自国ファースト G20

保護主義に振り回される  G20

面倒なこと 不協和音
言いたい放題
 


議長国記者会見評価トランプ裏読み6/307/17/27/37/47/5-
G20G7G20大阪サミット概要G20大阪首脳宣言・・・
 
 
 
 
 

 

G20大阪サミット議長国記者会見 6/29
安倍総理冒頭発言
大阪の地に世界中からリーダーをお迎えし、我が国が初めて議長国を務めるG20(金融・世界経済に関する首脳会合)サミットを開催できたことを大変うれしく思います。
世界は結束できる、そう信じて、精一杯、議長役を務めてまいりました。様々な課題について一気に解決策を見いだすことは難しい。それでも、本年のサミットは多くの分野でG20諸国の強い意思を世界に発信することができたと思っています。どの国にとってもウィン・ウィン、そして未来に向けて持続可能な成長軌道をつくる。その思いはその一点でありました。私の思いはその一点でありました。
今、世界経済には、貿易をめぐる緊張から、依然として下振れのリスクがあります。こうした状況に注意しながら、更なる行動をとり、G20は力強い経済成長をけん引していく決意で一致しました。
グローバル化が進む中で、急速な変化への不安や不満が、国と国の間に対立をも生み出しています。戦後の自由貿易体制の揺らぎへの懸念に対し、私たちに必要なことは、これからの世界経済を導く原則をしっかりと打ち立てることであります。自由、公正、無差別、開かれた市場、公平な競争条件、こうした自由貿易の基本的原則を、今回のG20では、明確に確認することができました。
他方で、WTO(世界貿易機関)の改革は避けられません。グローバル化、デジタル化といった近年の動きに、WTOは必ずしも対応できていない現実があります。ビッグデータ、AI、第4次産業革命が急速に進む時代にあって、付加価値の源泉であるデータについて、新たなルールづくりが必要であり、今回のサミットの重要なテーマでありました。
今回、トランプ大統領、習近平国家主席、ユンカー欧州委員長を始め、多くの首脳たちと共に、データ・フリー・フロー・ウィズ・トラストの考え方の下に、新しいルールづくりを目指す、大阪トラックの開始を宣言いたしました。プライバシーやセキュリティを保護しながら、国境を越えたデータの自由な流通を確保するための国際的なルールづくりを、スピード感をもって進めてまいります。これは、WTO改革の流れにも新風を吹き込むに違いありません。
世界経済の8割を占めるG20は、持続的な成長のために、大きな責任を有しています。地球環境問題は一部の国々の取組だけでは対応することが困難な課題であり、世界が共に取り組んでいかなければなりません。一昨年のハンブルク、昨年のブエノスアイレスでのG20サミットにおける努力の上に、環境と成長の好循環の実現に向けて世界が共に行動していくことが重要である。今回、こうした認識でG20として一致できた意義は大きいと考えています。
海洋プラスチックごみも、一部の国だけでは解決できない課題です。そうした中で、G20が結束して、新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを共有できたことは、この問題の解決に向けた大きな一歩であると考えています。その実現に向けた具体的実施の枠組みでも合意しました。
我が国は、これまでの技術や経験をフル活用し、途上国の廃棄物管理や人材育成支援を行い、世界の取組に日本らしい貢献をしてまいります。国際社会の様々な課題に首脳たちが直接話し合うことで解決策を見いだすことができる、国と国の間の問題もその解決に向けて歩みを進めていくことができる。
このサミットの機会をいかして、私も20名を超えるリーダーと会談を行います。本日もこの後、ロシアのプーチン大統領と首脳会談を行う予定です。EU(欧州連合)との首脳会談では、東北の安全な農産物、水産物について、規制緩和への大きな動きがありました。被災地の復興に協力してくださる多くの国々に、改めて感謝申し上げます。
世界の大きな関心である米中貿易摩擦について、一昨日、習近平国家主席と、昨日はトランプ大統領とそれぞれ話をしました。私からは、世界第1位、第2位の経済大国が建設的な議論を通じて、安定した経済関係を構築していくことが極めて重要であると申し上げました。こうした貿易摩擦や地域情勢について、このG20の機会をいかして、首脳同士が直接会って、胸襟を開いて話すことで歩み寄っていける。日本としてできる限りの役割を果たしていく考えです。
グローバル化は、経済の成長を後押しする一方、そこから生じる格差の拡大にもG20はしっかりと向き合い、成長の果実を社会の隅々にまで浸透させなければなりません。教育の充実は、持続可能な経済成長への最大の鍵です。全ての女の子が、少なくとも12年間の質の高い教育にアクセスできる、そうした世界を目指していく。その決意をG20の首脳たちと確認しました。日本はこれからも途上国における女子教育の拡大に役割を果たしていく考えです。2020年までの3年間で少なくとも400万人に上る途上国の女性たちに、質の高い教育、人材教育の機会を提供していきます。
世界では対立ばかりが強調されがちな中にあって、共通点や一致点を見いだしていく。日本ならではのアプローチで、この大阪サミットでは、世界の様々な課題に対し、G20が一致団結して力強いメッセージを出す。そして、具体的な行動へと移していく大きなきっかけにすることができました。
最後となりましたが、今回のサミット開催に当たり多大な御協力を頂きました御地元の皆様、人情の町・大阪らしい温かいおもてなしで迎えていただいたことを、心から感謝申し上げます。
私からは以上であります。
質疑応答
内閣広報官 
これからは皆様方からの質問をお受けいたします。最初は日本のプレスの皆様からの御質問です。御希望される方は挙手をお願いいたします。私が指名いたしますので、指名された方は近くのスタンドマイクの前に進み出て、所属とお名前を明らかにされた上で御質問をお願いいたします。どうぞ。
記者
読売新聞の池田と申します。G20全体について伺います。G20は参加国が多いことから意思決定が難しく、国際協調の枠組みとしての限界を指摘する声もあります。取り分け、米中の貿易摩擦が続き、今回の首脳宣言でも、保護主義と闘うという文言は盛り込まれない方向だと言われています。本日は、アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席が貿易摩擦の解消に向けて会談をしましたが、総理はG20議長として、世界経済のリスクを緩和するために有効な処方箋を示すことができたとお考えでしょうか。また、G20の枠組みを改善していく必要があるとお考えであれば、どう改善すべきか、お考えをお聞かせください。また、今回のサミットで議題になったWTO改革については、どのようなスケジュール感で進めていくお考えでしょうか。よろしくお願いします。
安倍総理
G20について、世界を取り巻く主要な課題について、意見の対立ばかりが強調されがちと言ってもいいと思います。言わば、意見の違いが強調されることによって、それは政治的な意味を持ってくる。ある主張をしていると、その主張が通らなければ、政治的に負けたのではないか、実質とはだんだんかけ離れて、言わば、例えばいろいろな言葉、とった、とらないという結果になってしまうわけでありまして、その結果、共通の解決策が得られにくい状況になっているとの指摘もあります。しかし、例えば貿易や地球環境や防災といった課題については、一部の国だけで対応することは困難であります。世界がダイナミックに動く中で、世界経済の約8割を占めるG20の国々が一堂に会して、共に課題解決に取り組んでいくということは、大変意義が大きいと思っています。そのため、今回のG20サミットでは、日本は議長として、G20の持つ力を最大限に発揮するためには、各国間の対立を際立たせるのではなくて、共通点、一致点に光を当てていく。粘り強く共通点を見いだすアプローチをしていく。そして、世界をよりよい世界にしていくための結果を出していくということに力を入れました。多くの国々は、このアプローチに賛同していただいたと思っています。同時に、この2日間を通じて、議長国としての責任の大きさを改めて痛感もしたところであります。貿易については、戦後の自由貿易体制が揺らいでいるのではないかとの懸念がある中で、これからの世界経済を導く原則をしっかりと打ち立てることです。今回のサミットでは、自由、公正、無差別、そして、開かれたマーケット、公平な競争条件といった自由貿易体制を支える基本的原則につき、一致することができたと思います。そもそも、私たちが求めていたのは、この原則のはずであります。ですから、今回のサミットにおいては、本来、では、私たちは何を求めていたのか、との原点に立ち返って、今まで意見の違いばかりがあおられてきた。その結果、何も原則も確認できなくなってしまわないように、今回はしっかりと原則に立ち戻り、かつ大切な原則を確認することができたと思います。また、AIやビッグデータが急速に進歩する時代にあって、デジタルデータが付加価値の大きな源泉となっています。私がダボス会議で提唱した、信頼性の下に自由なデータ流通を確保するための新たなルールづくりを米国、中国、EUを始め、多くの国々の首脳らと共に、大阪トラックとしてスタートすることができました。現在のWTOは、グローバルなデジタル化に十分対応できていません。こうした中での今回の成果は、WTO改革に新風を吹き込むものとなりました。来月にも大阪トラックの最初の会合を開催します。来年には実質的な進展を得られるよう、スピード感を持って進めていきます。また、今回のG20では、海洋プラスチックごみ対策も大きなテーマとなりました。新興国、途上国を含む世界の主要国が、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを共有したことは、世界全体で海洋プラスチックごみ対策を進めるに当たって大きな意義があります。また、その実現に向けた具体的な実施枠組みにも合意できました。我が国は海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、引き続きリーダーシップを発揮をし、積極的に貢献をしてまいります。
広報 
それでは、次は外国系、日本ではないメディアの皆様からの御質問をお受けいたしますので、挙手をお願いいたします。それでは、一番前列手前の女性の記者の方、マイクロホンまでお進みください。
記者
先ほど言及のあった大阪ブルー・オーシャン・ビジョンについてお伺いします。日本はテクノロジーおよび経験を提供すると言及されましたが、日本自身、プラスチック製品の巨大な消費国であり、欧州諸国に比しても、海洋プラスチックごみへの対処が後れをとっており、更に海洋プラスチックごみを発展途上国に輸出しています。総理御自身、国際社会に海洋プラスチックごみ問題への対処を呼びかける前に、日本の国内事情にどのように対処されるお考えでしょうか。
総理
大阪ブルー・オーシャン・ビジョンですが、海は世界共通の財産であります。海洋プラスチックごみによる汚染から私たちの美しい海を守るためには世界全体での取組、もちろん、日本も含む世界全体での取組が必要であります。新興国、途上国を含む世界の主要国から成るG20が大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを共有したことは、世界全体で海洋プラスチックごみ対策を進める上で大きな意義があると考えています。加えて、今回のG20では、その実現に向けた具体的な実施枠組みにも合意できました。各国が継続的に情報を共有、更新しながら対策を実施することを通じ、G20としての、更には世界全体での実効的な対策を着実に進めていきます。日本としては先般、海洋プラスチックごみゼロを実現するためのアクションプランを決定しました。重要なことは、いかにプラスチックごみの海洋流出を防ぐかであり、規制が唯一の方法ではありません。日本から大量の海洋プラスチックごみが海に出ているというのは、これは誤解であります。もちろん、プラスチック製品は日本はたくさんつくっておりますが、日本から大量のプラスチックごみが出ているのではなくて、漁具等、かなり一部に日本から出ているものは限られていると思います。適正な廃棄物管理、海洋ごみの回収、海で分解されるバイオプラスチックごみ、バイオプラスチックのイノベーションなど、あらゆる手段を尽くしていく考えであります。また、これまでの日本の経験と技術をフルに活用し、途上国、そして途上国の能力構築等の国際貢献にも取り組んでいきます。例えば廃棄物管理の人材を、世界で2025年までに1万人育成します。今回のG20大阪サミットでは、プラスチック汚染から私たちの美しい海を守るため、世界が一致して、大きな一歩を踏み出すことができたと思っています。我が国は、この問題の解決に向けて、引き続き、今回の議長国としてふさわしい貢献をしてまいります。
広報 
それでは、再び日本のメディアの方からの御質問。では、2列目の女性の記者の方。
記者
日本テレビの菅原です。よろしくお願いいたします。総理はエネルギー安全保障の問題についても、G20各国で重要性について共有したいというふうにおっしゃっておられましたけれども、アメリカとイランの緊張の高まりについて、この期間を通じてどのような議論があったでしょうか。また、G20として、その緊張緩和に向けて何ができるとお考えか。また、日本としての役割というのを改めてどうお考えか、お聞かせください。
総理 
今回のサミットにおいては、イラン情勢に関し、各国が強い関心を示していました。私も各国首脳との会談の中で、先日のイラン訪問の話を紹介し、各国からは、ホルムズ海峡付近における船舶への攻撃事案や、あるいは、イランによる米国の無人機撃墜事案など、地域の緊張が高まっていることを懸念する声が相次ぎました。中東における緊張感が高まる中で、各国が緊張緩和に向けた取組を続けているわけでございますが、先般も私自身がイランを訪問し、大統領、そしてハメネイ最高指導者と会談を行ったところでございます。私の訪問については、例えばフランスのマクロン大統領を始め、また、サウジアラビアの皇太子など、多くの方々から緊張緩和への努力についての強い支持があったわけでございまして、今後とも、国際社会と連携をしながら、この緊張緩和に向けて努力をしていきたい。そして、やはりこの地域の緊張緩和が世界の繁栄、平和に極めて重要であるということは、認識が一致しているわけでありまして、それぞれがそれぞれの役割を果たしていく。日本は伝統的にイランと友好関係があるわけでありますし、米国との同盟関係もあります。欧州との信頼関係もある中で、日本の役割を果たしていきたいと。そう簡単なことではもちろんありませんが、日本は日本の役割を果たしていきたいと、こう思っています。
広報
それでは、外国のメディアの方も含めまして、もう1問、おとりしたいと思います。それでは、2列目の眼鏡をかけた男性の方、お願いします。
記者 
今回のG20サミットが成功裏に開催されたことに祝意を表します。来年の議長国はサウジアラビアですが、議長国のサウジアラビアに期待することは何ですか。様々な課題があるかと思いますが、お考えをお聞かせください。さらには、サウジアラビアの指導者に対し、今回の教訓等も踏まえ、助言があればお聞かせください。
総理
日本は今回、議長国として、G20において意見の違いよりも共通点を見いだすことができるように努力を重ねてまいりました。特に、例えば今回も、気候変動の問題については意見の大きな違いがありました。しかし、違いがあるわけではありますが、より良い地球を次の世代に残していこうという基本的な認識においては、どこも、もちろん米国もEUも日本も途上国も同じ認識を持っている。そして、実際に結果を出していくことが大切です。まず、この共通認識の下に、対立ではなくて、G20でしっかりと共通のメッセージを発しなければ、これは本当に私たちは責任を果たしているとは言えないという危機感を共有することができました。最後の局面において、トランプ大統領を始め米国にも、あるいはマクロン大統領やメルケル首相を始めEU側にも、また、中国やブラジルや多くの国々も大変な協力を頂きました。首脳間でのやりとりも行いながら、最後は一致点を見いだすことができた。つまり、努力をしていけば、私たちは団結することができる。より良い世界をつくっていくために、私たちは団結することができる。このことを、次の議長国であるサウジアラビアにも引き継いでいただきたいと、こう思っています。大阪首脳宣言を採択する上において、大変な困難もありましたが、多くの国の協力によって乗り越えることができたということであります。それは、やはりG20の国々は、経済においても大きな力を持っておりますが、それは同時に大きな責任を担っているということであり、この責任をかみしめながら最後の瞬間まで努力を重ねるということではないかと思います。ぜひ、サウジアラビアにも強いリーダーシップを発揮していただきたいと思いますし、大阪首脳宣言を土台として議論を発展させていただきたいと思います。日本も11月末まで議長国として、また、その後も来年のリヤド・サミットの成功に向けて全面的に協力をしていきます。また、サウジアラビアはサウジ・ビジョン2030を打ち出し、これまでにない改革に精力的に取り組んでおられると承知をしておりますが、G20の議長国は、世界が直面する様々な課題に対処するためのメッセージを発出する上で大きな役割を果たします。リヤド・サミットの成功を心からお祈りしております。
広報 
それでは、予定いたしました時間を超過いたしましたので、以上をもちまして、安倍総理大臣の議長国記者会見を終了させていただきます。プレスの皆様には、大変な御協力を頂きまして、ありがとうございました。総理が退場されるまで、そのままでしばらくお待ちいただきたいと思います。
総理
ありがとうございました。 
「大阪宣言」の要点
G20大阪サミットで採択された「大阪宣言」。調整が難航していた貿易・投資について「自由・公平・無差別で透明性があり安定した貿易と投資環境を実現するよう努力する」としたうえで、WTO・世界貿易機関の改革への支持を盛り込む一方、「保護主義と闘う」という文言は去年に続いて盛り込まれませんでした。貿易だけでなく、データの流通や海洋プラスチックごみの削減でも、具体論に入ると各国の思惑は必ずしも一致していません。日本を含むG20各国は、今回の首脳宣言をいわば「絵に描いた餅」にしないために、実効性ある取り組みが求められています。
世界経済の現状
「世界経済の成長は足元で安定化の兆しを示しており、ことし後半から来年に向けて緩やかに上向くとみられている。しかしながら、成長率は依然として低く、リスクは依然として下方に傾いている」として、世界経済を下押しする圧力が増しているという見方を示しています。
そのうえで、「何より、貿易と地政学をめぐる緊張が増大してきた。われわれはこれらのリスクに対処し続けるとともに、さらなる行動をとる用意がある」としています。
さらに「強固で持続可能性があり、均衡のとれた成長を達成するため、すべての政策的な手段を使い対話と行動をもって下方リスクに対応するコミットメントを再確認する」とし、G20各国が結束してリスクに対処し世界経済を支えていく姿勢を強調しています。
貿易・投資
米中の貿易摩擦を背景に調整が難航していた貿易・投資について、「国際的な貿易と投資は、成長・生産性・イノベーション・雇用創出、開発の重要なけん引力だ」としたうえで、「自由・公平・無差別で、透明性があり、予測可能で、安定した貿易と投資環境を実現し、市場を開放的に保つよう努力する」と原則を明記しています。一方、「保護主義と闘う」という文言は、去年に続いて盛り込まれませんでした。
WTO=世界貿易機関改革
「必要な改革への支持を再確認しほかの加盟国と建設的に取り組む」としたうえで、貿易をめぐる紛争解決の機能についても加盟国の交渉に基づいた見直しが必要だと指摘しています。
地球環境問題
海洋汚染の原因となっているプラスチックごみについては、「すべての国や関係者の協力のもとで、国内的・国際的に対処する必要があり、海洋プラスチックごみなどの流出の抑制や大幅な削減のために適切な行動を速やかにとる決意だ」として、新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」への賛同を、G20以外の国にも呼びかけるとしています。
また国際的な枠組み「パリ協定」について、「2020年までに、更なる世界的な努力が必要であることを考慮する。パリ協定に従って、緩和と適応の双方に関して開発途上国を支援するための財源を提供することの重要性を強調する」としています。
また、アメリカのパリ協定から脱退するとした決定を再確認し、「アメリカは引き続き、エネルギー関連の二酸化炭素排出量を減らし、よりクリーンな環境を提供し続けるため、先進技術の開発と配備にコミットする」としています。
デジタル経済
「データの自由な流通はプライバシーやデータ保護、知的財産権、セキュリティーに関する一定の課題を提起している」とし、現状のデータのやり取りではプライバシーや知的財産権などの面で課題があると指摘しています。
そのうえで、データの自由な流通を促進するためには、「国内的および、国際的な法的枠組みの双方が尊重されることが必要である」として、こうしたルールを作る新しい枠組み「大阪トラック」の交渉を後押ししています。
このほか、国境をこえたデータなどのやり取りで利益を上げる巨大IT企業への新たな課税ルールについても触れています。
世界のおよそ130か国が国際的な枠組みを作り、新たな課税のルールについて来年・2020年中に具体案を取りまとめる予定で、「世界的に公正かつ持続可能で、現代的な国際税制のための協力を継続し、国際的な協力を歓迎する」とし国際的なルール作りを後押ししています。 
G20大阪サミット首脳宣言のポイント 6/29
20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は29日、自由で無差別な貿易環境の実現に向けた首脳宣言を採択し、閉幕した。首脳宣言の要旨は以下の通り。
・世界経済は足元で安定化の兆しを示し、本年後半及び2020年に向けて緩やかに上向く見通し。
・成長は低位であり続けており、リスクは依然として下方に傾いている。貿易と地政を巡る緊張は増大してきた。
・これらのリスクに対処し続けるとともに、さらなる行動をとる用意がある。
・強固で持続性があり均衡のとれた包摂的な成長を実現するため、下方リスクから守るために全ての政策手段を用いるとのコミットメントを再確認する。
・必要に応じて財政バッファーを再構築し、財政政策は機動的に実施し、成長に配慮したものとすべきである。
・金融政策は引き続き、経済活動を支え、中央銀行のマンデートと整合的な形で物価の安定を確保する。
・グローバルインバランス(経常収支不均衡)は世界金融危機の後、新興国及び開発途上国において減少しており、次第に先進国に集中してきた。
・対外収支を評価するに当たっては、サービス貿易・所得収支を含む経常収支の全ての構成要素に着目する必要性に留意する。
・高齢化を含む人口動態の変化は全てのG20構成国に対して課題と機会をもたらし、こうした変化は財政・金融政策、金融セクター政策、労働市場政策及びその他の構造政策にわたる政策行動を必要とする。
・自由、公平、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易及び投資環境を実現し、市場を開放的に保つよう努力する。
・国際的な貿易及び投資は、成長、生産性、イノベーション、雇用創出及び開発の重要なけん引力である。
・WTO加盟国によって交渉されたルールに整合的な紛争解決制度の機能に関して、行動が必要であることに合意する。
・WTO協定と整合的な二国間及び地域の自由貿易協定の補完的役割を認識する。
・イノベーションは経済成長の重要な原動力であり,持続可能な開発目標への前進及び包摂性向上にも寄与し得る。
・デジタル化及び新興技術の適用の促進を通じ、包摂的で持続可能な、安全で、信頼できる革新的な社会の実現に向けて取り組む。
・データの潜在力を最大限活用するため、国際的な政策討議を促進することを目指す。
・インフラは経済の成長と繁栄の原動力である。共通の戦略的方向性と高い志として「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を承認する。
・クォータを基礎とし、十分な資金基盤を有する国際通貨基金(IMF)を中心としたグローバル金融セーフティネットをさらに強化するとのコミットメントを再確認する。
・第15次クォータ一般見直しを遅くとも2019年の年次総会までに完了することに引き続きコミットしており、最優先事項として迅速に進めることIMFに求める。
・ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントは、持続可能で包摂的な経済成長に不可欠である。
・紛争の予防及び解決において女性を認識することにコミットする。
・エネルギーミックスにおけるあらゆるエネルギー源及び技術の役割、よりクリーンなエネルギーシステムを達成するために国によって異なる道筋が存在することを認識する。
・広範囲のエネルギー関連問題における国際協力の重要性を認識する。
・2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す。 
G20大阪サミットの開催結果に対する三村会頭コメント 6/29
このたびのG20大阪サミットは、わが国が議長国として開催する初の会合であり、まずもって議長としてリーダーシップを発揮し、首脳宣言をとりまとめた安倍総理のご尽力に敬意を表したい。
今回のサミットでは、渦中の米中貿易戦争に端を発した保護主義化の流れに対し、G20がどこまで結束できるか、米中首脳会談他、二国間外交の行方を含めて注目された。首脳宣言には「反保護主義」といった強い表現こそ盛り込まれなかったが、自由で公正かつ無差別な貿易体制の推進という基本原則で一致できたことは評価したい。
あわせて、米中が二国間会談で貿易交渉の再開に合意し、新たな追加関税の発動が当面見送られることになったことを歓迎したい。両国の協議が進み、早期に何らかの妥協点が見いだされることを期待したい。
また、今回のサミットでは世界の持続可能で包摂的な成長の拡大に向けて、多くの分野で議論の進展が見られたと思う。とりわけ世界で加速化するデジタル経済への対応では、わが国が主導するデータ流通の国際的なルールづくりにおいて「大阪トラック」の創設が採択されたことを評価したい。また、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、その重要性が認識され、2050年までに新たな汚染をゼロにする地球規模での具体的取り組みの枠組みに合意できたのも大きな前進である。今後実効性のある取組が進展していくことを期待する。 
 
 
 評価

 

安倍首相は「みんなのお気に入り」=調停役として評価−G20 6/28
独紙ツァイト(電子版)は27日、20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に際して安倍晋三首相についての論評を掲載し、「国際政治の場で、みんなのお気に入りのようになっている」として、対立が深まる大国間の調停役に適任と評価した。
論評は、「現在、各大国の調停役を担う首脳が必要とされるのなら、それはおそらく安倍(首相)だ」と指摘し、安倍氏はナショナリストとされるが、同時に多国間主義者でもあると解説。具体例として、米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)の妥結にこぎ着けたことや、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)締結を挙げた。
このほか、トランプ米大統領、習近平中国国家主席の双方との関係を構築している点に言及。両首脳がG20で会談するのを決めたことで「安倍氏は一定の成果を挙げた」と強調した。  
安倍外交、海外メディアの評価は? 6/29
大阪市で28、29両日開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)には、海外から大勢のメディア関係者が訪れた。議長国・日本の安倍晋三首相の外交手腕は外国人記者たちの目にどう映り、関心を寄せる外交テーマは何か。さらに「大阪の食」の印象は――。メイン会場のインテックス大阪(同市住之江区)で聞いた。
6年半の安倍政権が実績として誇るのが外交だが、評価は割れた。
デンマークのテレビリポーター、スヴェニング・ダルガードさん(73)は、安倍首相が今月中旬、米国と対立するイランを訪問したことに触れ、「情勢に何の変化ももたらさなかった。トランプ米大統領は(首相訪問後も)イランに対して戦争をちらつかせるような言動を続けている」と指摘。ロシアのタス通信社の記者で東京支局長のヴァシリー・ゴロヴニンさん(64)は「北方領土問題や北朝鮮による日本人拉致問題などで、ほとんど成果は上げられていない」と語った。
韓国紙・東亜日報で東京支局長を務める朴炯準(パクヒョンジュン)さん(45)は多くの国々を訪問してきた実績を認めつつ、今回のG20サミットで韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領との首脳会談が予定されていない点に「ホスト国としてどうか。国際社会の評価を下げる」と疑問を示した。
ログイン前の続き一方、インドの政府系メディアのラジャサバTVのアキレシュ・スマンさん(52)は「安倍首相は世界情勢にコミットする真の政治家だ」と述べ、首相のイラン訪問を評価。米国の政治ニュースサイト「ポリティコ」の記者のダグ・パーマ―さん(62)は「相手を脅しながら、予測できない交渉をするトランプ氏とうまくやっている数少ない人物」と話した。
G20サミットで海外メディアが注目しているのが、二国間会談が予定されている米中両首脳による貿易摩擦への向き合い方だ。米中対立の影響は世界中に及ぶため、不安の声が聞かれた。
チリのADNラジオ局の記者ガブリエル・アレグリアさん(29)は、チリの主要産業である銅の輸出に触れ、「経済戦争に世界中が巻き込まれ、銅の価格にも影響がある。今回のサミットで(激しい対立は)終わらせなければならない」と強調。エジプト・アハラム紙の記者のシャディ・ザラタさん(37)は「今後も米中の関係は悪化していくと思う。中国製品があふれるエジプトにも影響があるかもしれない」と心配した。
また今回、「ホスト都市」となった大阪府と大阪市。力を入れたのが食文化のアピールだった。
多くの外国人記者が「おいしかった」と答えたのが「たこ焼き」。会場内で振る舞われたことも大きかったようだ。インドのインディアン・エクスプレス紙記者のシュブハジット・ロイさん(41)は「たこ焼きも良かったが、牛肉やカキを食べてどれもおいしかった」と満足そう。中国のネットメディア「澎湃新聞」記者の廖婧雯(リョウセイブン)さんは仕事が忙しく、会場外での食事はできていないという。「和食の中でも、特におすしが好きなので食べたいです」
サウジアラビア政府の報道担当のノーラ・アルカナンさん(26)は大阪・難波に宿泊。「24時間眠らない街で活気にあふれていた」と驚いた様子。「日本の伝統文化も体験したい」と言い、京都観光をしてから帰国する予定という。 
安倍首相のリーダーシップは? 一定の評価 課題も... 6/29
今回のG20(20カ国・地域)サミットでは、各国の複雑な利害がからむ中、安倍首相はリーダーシップを発揮できたのか。
政府関係者は、安倍首相が、「対立ではなく、共通点を見いだす」と繰り返し強調したことで、「各国首脳の耳にも届いた」と、一定の評価をしている。
貿易問題への対応が注目された米中首脳会談で、両首脳は「対話を通じた問題解決の重要性を訴え続けたことが功を奏した」と語る政府関係者もいる。
一方、課題も残された。
採択された首脳宣言では、貿易問題で、自由や公正といった原則をあらためて確認したものの、保護主義的な経済政策に今後、どう向きあうのかという方針は示されなかった。
安倍首相はこのあと、日ロ首脳会談に臨む。
平和条約交渉が停滞する中、トップ会談で進展の糸口をつかめるかが焦点になる。 
「反保護主義」盛らず「自由貿易の原則確認」 G20閉幕 6/29
日本が初めて議長国を務めた主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は29日、「自由、公平、無差別で安定した貿易の実現」を目指すとする首脳宣言を採択し、閉幕した。米中貿易戦争などで世界経済の下振れリスクが高まっていることを受けて、自由貿易の重要性を強調した。環境問題では、G20各国が2050年までにプラスチックごみによる新たな海洋汚染ゼロを目指すとする共通目標「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を盛り込んだ。
首脳宣言は世界経済の現状について、「成長は低位で、リスクは依然として下方に傾いている」と分析。「貿易と地政を巡る緊張は増大してきた」として、リスクに対応するために「更なる行動をとる用意がある」との姿勢を示した。
貿易問題を巡っては、「自由、公平、無差別で透明性があり、予測可能な安定した貿易及び投資環境を実現するよう努力する」と明記。世界貿易機関(WTO)改革を後押しする方針を確認した。だが、米国の反発が予想される「保護主義への対抗」などの文言は、昨年のサミットに続き宣言に盛り込むことを見送った。
議長を務めた安倍晋三首相はサミット閉幕後の記者会見で「自由貿易の基本的原則を明確に確認できた。下振れリスクに注意しながら、G20は力強い経済成長をけん引する決意で一致した」と意義を強調した。
環境面では、海洋プラごみや砕けて5ミリ以下になったマイクロプラスチックの対策の重要性を明記し、各国が海洋流出の防止策や削減策を速やかに実施することを確認した。各国の対策や海洋流出量などを共有する枠組みを進めるとした。安倍首相はプラごみ問題に対するビジョンを各国が共有したことについて「問題解決に向けた大きな一歩。世界の取り組みに日本らしい貢献をしていく」と述べた。
一方、地球温暖化問題では、来年始まる国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱を表明している米国以外の19カ国・地域が、協定の完全実施の約束を再確認し、来年までに各国が温室効果ガス削減目標の更新を目指すことで合意した。  
 トランプ

 

G20閉幕、米中決裂回避も解消みえず トランプ氏は日米同盟に言及 6/29
20カ国・地域(G20)首脳会議は29日、自由で無差別な貿易環境の実現に向けた首脳宣言を採択し、閉幕した。懸案だった米中首脳会談の決裂も回避され、貿易協議を今後再開する。もっとも制裁関税そのものは残ったままで、解消の道筋は見えない。トランプ米大統領は日米同盟の見直しにも言及しており、参院選を控える中で安倍政権は新たな課題を突き付けられたかたちだ。
首脳宣言でG20は、世界経済の現状について「安定化の兆しがあり、年後半から2020年にかけ緩やかに回復する」との見通しをあらためて示した。
一方、米中貿易摩擦やイラン情勢を念頭とする貿易・地政学的リスクに対処するため、「さらなる行動をとる用意がある」と表明した。貿易分野では「自由で公平、無差別、予測可能で安定した貿易・投資環境を実現するため努力し、市場が開かれた状態であることを維持する」との認識を共有し、世界貿易機関(WTO)改革を巡って「建設的に取り組む」ことも併せて明記した。
安倍晋三首相は、閉幕後の記者会見で「世界は結束できると信じて議長国を務めた。自由貿易の基本原則をG20で明確に確認できた」と述べた。
懸案だった米中貿易協議の決裂は回避された。G20宣言に先立つ米中首脳会談で、両国は貿易協議を再開することで合意し、米国がスマートフォンやパソコンなども含めた3250億ドル相当を新たに課税対象にする制裁関税の発動は先送りする。
トランプ大統領は「われわれは軌道に戻った」と述べ、中国との交渉を継続するとの認識を示した。新華社通信によると、中国の習近平国家主席は会談で、中国企業を公平に扱うことを望むと表明した。
G20閉幕後の会見では、トランプ大統領が日米同盟の見直しに言及し、「破棄することはまったく考えていない。不平等な合意だと言っている」と語った。「条約は見直す必要があると安倍首相に伝えた」ことも明らかにした。
日米同盟のベースとなる日米安保条約に米大統領が疑念を示すのはきわめて異例で、トランプ大統領の発言は、茂木敏充経済再生相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表との間で協議を重ねている貿易交渉に影響する可能性もある。
<IMF専務理事、貿易障壁引き下げを訴え>
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は29日、サミット閉幕にあたり声明を発表し、関税などの貿易障壁引き下げを訴えた。
専務理事は通商摩擦により投資や貿易が鈍化するなど世界経済が困難な局面にあるとし、「米中の協議再開を歓迎する一方、すでに発動された関税は世界経済を抑制しており、未解決の問題は今後の大きな不透明感につながっている」と指摘した。
今後の世界経済についてIMFは一定の成長の強まりを予測しているが、見通しへのリスクは引き続き深刻とし、各国中銀は今後の指標をみながら政策調整する必要があるとの認識も併せて示した。 
トランプ大統領、Huaweiと米企業の取り引き容認へ〜G20の記者会見で 6/29
ドナルド・トランプ米大統領は29日、Huaweiに対する禁輸措置を解除すると発表しました。G20大阪サミット閉幕後の記者会見で明らかにしました。
日本経済新聞によると、ドナルド・トランプ米大統領は「アメリカ製品をこれからも売ることを認めていきたい」と述べ、米企業がHuaweiに対して自社製品を販売することを容認する意向を示しました。
Huaweiとその関連企業は5月、米政府の輸出規制リストに追加されたことで米企業との取り引きができなくなり、事実上の海外市場からの締め出しを受けていました。これによって、Android OSを提供するGoogleや、チップのアーキテクチャを提供するARMといった企業が相次いでHuaweiとの取り引き停止を宣言しました。
しかし、世界スマートフォン市場で2位につけるHuaweiに部品が供給できなくなることは、サプライヤーにとっても大きな痛手です。こうした事情を汲み取ったのか、トランプ大統領は「大量の米国製品がHuaweiのさまざまな製品に使われており、取引を続けてもかまわないと思っている」とし、安全保障上の問題がなければ、販売を認めていく方針を採っていくとしました。
また、中国の習近平国家主席との会談でも「しばらくの期間は追加関税は行わない」と述べ、新たな分野で関税を上乗せする考えは当分ないとの考えを明らかにしました。これによって、iPhoneに課される可能性のあった25%の関税はしばらく見送られることになります。
先日、IntelとMicronが輸出規制をかいくぐってHuaweiへの製品供給を再開したのに続き、AppleもMac Proの組み立て工場を米国から中国へ移転していたことが判明するなど、トランプ大統領の意向とは相反するような行動が複数の米企業に見られましたが、大統領のこうした方針転換を事前に察知していた可能性があります。 
 裏読み

 

トランプが「安倍に“日米安保条約見直し”を伝えた」 6/29
 「安倍は理解を示した」と衝撃発言!
安倍首相がまた、不都合な事実をトランプ大統領にバラされてしまった。きょう、G20閉幕後の会見でトランプ大統領が“日米安保条約を破棄するつもりなのか”と問われ、「破棄することはまったく考えていない」としたものの、「不平等な合意だ」と持論をぶった後、「条約は見直す必要があると安倍首相に伝えた」と述べたのだ(ロイター通信)。
しかも、朝日新聞によると、〈トランプ氏は、安倍首相はこうした考えを理解しているとの認識も示した〉という。
トランプの「不公平」主張のインチキについては後述するとして、これは安倍政権のこの間の説明がすべて嘘だったということではないか。
周知のように、トランプ大統領が日米安保条約を不公平だと主張していることは、すでにG20前から報道されていた。
6月24日、米通信社・ブルームバーグが、「トランプ氏が日本との安全保障条約を破棄する可能性についての考えを側近に漏らしていたことが分かった」と報道。また、26日には、トランプ大統領自身が米テレビ局・FOXビジネスネットワークのインタビューのなかで、日米安保条約についてこう述べていた。
「日本が攻撃されれば、米国は第3次世界大戦を戦う。我々は命と財産をかけて戦い、彼らを守る」
「でも、我々が攻撃されても、日本は我々を助ける必要はない。彼らができるのは攻撃をソニーのテレビで見ることだ」(朝日新聞デジタル27日付)
ところが、これに対して、安倍政権は一貫して完全否定していた。複数の外務省幹部は「ありえない」と一斉に否定し、菅義偉官房長官も25日の会見で「報道にあるような話はまったくない。米大統領府からも政府の立場と相いれないと確認を受けた」と、事実関係そのものを否定。
トランプの発言後も、やはり菅官房長官が27日、「(日米安保条約は)片務的ではなく、お互いにバランスがとれている条約だと思う」としたうえで、「(日米の)政府間では日米安保条約の見直しといった話、これは一切なく、米大統領府との間でもその旨は確認している」とコメントするなど、問題をなかったことにしつづけた。
さらに、昨日午前に開かれた安倍首相とトランプ大統領の首脳会談でも、メディアは一斉に「日米安保条約見直しは話題に上らなかった」「日米安保の話はなかった」と報じた。これは、会談に同席した西村康稔官房副長官が記者団に「話はなかった」と明言し、「日ごろから安保条約を前提とする日米同盟がアジア太平洋の平和と安定の基礎だと確認している。あえてそういうことをする必要はない」と語ったためだった。
しかも、この会談では、トランプの“日米安保発言”隠しの報道統制まで行っていた。会談の冒頭は当初、公開とされていたのだが、記者がトランプに質問しようとすると、日本の外務省職員がそれを「退室願います。サンキュー」と遮ったのだ。トランプは答えようとしたが、安倍首相は手を振り、記者に退室を促したという(毎日新聞デジタル版6月28日付)
ようするに、安倍首相と安倍政権はトランプから「安保見直し」を伝えられていたにもかかわらず、こんな重大な事実を国民に知らせず、なかったことにしようとしていたのである。
まあ、たしかに、安倍政権がこの事実をひた隠しにしたくなる理由はわからなくはない。なにしろ、これまで安倍首相は歴代の総理大臣が誰も見せたことのないくらい露骨な“トランプのポチぶり”を発揮してきたのだ。
トランプに言われるがままに、イージス・アショアやステルス戦闘機を大量購入、爆買いによって、アメリカからの有償軍事援助(FMS)による兵器購入契約の額は安倍政権下でどんどんと膨らみつづけ、2018年度は従来の5倍もの6917億円にまで増加。昨年末に閣議決定された「中期防衛力整備計画」では、2019から2023年度に調達する防衛装備品などの総額は、なんと約27兆4700億円程度と過去最高水準に達した。
ほかにも、2017年には、公的年金数兆円をアメリカのインフラ事業に投資する方針が報じられた。日本企業が400億ドル(約4兆4600億円)を米国の自動車工場に投資することも表明した。
さらには、トランプのご機嫌取りのために、安倍首相はトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦までした。
ところが、安倍首相はこれだけトランプに尻尾を振り、あらゆる要求を飲んできたにもかかわらず、さらに「日米安保見直し」という、これまで日本の総理大臣が経験したことのないような理不尽な要求を突きつけられてしまったのである。
この事態は“安倍外交”の完全失敗を意味するもので、“不都合な真実”を次々なかったことにしてきた安倍政権としては、到底、認めるわけにはいかなかったのだろう。
しかし、日米安保条約の見直しを要求されるというのは、日本の平和や安全保障を根幹から揺るがす問題だ。こんな重大な事実を国民に隠していていいはずがない。
しかも、前述したように朝日の報道では、トランプは今日の会見で「条約見直しを伝えた」ことだけでなく、〈安倍首相はこうした考えを理解している〉との認識まで示しているというのだ。
日米安保条約と付随する日米地位協定は、米国最大の海外戦略拠点を日本に提供させている上、基地負担や米軍の特権的地位を押し付ける、むしろ日本側にとって著しく不公平なものだ。しかも、日本が攻撃されたとき、米国が本当に日本を守ろうとするかどうかについては、多くの国際政治学者や軍事の専門家が疑問を投げかけている。
いずれにしても、ここまで理不尽な要求を突きつけられたら、「だったら、こちらが日米安保条約や日米地位協定の見直しを要求する!」と、むしろ日本に平等な見直しを突きつけ返すというのが、本来の外交交渉というものだろう。ところが、トランプ大統領に安倍首相はこんな無茶苦茶な要求に唯々諾々と「理解を示した」というのだ。
実際、政府関係者の間では、安倍首相がトランプ大統領に「日米安保見直し」を突きつけつけられて、さらなる妥協をしたのではないかという見方が有力になっている。
「安倍総理が今回の会談で、農産物の輸入関税を米国の主張通り大幅引き下げを約束した、あるいは、先月の首脳会談で約束したものよりもさらに大量の武器購入を提案したのではないかという話が流れています。西村康稔官房副長官は日米安保条約見直しだけでなく、防衛装備品購入についても『議論はなかった』と言っていましたが、額面通りには受け止められません。安倍首相は先月の首脳会談でも、参院選後の大幅関税引き下げを約束したことをトランプにバラされましたが、まったく同じパターンなのかもしれない」(全国紙政治部記者)
さらに、安倍首相が参院選後、トランプ大統領の要求に応じて、本当に「日米安保条約のアメリカの見直し」に踏み込む可能性もある。
「安倍首相は、いまは参院選を意識して、日米安保見直しの話題をひた隠しにしていますが、参院選後は姿勢を変えるでしょう。いまの情勢では、改憲勢力が3分の2を占めるのは難しくなっていますから、米国の日米安保条約の見直し要求を大義名分にして、自衛隊が海外で武力行使できるよう解釈改憲をさらに進めていく可能性が非常に高い」(政治部デスク)
トランプ大統領は24日のTwitterでも、ホルムズ海峡のタンカーについて〈中国は91%、日本は62%、ほかの国も同じようなものだが、あの海峡から原油を運んでいる。なぜ、われわれアメリカがそれらの国のために航路を無償で(何年にもわたって)守っているのか。そうした国々はみな、危険な旅をしている自国の船を自国で守るべきだ〉(編集部訳)と投稿している。
日本政府は、岩屋毅防衛相が「現時点でホルムズ海峡付近に部隊を派遣することは考えていない」(25日会見)と述べるなど、いまのところ否定してはいるが、参院選後にさっそく、自衛隊がホルムズ海峡に派遣されるかもしれない。
わたしたちが警戒しなければならないのは、トランプの“ディール”発言よりも、安倍首相の国民に対する裏切りのほうなのである。 
大阪G20記念撮影 各国首脳の“ガン無視”に安倍議長オロオロ 6/29
世界中の孤独を独り占めしたような光景だった。28日大阪G20サミットの開幕時、安倍首相は各国首脳を1人ずつ出迎えた後、集合写真の撮影までの間、ほとんど誰にも相手にされなかったのだ。
議長の安倍首相はひな壇中央に陣取ったが、バラバラに集まった各国首脳は誰も話し掛けない。並んで現れたトランプ、プーチン両大統領は会話に夢中で安倍首相など眼中になし。安倍首相は習近平国家主席とトランプとの握手をボーッと見つめるだけ。
アチコチで談笑が始まる中、安倍首相はその輪に加われず、愛想笑いを浮かべ、周囲をオロオロと見渡すのみ。撮影が終わると、居心地の悪い空間から逃げ出すように我先に次の会場へ向かった。
「国際会議の場では安倍総理と話そうとする各国首脳が列をつくる」――。昨年の臨時国会で稲田朋美元防衛相はそう言ったが、いくら出迎え時にあいさつを交わしたとはいえ、各国首脳にガン無視される状況は稲田氏のヨイショとは程遠い。
同じ光景は昨年12月、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスG20でも見られた。各国首脳夫妻の記念撮影時、安倍首相と昭恵夫人には誰ひとり近寄らない。語学に自信がないのか、自ら話し掛けもせず最後までポツン。その様子は今もユーチューブで公開されている。
稲田氏は安倍政権の外交成果により、「世界における日本のプレゼンスは向上した」と言ってのけたが、笑止千万。日本の首脳がシカトされる中、大阪G20で「プレゼンス」向上の手段は物量作戦頼みだ。
「プレスを含め、出席者全員に日本の扇子や箸を無料配布。ビュッフェの入り口では着物姿の複数の女性が出迎え、席までエスコート。豪華メニューは朝・昼・晩と変わり、大阪名物のたこ焼きや串カツも食べ放題。世界では珍しい升も持ち帰り自由で、日替わりで常時150種類が揃う日本酒、国産ウイスキーとワインも飲み放題。畳敷きの部屋で芸者遊びを楽しめるブースもあります」(現地で取材中の記者)
日本文化が世界に誤解されなければいいが……。  
 
 
 6/30

 

「自由貿易の促進」消えたG20首脳宣言 協調の難しさ 6/30
29日に閉幕した大阪市での主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の首脳宣言は、米中貿易摩擦や気候変動での米国の孤立などを受け、各国協調の難しさが随所ににじむ内容となった。
米中貿易摩擦が激化する中、貿易については「自由、公平、無差別な貿易及び投資環境を実現するよう努力する」との表現を盛り込んだ。中国が求める「無差別」、米国が求める「公平」がいずれも入り、各国への配慮をにじませた。政府関係者は米国を念頭に「この表現ですら、反対する国があった」と話す。
保護主義的な動きを強める米国の反対で、昨年初めて削られて注目を集めた「反保護主義」への言及は、対立を避けるために今年も見送られた。さらに、朝日新聞が入手した宣言の原案段階で序文にあった「自由貿易の促進」との言葉も、最終の宣言からは抜け落ちていた。米国などの反対があった可能性がある。
世界貿易機関(WTO)についても多くを割いた。日米欧が問題視する紛争解決制度の改革について、「行動が必要であることに合意する」。電子商取引のルール作りの交渉についても重要性の確認を盛り込んだ。米国などがWTOに失望する状態が続けば、貿易問題の解決がいっそう困難になるとの危機感がある。
世界経済の認識については「成長は低位であり続けており、リスクは依然として下方に傾いている」と警告。「何よりも貿易と地政(学)をめぐる緊張は増大してきた。これらのリスクに対処し続けるとともに、さらなる行動をとる用意がある」とアピールした。
パリ協定 「米国と米国以外」、立場鮮明に
首脳宣言づくりで「最後の最後まで紛糾した」(交渉筋)のは環境分野での地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の扱いだった。宣言では協定離脱を表明している米国と、それ以外の19の参加メンバーの姿勢の違いが鮮明になった。
昨年のアルゼンチンでのG20サミットの首脳宣言では、米国の離脱表明を明記する形で、ほかの国・地域とわけた。今回日本政府は米国を孤立させず、全参加メンバーが合意できる内容を模索した。
だが前回宣言からの「後退は受け入れられない」などと欧州勢が反発。仏中両外相と国連事務総長の3者で、気候変動に取り組む緊急性を訴える共同声明も出した。
今回の首脳宣言は、米国以外のメンバーについては「パリ協定は不可逆で、完全実施の約束を再確認する」と前回の表現をほぼ踏襲した。一方、米国が離脱を決めた理由を「パリ協定は自国の労働者と納税者に不利だからだ」と記述。「米国は(温室効果ガスの)排出量削減の世界のリーダーだ」とも記し、米国とほかのメンバーとの立場の隔たりが際立った。
安倍晋三首相は閉幕後の会見で「意見の違いよりも共通点を見いだすことができるように努力を重ねた」と述べた一方で「意見の大きな違いがあった」と認めた。
「米国の態度は残念というしかない。それ以上に私ができることは何もない」。仏マクロン大統領は会見で失望を隠さなかった。英国のメイ首相は「19カ国が集まってパリ協定の不可逆性と我々の関与を再確認できた」と一定の評価をした。(田中誠士、桜井林太郎、疋田多揚)
明暗 「海洋プラ、女子教育」と「データ流通」
焦点の一つだった海洋プラスチックごみの対策については、ごみの適正処理を進めて2050年までに新たな汚染をゼロにすることをめざすなどとした「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有すると明記。付属文書として、具体策の実施枠組みをまとめた。
また、質の高い初等・中等教育の提供など「女児・女性教育及び訓練への支援を継続する」ことも盛り込まれた。首相は閉幕後の会見で、「全ての女の子が少なくとも12年間、質の高い教育にアクセスできる世界をめざしていく」と強調した。
デジタルデータ流通のルール作りについては、28日に米国や中国、欧州連合(EU)も参加して議論の枠組み「大阪トラック」の開始を宣言するところまでこぎ着けた。ただ、インドや南アフリカが宣言文に署名しなかったため、首脳宣言には入らなかった。(小野甲太郎)
視点「避け続ける対立、失われる求心力」
世界のリーダーたちが大阪に集った2日間。国際社会へ最も大きく報じられたのは、G20サミット自体ではなかった。米国のトランプ大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席による首脳会談だ。
両大国の貿易摩擦が激しくなれば、世界経済に急ブレーキがかかる。けれど、両氏を首脳らが足並みをそろえて説得しようとした場面は見られなかった。議長国の日本が選んだのも対立には深入りせず、一致できる所に焦点を当てる手法だった。
こうして積み上げた成果には、行動の「計画」や長期の「ビジョン」がずらりと並ぶ。いま合意できる範囲を絞りこんだ日本の手腕は精緻(せいち)だったが、具体化に向けて待ち受ける対立まで避け続ければ、成果は絵に描いた餅で終わる。
G20が「決める力」を失う中、ある財務官経験者は「二国間会談などの機会を提供する意味はまだある」と話す。ただ、現実にはG20前、トランプ氏が訪日するかどうかを日本側が気をもむ局面まであった。
サミット開始のきっかけとなったリーマン・ショックから10年がすぎた。あの年、手を組んで危機に立ち向かった首脳らが今、お互いの反目に立ちすくむ。世界経済に次の暗雲が近づく中、G20の前途はかつてなく見えなくなっている。(斎藤徳彦)
G20首脳宣言のポイント
【貿易と投資】「自由、公平、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易を実現」と明記。「反保護主義」は断念
【世界貿易機関(WTO)】機能改善に必要な改革への支持を再確認
【海洋プラスチックごみ対策】2050年までに新たな汚染ゼロをめざす「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有
【気候変動】パリ協定をめぐり、米国とそれ以外のメンバーとの意見の相違が埋まらず、両者の立場を併記
【データ流通】「信頼性のある自由なデータ流通」の文言を明記。ルール作りの枠組み議論「大阪トラック」の開始は有志国のみの合意で、宣言の外枠に
【デジタル課税】巨大IT企業への課税方法を20年までに合意する方針を承認
【エネルギー】安全な流通が懸念される最近の出来事を考慮し、エネルギー安全保障の重要性を認識 
G20大阪サミット閉幕 米中摩擦の緩和に至らず 6/30
大阪を舞台に日本初の主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が開かれ、2日間の日程を終えた。世界経済や地球環境を巡る多くの課題に直面する中、日本は議長国としてかじ取りを問われた。
最大の焦点となったのは米中貿易戦争への対応だ。だが米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席の会談は休戦に合意する程度にとどまり、G20として摩擦緩和に向けた協調態勢を築くには至らなかった。
両首脳の会談は世界経済の行方を左右するものとして、世界から注目された。トランプ氏は不調に終われば中国からの全輸入品に制裁関税を課す方針を示していたが、会談後に発動を当面見送ると表明した。
全面対決に発展すれば、世界経済が深刻な打撃を被るのは必至だった。高関税で負担の増す米国企業の反発も強く、トランプ氏も考慮せざるをえなかったのだろう。
とはいえ打開のめどは立っていない。貿易不均衡の是正というレベルを超え、安全保障に直結するハイテク覇権争いに発展しているからだ。
心配なのは、米中が自国に有利な経済圏を作るブロック化を進め、グローバル経済が分断されることだ。
米国は、次世代通信技術5Gで世界をリードする中国ファーウェイ(華為技術)の排除に乗り出し、同盟国にも同調を迫っている。対抗して習氏はサミット前、ロシアのプーチン大統領と会談しファーウェイとロシア通信大手の提携に合意した。
トランプ氏は習氏との会談後、米国からのファーウェイ向け部品販売は容認する意向を示した。だが、中国との取引の一環で、米国などからファーウェイ製品を締め出す基本姿勢は変えていないとみられる。
米国は、中国政府がハイテク産業に過度な補助金を出していると批判する。だが官民一体の産業育成は中国特有の国家資本主義の根幹だ。習指導部には譲れない一線である。
今年は冷戦終結から30年に当たる。中国の台頭に象徴される経済のグローバル化が進んだ。米国企業が日韓の部品も使って中国で生産し、高性能で割安なスマートフォンなどが世界に出回るようになった。米中対立が長引くと、冷戦後の発展を支えた国際分業が寸断されかねない。
本来、世界経済の安定に協調するのがG20だ。だが「米国第一」を掲げるトランプ政権の発足で空洞化し今回も役割を果たせなかった。
象徴的なのは、保護主義に反対する文言を首脳宣言に盛り込めなかったことだ。トランプ政権の意向で消えた昨年の宣言に続くものだ。
2008年のリーマン・ショック後に始まったG20サミットは「反保護主義」を宣言に明記していた。G20は体制が違う国の集まりだ。それでも経済のグローバル化で協調の必要性が高まり、最低限の共通認識としたのが「反保護主義」だった。
今回も米中対立に懸念の声が相次ぎ、宣言は「貿易を巡る緊張は世界経済のリスク」と明記した。だが米中が意に介した形跡はない。休戦も米中の駆け引きの産物だ。
かつて米国と国際協調を担った欧州でも協調重視派は退潮傾向にある。米中のパワーゲームに世界が振り回されているのが実態だ。
議長国の日本は協調立て直しに努めた。世界貿易機関(WTO)の改革を首脳宣言に盛ることを主導したのは日本だ。中国に補助金是正などを促す仕組みを目指し、米国を多国間の枠組みにとどめる狙いだ。
経済のデジタル化に応じた国際的なルール作りや、プラスチックごみによる海洋汚染対策でも一定の成果をあげたと言えよう。
もっとも日本の役割は限られた。政府はそもそも「反保護主義」の文言は困難とみていた。安倍晋三首相は会議で「貿易制限の応酬はどの国の利益にもならない」と呼びかけたが、それ以上踏み込まなかった。貿易交渉中の米国を刺激したくないとの思惑が働いたのではないか。
何より必要なのは、米中が今後の協議で共存を探ることだ。大国として世界経済の安定に責任がある。
トランプ氏には、対中強硬姿勢を保てば大統領選に有利、との計算もあるのだろう。選挙目当てで世界を混乱に巻き込むのは許されない。
中国の国家資本主義も国際的に異質な体制だ。補助金に依存する体質から抜け出すことは中国の安定成長に役立つはずだ。中国が自主的に取り組むべき課題である。  
安倍外交、停滞感浮き彫り=参院選効果は不透明−G20 6/30
20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)が29日閉幕し、安倍晋三首相は2日間の議長役を終えた。首相は議事を総括する記者会見で「力強いメッセージを出せた」と宣言し、7月4日公示の参院選に向けて成果をアピールした。しかし、安倍外交の停滞ぶりも浮き彫りになり、選挙向けの実績となったかは不透明だ。
「昨年の首脳宣言を踏まえ、さらに踏み込んだ合意ができた。国際社会にG20の結束を示せた」。首相は29日の閉会セッションでこう述べ、首脳間で採択した大阪宣言の内容に胸を張った。
大阪宣言の新機軸は、プラスチックごみの海洋流出を2050年までにゼロにする目標などを打ち出した点。だが、焦点の貿易では「保護主義と闘う」との文言を盛り込めず、「自由・公正・無差別な貿易・投資環境の実現に努める」と記すにとどまった。
反保護主義の文言は、08年のG20創設以来、毎年の首脳宣言でうたわれてきた「結成の精神」。保護主義に傾くトランプ米政権の反対で、昨年の首脳会議で初めて宣言から抜け落ちた。G20の根幹を揺るがす事態だが、日本政府がこの文言を復活させようと本気で取り組んだ形跡はうかがえない。
G20サミットの合間に、首相は個別の首脳会談も精力的にこなした。27日の中国の習近平国家主席との会談では習氏を来春に国賓として招くことで合意。28日の日米首脳会談では、対日貿易赤字に不満を募らせるトランプ米大統領をひとまず抑えることはできた。
とはいえ、中国が沖縄県の尖閣諸島周辺での挑発行為をやめる兆しはない。トランプ氏も、参院選が終われば日米安全保障条約への不満と絡めて対日圧力を強めかねない。29日の記者会見では、日米安保条約の片務性を変える必要があると首相に伝えていることを明かした。
29日の閉幕後、首相はロシアのプーチン大統領との会談に臨んだ。この会談で北方領土交渉の大筋合意を宣言するシナリオを描いた時期もあったが、交渉継続を確認するにとどまった。
日ロ首脳は昨年11月の会談で領土交渉加速で合意。首相は2島返還に事実上かじを切り、スピード決着に持ち込みたい考えだった。誤算だったのはロシア政府が世論の反発を受けて強硬姿勢に出たことだ。日本政府内からは「安倍政権での解決は困難」との声も漏れる。
G20サミットは先進7カ国首脳会議(G7サミット)の後に開かれるのが通例だが、今年は順序が逆転した。背景には外交成果を掲げて参院選に臨みたい首相の思惑があったとの見方もある。来月21日投開票の参院選では、安倍外交の是非をめぐる与野党の舌戦も熱を帯びそうだ。 
 
 
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G20大阪サミット、巨費投じた日本は何を得たのか―中国メディア 7/1
6月29日、第14回主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が大阪で閉幕した。日本はサミットに巨額の費用を投入し、非常に大きな収穫を上げたと言える。日本はサミットを主催するのに一体いくら使ったのだろうか。詳しい統計をまとめるのは難しいが、一連の公開されたデータから、大きな金額であることはうかがえる。中国青年報が伝えた。
日本は昨年9月21日に、サミットの準備費として2018年度予算の予備費から約75億円を拠出することを閣議決定した。
今年1月28日、サミット開催地の大阪府はサミットの準備状況についての報告書の中で、大阪府と大阪市が2018-2019年度に合計51億3800万円の予算を計上したことを明らかにした。日本政府の主な関係省庁の予算をみると、合計約484億5000万円に上り、外務省が339億8000万元、警視庁が124億2000万元、消防庁が9億5000万円、厚生労働省が11億円となっている。
以上の予算データは18年度と19年度にそれぞれ拠出された。このほかにも大阪府と大阪市は多くの資金を集め、日本企業からの協賛金もある。地方政府と企業からの協賛金にははっきりしないところがあり、政府も触れないでいる。
サミットの開催状況をみると、日本の各方面が実際に投入した資金はこれより多いとみられ、公式の決算報告を待つしかない。資金の中には統計が難しいものもあり、たとえば各会場へサービスや物品を提供した事業者の投資、開催期間に大阪市や大阪港などで多くの事業所が一時休業したことによる経済的損失などだ。国際展示場のインテックス大阪はサミットのメーン会場になったため、総面積約13万平方メートル、6つの大型展示ホールをもつこの場所が、サミット近くなると貸し切りになって全面的に営業を停止した。また会期中は、メーン会場の周辺、大阪市内の「関連施設」周辺の事業者は一時休業か移転を余儀なくされ、近くの大阪港をはじめ多くのふ頭が稼働停止になった。このうち大阪港は年間貨物処理能力が約8600万トンに達する。
サミットの現段階での成果をみると、日本は大きな利益とリターンを得たと言える。リターンには少なくとも次のことがある。日中関係を増進・強化した。「予測不能」な米国のトランプ大統領に「予測不能」な動きをさせなかった。データ流通の国際ルール策定の交渉枠組を促進した。参加したG20メンバー、招待を受けた非メンバー、国際機関が緊密な二国間・多国間・全方位的外交を展開した。安倍政権は外交で成果を上げ、参議院選挙を有利に戦えるようになった。サミット自体と各国のメディアを通じて、国際社会に向けて日本文化を着実にアピール・発信した。こうしたことから、G20大阪サミットを通じ、日本の国際的影響力と国際的イメージがアップすることが予想される。 
トランプ・金正恩会談で大恥! 安倍首相は会談開催も知らなかった 7/1
 …「蚊帳の外」は韓国でなく日本
これぞ安倍外交の真髄と言っていいだろう。大阪で開かれたG20のことじゃない。トランプ大統領と北朝鮮・金正恩委員長の電撃会談のことだ。ふだんあれだけ、「トランプ大統領と完全に一致している」とその絆の強さを語り、日朝首脳会談については「私自身が金正恩委員長と向き合う」などと大見得を切っていたのに、安倍首相はトランプの北朝鮮外交で完全に“蚊帳の外”に置かれてしまったのだ。
しかも、トランプ大統領が今回、北朝鮮外交で強力なタッグを組んだのは、安倍首相が関係修復を拒否し、安倍応援団メディアが「トランプから嫌われ、国際社会で孤立」などと攻撃している韓国の文在寅大統領だった。
大阪でのG20後、トランプ大統領と文大統領は韓国・ソウルで会談後、ヘリコプターでパンムンジョム(板門店)へ向かい、トランプ大統領は軍事境界線で金委員長と電撃再会。しかも、境界線を超え現職のアメリカ大統領として初めて北朝鮮側に足を踏み入れた。さらに、金委員長とともに韓国側に戻り、文大統領と3人で、韓国側施設「自由の家」へ移動し、シンガポールハノイに続き、3回目の米朝首脳会談が行われ、その後文大統領も加わり米中韓3カ国会談まで行われた。
非核化・朝鮮半島和平に向けどれほど進展に繋がるかはもちろん未知数だが、米朝の交渉チームの協議再開が決まるなど、ハノイでの米朝会談決裂以降の停滞していた北朝鮮情勢に一定の動きがあったことは間違いなく、少なくとも当面北朝鮮を孤立化させ暴発に追い込まないためには、大きな意味があっただろう。
しかし、問題は日本政府と安倍首相だ。会談になんのコミットもできなかったばかりか、会談をやること自体を知らされていなかったのである。
トランプ大統領が板門店を訪れ北朝鮮問題に動きがあるという噂は数日前から流れており、29日にはトランプがツイッターで〈日本を離れ文在寅大統領とともに韓国に向かう。その間に、もし金正恩委員長がこのツイートを見たら、軍事境界線・DMZ(非武装地帯)で会って、握手して、ハロー(?)って言うよ〉と投稿していた。しかし、それでも日本の官邸や外務省はとりあわず、取材にも「ありえない」と言い続けていた。
外務省が会談を知ったのは、ニュースがとびこんできた後だったという情報もある。実際、第一報直後、NHKの取材に対し外務省幹部が「事前にアメリカ側から連絡はなく、情報の確認に追われている。アメリカ大使館や国務省にも問い合わせているが、詳細は不明」と答えている。
いや、それどころじゃない。会談が終わった17時すぎの段階でも、外務省幹部は「まだ映像を見ただけで詳しい情報は入ってきていないが、まさにトランプ外交という感じだ」という新人記者のような感想を述べるだけだった。さらに、19時の段階で、NHKニュースが報じた外務省幹部のコメントは「アメリカから今回の会談についてまだ報告は受けていない」「まずは電話会談で把握したい」などというものだった。
河野太郎外相も、“何も知らない間抜け”ぶりをさらした。会談に向け事態が進行している30日午前、河野外相が何をやっていたかというと、ツイッターにG20の会議風景を撮った“思い出写真”を次々アップして、「タローを探せ。」なるお遊びツイートに興じることだった。
会談の数時間後に、ようやく記者団の取材に応じたものの、拉致問題が扱われたのかなど会談内容について問われると、「会談内容についていま日本側から申し上げることは差し控えたい」とコメントするのみ。「差し控えたい」って、何も知らされてないから、語ることができなかっただけだと思うが……。
しかしもっとも間抜けだったのはやはり安倍首相だ。G20サミットでは、韓国の文在寅大統領が日韓首脳会談に意欲を見せたのに、安倍首相は徴用工裁判問題を理由に拒否。議長国としてはありえないネトウヨ的行動に出たわけだが、文大統領は前述したように、今回、トランプ大統領と板門店に同行し、金委員長と会い、電撃米朝会談のキーマンになった。ようするに安倍首相はネトウヨ脳で対北朝鮮外交へのコミットのチャンスをふいにしてしまったのだ。
いずれにしても、安倍首相と日本政府は、事前も、会談が終わってからも、何にも知らされていなかったということは間違いない。
しかし、だとしたら、いったい安倍首相のこれまでのあの勇ましい言動はなんだったのか。
たとえば安倍首相は5月19日の「全拉致被害者の即時一括帰国を実現せよ!国民大集会」でこう宣言していた。
「私自身が金正恩委員長と直接向き合わなければならないと、こう決意をいたしております。条件を付けずに金正恩委員長と会って、そして率直にまた虚心坦懐に話をしたいと考えています。」
「拉致問題は安倍内閣で解決する」
また、5月28日の日米首脳会談後の共同記者会見でも、こう胸を張っていた。
「最新の情勢を踏まえ、方針の綿密なすり合わせをした。日米の立場は完全に一致している。拉致問題の一日も早い解決に向け、次は私自身が条件をつけずに金正恩朝鮮労働党委員長と会い、率直に虚心坦懐に話をしたい。トランプ大統領からも「全面的に支持する」「あらゆる支援を惜しまない」との力強い支持をいただいた」
それが、たったひとり蚊帳の外状態。ようするに、これまでの安倍首相の発言はすべてインチキ、中身のない“やってる感演出”にすぎなかったというわけである。
インチキがばれたのは、安倍サマのやることはなんでも正しいと叫ぶ安倍応援団メディアも同じだ。何しろ、連中はこの間、日米が連携して対北朝鮮交渉を行い、韓国がいかに蚊帳の外に置かれているかを喧伝してきたのだ。
たとえば、5月、安倍首相が北朝鮮との交渉について「前提条件なし」と方針転換を表明した際、御用記者のNHK岩田明子記者はこのように解説していた。
「今回の発言は、根本的な方針を変えたのではなく、『今後は北朝鮮外交で日本が一歩踏み込む』という姿勢を示したということではないでしょうか。この対北朝鮮外交の姿勢については、実は安倍総理大臣は、2月の米朝首脳会談後のトランプ大統領との電話会談や、先月(4月)にワシントンで行った日米首脳会談で、『今まで以上に日本が積極的な役割を果たしたい』と伝えていました」
また、「夕刊フジ」は4月の米韓首脳会談の際、「『実質2分』見限られた文大統領 米は裏切り許さず…『いい加減にしろ』文氏を恫喝」と言うタイトルの記事を出し、〈文氏がどのような誘い水をかけようと、トランプ氏には3回目の米朝首脳会談を行うメリットはない。〉〈米国が、韓国を見放しつつあるのは明らかである。〉などと断定ていた。
さらに、フジテレビ系のFNNはつい3日前、28日に「韓国の外交孤立浮き彫りに」と題し、最近の韓国はアメリカとも北朝鮮ともギクシャクしていると分析、北朝鮮外務省のアメリカ担当局長「韓国との水面下のやり取りは「一つもない」と完全否定」という談話を紹介、「韓国の努力を「お節介」と切って捨て、仲介を頼むことは「絶対に無い」と突き放した」などと報じていた。
他にも安倍応援団メディアは、「安倍首相とトランプ大統領の協力を得て、いよいよ拉致が動く」「日米の強固な絆で、韓国の存在はどんどん薄くなっている」などと書き立ててきた。その結果がこの有様なのである。
もっとも、安倍首相は、この期に及んでなお、必死でインチキをふりまいて対面を取り繕っている。
本日30日夜、参院選に向け行われた「ニコ生」での党首討論でも拉致問題解決に向け日朝会談は実現するのかという国民からの質問に、安倍首相はこう答えた。
「今日も米朝首脳会談がございました。トランプ大統領からも私の考え方を金正恩に伝えていただき、また習近平主席もこの問題においてたいへんな協力をしていただいております。被害者のご家族もだんだんお年を召され、時間が残ってないという気持ちで、私もあらゆるチャンスを逃さない決意で、この問題全面解決に向けて全力を尽くしていきたいと思っております。最後は金正恩委員長と向き合って解決しなければいけない、そう思っております」
ただ、伝言をお願いしたのを手柄話のように語ったうえ、なんと厚顔にも「あらゆるチャンスを逃さない決意」と述べたのだ。G20での日韓首脳会談を韓国側からの呼びかけを無視して見送り、せっかくのこの大チャンスを逃したばかりでよくそんなことが言えたものではないか。
安倍応援団メディアもこの安倍首相の失態をごまかそうと必死だ。NHKは30日夜の『これでわかった!世界のいま』で、国際部の記者が「トランプ大統領が幻想を振りまいているだけで、核合意は進まない」と日朝首脳会談の意義を否定。
産経新聞にいたっては今回の米朝首脳会談を受けてなお、〈文在寅政権の対北融和政策は行き詰まり、北朝鮮側からも「仲介役」であることを否定された。国際社会で相手にされない韓国では“韓国孤立論”という言葉さえ普通に飛び交っていた。〉と文大統領ディスを展開した後、会談についても〈歴史的な場面を見せる効果はあるものの「成果」は別のものだ。これまで米朝と南北は「平和のための握手」(文氏)とその光景の発信を繰り返してきたが、目立った成果はない。〉とこきおろすなど、涙ぐましいまでの、“無理やり”記事を掲載している。
もっとも、こうした手法はそろそろ限界にきているかもしれない
あれだけトランプ大統領に言いなりになって、国益をすべて差し出してきたのに、対北朝鮮外交で外されただけでなく、「日米安保条約を見直せ」と要求され、数カ月前には参院選までに北方領土2島返還に道筋をつけると息巻いていたが、昨日の日露首脳会談では全く進展なし、ロシアにもお金をむしりとられただけだったことが明らかになった。
安倍応援団メディアの協力を得て、“外交の安倍”をアピールし安倍首相だったが、それがインチキであることがどんどんばれてきているのだ。参院選向けアピールのためにG20の日程を前倒しまでした安倍首相だったが、このG20が“終わりの始まり”になるかもしれない。 
G20で日本が韓国・文大統領を冷遇… 7/1
 半導体材料の輸出規制を強化、韓国通貨危機の懸念も
6月28、29日に大阪でG20サミット(20カ国・地域首脳会議)が行われ、無事に終了した。さまざまな分野で各国の利害が対立するなか、どのような声明が出されるかに注目が集まったが、ひとまず無難に決着したといえる。
米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席による米中首脳会談では、通商協議の再開および華為技術(ファーウェイ)への禁輸の一部緩和が決まるなど、貿易摩擦は一時休戦の様相を見せた。また、トランプ大統領のツイッターに端を発した北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談が実現し、史上初めて現職の米国大統領が南北軍事境界線を越えて訪朝したことも大きな注目を集めた。
一方で、この事実上3回目の米朝首脳会談が実現する前の段階で、北朝鮮は韓国の文在寅大統領を非難していた。米朝が水面下で接触していることを匂わせる文大統領の発言を外務省幹部が否定し、「米朝間の調停役かのように公に振る舞って自らのイメージ刷新を試みている」などと批判、さらに米国との連絡については「韓国を通して進めるようなことはまったくない」と突き放したのだ。
これは、北朝鮮の「米国とのホットラインを利用するので韓国はいらない」「仲介役のふりをするな」というメッセージだろう。前回の米朝会談が失敗に終わった原因が韓国の介入にあるとの見方を踏まえての動きと思われる。実際、米朝間では事前に親書のやり取りが行われており、韓国の手を借りずとも会談の下地は整っていたといえる。
また、G20においては文大統領の冷遇も話題になった。日韓間で首脳会談が見送られたばかりか略式会談さえ開かれず、安倍晋三首相は出迎えの際に文大統領とほとんど目も合わさずに数秒握手しただけで終わったのだ。これについて、韓国メディアは「8秒間」と伝えているが、共同通信は「約5秒」としており、いずれにしても異例の短さであることに変わりはない。4月、文大統領はわざわざ渡米したにもかかわらず、トランプ大統領との会談が約2分で終了したことが話題となったが、それを超える冷遇ぶりといえる。
そして、日本の経済産業省は半導体材料の対韓輸出を規制する方針であることが明らかになった。対象となるのは、テレビやスマートフォンの有機ELディスプレイに使われるフッ化ポリイミド、半導体の製造に使用されるレジストとエッチングガスの3品目だ。
これまでは手続き簡略化などの優遇措置を取っていたが、7月4日からは契約ごとに審査・許可する体制に切り替えるといい、輸出手続きには90日間ほど要することになるという。許可が下りるかどうかは用途や使用先次第であり、米国のように不許可を前提とした運用も可能となる。今後は、韓国側の出方や対応を見極めながら段階的に締め付けていくのではないだろうか。
フッ化ポリイミドとレジストは日本が世界の全生産量の約9割を占めており、エッチングガスも約7割を日本が占めるとされる。そのため、韓国のみならず、世界の半導体企業は急に代替先を確保するのは難しい。規制強化により、サムスン電子やLGエレクトロニクスなど韓国の電機産業に悪影響が出ることは必至だ。韓国はサムスングループだけで国内総生産(GDP)の約2割を稼いでいるともいわれており、半導体は輸出産業の中核をなしている。日本からの材料供給が停止されれば、韓国の経済全体が壊滅的なダメージを受けることになるだろう。
また、同時に韓国は外国為替及び外国貿易法(外為法)の優遇制度「ホワイト国」から除外される見込みだ。これは、軍事転用されると安全保障の脅威となる先端技術などの輸出について許可申請が免除される制度で、除外後は個別の出荷ごとに国の輸出許可の取得が義務づけられる。これについては、7月1日からパブリックコメントが実施され、8月1日をめどに運用が開始されるという。
ホワイト国から外れることで、韓国は金融面での信用悪化も想定される。韓国の金融は日本が裏支えしてきた側面が強く、日本市場へのアクセスが困難になれば、韓国企業の調達金利の上昇や通貨暴落の要因にもなり得る。今回の輸出規制を定める外為法では日本からの送金を規制することも可能であり、仮に実施されれば韓国の金融産業が大打撃を受け、長期化すれば通貨危機に発展する可能性もあるだろう。
日本としては、送金規制のほかに、ノービザ渡航の廃止、外国人労働者受け入れ国からの排除、留学生や就労ビザの不許可運用など、まだ多くのカードを持っている。半導体材料の輸出規制は、1枚目のカードを切っただけにすぎないのだ。
また、これらの対応はG20で米国をはじめとする関係国とすり合わせをした上でのものと思われる。トランプ大統領がツイッターで直接北朝鮮に呼びかけ、実際に金委員長と再会するに至った。ほぼ時を同じくして、日本は韓国に異例の制裁を科すことを決めた。G20の裏で、韓国は政治的にも経済的にも厳しい立場に追い込まれたことが明白である。 
 
 
 7/2

 

G20「完璧だった」=トランプ氏、安倍首相を称賛 7/2
トランプ米大統領は1日、大阪市で開催された20カ国・地域首脳会議(G20サミット)について、ツイッターへの投稿で「完璧だった!」と称賛した。
トランプ氏は「不足していたものも、失敗も何一つなかった」と強調。「このように素晴らしく、よく運営されたG20を主催した安倍(晋三)首相をお祝いする」と述べた。
G20後に訪問した韓国の文在寅大統領に対しても、「北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談でき、大きく報じられたのは素晴らしかった」と謝意を示した。  
G20が閉幕 海洋プラスチックへの対策は結局どうなったの? 7/2
大阪市で開催されていたG20サミットが、6月29日に閉幕した。近年問題視されている海洋プラスチック問題も、主要テーマの1つとして話し合われた。
会議での成果をまとめ発表された首脳宣言では、対策として、新たな海洋プラスチック汚染を2050年までにゼロにする事を目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有。プラスチックの重要性を認識しつつも、管理を誤ったプラスチックごみの流出を減らすなど、包括的なアプローチによって海洋プラスチックごみによる汚染の削減を目指す。
また、日本政府としては、廃棄物管理、海洋ゴミの回収などの技術推進の為に途上国における能力強化を支援する「マリーン(MARINE)・イニシアティブ」も発表。
G20大阪サミット前に長野県で行われた「G20エネルギー・環境関係閣僚会合」では、各国が海洋プラスチックごみの削減に向けた行動計画の進捗状況を定期的に報告・共有する「G20 海洋プラスチックごみ対策実施枠組」が決められた。
一見多くの進展があったように見えるが、G20大阪サミットが閉幕した同日、「それでは不十分」と「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」のメンバー及び賛同24団体が共同声明を発表した。
声明文では、G20大阪サミットで共有されたビジョンや枠組みの内容を歓迎するとした上で、それでは対策として不十分であり、法的拘束力のある国際協定の早期発足や、2030年までの意欲的なプラスチック使用量削減目標を日本が率先して設定することなどを求めた。
この共同声明文を発表したネットワークのメンバー団体であるWWFジャパンで、プラスチック政策マネージャーを務める三沢行弘さんは、「今回の宣言は一定の評価はできますが、早急に止める必要のあるプラスチックごみの海洋汚染の達成目標が2050年というのは遅すぎます」と話す。
「少なくとも2030年までの流出ゼロに合意し、廃棄処理や回収だけでなく、根本となる生産と使用の削減目標が必要です。そしてそれは努力目標ではなく、拘束力のある協定が求められます」と語った。 
G20・米中首脳会談の着地は「前向きなサプライズ」 7/2
20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)が閉幕した。もとよりG20は何かを決める場所ではなく、あくまで首脳同士で問題意識のすり合わせを行う場所という性格が色濃いものであり、金融市場の取引材料を期待するイベントではない。
だが、今回は通商協議の行方が注目される米中首脳会談が重ねて行われるということもあり、トランプ米大統領および習近平・中国国家主席の言動を中心として、その行方が平時以上に注目されていた。
結論から言えば、「どうせ何も材料は出ない」という市場予想を前提とすれば、かなり前向きな結果に着地したと言える。
得るものが多かったのは中国
閉幕後に開催されたトランプ大統領の記者会見のポイントを金融市場の観点からまとめると、主に4つある。
(1)中国への追加関税(3000億ドル分の中国製品に対する25%)を当座は見送り、協議を再開
(2)米企業と中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)との取引を再開(同社に対する禁輸措置の解除)
(3)日米安保条約の破棄は考えていないが不公平
(4)G20終了後に北朝鮮の金正恩委員長と面会する予定(そして実際に面会)
このうち(1)は想定通り、(3)も事前報道と大きく乖離するものではない。サプライズは(2)と(4)であり、どちらも市場心理の改善に寄与している。
とりわけ(2)については、ファーウェイに対するアメリカ側の厳しい対応が米中貿易戦争のバロメーターのように解釈されてきたことを思えば、トランプ大統領が「安全保障上の問題がなければ米企業と同社の取引を容認する」と述べたことは大きな材料と言える。
(1)と(2)を見る限り、今回の会談は中国側が得るものが多かったように見受けられる。
対米貿易交渉の「大義名分」を手に入れた日本
議長国の日本については総じて「上手くやった」との評価が目立つが、今後を見据えた上で目を引く課題も残った。
もちろん、シンボリックには上述した(3)であり、参院選(7月21日投開票)を前に日米同盟の見直しを提起されたことは、政府・与党にとって想定外だったかもしれない。金融市場の観点からすれば、今後、日米貿易交渉を進める上で「為替」に加えて「安全保障」まで取引カードに乗ってきてしまうのかという不安を抱かざるを得ない。
日米貿易交渉に絡めて気になったのは、首脳宣言の「世界経済」部分において「グローバル・インバランス(経常収支不均衡)は依然として高水準かつ持続的。サービス貿易・所得収支を含む経常収支の全ての構成要素に着目する必要性に留意」との表現が入ったことだろうか。
G20開催前、浅川雅嗣財務官がこの論点を強調する報道が見られたので、日本からアメリカへのメッセージ性が強い表現ではないかと察するが、程度の差こそあれ、アメリカと相対する多くの経常黒字国ないし貿易黒字国と認識を共有するものであろう。
経常黒字と、海外への直接投資や証券投資から得る黒字を示す「第1次所得収支黒字」の水準がほとんど同額の日本からすれば、「黒字」と貿易摩擦は全くリンクしない。
首脳宣言に記載したこうした正論が、直感的なトランプ交渉術にどこまで有効なのか知る由もないが、交渉を進める上での公的な大義名分を手に入れられたことは、開催国として挙げた1つの「武功」と言えるのかもしれない。
今後はこうした正論を盾に「為替」や「安全保障」といった破壊力のあるカードを持つアメリカと相対していくことになる。交渉は簡単なものにはならないのだろうが、アプローチとしては至極真っ当なものであり、好ましいものであるように思える。
「米中」は問題蒸し返しも想定内
総じて好材料が目立ったG20だったが、米中貿易協議について言えば、既存の追加関税(「2000億ドルに対し25%」など)が消えるわけではなく、座礁していた協議がリスタートしただけである。
協議が「解決」せずに「継続」している以上、トランプ大統領が唐突にツイッターで「やはり3000億ドルについても25%を課税することにした」と表明するリスクは消えない。解決間近と噂されながら、「2000億ドルに関し10%から25%に関税を引き上げることにした」と唐突に交渉決裂を宣言したのはわずか2カ月前(5月5日)の出来事である。
トランプ大統領は今回、「少なくとも当座は中国に対する関税を引き上げることはしない」と述べているが、企業や市場参加者の不安は尽きないだろう。
「引き上げることはしない」とは言ったが、「当座」が何を意味するかまでは明言していない以上、例えば1月後にいきなり問題が蒸し返されてももはや驚きではない。いや、これまでの経緯を踏まえれば、そうならないと思っている参加者の方が少ないくらいではないのか。
ファーウェイに対する禁輸措置も同様であり、早速、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長から「これは恩赦ではない」とのコメントが見られ、同社について「いわゆるエンティティー・リスト(安全保障上の脅威である外国企業のリスト)に残り、厳しい輸出管理が適用される」という状況は変わらないことが確認されている。一連の動きはポジティブに違いないが、依然として可変的であることは念頭に置きたい。
「サプライズ」だが「ゲームチェンジャー」とまでは言えない
そもそも米10年金利が一時2%を割り込み、ドル/円相場が一時106円台をのぞきに行く展開となった背景には何があったのかを今一度、振り返るべきだろう。
米中貿易協議への不透明感もさることながら、アメリカの国内外の経済・金融情勢を踏まえて米連邦準備制度理事会(FRB)が「もう利上げは難しい」と判断し、「次の一手は利下げである」という地ならしを始めたからであったはずだ。
この雰囲気が本格化したのは、米10年金利が2.40%を割り込み始めた5月半ば以降である。
ドル/円相場の週間変化率に関し、米10年金利とNYダウ平均株価のそれとの相関係数(関係の強弱をはかる指標)を取って比較したものが【図表】である。
6月のNYダウ平均株価は約7.2%上がり、同月としては81年ぶりの高い上昇率となったことが話題だが、これに連れてドル/円相場が値を上げたわけではなく、むしろ水準は切り下がった。過去2カ月間でドル/円相場は株価よりも米金利と安定的な関係を持つようになっており、それだけFRBの政策姿勢の転換が重視されるようになってきていると解釈すべきだろう。
「米金利が下がる」という大前提が生まれた今、いくら緩和期待で株価が押し上げられても、積極的に円売り・ドル買いをする向きは限られるというのが筆者の基本認識である。上述した(1)、(2)、(4)は市場心理を明るくするものではあるが、金融市場のゲームチェンジャーとまで言えるものではない。
FRBの政策転換とともに「過去5年のドル高が修正される」という為替市場におけるメインシナリオは、「継続」と見て問題ないだろう。 
文在寅大統領、G20での影の薄さは米朝会談で挽回できたか? 7/2
G20首脳会合は、韓国・文在寅大統領の影が薄い会合となった。同時に、G20での文大統領の動向は、過去2年間の政治の失敗を反映する出来事となった。
G20の席上での経済に関する発言内容は、韓国政府の経済運営に関する疑念を深めたのではないだろうか。また、中ロとの会談でも文大統領の期待する北朝鮮問題への協調を促進する契機とはならなかったのではないか。
ただ、トランプ大統領が南北軍事境界線にある非武装地帯訪問の際に、金正恩国務委長と面会する可能性があるとの報道が流れていたため、韓国内では世間の関心が北朝鮮に向き、国内のメディアにおいて文在寅大統領の外交的無策が目立たなかったのが、文大統領にとっては幸いであったであろう。
文大統領とホスト国の安倍晋三首相との会談は、立ち話さえも行われなかった。会談前に安倍総理が各国の首脳を出迎えた際に、8秒間ぎこちない握手をしただけだった。各国首脳を招いた夕食会も、日韓の首脳は別のテーブルに席があった。
安倍首相がこれほど文大統領との会談を避けたのは、同政権が徴用工問題で出してきた答えが、日韓両国の企業が資金を出し合って、判決の出ている徴用工に賠償しようというものであったためである。この策はもともと青瓦台も否定していたし、日本にとっては元徴用工に対する個人請求権は消滅しているとの大原則を否定する案である。日韓の外相が20分間元徴用工の問題を話し合ったというが、平行線に終わった。
一般的に、多国間会議で開かれる首脳会談は、事前に大きな成果を準備しなくても比較的気軽に会える場である。それにもかかわらず、日韓間では立ち話もなかったということは、日韓関係の異常な冷え込みを象徴するだろう。今後とも当分の間、実りある首脳会談は期待できず、日韓の政治関係は文政権が続く限り立て直しは困難であろう。
ただ、日本側のこうした対応に対する韓国の反応は、これまでよく見られていた日本の非礼を追及するもの一辺倒ではなく、日韓関係の異常なまでの冷え込みを懸念する声も多く聞かれた。それだけ、日本の韓国バッシングの姿勢が韓国にも知られるようになったということであろう。文政権はこうした変化に気付いてほしいものである。
G20が終了した直後の7月1日、日本政府は有機ELに使うフッ化ポリイミド、半導体製造で使うレジスト、エッチングガスの3品目で、韓国に認めていた簡略な輸出手続きを改め、契約ごとに輸出を審査・許可する方法に切り替える方針であると報じられている。そのうちの2品目は日本のシェアが9割に達する品目であり、韓国経済に大きな影響を与えることは間違いなさそうだ。これに対し、韓国は「戦前日本が軍事力で韓国を支配した、戦後は経済力で韓国をたたこうとするのか」と再び反日になる懸念がある。しかし、日本政府は、元徴用工を巡り韓国政府に行動を促すことを重視したのであろう。
また朝鮮日報は、G20の機会に日、米、インドの会合が開かれ、「インド太平洋構想」のビジョンを共有したことに懸念を表明している。これまで多国間会議があるたびに、日米韓会合が開催されていたが、今回は話題にも上らなかった。米国は新たなアジア太平洋戦略を組むに当たり、日本、インドを選択し、ここに韓国はなかった、としている。これが今、韓国が置かれている外交の立ち位置である。文在寅氏は米韓首脳会談で米国のこの戦略に協調すると述べたが、一歩遅れているとの感は否めない。
ちなみに、日韓首脳が8秒間の握手をした日、ソウル市で開かれた「日本企業採用博覧会」には志願者だけで1600人が集まり、大盛況だったという。文在寅政権と韓国市民一般が見る日本との間には距離があることの象徴である。
文在寅大統領は、G20の「世界経済と貿易投資」をテーマとしたセッションで発言し、「低賃金労働者の割合が過去最低水準に下がり、労働者間の賃金格差も緩和されている。G30諸国は世界経済の下降リスクにも先回りして対応すべきだ。韓国政府も拡張的財政運用のために努力している」と述べた。
相変わらず、所得主導成長が国民生活を疲弊させていることに反省がなく、無謀な財政支出で政府債務を際限なく増大させていることを顧みない発言である。IMFをはじめ、欧米の主要な格付け機関が韓国の経済状況を下方修正している時に、経済停滞の原因となっている経済政策を誇示するようでは韓国経済に対する信頼を失わせるばかりである。そうした危惧を持たず、独善的な見解を示したことを世界はどう判断するであろうか。
2日間にわたって開かれたG20では、韓国の存在感はかつてないほど薄いものだった。だが、文大統領なりに、各国との外交活動は行っていた。主なものを検証してみたい。
まずは中韓首脳会談である。経済や安全保障において関係が深く、韓国にとって極めて重要な隣国であるが、会談後の中韓の発表を聞くと、両国は足並みが揃っていないようだ。
韓国側の説明によれば、習主席は、中朝首脳会談の際に、金委員長が「対話を通じ問題を解決したい」との立場を示し、「非核化の意思は不変」と述べた由であり、中国も「朝鮮半島情勢を進展させるため、建設的な役割を続けていく」と述べたようである。
しかし、中国側の説明によれば、会談で習近平主席が真っ先に取り上げたのは、THAAD(高高度防衛ミサイル)の在韓米軍配備問題であり、「解決にむけた方策が検討されることを望む」と述べたそうである。
韓国は、この問題について「THAADの追加配備はしない」「米国によるミサイル防衛システムには入らない」「韓米同盟には加わらない」といういわば「三不」を約束することで決着がついたと述べていた。だが、そもそもこの三不などは主権国家として他国と約束すべき事項ではない。だが、それでも中国は韓国を責め立てた。中国のような国との外交では、一度原則なしに譲歩してしまえば、それが終わりとはならず、その後も責め立てられるということである。
中韓首脳会談は、韓国が説明しているような、北朝鮮の非核化で中韓の協力を誇示する会合ではなかったようである。
韓ロ首脳会談は、プーチン大統領が2時間遅れて到着したようである。プーチン大統領は遅刻の常習犯であることは有名だが、始まったのは午前0時半過ぎであり、遅れたことに対する謝罪はまったくなかったようである。韓ロでは「北朝鮮に対する安全保障が核心であり、非核化に対する相応の措置が必要だ」とする金正恩氏のメッセージを中心に議論したようでる。これ以外のテーマも話したとあるので、南北ロ協力についても話し合ったとみられる。ただ、韓国ではプーチン大統領の遅刻に話題が集中し、会談の中身に関する関心がそがれてしまった。
米国トランプ大統領はG20首脳会談の後、韓国を訪問した。29日歓迎夕食会、そして30日午前に少人数の米朝首脳会談が開催され、その後昼食会を兼ねた拡大会合が開催された。ただ、その会談内容については、韓国の新聞にもあまり報じられていない。
同日午後に予定されていた非武装地帯訪問と、その際のトランプ大統領と金正恩委員長との会談に関心が集中していたからである。
米韓会談の主要関心事も、来る金正恩委員長との会談だったのであろう。トランプ大統領は「経済的なバランス、貿易、軍事などを巡る話があった」と述べた。在韓米軍防衛費分担金の増額、貿易の不均衡問題、米中の覇権争いの問題で、米国は韓国にプレッシャーをかけたとみられている。
そして30日午後、トランプ大統領は南北の軍事境界線に接する非武装地帯を訪問。文在寅大統領が同行した。まず、哨戒所に立ち寄って北朝鮮を一望した後、米韓両軍兵士を慰問した。
米朝首脳は、お互いの領内を行き来し、その後、文大統領も加わって韓国側の施設「自由の家」に入った後、米朝首脳だけの会談が1時間ほど行われた。それには文在寅大統領は加わっていないが、再び「自由の家」を出てきた時には文在寅大統領も一緒にいた。
会談後のぶら下がり会見でトランプ大統領は、今後米朝で実務者チームを立ち上げる。米国はポンぺオチーム、ビーガンチームで交渉に臨んでいくことを明らかにした。北朝鮮は板門店に李容浩外相、崔善姫第一外務次官を同行させており、彼らが交渉の中心となるのだろう。実務者チームは今後2〜3週間で何ができるか模索することになる。さらにトランプ大統領は、スピードは求めておらず、包括的な合意を目指すと述べた。
トランプ大統領が金正恩委員長との会談を思いついたのは、前日であり、24時間という短期間で金正恩委員長が会談に応じたことに感謝の意を伝え、また、金正恩委員長をホワイトハウスにも招待し、金正恩氏もトランプ氏を平壌に招待した由である。
トランプ大統領は選挙モードに入っている。その一例が米中首脳会談である。トランプ氏が、強硬姿勢を引っ込め、当分交渉を再開すると言ったのも、第4弾の関税引き上げが国内の消費者物価に及ぼす影響、景気に与える影響を懸念しているからだろう。それは再選を目指すトランプ大統領にとって大きな痛手となりかねない。
同様に北朝鮮問題についても、2月のベトナムでの会合以来、膠着状態になっており、実務者協議を開けるような状態にはなっていなかった。そこで金委員長と面会し、実務者協議を再開することを目指したというわけだ。トランプ大統領はぶら下がり会見で、再三、自身が大統領に就任した時には北朝鮮の核問題はひどい状況にあり緊張が高まっていたが、現在は関係が改善した点を強調している。米朝の緊張関係の緩和はトランプ大統領の功績であり、これを維持したいということを誇示していた。その意味で、トランプ大統領にとっては今回の会談には成果があった。
トランプ大統領は交渉に臨む方針として、早く交渉をまとめるよりも包括的で良い合意を目指すと述べている。しかしこの点について、金正恩委員長とどこまで話しあっているかは定かでない。北朝鮮は、シンガポールの首脳会談では、包括的でなく、段階的非核化について合意があったと主張しており、その立場は崩していない。したがって、実務者会談を再開しても認識の違いがあれば、実質的な進展が見込めるのか、今後見極めていく必要があるだろう。
金正恩氏は、トランプ大統領のツイッターを見て今回の面会を決意したと述べた。僅か24時間で首脳会談が実現するのは異例。それは同時に、金正恩氏がどれだけ米朝首脳会談を欲していたか端的に物語っている。
金正恩氏にとって、今年の北朝鮮の干ばつは深刻であり、1000万人が食糧不足に陥るといわれている。加えて、金正恩氏が軍部や党の忠誠を促す統治資金も枯渇に近いようである。
トランプ氏は米朝関係の改善を「急いでいない」という態度だ。その半面、北朝鮮は交渉による制裁緩和を急いでいる。トランプ氏は制裁について、「制裁は外すことを楽しみにしているが、科したままだ」と述べた。今は、しっかりとした実務協議を行い、北朝鮮の譲歩を促す時だとみているのだ。
一方で文大統領は、今回の会談に加わり南北プラス米国という形式の首脳会談とすることは出来なかった。米朝の仲介者役を自認していた文大統領としては、メンツをなくしたともいえる。しかし、トランプ大統領の訪韓をアレンジし、それが米朝の面会につながったことで、国内的には仲裁役を果たしたということで、一応の格好はついた。それ以上に、文大統領は米朝の交渉が進めば、北朝鮮と経済協力に道が開けると期待している。
ただ、そううまくいくかどうかは北朝鮮の出方が鍵である。北朝鮮の対南宣伝メディアは、米朝の面会、会談があった30日、「南朝鮮当局が対米追従姿勢を捨てないならば南北関係は今日の状態から抜け出すことはできない」と非難している。朝鮮半島を巡る構図は、米、南北、中ロの利害を巡ってますます複雑になってきていることが、G20会合で改めて確認できたというところであろう。 
G20に出席したイヴァンカ・トランプ、世界中で大ひんしゅく 7/2
先日、大阪で開催されたG20サミット。その中でもひときわ浮いている場違いな人がいた。娘ということを理由に会議に出席させた、イヴァンカ・トランプだ。世界各国のリーダーたちがイヴァンカ・トランプに対して、うわべだけ礼儀正しく接しながらもいらだちを隠せぬ様子を捉えた動画が、ソーシャルメディア上に投稿され、世界中からひんしゅくの声が絶えない。
2019年6月29日夜、フランス政府がInstagram上に公開した動画には、ドナルド・トランプ米大統領の娘イヴァンカがG20サミットの会場で世界各国のリーダーたちとの会話に加わる姿が写されている。イヴァンカは父親に同行してG20サミットに参加し、女性の経済的エンパワーメントをテーマに講演を行った。
投稿された動画は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領による社会正義についてのコメントから始まる。続いて英国のテリーザ・メイ首相が会話に加わり、経済的な見地から問題に取り組めば人々の関心がより高まる、と発言。「問題の経済的側面を取り上げればすぐに、それまで無関心だった多くの人々も耳を貸すようになるでしょう」とメイ首相は述べた。
その時イヴァンカがここぞとばかりに口を開き、国防部門はいかに男性が多数を占めているか、などという的外れな意見を述べ始めた。「さらにその状況は国防の分野だけに限りません」とイヴァンカは言う。「あらゆるビジネスの場面で完全に男性優位な状態が続いています。」
大統領の子女による発言に、IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事は軽蔑の色を隠せず、明らかないらだちの表情を浮かべた。
イヴァンカがサミットに関わることは、米民主党からの批判を招いた。アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(民主党、ニューヨーク州)はフランス政府の動画を共有しつつ、大統領の娘によるG20サミットへの同行を批判した。「耳の痛い人もいるでしょうが、誰かの娘だからといってキャリアの資格が与えられる訳では全くありません」と彼女はTwitterに投稿した。「大統領がいい加減な対応をし、それで世界が動くとすれば、米国の外交姿勢が問われます。米国はG20を主導する大統領を必要としているのです。正規の外交官を同行していれば何の問題もなかったでしょう」
テッド・リュー下院議員(民主党、カリフォルニア州)もまた、同動画をTwitterで共有し、「この動画に対するイヴァンカ・トランプの説明を聞いてみたいですね。でもそういえば、ホワイトハウスの上級顧問を務める彼女のアカウント@IvankaTrumpから私はブロックされているのでした。誰か以下の動画を彼女へ転送し、彼女にコメントを求めてもらえませんか?」とツイートしている。
イヴァンカ・トランプがG20サミットで場違いな役を演じたのは、これが初めてではない。2017年のサミット時、中国国家主席、トルコ大統領、ロシア大統領、英国首相、ドイツ首相らによる会議中に、彼女は席を外した父親に代わってテーブルに着き、その行動は批判を呼んだ。マキシン・ウォーターズ下院議員(民主党、カリフォルニア州)は当時、「彼女が席に着くのは筋違い。G20サミットには合衆国大統領が自由主義諸国のリーダーとして参加しているのです。彼は政治の場を利用して自分の娘を公の場に引き出し、何の知識もない彼女を重要な会議に参加させようとしています。彼女は、参加している国々の代表といかなる交渉もできません。彼女は話し合われる問題に関して全く理解していないのです」と述べている。
共有された動画を見る限り、ウォーターズ議員による当時のコメントは今なお通用するようだ。  
 7/3
米中首脳会談に注目集まる、G20大阪サミット 7/3
米国主要メディアは、6月28、29日に開催されたG20大阪サミット(首脳会議)について、トランプ大統領がこの機会に行った各国首脳との会談内容を中心に報道した。中でも、追加関税の発動の有無が注目されていた米中首脳会談に関する報道が目立った。いずれのメディアも、貿易摩擦の一時停戦を評価する姿勢を示しつつも、根本的な解決は当面先になるとみている。
「ウォールストリート・ジャーナル」(WSJ)紙は6月30日付の記事で、トランプ大統領と習近平国家主席は貿易交渉の再開にこぎつけたが、多くの課題を残したと報じた。トランプ政権に政策的な助言を与えているとされるハドソン研究所のマイケル・ピルズベリー氏による「習氏とトランプ氏ともに、支持を取り付ける必要のある基盤を抱えている対称的な状況にある」とのコメントを引用し、習氏は中国共産党内の対米強硬派を、トランプ氏は超党派となっている議会の対中強硬派に加えて、2020年の大統領選挙を見据えてビジネス界や農業州を無視できないと指摘している。
米中間ではファーウェイ問題が議論の焦点
また、いずれのメディアも、トランプ大統領が発表した華為技術(ファーウェイ)に対する輸出規制の緩和について、今後も賛否の議論が続くとしている。経済誌「ブルームバーグ」のコラムニストであるティム・カプラン氏は7月1日付の記事で、規制緩和に踏み切ったトランプ氏の判断は「水面下で起きている技術面での冷戦を止めることはない上に、ファーウェイは政治的な人質以上の存在だとしてきた米国のスタンスを弱めてしまう」と指摘した。
北朝鮮、サウジアラビア、ロシアの首脳との会談にも着目
米中関係以外では、各紙によって着目する案件が若干異なるものの、トランプ大統領と(1)北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長、(2)サウジアラビアのムハンマド皇太子、(3)ロシアのプーチン大統領との会談に関する報道が集中した。
(1)は板門店で6月30日に行われ、2月にベトナムのハノイで開催された第2回米朝首脳会談が不調に終わって以降、初の会談として各メディアがトップ記事で取り上げた。「ニューヨーク・タイムズ」紙は30日付の記事で、「任期を半分以上終えた中で、トランプ氏は(北朝鮮との)長年の紛争を解決し自らのレガシーにすることで、来年の選挙の弾みにする考えだ」と評している。
(2)については、トランプ大統領が、2018年10月にトルコで発生したサウジアラビア人記者カショギ氏の殺害を指示した証拠があるとして厳しい立場に立たされているムハンマド皇太子を積極的に擁護する姿勢を見せたことに関して、政治紙「ポリティコ」は6月29日付記事で、「トランプ氏はカショギ氏殺害に関する記者の質問を無視して、皇太子を称賛し続けた」としている。
(3)では、2016年の米国大統領選挙にロシアが介入したとされる点に関して、トランプ大統領がプーチン大統領に対して、「選挙に介入しないように」と伝えたことが大きく報道された。その発言が記者からの質問が相次ぐ騒々しい中で軽快に出たことを批判的にみる向きもある。「USAトゥデー」紙は6月28日付の記事で、「トランプ氏は相変わらず、米国の安全保障を犠牲にしてプーチン氏を満たしている」と評したオバマ政権時の駐ロシア米国大使のマイケル・マクフォール氏のツイッターでの発言を紹介している。 
米中首脳会談、経済貿易交渉の継続を合意 7/3
習近平国家主席は6月29日、G20大阪サミット(首脳会議)のため訪問中の大阪で、トランプ大統領と首脳会談を行った。
中国外交部の発表によると、両首脳は、米中関係の発展に関する根本的な問題や現在の米中経済貿易摩擦、共通の関心事項である国際問題や地域の問題について深く意見交換を行った。
さらに両首脳は、米国が中国産製品に新たな追加関税を課さず、平等と相互尊重に基づき、経済貿易交渉を再開することで合意した。
会談で習国家主席は、中国は米国との交渉について誠意をもって継続し、対立事項を管理・コントロールする意思があると述べつつ、交渉は平等であるべきで、中国の主権と尊厳に関わる問題においては、自国の核心的利益を必ず守るとの従来の主張を強調した。
一方、トランプ大統領は、両国企業に公正な待遇を提供するために、米国は交渉を通して両国の貿易均衡の問題を適切に解決すると述べ、米国は中国からの輸入品に対して新たな追加関税を課さないとした。
首脳会談での合意を受けた中国国内の報道では、合意を歓迎する論調が目立つ一方、米国内でも意見の相違が見られることなどから、今後の交渉妥結には長期間を要するといった慎重な見方が出ている。
「環球時報」7月2日付記事は、首脳会談後に米国、日本、英国、ドイツなどの株式指標が上昇したことを挙げ、「米中交渉が正常な軌道に戻ったことに対する歓迎と期待を反映している」と評価した一方、これまでの交渉で明らかになった両国の主張の隔たりから、「最終的な貿易協議の合意は容易ではなく、長期間を要する」と指摘した
「人民日報」7月2日付記事は、ホワイトハウスのクドロー米国家経済会議委員長がメディアの取材に対し、トランプ大統領が華為技術(ファーウェイ)への米国製品販売を認める考えを示したことについて、「恩赦ではない」と発言し、知的財産権の侵害や強制的な技術移転、サイバーセフトなどの問題を再び指摘したことについて、「彼が発信したシグナルは両首脳が会談で合意した内容と異なる」と批判した。 
日本、世界競争力30位で“タイ以下”に… 7/3
 日本のモノづくり力を疑うべき
世界的に著名なスイスのビジネススクール「IMD」は、1989年から「世界競争力ランキング」を発表している。今年は5月28日に発表され、これを踏まえ翌29日にフィリピン・マカティにあるビジネススクール「AIM」で、「フィリピンの競争力」に関するカンファレンスが開催され、筆者も出席した。発表の翌日にカンファレンスが開催されるという驚異的なスピード感は、アジア屈指のビジネススクールであるAIMとIMDとの良好な関係により実現している。
世界競争力ランキングは、どのように決定されるのか。まず、使用されるデータは61%が統計データ、残りの39%はグローバル企業の経営陣への意識調査となっている。今年は6100人のエグゼクティブを対象に調査が実施されている。
評価項目は大きく「経済のパフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」という4つのポイントから構成されている。
2019年のフィリピンの世界競争力は46位という結果であった。今回調査対象になっている国は63カ国ゆえ、深刻に捉えるべき事態と思われるが、和やかな雰囲気で始まった。昨年の50位よりランクアップしていることに加え、楽天的なフィリピン人の特性が影響しているのかもしれない。
評価内容に注目すると、労働市場(10位)、国内経済(12位)、税制(14位)などは上位にあるものの、基礎的インフラ(61位)、教育(58位)、貿易(54位)などは極めて深刻な事態となっている。
確かに、道路などの交通事情は極めて悪く、たとえばグーグルマップで目的地までの到着時間を調べると「45分〜2時間30分」などと表示され、まったく時間が読めない状況である。マニラでは、「1日に2つのアポイントメントを入れてはいけない」と、よく言われている。
しかしながら、教育に関しては、マニラの街中には大学が数多く点在し、筆者の知り合いでも、富裕層ではないものの必死に子供を大学に通わせようとしている人が多く、もっと上位に位置していると思っていた。ちなみに、フィリピンの大学進学率は35%程度である。
ASEAN(東南アジア諸国連合)の他国の状況として、マレーシア(22位)、タイ(25位)、インドネシア(32位)といった国々の結果も報告された。とりわけ、インドネシアに関して、17年には共に40位程度であったものの、その差が大きく開いていることには危機感のようなものが流れた。
カンファレンスには実業界、さらには政府関係者も出席しており、こうしたデータを真摯に捉え、今後の方策について活発な議論が繰り広げられた。
それでは、日本の世界競争力は何位なのだろうか。結果は30位となっている。こうした数字に、恐らく多くの日本人は嫌悪感や不信感のようなものを抱くことだろう。「馬鹿にするな」と怒る人もいるかもしれない。確かに、世の中には多くのデータが散乱しており、日本が上位にきているデータもある。また、IMDのデータはすでに述べたとおり、統計データだけではなく、経営陣への意識調査といった主観的なものも含まれており、経営陣一人ひとりがどれほど国際情勢などを正しく理解しているのかについては議論の余地もあるだろう。
しかしながら、こうした耳の痛いデータに対して真摯に向き合うことも大事なのではないだろうか。たとえば、多くの日本人が信じている“日本のモノづくり力”についても、疑う必要があるかもしれない。そもそも“モノづくり力”とは何なのか。日本では一般に“低コストで高品質のモノをつくる力”を意味している。一方で、グローバル化する高競争時代の現代の市場環境においては、“超低コストながら中品質のモノをつくる力”もしくは“高コストではあるが、超高品質のモノをつくる力”などが競争優位性のある“モノづくり力”になるのかもしれない。こういう視点でとらえると、日本のモノづくり力はどのように評価されるのだろうか。
ちなみに、世界トップテンは以下の通りである。1位・シンガポール、2位・香港、3位・アメリカ、4位・スイス、5位・アラブ首長国連邦、6位・オランダ、7位・アイルランド、8位・デンマーク、9位・スウェーデン、10位・カタール。 
 7/4
中国、板門店での米朝首脳会談の意義を評価、支持を表明 7/4
米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は6月30日、朝鮮半島の南北非武装地帯(DMZ)にある板門店で3回目の首脳会談を行った。中国外交部の耿爽報道官は7月1日の定例記者会見で、「米朝韓首脳が友好的に会ったことは歓迎に値する」と評価し、「会談は建設的で、前向きな成果を収めた。特に、米朝双方が近く実務者協議を再開すると決定したことには重要な意義がある。中国側はこれを支持する」と表明した。
耿報道官はさらに、「朝鮮半島における非核化の実現、半島の平和と安定の擁護、対話を通じた問題解決を堅持する」という中国側の「3つの堅持」原則を強調した上で、「中国は、関係各国との意思疎通や調整を強化し、半島の非核化と政治的解決のプロセスを不断に推進することで、新たな進展が得られるよう望む」と述べた。
王毅国務委員兼外交部長は7月2日、大阪で6月29日に行われた米中首脳会談で習近平国家主席がトランプ大統領に対し、朝鮮半島問題に関する中国側の原則的な立場を説明し、米国側が対北朝鮮経済制裁の緩和も含め柔軟な姿勢を示すよう働き掛けたことを明らかにした。また、王部長は会談について、「正しい方向に向かう重要な一歩であり、中国はこれを歓迎し、支持する」と述べたほか、6月20、21日の習国家主席の訪朝(2019年6月27日記事参照)について、朝鮮半島問題をめぐる最近の各国によるポジティブな動きとして挙げた(「環球網」7月2日)。
中国社会科学院アジア太平洋・世界戦略研究院の王俊生研究員は、今回の米朝首脳会談について、「トランプ大統領としては、前回のハノイ会談の成果が乏しく、米国内で対話による北朝鮮の核問題解決に対して疑問の声が上がる中で、今回、金氏と再度会談し、依然として朝鮮半島問題を対話で解決するとの希望を表明することで、2020年の大統領選挙での再選へ向けてポイントを稼ぎたい考えがあった。北朝鮮側としては、米国との対話を通じて自国にとって有利な国際環境を築くことができ、経済発展という戦略目標の実現にも資する」と、米朝双方の思惑を分析した(「新華網」6月30日)。
同時に、王研究員は、今回の会談について、「米朝の対話に新たな活力を注入したという点で意義がある。今回の首脳会談は時間こそ短かったものの、ハノイ会談の悲観的なムードをある程度払拭(ふっしょく)したことで、対話を引き続き正しい方向に進ませることができる」と指摘した。 
 7/5-
 
 
 

 



2019/7
 
 
●G20 

 

 
G20 
1
《Group of Twenty》20か国財務相・中央銀行総裁会議。世界的な経済の安定と成長をはかるための国際会議。年1回開催。G7(主要7か国財務相・中央銀行総裁会議)の米国・英国・フランス・ドイツ・日本・イタリア・カナダと、ロシア・中国・韓国・インド・インドネシア・オーストラリア・トルコ・サウジアラビア・南アフリカ・メキシコ・ブラジル・アルゼンチン・EU(欧州連合)の20か国・地域で構成される。
2
日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダの主要7カ国(G7)に、ロシア、中国、インド、ブラジル、南アフリカ、韓国、オーストラリア、メキシコ、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチン、欧州連合(EU)を加えた20カ国・地域。財務相・中央銀行総裁会議は1999年に始まり、リーマン・ショックが起きた2008年以降は首脳会議も毎年開かれている。
3
先進7ヵ国と欧州連合に12の新興経済国を加えた経済・金融国際会議。米,英,仏,独,伊,日,加の7つの国・地域はG7として財務大臣・中央銀行総裁会議を定期的に開催していたが,これを拡大して1990年より開催。加盟国はG7に加えてアルゼンチン,韓国,オーストラリア,メキシコ,トルコ,ブラジル,インド,ロシア,インドネシア,サウジアラビア,中国,南アフリカ,EU(欧州連合)。G20全体で世界のGDPの9割強,貿易額の8割を占めている。会議にはIMF,世界銀行,国際エネルギー機関などの国際機関の代表も参加している。また,G20以外の国が臨時参加することもある。2008年米国発の世界金融危機と世界同時不況,2010年・2011年のユーロ危機,ソブリンリスクなど,連続する経済危機で,その役割が重大化している。2013年4月にワシントンで開催された財務相・中央銀行総裁会議では,第二次安倍内閣と日本銀行・黒田東彦総裁が打ち出した大規模な金融緩和による日本のデフレ状況の克服という経済政策(アベノミクス)が注目された。G20のなかでも突出した財政赤字(政府債務)を抱える日本が,財政規律を無視するかのような極端な金融緩和政策を採用することに各国とも強い警戒感があり,会議は金融政策の対象は国内経済の問題と受け止めつつ財政規律の中期計画を日本に強く求めた。同年9月にロシアのサンクトペテルブルグで開催されたG20首脳会合(サミット)では財政健全化に向けた具体的な取組方針を示し各国首脳から強い期待と高い評価が寄せられた。2014年11月のオーストラリアのブリスベンでの首脳会合では〈経済成長率を2%以上底上げする〉などの首脳宣言が出されたが,世界経済は停滞しており目標実現の道筋は描けていない。安倍首相は2015年10月の消費税率10%への再増税の見送りについて記者団に問われたが,景気回復を確実にするための〈再増税見送り〉をにおわせた。日本の財政再建の遅れを懸念する声も根強く存在している。
4
日米欧の先進国や新興市場国など 20 の国と地域の蔵相・中央銀行総裁会議。1999年(平成 11)開催。先進国と新興国が幅広い国際金融問題について、世界的な金融システムの安定と危機再発防止に向けて話し合う。WTO 会合において、ブラジル、インド、中国などの途上国が先進国に共同して対抗するため結成したグループ。先進国の農業保護の大幅削減などを要求。2003 年結成。
5
Group of Twentyの略称。世界的に重要な経済・金融問題を協議する国際会議、また、そのメンバーである20か国・地域をさす。メンバーは日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダのG7(ジーセブン)Group of Sevenに加え、ロシア、中国、インド、韓国、インドネシア、オーストラリア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、ヨーロッパ連合(EU)。会議には首脳会議(G20サミット)と財務大臣・中央銀行総裁会議があり、財務大臣・中央銀行総裁会議には、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、ヨーロッパ中央銀行などの代表も参加する。会議では金融危機や財政健全化などの世界経済が抱える諸問題のほか、地球温暖化、新型ウイルス、テロ、途上国支援などについても協議される。議長国は持ち回りで、事務局は原則として開催国が務める。1970年代から1980年代にかけて、世界経済や国際通貨に関する重要問題が生じた際、日本、アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ(当時)の西側先進5か国(G5(ジーファイブ)、Group of Five)は随時、財務大臣と中央銀行総裁による非公式会合で対策を協議していた。1985年にはドル高是正で合意(プラザ合意)するなどの実績をあげ、翌1986年からはカナダ、イタリアを加えたG7が財務大臣・中央銀行総裁会議を定期開催していた。その後の冷戦終結やグローバル化による新興国の台頭にあわせ、1999年の財務大臣・中央銀行総裁会議(ベルリン会合)に初めて20か国・地域が参加した。2008年のリーマン・ショック後には、当時のアメリカ大統領ブッシュの呼びかけで、初めて首脳によるG20サミットを開き、2009年の第3回20か国・地域首脳会合(ピッツバーグ・サミット)から毎年開催されるようになった。G20の域内総生産(GDP)は世界の8割強、人口は40億人に達しており、最近の国際会議ではG7よりG20の存在感が増している。ただし、G20では国家間の利害が対立しやすく、合意形成もむずかしい。このため金融危機などの緊急課題に対しては、G7が機動的に対処するケースが多い。
6
G20は、G7(後述)の7か国に、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合・欧州中央銀行を加えた20か国・地域のことです。
G20財務大臣・中央銀行総裁会議は、これら先進国・新興国にIMF(国際通貨基金)や世界銀行などを加えたメンバーからなる会議です。1999年(平成11年)から原則年1回開催されていましたが、2009年(平成21年)以降、世界的な金融危機を契機に重要性が高まっており、開催頻度も増えています。
G7は、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7か国のことです。
これら7か国によるG7財務大臣・中央銀行総裁会議では、世界の経済・金融情勢や国際通貨制度、金融規制・監督などについて意見交換を行っています。G5と呼ばれていた先進5か国にカナダ、イタリアを加えて、1986年(昭和61年)から開催されるようになりました(注)。 (注)ユーロ発足に伴い、欧州中央銀行(ECB)総裁、ユーログループ議長も出席しています。 
 
G20
主要国首脳会議(G7)に参加する7か国、EU、ロシア、および新興国11か国の計20か国・地域からなるグループである。構成国・地域は、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、EU、ロシア、中華人民共和国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ共和国、オーストラリア、大韓民国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチンである。20か国・地域首脳会合(G20首脳会合)および20か国・地域財務大臣・中央銀行総裁会議(G20財務相・中央銀行総裁会議)を開催している。主要20か国・地域とも言い、日本の放送局であるNHKでは、先進国会合であるG7と区別して、先進国に新興国を加えた主要20か国と表現している。
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、EUは、G7として定期的に財務大臣・中央銀行総裁会議を開催していたが、この先進7か国・1地域に主要国首脳会議(G8)参加国のロシアと新興国11か国(中国・インド・ブラジル・メキシコ・南アフリカ・オーストラリア・韓国・インドネシア・サウジアラビア・トルコ・アルゼンチン)が加わり、1999年より20か国・地域財務大臣・中央銀行総裁会議(G20 Finance Ministers and Central Bank Governors)を開催している。この会議には、国際通貨基金、世界銀行、国際エネルギー機関、欧州中央銀行など、関係する国際機関も参加している。
世界金融危機の深刻化を受けて、2008年からは20か国・地域首脳会合(G20 Summit)も開催されている。正式名称は「金融・世界経済に関する首脳会合」(Summit on Financial Markets and the World Economy)であるが、金融サミットとも呼ばれる。議長は各国持ち回りで担当し、任期中は議長国が事務局機能を果たすため、恒久的な事務局や常勤職員などは存在しない。
G20の20か国・地域(EU加盟国を含む)の国内総生産(GDP)を合計すると、世界のGDPの90%ほどを占め、貿易総額は世界の80%である。また加盟国の総人口は世界の3分の2ほどになる。欧州連合は団体としてG20に参加しており、欧州連合加盟国は、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアを除き個々の国としてG20には参加していない。ただ、スペインやオランダのように、G20に参加していない国が必要に応じて、会合に臨時出席する場合もある。
2009年に米国で開催されたG20は「G20を国際経済協力の第一の協議体」とすることで合意した。2010年6月に開催された4回目となるG20サミットは、カナダのトロントで主要国首脳会議(G8サミット)に連続して開催され、その最大目的は、欧米諸国の財政・金融政策の健全化をどう達成するかであり、途上国の開発援助・地球温暖化の問題などが焦点となった。また、中国やインド、ブラジル、南アフリカ共和国などが国際経済で果たす役割が増す中で開かれた。
批判
G20は経済規模の大きな国によって構成されているが、議論の焦点が経済格差、低所得国の債務問題、環境問題や自国の大企業に対する規制などの問題に十分に当たっておらず、国際社会全体のためではなく自国の利益を追求するための議論の場となっているという、G20の公平性に対する批判も存在する。2010年にカナダのトロントで行われたサミットの際には大規模な抗議デモが起きた他、当時ノルウェーの外相であったヨーナス・ガール・ストーレ氏が「G20は第二次世界大戦以来、最も大きな後退である」と非難した。また、2014年のオーストラリア・ブリスベンサミットの際にはおよそ2,000人がG20に抗議してデモを行った。さらに、2017年にドイツ・ハンブルクで開催されたサミットでは、「G20抗議の波(G20 Waves of Protest)」と呼ばれる抗議活動も行われた。これには環境保護を訴えるNGO・グリーンピース(Greenpeace)、貧困問題に関する活動を行う国際協力団体・オックスファムのドイツ支部(Oxfam Germany)に加えて、ドイツ国内の反資本主義組織といくつかの政党が関わった。 
 
G20における安倍首相のトランプ大統領への「祝辞」 2018/12/6
アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイと南米各国をまわっている安倍首相が“トンデモコメント”を発したのはG20でのこと。トランプ大統領との会談で「アメリカ中間選挙での歴史的な勝利」を祝福したのだ。  
これだけ見ると普通のニュースにしか見えないが、ご存知のとおり、米中間選挙ではトランプ大統領のライバル・民主党が8年ぶりに下院での多数派を奪還。「歴史的勝利」をおさめたのは、むしろトランプ大統領にNOを突きつけた女性やマイノリティ議員たちだ。  
そもそも結果が理解できていないのか、単に何かを褒めて媚を売りたかったのか……。真意は図りかねるが、なぜかトランプ大統領を「祝福」した安倍首相。CNNはこのコメントを「実際には民主党が大躍進も、日本首相はトランプの中間選挙勝利を祝福」という皮肉交じりのテロップつきで報じている。  
さらに番組内では、安倍首相のコメントにキャスターが思わず絶句する姿も。有識者との中継では、下記のようなやりとりが繰り広げられた。
キャスター:「え〜、ちょっと(テロップを)見てください。『歴史的勝利』……はぁ?」
識者:「彼はトランプがどんな言葉を聞きたいか知っています。だから、それ(褒め言葉)を口にしたんでしょう。トランプはお世辞に弱いし、本人は勝った気でいるのを知っていますから」
キャスター:「だけど、それ(中間選挙での勝利)はまったく間違っていますよね?」  
驚きを隠せないといった表情のキャスターと、苦笑いしながら解説する識者の姿は、ニュース番組というよりはコメディだ。  
また、CNNはウェブ版のニュース記事でも、G20でのトランプ大統領の動向とともに、安倍首相の珍コメントを紹介している。  
同記事ではトランプ大統領のロシア疑惑と関連してプーチン大統領との会談がキャンセルされたこと、「サミットでもっとも重要」な習近平首席との会談、サウジアラビアやトルコなど各国首脳陣とのエピソードが取り上げられている。  
そうして安倍首相が登場するのは記事の終盤。中国や北朝鮮問題に懸念を抱いているとしたうえで、「誇張した賞賛を送った」と、これまた小馬鹿にするような記述が見られるのだ。  
こうした見方をしているのはCNNだけではない。『ニューヨークタイムズ』も、安倍首相のコメントを次のように解説している。
“大統領は日本とオーストラリア、2人の環太平洋同盟国首脳、そしてインド首相と会談。各国首脳陣のなかで、トランプ氏のもっとも熱心な臣下である日本の安倍晋三首相は、「中間選挙での歴史的勝利」――民主党が下院を制した選挙を祝福した”
「歴史的勝利」が間違っているというのを強調しているだけではない。こうしたお世辞外交を繰り返す安倍首相を「熱心な臣下」とまで形容しているのだ。  
また、『ニューヨークポスト』は「G20で安倍晋三首相が魅力を発揮」と、“お茶目”な部分にフォーカス。「各国首脳陣がお世辞を使って、最高司令官との関係を良好にしようとするのに倣った」と報じている。
メディアからは失笑されている安倍首相のコメントだが、一般人はどう感じているのか? 在日アメリカ人たちに話を聞いてみると……。
「オー、ゴッド……。コイツらはお互いが必要なんだね。(安倍首相がトランプ大統領を褒めちぎるのは)経済的になんらかの見返りがあるとしか思えない。アメリカ国内でのトランプの立場は悪化する一方だし、国際的にもすでに変人扱いされているからね」(38歳)
「なんでこんなにKiss-ass(媚びへつらう)のか謎だよ。まあそれでトランプが喜ぶなら、ある意味成功しているのかもしれないけど、ちょっと恥ずかしくない?」(34歳)  
目的には理解を示しつつも、あまりにヘコヘコとする姿には違和感がある様子だ。  
また、ネット上には次のようなコメントも見られた。
“もしかして安倍晋三は政党で混乱してるのかな? それともトランプで遊んでるだけ? どの首脳もとにかく褒めとけば喜ぶって知っているからね”
“トランプは安倍の祝福を文字通り受け取っちゃうから、気をつけないと。中間選挙で惨敗なんかしなかったって思い込みそう”
「さすがに本気で褒めているはずはないだろう」というのが主な見方だが、はたして安倍首相の真意はどこにあったのだろうか?  
重要な議題が国会であがるたびに外遊を繰り返す安倍首相。世界に顔が売れていくのはいいことだが、今回は媚を売って失笑を買ってしまったようだ。 
 

 

 
 
●G7 

 

 
G7 
1
先進7ヵ国財務大臣・中央銀行総裁会議 / アメリカ合衆国,イギリス,イタリア,カナダ,ドイツ,日本,フランスの財務大臣および中央銀行総裁(アメリカは連邦準備制度理事会 FRB議長)による会議。G7と略称され,参加 7ヵ国も G7と呼ばれる。物価の安定と持続的成長のため,マクロ経済政策の国際協調を行なうことを目的とする。1985年にプラザ合意を発表した G5(アメリカ,イギリス,ドイツ,日本,フランス)に,イタリアとカナダから参加要請があり,1986年東京で開催された主要国首脳会議(サミット)で G7の創設が合意された。協議の場であるとともに,主要経済指標を活用した経済政策の相互監視も行なわれる。原則として,春秋の国際通貨基金 IMF総会の前後およびサミット開催時の,年 3回開催される。
2
米国、英国、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7カ国の財務相、中央銀行総裁が、年に数回集まり、為替相場やマクロ経済状況を討議する会議。起源は1973年4月ともいわれるが、同年9月のIMFナイロビ総会時から、カナダ、イタリアを除く5カ国(G5)が定期的に会合を持つようになったという説もある。現行のメンバーは86年から定着した。85年9月にドル安誘導を図ったプラザ合意や、その後、87年2月にドル安に歯止めをかける狙いを持ったルーブル合意で、存在が注目を集めるようになった。IMFのような国際機関とは独自に、国際政策協調を討議し実行するので、会議に招かれない諸国からは、あまり好意的には見られていない。その点では、サミットに対する批判にも通じる。2005年以降は、人民元改革、原油高の影響などが話題に上っている。
3
「Groupof7」の略。現在の参加国は日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダで、各国の財務相・中央銀行総裁が出席。世界経済や金融問題を議論する。
4
《The Conference of Ministers and Governors of the Group of Seven》主要7か国財務相・中央銀行総裁会議。米国・英国・フランス・ドイツ・日本・イタリア・カナダの財務大臣と中央銀行総裁とが集まって国際金融の安定化などについて話し合う会議。年3回開催される。7か国で行われる主要国首脳会議(サミット1)の略称。
5
先進7ヵ国財務相中央銀行総裁会議 / G7(ジーセブン)と略。日,米,英,独,仏,伊,加の7ヵ国の財務相,中央銀行総裁で構成する会合。1986年の東京サミットで設立が決定され,通貨問題を含む国際経済問題について政策協調を図る。G7にロシアを加えたG8,G7プラスオランダ,ベルギー,スウェーデン,スイスのG10,さらに主要国以外に大きな経済規模を抱える,11ヵ国(アルゼンチン,オーストラリア,ブラジル,中国,インド,インドネシア,メキシコ,サウジアラビア,南アフリカ,韓国,トルコ)にEU議長国と国際金融機構等を加えたG20等,急速に進行する世界経済のグローバル化に対処するための国際的な枠組み作りがなされている。
6
7カ国財務相・中央銀行総裁会議。7ヶ国(Group of Seven)は、日本、米国、ドイツ、英国、フランス、イタリア、カナダを指します。またロシアを加えて「G8」と呼ぶこともあります。「G7」は、原則として年3回開催されます。会議の結果は外国為替市場や国際金融市場に大きな影響をもたらすことがあります。
7
Group of 7; Conference of Ministers and Governors of the Group of 7 / 先進 7 か国(アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・日本・カナダ・イタリア)のこと。または、その蔵相・中央銀行総裁会議。国際経済や通貨問題について政策協調を推進するため、1986 年(昭和 61)の東京サミットで設置された。
8
Group of Sevenの略称。日本語訳としては先進7か国財務相・中央銀行総裁会議となるが、単にこの会議に出席する国々のことをさす場合もあり、G7諸国などのように用いられる。世界経済の持続的な成長や為替(かわせ)相場の安定などを達成するために政策協調を行うべく、国際金融や通貨の問題を話し合う国際会議である。最近では、これらの問題に加え気候変動などの問題も扱われることがある。構成国は日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダで、開催場所は定まっていないが、通常は年に2〜3回開催されている。国際的な通貨・金融問題を扱う機関としては国際通貨基金(IMF)が存在するが、1985年9月に日本、アメリカ、イギリス、西ドイツ(当時)、フランスの5か国(G5)でドル安誘導を協調して行うことがプラザ合意として発表されてG5の存在が公となり、翌年からイタリアとカナダも加わりG7として会議が開かれている。合意事項には法的な拘束力はないが、世界経済を考えたうえでの合意であることを考えると、一国の判断でこれに背くような政策をとることは許されないのが現実である。しかしながらG7は先進国の集合体でしかなく、グローバル化の進んだ世界経済を考えるうえで、新興国や開発途上国の台頭で地盤沈下を起こしているとの指摘もある。その一方、世界経済が大きな課題に直面した局面では、世界のリーダーとしてG7に期待を寄せる意見もある。なお、主要国首脳会議もG7諸国で開かれていた時期があるが、1998年からロシアが加わりG8となっている。またG10やG20などさまざまな種類の国際会議があり、これらの会合の場でも国際金融や通貨の問題が話し合われており、「G7」にも参加国の拡大議論がある。 
 
G7 
主要国首脳会議(先進国首脳会議)、国際的な首脳会議のひとつ。 G7(ジーセブン、"Group of Seven"の略)、主要(先進)7か国首脳会議、サミット(首脳の地位を山頂に擬えたもの)ともいう。ロシアが参加していた頃は、G8(ジーエイト)、主要8か国首脳会議などと呼ばれていた。2014年以降、ロシアは参加資格を停止され、再びG7(先進国首脳会議)と称されている。
1998年から2013年まで、主要国首脳会議で中心となるのは、以下に示す8つの主要国であった。
フランス(仏) / アメリカ合衆国(米) / イギリス(英) / ドイツ(独) / 日本(日) / イタリア(伊) / カナダ(加) / ロシア(露)。
上記の8か国の政府の長および欧州連合の欧州理事会議長と欧州委員会委員長が年1回集まり、国際的な経済、政治的課題について討議する会議である(その他の国の首脳や国際機関の代表も例外的に出席)。また、合わせて、数多くの下部会議や政策検討も行われる。しかし、2014年以降、ロシアは参加停止中(後述)。
経緯
発足時の名称は「先進国首脳会議」。
冷戦下の1973年のオイルショックと、それに続く世界不況に起源を持つ。これらのトラブルによってアメリカで、西側諸国(ヨーロッパ諸国、アメリカ、日本)の財務大臣級(アメリカは財務長官、当時の日本は「大蔵大臣」)が集まり、経済的課題を討議する会議「ライブラリーグループ」がまず生まれた。
1975年に、フランス大統領ヴァレリー・ジスカール・デスタンはライブラリーグループメンバーに西ドイツを加えた、“工業化された4つの主要民主主義国”の首脳をフランスのランブイエに招待し、フランスを含めて5カ国ではじめての首脳会議を開催し、定期的に首脳会議を持つことを提案した。このときの出席者は、主催国を交代しつつ年に一回会議を持つことに合意した。こうしていわゆる「G5」が生まれた。しかし、これを不服としたイタリアの首相アルド・モロが第1回会議に乗り込んで来た為、イタリアを加えG6となる。
しかし、これでは欧州に偏る為、翌年のプエルトリコの首都サンフアンでのサミットでアメリカのジェラルド・フォード大統領の要請によりカナダが参加したことにより、「G7」となる。
冷戦の終結に続く1991年のG7サミット終了後、旧東側諸国の盟主で、かつてはG7諸国と対立していたソ連(現・ロシア)とサミットの枠外で会合を行うようになった。ロシアは1994年のナポリ会合以降は首脳会議のうち政治討議に参加するようになり、1997年のデンバー会議以降は「世界経済」「金融」等の一部セッションを除き基本的に全ての日程に参加することになった。1998年のバーミンガム会議以降は従来の「G7サミット」に代わり「G8サミット」という呼称が用いられるようになった。さらに2003年のエビアン・サミット以降、ロシアは「世界経済」に関するセッションを含め完全に全ての日程に参加するようになった。一方ロシアは経済力が大きくないなどの理由により、7か国財務大臣・中央銀行総裁会議には完全参加していなかった。
ロシアの参加には米大統領ビル・クリントンの示唆などもあった。これは当時のロシア大統領ボリス・エリツィンに経済改革を進めさせ、またNATOの東への拡大に関して中立を保つようにさせるためのクリントン大統領のジェスチャーだった。ロシアは加入当初は経済破綻で貧困状態であったために先進国とは言い難く、一人当たり名目GDPも1999年には1334ドルに過ぎない発展途上国状態であった。このころから、名称を「先進国会議」から「主要国会議」に変更された。
他方2005年2月18日、米上院議員ジョー・リーバーマンとジョン・マケインがロシア大統領ウラジーミル・プーチンによって民主的、政治的自由が確保されるまではG8への参加を見合わせるようにロシアに呼びかけるなどの動きもあった。
当初においては様々な国際的な課題への強い影響力を有していたが、近年では新興諸国の経済的、政治的影響力の上昇に伴う相対的な影響力の低下とともに、形骸化や単なるセレモニー化が指摘されている。その一方で国連総会などの外交官レベルの会議に比べ、主要各国の首脳会議であるサミットは決断力・実行力に格段の優位性があるほか拒否権など制度的問題点がなく、国連を補完する意味でも一定の役割を果たしているという指摘もある。
2014年3月25日にオランダのハーグで開かれた核セキュリティーサミットとあわせ、臨時のG7サミットが開かれた。その議場において、ロシアのウクライナに対する軍事介入やクリミア半島掌握などを非難したG7の首脳陣は、2014年6月にロシア・ソチで行われる予定だったG8サミットを中止し、会場をベルギーのブリュッセルに変更する決定をした。また同会議において、「ロシアが態度を改め、G8において意味ある議論を行う環境に戻るまで、G8への参加を停止する」という内容のハーグ宣言を発表した。これにより事実上G8が停止され、冷戦当時のG7へと戻った。
グループの編成と活動
G8は国連や世界銀行のような機関とは異なり、国際横断的な管理部門を持たない。またメンバー国の間で毎年順番にグループの議長国が回り、新しい議長国は1月1日から担当が始まると考えられている。議長国は一連の大臣級会議を主催し、続いて年の中頃に3日間の首脳によるサミットを行う。また、出席者の安全を確保するのも議長国の役割である。
大臣級会議は健康、法務、労働を担当する大臣が集まり、相互のまたは全地球的な問題について議論する。これらのうち最もよく知られたものはG8外務大臣会合、G8財務大臣会合などがある。1994年にはG7の後援の下で、情報社会の実現に関する特別プログラムが設立された。
2005年6月には、G8は幼児性愛者に関する国際的データベースを立ち上げることに同意され設置された。また、G8以外の国もこのデータベースに参加することができる。またG8は、各国のプライバシーと保安にかかる法律の範囲内でテロリズムに関するデータを集積することにも同意した。同時にG8構成国、およびブラジル、中国、インド(発展途上国で最大の地球温暖化ガスの排出国)の国際科学アカデミーが気候変動に関する共同声明に署名した。この声明は気候変動についての科学的理解はいまや各国が即座に対策を執るには十分に明らかになっており、IPCCの統一見解を明示的に支持するということを強調している。
G8への反発
G8への非難
G8で扱われる課題は議論のある国際的問題であるためG8は非公式な「世界政府」であり、何の関係もない第三世界にまで決定事項が強制されているという非難がアルテルモンディアリストによりしばしばなされる。ちなみにG8の「決議」「決定」「宣言」その他諸々は、国際法上の根拠を何ら持たない“仲間内での取り決め”である。
年1回のサミットは、しばしば反グローバリゼーション活動の反対活動の的になる。特に2001年にジェノバで開かれた第27回サミットでは大規模なデモが行われるなど顕著だった。
G8参加国は現在、地球規模で深刻な問題となっている地球温暖化や発展途上国での貧困の原因となっていると非難があり、また主要国として問題解決に向けて対処すべきという非難もある。このようにG8諸国が作り出していると非難されている問題について責任を取って闘うよう、G8指導者へさまざまな団体から圧力がかかっている。例えば、ボブ・ゲルドフは2005年7月2日と7日にグローバル・アウェアネス・コンサートであるLive 8を組織しG8指導者に「Make Poverty History(貧困を歴史としよう)」を奨励した。また組織関係者は、G8メンバー国に1992年のリオデジャネイロ地球サミットの「アジェンダ21」で概説されたとおり国家予算の0.7%を海外援助に回すよう提案した。このコンサートは第31回G8サミットと同時になるように計画された。
G8とテロリズム
2005年7月7日、スコットランドでのサミットの初日に50人以上が命を落とし数百人が負傷したと言われるロンドン地下鉄およびロンドン2階建てバス同時多発爆破事件が起こった。この攻撃は、直ちに「ヨーロッパ在住のアルカーイダ秘密グループによるジハード」によるものとされた。この攻撃は西側国家に対し、アフガニスタンおよびイラクでの軍事活動をした場合攻撃を行うとイスラム原理主義者によって犯行の予告が先立ってされていた中で英国が軍事行動に参加したことと関係があるものとされた。G8サミットへ集まった国際的な注目は、おそらく最大限の象徴的な効果のためにテロリストによって増幅された。この打撃は、IOCがロンドンを2012年オリンピック大会の開催地に決定した告知をした直後でもあった。  
 
G7 
フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7つの先進国のことである。
イタリアとカナダが加わる以前は、仏・米・英・西独・日の5か国が参加するG5(ジーファイブ)と呼ばれていた。1975年にイタリアが参加し第1回先進国首脳会議が開催されG6(ジーシックス)となる。その後1976年にカナダが加わり第2回先進国首脳会議が開催されG7となった。現在では、首脳や各大臣による会合は全てG7の枠組みとなっている。カナダ以外の6か国は20世紀前半までの帝国主義時代における列強にあたる。
1998年サミットからロシアによるクリミア・セヴァストポリの編入までは、ロシア連邦もサミットに参加していたため、G8(ジーエイト)と呼ばれていた。
なお、ロシアの参加によって首脳会議や閣僚会合がG8という枠組みとなっていた時代においても、先進7か国財務大臣・中央銀行総裁会議に関してはG7の枠組みで活動していた。そのため一時期は「G7=先進国財務大臣・中央銀行総裁会議」の略称として用いられていたとされる。
G7の今後のあり方
近年は新興国の急速な経済的発展に伴い、世界経済に関してはG7にEUとロシアおよび新興経済国11か国を加えたG20の枠組みで議論される事が多くなっている。
2010年2月5日から6日まで2日間の日程でカナダのイカルイトで開幕したG7の財務大臣・中央銀行総裁会議では、世界経済の現状について意見交換する夕食会の後、膝詰めで話し合う「炉端対話」が行われ、フランスのクリスティーヌ・ラガルド財務相からG7の今後のあり方が提案されたが結論は出ず、継続議論となった。日本からは菅直人財務相と白川方明日銀総裁が出席した。
現在では、ロシアによるクリミア併合や中国の海洋進出などを受けて、法の支配や基本的価値の共有を標榜するG7の結束は高まっている。
2016年5月31日、日本の外務大臣岸田文雄(当時)は、記者会見で「G20の台頭」に対して、「G7は特に、自由、民主主義、法の支配、人権と言った基本的な価値観を共有する主要国の枠組みだと思います。」「国際社会が経済も含めて不透明化する中にあって、この枠組の意義、存在感は益々高まっていくのではないか、このように認識しております。」(一部抜粋)と語っている。  
 
G8・G20・G7のそれぞれの参加国と違い
テレビのニュース番組や新聞記事の見出しにおいて「G8」「G20」「G7」といった言葉をしばしば見かけることが出来ますが、皆さんはこれらの違いについて正確にご存じでしょうか。
「8」や「20」といった数字が参加国の数であるということはおわかりでしょうが、ではG20に参加している20の国はどこか、G8とG7の違いは何かとなると怪しくなってくる場合が多いと思われます。そこで今回はG8やG20等の違いについてわかりやすく解説することにします。
「G8」とは
主要国首脳会議である「G8」の定義から御紹介しますと、驚くことなかれ、G8という言葉に対する正式な定義は無いのです。G8は、国連や世界銀行などの機関とは違い、先進国からなる非公式な「世界政府」です。
また、G8が「Group of Eight」という総称の略称であること、G8とは「G8サミット」と呼称される「首脳会議」に参加する「日本(日)、アメリカ合衆国(米)、イギリス(英)、フランス(仏)、ドイツ(独)、イタリア(伊)、カナダ(加)、ロシア(露)」の8カ国のことを指しています。
G8参加国:日本・アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・カナダ・ロシア
ただし、ロシアはウクライナ問題によって除外されており、現在はロシアを除く7カ国で首脳会議が開催されています。G8での議題は、国際的な問題が中心であり、それで決定された事項を、参加していない発展途上国に強制されているという批判もあります。
このG8の成り立ちについて理解するには、G7を理解しておく必要がありますので、続いてはG7をご紹介することにします。
先進国首脳会議「G7」とは
「G7」もG8同様、7つの先進国からなる非公式な首脳会議です。またG8が「Group of Eight」の略称であるのと同様に、G7も「Group of Seven」の略称であり、G8との違いで言えば「ロシア(露)」を除いた7カ国であるということです。ロシアが含まれるとG8となり、含まれない場合がG7と理解しておくと憶えやすいですね。
そのG7に参加している国々は、G8の「露」を除いた「日、米、英、仏、独、伊、加」の7カ国となります。参加国の顔ぶれから分かるとおり「先進国」ばかりです。そのためG7サミットは「先進7カ国首脳会議」といった言葉が新聞の見出し等で採用されてきた訳ですが、あくまでそれらは造語であって、公式に認められている呼称ではなかった訳です。
G7参加国 日本・アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・カナダ
G6→G7→G8の経緯
このG7の成り立ちですが、1975年に発生した「オイルショック」が契機となり、世界的な経済対策を国家の枠を超えて取り組む必要が生じたことから、まずG7参加国の中からカナダを除いた6カ国の首脳で会議が行われ、翌1976年にカナダも加わり、以来その7カ国の首脳で定期的に会議を実施するようになったことで、G7という総称が誕生することになりました。従ってスタート時は6カ国であったことから「G7」ではなく「G6」を起源とし、G7と区分けして解説する識者もいます。
もっとも、カナダは翌年には参加していたこととカナダが参加してから98年にロシアが正式に仲間入りするまでの約20年間は7国だけで首脳会議が行われてきたことを考えれば、G7がG8の起源となったと考えても良いと言えます。
その後、ロシアが98年にG7に加入することになった経緯は、当時米露間の冷戦時代がほぼ終結したことによって対立関係が解消してきたことに加え、先進国だけではなく、途上国側との協議の重要性が高まってきたことから、途上国を代表する立場としてロシアがG7への仲間入りを果たし、以来G8という枠組みが続いてきました。
「G20」とは
最後にG20参加国を御紹介します。G20は「G8参加国+12カ国」となっていますのでG8参加国は全てG20にも含まれます。
従って、残り12カ国がわかればG20の顔ぶれがわかりますが、その12カ国とは「アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、韓国、欧州連合」となっており、G20がスタートしたのは1999年(平成11年)。G20は主に世界金融・経済を主要テーマとして、年1度以上の頻度で現在開催されています。
G8参加国 日本 / アメリカ / イギリス / フランス / ドイツ / イタリア / カナダ / ロシア
経済地域 欧州連合
新興経済国 アルゼンチン / オーストラリア / ブラジル / 中華人民共和国 / インド / インドネシア / メキシコ / サウジアラビア / 南アフリカ / トルコ / 韓国
今回の記事でG8、G20、G7の参加国や特にG8とG7の違いについて御理解頂けたと思います。その上で、近年のG8について状況をお伝えすると、ウクライナ問題におけるロシアと欧米の対立が鮮明となり、現在、ロシアはG8への参加を停止しています。そのため、マスメディア等では「G8崩壊」といった見出しが躍るような状況になっています。このまま本当にG8崩壊となるのか、また復活するのか暫くその動向から目が離せません。  
 

 

 
●G20大阪サミット  

 

 
G20大阪サミット [結果概要]
令和元年6月29日 外務省
6月28日及び29日、大阪にて安倍総理の議長の下で、G20大阪サミットが開催されたところ、会合の概要は以下のとおり。
1、総論
日本が初めて議長国を務めたG20サミットでは、G20メンバー国に加えて、8つの招待国、9つの国際機関の代表が参加し、国内で開催した史上最大規模の首脳会議となった。
主要国のリーダーたちが一堂に会する中、今般のサミットでは、互いの共通点を見出し、主要な世界経済の課題に団結して取り組んでいく姿を打ち出すことができた。
また、グローバル化による変化への不安や不満の声があがる中で、議長国としてリーダーシップを発揮し、自由貿易の推進やイノベーションを通じた世界の経済成長の牽引と格差への対処、環境・地球規模課題への貢献等、多くの分野でG20としての力強い意志を「大阪首脳宣言」を通じて世界に発信できた。
2.議論の概要
(1)安倍総理は議長として、「世界経済、貿易・投資」、「イノベーション(デジタル経済・AI)」、「格差への対処、包摂的かつ持続可能な世界」、「気候変動・環境・エネルギー」をテーマとした各セッションで、意見の対立ではなく共通点を見出すべく、議論を積極的に主導した。
(2)第1セッション「世界経済、貿易・投資」では、冒頭、安倍総理から、世界経済における貿易と地政学をめぐる緊張の増大を指摘し、G20として、これらの下方リスクに対処し、必要な行動をとるべきである旨訴えた。その上で、グローバル化、高齢化、デジタル化に対処していくべきこと、また、自由、公正、無差別な貿易体制を維持・強化していくべきであり、特に、(ア)上級委員会を含む紛争解決制度、電子商取引を含む新しい時代のルール作りをはじめとするWTO改革、及び(イ)国際貿易・投資の基盤としての公平な競争条件の確保の重要性を指摘した。
各首脳からは、現下の貿易を巡る状況が、経済成長に及ぼす影響やWTO協定と整合的な形で解決されるべきことなどの指摘に加え、WTO改革のモメンタムをG20として政治的に後押ししていくべきことなどについて、多くの指摘がなされた。
(3)第2セッション「イノベーション」では、安倍総理から、イノベーションは経済発展と社会的課題の解決を両立する鍵であり、中でも発展著しいデジタル化に際して、データの自由な流通が不可欠である旨指摘した上で、「信頼性のある自由なデータ流通(Data Free Flow with Trust:DFFT)」の考え方を提示した。また、本セッションに先立って開催された「デジタル経済に関する首脳特別イベント」における「大阪トラック」の立ち上げに言及しつつ、今後、同トラックを通じ、WTOでの電子商取引をはじめとするデジタル時代のルール作りを進めていきたい旨述べた。また、AI等の先端技術の活用にも「信頼」が不可欠である旨強調し、G20・AI原則の重要性についても言及した。
各首脳から、経済成長や社会的課題の解決におけるイノベーションの役割や、デジタル経済の国際的なルール作りの重要性について発言があった。また、「信頼性のある自由なデータ流通」の考え方が参加者間で共有された。
なお、同セッションにおいては、テロリストによるインターネットやソーシャル・メディアの悪用の深刻化に関する議論が行われ、これを受け、「テロ及びテロに通じる暴力的過激主義によるインターネットの悪用防止に関するG20大阪首脳声明」が発出され、法の支配及び表現の自由を含む人権の尊重の重要性をしっかり踏まえつつ、デジタル産業と協調した取組を行うことの重要性について認識が共有された。
(4)第3セッション「格差への対処、包摂的かつ持続可能な世界」に先駆け、女性のエンパワーメントに関する首脳特別イベントを安倍総理主催で開催し、マキシマ蘭王妃、イヴァンカ米国大統領補佐官の参加の下、(ア)女性の労働参画、(イ)女児教育支援、(ウ)女性起業家支援にフォーカスし、国際社会全体における女性の活躍推進に向けたモメンタムの強化に貢献した。
第3セッションにおいては、冒頭、安倍総理から、成長の果実を社会の隅々まで行き渡らせていく上で、特に対処すべき課題として、イノベーション、人口動態の変化やジェンダー不平等がもたらす格差にしっかり対処していくべきことを指摘し、今後の課題や日本の取組について言及した。また、包摂的かつ持続可能な世界の実現のため、途上国の債務問題、質の高いインフラ投資、国際保健や防災・教育、科学技術イノベーション(STI)等の活用によるSDGsの達成に向けた取組等の重要性を指摘した。加えて、社会的インパクト投資や休眠預金を含む多様で革新的な資金調達のあり方を検討し、日本が国際的議論の先頭に立っていきたい旨を述べた。
その後の議論では、各首脳から、女性のエンパワーメント、教育格差、途上国支援、貧困、持続可能な開発について、自国の取組に加え、SDGsの達成をはじめとする開発分野における国際協力の重要性等が指摘された。
(5)第4セッション「気候変動・環境・エネルギー」では、冒頭、トーマス・バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長が、来年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、大阪サミットが目指す、女性、若者、高齢者や障害者を含むあらゆる主体が活躍する社会を実現する上で、スポーツが果たす役割等についてスピーチを行った。
その後、安倍総理から、気候変動・エネルギー及び海洋プラスチックごみ対策といった喫緊の地球環境問題への対処におけるイノベーションの活用の重要性を指摘するとともに、先般策定されたパリ協定の本格運用に向けた長期戦略を紹介しつつ、脱炭素社会という究極の目標実現に向け、世界のモデルとなるべく努力して取り組んでいく旨述べた。さらに、G20首脳が合意した、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロとすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向け、日本としても、途上国の廃棄物管理に関する能力構築及びインフラ整備等を支援していく旨を表明した。加えて、安倍総理より、スペースデブリの増加問題について、国際社会が協力して取り組む必要がある旨指摘し、日本が世界に先駆けて大型デブリ除去プロジェクトを開始し同分野における取組を主導していく考えを述べた。
その後の議論では、各首脳から、気候変動問題や海洋問題について様々な指摘があり、特にパリ協定の実施の重要性について多くの指摘がなされた。また、この関連で再生可能エネルギーを活用の必要性、必要な措置をとっていくことが今後新しい産業や雇用創出にも資するとの指摘があり、環境問題・気候変動問題・海洋問題の重要性について認識が共有された。
(6)閉会セッションでは、サミットの成果文書として「大阪首脳宣言」を採択し、安倍総理から、自由、公正、無差別な貿易体制の維持・発展の重要性、データの自由な流通を含むデジタル経済におけるルール作り、海洋プラスチックごみ対策の「ビジョン」の共有、女性のエンパワーメントをはじめとする諸課題について、G20として一致して力強いメッセージを発信できた旨評価した。
その後、次期G20議長国を務めるサウジアラビアから来年のリヤド・サミットに向けた抱負が述べられ、最後に安倍総理から、世界経済をリードするG20として、今般採択された大阪首脳宣言に基づき、自由で開かれた、包摂的かつ持続可能な未来社会の実現に向けた協力を継続していきたい旨総括し、G20大阪サミットは閉会した。
3.成果文書
「大阪首脳宣言」及び「テロ及びテロに通じる暴力的過激主義によるインターネットの悪用防止に関するG20大阪首脳声明」の二つの首脳文書に加え、各種の付属文書が策定された。
(1)G20大阪首脳宣言
(2)テロ及びテロに通じる暴力的過激主義によるインターネットの悪用防止に関するG20大阪首脳声明
(3)附属文書
・質の高いインフラ投資に関するG20原則
・経済の電子化に伴う課税上の課題に対するコンセンサスに基づいた解決策の策定に向けた作業計画
・高齢化と金融包摂のためのG20福岡ポリシー・プライオリティ
・GPFI作業計画提案
・途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解
・インフラ開発における腐敗対策に関するG20グッドプラクティス集
・効果的な公益通報者保護のためのG20ハイレベル原則
・G20・AI原則
・女性労働参画進捗報告書
・G20持続可能な開発のための人的資本投資イニシアティブ
・持続可能な開発のための2030 アジェンダに関するG20行動計画に基づく大阪アップデート
・持続可能な開発目標達成のための科学技術イノベーション(STI for SDGs)ロードマップ策定の基本的考え方
・G20開発コミットメントに関する大阪包括的説明責任報告書
・G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組
・G20適応と強靱なインフラに関するアクション・アジェンダ
・持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関するG20軽井沢イノベーションアクションプラン
【参考】G20大阪サミット
(1) 日程
6月28日(金)
デジタル経済に関する首脳特別イベント
第1セッション(ワーキング・ランチ)【世界経済、貿易・投資】
第2セッション【イノベーション(デジタル経済、AI)】
6月29日(土)
女性のエンパワーメントに関する首脳特別イベント
第3セッション【格差への対処、包摂的かつ持続可能な世界】
第4セッション(ワーキング・ランチ)【気候変動・環境・エネルギー】
閉会セッション
(2)参加国・国際機関:
(ア) G20メンバー
日本、アルゼンチン、豪、ブラジル、加、中、EU、仏、独、印、インドネシア、伊、メキシコ、韓、露、サウジアラビア、南ア、トルコ、英、米
(イ) 招待国
スペイン、チリ(APEC 議長国)、エジプト(AU 議長国)、オランダ、セネガル(NEPAD 議長国)、星、タイ(ASEAN 議長国)、ベトナム
(ウ) 国際機関
国際連合、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)、国際労働機関(ILO)、金融安定理事会(FSB)、経済協力開発機構(OECD)、世界保健機関(WHO)、アジア開発銀行(ADB)  
 
G20大阪首脳宣言
2019年6月28日・29日

 

前文
1.我々G20の首脳は、主要な世界経済の課題に対処すべく団結して取り組むため、2019年6月28日・29日に日本の大阪において会合した。我々は、全ての人々の利益のために、技術イノベーション、特にデジタル化及びこれを適用した力を活用しつつ、世界経済の成長促進に向けて協働する。
2.これまでの議長国による成果に基づいて、我々は、不平等に対処することによって成長の好循環を創出し、全ての人々が自らの潜在力を最大限に活用できる社会を実現するために努力する。我々は、機会をとらえ、人口動態の変化によるものを含めて今日あるいは将来にわたって提示される経済、社会及び環境の課題に対処する能力を有する社会を建設する決意である。
3.我々は更に、持続可能な開発のための2030アジェンダの中でビジョンとして掲げられているとおり、包摂的かつ持続可能な世界に向けた道を開くため、開発を促進し、その他の地球規模の課題に対処する取組を主導する。
世界経済
4.世界経済の成長は、足元で安定化の兆しを示しており、総じて、本年後半及び2020年に向けて、緩やかに上向く見通しである。この回復は、緩和的な金融環境が継続すること及び幾つかの国々で景気刺激策の効果が発現することによってもたらされている。しかしながら、成長は低位であり続けており、リスクは依然として下方に傾いている。何よりも、貿易と地政を巡る緊張は増大してきた。我々は、これらのリスクに対処し続けるとともに、更なる行動をとる用意がある。
5.我々は、強固で持続性があり均衡のとれた包摂的な成長を実現するため、また、信頼を高める対話と行動を強化することにより、下方リスクから守るために全ての政策手段を用いるとの我々のコミットメントを再確認する。必要に応じて財政バッファーを再構築し、かつ、GDP(国内総生産)比の公的債務が持続可能な道筋にあることを確保しつつも、財政政策は、機動的に実施し、成長に配慮したものとすべきである。金融政策は、引き続き、経済活動を支え、中央銀行のマンデートと整合的な形で物価の安定を確保する。中央銀行の決定は引き続きよくコミュニケーションがとられる必要がある。構造改革の実行を続けることは、我々の潜在成長力を高める。我々はまた、2018年3月に財務大臣・中央銀行総裁が行った為替相場のコミットメントを再確認する。
6.グローバル・インバランス(経常収支不均衡)は、世界金融危機の後、特に新興国及び開発途上国において減少しており、次第に先進国に集中してきた。しかしながら、不均衡は依然として高水準かつ持続的であり、対外資産・負債の水準も拡大を続けている。我々は、対外収支を評価するに当たっては、サービス貿易・所得収支を含む経常収支の全ての構成要素に着目する必要性に留意する。協力推進の精神に基づき、我々は、過度の対外不均衡に対処し、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ、包摂的な成長というG20の目標実現に対するリスクを軽減するには、各国の実情に即しつつ、注意深く策定されたマクロ経済・構造政策が必要であることを確認する。
7.高齢化を含む人口動態の変化は、全てのG20構成国に対して課題と機会をもたらし、こうした変化は、財政・金融政策、金融セクター政策、労働市場政策及びその他の構造政策にわたる政策行動を必要とする。高齢化社会における金融包摂を強化するため、我々は、「高齢化と金融包摂のためのG20福岡ポリシー・プライオリティ」を承認する。
強固な世界経済の成長の醸成
貿易と投資
8.我々は、G20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合閣僚声明を歓迎する。我々は、自由、公平、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易及び投資環境を実現し、我々の市場を開放的に保つよう努力する。国際的な貿易及び投資は、成長、生産性、イノベーション、雇用創出及び開発の重要な牽引力である。我々は、世界貿易機関(WTO)の機能を改善するため、必要なWTO改革への支持を再確認する。我々は、第12回WTO閣僚会議までの間も含め、他のWTO加盟国と建設的に取り組む。我々は、WTO加盟国によって交渉されたルールに整合的な紛争解決制度の機能に関して、行動が必要であることに合意する。さらに、我々は、WTO協定と整合的な二国間及び地域の自由貿易協定の補完的役割を認識する。我々は、ビジネスを可能とする環境を醸成するため、公平な競争条件を確保するよう取り組む。
過剰生産能力
9.我々は、鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラム(GFSEC)がこれまで成した進展に留意しつつ、GFSECの加盟国の関係大臣に対し、2019年の秋までに、フォーラムの作業を進展させる方法について、探究し、コンセンサスに至るよう求める。
イノベーション:デジタル化、データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(信頼性のある自由なデータ流通)
10.イノベーションは経済成長の重要な原動力であり、持続可能な開発目標(SDGs)への前進及び包摂性向上にも寄与し得る。我々は、デジタル化及び新興技術の適用の促進を通じて、包摂的で持続可能な、安全で、信頼できる革新的な社会の実現に向けて取り組む。我々は、ソサエティ5.0として日本によって促進されつつある人間中心の未来社会の観念を共有する。デジタル化が我々の経済・社会のあらゆる側面に変革をもたらしている中、我々は、経済成長、開発及び社会福祉を可能にするものとして、データの有効利用が果たす決定的役割を認識する。我々は、データの潜在力を最大限活用するため、国際的な政策討議を促進することを目指す。
11.データ、情報、アイデア及び知識の越境流通は、生産性の向上、イノベーションの増大及びより良い持続的開発をもたらす一方で、プライバシー、データ保護、知的財産権及びセキュリティに関する課題を提起する。これらの課題に引き続き対処することにより、我々は、データの自由な流通を更に促進し、消費者及びビジネスの信頼を強化することができる。この点において、国内的及び国際的な法的枠組みの双方が尊重されるべきことが必要である。このようなデータ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(信頼性のある自由なデータ流通)は、デジタル経済の機会を活かすものである。我々は、異なる枠組みの相互運用性を促進するために協力し、開発に果たすデータの役割を確認する。我々はまた、貿易とデジタル経済の接点の重要性を再確認し、電子商取引に関する共同宣言イニシアティブの下で進行中の議論に留意し、WTOにおける電子商取引に関する作業計画の重要性を再確認する。
12.デジタル経済におけるイノベーションを更に促進するために、我々は、効果的な政策と、規制のサンドボックスの使用を含め、革新的かつ機動的で柔軟性があり、デジタル時代に適応した規制アプローチ及び枠組みに関するグッドプラクティスの共有を支持する。人工知能(AI)の責任ある開発及び活用は、SDGsを推進し、持続可能で包摂的な社会を実現するための原動力となり得る。AI技術への人々の信頼と信用を醸成し、その潜在能力を十分に引き出すために、我々は、AIへの人間中心のアプローチにコミットし、経済協力開発機構(OECD)AI勧告から引用された拘束力を有さないG20・AI原則を歓迎する。さらに我々は、デジタル経済において、セキュリティを促進すること及びセキュリティギャップと脆弱性に対処することの重要性が高まっていることを認識する。我々は、知的財産の保護の重要性を確認する。モノのインターネット(IoT)を含む新興技術の急速な広がりに伴い、デジタル経済におけるセキュリティについて進行中の議論の価値は高まっている。我々、G20構成国は、これらの緊急の課題への更なる取組の必要性を認識する。我々は、中小零細企業と全ての個人、特に脆弱なグループの人々の間で、情報格差を克服し、デジタル化の採用を促進することの重要性を再確認し、また、スマートシティの開発に向けた都市間のネットワーク化と経験共有を奨励する。
質の高いインフラ投資
13.インフラは経済の成長と繁栄の原動力である。我々は、我々の共通の戦略的方向性と高い志として、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を承認する。これらは、質の高いインフラが、「投資対象としてのインフラに向けたロードマップ」に沿いインフラ・ギャップの縮小に向けて継続中のG20の努力の必要不可欠な一部であることを強調する。我々は、公的財政の持続可能性を保つ形での持続可能な成長と開発を達成するためのインフラの正のインパクトの最大化、ライフサイクル・コストでみた経済性の向上、女性の経済的なエンパワーメントを含めた環境・社会配慮の統合、自然災害その他のリスクに対する強じん性の強化、及びインフラ・ガバナンスの強化の重要性を強調する。我々は、質の高いインフラ投資に係るあり得る指標を探求することを含めて、インフラを投資対象へと育成するための要素を引き続き前進させていくことを期待する。
グローバル金融
14.我々は、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有する国際通貨基金(IMF)を中心としたグローバル金融セーフティネットを更に強化するとのコミットメントを再確認する。我々は、第15次クォータ一般見直しを遅くとも2019年年次総会までに完了することに引き続きコミットしており、IMF資金とガバナンス改革に関する作業を最優先事項として迅速に進めることをIMFに求める。我々は、カントリー・プラットフォームや、開発金融におけるリスク保険を向上させるための世銀グループ(WBG)による努力を含む、賢人グループ(EPG)の提言のフォローアップ作業の進捗を支持する。我々は、資本フローに関する国際機関の取組を歓迎する。OECDは、資本移動自由化コードの見直しを完了した。我々は、EPGの提言が複数年にわたる性質のものであることを認識しつつ、その作業を継続する。
15.我々は、債務の透明性を向上し、債務の持続可能性を確保するための、債務者及び公的・民間の債権者双方による協働の重要性を再確認する。我々は、IMF及びWBGに、「様々な角度からのアプローチ」等の下で、債務の記録・監視・報告、債務管理、公的財政管理、国内資金動員の分野における債務者の能力強化のための取組を継続することを求める。我々は、IMF及び世銀グループに、債務上限ポリシー及び非譲許的借入ポリシーの見直しの文脈で、担保付貸付の慣行の分析を引き続き深めることを奨励する。我々は、「G20持続可能な貸付に係る実務指針」の実施に関する任意の自己評価の完了、及びその評価結果と政策提言をまとめたIMF及びWBGのノートを歓迎する。我々は、評価を完了したG20及び非G20諸国・地域を称賛するとともに、貸付慣行の改善を目指して、このノートで強調されている課題の継続的な議論を求める。我々は、民間貸付に係る債務の透明性及び持続可能性を向上させるための、「債務透明性のための任意の原則」に関する国際金融協会の取組を支持し、フォローアップを期待する。我々は、債権者たる新興国のより幅広い関与に向けて、二国間の公的債務を再編するための主要な国際フォーラムとしてパリクラブが進めている取組を支持し、パリクラブと協働するために、インドがパリクラブに事案に応じた参加を自発的に決定したことを歓迎する。
16.我々は、世界規模で公正、持続可能かつ現代的な国際課税システムのための協力を継続するとともに、成長志向の租税政策を推進するための国際協力を歓迎する。我々は、G20/OECD「税源浸食と利益移転(BEPS)」パッケージの世界的な実施及び税の安定性向上の重要性を再確認する。我々は、経済の電子化に伴う課税上の課題への対応に関する最近の進捗を歓迎し、BEPS包摂的枠組みによって策定された、2つの柱から成る野心的な作業計画を承認する。我々は、2020年までの最終報告書によるコンセンサスに基づく解決策のための取組を更に強化する。我々は、税を目的とする情報の自動的交換の進捗を含む税の透明性に関する最近の成果を歓迎する。我々はまた、国際的に合意された税の透明性の基準を満足に実施していない法域の更新されたリストを歓迎する。我々は、強化された全ての基準を考慮した、OECDによるリストの更なる更新を期待する。リストに載った法域に対しては、防御的措置が検討される。2015年のOECD報告書は、この点に関する利用可能な措置を列挙している。我々は、全ての法域に対し多国間税務行政執行共助条約に署名及び批准するよう求める。我々は、開発途上国における税に関する能力構築に対する支持を再確認する。
17.技術革新は、金融システム及びより広い経済に重要な便益をもたらし得る。暗号資産は、現時点でグローバル金融システムの安定に脅威をもたらしていないが、我々は、注意深く進展を監視するとともに、既存の及び生じつつあるリスクに警戒を続ける。我々は、金融安定理事会(FSB)と他の基準設定主体による進行中の作業を歓迎するとともに、追加的な多国間での、必要に応じた対応にかかる助言を求める。我々は、マネーロンダリング及びテロ資金供与への対策のため、最近改訂された、仮想資産や関連業者に対する金融活動作業部会(FATF)基準を適用するとのコミットメントを再確認する。我々は、FATFの解釈ノート及びガイダンスの採択を歓迎する。我々はまた、分散型金融技術のあり得る影響、及び当局が他のステークホルダーとどのように関与できるかについてのFSBの作業を歓迎する。我々は、サイバーの強じん性を高める努力を強化し続ける。
18.我々は、マネーロンダリング、テロ資金供与及び拡散金融と闘い、これを防止するための国際基準を設定することにおけるFATFの不可欠な役割を強調する国連安保理決議2462号を歓迎する。我々は、FATF型地域体のグローバルネットワークを強化することを含め、これらの脅威と闘う努力を強化することについての我々の強いコミットメントを再確認する。我々は、FATF基準の完全、効果的かつ迅速な履行を求める。
19.合意された国際基準に基づく、開かれた、強じんな金融システムは、持続可能な成長を支えるために極めて重要である。我々は、合意された金融規制改革の完全、適時かつ整合的な実施に引き続きコミットしている。我々は、FSBに対して、その影響を引き続き評価するよう求める。我々は、金融安定性に対する脆弱性と生じつつあるリスクについて、引き続き注視し、マクロ・プルーデンスの手段を含め、必要に応じ対処する。ノンバンク金融仲介が金融システムに歓迎される多様性を与える一方、我々は引き続き、関連する金融安定リスクを、適切に特定、注視、対処する。我々は、市場の分断についての取組を歓迎し、その意図せざる、悪影響に対して、規制・監督上の協力等により対処する。我々は、コルレス銀行関係の解消の原因及び結果について、引き続き監視し、対処する。サステナブル・ファイナンスの動員及び金融包摂の強化は、世界の成長にとって重要である。我々は、こうした分野における民間部門の参加と透明性を歓迎する。
腐敗対策
20.我々は、関連する国際文書及びメカニズム間の相乗作用を強化しつつ、「G20腐敗対策行動計画2019-2021」の履行を通じて、腐敗を防止し、これと闘い、清廉性を促進するグローバルな努力において先導的な役割を担うことに引き続きコミットする。我々は、腐敗との闘いはインフラの質と信頼性を確保する上で極めて重要である旨認識しつつ、「インフラ開発における清廉性と透明性に関するグッドプラクティス集」を我々の更なる取組の一部として歓迎する。我々は、「効果的な公益通報者保護のためのハイレベル原則」を承認する。我々は、腐敗との闘いにおけるG20構成国間のハイレベルの国際協力を追求し、腐敗の防止に関する国際連合条約のレビュープロセスを含め、同条約の効果的実施を通じて、模範を示すことにより主導するとのコミットメントを再確認する。我々は、外国公務員贈賄と闘い、G20各国ができる限り早く外国公務員贈賄を犯罪化する国内法を整備することを確保するための取組を強化する。我々は、OECD外国公務員贈賄防止条約の遵守に向けた努力に留意する。我々は、腐敗と闘うための実際的な協力を継続し、G20及び国際的なコミットメント並びに国内法制度と整合的な形で、腐敗関係の捜査対象者及び彼らの腐敗の収益の安全な逃避先を否定するという我々のコミットメントを再確認し、財産回復協力に一層緊密に協力する。我々は、腐敗に関連する深刻な経済犯罪者及び奪われた財産の回復に対処するための国際協力の現状に関する報告書が関連国際機関によって準備されることを期待する。加えて、我々はまた、関連国際機関による腐敗とジェンダーの連関に関する取組を歓迎する。
不平等に対処することによる成長の好循環の創出
労働及び雇用
21.人口高齢化はG20構成国で様々な速度で進行している。G20諸国の人口動態上の共通点及び相違点を考慮し、我々は、若者や女性、障がい者の経済活動への参加を引き続き増やしつつ、高齢期も労働市場に参加できるような健康で活力ある高齢化社会の促進の重要性を認識する。我々は、職業生活の長期化が見込まれていることを踏まえ、雇用創出及び柔軟な働き方を促進し、雇用の質の向上と、生涯学習を通じた労働者の雇用可能性の増進を目指すとともに、各国の国毎の状況に応じて介護労働者を含む全ての者の労働条件の改善に向けて努力する。我々はまた、若年層の雇用機会及び雇用可能性を引き続き促進する。我々は、労働雇用大臣に対し、9月の松山での会合において、人口動態の傾向に適応するために採り得る政策上の優先事項を特定するよう求める。我々は、生じつつある新たな労働形態、とりわけ技術革新によって生じるものは、就業機会の源になり得るとともに、ディーセント・ワーク及び社会保護制度にとって課題ともなり得ることを認識する。我々は、民間部門の見解を考慮しつつ、これらの新たな労働形態に対して適切な政策対応を策定するよう努力するに当たり、労働雇用大臣に対して経験及びグッドプラクティスを一層共有するよう奨励する。我々は、ディーセント・ワークを推進し、持続可能なグローバル・サプライ・チェーンの促進を通じたものを含め、仕事の世界において、児童労働、強制労働、人身売買、及び現代の奴隷制を根絶するための行動をとるというコミットメントを再確認する。
女性のエンパワーメント
22.ジェンダー平等と女性のエンパワーメントは、持続可能で包摂的な経済成長に不可欠である。我々は、我々の政策のあらゆる側面において、かつ今後のサミットにおける横断的な課題として、これらの重要性を再確認する。我々は、2025年までに労働力参加における男女間の格差を25%削減するとのブリスベン・ゴールに向けて更なる進捗が得られたことに留意する。我々は、国際労働機関(ILO)及びOECDが作成した「G20諸国における働く女性」進捗報告書に留意し、我々の努力を加速化させる必要性を認識する。労働雇用大臣による継続的な努力に立脚して、我々は、当該年次報告書を基礎として、女性の雇用の質を含め、ブリスベン・ゴールに向けたG20における各国の進捗及び行動を交換する。我々はまた、女性の労働市場参加に対する主要な障害となっている、無償ケア労働におけるジェンダー格差にも取り組む。我々は、女性の雇用の質を改善し、男女の賃金格差を減少させ、女性に対するあらゆる形態の差別を終わらせ、固定観念と闘い、女性を平和の代理人として、また、紛争の予防及び解決において、認識するために更なる行動を取ることにコミットする。
23.我々は、質の高い初等・中等教育の提供、STEM(科学、技術、工学及び数学)教育へのアクセスの改善及びジェンダーに関する固定観念の排除に向けた意識向上を含め、女児・女性教育及び訓練への支援を継続することにコミットする。デジタル面におけるジェンダー格差を埋めるため、我々は引き続き、貧困層及び農村部の女児・女性のニーズに焦点を置きつつ、彼女たちのデジタル技術へのアクセスを向上させる。我々は、デジタルの文脈におけるものも含め、あらゆるジェンダーに基づく暴力、虐待及びハラスメントを根絶するために措置を講じることの重要性を再確認する。我々は、とりわけ民間部門による、女性の管理職及び意思決定に関わる地位へのアクセスを促進し、女性のビジネスリーダー及び起業を育成するための取組を歓迎する。我々は、女性の起業を促進するため、技能開発を支援し、資金へのアクセスを提供する取組の重要性を再確認し、アフリカを含む開発途上国における女性の起業を支援するための女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)の継続的な実施を歓迎する。我々は、管理職や意思決定に関わる地位にある女性の数を増やすための措置を取る企業の認識や、ジェンダーに対応した投資を含む民間部門による取組を奨励することの重要性を認識する。我々は、「エンパワーメントと女性の経済代表性向上(EMPOWER)」のための民間部門アライアンスの立ち上げを歓迎し、同アライアンスに対して、民間部門における女性の進出を唱導することを求め、今後のサミットにおいて、その進捗を評価し、その具体的な取組を共有する。
観光
24.観光産業は世界のGDPの相当の割合を占め、引き続き世界経済の成長の重要な牽引役となることが見込まれる。我々は、特に女性及び若者のための、また、創造産業における、質の高い雇用と起業の創出、経済的な強じん性及び回復、持続可能な観光に関する計画及び管理を通じた自然資源の保護、並びに、包摂的かつ持続可能な開発の実現に対する観光部門の貢献を最大限にするために取り組んでいく。
農業
25.増加する世界の人口に対し、食料安全保障を達成し、栄養状況を改善するためには、自然資源の持続可能な管理とより両立し得る方法で、農業生産性を高め、また、食料の損失及び廃棄の削減を含め、流通をより効率的に行う必要がある。この目的のために、我々は、情報通信技術(ICT)、人工知能(AI)、ロボット工学等の既存の、新たな又は先端の技術のアクセスと利用の重要性を強調し、関係者間の分野横断的な協力を奨励する。我々はまた、農業・食品分野において新規参入者を引き付け、若者と女性のエンパワーメントを行う上で、全ての人々に対するイノベーション、技能研修及び生涯学習を推奨する。我々は、農村地域の再活性化にも貢献する、持続可能で、科学に基づく、強じんな農業・食品バリューチェーンを、家族農業及び小規模農家を含め、包摂的かつ衡平な方法で発展させることの重要性を認識する。我々は、既存の又は生じつつある動植物の衛生問題に対応するための情報共有及び研究協力の継続・強化の必要性を強調する。我々はさらに、より持続可能な農業・食品分野に向けたグッドプラクティス及び知識についての任意の交換を推奨する。
包摂的かつ持続可能な世界の実現
開発
26.9月の国連ハイレベル政治フォーラム及び国連開発資金ハイレベル対話を目指して、我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダ及びアディスアベバ行動目標の適時の実施に貢献することにおいて主導的な役割を果たすことを引き続き決意している。我々は、開発のための国際的な公的及び民間資金、並びに、ブレンディッド・ファイナンスを含むその他の革新的資金調達メカニズムが、我々の共同の取組を高めていく上で重要な役割を担うことができることを認識する。持続可能な開発のための2030アジェンダに関するG20の行動計画に基づいて、「大阪アップデート」は、同アジェンダの達成に貢献し、「誰一人取り残さない」ことを確保することに向けた共同のかつ具体的な行動を強調する。我々は、「大阪包括的説明責任報告書」を歓迎する。
27.我々は、民間部門の資金の動員、能力構築支援など、あらゆる実施手段を用い、貧困の撲滅、質の高いインフラ投資、ジェンダー平等、保健、教育、農業、環境、エネルギー、産業化等の分野で開発途上国がSDGsの適時な実施に向けて前進するための努力を支援する。我々は、G20構成国による二国間の関与を強化させ、「アフリカとのコンパクト」(CwA)の実施における世銀グループ、アフリカ開発銀行及びIMFの役割を強化させた上で、CwAを含むG20アフリカ・パートナーシップ、アフリカの産業化支援に関するG20イニシアティブ、及びアフリカ連合のアジェンダ2063に示されたアフリカのビジョンの実現に貢献するその他の関連イニシアティブへの継続した支持を強調する。我々は、違法な資金フローに対処することに引き続きコミットし、今後のサミットにおいて評価する。
28.我々は、「G20持続可能な開発のための人的資本投資イニシアティブ」で強調されているように、人的資本に投資し、全ての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を推進するという我々のコミットメントを再確認する。我々は、SDGs達成のための科学技術イノベーション(STI)の重要性を認識し、「SDGs達成のためのSTIロードマップ策定の基本的考え方」を承認する。我々は、南北協力、南南協力及び三角協力並びに自然災害に対する財務上の強じん性を促進させる手段としての災害リスクファイナンシング調達及び保険スキームを含む防災に関する更なる取組の重要性を認識する。
29.我々は、第19次国際開発協会増資及び第15次アフリカ開発基金増資を成功裏に達成するための作業を継続する。我々は、国際復興開発銀行及び国際金融公社の拡大した役割を踏まえ、増資パッケージの完全かつ適時の実施を求める。
国際保健
30.保健は、持続可能かつ包摂的な経済成長の前提条件である。我々は、国毎の状況及び優先事項に応じて、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」達成に向けて前進するとのコミットメントを想起する。我々は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに関する国連総会ハイレベル会合を期待する。医薬品へのアクセス、予防接種、栄養、水・衛生、健康増進及び疾病予防を含むプライマリ・ヘルス・ケアは、健康及び包摂を前進させるための礎である。我々は、保健人材及び政策策定のための人材を向上させること並びに費用対効果が高く適切なデジタルその他の革新的な技術のような政府及び民間によるイノベーションの促進を通じることも含めて、医療の質に焦点を当てつつ保健システムを強化する。持続可能な保健財政の重要性を認識しつつ、我々は、財務・保健大臣会合の合同セッションにおいて我々のコミットメントが確認されたように、「途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・ファイナンスの重要性に関するG20共通理解」に従い、保健・財務当局間の更なる協力を要請する。我々は、国際機関及び全ての関係者に対し、効果的に協力するよう奨励し、全ての人々のための健康的な生活及び福祉のための世界行動計画の今後の発表を期待する。
31.我々は、健康増進、感染症及び非感染性疾患の予防と制御に対処するための政策措置、並びに、人口動態の傾向を含む各国の事情に従った人間中心で、分野横断的かつコミュニティに根ざした生涯を通じた統合された医療及び介護を通じて、健康で活力ある高齢化を促進する。我々は、認知症を持つ人々及び介護者の生活の質(QOL)を向上させることを目指し、リスク削減、介護の持続可能な提供及び包摂的な社会促進及び包摂的な社会を含め、認知症の対策のための包括的な一連の政策を実施する。
32.我々は、我々自身の中核的な能力の強化及びWHO国際保健規則(2005)に従った他国の能力支援を含む公衆衛生、備え及び対応の改善にコミットする。我々は、適時の財政的及び技術的双方の支援を通じて、また、健康危機に対する国際的な対応のためにWHOが有する中心的な調整責任に沿って、アフリカにおける現在のエボラ出血熱の流行に苦しむ国々を支援する。我々は、世界的な健康危機に対する資金調達メカニズムの持続性と効率性に取り組む。我々は、ポリオを撲滅し、エイズ、結核及びマラリアの流行を終わらせるとのコミットメントを再確認するとともに、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の第6次増資の成功を期待する。
33.我々は、薬剤耐性(AMR)に取り組むためのワン・ヘルス・アプローチに基づく努力を加速させる。国連AMRに関する機関間調整グループ及びその他の関連イニシアティブから勧告を受けたAMRに関する国連事務総長報告書を認識し、我々は、国際機関を含む全ての関係者に対し、AMRと闘うための世界的な取組に貢献する、それぞれの任務に関連する項目に関して行動し協調するよう促す。我々は、感染予防及び行き過ぎた抗菌薬使用の削減のための政策手段の必要性を認識する。抗菌薬の管理とアクセスを促進するために更なる行動をとるべきである。国際薬剤耐性研究開発ハブによる進行中の取組に留意し、我々はAMRに取り組むための研究開発を促進する。我々は、関心あるG20構成国及び国際薬剤耐性研究開発ハブに対し、AMR研究開発の最良のモデルを特定するため、プッシュ及びプルの仕組みを分析し、関連のG20閣僚に報告するよう求める。
地球環境問題と課題
34.「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)及び「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」(IPBES)の重要な作業に留意しつつ、また、近年の異常気候や災害に照らして、我々は、気候変動、資源効率、大気汚染、土地汚染、淡水汚染、海洋プラスチックごみを含む海洋汚染、生物多様性の損失、持続可能な消費と生産、都市環境の質その他の環境問題を含む複雑で差し迫ったグローバルな課題に対処し、また、持続可能な成長を促進しながら、最良の入手可能な科学を用いて、エネルギー転換を促進し主導する緊急の必要性を認識する。産業界が公的部門と相乗効果を持って重要な役割を果たす形で、環境と成長の好循環が技術革新を通じて行われるパラダイム・シフトが必要とされている。この目的のため、我々は、好循環を加速化させ、強じんで、包摂的で、持続可能な将来への転換を主導する重要性を強調する。我々は、具体的で実際的な行動をとり、世界中から国際的な最良の慣行と知識を集め、公的及び民間の資金、技術及び投資を動員し、ビジネス環境を改善する重要性を強調する。
気候変動
35.この目的のために、我々は、公的及び民間資金の動員及び両者の連携を含む持続的開発のための包摂的資金調達、並びに、低排出及び強じんな開発のための幅広い分野におけるイノベーションを促進するために努力する。非国家主体を含む広範な参加を得て、全てのレベルにおいて気候に関する行動をとることが、このようなパラダイム・シフトを実現させる鍵となる。この努力を更に促進するに当たり、各国の事情に応じて、我々は、スマートシティ、生態系・コミュニティに根ざしたアプローチ、自然に根ざした解決策及び伝統的かつ先住民の知識を含む幅広いクリーンテクノロジーやアプローチを検討する。我々は、特に最も脆弱なコミュニティにとっての適応及び災害リスク軽減における行動及び協力を支援するための取組を強化し、更に議論を深め、緩和行動、適応措置、環境保護及び強じんなインフラとの間の一貫性を育む必要がある。我々は、G20ブエノスアイレス・サミットの成功に続き、パリ協定の実施指針が成功裏に採択されたこと、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第24回締約国会議(COP24)においてタラノア対話の総括が完了したこと、及び軽井沢でのG20エネルギー・環境大臣会合における成果に留意する。我々は、この機運を最大限活用することを決意し、国連事務総長による気候アクションサミットの成功及びチリのサンティアゴにおける国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)での具体的成果を期待する。ブエノスアイレスにおいてパリ協定の不可逆性を確認した、及び同協定を実施することを決意している同協定の署名国は、各国の異なる状況に照らし、共通だが差異ある責任と各国の能力を踏まえて、同協定の完全な履行についてのコミットメントを再確認する。2020年までに、我々は、更なる世界的な努力が必要であることを考慮して、「自国が決定する貢献」(NDC)を提出し、更新し又は維持することを目指す。我々は、パリ協定に整合的な形で緩和と適応の双方において開発途上国を支援するための財源を提供することの重要性を強調する。
36.米国は、パリ協定が米国の労働者及び納税者を不利にするとの理由から、同協定から脱退するとの決定を再確認する。米国は、経済成長、エネルギーの安全保障とアクセス及び環境保護を促進するとの強いコミットメントを再確認する。エネルギーと環境に対する米国のバランスのとれたアプローチは、クリーンで先進的な化石燃料や技術、再生可能エネルギー、民生用原子力を含むあらゆるエネルギー源や技術を活用するとともに、排出量を削減し、経済成長を促進しながら、全ての市民に対し、安価で信頼性が高く、安全なエネルギーの配送を可能とする。米国は、排出量の削減において世界の指導者である。米国のエネルギー関連の二酸化炭素排出量は、2005年から2017年の間に、革新的なエネルギー技術の開発と展開により、経済が19.4%成長しているにもかかわらず、14%減少した。米国は引き続き、排出量を減らし、よりクリーンな環境を提供し続けるため、先進技術の開発と配備にコミットする。
エネルギー
37.我々は、目標を達成するために国によって異なる道筋が存在することを認識しつつ、可能な限り早急に、我々のエネルギーシステムを、低廉で、信頼でき、持続可能で、温室効果ガスの排出の少ないシステムへ変えるために、「3E+S」(エネルギー安全保障、経済効率性、環境+安全性)を実現するエネルギー転換の重要性を認識する。G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合のコミュニケを想起しつつ、我々は、エネルギーミックスにおけるあらゆるエネルギー源及び技術の役割、並びに、よりクリーンなエネルギーシステムを達成するために国によって異なる道筋が存在することを認識する。我々はまた、水素、並びに、各国の状況に応じて、「カーボン・リサイクル」及び「エミッション・トゥ・バリュー」に関する作業に留意しつつ、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)を含む、エネルギー転換に向けた革新的、クリーンで効率的な技術の更なる発展によってもたらされる機会を認識する。我々は、「クリーンエネルギー技術のための研究開発(RD20)」と呼ぶG20議長国である日本のイニシアティブを認識する。エネルギーの安全な流れに関する懸念を浮き彫りにした最近の出来事を考慮し、我々は、インフラの強じん性、安全性及び開発、並びに、様々な供給源、供給者及び経路から途絶されないエネルギーの流れを含め、エネルギーシステム転換のための指針の一つとしての世界のエネルギー安全保障の重要性を認識する。我々は、エネルギーアクセス、アフォーダビリティ、エネルギー効率及びエネルギー貯蔵を含め、広範囲のエネルギー関連問題における国際協力の重要性を認識する。我々は、最貧困層を対象とする支援を提供する一方で、無駄な消費を助長する非効率的な化石燃料補助金を中期的に合理化し、段階的に廃止する共同のコミットメントを再確認する。
環境
38.我々は、循環経済、持続可能な物質管理、3R(リデュース、リユース、リサイクル)及び廃棄物の価値化等の政策やアプローチを通じた資源効率性の向上が、SDGs達成、及び、広範な環境問題に対処し、競争力及び経済成長を向上し、資源を持続可能な方法で管理し、雇用を創出することに貢献することを認識する。我々は冷却部門におけるイノベーションにおける民間部門との協力を奨励する。我々はまた、リサイクル製品の需要を増やすために関係者と協力する。我々は、議長国を務める日本の下でG20資源効率性対話のロードマップが策定されることを期待する。
39.我々は、海洋ごみ、特に海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチックに対処する措置は、全ての国によって、関係者との協力の下に、国内的及び国際的に取られる必要があることを再確認する。この点に関し、我々は、海洋へのプラスチックごみ及びマイクロプラスチックの流出の抑制及び大幅な削減のために適切な国内的行動を速やかに取る決意である。さらに、これらのイニシアティブ及び各国の既存の行動の先を見越して、我々は、共通の世界のビジョンとして、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有し、国際社会の他のメンバーにも共有するよう呼びかける。これは、社会にとってのプラスチックの重要な役割を認識しつつ、改善された廃棄物管理及び革新的な解決策によって、管理を誤ったプラスチックごみの流出を減らすことを含む、包括的なライフサイクルアプローチを通じて、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指すものである。我々はまた、「G20 海洋プラスチックごみ対策実施枠組」を支持する。
40.違法・無報告・無規制(IUU)漁業は、世界の多くの地域において、引き続き海洋の持続可能性にとって深刻な脅威となっているため、我々は、海洋資源の持続的な利用を確保し、生物多様性を含め、海洋環境を保全するために、IUU漁業に対処する重要性を認識しIUU漁業を終わらせるという我々のコミットメントを再確認する。
避難と移住
41.我々は、OECDがILO、国際移住機関(IOM)及び国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と協力しつつ策定した「G20への2019年国際的移住及び避難の傾向と政策に関する報告」に留意する。我々は、G20において、これらの問題の様々な側面についての対話を続ける。
42.難民の大規模な動きは、人道的、政治的、社会的及び経済的な影響を伴う世界的な懸念である。我々は、避難の根本原因に対処し、増大する人道的ニーズに対応するための共同行動の重要性を強調する。
43.我々は、議長国を務め大阪サミットを成功裏に主催し、G20プロセスへ貢献した日本に感謝すると共に、2020年にサウジアラビア、2021年にイタリア、2022年にインドで再会できることを楽しみにしている。
付属文書
関係閣僚会合閣僚宣言・声明
1.G20新潟農業大臣宣言(2019年5月11日〜12日)
2.G20貿易・デジタル経済大臣会合閣僚声明(2019年6月8日〜9日)
3.G20財務大臣・中央銀行総裁会議声明(2019年6月8日〜9日)
4.G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合閣僚声明(2019年6月15日〜16日)
G20ワーキンググループ等付属文書
1.質の高いインフラ投資に関するG20原則
2.経済の電子化に伴う課税上の課題に対するコンセンサスに基づいた解決策の策定に向けた作業計画
3.高齢化と金融包摂のためのG20 福岡ポリシー・プライオリティ
4.金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)作業計画提案
5.途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・ファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解
6.G20インフラ開発における清廉性と透明性に関するグッドプラクティス集
7.G20効果的な公益通報者保護のためのハイレベル原則
8.G20 AI原則
9.女性労働参画進捗報告書
10. G20持続可能な開発のための人的資本投資イニシアティブ
11.持続可能な開発のための2030アジェンダに関するG20行動計画に基づく大阪アップデート
12.持続可能な開発目標達成のための科学技術イノベーション(STI for SDGs)ロードマップ策定の基本的考え方
13.G20開発コミットメントに関する大阪包括的説明責任報告書
14.G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組
15.G20適応と強靱なインフラに関するアクション・アジェンダ
16.持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関するG20軽井沢イノベーションアクションプラン  
 
テロ及びテロに通じる暴力的過激主義(VECT)による
 インターネットの悪用の防止に関するG20大阪首脳声明
首脳として、我々の最も大きな責任の1つは、市民の安全を確保することである。テロを防ぎ、これと闘うことは、何よりもまず国の任務である。ここ大阪で、我々は、テロリスト及びテロに通じる暴力的過激主義(VECT)によるインターネットの悪用から人々を守るために行動するとのコミットメントを再確認する。我々は、オンラインプラットフォームが自らの役割を果たすとの期待値を高めるよう、この声明を発出する。
我々G20の首脳は、あらゆる形態のテロへの最も強い非難を再確認する。インターネットで生中継されたクライストチャーチのテロ攻撃その他の最近の残虐行為は、我々が関連する国連決議、国連グローバル・テロ対策戦略及びテロ対策に関する2017年ハンブルクG20首脳声明を含むその他の文書を十分に実施しなければならないとの緊急性を示す。
我々が皆デジタル化の恩恵を受けるため、我々は、開かれた、自由で、安全なインターネットを実現することにコミットしている。インターネットは、テロリストがメンバーを採用し、テロ攻撃を扇動し、又は準備するための避難場所となってはならない。この目的のため、我々は、ハンブルグで確認されたように、オンラインプラットフォームに対し、法の支配はオフライン同様にオンラインでも適用されるという中核的な原則を遵守するよう強く促す。これは、人権及び表現の自由や情報へのアクセスのような基本的自由を含む国内法及び国際法と整合的な方法で達成されなければならない。我々は、これらを尊重する。我々は、この努力において、国、国際機関、産業及び市民社会と協力することにコミットする。
我々は、オンラインプラットフォームに対し、テロやVECTを助長するために自らのプラットフォームが使われることを認めてはならないとの市民の期待に応えるよう強く促す。プラットフォームは、利用者を保護するとの重要な役割を持つ。課題が複雑であり、インターネットを悪用する犯罪者が一層巧妙化しているとしても、プラットフォームが、社会に害を与えるテロリスト及びVECTのコンテンツを自らのプラットフォームを使って拡散することを防止しようとすることは、引き続き重要である。
我々は、オンラインプラットフォームに対し、テロリストやVECTのコンテンツがインターネット中継され、アップロードされ、又は再アップロードされることを防ぐ取組の野心や速度を高めるよう、強く促す。我々は、テロリストやVECTのコンテンツを検出し、これが自らのプラットフォームに現れるのを防ぐために、サービス利用規約を設け、実施し、強制するための共同の取組を強く奨励する。その他の手段の中でも、これは技術を開発することによって達成されるかもしれない。テロリストのコンテンツがアップロード又は配信される場合、我々は、オンラインプラットフォームが、文書の証拠が保存されるよう確保しつつ、拡散を防ぐため適時にこれに対処する重要性を強調する。我々は、自らの方針や手続に設けられているとおり、定期的かつ透明性をもって公に報告するとのオンラインプラットフォームのコミットメントを歓迎する。
我々は、危機対応を含めて、この重要な産業横断的課題を推し進めるために「テロ対策のためのグローバル・インターネット・フォーラム(GIFCT)」が現在行っている作業に留意する。しかし、更なる緊急の行動が必要とされている。我々は、GIFCTを強化し、これがより包括的になるよう参加者数を拡大するため、産業、報道機関、研究者及び市民社会との協力を奨励する。強化されたGIFCTは、産業横断的理解と協力、及び、大企業と小企業が自らのプラットフォームのテロリスト及びVECTによる悪用を防ぐ能力を高めることとなる。
我々は、国内において、また、国際的なフォーラムやイニシアティブを通じて、国内の経験を共有することも含め、この課題に対処するために引き続き協働することをコミットする。テロリストのプロパガンダに対抗するための前向きなナラティブは、引き続きこの取組の重要な要素となる。我々は引き続き、産業における進歩に参画し、市民社会、消費者及び投資家に対し、同様の行動を強く促す。