政治不信 自浄能力を失った自民党

人のすること
権力にすり寄り 利権を貪る人はいます
清廉潔白など求めませんが
明らかになった不正くらいは 正しましょう

自民党の自浄能力試験
石破さん 頑張ってください
 


 
 

 

安倍総理周辺 真っ黒な煙 モクモク
総裁三選なら 
政治不信 世の中 社会が乱れます 
 
 
 

 

政治の異変
「美しい日本」「アベノミクス」「国難」 中身なし
景気 アベノミクスの物差しなら低迷 (当り前)
経済政策 潤う人が判りやすい
予算バラマキ 財政健全化の放棄宣言 
順番こ大臣起用
相次ぐ 無知で馬鹿な政治発言 
総理に任命責任はない
総理の驕り  森友学園疑惑 加計学園疑惑
状況証拠は証拠になりません まして「忖度」など
開き直り
   大昔の政治美学なら
   「疑念を抱かれたことは不徳の致す所 お詫びし辞任します」
総理の座 お譲り下さい
あと3年 口を開けてお待ちします
政策不明 自覚のない派閥
役所の不祥事
担当大臣の決め台詞 「遺憾です」
大臣に監督責任はない
役人の忖度文化 ( 役人の必須能力 / 記憶力不要・文書管理の下手なこと )
総理をお守りします
ご褒美は二階級特進 
司法まで尻尾を振る
行政文書 自由に改ざん可能です
一事が万事
上が上なら下も下
国民に背を向けた行政 政治
おまけ 忖度メディア 跋扈
表面撫でて 目にした結果だけ報道
堀っくり返したりしません 

 

一事が万事
一つの事を見るだけで、他のすべての事がおしはかられる。一つの小事でも、ひいては万事その調子になる。 
塞翁が馬
昔、中国の北辺の老人(塞翁)の馬が逃げたが、後に立派な馬をつれて帰ってきた。老人の子がその馬から落ちて脚を折ったが、そのために戦争に行かずにすんだ。このように人生の吉凶は簡単には定めがたいことをいう「淮南子‐人間訓」の故事による格言。人間万事塞翁が馬。 
 
 

 

●「黒い霧解散」再来はあるか 2018/5
4月21日、土曜日。首相の安倍晋三は自らが主催する毎年恒例の「桜を見る会」を、今年も新宿御苑で開催した。快晴で、都内の気温は26度まで上昇。すでに桜は散っていたが、桜の花をイメージさせるピンク色のネクタイを身につけた安倍は、タレントの梅沢富美男やピコ太郎、将棋の元名人・加藤一二三、平昌五輪スピードスケートで金、銀、銅メダルを獲得した高木美帆ら各界著名人や旬のスター、約1万7000人を前に挨拶に立つと、こう言って殊勝に頭を下げた。
「行政に対する信頼を揺るがす事態となっている。国民の皆様に改めてお詫び申し上げたい。膿を出しきって組織を立て直していく」
実はこの日、メディアにどう扱われるかを官邸サイドが心配していた招待客がいた。小川えり。6年連続、東海地区でナンバーワンの人気を誇る名古屋の現役キャバクラ嬢だ。2日間で1億円超の驚異的な売り上げを果たしたこともある斯界の有名人なのは事実だが、誰が推薦したのか、「キャバ嬢では史上初めて」(関係者)同会に招かれた。前財務次官の福田淳一が、一連のセクハラ騒動の最中に「時には女性が接客をしているお店で言葉遊びを楽しむようなことはある」とコメントし、世間の激しい批判にさらされた直後だけに、官邸筋からは「よりによってこんなタイミングで」という懸念の声が漏れた。
しかし小川は同会終了後、「(事前に)沢山の報道メディアに出させてもらい想像以上に話題が大きくなりすぎて色んな方達に迷惑がかかると思った為、時間をずらして行きました」と自らのインスタグラムで告白。首相との接触を避けたのは自発的「忖度」か、官邸サイドの「指示」か……真相は不明だが、写真に一緒に写ることもなく、安倍周辺は安堵したという。
「勝つためにはあらゆることをする」と公言
折しもこの日、北朝鮮は核実験、大陸間弾道ミサイル発射実験の即時中止と核実験場の廃棄などを一方的に宣言。安倍は「前向きな動きを歓迎する」と努めて冷静さを装ったが、内政、外交ともに問題山積で前途は多難だ。
そんな中、安倍の最優先事項は無論、9月の自民党総裁選への対応である。しばしば周囲に「勝つためにはあらゆることをする」と公言し、布石を次々と打ち始めている。
前日の4月20日。東京・芝公園のザ・プリンス パークタワー東京で、自民党所属の都道府県議会議員と政令指定都市の市議会議員の代表者を対象にした研修会が開かれた。3部構成の研修会では憲法改正に関する議論を中心に、働き方改革、生産性革命・人づくり革命、地方創生、外交・安全保障などの政策テーマごとに分科会が開催された。メディアには非公開。冒頭の挨拶で、「メディアにICレコーダーを渡されて頼まれても、録音してあげることなどないようにしてください」と保秘を徹底したのは、安倍側近の自民党幹事長代行・萩生田光一である。彼が中心となり、総裁選戦略の1つとして年明けから準備してきたこの会に、日米首脳会談後、帰国したその足で安倍も駆け付け、講演を行った。
政府の相次ぐ不祥事を陳謝するとともに、安倍は「地方の声を聞かせて欲しい」と繰り返し、地方議員の意見に耳を傾ける姿勢もアピール、来年4月の統一地方選に向けた結束を訴えた。
総裁選では地方票の行方が勝敗を大きく左右する。世論の反発が強い森友・加計問題の対処のために、安倍の“お友達”評論家の小川榮太郎が著した『徹底検証「森友・加計事件」 ――朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪――』が約800人の出席者全員に配布され、自民党法曹団代表の弁護士、橋爪雄彦が「森友学園問題に昭恵夫人は関係していない」などと主張する解説まで行う念の入れようだ。
大阪で見せた変化とは
もっとも、各県連の足並みはそろっていない。
総裁選への出馬を公言している総務相・野田聖子のおひざ元、岐阜県連幹事長の猫田孝は研修会後、「国民の不信は強い。真相究明してしっかりと対策を立てなければならない」と記者団に執行部への不満をぶちまけた。一方、首相の地元山口の県議会議長・柳居俊学らはその夜、虎ノ門のホテル「アンダーズ東京」のバーで安倍と懇談。安倍は「総裁選をよろしく頼む」と支援を要請した。
2012年の総裁選。地方票は安倍87票に対し、石破茂は倍近い165票を獲得。今回も石破の地方人気が健在なら、安倍3選のハードルは極めて高い。だからこそ安倍は寸暇を惜しんで地方票の取り込みに躍起だ。
4月14日に自民党大阪府連の会合に出席したのも、焦りの表れだ。安倍はこれまで、改憲勢力の日本維新の会とは良好な関係を築いてきた。維新の本拠地・大阪で直接対峙してきた自民党大阪府連には、安倍への根強い不信感がある。というのも、維新が掲げる「大阪都構想」をめぐり、反対する大阪府連と静観する党本部の間に深い溝が長らく横たわってきたからだ。
安倍はこの日、驚くべき変化を見せた。「府連と自民党(本部)との考え方が違うと問われることが多いが、府連の考え方が党総裁である私の考え方だ」と述べたのだ。安倍が大阪都構想に公の場で反対の意を示したのは初めて。総裁選のための、なりふり構わぬ“維新切り”にも見えた。これに先立つ2月、石破派が大阪でセミナーを開催した際は100人以上の地方議員を含む約1000人が参加。地方議員からは「石破氏を首相にすべきだ」との声が上がっていた。こうした動きをけん制するための大阪入りだったのは明らかだ。
同様の動きは枚挙にいとまがない。例えば2月の沖縄・名護市長選の後、新市長に同行して名護市議団が官邸を訪れた際のことだ。安倍との記念撮影にのぞんだ一行に対し、首相秘書官(政務)の今井尚哉が「時間がかかるので全員で一緒に撮りましょうか」と呼びかけると、すかさず安倍は「いや、お一人ずつで構わないから」とこれを制した。地方議員を手厚くもてなす安倍の狙いは言うまでもない。
総裁選に向けた「アメ」ではないか
4月2日には官房長官の菅義偉が、来年6月に大阪で行われるG20サミットに関係する閣僚会合の開催地を発表した。財務相・中央銀行総裁会議は福岡市、労働雇用相会合は愛媛県松山市、観光相会合は北海道倶知安町、農相会合は新潟市、貿易・デジタル経済相会合は茨城県つくば市、エネルギー・地球環境関係閣僚会合は長野県軽井沢町、保健相会合は岡山市、外相会合は愛知県――。国際会議誘致は地元の経済を潤す。官邸主導で決まった開催地も、総裁選に向けた「アメ」ではないかとの指摘が聞こえてくる。
さらなる「アメ」と取られかねない動きも見え隠れする。地方議員が厚生年金に加入できるようにする関連法案だ。7年前、旧民主党政権時代に地方議員年金が廃止されて以来、地方議員が加入できるのは、兼業議員を除けば国民年金のみ。彼らが厚生年金に加入できるようにすれば、成り手不足の解消につながるとの大義名分で自民党PTを中心に進められてきた話だが、当然、公費負担を伴う。議員立法で会期内成立をめざす自民党執行部は、早々に公明党の支持も取り付け、成立に向かって邁進してきたが、4月13日の総務部会後、党筆頭副幹事長の小泉進次郎は「農業、漁業、林業、介護、建設、物流、どこも人手不足で大変。なぜ議員だけ年金の話になるのか」「国民の理解を得ることはできない」「政策の意思決定プロセスに瑕疵がある」と執行部を鋭く批判した。
野田聖子の携帯メール
なりふりかまわぬ安倍に物申した人物がもう1人いる。野田聖子だ。
知られざる動きがあったのは、財務省の文書改ざん問題などで政権が支持率低下に悩まされていた3月下旬のことだった。野田は安倍、菅、今井の政権中枢3者に自らの携帯からメールを送信した。「安倍さんは総裁を一度辞任した方がいい。その上で出直し総裁選をやり、そこで再び支持を得ればいいのではないか」といった内容だったという。安倍と菅はスルー。今井だけは「こんな小さなことで総辞職などできません」という旨を返信した。
野田はその少し前から、政治的公平を担保する「放送法4条」の見直しでメディアを揺さぶる安倍の姿に憤っていた。3月9日夜、旧三井財閥ゆかりの高輪館。かつて東芝の迎賓館だったのを一昨年日本テレビが買収。ゲストハウスに使うこの館に足を踏み入れた安倍は、次期民放連会長に内定した日本テレビ社長の大久保好男と向かい合った。放送法4条を撤廃すべきだと主張する安倍に、大久保は強く反発。大久保はこの後、野田にも反対の意向を伝えている。野田は、これまで安倍政権に擁護的だった読売グループが反安倍に動き始めていると察知し、その後国会答弁でも「4条を撤廃すれば公序良俗を害するような番組や事実に基づかない報道が増加する」と踏み込むなど、強気の攻勢に出た節がある。
安倍政権の揺らぎは、連立を組む公明党の支持母体・創価学会にも及ぶ。
「ポスト池田大作の本命はわからなくなった」。創価学会主任副会長だった谷川佳樹が今年1月、壮年部長に突如異動し、学会には激震が走った。次期会長の有力候補に浮上したのが、同じ主任副会長だった萩本直樹。永田町では谷川のほうが名が知られているが、学会内では萩本の方が年齢もキャリアも上だ。谷川は菅と親しい学会副会長(選挙担当)の佐藤浩とのパイプを利用し、着々と地歩を固めてきた。だが、谷川世代に交代するまでの「つなぎ」と目されていた第6代創価学会会長の原田稔が、安倍政権と歩調を合わせてきた「谷川・佐藤」ラインから、軌道修正を図っていると囁かれる。原田の任期は来年11月まで。学会の平和理念に照らし、原田が名誉会長の池田や周辺の理解を得るために「安倍離れ」を徐々に進めているのではないかとの声が静かに広がりつつあるのだ。
「解散も1つの選択肢だ」
こうしたなか、内閣官房参与の飯島勲は4月17日のBSフジ「プライムニュース」で「1日も早く衆院を解散し、安倍内閣が重要課題に向き合う姿勢を国民に知らしめて欲しい」と述べ電撃解散を進言した。解散総選挙の日程として「5月23日公示・6月3日投開票」「6月27日公示・7月8日投開票」という具体的な2案まで提示。さらに翌週には自民党国対委員長の森山裕が「(野党から)内閣不信任案が出されれば、解散も1つの選択肢だ」と語り、永田町はざわめいた。
普通に考えれば、昨秋の総選挙から半年強での解散は無理筋だが、確かに野党6党は今もバラバラのまま。最大の敵・立憲民主党の政党支持率もせいぜい十数%で自民党の約3分の1だ。ここで解散に打って出て過半数を獲れれば、「モリカケ問題の禊は済んだ」と言える、との理屈には一理ある。
飯島は同番組で「大義は関係ない。大平(正芳)内閣で当時の社会党が内閣不信任案を出して可決され、選挙からたった7カ月でハプニング解散に至ったことがある」と言及したが、安倍の念頭にあるのは、むしろ「黒い霧解散」の再来だろう。
1966年末、自民党議員の相次ぐ汚職や公私混同の醜聞で大揺れに揺れ、政権が窮地に立たされる中、安倍の大叔父・佐藤栄作はまさかの解散に打って出た。結果、議席数は微減ながらも善戦し、安定多数を確保した。
「内閣改造をするほど総理の権力は下がり、解散をするほど上がる」とは佐藤の至言だ。不祥事に追い込まれた中で「伝家の宝刀」を抜き、佐藤は確かに7年8カ月におよぶ長期政権の足場を築いた。あれから半世紀、安倍は大叔父の奇策に倣うのか。6月20日の会期末まで残り1カ月余り。平成の「黒い霧」は未だ晴れない。 
 
 

 

●「安倍三選」を左右する“唯一のリスク要因”小泉進次郎の動向 7/10
「選挙っていうのはね、勝つと負けるとでは大きな違いなんですよ。勝ったのは大きいですね」
6月20日夜、客単価4万円は下らないという東京・銀座のステーキ店「かわむら」で、最高級の肉をほおばりながら、首相の安倍晋三は、饒舌に語った。「選挙」とは、10日前に投開票された新潟県知事選のこと。与党が推す候補が初当選した。
席を並べたのは、財務相の麻生太郎、自民党幹事長・二階俊博ら、秋の総裁選で三選を目指す安倍を支える麻生派と二階派の幹部たち。安倍の出身派閥の細田派を加えたこの三派には、降ってわいた知事選の前後で、永田町の景色が、全く違って見えていた。
安倍が「選挙の顔」になり得るかの試金石
前新潟県知事の米山隆一が週刊文春による「買春」報道で4月18日に辞任を表明。自民は二階の運輸相時代に秘書官だった前海上保安庁次長の花角英世を擁立。かたや野党は女性県議を立て、与野党対決型の選挙戦になった。
安倍自身や妻・昭恵に端を発した森友学園や加計学園の問題で内閣支持率が低落傾向にあるさなかだったこともあって、国会会期末が迫る6月10日に設定された知事選は、政権にとっての中間選挙の様相を帯びた。特に来夏に改選を迎える参院議員にとって、傷ついた安倍が、それでも「選挙の顔」になり得るかの試金石だった。
実際、この間、参院側には不穏な動きがあった。加計学園をめぐる愛媛県の文書の国会提出を野党が求めたのに対し、参院自民は、あっさり受け入れた。提出された文書には、安倍が「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と語ったとされる記述があり、その後、安倍は国会答弁で苦しんだ。総裁三選に向けて野党の追及を避けたい安倍や官房長官の菅義偉が早期の国会閉会をもくろむ中、定数を6増する参院選挙制度改革案を唐突に打ち出し、国会延長を主導したのも参院自民だった。
参院自民の中核は竹下派だ。裏には引退して、なお影響力が残る元党参院議員会長の青木幹雄がいる。青木と一心同体ともいえる党総務会長の竹下亘は、安倍のライバルである元幹事長・石破茂とも関係が深い。その竹下は「安倍さんが引き続き総理になるか。『はい、その通り』とは即答しかねる」と繰り返す。「知事選で負ければ、参院側が反安倍で動き出しかねない」との疑心暗鬼が広がっていた。
果たして結果は自民が推す花角が当選。決め手は、大票田の新潟市内で約1万8000票の大差をつけたことだ。党職員は言う。「二階派秘書軍団のローラー作戦が大きい。国政の補選の比ではなかった」。二階の政治の師である元首相の田中角栄のおひざ元で繰り広げた、角栄さながらの人海戦術の勝利だった。
「これで安倍三選は決まった」。三選に期待する議員の間では、すでに総裁選の勝負は決したかのような空気が広がる。ステーキ店の宴は、安倍にとっては、中間選挙をまとめてくれた二階に対する慰労の場にもなった。
安倍は岸田に激怒した
安倍は国政選挙になると、どんなに圧勝の情勢調査が流れても、自ら名簿を取り寄せ、街頭演説の合間の移動中、各地の経営者や県議に携帯電話で支持を呼びかける。自らが「火の玉」になって動くのは、総裁選も同じだ。
6月18日夜。安倍は自民党政調会長の岸田文雄と、東京・赤坂の日本料理店「古母里」へ赴いた。しゃぶしゃぶやすき焼きが売りの同店だが、安倍は「肉はやめよう」と魚料理を選び、約2時間、濃密な時間を過ごした。
48人を擁する党内第四派閥・岸田派の領袖を誘ったのは安倍のほうだった。国会議員票の過半数に迫る細田、麻生、二階の三派を、まず固める。次に、旗幟を鮮明にしない他の派閥に支持を広げていく。それが安倍の基本戦略だ。2012年末の第二次安倍政権発足以降、政権の中枢で安倍を支えてきた岸田だが、総裁選での対応をいまだに明言していない。
二人はビールの後、日本酒に移った。熱燗を楽しみ、店を出た岸田は記者団に「北朝鮮と終盤国会、もちろん総裁選挙の話もあった。内容はノーコメント」と語った。
このニュースに、ネット上は荒れた。
「今日のような日でも総裁選」
「地震があった晩でも総裁選の話をしながら日本料理店で会食か」
震度6弱の揺れが大阪をおそった当日の夜だった。実は、この日、岸田は大地震発生を理由に、延期を模索。だが安倍側の意向で会食は強行された。
批判されるのが目に見えているのに会食を延期しなかったのは、安倍に内心、余裕がないからではないか、と思わせるエピソードがある。
冬にまで、さかのぼる。1月25日夜、安倍と岸田は二人きりで会食した。この日はフグ。ビールの後はひれ酒を安倍が一杯、岸田が二杯楽しんだ。この日、安倍は能弁に語っていた。「今回の総裁選は、党総裁としての権限を最大限に使うつもりだ」。一方、岸田はこの2時間の会食で、総裁選への対応に踏み込まなかった。
3週間後の2月16日、岸田は、安倍最側近の党幹事長代行・萩生田光一のパーティーで言った。
「来年は事多き1年だ。安倍総理も来年に向けて、力を蓄え、この大切な年を迎えなければならない」
岸田の言葉は、来年2019年の統一地方選や参院選は、安倍首相で戦う、つまり、今年の総裁選では岸田自らは立候補せず、安倍を支持する、と受け止められた。そうした見方が一斉に報じられもした。だが3日後、岸田は「総裁選への対応とは別次元の話。強引にこじつけた報道は実態とは違う」と釈明、不出馬報道を打ち消した。
実はこの時、安倍は激怒したという。「俺を支持するようなことを一度言ったのに。早く、俺を支持するって言えよ!」。森友・加計学園の問題が再燃する前だったが、安倍は焦っていた。
石破の地方票を崩すため、閣僚会議誘致の陳情を利用
焦りの淵源は、石破の存在にある。
2012年総裁選。1回目の投票では地方票300票の半数を大きく超える165票を奪った石破に対し、安倍は87票。国会議員だけによる決選投票で逆転し、総裁再登板を果たしたが、2015年に無投票で総裁に再選されるまでの3年間は、党員の圧倒的な支持を受けた石破に、陰に陽に配慮せざるを得ない屈辱があった。
だからこそ、三選後の3年間に思い通りの政権運営をするためには、今回こそ、石破を屈服させなければならない。地方票でも石破を圧倒することは、この6年間の政権運営の評価にもつながる。安倍は圧倒的三選に向けて、岸田に語った通り、総理総裁として権限を最大限に活用している。3月前半には党の各県連幹部を務める議員や県幹部、地方議員が次々と首相官邸に安倍を訪ねた。岡山、愛知、愛媛、北海道、長野、茨城。2019年に大阪で開かれる主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせた関係閣僚会議の誘致のためだ。中堅議員は「これも総裁選対策だ」と解説する。萩生田ら安倍側近は、石破の地方票を崩すため、安倍の地方行脚を、と考えるが、公務で忙しく、そう簡単ではない。だからこそ、閣僚会議誘致の陳情を利用しようというわけだ。
そして時間を見つけては、地方に直接、出向く。6月2日には滋賀県連大会に出席。地方組織の定例大会に総理総裁が出席するのは異例だが、首相が出席できる日に合わせるため、官房副長官の西村康稔らが動き、別の日に設定されていた大会を2日に動かすという念の入れようだった。石破は親しい知人にこうぼやいた。
「俺が強いところに、総理が狙い撃ちしている。こんなに器が小さいとは驚くばかりだ」
首脳会談で拉致問題の前進があったと記者団に強調
首相として向かい合っている北朝鮮問題も、安倍や周辺は三選への追い風とすべく、利用しようと躍起だ。
「金委員長は、この問題は解決済みと公の席で言ってきたが、そういう反応はなかった。大きな前進だ」
米大統領のトランプと、北朝鮮朝鮮労働党委員長の金正恩による米朝首脳会談があった翌日の6月13日、萩生田は、安倍から聞いた話を紹介し、首脳会談で拉致問題の前進があったと記者団に強調した。「トランプ、金のパフォーマンス合戦で中身がなかった」との見方が広がる中、国内の世論をつなぎとめようとの思惑が垣間見えた。
一方で国内の期待を高めすぎないようにもしている。14日付の読売新聞朝刊一面で、日朝首脳会談について「8・9月で調整」と報じられると、官房副長官の西村は17日のテレビで「8月や9月は、そう簡単に成果を出すのは難しい」と火消しに走った。期待値の調整で、「安倍でしか拉致問題は解決できない」「総裁選が終われば日朝会談。安倍を代えるべきではない」と、総裁選に向けた世論操作をしているとの見方が永田町では強い。
そっぽを向いた小泉進次郎
新潟県知事選のハードルを越え、主要派閥を固め、党員票にも触手を伸ばし、北朝鮮問題も利用する。「権限をフル稼働し、首相としての実績を訴えれば、最終的には党員票でも石破に勝つことができる」(安倍に近い党幹部)との空気が醸成されつつある中、安倍三選の流れを逆流させかねない唯一のリスク要因は、小泉進次郎だ。
小泉は24日、総裁選について「誰が出るかも出ないかも分からない。最後までしっかり考える」と述べるにとどめた。そもそも小泉は2012年総裁選では事前の支持表明こそしなかったが、最終的に石破に投票したことを明言。森友・加計問題で政権の対応を批判する言動が目立ち、「総裁選では石破を推すのでは」との見方がくすぶっている。各社の世論調査で安倍を超えて「次の総理」に選ばれることが多い小泉。政界随一の人気を誇る小泉が事前に石破を支持すれば、父・純一郎が地滑り的に大勝した2001年総裁選のように、世論の力で石破に票が流れかねない。
安倍にとっての天王山だった新潟県知事選での小泉の振る舞いも、そうした見方に拍車をかけた。知事選前の副幹事長会議。二階側近の幹事長代理・林幹雄が「副幹事長も一回は知事選に応援に行くように」と要請したが、林の隣に座る筆頭副幹事長の小泉は返事をするどころか、そっぽを向いて聞き流した。結局再三再四の応援要請にもかかわらず、新潟入りしなかった。
一方、小泉は時折、複雑な心境ものぞかせる。飲み友だちには「政権を批判しすぎると石破さんと同じように浮いてしまう」と語ったこともある。
その小泉が最近強く主張するのが党改革だ。「組織の集約や議員の専門性向上」を打ち出し、党部会での資料のペーパーレス化や、官僚による法案の趣旨説明を各省の副大臣や政務官に行わせる、などの提言をする。だが一方であまりに細かい“改革”には疑問を呈する向きもある。例えば小泉は党職員に「民間企業みたいに名札を付けるべきだ。党職員と記者の区別がつかない」と指摘。これには、職員の顔と名前を覚える気はないのかと首をかしげる者もいる。また昨年来、経産省が各課の部屋に鍵をかけて、記者の取材を制限したことを引き合いに、「同様にして記者を党の部屋まで入れないようにすべき」と話すこともあるが、経産省の措置には、「あまり好ましくない」(山本公一環境相)、「閉鎖社会を作るようなイメージであるなら、もう少し検討を」(山本有二農水相)などと当時の閣僚から異論が相次ぎ、他省庁に広まらなかったのは周知の通りだ。
こうした小手先の改革よりもむしろ、時折みせる安倍への苦言を総裁選で大々的にぶち上げ、逆境に挑めば、誰もが彼の真の成長を認めるだろう。だがここにきて「小泉は総裁選の期間、外遊に出る」との情報も飛び交う。小泉が大勝負に出れば、安倍の刃は石破ではなく、小泉に向けられることになるのだが果たして――。 
 
 

 

●安倍総裁3選を阻止するただひとつの方法 7/16
すでに「消化試合」というレッテルが貼られている。9月下旬に行われる自民党総裁選のことである。安倍晋三首相(党総裁)の3選が確実視されている。先が見えているだけにメディアもほとんど無視を決めこんでいる。確かに安倍氏が優位に立っているのは確かだが、この状況をひっくり返す方法が1つある。それは小泉旋風が起きた2001年の総裁選の構図に持ち込むことだ――。
今のままなら安倍氏勝利は「鉄板」
今回の総裁選は9月20日ごろ投開票となる方向だ。今のところ3選を目指す安倍氏の他、石破茂元自民党幹事長の出馬が確実視される。野田聖子総務相も、連日出馬への意欲を示し続けているが、出馬に必要な推薦人20人を集めるめどがたっていない。岸田文雄党政調会長も注目されるが、今回は出馬を見送り「次の次」狙いに切り替えるとの見方が強くなっている。
安倍氏は、今年前半「森友」「加計」問題などで批判が高まっている時は3選に黄信号が灯っていたが、今は内閣支持率も戻った。党内では細田派、二階派、麻生派の「主流3派」の支持を取り付けた。3派で国会議員数の約半分を占める。「現段階では白紙」としている竹下派も、幹事長ポストなどを条件に安倍氏に乗るとの見方が広がっている。無派閥の議員も安倍氏に雪崩打ちそうな気配だ。「安倍票」は国会議員票の過半数を軽く上回る。
6年前の総裁選では1度目の投票で1位になった
総裁選は、国会議員票と党員による地方票の比率を1対1にして行われる。過半数を獲得する候補がいなければ上位2人の決選投票となるが、今回は国会議員の票に、都道府県1票ずつの47票を加えて行われる。安倍氏が議員票の過半数を既に固めていることは、非常に有利であることは明らかだ。
「鉄板レース」の流れを変えることができるとすれば石破氏しかいない。総裁選立候補に必要な20人の確保のめどは立っているし、知名度もある。自ら閣僚や党首脳から退いて「党内野党」の立場を貫いており、安倍氏への対立軸を示しやすい。しかも6年前の総裁選では1度目の投票で1位になり、安倍氏との決選投票で競り負けたという「実績」がある。
ただ、残念ながら6年前のように安倍氏を追い詰めるのは難しいと評価されている。6年前、石破氏は「野党の論客」としてテレビに引っ張りだこだったが、今はマスコミへの露出は激減。印象は薄い。
キーワードは「2001年の再現」
石破氏に勝ち目はないのか。そうではない。キーワードは「2001年の再現」。17年前の4月に行われた総裁選と同じ構図になれば、まだ大逆転の可能性は十分ある。
森喜朗氏の辞任に伴って行われた同年の総裁選は、当初、橋本龍太郎氏の当選が確実視されていた。ところが、結果は小泉純一郎氏が勝った。
最大の理由は党内人気ナンバーワンが小泉氏側についたからだ。当時の人気ナンバーワンは、歯に衣着せぬ語りぶりで注目された田中真紀子氏。総裁選を前にした3月27日、小泉氏は田中氏と会談し「小泉−真紀子連合」で意気投合した。
それまで小泉氏は「総裁選に出るかどうかは五分五分だ。このままで戦ったら負ける」と言っていたが、日を置かずに出馬を決断。田中氏は小泉氏の推薦人に名を連ね、2人はツーショットで全国遊説した。死去した小渕恵三元首相を「おだぶつ」と言ってひんしゅくを買ったこともあったが、それも含めて真紀子ブームを起こし小泉氏に勝利をもたらした。
今の石破氏のほうが政治経験も知名度も上
この時の構図を、今に当てはめてみよう。当時の小泉氏の役回りをするのは石破氏。「石破氏と小泉氏では器が違う」と思う人もいるかもしれないが、01年の総裁選前の小泉氏はまだ「出ると負け」と言われた泡沫候補扱いだった。今の石破氏のほうが政治経験も知名度も上だ。
田中氏の役割を果たす適任者がいる。小泉進次郎党筆頭副幹事長だ。進次郎氏の人気が政界随一であることに異論をはさむ人はいないだろう。マスコミ各社の世論調査では「次の首相候補」で安倍、石破の両氏をしのいで1位になることもある。テレビカメラの前に立ち短い言葉で鋭く切り込む姿は、父親・純一郎氏のDNAを引き継いでいる。彼が石破氏支援に回って総裁選を戦えば、17年前の「小泉・真紀子」に勝るとも劣らないタッグとなる。
「ほかにいい人がいない」という消極的な支持
進次郎氏が石破氏を推す可能性は十分ある。進次郎氏は12年の総裁選の時も石破氏を支援している。その後も気脈は通じ合っている。
ただし6年前は、石破氏支援を明言せず、ひそかに応援していた。それでは安倍氏の優位をひっくり返すインパクトにはならない。進次郎氏が国民の前で石破氏支援を明言し、連日一緒に遊説することで初めて「タッグ効果」が機能する。
石破氏も、進次郎氏が自分の支持を明言してくれることの重要性を理解している。7月9日に都内で行った講演では、進次郎氏が提唱している国会改革について「必要なことだ。同感だ」とエールを送った。進次郎氏との共闘を期待しての発言だったことは言うまでもない。
17年前を知るベテランの自民党関係者の間では「当時の橋本氏と今の安倍氏が似ている」というささやきが漏れる。橋本氏は、永田町内の「数の力」では圧倒的優位に立っていたが、熱狂的な支持はなかった。今の安倍氏も「ほかにいい人がいない」という消極的な支持に支えられている。別に魅力的な選択肢が出れば形勢が一気に変わるかもしれないのだ。 
 
 

 

●安倍晋三首相 記者会見 2018/7/20
「まず冒頭、今般の豪雨災害によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆さまにお悔やみを申し上げます。そして被災された全ての皆さまに衷心よりお見舞いを申し上げます。そしてこの2週間、行方不明者の捜索、被災者の支援に高い使命感を持って当たっている自衛隊、警察、消防をはじめ、すべての関係者に心から敬意を表します」
「被災者の皆さんのため、過酷な現場で黙々と任務を全うする彼らは日本国民の誇りです。全国各地からのボランティアの皆さんにも感謝を申し上げます。明日、私は広島の被災地を訪問いたします。被災地の皆さんの声を踏まえ、現場主義での復旧・復興を加速する考えです。仮設住宅への移転、生業の復興など、被災された皆さんが一日も早く、安心して暮らせる生活を取り戻すことができるよう、自治体と連携しながら、政府の総力をあげて取り組んでまいります」
「半年にわたった通常国会が明後日、閉会となります。まず今国会の会期中、行政をめぐるさまざまな問題が明らかとなり、国民の皆さんの信頼を損なう結果となったことについて、行政のトップとして改めて、深くおわび申し上げます。行政文書は国民と行政をつなぐ最も基礎となるインフラであります。その強い自覚を、公務員一人一人が持たなければなりません。決裁文書の改竄(かいざん)など絶対にあってはならず、再発防止に向け、文書の監査機能を抜本的に強化いたします」
「森友学園への国有地売却、獣医学部の新設をめぐっては、この国会でも厳しいご指摘をいただきました。行政プロセスが公平、適切に行われることは当然です。しかし、それでもなお、総理大臣という立場が周囲に与えうる影響を常に意識し、慎重の上にも慎重に、政権運営に当たらなければなりません。そのことを深く胸に刻み、国民の皆さまの負託に全力でこたえていく。その決意を新たにしております」
「この国会を働き方改革国会とする。本年の始まりに当たって私はそう申し上げました。労働基準法の制定以来、実に70年ぶりの大改革がこの国会で実現いたしました。わが国に染みついた長時間労働の慣行を打ち破る。史上初めて労働界、産業界の合意のもと、時間外労働について罰則付きの上限規制を導入します。この国から非正規という言葉を一掃する。雇用形態による不合理な待遇差を禁止する同一労働同一賃金を実現します。育児や介護など、さまざまな事情を持つ皆さんが、多様な働き方を選択できる1億総活躍の新しい時代に向かって大きな扉を開くことができたと考えています」
「深刻な人手不足に直面する中小、小規模事業者の皆さんへの支援もしっかりと行ってまいります。生産性を向上させるための投資には、固定資産税をゼロにする。かつてない制度がスタートしました。ものづくり補助金や、持続化補助金により中小・小規模事業者の皆さんによる経営基盤の強化を応援します。4月からは、相続税の全額猶予に次世代への事業承継を力強く後押ししています。一定の専門性、特定の技能を持った優秀な外国人材を受け入れるための新たな在留資格の創設に向けて準備を進めてまいります」
「第2次安倍内閣の発足以来、5年間で名目GDP(国内総生産)は56兆円増え、11・3%成長しました。正社員の有効求人倍率は統計開始以来、過去最高です。5年半前、正社員になりたい人100人に対し、たった50人分しか仕事はなかった。しかし、今は2倍以上の110人分の正社員の仕事があります。この春、連合の調査によれば、中小企業の賃上げ率は過去20年で最高です。経団連の幹部企業への調査では、4分の3以上の企業で年収ベースで3%以上の賃上げが実現しました」
「デフレ脱却に向けて、日本経済は確実に前進を続けています。革新的なイノベーションに挑戦する企業には法人税負担を20%まで大胆に引き下げ、チャレンジを力強く後押ししていきます。この国会ではTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)11協定が承認されました。人口5億人、GDPで1000兆円を超える巨大な経済圏が誕生します。今週は日本と欧州のEPA(経済連携協定)も署名に至りました。世界的に保護主義への懸念が広がる中、わが国は自由貿易の旗手として自由で公正なルールに基づく新たな時代の経済市場を世界に打ち立ててまいります」
「これは、わが国が誇る全国津々浦々の安全でおいしい農林水産物が世界に進出する大きなチャンスとなります。地方創生の起爆剤です。農林水産物の輸出は5年連続で過去最高を更新し、昨年は8000億円を超えました。そうした40代以下の若手新規就農者は調査開始以来、初めて3年連続で2万人を超えました。農業は国の基であります。農家の平均年齢が66歳を超える中で、伝統あるふるさとの美しい田園風景を守り抜くためにこそ今、改革を進めなければならない。若者が、夢や希望を持って飛び込んでいけるような地方を作り上げなければなりません」
「今国会では、戦後以来の林業改革を進める法律も成立しました。経営の大規模化によって、わが国の豊かな森林資源を生かしながら、地方が誇る美しい山々を守り抜いてまいります」
「地方創生のもう一つの柱は観光です。今年の上半期、わが国を訪れた外国人観光客は1600万人に迫り、いよいよ3000万人時代に突入しました。新しい財源も活用して、全国津々浦々が誇る美しい自然、伝統文化、食などの観光資源にさらに磨きをかけ、4000万人の高みを目指してまいります」
「この国会中、本当に痛ましい事件が発生しました。わずか5歳の結愛ちゃんが死の間際、どんな思いでノートにあの言葉をつづったのか。今も私の心に突き刺さっています。虐待によって多くの幼い命が奪われています。本日決定した緊急対策を直ちに実行に移し、児童虐待の根絶に向け政府を上げて取り組んでまいります」
「子供たちの命を守り、子供たちが持つ大きな可能性を開花させる。これは私たち、大人の責任です。この春から新たに2万人の子供たちが給付型奨学金を手にしました。生活保護世帯の子供たちの大学進学を支援する新しい制度が先月から動き出しています。児童扶養手当について来月分から50万人を超えるひとり親家庭で支給額を増やします」
「家庭の経済事情に左右されることなく全ての子供たちが希望する教育を受けることができる。頑張れば自らの力で未来をつかみ取ることができる。そうした社会を作り上げるため、引き続き全力を尽くしてまいります。来年10月から消費税率引き上げと合わせ、3歳から5歳まで幼児教育を一気に無償化します。再来年4月から真に必要な子供たちの高等教育の無償化も行います。来る人生100年時代をしっかり見据えながら、わが国の社会保障制度を全世代型へと大きく転換する。誰もが安心できる社会保障制度を作り上げていく。その決意であります」
「平成の時代が幕を開けたころ、日本の高齢化率は11・6%でした。それが今、27・7%。この30年弱の間に16%以上アップしました。子供の出生数も年間100万人を下回り、平成元年と比べ30万人減少している。少子高齢化が一気に進みました」
「しかし、私たちは今、あの失われた20年から脱却しつつある。長い景気の低迷、不安定な政治は過去のものとなり、もはや小手先の対応は不要です。未来を見据えた改革を進める準備が整いました」
「今こそ新しい時代を切り拓(ひら)くときです。平成のその先の時代、次の世代のために、わが国の経済社会システムをもう一度作り上げていかなければなりません。働き方改革、TPP、地方創生、そして全世代型の社会保障制度の構築。この通常国会はわが国が次の時代に向かって大きな一歩を踏み出した。そういう国会になったと考えております。私からは以上です」
西日本豪雨について尋ねる。多くの犠牲者を生んだが、国会で野党からは初動対応の遅れを指摘する声もあった。今回の教訓を踏まえ今後、来るかもしれない災害への対応をどうやって見直していくか。多くの被災者が苦しい生活を迫られている。補正予算編成も含め具体的にどう対応していくのか。復旧や生活支援に向けた支援が続く中で首相自身の自民党総裁任期も迫っている。自らの総裁選への対応、判断時期について今どう考えているか
「改めてお悔やみとそしてお見舞いを申し上げたいと思います。梅雨末期の大雨への対応については、6月29日の中央防災会議において、私から関係閣僚に対して大雨への備えを指示していたところ、今回の豪雨に際しては、気象庁が記録的な大雨となる恐れを発表した時点で小此木(八郎)防災大臣のもとで関係省庁災害警戒会議を開催し、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害の拡大を想定して、政府の対応態勢を拡大するなど、いかなる事態にも対応できる万全な態勢で対応にあたってきたところであります」
「具体的には発災直後から救命救助、そして行方不明者の捜索、ライフラインの早期復旧に懸命にあたるとともに、これまでの災害対応の経験も踏まえて、例えばプッシュ型によるクーラーを迅速に設置し、そしてまた半壊でも仮設住宅に入居できるようにするなど、被災者の生活環境の改善、そして生活再建に向けた支援を先手先手でスピード感を持って行ってまいりました」
「引き続き現場主義を徹底し、そして被災者への支援、とりわけ今後は生業の再建に全力を尽くしていかなければならないと考えています。今後の台風シーズンを控えて、政府として必要な警戒態勢を敷き、災害対策に万全を期していきます。豪雨災害に関連して、補正予算の編成についてもさまざまな質問が今までありましたが、今年度の当初予算に計上している予備費や災害復旧のための予算をあわせますと約4000億円あります。まずはこうした予算を活用することにより、今般の豪雨災害の対応に万全を期してまいりたいと思います」
「その上で補正予算については一連の被害の全貌や予算の使用状況などを見極めながら必要に応じて適切に対応してまいりたいと考えています」
「総裁選への対応についてでありますが、約半年にわたった国会が終了したばかりでありますし、まさに災害対応にも全力を尽くしていかなければいけません。明日は先ほどお話をさせていただいたように、広島にお伺いをする予定でございます。まあそうした中にあって、まだ先のことを考える余裕はないというところが正直なところでございまして」
「せみの声が聞こえてきたころということを申し上げてまいりましたが、東京でも少しまセミの声が聞こえてくるようにはなりましたが、この夏、せみ時雨を聞きながら、よく考えていきたいと思っております」
米国が日本製の車に25%の関税をかけた場合、日本はどうするか
「米国務省がですね、自動車および自動車部品の輸入に関し、現在通商拡大法第232条に基づく調査を行っていることは承知をしておりますが、ご指摘のこの25%の関税といった点はですね、まだ報道にすぎないわけでありまして、具体的な措置が決定されたわけではありません。そのため、ご質問についてですね、現時点で予断を持ってコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います」
「いずれにせよ、わが国の自動車および自動車部品の輸出が、米国の安全保障上の障害になったことは、これまでありません。そしてこれからもありません。また日本から米国への自動車輸出は174万台ではありますが、その2倍以上にあたる377万台を日本は米国で、国内現地で生産をしております。米国内でも良質な雇用を生み出しています。そして米国経済に多大な貢献もしています」
「貿易制限措置が課された場合、こうした雇用が失われるなど、米国経済に悪影響を及ぼすだけではなくて、世界経済にも大きなダメージを与えることとなります。トランプ大統領にはこれまでも、日本の自動車メーカーの米国経済、雇用を含めて米国経済への貢献について何回も説明をしてきたところでありますが、貿易制限措置の応酬は誰の利益にもなりません。引き続き米国に対して、こうした点を説明しながら、貿易制限措置を回避するために粘り強く取り組んでいく考えであります」
東日本大震災、熊本地震、大阪北部地震、そして今回の西日本豪雨で大変多くの方が避難生活を余儀なくされている。こうした方々が生活を再建していくためのインフラ復旧や住宅再建にかかる人手不足がさらに深刻化していくものと思われる。喫緊の課題の建設に関する人手不足にどのように対応していくか
「大変重要な点だと私たちも認識しております。今般の豪雨災害が発生した段階から、発生を受けまして、まず国土交通省から建設業団体に対して、被災地で必要となる建設機械や資材の調達、労働力の確保などについて、被災した県や市など地方公共団体等と緊密な連携を図るなどの協力要請を行いました。今後、インフラ復旧や住宅再建を着実に進めるためには事業の円滑な施工の確保が極めて重要であります」
「このため復旧復興事業の施工状況を注視しながら被災地の実情を反映した予定価格の設定、そしてまた建設業従事者への適切な賃金を払って、適切な賃金支払いを行うなど、人材確保、必要な環境の整備をしっかりやっていきたい」
「特にわれわれ東日本大震災後のですね、こうした人手不足、あるいは入札の不調等、経験があります。その経験をいかしてそうしたことを繰り返さない対策を今までもしっかりと念頭に対応してきております。これからも対応してまいりたいと、こう思っています」
この国会では公文書管理が大きなテーマとなった。財務省の文書改竄(かいざん)は社会に大きな影響を及ぼし、国会でも再三にわたり取り上げられた。また、加計学園の獣医学部新設に関し愛媛県側が3年前に加計理事長が安倍首相と面会し、計画を説明したとされる文書を国会に提出した。後日、学園側は否定したが、この内容の真偽が国会論戦の争点となった。首相は一連の問題について国会で十分説明を果たしたと考えるか
「行政文書はですね、国民の皆さまと行政をつなぐ最も基礎となるインフラであります。決裁文書の改竄など決してあってはならないと考えています。財務省ではすでに調査結果を公表し、その反省の上に再発防止に取り組んでおりますが、政府全体としても本日、閣僚会議を開催し、文書の監査機能の抜本強化など公文書の適切な管理に向けた対策を決定いたしました」
「森友学園への国有地売却、また獣医学部の新設をめぐっては、行政プロセスが公平、適切に行われてきた点について、政府としてもですね、私自身としても、繰り返し国会で丁寧に説明をしてまいりました。今後とも指摘があれば丁寧に説明責任を果たしていかなければならないと考えております。その思いには変わりはありません」
「その上で今国会においてもさまざまなご指摘をいただきましたが、行政が公平、適切であることは当然であり、しかしそれでもなお総理大臣という立場が周囲に与えうる影響を常に意識し、今後、慎重の上にも慎重を期していきたいと、その上で政権運営にあたっていきたいと考えております」
憲法改正について、今国会では自民党の憲法案を示すことはできなかったが、2020年の改正憲法施行向けて今年秋の臨時国会では案を示す考えはあるか。首相は今、総裁選については明言しなかったが、誰が候補になるにしても総裁選で憲法改正が主たるテーマになるとお考えか
「本日も3万人を超える自衛官の皆さんが今般の豪雨災害の被災地において行方不明者の捜索や、あるいは給水、入浴、そしてまたゴミの処理などに本当に懸命にあってくれています。連日猛暑が続く過酷な現場でも被災者の皆さんのために、黙々に献身的に任務をまっとうする自衛隊の諸君はまさに国民の誇りだと思います」
「私は毎年、防衛大学校の卒業式に総理大臣と出席し、そして任官したばかりの若い自衛官たちから『事に臨んでは危険を顧みず、責務の完遂に務め、もって国民の負託に応える』。この重たい宣誓を総理大臣として、そして最高指揮官として受けます。彼らは国民を守るために命をかけます」
「しかし、近年でも自衛隊は合憲と言い切る憲法学者は2割にしかなりません。その結果、違憲論があることについての記述がほとんどの教科書には載っています。自衛隊の、自衛官たちの子供たちもその教科書で勉強しなければならないわけでありまして、この状況に終止符を打つのは今を生きる私たち政治家の使命であると、こう思っています」
「憲法にわが国の独立と平和を守ること、そして自衛隊をしっかりと明記し、その責任を果たしていく決意であります。そうした思いのもと、先の昨年の総選挙では初めて選挙公約の柱、主要項目のひとつとして憲法改正を位置づけ、4つの項目の一つとして自衛隊の明記を具体的に掲げました。その上で私たちは国民の信を得て、また選挙に勝利をして、政権与党として今の立場にいるわけであります」
「本年の党大会では、党の運動方針として公約に掲げた4項目の議論を重ね、憲法改正案を示し、憲法改正の実現を目指すとの方針を決定したところであります。これに沿って意見集約に向けた党内議論が精力的に行われてきました」
「自民党というのは自由闊達(かったつ)な議論を行いますが、さまざまな意見が出ますが、いったん結論が出れば一致結束してその目標に向かって進んでいく。それが政権与党としての責任感であり、矜持(きょうじ)でもあります。私としては、これまでの議論の積み重ねの上に自民党としての憲法改正案を速やかに国会に提出できるよう取りまとめを加速するべきと考えております」
「その上で、9月に総裁選挙が行われますが、憲法改正は立党以来の党是であり、自民党としても長年の悲願でありますし、今申し上げましたように4項目を掲げ、われわれはみんなで選挙を戦ったわけであります。そして、それはまさに党としての公約であります。当然ですね、候補者が誰になるにせよ、次の総裁選においては当然、候補者が自分の考え方を披瀝(ひれき)する、大きな争点となると考えます」
「憲法改正は衆議院、参議院、両院の3分の2を得て発議をし、そして国民投票において過半数の賛成を得なければ実現できません。政治は結果であります。つまり発議できる3分の2を得ることができるかどうか、そして国民投票でそれを成立させることができるかどうか、賛成を得ることができるかどうかという現実にしっかりと目を向けながら結果を出していく。そういう姿勢を私たちには求められている。先ほど申しあげました、今を生きる私たちの責任とは何かということを念頭に議論が行われるものと思います」 
 
 

 

●角栄・大平墓参りの石破氏に「渡辺美智雄氏が先では」批判 8/1
政治家が大勝負に挑むとき、薫陶を受けた派閥領袖の墓前に手を合わせ、「決意」を誓うことは自民党の古き良き伝統だ。
だが、墓参の相手や順番を間違えると、せっかくの美徳も、「どんな御利益を願ったのやら」と打算を見すかされてしまう。
総裁選で安倍晋三・首相に「討ち死に覚悟の一騎打ち」を挑む姿勢を見せている石破茂・元幹事長は、この7月に新潟の田中角栄元首相と香川の大平正芳元首相の墓を相次いで参った。
「東京一極集中を是正し、地方に所得と雇用を作らなければならないという、角栄先生の思いを引き継いでいる」
石破氏は角栄氏の生家の前で総裁選の“抱負”をそう語り、増税を掲げて総選挙に臨んだ大平氏の銅像の前では、「不人気な政策でも国民に問う姿勢を、政治家は学ばなければいけない」と讃えた。
角栄氏が石破氏の「政治の師」の1人であるのは間違いない。田中派参院議員で自治大臣を務めた石破氏の父・二朗氏が亡くなった時、角栄氏はロッキード事件の被告人で“謹慎中”の身ながら鳥取へ飛び、葬儀委員長として盛大な「田中派葬」で送った。その際、銀行員だった息子の茂氏に衆院選出馬を勧め、躊躇すると「馬鹿者!」と叱咤激励して出馬まで田中派の「派閥秘書」として面倒を見た。それが、石破氏が「角栄の最後の弟子」を自任する理由だ。
しかし、大平氏はその頃すでに亡くなっており、石破氏との接点はない。岸田派議員が言う。
「石破さんの狙いは宏池会(岸田派)の票だ。総裁選では最大派閥の細田派、麻生派、二階派がいち早く安倍首相支持を打ち出していたから、議員票を期待できるのは田中派の流れを汲む竹下派と宏池会くらいしかない。だから田中先生だけでなく、宏池会の創設者である大平総理の墓にまで足を伸ばし、岸田派にも共闘をアピールした。大平先生もあの世で“アーウー”と戸惑っているんじゃないか」
石破氏の節操のなさに憤慨する自民党議員もいる。
「墓参りするなら、世話になった渡辺美智雄先生が先じゃないか」(ベテラン議員)
確かに、石破氏にとって角栄氏と並ぶ「政治の師」といえるのは“ミッチー”の愛称で呼ばれた渡辺元副総理だろう。1986年の総選挙に出馬した石破氏は、同じ選挙区に田中派の先輩議員がいたことから田中派に入れず、中曽根派の大幹部だったミッチーを頼って当選後は中曽根派に所属した。
石破氏が総裁選に向けて書き下ろした政権構想ともいえる新著『政策至上主義』(新潮新書)でも、冒頭で〈政治家の仕事は、勇気と真心をもって真実を語ることだ〉というミッチーの言葉を「私の原点」だと書いている。だが、恩人である渡辺氏の墓参りには「少なくともこの1年くらいは行っていません」(石破事務所)という。中曽根派の流れを汲む二階堂派はすでに安倍支持を決めているから、“総裁選の票にはならない”と踏んだのだろうか。
ところで、石破氏の『政策至上主義』は発行1週間で増刷がかかり、発行部数は2万部(7月26日時点)。「手応えはある」(担当編集者)という。総裁選直前に出版された安倍首相の『美しい国へ』は約52万部、麻生太郎・元首相の『とてつもない日本』は約22万部を短期間に売り上げた。
安倍、麻生氏の背中ははるか遠い。 
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 



2018/8