内閣府 よいしょ「いざなぎ超え」好景気

いざなぎ景気の時代
好景気 国民の多くが実感
 
いざなぎ超えの好景気  
実感もっているのは お役人だけです
サラリーマン給与 停滞
 


戦後日本経済の歩み 
 
 
 

 

2016年 平均年収
国家公務員        678万円 (2018)
地方公務員        633万円
上場企業サラリーマン 602万円
サラリーマン平均    421万円
 
 
いざなぎ超えの好景気 悪い冗談  
予算取り繕う 国債発行
お金 バラマキ政治
「好景気」 数字のお遊び
 
 

 

●神武景気 (1955年〜1956年) 31ヵ月
   なべ底不況 (1957年〜1958年)
●岩戸景気 (1959年〜1961年) 42ヵ月
   昭和37年不況 (1962年)
オリンピック景気 (1964年)
   昭和40年不況 (1964年〜1965年)
●いざなぎ景気 (1966年〜1970年) 57ヵ月
   石油危機 (オイルショック/1973年〜1974年)
   第二次石油危機 (1978年〜1979年)
   円高不況 (1985年〜1986年)
バブル景気 (1987年〜1991年)
   バブル崩壊 (1991年)
   失われた10年/平成不況 (1991年〜2002年) 
景気回復 (2002年〜2008年) 73ヵ月

 

●景気回復、戦後最長73カ月が確定 2002年2月〜2008月2月 2011/10
内閣府は19日午後、大学教授やエコノミストら7人の有識者による景気動向指数研究会(座長・吉川洋東大教授)を開き、これまで暫定的に設定していた景気の「山」と「谷」の判定を、それぞれ2008年2月と09年3月とすることで確定した。
昨年6月までに決定した暫定的な判断では、景気の「山」が07年10月、「谷」は09年3月としていたため、02年2月から始まった景気の拡張期間は73カ月間と戦後最長とされた景気回復の期間がさらに延長された格好となった。08年3月から始まった景気後退期間は13カ月間となった。
同研究会は、景気動向指数に基づいて、鉱工業生産指数などの経済指標で構成される11の指数を用いて算出した長期間の移動平均値となる「ヒストリカルDI」を参考に景気の転換点を判断している。今回、景気拡張期間を変更したのは判断に用いる個々の指数で改訂があったため。
景気動向指数のCI一致指数でみた場合、73カ月間の上昇率は23.7%。バブル景気にわいた1986年12月から51カ月間の上昇率(30.8%)と比べ、長期間で緩やかな成長だった。
一方で、08年3月から13カ月間の下落率は31.5%とバブル崩壊前後である91年3月から32カ月間の下落率(22.4%)と比べても急だった。内閣府内で記者会見した吉川教授は、08年のリーマン・ショックに伴う金融危機の影響について「従来と全く違って、まさにフォール(急落)だった」と語った。
09年4月から現在まで続く足元の景気拡張期について、吉川教授は「水準で言っても、08年のリーマン・ショック前には遠く及ばない」と指摘。東日本大震災を挟んだ見方について、今回の議論の対象ではなかったとしながらも「拡張に若干の変調がみられると複数の委員から指摘があった」と明かした。その上で「注意してみていなければいけない」と語った。ある委員からは「既に踊り場にきているのでは」との指摘もあったという。 

 

●景況感は企業規模により「温度差」 2017/6
大企業と中堅企業の景況感に格差
規模の大小に注目して企業の景況感を示す数字を見ると、大企業の好況が中小企業以下へと波及していく「トリクルダウン」は起こっておらず、水準の「住み分け」が固定化していることがわかる。具体的に見てみよう。
大企業と中堅企業の景況感を示す数字として、ここでは日銀短観の業況判断DI(回答比率「良い」−「悪い」)を取り上げた<図1>。
   図1:大企業・中堅企業の業況判断DI 〜 日銀
大企業は2014年3月(+21)が直近ピークで、その後は2017年3月まで+12〜+19のレンジ内に収まっている。大まかに言うと、ここ数年は+10台が大企業の水準である。
中堅企業は2017年3月(+15)が直近ピークで、その前は2014年3月から2016年12月まで+6〜+14のレンジ内に収まっていた。大まかに言うと、ここ数年は+10前後が中堅企業の水準になっている。
中小企業の景況感を示す数字は多数あるが、方向ではなく水準を示しているものとしてここで取り上げたいのは、1日銀短観の業況判断DI、2中小企業庁の業況判断DI(今期の水準)、3中小企業家同友会全国協議会の同友会景況調査報告(DOR)の業況水準DI、以上3つである(1〜3のいずれも回答比率「良い」−「悪い」で算出される)<図2>。
   図2:中小企業の業況判断DI 〜 日銀、中小企業庁、中小企業家同友会全国協議会
1は、2014年3月(+7)が直近ピークで、その後は▲1〜+5のレンジ内で推移している。
2は、2015年10-12月期の▲22.9が直近ピーク。その後は▲27〜▲29前後で推移中。
3は、2013年10-12月期の+13.5が直近ピーク。その後は▲7.5〜+10のレンジである。
また、小企業については、日本政策金融公庫総合研究所による全国中小企業動向調査<小企業編>が、昔から代表的な統計である(政府系金融機関の統合前は国民生活金融公庫が公表していた)。業況判断DI(回答比率「良い」−「悪い」)の直近ピークは2015年10-12月期の▲24.2。その後は▲30前後の狭いレンジ内で推移している<図3>。
   図3:小企業・個人企業の業況判断DI 〜 日本政策金融公庫、総務省
個人企業(個人が経営している事業所)を対象とする調査で国が行っている唯一のものは、総務省の個人企業経済調査であり、今期の業況判断DI(回答比率「良い」−「悪い」)が含まれている。個人で製造業、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業、サービス業を営んでいる約4000事業所が調査対象。上記DIの直近ピークは2015年10-12月期の▲58.1。その後は▲60台前半の狭いレンジ内にある<図3>。
以上のように、企業の景況感を示す数字では、規模別に水準が分布している「住み分け」が、このところ明確になっている。
大企業の事業の海外シフトで、高収益が下請けに及ぶ割合は低下
景気拡大局面が長期化し、大企業で高水準の収益が続いている現状、より規模の小さい企業へと景気拡大メリットが波及して規模別の景況感格差が縮小してくる方が、経済状況としてはより望ましいと考えられる。だが実際には、そうはなっていない。
その最も大きな原因と考えられるのは、大企業の収益において海外で生み出された収益の比率が上昇していることだろう。製造業では、たとえば自動車産業は生産拠点を海外にシフトし、さらに部品の現地調達比率を引き上げている。ある年度に大企業が稼ぎ出した高収益のメリットが国内下請け企業へと及ぶ度合いは低下していると考えられる。
非製造業においても、調達先・販売先のグローバル化が進展しているため、規模の小さな国内取引先へのメリット波及は以前に比べると抑制されていると考えられる。
人口減・少子高齢化による強い下押し圧力も
しかも、中小企業や小企業に属する非製造業、さらには個人企業といった、「人」に直接由来する需要と大きく関わっているカテゴリーでは、人口減・少子高齢化による長期的な需要減少という、日本経済に内在する強い下押し圧力が加わっている。
日本経済は足元で、輸出・生産が主導して好調に推移している。だが筆者は引き続き、持続性と力強さを兼ね備えた「エースピッチャー」的な需要項目は見当たらないと認識している。輸出は海外経済・為替相場・製品サイクルなどに大きく左右されるため、本質的に不安定である。
そして、景気が長期にわたる拡張局面にある中でも、「企業収益増→賃金・個人消費増」に加えて、「規模の大きい企業の好況→規模の小さい企業の好況」という面でも、前向きのメカニズムは作動しておらず、「トリクルダウン」は起きていないと言えるだろう。
景気の指標となる「理容業」「美容業」は、低迷傾向
最後に、個人企業の代表例として、筆者が関連統計をウォッチしている理容業について、直近の状況を複数の経済指標で見ておきたい。理容業の動向は景気のインディケーターでもある。筆者の行きつけの店の人によると、常連のお客さんが「懐具合がさびしい」と感じやすい不況時には、髪を切りに来店するインターバルが長くなりがちだという。
6月9日に経済産業省から発表された4月の第3次産業活動指数は前月比+1.2%で、予想比上振れとなったが、それまで4か月連続で低下してきた後の反発であり、基調判断は「横ばい」に据え置かれた。
この指数の業種別内訳から、「理容業」と「美容業」の季節調整済指数を見ると、前者が今年の初めに急落した後でリバウンドする一方、後者は同じ時期にずるずる下がっているという違いはあるものの、趨勢として水準を切り下げている点は共通している<図4>。
   図4:第3次産業活動指数 季節調整済指数 「理容業」「美容業」
消費関連指標では、新車販売台数がこのところ好調に推移している。だが、何度目かの車検を経て買い替え時期が到来して多額の支出をやむなく強いられる場合、実質賃金の停滞が続いているだけに、家計の支出繰りで他の品目にしわ寄せが行きやすいと考えられる。
「理容業」の関連ではもう1つ、日本政策金融公庫(国民生活事業本部・生活衛生融資部)が四半期ごとに発表している「生活衛生関係営業の景気動向等調査」を見ておきたい。
直近データである今年1-3月期分(3月上旬に調査が行われて4月28日に発表)で、「理容業」の各種DIは以下のように、悪い数字が並んでいる。

○業況判断DI(前期対比「業況好転」企業割合−「業況悪化」企業割合)
 ▲38.6(2016年10-12月期は▲38.1)
○売上DI(前年同期対比「売上増加」企業割合−「売上減少」企業割合)
 ▲36.6(2016年10-12月期は▲38.0)
○採算DI(当該期「黒字」企業割合−「赤字」企業割合)
 ▲11.7(2016年10-12月期は▲8.6)
○利用客数DI(前年同期対比「利用客数増加」企業割合−「利用客数減少」企業割合)
 ▲41.0(2016年10-12月期は▲39.5)
○客単価DI(前年同期対比「客単価上昇」企業割合−「客単価低下」企業割合)
 ▲15.0(2016年10-12月期は▲15.1)
別データでも景気指標の「理容業」景況感悪化が浮き彫り
上記のうち業況判断DIは、前期と比べた業況の好転・悪化を調べており、季節性のある変動を毎年繰り返している<図5>。
   図5:生活衛生関係営業の景気動向等調査 「理容業」 業況判断DI
そこで、ベースにあるトレンドを知るための簡易な試みとして、このDIの前年同期差をとってみよう<図6>。
   図6:生活衛生関係営業の景気動向等調査 「理容業」 業況判断DIの前年同期差
すると、この業種の景況感がこのところ悪い方に動いていることが浮かび上がる。2016年10-12月期は▲12.2で、「アベノミクス」が始まった直後の2013年1-3月期(▲10.3)を下回った。2017年1-3月期には上昇したものの、プラス圏は遠い。政府の経済政策が長期的な視野に立った人口対策に踏み込めていない中、「草の根」の企業では地盤沈下の流れに抗するのは難しいことがうかがえる。
繰り返しになってしまうが、「人」を相手に商売を行っている業種にとって、人口減・少子高齢化の流れが止まらないことは、致命的とさえ言える弱点である。高齢者向けの訪問サービス拡充や新しい種類のサービス提供といった工夫により、理容業では需要喚起が図られている。資格要件の面では美容業とのオーバーラップが進みつつある。だが、そうした対応だけではどうしても限界があるのが、偽らざる現実である。 

 

●「実感なき長期景気拡大」が長期間続く理由 2017/10
みずほ総合研究所がこのほどまとめた「内外経済中期見通し」では、米国の景気回復期間が今年7月に97ヵ月となり、2019年7月には過去最長の120ヵ月を抜いて、過去最長の景気拡大となるとの予想だ。同様に、日本も今年9月には戦後2番目に長い景気拡大局面になり、このままでは過去最高の景気回復期間になる可能性がある。
だが日米ともに、今回の局面が、歴史的にも力強い景気回復かというと、そこまでの実感はなく、「実感なき景気回復」と言った方がいい。どちらも、物価や金利は低いままの「低温経済」。だがそのことが実は景気拡大を長持ちさせている秘密だ。
米国の景気拡大 「過去最長」も視野に
図表1にあるように、米国ではそれまでの景気拡大の最長期間は1990年代初めから2000年代初めの「ITバブル崩壊」までだ。
米国の過去の長期回復期間の終焉は、1990年代初めの「不動産バブル崩壊」、2000年代初めの「ITバブル崩壊」、2007年夏の「サブプライムブーム崩壊」と、どれもバブルが起きるほどの景気の過熱や市場の高揚感に対して、FRB(米国連邦準備制度理事会)が急ピッチの利上げをしたことによるものだった。
   図表1:1980年以降の米国の景気循環
だが今景気拡大局面で、2015年から始まったFRBの利上げは、2016年、2017年と今のところ年に1〜2回のペースの緩やかなものにとどまっている。
そのため今日、米国経済は、自動車販売の鈍化や銀行貸出の停滞等の兆しはあるものの、景気後退を示すほどでもない。そもそも、過去の景気拡大局面で見られたバブルが生じるほどの過剰な信用膨張であるレバレッジの積み上がりは、不動産や自動車ローン等についても生じていない。
だから利上げによる急ブレーキがかかりにくい分、景気拡大も長持ちしやすいことになっている。
さらに、当初はトランプ大統領が大統領選で掲げた「大減税案」への期待から過熱が予想されたものの、最近ではトランプ政権の政権運営や政策の混迷から、財政面からの十分な需要効果は期待しにくいのが実情だ。
その結果、本来ならプラス効果は少ないにもかかわらず、物価や金利がそう上がりそうにないことから、逆説的に過去最長の景気拡大も視野にあるというのが我々の見通しだ。
日本も「いざなみ」超えで戦後最長の可能性
同様の長期回復は日本にも当てはまる。
以下の図表2に示されるように、日本の景気拡大期間は、今年9月、「いざなぎ景気」(1965年11月〜1970年7月、57ヵ月)を超える58ヵ月となり、戦後2番目になる。
   図表2:日本の成長率と景気循環
2017年4−6月期の実質成長率は1次速報の前期比+1.0%から2次速報で同+0.6%に下方修正されたが、底堅い回復が続くとみられる。
このまま回復が続けば、2019年1月には「いざなみ景気」(2002年2月―2008年2月、73ヵ月)を超える74ヵ月となり、戦後1番になる可能性もある。
過去の長期にわたる景気拡大期間の終焉は、
「いざなぎ景気」(1971年):ニクソンショック
「いざなみ景気」(2008年):リーマンショック
と、どれも「海外発」の大きなショックが加わった時だっただけに、今回、日本の長期景気が続くかどうかは、先に示したように米国の景気拡大が続くかにも大きく依存する。 そうした点から見れば、日米景気は一心同体と考えることもできる。
物価や金利は低位安定 株式、債券相場は「程よい状況」
昨年は世界的に「3L」(3低)(低成長、低インフレ、低金利)が話題になったが、今年、そのなかの「成長」はそこそこの水準に改善している。
ただし、他の2つの「L:低い」である「インフレ率」と「金利」は依然、続いている。
以上の状況が続くとなると、低インフレのもとで、先述のように利上げペースが緩やかにななることで、米国の景気拡大期間が長引くことに繋がりやすい。
景気拡大―企業業績アップは株式相場を押し上げるサポートになるだけでなく、低インフレ、低金利状態で債券相場にも優しい、「ゴルディロックスの状況」になりやすい。 経済が過熱せず冷めすぎていもいないなかで、市場環境も程よい状況が続く。
つまり長期金利の低位安定(債券相場の高値安定)と株高の背景には、現在の日米の異例の、長期にわたる景気拡大期間と、それにもかかわらず物価や金利が上がらない「低温経済」の状況があると考えられる。
米国、株価調整はあっても景気拡大が長持ちする要因に
確かに、金融緩和基調が続けば、いまの株式市場や債券市場の居心地の良い状況が維持されるから、トランプ大統領も2018年2月に任期を迎えるイエレン議長の後任には低金利を好む議長を望んでいると言われている。
ただし、こうしたなかでの過度な期待の高まりは株式市場でバブルを生みやすい。
既に米国株式市場のPER(株価収益率)は18倍程度と、割高な水準に達している。 みずほ総合研究所は年初から 「7の付く年のジンクス」として、例年、秋にかけての金融市場の波乱を挙げてきた。今年も、そのリスクを念頭に置く必要もある。このジンクスは、87年のブラックマンデー、97年のアジア危機、2007年のサブプライム問題と、金融市場を大きく揺るがす事件が10年おきに起きたことを指す。しかもその時期もいずれもが夏から秋にかけてだった。今年はそのジンクスにあたる年で、時期もまさにこれからだ。
ただし、今日の米国経済の環境は本質的なレバレッジの高まりがないだけに、株価下落によって実体経済が大幅に落ち込むリスクはも少ない。
むしろ、一時的な株価下落が生じた方が、株式市場の過熱感が薄れ、年末にかけての利上げも回避されて、景気拡大が長持ちしやすい面もある。 

 

●企業の景況感 2018/12/11
財務省と内閣府が11日発表した2018年10〜12月期の法人企業景気予測調査によると、大企業全産業の景況判断指数はプラス4.3となった。プラスは2四半期連続。製造業、非製造業ともに好調だった。今後の見通しは、19年1〜3月期がプラス4.7、4〜6月期がプラス1.4。
景況判断指数は、自社の現在の景況が前期と比べて「上昇した」と回答した企業から「下降した」と答えた割合を差し引いた値。11月15日時点で調査した。
10〜12月期の大企業の製造業はプラス5.5。化学工業や鉄鋼業で自動車向けの需要が増えた。非製造業はプラス3.7。堅調な建材需要を背景に卸売業が好調だった。  中堅企業全産業はプラス6.0、中小企業全産業ではマイナス4.9。19年1〜3月期も中堅企業がプラスの一方、中小企業はマイナスの見込みだ。  

 

●景気「いざなぎ」超えと認定、14年増税後も回復継続と判断 12/13
内閣府は13日、景気動向指数のあり方を検証する景気動向指数研究会(座長:吉川洋立正大学教授)を開催し、2012年12月から始まる現在の景気回復が2017年9月時点で、高度成長期に57カ月続いた「いざなぎ景気」を超え戦後2番目の長さとなったと正式に判断した。来年1月まで景気回復が続けば、戦後最長の74カ月となる。
現在の景気回復は安倍晋三政権が始まる直前にスタートしたが、消費税率を引き上げた14年4月以降は景気動向指数が大幅に悪化、景気は悪化局面入りした可能性などが取り沙汰されていた。
今回は景気動向指数を構成する各種指数の動きなどを分析し、同時期に多くの指数が悪化したもののそれらの景気全体への影響が限定的であったことなどから、2012年11月を谷として、2017年8月以前に景気が悪化に転じることはなかったと判断した。
すでに2017年9月に茂木敏充経済再生相が「いざなぎ景気を超えた可能性が高い」との見解を示していたが、正式な認定には景気動向指数を構成する各種経済指標の年間平均などの様々な分析が必要なため、今回が初めての判断となる。 
●景気拡大長さ「いざなぎ」超え 実感ある?成長率1%台 12/13
景気拡大の長さが、高度成長時代に4年9カ月続いた「いざなぎ景気」を上回り、戦後2番目になった。内閣府の景気動向指数研究会(座長=吉川洋・立正大教授)が13日に認定した。
2012年12月に始まった景気の拡大は、足元も続いているとみられる。年明けの19年1月まで続けば、08年2月までの6年1カ月だった戦後最長景気(いざなみ景気)も超える。
景気の山と谷は、生産や雇用など9指標をもとに研究会で有識者らが議論し、内閣府が判定する。月ごとに見るとぶれが大きいため1年ほど後まで含めて分析する。その結果、景気の拡大が、少なくとも昨年9月まで4年10カ月間続いたと今回認定した。
ただ、戦後2番目になったのはあくまで景気拡大の長さで、成長の大きさではない。
東京五輪の後の1965年に始まり、大阪万博があった70年まで続いた「いざなぎ景気」は、年間の成長率が平均10%を超えた。「3C」とも呼ばれるカラーテレビやクーラーといった品が急速に普及し、多くの人が豊かさを実感できた。対して、今の景気拡大の平均の成長率は1%台にとどまり、当時のような好景気は実感しにくい。14年の消費税率8%への増税後は消費が大きく落ち込み、「景気拡大はすでに途切れている」との指摘も出ていた。
今も緩やかな景気の回復は持続しているとみられ、戦後最長を更新する可能性は高いとみられている。ただ。年明け以降も視野に入れると、景気の先行きは不透明だ。米中対立や英国の欧州連合(EU)離脱問題など、海外発の景気変調のリスクは増しており、国内への影響が心配されている。来年10月には10%への消費増税も控えており、日本経済は正念場を迎える。 
●今の景気回復「いざなぎ景気」超え 戦後2番目の長さに 12/13
景気動向を検証する内閣府の研究会が開かれ、平成24年の12月から始まった今の景気回復が高度経済成長期の好景気「いざなぎ景気」を超えて、戦後2番目の長さとなったことが確認されました。
内閣府は、景気の回復や後退の時期を有識者による研究会で判断していて、13日は平成24年12月から始まった今の景気回復について検証を行いました。
そして、景気動向指数などの指標を詳しく分析したところ、今の景気回復が高度経済成長期まっただ中の昭和40年11月から昭和45年7月まで4年9か月続いた「いざなぎ景気」を超えたことが確認されました。
これにより、今の景気回復の期間は戦後2番目の長さに達したことになります。
さらに景気の回復が今月まで続いていることが確認されれば、平成14年2月から平成20年2月までの6年1か月に及んだ戦後最長の景気回復に並ぶことになり、民間のエコノミストや政府内では、雇用や所得の改善などを背景に、来年1月には戦後最長を更新するとの見方が強まっています。
全銀協会長「来年以降も続くかは海外経済がカギ」
今の景気回復が高度経済成長期の好景気「いざなぎ景気」を超えて戦後2番目の長さになったことについて、全国銀行協会の藤原弘治会長は、来年以降も回復が続くかは不透明さを増す海外経済がカギになるという見方を示しました。
全国銀行協会の藤原会長は13日の記者会見で今の景気について、「企業収益が過去最高を更新し、好ましい状態だが、企業は人手不足などの課題を抱えている。さらなる生産性の向上に向けた取り組みを一段と強化していく必要がある」と述べ、日本経済になお課題は残っているという認識を示しました。
そのうえで、「来年は海外の情勢に不確定要素が多く国内の努力だけで景気の拡張が持続するわけではない」として、来年以降も回復が続くかは米中の貿易摩擦などで不透明さを増す海外経済がカギになるという見方を示しました。
一方、国が主導する官民ファンド「産業革新投資機構」で取締役9人が辞任を表明する混乱が起きたことについて、藤原会長は「民間だけではリスクを取るのが難しい案件を手がけることで民間からの投資や融資を喚起する呼び水効果は期待される」と述べ、官民ファンドが果たすべき役割はまだあるという考えを示しました。
石油連盟会長「原油価格落ち着くか見極めたい」
これについて石油元売り各社でつくる石油連盟の月岡隆会長は、13日に開かれた定例の記者会見で、「資源価格は適温な範囲というのがあり、国際的な原油価格が50ドルから60ドルで推移したことが景気回復の大きな要因だったと思う。10月には原油価格が高騰し、産業に悪い影響を与えると心配していた。今はいったん下がっているが、今後も価格が落ち着くのか見極めないといけない」と述べました。
専門家「いざなぎ景気とは個人消費に違い」
今の景気回復について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は、「アメリカを中心に海外の景気拡大に引っ張られる形で日本からの輸出が伸びたことや、企業が業績を回復する中で人手不足を解消するための設備投資を積極的に増やしていることなどがプラスの効果をもたらしている」と分析しています。
また、「いざなぎ景気」を超えたことについては、「今の景気回復は、成長率がほぼ横ばいに近く、だらだらと景気が拡大している状況で、いざなぎ景気とは中身や拡大の勢いが全く違う。決定的に違うのは個人消費で、かつては人々の生活が豊かになっていく中で消費を増やしていく世の中だったが、現在は消費が盛り上がっていない」と指摘しました。
そのうえで、小林主席研究員は「最近は、物価が上がっていることに加え、社会保障の負担が増してきていることもあり、可処分所得が伸びていない状態だ。人々が賃金が上がったと実感することは難しく、消費の意欲を抑える要因になっている」と話しています。
今の景気回復の特徴
今の景気回復は、平成24年12月から始まりました。デフレ脱却を目指した「アベノミクス」と呼ばれる経済政策のスタートとほぼ時を同じくしています。
日銀の大規模な金融緩和を背景にした円安で、自動車メーカーなど、輸出産業を中心に業績の回復が続き、昨年度の企業の業績は過去最高の水準となりました。有効求人倍率もことしに入ってから、昭和49年以来の高い水準となるなど雇用環境も改善しています。
このまま景気回復が来年1月まで続くと、回復の期間は6年2か月に及び、平成14年2月から平成20年2月まで続いた景気回復を超えて、戦後最長を更新することになります。
ただ、景気回復が長く続いている割には、実感が少ないとの声も上がっています。
調査会社によりますと、この景気回復の期間を実質GDP=国内総生産の伸び率で見てみると1年当たりの平均で1.2%、「個人消費」の伸びは平均で0.4%にとどまっています。また、「実質賃金」は物価の上昇もあって、平均で0.5%減少しています。
さらに今後は、アメリカと中国の貿易摩擦の影響や、アメリカの景気回復が息切れする懸念も出ていて、先行きに不透感が増しています。 
●「戦後2番目に長い好景気」と内閣府が大本営発表 12/13
現在も続く好景気、戦後2番目の長さに
日経新聞によると、内閣府が12月13日に第2次安倍政権が開始した2012年12月を起点とする景気回復の長さが2017年9月時点で高度経済成長期の「いざなぎ景気」を超えた事を正式に認定しました。
これで現在まで続く景気回復の長さは戦後2番目となります。肝心の今回の景気回復は現在も続いており、戦後最長に文字通りリーチが掛かりました。
いざなぎ景気は57カ月間ですが、これを超える58カ月の景気回復の起点は安倍首相が2度目の内閣総理大臣に就任してアベノミクスを開始、日銀が異次元緩和を始めた時期と重なります。
まさに安倍政権の登場と共に戦後2番目の好景気が始まり、現在も続いている事になりますが、この好景気が2019年1月まで続けば戦後最長の74カ月となります。
GDPは年率2.5%減に下方修正も「好景気」「経済成長」
なお、内閣府が12月10日発表した7〜9月期の国内総生産(GDP)の改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%減、年率換算では2.5%減となっており、速報値(前期比0.3%減、年率1.2%減)から大きく下方修正となりました。
ただし、この下方修正に麻生財務相は「景気が悪くなってきているという感じではない」と好景気が今も継続しているという認識を示しています。
麻生財務相は4月にも「政権の安定があったからこそ、これまでの経済成長がずっと継続性を持たせられたのは間違いない事実であって、5年前より今の方が悪いという人は、よほど運がなかったか、経営能力に難があるか、なにかですよ」と発言しており、経済成長がずっと続いてきたとの認識を示しています。
しかし8割の日本人は景気回復を実感せず
ですが今回のGDPと政府認識の齟齬が示すように、実に日本国民の8割が景気回復を感じていませんでした。
2017年12月に朝日新聞社が実施した全国世論調査では、景気がよくなったかどうかの実感を尋ねたところ、景気の回復を「あまり」と「まったく」を合わせて「実感していない」人の割合は82%にも上っています。
一方で景気回復を「ある程度実感している」は15%、「大いに実感している」は1%に留まっています。つまりは「よほど運のなかった」人が8割を超えていました。
また内閣府が2018年3月に実施した消費動向調査を見てみても、暮らし向きが「良くなる」「やや良くなる」と回答した人は1月で合計7.7%でしたが2月には6.4%、3月には5.9%とじわじわ減少していることが分かります。
さらに2018年9月1日と2日に行われたJNN世論調査でも「景気回復の実感はある?」という項目で「アベノミクスと呼ばれる安倍政権の経済対策によって実際に収入が増えるなどあなたは、景気回復の実感がありますか、ありませんか」という質問に「実感がある」と答えたのはわずか11%。
なんと84%もの人が「実感はない」と回答しており、デフレ脱却の鍵を握るはずの個人消費の冷え込みがこの上なくよく分かる結果となりました。
世帯収入の中央値も22年前のピークの3/4に
この実感を裏付けるように、バブル崩壊後の1995年に世帯収入の中央値はピークの550万円を記録していたものの、それから22年間で122万円減少しています。これは22%超の減少ということで、およそ3/4になったということ。
中央値は21世紀になって500万円を割り込み、リーマン・ショックの2008年には427万円まで低下。その後民主党政権になって東日本大震災があったものの2012年までは432万円で維持していました。
しかし安倍政権が2012年12月に誕生し、2013年の中央値は415万円へと落ち込みます。2014年は427万円、2015年は428万円と微増しますが、3年経っても東日本大震災後の民主党政権最後の年のラインに戻すこともできていません。
これを裏付けるように、経済協力開発機構(OECD)は物価の影響を除いた各国通貨ベースでの実質賃金が、G7うち日本だけが2000年よりも低い水準に留まっていることを指摘しています。
政府の言う「好景気」の正体とは?
ではいったい、この日本のどこに好景気があるのでしょうか?日経新聞は2018年1月の記事で「大企業の賃上げ率は4年連続で2%を超える」とし、「上場企業は18年3月期に2年連続の過去最高益を見込む」事を報じています。
そして財務省が9月3日発表した2017年度の法人企業統計によると、企業の蓄えた「内部留保」に相当する利益剰余金が、金融・保険業を除く全産業で前年度比9.9%増の446兆4844億円となって過去最高を更新しました。
内部留保が過去最高となるのは、第2次安倍晋三政権が発足した2012年度以降6年連続。製造業は9.1%増の153兆3205億円、非製造業は10.4%増の293兆1639億円で、ともに1割近く拡大しました。
そう、この内部保留の過去最高額連続更新が「いざなぎ越えとなる戦後2番目の長さの好景気」が始まるのと軌を一にしていることが明確に分かります。
そして、同時に企業の稼ぎを人件費に回した割合を示す「労働分配率」は2016年度の67.5%から2017年度は66.2%に下落。この割合はバブル期にも及ばず、43年ぶりの低さとなりました。
結局のところアベノミクスの6年間では、企業は大儲けしながら焼け太り、トリクルダウンは発生せずに国民の8割以上が不景気の中で苦しみ続けるという構図が強化され続けてきたことになります。
ということで、「いざなぎ越えとなる戦後2番目の長さの好景気」がいったいどんなものなのか、誰にとっての好景気かを考える時、この6年間にわたって繰り広げられてきたアベノミクスがどこを向いて、誰のために行われてきたかも自然と理解できるのではないでしょうか? 

 

●日銀短観、景況感横ばいも先行き警戒 2018/12/14
12月全国企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業・製造業の景況感は横ばい、同非製造業は2四半期ぶりに改善するなど、ともにマイナスを見込んでいた市場の予想を上回る結果となった。ただ、貿易摩擦や海外経済減速への懸念も広がっており、製造業・非製造業ともに先行きは悪化を見込んでいる。市場関係者のコメントは以下の通り。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券・シニアマーケットエコノミスト 戸内修自氏
12月日銀短観は、総じて足元しっかりだが、先行きは決して楽観できる内容ではない。
大企業・製造業の業況判断DIはプラス19と市場予想を上回るとともに、前回調査から横ばいとなった。しかし、需給判断や販売価格が悪化していることを踏まえると、原油価格の下落を受けてコストが低下したことが影響しているのだろう。景況感改善がコスト低下に起因しているとすれば、その持続性に懐疑的な面が残る。
大企業の設備投資計画も市場予想を上回った。しかし、製造業は海外経済の減速などを背景に下方修正された。生産などの他の統計を合わせて考えると、ひと頃の勢いが鈍化しているのは顕著だ。
みずほ総合研究所 市場調査部長 武内 浩二氏
大企業・製造業DIは、足元は9月調査と変わらなかったが、先行きが減速した。足元の業況は堅調であるものの、やはり米中貿易戦争や世界経済減速への懸念から、製造業企業は先行きを慎重にみているようだ。
2018年度の設備投資計画も引き続き強かったが、今後、先行きの懸念が現実化し、収益に影響が出てくるようであれば、慎重化する可能性がある。とはいえ、国内は人手不足による省力化投資の需要が高く、その分野の投資は、多少、外部環境が変わっても、継続するのではないか。
ソシエテ・ジェネラル証券 株式営業部長 杉原龍馬氏
SQ(特別清算指数)当日、指数構成銘柄が全て寄り付いた後に激しく売らなければいけない理由というのは、本来はあまりない。投資家のポジション自体は軽くなっているはず。先物のロングで含み損を抱えた投資家の売りというよりも、新たに売り仕掛けをしているとみるべきだろう。SQ値の下に現物指数が押し下げられたことで、買い手の意欲が削がれた。メジャーどころのヘッジファンドによる顧客への資金返還も伝わっている。ポジションを閉鎖するとすれば、(ヘッジファンド側は)発表前に売る分には売っていると思うが、連想売りにつながりやすい。
日銀短観が発表され、日経平均は寄り付き直後は下げ幅を縮小していた。中国の経済指標が出る前から、下落の勢いがついている。下落のタイミングとしては違和感がある。売りに動いた主体の考え方が読みにくく、この状況から買い向かうのはリスクもある。短期的には12月限のSQ値(株式市場の推計で2万1618円88銭)が上値のめどとなりそうだ。2万1000円を割っても違和感がないが、割った場合はアジア時間では押し目買いが入ることも想定される。  

 

●実感できない「いざなぎ超えの好景気」バブル以降2割下がった給料 12/17
我々はなぜ“いざなぎ超えの好景気”を実感できないのか?
先日、内閣府の景気動向指数研究会が開かれ、2012年12月に始まった今回の景気拡大局面が、少なくとも2017年9月まで、4年10カ月間続いたことが確認されたそうです。これは1965年から4年9カ月続いた「いざなぎ景気」を抜いて、戦後2番目の長さとのことです。つまりは、日本は高度成長期に匹敵するような好景気の時期にあるということだそうです。
しかし、この好景気を実感している人はどのくらいいるでしょうか?ほとんどの人は、好景気を実感していないのではないでしょうか?
また戦後二番目ということは、一番目があるわけですが、この一番長い好景気の時期って、みなさんご存知ですか?これは、実は、2002年から6年1カ月間続いた「いざなみ景気」です。この「いざなみ景気」にも、今回の戦後二番目の景気にも、違和感を抱きませんでしたか?その違和感は、実はあなただけのものではありません。あなただけが、景気の良さを実感していないのではなく、国民のほとんどは実感していないのです。
なぜならば、バブル崩壊から現在まで、サラリーマンの平均収入は20%も下がっているからです。収入が下がっているのに、景気がいいと言われたって、実感がないのは当たり前です。そして、日本で勤労している人のほとんどがサラリーマンですので、国民のほとんどは好景気を実感できていないわけです。
また好景気の長期化のニュースとともに、個人金融資産のニュースにも違和感を持った方が多いのではないでしょうか?日本銀行の統計によると、2017年9月末の時点において、個人金融資産は1,800兆円を超えたそうです。
日本の個人金融資産というのは、バブル期以降激増しているのです。バブル期の1990年の段階では、個人金融資産は1,017兆円でした。が、現在は1,800兆円以上に達しているのです。二十数年の間に、80%も増加しているのです。
個人金融資産が1,800兆円ということは、生まれたばかりの赤ん坊から100歳以上の老人まですべての人が、金融資産を平均で1,400万円以上も持っていることになります。3人家族であれば4,000万円以上、4人家族であれば6,000万円近くの金融資産を持っているということです。しかもこれは不動産などの資産は含まずに、金融資産のみの額です。
でも、ほとんどの人はこう思っているはずです。「うちにはそんなお金はない」と。現在、ほとんどの日本人は、金持ちの生活というより、貧しめの生活をしています。今の日本では平均的な収入のある人でも、子供二人を育てるのは大変です。平均以上の収入があるのに、子供を二人育てられない国というのは、実は世界でもあまりないのです。だから子供のいる世帯のほとんどは、金融資産は微々たるものでしょう。また独身の方も、1,000万円以上の金融資産を持っている人は稀です。では、一体、どこの誰が金融資産を激増させているのでしょうか?今回は、それを分析したいと思います。
激増する億万長者
実は、昨今、日本では億万長者が激増しています。世界的な金融グループであるクレディ・スイスが発表した「2016年グローバル・ウェルス・レポート」によると、100万ドル以上の資産をもっている人々、つまりミリオネアと呼ばれる日本人は282万6,000人でした。前の年よりも74万人近く増加しているそうです。増加率は世界一だったのです。
この激増している億万長者の大半は、実は「大企業の株を大量に持っている人」です。これは、「昨今、株を始めた人」や「株の売買をしている人」ではありません。「かなり以前から、大企業の株をたくさん持っていた人」なのです。次の数字を見てください。これは上場企業の配当金の総額です。
   2005年   4.6兆円
   2007年   7.2兆円
   2009年   5.5兆円
   2012年   7.0兆円
   2015年  10.4兆円
   2017年  12.8兆円

日本の上場企業の配当金は、2009年からのわずか9年間で2倍以上になっているのです。リーマン・ショック前の最高値だった2007年と比べても2倍近くに増えています。つまり、10年前と比べて、配当収入は2倍に増えているということです。これは何を意味するのか、というと配当収入が2倍になっているということです。創業者親族などの大口の株主や、配当だけで生活できるほど株を持っている人は、かなり潤っているはずです。またアベノミクスの影響で、2012年から2018年の間に、日経平均株価は2倍以上になりました。2012年に持っていた株資産は2018年現在では倍に膨れ上がっているということです。
だから、5,000万円程度の株を持っていていた人は、株価が2倍に膨れ上がることで、保有資産が1億円をこえることになります。近年、資産が激増した人でもっとも多いパターンは、このパターンだと見られるのです。
この中には、最近、株を始めたような人はほとんど含まれていないと思われます。というのも、株が上がり始めてから株を買っても、資産はそうは大きくなりません。だから、激増しているミリオネアのほとんどは、昔から株をたくさん(数千万円単位で)持っている人なのです。
では、もとから数千万円単位で上場企業の株を持っていた人というのは、どういう人でしょうか?これは普通に考えて、「元からある程度のお金持ちだった人」ということになります。つまりは、「元からある程度のお金持ちだった人」が、アベノミクスによる株価の上昇でさらにお金持ちになったということです。それが、昨今、激増しているミリオネアの正体なのです。
日本は実は世界一の金持ち国
日本というのは、実は世界一の金持ち国なのです。先にも述べましたように、日本の個人金融資産残高は現在1,800兆円です。一人当たりの金融資産1,000万円を大きく超え、アメリカに次いで世界第2位です。しかも、これは金融資産だけの話であり、これに土地建物などの資産を加えれば、その額は莫大なものです。また日本は、対外準備高も全ヨーロッパの2倍もあり、国民一人当たりにすると断トツの1位です。対外純資産は、約3兆ドルで世界一です。日本は世界一の債権者の国でもあるのです。つまり「日本人は世界一の金持ち」といっていいのです。
なぜ国民の多くは、世界一の金持ち国としての実感がないのでしょうか?その答えは、実は明白です。先ほど述べましたように、日本のサラリーマンの給料が下がっているからです。日本人の平均給与は、この20年間で20ポイントも下がっています。この20年のうちには、戦後一番目と二番目の長さの好景気があったのです。にもかかわらず、サラリーマンの給料は上がるどころか下がっていたのです。安倍首相の財界への呼びかけで、この数年は若干、給料が上がっていますが、この20年で下がった分に比べれば焼け石に水なのです。
そして先進国の中で、この20年間で、給与が下がっているのは、先進国ではほぼ日本だけなのです。この20年のうち、先進国はどこの国でもリーマン・ショックを経験し、同じように不景気を経てきました。でも、OECDの統計によると、先進国はどこの国も、給料は上がっているのです。EUやアメリカでは、20年前に比べて平均収入が30ポイント以上も上がっています。日本だけが20ポイントも給料が下がっているのです。つまり欧米と比べれば、50ポイントも給料の増加率が低いのです。
逆に言えば、日本のサラリーマンは、すぐにでも金持ちになれるということでもあります。今より、給料が50ポイント上がれば、ほとんどのサラリーマンはかなり豊かな、金持ちの気分を味わえるはずです。
しかもそれは決して無理なことではないのです。日本の企業が、他の先進国並みの給料水準にすれば、すぐに達成できることです。そして、日本の企業は、そういう資金的な体力は十二分に持っているのです。企業は内部留保金(貯金)を天文学的に増やし続けています。2017年末の時点で、内部留保金は446兆円にも達しています。この14〜15年で倍以上に膨れ上がっているのです。
446兆円という金がどの程度の金額か、一般の人には想像ができないでしょう。国の税収の8〜9年分にも及ぶのです。
これを見れば、「日本企業はバブル崩壊以降、かなり儲かっており、長い好景気の時期があった」「にもかかわらず、サラリーマンの給料が上がらなかった」「だから、国民のほとんどは好景気を実感していない」ということなのです。この図式は、誰も否定できないはずです。もし否定できるものなら、ちゃんとデータをあげて否定してほしいものです。そして、この図式を見たとき、日本経済がやらなければならないことは明白です。「企業が社員の給料を上げる」ということです。政府には、他の余計な経済対策など一切しなくていいから、この点のみを集中してやって欲しいものです。  

 

●公務員の給与が5年連続で増え続けるワケ 12/19
庶民感覚では納得がいかない給与増
消費増税が迫る中、巨額の借金を抱えて財政難に陥っているハズの「国」の公務員の給与とボーナス(期末、勤勉手当)がまたしても引き上げられた。引き上げは5年連続である。11月28日に給与法改正案が与野党の賛成多数で可決され、成立。8月の人事院勧告にそって、2018年度の月給が平均で655円、率にして0.16%引き上げられるほか、ボーナスも0.05カ月増の年4.45カ月分になることが決まった。
増額分は4月にさかのぼって年明けから支給され、平均年収は3万1000円増の678万3000円になるという。人事院勧告は民間の動向を踏まえて毎年の賃金の増額率を決めている。「民間並み」と言うわけだが、どう考えても庶民感覚では納得がいかない。
本来なら人件費を含む歳出削減を行うべき
「我が国の債務残高はGDPの2倍を超えており、先進国の中で最悪の状況」だと財務省は言う。歳入(収入)よりも歳出(支出)が大きいのが原因で、本来なら、まずは人件費を含む歳出削減を行うのが筋だ。
ところが官僚たちは、自分の給料が毎年上がることについては「当然」だと思っているようだ。来年度予算では一般会計の総額が史上初めて100兆円を突破する見通しで、財政の肥大化が進む。まったく合理化で財政を引き締めようという気配は表れない。
「借金が増えているのは、政治家が悪いのであって、官僚に責任があるわけではない。給料は労働の対価なので、賃上げは当然だ」という声が上がる。
民間企業で働いている人たちからすれば、会社が大赤字になれば「賃上げは当然」などとは決して言えない。会社が潰れてしまえば元も子もないからだ。だが、公務員の場合、国が潰れるとは思っていない。つまり「親方日の丸」体質だから、賃上げは当然と思えるのだろう。
「定年の延長」も事実上決まっている
公務員については、もうひとつ驚くべき「計画」が進んでいる。定年の延長だ。現在60歳の定年を2021年から3年ごとに1歳づつ引き上げ、2033年に65歳にするというもの。人事院が意見として内閣と国会に申し入れているものだが、国民がいまいち関心を払っていないうちに、事実上決まっている。さらに60歳以上の給与については、50歳代後半の水準から3割程度減らすとしている。
民間では高齢者雇用安定法によって、定年後は希望する社員全員について65歳まで働けるようにすることを義務付けた。ただし対応策は3つあり、(1)65歳までの定年延長(2)65歳までの継続雇用(再雇用)制度の導入(3)定年制度の廃止のいずれかが求められている。定年を廃止するケースでは、給与は実力主義に変え、年功序列賃金を見直す場合が多い。
民間の対応で最も多いのが65歳までの継続雇用(再雇用)制度の導入で、定年になっても雇用されるものの、再雇用のためそれまでの条件が白紙になり、給与が激減することになる。
定年延長に合わせて年功序列の見直しを
霞が関が考えている公務員の定年延長は、再雇用ではなく、定年の延長。ただし、それだと年功序列の賃金体系では給与が増え続けてしまうので、50歳代後半の7割にする、というのである。これが「民間並み」の制度見直しなのだろうか。
公務員の定年が伸びるに従って、公務員の人件費総額は増え続けることになる。2018年度予算での公務員の人件費は5兆2477億円。これに国会議員歳費や義務教育費の国庫負担金などを合わせた人件費総額は8兆円を超えている。
人件費が膨らむ問題もあるが、高齢者が官僚組織に居残ることになり、それでなくても高齢化が指摘されている官僚機構での、若手の活躍の場を失わせることになる。本来ならば、定年延長に合わせて年功序列の昇進昇給制度を見直し、若くても重要ポストに抜擢できるようにすべきだろう。
身分保障で守られている国家公務員の世界で抜擢を行うためには、成績を上げられない官僚の「降格」制度を作るしかない。だが、日本の今の制度では、官僚の降格はまず不可能だ。いったん、昇格したら定年まで給料が減らないのが公務員の世界である。
給与水準に「高過ぎる」「安過ぎる」は不毛
国家公務員の給与水準について「高過ぎる」「安過ぎる」といった議論は不毛だ。人事院は公務員の給与を決めるに当たって、「民間企業従業員の給与水準と均衡させること」を基準にしている。だが、しばしば指摘されるように「民間」といっても「企業規模50人以上かつ事業所規模50人以上の事業所」を比較対象にしている。中小零細企業はもともと相手にしていないわけだ。
給与水準は職種や仕事の内容によって大きく差があり、どの数字を使うかでまったく姿が変わる。国税庁の民間給与実態統計調査では2017年の平均給与は432万円ということになっているので、これと比べれば公務員給与は200万円以上も高い、という話になってしまう。
問題は、労働の対価として適正かどうか、という観点でみるべきだろう。中央官庁の官僚は給与に見合った働きをしているか、それだけの時間とコストを費やすべき仕事をやっているか、ということだ。
本当に「税金を使って」やるべき仕事か
中央官庁の場合、幹部官僚にとっての「成果」は新しい仕事を作ること。法律を通して事業を行うわけだが、いったん出来上がった仕事はなかなか見直されない。実際の内容はほぼ同じなのに名前を変えて事業を続けるということはあるが、過去からの事業を廃止するということは滅多にやらない。それをやると、予算と人員が減らされることになるからだ。課長としての能力は「いかに予算を取って来るか」であって、「いかに効率化したか」ではない。よって、中央官庁の仕事はどんどん膨らみ、官僚たちは日々、忙しく働いている。
だが、それが本当に「税金を使って」やるべき仕事なのか、という検証はなかなかされない。
基本的に官僚機構の仕事は「付加価値」を生まない。あるいは付加価値がごく小さいものだ。付加価値を生む事業だったら、さっさと民間に任せればよい。それが規制改革による民営化の原点だ。だが、ともすると、官僚機構は「公益性」の名前の下で、本来は民間ができることまで官僚機構でやろうとする。
産業革新投資機構の問題も根は同じ
経済産業省との対立が表面化した官民ファンド、「産業革新投資機構(JIC)」の問題もそこにある。経産省が「世界レベルの政府系リスクキャピタル投資機関を作る」という理念を打ち出し、それに賛同した日本を代表する金融人、経営者、学者が経営に参画して発足した。
ところが発足から2カ月あまりで、JICの取締役11人中、経産省と財務省の出身者2人を除く民間人9人が一斉に辞意を表明する事態に陥った。
きっかけは給与。成功報酬を含めて1億円を超す報酬体系を決め、世界に通用する人材を雇ったものの、「JICは国の資産を運用する機関で、高額報酬は国民の理解を得られない」という経産省が報酬案を白紙撤回、それに怒った民間取締役が辞表をたたきつけたというわけだ。
参画した社外取締役の経営者たちは、日本政府がリスクマネーを供給してイノベーションを起こす仕組みが作れる、と期待を寄せたようだが、経産省にはしごを外される結果になった。これも、どこまで「官」は口をはさみ手を出すべきなのか、官僚機構の基本的なあり方が定まっていない、ということなのだろう。
国民全体が「国への依存」を強めている
ともかく官僚機構が民間のやるべき分野にまで口を出し、人を送り込み、カネも出す、というのが今の日本。民営化したはずの日本郵政にしても、事故で事実上破たんした東京電力にしても、事実上国が過半の株式を保有する。「国の機関」化が進んでいる。
官僚機構が肥大化し、その人件費が膨らめば、最終的には国民がそれを負担することになる。5年連続で公務員給与が増えても、ほとんど大きな批判も反発も起きなくなった。そんな日本では、国民全体が「国への依存」を強めているように見えてならない。国からのおカネに頼る組織や企業、個人が増えていくということは、「タックスイーター」が増殖していることに他ならない。誰が「タックスぺイヤー」としてこの国の将来を担っていくのか。そろそろ真剣に考える時だろう。 

 

●業況DIは、ほぼ横ばいで推移 先行きは不透明感増す 2019/1
日本商工会議所が31日に発表した1月の商工会議所LOBO(早期景気観測)調査結果によると、1月の全産業合計の業況DIは、▲16.0と、前月から▲0.3ポイントのほぼ横ばい。民間工事や設備投資、自動車関連を中心とした生産、インバウンドを含む観光需要は堅調に推移した。他方、根強い消費者の節約志向に加え、暖冬により冬物商材の動きが鈍く、売上が伸び悩んでいるとの声も聞かれ、小売業の業況感が悪化した。人手不足の影響拡大や原材料費の高止まりが足かせとなっており、中小企業の景況感は足元でほぼ横ばいの動きとなっている。
先行きについては、先行き見通しDIが▲17.3(今月比▲1.3ポイント)と悪化を見込むものの、「好転」から「不変」への変化が主因。個人消費の拡大やインバウンドを含めた観光需要拡大、生産・設備投資の堅調な推移への期待感がうかがえる。他方、人手不足の影響の深刻化や、原材料費の上昇、コスト増加分の価格転嫁遅れ、貿易摩擦の激化、世界経済の動向、消費増税の影響など不透明感が増す中、中小企業の業況感は慎重な見方が見られる。
項目別では、全産業合計の売上DIは▲12.6と、前月から悪化。産業別にみると、サービス業でほぼ横ばい、その他の4業種で悪化した。 
全産業合計の採算DIは▲14.6と、前月からほぼ横ばい。産業別にみると、建設業でほぼ横ばい、サービス業で改善、その他の3業種で悪化した。
全産業合計の資金繰りDIは▲9.1と、前月からほぼ横ばい。産業別にみると、建設業、サービス業で改善、その他の3業種で悪化した。
全産業合計の仕入単価DIは▲36.6と、前月から改善。産業別にみると、全業種で改善した。
全産業合計の従業員DIは25.8と、前月から横ばい。産業別にみると、卸売業、小売業で人手不足感が強まり、建設業で人手不足感が弱まった。その他の2業種ではほぼ横ばい。  

 

●2019年、消費増税がなくとも日本の景気が落ち込むこれだけの悪材料 2019/1
2019年は経済的に見ても、10月から消費税率を上げられる状況ではなくなると、私は考えている。
その理由として、まず挙げられるのは景気循環だ。景気循環は、生産と在庫の関係を指標とするキチンサイクル、設備投資を指標とするジュグラーサイクル、住宅建築投資を指標とするクズネッツサイクル、技術革新を指標とするコンドラチェフサイクルという4つのサイクルの複合循環で、それぞれの周期は、キチンが5年、ジュグラーが10年、クズネッツは20年、コンドラチェフは50年といわれる。
そのうち、周期10年のジュグラーサイクルは2018年にピークアウトした。周期5年のキチンサイクルも2019年にピークアウトする。短い周期の指標がより支配力が大きいので、2019年は景気循環上、景気が落ち込む年になるのだ。
また2019年は、2020年に向けてのオリンピック特需が終焉を迎える。過去を振り返ると、オリンピック開催による建設などの特需は、開催の前年にはピークアウトしている。オリンピック開催の半年前くらいには、施設やインフラの整備を済ませないといけないからだ。それも景気の足を引っ張る可能性が高い。
さらに、海外に目を向ければ、米国のトランプ大統領を要因とする景気減速もあり得る。すでに、米中貿易戦争をはじめ民主党やFRB(米連邦準備制度理事会)との軋轢などで景気減速は進んでいるが、2019年はさらに酷い状況となるのではないか。
トランプ大統領が2018年7月から9月に中国に課した制裁関税は、表向きは「中国が米国の知的財産権を侵害している」という理由だった。それなら中国が、「今後、米国製品のパクリはしない」といえば、貿易戦争は収まるはずだ。だが、中国はそうしていない。
なぜかといえば、中国が米国から水面下で突き付けられている要求は、米国がリードしてきた最先端情報技術分野からの撤退だからだ。それに対して中国政府は、世界最先端の技術に立脚した製造大国の地位を築くことが最終目標の「中国製造2025」(2015年に発表した今後10年間の製造業発展のロードマップ)という計画を推進しており、米国のそんな要求を呑む気はさらさらないのだ。
2018年12月の米中首脳会談の合意により、米中貿易戦争は90日の休戦となった。しかし、国家の威信をかけた戦いである以上、簡単に終結するはずはない。おそらく2019年4月以降、再び激化するのは確実だろう。そうなれば日本も当然、それに巻き込まれることになる。こうした一連のトランプショックが実は一番、日本経済の足を引っ張る要因になる懸念が大きい。 

 

●景気回復は戦後最長へ 2019/1
「世界には4種類の国がある。先進国と途上国、そして日本とアルゼンチンだ」
そんな言葉をご存じですか? 1971年にノーベル経済学賞を受賞したサイモン・クズネッツが1960年代に語った言葉です。
もちろんジョークなのですが、大戦後に奇跡的な復活を遂げ、世界の先進国入りを果たした日本について語る際によく引き合いに出される言葉です。その一方でアルゼンチンは豊かな資源がありながら衰退した国家の典型として引き合いに出されるのですが…。
そう語られてからすでに半世紀以上が経つ日本。「失われた30年」とも言われる平成の30年が終わろうとしている今、日本はどのように進んでいくのでしょうか。景気と金融の関係について、改めて考えてみます。
「いざなみ景気」を超えることは確実
昨年12月、政府は「景気回復は戦後最長となる見通し」という見解を発表しました。
2012年12月から始まった景気回復は2018年12月で長さが6年1ヵ月に到達。前回の景気回復である2002年から2008年まで続いた戦後最長の景気回復に並んだ可能性が強くなりました。
米国と中国の貿易摩擦に伴う逆風を受けつつも、この勢いは当分続くとみられ、2019年1月で戦後最長の景気回復となるのはほぼ確実です。10月には消費税率の10%への引き上げが予定されていますが、その直前の駆け込み需要などによって、今年前半は個人消費も堅調そうです。
ちなみに前回の2002年から2008年までの69ヵ月間の景気回復は「いざなみ景気」と呼ばれ、これに続く戦後2番目の長さとなる1965年から1970年までの景気回復は「いざなぎ景気」と呼ばれています。今回の戦後最長を更新しそうな景気回復は、何景気と呼ばれることになるのでしょうか。
「世界には4種類の国がある」と発したサイモン・クズネッツがまだ生きていたら、「いざなぎ景気」を超える今の日本を見て、なんと口にしたことでしょう。
金融危機のリスクは脱したか?
もちろん不安材料がないわけではありません。すでに紹介したように米国と中国の貿易摩擦は世界経済全体に暗い影を落としていますし、日本経済だけをとってみても消費増税後の消費の落ち込みはかなり大きいはずです。
また、10年ごとに金融危機が訪れるという説は根強く、1987年のブラックマンデー、1997年のアジア通貨危機、2008年のリーマンショックと、これまでほぼ10年の周期で金融危機が訪れています。幸いにして2017年、2018年と大きな金融危機は起きませんでしたが、だからといって決して油断はできないという指摘もあります。
金融政策が及ぼす影響は
さて、景気と金融政策については、どのような関係があるのでしょうか。
一般的に、景気が低迷すると金融政策によって金利が引き下げられ、金融機関は低い金利で資金を調達できるので、企業や個人への貸し出しについても金利が引き下げられます。すると企業は設備投資の資金や人材確保、仕入れに必要な資金などを調達しやすくなります。個人も、住宅取得の資金が借りやすくなります。
その結果経済活動が活発となり、それが景気を上向かせることになります。同時に物価が押し上げられて、デフレからの脱却へと結びつきます。 こうした金融政策を「金融緩和政策」と呼びます。
一方で、景気が過熱していくと、物価がさらに上がってインフレとなり、ますます資金需要は高まって金利も上昇します。すると金融機関は高い金利で資金調達しなくてはならず、企業や個人への貸し出しでも金利が引き上げられます。企業や個人はお金を借りにくくなり、経済活動は次第に抑制されて、景気の過熱が抑えられることになります。これに伴って物価は押し下げられます。 こうした金融施策は「金融引き締め政策」と呼ばれます。
このように景気や物価に金融政策は大きな影響を及ぼします。 ご存じのように現在は「金融緩和政策」がとられており、しかも「極めて低い長期金利の水準を維持する」と日銀が明言している状態です。そのため2019年も現在の金融緩和状態が続くとみられます。
まとめ
戦後最長だった「いざなみ景気」を超える景気回復が確実となった日本経済。米中貿易摩擦や消費増税などの懸念材料はあるものの、当分はこの状態が続きそうです。
こうした景気の動きに、金融政策は大きな影響を及ぼしています。日銀も「極めて低い長期金利の水準を維持する」と明言していることから、2019年も景気拡大の局面となるでしょう。  

 

●IMF世界経済見通し 2019年1月 改訂見通し 2019/1
●成長の力強さを失う世界経済
• 世界経済の拡大は力強さを失ってきている。2018年の経済成長率は、ヨーロッパやアジアを中心に2018年10月の「世界経済見通し」の予測よりも成長率が低かった国があったものの、10月の同予測同様に3.7%であったと推定される。世界経済は2019年に3.5%、2020年に3.6%のペースで成長すると予測されているが、これは10月時点での予測と比べてそれぞれ0.2%ポイントと0.1%ポイントの下方修正である。
• 世界経済の2019年と2020年の成長率予測は2018年10月の「世界経済見通し」で既に引き下げられていたが、同年それまでにアメリカと中国で行われた関税引き上げの負の影響が理由のひとつであった。前回の「世界経済見通し」以降の下方修正は、部分的には2018年後半に勢いが弱まったことが尾を引いているためである。例えばドイツでは新たな自動車燃料排出基準が導入された後に、また、イタリアでは国債リスクと金融リスクが内需に対して重石となったために、モメンタムが弱まっている。しかし、下方修正の理由はそれだけではなく、金融市場のセンチメントの冷え込みと想定よりも深刻になると今予測されているトルコ経済の縮小もその原因となっている。
• 世界経済の成長率が予測と比べて上振れするか、下振れするかについては、下振れリスクが優勢となっている。見通しに既に織り込まれている以上に貿易摩擦が拡大することが、見通しに対する大きなリスク源であり続けている。秋以降、金融環境は既にタイト化している。とりわけ政府債務と民間債務が高水準にあることを踏まえると、貿易摩擦の拡大以外にも、一連の要因によってリスクセンチメントがさらに悪化し、経済成長にも負の影響が生じる可能性がある。こうした要因になりうるものの例としてはイギリスの「協定無し」での欧州連合離脱や、中国経済の予想を超える減速が挙げられる。
• 各国にとって政策上の主たる優先事項は、有害な障壁を高めることではなく、また、既に減速している世界経済を不安定化させることでもなく、協力して迅速に貿易に関する意見の相違と、その結果生じている政策の不確実性を解消することである。高水準の債務負担が生じ、金融環境がタイト化している環境において、潜在成長率を向上させる施策、包摂性を高める施策、財政・金融のバッファーを強化する施策があらゆる国にとって必須となっている。
●弱まる勢いと不確実性の高さ
世界経済の拡大は継続しているが、一部の国々では第3四半期の経済成長が残念なものに終わった。その国特有の要因(ドイツの新燃料排出規制や日本の天災)が経済大国の活動にとって重石となった。しかし、こうした変化が起こっている背景には、金融市場でのマインドの冷え込み、貿易政策の不確実性、中国の見通しに対する懸念といった要因もある。米中貿易紛争において関税が90日間猶予されるという12月1日の発表は歓迎できるが、春に緊張が再び表面化する可能性は世界経済の見通しに影を落としている。
高頻度のデータは第4四半期の勢いがさえないことを示している。アメリカ以外では工業生産が減速しており、この点は資本財で顕著である。世界貿易の成長は減速し、その成長率は2017年の平均を大きく下回っている。根底にある勢いの本当の強さはデータが示しているよりもさらに弱い可能性がある。というのも、重要指標の数値は関税引き上げに先立つ輸入の前倒しによって押し上げられたものかもしれないからだ。くわえて、新製品の立ち上げによってテクノロジー製品の輸出が増えたことによっても数値が上昇したのかもしれない。こうした解釈と一貫するかたちで、購買担当者景気指数は新規受注のカテゴリーを中心に将来の活動に対する期待が低下していることを示している。
一次産品と物価上昇
昨年8月以降、原油価格は変動が激しく、これはイランの石油輸出に対するアメリカの政策など供給への影響や、より直近では世界的な需要の弱まりに関する懸念を反映している。1月上旬時点で、原油価格は1バレルあたり約55ドルで、今後4-5年の間この価格帯で推移することを市場も予想していた。金属や農業一次産品の価格は8月以降、若干弱含んでおり、これは部分的に中国の需要がさえないことがその要因となっている。ここ数か月、先進国において消費者物価の上昇率は概ね抑制されたままであるが、潜在成長率を超える成長が続くアメリカで徐々に高まってきている。新興市場国においては、石油価格低下を受けて、物価上昇圧力が緩和されつつあるが、中には通貨安が国内価格に転嫁され、石油安によるインフレ圧力の緩和が相殺されている国もある。
先進国の金融環境
先進国の金融環境は秋以降、タイト化している。株価は一部の国で上昇し過ぎていたきらいもあったが、貿易摩擦が激化し、世界経済の成長が減速する中、企業収益の見込みに対する楽観論が後退したことを受けて、下落している。米政府機関閉鎖の懸念が年末にかけて金融セクターのセンチメントにさらに水を差している。また、主要な中央銀行はより慎重なアプローチを採用している格好である。米国連邦準備制度はフェデラル・ファンド金利の誘導目標を12月に2.25–2.50%へと引き上げたが、2019年と2020年についてはより緩やかなペースで利上げを行うことを示唆している。それまでの情報発信と一貫するかたちで欧州中央銀行(ECB)は12月に資産買入を終了させた。しかし、ECBは金融政策が十分に緩和的であり続けるだろうこと、少なくとも2019年夏までは政策金利の引き上げがないだろうこと、初回利上げ後もかなりの間、保有債券の満期償還金はその全額を再投資に回し続けるだろうことを認めている。成長見通しに対するセンチメントの悪化と政策期待のシフトにくわえてリスク回避の傾向が強まったことは、米国債、英国債、ドイツ国債を中心にソブリン債の利回りを低下させる効果があった。ユーロ圏諸国については、イタリア国債のスプレッドが欧州委員会との間で生じた予算を巡る行き詰まりが解消したことを受けて10月中旬のピークから縮小してきているものの、1月7日時点で270ベーシスポイントと高い水準に留まっている。ユーロ圏の他の国々については、同期間の国債のスプレッドにほぼ変化は見られなかった。国債以外では、米国企業債の信用スプレッドが拡大しており、これには楽観が後退したことと石油安に伴うエネルギー産業への懸念が反映されている。
新興市場国の金融環境
新興市場国の金融環境は秋以降わずかにタイト化しており、国ごとの特定要因に応じて、顕著な違いが生じている。貿易摩擦の過熱とリスク回避の傾向の強まりという文脈の中で、新興市場国の株価指標は同期間に大幅に下落してきている。それまでの石油価格がもたらすインフレ効果が懸念されたことと、一部諸国においてはGDPギャップの縮小と、通貨安の転嫁によるインフレ効果が心配されたことを受けて、チリ、インドネシア、メキシコ、フィリピン、ロシア、南アフリカ、タイといった多くの新興市場国の中央銀行は秋以降、政策金利を引き上げてきている。対照的に、中国とインドの中央銀行は政策金利を据え置き、それぞれ銀行の預金準備率の引き下げとノンバンク金融機関への流動性の供給によって国内の資金調達環境を緩和する行動を起こした。1月上旬時点でメキシコやパキスタンといった例外を除くと、新興市場国の大半で自国通貨建て国債の長期利回りが8-9月と比べて低下している。外貨建て国債の信用スプレッドは大半の国債で少しずつ上昇している。一部のフロンティア市場の国債については大きな上昇があった。
資本フローと為替相場
リスクが比較的大きい資産へのエクスポージャーの度合いを投資家が押しなべて下げようとしている中、2018年第3四半期には新興市場国から純額ベースで見ると資本が流出している。実質実効為替レートでは、1月上旬時点の米ドルは9月から変わりがない。成長が減速しイタリアに対する懸念が生じている文脈の中でユーロ安が2%程度進んだ。EU離脱を巡る不確実性が高まる中、英ポンドは約2%安となっている。一方で、リスク回避の結果、日本円は約3%の円高となった。トルコのリラ、アルゼンチンのペソ、ブラジルのレアル、南アフリカのランド、インドのルピー、インドネシアのルピアは昨年8-9月に記録された同年の最安値から回復してきている。
●予測の前提
予測の基になる関税、政策スタンス、金融環境の前提については、前回の「世界経済見通し」とほぼ同じ前提を置いている。
ベースライン予測は2018年9月までに発表された米国関税と報復措置を計算に入れている。アメリカについては、2018年前半に発表されたソーラーパネルや洗濯機、アルミニウム、鉄鋼が含まれる他、500億ドル相当の中国からの輸入品に課される25%の関税にくわえて、2,000億ドル相当の中国からの輸入品に課される10%の関税も含まれている。この10%の関税については現在の90日間「停戦」が2019年3月1日に終われば、25%まで税率が上がる予定である。中国については、アメリカからの600億ドルの輸入品に課される5%から10%の関税が予測に織り込まれている[1]。
2019年と2020年の石油価格平均は前回の「世界経済見通し」で1バレルあたり69ドル、66ドルと予測されていたが、現在は60ドルを下回る程度に下方修正されている。金属価格は2019年に前年比で7.4%下がると見込まれているが、これは前回10月の「世界経済見通し」の予測よりも急な下落である。金属価格は2020年には概ね変化がないと見られている。主要な農業一次産品は大半に価格予想の下方修正がわずかに行われている。
●2019年、世界経済の成長は鈍化する
世界経済の2018年の成長率は昨年秋の予測から変わらず3.7%だと推定されているが、2018年後半に見られた減速の兆候を踏まえて、いくつもの国の成長率が下方修正されている。
2018年後半の弱さが今後数四半期も継続し、世界経済の成長率は2019年に3.5%へと低下するだろう。その後、2020年には3.6%へとわずかに改善する。これらの数字は前回の「世界経済見通し」と比べるとそれぞれ0.2%、0.1%の下方修正である。先進国は潜在成長率を超えるペースで経済が成長してきたが、こうした水準から先進国の成長率が持続的に下がること、この成長率の低下が以前の想定よりも急速に起こっていることが私たちの世界経済の成長率予測に反映されている。また、2019年に新興市場国や発展途上国の成長率が一時的に低下することも反映されている。これはアルゼンチンとトルコで経済がマイナス成長になること、また、中国などアジア諸国が貿易措置の影響を被ることを受けたものである。
具体的には先進国の経済成長は成長率が2018年の推定2.3%から2019年に2.0%、2020年は1.7%へと減速していく見込みである。2018年10月の「世界経済見通し」と比べると、先進国成長率の2018年と2019年の予測値はともに0.1%ポイント低くなっているが、これは主にユーロ圏に対する下方修正によるものである。
• ユーロ圏は経済成長のペースを2018年の1.8%から2019年に1.6%、そして2020年は1.7%へと緩めることになっており、2019年の成長予測については昨年秋の予測から0.3%ポイントの下方修正である。域内の多くの国について成長予測が下方修正されているが、顕著な例としてはドイツ、イタリア、フランスがある。ドイツは民間消費の弱まり、自動車燃料排出基準改定後の工業生産の弱さ、低調な外需が下方修正の理由となっている。イタリアについては、内需の弱さと、国債の利回りが高止まりしていることに伴う借入コスト増を受けている。一方、フランスは路上での抗議デモや労働争議による負の影響を踏まえた下方修正となった。
• イギリスの経済成長率については、2019-20年のベースライン予測が1.5%であるが、この予測には大きな不確実性が存在する。2018年10月の「世界経済見通し」から予測数値に変更はないが、EU離脱の結果に関する不確実性の長期化がもたらす負の影響が2019年予算で発表された財政刺激策のプラス効果を打ち消すことが反映されている。ベースライン予測はEU離脱協定が2019年に合意されること、イギリスが新体制に徐々に移行することを前提としている。しかし、1月中旬時点ではEU離脱の最終形がどのようなものになるかは非常に不確実である。
• アメリカの成長率予測にも変更がない。財政刺激策が終了すること、フェデラル・ファンド金利が自然利子率を一時的に超えることを受けて、成長率は2019年に2.5%へと低下し、2020年にさらに1.8%まで下がることが見込まれている。しかし、アメリカ経済は両年ともに推定される潜在成長率を超えるペースで拡大を続けるだろう。内需の力強い伸びに伴って、輸入の増加に拍車がかかり、アメリカの経常赤字を拡大させる方向に働くだろう。
• 日本経済は2019年に1.1%の成長を遂げる見込みだが、これは昨年10月の「世界経済見通し」と比べて0.2%ポイントの上方修正である。この上方修正は主に今年追加で実施される財政刺激策を反映している。例えば、2019年10月に予定されている消費税引き上げの影響を緩和する施策である。成長のテンポは2020年に0.5%へと緩やかになる予測であるが、この数値はこうした緩和策の実施を受けて、2018年10月の「世界経済見通し」比で0.2%ポイント高くなっている。新興市場国と発展途上国では成長率が2018年の4.6%から2019年の4.5%へと若干低下し、その後2020年に4.9%へと改善すると予測されている。2019年の成長予測については2018年10月の「世界経済見通し」比で0.2%ポイント低い。
• アジアの新興市場国と発展途上国の成長率は2018年の6.5%から2019年に6.3%、2020年は6.4%へと低下する見込みである。アメリカの関税引き上げに伴う影響を一部相殺する財政刺激策にもかかわらず、中国経済は必要な金融規制の引き締めと対米貿易摩擦から生じる影響が相まってペースを緩める。インド経済は2019年に加速する態勢が整っている。石油価格が下がったことと、インフレ圧力の緩和を踏まえて金融の引き締めが以前に想定されていたよりも緩やかなペースで進むことの恩恵を受ける。
• 中東欧での概ね好調な成長にもかかわらず、2019年にヨーロッパの新興市場国と発展途上国では以前の想定よりも成長が減速し、成長率が2018年の3.8%から2019年の0.7%まで下がった後、2020年に2.4%まで回復すると現時点で、予測されている。2019年は1.3%ポイント、2020年は0.4%ポイントの下方修正となっているが、これは政策が引き締められ、外部金融環境がより逼迫する中でトルコ経済が2019年に大きなマイナス成長になり、これに続く2020年の回復ペースがより遅いものになると予測されているためである。
• ラテンアメリカの成長率は今後2年間に2018年の1.1%から2019年に2.0%、2020年は2.5%へと回復することが予想されているが、2019年と2020年の両年の予測数値は前回の予測と比べて0.2%ポイント低い。この下方修正の理由となっているのは、ひとつには民間投資の低下を踏まえてメキシコの2019年から2020年の成長見通しに下方修正があったことである。また、以前の想定を超える規模でベネズエラ経済が縮小することも反映されている。両国に対する下方修正は、ブラジルの2019年の成長率に対する上方修正によっても部分的にしか相殺されていない。ブラジルでは2015-16年に起こった不況からの緩やかな回復が継続する見込みである。アルゼンチン経済は不均衡解消を目的とした引き締め政策が内需を減速させることを受けて2019年に縮小した後、2020年に成長を再開するだろう。
• 中東、北アフリカ、アフガニスタン、パキスタンの地域ではさえない成長が続くことが見込まれ、成長率は2019年に2.4%となった後、2020年に約3%へと回復することが予測されている。この地域の見通しには複数の要因が水を差している。例えば、サウジアラビアでは非石油の活動に伸びが予想されているにもかかわらず、石油生産の伸びに力強さが欠けるため相殺されてしまう。パキスタンでは融資条件が厳しくなることが見込まれ、イランではアメリカによる制裁が、また、いくつもの国で地政学的な緊張が要因となっている。
• サブサハラアフリカでは、成長が加速し、成長率が2018年の2.9%から2019年に3.5%、2020年は3.6%へと上昇することが見込まれている。2019年と2020年の両年ともに昨年10月の予測と比べて0.3%ポイントの下方修正であるが、これはアンゴラとナイジェリアの成長率が石油安を受けて下方修正されたためである。地域全体の予測数値を見ているだけでは、各国成長率の間にある大きな差異が目に入ってこない。サブサハラアフリカでは3割を超える国々が2019-20年に5%を超える成長率を記録すると予測されている。
• CIS諸国の経済活動は2019–20年に約2.25%伸びると予測される。この数字は昨年10月の「世界経済見通し」と比べて若干低いが、短期的な石油価格の弱含みがロシアの成長率予想に水を差したことがその理由である。
●見通しに対するリスク
世界経済の成長見通しに対する主要なリスク源は貿易交渉の結果と、今後数か月に金融環境が向かい始める方向性である。もし国々の間で歪みをもたらす貿易障壁をさらに高めることなく意見の相違が解消されれば、市場のセンチメントが回復し、改善した信頼と金融環境が相互にプラスに働いて、ベースライン予測を上回る成長率が実現される可能性がある。しかし、上振れリスクと下振れリスクでは、10月の「世界経済見通し」から変わらず、下振れするリスクが優勢になっている。
貿易摩擦
NAFTAに代わる米国・メキシコ・カナダ自由貿易協定(USMCA)が11月30日に調印されたこと、アメリカと中国が12月1日に関税引き上げに関して90日間の「停戦」を発表したこと、米国産自動車に対する中国関税引き下げが公表されたことは貿易摩擦の鎮静化に向けた歩みとして歓迎できる。しかし、最終的な結果は米中の貿易摩擦については困難となりうる交渉の結果次第であるし、USMCAについては国内の批准プロセス次第である。したがって、世界貿易、投資、GDPは政策の不確実性と現行の貿易摩擦によって脅威にさらされている。相違が解消できず、結果として貿易障壁が高まると、輸入中間財と資本財の価格が上昇し、消費者の最終製品価格も上昇するだろう。こうした直接的な影響の他、貿易政策の不確実性が増し、貿易摩擦の過熱と報復措置に対する懸念が事業投資を減らし、サプライチェーンに混乱をもたらし、生産性の伸びを鈍化させかねない。この結果、企業収益の見通しが悪化することで金融市場のセンチメントが冷え込み、成長がさらに阻害されるかもしれない(2018年10月「世界経済見通し」のシナリオボックス1)。
金融市場のセンチメント
貿易摩擦にくわえて、イタリアの財政政策や、複数の新興市場国の状況、そして年末にかけては米国政府機関の閉鎖が懸念されており、こうした憂慮が2018年後半の株価を下落させる方向に働いた。システム上重要な主要国で触媒として機能する一連の事象が生じると、債務負担がいまだに大きい中で投資家マインドが幅広く冷え込んだり、資産価格の突然かつ急激な調整が起こったりする可能性がある。こうした事象が現実になる場合には、より安全な資産を求めるリスクオフの動きが広まり、世界経済の成長はベースライン予想に届かなくなる可能性が高い。
• イタリア国債のスプレッドは10-11月のピーク時から縮小してきているが、いまだ高水準にある。利回りが高い状態が長期化していることで、イタリアの銀行にさらなるストレスがかかり、経済活動の重石となり、債務の状況が悪化する可能性がある。この他、広範囲のリスク回避を誘発しかねないヨーロッパ特有の要因としては、イギリスが協定無しでEUを離脱して混乱と国際的な波及効果が生じる可能性が高まっていることが挙げられる。また、高まる欧州懐疑主義が欧州議会の選挙結果に影響を与えることもリスク回避を引き起こしうる。
• システム上重要な金融安定性リスクの原因となっている2番目の要素は中国で予想を超える景気減速が起こることである。この事態が生じると貿易相手国と世界の一次産品価格に負の影響が生じる。中国の経済成長が2018年に減速した主な理由は、影の銀行の活動と地方政府による帳簿外の投資を抑制するために行われた金融規制の厳格化であった。また、米中貿易摩擦が過熱し、年末にかけて減速に拍車をかけた結果であった。2019年にはさらなる成長の鈍化が予測されている。中国政府当局は金融規制厳格化の抑制、銀行に対する準備預金比率の引き下げを通じた流動性の供給、財政刺激策の実施、公共投資の再開によって減速に対応してきている。しかし、特に、貿易摩擦が緩和されないといった場合には、経済活動は予想を下回ることになるかもしれない。2015–16年に見られたように、中国経済の健全性に対する懸念は金融市場・コモディティ市場において突然かつ広範囲にわたる投げ売りを誘発する可能性がある。こうした事態は、貿易相手国や一次産品輸出国、その他新興国をストレスにさらす。
貿易摩擦が過熱する可能性、金融市場のセンチメントに広く変化が起こる可能性の他にも、世界の投資や成長を下振れさせるリスクが存在している。例えば、新政権の政策内容の不透明性、アメリカで長期化する政府機関閉鎖、中東や東アジアでの地政学的な緊張である。よりゆっくりと進行する性質のリスクとしては、気候変動の広範に及ぶ影響や、既存制度や政党に対する信頼が失われていくことが挙げられる。
●政策上の優先事項
勢いのピークが過ぎたことで、世界経済の成長に対するリスクは下振れリスクが上振れリスクを上回り、多くの国々で政策余地が限られており、多国間でも国内でも政策はさらなる減速に歯止めをかけ、強靭性を高めることに緊急に焦点を当てなければならない。共通の優先事項は経済の包摂性を高めつつ、中期的な成長見通しを引き上げることである。
多国間協調
上記のような直近の好ましい変化を土台として、政策担当者はルールに基づく貿易制度に対する不満の種に対処し、貿易コストを削減し、意見の相違を関税障壁と非関税障壁を高めることなく解決するために協力すべきである。そうした協力が行われなければ、成長が減速している経済を不安定にするだろう。貿易以外の面では、一連の課題についてさらに緊密な協力を促進することで、グローバルな経済統合の恩恵を一層広めることが可能になるだろう。例えば、金融規制改革、国際課税と国際的な脱税の経路の最小化、汚職など腐敗の撲滅、各国が外的ショックから自己防衛する必要性を減らすためのグローバルな金融セーフティネットの強化である。国際社会にとって最も大きな課題は、酷暑、大雨、旱魃といった極端な天候が経済にもたらす破壊的な人道コストと経済コストの可能性を低くするために気候変動に適応し、その影響を緩和することである(2017年10月「世界経済見通し」第3章)[2]。新たなリスク、増大するリスクを抱え、経済が拡大しこれまで以上に複雑になった世界で、IMF資金が十分であることは国際資本市場において安定をもたらす大きな要因であり続けるだろう。
国内政策
先進国、新興市場国、発展途上国の政策優先事項は2018年10月の「世界経済見通し」で議論された内容と概ね同じである。
• 先進国については、成長のテンポが潜在成長率を超えるペースから、控えめな潜在成長率のペースにまで緩やかになるだろう。一部の国は以前の想定よりも減速の時期が早まっている。どの国も生産性を向上させる施策や、労働参加率を高める施策に注力するべきである。とりわけ女性の労働参加率を高めるべきだが、若者の労働参加率向上が重要な国もある。そして、構造変化に脆弱な人々を対象にしたものを含めて適切な社会保険を確保するべきである。金融政策はインフレ期待のアンカリングを確実にしつつ、財政政策は不況対策を行うための政策余地が限られており、それを拡充する必要がある場合には、バッファーの再構築を行うべきである。
ここ数か月、新興市場国と発展途上国は貿易摩擦、アメリカの利上げ、ドル高、資本の流出、激しく変動する石油価格といった困難な外部環境の試練を受けてきた。膨らんだ民間債務の重荷やバランスシートにおける通貨と満期のミスマッチに対処するためにマクロ・プルーデンス規制の強化が必要になる国もあるだろう。為替相場の柔軟性は外部ショックの緩衝材となることでこうした政策を補うことができる。インフレ期待のアンカリングがしっかりしている国では、金融政策によって、必要に応じて国内での活動を支えられるだろう(2018年10月「世界経済見通し」第3章)。外部金融環境の厳しさが増す中で、財政政策は債務比率が持続可能なものであり続けるようにするものであるべきだ。包摂性を高めるために、潜在成長力を向上させ、社会支出を強化することができるが、このために必要な資本支出を確保するためには、補助金対象の絞り込みの改善や、経常支出の合理化が有用である。低所得途上国では、これら分野での取り組みに注力することが、生産構造の多様化(一次産品に依存する国にとっては緊急の重大課題である)や、国連の持続可能な開発目標の達成に向けた前進にとってもプラスとなるであろう。

[1] 2018年10月「世界経済見通し」のシナリオボックス1では、貿易障壁の一層の引き上げが及ぼしうる影響について、試算を行っている。例えば、企業の信頼や市場のセンチメントが損なわれることなどによって生じる影響が推定されている。
[2] 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は現状の気温上昇率を踏まえると、2030年から2052年の間に平均表面温度が産業革命前よりも1.5°C高くなる可能性があると10月に報告している。 

 

●「戦後最長の景気拡大」で語られていない意外な理由 2019/2
2019年1月で、景気拡大期間が戦後最長となったもようだ。その主因は、景気の拡大が緩やかであったこと、そして海外の景気に大きな波乱がなかったことが挙げられるが、筆者がもう1つ重要だと考えているのは、「少子高齢化によって景気の波が小さくなってきた」ということだ。
今後、景気拡大がいつまで続くのかは何とも言えないが、少子高齢化によって景気の波が小さくなっていき、景気が後退しにくくなっているため、海外の景気が多少悪化しても、国内の景気は後退しないと考えられるからだ。
少子高齢化による労働力不足は、今後も深刻化していくと考えると、将来的には景気の波が消滅してしまう可能性もある。もちろん、海外でリーマンショックのような経済危機が再来すれば別だが、よほどのことが起きない限り、国内の景気が循環しないといった時代がくるかもしれない。今回は、そう考える理由を示してみたい。
そもそも、なぜ景気が後退するのかには諸説あるが、筆者の理解では需要が減少するからだ。需要が減ると生産が減り、生産のための雇用が減り、失業が発生する。失業者は物(財およびサービスを本稿では物と記す)を買わないから、物が一層売れなくなるといった悪循環に陥るわけだ。
需要が減少する理由としては、在庫循環、設備投資循環などを挙げる向きもあろうが、筆者はそうは思わない(理由は後述)。したがって、需要が減少する要因としては、海外向け輸出が減少する、バブルが崩壊する、金融引き締めで投資が減る、といったことが主だろう。
少子高齢化は、2つの理由で労働力不足をもたらす。1つは、需要を規定する総人口よりも生産量を規定する生産年齢人口の減り方が大きいため、需要不足が起きにくくなるからだ。少数の若者が作ったものを大勢の高齢者が奪い合うので、若者の仕事はなくならないといったイメージだろう。
もう1つは、高齢者の需要は医療や介護など、労働集約的な物が多いからである。若者が100万円の自動車を買っても、全自動のロボットが作ってしまうので失業は減らないが、高齢者が100万円で医療や介護を頼むと失業が確実に減るといったイメージだ。
バブル崩壊後の長期低迷期には、需要不足による失業問題に悩まされ続けた日本経済だが、これからは少子高齢化による労働力不足の時代を迎え、失業問題に悩まないようになると期待される。
そうなると、「好況時は超労働力不足、不況時はやや労働力不足」といった状況となり、「失業者が物を買わないから一層需要が減少する」ということは起きにくくなる。そうなれば、景気後退の悪循環が生じないので「景気の谷」は浅くなるわけだ。
バブル崩壊後の長期低迷期には、日本経済が需要不足であったことから、輸出が少しでも落ち込むと景気が簡単に後退した。しかし、今後は輸出減のインパクトは小さくなっていくだろう。
まず、少子高齢化時代には、輸出産業が労働力を確保しにくいため、海外での現地生産に軸足を移していくだろうから、国内経済に占める輸出産業のウエート が下がり、輸出減少の経済へのインパクトも軽くなっていくと思われる。
加えて輸出産業には「為替変動の影響を受けにくい体質に転換するため、売れるところで作る体制を作る」という動きが広がっており、アベノミクスによる円安でも「国内で作って輸出する」という動きは広がっていない。こうした動きと労働力不足が重なれば、日本の輸出額は減っていくことになる。
日本経済における輸出産業の重要性が減っていけば、海外の景気に日本の景気が左右されにくくなっていくのは自然なことだ。
もう1つ、もしも海外の不況により輸出が激減し、輸出産業の労働者が失業したとしても、失業者は内需型産業で容易に仕事を見つけることができるので、「所得が得られず消費できない」といった事態に陥るとは考えにくい。
少子高齢化とは、経済に占める高齢者の比率が高まっていくということだ。高齢者の収入は、年金が主な収入源だから安定している。年金で不足する分は貯金を取り崩して生活費に充てる形になるが、その金額も安定していると考えていいだろう。したがって、高齢者の消費額も安定している。
高齢者の消費額が安定しているということは、高齢者に物を提供している現役世代の所得も安定しているということになる。現役世代の中で、高齢者向けの仕事をしている人のウエートが上がっていけば、現役世代の所得全体としても安定度を増していく。そうなれば、現役世代の消費額も安定してくるだろう。
極端な話、現役世代の全員が高齢者の介護をしている経済を考えてみればいい。必要な物はすべて輸入し、輸入代金は海外投資からの利子・配当で賄う、という極端な仮定を置くと、景気は全く変動しない。
もちろんこれは非現実的な仮定ではあるが、現実の経済が方向として少しずつそれに近づいていくことは間違いないだろう。
「需要が減少する理由としては、在庫循環、設備投資循環などを挙げる向きもあろうが、筆者はそうは思わない」と前述したが、興味をお持ちの方のために、その理由を示しておく。
在庫変動が景気を動かしていたのは、製造業が経済に占めるウエートが大きく、かつ在庫管理技術が未熟だった時代であり、最近では在庫変動が景気を動かすとは考えにくい。まして今後、そうした事態は起きないだろう。
設備投資循環が景気を動かしていたのは、設備の更新サイクルがおおむねそろっていたからだ。一度、景気が拡大して設備投資が盛り上がると、10年ほどして一斉に設備が更新期を迎えるため、景気の波ができていたというわけだ。
しかし最近では、コンピューターのように更新サイクルが短いものも多いので、更新投資が一斉に起きるわけではなく、設備投資循環が景気を動かすほど明確に表れるとは考えにくいのだ。
ここからは余談だ。日本は、巨額の海外資産から巨額の利子配当収入を得ているので、輸出産業が縮小していっても経常収支が赤字になるとは考えにくい。だが、リスクシナリオとして、万が一経常収支が大幅な赤字になったら何が起きるのかも考えてみよう。
経常収支が巨額の赤字となれば、輸入代金を払うためのドル買い需要によってドル高円安となる。そうなると、輸出企業は「高い給料を払っても労働者を集めて国内で生産して輸出しよう」と考えるので、内需型産業と労働力の奪い合いになる。
景気という観点からは、「労働力の奪い合いが起きるほど景気がいい」ということになるが、介護の現場で労働力不足が深刻化して介護が受けられない高齢者が増加するといった問題は深刻化するかもしれない。 
まあ、元気な高齢者が働くようになれば、そこまで深刻な労働力不足は発生しないと思うが、一応リスクシナリオとしては頭に入れておきたい。 

 

●「戦後最長の景気拡大」はいつ終わるのか? 2019/3
「確定には時間がかかるが、『緩やかに回復している』という判断は変わっていない」――。茂木敏充経済再生担当相は2月21日の月例経済報告関係閣僚会議後の記者会見で、平成24年12月に始まった現在の景気拡大局面が75カ月に達して戦後最長を更新したとの認識を示した。中国をはじめとする海外経済の減速を背景に輸出に弱さがみられるものの、人手不足に伴い雇用・所得環境が改善し、個人消費や設備投資といった民需が堅調に伸びているからだという。
ただ、報道各社の世論調査で、景気回復の実感を聞くと、「実感はない」との回答は7〜8割に達し、ほとんどの国民が「戦後最長景気」といわれてもピンと来ていないのが実態だ。統計不正問題による政府への不信感も相まって、「戦後最長景気」も「偽装している」との批判が出ている。
政府が強調する「景気拡大」と国民の景気実感にズレが生じるのには理由がある。有識者による内閣府の「景気動向指数研究会」が、景気後退への転換点を示す景気の「山」を認定しない限り、「景気は拡大している」ということになるのだ。景気が伸び悩んで横ばいを続けても、明確に下がらなければ「景気拡大」は続いていると判定されることもある。
今回の景気拡大は期間は長くなったものの、その中身をみると心もとない。内閣府によると、「戦後最長景気」の年率換算の実質国内総生産(GDP)成長率は1.2%にとどまり、戦後第2位の「いざなみ景気」(14年2月〜20年2月、73カ月)の1.6%、3位の「いざなぎ景気」(昭和40年11月〜45年7月)の11.5%には及ばず、「戦後最長景気」の力不足感を示している。「緩やかに回復している」という政府の景気の基調判断は「かなり緩やかな回復」と言っても過言ではない。
「下がってはいない」という「戦後最長景気」は一体いつまで続くのか。主要シンクタンク16社が平成30年10〜12月期のGDP速報値の発表を受けて公表した30〜32年度の経済見通しをみると、ほとんどがこの3年間の実質GDP成長率を1%未満と予測。政府が1月30日に発表した中長期試算で▽30年度0.9%▽31年度1.3%▽32年度1.6%(高成長ケース)、1.4%(低成長ケース)−と高めに推計しているのとは対照的で、民間予測に基づけば「戦後最長景気」がいつ途切れるかは予断を許さないともいえる。
実質GDP成長率の先行きを▽30年度0.6%▽31年度0.3%▽32年度0.2%−と最も厳しく予想する農林中金総合研究所は「足元で世界経済が減速傾向にあるため、輸出は先行き減少に転じるほか、それが31年度入り後の企業設備投資にも影響を及ぼしていく」と指摘。31年度上期は10月に予定されている消費税増税の駆け込み需要で景気は表面上底堅く推移するが、下期以降は「手厚い消費税対策にもかかわらず、反動減が発生、調整色が強まる」と分析し、景気の底入れは32年度半ばになるとみている。
一方、そこまで景気は落ち込まないという見方もある。明治安田生命保険は「基本的に堅調な米国景気や省力化投資需要の高まりなどを背景に、緩やかな回復が続く」と予測。特にGDPの5割超を占める個人消費に関し、ゴールデンウイーク10連休やラグビーワールドカップ、東京五輪・パラリンピックなど「31年度以降、個人消費の後押しを期待できるイベントが数多く到来することで、今後の個人消費は底堅く推移する」と期待を込める。
「戦後最長景気」について、小玉祐一チーフエコノミストは「32年度までは景気の『山』は来ない」と強調。その上で「問題は米国の景気がいつ終わるか。少なくとも次の大統領の任期中、どちらかというとその前半には米国経済も景気後退に陥る可能性は高い」と分析する。
政府・与党内からは「28年ごろの景気が足踏みした期間を景気後退期とみなして、その後から景気拡大が再び始まったと考えれば、まだまだ景気拡大は続く」(自民党幹部)との楽観論も聞こえる。米国の景気拡大の最長記録が10年(120カ月)であることを考えると、日本の最長記録もさらに更新される可能性は残されている。
「景気は水物」とはよくいわれるが、あまり楽観的にも悲観的にもなり過ぎずに景気動向をウオッチする視点が欠かせない。 

 

●日本経済展望 2019/3
概況:景気に足踏み感
内需は堅調も、外需が下振れ
10〜12月期はプラス成長
2018年10〜12月期の実質GDPは、自然災害による下振れがはく落したため、前期比年率+1.4%と2四半期ぶりのプラス成長。もっとも、中国向けを中心とした輸出の伸び悩みなどを背景に、外需の寄与度がマイナスとなったため、前期の減少分(同▲2.6%)を取り戻すことができず。
鉱工業生産は弱含み
製造業の活動は足踏み。1月の鉱工業生産指数は前月比▲3.7%と3ヵ月連続の減産。輸出の減少を背景に、輸送機械や生産用機械など幅広い業種で下振れ。先行きも、2月は前月比+0.4%(予測指数の傾向的な誤りを修正した経済産業省試算値)、3月は同▲1.6%と回復感に乏しい状況が持続。
家計部門は緩やかに回復
もっとも、雇用・所得環境は改善傾向が持続。失業率は25年ぶりの低水準圏を維持するなど、労働需給は引き続き逼迫。12月の現金給与総額も前年比+1.5%と増勢を維持。これを受けて、個人消費は緩やかに持ち直し。株価下落などを背景に消費者マインドは弱含んでいるものの、総雇用者所得は緩やかな増加が持続。堅調な所得環境を受けて、消費総合指数も均してみると回復傾向を維持。
輸出は伸び悩み
財輸出は伸び悩み
1月の財輸出は、中国向けを中心に幅広い品目で減少。中国景気が一段と減速するなか、中間財や資本財、電子部品・デバイスの輸出が大きく減少。中国経済の影響を受けやすいASEAN向けの輸出も減少。先行きを展望すると、財輸出は伸び悩みが続く見通し。景気が底堅く推移する先進国向けは堅調を維持するものの、景気減速が続く中国向けが減少を続けることが背景。なお、日米の貿易摩擦が激化すれば、輸出への下振れ圧力がさらに強まるリスクも。日米物品貿易協定(TAG)の交渉開始で自動車関税の引き上げは当面猶予されたものの、自動車輸出の数量規制や為替条項が盛り込まれた場合、わが国輸出に大きな悪影響。
インバウンド需要は持ち直し
インバウンド需要は、観光客数、消費額ともに、自然災害による落ち込み前の水準を上回って推移。先行きも、インバウンド需要は拡大が続く見通し。背景には、アジア新興国での中所得者層の拡大や、わが国の観光客受入態勢の整備などが指摘可能。
企業収益は弱含みも、設備投資は回復基調
企業収益は足踏み
企業収益は高水準を維持しながらも、足元ではやや弱含み。法人企業統計季報によると、2018年10〜12月期は売上高が5四半期連続の増加となった一方、経常利益は2四半期連続の減益に。とりわけ製造業は前期比▲10.6%と大幅減益。人件費の増加は抑制されているものの、秋口にかけて続いた原油高による変動費の増加が利益率を押し下げ。もっとも、このまま企業収益が落ち込んでいく公算は小。先行きを展望すると、原油価格の下落により、変動費が減少に転じると見込まれることから、企業収益は再び増加に転じる見通し。
設備投資は緩やかに増加
設備投資は増加基調。人手不足を背景とした合理化・省力化投資や老朽化に対応した維持更新投資などがけん引役。10〜12月期については、夏場に相次いだ自然災害による落ち込みからの反動の側面も。先行きについては、中国経済の減速など、不透明感の高まりを受けて、若干減速するものの、合理化・省力化投資などのニーズは引き続き強いことから、設備投資が腰折れする公算は小。足元で弱含んでいる機械受注も早晩持ち直す見込み。
所得は堅調に回復
改善続く雇用・所得環境
雇用情勢は改善が持続。正規雇用者を中心に、新分野の製品開発などが旺盛な製造業で顕著に増加。働き方改革の進展も、パートからフルタイムへのシフトを後押し。また、全業種でバブル期を上回る人手不足となっていることを背景に、名目賃金の上昇ペースもやや加速。サンプル替えなどの影響を除去しても、フルタイム労働者の所定内給与の増加ペースは高まる方向。
実質所得は堅調に拡大
先行きを展望すると、緩やかな景気回復と人口減少の両面から、労働需給の逼迫は続く公算大。この結果、雇用・名目賃金ともに改善傾向が続く見込み。もっとも、雇用の改善ペースは徐々に緩やかとなると予想。景気回復ペースの鈍化などを背景に、先行指標である新規求人数は2018年入り後から横ばい圏内の動き。実質ベースの雇用者所得も、2019年度以降、雇用者数の増勢鈍化を主因に改善ペースはやや鈍化する見通し。ただし、名目賃金が引き続き上昇することと、教育・保育の無償化によって、消費増税による物価上昇が小幅に抑えられることから、2%程度の伸びは維持できる見込み。
個人消費は緩やかな回復基調
個人消費は緩やかな回復基調
個人消費は、天候要因により振れやすくなっているものの、雇用・所得環境の改善を背景に、基調としては緩やかに回復。暖冬の影響により、冬物衣料品や食料品などの季節商材の販売は下振れ。また、株価下落や景気の先行き不透明感の高まりに伴う消費者マインドの悪化も、個人消費が力強さを欠く一因に。もっとも、可処分所得の増加を背景に、外食や旅行などのサービス消費は増加基調で推移。自動車など耐久財消費についても、新車投入効果などを背景に堅調を維持。
先行きも緩やかな持ち直し
先行きを展望すると、不安定な株価動向を受けたマインド悪化が懸念材料ながら、雇用・所得環境の改善が続くことから、基本的に個人消費は緩やかな回復基調を維持する見通し。消費者マインドが改善に転じれば、個人消費は所得の増加に見合った伸びに回復する見込み。
非正規雇用者の増加をどうみるか
若年層、女性の非正規が急増
わが国の非正規雇用者は、2018年に増加ペースが加速。年齢別・性別に内訳を見ると、シニアに加えて、若年層と子育て期の女性が大きく増加。
就業条件の柔軟化が背景
この背景として、企業による就業条件の柔軟化が指摘可能。人手不足の深刻化により労働力確保が一層難しくなるなか、企業は就労を希望しながら働けていない非労働力の掘り起こしに注力。第1に、勤務時間の柔軟化。例えば、早朝など短時間限定での勤務制度を導入することで、子育て期の女性が子どもを預けている間だけでも就業可能に。この結果、勤務日あたりの労働時間は減少。第2に、勤務日数の柔軟化。最低勤務日数の引き下げにより、特定の曜日しか働けない学生等が就業可能に。こうした取り組みを受け、月15日以下の日数で勤務する労働者の割合が増加。
勤務場所の柔軟化がネック
このように、様々な取り組みが奏功しているものの、依然として就業ミスマッチは残存。例えば、家族の介護問題や本人の健康不安を抱える無業シニアでは、就労できない理由に勤務場所の制約を挙げる声が多数。テレワークやシェアオフィス等の勤務場所のミスマッチを解消するための環境整備が必要。
底堅い内需に支えられ、緩やかな景気回復が持続
底堅い内需が景気を下支え
先行きを展望すると、世界経済の緩やかな減速を背景に、輸出の伸び悩みが続く見込み。輸出企業を中心に設備投資の増勢も鈍化。もっとも、国内需要に支えられる形で景気回復が続くという見方は変わらず。多くの企業が生産能力の拡大に慎重だったこともあり、企業の設備不足感は依然として強い状況。人手不足を背景に省力化・合理化投資も底堅く推移するとみられることから、設備投資の大幅な調整が生じる可能性は小。加えて、今後は、2018年度補正予算の執行に伴い公共投資が増加に転じることで、景気を下支える見込み。
消費増税下でも景気回復基調が持続
家計部門においても、良好な所得環境を背景に、個人消費の緩やかな増加が続く見通し。2019年10月には消費増税が予定されているものの、前回2014年と比べ税率の引き上げ幅が小さいほか、軽減税率の導入や教育・保育の無償化などの消費増税対策により家計の負担増が緩和されることで、消費の大幅な落ち込みは回避。結果として、2019年度は1%近い成長を維持できる見通し。
物価は前年比+1%弱、長期金利はゼロ%近辺で推移
物価の伸びは鈍化
コアCPI上昇率は、エネルギー価格の騰勢が鈍化した一方、宿泊料などがプラス寄与を拡大した結果、前月よりも小幅上昇。先行きは雇用・所得環境の改善を背景に、需給面からの上昇圧力は強まるものの、エネルギー価格の伸びは低下が続くため、当面は前年比+1%弱で推移する見通し。
短期金利は現行水準を維持
日銀は、2019年1月の金融政策決定会合で、現状の金融政策の維持を決定。10年物国債金利をゼロ%程度とする枠組みのもとで、市場機能の低下を回避するため、ある程度の金利変動を容認する姿勢を当分の間継続。短期金利については、現行の目標水準(▲0.1%)を維持する見込み。
長期金利はゼロ%近辺で推移
2月の長期金利は、投資家のリスク回避姿勢が和らいだことで低下圧力は後退したものの、米国金利の上昇ペースの鈍化を受けて、マイナス圏で推移。先行きを展望すると、日銀による国債買い入れ減額の思惑などが上昇圧力としてくすぶる一方、米国金利の頭打ちが金利抑制に作用し、0%近辺での推移となる見通し。  
 
 

 

●神武景気
日本の高度経済成長のはじまりの1954年(昭和29年)12月から1957年(昭和32年)6月までに発生した好景気の通称のことである。1955年(昭和30年)に数量景気(すうりょうけいき)とも呼ばれた。
日本初代の天皇とされる神武天皇が即位した年(紀元前660年)以来、例を見ない好景気という意味で名づけられた。
1950年(昭和25年)〜1953年(昭和28年)における朝鮮戦争中、朝鮮半島へと出兵したアメリカ軍への補給物資の支援、破損した戦車や戦闘機の修理などを日本が大々的に請け負ったこと(朝鮮特需)によって、日本経済が大幅に拡大されたために発生した。
この好景気によって日本経済は戦前の最高水準を上回るにまで回復し、1956年(昭和31年)の経済白書には「もはや戦後ではない」とまで記され、戦後復興の完了が宣言された。また、好景気の影響により、耐久消費財ブームが発生、三種の神器(冷蔵庫・洗濯機・白黒テレビ)が出現した。
1956年(昭和31年)末には景気が大幅に後退し、結局日本経済の上部だけを潤しただけということから「天照らす景気」と呼び変えられたが、この名前は一般的なものとはならなかった。
また、当時は「神武以来(じんむこのかた)の○○」という言葉が流行した(「神武以来の美少年(美輪明宏)」、「神武以来の天才(加藤一二三)」など)。
この好景気が終わると約1年間のなべ底不況に陥っているが、その後には42か月間続く岩戸景気と呼ばれる好景気が発生している。
 
 

 

●岩戸景気
日本の経済史上で1958年(昭和33年)7月〜1961年(昭和36年)12月まで42か月間続いた高度経済成長時代の好景気の通称である。
神武景気、いざなぎ景気と並び、戦後高度成長時代の好景気の一つ。景気拡大期間が42か月と神武景気の31か月をしのぎ、神武景気を上回る好景気から、神武天皇よりさらに遡って「天照大神が天の岩戸に隠れて以来の好景気」として名付けられた。
過剰な投機熱による技術革新によって支えられた。設備投資が景気を主導し、順調に発展していた。一社の民間企業の設備投資が、別の会社の設備投資を招き、「投資が投資を呼ぶ」といわれた。特需の役割は神武景気時代より低比重の一方、外国資本の流入が急増(外国資本の純流入額は外貨調達源として12%)し、日本からの資本の流出の増加を大きく上回ったことによって資本取引面の比重が上昇。
前年の1957年(昭和32年)7月より発生していたなべ底不況(デフレーション現象)の景気後退で停滞的傾向の強まった石炭や海運産業等と、景気後退をほとんど受けなかった電気機械・精密機械・自動車など、あるいは受けたが回復の早かったいわゆる成長産業(鉄鋼・化学・石油精製等)との格差が目立ってきた。これは基本的には技術革新による産業構造の変革期である。
1 好景気によって若年サラリーマンや労働者の収入が急激に増加し、国民の間に「中流意識」がひろがっていった。各企業はこの頃から技術・管理・販売部門の拡大に乗りだしたが、いわゆるホワイトカラー層の増加と賃金の大幅な上昇が大企業のサラリーマンを中産層に押しあげていった。中産層は大量消費社会のリード役を果たす。
2 中産層の増大と消費ブームの到来は、生産と消費に介在する流通システムにも大きな変革を促した。大量生産・大量消費の時代には、従来の伝統的な流通チャネルだけでは、もはや適応できなくなった。食料品・繊維製品・台所用品・化粧品・医薬品などの小売市場に、スーパーマーケット、スーパーストアなどの大型店舗が出現、豊富な品ぞろえと大幅な値引き販売で顧客を集め始めた。スーパーを代表とする大型量販店の出現は、「生産者→問屋→小売」という、従来の流通経路に革命的な変化をもたらしたという意味で流通革命と呼ばれた。物情騒然とした状況がつづき、一国の総理大臣が代わっても、日本経済はそんなこととは関わりなしに右肩上がりに突っ走っていった。
昭和34年度
実質経済成長率は前年度比11.1%増
鉱工業生産は25.0%増
民間企業設備投資(実質)は32.6%増加
国民総生産(GNP)前年比17.5%増と戦後最高を記録
昭和35年度
実質経済成長率は12.1%と2年続いて2桁成長。
国民総生産(GNP)前年比14.0%増
後退
投資が活発となり景気は好調となったが、実体経済の成長に伴って、景気はずるずると下降線を引いていった。池田勇人首相内閣により「所得倍増計画」提唱、技術革新と近代化で高度成長が可能になるという理論をもとに主張された。この計画のもとで、経済は予想を大きく上回る成長を遂げたが、1960年度末になると徐々に好景気も末期症状を見せるようになって、それまで安定していた消費者物価が上がり始めた。
岩戸景気の後、短期間(10か月)の不景気(転型期不況、転換型不況、昭和37年不況)を経て、1964年東京オリンピックによる好景気、いわゆる「オリンピック景気」がある。  
 
 

 

●いざなぎ景気
1965年(昭和40年)11月から1970年(昭和45年)7月までの57か月間続いた高度経済成長時代の好景気の通称。
長らく第二次世界大戦後最長の景気拡大期間とされてきた。しかし、2002年1月を底に続いた景気回復(いわゆるいざなみ景気)が2008年2月までの73か月間続いたことにより、期間については最長記録を更新された。
いざなぎ景気という名称は、神武景気や岩戸景気を上回る好況という意味を込めて名付けられた。「いざなぎ」とは日本神話で、天つ神の命をうけ日本列島をつくったとされる男神「伊弉諾尊(いざなぎのみこと)」から。伊弉諾尊(いざなぎのみこと)は天照大神(あまてらすおおみかみ)・素素戔嗚尊(すさのおのみこと)の父神。
景気の推移
1964年東京オリンピック翌年(1965年)の証券不況(構造不況、昭和40年不況)は、それまでの第二次世界大戦後の不況のように、政策金利の引き下げなどの金融緩和による金融政策だけでは改善せず、政府は補正予算で第二次世界大戦後初の建設国債の発行を閣議決定し、翌1966年に発行した。これと前後して、景気は回復しはじめ、いざなぎ景気がはじまった。
1970年の八幡製鐵と富士製鐵の合併による新日本製鐵(新日鉄)の誕生など、貿易や資本の自由化への対応のために、国際競争力の強化をめざして規模拡大のための企業の大型合併が多数実現した。トヨタ・カローラや日産・サニーといった低価格の大衆車の発売によってマイカーブームが起こり、東京オリンピック(1964年)を機にカラー放送が本格化したことからカラーテレビの普及率が急速に高まった。
所得水準の向上によって、エアコン(クーラー)の購入も増加し、車 (car)、エアコン (cooler)、カラーテレビ (color TV) が3C(新・三種の神器)と呼ばれ、消費の大幅な伸びも見られた。いざなぎ景気の間に日本経済は大きく拡大し、世界第二の経済大国となった。
これ以前の景気拡大では、国際収支の悪化が起こり、外貨準備の減少を防止するために金融政策の引締めによる景気抑制が必要となるという「国際収支の天井」が景気拡大の制約条件だった。しかし1960年代半ばになると国際収支(経常収支)は黒字基調となって、景気拡大の制約条件ではなくなってきた。1969年9月には公定歩合が6.25%にまで引き上げられているが、同年の経常収支は2119(百万ドル)の黒字であった。いざなぎ景気は、景気過熱による賃金・物価の上昇加速を抑制しようとした金融引締めと設備投資の行き過ぎが引き起こした投資循環によって後退に向ったと考えられている。
神武、岩戸景気を上回る景気である事から、さらに時代を遡って伊邪那岐尊の名をとって「いざなぎ景気」と命名した。2002年2月から回復局面に向かい、2008年2月まで73か月間続いた景気で現状は一番の景気の名称(通称)ではないが、この「いざなぎ景気」を超える長さであることから、伊邪那岐尊の妻である伊邪那美尊の名を取って「いざなみ景気」と命名するマスコミもいる。  
 
 

 

●中小企業景況調査
(独)中小企業基盤整備機構が実施している「中小企業景況調査」は、約19,000社の中小企業を対象とし、他の機関が実施している中小企業を対象とした景況調査に比べ最もサンプル数が多く、また、全国の商工会、商工会議所の経営指導員および中小企業団体中央会の調査員が調査対象企業を直接訪問面接し、調査票に基づき聴き取り調査を行っているため、回収率も常に95%以上と非常に高い回収率を得ています。
このように調査対象企業数が多いことにより、産業別、業種別、規模別、地域別、都道府県別など細部にわたる分析が可能であることが、本調査が持つ大きな特徴であり強みです。また、調査対象企業のうち約8割を小規模企業が占めており、小規模企業中心の調査であることも大きな特徴です。
DI
例えば前年同期と比べた今期の状況、前期と比べた今期の状況あるいは、今期と比べた来期の見通しにおいて「増加(上昇、好転)」企業割合から「減少(低下、悪化)」企業割合を差し引いた値です。具体的には、今期の売上額を前年同期と比較した結果、?「増加」企業割合が30%、?「不変」企業割合が60%、?「減少」企業割合が10%となったとすると、DI値は?−?すなわち、30−10=20となります。
DIは0を中心として100と▲100の間で変動するが、0を基準としてプラスの値は景況が上向き企業割合が多いことを示し、マイナス値は景況が下向き傾向の企業割合が多いことを示します。従って、DIは強気・弱気などの景況感の相対的な広がりを示すものであり、売上額などの実数値の上昇率とは異なるということに注意が必要です。
調査
平成16年1〜3月期より業況判断DIに基づく基調判断を行っています。
平成年 月期  業況判断DI(前期比季節調整値) / 基調判断
        全産業    製造業    非製造業
30年 10〜12  ▲13.8    ▲10.2    ▲15.0
 一部業種に一服感が見られるが基調としては緩やかに改善している
    7〜 9  ▲15.6    ▲10.5    ▲17.2
 緩やかな改善基調の中にも一服感が見られる
    4〜 6  ▲14.0     ▲8.5    ▲15.9
 一部業種に一服感が見られるが基調としては緩やかに改善している
    1〜 3  ▲13.9    ▲10.1    ▲15.3
 一部業種に一服感が見られるが基調としては緩やかに改善している
29年 10〜12  ▲14.4    ▲7.9    ▲16.6
 一部業種に一服感が見られるが基調としては緩やかに改善している
    7〜 9  ▲14.8    ▲11.2    ▲15.9
 一部業種に一服感が見られるが基調としては緩やかに改善している
    4〜 6  ▲14.3    ▲10.6    ▲15.5
 緩やかに改善している。
    1〜 3  ▲17.0    ▲13.0    ▲18.4
 一部業種に足踏みが見られるものの持ち直しの動きを示している
28年 10〜12  ▲18.7    ▲15.5    ▲19.6
 一部業種に足踏みが見られるが持ち直しの動きを示している
    7〜 9  ▲18.2    ▲15.6    ▲19.0
 一部業種に足踏みが見られるが持ち直しの動きを示している
    4〜 6  ▲19.5    ▲16.9    ▲20.4
 持直し基調の中にも弱い動きが見られる
    1〜 3  ▲18.1    ▲16.8    ▲18.8
 持直し基調の中にも弱い動きが見られる
27年 10〜12  ▲15.1    ▲12.9    ▲15.8
 一部業種に足踏みが見られるが持ち直しの動きを示している
    7〜 9  ▲15.5    ▲12.8    ▲16.4
 一部業種に足踏みが見られるが持ち直しの動きを示している
    4〜 6  ▲18.7    ▲15.6    ▲19.6
 持直しの動きを示しているが一部業種に足踏みが見られる
    1〜 3  ▲17.8    ▲14.1    ▲19.3
 持直しの動きを示しているが一部業種に足踏みが見られる
26年 10〜12  ▲19.4    ▲14.4    ▲21.0
 一部に持直しの動きを示しているが足踏みが見られる
    7〜 9  ▲18.7    ▲12.3    ▲20.6
 持直しの動きが見られるが一部業種には弱い動きを示したものもある
    4〜 6  ▲23.2    ▲18.3    ▲24.7
 このところ悪化しているが今後の見通しでは改善の動きが見られる
    1〜 3  ▲11.1     ▲2.6    ▲14.0
 緩やかに改善している
25年 10〜12  ▲13.8    ▲6.7    ▲16.1
    7〜 9  ▲18.7    ▲15.1    ▲19.6
    4〜 6  ▲17.7    ▲17.0    ▲17.9
    1〜 3  ▲20.9    ▲19.8    ▲21.9
24年 10〜12  ▲25.2    ▲24.4    ▲25.3
    7〜 9  ▲25.6    ▲24.4    ▲25.9
    4〜 6  ▲21.7    ▲20.4    ▲22.0
    1〜 3  ▲24.2    ▲19.0    ▲26.3
23年 10〜12  ▲24.3    ▲20.0    ▲26.0
    7〜 9  ▲26.6    ▲20.5    ▲28.8
    4〜 6  ▲34.8    ▲28.8    ▲36.5
    1〜 3  ▲26.3    ▲16.1    ▲29.8
22年 10〜12  ▲27.9    ▲22.3    ▲29.8
    7〜 9  ▲29.0    ▲21.1    ▲31.3
    4〜 6  ▲30.2    ▲19.3    ▲34.7
    1〜 3  ▲34.2    ▲26.1    ▲36.7
21年 10〜12  ▲36.4    ▲32.1    ▲37.7
    7〜 9  ▲38.4    ▲35.1    ▲39.7
    4〜 6  ▲43.4    ▲44.7    ▲43.1
    1〜 3  ▲50.0    ▲55.0    ▲48.4
20年 10〜12  ▲42.0    ▲42.8    ▲41.5
    7〜 9  ▲35.9    ▲33.2    ▲36.8
    4〜 6  ▲32.5    ▲26.9    ▲34.5
    1〜 3  ▲29.8    ▲25.3    ▲31.6
19年 10〜12  ▲25.9    ▲19.1    ▲28.3
    7〜 9  ▲23.6    ▲17.5    ▲26.2
    4〜 6  ▲23.3    ▲16.4    ▲26.0
    1〜 3  ▲21.6    ▲14.8    ▲24.2
18年 10〜12  ▲20.4    ▲11.4    ▲24.0
    7〜 9  ▲20.3    ▲14.4    ▲22.6
    4〜 6  ▲20.0    ▲10.8    ▲23.6
    1〜 3  ▲19.3    ▲10.1    ▲23.0
17年 10〜12  ▲23.1    ▲13.6    ▲26.9
    7〜 9  ▲24.1    ▲14.8    ▲27.9
    4〜 6  ▲26.0    ▲16.4    ▲30.0
    1〜 3  ▲24.7    ▲17.4    ▲27.7
16年 10〜12  ▲27.1    ▲17.4    ▲31.1
    7〜 9  ▲25.5    ▲13.8    ▲30.4
    4〜 6  ▲24.6    ▲14.0    ▲29.3
    1〜 3  ▲24.2    ▲12.9    ▲29.0  
 
 

 

 
 
 

 

 
 
 
 

 



2018/12
 
 
 

 

●戦後日本経済の歩み 
 
 

 

●高度経済成長期
好景気の名称
復興に向かった日本経済は、その後、世界に例のない高度成長成長期に入っていく。1955年から1973年まで、日本の実質経済成長率は年平均10%を超え、欧米の2〜4倍にもなった。それぞれの時期の好景気には呼び名がつけられているが、それらはマスコミがつけたものだ。
1955年からの好景気は「こんなに景気がいいのは神武天皇(初代天皇)以来のことではないか」などという声が出て、神武景気と名づけられた。次の1958年からの好景気は神武景気より景気がよかったので、「神武天皇より前の名前がつけられないか」ということになって、日本神話の「天の岩戸」のエピソード(神武天皇の祖先の天照大神が天の岩戸に隠れた話)から岩戸景気と名づけられた。1965年からの好景気は、岩戸景気より長く続いたので、「天の岩戸」の前にさかのぼったエピソードから名前をつけようと、国造り神話に登場する「いざなぎのみこと」の名前をとって、いざなぎ景気と呼ぶことになった。「いざなぎ」の奥さんの名前が「いざなみ」で、2人の子どもが天照大神(あまてらすおおみのかみ)である。
神武景気の1956年度の経済白書では、『もはや「戦後」ではない』という言葉が使われた。国民1人あたりの消費高が1953年に戦前の水準を突破したことを受けている。
岩戸景気(1958年〜1961年)の頃は、せんい・機械の輸出好調を背景に、工場建設など企業の設備投資がさかんに行われた。神武景気からの好景気を支えたのが民間の設備投資だった。特に、鉄鋼・化学・電力などの素材産業で活発な設備投資が行われた。こうした当時の状況を『投資が投資を呼ぶ』と、1960年の経済白書で表現した。
これらの産業では、「規模の利益」(=生産設備の規模拡大で単位あたりの生産費用が低下し、企業にとって利益が生じること)が追求された。また、石油化学産業では、外国から新しい技術を取り入れ、技術革新を行い、太平洋沿岸の各地に鉄鋼・石油化学などの臨海工業地帯をつくった。そこにコンビナートが作られ、関連産業を集めた「集積の利益」が追求された。
1960年―――池田勇人内閣が「所得倍増計画」を発表する。
国民の所得も増え、この時期、「白黒テレビ、冷蔵庫、洗濯機」が三種の神器として消費ブームを巻き起こした。こうした個人消費も国内需要(内需)を拡大させ、景気を引っ張った。
前半期は、内需に依存した設備投資主導型の経済成長だったので、《好景気になると原材料の輸入が増える。そうなると国際収支が悪化して外貨(ドル)不足となり、日銀が金融引き締めを行う。金融引き締めを行うと景気が落ち込む》というパターンの繰り返しだった。
白黒テレビから流れるCMが人々の消費欲をかき立てた。冷蔵庫が登場する前は、家で飲むビールやジュースはなま温かかった。冷蔵庫で冷やすとおいしいことがわかり、冷蔵庫の普及とともにビールや清涼飲料水が爆発的に売れることになる。こうして消費ブームが起こり、ますます経済は成長していった。
洗濯機が登場する前は、洗濯板で洗っていた。水と洗剤を入れてスイッチを入れれば洗濯してくれるとは画期的なことで、電気がまの登場で早起きをしなくてもすむようになり、家事にかける時間は飛躍的に短くなって、女性の社会進出が進んだ。ただ、当時の脱水はまだ、手でローラーを回して水を抜くものだった。
東京オリンピックの映像は一部カラーで残っている。開会式の日は快晴で青空だった。しかし、この頃の東京の空は晴れても灰色で、PM2.5よりもすごく、排気ガスや工場のけむりが原因で発生したスモッグに覆われていた。東京タワーの上から東京を見下ろすと、街がかすんで見えなかった。そんな東京の街の中でマラソン競技が行われることに対して、非人道的だという非難も出たほどだ。
国際的地位の向上
1952年――日本は、国際通貨基金(IMF)と国際復興開発銀行(IBRD/世界銀行)に加盟する。
1955年――日本は、関税と貿易に関する一般協定(GATT)に加盟する。
この時期の日本は、国内産業を保護するため、貿易制限や為替制限(輸入や投資に必要な外貨の両替を制限)を行い、外国資本の日本への対内投資についても強く抑制していた。
日本が国際経済への本格的な復帰を果たすのは、高度成長期に入って、岸内閣が開放経済体制への以降を基本方針としてからである。
1960年、岸内閣は「貿易・為替自由化計画大綱」を閣議決定し、日本経済を開放経済体制へ移行させる方針を決めた。
1963年―――日本は、GATT12条国からGATT11条国へ移行する。
※GATT11条国――国際収支を理由とした輸入の数量制限を禁止されている国。数量制限が許されている国のことをGATT12条国という。
1964年―――日本は、IMF14条国からIMF8条国へ移行し、貿易の自由化を行う。
※IMF14条国――国際収支の赤字を理由に、為替の制限が許されている国。
※IMF8条国――国際収支を理由とした為替の制限を禁止するなどの条項。具体的には、外国為替の売買や保有を自由に認められた。
1964年―――経済協力開発機構(OECD)への加盟が認められる。
経済協力開発機構(OECD)は、経済成長の促進、発展途上国への援助などを目的とする先進国の政策調整のための国際機関で、先進国クラブともよばれる。これによって、日本は資本の自由化を義務づけられた。資本の自由化とは、外国からの投資を制限しないということだ。1976年に、農林・水産・皮革・鉱業の4業種を除いて、資本の自由化が完了した。
1965年からのいざなぎ景気の特色は、輸出主導型の経済成長である。設備投資の進んだ重化学工業の分野で国際競争力が強化され、鉄鋼・電気製品の輸出が増大したことにより、国際収支の天井が解消された。経常収支は常に黒字となり、政府も国債を発行して公共投資の拡大をはかる中で、いざなぎ景気は57ヵ月という戦後最長の大型景気となった。
国民生活では、「マイカー、カラーTV、クーラー」の3Cブームが起き、普及していった。
こうして、1967年から段階的に資本の自由化を進め、開放経済体制に入っていった。
1968年―――日本は、GNPが自由主義経済国内でアメリカに次いで第2位となる。
誰もが海外旅行に行けるようになったのは、1964年4月1日からである。ツアー料金はヨーロッパ17日間が約70万円、ハワイ9日間が36万円である。ちなみに大卒初任給が2万円の時代である。
それまでは海外渡航は厳しく制限され、政府関係者や企業の業務、留学などに限られていた。戦後の日本は外貨が不足しがちで、外貨流出を防ぐ必要があったからだ。
自由化後もしばらく、観光渡航は年1回、外貨持ち出しは1人500ドルまでという制限があった。1970年代に入ると、ジャンボ機の就航による割引運賃が導入され、旅行費用が大幅に下がって海外旅行の一般化が進んだ。1990年に出国者数は1000万人を突破し、2012年は1849万人である。
高度経済成長の背景
1)技術革新と設備投資
企業は賃金コストが小さく利潤が大きいので、これを設備の改善と拡大に向けた。各企業が競って欧米諸国から技術を導入し、技術革新や設備投資を行った。この結果、生産性が大幅に向上し、大量生産が行われるようになった。
2)日本人の高い貯蓄率
高い貯蓄率のもとに集められた預金が、銀行を通して企業の資金にまわされ、設備投資資金にあてられた。豊富な資金が間接金融により企業へ供給されたのだ。
3)豊富な労働力
農村から都市へと流れた教育水準の高い勤勉で優秀な労働力を、比較的安い賃金で雇うことができた。また、終身雇用・年功型賃金などの労使慣行に支えられ、特に民間企業で協調的な労使関係が形成されていたことも大きい。
4)国際経済情勢
高度経済成長を原料やエネルギー源の面から支えた原油をはじめ多くの鉱山資源を安く容易に入手できた。また、1ドル=360円という固定相場が維持され、輸出を増加させた。世界的にも好景気で、日本の商品が海外市場に多く輸出された。
5)国内市場の拡大
国民の所得水準が上昇し、家電製品や自動車など耐久消費財を中心に国内市場が拡大した。
6)政府の産業保護・助成政策
政府が道路・鉄道・港湾など生産関連社会資本を整備したり、税制上の企業優遇措置を行うなどした。
高度経済成長がもたらしたもの
1)大都市への人口集中により、過疎・過密の問題、さらには公害問題が発生した。
大都市では住宅事情が悪化し、交通渋滞・騒音・ゴミ問題など生活環境が悪化した。日本のGNPが資本主義国で第2位となったのは1968年だが、四大公害裁判の開始は1967年、公害対策基本法の制定も1967年、環境庁の設置は1971年である。
2)産業構造の高度化
第一次産業の比重が低下し、第2次産業、さらに第3次産業に比重が移った。また、第2次産業の中でも軽工業から重化学工業に比重が移り、第3次産業が拡大し、経済のソフト化・サービス化が進んだ。日本の産業は「重厚長大(ジュウコウチョウダイ)」(製鉄や造船、大型機械、化学工業)から「軽薄短小」(情報、サービス業、電子工業/車や電気製品の組み立てにロボットやオートメーション機構を使ってコストを下げることができる産業も含まれる)へと移ってきた。軽薄短小型産業への移行は、ME(マイクロエレクトロニクス)革命を中心に進められた。
※経済のソフト化・サービス化―――機械や装置をハードと呼ぶのに対して、ハードを利用するための知識がソフトである。モノを作るよりも、知識・サービス(ソフトウェア)の比重が高まり、情報・通信の果たす役割が大きくなっていくこと。
※鉄鋼や石油化学などの素材型産業は、大量の資源やエネルギーを消費し、生産・輸送・貯蔵などのために大きな設備や港湾を必要し、あらゆる面で重厚なので、重厚長大産業といわれた。
※ME(マイクロエレクトロニクス)革命―――集積回路(IC)や大規模集積回路(LSI)を応用した電子技術をMEという。産業用ロボットで生産工程を自動化するFA(ファクトリー・オートメーション)化や、ファクシミリやパソコンによるOA(オフィス・オートメーション)化が推進された。こうしたME技術の進歩とその応用の広がりをME革命という。
産業構造の高度化は、17世紀、イギリスのペティによって示唆され、20世紀にコーリン・クラークが統計的に実証したので、ペティ=クラークの法則と呼ばれている。
ウィリアム・ペティは、農業・工業・商業の順に収益が高くなることを指摘し、コーリン・クラークが一国の経済が発展するにつれて、第一次産業が衰退し、第二次産業、ついで第三次産業の比重が増大することが観測できると実証的に示した。
3)生活スタイルの変化
高度経済成長は、サラリーマンとして雇用される人を増加させ、女性の社会進出をもたらした。子どもの世界では、受験戦争が激しくなった。
「3種の神器」「3Cブーム」など家庭電器製品や乗用車など耐久消費財が普及し、人々の暮らしを大きく変えた。大量消費時代が来ると、人々の価値観も変わり、モノやお金へのこだわりが強まった。
高度経済成長の終焉――安定成長へ
1973年秋――石油危機が発生し、日本経済も混乱する。
石油危機は、1973年10月に起きた第四次中東戦争が原因だ。アラブ石油輸出国機構(OAPEC)が対立するイスラエルを支援する国(欧米や日本)に対して、原油の輸出を減らしたり、原油価格を上げる石油戦略を実施した。これによって、原油価格が世界的に急騰した。
原油の輸入価格が約4倍にはね上がり、日本の国際収支は赤字となった。「列島改造ブーム」でインフレが進行していたところに、原油価格の高騰が油を注ぐ形となり、狂乱物価と呼ばれるほど上がっていった。この時期、卸売物価指数が消費者物価指数よりも高い上昇率になっていた。物価は上昇するが、不景気であり、スタグフレーションに陥った。
Qそこでとった政府の政策は?
狂乱物価を抑えるため(インフレ克服のため)、総需要抑制政策を行った。
(内容)
1財政支出の抑制(公共事業も削減)
2公定歩合の引き上げ(1973年には最高最高水準の9%まで)
(結果)
1狂乱物価(インフレ)はおさまった
21974年の経済成長率は−0.2%と戦後初めてのマイナスを記録したが、その後は3〜5%の安定成長(1974年〜1980年代前半)に移行することになる。
1974年の戦後初のマイナス成長で、政府は2兆円規模の所得税減税を行った。
石油危機の下で、日本経済は不景気であるにもかかわらずインフレが進行するという事態(=スタグフレーション)が起こった。不景気とインフレは今までなかった組み合わせだ。
<政府の不況対策>
・財源不足を補うため、1975年度の補正予算で特例国債(赤字国債)の大幅発行に踏み切る。
他の先進国でも石油ショックの影響は大きく、フランスのジスカールデスタン大統領の提案で、1975年、フランスのランブイエで第一回のサミットが開かれた。
1979年―――第2次石油危機が起こる。
イラン革命(1978〜1979年)による原油輸出の中断が原因で、原油価格は、1978年末〜1980年にかけて2.4倍に上昇した。欧米諸国では、失業率が10%を超える経済危機に直面した。しかし、省資源化の進んでいた日本は比較的、短期間で乗り切ることができた。
Q石油危機によって企業にはどんな変化が起きたか?
1970年代の石油危機という厳しい環境下で、高度経済成長から低成長に移行し、省エネ・省資源が叫ばれると、企業は減量経営を行う一方で、積極的にME(マイクロエレクトロニクス)技術の導入を進めるなど、経営の合理化に努めた。
※減量経営――不況や低成長など経営環境の悪化に対応して、企業体質の軽量化を図ること。経費削減の他、正規従業員の削減、非正規従業員の動員、赤字部門の切り捨てなどが行われる。
※ME(マイクロエレクトロニクス)技術導入で、FA化(工場の自動化)・OA化(事務の機械化)が進む。
重厚長大産業から軽薄短小産業への変化したことで、企業は資本集約型(素材型)から知識集約型産業への脱皮を図ろうとした。
※知識集約型産業―――研究開発従事者比率が高い高付加価値型産業の総称。コンピュータ、IC産業や情報処理サービスなどの知識産業が典型。
日本経済は、この石油危機によって突然ゆきづまったわけではない。高度経済成長が限界に達した背景には、次の点も見逃せない。
1)物価の上昇
高度経済成長で賃金が上昇し、物価も上昇した。
2)国際通貨制度の動揺
1971年のニクソンショックで、日本の高度経済成長を支えたブレトン=ウッズ体制が動揺した。円の切り上げは輸出関連企業を中心に円高不況感を生んだ。
3)公害問題などの環境問題が発生
本当の豊かさとは何かを問う声が広がり始めた。
対外投資の歴史
1951年に、日本の直接投資が再開された。1960年代、韓国・インドネシアなどは独裁体制の下で日本からの援助や外資を積極的に導入して経済開発を進めた。1970年代になると、イランなど中東の石油資源開発型の直接投資が増加した。
1971年のニクソンショックで、日本の輸出環境が悪化したため、繊維など労働集約型の産業を中心に、労働賃金の安い東南アジアへの工場進出が急速に拡大した(=第一次海外進出ブーム)。
1970年代後半には、高まる貿易摩擦を緩和するため、輸出拡大の方針を転換して、先進諸国、特にアメリカへの直接投資が活発化し、現地生産を行うようになった。1985年のプラザ合意以降、急激な円高を背景に、日本企業のグローバリゼーションとあいまって、北米やEC諸国など先進国への直接投資が拡大した。
1985年のプラザ合意以降、日本企業のアメリカ企業買収や不動産への投資が急増したため、アメリカ議会や企業、労働組合などが反発し、日米投資摩擦が起きた。
1980年前半は、アメリカの高金利政策(レーガノミクス)の恩恵にあずかろうと、日本の機関投資家(銀行・生命保険会社など)を中心に、ジャパンマネーによるアメリカ国債などへの証券投資(間接投資)が増大した。
海外に持っている債権(対外資産)が債務(対外負債)を上回っている国を債権国、逆に債務が上回っている国を債務国という。日本の対外純資産は、1985年にイギリスを抜いて世界第一位となった。日本は現在も世界最大の債権国である。一方、アメリカは1980年代後半に債務国へ転落した。
 
 

 

●バブル経済と平成不況
プラザ合意
変動相場制へ移行して、為替レートが短期間のうちに、不安定な乱高下を繰り返すようになった。そのため、先進国が協調して為替レートを管理していく重要性が認識され始めた。
1980年代はじめ、日本は対米輸出の急増により、世界最大の貿易黒字国となった。経営の合理化や産業構造の転換を終えた日本は国際競争力を強め、欧米諸国に集中豪雨的と呼ばれる激しい輸出をして、貿易摩擦が深刻化していった。
1981年にアメリカの大統領に就任したレーガン大統領は、アメリカの経済力と軍事力の強化を図ろうとした。それまでのケインズ政策とちがって「小さな政府」を主張したレーガンは、政府支出の抑制、大幅な減税、規制緩和などのレーガノミックスと呼ばれる政策を行った。
しかし、一方で、軍事支出の激増によって財政赤字は拡大し、アメリカは高金利政策をとったのでドル高になり、アメリカの輸出競争力を弱めた。1980年代のアメリカは財政赤字と経常収支の赤字が同時に進行する「双子の赤字」に悩まされ、アメリカ国内では保護主義が台頭し始めた。
保護主義傾向に危機を感じた先進諸国は、会議を開いた。
1985年―――ニューヨークのプラザホテル(セントラルパーク付近)で、G5が開かれる。
※G5―――先進5ヵ国蔵相・中央銀行総裁会議。5ヵ国とは、日・米・英・仏・西独である。
(内容)ドル高を是正するため、日本・アメリカ・ドイツの通貨当局がドル売りの協調介入(円高ドル安にしようとした)で合意する。
プラザ合意に出席したのは竹下登蔵相(DAIGOの祖父)。竹下は記者たちに渡米がばれないように、成田にゴルフをしに行くといって出かけた。ゴルフプレー中に記者があきらめて帰ったので、急いで成田空港へ行った。そこでは秘書が着替えを持って待っていた。マスコミをだますほど、プラザ合意は秘密裏に行われた。
Qプラザ合意後の影響は?
急激な円高ドル安が進行し、1ドル=240円台だった為替レートは、1年後には1ドル=120円台まで円高となった。
円高を利用した海外直接投資が増大し、資本収支は大幅な赤字となった。この時期、日本企業によるアメリカの企業や不動産の買収が盛んに行われ、日本の直接投資は1999年までは巨額であった。
急激な円高は日本企業を直撃し、円高によって日本製品の国際競争力は低下したので、輸出主導型で成長してきた日本経済は円高不況に陥った(1986年)。
企業の中には円高の影響を回避するために、生産拠点を労働力の安い東アジアに移したり、貿易摩擦を回避するために現地生産を進めた。外国で生産した工業製品の逆輸入やOEM生産(相手先ブランドによる供給)が増加した。これにより、国内では製造業が衰弱化する産業の空洞化が起きた。
エネルギー・原材料に代わり、製品輸入が増大した。特に、アジアNIESからの安価な製品輸入の増大により、日本の貿易構造は大きな変動期を迎えた。
日本政府は、中曽根首相の私的諮問機関の報告書・前川レポート(1986年)で提唱された内需拡大の方針に沿って、公共投資の拡大、輸入の拡大、貿易黒字の縮小をめざす内需主導型経済への転換を進めた。
1987年―――フランスでG7が開かれ、ルーブル合意がなされる。
※G7―――G5の国に、イタリアとカナダが加わる。
(内容)G5諸国は貿易黒字国の協調利下げと、アメリカの利上げを決め、ドル安を止めようとする。
日銀は金融緩和政策に踏みきり、公定歩合を下げ、1987年には過去最低の2.5%とした。こうして為替相場が安定し、この低金利政策(日銀は公定歩合を7回にわたって引き下げる)によって生じた余剰資金が株式や土地投機へと向かい(=財テク)、内需主導型の空前のバブル(1986年〜1991年)が発生した。1987年から景気は再び上向きに転じ、平成景気がスタートした。
平成景気(バブル経済)
日本では、1986年11月から1990年中頃まで平成景気と呼ばれる好景気が続いたが、これが、バブル経済の時期であった。バブルとは、経済が実力以上に泡(バブル)のようにふくらんだ状態をいう。日本の土地や株は本来の価値とかけはなれた価格まで上昇し(資産インフレ)、個人や企業が持つ資産の価値が高まった。人々は高級ブランド品、大型乗用車、ゴルフ会員権、絵画、リゾートマンションなどを買いあさった。しかし、卸売物価や消費者物価は安定していた。その理由は、円高による輸入品の値下がりが影響しているからだ。
※1980年代後半の消費者物価指数は年間5%以下の上昇で推移していた。
バブルまでの流れ/アメリカの貿易赤字が増加→1985年プラザ合意→円高不況→低金利政策(金融緩和政策)公定歩合大幅引き下げ→資金が入りやすく土地や株に投資→バブル
しかし、バブルはいつまでも膨れつづけるわけではない。いつかははじける。
不動産融資総量規制と、湾岸戦争にともなう輸入原油価格の上昇からインフレになることを心配した日本銀行は、公定歩合を引き上げた。
その結果、銀行からお金を借りて土地や株を買う人が少なくなり、株安と地価の下落を生むことになる。
1990年2月―――株価は暴落する。
地価の動向をみると、右グラフのように、1991年3月を境に下がっている。
一度、株が下がると、多くの人が「このまま株が下がり続けたら、もっと大きな損をしてしまう」と考えるようになり、心配した人は、早めに株を売った。
その結果、さらに株価は下がった。つまり、バブル崩壊が起きたのだ。
1989年12月から1992年8月までの株価の低下率は63.3%に達した。
1991年3月から1993年10月まで、バブル崩壊による不況は続いたが、実質経済成長率は、1991年度が2.5%、1992年度が0.4%、1993年度が0.4%で、−にはならなかった。
バブル崩壊までの流れ/バブル(バブル景気・平成景気が1986年末〜1991年初めまで続いた)→不動産融資総量規制、公定歩合の引き上げ、地価税の導入→資金が入りにくくなり、土地や株を買う人が減る(地価・株価の下落)→バブル崩壊
平成不況(バブルの後遺症)
バブル崩壊後、企業はリストラと海外生産・海外進出によって不況乗り切りを図り、実質経済成長率も1995年度は2.8%、1996年度は3.2%と回復傾向にあったが、それは、まだ完全な回復ではなかった。
1993年から政府は「景気てこ入れ政策」として公共投資を行ったが、景気回復効果はなかった。長期の不況は税収を減少させ、公共事業の増大は赤字財政を引き起こし、大量の赤字国債を発行することになった。日本経済の低迷は先進国の中でも際だち、1990年代は「失われた10年」といわれるようになった。
バブルの崩壊は、金融機関からお金を借りて株や土地に投資した企業や個人に多額の損失をもたらした。銀行から資金を借りてまで投資した企業や個人は、借金の返済を迫られるが、担保としていた自分の所有する土地や株を売っても、バブル崩壊で価格が下がっているので(10億の土地が5億になったら、売ってもお金が作れない・・・)、返済するための資金にならない。銀行に借金が返せなくなる。銀行からみれば、回収できなくなったお金――これが不良債権である。積極的に融資を行っていた金融機関の多くは、貸し出し先が倒産したり、経営悪化に陥り、お金を返してもらえなくなりして、巨額の不良債権を抱え込んだ。
バブル崩壊は、地価や株価の下落を引き起こしただけではない。多額の借金だけが残った不安感と、1997年の消費税引き上げも重なり、人々はあまりモノを買わなくなり、個人消費は落ち込んだ。企業の経営は悪化し、不良債権を抱えた企業の中には、銀行などに借金が返せなくなって倒産する会社や、失業者が増えていった。そのため、多くの会社はリストラをやらざるを得なくなった。リストラとは、リストラクチャリング(re-structuring/企業の再構築)のことで、経営の建て直しという意味である。新規卒業者の就職難やリストラによる中高年層の失業が増加し、不景気は長期化した。
こうして、日本経済は、1997年から平成不況と呼ばれる長い不景気の時代に入っていく。
1997年度の経済成長率は−0.7%、1998年度は−1.9%と2年連続マイナス成長を記録した。
※戦後のマイナス成長は、石油ショック後の1974年にもある。
物価は、1990年代後半にデフレーションが発生し、長期にわたって下落した。
完全失業率は、1990年代から景気の拡張期でも上昇傾向にあり、1995年に3%を超えた。2002年には過去最悪の5.4%を記録している。
有効求人倍率は、2005年12月に約13年ぶりに1.0倍を回復した。しかし、地域間格差は深刻で、愛知県が1.94、東京都が1.42と高いのに対して、沖縄県は0.37、北海道は0.66となっている。(有効求人倍率は、2007年1月の数字)
平成不況の原因
1)消費税の5%への引き上げ(1997年4月)・・・個人消費の落ち込み
2)バブル経済の崩壊・・・不良債権と金融不安。バブル後遺症で金融機関が破たんしていく。不良債権の処理に追われる金融機関の貸し渋りは、企業の資金繰りを圧迫し、景気をさらに悪化させた。
不良債権を処理するってどういうこと?
不良債権を減らすことで、2つの方法がある。
1つは、不良債権は返ってこないものとあきらめて、借金の一部を帳消しにする「債権放棄」である。
貸した先の会社がまだがんばれそうだと銀行が判断した時に選ぶ。ただし、その分は銀行が利益や自己資金で穴埋めするので、必ず損をする。2つめは、貸した先の会社がつぶれてもかまわないと考えたら、担保を売り払って、全額とはいかなくても、貸した金を回収する。それでも足りない分は、やはり銀行が損をしたと認めて、自分のお金で穴埋めをする。どちらの方法でも、銀行は赤字になる。しかし、処理をさぼっていると不良債権はもっと増えるかもしれない。
バブル崩壊以後、銀行の中小企業への貸し出しは減る一方だった。なぜ、銀行は貸し渋りをするのか?国際業務をする都銀の場合、自己資本率が8%を下回ったら、自己資本率の低さによって、リストラ、経営責任の追及、自主廃業、破たん、などを余儀なくされる。この国際規制をBIS規制といい、これをクリアするために、分母にあたる貸出量を減らそうとする。
貸し渋りのやり口は、約束した融資額を一方的に削ったり、これまで必要なかった担保を新たに積ませたり、期限前なのに返済するように迫ったりする。
銀行の貸し渋りは、会社に資金が回りにくくなる。特に、中小企業は資金不足で、従業員の給料が払えなかったり、材料を買う費用がないので生産活動ができなくなったりした。こうして、経営が苦しくなり、倒産する会社が増えた。
失業して収入が減り生活が苦しくなったり、自分たちも失業するのではないかという不安から財布のヒモをきつくする。ますますモノが売れなくなり、景気はさらに悪化するのだ。貸し渋りはさらなる景気の悪化を招く。
金融システムの安定化
1997年11月24日―――山一証券が、自主廃業を決める。
山一証券をはじめ、金融機関の破たんが続いたので、政府は金融機関の安定化を考えた。
1998年2月―――金融システム安定化のため、公的資金(≒税金)投入の制度ができる。
政府は、自己資本比率の低下した銀行に公的資金を注入するとともに、不良債権処理・金融システムの安定化のための条件整備に乗り出した。1998年に金融安定化2法と金融再生法を制定する一方で、金融監督庁が設置され、さらに不良債権処理のために整理回収機構(RCC/日本版RTC)が設置された。
1998年6月―――金融監督庁が発足する。
▽大蔵省から銀行や保険会社などの検査・監督機能を分離・独立させることが目的である。
▽総理府の外局として設置された。
▽2000年7月には金融庁に改組される。さらに、2001年1月の省庁再編で、金融再生委員会の機能もとりこんで、内閣府の外局となった。
金融再生委員会は、金融機関の破綻処理を主要な目的として、総理府内に設置された。
預金者を金融破綻から保護するために、1971年に預金保険機構が発足した。金融機関があらかじめ預金保険機構に保険料を積み立てておき、経営が破綻した場合、預金保険機構が倒産した金融機関の預金者に一定額の払い戻しを行っていた。だから、金融機関の経営が破綻しても、預金保険制度により預金は全額が払い戻され、預金者は保護されていた。
しかし、2003年4月から(定期預金は2002年4月から)1人元本1000万円とその利子しか保護されないことになった。
1998年1月、大蔵省発表によると、不良債権の総額は76兆円にのぼるという。同年3月には、政府は銀行株を税金で買い(公的資金投入)、経営を支えた。
なぜ、金融機関だけが特別扱いされ、公的資金が投入されるのか?
経済のお金の流れは、人間の体の血液にたとえられる。銀行はお金の流れを取り持っている。血液が滞ると体調が狂うように、今の日本経済は、銀行の経営悪化が響いて、お金がスムーズに流れず、不況が深刻化している。銀行の経営破綻は、何千、何万という取引先に影響を与えるだけでなく、日本の金融システムの信頼性を損い、経済をいっそう悪化させる恐れがあるからである。
1998年9月―――金融再生関連法が成立する。
(内容)
破たん前の銀行⇒情報開示を義務化し、公的資金を注入し、健全化を図る。
破たん後の銀行⇒破たんした後、経営陣は退陣し、次の3つから選択する。そして、受け皿となる企業をさがし、売却・合併が行われる。これに失敗した場合、清算され消滅の道をたどる。
1)特別公的管理(一時国有化)する。
2)金融監督庁が金融整理管財人を派遣し、ブリッジバンクへ。
3)日本版RTC(整理回収機構)が不良債権を買い取る。
(注)整理回収機構は、政府から独立した株式会社の形をとっている。
1998年10月23日―――長銀の「破たん」を認定する。
政府は、金融再生関連法に基づき、長銀を特別公的管理(一時国有化)とした。特別公的管理の間に、従業員削減や給与引き下げなどの徹底的なリストラが行われる。
1998年12月―――日債銀が特別公的管理に移行する。
平成不況と不景気からの脱出
バブル崩壊後の不況は、平成不況と呼ばれ、企業倒産件数、完全失業率の高さからいっても大変深刻なものとなった。回収困難な巨額の不良債権が発生し、多くの金融機関が破綻して金融不安が広がった。バブル崩壊後の不況は、通常の景気循環型不況だけでなく、不良債権を抱えた金融機関の業績悪化が重なった複合不況だといわれる。1990年に6.0%あった公定歩合は、2001年には史上最低の0.1%になった。
民間企業は、リストラクチャリング(事業の再構築)を進め、新卒者の採用者数の削減や人員整理を行ったため、失業問題が深刻化した。
また、需要の冷え込み、円高による安い輸入品流入、ディスカウントショップの増加などで、企業主導の価格システムが崩れ、“価格破壊”という値下げ競争が激化した業界もあった。
不景気から脱出するために何をしたか?
1999年に行った政府の景気回復策は次の内容である。
1)所得税・住民税の減税
2)公共事業の拡大
3)地域振興券の配布(目的)需要を拡大すること
4)金融システムの安定化銀行への公的資金投入、破綻した銀行は一次国有化する。
不景気は悪いことばかりではない。不景気になると、できるだけムダなお金を使わないように、仕事の効率を考えたり、節約をしようとする。
例えば、車を作るにしても、以前よりお金をかけないで同じ性能の車を作ったり、より性能がいい車ができたりする。このように不景気の時は、会社は生き延びるために、頭を使ってムダをなくし、仕事の効率をよくしていく。そして、景気が回復した時、不景気の時の体験が生きて、今まで以上に成長する会社になったりするのだ。不景気になって初めて見えてくるものがあるのだ。不景気は、私たちに頭を使い努力するきっかけを与えてくれることもある。ピンチこそチャンスなのである。
景気対策で行われるのが、公共事業である。しかし、高度経済成長の時ほど効果が上がらなくなった。建設会社の数や従業員が増えたため、新たに公共事業に国がお金をつぎ込んでも、すべての会社が潤うわけではない。また、かつては新しく道路を作ることでガソリンスタンドができ、商店が進出し、交通が便利になることで経済発展に効果があったが、今や山の中に新しい道路を建設しているような状態で、経済の波及効果は望めない。
それよりは、インターネットに代表される情報産業が発展するように光ファイバーのネットワーク作りを進める方が効果がある。また、人が利用しない高速道路を作って赤字を増やすのではなく、高齢化社会を迎えて福祉施設を建設した方が国民にとってはるかにプラスになる。高齢化社会に必要な職を増やすことで、失業者を救済することになる。
浪費による景気回復でいいのか?
景気回復のため、政府は消費の拡大を呼びかけている。消費の拡大とは何か?自動車を買い替え、住宅を建て、家庭電化製品を買い、・・・つまりは、ムダ使いをしてほしいということだ。確かに、国民がムダ使いをすれば景気はよくなる。道路に穴をあけ、それを直す・・・こんな工事を国が発注すれば景気はよくなるかもしれない。しかし、国民にとって何のプラスにもならない。景気が回復するためなら浪費はいいことなのか?本当に国民にとって幸せな経済状態とは何か、景気回復策について論ずる時、その哲学が問われている。