羅針盤のない国

「厚労省の統計不正」 

国民の暮し向き 
上向いている 好景気
不景気 質素倹約
国民の生活向上 政治の根幹のひとつ

正しい政治の舵取りは不可能
しばらく 安倍総理の「キャッチコピー」からも数字が消えるのでしょう
 


景気指標
 
 
 

 

政治判断
必ず 拠り所となる「数字」が関わります
    好転 変化なし 悪化
    拡大 均衡 縮小 消滅
    上向き 横ばい 下向き
    どちらが大きい 同じ どちらが小さい
 
 

 

安倍総理
大変 嗅覚 方向感覚に優れています
当然ですが 「数字」不要
延命に都合の良い方向に 舵をきります
 
 

 

●日本1人当たり 名目GDP ( IMF統計 )
 年 国際順位  US$   総理大臣
1990   9   25,196  海部俊樹
1991   4   28,718  海部俊樹/宮澤喜一
1992   4   31,194  宮澤喜一
1993   3   35,657  宮澤喜一/細川護熙
1994   3   39,224  細川護熙/羽田孜/村山富市
1995   3   43,455  村山富市
1996   3   38,453  村山富市/橋本龍太郎
1997   4   35,042  橋本龍太郎
1998   6   31,931  橋本龍太郎/小渕恵三
1999   4   35,912  小渕恵三
2000   2   38,534  小渕恵三/森喜朗
2001   5   33,860  森喜朗/小泉純一郎
2002   8   32,301  小泉純一郎
2003  12   34,845  小泉純一郎
2004  14   37,701  小泉純一郎
2005  15   37,228  小泉純一郎
2006  20   35,465  小泉純一郎/安倍晋三
2007  22   35,342  安倍晋三/福田康夫
2008  24   39,454  福田康夫/麻生太郎
2009  17   41,014  麻生太郎/鳩山由紀夫
2010  18   44,674  鳩山由紀夫/菅直人
2011  17   48,169  菅直人/野田佳彦
2012  15   48,633  野田佳彦/安倍晋三
2013  26   40,490  安倍晋三
2014  27   38,143  安倍晋三
2015  26   34,493  安倍晋三
2016  22   38,883  安倍晋三  
2017  25   38,449  安倍晋三

 

●毎月勤労統計調査  
    1月〜12月  前年同月比 %
     1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12
2005 0.2 0.1 -0.4 0.6 0.6 1.5 1.3 -1.1 0.8 0.6 0.1 1.6
2006 -0.1 0.4 0.4 0.4 0.5 1.0 0.4 -0.2 0.1 0.0 0.2 -0.1
2007 -1.2 -1.0 -0.1 -0.2 -0.2 -0.9 -1.7 0.6 -0.6 -0.1 0.1 -1.7
2008 1.6 1.5 1.5 0.8 0.8 0.4 0.3 0.1 0.2 0.1 -0.7 -0.8
2009 -2.7 -2.4 -3.9 -2.7 -2.5 -7.0 -5.6 -2.7 -1.8 -1.9 -2.4 -5.9
     1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12
2010 -0.2 -0.7 1.0 1.6 0.1 1.8 1.4 0.4 0.9 0.5 0.2 0.1
2011 0.4 0.3 -0.1 -1.4 1.0 -0.7 -0.2 -0.4 -0.4 0.0 -0.2 0.1
2012 -1.2 0.1 0.9 0.2 -1.1 -0.4 -1.6 0.0 -0.5 -0.4 -0.8 -1.7
2013 0.1 -0.8 -0.9 0.0 -0.1 0.6 -0.1 -0.9 -0.2 -0.1 0.6 0.5
2014 -0.2 -0.1 0.7 0.7 0.6 1.0 2.4 0.9 0.7 0.2 0.1 1.3
     1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12
2015 0.6 0.1 0.0 0.7 0.7 -2.5 0.9 0.4 0.4 0.7 0.0 0.0
2016 0.0 0.7 1.5 0.0 -0.1 1.4 1.2 0.0 0.0 0.1 0.5 0.5
2017 0.4 0.4 0.1 0.5 0.7 0.4 1.8 0.6 0.8 0.4 0.8 0.9
2018 1.1 1.1 2.2 0.6 2.1 3.3 1.8 0.8 1.2 1.7 1.8 1.9
厚生労働省HPより (2019/2/28現在)
毎月勤労統計調査結果の概要/全国調査(月別結果)/概況・数値
 
 

 

●国民民主党 代表質問 1/28
はじめに
国民民主党代表の玉木雄一郎です。国民民主党・無所属クラブを代表して、安倍総理に質問します。
まず冒頭、一点申し上げます。
この代表質問、タブレット端末を持ち込んでやらせていただきたいとお願いしましたが、認めてもらえませんでした。議場の皆さん、もう平成の時代が終わろうとしています。国会のペーパーレス化のためにも、こうした古いルールを改めて、ペーパーレス化を進めていこうではありませんか。
さて、私たち国民民主党は、「共生」を理念として掲げる「改革中道」政党です。「つくろう、新しい答え。」を党のキャッチフレーズに掲げ、新しい時代へ進む新しい解決策を提案していきます。また、右か左かといった二元論的な対立を乗り越え、社会全体を包み込む温かさをもって、野党勢力の結集に尽力してまいります。
質問に入ります。
総理の演説を聞きましたが、憲法改正は一番最後にたった3行。日露交渉も4行だけで、「北方領土」という言葉さえ見当たりません。拉致問題に至ってはたった2行。安倍総理が今年11月20日まで続けば、桂太郎首相を抜いて憲政史上最長との話もありますが、憲法改正にしても、日露交渉にしても、拉致問題にしても、順調に進んでいるようには見えません。安倍総理、総理が任期中に、一番やりたいことは何ですか。まず、伺います。
様々な課題が行き詰まっているからこそ、都合のいい数字だけをつまみ食いし、時にはカサアゲまでして、都合よく成果を宣伝することばかりに腐心しているように見えます。しかし、庶民に、戦後最長の景気回復の実感は全くありません。
例えば、総理は、子どもの貧困が改善したと胸を張っていますが、依然として、ひとり親家庭の相対的貧困率は50%を超えています。総理、ご存知ですか。また、現役世代の生活保護世帯が8万世帯減ったと言いますが、この間、生活保護世帯の半数以上を占める高齢者の受給世帯は増加の一途をたどり、安倍政権になってから約20万世帯も増えています。総理、ご存じですか。
働く現役世代にとっても、50代以降に教育費と介護費を同時に負担しながら、自分の老後の資金をつくることは相当難しいのが現実です。現に、安倍政権6年間で、年収300万円の世帯で収入から税などを除いた実質可処分所得は約20万円減少、年収400万円で約25万円減少しています。
総理、都合のいい数字だけを並べて国民生活の厳しい現状から目を背けることは、もうやめませんか。国会は、あなたの自慢話を聞く場ではなく、国民生活の現実に向き合い、解決策を導き出していく場です。そして、都合のいい数字で飾り立てるために、役所の忖度と不正が招いた結果が、今回の毎月勤労統計の問題ではないでしょうか。
毎月勤労統計問題
昨年6月に名目賃金の伸び率が公表された際、21年ぶりの高い伸び率と報道されましたが、今回の統計不正が発覚し、再集計では当初発表の3.3%から2.8%に下方修正されました。さらに、学識経験者から構成される中立の第三者機関である総務省統計委員会は、景気指標としては、再集計した2.8%より、同じ企業サンプルを比べた「参考値」1.4%の方が実態に近く重視すべきとしています。当たり前です。違う人間の身長を比べて、背が伸びたと言っているような数字に、意味はありません。
総理に伺います。昨年6月に名目賃金が「21年5ヶ月ぶりの高い伸び率」だったという主張を撤回しますか。
さらに、物価上昇を差し引いた実質賃金の伸び率を試算すれば、昨年6月は0.6%となり、かつ、6月以外の参考値はマイナスとなります。ということは、同じ企業サンプルを比べたら、昨年1月から11月の期間における実質賃金の伸び率は、結局マイナスだったのではないですか。昨年1月から11月までの物価上昇を差し引いた実質賃金の伸びは、具体的に何%になるのか、少なくともプラスなのか、マイナスなのか、明確な答弁を求めます。
21年ぶりの高い伸び率と公表された年の実質賃金の伸びが、実はマイナスだったということになれば、事態は極めて深刻です。これはまさに、「賃金偽装」、「アベノミクス偽装」とも言うべき大問題です。
厚労省による調査は、第三者とは名ばかりのお手盛り調査でした。根本大臣は、24日の国会で、第三者調査について間違った答弁をしていたことを昨日認めました。しかも、根本大臣は昨年12月20日に報告を受け、徹底調査を指示をしていますが、統計の不正を知りながら、翌21日に予算案の閣議決定にサインしたことになります。安倍総理、根本大臣を罷免すべきではありませんか。
また、麻生大臣は「上がっていないと感じる人の感性」といった言いましたが、実質賃金が上がっていないのは「感性の問題」ではなく、まさに事実そのものだったわけです。予算の修正を余儀なくされたことも含め、麻生財務大臣も謝罪すべきではありませんか。
そして、この統計不正によって、雇用保険の失業給付などの支払い不足が発生しています。本来、必要な人に支払われるべきお金が、支払われていないのです。政府は追加給付額として700億円を計上していますが、平成16年から平成23年については元のデータが破棄されているため、本来支払うべき正確な額は不明のままです。その意味で、追加給付額には確たる根拠がありません。根拠のない追加給付額を計上した修正予算を元に議論することはできません。データをすべて探し出し、不正の全容を解明するのが先であり、その上で予算の修正案を提出すべきではありませんか。根拠のない支出を含んだ欠陥予算案を国会で審議することはできないはずです。総理の見解を求めます。
アベノミクス、安倍政権の限界と課題
安倍政権が発足してもう6年。大規模な金融緩和に頼った経済政策に限界が来ていることは明らかです。総理は未だに「デフレは貨幣現象」だと信じているのでしょうか。デフレの原因は他にもあるとの考えに変わったのでしょうか。
マイナス金利の導入もあり、地方銀行の収益が悪化しています。地方銀行の収益が悪化すれば、地方経済にも大きな影響を与えます。地方銀行の収益悪化の影響をどのように考えているのか、総理の見解を伺います。
また、企業の内部留保が500兆円にも上る一方で、企業が生み出した付加価値を労働者にどれだけ還元されているかを示す労働分配率は下がっています。働く人にもっと還元されるべきです。
私は、労働分配率を上げた企業の法人税率を引き下げると同時に、必要以上に多額の内部留保を持つにもかかわらず、労働分配率が低い企業の法人税率を引き上げる「労働分配促進税制」を導入すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
グーグルやアマゾンといった「GAFA」など、プラットフォーマーとも言われる巨大IT企業の一人勝ち状況が進み、一部の企業は、実質的に日本で上げた収益を他国に移し替えることで、本来日本で払うべき法人税を払っていません。また、優越的地位の濫用とみられるケースも散見されます。これら巨大IT企業への課税や独占禁止法の適用を、EU並みに厳格化すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
今、企業には大量の個人データが集まっています。そんな中、ポイントカード大手の「Tカード」を運営する会社が、裁判所の令状なしに会員情報や利用履歴を捜査当局に提供していたことが明らかになりました。
公文書や統計データを改ざんする信頼できない政府が、膨大な個人情報を収集し、国民の思想信条も含めたプライバシーも監視するという、おそろしい社会になると危機感を覚えている国民も多いと思います。裁判所の令状なく捜査当局が個人情報の提供を受けている企業は、「Tカード」の運営会社を含め、現在何社あるのか、総理の明確な答弁を求めます。
東京オリンピック・パラリンピックの招致に関して、フランス当局から贈賄の容疑がかけられています。
疑惑を払拭し、世界から祝福される大会にするためにも、政府としても、日本オリンピック委員会、JOCの調査を鵜呑みにせず、JOC竹田会長や電通などの関係者から事情を聴くなど、全容解明を図るべきではありませんか。また、国内法では必ずしも禁止されていない、IOC委員等への贈賄行為を明確に禁止する法改正を行うべきではないでしょうか。総理の見解を伺います。
原発については、福島第一原発事故以降、安全対策費用が高騰し、英国、トルコも断念の方向となり、原発輸出は事実上全て頓挫しました。今後、再生可能エネルギーのコストが低下する中で、輸出に限らず、国内においても、民間企業の経済合理性に基づく民営原発は難しくなってきているのではないでしょうか。総理の認識を伺います。
経済政策の「新しい答え」
地方と中央の格差が広がっているのも、アベノミクスの弊害です。
安倍総理は、農林水産業が万事うまくいっているように演説しましたが、地方の実態は違います。人口減少は底が抜けるように進み、空き家、耕作放棄地、鳥獣被害の3点セットが加速する一方です。総理、地方の現状が本当に見えているのでしょうか。
こうした流れに歯止めをかけるため、国民民主党は、市場原理を重視する産業政策としての農業だけでなく、農業や農地の持つ多面的機能を重視する地域政策としての農業にもっと力を入れます。
具体策として、かつての農業者戸別所得補償を改良し、GAPなど環境や食の安全に配慮した農法を採用する農家には新型の加算措置を講じ、加えて、地域ごとの生産コストを踏まえた地域別の支払単価を導入した「新たな所得補償制度」を提案します。総理の見解を伺います。この新たな所得補償制度の導入によって、安心して営農継続できる環境を整え、農村集落の衰退に歯止めをかけていきます。
また、物流コストの低減を通じて地方経済の活性化にも資する政策として、高速道路料金の引下げを提案します。
現在はやがて無料になることを前提に高い料金設定となっていますが、永久有料制とすることにより、その分の安定永続収入が見込まれ、料金値下げの原資ともなります。永久有料制度への移行による料金値下げを検討すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
外国人労働者の受け入れ拡大
地方では、深刻な人手不足も発生しています。しかし、4月に施行される新制度では、特定技能外国人は転職自由となります。そのため、給与の高い地域に人が集中し結局地方の人手不足は解消しないとの懸念がありますが、昨年12月に閣議決定された基本方針を見ても具体策が全くありません。これで給与の高い都会への集中をどうやって防ぐのか、具体策について、総理の見解を伺います。
全世代が安心を実感できる社会保障改革
人口減少を国難と呼ぶわりには、安倍政権の取り組みは掛け声倒れと矛盾に満ちています。例えば、待機児童問題。当初、2017年度中に待機児童ゼロと言っていたのに、突如、達成期限を3年のばして2020年度としたのは記憶に新しいところです。総理は、待機児童ゼロの目標は「必ず実現いたします」と力を込めて述べたが、その期限は2020年度末で変わらないか確認したい。幼児教育の無償化によって保育ニーズが高まり、むしろ待機児童問題は悪化するとの指摘もあり、さらに目標が先送りされる「永遠の道半ば」になるのではないですか。この質問は大学生からぜひ聞いてほしいと頼まれた質問ですので、はぐらかさずお答えください。
少子化の最大の原因は経済的理由から子どもをあきらめてしまうことですが、その解決策として、私は「第3子に1000万円給付」のコドモノミクスをかねてから主張しています。金額だけ聞くとびっくりするかもしれませんが、現在の児童手当をベースとして、第一子は月1万円、第二子には月2万円、第三子以上には月4万円とすれば、第三子には18歳の成人になるまで累計約900万円が支援されることになります。追加の財源も、約1兆円程度で始められます。我が国最大の課題である少子化を乗り越えるためには、異次元の金融緩和ではなく、「第3子1000万円」のような異次元の子育て支援策が必要と考えますが、総理の見解を伺います。
「人生100年時代」と言いますが、多くの人は100歳まで生きることに不安を感じています。政府が現在検討しているように、「現役世代」を延長し、仮に70歳まで働き続けるとして、その後の人生がまだ30年ある。生活を支える最低限の所得の確保が重要です。来年度から、低所得年金者向けに、民主党政権時代に決めた最高月5000円、年間6万円の福祉給付金制度が始まります。一歩前進ですが、まだまだ不十分です。
私たち国民民主党は、安定財源の確保を前提に、年金の最低保障機能をさらに高め、人間としての尊厳ある生活をすべての高齢者に保障する、高齢者向け「ベーシック・インカム」としての最低保障年金や、高齢者向け住宅などの「ベーシック・サービス」を提供する総合政策を導入していく方針です。「貯金ゼロでも不安ゼロ」の社会、これが私たち国民民主党の目指す社会像です。
消費税増税
総理、今からでも間に合います。軽減税率は撤回しましょう。混乱しか生み出しません。軽減税率の適用・不適用の線引きは国民に分かりにくく、また免税となっている事業者が取引から排除されかねません。軽減税率は廃業促進税制となりかねないのです。何より、不公平極まりない。
具体的に総理に伺います。
宅配の新聞には軽減税率が適用され8%の一方で、同じ中身の新聞でも駅売りやコンビニで買えば10%、電子版も10%。意味が分かりません。その理由を明確にお答えいただきたい。
安倍政権は、5%ポイント還元やプレミアム付き商品券といった小手先の対策ばかりに熱心で、議員定数削減や税金のムダ遣いの徹底など、本来やるべきことをやっていません。いわゆる逆進性対策も、軽減税率ではなく、所得税減税と給付策の組み合わせの方が分かりやすく効果的であることは、この議場にいる多くの方は理解しているはずです。
しかも、安倍総理は、「今回(消費税を)引き上げた分は、全部お返しし、さらにお釣りが来る」と言いましたが、そんなことをするくらいなら、増税自体をやめた方がましです。2012年に民主党・自民党・公明党で合意した「社会保障・税の一体改革」の精神は、安倍総理によって完全に踏みにじられてしまいました。残念でなりません。
外交・安全保障政策
1.日米関係
3月にも開始される日米通商交渉では、日本から輸出される自動車の数量規制を求めてくる可能性が高い。しかし、数量規制は、最も自由貿易を阻害し、GATT第11条違反になり得ます。WTO体制を遵守し「自由貿易の旗を高く掲げる」というなら、米韓FTAや、メキシコ・カナダとの貿易協定におけてアメリカから求められた、自動車の数量規制だけは絶対に容認しないと、ここで総理に明言してもらいたいと思います。これを受け入れてしまえば、日本の自動車産業はがたがたになってしまいます。
2.日露関係(北方領土問題)
日露関係について伺います。
私は、昨年、一つの現実的な解決策として、1956年の日ソ共同宣言を土台とした交渉を提案しましたが、交渉はロシアペースになっているように見えます。
そこで、安倍総理の日露交渉の基本方針について伺います。まず、総理の言う「日ソ共同宣言を基礎として」という意味は、二島「先行」返還ではなく、国後島や択捉島は永久に返ってこない「二島のみ」という意味でしょうか。もしそうなら、それは、これまでの日本政府の方針とは異なるものであり、明確に国民に説明すべきではないでしょうか。国後島、択捉島の帰属は日本にあるのか、ロシアにあるのか、総理の考えを明確に示していただきたい。
さらに、総理が年頭記者会見で「住民の方々に日本に帰属が変わることについて納得、理解していただくことも必要だ」と述べたことにロシア側が抗議しましたが、島の帰属がロシアにあることを前提にした発言は日本国の総理大臣として不適切です。
総理は色丹島の帰属さえ、すでにロシアにあると認めて交渉しているのですか。色丹島の帰属は日本にあるのか、ロシアにあるのか、総理の考えを明確に示していただきたい。
あわせて、歯舞群島の帰属についても、総理の考えを明確に示していただきたい。
3.日中関係
米国は、高速大容量の5G技術で先行するファーウェイ社など中国製品を米国の息のかかった経済圏から排除する、いわゆる「デカップリング」政策を同盟国に求め、世界の経済圏を分断するような状況となっています。
日本は安全保障上のリスクを理由に情報通信機器の政府調達からこれらの製品を排除することを決めましたが、米国の同盟国であるドイツやフランスは必ずしも排除を決めていません。日本は何を根拠に中国製品の排除を決めたのでしょうか。情報窃取の可能性がある機器を特定しているのでしょうか。
日本は中国と経済的結びつきが大きく、また、「自由貿易の旗を高く掲げる」とした日本が、米国の政策に付き合うだけでいいのか、安倍政権の戦略を伺います。特に、米国のデカップリング政策の日本経済への影響、とりわけ日中貿易への影響をどのように分析しているのか、明確な答弁を求めます。
4.日韓関係
いわゆる徴用工判決、火器管制レーダー照射など、我が国にとって受け入れ難い問題です。今、日韓関係は非常に厳しい状況にあると認識しています。だからこそ、日本の主張をはっきり伝え、しっかり対話すべきではありませんか。
しかし、総理は演説でこうした困難な問題についての言及を避け、なぜ「韓国スルー」をしたのですか。レーダー照射問題について問題解決の責任があるのは韓国側だと考えますが、日本政府としては、今後、どのように対応していく方針なのでしょうか。もう何もしない方針なんですか。総理の答弁を求めます。
5.北朝鮮問題
「韓国スルー」だけでなく、北朝鮮問題解決に向けた熱意も感じられませんでした。
昨年8月、韓国政府は、国連禁輸品の北朝鮮産石炭を韓国に密輸することに加担したとして、外国籍貨物船4隻の入港を禁止しました。いったんロシアのサハリン港に寄って「ロシア産」として韓国の港に運んだケースです。
しかし、実は、これら4隻の船は、日本の港には自由に出入りしています。国連制裁違反貨物船舶が、何ら制裁を受けることなく日本の港に入港しています。日本には実効性ある形で取り締まる国内法がないために、韓国でさえできている国連制裁の執行ができていないのです。なぜ、放置したままなのか。安倍総理、北朝鮮に対して威勢のいいことばかり言うのではなく、制裁逃れを許さないよう、穴を埋める法整備を早急に進めるべきではないでしょうか、総理の見解を伺います。
6.日米地位協定の改定
先日、一昨年12月に米軍機からの部品落下事故があった緑が丘保育園を訪問した時、あるお母さんから「沖縄の子どもたちの命は、本土の子どもたちの命より軽いのですか」と言われました。このお母さんの言葉に対して、私たち政治家は何と言えば良いのか。国民の生命と財産を守るべき政府は、どう応えるべきなのか。胸をえぐられる思いでした。
国民民主党は、昨年12月26日、日米地位協定の改正案を取りまとめました。主権が大幅に制限さた「治外法権」とも思われる状況は、主権国家として一日も早く改めるべきと提案しています。
そこで、まず、総理に、在日米軍に対する国内用の適用に関する原則を伺います。政府は本年1月1日、地位協定に関する外務省ホームページ上での説明を突如、変更しました。これまで政府は、「一般国際法」を根拠に、在日米軍には国内法が適用されないとの説明をしていましたが、年明けの修正でこの「一般国際法」という記載を削除し、「軍隊の性質に鑑み、免除される」との説明に改めました。なぜ、修正したのか、また、この修正によって、在日米軍にも、原則、国内法が適用されることに変わったのか、総理の明確な答弁を求めます。
日本の主権を守り、日本の子どもたちの安全を守るために、単なる運用改善ではなく、地位協定そのものの改定すべきと考えますが、日米地位協定改正に向けた総理の認識を伺います。
7.新防衛大綱
新防衛大綱について伺います。いずもを事実上空母化し、ヘリコプターの代わりにF35Bを積んだ場合、いずもの本来の任務であった対潜水艦の哨戒活動に支障は出ないのでしょうか。
また、中国やロシアが開発しているとされる音速の5倍で飛行し探知と迎撃が困難な極超音速ミサイルは、イージス・アショアで迎撃できるのか、総理の見解を伺います。ロシアは今年中にも実戦配備するとしていますが、イージス・アショアが無力化するのではないですか。そもそもイージス・アショアが実際に迎撃できるようになるのはいつと想定しているのか、また、運営費を含めた総コストはどの程度になると考えているのか、総理の明確な答弁を求めます。
憲法改正
憲法改正の国民投票について、国民民主党は、CM規制を含め資金力が国民投票に与える影響を最小化するための法案を提出済みです。業界の自主規制ではなく、法律に基づくCM規制を導入すべきです。憲法審査会で積極的に議論を進めていきます。
国民民主党は、立憲主義の観点に立ち、憲法改正議論には真摯に向き合っていきますが、自民党の条文イメージにおける9条改憲案では、単に自衛隊を明記するだけではなく、制約のない自衛権の拡大を認める内容になっており、こうした案に国民民主党は反対です。
そもそも、総理が主張してきた「何も変わらない」とする「自衛隊明記案」と、自民党の9条の「条文イメージ」は同じなのか違うのか、明確な答弁を求めます。総理は、自民党の「条文イメージ」でも、自衛隊が行使する自衛権の範囲は拡大しないと考えているのか答弁を求めます。
むすびに
今上陛下は昭和58年、50歳の誕生日の会見で、論語の一節を引いて次のように述べられました。
「好きな言葉に『忠恕(ちゅうじょ)』があります。自己の良心に忠実で、人の心を自分のことのように思いやる精神です。この精神は一人一人にとって非常に大切であり、さらに日本国にとっても忠恕の生き方が大切ではないかと感じています。」
今年5月に即位される皇太子殿下も、同じ50歳の誕生日に今上天皇のこの言葉を引用されました。
私たち国会議員も、この「忠恕」の精神をもって、国民の期待に応える論戦を国会で展開していくことが必要ではないでしょうか。その意味で、総理には改めて正直で誠実な答弁を、とりわけ、野党の質問の先にも多くの国民の声があるということに思いを馳せて答弁いただくことを求めます。また、野党各党・各会派の同僚議員にも、様々な思いを乗り越え、自民党に代わり得る「もう1つの選択肢」をつくるため、大同団結することを呼びかけたいと思います。なお、総理の答弁が不十分な場合には、再質問、再々質問をさせていただくことを申し添え、私の質問を終ります。ご清聴、有難うございました。
以上 

 

●安倍首相、実質賃金の再計算を検討 2019/2/1
 統計不正、経済判断の変更は否定
参院は1日午前の本会議で、安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問を続行した。首相は、毎月勤労統計の不正調査に絡み、2018年の実質賃金の伸び率が大半の月で前年同月比マイナスになるとの指摘が出ていることについて、「昨年1月から11月の実質賃金の算出が可能かどうか担当省庁で検討を行っている」と述べた。
立憲民主党の福山哲郎幹事長が、昨年の実質賃金を実態に即した方法で再計算した野党の試算を念頭に、「18年は実質賃金がマイナスになる可能性が出てきた。アベノミクス偽装そのものだ」として、事実関係をただしたのに対し答えた。
一方、首相は、21年5カ月ぶりの高い伸びを記録した昨年6月の名目賃金が従来の3.3%増から修正値で2.8%増となったことに触れ、「再集計でも増加傾向が続いていることに変わりはない。雇用所得環境が着実に改善しているとの判断に変更はない」と強調した。
不正統計に伴う雇用保険などの過少給付への対応については、「システム改修の準備を進めている」と述べ、早期に具体的なスケジュールを公表する考えを示した。 

 

●実質賃金、マイナス認める=再計算公表は慎重姿勢−根本厚労相 2/5
根本匠厚生労働相は5日の衆院予算委員会で、毎月勤労統計の不正調査に絡み、2018年の実質賃金の伸び率を実態に即した方法で再計算した場合、大半の月で前年同月比マイナスになるとの野党の主張について、「機械的に出された(計算した)限りではおっしゃった通りだ」と認めた。一方、政府としての再計算と数値の公表には慎重姿勢を示した。
立憲民主党の西村智奈美氏が18年1〜11月の実質賃金について「下落ぶりを認めるのか」と追及したのに対し答えた。野党は政権に対し、「アベノミクス偽装」との批判を強める構えだ。
実質賃金は労働者の購買力を示す指標で、名目賃金から物価変動の影響を差し引いて算出される。厚労省は野党のような実態に近い調査手法での数値を公表していない。
これについて、安倍晋三首相は「(算出が)可能かどうかは関係省庁で検討している」と説明したが、根本氏は「専門家の意見を聞き、最終的には統計委員会との協議も必要だ」と述べるにとどめた。国民民主党の玉木雄一郎代表らへの答弁。
首相は「経済の実態を表しているのは総雇用者所得で、名目でも実質でもプラスになっている」と重ねて強調した。 

 

●「国民に(実態を)知らせないなんて政治はない」 2/6
衆院予算委員会で5日、国民民主党から山井和則議員が2018年度第2次補正予算の基本的質疑に立った。
山井議員は冒頭次の質問を読み上げた。(1)昨年6月の名目賃金の伸び率は何%か(2)昨年6月の実質賃金の伸び率は何%か(3)昨年1月から11月までの実質賃金の伸び率の平均は、機械的に計算すれば何%か(4)昨年1月から11月までの実質賃金の伸び率の平均は、プラスかマイナスか――。
「日本で賃金が何%上がっているのか、何%下がっているのか。国民の皆さんも知りたいと思う。私たちがこれから経済政策、景気対策を議論する上でも、現状認識がなければ正しい政策はできない。正しい賃金統計なくして、正しい政策はつくれない。特に賃上げと言えばアベノミクスの一丁目一番地のことなので、安倍総理にぜひお答えいただきたい」と問題点を指摘した。
次に、厚生労働省が昨年6月に発表した名目賃金の伸び率を3.3%から2.8%に下方修正し、総務省統計委員会が「共通事業所参考値1.4%の方が適切である」と回答した経緯を説明し、安倍総理に政府の公式見解を求めた。
山井議員はあいまいな答弁を繰り返す安倍総理に対して、「このようなことが国際社会で知られると、日本の信頼に関わる。賃金上昇率を上乗せしたあげく、国会で指摘されても安倍総理は認めようともしない」と痛烈に批判した。また、ニューズウィーク日本版の記事を紹介し、ロイター通信が厚労省の毎月勤労統計を試算した結果、昨年1月から11月までの実質賃金がマイナス0.4%と報道され、日本の賃金統計がエコノミストから信用されていない現状について安倍総理に見解をただした。
さらに、世論調査でアベノミクスを実感している国民が16%しかいないことにも触れて、「政治は国民生活が良くなっているのかを確認しながら政策をつくっていくべき。総理が実質賃金が伸びたかどうかわからない。先進国でそのような国はない。」「おととし以上に昨年は実質賃金の伸び率がマイナスになっていて、国民の生活は厳しくなっているのではないか。国民に(実態を)知らせないなんて政治はない」と厳しく詰め寄った。
山井議員は根本厚労大臣に「厚労省か総務省のどちらかで、いつまでに昨年の実質賃金の伸び率を明らかにするのか」と質問したが、明確な答弁はなかった。
最後に、昨年1月から毎月勤労統計の算出方法を変更したことにより、伸び率が大きく上振れしたグラフを示した。それは昨年8月28日に総務省統計委員会が「平成27(2015)年10月、経済財政諮問会議において、麻生議員がGDP推計のもととなる基礎統計(毎月勤労統計を含む)の充実に努める必要性を指摘、これを受け」調査方法を「早急に検討し、方針を整理することを要請」と記載した資料を示した。安倍総理は恣意的な関与を否定したが、山井議員は経済財政諮問会議の要請により、調査を変更してから、結果的に賃金が上昇している点も強調した。 
●「ごまかし以外の何物でもない」 2/6
玉木雄一郎代表は6日、定例記者会見を国会内で開いた。
冒頭、舞台を参院に移した予算委員会での補正予算審議について「衆院もそうだったが、参院でもあいかわらずまともに答えないし、答えられないということで、たびたび審議がストップしている。このような姿を見て、そもそも政府は本当に事案の深刻さが分かっているのか、全容解明する気があるのか疑わしく感じた」と語った。
統計不正問題国会論戦の中で、実質賃金よりもむしろ「総雇用者所得」に目を向けるべきだとする安倍総理の発言について意見を求められると、玉木代表は「ごまかし以外の何物でもない」と即答。「実質賃金について話しているのに、総雇用者所得について長々とお話しいただくのは止めにしてもらいたい。都合の良いところだけつまみ食いをする、あるいは都合の良い手法に替えていくことが問題となっている訳で、まさにこの統計不正問題を招いた安倍政権の体質を、あの総理答弁が表している」「『まともに答えない』『都合の良いことを延々しゃべる』。こういうことを改めないと、統計不正の問題なんか治らない」と安倍総理の答弁内容や政権の体質を批判した。
続けて「総雇用者所得とは、一人あたり賃金(現金給与総額)に雇用者数を掛けた所得の合計を表している訳で、この間、総雇用者所得が増えているということは、安倍総理の指摘通り、雇用者の総数が増えているからだと思う。他方、そういう状況下で実質賃金が下がっているということは何を意味しているのか? 1人ひとりの稼ぎは少なくなっているということだ」「さらに言うならば、増えた雇用者200万人の中の多くは高齢者。高齢者の就労が増えている。つまり今の状況は、低所得で働かざるを得ない高齢者が増えている、ということをまさに現わしている」と指摘した。
「高齢者が働く理由の一番に上がるのが『生活の糧として働かざるを得ない』というもの。退職をして、人生100年だと言われて、老後の生活が長い中で年金が少ない。比較的低い賃金の中でたくさんの高齢者が働かざるを得ない状況を、総理がまさに自分の口で語っているのではないか」と、アベノミクスの成果の証として総雇用者所得の増加を挙げた安倍総理の答弁をやゆした。
参院予算委員会で足立議員から幼児虐待に関する様々な問題提起があったことも玉木代表は取り上げた。国民民主党としては「児童虐待防止法案」を提出しているとして、(1)児童福祉士の人員拡充(2)児童相談所の管轄が変わった時の情報共有(3)虐待をする親が強い態度に出てくるケースへの対応などについて、引き続き力を入れて取り組んでいきたいと説明した。
北方領土返還交渉に関しては、今まで与野党で当たり前のように使っていた「わが国固有の領土」という言葉が使われなくなってきており、代わりに「主権を有する島々」という弱々しい表現になってしまっている、と指摘。「ロシアから言われているのか。交渉がどんどん不利な方向に行っているのではないか。後退している印象だ」と懸念を表明した。 

 

●安倍首相、公表に慎重姿勢=実質賃金参考値、野党が要求 2/7
安倍晋三首相は7日の参院予算委員会で、毎月勤労統計の不正調査問題をめぐって野党が求める2018年実質賃金の参考値の公表について「可能かどうか今、検討している」と述べるにとどめ、慎重な姿勢を示した。
参考値は対象企業の入れ替えなど調査手法の変更の影響を除いた数値。野党は、18年実質賃金の参考値は大半の月で前年同月比マイナスになると指摘しており、予算委で根本匠厚生労働相は「単純に計算すればその数字(マイナス)は出るが、専門的な検証が必要だ」と語った。共産党の倉林明子氏への答弁。  

 

●「統計不正」野党の不毛な追及… 真相究明し改善策に知恵絞るべき 2/9
政府の統計不正問題が広がっている。背景には、担当職員の削減もあるだろう。だが、問題の本質はやはり「官僚の劣化」ではないか。
例えば、厚生労働省に限ってみても、統計部局の職員はこの10年間で約2割も削減されたという。企業が集中する自治体の現場が忙しいのも理解できる。
とはいえ、官僚が法律を守らず、全数調査を勝手にサンプル調査に変えていたのは論外だ。コンプライアンス(法令遵守)意識が、まるで感じられない。法律を預かる中央省庁の官僚が、なぜ法律改正を考えなかったのか。
現場だけではない。厚労省の官房長は特別監察委員会の調査に同席し、質問までしていた。本来なら、自分自身も監察対象になり得る立場ではないか。自分たちが何を問われているのか、官房長自身が分かっていないのである。
さらに言えば、特別監察委員会の委員長を努めた外部有識者は「官房長の同席はおかしい」と思わなかったのだろうか。委員長は厚労省の関連団体である独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の理事長を努めている。いわば身内だ。この人選からして、そもそも「第三者委員会」としての中立性が疑わしい。
厚労省といえば、かつて「消えた年金」問題でも、旧社会保険庁のデタラメぶりが問題になった。2006年に成立した第1次安倍晋三政権が崩壊するきっかけになった問題だ。社保庁は結局、解体されて日本年金機構に生まれ変わったが、なお改革途上にある。
以上を踏まえると、厚労省は現在の体制を維持したままで、自己改革を図れるとは、とても期待できない。大胆に外部の血を入れたうえで、組織を分割するくらいの荒療治をしないことには、コンプライアンス軽視の役所文化は変わらないだろう。
そう指摘したうえで、残念なのは、野党の対応である。野党は「絶好のネタが転がってきた」とばかり、安倍政権の責任を追及している。だが、それだけでいいのか。
不正は判明分だけでも、04年から始まっていた。つまり、旧民主党政権時代でも不正があったのだ。にもかかわらず、自分の失敗について、じくじたる思いを感じている様子がない。
立憲民主党の枝野幸男代表は「私が承知している限り、厚労省で当時仕事をした仲間は実態はまったく伝えられておらず、疑ってしかるべき状況もなかった」と語っている。そこは、安倍政権も同じではないか。
そうであれば、これは与野党の区別に関係なく、真相を究明して改善策に知恵を絞るべき問題だ。なんでもかんでも「安倍政権が悪い」という話にするのは無理がある。
共同通信の世論調査(2、3日実施)では、政府の対応が「不十分だ」との回答が83・1%に上った一方、安倍内閣の支持率は45・6%と前回の43・4%から2・2ポイント上昇した。この数字をみると、国民も「旧民主党政権時代でもあった話で、問題の根源は役所のデタラメ仕事」と理解しているようだ。
野党は不毛な政権追及ではなく、建設的かつ抜本的な統計改革を提言してこそ、存在感を発揮できるはずだ。 

 

●安倍政権以前の実質賃金が高かったのはデフレが理由 2/12
安倍晋三首相は12日午後の衆院予算委員会で、安倍政権以前の方が実質賃金の水準が高かったとの指摘に対して、デフレという異常な状況だったためと説明し、「名目賃金を物価で割り戻したのが実質賃金。実質が高いのはデフレ自慢」と述べた。共産党の志位和夫委員への答弁。
志位氏は安倍政権での実質賃金が前年比マイナスであることなどから消費が低迷しているとして消費増税の停止を求めた。首相は就業者の拡大によって総雇用者所得は拡大していると強調した。  

 

●「これは本当に民主主義の危機だ」 2/13
国民民主党は7日、通常国会連続街宣第4弾となる街頭演説会を神奈川・戸塚駅東口で開いた。玉木雄一郎代表、大西健介国民運動局長、乃木涼介参院選神奈川選挙区公認内定者、曽我部久美子神奈川県議、坂本勝司横浜市議、川辺芳男前横浜市議らが交代でマイクを握った。
玉木雄一郎代表は、衆院予算委員会で統計不正の問題について安倍総理に質問したことに触れ「聞いたことには答えない。聞いていないことは一杯しゃべる。呼んでもいない大臣が出てきて、だらだらしゃべる。こんなことをやっていたら、議会でまともな議論なんてできないじゃないですか、皆さん!」と、政府の対応を批判した。そして「さまざまな立場の違いを尊重しながら、しっかりと議論していく場が議会であるはずだ。とにかく数の力で押し切っていこう。こんなことではまともな民主主義は育たない」と訴えた。
さらに「今、私たちが一番問題だと思っているのは、(議会での)議論の前提となるデータや資料や文書を、政府がきちんと求めに応じて出さないこと。それがなければ、まともな議論すらできない。しかし求めても『出さない』『隠す』。挙句の果てには『改ざん』される」と述べた上で、「当たり前だと思っていた民主主義のルールが壊れつつある。これは本当に民主主義の危機だ」と現在の日本の統治のあり方そのものに対する危機感を訴えた。
大西健介国民運動局長は、支持率がなかなか上がらない党の現状への対応について党大会で玉木代表がイソップ童話にある、ミルクの入ったコップに閉じ込められた3匹のカエルになぞらえて語ったことにふれ、「もがいているうちに足元が固まり、私たちも高く飛び上がることが出来る。そう信じて、これからもしっかりもがいていきたい」と訴えた。また、乃木涼介神奈川県参議院選挙区第1総支部長がNHKの連続テレビ小説に出演した俳優であることを紹介し、「乃木さんのTVの役柄にもあった通り、どうなるか分からないけれども『やってみなはれ』。こういう挑戦する人がいないと世の中変わらないんです」と乃木候補のチャレンジ精神を持ち上げた。
その乃木神奈川県参議院選挙区第1総支部長は「俳優だった私がなぜここに立っているのか」と聴衆に語りかけ、「それはこの国がこのままでよいのか。この国に未来があるのか。安倍一強政治のままでよいのだろうか。多種多様な世の中で自分の考えをはっきり言えない、そんな世の中でよいのだろうか。6人に1人、ひとり親家庭では2人に1人の子どもが相対的貧困の中にあると言われているほど格差が広がっている」と、こうしたさまざまな思いに突き動かされて立候補に至った経緯を訴えた。
安倍総理が民主党政権の時代を「悪夢」と表現したことについて、玉木代表は「安倍政権が発足してからすでに6年が経っている。にもかかわらず未だに言っているのが前の政権の批判にはがっかりだ」と述べた上で「自分自身がすでに民主党政権の倍の期間も統治している。本来掲げた政策課題がきちんとできているのか向き合うことの方が重要だ。例えば、介護離職ゼロを掲げながら、いまだ離職者が年間10万人もいる。
そうしたことのを目指していくのが宰相としての責任ではないか」と安倍総理の発言を批判した。「いつまでも人の悪口を言って、相対的に自分を上げようとする。そういう傲慢なやり方には極めて違和感を感じるというか、残念だ。しっかりと国民に向き合う政治をやってもらいたい」とこれについて締めくくった。
また自由党との政策協議について聞かれると「率直にさらなる連携強化ということで本日から政策協議に入らせて頂いた。それはやはり政党ですから。何処まで詰めることができるか、見守っていきたい」と述べた上で「問われているのは、原発ゼロか否かというかということではなくて、いかにそのゴールに到達するのか。ある程度、幹部同士で合意に到達できたとしても、ご存知のようにわが党には、地方組織にもそうしたことを諮るプロセスが必要だ。一定程度の時間がかかることは想定している」と政策協議に時間がかかることについて理解を求めた。
さらに「既存の政策に限らず、各党と協議をする中で、参院選などで訴えることのできる、新しい政策をそうした協議の中から見つけ出すことができることも期待している」と既存の政策のすり合わせに留まらない連携への期待を示した。 
●「黒田総裁。一般常識からすればあなたはとっくにクビです。」 2/13
衆院予算委員会で13日、2019年度総予算の基本的質疑が行われ、国民民主党の第1番手として階猛議員が質問に立った。
階議員は(1)桜田五輪相の大臣としての資質(2)2021年度以降の復興庁のあり方(3)統計不正にかかる事務費の捻出(4)キャッシュレス消費による消費税のポイント還元(5)日銀による異次元緩和策――等について取り上げた。
最初の質問では、五輪競泳女子のエース、池江璃花子選手が白血病を公表したことを受け「ガッカリ」「下火にならないか心配」と発言した桜田義孝五輪担当相について、階議員は「池江選手を金メダルを取るための道具としか見てない人間の尊厳を無視した発言だ」「私も被災地の代表として、この復興五輪ともいわれる五輪をあなたには任せられない」と批判。「是非やめてください」と桜田五輪担当相に辞任を迫った。
復興創生期間が終わる2021年度以降の復興庁のあり方についても質問。階議員は、人が戻るどころか、むしろ流出している東北地方の状況を指摘した上で、復興庁の存続ないし後継組織を設ける方向で政府は検討しているのか質したが、はっきりとした答弁は得られなかった。
統計不正にかかる事務費の捻出については「われわれの保険料、こんなことに使われてはたまらない。国会にもしっかり説明してもらいたい」とくぎを刺した。
消費税のポイント還元策については、五輪後の需要の反動減について尋ねた後、「ポイント還元で4000億円もの予算を使うことについては、恩恵が及ぶ中小企業を含むスーパーマーケットなどの事業者団体からも反対論が出ている」「私が前回提案したようにキャッシュレス普及は地域経済や地域コミュニティの活性化に資するような、地域電子通貨のようなやり方でやるべきだ」と主張した。
最後に階議員は約6年に及ぶ日銀の異次元緩和策を取り上げ、「新しい経営者が来て、新しい経営方針で仕事をしたいので借金を2倍にしてくれ、こういう風に頼んできた」と日銀の金融政策を民間企業の経営になぞらえた。「銀行が2年で目標達成できるんだったらしょうがない、借金を2倍にするのもしょうがないと言って、お金を貸してあげたところが2年経って目標が達成されるどころか6回も先送りしてついに雲散霧消した」と述べた上で、「(民間企業だったら)少なくとも経営者クビです。黒田総裁あなたは一般常識からすればとっくにクビ、そういう自覚はありますか」とただし、日銀の金融政策の現状に疑問を投げかけた。 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 2018/12

 

●内閣支持率 2018/12 調査
内閣支持率
支持する 40.0% (前回比-4.3) / 支持しない 40.6% (前回比+4.2) / わからない、答えない 19.4% (前回比+0.1) .
支持する理由は何ですか?次の6つから1つを選んで下さい。
安倍総理の人柄が信頼できるから 16.7% / 支持する政党の内閣だから 20.4% / 政策に期待が持てるから 10.1% / 大臣の顔ぶれが良いから 2.5% / 他の内閣より良さそうだから 42.1% / その他 3.7% / わからない、答えない 4.5% .
支持しない理由は何ですか?次の6つから1つを選んで下さい。
安倍総理の人柄が信頼できないから 31.2% / 支持する政党の内閣でないから 6.6% / 政策に期待が持てないから 37.2% / 大臣の顔ぶれが良くないから 10.2% / 他の内閣の方が良さそうだから 2.3% / その他 6.3% / わからない、答えない 6.2% 
 2018/11

 

●日銀の総資産、戦後初の「GDP超え」 553兆円に 2018/11
大規模な金融緩和で大量の国債を買い続けている日本銀行の総資産の規模が、国内総生産(GDP)を上回った。13日公表の10日時点の総資産は553兆5922億円で、名目GDPの552兆8207億円(4〜6月期、年換算)を超えた。日銀の総資産が同じ年のGDPを超えるのは戦後初めて。
総資産のうち国債が約469兆円、上場投資信託(ETF)が約22兆円を占める。黒田東彦(はるひこ)総裁の下で異次元緩和を始める直前の2012年度末の総資産は約164兆円で、この5年余りで約3・4倍まで膨れあがった。日銀は「物価上昇率2%」の目標に向けて国債などの買い入れを続けており、今後も資産はさらに増える。
保有資産の規模があまりに大きいと、緩和を終える「出口」で日銀の財務が悪化する懸念がある。現在日銀が買っている国債の利回りは低いが、政策金利を引き上げる出口の局面では、日銀にお金を預けている民間銀行などへの利払いが増え、日銀は債務超過に陥りかねない。SMBC日興証券の丸山義正氏は「バランスシートの後始末など、出口に向けた様々な立案を進めておく必要がある」と指摘する。 
 2018/10

 

●教育費負担の軽減は暮らし向き改善の重要課題 2018/10
先ごろ、平成30年度県政世論調査の概略が公表された。この調査は県知事の直轄組織である知事戦略局が毎年4000人の県民を対象に行っているものである。
それによると、「暮らし向きが苦しくなっている」と答えた県民は33%で4年連続で減少したということになるが、「暮らし向きは同じようなもの」と答えた人が昨年より増え、両方合わせると91.3%となり昨年より多い。ということは圧倒的多数の県民にとって暮らし向きは変わらず、アベノミクスの恩恵を受けているとは言えない結果である。
こうした調査では年代別の結果が気になるが、まだ詳細版が未発行のため昨年の同調査を参照すると、20代から60代では過半数が「給料や収益が増えない、又は減った」と答えており、70代以上になると「毎日の生活費が増えたから」あるいは「家族の病気、介護などで出費が増えた」が明らかに増加しているのである。
この中で注目すべきは「教育費や学生の子どもへの仕送りが増えたから」という回答が40代、50代で多いことである。とくに40代の県民にとっては暮らし向きが苦しくなった理由の第二位(男45.6%、女50.6%)になっている。
こうした県政世論調査の結果は、現在の国民生活をそのままに反映しており、県政としてこの結果をどう生かすかも課題だが、実はその前に国の予算、即ち税金の使い方が問われていると考えなければならない。
よく言われるように、安倍政権になって不正規雇用が増え、勤労者の名目賃金は上がっても実質賃金は減少しており、一方で国民負担となる教育費や医療費、介護費用が増えているのである。それを補うのが消費税だったはずだが、実のところ法人税の減税に充てんされただけで、とくに大企業だけが減税や賃金抑制で内部留保が数倍に増えているという実態である。
三選された安倍首相は自衛隊の海外派兵を念頭にした急ぐ必要もない改憲に加えて、どういうわけか保育の無料化を総裁選の公約とした。保育の無料化は選挙目当てといったものではなく、実は生産年齢世代の急激な減少で悩む企業の人手不足対策のためといわれ、子育て支援には必要ではあるがこれで国民の暮らし向きを大きく変えることはできないのである。
当面もっと切実で、日本の将来にとっても重要な問題は大学進学にかかる教育費負担の軽減である。低所得者層への授業料免除、給付つき奨学金の大幅な拡大、大学への国の交付金の増額などを実現しなければならない。来年の参院選に向けて、大企業本位のアベノミクスに対抗する野党側の経済政策、国民生活向上のための予算配分方針が選挙の争点として浮上してほしいのである。医療費や介護費用に苦しむ高齢者に対する対策だけでなく、若年世代への支援策も重要な政治課題として注目していきたい。 
 2018/8

 

●次の総裁は“石破氏” ただし… 2018/8/20
ANNの世論調査で来月に行われる自民党の総裁選挙について次の総裁は誰が良いか聞いたところ、石破元幹事長が42%で安倍総理大臣を上回りました。
調査は18日と19日に行いました。自民党の総裁選挙に立候補を表明したり意欲を示したりしている3人のうち誰が良いか聞いたところ、石破氏が42%でトップになり、安倍総理が34%、野田総務大臣が10%でした。ただ、自民党支持層に限ってみると安倍総理が58%で、石破氏や野田氏に大きく差を付けています。また、内閣支持率は38.8%で横ばいでした。そして、2020年の東京オリンピックに向けて暑さ対策のために検討されているサマータイムについては「支持しない」と答えた人が53%で、「支持する」人は36%でした。 
 2018/2

 

●日銀の「物価の眼鏡」に歪み、国民の暮らし向きは悪化 2018/2/23
国民が日々の生活のなかで物価上昇を実感する一方で、日銀の「物価の眼鏡」で見た世界ではインフレが沈静化している。このため、今年も異次元緩和が継続される見込みが高いが、物価の眼鏡を取り換えれば、リアルなインフレの姿が見えてくる。
日銀の「コア眼鏡」と国民の実感にズレ
総務省がきょう公表した1月の全国消費者物価指数(CPI)では、日銀がインフレ判断のベンチマークとする「生鮮食品を除く総合指数、コアCPI」が前年同月比0.9%上昇。生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数は前年同月比0.4%上昇と、引き続き物価が低迷していることを示された。
しかし、日銀がコアCPIという「物価の眼鏡」を外せば、世界は変わってみえる。
国民の生活実感により近いとされ、厚生労働省が実質消費や実質賃金の計算に用いる「持ち家の帰属家賃を除く総合指数」では、全国ベースで1月に前年同月比1.7%の上昇だった。昨年12月は同1.3%上昇、11月は0.7%の上昇だった。
東京都区部の確報値では、1月が前年同月比1.7%上昇と、12月の同1.3%上昇、11月の同0.4%上昇から、こちらも上昇ピッチが速まっている。
持ち家の帰属家賃とは、実際には家賃の受け払いを伴わない住宅等について、通常の借家と同様のサービスが生産・消費されるものとみなして、それを市場価格で評価した帰属計算上の家賃をいう。
寄与度でみると、こうした持ち家世帯の架空家賃が1月の総合指数(前年同月比1.4%上昇)から0.3%ポイントも統計上のインフレを「押し下げ」ていることになる。
日銀がインフレのベンチマークとするコアCPIと、消費者が直面する現実の物価上昇率1.7%の間には、0.8%ポイントもの格差があり、この格差は生鮮食品の大幅な価格上昇と、実体のない持ち家世帯の家賃の下落が統計上、物価を押し下げていることから生じている。
日銀の生活意識に関するアンケート調査
日銀と国民の「インフレ感」のズレは、日銀が実施するアンケートでも確認できる。
「日銀のアンケート調査では、国民が既に5%近い物価上昇を感じている。こうした状況にも関わらず、金融緩和が不十分だとして、日銀が大規模緩和を続けるとしたら、物価高による購買力の低下により、国民をさらに苦しめることになりかねない」とグローバル・エコノミスト、斎藤満氏は警鐘を鳴らす。
日銀が20歳以上の個人4000人を対象に実施した「生活意識に関するアンケート調査」(2017年12月調査)によると、1年前に比べ物価は何%程度変化したかについて、回答者の平均値は4.5%上昇と9月調査の4.2%上昇を上回った。
現在の暮らし向きについては「ゆとりがなくなってきた」が12月調査で40.2%と、9月調査の39.2%から増え、その理由(複数回答)のうち、「物価が上がったから」(50.7%)、「給与や事業などの収入が減ったから」(48.5%)が群を抜いて高い。
それでも異次元緩和か
2013年4月、日銀は「少々毒はあるかもしれないが、短期間なら問題ない」と割り切ったスタンスで「異次元緩和」を開始した。当時は2年程度でインフレ目標を達成できると信じていたが、現実にはそうならず、達成時期を6回も先送りしている。
「次の5年間も『あとちょっとで2%になる』と言いながら異次元緩和を引っ張り続けたら、長期化による副作用が多方面で噴出してくる恐れがある」と東短リサーチ・代表取締役の加藤出氏はみている。
しかし、安倍政権にとっては、日銀が今の「物価の眼鏡」をかけたまま、インフレ目標を目指して超金融緩和を継続すれば、長期金利が抑えられ、政府は低い資金調達コストを満喫でき、株式も日銀が買い支えてくれるといい事づくめだ。
政府は16日、4月8日で任期満了となる日銀の黒田東彦総裁を再任する人事案を提示。副総裁の一人にリフレ派の若田部昌澄・早稲田大学教授を充てるなど、当面、異次元緩和の出口は封じられた。
さらに、最近の円高や株安のおかげで、市場がかつて予想した「金利目標の微調整」や「上場投資信託(ETF)の減額」は雲散霧消した。
「スモールチェンジ」というインフレ
インフレは、別の形でも消費者に迫る。
1月18日放映のNHKクローズアップ現代+では、原料コストの高騰や、世界的な需要の高まりによって食材の奪い合いで苦しむ菓子、缶詰、乳製品などの食品メーカーが、値段を据え置きつつ、容量を少なくする「食品のスモールチェンジ」が紹介された。
「20年間続いたデフレ不況で、モノが安くなるのが当たり前というのが消費者のイメージで、価格の上昇に対して日本人はかなりシビアになっている」(野口智雄・早稲田大学教授)。
食品の小型化・軽量化など「実質値上げ」の一部はCPIに反映されているが、全部ではない。また、スモールチェンジやコストカットは永久に続けられるわけではなく、いずれ、企業は価格を上げなければならなくなるだろう。  
 2018/1

 

●暮らし向き、実感は今なおデフレ… 脱却に必要な条件とは? 2018/1/20
今年こそは脱デフレ元年になるのか。日銀が発表した「生活意識に関するアンケート調査」(昨年12月実施)結果が興味深い。(夕刊フジ)
暮らし向きを国民がどう受けとめているかを知ることはいわば政治の要諦だ。1984年、筆者がワシントンに駐在していたとき、政権1期目のレーガン大統領は再選を目指した選挙戦で、「あなた方の生活は良くなったか」と聴衆に問いかけると「イエス」との声が湧き上がり、ライバルに圧勝したことを思い出す。
グラフは日銀調査のうち、1年前に比べた「暮らし向き」と「物価に関する意識」を抜き出して推移を追っている。暮らし向きが良くなったとする回答の割合から悪くなったとする割合と、物価が「上がった」とする割合から「下がった」とする割合を差し引いた数値である。1997年から始まった慢性デフレのもと、暮らし向きが悪いと感じる消費者が多いのはよく理解できる。賃金など収入が減るからだ。
他方で、経済統計上の物価が下がり続ける状態がデフレなのだが、物価が上がっているという意識を持つ消費者がほぼ一貫して多数を占める。統計と実感のズレのようではあるが、家人から「あなたはデフレというが、物価は上がっているよ」と文句を言われ続けてきた。身近な生鮮食料品の一時的な値上がりの印象が脳裏に残るし、食用油や加工食品なども同じ値段で中身が減っているから物価が高くなっている感覚が強いのだ。
2012年12月のアベノミクス開始後、暮らし向きが悪くなったとする割合は目覚ましく減ったものの、14年4月からの消費税増税が改善基調をぶち壊した。消費税率上乗せ分だけ物価が上昇するので消費者の懐が寂しくなった。
当時、消費税引き上げに奔走するあるエリート官僚は「消費税率引き上げに伴って物価が上がれば、デフレが終わります」と筆者にうそぶいたことを思い出す。確かに、エリート官僚が米国で学んだ経済学では物価下落基調のときはデフレ、上昇が続くときはインフレなのだが、日本のような慢性デフレを説明できない。
脱デフレとは物価が上がり続けることではない。物価上昇以上に賃金が上昇することなのだ。物価が2%上がっても、賃上げ率がそれ以下だと、消費者の生活実感は好転せず、消費を抑えるので、需要が減る。その結果再びデフレに戻る。
気になるのは、安倍晋三政権の緊縮財政路線だ。今年度は補正後の歳出が前年度比、1・1兆円減。補正後の税収見込みは57・7兆円で、16年度税収に比べて2・3兆円の増。つまり、政府は合計で3・4兆円、国内総生産(GDP)比0・7%分もの実需を民間から奪う。
おまけに、サラリーマンへの所得増税に加えて、20年度は消費税率の10%への引き上げを首相が公約している。首相は経団連に賃上げを求めるが、政府がその前に財政面で民間需要を減らす。全雇用の9割を支える中小企業に賃上げが浸透するのだろうか。 
 
 
 

 



2019/2
 

 

●景気指標
1
経済指標のなかで景気変動すなわち経済活動の拡張や収縮の過程と密接な意味と関係をもって変動する個々の経済指標のこと。日本の景気指標を全体的な景気変動との時間的な関係によって分類してみると,全体的な景気変動に先行して変動する指標 (先行指標) ,ほぼ一致して変動する指標 (一致指標) ,および遅行して変動する指標 (遅行指標) の3つのグループに大別され,それらのなかから代表的な 32系列の指標を選んで作成しているのが景気動向指数である。先行指標は労働の投入や受注関係および在庫投資などの指標,一致指標は生産や貨物輸送など供給関係の指標,遅行指標は在庫水準や金融関係および賃金コストの指標で構成されている。
2
経済統計の中で、景気の動きを敏感に示すデータやそれらの合成で作成された指標。景気に先駆けて動意を示す先行指標、景気と同時に動く一致指標、景気に遅れて動き出す遅行指標がある。代表的な指標は内閣府が毎月作成・公表する景気動向指数(DI:Diffusion Index)。DIはNBER(全米経済分析研究所)で研究・開発されたものにならっており、通貨供給量(M2+CD)などの12系列から成る先行指数、鉱工業生産指数など11系列から成る一致指数、完全失業率などの7系列から成る遅行指数から成り立つ。それぞれの系列は、3カ月前に比べて好転した(プラス)か悪化した(マイナス)かで算出され、指標に占めるプラス系列の割合を割り出し、それが50%を超えたかどうかで景気の良しあしを判断する。ただしDIの動きでは景気の拡張・後退は判断できるが、その強さや速さは測れない。そこで各指標の変化の度合いをも加味し、作成されたのが景気総合指数(CI:Composite Index)。なおDIは、1960年8月から公表されており、おおむね景気が一循環するごとにその採用系列の見直し・改訂がなされ、精度の維持・向上が図られている。
3
景気変動の局面を示す指標。景気の現況の把握および予測に用いる。
4
景気の良しあしを表す指標を景気指標というが,これには次の三つの種類がある。第1は,経済統計そのもので,鉱工業生産指数,物価指数,GNP(国民総生産),企業収益といった統計がここに含まれる。第2は,とくに景気状況を判断するためにくふうされた指標で,景気動向指数あるいはディフュージョン・インデックスdiffusion index(DIと略称)と呼ばれる。第3は,企業や家計による売上げや所得の予想を示す指標で,サーベイ・データがこれに当たる。
5
経済統計のうち、失業率や生産指数など景気の動向と密接な関係をもつもの。また、それらを合成して作られる景気動向指数。景気の動きに対して先行・一致・遅行するものに大別できる。
6
過去の景気変動過程を指示し、将来の景気変動を予測する手がかりとなる統計的な数字。経済社会総合研究所(内閣府の付属機関)の発表する経済動向指数など。 

 

●景気動向指数
1
内閣府経済社会総合研究所が毎月発表する、総合的な景気状況の判断指標。具体的には、複数の指標を3カ月前の水準と比較して「改善(プラス)」「変化なし(横ばい状態)」「悪化(マイナス)」に分類。総合的に分析・評価する。その指数が50%を上回っていれば景気は上昇傾向、下回っていれば下降傾向にあると判断できる。景気の転換局面をとらえる上で重要な意味を持つ。
2
企業の生産活動や利益、有効求人倍率など、景気の動きに敏感な指標をあわせた指数。先行きと現状、過去の3種類があり、このうち現状を示す「一致指数」は内閣府が毎月、基調判断を示す。判断は「改善」「足踏み」「局面変化」「悪化」「下げ止まり」の5段階だ。
3
内閣府が毎月公表する産業・労働・金融などさまざまな経済活動で、景気に重要かつ敏感な複数の指標動向をもとに算出した統合的な景気指数。景気の予測や現状判断、確認などに利用される。景気の局面判断や転換点判定に有効なディフュージョンインデックス(DI)と、景気動向の大きさやテンポなど量感を把握できるコンポジットインデックス(CI)があり、DIとCIのそれぞれについて先行指数・一致指数・遅行指数がある。平成20年(2008)4月から内閣府は、DI中心の公表から、国際的な主流となっているCI中心の公表へと移行した。
4
景気の転換点を把握するために作成された指数。略称DI(Diffusion Index)。経済企画庁が毎月発表しているDIは,景気に反応しやすい20〜40前後の系列を選び,各々の系列について3ヵ月前と比較して増加しているときにはプラス,減少しているときにはマイナスとして,プラスの個別指標がどれだけあるのかを百分比で示す。予測性の向上のため,過去の景気の転換点(山と谷)に対する指標の時間的先行性,一致性,遅行性の3種類に分けて分析し,それぞれの指数を先行指数(通貨供給量などの13系列),一致指数(百貨店販売額などの11系列),遅行指数(法人税収入などの8系列)という。一致指数が50%を上回っているときは景気の上昇局面,これを下回るときは下降局面である。正確な判断のためにはこれらの指数を総合的に判断する必要がある。なお,DIとは別のCI(Composite Index)という指数もあるが,これはそれぞれの指標の変化率を基準として,景気変動の大きさやテンポも測定しようというもので,欧米ではこれが代表的である。
5
内閣府が毎月発表する、景気の動向をとらえるための指数。鉱工業生産指数・製品在庫率指数・完全失業率などの指標を組み合わせて作成。 〔2008 年(平成 20)4 月速報より、景気に敏感な諸指標のうち上昇(拡張)を示している指標の割合を示す DI 中心から、景気に敏感な指標の量的な動きを合成した指標 CI 中心に公表されるようになった〕
6
景気の現状,転換点および先行きを総合的に把握,判断するための総合指数。日本においては内閣府が 30系列の代表的な景気指標を作成,公表している。景気動向指数は技術的には全採用系列数に占める拡張系列数の個数についての算術平均による割合で示されるが,それは次のような意味をもっている。 (1) 指数の値が 50%より大きいとき景気は上昇局面にあり,小さいとき下降局面にある。 (2) 指数の値が 50%ラインを上から下に切るときは,景気が上昇から下降へ転じる時点,すなわち景気の山を意味し,下から上に切るときは,下降から上昇へ転じる時点,すなわち景気の谷を意味する。景気動向指数は採用される個々の指標の性質によって,先行系列,一致系列および遅行系列による景気動向指数の3部分指数に分解されるが,これらの動きを的確につかむことによってより正確な景気分析が可能となる。
7
政府機関によって、その国の経済動向を示す各種の統計資料を合成することにより経済全体としての景気の動きを把握するように作成される指標。内閣府が毎月公表する。経済の動きは、企業の現在の生産活動、国民の日常消費活動、商業分野の販売動向、企業の将来生産活動のための設備投資行動や新規の雇用状況など、さまざまな活動を包含している。そのような個別の経済活動を包含する経済全般のよしあしを表現するものが景気であるが、その景気が現在どのような状況にあるのか、また近い将来において上向くのか下降へ向かうのかを適切に判断することは、一般家計にとっても企業にとっても重要な意味をもつ。とくに、政府や中央銀行などの経済政策を担当する機関にとっては、国民経済の適切な運営という点において、現在および近い将来の景気動向を的確に把握し予測することは基本的に重要な仕事となる。景気動向指数はこのような認識と目的から作成される。
 指数作成の経緯
経済の動向を一つの数字で把握する景気指数の作成作業は、第二次世界大戦前にアメリカで開発されたハーバード景気指数とよばれるものが最初とされている。その後、それを改良する作業がやはりアメリカのNBER(National Bureau of Economic Research)という経済研究機関によって行われ、1950年代の前半にDI(ディフュージョン・インデックスdiffusion index)とよばれる景気の変動方向を把握する指数が考案された。ついで同じNBERによって景気の強さや変化の速さなど、景気変動の量的な把握が可能となる指数としてCI(コンポジット・インデックスcomposite index)が1960年代の後半に開発された。その後も指数改良の努力が続けられており、新指標の提案なども行われている。
 DIとCI
現在のところ、世界で実際に採用されている景気指数はDIとCIである。日本では、1960年(昭和35)から当時の経済企画庁がDIを作成し、「景気動向指数」として公表してきた。その後、しだいにCIを採用する国が多くなり、日本でもDIを基本としつつCIを参考資料として作成、公表してきたが、2008年(平成20)4月からは両指数の取り扱いを逆転させてCI中心の公表形態とし、DIを参考資料として提示することになった。従来使われてきたDIが景気の変化方向を示すのに対して、CIは変動の大きさや速度を示す内容の指数であり、両指数をあわせ考察することによって、より適切な景気判断が可能になる。
 日本の景気動向指数
両指数の概要を、2011年10月改定の日本の「景気動向指数」(内閣府経済社会総合研究所が作成)についてみると次のとおりである。指数作成に用いられる景気指標としての経済統計の数は28系列。採用される具体的な統計系列および系列の全体数は、おおよそ景気が1循環するごとに見直される。それらの統計系列は景気の動きに先んじて変動する性質をもつものとしての先行系列(最終需要財在庫率指数、新規求人数、東証株価指数など)、景気の動きと一致して動くと考えられる一致系列(鉱工業生産指数、大口電力使用量、商業販売額など)、そして景気の動きに追随して変動するとみられる遅行系列(製造業常用雇用指数、家計消費支出など)の3種に分けられる。2014年時点の系列数としては、先行、一致、遅行のそれぞれについて11個、11個、6個の統計系列が採用されている。3種の統計系列から、景気の先行きを予測するための先行指数、景気の現状把握に使う一致指数、事後的な確認に用いる遅行指数の3種の景気動向指数を作成する。各月の景気指数の具体的な作成方法は次のとおりである。まず、DIとは、各採用系列について3か月前の値と比較して上昇(景気がよくなると統計数字が低下する逆サイクル系列の場合は下降)した拡張系列の数を分子に置き、採用全系列の数を分母に置いて計算される拡張系列割合(%)のことである。この際、系列指標が3か月前の数字と変わらなかった系列については分子の数に0.5の値を入れて計算する。したがって、DIは景気の動きの強さとは関係がなく、50%を境に景気の改善、後退という変化の方向を示す指数となる。
 新指数CIの作成方法と特性
CIは統計数字のもつ量的な大きさの動きを景気情報として把握するための指数とされるため、DIよりも作成方法はかなり複雑となる。まず、採用された統計系列は、それぞれが異なる経済現象の動きを示す数字であるために、小さい変動でも景気への影響としては大きな意味をもつものもあれば、大きな変動でもその数値変動の大きさと比べて景気変動の意味は小さい系列もある。したがって、これらの異なる性質の情報量をもった統計系列を、すべての系列の動きが大きさの点で同じ意味をもつ無名数に統一する必要がある。この作業を各系列の基準化という。すなわち、CIの作成には、まず採用各系列について基準化を行う。基準化の方法は、各系列について前月に対する変化率変換を行い、その系列について趨勢値(すうせいち)(変化率の平均値)と振幅(変化率の標準偏差)を計算する。そして、各月の変化率から趨勢値を差し引き、その値を振幅で割るという手続を採用する。こうして得られた数字は原系列を変化率に変えたものを、系列を通じて動きを基準化したものであるところから基準化変化率とよばれる。これによって各採用系列の動きが生の統計の動きの大小からくる影響を取り除いた系列に変換されたため、先行、一致、遅行の各系列群について当該月の所属系列の平均値をとることが可能になる。これが合成基準変化率である。さらに、各系列群の趨勢値と振幅の各平均値を用いて、系列群のそれぞれについて1個の合成変化率が得られる。最後に、前月のCIに当月について計算された合成変化率を乗じることによって、当月のCIが得られることになる。このようにCI作成はかなり複雑であるが、それだけこの指数には、景気敏感系列の各採用指標の動きの表す大きさや変化の速さまでの情報、いわゆる「量的」情報を温存するものであるところから、その意味するところはDIよりもはるかに豊かであり、CIの一致指数の数値の上昇・下降と景気の拡張・後退の各局面は符合し、指数の変化の大きさは景気の拡大、後退の速さをも示すとみることができる。このようなことから、今日では、世界の主要な国々や国際機関においては、CIが景気変動の標準的指標として使われるようになっている。
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景気指標 …第1は,経済統計そのもので,鉱工業生産指数,物価指数,GNP(国民総生産),企業収益といった統計がここに含まれる。第2は,とくに景気状況を判断するためにくふうされた指標で,景気動向指数あるいはディフュージョン・インデックスdiffusion index(DIと略称)と呼ばれる。第3は,企業や家計による売上げや所得の予想を示す指標で,サーベイ・データがこれに当たる。…
景気循環 … そこで,西ドイツ型の諸国の場合と,西ドイツ型に準西ドイツ型の諸国も含めた場合とについて,それらの諸国でのGFCF・GDP比率に現れた中期循環の一般的状況を検討し,それによって,まずヨーロッパ地域における景気循環の状況をみることにする。この場合,検討対象とした個々のヨーロッパ諸国のGFCF・GDP比率の動きから,ヨーロッパ地域全体での景気循環の状況をとらえるため,GFCF・GDP比率にもとづく景気動向指数(ディフュージョン・インデックス,DI)を作成した。 景気動向指数(景気指標)というのは,景気の動きを判断するために選ばれた複数個の経済指標系列のそれぞれについて,その数値が前月(あるいは前年)に比べて増加している場合には1の値を,増減のない場合には0.5の値を,そして減少している場合には0の値を与え,対象系列全体についてこれらの得点総計を対象系列数で割って,その結果を百分率で示したものである。…
経済予測 …また対象となる個別経済量も,通常の経済量の代りに,前期に比べて上昇中のものは1,下降中のものは−1,変わらないものは0,というように,なまの経済量を加工,簡単化したものをとることもできる。このように,経済量がとる値を1,0,−1といった,簡単な一種の景気指標に変換したうえで,各種経済量グループ間の先行―遅行関係を見いだし,その関係を使って先行グループ指標の動きから遅行グループ指標――一致指標,遅行指標――の動きを予測する,といういき方が,ディフュージョン・インデックス(景気動向指数)による景気予測の手法である(〈景気指標〉の項参照)。先行指標予測の場合も,原則的に経済理論的関係は利用しない点は,外挿的予測の場合と同様である。… 

 

●羅針盤
磁石の針が南北を指すことを利用して、船舶や航空機の方位・進路を測る器械。コンパス。羅盤。羅針儀。
羅針儀、コンパスとも。船や航空機などで方位を知るのに用いられる器具。磁針が地磁気の方向を指示することを利用した磁気コンパスと、高速回転しているこまの力学的性質を利用して、こまの回転軸が子午線方向を指示するようにしたジャイロコンパス(転輪羅針儀ともいう)がある。磁気コンパスはおそくとも11世紀末には中国の船に装備されており、それがヨーロッパに伝わって改良され、大航海時代の幕を開く重要な航海計器となった。
羅針儀、コンパスとも呼ばれる。船や航空機などで方位を測定するために用いられる器具で、原理から、磁石の指極性を利用して方位を知る磁気コンパスと、高速で回転するこまの運動を利用するジャイロコンパスに分けられる。磁石の指極性を最初に発見したのは中国で、おそくとも11世紀末には貿易船に備えられていた。当時の羅針盤は、円盤の周囲に24方位を刻み、中央の円形のくぼみに水をたたえ、そこに適当に装置した磁針を浮かべたもので、一般に湿式羅針盤と呼ばれる。
磁石を用いて方角を知る計器。船や飛行機などで用いる。羅針儀。羅盤。コンパス。
航海などに際し、方位を知るための装置。軽い円板の周を三十二等分して方位を記したものを磁針の上に張り、これを船体の動揺にかかわらず、常に水平の位置を保つように装置した器内に支えたもの。通常、船の進む方向と一致した向きに標針を出しておき、これに対する円板上の方位によって船の進む方位を知る。羅針儀。羅盤儀。羅盤。コンパス。(比喩的に) 進むべき道を示すもの。 

 

●方位磁針
磁石の作用を用いて方位を知るための道具である。用いられる場面や仕様の違いにより、単に「磁針」と呼ばれたり、「方位磁石」「コンパス」「磁気コンパス」(電子コンパス)「羅針盤(らしんばん)」などとも呼ばれることもある。
方位磁針は、N極とS極がそれぞれ一つずつ現われるように着磁されている磁石を、N極とS極の両磁極を結ぶ方向をその地点の磁界の向きに沿わせようとする回転動作が磁界と重力以外の影響なく自在に行えるようにして回転自在に支持したものである。現在の地球表面付近の多くの場所に限れば、地磁気以外の磁界が無視できる環境の下では、方位磁針はそのN極を各地点でのほぼ北方向に、そのS極をほぼ南方向に向けるようになって停止する。方位磁針は、単純には、非常に軽く作った磁石を支持針の上に乗せたり、磁石を水に浮かべるだけでも実現することができる。
なお方位磁針が実際に指示する方向は局所的な磁界の方向であり、地形上の厳密な真北および真南を指してはいない。この局所的な磁界の方向と実際の真北および真南のなす方向との違いは、「偏差」と「自差」により説明される。つまり真の子午線に沿っている真北および真南を結ぶ方向と方位磁針が指示している方向との角度差(コンパス違差、コンパス・エラー、コンパス誤差とも呼ばれ、記号「C.E.」とも略記される)が上記偏差と上記自差の代数和となっているのである。
偏差
方位磁針が指示する方向は、後述する自差を無視できるとき、地磁気による磁気子午線上の北(磁北)と南(磁南)を結ぶ方向である(「磁針方位」という)。この磁針方位と、厳密な北(真の子午線上の北、地軸と地球表面の北側の交点、すなわち真北)および厳密な南(真の子午線上の南、地軸と地球表面の南側の交点、すなわち真南)を結ぶ方向とがなす角度は、現在の地球表面付近の多くの場所において0ではない。この角度を「偏差」(または「磁気偏角」あるいは単に「偏角」)と呼ぶ。偏差はバリエーションとも呼ばれ、記号では「Var.」と略記される。 偏角の向きおよび大きさは、地球上の地域によって異なり、時間的にも常に変化している。一年間に生じる偏差のずれを年差という。
磁北が真北より右に傾いている場合を偏東(または偏東偏差)、左に傾いている場合を偏西(偏西偏差)といい、例えば「偏東〇°〇〇′」等と表現する。日本国内の偏角は、国土地理院地磁気測量ホームページで概算でき、地形図(国土地理院発行基本図)にも「磁針方位は西偏約〇°〇〇′」等と偏差が明示されている。2010年現在の日本列島の概略の偏差は、沖縄で西偏4度、九州・四国・本州では西偏6度から西偏8度、北海道で最大西偏10度である。日本国外では、地域によっては数十度にも達する。
登山などで方位磁針とともに地形図などの地図を用いる際に方位磁針のみにより正確な真北を知りうるためには、偏差の角度に合わせた磁北と磁南を結ぶ直線を例えば数センチ間隔で分度器等により正しい角度で予め図面上に書き入れておくことが有用である。また、航海用の海図には、羅針図(コンパス図・コンパスローズ)が図面上に描かれている。これは同心円の大径円により真方位目盛を、また小径円により磁針方位目盛を描いたものであり、偏差を反映した方角を簡単に読み取ることができるようにしたものである。なおこの場合の偏差の値については、コンパス図中に「偏差(測定年)年差」の順に、例えば「Var. 9°-00′W(1989) 2′.0 W ann.」のように記載されている。
地磁気の北極については、実際の地磁気が鉛直下向きとなる北磁極がカナダの北方海上部に、また、地球を磁気双極子に見立てたときのN極(「地磁気北極」)はグリーンランド北西に位置している。これに対し、地磁気の南極については、実際の地磁気が鉛直上向きとなる南磁極は南極大陸近辺の海上部に、また、地球を磁気双極子に見立てたときのS極(「地磁気南極」)は南極大陸の陸上部に位置している。なお、これら北磁極および南磁極の近辺では方位磁針は誤差が大きい。なおバイカル湖の北にはあたかも磁極があるかのような地磁気の異常分布が存在し、これが1800年頃から顕著になっている。
自差
方位磁針は近くに鉄製品や磁石があるとその影響を受けて磁気子午線上の北(磁北)とも若干異なる方向を指すことがある。この差を「自差」と呼ぶ。自差はデビエーションとも呼ばれ、記号では「Dev.」と略記される。船舶の場合、具体的には船搭載のエンジンやモーター類などがその原因となる。具体的な自差の出方は、方位磁針の種類により異なり、また、船首方向の転換、船体の傾斜、積荷の移動、落雷などの影響を受け一定しない。
伏角
磁力線は赤道付近以外では地面と平行に走っているわけではなく、北半球の多くの地域の場合、地面の中に向かって突き進むような方向に走っている。そのため針が斜めになってしまわないように、S極側を重くすることで釣り合わせている。なお、均一の重心の方位磁針では、東京だと47度上下にお辞儀をしてしまう。
歴史
11世紀の中国の沈括の『夢渓筆談』にその記述が現れるのが最初だとされる。沈括の記述した方位磁針は24方位であったが、後に現在と同じ32方位に改められた。
原型となるものとしては、方位磁針相当の磁力を持った針を木片に埋め込んだ「指南魚」が3世紀頃から中国国内で使われていた。指南魚を水に浮かべることで、現代の方位磁針とほぼ同様の機能を実現する。名前に「魚」とつくのは、多くの場合木片を魚の形に仕上げ、魚の口の部分が南を向くようにしたもの(文字通り「南を指す魚」=「指南魚」)が使われていたため。
方位磁針の改良によって航海術は著しく発達し、大航海時代が始まった。
実用的な方位磁針として最初に出現したのは、容器に入れた水の上に磁針を浮かせることで自由な回転と水平面の確保を同時に実現する方法だった。この方位磁石の欠点は、激しく揺れる船上で正確に方位を知るのが難しい点である。揺れる船上で方位を知る装置として、宙吊り式羅針盤が開発された。
ただ19世紀になると船体に木材ではなく鉄などの金属を使う船が普及し始めるが、これらの金属船では方位磁針が船体の金属の影響を受け、正確な方位を知るのが難しくなる。このためそれらの船では代わりにジャイロコンパスが方位を知るための手段として用いられるようになった。
最近の方位磁針
磁石の性質を利用した方位磁針では、透明な油(ダンパオイル)によって振れを低減したものがある。気圧・気温により気泡を生じることがあるが、機能・特性への影響はない。気泡を消そうとして加熱したりするとケースが変形する原因となる。
磁石を用いない方位磁針として、2つの磁気センサで磁束密度を測定し、方位を割り出すものもある。
離れた2つのGPS受信機を使って方位を割り出すものもある。大掛かりなため、磁気以外の冗長手段として用いられる。運動方向の情報を使えるなら、簡易な方法として異なる時点の位置情報から運動の方角が得られる。
高性能なジャイロによって、地球の自転を測定し、方位を割り出す方式もある。これも大掛かりになる。
軍用品は、軍用地図(縮尺5万分の1で格子が入っている)と組み合わせての砲撃目標や進軍方向の決定等に使われる。「レンザティックコンパス」という。単位としてミルを使用することがある。 レンザティックコンパス(Lensatic Compass )は眼の高さに持ち、照準(蓋に抜かれている長方形の穴に張られた針金の線)を目標物に合わせつつ、レンズで盤面を見て、外周の目盛りを磁針の指す方位に一致させる(目標物が1つの場合は、磁針の方位を覚えるだけでも良い)。目盛り線の指す方角が進むべき方向。行進中に定期的に取り出し、自分の進路(=その時点で磁針の表す方角)が、目標設定の時に目盛り線を置いた方角からずれ始めていないか確かめる。
登山やオリエンテーリングでは、透明なプレートと、手で回転させられる方位目盛がついた方位磁針がよく用いられる。
本針と逆針
方位磁針は、その用法と縁への方位の記し方により、本針と逆針とに分類される。
本針
本針(ほんばり)とは、針の示す方向に縁に記してある北が合致するよう、手に持って水平に回転して方位を確認する形態の方位磁針である。方位磁針の縁には、上に北、右に東、下に南、左に西と記してある。
逆針
逆針(さかばり)とは、船体などに固定して、針の示す方向の縁に記してある方位を進行方向の方位として確認する形態の方位磁針である。方位磁針の縁には、船首方向には北(子)、右舷方向には西(酉)、船尾方向には南(午)、左舷方向には東(卯)と記してある。
揺れる海上では、手に持って体を水平に回転させるよりも、船に固定したほうが使い易い。針上に記されているN極と縁に記されている方位が合致したとき、その船はその縁に記された方位に向かっていることとなる。例えば、船が東に向かっている場合には、針のN極は左舷方向である東(卯)を指しているので、船が東(卯)の方向に向かっていることが判る。羅針儀にも類似する仕組みが見られる。
日本の航海用語で船の右方向への旋回のことを「面舵」と言うが、これは元来「卯の舵」であり、舵の柄を左舷壁(逆針の縁に卯と記されている)方向へ寄せることを意味している。同様に、左方向への旋回を指す「取舵」は「酉舵」、つまり舵の柄を右舷壁(逆針の縁に酉と記されている)方向へ寄せることに由来する。  

 

●羅針盤(コンパス・方位磁石)の発明と歴史
羅針盤(コンパス・方位磁石)が古代中国で発明されるまでには磁石や指南など様々な技術の変遷がありました。それらの技術と発明の歴史について紹介します。
羅針盤とは
羅針盤(コンパス・方位磁石ともいう)とは磁石が南北を示すことを利用して船などの進路を測る道具のことです。
少し高い山に登る時は必携です。その場合普通「羅針盤」とは言わず「コンパス」と言いますね。道に迷った時にコンパスを使えば東西南北の方角がわかります。コンパスは丸い形をしていて東西南北の文字が書いてあり、真ん中に針があります。方角を知りたい時はコンパスを平らな場所に置きます。すると針がくるくる回って止まります。針の先に色が着いている方が北です。そこで文字盤に書かれた「北」という文字を針先まで動かすと、東西南北が一目でわかるのです。山で道に迷うと命にかかわる場合がありますが、コンパスはこの危険を減らしてくれます。このすぐれものを発明したのは昔の中国人です。
羅針盤はいつ発明されたか
11世紀に出版された沈括しんかつ(北宋時代の政治家・学者)の随筆『夢渓むけい筆談ひつだん』(科学技術に関する話題が多い)に「磁針の中心に蚕の繭の新しい繊維を1本ロウで固定し、風のない場所に吊り下げると、それは常に南を指す。針の中には北を指すものもある」と書かれています。ヨーロッパで初めて羅針盤について書かれたのは12世紀の終わりに出版されたアレクサンダー・ネッカムの『物の本性について』という本で、「曇りの日や夜船の方位を知りたい時に磁石と針を触れさせると、針は円を描いてぐるぐる回り、動きが止まると先が北を示している」とあります。この本が書いている羅針盤は船乗りが中国人と交流する中でヨーロッパに伝わったものと考えられています。
羅針盤はかなり古くから中国に存在していましたが、航海に使われるようになったのは9世紀から11世紀の間と言われます。では中国ではいつごろからこうした方位磁石が使われていたのでしょうか。
古代中国の方角へのこだわり
中国では古くから「正しい方角」というものがとても重視されていました。地位の高い人は「坐北朝南」(北側に座って顔を南に向ける)ことになっていました。この方角を測るものを「圭表」と言いました。「圭表」とは地面に棒を垂直に立て、影の長さや位置を測って、東西南北の方位や時間を知るためのものです。
西安で発掘された約6000年前の新石器時代の遺跡では住居の出口がみな南向きになっていました。この頃からすでに古代中国人には方位知識があったと考えられています。
磁石の発見
古代中国では磁石が鉄を吸いつける現象はすでに知られていました。『管子』『山海経』『呂氏春秋』などにそうした記述がみられます。それらの中で「磁」には「慈」の字があてられていました。鉄が石に引き寄せられる様に親の慈愛を感じていたようです。
紀元前227年、後に始皇帝となる秦王は燕国の太子・丹が放った刺客・荊軻けいかに危うく殺されそうになります。当時の凶器と言えば刃物…鉄です。天下を統一した後阿房宮という大宮殿を立てさせた始皇帝はその門に工夫をほどこします。門に磁石をはめこんで、中に入り込む者が金属を隠し持っていないかをチェックしたのです。刃物を持っていると磁石に吸い付けられ捕まります。これを「磁石門」と言いますが、空港のセキュリティチェックとそっくりですね。人をくっつけるほど大きな磁石があったんでしょうか。磁石のカラクリを知らない人はさぞ驚いたことでしょう。

 

「司南」…羅針盤のひな型
中国の羅針盤というと不思議な写真が出てきます。四角い枠の中には円があり、その真ん中に一方の先端が細いひしゃくのようなものが置いてある…。
このひしゃくのようなものは「司南」と言います。四角いものは「地盤」、円は「天盤」と言います。天盤は手で動かすことができます。天盤と地盤には「甲乙丙丁…」とか「子丑寅辰…」などの文字が等間隔で書かれています。このうち「子」は「北」、「午」は「南」を意味します。
この盤の上にひしゃくの形をしたもの、つまり「司南」が乗っていて、これは静止状態と先端が南を指すので「司南」と呼ぶのです。
この謎めいた物体は何に使ったかというと…占いに使ったのです。天盤を回して一定の位置に止まった時そこにある文字から吉凶を占いました。
戦国時代(紀元前5〜3世紀)の本『鬼谷子きこくし』(戦国時代に鬼谷が書いたと言われる遊説に関する書)にこの「司南」についての記述があります。「鄭の人は玉をとりに行く時、道に迷わないように司南を持っていく」。この司南は「指南」とも書きます。現代中国語で「指南」は「指針・よりどころ・手引き・ガイド」のこと。日本語で「指南」は「指導する」意味で使います。この「指南」は古代の「司南」つまりコンパス・方位磁石に由来を持つと考えられます。
魅力的な形を持つこの司南ですが、磁力が弱く、重かったために使われることはあまりなかったそうです。
磁石の針と「偏角」
中国で紀元前から使われていた「司南」はひしゃくの形をしていました。これでは方向が正確には示せません。そこで今使われているような「針」が開発されるのですが、これも中国で発明されました。そしてここにも「占い」、つまり「風水」がかかわっています。中国では家や墓を作る時、凶を避けるため、その土地の地形や方位、日取りが重視されました。特に唐代になると前代から行われていた科挙制度がいっそう発展し、農村出身者が科挙に合格するようになります。彼らは農村を出て都会で官僚となって活躍し、老年になると引退、再び農村に戻って美しい自然の中に隠居用の家を建てようとするのですが、老境に至った彼らは官僚時代の儒教思想より荘子や老子、そして道教思想の方がなじむようになります。こうして唐代では風水思想が盛んとなり、家を建てる時の場所や日取り選びに風水を重視するようになりました。
晩唐の書で風水に関する文献『管氏地理指蒙』に「磁石針」が出てきます。「磁石には母親の本性があり、針は鉄から作る。磁石と鉄の母子性はこれによって感応し、互いに通じるようになる。鉄で作った針はその母性をいっそう高める。磁石の針は軽くまっすぐで、その指し示す方向は正しくなければならないが、やや偏っている…」
科学書というより占いの書じみていますが、この中では「磁石に針を使っている」ことと、「磁石の示す方向と地理的方向にはズレがある」ことが書かれています。地理的北極と磁気的北極とではわずかにずれていて、これを「偏角へんかく」と言うのですが、8世紀から9世紀頃中国ではすでにこの「偏角」が発見されていたことがわかります。ヨーロッパで偏角が知られるようになるのは15世紀と言われていて、これらの知識に関して中国がいかに早かったかがわかります。
羅針盤が航海に使われるようになった宋、元、明代
風水など占いのために使われていた羅針盤ですが、北宋になると航海に使われるようになります。それまで太陽や星に頼っていた航海術ですが、曇りや雨になると羅針盤なしにはどうにもなりません。
唐代、日本の僧侶・円仁の『入唐求法巡礼行記』には海上で悪天に遭遇した時の様子が描かれています。方向がまったくわからなくなり、ある人はこちらが北だと言い、ある人は北西だと言い、大混乱に陥ったと書いてあります。
羅針盤は北宋時代に船の航海に使われるようになり、元代には航海に不可欠な機器となりました。遣唐使の時代多くの船が海の藻屑となりましたが、羅針盤があれば防げたものもあったことでしょう。
明代の鄭和ていわ(明代の宦官にして武将)の大航海はよく知られています。1405年鄭和は時の永楽帝の命を受け、240隻を連ね、西太平洋・インド洋の30数か国を訪れました。1433年までに前後8回に渡って航海をし、1414年にはアフリカからお土産としてキリンを中国に連れ帰っています。こうした大航海を可能としたものの一つに羅針盤の活躍があったことは言うまでもありません。