大荒れ テレビ朝日株主総会

経済部長を左遷した「官邸忖度人事」
幻冬舎・見城社長の「番組審議会解任」要求

メディアの立ち位置
政権への忖度  本当ですか
 


 
 
テレビ朝日株主総会大荒れ!  7/2
 経済部長を左遷した「官邸忖度人事」と幻冬舎・見城社長の「番組審議会解任」要求
政権に批判的な記者やアナウンサー、コメンテーターを報道番組から次々に追いやるなど、着々と“安倍政権御用化”が進んでいるテレビ朝日だが、去る6月27日に行われたテレビ朝日ホールディングスの株主総会が“大荒れ”だったらしい。総会の終盤、早河洋会長が切り上げようとしたところで、例の、麻生太郎財務相を追及していた経済部長を報道局から追放した“官邸忖度人事”についての質問が飛び出したという。
「早河会長が『ではそろそろ』と言って終わりにしようとしたとき、株主のひとりが手を上げて、M経済部長の異動人事を強く批判したのです。受けた早河会長は、株主が具体的に質問しているにもかかわらず『質問をまとめてください!』などと言うなど、明らかに苛立っていましたね」(テレビ朝日関係者)
本サイトで先日お伝えしたように、この人事は、テレビ朝日で政権を追及してきた経済部長のM氏が、報道とは関係のない「総合ビジネス局・イベント事業戦略担当部長」なるポストへ異動になるというもの。M部長は古舘伊知郎キャスター時代、“『報道ステーション』の硬派路線を支える女性チーフプロデューサー”として有名だった女性だ。2016年に『報ステ』で手がけた特集「独ワイマール憲法の“教訓”」は、その年の優れた番組に贈られるギャラクシー賞の大賞(テレビ部門)を番組として受賞している。
だが、それゆえにM氏は官邸やテレ朝上層部から睨まれてきた。2015年、ISによる後藤健二さん、湯川遥菜さん人質事件が起きたさなか、ISを刺激する安倍首相の発言を批判して、コメンテーターの古賀茂明氏が「“I am not ABE”というプラカードを掲げるべきだ」と発言したことに官邸が激怒。菅官房長官の秘書官が番組幹部に恫喝メールを送りつけるなど圧力をかけて、古賀氏を降板に追い込んだことがあったが、このとき、古賀氏らといっしょに同番組から外されたのがM氏だった。
しかし、M氏は経済部長に異動になってからも、森友問題などでは、経済部として財務省をきちんと追及する取材体制をとっていたという。いま大きな問題になっている金融庁の“2000万円報告書”問題でも、麻生財務相の会見でこの問題をはじめて追及したのはテレビ朝日経済部だった。その後も、会見の度に、報告書問題を質問。また、麻生大臣が11日、「報告書を受け取らない」としたときの会見には、M部長自ら出席。報告書の内容を「政府のスタンスとちがう」と言い訳した麻生財務相に、「報告書のベースは金融庁が作っている」「夏の税制改正要望に証券税制の優遇を入れるという意図があったのではないか」と鋭い追及をしていた。
そんななかにおいて、テレ朝上層部がM部長を報道局から追放し、イベント関連の新設部署へ異動させるという内示が出たため、局内外で「こんな露骨な人事、見たことない」「安倍政権からなんらかの圧力があったのではないか」という声が上がっていたのである。再びテレ朝関係者が語る。
「株主の追及は厳しいものでした。『報道でギャラクシー賞までとった人を、現役世代のうちに畑違いの部署に異動させるというのは普通なのか。不自然ではないか。他にこうした事例があるなら実例をあげてほしい』、『以前も元政治部長が新設の部下が一人もいない営業マーケティング担当へ飛ばされたというが、株主として、局長一人きりの局なんてものは事業の合理性の見地から納得できない』と畳み掛け、M部長の異動先に部下は何人いるのか?などと質問したのです」
この株主からの質問に対して、早河会長が「質問をまとめてください!」と苛立ちを見せたのは前述したとおり。株主から「今のが質問ですよ」と返され、早河会長の指名で人事局担当の藤ノ木正哉・専務取締役が答えるのだが、これがまた回答にならないものだったという。テレ朝中堅社員が証言を継ぐ。
「藤ノ木専務は『個々の人事異動については回答を差し控えるが、組織の活性化と社員のスキルアップ、経験領域の拡大につながることを意図した人事異動として実施した』と。ようは一般論で対処したんだけど、経済部長まで務めた人間の総合ビジネス局への異動が“当人のスキルアップのため”なんていうのは、建前としてもありえない。前の経済部長は政治部長に栄転してますし、その前もネットニュース関連を統括するクロスメディアセンター長になってますからね。当然のように、質問者の株主は『全然答えていない』と批判。他の株主からも『答えろ!』『そんな話じゃないだろ!』と怒号が飛ぶなど、会場は騒然としました」
あげく、経営陣の煙を巻く回答に業を煮やした株主が、最後にテレ朝の若手局員たちへ向かって「M部長にかならずもう一度報道の現場に戻ってきてほしい。そう株主が申していたとお伝えください!」とマイクで直接呼びかけ、拍手が起きるなど、今年のテレ朝総会は異例の展開で幕を閉じたという。
いずれにしても、『報ステ』などでテレ朝のジャーナリズムを牽引してきたM氏を報道局から外すという異常な人事は、まさに「安倍政権を忖度した見せしめ」と言わざるを得ないが、それを株主総会で追及されてもなお「スキルアップ」「組織の活性化」などと平然と言い放つテレ朝経営陣の厚顔には呆れるほかない。
しかも、株主総会で顕現したテレ朝の“安倍政権忖度”はこれだけではかった。総会の質疑応答のなかで、テレビ朝日の放送番組審議会メンバーの資質を問う質問も株主から出されたのだが、とりわけ強く追及されたのが、放送番組審議会の委員長を務める見城徹・幻冬舎社長についてだ。
周知のとおり、見城社長は、安倍氏をヨイショする書籍を多数手がけ、第二次政権誕生以降も面会を繰り返したり、携帯電話でやり取りをするなど、本人も「安倍さんの大ファン」を公言する“政権応援団”の強力な一員。早河会長と安倍首相をつなげたのも見城氏だといわれている。放送番組審議会は〈放送法に定められた機関で、番組内容の充実・向上を目指すことを目的〉とするというが、いわば見城氏は、放送法が定める「不偏不党」を保つため番組の内容をチェックするその役割から、もっとも報道倫理的に遠い人物のひとりだと言わざるを得ないだろう。
最近では、例の『日本国紀』(百田尚樹)の“コピペ問題”をめぐり、これを批判した作家・津原泰水氏の実売部数を晒す暴挙に出て、世間から大きな顰蹙を浴びたのも記憶にあたらしい。見城氏は表向きには謝罪をし、Twitterの終了やテレビ朝日と提携するAbemaTVの冠番組『徹の部屋』を終了したものの、問題視されているテレ朝放送番組審議会委員長については当面、辞任する予定はないという。
もっとも、見城氏の“放送番組審議会委員長としての資質”は、ここ数年の総会で繰り返し問われてきたのだが、今年はなんと「経営幹部が『事前質問があったので一括して答える』として、株主の質問時間の前にあらかじめ回答を述べてしまった」(前出・テレ朝中堅社員)のだという。
あきらかに、追及を抑制しようという意図が丸見えだが、その回答の内容も「見城委員長は豊富な事業経験を持つお方」「多岐にわたる深い知見」「多角的な視点から有意義な意見を頂戴している」と礼賛し、「放送番組の適正をはかる職責を果たしている」と委員長続投を明言。さらにはこんな予防線まで張ったという。
「見城氏をめぐっては早河会長も相当ナーバスになっていたらしく、だからこそ事前に策を講じたんでしょう。実際、わざわざ『番組審議会以外の場でそれぞれのお立場でなされたご発言については、当社はコメントする立場にない』なんて加えていましたからね。その後、質疑応答のなかで株主が、『“実売部数晒し”で多くの作家から非難されている。見城氏のような倫理基準に従ってテレ朝が番組を作っていることは、作家のドラマ原作引き上げや番組出演拒否などボイコットに発展する可能性もある』と指摘、テレ朝側が解任にすべきだと提言したんですが、広報担当の両角晃一取締役は冒頭の“事前質問に対する回答”を繰り返すだけ。まともに聞き入れようともしませんでした」(前出・テレ朝中堅社員)
この期に及んでも、安倍首相と近い見城氏をかばい続けざるをえない早河会長ら経営幹部。これこそ“安倍政権忖度”を強めるテレ朝の現況を証明しているだろう。
安倍政権を追及してきた記者やプロデューサーを報道から放逐する一方で、政権をヨイショする出版社社長をまるで“守護神”のように崇め、どんな不祥事を起こそうが不問に付す。その目線はもはや「知る権利」を持つ視聴者に向いているとは到底思えない。テレビ朝日上層部は、いったいどこまで安倍政権にシッポを振り続けるつもりなのか。 
テレ朝亀山新社長「テレビはまだできることある」 7/2
テレビ朝日の定例社長会見が2日、都内の同局で行われ、亀山慶二新社長(60)が出席した。
先月26日の株主総会を持って社長に就任。今回が社長として初の会見となった。
亀山社長は冒頭であいさつを述べ「角南前社長から視聴率、広告売上ともに民放第2位という状態でバトンを受けた形です」とし、「国民共通の財産である公共の電波を使用させていただく事業者ですので、引き続きコンテンツを最重視して参ります。人材と資金を最大限投入して、視聴者の皆さまの喜怒哀楽に資する多様な番組をお届けすること、正確で迅速な編集取材、報道に努めていく」と話した。
また「視聴者の皆さまに安心してコンテンツを送り続けるためには、収益基盤を強固にしなければならない。デジタル時代の到来は、テレビの広告市場を縮小させているのではないかという見方はあるが、私個人としては、その結論はまだ早いのではないかと感じています。テレビはまだまだできること、やっていないことがあると思っている。せっかく与えていただいたチャンスですので、社長としてさまざまなトライアルを促していきたい」と意気込みを語った。 
テレ朝の株主総会に行ってみて分かったこと 2017/7
先日、テレビ朝日の株主総会に行ってみました。日頃から番組の内容に疑問を持っていたので、株を買う気になりました。株式は誰でも買えるので(テレビ局の株はそれほど高くありません。ちなみにテレビ朝日は1株、2千円弱)番組やCM内容など、質問したい人は株主総会に行くことをお勧めします。経営陣は株主の発言は一応聞く(ふりをする)ことになっていますので、ビシビシ、思ったことを言えますよ〜
一人の株主が手を挙げて指名されました。マイクの前に進んで、その人は「テロ等組織犯罪処罰法改正案のことを報道するとき、お宅の番組はなぜ[共謀罪]という言葉を使うのか?」という質問をしました。ほんと、その通り! ですよね。法律の名称を勝手に変えてしまったら、法律の中身まで変わって伝わってしまうのに、テレ朝だけでなくTBSもフジテレビも、どこもかしこも[共謀罪]って言っていましたよね。[共謀罪]という名称を使うこと自体、その法律のネガキャンをしてるのと同じこと! しかし、この質問に対する会社側の回答は何だか「むにゃむにゃむにゃ・・・」って感じで意味不明でした。
また別の株主さんが指名され「お宅のモーニングショーっていう番組はなぜ[共謀罪]に反対の意見をもつコメンテーターばっかり出すのか?」と聞きました。確かにこれは問題です。放送法第2章第4条には、報道番組は、
1.公安及び善良な風俗を害しないこと
2.政治的に公平であること
3.報道は事実を曲げないですること
4.意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
とあります。 でもこれ、まったく守られていませんよね? それなのにどうしてテレビ局は罰せられないんでしょうか? 
実は放送法は欠陥法なのです。放送法にはなんと!罰則がなく、テレビ局はその欠陥をうまく利用しています。例えばワイドショーは一つの番組の中に政治や経済、芸能からスポーツまで少しずつ扱います。だからワイドショーは「報道枠」ではなく「バラエティ枠」ということになっているので、報道番組に対する法律の規制の対象外なのです。しかし「バラエティ枠」だからいい加減な情報を流していい、ということにはもちろんなりません。政治的に今、もっとも重要な法律の名前を勝手に変えるなんてトンデモナイことです。しかしテレビ局(放送事業者)の監督官庁である総務省は実際には放送事業者を指導できません。テレビ局はどんな違反を犯そうが総務省に処罰されることはないのです。
私は以前、総務省に電話をして「OO局のOOOという番組はどう見ても公平ではないと思いますが、なぜ指導しないんですか?」と聞いたことがあります。すると総務省の担当者は「番組構成は全体のバランスの中で考えているので・・・・」という言い訳をしました。これはどういうことかというと、例えば朝の番組で何か違反があっても夜の番組が問題なければ、一日の中では問題なし、と判断するということです。こんなの、おかしいと思いませんか
放送法が作られたのは1951年、GHQの占領下でした。GHQは放送事業者に強大な権限を与えて日本人を洗脳させたのです。以来66年間、放送法は一度も改正されていません。放送事業者の在り方こそが「戦後レジーム」そのものであり、時代に合わないのです。テレビ局は既得権益の塊です。彼らは企業や政治家、官僚の不正は正義の味方面して叩くくせに自分たちの非は認めようとせず、ひたすら隠します。
株主総会はその会社の体質が透けて見えてきて面白いですよ。一度行ってみることをお勧めします。  
見城徹
(1950 - ) 日本の編集者、実業家。株式会社幻冬舎を創業し代表取締役社長(現任)として同社を上場させた(後にMBOにより上場廃止)。株式会社ブランジスタ取締役。エイベックス株式会社取締役(非常勤)。
1950年12月29日、静岡県清水市(現:静岡市清水区)生まれ。
慶應義塾大学法学部卒業後、廣済堂出版に入社。自身で企画した初めての『公文式算数の秘密』が38万部のベストセラー。
1975年、角川書店に入社。『野性時代』副編集長を経て、『月刊カドカワ』編集長に。編集長時代には部数を30倍に伸ばした。つかこうへい『蒲田行進曲』、有明夏夫『大浪花諸人往来』、村松友視『時代屋の女房』、山田詠美『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』、景山民夫『遠い海から来たCOO』の5つの直木賞作品を担当し、森村誠一『人間の証明』、五木寛之『燃える秋』、村上龍『トパーズ』等々のベストセラーを手がけた。このカドカワ時代に、坂本龍一、松任谷由実、尾崎豊など、芸能人、ミュージシャンとの親交を培った。41歳で取締役編集部長に昇進。
1993年、取締役編集部長の役職を最後に角川書店を退社。部下5人と幻冬舎を設立、代表取締役社長に就任。設立後、五木寛之『大河の一滴』『人生の目的』、石原慎太郎『弟』『老いてこそ人生』、唐沢寿明『ふたり』、郷ひろみ『ダディ』、天童荒太『永遠の仔』、梁石日『血と骨』、向山貴彦『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』、村上龍『13歳のハローワーク』、上大岡トメ『キッパリ!』、木藤亜也『1リットルの涙』、山田宗樹『嫌われ松子の一生』、劇団ひとり『陰日向に咲く』の14作のミリオンセラーをはじめ、小林よしのり『新・ゴーマニズム宣言・戦争論1 - 3』、白川道『天国への階段』、細川貂々『ツレがうつになりまして。』、村上龍『半島を出よ』、渡辺淳一『愛の流刑地』、宮部みゆき『名もなき毒』など、ベストセラーを送り出した。
2008年、旧株式会社ブランジスタの取締役に就任。
2010年6月からはエイベックス・グループ・ホールディングス株式会社の非常勤取締役を務めている。
2011年、株式会社ブランジスタの取締役会長に就任。
2013年、秋元康、エイベックスの松浦勝人、サイバーエージェントの藤田晋らと女性向け雑誌「DRESS(ドレス)」を発売するために株式会社giftを設立(3億4200万円の赤字を出して2015年に売却)した。
2015年、第28回日本メガネベストドレッサー賞・経済界部門を受賞。
逸話
・幻冬舎のマークに描かれている「槍を高くかざした人間」のモデルは見城本人で、自らポーズをとって描かせたものである。
・夜を徹して『ダディ』を校正、校了してその足で郷ひろみとゴルフをしに行ったところ、郷がホールインワンを出した。この時、見城はダディがミリオンセラーになることを確信したという。
・20代のころ、既に大作家となっていた石原慎太郎と仕事がしたいと思った見城は、『太陽の季節』と『処刑の部屋』を全文暗記して石原との初対面に臨んだ。これには石原も「わかった、もういい。お前とは仕事をするよ」と苦笑したという。
・容姿への劣等感、学生運動での挫折、若くして運動の中に散った日本赤軍の奥平剛士らのような存在への負い目が自身を駆り立てていると常々語っている。
・太田出版元社長の高瀬幸途は友人であり、見城の著書『編集者という病い』の編集を手掛けている。
・NMB48の須藤凜々花の熱烈なファンであることを公言していた。 
 2019/5
幻冬舎・見城徹社長の“実売数晒し”に批判噴出… 2019/5
出版界の大物が、作家たちから集中砲火を浴びる事態になっている――。
ことの発端は、作家の津原泰水氏が、『日本国紀』(百田尚樹/幻冬舎)を批判したことを理由に幻冬舎での書籍出版が一方的に中止にされたと公表している件だ。幻冬舎社長の見城徹氏は16日、自身のTwitter上でこの件について次のように投稿した。
「こちらからは文庫化停止は1度も申し上げておりません。担当者はずっと沈黙していましたが、あまりのツイートの酷さに『これでは私が困ります』と申し上げたところ『それでは袂を分かちましょう』と言われ、全く平和裡に袂を分かったのが経緯です。他社からその文庫が出る直前に何で今更?」(原文ママ、以下同)
「津原泰水さんの幻冬舎での1冊目。僕は出版をちゅうちょしましたが担当者の熱い想いに負けてOKを出しました。初版5000部、実売1000部も行きませんでした。2冊目が今回の本で僕や営業局の反対を押し切ってまたもや担当者が頑張りました。実売1800でしたが、担当者の心意気に賭けて文庫化も決断しました」
津原氏は自身のTwitter上で、原稿もほぼ完成していたなかで幻冬舎の担当者から一方的に出版中止の連絡を受けたメールのエビデンスを公表しているが、津原氏は見城氏の発言を受け、次のように困惑の声を上げている。
「俺にも確認できない実売部数晒しとか始めちゃって、まるで格闘家が試合前のパフォーマンスで大怪我してるみたいな状態なわけですよ」
「実売部数晒しが、こいつ売れないぞ、拾っても無駄だぞ、ざま見ろって自爆テロのつもりだったとしても、刷り部数が1万行ったら万歳三唱の時代に、そう悪い数字でもなかったりする。頑張れば黒字ラインに持っていけた筈。そんなん無理だって云うなら出版社畳めばって話だ。何がしたかったんでしょう?」
さらに見城氏の“実名晒し”への批判は広がり、Twitter上では別の作家たちからも多数のコメントが上がっている。
「見城さん、出版社のトップとして、これはないよ。本が売れなかったら『あなたの本は売れないからうちでは扱わない』と当人にいえばいいだけ。それで文句をいう著者はいない。でも『個人情報』を晒して『この人の本は売れませんよ』と触れ回るなんて作家に最低限のリスペクトがあるとできないはずだが」(作家・高橋源一郎氏)
「信じられないこと 出版社の社長が自社で出した本の部数が少ないと作家を晒しあげる。ふつう編集者や営業は、一緒に作った本が売れなかった時『力が及びませんでした、残念です』というものだよ。もちろん同じことを作家は編集者たちに思っている。見城氏は作家ばかりでなく、自社の社員もバカにしている。商品としての本は、作家だけじゃない、編集者、デザイナー、営業、みんなで作るものじゃないか。もちろんこんな業界の基本のキを知らないわけがない。これじゃあ売り上げが悪いならでてけ、という単なる場所貸し会社じゃないか」(作家・倉数茂氏)
「やはりここまで来たら日本の作家は『幻冬舎とは仕事をしない』ということを宣言すべきだと思います」(思想家・内田樹氏)
「やり過ぎだろう。見るに耐えない」(作家・平野啓一郎氏)
こうした反応を受け見城氏は17日、ツイッターで「編集担当者がどれだけの情熱で会社を説得し、出版にこぎ着けているかということをわかっていただきたく実売部数をツイートしましたが、本来書くべきことではなかったと反省しています。そのツイートは削除いたしました。申し訳ありませんでした」と謝罪。しかし、ネット上では以下のように見城氏への批判が続出し、騒動は収まりそうにない。
「ここから本を出すことは恥ずかしいと、まともな作家たちは思い始めている」
「津山氏に対して失礼しすぎます」
「見城徹には他者へのリスペクトなんかないでしょ。どうやったら“金づる”が見つかるか、その“金づる”を逃さないようにするかしか考えてないし」
「ケンカ見城 悪名は無名に勝ると言ってたのに。詭弁と謝罪か。がっかり」
「お得意の『情熱』を正当化するなって」
「見城社長は津原氏に対して、直接目の前で頭を下げるべきだ」
出版業界関係者は語る。
「見城さん個人はナイスな人ですよ。石原慎太郎や村上龍、森村誠一など、名だたる大物人気作家たちから絶大な信頼を得て、これまで無数の大ベストセラーを生み出してきた剛腕編集者であることは、誰もが認めるところです。人脈は出版界にとどまらず、サイバーエージェント社長の藤田晋氏やGMO代表の熊谷正寿氏などの経営者、芸能界の重鎮でバーニングプロダクションの周防郁雄社長、さらには安倍晋三首相をはじめとする政治家など、錚錚たる顔ぶれとあつい親交があります。その“大物っぷり”はハンパなく、以前見城さんがあるキー局の番組にゲストとして出演した際には、その局の幹部連中がずらりとスタジオに顔をそろえて観覧していたと聞きます。ただ、“情にあつい”といえば聞こえがいいのですが、かなりの“身びいき”なことでも知られており、自分の仲間に批判的な人を容赦なく攻撃してしまう面もあります。最近では“盟友”百田尚樹氏が、俳優の佐藤浩市が雑誌のインタビューで安倍首相を揶揄したと勘違いして佐藤を批判し、それに乗っかって見城さんもTwitter上で佐藤を攻撃して世間から失笑を買っていましたが、その“熱い情熱”が間違った方向に行ってしまうことが、しばしば散見されます」
また、別の出版業界関係者はこう語る。
「これほど毀誉褒貶が激しい人も珍しい。“そのときどきで権力や勢いを持っている人物にすり寄って、金儲けしているだけ”“自分が権力者だと思い込んで、自分に酔っている”という声もあり、見城さんを嫌っているというか、近づかないようにしている人が多いのも確かです。幻冬舎でも、見城さんのワンマンなやり方や、自分より優秀な人が台頭してくると潰そうとする性格に嫌気がさして辞めた優秀な編集者を何人も知っています。もっとも、本人はワンマン経営者であることを自任しているくらいなので、改善される見込みはないでしょう。ただ、見城さんの日頃の発言や著書、さらにいろんな評判を聞く限り、やっぱり“売れる作家=良い作家”という信条の持ち主だという印象は拭えません。もし作家にリスペクトの気持ちがあれば、勝手に実売を公に晒すなんていう行為は想像もつかないでしょうし、作家を商売の道具くらいにしか考えていないのではないかと感じます。自分の会社が作家に批判されたからといって、その作家の部数が低いとでも言いたいかのような発言をするなど、言葉は悪いですが“クズ編集者”ですよ」
出版界の大物だけに、業界での評価も分かれるようだ。 
幻冬舎・見城社長「実売数晒し」で謝罪 作家ら一斉反発 2019/5
「初版5000部、実売1000部も行きませんでした」――。幻冬舎の見城徹社長のツイッターでの発言をめぐり、多くの作家が不快感をあらわにしている。
同社と対立する作家の書籍の「実売数」を明かす発言をしたことに、「『この人の本は売れませんよ』と触れ回るなんて作家に最低限のリスペクトがあるとできないはず」とひんしゅくを買っている。
騒動のきっかけは、作家の津原泰水(つはらやすみ)氏が2019年5月13日、百田尚樹氏の著書『日本国紀』(幻冬舎)を批判したため、自著が出せなくなったとツイッターで主張したためだ。
津原氏は幻冬舎から文庫本『ヒッキーヒッキーシェイク』の出版を予定していたが、『日本国紀』がネットの情報を無断引用していると指摘したところ、出版が急遽取りやめになったとしている。
一方、幻冬舎は16日のJ-CASTニュースの取材に、『日本国紀』を批判するのは止めるよう依頼したのは事実としつつ、「『お互いの出版信条の整合性がとれないなら、出版を中止して、袂を分かとう』と津原氏から申し出がありました」と反論する。
その後、津原氏は幻冬舎の担当者とのメールのやりとりをツイッターで公開し、同社の反論は事実無根だと訴えた。担当者からのメールには「『ヒッキーヒッキーシェイク』を幻冬舎文庫に入れさせていただくことについて、諦めざるを得ないと思いました」などと書かれている。
津原氏のメール公開などを受け、見城氏自身がツイッターで「こちらからは文庫化停止は一度も申し上げておりません」と改めて反論し、「メールのやり取りの全文も何らかの形で明らかになるでしょう」と"予告"した。
さらに、津原氏が幻冬舎から出版した過去の著書を挙げ、自身は反対していたとも明かしている。
「津原泰水さんの幻冬舎での1冊目。僕は出版を躊躇いましたが担当者の熱い想いに負けてOKを出しました。初版5000部、実売1000部も行きませんでした。2冊目が今回の本(編注:『ヒッキーヒッキーシェイク』の単行本)で僕や営業局の反対を押し切ってまたもや担当者が頑張りました。実売1800でしたが、担当者の心意気に賭けて文庫化も決断しました」
見城氏の「実売晒し」ツイートを受け、多くの作家らが反発している。
作家の高橋源一郎氏は、「見城さん、出版社のトップとして、これはないよ。(中略)『個人情報』を晒して『この人の本は売れませんよ』と触れ回るなんて作家に最低限のリスペクトがあるとできないはずだが」
映画史研究家で、著書を多数持つ春日太一氏は、実倍数を公表することで「腰が引ける出版社や書店が出てくる可能性がある」として、 「どれだけ争っているとしても、『著者が他社でも仕事できにくくするよう率先して仕掛ける』ようなことはしない。それが出版社としての矜持だと思っていました。が、見城徹は明らかにその一線を越えたように私には映ります。芸能界や映画界のように出版界はなってほしくない。危惧します」
作家の岡田育氏は「『実売数の大きな作家は業界全体に大きな発言権を持つ ≠ 実売数が少ない作家には発言権がない』『本を売るのは出版社の仕事なので出した本が売れない責任は主に出版社にある』今日は皆さんにこれだけ憶えて帰ってもらいたいと思います」
そのほか、平野啓一郎氏や藤井太洋氏、‏深緑野分氏、福田和代氏、葉真中顕氏など多数の作家らが異議を唱えている。
(17日13時追記)見城氏は17日12時50分に、ツイッターを更新。先のツイートを削除し、お詫びした。
「編集担当者がどれだけの情熱で会社を説得し、出版に漕ぎ着けているかということをわかっていただきたく実売部数をツイートしましたが、本来書くべきことではなかったと反省しています。そのツイートは削除いたしました。申し訳ありませんでした」  
百田尚樹『日本国紀』批判したら「文庫出せなくなった」 2019/5
作家・百田尚樹氏の著書『日本国紀』(幻冬舎)を批判したら、自著が出せなくなった――。作家の津原泰水氏がツイッターでこんな訴えをしている。
同氏は幻冬舎から文庫本の出版を予定していたが、『日本国紀』の問題点を指摘したところ、出版が急遽取りやめになったとしている。一方、幻冬舎は取材に対して、「事実ではありません」と反論する。
津原氏は2019年5月13日、ツイッターで「幻冬舎から文庫出せなくなった」と明かした。その後の投稿によれば、幻冬舎文庫から19年4月に刊行予定だった小説『ヒッキーヒッキーシェイク』が、同年1月ごろに突如、出版中止を告げられた。
理由については、担当者を通じて「『日本国紀』販売のモチベーションを下げている者の著作に営業部は協力できない」と説明され、津原氏は「ゲラが出て、カバー画は9割がた上がり、解説も依頼してあったんですよ。前代未聞です」と憤りを隠さない。
津原氏はツイッターで、『日本国紀』がネットの情報を無断引用しているとたびたび指摘しており、「同じ幻冬舎から本を出す作家の立場から、世間に謝罪すべき(ならば浮かぶ瀬もある)と提言した。百田氏にもそうコメントしました。何故か返事は無いままです」ともつづっていた。
なお、『ヒッキーヒッキーシェイク』は、2016年の文学賞「織田作之助賞」の最終候補作に残った作品。一連の経緯から幻冬舎から出版できなくなったとしているが、19年6月に早川書房から刊行予定だ。
幻冬舎総務局は5月16日、J-CASTニュースの取材に「文庫化を一方的に中止したという津原氏のご主張は、事実ではありません」と回答。出版中止は、津原氏からの申し出だったという。
「2018年末から2019年初にかけての、津原氏の『日本国紀』に関する膨大な数のツイートに対し、担当編集者として『さすがにこれは困ります』という旨、ご連絡を差し上げたのが年初のことです。そして、担当編集者と津原氏が電話で話をする中、『お互いの出版信条の整合性がとれないなら、出版を中止して、袂を分かとう』と津原氏から申し出がありました」
「尚、津原氏のご指示で、制作に関する関係各所への連絡は担当編集者が行い、それまでに制作に要した経費は弊社ですべて負担いたしました。また、津原氏からの出版契約の更新不可のお申し出を受諾し、その後、他社で文庫化される際のロイヤリティも放棄しております」  
見城徹「やましいことは一切ない」──『日本国紀』への批判に初言及 2019/5
<コピペや盗用が指摘される百田尚樹の65万部ベストセラーについて、版元である幻冬舎の見城徹社長が初めて口を開いた>
百田尚樹の『日本国紀』は、65万部のベストセラーとなった一方で、インターネット上のフリー百科事典「ウィキペディア」からのコピペや他文献からの盗用を巡る指摘が後を絶たない。版元の幻冬舎は昨年11月の初版発売から重版を重ねるたびに、公表することなく修正も繰り返している。
5月28日発売のニューズウィーク日本版「百田尚樹現象」特集で、幻冬舎社長・見城徹が『日本国紀』を巡る一連の問題について、初めてインタビューに口を開いた。
インタビューは5月10日、東京・北参道の幻冬舎社内で収録した。なお、小説家の津原泰水が、『日本国紀』を批判したことで、作品を幻冬舎文庫から出版できなくなったと公表するのはこのインタビュー後なので、その点についての質問はない。計20ページに及ぶ「百田尚樹現象」特集のうち、見城へのインタビューの一部を抜粋する。
――見城徹の目からみた作家・百田尚樹の評価は?
「百田さんの小説は読みやすいと言われるけど、単純ではない。裏打ちとしてあるのは彼の文章学であり、人間に対する見方、考え方だ。それをエンターテイメントに落とし込んで、かつ人の心に沁みこむように書けるというのは、並の作家ではできない」
――では、『日本国紀』をどのような本として認識しているのか。
「『日本国紀』は百田尚樹という作家の作品であり、百田史観による通史だ。百田尚樹という作家が、日本という国の歴史をこう捉えたということ。これがはるかに大事なんだよ。まさに叙事詩だ。彼は歴史家じゃなくて作家。作家によって、新しい日本の通史が書かれるという興奮のほうが大きい。僕は百田尚樹がどんな政治信条の持ち主でも出しましたよ」
――右派の本が売れているから、ビジネス戦略として『日本国紀』を出したのか。
「そんなことは1ミリも思っていない。僕にはビジネス的に右派が売れているから右派の本を出そうという考えは全くない。右派的な本や雑誌ばかりが売れるのはどうかと思っている。もちろん、売れることは大事だ。売れる本があるから、全く売れないと分かっていても世に必要な本が出せる。僕が元日本赤軍、極左の重信房子の本を何冊も出していることから分かるでしょう。その時は批判なんて来なかった。僕は右でも左でもない。見城という『個体』だよ」
――では、なぜ売れたのか。
「売れている理由は明確でしょ。百田さんの史観と文章によって、歴史はこんなに面白いのか、というのが分かるからだ。特に12章以降の戦後史はこの本のハイライトで面白い」
右派的な歴史観が強く打ち出される戦後史が面白い、と言われてうなずくことはできないが、見城の分析はデータを見る限り、ポイントを押さえていることが分かる。全国のTSUTAYAとTポイント提携書店のPOSデータを分析するサービス「DB WATCH」によると、『日本国紀』は刷り部数相応に売れており、百田のオピニオン系の書籍も数字が動いている。ここから「強いファン層」が存在し、歴史観に共鳴していることは推測できる。であればこそ、初版以降、多くの修正が出たことについてどう考えるか。百田本人は特集のインタビューで「初版の読者には申し訳なかったという思いがある」と言い、正誤表も「あってもいい」と語っているが、見城はどうか。
――初版から指摘を受けるたびに、明示することなく修正していることが問題視されている。
「この程度の修正はよくあることでしょ。校正をいくら重ねても出てしまうもので、版を重ねて修正するのはどの本でも当たり前のようにあること。うちの本にも、他社の本にもありますよ。今の修正なら、僕の判断で(正誤表は)必要ない、と決めました」
担当編集者の高部真人も同席し、こう付け加えた。
「校正について言えば、普通の本の3倍以上はやっています。通史で全部のファクトを細かくチェックしていけば、校正だけで5年はかかります。監修者の協力も得て、一般書としての最高レベルでやりました。それでもミスは出てしまう。それは認めるしかありません」
――ウィキペディアからのコピペ、他文献からの盗用があったのではないかという指摘についても幻冬舎から反論や見解を出していない。
「こちらにやましいことは一切ない。ある全国紙から何度も、コピペ問題について取材依頼が来ましたが、応じるまでもなく、どうぞ好きに書いてくださいというのがこちらの考え。ウィキペディアを含めてさまざまな文献を調べたことは当然、あったでしょう。だけど、そこからのコピペで、これだけ多くの読者を引きつけられるものは書けない。この件も百田尚樹だから批判が出るのでしょう。(首相の)安倍さんと近いとか、そんなことが大きな理由じゃないですか」 
首相公邸で安倍首相と会食!? 見城社長の最大の問題は権力との癒着だ 2019/5
『日本国紀』(百田尚樹)を批判した作家・津原泰水氏の文庫本出版中止問題で、津原氏の実売部数を晒すなどの暴挙に出た見城徹・幻冬舎社長だが、さすがに白旗をあげざるをえなかったようだ。19日深夜にはTwitterを閉鎖。20日には、AbemaTVでもっていた冠番組『徹の部屋』で改めて津原氏に対して謝罪したうえ、同番組の終了を宣言した。見城氏としては個人的な言論活動を一旦やめることで“けじめ”を示したつもりなのだろう。
しかし、見城氏は実売晒しについては謝罪しているが、同社が津原氏の『日本国紀』批判を抑え込もうとして、その文庫本を最終的に出版中止にした問題については、なんの謝罪もしていない。本来は、この表現の自由の侵害こそが今回の騒動の本質であるにもかかわらず、だ。
さらに、見城氏にはもうひとつ、批判されるべき大きな問題がある。それはほかでもない、安倍首相との“癒着”だ。
そもそも見城氏といえば、第一次政権放り出し後、野にくだった安倍氏と急接近。首相再就任にも大きな貢献をしたことで知られる。安倍氏とは行きつけのスポーツクラブで知り合ったという見城氏だが、その後、急速に親しくなり、2012年には首相に返り咲くための応援団を買って出る。そして、自民党総裁選前には『約束の日 安倍晋三試論』(小川榮太郎/2012年9月)を自社から刊行し、大々的に新聞広告を打つなどして安倍首相を援護射撃した。大規模な広告展開を仕掛け、ベストセラーに仕立てる手法は幻冬舎商法と揶揄される戦略だが、それが成果をあげたのか本はベストセラーに。安倍は首相への返り咲きに成功した。
実際、安倍首相自身、「ここまでこれたのは見城さんのおかげだ!」と発言している。この発言は、2013年9月に見城氏が主催した若手IT経営者たちとの食事会で出たものだったが、第二次政権発足以降、この会に限らず見城氏は積極的に自分の人脈と安倍氏を引き合わせている。見城氏が安倍首相との間をとりもったひとりが、テレビ朝日の早河洋会長だ。
さらに一方で、前述の小川榮太郎氏や百田尚樹氏、山口敬之氏ら安倍応援団の著書を節目節目で出版し安倍政権をアシストし続けてきた。今回の部数晒しツイート問題の発端になった百田氏の『日本国紀』も、その本質は安倍改憲を後押しするプロパガンダ本だ。
まさに“べったり”という表現がぴったりな応援団ぶりだが、この癒着が問題なのは、見城氏がただの出版社社長ではないからだ。見城氏はテレビ朝日の放送番組審議会の委員長も務めており、同局の報道番組に睨みを利かせてきた。
実際、見城氏は『報道ステーション』に対して審議会で「政権批判だけでなく評価もすべき」という趣旨の発言をしたと報道されたこともあるし、その後、『報ステ』や『羽鳥慎一モーニングショー』などテレビ朝日のさまざまな報道・情報番組で政権に批判的な出演者が降板させらたり、政権批判報道が減った背景にも関係していたのではないかといわれている。
時の権力者とべったりの人物が番組審査などすれば、放送の独立、報道の自由なんて保てるはずがない。裏で特定の政治勢力とつながっている人物を「放送番組審議会委員長」の職に就かせてチェックさせるというのは、それこそ放送法違反ではないのか。
しかも、見城氏の安倍首相へのすりよりは、時を経るにつれてどんどん露骨になっている。2017年衆院選の際には告示日2日前、『徹の部屋』に安倍首相を生出演させ、「すごくハンサムですよ。内面が滲み出ているお顔ですよ」などと歯の浮くようなヨイショを連発。AbemaTVはテレ朝が40%を出資するネット放送局だが、見城氏は一方でテレ朝の番組審議会委員長をつとめながら、系列のネット番組で“放送法逃れ”の露骨な安倍PRをやってのけたのだ。
また、先日、実売部数晒しの少し前には、映画『空母いぶき』で総理大臣役を演じた佐藤浩市に“安倍首相を揶揄した”と言いがかりをつけた。佐藤はこれまでの役柄や映画での役作りについて語っただけだったが、百田氏や阿比留瑠比氏ら安倍応援団とともに発言を歪曲して騒ぎ、〈最初から首相を貶める政治的な目的で首相役を演じている映画など観たくもない〉と攻撃。“安倍首相の親衛隊”ぶりを見せつけたのである。
もっとも、この佐藤浩市への攻撃については、ネットでは「安倍応援団の誤爆、切り取り」との批判が殺到、爆笑問題などからも「またうるさいね、あの親父たちは。佐藤さんがちょこっと言ったことをヘンなふうに自分なりに解釈してさ。ギャーギャー騒ぐんだな」「安倍さんをチョットでも悪く言うとワーッみたいなね」とからかわれる始末だった。
しかし、当の見城社長はこうした状況になんの恥も感じていなかったらしい。実はこの騒動の最中も、見城社長は安倍首相と密かに会い、会食していた可能性が高い。
それは5月15日夜のこと。見城社長がTwitterで佐藤浩市を攻撃した3日後、津原氏の文庫本出版中止問題で批判を受けて〈訴訟するのは気が進まないが、訴訟するしかなくなる〉と強気のツイートを投稿した当日、そして、津原氏の実売部数晒しをする前日のことだ。
新聞各紙が報じている「首相動静」を見ると、5月15日、安倍首相は午後7時頃からの赤坂の寿司屋で秋山光人日本経済社特別顧問らと会食を早々に切り上げ、7時30分には公邸に戻った。その後には「末延吉正東海大教授らと食事」と記されている。
ちなみに、末延氏といえば、安倍首相の地元山口の後援企業の御曹司からテレ朝の政治部長になった人物で(その後に退職)、現在もテレ朝の『大下容子ワイド!スクランブル』などでコメンテーターを務め、安倍首相を擁護しまくっている典型的なマスコミ内の政権応援団の一人だ。末延氏の会食だけでも大いに問題ありだが、この食事に、どうやら見城社長も同席していたらしいのだ。
しかし、前述したように、首相動静には「末延氏“ら”」とあるだけで、見城氏の名前はない。全国紙の官邸詰め記者が当日の状況をこう解説する。
「首相動静は報道各社の総理番が一日中、総理に張り付いて報じるわけですが、首相官邸(公邸)には番記者たちが目視できないように首相と面会できる“ルート”が存在し、“面会はあったと思われるがそれが誰だかわからない”ということがしばしば起こる。その場合は、官邸スタッフに確認をとって、非公式に名前や素性を教えてもらうわけです。15日夜のケースもそうで、入った時はまったくわからなかった。ところが、夜10時、公邸から黒いアルファードが出てきたので“誰かと会っていたたようだ”となった。すると、一人は末延さんだと公表したんですが、もう一人については『中小企業の社長だ』としか言わず、最後まで明かそうとしなかった。周辺からは『食事会を主催したのは見城社長』という情報もあったんですが、官邸が頑として名前を明かさなかったため、活字にできなかった」
しかし、見城氏の同席はひょんなことから確度の高い情報がとれた。それは、15日夜10時6分、首相公邸から出てきた「黒いアルファード」だ。首相番記者はこういう場合、必ず車のナンバーを控えている。そして、本サイトの記者がそのナンバーを入手し、渋谷区千駄ヶ谷にある幻冬舎本社に確認に行ったところ、駐車場にまさにそのナンバーの車が停めてあったのだ。
「中小企業の社長」という官邸のレクチャーと考え合わせると、この日、見城社長が安倍首相との食事会に同席していたというのはほぼ間違いないだろう。
それにしても、首相動静から、見城氏の名前だけが隠されているのはいったいなぜなのか。当初は、佐藤浩市を安倍首相に成り代わって攻撃したことに“お褒めの言葉”でももらうための食事会だったため秘密にしたのか? と穿った見方をしたが、そういうことではなさそうだ。
というのも、見城氏は第二次政権発足当初こそ、首相動静に名前が何度か出てきていたが、2014年7月を最後に、一切、首相動静に載らなくなったからだ。見城社長と安倍首相が会わなくなったわけではない。例の“組閣ごっこ”など、見城社長が安倍首相と頻繁に面会していることは明らかだ。にもかかわらず、首相動静には載らないのである。
そこで、官邸に対して、15日夜に見城氏が公邸を訪問した事実の確認と、名前を伏せた理由を問いただしてみた。しかし、帰ってきた答えはこうだった。
「総理が誰と面会したなどについてはわかりません。報道の首相動静を見てもらうしかない。そもそも報道室の業務に含まれていませんので、そうした面会は記録しておらず、逐一メモにとる等も行っておりません」(官邸報道室担当者)
「総理がひとりひとり誰と面会したかということについては回答できません。なお、警備都合上、入館のための訪問予約届は管理しますが、その一日の業務が終わり次第破棄しています。また、仮に破棄前であっても、個人情報ですので入館記録についてはお答えしません」(官邸事務所担当者)
見ての通り、「記録していない」「お答えできない」の一点張りである。言っておくが、総理大臣は一国の政治の最高権力者であり、いつ、どこで、誰と会っていたかという事柄は、当然、公共の正当な関心事であって隠されることなどあってはならない。いったい、官邸は国民の知る権利を何だと思っているのだろうか。
しかも、この訪問者の名前を一律で明かしていないという回答は、ただの建前にすぎない。官邸担当記者が語る。
「官邸は訪問者本人、もしくは安倍首相から名前を伏せろ、という指示がない限り、訪問者の素性を教えてくれることが多い。もちろん非公式にですが。つまり、見城氏の場合は、ある時期から完全にシークレット扱いになっているということでしょう」
では、なぜ、見城氏がシークレット扱いになっているのか。それはおそらく、見城社長が前述したように、テレビ朝日の放送番組審議会の委員長を務めていることと関係があるのではないか。
実は、安倍首相と関係の深い見城氏がテレビ朝日の番組審議委員長をやっていることに、批判の声が上がり始めたのが2014年の後半。翌年には週刊誌でも見城氏がテレビ朝日の番組審議委員会で圧力をかけたという報道がなされた。これは、首相動静に見城氏の名前が載らなくなっていった時期とほぼ一致する。
「ネットなどでも、安倍首相と会食を繰り返す応援団がテレビ朝日の番組審議委員長を務めているのはおかしいという批判が上がりました。そのため、面会の事実を伏せるようにしたんじゃないでしょうか。番組審議委員長の椅子というのは見城氏にとっても、安倍首相にとっても、世論操作のために最も利用価値のあるものですから」(週刊誌記者)
もっとも、その後、安倍一強体制がさらにエスカレート。安倍政権の横暴やお友だち優遇がまかり通るようになるにつれ、見城社長も安倍首相との関係を隠そうとしなくなり、『徹の部屋』やTwitterで露骨に安倍首相との関係を誇示するようになった。
今回の佐藤浩市攻撃や実売部数晒しはまさにその驕りの結果だと言えるだろう。
見城社長は結局、その露骨な言動によって批判の集中砲火を浴び、Twitter閉鎖と『徹の部屋』の終了に追い込まれた。
だが、だからといって、見城社長が安倍首相の“名代”として、メディアに影響力を行使する状況は変わったわけではない。Twitterと『徹の部屋』は終了するが、テレビ朝日の番組審議委員長を辞任するという動きは聞こえてこないからだ。
これからはむしろ、安倍首相との関係は水面下に隠されるかたちで、巨大メディアに隠然とした力を発揮していくのだろう。本サイトは引き続き、幻冬舎・見城徹社長の動向を注視していくつもりだ。 
ニュースの現状とメディアの役割 テレビ朝日・経済部長 松原文枝氏
政経フォーラムに、テレビ朝日・経済部長の松原文枝氏にお越しいただき、ニュースの現状とメディアの役割についてお話をいただきました。
松原氏は、メディアの役割について「権力を監視すること」「視聴者のための報道を行うこと」だと述べられました。世の中の不条理を報道することで、権力を持つものへの抑止力につながったり、真実の報道を通じて、社会で何が起きているのかを正確に掴むことが重要であると実感しました。また、視聴者の心に深く響く番組を創り出す必要性やテレビ視聴の平均時間が平日は159.4分、休日は214分であることからも、メディアの影響力が非常に大きいということです。
私たちは、報道そのものを鵜呑みにすることなく、真実を見抜く目を養いながら日々のマスコミ報道と向き合っていくことが大事です。 
テレ朝が“忖度”人事か…安倍政権追及の経済部長を更迭 6/23
テレビ朝日で来月1日発令の人事異動が21日内示され、社内に衝撃が走っている。安倍政権を厳しく追及してきた経済部長の女性A氏(52)が報道現場から外され、イベント関係の新設ポストへ“左遷”されるというのだ。
「A氏の異動先は総合ビジネス局で、イベント事業戦略担当部長です。わざわざ新しいポストをつくってまでとは、会社もやることが露骨。もっと酷い閑職も検討されたそうです。経済部長から非現業の部署への異動は異例です。前任者は政治部長になり、前々任者もネットニュース部門の長であるクロスメディアセンター長になっています」(テレ朝社員)
テレ朝の経済部長といえば、昨年4月、財務次官のセクハラを告発した女性記者を守った上司でもある。あれから1年。ほとぼりが冷めた今になっての懲罰人事かと思いきや、それだけではないようだ。
A氏の前職は「報道ステーション」のチーフプロデューサー。古舘伊知郎(64)がキャスターだった頃に、原発や安保法制の問題など政権が嫌がるテーマにも鋭く切り込んでいた。
「I am not ABE」で官邸の逆鱗に触れ、元経産官僚の古賀茂明氏(63)がコメンテーターを降板させられた2015年4月に、A氏も報ステを外されている。
経済部長となった後も「森友問題について財務局OBに話を聞く座談会」を企画したり、「武器輸出」について特集したりと、政権に厳しいニュースを経済部として報じてきていたという。そうした姿勢が会社に疎まれたのか。
「A氏は報道機関として『権力の監視』を当たり前のようにやっていただけです。2016年には『ワイマール憲法の教訓』という企画で、ギャラクシー賞の大賞をテレ朝で初めて受賞しています。自民党憲法草案にある緊急事態条項の危険性に警鐘を鳴らす特集でした。それなのに“粛清”人事ですか。テレ朝の報道は終わりました」(前出の社員)
今回の人事についてテレ朝広報部は、「通常の人事異動の一環です。なお、社内における職位(担当部長)については、変更はありません」とコメントした。
昨年、NHKでも政権忖度人事で森友スクープ記者が左遷されたが、テレ朝も同じだとしたら、安倍政権下のテレビ局の萎縮は尋常じゃない。  
テレビ朝日が2000万円報告書問題で麻生財相を追及した
 「報ステ出身の経済部長」を報道局から追放! 6/23
本サイトでも継続的にレポートしてきたように、安倍首相と蜜月関係にある早河洋会長のもと、“政権御用化”が進行しているテレビ朝日だが、ここにきて、またぞろ、政権の不正を追及してきた報道局幹部をパージする“政権忖度人事”が行われた。
「経済部部長・Mさんに、7月1日付人事異動の内示が下ったんですが、これが前例のない左遷人事だったんです。M部長の異動先は総合ビジネス局・イベント事業戦略担当部長。今回、わざわざ新たに作った部署で、部長と名ばかり。これまでの部長は政治部長やセンター長になっているのに、これはもう嫌がらせとしか思えません」
M部長は古舘伊知郎キャスター時代、“『報道ステーション』の硬派路線を支える女性チーフプロデューサー”として有名だった女性。経済部長に異動になってからもその姿勢を崩さず、森友問題などでは、経済部として財務省をきちんと追及する取材体制をとっていたという。
「財務省や麻生太郎大臣の会見は、経済部が中心なので、不正や政策の問題点を追及する質問なんてほとんどやらないんですが、Mさんが部長になった頃から、テレ朝は複数の記者を投入して、踏み込んだ質問をするようになった。ごくたまにですが、重要な局面では、Mさん自身も会見に出て、質問していました」(全国紙経済部記者)
いま、大きな問題になっている金融庁の“2000万円報告書”問題でも、麻生財務相の会見でこの問題をはじめて追及したのは、テレビ朝日経済部だった。その後も、会見の度に、報告書問題を質問。また、麻生大臣が11日、「報告書を受け取らない」としたときの会見には、M部長自ら出席。報告書の内容を「政府のスタンスとちがう」と言い訳した麻生財務相に、「報告書のベースは金融庁が作っている」「夏の税制改正要望に証券税制の優遇を入れるという意図があったのではないか」と鋭い追及をしていた。
しかし、こうしたテレビ朝日の追及に、麻生大臣が苛立ちを示すケースもしばしばで、2000万円報告書問題では「テレビ朝日のレベルの話だからな」「またテレビ朝日か」「テレビ朝日のおかげで不安が広がった」「おたくのものの見方は俺たちとぜんぜん違う」などと、名指しで恫喝することも少なくなかったという。
そんなさなかに、M部長が聞いたこともない部署に飛ばされる人事の内示が出たため、局内外で「こんな露骨な人事、見たことない」「安倍政権からなんらかの圧力があったのではないか」という声が上がっているのだ。
実際、M部長の異動の裏に、テレ朝上層部の安倍政権忖度があったのは間違いない。
そもそもM部長は、『報道ステーション』のチーフプロデューサー時代から、官邸とテレ朝上層部に目の敵にされてきた。実は、『報ステ』のチーフPを外されたのも、官邸の圧力だったといわれている。
2015年、ISによる後藤健二さん、湯川遥菜さん人質事件が起きたさなか、ISを刺激する安倍首相の発言を批判して、コメンテーターの古賀茂明氏が「“I am not ABE”というプラカードを掲げるべきだ」と発言したことに、官邸が激怒。菅官房長官の秘書官が恫喝メールをテレ朝上層部に送りつけるなど、圧力をかけて、古賀氏を降板に追い込んだことがあったが、このとき、古賀氏らといっしょに同番組から外されたのが、M氏だった。
「Mさんがチーフプロデューサーをつとめていた時代、『報ステ』は政権の不祥事や原発問題に果敢に踏み込んでいました。上層部からの圧力にも身を盾にして現場を守っていた。早河さんや当時の篠塚(浩)報道局長らは苦り切っていて、Mさんを外す機会を虎視眈々と狙っていた。そこに、古賀さんの発言があって、官邸から直接圧力がかかったため、古賀さんを降板させた少しあとに、Mさんを政治家とは直接関わることが少ない経済部長に異動させたというわけです」(テレビ朝日局員)
しかし、M氏は経済部長になってからも、官邸や局の上層部からマークされ続けていた。
昨年4月、財務省・福田淳一事務次官(当時)の女性記者へのセクハラ問題が勃発したときは、官邸がM氏に責任をかぶせるフェイク攻撃を仕掛けていたフシがある。周知のように、福田次官のセクハラは、「週刊新潮」(新潮社)がスクープしたものだが、告発した女性記者の一人がテレ朝の経済部記者で、M氏はその女性記者の上司だった。そのため官邸は「Mが女性記者をそそのかして告発させた」という情報を拡散させたのだ。
「たしかに当時、官邸に近い政治部記者が『Mが福田次官をハメるため女性記者に「週刊新潮」への音源提供をそそのかした』なるストーリーを口々に語っていました。週刊誌が調べてもそんな事実はなくて、官邸幹部が吹き込んだフェイク情報だったようですが……。官邸はこういう情報操作と同時に、テレビ朝日にも『Mをなんとかしろ』と相当、圧力をかけていたようですね。テレ朝としてはそのときにすぐに左遷するのは露骨だったので、タイミングをみはからっていたんでしょう」(週刊誌記者)
そして、冒頭で紹介したように、麻生大臣の会見などで、2000万円報告書問題を厳しく追及しているさなか、M氏の人事が内示されたのだ。
言っておくが、M部長は特別、過激なことをしていたわけではない。組織の秩序を乱したわけでもないし、不祥事を起こしたわけでももちろんない。政策や政権の不正をチェックするという、ジャーナリズムとしてはごく当たり前の取材・報道をしようとしただけで、10年前だったらなんの問題にもならなかっただろう。
ところが、テレビ朝日は、M氏を報道局から追放し、前例のない人事を行ったのだ。どう見ても「政権に忖度して政権批判者を追放する見せしめ人事」を行ったとしか思えないだろう。
しかも、恐ろしいのは政権批判に踏み込む報道局員を飛ばす、こうした人事がいまや、テレビ局で普通になっていることだ。テレ朝でも同様のケースがあった。解説委員として、ときには政権批判に踏み込むことで知られていたF元政治部長が、3年前に突然、部下が一人もいない営業マーケティング担当局長という新設のポストに異動させられている。
他局でも、政権批判に踏み込むデスクや記者が次々とメインの政治取材から外されており、その結果、官邸や記者クラブでは、政権の言い分を代弁する記者ばかりになり、会見でも安倍政権を追及するような質問は、ほとんど出なくなった。そして、普通に権力のチェックをしようとする数少ない記者たちは「空気を読めないやつ」「面倒臭いやつ」として取材体制から排除されていく。
NHK、フジテレビ、日本テレビだけでなく、テレビ朝日やTBSでも同じことが起きているのだ。この国のテレビはいったいどこまで堕ちていくのだろうか。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
税収60兆円突破でバブル期超えか 日本の税収は増えているの? 7/2
2018年度における税収が60兆円を突破することが明らかとなりました。新聞記事にはバブル期超えなどという見出しが躍っていますが、日本の税収は増えているのでしょうか。
2018年度の当初予算における税収見込みは59兆790億円となっており、その後、編成された補正予算では約59兆9000億円に増加していましたが、最終的な税収はさらに増え60兆円を突破する見込みです。これまでの最高額はバブル崩壊直前の1990年度における約60兆1000億円ですから、この金額を突破した場合には、バブル期超えを実現することになります。しかしながら、バブル期と今とでは、経済規模が大きく異なりますから、バブル期との比較で増減を議論してもあまり意味はありません。
2018年度における日本の名目GDP(国内総生産)は約550兆円ですが、1990年度における名目GDPは約450兆円しかありません。また消費者物価指数も当時との比較で約10%上昇しました。GDPが450兆円しかない時に60兆円の税収があったことと、550兆円の現在において60兆円の税収があることの意味は大きく異なります。
税収の割合も大きく変わっています。当時は消費税が導入されてから1年しか経過しておらず、消費税率も3%でした。全体の43%が所得税からの税収となっており、法人税も30%と現在と比較すると高い割合でした。消費税による税収は全体のわずか8%しかありません。その後、消費税が8%まで増税されたことや、安倍政権が急ピッチで法人税の減税を推し進めたことから税収の比率は大きく変わりました。2018年度の当初予算ベースでは、所得税の割合は32%まで下がり、法人税はさらに下がって20%となっています。一方で消費税の割合は30%まで上昇しています。もし消費税が10%まで増税された場合には、消費税は日本における最大の税収という位置付けになるでしょう。
消費税の増税が消費の低迷を招いたとして、消費増税の延期や廃止を求める声が大きくなっていますが、そもそも消費税が導入された理由は、景気に依存しない安定的な財源を確保するためでした。所得税や法人税は景気への依存度が高く、安定的な財源にはなりにくいというのが一般的な解釈であり、もし消費税の位置付けを変えるということになると、今後の税収や財政に大きな影響を与えることになります。
日本は高齢化の進展で、今後、社会保障費の増大が確実視されていますが、景気に左右されにくい消費税を強化するのがよいのか、景気によって大きく税収が変化する法人税や所得税を重視した方がよいのか、もっと国民的な議論が必要でしょう。  
櫻井よしこ氏が“安倍麻生道路”忖度発言の塚田一郎氏を応援演説 7/3
明日、参院選が公示されるが、“安倍応援団”ジャーナリストといわれる櫻井よしこ氏が応援演説で事実を歪曲した野党攻撃を行い、批判の声が上がっている。
櫻井よしこ氏といえば、安倍首相の推し進める憲法改正運動の旗振り役であるだけでなく、自ら主宰するインターネット番組「言論テレビ」でも安倍首相をさかんに擁護し、最近でも月刊誌「Hanada」(飛鳥新社)8月号で「無責任野党と朝日新聞に問う 安倍総理、大いに語る」と題するロング対談をするなど“首相の広報官役”も果たしている。
ところが、その櫻井氏が6月25日、塚田一郎参院議員(参院選新潟選挙区予定候補)の集会に登場し、応援演説を行ったのだ。
塚田議員といえば、今年4月、山口県下関市と北九州市を結ぶ道路整備をめぐって、「安倍晋三総理大臣から麻生副総理の地元への、道路の事業が止まっている」「私はすごくものわかりがいい。すぐ忖度する」「今回の予算で国直轄の調査計画に引き上げた」と、忖度による安倍首相、麻生太郎財務相への利益誘導を公言。責任を取って国交副大臣を辞任したばかりだ。
一応、ジャーナリストを名乗っておきながら、そんな候補者の応援演説を引き受ける感覚には首を捻りたくなるが、もっと問題なのはその内容が、事実を歪曲していることだ。候補者に関して虚偽の事実を公にすることは、「虚偽事項公表罪(公職選挙法235条第2項)」違反に当たる可能性がある。
櫻井氏は塚田議員の対抗馬である野党統一候補で弁護士の打越さく良氏に対してこう批判した。
「(参院選の)新潟の場合は塚田さんと打越さんの一騎打ちです。この中で『自衛隊をなくして皇室をなくす』という打越さんがいいと思う人はいるはずがない。(参加者から『そうだ!』『負けてられないよ!』という声)。負けてられないけれどもお父さん、今ね、調査すると、打越さんのほうが少し有利なのですって。恥ずかしくない? (参加者から『恥ずかしい!』との声)だから、これを一日も早く逆転しないといけない。逆転して、そして、さらに彼女に打ち勝って、選挙の当日にはすごい票差でこっちが勝たないといけない。(大きな拍手)皆さん、打越さんに聞きましょう。『あなたは皇室のことをどうなさるおつもり?』『自衛隊を解散するのですか?』。聞いて下さい。だって共産党が一生懸命支援をしている」
しかし櫻井氏が放った「『自衛隊をなくして皇室をなくす』という打越さん」という発言は、フェイクの可能性が高い。というのも筆者は打越氏の集会を取材しているが、予定候補本人はもちろん応援演説をした共産党の国会議員からも、櫻井氏が言うような“自衛隊をなくす”や“皇室廃止”の訴えなど聞くことはなかったからだ。
また打越氏の出馬会見を報じた5月11日の産経新聞でも、打越氏の5本柱の政策が紹介されているが、「(1)格差と差別のない社会(2)地域経済の躍進(3)原発ゼロ(4)暮らしの安心・安全確保(5)新時代の平和政策」という政策であり、“自衛隊解散”も“皇室廃止”も入っていない。
念のため打越氏の選対関係者にも問い合わせたが、「打越氏が街頭演説で自衛隊解散や天皇制廃止を訴えたことはない」と否定しているし、さらに櫻井氏は演説のなかで、打越氏がいつどこで「自衛隊をなくして皇室をなくす」という発言をしたのかの根拠を示すことはなかった。
さらに唖然としたのは、慰安婦に関する櫻井氏の発言だ。少し長くなるが、その部分の演説を引用しよう。
「そして今度の参院選挙でも塚田さんは圧倒的に勝たないといけない。(拍手)打越さんという方、立派な頭のいい弁護士さんなのだと思うのです。私は、打越さんがどういうことを仰っているのかをやっぱりきちんと調べようと思いまして、彼女のいろいろ書いたもの、発信したものを見てみました。
おかしなことが書いてあるのです。これは、2016年9月21日付のネットサイト『LOVE PIECE CLUB』というところに打越さんが書いてありますね。ここで慰安婦の問題について書いています。『かなりリベラルと信頼する友人たちからも“慰安婦って朝日新聞のねつ造なのでしょう”と言われてビックリすることも多い』と彼女は書いています。これは、2016年9月21日のネットサイト『LOVE PIECE CLUB』に書いたものです。
さあ朝日新聞といえば、慰安婦問題で大誤報をしました。で、『間違っていた』ということを彼らは認めましたよね、それが2014年8月5日と6日の紙面です。本当に、こんなに一面も二面も三面も使って大検証をしました。朝日新聞が報道した慰安婦関連記事、吉田清治さんという職業的詐欺師がいた。朝鮮半島に行ったことはないのに、息子さんがちゃんと言っています。『うちのオヤジは済州島なんか行ったことがありません』。にもかかわらず、『戦時中、軍に命令されて済州島に行って若い女性たちを慰安婦狩りをして、何百人も泣き叫ぶ女性たちを連れて行って慰安婦にした』という嘘を書いた人が吉田清治さん。朝日新聞がこのことを大きく取り上げた。そこから慰安婦問題に対する本当に深刻な誤解が始まったのです。朝日新聞はこの吉田清治さんに関する一連の記事の全てを虚偽であるとして訂正をして取り消しました。これが2014年8月5日と6日です。
ところが打越さんの書いた先ほどの記事、これは2016年9月21日です。朝日新聞は2014年8月に取り消している。ところが彼女は、それから2年以上後に2016年9月になって、自分の友達が『慰安婦問題、朝日のねつ造でしょう』ということを書いたのをビックリしたと言っている。でも2年以上も前に朝日新聞が大訂正をした。『慰安婦問題、吉田清治、嘘でした』と訂正したことに対して、彼女はどう思っているのでしょうか。『お友達が“朝日新聞のねつ造でしょう”とお友達が書いたことにビックリした』と言っているのです。そんなこと(“朝日新聞のねつ造でしょう”)は当たり前で、(打越氏が)ビックリしたことに私たちのほうがビックリした。(参加者から『バカじゃないの』の声)
打越さん自身がやっぱりすごくリベラルで左で、現実を見ることを拒否しているのかも知れないとさえ、私は思いました。いずれにしましても、この共産党を含めた野党が応援する打越さんの政治的立場というのはどこまで信用して良いのか。打越さん自身が極めてリベラルで左かかっている考え方を、どこまで私たちは支持できるのか。信用も出来ないし、支持も出来ないのではないかしら?(大きな拍手)」
これは、明らかに打越氏の記事の一部分をすり替え、事実を歪曲した発言だ。たしかに、朝日新聞は慰安婦を暴力で強制連行したとする吉田清司氏の証言を誤報だとして、取り消した。しかし、その際、右派メディアや歴史修正主義者は、あたかも、慰安婦制度そのものが存在せず、朝日新聞が慰安婦問題全体をでっちあげたかのような間違った認識を広めた。
打越氏が「慰安婦って、朝日新聞の捏造なんでしょ」と友人に言われて「びっくりした」と書いているのは、そのことであり、朝日新聞の吉田清司氏関連記事の誤報を否定したわけではない。
念のために、櫻井氏が問題にしている打越氏の記事も紹介しておこう。『LOVE PIECE CLUB』に発表された「歴史修正主義にのみこまれる危機に瀕している」という表題の記事は、以下のようなものだった。
「『歴史戦』と称して、日本の右派が『慰安婦』問題をはじめとする、植民地主義や戦争責任を否定する歴史修正修正主義のメッセージを発信する動きが活発になっている。『海を渡る「慰安婦」問題――右派の「歴史戦」を問う』(岩波書店、2016年)を読めば、第2次安倍政権成立後、現在では、その動きは『一部の右派によるもの』と見くびっていることは到底できない状況にあることがわかる」「能川元一による第一章は、歴史教育に対する歴史修正主義的な攻撃は1997年前後が転機であったという(中略)」
「能川は、安倍と右派論壇との密接な関係をデータをもって明らかにする。具体的には、2000年2月号から12年10月号までの間に、ポスト小泉の自民党総裁経験者である福田康夫や麻生太郎、谷垣禎一、そして安倍の、雑誌『正論』や『諸君!』(後に『WiLL』)での登場回数を比較する。その間、安倍は『正論』に20回、『諸君!』『WiLL』に17回登場。これに対し、福田は全くなし、麻生は『諸君!』に、谷垣は『正論』に、それぞれ1回の登場のみ。安倍は、07年の首相退任から2度目の党総裁就任までの期間も、『正論』に11回、『諸君!』『WiLL』に10回も登場。安倍は右派論壇から待望された総理大臣なのだ。
能川は、右派論壇の『歴史戦』言説の特徴をまとめてくれる。それはまず、『圧倒的な物量作戦』。まさに『声が大きい方が勝つ』を実践している。通常、アカデミズムやジャーナリズムは、『新規性』という価値に拘束され、同じ内容の繰り返しは忌避される。しかし、『歴史戦』の観点からは、新規性に価値を置かない。そのため、右派メディアとそれらのメディアとの間に情報発信量の著しい非対称性が生じてしまい、市民は否認論にならされてしまっている、という。確かに…。かなりリベラルと信頼する友人たちからも、『慰安婦って、朝日新聞のねつ造なんでしょ?』と言われてびっくりすることも多い。『声が大きい』戦略の威力は侮れない」
打越氏はまさに、朝日の誤報を利用して慰安婦問題全体を否定する、櫻井氏たちのような歴史修正主義の動きに警鐘を鳴らしたのである。そうした打越氏の記事全体の主旨を紹介した上で批判をするのならまだしも、実際には、“友人が信じ込んだ慰安婦朝日ねつ造説”が「当たり前の」であるかのように訴えた上で、それを「びっくりした」と批判的に捉えた打越氏を、極左で現実直視回避癖の疑いがあると指摘、塚田氏への支持を呼びかけたのである。
櫻井氏は、これまでも福島瑞穂氏や元朝日新聞記者・植村隆氏について、発言や記述のねつ造をして攻撃したことが明らかになっている。植村氏のケースでは訴訟にも発展した。
弁護士である打越氏がこの櫻井氏の応援演説に対して、どんな批判や反論をするのか、注目される。 
報道の死は国の死につながる 6/26
NHKニュースの奇異
6月23日、沖縄「慰霊の日」である。太平洋戦争時、沖縄は日本国内で地上戦が行われた地であり、その死者数は約20万人、県民の4人にひとりが死亡したといわれる酸鼻極まる戦いだった(米兵もまた1万2500人もの戦死者を出している)。
沖縄で“組織的戦闘”が終結したとされるのが、1945年6月23日。その日を沖縄県は「慰霊の日」として、県民の休日にした。県民が、死没者を悼み、あの戦争を忘れないためである。毎年この日、沖縄では「沖縄全戦没者追悼式」が行われる。今年もその日が来た。
正午から、慰霊の式典が行われるということで、ぼくはテレビを点けた。昼のNHKニュースの時間。そこで、ぼくは愕然とした。なんだ、こりゃ? トップニュースは延々と“逃亡容疑者逮捕”で、なかなか沖縄は出てこない。あれ? 今日は「慰霊の日」じゃなかったっけ?
だけど、ニュースが終わると「特別番組」が始まり、式典の模様が生中継された。ああ、そういうことか、と一応は納得した。
小学6年生の山内玲奈さんの平和の詩の朗読、そして玉城デニー沖縄県知事のウチナーグチ(沖縄言葉)と英語を交えた式辞。どちらも静かだが胸に沁みるスピーチだった。
来賓あいさつは安倍首相。こちらはまるで心に響かない。毎年同じような文面を、さっさと終わりたいのか猛烈な早口で読み飛ばす。そんなにイヤなら出席しなきゃいいのに。
会場からは、かなりのヤジや批判の声が挙がる。それはかすかだが、NHKのマイクも拾っていた。しかし、耳をそばだてていなければ聞こえないほどの音量。NHK技術陣の苦労のほどがしのばれる。
実際、後でSNS上に公開されていた動画で確認すると、多くの声が聞きとれる。とくに安倍首相が「沖縄の負担軽減」「そのための辺野古移設」などに触れると、叫びは一層高まった。「ウソをつくな!」「何しに来たっ!」「帰れ!」「恥を知れ!」……。会場には怒号ともいえる叫びが響いていた。NHKが拾えなかった(拾わなかった)声だ。
ところが安倍首相が退席すると、NHKはあっさりと中継を止めた。そして「八重山カヌー紀行」というような番組を始めたのだ。まだ式典は続いていたのに、あれはどういう意図だったのだろう?
ぼくの大好きな沖縄の海の番組だったけれど、異様な編成だ。ぼくはテレビを消した…。
この日のNHKの夜7時のニュースでは、会場での安倍首相への批判の叫びを流し、コメントもあったということだが、ぼくはどうせ同じだろうと思い、7時のニュースは見なかった。いや、見る気がしなかったのだ。
テレビが壊れかけている。
テレビ朝日の、ある人事
辛辣な政権批判で知られるウェブサイト「LITERA」に、ギョッとする記事が載っていた。(6月23日)
「 テレビ朝日が2000万円報告書問題で麻生財相を追及した「報ステ出身の経済部長」を報道局から追放! 露骨すぎる安倍政権忖度人事 ・・・(略)「経済部長・Mさんに、7月1日付人事異動の内示が下ったんですが、これが前例のない左遷人事だったんです。M部長の異動先は総合ビジネス局・イベント事業戦略担当部長。今回、わざわざ新たに作った部署で、部長とは名ばかり。これまでの部長は政治部長やセンター長になっているのに、これはもう嫌がらせとしか思えません」 M部長は古舘伊知郎キャスター時代、“『報道ステーション』の硬派路線を支える女性プロデューサー”として有名だった女性。経済部長に異動になってからもその姿勢を崩さず、森友問題などでは、経済部として財務省をきちんと追及する取材体制をとっていたという。(略) 」
このM部長は重要な局面では、自らも記者会見の場へ出て質問をすることもあったという。その人が、何をやるかも定かでないような新設の部へ飛ばされた。要するに、安倍政権にとって都合の悪い報道をして来た者は、こんな目にあう、ということか。
報道という現場から、政権(権力)批判が消えていく。それも“忖度”という目に見えない圧力によって消されていく。そのことを、報道機関であるテレビ局が自ら行う。テレビ局はもはや報道機関ではなく“放送企業”でしかなくなってしまったのか。
差別やヘイトを煽る番組や広告
企業であれば、売れる(視聴率が取れる)なら何でもやる。公共の電波を使っているという意識は捨て去ったようだ。
6月24日の毎日新聞が社説でこう書いている。
「 在阪民放局で、人権への配慮を欠く放送が相次いだ。偏見を助長する恐れのある内容だ。業界全体への信頼にかかわる。読売テレビはニュース番組で、見た目で性別が分かりにくい人に対し、しつこく確認するという主旨の企画を放送した。(略)  一方、関西テレビではバラエティー番組に出演した作家が、韓国人気質について「『手首切るブス』みたいなもん」とコメントした。民族差別や女性蔑視をあおる表現であり、ヘイト発言と受け取られかねない。(略)  とくに関西テレビでは、同様の発言が以前にも放送され、社内で議論した上で「差別的な意図はない」と判断していた経緯があった。(略)  若者を中心にテレビ離れが進み、視聴率競争や制作費削減で現場には疲弊が広がる。構造的な問題も横たわる。(略) 」
書いてある通りだと思うが、この批判は、書いている新聞へも撥ね返ってくるはずだ。同じことが、新聞社内でも起ってはいないか。
毎日新聞にだって、それこそヘイト表現としか思えないような書籍や雑誌の広告が散見されるではないか。社内の広告審査が機能していないとしか思えない広告が、かなり多く見かけられるのだ。
新聞購読者数が減っていることは紛れもない事実。そのために、多少ヤバイ広告でも、目をつぶって掲載しているというのが実際のところだ。
そのようなマスメディアの窮状をいいことに、カネのある組織がTVCMや新聞広告でヘイトをばら撒く。
ほんとうに、気をつけなければならない。
日本の報道の危機に国際的懸念も
国際NGO(非政府組織)の「国境なき記者団」が毎年発表している「報道の自由度ランキング」で、日本は今年67位だった。この順位は安倍政権になってから急落の一途をたどっている。例えば民主党(鳩山首相)政権時代は世界で11位だったものが、第2次安倍政権以降は、53位→59位→61位→72位→67位と無残なほどの落ち込みである。
「国境なき記者団」だけではなく、国連も日本のメディアの独立性に憂慮を示す報告書をまとめている。
毎日新聞(6月24日付)に、こんな記事が載っていた。
「 言論と表現の自由に関する国連のデービッド・ケイ特別報告者が、日本では現在もメディアの独立性に懸念が残るとする新たな報告書をまとめた。日本の報道が特定秘密保護法などで委縮している可能性があるとして同法の改正や放送法4条の廃止を求めた2017年の勧告を、日本政府がほとんど履行していないと批判している。沖縄の米軍基地の県内移設などに対する抗議活動についても当局の圧力が続いているとし、日本政府に集会と表現の自由を尊重するように要請した。報告書は24日に開幕する国連人権理事会に正式に提出される予定。(略)  政府に批判的なジャーナリストらへの当局者による非難も「新聞や雑誌の編集上の圧力」と言えるとした。「政府はジャーナリストが批判的な記事を書いても非難は控えるべき」としている。(以下略) 」
さらにこの記事では、辺野古基地反対運動のリーダー山城博治さんの有罪確定についても「(表現の自由の)権利行使制限の恐れがある」として深刻な懸念を示したとされている。
これに対し菅官房長官は、またも紋切り型の反応。「極めて遺憾。報告書は不正確かつ根拠不明のものが多い。日本では憲法の下、表現の自由、集会の自由は最大限保証されている」と記者会見で反論した。
よく言うよ、である。あの東京新聞・望月衣塑子記者に対する会見での扱いを見ていれば、菅氏の言うことが絵空事であることはバレバレではないか。
こんなマスメディア状況にありながら、前述のテレビ朝日のような露骨な“安倍忖度人事”が行われている現実もある。
――報道が死ねば、国も死ぬ―― それこそが、日本を敗戦に導いた報道機関の「痛苦な反省」ではなかったのか。 
 
 
 
 
 
 
 
フジHD株主総会大荒れ… 2013/6
 テレビ視聴率3位転落や業績低迷に、経営責任を問う声相次ぐ
フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)の株主総会が6月27日、東京・お台場のホテル・グランパシフィック LE DAIBAで10時から行われた。就任から6年目を迎える豊田皓社長が副会長に就き、太田英昭副社長が社長に昇進する人事が承認された。子会社であるフジテレビも豊田社長は副会長となり、亀山千広常務が社長に昇格する人事が正式に決定した。
1980年代から視聴率競争で常にトップ争いをしてきた同局だが、昨年はテレビ朝日に抜かれて3位に転落。フジテレビの黄金時代を築いた名物プロデューサーである亀山氏を抜擢した人事が、今年の株主総会最大の話題だ。亀山氏は80年に入社して主にドラマ畑を歩み、『ロングバケーション』『踊る大捜査線』などの人気作をプロデュースした。近年は映画事業部門に移り、『踊る大捜査線THE MOVIE』や『海猿』などテレビドラマの劇場映画版を次々にヒットさせ、昨年6月、常務に就任していた。
低迷する視聴率と業績
フジHDは、2013年3月期決算で企業の実力を示す経常利益が前年同期比9.8%減となり、最終的な儲けである当期純利益も48.8%もの大幅な減益となった。日本テレビHDやテレビ朝日が増益となったのに比べて、ひときわ業績不振が目立つ。これは、フジテレビが視聴率競争で、日本テレビばかりでなくテレビ朝日にも抜かれて3位に転落し、フジテレビの放送収入が前年同期比2.1%の減収に終わったことなどが響いている。
フジHDとフジテレビにおける今回の社長交代は、事実上豊田氏の引責と受け取る向きは多いのだが、ある株主は会場で「経営不振は日枝会長にも責任があるのに、今回も会長に居座り続けるということで、まるでトカゲの尻尾切りだ」と話した。
日枝氏は1988年にフジテレビ社長に就任して以来、実に四半世紀・25年もの長きにわたってトップの座に君臨している。なお、フジHDとフジテレビの社長職に初めて異なる人物が就くことが決まったが、日枝会長だけはどちらの社でも会長職留任だ。日枝独裁体制が進むのではという批判の声は多い。
株主からの質疑でも「フジテレビはもう、時代に取り残されてしまったのでは」という視聴率低迷に対する不安の声は多く出た。
「短期的にはドラマ、中期的にはバラエティ、中長期的には報道情報番組をテコ入れしていく。4月の番組改編以降、1〜3月期よりも視聴率は上がっているので、反転攻勢に向かっている」(太田副社長)というのが会社側の答えだった。
また、ある株主からはフジHDの総会の運営に対し、注文がついた。
「いろいろな総会に出ているが、他の企業は社長が議長をやっている。どうして毎年、日枝会長が議長をやっているのか。日枝会長自身への質問に、本人が答えないのはなぜか。他の会社の総会では、質問する株主の席まで係員がマイクを持ってくる。どうしてフジHDでは、株主がマイクスタンドまで足を運ばなければならないのか」
ここまで言われてもなお、日枝氏自身が答える場面はなかった。
企業体質へ疑問の声も
ここ最近、フジサンケイグループは何かとマスコミを騒がすことが多い。例えば、牛丼チェーン「すき屋」などを運営するゼンショーHDが、フジHDから傘下の産経新聞の株式買収を持ちかけられたと「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/5月25日号)が報じた。しかし、ゼンショーが断ったため、この話は立ち消えになったという。太田副社長は「事実無根」と一蹴したが、株主は「ウソならダイヤモンドに法的措置をとるべき」と噛み付いた。
ある株主は次のように語る。
「昨年の総会の2日前、ニッポン放送の元人気アナでフジに転籍した塚越孝さんが、フジテレビ内のトイレで首吊り自殺をしました。直前だったため、さすがに総会で質問するのはためらいましたが、ニッポン放送からの転籍組は冷や飯を食わされていると聞きます。フジサンケイグループの内部は日枝さんの下でガタガタなんじゃないでしょうか」
昨年、映画『海猿』の原作者・佐藤秀峰氏が「『海猿』の関連書籍が契約書なしで販売された」とフジに激怒し「信頼に値しない企業」と批判。さらにツイッターで「フジテレビからアポなしかつ執拗な取材を駆けられた」ともつぶやいた。
佐藤氏にここまでダメ出しされてしまったフジは、視聴者やスポンサーに信頼してもらえるような企業に生まれ変わることができるのか。全社一丸となった視聴率回復に向けた取り組みに、注目が集まっている。  
テレビをこんなにつまらなくした真犯人は誰だ!? 2013/7
 視聴率とクレームの狭間で潰される制作現場の悲鳴
最近、ますますテレビがつまらなくなったという声は多い。理由は様々だろうが、先般開催されたフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)の株主総会では、太田英昭副社長自らが、「金属疲労」を起こしていると口にした。「若者のテレビ離れ」に危機感を持つのは、足もとで視聴率の低下が著しいフジテレビだけではない。果たして、テレビに未来はあるのか。テレビウォッチャーやテレビマンの意見を交えながら、テレビがつまらなくなった理由を徹底分析する。
業績悪化でも日枝会長は留任のなぜ 大荒れとなったフジHDの株主総会
「フジは本当に大丈夫なのか?」
6月27日、東京・台場の「ホテル グランパシフィック LE DAIBA」で開催されたフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)の株主総会。そこに出席した筆者は、こんな感想を持った。
今回焦点となったのは、フジHDとその子会社であるフジテレビの社長交代である。両社ではこれまで、トップ経営陣(会長、社長、副社長)は兼務だったが、初めて分離することとなった。フジHDでは、豊田皓社長が副会長に就任し、太田英昭副社長が社長に昇進する。一方フジテレビでは、豊田社長が副会長となり、亀山千広常務が社長になる。
しかし、株主が違和感を覚えたのは、日枝久会長ただ1人が留任したことである。日枝氏は1988年にフジテレビ社長に就任して以来、四半世紀にわたってトップに君臨し続けている。かねてより、「独裁体制ではないか」と指摘する向きもあった。
株主がこうした経営体制のひずみと目したのが、2013年3月期にフジHDの当期純利益が対前年比▲48.8%という大幅な減益に陥ったことだ。増益だった日本テレビHDやテレビ朝日と比べて、業績不振が目立つ。これは、前年度のサンケイビルの連結子会社化により発生した、負ののれんを計上した影響などが大きかった。一方、営業利益は対前年比でプラスを維持した。
ただし、問題は増益の中身だ。増益の牽引役は新たに加わった都市開発事業などで、既存の放送事業、映像音楽事業、生活情報事業、広告事業などは軒並み減益となっている。主力の放送事業での減益は、核となる放送収入が対前年比2.1%減に終わったことなどが響いた。視聴率競争で昨年は日本テレビばかりでなくテレビ朝日にも抜かれ、民放キー局5社中3位に転落した影響も大きいと見られる。
こうした状況もあり、今回の社長交代を、視聴率低迷と業績不振に対する「事実上の豊田氏引責」と見る向きは多い。ある株主は会場で「経営不振は日枝会長にも責任があるのに、会長に居座り続けるとは……。まるでトカゲの尻尾切りじゃないか」と疑問を呈した。
1980年代から視聴率競争で常にトップ争いをしてきた同局だが、前述のように、今や往時の勢いは見る影もない。唯一希望が持てる話題は、フジの黄金時代を築いた名物プロデューサーである亀山氏が、フジテレビの社長に抜擢されることだろう。
亀山氏は1980年の入社後、『ロングバケーション』『踊る大捜査線』などの人気ドラマをプロデュース。近年は映画事業部門で『踊る大捜査線 THE MOVIE』『海猿』など、テレビドラマの劇場版を次々にヒットさせた。常務に就任したのは昨年6月だ。しかし、亀山氏の抜擢だけで視聴率低迷を挽回できるかどうかはわからない。
フジは時代に取り残されてしまった? 「韓流押し」「懐古主義」に不満の声
株主からの質疑でも「フジテレビはもう、時代に取り残されてしまった」という視聴率低迷に対する批判が多かった。これに対する会社側の回答は次のようなもの。
「短期的にはドラマ、中期的にはバラエティ、中長期的には報道情報番組をテコ入れしていく。4月の番組改編以降、1〜3月期よりも視聴率は上がっているので、反転攻勢に向かっている」(太田副社長)
番組の内容についても株主の不安は大きく、北海道から来たという株主とのやり取りはこんな風だった。
「『韓流押し』が視聴率低下につながっているのではないか。ネットではフジテレビの韓流押し批判が続いている。そういう批判が結果的に企業価値を落としているのではないか」
「今はかなり減っている。韓流ドラマやK-POPもニーズがあるから放送してきた。数字の低迷は金属疲労みたいなもので、韓流とは関係ない」(太田副社長)
また、会場に来ていた女性の株主から「フジは他局と比べて“懐古主義”が目立つような気がする」という声も聞かれた。
「4月から『ガリレオ』の第2シリーズが始まり、今秋にはW浅野(浅野ゆう子・浅野温子)主演の『抱きしめたい!』がスペシャルドラマとして復活するとか。今さらW浅野もねぇ……。それから、江角マキコの『ショムニ』の続編も始まるんですよね。亀山さんも『アマルフィ』がコケたし、昔の勢いはないのでは」
とはいえ、フジテレビはドラマ『ガリレオ』が視聴率22.6%を獲得するなど2013年上半期はドラマの視聴率で健闘した。しかし、全盛期から見れば低調な印象が強いために、株主からの「ダメ出し」が相次いでしまうのかもしれない。フジHDの株主総会は、こうした荒れ模様の中で幕を閉じた。
「テレ朝三冠王」に見る視聴率の異変 なぜテレビはつまらなくなったのか?
近年、「テレビがつまらなくなった」という声は多い。若者のテレビ離れが大きな原因とされているが、理由は様々だろう。足もとでは視聴率でフジに勝っているように見える他局も、株主や視聴者からの突き上げに戦線恐々としている。果たして、テレビに未来はあるのか。テレビウォッチャーやテレビ制作者などの意見を交えながら、「テレビがつまらなくなった理由」を徹底分析する。
まずは、ここ数年間の視聴率競争の様子と、2013年上半期における各局の状況を振り返ってみよう。
フジテレビが全日(午前6時〜深夜0時)、ゴールデンタイム(午後7時〜同10時)、プライムタイム(午後7時〜同11時)で年間視聴率三冠王を獲得していたのは、2004年から2010年までの7年間。フジの凋落と群雄割拠が始まったのは、それ以降のことだ。
2011年に日本テレビが三冠王を奪還。2012年は、日本テレビが全日、ゴールデンタイムで年間視聴率1位を獲得してニ冠、テレビ朝日がプライムタイムで開局以来初の1位を獲得している。2013年は、1月クール(1月1日〜3月31日)、4月クール(4月1日〜6月30日)に、テレビ朝日が全日、ゴールデン、プライムで視聴率三冠王を獲得し、2013年年間視聴率三冠王に期待がかかっている。
朝ドラが好調で大河が不調のNHK TBSは新手法の『ヤマト』で挽回
次に、各局が手がける番組のトレンドを見てみよう。
2013年のドラマを語る上で忘れてならないのが、NHK。連続テレビ小説『あまちゃん』が視聴率22.2%を獲得し、劇中のセリフ“じぇじぇじぇ”は流行語になりつつある。ただし、大河ドラマ『八重の桜』は初回視聴率が20%越えを達成したものの、第2回以降は20%をなかなか越えられず、4月には11.7%に落ち込んだことも。
このほか、NHKスペシャル『世界初撮影!深海の超巨大イカ』も16.8%の視聴率を得てかなりの話題となったが、ネット上では「このくらいのクオリティの動物番組は、海外では普通。日本の番組はレベルが低い」という内容のブログが話題となり、一定の賛同が集まった。
日本テレビはバラエティが好調だったようだ。『世界の果てまでイッテQ!』『踊る!さんま御殿!!』『行列のできる法律相談所』『ぐるぐるナインティナイン』など、平均視聴率15%前後の番組が多数ある。いずれも長寿番組であり、その基盤は極めて堅い。
苦汁を舐めているのがTBSだ。ゴールデン帯の番組も1ケタが続き、ドラマも低調だ。そんななか、話題になったのはアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』。人気漫画をテレビアニメ化し、それを映画化してDVDを売ってきた既存のビジネスモデルに対し、ヤマトはまず映画化してDVDを発売し、最後にテレビアニメにするという全く新しい戦略を打ち出した。視聴率も好調で、成功を収めている。
フジテレビはドラマが好調で、視聴率22.6%を獲得した『ガリレオ』をはじめ、『ラストシンデレラ』『家族ゲーム』などがいずれも高視聴率を叩きだした。前述のように株主総会では「ダメ出し」が相次いだが、ドラマを中心にフジテレビの復調の兆しが見えた上半期でもあった。
視聴率王に急浮上したテレビ朝日は、特殊な編成で高視聴率を獲得している。隣り合った時間帯で放送している『もしものシュミレーションバラエティ お試しかっ!』と『クイズプレゼンバラエティ Qさま!』の合体スペシャル番組で高視聴率を得ているほか、3時間拡大スペシャルなどを多数投入しているのが目立つ。
『ロンドンハーツ』『アメトーーク!』もコンスタントに高視聴率を獲得し、安定したコンテンツとなりつつある。ただし、これまで「得意分野」だった刑事ドラマが不調。4月期のドラマ『ダブルス』『遺留捜査』が10%程度の視聴率だったのは、想定外だったのではないか。
そして、独自路線を行くテレビ東京で最も話題に登った番組は、選挙開票速報番組『池上彰の総選挙ライブ』だろう。池上彰がタブーに切り込み、政治家に対する歯に衣着せぬ物言いが注目を集め、視聴率も民法トップの7.9%を記録した。
20代の視聴時間が大きく低下 刻々と進む若者の「テレビ離れ」
足もとのこうしたトレンドを見ると、各局は話題になる番組や高視聴率を取れる番組を、一定数持っていることがわかる。視聴者のテレビ離れ、とりわけ若者のテレビ離れは、本当に進んでいるのだろうか。データを見ると、やはり全体の視聴率が落ちている現状がある。
NHK放送文化研究所が発表した『2010年国民生活時間調査報告書』によると、国民全体の平日のテレビの平均視聴時間は3時間28分と、2000年以降ほとんど変わっていないという。しかし、視聴時間の減少傾向が最も顕著な20代男性では、2005年調査時は2時間11分だったのに対し、2010年調査では1時間54分と大きく下がっている。20代男性以外でも、30代以下は男性、女性ともにテレビ視聴時間が下がっており、やはり「若者のテレビ離れ」は進んでいるようだ。
逆に、高齢者ほど長時間テレビを見る傾向があり、男性の70歳以上では平日、土曜、日曜の全てで視聴時間が5時間を超えている。現在テレビを支えているのは、高齢者と言って間違いはないだろう。
とはいえ、いつの時代も文化は若者が中心となってつくるもの。これまでは、テレビが発信した情報が世の中のトレンドをつくり、それを若者たちが実需に結び付け、日本経済を下支えしてきた。その影響の大きさは計り知れない。家で通販番組を見る高齢者が増えるだけでは、テレビが元気だった頃の経済効果は期待できないだろう。その意味でも、やはり「テレビがつまらない」と感じる若者が増えることは、憂慮すべき問題である。
暴力やエロに対する過剰な規制 どの番組の出演者も一緒でマンネリ
それではなぜ、テレビはつまらなくなったのだろうか。テレビをよく見ているという一般視聴者数人(20代後半〜30代前半の男女)から、話を聞いた。
テレビがつまらなくなった理由としてまず挙げられたのが、「暴力やエロに対する過剰な規制」。2000年以前は、体を張った体当たりのバラエティや風俗を扱った情報番組などが数多くあったが、現在ではまず目にすることがない。特に刺激的なものを欲する若者にとっては、今のテレビは非常に退屈なものに映るのかもしれない。
他には、「どの番組も同じ内容」という指摘もあった。確かに、「県民性」がブームになれば同じような県民性の番組がつくられ、「血液型ブーム」と言われれば同じような血液型の番組がつくられる頻度が高くなる。ここ数年は、お笑い芸人がひな壇に座ってトークする番組や、タレントがクイズやゲームに挑戦する番組ばかりになっている印象がある。
特にこの4月からレギュラー放送として始まった『アウト×デラックス』(フジ)や『有吉反省会』(日テレ)など、世間とはズレた人間性、変わった趣味を持つ芸能人や一般人を招いたトーク番組が増えた。不況によるスポンサーの減少から、番組制作費が減らされるなか、少ない予算で制作できるトーク番組が、今後色々と形態を変えて増えてくると予想される。
同様に「どの番組の出演者も一緒」という指摘もあった。確かに、どの番組を見ても、よしもと芸人、ジャニーズタレント、AKB48などの人気者が出ている。テレビで活躍する新しいスターが誕生しづらくなっていることには、お笑いネタ番組や音楽番組がゴールデンタイムから姿を消したことが、理由に挙げられるかもしれない。
ここ数年間に、『エンタの神様』(日テレ)、『爆笑レッドカーペット』(フジ)、『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』(フジ)、『うたばん』(TBS)などのレギュラー放送が終了した。今活躍している芸人やアーティストには、これらの番組がきっかけでブレイクした人が少なくない。テレビ番組自体がスターの新陳代謝を悪くさせ、結果として視聴者に飽きられているならば、皮肉な話だ。
また、テレビが魅力のあるコンテンツを提供できなくなってきたこと以外に、今までテレビに時間を割いていた視聴者が、テレビ以外のことに時間を使うようになってきたことも大きい。主に挙げられたのが「インターネット」「ソーシャルゲーム」だ。
視聴者の多様化したニーズに対し、インターネットはコンテンツ数でテレビを圧倒した。また速報性でも、放送時間にならなければ報じられないニュースより、常時更新されるインターネットの方に分があるのは明らかだ。
現場がクレームに過敏になった 視聴者の顔色を見過ぎて飽きられる?
それでは、テレビは再び若者の支持を取り戻し、復活することができるのだろうか。ゴールデン帯の番組を担当する若手ADに話を聞いた。
「なぜテレビが同じような内容の番組になるのかと言えば、1つには現場がクレームに過敏になっているということがあります。クレームの電話をぞんざいに扱うとそれをネットで拡散されたり、クレームを局ではなくスポンサー企業に入れられたりする。結果的に、クレームの電話1本で番組の内容が変わることさえあります」
実際に、ある番組の会議では「今週連絡があったクレーム一覧」が配られ、どう対策するかを話し合うこともあるという。このADは、「クレームの入らない安全運転を心がけるあまり、型にハマった番組ばかりになったのではないか」と推測する。
社会が成熟するにつれ、サービスに対する消費者の目は厳しくなるもの。テレビマンが視聴者に気配りしなくてはいけない状況は、今後も変わりそうにない。しかし、前出の声にもあるとおり、視聴者の顔色を見過ぎると、逆に彼らを魅了する面白い番組はつくれなくなってしまう可能性がある。テレビをつまらなくする真犯人はテレビマンなのか、それとも視聴者なのか……。
いずれにせよ、各局は視聴者の新しいニーズも考慮しながら、もっと体系的に戦略を練る必要はないのか。各局の番組のつくり方や特徴について尋ねた。
「日テレはテロップや音楽などの演出を多めにして、主婦が家事をしながら見ることができる番組づくりをしているようです。TBSは若者を切り捨て、対象を中高年の視聴者に絞った番組づくりに舵を切った印象がある。そしてテレ朝は、制作にかかる予算が今後減っていくことを考慮に入れ、どうすれば少ない予算で面白い番組ができるかという命題にいち早く取り組んできた過去があり、それが功を奏しているように見えますね」(AD)
テレビ局も様々な手法で、視聴者の取り込みに苦慮していることがわかる。
視聴者の眼はさらに厳しくなっても 面白い番組へのニーズは変わらないはず
「テレビ東京営業局のメディアデータ」やTBSホールディングスの決算説明会資料によると、1990年代には70%を超えていたゴールデンタイムの総世帯視聴率が、現在では60%強にまで落ち込んでいるという。今後テレビはどんな姿になっていくのだろうか。
結論から言えば、これまでのテレビの常識が様変わりしていく可能性がある。1週間に8チャンネル全てのテレビ番組を録画することができる全録レコーダー「SPIDER」の発売、インターネットにつないで様々な映像コンテンツやTwitterなどのSNSを利用できる「スマートテレビ」の登場、米国発の「Hulu」といったビデオ・オン・デマンドの参入などにより、ゴールデンタイムやプライムタイムという放送概念、テレビ局が全時間放送することの意義、テレビCMという広告形態の在り方などが、問われることになるだろう。
つまり、視聴者が必ずしもテレビの前で番組を見る必要がなくなり、なおかつ「要るコンテンツ」「要らないコンテンツ」をこれまでよりも自由に選別できるようになるわけだ。視聴者主導の状況は、ますます強まっていくだろう。
こうした状況を見据えて、あるディレクターは「テレビでは、より多くの人が一方的にリアルタイムで見ることのできる番組が生き残るのではないか」と予想する。たとえば、オリンピックやワールドカップなどのスポーツ中継だ。また一般視聴者からは、震災時など災害時におけるテレビの速報性と信憑性に対する期待の声が高かった。
ただし、どのように形態が変わっても、「面白い映像コンテンツを見たい」という視聴者のニーズに変わりはない。視聴率主義の圧力とクレームへの不安との狭間で、本来の存在意義を見失うと、そのときこそ屋台骨が揺らいでしまう。それは他のメディアも同じだ。テレビならではの特性を活かした、より企画性が高く魅力的な番組づくりを、テレビマンたちに期待したい。 
フジメディアHD総会、出席株主と埋まらぬ溝 2018/6
毎年、一部株主からの過激な発言が飛び交うフジ・メディア・ホールディングス(HD)の株主総会。今年は長年トップを務めた日枝久前会長が代表を退き、嘉納修治会長、宮内正喜社長がグループの指揮を執る体制に移行して初めての総会だったが、株主の修正動議が相次ぐなど、荒れ模様となった。
フジメディアHDは6月27日、本社近くのホテル、グランドニッコー東京 台場で第77回定時株主総会を開催した。昨年同様、会社側が提案した議案である「剰余金の処分の件」「取締役17名選任の件」「監査役1名選任の件」は承認され、株主側からの修正動議はすべて否決された。10時から始まった総会は2時間40分(昨年は2時間58分)で閉会となった。
業績や戦略の質問が相次ぐかと思いきや…
フジメディアHDの前2018年3月期は、営業利益252億円(前期比13%増)で5期ぶりの増益となった。都市開発事業の中核、サンケイビルが保有ビルの売却で業績を牽引。放送事業の主力であるフジテレビジョンもコスト削減や業務の見直しを徹底、営業利益44億円(前期比10%増)と6期ぶりの増益だった。
また5月には、近年目覚ましい成長を見せる都市開発(今期から都市開発・観光事業に改称)ではなく、フジテレビの増益によってグループを成長させる中期計画を発表した。このため、今回の総会は、前期実績についての評価や、今後の成長戦略に関する質問が相次ぐかと思われた。
しかし、今年もスムーズな総会とはならなかった。会社側の報告が一通り終了すると、質疑は株主の強烈な修正動議で幕を開けた。
「日枝取締役と(フジテレビで編成・美術制作を統括する)石原隆取締役は取締役ではなく、監査役になるべき。また、AKB48グループの指原莉乃氏を取締役にして視聴率を上げ、嫌なら見るなで有名な(お笑い芸人の)岡村隆史氏も取締役として視聴率が下がった責任をとってほしい。ダウンタウンの浜田雅功氏はギャラが高いので取締役に。(高須クリニック院長の)高須克弥氏、元NHKの登坂淳一アナとNHKから国民を守る党の立花孝志氏。お笑いビッグ3のタモリ氏、ビートたけし氏、明石家さんま氏、その娘のIMALU氏、(お笑い芸人の)小峠英二氏も取締役にする」という驚きの内容だった。
その後も幾度となく動議が出された。「配当を40円ではなく50円に」「代表取締役会長以下、取締役の選任は行わず、名簿から全員削除すること」「東京電力の社長だった南直哉氏を監査役に再任すべきでない」「修正動議を原案と一括採決し、監査役がほとんど寝ていることも注意できない議長に対する不信任動議」「フジ社内で日枝氏が代表と呼ばれていると聞く。代表でない人物を、代表を呼ばないように決議すべき」「休憩をとり、バイキングを見学させてほしい」などといったものだ。決議事項と関係のない提案も多かった。
フジテレビについては、番組の質についての質問が寄せられた。「昨年も指摘したのに、なぜ報道でミスが多発しているのか」との質問に対して、フジテレビで報道・情報制作を統括する岸本一朗取締役は「ミスが続発したことについては申し訳ない。研修会議を開いたり、番組ごとに危機管理担当をおいてチェックし、制作フローを見直している。今後も再発防止に努めていく」などと回答した。
「大人が見るのに耐えられる番組を」
主婦で、フジテレビをよく見ているという女性が質問に立つと、「大相撲の内紛や日大アメフト部問題、紀州のドン・ファンなど、なぜいつまで経ってもスカスカの内容を放送し続けるのか。サッカーも小柳ルミ子氏を出演させるなど、なぜバラエティにしてしまうのか。低俗な番組ではなく、大人が見るのに耐えられるものを作ってほしい」と厳しく指摘した。
そのほか、「AKB選抜総選挙の視聴率が毎年下がっている。仕切り直して質を上げてほしい」「視聴者の半分は女性や子供。極楽とんぼの山本圭壱氏や狩野英孝氏など、性犯罪などの不祥事を起こしたタレントを出すべきではない」「株主を番組にキャスティングしてほしい」「放送免許を返上し、不動産事業に特化したほうが株価は上がる。カジノ事業をやればグループはさらに栄える」など、さまざまな意見が挙がった。フジテレビについての質問は主に岸本取締役と石原取締役が担当し、宮内社長の発言はなかった。
お土産は料理家・栗原はるみ氏のレシピ本。本社の球体展望室の入場券、ボールペン。昨年(社員食堂ビーフカレー、球体展望室の入場券、手ぬぐい、ニッポン放送のみ聴取できる「FMバッヂ」)と比べて縮小したためか、「日枝さんのときはこんなことはなかった」とこぼす株主もいた(記者撮影)
経営全般については、「米国ではメディアの買収合戦が起きているが、どう考えているか」との質問があった。金光修専務取締役は「当社は放送認定持株会社で、外資(による買収の)規制やマスメディア同士でも規制がある。ただ、現在のルールが未来永劫続くわけではない。そこも考えて経営していきたい」と回答している。
また、毎年恒例の「株主優待がなぜオリジナル手帳なのか」という質問もあった。和賀井隆常務取締役は「昨年にアンケートを実施し、1万人から回答をいただいた。うち6割が手帳を使っているということだった。利便性やコストも考えてよいと思う」などと答えた。
昨年の総会では、相談役に退く日枝氏の役割や、宮内社長の経歴のほか、都市開発事業出身の取締役や女性役員がいないことについても質問があった。だが、今年は一部の株主が例年のように特定の問題を追及する場面こそあったものの、経営課題や成長戦略に関する質問は少なく、中期計画についての質問は皆無だった。会社側と株主(主に出席する一部の過激な株主)の間で、コミュニケーションが取れていないことが浮かび上がった形だ。
もちろん、株主の不満は、株価が2016年から上昇基調にあるとはいえ、2000年の高値1万4000円台から大きく下落し、低迷している(27日終値は1869円)ことに起因しているだろう。だが今後、中期計画を完遂し、株価が上昇したとしても、一部株主が強硬姿勢を変えないかぎり“荒れ模様”が続くのではないか。そう感じさせる総会だった。  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


2019/7