油生産をめぐりサウジアラビアとロシアが決裂したことに反応し、原油価格が急落すると、9日の米主要金融指標は7%以上下がり、ロンドンは8%近く落ちた。ニューヨーク市場では取引開始の数分後、S&P500種株価指数が7%下落する基準に達したため、売買を15分間停止するいわゆる「サーキットブレーカー」が自動的に発動された。
主要企業からなるダウ工業株平均の終値は前週末比2013.76ドル(7.79%)安い2万3851.02ドル。1日の下げ幅は、これまで最大だった今年2月27日(1190ドル)を抜いて過去最大となり、下落率は2008年の世界金融危機以来となった。
S&P500は7.6%、ハイテク株が多いナスダック総合指数も7.3%下がった。
ロンドンではFTSE100種が前週末比7.69%急落。イギリスの主要企業の時価総額が約1250億ポンド(約16兆8700億円)が失われた。
同じように、フランス、ドイツ、スペインなど欧州各地の市場でも、株価が7%以上急落して取引を終えた。
「市場では今、パニックが始まりつつある」と米マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院のアンドリュー・ロー教授(金融学)は指摘。「事態がよくなる前に、いったんさらに悪くなる」と見通しを示した。
株価の劇的な急落のきっかけになったのは、原油だった。新型コロナウイルス拡大に伴う原油需要減への対応として、石油輸出国機構(OPEC)が減産を提案したものの、ロシアがこれを拒否。するとサウジアラビアが増産に転じて、価格を大幅に引き下げる姿勢を見せた。産油国間の「価格戦争」の懸念が高まった。
サウジアラビアのこの対応は、主要産油国としての地位と影響力を守るための勢力誇示だったとアナリストたちは見ている。原油価格の指標となる北海ブレント原油先物は3割近く下落。1日の下落率としては1991年の湾岸戦争時以来。これに先立ち原油価格はすでに新型コロナウイルスへの懸念から需要減の影響を受けていただけに、サウジアラビアによる増産判断は「きわめて意外だ」と、米株式調査大手CFRAリサーチのエネルギー資産アナリスト、スチュワート・グリックマン氏は言う。「原油市場にショックが走るのは初めてではないが、覚えている限り、供給ショックと需要ショックが同時に起きるのは初めてだ」
米英株式市場では、シェル、BP、シェヴロンなど石油大手が15%前後の値下がり。プレミア・オイルは50%以上下げた。フランクフルトとパリの市場では、特に銀行株が大きく下げた。為替市場ではロシアのルーブルが8%下げ、2016年以来のルーブル安となった。他方で、他の金融資産が不安定な時の「安全資産」とされる金は一時、7年来の高値に達し、オンス1700ドルで取引された。 
●世界恐慌のはじまり? NY株過去最大の下げ幅一時2000ドル超急落! 3/10 
新型コロナウイルスの長期化が影響?
速報ですが、2020年3月9日(現地時間)ニューヨーク株式市場が急落し、ダウ工業株30種平均が前週末終値比で一時2000ドル超下落。取引時間中としては過去最大の下げ幅となり、同市場では取引が一時停止される(サーキットブレーカー発動)など世界の金融市場が大混乱に陥っています。新型コロナウイルスの感染拡大で米ニューヨーク州が7日に非常事態宣言を出した事が株式市場暴落の直接的な原因ですが、世界中でも感染拡大が止まらず世界経済の失速懸念が一層強まっている事が背景にあります。ちなみに日本でも2008年のリーマンショック時に株式市場が大暴落していますが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大による影響はあの時とは状況が全く違います。
今回は、新型コロナウイルスの今後の見通しと私たちの生活はどうなっていくのか、私の個人的推測をご紹介します。ポイントは3つです。
1 新型コロナウイルスは春になると収まるとされてきたが、長期化する恐れが徐々に高まりつつある
2 長期化すると観光や経済に大打撃となる
3 一般の人が外に安心して出かけられなくなる事が一番の問題!オリンピックの開催自体に影響があると更に大混乱に
新型コロナウイルスの影響は世界中に!世界恐慌のはじまりか?
新型コロナウイルスは春になると収まるとされてきたが、長期化する恐れが徐々に高まりつつある
新型コロナウイルス感染症の政府専門家会議が3月9日に開催され、今後の国内感染について「当面感染者の増加傾向が続くと予想され、警戒を緩めるわけにはいかない」とする見解をまとめました。新型コロナウイルスに関しては、気温が暖かくなる春を過ぎたら収束するのでは?という見方があったのですが、実は気温に関係無く影響が長期化する可能性が徐々に高まっています。その理由として、今は夏である南半球の国でも感染拡大しているからです。3月6日現在、オーストラリアで61人の感染者が確認されていますし、3月の最高気温が30℃を超えるシンガポールでも130人の感染者が確認されているのです。先ほどの政府の専門家会議のメンバーからは、新型コロナウイルス感染症の対応について「数カ月から半年、年を越えて続くかもしれない」と述べ、長期化する可能性を示唆しています。2008年に起きたリーマンショックは、アメリカ合衆国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズが経営破綻したことに端を発している世界規模の金融危機でしたが、今回の新型コロナウイルスに関しては、未知のウイルスであり、先がどうなるのか誰にも分からないのがリーマンショックと根本的に違う点ですね。そうなると人々の不安は一層高まる事になり、経済に与える影響がどんどん広がってしまいます。
新型コロナウイルスの影響が長期化すると、観光や経済に大打撃となる
日本で新型コロナウイルスの影響が広がり始めたのは、1月の中国の春節の時期でした。近年では中国人観光客をはじめとするインバウンド効果で日本の観光産業は大いに盛り上がっていましたが、2020年は新型コロナウイルスの影響で大打撃になっています。大丸松坂屋百貨店の売上高は前年2月比で21.8%減、博多大丸、下関大丸、高知大丸を含めた百貨店事業の売上高は21.4%減となっています。特に、大丸松坂屋百貨店合計の免税売上高(速報値)は約75%減(客数74%減、客単価3%減)、H2Oの名税売上高は68%減、高島屋の免税売上高69.9%減と約7割も減少しており、免税品が全く売れなくなっています。北海道のお菓子で有名な「白い恋人」を製造販売している石屋製菓(本社・札幌市西区)でも、新型コロナウイルスの影響で売り上げが減少して、30日間の製造休止を発表しています。また新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ為、東京ディズニーランドや大阪のUSJなどテーマパークも一時休園になっており、最近では映画館や入浴施設など身近にある施設でさえも利用できなくなってきています。これらの観光施設が休園や利用出来ない期間が今後更に伸びる可能性がある訳で、そうなるとインバウンドどころの騒ぎではなく、国内全体の経済が相当落ち込みます。3月は卒業シーズン、4月は新年度という本来なら新たな気持ちでスタートする時期なのですが、暗くて重くて先の見えない空気を背負いながら感染拡大が収まるのを待つしかない・・・、そんな可能性が出てきたのです。
一般の人が外に安心して出かけられなくなる事が一番の問題!
2020年は記念すべき東京オリンピックイヤーでしたが、もはや普通の開催はムリじゃない?と思う方は日に日に増えていると思います。実際オリンピックの開催まで半年を切っていますが、現在日本で一番新型コロナウイルスの感染者が多い北海道で日程通りマラソンを開催するのは、現状でかなり難しいでしょう。東京オリンピックに限らず、楽しみにしていたイベントなどに行く事が出来なくなった!これは景気に与える影響はとてつもなく大きいのです!2008年のリーマンショックでは世界恐慌状態になりましたが、テーマパークが休園になる事はありませんでしたし、外に出かける事も普通にできました。家族が家に閉じこもりがちになると、少しずつイライラが募ってしまいます。気分転換に外に出かけたくても、感染リスクが高まってしまいますし、観光施設はどこも営業していません・・・。まさに家族の危機なのです。新型コロナウイルスの影響がどのくらい続くかは誰にも分からないのが現状ですが、逆に長期化を受け入れて何をすれば少しでも気持ちが楽になるのかを考えていくのが、私たちが今できる一番最善で現実的な方法だと思います。その方法は個人や家族によって違いますが、我が家でも休日の過ごし方など今後の新型コロナウイルスの感染拡大の長期化を見据えて、話し合いが出来ればと思っています。 
●「コロナ恐慌…」1か月で約5000円下落 3/10 
新型コロナウイルスの感染拡大でニューヨーク株式市場のダウ平均株価が2013ドル暴落したことから、10日の東京株式市場の株価は一時1万9000円を割り込んだ。
ニューヨーク株式市場がリーマンショック級の下落率を記録した影響で、10日の東京株式市場にも動揺が広がり株価は一時800円以上、値下がりした。
新型コロナウイルスの感染拡大に加え原油価格が急落したことなどから、前日のニューヨーク株式市場はダウ平均株価が2013ドル安と過去最大の下げ幅となった。ニューヨーク株式市場では、この暴落で自動的に取引が停止される場面もあった。
これを受け、10日朝の東京株式市場は先の見えない不安から売り注文が膨らみ下げ幅を拡大。日経平均株価は一時800円以上、値を下げ取引時間中としては約1年2か月ぶりに1万9000円を割り込んだ。この1か月で5000円近く値下がりしたことになる。
投資家「コロナ恐慌みたいな感じで、すごく心配しています」「前代未聞じゃないですけど、世界的にまた下げる。ちょっと心配です」
マネックス証券・広木隆チーフストラテジスト「今はもう価格関係なく怖いから売ると、とにかく手放したいという流れになっています。政府による対策を引き出すための催促をしているような相場のようにもうつります」
東京株式市場はその後、下げ幅を縮小させ293円19銭安で午前の取引を終えているが、先の見えない状況が今後も続くことになりそうだ。 
●コロナで景気後退「すでに現実」 原油暴落が示すもの 3/10 
新型コロナウイルスの感染拡大で、週明け9日の米ニューヨーク株式市場は、主要企業でつくるダウ工業株平均が2000ドルを超す史上最大の急落となった。世界経済が深刻な景気後退に陥るかもしれない――。金融市場の動揺は、投資家のそんな不安を映し出す。ダウ平均の9日の終値は前週末比2013・76ドル(7・79%)安い2万3851・02ドル。下落率でもリーマン・ショック直後以来11年半ぶりの大きさだ。この日の株安の激しさは、株価が一定限度より下がると取引をいったん停止する「サーキットブレーカー」が取引開始後わずか数分で、現行制度で初めて発動されたことにも表れている。
サーキットブレーカーとは、ダウ平均が1日で22%急落した1987年の「ブラックマンデー」を教訓に導入されたしくみ。「売りが売りを呼ぶ」パニック的な株価急落が起きた場合、投資家に冷静な判断を促すための措置だ。売買中断前、ダウ平均は1800ドル超の急落だった。15分後に取引が再開された後、ダウ平均はつるべ落としのような下落には歯止めがかかったが、反転のきっかけをつかめずに2000ドル安に沈んだ。ダウ平均は2月12日につけた最高値から19%下落し、「弱気相場」入りが間近に迫る。リーマン・ショック後の2009年春から11年間、米株式相場は米景気の回復と歩調を合わせて上昇傾向が続いてきたが、「強気相場はとうとう終わった」(米ストラテジスト)との声が漏れる。「高値から30%下落も視野に入った」とみる米エコノミストもいる。
9日に米金融市場が動揺した直接のきっかけは、サウジアラビアの原油増産姿勢を受けて前夜に起きた原油価格の暴落だ。米国産WTI原油の先物価格は前週末から3割超も急落し、一時1バレル=30ドルを割った。原油価格の暴落は、世界経済が大きく減速する可能性を投資家に意識させただけではない。18年に世界最大の産油国にの… 
●米国株式市場ダウ2013ドル安、下げ幅過去最大 3/10 
米国株式市場は急落。原油相場の大幅な値下がりや新型コロナウイルス感染拡大を巡る懸念からリセッション(景気後退)懸念が台頭し、パニック売りに見舞われた。ダウ平均株価は2000ドル超急落し、過去最大の下げ幅を記録した。
主要株価指数は寄り付きから下げが拡大し、間もなく7%安を付けたところで緊急避難的な取引停止措置である「サーキットブレーカー」が発動、15分間の取引停止となった。同措置は株式相場が大暴落した1987年の「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)」以降に導入された。その後はやや下げ渋る場面も見られたものの、取引終盤にかけて再び売りの勢いが増した。結局S&P総合500種指数は2月19日の最高値から約19%安でこの日の取引を終えた。
キーター・グループ(マサチューセッツ州)のマシュー・キーター氏は「歴史的な取引になったことは間違いない。市場は高い確率で景気後退を織り込みつつある」と指摘。またスパルタン・キャピタル・セキュリティーズ(ニューヨーク)の主任市場エコノミスト、ピーター・カルディリョ氏も「市場では恐怖感が高まっている。原油価格の下落が継続すれば世界経済はそれほど遠くない将来に景気後退入りする可能性がある」とした上で、相場がパニックモードに入ったことで、米連邦準備理事会(FRB)が救済に動く可能性もあると述べた。
株式投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数)は上昇し、金融危機に見舞われた2008年12月以来の高水準を付けた。こうした中、米国債利回りは一段と低下し、10年債利回りは0.318%と過去最低を更新した。
9日の原油先物相場は激しい売りに見舞われ、下げ幅は一時30%を超え1991年の湾岸戦争以降で最大を記録した。石油輸出国機構(OPEC)にロシアなど非加盟産油国を加えた「OPECプラス」の協調減産体制が崩壊する中、サウジアラビアとロシアによる石油価格戦争の勃発で原油安ショックが広がった。
関係筋によると、サウジは原油生産量を過去数カ月の日量970万バレルから同1000万バレル超に引き上げる方針。こうした中、ロシアも生産量を引き上げる可能性があり、6ー10年は原油安に耐え得ると表明した。
業種別ではエネルギー株や金融株の下げが目立った。個別銘柄ではアップルが7.9%安。中国でのiPhone出荷台数が2月は50万台を下回ったことが、中国信息通信研究院(CAICT)のデータから9日明らかになった。アップルは同月、新型ウイルス感染拡大を受け、中国本土にある店舗とオフィスを少なくとも2週間閉鎖した。
フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は8.3%安と08年10月以来の大幅な下げを記録した。
ニューヨーク証券取引所では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を17.86対1の比率で上回った。ナスダックでは19.11対1で値下がり銘柄数が多かった。米取引所の合算出来高は172億2000万株と、直近20営業日の平均110億5000万株を大幅に上回った。  
●新型コロナ影響でNY株価暴落 3/10 
新型コロナウイルスの世界的なまん延や原油相場の急落を受けて、9日のニューヨーク株式市場は大混乱に陥りました。ダウ平均株価は一時、過去最大の下げ幅となる2100ドル以上の暴落を記録しています。9日のニューヨーク株式市場ではリスク回避の動きで取引開始直後から売り注文が殺到、主要500社の株価指標であるS&P500の下落率が7%を超えたため「サーキット・ブレーカー」といわれる取引が15分間停止される異例の措置が発動されました。
しかし、取引再開後も株が売られる流れに歯止めがかからず、下げ幅は一時2158ドルにまで到達。終値は先週末と比べて2013ドル安の2万3851ドル2セントの全面安で取引を終えています。
「きょうの市場はストレスと不安と自信喪失で、多少のパニック状態にあります。市場が侵食され始めると、(個人投資家などの)多くの人々も巻き込まれ、一斉に“売り”に走ります」(株式トレーダー ピーター・タックマン氏)
新型コロナウイルスによる景気や企業業績悪化の懸念に加え、原油相場の急落が拍車をかけた格好で、市場関係者の間には「底がどこにあるのか分からない」といった悲観的な見方が広がっています。 
 
 
 

 

●米トランプ大統領、株価急落受け経済対策協議へ 3/10 
アメリカのトランプ大統領は9日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で株価が急落したことを受け、10日に連邦議会の幹部らと所得税の減税などの経済対策について協議する考えを表明しました。「我々は明日、議会の幹部らと会い、所得税の減税などの可能性について協議する」(アメリカ トランプ大統領) トランプ氏は9日、このように述べ、10日に連邦議会の幹部らと所得税の減税などの経済対策について協議し、改めて記者会見を行うと表明しました。その上で、アメリカ経済について「我々には素晴らしい、非常に強い経済がある」と強調しましたが、株価の急落などに関する質問は受け付けず、会見室を後にしました。一方、ムニューシン財務長官は「経済はこれから1年で、とても良い状態になる」と述べた上で、現在の状況について「これは終わりの見えない金融危機のようなものではない」と強調しました。 
●「パンデミック 非常に現実的に」WHO事務局長 制御可能とも 3/10 
新型コロナウイルスの感染が100以上の国と地域に広がっていることを受けて、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は「パンデミックの脅威は非常に現実的になってきた」と述べ、世界的な大流行を意味する「パンデミック」の脅威がより現実味を帯びてきたという認識を示しました。その一方で制御は可能だとして各国にさらなる対策を強く求めています。
テドロス事務局長は9日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染が100以上の国と地域に広がっていると指摘するとともに、「パンデミックの脅威は非常に現実的になってきた」と述べて、「パンデミック」の脅威がより現実味を帯びてきたという認識を示しました。一方で「われわれの決断によってウイルスの広がりを遅らせ、感染を抑えることができる」として、対応次第で制御は可能だと改めて強調し、各国にさらなる対策を強く求めました。
また、WHOとしての「パンデミック」の定義を問われたのに対し、危機対応を統括するライアン氏は「明確な定義はないが、病気が国から国に広がるのをもはや制御できない段階に達したことを指す」と述べました。
これに関連してテドロス事務局長は、感染が確認された100以上の国と地域のうち79では感染者が100人以下にとどまっていると指摘し、「パンデミック」の判断には感染の実態や状況を見極める必要があるという認識を示しています。またテドロス事務局長は、中国では感染が確認された人の70%以上が回復しているとして、感染したとしても多くのケースでは回復は可能だとする見解を明らかにしました。  
●新型コロナ「パンデミックが現実味」 WHO事務局長 3/10 
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は9日、世界で感染拡大が続く新型コロナウイルスについて「パンデミック(世界的な大流行)の脅威が非常に現実味を帯びてきた」と述べた。中国湖北省武漢市で発生したウイルスは同国以外で勢いを増しており、感染は100カ国以上に広がっている。
米ジョンズ・ホプキンス大学によると、日本時間10日午前4時時点で、世界の感染者数は11万3千人を超え、死者は約4000人に達した。当初、中国以外の感染比率はわずか1%程度だったが、現在は約30%まで上昇した。特にイタリア、韓国、イランの3カ国で感染が急増している。テドロス氏は「とても多くの国が影響を受けている。時間の問題かもしれない」と語り、パンデミックが目前に迫ってきているとの認識を示した。
一方で、ウイルスの封じ込めや影響の緩和策によって「制御できる」とも強調した。各国に感染者の隔離や感染経路の分析など、あらゆる対策を取るよう改めて求めた。行動が早ければ早いほど感染を防ぐ効果が高まるとして「あきらめないことが肝心だ。我々はウイルスとの闘いに勝利できる」と呼びかけた。
WHOは日本やシンガポールなどは封じ込めに成功しているとし、「勇気づけられている」(緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏)と対策の成果を評価した。WHOによると、インフルエンザ以外では、パンデミックを宣言する公式な規定はない。今後、仮にWHOがパンデミックと表明しても、各国に何かが義務づけられるものではない。一般的に、いったんパンデミックになれば、それまでの封じ込め段階から緩和や対症療法が重要になるといわれる。ライアン氏はパンデミックになる条件として、国から国への感染が制御できない状態に到達していることをあげた。 
●コロナショックが巻き起こす「市場パンデミック」 3/10 
<ウイルスの感染拡大を阻止するために世界各地で経済活動が停滞し、原油需要が減退し、株式市場がパニックに陥る悪循環が始まった>
新型コロナウイルスは、ヒトだけでなく経済にも感染を広げ始めた。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)にまつわる投資家の不安が増すなか勃発した原油戦争の波紋が、株式や金融市場をも呑み込んだ。米国債(10年債)の利回りが過去最低を更新したのは、アメリカ経済に迫りつつあった景気後退が予想以上に早く訪れるであろうことを示唆している。北海ブレント原油の国際価格は3月9日、最大3割下落した。ニューヨーク株は取引開始直後から急落し、下げ幅は一時過去最高の2000ドルに達した。ダウ平均株価のこの日の終値は2013.76ドル(約8%)安で、2008年のリーマン・ショック以降で最悪の一日となった。「新型コロナウイルスはヒトだけでなく、経済にも感染し始めた」と、ジュネーブ国際問題高等研究所のリチャード・ボールドウィン教授(国際経済学)は言う。特に打撃が大きいのが製造業で、アジアにある多くの工場の閉鎖、各地のサプライチェーンの混乱に加え、消費者が様子見モードのために自動車や電気製品など多くの製品の需要が落ち込むという「三重苦」に見舞われている。
市場を支配する恐怖
「経済大国が軒並み痛手を被っているため、経済全体への影響も大きい」とボールドウィンは言う。「この問題が経済に与えるショックは、過去のどのパンデミックと比べても桁違いに大きい」。投資家たちもそのことを認識しており、それが今、世界の金融市場を支配する恐怖の発生源になっている。既に中国や東アジアで工場閉鎖や貿易の減少を招いている新型コロナウイルスの衝撃は、ついにヨーロッパに到達した。日本では2019年10〜12月期のGDP成長率が年率でマイナス6.3%と大きく落ち込んだ上に、2020年からはウイルスの影響をもろにかぶる。ドイツやフランスも景気停滞に直面している。死者が増え続けるイタリアでは北部対象の移動制限が全土に拡大され、景気後退はほぼ決定的になった。アメリカではドナルド・トランプ大統領が同ウイルスをめぐる懸念を一蹴し、ウイルスの脅威については「フェイクニュース」だと主張してきた。だがエコノミストたちは、ウイルス問題の余波が年内にもアメリカを景気後退に追い込みかねないと予測している。11月に大統領選を控えるトランプは9日、市場の取引終了後に会見を行い、ウイルス封じ込めのためのさらなる取り組みや、給与税の減税など景気対策の拡大を行うと表明。さらに10日に米議会と協議した上で「重要な」政策を発表するつもりだと述べ、「この問題は世界に不意打ちを食らわしたが、我々はとても優れた対処を行ってきた」と自画自賛した。
ウイルスの発生源とされる中国は最悪の時期を脱したようで、経済活動が徐々に戻ってきている。今後の心配は他の経済大国、特にアメリカで感染者が急増し、貿易や人の移動、製造業に影響が及ぶことだ。トランプはここ何年も、製造業の中国撤退やハイテクの対中輸出制限など「脱グローバル化」を推し進めてきたが、新型コロナウイルスの影響による経済の低迷は、世界経済がいかに深く相互に依存し合っているかを改めて知らしめた。だが、ここから世界がさらなるグローバル化に進むのか、脱グローバル化に進むのかはまだわからない。「長い目で見ると、これまで以上にポピュリズム支持が増え、これまでに築き上げたグローバルなサプライチェーンが崩壊することになる可能性もある」とボールドウィンは指摘する。だが逆に「中国がくしゃみをすればG7全体が風邪を引くのだという理解がようやく共有されて」多国間の協調が進むことになるかもしれないという。9日の世界市場の急落は、新型コロナウイルスの経済的影響と原油市場、地政学、そして市場パニックがいかに緊密に結びついているかを思い起こさせてくれた。
サウジとロシアの思惑
新型コロナウイルスのせいで世界的な経済活動に物理的な支障が出ていることから、今年の世界の原油消費量は10年前のリーマンショック以降で初めて、減少に転じると予想されている。国際エネルギー機関(IEA)は9日、世界の原油需要が前年比で1日あたり10万バレル近く落ち込むとの見通しを発表した。6日にはサウジアラビア率いる石油輸出国機構(OPEC)が、需要減退による原油価格の下落を限定的なものにとどめるために減産強化を提案。だが、非OPEC国のロシアに拒否され交渉は決裂した。するとサウジアラビアは突如、原油価格の大幅な「値下げ」に転じ、原油価格は一夜にして30%も下落した。これがアジア、ヨーロッパ、そして最終的にはアメリカの市場に大混乱をもたらし、投資家たちは米国債のような安全な資産に群がった。ロシアが協調減産を拒否したのには理由がある。ロシアは経済安定のために約1500億ドルの外貨準備を蓄えており、原油価格が1バレル=42ドルを下回っても今後6年間は乗り切ることができる。それに原油価格が下落すれば、ライバルであるアメリカのシェールオイル産業に打撃を与えることができる。
米シェールオイル産業は設備投資で債務が膨れ上がって生産量の伸びも鈍化しており、今年は特に原油価格下落の打撃を受けやすい状態にあるからだ。では、原油価格を上げたがっていたサウジアラビアは、なぜ値下げを始めたのか。アメリカ産シェールオイルの台頭にはサウジアラビアもロシアと同じく苛立っている。だが、原油価格は、サウジアラビアとロシアの交渉が決裂したときからどのみち下落し始めていた。自分たちだけが原産して、もし価格は下がり続ける事態は避けたかったのだろう。ロシアやサウジアラビアの賭けが当たるかどうかはわからない。だが、当面最も損をするのはアメリカの石油産業だ。9日、アメリカの多くのエネルギー会社の株価は半値近くまで下落した。原油価格が下落するのを見て、すかさず採掘計画と生産計画の縮小を発表した生産者もいた。原油価格の低迷が続けば、倒産とリストラでシェール産業はズタズタになると、専門家は予想する。そうなれば、エネルギー業界を重要な支持層とするドナルド・トランプ大統領とその再選の機会、最終的に傷つくことになるかもしれない。 
●韓国、9日の新型コロナウイルス感染者35人増え7513人 3/10 
韓国疾病予防管理局(KCDC)の10日の発表によると、国内の新型コロナウイルス感染者は35人増え、累計7513人となった。死者は3人増え、54人。感染者数の増加ペースは緩やかになりつつある。同日中に最新集計結果があらためて発表されるとみられる。
集団感染が起きた南東部の大邱(テグ)市の教会の信者約20万人への検査がほぼ終了する中、前日は感染者の増加数(165人)が過去11日間で最低となった。保健当局の幹部は「新たな感染者数は減少傾向にある」としながらも、人の多い職場などでは注意が必要であり、熱のある従業員を出勤させないなど企業側の協力が不可欠だ、と指摘した。ここ数日の新たな患者の感染経路として、職場やダンス教室での感染症クラスター(集団)発生が確認されている。ソウル市は、保険会社のコールセンターで集団感染が起きたことを受け、同種の職場環境の調査に乗り出した。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は9日、国内の新型コロナウイルスの感染拡大ペースが鈍化しつつあることから、このままいけば「安定局面」に入る可能性があるとしながらも、楽観するのは時期尚早だと警戒感を示した。 
 
 
 

 

●「密閉空間」「密集」「近距離の会話」の“重なり”を避けて 3/10 
新型コロナウイルス対策の専門家会議は3月9日に新たな見解を発表。「日本の状況は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえている」としながら、感染者の増加は当面続き「警戒を緩めることはできない」との認識を示している。2月24日に「今後1、2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」との見解を出してから2週間経過し、「一定程度持ちこたえている」とするが、対策の効果が出ているか、特に北海道での緊急事態宣言(2月28日)から約2週間とその判断を経て、3月19日を目処に新たな対策を公表する予定。また、集団感染が確認された場所に共通するのは、以下の3つが同時に行なわれたこと。
・換気の悪い密閉空間
・多くの人が密集していた
・近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行なわれた
そのため専門家会議では、これらの3つの条件が同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとるよう呼びかけている。また、上記の条件の他に、共用の物品を使用していたという場面もあり、こうした状況では接触感染がおこりうると注意。これらへの注意に加え、こまめな手指衛生と咳エチケットの徹底、共用品を使わないことや使う場合の充分な消毒などを強く推奨している。  
●「満員電車」も条件が揃えば、感染要因に。 3/10 
感染拡大を防ぐため時差通勤などの取り組みが実施される中、「なぜ満員電車については触れないのか」などと、疑問の声も出ていた。新型コロナウイルス感染症対策の政府の専門家会議は3月9日、最新の見解を発表し、「満員電車」について、条件が揃えば感染要因(クラスター)になり得ると初めて言及した。満員電車に対しては、感染要因として懸念の声が多く上がっていたが、政府のこれまでの公式見解では具体的に挙げられたことはなかった。
政府は9日の専門家会議で、「新型コロナウイルス感染症のクラスター(集団)発生のリスクが高い日常生活における場面についての考え方」と題した書面を公表した。これまでに新型コロナウイルスの感染が確認されたケースに共通する点として「1換気の悪い密閉空間2人が密集していた3近距離での会話や発声が行われたという3つの条件が同時に重なった場」とし、このような場では、より多くの人が感染していたと考えられると説明。そのような場所の具体例として、屋形船、スポーツジム、ライブハウス、展示商談会、懇親会などが挙げられていた。
条件が重なれば「満員電車」も感染クラスターに。
今回公表された見解では、「満員電車」についても、感染が起こりうる空間になり得ると初めて指摘された。上述した“3つの条件”がすべて重ならなくても「1つないし2つの条件があれば、なにかのきっかけに 3 つの条件が揃うことがあります」と前置きした上で、以下のように説明した。例えば、満員電車では、1(換気の悪い密閉空間)と2(人が密集していた)がありますが、3(近距離での会話や発声が行われた)はあまりなされません。しかし、場合によっては3が重なることがあります。加えて、満員電車のほか野外でのスポーツについても以下のように言及した。例えば通常の野外スポーツをしている際には3つの条件は揃いませんが、着替えやミーティングにおいては1から3の条件が重なることがあります。そのため、3 つの条件ができるだけ同時に重ならないようにすることが対策となります。
満員電車をめぐっては、列車自体が感染源になることや乗客を通じての感染拡大を防ぐため『時差通勤』などの取り組みが実施される中、「なぜ満員電車について、政府は何も触れないのか」「学校は臨時休校の対応で、人混みは避けるようにと言っておきながら、満員電車には言及がないの?」などと、疑問の声も出ていた。また政府は、不特定多数が参加するイベントについても改めて言及。イベントの開催については「感染拡大のリスクが高いだけでなく、クラスターが発生したときに感染源の特定、接触者調査が困難となり、クラスターの連鎖につながるリスクが増します」と説明した上で、「可能な場合には、あらかじめ参加者を把握できているほうが感染拡大のリスクを下げることができます」と主催者側に呼びかけていた。 
●株安・円高が止まらない!前代未聞「新型コロナ相場」の着地点 3/10 
週明けの金融市場は、ここ数年で最も激しい展開となった。日本時間3月8日朝方、米ニューヨーク州は新型コロナウイルスの感染者数が拡大したことで、ニューヨーク市を含む州全体に非常事態宣言を発令。
翌9日朝方には、石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」が減産強化で合意に至らず、サウジアラビアが増産を検討していると報じられたことを受け、原油先物価格が1バレル30ドルちょうど近辺まで急落。下げ幅は1991年の湾岸戦争以来の大きさとなった。
新型コロナ懸念だけでなく、商品市況の代表的な存在である原油価格が急落したことで、市場のリスク回避姿勢は一気に高まった。為替市場ではドル円が104円台前半と先週末から1円以上円高ドル安水準でスタート。8時前に北朝鮮が飛翔体を発射したと報じられると、ドル円は103円台半ば近辺と、節目とされる104円台を割り込んだ。
その後、ドル円は104円を挟んで方向感に欠ける展開となったが、仲値公示後に米債利回りが低下すると、日本株が売り先行の展開に。日経平均株価は1050.99円安の1万9698円76銭と、終値ベースでは1年2カ月ぶりの2万円割れで引けた。
そしてドル円は、日本株の下げを受けて円買いの動きが一気に強まり、一時101円台半ば近辺と、2016年11月以来の円高ドル安水準を記録。日経平均株価が下げると、ドル円が下げ、それを受けて日経平均株価が下げるという、典型的なリスク回避モードとなった。
ロンドン市場に入っても、金融市場のリスク回避姿勢は強いままだ。午後4時30分から始まった日経225先物イブニング・セッションでは、1万8710円と約3年ぶりの安値まで下落。ドル円も102円台後半から102円ちょうど近辺まで下げた。ロンドン市場が中盤に近づくと、日経225先物、欧州株ともに下げ渋ったこともあり、ドル円は102円台前半で下値を固めつつあるが、このままドル円が下げ止まるとみる向きは少ないだろう。
テクニカルでみたドル円の下値の目途は101円台前半(2016年11月の安値)と節目として意識されやすい100円ちょうど、そして99円台半ば近辺(同年8月の安値)だ。
ただ、新型コロナ感染拡大の先行きを考えるには、経済合理性など金融市場参加者が得意とする知識・経験の多くが役に立たない。まさに前代未聞といえる事態に対し、市場参加者が行き過ぎた反応をしないと言い切ることもできず、むしろ今後も市場参加者がリスク回避姿勢を強めるとの思惑から、株安・円高の動きが続くとみるのが自然ともいえる。
日銀をはじめとする世界の金融当局者の手詰まり感が強まっていることも、市場のリスク回避姿勢を強めている。米連邦準備制度理事会(FRB)は3月3日、市場参加者の意表を突く形で50ベーシス・ポイント(bp)の利下げに踏み切ったが、米国株は上昇するどころかこれまで以上に大きく下落。市場参加者の多くは、FRBがそう遠くない将来にゼロ金利までの利下げを余儀なくされるとみている。
ただ、効果が薄いと指摘する声もあるマイナス金利政策にFRBが踏み切れるかは現時点では読み切れず、FRBによる対応が株安・円高(ドル安)を食い止めると期待することは難しい。
日本銀行はFRB以上に難しい立場にいる。株安・円高が進み続けている以上、日銀が3月18日、19日に予定されている金融政策決定会合でゼロ回答となることはあり得ない。新型コロナの影響で売り上げが急減している観光業、宿泊業、小売業などを対象に、貸出支援オペが拡充されるだろうが、即効性を期待する市場関係者にとっては魅力の高いものに映らない。
仮に日銀が、市場関係者の期待形成策として10bp程度の利下げを決めたとしても、それで株安・円高の動きが止まると確信する市場参加者は少ないだろう。むしろマイナス金利の深堀りによって地域金融機関を中心に金融業の業績悪化が懸念される展開すらあり得る。日銀が即効性を重視し、ETFの買い入れ目標を引き上げる可能性もゼロではない。たとえば、年間買い入れ目標を現在の6兆円から8〜10兆円に引き上げれば、短期的かもしれないが日本株を買い戻す動きが強まるかもしれない。ただ、その場合、日本株の官製相場化がさらに強化されると指摘する声も強まるだろう。現在の日銀金融政策決定会合のメンバーは、一部の極端なリフレ派と呼ばれる者を除き、極端な追加緩和に否定的な姿勢が強い。
ETFの買い入れを執行部が提案したものの、反対多数で否決された場合、日銀の手詰まり感が明確なものとなり、株安・円高の動きが加速する展開も視野に入れておくべきだろう。 
●この円高と株安の同時進行はいつまで続くのか 3/10 
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に収束のメドが立たない中、国際金融市場の波乱が続いている。
3月9日の東京市場では、円が対ドルで一時、2016年11月以来の101円台に突入した。前週までは、ドル106円〜108円で推移していただけに、一気に円高が進んだ格好だ。日経平均株価は前日比1050円安の1万9698円と今年最大の下げ幅で、1年2カ月ぶりに2万円の大台を割り込んだ。
この流れを受けた形でアメリカ市場はさらに荒れた。ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は、取引が始まると一時2000ドル超も下落。S&P500種株価指数が急落したことで取引を一時停止するサーキットブレーカーが発動された。
為替市場では、新型コロナウイルスに対する不安が高まる中、2月半ばには一時1ドル112円台をつけるなど円安が進行し、「リスクオフの円高は終わったのでは」との見方すら出ていた。
背景にはアメリカ経済の底堅い動きがあったが、ヨーロッパやアメリカ国内でも感染拡大が深刻化するにつれ、企業のセンチメントが急速に悪化するなどアメリカ経済への先行き不安が台頭。最高値圏にあったアメリカの株価が急落する一方、安全資産であるアメリカ国債に投資資金が集まり、長期金利が急低下した(債券の価格は上昇)。
3月3日にアメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が臨時会合(定例会合は3月17日、18日)を開いて0.5%の緊急利下げを断行するが、「金融緩和では感染拡大は止められない」として市場の不安は払拭されず、アメリカの株式市場は低迷を続けた。
市場はすでに、FRBが4月にかけてさらに追加で0.75%分の利下げを行うことすら織り込んでいる。そして、10年物のアメリカ国債の利回り低下は一段と進んで一時0.5%をも割り込んだ。
2020年の初めの段階で10年物のアメリカ国債の利回りは2%弱だっただけに、マーケットの状況は急激に変化している。日本やドイツなどと同様、長期金利のマイナスに突入することさえも意識される水準だ。
アメリカの景気見通しが悪化し、金利が大幅に低下することで日本とアメリカの金利差が縮小する中、「リスクオフ(リスク回避)」の円高が急激に進行している。それが為替相場の現状だ。
円高が進行している分だけ、日本株はアメリカ株以上に値を下げている。アメリカ株が下げ止まらないと、円高も止まらない。それが円高と株安が同時進行につながっている。
さらに、ここに来て劇的な下げを見せているのが、原油価格だ。WTI原油先物は3月9日の午後(日本時間)で一時1バレル=27ドル台まで3割以上の暴落となり、2016年2月以来の安値を付けた。
世界的な景気失速によって原油需要の減退が予想される中、「OPECプラス」の協調減産協議の決裂やサウジアラビアの原油大幅増産計画などが嫌気されたものだ。
市場内では、原油価格の急落に伴い、サウジ政府系ファンドなどのオイルマネーが世界の株式市場から資金を引き揚げるのではないかとの観測が浮上。また、中国経済の停滞が懸念された2015〜2016年のチャイナショック時と同様、原油急落から、米国のシェールオイル関連などハイイールド債発行企業の信用不安につながるとの懸念も強まっている。チャイナショックが起きた当時、ドル円相場は一時、1ドル100円を割る水準まで進んでいる。
今後の為替市場の見通しについて、楽天証券経済研究所グローバルマクロ・アドバイザーで田中泰輔リサーチ代表の田中泰輔氏は、「新型コロナの感染拡大収束のタイミング次第だが、短期収束の可能性が高まれば、ドルショート(ドルの売り持ち)の巻き戻しで急速に円安に転じる。だが、向こう2〜4週間でも収束のメドが立たなければ、すでに長期拡大の終盤を迎えつつあるアメリカ経済の景気後退が現実味を増し、1ドル90円近辺への円高も覚悟すべきだ」と話す。
1ドル100円を割ってくれば、日本銀行も何らかの対応を迫られる見通しだが、マイナス金利の深掘りには低迷する銀行収益を直撃するなど副作用も多く、「円高を食い止める対応には限界がある」(田中氏)。1ドル90円台となると、輸出企業を中心に業績下方修正の懸念が一段と強まり、株価下落に一段と拍車がかかる可能性がある。日本の本格的な景気後退は避けられないだろう。
今後、新型コロナの感染拡大のデータとともに、国内外の景気指標も続々と発表され、世界経済へのダメージが明らかになってくる。そうした数字をマーケットがどう消化し、政策当局がどう対応するか。先行き予断を許さない展開が続く見通しだ。 
 
 
 

 

●パンデミック (pandemic) 
ある感染症(特に伝染病)が、顕著な感染や死亡被害が著しい事態を想定した世界的な感染の流行を表す用語である。語源はギリシア語であり、全ての人々を意味する。
定義及び用法
これには複数の立場がある。
ある病気(感染症)が国中あるいは世界中で流行すること、ある感染症(特に伝染病)の(顕著な感染や死亡被害が著しい事態を想定した)世界的な流行、(感染症などとは関係なく)世界流行とも。
概説
パンデミックとは何らかの疾患、特に感染症が、ある国の中のそこかしこや、国境を越えて世界中で流行することである。疾患、特に感染症の流行は、その規模に応じて(1)エンデミック、(2)エピデミック、(3)パンデミックに分類される。このうち最も規模が大きいものがパンデミックである。関連用語と比較  ・・・ 
endemic エンデミック(地域流行) / 特定の人々や特定の地域において、「regularly (ある程度の割合、ポツポツと)」見られる状態。地域的に狭い範囲に限定され、患者数も比較的少なく、拡大のスピードも比較的遅い状態。「流行」以前の段階。風土病もエンデミックの一種に当たる。
epidemic エピデミック(流行) / 特定のコミュニティ内で、特定の一時期、感染症が広がること。特に突発的に規模が拡大し集団で発生することをアウトブレイクと呼ぶ。
pandemic パンデミック(汎発流行) / (さらに流行の規模が大きくなり)国中や世界中で、感染症が流行すること。
WHO(世界保健機構)は、ひとつひとつの感染症のパンデミックの(その時点での)状況を6つのフェーズ(段階)に分けて分類している。
なお「感染症」とは、微生物が体内に侵入し、繁殖したためにおこる病気のこと。たとえばウイルス、細菌、原虫などの病原体がからだの中へ侵入して増え、その結果、咳、発熱、下痢などの症状がでることを言う。
ヒトからヒトへの感染(=「ヒト-ヒト感染」)を起こすようなウィルスの場合、(感染力が弱ければ、大流行に至らずに済む場合もあるが)感染力が高ければ高いほど、感染を防げないままに、2次感染、3次感染...と感染が広がってゆくことになりがちで、一人の人から3名、4名、5名...などと 多人数の人に感染するような感染症では、「ヒト-ヒト 感染」が繰り返されるうちに指数級数的に、つまり「爆発的」に広がってゆくことになる。
(古代や中世は旅をする人々の割合は少なかったが)現代では、人々の移動が盛んで、おまけに世界各国で、国内旅行だけでなく、航空機を用いた外国旅行も世界的に非常に盛んになっているので、国境を越えて世界規模のパンデミックが起きやすくなっている。たとえば2002年〜2003年のSARSのパンデミックでは、中国国内で最初期の感染が起きたが、最初の感染者の治療を行った中国人医師のひとりが(自分が感染してしまったとの自覚も無いままに、親類の結婚式出席のために)香港へと旅をしたことで香港に滞在している人々に飛び火し、その香港には、世界中の各国から中国人(中国系○○人)がやってきてはそれぞれ自国(移住先)に帰国するために、あっという間に世界各地に飛び火した。
パンデミック、なかでも生命にかかわるような症状をともなう感染症のパンデミックは、人類の皆にとっての脅威である。
現在までヒトの世界でパンデミックを起こした感染症には、天然痘、インフルエンザ、AIDSなどのウイルス感染症、ペスト、梅毒、コレラ、結核、発疹チフスなどの細菌感染症、原虫感染症であるマラリアなど、さまざまな病原体によるものが存在する。AIDS、結核、マラリア、コレラなど複数の感染症については世界的な流行が見られるパンデミックの状態にあり、毎年見られる季節性インフルエンザ(A/ソ連、A/香港、B型)の流行も、パンデミックの一種と言える。 ただし、これらの感染症の中でも特に新興感染症あるいは再興感染症が集団発生するケースでは、しばしば流行規模が大きく重篤度(死亡率など)が高くなるものが見られるため、医学的に重要視されている。これらの新興(再興)感染症によるパンデミックはしばしば一般社会からも大きく注目されるため、一般に「パンデミック」と呼ぶ場合、これらのケースを指すことも多い。
パンデミックの歴史
ここでは感染症全般の歴史ではなく、『パンデミックの歴史』を記述する。感染症によるパンデミックは古代より見られ、大きな被害を与えてきた。
14世紀には黒死病(ペスト)がヨーロッパで大流行した。このときの流行では当時のヨーロッパ総人口の約3分の1にあたる、およそ2500万人から3000万人もの死者を出したとされる。
16世紀にはコロンブス交換によってもたらされた天然痘が南北アメリカ大陸で猛威をふるい、天然痘の免疫を持たなかった先住民の人口は約10分の1にまで減少した。またこの天然痘の大流行はアステカ帝国やインカ帝国といった現地の政治権力に大打撃を与え、両国の滅亡とスペインの新大陸制覇の一因となった]。
19世紀から20世紀にかけてコレラが、地域を変えつつ7回の大流行を起こした。
1918年から1919年にかけてスペインかぜ(インフルエンザ)が全世界で流行し、死亡者は約5000万人から1億人にものぼった。この時期は第一次世界大戦の末期にあたり、総力戦体制のもと全世界的に軍隊や労働者の移動が活発となったことが被害を大きなものとした。流行は鉄道や河川といった輸送ルートを通って海岸部の港湾都市から奥地へと広がっていった。
1980年代以降、後天性免疫不全症候群の患者が全世界で増大したが、なかでももっとも感染の激しかったブラックアフリカでは全人口の30%以上が感染した国家まで存在し、平均寿命の大幅な減少がいくつかの国家で見られた。
2002年11月1日〜2003年8月7日にはSARSが世界各地で流行。香港を中心に8,096人が感染し、37ヶ国で774人が死亡した。
なお「パンデミック宣言」がなされたものの実際の被害が小さくて済んだものとしては、2009年新型インフルエンザの世界的流行がある(詳細は#WHOのパンデミック誤警告問題を参照)。また、1997年からの高病原性トリインフルエンザや2002年のSARSについてはパンデミックには至らなかったものの、その一歩手前の状態になった。
そして2020年、COVID-19が中国の湖北省東部の武漢市から流行し、3月8日現在で全世界で10万人程の感染者、3000人ほどの死者が出ており、発見されてない感染者と死者数は確認されている10倍ほどにもなると予測されている。
また特に流行の被害が大きい国はウイルス発生国の中国の他に、韓国・イタリア・イランとなっている。
WHOによる分類
WHOは、感染症の感染力や流行の、その時々の状況に応じて、(パンデミックに至る)6つのフェーズ(phase、「段階)(≒警戒区分)に分類している。この警戒区分は、対象となる感染症の原因となる病原体の病原性の強さや、流行の程度を考慮して総合的にWHOが判断して警戒や対策の実行を呼びかけるものである。
WHOによる6つのフェーズ
WHOでは、パンデミックまでの各フェーズを以下のように切り分け、フェーズごとの公衆衛生学的な対応策を各国に求めている。日本ではフェーズ3以降をさらにA(海外で発生しているが,国内では発生していない)、B(国内で発生している)に細分し、それらに適合した対応ガイドラインが設定されている。
なお6段階ではなく3段階に分けた用語と、6つのフェーズの関係は次の通り。 前パンデミック期(Inter-Pandemic Period、パンデミック間期):フェーズ 1-2。パンデミック・アラート期(Pandemic Alert Period、パンデミック警告期):フェーズ 3-4-5。パンデミック期(Pandemic Period):フェーズ 6。
   ●WHOにおけるインフルエンザパンデミックフェーズ(2005年版)
フェーズ1(前パンデミック期)
ヒトから新しい亜型のインフルエンザは検出されていないが、ヒトへ感染する可能性を持つ型のウイルスを動物に検出。このフェーズでの対策の目標:世界、国家、州、県、都道府県、コミューン、市区町村のそれぞれのレベルで、パンデミック対策を強化する。
フェーズ2(前パンデミック期)
ヒトから新しい亜型のインフルエンザは検出されていないが、動物からヒトへ感染するリスクが高いウイルスが検出このフェーズでの対策の目標:ヒトの感染拡大のリスクを減少させ、仮にヒト感染が起きたとしたら、迅速な検知、報告が行われる体制を整備する。
フェーズ3(パンデミックアラート期)
ヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認されているが、ヒトからヒトへの感染は基本的に無い。このフェーズでの対策の目標: 新型ウイルスを迅速に検査診断し、報告し、次の患者発生に備える。
フェーズ4(パンデミックアラート期)
ヒトからヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認されているが、感染集団は小さく限られている。このフェーズでの対策の目標:隔離をはじめとした物理的な封じ込め対策を積極的に導入し、ワクチンの開発と接種などを事前に計画し、準備した感染症対策の実施に必要な時間的猶予を確保するために、最大限努める]。
フェーズ5(パンデミックアラート期)ヒトからヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認され、パンデミック発生のリスクが大きな、より大きな集団発生がみられる。このフェーズでの対策の目標:フェーズ4での目標と同じ。
フェーズ6(パンデミック期)
パンデミックが発生し、一般社会で急速に感染が拡大している。
後パンデミック期
パンデミックが発生する前の状態へ、急速に回復している。このフェーズでの対策の目標:パンデミックによる多方面への影響を評価し、計画的復興と対策の改善を実施する。
パンデミックの推移
H5N1亜型などの致死性が高くパンデミックを起こすとされているインフルエンザを例に、パンデミックの発生から消退までの予想される経過を表で示した。
インフルエンザ・パンデミックの推移
経過 / 解説
亜型ウイルスの確認 /  亜型ウイルスの存在が確認されている(例。動物のインフルエンザウイルス) ヒト感染のリスクは低い、またはヒト感染は報告されていない。
ヒトへの感染の確認 / 亜型ウイルスの存在が確認されている(例。動物のインフルエンザウイルス) ヒトへの感染が報告されている。パンデミックの潜在的脅威。
限局したヒト−ヒト感染の確認 / ヒトからヒトへの感染はきわめて限定されている(家族や身近な接触者等)
小規模の流行 / ヒトからヒトへの小規模感染(単独国家内での感染)を認めるだけの証拠が存在する。パンデミックとなる可能性は中〜高程度
大規模の流行 /  ヒトからヒトへの相当数の感染(単一のWHO管区内における複数の国家での感染)を認めるだけの証拠が存在する。パンデミックへと発展する可能性が高く、早急に大流行への計画的な対策を講じる必要性がある
世界的な大規模流行 / グローバルパンデミック(世界流行)の状態。上記の状態に加え、当初集団発生したWHO管区とは異なる管区で集団発生が確認される。
流行の消退 / 流行のピークは過ぎたものの、流行再燃の懸念が残る状態。
流行後 / パンデミックを起こしたウイルスが通常のインフルエンザウイルスと同等の状況となった状態。しかしパンデミックに対する警戒と備えは維持する必要がある。
対策
WHOの分類フェーズを目安にしつつ、各国の政府、自治体、行動計画をそれぞれ作成することによって、パンデミックへの対策を行わなければならない。企業 等さまざまな組織も、従業員や顧客を護るために対策を練ることになる。
高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1型による鳥インフルエンザも、現状は主に東南アジア諸国での発生であるが、世界的なパンデミックに至る恐れもあり、世界保健機関(WHO)が途上国を中心に対策を立てている。日本では、厚生労働省を中心に地方自治体が対策をとっている。行政側から一般市民へ呼びかけも行われており、鳥の死骸を見つけた場合、近寄ったり触れたりしないことが薦められている。自宅の庭などで鳥の死骸を発見した場合でも、なるべく近寄らないようにし、決して自力で死骸を処理したりせず、まず行政(市役所など)へ連絡して死骸の処理を依頼するべきで、そうすれば感染を防ぐためのノウハウを知る担当者がやってきて死骸除去および消毒などをしてくれる、とされている。なお、もしも患者が急増した場合には、医療機関の混乱、交通機関の麻痺、食料の供給不足などが発生する懸念がある、とする専門家もいる。
パンデミックに発展する恐れのある疾病
世界保健機関の国際的感染症対策ネットワーク (2009) が警戒する感染症は、炭疽、鳥インフルエンザ、クリミア・コンゴ出血熱、デング熱、エボラ出血熱、ヘンドラウイルス感染症、肝炎、インフルエンザ、2009年のインフルエンザ(H1N1)、ラッサ熱、マールブルグ熱、髄膜炎症(en:Meningococcal disease)、ニパウイルス感染症、ペスト、リフトバレー熱、重症急性呼吸器症候群(SARS)、天然痘、野兎病、黄熱病の19疾病である。
WHOのパンデミック誤警告問題
世界保健機関(WHO)は、2009年に「今、すべての人類が脅威にさらされている」として新型インフルエンザH1N1亜型をすべての人類の脅威として警告を行った。その後、新型インフルエンザが弱毒性であることが発覚するも、顕著な感染や死亡の被害が著しい事態を想定した警告であるフェーズレベル6/6と警告し、パンデミック(世界的大流行)の宣言を行なった(このWHOのパンデミック警告の経緯については、2009年新型インフルエンザの世界的流行#発生確認と初期対応を参照)。しかし、「すべての人類の脅威」とまで宣言された新型インフルエンザは、他の季節性インフルエンザと大差ないレベルのインフルエンザであり、被害も小さかった。一連のWHOの誤報を重く見た欧州議会は、パンデミック宣言に至った経緯の調査に踏み出す事態となった。
欧州議会ヴォルフガング・ワダルグ(英語版)前保健衛生委員長は、WHOのパンデミック宣言は偽のパンデミックであったとし、一連のパンデミック宣言を批判した。その原因にはWHOの意思決定に製薬会社の意向が大きく影響しており、それが今回のパンデミック宣言につながったとして、WHOの意思決定システムを問題視している。そのパンデミックの言葉は、医学的にも歴史的にも不適切な使用であった。一方、世界最大規模の製薬会社であるグラクソ・スミスクライン社(イギリス)は、製薬会社がWHOのパンデミック宣言に影響を与えているなどの認識は誤りであると、インタビューで反論している。
インフォデミック
インフォデミック(英: infodemic)とは、疫病の流行に伴う流言が急速かつ大量に広がって社会に混乱をもたらす状況を指す。この概念は誤報と闘うための取り組みの中で提唱された。2020年2月2日、世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスについて、「人々が必要とするときに、信頼できる情報源と信頼できるガイダンスを見つけるのを困難にする」情報が過剰に報告されていて、正確なもの、間違ったものが混在していることを引用し、「大量情報伝染(massive infodemic)」を宣言した。WHOは、タイムリーで信頼できる情報に対する高い需要により喚起され、WHOの神話を破る24時間年中無休ホットラインの創設を奨励し、コミュニケーションおよびソーシャルメディアチームが、Webサイトおよびソーシャルメディアページを通じて誤った情報を監視し、対応している、と述べた。
Facebook、Twitter、Googleは、「誤報(misinformation)」について世界保健機構(WHO)とともに取り組んでいると発表した。Facebookは、大手の世界的な保健機関や地方自治体によって「身体的危害(physical harm)」につながる誤った情報に関するコンテンツポリシーに違反している、とフラグが立てられたコンテンツを、削除する。と述べた。
2月末、アマゾンは、コロナウイルスから保護することができると誤って主張をした100万以上の製品を禁止し、出品停止した。また、高額すぎる健康関連商品の出品を、数万点削除した。
日本でもメルカリ、Amazon.co.jpのマーケットプレイスなどで、高額転売(価格高騰)が問題になった。感染予防のため品薄なマスク、消毒用アルコール、直接関係は無いが品薄状態のトイレットペーパー、ティッシュペーパーは、メルカリ事務局の判断で削除対象となった。  
● 「新型コロナウイルス感染症対策の見解」 3/9 
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議
この専門家会議は、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の下、新型コロナウイルス感染症の対策について医学的な見地から助言等を行うために設置されました(令和2年 2月 14 日 新型コロナウイルス感染症対策本部決定)。この見解は、新型コロナウイルス厚生労働省対策本部クラスター対策班が分析した内容に基づき、専門家会議において検討した結果をまとめた見解です。現在までに明らかになってきた情報をもとに、我々がどのように現状を分析し、どのような内容について政府に助言をしているかについて、市民に直接お伝えすることが専門家としての責務だと考え、この見解をとりまとめています。この内容はあくまでも現時点の見解であり、随時、変更される可能性があります。
1. 感染拡大の防止に向けた日本の基本戦略
専門家会議では、日本で新型コロナウイルスに対応するための基本的な考え方を、社会・経済機能への影響を最小限としながら、感染拡大の効果を最大限にするという方針とし、政府に助言をしてきました。その具体的な戦略は「クラスター(集団)の早期発見・早期対応」、「患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保」、「市民の行動変容」という3本柱であると考えています。この戦略は世界保健機関(WHO)の推奨する戦略とも一致しており、既にシンガポールや香港などで実施されているのと同等の戦略です。
一方、日本よりも急速に感染が拡大してしまった国では、日本のような戦略のみでは感染拡大を抑えることができず、人々の行動を大幅に制限する戦略を取らざるを得ない状況になっています。
日本では、医療機関が高い医療水準を誇っており、地方公共団体や保健所の高度な調査力があります。今後の感染拡大に備えて、これらの機関の体制を強化し、広域での連携や情報共有をすることは不可欠です。
そして、日本には、市民のみなさまの強い協力意識があります。この戦略を確実に実行するためには、市民のみなさま一人一人が二次感染を防ぐための行動にご協力いただくことも欠かせません。
我々が提案する基本戦略は、これらがそろって、はじめて実現できる戦略ですが、後述するように、日本の状況はこの戦略により感染拡大のスピードを抑えられる可能性もあります。そのため、専門家会議としては、当面の間、この戦略を強化すべきであると考えています。
2. 現在の国内の感染状況
現時点において、感染者の数は増加傾向にあります。また、一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が、全国各地で相次いで報告されています。
しかし、全体で見れば、これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていません。また、実効再生産数(感染症の流行が進行中の集団のある時点における、1人の感染者から二次感染させた平均の数)は日によって変動はあるものの概ね1程度で推移しています。感染者や濃厚接触者の方々、地方公共団体や保健所の皆様、厚生労働省対策本部クラスター対策班の連携と多大な努力が実り、現時点までは、クラスター(集団)の発生を比較的早期に発見できている事例も出てきています。これは、急激なペースで感染者が増加している諸外国と比べて、感染者数の増加のスピードを抑えることにつながっています。
2月24日に公表した専門家会議の見解において、我々は、「これから1−2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となります」と述べましたが、以上の状況を踏まえると、本日時点での日本の状況は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえているのではないかと考えます。
しかしながら、感染者数は、一時的な増減こそあれ、当面、増加傾向が続くと予想されます。また、後述するように、感染の状況を把握するためには、約2週間程度のタイムラグを生じ、すべての感染状況が見えているわけではないので、依然として警戒を緩めることはできません。専門家会議としては、現在、北海道で行われている対策の十分な分析が完了し、さらに他の地域の状況の確認などをしたうえで、全国で行われている対策も含め、我々の考えを政府にお伝えしたいと考えています。
3.重症化する患者さんについて
中国からの2020年2月20日時点での報告では、感染が確認された症状のある人の約80%が軽症、13.8%が重症、6.1%が重篤となっています。また、広東省からの2020年2月20日時点の報告では、重症者125名のうち、軽快し退院したものが26.4%、状態が回復しつつある者が46.4%となっています。
日本国内では、2020年3月6日までに、感染が確認された症状のある人366例のうち、55例(15%)は既に軽快し退院しています。重症化する患者さんも、最初は普通の風邪症状(微熱、咽頭痛、咳など)から始まっており、その段階では重症化するかどうかの区別をつけるのは、依然として難しい状況です。
日本では、死亡者数は大きく増えていません。このことは、限られた医療資源のなかであっても、日本の医師が重症化しそうな患者さんの多くを検出し、適切な治療をできているという、医療の質の高さを示唆していると考えられます。今後も死亡者数の増加を抑えるために、日本の医療提供体制を強化する必要があります。
重症化する患者さんは、普通の風邪症状が出てから約5〜7日程度で、症状が急激に悪化し、肺炎に至っています。重症化する患者さんの場合は、入院期間が約3〜4週間に及ぶことが多いです。また重篤の方の場合は、人工呼吸器による治療だけでなく、人工心肺を用いた集中治療が必要になることがあります。
4. 北海道における、「人と人との接触を可能な限り控える」対策について
北海道では、急速な感染拡大を収束に向かわせることを目的として、2020年2月28日に「新型コロナウイルス緊急事態宣言」が知事より示されました。道民のみなさまには、基本戦略への対応に加えて、現在、「人と人との接触を可能な限り控えること」にも多大なご協力をいただいています。
こうした対策の効果を検討するための最初のデータが得られるまでには、まだ時間を要します。この感染症の感染から発病に要する潜伏期間の平均値は約5日間であり、発病から報告までに要する平均時間は約8日間であることが知られており、我々が今日見ているデータは、その約2週間前の新規感染の状況を捉えたものであるというタイムラグがあるためです。そのため、北海道での対策については、北海道での緊急事態宣言から少なくとも約2週間後からでなければその効果を推定することが困難です。その後、複数の科学的な指標(感染者数の変化、実効再生産数、感染源(リンク)が明確な患者数)を用いて、約1週間程度かけて、この対策の効果を判断し、3月19日頃を目途に公表する予定です。
5. 今後の長期的な見通しについて
国内での急速な感染拡大を抑制できたとしても、世界的な流行を完全に封じ込めることはできません。
先週まで報告が少なかった諸外国において、患者数が急増しています。これまで渡航の制限がなかった諸外国や国内の人々との間の往来や交流が既に積み重ねられています。しかし、全ての感染源(リンク)が追えているわけではないので、感染の拡大が、既に日本各地で起きている可能性もあります。よって、今回、国内での流行をいったん抑制できたとしても、しばらくは、いつ再流行してもおかしくない状況が続くと見込まれます。また、世界的な流行が進展していることから、国外から感染が持ち込まれる事例も、今後、繰り返されるものと予想されます。
新型コロナウイルス感染症は、人々が気づかないうちに感染し、感染拡大に重大な役割を果たすという特徴があるため、クラスター(集団)を早期に発見し、早期に対応できる体制の確立が不可欠だと考えています。
今後、急速な感染拡大が予想される地域では、その地域ごとに「人と人との接触を可能な限り控える」対策を進め、収束に向かえば、比較的、感染拡大のリスクの低い活動から解除するなど、社会・経済活動の維持と感染拡大防止のバランスを取り続けるような対策を繰り返すことが、長期にわたって続くと予想されます。
WHOは、今回の新型コロナウイルス感染症の地域ごとの対策を考えるために、3つの異なるシナリオ(3Cs)を考えるべきとしています。つまり、それぞれの地域を 1)感染者が他地域からの感染者に限定されている地域(Cases)、2)クラスターを形成している地域(Cluster)、3)地域内に広範に感染者が発生している地域(Community Transmission)、の 3 つに分類して対応を考えることが必要だとしています。まだ、WHO からそれぞれの地域の詳しい定義は提示されていませんが、厚生労働省のクラスター対策班でこれらの地域ごとの流行状況を決める指標とそれぞれのシナリオに応じた対策についての指針を作成しています。
専門家会議としては、この指針と北海道での対策の効果をもとに、全国各地での対応を検討し、報告する予定です。また、クラスター(集団)の早期発見・早期対応が長期的にわたって持続できる体制の整備が急務だと考えています。保健所については、労務負担を軽減すべく、帰国者接触者相談センターの機能について保健所以外の担い手を求めるなど、早急に人的財政的支援策を講じるべきだと考えます。また、地方公共団体や保健所の広域での連携及び情報共有が必要です。医療提供体制については、さらなる感染拡大に備え、対応にあたる一般医療機関や診療所を選定し、その体制を強化していく支援をすべきだと考えます。
6. みなさまにお願いしたいこと
これまでに明らかになったデータから、集団感染しやすい場所や場面を避けるという行動によって、急速な感染拡大を防げる可能性が、より確実な知見となってきました。これまで集団感染が確認された場に共通するのは、(1)換気の悪い密閉空間であった、(2)多くの人が密集していた、(3)近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われたという 3 つの条件が同時に重なった場です。こうした場ではより多くの人が感染していたと考えられます。そのため、市民のみなさまは、これらの3つの条件ができるだけ同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください。
ただし、こうした行動によって、どの程度の感染拡大リスクが減少するかについては、今のところ十分な科学的根拠はありませんが、換気のよくない場所や人が密集する場所は、感染を拡大させていることから、明確な基準に関する科学的根拠が得られる前であっても、事前の警戒として対策をとっていただきたいと考えています。
専門家会議としては、すべての市民のみなさまに、この感染症との闘いに参加して頂きたいと考えています。少しでも感染拡大のリスクを下げられるよう、別添の「新型コロナウイルス感染症のクラスター(集団)発生のリスクが高い日常生活における場面についての考え方」を参考にしていただき、様々な場所や場面に応じた対策を考え、実践していただきたいと考えています。どうかご協力をお願いいたします。
事業者の方へのお願い
事業者の皆様におかれましては、既に感染拡大のリスクを防ぐために様々な対策をとっておられることと思いますが、別添の「新型コロナウイルス感染症のクラスター(集団)発生のリスクが高い日常生活における場面についての考え方」を参考にしてください。そして、どのような対策を取っておられるかをぜひ積極的に市民に情報共有してください。そのことが市民にとって、施設や各種サービス等の利用しやすさの判断につながると考えています。どうかご協力をお願いいたします。  
●インフルエンザパンデミック(新型インフルエンザ)とは 2/28 
概念
インフルエンザウイルスにはA・B・Cの三つの型があり、このうち毎年のようにヒトの間で大きな流行を起こすのはA型とB型のインフルエンザです。A型インフルエンザは、抗原性(抗原となる物質が特異的に抗体を認識し結合する性質)の異なる亜型(派生的な型)がヒトの間に出現することによる大流行を引き起こすことがあります。このような変異様式を不連続変異といい、これはA型インフルエンザには抗原性の違う多くの亜型が存在することによります。これらの亜型はおもに鳥類に存在していますが、これらのトリのインフルエンザウイルスが何らかの理由により、ヒトからヒトへの感染性を獲得すると、人類の大多数はそのようなウイルスに対して全く免疫をもっていないために、爆発的な世界規模の大流行を起こすことになります。これがインフルエンザパンデミックもしくは新型インフルエンザと呼ばれている現象です。
過去のパンデミック
過去の歴史をみると、数十年に一度このようなパンデミックが起こっています。20世紀には、3回のパンデミックが起きたことがわかっています。1968年の“香港インフルエンザ”、1957年の“アジアインフルエンザ”と1918年の“スペインインフルエンザ”です。20世紀以前にもパンデミックは、数十年に一度の間隔で起きていたと考えられています。
パンデミックが起きた場合に予測される被害
今、パンデミックが起きたとしたら、どの程度の被害が生じるのでしょうか。まず、感染者数としては世界の人口の20〜30%が感染すると考えられています。現在、世界の総人口を60億人であると考えると、12〜18億人が感染するということになります。過去のパンデミックは1〜2年かけて世界中に拡がっていますが、今パンデミックが起きた場合、どのくらいの速さで世界中に流行が拡がるかということは、正確にはわかっていません。しかし、グローバリゼーションの進んだ現在、世界中にウイルスの拡散するスピードは過去のパンデミックよりもはるかに速い可能性があり、数週間で世界中にウイルスが拡がってしまう可能性も十分に考えられます。死亡者数は、パンデミックを起こすウイルスがヒトに対してどの程度の病原性をもっているかによって大きく違ってきます。過去のパンデミックをみても“香港インフルエンザ”ではおよそ100万人が死亡したと考えられているのに対し、“アジアインフルエンザ”では200万人が死亡したとされています。記録に残っているパンデミックのうち最も大きな被害をもたらしたのは“スペインインフルエンザ”です。このパンデミックでは少なくとも4,000万〜5,000万人が世界中で死亡したとされています。当時の世界の人口は現在の1/3以下なので、今の人口に換算すれば1億人以上が死亡するような激烈なパンデミックでした。日本でもこのパンデミックで約39万人が死亡したとされています。過去のパンデミックのデータをもとに算出した死亡者数の推計によると、世界中で140万〜1億4,000万人が死亡するとしています。通常のインフルエンザでも年間50万〜100万人は死亡していると考えられているので、パンデミックが起きても、通常のインフルエンザと大きく死者数が変わらない場合もあれば、通常のインフルエンザをはるかに超えるような非常に高い死亡率のパンデミックになる場合もあるということになります。
パンデミックの影響
もしパンデミックが起きた場合、その被害は単に膨大な数の感染者や死者が出る、というようなウイルスによる直接の被害だけにとどまりません。感染者で病院があふれることによって、病院の機能が麻痺し、インフルエンザ以外の慢性疾患の患者や救急患者には十分な対応ができないような事態も想定できます。さらに、パンデミックの影響は医療の現場だけでなく、社会全体に及ぶことが予測されます。まず、多くの人が同時に感染し、それらの人が大量に欠勤することになります。また、実際に感染した人以外にも、家族が感染しその看護のために家にとどまる必要のある人や、感染を避けるために出勤を自主的に控える人などを含めると、それぞれの職場で失われる労働力は、予測される感染者の割合である20〜30%を大きく上回る可能性もあります。そうなると、多くの職場で通常の業務を維持していくことが困難になると予想されます。このような影響は、電気・ガス・水道などのライフラインにも及ぶと考えられます。さらに社会不安が増大することが避けられないと考えられますが、治安に関わる警察機能なども維持していくことが困難になるかもしれません。その他、物流、公共交通、郵便、教育なども長期にわたり大きな影響を受ける可能性があります。
鳥インフルエンザとパンデミックの危険性
2003年の終わりに始まったインフルエンザA(H5N1)による鳥インフルエンザの流行は瞬く間にアジア各国に拡がり、2004年の終わりまでにアジアの9カ国で1億5,000万羽以上の家禽(鳥類に属する家畜のこと。アヒル、ガチョウなど)類が死亡するか処分されるという大きな流行を起こしました。このウイルスはその後、2005年の後半からその分布範囲を急速に拡大し、ヨーロッパから中東さらにアフリカにまで広がり現在に至っています。このようなトリでの流行の拡大とともに、アジアを中心とする12カ国で300人以上のヒトでの感染者が確認されています。これまでは、ほとんどのヒトの感染は感染したトリに直接接触することで起こってきていると考えられていますが、一部にヒトからヒトへの感染が疑われるような例も存在します。しかし、現時点ではヒトからヒトへの感染が起こっていたとしても限定的であり、ヒトからヒトへ感染が継続して起こるような状況ではありません。しかし、このH5N1ウイルスはウイルス学的にも様々な変化を遂げてきており、今後ヒトからヒトへと効率的な感染をするようにウイルスが変化する可能性も十分に考えられます。仮に、H5N1がパンデミックを起こさなかったとしても、他にもH2N2、H7N7、H9N2など、他のウイルスもパンデミックを起こす可能性はあり、長期的にみれば、いつかは必ずパンデミックは起こるものとして、その対策を考えておくべきだと考えられます。
パンデミック対策
このような社会全体に大きな影響を与える可能性のあるパンデミックに対してどのような対策が可能なのでしょうか。まず、対策を考えるうえで前提となるのは、いったんウイルスがある程度拡散してしまうと、ウイルスを封じ込めることは不可能であると考えられているという事実です。2003年に世界的な流行を起こしたSARSは患者の早期発見と隔離で封じ込めに成功しましたが、SARSのときに使われた戦略はインフルエンザに対しては有効ではないと考えられます。その最大の理由は、SARSは潜伏期や病初期にはほとんど感染性がなく、感染性は重症の肺炎などを併発した段階でのみ生じていましたが、これに対してインフルエンザでは、病初期に感染性のピークを迎え、潜伏期にも感染性をもつ可能性があるので、発熱者を隔離するというような戦略では封じ込めができないことによります。したがって、パンデミック対策の目的は封じ込めではなく、いかにしてその被害を最小限に抑えるかということが中心となります。そのために考えられている対策としてワクチン、抗ウイルス薬、患者の隔離や学校の閉鎖などの公衆衛生学的対策、手洗いやマスクの使用などの個人防御、医療機関での感染防御対策、国境での水際対策などが考えられますが、そのいずれもいくつかの問題点を抱えており、必ずしもどの対策も決定的な対策となるとは考えられません。実際のパンデミックに際しては、これらの対策を組み合わせていかにしてパンデミックによる被害を最小限に抑えるかということを考える必要があります。そのためには、それぞれの対策の有効性と限界を十分に理解した上で、最も有効な対策の組み合わせを選択する必要があります。しかし、選択すべき対策は、パンデミックを起こしたウイルスの特徴によっても左右され、またパンデミックの段階によっても違ってきます。したがって、その時々の最新の情報に基づいて判断することが求められます。 
 
 
 3/11

 

●“感染 名古屋中心の2つの「クラスター」で81人” 愛知県知事  3/11 
愛知県の大村知事は11日、臨時の記者会見を開いて新型コロナウイルスの県内の感染状況を説明し、名古屋市内を中心に2つ発生しているとみられる「クラスター」と呼ばれる感染者の集団の人が、感染者のほとんどの、81人にのぼると発表しました。愛知県内で新型コロナウイルスへの感染が確認された人は、10日までに99人となっていて、このうち名古屋市内に住む3人が死亡しました。こうした中、愛知県の大村知事は11日午前、臨時で記者会見を開き、県内の感染者の現状などを説明しました。
それによりますと、死亡した3人を除いて、名古屋市内を中心に2つ発生しているとみられる、「クラスター」と呼ばれる感染者の集団の人は、合わせて81人にのぼるとしています。内訳は、スポーツクラブの利用者や、利用者と接触するなどした人たちの集団が36人、名古屋市南東部の福祉施設の利用者や利用者と接触するなどした人たちの集団が45人だということです。また、そのほかの感染者は2人の中国人旅行者も含めて15人だとしています。
大村知事は、スポーツクラブの利用者などの集団での感染拡大は抑えられつつあるという見方を示す一方、福祉施設の利用者などの集団では拡大が続いているとして、「名古屋市が高齢者福祉施設に休業を要請しており、対応をサポートしたい。感染が確認された場合、医療機関のあっせんをしっかり行いたい」と述べました。また、県内の感染者の多くは2つの集団の人たちだとして、「感染が愛知県全域に広がっている感じはしていない。それは事実だと思う」と述べました。さらに、県内の医療機関の感染者の受け入れ態勢について、「名古屋市内の医療機関が、ひっ迫しているのは事実だが、県内の医療機関に協力を要請しており、当面は対応できると考えている」と述べました。 
●名古屋のクラスター、36人と45人 新型コロナ感染  3/11 
新型コロナウイルスの感染拡大を巡り、名古屋市で感染が確認された2つの集団(クラスター)について、愛知県の大村秀章知事は11日、感染者数がそれぞれ10日夜の時点で36人と45人に上ると明らかにした。県によると、1つ目は米ハワイ帰りの60代女性から、スポーツジムなどを経由して感染が拡大。もう一つは同市緑区の病院に入院した患者に端を発して、通所介護(デイサービス)事業所で広がり、市が6日に緑区と、隣接する南区の計126施設に2週間の休業を要請した。
大村知事は1つ目のクラスターについて、ほぼ拡大が止まっている状態とする一方で、もう一つのクラスターに関し「高齢者施設を中心に利用者が多かったため、施設で広がっている」との見方を示した。県は厚生労働省の「クラスター対策班」からアドバイスを受けながら、市や民間の医療機関などと協力して検査態勢を強化するなど対策を進める。 
●パンデミックを乗り切るなら清潔な日本 3/11  
COVID-19が安倍首相肝いりのプロジェクトを台無しにする恐れがある。
パンデミックを乗り切るために滞在する国を一つ選ばなければならなくなったら、筆者は間違いなく日本を選ぶ。
入浴の様子を描いた19世紀初めの木版画が物語っているように、日本人は昔から、清潔であることを称賛に値するほど重んじてきた。現代の日本人も長年、ちょっと鼻をすすっただけで、すぐにマスクをつけていた。周囲に迷惑がかからないようにとの配慮からだ。さらに、国民は公的機関などからの呼びかけに素早く反応する。
1月半ばから説かれている新型コロナウイルス感染症「COVID-19」対策では、こまめに手を洗うことが強調されている。手洗いは、ウイルス拡散のスピードを遅くすることに間違いなく貢献している。3月4日時点で日本の感染者数が1035人で死者が12人にとどまっていること、しかもその大半が横浜港に数週間停泊していたクルーズ船に関連していることを考えれば、特にそうだ。驚くべきプラスの副作用がすでに明らかになっている。
医師からの報告によれば、日本では欧米と異なり、普通のインフルエンザの患者数が急減している。過去数年との比較だけでなく、この冬の前半と比べても減っているという。日本でのインフルエンザによる死者が2018年には3300人だったことを考えれば、ここ数カ月間で熱心に説かれた予防策は、COVID-19の犠牲者をはるかに上回る数の命を救ってきたのかもしれない。だがそれでも、ここ数日は社会のストレスが表出している。東京では、マスクを手に入れようと薬局にやってきた買い物客の行列で小競り合いが生じた。トイレットペーパーのパニック買いが各地で始まり、店の棚が空になった。
公衆トイレのトイレットペーパーに自転車用の盗難防止チェーンが巻かれている写真まで広まった。ゴールディングの『蠅の王』には遠く及ばないものの、日本のように行儀の良い国では非常に異例な現象だ。その原因は、普段は主張がはっきりしている安倍晋三首相の政府に対する疑念がわき起こったことに求められる。そもそも、首相の問題は前述のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から始まったようだ。乗客乗員3700人の中にCOVID-19の感染者(いずれも海外で感染)がいることが分かった時に取られた隔離策はお粗末だった。
ある乗客が表現したように、この船は海に浮かぶペトリ皿だった。船内では、感染者数が700人を超え、7人の死者を出すことになった。さらに驚くべきことに、乗組員はウイルスに感染した船からの上陸を認められた際に特に隔離されず、日本人の乗客は公共交通機関で帰宅することが許された。間違いだらけの危機管理と言えば、日本には前科がある。1995年の阪神淡路大震災の時には、政府の支援の手が届くのがあまりに遅かったため、ヤクザが炊き出しを行ったほどだ。
ダイヤモンド・プリンセスへの対応においても官僚組織は混乱していた。自国民の乗客がいる欧州諸国の大使は、日本政府の誰と連絡を取ればよいのか分からないとこぼしていた。危機の間に姿が見えなかった安倍氏については、腕が落ちたのではないかと訝る声がファンの間から漏れた。それまでびくともしなかった内閣支持率は急落した。コロナウイルスだけでなく自分の評判へのダメージも封じ込めようと、安倍氏は2月27日、指導力を発揮し、すべての学校に対して4月まで休校するよう求めた。また3月初旬には、最悪の事態に備え、政府が非常事態宣言を出すことを可能にする法案作成にも着手した。緊急支援策も打ち出している。
攻めの姿勢の安倍首相が帰ってきた。おかげで今度は、休校要請の決断に際して専門家からどんな助言を受けたのか、そもそも助言を受けたのか、といった疑問が次々に浮上している。新たなストレスも表に出てくるに違いない。特に、昼間働いているのにこれから数週間にわたって子供の世話をしなければならなくなった母親たち(父親たちではないようだ)は大変だ。
ある母親は「子供を育てるとはどういうことか、政府は分かっていない」と不満を述べている。日本政府は、4月には国内が正常化するとしている。その見込みは薄いように思える。中国の習近平国家主席を国賓として招く計画は、傾きかけた日中関係を元に戻してくれるはずだったものの、すでに延期が決まっている。これについては、安倍氏が被る政治的コストはほとんどない。そもそも、安倍氏を権力の座に押し上げたナショナリストたちは、中国の独裁者を招請することに不満を漏らしていた。
もっと利害が大きいのは、この夏に開催予定の東京オリンピックの方だ。安倍氏は、嘆かわしいことに普通の日本人には愛国心が足りないので、このイベントを機に養ってもらいたいと思っている。また、オリンピックのおかげで日本が開放的でグローバル、かつ多文化の国に見えるようになってほしいとも考えている。さらに、オリンピックは関連の費用が予算を大幅に超過しているとはいえ、首相を7年あまり務めて勇退する際の花道にもなる。
この大会をキャンセルすることになれば、日本の一般市民はがっかりするだけでなく、負担しなければならなかった費用が無駄になることへの怒りも覚えるだろう。しかし、もしパンデミックになれば、その決定権は安倍氏の手から取り上げられる。何といってもオリンピック選手村が「陸上のクルーズ船」になってしまうからだ、と上智大学の中野晃一教授は指摘する。オリンピックは少なくとも延期になると思っておいた方がいいだろう。そして首相の人気の回復もかなり先にずれこむと見てよさそうだ。 
●イタリア 外出禁止...全土で移動制限 3/11 
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、イタリア全域で10日、人の移動を制限する異例の措置が始まった。一時的とはいえ、全国民の日常生活に大きな影響を与え、社会の混乱は避けられない。
コンテ首相は9日深夜、移動制限措置を発表した記者会見で、「より厳しい基準を受け入れ、皆で一体となって取り組まねばならない」と述べ、強い決意を表明した。イタリア政府によると、4月3日まで、健康上や仕事上の必要性がある場合を除いて、外出が禁止され、理由なく外出すれば罰金の対象となる。警官が路上で外出の理由を尋ねることもあるという。イタリアでは2月21日に北部ロンバルディア州で、中国への直近の渡航歴がない患者への感染が確認されて以降、周辺地域に感染が急拡大した。
政府は8日、全人口の約4分の1にあたる約1670万人が暮らす北イタリア一帯を「隔離地域」に指定し、地域内の住民に対して移動制限措置を講じていた。だが、隔離地域から南部に逃れたり、外出を控えない住民が多かったりしたため、対象を全国に拡大した。移動制限の拡大と同時に、ほかの措置の対象も全国一律となった。飲食店は対人距離を1メートル以上保った上での営業のみ認められ、午後6時で閉店する。スポーツ施設は閉鎖され、スポーツイベントの多くは延期される。学校の休校の期限も、当初の3月15日から4月3日までに延長された。
イタリア移動制限 現地の日本人は戸惑い 3/11
イタリアでは10日から、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、全国的な移動制限措置が開始された。こうした中、現地に住む日本人からは戸惑いの声が上がっている。
移動制限措置は、仕事や病院に行くなど必要に迫られる場合を除き、自宅にとどまることを求めるもので、来月3日まで続く。学校が閉鎖されたほか、スポーツの試合など人が集まるイベントも禁止された。こうした中、現地に住む日本人からは戸惑いの声が上がっている。
ミラノ在住7年の女性「できるだけ外に出る機会をつくらないようにしています。先が見えない不安というのはありますね」 ローマ在住18年の女性「ゴーストタウンみたいになっていますね。(こういう光景は)初めてです。まるで恐怖映画の中みたいです」また、ローマ市内の商店では、客同士が接触を避けるため、1メートル程度距離をとって並ぶ光景も見られた。
日本時間11日未明、イタリア政府は、感染者が約1000人増え、初めて1万人を突破したとした。感染拡大は収まる気配をみせていない。
イタリア人、隣国スロベニアで普段通り買い物 移動制限の一方で 3/11
欧州における新型コロナウイルスの流行中心地となっているイタリアと国境を接するスロベニアは10日、イタリアからの入国を厳しく制限すると発表した。一方で同日には、まだ規制がかけられていない出入り可能なスロベニア国境を越えて、普段通りに買い物をするイタリア人の姿も見られた。
これを受けてオーストリアとスロベニアは10日、隣国イタリアからの入国を厳しく制限する意向を明らかにした。イタリア北東部トリエステ(Trieste)市の周辺住民は、国境を越えたスロベニアでより安価なガソリンを補充したり買い物をしたりすることが多い。イタリア政府の命令によると、移動は「緊急かつ検証可能な労働状況や、緊急事態や健康上の理由」によるもののみ認められるという。しかし、トリエステから20キロ以内にあるスロベニア・セジャーナ(Sezana)郊外の商業施設では、駐車場で確認した車のうち半数にイタリアのナンバープレートが付いていた。また、国境規制はなく、イタリア・スロベニア間を車で自由に出入りすることができた。
スロベニアは9日、国境での検診を導入し、12日から一部の国境検問所を閉鎖すると発表した。10日には一部の国々と同様、イタリアなどの新型コロナウイルス流行地域からの航空便を一時停止した。アルプス山脈の麓にあるスロベニアは人口約200万人。これまでに32人の感染が報告されており、その半数以上はイタリアと直接的な関連があった。多くのイタリア人がスロベニアにあるカジノを訪れているが、スロベニアの大手カジノ・チェーン「ヒット(Hit)」は10日、予防措置として今月20日まで同社のカジノ店舗を休業とすると発表した。 
●新型コロナウイルスが火をつけた米中メディア戦争 3/11 
中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症が、米国と中国の間にニュースメディアをめぐる熾烈な戦いをもたらした。
まず、米国メディアの記者を追放するという強制手段に踏み切ったのは中国である。続いて米国側も、在米の中国メディア要員を大幅に削減する強硬措置を打ち出した。その過程でトランプ政権は、中国の「ニュースメディア」の実態は政府の政治活動機関であって報道機関ではない、とする厳しい判断をさらに強化するようになった。
中国政府は2月19日、中国に駐在する米国大手紙ウォール・ストリート・ジャーナルの米人記者ら3人を国外に追放するという決定を発表した。中国外務省の報道官はこの決定の理由として、「ウォール・ストリート・ジャーナルが2月3日掲載の記事で中国を侮辱する表現を使った」ことを挙げた。2月3日の同コラム記事は、米国の政治学者ウォルター・ラッセル・ミード氏によって執筆された。武漢で発生した新型コロナウイルス感染症を習近平政権が隠蔽したことが爆発的な感染の原因になったとして中国を批判する記事だった。記事の見出しは「中国はアジアの真の病人(sick man)だ」となっていた。
中国の外務省報道官は、この「病人」という言葉が侮辱的だと言明し、その報復措置としてウォール・ストリート・ジャーナルの中国駐在記者3人を追放したことを明らかにした。
実は、中国側のこの対米報復措置の背景には、もう1つの大きな要因があった。2月18日に米国務省が「中国の主要メディア5社をメディアとは見なさない」とする新たな規制措置を発表していたのだ。その5社とは中国の国営の新華社通信社、中国グローバル・テレビ・ネットワーク(CGTN)、中国ラジオ・インターナショナル、英字紙のチャイナ・デーリー、中国共産党の機関誌の人民日報だった。米国務省は、これら中国の機関は、報道を目的とするニュースメディアではなく、実質的に中国政府の政治活動を実行する政府機関であり、米国内での外国政府機関の政治活動を監視する「1982年外国任務法」を適用すると言明した。米国務省によると、これらの中国「メディア」は、実際には中国政府のための政治宣伝や対外影響力工作、政治情報の収集、スパイ活動などに関わっている。今後は外国任務法に基づく「外国代理人」として、活動内容や要員名などを米司法省に定期的に申告することを義務づけられるという。
中国政府はこの措置に怒り、抗議した。だが米国は方針を変えなかった。その背後には、中国駐在の米国報道機関の記者たちが中国政府から厳しく監視され行動の規制をかけられているという現実があった。米側は相互主義を求めると主張していた。中国政府が、新型コロナ報道を理由としてウォール・ストリート・ジャーナル紙記者3人を追放したのは、この米側の措置への報復としての意味もあったと見られる。中国政府が米紙記者3人の追放を決定すると、今度は、トランプ政権がさらに報復に出る。3月2日、国務省は前述の新華社通信など5社所属の中国人要員を現在の合計160人から100人にまで減らすことを命令した。しかもその60人の削減は3月12日までに終えることを求めていた。事実上、60人を米国から追放することに等しい措置だった。
中国はこの措置に再び抗議するとともに、「中国は、さらに対抗措置を取る権利を留保しておく」と宣言した。この状況はまさに中国と米国とのメディアをめぐる報復合戦だといえる。
報復合戦は今後ますますエスカレートする様相を呈している。米国ではさらに連邦議会でも共和、民主両党の議員たちから、中国ニュースメディアの組織の実態や米国内での活動の実態を明らかにせよという声が出始めた。新華社通信などと契約をしている米AP通信などのメディアに対して、契約内容の公表を求める議員たちも出てきている。
日本では、新華社通信や人民日報、さらにはCGTNの母体である中国中央テレビ(CCTV)などと提携して記事や映像の提供を受けるメディアも多数存在する。そうしたメディアは、米国の「中国のメディアをメディアとはみなさない」という厳しい姿勢を認識し、参考にするべきだろう。米中間のメディアをめぐる激突は、コロナウイルスの拡散によってさらに燃え上がる見通しが強いのである。 
 
 
 

 

●米国、新型コロナ感染者数 950人超 NY一部地域を閉鎖 3/11 
米国で新型コロナウイルスの感染拡大が加速している。米ジョンズ・ホプキンス大学によると10日午後6時(米東部時間)時点で米国の感染者数は959人、死者数は28人となった。ニューヨーク州は感染者の増加が著しい一部地域の学校や教会を閉鎖すると発表。ハーバード大学はオンライン講義への移行を決めるなど、学校封鎖の動きも強まっている。
ニューヨーク州は10日、ウェストチェスター郡ニューロシェルの感染者が多く発生した場所から半径1マイル(1.6キロメートル)を「封鎖ゾーン」として、ゾーン内の学校や教会、集会場所などを12日から2週間閉鎖すると発表した。国家警備隊が食料配達を支援し、同地域の消毒などを行う。大人数の集会を制限するもので、ゾーン内に住む人の行動は制限しない。
ニューヨーク州のクオモ知事は10日の記者会見で、同州の感染者数は31人増えて173人となったと発表した。その半数以上がニューロシェルのあるウェストチェスター郡であるため「米国における最も大きい『クラスター(小規模な感染集団)』のケースだ」と述べた。
感染拡大をうけて、大学の閉鎖も相次ぐ。ハーバード大学は10日、新型コロナの感染拡大を防ぐため春休み明けはオンライン講義に移行すると発表した。9日にはコロンビア大学がオンライン講義に移行するために、9〜10日の講義の中止を発表するなど、主要大学で対応が広がっている。アイビーリーグはバスケットボールのトーナメント大会の中止も決めた。
国連は10日、新型コロナウイルスの感染拡大の懸念で、観光客向けツアーの停止を発表した。グテレス事務総長の報道官が明らかにした。再開時期は未定。ツアーは週末以外は毎日実施され、国連には毎年約100万人の観光客が訪れていた。国連によると、現時点ではニューヨーク本部の職員が感染したケースはない。 
●米国株式市場ダウ急反発1167ドル高 景気対策期待で 3/11 
米国株式市場は急反発し、前日に2000ドルを超える下げを記録したダウ平均株価はこの日1167ドル高で取引を終えた。政府による景気刺激策への期待から安値拾いの買いが入った。前日に2008年の金融危機以来となる大幅な下げを記録した主要3株価指数は、いずれも約5%上昇。ただ、S&P総合500種とナスダック総合は2月19日に付けた終値ベースの過去最高値をなお約15%下回っている。高値からの下落率が20%を超えると弱気相場入りが確認される。
トランプ米大統領は9日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ホワイトハウスが景気を下支えするため、給与税の引き下げなどの措置を議会共和党と10日に協議すると明らかにした。
ホライゾン・インベストメント・サービシズのチャック・カールソン最高経営責任者(CEO)は「前日の急落を受け、短期的な押し目買いが入ったほか、財政刺激策への期待がある」と指摘。「最大の恩恵は実際に何が行われるかではなく、計画があるように見えることだ。何かを行うという意欲が見られ、これがおそらく市場の支援材料になった」と述べた。
前日に1991年の湾岸戦争以来となる大幅な下落率を記録した原油価格が反発したことを受け、エネルギー株も前日の記録的な下げから回復し、5.0%上昇。
S&P主要11セクター全てが上昇。情報技術が上げを主導した。
米債利回りが過去最低水準から切り返したことで、前日に10年超ぶりの下げとなっていた金融株も6.0%上昇した。
米宅配便大手ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)は6.5%高。スタイフェルが投資判断を「バイ」に引き上げた。アマゾンもコーウェンの目標株価引き上げを受け5.1%上昇した。シェブロンとマラソン・オイルはそれぞれ5.3%、21.2%上昇。原油価格の急落を受け、大手米石油会社の間で設備投資を削減する動きが相次いだ。
ニューヨーク証券取引所では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を2.61対1の比率で上回った。ナスダックでは2.06対1で値上がり銘柄数が多かった。米取引所の合算出来高は158億1000万株と、直近20営業日の平均115億2000万株を上回った。 
●米航空大手、新型コロナで減便拡大 太平洋路線など 3/11 
新型コロナウイルスの流行を受け、米航空大手が国際便や国内便を減らす動きが拡大している。デルタ航空やアメリカン航空はアジア太平洋地域の路線などを大幅に減らす。感染者のいる地域が世界に広がったことで旅行を控える動きが加速し、需要が大きく落ち込んでいるためだ。従業員に任意の無給休暇を募るなど各社の雇用にも影響が出ている。
デルタは10日、現時点で太平洋路線を中心に国際線を20〜25%、国内線を10〜15%削減していると明らかにした。新型コロナによる悪影響が読み切れないとして、2020年通期の業績予想も撤回した。エド・バスティアン最高経営責任者(CEO)は「ネット予約が25〜30%減り、今後さらに減少する可能性がある」と述べた。
アメリカンは新型コロナの影響は長引くとして、夏季休暇の需要がピークに達する時期に国際線を10%減らす予定だ。特にアジア地域への旅行者が落ち込むと見込み、太平洋路線を55%減らす。イタリアやスペインなど欧州便も削減する。新型コロナの発生源とされる中国への直行便は10月まで運休を続ける。ユナイテッド航空は4月の国際便を20%、国内便を10%減らす方針を打ち出した。
業績への影響は必至だ。国際航空運送協会(IATA)によると北米地域の旅客収入は20年、211億ドルの減収になる見通し。直近の原油安の恩恵を受けて燃料コストは減るが、減便による全体の業績への下押し影響をどの程度相殺できるかは不透明だ。従業員への影響も表面化してきた。デルタは新規雇用を中止し、任意の無給休暇を提供する。サウスウエスト航空も給与を10%カットすると明らかにした。リストラは「最終手段だ」(ギャリー・ケリーCEO)という。ユナイテッドのオスカー・ムニョスCEOとスコット・カービー社長は少なくとも6月末まで基本給を辞退する方針だ。 
●新型コロナのデマが情報戦の「武器」になる 3/11 
新型コロナウイルスをめぐるデマや陰謀論の拡散が、国際情報戦の「武器」として、米国やロシア、中国、イランの間で激しい応酬が続いている。
米国務省は、新型コロナウイルスについて「ロシアが200万件の陰謀論を拡散」と指摘。さらに米国では、保守派議員などが「中国による生物兵器」との陰謀論を主張する。
一方で、イランの政府系メディア「プレスTV」は、「米国による生物兵器」との陰謀論を主張し、新型コロナウイルス対策が米国による経済制裁によって阻害されている、と米国批判を展開。
ロシアの政府系メディア「RT」も、「米国による生物兵器」との陰謀論を後押しする。
さらに中国の政府系メディア「グローバル・タイムズ」は、「中国の生物兵器」との陰謀論を否定するとともに、米中貿易摩擦などに絡めて、米国が新型コロナウイルスを政治利用しているなどと批判する。
これらの国際情報戦に加えて、詐欺や悪質商法などのデマも拡散を続ける。
メディアベンチャー「ニュースガード」の調べでは、すでに米欧で新型コロナウイルス関連のデマなどを流すサイトは117に上り、米国の70を超すサイトだけでも過去3カ月で5,200万を超すエンゲージメント(いいねや共有)を獲得しているという。
国家レベルの情報戦と詐欺・悪質商法が入り混じるデマ拡散について、元FBI捜査官で米シンクタンク「外交政策研究所(FPRI)」のクリント・ワッツ氏は、その危険度や緊急性に応じた対応の仕分けが必要だと指摘。
国際的な情報戦は、より長期的な影響が懸念されるが、詐欺や悪質便乗商法などのデマは、感染そのものにかかわる緊急性を要し、より早急な対策が求められるという。
新型コロナウイルスの国際的な感染拡大は、デマの国際的な拡大ももたらす。だがその対策には、時間軸を見据えた取り組みが必要になってきているようだ。
「200万件の陰謀論ツイート」
ロシアによる虚偽情報のエコシステムがフル稼働している。
米国務省でプロパガンダ対策を担うグローバル・エンゲージメント・センターのコーディネーター、リー・ガブリエル氏は、5日に行われた上院外交委員会の小委員会で証言に立ち、新型コロナウイルスをめぐってこう述べた。
米FOXニュース出身のガブリエル氏は、さらにこうも指摘している。
我々はこれまで、世界中の人々が恐怖を感じる健康危機に乗じて、敵対する国々が勢力拡大をもくろむのを目にしてきた。新型コロナウイルスはその一例にすぎない。
同センターは、これに先立って、今回の新型コロナウイルスをめぐるデマや陰謀論についての報告書をまとめている。
仏AFP通信や米ワシントン・ポストによると、同センターは、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言(1月30日)を出した前後3週間(1月20日〜2月10日)に米国外で投稿されたソーシャルメディアの書き込み2,900万件を分析した。
すると、全体の約7%にあたる200万件が、新型コロナウイルスに関するデマや陰謀論を扱っていた、という。
これらは、シリア内戦、フランスでの政府への抗議デモ「黄色いベスト」運動、チリでの大規模な反政府デモなどに絡んで、ロシアの主張を拡散させてきた数千のアカウントが、今回の新型コロナウイルスに関して投稿を行っているのだという。
これらの投稿は、英語、スペイン語、イタリア語、ドイツ語、フランス語でほぼ同じタイミングで行われ、ロシアのダミーサイトへのリンクや、ロシアの政府系メディア「RT」「スプートニク・ニュース」と同じような論調の内容だったという。
デマや陰謀論の中には「米国が中国を標的にした生物兵器」「ビル・ゲイツ氏の財団が利益を得ている」などの内容も含まれていた。
新型コロナウイルスに関するデマの排除に取り組むフェイスブックやツイッターは、国務省の報告書について、その具体的なデータ提供を求めている。
だが同省は、今のところ開示をしないという姿勢を崩しておらず、米国務省の主張を裏付ける詳細は不明なままだという。
米国では新型コロナウイルスの感染拡大の一方で、米大統領選の予備選挙も進行中だ。そして、2016年の前回大統領選と同様に、ロシアによる選挙介入への警戒感もある。
14州で予備選挙が行われた候補者選びの山場「スーパーチューズデー」の前日の3月2日には、国務省、司法省、国防総省、国土安全保障省、国家情報長官室、連邦捜査局(FBI)、国家安全保障局(NSA)、サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)は連名で、「我々は警戒態勢を継続し、2020年大統領選を妨害するいかなる試みにも対応する用意ができている」との共同声明を発表している。
これに先立ち、米情報機関の観測として、ロシアが今回の大統領選では現職のトランプ氏に加え、民主党では左派のバーニー・サンダース氏を後押しする動きがある、とも相次いで報じられている。
新型コロナウイルスと大統領選。米国はこの二つの情報戦に直面している。
ロシア、イラン、中国の情報戦
新型コロナウイルスのデマをめぐって、米国の矛先はロシア、そして中国に向いている。
一方で、批判を向けられたロシア、中国、さらに米国の経済制裁下にあるイランは、新型コロナウイルスをめぐる混乱の“元凶”として、米国を名指ししている。
米シンクタンク「外交政策研究所」のプロジェクトマネージャー、レイチェル・チェルナスキー氏は、これらの国々が政府系のメディアを通じ、米国が新型コロナウイルスを政治的に利用し、ウイルスの感染拡大を悪化させた、との主張を展開しているという。
チェルナスキー氏によると、新型コロナウイルスについて「米国による生物兵器」などの陰謀論を主に展開しているのは、ロシアよりもむしろ、米国による経済制裁を受けているイランなのだという。
イランの政府系メディア「プレスTV」は、新型コロナウイルスが「中国向けの生物兵器」で、米国のユダヤ人グループやイスラエルが「より致死的なウイルスをイラン向け生物兵器として投入した」、などとしている。
さらに、米国による経済制裁がイランの新型コロナウイルス対策の障害になっている、などの米国批判もあわせて行っている、という。
ロシアの政府系メディア「RT」は、イランが発信源となっている「生物兵器」などの陰謀論を、さらに拡散する役割を担っている、とチェルナスキー氏は見立てている。
チェルナスキー氏によると、中国は、イラン、ロシアとはややメッセージのトーンが異なるという。新型コロナウイルスの感染源であり、その情報開示や対応をめぐる批判が集中してきた中国は、自国に対するネガティブイメージの払しょくに重きを置いているようだ。
そのため、政府系メディアの「グローバル・タイムズ」は、新型コロナウイルスの「中国の生物兵器」陰謀論の否定のほかには、中国の監視体制や閉鎖性に対する批判への反論などを主に展開している、という。特に対米関係では、貿易摩擦と絡めて、米国が新型コロナウイルスを政治利用しようとしている、などの主張を行っている、とチェルナスキー氏は指摘する。
デマ・陰謀論の発信サイト
新型コロナウイルスをめぐるデマや陰謀論を発信する、様々なウェブサイトも特定されつつある。
サイトの信頼度を判定する米メディアベンチャー「ニュースガード」は、2月25日に新型コロナウイルスに関するデマ・陰謀論を発信するサイトの追跡プロジェクトを開始。
1週間後の3月3日には、米国に加え、英国、フランス、イタリア、ドイツの5カ国で106のサイトを特定した。10日現在で、その数はさらに増え、117サイトに上る。
3日の段階で、このうち米国の75サイトの直近90日間のエンゲージメントを調べたところ、合計で5,200万件にのぼったという。
一方で、米国保健福祉省傘下で感染症対策を担う疾病予防管理センター(CDC)と世界保健機関(WHO)のサイトの同じ90日間のエンゲージメントは合わせて36万件だった。
「ニュースガード」が特定したサイトの中には、イラン政府系の「プレスTV」や、ロシア政府系の「スプートニク・ニュース」の仏伊独語版、「RT」の独語版といったものも含まれる。
その一方で、健康に関する陰謀論などを発信する右派サイト「ナチュラルニュース」もある。同サイトは54ものサイトによるネットワークをつくっており、その数は「ニュースガード」が特定した米国サイトの7割を占める。
同サイトは陰謀論の発信とともに、サプリメントなどのネット販売などで知られ、2019年6月にはフェイスブックからスパム認定による削除措置を受けている。
米国内ではこのほか、やはり陰謀論とサプリメント販売で知られる右派サイト「インフォウォーズ」なども、「ニュースガード」のリストに含まれている。
「インフォウォーズ」はまた、フェイスブックやツイッターによる削除措置の対象とされてきた。同サイトは、2016年の米大統領選をめぐって発砲事件にまで発展した陰謀論「ピザゲート」の発信源の一つでもあった。
新型コロナウイルスをめぐるデマ、陰謀論には、政府間の情報戦からネットの物販まで、様々なプレーヤーが入り混じっていることがわかる。
デマの危険度と仕分け
「外交政策研究所」の特別研究フェロー、クリント・ワッツ氏は、デマや陰謀論の発信者は多様であり、その危険度、緊急度の違いを理解し、すぐに対処すべきもの、長期的に対応すべきものを仕分けていくことが必要だと述べる。
ワッツ氏は米陸軍、FBIでテロ対策に携わり、2016年の米大統領選直後には、ロシアのフェイクニュースによるプロパガンダ戦略をまとめた報告書を発表。2019年6月に下院情報特別委員会で開かれた「ディープフェイクス」問題をめぐる公聴会でも証言をしている。
ワッツ氏は、今回の新型コロナウイルスをめぐる、喫緊の脅威となるデマや陰謀論として、三つのタイプを挙げる。
・公共の安全への脅威(パニック扇動、疑似科学の流布、偽の治療薬などの販売)
・金融市場への影響(取り付け騒ぎの誘発、市場操作によるパニック発生)
・人種差別の先鋭化(アジア人へのヘイト・挑発・暴力、感染国の市民への暴力や反対運動)
特に、直近の影響が最も大きいデマ・陰謀論の発信元として、偽の治療薬販売や広告収入を狙う詐欺商法を挙げる。その一方で、国家レベルの情報戦については、継続的で長期的な脅威と位置付けている。
実際に、「ナチュラルニュース」や「インフォウォーズ」のほかに、米食品医療品局(FDA)が「深刻で命にかかわる可能性の副作用がある」と以前から指摘する「MMS」と呼ばれる偽の“万能薬”の宣伝が、新型コロナウイルスに絡んでネット上に出回っていた。
死者が出る事態も起きている。
USAトゥデイなどによると、イランでは、新型コロナウイルス対策だとして密造の中毒を引き起こすアルコール(メタノール)を飲んだことが原因で、10日までに少なくとも44人が死亡した、という。
同国では飲酒が禁止されているが、アルコールを飲むことで新型コロナウイルスの予防や治療に役立つとのデマが流れていたという。
「ウイルス予防商品」への注意
日本でも消費者庁が3月10日、新型コロナウイルスへの予防効果を標ぼうする商品について、商品表示の改善要望と消費者への注意喚起を発表している。
「新型コロナウイルス 感染予防サプリメント!! ビタミンCとビタミンD」「コロナウイルス対策サプリ、ウイルス感染症の予防、症状軽減にはビタミンC、ビタミンD、亜鉛、マグネシウム、セレンの摂取が重要」「世界的にコロナウイルスは猛威、ウイルス予防に梅肉エキス」などのうたい文句の“いわゆる健康食品”23事業者40商品。
さらに、マイナスイオン発生器・イオン空気清浄機(4事業者3商品)、空間除菌剤(3事業者3商品)も含まれる。
同庁のリリースはこう述べている。
新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうするウイルス予防商品については、現段階においては客観性及び合理性を欠くものであると考えられ、一般消費者の商品選択に著しく誤認を与えるものとして、景品表示法(優良誤認表示)及び健康増進法(食品の虚偽・誇大表示)の規定に違反するおそれが高いものと考えられます。
発表では、具体的な業者名、商品名は明らかにされていない。
デマや陰謀論との関連は不明だが、このような根拠のない「ウイルス予防商品」もまた、それらの脅威と地続きの身近な問題だ。  
●コロナが終息しても市場は元に戻らない?「世界経済の逆回転」が始まるのか 3/11 
新型コロナウイルスの感染拡大による金融市場の混乱が続いている。感染症が拡大すると世界経済に影響が及ぶので、市場がある程度、動揺するのは予想されていたことではある。しかしながら、今回は、米国の景気後退が取り沙汰されるタイミングであったことから、一部の市場関係者はコロナウイルスによるショックが、リセッション入りのきっかけとなることを危惧している。
前代未聞の市場の動き
2020年2月24日のニューヨーク株式市場はダウ平均株価が1,000ドルを超える下げ幅となり、翌25日の東京株式市場も日経平均株価が一時1,000円以上、下落する騒ぎになった。3月9日にも原油価格の暴落をきっかけにダウが2,000ドルも値を下げるなど市場の混乱が続いている。こうした事態を受けて米国の長期金利は急低下。3月9日の段階で0.5%割れという異常事態になっている。2002年末から2003年春にかけてSARS(重症急性呼吸器症候群)の感染拡大で各国の市場が混乱するという出来事があったが、この時は、香港株式市場のハンセン指数が年明け以降、最大で約14%下落、ダウ平均株価は16%下落、日経平均株価は14%下落した。この下落幅は感染が拡大してから終息するまでの全期間を通じたものだが、今回、ダウ平均株価はすでに最大で約19%、日経平均は22%も下がっているので、SARSの時よりも市場のショックは大きい。
ウイルスの拡大で世界経済の混乱が予想され、株価が下がるのはある程度、織り込み済みだが、今回は少し気になる兆候が見られた。実は株価が大幅に下落する1週間ほど前から、為替市場と金先物市場が大きく動いていたのである。2月18日以降、外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが活発となり、1ドル=109円台だったドル円相場は一時、1ドル=112円を突破するまでに急騰した。その後、一転してドルは売られ、3月9日には一時、1ドル=101円台まで円が上昇した。まさに乱高下だが、1ドル=112円台を突破したのは2019年4月以来、10カ月ぶり、逆に101円台を付けたのは2016年11月以来、3年4カ月ぶりのことである。ほぼ同じタイミングで金価格も急上昇しており、1オンス=1,500円台だったニューヨークの金先物相場は一時、1オンス=1,700ドルに迫る水準まで上昇している。
今回の為替市場や金先物市場の動きは関係者を少々驚かせた。近年、世界経済に対する不安が高まると安全資産である円が買われるというステレオタイプな見方が一般的となっており、景気見通しが悪化すると円が買われるパターンが多かった。現実には安全資産として円が買われているのではなく、米国でのポジションを縮小した日本の機関投資家が資金を日本円に戻していることが原因だが、今回はこのパターンが大きく崩れ、一気にドル高が進んだ。円高を見越していた投機筋の見通しが外れ、ドルを買い戻したことが急激な円安の原因といわれており、その後は、急激に円高に戻している。だが、不景気=円高という従来の図式が成立しなくなったという点では、やはり大きな変化といって良いだろう。
金とビットコインはさらに市場を先読みしていた
金も同じである。金とドルは表裏一体の関係にあり、一般的に米国の景気が良好な時は、金は売られる傾向が強かった。だが、ここ最近は米国の景気が絶好調であるにもかかわらず金が買い進まれており、ウイルスの感染拡大をきっかけにさらに急騰している。実はビットコイン市場でも動きが出ていた。1BTC=7,000ドル台で低迷していたビットコインが年初から顕著に上がり始め、2月には9,000ドル台に上昇、一時は1万ドルを突破するなど活発な取引となった。その後、下落に転じているのも円や金と同じである。最初にビットコインに動きが見られ、それが金、為替市場に波及し、最終的に株式市場の下落につながったという流れだが、これは一体何を意味しているだろうか。
ビットコインや金先物の投資家はかなり先鋭的なので、コロナウイルスがもたらす影響をもっとも早い段階で察知したことは想像に難くない。だが為替市場でも円が売られるという異変があったことを考え合わせるとコロナウイルスだけが原因というわけではないだろう。今回の値動きの背景には、世界の投資家における共通の不安要素として台頭しつつある、米国経済のリセッション(景気後退)入りに対する懸念が存在すると考えるのが自然だろう。
単なるコロナショックか、それともリセッション入りの兆候か?
説明するまでもなく、リーマンショック以降、米国経済は順調に拡大しており、米国の旺盛な消費が世界経済を支えてきた。本来であれば景気後退に備え、FRB(連邦準備制度理事会)は金利を上げておくべきところだったが、足元の景気を最優先するトランプ米大統領による圧力に抗しきれず、景気が拡大しているにもかかわらず金利を下げてしまい、これが株価と債券価格の過剰な上昇を招いてきた。本来、景気が良く株価が上がっている場合には、金利は上昇している(債券価格は下落)はずだが、株価と同時に債券価格も上昇しており、万が一、株価が下落した時には資金の退避先がない状況となっている。今回のコロナショックによる下落で債券はさらに買われ、金利は一段と低下したが、これ以上、債券を買い進むことは現実的に難しく、投資家は途方に暮れている状況だ。
今のところコロナウイルスの感染が終息すれば、市場は元に戻ると考える市場関係者が多いが、今回の一連の値動きが、米国のリセッションの前触れだとすると話は変わってくる。それが本当なら、今回の下落をきっかけに、世界経済が逆回転を始めることを意味しており、米国の株価はさらに下落することになる。これ以上、債券に逃げることはできないので、どこかのタイミングで債券市場も総崩れとなり、株安、債券安のダブルパンチとなる可能性も十分に考えられる。日本円が売られ、ドルが買われていたという現実を考えると、円などに資金を退避させ続けることもできないので、再び大量の資金が金やビットコインといったオルタナティブな資産に殺到するかもしれない。現時点では、今回の下落がリセッション入りの引き金を引くとは断定できないが、そのリスクが高いことは多くの投資家にとって共通認識である。仮に株価が回復するにしても、しばらくの間、市場はピリピリした雰囲気が続くだろう。
日本の国債市場に波及した場合の影響は大きい
もし米国が本格的にリセッション入りした場合、日本の金融市場は重大な局面を迎えることになる。各国の株価の連動性は高まっているので、米国株が下落すれば当然、日本株も下落する。日本の製造業は米国市場で稼いでおり、米国の景気が足踏みすれば、いずれ業績に響いてくるので、これも株価下落の要因となる。 これまでは株価が下落して円が買われ、債券も買われるというシナリオだったが、今回はそうはいかないかもしれない。債券価格の下落が日本国債にも波及し、為替市場で円安が進んだ場合、日本の金融システムもすべてが逆回転を始めてしまう。
債券が下落すれば、金利が上昇するので、インフレ率も上昇する。日銀は必死で国債を買い支えるだろうが、もしその効果が十分ではなかった場合、日本は円安、債券安、物価上昇というスパイラルに入ってしまう。日本の財政政策は金利が低く推移し、物価が急上昇しないことを大前提としているが、それが崩れてしまうのだ。このスパイラルに入ってしまうと、日本にもはや打つ手はない。金利上昇から政府の利払い負担が増え、緊縮財政を余儀なくされるので、さらに景気が縮小するという悪循環になる。とにかくこのシナリオにならないことを願うばかりだが、最悪のケースを想定しておいて損はない。  

 
 
 

 

●コロナショック、ついに「メディア支出」にも影響が及ぶ 3/11 
グローバルな広告主たちが、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によるメディア支出の大混乱を収めるべく奔走している。プロクター・アンド・ギャンブル、ユニリーバ、Apple、マイクロソフト、ダノン、アンハイザー・ブッシュ・インベブ、バーバリー、アストンマーティンなど最大手の広告主が、この年の売上高予測を引き下げた。新型コロナウイルスは感染拡大の見通しが1日ごとに変化し、多くの企業が不確実性の循環にはまっている。こうなると決まっていたことが頓挫しがちで、広告費は引き上げやすい経費だ。ニューヨーク・タイムズは、新型コロナウイルスの影響により現四半期の広告売上が「10%台半ば」の減少になる見通しだと予告している。
広告不況につながりかねない
欧州インタラクティブ広告協議会(以下、IAB Europe)のチーフエコノミスト、ダニエル・クナップ氏は、「アウトブレイクによる大きな影響が出ている地域の数は少なく、グローバルな広告市場に対する新型コロナウイルスの影響はまだまだわからない」と語った。「しかし、広告の経済史を見れば、幸先がよい状況ではない」。経済協力開発機構(OECD)は3月2日、新型コロナウイルスの影響が拡大した場合、2020年は世界経済の成長率は、前年の2.9%からほぼ半分の1.5%に落ち込むおそれがあると表明。この予測は広告には「悪いニュース」だと、クナップ氏はいう。広告の成長はこの2年間、国内総生産(GDP)の後塵を拝してきた。世界経済の成長率が2%を下回ることになれば、広告市場は横ばいになるのだという。「広告不況につながりかねない経済成長の停滞になる可能性もある」と同氏は語った。
打撃は「需要」と「供給」の両方に
新型コロナウイルスによる経済的打撃は、経済の需要と供給の両方に及ぶという特徴がありそうだ。需要面では、移動が少なくなり、消費者はおそらく支出をためらうようになる。供給面では、製造業のサプライチェーンが混乱する。この両側面に対処できる選択肢はあまりなく、世界中の政策立案者が苦境に陥っているのだ。メディア予算を見直しているのは、これまでのところ、中国の製造業者と物流ネットワークに依存している企業が中心だ。消費財(CPG)や自動車のメーカーが、新型コロナウイルスで工場や輸送路の閉鎖に直面している。最終製品を供給できなければ、製品の需要喚起の正当化は難しくなる。アンハイザー・ブッシュ・インベブのCEO、カルロス・ブリトー氏は2月末の業績発表時に、「市場における消費者の購入動向に見られる変化に応じて、チームがリソースを使えるように、感染拡大から後、支出面でさまざまな取り組みを実施している」と、米DIGIDAYに語った。続けて一例として、中国ではすでに屋外メディアから、自宅に閉じ込められた買い物客のトラフィックが急増しているオンラインメディアに資金を移したと説明した。
メディアプランニングの見通し
こうした広告予算の見直しに備える動きが、すでにメディアオーナー側にもある。「不測の事態に対応したプランの実施を求めてきているのは、中国からの製造部品の調達に苦戦しているクライアント」だと、英国を拠点とするメディアエージェンシーのシニアプランナーが匿名を条件に米DIGIDAYに語った。このプランナーは、回復の初期兆候がある中国を注視している。移動が減り、製造が混乱し、小売販売が縮小し、さまざまな興行が中止されている状況下でほかのマーケターたちにメディア戦略をどのように適用するべきか、ヒントを探しているのだ。「こうしたプランは基本的に、アウトブレイクが拡大するなか、現在生きている前払い契約の数を減らそうとするクライアントには、後の一定の取り引きを約束してもらうことが中心になる」と、プランナーは語った。
デジタルメディアは意外に軽症
こうした見直しによって真っ先に変更されるのは、デジタルの予算であることが多い。マーケターはたいてい、メディアオーナーから引き上げた資金を、すべて戻して収益にすることを求められる。しかし、見直しは予算削減とは限らない。たとえば、北欧市場のあるメディア企業は、アウトブレイクの情報を提供したい政府のさまざまな衛生当局を中心に、サイトの広告の受注が減るどころか増えていると、あるデジタルディレクターが匿名を条件に明らかにした。決まっている広告投資の削減は、デジタルメディアよりも(数カ月前から予約されることが多い)テレビのほうが難しい傾向にある。そのような事前契約を撤回するのは、金銭的なペナルティを受け入れるとしても簡単ではない。広告主は、撤回ではなく、キャンペーンを延期して、あとで年内に広告を実施することが多い。その場合、メデイアオーナー側は広告投資が維持され、広告主側は罰金を回避できる。グループ・エム(GroupM)のビジネスインテリジェンス担当グローバルプレジデントのブライアン・ウィーザー氏は、「もちろん、削減を回避できれば、料金設定が有利になり、消費者の関心をめぐる競争が抑えられる可能性が高く、マーケティング担当者の仕事にはプラスになる」と語った。
経済復興のスピード次第
いまは、アウトブレイクの影響が明らかになってきているところであり、広告主側は様子見しかない状態にあるようだ。「テレビ予算の引き揚げを求めてきているクライアントはまだいないが、仮に求められたら、我々はやめるように説得する」と、グローバルなメディアエージェンシーのシニアテレビバイヤーが非公式に米DIGIDAYに教えてくれた。「そうした確約を反故にしようとすると、メディアオーナー側からさまざまな金銭的ペナルティを求められることになる」のだという。仮にアウトブレイクが3カ月を超えて続くようなことになると、不測の事態への対応プランをめぐる現状は逆転するかもしれない。2009年の広告不況の際に大打撃を受けたのは、ブランドマーケティング予算とそれに伴うテレビ予算だった。検索やその他のパフォーマンスチャネルは比較的、傷が浅かった。「新型コロナウイルスについて企業がわからないでいるのは、経済活動がどの程度持ち直すかだ。これは予測が難しい」と、ウィーザー氏はいう。新型コロナウイルスの市場への影響が1年〜1年半のサイクルを超えて長引くのか、それとも主要市場における消費習慣への影響がもっと短期間の限定的なものになるのかで、広告市場が受ける影響は大きく違ってくる」と、同氏は語った。 

 
 
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●新型ウイルス 国内感染者は計624人に(クルーズ船など除く)  3/12 
各地の自治体や厚生労働省によりますと12日、新たに4人の感染が発表され、午前10時半現在、日本で感染した人などは合わせて624人となっています。
このほかクルーズ船の乗客・乗員が696人、チャーター機で帰国した人が14人で合わせて1334人です。このうち死亡したのは、国内で感染した人が15人、クルーズ船の乗船者7人の合わせて22人です。
日本で感染した人や中国からの旅行者など624人のうち、北海道は118人、愛知県は104人、大阪府は80人、東京都は73人、神奈川県は46人、兵庫県は41人、千葉県は25人、京都府は15人、埼玉県は14人、和歌山県は14人、高知県は12人、新潟県は11人、奈良県は8人、石川県は7人、三重県は7人、熊本県は6人、長野県は3人、山口県は3人、福岡県は3人、沖縄県は3人、秋田県は2人、栃木県は2人、山梨県は2人、静岡県は2人、岐阜県は2人、愛媛県は2人、宮城県は1人、福島県は1人、群馬県は1人、滋賀県は1人、広島県は1人、徳島県は1人、大分県は1人、宮崎県は1人、厚生労働省の職員や検疫官、それに空港の検疫で感染が確認された人などが合わせて11人です。また厚生労働省によりますと、重症者は11日の時点で国内で感染した人などが26人、クルーズ船の乗船者が14人の合わせて40人となっています。
一方、国内で感染が確認された人のうち、11日までに症状が改善して退院した人などはクルーズ船の乗客・乗員を含めて合わせて475人となっています。 
●WHO「新型コロナウイルスはパンデミックといえる」  3/12 
世界各地で感染が拡大する新型コロナウイルスについて、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は、「新型コロナウイルスはパンデミックと言える」と述べて世界的な大流行になっているとの認識を示したうえで、各国に対して対策の強化を訴えました。これは、WHOのテドロス事務局長が11日、スイスのジュネーブの本部で開いた定例記者会見で述べたものです。
テドロス事務局長はこの中で、「過去の2週間で中国以外での感染者数は、13倍に増え、国の数は3倍になった。今後、数日、数週間後には感染者数と死者数、そして感染が確認された国の数は、さらに増えると予想する」と述べ、感染が今後も拡大するとの見通しを示しました。テドロス事務局長は「われわれは、感染の広がりと重大さ、そして対策が足りていないことに強い懸念を持っている」と述べたうえで、「新型コロナウイルスは『パンデミック』と言えると評価をした」と述べ、新型コロナウイルスは世界的な大流行になっているという認識を示しました。
WHOが過去にコロナウイルスの流行を「パンデミック」だと表現したことはなく、今回の新型コロナウイルスが初めてです。テドロス事務局長は「初めて『パンデミック』と呼ぶコロナウイルスであると同時に初めて封じ込めができるケースにもなりうる」と述べ、感染を封じ込めることは可能だとして、感染者の発見や隔離、そして治療を進めるよう呼びかけました。WHOとしては、世界各地で急速に感染が拡大するなか「パンデミック」という表現を使うことで各国に対して強い危機感を持って対策を強化するよう促すねらいがあるものと見られます。
冷静に対策を進める必要性訴える
一方でテドロス事務局長は「こうしたことがWHOによるウイルスの脅威に対する評価を変えるものではないし、WHOが行っている対策や、各国がとるべき対応を変えるものではない」と述べ、冷静に対策を進める必要性を訴えました。そのうえで、各国に対して、感染のリスクと予防方法を広く周知すること、感染者を発見して隔離し、治療するととともに、接触した人を追跡すること、医療体制を整え、医療従事者を感染から守ることなどを改めて呼びかけました。
イランの医療機器不足に懸念
記者会見で、WHO=世界保健機関の危機対応を統括するライアン氏は、感染が9000人に拡大したイランで人工呼吸器などの医療機器や医療用資材が不足する事態に懸念を示しました。そのうえで、ウイルスの感染を確認する検査キットをこの1日で4万セット、イランに提供するなどWHOとして医療現場への支援を続けていく姿勢を強調しました。
厚生労働省「感染拡大の防止に向け対策続ける」
WHO=世界保健機関が新型コロナウイルスについて世界的な大流行、パンデミックになっているという認識を示したことについて厚生労働省は「WHOは世界的に感染が広がっている状況を表現したもので、国内の感染について状況に変化が起きているということではない。専門家の意見を踏まえ、今後も感染拡大の防止に向けてしっかりと対策を続けていきたい」としています。
専門家「さらなる対策強化も考えていく必要ある」
WHOが「パンデミックといえる」という認識を示したことについて、感染症に詳しい東北大学の押谷仁教授は「ヨーロッパやアメリカなど先進国でも患者の数が増え、WHOとしてもパンデミックという表現を使って世界中に警戒を呼びかけざるをえないと判断したのだと思う。今後、世界各国で大きな流行が起きるおそれがあり、日本にもさまざまな国から感染者が入ってくることが想定される。状況を見ながら改めて水際対策に目を向けたり、海外に住んでいる日本人に帰国を呼びかけたりするなど対策をさらに強化することも考えていく必要がある」と話しています。
パンデミックとは
パンデミックは感染症の世界的な大流行を指すことばで、WHOでは2009年に当時の新型インフルエンザについてパンデミックの状態になったことを宣言して、各国に対して対策などを呼びかけました。今回の新型コロナウイルスを含むコロナウイルスについてはパンデミックを宣言する手続きは定められておらず、過去にWHOがパンデミックと表現したことはありませんでした。一方で、WHOはことし1月31日に新型コロナウイルスについて医療体制のぜい弱な国への感染拡大を懸念しているとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、各国に向けて警戒と対策強化を呼びかけています。
これまでの経緯
WHOはこれまでの会見で「パンデミック」について、「明確な定義はないが、病気が国から国に広がるのをもはや制御できない段階に達したことを指す」とか「地球上のすべての人がウイルスにさらされている状態」などと表現してきました。そのうえで、当初は、ウイルスを封じ込めようとしている段階にあり「パンデミック」という表現は有益ではないとして、各国に対策の強化を求めてきました。テドロス事務局長は今月2日の会見で「証拠に基づいて、感染の広がりを『パンデミック』だと表現することはためらわない」としながらも、「状況を客観的に見なければならない」と述べ、「パンデミック」という表現自体に慎重な姿勢を示してきました。
過去の「パンデミック」は
WHOは、新型インフルエンザが流行した2009年に世界的な大流行を意味する「パンデミック」を宣言しています。しかし、実際には新型インフルエンザは感染しても軽症で済む人も多く医療機関に大勢の人たちが押し寄せるなど社会的な混乱ももたらしました。こうしたことを教訓に、WHOは当時使っていた6段階の警戒レベルの基準を廃止し、2013年に新型インフルエンザを4段階で警戒する新たな基準を発表しましたが、あくまでインフルエンザを警戒する基準のため、今回の新型コロナウイルスではこの基準は使っていません。WHOが「パンデミック」という表現を使って特定のウイルスを警戒するのは2009年以来になりますが、コロナウイルスについて「パンデミック」と表現するのは今回が初めてです。
過去の「パンデミック」との違い
WHOの専門家によりますと2009年、新型インフルエンザについてWHOが当時使っていた6段階の警戒レベルで「パンデミック」を宣言したあと、各国は季節性のインフルエンザ用のワクチンの製造をパンデミックワクチンの製造に切り替え、封じ込めにあたりました。一方で、今回の新型コロナウイルスに対応するワクチンや治療法はまだ確立されておらず、「パンデミック」ということば自体も、すでに決められている基準に基づいて表現されたわけではありません。今回の「パンデミック」について危機対応を統括するライアン氏は「『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態』のように正式な手順をへて表現したものではない。テドロス事務局長がWHO内外の専門家の話を聞いたうえで現状を描写したものであり、より精力的に対策を講じるという以外、何かの引き金になるものではない」と述べ、WHOが「パンデミック」と表現したことで、各国が封じ込めを諦めるのではなく、対応をより強化することに力を尽くすべきだという考えを示しています。 
●過去2番目の下落幅 NY株式市場 ダウ平均株価 9日に次ぐ  3/12 
11日のニューヨーク株式市場は、新型コロナウイルスについてWHO=世界保健機関が世界的な大流行になっているとの認識を示したことを受け、大幅に値下がりし、ダウ平均株価の下落幅は、これまでで2番目となる1464ドルを記録しました。11日のニューヨーク株式市場ダウ平均株価の終値は、前の日に比べて、1464ドル94セント安い、2万3553ドル22セントでした。1464ドルの値下がり幅は今週月曜日の今月9日に次いで、過去2番目の大きさとなりました。
この日は、トランプ政権が発表した経済対策への失望から大きく値下がりして取り引きが始まりましたが、新型コロナウイルスについてWHOが世界的な大流行になっているとの認識を示したと伝わると、一段と下落幅が広がり、一時、1700ドル近くに達しました。新型コロナウイルスの感染拡大への懸念から、ニューヨーク株式市場は、先々週の大幅な下落のあと、記録的な乱高下が続いています。市場関係者は「アメリカ国内でも、感染者数が連日大幅に増えているほか、アメリカの大手金融グループがさらに大幅な株価下落を予想したこともあって、投資家心理を冷やしている」と話しています。
記録的な乱高下を続けているニューヨーク株式市場のダウ平均株価の下落率は、先月12日につけた最高値に比べて、20%を超えました。ことし初めにかけて、上昇基調だったニューヨーク株式市場のダウ平均株価は、先月12日に最高値となる2万9551ドル42セントをつけました。しかし、その後、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、市場は一変し、先月24日の大幅下落以降、乱高下しながら値下がりを続けました。
今月9日には、急激な値下がりによって自動的に売買を停止する「サーキットブレーカー」と呼ばれる仕組みが発動されたうえ、これまでで最大の2013ドルの下落を記録、11日にも1464ドル下げ、終値は、2万3553ドル22セントまで落ち込みました。
11日の終値を先月の最高値と比べると、ほぼ6000ドル値下がりし、下落率は20%を超えました。
こうした大幅な下落をアメリカメディアは、熊が爪を振り下ろす動作に見立て“ベア・マーケット”と伝えています。さらにアメリカの大手金融グループ、ゴールドマン・サックスは、11日、「株価は向こう3か月でさらに15%程度下落する」というリポートをまとめました。それによりますと、アメリカの上場企業主要500社で構成する「S&P500」の株価指数について、10日の終値にあたる2882が向こう3か月で2450まで、率にして15%下落すると指摘しています。これをダウ平均株価に当てはめると、11日の終値よりさらに2000ドル以上安い、2万1250ドルほどまで下落する計算です。
リポートの中では「これまで11年間続いてきた、“ブル・マーケット”とも呼ばれるニューヨークの株価の上昇基調は、まもなく終わるだろう」としています。 
●“致死率 インフルよりはるかに高い” 米研究者 新型ウイルス  3/12 
NIH=アメリカ国立衛生研究所で新型コロナウイルス対策を率いるファウチ博士は11日、議会下院の監視・政府改革委員会で証言しました。
このなかで、ファウチ博士は新型コロナウイルスの致死率について、中国を含めたデータはおよそ3%であるものの、ウイルスに感染していても症状が出ない人もいることから、実際には感染者はさらに多いとして、致死率はおよそ1%と分析していることを明らかにしました。そのうえで「インフルエンザの致死率は0.1%であり、致死率は10倍高いことになる」と述べ、新型コロナウイルスの致死率はインフルエンザよりもはるかに高いと指摘しました。
また、今後の感染拡大の可能性についてファウチ博士は「結論を言えば、状況はさらに悪化するだろう」と述べ、さらなる感染の拡大は避けられないとの認識を示しました。そして、状況の悪化を少しでも抑えるためには、大勢の人が集まるイベントの中止を検討すべきだとしてNBA=アメリカプロバスケットボールなどの試合を観客を入れずに行うなどの対策が必要だと強調しました。 
●原油価格急落、コロナショックでこれから金融業に訪れる「危機」 3/12 
新型コロナウイルスによるダメージは、当初考えられていた実体経済の問題だけではなく、金融面も通じた複合的な悪影響が生じるリスクが高まっている。景気の先行指標とみなされる株価下落だけではなく、サウジアラビアとロシアの交渉決裂が原油市況の急落を招き、金融、不動産市況にも悪影響を及ぼしかねない。また、日本に目を向けると、異次元緩和による経営環境の悪化という構造上の問題があり、融資スタンスの変化が懸念される状況だ。
「逆オイルショック」発生、危機シナリオが複雑化した
新型コロナウイルスが報じられた当初は中国の景気減速やサプライチェーンへの悪影響、日本国内においてはインバウンドの減少など比較的影響範囲が限られると見られていた。だが、世界各国への波及による世界経済の減速懸念、そして、このタイミングでの石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」で、サウジアラビアが提案した減産案をロシアが拒否したことで、サウジアラビアが増産姿勢を打ち出し、原油市況が一気に崩れた。もともと、協調減産があったとしても、世界経済の減速からなお供給過剰と見られていただけに、サウジアラビアの増産は深刻なネガティブサプライズとなった。9日のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は前週末比25%安となり、下落率は湾岸戦争による悲観ムードが高まった1991年1月に次ぐ、過去2番目である。9日のニューヨーク株式市場も急落し、ダウ工業株30種平均は前週末終値と比べて2013.76ドル下落した。実体経済だけではなく、金融面も含めた複合不況の様相を見せ始めている。原油価格急落という逆オイルショックで、コロナショックの波及経路は複雑になり、危機のシナリオが増えた。その全てを洗い出すことは難しいものの、比較的蓋然性が高いと思われるシナリオを確認しよう。
オイルマネー縮小で金融・不動産市況に打撃も
原油価格暴落により、産油国の国際収支・財政収支は悪化する。平時であれば、原油価格の下落は、投入コストの削減や物価上昇が抑制されることによる需要増加などを通じて、世界経済全体に取ってはプラスになる面もある。だが、新型コロナの影響で経済活動そのものが低下している状況では、原油価格下落の恩恵は望めない。人や物の移動が制限されている状況では、原油価格が下落しても、需要増加につながらないからだ。そもそも、足元の原油価格では採掘などにかかる生産コストと比較して採算割れとなる国もある。サウジアラビアの戦略はロシアの譲歩を引き出すことが目的だと考えられる。一般財団法人日本エネルギー経済研究所『国際原油市場を取り巻く環境と価格形成に影響を与える諸要因に関する調査報告書』によると、サウジアラビアは世界で最も低い生産コストを誇るが、一方で、拡張的・硬直的な財政支出が災いして、財政収支は赤字傾向にある。外貨準備や、政府が出資する投資ファンドであるソブリン・ウェルス・ファンド(Sovereign Wealth Fund: SWF)を活用することで、この原油急落局面でもショックを緩和することができる。交渉相手となるロシアも生産コストは低いが、外貨準備やSWFが少なく、我慢比べではサウジアラビアが有利と見ることができる。産油国であっても、アゼルバイジャン、アンゴラ、イラク、イラン、オマーン、ナイジェリア、ベネズエラなどはロシアと同じように外貨準備やSWFが潤沢とは言えない。国内政治や経済環境に問題を抱えている国も多く、ソブリンリスク(国に対する信用リスク)の上昇が国際金融市場に波及する可能性もある。オイルマネーが細れば、SWFを期待した金融・不動産市況への悪影響もあるだろう。
楽観的だったハイイールド債市場が変調
社債市場では低格付け債(ハイイールド債)で変調が起き始めた。9日の日経新聞では、低格付け債に投資するETFから大規模な資金が流出、ハイイールド債全体の流出額は、年初来ではおよそ56億ドルにのぼることが報じられた。これからもハイイールド債は厳しい状況が続くと見た方が良いだろう。2019年はFRBが利上げを休止し、政策金利引き下げにかじを切った年だった。世界的な金融緩和が続く中、OECD『Corporate Bond Market Trends, Emerging Risks and Monetary Policy』(2020年2月18日)によると、2019年には、13兆5000億ドルの社債が発行された(金融機関を除く)。OECDはレポートの中で「過去の信用サイクルと比べて、信用の質が低く、返済負担が重く、償還までの期間が長く、保護規定が劣っている。景気の悪化が非金融部門および経済全体にもたらす悪影響を増幅する恐れがある」と指摘している。
国際機関や監督当局の予想は外れることもあるが、今回は杞憂(きゆう)で終わらないかもしれない。ハイイールド債は情報通信やエネルギーなど、業歴が浅く設備投資負担が重たい企業で発行されることが多い。iシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETFの組み入れ比率を見ると、通信が25%、エネルギーが10%を占める。「通信」は将来期待に左右されやすい分野である上、「エネルギー」は景気にも、そして、足元の原油急落の影響も受ける。ハイイールド債の変調は、金融派生商品にも影響を及ぼす恐れがある。CLO(ローン担保証券)も気がかりだ。米国債10年利回りが1%を切る水準で推移するなど、質への逃避が加速しているため、低格付け企業の社債や融資で借換資金の調達に苦慮する可能性もある。
日本では貸出スタンスの変化が懸念される
さて、国際的な状況を見てきたが、ここで日本の金融環境に目を向けよう。これまでの連載で、異次元緩和による低金利が金融機関の経営体力を奪っている現状を指摘してきた。全国銀行協会『全国銀行の2019年度中間決算の状況(単体ベース)』を見ると、経常利益は1兆9,815億円(前中間期比 2,493億円、11.2%)。国内業務部門が苦戦する中、国際業務部門頼みという状況だが、コロナショックにより国際業務に期待することが難しくなっている。
過度な金融緩和が長期間続いた結果、金融政策の打ち手が限られているという事情もあり、金融機関の貸出スタンスが急変する懸念がある。制度融資によって、企業の資金繰りはひと息つける可能性があるが、そもそも新型コロナがいつ終息するか見通しが立たない。
日本銀行『金融システムレポート(2019年10月)』に指摘されているように、「総与信の対GDP比率」が上昇を続けており、トレンドからの上方乖離(かいり)幅がバブル期に近づいていること、利鞘(りざや)の薄い低採算の貸出増加や、地域金融機関を中心に低水準だが信用コストが増加し始めていることなど、ネガティブな要素には事欠かない中でのコロナショックである。運用難から日銀当座預金に大量に資金が滞留しているため、金融機関の資金繰りに端を発するシステミックリスク(ある機関や市場で起きた機能不全が、他の金融機関や市場、金融システム全体に波及するリスク)は考えにくいが、有価証券の評価損や減損リスクなどの個別事情が金融機関経営を直撃しかねない状況だ。ソブリンリスクやハイイールド債のリスクを直接、あるいは、投信などを通じて間接的に負っている先もあるだろう。
年度末まであと半月。金融機関にとっても一般企業にとっても急激な環境変化だが、まだ短期間であるため、3月期決算の段階では、「悪材料は出尽くした」わけではない。特に、債務者区分の移動には収益が悪化してからタイムラグがある。政府の経済対策・財政出動が奏功するかによる部分もあるが、中間期決算で信用コストが膨らむ可能性がある。設備投資の抑制を通じて、景気低迷が長引く可能性は否定できない。 
 
 
 

 

●エコノミストが「コロナショックはリーマンショックより厄介」と考える理由  3/12 
パンデミックを前に対応が後手に回る各国政府
新型コロナウイルスの大規模な流行を受けて、世界経済への悪影響が深刻化している。当初は感染の拡大が見られなかった欧米でもコロナウイルスの感染者が急増しており、米ジョンズ・ホプキンス大学がリアルタイムに公表している特設サイトによれば、日本時間3月11日正午時点で世界の感染者数は11万8000人を超えたようだ。今後も感染者数の増加は続くと見込まれる。各国で検査体制が整えば、それだけ感染者数の発見が進むと考えられるからである。またこれまでの世界的な流行の経緯を振り返ると、局所的なホットスポットがあるにせよ、かなり前から新型コロナウイルスは世界的に拡散していたと考える方が自然な見方ではないだろうか。
感染が発覚した11万人程度のうち死者は4000人程度、それもその多くが発症元とされる中国の武漢での惨事である。中国の場合、地方都市では医療へのアクセスがいまだ悪く、気がついた頃には重篤化していた事例が多いようだ。言い換えれば、新型コロナウイルスは、発症しても適切な対処療法が行われれば十分に完治が見込めるということだろう。それに新型コロナウイルスの予防対策も、従来のインフルエンザなどと同様に、手洗いの徹底などオーソドックスなものであるようだ。適切に対処できていればそれほど恐れる必要はなさそうだが、近年まれに見るウイルス感染症の世界的流行(パンデミック)を目の前に、各国とも対応が後手に回ってしまっているというのが実情と言えよう。
国土の全面封鎖でイタリア景気は腰折れ
筆者が専門的にウオッチしている欧州の場合、代表的なホットスポットは北イタリアとなる。感染者はすでに1万人を超えており、残念ながら600人以上の死者が出ている模様だ。連立与党の一翼を担う民主党のジンガレッリ党首も新型コロナウイルスに感染したようだが、幸いなことに容態は安定しており、自宅静養に努めているそうだ。イタリア政府は3月8日、コロナウイルスの封じ込め対策として商業都市ミラノを含むロンバルディア州や世界的な観光都市ベネツィアをはじめとする14県を封鎖した。さらに10日には、封鎖の対象をイタリア全土に拡大する措置に踏み切った。イタリア経済は実質的に機能不全に陥り、景気は腰折れを余儀なくされた模様だ。もともとイタリア経済は、北部の製造業が米中貿易摩擦にともなう世界景気の減速や自動車産業の不調を受けて低調であり、最新19年10〜12月期の実質GDPが前期比0.4%減とほかのEU諸国と比べても景気停滞が顕著だった。それに今回のコロナウイルス流行による悪影響が加わり、1〜3月期の成長率は記録的なマイナス成長になると予想される。こうした状況を受けて、イタリア政府による財政拡張観測もくすぶりはじめた。今財政を拡張したところで、経済の中心である北イタリアの経済が動かなければ望ましい効果など得られないだろうが、生活費の補償なども不可欠である。欧州連合(EU)の執行部である欧州委員会も、理由が理由なだけにイタリアの財政赤字拡大を容認する方向だ。
ヒトとモノが回らなくなった経済危機
新型コロナウイルスの流行が経済に与える悪影響を2008年秋に生じた米投資銀行大手リーマンブラザーズの経営破綻にともなう世界的な金融危機となぞらえる向きもあるが、あの危機はカネが回らないことにによる現象であった。しかし今回の場合は、イタリアのケースが端的に物語るように、ヒトとモノが回らなくなった経済危機と言えよう。そのため、金融緩和や財政拡張でカネ回りを良くしても、ヒトとモノが動かない限り経済が息を吹き返すことが見込みにくい。米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が3月に政策金利であるFFレートを0.5%も引き下げ、金融緩和を強化したものの相場が好転しなかったことは、ある意味当然だったと言える。新型コロナウイルスのパンデミックという非常時の危機管理を行う上で、ヒトとモノの流れをある程度制限することは致し方がないことだろう。とはいえ、それで経済活動そのものがクラッシュしてしまえば元も子もない。収束の時期が見えないことは確かであるが、言い換えればコロナウイルスの存在を前提に経済を回す必要もあるのではないか。最も重要なことは正確な情報の提供だろう。日本ではトイレットペーパーがなくなったように、ドイツではパスタがパニック買いの対象になった。緊急事態に直面した人々は、世の東西を問わず根も葉もない情報に踊らされがちである。各国政府や企業、それに報道機関は正しい情報提供に努め、そうした人々の不安心理を和らげる必要がある。
求められる徹底的な検証
なお欧州でもパニック買いが生じたという事実は、欧州経済を専門に見てきた筆者にとってもある意味で新鮮に映った。今回の新型コロナウイルスの流行のような経験を欧州があまり経験してこなかったことの証左と言えるだろう。またドイツ人は合理的であり冷静沈着であるというイメージを持つ人々にとっても、衝撃的だったかもしれない。日々情勢は変わるが、小中学校の閉鎖や国境をまたぐ移動の制限などの諸政策がどの程度の医療的メリットをもたらし、一方で経済的デメリットをもたらしているのかという分析も、可能な限り同時進行で進めていく必要があるのではないか。さしたる医療的メリットがなく経済的デメリットが顕著となった対応策もあると考えられる。たとえばイベント自粛の要請を考えると、閉鎖的な屋内でのイベントは中止でも、開放的な屋外でのイベントは継続しても良いのかもしれない。観光施設についても同様のことが言えるのではないか、そうしたことを検証すべきなのだろう。一律に自粛を要請するようでは、それこそマインドがいたずらに悪化し、景気の命取りとなる。
株安と円高に歯止めをかける条件
それに、今生じている世界的な株価の暴落や円高は、世界経済の停滞がいつまで続くか分からないことへの不安を反映した現象だ。逆を言えば、世界経済が再び回りはじめそうだという認識が広がってはじめて、株安と円高に歯止めがかかる。金融市場の動揺を鎮めるためにも、過度な行動制限を見直し経済への負荷を解いていく必要があるのではないか。医療面と経済面のバランスをどうとるかは難しい話だが、後者も重視しなければ、われわれの日々の生活が回らなくなってしまう。今回のコロナウイルスの流行は、総合的な便益(ベネフィット)と費用(コスト)の観点から、今後も生じる世界規模での感染症予防対策のあり方を考える良いきっかけかもしれない。世界経済が持続的に成長するうえでは、ヒトモノカネの自由な移動は不可欠である。感染症のパンデミックが意識されても、それらの流れを完全にシャットアウトすることなどできない。新型コロナウイルスの流行もいつかは収束し、経済も平常運転を取り戻す。根拠なき楽観と同様に、過度な悲観もまた禁物ではないだろうか。 
 
 
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●新型ウイルス 国内感染者は計684人に(クルーズ船など除く)  3/13 
各地の自治体や厚生労働省によりますと、午後3時現在、日本で感染した人などは、合わせて684人です。
このほか、クルーズ船の乗客・乗員が697人、チャーター機で帰国した人が14人で合わせて1395人となっています。このうち死亡したのは、国内で感染した人が19人、クルーズ船の乗船者7人の合わせて26人です。
日本で感染した人や中国からの旅行者など684人のうち、北海道は136人、愛知県は111人、大阪府は89人、東京都は75人、神奈川県は49人、兵庫県は46人、千葉県は27人、埼玉県は20人、京都府は17人、和歌山県は14人、新潟県は14人、高知県は12人、奈良県は8人、石川県は7人、三重県は7人、熊本県は6人、群馬県、長野県、静岡県、山口県、福岡県、沖縄県は3人、秋田県、栃木県、山梨県、岐阜県、愛媛県は2人、宮城県、福島県、滋賀県、広島県、徳島県、大分県、宮崎県は1人、厚生労働省の職員や検疫官、それに空港の検疫で感染が確認された人などが合わせて11人です。また、厚生労働省によりますと、重症者は、12日の時点で、国内で感染した人などが29人クルーズ船の乗船者が14人の合わせて43人となっています。
一方、国内で感染が確認された人のうち12日までに症状が改善して退院した人などは、クルーズ船の乗客・乗員を含めて合わせて511人となっています。 
●コロナウイルス「PCR検査」を遅らせた“戦犯”は? 3/13 
新型コロナウイルス感染症を巡り、政府の専門家会議(座長=脇田隆字・国立感染症研究所長)は3月9日、国内の状況について「持ちこたえている」と説明した。しかし、PCR検査は保険適用になったにもかかわらず、遅々として進んでいないのが現実だ。現場で一体、何が起こっているのか?
「PCR検査の体制整備の遅れは、すべて感染研に問題がある」
こう厳しく指摘するのは医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師だ。そしてこう続ける。
「驚くことに、日本の新型コロナウイルス肺炎による致死率は、上海、北京に比べはるかに高い。なぜかと言うと、それはこれまでPCR検査を広く行ってこなかったからです」
たしかに、お隣の韓国は、今回の新型コロナ騒ぎで1日当たり5千〜1万4千人のペースで検査し、2月末時点で計約7万8千人の検査を終えたという。
日本では、一日に約3800件の検査ができるとされていたが、2月18日から23日までに行った検査は計約5700件だったと、衆院予算委員会で報告された。保健所が医師の検査依頼を拒んだ事例が、少なくとも計30件あったことも日本医師会の調査で明らかになった。
検査体制の見直しを求める声におされてか、政府は、それまでは法律に基づき、保健所が認めないと実施できなかったPCR検査に、3月6日から健康保険を適用し、民間の検査会社などでも実施できるようにした。
しかし、なぜこの時期まで、検査の幅を広げなかったのだろうか。それについて上医師はこう述べる。
「それは、感染研の目的が感染者の治療ではなく、研究にあるからです」
今回の新型コロナ対策では、感染研に9.8億円の予算が付けられている。本来なら、それを使って感染者の広がりを知るためのサンプル調査をしたり、民間にPCR検査を依頼したりしてもよかったはず。それらをしなかったのは、すべては自分たちの研究のためで、PCR検査のデータを独占したかったから、との見方も出ている。
実際、政府の新型コロナ対策を担う専門家会議のメンバーには、座長を始め、感染研に関係する人物がいる。PCR検査を民間まで広げることには消極的だったことがうかがえる。
では、保険適用されたことでようやく、誰もが近くの医療機関で検査を受けられるようになるのか?
長年、感染症の研究と治療に携わってきた、グローバルヘルスケアクリニック院長の水野泰孝医師は言う。
「今までと一緒で、検査依頼を出せるのは『帰国者・接触者外来』(全国約860カ所/非公開)の医師のみ。一般の病院や診療所では検査をすることはむずかしい」
今回の保険適用を受け、感染者や感染した疑いのある人が次々と一般の診療所を訪ねることが予想される。そうすると、他の病気などで受診した患者らと同じスペースで待つことで、感染の恐れが出てくる。
さらには、多くの人が訪れれば風評も出かねず、すでに「呼吸器症状がある人の診療はしたくない」と言う医師も出るなど、現場は混乱しているという。
水野医師はこう訴える。
「まずは、誰でも近くの診療所で検査を受けられる、という誤解を解くことが必要。その上で、今後は一般の診療所でも検査ができる体制を整えてほしい」
クルーズ船の対応を始め、これまでに専門家会議がとった対策が、功を奏しているとは言い難い。
感染研とは誰のための研究所なのか──。
前出の上医師が指摘する。
「今は感染研のための感染研になっている。政治に影響されず、真に国民の健康を第一に考える組織にすべきだ」
自国で発生した感染症の全体像を把握する調査は必要不可欠だが、人の生死を重視しない研究でいいはずがない。 
●NY株式市場 終値 2352ドル安 過去最大の値下がりを記録 3/13 
12日のニューヨーク株式市場は、新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済に深刻な影響を与えるという見方から株価が急落し、ダウ平均株価は下落幅が2352ドルと、過去最大の値下がりを記録しました。12日のニューヨーク株式市場は売り注文が殺到し、「S&P500」と呼ばれる主要な株価指数の下落率が、基準となっている7%に達したため、取り引き開始後5分ほどで売買が自動的に停止しました。これは、株価の急落を防ぐための「サーキットブレーカー」と呼ばれる措置で、今月9日に続いて、2度目になります。
しかし、取り引き再開のあとも、株価は値下がりを続け、結局、ダウ平均株価の終値は、前の日に比べて2352ドル60セント安い、2万1200ドル62セントでした。2352ドルの下落幅は、今月9日を上回って過去最大で、下落率はおよそ10%となり、アメリカメディアは、「1987年10月の株価暴落、いわゆる『ブラックマンデー』の時の22%以来の下落率となった」と伝えています。また、終値としては、2017年6月の水準まで落ち込みました。
市場では、トランプ大統領が発表した、新型コロナウイルスに対応する経済対策の内容が十分でなかったうえ、ヨーロッパからの入国を停止する措置で、人の移動が厳しく制限され、実体経済にも深刻な影響が及ぶのではないかとして、記録的な下落につながりました。
下落率は1987年の「ブラックマンデー」以来
12日のニューヨーク株式市場でダウ平均株価は、2352ドルという過去最大の下落幅を記録し、下落率もおよそ10%と大きくなりました。これは、世界的な株価暴落で「ブラックマンデー」と呼ばれた1987年10月19日に記録した22.6%以来の下落率だということです。当時のダウ平均株価は、2200ドルほどだったため、508ドルの値下がりでしたが下落率は大きくなりました。アメリカメディアはそろって、「ブラックマンデー以来の大暴落だ」などと、記録的な下落を驚きを持って伝えています。
ブラジルでも株価大幅値下がり
新型コロナウイルスの感染拡大への不安からブラジルでも株価が大幅に値下がりし、12日のブラジル株式市場は2度にわたり売買停止の措置がとられ、主要株価指数のボベスパは、前の日に比べて14.8%値下がりして取り引きを終えました。下落率としては1998年以来、22年ぶりの大きさだということで、ブラジル経済への懸念が強まっています。 
●米 FRB 600億ドル超の国債買い入れを発表  3/13 
アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は、12日、金融市場の動揺を抑えるため、600億ドル、日本円で6兆円を超える国債の買い入れを行うとともに、金融機関どうしがやり取りする短期金融市場に、日本円で52兆円の資金を投入すると発表しました。株価の急落が続くなか、大量の資金供給を通じて、市場の安定をはかるねらいがあります。 
●欧州株 全面安 イタリアで16%超など記録的な下落に  3/13 
12日のヨーロッパの株式市場は、経済の先行きへの懸念から売り注文が殺到する展開となり、株価の下落率は新型コロナウイルスの感染が深刻なイタリアの市場で16%、ドイツやフランスの市場で12%を超える記録的な値下がりとなりました。12日のヨーロッパの株式市場は、アメリカがイギリスを除くヨーロッパからの入国を一時、停止する措置を明らかにしたことで、経済に対する影響への懸念が強まって全面安の展開になりました。その後、ヨーロッパ中央銀行が新型コロナウイルス関連の景気対策で焦点になっていた利下げを見送ると売り注文はさらに膨らんで株価は一段と値下がりしました。
主な市場の株価指数の終値は、前日と比べて新型コロナウイルスの感染がヨーロッパで最も深刻なイタリアのミラノ市場でおよそ16.9%下落しました。また、パリ市場はおよそ12.3%、ドイツのフランクフルト市場はおよそ12.2%、ロンドン市場はおよそ10.9%、値下がりしました。いずれの市場も1日の下落率ではリーマンショックの時期を上回り、記録的な値下がりとなりました。
市場関係者は「アメリカの措置がヨーロッパ経済の深刻な打撃となるという警戒感が広がる中で、ヨーロッパ中央銀行が市場が織り込んでいた利下げを見送ったことで失望が広がった。市場は極度の混乱に陥っている」と話しています。 
●ニューヨーク株式市況 3/13 (現地日付 3/12) 
株式市場
昨晩、トランプ大統領が、新型コロナウイルス感染拡大への対応策として、英国を除く欧州から米国への入国を向こう30日間停止する措置を発表し、また、小企業むけ$50Bの低利の融資案を承認した。しかし、市場が期待した大胆な景気対策の具体案の発表はなく、市場には失望が広がった。また、朝方に発表されたECBの金融政策パッケージには120Bユーロの資産買入れおよび追加的な長期リファイナンシング・オペレーションによる流動性供給などが含まれたものの、ベンチマーク金利を据え置いたことから、欧州株式市場が大幅下落。これらを背景に、NY主要指数も大幅続落して寄り付いた。S&P500は寄り付き後すぐに-7%の下落となりサーキットブレーカーが稼働。15分間の取引停止後再開すると、いったん前日比-8%の2508まで下げ、その後は2534~2575のレンジ内。新型コロナウィルス感染者数が米国で1200人を突破した中で、さまざまな経済および企業活動が次々にキャンセルないし縮小を余儀なくされる中で、グローバルリセッションへの懸念がますます拡大。WTI先物価格が再度$30を窺う水準へと下落する中で、これも懸念を深める要因となり、S&P500は幅広く売られ、正午過ぎには前日比-8.78%の2500まで下落した。午後に入り、ニューヨーク連銀が、本日と明日に合計$1.5兆の大規模な買いオペを行うと発表。更に、毎月$60Bの資産買入れの対象をTビル以外の多様な範囲に拡大するとした。大規模な流動性供与と実質的量的緩和と見られる策の実施を受けて、直後の市場は急速な買い戻しとなり、S&P500は午後1時過ぎに2660まで下げ幅を縮小。しかし反発もここまでで、大規模な財政出動がない中で、グロバールリセッションは不可避との悲観論が再び主流となり、午後にかけて再度売り圧力が高まる展開。主要指数は引けにかけて一段の売りに見舞われ、ほぼ安値引け。ダウ平均が-9.99%。S&P500が-9.51%と2月の最高値から26.7%調整。ナスダック総合が-9.43%。S&P500の全11セクターが前日比マイナスとなった中で、とりわけ、エネルギーが-12.30%、金融が-10.77%、資本財が-10.33%。個別では、S&P500組入れ採用銘柄が総じて前日比マイナスとなる中、財務への懸念からクルーズ各社が本日も大きく売られ、ノルウェージャン・クルーズ・ライン(NCLH)が-35.80%、ロイヤル・カリビアン・クルージズ(RCL)が-31.78%。カーニバル(CCL)が-31.17%。マリンクロット(MNK)が酸素吸入器の新型肺炎治療むけ適用を吟味されていることから+14.1%。
債券・為替市場
昨夜行われたトランプ大統領の演説で、英国を除く欧州から米国への入国を30日間停止する措置が発表されたが、市場が期待する大型経済対策の具体案は示されず、また、時給労働者の病欠を有給休暇扱いすることなどを含めた民主党による対策案について、政府、共和党が超党派で合意するまでに至らず、市場には経済対策が後手に回っているとの懸念が広がった。これを背景に、10年債はオーバーナイトで買われ、NY朝方に利回りは0.680%へと低下。また、ECBが発表した金融政策パッケージに欧州株式市場が失望する中で、リスクオフがますます強まり、10年債利回りはは0.629%まで低下した。しかし、政府及び議会が景気対策案を協議中の中で、その後は若干の利食い売りとなり、正午近くに利回りは0.8%を越えた。午後1時前、FRBがレポ取引を通じて本日、明日の両日で$1.5Tを短期金融市場に供給し、また、現行の国債購入については幅広い償還期間の国債へと対象を広げると発表。これを受けて、10年債利回りはいったん再び0.667%付近へと低下。しかし、午後1時の30年債入札結果は、最高落札利回りが1.320%と4bpsのテールとなり、これを受けて利回りは再び上昇。午後4時の10年債利回りは0.873%となった。為替市場では、昨夜トランプ大統領が発表したコロナウイルス対策に具体的で大規模な景気刺激策がなかったことから、ドル/円は朝方から売られ103.75付近で推移。しかし、10年債利回りが上昇に転じる中で正午前にドル/円は105.78付近にまで反発。午後にはFRBによる$1.5Tの資金供給プラン発表を受け、106.10まで上伸。しかし、株式市場が大幅下落する中で、その後は小幅に押され、午後4時には105.34となった。 
 
 
 

 

●今日の株式見通し=大幅続落、世界株安が加速 1万7000円割れか 3/13朝 
きょうの東京株式市場で日経平均株価は、大幅続落が想定されている。前日の米国株式市場は暴落。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、トランプ米大統領がホワイトハウスからの演説で英国を除く欧州からの入国禁止を発表したことなどが嫌気され、世界各国で株安が加速している。東京市場でも朝方から売り優勢の展開となり、日経平均は1万7000円を下回るとの見方が多い。きょうはメジャーSQ(特別清算指数)算出日のため、寄り付き直後はボラタイルな動きとなる可能性もある。
日経平均の予想レンジは1万6700円─1万8100円。
新型コロナを巡り世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的な流行)に相当すると表明したことを受け、世界的な株安が止まらない。12日の米国株式市場でダウ平均株価.DJIは2352ドル値下がりし、過去最大の下げ幅を記録したほか、下落率も約10%と1987年10月のブラックマンデー以降で最大になった。S&P総合500種指数.SPXとナスダック.IXICは2月に付けた最高値から20%超下落。米国株式市場において投資家の不安心理の度合いを示すボラティリティー・インデックス(VIX指数)は一時76.83まで上昇し、2008年11月以来の水準にとなった。
またトランプ米大統領は12日、2020年東京五輪について1年延期することを関係者は検討すべきとの考えを示した。安倍晋三首相には公式に提案するつもりはないと述べたものの「無観客の競技場で実施するよりは良い」とし、延期がより良い選択だという見方を示した。トランプ米大統領の発言が、日本株にマイナス作用する可能性がある。
現在のドル円は104.70円台で、前日午後3時時点と比べて円安水準。シカゴの日経平均先物6月限(円建て)清算値は1万6855円と、前日の現物終値を大幅に下回り、1万7000円割れが警戒されている。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券・シニア投資ストラテジストの荒井誠治氏は「トランプ大統領の演説については昨日の時点で織り込まれているものの、ダウがここまで下がるとさすがに投げ売りが起きてしまう」と指摘する。「メジャーSQ算出日でもあるため、イレギュラーな売買が加わり、荒い相場になる可能性が高い」という。  
●日本株大幅安、リーマン級景気後退意識−債券下落、為替106円台 3/13 
13日の東京株式相場は大幅続落し、日経平均株価の下げ幅は1000円を超えた。景気後退への不安から下落率は一時10%を超え、2011年3月15日の東日本大震災直後以来の大きさとなったが、午後には金融政策への期待からTOPIXの下げが1.8%まで縮小した。為替相場はドル・円が一時1%を超す上昇となり、106円台に乗せた。午前は、新型コロナウイルスの感染拡大に対して米国と欧州が打ち出した対策は不十分と捉えられ、リーマン・ショック並みのリセッション(景気後退)になるとの不安が高まり、市場は不安定な動きとなった。日本銀行はこの日午前に2週連続の国債買い現先オペ(5000億円)に続き、午後にも予定外の国債買い入れオペ(2000億円)を通知した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う金融市場の混乱に配慮して、潤沢な資金供給の姿勢を示しているとみられる。

TOPIXの終値は前日比66.18ポイント(5%)安の1261.70 / 日経平均株価は同1128円58銭(6.1%)安の1万7431円05銭 / ドル・円相場は0.9%高の1ドル=105円59銭、一時106円台に乗せる / 長期国債先物中心限月は4年ぶり下落幅、長期金利は約2カ月ぶりにゼロ%に接近
〈きょうのポイント〉 適切な資産買い入れ進め、市場・経済安定図る−日銀総裁が首相と会談 / 12日の米国株はブラックマンデー以来の大幅安 / 欧州中央銀行(ECB)、新型コロナ対策パッケージ発表 ・・・ 債券購入と銀行への長期貸し付けプログラムを拡大 ・・・ 中銀預金金利をマイナス0.5%で据え置き / ストックス欧州600は過去最大の下落 / トランプ米大統領、東京五輪は1年延期してはどうだろうか

財務省と金融庁、日銀の幹部は同日、株価急落を受けて三者会合を緊急に開いた。武内良樹財務官は会合後、記者団に対し、主要7カ国(G7)が12日に開いた財務相代理による電話会議で、新型コロナの影響への「取り組みで協調していくことを確認した」とした上で、「より一層緊張感をもって市場の動向を注視し、必要な場合はG7、G20(20カ国・地域)の合意に沿って適切に対応していく」と語った。
日本株の大幅安について、アセットマネジメントOneの淺岡均シニアストラテジストは、「日本株を含むリスク資産から投資家が資金を引き揚げている」と指摘。午後の下げ縮小は、「中央銀行から何かしらの対策が出てくるのではないかと期待して急速に戻した」と松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは話した。
岡三証券の山本信一シニアストラテジストは、「新型コロナウイルスの感染拡大は欧米では初動の段階、特に米国に集中していた資金の逆流は継続する可能性がある」と指摘。市場の動揺が収まるまで機関投資家やヘッジファンドはキャッシュ化に動くとした上で、「リーマン・ショック時より資金がリスク資産に集中していたため、株価の下げが大きい」との見方を示した。
オリンピック開催も不安視
今年7月に予定されている東京オリンピック・パラリンピックの中止や延期の臆測も株価を下押しした。トランプ米大統領は12日、東京五輪について、自身のアイデアだと前置きした上で、「1年延期してはどうだろうか」との考えを示した。
みずほ証券の倉持靖彦投資情報部長は、米国が渡航制限を発表し東京五輪の開催も危ぶまれるとなると、「来期は25%程度の減益になる公算があり、その場合の日経平均のフェアバリューは1万5000−1万6000円」と試算。「世界景気は4−6月期のマイナス成長は避けられず、リーマン・ショック並みのリセッションシナリオを市場は織り込みに行っている」と話していた。
12日の米株式市場でS&P500種株価指数とダウ工業株30種平均は1987年のブラックマンデー以来の大幅安となった。この日は欧州、ブラジル、カナダと世界で株安が連鎖。米国の主要3株価指数は全て9%余り下げ、S&P500種は弱気相場入りし、2018年末以降の上昇分を全て失った。
東京外国為替市場のドル・円相場は一時1ドル=106円台に乗せ、朝方の104円台半ばから大幅にドル高・円安に振れた。欧米の政策対応に対する失望から世界的に株安が進んでいたが、アジア時間に取引されている米国株先物が上昇に転じたのに伴い、ドル買い・円売りが強まった。
国内債券相場は大幅下落。長期国債先物の6月物は前日比1円07銭安の153円28銭と、日中取引では2016年以来の下落幅となった。長期金利は一時6ベーシスポイント(bp)高いマイナス0.005%と約2カ月ぶりにゼロ%に接近。日銀は2週連続で国債買い現先オペ、午後には臨時の国債買い入れオペを実施したが、金融市場の不透明感は根強く、相場への影響は限定的だった。 
●米国株の底割れは不可避か?「13日の金曜日」を過ぎたら… 3/13 
米国株の下落に拍車がかかっている
3月12日の米国株式市場において、NYダウが再び急落しました。この日は寄り付きから売りが殺到し、一時売買を停止するサーキットブレーカーが発動しました。これは週初の9日にも発動されており、今週だけでも2回目という異常事態です。NYダウの終値は21,200.62ドル(前日比-2,352.60ドル)で、9.99%の記録的な下げ幅となりました。
S&P500種株価指数が現地時間の午前9時35分時点で前日比7%安の2,549となり、証券取引所のルールに基づいて、15分間取引を停止しました。しかし、取引再開後も売り物が相次ぎ、下げ幅を拡大しました。
この日も米国のトランプ政権から「必要なら緊急時の権限行使も」などの発言が伝えられましたが、市場の見方は冷ややかです。投資家心理を最も冷やしたトピックは、トランプ大統領が国民向けの演説で、欧州から米国への渡航を30日間大幅に制限すると表明したことでしょう。欧州側との事前協議もせずに決めたとされています。これにより、米国経済に急ブレーキがかかるとの見方が、一気に広がりました。
さらに、トランプ大統領が米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度)に対して、追加の金融緩和を行うよう圧力をかけ続けていると報じられていることも、影響しているとの指摘があるようです。
先日の緊急利下げに続いて、この日はFRBの金融調節を担うニューヨーク連銀が、1兆5,000億ドル規模の追加レポオペを実施すると発表しました。国債の購入対象も増やし、マーケットの資金供給を増やすことで、市場の動揺を緩和しようという狙いです。
しかし、今回の「コロナ・ショック」に金融緩和は効かないと、多くの市場関係者は考え始めています。今週の週央あたりから、ブルームバーグやロイターのニュース、コラムでも、この指摘が散見されるようになり、金融緩和では止められないという見方がコンセンサスになりつつあります。
そろそろ「セリング・クライマックス」か
「多くの米国市民にとってリスクは非常に小さい」、「市場は非常に大きく持ち直すだろう」といった発言が伝えられるように、トランプ大統領は依然として楽観的な見方のようですが、金融関係者をはじめとして大半の米国民には、楽観ムードはなくなってきています。
この「楽観ムード」から「悲観ムード」への変化は、実は株価の下げ止まり、反転上昇の時期を探る1つのシグナルになります。「〇ショック」時のパターンとして、年金や投資信託といった機関投資家の売りで「一番底」をつける→値ごろ感からの買いで、いったん反発→値を戻す局面で、売りそびれていた投資家の売り→個人投資家を中心とした見切り売り、投げ売り→すべての投資家のろうばい売りで一段安となり「二番底」といったイメージです。
この点で、「すべての投資家のろうばい売り」のステージに、現状はあると思われます。「すぐに反発するだろう」と思っていた投資家が、「やばい!」と考えを改めています。この方々が売り切れば、「売りたい人(売らなければならない人)」のポジション整理が一巡となります。
これはマーケットで「セリング・クライマックス」という言い方をされます。1つの下げ相場の最後の局面といった感じです。「売りたい人(売らなければならない人)」がいなくなれば、理論的には株価の売り圧力が取り除かれ、株価上昇に向けて「軽く」なります。
上に示したチャートでは出来高(取引量)を確認できないのですが、実は、3月12日の株価急落は、商いを伴っての下落です。この出来高というものが大事で、「セリング・クライマックス」を見極める1つのシグナルともいえます。
取引が閑散としていて、かつダラダラと下げているのが最もタチが悪いです。ドカンと下げた方が、ポジション整理が進んで、反転上昇に向けてはよいといえます。
週明けからマーケットは落ち着きを取り戻せる可能性も
投資家の悲観ムードが急速に高まり、今週は株価が急落しましたが、週明けから下値確認→リバウンドをトライといった展開に、状況が変わることはないのでしょうか。株価の底割れは避けられないのでしょうか。
2017年1月に米国でトランプ政権が発足しましたが、当時からNYダウは一貫して上昇しました。その「貯金」をここにきて一気に吐き出している格好になっていますが、政権発足時の株価水準に近づいてきており、このあたりが下値のメドとして意識される可能性があります。
金利低下や、原油価格をはじめとしたコモディティ相場の下落などを短期間に急速に織り込みました。
本日は「13日の金曜日」です。日本人はあまり気にしませんが、欧米の金融関係者の中には、この日を敬遠するトレーダーは少なくありません。彼らからすれば「縁起が悪い」、「不吉だ」と、今回の混乱で確信を強めているのかもしれません。
ホラー映画『13日の金曜日』に出てくる殺人鬼「ジェイソン」が去れば、欧米のトレーダーの「恐怖心」が和らぎ、週明けからマーケットに落ち着きを取り戻せるかもしれません。なお、次の「13日の金曜日」は11月13日まで、しばらくありません。 
 
 
 3/14

 

●米株式市場ダウ反発1985ドル高 トランプの非常事態宣言を好感 3/14 
米国株式市場は急反発。前日に1987年のブラックマンデー以降で最大の下げを記録したダウ平均株価はこの日、1985ドル高で取引を終えた。序盤から買い戻しが先行し、その後トランプ大統領が新型コロナウイルス対策で非常事態を宣言したことで買いの勢いが強まった。一方、週間では主要株価指数が軒並み8%を超える下げになった。
トランプ大統領は13日、新型コロナウイルスへの対応で国家非常事態を宣言した。トランプ氏は記者会見で「状況は悪化する可能性がある。今後8週間が重大な局面となる」とし「連邦政府の全権を解き放つために、非常事態を宣言する」と表明。さらに「新型コロナ対応に向け最大500億ドルの拠出に道を開く」と述べた。
オークブルック・インベストメンツ(イリノイ州)のピーター・ジャンコフスキス共同最高投資責任者(CIO)は「市場は当初、500億ドル相当の支援金の使途などについて懐疑的だったが、トランプ大統領とともに会見に出席した各分野のトップらが対応を説明するにつれ、市場は好感する流れになった」と述べた。
主要株価指数は2月中旬に付けた最高値から2割程度値下がりしている。民主党が多数を握る下院ではコロナ関連の景気対策法案が可決される見通しだが、上院やトランプ大統領が支持するかどうかは不透明だ。
業種別では全ての指数が上昇。金融株は13.23%値上がりした。連邦準備理事会(FRB)の金融調節を担当するニューヨーク連銀は13日、総額370億ドルの国債買い入れを実施すると発表。買い入れ対象は前日の銘柄拡充に伴い、当初の短期債から中長期債にまで拡大する。連銀は国債買い入れについて、新型コロナによる「非常に特異な市場の混乱」に対応するものと説明した。
エネルギー株は8.84%高。原油価格の上昇につられる格好となった。一方、原油価格は週間ベースで2008年の世界金融危機以来の下落率を記録。新型コロナの感染拡大のほか、サウジアラビアとロシアの価格競争が重しになった。
個別銘柄ではアップルが12%急騰。中国の販売店42店舗全ての営業を再開すると明らかにした。
ニューヨーク証券取引所では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を4.73対1の比率で上回った。ナスダックでも2.95対1で値上がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は171億株。直近20営業日の平均は130億2000万株。 
●世界の新型コロナ 3/14 
欧州が中心地にとWHO 新型コロナ、中国から移行 3/14
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は13日、新型コロナウイルス感染症について「今や欧州がパンデミック(世界的大流行)の中心地となった」と述べ、感染拡大防止の主戦場が、中国から欧州に移行したとの認識を示した。欧州では感染者数が1万人を超えているイタリアのほか、スペイン、ドイツ、フランスなどで感染者や死者が急増、感染はほぼ全域に拡大している。1日当たりの新規感染者は、2月26日以降は中国本土よりも中国以外で多くなっている。
中国、封鎖で感染者出国7割減 米エール大チーム推計 3/14
中国政府が新型コロナウイルスの感染拡大防止策として実施した“武漢封鎖”などの渡航制限で、初期に出国した感染者の数を7割減らせたとの推計結果を、米エール大のチームが13日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表した。チームは中国の感染者報告や航空便などのデータを利用し、湖北省武漢市の封鎖や国境閉鎖、渡航制限といった対策を中国が取らなかった場合、2月15日までに779人の感染者が出国したと推計。1月23日に渡航制限を始めたため、230人に減らすことができ、感染拡大抑止に一定の効果があったとしている。
新型コロナでマニラ夜間外出禁止 15日から、通勤は対象外 3/14
フィリピンのマニラ首都圏開発庁は14日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、マニラ全域で15日以降、午後8時から午前5時までの外出を禁じると明らかにした。4月14日まで。医療従事者のほか、出勤や退勤、生活必需品の買い出し目的の場合は対象外という。同庁によると、違反しても逮捕や拘束はせず、帰宅を促す警告だけにとどめる。外出禁止時間帯は小規模なスーパーや雑貨店、薬局などの営業を認める一方、全てのショッピングモールに対して閉鎖を求めた。同庁幹部は記者会見で「ウイルスの拡散を防ぐためには人々の行動を制限する必要がある」と述べ、理解を求めた。
米、1億6千万人感染の試算 保健当局研究と報道、新型コロナ 3/14
米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は13日、米国で新型コロナウイルス感染防止の対策を何も取らなければ、国内の感染者が少なくとも1億6千万人、死者が20万人に上るとの試算があると報じた。疾病対策センター(CDC)によるウイルスの感染力などに基づく試算の一つで、政府対策チームは「見たことがない推計」としているという。最大で感染者は2億1400万人、死者は170万人としている。だが、既に導入された休校措置や在宅勤務、人が集まる施設の閉鎖などの対策の効果により、実際の数字は改善する。試算の詳細な根拠は明らかにしていない。
イタリアの致死率、高齢化一因か 医療体制不備で拡大指摘も 3/14
イタリアでは新型コロナウイルスに感染した死者が14日までに1266人に達した。感染者累計1万7660人に対する致死率は約7・2%で、他国に比べ突出して高い。病状が悪化しやすい高齢者が多い人口構成が一因だとの見方や、緊縮財政のあおりを受けた人員不足など医療体制の不備が感染拡大に拍車を掛けたとの指摘も出ている。政府の衛生高等研究所幹部は致死率の高さについて「症状の重い人を優先的に検査しているからだ。高齢者の人口が多いという事情もある」と説明する。EUの昨年の統計によると、同国の65歳以上の割合は22・8%でEU加盟国の中で最も高い。 
 
 
 3/15

 

●日経平均の下値模索は続くのか、中銀や政府動向などにも警戒 3/15 
先週の日経平均は17000円台割れまでの急落を見た。週間では5週連続安となった。
世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大し、景気後退の懸念が一段と強まり6日のNYダウは続落した。これを受けた週初9日の日経平均は一段安で始まると、減産交渉の決裂を受けた原油相場の急落、一時1ドル=101円台後半まで振れた円高など悪材料が重なり、朝方には節目の20000円をおよそ1年2カ月ぶり(終値ベースでは2019年1月4日以来)に割り込み、1277.49円安まで下落する場面もあった。
9日の米国市場は、新型コロナウイルスの感染拡大と原油価格の急落を嫌気し、寄り付き直後に「サーキットブレーカー」(すべての株式売買を一時停止する措置)が発動し、15分間の取引停止となった。NYダウは、過去最大の下げ幅となる2013.76ドル安の23851.02ドルで取引を終了した。この米国株安を受けて10日の日経平均は朝方に、取引時間中では2018年12月26日以来となる19000円割れに突っ込んだ。しかし、原油相場の落ち着きと円高の一服を受けて、取引開始直前にあった米大統領による給与減税実施との発言報道が見直され、日経平均は3日ぶりに上昇に転じた。
トランプ政権の景気対策への期待から10日のNYダウは4日ぶりに急反発をみた。しかし、11日の東京市場は、米国の経済対策に対する市場の期待が後退して日経平均は反落した。
世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの感染拡大を「パンデミック」と宣言したことを嫌気し、11日のNYダウは1464.94ドル安と急反落した。トランプ政権の景気対策も、具体的な内容や実施時期が不透明で投資家に失望感を与え、終日軟調推移となった。この流れから12日の東京市場にも朝方から売りが先行して全面安商状となった。トランプ米大統領が欧州からの入国を30日間全面停止すると発表し、新型肺炎感染拡大に対する警戒感が一段と高まり日経平均は一時1000円超に下げ幅を広げた。
12日のNYダウは2352.60ドル安(マイナス10%)と、過去最大の下げ幅、ブラックマンデー以来の下落率を記録した。9日に続く先週2度目の「サーキットブレーカー」が発動され、新型コロナウイルスの世界的流行で世界の経済成長が大きな打撃を受けるとの懸念から売りが加速した。メジャーSQ日に当たった13日の東京市場は、新型コロナウイルスの世界的大流行で世界の経済成長が大きな打撃を受けるとの懸念から、売りが一段と加速し全面安商状となった。
3日続落となった日経平均は一時1800円超値下がりし、取引時間中として2016年11月10日以来となる3年4か月ぶりの17000円台割れをみた。後場に入り、アジア株の下げ幅縮小、米株価指数先物の時間外取引での上昇、日銀による金融市場への緊急資金供給が伝えられると、下げ幅を縮める場面があったものの大引けにかけては再度売りが先行した。日経平均は1128.58円安の17431.05円で大引けた。なお、この日のメジャーSQ値は17052.89円だった。
今週の日経平均は、引き続き下値を模索する展開となりそうだ。日本時間12日の午前、米国は新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するため、英国を除く欧州からの入国を30日間停止すると発表、感染者が1万2000人超とされるイタリアでは薬局やスーパーなど生活必需品を扱う店舗以外を2週間にわたり全面的に閉鎖、国内では東京五輪の開催問題が燻るなど、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済・企業業績への影響が一段と深刻となっている。
世界連鎖株安の状況下、マーケットはファンダメンタルズに基づく取引とはなっていないため、日経平均は明確なボトムが見極めづらい。16日の日本時間11時に発表される中国の1月・2月小売売上高、17日発表の米2月小売売上高、19日の米10-12月期経常収支など経済指標に対する警戒感も強い。
東京証券取引所が12日に発表した3月第1週(2−6日)の投資部門別売買動向で、海外投資家は現物株を1535億5655万円と4週連続で売り越したことが明らかとなった。株価指数先物を合わせると1兆1000億円超の大幅売り越しとなっている。需給的にも海外投資家売りが止まらない厳しい状況が続いている。このほか、20日は春分の日で東京市場は休場となることから、週後半は手控えムードも強まりやすいだろう。
こうしたなか、今週は17日にFOMC(米連邦公開市場委員会)、18日にパウエルFRB議長会見、日銀金融政策決定会合、19日に黒田日銀総裁会見と日米の金融イベントが相場の下方圧力を軽減できるかが一つの焦点となってこよう。また、リーマン・ショック以来の株価暴落と急速な景況感の悪化から、政府・与党内で新たな経済対策に向けた動きが伝えられている。一部報道では事業規模10兆円から20兆円の経済対策案が浮上している。日米の金融・政策当局からのアナウンス内容次第では、5週連続安の間、23000円台から17000円割れまで7000円超の値幅で直線的に下げた日経平均の自律反発が生じやすいタイミングでもある。
物色的には13日にかけて2日連続ストップ高となったクラボウ<3106>のように新型コロナウイルス対策関連でニュースが出た銘柄の個別物色に加えて、13日に反発した渋沢倉<9304>のように直近まで急落し、配当利回りが3%、PBR1倍割れで業績リスクが少ない内需系銘柄に打診買いが広がる期待がある。
今週の主な国内経済関連スケジュールは、16日に1月機械受注、17日に2月首都圏新規マンション販売、18日に日銀金融政策決定会合(19日まで)、2月貿易統計、2月訪日外客数、19日に黒田日銀総裁会見、2月消費者物価指数、1月全産業活動指数の発表が予定され、20日は春分の日で東京市場休場となる。
一方、米国など海外主要スケジュールでは、16日に中国1月・2月工業生産、中国1月・2月小売売上高、中国1月・2月都市部固定資産投資、米3月NY連銀製造業景気指数、17日にFOMC(18日まで)、米2月小売売上高、米2月鉱工業生産・設備稼働率、米3月NAHB住宅市場指数、18日にパウエルFRB議長会見(経済見通し発表)、米2月住宅着工件数、米2月建設許可件数、米州開発銀行(IDB)年次総会(22日まで、コロンビア)、19日に米10-12月期経常収支、米3月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、米2月CB景気先行総合指数、20日に米2月中古住宅販売件数の発表が予定されている。 
●世界の新型コロナ 3/15 
国内新たに61人感染 名古屋の高齢女性死亡 3/15
国内では14日、新たに61人の新型コロナウイルス感染が確認され、感染者はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員を含めて1482人になった。感染が確認されていた名古屋市内の高齢の女性が肺炎で死亡し、国内の死者は29人となった。長崎県で初の感染が確認され、大阪府は累計102人となり100人を超えた。クルーズ船を除いて国内で確認された1日の感染者数は最多。各自治体によると、都道府県別の内訳は兵庫11人、東京、大阪各10人、北海道、埼玉、愛知各7人、群馬、千葉、新潟各2人、福島、長野、長崎各1人。
マスク転売禁止スタート ネット販売、業界も対策 3/15
新型コロナウイルスの感染拡大で極度の品薄に陥っているマスクの転売禁止が15日始まった。不足に拍車を掛けている転売目的の買い占めを排除するため、政府は罰則付きで監視を強める。転売の温床となっていたインターネットを通じた販売も業界各社が相次ぎ自主規制に乗り出し、官民で流通の適正化を目指す。政府は転売禁止に向け、第1次石油危機時に制定した国民生活安定緊急措置法を持ち出した。10日に同法の政令改正を閣議決定し、15日午前0時以降、仕入れ価格を超えた他人への販売を取り締まれるようにした。違反すれば1年以下の懲役か100万円以下の罰金、またはその両方を科す。
仏もレストランや店舗閉鎖 感染確認4千人超す 3/15
フランスのフィリップ首相は14日、新型コロナウイルスの感染抑制のため、15日から当面の間、国内でレストランやカフェなどの商業施設を閉鎖すると発表した。食料品店や薬局など生活に不可欠な店は除く。保健省によると国内で感染が確認されたのは14日現在4500人。過去3日間で倍増した。約300人が重症で集中治療を受けており、91人が死亡した。フランスは13日、100人以上が集まる行事を全て禁止。16日から学校も無期限で休校となる。フィリップ氏は国民に対し、できる限り在宅勤務とし、外出は必要な買い物など最小限にとどめるよう促した。
イタリアの感染者、2万人超 死者1441人に 3/15
イタリア政府は14日、新型コロナウイルスの感染者が前日より3497人増え2万1157人となったと発表した。死者は1441人に上った。前日比の感染者増加数はこれまでで最多。中国以外で感染者が2万人を超えたのはイタリアが初めて。地域別で感染者が最も多いのは大都市ミラノがある北部ロンバルディア州で1万1685人。いずれも北部のエミリアロマーニャ州が2644人、ベネト州が1937人で続いた。首都ローマのあるラツィオ州は357人。感染者のうち回復したのは1966人。これまでに10万9170件のウイルス検査を実施した。
米、入国禁止を英に拡大 欧州との交流停滞、深刻に 3/15
米政府は14日、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために導入した欧州26カ国からの入国禁止措置を、16日から英国とアイルランドに拡大すると発表した。ペンス副大統領がホワイトハウスでの記者会見で明らかにした。米商務省の統計によると、英国は欧州の中で最も米国への人の移動が多く、欧米間の交流の停滞が深刻になりそうだ。また、会見の冒頭でトランプ大統領は、感染が急拡大する米国内の移動制限について「検討している」と述べた。
スペイン全土で外出制限 非常事態、首相の妻も感染 3/15
スペインのサンチェス首相は14日、新型コロナウイルスの感染急拡大を受けて緊急閣議を開き、非常事態を宣言した。特別な措置が可能となり、仕事や生活必需品の買い物など一部の例外を除き全土で外出を制限すると発表した。地元メディアが伝えた。公共放送によるとスペインの感染者は14日、6千人を超え、欧州ではイタリアに次ぐ数。死者は190人を超えた。またサンチェス氏の妻ベゴニャ・ゴメスさんも感染していることが確認された。首相夫妻の体調は良いとしている。スペインでは閣僚2人の感染も既に確認されている。
レストランなど閉鎖、イスラエル コロナ感染拡大を阻止 3/15
イスラエルのネタニヤフ首相は14日、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかけるため、レストランやホテル、ショッピングモールなどの商業施設を15日から閉鎖すると発表した。薬局やスーパーマーケットは営業を続ける。また感染者の行動を追跡するため、通常はテロ防止目的で使う技術を転用する意向も表明した。内閣の許可を得た後に使用を始めるという。イスラエルは入国者全員に14日間の隔離措置を行い、観光客の入国を事実上拒否。小学校から大学までを休校にしている。
リビアが非常事態宣言 暫定政権、空港など閉鎖 3/15
内戦で国家分裂状態にあるリビア暫定政権のシラージュ首相は14日、新型コロナウイルスを巡り非常事態を宣言した。国内で感染者は確認されていないが、ロイター通信によると予防的措置として16日から全ての港や空港を閉鎖するという。シラージュ首相は大学や学校を2週間休校にすると表明。結婚式場や人が集まるカフェも休業にするとしている。
ノルウェーが港や空港など閉鎖 新型コロナ感染拡大抑止で 3/15
ノルウェーのソールバルグ首相は14日、新型コロナウイルスの感染拡大抑止のため、国内の港や空港などを16日から閉鎖すると発表した。ロイター通信が伝えた。外国からの入国は規制するが、隣国スウェーデンとの国境は閉鎖しない。ノルウェーでは14日までの感染確認者が900人を超えた。
韓国のコロナ感染増、百人下回る 1日の確認者、3週ぶり 3/15
韓国保健福祉省は15日、新型コロナウイルスの新規感染確認者が14日からの1日で76人だったと発表した。累計の感染確認者は8162人。死者は3人増え計75人。同省によると、1日当たりの感染確認者が100人未満となったのは2月21日以来、約3週間ぶり。ただ、ソウルなど各地で集団感染が続いており、韓国政府は緊張を緩めていない。南東部・大邱市などの多発地域で減少傾向にあることが要因。韓国では、多い日には1日に500人以上の新規感染者が確認されていた。しかし、保健当局は「まだ安心できる状態ではない」と強調している。
中国の新型コロナ死者3199人 日本から入国の疑い例も 3/15
中国政府は15日、新型コロナウイルスによる中国本土での死者が14日に10人増え、計3199人になったと発表した。感染者は20人増え、8万844人になった。また北京市政府は15日、感染が疑われる入国者が14日に8人確認され、うち1人は日本から到着したと発表した。新たな死者はいずれも湖北省武漢市。新たな感染者のうち4人は武漢で確認され、残り16人は中国本土外から北京や上海、浙江省などを訪れた人だった。こうした本土外から来た人の感染者の累計は111人になった。
世界のコロナ感染者、15万人超 欧州中心に拡大、勢い衰えず 3/15
共同通信の集計によると、新型コロナウイルスの感染者が15日、世界全体で15万人を超えた。8万人超で依然過半数を占める中国が今月に入ってほぼ横ばいで推移しているのに対し、欧州を中心に世界各地での感染拡大の勢いが衰えず、終息に向けた展望は開けないままとなっている。
世界保健機関(WHO)によると、感染者が5万人を超えたのは2月15日付で、この時点では中国以外の感染者は全体の1・2%にすぎなかった。だが2月26日に、中国以外の新規感染者が中国本土を上回るようになり局面が転換。3月7日付報告では、中国以外の感染者が初めて全体の2割を超えた。
イタリア滞在歴の2人感染 羽田空港検疫で判明 3/15
厚生労働省は15日、羽田空港に到着した10〜20代の男性2人が新型コロナウイルスに感染していたと発表した。2人はイタリアの滞在歴があった。空港での検疫検査で14日に判明し、東京都内の医療機関に搬送された。厚労省によると、2人に発熱やせきなどの症状はない。20代の男性は2〜6日にイタリアに滞在した後フランスに移動し、アラブ首長国連邦のドバイ経由で13日に帰国した。10代の男性はイタリアに半年間滞在しており、14日に帰国していた。
カザフスタンが非常事態宣言 中央アジアに感染拡大の兆し 3/15
中央アジアのカザフスタンのトカエフ大統領は15日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、16日から1カ月間の非常事態を導入する大統領令に署名した。商業施設、映画館、劇場などの営業を停止し、多数が集まるスポーツや式典の開催も禁止。外交官や国際機関職員らを除き出入国も制限する。中央アジア5カ国では3月に入っても当局が確認した感染者がゼロの状況が続いていたが、カザフで13日に初めて感染者が確認され、15日に8人まで増加。ウズベキスタンでも15日に初感染者が確認されるなど拡大の兆候を示している。
シンガポール、日本から入国規制 東南アジアからも 3/15
シンガポール保健省は15日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、日本や東南アジアなどを2週間以内に訪れた渡航者に対し、入国後の2週間、自宅などからの外出を禁止すると発表した。16日夜から開始する。また、シンガポール人に対し、全ての不要不急の海外渡航を30日間控えるよう求めた。
イラン、死者が700人超に 感染者は1万4千人 3/15
イラン保健省報道官は15日、新型コロナウイルスに感染した死者が前日から113人増えて724人になったと発表した。感染者は1209人増加し計1万3938人になったとしている。
クルーズ船、乗客15人感染確認 計712人に、厚労省発表 3/15
厚生労働省は15日、新型コロナの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から急病で医療機関に搬送されるなどした乗客を検査した結果、日本人6人を含む50〜70代の15人の感染が確認されたと発表した。このうち11人は船内の検査では陰性だった。クルーズ船を巡る感染者は計712人となった。下船後に政府施設で健康観察を続けていた乗員145人については、11〜13日に検査を実施した結果、全員が陰性だったとした。また厚労省は、下船し自宅に戻るなどした乗客1011人に対する14日間の健康フォローアップ調査を終え、7人が感染していたと発表した。
国内の感染者、1500人超え 死者は31人 3/15
国内では15日、新たに31人の新型コロナウイルス感染が確認され、感染者はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員を含めて1513人になった。札幌市の80代女性と名古屋市の高齢男性が死亡し、国内の死者は31人となった。各自治体によると、都道府県別の新たな感染者は北海道4人、東京3人、神奈川5人、滋賀1人、大阪4人、兵庫11人、和歌山1人。厚生労働省は、羽田空港に到着した男性2人が感染していたと発表、2人はイタリアでの滞在歴があった。北海道は10歳未満の男児が含まれている。死亡した名古屋市の男性は通所介護で感染が広まった集団に含まれている。 
 
 
 3/16

 

●新型ウイルス 国内感染者は計819人に(クルーズ船など除く) 3/16 
各地の自治体や厚生労働省によりますと、16日午後9時現在、北海道、愛知県、大阪府、新潟県、群馬県、兵庫県、滋賀県で新たに合わせて15人の感染確認が発表され、日本で感染した人などは819人となりました。
このほかクルーズ船の乗客・乗員が712人、チャーター機で帰国した人が14人で、合わせて1545人となっています。このうち死亡したのは、国内で感染した人が28人、クルーズ船の乗船者7人の合わせて34人です。
日本で感染した人や中国からの旅行者ら815人のうち、北海道は152人、愛知県は123人、大阪府は108人、東京都は90人、兵庫県は82人、神奈川県は55人、千葉県は31人、埼玉県は29人、京都府と新潟県は17人、和歌山県は15人、高知県は12人、三重県と奈良県は8人、石川県は7人、群馬県と熊本県は6人、長野県は4人、静岡県、滋賀県、山口県、福岡県、沖縄県は3人、秋田県、福島県、栃木県、山梨県、岐阜県、愛媛県は2人、宮城県、広島県、徳島県、長崎県、大分県、佐賀県、宮崎県は1人、厚生労働省の職員や検疫官、それに空港の検疫で感染が確認された人などが合わせて15人です。 
●欧州株が再び急落 英独仏、一時9〜10%安  3/16 
週明け16日の欧州株式相場は、前週末の上昇から一転して再び大幅安となっている。フランスの株価指数CAC40は一時10%あまり急落したほか、ドイツ、英国の株価指数も9%下げる場面があった。新型コロナウイルスの域内での感染拡大が加速しており、運用リスクを回避する換金売りが続いた。欧州株全体の値動きを示す主要600社の指数「ストックス600」は一時9%下げ、取引時間中として2012年11月以来の安値水準を付けた。前週末以降、新型コロナ対策としてドイツなどで国境封鎖の動きが広がり、景気への悲観的な見方がさらに強まった。米連邦準備理事会(FRB)は追加の緊急利下げを打ち出したが、下支えにはなっていない。英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ親会社のインターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)は、値下がり率が2割以上に達した。金融や小売りなど幅広い銘柄が売られている。債券市場ではイタリア、スペイン、ギリシャなど南欧の国債に売りが続いた。イタリアの10年物国債利回りは一時2.1%前後と、前週末の1.8%程度から上昇(債券価格は下落)した。新型コロナによる経済混乱で財政悪化に警戒感が強まっている。 
●厚労省 クラスター全国15か所 地図で公開 新型コロナウイルス  3/16 
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、厚生労働省はクラスターと呼ばれる感染者の集団がどこで発生しているかを示した地図をホームページで公開しました。全国10都道府県で合わせて15か所発生しているとしています。厚生労働省は専門家の分析を基に15日までに全国で発生したクラスタ=感染者の集団を地図にまとめ、ホームページで公開しました。それによりますと、5人以上のクラスターは北海道から大分県まで10都道府県の合わせて15か所にのぼっています。
規模別では、
〇 50人以上が1か所。
〇 10人以上50人未満が10か所。
〇 5人以上10人未満が4か所となっています。
都道府県別では、
〇 北海道でライブバーや、展示会・夕食会を介した感染が2か所。
〇 千葉県でスポーツジムや福祉施設を介した感染が2か所。
〇 東京都で屋形船を介した感染が1か所。
〇 神奈川県で福祉施設を介した感染が1か所。ここには、JR相模原駅の関係者なども含まれているということです。
〇 新潟県で卓球スクールを介した感染が1か所。
〇 愛知県でスポーツジムや福祉施設を介した感染が2か所。
〇 大阪府でライブハウスを介した感染が1か所。ここには、複数のライブハウスの参加者や、その接触者などが含まれているということです。
〇 兵庫県で医療機関や福祉施設を介した感染が3か所。
〇 和歌山県で医療機関を介した感染が1か所。
〇 大分県で飲食店を介した感染が1か所となっています。
厚生労働省は、こうした地域にクラスター対策班のメンバーを派遣し、感染の拡大を防ぐための対策にあたっています。
対応の医療関係者 名古屋市に負担軽減要望
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、名古屋市で「クラスター」と呼ばれる感染者の集団の対応にあたっている医療関係者の団体が、名古屋市役所を訪れ、医療現場の負担軽減などを要望しました。
愛知県内の新型コロナウイルスの感染者は、15日までに121人にのぼり、このうち12人が死亡しました。
こうした中、主に名古屋市南東部の福祉施設で発生しているクラスターに対応している「名古屋南部地域医療連携推進協議会」が名古屋市役所を訪れ、河村市長に要望書を手渡しました。
要望書では、市の南東部の病院の負担が大きいとして他の地域にも患者の受け入れを求めているほか、患者や医療関係者が差別的な扱いを受けたこともあるとして、新型コロナウイルスについて適切な情報を公開することなどを求めています。
これに対し河村市長は「医療現場の皆さんを守るため、全力投球したい」と述べ、医療現場の負担の軽減に努める考えを示しました。
要望のあと名古屋南部地域医療連携推進協議会の絹川常郎代表幹事は「地域の病床の数を超える数の患者が発生していて、軽症の患者を回す病院の確保などの対応を求めた。市長は何らかのアクションを取ってくれると思う」と述べ、市の対応に期待を示しました。 
●世界の感染者 3/16 
国内新たに11人感染 愛知、北海道で計3人死亡 3/16
国内では16日、新たに11人の新型コロナウイルス感染が確認され、感染者はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員を含めて1539人になった。北海道で80代男性、名古屋市で70〜80代の男性2人が死亡し、死者は34人となった。各自治体によると、都道府県別の新たな感染者は、北海道4人、大阪2人、群馬、新潟、愛知、滋賀、兵庫各1人。北海道によると、亡くなった男性は呼吸器疾患があった。感染が確認された時には重症だったという。15日には31人の新たな感染が確認され、ダイヤモンド・プリンセスの乗客乗員の感染者も15人増え、累計で1500人を超えた。
世界の感染者、中国上回る 拡大防止の主戦場、欧州へ 3/16
新型コロナウイルスの感染は世界各国で拡大し、各国政府の発表などによると、16日午前の時点で感染者は16万6千人、死者は6千人に達した。欧州など各地の感染者数が初めて中国本土を上回った。中国が今月に入ってほぼ横ばいで推移しているのに対し、欧州を中心にした感染拡大の勢いが衰えず、終息への展望は開けていない。拡大防止の「主戦場」は中国から欧州に完全に移行した。各国の発表や主要メディアの報道を共同通信が集計。中国本土の感染者は8万860人。イタリアが2万4千人を超え、スペイン、フランスなども拡大が続き欧州全体の感染者は4万人を大きく超えた。 
●東京株式市場  3/16 
東京株式市場 売り買い交錯 荒い値動き  3/16
日銀が16日、金融政策決定会合を前倒しで開き追加の政策対応に踏み切る見通しとなったことから、16日の東京株式市場では、取り引き開始直後に日経平均株価が200円以上値上がりしましたが、その後は売り買いが交錯し、荒い値動きとなっています。
新型コロナウイルスの感染拡大による金融市場の混乱に歯止めをかけるためアメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が16日朝、事実上のゼロ金利政策に踏み切ることを決めたのに続き、日銀も16日正午から金融政策決定会合を前倒しで開き、追加の政策対応に踏み切る見通しとなりました。
これを受けて東京株式市場では取り引き開始直後に買い注文が集まり、日経平均株価は一時200円以上値上がりしました。
しかしその後は200円以上値下がりするなど、方向感の定まらない展開となっています。日経平均株価、午前の終値は先週末の終値より18円54銭高い1万7449円59銭。東証株価指数=トピックスは、6.69上がって1268.39となっています。午前の出来高は10億8429万株でした。市場関係者は「日銀の政策対応への期待もある一方で内容を見極めたいという投資家も多く、方向感が定まらない展開となっている」と話しています。
東証大引け 続落 日銀緩和姿勢に失望感 3年4カ月ぶり安値 3/16
16日の東京株式市場で日経平均株価は4日続落し、前週末比429円01銭(2.46%)安の1万7002円04銭と、2016年11月9日以来約3年4カ月ぶりの安値で終えた。日銀は16日に前倒しで開催した金融政策決定会合で上場投資信託(ETF)の買い入れ額を当面12兆円と倍増を決めた。追加の金融緩和を受け、上げ幅を300円あまりに広げる場面があったが、基本的な買い入れペースは従来通り6兆円ともしたため、徐々に取り組み姿勢に対する失望感が広がり、大引けにかけて売りがかさんだ。下げ幅は一時500円を超えた。
「日銀が買い支えることによって日本株の割高感が目立ち、むしろ外国人投資家の利益確定売りが増えるとの思惑が広がった」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)との声が聞かれた。
米連邦準備理事会(FRB)は米国時間15日(日本時間16日早朝)、緊急の連邦公開市場委員会(FOMC)を開催。ゼロ金利政策と量的緩和の再開を決めた。企業の資金繰りが改善するとの見方と景気の悪さを再確認させられたとの見方が交錯し、投資家の反応はまちまちだった。
JPX日経インデックス400は4日続落し、終値は前週末比252.05ポイント(2.22%)安の1万1118.66だった。東証株価指数(TOPIX)は4日続落し、25.36ポイント(2.01%)安の1236.34で終えた。
東証1部の売買代金は概算で3兆3191億円。売買高は23億4569万株だった。東証1部の値下がり銘柄数は1098と、全体の約5割を占めた。値上がりは1019、変わらずは49だった。ソフトバンクグループ(SBG)、東エレク、オリンパスが売られた。アステラスや京セラも安い。KDDI、中外薬、丸井Gは買われた。 
 
 
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●東京都内で新たに12人の感染確認 感染者数 計102人に  3/17 
都内に住む合わせて12人が、新たに新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。都内で感染が確認されたのはこれで100人を超えて、102人になりました。
東京都によりますと、新たに感染が確認されたのはいずれも都内に住む40代から60代の男性11人と女性1人の合わせて12人です。いずれも3月に入って発熱やせきなどの症状が出ましたが、重症の人はいないということです。12人のうち1人は、日本サッカー協会の田嶋幸三会長だということです。また3人は、すでに感染が確認されている人の家族や知人などで、「濃厚接触者」として検査を受けた結果、感染がわかったということです。
都内で感染が確認されたのはこれで100人を超えて、102人になりました。東京都福祉保健局健康安全部の高橋博則部長は「今後、感染者が増え続けるかどうかは判断がつかない。感染した人の濃厚接触者を各保健所で調査していて、これ以上、拡大しないように取り組んでいるところだ」と話していました。 
●世界同時不況のおそれ? 新型コロナで景気は… 3/17 
年率マイナス2.89%。民間のエコノミストが試算した、日本の1月から3月までのGDP=国内総生産の伸び率の平均値です。GDPは2期連続でマイナスとなり、欧米ではリセッション=景気後退期と見なされる局面に入る可能性が高まっています。「リーマンショック以来の水準」「東日本大震災以来のマイナス」など、経済指標も相次いで厳しい現状をうつしています。新型コロナウイルスの感染拡大で、日本、そして世界の景気はどうなるのでしょうか? 
●新型コロナウイルスを巡る海外の状況 (17日現在) 
欧州連合(EU)と中国が3月末に北京で開催を予定していた首脳会議が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期になった。
フランスのルメール経済・財務相は17日、450億ユーロ(502億ドル)規模の企業支援措置を導入する考えを示した。
コンサルティング会社ツーリズム・エコノミクスは、今年の海外旅行が前年比で少なくとも10.5%減と、過去最大の減少を記録するとの見通しを示した。新型コロナウイルスの感染が急激に拡大していることが背景。
台湾の蔡英文総統は17日、新型コロナウイルスを持ち帰らないようにするため、市民に域外へ旅行しないよう呼びかけた。台湾当局は感染者が初めて2桁増加したと発表、すべて域外での感染症例だったことを受けた。
トランプ米大統領がツイッターで、新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼んだことについて、中国外務省は17日、中国を中傷するものだとして強く抗議した。
ドイツのアルトマイヤー経済相は、新型コロナウイルス感染拡大の影響は5月末まで続くとの見通しを示した。
オーストラリアのピーター・ドハーティー感染・免疫研究所は17日、人間の免疫システムの新型コロナウイルスへの反応が、インフルエンザに対する場合と同じことが分かった、と明らかにした。ハント豪保健相は、ワクチンや治療法の開発に向けた重要な一歩となる、と評価した。
インドは新型コロナウイルスの感染対策として、最も有名な観光名所のひとつであるタージ・マハルを閉鎖した。また、同国の金融センターであるムンバイは16日夜、必要不可欠なサービスを提供している場合を除き、オフィスのスタッフの半分を在宅勤務とするよう命じた。
ロイターの集計によると、17日時点で新型コロナウイルスの感染者は世界全体で18万2260人を超え、死者は7100人を突破した。中国以外の国・地域での感染者・死者数は、新型コロナが発生した中国を上回った。
中国当局の17日の発表によると、中国本土の新型コロナウイルスの新たな感染者は16日に21人と、前日の16人から増加した。国内の感染者は減っているが、海外からの渡航者が感染しているケースが後を絶たず、増加ペースをゼロに抑える当局の取り組みは難航している。
ニュージーランド(NZ)政府は17日、新型コロナウイルス感染拡大による同国経済への悪影響を和らげるため、121億NZドル(73億1000万米ドル)規模の経済対策を発表した。
韓国政府は17日、入国者に対する検疫強化措置である特別入国手続きの適用対象を全ての国に広げると発表した。19日から実施する。新型コロナウイルスの国内感染者数の増加ペースが落ちるなか、水際対策を一段と強化する。
マレーシアは、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の財務相・中銀総裁の代理級会合を延期した。会合は17日から3日間開催される予定だった。
ブラジル政府は16日、新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響を和らげるため、約1500億レアル(300億ドル)の景気支援策を発表した。
米インターネット通販大手アマゾン・ドット・コムは16日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ネット注文が急増していることを背景に、米国の倉庫と配送センターで10万人を雇用すると発表した。
米市場で、米連邦準備理事会(FRB)に対しコマーシャル・ペーパー(CP)市場への流動性供給策を求める声が高まっている。新型コロナウイルスの感染拡大による信用市場の動揺で、ここ数週間にCP市場の流動性が枯渇しているためだ。また、資本市場から締め出された企業が短期の資金調達に走り、新規発行が急増するとの観測から、CPの価格は下落している。
香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は17日、新型コロナウイルス感染拡大予防策として、19日午前0時から入境者全員を14日間の強制隔離の対象にすると発表した。
米オハイオ州のマイク・デワイン州知事は、新型コロナウイルスの感染拡大による公衆衛生上の緊急事態を理由に、17日に予定されている大統領選予備選を延期する方針を示した。16日夜にツイッターで明らかにした。
米ピープル誌によると、オーストラリアで新型コロナウイルスへの感染が確認され、隔離されていた米俳優トム・ハンクス(63)さんがクイーンズランド州の病院から退院した。
中国国家発展改革委員会(発改委、NDRC)は17日、新型コロナウイルスの感染拡大による影響軽減に向けた政府の措置に効果が表れるのに伴い、中国経済は第2・四半期に正常化するとの見通しを示した。
大手米銀8行は16日、米連邦準備理事会(FRB)の割引窓口(ディスカウント・ウィンドウ)貸出制度を利用する方針を明らかにした。
米航空機大手ボーイングは16日、同社と航空業界全体への短期的な公的支援について、ホワイトハウス高官や議会首脳と協議しているとの報道を認めた。
米国の首都ワシントンDCのバウザー市長は16日、新型コロナウイルスの感染防止策として、飲食店や娯楽施設への新たな規制を発表した。
ギャラップが発表した最新調査によると、米国民のうち、自分または家族が新型コロナウイルスに感染する可能性を「大変」または「ある程度」懸念しているとの回答の割合が、2月の36%から60%に上昇した。
米ファストフード大手マクドナルドと米コーヒーチェーン大手スターバックスは16日、米国内店舗の多くで飲食スペースを閉鎖し、持ち帰りとデリバリーサービスのみの営業にすることを決定した。
フィリピン証券取引所は17日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、トレーダーや従業員の安全確保のため、取引を無期限で停止した。
ユーロ圏財務相(ユーログループ)のセンテノ議長(ポルトガル財務相)は16日、「あらゆる手段を尽くして」新型コロナウイルス感染拡大による経済的影響から市民と通貨を守り、信頼回復と早期の景気回復を実現すると表明した。
フランスのマクロン大統領は16日、新型コロナウイルスの感染拡大を遅らせるため、買い物や通勤を除き外出を厳しく制限すると発表した。また、フランスは新型コロナとの闘いで「戦争状態にある」とし、患者の搬送に軍を出動させる方針を明らかにした。
英国のジョンソン首相は16日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染防止策として、不必要な他者との接触を避け、旅行もできるだけ控えるよう国民に要請した。
米カリフォルニア州のサンフランシスコベイエリア周辺の自治体は16日、新型コロナウイルス対策で不要不急な外出を4月7日まで自粛するよう勧告した。17日午前0時から実施され、サンフランシスコやサンタクララなどの6郡の約670万人の市民が対象となる。
フランス・オリンピック委員会のマセリア会長は16日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)が5月末までに終息しない限り、2020年東京五輪を予定通り7月に開催することはできないと述べた。
トランプ米大統領は16日、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた指針を強化し、10人以上の集会や不要不急の旅行、レストランやバーでの飲食を避けるよう促した。
イタリア当局は16日、新型コロナウイルスによる国内の死者数が前日から349人(19.3%)増加し、2158人になったと明らかにした。
米疾病対策センター(CDC)は16日、米国内で確認された新型コロナウイルス感染が3536人と、13日から1858人増加したと発表した。
米医薬品・健康関連用品大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は16日、抗エイズウイルス(HIV)治療薬「プレジスタ」(一般名:ダルナビルエタノール付加物)について、新型コロナウイルス患者への有効性は実証されていないとの見解を示した。
チリ中央銀行は16日、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けた緊急措置として、主要政策金利を1.75%から1.0%に引き下げると発表した。
ロシアは16日、新型コロナウイルスの感染拡大阻止に向け、全国的な全てのスポーツイベントの中止などの措置を打ち出した。首都モスクワでは公立学校が休校されるほか、50人以上の屋内での集会が禁止される。
カナダは16日、新型コロナウイルスの感染拡大阻止に向け、米国民とカナダ永住権保有者以外の外国人の入国を禁止すると発表した。また、国民に対しできるだけ自宅にとどまるよう呼び掛けた。
米国務省のオルタガス報道官は声明で、ポンペオ国務長官が中国の外交担当トップである楊潔篪・共産党政治局員と電話会談し、新型コロナウイルスの責任を米国に押し付けようとする中国の試みに「強い異議」を伝えたと発表した。
G7(主要7カ国)首脳は16日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けテレビ会議を開いた。世界的流行への対応を最優先課題とし、世界経済の安定を支援するため保健対策で協調体制を取ると表明した。
ドイツは16日、新型コロナウイルスの感染拡大阻止に向け、食料品店や薬局などを除く大半の小売店の休業や、レストランの営業時間の制限のほか、宗教施設などでの集会の禁止を含む抜本的な措置を発表した。これによりほぼすべての国民が自宅待機状態になっているイタリアとスペインの状況に一歩近づいた。
米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長は16日、年末までの給与税減税が議会で承認された場合、新型コロナウイルスを巡る景気対策の規模は8000億ドル超にも達するという認識を示した。
欧州連合(EU)は16日、新型コロナウイルスの感染拡大阻止に向け、非EU加盟国の国民が不要不急の要件でEU域内に入ることを30日間禁止することを提案した。ただ、こうした措置は遅きに失しただけでなく、規模が小さ過ぎるとの批判が出ている。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は16日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を抑え込むには各国による検査体制の強化が必要という認識を示した。
トランプ米大統領は16日、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた指針を強化し、10人以上の集会や不要不急の旅行、レストランやバーでの飲食を避けるよう促した。
米コーヒーチェーン大手スターバックスは16日、米・カナダで急速に拡大している新型コロナウイルス感染への対応で、少なくとも今後2週間、店舗を持ち帰り専門にすると発表した。
イタリアは16日、欧州最悪となっている新型コロナウイルスの被害を受け、250億ユーロ(280億ドル)規模の経済支援策を定めた緊急法令を布告をした。
新型コロナウイルスの影響により、欧州の経済成長率が今年、マイナス1%になる可能性がある。欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が資料を公開した。
米連邦準備理事会(FRB)の金融調節を担うニューヨーク連銀は、16日午後に最大5000憶ドルのレポオペ第2弾を実施すると発表した。
インド準備銀行(中央銀行)は16日、新型コロナウイルスの流行に直面する中で、政策措置を「検討し、調整している」との見方を示した。
世界の航空大手が加盟するワンワールド、スカイチーム、スターアライアンスの3航空連合は16日、共同声明を発表し、各国政府に対し新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受けた航空各社を支援するよう呼び掛けた。
米ホワイトハウスは16日、新型コロナウイルス対策で、全米での外出禁止令の発令を巡り積極的に検討していないと明らかにした。
欧州投資銀行(EIB)は欧州連合(EU)財務相に対し、新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受けた中小企業に対し直ちに280億─400億ユーロの支援を実施できると表明した。
オーストリア政府は16日、新型コロナウイルス感染者が1018人に増加したことを受け、景気下支えに向けた40億ユーロの支援金に加え、20億ユーロの融資保証を供与すると発表した。
米ニューヨーク州のクオモ知事とニューヨーク市のデブラシオ市長は16日、新型コロナウイルス感染の封じ込めに向け州政府や地方政府がそれぞれ独自に取っている措置では不十分とし、トランプ大統領に対し全国レベルの措置を調整するよう呼び掛けた。
英国は新型コロナウイルス対策としてフォードやホンダ、ロールスロイスなど製造業大手に対し、人工呼吸器など医療器具の製造支援を要請することが分かった。
米エネルギー省は、トランプ大統領が先週末に戦略石油備蓄(SPR)の補充を指示したことを受け、早ければ2週間以内に原油の買い取りを開始する可能性がある。同省関係者が16日、明らかにした。買い取りは数カ月間継続するとみられる。
独経済省は16日、新型コロナウイルスの感染が欧州でも拡大していることを受け、独経済が第1・四半期に上向くとの観測は後退し、影響は少なくとも第3・四半期まで継続するとの見解を示した。
国際オリンピック委員会(IOC)は17日に国際競技団体のトップと会合し、新型コロナウイルス流行への対応を協議する。電話会議による臨時理事会も開催し、最新の動向について話し合う。関係筋が明らかにした。
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は16日、新型コロナウイルスの感染拡大で経済に長期的な影響が及ばないよう、各国政府に対し協調的な財政・金融政策を実施するよう呼び掛けた。
ナバロ米大統領補佐官(通商製造政策局長)は16日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、医療物資サプライチェーン(供給網)の海外依存低減に関する大統領令を準備中と表明した。CNBCとのインタビューで明らかにした。
イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー新総裁は16日、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で英経済が衝撃を受けた場合、中銀は「速やかに」追加措置を取ると確約した。  
 
 
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●新型ウイルス 国内感染者は計868人(クルーズ船など除く)  3/18 
各地の自治体や厚生労働省が発表した新型コロナウイルスの感染者などの人数です。18日は午前10時半までに愛媛県と岐阜県で合わせて2人の感染確認が発表され、日本で感染した人などは868人となりました。
このほか、クルーズ船の乗客・乗員が712人、チャーター機で帰国した人が14人で合わせて1594人となっています。このうち死亡したのは、国内で感染した人が29人、クルーズ船の乗船者7人の合わせて36人です。
日本で感染した人や中国からの旅行者ら868人のうち、北海道は152人、愛知県は125人、大阪府は112人、東京都は102人、兵庫県は86人、神奈川県は59人、千葉県は31人、埼玉県は34人、新潟県は21人、京都府は19人、和歌山県は15人、高知県は12人、群馬県は10人、三重県は8人、奈良県は8人、石川県は7人、熊本県は6人、長野県は4人、滋賀県は4人、福岡県は4人、静岡県は3人、岐阜県は3人、山口県は3人、愛媛県は3人、宮崎県は3人、沖縄県は3人、秋田県は2人、福島県は2人、栃木県は2人、山梨県は2人、宮城県は1人、茨城県は1人、広島県は1人、徳島県は1人、香川県は1人、長崎県は1人、大分県は1人、佐賀県は1人、厚生労働省の職員や検疫官、それに空港の検疫で感染が確認された人などが合わせて15人です。
厚生労働省によりますと、重症者は17日の時点で、国内で感染した人などが46人、クルーズ船の乗船者が14人の合わせて60人となっています。一方、国内で感染が確認された人のうち、17日までに症状が改善して退院した人などは、クルーズ船の乗客乗員を含めて合わせて679人となっています。 
●感染者確認の国と地域162 感染者17万9100人超 WHO  3/18 
WHO=世界保健機関の発表などによりますと、新型コロナウイルスの感染が確認された国と地域は17日現在、162となっています。感染者の数は、前の日に比べ1万1526人増えて17万9112人、死者の数は、475人増えて7426人となっています。 
●中国 新たに13人が新型ウイルスに感染 感染者は8万894人に  3/18 
新型コロナウイルスについて中国の保健当局は17日、新たに13人の感染が確認され、中国での感染者は合わせて8万894人になったと発表しました。新たな感染者のうち状況が最も深刻な湖北省武漢での感染者は、16日に続いて1人にとどまっていて、そのほかの12人については、すべて海外から中国への入国者だとしています。また、死亡した人は湖北省で11人増えて、中国での死者は合わせて3237人になりました。 
●株価 終値1万7000円下回る 3年4か月ぶり  3/18 
18日の東京株式市場は取り引き開始直後に日経平均株価は300円以上値上がりしたものの、その後売り注文が優勢となり、終値は280円余り値下がりし、3年4か月ぶりに1万7000円を下回りました。
18日の東京株式市場は、ニューヨーク市場で株価が大きく値上がりしたことを受けて取り引き開始直後は買い注文が広がり、日経平均株価は一時300円以上値上がりしました。しかし午後に入って売り注文が急速に膨らんで値下がりに転じ、日経平均株価の終値はきのうより284円98銭安い、1万6726円55銭となりました。
日経平均株価の終値が1万7000円を下回るのは、2016年11月以来3年4か月ぶりで、アメリカの大統領選挙でトランプ大統領が勝利したころの水準まで下落したことになります。また、日経平均株価は、ことしに入っておよそ30%下落したことになります。
一方、東証株価指数(トピックス)は2.38上がって1270.84でした。1日の出来高は27億1881万株でした。
市場関係者は「新型コロナウイルスの感染拡大が続く状況で世界経済の先行きに対する懸念は根強く、株価はいったん値下がりすると売りが売りを呼ぶ展開になりやすくなっている。当面は荒い値動きが続くだろう」と話しています。 
●米 ダウ平均株価 終値1000ドル余り上昇 一時は2万ドル割れ  3/18 
17日のニューヨーク株式市場は値上がりし、ダウ平均株価の終値は前の日に比べて1000ドル余り上昇しましたが、一時3年1か月ぶりに2万ドルを割り込みました。先月末から始まった株価の急落は歯止めがかからず、3週間あまりで9000ドルを超える値下がりを記録したことになります。17日のニューヨーク株式市場ダウ平均株価の終値は、前の日に比べて1048ドル86セント高い2万1237ドル38セントで、新型コロナウイルスの感染拡大に対するアメリカ政府の経済対策や資金繰り措置への期待などから値上がりしました。
前日にこれまでで最大の3000ドル近い値下がりとなったダウ平均株価は17日は不安定な値動きで始まり、取り引き開始から30分後に1万9882ドルまで値下がりし、2万ドルの大台を割り込みました。2万ドルを下回るのは2017年2月以来、3年1か月ぶりのことです。
ダウ平均株価はトランプ大統領が就任して以降、上昇を続け、2月12日には最高値となる2万9551ドルをつけ、3万ドルも視野に入っていました。ところが2月24日以降、急速に下落し、わずか3週間あまりで9000ドルを超える大幅な値下がりを記録したことになります。
市場では新型コロナウイルスの感染拡大による経済への悪影響は長期化するとの見方が広がっており、株価も当面不安定な動きが続きそうです。
トランプ大統領「ウイルスに打ち勝てば元どおりに」
トランプ大統領は17日、記者会見で「一時的に犠牲を払うことで、アメリカ人の健康を守ることができ、その後、アメリカ経済は急速に好転することになる。今、行うべき最大のことは、ウイルスに打ち勝つことで、それができれば、先例がないくらい見事に元どおりに回復するだろう」と述べ、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めれば、経済状況はただちに好転するという考えを示しました。 
 
 
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●新型コロナウイルス、現在の感染者・死者数 3/19 
各国当局の発表に基づきAFPがまとめた統計によると、日本時間19日午後8時現在での世界の新型コロナウイルス感染者数は157の国・地域で21万7510人に達し、うち9020人が亡くなった。18日午前4時以降、世界全体で新たに236人の死亡、8015人の感染が確認された。
昨年12月末に新型ウイルスが最初に発生した中国では、香港とマカオ(Macau)を除く本土の感染者は8万928人で、うち3245人が死亡、6万9601人が回復。18日以降、新たに発表された感染者は34人、死者は8人だった。中国以外では19日午後8時時点で、死者が228人増えて5775人に、感染者は7981人増えて13万6590人となった。中国以外で被害が大きな国は、イタリア(死亡2978人、感染3万5713人)、イラン(死亡1284人、感染1万7361人)、スペイン(死亡598人、感染1万3716人)、フランス(死亡264人、感染9134人)。日本時間の19日午前4時以降、初の死者が出た国はパキスタン、ロシア、コスタリカ、メキシコ。初の感染者が確認された国はモーリシャス、バルバドス、ザンビア、フィジー、バハマ、エルサルバドル、ニカラグア。この統計は、各地のAFP支局が各国当局から収集したデータと世界保健機関(WHO)からの情報に基づいたもので、死者の集計方法や検査体制が国によって異なる事実を考慮している。 
●米国株式市場 3/19 
米国株式市場1338ドル安、ダウ平均はトランプ相場の上げ消失
米国株式市場は大幅反落。新型コロナウイルスを巡る懸念から、最近の売りが再び強まった。ダウ平均は1338ドル下落し、2017年のトランプ大統領就任以降に記録した上げを全て失った。S&P総合500種は下げ幅を縮小して引けたが、それでも5.2%安。2月19日の終値ベースの最高値から約29%下落している。ホテルや空港では利用客が急減し、航空会社は損失抑制に向け従業員に無給休暇の取得を要請。これを受け、S&P1500航空株が20.8%安となり、ヒルトン、マリオット、ハイアットなどのホテル株が12─19%値下がりした。
エドワード・ジョーンズの投資ストラテジスト、ネラ・リチャードソン氏は「市場は恐怖と不確実性に反応しており、株価が底値を付けるまでは終わらないだろう。底値形成には新型コロナの感染拡大を封じ込め、経済的損害を限定する必要がある」と述べた。
トランプ大統領は約500億ドルの航空業界支援策に加え、総額5000億ドルの現金給付案を議会に提案したが、株安に歯止めはかからなかった。
JPモルガンは新型コロナの影響により、米経済が今四半期に4%、次の四半期に14%縮小し、通年では1.5%縮小する可能性が高いと発表した。
取引時間中にはS&P500が7%安となったことを受け、取引が15分間停止された。投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数)は76.45に上昇した。
米原油先物がこの日約17%下落して18年ぶりの安値を付けたことを受け、S&Pエネルギーは終値で2003年以来の安値となった。
デフォルト(債務不履行)や評価損の計上が相次ぐとの懸念から銀行株も売られ、S&P銀行株指数は7.9%安となった。
航空機大手ボーイングは17.9%の大幅安。
バンテージポイント・インベストメント・アドバイザーズの最高投資責任者(CIO)、ウェイン・ウィッカー氏は「市場は2月初めには怖いもの知らずのような勢いがあったが、そこからきょうのように希望を失った状況に陥っている」と指摘した。
ニューヨーク証券取引所では、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を12.71対1の比率で上回った。ナスダックでは8.79対1で値下がり銘柄数が多かった。
S&P500構成銘柄では、5銘柄が52週高値を更新し、294銘柄が新安値を付けた。ナスダック構成銘柄では11銘柄が新高値を更新し、1214銘柄が新安値を付けた。
米取引所の合算出来高は185億1000万株。直近20営業日の平均は146億株。
コロナで乱高下、大恐慌以来のレベルに どうなる米国株
新型コロナウイルス問題が米国の株式市場を揺らし続けている。米ニューヨーク市場では18日、ダウ工業株平均が約3年ぶりに2万ドルの節目を割り込んで終えた。トランプ米大統領の就任(2017年1月)からの株価上昇分が消え去った形だ。連日1000〜2000ドルの乱高下が続く荒い値動きは90年前の大恐慌以来のレベルに達し、先が全く見通せない。ダウ平均の18日の終値は前日比で1338ドル(6・3%)安い1万9898ドル。2月につけた最高値からの下落幅は実に1万ドルに迫り、トランプ氏が就任した17年1月20日の終値(1万9827ドル)の水準まで落ち込んだ。激しすぎる値動きを抑えるため、売買を一時的に休止する「サーキットブレーカー」はこの日も発動され、今月は4度目になる。売買再開後も下落は止まらず、一時は1万9000ドルも割り込んだ。この日の相場を大きく引き下げ… 
●新型コロナと株式市場、株価はいったん底入れと見る理由 3/19 
3月11日の拙稿「新型コロナ相場を左右する2つのポイント」では、米国のドナルド・トランプ大統領が「米国は新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)にも大丈夫」という前言を撤回して、本格的な新型コロナ対策に乗り出せば株価は上昇、そうでなければ下落すると述べました。幸いなことに、その後トランプ氏は、明確な前言撤回こそないものの、米国が非常事態にあることを宣言。これにより米国は本格的な新型コロナ鎮圧に乗り出すことになりました。具体的な対策としては、州政府 に対する最大500億ドル(約5兆4000億円)の支援金のほか、学生ローンの利息免除、戦略石油備蓄の積み増しなどです。今回は前回のフォローアップとして今後の新型コロナ問題や株式市場の見通し、新型コロナが政治や国際情勢に与える影響などについて考えてみます。
株式市場は下落からボックス圏での動きへ
「株式市場はまだどうなるか分からない」とお考えの方も多いと思いますが、筆者は今までのような急落は終了、今後は広めのボックス圏(2万1000〜2万5000ドル)での動きにシフトしていくと予想しています。まずこの点について説明します。最近の世界的な株価の急落は、単に新型コロナによる景気や企業業績の悪化を反映しただけのものではありません。それだけであれば、FRB(米連邦準備制度理事会)が3月3日に実施した前回の緊急利下げがもっと効果を発揮したと思います。現実がそうならなかったのは、市場が危惧していたのが米国における新型コロナの爆発的な感染そのものだったからです。なお15〜16日にFRBや日銀が相次いで新たな金融緩和に踏み切りました。けれども、日本株に対してそれほどプラスの影響は見られません。このことからも、今回は金融政策よりも新型コロナ対策が市場での関心事になっていると思います。また16日の米国株の大幅下落については、米国が厳しい状況にあることをトランプ氏が認めたことが、投資家の不安を増幅させたためと考えています。しかし、このトランプ氏の新たな現状認識は今後のコロナ対策に必要なものです。投資家がこの点を理解すれば、逆に株価の押し上げ要因になると見ています
史上最大の催促相場
新型コロナ発生以来、トランプ氏は「米国は大丈夫」との姿勢を貫いてきましたが、日に日に状況は悪化。このままでは米国、ひいては世界が大変なことになりかねないという懸念が高まりました。こうした状況における株価の急落は、トランプ氏にそれまでの姿勢の再考と、積極的な新型コロナ対策への転換を促すものであり、史上最大の催促相場と呼べるものだったと思います。幸いトランプ氏が方針転換したことにより、米国中にウイルスがまん延するという最悪のシナリオは回避されることになりました。これが、株式市場が今後、急落からボックス圏での動きにシフトすると筆者が考える理由です。
新型コロナ再燃リスクに注意
もちろん新型コロナが終息したわけではありません。それでも株式市場への影響は徐々に低下すると見ています。その理由は、中国など一部の国で感染者の発生がピークアウトしていることです。この中国の事例は必要な対策をとれば感染を抑え込むことが可能ということを示していると言えます。また、テレビでコメントする専門家の方々の意見にも、「1年ほどかかる」という見方はありますが、「解決できない」というものはほとんど見かけません。株式市場は不透明性を嫌うので、これまでのように、新型コロナについて分からないことが多い状況では不安心理が増幅されますが、逆に情報が増えてくれば投資家心理は改善します。こうした投資家心理の改善が期待できることもボックス圏への移行を見込む理由です。景気や企業業績についても同様のことが言えます。影響がはっきりしていない現時点では、投資家も資金を株式に投資することをためらいます。しかし、目の前の状況は悪くても、景気や企業業績に対する影響が明らかになってくれば、いったんは売られても、その後は投資対象となることがあるでしょう。ただし、リスクが1つあります。それは、国の指導者が景気を重視するあまり、人の移動に関する規制などの対策を早期に緩めてしまうことです。その場合、新型コロナが勢力を盛り返すリスクがあるでしょう。特に、この問題で求心力の低下が懸念される中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席や選挙を控えた米国のトランプ氏などの動向についてはこのリスクを注視する必要があるでしょう。
米大統領選は実施できるか
次に、新型コロナが政治にもたらす影響について考えてみます。まずは米大統領選についてです。トランプ氏にとってプラスになる影響、マイナスになる影響がそれぞれ考えられます。一般的に、この問題はトランプ氏にとってマイナスという見方の方が多いと思います。米国の景気に対する悪影響があること、また、トランプ氏の対策の遅れが米国における新型コロナの感染拡大につながったと考えられることがその理由です。もともと米国経済が好調であることがトランプ氏を評価する人たちの主な理由になっているので、景気が悪化すればトランプ氏にとって打撃になる可能性は高いと思います。一方、これがプラスになる可能性も考えられます。もしここからトランプ氏が適切な新型コロナ対策を打ち出すことができ、その結果、問題が沈静化すれば、トランプ氏への評価が高まる可能性もあるでしょう。この点については、トランプ氏が繰り出す今後の新型コロナ対策を見ていきたいと思います。大統領選挙に関して、もう一つ別の問題もあります。そもそも選挙が予定通り実施可能かどうかです。新型コロナの影響で、現在進行中の大統領予備選が延期されるケースも出ています。もしこのまま11月まで新型コロナが沈静化しないようなことがあれば、大統領選挙が実施できない事態になりかねません。こうした点でも新型コロナにより大統領選の帰趨(きすう)が予測困難なものになっていると言えます。
立ち直った安倍首相
一方、トランプ氏より一足早く立ち直ったのが安倍晋三首相です。同首相は、桜を見る会についての疑惑や閣僚の失言などで、野党の追及を受けていました。ですが、この新型コロナ問題をきっかけに態勢を立て直しています。問題が発生した当初は、対応の遅れなどから批判を受けました。けれども、習近平氏の訪日取りやめをきっかけに新型コロナに集中できるようになり、その後は、安倍氏に対する批判も和らいでいるようです。株式市場では新型コロナ対策として減税や景気対策を望む声があります。安倍氏も前向きに考えているようですが、その前に、子育て世代への支援など新型コロナの影響を受けている方々への対策を優先させた点は評価できると思います。小さい子供がいる共稼ぎ家庭の方が年次有給休暇と別に有給で休暇をとる場合、雇用者である企業に助成金が出る制度などがそうです。減税や景気対策は経済全体に大きな効果を与えることができますが、その半面、支援が必要な方に手が届かない可能性があります。こうした細かい配慮は評価できると思っています。
中国への依存度引き下げの兆し
最後に新型コロナが国際関係に与える影響について触れておきます。安倍氏は3月5日の未来投資会議でサプライチェーンにおける特定の国への依存度を引き下げることの重要性について言及しました。これは中国を意識したものと思われます。習近平氏との関係を重視する安倍氏がこのタイミングでこうした発言をしたことに筆者は違和感を覚えました。これは、日本の対中政策の変化を示しているものかもしれません。米中の貿易戦争が進行する中、サプライチェーンにおける中国への依存度の高さを懸念する国は多いと思います。今回の新型コロナにより、こうした国がさらに増えるのではないでしょうか。この中国依存の問題が今後、世界経済に影響を与える可能性もあると考えています。この点にも注目です。 
●日本で新型コロナが「感染爆発」しない理由 3/19 
3月11日、ドイツのメルケル首相は、「ドイツ国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染する可能性がある」と警戒を呼びかけた。こんなことが本当に起こりえるのだろうか?これが現実になった場合、感染者のうち1〜2割が重症化し、入院治療が必要になること考えると、医療崩壊は免れないだろう。しかし、私はそうはならないと考える。その理由は新型コロナの感染拡大パターンにある。
新しい感染症が入ってくるとどうなる?
メルケル首相の言葉は、新しい感染症に対する基本モデルに基づいている。ある感染者がその感染症に対する免疫を持たない集団に入ってきた場合、かなりの勢いで広がっていく。しかし、集団免疫という考え方がある。感染から回復し免疫を得た人々が「免疫の壁」として立ちはだかるようになり、未感染者が感染者から感染するのを阻止する形となるのだ。すると、一定の未感染者を残しながらも、感染拡大は停止する。ウイルスの感染力が弱まって感染拡大が止まるわけではない。
60%から70%が感染のカラクリ
ある感染者がその感染症に免疫を全く持たない集団に入ったとき、感染性期間に直接感染させる平均の人数を「基本再生産数」と呼ぶ。これが1より大きければ感染は拡大し、1であれば感染は定常状態となり、1未満になれば感染は終息に向かう。新型コロナ、インフルエンザ、SARS の基本再生産数はだいたい2〜3といわれている。計算式に当てはめると、基本再生産数が3のとき、集団免疫による感染拡大停止までに67%が感染することになる。メルケル首相が、「国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染可能性」を示唆した背景には、この計算があるのだろう。しかし、これは集団が新型コロナに対して全く免疫を持っていないという仮定に基づいている。
私たちは新型コロナウイルスへの免疫を持っている?
2009年にパンデミック化した新型インフルエンザを思い出してほしい。基本再生産数が3だったとしても国民の6〜7割が感染するようなことはなかった。季節性インフルエンザに対する免疫が、新型インフルエンザにもある程度有効だったと私は考える。そもそも「新型」ではない「コロナウイルス」は、主に子供の風邪のウイルスとしてありふれたものである。これは「新型コロナウイルス」とは別物であり、多くの人が年に1,2回は感染している。そのため、子ども、子育て世代、小児科医などは新型コロナに対しても免疫を持っているかもしれない。また、新型コロナは8割が軽症である。無症状で経過する人も相当数いる。日本には春節前から多くの中国人が訪れていた。あくまで推測の域をでないが、既に日本人の多くが自分でも知らない間に感染しているかもしれない。そうであれば、先に示した集団免疫の作用で感染爆発は起こり難い。またメルケル首相の発言には「仮に政府が何の対策をとらなかったら」という仮定も入っている。しかし、日本も含め多くの国が既に強い対策に打って出ており、また人々は行動変容を起こし、大勢の人が集まるところに出かけることを控えている。よって、無防備に感染が拡大するとは考えにくい。新型コロナの感染拡大パターンは、次のようなものである。
新型コロナの感染パターン
3月9日夜、新型コロナ対策専門家会議の記者会見があり、新型コロナ対策専門家会議・尾身茂副座長が疫学的知見を発表している。感染症が進行中の集団の、ある時点における、1人の感染者から発生した二次感染の平均の数である、「実効再生産数」について述べている部分を引用する。「現時点において、感染者の数は増加傾向にあります。また、一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が、全国各地で相次いで報告されています。しかし、全体で見れば、これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていません。また、実効再生産数は日によって変動はあるものの概ね1程度で推移しています」新型コロナの基本再生産数は2〜3である。対して、実効再生産数は1。要するに、日本国内で感染が広がっている速さを示す実効再生産数は、現在、ウイルスの持つ感染力を示す基本再生産数を下回っているということだ。
新型コロナの感染状況をビジュアル化
実効再生産数が1ということは、10人の患者から新たに10人の二次感染患者が再生産されることになる。しかし、専門家会議は「80%が誰にも感染させていない」としている。例えば、新型コロナウイルス感染患者が10人いたとする。そのうち8人は誰にも感染させず、2人が感染させる。図1のモデルでは、2人の患者がそれぞれ例えばライブハウスで8人、自宅で2人に感染させている。図2では、ライブハウスでの感染者の1人がライブハウスBで9人の三次感染者をだし、家族内感染の1人が職場で1人の三次感染者をだしたといった国内でありがちな仮想モデルを示した。一旦感染すると2週間など長期にわたって咽にウイルスをもち感染力を保ったまま活動できてしまうので感染が拡大する。そのため実効再生産数が1であっても、患者数は増加し得る。では、感染を終息に向かわせるにはどうするべきか?図3のように、例えば2つのライブハウスでの感染をブロックできれば、10人から3人の患者しか発生しないので、やがて患者数は減っていく。だれがウイルスをもっているか判らなく、感染力も強く、致死率が高い。このような場合で、かつ感染拡大パターンを最初に示した基本モデルで考えると、感染拡大を止めるにはどうしても外出自粛、休校、移動制限、地域封鎖となってしまう。新型コロナの場合、確かにだれがウイルスをもっているか判らないことが、人々に大きな恐怖心を植え付けている。しかし、私達は今までの経験からクラスター(集団感染)を形成しやすい条件を知っている。それは、換気の悪い室内で、不特定多数と長時間会話したり、食事をしたときだ。
エアロゾル感染のリスクは「換気」で減らす
3月9日の専門家会議の記者会見で「みなさまにお願いしたいこと」として以下の点が指摘された。1. 換気の悪い密閉空間、2. 多くの人が密集、3. 近距離(互いに手を伸ばせば届く距離)での会話や発声 という3つの条件が同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください。これを多くの市民が実施できれば、クラスター発生を予防でき、国が強権を発動せずとも感染は終息に向かうであろう。実際、諸外国と比べて日々の感染者数は数十人で収まっている。ただ、人は同じ説明を聞いても、何も気にせず日常生活を送れる人もいれば、家から一歩も出られない、仕事にも行けない人まで様々であろう。レストランで外食したり、会社で仕事をしたりというのは上記1・2・3にあてはまるからだ。そこで、人々の不安を少しでも解消し、対策の一助になればと思い、感染のメカニズムを解説したい。会話やくしゃみで飛沫が飛び散る。大きな飛沫は放物線を描いて地面に落ちる。しかし、目に見えないくらいの小さな飛沫粒子、いわゆるエアロゾルは数時間室内を空気のように浮遊する。大きな飛沫による感染は(3)の近距離での会話や発声に対応する。これは、お互いにマスクをしていれば予防できるし、マスクがない場合には1〜2メートルなど距離を開ければ解消できる。エアロゾルによる感染は(1)の換気の悪い密閉空間に対応する。新型コロナウイルスは1時間で半減するものの、数時間は感染性を保ったままエアロゾルとして空中を浮遊することが最近アメリカの研究チームにより報告された。これは窓を開けて空気を入れ替えれば、解消される。外であれば、まず問題にならない。人数が数十人、数百人と多くなればなるほど、その中にウイルスをもった人がいる確率があがる。(2)の多くの人が密集というのは、このことを指している。しかし、新型コロナの発生がほとんどない地域では気にしなくてもよいかもしれない。「3つの条件が同時に揃う場所」を言い換えれば「1つの条件が解消されていれば避ける必要はない」ということである。例えば十分な換気をはかれればよいことになる。また十分な換気ができなければ、マスクをするか、距離をとればよいことになる。
今後の日本は如何に?
2月後半、1日の報告件数が10人、20人と増えだした。これに対して、日本政府は在宅勤務の推奨、大型のイベント自粛、休校を要請した。患者数の推移を海外と比較すると、日本は地域を封鎖したり、移動制限や外出自粛を強要したりすることもなく、何とかよく持ちこたえていると思う。これは政治決断の効果でもあり、日本人1人1人ができることをやっている成果であるとも思う。今後は、患者数の推移を慎重にみながら、屋外や換気を十分するといった条件で、社会活動を少しずつ再開してもよいのではないだろうか。とはいえ、大規模イベントや、今までクラスターのあった場所での活動の再開は慎重にするべきである。危機管理の基本は、初動において厳しい対応をして、様子を観ながら徐々に緩めるのが鉄則だ。  
 
 
 3/20

 

●大阪「事態を重く受け止めた」、兵庫「大阪はいつも大げさ」…往来自粛  3/20 
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、吉村洋文・大阪府知事と井戸敏三・兵庫県知事が19日に打ち出した大阪―兵庫間の往来自粛。決断の背景には、最悪の場合、2週間後には両府県の感染者が3300人に達するとの「試算」があった。人口集中地帯の大阪―神戸間は日頃から行き来する人が多く、住民からは驚きと戸惑いの声が上がった。
吉村知事「国側が提案」
「専門家の提案を受け、事態を重く受け止めた」。吉村知事は19日夕、報道陣に自粛要請に至った経緯を説明した。根拠として挙げたのは、国から派遣された専門家から示されたとする「試算」だ。大阪、兵庫両府県では19日までの1週間で感染者が約80人増加。試算では、このまま放置すれば今後の1週間で最悪の場合、感染者が586人に増え、さらに1週間後には3374人に達するという内容だった。試算では、2週間後に重症者も227人に上るとされ、吉村知事は「この数字になれば、軽症者は病院で対応できなくなる」と、感染者数を抑制する必要性を強調した。ただ、大阪―兵庫間は同じ通勤・通学圏にあり、企業などの経済的な交流も活発だ。2015年の国勢調査によると、兵庫県から大阪府に通勤・通学している人は約33万3000人。大阪から兵庫に通う人も約11万人いる。JR西日本によると、東海道線の大阪―神戸間では18年度、1日平均約38万9000人が利用した。
記者会見で吉村知事は、自粛要請の期間を専門家が提案した3週間から連休の3日間としたことについて、「大阪と兵庫は経済圏域が一体。完全にストップさせると大きな問題が出る」と述べ、経済的な影響を考慮したことを明かした。大阪市内の勤務先から兵庫県西宮市の自宅に帰宅途中だった会社員女性(46)は「両親が高齢なので、人混みを避けた経路で通勤しているが、どこから感染するかわからない不安はある。皆が協力していくしかなく、仕方がない」と理解を示した。兵庫県尼崎市から隣接する大阪市の職場に通う飲食店経営男性(74)は「20分ほどの距離で、この往来を自粛して意味があるのかという思いもある。気にせず外出する人もいるのではないか」と要請の効果への疑問を口にした。連休中に大阪市内に買い物に行く予定だったという神戸市灘区の無職女性(64)は「人との接触が少ない車の移動で、行く店も決めている。そうしたケースまで一律に自粛をする必要があるのか疑問。感染リスクは国内どこでもあり、なぜ兵庫と大阪だけが制限されるのか」と納得できない様子だった。
井戸知事は不快感
大阪府の方針に対し、兵庫県の井戸敏三知事も19日夕、大阪など他地域との往来自粛を求める方針を打ち出した。ただ事前に大阪側から相談がなかったことを明かし、「大阪の知事も(兵庫と)言っているようなのであえて『大阪』と入れた」と不快感も示した。井戸知事は記者会見で、専門家から大阪と兵庫両府県での「内外の往来の自粛」を提案されたとして、「以前から不要不急な外出自粛は呼びかけている。『往来』という言葉で具体的な行動を例示した」と説明。「大阪はいつも大げさ。兵庫との往来さえしなければ済むのか」と、大阪が往来自粛の対象を「兵庫」に限ったことへの疑問も口にした。 
●米国株式市場反発 新型コロナウイルスへのFRBの支援策を好感 3/20 
米国株式市場は反発。新型コロナウイルスによる経済への影響緩和に向け米連邦準備理事会(FRB)などが打ち出している一連の措置が材料視された。主要3指数ではナスダック総合がアウトパフォームし、2.3%高で取引を終了。アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、フェイスブックが上昇を主導した。株価はこの日上昇したものの、S&P総合500種がトランプ大統領就任後の上げをほぼ全て消失しており、株式相場は最近の下げを取り戻す状況には至っていない。
FRBはこの日、9カ国の中央銀行と新たに通貨スワップ協定を結んだと発表。ドル資金の市場への供給を拡充を目指す。FRBは緊急利下げやコマーシャルペーパー(CP)市場への流動性供給など、過去2週間で新型コロナ流行による混乱緩和に向けた一連の措置を講じている。欧州中央銀行(ECB)も前日、域内の借り入れコスト押し下げに向け、7500億ユーロ(8200億ドル)の緊急債券買い入れプログラムを開始すると発表した。
米上院は18日、新型コロナ緊急対策法案を可決。トランプ大統領が署名し、成立した。トランプ政権と議会はさらに1兆ドルを超える規模の景気刺激策も検討しており、市場ではFRBによる支援だけでなく、政府による財政面での支援も注目されているとアナリストは指摘する。しかし、ロイターの調査によると、一連の支援策にもかかわらず、米国が今年リセッション(景気後退)に陥る確率は中央値で80%とみられている。
この日は原油先物相場が一時35%上昇し、投資家心理が上向いた。また、スレートストーン・ウェルスの首席投資ストラテジストのロバート・パブリク氏は「現時点で株のバリューを見極めることは難しく、アクティブ投資家は安値拾いの買いの好機と見なしている可能性がある」と述べた。個別銘柄では自動車大手フォード・モーターが0.7%安。新型コロナの事業への影響を踏まえ、既存の信用枠から150億ドル超を引き出すと発表した。
朝方発表された14日終了週の新規失業保険申請件数は28万1000件と予想以上に増加し、2017年9月以来の高水準となった。新型コロナ感染拡大で企業によるレイオフ・解雇が増加していることが示唆された。
ニューヨーク証券取引所では、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を2.64対1の比率で上回った。ナスダックでも3.21対1で値上がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は170億8000万株。直近20営業日の平均は150億株。 
●アメリカ国務省「海外旅行せぬよう」勧告 最高レベル4に 3/20 
アメリカでは、現地時間の今日(3月19日)が春の始まり。一部の学校で早めの春休みが始まっている。しかしCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)騒動の中、若者がマイアミのビーチに大挙して押し寄せるなど問題になっていた。その後ビーチもバーも閉鎖。人がまったくいなくなったビーチの光景もまた異様だ。大学生に限らず、春休み中の海外旅行を計画していた人も多いことだろう。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により19日、アメリカの国務省は、海外渡航をせぬよう促す警告をレベル3から最高レベルの4に引き上げた。これにより渡航の中止(すでに滞在している場合は退避)をアメリカ市民に勧告した。新型コロナ騒動以前からアメリカでは、渡航しないように勧告しているレベル4の国がいくつかある。シリア、イラン、イエメン、北朝鮮の4ヵ国だ。しかし新型コロナウイルス騒動により、渡航先がどの国であれ「渡航しない」、すでに国外に出ている場合は「国内に戻る」、もしくは国外滞在を今後も予定している場合は「国境を越えての旅をしない」ことが勧告された。もちろんこれは禁止や命令ではないから、勧告を無視してどこの国に行こうと個人の自由なのだが、ここにきて国境閉鎖や国際線フライトの運航中止などにより「アメリカに帰国できない市民」が続出しているから厄介なのだ。
ペルーからアメリカに戻れなくなった人々
エル・パソ・タイムス紙が報じたところによると、テキサス在住の医師、マックス・ペラルタ(Max Peralta)さんは春休みを利用し、故郷ペルーに娘2人を連れて15日から帰郷していた。15日、ペルーのマルティン・ビスカラ大統領が、ウイルスの感染拡大防止のため国境を閉鎖すると発表。すべての国際線フライトが運航停止となった。ペラルタさん家族がペルーに到着した同じ日のことだ。そして本来なら20日にアメリカに帰国予定だったが、帰国の見通しは立っていない。同紙によると、ペルーにはほかに何千人もの旅行者が立ち往生しているという。アメリカの国務省のスポークスマンの談話では「アメリカ市民の安全面よりも優先順位が高いものはない」としながら、同紙は「今回のケースのように国外に取り残されたアメリカ市民を国が避難させるかどうかは明らかではない」と報じている。これはおそらく、チャーター機などによる避難救助などを意味しているのだろう。トランプ大統領は19日の記者会見でこの件について記者団に質問をされ「アメリカ市民が帰国できるよう、各国当局と話し合いを進めている」と語った。
NY州の感染者4152人、死者29人
アメリカは、ニューヨーク州やワシントン州などで感染者数や死者が日に日に増えている。感染者数全米最多のニューヨーク州では19日現在、患者数4152人、死者29人だ。州では、患者数の爆発的な増加による医療崩壊を阻止するため 「フラット・ザ・カーブ」(カーブを平にする)戦略が取られている。まだ外出禁止令などは出ていないが、公立学校や図書館、バー、ブロードウェイ、博物館や美術館、ジムなどがクローズし、レストランも持ち帰りやデリバリーに限り認められている。デパートやリテール店も閉店しているところが多い。職場では在宅勤務が奨励されており、19日より職場では通常の人数の25%しか働けなくなった。(前日までは50%までOKだった)もはや外国へ旅行、どころではない状況だ。とにかく「自宅待機」(Stay Home)が叫ばれている。
日本からは渡航できる?
日本からビジネスや観光、留学によるアメリカへの渡航は、今のところ禁止になっていない。しかし、日本人観光客も多く滞在するマンハッタンのホテル、ニューヨーク・ヒルトン・ミッドタウンでは18日、20日から2ヵ月間クローズすると突然発表があった。つまり予約済みであっても泊まれない。(日本からの渡航者にもアメリカ到着後、以前は2週間、今は無期限の室内待機が奨励されているが、滞在先のホテルがクローズしたら?ニューヨークには日本人が経営する民宿も多数ある。コロナ騒動で万が一宿泊先に困った場合は利用してほしい) ホテルだけではない。先述のように航空会社の国際線フライトもクルーズ船も相次いで運航中止を発表している。またアメリカでのビジネスや留学に必要な非移民ビザも18日、大きな変更の発表があった。日本を含む各国にあるアメリカ大使館・領事館では、翌19日から館内での面接(新規)が無期限で中止になった。今後の面接予約もすべて取り消された。(例外:領事との面接が必要でない種類のビザ、追加書類を提出するだけのケース、アメリカ渡航が生死にかかわる緊急事態など。またESTAは引き続きオンライン上で申請できる) このように、世界は新型ウイルスのパンデミックにより大きく揺れており、中止や延期、閉鎖が突然発表されるなど、情勢が刻一刻と変わっている。筆者も本来ならば今ごろは、18年ぶりに日本の桜を見ていたはずだったが、旅行はしばらくおあずけだ。渡航先で感染した、帰国できなくなったなど、思わぬトラブルに巻き込まれないよう、今は家の中でじっと辛抱する時期だろう。 
●韓国がこれから直面する「IMF危機以上」の地獄 3/20 
中国・武漢から広がり、世界中を混乱に陥れている新型コロナウイルス禍だが、日本と韓国では、新型コロナの新たな感染者数は抑制的に推移するようになり、両国の国内的関心は経済問題に向かい始めている。
これまでは、「経済を多少犠牲にしても、感染者の広がりを抑えるのを優先させるべき」との考えが支配的であったが、最近では、「新型コロナを完全に撲滅させることは困難なので、いかに広がりを抑えつつ経済活動を再開していくか」に関心が移りつつある。特に韓国では、大邱における集団感染は一段落し始めているのだが、経済の混乱が極めて深刻な状況になりつつある。もともと文政権になってからの経済政策失敗により経済界が疲弊していたが、そこに新型コロナによるダメージが畳みかけて来た。新型コロナによって受けるダメージは日本よりも甚大なものになるだろう。その現状を、主として中央日報・韓国経済新聞の記事をベースに、過去の経済危機とも比較しつつ分析してみたい。
「経済的死亡が恐ろしい」
中央日報に「経済的死亡がもっと恐ろしいかもしれない」というコラムが掲載された。1997年のIMF危機当時、金融監督委員長に任命され、企業構造調整を指揮した李憲宰元経済副首相は、危機解決者と韓国では呼ばれている。その李副首相は2012年に回顧録で「持たない人に危機はさらに苛酷なものだ。家を売り車を売り危機をどうにか耐え忍んでみたら、待っているのはさらに貧しくなった暮らしだ」と当時の様子を記しているが、今回の危機を受け、改めて中央日報に対し「医学的死亡(medical death)だけが深刻なのではない。経済的死亡(economic death)が始まるだろう」と述べ、「数十万人が崖っぷちに追いやられるだろう」との警告を発したというのだ。IMF危機が東南アジアの国々に広がった1997年7月、韓国政府は当初「ファンダメンタルズ(基礎体力)は大丈夫だ」として、安穏と構えていた。当時の経済成長率は直前まで年8%台に達していたのだ。しかし、「輸出主導経済」である韓国で同年上半期の経常収支が92億ドルの赤字であることを確認した外国人投資家は「韓国は危険」と判断、資金の回収に乗り出したため、外為市場と証券市場が一気に大揺れとなり、大企業が相次いで倒産した。
IMF危機当時より悪い韓国経済の状況
現在の韓国経済の状況は、文在寅政権の経済政策の失敗のお陰で、2007年のIMF危機当時より深刻と言える。まず昨年の韓国のGDP成長率は2.0%と辛うじて2%台を維持したが、これは60年代後半の「漢江の奇跡」以降、世界経済危機の時を除き最低水準だった。しかもこの2%のうち公的部門の貢献は1.5%であり、民間部門の貢献は0.5%とほぼ横ばい状態なのである。そもそもこのような経済状況下にあったのに、今回の新型コロナによる世界的な混乱により、韓国の経常収支は急激に悪化している。これは、経常黒字のうち最も大きな割合を占める貿易黒字が減少しているためだ。産業通商資源部によると先月の1日平均輸出額は18億3000万ドルで、前年比11.7%も急減した。この衝撃は今後さらに大きくなる可能性が大きい。
経常収支の悪化が外為市場を直撃
3月17日のウォン相場は、前日より17.50ウォン安ドル高となる1ドル=1243.50ウォンで取引を終えた。それまで4取引日連続でウォンが下落した。1240ウォン台を記録したのは約10年ぶりだ。外国人の株式売りに伴うドル送金、新興国の通貨安などが影響したものだ。韓国ウォンが1200ドルを割り込むと下落に歯止めが利かなくなる恐れがあると言われている。韓国から資金流出が起きるのは、短期対外債務(1年以内に満期が到来する債務)比率が約34%と2015年以降で最も高い水準にあるためだ。1997年の通貨危機当時も短期対外債務の割合が上がり、日系資金の流出が始まり、その後多くの外国人投資家が一気に資金を回収し韓国の通貨危機が始まった。世宗大学経営学部の金デジョン教授は、「新型肺炎で世界的なドル不足、韓日と韓米の通貨スワップ拒否、韓国の短期対外債務比率上昇、75%と高い貿易依存度そして新興国のデフォルトなど国際金融市場の不確実性が増している。最も重要なのは日米との通貨スワップの締結だ」と述べている。日韓通貨スワップ協定については、よく知られているように2015年2月に期限が終了した。延長するという選択肢もあったが、日本からは積極的に働きかけなかったし、当時経済状況が良かった韓国側は「延長しなくても、悪影響はない」としていた。こうして日韓間の通貨スワップは終了したが、万が一の時のためのセーフティーガードとしてあるに越したことはない。そのため再締結を模索する動きもあったが、2017年1月、韓国の市民団体が釜山の日本領事館前に慰安婦像を設置したことを受け、菅義偉官房長官は通貨スワップ協定に向けた協議の打ち切りなどを決定。現在も、その状態が続いている。
新型コロナの世界的蔓延が韓国経済に与える激震
韓国国内を見れば、新型コロナウイルへの感染者は減少してきているが、経済状況はこれから深刻な状況に陥ることになるだろう。その大きな原因は世界的な感染拡大に伴う、各国政府の国境封鎖、移動制限、商店の閉鎖といった新型コロナ封じ込め政策である。こうした「シャットダウン」の余波で米国と欧州の日常生活と経済活動はマヒしている。韓国はその影響をもろに受けることになる。韓国の産業界は、サムスン電子や現代自動車など主要企業の売り上げの半分以上が米国と欧州であるだけに、業績が大きな打撃を受けると懸念されているのだ。たとえば世界の1-3月期テレビ販売台数が昨年より87%減ると予想されている。第5世代(5G)とともに成長が予想されたスマートフォン市場も1-3月期の販売台数が昨年より26.6%減ると予想されている。また現代自動車の中国での売り上げは先月97.4%減となった。原油価格の急落で、1-2月の世界造船受注は昨年より76%急減。中東地域の建設事業でも工事代金の回収後れや受注取り消しの可能性が高まっている。国際原油価格急落により、今後、中東やロシアなどの産油国への輸出も急減する可能性が高い。観光などサービス収入なども大きな打撃を受けている。輸出企業では「積み出す船も貨物もない」という状況という。中小規模の船会社は厳しい経営事情の中で運賃までが大きく下落し、倒産危機に追い込まれている。こうした状況を受け、大手企業の収益は急激に悪化している。1-3月期の営業利益予想値は、SKが−40%、ロッテが−37%、ポスコが−26%、LGが−25%などという惨状だ。
危機的状況にあるのは輸出だけはない。各国の「韓国人入国禁止と制限」は海外事業にも赤信号を点灯させた。韓国からの入国を制限している国は16日現在130カ国であり、韓国の10大輸出国のうち米国を除く9カ国が入国を制限している。特に、ショックだったのがベトナムの対応であろう。ベトナムへの外国人投資で最大の国は韓国であり、しかもそのトップであるサムソン電子の李在溶副会長が出席する予定であったモバイル研究開発センターの起工式が、ベトナム政府による突然のノービザ入国中断のため開催できなくなったのだ。今後韓国のビジネスマンの出張、協議が大幅に制限される可能性が出てきている。新型コロナによるダメージは、大手企業よりも自営業者や中小企業に致命傷を負わせることになる。韓国経済は、もともと17年9月を頂点として下降局面を継続していた。政府の「所得主導成長政策」が消費と投資を抑え込んでしまっているのが要因であった。韓国では就業者に占める自営業者(特に零細自営業者)とその家族の割合が高く、全就業者の25%を占めている。文政権の所得主導成長政策が始まってから、自営業者の廃業は急増し、18年には100万人を超えた模様である。これに追い打ちをかけるのが、新型コロナウイルスである。自営業者などの小商工人たちは、売り上げの急減で、店舗の賃貸料や従業員の給与が払えなくなり、連鎖倒産の懸念が高まっている。新型コロナの長期化で、自主休業に入ったり営業時間の短縮を行ったりするところが急増している。政府は小商工人対策として3兆2000億ウォンの経営安定資金の融資を約束したが、信用度低下で融資を受けらえない人も多く、審査にも時間がかかっているようだ。生計費補助など実質的支援が必要との声が高まっている。また、2月27日に中小企業中央会が中小企業300社を対象に実施した調査によると、70.3%が直接的、間接的に被害を受けていると答えている。中国からの原材料や副材料の供給が中断・遅延された上に価格が上昇したことが、中小企業の経営にマイナスの影響を与えている。
株安は韓国実体経済の悲観的見通を反映
ウォン安と並んで韓国の金融市場を混乱させているのが、株安であり、これは韓国の実体経済の現状をもっともよく反映している。外国人投資家は新型コロナが問題となっていらい、韓国の証券市場で10兆ウォン以上株を売却した。こうした流れを受け、韓国銀行は16日、2008年金融危機以来となる臨時金融通貨委員会を開き、政策金利の基準金利を電撃的に0.5%引き下げ0.75%とした。金利0%台となるのは初めてのことである。しかし、それでも株価の下落を止めることはできず、18日の韓国総合指数は4.86%下落して1600を割り、19日にはさらに8.39%下落して1457となった。株安は国内金融資産の大幅減少を招き、通貨安を招いている資本の海外逃避と合わせ、信用収縮を招くことになり、韓国の実体経済を一層悪化させる。
韓国政府の財政出動は有効か
もはや金融政策だけでは、韓国経済の悪化を止めることはできず、財政面からのテコ入れが不可欠であることが明白となった。しかし、ここで文政権による経済政策の失敗、放漫財政の付けが回ってきている。グローバル金融危機を迎えていた2009年3月、韓国政府は28兆4000億ウォンの補正予算を編成した。これは同年の本予算の10%に上る規模であり、今年新型コロナ対策として編成した補正予算11兆7000億ウォンの倍以上である。それでも韓国の財政健全性には問題はなかった。国家負債が低い水準に抑えられていたからである。しかし、文在寅政権の財政支出は膨張の一途をたどってきた。18年432兆ウォンから20年520兆ウォンへと21%ほど増加した。この間、財政支出の増加率は、経常成長率(実質成長率+物価)を大幅に上回ってきた。昨年で見ればそれぞれ財政支出の増加率が9.9%であるのに対し、経常成長率は1.1%に過ぎない。中央・地方の負債は18年の680兆ウォンから今年は815兆ウォンに増大する。文政権はこれまで総選挙を意識したバラマキ政策で、経済政策失敗の穴埋めをしてきた。そのツケが非常時に回ってきたのである。文在寅政権の下の経済政策が、金融・財政の健全性を低下させ、新型コロナへの有効な対策を困難にしている。文政権は、これまでもそれなりに経済対策を行ってきたが実効性は低かった。中小商工人を対象とした低金利融資は審査に2〜3カ月かかるという。追加補正予算を出すというが、それは財政の健全性一層悪化させかねない。さらに、急激に低下した財政健全性が経常収支など対外健全性の低下と重なる場合、「格付けの低下」を招く恐れが高くなる。そうなれば、政府・企業の外貨調達費用の増加→対外健全性のさらなる悪化→ウォン安ドル高→外国資本の流出拡大といった悪循環につながってしまう。
実体経済の悪化がさらに進み、それが金融危機となれば、韓国経済の回復は一層困難な道となろう。文在寅大統領は主要経済主体招待円卓会議で「経済危機長期化の可能性が高い」「連帯・協力の力を信じる」などと述べている。また、企画財政部の金容範(キム・ヨンボム)次官は16日、ソウル銀行会館でマクロ経済金融会議を開き、「過去の感染症事例で現れたグローバル経済の一時的衝撃後に反騰するいわゆるV字回復は容易でない」「U字型、さらにはL字型まで懸念される」と述べた。ソウル大学のキム・ソヨン教授は「実物経済が先に厳しくなり、金融圏に転移する可能性が高い」「2008年の金融危機よりも厳しく、これまでになかった状況」と述べている。文在寅大統領ら政権幹部はいまただならぬ緊張感の下で経済政策の操縦桿を握っているに違いない。文在寅大統領は、17日の閣議で「未曽有の非常経済時局」と述べた。新型コロナによるダメージだけならまだ乗り切れる余地はあったかもしれない。だが、それに耐えうるだけの体力は、それまでの文在寅大統領の経済政策により奪われてしまっていた。それが事態をより深刻化させている。文政権の手詰まり感は否めない。 
●コロナ対策を中国に学んだイタリアとイランでなぜ感染拡大が止まらないのか 3/20 
「コロナ発生国」と非難されたが今では世界の「お手本」に
「新型コロナウイルスの感染をいかに防ぐか」は、今や世界共通の課題だ。ウイルス発生国の中国では流行のピークが過ぎ、徐々に正常化しつつあると伝えられる。一歩先を行く中国の人々が世界に向けるのは、「中国に学ぶことができるのか」といったまなざしだ。
湖北省武漢市では、蔓延の初期段階において医療スタッフや病床の不足に加え、物資が不足して現場は大混乱となった。だが、瞬く間に5万人の医療スタッフが全国から集められ、10日間の突貫工事で病床が増加し、医療資源の不足は一気に解消された。
ウイルス拡散を防止するために中国政府が取った策は、人の移動を制限する「封鎖措置」だった。1棟1棟の集合住宅から1戸1戸の世帯に至るまで、住人を自宅から外出させないという、水も漏らさぬような厳重な管理ぶりだった。
3月1日、WHOの専門家、ブルース・アイルワード氏は、米メディアのインタビューに「中国が行った病例の発見、接触者の追跡、集会等の停止は世界共通の措置になる。特に政策のカギとなったのはそのスピードだ」と答えている。
中国の防疫措置の特徴を分析すると、「間髪入れずしてのスピード」と「一刀両断の徹底ぶり」、そして医療現場の人的不足やマスクなど物資不足を補うための「挙国一致の動員力」にある。そのベースにあるのは、移動の自由など人権の議論を許さない一党独裁の政治体制と経済力、そして何よりも、政府の一刀両断を受け入れる「国民の忍耐力」だった。
振り返れば、安倍政権が新型コロナウイルス感染症対策の基本方針を発表した2月25日、日本在住の中国人や日本に親族を持つ大陸の中国人から失望の声が上がった。「なぜ積極的に検査しないのか」「企業活動をいつまで続けさせるのか」といった疑問が噴出したのは、すべての力を防疫に注いだ“強制力ある中国式措置”とは異なるものだったからだ。
3月に入り、欧州や米国で感染が広がると、中国のネット民は欧米の一挙手一投足を注視するようになった。飛び交ったのは、「西側諸国は中国に学べるのか」といった議論だった。2か月前、「ウイルス感染源だ」と世界から非難された中国は、「今や世界のお手本だ」という意識を強めている。
イラン、イタリアは中国モデルを導入
中国モデルを積極的に採用するのがイランだ。2月19日に新型コロナウイルスの初めての患者が確認されたイランだが、その後も感染拡大が続いた。そこでイラン政府は、3月3日に「防疫措置を中国に学ぶ」と宣言した。
イランは国家動員計画のもと、中国の診療モデルをペルシャ語に訳して公開し、30万の「小組」とよばれる医療グループを組織し、1000万人を対象に各世帯を巡回し感染の実態調査に乗り出した。その結果21万人に発熱、頭痛などの症状が見られ、うち3万人が重症であることがわかった。治療対策については、テレビ会議を通して中国の医療経験を学んでいる。
イランだけではなく、イタリアもまた中国モデルを手本にした。イタリアは、ローマを旅行中の中国人に初の感染者が確認されると、1月31日に自国と中国の主要都市を結ぶエアラインの運行停止に踏み切った。イタリアで感染者が爆発したのは2月21〜22日にかけてだが、新たな感染増加数が60人という段階で、ロンバルディア州の複数の都市を封鎖した。かなり早い段階で、感染拡大を防ぐ措置を採っていたといえる。
また、中国政府がわずか10日で建設した「火神山医院」を模範に、病院の突貫工事を始めた。住民の外出管理も徹底し、外出のための通行証も必携にした。当局のルールに反すれば「拘留または罰金」という取り締まりも中国モデルに酷似する。
しかし、イタリアの患者数は増え続けた。3月19日時点で感染者3万5713人、死亡者2978人となった。イランも同時点で感染者1万7361人、死亡者1135人に上り、この2つの国は世界のワースト1、2位となっている。
ちなみに、中国にとってはイランもイタリアも、戦略上、欠かせない重要なパートナーだ。イランとは2016年1月に、イタリアとは昨年3月に、中国の主導する「一帯一路」で協力する覚書を交わしており、その関係は良好だ。
他人の処方箋は効き目がない
それにしても、中国式を手本にし、早期防衛に着手したイランとイタリアの状況がますます悪化していくのはどういうことなのだろうか。
現在、海外の中国人の間でよく読まれている文章がある。欧州在住で4カ国語に精通する中国人女性が執筆したもので、コラムの一部には次のような内容が書かれていた。
「イタリア政府は最大限の警戒感をもって臨んでいたが、かえって封鎖反対の抗議活動やスーパーでの買い占め、監獄での暴動を引き起こし、医療システムを麻痺させるなど国民をパニックに陥れた。イタリア人からすれば、自分の自由を制限されるほど辛いことはない。国情も違えば国民も違うのだ。国家の一声で十数億人を家に閉じ込めた中国はむしろ世界の奇跡だろう」
初期段階での強制措置は、かえってイタリアの人々の心理に大きな不安をもたらしてしまったようだ。文章には「他人の処方箋は、その人と同じ体質でない限り効き目がない」とも綴られていた。中国の感染病の専門家である復旦大学付属華山医院感染科主任・張文宏氏も、「イタリアは早期防衛の失敗例だ」と語っている。
中国はウイルス防衛のリーダーシップを世界で発揮したいようだが、中国人の間でもこれに対する見方はさまざまだ。ドイツに移住したある中国人女性は「ウイルスの抑え込みでは好成績を収めた中国ですが、国内の医療問題は依然として課題山積。責任を取りたがらない医師も多く、国民が安心して受けられる医療からは程遠い」と厳しい。
また、日本で長年生活する中国人男性は「中国の“防疫成功”はあくまで美談づくり。足元で悪化する経済から国民の目をそらすための宣伝に過ぎません」とシビアだ。確かに中国政府は、ウイルス発生国の汚名返上を急いでいる。
初期の段階で全面的に中国の模範事例を取り入れたのはイタリアだが、中国と同じような結果にはならなかった。目下、ウイルスの蔓延が深刻化するドイツや英国では、中国と違う発想での対策が進んでいる。世界は今、新型コロナウイルスの感染という同じ危機に直面しているが、国の事情や国民性によって、そのアプローチは異なるようだ。 
●大分県でクラスター発生の疑い 3/20 
新型コロナウイルスの感染者は21日午前0時現在、新たに54人が確認された。東京都と名古屋市ですでに感染が判明して入院していた高齢男性や、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客だった70代のカナダ国籍男性が亡くなり、全国の死亡者は計43人になった。19日に往来自粛が要請された兵庫県で8人、大阪府で4人の感染が判明。また東京都で11人、名古屋市で5人など都市部での感染確認が目立った。
大分市では男女5人の感染が判明した。すでに感染が確認された60代夫婦が入院していた同市の大分医療センターの関係者で、大分県はクラスター(小規模な感染集団)が発生した疑いが強いとみて、厚生労働省に対策班の派遣を要請した。このほか、スペインやポルトガル、フィリピン、エジプトなどからの帰国者の感染も相次いで確認された。 
●米カリフォルニア州全土に外出禁止命令 知事が発令  3/20 
米カリフォルニア州のニューサム知事は19日(日本時間20日)、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、同州全土を対象に原則として外出を禁止する命令を出した。19日夕から食品の買い物や通院など必要不可欠な場合を除いて屋内での退避を義務付ける。同州は人口4千万人と全米で最も多く、米経済に与える影響は大きくなりそうだ。
同日夕に記者会見し、現時点で期限は設けないとした。カリフォルニア州では北部のサンフランシスコ市、周辺の郡や市で17日から外出禁止命令が出されている。対象地域を州内全域に広げることで新型コロナの感染拡大に歯止めをかけたい考えだ。記者会見でニューサム知事は「期間は流動的で、毎日判断する」と説明した。米CNNによると、カリフォルニア州における新型コロナによる死者は19日夕時点で19人に達し、感染者もワシントン州、ニューヨーク州に次いで多い。 
 
 
 

 

●大分県でクラスター発生の疑い 3/20 
新型コロナウイルスの感染者は21日午前0時現在、新たに54人が確認された。東京都と名古屋市ですでに感染が判明して入院していた高齢男性や、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客だった70代のカナダ国籍男性が亡くなり、全国の死亡者は計43人になった。19日に往来自粛が要請された兵庫県で8人、大阪府で4人の感染が判明。また東京都で11人、名古屋市で5人など都市部での感染確認が目立った。
大分市では男女5人の感染が判明した。すでに感染が確認された60代夫婦が入院していた同市の大分医療センターの関係者で、大分県はクラスター(小規模な感染集団)が発生した疑いが強いとみて、厚生労働省に対策班の派遣を要請した。このほか、スペインやポルトガル、フィリピン、エジプトなどからの帰国者の感染も相次いで確認された。 
●米カリフォルニア州全土に外出禁止命令 知事が発令  3/20 
米カリフォルニア州のニューサム知事は19日(日本時間20日)、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、同州全土を対象に原則として外出を禁止する命令を出した。19日夕から食品の買い物や通院など必要不可欠な場合を除いて屋内での退避を義務付ける。同州は人口4千万人と全米で最も多く、米経済に与える影響は大きくなりそうだ。
同日夕に記者会見し、現時点で期限は設けないとした。カリフォルニア州では北部のサンフランシスコ市、周辺の郡や市で17日から外出禁止命令が出されている。対象地域を州内全域に広げることで新型コロナの感染拡大に歯止めをかけたい考えだ。記者会見でニューサム知事は「期間は流動的で、毎日判断する」と説明した。米CNNによると、カリフォルニア州における新型コロナによる死者は19日夕時点で19人に達し、感染者もワシントン州、ニューヨーク州に次いで多い。 
 3/21

 

●新型コロナ国内感染1000人超す 爆発的拡大防ぐ瀬戸際  3/21 
新型コロナウイルスの国内での感染者数は21日に1000人を超えた。3月に入って愛知や大阪、兵庫を中心に感染者の集団(クラスター)が発生、新規感染確認は最大1日60人に上った。都市部で経路不明の感染者が増えており、爆発的な感染拡大(オーバーシュート)防止に向けた「瀬戸際」状態は続いている。
東京都では21日も7人の新規感染が確認され、うち6人の感染経路が現時点で不明という。午後9時前から開かれた記者会見で、都の担当者は「国のクラスター班に協力してもらい、一つ一つひも付けしている」と述べ、経路の分析を進めていると説明した。感染者数は1月中旬の国内初確認から500人に増えるまで2カ月弱を要した。だがその後は1日あたりの感染確認が30〜60人と急増し、500人から1000人までは10日余りだった。
急増の背景には大阪市内のライブハウスのほか、愛知県や兵庫県内の介護施設でクラスターが相次いで発生したことがある。濃厚接触者を追跡調査し、無症状の人を含め感染確認が増えた。
愛知県の死者は20日までに16人と全国の死者数の約半数を占めた。高齢者に感染が広がると、死者が増えるリスクが顕著になっている。
今後の感染拡大がとりわけ警戒されているのが都市部だ。政府の専門家会議の分析によると、感染者のうち感染経路不明の割合は、東京都と大阪府で2月下旬から3月中旬まで増え続け、5〜10%前後を占めている。
人口が多い都市部で感染源不明の感染者が増えるとクラスターの連鎖が生まれる恐れがある。欧米では既に感染者が急増し、オーバーシュートとなった国が相次いだ。
専門家会議は「日本でも感染源が分からない患者が継続的に増加し、こうした地域が全国に拡大すれば、爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながりかねない」と警戒を強めている。
一方、これまで感染者が出た39都道府県のうち宮城、山口、徳島、沖縄の4県は直近2週間で県内での新規感染が確認されていない。感染者が出ても、対応次第で拡大を抑えられる可能性はある。専門家会議は(1)感染拡大傾向のある地域(2)一定程度に収まっている地域(3)感染が確認されていない地域――に分類し、大規模イベントなどの開催の是非を地域ごとに判断するよう求めている。 
●50歳以下も重症リスク、WHO「若者は無敵ではない」 3/21 
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は20日、新型コロナウイルスについて若者や中年も重症化するリスクがあるとして注意を呼びかけた。各国のデータによると「入院を必要とする患者は50歳以下の人がかなりの割合を占めている」と指摘した。
これまで新型コロナは主に高齢者や基礎疾患がある人が重症化するリスクが高いとみられていた。テドロス氏は記者会見で若者にメッセージがあると強調し「あなたたちは無敵ではない。このウイルスは数週間入院させるか、死をもたらすこともある」と警鐘を鳴らした。
外出制限を出した一部の国では、不満がたまった若者が公園などでパーティーを開くケースが出ている。新型コロナは無症状の人も多く、知らず知らずのうちにウイルスを拡散させる恐れがある。テドロス氏は「あなたがどこに行くかは、他の人の生と死を左右する可能性がある」と述べ、規律ある行動を求めた。
一方、テドロス氏は全世代に健康管理を呼びかけた。免疫機能を高めるため栄養価の高い食事をとることや、飲酒制限、禁煙を求めた。さらに在宅勤務などで運動不足に陥ることを懸念し、大人は1日30分、子どもは1時間の運動を推奨した。外出ができる場合は散歩やランニング、できない場合は階段の上り下りやヨガなど室内で体を動かすよう促した。
また、WHOは対話アプリ「ワッツアップ」などと協力し、症状や自身を保護する方法など新型コロナに関する情報を発信するメッセージサービスを始めたと発表した。現在は英語のみだが、来週から複数の言語を追加するとしている。 
●米「7000万経済圏」に悪影響 NYなど3州が移動制限  3/21 
米国で新型コロナウイルスの感染が一段と広がり、自治体が住民の移動を厳しく制限し始めた。ニューヨーク州は22日から州内の事業者の全従業員に在宅勤務を義務付ける。カリフォルニア州は19日から州全域で住民の外出を禁止し、中西部イリノイ州も追随した。3州の人口は合計で約7千万人と米全体の2割強を占める。個人消費や企業活動への悪影響が深刻化しそうだ。
「我々が取れる最も大胆な措置だ」。ニューヨーク州のクオモ知事は、20日の記者会見で強調した。同州は18日に従業員の半分は在宅勤務にするよう命じ、その後75%に引き上げていた。これが22日からは全従業員とする。違反した事業者には罰則を科す。食品スーパーや医療機関、銀行、報道機関など生活に不可欠な業種は対象から外す。
全米の感染者は日を追うごとに増え、20日時点で1万5000人を超えた。ニューヨーク州(7100人)が最多で、ワシントン州(1400人)、カリフォルニア州(1千人)がこれに次ぐ。
クオモ知事は感染者のうち18%が入院しているとした。人工呼吸器付きの集中治療室(ICU)のベッド数が不足しているとの危機感を示し、患者の臨時の収容先としてマンハッタンの会議場や州立大学など約10カ所の候補を並べた。
住民には「可能な限り自宅にとどまる」ことや、他人のいる空間では6フィート(183センチメートル)の距離をとることを強く求めた。地下鉄やバスなどの公共交通機関を「緊急で絶対に必要な時以外使わない」よう呼びかけた。
イリノイ州のプリツカー知事は20日、州全域で外出禁止を命じる方針を明らかにした。21日夜からひとまず4月7日までの措置。食品の買い物やランニングなどによる外出は認められるという。
カリフォルニア州は19日から、州全域で外出を禁じた。食品の買い物や通院など必要不可欠な場合を除き、屋内での退避を義務付けた。ニューサム知事は「期間は流動的で、毎日判断する」と説明しているが、解除のめどは立っていない。
カリフォルニア州の人口は全米最大で4千万人だ。ニューヨーク州は1900万人で4位、シカゴ市を抱えるイリノイ州は6位と、いずれも全米でも有数の人口を抱える経済圏だ。雇用者数もカリフォルニアが1700万人と最大で、ニューヨーク州が950万人超、イリノイ州が600万人超と規模が大きい。既にニューヨーク州では飲食店の営業休止などで多くの労働者がレイオフ(一時帰休)され、雇用への深刻な影響が懸念されている。 
●NY州知事、企業に在宅勤務命令 銀行など除外  3/21 
ニューヨーク州のクオモ知事は20日に記者会見を開き、ニューヨーク州にある事業者の全従業員に対し、在宅勤務をするよう要請した。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐのが狙い。医療機関や食料品店、銀行など生活に欠かせない業種は対象外とする。
22日夜から適用する。今回の措置は指示で、違反した事業者には罰則を科すことを検討していることも明らかにした。知事は会見で「混乱を引き起こすのは分かっている」とした上で、企業経営者らと相談した結果「感染拡大と医療体制の崩壊を防ぐために必要と判断した」と説明した。「我々が取れる最も思い切った行動だ」とも述べた。
州の住民に対しても「可能な限り自宅にとどまる」ことや、他人のいる空間では6フィート(183センチメートル)の距離をとることを強く要請した。人数の規模によらず、人々が集まることも避けるよう述べた。ニューヨーク州には1900万人の住民がおり雇用者数は950万人。この大半が在宅勤務となれば、飲食店や娯楽業界などへの打撃は必至だ。
クオモ知事によると、ニューヨーク州の感染者は7100人に達したという。ジョンズ・ホプキンス大によると、米東部時間の20日午前11時時点で、米国のコロナ感染人数は1万4000人を超えた。カリフォルニア州では19日、州全土を対象に原則として外出を禁じる命令が出ている。 
●欧州からの帰国者の感染発覚相次ぐ 3/21 
欧州からの帰国者の感染報告が相次いでいる。羽田空港、成田空港ではイタリア、フランスなど欧州からら帰国した5人の感染が判明。家族らとのスペイン旅行から帰国した沖縄県の10代の女性は、成田の検疫所の待機要請を聞かず、羽田経由で沖縄県内の自宅に戻っていた。 
 3/22

 

●新型コロナ感染者、米で2万人突破 NY州で1万人超  3/22 
米国内の新型コロナウイルスの感染者数が21日、2万人を突破した。米ジョンズ・ホプキンス大学によると、全米の感染者数は東部時間同日午後4時(日本時間22日午前5時)時点で2万4148人となった。死者数は285人に増えている。感染者数はわずか2日間で倍増しており、政府は対応に追われている。
感染者が最も多いのはニューヨーク州で、すでに1万人を超えた。同州のクオモ知事は21日の記者会見で「どこよりも多く検査しているため、陽性患者が増えている。もっと見つけることが目標だ」と強調した。クオモ氏は20日、同州の全事業者を対象に、全従業員の在宅勤務を義務化すると発表。感染防止策を強化している。すでにカリフォルニア州やイリノイ州も外出禁止などの強制措置に踏み込んでおり、米国内総生産(GDP)の約3割を占める主要州の経済圏が機能不全に陥る恐れがある。ニュージャージー州も同様の措置を検討中だ。今後、他の州も追随する可能性が高い。
影響を大きく受けるのは外食や小売りのほか、宿泊、観光などのサービス業だ。米商務省の個人消費支出額の内訳を見ると、2019年時点で航空や鉄道など運輸サービスは4780億ドル(約53兆円)、娯楽サービスは5860億ドル、飲食・宿泊は1兆200億ドル。これら合計で年間約2兆1千億ドルと、全体の約14%を占める。雇用や企業活動への影響も甚大だ。全米レストラン協会(NRA)の推計によると、今後3カ月で外食業界は2225億ドルの売上高、最大700万人の雇用を失う可能性がある。米調査会社テレシー・アドバイザリーのボブ・デリントン氏は「家族経営店などは資本が脆弱で最も大きな打撃を受ける」と指摘した。 
●新型コロナウイルス 3/22 
延期も含め検討、4週間以内に結論―IOC 3/22
IOCは22日の臨時理事会で、大会組織委員会や東京都などと延期も含めて検討・協議の上、4週間以内に結論を出すことを決めた。中止は議題にしないという。
大分の病院でクラスター発生 3/22
大分市の国立病院機構「大分医療センター」の医師や患者と、その転院先で感染者が相次いでいる。19日から22日までの4日間で感染が確認された人は16人に上った。広瀬勝貞知事は21日に「院内でクラスター感染が発生したものといわざるを得ない」とのコメントを発表している。
埼玉と群馬で初の死者 3/22
新型コロナウイルスの感染者は22日午後10時現在、岡山県内で初めて見つかるなど新たに46人が確認された。大分県では同じ病院の関連で8人が新たに判明して計20人になり、院内でクラスター(小規模な感染集団)が発生しているとみられる。死者は埼玉県と群馬県で初めて出たほか、大阪府と兵庫県でも確認され、計5人増えた。
クラスターが発生しているとされるのは、大分県の大分医療センター(大分市)。感染した患者の転院先の看護師を含め、22日に8人の感染が確認された。同センターは外来診察を全面中止し、勤務者と入院患者計約600人全員を対象にPCR検査を実施。厚生労働省にクラスター対策班の派遣を要請している。
また、欧州など海外からの帰国者の感染が相次いだ。大阪府では40代夫婦と保育園児の家族3人がスペイン旅行の帰国後に感染が発覚。奈良県の40代女性はメキシコ滞在中に発熱やせきの症状があり、帰国後に検査を受けて判明したという。このほか、米国やポルトガル、メキシコ、フランス、アフリカなどからの帰国者約10人で感染が確認された。  
 3/23

 

●新型コロナウイルス 国内感染者は計1109人(クルーズ船除く)  3/23 
各地の自治体や厚生労働省によりますと、これまでに愛知県で1人、そしてクルーズ船の乗船者の日本人2人の死亡が発表されました。23日午後6時半の時点で、日本で感染が確認された人はチャーター機で帰国した人も含めて1109人となっています。このほか、クルーズ船の乗客・乗員が712人で、合わせると1821人となります。このうち死亡したのは、国内で感染した人が42人、クルーズ船の乗船者10人の合わせて52人です。
日本で感染した人や中国や欧州などからの旅行者・帰国者1109人のうち、北海道は162人、愛知県は144人、東京都は138人、大阪府は131人、兵庫県は111人、神奈川県は77人、埼玉県は51人、千葉県は47人、新潟県は27人、京都府は24人、大分県は21人、和歌山県は17人、高知県は12人、群馬県は11人、三重県、奈良県は9人、石川県、岐阜県は8人、熊本県は7人、滋賀県、福岡県は5人、栃木県、長野県、山口県、茨城県は4人、静岡県、広島県、愛媛県、宮崎県、沖縄県は3人、秋田県、福島県、山梨県は2人、宮城県、福井県、岡山県、徳島県、香川県、佐賀県、長崎県は1人、中国からチャーター機で帰国した人が14人、厚生労働省の職員や検疫官、それに空港の検疫で感染が確認された人などが合わせて27人です。
また、厚生労働省によりますと、重症者は今月19日の時点で、国内で感染した人などが49人、クルーズ船の乗船者が12人の合わせて61人となっています。一方、今月19日までに症状が改善して退院した人などは、国内で感染した人などが215人、クルーズ船の乗客乗員が551人で、合わせて766人となっています。 
●米・感染者急増で封じ込めを断念 検査に優先順位 3/23 
感染が我が身に迫っている危機感に襲われているからだろうか、ジョンズ・ホプキンス大学が出す、新型コロナウイルスによる感染者数や死者数の集計を確認することが、筆者の朝の日課になっている。集計は、アメリカでの感染者数の急増を示している。3月21日は前日20日より約7000人も感染者数が増えていた。検査数が増加しているから感染者数が増えるのも当然ではあるが、このペースで増えて行けば、イタリアの感染者数を超えるのは時間の問題かもしれない。それに、最近、救急車の音が以前よりも頻繁に聴こえてくるようになったのも、とても気になっている。外出禁止令はカリフォルニア州に続き、ニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州、イリノイ州、オハイオ州、ルイジアナ州、デラウェア州でも出され、全米の3分の1にあたる1億100万人の人々が外出禁止の対象となっている。トランプ氏は、ニューヨーク州に対しては「大規模災害宣言」も行ったが、同様の宣言はカリフォルニア州やワシントン州に対しても行われる可能性があるという。
感染者数予測は様々
アメリカでの新型コロナによる感染者数については、様々な予測が行われている。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、コロンビア大学の研究者の分析に基づき、今後2カ月で感染者が65万人に上る可能性があると報じた。ジョンズ・ホプキンス大学のマーティー・マカリー教授は「米国内では、5万〜50万人の感染者が歩き回っている」と話している。国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長のアンソニー・ファウチ氏は「思い切った封じ込め策を取らなければ、感染者数は数百万人に達する」という見解を示した。アメリカの感染者数は最大9600万人に達すると推定している学者もいる。CDCは、対策を講じない限り、感染者数は1億6000万人から2億1400万人になるというシナリオもたてている。
医療崩壊を懸念
検査数が増えて感染者数が増大する中、アメリカでは、今、医療用マスクや人工呼吸器、ベッドなどが不足し始めており、医療崩壊が危惧されている。特に、ニューヨーク州やカリフォルニア州、ワシントン州など感染者数が多い州は、医療器具の不足が深刻化している。筆者が住むロサンゼルスでは、病院の医師が「N95マスクが不足しているため、持っている人がいたら寄付してほしい」とテレビで窮状を訴えている。医療用マスク不足から、病院の従業員たちは、マスクの手作りまで始めた。また、市民の間からは、マスクを寄付する者も現れている。ベッド数不足から、閉鎖されていたLA郊外のロングビーチ市の地域病院も再開されようとしている。LA郊外のポモナ市にあるシェラトン・フェアプレックス・ホテルは、23日から、ホテルの244の客室を、新型コロナの感染者や症状があり検査結果を待っている人々の隔離用に提供することになった。官民一体となって、地域ぐるみで、新型コロナと闘おうとしている姿勢が見てとれる。しかし、そうしなければならないほど、アメリカはリソース不足のため、増える感染者に対応できない状況になっており、医療崩壊の危機に瀕しているのである。
検査に優先順位へ
この状況から、検査数拡大を重視してきた米政府は、ここにきて、検査に優先順位をつける方向へとシフトし始めた。米国時間3月21日、ペンス副大統領は検査のガイドラインを発表、感染リスクが高い「入院している患者、医療従事者、症状を見せている介護施設の居住者、心臓や肺に基礎疾患を抱える65歳以上の高齢者」を優先的に検査することに対して、国民に理解を求めたのだ。日本同様、軽い症状の人々の検査は後回しにされることなったのである。検査規模拡大を訴えていたファウチ氏も「すべてのアメリカ人が検査を受ける必要はない。みなが検査を受けにいくと、感染防護用具、マスクやガウンなどが無駄に使われることになるかもしれない。それらは、患者のケアに当たっている医療従事者のためにとっておかなくてはならない」と訴えた。アメリカでは各地でドライブスルー検査が始まり、FDAは45分で結果が出る検査キットも認可したばかりなのだが、検査態勢が整い、感染者が増えても、医療側が感染者の受け入れに対処できない状況を、米政府は懸念し始めたのだ。
少数にしか検査を行わず
実際、ロサンゼルス郡は検査により感染者を発見して隔離することで感染拡大を封じ込める戦略を断念し、感染のピークを遅延させる戦略へシフトした。米紙ロサンゼルス・タイムズは、「ロサンゼルス郡は感染封じ込めのために患者を検査することは断念し、陽性という結果が出た時に治療法を変更する可能性がある患者だけ検査するよう医師たちに通達した」と報じている。医師たちは、この通達について、感染は疑われるものの、風邪のような症状で自宅隔離できる患者の検査は行わず、入院治療が必要だと判断した場合だけ検査を行うということだと解釈しているという。同じ状況はニューヨークでも見られる。米紙ワシントン・ポストによると、ニューヨークのマウント・サイナイ病院には、毎日、呼吸器症状がある100人以上の患者が緊急治療に訪れているが、そのうち、新型コロナの検査が行われるのは少数だという。医師たちは、市中感染拡大の状況から、発熱、咳、呼吸器症状、風邪のような症状で来る患者はみな感染していると仮定してはいるものの、治療薬がまだない以上、彼らを検査してもどうにもならないと考えているようだ。つまり、医師は感染を疑っても、患者が治療が必要になるような症状を示していない限りは検査を行わず、自宅で隔離させる方針を取っているのだ。それだけ、リソース不足は深刻ということになる。
検査拒否され、死亡か
しかし、問題は、検査を受けらなかったために、重篤化して死亡した人も出てきていると考えられることだ。ロサンゼルスのCBSテレビが、3月20日、とても悲しいニュースを報じた。LA郊外のサン・ガブリエル市に住むフリオ・ラミレズさん(43歳)は、国内旅行から帰宅後、発熱、筋肉痛、空咳など風邪のような症状を見せ始めた。機内で隣に座っていた乗客が咳をしていたという。基礎疾患はなく、病気にもかかったことがない健康体のフリオさんだったが、9日、受診に行こうと病院に電話。しかし、医師は電話で、タミフルと風邪薬を処方しただけだった。11日、フリオさんは再び病院に電話したが、返事はなかった。13日、呼吸困難に陥ったフリオさんは、妻のジュリーさんに車椅子に乗せられ、緊急治療棟に行った。そこではレントゲン撮影をされ、結果が伝えられることにはなったものの、結局、医師からは診察されず、新型コロナの検査もされなかったという。フリオさんは16日朝、亡くなった。
「病院側は、車椅子に乗った呼吸困難な夫を目にしたら、診察すべきだった」 とジュリーさんは涙ながらに訴えている。フリオさんが感染していたかは不明だ。検視局は、病院側が死因を肺炎と断定したため、検視を行わないという。そのため、ジュリーさんは夫が新型コロナで亡くなったか、独立機関で検査してもらうという。フリオさんのようなケースは、氷山の一角ではないのか。検査を受けられず、新型コロナが原因なのかわからぬまま、命を落としていく人々。そうならないためにも、誰もが等しく検査を受け、治療を受けられるよう、リソースが拡充されなけばならない。ロサンゼルスでは、前記したように、閉鎖されていた地域病院が再開されたり、ホテルが感染者のために客室を提供したりする動きがあるが、今は、地域ぐるみでリソース拡充を図り、新型コロナと闘う時なのだ。 
●新型コロナで致死率9.3%のイタリア、オーバーシュートの脅威 3/23 
イタリアの新型コロナウイルスの感染者と死者が増え続けている。3月22日夜時点で、感染者は前日から5560人増の5万9138人、死者は651人増の5476人になった。感染者数は中国に次いでいるが、死者数は世界最多で致死率は9.3%まで上昇している。
3月12日に掲載した「新型コロナのパンデミックで避けたい未来、医療崩壊のイタリア」の後も状況は悪化し、様々なメディアがイタリアの惨状を報じている。一部の地域では新型コロナに感染した重症患者が急増し、医療態勢が追いつかない医療崩壊が起きてしまっている。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は19日、北部のロンバルディア州ベルガモの医療崩壊の実態を伝えている。記事によると、ベルガモにある大規模な病院では、新型コロナの重症者が急増し、患者全員に挿管できるだけの人工呼吸器が備わっていないという。集中治療室(ICU)の受け入れ能力も限界を超えており、治療する患者を選ばざるを得ない。地元の医師は、ベルガモの人口の過半が新型コロナに感染しているとみる。イタリアが苦境に追い込まれていることは、各種データからも読み取れる。下のグラフ1のように、感染者数は増え続けている。22日は前日に比べ感染者と死者の増加数は下がったが、依然としていずれも高水準にある。
検査体制の問題が指摘されるが、グラフ1のデータからは検査自体の問題点は読み取れない。3月以降は9日を除き、検査数に対する陽性数の比率は14〜33%の間に入っている。検査数と陽性数に大きな異常は認めづらく、このペースだとしばらくは感染者が増え続けてしまいそうだ。また、下のグラフ2に示しているように、高齢者の致死率が高いのは明らかだ。30歳以下の致死率はゼロだが60〜69歳では4.4%、70〜79歳は13.5%、80〜89歳は20.9%、90歳以上は22.5%になっている。ちなみにこのデータは20日時点のもので、この時点でのイタリア全体の致死率は7.6%だったため、現時点ではこれらの数値はさらに上昇している公算が大きい。
イタリアでは3月10日に原則的に外出禁止となり、人の交流や感染リスクはその前に比べて大幅に減ったはずだ。そろそろ感染者と死亡者の数にピークがきてもおかしくないが、いまだにピークを越えたとは言い難い。その理由は主に4つ考えられる。
1つ目は、外出制限の3月10日より前に感染が広がっており、データには遅れて反映されている可能性だ。新型コロナウイルスの潜伏期間は1〜14日で、症状が現れる平均日数は5〜6日といわれている。症状を自覚してから検査を受け、公表されるまでに一定の時間がかかるだろう。長いケースでは、感染から公表データに反映されるまで2〜3週間かかる可能性があり、10日の外出制限より前に感染している人々の検査結果が、徐々に明らかになっているのかもしれない。
2つ目は、外出禁止を守っていない人々がいて、その人たちが感染を拡大している可能性である。10日以降、経済都市であるミラノの中心地などでは人が明らかに減っているが、場所によっては人々が集まっているケースもあるという。地元メディアは、ミラノのおしゃれなエリアとして知られるナヴィリオ地区に人々が集う様子などを報じている。
3つ目は、医師や看護師など医療従事者の感染だ。イタリアでは感染者のおよそ1割が医療従事者とのデータがある。ロンバルディア州では多くの医療従事者が感染してしまっているとの報告もある。先ほどのWSJの記事では、救命救急士が感染し、街中で感染を広げているという指摘があった。
こうした状況の中で、医療崩壊が起きてしまっているのが4つ目の理由だ。現地の医療従事者から医療崩壊の実態が報告されているが、データで見ても、今後も厳しいことが分かる。22日時点で新型コロナに感染し、ICUで治療を受けている患者は約3000人、入院患者数は約2万人と右肩上がりに増えており、逼迫している医療態勢を改善するのは容易ではない。
イタリアのコンテ首相は21日、「戦後、最も困難な危機だ」とビデオメッセージで訴え、一段の対策強化を打ち出した。経済活動への配慮のため、オフィスや工場の稼働を許容してきたが、暮らしに関わる食品や薬品の工場を除き、これらの稼働も停止させた。
ジョギングなど屋外運動を禁止するほか、すべての公園を閉鎖した。ミラノに暮らす日本人は、「外出していないので感染リスクは少ないと思うが、万が一体調を崩した場合に治療を受けられない可能性があるので、緊張しながら暮らしている」と話す。
強硬措置の背景にあるのは、北部イタリアはもちろんだが、北部より経済的に豊かではなく、医療体制も整っていない中南部での感染拡大を防ぐためだ。イタリア全体で捉えられることが多いが、実態は北部のロンバルディア州が突出して深刻な状況にある。下のグラフ3で明らかなように、ロンバルディア州だけ感染者が急増しており、他の地域と明らかな差がある。
新型コロナ対策で恐ろしいのは、局地的に爆発的な感染拡大(オーバーシュート)が起きることだ。患者を遠方に搬送することはできず、医療機関の受け入れ能力にも限界があるため、オーバーシュートが起こると医療崩壊が起き、簡単には改善できない。
日本でもオーバーシュートが起きるリスクある。安倍晋三首相は20日、「爆発的な感染拡大には進んでおらず、引き続き持ちこたえているものの、都市部を中心に感染者が少しずつ増えている」との認識を示した。
政府の専門家会議は19日、「感染源が分からない感染者が増加していくと、いつか、どこかで爆発的な感染拡大(オーバーシュート)が生じ、ひいては重症者の増加を起こしかねません」と指摘している。国単位での情報発信も必要だが、今後はオーバーシュートに備え、地域ごとの小まめな情報発信や注意がより重要になってくる。 
●米の新型コロナ感染者3万人超に 外出制限の州も続出  3/23 
新型コロナウイルスの感染者数が22日、米国で3万人を超えた。このうちニューヨーク州が約1万5800人と半数を占める。ニューヨーク州は22日から事業者に完全在宅勤務を義務づけるほか、フロリダ州やネバダ州でも週末にかけて飲食店の営業休止を指示した。感染拡大で医療提供体制が崩壊するのを防ぐため、移動制限をかける動きが広がっている。
米ジョンズ・ホプキンス大学によると、米東部時間22日午後6時半(日本時間23日午前7時半)時点の全米のコロナ感染者数は3万3073人となった。州別では、ニュージャージー州(1900人)、ワシントン州(1800人)、カリフォルニア州(1600人)がニューヨーク州に続く。ニューヨーク州のクオモ知事は「どこよりも多く検査をしている」と強調した。すでに6万1千人が検査を終えたという。ただ、検査の拡大とともに判明した感染者の数も急増。重症患者を受け入れる集中治療室(ICU)のベッド数が足りず、病院に緊急でない手術を控えるよう要請した。ニューヨーク州の中核であるニューヨーク市の感染者数は9千人となった。クオモ知事は「公園にいまだに人が集まっているのが問題だ。今は非常時だ」と述べ、24時間以内に公園の運営を見直すよう市に求めた。
ニューヨーク州では22日午後8時から、生活に不可欠な業種以外の企業にすべての従業員の在宅勤務を義務づける。住民は不要不急の外出を控えるよう求められる。ニューヨーク市のマンハッタンの中心街では百貨店や衣料品店などがすでに店を閉じているほか、家電量販店もネット注文の受け取りに絞るなど営業を制限している。地元のスーパーでは生活必需品を買い求める住民が外で間隔をあけながら列をつくり、非常事態に備えた。全米では同様の措置をとる州が相次いでいる。ニュージャージー州やイリノイ州は、21日から住民に生活に不可欠な買い物など以外の外出を禁じる命令を出した。フロリダ州は飲食店の営業停止を命じ、ネバダ州は映画館やジムなどを休止するよう指示した。 
●新型コロナ「震源地」武漢で新規感染者ゼロも残る疑念 3/23 
3月18日、ついに新型コロナウイルスの感染が最初に拡大した中国・湖北省の武漢市で新規感染者がゼロになった。1月23日の街の封鎖以来初めてのことだ。同市では仮設の医療施設が閉鎖され、全国から派遣されていた医療チームが引き揚げ始めた。武漢駅での別れの抱擁は感動的だが、「本当にゼロなのか」と、中国の統計に対する疑念も。 
 

 

●»新型コロナ、小池都知事「首都の封鎖あり得る」 3/23 
東京都の小池知事は、新型コロナウイルスの大規模な感染拡大が認められた場合は、首都の封鎖=ロックダウンもあり得るとして、都民に対し、大型イベントの自粛などを改めて求めました。「この3週間オーバーシュートが発生するか否かの大変重要な分かれ道であるということです」(小池百合子 東京都知事) 小池都知事は、23日から3週間、イベントなど人が密集する空間への外出を控えるよう都民に呼びかけました。都内で大規模な感染拡大が認められた際には、東京都を封鎖する「ロックダウン」も検討するとしています。また、小池知事は、海外から帰国後に感染が確認されるケースが多くなっていることから、羽田空港の検疫の状況を自ら確認することを発表。さらに、東京には大学も多く、症状の軽い人たちが感染を広げないように、若者にメッセージを出すことを明らかにしました。 
●延期の判断を行わざるを得ない―安倍首相 3/23 
安倍晋三首相は参院予算委員会で、IOCが東京五輪の延期も含めた検討をすると発表したことを受け、「仮に、それ(予定通りの開催)が困難な場合には、アスリートの皆さんのことを第一に考え、延期の判断も行わざるを得ない」と述べた。安倍首相が延期を容認する発言をしたのは初めて。  
 3/24

 

●「世界大恐慌」今だからこそ響く忌まわしい歴史 3/24 
新型コロナウイルスの感染拡大は、イタリア、フランス、ドイツ、アメリカといった先進国に飛び火し、各国の経済活動を大きく制限している。実体経済も金融市場も混乱を来し、リーマンショックを上回る経済危機になりそうなことがはっきりしてきた。ドナルド・トランプアメリカ大統領は、「ある意味で戦時の大統領になった」と宣言し、朝鮮戦争時に制定した「国防生産法」の適用にまで踏み込んできた。現実に、アメリカ金融大手のゴールドマン・サックスは、2020年4〜6月期のアメリカのGDP成長率の見通しを、従来のマイナス5%からマイナス24%へと下方修正した。四半期単位のマイナス24%は過去最大だと報道されている。また、セントルイス地区連銀のブラード総裁は、GDPが4〜6月期にはマイナス50%、失業率も30%に達すると発言している。もう「不況になる」「ならない」の問題ではない。
そもそも経済危機というのは、いくつかの段階がある。簡単におさらいしておこう。
・景気後退(Recession)……第2四半期連続でのGDP成長率がマイナス
・不況(Depression)……年10%前後のマイナス成長、あるいは3年以上のマイナス成長
・恐慌(CrisisまたはPanic)……不況の状況に金融危機が伴い、金融機関の貸し渋りと貸し剥がしなど「信用収縮」「信用崩壊」が伴う
・大恐慌(The great depression)……壊滅的な経済危機。金融システム崩壊、企業倒産が相次ぎ、失業者が街にあふれる。通貨の暴落、ハイパーインフレが訪れる
恐慌まで行くか、それとも大恐慌になるか
今の状況からすると、不況は避けられない。ここ数カ月の間に画期的な治療薬が発明される、あるいはワクチンができれば別だが、恐慌まで行くか、それとも大恐慌になってしまうかの瀬戸際と言っていい。リーマンショックは「100年に1度の経済危機」として、1929年の世界大恐慌に匹敵する大恐慌になるのではないかと懸念された。幸い、アメリカの中央銀行に当たるFRBのバーナンキ議長が恐慌の専門家だったため適切な対応ができたことはよく知られている。加えて、G7やG20といった世界の首脳が意思をひとつにして財政政策を実施。本来であれば、大恐慌級の経済危機が襲うはずだったのが救われたわけだ。しかし、リーマンショックからわずか10年で襲ってきた今回のパンデミックでは、貿易や観光など経済のグローバル化が急激に進むなど、世界の環境は大きく変化している。大恐慌に至ってしまう可能性も否定できない。世界恐慌や大恐慌になると、どんなことが起こるのか……。経験したことのない経済危機の入り口に立っているわれわれが今、学べるとすれば過去の歴史しかない。
具体的に、近代史の中では最も悲惨と言われる1930年代の大恐慌下のアメリカを例に考えてみたい。アメリカの大恐慌は、1929年に株価が大暴落したあと、フーバー政権が何の対策も打たずに静観したのが、大きな原因と言われている。さすがに現代において各国政府が何の手も打たずに静観して、このようになってしまうとは想像したくないが、さまざまな文献を参考に何が起きたのかをまとめると、ざっと次のようになる。
・国民総生産……ピーク時から半減(1929年:100⇒1933年:53.6)
・生産指数……ピーク時の半減(1929年:100⇒1932年:54)
・卸売物価指数……3割の下落(1929年:100⇒1933年:69.2)
・失業者数……最大1283万人(1933年)
・失業率……最大24.9%(1933年)
・金融機関……銀行倒産件数6000行
・株価……ピーク時から89.2%の下落
1933年には実体経済がズタズタに
1933年には実体経済がズタズタになってしまった。大量の失業者が家を失い、「フーバービル」と呼ばれたバラックを建ててコミュニティーを作ったとされる。1932年には、とうもろこしの価格が4分の1になるなど食糧価格も大きく下落。その後の食糧難の原因にもなっていく。フーバー大統領の次に登場したルーズベルト大統領が、有名な「ニューディール政策」をスタートさせ、貧困にあえぐ国民を救うための「連邦緊急救済局(FERA)」を設立した。1930年代の大恐慌下での最初の救済機関であり、最低限の生活費を給付するような機関だ。『世界大恐慌――1929年に何がおこったか』(秋元英一著、講談社選書メチエ)によると、1933年10月に行われた「救済状況調査」によると、300万家族、1250万人、アメリカ全人口の10%がFERAに依存せざるをえなかった、と記録されている。FERAの運用は、州などの地方自治体に任されたが、例えばニューヨーク州の1933年8月の救済金は一家族あたり23ドル。食費で消えてしまい、家賃が払えずホームレスになる家族が大量に発生したと言われる。とくに1933年には、それまで政府の失業支援策を受けることを世間体から拒否していた独身女性までもが、空腹に耐え切れずに失業者救済のオフィスの扉をたたくようになり、政府もやっと事態の重大さに気づいたといわれる。州によっては、食料品を現物支給するところも多かった。この直後からニューディール政策として400万人の雇用確保計画が始まる。アメリカでさえも大恐慌に陥れば国民全体が貧困になり、飢えるということだ。ほかにもさまざまな文献を参考に大恐慌の歴史を振り返ってみよう。
   <失業率>アメリカでは25%、1200万人の失業者が街にあふれた
1930年代の大恐慌では、アメリカの失業率は25%(1933年)に達し、1200万人の失業者が街にあふれたと言われる。単純に言えば労働者の4人に1人が失業しているわけだ。当時のアメリカの人口は、だいたい1億2600万人というから現在の日本と同程度の人口規模だ。日本の労働者数は、就業者数6687万人(2020年1月、労働力調査より、以下同)、雇用者数6017万人、完全失業者数は159万人。単純に失業率が25%になれば、日本の完全失業者数は1671万人となる。大恐慌になれば、街は失業者であふれると考えていい。アメリカは、当時400万人の雇用を創設したニューディール政策によって、10世帯に1世帯を救ったとされている。日本政府に1671万人を救う力はあるだろうか。一方、大恐慌下の労働者を取り巻く環境では、フルタイム就業者がどんどん首を切られて、最終的にはパートタイムの労働者だけになってしまうという現象も起きた。前述の『世界大恐慌――1929年に何がおこったか』によると、当時の鉄鋼会社「USスティール」のフルタイム就業者の数は次のように激減していく。
・1929年……22万4980人
・1930年……21万1055人
・1931年……5万3619人
・1932年……1万8938人
・1933年……0人
22万人を超えたフルタイム就業者数が、株価暴落から4年でゼロになってしまう様子がわかる。大恐慌を超える可能性のある今回の経済危機では、これと同じようなことが起こるかもしれない。現実に、アメリカでは当時の花形の職種だった紡績工の7人に3人が失職し、自動車業界の従業員も4分の1に削減されている。例えばデトロイトの「フォード」では、1929年3月には12万8000人いた従業員が、1930年9月には3万7000人に減少している。
   <賃金>平均賃金は3割超の減少に
恐慌では賃金の落ち込みも深刻になる。大恐慌時代のアメリカの「週平均賃金」の落ち込みは大きく、1923〜1925年を100とした「週賃金」は次のように落ちていく(前述『世界大恐慌――1929年に何がおこったか』より、( )内は生計費の平均値)。
・1929年……104.2(99.5)
・1930年……96.8(96.9)
・1931年……86.8(88.2)
・1932年……70.4(79.2)
・1933年……68.3(75.0)
・1934年……75.3(77.7)
業種ごとにバラツキも
仮に、仕事があっても、賃金が104だった平均賃金は、1933年には68まで、最大3割を超える規模で下落していく。賃金俸給を合わせた労働者の貨幣収入の総額は、最大で42.5%下落したというデータも残っている。ちなみに、業種別では建設業が75.4%もの減少となった。ルーズベルト大統領になってニューディール政策がスタートしてから、やっと建設業界にも仕事が入ったと言われる。業種別では、ほぼ半減してしまったのは鉄鋼、非鉄金属、自動車、機械、木材などの重工業関連、鉱業、農林業、輸送関連。減少幅が小さかったのは政府、公益機関、金融保険、軽工業などと指摘されている。公務員はやはり安泰だということだ。
   <物価>消費者物価も2〜3割下落、デフレが深刻に
大恐慌のような経済危機では必ず「デフレ」という現象が伴う。『大恐慌』によると、1929年と1933年の4年間の卸売物価を見てみると、わずか4年で物価は4割も下落している。下記のカッコ内は、1929年から32年までの消費者物価指数。
・アメリカ……マイナス42%(マイナス18.6%)
・フランス……マイナス38%(マイナス29%、1929〜33年)
・イタリア……マイナス37%(マイナス21%)
・ドイツ……マイナス34%(マイナス21%)
・イギリス……マイナス32%(マイナス14%)
前述したように、アメリカの国民総生産(GDP)は1929年の1044億ドルから560億ドル(1933年)にまで縮小。4割超の物価の下落はGDPも半減させたということだ。ちなみに、大恐慌の影響をあまり受けなかった日本でも、消費者物価指数は同条件でマイナス17%という記録が残っている。
   <貿易>「保護貿易」に陥った
1930年代の大恐慌では、アメリカの悲惨な例が注目されるが、実はブラジルのコーヒー農園ではアメリカ向けのコーヒー豆が売れなくなり、過剰在庫として石炭と一緒に燃料として燃やされたという記録が残っている。実際に、大恐慌時代は世界各国が「保護貿易」に走り、とりわけアメリカでは高い関税をかけて海外からの輸入を規制した。75カ国の月ごとの輸入を合計した数値を「らせん状」に並べたグラフは、大恐慌を象徴するものとして知られている。各年1月時点の75カ国の「輸入額」は次のような推移をたどって、5年で3分の1に減少した(『大恐慌』より)。
・1929年……2.998
・1930年……2.739
・1931年……1.839
・1932年……1.206
・1933年……0.992(単位:10億ドル)
「輸出」で見ると、そのすさまじさがわかる。1928〜1929年から1932〜1933年までに、輸出が大きく減少した国は次のようになっている(『大恐慌』より)。
・80%以上……チリ
・75〜80%……中国
・70〜85%……ボリビア、キューバ、マレーシア、ペルー、エルサルバドル
   <株価>9割の超大幅下落
1929年の大恐慌では株価はざっと9割下落している。まさに、紙くず同然になった株式も少なくなかったわけだ。投資家が数多く入居していた当時のエンパイアステートビルでは、毎日のように破産した投資家がビルから身投げをしたという記録も残っている。歴代の株価暴落を紹介すると、次のようになる。
日本の平成バブル崩壊も株価は8割下げた
〇ニューヨークダウ(1929年〜1934年)……89.2%
〇FT100(1974年)……86.5%
〇日経225(1990〜2003年)……81.5%
ちなみに、代表的な株価指数ではないが、日本の「東証マザーズ」では有名な「ライブドア・ショック」時に、最大で90.86%(2006年1月31日〜2008年10月31日)の下げ幅になった。新興企業の大半が壊滅的な株価下落を経験している。新型コロナウイルスの感染拡大による現象で「オーバーシュート」という言葉が話題になっているが、株式市場でもオーバーシュートという言葉がよく使われる。売られすぎ、買われすぎを示す言葉だが、時として金融市場の価格はドラスティックな動きになる。加えて、変動幅が増幅される現在のAI(人工知能)相場では、さらに大きな変動もありうる。想定を超えるボラティリティー(変動幅)があっても不思議ではない。
資本主義社会ではもともと「恐慌」は避けられないものともいえる。世界の恐慌の歴史を振り返ってみると、1929年の大恐慌だけではなくそれこそ10年に1度程度の割合で恐慌が起きている。実際に、金融危機だけを見ても1929年の大恐慌以後もたびたび起きている。ニクソンショック(1971年)、ブラックマンデー(1987年)、アジア通貨危機(1997年)、ITバブル崩壊(2001年)、リーマンショック(2008年)という具合だ。大恐慌以前も、オランダ黄金時代のチューリップ恐慌(1637年)、世界的な規模の恐慌の第1号と言われる「1857年恐慌」といったものが有名だ。1857年恐慌は、アメリカの銀行が必要としていた金を積んだ船がハリケーンで沈んだことがきっかけとなって、南北戦争終了まで影響が残ったとされる。1929年の大恐慌も、結果的に第2次世界大戦が終結するまで景気が回復しなかったことから、第2次世界大戦の原因になったと言われている。
破綻は個人から企業、そして国家へと連鎖?
中世のコレラやペストといったパンデミックは、欧州という具合に特定の地域で発生し、タイムラグもあった。世界はまだグローバル化されていなかったからだ。しかし、今回の新型コロナウイルスの感染爆発では、世界中でほぼ同時に感染が拡大している。おそらく、世界経済の落ち込みも世界同時になるはずだ。問題は何が起こるかだが、予想されるリスクを発生順に列記すると次のようになる。
・欧州債務危機の再発(国家の破綻)
・新興国通貨の暴落、債務危機(〃)
・過剰流動性の副作用で「デフォルト」が大量発生(企業や国家が続々と破綻)
・世界的な金融インフラの崩壊(銀行の連鎖倒産、取り付け騒ぎなど)
・急激な保護貿易で世界は縮小経済へ
・世界同時ハイパーインフレ
世界同時ハイパーインフレとは、貨幣という概念の崩壊だ。貨幣に対する信用度が喪失し、あらゆる商品やサービスの価格が上昇してしまう現象である。18世紀のフランス革命直後のハイパーインフレをはじめとして、19世紀の南北戦争直後のアメリカ、20世紀に入ってからも第一次世界大戦直後のドイツ、帝政が終了した直後のロシア、第2次世界大戦直後の日本などなど、歴史的に大きなイベントの結末にハイパーインフレが襲っている。すでにあちこちで流動性不安ともいえる事態が伝わってきているが、アメリカでの通貨不安や債券市場での流動性不安が高まれば世界にも及ぶことになる。有事に強いはずの金までもが投げ売り状態となっているのはリーマンショックと同じだが、ここからさらに金融不安がおこれば、世界各地で信用不安が発生し、その現象は世界中に感染し、連鎖しかねない。金融不安の“クラスター”が世界中で同時発生してくる可能性があるということだ。 
 
 
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●外務省 不要不急の海外渡航やめるよう要請へ 全世界対象は初  3/25 
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、外務省は海外の治安情勢などを考慮して出している「危険情報」について25日夜、世界全体を対象にレベルを引き上げ、海外への不要不急の渡航をやめるよう求めています。世界中を対象に不要不急の渡航をやめるよう求める危険情報を出すのは、初めてです。
「危険情報」は、海外の治安情勢などを考慮して、渡航や滞在にあたって特に注意が必要な国や地域に出される情報です。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、外務省は、これまで「感染症危険情報」を随時、引き上げ、今月18日には、世界すべての地域に「レベル1」を出し、渡航に十分注意するよう呼びかけてきました。しかし、世界的に新型コロナウイルスの感染が急速に拡大する中、いま感染の広がりが確認されていない国や地域でも、今後、感染が拡大したり、渡航の制限が行われたりするおそれがあるとして、「感染症危険情報」とは別に25日夜、世界全体を対象に「危険情報」を「レベル2」に引き上げました。感染症を理由に「危険情報」を出すのは異例で、世界中を対象に不要不急の渡航をやめるよう求める危険情報を出すのはこれが初めてです。海外からの帰国者の感染が相次いでいることや、国際線の運休などで現地から出国できないケースが出ていることなども考慮したとみられます。
外務省が出す「感染症危険情報」は海外に滞在している日本人や、渡航を予定している日本人に向けて出すもので、新型インフルエンザなど、危険度の高い感染症に関して、渡航や滞在にあたって特に注意が必要と考えられる国や地域に出す海外安全情報です。「感染症危険情報」は「レベル4」の退避勧告を最高に4段階に分かれています。今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、外務省は渡航中止を勧告する「レベル3」をイタリア、スペイン、フランス、ドイツ、イランなどの全土や、中国と韓国の一部地域に出しています。また「不要不急の渡航」をやめるよう渡航自粛を要請する「レベル2」をアメリカ全土やヨーロッパのほかの地域、中国や韓国の「レベル3」以外の全土、それにエジプトに出しています。さらに、渡航に際して十分注意するよう呼びかける「レベル1」をほかの世界すべての地域に出しています。 
●「リーマン超え」コロナショック、政策対応は長期戦の覚悟が必要 3/25 
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、欧米などへの爆発的な感染拡大、WHOの「パンデミック」宣言と、世界同時株安で、3月中旬以降、ステージが大きく変化した。日本を含めG7諸国でも、2008年のリーマンショック時と同様に国際協調による金融・財政措置が採られつつある。特に、米国はまさに「戦時体制」に移行しつつある。3月6日の歳出規模83億ドルの追加歳出法の成立、13日の国家非常事態宣言、18日の第2弾の対策法の成立に加え、21日には国防生産法の発動、総額2兆ドル規模の第3弾の対策法の策定、病院船の派遣や軍の野戦病院の開設準備を決めた。新型コロナウイルス感染症の脅威を、当初、トランプ大統領が甘く見たことで、初動が遅れ、感染が急拡大、それを受けて株価が暴落、支持率も低下に転じ、11月3日の大統領選での再選に赤信号がともり始めたことが背景にある。ただし、欧米の中央銀行や政府の非常時対応にもかかわらず、世界的に株価の下落が止まらない。リーマンショックを上回る世界経済の落ち込みが懸念される事態だ。
過去、ショックといえば、2008年のリーマンショック、2001年のITバブル崩壊、1998年の金融危機、同じく1998年のロシア危機、1997年のアジア危機、1990年のバブル崩壊、1978年10月から1982年4月の第2次オイルショック、1973年の第1次オイルショック、1971年のニクソン・ショックなどが発生している。大きな危機は、おおむね10年前後で発生している。10年タームは設備投資の循環サイクルにも近いのだが、10年もたつと過去の学習効果が剥落し、バブルが発生しやすくなる点に加え、景気循環等の要因が影響していると考えられる。こうした歴史はあるものの、「コロナショック」は、すでに世界の金融市場に対しては、リーマンショック並みないし、それを上回る規模で市場を揺さぶっている。シカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数、VIXは3月16日には、82.69と、過去最高水準で引けている。これまで、終値ベースの最高値は、リーマンショック後に米議会が自動車業界救済計画の採決を延期した2008年11月20日につけた80.86だった。ザラ場での最高値は、2008年10月24日の89.53だが、3月16日には、83.56と、最高値に迫った。
ショックが起きた後、株価が底をつけたのは、リーマンショック時は、VIX指数の高値から4〜5カ月後の2009年3月9日(NYダウ終値ベース、ザラ場では同年3月6日)だった。タイムラグがあるが、このコロナショックとリーマンショックを比較すると、VIX指数の上昇も株価の下落も極めて急であることが特徴的だ。リーマンショックの背景は、米住宅販売が2005年から頭打ちとなり、住宅価格の上昇が2006年夏に止まったことで、低所得者向けのサブプライムローンの延滞が2007年から増加したことがある。2007年8月には、住宅ローン担保証券(MBS)などに投資していたフランス金融大手BNPパリバ傘下のファンドが投資家からの解約を凍結すると発表したことで表面化。2008年になると、米大手投資銀行(第5位)のベア・スターンズが3月に経営危機に陥り、5月にJPモルガン・チェースに買収された。9月には、同4位の大手投資銀行リーマン・ブラザーズが連邦倒産法第11条を申請、経営破綻したことで、デリバティブや資産担保証券価格の大幅下落等を通じた信用危機が世界中に連鎖することとなった。その後、金融危機は欧州に伝播、ギリシャなどの欧州財政危機へと拡大、国際金融市場は正常化するまで長期間を要した。リーマンショック前の米株価の高値は2007年7月につけており、当初、株価の下落スピードは緩やかだった。また、危機の発端は、米住宅価格の下落であり、その兆候は2006年頃から表れていた。加えて、米政府やFRBが当初はリーマン・ブラザーズの救済に前向きだったことで、筆者も含め、リーマンショック後の世界経済への影響が、過小評価された経緯がある。
それに比べると、今回は展開が全て急である。その違いは、「Contagion(コンテイジョン)」のスピードの差にあると考えられる。コンテイジョンという言葉は、欧州財政危機の当時、ギリシャ危機がスペインやポルトガル、イタリア、さらにフランスなどに伝染する可能性を指す意味で多用されたが、本来は、伝染病(感染症)の伝染(感染)を表す用語だ。新型ウイルスの伝染スピードは、当然ながら、金融危機、信用危機、財政危機の伝播のスピードよりも極めて早いし、感染による世界経済への波及も、リーマン当時よりも比較にならないスピードで進行している。リーマンショック後の個人消費の減退は、米国での住宅価格の下落に続き、株価の下落に伴う「逆資産効果」や雇用の減少などを通じ、徐々に世界に拡散していった。今回の場合、米株価が過去最高値をつけたのは、NYダウの場合、今年2月12日、S&P500種指数とNASDAQ総合指数は2月19日と、ほんの少し前までは株価は上昇していた。住宅価格に至っては、最新の統計ではまだ上昇中だ。とりわけ今回、消費が急速に減少しているが、それは、COVID-19の感染拡大防止のため、各国政府が都市閉鎖などのシャット・ダウンや日本の自粛要請のように、強制ないし半強制的に、企業や個人の行動を抑制していることに尽きる。コンテイジョンのスピードが早いのは従来、大災害や戦争などのショックが起きた時だが、その意味では、コロナショックは第1次オイルショック(第1次石油危機)に近いと考えている。ただ原油価格の動きは、石油ショックの時とは真反対だ。当時は原油価格が暴騰する一方、今回は暴落している。また、国内だけだが、やや似ているのが、東日本大震災後の状況だろう。
一方でウイルス感染拡大が経済に打撃を与えた例も過去にも何度か起きている。その中で比べると、規模が小さいが今回に近い状況が、2009年の新型インフルエンザのパンデミック時だ。2009年4月に米国で初めて確認された新型インフルエンザA(H1N1/H1N1pdm09ウイルス)は、世界中に急速に感染し、6月、WHOがパンデミック(フェーズ6)を宣言。世界中で15万1700〜57万5400人が2009年に死亡したとみられている(米CDC)。2010年8月10日にWHOはパンデミックの終息を宣言したが、ただし(H1N1)pdm09ウイルスは季節性インフルエンザウイルスとして、現在でも継続的に流行している。新型インフルエンザは若年層に大量に感染したが、基本的に弱毒性であり、季節性インフルエンザよりも、高齢層等の致死率が低く、抗ウイルス薬が効果を示したことから、対策は徐々に縮小された。しかし今回の新型コロナの場合は、新型インフルエンザと同様に論じることはできない。WHOの発表では、感染力はインフルエンザよりはやや低いものの、同じコロナウイルス感染症であるSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)等とは比べものにならないほど強い。
潜伏期間時や軽症者も感染させる力があり、退院後の再陽性の事例も多数確認されている。特に致死率に関しては、現時点で4.0%程度と高く、重篤化時は、酸素吸入器や人工呼吸器が必須となることから、患者が多数発生し、医療崩壊が起きた際には、武漢市や現在のイタリアのように、致死率が跳ね上がりかねないなどのリスクが高い。しかも、感染者が南半球まで広がった今、SARSのように、北半球の夏に世界中で終息することを期待するのは、すでに無理な状況だ。現状では、早期のワクチンと抗ウイルス薬の開発と臨床試験を進め、来年までに ワクチン接種と軽症段階での抗ウイルス薬の投与ができるようにするしかない。ワクチンの開発は全世界で取り組まれているが、健康な人も接種するワクチンは副作用リスクなどの解明のための臨床試験に最低でも半年はかかる。今シーズンの実用化は困難だろう。
こうしたことを考えると、COVID-19対策は長期戦とならざるを得ないだろう。対策を考える上での基本的な戦略としては、期限を決めた強力な封じ込め策を実施するか、あるいは長期戦を覚悟した対策を採るか、の2つしかない。早期に判断する必要があるが、筆者は現状では長期戦を採る。中国国内の状況を見ると一目瞭然だが、強力な封じ込め策で新規の発症者(国内分)が一桁になったといっても、いまだ、北京や上海でも人影はまばらだ。海外とは相互に入国禁止や行動制限措置が取られ、企業活動や学校は再開されたとはいえ、会社はテレワーク、学校はオンライン授業の状況だ。こうした状況を考えると、中国が大規模な内需拡大策を実施して世界経済の回復をけん引したリーマンショック時のように 日本でも需要回復のために大規模な公共投資などはまずできない。日本国内では需要喚起策として消費税率(現行10%)を5%やゼロにすべきとの意見を散見するが、外出制限の中で、消費が増えるのかは疑問だ。海外から付加価値税(消費税)の税率をゼロにしろという対策案は聞こえてこない。しかも、2019年度と2020年度の税収が大幅な不足となるのは必至の状況で、減税などの原資は全て、赤字国債の発行に頼らないといけないことになる。現役世代や将来世代につけ回しするだけであり、またそういう状況で彼らが車を買うなど消費を増やしたり、結婚し多くの子供を持ったりするとは考えにくい。それよりは、長期戦を覚悟した対策、具体的には、テレワークや時差出勤、有給休暇の完全取得、オンライン授業等へのシフトによる満員電車の解消、営業時間や入場客を限定したイベント、劇場、映画館、スポーツジムの再開、営業継続などにより、持続可能性の高い政策に切り替えるかという判断が重要だろう。そしてその前に、会社の倒産を防ぐための資金支援や失業したサラリーマンやフリーランス、パートタイマーらへの所得補償などは従来とは異なる基準で大規模に実施すべきだろう。観光や外食業への補助金やイベント中止等への補償も検討すべきだ。
長期戦を戦う上では、国内の感染の広がりのモニタリングが必須だろう。情報なくして、戦略や戦術を立てようがない。スイスの製薬大手ロシュは3月13日、同社が開発した新型コロナウイルスの検査システムが米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可(EUA)を受けたと発表した。1台で、24時間に1440件ないし4128件の検査能力がある機器が使用可能になり、米国内の研究機関や大学がすでに100台以上を保有しているという。トランプ大統領は国家非常事態宣言を発表した記者会見で、「1カ月以内に500万人分の検査が可能になる」としている。米国は、国家非常事態宣言で、CDC(疾病管理予防センター)、NIH(国立衛生研究所)、FDA(食品医薬品局)に加え、連邦緊急事態管理庁(FEMA)、生物兵器に対応した軍も出動が可能となり、一気に検査件数が増える可能性がある。これ対して日本での検査件数は、2月18日から3月20日までの32日間で3万8601件、1日平均1206件にすぎない(3月22日現在)。検査の実施に関しては、さまざまな意見があるが、少なくとも、欧米と比較に足るような件数が実施されていないと、海外から透明性に疑念が持たれる可能性が高く、東京オリンピックを含め、今後の日本の政策に対して諸外国に協力や支援を求める際には、マイナスになるのではないか。14日の安倍首相の会見では「今月中には、1日当たり8000件まで検査能力が増強できる見込み」とのことだが、早期に検査件数を増やすことを期待したい。
こうして考えると、当面の政策対応としては、感染防止や医療面では、ワクチンや抗ウイルス薬の開発・生産支援や、海外で一般化しつつあるドライブ・スルー検査などの拡充、簡易ベッドを含む感染症病床の大幅拡充、医者や看護師経験者の臨時登用、自衛隊の災害出動準備など、感染予防と感染後の治療体制の整備に戦力を集中投入すべきだろう。そして経済面の対応は、当面は対症療法的な止血処理を拡充するしかない。売り上げが急減した企業やそのために失業したり収入が大きく減ったりしたフリーランスやパートタイマーらに、資金繰り支援を行うとともに、保険でカバーされない人々には給付金を供与し、当面の生活の糧を得てもらうことだ。大震災時の応急仮設住宅への避難者に食料を配給したり、電気代やガス代などを免除したりしたのと同様、従来と異なる発想で実施する必要があろう。その後、感染の終息のめどが立った際や、開発されたワクチンの接種がスタートした後、一気に大型の経済対策を実施するという戦略を取る他ないと思われる。 
 3/26

 

●新型ウイルスの死者、世界で2万人超す 東京都は外出自粛要請 3/26 
新型コロナウイルスによる世界全体の死者は日本時間26日午前、2万人を超えた。各国保健当局の発表を集計し続けている米ジョンズ・ホプキンス大学の集計による。スペイン保健省は現地時間同日午前(日本時間同日夜)、スペインの死者が4000人を超えたと発表した。また日本では25日夜に、東京都が「重大局面」として外出の自粛を要請した。スペイン保健省によると、26日午前の時点で確認された感染者は5万6188人となり、死者は4089人に達した。24時間で増えた死者は655人。前日の738人からわずかに減った。全世界で最も多く死者が出ているのは25日から、イタリア、スペイン、中国の順になっている。
東京都でも外出自粛要請
日本では25日夜、東京の小池百合子知事が記者会見。「感染爆発 重大局面」と書かれたパネルを掲げ、「今の状況を感染爆発の重大局面ととらえこの認識を共有したい」と述べた。その上で、「(26、27日は)できるだけ仕事は自宅で」行い、「夜間の外出も控え」、 「週末は、不要不急の外出はぜひとも控えてください」と要請した。東京都によると、都内で新しく確認された感染者は24日は17人、25日が41人、26日が47人と増え続けている。東京都の行動自粛要請の後、都内各地のスーパーなどでは、食料品をまとめ買いする人の列が見られた。東京都の要請を受けて26日、埼玉県、千葉県、神奈川の知事もそれぞれ、県民に東京行きの自粛や不要不急の外出自粛などを要請した。厚生労働省などによると、日本で感染した人や中国や欧米などからの旅行者・帰国者で、感染が確認された人(クルーズ船を除く)は26日夜現在、1373人。そのうち東京都の感染者は259人という。
スペインは感染者約5万6000人超
スペインで感染が確認された人数は5万6000人を超え、2万7000人が病院で手当てを受けている。国内では首都マドリードでとりわけ被害が集中しているが、北東部カタルーニャ州でも顕著に感染者が急増している。政府によると、カルメン・カルボ副首相がウイルス陽性となった。呼吸系の症状を発症して22日に入院していた。スペイン議会は25日深夜、非常事態宣言を4月12日まで2週間延期することを決定した。非常事態中の現在、生活必需品や医薬品の購入のためと出勤が不可避な仕事への通勤を除き、外出が禁止されている。マドリードの市営葬儀会館は24日、新型ウイルスによる感染症「COVID-19」で亡くなった人の遺体受付を中止すると発表。一方で市内の大型アイススケート場が臨時の遺体安置所として使われることになった。23日には国防省が、ウイルス対策支援に当たっている軍の部隊が、介護施設などで高齢者が置き去りにされているのを発見したと発表した。中には、ベッドで亡くなっていた高齢者もいるという。地元メディアは25日、マドリード・チャマルティン区にあるひとつの介護施設で、入居者20人以上が新型ウイルスによって死亡したと伝えた。この施設の職員約50人が隔離されているという。
全人類の脅威
国連は25日、新型コロナウイルスを「全人類にとっての脅威」と呼び、医療制度が脆弱な世界の最貧国のため20億ドル(約2200億円)の人道支援を加盟国に要請した。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「世界的行動と連帯が不可欠だ。個別の国ごとの対応では足りない」と、協力を呼びかけた。その他の動向は――。
イタリアでは25日、24時間の間に683人が死亡し、新型ウイルスによる死者数は計7503人に達した。前日の死者数よりわずかに少なく、感染者の増え幅も4日連続して減少している。政府は、感染抑制のための行動制限命令について、違反者への罰則を強化しており、ウイルス陽性となりながら隔離に違反する者には高額の罰金や最長5年の禁錮刑などを適用することが可能になった。
フランスでは、24時間で231人が死亡し、死者数は計1331人になった。保健当局によると、生命維持装置が必要となった人数は12%増え、「フランスでは感染大流行が急速に悪化している」との見方を示した。エマニュエル・マクロン大統領は25日夜に軍病院を訪問し、医療従事者の努力と献身を称えた。
ロシアでは、ウラジーミル・プーチン大統領が自分の続投を可能にする改憲案の国民投票を延期した。4月22日には、改憲の是非を問う「国民投票」が実施される予定だった。ロシア当局が発表している感染者の数は25日、日別で最多となり、計658人になった。
欧州各地で都市封鎖(ロックダウン)が実施されるなか、主要都市の大気汚染が大幅に解消されている。欧州環境庁(EEA)によると、イタリア・ミラノでは大気中の二酸化窒素(NO2)の領が前年同期に比べて21%減った。マドリードでは同様にNO2が41%減り、ポルトガル・リスボンでは51%減ったという。 
●「感染爆発の重大局面」東京都 小池知事会見 3/26 
新型コロナウイルスの感染者が東京都内で急増していることを受けて、小池知事は25日夜、緊急の記者会見を開き、「いまの状況を感染爆発の重大局面ととらえ、この認識を共有したい」と述べて強い危機感を示した上で、今週末の不要不急の外出などを控えるよう呼びかけました。以下、冒頭の発言の内容です。
小池知事会見 冒頭発言全文
新型コロナウイルスに感染した患者が、都内で多数発生したことを受けまして、皆様方にご報告を申し上げるとともに、あらためて都民の皆様にご協力をお願い申し上げたく存じます。
「1日で41人感染判明 感染経路不明 10人以上」
本日新たに都内で、新型コロナウイルスに感染したことが判明しました患者さんは、計41名でございます。この内訳でありますけれども、病院で感染されたと推測される患者さんが11名、その他の患者さんが30名となっておりまして、そのうち5名は渡航歴があることが現段階で確認されております。そして病院で感染されたと推測される方々につきましては、既に都といたしまして医療法に基づく立ち入り検査を行いました。そして院内の状況などを確認しまして対策にかかる指導を行っているところでございます。この病院につきましては、台東区にございます永寿総合病院、そしてこの病院に現在通院されておられる方、また入院されておられる方々につきまして、またご家族もそうなんですけれども、どのようにすべきか等々は主治医等のご指示に従って行動していただきたく存じます。今週に入りましてから、陽性の患者さんは増えております。おとといが16名でした。そして昨日が17名で、きょうが41名ということで、この3日間で合わせまして74名ということになります。また本日感染が判明された患者さんの中にはですね、現時点で、この感染経路が不明な方10名以上含まれているところでございます。
「感染爆発=オーバーシュートを防ぐために」
感染者の爆発的な増加、いわゆるオーバーシュートと言われていますが、これを防ぐためには都民の皆様のご協力が何よりも重要でございます。お一人お一人、危機意識を持って行動していただけますように、改めてお願いを申し上げます。先般23日の時点で新たな対応方針を発表させていただいたわけでございますけれども、そのときに皆様方にはですね、引き続きこのように3つの密、「換気の悪い密閉空間」「多くの人の密集する場所」「近距離での密接した会話」、これら3つの密を避けて頂く、そのような行動をおとりいただきたいと存じます。また屋外屋内を問わずイベント等への参加についてもお控えいただきたいと存じます。そして最近注目されておりました、埼玉で行われたKー1でございますけれどもこれについてはですね、多くの批判もあったわけでございます。感染拡大防止の観点から、いかがなものかということでございます。そして同じくこのKー1ですけども、今週末3月28日の土曜日、後楽園ホールで開催が予定されておりまして、こちらについてはですね、このイベントの実行委員会に対しまして、3月24日から都といたしまして、この感染拡大の状況を踏まえて、主催者として開催について改めてご検討いただくように要請をしてきたところでございます。そして本日夕刻でございますが2回目の協議を行いまして、そして先ほどこのKー1の実行委員会の方から都に対しましてご連絡を頂きました。それはですね、感染の拡大を防止する都の要請の趣旨に沿うということで、無観客試合で対応をして頂けるということで前向きなこのようなご連絡を頂いたところでございます。ご協力に対しまして感謝申し上げます。そしてライブハウスなどについても自粛をお願いする要請、個別に行ってまいりたいと考えておりますので、ご協力の程、よろしくお願いを申し上げます。また、小人数でありましても、飲食を伴う集まりですけれども、できるだけお控えをいただきたいということでございます。それから症状が出ない方、症状が軽い方がですね、無意識のうちにウイルスを拡散させるということが懸念されておりまして、お一人お一人それぞれ自分自身の事と考えて適切な行動をとっていただきたいと存じます。そして今週になりまして、オーバーシュート、感染爆発でございますが、この懸念がですね、さらに高まっております。今まさに重要な局面でございます。都民の皆様方にはこの事をくれぐれもご理解いただきまして、平日につきましては、できるだけお仕事は、ご自宅で行っていただきたい。もちろん職種にもよりますが。それから夜間の外出についてもお控えいただきたいと存じます。
「今週末の外出を控えて」
この週末でございますが、お急ぎでない外出はぜひとも控えていただくようにお願いを申し上げます。それから外国から帰国された方々につきましては、帰国者から感染が確認される事例は大変、増えております。そのことを踏まえまして、ご帰国から14日間の外出の自粛、この順守をお願いをしたいと存じます。それから大学でございます。新しく入学をされる方々はたくさんいらっしゃると思いますけれども、新学期を迎える中におきまして、授業の開始を後ろ倒しに、後回しにすると。例えば都立大学はゴールデンウィーク明けからの新学期としているようにですね、かなり時期をずらして新学期を始めるということが増えてまいりました。その他の大学におきましても効果のある対策をお願いしたいと存じます。都といたしまして、こうした都の状況を国にも伝えまして、ちょうどあすにはですね、対策本部会議が開かれると伺っておりまして、国のほうにも対策について検討をいただくようにお願いをしたいと存じます。改めて今の状況がどういう状況にあるかということを、ひと言で表しますと、感染爆発の重大局面と捉えていただきたいと存じます。感染爆発重大局面、この認識を皆様方と共有する、そしてお一人お一人の行動が社会全体にもさまざまな影響をもたらすというそのような自覚を持って頂いて、この難局を皆様とともに乗り越えていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いを致します。 
●コロナショックでマンション価格の暴落は本当に起きるのか 3/26 
新型コロナウイルスの不動産市場への影響を危惧する声を、ここにきてよく聞く。こうしたパンデミックは過去に例がないが、経済の悪化が不動産価格に影響することは否めない。ただし、不動産と十把ひとからげに言っても実態の理解は進まない。不動産の種類ごとに時系列で何が起こるのかという2つの軸で把握する必要が出てくる。新型コロナは人の移動を止めるものなので、ホテルや飲食店を含む商業施設が真っ先に影響を受ける。こうした事業は、日銭の入金が読めているから成り立つ業態である。そこで売り上げが急減すると、キャッシュが不足するリスクが高まる。不動産で最も影響を受けているのはこの業態である。次に、経済活動が滞ることで企業業績が悪化する。株価はこれを端的に表している。ここで需要が減るのがオフィスである。アベノミクス以降の景気で企業業績が向上し、オフィス需要は旺盛だった。大量供給や建て替えがあるものの、稼働率は低減していき、賃料も上がってきた。そんな状況下での業績悪化はオフィスの拡張移転を減らし、稼働率の悪化を招くことになる。こうして数カ月のタイムラグをもって、オフィス市場は悪化しそうだ。逆に、最も影響が少ないのがマンションなどの住宅になる。「住宅は実需」と言われるように、人にとって住む場所は必ず必要であり、この需要が大きく変動することは生活基盤が揺らがない限りない。
その意味では、ビジネスパーソンの給与水準が大きく変わるようだと住宅需要にも影響が出る。給与水準は雇用と密接に関係しており、100年に一度の金融危機と言われたリーマンショック直後に平均で3%ほど下がった。これほど下がったことは第二次世界大戦後にはなく、未曽有の金融危機だったといえる。このように、オフィス市場と住宅市場の価格変動幅はかなり違う。法人は法人業績と、個人は個人年収と連動するので、安定しているのは明らかに個人需要である住宅になる。住宅は景気下降期に強いといわれるのは、こうした影響要因を理解しておくとわかりやすい。
実は、リーマンショック後に首都圏マンションの中古価格は1割しか下落していない。それも一時的な話で、1年後には反転を始め、その1年後には価格が以前の水準に回復している。これは新築デベロッパーが多く倒産したため、新築供給が一時的に3分の1ほどに急減したことと連動している。供給が減ると、需要が安定している住宅の価格は上昇する方向に向くのだ。その意味で、今回の経済の腰折れに対する不安を抱く人が、購入を手控えるなどの状況を招くことはあろう。単純に売れ行きが悪くなることは想像される。しかし、価格は供給側が決めることができる。新築のマンションデベロッパーは大手7社で全戸数の半数程度を供給しており、需要が減ってもすぐには価格を下げる必要がなく、現状の方針は変えないはずだ(中堅以下は値引き販売が水面下で行われるだろう)。そのぶん販売期間が長引くことになるが、それは財務力と低金利による借入のお陰でしのぐことができる。そして新築マンション価格が下がらないと、中古価格が下がる理由がなくなる。
新型コロナの発生源が中国だったこともあり、トイレなどの資材の供給遅れが事業者側から発表されている。しかし、こうしたサプライチェーンの問題は、供給者側の善処により最小限・最短期間で終息することが多い。それは事業計画や予算などの関係により、代替品などで帳尻合わせを行うからだ。過去の非常事態を思い出してもそれほど長引くことはなく、今回も数カ月で解消に向かうだろう。次に問題になるのは、短期的なマインド低下による取引量の減少だ。これまで7年間ほど上昇の一途を辿ってきたマンション価格は、横ばいになるかもしれない。しかし売り手が「いつまでに売り切らないといけない」となった場合に、価格を下げざるを得ない場合が出てくる。こうした投げ売りに近いものは、3月の大量竣工時期にあたるため、出やすくなっている。こうした時期は金利が下がるので、買いやすくなる。買い手のマインドが落ちているときは物件を選びやすくなるので、見方を変えればチャンスである。
不動産の中でも、住宅が最も需要が堅いだけに一番リスクが低く、短期的には影響は小さいことがわかってもらえたと思う。しかし、住宅は中長期的にリスクがないわけではない。雇用が不安定になり、所得が下がれば、需要減退の回復は容易ではない。また、売買市場への影響が中長期的に出るものとして、結婚や出産が減ると持ち家需要や戸建て需要が減るので、注視する必要がある。それに加えて、賃貸市場と売買市場は関係が密接になってきている。都市圏では、地方からの日本人の人口流入と外国人の流入が細ると空室率の上昇を招き、家賃の低下につながる。こうした情報を把握しながら、影響を見極める必要がある。 
●コロナ・ショックでも資産を増やした運用方法とは? 3/26 
日経平均対象のETFを使って、資産を守り、増やす
今回のコロナ・ショック。短期間での急落ぶりはリーマン・ショック以上とも言われています。この局面において、大切な資産を大きく減らしてしまった方も多いのではないでしょうか? この状況下において、日頃、ご提案している運用方法が、「資産を守り、増やす」を実現できていますので、その方法についてご紹介したいと思います。その方法とは、日経平均株価を対象としたETF(上場投資信託)を使って、安くなればなるほど買いポジション(日経平均株価が上がればプラスになるETF)を増やし、高くなればなるほど売りポジション(日経平均株価が下がればプラスになるETF)を増やしていく方法です。
業績から割安・割高を判断、ここで重要になるのが「何をもって安い、高いを判断するか」ですが、私は、一つの基準として、「業績から見た時に割安か、割高か」で判断しています。
ここで、日経平均株価と、日経平均を構成する銘柄の業績動向(予想EPS[1株あたり利益])の推移を見てみましょう。日経平均株価と予想EPSの推移(2013年1月1日〜2020年3月19日) このグラフにおける重要なポイントは、日経平均株価は中長期では企業業績に連動しているという点です。
過去においては、2018年の年末にかけて米中貿易問題で大きく下落、さらにさかのぼると、2017年には北朝鮮ミサイル問題、2016年にはイギリスがEU(欧州連合)からの離脱を決定と、さまざまな出来事で株価が大きく動く局面がありました。しかし結局、日経平均株価は企業業績に連動していることが見て取れます。ということは今後においても、新型コロナウイルスの拡大・収束のいかん、米大統領選挙の結果に関わらず、日経平均株価は中長期では企業業績に連動するということになります。つまり今後の日経平均株価は、将来の企業業績が鍵を握っています。そこで、将来の企業業績から見た時に今の日経平均が割安か、割高かを判断していきます。そして、その割安、割高の判断を基に、買いポジション、売りポジションの投資比率を決めていきます。
2019年12月26日の記事にあるとおり、2019年12月は、日経平均株価は「割高」と判断していました。このため、日経平均株価が上がればプラスになる買いポジションではなく、下がればプラスになる売りポジションを持っていたので、コロナショックで日経平均株価が急落する中、資産を守り、増やすことができたのです。
私は運用する際に、「資産額全体をいかに大きく減らさないようにするか」を一番に考えています。運用において、一般的には「分散投資×長期保有」が良いとされていますが、コロナショックのようなことが起こると、どうしても資産は減ってしまいます。一方で、「分散投資×長期保有」において、資産を大きく減らさないようにするには、リスクを低減する形(国内債券や外国債券(為替ヘッジあり)が多いポートフォリオ)となり、リターンも小さくなってしまいます。下落リスクを小さくする一方で、リターンを伴う形にしたいとするならば、やり方が違ってきます。上がればプラスになる買いポジションのみでは、今回のコロナショックのような局面で、資産は減ってしまいます。資産を減らさないようにするためには、買いポジションのみではなく、現金ポジションを活用するか、できれば、下がればプラスになる売りポジションまで踏み込んでいくという手法になります。
長期保有で下がってもじっと耐えるのではなく、上がった時には現金化して避難し、下がるまでじっくり待つという、投資比率を変えていく手法になります。資産運用する上では、当然のことながら、資産は増えたり減ったりしますが、皆さまもできれば大きく減ってしまうことは避けたいでしょう。今回のコロナショックのような局面で資産を大きく減らしてしまうことは、セカンドライフを控えた50代の方、60代の方、特に年金生活の方(築き上げてきた大切な資産を運用で増やしながら、生活の足しにしていきたいという方)にとっては、とてもきつい状況では、と私は思います。
今回、ご紹介した運用方法においても、割安・割高をどのように判断するか、投資比率をどのような基準で変えていくのかは簡単ではありませんし、実際にやってみると、心理的な負担がかかる局面(特に、日経平均株価が下がればプラスになるETFを保有して、日経平均株価が上がっていってしまう局面)もあります。私自身、これまでに多くの方とやり取りをしてきましたが、多くの方に共通する根底の想いは「(リターンはしっかり確保して)増やしたいけど、(下落リスクは小さくして)減らしたくない」だと思います。その「増やしたいけど、減らしたくない」を実現するために、どのような運用方法が自分に合っているのか、改めてこの機会に考えてみてはいかがでしょうか? 
 3/27

 

●新型コロナウイルス 国内感染者 1449人(クルーズ船除く)  3/27 
各地の自治体や厚生労働省などによりますと、27日は午後5時現在で埼玉県と神奈川県でそれぞれ1人の死亡が確認されました。また、感染者は東京都の40人を含め、全国9の自治体で合わせて48人が新たに確認されました。日本で感染が確認された人は空港の検疫で見つかった人やチャーター機で帰国した人なども含めて1449人となりました。このほかクルーズ船の乗客・乗員が712人で、合わせると2161人となります。死亡したのは、国内で感染した人が49人、クルーズ船の乗船者が10人の合わせて59人です。
日本で感染が確認された1449人のうち、東京都は299人、北海道は169人、愛知県は157人、大阪府は156人、兵庫県は121人、神奈川県は93人、埼玉県は67人、千葉県は57人、京都府は34人、新潟県は30人、大分県は25人、和歌山県は17人、岐阜県は16人、群馬県は14人、高知県は12人、福岡県は12人、栃木県は11人、茨城県は10人、三重県は9人、奈良県は9人、石川県は8人、熊本県は8人、福井県は7人、青森県は6人、滋賀県は6人、山口県は6人、沖縄県は6人、長野県は5人、山梨県は4人、広島県は4人、愛媛県は4人、静岡県は3人、宮崎県は3人、宮城県は2人、秋田県は2人、福島県は2人、長崎県は2人、岡山県は2人、徳島県は1人、香川県は1人、佐賀県は1人、鹿児島県は1人、中国からチャーター機で帰国した人が14人、厚生労働省の職員や検疫官、それに空港の検疫で感染が確認された人などが合わせて33人です。
また、厚生労働省によりますと、重症者は26日の時点で、国内で感染した人などが56人、クルーズ船の乗船者が9人の合わせて65人となっています。一方、26日までに症状が改善して退院した人などは、国内で感染した人などが359人。クルーズ船の乗客乗員が601人で、合わせて960人となっています。
東京都で新たに40人の感染確認 新型コロナウイルス
東京都の小池知事は、27日、新たに40人が新型コロナウイルスに感染したことを確認したと発表しました。都が確認した感染者の数は、25日が41人、26日が47人と感染の拡大が続いていて、これで3日連続で40人規模の感染が確認されたことになります。 
●G20テレビ会議 550兆円超投入の「強大な経済財政政策」 3/27 
20カ国・地域(G20)は26日夜、テレビ会議形式の首脳会議を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するため、約550兆円以上を投入し、強大な経済財政政策を行うなどとする声明を発表した。安倍晋三首相は、東京五輪・パラリンピックの開催を1年程度延期することを説明し、参加国の理解を得た。G20の首脳がテレビ会議形式で協議するのは初めて。声明では、人々の健康や社会・経済的な打撃に立ち向かうことが「絶対的な最優先事項」とし、連帯を表明。財政面を含む必要な手段を取るとしている。
安倍首相は会議で、「現下の事態を収束させるために、世界の英知を結集させて治療薬などの開発を一気に加速させる」と提起。参加国は、治療薬やワクチン開発での協力を確認した。東京五輪・パラリンピックに関しては、来年夏までに開催するとの国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長との合意を紹介し、「人類が新型コロナに打ち勝った証しとして、完全な形で開催する」との決意を示した。中国の習近平国家主席は、関税の減免など貿易を円滑化するための共同施策を取り、世界経済の回復に向けた機運を高めるべきだと呼び掛けた。中国国営新華社通信が伝えた。習氏は「ウイルスに国境はなく、ウイルスはわれわれの共通の敵だ」と強調。各国が「最も厳密な感染防止・制御のネットワーク」を共同で構築しなければならないと訴えた。  
●新型コロナで焦るトランプ大統領の危険な賭け 3/27 
首都ワシントンはゴーストタウンと化した。3月半ばから桜が咲き始め、例年、この時期は多くの花見客が訪れる。だが、3月22日、ムリエル・バウザー市長は桜の名所を一部封鎖し、今年の花見は見送るよう懇願し、25日には必要不可欠な事業も市長令で閉鎖した。子供の学校の授業や誕生日パーティーまでバーチャルに切り替わり、市民生活は激変した。すでに全米で6万9000人を超える新型コロナウイルスの感染者が出て、死者も1000人を超えた。外出自粛あるいは一部の州では外出禁止の生活が全米でニューノーマルとなりつつある。11月のアメリカ大統領選へ向けて、数週間前までは再選がほぼ確実視されていたトランプ大統領だが、雲行きは怪しくなってきた。
歴史的に不況下の再選はほぼ失敗
新型コロナによる不況は避けがたい。経済成長と公衆衛生問題の解決はトレードオフの関係にある。感染拡大を防ぐためには他人との距離を保つ「社会的距離(social distancing)」が不可欠だ。だが、社会的距離の徹底は、人々の交流が前提となっている経済が犠牲にならざるをえない。
ケビン・ハセット前大統領経済諮問委員会(CEA)委員長は、仮に今後半年間、国民が外出しない状況が続けば「大恐慌のようになりかねない」と警鐘を鳴らした。トランプ氏は幸運にも、これまで戦争勃発や経済危機など政権運営が試される大規模な危機に直面したことはなかったが、ついに政権発足以来の最大のピンチに陥った。
任期1期目後半に不景気を経験した大統領で再選を果たしたのは、南北戦争以降では1900年大統領選で再選したウィリアム・マッキンリー大統領のみだ。それ以降、不景気の中、再選を目指したウィリアム・タフト大統領、ハーバート・フーバー大統領、ジミー・カーター大統領、ジョージ・H.W.ブッシュ大統領(ブッシュ父)はいずれも落選している。
現時点では景気はV字回復を遂げるのか、より回復に時間を要するU字回復となるのか、あるいは低迷を続けるL字(ホッケースティック)回復となるのか不透明だ。いずれにしても、突然、止まった経済活動は、公衆衛生問題がある程度、解消するまでは復帰の道筋はない。もちろん、公衆衛生問題は政策金利引き下げでは解決できない。
近年の2極化社会の中で景気と再選の相関関係は低下しているとの分析もあるが、これまでの歴史が繰り返されれば、選挙直前に不景気入りに直面するトランプ氏の再選は危うい。
だが、トランプ政権が直面しているコロナ危機は前例がないものであり、危機をチャンスに替えることも不可能ではない。
建国の父アレキサンダー・ハミルトン初代財務長官は、『ザ・フェデラリスト』の論文で立法府(議会)は将来の政策の枠組みを設定し、司法府(連邦裁判所)は過去に実行した政策について評価し、行政府(大統領)は現在起きている事象に対応する役割を担っていると記述している。
国家が危機に直面した際、大統領はリーダーシップを発揮する機会に恵まれているといえる。その機会をうまく捉えて国民を団結させ有権者からの支持を伸ばす大統領がいる一方、その機会を台無しにして、支持を失う大統領もいる。前者が大恐慌から国を再生したフランクリン・ルーズベルト(FDR)大統領、後者が同大統領の前任のフーバー大統領だ。
「ワシントンの沼地をさらう」と訴え、2016年大統領選以降、反エスタブリッシュメントを掲げてきたトランプ氏はこれまでアメリカの政府機関を批判してきた。だが、危機が起きた今、日頃は政府機関に批判的な国民も政府機関が果たす役割に期待を寄せる。トランプ氏はこれまで批判してきた政府機関を巧みに操り対策を打ち出さねばならず、自らのリーダーシップを発揮する極めて重要な局面にある。
コロナ対策で急変したトランプ政権
3月16日の記者会見でトランプ氏は新型コロナをめぐる自らの政権の対応について「10点満点をつける」と語ったが、初期の対応については落第点であったといえよう。コロナの感染がアメリカで拡大し始め、懸念が高まりつつあった年初から約2カ月間、トランプ氏は好調な市場への影響ばかり懸念して、問題を軽視する発言を繰り返し、民主党やメディアが事実に基づかずでっち上げた「フェイクニュース」だとすら話していた。共和党には大統領罷免に失敗した民主党が大統領を追いやるために新型コロナを政治問題化したとの声もあった。
だが、トランプ氏は3月半ば頃から急変した。トランプ氏は危機意識を高め、3月13日に非常事態宣言を行い、18日には国防生産法を発表した。公衆衛生問題の深刻さを把握し、問題を否定することでは切り抜けられず、この問題が再選を阻むリスクを理解したようだ。
3月16日に15日間ほど10人以上の集まりは自粛することを含む行動指針を発表した件について、コロナ対策調整官のデボラ・バークス博士は記者会見で英国の報告書がきっかけで、感染拡大を防ぐために他人との距離を保つ社会的距離を訴求する判断を下したことを説明した。英国の報告書は、ホワイトハウスにも共有されていた英インペリアル・カレッジのコロナ対策チームが発効したものと一致し、同報告書では何も対策を打たない場合は220万人のアメリカ国民が死亡すると分析しているのだ。
トランプ氏は支持率が頭打ちとなる中、コロナ問題が浮上するまでは、上昇傾向にあった株価を自らの経済政策の成果としてアピールしてきた。そして、資本主義を推進するトランプ政権と社会主義を推進する民主党といった対比の構図を描き、民主党が政権を握った場合、経済が悪化すると主張してきた。
だが、新型コロナによる株価暴落がその戦略を大転換させることとなった。大統領選がトランプ氏の新型コロナ対策の是非を問う信任投票となる可能性が高まったからだ。
今や民主党指名候補がほぼ確実視されているジョー・バイデン前副大統領は、大統領選へ向けて、新型コロナ対策についてのブリーフィングを毎日実施してトランプ氏のリーダーシップに疑問を呈している。外野からヤジを飛ばすことができるバイデン氏は優位な立場にある。ある専門家はトランプ政権が新型コロナ対策で失敗した場合、控えの投手にバイデン氏が用意されているとすら揶揄している。
ワシントン政治の破壊を公約したトランプ氏よりも、政府機関の力を借りて政策を発動できる経験豊富なバイデン氏のほうが、危機時にはふさわしいという見方が広まり、バイデン氏を当選させる機運が高まることも考えられる。
愛国心に訴え、今のところは支持率を維持
感染者が拡大する中、新型コロナ対応で出遅れたトランプ氏は、責任転嫁と愛国心の高揚に努めている。トランプ氏は新型コロナを「中国ウイルス」と称して中国の対応を批判したり、オバマ前政権に検査システムを複雑にした問題があったと主張したりしている。また、大統領が「アメリカが戦時下にある」と言い始めたのは、国民の愛国心を高め、大統領の下に団結することを狙っていると思われる。
その成果か、ABCニュース/IPSOSの最新世論調査では、大統領のコロナ対策について評価するとの回答が過半数を超える。ギャラップの最新世論調査では、トランプ氏本人の支持率は政権発足以来の最高値49%に達している。国が危機に直面し愛国心が高まる最中、今のところトランプ氏は多くの国民の支持を確保することに成功している。
9.11アメリカ同時多発テロの後に、メジャーリーグベースボールは全試合中止を発表したが、わずか6日後の9月17日には再開し、国民生活も元どおりとすることが推奨された。だが、新型コロナによる外出自粛はいつまで続くか不透明だ。1年から1年半後にワクチンが開発されるまで不安は完全に解消されないともいえる。
だが、一部有識者そして政権内では新たな動きも見られる。22日にトランプ氏は、「解決策が問題自体よりも劣ってはならない」とツイート。さらに、24日、フォックスニュースの番組でトランプ氏は、新型コロナの影響で経済活動が事実上停止状態の中、「(4月12日の)イースター(復活祭)までに再開したい」と述べた。大統領は月末まで国民に呼びかけた外出自粛の対策について緩和策を示唆し、再び経済重視の姿勢に転換する可能性がある。
新型コロナの指針が期限を迎える月末までに、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は今後の対策について大統領に助言する予定だが、感染者や死者が増加傾向の中、外出自粛などの継続を提言することが想定される。そこで、トランプ氏が専門家の意に反し、国民に職場復帰を呼びかけた場合、何が起こるか。
連邦制のアメリカは、トランプ氏の支持に従わない州がでてきて、大統領はそれらの州に強引に従わせることはできない。憲法修正第10条では州民の公共福祉の規制、安全確保は州政府が権限を保有するとしている。州政府あるいは市政府など地方自治体の外出自粛や外出禁止の政令を、大統領が撤回することは、憲法違反となりできない。また下院を民主党が握る中、そのような権限を州政府などから大統領に委譲するような新たな法律を、議会が可決することは考えられない。
現在、21州で外出禁止令が出ていて、これらの州民は合計するとアメリカの人口の半数を超える約1億9000万人にものぼる。ニューヨーク、カリフォルニア(ロサンゼルス市、サンフランシスコ市)、イリノイ(シカゴ市)など主要経済都市を抱える州も含まれる。いずれの州も民主党出身の州知事でもあり、大統領の早期緩和策に従わないことが想定され、トランプ氏の願う経済活動の再開の効果は限定的となるであろう。
早期の経済活動再開の可能性とリスク
だが、トランプ大統領が緩和策を打ち出す行為が、人々に何の影響も及ぼさないわけではない。CBSニュース/ユーガブの最新世論調査によると、「新型コロナに関する正しい情報源としてトランプ大統領を信用するか」との問いに対し、90%の共和党支持者が信用すると回答。大統領職という公的地位によって、大統領は共和党を中心に多くの国民の考えにインパクトを与えかねない。また、大統領よりも支持率が低く、大統領の意向の影響を受けやすい大半の共和党出身の政治家も、大統領に追随せざるをえない事態が想定される。
早期緩和策の実行による外出自粛の緩和はリスクを伴う。現状では、感染がさらに拡大し死者がさらに増えることは確実視され、それはアメリカ社会の自殺行為に等しいとも批判されている。
パンデミックの前例として比較される1918年のスペイン風邪では春、秋、冬の3つの波があった。一端、パンデミックが沈静化したと見られても、社会的距離を早期解除した場合、再び感染拡大のリスクがある。現在は多くの国民が大統領のコロナ対策を支持しているが、死者が急増すれば、選挙戦に向けて大統領に対する風当たりは激しさを増し、落選リスクは高まるであろう。
一方、パンデミックが沈静化すれば、民主党と協力して超党派法案を可決することで経済のV字回復あるいはU字回復を実現して、危機をチャンスに変えることができる。大統領選まではまだ7カ月あり、予断を許さない。 
●コロナショックの経済危機はリーマン超え 3/27 
ドナルド・トランプ米大統領は2018年5月に米政府のパンデミック(世界的大流行)準備ユニットを再構築し、規模を縮小した。現時点で振り返れば軽率な判断に見える。
しかし、こうした措置を取った大統領はトランプだけではない。国家安全保障会議(NSC)の世界保健安全保障ユニットはビル・クリントンの政権下で1998年に設置された。その何年か後、まずジョージ・W・ブッシュ、次いでバラク・オバマがこのユニットを一時閉鎖した。
要するに官僚組織は、蓋然性は低いが大きな犠牲を伴うパンデミックのようなリスクにはほとんどお手上げなのだ。この手のリスクは縦割り型の行政機構とリスク評価モデルにはうまく収まらない。
NSCでさえこんなありさまだから、経済政策の立案担当者はなおさらなすすべを知らない。彼らとて「テールリスク」、つまり数十年から数百年に1度起こるかどうかのリスクを議論することはあっても、パンデミックで経済活動がストップする事態など想像もできなかったはずだ。
2008年に私たちはリーマン・ショックで金融市場が大混乱に陥るのを目の当たりにした。サブプライムローンの焦げ付きに端を発した金融危機で、経済全体が心臓発作を起こしかねない状況だった。
2008年から09年にかけての冬には全米で毎月75万人超が失業し、景気後退期全体を通じて870万人が職を失った。自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)やクライスラーなどアメリカが誇る大企業も経営破綻に追い込まれた。
影響は世界全体に及び、世界の貿易量はかつてないほど落ち込んだ。それでも各国の大胆な金融・財政政策のおかげで景気後退の深化と長期化は回避でき、2009年下半期には回復の兆しが見え始めた。
いま私たちが直面している新型コロナウイルスによる経済危機がどの程度進むのかはまだ予測できないが、景気後退は避けられそうにない。昨年から既に世界の製造業は伸び悩み始めていた。今や最低でも数カ月間、世界の経済大国が軒並み経済活動を大幅に制限せざるを得ない状況だ。工場は操業を停止し、店舗、ジム、バー、学校、大学、レストランが閉鎖されている。
現時点での指標を見る限り、アメリカでは6月までに毎月最大で100万人の失業者が出ると予想され、2008〜09年よりも深刻な事態になりそうだ。航空産業など一部の部門は特に大きな痛手を受けるだろう。石油業界では需要の急減を見越してOPEC(石油輸出国機構)とロシアと北米のシェール石油会社が熾烈な値下げ競争を繰り広げている。
値下げ競争が他部門にも広がれば「負債デフレ」、つまり物価の下落で企業の負債が実質的に増大する現象が起きる。世界全体で企業の負債は2008年の2倍に上っており、この負担が増大すれば世界全体で景気が急激に冷え込む。
流動性確保に走る市場
だが新型コロナウイルスによる景気後退には、減税や政府支出など古典的な財政政策で対処できる。感染拡大の最悪期を乗り切れたら、まずは公衆衛生インフラに投資することだ。今回明らかになったように、どの国も感染症の監視、モデリング、緊急対応システムを大幅にグレードアップし、物品の備蓄や予備能力を拡充する必要がある。それにより建設的な投資機会が数多く生まれ、質の高い雇用が創出されるだろう。
2008年と違って今回は危機をきっかけに成長が見込める部門もある。アメリカのGDPの約18%を占める医療部門はその代表格だ。人と人の接触を避ける必要があるため、非対面型のデリバリーサービスやウェブ会議システムの利用も増えている。こうした部門は危機後も成長するだろう。
とはいえ2008年と同様、景気後退に対処する前に抑えるべき脅威がもう1つある。金融パニックのリスクだ。パニックは景気後退とは違う。今回の金融パニックは3月第2週から始まり、今も市場を揺さぶり続けている。
直接的な引き金となったのは、サウジアラビアとロシアの石油減産交渉の決裂と、その後のサウジアラビアの大幅な増産決定だった。イタリアの感染拡大のニュースに、経済に直結する油価のニュースが重なったため、世界的な信用収縮と、安全な資産への資金逃避に火が付いた。
感染症という異質の要因が経済にもたらした衝撃が、信頼感と信用の崩壊という経済システムの内部崩壊に「変異」しつつあることが、市場関係者にも少しずつ分かってきた。
突然の信用収縮は、ビジネスモデルが弱いにもかかわらず、莫大な借入金によって仕事を回してきた企業をあぶり出す。その経営悪化は、操業停止や雇用喪失、さらには本来なら優良な資産のたたき売りを通じて、経済全体の先行きを怪しいものにする。
こうした企業が借入金の返済に窮すれば、債権者のバランスシートがダメージを受ける(そんな企業に融資していた時点で間違っているのだが)。そしてこの種の連鎖的な破綻に対する不安が、全面的な信用収縮をもたらす。
2008年の金融危機の「主犯」は銀行だった。だがその後、アメリカの大手銀行はバランスシートを強化してきたから、今回は困難に陥るとは考えにくい。だがヨーロッパの銀行は違う。2008年の金融危機とユーロ圏の財政破綻のダブルパンチから、まだ本当に立ち直ったとは言えない状況だ。イタリアの公的債務は今も危険なレベルにある。
一方、原油価格の急落で石油収入が激減した産油国は、政府系投資ファンドの資産売却を強いられるかもしれない。そうなれば、本来なら優良資産だったものが買いたたかれて、幅広い市場に連鎖反応を引き起こしかねない。
だが、何より懸念すべき兆候は、株価と米国債の急落だ。本来なら米国債は、資金の安全な逃避先となるはずだ。その価格が下がるということは、相当な数の投資家が、必死で手元資金を確保しようとしていることを意味する。
それなのに、各国の中央銀行の対応はどこか頼りない。ECB(欧州中央銀行)のクリスティーヌ・ラガルド総裁は3月半ば、ECBにはイタリアを支援する義務はないと示唆するかのような発言をして市場を動揺させた。
FRB(米連邦準備理事会)が15日に緊急決定した措置も、インパクトに欠けた。政策金利を実質ゼロにまで引き下げ、4回目の量的緩和に乗り出すというものだったが、これでは2008年の対策と基本的に同じだ。
確かに、感染症のパンデミックにぴったりの金融政策は存在しない。実際、米欧の金融当局はどちらも、これは財政政策によって対処するべき問題だと主張する。だが、たとえ中央銀行が取れるパンデミック対策は限られているとしても、信用システムそのもののリスクが高まることは阻止しなければならない。
FRBのリードに期待
今のところ世界の中央銀行には、2008年の世界金融危機で見られたレベルの連携はない。ただ、明示的な連携は必要ないかもしれない。私たちは十分な時間をかけて、世界金融危機の経験を消化してきた。その展開をよく理解して、FRBがリーダーシップを取らなくてはいけないことは、誰もが分かっている。
世界の金融市場はドルベースで動いている。それだけにFRBが15日、日本やイギリスの中央銀行と協力して、ドル資金の通貨交換(スワップ)を拡充すると発表したことは重要だった。
こうした中央銀行の世界的な協力体制に、トランプと米政権内の経済ナショナリストが異議を唱えるのではないかという懸念も、パンデミック以前は根強かった。
スワップ協定は、簡単に言えば、FRBが他国の中央銀行の要請に応じてドルを供給するものだ。「アメリカを再び偉大な国に」と気勢を上げる人々に支持される政策ではなさそうだが、自宅から出ることさえ恐れている最中に、経済ナショナリズムにこだわる余裕はないようだ。
しかし、FRBの介入も市場の売りを止めることはできず、緩和政策がさらに拡大するのか、様子見が続いている。
FRBはまず、金融機関が国債などを担保に短期資金を貸し借りするレポ市場に、緊急の資金供給を追加した。続いて、大企業が無担保の短期約束手形で資金を調達するコマーシャル・ペーパー市場にも、流動性を供給している。
ただし、世界全体との関係を考えたとき、中央銀行の行動には根本的な限界がある。
近年のスワップ協定は、先進国の中でも最重要国に限られてきた。先の金融危機に際して一時的に拡大したときも、FRBのドル供給の恩恵にあずかることができるのは14の中央銀行だけ。そのうち新興市場は、韓国、ブラジル、メキシコだけだった。
中国が米国債を換金?
とはいえ、2008年以降、最も進んだ新興国経済と先進国経済の垣根は、次第に曖昧になりつつある。
パニックが起きると、資金はアメリカを中心とする先進国に流れる。今のところ、ドル建て資産への資金流入は始まったばかりのようだ。しかし、いくつかの新興国市場は既に、深刻な金融逼迫に直面している。実際、新型コロナウイルスの不安が世界的に広まり始めてからというもの、外貨の大規模な流出が続いている。3月中旬までの8週間で、新興国市場から逃げ出した資金は550億ドル。2008年の金融危機や、2013年にFRBが量的緩和策の縮小を示唆して金融市場が動揺した「テーパータントラム」の際の2倍に当たる規模だ。
メキシコやブラジルなど、人口が多くて、公共インフラや財政が脆弱な国は、特に深刻な影響を受けるだろう。
ただし、最も懸念されるのは中国だ。2008年の中国経済はたくましかった。資金流出の影響を受けず、大規模な財政・金融刺激策によって、自国の経済も、中国への輸出に頼る国々の経済も、大きく底上げしてみせた。
FRBと中国人民銀行がスワップ協定を真剣に検討することもなかった。2008年以降、中国はドルではなく人民元を核に、独自にスワップ協定網を確立している。
その中国が経済活動の大部分を閉鎖せざるを得ない事態となり、世界の貿易が大幅に縮小しようとしている今、問題は中国のグローバル企業のドル需要がどこまで増えるかということだ。
2008年以降、中国企業の国際進出は目覚ましく、他の新興国市場の企業と同じように米ドルを大量に借り入れている。中国の外貨準備も膨大だが、現金の米ドルではなく、ほとんどを米国債で保有している。
米債券市場の不安定さを考えると、世界が何よりも恐れているのは、中国がその膨大な外貨準備高を現金化せざるを得ない状況に追い込まれることだ。そうなれば、公的資金によって市場の安定を図ろうとしているFRBの努力は、水の泡になりかねない。
一方で、FRBが人民元を担保に中国と大規模なスワップ協定を結ぶことは、想像しにくい。FRBも米議会の反中タカ派の怒りを買いたくはないだろう。
世界が公衆衛生危機に直面し、経済の安定を守るという共通の利益が脅かされている。官僚の創意が、この危機を政治化したい人々のあからさまな誘惑に打ち勝つことを、願うしかない。 
●「コロナショックでお金を失わない方法」 3/27 
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界的に株価が暴落している。こうした金融危機の時には、自分の知っているもの以外には決して投資しないことが肝要だ。もし、私が何かを「10」で買うように助言して、それが「20」になったとしたら、あなたは自分がどれだけ賢いかを自慢して回るだろう。その時は、助言したジム・ロジャーズの名前は決して出さない。でも、その時の選択が正しかったとしても、自分で導き出したわけではないので、「この先もっと買うべきか、ここで売るべきなのか」という次の一手がわからない。逆に、もし、私が言う通りに「10」で買ったものが、「5」に半減したとする。その時は、「ジム・ロジャーズほど愚かな人はいない」と文句を言うだろう。金融危機の局面でも「大丈夫、まだ買える」と考えることができる場合もある。しかし、もし何も知らないのであれば、何もしないことが一番いい。成功した投資家の多くは何もしない時間が長い。座って待って、何かを見つけたら、10年でも20年でも成長を待つ。だから成功した投資家の多くはたいてい何もしていないのだ。
最も気を付けなければならないのは、買ったものが「10」から「100」になったような時だ。売って儲けを出した後も、「もっと何かしなければいけない」と思ってしまう人がいるが、それをやってはダメだ。こういう時は何もしてはいけない。「ビーチでリラックスする」「窓を閉めて何もしない」「落ち着いて忍耐強くなる」など、他に何かを見つけるまでは何もしてはいけないのだ。投資家にとって、とても大事なことなのだが、それを守れる人は少ない。ドイツ人であっても、ロシア人であっても、日本人であっても、たいていは、「いつもゲームに参加していないといけない」と思ってしまう。投資家の悲しい習性だ。投資で一番大事なことはお金を失わないことである。資本を守るには、お金を作り出すことが極めて重要だが、まずは「お金を失わない」というルールを守らなければならない。
私は安くて、落ち込んでいるものを買うのが好きだ。こうすれば、もし間違った選択をしたとしても、多くを失うリスクはないからだ。そして、誰も知らなかったり、注意を払っていなかったりするものを買う。チャンスは、人々が見過ごしているところに生じる。「何か面白いことが起きているか?」と聞いて回り、それを探し出せれば、必ず儲けが生みだされるものなのだ。
ホットティップ(とっておきの情報)を欲しがり、今週金持ちになりたいと欲し、他人が言うことを何でも信じてしまう。そういう投資家は、自分の知らない分野にお金を投じるという愚かな行いを犯してしまう。
もし、人生で合計20回しか投資ができないのなら、誰もが、もっと慎重になるだろう。インターネットの情報を見るだけで済ますのではなく、友達の話だけを信じずに、自分がよく知っているものだけを買うだろう。でも、多くはインターネットやテレビや新聞を見て、「私にも今できるはずだ」と思い込む。実はマーケットで金を儲けるのはそんなに簡単ではない。ほとんどの人が儲けられないのは、努力不足のまま、簡単に早く見つかる答えを求めるからだ。
結論として、「何かをよく知っていない限り、投資はしてはいけない」「人生で20銘柄しか買えないと思い、慌てて行動せずに、とても慎重に何を買うかを決める」。これが実行できれば、投資家として成功するだろう。 
 3/28

 

●コロナショックの飲食店を救えるか!? 飲食代の先払いサービス「さきめし」 3/28 
Covid-19(新型コロナウイルス感染症)による影響で大きな打撃を受けているといわれる飲食業界を応援できるかもしれないサービス、「さきめし」が注目を集めています。これは新しい応援の仕方。
さきめしとは
「食」を通じた新しいコミュニケーションや価値観を提案するGigiが展開するのは、Covid-19対策として外出を控えている人がスマホアプリ「ごちめし」を通じて、応援したい飲食店へ自分の食事代“ごち”を先払いするというサービス。外出できるタイミングになったらその“ごち”で食事ができるほか、他の人に食事をごちそうできる「ご指名ごち」や「オープンごち」も使用可能です。
決済後、店舗には最短1週間以内に料金が振り込まれるため、今すぐ店舗に行けないという場合でも応援の気持ちを伝えることで「苦境を手助けできる」とのことですが、有効期限は6カ月であることと、さきめしを入れた店舗が閉店してしまった場合には返金がされないのでその点は注意が必要です。
“未来のお客さん”という形で“ごちそうさま”を先払いできる「さきめし」が発表されて以来、登録店舗は全国へ拡大中。Twitterでも「この制度いいかも!?」「こういうのいいな!」「素晴らしいシステム」といった声があがっています。 
 3/29

 

●トヨタさえも「崖っぷち」、新型コロナの衝撃度 3/29 
「こんなにも、世の中がガラッと変わることがあるのか」──。日本自動車工業会が3月19日に開いた定例会見。会長を務める豊田章男・トヨタ自動車社長は、冒頭のあいさつの中で、新型コロナウイルス感染拡大による社会の混乱をそう表現した。中国から始まった感染は、今やヨーロッパ全域やアメリカ、東南アジアなど全世界レベルにまで拡大。各地で経済活動が停止し、日本の製造業を代表する自動車産業への影響も一段と深刻なものになってきた。ヨーロッパではイタリアやフランス、スペインなどで感染者が急増。人の移動が制限されたことを受け、3月16日以降、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループなど主要な自動車メーカーが相次いで域内生産の一斉休止を発表した。日本勢も追随し、トヨタはヨーロッパの主力生産拠点であるイギリスやフランスを含め、6カ国の工場の稼働を停止。ポルトガルを除き、再開時期は決まっていない。日産自動車やホンダ、スズキも完成車工場を休止した。
米自動車ビッグスリーも生産停止に
さらにアメリカでも感染の拡大を受け、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の米自動車ビッグスリーが3月18日、3月末まで生産を停止すると発表した。全米自動車労働組合の要請を受けた措置で、北米にある全工場の操業を止めた。日系自動車メーカーも操業休止の意向を表明し、トヨタは部品生産拠点も含め、アメリカ、カナダ、メキシコの全14工場の生産を休止(当初の休止期間は3月23日から4月3日)。ホンダも北米にある全12工場の操業を停止した。日産やマツダ、SUBARUも追随し、北米にある日系自動車メーカーの工場はすべて操業が止まった。その後、アメリカでの感染者数はさらに拡大。3月26日時点では8万5000人にまで拡大し、中国やイタリアを上回って世界で最多になった。FCAは同日、カナダとアメリカでの生産停止を4月14日まで延長すると発表。トヨタも同日、北米地域の生産停止を4月17日まで延長することを明らかにするなど、事態はますます深刻化しつつある。自動車メーカーの生産が停止すれば、伴って進出している部品メーカーも同じように厳しい状況に置かれる。あるホンダ系部品メーカーでは北米やヨーロッパ、インドなど、日本と中国以外の大半の工場が止まった。同社幹部は「いきなり需要が蒸発した。海外売り上げがほとんど立たない中で、とくに生産規模が大きいアメリカは人件費など固定費の負担が非常に苦しい」と悲鳴を上げる。
ドル箱市場のアメリカで販売激減
日本の自動車産業にとって、アメリカ市場の混乱はとりわけ痛い。何しろ日本の自動車メーカー6社(三菱自動車を含む)は昨年、アメリカで計643万台もの新車を販売。ホンダと日産は世界販売台数に占める北米比率がいずれも3割を超える。SUBARUに至っては7割超だ。トヨタは比率としては3割を切るが、アメリカ市場でGM、フォードに次ぐシェアを誇り、現地販売台数は年間238万台に上る。しかもアメリカでは、新車需要の7割以上を値の張るSUV(スポーツ用多目的車)やピックアップトラックが占め、1台当たりの平均単価が他地域よりも高い。台数、金額の両面において、アメリカは文字どおりの“ドル箱”市場なのだ。しかし、外出の自粛要請などで新車販売店への客足は多くの地域でほぼ途絶えており、3月以降の販売激減は避けられない。韓国・現代自動車のグローバルCOO、ホセ・ムニョス氏は米紙のインタビューで、「3月の全米の新車販売は前年同月比で15〜20%減り、4月には同50%にまで落ちるだろう。新型コロナの影響が7〜8月まで続くことを最悪のシナリオとして想定している」と強い危機感を示した。ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは、新型コロナによる社会・経済の混乱で、アメリカの新車販売の冷え込みは長引く可能性があると指摘する。「トランプ政権が早期に混乱を収束できなければ、休業や失職によって、車のローンやリースを組めない人がこれから大量に出てくる」。
過去を振り返れば、金融機能がマヒした2008年のリーマンショック時にも、自動車産業は大きな打撃を被った。しかし、当時と今とでは状況がまるで違う。「当時は中国市場が世界を牽引し、グローバルではバランスが取れていた。今回は牽引役が期待できない」(豊田社長)。リーマンショック時には世界需要を支えた中国だったが、今回は新型コロナの発生地として大混乱に陥り、いまだ非常事態モードが続く。中国政府の公式統計上は感染者拡大のピークを過ぎ、工場の操業再開などが進みつつある。だが、物流や人の移動には依然として厳しい制限がかかり、サプライチェーンの復旧は道半ばだ。こうした状況下で自動車が売れるはずもなく、2月の中国内の新車販売は前年同月より8割近く落ち込んだ。3月に入って減少率は5割以下に縮まるなど改善傾向にはあるが、今年1年間でみれば大幅な前年割れが確実だ。世界最大の市場だけに日系自動車メーカーが被る打撃は大きい。ただし、日本経済への影響度で言えば、アメリカ市場が崩れたことのほうが深刻である。日系自動車メーカーの中国事業は基本的に現地生産・現地販売なのに対し、アメリカで販売される日本車の3割弱は日本で生産して輸出しているからだ。昨年その台数は172万台に上った。国内生産台数のうち、スバルは5割、マツダは3割、トヨタと日産も2割超をアメリカに輸出しており、アメリカ市場の冷え込みは国内工場の操業度低下に直結する。
トヨタもついに国内減産に踏み切る
その懸念はすでに現実のものになった。トヨタは3月23日、新型コロナ感染拡大による海外販売不振に対応して、4月3日から最長で同15日まで愛知県の高岡工場、堤工場、田原工場など国内5工場の7ラインを対象に生産を一時停止すると発表した。期間中の減産は3万6000台だが、生産委託先である日野自動車を除く4工場の2019年の生産実績は約160万台と、トヨタの国内生産の半分弱を占める。トヨタが海外での需要減少を理由に国内工場を停止するのはリーマンショック時以来のこと。従業員には特別休暇を付与し、給料も全額支払う。停止期間は稼働日ベースで最短2日間だが、高級車ブランド「レクサス」を製造する子会社のトヨタ自動車九州の第1ラインは4月15日まで9日間休止する。レクサスは世界販売の4割をアメリカが占めるだけに、アメリカ市場の混乱が直撃した格好だ。マツダも3月24日、国内の全2工場で生産調整を実施する計画を明らかにした。広島の本社工場と防府工場(山口県)において、3月28日から4月30日までのうち13日間は操業を休止するなどして、輸出車を中心に大幅な生産調整を行う。期間社員を含め、雇用を維持し、従業員には通常の給料の9割相当の休業手当を支払う。事務などの間接部門は業務を続ける。マツダの今回の停止期間は、2011年の東日本大震災(5日間)やリーマンショック時(10日間)を上回る異例の長さだ。帝国データバンク広島支店によると、マツダとそのグループ会社の製造部門の下請け企業(資本金3億円以下)は849社で、そのうち5割近くが広島県を中心とした中国地方に立地する。マツダの生産調整が長引けば、地域経済への影響も避けられない。日産自動車も国内外の需要が低迷しているとして、国内の3工場で長期間減産することを決めた。海外向けブランド「インフィニティ」や国内向けの高級車を生産する栃木工場は4月6日〜5月1日のうちの14日間、小型車を生産する追浜工場(神奈川県)は4月3日〜5月1日のうちの4日間で生産を停止する。SUVなどを生産する子会社の日産自動車九州では、昼夜2交代勤務のうち、4月中の大半の日で夜勤での車両生産を取りやめる方針だ。
サプライチェーンの寸断も発生
新型コロナの影響で海外の部品生産に支障が生じ、国内工場が停まるケースも出ている。いわゆる“サプライチェーンの寸断“だ。ホンダは4輪車の狭山工場(埼玉県)で4月16〜17日の2日間、生産を停止する計画だ。今後の部品調達が滞る可能性が高まってきたことが原因という。三菱自動車も同様の理由で、軽自動車を生産する水島製作所(岡山県)の第1ラインの稼働を3月27日から4月10日まで停止することを決めた。自動車は裾野が広く、日本経済の屋台骨を支える産業でもある。国内で完成車や部品の製造に携わる従業員は約90万人。鉄やプラスチックなどの関連素材を含めると就業者数は約140万人に上る。豊田社長はかねて「国内生産は石にかじりついてでも守る」と発言してきたが、それはあくまで平時での話だ。アメリカなど主要市場での需要減少やサプライチェーンの混乱が長引き、自動車メーカーの国内生産がストップする事態が続けば、その下請けや周辺産業を含めた国内の雇用にも大きな悪影響が及ぶ。 
●「コロナ不況」で真っ先にリストラされる人 3/29 
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、リモートワークに踏み切る企業が増えている。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「在宅勤務は部下をマネージできない管理職と自己管理のできない社員をあぶりだす。そういう人は“コロナ不況”でリストラや降格・降給の対象になるだろう」という――。
リモートワークでバレる「ほんとうに必要な社員いらない社員」
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、社員の在宅勤務に踏み切る企業が増えている。パーソル総合研究所の「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」(3月9日〜15日調査、正社員2万1448人)によると、「在宅勤務を命じられている」3.2%、「推奨されている」は18.9%で計22.1%。「命令・推奨」の割合は大企業ほど高く、従業員1000〜1万人の企業は35.1%、1万人以上は42.9%と半数近くに上っている。実際に在宅勤務を実施している人の割合は13.2%。そのうち現在の会社で初めて実施した人は約半分の47.8%もいる。国勢調査に基づく推計では約360万人の正社員が在宅勤務をしていることになり、これにその47.8%を当てはめると、約170万人が今回のコロナ騒動をきっかけに“にわか在宅勤務者”となったということになる。在宅勤務といえば、これまで「通勤地獄から解放され、自由な時間も増える」「子育てとの両立ができる」といったメリットが強調されてきた。
在宅勤務は通勤地獄から解放されるが緊張感を維持するのが大変
だが当然、在宅であっても仕事の成果が問われる。最初は張り切って仕事をしようとするが、1週間も続けば、同僚や先輩もいない中で緊張感を維持するのが大変になる。しかも、自宅に書斎や自分の部屋がない人も多い。以前、在宅勤務をトライアル実施した大手電機メーカーでは、自宅に独立した部屋を持つ人は3分の1しかいなかったそうだ。子どもには部屋はあるが、夫婦の寝室はベッドが占領しているという家庭では、パソコンを開いて仕事できるのはリビングデーブルだけとなる。朝食を取りながらテレビを見たり、新聞を読んだりするプライベート空間の中で、仕事モードにスイッチを切り替えるのは容易ではない。ダラダラと仕事をすることになりかねず、仕事のモチベーションを維持するには厳しい自己管理が問われる。“にわか在宅”ともなれば日を追うごとにさまざまな困難にも遭遇するにちがいない。
在宅勤務のデメリット「運動不足、精神的負担、意思疎通が難しい…」
新型コロナ対策として1月27日から約4000人の社員の在宅勤務に踏み切ったGMOインターネットグループは1カ月以上経過した3月4〜5日に実施したアンケート調査を公表している(3月16日)。それによると、通勤負担の軽減などのメリットも多くあったものの、デメリットや課題が浮かびあがっている。たとえば「腰痛など身体的負担、運動不足、精神的な負担」や「業務効率が低下、時間管理が難しい」という声が上がっている。また「同僚・他部署パートナーとの意思疎通が難しい」といった在宅ゆえのコミュニケーション不足も指摘されている。実際に長期の在宅勤務を続けると、どんな弊害が発生するのか。数年前にIT企業が営業部門のセールスエンジニア職などを対象にテレワーク参加者を募集した。会社に行くのは週1回のミーティングのみで、あとはテレビ会議を通じて必要な打ち合わせ行う。人事評価の基準は「顧客との成約」などの目に見える成果が中心になる。当初、20代後半から30代の多数の社員が手を挙げた。その一人の30代のA氏は「結局、仕事のコントロールなど自己管理が難しく、3カ月もたたずに挫折しました」と語る。自己管理ができないだけではなく、仕事や会社に対する意識にも大きな影響を及ぼすようになったと言う。
「会社を辞めたい」「別の部署に異動したい」社員続出、組織は崩壊
「チームを離れて仕事をしているうちに、『この仕事は自分がいなくても誰でもできるんじゃないか』と思う人が増えました。また、チャット上でのやりとりばかりで、結果的に個人のパフォーマンスが目立つようになり、マネジャーは『君の数字が足りていないね、誰がカバーしますか』というチャットばかり。前向きの議論はしなくなりました。その結果、かなりの人が『会社を辞めたい』『別の部署に異動したい』と声を上げるようになり、組織は崩壊しました」在宅での仕事を続けていくうちに顧客との関係でつまずくこともある。同じオフィスにいれば、誰かがサポートすることも可能だが、在宅勤務では自分で悩みを抱え込んでしまい、その失敗を引きずってしまうことがあった。
通信環境が整備されてもチームや職場の一体感が失われる
一方で成果を求められる中で、自分がこの会社に存在する意味があるのかという根源的な疑問も頭をもたげ、考えた末に退職してしまうケースも多かったという。通信環境がどんなに整備されてもチームや職場の一体感が失われてしまう。在宅勤務にはそんなリスクも隠されているのだ。ただ、とはいえ、今回のコロナ対策を契機に在宅勤務は広がっていくことになるだろう。会社にとって最大のメリットは「管理職の資質・能力」や「社員の評価」が労働時間の長さではなく、成果という数字によって可視化されるからだ。数年前から在宅勤務および、コアタイムのないフレックスタイムを推奨しているIT企業の人事部長はこう語る。「従来は朝早く出社して仕事の準備をしている社員を管理職は『彼は真面目で偉い、それに比べて始業時間ギリギリに駆け込んできたあいつはダメだ』と勝手に評価したつもりになっていました。しかし本当に測るべきなのは成果です。だからこそ会社としては社員を時間と場所から解放し、自律的な働き方を推進しているのです」
コロナ不況で「ダメ上司&社員」が降格・降給される日
この人事部長は、在宅勤務も含めた「働き方の変化」でより重要視されるようになるのは、やはり管理職の能力と社員の成果だと言い切る。「在宅勤務になると多くの管理職は目の前にいる部下がいなくなることに苦慮します。メンバー一人ひとりとどのようにコミュニケーションを取り、明確な仕事の指示ができるのか、そして課全体のパフォーマンスを達成できるかが問われます。マネジメントスタイルががらりと変わる中で独自のスタイルを築くことができず、チームの成績が落ちれば、管理職不適格者と見なされても仕方ないですし、降格することになるでしょう」同社ではすでに降格された管理職も少なくない。ある部署ではこの2年間で実に10人の管理職が入れ替わっているという。また、このIT企業では賃金制度も年功的制度を廃止し、役割と成果に基づく年俸制に変えている。その結果、年齢に関係なく年俸が毎年増減するようになった。同社の社員は通常勤務と同じように成果を出さなければ給与が減るという緊張感の中で仕事をしている。離れて働くからこそわかる「本当の実力」で「昇進・降格」「昇給・減給」するような仕組みの導入はコロナ対策の在宅勤務でも加速していく可能性がある。現在、感染拡大が事業活動にも深刻な影響を与えている。東京商工リサーチの調査(3月19日)によると、新型コロナウィルスの影響を受けているとした422社の上場企業のうち151社(35.7%)が売上高や利益の減少など業績悪化を挙げている。すでに“コロナ不況”の足音も聞こえ始めている。不況になれば、当然、リストラに踏み切る企業も出てくるだろう。在宅勤務によってあぶりだされた「社員をマネージできない管理職」と「自己管理できずに成果を出せない社員」が、そのターゲットになるかもしれない。 
 3/30

 

●コロナショック…韓国を襲う「海外ファンド資金引き上げ」の連鎖 3/30 
実体経済、金融市場、ともに不安定
欧州、米国を中心に新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。コロナショックの影響は大きく、欧米の多くの国で外出に制限がかけられ、経済活動は一部を除いて開店休業状況だ。間違いなく、世界経済はマイナス成長の世界に入ることになる。そうした状況下、最も大きな影響を受けている国のひとつが韓国だ。同国では、実体経済と金融市場の不安定感が大きく高まっている。ソウルの金融市場では投資資金の流出が止まらない韓国銀行(中央銀行)は、無制限の資金供給を行うなど、なりふり構わぬ姿勢で銀行の流動性を支えようとしているが、状況がどうなるかは見通しづらい。また、韓国の経済を支えてきたサムスン電子の業績懸念等も高まり始めた。スマートフォンの生産に加え、世界的な半導体需要の落ち込み懸念が高まる中、サムスン電子はこれまでに行ってきた設備投資負担に対応しなければならない。消費者信頼感がリーマンショック発生直後の水準を下回るなど、韓国経済の下振れ懸念が高まっている。
不安定感高まる韓国の金融システム
足許、韓国の金融システムからはかなりの勢いで資金が流出している。状況はかなり深刻とみられる。韓国経済の専門家の中には、韓国の経済・金融システムが1997年のアジア通貨危機と同等か、それ以上のショックに見舞われる可能性は否定できないと先行きを警戒する者が増えつつある。特に、銀行のドル資金の調達への懸念が強まっている。3月26日に韓国銀行が発表した声明によれば、世界的に投資家が急速にリスク削減に動きドル買いが進んだ結果、韓国ウォンボラティリティー(為替レートの変動性)が想定以上に高まってしまった。この状況を韓国の金融当局は憂慮している。その一因には、外国籍のファンドが韓国株を投げ売り、ウォンの売り圧力が高まったことなどがある。その結果、売るから下がる、下がるから売るという“群集心理”の連鎖反応が起き、ウォンの為替レートの変動率が急上昇した。文政権は、銀行の資金繰り支援などを通して金融システムの安定を維持しようと必死になっている。投資資金の流出に加え、韓国は家計債務の膨張という問題にも直面している。これからも資金流出圧力が増大し続ければ、韓国の金融システムの不安定感がさらに高まり、家計の資金繰りがひっ迫する可能性は高い。近年、世界的な低金利に依存して韓国が資金繰りをつないできたことを考えると、同国経済はかなり厳しい状況を迎えつつある。
サムスン電子の先行き懸念
更に、韓国経済の成長を支えてきたサムスン電子の業績懸念が高まっている。同社の売り上げの90%が海外で獲得されている。中国に加え、感染が拡大している米国や欧州各国での収益は、同社の業績拡大を支える大きな要素だ。欧米の主要都市の封鎖による製品販売の減少に加え、東京五輪の延期が発表されたことも収益にマイナスだ。サムスン電子の過剰生産能力への懸念も高まりつつある。これまでサムスン電子は、世界経済の不安定感が高まる局面で設備投資を積み増し、その後の回復をとらえて一気に半導体などのシェアを獲得した。この“逆張り”の発想に基づき2018年以降、同社は世界の半導体市況が悪化する中で設備投資を積み増した。人の移動制限から、世界全体で需要が冷え込み始めている。5Gスマホの投入などによって半導体事業の収益落ち込みを補いたかった同社にとって、この展開は想定外だろう。徐々に、過去の設備投資の負担が同社の業績・財務内容を圧迫する可能性が高まっている。状況によっては、同社が資産の売却などに踏み切らざるを得なくなる展開も排除できない。いつ新型コロナウイルスの感染拡大が収束するかはわからない。すでに米国では失業者が急増し、仮に短期間で状況が落ち着いたとしても需要の低下は免れない。当面、サムスン電子の収益・財務内容には下押し圧力がかかりやすい。それは、同社の成長に依存してきた韓国の経済運営が行き詰りつつあることということだ。 
●そもそもウイルスってどんなもの? 3/30 
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)が広がり、世界中が対応に追われている。このSARS-CoV-2はコロナウイルス科の一種で、プラス 1本鎖RNAウイルスに分類される。ウイルスの分類や構造、増殖の仕方などについて、長年、RNAウイルスの研究に携わっている京都大学ウイルス・再生医科学研究所ウイルス感染研究部門RNAウイルス分野教授の朝長啓造氏に話を聞いた。
──ウイルスにはDNAかRNAか、1本鎖か2本鎖か、といったゲノム本体の違いのほか、エンベロープの有無などの違いがありますが、こうした違いはウイルスにとってどんな意味があるのでしょうか。
朝長 そのとおり、ウイルスは核酸の形状と増殖機構に基づいて7つに分類されています。もともと逆転写酵素の発見者のひとりが提唱したもので、彼の名前に基づいてボルティモア分類と呼ばれていますが、これが基礎となって International Committee on Taxonomy of Viruses (国際ウイルス分類委員会)による分類が作られています。
7つの分類は、(1)2本鎖DNA、(2)1本鎖DNA、(3)2本鎖RNA、(4)1本鎖RNAプラス鎖、(5)1本鎖RNAマイナス鎖、(6)1本鎖RNA逆転写、(7)2本鎖DNA逆転写――です(表参照)。
DNAウイルスのゲノムはその名の通りDNAであり、多くの場合、細胞の中の核に移行して宿主のDNA複製酵素(DNAポリメラーゼ)を使って自らのDNAを増やします(複製する)。複製の酵素を宿主の仕組みに依存していると言えるでしょう。一方、RNAウイルスのゲノム本体はRNAですが、RNAを鋳型としてRNAを作る酵素(RNA依存性RNAポリメラーゼ)は宿主が持っていないため、ウイルスはそれを作り出す配列情報を自ら持っています。この配列情報に基づいてRNAポリメラーゼが宿主細胞内で作られ、これを使って複製します。RNAウイルスの多くは細胞質で複製しています。例外は、インフルエンザウイルスなど一部です。近年、生物の起源(ウイルスは生物ではありませんが)はRNAだという考え方が主流となっていますので、RNAウイルスの方が先に登場したかもしれません。だからといってDNAウイルスの方がより進化した存在かというと、そうではないと思います。HIVのようなレトロウイルスは、自分自身のゲノムはRNAですが、逆転写酵素を持ち、これを使ってDNAを作ります。その結果、DNAは宿主のゲノムDNAの中に組み込まれ、安定した潜伏感染を形成します。ヘルペスウイルスやパピローマウイルスに代表される2本鎖DNAウイルスも宿主の核内に安定して慢性感染します。また、DNAウイルスの方がRNAウイルスよりも自らの遺伝情報をたくさん持ちやすい傾向にあります。RNAポリメラーゼはDNAポリメラーゼよりも校正能が低いことからRNAウイルスは変異しやすいとされますが、変異しにくいRNAウイルスも存在します。宿主とウイルスはともに進化してきたと考えられ、共生する宿主にウイルスが適応していった結果としてDNAかRNAか選択されてきたと考えられ、DNAかRNAかでどちらが優れているとか劣っているというわけではないと考えられます。
──ウイルスにはエンベロープを持つものと持たないものがあります。その違いは何でしょうか?
朝長 ウイルスは、ウイルスゲノムであるDNAあるいはRNAがカプシドという蛋白質の殻で覆われています。カプシドの形状は、らせん構造を取るものと正二十面体の構造を取るものに大別されます。このウイルスゲノムとカプシドの外側を覆うように存在するのがエンベロープです。ただし、ウイルスの中にはエンベロープを持たないものも存在します。エンベロープの有無は、ウイルスゲノムがDNAなのかRNAなのか、あるいは1本鎖、2本鎖なのかによって決まっているわけではありません。DNAウイルスでもエンベロープを持つものと持たないものがあるし、RNAウイルスでも同様です。エンベロープの有無に規則性は見いだせないのが現状です。エンベロープは脂質二重膜で、宿主の細胞膜を使って作られています。そのため、エンベロープにはウイルスゲノム由来の蛋白質(エンベロープ蛋白質)だけでなく、宿主細胞の細胞膜上に存在する受容体などの蛋白質も含まれています。エンベロープ蛋白質は宿主側の因子と結合するために使われるもので、HIVのエンベロープ蛋白質であるEnv蛋白質は免疫細胞表面にあるCD4と、新型コロナウイルスやSARSのエンベロープ蛋白質であるS蛋白質はACE2受容体と結合する作用があります。これらエンベロープ蛋白質は感染する細胞を決めるための蛋白質といえるでしょう。また、エンベロープにはエンベロープ蛋白質以外にもウイルス由来の蛋白質が存在することがあります。例えばインフルエンザウイルスではヘマグルチニン(HA)が知られています。これをフュージョン蛋白質と呼びますが、これはウイルスのエンベロープ蛋白質と宿主細胞の細胞膜が膜融合する際に機能します。エンベロープ蛋白質で感染する細胞の特異性を決めフュージョン蛋白質の助けを受けて膜融合し、細胞内へと侵入していきます。こうした蛋白質をウイルス粒子の表面にたくさん保有するにはエンベロープがある方が適しているのかもしれません。一方、エンベロープがないウイルスの場合、カプシドから蛋白質が突起のように出ていて、これが宿主細胞の細胞膜に存在する受容体などの蛋白質と結合し、エンドサイトーシスという細胞が細胞外の物質を取り込む作用を介して細胞内に侵入していくとされています。エンベロープは脂質二重膜によって構成されているため、石鹸などの消毒薬に弱く、エンベロープがないウイルスは石鹸などに強いとされています。エンテロウイルスやノロウイルス、ロタウイルスなど、消化液が存在する消化管で感染するウイルスにはエンベロープがなく、ウイルス蛋白質だけで構成されるカプシドだけで覆われています。エンベロープがないことは厳しい環境で感染性を維持するために大事な要素かもしれません。ただし、エンベロープの有無だけが厳しい環境に耐えるための手段ではないと思います。
──ウイルスには病原性を持つものがありますが、そもそもウイルスの毒性とはどんなものなのでしょうか。
朝長 ウイルスの毒性、つまり我々の体に及ぼす害の多くは、宿主の免疫応答だと言えるでしょう。つまり風邪で見られる感冒症状のように、炎症反応です。ウイルスそのもの、もしくはウイルスが感染した細胞を排除するために免疫系が働くため、発熱、鼻汁、咳などの症状が現れるわけです。中には宿主細胞の恒常性機構に異常を起こし、細胞死を引き起こしたり、細胞の癌化を引き起こすことで宿主に害を及ぼすものもありますが、多くの場合は宿主免疫が活性化して起こる免疫応答が人類にとっての害だと言えます。重篤な肺炎や神経障害を引き起こすウイルス感染症がありますが、これは宿主免疫が過剰に活性化してしまって、ウイルス感染細胞だけでなく、自らの臓器まで傷害してしまうからと考えられます。ただし我々人類が認知しているウイルスは、多くの場合、ヒトあるいは動物に感染して病原性を発揮するウイルスだけです。自然界にはもっとたくさんの、人類が知らないウイルスが存在すると考えられています。しかも我々が知っているウイルスは、宿主が違えば病原性がないものだってあります。SARSやMERSはコウモリやラクダに感染しているウイルスがヒトに感染して高い病原性を示したとされていますが、コウモリやラクダにとって脅威となるウイルスではないかもしれませんし、SARSやMERSのもともとの宿主(自然宿主という)は、元をたどれば別の生物だったかもしれません。そしてその自然宿主ではあまり増殖せず、おとなしく潜伏していたのかもしれません。地球上の生物の生活環境は昔と今ではずいぶん違うでしょうし、ヒトで言うならば、今のように密集して生活していたり、飛行機を使ってしか移動できないような距離を行き来していたわけではありません。気温などの自然環境も違うでしょう。今の新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、今まで出会う機会がなかったウイルスと宿主(ヒト)が出会い、感染が成立し、社会状況を含めた環境が拡大を後押ししたのではないかと思います。
表 国際ウイルス分類委員会による分類と代表的なウイルス
2本鎖DNAウイルス
感染すると多くの場合細胞の核に移行し、宿主の複製機構を使って増える。宿主のRNAポリメラーゼを使ってmRNAを作り、ウイルス蛋白質を産生する。ーーーアデノウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、天然痘ウイルス、EBウイルス
1本鎖DNAウイルス
自らのゲノムを鋳型に2本鎖DNAを作り、複製する。ーーーアデノ随伴ウイルス
2本鎖RNAウイルス
プラス鎖のRNAがmRNAとなりウイルス蛋白質を作る。自らが持つRNA依存性RNAポリメラーゼを用いて粒子内で複製を行う。ーーーロタウイルス
1本鎖RNAウイルス[プラス鎖]
ゲノム本体そのものがmRNAとして働き、ウイルス蛋白質を作り出す。細胞質内で自らが持つRNA依存性RNAポリメラーゼで複製する。ーーーコロナウイルス、エンテロウイルス、風疹ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルス、ノロウイルス
1本鎖RNAウイルス[マイナス鎖]
まず本体であるゲノムRNAを鋳型にmRNAを作り、このmRNAからウイルス蛋白質を作る。多くの場合、細胞質で複製を行う。ーーー麻疹ウイルス、センダイウイルス、ムンプスウイルス、RSウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス
1本鎖RNAウイルス[逆転写]
本体であるプラス鎖RNAを逆転写し、2本鎖DNAを作り、宿主のゲノムに組み込まれる。ゲノムに組み込まれたDNAからmRNAを作り、ウイルス蛋白質を産生する。ーーーヒトT細胞白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
2本鎖DNAウイルス[逆転写]
2本鎖DNAではあるが、いったんRNAを作り、そのRNAを逆転写することでDNAを作って自らを複製していく。ーーーB型肝炎ウイルス  
●緊急事態宣言のリスク意識−株売り・円買い、長期金利は低下 3/30 
新型コロナウイルスの感染が広がり、投資家が慎重な姿勢を強めた。株式などリスク資産が売られ、資金の逃避先となる債券は上昇。TOPIX(東証株価指数)と日経平均株価の下落率は一時4%を超え、長期金利はマイナス圏に沈んだ。東京都で感染者数の増加傾向が強まり、政府が緊急事態宣言に踏み切るリスクが意識された。外国為替市場でドル・円相場は一時107円台前半までドル安・円高が進んだ。
午後の日本株は下げ渋った。受け渡し日が新年度に入り配当の再投資を意識した買いが支えになった。ただ、株価指数が切り返す力はなかった。明治安田アセットマネジメントの杉山修司チーフストラテジストは感染拡大が続いているため、まだ株式相場は底値に到達していないと指摘。「円高に伴ってグローバル投資家がポートフォリオの日本株配分比率を調整する機械的な売りオペレーションも入っている」と分析した。市場では国内感染の拡大に敏感だ。三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは、日本の緊急事態宣言も投資家は意識し下値のリスクはくすぶっていると話す。東海東京調査センターの平川昇二チーフグローバルストラテジストは、東京都でも「新規感染者数が日々100人を上回れば外出禁止令が発動され、もう一段の景気悪化を株価が織り込む恐れがある」とみる。
外国為替市場の円は主要16通貨に対して全面高。株・原油安を伴うリスク回避の動きが円相場の支えとなった。ただ、今月18日以来のドル安・円高水準を付けた後のドル・円相場は、アジア時間取引の米株先物の上昇などに反応して午後の取引後半にかけて60銭以上戻した。ソニーフィナンシャルホールディングスの石川久美子為替アナリストは、コロナウイルスに関してネガティブな報道には弱めに反応する一方、ポジティブなニュースに対しては継続的な反応を示せないだろうと話した。国内債券相場は上昇。長期国債先物6月物の終値は前週末比39銭高の152円73銭。リスク回避の買い圧力が強まり、午前には152円96銭まで上昇する場面があったが、その後は高値警戒感や年度末を控えた売りで上げ幅を縮めた。長期金利はマイナス0.005%と前週末終値を1ベーシスポイント(bp)下回り、17日以来のマイナス圏で開始し、その後はゼロ%での推移が続いている。
パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、債券相場について「米長期金利の低下で買い戻しが入ったが、10年債、20年債には期末前の戻り売りも出ている」と説明した。その上で、「期初は例年なら益出しの売りが出るが、銀行は保有株式の減損リスクへの対応や融資部門への側面支援のため新たな利益の源泉が必要なので売りっぱなしではないだろう」と述べた。 
●新型コロナ 世界の死者数3万4000人突破−豪州は雇用保護強化 3/30 
新型コロナウイルス感染による世界の死者数が3万4000人を突破した。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は米国の死者数が20万人に達する可能性があるとの見方を示した。米ジョンズ・ホプキンス大学によれば、感染症例数は世界で72万3000件を超えた。3万4000人強が死亡し、15万2000人が回復している。トランプ米大統領は29日、政権として新型コロナによる国内の死者数のピークが約2週間後になると予想していると述べ、国民の社会距離ガイドラインを4月30日まで延長すると説明した。これまでは同月12日の復活祭(イースター)までの経済活動再開を目指していた。同大統領はまた、ビジネス会食の税控除復活を望むと表明、感染拡大の影響を受けているレストランについて営業継続の支援を探ると語った。
ファウチNIAID所長によれば、米国の死者数は20万人に達する可能性がある。同所長は29日のCNNの番組で、「現状から判断すると、10万−20万人」の死者が予想されると発言。「ただ、それにとらわれる必要はない。対象があまりにも流動的なため、容易に間違いとなる可能性がある」と述べた。
中国の国家衛生健康委員会は30日、確認された感染症例が累計で8万1470件になったと発表した。29日は31件増え、そのうち30件が国外からの入国者の感染例だった。中国の死者は29日に4人増えて計3304人。この日の死者は全て湖北省で報告された。罹患(りかん)者で退院した人は322人増え、計7万5770人となった。
オーストラリア政府は雇用を守るため今後半年で1300億豪ドル(約8兆6000億円)を投じる方針を30日示した。一方、シンガポール通貨庁(MAS、中央銀行)は為替管理政策(金融政策)の見直しに伴い、シンガポール・ドルの為替レート政策バンドの傾斜をゼロにする金融緩和を実施すると同日発表。ここ数年で最悪のリセッション(景気後退)に向かいつつある国内景気を下支えする。政策バンドの許容変動幅は据え置いた。
スペインの新型コロナによる死者数は6500人を超えた。同国では利用可能な集中治療用のベッド数よりも患者数が多い状況で、政府はさらなる国民の移動制限措置を模索している。スペインの保健省は、過去24時間に新型コロナで838人が死亡したと発表。1日の数字としてはこれまでで最多となり、死者数は計6528人となった。新たな感染者は6549人で、同国の感染者数は計7万8797人と、欧州ではイタリアに次いで2番目。イタリアの新型コロナによる死者は2日連続で減少した。一方、米ニューヨーク州の死者は合計965人と、前日時点の728人から増加した。
米ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループは主要子会社ジェフリーズ・グループのペグ・ブロードベント最高財務責任者(CFO)が新型コロナ感染による合併症で死去したと発表した。56歳だった。同氏はモルガン・スタンレーに16年在籍した後、米国の独立系投資銀行としては最大級でニューヨークを本拠とするジェフリーズ・グループのCFOに就いていた。ジェフリーズ・ファイナンシャルのテリ・ジェンドロンCFOがジェフリーズ・グループの暫定CFO兼最高会計責任者(CAO)に指名された。英国全土での封鎖は現行計画よりも長期化する可能性があると、ゴーブ英内閣府担当相は指摘。ゴーブ氏は29日のBBCの番組で、「こうした措置が講じられている際に、これが著しい期間続くことに誰もが備えなくてはならないと考える」と話した。英政府のハリエス副首席医務官は同日の記者会見で、ウイルス拡散を「本当に制圧したかどうかを見極めるのに2、3カ月かかり、理想を言えば3−6カ月が必要だ。どの時点で実際にわれわれが正常に戻ることができるのかを見据えるのに多く不確実性がある」と語った。英国の新型コロナによる死者は1228人(前日は1019人)に増加。感染者は1万9522人(同1万7089人)に増えた。 
●加藤厚生労働大臣にワクチン開発に関する要望書を手交 日本医師会 3/30 
横倉義武会長は3月27日、加藤勝信厚生労働大臣と会談し、「新型コロナウイルス感染症のワクチン開発に関する要望書」を手交した。
同会長は、大阪大学で開発されているプラスミドDNAワクチンは既に動物用製剤が入手可能で、ヒトに対する臨床試験も予定されていることを説明。「抗血清製剤は、ハブ、まむし、ボツリヌス抗毒素として長い使用経験があるが、新型コロナウイルスに対する抗血清製剤は、重症感染者等に対する緊急対策として治療の選択肢に加えるべき」として、審査の柔軟な対応と開発に必要な財政支援を求めた。
なお、会談の中で横倉会長は、(1)新型コロナウイルス感染症患者等への医療に対する特殊勤務手当、(2)防護具や消毒薬等の配備など医療従事者が安心して患者を診られる体制の確保、(3)各地域における相談外来の公設、(4)休業や一部閉鎖への補償、(5)風評被害等を含めた支援、(6)重症患者の増大に向けた備え、(7)民間保険の充実―なども要請。
新型コロナウイルス感染症の影響により、医療機関の外来患者が約30%減少、入院患者が約20%減少するなど、特に急性期病院の経営環境が悪化している他、陽性者が発生した医療機関では休業や一部閉鎖を余儀なくされたり、風評被害による急激な患者減少で収益が激減しているなどの窮状を訴え、「新型コロナウイルス感染症によって医療提供体制が壊れないよう、支援をお願いしたい」と強調。加藤厚労大臣は「何らかの対応を検討したい」と応じた。 
 3/31

 

●新型コロナウイルス感染症に関する日医の対応について 日本医師会 3/31 
釜萢敏常任理事は3月30日に記者会見を行い、政府の対策本部会議が3月28日に「基本的対処方針」を決定したことを受けて、今後の課題等について説明を行った。
同常任理事は、「対処方針にも触れられている、重症者を入院させ、軽症者を退院させるためには、退院の基準を変更する必要がある」とした上で、基準を変更するには「家族への感染をどのように防ぐか」「家では対応が難しい場合に、どのような施設を準備できるか」「退院した方の日々の健康管理に当たる人員の確保」などの課題があるとし、国に対して、その対応を求めた。
また、外来については、医師が必要とした場合にはPCR検査ができるようにしてもらわなければならいと改めて強調。「まだうまくいっていない地域もあり、改善が必要だ」と述べた。
更に、地域の感染状況の指標として、新たに「地域の病床数と重症者の割合」を加えるべきとの考えを明示。「このバランスが崩れてしまうと、医療崩壊にもつながる」として、今後、この指標を確認していくことが重要になるとした。
その他、記者との質疑応答の中で、特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を政府が発令すべき時期について質問された同常任理事は、多くの専門家会議の委員は、「爆発的な感染が起きてから宣言を出しても遅い」という認識をもっていることを紹介。あくまでも個人的な意見とした上で、「現状は、宣言を出しても良い状況にあるのではないか」とした。また、宣言の対象地域については、「今後データを精査しなければならないが、東京都に絞らず、近隣の県にも広げるべき」との考えを示した。 
●日本医師会から国民の皆様へのお願い 3/31 
横倉義武会長は3月30日の緊急記者会見で、日医が「新型コロナウイルス感染拡大防止 推進月間」と位置付けた4月を迎えるに当たり、国民に対し、新型コロナウイルス感染症の現状を説明した上で、拡大防止に向けた更なる対応に理解を求めた。
まず、横倉会長は、東京都を始めとした関東一円、大阪府、福岡県等において、週末の外出自粛の要請がなされたことに触れ、今後も引き続き不要不急の外出を控えるよう要望するとともに、「特に若い世代の方の感染者が増えており、海外で10代の感染者の死亡事例があったことから、若い世代でも安心できないことを知って欲しい」と述べるとともに、「今後、いつ緊急事態宣言が発令されてもおかしくない状況の中、国民の皆様には、感染拡大防止のために気を引き締めてより一層の対策をお願いしたい」とした。
また、特に東京都において、先週後半から1日当たりの感染者数が増え、感染源が明らかでない感染者も多いことに危機感を表明。都内の感染症病床も瀬戸際の状況にあり、医療崩壊を防ぐためにも、国民には外出自粛を守るとともに、「密閉空間」「密集する場所」「近距離での密接な会話」を避けることや、手洗いの励行などの基本的な健康管理をしてもらいたいと改めて強調した。
更に、今回の新型コロナウイルス感染症は、「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」に準じて行動することになっており、ワクチンも有効な治療薬も確立していないことから新型インフルエンザより状況は悪化していることを認識する必要があるとするとともに、医療従事者が安心して診療を行えるようにするためにもワクチン開発が急がれることから、3月27日には加藤勝信厚生労働大臣に、国家の非常事態対策として、審査の柔軟な対応及び開発に必要な財政支援が必要であることを要望したことを報告。
同日に加藤厚労大臣に提出された、自民党の「国民医療を守る議員の会」が取りまとめた「新型コロナウイルス対策についての緊急提言」に関しても、その実現に向けて、日医として政府等に働き掛けていく考えを示した。
その他、同会長は、感染経路が明らかでない事例が出ている中では、医師、医療従事者を始め、医療機関を受診する患者にも感染のリスクが常にある現状を踏まえ、感染リスクを避けるためにも、健康に不安がある場合は、受診歴のあるかかりつけの医療機関に電話等の情報通信機器を用いて相談の上、かかりつけ医の指示に従うことを要請。「その場合には、診療報酬できちんと手当てをすることが重要になる」とした。 
●マスクなどは密閉して出してください 3/31 
新型コロナウイルスの感染者及び感染の疑いがある方がいる場合、ごみの出し方については次の通り対応をお願いします。鼻をかんだティッシュや使用したマスク等はビニール袋等に入れ、口をしっかり結ぶなど密閉したうえで透明か半透明の袋に入れて燃やすごみの日にお出し下さい。ごみの処理は区民の皆様の生活を維持するために必要不可欠なものです。収集作業員の感染リスクを減らし、ごみの収集を安全に継続して行えますよう、ご協力をお願いいたします。 
 4/1

 

●世界で病床確保急ぐ 米欧に危機感、日本は対応鈍く 4/1 
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界中で病床の不足が深刻になっている。感染者の受け入れ態勢の充実に向け、米欧諸国は病院船を投入し、見本市会場を治療棟に改装するなど異例の構えで臨む。多くの国が既に経験したオーバーシュート(爆発的な感染拡大)。未体験の日本では、受け入れ先を指定医療機関から一般病院にまで広げる取り組みにとどまる。ウイルスの脅威を前に対応の鈍さが目立ってきた。 
●全世帯に布マスク配布へ 首相表明、1住所2枚  4/1 
安倍晋三首相は1日、首相官邸で開いた新型コロナウイルス感染症対策本部で、全世帯に再利用可能な布マスクを配布すると表明した。1住所あたり2枚ずつ配る方針で「再来週以降、感染者数が多い都道府県から順次配布を開始する」と語った。来週決定する経済対策に国が買い上げる費用を盛り込む。
全国5000万あまりの世帯に配る。首相は「来月にかけて1億枚を確保するメドがたった」と述べた。「急激に拡大するマスク需要に対応する上で極めて有効だ」との認識も示した。
これとは別に首相は対策本部で、海外からの全ての入国者に宿泊施設や自宅で14日間の待機を要請すると表明した。日本人の帰国も対象だ。73カ国・地域からの外国人は入国を原則拒否する。これまで対象ではなかった米国、英国などと、一部地域から対象を広げる中国と韓国の計49カ国・地域について、新たに3日から措置をとる。公共交通機関を使わないことも求める。 
●都立高、夏休み短縮を決定 休校延長は5月6日まで  4/1 
新型コロナウイルスの感染者の急増で都立高校の休校措置を延長することを巡り、東京都は1日、夏休みを短縮して授業時間を確保する方針を決めた。年間行事計画などを見直し、休校措置に伴う授業時間の減少を補う。休校期間中はIT(情報技術)を活用した自宅でのオンライン学習・・・ 
●新型コロナウイルス感染症対策本部(第25回) 4/1 
令和2年4月1日、安倍総理は、総理大臣官邸で第25回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催しました。会議では、新型コロナウイルス感染症への対応について議論が行われました。総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。
「本日、専門家会議が開催され、改めて全国の感染状況の分析が提言されました。
まず、国内の感染状況ですが、新規感染者数は、都市部を中心に急増しており、爆発的感染拡大いわゆるオーバーシュートが見られている諸外国に比べ、感染者数の拡大スピードは緩慢であるものの、既に医療提供体制がひっ迫しつつある地域もあるとのことであります。
また、専門家会議からは感染のまん延状況に応じて、『感染拡大警戒地域』、『感染確認地域』、『感染未確認地域』の3つに区分し、それぞれの地域区分の考え方を示すとともに、各自治体で感染拡大防止のために想定される対応が示されています。
その上で、市民の行動変容をより一層強めていただく必要性が指摘されており、国民の皆様におかれては、バー、ナイトクラブ、カラオケ、ライブハウス等、夜間の繁華街への出入りを控えることとの指摘がなされたことを踏まえ、引き続き、いわゆる『3つの密』を避ける行動の徹底など、感染拡大防止に向けた御協力を改めてお願いしたいと思います。
この提言を踏まえ、文部科学省より新学期からの学校再開について新たなガイドラインが報告されました。文部科学省におかれては、それぞれの地域区分に応じて地域や学校現場で円滑な対応が行われるよう、ガイドラインの周知徹底を図るとともに、必要な支援を行ってください。
さらに、ガイドラインを踏まえ、学校の臨時休校を行う場合には、国として、職場を休まざるを得なくなった保護者の皆さんへの助成金や、放課後児童クラブや学校教室の活用といった地域の実情に応じた取組への支援など、これまでの支援をしっかりと継続してまいります。
また、欧米諸国を中心に感染者の爆発的拡大が見られており、水際対策についても更なる強化を講じることといたしました。
昨日、感染症危険情報をレベル3の渡航中止勧告にまで引き上げた49の国と地域の全域については、入管法による入国拒否対象地域に追加することとし、3日午前0時から効力を発生させるものとします。
今回の追加により、合計73の国と地域について入国拒否を行うこととなりますが、これら対象地域から帰国した邦人等に対しては、引き続き、空港おけるPCR検査を確実に実施してまいります。
加えて、昨日付で感染症危険情報は全世界でレベル2以上となっているところであり、査証の制限措置に加え、全世界からの邦人を含む入国者に対して検疫所長の指定する場所での14日間の待機及び公共交通機関の使用自粛を要請することといたします。
あわせて検疫の強化措置を踏まえ、今後、空港で多数の帰国者が検査を受けることになることから、適切な待機場所の確保はもとより、外国との間の航空旅客便について到着旅客数の抑制を要請いたします。
これら措置についても、3日午前0時から運用を開始し、当面今月末日までの間、実施することとします。
マスクについては、政府として生産設備への投資を支援するなど取組を進めてきた結果、電機メーカーのシャープがマスク生産を開始するなど、先月は通常の需要を上回る月6億枚を超える供給を行ったところです。更なる増産を支援し、月7億枚を超える供給を確保する見込みです。
他方、新型コロナウイルス感染症に伴う急激な需要の増加によって、依然として店頭では品薄の状態が続いており、国民の皆様には大変御不便をお掛けしております。全国の医療機関に対しては、先月中に1,500万枚のサージカルマスクを配布いたしました。さらに、来週には追加で1,500万枚を配布する予定です。加えて、高齢者施設、障害者施設、全国の小学校・中学校向けには布マスクを確保し、順次必要な枚数を配布してまいります。
本日は私も着けておりますが、この布マスクは使い捨てではなく、洗剤を使って洗うことで再利用可能であることから、急激に拡大しているマスク需要に対応する上で極めて有効であると考えております。
そして来月にかけて、更に1億枚を確保するめどが立ったことから、来週決定する緊急経済対策に、この布マスクの買上げを盛り込むこととし、全国で5,000万余りの世帯全てを対象に、日本郵政の全住所配布のシステムを活用し、一住所あたり2枚ずつ配布することといたします。
補正予算成立前にあっても、予備費の活用などにより、再来週以降、感染者数が多い都道府県から、順次、配布を開始する予定です。
世帯においては必ずしも十分な量ではなく、また、洗濯などの御不便をお掛けしますが、店頭でのマスク品薄が続く現状を踏まえ、国民の皆様の不安解消に少しでも資するよう、速やかに取り組んでまいりたいと考えております。
政府においては、国民の皆様の命と健康を守るため、引き続き、各種対策に全力で取り組んでまいりますので、国民の皆様におかれましても、御協力を何とぞよろしくお願いいたします。」 
 4/2

 

●新型コロナウイルス 国内感染者2649人(クルーズ船除く)  4/2 
東京都の関係者によりますと、2日は都内で1日としてはこれまでで最も多い97人の感染が確認されたということで、全国の新たな感染者は午後5時半の時点で、合わせて154人となっています。これで、日本で感染が確認された人は、空港の検疫で見つかった人やチャーター機で帰国した人なども含めて2649人。クルーズ船の乗客・乗員が712人で、合わせると3361人となります。死亡した人は、国内で感染した人が71人、クルーズ船の乗船者が11人の合わせて82人です。
日本で感染が確認された2649人のうち、東京都は684人、大阪府は278人、千葉県は185人、北海道は183人、愛知県は183人、神奈川県は181人、兵庫県は162人、埼玉県は104人、福岡県は78人、京都府は77人、茨城県は43人、岐阜県は34人、新潟県は32人、福井県は30人、大分県は29人、和歌山県は21人、高知県は21人、群馬県は20人、奈良県は19人、栃木県は17人、石川県は15人、熊本県は15人、静岡県は13人、三重県は12人、愛媛県は12人、宮城県は11人、山梨県は9人、長野県は9人、沖縄県は9人、青森県は8人、秋田県は8人、福島県は8人、富山県は8人、滋賀県は7人、岡山県は7人、広島県は6人、山口県は6人、長崎県は5人、山形県は3人、徳島県は3人、佐賀県は3人、宮崎県は3人、香川県は2人、鹿児島県は2人です。
このほか、中国からチャーター機で帰国した人が14人、厚生労働省の職員や検疫官、それに空港の検疫で感染が確認された人などが合わせて70人です。また、厚生労働省によりますと、重症者は1日の時点で、国内で感染した人などが60人、クルーズ船の乗船者が10人の合わせて70人となっています。一方、1日までに症状が改善して退院した人などは、国内で感染した人などが472人、クルーズ船の乗客・乗員が619人の合わせて1091人となっています。 
●東京、97人の感染確認 最多更新―新型コロナ 4/2 
東京都は2日、都内で97人の新型コロナウイルスの感染者を確認したことを明らかにした。1日当たりの感染者数の最多を更新し、都内の感染者は計684人となった。院内感染が疑われる永寿総合病院(台東区)の関係者21人のほか、慶応大病院(新宿区)に関連する13人が含まれているという。永寿総合病院では、これまでに100人超の感染者が発生し、患者7人が死亡。慶応大病院は3月26日、永寿総合病院から転院した人を含む入院患者4人が感染したことを明らかにしていた。都内の感染者は、3月25日に41人が確認されて以降、おおむね高水準で推移。小池百合子知事は「感染爆発の重大局面」として外出自粛などを呼び掛けている。
福岡市は2日、博多区の介護老人保健施設「楽陽園」で、入所者6人と職員2人の感染が確認されたと発表。この施設の感染者は計9人となり、市は感染者集団「クラスター」が発生したとみている。
京都市は、新たに京都産業大の学生と接触者計4人が感染したと発表。同大関係者の感染は40人を超えた。
2日には、福井県越前市の50代男性と札幌市の50代男性が死亡し、クルーズ船乗船者を含めた国内の死者は計82人となった。  
●首相「首都圏での新型コロナ拡大回避は極めて重要」衆院本会議  4/2 
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、安倍総理大臣は衆議院本会議で、特別措置法に基づいて政府対策本部を設置したことなどを報告したうえで、「首都圏での急速な感染拡大の回避は極めて重要だ」と述べ、対応に万全を期す考えを強調しました。この中で安倍総理大臣は先月26日に新型コロナウイルスの特別措置法に基づいて政府対策本部を設置したのに続き、全般的な方針などを盛り込んだ「基本的対処方針」を決定したことを報告しました。そのうえで安倍総理大臣は「各都道府県においても対策本部がすでに設置されている。今後はこれまで以上に、都道府県と連携を密にしながら、一体となって対策を進めていく。国民の皆様の命と健康を守ることを第一に、感染拡大の防止に向けた取り組みを徹底していく」と述べました。また安倍総理大臣は東京オリンピック・パラリンピックについて先月、IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長と電話で会談し、大会の中止はないことを改めて確認するとともに、「世界のアスリートが最高のコンディションでプレーし、観客にとって安心で安全な大会」とするため、遅くとも来年夏までに開催することで合意したことを説明しました。そのうえで、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、完全な形で実施できるよう、IOCと緊密に連携していくことで一致した」と説明しました。そして、その後の関係者による協議の結果、オリンピックについては来年7月23日から8月8日の日程で、パラリンピックについては8月24日から9月5日の日程で開催することが決まったと報告しました。安倍総理大臣は「この決定を踏まえ、今後ともIOC、大会組織委員会、東京都などとの緊密な連携のもと、東京大会の成功に向けて、開催国の責任をしっかりと果たしていく」と述べました。
「罰則は慎重な検討が必要」
安倍総理大臣は衆議院本会議で新型コロナウイルスの特別措置法について、罰則規定を設けるなど、より強制力を持たせるべきだと指摘されたのに対し、「現行法では緊急事態において、大規模施設でのイベントの制限について、都道府県知事に要請や指示を行う権限が付与されているが、私権を制限するものであるため、範囲を広げることや、罰則による強制力を強めることは慎重な検討が必要だ」と述べました。また加藤厚生労働大臣は治療薬の開発をめぐり、インフルエンザ治療薬「アビガン」については、先月31日から企業による治験が始まっていることを説明したうえで、「安倍総理大臣からは、緊急経済対策で、感染拡大防止策などとともに、治療薬の開発について取りまとめるよう指示を受けており、早期の開発促進に向け、現在具体的な検討を行っている」と述べました。
「小池都知事と緊密に連携 同じ危機感持って対応」
自民党の小倉將信氏は新型コロナウイルスの特別措置法に基づく緊急事態宣言について、「国民の間では、いつ緊急事態宣言が発令されるのか、発令されれば、いわゆるロックダウン=都市封鎖が行われるのではないかとの心配が広がっている。宣言発令も含め、足元の状況をどう認識しているのか」と質問しました。安倍総理大臣は「現在の国内の状況は東京をはじめとして、都市部を中心に感染者数が急増し、感染経路が不明な感染者も増加しており、海外からの移入が疑われる事例も多数報告されている。緊急事態宣言との関係では、現時点ではまだ全国的かつ急速なまん延という状況には至っておらず、ぎりぎり持ちこたえているが、少しでも気を緩めればいつ急拡大してもおかしくない、まさに瀬戸際が継続している状況だ」と述べました。そのうえで、「東京を含む首都圏で急速な感染拡大を回避することは極めて重要で、東京都の小池知事とは緊密に連携し、同じ危機感を持って対応している」と述べました。
「五輪延期に伴う経費 検討状況を注視」
立憲民主党の逢坂政務調査会長は東京オリンピック・パラリンピックの延期について、「延期によって、どのような課題が生じるのか。追加費用はどの程度と見積もっているのか、それを誰が負担するのか。また、来年夏までの延期だが、1年後には確実に実施できるのか。再延期はないと言い切れるのか」とただしました。これに対し、安倍総理大臣は「東京大会の延期に伴い、競技会場の確保やボランティアを含めたスタッフの確保などの課題がある。延期に伴う追加的経費については、まずは大会組織委員会や東京都を中心に内容の精査を進められると承知しており、その検討状況を注視していく」と述べました。また安倍総理大臣は品薄状態が続いているマスクについて、「来週決定する緊急経済対策に、再生利用可能な布マスクの買い上げを盛り込み、全国のすべての世帯を対象に1住所当たり2枚ずつ配布する。今年度の補正予算案の成立前でも、予備費の活用などにより、再来週以降、感染者数が多い都道府県から順次配布を開始する」と述べました。
「財政、金融、税制総動員し思い切った措置を講じる」
公明党の高木政務調査会長代理は経済対策について、「雇用の維持・確保の支援、景気全体を浮揚させるための対策など、リーマンショック時を超える、国費20兆円、事業費60兆円以上の対策を講じるべきだ。具体的には1人当たり10万円の現金給付を迅速に行うべきだ」と求めました。安倍総理大臣は「経済への甚大な影響に対して、リーマンショック時の経済対策を上回る、かつてない規模の対策としたい。徹底的に下支えすることにより、地域の雇用、働く場所はしっかり守り抜く。仕事が減るなどで収入が減少し、生活に困難をきたしている方々には、生活を維持していくための現金給付を実施していく。前例にとらわれず、財政、金融、税制を総動員して思い切った措置を講じていく」と述べました。また安倍総理大臣は、緊急事態宣言を出す際の周知について、「専門家の意見や、決定に至った背景などについて、私から直接、国民の皆様に説明する場を設ける。都道府県が講じる外出自粛要請などの措置の内容についても、しっかりと情報発信し、不安の払拭(ふっしょく)に努めていく」と述べました。
「最大の使命は事業継続と雇用守ること」
共産党の塩川鉄也氏は雇用対策をめぐり、「雇用形態を問わず、賃金、収入の8割を補償するべきだ。新型コロナを理由に解雇、雇い止め、派遣切り、内定取り消しなどを行わないよう、対策を講じるべきだ」とただしました。これに対し、安倍総理大臣は「政治に課される最大の使命は、何とか事業を継続していただき、雇用を守っていくことだ。緊急経済対策の中で、雇用の維持と、事業の継続の観点から、民間金融機関でも無利子融資を受けることができる制度を整えるとともに、特に厳しい状況にある中小・小規模事業者などに対して、新たな給付金制度を創設する」と述べました。
「甚大な影響受けている方々に必要な額を早期に提供」
日本維新の会の浦野靖人氏は、感染拡大で所得が減少した人への現金給付について、「政府・与党は、所得で対象者を限定する方向だが、線引きに時間がかかり、給付が遅れる。一律の現金給付は検討しないのか」と指摘しました。これに対し、安倍総理大臣は「国民全員に一律で行うのではなく、甚大な影響を受けている中小・小規模事業者の方々や、フリーランス、個人事業主の方々をはじめ、仕事が減るなどにより、収入が減少し、生活に困難をきたしているご家庭の方々に、この困難を乗り越えていただき、事業の継続、生活の維持のために、必要な額をできるだけ早期に提供していきたい」と述べました。 
●新型コロナ「感染したら…」対応考えている人は40%  4/2 
新型コロナウイルスについて、ほとんどの人が大規模イベントに行かないとか、こまめに手を洗うなどの感染対策はとっているとしたものの、体調が悪化したときの相談先や移動手段など、自分が感染した際の対応を具体的に考えている人は、およそ40%にとどまることが東京大学などの研究グループの意識調査で分かりました。グループは、自分が患者になるかもしれないという意識を持ってもらい、対策を徹底することが必要だとしています。
調査は、東京大学医科学研究所の武藤香織教授らのグループが、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、どうすれば行動を変えてもらえるか探ろうと先月下旬、インターネットを通じて行い、20歳から64歳の1万1000人余りが回答しました。
調査では、76.4%の人が「さまざまな対策をとっている」か、「多少の対策をとっている」と答えた一方、4.5%は「なにも対策をしていない」と答え、年代が上がるほど対策を行っている割合が高く、20代が最も低くなっていました。
具体的にとっている対策として「大規模イベントに行かない」が86.8%、「こまめに手を洗う」が86.4%、「密閉・密集・密接の『3密』を避ける」は80.5%と高く、感染対策について一定程度、意識が浸透してきているとみられるとしています。
その一方で「体調が悪化したときの相談先や、移動方法の準備」は41.5%、「自分より高齢者との接触は避ける」が26.3%などと低く、自分や家族も感染して患者になるかもしれないという意識が根付いていない可能性があると分析しています。
武藤教授は「自分も患者になるかもしれないという危機感が、対策をより徹底することにつながる。どんな事態が待っているのか、家族で話し合っておくことが必要だ」と話しています。 
●渋谷のライブハウス、複数の出演アーティストが感染…来場者50人程度  4/2 
東京都渋谷区のライブハウス「LOFT HEAVEN(ロフトヘブン)」で3月20日に行われた公演で、出演した複数のアーティストが新型コロナウイルスに感染していたことが、運営会社への取材でわかった。
運営会社によると、この公演は同日夜に行われ、十数人が出演。来場者は50人程度だった。出演者の感染を把握した運営会社は、公演から10日たった3月30日に保健所に相談。現在は休業している。
また、集団感染が発生している台東区の永寿総合病院で、台東保健所が3月末までに感染を確認した105人のうち、医師や看護師などの医療従事者が44人に上ることが同保健所への取材で判明した。3月末までに同病院の入院患者や医療従事者など788人にPCR検査を実施したという。 

 

●コロナに「マスクは無意味じゃない」明確な根拠 4/2 
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、マスクの着用が当たり前になっている。安倍首相が4月1日に表明した全世帯への布製マスク配布方針には、驚きも広がった。だが、品不足はまだ続く。建築・都市環境工学、とりわけ人の周りの空気環境の研究を続ける村上周三・東大名誉教授にインタビュー、改めてマスクの功罪と正しい使い方について聞いた。
マスク、自分自身への感染防ぐ効果は限定的
――会議や会合でマスク着用が義務付けられることが増えています。街を行く人もマスク姿が多くなりました。
自分への感染を防ぐためにマスクを着けている人が多いと思います。水道水の安全性に不安があるときに、ペットボトル、プラスチックによる海洋汚染が問題になってからはマイボトルを持ち歩く人が増えました。しかし、空気の場合、自分用の空気を持ち歩けません。そこで空気に含まれる危ないものを吸わないようにいわばペット空気の代用としてマスクを着けているものと想像します。私の場合もそうですが、マスクを着けていると安心感があります。でも実は、本人への感染防止効果は限定的です。
――マスクでは感染を防げない、という声は、以前からありました。
私たちはマスク着用時の空気の流れを数値流体力学の手法を用いて分析しました。北九州市立大学の白石靖幸教授がコンピューターによるシミュレーション解析を行ったところ、マスクを着けた場合、吸っている空気のうち、マスクを通して吸引している空気は少量、マスクの顔への密着度がよくない場合は約1割で、横の隙間から吸っている空気が大半、約9割に達するという結果が出ました。空気には、なるべく抵抗の少ないところを通るという性質があるからです。
――マスクを着けても、吸っている空気の大半は、マスクを通っていないのですか?
そうです。一般に使われるマスクのフィルター効果は限定的ということです。もともとマスクに期待されている機能は、吸い込み空気に含まれる汚染物質の除去です。花粉症の防御の場合には、花粉のサイズが大きいのでフィルターの捕集効果を十分に期待することができます。しかし、ウイルスはずっと小さいですからフィルターの捕集効果が通常のマスクにあるかというと、疑問です。ましてや、今回のシミュレーション解析でわかったように、マスクを着けていても人はマスクの脇から空気を吸っているとすると、フィルター効果に期待するのは現実的ではありません。
マスク着用は他の人々のため、マスクの功罪
――そうなると、マスクを着けても意味がないことになりそうです。
いいえ、大きな意味があります。それは、自分が吐き出す空気に含まれる飛沫が拡散するのを防ぐということです。自分が吐き出す空気、これを吐き出し気流といいます。吐き出し気流は流体力学の言葉ではジェットと呼ばれます。ジェットは拡散しにくくまっすぐに進みます。そして、マスクと顔の脇の隙間を通らずにマスクを通過します。咳やくしゃみをしたときに出る飛沫は比較的大きく、マスクでも十分捕集できます。マスクには、もし自分が感染している場合、自分から出る飛沫に伴う周囲の人たちへの感染防止効果があります。新型コロナウイルスは、感染しても無症状な人が多く、自分で感染していると知らないままウイルスを拡散させているケースが多いとされています。マスクの着用は、本人のためというよりは社会のためで、公共財としての空気の清浄維持に通じるものなのです。
――では、マスクを着けている本人にとって、いい点はない?
マスクを着けると、吐き出した空気は拡散されにくくなりますので、それを再び吸う割合、再吸収率が高くなります。冬場の寒いときに再吸収率が高くなることは、温められ、湿度も適度にある空気を吸うことになり、のどを保護できるという利点があります。冬場に冷たく乾燥している空気を吸うとのどをやられることがありますが、のどがイガイガしなくて済みます。火事のときには濡れタオルを顔にあてて逃げるといい、と言われますが、それは濡れタオルには煙の中の粉じんを捕集し、熱気流を冷却する効果があるからです。しかし、気を付けなければならないのが、マスクを着けることにより、自分の健康にとって負担になる点があるかもしれないということです。
――どういうことですか。
密閉性が高く高性能のフィルター効果を備えたマスクを隙間のないようにきちんと装着した場合、呼吸に大きな負担がかかります。私は16年前、SARS(重症急性呼吸器症候群)がアジア地域で広がった後の2004年にマスク着用時の人の呼吸について実験を行い、解析しました。その結果、密閉性の高い高機能のマスクではなく普通のマスクでも、着けた人は普段よりも肺に負担がかかることがわかりました。マスクを隙間のないように着けると息苦しさを感じます。肺への負荷が大きくなっているからです。医療現場で本格的なマスクを着けることが多い医療関係者からも、息苦しいという話を聞いています。さらに問題は、息苦しくなると鼻だけではなく口からも息を吸うことになります。すると人間が本来持っている鼻のフィルター効果が活用されないことになります。また、マスクを着用すると再吸引率が高くなります。すなわち、自分が吐き出した空気を再び吸引する割合が高くなり、清浄で新鮮な空気を吸引する割合が減るというマイナス面も指摘されます。
適切なマスクの利用方法、空気感染への警戒
――そうすると、適切にマスクを使うには、どうしたら?
飛沫汚染防止という他者のためのマスク着用は、公衆道徳の面からも大変必要性が高いと思います。一方で、1人でいるときや、ほかの人と離れた場所にいる場合は、マスクを着けたままにしておく必要はあまりないと思います。私の場合、寒い日に外にいるときはのどの保護のつもりでマスクを着けることが多いです。
――新型コロナウイルスは、空気感染するのでしょうか。
くしゃみなどで飛ぶ飛沫による飛沫感染や、飛沫が付着したものを触ったことから自分の手から口へ、などの経路で体内にウイルスが入ってしまう接触感染が主な感染ルートだとされてきました。しかし、最近の報告では空気感染の危険性が指摘されています。中国政府は2月に新型コロナウイルスによる肺炎の診療指針改定版を発表しました。その中で、空気中を浮遊する微小な粒子、エアロゾルによる感染はありうるとしています。
――エアロゾルは、飛沫とは違う?
咳やくしゃみによる飛沫よりはるかに小さいもので、そうした飛沫や唾液などが微粒子になって空中を漂うケースが問題です。3月にアメリカの国立衛生研究所の下にある国立アレルギー感染症研究所が、新型コロナウイルスがエアロゾル化し、空中で最低3時間は生き残る、という研究結果を発表しました。空気感染は起きていない、という見解もありますが、エアロゾルによる感染をはじめ、わかっていないことは多いのです。政府は換気の悪い密閉空間を問題視していますよね。滞留した空気を外の新鮮な空気と入れ替えて室内に漂うエアロゾルを追い出すことは、環境衛生の基本中の基本です。「ペット空気」のお話を最初にしましたが、清浄空気の確保は基本的人権に通じるくらい大切なことです。
ビルの換気計画を再検討する必要あり
――とはいっても、窓を開けることができないオフィスビルは増えています。
まったくご指摘の通りです。大きな問題だと思います。今までになかった汚染問題が発生している事態を踏まえてビルの換気計画の在り方を再検討していく必要があると思います。
――前から気になっていることで、一つお聞きします。3月26日午後、首相官邸で開かれた改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく対策本部の初会合では、マスクを着けていたのは河野太郎防衛相など数人だけでした。当時はすでに各種会議でマスク着用を義務付けられていたので、違和感を覚えました。3月31日の経済財政諮問会議では、一転、安倍首相をはじめ参加者全員がマスクをつけていました。これをどう見ますか。
感染者がどこにいるかわからない状況では、他者のためにマスクを着用することは、屋内、屋外を問わず、同じ場所に同席する場合のマナーとして励行すべきであると思います。政府関係者がそういう場所でマスクを着用することは、マナー喚起の点から必要だと思います。 
●コロナ危機でアメリカ版「国民皆保険」への支持が急上昇 4/2 
<従来からの無保険者だけでなく、雇用主を通じて医療保険に加入していたアメリカ人さえもロックダウンで失業、医療保険も失っている。最近の調査では、55%が皆保険を支持すると回答した>
アメリカで新型コロナウイルスの感染が急拡大するなか、11月の大統領選に向けて民主党の候補指名を争うバーニー・サンダース上院議員が提唱するアメリカ版「国民皆保険」(メディケア・フォー・オール)を支持する声が高まっている。新型コロナ感染の経済的負担を目の当たりにして、国民皆保険は社会主義だとして反対してきたアメリカ人も心を動かされ始めたようだ。
これは調査会社モーニングコンサルトとウェブメディアのポリティコが3月27日から29日にかけて実施した世論調査で明らかになったものだ。同調査では、回答者の55%がサンダースの提唱する国民皆保険制度を支持。過去最高だった2019年1月の56%と並ぶ高い支持率を記録した。
「有権者の35%は今もこの案に反対しており、純支持率(支持率から不支持率を引いた数字)は20ポイントと、2月半ばから9ポイントの上昇だった」とモーニングコンサルトは報告した。同世論調査は1997人の回答者を対象に実施され、誤差の範囲は±2%ポイントとされている。
サンダースら進歩主義の議員は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で医療費への不安が高まっていることを受け、アメリカにはやはり国民皆保険制度が必要だ、と訴えてきた。全国的に失業率が悪化するなか、雇用主を通じて医療保険に加入していた人々さえが、突然のリストラで保険を失い途方に暮れている。
サンダースは3月30日のツイートで、「アメリカの医療保険制度は、保険会社を儲けさせるためのものではなく、人々の命を守るものであるべきだ」と主張。
サンダースを支持している民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員(ニューヨーク選出)も、3月31日のツイートで同様の主張を行った。「毎年、営利目的の医療保険制度のために人々の命が犠牲になり、年を追うごとに事態が悪化していく」とオカシオコルテスは指摘。「保険の掛け金が払えなくなって、それでもメディケイド(低所得者医療保険制度)に加入するには『所得がありすぎる』場合はどうなるのか。何千万人もの人々が保険に加入できないか、保障が不十分な保険に加入している。私たちには国民皆保険制度が必要だ」
米連邦議会は3月18日に成立させた新型コロナウイルス対策で、既に同ウイルスの「検査」の無償化を決定しているが、多くの進歩主義者たちは、感染した場合にはさらに何万ドルもの治療費がかかる可能性があるため、この対策では不十分だと指摘している。アメリカでは今も、保険に加入していない人や保険の保障範囲が狭くて不十分な人が何千万人もいるため、病気になることが経済的な破綻に直結しかねない。
サンダースは民主党の候補指名争いでジョー・バイデン前副大統領に後れを取っているものの、国民皆保険制度を設けるという彼の提案は、全米の有権者に広く支持されているようだ。CNNが実施した複数の調査によれば、これまでに党員集会や予備選を実施したほぼ全ての州の民主党有権者が、民間の保険よりも政府が運営する国民皆保険制度の方が好ましいと表明している。
カイザー家族財団が2月に実施した別の世論調査のデータでは、ぎりぎり過半数の有権者が国民皆保険への支持を表明。同調査で国民皆保険制度を支持すると答えた回答者は全体の51%で、反対だと答えた回答者は44%だった。民主党を支持する有権者の間では、支持すると答えた人が74%。無党派の有権者は50%が同制度を支持すると回答し、共和党支持の有権者で同制度に支持を表明した回答者は20%にとどまった。 
●アメリカ 感染者21万人超で 同時多発的な医療崩壊に危機感  4/2 
感染者が21万人を超えたアメリカでは、急増する患者に直面する東部ニューヨーク州で、医療現場の対策が追いつかずに医療崩壊が起きる懸念が強まっています。さらにフロリダ州など、複数の州でも患者が急増していて、各地で同時多発的に同様の事態が起きることへの危機感も高まっています。
世界的な感染状況を集計しているアメリカ、ジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと、全米の感染者は21万人、亡くなった人は5000人を超えています。
感染者の最も多い東部ニューヨーク州では、クオモ知事が1日の記者会見で「4月の終わりごろに感染が最も広がっているという予測もある」と述べて、感染は今後1か月間さらに拡大し続けるという見通しを明らかにしました。
ニューヨークとその周辺では、患者の数がすでに10万人を超える一方、病床や人工呼吸器、医師と看護師、さらに医療従事者が感染防止に着用するマスクの不足が続いています。現地では医療の現場で受け入れ態勢の拡充を急いでいますが、増え続ける患者に医療機関の対応能力が追いつかずに、医療崩壊が起きる懸念が強まっています。
さらに、ほかの州でも患者は増え続けていて、中でもここ最近、南部フロリダ、ルイジアナ、中西部のミシガンの3州で急激に患者が増え、フロリダ州は1日、全域で外出を制限する命令を出しました。
フロリダは観光シーズンのさなかで、トランプ大統領に近い知事が、経済への影響を懸念して命令を出してきませんでしたが、この結果、海岸や繁華街に人が集まり感染を広げているという批判も出ていました。
またルイジアナでは、すでに外出は制限されていますが、州内に多いキリスト教福音派の一部の教会が、大勢の信者を集めた礼拝を続けていることが問題になっていて、各地で人と人との接触を避ける対策が十分行き届いていないおそれもあります。
トランプ大統領は1日、感染者の多い「ホットスポット」を結ぶ航空便の制限も検討しているとして対応を急いでいますが、このままのペースで患者の増加が続けば、全米の各地で同時多発的に医療崩壊が起きる可能性もあり、危機感が高まっています。
各州の感染者数と増加率
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の集計によりますと、全米の感染者は日本時間の午後5時現在、21万6722人、亡くなった人は5137人となっています。
州ごとの感染者の数は多い順に、東部、ニューヨークが8万4046人、東部、ニュージャージーが2万2255人、西部、カリフォルニアが9907人、中西部、ミシガンが9315人、南部、フロリダが7773人、東部、マサチューセッツが7738人、中西部、イリノイが6980人、南部、ルイジアナが6424人、東部、ペンシルベニアが6063人、西部、ワシントンが5984人となっています。また、全米の感染者の数を報道機関や研究者らを中心に独自に集計している「コービッド・トラッキング・プロジェクト」によりますと、フロリダでの感染者は3月25日の時点では1682人でしたが、4月1日には6955人に増え、1週間で4.1倍に増加しました。またミシガンでは3月25日は2294人でしたが、4月1日には9334人に増えて、同じく1週間で4.1倍に増加しました。ルイジアナでは3月25日には1795人でしたが、4月1日には6424人に増え、1週間で3.6倍に増加しました。
ルイジアナ州 急激に患者や死亡者増加
南部ルイジアナ州では、先月9日に最初の感染者が報告されて以来、3週間余りの間に感染者は6400人余りに上り、死者は270人以上となっています。
今月1日の、1日でおよそ1200人の患者と34人の死者が報告されるなど、全米でも急激に患者や死亡者が増加している州の1つで、患者のおよそ4分の1に当たるおよそ1500人が入院しているため、患者の集中している大都市ニューオーリンズの医療機関では、人工呼吸器が不足する事態になっていて致死率は4%と、高い数字になっています。
エドワーズ知事は当初、今月13日までだった外出禁止の命令を30日まで延長し、感染の拡大の抑制をはかるとともに連邦政府に対し、人工呼吸器などの支援を求めています。
菅官房長官「米国の状況注視 緊密に連携」
菅官房長官は午後の記者会見で、アメリカのトランプ政権が、新型コロナウイルスによる国内の死者が、最大で24万人にのぼるおそれがあるとしていることについて「試算結果は承知しており、同盟国として感染状況を注視している。これまでも首脳電話会談などを通じて、両国内の状況や感染拡大防止策について意見交換しており、今後も治療薬やワクチン開発を含めた協力と情報共有を行い、緊密に連携していく」と述べました。 
●新型コロナ、若者が次々に重篤化 NY感染症医の無力感 4/2 
新型コロナウイルスが世界で猛威を振るう中、欧米で注目が集まるのは、高齢者だけでなく若年層の感染や死亡の報告が増えていることだ。米国では、2020年3月24日にロサンゼルスで17歳の男性が、25日にはサンディエゴの自宅で自主隔離中だった25歳の男性が新型コロナ感染症で死亡しているのが発見された。28日にはイリノイ州で0歳児の死亡も報告されている。米ジョンズ・ホプキンス大学の統計によると、4月1日(米東部時間)午後10時現在、世界の新型コロナ感染者は93万人超、死者は4万7000人を超えている。国別の感染者では米国の21万5417人が最多で、その4割をニューヨーク州が占めている。今回は3月27日付記事「新型コロナ、NYから医師が警告『気を抜けば東京もこうなる』」の第2弾として、ニューヨーク近郊の大学病院で日々、COVID-19(新型コロナ感染症)の治療に当たる感染症専門医の斎藤孝医師に、新型コロナのアウトブレイクの現状を聞いた。第1弾から1週間もたたないが、状況は深刻さを増している。
ーーー新型コロナウイルスのアウトブレイク(集団感染)があってから、どのような生活をしているのでしょうか。
斎藤孝医師 / 日本で総合商社に勤務後、米国駐在を経て米国の医科大学に進学。卒業後にニューヨーク市ブロンクス地区の病院で内科研修修了。ニューヨーク・プレスビテリアン・クイーンズ病院で感染症フェローとしてエイズや結核などの感染症患者の治療に従事後、20年からニュージャージー州の大学病院で感染症の指導医を務める。
斎藤孝医師(以下、斎藤氏):週末も全て出勤でしたが、今日はようやく午前中だけ時間が取れました。昨日までオンコール(緊急時のために時間外も待機すること)で、その翌日は午後から出勤することになっているので。現在は、ニューヨーク市から川を挟んで隣のニュージャージー州の大学病院で感染症指導医を務めています。2カ月前までは、現在、新型コロナ感染症の患者さんが最も多く入院している病院の一つ、ニューヨーク・プレスビテリアン・クイーンズ病院に勤務していました。
状況が変わったのは2〜3週間くらい前でしょうか。先週は特にきつかったのですが、今週はもっときつくなると思います。何百人という数の患者さんが次々に入ってきている状態です。検査も追いついていません。時間を追うごとに数字がどんどん変わるので正確には言えませんが、現時点で200人くらいの患者さんが入院していて、そのうち重篤患者さんが40人くらいではないかと思います。ICU(集中治療室)のベッドがほぼ埋まっています。現在はICUをCOVID-19の患者さんだけにして、別の疾患の患者さんには、別の部屋に機材を入れて一時的に移ってもらっています。感染リスクがあるので同じ部屋に入ってもらえないからです。COVID-19は空気感染はしないものの空気中に3時間以上存在すると言われているので、空気感染の場合と同じように陰圧をかけた特別な部屋に入ってもらっています。限られた病室でしか対応できないのはこのためです。手術も急を要さない限り、全てキャンセルしています。
医師は曝露していても熱がない限り働き続ける
斎藤氏:ニューヨークの病院でCOVID-19の患者さんが多い所では、看護師も医師もウイルスにエクスポーズ(曝露)しているので人手が足りていません。当初は、エクスポーズしたら14日間は自宅待機という決まりになっていましたが、現在は熱や咳(せき)などの症状がなければ働いていいということになっています。14日間待機の時は、人手があまりにも足らず、外科医が内科の患者さんに目配せするような末期的な状況だったと聞いています。私の勤務先でも熱が出たら自宅待機になるので、皆、しょっちゅう熱を測って自分の体調を確認しています。防護具も足りていません。ニューヨークもニュージャージーと同じだと思いますが、「N95」のマスクが全然足りない。本来は患者1人に対して使い捨てをするのですが、私はかれこれ1週間は使っています。表面をアルコール消毒したり、サージカルマスクという日本で皆さんが着けているようなマスクを上から装着して、それを使い捨てにしたりして対応しています。テレビの映像で見ると、欧州や中国の医師は体をすっぽり覆う大がかりな防護服を着ていますが、こちらでは初めからそんなものはありませんでした。皆、とても簡易な装備で仕事をしているのです。看護師は、1日に10回くらいはICUの部屋に入って、1回当たり10分くらいは中にいますから、いつ感染してもおかしくない非常に危険な状況です。ER(緊急治療室)のドクターでも入院している人が何人もいます。かなり重篤化するケースも出ています。
20〜40代の患者が急増している
ーーー症状がなければ働く。しかも軽装備では医療従事者は不安ではないですか。
斎藤氏:はっきり言って、怖い。怖くなってきている。というのも、今は感染症にかかって入院してくる患者さんが20〜40代ばかりだからです。これまでは、65歳以上の高齢者や心臓や肺に疾患を持っている人が中心でしたが、今はそうではなくなっています。なぜかは分かりません。何も治療歴のない健康そのものの屈強な男たちがいきなり、急性呼吸不全(ARDS)になって自発的な呼吸ができなくなり、重篤化、死に至るというようなケースを毎日のように目の当たりにしています。ICUでは1日に何度も「ラピッド・レスポンス(Rapid Response)」と呼ばれるコールが鳴り響いています。ラピッド・レスポンスというのは、患者が心肺停止など容体急変の時に用いられる「コードブルー」の前の段階で、血圧の急低下や意識の混濁など、心肺停止前の変化を看護師たちが察知して緊急信号を発します。そうなったら、担当の医師チームが集まって処置をします。
退院が近いと思われた患者もいきなり重篤化
斎藤氏:このラピッド・レスポンスは毎日ありますが、最近は回数が急増しています。特に先週末はひどかった。大丈夫そうだな、退院は近いかな、と思うような患者さんでも、いきなり重篤化するのがCOVID-19の恐ろしいところだと感じています。もちろん、こうした患者さんに対して何もしていなかったわけではありません。呼吸状態を見て、血中酸素濃度の数値がある基準を下回った場合は、治験中の薬を投与することもします。効く場合もあるのですが、重篤化している場合は全く効きません。若い人を助けてあげたいけど、全然ダメ。かなり急激に悪化して、戻ってこない。そんな場面が続くと、無力感にさいなまれます。だからでしょうか。医療従事者たちは皆、逆にハイになっているような気がします。しょうもないことを言って、互いを笑わせたりして……。
ーーーCOVID-19は他にどんな特徴があるのでしょうか。
斎藤氏:似ているのは03年ごろに流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)です。ウイルスが空気中に3時間くらい浮遊することができるなど、今回のウイルスと特徴が似ています。コロナウイルス自体は風邪の原因にもなっているものですが、それに毒性の高いものが加わって、SARSや中東呼吸器症候群(MERS)、COVID-19の原因となっているのです。ウイルスそのものが体に直接的にダメージを与えるのではなく、ウイルスによって体の免疫システムがオーバーリアクト(過剰反応)した状態になり、それで多臓器不全などに陥るのです。今回のウイルスはまだ分かっていないことが多いのですが、現場で感じるのは非常にたちが悪いということ。感染力が高く、重症化すると助けることが難しい。大学病院が多く、研究データが豊富で感染症の専門家も多いニューヨークですら、こんな状況です。東京でもし同じ状況になったら、到底、対応できないと考えられます。
電車通勤はもってのほか
ーーー日本に届けたいメッセージはありますか。
斎藤氏:日本の方々はこちらで起きていることを「遠い国の出来事」と思われているかもしれません。でも、(人が密集して暮らしているという状況は)東京もニューヨークと変わりません。日本では感染者数が少ないといっても、それは検査数が圧倒的に少ないから。症状はないけれども、ウイルスは持っているという人がすでに数多くいると考えた方がいいでしょう。日本ではクラスターの存在を早めに察知するという手法で封じ込めを狙っているようですが、大規模検査の実施なくしてクラスターの把握などあり得ません。にもかかわらず、まだ在宅勤務を実施していない企業が日本には数多くあると聞きます。私はもともと商社に勤めていて、脱サラして医者になったのですが、友人に聞いたところ、親会社の商社は在宅勤務にしていても、子会社はまだ出勤しているそうです。
「自粛」などと言っている場合ではない
斎藤氏:症状はないけれども感染はしている人たちが多くいる可能性が高いのに、いまだに電車通勤をしているなんてあり得ないことです。「自粛」と言う言葉を使うからいけないのかもしれません。そんなことを言っている場合ではない。ニューヨークの病院では、遺体を安置する場所が足りないので、病院の横に冷凍トラックを駐車し、そこに遺体を安置しているような状態に陥っています。ご家族は感染リスクがあるので、死に目に会えないばかりかご遺体にも会うことができません。会えずじまいになるのです。本当に悲しいことです。ニューヨーク周辺では、シナゴーグや会議場などでアウトブレイクし、クラスターができたといわれています。とにかく同じ部屋に多くの人が集まるようなことは避けるべきですし、会社で会議をいまだに開いているなんて会社があればもってのほかだと思います。自分のことだけではなく、人に感染させるリスクも考えなければなりません。その人に疾患があり、免疫力が下がっていれば、感染に対応するのは難しいでしょう。他の人をそういった状況に陥れてしまう可能性があるということをもっと自覚して、行動してもらいたいと思います。 
●スペイン、死者9千人を超える 感染者の増加率は低下 4/2 
スペインの新型コロナウイルスによる死者が1日だけで864人増え、9000人を突破した。ヨーロッパ全体の死者は3万人を超えた。米ジョンズ・ホプキンス大学の集計では、新型ウイルスの世界の感染者は87万人を超え、死者は4万3000人以上に達している。スペインのCOVID-19(新型ウイルスによる感染症)による死者は9053人で、イタリアに次いで多い。1日あたりの死者数は、前日の849人をわずかに上回り、5日連続で800人を超えた。同国では10万2136人の感染が確認されているが、感染者の増加率は下がり続けている。この日は前日比で12%増えた。スペインのロックダウン(都市封鎖)は2週間以上続いており、より厳しい移動制限が3月30日に導入された。しかし、マドリードやカタルーニャなど感染が深刻な地域では、医療の提供が困難な状況が続いている。特に医療器具の不足が問題になっている。
世界で最も大きな影響を受けているイタリアは、感染者数が10万5792人、死者は1万3155人に上っている。しかし、1日あたりの新たな感染者の増加率は3%未満に下落しており、ここ数日でよい方向に進んでいる。アメリカの死者数は4000人を超え、イランの死者数は3000人に上った。ベルギーは死者が123人増えて828人となったほか、集中治療室の病床の空きは半数以下になったとしている。フランスでは過去24時間に509人がCOVID-19で死亡し、これまでの死者は4032人に上った。イタリア、スペイン、アメリカに次いで世界で4番目に多い。フランスの感染者は5万6989人で、前日の31日から約9%増えた。イギリスは1日、過去24時間の死者が563人となり、初めてフランスを上回った。死者の合計は2352人で、フランスより少ない。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、新型ウイルスのパンデミック(世界的流行)は世界にとって、第2次世界大戦以来の試練だと述べている。国連の報告書は、新型ウイルスの影響により世界で最大2500万の仕事が失われると予測している。イギリスでは3月の製造業の生産量は2012年以降で最低水準になった。オーストリアの失業率は昨年3月と比べて52.5%の急激な悪化を示し、1946年以降で最悪レベルとなった。イタリアの2月の失業率は前月よりやや悪化の9.7%で、新型ウイルス危機の影響はこれからとみられる。
その他の国々の状況
◾ オランダでは死者が134人増え、計1173人となった。ただ、入院患者の増加率は下がった
◾ サウジアラビアはイスラム教徒に対し、7〜8月の聖地メッカとメディアへの巡礼に関して予約を延期するよう呼びかけた
◾ スイスは3月31日夜、死者が433人になったと発表。翌4月1日には影響が深刻なティチーノ州でさらに12人が死亡したと発表した
◾ ロシアでは新たに7人が死亡し、死者は24人となった。感染者は2777人に上った
◾ スウェーデンではイースター(復活祭)休暇を前に、多くのスキーリゾートが閉鎖を予定している。当局が比較的緩やかだった規制を強化している
◾ 中国は輸出用医療用具の品質管理を強化すると表明した。欧州の国々から欠陥があると苦情が出たのを受けたもの
◾ インドでは首都ニューデリーで開かれた宗教行事に参加した数百人の行方を当局が追っている。この行事で集団感染が発生した 
 4/3

 

●ポリープ除去手術延期 4/3
都立病院、二回目のポリープ除去手術の打ち合わせに、担当の先生に会う。なんだかお疲れのご様子。「ポリープは悪性でないので、しばらく除去を先送りしたい。」 9月に延期する。コロナ治療対応で、手が一杯で大変とのこと。
一回目の手術は3/16だった、都内のコロナ患者の急拡大を実感した。
●緊急報告 “コロナショック”地域の悲鳴  4/3 
新型コロナウイルスの影響を多くの日本人がはっきりと意識したのは、ことしの1月下旬。日本の観光地から中国人旅行客の姿が消え、中国・武漢の封鎖で、日本企業の現地生産が停止したときでした。そこから2か月余りで想像を超える事態が、現実になっています。見えないウイルスの猛威は、わたしたちの日々の暮らしや、地域の経済に深刻な痛みをもたらしています。今、何が起きているのか。新年度が始まった地域の声を全国でいっせいに取材しました。
インバウンドが消えて
中国からの旅行者が急減し、日本を訪れた外国人旅行者はすでに2月の時点で、前年比58%減。それ以後、世界中の国からの入国が制限・拒否が決まり、4月、5月と、旅行者が、さらに落ち込むのは避けられません。各地のホテルや旅館の予約はキャンセルが続出。インバウンドの盛り上がりが地域経済を支えてきただけに、日本中の観光地から厳しい声があがっています。
経験したことのない危機
「考えられないことが目の前で起きている。経験したことのない危機だ」 歯ブラシなどアメニティーグッズを製造し、全国のホテルなどに販売する愛媛県のSANYOホールディングスの武内英治社長は危機感をあらわにしました。3月後半、当て込んでいた取引先からの受注がストップ。倉庫には、大型連休の需要の増加に備え、増産していた在庫が積み上がっていました。東京オリンピック・パラリンピックの需要拡大を見込んで、およそ8億円をかけて新工場を建設。3月10日に竣工したばかりでしたが、今は操業を停止しています。
武内英治社長 「旅行客が増え、われわれがホテルを支えるという構図が土台から崩れたような感じだ」 会社は生産態勢の大幅な見直しを迫られています。
仕事が週2日か3日に
ホテルにシーツやタオルを貸し出すリネンサプライ業も打撃を受けています。さいたま市のリネンサプライ会社、べネックは、東京都心や東京ディズニーランド周辺のホテルと取り引き。外国人旅行者の増加で業績を伸ばしてきましたが、2月半ばから売り上げが急減。シーツ、タオルを洗濯する栃木県の工場は1年中休みなく稼働してきましたが、3月からは週3日の休みを設けました。「これまで週5日働いてきましたが、週2日か3日の勤務になりました。目に見えて仕事が減って不安です」 工場で働く女性従業員は心配そうに話しました。
収束、待つしかない
影響は水産業にも及んでいます。岩手県大船渡市であわびの養殖を手がける北日本水産。東日本大震災で全壊した養殖施設を6年前に復旧させ、ホテルや飲食店への販売を増やしてきました。しかし新型コロナウイルスの影響で売り上げは1年前の半分ほどに落ち込みました。あわびの輸出も手がけてきましたが、税関が封鎖されて送り返されてくることもあるといいます。古川季宏社長 「八方ふさがり。収束を待つしかない」 インバウンドの落ち込みにとどまらず、国内の感染拡大がとまらず、自粛の動きも日に日に強くなっています。北海道・函館のタクシー会社。山梨・富士河口湖町のホテルやレストラン、おしぼりをリースする中小企業。新潟・燕市の金属加工会社。先の見えない不安が全国に広がっています。
リーマン以来の危機に身構える
一方、インバウンドとともに厳しい声が相次いだのが自動車関連です。2008年のリーマンショックを経験した各地の企業は、危機の再来に身構えています。愛知県清須市の自動車部品の金型メーカー、エムエス製作所は、中国の工場が2月下旬までおよそ1か月操業停止となり、インドの工場も生産停止に追い込まれました。日本でも4月に見込んでいた受注の3分の1が無くなりました。「これまでの会社の歴史の中で、いちばんの危機にあるということだけは確かだ」 迫田邦裕副社長は、自動車生産が世界中で一斉に落ち込んでいることを強く警戒しています。
社員の生活を守る
大阪・八尾市の金属部品の加工会社、理化工業は、従業員およそ70人。自動車部品に熱処理を施して強度をあげる事業を手がけています。電気自動車の軽量化のため需要が伸びるアルミを熱処理する新たな設備を3億円かけ作ることを計画していました。しかし、感染拡大が続く中、急きょ投資を凍結しました。森嶋勲社長は、今は巨額投資のリスクは避け、守りを固める時期だと考えています。森嶋勲社長 「社員の生活を守っていくのが中小企業にとっていちばん大きなテーマ。これから来るショックに備えておかないといけない」
いつまで耐えればいいのか
コロナウイルスで急ブレーキがかかる深刻な状況を何とかしのごうと、いま多くの企業が資金繰りの手当てなどに走っています。政府は、実質的に無利子・無担保で融資を受けられる資金繰り支援を始め、民間金融機関もさまざまな対応に乗り出しています。東京・港区に本店がある芝信用金庫は500万円以内であれば支店の判断ですみやかに融資する特別の仕組みを導入。「お客さんが事業を継続できなければ、私たち信金も生き残っていけない」 信金の橘新治常務理事は、取引先を支えなければ、将来の地域経済の地盤沈下につながりかねないと危機感をあらわにします。しかしウイルスの感染はおさまらず、暮らしや地域経済も日に日に停滞の度合いを深めています。「いつまで耐えればいいのか」 厳しいですが、今はまだわかりません。 
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●国内感染者3403人(クルーズ船除く)新型コロナウイルス  4/4 
東京都は4日、都内で新たに118人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたと発表するなど4日はこれまでに全国で273人の感染が発表され、日本で感染が確認された人は、空港の検疫で見つかった人やチャーター機で帰国した人なども含めて3403人となっています。このほかクルーズ船の乗客・乗員が712人で、合わせると4115人となります。また4日は岐阜県で1人が死亡し、死亡した人は国内で感染した人が78人、クルーズ船の乗船者が11人の合わせて89人となりました。
日本で感染が確認された3403人のうち、東京都は891人、大阪府は346人、千葉県は235人、神奈川県は234人、愛知県は203人、北海道は193人、兵庫県は190人、埼玉県は154人、福岡県は146人、京都府は109人、茨城県は54人、岐阜県は47人、福井県は46人、新潟県は35人、大分県は32人、群馬県、高知県は26人、石川県、奈良県は24人、和歌山県は22人、愛媛県、宮城県は20人、熊本県は18人、栃木県、静岡県、滋賀県は17人、沖縄県は16人、広島県は14人、三重県、福島県は13人、青森県、山梨県、秋田県、長野県、長崎県は11人、富山県、岡山県は10人、山形県、宮崎県は8人、山口県は7人、佐賀県は6人、徳島県、鹿児島県は3人、香川県は2人です。
このほか、中国からチャーター機で帰国した人が14人、厚生労働省の職員や検疫官、それに空港の検疫で感染が確認された人などが合わせて75人です。厚生労働省によりますと、重症者は3日の時点で国内で感染した人などが64人クルーズ船の乗船者が9人の合わせて73人となっています。一方、3日までに症状が改善して退院した人などは国内で感染した人などが514人、クルーズ船の乗客・乗員が619人の合わせて1133人となっています。 
●米国「コロナ爆発的拡大」背景にある政治的事情 4/4 
2月29日、ワシントン州でコロナウイルス(COVID-19)によるアメリカ初の死亡例が公表された。それ以降、このウイルスはアメリカ各州に広がり、感染者21万人以上、死者は5000人近くに上る。3月13日には国家非常事態宣言が出され、多数の商店やレストランが閉鎖された。また、さらなるウイルス感染拡大のリスクを最小限にとどめるため、一部の知事や市長は住民に自宅待機を求める「ロックダウン(都市封鎖)」を発令した。
3月初旬には共和党、民主党で認識に大きな違い
3月のはじめ、アメリカで「あなたの地域におけるコロナウイルスの感染拡大についてどの程度心配しているか」と質問したところ、共和党員の40%以上は「まったく心配していない」と答えたのに対し、民主党員で同じ答えは5%未満と、35%の開きがあった。しかし3週間後の3月21日になると、共和党員による同回答は40%から18%にまで急激に減少し、民主党員の回答も5%から2%に下落した。3月はじめにおける共和党員と民主党員の間の35%というこの差は、政党間の分断を反映したものと言える。しかしながら、このように3週間で両党の差が35%から16%に縮まったということは、この危機に対し両党の認識が近づいているということなのかもしれない。とは言え、共和党員と民主党員の間で脅威の認識にこのような乖離が生じるのはなぜなのだろうか。1つめの理由として、指導者たちが国民に向けて相反するメッセージを発していたということがある。
アメリカの情報機関は、1月初めには中国でコロナウイルスの感染が拡大していること、そしてそれが世界的パンデミックにつながりうることをドナルド・トランプ大統領に説明していたが、大統領がその問題を真剣に受け止め、国家非常事態宣言が必要であるとの結論に至るまでには1カ月以上かかった。2月27日になっても、トランプ大統領は「今は15人だが、この15人も数日以内にほぼゼロになるだろう」と力説していたのである。同じ頃、国立アレルギー・感染症研究所所長のアンソニー・フォーシは、「来週、あるいは2、3週間のうちに、われわれは地域のあちらこちらで多数の症例を目にすることになるだろう」と警告していた。そしてその後まもなく、民主党の州知事であるカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事やニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事などは、それぞれの州でロックダウンを発令し、不要不急の企業活動の休止や住民の自宅待機を促した。2つめの理由として、情報源の二極化がある。調査によると、共和党員のテレビ視聴者に人気のFOXニュースと、民主党員の多くが視聴するMSNBCでは、コロナウイルスについての報道がまったく異なっており、保守陣営の中には、民主党が意図的に「11月の大統領再選にダメージを与えようとコロナウイルスの感染拡大を「でっちあげ」ているのだ」と非難する者すらいる。また、共和党のSNSユーザーの多くは、主に保守系情報源を利用し、民主党SNSユーザーの多くが主に進歩系情報源を利用しているために、両者は互いに異なった、ときとして互いに理解不能な世界を作り出しているのである。
地理的な事情も影響した
3つめの理由として、地理的な政治要因がある。東海岸および西海岸の高人口密度地域(ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル)や、アメリカ中西部の大都市(シカゴ、デトロイト)は、特に感染者が多い場所である。そしてこれらは民主党が強い地域でもある。これに対し、感染者数が比較的少ない中西部や南部は共和党の牙城である。従って、共和党員の間でコロナウイルスに対する危機感が弱いのは、彼らの生活圏が大都市に比べて感染拡大による影響が少ない地域だからということも考えられるのである。コロナウイルスに対する危機認識は共和党員と民主党員の間で収束しつつあるが、この危機に対するトランプ政権の対応については、依然として党派間で意見が両極端に分かれている。3月初め、アメリカで「コロナウイルス発生に対する米国政府の現在の対応にどの程度満足しているか」という調査を行なったところ、共和党員では50%が「完全に満足している」と答え、「全く満足していない」と答えたのはわずか4%であった。これに対し、民主党の回答者のうち「全く満足していない」と答えたのは61%、「完全に満足している」と答えたのはわずか3%であった。3月21日の調査では、民主党員は64%が「全く満足していない」と答え、「完全に満足している」と答えたのはわずか2%。共和党員の回答者のうち、「完全に満足している」と答えたのは46%、「全く満足していない」と答えたのは5%だった。つまり、共和党員の間で危機認識が高まりはしたものの、トランプ政権のコロナウイルス危機への対応についての評価には、党派間の溝が依然として存在するのである。しかし、こうした党派間の分断にもかかわらず、党派的ないざこざの後、コロナウイルスによる経済的損害の緩和に向けた2兆ドルの法案を、3月25日に上院で可決できたことは心強い。おそらくこれは、誤魔化しが効く政治的危機とは対照的に、具体的に死者がでている現実的な危機的状況においては、党派の主義主張よりも事実が勝るということを示しているのではないだろうか。
統一的対応の欠如は中国の存在感を高めることに
つい最近までは、トランプ大統領が3月24日に「4月12日のイースターまでに経済活動を再開したい」という意向を示したことをめぐり、新たな論争が勃発し始めた。大統領は、「ちょうどいい時期だし、ちょうどいいタイミングだと思った」のだという。しかし、公衆衛生の専門家から「その期限はあまりにも時期尚早であり、コロナウイルスの克服という見地から見て悲惨な結末につながる」と非難されたため、3月29日、大統領はこの目標を撤回した。世界的パンデミックの中心地はこの2カ月間で中国からイタリアへと移動し、そして今やアメリカがその中心地である。トランプ政権は、「武漢ウイルス」や「チャイナウイルス」などとレッテルを貼り、中国がパンデミックの発生源であると非難しているが、国内における両党派の対立や世界におけるアメリカの統一的な対応の欠如は、最終的には中国の存在感を高めることにつながる可能性が高い。なぜなら、現実はさておき、中国には国内における危機の克服と他国に対する支援の両面で明確な戦略があったからである。国内だけでなく、世界においても、党派間の対立を克服し、科学、エビデンス、透明性、そして真実に基づくリーダーシップをアメリカが発揮できるようになることを期待したい。 
●世界恐慌級かリーマン級か?コロナショックの「本当の危機度」とは 4/3 
コロナショックのダメージは? 日本を襲った「4大危機」を検証
新型コロナウイルスのパンデミックによって、欧米では都市機能がロックダウンされる事例が増えています。東京でも、緊急事態宣言が出されるか否かの瀬戸際の状態です。このまま東京などの大都市がロックダウンに突入し、それが長引く事態になれば、日本も経済活動の停止に追い込まれます。そうなる可能性が現実味を帯びてきた今、コロナショックはどのようなレベルで日本経済に打撃を与えるのかを考えてみましょう。これまでに日本を襲った4つの危機、リーマンショック、バブル崩壊、オイルショック、そして戦前の世界恐慌と比較して、コロナショックがどのようなレベルの危機になりそうか、未来予測をしてみたいと思います。結論を先に言うと、最悪の場合、「悪い方から2番目」の危機になるかもしれません。順を追ってみていきたいと思います。2008年に起きたリーマンショックは、記憶に新しいと思います。ウォールストリートを代表する大手投資銀行グループ、リーマン・ブラザーズの破綻がきっかけとなった金融危機ですが、その後、日本でも深刻な不況が起きました。企業業績は悪化し、派遣社員の雇い止めが社会問題になるなど、経済に大きな爪痕を残したのです。リーマンショックの特徴は2つあります。1つ目は、世界の金融システムが崩壊しかねない最悪の事態の直前までいった危機だったということです。結果として、各国政府の救済策で最悪の事態は回避され、一時は半値まで落ち込んだ株価も元の水準に戻りました。2つ目は、終わってみたら金融業界はほぼ安泰で、ひどい目に遭ったのは製造業、サービス業、小売業などの他業界だったということです。回り回って、それらの業界で働く人たちにリストラという形でショックのツケがやってきました。このとき起きたのは、金融システム全体が傷つき、銀行がお金を貸せなくなり、結果として企業が立ち行かなくなるということでした。経済的にはひどい経験でしたが、金融システムの崩壊を回避できたことで、1年程度で暗いトンネルを脱出することができました。その視点で振り返れば、前述の4つの危機のうち一番実被害は小さかったと思われます。日本経済に対する打撃がもっと大きかったのは、1991年のバブル崩壊です。1980年代後半の金融緩和で、市場にじゃぶじゃぶとマネーが出回り、土地や株の価格が実体以上に押し上げられました。1990年3月の金融引き締めをきっかけとして、翌年ついに不動産価格と株価が崩壊したのです。不良債権となった不動産や貸出金は銀行全体で100兆円規模に上り、それを少しずつ損失処理する過程で、「失われた10年」と呼ばれる経済の氷河期が訪れました。実際の経済損失の大きさと、そこから回復するまでの期間の長さを考えると、バブル崩壊の影響はリーマンショックを上回ります。しかしバブル崩壊は、主に日本国内に影響範囲が留まりました。そのことを考えると、世界経済全体が崩壊を始めているコロナショックと比べて、まだ被害は小さかったと捉えるべきでしょう。
最悪だった世界恐慌ほどの危機には発展しない?
世界規模で起きた経済危機といえば、現代史において最大の打撃を与えたのが1929年の世界恐慌です。その打撃たるや、1940年代まで世界を揺るがし、ナチス台頭、ひいては第二次世界大戦勃発の引き金となったほどの甚大さでした。「大恐慌は世界的なバブル崩壊だった」とも言えますが、この最悪の経済危機が21世紀の現代において再び起きることはありません。理由は、大恐慌をきっかけに近代マクロ経済学が確立されたからです。現在、日本や米国が検討している財政出動は、大恐慌当時に経済学者のケインズによって提案されたもので、今ではその効果が後の経済学者によって立証されています。そのような対策が行われるという点で、大恐慌のような最悪の経済危機がコロナによって起きることはないでしょう。そう考えると、世界で同時発生しているコロナショックに規模が最も近いショックといえるのは、1973年に起きたオイルショック(第一次)かもしれません。第四次中東戦争をきっかけに、それまで1バレル=3ドルだった原油価格がわずか3カ月で4倍に高騰しました。その結果、「狂乱物価」と呼ばれるインフレが起きました。私は12歳のときにオイルショックを経験していますが、それまで10円で買えたチロルチョコレートが20円になり、子ども心ながらに「寒い時代が来たな」と感じたものでした。実は、コロナショックが広がるにつれて、世界の原油価格は暴落しています。「じゃあ、オイルショックと全然違うじゃないか」と感じる読者もいるかもしれません。しかし、それでもこれから、オイルショックとよく似た危機が訪れる可能性があるのです。オイルショックの危機の本質は、コストプッシュインフレに伴うスタグフレーションです。簡単に言えば、モノが足りなくなり、モノの価格が急激に上がることで起きる大不況です。
オイルショック時と似た危機 スタグフレーションがやって来る
オイルショックのときは原油価格が高騰しただけでなく、原油そのものが日本に入ってこなくなりました。そのため、繁華街ではネオンを消したり、百貨店ではエスカレーターを止めたりと、とにかく国を挙げて節約を呼び掛けたものです。それでも鉱工業生産指数は、高度経済成長期であったにもかかわらず、1974年からの2年間の平均でマイナス7.2%へと落ち込み、国内のモノの製造が大停滞しました。モノが手に入らないので価格が高くなる。でも給料は好況時のインフレのようには上がらない。結果、国民の生活は苦しくなる――。これがスタグフレーションです。そして今回のコロナショックでは、世界はこれと同じ危機に直面しそうです。現在の日本では、まだモノ不足は起きていません。オイルショック時と同じく、一時トイレットペーパーの買い占めが起きましたが、ほどなくしてパニックも和らぎました。コロナ不安が広がりを見せてから、一貫して薬局の棚に見当たらないのはマスクです。こうした差が生じる理由として、マスクは中国で製造しているため中国のロックダウンで製造が止まっていたこと、製造を再開したころには全世界でマスクの需要が急増しており、なかなか日本に入ってこなくなったことが挙げられます。まだロックダウンが行われていない日本で製造するトイレットペーパーとの違いが、そこにあります。
日本は最悪の形で デフレ脱却を果たすか
では、日本がロックダウンされたらどうなるでしょう。日本は工作機械やロボット、半導体製造装置などの工業品の製造が得意ですが、工場が止まれば世界へ向けたこれらの製造ラインが停止することになります。一方アメリカや中国の工場は、その生産ラインの多くが日本からの工業機械供給に頼っています。日本の装置が海外に届かなくなり、アメリカの工場が活動を停止して、世界の工業生産額の28%を占める中国の生産力にも影響が出ると、回り回って日本に戻ってくる最終製品の生産減少へと波及します。世界のサプライチェーンはつながっているので、1カ所が止まれば負の連鎖が起き、世界的なモノ不足が起きるのです。そしてモノが不足すれば、当然価格は上がります。今、一部のスーパーではマスク1箱が3980円で売られていると話題になっていますが、それは実は、経済学的にみれば当然の出来事です。そしてコロナショックが進むと、そのようなコストプッシュインフレが様々な日用品で起きるようになります。そうなると、日本は最悪の形でデフレを脱却することになるでしょう。給料はそれほど上がらないのに、モノ不足から百均の商品価格が200円、500円と上がり、カップ麺、コンビニのおにぎり、ペットボトル飲料など気軽に手に入ると思っていた商品が、次々と狂乱物価の様相を呈するようになります。原油価格が下がっても、生産力が世界で同時に落ちてしまうので、コストプッシュインフレが起こるのです。それによって庶民の生活は圧迫され、日常生活はスタグフレーションの悪影響で暗くなる。オイルショックのときの、あの何とも言えない、何となく自分たちが貧しくなってしまったような気持ちが蘇ることになります。コロナショックでは、こうしたことが世界で同時に起きる可能性があるのです。結論を言えば、冒頭で述べた4つの危機のうち、世界恐慌の次に悪いレベルとなるオイルショック並みの危機を、我々は覚悟しなければなりません。そうならないよう、日本政府には何とかうまくコロナを抑え込んでほしいと願うばかりです。 
●コロナ騒動で見えた「人間が抱える3つの弱点」 4/4 
コロナ騒動によって、「人権の脆さ」が世界各国で露呈した。主に欧米だが、海外在住日本人による「差別を受けた!」という悲痛な声がSNSに多数書き込まれている。アジア系住民が電車の乗車を拒否されたり、差別的な言葉を投げかけられたりするのは日常茶飯事。アジア人が歩いてきたら口を手で覆い、スーッと避けていき、あまつさえ「コロナ!」と侮蔑の言葉を吐く白人男性もいたという。
コロナで見えた「人間の弱さ」
今回のコロナ騒動で、「人間の弱さ」を感じる出来事が多くあった。それらを大まかに分けると3つある。
1.時に人は「差別を正当化」してしまう
今年1月に箱根の駄菓子店店主が「中国人は入店禁止」と意味する貼り紙を店頭に貼り、SNSでは「店主は差別主義者」など批判の声があがり、多数のメディアもこの件を問題として報じた。しかし、今では世界中の国々がコロナの感染源である中国からの入国を禁止し、日本も各国からの入国を制限。店主のやり方は露骨すぎたが、今同じことをして「差別だ!」と批判する人は少ないだろう。そして、日本も世界の多くの国から入国を拒否をされている。平時においては差別だと捉えられたことも、今回のような緊急事態には「人権」よりも「人命」のほうが優先されるため許容されがちだ。だからこそ現状には、「差別を正当化できるようになった」という危険がある。前述の欧米各国で起きているアジア人差別も、差別する側の論理としては「アジア人のせいで我々の命が危機に晒されている」という心理が働いているのだろう。今後「黄禍論」(19世紀末に勃発した白人による黄色人種脅威論)のように欧米諸国によるアジア人種差別が再燃する可能性もある。残念ながら今回の騒動によって延期してしまったが、オリンピックには「世界平和を実現する」という目的がある。2021年の無事開催を心から願うが、東京オリンピックは再び世界の人々が協調と優しさを取り戻せるかのメルクマールとなる。もしも開会式で中国人選手団の入場の際に大ブーイングでもあろうものなら、残念ながら戻ってはいないのだろう。もし世界の人々に安寧をもたらしたのであればそれは、今進行している「差別の正当化」を食い止めることになるし、恐らく東京に来てくれた外国人とは「お互い色々大変なことを乗り切ったね」という「戦友」のような感覚を共有できるかもしれない。というかそうなってほしい。
2.「右へ倣え」で一気にパニックになる
2011年の東日本大震災以来、久々にトイレットペーパーが薬局やスーパーから姿を消した。1973年のオイルショック以降、日本人は有事の際、トイレットペーパーを買い占める行動様式を示すようになった。連日ドラッグストアには開店前からトイレットペーパーやティッシュペーパーを求める行列ができている。マスクについてはもう店頭で見かけることさえ難しい。コンビニではトイレットペーパーを盗む不届き者がいるためトイレの使用禁止に踏み切る店も出たようだ。3月15日からマスクの転売が禁止されたが、それまでにとんでもない高額でマスクを転売する例も続出した。「価格は市場の原理で決まるもの」と転売を正当化する者もいたが、これは単に「小ずるい」だけである。静岡県の県議が自身の経営する貿易会社の在庫マスクを転売して約888万円の売り上げがあり批判を浴びたが、本人は転売ではないと主張した。転売か転売ではないかという本人の認識はどうでもいいが、社会不安に乗じて小ずるい連中が利益を得るさまを見るのは正直不快である。
3.欲望を抑えきれない
3月19日、専門家委員会による休校の解除発表などにより、コロナ騒動も一旦、弛緩ムードが広まった。当時は明らかに人々が「コロナ疲れ」から解放されたいと思い、日常を取り戻そうとしていたのか、3月20〜22日の三連休には、代々木公園などでは花見を楽しむ観光客も多くいた。3月24日19時頃に東京メトロ千代田線に乗ると、前週とはレベルが違うほどの混雑ぶりで「あっ、これはマズい」と思った矢先、翌日にタレントの志村けんさんの感染が発覚。3月30日には東京五輪延期決定が報道され、再び自粛ムードが復活した。匿名掲示板5ちゃんねるには「志村さんには悪いけど、これで一気にみんな気を引き締められればいい」という書き込みがあった。亡くなった志村さんは本当に気の毒だが、もし彼の感染が報道されなければ、人々の気は緩んだままだったろう。3月22日に興行を強行し、今後も興行は続けると宣言したK-1は今もネットで猛烈な批判を浴びている。K-1が諸悪の根源というわけではまったくないものの、3月末の3連休に端を発した弛緩ムードの象徴的存在とされている。
人間は「欲望を抑えきれない」生き物
感染開始初期の頃は、「クルーズ船乗客」「バスツアー参加者」「屋形船宴会参加者」「ジム通いの人」「ライブハウス参加者」など娯楽を楽しんだ人々がしきりと報じられた。つい先日もスペイン旅行から帰って来た一家が成田空港の検疫による待機要請を振り切って沖縄に戻ってしまい、その後コロナ陽性が判明となった。いずれもそのアクティブさと娯楽への欲望の強さが反感を呼んだ。しかし、「キャンセル料金を払うのはイヤだ」といった気持ちは理解できるし、「家族でのせっかくの旅行を楽しみたい」という気持ちにも健気さを感じる。「私たち家族は感染しないだろう」という見通しの甘さはあっただろうが、この一家が抱いた欲望が止められないことは人間の1つの真理を表している。人間は欲望を抑えきれない生物であり、それが結果的に個人の失敗や社会の混乱を招いてしまうのだ。2008年にはリーマンショック、2011年には東日本大震災、そして2020年にはコロナ騒動が起きた。生きていれば抗いようもない事件は起きるものだし、予測も対策もしづらい。せめて今回の騒動で見えた人間の弱さについて思いを馳せ、人々がまた失敗を繰り返さないことを願う。  
●コロナ危険別「行っていい場所・ダメな場所20」 4/4 
「緊急事態宣言によって、東日本大震災の原発事故後の福島のような事態が起こらないか心配しています。社会の仕組みは非常に複雑です。普段の仕組みを壊すことで、予想もしなかったところに副作用が出ることがありますから」 と医師でNPO法人『医療ガバナンス研究所』の上(かみ)昌広理事長は懸念を隠さない。
まずやるべきは検査態勢を整えること
新型コロナウイルスの感染防止策が後手後手に回っている安倍晋三首相は、「緊急事態宣言」を発令できるよう新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案成立を見据える。3月14日施行で調整中。特定の地域で感染が広がった場合、首相が緊急事態宣言をすれば、都道府県知事は住民に不要不急の外出の自粛を求めたり、学校や体育館・劇場・映画館などの使用制限を指示できるようになる。医薬品や食品の売り渡し要請や保管命令もでき、従わないと30万円以下の罰則を科せられることも。国民の権利や自由が制限される“劇薬”といっていい。前出の上理事長は「目に見えない恐怖はパニックを引き起こしやすい」と話す。「パニックになったとき真っ先に気にするのは子どもの健康。子連れの女性が避難するようになると、女性に支えられている職場は機能不全に陥りかねません。病院は圧倒的な数の女性看護師に支えられており、薬剤師も女性が多い。原発事故直後からチームで福島に入って診療を続けてきましたが、医師も看護師も避難して人出不足でした」(上理事長)全国一斉休校要請により、子どもを持つ働く母親はすでに追い詰められている。小学生が1カ月以上も「家で留守番」に耐えられるはずがない。「福島を落ち着かせたのは緊急事態宣言ではありません。希望者ひとりひとりに内部被曝検査を実施し、放射能に汚染されていないと自分で確認できたからです。同じ目に見えない新型コロナでも、まずやるべきは検査態勢を整えることではないでしょうか」と前出・上理事長。
休日は自宅にこもる人も少なくないようだが、いっさい外出しない生活を続けられる人は限定的だ。出かけても感染リスクの低い場所はどこなのか、どのように立ち回ればいいのか──。感染症専門医で東京都の『KARADA内科クリニック』の佐藤昭裕院長は「飛沫(ひまつ)感染を防ぐには感染者との位置関係と距離が大事」と説明する。無自覚・無症状の感染者がいることも想定されるため、少しでもリスクを減らすには周囲全体に気を配らなければならない。「向き合った状態では1.5〜2メートル離れるのが望ましい。お互いに手をのばしたとき触れる距離は危険です。咳(せき)やくしゃみのほか、しゃべるときも唾液が飛沫になって前方に飛んでおり、ウイルスを含んだしぶきはやがて下に向かいます。例えば電車で座っているとき、前に立っている人がマスクをせず、こっちを向いてしゃべっていれば感染リスクは高くなります」(佐藤院長)つまり、座るよりも立っているほうが安全といえる。電車の乗車時に限らず、外出先などでは、この位置関係と距離を保つようにしたい。
手洗いに15秒はかけて
では、どのような状況だと危ないのか。東北大学病院・感染管理室の徳田浩一室長は、「比較的狭い空間で、空調も十分ではなく、人が集まるところは避けたほうがいい」と話す。「屋内であっても、広々とした場所に少人数しかいないのであれば、そんなにリスクはないと思います。逆に狭い場所で話をしたり、盛り上がって声を上げたり、騒いだりするのはリスクになりうる。換気がされているかどうかも大事です」(徳田室長)厚労省の専門家会議が注意するカラオケボックスやクラブ、クラスター(集団感染)が発生したライブハウスなどは避けたほうがいい。では、乳幼児を含めて子どもを連れて出かけるとき、どういった場所ならば安心できるのだろうか。広島県の『女医によるファミリークリニック』の竹中美恵子院長(小児科)は、「換気の必要がない公園は安全だとは思います。しかし、人が密集すれば飛沫が飛んでいることも十分に考えられますし、公園には遊具などの手すりがあります。それらを直接舐(な)めることもあるでしょうし、触れた手を舐めることもあるので、遊具に触ったあとはしっかり手洗いやうがいをすることが大切です」と、母親が目配りしたいポイントを指摘する。人が触ったものを触ることがリスクにつながるというわけ。前出の徳田室長は、「手洗いには15秒はかけてほしい。意外と長いんですが、とくに指先と指の間を意識してよく洗うようにすればクリアできるはずです」とアドバイスする。医師への取材をもとに、『行っていい場所・ダメな場所』を20種類のスポットに分け、危険レベル別に紹介している。一覧表は最後のページに掲載した。こちらを参考に、長い春休みを過ごしてほしい。
危険度レベル別「行っていい場所・ダメな場所20」
   行っていい度:○
運動場やスポーツ観戦
「屋外の草野球やドッジボールはそれほどリスクはない」(徳田室長)。人との距離が近いか、接触が当たり前の競技かで危険性は変わる。「線引きは難しいが屋内でプロレスごっこは超濃厚接触」(同)。屋外観戦でも人との距離を
映画館
「室内で密閉空間だが、みんなが触れるものはないし、上映中にしゃべる人はいないので意外と安全ではないか」(佐藤院長)。問題は混み具合。「空いていて前後の席が空いているようならば鑑賞してもいいのでは」(同)
カフェ、牛丼店
カフェチェーンや牛丼店、立ち食いそばは「横並びで1人利用するケースが多く、目の前に飛沫をかけてくる人がいない席は比較的安全」と佐藤院長。回転率も早く換気されやすいが、カフェ奥の喫煙室は狭い密閉空間なので注意
公園や児童遊園
「基本的には大丈夫」と徳田室長。「ただし、大きな公園では手すりやベンチを触ったとき、児童遊園ではブランコや鉄棒を触ったあとは必ず手洗いを」(同)。せっけんを持ち歩くか、水道水だけでも丁寧に洗えばウイルスは落ちる
登山、キャンプや海辺散策
暖かくなってくるとアウトドアに出かけたくなりがち。徳田室長は「登山、キャンプ、海辺の散策は屋外で混みにくいのでまず大丈夫」としながら、「バーベキューをやるときはトングや食器、タオルは共用しないように」と指摘
   行っていい度:△
コンビニ
百貨店やスーパーに比べて狭いが、客の出入りが多いため換気されやすく滞在時間も短い。佐藤院長は「レジに並ぶときは、せめて“前ならえ”の距離を空けたい。支払いはお金をやりとりせずにすむ電子マネーがいい」と指南
ショッピング(スーパー、デパ地下)
スーパーは「値引きタイムが混み合うならば別の時間帯に」と佐藤院長。共用のトングを触って、むき出しの焼き鳥などをパックに入れて買う総菜類は帰宅後に洗えないためアウト。デパ地下も含め「試食は控えたい時期」(同)
図書館や学習塾
​「学校が休みになっているため、学習塾や図書館、学童クラブに行っているお子さんが多いようですが、人が集まるところはおすすめできません」と竹中院長。空いている図書館ならば別だが、他人と距離がとりにくければ注意したい
美容院
「洗髪してもらうとき顔にかけられる薄いガーゼ1枚では感染はブロックできません」と佐藤院長。耳にかけたゴムが濡れるかもしれないが、マスクをつけたまま洗髪してもらうようにしたい。マスク着用の美容師は増えている
ファミレス
​「同じテーブルで向き合うのはリスクが高い。しゃべりながら食事しているだけで、目に見えない飛沫が目の前の料理に飛んでいる」(佐藤院長)。それを食べれば飛沫感染。トング共用のサラダバー、ドリンクバーも感染リスクだ
遊園地や動物園
感染拡大防止のため、TDLやUSJ、上野動物園は3月15日まで臨時休園を決めた。開園中の小規模遊園地や動物園もある中、徳田室長は「人混みは避ける」ことをポイントに挙げる。屋外であっても混み合うところは避けたい
密閉された狭い空間、同じ箇所を入れ替わり触るのは×
   行っていい度:×
カラオケボックス
「リスクは高い」と佐藤院長。密閉された狭い部屋で「熱唱してたくさん唾をつけたマイクを使い回し、中には下唇にマイクを当てたスタイルで歌う人もいる」(同)のが危険。複数人が触るリモコンを操作すると、手にウイルスが
ゲームセンター
「入れ替わり、立ち替わりゲーム機のレバーやボタンをガチャガチャ触る。その手で口元に触れれば接触感染のリスク。プリクラも危ない」と佐藤院長。ボックス内でしゃべりながら顔を寄せ合い、指先でボタンを触るのは危険
ジム
名古屋市でクラスター感染が発生するなど危険視されている。「ジムのマシンはみんなが触るし、触らないと鍛えようがないので接触感染しやすい環境」と佐藤院長。ちなみに感染症は「汗からはうつらない」と言われているそう
電車に乗る(バス、タクシー)
「満員電車に毎日乗り、たまのカラオケだけ気にするのは疑問」(上理事長)。換気と周囲のスペース確保のため「頻繁にドアが開く各駅停車に乗り、人がたまるドア付近は避ける」(佐藤院長)。バスやタクシーでは窓を少し開けて
パチンコ店
「厚労省の専門家会議では名指しされなかったが、クラスター感染が心配な場所のひとつ」(佐藤院長)。大当たりしないとき遊技台を移動する人は多く、同じハンドルを何人も握る。連続大当たりしたら長時間そこから動けなくなる
花見
東京都は花見シーズンの都立公園などでの飲食を伴う宴会の自粛を呼びかけ。散歩しながら花見してほしいというが、「桜の名所は人出が多く、屋外であっても人との距離が近い。ワイワイ騒ぎがちだし危なそう」と徳田室長
病院や介護施設
「病院で“もらう”可能性はある」と上理事長。腰痛など別の症状で通院中の人は「主治医に遠隔診療できるか聞き、薬も多めに処方してもらう」(同)。病院も介護施設も重篤化しやすい高齢者が多いのでうつさないように注意!
ベーカリー
「トングは個別なので安心。ただ、焼きたてを除けば、ほとんどのパンがむき出しで陳列されているのが気にかかる」(佐藤院長)。ビニール袋に入っている食パンなどは別。ワックスペーパーで個別に包んで陳列し始めた店舗も
ホストクラブ
​大分市ではラウンジ接客業の女性が感染。佐藤院長は「横並びで座っても、至近距離で向き合って肌が触れたり、盛り上げようとしゃべって飛沫が飛ぶリスクは高い」と指摘。客として行くことも、ホステスとして接客するのも×  
●安倍首相、昭恵夫人をコントロール不能なわけ 4/4 
新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言も秒読みとされる中、安倍晋三首相の場当たり的な対応と昭恵夫人の無自覚な振る舞いが炎上している。奔放な言動で知られる昭恵氏は、東京で行動自粛が叫ばれる中、3月下旬に都内のレストランで「花見宴会」に参加したことが発覚。安倍首相も4月1日に「布マスク1億枚配布」を突然表明し、「エイプリルフールだと思った」などと集中砲火を浴びている。
ファーストレディとして適切な行動なのか
後半戦に入った国会は、コロナ対策最優先で「挙国一致ムード」(自民党国対)も漂い始めており、与党内では首相夫妻に対する批判・炎上は一過性に終わるとの見方が多い。ただ、国民の不信が拡大すると、今後の安倍首相の政権運営への足かせとなることは避けられそうもない。
昭恵氏のお花見騒ぎは、親しい有名芸能人ら10人以上の仲間との集合写真が3月26日にインターネット上で公開されたのが発端。2020年度予算の締めくくり質疑となった3月27日の参院予算委員会では、立憲民主党の杉尾秀哉氏が「昭恵夫人がグループで花見をしている写真が出回っている」と質した。
これに対し、安倍首相は「都内のプライベートなスペース、レストランで会合を持った際に記念撮影を行ったものだ」と昭恵氏の会食参加は認めたうえで、「都が自粛を求めている公園での花見というような宴会という事実はない」と不快そうな表情で反論した。
収まらない杉尾氏はさらに「レストランなら問題ないのか。ファーストレディの行動として適切なのか」と追及したが、安倍首相は「レストランに行ってはいけないのか。(シチュエーションなどを踏まえ)正確に発言してほしい」などと口をとがらせて言い返し、委員会室も騒然となった。ただ、追及劇自体は時間切れの尻切れトンボで終わった。
3月28日の記者会見で、安倍首相は緊急事態宣言を出す「ぎりぎりの事態」と危機感を示しつつ、国民の行動自粛を訴えた。しかし、それを無視したかのような昭恵夫人の行動に、「夫の足を引っ張る夫人は、首相のアキレス腱だ」(自民党の閣僚経験者)などと非難する声が相次いだ。
国会での口論シーンはテレビ中継されていなかったものの、ネット上に動画が公開されると一気に炎上。ツイッターでは「首相夫人がレストランで13人の『桜』宴会は駄目」「史上最悪な“ワーストレディ”では」との書き込みが相次いだ。
5000万世帯にマスク配布を表明
4月1日に安倍首相も出席した参院決算委員会や、2日、3日の衆参本会議質疑はコロナを優先させて野党側の追及もなく、「騒ぎは一過性で終わり」(自民国対)との声も出た。
しかも、安倍首相を追及した杉尾氏がフェイスブック上で、選挙区の長野県千曲市の「あんずの里」について「今がちょうど見頃です」「これまで見た中では最高でした」などと投稿していたことを夕刊紙が報じ、騒ぎの鎮静化につながった。
そんな中、4月1日に開かれた政府のコロナウイルス対策本部で、「全国5000万余りの全世帯を対象に、1つの住所につき2枚ずつ、布マスクを配布する」との考えを表明した。約200億円とされる経費は2020年度の補正予算案に盛り込む方針だが、これも直ちに大炎上した。
ネット上では、アベノミクスを揶揄した「アベノマスク」なるハッシュタグがトレンド1位となり、「使う税金をもっと重要な対策に回せ!」「国民をバカにするのもいい加減にしろ!」などという書き込みがあふれた。
安倍首相は1日以降、自ら布マスクを着用しており、「布マスクは洗えば再利用できる」として自身の決断に自信をにじませた。
布マスク配布案は首相側近の発案とされ、「国民の皆様の不安解消に少しでも資するため」(安倍首相)という狙いだったが、世界保健機関(WHO)は「(布マスクは)いかなる状況でもお勧めできない」との見解を示している。
野党は「思いつきも甚だしい」(国民民主党幹部)などと噛みつき、自民党内からも「ポピュリズムの権化のような政策で、医療の整備に充てるほうがよっぽど有益だ」(石破派幹部)との指摘が相次いでいる。
自殺した財務省職員夫人が訴訟を提起
2月以来、マスク不足対策の司令塔を務める菅義偉官房長官は「店頭にマスクがないという声が多い」と強調。4月中旬の週以降に発送するとして「このシステムは北海道で実施済みで、その経験を生かして速やかに配布できる」とスピード感を訴えたが、口調や表情は精彩を欠いていた。
昭恵氏絡みでは、森友学園をめぐる公文書改ざん問題で自殺した財務省近畿財務局職員の手記公表も改めて政権の火種となっている。同職員夫人が「改ざんに至る真相の解明と損害賠償」を求める訴訟を起こし、野党側も「第三者による再調査」を繰り返し強く要求している。
財務省の調査報告書では、当時の佐川宣寿理財局長(国税庁長官を経て退職)が改ざんを主導したとされているが、改ざんに至った動機などは解明されていない。野党側は「首相の『私や妻が関わっていたら、総理も議員も辞める』との答弁が改ざんのきっかけなのは明らか」として安倍首相の責任を追及している。
しかし、安倍首相は「答弁が改ざんのターニングポイントとは手記に書いていない」と繰り返し、昭恵夫人の関与についても否定する姿勢を堅持している。
そもそも、安倍首相と昭恵夫人については「歴代首相と夫人の関係とはまったく異なる夫婦」(首相経験者)との評がついて回る。その原因は昭恵氏のファーストレディとして型破りな立ち居振る舞いだ。
第1次安倍政権発足時からネットなどで「アッキー」の愛称で呼ばれ、「神出鬼没ぶりも際立っていた」(官邸筋)。
居酒屋を経営し、深夜まで友人と飲み歩く昭恵氏の自由奔放な行動に、政界では眉をひそめる向きが多かったが、「反原発」「反TPP」などを公然と口にする家庭内野党ぶりが、好感度にもつながっていた。安倍首相も公式の席で「家庭の幸福は妻への降伏」と駄洒落を飛ばし、昭恵氏の言動を黙認してきた。
保守系野党加わり「大連立政権」の噂も
今回の花見騒ぎでも、「首相はその延長線上で妻を擁護するしかなかった」(自民幹部)とみられている。ただ、度重なる昭恵スキャンダルに苛立つ与党内からは「今回ばかりは『申し訳ない。妻には無思慮な行動を叱っておいた』と答弁すればそれで済んだのに」(自民長老)との声も出る。
そうした中で野党側は、安倍首相の恩師でもある小泉純一郎元首相が最近の週刊誌のインタビューで、「(森友学園問題で)首相は責任を取って辞めざるを得ない」と発言したことを取り上げた。これに対して安倍首相は「新型コロナウイルスの対策を全力でやっている。(職を)放り投げることは毛頭考えていない」と辞任を否定した。
たしかに、「戦争に並ぶ国難の中で、スキャンダルなどで政権が揺れることは国民も望まない」(首相経験者)との指摘は多い。政界の一部では自公政権に維新、国民など保守系野党が加わっての「大連立政権」なども噂されている。このため、首相サイドは「しっかりコロナに対応していれば、ネットでの炎上などは一過性に終わる」(政府筋)との強気の声が少なくない。
ただ、多くの世論調査では内閣不支持の理由が「首相の人柄が信用できない」がトップであることも事実だ。安倍首相は東京五輪招致の際、福島原発について「アンダーコントロール」と世界に胸を張った。しかし、身内中の身内でもある昭恵氏については「現状をみる限りコントロール不能」(自民長老)と言われても仕方がない。
小泉元首相の警告も含め、今回の炎上騒ぎは「時間とともにじわじわとボディブローとして効いてくる」(閣僚経験者)ことも否定できない。  
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●経済不況で自殺が増加する:コロナウィルス経済対策の重要性 4/5 
経済不況では自殺が増加する
Covid-19のパンデミックによる日常生活への影響は、ますます大きくなっている。特に観光・飲食業は厳しく、壊滅に近いという報道もある。気になるのは、わたしの身のまわりでも、仕事やアルバイトが休みになる勤め人や学生、客が減って収入が激減している自営の人が多いことだ。わたしの知人の内科開業医や調剤薬局からも、患者数や処方箋数減少による経営不振を嘆く声を聞く。この週末に閑散とした街を見て、今後の生活への不安感を強くした人も多いだろう。
わたしのような経済に詳しくない者でも、世界規模の経済不況が既に始まっているのではないかと不安になる。噂されている緊急事態宣言やロックダウンが実施されれば、経済に対して悪影響は避けられないだろう。明日や来月からの支払いなど生活が気になり夜も眠れない人も少なくないとは思うが、経済不況が自殺者数を増加させるのは、1920年代の世界恐慌の頃から観察されている事象である。
1929年頃から発生した世界恐慌(Great Recession)での死因を調べた研究では、死因のうち自殺だけが増加し、自殺率は失業率のピーク(1921年、1932年、1938年)と一致したという(1)。厚生労働省による自殺対策白書(2)での自殺者推移を見ても、バブル崩壊後の拓銀や長銀、山一証券など大手金融機関が破綻した後の1998年に自殺者が24,391人から32,863人に急増し、かつ30,000人以上の自殺者数が恒常化する現象が2011年頃まで続いてしまった(図1)。(図1)自殺者数の推移
自殺に関する記事は、自殺者数が増加する3月ないし5月に多い。3月は、自殺対策強化月間でもある。しかし今年に限っては、Covid-19による経済不況によっては、自殺者が5月を過ぎても増えていく可能性も考えられ、この傾向が異なってくるかもしれない。Covid-19が引き金を引いた経済不況において有効な経済・財政対策を取らなければ、せっかく減少した自殺者を、再び増加させかねないと危惧し、この文章を書いている。
不況になると自殺が増加する
厚生労働省による自殺対策白書(2)をもとに、自殺の基本知識をまとめておく。
・自殺者は2010年以降に明確な減少傾向をとり、2019年に20,000人を切った。
・自殺既遂者の男女比は、約2:1でほぼ一定している。
・例年3月は自殺者がもっとも多く、次いで5月が多い
・若年者(10歳〜39歳)の死因第1位は自殺
・男性では40〜60才代の比率が、女性では40〜80才代に至るまで高い
・精神障害(うつ病)による自殺は減少傾向ながらも約3割
過去の自殺対策白書内では、経済状況と自殺との関連性が記載されている。景気動向指数の増減と「経済・生活問題」による男性の自殺者数の増減には、負の相関の関係がある(図2)。不況になると、男性の自殺が増えるというパターンだ。(図2)景気動向指数の増減と自殺
日本は他のOECD諸国に比べて、自殺と失業率との相関が大きい(3)。近年の自殺対策白書では、これまで注目されていた失業や就職失敗だけでなく、「事業不振」「生活苦」も自殺者増加と強い関連があるという結果が出ている。
多重債務による自殺者は減少傾向だが、これは法テラスなど相談窓口を充実させるなど社会的サポートが貢献している。「コロナ失業」「コロナ倒産」「コロナ廃業」による自殺を防ぐには、社会・経済的サポートが重要であることを示している。
政府は有効な経済財政政策を
アメリカの約220兆円規模の経済対策など諸外国が多額の財政出動や臨時の現金支給を決めているなかで、政府のマスク2枚給付は国民の期待に水を差した感が強いと個人的には思う。マスクばかりが報道されているが、危機対応融資枠としての緊急経済対策や雇用調整助成金の助成率アップは、手続きがわかりにくいという批判はあるが、これは評価されるべきであろう。
コロナ不況による自殺防止として二点だけ書き留めておきたい。
1.自殺は、家族の不和や失業・倒産、生活苦、病苦、職場環境など複合的要因が連鎖して起こる。3割がうつ病など精神障害であるとはいえ、政治が社会的対策を打たなければ、有効な自殺対策とは言えない。個人の医者ができることは、不眠に対する対処、話を聞き当事者が不況と向き合っていくサポート程度である。
2.緊縮財政(Austerity)は、自殺率を上げる可能性がある。2001年から2014年に書けての都道府県の財政政策と自殺の関連を調べた研究では、都道府県の支出が一人当たり1%の増加は、40〜64才の働く世代の自殺率の0.2%低下と相関があったという(5)。
自殺は、その人が生きていれば生んだであろうさまざまな影響や活動を失うことになり、大きな社会的損失となる。さらに現在日本では約40人に1人と言われる自死遺族だけでなく、周囲の人間・社会へのダメージも大きい。
ロックダウンなど公衆衛生上の感染防止対策と経済活動とは両立が難しく、絶対解はないのかもしれない。Covid-19発症者・死亡者を抑えることが優先されるのは当然として、経済不況による死者の増加も念頭におくべきである。政治が処方しなければならない処方箋である。  
●コロナで半分がなくなる?飲食店「倒産ドミノ」 4/5 

3月31日午後4時。東京・永田町の自民党本部に、10人の料理人が集まった。
落合務シェフやパティシエの鎧塚俊彦氏など有名料理人らは、いつものコックコートではなく、スーツを着用。マオカラースーツに身を包んだ服部栄養専門学校の服部幸應校長の姿もあった。彼らが訪ねた先は岸田文雄政調会長である。要望書とともに「このままでは倒産する飲食店がたくさん出てきます」と訴えた。
この日の陳情のために大阪から来京した米田肇氏(三つ星レストラン「Hajime」オーナーシェフ)は、3月30日から発起人となって署名活動も開始している。飲食業界を救済するために、家賃と雇用者給与の補助を求める内容に対して、4日間で8万人近くの署名を集めた。「国内外から15万人は集めて国と自治体に声を届けたい」(米田氏)と力を込める。
新型コロナウイルスの影響で、日本中の飲食店が苦境に立たされている。インバウンド(訪日外国人観光客)の減少から始まり、日本人観光客や仕事での会食も激減。政府や地方自治体が外出自粛要請を出したことが決定打となり、飲食店を訪れる客数は激減している。
ロックダウンの前に、すでに瀕死状態
最も深刻なのは地方の名店だ。「地元の厳選された食材を使った客単価1万5000円程度の店は、観光客が多いために壊滅的な状態」(米田氏)。レストランの世界ランキングに名を連ねる名店さえ、親戚に金を借りながら何とか店を維持している状態に陥っている。
数カ月先まで予約で埋まる米田氏の「Hajime」も例外ではなく、4月のキャンセルは200人超に上った。客単価8万円なので、ざっと2000万円近くの減収となる。4月は桜を目当てに訪れる外国人も多く、2019年末から予約で埋まり始めたが、キャンセルが相次いだ。九州や東京からの客も身動きが取れずにキャンセルが増えている。
富裕層が多い都心部の場合、さほど客数の減っていない人気店も少なくない。だが、カウンター形式や地下店舗の中には「感染者を出すと怖い」という理由から、休業を選ぶケースが出始めている。すでに極限まで厳しい状況だが、このまま感染者数が増えてロックダウン(都市封鎖)となれば、「飲食店の半分以上が潰れる」と米田氏は危機感を露わにする。
ロックダウンにならずとも、すでに瀕死状態に陥っている飲食店は数多い。3月27日に小池百合子東京都知事が「飲食を伴う集まりを控えるように」と自粛要請をしたことがトドメとなった。「飲食業が発生源になっているから自粛しろというが、それを補う経済政策は何もないではないか」と多くの飲食店経営者は怒り心頭だ。休業するにも補填はなく、営業を継続しても閑古鳥が鳴く、という生殺し状態が続いている。
政府や自治体は飲食店など中小企業を対象とした補助金や助成金を増やしているが、「申し込みが殺到しており、融資が下りるのは3カ月後。助成金制度も複雑で非常にわかりにくく、手続きを待つ間に店が潰れてしまう」(米田氏)。実際にフランスでは、三ツ星レストランの有名シェフが署名を集め陳情したことで、ロックダウン中の経費や家賃、給与を補填する策が打ち出された。
多くの飲食店では、経費の3〜5割を人件費が占める。家賃が1〜2割で、残りが食材費となっている。もし緊急融資が降りても、それを元手に家賃や給与を払い続けるうちは、店の収入が激減しているために負債が膨らむばかり。感染がピークアウトして通常に戻っても、マイナスからのスタートとなる。いっそ店を潰すにも、元の状態に戻すのには費用がかかるため、進むも退くも茨の道が待ち受ける。
何よりも辛いのは、コロナが終息する見通しが見えないことだ。「飲食店の半数以上が3カ月後に潰れてしまう事態をリアルに感じている。2021年開催の東京オリンピックで、世界中から人が集まったとき、どこで食事をすればいいのか」(同)。強烈な危機感が署名活動へと突き動かす原動力となっている。
飲食店を救うなら予算は1兆円超え?!
もともと日本の飲食業界は、多くの店が薄利多売で商売をしてきた。数年前から深刻な人手不足に陥り、有名料亭さえも、後継者不在で閉店に追い込まれている。確かに、今や低賃金で修行を積むなどは昔話で、会社員と変わらない給与水準まで改善されている。それでも労働時間が長いゆえ、離職率の高さは変わっていない。
実際に50〜60代の有名シェフが集まると、「昔は厨房に着いたらピカピカに掃除されていたが、今は『俺が掃除するからいいよ。お前元気か?』と、気遣うようになった」という笑い話が出てくるほど。従業員の待遇が改善される反面、競争環境は厳しくなるばかりで、客単価は横ばいの店がほとんどだ。平時でさえ、どの店も固定費の増加に悩みながら、綱渡りで店を維持しているに過ぎない。
皮肉にも客から見たこのコスパのよさが、「日本のレストランは安くておいしい」と外国人観光客を呼び寄せた。涙ぐましい努力を続けてきた日本の飲食業界だが、現下のコロナショックによって、もはや崩壊寸前にまで迫っている。飲食店だけでなく、食材の生産者にも波及しており、事態は深刻である。すでに、高級食材や業務用食材がネット通販で安く流通し始めているが、全てをさばくには無理がある。
日本の外食産業の市場規模は26兆円。大手チェーンから家族経営の零細店まで、その裾野は広く、高級店やB級グルメなど独自の食文化を醸成してきた。政府や自治体がコロナによる飲食店の支援策として、家賃や給与補填を決めた場合、予算規模は1兆円を超える可能性もある。難しい判断が迫られるが、検討に時間をかけてしまうと、その間、倒産が相次ぐことも懸念される。事態は日々刻々と深刻さを増している。 
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●東証一時600円近く上昇 円安好感、緊急事態警戒 4/6 
週明け6日午前の東京株式市場の日経平均株価(225種)は大幅続伸した。外国為替市場の円安ドル高進行を好感した買い注文が優勢となり、上げ幅は一時600円に迫った。新型コロナウイルスをめぐり日本での緊急事態宣言発令を警戒し、経済停滞を懸念する売り注文も出て、朝方には前週末終値を挟んでもみ合う場面もあった。
午前10時現在は前週末終値比444円76銭高の1万8264円95銭。東証株価指数(TOPIX)は29・64ポイント高の1354・77。
前週末のニューヨーク市場は、米雇用情勢の悪化を受けて売りが膨らみ、ダウ工業株30種平均が下落。ドル資金を確保するドル買いの動きが円安につながった。欧米など「海外で感染拡大が近く最悪期を脱するのではないかとの期待感が出た」(大手証券)ことも相場の支えになった。 
●オリエンタルランド、2カ月休園でも磐石 4/6
4月1日夕方。普段は東京ディズニーリゾートへ訪れた家族連れやつけ耳姿の学生たちでにぎやかなはずのJR京葉線・舞浜駅は人の気配がほとんどなく、異様なまでの静けさに包まれていた。新型コロナウイルスの影響で、2月29日から東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを臨時休園してから1カ月が経過した。両テーマパークを運営するオリエンタルランドは当初、3月16日からの再開を見込んでいた。しかし、官邸からのイベント自粛要請が解除されず、臨時休園を2度延長。4月3日現在、再開予定日は4月20日までずれ込んでいる。
隣接ホテルも休業に追い込まれる
約750億円を投じて開発し、4月15日にお披露目を予定していた「美女と野獣」などの新アトラクションも、開業を5月中旬以降へ延期。隣接する商業施設「イクスピアリ」や「東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ」など直営4ホテルも休業に追い込まれている。
オリエンタルランドは、テーマパーク休園による2020年3月期の業績への影響額を明らかにしていない。ただ、2020年1〜3月期のテーマパーク事業の売上高見込みは約933億円(91日間)。休園の日数(32日間)から推測すると、約330億円の売り上げが消えてなくなった計算だ。
野村證券の山村淳子アナリストは2月20日付のレポートで、「アトラクションの待ち時間などを確認すると、2月頃から東京ディズニーシーを中心に、新型肺炎の影響がみられる」と、2月末の臨時休業の前から来園者数が弱含んでいたと指摘している。
学生の春休みシーズンと重なる3月は本来、かき入れ時だったことを踏まえると、2020年3月期の売上高は5038億円とする会社予想に届かず、4700億円程度となる可能性が高い。
売上高に下押し圧力がかかる一方、固定費負担も重石になっている。休園で食材費などの変動費が抑制されるが、人件費や巨大なアトラクションの減価償却費などの固定費負担が重くのしかかる。
今回のコロナショックと類似する時期としては、2011年に東日本大震災が発生し、期末にかけてテーマパークを20日間休園した2011年3月期が挙げられる。当時は休園期間の人件費や減価償却費など53億円の固定費が「災害による特別損失」として計上された。つまり、1日当たり2億6000万円程度の固定費が発生していたことになる。
2019年3月期の人件費と減価償却費の合計は当時と比べて9.3%増加しており、これを加味すると、1日当たり2億8000万円程度の固定費が発生し、損失となっているとみられる。会社が予想している2020年3月期の当期純利益762億円は、収入減の影響のほか、32日間分の休園期間の固定費90億円程度が加わり、下方修正要因となりそうだ。
特筆すべきキャッシュの充実ぶり
安倍晋三首相が3月28日の会見で、「(新型コロナウイルスが)いつ急拡大してもおかしくない。長期戦を覚悟する必要がある」と発言したように、4月中にイベント自粛要請が解除される見通しは立っていない。では、ドル箱であるテーマパークの売り上げを欠いたまま、オリエンタルランドはどこまで事業を継続できるのだろうか。
そんなオリエンタルランドの「対コロナ持久力」を見定めるうえで重要なのが、短期的な債務の支払い能力だ。1年以内に現金化できる流動資産がどの程度確保されているかを見る流動比率(流動資産/流動負債×100)は、2019年12月末時点で302.9%。理想とされる200%を大きく上回っており、良好だ。「富士急ハイランド」などを運営する同業の富士急行が同162.0%、よみうりランドが90.8%であることと比べても、圧倒的に盤石な手元流動性を誇っている。
オリエンタルランドの財務で特筆すべき点は、キャッシュの充実ぶりだ。2019年12月末時点の現金及び預金残高は3291億円。月当たり売上高(約433億円)の7.5カ月分に相当する。同じく富士急行は3.4カ月分、よみうりランドは2.2カ月分にとどまる。
オリエンタルランドの事業は、テーマパークやホテル、商業施設、モノレールなどがある千葉県浦安市に集中している。同社は1995年の阪神・淡路大震災を機に、リスク発生時のファイナンス体制を強化。現在設定しているコミットメント期間付タームローンでは、メガバンクや地銀など4行から計1500億円を上限に必要な金額を借り入れることができる。
オリエンタルランドは「これにより約半年分の運転資金(人件費、取引先への債務支払、税金)と着手済の設備投資資金の調達が可能である」(同社広報)と想定している。この借り入れと2019年12月末時点の現預金3291億円を合わせると、仮にあと1年半程度休園が続いても資金繰り上は大丈夫という計算だ。
株価はオリエンタルランドの実力を高評価
オリエンタルランドの財務体質や営業再開時の実力値への評価が揺るがないことは、株価にも表れている。2月中に急落したオリエンタルランドの株価は、3月12日終値で1万2070円をつけたが、3月25日には同1万4835円をつけ、中国人の団体旅行が禁止される直前だった1月24日の1万5725円に迫る勢いとなった。
SBI証券の田中俊アナリストは「近年は有利子負債が減ってきていることもあり、新型コロナウイルスの影響が長引いても財務的にはまったく問題ない。集客力やオペレーションへの評価も高く、営業が再開すればぴかぴかの長期保有銘柄に戻るイメージがある。個人・機関投資家を問わず、これまで株価が上がりすぎて買えなかった人たちに絶好の買い場という感覚が強く、下げ渋って堅調に推移している」と分析する。
3月19日には期間限定イベント「ベリー・ベリー・ミニー!」のショー動画を公式YouTubeチャンネル上で公開。再生回数は4月2日16時時点で170万回超えと、休園中にもかかわらず存在感を発揮した。休園中のファンのつなぎ止めのため、その後も随時動画の更新をしているだけでなく、ゲート付近の保守・修繕など各種工事を実施している。
終わりの見えない中、オリエンタルランドは「休園後」に向けて着々と準備を進めている。 
●コロナで支払えない人が頼りたい「免除・猶予」 4/6
日に日に感染拡大の一途をたどる新型コロナウイルス感染症。相次ぐ外出自粛や学校の休校、海外への渡航自粛要請や各国の入国禁止措置により、日本経済へのマイナスの影響もじわじわと拡大しています。働く人たちからは、不本意な休業や仕事のキャンセルによって収入が減り、日常の生活費をやりくりするのも厳しいという声があちこちから上がっています。この事態を受けて、行政や金融機関などでは新型コロナウイルス感染症による影響を受けた人向けの緊急措置を設けています。税金、年金、住宅ローン、公共料金などの免除や猶予措置についてまとめました。
所得税や住民税は1年間猶予
4月16日まで、申告期限が1カ月延長された確定申告。新型コロナウイルス感染症による社会的な混乱のなかで、所得税の申告や納税の期限を先延ばしにできることになりましたが、納税資金を工面するのも厳しいときには、納税を猶予してもらうことができます。
所得税だけでなく、相続税、贈与税、自動車重量税、法人税、消費税など国に対して納める国税には、災害や病気、事業の休廃業などの事情がある際に納税が猶予される措置があります。今回の新型コロナウイルス感染症に関しても、本来の納期限から6カ月以内に申請書を提出する、猶予を受ける税以外に国税を滞納していないなどの要件を満たすと、税の納付を1年間猶予してもらえます。また、猶予期間中にかかる延滞税が軽減または免除され、財産の差し押さえなども猶予されます。
申請できるのは、自身や家族が新型コロナウイルス感染症にかかった場合に限らず、感染拡大によって事業の業績が著しく下がってしまったとき、休業・廃業したときなども含まれます。申請時には今後の納付計画を明記し、財産目録などの提出が求められるようですが、納付できない事情を説明すれば個別に相談に応じてもらえるようです。事情によっては、1年以上の猶予が認められる可能性もあるようです。
これらは「新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ」と題した国税庁のホームページに詳細が記されています。
また市町村に納める住民税も、同様に原則1年の猶予制度があります。申請要件も国税とほぼ同じようですが、申請方法など詳細は各自治体に確認してみましょう。
自営業やフリーランスで国民年金に加入している人、この春に退職して無職になった人には、自分で国民年金や健康保険の保険料を払っているケースが少なくありません。しかし全額を自己負担して毎月納めるのは少なからぬ負担です。
国民年金については、失業や廃業、事業の休止で保険料の納付が難しいときには、免除や猶予の制度があります。勤め先を辞めて失業したときは、前の勤務先から受け取る雇用保険の離職票か雇用保険の受給資格者証、自営業で廃業や休業をしたときは登記簿や廃業の届出書などを提出すると、市区町村の窓口で手続きできます。
免除になるか、猶予になるかは個別の状況によって異なります。
これらは「【国民年金被保険者の方へ】新型コロナウイルスの感染症の影響により国民年金保険料の納付が困難となった場合の免除制度の活用について」と題した日本年金機構のページに詳細が記されています。
細かな取り扱いは地域ごとに違う
国民健康保険料や後期高齢者医療制度、介護保険の保険料も、新型コロナウイルス感染症の影響で支払いが難しいときには減免や猶予の措置をとっていることがあります。会社の倒産や解雇などによる失業や病気など、特別な事情があることを要件としているのが一般的ですが、減免の範囲や手続き方法など細かな取り扱いは各地域で定めています。窓口で相談すると、個別に対応してもらえる可能性もありそうです。
退職してから2年以内なら、前の勤務先の健康保険の任意継続制度を利用していることもあるでしょう。在職中には半分で済んでいた保険料の負担が全額自己負担になりますから、この時期にはより重く感じられるかもしれません。
厚生労働省からは各健康保険組合に対して、保険料の猶予など柔軟に対応するように通達が出されています(「新型コロナウイルス感染症への対応に伴う国民健康保険、後期高齢者医療制度及び介護保険関係事務の取扱いについて」「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う保険料等の取扱いについて」、2020年3月10日)。猶予制度があるか、どれくらい猶予してもらえるかは勤務先の健康保険組合が整備していますので、元の勤務先の人事労務部門などに確認する手があります。
住宅ローンを抱えている場合には、その返済が家計の重荷になってしまう懸念もあるでしょう。現在、住宅ローンは期日通りに返済するのが原則で、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた人向けに一律の措置を公表している金融機関は少ないようです。
しかし、返済が厳しいときには個別に相談することで、期日の猶予や返済額の軽減に応じてもらえることがあります。返済日の変更、借入期間の延長、ボーナス払いの取りやめなど返済条件の変更を伴うと、変更内容によっては手数料がかかることがあります。ただ、一部の銀行では新型コロナウイルス感染症の影響を受けて変更する場合にかかる1万〜3万円程度の手数料を免除しています。
また、感染拡大の影響でこの春に引き渡し予定だった新築のマイホームの完成が遅れているなど、住宅ローンの融資開始を延期する場合、本来は融資日の変更としてかかる手数料を免除する銀行もあります。
金融庁や全国銀行協会などでは、新型コロナウイルス感染症の影響でローン返済が難しくなった人に向けて、電話での相談窓口を設けています。返済計画や返済条件の変更などについて、無料で相談できます。借入先の金融機関への相談とともに、活用できそうです。
賃貸向けには住居確保給付金がある
賃貸住まいの場合には、家賃を下げてもらう、支払いを延ばしてもらうのは基本的に大家さんに直接交渉するしかありません。滞納が続くと、家を出ていかなければならないおそれもあるかもしれません。
しかしやむをえず仕事を退職したことで生活が立ちゆかなくなった場合には、各地域の自立相談支援制度を利用できることがあります。
この制度には「住居確保給付金」といって、離職したことで自宅を退去せざるをえなくなった、退去のおそれがある人に、家賃相当の給付金を支給するしくみがあります。各市区町村の自立相談支援機関が運営しており、東京都の場合には離職から2年以内の65歳未満の人で、収入や資産が所定額以下、ハローワークで求職活動をしているなどの要件を満たすと受給できます。
これに関する厚生労働省がまとめた「生活困窮者自立支援制度について」はネットで検索できます。
受給額は自宅のある地域や世帯人数によって所定の計算式で決まります。実際の家賃の全額が支給されないこともありますが、住居費の負担を軽減する助けになるかもしれません。
電気、ガス、水道、電話など、日常生活で必ずかかる料金。各地の外出自粛要請により自宅で過ごす時間が長くなり、請求額が跳ね上がってしまう心配もあるかもしれません。
現在、各供給会社では支払いの猶予措置を取っています。電気、ガスは支払期日が2020年3月25日以降の料金(電気は3〜5月分、ガスは2〜4月分とされている会社が多い)について、支払期限を1カ月延長してもらうことができます。供給会社に電話で申し出ると対応してもらえます。
対象になるのは新型コロナウイルス感染症の影響で休業や失業をして支払いが困難、または緊急小口資金・総合支援資金など、今般の影響で各都道府県の臨時の貸付制度を利用している人に限られます。個別に細かな状況を相談し、該当するか確認するとよいのではないでしょうか。
水道料金は各市町村が猶予措置をとっています。電気やガスと同様の要件を設けている地域が多いですが、個別の相談に応じるとしているのが一般的です。東京都の場合は、電話で申し出ると最長4カ月間、支払いが猶予され、その後も状況により延長してもらえます。
携帯電話は、大手3社については2020年2月末(KDDIは25日)以降が支払期限の料金について、5月末まで支払いを延長してもらえます。法人契約、個人契約ともに、支払いが困難なときには契約先に電話で申し出ると延長されます。また、新型コロナウイルス感染の状況によっては、今後さらに支払期限の延長に対応する可能性もあるとしています。
生命保険・損害保険は最長6カ月猶予
生命保険や自動車保険、火災保険などに契約している人は、その保険料の支払いを猶予してもらうこともできます。
通常、各保険には口座引き落としで保険料を支払えなかったときなどに1カ月程度の支払い猶予期間が設けられています。この猶予期間を過ぎて支払いをしないと保障(補償)が切れてしまいますが、今般の臨時措置として、生命保険(医療保険、がん保険などを含む)は2020年9月末まで、損害保険(自動車保険、火災保険など)は5月末まで、猶予期間が延長されます。
猶予期間を延長するには、契約先の保険会社に電話で申し出をします。支払いが厳しいことを伝えれば、基本的には細かな要件は問われないところが多いようです。
これらの猶予や免除の措置は、今後の新型コロナウイルス感染症の状況に応じて随時変更される可能性があります。また、個別の状況に応じて相談に乗ってもらえることもあります。支払いに困ったら、早めに地域の窓口や業界団体、契約先の会社に相談してみるとよいのではないでしょうか。
新型コロナウイルス感染症が1日も早く終息すること、そして生活への経済的な負担が少しでも減り、日常生活を取り戻せることを願っています。 
●「コロナショック」がリーマンショック以上に日本を脅かす 4/6
感染拡大に伴い、日本経済にも深刻な影響を与えつつある新型コロナウイルス。安倍首相が会見で「リーマンショックの際を上回る規模の緊急経済対策の策定」を表明するなど、予断が許されない。「コロナショック」は、果たしてリーマンショック以上の悪影響を日本経済に今後、もたらすのだろうか。そこで、WHO(世界保健機関)からコロナウイルスの世界的感染(パンデミック)の中心地と名指しされ、拡大がアジア圏より進む欧州の中でも、経済規模や特徴が比較的日本に近いとされるドイツ経済の「先行例」を元に迫りたい。
ヒトとモノが停止する「コロナショック」の衝撃
先日、ドイツで注目される経済データが公表された。3月の「Ifo景況感指数」がそれである。この指数はドイツの有力なシンクタンクが企業の景気に対するマインドを調査したもので、世界景気の良しあしを占う上でも頻繁に利用される。
3月のIfo景況感指数は86.1と2月の96.0から急低下し、ドイツ企業の景気に対するマインドが急速に冷え込んでいることが確認できた。コロナショックがドイツ経済に与えた悪影響の強さがうかがえるが、ではコロナショックとリーマンショック(2008年9月)とを比べると、どちらの方がより深刻な悪影響をドイツに与えているのだろうか。
リーマンショックは、08年9月に当時の米大手投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻に伴って生じた、世界的な金融危機だった。しかしそれ以前から、Ifo景況感指数の動きが示すように、世界景気は徐々に後退局面に入っていた。景気が徐々に悪化してきたところに金融危機が生じ、景気が一気に底割れしたのである。
一方で、今回のコロナショックは、景気が持ち直しの兆しを見せていたところで生じた。それも金融、つまりカネの危機ではなく、コロナウイルスの感染拡大によってヒトとモノが動かなくなる、つまり景気が急激にマヒするというかたちで、経済が危機に陥った。それに引きずられるかたちで、カネも危機に瀕(ひん)することになった。
ヒトとモノの方が先に動かなくなり、さらにそれがいつ動き出すかが全く見えない。こうした厄介な状況が、フリーフォールのような急速な低下を記録した3月のIfo景況感指数の動きに表れている。カネの動きをどうにかすればよかったリーマンショックの方が、今回のコロナショックよりもある意味では対応しやすかったといえよう。
「リーマン」より回復展望描きにくく
ドイツは日本以上に輸出で稼いでいる国だ。リーマンショックの際は、世界的な金融危機を受けて輸出が落ち込んだが、その後は各国が矢継ぎ早に経済対策を打ち、輸出は急速に回復した。特に中国が4兆元(当時のレートで約60兆円)規模の経済対策を実施したことが、ドイツの急速な景気回復につながった。
しかしながら今回は、各国が巨額の経済対策を用意しているにもかかわらず、景気が回復する展望が描き難い。コロナウイルスの感染を防ぐため、ヒトとモノの移動が世界的に制限されているためだ。ヒトとモノの動きが正常化しない限り、各国が経済対策を打ったところで景気は回復しないため、輸出が動きようもないのだ。
そもそもドイツ自体が、感染拡大を防ぐためにヒトとモノの移動に強い制限を課している。若者がコロナパーティーと称して夜間に出歩いてしまう国民性もあり、政府は国民に危機感を抱かせるために強い手段を取らざるを得ない。それが、ヒトとモノに対する強い制限といった形で表れている。
例えば学校や生活必需品を販売する店舗以外を閉鎖し、大規模集会を禁止する措置が取られたのに加えて、3月下旬には3人以上の集会が2週間禁止された。同じ家に暮らす家族や、新鮮な空気を吸うために一緒に外に出ることなどは例外として認められるが、要するに政府は人々の外出を原則として禁止したということになる。
国内でも国外でもモノが売れない状況が続けば続くほど、当然であるが企業の業績は悪化する。倒産する企業も増え、同時に失業する人々も増える。ドイツ政府は企業の資金繰りを支えるために無利子での融資や失業・休業手当の拡充などの対策に取り組んでいるが、ヒトとモノに課された制約が緩まない限り、事態の解決にはならない。
経済混乱、「次は日本」か
コロナウイルスの感染の拡大が比較的抑制されていた日本でも、3月下旬に入って感染者が急増する事態となっている。東京都の小池百合子知事が首都閉鎖の可能性にも言及するなど、緊張感が強まっている。3月最後の週末となる28日から2日間について東京都は都民に外出の自粛を要請、神奈川など近隣の各県も同様の措置を採った。
日本が欧州より「コロナショック」を受ける可能性
コロナウイルスの感染拡大で、既に日本でも観光業や飲食業などを中心にさまざまな業種へ悪影響が及んでいる。近年、日本はインバウンド観光を奨励し、地方経済の外国人観光客需要への依存度が高まっていた。そのため、特に海外からの訪日客が激減したことが、日本の地域経済に甚大な悪影響を与えている。
さらに、今夏に予定されていた東京五輪の延期も、さまざまな業種に悪影響を与えている。特に五輪需要を当て込んでいた観光業や小売業は、五輪の開催延期によってそうした需要がしぼむことになった。ほぼ満室を見込んでいた今夏のホテルの稼働状況は今や風前の灯(ともしび)だ。こうした状況はドイツなどヨーロッパに比べても深刻といえよう。
加えて東京で都市閉鎖が実施され、それが長引けば、経済への悪影響はドイツ以上となるかもしれない。コロナウイルスの感染拡大を防ぐ必要がある一方で、経済活動をいつまでもストップさせるわけにもいかない。バランスは大変難しいが、経済を軽視し過ぎると未曽有の大不況となってしまう恐れがある。
実際、4月1日に発表された3月の日本銀行の全国企業短期経済観測調査(短観)では、コロナウイルスの感染拡大を受けてさまざまな業種で景況感が悪化したが、なかでも宿泊や飲食の景気判断が過去最低となった。この調査の段階でも、日本企業の景況感はドイツ以上に悪化していたのかもしれない。疫学的な観点が最優先されるべきだが、可能な所からは経済活動の迅速な正常化が行われることが望まれるところだ。 
●次々に止まる自動車工場、いよいよ製造業も危ない 4/6 
新型コロナウイルス感染拡大の影響がいよいよ製造業にも及び始めた。メーカーが本格的な生産調整に入った場合、来年度以降の設備投資が凍結されるなど、影響が長期化する可能性が高まってくる。政府は大規模な経済対策を検討中だが、経済活動の自粛と景気刺激策は基本的に矛盾してしまうので、100%の効果を発揮できる保証はない。各メーカーの生産調整がどれだけの規模となるのか、見極める必要があるだろう。
自動車メーカー各社がいよいよ生産調整へ
トヨタ自動車やマツダなど、自動車メーカー各社は、コロナウイルス感染拡大による需要低迷を受けて、一時的な操業停止を決定した。トヨタは高岡工場や田原工場など国内5工場の一部ラインを3〜9日程度停止するほか、マツダは本社工場と防府工場の操業を13日間停止することに加え、8日間は昼間のみの生産にとどめる。
米国ではすでに各メーカーが生産の一時停止に入っているほか、欧州でも操業停止を実施するケースが増えている。北米への依存度が高いメーカーの影響は甚大で、スバルは全生産ラインの停止を決定した。
自動車メーカー本体が操業を停止すれば、当然、部品を供給する部品メーカーにも影響が及ぶ。トヨタグループのアイシン精機はすでに3割程度の工場で稼働をストップしているので、自動車業界はグローバルレベルで生産調整に入ったと見てよい。
欧州や米国では、強制力を伴う外出禁止措置が取られており、自動車の販売ができない状態にある。流通段階で過剰な在庫を抱えることはできないので、生産の一時停止はやむを得ないだろう。
感染症の拡大といった事態が発生すると、一般的に、(1)観光業、(2)航空業(運輸業)、(3)イベント業、(4)外食産業、(5)小売業、(6)製造業の順番で影響を受けることになる。諸外国では外出禁止措置によって、外食産業や小売は大打撃となっており、国内についても政府や自治体からの自粛要請で、やはり外食や小売が大きな影響を受けている。
この段階になると、製造業に影響が及び始めるのはほぼ確実であり、自動車はグローバル産業の典型であることから、最初に影響が顕在化したとみてよい。
自動車業界は現代産業の中核となっており、自動車産業に依存している業界は多い。鉄鋼業界は自動車がなければ売上高のかなりの割合を失うことになるし、内装・外装に用いるプラスチックなど化学メーカーへの影響も大きい。近年の自動車は多数の半導体やコンピュータを搭載しているので、IT業界も影響を受ける。
国内製鉄2位のJFEスチールは2020年3月27日、国内の高炉1基を休止し、生産能力を13%削減すると発表した。
同社の高炉休止は自動車メーカーの生産調整とは直接関係なく、昨年(2019年)から継続している米中貿易戦争による需要低迷が主な理由である。だが、コロナウイルスの感染拡大が、自動車の生産台数の減少と粗鋼需要の低下をもたらすのはほぼ確実であり、判断材料の1つとなった可能性は高いだろう。競合で国内首位の日本製鉄(旧新日鉄住金)もすでに2月の段階で、一部高炉の休止を決定している。
全世界的な景気後退による需要減少も
単純にウイルスによる感染拡大のみが理由であれば、各社がこれほど悲観的になる必要はないが、今回のコロナショックには別の要因が存在している。それは米国経済の失速による全世界的な景気後退(リセッション)懸念である。
米国経済は過去10年にわたって高成長が続いており、自動車をはじめとする製造業各社は、絶好調ともいえる米国経済に依存する形で業績を拡大してきた。だが、米国の景気がそろそろ頭打ちになるとの懸念が台頭しており、そうした中で米中貿易戦争が勃発し、ここにコロナウイルスによるショックが加わった。
多くの市場関係者や企業関係者は、コロナショックが全世界的な景気後退の引き金になることを強く懸念しており、これが一連の生産見直しの動きにつながっている。
製造業は業種にもよるが、生産量を臨機応変に増減させることは難しい。工場のライン増設などは数年タームで計画されており、たいていの場合、中長期的な需要予測に基づいて設備投資が行われている。今回、世界経済が景気後退に陥るとの観測が高まってくると、中期計画などの見直しにつながる可能性も出てくる。その場合には、新規の設備投資の一部は、凍結あるいは延期されてしまうだろう。
新規の設備投資計画が縮小されると、今度は工作機器や検査装置など機械類の業界に影響が及ぶ。当然、部品メーカーへの影響も深刻になるので、経済全体が縮小モードに入ってしまう。
外食産業などの場合には、状況が回復すればすぐに客足が戻り、サービスの生産量も増大するが、製造業の場合にはそうはいかない。生産調整がさらに長期化し、関連産業に波及した場合、数年後の設備投資にも関係してくるので、影響がどうしても長期化する。
加えて言うと、今回のコロナウイルスが終息した後も、再度、似たような感染症の拡大が発生すると予測する専門家は多い。そうなると一部のメーカーは、デリケートで複雑だった従来型のサプライチェーンを見直し、シンプルな形に再構築すると考えられる。これは全世界的な生産拠点の見直しにつながる可能性もあるので、要注意だ。
コロナ後を見据えた戦略的な対策が必要
自動車業界は、自動運転システムや電気自動車(EV)、シェアリングエコノミーなど、100年に一度の変革期を迎えている。一連のイノベーションが予定通り進んだ場合、従来のヘビーな組織体制のスリム化は必須であり、どこかのタイミングで組織の抜本的な改革が必要といわれてきた。
今回のコロナウイルスがそのきっかけになる可能性は否定できず、もし自動車業界のリストラクチャリング(再構築)が本格的にスタートした場合、世界の産業界に大きな影響を及ぼすだろう。
特に日本の場合、自動車とそれに付随する産業がGDP(国内総生産)に占める割合が高く、日本経済はまさに自動車産業が支えているといっても過言ではない。もし今回のコロナウイルスが、自動車業界再編を促すことになれば、工場誘致などで雇用を維持してきた地方経済にとっても大打撃となるだろう。
現時点でコロナウイルスの感染が終息する兆しはまったく見えておらず、政府も国内の感染対策に忙殺されている状況である。人命が最優先なので、当面の感染拡大防止にリソースが割かれるのは当然のことだが、一方で、感染が長期化すれば、マクロ経済への影響も深刻化してくる。
日本経済は長期にわたって消費が低迷するなど、戦後、最大のピンチに直面している。ここで景気が大きく底割れしてしまうと、再浮上のきっかけを半永久的につかめなくなってしまう可能性も否定できない。コロナ後のグローバルなビジネス環境の変化も見据えた上で、経済全体を底上げする戦略的な施策について検討する必要があるだろう。
予断を許さないが、中国は初期の封じ込めが功を奏し、経済活動の回復に向けて動き始めている。今回のコロナウイルスをきっかけに、EV化や自動運転を強化してくることも十分に考えられ、ここで日本が出遅れてしまうと、致命的な遅れにつながってしまう。早期に感染を終息させるとともに、将来を見据えた大規模な対策の実施が強く求められる。 
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●緊急事態宣言 要旨 4/7
1)医療現場を守るため、あらゆる手を尽くす
•医療現場は逼迫している。医療崩壊を防ぐため、今、緊急事態宣言を出す必要があると判断した。
•感染防止に必要な物資、治療に必要な医療機器の増産に力を尽くす。
•軽症者や症状のない感染者は、医療機関ではなく宿泊施設で療養してもらい、医療機関の負担を軽減する。
•ホテルチェーンの協力により関東で 1万室、関西で 3千室を確保した。日本財団も臨時施設を準備中。
•東京では五輪関係施設も改修し、800名の軽症者を受け入れられる設備を整備する。
•必要があれば、自衛隊などの医療スタッフを動員し、特別措置法48条に基づく臨時の医療施設として活用することも検討。
•こうして医療施設を重症者対応に振り向けることで病院の機能維持を図る。
2)緊急事態宣言の対象範囲
•対象は、東京、千葉、神奈川、埼玉、大阪、兵庫、福岡の 7都府県
•本日より、GWの終わる 5月 6日までの一ヶ月
3) 現在の状況
•事態は切迫している。この事態を1ヶ月で脱するためには、人と人との接触を7割から8割、削減する必要がある。
•東京は感染者累計が千人を超え、感染者数が 5日で 2倍になっている。このペースが続けば、2週間後には 1万人、1ヶ月後には 8万人を超えてしまう。
•しかし 専門家の指摘では、人と人の接触機会を最低 7割、できれば 8割削減できれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができる。
•そうすれば爆発的な感染拡大を回避できるだけでなく、クラスター対策による封じ込めの可能性もでてくる。
•その効果を見極める期間も含め、次の1ヶ月、外出自粛をお願いしたい。
4) 具体的な行動変容の要請
•具体的には知事が定めるが、生活の維持に必要な場合をのぞき、みだりに外出しないよう要請すべき。
•社会機能を維持するために必要な職種をのぞき、オフィスでの業務は原則、自宅で行えるようにしてほしい。
•どうしても出勤が必要な場合も、ローテーションを組むなどし、出勤者の数を最低 7割減らす、時差出勤を行う、人の距離を十分にとる、といった取り組みを実施するよう、すべての事業者にお願いする。
•レストランなどの営業では、換気の徹底、客同士の距離を確保するなどの対策をしてほしい。
•休校が長期化するが、オンライン教育の環境を早急に整えていきたい。
•電話、オンラインでの診療も、初診も含めて解禁する。病院での感染が怖くて受診を我慢するといったことが起らないようにする。
•日常に不可欠な買い物についても、密閉、密集、密接をさけるよう努力をしてほしい。
•ジョギングや散歩をすることはなんら問題ない。
•3つの密が重なるバー、ナイトクラブ、カラオケ、ライブハウスへの出入りは控えてほしい。集会やイベントを避け、飲み会を避け、家族以外、多人数での会食も避けてほしい。
•発熱などの症状がなくとも感染している人が多く、知らず知らずのうちに周囲の人に移して感染が拡大している。自分は感染者かもしれないという意識をすべての人にもってほしい。
•外出時には人混みを避け、他の人との距離を保つ。飛沫をとばさないようマスクをつけてほしい。
5)都市封鎖、ロックダウンとの違い & 都市間移動の自粛
•海外で行われているような都市封鎖とはまったく異なる。
•今後も、電車やバスなどの公共交通機関は運行される。道路も封鎖しない。そういった必要は無いというのが専門家の意見でもある。
•海外では、感染地から他地方に人が移動し、感染が拡がった例もある。
•日本では、東京、大阪でも外出を控えて生活すれば感染の恐れは低い。だから、重症化リスクが高い高齢者の多い地方への移動は控えてほしい。
6)冷静な行動の呼びかけ
•SNSに拡がったデマによりトイレットペーパーが店頭で品薄になるなど、ウイルスという見えない敵への不安心理を利用した騒動が起っている。
•SNSは本来、人と人の絆を深め、人と人をつないで社会不安を軽減する大きな力を持っている。しかし、拡散された誤った情報によってパニックを起こしてしまうと、ウイルスを超える甚大な被害が生まれてしまう。
•社会機能はしっかり維持する。電気、ガス、水道、通信、金融、ゴミの収集、焼却など暮らしを支えるサービスは平常通りの営業を行う。
•介護施設や保育所なども、サービスを必要とする人のため、ご協力をいただけるようお願いする。
•食品など、生活必需品の製造、物流、それら商品の小売りに関わる方々にも営業をしっかり続けてもらえるよう依頼する。
•だから冷静に行動してほしい。
7)経済打撃への支援
•戦後最大の危機。雇用と生活を守り抜くために、GDPの 2割にあたる 108兆円の経済対策を実施する。
•生活に窮している方のために総額 6兆円、一世帯 30万円の現金給付に加え、児童手当を月 1万円増額する。
•事業者向けの給付金制度も創設。売り上げが大きく減った中堅・中小法人に 200万円、個人事業主に100万円を給付する。
•固定資産税も減免する。消費税の納税や社会保険料の支払いは1年間、延滞金なしに猶予する。
•地方銀行、信用金庫、信用組合などを通して、実質無利子、無担保、最大 5年間 元本返済据え置きの融資が受けられるようにする。
•雇用助成金の助成率を過去最大まで引き上げる。 
●新型コロナとの戦い、2兆ドル経済対策で臨むトランプ大統領 4/7 
トランプ大統領は3月27日、新型コロナウイルス対策として、総額2兆2000億ドルの「Coronavirus, Aid, Relief and Economic Security (CARES) Act」を成立させた。これは3月6日の総額83億ドルの「Coronavirus Preparedness and Response Supplemental Appropriation Act(CPRSAA)」、同18日の有給休暇取得などについて定めた「Families First Coronavirus Response Act (FFCRA)」に次ぐ第3弾となる。
この第3弾の法律は、名目GDP(国内総生産)の10%に相当する金額規模で、かつ様々な産業や個人への配慮をした内容となっており、感染症対応とはいえ、かつてない大型の政策である。ちなみにこの規模は、真珠湾奇襲攻撃を受けた翌年にGDPの10%以上の財政支出した時以来のことである。
一方、FRB(米連邦準備理事会)は、3月5日に政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートを0.5%引き下げた後、同12日には米国債の購入対象を従来の短期債から中長期債にまで拡大。3月15日には、日曜にもかかわらず日本や欧州の市場を意識して、夕方の午後5時にFFレートを1%引き下げてほぼゼロとしたほか、量的緩和の再開として米国債と政府機関経由のMBS(住宅ローン担保証券)の購入を開始し、同時にCMBS(商業用不動産ローン担保証券)も新たに購入対象とした。
さらに、同23日には、米国債等の購入額の上限を撤廃したことに加え、社債の発行市場と流通市場を支援するプログラムと、ABS(資産担保証券)市場を支援するプログラムを新設した。その後も中小企業向け貸し出し支援など、新型コロナによる企業や個人の流動性の枯渇を防ぐよう努力を続けている。
トランプ政権、FRBともに相次いで3回にわたって対策を打ち出した。過去に例を見ない規模と新しい手法により、新型コロナの経済的影響を可能な限り軽減しようと考えているようだ。これらの政策が効果を発揮するかどうかは、新型コロナそのものを収束できるかどうかにかかっている。ただ、3月時点で考えられる必要な施策を打ったと言えるだろう。
では、実際にどのような効果が出ており、また今後どうなるのだろうのか。本稿では、このあたりについて敷衍(ふえん)していきたい。
社債市場が示したギリギリのタイミング 
トランプ政権、FRBとも2度目の対策までは「規模が小さい」などの不満から、社債市場は反応が鈍かった。世間の注目は暴落を続ける株式市場に集まっていた。
一方、ロックダウン(州によってはStay at Home、Shelter in Placeと呼称)などにより企業活動がほとんど止まる中、資金繰りに窮する企業が急増した。格下げも相次いだため、3月19日には「社債市場の大虐殺」「社債市場は崩壊した」とのアナリストコメントが出回るほど、社債市場は死に体の状態となった。
FRBの金融政策に対しては、米国外などウォール街から離れたところでは、3月3日の利下げ幅が通常の0.25%の2倍だったことへの批判や、同15日にゼロ金利にしたことで、「FRBが日銀化した」との声が出ていたが、実のところ、市場はゼロ金利でも解決できない問題に直面していたのである。
ちなみに、この間の金利の動きを、米国債より高い格付けを獲得しているスタンフォード大学の債券利回りの動きで見てみよう。大学債は米国では社債の一種で、米国で米国債より高い格付けを獲得している発行体のほとんどは超一流大学である。
期間31年、金利3.64%のスタンフォード債の利回りは、3月3日に2.28%となった後、6日はほとんど反応がなく、16日は1.92%まで下落した。ところが、ここから急上昇し、19日には4.69%まで上昇している。最高格付けを取っている社債でさえ、これほど売られたのである。誰もが注目している米株価も暴落の様相を呈していた。
スタンフォード大学の債券利回りは乱高下
ここからトランプ政権が超大型パッケージをアナウンスし、3月23日にはFRBが前述のような大胆な政策を発表した。スタンフォード債の利回りは、その日のうちに4.04%まで下げ、2兆2000億ドルの大型法案が成立した27日には2.89%と、月末にかけて3%を切る水準に戻っている。
スタンフォード債は期間31年という超長期債なので、てこの原理のように指標銘柄の米国債10年物より振れが大きくなる傾向があるのは確かだ。だが、社債市場はトリプルA債までもが大幅な利回り上昇に見舞われるほどの機能不全に陥っていたのである。
なお、大学債には米国の歴史や就職先などの見えないランキングが影響しており、スタンフォード債が揺れ動いた間も、期間30年のハーバード債やコロンビア債は安定的に推移していた。投資家は、米国債より高い質への逃避をしていたのである。
ちなみに、23日のFRBによるアナウンス後の社債市場は新発債ラッシュとなり、23日の週の発行額は1091億ドルと、過去最高だった昨年9月を48%も上回った。3月末の発行残高も、過去最高だった昨年末の9兆5978億ドルを上回り、11兆8889億ドルとなった。
米社債市場は、セプテンバー・イレブン前の2000年末の発行残高が3兆4539億円、リーマン・ショック直後の2008年末が5兆5054億円なので、直近の数字の大きさと、企業の資金繰りにおける社債の重要性が分かる。
何はともあれ、FRBのなりふり構わぬ大胆な金融緩和と、2兆2000億ドルの超大型経済パッケージは、とりあえず社債市場を救い、また株式市場の暴落もひとまず止まっている。
トランプ大統領はすでに次なる対策を示唆し始めているほか、新型コロナの陰に隠れて世界をかく乱している原油価格の暴落に対して、世界最大の産油国である米国が減産することを明らかにしている。同時に、第2位の産油国であるサウジと増産を続けてきたロシアが減産に同意する見通しも出てきた。世界大恐慌の回避に向けた新たな動きである。
一方、FRBは他の4つの規制当局、すなわちFDIC(連邦預金保険公社)、NCUA(全米信用組合協会)、OCC(通貨監督庁)、CFPB(消費者金融保護局)とともに、個人や中小企業への融資の柔軟化を指示した。また、銀行の国際機関であるバーゼル銀行監督委員会が、世界の銀行に対する三回目の自己資本規制(バーゼルIII)の達成時期を遅らせると発表。FRB自身も米国内の全銀行に対する資本規制を緩和した。
こうした対応をもう少し具体的に見てみよう。
まず社債市場の現状を見ると、米ゴールドマン・サックスによれば、2020年に入ってすでに7650億ドル分の社債が格下げとなっているという。米ムーディーズは、3月30日に6.6兆ドルの社債をネガティブ(格下げするかもしれないという示唆)に変更している。同社のデフォレスト格付部長によれば、2020年は残り1690億ドル分、2021年は3000億ドル分が満期を迎えることとなっている。
したがって、小康状態にある社債市場もちょっとしたことで再び壊れるなリスクがあり、今はとても危険な綱渡り状態にあることが分かる。FRBがきめ細かく対策を出し、ウォールストリートにあるニューヨーク連銀がCPの買い入れを増やすなどしているのは、そのためだ。
一方、FRBからの貸出金利は全てゼロなので、5つの監督機関の強い指導の下、個人や中小企業にゼロ金利、または超低金利でどれだけ融資が行われるかどうかが重要となる。
なお、FRBによる社債やMBS、CMBSの購入については、民間のブラックロックにその運営を委ねた。これはリーマン・ショックの際と同じで、官ではできない実務面を、FRBにとって信用できる民に任せたということだ。
日本の官民ファンドとは異なって、任せた以上は全権を与えており、途中から官が口を出すことはない。また、ブラックロック側にしてみれば、これは緊急時の政府支援なので、高い報酬を求めてはおらず、些末な問題で騒がれるリスクも小さい。
また、FRBのこの対策の結果、投資適格格付けの企業と不適格の企業は社債市場で従来以上の差がつくこととなり、投資不適格企業はこれからどうするのかという次なる問題は残っている。例えば、携帯会社のスプリントを買収したTモバイルは投資不適格のBBに格下げとなっている。
全国民を対象に現金を給付
公立大学の学生や定年退職した人々への対応として、低利ローンや学生ローンのモラトリアム実施などはすでに始まっている。また、全国民を対象にした大人一人につき1200ドル、子供は500ドルという現金給付が間もなく開始される。所得制限等の区別なく、またそのための時間的コストをカットする目的から、全国民一律としているところに価値がある。前民主党大統領候補だったアンドリュー・ヤング氏もこれについては評価していた。
さらに、4月2日から新型コロナ対策法第2弾のFFCRAが執行され、有給休暇が取れるようになった。基本的には、FFCRAにより、2つの有給休暇に関する法律を使えるようになるので、雇用者と労働者はどうするか有利な方を話し合って決める(とはいえ、雇用者の方が強いので、雇用者の意見が最後には通るというのが米国の常だ)。
1つは、「Emergency Family and Medical Leave Expansion Act (EFMLEA)」で、1日当たり200ドル未満、または累計で1万ドルを上限に、10週間は3分の2の報酬をもらえるというもの。もう1つは、「Emergency Paid Sick Leave Act(EPSLA)」で、1日当たり511ドル未満、または合計で5110ドル未満を2週間もらえるというもの。ただ、もともとの法律は名前の通りに異なる問題に対処するためにできたものなので、雇用者と労働者の話し合いは容易ではないかもしれない。
ただ失業保険を週当たり600ドル、13週間までもらえるよう延長した法律もあり、労働者の立場がかなり楽になるのは事実である。
企業や大学には政府が支援を表明
支援先の業種に注目すると、航空業界やクルーズ船業界など、落ち込みが激しいところには政府が支援することを表明している。具体的な金額も発表された。恐らく、株価が4分の1近くまで下落している米ボーイングも救われるだろう。トランプ大統領は他の業種についても、同様の支援を約束している。
州立大学の学生の授業料向けローン免除についてはすでに実施しているが、今回の第3弾では、私立を含めた格付けの低い大学への経営支援を含めた。特に、白人優先主義と批判されているトランプ大統領の政策として興味深いのは、Historically Black Colleges and Universities(HBCU)への支援を明確にしたこと。例えば、格付けBa1ネガティブのハワード大学に1300万ドル、A2のガローデット大学に700万ドルを入れると発表している。
この状況下においては、様々な人を分け隔てなく救済する、というのが、トランプ政権とFRBの考え方である。
韓国経済は追い詰められている?
この間、FRBは海外の金融当局へのドルの供給を考えたプログラムを実行している。
3月15日には、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、カナダ銀行、スイス国立銀行とともに、ドルの流動性供給のための協調行動の確認を発表。その後、19日には、新たにメキシコ、ブラジル、シンガポール、スウェーデン、オーストラリア、韓国とは60億ドルの、またノルウェー、デンマーク、ニュージーランドとは30億ドルの、最低6カ月間の通貨スワップ契約をした。
この新規のスワップ契約は、同等の立場とはいえ、ありていに言えば、経済面で問題がある国へのFRBからのコミットメントラインである。
3月31日には、ニューヨーク連銀の口座を持つ海外の中央銀行や国際機関との間でForeign and International Monetary Authorities(FIMA)に対して、米国債を使ったレポ(米ドルと米ドル債の現先取引)を行う取り決めを行った。これにより、FRBは連邦準備制度の公開市場操作の場で、海外中銀などを通じて海外市場への流動性供給が可能になり、海外発の市場混乱が米国内に波及するのを防ぐことができるようになる。
米国は、国内発の更なる市場混乱を避けるとともに、海外発の市場混乱の波及を回避すべく、必死な行動を続けているのである。
中でも注目すべきは、韓国が3月19日に、FRBからの通貨スワップを、前回(2008年のリーマン・ショック時)の30億ドルから2倍に増加した点である。同国は、世界第10位のGDPを誇り、対峙しているのは陸続きの北朝鮮であるにもかかわらずイージス艦の追加やいずも型空母の建造など羽振りのよい財政活動をしている。新型コロナの影響が大きいとはいえ、日本との通貨スワップの継続を望まない韓国中銀が、今回はFRBとの通貨スワップを倍増したのである。
新型コロナの韓国経済への影響は多々指摘されているが、このFRBと韓国中銀の通貨スワップの増額は、どう考えてもFRB側が求めるはずはない(米国が韓国に資金問題で助けを求めるはずはない)。韓国側からの要請だろう。
韓国の金融界に詳しい、米国にいる韓国系米国人の研究者によれば、韓国側は対等での契約だと主張しているが、事実はかなり苦しい国内経済状況の下、韓国側が非常に強く要請したものだったとのことだ。どうやら、韓国は経済的にかなり追い詰められているらしい。前回も、半年の契約を2010年まで延長したという経緯があるため、今回もどれほどの期間となるか要注目だ。
このように、米国は新型コロナそのものを収束させることに加え、この間の経済をとにかく崩壊させないこと、そして収束後にV字回復をさせることに向けて対策を打っている。
もちろん、今後、さらなる金融政策や財政出動が必要なことになるかもしれない。ただ、迅速かつ大胆に行動していることは米国民に伝わっており、一致団結しているのは間違いない。実際に米国で暮らしていて、この1カ月間の変化は強く感じている。 
●米国株が新型コロナの懸念緩和で急反発 4/7 
米国時間4月6日、米国株が元気を取り戻した。投資家が新型コロナウイルス(COVID-19)に関わるあらゆるプラス要因に飛びつき、主要インデックスはすべてプラス領域に転じた。株式市場はもちろん経済ではない。そしてこれは、「デッド・キャット・バウンス」、大暴落の後の一時的な小幅回復にすぎない可能性が高い。問題はこれから先何回デッド・キャット・バウンスが起きるかだ。そして、新型コロナ・パンデミックによる経済低迷が続いている中、新型コロナの新たな感染例の増加が減速しているというジョンズ・ホプキンス大学のデータを投資家は見逃さなかった。現在最も信頼されている同大学の新型コロナウイルスマップによると、3月31日に2万5200件だった米国内の新たな感染者数は、4月3日には3万3300件だった。そして4月4日はこの数字が2万8200に下がった。ただし、若干異なる結果を示している統計データもほかにはある。今日の復調は、新型コロナの感染拡大が続き、最終的にピークを迎え安定するまで、今後数日、数週間で試されていくだろう。国立アレルギー感染症研究所の所長で政府の新型コロナ対策を指南するAnthony Fauci(アンソニー・ファウチ)博士は、感染者数と死者数は来週急増する可能性が高いと警告している。
今日の株式状況は以下の通りだ。
Dow Jones Industrial Average(ダウ平均株価):7.59%、1,597.21ドル高、終値2万2649.74ドル
S&P 500:6.95%、172.86ポイント高、終値2,661.51ポイント
Nasdaq composite(ナスダック総合指数):7.33%、540.15ポイント高、終値7,913.24
他にも、新たな売上ガイダンスやアナリストのコメントなどの間接的新型コロナ要因が、一部の株価を変動させた。eBay(イーベイ)、Amazon(アマゾン)をはじめとするEコマース株もプラスの動きを見せた。中でもオンライン小売業のWayfair(ウェイフェア)はおそらくこの分野で最大の上昇だった。同社が3月末決算で粗利益が2倍以上に伸びたことを報告した後、36%高で寄り付いた。Wayfairの株価は41.7%高、終値は71.50ドルだった。音楽ストリーミングのSpotify(スポティファイ)は、Raymond James(レイモンド・ジェームズ・ファイナンシャル)が同社株の投資判断を「strong by(強い買い)」から「market perform(中立)」に格下げし、新型コロナはエンゲージメント低下とダウンロード数減少を招き、ユーザーは室内で過ごす時間が増えたと説明したことで、株価は4%以上下落した。Spotify株はその日のうちになんとか回復し、終値は約0.33%高の122.52ドルだった。この日はSaaS関連株も反発し、Bessemerのクラウドインデックスは6.79%上昇した。SaaSなどの新しいソフトウェアを扱う企業は、ここ数年大きく売上を伸ばしている。しかし、インデックス下落の後をたどり、未だに下げ相場の領域にいる。我々は今、強い不安定経済期の中で決算発表シーズンに入ろうとしている。今後株式市場がどのように動くかは、企業が2020年第1四半期にどのような業績を上げ、将来をどう予測しているかに、少なくとも部分的には依存する。注目したい。 
●企業の業績悪化が長期化すれば、二番底が見えてくる 4/7 
投資主体別売買動向に注目
今回は、コロナショックにより与えられる株式相場の二番底のリスク要因を解説していきたいと思います。「NYダウは一時底値から約24%上昇」 NYダウは、3月23日に安値1万8,213ドルから3月27日高値2万2,646ドルまで短期的に上昇し相場はいったん落ち着きを取り戻したように思えます。しかし、この買い戻しは主に機関投資家によるものであり、個人投資家の待機資金はほとんど動いていない状態です。個人投資家の多くは、MMFに資金を現金化して待機させている状態であり、25日までの1週間で3,000億ドル以上の資金流入が続いています。3月相場では、各国政府の財政出動、中銀による大規模緩和という相場下支えイベントが発生したことにより、「機関投資家による空売りの買い戻し、および、3月末のポジション解消によるリバランスによる買いが一時的な上昇に寄与した」のです。
日銀による量的緩和拡大が相場を支える
今回のコロナショックを受け、各国は大幅な財政出動・緩和策に打って出ており、世界で7兆ドルの量的緩和と5兆ドルの財政出動が行われることになりました。日銀は、20年3月16日に年6兆円としていた上場投資信託(ETF)の購入目標を12兆円に倍増し、不動産投資信託(REIT)においても従来の900億円から1,800億円に倍増することを決定しています。これにより、1回あたりのETFの買い付け額は、それ以降2,000億円規模となっており、NYダウが下落しているにも関わらず日銀買付銘柄だけが大幅な上昇に転じる場面が多々見受けられるようになりました。しかし、買いの主体は個人投資家と日銀であり、海外投資家は売り越しとなっているため、本格的な回復局面とは言えません。
企業決算悪化によるEPS(1株当たり利益)の悪化に注意
今回の企業決算では、新型コロナウイルスの影響により大幅な業績悪化が予想されています。リーマン・ショック時、TOPIXのEPS(1株当たり利益)は67%下落しており、株価は約4割下落しましたが、今回のコロナショックでは3割の下落で収まっています。当時の相場環境では、このTOPIXのEPSが減少する前に株価はすでにそれを織り込みながら下落していたため、EPSが下落し始めた段階で株価は底を打ち上昇に転じました。しかし、今回のコロナウイルスにより企業の業績悪化が長期化するという事態が判明した場合、さらなる下落に備えなければなりません。ゴールドマン・サックスは、S&P500指数の予想EPSを前年比33%減の110USドルとしており、PER(株価収益率)が23倍強に達してしまうため、そのリバランスが起こることが警戒されています。
機関投資家は下落局面に備えプット(売る権利)を積み上げている
機関投資家は、世界的なコロナウイルス感染者数の大幅増加を受け、これが長期化するリスクに備え大幅にプット(売る権利)を積み上げています。日経平均の権利行使価格1万6,000〜1万7,000円で利益が出るような保険であるプットは、「現状到達しかねない水準であることから買うにはコストが高くなりすぎており、権利行使価格1万円や1万2,000円などのプットにおいて異例の大商いが続いている現状を考えても、機関投資家がどれだけさらなる下落に備えている」のかが読み取れます。
米雇用統計のさらなる悪化に注意
3月の雇用統計の非農業部門の雇用者数は前月比70万1,000人減少しました。市場予想は10万人減であり多くとも25万人減だろうと予測されていましたが、その水準から大幅に下方乖離してしまったことからネガティブサプライズとなりました。しかし、これを受けた3日のダウ工業株30種平均は前日比360ドル安しか下落しませんでした。これは、コロナウイルスの影響により失業保険が優遇されていることが一因だと言われています。NYでは、通常1週間で500ドルもらえる失業保険に優遇措置として7月までは追加で600ドル上乗せされることから、月間4,400ドル、日本円にして50万円もの給付を受けられます。これにより、これだけ給付金がもらえるのなら働かなくてもいいと考える人が増えてしまっています。企業側としても、社員を解雇した方が手厚い保証をもらえることができることから、雇用統計の予想を超えた悪化につながっている可能性があります。しかし、4月の雇用統計は失業保険申請者数が3月28日までの2週間で1,000万件と大幅に増加していることから大幅に悪化する可能性があるため、その動向には注意する必要があります。
コロナ騒動とともに株価を注視
今回の一時的な株式上昇は、投資主体別では中身がそこまでよくなく、今回のコロナショックによる企業の業績見通しがどのような見通しになるかによって相場環境にネガティブに働く可能性が出てきています。業績悪化がどれだけ長期化するかによって二番底を試す可能性が高くなりますので、十分なリスク管理が必要となります。また、米国の感染者数が爆発的に拡大してきており、米トランプ大統領も4月4日に「今後1〜2週間が感染拡大のピークになる」としていることからその動向には注目しておく必要があるでしょう。 
●「どうやって生きろというの!」銀座クラブママと新宿ホストが怒りの署名運動 4/7 
「どうやって生きていったらいいのですか」――。
新型コロナウイルス拡大を受けて、政府は2020年4月7日に緊急事態宣言を発令するが、自粛のやり玉に上がっている夜の接待業の代表格、銀座・六本木の高級クラブのママや歌舞伎町の巨大ホストクラブのホストたちが、営業補償を求めて署名運動を始めている。
バーやクラブ、キャバレー、ホストクラブなどでつくる一般社団法人・日本水商売協会(甲賀香織・代表理事)が4月初めからインターネット上で署名サイト「新型コロナウイルス感染症による接待を伴うナイトクラブの自粛による営業補償をお願いする陳情書」を公開した。
発起人に名を連ねているのは銀座や六本木、歌舞伎町の合計14の店舗や事業者グループ。銀座では、「クラブNanae」の唐沢菜々江ママ、「クラブ昴」の高田律子ママ、「クラブ ル・ジャルダン」の望月明美ママ、「CLUB AMOUR」の河西泉緒ママら、そうそうたる顔ぶれ。六本木では1960年代から「キンコンカ」「ピロポ」「セリーネ」「花かん」など高級会員制クラブを順次開店してきた「瀬里奈グループ」、歌舞伎町では38店舗ものホストクラブを展開する「groupdandy」(グループ・ダンディ)などだ。
そのほか、江東区の三次ゆりか区会議員、銀座クラブの「筆談ホステス」として知られ、本やドラマにもなった斉藤りえ・元北区議会議員も名を連ねている。
署名サイトによると、「新型コロナ感染の災禍に対しては、事の重要性に鑑み、対処すべき事態であることは理解をしております。しかしながら、小池都知事が我々接待を伴う飲食店を名指しで都民の利用の自粛を要請したことは、当業界の存亡や従業員の生活に直結する重大な事態であります」と訴えた。
実際、かなりの客数が減少し、休業に追い込まれた店も多い。「本来、自粛要請は、憲法第29条3項(編集部注・財産権の保障)に鑑み、補償とセットでなされるべきものです。欧米のケースでは緊急事態宣言発動の前段階で売り上げが激減する業界には手厚い補償を約束したうえで、市民に店舗利用の自粛を要請しています」と欧米に例を引き合いに出している。
ところが日本では、経済産業省の新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業者向け「セーフティネット保証5号」では、風営法の許可を受けるキャバレーやクラブは事実上除外されており、申請をしてもほとんど通らない状態だという。そして、「風営法管轄だけが差別されています。一般企業、一般市民と同じ処遇を!」として、「休業をしている間の店舗家賃の補償」「最低限の人件費の補償」「無担保無利子融資の斡旋」の3つを求めている。4月7日正午現在、4693人が賛同している。 
 4/8

 

●緊急事態宣言 欧米メディアの見方は  4/8
安倍総理大臣が「緊急事態宣言」を行ったことについて、アメリカのメディアは宣言に踏み切った時期や、罰則がないことなどについて懐疑的な見方を伝えています。
このうちCNNテレビは「ウイルスの感染が長期間、問題になってきたにもかかわらず、日本は他の多くの国で見られるような踏み込んだ措置を取るのが遅れた」と指摘しました。そのうえで「東京は次のニューヨークになる可能性がある」との専門家の見方を紹介し、今後、東京も感染者が急増し、ニューヨークのように医療態勢がひっ迫するおそれがあると伝えています。
また、CBSテレビは「取られている措置のほとんどは『要請』だ」と指摘したうえで「日本では罰金などを科すことが認められていないため、周囲の目による圧力を罰則の代わりにしている」と伝えました。
一方、有力紙のニューヨーク・タイムズは「日本はこの数か月間、他の国が取っているような厳しい措置をとることなく、感染者を抑えてきたことで世界を当惑させてきた。今回の緊急事態宣言は惨事を避けるのに間に合ったのか、それとも遅すぎたのか、専門家も判断できずにいる」として、専門家の間でも評価が分かれていると伝えています。
ヨーロッパのメディアは日本で外出を厳しく制限する措置が取られない背景などに言及しています。
このうち、フランスの公共ラジオは「日本はこれまで、スウェーデンと同様、経済活動をなるべく妨げない方法を採用し、日本人の非常に厳格な衛生習慣に頼ってきた。しかしとりわけ東京で感染の拡大を制御できなくなり、安倍総理大臣はメディアや専門家たちから緊急事態の宣言を強いられた」としています。また「緊急事態宣言を出したにもかかわらず、人々に家に閉じこもるよう強制したり、違反した場合の制裁を科す法的権限は無く、政府は日本人の市民精神や社会の同調圧力に頼ることになる」と指摘しています。
また、イギリスの有力紙「ガーディアン」は「日本政府は罰金や罰則を伴う法的権限を有さない代わりに自粛を求め、拒否する事業者の名前を公表する見せしめ行為に効果があると期待している」と伝えています。そして日本が厳格な措置に踏み切らない理由として「軍国主義時代に起きた国民の権利の侵害や、ハンセン病患者の強制的な隔離といった苦い思い出に起因している」と分析しています。 
●専門家が見る 緊急事態宣言のタイミング 4/8
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、7日に出された緊急事態宣言。3月中旬に出たイタリアなどに比べると、半月以上遅れての発令となった。政府は「医療現場で危機的な状況となっていることを踏まえた」と説明しているが、専門家はこのタイミングをどう見るのか。
「少なくとも1カ月ほど前に出してもよかったのでは」 こう話すのは、宮本勝浩関西大名誉教授(理論経済学)。発令によって国民のさらなる出控えが予想され、経済的損失は数十兆円にも上ると試算する。感染が拡大すればするほど損失は広がり、経済回復までの時間がかかる。「宣言が出されれば、抜本的な感染拡大防止の対策を講じられ、今よりも感染拡大は食い止められていたはずだ。感染者の少ない早い時期に出していた方が損失は少なかっただろう」と指摘する。
東京女子大の橋元良明教授(情報社会心理学)は「緊急事態」という言葉が国民に対して強いメッセージ性を持ち、一人一人の行動に大きく影響する、とみる。感染拡大を受けて、これまでも東京や大阪では外出自粛要請が出されており、人出は大きく減ることが予想される。「日本人は同調思考が強いとされ、これまで自粛の行動をとっていなかった人にも一定の効果があるだろう。外出自粛の流れはさらに強まる」と分析する。そのうえで、国民の間で緊急事態宣言の発令が現実味を帯びてきたのは、安倍晋三首相らがロックダウン(都市封鎖)について言及し始めた3月下旬ごろとし、「国民の間ではもう覚悟ができていた。そうした意味では、発令はもう少し早くても良かったのではないか」と話す。
一方で、肯定的にとらえるのは、広島大の坂口剛正教授(ウイルス学)だ。「新型コロナは当初の見立てより重症化の率が高く、決してあなどれないウイルスだということが分かってきた。ここで宣言を打ち出すのは、気を引き締める意味があるのではないか」と指摘する。医療現場では今、医療崩壊に対して緊張が高まっているとし、「宣言を受けて、みんなが外出自粛などを守れば感染拡大を穏やかにすることができる。その間に重症者と軽症者を分けるなど医療体制強化のための時間を稼ぐことができる」と述べた。
近畿大の久(ひさ)隆浩教授(都市・まちづくり)は「こうした宣言は公権力の押し付けになりかねず、本来は宣言を出さなくても感染防止に向けて一人一人が自律した行動をとるのが望ましい」と指摘。3月の連休中に外出自粛要請が出ていたにもかかわらず勝手な行動をとっていた若者らもいたとし、「宣言を出さないとこうした行動を抑えきれない状況にある。やむをえないぎりぎりの判断だったのだろう」と話した。 
●歴史から読み解く「コロナショック」経済の行方 4/8 
株式市場の世界的な大暴落、東京オリンピックの延期、著名人の感染・死亡と、当初の想定を超えた「最悪の事態」を塗り替え続けているコロナショック。人的被害はもちろん、経済的被害も底が見えない状況になっている。ちょうど1世紀前にも、約2年間にわたり「スペイン風邪」が世界で猛威を振るった。われわれはその歴史から何を学べるのか――。『お金は「歴史」で儲けなさい』などの著作があり、テレビ朝日系「モーニングショー」にも出演する経済評論家の加谷珪一氏が、コロナショックとスペイン風邪を比較しながら世界と日本の経済の今後について解説する。

コロナウイルスによる感染が深刻な状況となっている。これだけ広範囲に感染が拡大し、経済活動が抑制されるというのは、戦後社会としては初めての経験であり、先の状況を予測することは極めて難しい。このようなときは一度、冷静になって歴史を振り返って見るという姿勢も必要だろう。
近代以降、大規模な感染によって全世界で死者が出たケースとしては、1918年から1920年にかけて大流行したスペイン風邪がよく知られている。本稿では、スペイン風邪の感染拡大とGDP(国内総生産)や株価の推移などについて考察していく。
筆者はかつて、過去130年の経済や株価の推移について分析した『お金は「歴史」で儲けなさい』という書籍を執筆しているが、こうした歴史分析を行うと、必ずと言っていいほど「当時と今を比較しても意味がない」「状況が違いすぎる」といった批判の声が出てくる。
過去と現在で状況が異なるのは当然のことであり、もし歴史をさかのぼることについて無意味であると考えるのなら、時間の無駄になるので、本稿を読んでいただく必要はまったくない。
しかしながら、著名な投資家や実業家の中には、歴史的な分析を実践している人が少なくない。経済というものが人間の活動の集大成である以上、同じようなことを繰り返す可能性は高く、歴史を知ることは人間を知ることにつながるからである。こうした歴史が持つ価値について理解のある方のみ、読み進めていただければと思う。
スペイン風邪が流行した当時はバブル経済の真っ最中
スペイン風邪は、1918年から1920年にかけて全世界で流行したインフルエンザである。当時、日本の内政を担当していた内務省の調査によると、国内では3回のピークがあり、第1回目のピーク(1918年8月〜1919年7月)には患者数が2100万人以上、死亡者は26万人に達したとされる。
2回目のピーク(1919年8月〜1920年7月)は患者数が約241万人と大幅に減り、死亡者数も12万8000人と半減した。さらに3回目のピーク(1920年8月〜1921年7月)になると、患者数は22万4000人、死亡者数は3700人となり、その後、感染は終息した。諸外国もほぼ同じで、1918年の秋に大流行となり、1919年に再度、拡大したのち終息を迎えている。
1919年当時の日本の総人口は約5500万人なので、一時は人口の4割近くが感染した計算になる。もっとも、統計によって数字にバラツキがあるので、正確性については多少、割り引いて考える必要があるが、広範囲に感染が拡大したのは間違いない。ただ、全期間を通しての死亡率は1.6%なので、当時の衛生状態を考えると、それほど危険とまでは言えないかもしれない。
では、当時の経済はどのような状況だったのだろうか。
1917年の実質GDP(当時はGNP)成長率は9.0%、1918年は8.6%、1919年は5.0%と高成長が続いていた。感染が終息した後の1920年はマイナス成長に転じているが、総じて経済は好調だった。当時の日本は新興国なので基本的に高成長だったが、それでもこの成長率はほかの時期と比較してかなり高い。
実は、この頃の日本経済は、第1次世界大戦特需によって絶好調という状況だった。
大戦の勃発によって欧州の企業活動が大幅に縮小したことで、戦争とはほぼ無縁だった日本企業には数多くの注文が舞い込んだ。各社は空前の好業績となり、株価も急騰。賃金も上昇したことから、雰囲気的には1980年代のバブル経済のような状態になった。株長者が続出し「成金」という言葉がメディアを飾った。
スペイン風邪はこうした中で発生したので、初期段階では景気に対してそれほど大きな影響を与えなかった。アメリカも日本と同様、戦争による直接的な被害を受けなったので、経済は順調に推移していた。欧州は大戦による被害が大きかったが、英国経済は何とか横ばいを保っていた。
景気には直接影響を与えなかったが…
図は日本国内における、スペイン風邪の死亡者数と株価の推移を示したものである。当時は日経平均のような株価指数は存在しておらず、東京株式取引所(東株)の株価が指数代わりに用いられていたので、新株分を調整した株価を指数として用いた。
それによると感染による死者が急増した1918年には、2回目となる株価バブルがスタートしており、スペイン風邪の影響はあまり見られない。ところが、株価バブルの頂点と、感染ピークの2回目はほぼ一致しており、感染爆発と同時に株価は暴落し、その後、長い不況に突入する結果となった。第1次世界大戦後の不況はかなり長引き、10年間のデフレを経て昭和恐慌へとつながっていく。
当時の日本政府は、今と同様、学校の一斉休校を実施したり、イベントの自粛を呼びかけるといった施策を行っている。また、マスクの着用やうがい手洗いの実施が呼びかけられており、これも今の施策と近い。だが、一連の対策が極めて有効に作用したのかというとそうでもなく、結局のところ、多くの人が感染し、集団免疫を獲得することで、終息に向かったと見てよい。
では、スペイン風邪の歴史を教訓にするならば、感染者の急拡大で社会は混乱したものの、経済への影響はそれほど大きくなかったということになるのだろうか。そう願いたいところだが、どうしても引っかかるのが、2回目の感染ピークと同じタイミングで到来したバブル経済の崩壊である。
スペイン風邪は、流行が拡大しているときは、経済にそれほど大きな影響を与えなかったが、第1次世界大戦バブル崩壊の引き金を引いた可能性は十分にある。もし、そうであるならば、今回との類似点は多い。
結局、日本だけが一人負けしていた
今回の感染拡大で日本を含む世界の株式市場は大打撃を受けたが、リーマンショック級の株価下落となったのは、単にコロナショックが大きかったからではない。
リーマンショック以降、アメリカは絶好調ともいえる景気拡大が続いており、一部からは株価や債券価格のバブル化を指摘する声が上がっていた。日本についていえば、トヨタをはじめとするメーカー各社が、拡大が続くアメリカ市場に製品を売り込むことで、何とか国内景気を維持してきたという面が大きい。
つまりアメリカ経済はバブルの兆候があり、日本経済は、アメリカのバブルに依存してきたというのが実態である。
だが、アメリカの好景気があまりにも長すぎることから、多くの関係者が、そろそろアメリカ経済が景気後退(リセッション)に入るのではないかと危惧していた。こうしたタイミングでコロナウイルスの感染が急拡大したので、株式市場への影響は極めて大きなものとなっている。
つまり、今回の株価下落は、コロナショックだけでなく、バブル崩壊と全世界的な景気後退懸念が加わっており、これが市場参加者の心理を極端に悪くしているのだ。
ちなみに1920年代のアメリカは、欧州復興特需で経済を急成長させ、欧州各国も、戦後処理が一段落してからは、それなりの安定成長を実現している(敗戦国のドイツを除く)。
しかし日本だけは、経済の体質転換が進まず不景気が続き、そのまま世界恐慌を迎えてしまった。日本経済だけが一人負けしてボロボロの状態となり、軍部の台頭によって最終的には無謀な戦争に突入した。一連の出来事がもたらした結果は言うまでもなく、終戦による日本経済の破綻とハイパーインフレであった。
つまりスペイン風邪の流行は、直接的には経済に大きな影響を与えなかったが、俯瞰的に見た場合、(あくまで結果論だが)日本経済の終わりの始まりを示唆していた。
日本経済はここ数年、消費の低迷が続くなど、経済の基礎体力が著しく低下している。ここでアメリカが景気後退に陥った場合、日本経済への打撃は計り知れない。歴史を教訓にするならば、日本経済が底割れするような事態は何としても回避しなければならない。それが実現できなければ、長期にわたる景気低迷を覚悟する必要があるだろう。 
●緊急事態宣言 小池都知事「スピード感をもって取り組む」 4/8
「緊急事態宣言」を受けて、8日から徹底した外出自粛などを要請する措置が始まったことについて、小池知事は記者団に対し「きのうも80名の感染者が出ている。宿泊所に寄って療養していただくシステムが始まったが、重要局面には変わらない。他の地域と規模感が違うので、都としてスピード感をもって地域の特性を鑑みながらこれから取り組みを進めていきたい」と述べました。
また、都が調整を進めている休業を要請する具体的な業態や施設については「若干調整も必要かと思うが、国との連携を取りながら早く決めたい」と述べました。 
●NY州の新型コロナウイルス死者最多に、感染者13.8万でイタリア超え 4/8 
米ニューヨーク州のクオモ知事は7日、新型コロナウイルス感染症による入院者の増加ペースが安定化の兆しを示していると述べた。しかし、死者は前日から731人増えて5489人に達し、1日当たりの死者数としてはこれまでで最多となった。同州で確認された感染者数も13万8836人に増加し、感染者数が世界で2番目に高いイタリアを上回った。全米の感染者は7日、40万人に迫り、死者は1万2700人を突破した。ニューヨーク州の感染者は、全米全体の3分の1以上、死者は半分近くを占めている。
クオモ知事は、死者数は、感染拡大状況を数日もしくは数週間遅れて示す「遅行指標」だと述べ、入院患者や集中治療室の利用、人工呼吸器装着率の伸び鈍化は、感染防止のための人との距離を置く「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)」の効果が出ていることを示していると指摘した。知事は、経済活動の再開に向けた計画を始める時期に差し掛かっているとした。ただ、ソーシャル・ディスタンシングの実践をやめる時ではないと釘を差した。知事は「自己満足は避けよう」と訴えるとともに、「ソーシャル・ディスタンシングは奏功している。だからこそ、新型コロナ感染に関する数字は下がっている」と警戒を続ける必要性を強調した。また、ニューヨーク市のデブラシオ市長は、最悪期を脱したと判断するのは時期尚早だとしたうえで「病院に到着した時点で人工呼吸器を必要としている人の数でみると、状況はここ数日若干改善している」と述べた。
また、イリノイ州シカゴのライトフット市長も外出制限措置が効果を発揮し、感染者の増加ペースが鈍化していると指摘。同時に「ピークには近づいていない。誤った期待を高めたくない」と述べた。ジェローム・アダムス米医務総監は7日、全米の死者数は、米疾病対策センター(CDC)の予測する10万─24万人を下回る可能性があるとの見方を示した。 
 4/9

 

●国内感染4979人(クルーズ船除く)新型コロナウイルス4/9 
8日は1日に確認された感染者の数が初めて500人を超えました。9日はこれまでに福井県と富山県で合わせて6人の感染が新たに発表され、日本で感染が確認された人は空港の検疫で見つかった人やチャーター機で帰国した人なども含めて4979人となっています。このほかクルーズ船の乗客・乗員が712人で、合わせると5691人となります。また、亡くなった人は国内で感染した人が105人、クルーズ船の乗船者が11人の合わせて116人となっています。
日本で感染が確認された4979人のうち、東京都は1338人、大阪府は524人、神奈川県は356人、千葉県は324人、愛知県は280人、埼玉県は250人、兵庫県は248人、福岡県は224人、北海道は208人、京都府は155人、茨城県は77人、福井県は77人、岐阜県は77人、石川県は66人、大分県は41人、新潟県は39人、高知県は39人、沖縄県は39人、宮城県は34人、和歌山県は34人、静岡県は30人、奈良県は30人、福島県は29人、群馬県は29人、栃木県は26人、滋賀県は26人、山梨県は25人、愛媛県は25人、広島県は24人、山形県は22人、熊本県は22人、長野県は19人、山口県は17人、宮崎県は16人、富山県は15人、岡山県は14人、三重県は13人、長崎県は13人、青森県は12人、秋田県は11人、佐賀県は11人、鹿児島県は4人、徳島県は3人、香川県は3人です。
このほか、中国からチャーター機で帰国した人が14人、厚生労働省の職員や検疫官、それに空港の検疫で感染が確認された人などが合わせて96人です。厚生労働省によりますと、重症者は8日の時点で、国内で感染した人などが99人、クルーズ船の乗船者が8人の合わせて107人となっています。一方、8日までに症状が改善して退院した人などは国内で感染した人などが632人、クルーズ船の乗客・乗員が638人の合わせて1270人となっています。
●コロナショックで「非正規切り」…過去最大の被害を及ぼす可能性 4/9 
108兆円の経済対策を実施する。大変な困難に直面している家庭、中小・小規模事業者に6兆円を超える現金給付をする。雇用を守りぬく――。安倍晋三首相は、4月6日、緊急事態宣言の発令を表明するとともに、過去最大の経済対策を実施、家庭や個人、中小事業者に目配りすることを明らかにした。事業規模は国内総生産(GDP)の約2割に相当、リーマン・ショックの09年4月に打ち出した約57兆円を大きく上回る。だが、過去最大規模は新型コロナウイルスがもたらす破壊力の大きさを示すとともに、リーマンから11年で日本の社会構造と雇用環境が変わり、セーフティ・ネットによって救わねばならない層が急増していることの表われでもある。
世界の二極化、非正規化
2極化は加速度的に進み、世界の資産額10億ドル(約1100億円)以上の超富裕層が、毎日25億ドル(約2500億円)も資産を積み増す一方で、世界の半分を占める貧困層は毎年約10%、資産を減らしている。もはや中流国ではなくなった日本の雇用環境は、年々、増える非正規雇用が約4割に達し、雇用契約が脆弱で収入保証のない広義のフリーランスは約1100万人となった。ネットアプリで仕事にありつけるギグ(単発仕事)ワーカーは、雇用に自由度と開放度をもたらしたが、個人事業主として首切りは容易で事故の際の補償もない。「安定」の象徴の公務員でさえそうで、国家公務員の非正規化が進められた結果、厚労省の53%が非正規で、「PCR検査遅延の原因」とされる保健所の数は、この17年間で45%減少、472カ所となった。20年以上、緊縮財政を続け、グルーバル環境のなかIT化、ネット化、AI化が進んだ結果、優勝劣敗の法則に従って、最低賃金制度の底辺に張り付く層が増え、貯蓄ゼロ世帯が3割に達する。企業がそれぞれに直面するグローバル競争のなかで、貧困化する社会を容認したのが政府である以上、コロナ・ショックという誰にも太刀打ちできず、誰より弱者に襲いかかる災厄に立ち向かうのは政府しかない。
「こぼれ落ちた層」は救えるのか
では、過去最大の個人にも留意した経済政策で「こぼれ落ちた層」は救えるのか。リーマン・ショックの際は「年越し派遣村」の事務局となって、解雇された派遣労働者の受け皿を作って問題提起、コロナ・ショックの今、非正規、パート、フリーランスの“駆け込み寺”となっている全国ユニオンの鈴木剛会長に聞いた。
――リーマン・ショック、東日本大震災など過去に幾つも大きな危機に立ち会ってきましたが、今回の衝撃度はいかがですか。
「3月7〜8日にホットラインを開設、いろんな相談を受け付け、今も電話はひっきりなしに掛かってきますが、限られた職種ではなく、全産業が例外なくダメージを受け、非正規切りに入っている印象で、過去最大の被害を及ぼす可能性があります」
ホットラインに寄せられた声は切実だ。
「微熱が続いているので医師からは休むようにいわれているが、派遣先からは37.5度以上でなければ出社しろといわれている」(派遣の女性)
「倉庫内で梱包作業をしているが、2月5日から16日まで休業になったものの、休業手当が支給されない」(派遣の女性)
「スポット派遣で週5日働いていたが、時期とコロナの影響で週1日しか働けない。仕事が出来るようにして欲しい」(派遣の男性)
「コロナの影響で仕事がなくなったが、請負契約なので補償がない。3月は少し、4月以降のメドが立たない」(請負の男性)
「正社員は有給で休みにするが、パートはないといわれた。仕事はなく、このまま無給が続くと生活が苦しい」(パートの女性)
派遣、請負、パートは正社員雇用のための防波堤。まず、ここからカットしている。殆どが、仕事が欲しくて我慢しているが、もちろん、労働者の権利無視は許されない。
――激しい勢いで雇用環境が悪化しています。どう対処されていますか。
「事業者が、契約、派遣、パートを切る場合には、契約満了時に更新を拒否する『雇い止め』と、契約途中で解雇する『期間中解雇』があります。相談を受けたら我々はまず、毅然とした抗議活動を勧め、事業者が簡単に解雇しないよう支援します」
――しかし、今回のコロナ・ショックは、観光・飲食などのサービス業で8割、9割と売り上げがダウン。興行は中止で収入がない。事業者側も切羽詰まっています。
「その場合は、カネを出させるよう要求します。雇用調整助成金は解雇しない場合、中小企業で9割、大企業で7割5分が支給されることになりました。今回、正規、非正規を問わずに支給されますが、このカネは労働者ではなく企業に支給される。だからキチンと申請して支払われるかを、チェックして監視していく必要がある」
――ほかに30万円の現金給付や中小零細向けに200万円、個人事業者向けに100万円の給付金も制度化されます。
「30万円の現金給付については、住民税非課税世帯や収入が半分以下に急減した世帯が対象です。ただ、その条件に見合う世帯と、条件が合わずに支給されなくとも生活が苦しい世帯があり、そこに不公平感が生まれます。細かい規定を設けず、一律給付の方が良かったのではないでしょうか。また、中小零細、個人事業主向けは手続きが煩雑で、支給が数ヵ月先というのでは、今、困っている人に行き届かない。30万円と合わせ、スピード感が必要です」
――手厚いように見えて、緊急事態宣言を出すと、宣言を受けての自粛での休業が「企業の自己都合ではない」として、労働基準法上で支払われるべき6割の休業手当を、制度的には支払わなくていいことになります。
「大いなる矛盾です。緊急事態宣言発令後、首都圏ではライブハウス、寄席、映画館、ナイトクラブ、居酒屋など多くの店舗で営業停止の要請や指示がなされます。本来、労基法上の休業手当は6割以上ですが、民法では100%の支払いが義務付けられています。自己都合ではないことを理由に支払いに応じない企業があるとすれば、それは社会責任の放棄であり、許されることではない。徹底的に交渉していきます」
――解雇させない努力をし、休業手当てに取り組み、給付金制度を利用と、あらゆる手を尽くしても、今の状況が数ヵ月も続けば、いずれ生活が破たん、生存権を脅かされる世帯、個人が出てきます。
「そうなった場合は、リーマン・ショックの時がそうであったように、NPO法人などと連携して生活保護を申請するように勧めます。なんら恥ずかしいことではない。経済が立ち直るまでの、一時的な避難であり、申請に同行して立ち会います」
自粛要請は補償とセットであるべき
鈴木氏は、「ホットラインに訴える相談者には共通項がある」という。「自虐的に今の境遇に至った事態を捉え、自己責任論に即して、自分を責めている人が多いんです」(同)誰にも予期できない新型コロナウイルスがもたらしたパンデミックが、個人の責任であるはずがない。災厄によってたちまち生活困窮者が出現するのは、我々の社会システムが、そうした人々を雇用体系のなかに組み込んでいるからだ。本来、緊急事態宣言に伴う自粛要請は、断行した事業者への補償とセットとなるべきだろう。だが、底なしのコロナ・ショックがいつまで続くかわからず、政府はそこまで責任を負うことができなかった。給付金、雇用調整助成金、無利子・無担保融資、資金繰り支援などの数々の施策は、「補償の代わりのメニュー」と、捉えることもできる。そういう意味では、30万円給付金で指摘されたように一時しのぎであり、政府に政治責任を求め、事業者に雇用責任を徹底させる全国ユニオンは、こぼれ落ちた層とともに、今後、粘り強く闘っていくことになるし、そうした動きは、困窮した層を追い込まないためにも、政治を巻き込みながら全国で活発化させるべきだろう。 
●日本株は通信安い、銀行や資源高い−コロナ収束楽観視の一方高値警戒 4/9 
9日の東京株式相場では、寄り付き直後に日経平均が上昇する場面もあったが、売り優勢の展開に転じた。TOPIXは小反落して方向感の定まりにくい動き。米国で新型コロナウイルスの感染状況に好転の兆しがあるとの見方などで、下げに対する過度の警戒は後退している。原油市況の大幅反発から資源関連、米長期金利上昇から銀行が上昇。一方で日経平均が1万9000円台前半に短期で上昇したことで高値警戒感も出ている。
岡三証券松本史雄チーフストラテジストは、「昨日ビックカメラの下方修正が出るなど、今後は企業業績に悪い話が出る」との見方が相場の重しになっているとした。東海東京調査センターの隅谷俊夫投資調査部長は、3月25日に付けた戻り高値の水準である1万9500円を手前に高値警戒感があることや「明日のSQを前にポジションを調整する動きもあるだろう」とみている。
一方で、前日の米国株式市場では主要3指数が上昇、S&P500種株価指数は3月23日の安値からの上昇率が20%を超えた。これについて野村証券投資情報部の若生寿一エクイティ・マーケット・ストラテジストは、新型コロナの感染拡大がピークを越えたとの期待感や、サンダース氏の米大統領選撤退でヘルスケアへの重しが軽くなったことだとした上で、「相場全体としての底上げの流れの中、日本株も戻りを試す展開となりそう」と話した。 
●新型コロナ改善兆候の世界と温度差、日本株は反落−ドル108円台後半 4/9 
新型コロナウイルス問題を巡っては米国などで状況が好転する兆しが見えつつある一方、国内では感染者の増加が加速、外出などの自粛による景気悪化への不安が根強い。米国株高の流れに乗れずTOPIX(東証株価指数)は4日ぶりに反落。外国為替市場でドル・円相場は1ドル=108円台後半を中心に小高く推移した。債券は小幅高。
コロナウイルスを巡る状況は国内外で温度差が生じている。米国では国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長が来週にも好転し始める可能性があるとの見解を示した。これに対して国内では東京都の8日の新たな感染者数が144人と最多になった。9日のアジアの株式相場が軒並み上昇する中、日本株の弱さが目を引く。
7日に緊急事態宣言が発令されたことで「店舗の閉鎖などが増えると、きのうのビックカメラの業績予想下方修正のように今後は企業業績の悪い話が出てくる」と岡三証券の松本史雄チーフストラテジストは懸念を示した。国内企業の業績落ち込みによる景気悪化が意識されたところで、株価指数は3月の戻り高値に接近しており売りに押されやすい。
株価の本格的な戻りには国内の感染状況が落ち着くことが必要との見方は多い。東海東京調査センターの隅谷俊夫投資調査部長は「海外勢は東京の感染者増加などを警戒している。日本での感染がピークアウトの兆しを見せ始め、海外勢の買いが入るようになれば日本株も戻りを試すだろう」とみている。
日本の債券相場は小幅反発。長期国債先物6月物の終値は前日比1銭高の152円17銭。前日の米国債相場が軟調だった流れを引き継いだことや、5年債入札に向けた売りで一時24銭安の151円92銭まで下落。その後は持ち直し、入札が順調な結果となると152円37銭まで上昇した。長期金利は1ベーシスポイント(bp)高い0.02%と1週間ぶり高水準で始まり、午後に入るとゼロ%まで低下。その後は0.005%で推移している。
岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、5年債入札について「市場参加者の減少が不安視されていたが、順調な結果となった」と分析。債券相場については「買い上がる動きはないものの、下値不安もない」と述べた。
外国為替市場のドル・円相場は一時109円台を回復したものの、大半の取引は108円台後半で上値が限られた。みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストは、ムードとしては感染症に対する過度な悲観論が若干落ち着きを取り戻したかなという感じだと指摘。「ただ、感染者は引き続き世界的に増えているし、まだわからないというのが本当のところ。ドル・円は下も上もやり、200日線(108円35銭)と100日線(108円98銭)のあたりが落ち着くにはちょうどいいところ」と話した。 
●世界の感染者が150万人突破−WHO、米中協調促す 4/9 
世界の新型コロナウイルス感染者は100万人に達してから1週間足らずで150万人を突破した。英国、ベルギー、米ニューヨーク州で新たに確認された死者数はこれまでで最多となった。集中治療室に入っているジョンソン英首相の容体は改善している。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、米中両国は協調して「誠実なリーダーシップ」を発揮すべきであり、さもなければパンデミック(世界的大流行)の危機が一段と深刻化する恐れがあると警告した。同局長はジュネーブでの記者会見で、「さらに多くの死者を出したくないなら、問題の政治化を避けなければならない」と訴えた。 
欧州連合(EU)の専門機関、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は8日、欧州が性急に制限措置を解除すべきではないと警告した。
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、新型コロナのパンデミックの影響が「近代におけるマクロ経済の最大の地殻変動の一つ」だと指摘し、欧州各国政府に対し、強力な財政措置の合意に向け意見相違を乗り越えるようあらためて呼び掛けた。
米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は8日、新型コロナとの闘いで状況は来週にも好転し始める可能性があるとの見解を示した。トランプ米大統領の上級衛生顧問らは、感染拡大のピークを越えたことを示す傾向が続いた段階で、安全に経済活動を再開するための医学上の基準の策定を進めている。
米国では、マコネル共和党上院院内総務が、自身が提案した中小企業支援プログラムの2500億ドル(約27兆2000億円)増額案の10日の採決に向けて動いている。一方、民主党の議会指導部は病院支援などの増額を求めており、双方の主張は食い違っている。EU財務相は5000億ユーロ(約59兆1200億円)規模の景気対策で合意できなかった。
シンガポールのリー・シェンロン首相はフェイスブックへの投稿で、人が集まるケースが依然としてあまりにも多いと指摘し、今後、公の場で集まりが見つかった場合は直ちに警察が書面で警告すると述べた。同国で8日に新たに確認された感染者数は過去最多となった。
中国は9日、新たに確認された感染症例が前日に63件増えたと発表した。 
●日銀総裁、新型コロナが日本経済に深刻な影響−必要なら追加緩和 4/9
日本銀行の黒田東彦総裁は9日、都内の本店で開かれた支店長会議であいさつし、新型コロナウイルスの感染拡大が日本経済に深刻な影響を及ぼしているとし、当面はその影響を注視し、必要があれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和措置を講じると表明した。
総裁は、新型コロナの感染拡大で「世界経済の先行きは強い不透明感に覆われている」とし、各国で外出制限などの措置がとられている中で「グローバルに経済活動が大きく制約されている」と指摘。感染拡大のグローバルな終息時期は「不透明感が強く、経済の先行きは不確実性が極めて高い」との認識を示した。
感染拡大の影響は日本経済にも「輸出・生産やインバウンド需要、個人消費の落ち込みなどを通じて、深刻な影響を及ぼしている」と危機感を表明。日本の金融システムは「全体として安定性を維持している」としながらも、「金融環境をみると、企業の資金繰りは悪化している」との見解を示した。
この間の金融市場については「投資家のリスクセンチメントが悪化し、急速に不安定化した」と指摘。各国の中央銀行が市場安定化に乗り出す中で、「金融市場は一頃の緊張が幾分緩和しつつある」ものの、「引き続き、神経質な状況にある」と警戒感を示した。
こうした状況を踏まえた金融政策運営は「当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視」すると述べ、「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」と強調した。
また、政府が緊急事態を宣言する下で、「企業金融支援のための新たなオペの開始や、CP・社債等買い入れの増額といった措置をしっかりと実施することで、企業金融の円滑確保に貢献していく」との方針を示すとともに、「金融機能の維持と資金決済の円滑確保といった、中央銀行として必要な業務を継続して行う体制を整備している」と述べた。
支店長会議は全国各地の支店長が本店に集まって開かれるが、今回は新型コロナの感染拡大防止の観点から初のテレビ会議方式で行われた。 
●日産、5000億円融資枠要請−3メガ銀と政投銀に 4/9
日産自動車が計5000億円規模の融資枠を3メガバンクと日本政策投資銀行に要請したと、日経新聞電子版が9日報じた。日産は新型コロナウイルスの感染拡大で世界各地で生産・販売が大きく落ち込んでいた。
報道によると、日産はみずほ銀行と三菱UFJ銀行、三井住友銀行の3行と政投銀に新たな融資枠の設定を要請。政投銀は「危機対応融資」と呼ばれる枠組みでの融資になる見通しで、日産は7日に開いた取締役会で資金の確保策を説明したとしている。
ブルームバーグのデータによると、日産の昨年12月末時点で現預金が約1兆2000億円で有価証券などの短期投資は2143億円あり、合計の手元資金は約1兆4185億円だった。日経によると、既存の融資枠も自動車事業分だけで5000億円程度を確保しているものの、手元資金が約6兆円のトヨタ自動車など競合と比べて財務基盤は弱いとしている。
日産は新型コロナウイルスの感染源とされた武漢市のある中国・湖北省に現地合弁の生産拠点を持ち、春節明け以降に長期の操業停止に追い込まれた。感染が世界中に拡大すると、欧州や米国、日本の工場でも順次、操業を停止。国内外で従業員の一時解雇や一時帰休に踏み切るなど経営を巡る環境が急速に悪化している。
日産の業績はカルロス・ゴーン元会長が2018年に会社法違反(特別背任)などで逮捕、起訴されてから急速に悪化。前期(20年3月期)の業績予想を11月と2月に2度下方修正し、現在は営業利益が前の期比73%減の850億円、売上高は同12%減の10兆2000億円を見込んでいた。
日産の広報担当者から現時点ではコメントを得られていない。 
●感染急増の東京、休業要請急ぐ知事に国は「外出自粛効果見極め」 4/9
新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言発令を受けた店舗などへの休業要請を巡り、実施を急ぐ東京都と外出自粛の効果を見極めてからとする国との間で温度差が生じている。東京都は他の自治体に先駆け、10日に対象業種など休業要請の内容を発表し、11日から実施する方針を示している。
東京都の小池百合子知事は8日のビデオメッセージの中で、休業要請について国から「宣言から約2週間、まず様子を見てからそのあと判断と伝えられている」としつつ、「即刻行うべきだとの意見たくさんいただいている」と早期の実施を訴えた。
同日の都内市長とのテレビ会議でも小池知事は、「2週間という話を聞いた時にええ、と思った」と述べ、都市規模や感染拡大の状況といった「東京としての実情を踏まえた迅速な対応」を進める考えを示していた。
緊急事態発令後は、知事の権限でさまざまな要請や指示が行われることになるが、実際には同時に改定された「基本的対処方針」に沿った対応を国が求めており、地方自治体と協議して進める形が取られている。
菅義偉官房長官は9日の記者会見で、特措法では「制限は必要最小限のものでなければならないと規定されている」と強調。休業要請は「外出の自粛等の協力の要請の効果を見極めて行う」との考えを改めて示した。休業要請を2週間程度見送るよう対象都府県に打診したのかとの質問には「承知していない」と述べた。
一方、西村康稔経済再生担当相は8日のテレビ番組で、休業要請の対象となる施設について小池知事と協議していると説明。東京都との間で意見が分かれているホームセンターや理美容については「日常生活で必要なもの」として休業を求めない考えを示した。
東京都では8日、新たに1日としては最多となる144人の感染者を確認。累計が1338人と感染拡大が続いている。東京に加えて緊急事態宣言の対象となった埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の各府県は、現段階で民間施設に対し休業要請しない方針を示していると共同通信が報じている。 
●ニューヨーク感染爆発にピークアウトの兆し 強力な「人出減らし作戦」が奏功か 4/9 
ニューヨーク州民の行動のおかげで、新型コロナウイルスの感染拡大カーブが平坦化し始めた──ニューヨーク州のアンドルー・クオモ知事は4月8日の記者会見でこう語った。つまり、感染者の増加ペースに歯止めがかかったかもしれないというのだ。
「私たちは劇的な措置を講じた。ニューヨーク州は学校や事業所・店舗を一時閉鎖し、州民には外出をやめて『社会的距離』を取るよう呼びかけた。それが効果を上げ始めた」と、クオモは州民に語りかけた。
「(感染者増加の)カーブは平坦化している。再度それを確認できた。私たちが厳しい制限に耐えたからだ。ただし、気を緩めれば、カーブはたちまち急上昇をし始めるだろう。このカーブは私たちの日々の行いと忠実に反映するのだ」
カーブの平坦化が意味するのは、感染者数がすぐに減り始めることではない。1日当たりの新たな感染者数の増え方、つまりカーブの傾斜が徐々に緩やかになっていく、ということだ。そしていずれピークに達し、その先はカーブも下向きになる。
「入院を要する患者は減っている。日々の増減だけではなく、3日間の平均を出して傾向を見ているが、ここでも減少が認められた。ここでも、平坦化が起きているということだ。(医療崩壊寸前だった)病院の収容余力もこれまでになく余裕ができ、より多くの患者を受け入れられるようになった」
「引き続き最大限の努力をし、しっかりと自制しなければならない」と、クオモは強調した。
一方で、州の24時間の死者数は最多を記録した。4月6日のニューヨーク州の死者は779人に上り、クオモは「恐ろしい」状況だと述べた。だがこれは、感染カーブの平坦化という良いニュースと矛盾しない。
クオモによればこれは、人工呼吸器で命をつなぎながら長期入院していた患者が次々と寿命を迎えている結果だという。「今後も死者数は増え続けるだろう」と、クオモは述べた。「入院患者数は減り始めても、11日間、あるいは14日間、あるいは17日間も入院していた患者が亡くなっていくため、死者数は増える。それが今の状況だ」
ニューヨーク州の感染者数は今も全米最多だ。ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、州内の感染者数は累計14万人を上回り、死者数は少なくとも1万3007人に上る。 
●新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況 (9日現在) 4/9 
ルフトハンザCEO、各国政府に支援要望 新型コロナ危機で
ドイツ航空最大手ルフトハンザLHAG.DEのシュポア最高経営責任者(CEO)は8日、独、スイス、ベルギー、オーストリアの各国政府に対し、支援を求める考えを示した。同社は新型コロナウイルスの影響で、大半の航空便の運航停止を余儀なくされており、危機的状況が長引くことが懸念されている。
ブラジル中小企業にコロナの打撃 必要なら為替介入も=中銀総裁
ブラジル中央銀行のロベルト・カンポス・ネト総裁は8日、同国の中小企業が新型コロナウイルスの打撃を感じ始めているとの見解を示した。政策金利を過去最低水準にしているにもかかわらず、企業の借入コストが上昇しているとも指摘した。クレディ・スイス主催のオンライン討論会で語った。
中国の新型コロナ新規感染者は小幅増、渡航者感染が2週ぶり高水準
中国国家衛生健康委員会は9日、中国本土で8日に新たに確認された新型コロナウイルス感染者が63人と、前日の62人から若干増加したと発表した。増加は2日連続で、海外からの渡航者の感染例が2週間ぶりの水準に増加した。
ソフトバンクG出資の印ホテルOYO、米などで従業員を一時帰休
ソフトバンクグループ9984.Tが出資するインドの新興ホテルチェーン、OYO(オヨ)・ホテルズ・アンド・ホームズは8日、コスト削減のため、米国などで一部の従業員を一時帰休とすると発表した。新型コロナウイルスの世界的流行で旅行客が減り、ホテル需要も減っている。
豪政府、減収企業の従業員に賃金補償 2週間ごとに900ドル支給
オーストラリア政府は、新型コロナウイルス感染流行への経済対策として、減収になった企業の従業員向けに少なくとも半年間の賃金補償を実施する。議会で与野党の支持で可決された。対象は600万人とみられ、総額1300億豪ドルと同国で過去最大規模の支援を見込む。
トランプ大統領、米経済の「ビッグバン」的な再開に期待
トランプ米大統領は8日、米国の経済活動を「ビッグバン(大爆発)」的に再開させたい意向を表明した上で、そうするには新型コロナウイルス感染による死者が減少傾向を示す必要があるとの認識を示した。ホワイトハウスでの記者会見で述べた。
米ブラックロック、年内は新型コロナを理由に人員削減はしない=CEO
米資産運用大手ブラックロックBLK.Nのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は8日、年内は新型コロナウイルスを理由とする人員削減を行わないと表明した。ビジネス向け交流サイト(SNS)のリンクトインに投稿した。
新型コロナ終息後の景気回復に慎重論=FRB各地区連銀総裁
米連邦準備理事会(FRB)の複数の当局者は8日、新型コロナウイルスの感染拡大が終息しても、急ピッチな景気回復を予想できない可能性があるとの見通しを示した。
英銀幹部、給与削減や賞与返上 コロナ対応で批判浴び
英大手銀行のHSBCHSBA.L、スタンダード・チャータード(スタンチャート)STAN.LとナットウェストRBS.Lの経営トップは8日、新型コロナウイルス危機で資金繰りに苦慮する顧客との結束を求める圧力が高まる中、給与削減に応じる姿勢を表明した。
米の中小企業向け追加支援策、与野党の協議が難航
米国のトランプ政権が提案している中小企業向けの2500億ドルの追加支援策を巡り与野党の交渉が難航、上院での9日の法案可決の見込みはなくなった。交渉は今後数日間続く可能性がある。
英政府、9日に緊急対策会議 都市封鎖措置の見直しを協議
英政府は新型コロナウイルス感染拡大防止に向けたロックダウン(都市封鎖)措置の見直しについて協議するため、9日に緊急対策会議を開く。スナク財務相が8日、記者会見で明らかにした。
新型コロナ巡り中国の責任問うにはまだ早い=米国務長官
ポンペオ米国務長官は8日、新型コロナウイルスの感染の実態に関する中国政府の報告が遅いとする米当局者の指摘について、中国にその責任を問うのは時期尚早との考えを示した。
米スタバ、1─3月期は47%減益の見通し 新型コロナ響く
米コーヒーチェーン大手スターバックスSBUX.Oは8日、第2・四半期(1─3月)は47%減益になるとの見通しを示すとともに、2020年度通年(9月まで)の業績予想を取り下げた。新型コロナウイルスの世界的流行による業績への悪影響は7─9月期まで続くと見込む。
フランス、都市封鎖を4月15日以降も継続
フランスの大統領府は8日、新型コロナウイルス感染拡大を防止するための都市封鎖(ロックダウン)措置を4月15日以降も継続すると発表した。3月17日に導入された都市封鎖の延長は2度目となる。大統領府はまた、マクロン大統領が13日夜に新型コロナに関して、国民向けに演説を行うと明らかにした。
英首相、快方に向かっているもよう=トランプ米大統領
トランプ米大統領は8日、新型コロナウイルスに感染して集中治療室(ICU)で治療を受けているジョンソン英首相について、快方に向かっているようだと述べた。
EU、新型コロナでアフリカや中南米など支援へ 200億ユーロ拠出
欧州連合(EU)は、新型コロナウイルス感染拡大の打撃を受けているアジアやアフリカ、中南米、バルカン地域の国々を支援するため、200億ユーロ以上を拠出すると明らかにした。
米国の新型コロナ死者1万4600人に、伊に次ぎ世界2位=ロイター集計
ロイターの集計によると、米国の新型コロナウイルス感染による死者が8日、1万4600人に達し、イタリアに次ぎ世界で2番目の高水準となった。7日時点の新たな死者は1900人を超え、1日の報告としては過去最多を記録した。
ECB総裁、新型コロナ対策で欧州の団結を呼びか
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は8日、新型コロナウイルス対策で欧州がさらに団結する必要があるとの認識を示した。
米、医療用防護具の輸出差し押さえへ 新型コロナ対応で
米税関・国境取締局(CBP)と連邦緊急事態管理局(FEMA)は8日、医療用のマスクや手袋など主要な防護具の輸出品について、差し押さえた上で、新型コロナウイルス感染拡大防止のために国内にとどめておくべきかどうか判断する方針を示した。
米、GMとフィリップスに人工呼吸器7.3万台発注 契約11億ドル
米保健福祉省(HHS)は8日、自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nとオランダの医療機器・ヘルスケア大手フィリップスPHG.ASに対し、重症化した新型コロナウイルス感染者の治療に必要な人工呼吸器7万3000台の製造を発注した。契約金額は総額11億ドル超。
米ノババックス、新型コロナワクチン臨床試験を5月半ば開始へ
米バイオテク企業ノババックスNVAX.Oは8日、新型コロナウイルスのワクチン候補を特定し、5月半ばにも臨床試験を開始すると発表した。
中国、中小企業の資金調達を支援=金融安定委
中国国務院(内閣に相当)の金融安定委員会は8日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)によって大きな打撃を受けた中小企業や民間企業による資金調達を支援すると発表した。
トヨタ、北米工場の操業停止を延長 臨時社員5000人は無給で帰休
トヨタ自動車<7203.T>は8日、新型コロナウイルス感染拡大を受け、北米工場(米・カナダ・メキシコ)の操業停止を延長すると発表した。生産再開は5月4日の予定。
NY州の新型コロナ死者、連日の最多更新 社会的距離は奏功と知事
米ニューヨーク州のクオモ知事は8日、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けたソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)は奏功しているものの、新型コロナ感染症による死者が前日から779人増え、1日の死者数としては最多になったと発表した。
スイス、新型コロナ抑制策を4月末から段階的に緩和
スイスは8日、新型コロナウイルスの抑制に向け導入している措置を今月26日まで延長するものの、その後は状況を見極めた上で段階的に緩和していく方針を示した。
ジョンソン英首相の症状改善、集中治療は続く
スナク英財務相は8日、新型コロナウイルスに感染して入院したジョンソン英首相(55)の症状が改善していると明らかにした。ただ、引き続き集中治療室に入っているという。
新型コロナで米経済は深く後退、回復は安心感次第=リッチモンド連銀総裁
米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は8日、新型コロナウイルス感染拡大で米経済は深く後退するとし、いかなる回復も消費者がいかに安心できるかにかかっていると考えを示した。
FRB当局者、新型コロナへ「強硬対応」必要=FOMC議事要旨
米連邦準備理事会(FRB)が8日公表した3月の2回の緊急連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、新型コロナウイルスの発生が米経済に悪影響を及ぼし、金融市場を混乱させた迅速さに懸念を強め、「強力な措置」の決定につながったことが分かった。
WHO事務局長、新型コロナ対応を擁護 トランプ氏の批判に反論
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は8日、トランプ米大統領の批判を受け、WHOによる新型コロナウイルスへの対応を強く擁護した。
国連総長「今はコロナ対応評価すべきでない」、米大統領の批判受け
国連のグテレス事務総長は8日、今は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)に対する世界的な対応を評価するタイミングではないとし、新型コロナの封じ込めに向け、国際社会は団結して取り組むよう呼び掛けた。
米財務省、航空会社への給与支援で詳細な財務情報の提出要請
米財務省は、従業員の給与支援を政府に申請している航空会社に対し、資本構成や流動性、会員プログラムなどの詳細情報を提示するよう求めている。事情に詳しい関係者が明らかにした。
欧州で新型コロナ感染拡大継続、抑制策解除は時期尚早=ECDC
欧州連合(EU)の専門機関、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は8日、欧州で新型コロナウイルスの感染拡大は継続しており、ピークに達したことを示す兆候は出ていないとの見解を示した。
米大学がコロナ死者予測下げ、ピーク12日 当局は「第2波」警戒
米ワシントン大学のモデル分析に基づく米国内の新型コロナウイルス感染による8月4日までの死者予測が8日、前日時点の約8万2000人から6万人超に26%下方修正された。
イタリア首相、厳しい行動制限継続の必要訴え コロナ死者は減少
イタリアのコンテ首相は8日、財界から経済活動の再開を要望する声も上がる中、新型コロナウイルスの猛威は衰えておらず、厳しい行動制限の継続が必要と訴え、理解を求めた。
米雇用・生産は第2四半期に大幅悪化へ 下期の回復に期待=シカゴ連銀総裁
米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は8日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で雇用や生産が第2・四半期に大幅に落ち込む見通しとしながらも、感染拡大防止に向けた措置が順守され、政府による家計や企業への支援策が奏功すれば、下期に景気回復が始まる可能性があるとの認識を示した。
大幅な物価リスクなければ大胆な追加緩和不要=仏中銀総裁
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのビルロワドガロー仏中銀総裁は8日、新型コロナウイルス危機への対策として一部で主張されている追加の金融緩和措置を検討するための唯一の要因は、インフレの大幅な下振れリスクだと述べた。
ユーロ加盟国、新型コロナ対応でECB依存なら無責任=ラトビア中銀総裁
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーであるカザークス・ラトビア中銀総裁は8日、新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響が拡大する中、ユーロ圏各国政府が対応をECBに依存すれば、責任を果たしていないことになると述べた。
米、中規模企業向け融資の週内発表目指す=財務長官
ムニューシン米財務長官は8日、従業員500人以上の中規模企業向け融資プログラムを週内に発表したいという考えを示した。
主要国の経済活動示す先行指標、過去最大の落ち込み=OECD
経済協力開発機構(OECD)は8日、新型コロナウイルス危機により、主要国の経済活動を示す月次の先行指標が過去最大の落ち込みになったと発表した。ロックダウン(都市封鎖)の解除時期が明らかにならない限り、経済活動の低下にいつ歯止めがかかるのか予見できないという。
米、コロナ対策奏功なら「正常化」計画策定も=ファウチ所長
米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、全国民を対象とした行動自粛要請などの対策により新型コロナウイルスの感染拡大が抑制されたと判断されれば、経済や社会活動の正常化に向け計画を策定することは妥当という考えを示した。
米マクドナルド、3月既存店売上高22%減・見通し撤回 新型コロナで
米ファストフードチェーン大手のマクドナルドは8日、3月の世界既存店売上高が22.2%減少したと発表した。第1・四半期の世界既存店売上高も減少した。新型コロナウイルス感染拡大で店舗を閉鎖し、サービスをテイクアウトと宅配に制限していることが響いている。
肥満、新型コロナ重症化のリスク要因 米国は脆弱=仏専門家
フランスの感染症専門家は8日、肥満が新型コロナウイルス感染症の重症化する主要リスクで、肥満率の高い米国はとりわけ脆弱との認識を示した。
イラン、IMFに緊急融資50億ドル再要請 新型コロナ拡大受け
イランのロウハニ大統領は8日、国際通貨基金(IMF)に50億ドルの緊急融資を再度要請した。IMFがイランを支援しなければ差別になると主張した。イランは新型コロナウイルス感染拡大の被害が中東で最も大きい。
米民主党幹部、2500億ドルの中小企業追加支援策への支持表明
米民主党のペロシ下院議長とシューマー上院院内総務は8日、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するために、トランプ政権が提案している中小企業向けの2500億ドルの追加支援策を支持すると述べた。ただ、病院や地方政府、食糧援助に向けた支援拡大を含める必要があるとした。
スペインの新型コロナ死者1万4500人突破、感染者数は14.6万人
スペイン保健省によると、同国の新型コロナウイルス感染による死者数は8日現在、757人増加して計1万4555人となった。
第2四半期のドイツ経済、9.8%縮小の公算大=主要シンクタンク
ドイツの主要シンクタンクは8日、第2・四半期の国内経済が9.8%縮小し、データをさかのぼれる1970年以降で最大のマイナス幅となる公算が大きいとの報告書を公表した。新型コロナウイルス感染拡大抑制のために導入したロックダウン(都市封鎖)が響く。
WHO、「中国中心主義」との批判否定 拠出金停止発言にも反発
世界保健機関(WHO)の当局者は、WHOが「中国中心主義」になっているとのトランプ米大統領の批判を否定したほか、WHOへの資金拠出を停止する意向を示したトランプ大統領に対し、今は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)の急性期であり、資金拠出を停止する時期ではないと主張した。
ポーランド中銀が0.5%に利下げ、新型コロナ対応の一環
ポーランド国立銀行(NBP、中央銀行)は8日、主要政策金利を1.0%から0.5%に引き下げることを決定した。新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響を緩和する。
独、欧州外からの企業買収ルールを厳格化へ
政府筋によると、ドイツ政府は8日、国内企業を欧州連合(EU)外の投資家による敵対的買収から守るため、買収ルールを厳格化することで合意した。
第1・四半期の仏経済、6%マイナス成長となる見通し=中銀
フランス銀行(中央銀行)は8日、2020年第1・四半期経済成長率が前期比マイナス6%になるとの予想を示した。新型コロナウイルスの感染拡大抑制に向けた全国的なロックダウン(都市封鎖)が響くという。
トランプ氏、経済対策の監査官を解任
トランプ米大統領は、新型コロナウイルスに対応した2兆3000億ドルの経済対策を監視するグレン・ファイン監察官を解任した。監察官の報道官が7日、明らかにした。
世界的な医療助成基金、コロナ対策で国際企業に80億ドル拠出要請
世界的な医療助成基金である英ウェルカム・トラストは、COVID−19(新型コロナウイルス感染症)を巡る検査キットや薬品、ワクチンの開発・製造を支援するため、国際企業や各国政府に80億ドルを月内に拠出するよう求めた。
香港、新型コロナ感染予防措置を4月23日まで延長
香港政府は8日、バーやパブの休業、4人以上の集会禁止など、新型コロナウイルス感染予防のための措置を4月23日まで延長すると明らかにした。
韓国、輸出企業に追加で295億ドルの低利融資=大統領
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は8日、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けている輸出業者に追加で36兆ウォン(295億ドル)の低利融資を提供すると表明した。
ノルウェーの失業率、過去最高の15.4% 新型コロナで景気停滞
ノルウェーの労働福祉局は7日、同国の失業率が3月31日時点の14.7%から上昇して15.4%となり、過去最高を更新したと発表した。同国は新型コロナウイルスの感染拡大を抑える取り組みを進める中で、景気が停滞している。  
 4/10

 

●東京で過去最多の189人の感染確認 4/10 
東京で10日、過去最多となる189人の新たな感染者が確認され、累計の感染者数は1705人となった。8日の144人、9日の181人と連日、高水準の感染確認が続いており、東京都ではこれ以上の感染拡大を阻止するため、バーやナイトクラブの休業要請、居酒屋など飲食店の営業時間短縮など、独自施策を実施する。  
●鳥取県で初の感染者、発生ゼロは岩手県のみに 4/10 
鳥取県で初めての感染者が確認された。10日時点で都道府県別で感染者が確認されていないのは岩手県のみ。 
 4/11

 

●国内感染6633人(クルーズ船除く)新型コロナウイルス  4/11 
11日、東京都でこれまでで最も多い197人の感染が確認されたのをはじめ、合わせて28の都道府県で453人の感染が新たに確認され、日本で感染が確認された人は、空港の検疫で見つかった人やチャーター機で帰国した人なども含めて6633人となりました。このほか、クルーズ船の乗客・乗員が712人で、合わせると7345人となります。また、11日には、6つの県で合わせて7人の死亡が発表され、亡くなった人は国内で感染した人が128人、クルーズ船の乗船者が12人の、合わせて140人となっています。
日本で感染が確認された人のうち、東京都は1902人、大阪府は696人、神奈川県は510人、千葉県は416人、兵庫県は357人、埼玉県は338人、愛知県は316人、福岡県は304人、北海道は255人、京都府は181人、石川県は104人、茨城県は101人、岐阜県は97人、福井県は86人、沖縄県は56人、高知県は54人、宮城県は45人、群馬県は44人、新潟県は42人、大分県は42人、静岡県は39人、奈良県は39人、和歌山県は38人、滋賀県は38人、福島県は36人、栃木県は35人、山形県は33人、広島県は33人、山梨県は31人、愛媛県は30人、長野県は28人、富山県は25人、熊本県は24人、青森県は22人、山口県は18人、宮崎県は17人、三重県は16人、岡山県は15人、長崎県は14人、秋田県は13人、佐賀県は13人、島根県は6人、鹿児島県は4人、香川県は4人、徳島県は3人、鳥取県は1人です。
このほか、中国からチャーター機で帰国した人が14人、厚生労働省の職員や検疫官、それに空港の検疫で感染が確認された人などが合わせて98人です。厚生労働省によりますと、重症者は10日の時点で国内で感染した人などが117人、クルーズ船の乗船者が8人の合わせて125人となっています。一方、10日までに症状が改善して退院した人などは国内で感染した人などが714人、クルーズ船の乗客・乗員が639人の合わせて1353人となっています。  
●世界の死者10万人超に 4/11 
米ジョンズ・ホプキンス大システム科学工学センター(CSSE)の集計で、世界の感染死者数が10万人を突破した。死者数はイタリア、米国、スペイン、フランス英国の上位5カ国だけで7万5324人に上り、世界全体の73%を占める。 
●羽田第2国際線施設閉鎖、成田はB滑走路閉鎖 4/11 
羽田空港は第2ターミナルの国際線施設を11日から、成田空港は2本ある滑走路のちB滑走路を当面閉鎖する。国際線を中心に航空機利用が大幅に減少しているため。 
●神戸市の感染症指定医療機関で集団感染 4/11 
神戸市の感染症指定医療機関の神戸市立医療センター中央市民病院に勤務する職員や入院中の患者ら13人の感染を確認。 
 4/12

 

●東京の感染者2000人超、国内全体では7000人に 4/12 
東京で12日、新たに166人の感染者が確認された。小池百合子都知事は、YouTubeで配信した動画の中で166人のうち64人が感染経路不明で、87人は院内感染が疑われることを明らかにした。東京の累計の感染者数2068人となり、このうち75%に相当する1547人は4月以降の感染者。。この他、神奈川県、千葉県など緊急事態宣言の出ている県などを中心に2桁以上の感染者が確認されており、国内感染者は7000人を突破した。 
●善良な9割以外の日本人の行動を変えさせろ 4/12
<外出自粛、マスク、手洗い、うがい──大半の日本人は緊急事態宣言以前からできることはすべてやってきた。重要なのは、もともとリスクが高い行動を取る人たちの行動変容だ>
8割接触を減らせ、8割人出を減らせ、と国民を説得しているが、効果が限定的なのは仕方がない。
8割人出を減らしても、効果は8割未満だからだ。
理由は簡単だ。
全体のうち9割の人が8割減らしても、1割の人が以前のままであれば、全体での減少は7割にとどまるから、というのが、おそらくまじめすぎる学者達の計算で、そう答えるのはまじめな人。それでは社会は理解できない。
8割と7割では、専門家的には違う、ということかもしれないが、この1割よりももっと致命的な欠陥がある。
それは、この1割の人々は、もともとリスクが高い行動を取る人たちであり、彼らの行動を変えない限りは、肝心の問題のある接触が減らないからだ。
こんなことを愚痴りたくないが、感染者に関する報道や政府の言動から明らかな感染の拡大の大きな原因は2つ。
夜の店での拡大。感染経路不明の多くがこれだと思われ、また感染者もなかなか口を割らないだろう。
もうひとつ致命的なのは、報道などの事例を見ると、いったん熱が出たが下がったので、仕事は続けた、出勤したが、その後容態が悪くなり、検査をしてみたら陽性だった、というもの。
熱が出たり、何か気になる症状が出たりしたにもかかわらず、外出を続けている例があまりに多いことだ。
これではまったく意味がない。
無症状の人からも感染するという話ばかりが強調され、それが多くの人を恐怖に陥れ、全員の自粛を求めているが、もちろん、それはそれとして自粛したほうがよいのだが、それよりも何よりも、まず、症状があった人、熱が出た人、この人たちは、何があっても自主的に外出をやめるべきだ。それを徹底しないこと、徹底できないことが感染拡大の大きな要因だ。
すなわち、自粛から緊急事態宣言となっても、もともと感染するリスクも、拡大させるリスクもない善良な人々は、初期から自粛につとめ、手洗いうがいを含め、あらゆる注意を払っているからリスクはさらに抑えられていたのだが、自粛をさらに強める。一方、リスクを気にしない上に(だからこそ)リスクを取り続ける人々は、自粛ムードになろうが、政府やメディアがどう宣伝しようが、自分は関係ないとリスクを取り続け、症状が出てもまだ何もせず、いよいよ酷くなってから、おかしいと思って検査をして、そこで初めて反省する。
つまり、リスクのない人ほど自粛に勤め、リスクのある人ほどリスクを取り続ける以上、自粛的な方法では、社会全体のリスクは減らないのだ。
夜の店に行くな、パチンコやるな、タバコすうな、と言っても、彼らはやめないだろう。
だから、夜の店は閉める、飲食店でのアルコールの提供は全面的に緊急事態の下では禁止する、ということをやらない限り、感染は広がり続けるだろう。
それを野放しにしたまま、経済を殺すような大々的な自粛を続けるのは効果が薄い。
日本人の特性に基づいて強制的な制度をとらなくても効果がある、というのは世間を知らない学者の甘い認識だ。日本人にもいろんな人がいる。そして、人の行動は学者の思うようには変わらない。
それだけだ。  
●米国の死者数が2万人を超え、国別で世界最多に 4/12 
米ジョンズ・ホプキンス大システム科学工学センター(CSSE)の集計で、米国の感染者数は52万4903人、感染死者数は2万389人となった。米国の死者数はイタリアの1万9468人を超えて世界最多。ニューヨーク州の公表によると、同州の死者は8672人に上り、米国全体の4割に達する。 
 4/13

 

●新型コロナウイルスの国内感染者数が7000人超え  4/13 
新型コロナウイルスの国内感染者数が新たに530人以上増え、これまでの累計7,123人となり7,000人を超えた。東京の新たな感染者数は166人増え、累計2,000人を超えている。
今回明らかになったのは、新型コロナウイルスの国内感染者数の累計が7,268人となり、クルーズ船を除く感染者数が7,000人を超えたもの。
また、東京の新たな感染者数は166人で、東京都単体での感染者数の累計は2,068人。東京だけで2,000人の大台を超えた。東京で新たに感染が確認された166人のうち、87人は中野区の中野江古田病院によるもので、同病院での院内感染が発生したものと見られている。
とはいえ、東京都では連日150人を超えるペースで感染者数が増加しており、予断を許さない状態が続いている。 
●東京で新たに91人の感染者、神戸では警察署長感染 4/13 
東京で13日、新たに91人の感染者が確認され、累計の感染者数は2159人となった。神戸市では、神戸西署の署長と副署長の感染が確認された。3月下旬に開かれた飲み会の参加者が複数感染しており、署内の約120人が自宅待機となっている。また、11日に看護師の感染が確認されていた神戸赤十字病院で新たに医師4人の感染が確認された。 
 4/14

 

●国内感染者、8000人超 新たに東京161人―新型コロナ 4/14 
国内では14日、午後10時現在で新たに477人が新型コロナウイルス陽性となり、感染者の累計は8000人を超え8161人となった。東京都では161人増え、累計は2319人となった。大阪府では59人、福岡県では33人が新たに確認された。
都では永寿総合病院(台東区)の入院患者4人を含む男性5人が死亡。石川県で3人、北海道と群馬県、埼玉県、福岡県で各2人、千葉県、福井県、大阪府で各1人が亡くなり、感染者の死亡は計173人となった。
広島市の社会福祉施設では、入所者17人と職員5人の感染が分かった。市はクラスター(感染者集団)が発生したと判断。入所者ら約90人の検査を進めている。
市によると、20代の女性職員1人の感染が判明。入所者6人にも発熱症状があり、検査していた。女性は、のどの痛みなどが出たが治まり、無症状で勤務を続けていたという。
仙台市では14日までに、「いずみ保育園」(泉区)の園児2人を含む6人と、学童保育などを行う「ASTER向陽台校」(同区)に通う小学生5人の感染が確認された。市はいずれもクラスターとみている。両施設で4月上旬に開かれた英会話教室で、感染が判明した外国籍の20代女子学生が講師を務めていたという。
島根県では、松江市の飲食店でアルバイトしていた10代女性の感染が県内1例目として確認された9日以降、従業員と客計8人の感染が相次いで判明。市はクラスターとみている。
札幌市の札幌呼吸器科病院では医師や入院患者ら5人の感染が新たに確認され、関係者の感染は25人となった。 
●立皇嗣の礼の延期を決定―政府 4/14 
政府は、秋篠宮さまが皇位継承順位1位の皇嗣となられたことを国内外に示す「立皇嗣の礼」を当分の間、延期することを決めた。祝宴にあたる「宮中饗宴の儀」は中止し、中心行事である「立皇嗣宣明の儀」を規模を大幅に縮小して19日に実施することとしていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大が収まらず、この時期の実施は困難と判断した。 
●都立墨東病院における新型コロナウイルス感染者の発生について  4/14 
都立墨東病院の1病棟において、新型コロナウイルスの感染が確認された患者が複数発生しましたので、御報告いたします。
1 発生場所
都立墨東病院内の1病棟。当該病棟は、循環器系疾患を中心に受け入れる一般病棟であり、新型コロナウイルス感染(疑い)患者が入院する病棟ではない。
2 経過等
(1)経過
患者A 3月下旬に当該病棟に入院し、4月初旬に当該病棟から退院 / 同月中旬に呼吸困難の症状があり再入院し、PCR検査の結果、本日「陽性」が判明 / 現在の症状は重症である。
患者B 4月初旬に当該病棟に入院 / 入院中に発熱あり、CTで肺炎像を確認。PCR検査の結果、本日「陽性」が判明 / 現在の症状は中等症である。
(2)現在判明している事実
当該病棟内に、4月中旬に発熱した患者Cが、現在、個室で経過を観察。本日、PCR検査を実施。現時点では、その他の患者に感染を疑わせる症状は見られない。 / 陽性となった患者と本日から14日以内に接触した職員は、全部で42名である(医師4名、看護職員33名、臨床検査技師1名、放射線技師3名、事務1名)。このうち3名の当該病棟に勤務している職員が発熱症状を申し出ている(うち1名は現在解熱)。現時点では、その他の職員には症状は見られない。 / 職員は、患者の診療や処置を実施する際はサージカルマスクの着用及び手指消毒等の標準予防策を実施していた。 / 当該病棟を3月下旬に退院した患者Dが、4月初旬に発熱し感染症の専用病棟に再入院。PCR検査で4月9日に「陽性」が判明。また、当該病棟で業務に従事した委託職員Eも4月初旬に発熱があり、PCR検査で同日に「陽性」が判明している。患者D及び委託職員Eについて、所管保健所の指導等も踏まえて他の患者及び職員との接触状況を確認したところ、発症以後の接触はなく、この時点では自宅待機等の対応を行うべき対象者はいなかった。 / 今回も所管保健所に指導を仰ぎながら調査を行っているが、陽性が判明した患者間での濃厚接触等の接点は見られず、現時点では感染ルートは不明である。
3 対応状況
陽性が判明した患者A及び患者Bは、感染症の専用病棟に入院し管理を行っている。 / 当該病棟に入院中の他の患者に説明を行い、継続して健康観察を行う。 / 当該病棟退院から14日以内の患者には、電話で連絡をし、症状があった場合には病院に連絡するよう伝えている。 / 所管保健所の指導により、接触のある職員42名についてPCR検査を実施し、陽性患者との接触から14日間の自宅待機を行う。 / 病棟の手すり、ドアノブ等の高頻度接触面の消毒を毎日行っている。 / 引き続きサージカルマスクの着用及び手指消毒等の標準予防策を徹底する。
4 今後の診療体制について
9日から当該病棟への新規入院・院内他の病棟からの転入を制限している。また、この制限は、現在入院中の患者が当該病棟に入院している間、継続する。 / 外来及び当該病棟以外の病棟への入院については、保健所の指導及び当院感染症専門医の助言等を踏まえて検討したところ、陽性となった患者A及び患者Bが発症以後に、外来及び他の病棟の患者及び職員との接触が確認されていないことから、通常どおり診療を継続する。 
●世界で休業補償をしている国はない 4/14 
<新型コロナウイルスの感染拡大対策で企業に対する休業要請が広がるなか、休業補償のあり方を巡って国と自治体がもめているが>
何度も言ってきたが、企業に対して休業補償をしている国は主要国では存在しない。
世界中どこでも、支える対象は個人、人間であって、企業ではない。
欧州各国での休業補償といわれているものは、日本では雇用調整助成金にあたり、雇用者側が被雇用者にたいして休業手当を支払う義務があり、それに対して政府が補助金を出す仕組みだ。
今回の危機に対して、これを大幅に拡大して、政府は条件を大幅に緩和し、かつ補助率も90%である。これはリーマンショックのときも行われ、今回はさらにそれを大幅に拡大している。
さらに今回特筆すべきことに、これまでは含まれてなかった、いわゆる非正規雇用も対象に含めている。非正規雇用という言葉も存在も、危機後にすべて消滅させて、正規も非正規もない制度に改革すべきであるが(これは20世紀からの課題で解決していないが)、現状では、非正規のままではあるが、休業手当への雇用調整助成金の対象に含めることで、実質正規化している。これは素晴らしい政策で絶賛したい。
これを現実に支払っていないのは企業側、雇い主の問題で、これを徹底的に取り締まることが重要だ。
残されているのは、個人事業主、フリーランスを含む人々だが、これは難しく、政府としては妥協案で、100万円を配ることにした。そして、自営業者も雇用側と被雇用側が一体となっているため難しいが、それも200万円を配るという手段で妥協した。これはベストとは言えないし、実施も難しい面があるが、妥協案としては仕方がないところだろう。
企業を守る手段は、資金繰り支援しかなく、公的金融機関が世界的に見てももっとも発達している日本では、ほかの国よりもこれは迅速で相対的に言えば機能している。失業させず、企業にとどめ、企業と協力しながら、雇用、働き手を守るということで徹底してそこに集中するしかない。
世界的に見て、日本のこのセーフティネットは最高水準にある。
休業補償を企業に対して行っている主要国はない。世界的には日本と違ってより強い権限で、休業を指示しているが、それでも休業補償を企業にはしていないのだ。 
●都立墨東病院で患者と職員4人の感染確認 新型コロナ  4/14 
東京都は「都立墨東病院」で患者3人と委託職員1人の合わせて4人が14日までに新型コロナウイルスに感染したことが確認されたと発表しました。病院は現時点で感染ルートは不明だとしていて、患者と接触があった医師など42人について自宅待機させるとしています。
都によりますと新型コロナウイルスの感染が確認されたのは都立墨東病院の同じ病棟に入院していた患者3人と、そこで働いていた委託職員1人の合わせて4人です。
このうち患者の1人は先月下旬に入院し、今月初めにいったん退院しましたが、今月中旬に呼吸困難の症状が出て再入院し、検査の結果、14日、感染が確認され重症だということです。
また、もう1人の患者は今月初めに入院して発熱し、検査の結果14日、感染が確認されたということです。
2人のほかに、今月9日にも別の患者1人と委託職員1人の感染が確認されています。
病院は新たに2人の患者の感染が確認されたことを受けて、2人と接触があった医師や看護師など42人について検査を行い、自宅待機させることにしています。
一方、患者が入院していた病棟について今月9日から新規の入院を制限していますが、外来や他の病棟への入院については通常どおり継続するということです。
病院には新型コロナウイルスの患者を受け入れている病棟がありますが、今回の病棟とはフロアが別で、病院側は「厳密に管理していて、感染が広がった可能性は考えにくい」としています。
墨東病院の鈴木紅副院長は「ご心配、ご迷惑をおかけし申し訳ない。現時点では感染ルートは不明で、調査中だ」と話しています。 
 4/15

 

●感染疑いの救急患者“拒否”相次ぐ 4/15 
新型コロナウイルスへの感染が疑われ、救急搬送を要請した患者が数時間にわたって受け入れ先の病院が決まらず、治療を受けられないケースが都内で相次いでいることが分かりました。
関係者によりますと、今月中旬、東京・墨田区の80代の男性が発熱して救急搬送を要請しましたが、およそ70の病院などから受け入れを断られました。受け入れ態勢の不備などの理由で、およそ9時間にわたって搬送先が決まらず、最終的には医師の判断で一時的な自宅待機を余儀なくされました。このほかにも100以上の病院から受け入れを断られ、患者自ら搬送を辞退したケースもあったということです。
こうした現状に対し日本救急医学会は、「発熱を訴える患者を受け入れる病院が少なくなり、救急搬送が困難な事例が増加している。救急医療体制の崩壊を実感している」と声明を出しています。
東京消防庁によりますと、先月都内では5つ以上の病院に断られたり、搬送先が決まるまでに20分以上かかったケースが、前の年に比べておよそ1.3倍の930件あまりにのぼっているということです。 
 4/16

 

●驚くべき政府、メディア、国民 4/16
<報道によれば、政府はマスクや防護服、医療機器の増産を企業に求めたという。今まで何をやっていたのか?>
驚いた。
今朝の日経新聞1面では、政府がマスクや防護服、医療機器を増産するよう企業に求めた、という記事が。
今日は4月16日。これは2月にやっていると思っていた。これこそ真っ先にやることであり、政府がやるべきことであり、できることだ。
なぜだ。
しかも、ダイヤモンドプリンセスという経験がありながら、なぜそれを生かせなかったのか。
首相、大臣のブレーンたちは何をしていたのか。
医療での遅れも目立つ。軽症患者の自宅、ホテルでの隔離、病院の分業、分離、これらは最重要であり、真っ先にやるべきだったが、遅れた。これは理解はできる。これまでの医療行政の立て付けから行って、制度に対する考え方を変える必要があったからだ。この柔軟性のなさは課題だが、そういう失敗、出遅れは理解できる。また、検査の方針、クラスター対策も、早めに二正面作戦に移るべきだったのが、最初のやり方に固執するのも、失敗だが、理解できる。また、日本医師会という団体が手ごわすぎて、いつも厚労省の政策が妨害されるのは大変残念だが、事実としてある。オンライン診療を2月いや3月になってもつぶしたのは医師会だし、4月に行うこととなってからも、例外中の例外と念を押す。緊急事態宣言を求めたが、その陳情書の中身は、病院に休業補償をしろという唖然とする内容。しかし、仕方がない。それが現実だ。これを打破してほしいが、打破できないのは理解できる。
しかし、一番理解できないのは、産業政策、経済官庁による動員政策だ。
なぜやらない?やらなかった?
布マスクの生産を依頼し、400億円あまり予算が自由に使えるなら、医療崩壊を守るための病院用マスク、防護服の生産を真っ先に全額出してもやるべきだったし、私もうかつだったが、当然やっているものだと思っていた。
それをいまさら。しかも、在庫買い上げというが、設備投資も政府が出したらよい。なぜそれができない?
医療行政と違って、反対する団体はいない。抵抗勢力はいないのだ。やればいいだけなのに、なぜだ?
布マスクのアイデアは経済官庁の官僚のものだと報道されている。そのアイデアを出す前に出すアイデアがあるだろ。アイデアでもなんでもない、誰でもやると当然思っていることだ。
理解できない。
これをメディアも求めなかったし、国民も緊急事態宣言や休業補償、金を配れというばかり。
理解できない。
そして、メディアも知事と官邸のせめぎあいばかりに関心があり、国民も、そのパフォーマンス競争に勝った知事たちを賞賛しているようだ。あほなのか。
ついでにニューヨークのことばかり報道して、ニューヨークの医師たちの東京への警告ばかりに気を取られ、韓国がロックダウンもせずに、人の流れを8割減らすどころか、2割しか減らさずに抑え込みに大成功していることからなぜ学ぼうとしないのか、韓国の報道をしないのか。韓国は2月の時点でほとんどの対策を打って成功させている。
そして、SNSでは意識高い系の人々が、stay home だかなんだか知らないが、ロゴを自分の写真に貼り付けて喜んでいる。欧米は韓国やシンガポール、台湾のように有効な政策をうつ能力がないから、何もできないことをあたかも良識ある唯一の解決策のように美化しているだけで、それを喜んでまねしているのも馬鹿馬鹿しくてあきれる。まあどっかの都知事も喜んでくりかえし叫んでいたが。
まったく理解できない。 
 4/17

 

●日本国内の感染者9800人 4/17
国内で1万人を超えた新型コロナウイルスの感染者。このうち4月17日までの9800人余りについて、年代や感染経路などのデータを詳しく分析しました。その結果、最近の感染拡大の特徴が見えてきました。
9852人のデータを分析
NHKは、全国の放送局を通じて自治体が発表した感染者の性別や年代、職業、感染経路などのデータを集め4月17日の時点の9852人について分析しました。
人口10万人あたりの感染者、東京に続き北陸が上位に
感染者の実数で最も多いのは東京都、次は、大阪府ですが、人口10万人あたりでみるとまた違った順位になります。東京都の20.1人に続くのは、石川県の14.1人、そして福井県の13.5人でした。高知県も9.0人で8番目になっていて、全国平均の7.8人を上回りました。北陸などでなぜこのような結果になるのか。これらの地域では、特定の企業や医療機関などで集団感染とみられるケースが発生していました。地方でも感染拡大が深刻になっていることがうかがえます。
男女別・年代別で見ると 20代女性の感染者が多い
感染者を男女別と年代別で比較します。
男性で割合が多いのは、次の年代です。
•40代 19.6% / •50代 18.8% / •30代 16.3% / •20代 14.6% / •60代 12.9%
男性で割合が少ないのは、次の年代です。
•90代以上 0.8% / •10歳未満 1.1% / •10代 1.8% / •80代 4.6% / •70代 8.8%
女性で割合が多いのは、次の年代です。
•20代 20.2% / •50代 16.2% / •30代 15.1% / •40代 14.0% / •60代 10.3%
女性で割合が少ないのは、次の年代です。
•10歳未満 1.4% / •10代 3.0% / •90代以上 3.0% / •80代 6.9% / •70代 9.3%
注目されるのは20代女性の感染の多さです。
男女別・年代別 人口あたりで見ると
人口10万人あたりで見ると、女性で最も多い20代女性は13.4人となっています。男性で最も多い50代は13.2人となっています。20代女性の感染がなぜ多いのか。日本感染症学会の理事長で東邦大学の舘田一博教授は、医療や介護の現場で働く人や、接客業の人たちなどに、若い世代が多い可能性を指摘したうえで、「さらに詳しい解析が必要だ。誰もが誰かに感染を起こしてしまうリスクがあるという意識で行動することが重要だ」と話しています。
発表日ごとに年代別の割合を見ると 30代以下で増加傾向
国内の感染拡大のなかで、年代別にはどのような変化があったのか。発表日ごとの年代別の割合を3月から見てみます。
•3月上旬から中旬にかけては「60代以上」が多く、「30代以下」が少ない傾向で推移。
•3月の終わりごろからは逆に「30代以下」がほかの年代を上回り、「60代以上」が比較的少なくなる傾向になりました。これは、東京などの都市部で感染者が急増した時期と重なります。
•その後、4月中旬以降では年代別の割合の差が小さくなる傾向になっています。
都市部と並行して高齢者の割合が高い地方でも感染が拡大したことで、世代の差が小さくなっていくのでしょうか。
感染経路が推定できる人 不明な人 その割合は
感染経路が分からない人が増えていることについてデータから見てみます。3月下旬以降、1日ごとの割合の変化をみると、やはり、感染経路が推定できる青い色の割合が日に日に少なくなってきたのがわかります。全体の半数以下にまで減る傾向になっています。
感染経路が推定できる人 不明な人 年代別では
感染経路が推定できる人とできない人の割合を年代別に見てみます。10代以下や、70代以上では推定できたケースが半数を上回ったのに対し、20代から60代では感染経路が推定できたケースが半数を下回り、とくに、30代から50代で感染経路がうかがえない傾向が顕著になっています。
感染経路が推定できる人 不明な人 職業別でも特徴が
職業別では、介護士や介護施設の利用者などの「介護・福祉」、大学生や学校の教員など「学校・教育」、医師や看護師などの「医療関係者」などで感染経路が推定できるケースが多いのに対し、「飲食・接客」や「会社員など」は感染経路が推定できる割合が少ない傾向となっています。感染者の職業は半数程度しか公表されず、職業の分類も自治体によって異なるため、あくまで参考のデータですが、病院や介護施設といった感染経路が推定しやすいケースと、飲食・接客のような不特定多数の人に接するケースとで、傾向に違いが出ているといえそうです。
専門家はどう見る
今回の分析結果について、日本感染症学会の理事長で東邦大学の舘田一博教授は次のように話しています。
《地方でも感染が増えていることについて》 「人口が多いところで患者数が多くて、その後、地方にと考えていたが、ある地域では3密を起こしやすい環境が作られている可能性がある。今は感染のまん延期なので誰でも感染してもおかしくない状況だ。患者数の多い都心から地方に移動した人を中心に集団感染が起きてしまう可能性があるので注意が必要だ」
《20代女性の割合や40代男性の割合が多いことについて》 「この感染症は人と人との接触で感染のリスクが高まるのでさらに詳しい解析が必要だ。40代、50代の男性は働き盛りで多くの人に会い、移動もする。夜の街に出て行く機会も多いのかもしれない」
《データ全体から言えること》 「男女、年代にかかわらず、誰でも感染を受けるリスクがあるし、誰もが誰かに感染を起こしてしまうリスクがあるという意識で行動することが重要だ」 
●なぜ、日本は新型コロナに強かったのか  4/17
日本政府の新型コロナウイルスへの対策は不十分だったのだろうか? たしかにダイヤモンド・プリンセス号の対応に関しては、「公衆衛生の危機対応として、教科書に載るような悪い例」と米有力紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が報じるなど、国内外から大きな批判を浴びた。しかし、ふたを開けてみればどうだろうか。韓国、イタリア、イランの感染者数・死亡者数が目立ち、ヨーロッパ各国も軒並み日本よりも深刻な状況だ。日本は現状、被害を最小限で食い止めたという見方を、元外務省主任分析官の佐藤優氏が示す。
「日本政府の対応ですが、私はスピーディーに行われていたと見ています。たとえば、WHOは2020年1月30日に、新型コロナウイルスを世界的な緊急事態と宣言しています。日本はWHOの決定を待ってから動くことが恒常的ですが、それよりも早く手を打っている事例もあります」
あまり表には出ていない話だというが、発生当初、医務官を含む日本大使館員が北京から武漢へすぐに駆けつけた。チャーター機を飛ばして邦人を帰国させるという動きがあったという。
また、20年1月28日には「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令」が公布された。しかし、法律では「公布の日から起算して10日を経過した日から施行する」と決められているため、施行は20年2月7日となるはずだった。
「1月30日の参議院予算委員会で、鈴木宗男参議院議員が、加藤勝信厚生労働大臣と安倍晋三総理に、『人の命に関わることなのだから、速やかに施行すべきではないか』と質問をしました」
すると翌日の朝8時すぎ、首相官邸から鈴木宗男氏のもとに、「前倒しして、明日(2月1日)から施行する」と連絡があったという。この政令が施行されたことで、検疫官が必要と判断すれば、感染が疑わしい人に診察や検査を受けさせる、従わない人には罰則が科されることになったのだ。
「この対応は評価すべきです。日本政府には内閣法制局という法の番人がいる。今回の政令には罰則があります。それを出すときは、国民に周知徹底期間を持たせないといけないと決まっている。その政令を知らない人にまで罰則を科すことになってしまうからです。これは民主主義国としては当然のことです」
内閣法制局は簡単に突破できる関門でもない。それを動かした政府の功績は大きいと佐藤氏は話す。
地理的にも中国に近く、20年2月下旬までは相対的に見て世界でも感染者数が多かった日本。しかし、20年3月に入り、急激にヨーロッパでの感染者数が増えだし、日本を抜き去った。それでもなお、日本政府の対応は批判される。
「ロシア科学アカデミー心理学研究所のアレクサンダル・ヴォロビヨフさんによると、感染症蔓延時の心理はマスコミに左右されるそうです。
流れとして外国人嫌悪のムードが当然出てきていますが、これは恐怖感をあおるようなマスコミの情報に対する一種の防衛反応です。
私は普段テレビを見ませんが、先日病院に行ったついでに待合室のテレビでワイドショーを見ていたら、やはり私でも怖くなってくる。それから映画やドラマの影響もある。感染症で人類滅亡みたいなカタストロフィーをテーマにした作品がたくさんあるでしょう。そういったものでみんな感染症の怖さが刷り込まれているのです。
本来、ショッキングな内容を避け、危機的な事態であってもパンデミックを引き起こさないためにどういった行動を取るべきか、それを伝える必要がある。しかし、マスコミはそれができていない」(佐藤氏)
日本政府は20年3月5日、事実上中国人と韓国人の入国を制限した。今後求められるのは現在の感染拡大地域であるヨーロッパからの渡航制限だろう。日本の対応は間違っていなかったと国民が納得できる結果にするためにも、スピーディーな対応を期待したい。 
●東京で新たに201人感染、200人超えは初めて 4/17 
16日に149人の新型コロナウイルス感染が確認された東京都。17日は新たに201人の感染が確認されました。「本日判明いたしました感染者の人数でありますけれども、本日200を超えました。201名の感染が判明いたしまして、非常にひっ迫している状況が続いているということには変わりありません」(東京都 小池百合子 知事) 都内の一日の感染者数が200人を超えたのは初めてで、これまでの都内の感染者の数は2797人に上ります。  
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●日本はコロナ危機ではなく人災だ 4/23
<日本より遅れてコロナ危機に襲われた欧米では、大きな犠牲を払いながらももう経済再開へのギアチェンジが始まっている。中国、韓国は既に走り始めた。ところが日本は、今ごろ医療崩壊の危機に直面し、緊急事態宣言を全国に拡大したばかり。なぜこんなに対応が遅れたのか>
欧州はまだ死亡者は増え続けているが、早くも経済活動再開のタイミング、やり方に議論が進んでいる。死者が4万5千人を超え、まだ毎日2500人以上死んでいる米国ですら、再開の時期、やり方をめぐって論争が起きている。再開を求めてデモが起きているほどだ。
アジアではいち早く活動を再開している。それは予想を上回るスピードで収束のめどを立てられたからで、台湾、韓国は世界中から絶賛される対応で乗り切り、中国でさえも経済活動の回復では世界の先陣を切っている。
一方の日本は、緊急事態宣言を4月7日になってから行うというもっとも遅れた動きをし、さらにいまさら、14日にこれを全国に拡げた。さらに、これでは不十分で活動制限をどう強化すべきか、という議論さえ4月22日の今、行われている。
なぜ、日本はこれほど対応が遅いのか、遅かったのか。
科学より世論優先
理由は2つある。
1つは専門知識の不足と軽視である。
政府の感染防止策、対応策は、世論に突き動かされたもので、その世論も、一部のメディアで煽る専門家に振り回されて、かつそれをSNSで増幅した、論理的でないものであり、科学的なアプローチ、検討を致命的に欠いているものであった。しかし、それに対応する形で、専門家を集めた会議などを行っておきながら、結局は、世論優先で政治的に対応を決定してきたために、非常にチグハグで、効率の悪いものになった。
しかし、もう1つは、そしてこちらが決定的に重要なのであるが、日本のコロナ危機は、世界でもっとも深刻度が低いものであったからだ。
死者が出ているから、このような発言は避けるのが普通だが、そのため誰も言えなくなっているが、あえて言うと、日本のコロナ危機は相対的に深刻でなかったし、いまだにそうだ。死者は増え続けているが、いまだに300人弱であり、米国の約200分の1だ。対応を絶賛されているドイツですら死者は5000人を超えている。イタリアはいうに及ばず、スペインもフランスも2万人を超え、イギリスは1万8千で今週に2万を越えるのは確実だ。人口は日本の半分でこれだから、人口比で言ったらとてつもない日本との差だ。
この結果、日本の人々は、真の意味での危機感がなく、ただの空騒ぎをしているのである。
切実な声は、ほとんどが中小企業、とりわけ飲食店からのものだ。このままではつぶれてしまう、死んでしまう、というものだ。ほとんどすべては経済的な危機なのである。
一方、政府は最大限の対応をしている。中小企業への資金繰り融資は世界的にももっとも経験豊富だ。政府系金融機関がこれほど発達している国は先進国ではない。これに加えて、民間金融機関を通じても資金繰り支援を行うことを政府はいち早く打ち出し、5年間返済猶予の無利子無担保という世界に類のない破格の支援策だ。日本ではこれが破格だと認識されていないのは、日本政府はいつもこの手の資金繰り支援を行っており、公的金融機関も慣れているから、特別感がなく、当たり前と思っているからだ。そして、いつもやっているから、動きは迅速だった。米国も、今回は史上初の試みをFRB(米国の中央銀行)が行い、中小企業に対する金融支援措置が議会を通過したが、その37兆円の融資保証枠が早くも枯渇し、追加措置が決定し、30兆円超の保証となる見込みだ。一方、経験豊富な日本は融資資金が枯渇していない。
しかし、これではだめだと日本の飲食店の人々が訴えているとメディアは報道している。理由は、いつまでこれが続くか分からないので、借金はしたくない。なんとかしてくれ、というものだ。
政府に現金給付を求めるな
これは真の危機感がないことの表れだ。本当にいつまで続くか分からないのであれば、政府の支援金で売り上げゼロで長期にわたって維持できるとは思えないから、一日でも早く廃業し、止血するべきである。投資をかなりしていて続ける意思が強いなら5年返済猶予の無利子無担保の融資を受けて資金繰りをしのぎ、2月半ばから5月半ばまでの3カ月の売り上げの急減による赤字を5年かけて返済する方策を採るしかない。危機である米国は生き残りをかけて従業員を解雇したため、1カ月で2000万人の新規失業者が生まれ、37兆円の資金支援措置は、従業員に対する休業手当を払うための支援であり、米国ですら給付ではなく、融資支援だ。
日本の飲食店の難しさは賃料の問題で、日本の不動産取引慣行は柔軟性に欠けているという問題点がある。政府に訴えるべき点はこの点で、家賃の猶予、減免をオーナーと交渉するために政府が全力で支援するべきだ(政府は、オーナーに減免した場合の優遇措置を決定した)。
つまり、日本政府の中小企業支援の体制は世界最高水準なのである。オーナーと家賃交渉をとことんする前に、従業員を解雇する前に、政府に現金を要求するのは順番が違う。まずは経営者として、賃金と家賃に関する政府の支援を全面的に活用し、従業員には休業手当で耐えてもらうか、解雇して失業手当で耐えてもらうか説得し、家主と交渉する。これが経営者としての現在緊急にやることのすべてであるし、それでも継続が難しいと判断するなら廃業するべきである。
しかし、世論は政府に現金給付を求め、政府ができないというと、自治体が現金を給付することとした。東京都は50万、あるいは100万円を配る。そんな国は世界中どこにもない。
なぜ日本だけができるのか? 危機が他の国ほど深刻でないからである。米国でやったら、あっというまに国家破産である。
一方の政府も危機感がないから、世論対策で消費者を含む全国民に14兆円を配ることにした。もし危機が深刻なら、14兆は消費者に一円も配るべきではないし、その余裕はなく、すべては失業者、倒産防止のための資金繰りの金融支援に投入するべきだし、そうしないと持たない。
医療崩壊は起きている。すでに大きな危機だ、という意見が大多数だろう。しかし、ニューヨークの惨状に比べれば、危機ではない。いまだに、新型コロナ専用とそれ以外の病院の分業を完全に実施せずに行っているのは、それでもぎりぎりしのいでいる、しのげるという認識があるからだ。現場が悲鳴を上げているとしても、全体としては今までの制度の延長でしのげると思っているから、抜本的な変更、分業の完全実施を行っていない。
なぜ必死で韓国に学ばないのか
保健所も、紙と鉛筆と電話で、感染者の経路を追っている。これは太平洋戦争当時の戦車に竹やりで向かう以上の戦いで、ロケットに弓で対抗しているようなものだ。韓国に学び、韓国のやり方を100%まねするべきだと思うが、そうしないのは、スマホを用いて、最先端のテクノロジーを総動員しなくてもしのげると思っているからだ。
人々も10万円を政府に配らせて勝利だというネット世論が盛り上がるぐらい余裕があるのである。危機ならばカネはすべて医療と失業者に集中させなければいけない。
しかし、それでもコロナは徐々に収まっていくだろう。そして、日本は韓国と異なり、SARS、MERSから学ばなかったように、今回のコロナでも根本的な変化が起きず、次の感染症の危機のときも、危機感のない対応でしのごうとするだろう。そして、いつか本当の危機がやってきて、そのときに初めて、危機感が生まれ、日本も危機対応をする体制に代わっていくだろう。
今回のコロナ危機で、政府の対応が諸外国に比べて周回遅れの対応になってしまったのは、危機感が国民全体になかったからであり、今ですらないからであり、それは相対的には欧米ほどの危機ではなかったし、今でもないからである。
そして、経済的な悲鳴が出ているのは、危機ではないのに、中途半端に危機だと煽った、政治家、メディア、人々が多数派であったからである。そのために、余計な対策ばかりに奔走し、マスクや10万円を配るという危機感のない対応をすることなり、知事たちも政治活動に熱心で、休業をお願いするのにカネを配るという世界的に例を見ない、人々に媚びた対応をしたのである。余裕がありすぎたのだ。本当に危機なら、休業は必須だし、カネをもらわなければやらないというような行為は許されないはずだ。今のパニックはコロナによるものでなく、真の危機感のない人々が大騒ぎしたことによって起きた人災だ。
危機ではないし、危機感もない。これが日本のコロナショックの本質だ。 
 4/24

 

●NY州民3000人検査で14%に抗体確認 コロナ感染270万人か 4/24
米ニューヨーク州のクオモ知事は23日の会見で、州内で無作為に選んだ3000人に新型コロナウイルスの抗体検査を行った結果、14%近くの人が抗体を持っていることがわかったと発表した。
州人口をもとに試算すると、これまでに約270万人が新型コロナに感染した計算になり、実際報告されている感染者よりもずっと多くなる。
一方、この推定感染者数(270万人)と州の死亡者集計(約1万5500人)で算出した推定死亡率は0.5%となる。これは、一部の専門家が懸念していたよりも低い水準。
23日時点でニューヨーク州の感染者は26万3460人。死者は1万5740人と、感染が確認された人の約6%。
クオモ知事は、州の死亡者について、病院や介護施設で亡くなった人を集計しており、自宅などで亡くなりCOVID−19(新型コロナウイルス感染症)と診断されていない人が含まれていないため、実際にはもっと多い可能性があると説明した。
検査は、買い物で外出していた人を対象に行ったため、恐らく、スーパーの店員やバス運転手など、生活に欠かせない仕事をする人はさほど含まれていないと指摘。また、検査対象者となった人は、家から全く出ない人よりは抗体を持っている可能性が高いとの見方を示した。
ただ、こうした要因を踏まえた上でも、今回の初期段階の検査によりウイルス感染状況の理解が増したと説明。経済再開に向けた判断材料になるとし、外出制限の緩和などを地域ごとに検討する可能性があることを示唆した。
一方、抗体検査で陽性反応が出た人が免疫を獲得したと言えるかどうかは、疑問が残ると述べた。 
 4/25

 

●コロナ感染を謝罪させる異常で危険な日本社会  4/25
感染者が当然のように謝る風潮
「チケットを買って下さった皆さまにも、役者、スタッフにも、家族にも、悲しい思いをさせてしまい、本当に申し訳ございません」
3月31日、俳優で脚本家の宮藤官九郎さんが、新型コロナウイルスに感染していたことを公表し謝罪した。
その前日には、ヴィッセル神戸のJリーガー酒井高徳選手も自身の感染を公表、「今回はサポーターの皆さんや一般の方々、全選手、スタッフ、その家族やご友人に不安とご迷惑をおかけしてしまうことになり、本当に申し訳ございません。(中略)多くの方々にご不安やご迷惑をかけてしまっていること、全ての皆様に心からおわび申し上げます。大変申し訳ありません」とコメントの中で繰り返し謝罪した。
さらに直近では、報道ステーション(テレビ朝日)のメインキャスターを務める富川悠太アナウンサー、そして俳優の石田純一さんが相次いで自らの感染を公表、この2人も「ご迷惑をおかけした関係者の皆様」に対して謝罪するコメントを出している。
新型コロナウイルスの感染が急拡大していくなかで、今後も著名人の感染が次々と明らかになっていくことが予想されるが、このように感染した人が謝罪するという行為、感染者が謝罪することを当然のことと見なす風潮は、感染症の拡大抑止には逆効果となり、実は非常に危険である。本稿では、なぜ感染した人が謝ってはいけないか、謝るのが当然とする社会がなぜ危険なのかについて、医師の視点から論じてみたい。
感染者の謝罪は社会人として当然の行為なのか?
新型コロナに限らず、これまでも、カゼや発熱などで仕事を休んだときに「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と職場の同僚や上司に謝っていた人も少なくないのではなかろうか。
確かに「自分さえ休まなければ、業務も滞りなく進捗したはずであるし、他の人の負担も増えなかったはずである。自分の行うはずだった仕事を肩代わりしてくれた人に申し訳ない」という気持ちは、自然なものかもしれない。
しかし実際の職場では、そのような自発的な謝罪ばかりとは限らない。過去に休んだ際、同僚や上司に嫌みを言われたり、自己管理の不徹底を非難された経験を持つ人なら、謝らずには許されない状況に追い詰められているだろうし、またそのような空気が充満している職場では、「謝罪」は社会人として当然の行為として認識されていることだろう。
では、逆の立場となった場合はどうか。つまりあなたの同僚や部下が体調を崩して休んだ場合、あなたは、その休んだ人に謝罪を求めたくなるだろうか。休んだのが上司であった場合は、どうか。休んだ上司に対して、「あなたが休むものだから、企画を中止せざるを得なくなったじゃありませんか」と責めるだろうか。休んだ人から「迷惑かけてすまなかった」との一言がないと、不愉快な気持ちになるだろうか。
感情論はさまざまあるだろうからさて置き、ここでは医療社会学的に考察してみることにしたい。
病気の人が期待されている役割とは何か
「役割期待」という言葉を耳にされたことはあるだろうか。
「役割期待」とは、「役割」つまり「ある地位について、その地位にふさわしい振る舞い」を、その人がその役割通りに振る舞うことを他者が期待することを言う。
例えば、学校の教師には「生徒にわかりやすい授業を行う役割」が期待されている。一方、生徒には「教師の行う授業を妨害しないで静聴する役割」が期待されていると言える。私たち医師は、患者さんに「丁寧な問診と診察、わかりやすい説明のもとに治療を行う役割」が期待されていると言えるだろう。
では患者さんの役割、すなわち「病人役割」とはいかなるものだろうか。さらに、病人の役割だけでなく、病人を取り巻く人々には、いかなる役割が期待されているのだろうか。
病人には「できるだけ早く病気の状態から回復すること」が期待されており、またそれを達成するために「医師に援助を求め、その指示に従うこと」が期待されている。
一方、病人を取り巻く人々には「病人が病気になる前の役割期待通りに振る舞うことができなくとも問題視しないこと」が期待され、さらに「病人が病気の状態にあることについて、当該病人に責任を負わせないこと」が期待されている。
つまり、病人は、なるべく早く回復するように、体力を温存してゆっくり休むことがその役割として期待されているのであるから、「休む」という行為こそが病人にふさわしい振る舞いなのであって、仕事に穴を開けないようにと、病をおして無理に出勤することは、病人にふさわしい振る舞いとは見なされ得ないのだ。
病人の周りの人に期待される「役割」とは…
一方、病人を取り巻く人、例えば職場の同僚や上司には、カゼを引いた従業員に対して「カゼくらいで休むな、仕事に来い」と発病前の役割期待通りに振る舞うことを強要したり、「カゼなんか引くのは自己管理が悪いせいだ」と責任を問うたりしないことが期待されているということになる。
これらの病人役割、病人を取り巻く人の役割を冷静に考えれば、新型コロナに感染した人が、感染前に期待されていた役割を全うできなくなったことについて謝罪する必要は全くないということ、さらに周囲の人が、感染した人に対して謝罪させるような空気を作ることや、感染してしまった責任を当人に負わせるべきではないことが容易に理解できるはずである。
しかも新型コロナウイルスは非常に感染力の強い感染症だ。罹患者には、回復することが期待されているだけでなく、周囲に感染を拡大させないことが期待されている。
休むことは危機管理に貢献すること
拙著『病気は社会が引き起こす インフルエンザ大流行のワケ』(角川新書)でも述べたが、カゼであれ、インフルエンザであれ、もちろん新型コロナであれ、ヒトからヒトへ伝播してゆく感染症だ。そしてこれらは、検査によって確実に峻別することはできない。PCR検査によって陰性との結果が出ても、それが非感染の証明にはなり得ないことは、もはや周知の通りである。
最近「カゼ症状があるなら、取りあえず受診して新型コロナではないかどうか診断してもらった上で、出勤するように」と会社の上司から指示されて受診する人が増えてきているが、その指示を出した者は管理者として失格だ。いかなるウイルスが原因であろうと有症状者には自宅安静、職場には来させないようにすることが、感染拡大抑止策であり危機管理というものだからだ。
さらに管理者は、従業員が体調不良を隠すことなく訴えて休みを求めた場合には、肩身の狭い思いをさせることなく休めるよう配慮すべきであるし、従業員の休むという行為については、危機管理、組織防衛に貢献する極めて適切なものであると評価あるいは称賛することによって、他の従業員にも同様の認識を持つよう啓発すべきであろう。
感染者をたたくことは水面下での感染爆発を生む
これとは逆に、感染してしまった人に対して、過去の行動を不用意だと非難したり、自己管理の不徹底だと断じることによって、感染の原因と責任を当事者にすべて負わせることが常態化している組織や社会では、感染経路が表面化しなくなるだけでなく、感染者が感染の事実さえも隠そうとすることにもつながりかねず、非常に危険だ。
当然ながら、ウイルスというのは、日常生活の中では誰の目にも見えない。感染している人としていない人を、見分けることもできない。
もし自分が感染してしまったときに、過去の自らの行動を振り返って、「あの外出のときに感染したのかも?」と思ったところで、本当にそのときに感染したのかを特定することは極めて困難だ。
ましてや無関係の第三者が、感染者の過去の行動と感染成立の因果関係を証明するなど完全に不可能だ。それにもかかわらず、ネットの世界などでは、無関係な第三者が、感染者の過去の行動を不用意だとして非難、いわゆる「炎上」させるなどして、集団でたたく行為が少なからず見られる。しかし感染者の行動を非難したたいたところで、感染拡大抑止には、何ら効果を発揮しない。抑止にならないばかりか、感染者をたたいたり、スティグマ化することは、感染者を孤立化、潜在化させ、さらに水面下での感染爆発をも誘発させかねない危険な行為と言えるだろう。
「不用意な行動」かどうかは当事者しかわからない
「不用意な行動」については、感染してしまった当事者本人が、過去の自らの行動をさかのぼって思い出して反省するだけで十分だ。仮に不用意な行動であったと自省した場合でも、それが故意に感染拡大を企図した行動でないのであれば、謝罪も一切不要である。
自由な行動が制限される閉塞した現状だから、「自分は我慢しているのに、勝手な行動しやがって」という気持ちから非難したくなる人もいるだろう。しかし、人をたたいたところで、現状が変わるわけでもない。「自分は気をつけよう」と自ら気を引き締めるだけで十分ではないか。
そもそも人は、それぞれに異なった事情を抱えながら生きている。
第三者には「不用意な行動」と見えるものでも、当事者にとっては生活に必要な行動という場合もあるのだ。その事情を熟知しない人たちが、勝手な思い込みや感情だけで、他者の行動を「不用意」であると断じて非難したたくことが放置される社会のままでは、今後さらに感染拡大が進むなかで、多くの感染者が見えない水面下で増殖していってしまうだろう。そのことが非常に危惧される。
休業手当がないゆえの「コロナ隠し」の可能性
現在、感染者は原則入院だが、今後は軽症者はホテルなどの施設に隔離となる方向だ。さらに爆発的に感染者が増えれば、それらの施設も不足し、軽症者は原則自宅隔離となることも避けられないかもしれない。いずれであれ、隔離されるということは、通常業務ができなくなるということだ。
厚労省がHPで公開している企業向けの見解では、「新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には『使用者の責に帰すべき事由による休業』に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。」とされているから、感染してしまうと、生活を回していくのに必要な収入を得ることができなくなってしまう。
ただでさえ、緊急事態宣言に伴い大幅に経済活動がシュリンクし、多くの業種で減収となっている状況だ。さらに隔離されて仕事もできないとなれば、それを契機に雇い止めとされたり、そのまま解雇とされてしまうかもしれない。そのような不安定な雇用環境に置かれた、ごく軽微な症状あるいは無症状の感染者が、感染した事実を職場に言わずに出勤するという事例が今後増えてきたとしても、何ら不思議な話ではない。
そのような行動を選ばざるを得なかった人のことを、非難したたくことはできるだろうか。感染は誰にでも起こり得る。明日はわが身かもしれないのだ。
感染拡大抑止には、感染してしまった人が、いかに周囲に気兼ねなく、収入を心配することなく療養できるかにかかっている。休業した場合でも、十分な所得補償がなされるのか。感染した事実を正直に申し述べても、非難や差別されることなく、雇い止めや解雇といった不当な扱いを受けることが絶対にないという保証はあるのか。それにかかっているのだ。その環境を整える役割が期待されているのは、感染してしまった人の周囲にいる人たち、そして最も重要な役割を期待されているのは政府だ。
自粛はさせるが補償は渋る、という現政権に期待が持てない現状では、自身の生活を守るために、感染を広げてしまう行動を取らざるを得ないという人も、少なからず出てくるだろう。しかし、そのような人のことを身勝手だとたたいたところで感染爆発は止められない。そういった人たちをいかに減らすか、それは政府が手厚い補償を約束するなど、命と生活を保障する対策を講じることでしかなし得ないのだ。
謝罪の慣習は今こそ葬り去るべき
感染した人が謝ることに違和感を持たない社会、感染した人の行動を非難したたく社会、感染は自業自得で自己責任であるという社会、感染者を孤立させる社会は、国民の公衆衛生、社会保障、社会福祉に本来責任を負うべき為政者が、その責任から逃れたい場合には、非常に都合の良いものかもしれないが、そのような社会は、増殖し拡散し続けたいウイルスにとっても、非常に快適なものであるとも言えるだろう。
「カゼでも絶対に休めない」というマインドが、長きにわたって、あたかも称賛に値するものであるかのように扱われてきた日本の社会だが、新型コロナの上陸によって、そのこれまでの“常識”は、180度転換せざるを得なくなった。「休んだときに謝るのは社会人として当然だ」との“常識”も、危険な過去の因習として、今こそ葬り去るべきときだ。
感染してしまった人が謝らなければならないという、異常で危険な“常識”を守り続けている限り、新型コロナを克服する日が、この国に訪れることはないだろう。 
●多賀城市の20代女性が感染 宮城は85人に 4/25
宮城県は25日、多賀城市内の20代女性飲食店従業員が新型コロナウイルスに感染したと発表した。感染経路は不明。県内の感染確認は20日以来で、計85人となった。
県によると女性は12日に下痢の症状があり、15日に発熱。16日に熱が下がったが、18日に嗅覚と味覚障害の症状が現れた。24日に医療機関を受診し、帰国者・接触者相談センターに相談。25日に陽性と判明した。入院予定だが、重篤ではない。女性は症状が現れてから14、17日に県内にある飲食店に出勤した。県が同居家族以外の濃厚接触者を調査している。 
●新型コロナウイルス、現在の感染者・死者数 死者19.3万人に 4/25
AFPが各国当局の発表に基づき日本時間25日午前4時にまとめた統計によると、世界の新型コロナウイルスによる死者数は19万3930人に増加した。中国で昨年12月末に新型ウイルスが最初に発生して以降、これまでに193の国・地域で計277万750人余りの感染が確認され、少なくとも73万6800人が回復した。
この統計は、各地のAFP支局が各国当局から収集したデータと世界保健機関(WHO)からの情報に基づいたもので、実際の感染者はこれよりも多いとみられる。多くの国では、症状が特に重い患者にのみ検査を実施している。
最も被害が大きな米国では、これまでに5万360人が死亡、88万4004人が感染し、少なくとも8万1338人が回復した。米国に次いで被害が大きい国はイタリアで、死者数は2万5969人、感染者数は19万2994人。
以降はスペイン(死者2万2524人、感染者21万9764人)、フランス(死者2万2245人、感染者15万9828人)、英国(死者1万9506人、感染者14万3464人)となっている。
香港とマカオ(Macau)を除く中国本土ではこれまでに4632人の死亡と8万2804人の感染が発表された。24日の新規感染者は6人のみだった。
日本時間の24日午前4時以降、初の死者が発表された国はシエラレオネ。
地域別の死者数は、欧州が11万9211人(感染132万9695人)、米国・カナダが5万2689人(感染92万7543人)、アジアが7664人(感染18万8320人)、中南米・カリブ海(Caribbean Sea)諸国が6815人(感染14万2389人)、中東が6122人(感染14万6298人)、アフリカが1326人(感染2万8542人)、オセアニアが103人(感染7964人)となっている。 
●東京都内 新たに103人感染確認 計3836人に 新型コロナ  4/25
国内では25日、午後6時までに新たに212人の新型コロナウイルス感染者が確認され、クルーズ船の乗船者を除く累計は1万3000人を超えた。東京都では103人の感染が判明。累計では3836人となった。
東京都では17日に最多の201人を記録。その後は100人台が続いている。また、千葉県、神奈川県、富山県で計3人の死亡が判明し、国内の死者は累計で361人となった。  
●国内感染確認 1万3000人超える (横浜港のクルーズ船除く)  4/25
25日は、午後5時半までに東京都で新たに103人の感染が確認されるなど、14の都と道と県で合わせて187人の感染が確認されました。国内で新型コロナウイルスの感染が確認された人は、少なくとも1万3050人となっています。このほか▽横浜港のクルーズ船の乗客・乗員が712人で、あわせると少なくとも1万3762人となります。また、25日は3つの県で合わせて3人の死亡が発表され、亡くなった人は、国内で感染した人が348人、横浜のクルーズ船の乗船者が13人の合わせて361人となっています。
日本で感染が確認された人のうち、東京都は3836人、大阪府は1446人、神奈川県は912人、千葉県は790人、埼玉県は781人、兵庫県は618人、北海道は601人、福岡県は594人、愛知県は475人、京都府は286人、石川県は224人、富山県は169人、茨城県は157人、岐阜県は149人、広島県は145人、群馬県は140人、沖縄県は134人、福井県は120人、滋賀県は93人、宮城県は85人、奈良県は77人、高知県は72人、福島県、山形県は66人、新潟県、長野県は65人、静岡県は62人、大分県は60人、栃木県、和歌山県は52人、山梨県は51人、愛媛県は47人、三重県、熊本県は45人、佐賀県は36人、山口県は31人、香川県は28人、青森県は22人、岡山県は21人、長崎県、宮崎県は17人、秋田県、島根県は16人、鹿児島県は10人、徳島県は5人、鳥取県は3人です。
このほか、空港の検疫で確認された人や長崎港に停泊しているクルーズ船の乗組員などが24日までに合わせて234人となっています。このクルーズ船では25日新たに、乗組員60人近くの感染が確認され、船内の感染者は合わせておよそ150人にのぼる見通しとなりました。さらに中国からチャーター機で帰国した人が14人となっています。また、厚生労働省によりますと、重症者は24日までに国内で感染した人などが263人、クルーズ船の乗船者が4人の合わせて267人となっています。一方、24日までに症状が改善して退院した人などは、国内で感染した人などが2536人、クルーズ船の乗客・乗員が645人の合わせて3181人となっています。 
●陽性率、都内で急上昇 検査少なく実態見えず 4/25
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、専門家はPCR検査で感染が確認された陽性者の数だけでなく、検査件数に対する「陽性率」の推移にも注目している。日本のように検査数が少ないと、陽性率が高くても実際の陽性者の数を把握できない。そのためオーバーシュート(爆発的患者急増)などになっていても気付かない恐れがあり、非常に危険という。「これでは有効な対策を立てられない」として、検査数を増やし、詳細な陽性率を公表する必要性を訴えている。
検査した日と結果が判明した日にずれがあるなどするため、厚生労働省は正確な陽性率として公表していないが、全国の陽性者数を検査数で割った数値を公表しており、目安にはなる。四月二十一日までの累積で全国平均は10%だった。三月二十一日までは5%で、上昇傾向といえる。
一方、国内で最多の感染者を抱える東京都で計算すると、高率になる恐れが判明した。曜日ごとの増減を平準化するため、一週間ごとに足し上げた陽性者数を一週間の検査数で割ったところ、二月から三月中ごろまでは0〜7%。しかし三月十五日からの週は16%、二十二日からの週は32%と上昇した。四月十二〜十八日は63%になった。
都の担当者は高率の理由について「感染が疑わしい人、治療に結び付けないといけない人を集中的に検査している」と説明する。
これに対し、長崎大の柳原克紀教授(臨床検査医学)は「明確に何%なら良いとは言えないが、東京都は5%程度だった二月ごろは十分な数の検査をしていたとみられる。検査を多くやり、陽性率が低くなるほど良い」と指摘。「同じ陽性率でも、発熱などの症状を訴えて病院に来た人と、クラスター(感染者集団)などで検査した人は分けて考えなければならない。しかし厚労省や各自治体の発表では、ごちゃ混ぜになっている」と苦言を呈する。状況がはっきりと分からないため、専門的な提言がしにくいという。
京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授もホームページで「東京都の陽性率は非常に高くなっている。検査数を増やさなければオーバーシュートがあっても見逃す」と強調。「必要な検査が行われないと、医療従事者の感染リスクが高まり医療崩壊が懸念される」として検査態勢の強化を求めている。 
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●国内感染者 1万4097人(横浜港のクルーズ船除く)新型コロナ  4/29
29日はこれまでに東京都で47人、北海道で38人など19の都道府県で合わせて202人の感染の発表がありました。国内で新型コロナウイルスの感染が確認された人は空港の検疫などを含めて1万4097人で、横浜港のクルーズ船の乗客・乗員712人を合わせると1万4809人となります。また死亡者は国内で感染した人が434人で、横浜のクルーズ船の乗船者13人を合わせると447人となっています。
日本で感染が確認された人のうち、東京都は4106人、大阪府は1597人、神奈川県は997人、埼玉県は837人、千葉県は826人、北海道は726人、兵庫県は643人、福岡県は638人、愛知県は486人、京都府は316人、石川県は250人、富山県は190人、茨城県は162人、広島県は154人、岐阜県は149人、群馬県は146人、沖縄県は141人、福井県は122人、滋賀県は95人、宮城県は88人、奈良県は83人、新潟県は75人、高知県は74人、福島県は72人、山形県は68人、静岡県は68人、長野県は66人、大分県は60人、和歌山県は60人、栃木県は55人、山梨県は53人、愛媛県は47人、熊本県は47人、三重県は45人、佐賀県は41人、山口県は32人、香川県は28人、青森県は26人、島根県は23人、岡山県は23人、長崎県は17人、宮崎県は17人、秋田県は16人、鹿児島県は10人、徳島県は5人、鳥取県は3人です。
このほか空港の検疫で確認された人や長崎港に停泊しているクルーズ船の乗組員などが合わせて300人、中国からチャーター機で帰国した人が14人となっています。また、厚生労働省によりますと、重症者は28日までに国内で感染した人などが305人、クルーズ船の乗船者が4人の合わせて309人となっています。一方、28日までに症状が改善して退院した人などは国内で感染した人などが3187人、クルーズ船の乗客・乗員が651人の合わせて3838人となっています。 
●新型コロナウイルス 世界の感染者311万人(29日午後3時現在)  4/29
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと、世界全体の新型コロナウイルスの感染者の数は、日本時間の29日午後3時の時点で311万7204人となりました。
感染者数を国別にみますと、アメリカが100万人を超え101万2583人と最も多く、次いでスペインが23万2128人、イタリアが20万1505人、フランスが16万9053人、イギリスが16万2350人などとなっています。
また、死亡した人の数は21万7193人で、国別では、アメリカが5万8355人、イタリアが2万7359人、スペインが2万3822人、フランスが2万3660人、イギリスが2万1678人などとなっています。 
●日本の感染被害のピークはこれからやってくる  4/29 
諸外国より死者数が少ない日本の現状をどう評価?
全世界に甚大な被害を及ぼしている現在のパンデミックで、米・英・仏・伊・西など諸外国に比べ、日本や韓国の死者数が圧倒的に少ないのは紛れもない事実である。
公衆衛生学が専門でWHO事務局長の上級顧問も務める渋谷健司教授(英・キングス・カレッジ・ロンドン)に最初に確認したかったのが、これをどう評価するかである。
回答はこのようなものであった。
「検査数が違いすぎるので単純に死亡者数や死亡率の比較はできない。各国の感染フェーズが大きく異なる。医療制度・準備状況も異なる。日本ではこれから重症者や亡くなる人が増えてくるだろう。安心するのは早いと思う。違いを生じさせる原因にBCG説があるのは知っているが、今のところエビデンスは無い」
実際、我が国における死者の数はじわじわと増え続けている。陽性と判定された患者に対する死者の割合もついこの間までは2%前後だったのが、今では3%に近づきつつある。
渋谷教授は続ける。「そもそも感染症で全体像を完全に把握するのは困難である(注)。何故かというと全員検査するわけにいかないからだ。もちろん死者は少ないにこしたことはない。国内のトレンドを見ることも大切だ。だが、このパンデミック初期の混乱の中で、数字の単純比較、特に国際比較に一喜一憂するのは余り意味がない」(注:末尾に補足説明あり)
確かに日本では検査数自体が圧倒的に少ない。しかも、無症状感染者は網に掛からない。単純な比較はできない。
そして渋谷教授は警告する。「日本の感染被害のピークはこれからやってくると考えるべきだろう」誰も信じたくはない。が、そう考えて備える必要があると理解しなければならない。
早期のワクチンと治療薬の開発は期待できる?
そこで、大いに期待が掛かるワクチンと治療薬の開発について尋ねてみた。
「ワクチンは時間がかかる。普通で5年から10年掛かるので、現在目標とされている18か月は非常に早い想定だと思う。ワクチンが出来て量産体制が整って、世界全体に遍く普及するのは、そのスケジュールでは難しいかもしれない。仮にアメリカや日本で今回の流行を抑え込めたとしても、人口の70%にワクチンを接種するか、自然感染で集団免疫ができなければ海外からまた戻ってくる。だから流行はまたやってくる。今回の新型に関しては、冬に向けて第二波が来てもっと酷くなるという見方も出ている。世界全体で集団免疫が成立して安心できるのはだいぶ先になる」
ということはワクチンを待つより、皆がさっさと罹って集団免疫を成立させる方が早いということにもなる。スウェーデンの対処法はこの考え方に近いと言われる。
この方法に関して、教授は「それができれば良いのだが、怖いのはこのウイルスが爆発的に増えること。日本でやったらお年寄りを中心に恐らく合計何十万という死者が出てしまうだろう」と否定的である。
だから、世界各地で実施されているようにロックダウンが必要になるという。ロックダウンは都市や町を封鎖して感染爆発を防ぎ、医療体制を守るのが狙いである。 
教授は言う。「そう。ロックダウンをやって感染を抑え込めたら解除して、また検査と隔離を繰り返すということにならざるを得ないと思う。特に日本のICU・集中治療室のキャパシティーは脆弱なので爆発に耐えられない」
我が国の人口当たりの集中治療室のベッド数が先進国の中では際立って少ないのは既に良く知られている。
だが、治療薬には期待できるという。
「今は300以上の様々な治験が走っているが、一番良いのは抗ウイルス薬が見つかって、軽症のうちから飲んで重症化をできるだけ防ぐ、それによってICUへの負荷を減らし、重症化してしまった人の命を救うということ。治療薬に関して私はそんなに悲観的ではない。効果のあるものは出てくると思う」
まだ治験結果はまとまっていない。しかし、早期に発見して、早期に治療できれば、かなりの確率で重症化・死亡を防ぐことができるようになるという。
となると、益々早期診断が大切になるが、日本ではそれが遅々として進んでいない。これをどう評価するか?訊いてみた。
「このウイルスの特徴を知れば知るほど検査をしないというチョイスは無い」という。
明治以来変わっていない日本の感染症対策
渋谷教授によれば、日本の感染症対策は明治以来変わっていないらしい。
日本では“帰国者・接触者外来”で検査し、水際対策をして症状のある患者の接触者を追えば国内での蔓延を防げるという伝統的な考え方のままということのようだ。クラスター潰しはまさにこの発想を具現したものとも言える。
「SARSのように症状が出た後に他人への感染力が強く、かつ致死率の高い感染症なら、このやり方で鎮圧できる。しかし、今回のコロナウイルスは感染力を持つ非常に多くの無症状者と軽症者がいて、潜伏期が長いという特徴がある。だから症状がある人だけ叩いても感染は制御できないのは当初から分かっている。それなのに水際とクラスター対策をやり続け検査を絞ったから、今のような経路を追えない市中感染と院内感染が拡がったのは当然の帰結と言える」と手厳しい。
そして、「一番まずいのは医療従事者への感染から医療崩壊が起きること。日本ではこれから感染者が急増し重症者が病院に押し寄せるし、医療従事者への感染も増えるので医療崩壊の危機に瀕していると思う」と警告する。
しかし、ここ数日、特に東京の新規感染者数は以前より減る傾向にあるようにも見える。
オープンにならない詳しいデータが対策のネック
だが、渋谷教授は「例えば、東京の陽性患者数は、その日に陽性と報告され集計された人数であって、いつ発症したのかという重要な情報は明らかになっていない。何月何日に症状が出た何人のうち何人が今日陽性と出ましたというデータではない。公表データでは、エピカーブと呼ばれる感染拡大の様子を示すグラフも書けない。これでは感染の正確な拡大状況は把握できない。国や感染症研究所は重症度も含めたもっと詳しいデータや分析結果を持っているはずだが、オープンとは言い難い」と即断や楽観を戒めた。 
話は少し逸れるが、クラスター班等が持っているデータやモデルが十分にオープンになっていないという点に関しては、日本国内の他の専門家も指摘している。
とすると、5月6日の緊急事態宣言解除は考えられないのか? 渋谷教授の回答は明快である。
「ゴールデンウイーク明けの宣言解除などお話にならないと私は思っている。三密を避けるとか接触8割減とか言っているが、はっきりとロックダウンと言えば良いと思う。法律的には難しいと思うが、ロックダウンですよと言ってしまえば、満員電車での通勤やマスクを求めて行列するとか無くなるのではないか」
海外メディアの報道ぶりを見ていても同様だが、イギリス在住の教授の目にも日本の対応は甘く映るようだ。
「ロックダウンなんてどこの国もやりたくない。経済が厳しくなるのは分かっているから。でも、そうしないと止まらないからやるのです。」
一般国民はどうすれば良いかという点に関しては「基本は家に居ること」との回答であった。ステイ・ホームは世界共通である。
今ではもう相当数の人が今回のコロナ禍はちょっとやそっとでは終わらないと感じているはずである。ワクチンと自然感染によって人類が集団免疫を獲得し、抗インフルエンザ薬のような特効薬が遍く行き渡るまで何年掛かるのか、現時点では何とも言えない。それまで臥薪嘗胆するしかないと筆者は自らに言い聞かせている。そして、政府にはコロナ禍で生活が困窮している人達への手当を手遅れにならないようにしっかり実行してもらいたいと願うのである。 
●東京 きょうの新たな感染確認者は47人 新型コロナウイルス  4/29
東京都は29日、都内で新たに47人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたと発表しました。都内の1日当たりの感染者数はここ数日、増減を繰り返していて、都は「一過性なのか行動自粛の影響なのかは短期間で判断することはできず、予断は許さない状況だ」としています。
東京都は29日、都内で新たに2歳から80代までの男女合わせて47人が新型コロナウイルスへの感染が確認されたと発表しました。
このうちおよそ57%にあたる27人が、今のところ感染経路が分かっていないということです。
都内では27日までの2日連続で、1日の感染者数が100人を下回りましたが、28日は再び100人を上回りました。
ここ数日感染者の数が増減を繰り返していることについて、都は「一過性なのか行動自粛の影響なのかは短期間で判断することはできず、予断は許さない状況だ。大型連休中も含めて今後の傾向を見る必要がある」としています。
これで都内で感染が確認された人は、合わせて4106人となり、このうち1271人はすでに退院したということです。
一方、都は新たに感染者9人が死亡したことを明らかにしました。9人は50代の男性が1人、60代の男性が1人、80代の男性と女性が3人、90代の女性が1人、そのほかの3人については遺族の同意が得られていないなどとして公表していません。これで都内で死亡した感染者は、合わせて117人となりました。
都は大型連休が終わる来月6日までを「ステイホーム週間」として、徹底して外出を自粛し、自宅にとどまるよう引き続き呼びかけています。 
 4/30

 

●世界各国の感染情報 4/30
      全世界、地域別確定例数(カッコ内は24時間での増加数)
全世界: 3,090,445人(71,839人増加)、死者217,769人(9,797人増加)
欧州地域: 1,434,649人(27,824人増加)、死者135,961人(6,650人増加)
米州地域: 1,246,190人(33,102人増加)、死者65,228人(2,824人増加)
東地中海地域: 182,417人(5,489増加)、死者7,447人(143人増加)
西太平洋地域: 147,743人(1,294増加)、死者6,094人(57人増加)
南東アジア地域: 54,021人(2,670人増加)、死者2,088人(87人増加)
アフリカ地域: 24,713(1,460人増加)、死者938人(36人増加) 
 5/1-10

 

●国内感染者1万5068人(横浜港のクルーズ船を除く)新型コロナ  5/3
3日は東京都で91人など、全国で合わせて191人の感染が確認されました。国内で感染が確認されたのは空港の検疫などを含めて1万5068人で、横浜港のクルーズ船の乗客・乗員712人を合わせると1万5780人となりました。また大阪府で4人、神奈川県で3人など合わせて14人が死亡し、死亡した人は国内で感染した人が531人、横浜のクルーズ船の乗船者13人と合わせると544人となっています。
日本で感染が確認された人の内訳です。東京都は4568人、大阪府は1666人、神奈川県は1097人、埼玉県は891人、千葉県は852人、北海道は848人、兵庫県は666人、福岡県は647人、愛知県は492人、京都府は332人、石川県は264人、富山県は212人、茨城県は165人、広島県は161人、岐阜県は150人、群馬県は146人、沖縄県は142人、福井県は122人、滋賀県は95人、宮城県は88人、奈良県は87人、福島県は78人、新潟県は77人、高知県は74人、静岡県は73人、長野県は70人、山形県は68人、和歌山県は62人、大分県は60人、山梨県は55人、栃木県は54人、愛媛県は48人、熊本県は47人、三重県は45人、佐賀県は44人、山口県は34人、香川県は28人、青森県は26人、島根県は24人、岡山県は23人、長崎県、宮崎県は17人、秋田県は16人、鹿児島県は10人、徳島県は5人、鳥取県は3人です。
このほか、空港の検疫で確認された人や長崎港に停泊しているクルーズ船の乗組員などは合わせて305人、中国からチャーター機で帰国した人が14人となっています。厚生労働省によりますと、重症者は5月1日までに、国内で感染した人などが328人、クルーズ船の乗船者が4人の合わせて332人です。5月1日までに症状が改善して退院した人などは国内で感染した人などが3981人、クルーズ船の乗客・乗員が651人の、合わせて4632人です。 
●新型コロナウイルス、現在の感染者・死者数 死者24.1万人に 5/3
AFPが各国当局の発表に基づき日本時間3日午前4時にまとめた統計によると、世界の新型コロナウイルスによる死者数は24万1682人に増加した。
中国で昨年12月末に新型ウイルスが最初に発生して以降、これまでに195の国・地域で計339万8390人余りの感染が確認され、少なくとも102万3900人が回復した。
この統計は、各地のAFP支局が各国当局から収集したデータと世界保健機関(WHO)からの情報に基づいたもので、実際の感染者はこれよりも多いとみられる。多くの国では、症状が特に重い患者にのみ検査を実施している。
最も被害が大きな米国では、これまでに6万5645人が死亡、112万1414人が感染し、少なくとも16万4015人が回復した。
次いで被害が大きい国はイタリアで、死者数は2万8710人、感染者数は20万9328人。以降は英国(死者2万8131人、感染者18万2260人)、スペイン(死者2万5100人、感染者21万6582人)、フランス(死者2万4760人、感染者16万8396人)となっている。
人口10万人当たりの死者数が最も多いのはベルギーの67人。次いでスペイン(54人)、イタリア(47人)、英国(41人)、フランス(38人)となっている。
香港とマカオ(Macau)を除く中国本土で発表された死者数は4633人、感染者数は8万2875人、回復者数は7万7642人。
地域別の死者数は、欧州が14万2223人(感染152万1847人)、米国・カナダが6万9278人(感染117万7994人)、中南米・カリブ海(Caribbean Sea)諸国が1万2533人(感染23万4032人)、アジアが8919人(感染23万3465人)、中東が6879人(感染18万721人)、アフリカが1730人(感染4万2229人)、オセアニアが120人(感染8102人)となっている。 
●南米、ロシア、トルコなどで感染者増―WHO:新型コロナ世界の感染者数 5/3
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は1日、専門家らによる緊急委員会の勧告を受けて、最高レベルの警戒を呼び掛ける「緊急事態宣言」を維持することを表明した。1月30日に宣言を出してから2カ月以上が経過し、 欧米での流行はピークを越えたという見方も強まっているが、医療体制の脆弱な地域での感染拡大はまだまだ懸念される。
感染者数の多い主な国(5月3日正午時点厚労省とりまとめ)
感染者数 / 死亡者数
米国    1130115 / 66364
(うちニューヨーク州) (312977) / (18909)
スペイン  216582 / 25100
イタリア  209328 / 28710
英国    182260 / 28131
ドイツ   164967 /  6812
フランス  130979 / 24760
トルコ   124375 /  3336
ロシア   123868 /  1221
ブラジル   96559 /  6750
イラン    96448 /  6156
中国     82877 /  4633
カナダ    55572 /  3446
日本     14839 /   492
韓国     10793 /   250

緊急事態宣言を維持―WHO(5月1日)
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は1日、専門家らによる緊急委員会の勧告を受けて、最高レベルの警戒を呼び掛ける「緊急事態宣言」を維持することを表明した。 1月30日に宣言を出してから2カ月以上が経過し、 欧米での流行はピークを越えたという見方も強まっているが、医療体制の脆弱な地域での感染拡大はまだまだ懸念される。
ロシアの感染者数が10万突破、ミシュスチン首相陽性に(5月1日)
3月末からロックダウン(都市封鎖)措置を開始したロシアだが、感染拡大は止まらず、感染者数は10万6331人となった。4月30日には、ミハイル・ミシュスチン首相が陽性となり、自主隔離を表明した。
NY州の感染者が30万人を突破(4月30日)
米NY州の感染者数が30万人を突破した。世界の感染者約310万人の3分の1に相当する100万人が米国、その約3割がNY州の感染者ということになる。米国では多くの州で経済活動の再開を模索する動きが出ているが、NY州のクオモ知事は依然、慎重な姿勢だ。
米GDP4.8%減に下落(4月29日)
米商務省が発表した2020年1-3月期の実質GDP(速報値)は年率換算で前期比4.8%減と、08年10-12月期(8.4%減)以来約11年ぶりの大幅な落ち込み。
米国の感染者数が100万人突破、世界全体の1/3占める(4月29日)
米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の集計で、米国の新型コロナウイルス感染者が日本時間29日未明、100万人を突破した。米国は世界全体の感染者の3分の1、感染死者数の4分の1を占めていずれも最多。米国にスペイン、イタリア、フランス、ドイツ、英国を加えた6カ国の感染者は192万人に達し、世界の中でも欧米主要国がウイルス拡大の中心となっている。
世界の感染者数300万人を突破(4月28日)
米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の集計で、日本時間28日未明、新型コロナウイルスの感染者数が世界全体で300万人を突破した。国別では、米国が全体の3分の1に相当する97万3000人で、スペイン29万9000人、イタリア19万9000人が続く。これにドイツ、フランス、英国を加えた6カ国で感染者数は世界全体6割強を占める。中国の武漢から流行が始まったウイルスはほんの数カ月で世界を席巻し、欧米諸国を混乱に陥れている。
世界感染死者数が20万人超に(4月26日)
米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の集計で、日本時間26日早朝、新型コロナウイルスによる世界の死者が20万人を突破した。国別の死者数は米国が約5万3000人で最も多く、イタリアは2万6000人、スペイン、フランスが各2万2000人、英国が2万人超。欧米5カ国だけで死亡者は14万人以上に達し、世界全体の7割を占める。世界の感染者数は288万人で、米国が約92万6000人で最多。
ブラジルが5万人超えなど、南米の感染拡大が深刻化(4月25日)
ブラジルの感染者数が5万人を突破して5万2995人となった。感染が拡大しているエクアドルでは2万2719人に急増し、ペルーもに2万人超。 南米では発生状況の把握が遅れていることもあり、さらに深刻な感染状況が予想される。
中国、韓国の新規の感染者が各6人まで減少(4月24日)
世界の感染者数が1日で8万人以上増えて266万人を超え、死者数も19万人に迫っている。そうした中、早期に感染が拡大した中国と韓国は、共に新規の感染者が6人、死者数はゼロと封じ込めに成功している。 
●世界の感染者数340万人余り、独は3月以来最小の増加 5/3
世界の新型コロナウイルス感染者数は340万人を上回り、死者数は24万3000人に上った。米国での感染者数は2日に3.2%増えて計112万人となった。米ジョンズ・ホプキンス大学とブルームバーグ・ニュースの集計データで示されたもので、増加率は過去1週間の平均2.9%を上回った。ドイツでの新たな感染者は890人と、1日として3月以来最も小幅な伸びとなった。
デブラシオ・ニューヨーク市長は同市について、まだ「困難な状況を脱しておらず」経済活動再開を検討することはできないと述べるとともに、予算不足で復興に支障が出るとして連邦の支援をあらためて求めた。
米資産家で著名投資家のウォーレン・バフェット氏は2日、自身の率いる投資・保険会社バークシャー・ハサウェイが、新型コロナの経済的影響を理由に米4大航空会社の株式を全て手放したことを明らかにした。またフィリピンの空港当局は、民間航空機による出入国の運航を3日から全面的に停止すると発表した。
オーストラリアでは社会的距離を保つ措置の新たな緩和策としてシドニーで不動産競売の再開が認められることとなった。一方、シンガポールは一部企業に対し、部分的なロックダウン(都市封鎖)が終了する6月1日以降も従業員の在宅勤務を求める可能性があることを明らかにした。 
●世界の感染者342万9795人 死者24万3837人 新型コロナウイルス  5/3
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと、世界全体の新型コロナウイルスの感染者の数は、日本時間の3日午後4時の時点で342万9795人となりました。
感染者数を国別にみますと、アメリカが113万3069人と最も多く、次いでスペインが21万6582人、イタリアが20万9328人、イギリスが18万3500人、フランスが16万8518人などとなっています。
また世界全体で死亡した人の数は24万3837人で、国別では、アメリカが6万6385人、イタリアが2万8710人、イギリスが2万8131人、スペインが2万5100人、フランスが2万4729人などとなっています。 
●イタリア、2日報告のコロナ死者は474人 病院外の合算で急増 5/3
イタリアで2日に報告された新型コロナウイルスによる死者数は、これまで含まれていなかった病院以外での死者が合算されたことで、4月21日以降で最多の474人となった。これにより同国の2月以降の累計死者数は米国に次いで世界で2番目に多い2万8710人となった。
474人のうち282人は4月に死亡していたが、これまで集計に加えられていなかった。ミラノ(Milan)が位置する北部ロンバルディア(Lombardy)州は2日、この死者数について市民保護局にはすでに報告済みだったと明らかにした。同州の新型コロナウイルスによる死者は国内最多で、イタリアの累計死者数のほぼ半数を占めている。
イタリアでは、介護施設の高齢者は新型コロナウイルスの検査を受けていないことが多く、同ウイルスによって自宅で死亡した人の数も特定できていないことから、実際の死者は公式統計よりかなり多いとみられている。 
●新型コロナ死者24万人超す 世界全体、感染者340万人 5/3
米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、新型コロナウイルス感染症による死者が2日、世界全体で24万人を超えた。死者の8割以上が集中する欧米を中心に、被害拡大が続いている。
感染者は世界全体で340万人超。感染者数が唯一、100万人を超えている米国が死者も最も多く6万5千人。欧州では死者2万8千人のイタリアが最多で、英国、フランス、スペインもそれぞれ2万人を超えている。
世界全体の死者は4月30日に23万人を超えたばかりだった。3月31日に4万人を上回ってからは1カ月以上にわたって、1〜2日ごとに1万人以上が増える状態が続いている。 
●新型コロナ 国内感染者1万5777人(横浜港のクルーズ船除く) 5/10
国内で感染が確認された人は空港の検疫などを含め1万5777人、このほか、横浜港のクルーズ船の乗客・乗員が712人で、合わせて1万6489人となっています。亡くなった人は、国内で感染した人が624人、横浜港のクルーズ船の乗船者が13人の、合わせて637人です。
各自治体などによりますと、国内で感染が確認された人の累計は、次のとおりです。
東京都は4846人、大阪府は1732人、神奈川県は1156人、埼玉県は959人、北海道は945人、千葉県は873人、兵庫県は688人、福岡県は653人、愛知県は501人、京都府は352人、石川県は277人、富山県は221人、茨城県は168人、広島県は165人、岐阜県は150人、群馬県は147人、沖縄県は142人、福井県は122人、滋賀県は97人、奈良県は90人、宮城県は88人、福島県は81人、新潟県は81人、長野県は75人、高知県は74人、静岡県は73人、山形県は69人、和歌山県は62人、大分県は60人、栃木県は56人、山梨県は56人、愛媛県は48人、熊本県は48人、三重県は45人、佐賀県は45人、山口県は37人、香川県は28人、青森県は27人、島根県は24人、岡山県は24人、長崎県は17人、宮崎県は17人、秋田県は16人、鹿児島県は10人、徳島県は5人、鳥取県は3人。
このほか、空港の検疫で確認された人や長崎港のクルーズ船の乗組員などが合わせて310人、中国からチャーター機で帰国した人が14人です。また厚生労働省によりますと、重症者は、9日までに、国内で感染した人などが266人、クルーズ船の乗船者が4人の、合わせて270人となっています。一方、症状が改善して退院した人などは、9日までに、国内で感染した人などが8127人、クルーズ船の乗客・乗員が651人の、合わせて8778人となっています。 
●世界の感染者 400万人を突破 新型コロナウイルス  5/10
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと、世界全体の新型コロナウイルスの感染者の数は、日本時間の10日午前11時の時点で402万3539人となり、400万人を超えました。
国別では、アメリカが130万9159人と最も多く、次いで、スペインが22万3578人、イタリアが21万8268人、イギリスが21万6525人、ロシアが19万8676人などとなっています。
また、死亡した人は世界全体で27万9307人で、国別では、アメリカが7万8792人、イギリスが3万1662人、イタリアが3万395人、スペインが2万6478人、フランスが2万6313人などとなっています。 
●新型コロナウイルス、現在の感染者・死者数 27.6万人に 5/10
AFPが各国当局の発表に基づき日本時間10日午前4時にまとめた統計によると、世界の新型コロナウイルスによる死者数は27万6435人に増加した。
中国で昨年12月末に新型ウイルスが最初に発生して以降、これまでに195の国・地域で計398万4960人余りの感染が確認され、少なくとも131万2900人が回復した。
この統計は、各地のAFP支局が各国当局から収集したデータと世界保健機関(WHO)からの情報に基づいたもので、実際の感染者はこれよりも多いとみられる。多くの国では、症状が特に重い患者にのみ検査を実施している。
9日午前4時以降、新たに4656人の死亡と8万7674人の新規感染が発表された。死者の増加幅が最も大きいのは米国の1643人。次いでブラジル(751人)、英国(346人)となっている。
最も被害が大きい米国では、これまでに7万7744人が死亡、129万7549人が感染し、少なくとも19万8993人が回復した。
次いで被害が大きい国は英国で、死者数は3万1587人、感染者数は21万5260人。以降はイタリア(死者3万395人、感染者21万8268人)、スペイン(死者2万6478人、感染者22万3578人)、フランス(死者2万6310人、感染者17万6658人)となっている。
人口10万人当たりの死者数が最も多いのはベルギーの74人。次いでスペイン(57人)、イタリア(50人)、英国(47人)、フランス(40人)となっている。
香港とマカオ(Macau)を除く中国本土で発表された死者数は4633人、感染者数は8万2887人、回復者数は7万8046人。
地域別の死者数は、欧州が15万5074人(感染170万7797人)、米国・カナダが8万2528人(感染136万5168人)、中南米・カリブ海(Caribbean Sea)諸国が1万8679人(感染34万1790人)、アジアが1万367人(感染28万4322人)、中東が7502人(感染21万8372人)、アフリカが2160人(感染5万9254人)、オセアニアが125人(感染8261人)となっている。 
 5/11-20

 

 
 5/21-31

 

●国内感染者 1万6433人 死者784人(クルーズ船除く)新型コロナ  5/21
21日は、これまでに新たな感染者の発表はありません。国内で感染が確認された人は、空港の検疫などを含め、1万6433人、クルーズ船の乗客・乗員が712人で、合わせて1万7145人となっています。また、亡くなった人は、国内で感染した人が784人、クルーズ船の乗船者が13人の合わせて797人です。
各自治体などによりますと、国内で感染が確認された人の累計は、東京都は5075人、大阪府は1777人、神奈川県は1303人、北海道は1019人、埼玉県は993人、千葉県は895人、兵庫県は699人、福岡県は658人、愛知県は509人、京都府は358人、石川県は290人、富山県は227人、茨城県は168人、広島県は166人、岐阜県は150人、群馬県は148人、沖縄県は142人、福井県は122人、滋賀県は99人、奈良県は91人、宮城県は88人、新潟県は82人、福島県は81人、長野県は76人、愛媛県は74人、高知県は74人、静岡県は73人、山形県は69人、栃木県は64人、和歌山県は63人、山梨県は60人、大分県は60人、熊本県は48人、佐賀県は47人、三重県は45人、山口県は37人、香川県は28人、青森県は27人、岡山県は25人、島根県は24人、長崎県は17人、宮崎県は17人、秋田県は16人、鹿児島県は10人、徳島県は5人、鳥取県は3人です。
このほか、空港の検疫などで確認された人が合わせて317人、中国からチャーター機で帰国した人が14人です。また、厚生労働省によりますと重症者は20日までに、国内で感染した人などが210人、クルーズ船の乗船者が4人の合わせて214人となっています。一方、20日までに症状が改善して退院した人などは、国内で感染した人などが1万2286人、クルーズ船の乗客・乗員が653人の合わせて1万2939人となっています。また、今月17日には、速報値で1日に2724件のPCR検査が行われました。 
 6/1-10

 

●新型コロナ「第2波」襲来でも緊急事態宣言を再発令しない理由 6/5 
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止のための緊急事態宣言が解除されて10日余りが過ぎた。東京都では同宣言解除前には1ケタにまで減少していた感染者が2020年6月2日に34人確認され、第2波の警戒を呼びかける「東京アラート」を初めて発動した。
北九州市では同日までの11日間で119人の感染者が発生し、北九州市の北橋健治市長は「今の状況をひと言で言うならば第2波の真っただ中にいる」と危機感をあらわにしている。全国的に感染爆発の第2波がやって来たら、国は再び緊急事態宣言を出すのか?出すとしたら、どのタイミングになるのか?
感染者増の「第二波」は避けられない情勢
今後、感染者の増加は避けられない見通しだ。理由は二つある。一つはワクチンがなく集団免疫を獲得していない現在の状況下で、緊急事態宣言が解除されたために仕事やプライベートで外出する人数が増えて感染の可能性が高まること。
NTTドコモの端末移動データによると、6月1日の東京都心への人出は同宣言が解除された1週間前の同5月25日に比べて約1.5倍に増えている。新型コロナウイルスの感染から発症までは2週間程度なので、6月8日以降に東京圏の感染者が増加するリスクは高い。
もう一つはPCR検査の増加だ。北九州市は5月25日に感染の有無を調べるPCR検査の対象を従来の濃厚接触者のうち発熱などの症状がある人から、無症状の人を含めた濃厚接触者全員へ拡大。同23日にさかのぼって検査をしたところ、感染者が続々と判明したのだ。感染者自体が増えたわけではないが、これまで見つかっていなかった感染者がが明らかになったということだ。
東京都でも6月3日にプロ野球球団・巨人の選手2人が陽性と判明したが、これも巨人が大学との共同研究で選手や球団職員の希望者全員に新型コロナウイルスの感染歴を調べる抗体検査を実施したことで明らかになった。今後、抗体検査やPCR検査が積極的に実施されるため、無症状者を含めて感染者は全国で増えるだろう。
では、国はどのタイミングで緊急事態宣言を再び出すのだろうか。おそらく感染者数が爆発的に増えたとしても、国民に警戒を呼びかけるだけで営業自粛要請などを含む緊急事態宣言を二度と出すことはないだろう。都道府県知事の権限で営業自粛要請をすることを止めることはないだろうが、国の緊急事態宣言なしに自治体が率先して取り組む可能性は低い。
緊急事態宣言の再発令は極めて厳しい
事実、東京都は「東京アラート」を発動したものの、都民に「夜の外出は控えてほしい」と呼びかけただけで、飲食店をはじめとする事業者への営業時間短縮や再度の営業自粛要請には踏み込んでいない。
小池百合子都知事は「感染拡大の状況次第では休業を再要請する可能性もある」としているが、再要請の目安となる「新規陽性者50人」を超えても「接触歴等不明率」などその他の指標の状況もみた上で検討するという「逃げ道」を用意している。
国も自治体も休業要請の「見返り」となる休業補償問題で頭を痛めている。巨額の財源もさることながら、対象となる中小零細企業数が多く事務処理に手が回らない。さらに補償を受けた事業者からも「少なすぎる。休業による収入減に全く見合わない」との強い批判がある。
再度の休業要請となると、追加の補償を求める声が巻き起こるのは必至だ。ならば東京都のように消費者側に利用自粛を呼びかけた方が、店舗や事業者側の「自己責任」として補償問題を回避できる。
問題は休業補償だけではない。企業の人員削減により失業者が増えるなど、コロナ禍による景気低迷は社会に深刻な影響を与えている。緊急事態宣言を再度出すことで、日本経済をさらに冷え込ませることだけは何としても避けたいのが国や自治体の本音だろう。
2020年1〜3月期の国内総生産(GDP)速報値は年率換算で3.4%減だったが、同4〜6月期は緊急事態宣言による外出自粛や飲食店・百貨店などの休業でさらに大きく落ち込む見通しだ。再度の緊急事態宣言発令となればマイナス成長が長期化するのは避けられない。
海外でもロシアやインドなどが、感染者や死亡者の増加が続いているにもかかわらず、6月に入ってロックダウン(都市封鎖)を緩和し始めている。これ以上の継続は、自国経済を徹底的に破壊しかねないとの懸念からだ。
日本でも安倍晋三首相が緊急事態宣言解除を発表した会見で「最悪の場合には残念ながら二度目の緊急事態宣言発出の可能性もある」としながらも、「外出自粛のような社会経済活動を制限するようなやり方はできる限り避けたい」と強調している。
国民に「油断」させないよう再度の緊急事態宣言をちらつかせながらも、二度と緊急事態宣言は出したくないのが本音だろう。
国や自治体にとって幸いなことに日本の新型コロナウイルス感染症による死亡者数は6月4日時点で903人と、米国(10万6696人)や英国(3万9728人)、イタリア(3万3601人)などに比べて圧倒的に少ないうえに、新たな検査で陽性となった感染者の多くは無症状者だ。
新型コロナウイルスが約100年前に起こった「スペイン風邪」の第二波のように強毒化して致死率が跳ね上がりでもしない限り、感染者が急増しても国や自治体は警戒を呼びかけながら「様子見」を続け、感染の自然終息を待つことになるだろう。 
 6/11-20

 

 
 6/21-30

 

●新型コロナ専門家会議を廃止 「分科会」に衣替え、自治体も参加―政府 6/24 
西村康稔経済再生担当相は24日の記者会見で、新型コロナウイルス対策の専門家会議を廃止し、代わって「新型コロナウイルス感染症対策分科会」を新たに設置する方針を明らかにした。分科会は、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく有識者会議の下部組織として位置付け、感染症専門家のほか、地方自治体の代表や危機管理対応の専門家らの参加も求める。
専門家会議の廃止は、同会議のメンバーが24日、「(助言組織と)政府との関係性を明確にする必要がある」とした提案書をまとめたことを受けた措置。分科会は、7月上旬にも初会合を開く。
西村氏は会見で、専門家会議廃止の理由について、「会議が法律に基づくものでなく、位置付けが不安定だった」と説明。今後はワクチン接種の優先順位なども課題になると指摘し、「感染症の専門家だけでは決められない事柄も出てくる」と語った。  
●新分科会、経済界も参加へ 新型コロナ対策で西村担当相 6/25 
西村康稔経済再生担当相は25日の記者会見で、政府の専門家会議に代えて新設する「新型コロナウイルス感染症対策分科会」のメンバーについて、「感染症専門家に加え、経済学者、企業経営者、病院関係者、地方自治体の知事など幅のある構成にしたい」と述べた。  
●西村担当相「排除と取られ反省」 専門家会議廃止で釈明 6/28 
西村康稔経済再生担当相は28日の記者会見で、新型コロナウイルス対策を議論してきた政府の専門家会議を廃止すると発表したことについて、「私が『廃止』と強く言い過ぎ、専門家会議の皆さんを排除するように取られてしまった。反省している」と述べた。会議廃止をめぐっては、意思決定の不透明さなどに与野党や会議メンバーから批判の声が出ている。
西村氏は、従来の専門家会議は厚生労働省内のアドバイス組織と、新たに設置する新型コロナ対策分科会へ「発展的に移行する」と強調。分科会は都道府県知事や経済界、労働界、マスコミ関係者の参加を想定しており、専門家会議メンバーも「当然何人かには入ってもらう」と説明した。  
 7/1-10

 

●専門家会議「廃止」で陳謝 西村担当相が公明に―新型コロナ 7/1 
西村康稔経済再生担当相は1日、公明党の新型コロナウイルス感染症対策本部などの会議に出席し、政府の専門家会議を廃止すると発表したことについて「『廃止』と強く言い過ぎた。批判されるから切るのではないかと誤解も与えてしまった。反省している」と陳謝した。
専門家会議の設置は、公明党が政府に提言していた経緯がある。西村氏は「最初に提言された皆さん方に十分説明できていなかった。大変申し訳なく思っている」とも述べた。  
●新型コロナ第2波ついに到来か? 7/8 
新型コロナウイルスの第2波到来が現実味を帯びてきた。7月3日に確認された国内新規感染者は250人。1日当たりの新規感染者が200人を突破したのは5月3日以来、約2カ月ぶりとなった。4日は263人とさらに増え、緊急事態宣言解除後では最多を更新した。
特に東京都は7月2日に107人、3日に124人、4日には131人と3日連続で100人を超えた。小池百合子都知事は4日、新型コロナ対応を担う西村康稔経済再生相と面会後、「都民に対して改めてのお願いであります。不要不急の他県への移動につきましてはご遠慮いただきたい」などと報道陣に話した。
この状況で注目を集めるのが、都が導入した感染状況を示す新指標だ。都はこれまで自粛の段階的緩和や再要請の目安として、感染者数に着目した指標を設定していた。しかし、小池都知事は6月30日の会見で「現在は検査体制が大幅に充実し、医療提供体制も確保できている」との認識を表明。7月から新指標として、「新規陽性者数(週平均)」「東京消防庁救急相談センターへの相談件数」「新規陽性者における接触歴等不明者数と増加比」「PCR・抗原検査陽性率」「救急医療の東京ルールの適用件数」「入院患者数」「重症患者数」の7項目を設定すると発表した。今後は医師や専門家が週1回、状況を分析・評価し、都の対応を決める方針だという。
新たな項目設定は第2波への備えとして有効なのか。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は指摘する。
「指標が多すぎます。何が大切で何が大切でないのかがわかりにくい」
上医師によれば、感染状況を正しく把握する上で本来必要な情報は「感染者数」と「死者数」の二つだ。
「感染者数の全貌(ぜんぼう)を把握しないことには、対策も講じようがありません。死者数は感染の重症化を示す目印。両者の数字をリアルタイムで公開する流れが、世界的に見ても対策の基本」
特に正確な感染者数を把握するためには、感染の有無を判定するPCR検査体制の拡充が不可欠だと上医師は言う。
「例えば、ドイツ政府は1日当たり20万件のPCR検査実施を目標に据えています。一方、日本政府が目標に掲げる検査数は1日2万件。ドイツの約10分の1です。検査の母数があまりに少ないため、現在発表されている新規感染者数も当てになりません」
大規模なクラスター(感染者集団)が発生したことで知られる永寿総合病院(東京都台東区)の湯浅祐二院長も、第2波への予防策として「PCR検査体制の充実」を挙げる。同病院では3月20日前後に最初の発熱者が発生。6月末までに患者・職員ら214人が感染、43人が死亡した。
7月1日の会見で涙ぐんだ湯浅院長は、感染を防ぎ切れなかった背景として検査体制の不備に言及した。
「感染の疑いがあっても、検査結果が出てこないことには闘いようがない」
「迅速な診断ができなかったことが感染拡大の一因となっていた」
第2波に向けた予防策については、こう述べた。
「必要な検査を迅速に行い、早急に結果を把握する体制を整えていきたい」
前出の上医師は、こうも話す。
「『3密の回避』『人との接触8割減』など、新型コロナ感染対策に関して国や都が掲げるスローガンは、全体的に科学的根拠に乏しい。単なる『思いつき』ではない、データに基づいた対策が求められています」
西村経済再生相は3日の会見で、検査体制などは確保されているとして「緊急事態宣言を発出するような状況にないと(政府専門家会議の)尾身(茂)氏と確認した」と述べた。現場の医師の声に、国や都はどう向き合うのか。 
●コロナ第2波、経済回復途上で到来なら金融危機も=嶋津洋樹氏 7/9 
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続くなか、国内では東京都を中心に新規感染者が再び増加へ転じたことで、第2波への警戒が強まっている。日本以外でも、米国ではニューヨーク州での感染拡大に歯止めがかかる一方、全体としては増加ペースが加速。中国や韓国は相対的に落ち着いているとはいえ、感染拡大の第2波に対する警戒は根強い。
もっとも、死亡者数をみると、新規感染者数の増加が依然として続くなかで、やや頭打ち感がみえる。具体的な要因は必ずしも明らかになっていないようだが、重症化しやすい高齢者などの感染が抑制されていることや、時間の経過とともに新型コロナに対する知見が深まったことなどが指摘されているようだ。
日本経済新聞(電子版)によると、トランプ米大統領は死亡者数の減少を受けて、「事態が改善している」と発言。それを受けて、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が「死者数に着目することで『間違った自己満足に陥ってはいけない』とクギを刺した」と報じられている。筆者もさすがに「事態が改善している」とは思わないが、今後も死亡者数の抑制が続くとすれば、徐々に第2波への警戒感も緩和する可能性はあるだろう。
リスク資産にも影響
筆者は3月中旬以降のリスク資産の動向について、産油国が価格競争を回避する姿勢を示し、原油相場が安定したこと、各国政府・金融当局が大規模なマクロ経済政策を早いタイミングで打ち出す一方、実体経済の落ち込みが想定ほど深刻ではなく、持ち直しも円滑だったことなどが好感されたと考えているが、死亡者数の落ち着きを受けて、第2波への警戒感が緩和したことも材料視された可能性がありそうだ。
とはいえ、今後も新型コロナの新規感染者数が増加する一方、死亡者数が抑制ないし、減少し続けるかはわからない。実際、国立感染症研究所感染症情報センターのウェブサイトでは、スペイン風邪について、「第2波は10倍の致死率」で、「15―35歳の健康な若年者層においてもっとも多くの死がみられ(た)」と説明されている。新型コロナについて、依然としてわかっていないことが多いとすれば、やはり第2波への警戒は怠れないだろう。
乏しい政策余力
それどころか、第1波の影響の深刻さを踏まえれば、仮に第2波の人的、経済的な被害が限られたものであったとしても油断は禁物だ。すでに多くの国では政府が大規模な財政支出に踏み切り、中央銀行は政策金利の大胆な引き下げや資産購入を実施。追加的な対策を打ち出そうにも第1波の時ほどの余裕は残っていない可能性がある。
とくに経常収支が恒常的に赤字で、資金の多くを海外に依存する新興国には注意が必要だ。そうした国で財政赤字を拡大すれば、通常は長期金利が上昇し、資金流入を促すが、今回は中央銀行が金融緩和でそれを相殺。結果として通貨が下落し、インフレ圧力が高まりかねない。実際にインフレ率が中央銀行の目標を上回れば、財政拡大と金融緩和という現状のポリシーミックスは見直さざるを得なくなり、それを放置すれば、金融市場からの圧力が増すだろう。最悪の場合、危機に陥る可能性すらある。
6月のインフレ率が2カ月連続で加速したトルコや、原油のほぼすべてを輸入に依存するインド、出稼ぎ労働者の送金が経済を支えるフィリピンなどの通貨や資金フローからは目が離せない。
こうした危機の芽は企業や家計にも存在する。いくら財務体質が強固な企業や家計であっても、経済活動が急速かつ大幅に停滞すれば、その悪化は避けられない。その立て直しに十分な時間があれば良いが、感染拡大の第2波は今秋にも来ると言われるなど、通常の景気循環よりも短期となる可能性が高い。しかも、「3密」回避などの「新しい生活様式」への対応も求められる。
景気が十分に回復しないままでの第2波は、たとえ、その人的、経済的な影響が第1波に比べて限られたものとなっても、深刻な景気後退や金融危機など、悲惨な結果を招くリスクをはらむ。
いたるところで「分断」加速
また、第1波をきっかけに顕在化した「分断」が第2波への対応を困難にする可能性もある。たとえば、米国での人種差別に対する抗議活動は、一部が暴徒化。筆者はその背景に根強い人種差別への不満のみならず、新型コロナの感染拡大と、それを受けた移動制限や都市封鎖に伴う不安の高まりもあったと考えている。米大統領選を控えて、政治的な対立が先鋭化しやすいなか、景気の深刻な落ち込みで経済的な格差が拡大したことも加わり、当面は合意を目指した協議よりも、単なる言い争いが多くなりそうだ。
国家間の「分断」も深刻だ。とくに中国を巡っては、米国を中心に新型コロナの発生源として責任を追及する動きがあるほか、欧州は中国の我田引水ともいえる「マスク外交」に冷ややかな視線を送る。主要先進国がマスクのみならず、医薬品やワクチンを確保しようと東奔西走する姿は、国際協調という言葉がいかにむなしいかを示すだろう。筆者は第2波を前に各国が足並みをそろえられるか不安に思っている。第1波への対応で、各国のマクロ経済政策の余力が大幅に削られたとすれば、なおさら不安にならざるを得ない。
リスク資産への投資では引き続き、アップサイドよりもダウンサイドを意識した、下値に堅いポートフォリオを構築する必要があると考えている。  
 7/11-20

 

●第2波来たのに緊急事態宣言に及び腰な3つの訳 7/15 
東京を中心として全国に再び新型コロナウイルスの感染者数が増加傾向にあります。第1波を抑え込んだ日本ですが、この先をどう見たらいいでしょうか。
まずはWHO(世界保健機関)が公表している「COVID-19ダッシュボード」の日本についてのグラフ(図1)をご覧ください。
6月下旬から新型コロナの新規感染者数が増加を始め7月に入って急増しているのがわかります。グラフの中ほどに目をやるとちょうど政府が4月初めにわが国初の緊急事態宣言を発動するかどうか迷っていた時期と、直近の感染者数のグラフの形が同じであることがわかります。
政府や自治体は情報操作をしている?
日本では4月7日に緊急事態宣言が発令されると翌日から公表される感染者数は500人を超える新しい水準へと移りました。これはまったくの邪推ではあるのですが、コロナの患者数が東京五輪の延期が決まった3月24日の直後に増え、緊急事態宣言の直後にも増え、そして今回、7月5日の都知事選挙の直後に東京都の感染者数が増え始めたことで、われわれ一般国民から見ると政府や自治体は何らかの情報操作をしているのではないかと勘繰りたくなります。
それにしても政府はこの状況においても「直ちに緊急事態宣言を出すような状況ではない」という認識を表明しています。これはいったいなぜでしょう。その背景にある3つの理由について解説してみたいと思います。
理由1 前提が違う
政府が「4月のときと違う」と言う背景には同じような数の新規感染者が出てきていても4月とは前提条件が違うという論理が存在しています。4月の緊急事態宣言発動時に最も危惧されていたのは医療崩壊でした。当時と比べると感染者には30代以下の人が多いことで重症化する人の割合が少なく、医療現場は逼迫していないと言います。
別の前提として当時とは違いPCR検査数が激増しているという事実もあります。覚えていらっしゃる方も多いと思いますが3月頃まではとにかく各地の保健所は理由をつけてPCR検査を受けさせることに消極的でした。東京都では4月頭頃までは1日の検査数が500件に満たない状況がずっと続いていました。これが4月中頃には1日1000件程度、5月には1500件程度と増加し、その後カウントの仕方が途中で変わっているという事実はありますが、7月現在で1日3500件程度の検査が行われるようになりました。
4月の頃は報道番組などで「検査を拡大すべきだ」という声が高まっていると同時に、専門家の推論として「全数検査ができたらおそらく感染者は公表数字よりも2〜3倍多いのではないか」といった意見も表明されていました。その前提で考えると見た目のグラフの高さが同じなだけで、実際のグラフの山は4月と比べて現在はまだ低いととらえることもできるわけです。
しかし新型コロナの感染者数は、緊急事態宣言が解除された5月25日以降、確実に増えてきているのは事実です。政府や都は「感染者がいちばん多いのは夜の街関連である」と繰り返し主張していますが、事実はそうでもありません。直近の東京都の感染者でいちばん多いのは経路不明の46%です。これは追跡できない感染経路が都内で急増していることを示しています。
アジアで日本と同じような再流行を見せている国を探してみると、中国、韓国、台湾は比較的コロナの抑え込みがうまくいっていて再流行の兆しは見られません。グラフを見ていただきたいのですがいちばん日本とよく似ているのが香港です(図2)。そして香港ではディズニーランドを再び休園させるなどコロナ封じ込めに動き始めました。
一方の日本では緊急事態宣言が解除されたことで通勤ラッシュがふたたび始まり、段階的な解除で飲食店や繁華街に人が戻り、スポーツイベントにも観客が入れるようになりました。季節は夏なので屋外でマスクを外す人も増えてきました。
集団免疫などほとんどできていない
6月に相次いで大規模な抗体検査が行われましたが、新型コロナの抗体を持っている人の割合は厚生労働省が発表した東京都の検査で0.10%、ソフトバンクグループ4万人の医療従事者データで0.43%と集団免疫などほとんどできてはいないことが判明しました。そもそも抗体を持っている人が少ない新しい伝染病なので感染しやすいという前提条件は変わっていません。
その前提下で7月22日に前倒しで国民の旅行需要を増やす目的の「Go Toトラベルキャンペーン」が開始されるので、この夏の新型コロナ感染者数が減りにくい状況が作られています。国民から見れば4月の緊急事態宣言と、7月のGo Toキャンペーンは国の政策としては明らかに矛盾しているように見えるのですが、なぜそんな判断につながるのでしょうか。そこで2つめの理由を見てみたいと思います。
理由2 死者が少ない
先ほど7月の感染者の内訳について重症者が少ないとお伝えしましたが、さらに少ないのが死者数です。グラフ(図3)を見ていただくとわかるように日本の新型コロナの感染者数は4月、5月に集中していて、緊急事態宣言が解除された5月25日以降は激減しています。
実はこの傾向は世界最大の新型コロナ感染国となったアメリカでも似た形で見られます。アメリカでは6月に入り、新型コロナが全州で拡散して感染者が増加の一途をたどっているのですが、その一方でWHOのグラフを見る限り、死者数のピークは4月から5月の頭にかけての時期であって、6月以降は日本と違って一定数の死者は出ているもののその数は落ち着いています。
そもそも日本では4月に緊急事態宣言が出された頃までは新型コロナの抑え込みに失敗すると国内に最悪で42万人規模の死者が出るという予測が念頭にあって大規模な自粛が行われました。その後コロナについての理解が深まり、医学的なリスクについての認識も修正されてきています。一方で日本経済は中小事業者を中心に経済的に壊滅的な被害が出始めています。
政府は経済優先で動かざるをえない?
当時は「人命と経済を天秤にかけることはできない」といった正論がまかりとおりましたが、その人命リスクの規模感が下方修正されたことで、政府としては経済優先で動かざるをえない状況が起きているようです。
前回の大不況であるリーマンショックの時には所得弾力性が大きい自動車業界や旅行業界が大きな打撃を受けました。このうち大企業が中心の自動車業界は銀行がクレジットラインを維持すれば乗り越えられる。その一方で中小や零細企業が多い旅行産業では需要喚起がなければ倒産が相次ぐことは間違いありません。
政治家や官僚がこういった理由を安易に口にすることはないでしょうけれども、実際のところは政府がGo Toトラベルキャンペーンに踏み切る背景には、このような経済学の裏付けが存在するのです。とはいえそれにしても国民感情を考えるとバラマキであり、丸投げ中抜きが問題になっているGo Toトラベルキャンペーンをなぜ感染者が急増している時期に前倒しで急ぐのか不思議に思えるかもしれません。そこに第3の理由が存在します。
理由3 冬になれば緊急事態宣言を出さざるをえない
ここで先ほどご覧いただいたWHO発表の新型コロナの死者数グラフについて別の切り口で比較してみたいと思います。図4は死者数を日本、アメリカ、ブラジル、南アフリカで比較したものです。ブラジルは今やアメリカに次ぐ世界2位の感染国で、南アフリカはWHOが新型コロナの拡大を懸念するアフリカ大陸の代表として挙げました。
グラフの形を見ていただいて直感的にわかることは、南半球の2カ国では主に6月に入ってから死者数が増え始め、7月もその勢いは衰えていないことです。
そして知識としてわかることは南半球の6月、7月は、北半球の12月、1月にあたることです。あくまで新型コロナは未知の病気である部分が多く医学的には断言しにくいことが多いのですが、少なくとも統計学的に推論すれば日本もアメリカも12月や1月に感染した場合には今よりも重症化リスクが高くなることが十分に推論できます。科学的にはこれからちゃんと解明されてくるでしょう。
つまり現時点でまとめると日本では7月の段階で経路不明の感染者数が増加しているため、すでにクラスター対策で封じ込めが難しい状況になっている。抗体を持っている国民は0.5%以下と非常に少なく、接触すれば感染リスクが高い状況は変わっていない。この前提のままで日本が冬を迎えざるをえない状況が政府にはわかっているということです。
スペイン風邪のときも第2波のパンデミックの被害が大きかった。おそらく新型コロナもそうなるリスクを政府は強く感じているのでしょう。そしてそれまではできるだけ経済を回復させる必要がある。だからこの夏の間、政府は経済を極力止めたくない。
これは生活者としての国民にとっては不安なことですが、労働者としての立場の国民感情としてはなんとしてもそうしてほしいという話です。3月、4月、5月と働く機会が減っただけでこれだけ大変だったのですから、少なくとも7月、8月、9月はしっかりと働かせてほしいと多くの国民が考えているのは当然です。
奇妙なニューノーマルが始まっている
ただ、状況は悩ましい。政府は「安心して外出してお金を使ってほしい」とアピールする一方で、50代以上の国民は「そうはいってもコロナは怖い」と自主的に消費にブレーキをかけるからです。
政府は夜の街をあたかもコロナの悪者であるかのようにアピールしますが、風俗、キャバクラ、ホストクラブに行かなければ新型コロナにかからないわけでは決してない。直近では夜の街関連の感染者の割合が減って、それ以外の感染経路が都内では4分の3を超えてきたのですから。
こうして政府は極力、第2波を認めず、緊急事態宣言を検討せず、経済優先を掲げる一方で、国民は自衛目的での自主自粛に入るという奇妙なニューノーマルが今こうして始まっているのです。 
●東京都、新型コロナ新規感染293人で2日連続最多を更新 7/17 
東京都は17日、都内で新たに293人の新型コロナウイルス陽性者が確認されたと発表した。陽性者が100人を超えるのはこれで9日連続。この1週間合計では1418人と感染拡大に歯止めがかからない状態だ。
この日確認された陽性者のうち、20代と30代が合わせて210人で全体の71%。また感染経路が不明な人は142人で48%を占めた。これは感染経路不明者の数として4月10・11日に次ぐ多さとなっている。
これで都内で確認された陽性者の合計は8933人、東京アラートを解除し休業要請などの規制を緩和した6月11日以降の陽性者は3513人となった。
連日200人台、陽性率も上がり感染第2波か
東京都では4月17日に206人の感染確認をピークに、徐々に新規陽性者が減り続け、5月23日には新規陽性者が2人まで減少。感染拡大の抑え込みに成功したかに見えたが、その後、新規陽性者が増加。7月に入ってからは連日100人以上の、感染拡大が続いている。感染者が2人と最少だった5月23日以降の累計では3804人となっている。
東京都は陽性者が急増していることについて、PCR検査の実施件数が1日あたり4000人以上と増えていることも理由にあげているが、陽性率も7月10日以降は6%と高まっており、感染第2波が現実のものになりつつある。
この日確認された陽性者のうち、20代と30代が合わせて約200人で全体の約7割と依然大半を占めているが、40代以上も増加しており、小池都知事は「最近の感染の増加は世代を超えた広がりがあり、また年代別だけではなくて感染経路も、友人同士のパーティーや会食による感染、それから高齢者への家族内感染など多岐に渡っている。陽性者が見つかる確率も高くなっており、感染拡大警報を呼びかけている」と危機感を表した。
神奈川県も独自の警戒を発動、政府は緊急事態宣言の必要認めず
また17日は、埼玉県51人、神奈川県43人、千葉県31名と首都圏でも感染者が急増。神奈川県では県の定める独自の感染警戒の発動基準に達したため、黒岩知事が「神奈川警戒アラート」を発動。「感染拡大注意」として、「3密」を避けるなどの感染対策の徹底、県の「感染防止対策取組書」を掲示していない店舗を利用しないこと、テレワークや時差出勤などの取り組みの徹底を呼びかけた。
こうした状況に対して菅官房長官は、一定の感染増加が継続している状況であるとしつつ、接待を伴う飲食店による従業員などが積極的に感染検査を受けていることや感染者の8割以上が30代以下であることを強調。また東京都内の重症患者が7人となっているなど「医療提供体制は逼迫していない」と述べて、緊急事態宣言を直ちに出す状況でないとの考えを重ねて表明した。 
●欧州、第2波阻止へマスク義務化 外出制限再発動も―新型コロナ 7/19 
新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念されている英国やフランスなど欧州各地で、マスク着用の義務化が進んでいる。スペインは一部地域で外出制限を再発動。各国政府は感染の第2波阻止に向け、警戒を緩めないよう国民に呼び掛けている。
英国では、既にスコットランドなどの自治政府が店舗内でのマスク着用を義務化。ロンドンを抱えるイングランドでも24日以降、同様の規制が課され、違反者には100ポンド(約1万3000円)の罰金が科せられる。
仏政府は20日から、店舗や公共の建物内でのマスク着用を義務化する。これまでは公共交通機関や美術館などでの着用が義務付けられていたが、店舗内での規制はなかった。
カステックス仏首相はメディアの取材に対し、第2波が到来した場合に「外出制限措置を再発動する用意ができている」と強調した。ただ、全国的な制限は「わが国にとって悲惨な影響がある」と指摘。経済への悪影響を回避するため、高齢者や一部地域を対象とした限定的な制限にとどめると説明した。
ドイツやイタリアと同様、スペインも公共の場でのマスク着用を原則義務化している。北東部カタルーニャ自治州は15日、州西部リェイダとその周辺を対象に外出制限を再発動。通勤や生活必需品の買い物以外の外出が禁止された。州政府は、州都バルセロナの住民に対しても不要不急の外出を自粛し、レジャー目的で海岸などに行かないよう求めている。  
 7/21-31

 

●東京再爆発、第2波到来…大人気「ユニクロマスク」を超す「さらに凄いマスク」とは 7/21 
コロナ禍はまだ続く。かつては風邪や花粉症の人のツールに過ぎなかったマスクを、今後は老いも若きも年中身につけねばならなくなりそうだ。
マスクが全国民、春夏秋冬くまなく必要になる? 
「新型コロナはいったいいつ終わるのか」――日本中がストレスをため込んだ今年2月以降の感染拡大・自粛期間を経て、このモヤモヤした状態がどうもこの先長く続きそうだという共通の認識が醸成されつつある。新型コロナウイルスの完全な排斥がいまだ難しい以上、ウイルスとの共存を目指す“withコロナ”モードが遠からず定着してゆくかもしれない。
今年3月以降、図らずも爆発的な需要増加に見舞われた一般人向けマスクも、一部ドラッグストアなどで再び「1人1箱限定」が継続されているとはいえ、現時点では生産数・価格はそれなりに安定していると言っていい。
しかし、従来と“withコロナ”モードとで違うのは、昨年までは冬から初春・梅雨入り前、風邪や花粉症患者の限定商品に過ぎなかったマスクが、全国民に1年間、春夏秋冬くまなく必要となりそうなことだ。
もちろん、「マスクは不要。コロナなんてただの風邪とどこが違う」という主張にも一定の説得力がある。が、日本社会の同調圧力は、外出自粛という一見“あなた任せ”モードですら、罰則のある他国のロックダウンと大差ないプレッシャーがある。そもそも、マスク着用には自衛のためではなく、他者への感染防止という立派過ぎる名目がある。今後ノーマスクを貫くのは、受動喫煙を嫌悪する嫌煙派のような周囲の冷たい視線を覚悟せねばなるまい。
中国“無認可”工場製マスクで不信感が
さて、他人への気遣い・エチケットのためというマスク着用の大前提に加え、機能面で今、求められるのは暑さ対策や着け心地、使い捨てでなければ何度も洗えること、速乾性、匂い対策など。そこに着目した国内の大手スポーツ用具メーカー、アパレルなどの新規参入製品が続々と市場に投入されてきたのは周知のとおりだ。
主だったものを列挙すると、
〇ユニクロ製「エアリズム」 白のみ1パック3枚組990円
〇ミズノ製「マウスカバー」(抽選のみ、プリント・アイスタッチ) 9色935円
〇無印良品製マスク(ネットストア限定) 白のみ4枚3632円
〇モンベル製「ウイックロン ポケマスク」 白のみ、スモールとレギュラーの2枚1200円
〇グンゼ製「肌にやさしい洗える布製マスク」 ライトグレー2枚980円
〇AOKI製「ダブル抗菌・洗えるクールマスク」 1箱20枚入り4000円
〇アイリスオーヤマ製「ナノエアーマスク」 7枚入り498円
〇西川製「洗えるクールマスク」 4枚セットM、L2000円 ジュニア1800円
〇ヨネックス製「スポーツフェイスマスク」 4色4枚3630円
〇アンダーアーマー製「UAスポーツマスク」 1枚3000円
……と、実に多種多様である。いずれも酷暑下での着用を見越して、「涼しい」「軽い」という機能やデザイン性を大きくアピール。発売当日に店頭で行列をつくる様子が報じられたユニクロ「エアリズム」が完売したのを始め、予約が殺到してすでに締め切られ、次回の販売日程が未定の商品も数多い。単価の高い「スポーツフェイスマスク」「UAスポーツマスク」は、運動中もマスク着用が必須となったアスリート向けだ。
いずれもウイルスやそれを含む唾液などの飛沫を通さぬ一方で、涼気や肌触りのよさを感じさせるという矛盾は、様々な工夫によってすでにクリアされていると見てよさそうだ。
4月に国内工場で生産開始したシャープ製マスクもそうだが、小売店から一時消滅した不安が完全には消えていないことに加え、中国製マスクに無認可工場の質の悪いものが混じっており、機能・衛生面・価格面で不信感が蔓延していたことが、大手ブランドへの安心感と人気高騰につながったのであろう。
Tシャツとセットで1万4000円
さて、常時着用となると、特に女性は機能一点張りというわけにもいかなくなる。確実に進化しそうなのはデザイン面だ。すでにネット上では百花繚乱という趣で、様々な生地やデザインのマスクがあふれている。三越伊勢丹はすでに6月にオンラインストアで40以上のブランドと組んで127種類のスタイリッシュなデザインのコラボマスクを販売、即日完売した(7月に再度販売)。単価は税込1650円と、当然ながら価格帯も上昇してゆく。
ヨウジヤマモトは6月にアーティストの内田スズメ、朝倉優佳とのコラボでTシャツ・マスクのセットを販売。価格は1万4000円だが、基調の黒に墨や水彩で描かれた花が鮮やか。このあたりになると、世間的に最も目立ったエアリズムとは別次元の出来栄えだ。
大正期の女性が着けていた「黒いマスク」
医者の白衣と同様、「白じゃないと清潔感がない」「衛生面に問題がある」と、マスクのファッション化に微妙な抵抗を感じる向きもあろう。ところが意外にも、医師の着衣の歴史の中で「白」の歴史は意外に浅い。
19世紀途中まで、西洋の医師はもっぱら黒いコートを着用していた(栗原宏「医師の身だしなみに関する研究:患者視点と医学生視点の比較・検討」)。黒は威厳・権威を表すフォーマルな色であり、キリスト教の礼服と同等の扱い。衛生面は二の次で、服の色と患者の治療とはまだ結びついていなかったようだ。
実は、明治以降の日本に普及したマスクの色も、当初はなんと黒だったとされている。1918(大正7)年、スペインかぜが世界的に大流行した際に方々で貼られたポスターには、「『マスク』とうがひ」「汽車電車人の前ではマスクせよ」という標語とともに、黒いマスクを着用して電車に乗る女性の姿が確認できる(速水融『日本を襲ったスペインインフルエンザ』)。
19世紀半ば以降、ウイルス・細菌が人類に認識されるようになったのと軌を一にするように白衣が登場した。科学と医学の足並みがそろい、衛生面の重要性がようやく認識されたことの証左でもあろう。以来、見た目も清潔で、汚れればすぐわかる白衣は定番となり、長らく医療関係者の象徴でもあった。
今、医師のユニフォームがカラフルな理由
ところが今、気が付いてみると病院の医務室に行っても、白衣より目立つのは1990年代に出現したスクラブと呼ばれるユニフォームだ。
手術着がルーツのVネックで、ゴシゴシ洗う(=スクラブ)ことが可能。ワインレード、ネイビーブルーなど従来では考えられぬようなカラフルさだ。この辺りの激変ぶりは、昭和の医療テレビドラマ『ベン・ケーシー』『白い巨塔』と、平成末期以降の『コードブルー』『救急病棟24時』とを見比べれば一目瞭然であろう。
もっとも、これにはファッション性とは異なる理由があって、その一つが補色残像。長時間同じ色を見続けた後に視線を他に移すと、その色の補色が見える、という現象が起こる。ある色の補色とは、その色とコントラストの強い色のことで、色相環の「反対側」にある。たとえば赤と青緑、緑と赤紫、黄色と青紫……といった具合だ。
例えば医師が外科手術で血液をずっと見ていると、視線を動かすごとに青緑色の残像が見えてしまい、そのたび業務が中断することになる。そこで、青や青緑色を周囲に置くことで残像を緩和するわけだ。医務室のカーテンやベッドのシーツなどに青緑が多用されるのはこれが理由である。
また?  日本独自のガラパゴス市場が深化
他にも白衣独特の威圧感で、病院で測った血圧の数値が普段より高くなる「白衣性高血圧」という現象も理由として挙げられるが、要は、白か白に近い色でなければ「衛生的でない」という思い込みは長年の刷り込みの残滓であり、少なくとも医療現場では過去のもの。医療従事者ではない人たちにとっても同様で、マスクの色とりどりのファッション化に対する抵抗感はほぼないといっていいだろう。
この先、コロナ禍が何年も収束しないのであれば、高付加価値のファッションマスクと安価な高機能マスク、そしてすでにポピュラーな日本人独自の手製布マスクと相まって、世界に類を見ない――ガラパゴスといえなくもない――独自の市場を今後も深化させてゆくであろう。
ウイルス自衛には使えない、クシャミや咳でツバを散らさなければいいと割り切れば、マスクを選ぶ基準は、耐久性も含めた機能と価格のバランス、そしてデザイン・ファッション性というところ。自分の身も心も100%満足させるマスクは、何もエアリズムとは限るまい。 
●国内感染 23日の新たな感染確認425人(午後3時半)新型コロナ 7/23  
23日はこれまでに東京都で366人、兵庫県で35人など全国で425人の感染者の発表がありました。また北海道で1人の死亡が確認されました。国内で感染が確認された人は空港の検疫などを含め2万7695人、クルーズ船の乗客・乗員が712人で、合わせて2万8407人となっています。亡くなった人は国内で感染した人が991人、クルーズ船の乗船者が13人の合わせて合わせて1004人です。各自治体などによりますと、国内で感染が確認された人は累計で次のとおりです。( )内は23日の新たな感染者です。
東京都は10420人(366)、大阪府は2662人、神奈川県は2108人(3)、埼玉県は1888人、北海道は1371人(4)、千葉県は1364人、福岡県は1174人、兵庫県は918人(35)、愛知県は781人、京都府は605人、石川県は306人、茨城県は235人、富山県は234人、広島県は228人(1)、岐阜県は200人、鹿児島県、群馬県は174人、奈良県は171人、沖縄県は157人、栃木県は142人、宮城県は139人(1)、滋賀県は128人、福井県は127人(1)、静岡県は124人(5)、和歌山県は100人、新潟県は91人、長野県は86人、福島県は85人、愛媛県は83人、山梨県は81人(1)、高知県は77人、山形県は75人、大分県は60人、三重県は61人(2)、佐賀県は57人(2)、熊本県は55人(1)、長崎県は50人、香川県は45人、山口県は45人(2)、岡山県は45人(1)、青森県は31人、島根県は26人、宮崎県は23人、秋田県は16人、徳島県は10人、鳥取県は5人です。
このほか、空港の検疫で485人、中国からのチャーター機で帰国した人と国の職員や検疫官などの感染は合わせて173人です。また厚生労働省によりますと、重症者は22日の時点で55人となっています。一方、症状が改善して退院した人などは、国内で感染した人が2万651人、クルーズ船の乗客・乗員が659人の合わせて2万1310人となっています。また、今月19日には速報値で1日に6377件のPCR検査が行われました。 
●コロナ第2波  7/23 
新型コロナウイルスの新規感染者数が再び増加している。1日100人未満だった国内の感染者数は6月下旬から3ケタ台が続く。東京から周辺、さらに地方へと感染が拡がり、感染第2波の到来を指摘する声も。
治療薬やワクチン実用化のめどが立っていないことも、第2波の懸念につながっている。同じ感染症であるインフルエンザの過去の例では、第2波の方が被害は深刻だったこともあり、決して油断はできない。
インフルエンザの世界的流行は20世紀に3回、21世紀に1回起きている。「スペイン風邪」など20世紀に流行したインフルエンザは、発生した地域や感染拡大の仕方は異なるが、いずれも第2波の方が被害は大きかった。
2009年に流行した新型インフルエンザも国によって感染の波に違いがみられた。メキシコやインドでは第3波まであり、欧米各国は第2波でおさまった。幸い日本は第2波の到来がなく、死亡者数も少なかった。
学校休校を早めに実施したことや、公衆衛生意識の高さ、入浴などの生活習慣が死者数の少ない要因とされ、それは現在も変わっていない。この先も手洗い・うがい、3密の回避を心掛け、感染第2波と無縁でいたい。 
●新型コロナ「第2波」を恐れる必要はない 7/24 
東京都で7月23日に確認された新型コロナウイルスの新規感染者数が、366人になった。300人を超えたのは初めてで、小池百合子東京都知事は4連休の外出を控えるよう呼びかけた。これをマスコミが「第2波が来た」と騒ぎ、「緊急事態宣言をまた出せ」という人が増えているが、それは本当だろうか。
問題は陽性者数ではない
そもそも東京都が発表しているのは「感染者数」ではなく「検査陽性者数」である。これはPCR検査(少数の抗原検査を含む)で陽性が確認された人の数だが、そのうち本当に感染して症状の出ている「患者」は何人いるのか、東京都の統計ではわからない。
7月22日のデータでは、入院患者916人のうち重症は18人である。これ以外に宿泊療養が156人、自宅療養が418人、調整中が470人だが、これはほとんど無症状と思われるので、おおむね半数が無症状と推定される。
4月に東京で陽性が増えたときは、37.5℃以上の発熱などの症状があった人が保健所に相談して検査を受けたので、ほぼ100%が患者だったが、6月から風俗営業の店などで無症状の人にも検査するようになり、6月1日には約1000人だった検査人数が、図1のように7月中旬には毎日4000人を超えた。
検査が4倍に増えたら陽性が増えるのは当たり前で、6月初めには毎日20人前後だった陽性者が、その10倍以上に増えた。この検査は臨床的には意味があるが、サンプルが大きく変化したので、感染状況を判断する材料にはならない。
4月上旬に東京で毎日200人以上の陽性者が見つかったときと今回の最大の違いは、その年齢層である。3月から4月にかけて検査したのは有症者だったので、半分以上が80歳以上の高齢者だったが、今回は60%が30代以下で、無症状の人が多い。
検査陽性率は1.9%から6.7%に上がったが、この「陽性」の基準(カットオフ値)はウイルス5個である。つまり検体の中にウイルス(あるいはその残骸)が6個以上あれば陽性と判定されるので、大部分は症状が出ない。
この程度を基準にすると、これからもたくさん陽性が出てくるだろう。そのほとんどは風邪を引いてなおるだけなので、行政が介入する必要はない。問題はコロナで死亡する人がどれだけ増えるかだ。
死者は欧米より2桁少ない
東京都の死者は7月に入って、90代の患者が2人死亡しただけだ。全国でも毎日0〜3人である。これが世界的にみていかに少ないかは、次の図をみてもわかるだろう。
これは世界各国の死者を比較したものだが、EUもアメリカもピーク時には毎日2000人以上が死亡していたのに対して、日本は最大でも20人台と1/100である。人口比でも欧米に比べて2桁少ない。
病気で人が死ぬのを行政が防ぐことはできない。問題は患者が激増して、医療崩壊によって助けられる命が助からないことだ。北イタリアやニューヨークでは感染爆発でそういう状況になったが、日本では感染爆発は起こらなかった。
東京都の重症患者18人に対して、確保された重症者用ベッドは100床。入院患者は916人だが、確保された病床は2800床と、いずれも余裕がある。陽性者数が急増すると過渡的には医療スタッフの手当が大変だが、医療崩壊の心配はない。
「死者は感染の増加から2週間〜1カ月遅れて増える」という人もいるが、上の図でもわかるように死者はこの1カ月減り続けている。今後、欧米並みに激増することは考えられない。
新型コロナはインフォデミック
日本の死亡率が低いのは、政府が緊急事態宣言で国民に求めた「接触削減」のおかげではない。日本より厳しいロックダウンをした欧米では、日本よりはるかに死亡率が高かった。
その原因についてはこれから科学的な解明が必要だが、結果として日本では新型コロナはインフルエンザ未満の風邪だと考えてよい。昨シーズンは1176万人が感染し、今シーズンの患者は728万人と推定されている。
今年のインフルエンザ患者は昨年より450万人少なかったが、それでも新型コロナの感染者2万6000人の280倍である。致死率は新型コロナより低いが、それでも死者は毎年3000人程度と推定され、図3のように1月のピーク時には新型コロナよりはるかに多い。
むしろ日本の反省点は過剰反応である。「2週間後にはニューヨークになる」とか「42万人死ぬ」とかいう脅しに乗せられ、緊急事態宣言で休業要請によって多くの経済的被害をもたらした。この意味で、新型コロナはインフォデミック(情報災害)である。
ワイドショーが毎日「感染者数が増えた」という数字ばかり取り上げ、人々が大病院の救急外来に殺到した。このため緊急手術以外の手術はすべて延期され、それで死んだ患者も多いだろう。おかげで一般病院や開業医は患者が減って経営危機に陥っている。
新型コロナを指定感染症として感染症法の2類に分類したことが、かえって医療の逼迫をもたらしている。指定を解除し、インフルエンザと同じように一般の病院でも対応できる病気にすればいい。
過剰な自粛もやめるべきだ。いま問題になっているGo Toキャンペーンより、移動制限を解除することが最大の経済対策である。 
●東京都、24日の新型コロナウイルス新規感染260人 7月11度目の200人超え 7/24 
24日、都内で新たに260人の新型コロナウイルス陽性者が確認された。テレビ朝日など国内メディアが報じた。
陽性者が100人を超えるのはこれで16日連続となる。7月に入って200人を超えるのは11回目となり、7月の合計では4455人と感染拡大に歯止めがかからない状態だ。
これで都内で確認された陽性者の合計は10680人。緊急事態宣言が解除された5月25日以降の累計は5535人と累計の半数を超えた。
東京都では4月17日に206人の感染確認をピークに、徐々に新規陽性者が減り続け、5月23日には新規陽性者が2人まで減少。感染拡大の抑え込みに成功したかに見えたが、その後、新規陽性者が増加。7月に入ってからは連日100人以上の、感染拡大が続いている。感染者が2人と最少だった5月23日以降の累計では5551人となっている。 
●コロナ再爆発!行動指針を誰も示してくれない「第二波」のサバイバル術 7/24 
政府はなぜ再流行を認めない? 日常には「ヒヤリ・ハット」がいっぱい
政府は認めていませんが、新型コロナウイルス感染の第二波が広がっています。なぜ再流行を認めないのかというと、旅行業界を救うための「Go Toキャンペーン」を軌道に乗せないといけないからでしょう。
客観的に7月の流行状況を眺めると、緊急事態宣言下の自粛時と比べて極めて感染リスクが高い状況になっていることは、いくつかの要素を並べてみればわかります。
・毎日の新規感染者数は過去最大レベルの水準で増えている
・感染経路不明者が新規感染者数の約半数を占めている
・若者中心に無症状の感染者が多い
・自粛が終わり、人々は職場や繁華街に戻ってきている
・夏になり、マスクを外す(外さざるをえない)人が増えている
ソーシャルディスタンスや三トル(距離を取り、マスクを取って、水分を取る)といった新しい日常マナーも浸透し始めてはいるのですが、実際に街に出ると、そうしたマナーを守らない人が一定数います。たぶん体感的には、1割から2割はそういう人がいるせいで、注意していても感染リスクに晒されるケースが結構出てきます。
感染の再爆発が始まっている昨今の新しい日常の中で、私がヒヤリと思い、ハッとした個人的な体験を10個挙げてみます。
(1) 交差点のバイク
横断歩道で信号待ちをしていたところ、突然、目の前50センチ程度の至近距離に、マスクを着けていないおじさんの顔が出現しました。バイクに乗ってきて、私の目前で急停車したのです。ハンズフリーの携帯電話に向かって、大声で飛沫を飛ばしながら話をしています。バイクを運転していて直進信号が赤に変わったので、私の目の前で停止し、歩行者信号が青になるまでの数十秒間、私の顔の近くで飛沫を飛ばし続けていました。
(2)タバコの煙
私が住む新宿区では歩行喫煙が禁止されていますが、ちゃんと罰金を徴収していないため、結構な数の人がタバコを吸いながら街を歩いています。あるとき、私の目の前3メートルの距離でタバコを吸いながら歩いている人がいて、吐き出したタバコの煙の臭いでそのことに気づきました。よく考えてみたら、タバコの臭いがわかったということは、彼の肺の中の空気が私の体内に入ってきたことになるわけです。
喫茶店、小売店、新幹線…… 外は「飛沫感染リスク」で溢れている
(3)喫茶店の「顔の赤い人」
私は仕事の移動の合間に、喫茶店でノートパソコンに向かって仕事をすることが多いのですが、ある日の昼下がり、斜め隣の席の人が病的に顔を真っ赤にしたままぐったりとしていることに気づきました。高熱があるようにも見えますが、昼間からビールを飲んだ人のようにも見えます。距離は1メートル程度しかありませんでした。
(4)蒸気をよく通すマスク
テレビのニュース番組で「夏を乗り切るマスク特集」をやっていました。透過性の強い素材でつくられたある有名メーカーのマスクですが、番組の実験では、従来品のマスクは水蒸気を遮断するのに対し、新製品のマスクでは蒸気がふわりと、ほぼきれいにマスクを透過していました。呼吸が驚くほど楽だという話ですが、このマスクをしている人からの飛沫は飛ぶことになります。
(5)会計の列で近くに寄ってくるカップル
小売店のレジ前に並ぶと、最近ではどのお店も足元に、カラーテープなどでソーシャルディスタンスを守るための立ち位置が指定されています。しかし、私の後ろに並ぶ人に限ってその立ち位置を無視し、接近して並ぶ人がなぜか多い。特にたちが悪いのがカップルです。2人で会話が盛り上がり、私の首筋のあたりでラブラブな声を響かせるケースが何度もありました。
(6)新幹線の大声電話
東海道新幹線の車内では携帯電話が禁止されているので、乗客は車両の連結部に移動して電話をします。そのマナーは守ってくれているのですが、連結部で仕事と思える長電話をずっと続けている人がいました。ドアに近いところに座っていた私には丸聞こえの声量でしたが、部下に熱く指示を出しているようでした。トイレに行こうと横を通過するとき、ちらっと見たらマスクを外してお口が全開でした。私は呼吸を止めていましたが、新幹線の連結部は飛沫で充満していたはずです。
(7)ファミレスの限界
最近のファミレスはコロナ対策をしっかりやっていて、入り口ではアルコール消毒、座席は距離を空けてという具合ですが、それでもどうしても感染リスクが不安になる部分が残されています。オーダーはタッチパネルで行なわなければいけないし、ドリンクバーもボタンを押さなければいけない。「頻繁に消毒をしている」とアピールしてはいるのですが、前のお客が利用した後にボタンを押すのはどうしても私の役目になってしまいます。
触った商品を棚に戻し、おしゃべりが止まらない人々
(8)手にとった商品を棚に戻す
コンビニでおにぎりを買おうとしていたら、先に来ていた人がおにぎりを手に取って、じっくり眺めてからそれを棚に戻しました。たぶん、みんなが同じことをやっているのでしょう。
(9)ランチで大盛り上がり
ランチの際、後からやってきて私の隣に座った2人がとにかくよくしゃべる人たちで、食事が来るまでの間、口角泡を飛ばす勢いで盛り上がっていました。ようやくその席に食事が運ばれてきたので、解放されるかと思ったら、今度は食べながらおしゃべりが続いています。たぶん飛沫だけでなく、ご飯つぶも飛んでいたはずです。
(10)老人で賑わう縁日
取材でお寺の縁日に出かけたことがあります。電車の駅を降りるところから明らかに老人の群れで改札が渋滞しています。お寺の参道に向かうと、その人数はさらに増え、みんな楽しそうに屋台で買い物しています。「密」でした。
政府はもう緊急事態宣言を出してはくれないという現実
さて、こうした「ヒヤリ・ハットな日常」をどうサバイバルすべきでしょうか。
まず大前提として、これは社会学としては当たり前の話なのですが、何らかのルールを100%の人に守らせることは無理です。刑法犯だって年間100万件の水準なので、国民の1%が罪を犯しているわけです。だとしたら、新型コロナの新しい社会ルールを守らない人が10〜20%存在するのも当たり前です。
そこで冒頭の問題提起に戻りますが、政府は「Go Toキャンペーン」を重要視しているため、第二波が訪れている状況でも、この夏、緊急事態宣言を再発動することはまずないでしょう。だとしたら、自分で自分の身を守るしかありません。私個人の体験だけでも、前述のように日常で10個も(本当はもっと多いかも)新型コロナの感染リスクに直面しているわけです。こうした感染リスクを、どう乗り切ったらいいのでしょうか。
一番わかりやすい対策は、4月と同様の自粛生活を「自主的に」行うことです。街に出るからリスクが発生する。ステイホームを心がければ、10個のリスクはどれも経験しないはずです。
とはいえ、生活をする上でそうは言ってはいられない人も多いと思います。実際、私だってそうで、必要最低限の外出はせざるを得ません。そのとき、なるべくリスクを避けた行動を心がけていても、どうしてもヒヤリとする場面に直面してしまいます。
当たり前の対処法ですが、手を頻繁に洗い、うがいをするしかありません。「しまった」と思ったときには、携帯しているハンドジェルで殺菌する。とにかく清潔を心がけ、リスクを減らすことが大切です。
それでも、心配な方は多いでしょう。実は、前述の「ヒヤリ・ハットな10の事例」には、共通のポイントがあります。私の目の前でそうした行動をしている人が無症状な陽性患者でない限り、その「ヒヤリ」はリスクではないのです。そこで、ちょっとだけ安心できるデータを示してみたいと思います。
幸いなことに、現在の日本で起きている第二波は、統計的に見れば小さな規模です。日本の新型コロナ感染者数は、累積で100万人あたり200人程度。つまり、5000人に1人しか感染経験者はいません。そのリスクを確率計算的に言えば、早稲田大学の学生5万人の中では10人、明治大学の学生3万人の中では6人程度。若者に感染が広がっているといっても、せいぜいその程度に留まっている。これが事実です。
ヒヤリ・ハットの法則として知られる「ハインリッヒの法則」では、1件の重大な災害の裏には300件のヒヤリがあると言いますが、私が挙げた10例のヒヤリ事例の裏で、エピソードの当事者が新型コロナに感染しているケースは、確率的には5000回に1回です。つまるところ、まだその程度の感染爆発に過ぎないと捉えて、必要以上におびえないことが大切だと私は思います。
ただ、現状をサバイバルするうえで、この先冬までの間に国内でどこまで感染が広がるのか、その数字を常に把握しておくことは重要です。新型コロナが猛威を振るっている代表的な国がアメリカとブラジルですが、感染者数は100万人あたり1万人で、つまり100人に1人が新型コロナに感染していることになります。
このような感染レベルになると、街で視界に入ってくる人の中の1人は感染していると考えるべきです。同様に、通勤電車の車内にも1人は無症状感染者がいると考えられるレベルです。
以前、ビックカメラが「100人に1人、買ったものがただになる」というキャンペーンをやり、私もハードディスクが無料になったことがありました。つまり、もし日本でコロナがアメリカやブラジル並みに蔓延する状況になったら、「ヒヤリ」で自分が当たってしまう可能性は結構高くなるのです。
感染者が「1000人に1人」になったら、何と言われても自粛して身を守れ
結論としては、現時点ではヒヤリ・ハットに直面したら手を洗い、うがいをすればよいでしょう。ヒヤリ・ハットは日常では必然的に起きることなので、必要以上に心配しないこと。そうしないと、メンタルが持ちませんから。
一方で、日本の感染状況はしっかり注視しましょう。感染者数が1000人に1人くらいの水準、つまり全体で10万人を超えてきたら、政府や自治体が何と言おうと(もしくは何も言わなくても)自主的に自粛モードに入ったほうがいいと、私は思います。 
●大阪府 新たに149人の感染確認 1日として過去最多 新型コロナ  7/24 
大阪府は、24日、府内で新たに149人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたと発表しました。大阪府内で1日に感染が確認された人数としてはこれまでで最も多くなりました。また、1日に100人以上の感染が確認されたのは3日連続です。大阪府内の感染者はこれであわせて2915人となりました。  
 
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2020/2-
 
 
 

 

●デマの拡散 3/1
 
 
2月24日ごろから、“トイレットペーパーやティッシュは製造元が中国で、生産元が生産していないから品薄になる。早めに買っておいた方が良いかもしれない”といった情報がSNSに複数投稿され、瞬く間に拡散していきました。すると、時を同じくして《近所のドラッグストア、トイレットペーパー売り切れてた》との書き込みも多く見られるようになったのです。
マスクは中国生産 たしかに不足
トイレットペーパー・ティッシュペーパーは国産
「品薄になるデマ」
買いあさり始まる  お一人様一個 制限販売スタート 
 
 
猫の餌を買いに行く レジに一杯人が並んでいる 
どうしたの ? 皆さん手に手に トイレットペーパーかティッシュペーパーを持っている
レジまで待つ時間は同じ なんとなく猫の餌に ・・・ ティッシュペーパーをくわえる 
15分くらいか並んで待つ レジで支払い
 
 
 

 

●新型コロナウイルス ネットで広がる偽情報 1/29 
新型コロナウイルスにより、130人以上が亡くなった。確認された感染者は5900人を超え、香港などは感染拡大を防ぐため、大陸側からの移動を禁じる措置を発表した。しかし中国や世界に広がっているのはウイルスだけではない、偽情報もだ。BBCモニタリングは、さまざまな偽情報がどこからやってきたのかを調べた。
「コウモリスープ」の動画
新型ウイルスの第1報が伝わるとすぐ、インターネット上では発生源について憶測が始まった。武漢で新型ウイルスが流行する中、人々はコウモリを食べているとする動画が大量に広まり、事態は悪化した。ある動画では、笑顔の中国人女性が調理されたコウモリをカメラに向け、「鶏肉のような」味がすると話している。この動画をきっかけに、インターネット上では中国人の食習慣が流行の発端だったのではないかと非難する声があがった。しかしこの動画は武漢どころか、中国ですら撮影されていない。2016年に人気ブロガーで旅行番組の司会を務めるワン・メンギュンさんが、太平洋の島国パラオで撮ったものだ。それが昨年、武漢で新型コロナウイルスが発生したというニュースと共に、ソーシャルメディア上に再浮上してきた。オンラインでの反感を受け、メンギュンさんは「地元の人々の生活を紹介したかっただけだ」と謝罪。コウモリがウイルスの感染源になるとは知らなかったと説明した。この動画は現在、取り下げられている。新型ウイルスは、武漢の魚市場で違法取引されていた野生動物から発生したと考えられている。最近の調査で、コウモリもウイルスの発生源である可能性があると指摘されているものの、中国ではコウモリのスープはよくある料理ではなく、実際の発生源の特定作業は今なお続いている。
流行は「計画されていた」
アメリカで最初の感染者が確認された先週以降、ツイッターやフェイスブック上で、専門家がこのウイルスについて何年も前から知っていたかのように読み取れる特許書類が出回り始めた。この疑惑を最初に広めた1人が、ユーチューバーで陰謀論者のジョーダン・サッシャー氏だ。サッシャー氏は連続ツイートで、英サリーにあるパーブライト研究所が2015年に提出した特許書類のリンクを紹介。その書類には、呼吸器疾患の予防ワクチンとして利用できる可能性のある、弱体化させたコロナウイルスについての記載があるという。このリンクはフェイスブックでも、陰謀論者や反ワクチン論者などによって広く拡散された。サッシャー氏はさらに、ビル&メリンダ・ゲイツ財団がパーブライト研究所やワクチン開発に資金を提供していることから、今回の新型コロナウイルス流行は、ワクチン開発への寄付を促すために故意に計画されたものだと主張している。「ゲイツ財団は今までにどれだけの資金をワクチン開発に出してきたのか? 今回のウイルス拡散は計画されていたのか? メディアは恐怖をあおるために利用されているのか?」とサッシャー氏はツイートした。しかし、パーブライト研究所の特許は新型コロナウイルスではなく、ニワトリが感染するコロナウイルス「鶏伝染性気管支炎ウイルス」に向けたものだ。また、ビル&メリンダ・ゲイツ財団をめぐる憶測については、パーブライト研究所の広報担当者がバズフィード・ニュースに取材で説明。鶏伝染性気管支炎ウイルスに関する取り組みに、ゲイツ財団は資金援助をしていないと答えた。
「生物兵器」の陰謀論
インターネット上で拡散している根拠のない主張には、新型ウイルスは中国の「密かな生物兵器プログラム」の一部で、武漢のウイルス研究所から流出したものだというものがある。この説を広めた人々の多くは、米紙ワシントン・タイムズが掲載した2つの記事を根拠にあげている。どちらも、イスラエルの元情報機関職員の話を引用している。しかし、これらの記事にある主張には根拠が提示されていない。さらに記事が引用するイスラエル関係筋は、ウイルス流出の「証拠やそれを示唆するものは今のところない」と述べている。両記事は現時点で、何百ものソーシャルメディア・アカウントで拡散され、数百万回は読まれているとみられる。英紙デイリー・スターも先週、新型ウイルスは「秘密の研究所」で始まったかもしれないという記事を出した。しかしその後、主張に根拠がなかったとして修正した。公式調査によると、新型ウイルスは武漢の魚市場で違法取引されていた野生動物から発生したと考えられている。BBCは、ワシントン・タイムズにコメントを求めている。
「スパイチーム」の存在
カナダ国立微生物研究所で研究者が解雇されたことと、新型ウイルスを結び付けようとする不正確な主張もある。カナダの公共放送CBCは昨年、ウイルス学者のチウ・シャングオ博士とその夫、中国からの学生などがこの研究所から「規約違反」の疑いで解雇されたと報じた。警察はCBCに対し、「公共の安全への脅威はない」と説明した。別の報道では、チウ博士は中国科学院の武漢国家生物安全実験室にを2年間で計4回訪れていたとされた。さらにツイッターでは、CBC放送へのリンクと共に、チウ博士とその夫が「スパイチーム」として「病源菌を武漢の施設へ届け」ており、夫は「コロナウイルス研究の専門家」だというツイートが出回った。このツイートはこれまでに1万2000回以上リツイートされ、約1万4000件の「いいね」が付いている。しかしCBCの2つの報道には、このツイートで指摘されている3つの主張は含まれていない。また、「コロナウイルス」や「スパイ」といった単語も一切出てこない。CBCはその後、このツイートに書かれている主張に根拠はないと報じている。
「武漢の看護師」の動画
武漢がある湖北省の「医者」や「看護師」による「内部告発」だという動画も何種類かある。こうした動画はソーシャルメディア上で何百万回も再生され、さまざまなインターネット・メディアで取り上げられている。もっとも有名なのは、韓国のユーザーがYouTubeに投稿したもので、英語と韓国語の字幕が付いていた。この動画は現在、削除されている。この英語字幕によると、動画に映っている女性は武漢の病院の看護師だという。しかしこの女性自身は、動画内で自分が看護師あるいは医者だとは発言していない。これは、この動画のさまざまなバージョンをソーシャルメディアにあげた人物による推測に過ぎないと思われる。女性は自分の身分を明かさず、特定不明の場所で防護服を着ている。しかしこの防護服は、湖北省の医療従事者が着ているものと一致しない。当局によって事実上の封鎖状態にあるため、湖北省内から動画を検証することは難しい。しかしこの女性は、ウイルスに関する根拠のない主張を数多く行っているため、彼女が看護師や医療補助員である可能性は低いとみられる。女性は、中国国内での新型ウイルス感染者は9万人だとしている。しかし公式には、感染が確認されたのは1月30日現在で7711人となっている。 
 
 

 

●新型コロナウイルスに関する10の偽情報、「陰謀説」も 2/6
ニューヨーク医科大学(NYMC)で先ごろ、感染が拡大する新型コロナウイルスについての情報を共有するため、同大学の専門家や州政府・市当局の関係者らが会合を開いた。 そこでNYMCのエドワード・ハルパリン学長がまず指摘したのは、「非常に多くの偽情報が出回っている」ということだった。「政府による陰謀とのうわさや、…中華料理店に行ってはいけないなど、中国系の市民に対する人種差別的な見方が広まっている」 とくに広く浸透しているとみられるのは、次の10のデマだ。
1 どの病原体より感染力が強い
事実とはまったく異なる。麻疹(はしか)ウイルスは、新型コロナウイルス(2019-nCoV)よりはるかに強い感染力がある。はしかが新型コロナウイルスほど急速に広まることがないように思えるのは、ただ予防接種を受けている人が多いためだ。
2 どの病原体よりも致死率が高い
ニューヨーク市衛生局の上席医療コーディネーターで医療疫学が専門のメアリー・フートによると、多くの人が新型コロナウイルスの致死率について、実際よりも相当に高いと誤解している。現在のところ、新型コロナウイルスの致死率は約2%とみられている。一方、エボラ出血熱とマールブルグ病はおよそ50%(いずれも世界保健機関:WHOの発表による)。狂犬病は発症すればほぼ100%とされる。また、米疾病対策センター(CDC)の2017年の発表によれば、インフルエンザで死亡する人は世界全体で、年間29万1000〜64万6000人に上っている。
3 実験室で“製造”され、意図的に拡散されている
感染症が流行すると、必ず流れるのが陰謀説だ。米国の国営放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」などが運営するファクトチェック・サイト「ポリグラフ・インフォ(Polygraph.info)」が1月27日に伝えたところによると、ロシアの多数の報道機関が「中国に対する米国のバイオテロ」「米国の“薬剤師”が大量にこのウイルスを製造」などと報じている。また、米国内では「ワクチン製造で儲けるため」の政府の陰謀といった偽情報が出回っている。
4 感染拡大を抑えるワクチンがある
ワクチンの開発は非常に難しく、時間とお金、そして“本物の”科学が必要となる。まずは問題を引き起こしているウイルスや細菌を見つけ出し、次に有効なワクチン製造方法を特定しなけなければならない。そして、できたワクチンは厳格な安全性試験に合格しなければならない。
5 予防・治療の方法がある
健康に関連する問題が起きると、特定のサプリメントやその他の“自然薬品”が効果的だと言う人が必ず現れる。だが、効果を科学的に証明する必要がないのであれば、誰でも何でも言うことができる。現時点では、新型コロナウイルスに感染した場合の治療薬はない。感染を防ぐための最善の方法は、頻繁に、よく手を洗うことだ。また、何であれ感染症にかかっている人との接触をなるべく避けることだ。
6 発熱・咳の症状があれば感染している
医療関係者の間ではよく、「ひづめの音が聞こえたら、シマウマではなくウマのことを考えろ」と言われる。発熱や呼吸器症状がある場合、まずは(新型コロナウイルスなどよりも)上気道疾患や呼吸器疾患のようなごく一般的な病気の可能性を疑ってみるべきだということだ。
7 特定の人や行動への罰
「HIV/エイズの感染が拡大したときもそうだったように、健康に関連する問題が起きると、人はいつでも特定の誰かを非難しようとする」とハルパリン学長は指摘する。「HIVのときは“4H”(ホモセクシュアル、血友病患者:hemophiliacs、ヘロイン依存症患者、ハイチ出身者)が原因だと非難された。現在は中国人が同じように非難されている」 仮に“道徳的に誤った”行動を理由に特定の人を罰するための病気があるというなら、「腐敗政治家熱」や「多額横領象皮病」などがあってもいいことになる。
8 中華料理・中国製品から感染する
たとえば中国で加工され、米国向けに出荷されたマグロなどの食品は、おそらくウイルスが死滅する温度まで加熱された後に、包装・梱包されているはずだ。
9 中国出身者・東アジア系の人を避けるべき
そうすべき科学的な根拠はない。ウイルスはマッチング・アプリのユーザーとは異なり、人種や人の外見を選ばない。免疫がなく、たまたま感染する距離にいた人に感染するだけだ。
10 感染拡大はウソ
そのようなうそを広めるために、WHOは世界各国から科学者や専門家、関係組織、政府関係者を集めて対策を協議したというのだろうか? 誤った情報を広めたい人たちは、常に存在する。ナンセンスな主張に対する免疫力を高めることが重要だ。
前出のフートは「最大の敵の一つはパニックと恐怖だ」として、次のように述べている。「デマによるパニックが起こらないようにすると同時に、人々が本当のリスクを理解し、適切な行動を取れるようにすることが非常に重要だ」  
 
 

 

●新型コロナ 世界でデマ拡散 SNSなど情報注意 3/7
新型コロナウイルス感染症への不安が広がる中、予防や日用品の供給に関するデマが会員制交流サイト(SNS)などで飛び交っている。真偽不明の情報がインターネット上で拡散しているが、社会心理学の専門家は国立感染症研究所などの「一次情報」にあたってほしいと呼び掛ける。
「免疫機能向上」や「ウイルス対策」に−。フリーマーケットアプリ「メルカリ」では三月に入って花こう岩(御影石)が多数出品され、実際に売買が成立している。
「花こう岩から出る放射線が新型コロナウイルスを分解する」などと記したSNSが発端とされるが、国立研究開発法人・産業技術総合研究所地質調査総合センターは「誤情報」と断定。花こう岩から出る放射線は微量で、体内のウイルスには効果がないという。
「二六〜二七度の温度でウイルスは死ぬ。お湯を飲めば予防できる」というのもデマ。感染症指定医療機関である公立陶生病院(愛知県瀬戸市)の武藤義和・感染症内科部長は「人間の体内は三八度前後だから、すでに死んでいることになる」と否定。
「鼻水とたんが出る場合は新型コロナウイルスでない」との話もあるが、武藤医師は「それこそが初期症状の一つ」と指摘する。
デマが消費行動を混乱させる事態も起きた。二月下旬、「マスクの原料と同じ」などとして、トイレットペーパーが品薄になるとの虚偽情報がSNSで出回り、各地のドラッグストアやスーパーに客が殺到した。
日本家庭紙工業会によると、トイレットペーパーは98%が国内産で原料もマスクとは異なる。経済産業省によると、国内在庫は国民全体が三週間分使える量(三億五千万ロール)があるが、輸送が追いついていない。早期の品薄解消に向け、店頭への輸送量を平時の倍にしている。
ユニセフが警告「誤情報の流布危険」
国連児童基金(ユニセフ)は6日、新型コロナウイルスに関し誤った情報が広がっているとして、注意を呼び掛ける声明を出した。例えば最近、インターネットを通じ、ユニセフの情報として「アイスクリームなどの冷たい食べ物を避けると感染しにくくなる」と数カ国語で広まったが「もちろん全くのうそ」とした。
「衣服を日なたに干せばウイルスは死滅する」という誤情報もあった。ユニセフは「不正確な情報を広めたり、信頼できる人の名前を悪用して誤情報を権威付けしようとしたりするのは危険だ」と強調。誤情報の流布をやめるよう求めた。
「一次情報に接して」
デマはなぜ広がるのか。社会心理に詳しい東京大総合防災情報研究センターの関谷直也准教授(44)は「新型コロナウイルスは世界共通の話題。中国・武漢の医療崩壊を知った人たちが強い不安を抱き、流言が広がっている」と説明する。
関谷准教授は、多くの人の不安を招く感染症を地震などと同じ「災害の一つ」と説明。ただ、原発事故による放射性物質が事故直後をピークに低減したのに対し、新型コロナウイルスの感染は今も拡大している。
情報を求めて多くの人がインターネットで検索し、玉石混交の情報がネット上にあふれる。各国のうわさレベルの情報もネットで瞬時に広がるという。
情報の真偽を個人で判断するのは難しく、関谷准教授は「感染症研究所など、信頼できる一次情報にあたることが重要」と指摘した。
デマ情報
花こう岩などの石 ウイルスの分解に即効性がある
産業技術総合研究所地質標本館の森田澄人館長「花こう岩は、地下深くマグマが固まってできた岩石で、建材や墓石などによく使われる石です。地域によっては、庭先や近くの川原にたくさん落ちているごく普通の石です。病気への効能などは確認されておらず、科学的根拠は全くありません」
鼻水と痰が出る場合は新型コロナウイルスではない
厚労省HPによれば、国内13例目の20代女性は鼻水が続くため医療機関を受診して発覚
新型コロナウイルスの再感染は致死的 / 2回目に感染したときは死んでしまう
感染症が専門の神戸大学の岩田健太郎教授によると「(調べた限りでは)『2回感染した』という事例は、1度も確認されていない」「再感染が確認されていないということは、それが心不全を起こすということも当然確認されていない」 「動画の中で『血清型が少し違うウイルスがやってくる』という発言がありましたが、まだそんなものは確認されていません」【2/28時点の情報】
新型コロナウイルスの感染予防にアオサが効果的
中部大学の発表は、26日までに公式サイトから削除。同大広報部は「意図した内容と違う捉え方をされて、皆様に広がっている」「新型コロナ(に効果があると)の裏付けは取れておらず、これでは嘘になってしまうので取り下げさせていただきました」と削除理由を説明している。
新型コロナにビタミンDが効く
国立健康・栄養研究所によれば「現時点ではそのような効果は確認されていません。手洗いなど、正しい予防を心掛けましょう」とTwitter上で注意喚起している。【2/26時点の情報】
コロナウイルスは熱に弱く、26~27度のお湯を飲むと殺菌効果がある
(医療ガバナンス研究所の上昌広理事長によると)摂氏26度や27度でウイルスが死滅するのならば、人間の体温は36度付近なので体内に入った時点で死滅することになる。根拠のない話。
聖マリア病院の本田順一副院長(感染制御学)によると「26〜27度で死滅するなんてことはあり得ない。お湯に関しても根拠のないデマ」
近畿大の吉田耕一郎教授(感染症学)によると「人間の体温より低い温度で殺菌できるなんて、常識的に考えてあり得ない。出元の分からない情報を安易に信じるのは危険だ」
川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長によれば「ウイルスは一般に熱には弱いので、煮沸などで十分ウイルスを不活化できることはあります。26-27度では活性は低下しますが、失活はしません」
エアロゾル感染を確認。要するに空気感染。
報道ではエアロゾル感染について『可能性』が言及されているだけで、現時点では確認はされていない。(感染症の専門家、岩田健太郎医師によると)咳やくしゃみなどによって感染が広がる「飛沫感染」よりは感染の範囲が広がるとはいえ、恒常的に感染の広がりが認められるものではなく「空気感染」とは別物。
ウイルスはアルコールでは消毒できないというのが通説。
ウイルスの種類によってはアルコール消毒の効果に差があるのは事実だが、厚労省はアルコール消毒は効果がないという情報は誤りで、アルコール消毒を呼びかけている。WHO特設サイトも「アルコール消毒剤か石けんと水」で手を頻繁に洗うよう勧めている。
新型コロナウイルスに「HIV(エイズウイルス)」のタンパク質が挿入されていることをインド工科大学の科学者たちが発見。
免疫学やウイルス学を専門とする峰宗太郎医師によると「HIVのあるタンパク質のごく一部の配列に似てはいるが、似ている部分は非常に短く、偶然に生じた配列である可能性がある」「類似が指摘されている配列は、とても短いアミノ酸配列であり、多くの生物から同じような配列は見つかる」
ウイルスの予防に紅茶や緑茶がお勧め
お茶に含まれるポリフェノール成分の一種に、抗ウイルス作用があるとする説に基づくものとみられるが、ポリフェノールに詳しい開発邦宏・大阪大連携研究員は「そうした研究はあるが、実際に人で予防効果を示した報告はない」と指摘。
30分に1回の軽いコップ1杯の給水で胃に流れて胃酸で死滅するようなので、予防にはお勧めです。
海外で感染症対策などにもあたっている日本赤十字社和歌山医療センターの古宮伸洋医師の話「医学的な根拠がないというのは言えます。ウイルスが胃酸に弱いのは確かですが、のどだけではく、目や鼻の粘膜からも体に入って感染します。この方法についてヒトでの効果を科学的に立証したデータはありません」
 
 

 

●新型コロナ、感染者より大バカ者の拡大が止まらない 3/11 
テレビは連日、コロナウイルス報道である。もうさすがにうんざりする。毎日毎日「感染、拡大止まらず」「警察官初の感染」「大分県初の感染」「広島県初の感染、8回受診して検査行われず」「どこどこで1人、どこどこで2人」「クラスター感染か」「依然つづく“トイレ紙”不足」。もう気が滅入る。テレビのワイドショーはどの局もくどくて、しつこい。報道の仕方に相変わらずの違和感しかない。感染の世界流行(パンデミック)になるのか、その逆に、いつごろ収束しそうか、東京オリンピックは大丈夫なのか、世界経済はどうなるのか、といった大問題は個人にはどうしようもない。いずれなるようになるだろうと思うしかない。わたしが関心をもつのは、一つひとつのもっと小さい事象や身の回りの人々の反応である。われわれの生活にとって問題になるのは、いつも小さなことや一人ひとりの人間の言動である。
いまやコロナウイルスの感染は世界中に拡散している。100か国を超え、アフリカも南米も無関係ではなくなった。だがこの「拡散」もじつは実態にはそぐわない。それはともかく3月6日の時点で、日本国内感染者はクルーズ船を含めて1054人だが、退院者は250人である。退院した人の数は感染者数から引かれないのか。中国では、感染者が8万651人だが退院者は5万5000人である(死者は3070人)。日本の回復率は約25%、中国は68%である(世界の回復率は約55%)。それにしても厚労省、もっと見やすい統計表にしろよ。それとも見せたくないのか。
2月25日、新型コロナウイルス感染症対策の基本方針が発表された。「感染の流行を早期に終息させるためには、クラスター(集団)が次のクラスター(集団)を生み出すことを防止することが極めて重要であり、徹底した対策を講じていくべきである」なんてことをいっていた。わたしはこれをテレビで見ながら、「エラソーに。クラスターなんて言葉使うんじゃないよ」と思った。クラスター(cluster)とは、「英語で『房』『集団』『群れ』のこと」だ(ウィキペディア)。専門家が使った言葉をそのまま発表に使っているのである。国民にわかるように説明しようという気がまるでない。この発表を見ていた毎日新聞の与良正男記者が「そんな言葉使うなよ」といっていた。正しいし、適切な反応である。
テレビでは「感染者の拡大止まらず」というが、それに伴って「大バカ者の拡大止まらず」で、日々、バカが続々出現しているのには笑わせられる。とくにわたしの印象では、40〜50代のおやじにバカが多い。男らしいだろというように「感染したらあとは死ぬだけよ」とドヤ顔のおやじ。感染したらもう死ぬと思っているのである。バカでしょ。
かと思えば、電車の吊り革には絶対さわらないというおやじがいる。軍手をしている。「絶対ウイルスいるでしょ、絶対」と、バカ丸出しである。わたしはできるだけ普通の生活をしたいから、あえて手すりにも吊り革にもエスカレーターのベルトにも触る。嘘か真か、職場で咳やくしゃみをしただけで「新型コロナウイルスと誤解させて迷惑かけたから、謝罪しろ」と迫るバカ上司が出現しているという。福岡では、マスクをせずに咳をしていた男を見てパニックになり、電車を止めたバカおやじがいた。しかし、なんといっても日本一のド阿呆チャンピオンは愛知県蒲郡市に住む50代の男だろう。この男、自分が新型コロナウイルス陽性となったと知るや、「今から駅前でウイルスをばらまいてやる」といって飲食店をはしごした。ところが、こいつは普段から酒癖の悪さでは札付きのバカらしく、さすがに例外中の例外である。
2月27日、安倍晋三首相は、春休みまでの休校を全国の小中高校などに要請する方針を表明した。専門家会議の、コロナウイルスの感染拡大を止められるかどうかはこの1、2週間が山、という見解に慌てたのである。それまでは、なにをしても後手後手と批判されてきたものだから、ここで一発逆転を狙ったのか、専門家会議にも諮らず、独自に判断決定したようである。
この唐突な政策に世間は右往左往し、効果のほども疑問視されている。しかし、これに反対するものはいない。だれもなにが正しいかわからないからだ。専門家にもわからない。ヘンなことをいって責任を問われても困るし。しかたないことだ(肝心の2週間の限度は今週末だが、どうなるか?)。麻生太郎財務相は翌日の記者会見で、小中高校の臨時休校に伴い、共働き家庭などで生じる費用負担について質問した記者に対して、「政府が払うのは当然のことなんじゃないですか」と答え、「つまんないこと聞くねえ」とつぶやいた。麻生の尊大さは相変わらずである。しかし、なにを訊かれても「つまんない回答」しかしていないのは政府側もおなじ。安倍首相はまたぞろ「私の責任」というが、かつて一度も責任をとったためしがない。「私の責任」といえば、それが責任をとったことになると思っているのではないか。ただし、「つまんないこと」を質問する記者がいることも事実だ。記者の側もしっかりしろよ。とくにテレビ記者の出来がひどい。自社の記者が発言する姿を撮ることだけに必死で、それを自社の手柄みたいに扱うのである。質問の中身など二の次なのだ。恥を知れ、といっても無駄。かれらは恥知らずだから。
マスクと消毒液の品切れのあとに、トイレットペーパーの買い占め問題である。もうわかっていたことである。だが政府は一言もなにもいわない。肝心なことはなにひとついわない国である。やっと2月28日に岡田官房副長官が「買い占めや転売しないで」と呼びかけたが、いかにも下っ端だし、時すでに遅し。トイレットペーパーを買っていた40〜50代のおやじにテレビがマイクを差し出すと、照れ笑いをしながら「デマだとわかっているんだけど、日本人の性(さが)だねえ」と弁解。あんたの性だよ。
こんなネット記事もあった。「トイレットペーパーを大量に買い占めて妻に激怒された夫、『私に落ち度はない』と共感求めるも批判相次ぐ」という記事である(3/3。キャリコネニュース)。投稿者は16ロール入りを18個購入した(どうやって持って帰ったのか?)。「それを見た妻は『こんなに沢山どうすんの!』と激怒したという。男性は不服そうに『妻には危機管理ってものが欠落しており、家族を守る私にとってなんら落ち度が無いと思うのですが…。皆さんならどっちが正しいと思いますか?』」と書いて、ネット上であなたが正しいといってもらおうと思ってたら、反対に袋叩きにあったというのだ。大バカ2号である。自分では正しいことをしているつもりなのが処置なしである。
3月6日、わたしは近所の大型スーパーに行った。そこで驚いた。6畳間ほどのスペースに大量にトイレットペーパーが、どうだ参ったか、というほど高く積み上げられていたのである。その周囲では、客もドン引きしたのか数人が手にとっていただけで、いたって静かであった。よく、客が殺到して阿鼻叫喚の争奪戦にならなかったものである。まあこの時期には国内在庫はたっぷりあるという報道がされはじめていたから、それも効いたか。
問題はいまでも解消されていないマスク不足である。「マスク不足、深刻」というが、なにが「深刻」なのかわからない。この点について、わたしが最近最も共感したニュースはこれである。「『健康ならマスクをしないで』シンガポール政府、売り切れ続出で勧告」(2月3日)。すでに1月29日の時点で、こんな勧告が出されていたのである。残念なのは、勧告を出したのが日本政府ではなかったことである。シンガポール政府は「健康ならマスクをしないで」と自粛を求めた。「マスクは、体調が悪く、咳や鼻水など呼吸器官の症状があった場合のみ着用してください」「健康な人たちはマスクを着用する必要はありません。マスクはウイルスの拡散を減らす助けとなるものです」「マスクの買いだめをする必要はありません。それにより、本当に必要とする人が入手できなくなってしまいます」というものである。
これでシンガポールでのマスク買い占め騒動が収まったかどうかは知らない。たぶんだめだっただろう。しかしいち早く「健康ならマスクをするな」と打ち出したシンガポール政府はえらい。
感染しても軽い風邪にかかった程度だからそれほど怖がることはない、と知っておくことは、いたずらに怯えないために必要ではないかとある医師がいっていたが、まったくそのとおりだと思う。感染したらすぐ死ぬ、と思っているのはバカおやじだけである。世界で感染者10万人。世界の人口は77億人。わたしは素人だが、これは到底パンデミックではない。無差別で頻繁な市中感染も起きていない。わたしはそう思っている。まだどうってことない。
3月9日、毎日新聞に、水戸在住の33歳の女性のこんな投稿が載った。彼女の会社では社員やパートたちが「嫌だ、怖い」といっているが、彼女は「手洗い、うがいの徹底、人混みはさけるか行く時はマスク。後は開き直るしかない」と考える。「いつ感染するかとびくびくおびえても」しようがない。「誰しも病気になる時はなる」「今できることに最善を尽くす」しかない、と書いている。「それは、人生においても同じではないかと思う」。じつにまっとうな考えである。いま必要なのはこういう覚悟ではないか。  

 

●新型コロナ:「デマ否定」が逆にデマを拡散させてしまう――それを防ぐには 4/7 
感染症などをめぐってネットに氾濫するデマ。だが、「デマ否定」がかえってデマを広げる事態も起きる――。感染症をめぐるデマについて、米ダートマス大学などの研究チームが、新たな調査結果からそんな傾向を明らかにした。虚偽情報に対抗する取り組みとして、ファクトチェックの重要性が指摘されてきた。だが場合によっては、事実の提示が逆効果になることもある、ということだ。
では、このパラドックスを避けるためにできることはあるのか。デマをめぐるメディアのニュースでは、「否定形」ではあっても、デマの内容はユーザーの目に飛び込み、強い印象を残してしまう。だが、この問題に対するいくつかの対策も提唱されている。
その一つが、「真実のサンドイッチ」と呼ばれる手法だ。まずはニュースの主眼を、事実をしっかり伝えることにおき、その後に、事実に反するデマの内容を伝え、さらに改めて事実を伝える。そうすることで、デマが強い印象を残すのを避ける狙いがある。カリフォルニア大学バークレー校教授で認知言語学の第一人者、ジョージ・レイコフ氏が提唱しているものだ。
もう一つの対策として指摘されているのが“スルー力”。デマの拡散規模を見極めて、その拡散が限定的ならニュースとしては扱わず、いたずらに社会の関心を集めないようにする、という判断だ。フェイクニュース対策のNPO「ファースト・ドラフト」事務局長のクレア・ワードル氏らは、拡散の「ティッピング・ポイント(臨界点)」を見極めよ、と指摘する。
新型コロナウイルス禍の中で、メディアの「伝え方」にも、効果と影響を見据えた検討が必要になっている。
感染症をめぐる「デマ否定」の逆効果
米ダートマス大学社会科学部副学部長のジョン・M・カーリー氏らの研究チームは今年1月末、ジカ熱(ジカウイルス感染症)の流行をめぐるデマと「デマ否定」の逆効果について、ブラジルでの調査による研究結果を、学術誌「サイエンス・アドバンシス」に発表した。
まず研究チームは2015年から2016年にかけてブラジルで流行したジカ熱に関する情報の理解について、1,532人のブラジル人を対象に、2017年に対面調査を実施した。それによると回答者は、ジカ熱について「蚊が媒介する」という事実を92%が、「人との日常的接触では感染しない」という事実は83%が、それぞれ理解していた。その一方で、63%超が「遺伝子組み換え(GM)の蚊が感染を広げた」というデマを信じており、ジカウイルスが要因の一つとされる小頭症について、過半数が「ボウフラの駆除剤」「三種混合ワクチン接種」が原因とのデマを信じていた。
研究チームはさらに、2017年と2018年にネット上での調査も実施した。この調査では、「遺伝子組み換えの蚊が感染を広げた」などのデマについて、世界保健機関(WHO)の情報をもとに否定したところ、その前後で回答者がデマを信じる割合がほとんど変わらなかった、という。さらに、「遺伝子組み換えの蚊」のような広く信じられているデマを否定することで、回答者はジカ熱に関するより一般的な事実についても、懐疑的になる傾向があった、という。
つまり、デマを否定されることで、人々は事実を理解するのではなく、より事実から遠ざかってしまった、ということだ。
研究チームは、やはり蚊が媒介する黄熱病に関するデマについても、事実をもとに否定する実験をしたところ、こちらはジカ熱の場合とは違い、否定の効果があった、という。長い歴史のある黄熱病と、ブラジルでの流行時には一般にはほどんど知られていなかったジカ熱。研究チームのメンバー、ダートマス大学教授のブレンダン・ニーハン氏は、これについてこうコメントしている。「私たちの研究結果によれば、ジカ熱のような新興の疾病に関する誤解を訂正しようとする取り組みは、思ったほど効果を上げないかもしれない。」 ジカ熱よりもさらに新興の感染症が、新型コロナウイルスだ。
「バックファイヤー効果」と「真理の錯誤効果」
ダートマス大学のブレンダン・ニーハン氏は、デマを否定されることで、よりデマを強く信じてしまう「バックファイヤー効果」の研究でも知られる。ニーハン氏は2005〜2006年の研究で、イラク戦争の理由とされた「イラクによる大量破壊兵器の保有」について、これが事実ではなかったことを示す実験をした。
すると一部の人々に「大量破壊兵器の保有」をより強く信じてしまう「バックファイアー効果」が見られ、保守派にこの傾向が顕著だったという。「デマの否定」をめぐっては、ほかの逆効果も指摘されている。「真理の錯誤効果」と呼ばれるものだ。ウソであっても、何度も繰り返されることで、事実と思ってしまう。米国では、特にトランプ大統領が事実ではない発言を繰り返すことをめぐり、その弊害を指摘する文脈で使われたりする。その弊害については、メディアにも矛先が向けられている。トランプ大統領による、事実と異なる発言やツイートをメディアが報じる際に、その内容を見出しにすることで、実質的にその拡散を後押しし、「真理の錯誤効果」を及ぼしてしまっている、との批判だ。
「真実のサンドイッチ」
トランプ氏はメディアを必要としている。そしてメディアは、彼の発言を繰り返すことで、その手助けをしている。そう指摘するのが、カリフォルニア大学バークレー校教授のジョージ・レイコフ氏だ。レイコフ氏は、単にトランプ氏の発言をなぞって繰り返し伝えるのではなく、以下のような構成にすることを提案する。
(1)まず事実の全体像を提示する
(2)その上でトランプ氏の発言を紹介
(3)さらにトランプ氏の発言内容をファクトチェックする
「事実」「発言」「事実」というサンドイッチ型の構成だ。メディアのニュースは、デマなどの情報を「否定形」で報じる。だが、「否定形」であろうがなかろうが、その内容はメディアを通じて拡散してしまう。トランプ氏の場合、その効果を見極めた上で、刺激的な発言やツイートを繰り返していることもうかがえる。一方で、「事実」「発言」「事実」というサンドイッチ型の構成にすることで、ニュースの重心は「事実」に置かれることになる――それがレイコフ氏の見立てだ。
ファクトチェックと「スルー力」
tori氏のnoteでの指摘によれば、日本国内でも2月末から広がったトイレットペーパーの「品薄デマ」の騒動は、ネット上で拡散もしていなかったデマが、インフルエンサーらに「デマ否定」の文脈で取り上げられることで、大きな注目を集めてしまうという経緯をたどったようだ。また日本経済新聞の報道によれば、「品薄デマ」を否定するツイートの爆発的増加がメディア報道にもつながり、実際の品薄に連動していた、という。
フェイクニュース対策のNPO「ファースト・ドラフト」のクレア・ワードル氏らは3月10日、「新型コロナウイルス報道と誤情報対策のヒント」と題して、このような問題への対処法をまとめている。この中でワードル氏らは、メディアがどのようなネット上のうわさを取り上げるか、という判断について、「ティッピング・ポイント(臨界点)」という表現で、このようなアドバイスをしている。「うわさが、ニッチなコミュニティの中だけで出回っていたり、ほとんど(「いいね」などの)エンゲージメントが獲得できていないなら、そこにあえて注目を集めることは避けよ。そのうわさがティッピング・ポイントに達しているかどうかを判断するための、5つの質問を挙げておく。
・どのぐらいのエンゲージメントを獲得しているか。それが同じプラットフォームの同種のコンテンツと比べてどうか?
・その議論は、ネット上の特定のコミュニティの中だけのものか?
・プラットフォームにまたがる拡散をしているか?
・インフルエンサーや認証マーク付きアカウントが共有しているか?
・大手メディアが報じているか?」
また、ハーバード大学ケネディスクールのディレクター、ジョーン・ドノバン氏とダナ・ボイド氏は、「戦略的沈黙」と「戦略的増幅」というキーワードで、こう指摘をしている。「フェイクニュースと分極化したレトリックがあふれるメディアのエコシステムの中で、メディアが何を報じないのか、という選択は、何を報じるかと同じくらい、重要な意味を持つことになる。」 どのような情報を、あえてメディアの俎上にのせないか――そんな“スルー力”が、大きな意味を持ってくるということだ。
受け手の“スルー力”
マスメディアやソーシャルメディアを通じて、新型コロナウイルス禍をめぐる膨大な情報が氾濫している。その中では、情報の「受け手」もまた、行き交う情報を判断し、リツイートや共有をすることでその「発信者」の立場に置かれる。「スルー力」はまた、「受け手」に求められる能力でもある。  

 

●コロナ禍でやはり出てくる偽情報、デマ、チェーンメール、悪質詐欺… 4/10
東日本大震災時と同じく、また今回の新型コロナウイルス騒動でもチェーンメールやデマが拡散してしまっている。新型コロナウイルス感染症関連のデマや厚労省からの注意喚起を確認しておきたい。非常時、人の心に入り込むデマは怖い。
広く拡散した「お湯で治る」デマ
連日、新型コロナウイルス感染症のニュースが続いている。戦後最大の危機とさえいわれる今回の事態だ。不安になったり、何かにすがりたくなったりするのは、むしろ自然なことだろう。
困るのは、こういった人の不安につけこんでデマを流す愉快犯や、詐欺を働こうとする輩がいることだ。そして、それを見た人が拡散してしまう。拡散してしまう人は多くの場合、善意に基づき「この情報を広く伝えなければ」という使命感に駆られている。
自分も不安だからこそ、「早く」「多くの人に」伝えなければと思ってしまう。
災害などが起こるたびにデマやチェーンメール、詐欺に関する注意喚起がなされるが、それでもやはり、毎回のようにデマは拡散してしまう。すぐに大量の人に情報を発信できるSNSの存在は、拡散に一役買ってしまっている(とはいえ、同じSNSで「それはデマだよ」と指摘を受け、そこで情報がストップしたり、注意が広く拡散されることもある)。
今回、2月ごろから広く拡散したのは、「コロナはお湯で治る」というデマだ。
【デマ】 「医療関係の友達からラインが来たので送ります。タイ在住の友だちが送ってくれました。わたしの知り合いが中国、武漢のコロナウイルスの研究者で、今回のコロナウィルスは非常に熱に弱いことがわかりました。感染防止のためにより以下を心がけてください。今回、武漢ウイルスは耐熱性が弱くて、36〜37度の温度で殺傷します。従ってより多くの湯を飲んでください。 (後略)」
一読して誤字が多いし、「コロナウイルス」と書いたり「武漢ウイルス」と書いたり一貫性がない。また、「タイ在住の友だち」が送ってくれた内容が「わたしの知り合いが中国、武漢のコロナウイルスの研究者で、」以下の内容だとすれば、その時点ですでに「友達の友達が言ってた話」である。
「口コミ」効果を利用する悪質性
伝聞がすべて悪いわけではないが、人を介せば介すほど情報は不確かになりがちだし、デマを拡散しようとする人はわざとそれを利用して発信元を濁す。
悪質だなと感じるのは、発信元を隠しつつ、「友だち」「知り合い」という言葉を使うところだ。人は口コミを信じやすい生き物で、「知り合いから聞いた情報」と聞くと、マス向けの発信よりも身近に感じてしまう。
少し考えれば、これが信用できる情報なら世界中のニュースで流れているはずだとわかる。しかし非常事態の人の心理は複雑で、「マスコミがまだつかんでいない情報なのかもしれない」「マスコミは100%の確証がないから報じていないだけかもしれない」などと考えてしまう。デマを信じたい気持ちから、普段はしない都合のいい解釈をしてしまうのだ。
筆者の元にこの情報が回ってきたときは、もうすでに明らかなデマだと指摘されていた。だから、「こんな情報に騙(だま)される人がいるのか」と驚いた。しかし、もしデマの指摘とセットに、ではなく日ごろから信頼している知人から「大事な情報だから」というメッセージを添えられたメールだったとしたら、どう思ったかわからない。
「納豆が効く」という誤情報も
というのも、よく会う知人の中にも「まわってきたときは本当かもと思ってしまった」という人がいた。その知人は、普段デマを信じるようなタイプではない。
体を温めるのも白湯を飲むのも、基本的に体に良いとされることだ。害があるわけではない。こんなデマを流しても誰の得にもならないからデマではないのではないか、そう思ってしまう人もいるのだろう。
これをすれば治る、というデマにはほかに、「納豆が新型コロナに効く」というものがあった。筆者もスーパーで納豆が品切れになっているのを目にして驚いた。
報道によれば、納豆の品切れは1月末に国立がんセンターが納豆をよく食べることで死亡リスクが10%程度低くなると発表したことも理由の一つという。普段より品薄になったことに焦った消費者が買い求めたようだ。
トイレットペーパーや精製水が品薄となっている理由も、誤情報に基づいたもの。必要な人に行き渡らない可能性があるため、それなりに在庫がある場合は「自分より困っている人がいるはず」と考えるようにしたい。
先を把握したい気持ちが チェーンメールを拡散する
海外でのロックダウンや非常事態宣言が報じられ始め日本でも……という状況になると、今度はこれらを巡るデマが拡散した。日時を特定して、「○日に発表がある」「期間は2〜3週間」などとするもの。3月31日が年度末にあたることから、4月1日か2日の発表が濃厚とデマの中では指摘されていた。
3月30日午後の会見で、菅官房長官がこれを明確に否定した。
今になれば、4月7日夜になって東京など7都府県で緊急事態宣言が出されたことは誰でも知っているが、つい1週間ほど前までは、誰もわからなかった。「○日に○○が起こる」というデマは、先を予測したい気持ちや、どうなるか把握しておきたいという人の気持ちにつけ入るため、信じる気持ちになってしまうことがある。
厚労省の偽サイト 偽アンケートに注意
このような状況から、厚労省のサイトでも注意喚起が促されている。
例えば、「厚生労働省ホームページの偽サイトにご注意ください」。厚生労働省ホームページとよく似たデザイン・内容のサイトが開設されたため、ユーザーを混乱させることが指摘されている。
コロナ関連以外のページについても確認されていることから、別サイトへ誘導するために厚労省のサイトを適当にまねしていると考えられるが、正確な情報を探そうとするユーザーが混乱する可能性があり、緊急事態において罪深い。
さらに先日、厚労省がLINEと連携して健康状態のアンケート調査を行ったことが話題となったが、これについても、このアンケートを装ってクレジットカード番号などを尋ねる事案について注意喚起がなされている。
また、国民生活センターのサイトでは、「新型コロナウイルスに便乗した悪質情報」として、「マスクを無料送付するというメッセージがスマートフォンに届いた」「新型コロナウイルス流行拡大の影響で金の相場が上がるとして、金を買う権利を申し込むように言われた」などの相談事例があったことが紹介されている。
この相談事例はどちらも2月だが、コロナに乗じた悪質詐欺・勧誘を企むような輩は、緊急事態宣言が出てもおとなしくしてはくれないだろう。
自分や家族のために、「何かしておかなければいけないのでは」という気持ちになる人も多いだろう。その気持ちが、デマの拡散や必要のない買い占めにつながってしまうことがある。また、その気持ちにつけ込む悪質詐欺もある。
筆者も、1月時点でもう少しマスクを買っておけばよかったという後悔はある。だから、「後悔しないために、今行動しよう」という気持ちはよくわかる。
「やらないで後悔するよりやって後悔」というのは通常時は一理あるのだが、非常時の場合は必ずしも当てはまらない。情報を拡散しない、買い占めをしない、うまい話に乗らない。勇気を持って「しない」行動も心がけたい。 

 

●「日赤病院のドクターから送られてきた」はデマ SNSで拡散 4/11
新型コロナウイルス感染症が拡大する中、静岡赤十字病院の医師をかたり「医療態勢が崩壊する」などと不安をあおるメッセージが会員制交流サイト(SNS)などを通じ拡散され、同病院に10日、問い合わせが相次いだ。同病院は「メッセージとは無関係」と強調し、「信用しないでほしい」と呼び掛けている。
メッセージは「静岡、日赤病院のドクターから送られてきた」とした上で、「現場ではすでに医療崩壊のシナリオも想定され始めています」などと外出自粛やメッセージの拡散を呼び掛ける内容。静岡だけでなく、各地の日赤病院の医師をかたり発信されているとみられる。
静岡赤十字病院には同日だけで、電話やメールなどで少なくとも26件の問い合わせがあった。担当者は「本来の診療業務に関わる電話が妨げられている。問い合わせや拡散をやめてほしい」と訴えた。  

 

●新型コロナウイルス、“怪しげな統計”に基づく数字がひとり歩きしている 5/3
新型コロナウイルスの恐ろしさを語る際に、1918年に世界を襲った通称「スペイン風邪」と致死率を比較して語られることがある。だが、この比較においては“怪しげな統計”のデータが引用されたまま数字がひとり歩きしている。そして現在進行中のパンデミックにおける比較には、単なる数字の間違いでは済まない危険が潜んでいる。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に関する報道は、ときには怪しげで、ときには矛盾した統計で溢れている。画面のなかを流れ、メールやツイートで拡散される数字のなかで最もやっかいなのは、致死率(CFR)、すなわち既知の感染者数に占める死亡者の割合だ。
パンデミックが始まったばかりのころ、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の平均致死率を2パーセントと発表し、その後それを3.4パーセントに修正した。一方、多数の疫学者は、世界全体におけるCOVID-19の致死率は1パーセントほどだと主張している。
わずかな差に思えるかもしれない。だが、この割合を大人数に当てはめると、全体の死亡者数はかなり違ってくる。
現在進行中のパンデミックの場合には、致死率の算出は難しいと強調する専門家もいる。その理由とは検査数の不足に加えて、感染症の発症から死亡までの時間差によって、致死率の算出時に推定される感染者数や死亡者数に偏りが生じるからだ。
こうした専門家からの助言にもかかわらず、ニュースの報道やソーシャルメディア上の議論はCOVID-19の致死率に執着し、その数字を歴史上のほかの感染症の致死率と比較することに躍起になっている。
特に繰り返し論じられている主張は、COVID-19の致死率は最低でも2パーセントと驚くほど高く、1918年に世界的に大流行したインフルエンザの致死率に匹敵するというものだ。俗に「スペイン風邪」と呼ばれるこのインフルエンザは、歴史上最悪のアウトブレイク(集団感染)のひとつを引き起こした。
だが実のところ、COVID-19とスペイン風邪の比較には重大な欠陥がある。さらに、この比較の基になる数値は、ほぼ確実に間違っている。
互いに矛盾する3つの数字
スペイン風邪に関して、新聞や科学誌がよく言及する3つの数字がある。
全世界における感染者数とされる「5億人」(当時の世界総人口の約3分の1に相当する)、死亡者数とされる「5,000万〜1億人」、そして致死率と言われる「2.5パーセント」だ。
だが、この3つのデータが矛盾なく成立することは、数学的には不可能である。
致死率とは、感染症のパンデミックが終息したあとに算出された全死亡者数を、全感染者数で割った数字だ。各国・各都市の致死率も、全世界の平均致死率も、同じように算出される。
仮にスペイン風邪の全世界の感染者数が5億人で、死亡者数が5,000万〜1億人だったとすると、致死率は10〜20パーセントになる。致死率が2.5パーセントで感染者数が5億人だったとすると、死亡者数は1,250万人だ。
また、2.5パーセントの致死率で5,000万人が死亡するには、少なくとも20億人が感染していなければならない。だが、それでは1918年当時の世界総人口である18億人よりも感染者数のほうが多くなってしまう。
出典元で唐突に示されていた数字たち
こうした矛盾を不思議に思い、これらの数字の出典元を調べてみた。
まず、スペイン風邪の正確な感染者数および死亡者数は、誰にもわからない。このふたつの推定値は、概して時間の経過とともに増加し、研究者たちはいまだに議論を続けている。
1918年のパンデミックによる全世界での死亡者数に言及する際、大半の人が引用するのが『Emerging Infectious Diseases』誌に発表された2006年の論文だ。同誌を刊行している米疾病管理予防センター(CDC)は、この論文をCDCのウェブサイトに目立つように掲載している。グーグルで「Spanish flu fatality」(スペイン風邪 死者数)と検索すると、最初にヒットする論文もこれだ。
この論文は冒頭の段落で、あまりに広く引用されている3つの矛盾する数字を、なんの脈絡もなく挙げている。スペイン風邪における感染者数は5億人、死亡者数は5,000万〜1億人、致死率は2.5パーセントというあのデータだ。
公平を期すために言うと、論文の著者たちは致死率を「case fatality rates」と複数形で表現したうえで、「> 2.5%」と記している。つまり、地域によって致死率がある程度は異なることを示唆しているのかもしれない。だが、この数値が全世界の感染者数および死亡者数と並べて掲載されているせいで、ほとんどの読者は致死率も全世界の平均だと解釈しているのだ。
「2.5パーセント」の謎
論文の著者たちが致死率を2.5パーセントとした経緯は不明だ。
この数値の参考文献として挙げられているふたつの出典も、この数字を裏付けるものではない。ひとつは1980年に出版された公衆衛生概論に関する書籍だ。同書はスペイン風邪の全世界の致死率を4パーセントとしているが、これは論文に書かれている致死率の約2倍である。
もうひとつは、医学ライターと医学を専門とする図書館員が執筆した1976年の書籍だ。この書籍では、スペイン風邪の原因となったインフルエンザウイルスの全世界における感染率は28パーセントで、2,200万人超の人々が死亡したとしている。そこから計算できる全世界の致死率は、最低でも4.3パーセントになる。
矛盾を明らかにすべく06年の論文の著者たちに連絡をとったところ、ひとりからは返答がなかった。
もうひとりは「あなたが言及している数字は、わたしたちの数字ではありません。でも、ほかの科学者たちは広く引用しているデータです」と答えた。そのうえで、「あなたが引用する数値が正確かどうかについては、何も意見はありません」と続けた。そして、06年の論文で示した数値を導いた科学者たちに連絡してみてはどうかと言った。
残念ながら、致死率2.5パーセントの出典と考えられるふたつの文献は40年以上も前に出版されており、著者たちは他界していた。
致死率として合理的な推定値
だが、公衆衛生の専門家であるニーアル・ジョンソンとは連絡がとれた。彼は1918年のパンデミックの際のデータとしてしばしば引用される、死亡者数5,000万〜1億人という推定値を算出した02年の論文の筆頭著者である。そのジョンソンは、「実際の致死率は、よく言われる(2.5パーセントの)数字よりも高いはずです」と断言した。
04年に『グレート・インフルエンザ』を著した歴史家のジョン・バリーも、2.5パーセントという数値はあまりにも低すぎるという見解に同意する。スペイン風邪の致死率は、米国などの先進諸国では恐らく約2パーセントだったが、その他の地域ではそれよりはるかに高かっただろうというのが、彼の見解だ。
今年3月初めには、ジョンズ・ホプキンス大学の疫学者ジェニファー・リーも、『ロサンジェルス・タイムズ』でスペイン風邪の全世界の致死率は10パーセント近くだった可能性があると語っている。
なお、スペイン風邪の感染者数を、1918年の世界総人口の25〜75パーセント、死亡者数を2,500万〜1億人と幅をとって考えることによって、全世界の致死率として妥当と思われる数値の幅を計算できる。
この幅で考えると、スペイン風邪による全世界の致死率として合理的な推定値は6〜8パーセントだ。誤解のないように言うと、この数値はスペイン風邪の感染者のうち6〜8パーセントが死亡したことを意味する。
全世界の人口に対してスペイン風邪による死亡者数が占める比率、つまり(感染者と非感染者を合わせた)世界総人口に占めるスペイン風邪の死亡者の比率は、おおかた2〜4パーセントだろう。この数字と、スペイン風邪による致死率を考えると、スペイン風邪を巡って広まっている統計上の混乱の一部は、ある程度は説明がつくかもしれない。
実体のない数字が拡散される
すでに述べた通り、スペイン風邪の致死率が2.5パーセントである場合、少なくとも5,000万人が死亡したという結果を導くことは、当時の世界総人口からすると数学的に不可能である。それにもかかわらず、この実体のない統計値は広範囲に拡散し、ブログからTwitter、『ニューヨーク・タイムズ』、最も権威ある医学誌にいたるまで、あらゆるところで言及されている。
この矛盾する数字は、医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』に2月末に掲載された複数の論評でも引用されている。
そこで同誌の編集者や統計コンサルタントに連絡をとり、統計値の間違いを指摘し、間違いが生じた原因と思われる事実について発見した内容を説明した。数日後、同誌のメディアアンドコミュニケーション部長のジェニファー・ジズから回答があった。
「著者たちは異なる情報源を基にしており、情報源によって食い違う数値が出ていたのでしょう。たとえその数値が矛盾するとしても、いずれの数値も出版されている情報源に基づいています」
もちろん、推定値はさまざまだ。ここで問題にしているパンデミックは1世紀以上も前に発生したので、完全あるいは正確な記録と言えるようなものはない。だからといって、非常に明白な数学的な矛盾の言い逃れをしたり、学者としての責任放棄を正当化したりすることはできない。
論文の間違いが、論文の信頼性を担保する査読という網をかいくぐり、見過ごされたなら、その間違いはただちに修正されるべきである。論文の間違いが誤解やパニックをもたらす恐れがある場合は、なおさらだ。
スペイン風邪とCOVID-19は違う
スペイン風邪はウイルスによる大惨事の代名詞になった。そしていま、新型コロナウイルスのパンデミックと言えば、スペイン風邪の場合と同様だと思われている。スペイン風邪と新型コロナウイルスを同じように捉える間違った見方は、公表されるべきではなかったまことしやかな統計値によるところが大きい。
スペイン風邪と同規模のパンデミックの再来は確かに起こりうることであり、むしろ避けがたいことでもあるだろう。だが、COVID-19の致死率および感染力に関する3月半ばの時点での推定値、さらには公衆衛生政策に対するCOVID-19の反応が示唆するのは、相対的に見ると今回のパンデミックは1918年の惨状には匹敵しないということだ。スペイン風邪によって当時の世界総人口の3パーセントが死亡して、それを現在の総人口に当てはめれば、2億3,000万人が亡くなることになる。
現在の危機と1918年のパンデミックを軽々に比較すべきではない理由は、ほかにも数多くある。
まず、医療に関するインフラと技術に歴然とした差があること。そして、スペイン風邪は第一次世界大戦の惨禍と重なったこと。また、若年層が亡くなるという、スペイン風邪特有の傾向があったこと。さらに、1918年のインフルエンザの感染者のうち、最多ではないにせよ、かなりの人々が(大量生産できる抗生物質がまだ存在していなかったせいで)二次感染で亡くなったことである。
全世界の致死率は平均値にすぎず、いかなる流行病の致死率も年齢、人口、地勢によってかなり異なる。例えば、スペイン風邪の流行時の致死率は、ある地域では1パーセント未満だったが、アラスカのある村では90パーセントだった。
致死率は“変化”し続ける
スペイン風邪と新型コロナウイルスのパンデミックに関しては、確実な根拠に基づく有益な比較も存在する。とはいえ、表面的な比較を行えば、このふたつの感染症の間にある数多くの違いがさらに見過ごされてしまう。いま生じうる現象の予測に、1世紀前のパンデミックに関する怪しげな統計を用いてはならない。
WHO事務局長のテドロス・アダノム・ゲブレイェススが3月3日、新型コロナウイルスによる全世界の致死率は3.4パーセントだと発表したが、その内容は既知の死亡者数を既知の感染者数で割った結果にすぎず、適正な推定値や確定的な数値ではなかった。
これに対して、感染症の数理モデルを扱う数学者アダム・クチャルスキーと彼の同僚らは、中国におけるCOVID-19の致死率が実際には0.3〜2.4パーセントであるとの計算結果を3月に発表している。
ほかの研究者たちも、COVID-19の全世界の致死率もクチャルスキーらが示した数値と同様らしいと結論づけている。ただ、この種の推定値は時間の経過や検査数の増加によって変化し続けるものである。
広範な検査が実施されても、COVID-19の全世界の致死率は2パーセント以下にとどまると予想する専門家もいる。
しかし、全世界における最終的な致死率は、現時点でのデータが示す値よりも高くなる可能性もある。
09年に発生したH1N1インフルエンザのパンデミックの際、流行初期に推定された致死率は、実際の値の10倍だった。一方、02〜04年に重症急性呼吸器症候群(SARS)のアウトブレイクが続いたとき、初期に推定された致死率は実際の値の約3分の1だった。
変動する数字にしがみつくことの危うさ
新型コロナウイルスのパンデミックは重大な脅威であり、迅速かつ大胆な対応を要する。致死率が0.5〜1パーセントだとしても、人口が多く相互接続されているわたしたちの世界においては、極めて警戒すべき確率だ。
そして、もうひとつ考慮すべき重要な事柄がある。それは、COVID-19が致命的ではなくとも、何週間も続く重症疾患を引き起こし、医療資源に過大な負担をかけたり、生涯にわたる健康問題を一部の人々にもたらしたりする恐れがあることだ。
世界中で新型コロナウイルスのアウトブレイクの拡大が抑制されなければ、特に高齢者や基礎疾患がある人々の間で膨大な数の感染者や死亡者が発生する事態を目の当たりにするだろう。
感染症の専門家は3月初め、新型コロナウイルスのパンデミックの規模が、世界中で100万〜400万人が死亡したと推定される1957年の鳥インフルエンザのパンデミックの規模に達する可能性があると示唆している。
だが、その可能性は生じうるひとつの過程にすぎない。いま進行しているパンデミックの結果はひとつの統計値ではなく、感染者の脆弱性、公衆衛生介入の速度と規模、政府の透明性など、社会、経済、環境といったさまざまな要因によって形成されるはずだ。
数値や図表があると、それによって示される事実は確実だという安心感が生まれる。しかし、危機が進行しているとき、こうした確信は誤解である場合があまりにも多い。十年以上も前につくり出されたひとつの不正確な統計値が突然広まり、パニックや物資の無意味な買いだめを誘発し、その物資を最も必要とする人々から奪うことになりかねない。
専門家やジャーナリストが、いいかげんな研究から無批判に数値を抜き出し、変動する統計上の数字にしがみつき、そうしたデータを指針として軽率に示すなら、人々を啓発するのではなく混乱させる結果になるだろう。 
 
 

 

●ブラックマンデー (Black Monday) 
1987年(昭和62年)10月19日(月曜日)に香港を発端に起こった世界的株価大暴落である。
米国のダウ平均株価(DJIA)は、ちょうど508ポイント(22.6%)下落した。これは過去最大の1日の減少率であった。大量の売りが1日を通して急激な価格下落を引き起こし、特に取引の最後の1時間半の間で顕著であった。S&P 500指数とウィルシャー5000指数はそれぞれ18%以上下落し、S&P500先物は29%下落した。総取引量があまりにも多かったため、当時のコンピューターや通信システムは機能せず、注文は1時間以上も滞った。大量の資金移動が何時間も遅延し、FedwireとNYSE DOTシステムが長期間停止したことで、トレーダーの混乱はさらに深まった。
世界の主要23市場すべてが、その10月に同様の暴落を経験した。共通の通貨(アメリカ合衆国ドル)でみると、八か国で20〜29%、三か国で30〜39%(香港、オーストラリア、シンガポール)、三か国で40%以上(マレーシア、メキシコ、ニュージーランド)の暴落が発生した。全世界での損失は1兆7000億米ドルと推定された。
暴落の激しさは、長引く経済の不安定性、あるいは世界恐慌の再来への恐れを引き起こした。各国とも、金融市場の低迷がより広範な経済に波及した度合い(実体経済への影響)は、各国が暴落に対応してとる金融政策に直接関係していた。
米国、西ドイツ、日本の中央銀行は、金融機関の債務不履行を防止するために流動性を供給したが、実体経済への影響は比較的限定的であり、束の間であった。しかし、危機を受けてニュージーランド準備銀行が金融政策の緩和を拒否したことは、金融市場と実体経済の双方にとって極めてネガティブで比較的長期的な結果をもたらした。
背景
1970年代、連邦準備制度のインフレ政策とオイルショックによる資金需要がレーガノミックスの高金利時代につながり、投信がマネー・マーケット・ファンドで食いつなぐほど株式は割安に放置され続けていた。1980年代、OTD金融でユーロダラーを捻出する政策がスタグフレーションを進行させていた。双子の赤字を減らす建前で1985年プラザ合意がなされた。これをきっかけに、少なくともドイツ・マルク、イギリス・ポンド、日本円、スウェーデン・クローネが一気に国際化した。これらの通貨を機関投資家は一挙に買収する準備を整えた。そしてブラックマンデーの2ヶ月前にFRB議長職がポール・ボルカーからアラン・グリーンスパンへ引き継がれた。グリーンスパンは、機関投資家の一つ、国際投信ドレフュスファンドの出身である。
また、ブラックマンデー直前の1987年10月15日にはイラン・イラク戦争のアーネスト・ウィル作戦で米軍の護衛を受けていたタンカーがイラン海軍の攻撃を受け、ミサイルを被弾する出来事があった。米軍は報復として当日未明、イランがペルシャ湾に持っていた石油プラットフォーム2基を爆撃(ニムバル・アーチャー作戦)し、原油市場に対する不安が沸き起こっていた。
原油不安は先進国を含む石油消費国のカントリー・リスクを引き上げた。ユーロ債を貸しこまれた各国経済の財務悪化につけこみ、グローバルな機関化を展開する未曾有のチャンスが創出された。偶然ではなく、オイルマネーはOTD金融によって信用創造された現金が世界各国へ貸しつけられ、それが燃料費となって生じていた。
影響
ブラックマンデーの当日は、香港市場から暴落が始まりヨーロッパからアメリカに波及した。
ニューヨーク証券取引所のダウ30種平均の終値が前週末より508ドルも下がりこの時の下落率22.6%は、世界恐慌の引き金となった、1929年の暗黒の木曜日(ブラック・サーズデー、下落率12.8%)を上回った。これが翌日アジアの各市場に連鎖。日経平均株価は3,836円48銭安(14.90%)の21,910円08銭と過去最大の暴落を起こした。欧州の各市場でも機関投資家の売り注文が殺到、世界同時株安となった。イギリス連邦は経済的に解体された。
1987年10月末までに香港(45.5%)、オーストラリア(41.8%)、スペイン(31%)、イギリス(26.45%)、アメリカ(22.68%)、カナダ(22.5%)で株式市場が下落しつづけ、
ニュージーランド経済への損害は特に打撃を受け1987年のピークから約60%下落、高い為替レートと、危機に対応したニュージーランド準備銀行が金融政策を緩和することを拒否したことにより悪化した。
1987年12月にワシントンDCでさまざまな国から集まった33人の著名なエコノミストが集まり、「今後数年間は1930年代以来最も問題になる可能性がある」と総括的に予測した。
日経平均株価については翌日2037.32円高(9.30%)となっている。これは上昇幅で当時の歴代1位、上昇率で当時の歴代2位の記録である。金融緩和を続けた日本では、日経平均株価は半年後の1988年(昭和63年)4月には下落分を回復。すでに1986年頃に始まっていたバブル景気は更なる膨張を続け、1989年(平成元年)12月29日には史上最高値(38957円44銭)を付けることになる。海外の機関投資家にとって日本株は売り対象ではなく、買収の対象だったのである。
トルコを含む東欧諸国は、外貨準備を充実できないまま株安で火の車となった。おとなしく機関化され、新興市場となった。