アメリカとトルコ 関係史

アメリカとトルコ 

トランプ大統領
エルドアン大統領
 


 
 

 

 
 
 2017

 

●トルコとアメリカとの亀裂は、トランプ政権で転換するのか 2017/4/15
トルコのビナリ・ユルドゥルム首相は、トルコとアメリカの間に生じた亀裂がドナルド・トランプ政権下では修復できると、慎重ながらも楽観的にみている。
バラク・オバマ前政権とはシリア政策に加え、2016年7月15日に発生したクーデター未遂事件の首謀者とトルコが非難しているフェトフッラー・ギュレン師の引き渡しをめぐり対立している。ギュレン師は、穏健派のイスラム主義勢力「ギュレン運動」の指導者で、現在、アメリカの亡命している。ユルドゥルム首相は3月9日、中東で最も重要なイスラム同盟国トルコとアメリカの間の関係が損なわれていると語った。
トランプ氏はアメリカ大統領選の期間中、イスラム教徒を攻撃するコメントを繰り返していた。トルコの首脳も他のイスラム教国と同様にトランプ氏を糾弾していたが、11月8日のトランプ氏勝利後は、公の批判を控えるようになった。トランプ氏は大統領就任後、ギュレン師の引き渡しやシリア問題について、明確な立場をまだ表明していない。しかし、もしトランプ氏がトルコの要求に応えなかった場合、NATO内の重要な同盟国であり、過激派組織IS(「イスラム国」)掃討の米軍拠点となるトルコは、これ以上黙っていないかもしれない。
トルコの政府高官は、トランプ氏が前任者の政策を転換し、自分たちの好ましい方向になることを期待している。
「我々は、アメリカの政権に明るい希望を持っている」と、ユルドゥルム首相は通訳を介して語った。「これまでの数年以上に、前向きな発言をしてくれると信じている」
オバマ政権の最後の数年間は、アメリカとトルコの間でシリアにいるISに対する方針が一致せず、協力関係に亀裂が入っていた。アメリカは、クルド人勢力「人民防衛隊」(YPG)というによる政治運動の軍事勢力をシリアにおける貴重な現地の軍事パートナーとみなし、この集団がISと戦うのを軍事面で支援した。トルコでは、YPGをクルディスタン労働党(PKK)というトルコ・アメリカ両国がテロ組織に指定している集団の一部とみなしており、アメリカの対応は容認できない立場だ。
しかしアメリカ国防総省は、シリアで最も重要なISの拠点ラッカを奪還する軍事行動に際しては、こういった武装勢力を取り込む方向にあるようだ。
「YPGと組むという間違った判断を、トランプ政権は繰り返すべきではない」と、ユルドゥルム首相は語った。「アメリカは、テロ組織と戦うのに別のテロ組織の力を借りるべきではない。アメリカが引かないなら、両国の関係は相当なダメージを受けることになる」
すでに二国間の関係が悪化していたところへ、2016年7月15日、トルコでクーデター未遂事件が起きた。トルコはこの事件を、自ら亡命し、アメリカ・ペンシルベニア州に住むフェトフッラー・ギュレン師に忠誠を誓う集団が引き起こしたと非難している。アメリカは、ギュレン師がクーデター首謀者の役割を果たした証拠がないとして、師をトルコに引き渡すという要求を聞き入れなかった。
ギュレン師の引き渡し要求に対するオバマ政権の反応は「私たちをバカにしているようだった」と、ユルドゥルム首相は語った。
トルコはこのような仕打ちを受けていたことから、同盟国から見放されたという感情を持つようになった。トルコ政府はアメリカ政府に対し、ISのほかPKK、ギュレン師の信奉者が政権内に侵食する三重苦に苦しむトルコを軽視していると非難している。アメリカはアメリカで、ISとの戦いにクルド人部隊の存在感が増していることを否定しようとするトルコにフラストレーションを感じるようになっている。クーデター未遂に関連して何万人もの人を拘束し、10万人を公職から追放したトルコ政府の弾圧を、非民主的な粛清とみている。
しかしユルドゥルム首相がトランプ政権に対して中立的であっても、シリアのクルド人勢力やギュレン師の引き渡し要求に対する態度を、アメリカの現政権が劇的に変化させるかは不透明だ。
大統領選前後での人事異動が最小限にとどまるアメリカ国防省は、シリアのクルド人勢力との協力に関してトルコ政府の要求に左右されることはないとみられる。
「アラブ系シリア人連合と連携しているYPGは、ISから多くの都市を解放したシリア民主軍(SDF)の一部だ。SDFが有能な戦力であることが証明されたから、ISとの戦いで引き続き戦略的に支援していく」と、対IS軍事作戦の報道官のジョン・ドリアン空軍大佐は強調した。トルコはYPGをPKKの一派だとみているのに対し、アメリカの立場は異なる。「アメリカはYPGを外国のテロ組織と認定していない」と、ドリアン大佐は語った。
ギュレン師をトルコに引き渡す意思について、新政権は具体的なメッセージを一切伝えていない。トルコ政府が楽観的な見方をしている根拠は、トランプ政権の前国家安全保障担当補佐官で、在米ロシア大使と接触した疑惑で辞任を余儀なくされたマイケル・フリン中将が新聞に寄稿した寄稿記事のようだ。
大統領選投票日にあたる2016年11月8日、フリン氏は寄稿記事で、ギュレン師は「怪しげなイスラム学者」であり、アメリカはギュレン師の安全を確保する必要はないと主張した。その2日後、トルコ政府寄りの「デイリー・サバー」紙が、トランプがトルコとの関係改善に向けて、「フェトフッラー派テロ組織(FETO。トルコ政府のギュレン師支持派の呼び名)に圧力をかけ、ギュレンを引き渡す」との見出しで報じた。
しかし、そのフリン氏はもうホワイトハウスにいない。そして、トルコ政府に対するフリン氏のシンパシーも、彼の政治信条に基づくものでもなさそうだ。寄稿する4カ月前、7月のクーデター発生時にフリン師は、トルコがそれまでに「イスラム寄りに移行」していたと非難する一方で、エルドアン大統領追放を支持していた。後に、フリン氏の調査会社がトルコ政府に関連するオランダ企業の傘下となり、53万ドル(約6100万円)の報酬でギュレン師引き渡しに関する調査活動を請け負った。そこでフリン氏はクーデター未遂への姿勢を変化させたという。フリン氏は外国機関の代理人として司法省に登録した。
トルコのベキル・ボズダー法相は3月9日、ギュレン師の対応でトランプ政権からまだ何も確証を受けていないと語った。ジェフ・セッションズ氏の司法長官就任後、ボズダー氏は祝電とともに、ギュレン師の問題がトルコにとって重要だと伝える書簡を送った、と記者団に語った。21日に行われたセッションズ氏との電話会談でも改めて要求を伝えたという。
アメリカ司法省は、ギュレン師引き渡しに対するトランプ政権の立場が前政権と異なっているかについて明言を避けた。「私たちは、トルコ政府が新たに提出する文書を精査し、事実関係と、関連する国内法規に基づいて引き渡しについての決定を下す」と、司法省のニコール・ナバス報道官は回答した。
クルド人部隊との連携と、ギュレン師の引き渡し――この重要な2つの問題にトランプ政権がどう対処するかが、エルドアン政権がトランプ氏の反イスラム的な発言や政策にどこまで寛容でいられるかに影響する。
いまのところ、イスラム教圏の6か国を標的としたトランプ政権の渡航制限令はアメリカ国内の問題、というのがトルコ政府の公式な立場だ。しかしトルコは以前、同盟国のイスラム嫌悪には容赦なく批判を加えている。トルコの政治家からの発言をみると、トランプ大統領の政策にフラストレーションが溜まっているのがわかる。
「アメリカが引き続きオープンなのかどうか、内向きになるのかどうか、アメリカに可能性や多様性がこれからもあるのか、その多様性が豊かさをもらたすのか脅威となるのか、いずれもアメリカの現政権が決める問題だ」と、トルコのメフメト・シムシェッキ副首相は語った。「しかし、個人的な見解で言えば、アメリカは自らの行いで災いを招いている」 
 
 
 2017

 

●悪化するトルコとアメリカの関係 2017/11/6
トルコ エルドアン大統領「アメリカは“民主主義の揺りかご”と言われるが、間違いだ。アメリカは民主国家ではない。」
痛烈なアメリカ批判を繰り返す、トルコのエルドアン大統領。ともにNATO=北大西洋条約機構に加盟する同盟国でありながら、今、かつてない不協和音が広がっています。先月(10月)には、両国がビザの発給業務を相互に停止する事態にまで発展。さらにトルコは、アメリカと対立するロシアやイランと関係を深めています。アメリカとトルコの関係悪化は、中東情勢にどのような影響を与えるのでしょうか。
米・トルコ関係悪化 中東情勢は
花澤「ヨーロッパとアジアの交差点に位置する、地域大国トルコ。アメリカにとっては、中東、そしてイスラム圏の大国として欠かすことができない重要な同盟国です。そのアメリカとトルコの関係悪化は、ただでさえ混乱が続く中東情勢をいっそう複雑なものにしかねないと懸念が高まっています。」
松岡「トルコはアメリカと長く同盟関係にあり、冷戦時代にはアメリカの主導する西側陣営の一員としてNATOに加盟し、ソビエトに対する、いわば“防波堤”としての役割を担ってきました。冷戦後も、トルコはアメリカにとって、中東におけるテロとの戦いの重要拠点で、シリアでの過激派組織IS=イスラミックステートに対する軍事作戦でも、両国は協力関係にありました。ところが、このISに対する軍事作戦をめぐって両国の関係はこじれます。アメリカはシリアのクルド人勢力を支援。しかしトルコは、『この勢力は、トルコがテロ組織に指定しているクルド人武装組織=PKKとつながりがある』として反対しました。にもかかわらず、アメリカがIS対策が優先だとしてクルド人勢力に武器を供与し続けたことに、トルコは激怒。その直後、エルドアン大統領はロシアから地対空ミサイルシステムを購入すると発表します。NATO加盟国がロシアから主要な兵器を購入するのは、異例なことです。そして先月、トルコでアメリカ総領事館の職員が拘束されたことをきっかけに、アメリカがトルコ国民へのビザの発給業務を停止。トルコも同様の対抗措置を取りました。この事態を、トルコの人々はどう受け止めているのでしょうか。」
米・トルコ関係悪化 中東情勢は
トルコ南部のアンタクヤにある合唱団。さまざまな宗教を信仰する人たちが1つのハーモニーを作り、平和や共存を訴えています。その理念が共感を呼び、世界各国から招かれ、公演を行っています。ところが先月、思わぬ事態に直面しました。アメリカのビザ発給業務の停止で、アメリカ公演のため渡米する予定だった47人が行けなくなってしまったのです。夫婦でメンバーのカラさんです。初めての渡米を楽しみにしていましたが、がっかりしています。
合唱団メンバー「去年から楽しみにして準備をしていたんです。」
合唱団メンバー「予期せぬ事態となり、落ち込みました。残念です。」
合唱団では、メンバーを全員入れ替え、長期のビザを持っていた人だけでアメリカ公演を行いましたが、やりきれない思いを抱えています。
アンタクヤ文明合唱団 ユルマズ・オズフラト代表「文化は両国の絆を強くします。政治的な問題で扉を閉じてはダメです。」
同盟国の間で持ち上がったビザ発給の相互停止。アメリカへの留学やビジネスなどに影響は広がっています。イスタンブールにあるビザの代行業者も、困惑の色を隠せません。この会社では、取り扱いの20%ほどがアメリカのビザ関係だったといいます。
ビザ申請担当 エルタン・アクドアンさん「ビザ発給が止まり、問い合わせが相次いでいます。アメリカに留学しようとしていた人の中には、時間的に余裕がない人だっているのです。」
トルコとアメリカの関係が悪化するきっかけとなったのは、去年(2016年)7月、トルコで起きたクーデター未遂事件でした。
トルコ エルドアン大統領「国民は誰が黒幕か知っているぞ。」
トルコ政府は、アメリカ在住のイスラム組織の指導者・ギュレン師が首謀者だとして引き渡しを要求。しかし、アメリカは証拠が示されていないとこれに応じず、両国に溝が生まれました。
5月にエルドアン大統領が訪米した際には、抗議デモが発生。その時、エルドアン大統領の警護官がデモの参加者を暴行したとして、アメリカの警察が警護官12人の逮捕状を取り、トルコ政府は猛反発しました。
トルコ国内では、アメリカへの不信感が広がっています。アメリカは、去年7月のクーデターの計画に関わったのではないか。もしくは、知っていたのに黙認したのではないかと疑念を持つ人も少なくありません。
市民「アメリカはトルコに敵対的です。クーデター未遂もビザの問題も、そのいい例です。」
市民「アメリカはいまいましい国です。自らの利益のために世界で血が流れても、何とも思わないのです。」
世界の大国であり、長年の同盟国でもあるアメリカとどうつきあっていくべきか。先月、イスタンブールにある研究機関が、今後の対米関係についてシンポジウムを開きました。識者からはアメリカの政策に対する疑問が相次いで出されました。
イスタンブール文科大学 ボラ・バイラクタル講師「最大の課題である治安・テロ問題に、同盟国を名乗るあの国が何もしてくれない。」
イブン・ハルドゥン大学 ハック・オジャル講師「近い将来、対米関係が改善するとは全く思わない。状況は下り坂で、言葉だけの『戦略パートナー』は終わるところだ。」
そして、トルコの外交は、アメリカに偏らずバランスを重視していくべきだという指摘が相次ぎました。
政治経済社会研究所 タルハ・キョセ准教授「トルコの外交における目標は、重要なパートナーを増やしていくことだ。ロシアやイラン、最近は中国と、より良い関係を持とうと努力している。」
シンポジウム主催者「今は極めて重要な時だ。トルコとアメリカは共通の土台を見いださないとならないが、特にアメリカ側からその兆候が見えない。」
“それでも同盟国か” トルコの不満
花澤「関係がこじれているアメリカとトルコ。ここからは、トルコとアメリカで、それぞれ取材している渡辺支局長と西河記者に聞きます。まず、トルコのイスタンブールにいる渡辺さん。ここまで対立が深まった最大の原因は何でしょうか?」
渡辺常唱支局長(カイロ支局)「トルコ側の不満は『一体それでも同盟国か』ということに尽きます。相次ぐテロやクーデター未遂など、厳しい状況にあるトルコに、アメリカは寄り添ってくれないばかりか、逆にトルコの安全を損ねるような動きを見せていると、不満を募らせています。そして対立の根が深いと感じるのは、トルコとアメリカ・ヨーロッパの間で、民主主義や人権などの価値観のずれが大きくなっていることです。エルドアン政権は治安対策を理由に、野党やメディア、人権団体の関係者を相次いで逮捕するなど、強権的な姿勢を強めています。欧米はこれを懸念し批判していますが、トルコからすれば、人権を声高に言う割には、難民の受け入れを厳しく制限するなど、ダブルスタンダードに映っています。なんといってもトルコは、300万人ものシリア難民を受け入れている国だからです。こうした不満や不信感はトルコ社会にも広がっていて、エルドアン政権はこの世論を意識し、アメリカを批判することで求心力を高めているという面があります。」
中東情勢への立場の違い 表面化
増井「ワシントンで取材をしている西河さん、この事態を、一方のアメリカはどう見ているのでしょうか?」
西河篤俊記者(ワシントン支局)「アメリカとしては、いくら同盟国とはいえ、トルコが自分たちの主張ばかりを押し通そうとしているとして、いらだちを募らせています。今回のビザの問題は、特にここ数年、アメリカとトルコとの間で生まれてきた中東情勢をめぐる立場の違いや不信感が象徴的に表面化したものといえます。背景には、アメリカの中東政策の『つまづき』と『方針転換』があります。このうち、『つまづき』というのはアラブの春のことです。オバマ政権は、トルコを中東の民主化の成功事例として、アラブの春が起きた国々がトルコのような穏健的なイスラム国家になることを期待し、支援しました。しかし、この欧米型の民主主義を中東にもたらそうというアメリカのもくろみは、事実上失敗しました。逆に、アメリカにとって今のエルドアン政権は、強権的な政権運営を進め、アメリカの言うこともきかない『理解しがたい存在』と映っています。もう1つ、『方針転換』というのは、内戦が続くシリアについてです。アメリカは当初強く主張していたアサド大統領の退陣を脇に置いて、ISの掃討を優先にしているのが現状です。アサド政権の退陣を求め続けるトルコに頼って、二人三脚で中東政策を進めていくという状況ではなくなった以上、トルコの言うことばかりを聞くわけにはいかないというのがアメリカの本音だと思います。」
関係悪化は避けたいアメリカ
花澤「では今後、トランプ政権はどう出るのでしょうか?」
西河記者「関係修復に向けて、落としどころを探ることになると思います。トルコに対して苦々しい思いは持ちつつも、中東地域安定のカギを握るトルコとのこれ以上の関係悪化はデメリットが大きいからです。その最大の理由は、イランです。ISの掃討が順調に進む中、トランプ政権にとっての中東での最大の課題は、イランへの対応になりつつあります。トランプ大統領の考えは分かりませんが、政権の中枢にいる、中東をよく知る軍出身の幹部たちは、トルコとイランの結びつきがいっそう強くなることは避けなければならないと認識していると思います。また、専門家は、アメリカとトルコの関係悪化が続けば、アメリカは他の同盟国からの信頼も失いかねないと警鐘を鳴らしています。」
戦略国際問題研究所 ブレント・アリリザ氏「トルコとの関係悪化が進めば、影響はトルコとの2国間だけの問題にとどまらない。『アメリカは同盟国の国益を考慮しない』と他の同盟国から思われることになる。」
西河記者「今週には、ペンス副大統領がトルコのユルドゥルム首相とワシントンで会談する予定です。事態打開の糸口が見いだせるのか、なお注視する必要があると思います。」
「バランス外交」 目指すトルコ
花澤「アメリカにとっては関係修復が急務ということですが、イスタンブールにいる渡辺さん、今後エルドアン政権は、どのような外交を展開していくつもりでしょうか?」
渡辺支局長「エルドアン政権は、価値観が合わなくなってきた欧米との関係を見直し、『バランス外交』を追求していくとみられます。シリア情勢をめぐり、元は対立していたロシアとイランに接近。特にロシアからは、地対空ミサイルシステムS400の購入を決め、アメリカに懸念が生じても構わないという姿勢です。トルコがNATOから離脱するとか、見通しの立たないEU加盟交渉を打ち切るといった大きな方針の転換は考えにくいと思います。しかしエルドアン政権は、自らのやり方を押し通すため、欧米とロシアや中国などを天びんにかけながら、したたかな外交を模索していくとみられます。アメリカ一強ではなく、世界が多極化する中、ヨーロッパとアジアをつなぐ位置にあるトルコの外交は、国際社会の力関係を映すものになっていると感じます。」
増井「アメリカとトルコは関係がこじれてきているという状況ですね。」
花澤「トルコからすると、シリア攻撃のためにアメリカに空軍基地を使わせてあげている。それから難民を300万人も抱えてあげている。EU加盟の見通しも全然立っていない。アメリカや欧米の言うことを聞く必要はないのでは、というのがトルコ側の本音だと思うんです。強権化も進めるエルドアン政権を、どう引き寄せるのか。この問題は今後もトランプ政権を悩ませていくことになりそうです。」 
 
 
 
 

 

 
 
 2018

 

 8/10
●エルドアン大統領「トルコはアメリカとの間の危機をどう見ているか」 8/10
トルコとアメリカは、ここ60年間、戦略的パートナーであり、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国である。両国は、冷戦期とその後に現れた共通の試練に対し、ともに戦ってきた。
トルコはここ数年間、アメリカが支援を必要としたときはいつもアメリカを助けてきた。朝鮮半島で両国の軍隊はともに血を流した。1962年にはケネディ政権が、キューバにおけるソ連のミサイルを、イタリアとトルコにあるミサイル・ジュピターを撤退させることで防いだ。9・11のテロ攻撃の後に、アメリカ政府がこの悪に対抗するために友好国と同盟国を信用したとき、トルコは軍隊をアフガニスタンに、同地のNATOの使命を成功に導くために派遣した。
しかしアメリカは、トルコ国民の懸念を理解し、それを尊重することに関しては、何度も、そして常に失敗してきた。そしてここ数年も両国のパートナーシップは、不和の試練に直面してきた。残念ながら、この危険な傾向を正そうとする努力は水の泡となった。アメリカがトルコの主権を尊重し、トルコ国民が直面している危険を理解していることを証明しなければ、両国のパートナーシップはリスクに晒されるだろう。
2016年7月15日にトルコは、トルコ政府が正式に「フェトフッラー派テロ組織」と認定し、その首謀者フェトフッラー・ギュレンがアメリカのペンシルベニア州か郊外の邸宅から管理している暗黒のグループのメンバーの攻撃に遭った。「フェト」こと、フェトフッラー派テロ組織のメンバーは、トルコ政府に対し、流血のクーデター企てを謀った。その夜、何百万人もの一般のトルコ国民が、あたかも真珠湾攻撃と9・11の攻撃の後にアメリカ国民が経験したのとまさに同様に、祖国を守ろうという意気込みにより家の外に繰り出した。長い間私の選挙運動を管理してくれた友人エロール・オルチョク氏とその子息アブドゥッラー・ターイプ・オルチョク氏も含まれる251人の無実の人々が、トルコの自由のために最も重い犠牲を払った。もし私と私の家族を襲った死の劇が成功裏に行われていたら、私もその1人となるはずだった。
トルコ国民は、アメリカがこの攻撃を断固とした言葉で非難し、トルコの選ばれた指導者と連帯すると伝えることを期待した。しかしアメリカはそうしなかった。アメリカのこの攻撃に対する反応は、満足するには程遠いものだった。トルコの民主主義を支援するどころか、アメリカ当局は警告するかのように、トルコに対し、安定、平和、継続を呼びかけた。それでも足りないというように、トルコとアメリカの合意に反し、トルコ側によるギュレンの身柄返還の要請をめぐり未だに全く行動を起こしていない。
相互関係において起こった別の失望は、アメリカと武装テロ組織PKKのシリアにおける派生組織PYDとYPGの間の協力活動に関するものだ。テロ組織PKKは、1984年から現在まで何千人ものトルコ国民を殺害してきた武装テロ組織であり、アメリカもテログループとして認めている。トルコ当局が推測するに、アメリカ政府はここ数年間テロ組織PYDとYPGに武器を供与するためにトラック5000台分と2000個の貨物輸送機を使用した。
トルコ政府は、アメリカ当局がテロ組織PKKのシリアにおける協力者に訓練と武器供与を行うと決定したことに対する懸念を、関連当局に何度も伝えてきた。残念ながら、アメリカはトルコの言葉に耳を傾けず、結果的にアメリカの供与した武器は民間人と、シリア、イラク、トルコの治安部隊を標的にするために使用された。
ここ数週間ではアメリカは、テロ組織を支援した罪で裁判を受けているアメリカ国籍のアンドリュー・ブランソン牧師がトルコ警察に逮捕されたことを理由に、トルコとの緊張を高めるような多くの行動を起こした。多くの会議や階段でトランプ大統領に警告してきたが、法的プロセスを尊重する代わりに、アメリカは友好国に対し公然たる脅迫を行い、トルコの大臣に制裁を科した。この決定は容認できるものではなく、論理的ではなく、結果として長年続いてきた両国の友好関係を損ずることになるものである。
トルコはこの脅迫に対し、複数のアメリカの関係者に対し同様の制裁を科して見返りを与えた。それでも我々は常に同じ原則に従っていく。トルコ政府が法的プロセスを踏まざるを得なくなるような状況を作ることは、両国の憲法や共通の民主主義的価値観にふさわしいものではない。
トルコは、以前何度もそうしてきたように、アメリカがトルコの言葉を聞かなければ、自国の問題を自ら解決することになる。1970年代にアメリカ政府が異議を唱えたのを押して、トルコ政府はキプロス島ギリシャ側によるトルコ系住民の虐殺を阻止するためにこの事件に介入した。もっと最近では、アメリカ政府がシリア北部からの安全保障に対する脅威に関するトルコの懸念を深刻に受け止めなかったことで、テロ組織DEASH(ISIL)の北大西洋条約機構(NATO)の境界線への到達を断ち、テロ組織YPGをアフリン地域から追放する2つの軍事作戦が実行されることになった。この状況においてのように、トルコは国民の利益を守るために必要な措置を講じる。
悪が世界のあちこちに狡猾に潜入しているこの時代に、何十年も同盟国だったアメリカがトルコに対し行った一方的な行為は、アメリカの利益と安全を壊すことにしか繋がらない。遅くならないうちに、アメリカ政府は両国の関係が不均衡のままでよいとする誤った考えを捨て、トルコには選択肢があるという事実を認めるべきだ。アメリカがこの一方的で無礼な行為をやめようとしなければ、トルコは新たな友好国と同盟国を模索しなければならなくなるだろう。 
●トルコ通貨危機はいかにして起きたのか 8/10
トルコのエルドアン大統領は‘外国勢力' (つまりアメリカ)が彼を失脚させたがっていると、しばしば主張する。‘金利ロビー' (つまり(ユダヤ人)銀行家)がトルコに損害を与えたがっていると彼は言う。二つの点で、彼はそれなり正しい。
先週以来、トルコ・リラは、ひどく下落している。今日だけで価値が約20%減少した。それはトルコ経済も道連れにする可能性が高く、エルドアンは誰かのせいにする必要があるのだ。
とは言え、外国勢力と銀行は、確かに危機を連中の狙いに利用してはいるが、エルドアンの経済政策こそ、まっさきに責められるべきだ。借りた外貨で彼が作り出した長い好況期が、とうとう破綻しつつあるのだ。
以下は、いかにして、こういうことになったかの要約だ。
大局的な政治構図
アメリカがひきおこした'アラブの春'の際には、アメリカのオバマ大統領は、カタールとトルコと協力して、 中東中にムスリム同胞団の政権を据えようとしていた。ヒラリー・クリントンが国務長官の座を去り、ジョン・ケリーが引き継ぐと、オバマ政権は姿勢を変えた。選挙で選ばれたエジプトのムルシー大統領に対するクーデターを支持したのだが、シリア政府打倒に、アメリカ軍を使う活動は控えた。
特にシリアに関し、トルコは貧乏くじを引かされた。エルドアンは、アメリカのシリア政府打倒という計画に賭けていた。彼がシリア難民を受け入れ、シリア国内で戦う過激イスラム主義者を支援したことで、膨大な費用がかかり、多数の問題ももたらされた。シリア経由の湾岸諸国へのトルコ貿易経路は閉鎖された。イランとの経済関係もまずくなった。エルドアンとしては、そこから何かを得る必要があったのだ。
ところが、アメリカ政策が、彼に敵対したのだ。2013年のゲジ抗議行動は、アメリカによるカラー革命の企てのあらゆる様相を帯びていた。彼らはしくじった。2014年、オバマ政権は、東シリアのコバニのクルド労働者党/クルド人民防衛隊を支援しはじめた。クルド労働者党は、トルコ東部と北シリアと北イラクに自分たちの国を作ろうとしているテロ組織だ。アメリカがクルド人と同盟し、武器を与えたことで、クルド労働者党/クルド人民防衛隊という短剣がトルコの急所に突きつけられたのだ。
2015年中期の、トルコが率いるラタキアとイドリブに対する攻撃に対応して、ロシアは、軍隊をシリアに配備した。後から考えると、その時点で、エルドアンのシリアでのゲームは終わっていたのだ。アメリカは核武装したロシアに対する戦争をしようするはずはなかった。シリアが倒れるはずもない。しかし、エルドアンは、やり続けた。
2015年11月、トルコ防空部隊が待ち伏せし、ロシア戦闘機を撃墜した。ロシアはトルコとのあらゆる経済関係の全面停止で対応した。これはアメリカがよくやる針でチクリと刺すような経済制裁ではなく、トルコへの何百万人ものロシア人観光客も含む、全ての貿易関係の全面的な突然の停止だった。トルコにとっての経済的損失は膨大だった。エルドアンはロシアに屈せざるを得なかった。プーチンは寛大で、エルドアンが面子を保つのを認めてくれた。ロシア政府は、もうかるパイプラインの取り引きや、他のうまい話をもちかけた。2016年中頃、CIAが、エルドアンに対する武力クーデターを画策したが、ロシア諜報機関がエルドアンに警告して、クーデターは失敗した。トルコは、クーデターをしかけたとトルコが非難しているフェトフッラー・ギュレンを引き渡すようアメリカに要求している。ギュレンは多数の信者を持ったトルコ人説教師で、長年のCIAの手先で、ペンシルヴェニア州で暮らしている。
トルコを"西"から "東"陣営にひっくり返すことは、ロシアの黒海戦略の一環と見なすことができる。ニコライ1世皇帝の下で行われていた19世紀中期の計画の繰り返しだ。現在の計画は、これまでのところ成功している。だが、これは、次の儲かる冷戦のためにNATOを復活させるというアメリカの計画と衝突する。そこで、現在のアメリカ計画は、トルコ経済問題を、最終的に、エルドアンを失脚させるのに利用することだ。
大局的な経済構図
トルコ国外では、エルドアンは、かなり嫌われている。彼の傲慢さと独裁的スタイルは良い印象を残さない。だが、トルコ国内では、彼は大成功をしており、国民の大多数から支持され続けている。この理由は、彼が作り出した長い好景気だ。
2002年、エルドアンが首相になった際、トルコは不況から回復しつつあった。エルドアンの前任者ケマル・デルビシュが、いくつか本格的な改革を実施していた。エルドアンは、その成果を、自分の手柄にした。彼は更に多数の煩わしい規制を廃棄し、官僚を浄化した。彼は外国からの投資を歓迎した。計画はうまく機能した。経済は急速に成長し、多くのトルコ人が貧困から救い出された。少数の人々は金持ちになった。彼の支配下における初期の経済的成功は良い思い出だ。資金が自由に得られ、経済成長しながらも、インフレは比較的低い率で、おちついていた。しかしながら、エルドアンの拡大主義の経済計画は、トルコを、より脆弱にもした。
トルコは慢性的に経常収支赤字だ。トルコは、輸出以上に商品とサービスを輸入しており、差額を埋めるために、外貨を借りるしかなかった。エルドアン統治の初期、多くの金がトルコに流れこんだ。だが、それは非生産的な事に投資された。新たな住宅が好景気のイスタンブールを拡張した。新しい素晴らしい橋梁や空港や多数のショッピング・モールや10,000以上の新しいモスクや、エルドアンが使うための1,000部屋の宮殿が建設された。建設業のエルドアンの取り巻き連中は大金持ちになった。
だが、他国市場に輸出する製品をつくる製造業は、モスク建設よりも難しい。エルドアンは、決してそれを優先事項にはしなかった。 そこでトルコの経常収支赤字は、GDPの1%から、GDPの約6%に拡大した。これは明らかに持続不可能だ。
好景気の間、トルコ中央銀行の金利は、かつての高さより下がったものの、依然、どこの国の金利よりも高かった。トルコの産業や銀行は、金利がより低いユーロやドルを借りたが、これは彼らが高い為替変動リスクを負うことを意味していた。もしトルコ リラが下落すれば、融資は減価するリラで得た収入から、交換可能な通貨で返済しなければならなくなるのだ。
通常の条件下であれば、トルコ中央銀行は、16年もの長い好景気の間に、何回かの穏やかな景気後退を仕組んでいるべきだった。累積した不良債権の一部は破棄されていたはずだ。外国製品の消費と経常収支赤字は減少していたはずだ。ところが、エルドアンは経済理論の奇妙な理解をしている。彼は高金利はインフレを引き起こすと思い込んでいる。
トルコ中央銀行が、インフレを抑制し、リラの下落を止めるために金利を上げる度に、エルドアンは中央銀行に対して厳しい発言をし、その独立を恫喝した。比較的低利の金が流れ続け、エルドアンの好景気が続いたが、構造的問題は悪化した。
2017年初め以来、トルコのインフレが高まり始めた。以来、8%から、今や15%に上がった。通貨は下落した。1リラの価値は2016年のアメリカ・ドル0.30から、一週間前のアメリカ・ドル0.20に減った。過去数日間でさらに25%下落し、 アメリカ・ドル0.15になった。2016年に、アメリカ・ドルで借りた1,000リラの融資元金の返済に、今や2,000リラ以上必要なのだ。トルコの産業と銀行は外貨で約1500億ドル借りている。製品の大半を交換可能通貨で輸出する企業だけが、借金を返済することが可能だ。他は事実上、破産だ。
長年の好景気のつけが現れつつあるのだ。トルコ・リラは崩壊しつつある。トルコに更に金を融資しようという外国人は皆無だ。そのように高いリストをとるため、彼らは極端に高い金利を要求する。トルコは、間もなく、輸入の、特にトルコに必要な炭化水素エネルギー代金が支払えなくなるだろう。アメリカ合州国との非友好的な関係のおかげで、国際通貨基金 (IMF) に緊急融資を依頼するのは困難だ。'改革'要求、つまり、エルドアンが支持者たちに与えていた恩恵を止めるといったような極めて厳しい条件がつけられるはずだ。
現在のエスカレーション
先週の通貨危機エスカレーションは、アメリカ合州国との小さな紛争のエスカレーションと同時に起きた。
2016年のクーデター未遂後、トルコは、長年トルコで働いていたアメリカ人牧師アンドリュー・ブランソンを投獄し、彼をテロで告訴した。先週、ブランソンを、イスラエルで、テロ容疑で拘束されているトルコ人と交換する取り引きがまとまった。トルコは、取り引きでより多くを期待していた。トルコは、アメリカの対イラン経済制裁に違反したかどでアメリカが投獄しているトルコ人銀行家、メフメト・ハカン・アッティラを解放させたがっていたのだ。(彼は実際イランとの石油貿易用に金を手配して、違反していた。トルコ、特にエルドアンの近親者が、その取り引きで儲けていた。)
先週、アメリカ側が、エルドアンが交換取り引きを撤回したと述べた。
イスラエルで、テロ容疑で投獄されているトルコ国民を、ブランソンの解放と交換するようトランプ本人がまとめたうまい取り引きのはずだった。ところが、水曜日、トルコ裁判所が、牧師を帰国させるのではなく、彼を自宅監禁に変え、彼の裁判を継続すると命じ、合意はどうやら崩壊した。
トランプと福音派のペンス副大統領は逆上した。
「 木曜日朝、エルドアンとの憎悪に満ちた電話会話の後、トランプは反撃した。アメリカ合州国はトルコに“大規模経済制裁を課す”と彼はツイートした。“この無辜の宗教者は即座に解放されるべきだ。”ペンス副大統領も、ある宗教会議での演説で、トルコは、今ブランソンを解放すべきで“さもなくば、その行為の結果を覚悟すべきだ”と言って割って入り、マイク・ポンペオ国務長官はアンカラの外務大臣に電話した。 」
アメリカは長年のNATO同盟国の閣僚二人を制裁した。ところがエルドアンは屈しなかった。市場は公的な経済制裁に反応し、経済制裁の脅威に答えた。リラは、1ドル、4.80リラから、1ドル、5.20リラに下落し始めた。水曜、トルコ代表団は、ワシントンを訪問し、問題で更に交渉を進めようとしたが交渉は失敗した。リラは更に、1ドル5.50ドルに落ちた。金融市場は不安になった。いさかいの好ましからぬ結果がヨーロッパの銀行に影響を与える懸念がある。
今朝、エルドアンが演説し、リラ崩壊の恐怖を切って捨てた。
「 “様々な組織的活動が行われている。気にすることはない”とエルドアンは述べた。“忘れてはいけない。彼らにドルがあるなら、我々には我が国民、我が神がいる。我々は一生懸命働いている。16年前、我々がどうだったか振り返り、今の我々を見よう”と彼は言った。 」
エルドアンは"エコノミック・ヒットマン経済には屈し"ないと言った。トルコに莫大な金を融資した銀行は、それをトルコ債務不履行の恫喝と理解した。
昼、リラは分刻みに、一日20%の率で下落した。最近財務大臣となったエルドアンの娘婿ベラト・アルバイラクが、経済について予定されていた演説を行った。彼は損失に関する何らかの数値を挙げ、リラ問題を終わらせるために、政府がおこなうはずの具体的措置を示すはずだった。しかし、彼はそうするのを差し控えた。彼はトルコ中央銀行は独立していて、必要に応じて行動すると主張して、市場を静めようとした。トルコ中央銀行がエルドアンの承認無しで動けるなどとは誰も信じていない。エルドアンは高金利の敵を自ら公言しており、中央銀行は、緊急に必要なのに、今日は介入しなかった。
アルバイラク演説の最中、ドナルド・トランプ本人がTwitterで口をはさんだ。
「 ドナルド・J・トランプ @realDonaldTrump - - 2018年8月10日 彼らの通貨トルコ・リラが我々の極めて強いドルに対し急速に下落する中、トルコ鉄鋼とアルミニウムの関税を倍にするのを承認したばかりだ! アルミニウムは今後20%で、鉄鋼は50%だ。現時点で我々のトルコとの関係はよろしくない! 」
鉄鋼はトルコ最大の輸出商品の一つだ。アメリカは年間10億ドル以上のトルコ鉄鋼を輸入している。ホワイト・ハウスは後に、この関税は、貿易ではなく、安全保障に関連していると述べた。
一方、エルドアンはロシアのプーチン大統領と電話会話をし"経済的なつながりについて話しあった"。彼は緊急融資を依頼した可能性がある。
一方、リラは対米ドル6.80に下落した。
エルドアンは、そこで、トランプや彼のツイートには触れずに、アメリカの圧力を強く非難する演説をした。
その日の終わりに、リラは、昨日の対米ドル、5.50の後、6.50になった。トルコの株は約2%下落した。一部のトルコ銀行と製鉄メーカーの株は15%下落した。トルコの銀行に何百億ユーロも貸していたスペインとイタリアとフランスの銀行も損をした。ブルームバーグは今日の重要な出来事を、ライブ・ブログで報じ続けた。
今後の行方
エルドアンには、この問題を顧問たちと話会うための週末がある。月曜日朝までに何の措置もとられなければ、今日の下落は勢いを増すだろう。リラは更に下落するだろう。下落をくい止め、緊急に必要な外貨を引きつけるために中央銀行は利子を30%以上あげねばならない。トルコ経済は深刻な不況になるだろう。多数のトルコ銀行や企業は破産する。失業は増える。
エルドアンは、下落をアメリカと"金利ロビー" のせいにするだろう。彼の支持者は彼を信じるだろう。エルドアンが、これをうまく切り抜けるだろうという希望は無駄だ。
だが、トルコの問題は構造的だ。トルコのバブル崩壊は、以前から予想されていた。トルコの外貨収支赤字は持続不可能だ。トルコは輸入を削減し、輸出を増大しなければならない。トルコは莫大な緊急融資が必要だ。
確かに、アメリカはこの問題をトルコに圧力をかけるのに利用している。しかし、アメリカは、この問題の根本的原因ではない。アメリカは、それをさらけ出したにすぎない。
アメリカの圧力はトルコ経済が狙いではなく、ブランソン牧師が狙いでもない。今も、2013年以来からも、エルドアンをアメリカの狙いに従って行動させるため、圧力がずっとかけられて来たのだ。彼はロシアとの良好な関係を止めなければならなくなる。彼はロシアのS-400防空システム購入を中止しなければならなくなる。彼はロシア・パイプラインを止めるよう命じられるかも知れない。シリアに関して、アメリカの指示に従わなければならない。彼がそうしない限り、アメリカは、彼を打倒するためにあらゆることをするだろう。
トルコがアメリカの要求から逃れられる唯一の可能性はロシアと同盟強化だ。プーチンはエルドアンが自分を必要としていることを知っている。彼は圧力を高めるために引き延ばし、そこで自分の要求をするだろう。エルドアンは、シリアに対する彼の計画を完全にあきらめざるを得るまい。トルコや、その代理勢力が保持している全てのシリア領土はシリア政府支配下に返還されなければならない。そうなって初めてトルコの湾岸諸国への貿易経路が再開する。そうなって、初めてロシア(とイラン)は、トルコが危機から脱出するのを助けるだろう。
月曜日 ロシアのラブロフ外務大臣がトルコを訪問する。
エルドアンはロシアの要求を受け入れるだろうか、それとも、アメリカ側に戻って、トランプとIMFに降伏するのだろうか? それとも、彼はこの惨状を脱出する別の方法を見いだすのだろうか?
エルドアンは今日のニューヨーク・タイムズに署名記事を寄せた。彼は何十年もの良い関係を思い起こし、最近のアメリカの行動に対する非難を列記し、悪化しつつある関係のせいだとしている。結局、こうなっている。
「 悪が世界中に潜み続けている時に、何十年もの同盟国トルコに対するアメリカ合州国の一方的行動は、アメリカの利益と安全保障を損ねるだけだ。ワシントンは、手遅れになる前に、我々の関係が非対称的であって良いという誤った考え方を止め、トルコには代替案があるという事実を甘受すべきだ。この単独行動主義と、敬意欠如の傾向を転換し損ねれば、我々は新たな友人、同盟を探し始めることが必要になるだろう。 」 
 8/11

 

 
 8/12

 

●カルン大統領府報道官が「アメリカはトルコを失う危険性に直面」と指摘 8/12
トルコ共和国大統領府のイブラヒム・カルン報道官が、アメリカ政府はトルコを失う危険性に直面していると表明した。
カルン報道官は、トルコの新聞『デイリー・サバフ』に「トルコとアメリカの関係における危機について」という題の論説を発表した。
テロ組織フェト(フェトフッラー派テロ組織・パラレル国家構造)が2016年7月に謀反を起した後、多くの国の評論家がトルコ国家と経済は完全に崩壊すると予想したことに言及したカルン報道官は、それにも関わらずトルコはこの闇からさらに力強く抜け出し、政治的安定と経済的発展を続けていると表明した。
カルン報道官は、この謀反から2年経ったが、ひとりの牧師が理由でトランプ政権との間に発生した現在の危機と外国為替市場の変動がトルコの決意を弱めることはないと強く表明した。
今年(2018年)約4000万人の観光客がトルコを訪れることが期待されていると説明したカルン報道官は、大きな公共プロジェクトが計画通り進められており、これはトルコの公的機関と経済がいかに頑丈であるかを示していると述べた。
投機的なアメリカドルの上昇についても言及したカルン報道官は、「トルコは、この困難とたたかう心構えがある。第一に、この問題は通貨戦争を越えている。テロの罪により自宅軟禁措置が取られている牧師ブランソンの問題を理由に2人の大臣に制裁を科すというトランプ政権の決定は、トルコとアメリカとの関係を奈落の底に突き落とす原因となった。トルコ側の問題を外交手段で解決しようとする取り組み、善意、結果を得るためのアプローチは、トランプ政権のイデオロギー的な姿勢と折り合おうとしない態度により、隅に追いやられた」と述べた。
安全への懸念がNATO(北大西洋条約機構)の同盟国に深刻に受け止められることを望むトルコの要求はどこまでも正当であると表明したカルン報道官は、「しかし、アメリカは、分離主義テロ組織PKKのシリアにおける派生組織PYDおよびYPGと協力することにおいて、トルコの異議に耳を貸さなかった。アメリカでのフェトの構造化についても措置を取らなかった」と述べた。
カルン報道官は、アメリカはトルコを完全に失う危険性に直面していると表明した。
カルン報道官は、「トルコは、世論は完全に、安全に対する正当な懸念を無視するアメリカの政策に反対である。トルコに対する脅迫、制裁、または傲慢な振る舞いは何の役にも立たない。トルコの決意を強め、アメリカをトルコからも国際社会からも遠ざけ孤立化させるだけである。トランプ政権は、これまでに、カナダ、メキシコ、キューバ、中国、ロシア、NATO、ドイツなど、数多くの国々と、特に国内での問題が原因でもめごとを起した。この状態は、信頼できる友好国と同盟国としてのアメリカの評価に傷をつけた。トルコでの認識もこれと変わりはない」と述べた。 
●中国、ロシア、イラン、トルコなどに経済戦争を仕掛けるアメリカの苦境 8/12
アメリカ政府はロシアに対する「経済制裁」を宣言、これに対してロシア政府は「経済戦争の布告」だと批判、報復する意思を示した。今年(2018年)3月4日に元GRU(ロシア軍の情報機関)大佐のセルゲイ・スクリパリとその娘のユリアがロシアの政府機関にノビチョク(初心者)という化学兵器で攻撃された報復だとしている。
この話を最初に主張したのはイギリスのテレサ・メイ政権だが、主張を裏付ける証拠は示されていない。つまり説得力がない。日本にはアメリカ支配層の流す情報を全て「事実」だとして垂れ流す人もいるが、フランスのエマニュエル・マクロン大統領でさえ、当初は攻撃とロシアを結びつける証拠が欲しいと発言、同大統領のスポークスパーソンは「おとぎ話的な政治」は行わないとメイ首相の言動を批判していた。
イギリス議会では労働党のジェレミー・コービン党首がメイ首相に対し、主張を裏付ける証拠を示すように求めたが、保守党だけでなく労働党の議員から罵倒されていた。それがイギリスの現状だ。
化学兵器について研究しているイギリスの機関、​DSTL(国防科学技術研究所)のチーフ・イグゼクティブであるゲイリー・エイケンヘッドは、スクリパリ親子のケースで使われた神経ガスがロシアで製造されたものだとは特定できなかったと語っている​。元ウズベキスタン駐在イギリス大使のクレイグ・マリーも同じ話をDSTLの情報源から聞いたと早い段階から語っていた。
ノビチョクは1971年から93年にかけてソ連/ロシアで開発されていた神経物質の総称で、ロシアで使われることはなかったと言われている。それをメイ政権が口にしたのは「ロシア」を強調したかったからだと見られている。
この化学兵器の毒性はVXガスの10倍だと言われている。VXガスの致死量は体重70キログラムの男性で10ミリグラムだとさているので、単純に考えるとノビチョクは1ミリグラム。ユリアの場合、さらに少ない量ということになるが、4月9日に退院、彼女の映像をロイターが配信した。(​記事​、​映像​)
その後、父親も退院したとされているが、状況は不明。ユリアへの取材も厳しく制限されている。この親子は保護されているのではなく、拉致され、軟禁状態にあるのではないかと推測する人もいるほどだ。
スクリパリの話が荒唐無稽であることは、当然、アメリカ政府も知っている。嘘がばれていることも認識しているはずだ。が、そうしたことはドナルド・トランプ政権にとってはどうでもいいこと。ロシアに経済戦争を仕掛けることが重要なのである。
すでにアメリカは中国に対する経済戦争を開始、イランやトルコも経済的に攻撃されている。アメリカの権力層が世界を支配するシステムに楯突く国々との戦争を始めているとも言える。
すでにアメリカはジョージアを使った南オセチアへの奇襲攻撃でロシア軍に惨敗、シリアではバシャール・アル・アサド体制を倒すために送り込んだジハード傭兵がロシア軍によって駆逐されてしまった。その間、ロシア軍が保有する兵器がアメリカの兵器を上回る性能を持っていることが判明している。そして始まったのが経済戦争。
アメリカはこれまで軍事力とドル体制で世界に君臨してきたが、軍事力の優位は揺らいでいる。基軸通貨として認められているドルを発行する特権が残された支配の仕組み。ドル体制を受け入れている国なら通貨戦争を仕掛けて潰すことは難しくないのだが、すでにドル離れは始まっている。アメリカの破壊されたイラクやリビアはそうした国だった。
このドル体制を守る重要な仕組みのひとつがペトロダラー。サウジアラビアをはじめとする産油国に石油取引の決済をドルに限定させ、そうした国々に集まったドルをアメリカへ財務省証券や高額兵器の購入といった形で還流させるというもの。トランプ政権がサウジアラビアを重視する理由はそこにあり、イランを敵視する政策につながる。
また、現在、ドル離れの震源地は中国とロシアである。ロシアは世界有数の産油国であり、この国を完全に制圧してエネルギー資源を支配できれば、中東をさほど気にする必要がなくなる。歴史的にロシアを支配できれば世界を支配できるという考え方がアングロ・サクソンにはあり、そうしたこともロシア攻撃に影響しているだろう。
イラン、中国、ロシア、そしてこの3カ国に近づいたトルコにアメリカ政府が経済戦争を仕掛けたのは必然なのだが、中国の対米輸出の相当部分はアメリカ系企業によるもの。創始が企業にアメリカへ戻れと言っているのかもしれないが、ネオコンによって社会基盤を破壊されたアメリカへ企業が戻っても機能しそうにない。 
 8/13

 

●目が離せなくなったトルコのアメリカ人牧師拘束問題  8/13
土曜日のブログでさらっとお伝えしたトルコのアメリカ人牧師拘束問題、考えれば考えるほど嫌な予感がしてなりません。
ことのあらましは土曜日にすでに説明したとおりですが、一言でいうと2016年にエルドアン大統領政権を転覆させようとしたトルコ軍がクーデターを起こした際にこのアメリカ人牧師がかかわったとしてトルコで逮捕されたことに関し、トランプ大統領が解放を迫り、快い返事がないため、関税引き上げで対抗すると発表したことでトルコのリラが一日にして2割も暴落した一件です。
通貨が一日で2割も変動するというのは円ならばさしづめ、110円だったものが突然138円にもなることです。こうなると慌てるのは貿易会社、金融関係、トルコの債権の所有者でありましょう。いわゆる狼狽による不安定な相場つきが想像されるのですが、これがトリガー(引き金)になって別のところに火をつける可能性も絶対にないとは言い切れません。
例えばリーマンショックもことの発信源はアメリカを舞台にしたものでしたが、その特殊な債権を多く購入していたのが欧州の銀行で、それがそののちに欧州の金融危機にもつながっていきます。今回はまずは欧州の銀行がどのような反応を示すかが注目になります。個人的には一部の欧州の銀行、例えばイタリアやスペインなど不良債権を抱えている銀行やドイツ銀行のように経営が不安定な銀行などがどうでるかが注目かと思います。またトルコ向け債権を多く所有する金融機関もあぶりだされるはずです。
次いでトルコのエルドアン大統領の態度が気になります。この大統領は非常に独善的である意味、トランプ大統領に似た性格をお持ちとお見受けします。売られた喧嘩は買う、という方でしょう。言い換えれば何らかの幕引きの条件が提示されない限り、大統領のメンツが許さない形になります。
一方、トランプ大統領も一牧師ごときになぜ、ここまで躍起になるかといえばキリスト教福音派の票を確保するための政治的配慮以外の何物でもありません。つまり、中間選挙対策であってそのために強硬な姿勢を貫くわけです。仮に日本人が拘束されたとして政府が国家間関係を壊すほどの圧力をかけることがあるでしょうか?想像すらできないはずです。
トランプ大統領は良い面もあるのですが、このところの選挙対策はあまりにもえげつないように感じます。話はずれますが、NAFTA協議でもアメリカはメキシコと交渉が展開しており、カナダとはサイドライン、つまり横に放り出されており、交渉の糸口すら見いだせない状況になってます。理由は前回のG7で議長を務めたカナダのトルドー首相への当てつけであります。
日本も数日前に開催された日米貿易協議では平行線のまま終わり、議論持越しになっています。日本がTPPなど多国間協議を求めるのに対し、アメリカは日米の二国間協議でベストを引き出そうとしています。私は絶対に2日間の協議ぐらいで決まる話ではないと確信していましたが、やはりそうなりました。
エルドアン大統領のことですからロシアや中国に掛け合ってくるでしょう。アメリカの選挙対策という自己都合の政策が地球全体の外交を揺るがし、金融市場など世界経済を不和にします。
ここまでくるとアメリカボイコットという声が出てきてもおかしくないかもしれません。イランも相当怒りをぶちまけています。果たして夏が終わるころ、再び、〇〇危機などという激変が起きないか、心配になります。トランプ大統領の手腕は「無謀な力づく」という表現が一番しっくりくるでしょう。安倍首相はエルドアン大統領と親交があるものの今は火中の栗は拾わないでしょう。
ことのなりゆきには要注目です。 
 8/14

 

●トルコ通貨リラ急落を招いた、トランプの関税引き上げ「攻撃」 8/14
<双方の宗教関係者の身柄引き渡しを求めるアメリカとトルコの対立の裏には、トランプとエルドアンそれぞれの政治的思惑が>
先週末以降のトルコ通貨リラの急落は、対米関係の急激な悪化がそのきっかけとなった。
ドナルド・トランプ米大統領は先週10日、アメリカとトルコの関係は「現時点では良好なものではない」とツイートし、トルコ製の鉄鋼・アルミニウムを対象とした関税を引き上げると発表した。一方トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は週明けの13日、アメリカはトルコの「背中を刺した(裏切った)」と非難した。
アメリカとトルコは共にNATO(北大西洋条約機構)加盟国で、7月にベルギーで開催されたNATO首脳会議では、トランプとエルドアンの良好な関係が噂されていた。だが今の両者の態度は、両国のこれまでの協調的な関係からは逸脱しつつある。
トランプとエルドアンの対立の中心にいるのは、複数の宗教関係者。なかでも問題となっているのは、数十年にわたってトルコで暮らし、2016年にトルコ当局に逮捕されたアメリカ人牧師のアンドリュー・ブランソンだ。
ブランソンは、エルドアン政権転覆を狙った16年のクーデター未遂後、強化された取り締まりで逮捕され、収監された。エルドアンは、かつての盟友で現在は米ペンシルベニア州で暮らすイスラム聖職者フェトフッラー・ギュレンが、クーデター計画の首謀者だと非難。今月10日付のニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した論説で、ギュレン派が「私の政府に対して流血のクーデターを起こそうとした」と主張した。
エルドアンは、ブランソンがギュレンの支持者らと協力したほか、エルドアンと対立関係にあり分離独立を掲げるクルド人政党のためにスパイ行為をはたらいたとも主張した。しかしギュレンの支持者は伝統的にクルド人とは同盟関係にないため、ブランソンに対する告発の妥当性を疑問視する声もある。
ブランソンは身柄を拘束されて以降も無実を主張しており、米国務省が釈放に向けて働きかけを続けているが、今も自宅軟禁状態にある。
一方でトルコもアメリカに対してギュレンの身柄引き渡しを要求しているが、歴代の米政権に断られてきた経緯がある。また複数の報道によれば、エルドアンはイランの米制裁逃れを手助けした罪で禁錮2年8カ月の有罪判決を受けたトルコ人銀行家ハカン・アッティラを釈放させるために、ブランソンを交渉材料として利用したいと考えている可能性もある。
しかし収監者の交換をめぐって始まった両国の対立は、あっという間に双方に長期的な影響を及ぼしかねない危機へと変わった。リスク分析サービス会社コニアス・リスク・インテリジェンスの上級アナリストでトルコ情勢を専門とするマグダレナ・キルチネルは、こう指摘する。
「アメリカもトルコもこう着状態を打開するための戦略を見出しているようには見えないことから、両国間の緊張が近いうちに緩和される見込みは薄いだろう。トルコ政府にとって、重要なのはもはや『宗教関係者同士の身柄交換』によってギュレンをトルコに引き渡させることではない。経済政策の失敗がもたらした結果を、トルコに対する「経済戦争」の影響の一環だとイメージ転換し、エルドアン率いる公正発展党(AKP)と世俗派のナショナリストたちを政府の味方につけることだ」
さらにキルチネルは、「ブランソンの問題でトルコに対する圧力を強化するまでに1年以上かかった米政府にとっては、トルコに対して厳しい姿勢で臨むことが、今やすべての党派が納得する数少ない事案の一つになっている」と続けた。
確かに、深刻な経済危機に直面しているトルコにとって、アメリカとの外交トラブルは恰好のスケープゴートだ。エルドアンは通貨リラの急落について陰謀説を唱えており、トランプが10日にトルコ製の鉄鋼とアルミニウムに高率の関税を課すと発表したことは「世界が自分の足を引っ張っている」というエルドアンの主張を裏付ける結果になっている。
トランプは、関税引き上げを外交上の戦略として使う姿勢を見せている。トルコ製品に関税を課す今回の決定についても、両国の関係悪化にはっきりと結び付けている。 
 8/15

 

●リラ急落で中国に急接近するトルコ−「制裁を受ける反米国家連合」は生まれるか 8/15
アメリカが相手構わずふっかける貿易戦争は、中国にチャンスを与えるものかもしれない。
8月10日にトルコ・リラが急落して以来、トルコ政府はロシアやイランだけでなく、中国との経済協力を模索している。アメリカが反米的な国を経済的に追い詰めるほど、それらは結束しやすくなり、中国の動向はそのカギを握ることになる。
リラ急落のきっかけとしての制裁
8月10日からのトルコ・リラ急落には、アメリカのゼロ金利政策の解除でドルが新興国から引き上げ始めたことや、独裁化の傾向を強めるトルコのエルドアン大統領が、7月に財政・金融の責任者に娘婿を据え、海外投資への規制を強化したことなど、いくつかの伏線がある。
しかし、直接的なきっかけは、10日にアメリカ政府がトルコの製鉄・アルミニウム製品に対する関税を2倍に引き上げたことにあった。
トルコはNATO加盟国で冷戦時代からアメリカと同盟関係にあるが、近年の両国はいくつかの問題をめぐって対立してきた。
•エルドアン政権によるメディア規制などの人権侵害
•シリア内戦でアメリカがクルド人を支援していること(クルド人はトルコ国内でも分離独立を要求しており、トルコ政府は彼らを「テロリスト」と呼んでいる)
•2016年7月にトルコで発生したクーデタの首謀者とみられるフェトフッラー・ギュレン師がアメリカに亡命していること
これらに加えて、最近では両国政府は、トルコ当局によってテロ容疑で自宅軟禁にされているアメリカ人牧師の解放をめぐって対立している。
関税引き上げは、この背景のもとで行われた。つまり、この関税引き上げは、アメリカの貿易戦争の一環であると同時に、NATO加盟国でありながら反米的なトルコに対する制裁でもある。
「汚れた枢軸」
そのため、リラ急落後、エルドアン大統領は「アメリカが後ろから刺そうとしている」、「同盟関係が危機にある」とアメリカを批判。これと並行して、エルドアン大統領はアメリカとの取り引きを減らすことに言及している。
もともと、アメリカとの対立が徐々に深まっていたエルドアン大統領は、2016年12月段階で既にアメリカに代わって中国、ロシア、イランとの取り引きを増やす考えを明らかにしていたが、リラ急落の翌11日に再びこの考えを示した。
中国はトルコと同様、関税引き上げの措置を受け、トランプ政権との貿易戦争に直面している。ロシアは2014年のクリミア危機以降、イランは5月のトランプ政権によるイラン核合意破棄以降、アメリカから経済制裁を受けている。
エルドアン政権の方針は、これらとの取り引きを増やすことでトルコ経済を立て直すとともに、アメリカと対抗しようとするものといえる。これに関して、英紙テレグラフは、トランプ政権が『制裁を受ける国の汚れた枢軸』を生むリスクを抱えていると指摘している。
中国からみたチャンス
では、中国はエルドアン大統領のラブコールをどうみているか。
8月10日、中国の英語放送CGTNはエルドアン大統領の方針を詳細に伝えた。中国にとって、リラ急落に見舞われるトルコのラブコールに応えるメリットは小さくない。
特にリラ急落は、金融面で中国が影響力を伸ばす転機となる。リラ急落直前の9日、中国銀行トルコ支社は初めて人民元で起債(パンダ債)していたが、リラが不安定になるほど、同様の動きは広がるとみられる。
人民元の普及は、習近平体制が推し進める「一帯一路」構想の柱の一つでもある。もともとトルコは「一帯一路」構想に(少なくとも表面的には)協力的で、2017年5月に中国で開催された「一帯一路」国際会議にエルドアン大統領はプーチン大統領らとともに出席していた。リラ急落を機に金融面でもトルコ経済に影響力を伸ばすことは、中国にとって「一帯一路」構想を加速させるものとなる。
また、既に中国はトルコ経済に深く食い込み始めている。中国屈指の情報通信企業ファーウェイはトルコ・テレコムと共同で5G回線の普及を進めており、宅配サービスのアリババも事業を開始している。リラ急落はこれら中国企業にとって、トルコ企業買収を加速しやすくする。
そしてなにより、「アメリカの横暴」に直面するトルコやイラン、さらにロシアを糾合した運動を展開することは、アメリカと張り合う大国としての立場の確立にもつながる。
こうしてみた時、香港に拠点をもつアジア・タイムズが「中国がトルコを買い叩く」というコラムを掲載したことは不思議でない。
中国にとってのブレーキ
ただし、トルコの要請に中国が一方通行で傾くかは疑問だ。実際、エルドアン大統領のラブコールに中国政府はこれまでのところ公式の反応を示していない。
もともと中国とトルコの間には、浅からぬ因縁がある。両国は新疆ウイグル自治区をめぐって対立してきた。
中国西部の新疆ではウイグル人の分離独立運動があり、中国政府はこれを「厳打」と呼ばれる苛烈な弾圧で取り締まってきた。これに対して、ウイグル人が民族的にトルコ人に近いことから、エルドアン大統領は「大量虐殺」とさえ呼び、しばしば中国を批判してきた。
この経緯を抜きに、困った時だけ臆面もなく協力を求めるエルドアン大統領に、面子を重んじる中国が「手を差し伸べない」ことで罰を与えようとしても不思議ではない。
それだけでなく、自分のペースでなく「反米連合の旗頭」に祭り上げられるのは、中国にしても痛し痒しである。中国にとって、長期的には「一帯一路」構想の重要性は揺るがないが、少なくとも短期的にはトランプ政権との貿易戦争の収束も重要な課題だ。IMFの統計によると、2017年段階の中国からみたアメリカとの貿易額(5886億ドル)は、トルコ、ロシア、イランの三ヵ国との間の貿易額の合計(1433億ドル)をはるかに上回る。
つまり、現状においてアメリカとの関係改善の必要に迫られる中国にとって、トルコの都合に引き回されるのはリスクでもある。そのため、英キングス・カレッジ・ロンドンのSun Xin博士が指摘するように、トルコ支援が中国にとってチャンスであるとしても、それはトルコ経済の根本的な建て直しより、「アメリカの一方的な行動は認めない」という政治的ジェスチャーに傾きやすいとみられる。
トランプ政権の敵はトランプ政権
こうしてみたとき、少なくとも短期的には、エルドアン大統領のラブコールに中国はせいぜい表面的な対応にとどめるとみてよい。
しかし、トランプ政権との貿易戦争が長期化し、アメリカとの関係改善にかかるコストが大きすぎると中国政府が判断した場合、「一帯一路」構想を優先させても不思議でない。それはトルコと中国が恩讐を越えて、これまで以上に接近する可能性を大きくする。
だとすれば、制裁を受ける反米国家の結束が強まるかは、中間選挙に向けて各国との対決を演出してきたトランプ政権が、中間選挙の後に貿易戦争をなし崩し的にスローダウンさせるかにかかってくる。トランプ政権の敵が増えるかは、トランプ政権次第なのである。 
●日本人が知るべき「トルコ経済」の問題 日本にも影響は波及 8/15
金融市場で夏休みムードを吹き飛ばすようなトルコ発の衝撃が広がっている。アメリカ人牧師拘束問題などをめぐってアメリカ・トルコ関係が悪化し、トルコの通貨リラの相場が急落、世界的な経済不安に発展している。
日経平均株価もこの影響で不安定な動きが続いている。リラ急落で欧州の金融機関が保有するトルコ関連の資産が焦げ付く恐れもあり、トルコ発の金融危機が懸念される事態に陥っている。
単一的な問題ではない
問題を複雑化させているのは、トルコの対外資本依存度の高さや中央銀行の独立性をめぐる疑義といった経済問題のみならず、アメリカとの外交関係悪化も絡み合っていることだ。さらには、2002年の総選挙勝利以来、強い指導者として君臨するエルドアン大統領の経済政策や資質そのものに疑念が生じていることも問題を根深くしている。
エルドアン大統領は、指導力を発揮してトルコを発展させてきた。一方、国力の違うアメリカのドナルド・トランプ大統領に喧嘩を挑んでしまった格好になっており、落とし所を見つけるのが困難な状況だ。
共に北大西洋条約機構(NATO)の加盟国であるアメリカとトルコは、2016年7月にトルコで起きたクーデター未遂事件をめぐり、トルコ側が黒幕とするアメリカ在住のイスラム組織指導者フェトフッラー・ギュレン師の引き渡しを要求、十分な証拠がないとするアメリカ側が拒否して関係の悪化が始まった。
トルコの隣国シリアの内戦に絡んだ過激派組織「イスラム国」(IS)掃討戦では、トルコが敵視するクルド人民兵組織をアメリカは友軍としたため、両国は一触即発の状況に陥ったほか、トルコは関係を深めるロシアの最新鋭地対空ミサイルS400の購入も計画してアメリカをいら立たせている。
リラの信認を回復するためには、アメリカなど国際社会との協調が欠かせない。だが、トルコはロシアや中国などに支援を仰ぐ構えを見せ、マーケットが期待する正攻法の利上げにも消極的で失望売りを招いている。
「このままでは経済的にもたない」(在トルコ日本人経済関係者)状況であり、トルコ中央銀行の金融政策決定会合が予定されている9月13日が転換点となるか、週末を挟んだ「犠牲祭(イスラム教の祭典)」の大型連休を迎える8月下旬に、エルドアン政権が何らかの妥協策を出してくるのではないかとの観測が浮上している。
経済手腕を評価する声は少なくない
今後の状況を予想する前に、エルドアン大統領の人物像や、最近のトルコ経済の動向を簡単に見てみよう。エルドアン大統領は2002年の総選挙で自らが率いたイスラム系の公正発展党(AKP)を勝利に導いた後、トルコが堅持してきた政教分離の世俗主義を捨ててイスラム化を推進。また、欧州連合(EU)への加盟が実現しない中、中東諸国や中国などとの関係を深め、欧米を重視したトルコの伝統的な外交姿勢も修正してきた。
アラビア文字表記の廃止や、脱イスラムなどエリート主導で西欧に追随することを目指した建国の父ムスタファ・ケマル・アタテュルク初代大統領率いる共和人民党によってトルコの民衆は信仰を制限されるなどして抑圧されてきた。これに対して、エルドアン氏は大衆に寄り添うポピュリスト的な指導者として、主に低所得者層から絶大な支持を集めている。
エルドアン大統領は、世俗主義の守護者だった軍の影響力を弱め、2017年4月の憲法改正により、儀礼的な立場だった大統領に実権が集中する大統領制への移行を実現し、独裁色を一段と強めた。政権に批判的だったメディアには圧力が掛けられ、ソーシャルメディアでも監視の目が厳しくなっている。エルドアン大統領は、強力な指導力を発揮して、トルコの前身であるオスマン帝国のような強国の復活を目指しているのではないかとささやかれる。
もっとも、経済手腕を評価する声は多い。2008年のリーマンショックによる世界的な経済危機では停滞したものの、中東・北アフリカ最大の経済規模を持ち、G20メンバーの有力な新興経済国として有望な投資先として経済成長を遂げてきた。共和国建国100周年の2023年までに世界10大経済国入りを目指している。
経済は2016年のクーデター未遂で一時的に落ち込んだが、好調な消費や設備投資に支えられて今回の通貨ショックまでは堅調に推移してきた。最大都市イスタンブールは膨張を続け、国際空港などの巨大インフラ整備事業が進んでいる。
トルコ全土でインフラ開発を進めるエルドアン首相の経済政策は、田中角栄元首相の「日本列島改造論」と重なる。開発が遅れてきたシリア国境に近いトルコ南東部にまで高速道路が延び、地中海沿岸の保養地には高級ホテルが林立、欧州やロシアなどから観光客が降り注ぐ太陽を求めて訪れている。
「金利は諸悪の根源だ」と主張
今回のリラ相場の下落とも関係するが、建設業を経済発展の主軸に据えるエルドアン大統領は「金利の敵」を自称している。エルドアン大統領としては、金利を引き上げずに内需を喚起することを最大の経済戦略と位置付け、対外投資を呼び込みたい考えとみられている。
イスラム主義者と目されるエルドアン大統領はまた、「金利は諸悪の根源だ」とも主張している。利子を取って金銭を貸すことを禁止しているイスラムの教えに沿い、「金利を悪と見なしているのではないか」(トルコ専門家)との説が有力だ。
さらに懸念されるのがエルドアン大統領の独裁化傾向だ。マーケットが期待しているのは、迅速に金利を引き上げてリラ相場を安定させることだが、6月の再選後、財務相に娘婿を起用する情実人事を行っており、「忖度」が働いて中央銀行の独立性が揺らいでいるとマーケットは受け取っている。7月24日の金融政策決定会合では、市場の予想に反して政策金利を据え置き、リラ売りが再燃した。もはや、エルドアン大統領が辞任するのが最も効果的との声も上がっている。
このままの事態が続けば、危機は世界に広がりかねない。アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ路線に舵を切ったことで、新興国通貨は対ドルで軒並み下落して経済の先行きに暗雲が垂れ込めている。過去の新興国発の通貨ショックのように、トルコ発の危機が世界的に連鎖するのではないかとの不安を呼んでいるのだ。
トルコの2017年の経常赤字は国内総生産(GDP)の5.6%に達し、外資依存度が高いことがトルコ経済のアキレス腱ともいわれる。この数字は、キプロスを除いて経済協力開発機構(OECD)諸国では最も高い。今回のリラ急落は、欧州への影響が大きい。リラの対ドル相場は、年初からの下落率が50%近くに達している。
トルコの企業にとっては、外貨建ての借り入れが倍近くになっている計算であり、「トルコの財閥は欧州の金融機関と債務帳消し交渉を行っているとの話も流れている」(在イスタンブールの日本人金融関係者)という。
通貨防衛のためには金利の引き上げを今すぐにも行わなければならない。ところが、エルドアン大統領は「保有しているドルやユーロなどの外貨資産や金塊を売って、リラに換えてほしい」と国民に訴えたことで、自身の大統領としての資質や、トルコの経済政策に対する不安を駆り立ててしまう逆効果をマーケット関係者に与えた。
対アメリカ関係改善は避けて通れない
こうした中、トルコは、エルドアン大統領への支持と不支持で真っ二つに割れており、支持しない層は安全資産として金や外貨を買い急いでいる。利上げをしない場合、残された数少ない手段は、外貨預金の強制封鎖などの資本規制だが、「対外信認がゼロになり、そこまでは踏み出せない」(前出の関係者)との見方が一般的だ。
リラ下落の要因の一つである対アメリカ外交に関しても、先が読めない。強力な指導力を売りとするエルドアン大統領が外交面で譲歩し、アメリカの要求に応じて牧師を釈放すれば、メンツが潰れてしまう 。
一方、「アメリカ第一主義」を貫くトランプ大統領も妥協の構えはない。11月の中間選挙を控え、牧師問題で強硬姿勢を取り、支持基盤であるキリスト教福音派から得点を稼ぎたい思惑があるようだ。トランプ大統領は、トルコ政府の2閣僚を制裁対象に指定したのに対し、エルドアン政権も米政府の2閣僚に対する報復制裁を発表。また、アメリカ側はトルコ製の鉄鋼とアルミニウムの関税率を倍に引き上げることを承認し、リラ急落に拍車が掛かり、貿易戦争の様相を呈している。
強い指導者としてトランプ大統領と渡り合うロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席は、相応の経済力を背景とし、経常収支も黒字である。これに対し、トルコはリラ防衛のための中央銀行準備金に事欠くという状況にある。トルコはロシアや中国のほか、関係が深い資源国のカタールに支援を要請するというシナリオも考えられるが、西側の経済制裁に直面するロシアにトルコを支援する余裕はなく、中国やカタールも今回の対立に巻き込まれるのは避けたいだろう。
このため、最終的にトルコは対アメリカ関係改善に踏み出さざるをえないと見る向きは少なくない。トルコの消息筋は「アメリカで対イラン制裁違反に問われたトルコ人との交換など水面下の合意を通じ、アメリカ人牧師を釈放する可能性もあるのではないか」と予想している。 
●トルコの通貨リラ急落でトルコ発の『9月金融危機』を懸念 8/15
トルコ・ショックはいつまで続くのか。市場関係者が怯えている。
13日、日経平均はトルコの通貨リラ急落を受け、大幅安となった。終値は前週末比440円安の2万1857円と、約1カ月ぶりに2万2000円の大台を割り込んだ。
「この時期の日本は市場参加者が少なく、株価が大きく上下に振れやすいのです。トルコ・ショックの後遺症は長引くかもしれません」(市場関係者)
トルコリラは、13日に対米ドルで一時7リラ近辺まで急落。前日に比べ、一気に2割の下落となった。
これに金融市場が慌てた。外資系金融機関のトルコ向け債権は約2233億ドル(約24兆5630億円)に上る。うち7割がEU系。最も多いのがスペインで、フランス、イタリア、ドイツと続く。
「トルコそのものではなく、こうした国の銀行が経営破綻するリスクが急浮上したのです。世界的な金融危機の恐れが高まり、リスクオフの流れが強まった。リスク資産である株は売られたのです」(ちばぎん証券アナリストの安藤富士男氏)
リラ安の根は深い。2年前、トルコのエルドアン政権へのクーデター未遂事件にかかわったとされる米国人牧師が逮捕、拘束された。トランプ米大統領は牧師の解放を要求しているが、エルドアン大統領にその気はさらさらないといわれる。怒ったトランプは鉄鋼の輸入制限を強化するなど経済制裁を発動した。
「トランプ大統領は11月の中間選挙を控え、攻撃の手を緩めようとはしないでしょう。一方のエルドアン大統領も6月の大統領選に勝ったばかりだし、いまは引き下がれない。長期戦の可能性もあります」(第一生命経済研究所主席エコノミストの西濱徹氏)
エルドアンは10日付のニューヨーク・タイムズ(電子版)に論文を寄稿。「トルコは他の友好国、同盟国を模索する」とし、暗にアメリカとの対立姿勢を鮮明にした。
「2001年の米同時多発テロや08年のリーマン・ショックは9月でした。9月は暴落が起きやすい月といえます。身構えておくべきでしょう」(金融関係者)
トルコ発の金融危機を覚悟すべきかもしれない。 
●トルコ主要各紙の目玉ニュース 8/15
ヒュッリイェト紙 「エルドアン大統領から電撃発表:『アメリカ製の電気製品をボイコットする』」
レジェプ・ターイプ・エルドアン大統領が、トルコはアメリカの電気製品をボイコットすると発表した。エルドアン大統領は、政治経済社会研究財団がアンカラ商工会議所コングレシウムで開催した「与党となって16年、公正発展党(AKP)シンポジウム」で、アメリカの制裁決定を検討してあらゆる措置を講じ、講じ続けると述べた。
ハベルトゥルク紙 「ビナリ・ユルドゥルム議長:『トルコはこの危機をうまく乗り越える』」
トルコにいる各国大使と面会したトルコ大国民議会(TBMM)のビナリ・ユルドゥルム議長が、「トルコは政治的な目論見により行われる経済的な押し付けを容認しない。トルコはこの危機をうまく乗り越える。為替の動揺はトルコの経済的指標により説明できるものではない。この進捗の土台には経済ではなく、政治がある」と語った。
ワタン紙 「アルバイラク財務相、外国人投資家たちと会談へ」
アルバイラク財務大臣が、明日(8月16日)、外国人投資家たちとテレビ会議を実施する。アルバイラク大臣は、最新の経済状況を話し合った後に、国際的な投資家たちに直接メッセージを伝える。このテレビ会議はアメリカ、ヨーロッパ、中東の投資家たちをはじめ、全世界の750-1000人の投資家の参加が見込まれている。
サバフ紙 「ターキッシュエアラインズ(THY)、アメリカに本部を置く機構に宣伝活動をしないと発表」
トルコ最大の諸企業が、アメリカに向けた宣伝活動をやめる運動を支持している。トゥルク・テレコムに続いてターキッシュ・エアラインズも発表を行った。ターキッシュエアラインズは、アメリカに本部を置く諸企業への宣伝活動をやめると発表した。ターキッシュエアラインズのヤフヤ・ウストゥン報道次官はソーシャルメディア上で発表を行い、「ターキッシュエアラインズとしてトルコ国家と国民を支える。この件に関する必要な指示は同社支部に与えられた」と述べた。
スター紙 「ワン県でウラルトゥ時代の足跡が発見される」
歴史的なワン城周辺で、イスタンブール大学文学部ワン地域歴史考古学研究センターのエルカン・コンヤル局長の主導で実施中の発掘調査で、ウラルトゥ時代の人の足跡が発見された。コンヤル局長は、長さ26センチメートルと確認された足跡を、発見された場所から切り取って研究室に運び、必要な研究を行った後に博物館に引き渡すと述べた。 
 8/16

 

●トルコ大統領、「アメリカの電気製品をボイコットする。トルコはハイテク製品を世界に売る力がある」と宣言 8/16
トルコとアメリカの貿易戦争、ヒートアップです。
トルコのエルドアン大統領は先日、Apple(アップル)のiPhoneを含むアメリカ製の電化製品をボイコットすると8100万人の国民に発表しました。大統領が「アメリカ製品をボイコットするよ」と宣言してしまうというのはかなりスケールの大きな話なわけですが、これはトルコとアメリカ間の貿易戦争が激化するのを受けて、トルコの貨幣であるリラの価値が暴落してしまったことに対する決断のようです。
首都アンカラで行われた熱のこもったスピーチの中で、エルドアン大統領はアメリカを「経済ヒットマン」と例えています。国の経済力を武器のように使っているという批判です。アメリカのあらゆるプロダクトに関して、トルコ内ではもっといいもの作ることができる、とも主張しています。当分の間はAppleではなく、サムスンの製品を利用するようです。
加熱するアメリカ人牧師拘束問題
トルコには国内産のスマートフォンブランドであるVenusとVestelも存在しており、彼らの製品も信頼できる、と加えています。トルコのスマートフォン・ユーザー数は4700万人ですが、iOSの利用率は16%程度であると推測されています。
大統領自身によるボイコット発表、ということで影響は大きそうですが、詳細に関してはこのスピーチでは語られていません。トルコで長期拘束されているキリスト教福音派のアメリカ人牧師の釈放を求めるアメリカとトルコの間での貿易戦争は特にこの1週間でエスカレートしてきました。キリスト教福音派はトランプ大統領にとって重要な支持層です。その教父であるAndrew Brunson牧師はテロ組織支援などの疑いでトルコで長期拘束されています。
これに対する制裁として、トランプ政権は先週金曜日に経済制裁を開始しており、鉄鋼への関税を2倍の50%に、アルミニウムへの関税を20%へと高めました。
アメリカの国家安全保障問題担当大統領補佐官であるJohn Bolton氏はその後、トルコのSerdar Kilic駐米大使とホワイトハウスで会談し、Brunson牧師の解放について語ったのですが、どちらも引き下がらずに会談が終わったようです。エルドアン大統領は、アフガニスタンにおけるアメリカの戦争にもトルコは支援をした、と過去の支援行為をアピールしています。また、アメリカはトルコに対して陰謀を展開しており、リラの暴落も論理的に説明がつかない、とも述べました。
「トルコのハイテク製品を世界に」
トルコを訪れる観光客たちはこのリラ暴落を利用して、シャネルやルイ・ヴィトンといった高級プロダクトを買い漁っているようです。米ドルを売り、リラを購入するように自国民に訴えるエルドアン大統領ですが、リラは継続して価値を下げています。今年だけでリラは40%下がり、この月曜日だけでなんと10%も価値を下げているんです。
「トルコはすぐに、ハイテクプロダクト、デザインプロダクトを世界に向けて売るようになる」と述べるエルドアン大統領。今回の対立がある前はトランプ大統領とエルドアン大統領は比較的良好な関係を保っていました。権力基盤を固めたトルコ当局に対してお祝いの言葉を送ったことすらあったんです。
国務省とトランプ大統領下のホワイトハウスはこの一連の動きの中でしっかりと連携を取れています。通常であれば国務省とホワイトハウスは連携をとって動くものですが、トランプ政権下では「この光景は久しぶり」と新鮮な気持ちを隠しきれません。なぜロシアによる選挙介入だと連携がすぐさま取れなくなるのか、不思議ですよね。
国務省のHeather Nauert氏は8月9日の段階で「我々が欲しい成果とは、Brunson教父が家に帰ることです、とだけ述べておきます」と発言しています。エルドアン大統領は貨幣価値の下落を指して、「この時点で、私達が払っている犠牲がある」と言った上で、「トルコに経済戦争を仕掛けてくる側が払うことになる犠牲もあるだろう」と警告しています。 
●トルコ 米製品へ新たな報復関税 8/16
トルコ政府は15日、アメリカによる経済制裁への報復として、アメリカからの一部の輸入品に対する新たな追加関税を発動したと発表しました。この措置で、アメリカ製乗用車への関税は120%に。アルコール類は140%に、葉タバコは60%にそれぞれ引き上げられ、地元メディアによりますと合わせておよそ615億円の上乗せとなります。トルコのオクタイ副大統領は、追加関税の発動について、「アメリカ政府によるトルコ経済への意図的な攻撃に対する報復措置だ」とツイッターに投稿しています。また、トルコ西部の裁判所は15日、トルコで長期にわたり拘束されているアメリカ人牧師、ブランソン氏の自宅軟禁などの解除を求める請求を退ける決定を下しました。エルドアン大統領の報道官は「大統領はアメリカとの問題は解決できると考えているが、そのためにはアメリカがトルコの裁判所への干渉をやめなければならない」と述べています。トルコとアメリカの対立が激しさを増す中、カタールのタミム首長は15日、トルコの首都アンカラでエルドアン大統領と会談し、トルコに対し、150億ドル、およそ1兆6,600億円に上る直接投資を行うと表明しました。ロイター通信によりますとこの直接投資は、トルコの金融機関などに回されるということです。トルコはこれまで、サウジアラビアなどによる国交断絶で孤立を深めていたカタールを支援してきました。 
●トルコ、WTOへの提訴手続きを開始 8/16
トルコはアメリカとの間で発生した危機を解決するために、世界貿易機関(WTO)への提訴手続きを開始した。
第10回大使会議の3日目、会議にチャウショール外務大臣と商業省のルフサル・ペキジャン大臣が招かれた。
会議で演説をしたチャウショール外務大臣は、アメリカとの間で発生している経済危機に言及した。
チャウショール外務大臣は、「このことを知っておいてもらいたい。この過程において、我々はすべきことはした。あらゆる面で建設的であった。しかし、向かい側にはこれがきちんとわかるような相手がいないこともわかった」と述べた。
トルコは危機を解決するための話し合いの場に着く用意ができていることを強く表明したチャウショール外務大臣は、「我々はあらゆることを話し合う用意はできているが、ひとつ条件がある。それは、脅迫や強制はないということだ。そして、もちろん制裁などという間違った手段にも出ないことである」と述べた。
商業省のペキジャン大臣は、アメリカに対し、世界貿易機関(WTO)の小委員会(パネル)への参加を要請したと述べた。ペキジャン大臣は、「アメリカに小委員会(パネル)への参加要請は届いた。これにより、世界貿易機関(WTO)への提訴手続きが開始されたことになる」と発言した。 
●新興国通貨の多くは回復基調に?トルコリラの動向は?
こんにちは、フィスコマーケットレポーター三井智映子の「気になるレポート」です。トルコとアメリカの関係悪化が懸念されていますね。また、ECBがユーロ圏の銀行が抱えるトルコ関連の投融資残高を調べていると報じられたことで、前週末10日にトルコリラが急落。しかし、週明けにトルコリラの下げは一服しています。トルコリラは今後どう動くのでしょうか?今回は、気になるトルコリラについてのレポートをご紹介します。
トルコは、クーデター未遂事件の支援疑惑から米国人牧師のアンドリュー・ブランソン氏を拘留しており、アメリカは釈放を求めましたがトルコ側はこれを拒否。トランプ政権はそれに対してトルコに大規模制裁を課しました。
松永さんのレポートでは、トルコの対米関係について『サンダース米大統領報道官は14日の会見で、トルコの姿勢に対して「トランプ大統領は大きな不満を感じている。」と述べました。そして、米政府高官は14日、「トルコ側が数日か1週間以内に何らかの行動を見せる必要がある。」と述べ、トルコ政府が拘束している米国人牧師を釈放しなければ更なる経済制裁も辞さないことを警告しました』と伝えています。
続けて、『1週間以内にトルコ側が米国人牧師を釈放しなければ、米国が再び経済制裁を強め、トルコリラに対する売り圧力が再び高まる可能性もあります』と分析。両国の関係修復にはブランソン牧師の解放が条件となっていますが、現状ではトルコのエルドアン大統領は解放に応じる意向は示していないため先行きは不透明といえそうです。
さらにレポートでは、『欧州復興開発銀行はトルコリラが40%下落した場合に備えて内部的にストレステストを実施していたことも伝えられております』と説明しており、『そのストラステストの結果は、「損失は出るものの、耐えられる」というものであり、この調査結果は先月の理事会で加盟67カ国に報告されていたそうです』と伝えています。そして、このストラステストの調査結果から、『先週末より急落した新興国通貨の多くは回復基調に転じるのかもしれません』と考察しています。  
●通貨暴落のトルコにカタールが150億ドル投資約束 8/16
15日の外国為替市場で、トルコリラが対ドルで買われ、前日と比べ一時約8%高となった。トルコの銀行監督当局が事実上の金融引き締めに乗り出し、投資家が買い戻した。混乱が続いているトルコリラは、カタールによる投資表明を受けてやや落ち着きを取り戻した。
産経ニュースによると、米国とトルコの対立激化を背景に、リラは13日のアジアの外国為替市場で一時1ドル=7リラ台前半まで急落したが、15日は5.8リラ台に上昇する場面があったという。
また、NHKによると、16日の東京株式市場、日経平均株価は、一時、300円を超える値下がりとなっており、トルコとアメリカの対立が激しくなっていることや、中国経済の先行きへの懸念から売り注文が広がっているようだ。 
 8/17

 

●FX投資は大損続出…暴落トルコ・リラは儲けるチャンスか 8/17
トルコ通貨リラの暴落に、日本の個人投資家も大打撃を受けている。ネット上には、リラに投資していた投資家の悲鳴が飛びかっている。
トルコ・リラは、FXを手掛ける日本の個人投資家のなかでは人気の通貨だった。とくにリラの下落が目立ちはじめた5月以降、取引が活発になり、「リラ・円」の取引金額は6月時点で1兆4000億円にまで膨らんでいた。もともと、FX取引をやる個人投資家は「逆張り」することが多い。下落局面でも「もう底値だ」と判断し、勝負に出たようだ。だが、さらにリラが下落し、強制ロスカットを迫られる投資家が続出してしまった。
しかし、リラの価値は、この1年で50%も下がっているだけに、「もう底値」の可能性もある。今週初め、1ドル=7リラ台まで売り込まれたリラは、15日には一時6リラの節目を抜けて5リラ台まで上昇した。
はたしてリラ投資に参戦してもいいのか。
「間違いなくやけどするので、やめたほうがいいでしょう」と金融ジャーナリストの鈴木雅光氏がこう言う。
「昨年の秋、1リラ30円くらいのとき、あるテクニカルアナリストが『来年一番面白い通貨』としてトルコ・リラへの投資を勧めていました。話に乗ってしまった人が被害者になっています。FXなら損切りできるのでまだマシですが、悲惨なのは、高金利をエサにトルコ・リラ債券を証券会社で買ってしまった高齢者などです。すぐに償還できない上に利回りが17%あっても為替手数料が10%以上というケースがザラだからです」
株式アナリストの櫻井英明氏はこう言う。
「そもそも投資は、知らないモノには手を出さないことが鉄則です。もし、リラに投資するなら、トルコの政治や経済についてよく知っているか、勉強してからにすべきです。基本的にリラへの投資は勧められない。10年間で価値が10分の1、5年間で3分の1になっている。下落トレンドだからです。もちろん、損をする覚悟で目をつぶって投資するなら別です」
トルコは人口8000万人。経済規模は世界17位、政府の債務もGDP比30%弱どまりと、決して悪くない。
もし、アメリカと電撃的に和解したら、リラは上昇するかもしれない。いずれにしろ、リラ投資は小遣いの範囲内にした方がよさそうだ。  
 8/18

 

 
 8/19

 

●米 VS トルコ なぜ日本の脅威に? 8/19
生野陽子キャスター「今回取り上げるのは、最近、急激に悪化しているアメリカとトルコの関係についてです」
能勢伸之解説委員「今回のテーマはコチラ!『トルコの“お買い物”が、日本の安全保障に落とす影?!』です」
生野「トルコが何を買ったら、日本の安全保障に影響があると、能勢さんはにらんでいるんですか?」
能勢「トルコは今、アメリカの最新鋭のステルス戦闘機『F-35』を100機導入したいとしているところなんです」
生野「『F-35』といいますと、日本もアメリカから購入している戦闘機ですよね」
能勢「その通りなんです。すでにアメリカ側は、6月の段階で、その『F-35A』2機をトルコに、アメリカ国内で引き渡しているんですね。トルコ空軍も、アメリカ国内にパイロットを送り込んで、16カ月の訓練を開始したばかりなんです」、「ところがその一方で、トルコはNATO(北大西洋条約機構)の加盟国であるにもかかわらず、ロシアから『S-400』という地対空ミサイルを買おうとしているんですね」
生野「ロシアからも、アメリカからも、国防に関わるような大きな買い物をしようとしているって、これは大丈夫なんですか?」
能勢「大丈夫と言えるかどうかなんですけど、トルコが『S-400』を導入すれば、ロシアが整備や部品供給で関わることになります。アメリカ議会は、ロシア側が『S-400』を通じて『F-35』の弱点を分析することを懸念しているんじゃないかと思うんですね」、「トランプ大統領は、13日に『国防権限法』という法律に署名して、新しい法律を成立させたんですが、この法律は、国防予算に議会からの要求が組み合わさってできた法律なんです。トルコがロシアから『S-400』を買おうとしていることに対して、90日以内に、国務省と国防長官から、議会へ報告書を出すように求めているんです」、「その内容の一部なんですけども、『S-400』がアメリカ製の兵器システムに与える影響の調査。特に『F-35』の作戦上、カウンターインテリジェンス上のリスクと、その緩和する手段について書くように求めていて、報告書が提出されるまでは『F-35』をトルコに引き渡すのを凍結するようにというふうにしているわけなんです」
生野「日本も防衛の要として『F-35A』を導入していますから、トルコがロシアからミサイルのお買い物をするとなれば、少なからず影響は出そうですよね」
能勢「『F-35A』は、日本の安全保障の根幹を担うステルス性の戦闘機ですね。だから、その特殊な能力を暴かれると、影響は小さくないですよね」、「さらに、トルコが加入しているNATOでは、防空システムを統一化しています。そこにロシア製の『S-400』が入ってくるとなると...」
生野「何だか、ややこしい話になってきそうですね」
能勢「決して、対岸の火事として見過ごすわけにはいかないかもしれない問題ですね」  
 8/20

 

●カタール・トルコ両中銀が通貨協定 リラ安定狙う 8/20
カタールの中央銀行は19日、トルコの中銀と17日に通貨スワップ協定を結んだと発表した。米国との対立が深まる中、トルコの通貨リラが対ドルで下落する懸念が広がっている。ドル建て債務を抱えるトルコ企業も多く、通貨安が同国経済に打撃を与える恐れが出ている。トルコは関係が深いカタールと協定を結ぶことで、リラの安定を狙う。
カタール中銀のホームページによると、17日に両中銀の総裁がカタールの首都ドーハで会談し合意した。スワップ協定により両国の通貨取引を容易にし、市場の流動性や金融の安定を図る。今回の協定の期間や金額などは明らかにしていない。
中銀は自国通貨が下落した際、外貨を売り、自国通貨を買うといった市場介入をすることで為替レートの安定を図る。一般的に通貨スワップがあれば、十分な外貨準備がなくても外貨を売り自国通貨を防衛することができる。カタールはスワップ協定により、トルコの通貨防衛を支援する狙いとみられる。
トルコは巨額の経常赤字を抱え、高インフレ下にある。同国在住の米国人牧師問題を巡る米との関係悪化も加わり、金融市場はリラ売りを繰り返している。13日には一時1ドル=7.2リラ台と過去最安値まで下落した。
その後、トルコ中銀の事実上の金融引き締め策や、リラの空売り抑制を狙った銀行監督当局によるスワップ取引制限の導入で、5リラ台まで持ち直した。ただ今回の通貨スワップ協定がリラ安定にどれだけ寄与するのか、金融市場の先行きは予断を許さない状況が続きそうだ。
カタールはスワップ協定に先立ち、タミム首長が15日にトルコのエルドアン大統領と会談し、150億ドル(約1兆6500億円)の直接投資を表明した。ロイター通信は資金は通貨や金融機関の安定に使われるとする金融当局者の見方を伝えた。
2017年6月にサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など4カ国がイランの支援を受けるカタールと断交した以降も、トルコはカタールへの支援を続けてきた。トルコは食料など物資を運び込んだほか、駐留部隊も増派するなど経済封鎖の効果を骨抜きにした。トルコが苦境にある中、今度はカタールが支援の手を差し伸べた形だ。  
●トルコ通貨危機とトランプ追加関税を警戒、トヨタ株も6700円台まで下落 8/20
 新聞ウォッチ 8月20日付
○社説・首都高地下化、日本橋再生のコストが問題だ (読売・3面)
○IT外資に課税、国税苦戦、アマゾン日本法人、14年は11億円 (朝日・1面)
○社説・温暖化対策長期戦略、「脱炭素」へ大胆な転換を (朝日・6面)
○京急×「北斗の拳」コラボ、ラッピング電車や特別仕様看板 (産経・19面)
○猛暑こそ太陽光発電、最高気温更新でも安定 (東京・1面)
○社説・トルコ通貨危機、両大統領に自省促せ (東京・5面)
○JR北、改革待ったなし、2年で400億円台支援 (日経・27面)
○お盆最終盤、空港や新幹線混み合う (日経・31面)
お盆期間最終盤の8月19日は、各地の空港やターミナル駅では夏休みを海外やふるさとで過ごした家族連れなどで混雑したという。きょうの日経によると、19日だけで、5万5000人が入国、新幹線も東京に到着する列車の一部で、自由席の乗車客が100%超となり、指定席が予約で埋まったりしたと伝えている。
8月10日から10日間を夏季休暇の日産自動車など、ロングサマーバケーションもようやく終わり、きょうから業務を再起動する企業も多い。そんな中、お盆休み期間の気になるニュースといえば、きょうの東京が社説でも取り上げているが、やはりトルコの通貨危機が世界経済に悪影響を及ぼしていることがあげられる。
トルコの通貨リラの急落で、東京株式市場でも株価が大幅に下落。8月13日には2万2000円台を割り込み、約1か月ぶりの安値を付けた。
トヨタ自動車の株価も一時3月26日に更新した年初来安値(6531円)に迫る6700円まで下落、17日の終値も6800円台に回復したが動きは鈍い。トランプ米政権が仕掛ける自動車や関連部品の関税を最大25%まで引き上げる輸入制限を回避できるかどうか、先行きが見通せないことも背景にある。米国から撤退しているスズキを除くと、トヨタやスバルなど日本車主要6社の追加関税による負担増は最大で計1兆9000億円に迫るというシンクタンクの試算もあるほどだ。
スズキ株がトヨタを抜いて7500円台で推移していることからみても、リラ通貨急落に加えてトランプ政権の「輸入制限」が自動車株下落の足を引っ張ているようだ。  
 8/21

 

●牧師釈放、トルコに譲歩せず=銀行制裁の回避要求拒否−米大統領 8/21
トランプ米大統領は20日、ロイター通信のインタビューで、トルコで長期間拘束されている米国人牧師の釈放に関し「譲歩はない」と述べ、釈放実現に向け強硬な姿勢を示した。これに関連して米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は、トルコ側が牧師釈放に絡めて自国金融機関への制裁回避を求めたが、米側が拒否したと報じた。
トランプ氏はインタビューで、イスラエル当局に拘束されていたトルコ人女性の釈放のため米国が尽力したのと引き換えに、トルコは牧師を釈放すると考えていたと説明。「彼らはとんでもない間違いを犯した」とトルコを批判した。
ウォール紙が米政権高官の話として報じたところでは、トルコ政府は牧師釈放と関連し、イラン制裁違反の疑いをかけられているトルコのハルク銀行に対する調査を中止するよう要求した。制裁違反が認定されれば、同銀は巨額の制裁金を科される可能性がある。  
●トルコ、米をWTO提訴=鉄鋼関税めぐり 8/21
トルコ政府は20日、米国による鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置が国際貿易ルールに反するとして、世界貿易機関(WTO)に提訴した。トルコが拘束している米国人牧師の釈放問題を背景に、両国の対立が深まっている。
トランプ米政権は3月、トルコや日本などからの鉄鋼製品に25%、アルミ製品に10%の追加関税を課した。今月10日にはトルコ製品を対象に税率をそれぞれ2倍に引き上げると発表。これを受け、トルコは15日、乗用車、アルコール飲料などの米国製品に対する追加関税の適用を表明していた。  
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2018/8