ギリシャに学ぶ

安倍総理 
任期中 財政健全化に向き合うこと放棄
バラマキ予算 オリンピックまで楽しみたいようです
気がつけば 日本も一番恵まれているのはお役人
後は野となれ山となれ 先送り

次期政権 口を開けて待っている岸田文雄さん 
尻拭いの知恵と覚悟 ありますか
 


総論
〜201020112012201320142015201620172018
20192020
 
 

 

夢見話  「 景気が良くなれば 税収が増え 財政は健全化に向かう 」
   経済の専門家がいないのでしょうか
   それとも 安倍政権に物言える人がいないのでしょうか
現状認識の誤りです
今の「景気」が正常なのです
就労人口は減少期に入り 基本的に税収は増えません
 
 
 
  総論

 

●ギリシャの経済
その名目国内総生産 (GDP)が年間194.851億ドルであり、世界で46番目の規模である。また、 購買力平価では年間288.245億ドルと、世界で54番目の規模である。 2015年時点で、ギリシャは欧州連合(EU)の加盟国28カ国中 第15位の経済規模である。ギリシャは、一人当たり名目GDPと一人当たりの購買力平価ではそれぞれ17,988ドル、26,391ドルと、世界で38番目と45番目に位置している。
ギリシャは、 サービス業 (82.8%)及び工業部門 (13.3%)が経済の軸である先進国である。農業部門は、2015年には同国の経済生産のうちの3.9%を占めていた。重要なギリシャの産業は観光やギリシャの海運などがある。2013年には1800万人もの国際観光客が訪れたギリシャは欧州連合では7番目に、世界では16番目に多くの観光客が訪れた国である。ギリシャの保有商船は 世界最多であり、ギリシャが所有する船舶は、2013年時点の全世界の載貨重量トン数のうち15%を占めている。ギリシャとアジア間の国際海上輸送需要の増加は、海運業界では前例のない投資をもたらした。
同国は、EU内における重要な農業生産国である。ギリシャはバルカン半島では最大の経済規模であり、地域の投資国としての役割も重要である。ギリシャは2013年にはアルバニアで最大、ブルガリアでは三番目、ルーマニアおよびセルビアでは上位3カ国に入る外国人投資家であり、 マケドニア旧ユーゴスラビア共和国の最大の貿易相手国であり、最大の外国人投資家である。ギリシャの通信会社OTEは、旧ユーゴスラビアやその他のバルカン諸国における有力な投資家となっている。
ギリシャは、先進的であると分類されており 高所得な経済、経済協力開発機構 (OECD)と黒海経済協力機構(BSEC)の創設メンバー国であった。同国は1981年に現・欧州連合に参加した。 2001年に、ギリシャはドラクマの代わりにユーロを、1ユーロあたり340.75ドラクマの為替レートで通貨として採用した。ギリシャは国際通貨基金(IMF)と世界貿易機関の一員であり、アーンスト・アンド・ヤングのグローバル指数 2011年において第34位に位置付けた。
第二次世界大戦 (1939-1945)は同国の経済を荒廃させたが、1950年から1980年まで続いた高水準の経済成長は、ギリシャの奇跡と呼ばれてきた。2000年以降ギリシャは2003年の5.8%、2006年の5.7%をピークに、ユーロ圏の平均を上回る高い水準のGDP成長率の記録した。その後の大不況と、欧州をまたにかけた欧州債務危機の主要な焦点であるギリシャ政府債務危機は 、同国の経済を急激に悪化させ、2008年には-0.3%、2009年には-4.3%、2010年には-5.5%、2011年には-7.3%、2012年には-7.3%、2013年には-3.2%の実質 GDP成長率であった。 2011年には、同国の公的債務は 3560億ユーロ(対名目GDP比172パーセント)に達した 。 民間部門と史上最大の債務再編の交渉を行った後に、ギリシャは2012年の第一四半期に、ソブリン債の負担を2800億ユーロ(GDPの137パーセント)まで減少させた。 ギリシャは景気後退から6年後の2014年に0.7%の実質GDP成長率を達成したが 、2015年には不況に再び陥った。
失業率
ギリシャの失業率は、2000年から2009年の期間では最悪でも11%で推移していた。EUに金銭支援を要請した2010年には12.8%に上昇、その2年後には24.4%にまで悪化してしまう。2014年には約26.5%となっている。この長期間の高失業率によって未来の経済成長率が低下することが懸念されている。IMFは2010年にギリシャ失業率の予測値を公表したが、それは極めて楽観的なものであった。
国内総生産
2014年の一人当たりの名目GDPは22,317ドルであり、世界平均の2倍を越えている。バルカン半島の国家の中では経済的に最も豊かな国であり、一人当たりの名目GDPはルーマニアやトルコの2倍以上、アルバニアの約5倍である。
2014年時のギリシャの実質国内総生産は2008年時の水準の約75%にまで低下している。IMFによる予測では2011年まで下げ基調で、以降ギリシャ経済は回復に向かうはずだった。この予測は現実と大きくかけ離れた。 IMFは、緊縮財政政策がギリシャ経済に与える悪影響を過小評価していたことを認めた。
産業
第一次産業
農業では、オリーブ、綿、葉タバコなど商品作物の生産が活発であるが、主食である小麦の生産は国内需給量をまかなうことができない。
2010年のギリシャの綿花生産量は欧州連合内最大で183.8千トンの生産量であった。また、コメの生産量は同第2位の229.5千トン、オリーブの生産量も同第2位の147.5千トンであった。イチジクの生産量は同第3位の11千トン、スイカは578.4千トンであった。また、たばこの生産量は同第4位の22千トンであった。国内総生産(GDP)に占める農業の割合は3.3%、労働人口の12%を占める。
ギリシャは欧州連合の共通農業政策における便益を享受している国の一つである。ギリシャが欧州連合の前身である欧州共同体(EC)に参加する際に、農業のインフラを整備した結果、農業生産高は上昇した。2000年から2007年にかけてギリシャにおける有機農業の生産高は885%上昇し、欧州連合内で最も高い上昇率であった。
2007年のギリシャの地中海における漁獲生産高は85,493トンであり欧州連合内第3位で約19%を占める。また、地中海における漁船保有量は同第1位であり、全体の漁獲生産高は87,461千トンであり同11位である。
第二次産業
鉱業では亜炭、褐炭、マグネシウム、鉄、ニッケル、ボーキサイト、原油、天然ガス、石材などの生産が行われている。
工業では、一次産品を利用したオリーブ油などの食品加工業や綿を中心にした繊維業などが盛ん。造船業、製鉄、石油化学工業も発展を遂げている。
第三次産業
数多くの古代ギリシャ時代や東ローマ帝国時代の遺跡・遺構、エーゲ海の風光明媚な島々などの観光資源も多く、観光も重要な産業となっている。
公共部門
ギリシャには公務員が約100万人おり、総人口の約10%、全労働人口の25%を占めている。
ギリシャ経済危機 (2010年-)
2009年10月、ギリシャにおいて政権交代が行われ、ゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ新政権(全ギリシャ社会主義運動)下で旧政権(新民主主義党)が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになった。従来、ギリシャの財政赤字は、GDPの4%程度と発表していたが、実際は13%近くに膨らみ、債務残高も国内総生産の113%にのぼっていた。
2010年1月12日、欧州委員会がギリシャの統計上の不備を指摘したことが報道され、ギリシャの財政状況の悪化が表面化。
2010年1月15日、財政赤字を対GDP比2.8%以下にするなどとした3カ年財政健全化計画を閣議で発表するが楽観的な経済成長が前提であった。格付け機関は、相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、債務不履行の不安からギリシャ国債が暴落した。株価も影響を受け、世界各国の平均株価が下落し、ユーロも多くの通貨との間で下落した。2010年4月23日にはギリシャが金融支援を要請した。
欧州連合ではユーロ圏諸国に対して、ユーロ経済圏の秩序維持のために起債上限額を制限している(安定・成長協定)。ギリシャは、こうしたルールを破ることとなったため、欧州各国が協調して問題に取り組むこととなったが、ドイツなどとの間で足並みの乱れも見られた。欧州では、ギリシャのほか、スペインやポルトガルなども財政赤字の拡大に苦しんでおり、こうした国へ飛び火することも懸念されたためである。
IMF、欧州委員会、ECBの3つはトロイカと呼ばれる。2010年からトロイカはギリシャに金銭支援を行っている。その中でもドイツの融資割合はもっとも高い。トロイカは金融支援の条件としてギリシャに緊縮財政政策をとるように要求している。
2010年4月にユーロスタットが発表した財政赤字は2009年10月に発表された13%近くではなく13.6%であることが発表された。2010年2月から断続的にストライキ、デモが行われており2月と3月には追加の財政再建策撤回を求めてギリシャ労働総同盟・ギリシャ公務員連合が24時間のゼネラル・ストライキを行い275万人が参加した。メーデーのデモが行われデモ隊と警官隊が衝突、けが人が出る事態となる。5月5日に行われたデモでは火炎瓶が銀行に投げ入れられ銀行員に死者が出る事件となった。犯行は無政府主義者とされている。
2011年7月25日、格付会社ムーディーズは既に投機的等級にあるギリシャの格付けをさらに3段階引き下げ、従来の「Caa1」を「Ca」とした。
2011年9月28日、欧州委員会・国際通貨基金(IMF)・欧州中央銀行(ECB)の3機関(トロイカ)で構成される合同調査団はアテネに戻り、ギリシャがデフォルト(債務不履行)回避に必要な次回融資を受けるにふさわしいかを判断するため、同国政府が最近合意した新たな緊縮措置や民営化計画の進捗について綿密に調査する見通しとなった。
2011年10月3日ギリシャ政府が、財政赤字削減目標未達となる見通しを発表したため、欧州金融市場は再び悪化した。これでギリシャが「ハード」デフォルト(債務不履行)となる可能性が高まった。
2011年10月12日ECBのトリシェ総裁は、債務削減合意を順守すれば、ギリシャはデフォルト(債務不履行)を回避できると述べた。
 10月27日、欧州諸国は債務危機に対応するために、「ギリシャ債務の民間投資家の損失負担を50%とし、欧州金融安定ファシリティの融資能力を拡充するほか、2012年6月30日まで銀行の資本増強を決めた」ものの、パパンドレウ首相が11月1日に第2次支援策の受け入れについて国民投票を実施すると発言したために、金融市場は再び不安定化、内外での反発が強まった。
 11月2日にはアンゲラ・メルケル、ニコラ・サルコジの独仏首脳がパパンドレウ首相に対し、支援凍結とユーロ離脱(自国通貨「ドラクマ復活」)をちらつかせながら圧力をかけ、事態収拾に動いた。11月4日に国民投票を撤回、翌11月5日にはパパンドレウ内閣の信任投票で僅差ながらも信任されたものの、大連立交渉に失敗しパパンドレウは首相を辞任。11月11日、前欧州中央銀行副総裁のルーカス・パパデモスを首班とする大連立政権が発足した。このとき総選挙を2012年に繰り上げ実施することで連立政権内の合意ができていた。
2012年5月ギリシャ議会総選挙では財政緊縮反対を掲げる左翼政党が大幅に躍進。連立交渉がまとまらず、翌月に再選挙(2012年6月ギリシャ議会総選挙)が行われることとなった。緊縮財政政策について政党により賛否がはっきりしているため、一連の選挙結果は欧州連合(EU)による金融支援を受けるのに不可欠である財政緊縮を堅持するか否かの動向に直結することから世界より注視されたが、6月の選挙では財政緊縮支持派の第1党が票を伸ばし連立政権の樹立に成功したことで、ようやく事態は沈静化へと向かうこととなった。
この一連の経済危機とその対策の不手際により、ギリシャの実質的な国内総生産は2009年から2012年の間に17%減少した。
2015年3月、ブラジル出身のPaulo Nogueira Batista 国際通貨基金理事がテレビ出演し、ギリシャに対する融資がドイツとフランスの銀行を救済する目的だったことを理事たちが承知していた事実を漏らした。4月9日、ギリシャはIMF に4億6200万ユーロを返済した。
2017年4月21日、ギリシャ統計局は2016年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)が対GDP比で3.9%の黒字に改善したと発表した。2015年は2.3%の赤字で、EUによる第3次支援は0.5%以上の黒字確保を条件としていた。過去の債務残高は3148億ユーロで、対GDP比は179.0%と、2015年の177.4%より悪化した。
2017年6月15日、ルクセンブルクで開催されたユーロ圏財務相会合にて、ギリシャに対する85億ユーロの追加融資で合意し、7月に予定される巨額の国債償還の資金を確保し、ギリシャ発の金融危機が再発する事態は回避された。
財政問題
放漫な財政運営が続いた理由について白井さゆりは以下のように指摘している。
1. 身の丈に合わない年金制度:「社会保障給付費」と「人件費」が利払い後歳出の7割を占める。年金給付水準が現役時代と大差なく他の先進諸国と比べて高いこと並びに年金受給開始年齢が早くて55歳前後であること
2. 政権交代のたびに拡大を続けた大きな政府:王政崩壊後、政権交代があるたびに公務員としての雇用を増やしてきたことする。
3. 脱税文化を持つギリシャ:脱税や税務署職員の汚職が蔓延しており徴税能力の低さにつながっている。例えば自営業者は一定水準の所得以下になると無税となることから領収書を発行しない、税務署職員に対する賄賂による脱税等である。
ギリシャ国民の納税意識については、様々な評論家等が言及を行っているが、2012年5月、国際通貨基金の専務理事が「ギリシャ人はみんな税金逃れをしようとしている」と発言した際には、ギリシャ国民から大きな反発を買っている。
ギリシャ国債
2012年3月 10年国債の利回りは36.5%。
2014年4月 ギリシャ国債発行で市場復帰 
●ギリシャ経済危機 

 

2009年の政権交代が始まり
2009年10月、ギリシャにおいて政権交代が行われ、ゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ新政権(全ギリシャ社会主義運動)下で旧政権(新民主主義党)が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになった。
従来、ギリシャの財政赤字は、GDPの4%程度と発表していたが、実際は13%近くに膨らみ、債務残高も国内総生産の113%にのぼっていた。
2010年にギリシャ国債が暴落
2010年1月15日、財政赤字を対GDP比2.8%以下にするなどとした3カ年財政健全化計画を閣議で発表するが楽観的な経済成長が前提であった。
格付け会社は、相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、債務不履行の不安からギリシャ国債が暴落した。株価も影響を受け、世界各国の平均株価が下落し、ユーロも多くの通貨との間で下落した。
デモが頻発
2010年4月にユーロスタットが発表した財政赤字は2009年10月に発表された13%近くではなく13.6%であることが発表された。2010年2月から断続的にストライキ、デモが行われており2月と3月には追加の財政再建策撤回を求めてギリシャ労働総同盟・ギリシャ公務員連合が24時間のゼネラル・ストライキを行い275万人が参加した。
メーデーのデモが行われデモ隊と警官隊が衝突、けが人が出る事態となる。5月5日に行われたデモでは火炎瓶が銀行に投げ入れられ銀行員に死者が出る事件となった。犯行は無政府主義者とされている。
2012年緊縮反対政党が躍進
2012年5月ギリシャ議会総選挙では財政緊縮反対を掲げる左翼政党が大幅に躍進。6月の選挙では財政緊縮支持派の第1党が票を伸ばし連立政権の樹立に成功したことで、ようやく事態は沈静化へと向かうこととなった。
この一連の経済危機とその対策の不手際により、ギリシャの実質的な国内総生産は2009年から2012年の間に17%減少した。
2012〜2014年借り入れを繰り返す
欧州連合(EU)が緊急財務相会合で国際通貨基金(IMF)と共に、財政危機に陥っているギリシャに対して今後3年間で1100億ユーロ(約11兆7千億円)の融資を実施することで合意。また国際通貨基金(IMF)が55億ユーロ(約5800億円)の融資を実施することで合意。
その見返りとして、ギリシャ政府は3年間で300億ユーロの財政赤字を削減することをEUなどに約束し、増税や行政サービスの歳出カット、公務員のリストラなどを実施。しかし公務員や多くの国民はこれに強く反対、デモやストライキが繰り返される。
2015年緊縮反対政党がさらに躍進
総選挙により、EU側がギリシャに強いた緊縮策に不満を持つ国民の支持を集め、反緊縮政策を掲げる急進左派連合が圧勝。チプラス新内閣が発足。
同国への国際金融支援の条件となっている幾つかの緊縮措置を撤回する計画を公表。
EUとの交渉が決裂、財政破たんへ
急進左派連合の政策は、
・ さらなる年金と社会保障制度の充実
・ EUへの借金については、返済の免除や期限の延長を交渉していくというもの。
ギリシャ国民はこの政策に大喜びですが、EU諸国などの債権者の立場からすれば、借金の返済をこれ以上延長されるなど、たまったものではありません。
そこで『ユーロ圏財務相会合』にて、主な債権者であるドイツとフランスが、ギリシャに対して、財政再建案を『最終通告』として提示しました。
しかし、ギリシャ政府はこの再建案について「ギリシャ内で国民投票まで待ってほしい」と返答。
この対応にしびれを切らしたEU側が、ついに支援を打ち切るという判断を下しました。 
●ギリシャ危機 

 

ギリシャ危機は、ギリシャ共和国の2009年10月の政権交代を機に、財政赤字が公表数字よりも大幅に膨らむことを明かしたことに始まる一連の経済危機をいいます。従来、ギリシャの財政赤字はGDP比で5%程度とされていましたが、新政権(全ギリシャ社会主義運動)下で旧政権(新民主主義党)が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになり、実際は12.7%に達していたことが分かりました(2010年4月に13.6%に修正)。
2010年ギリシャ危機
2010年1月に、欧州委員会がギリシャの統計上の不備を指摘したことが報道され、同国の財政状況の悪化が世界的に表面化しました。これに対して、ギリシャ政府は3カ年財政健全化計画を発表しましたが、あまりに楽観的な経済成長が前提であったため、格付会社が相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、マーケットではデフォルト不安からギリシャ国債が暴落しました。これをきっかけに、外国為替市場ではユーロが下落すると共に、世界各国の株価も下落することになり、その後は、危機収束に向けた楽観論と悲観論が繰り返され、マーケットは大きく揺さぶられました。
このギリシャ危機に対して、ユーロ圏諸国の財務相会合において、2010年5月にIMF・EUによる「第一次支援(総額1100億ユーロ)」が決定され、また2012年2月にIMF・EU・民間による「第二次支援(総額1300億ユーロ)」が決定されました。その一方で、ギリシャ政府に対しては、増税・年金改革・公務員改革・公共投資削減等の厳しい緊縮財政策や公益事業等の大規模の民営化が支援金受け取りの条件として課され、国民に大きな負担を強いることになりました。
2015年ギリシャ危機
2012年以降、ギリシャは、金融支援プログラムに課せられた厳しい条件(緊縮財政等)に取り組み、財政面は徐々に改善していきましたが、一方で景気は大きく落ち込み、国民の生活はさらに苦しくなり、大規模なデモや暴動が度々発生しました。そして、2015年1月の総選挙では、最大野党で反緊縮派の急進左派連合(SYRIZA)が緊縮疲れの国民の支持を受けて勝利し、チプラス政権が誕生しました。これによって、一層の緊縮策を求めるEUとの交渉が行き詰まり、ギリシャは6月末に返済期限を迎えたIMFからの借入を延滞すると共に、EUの第2次金融支援も終了しました。
2015年7月5日、チプラス政権は、改めて民意を問うため、緊縮財政策を受け入れるか否かについて国民投票を実施しましたが、結果は反対(緊縮拒絶)が圧倒的多数を占めました。一方で、国民投票は「ユーロ圏に残ること」を前提にしていたため、同年7月13日、ユーロ圏の首脳は会談を開き、ギリシャが財政改革の具体策を法制化することを条件に支援継続で合意しました。その後、ギリシャ議会は、年金給付の抑制や付加価値税の引上げ、離島への軽減税率廃止などを盛り込んだ財政改革関連法を可決し、同年8月14日、EUは欧州安定メカニズム(ESM)に基づき、3年間で最大860億ユーロを融資する「第3次支援」で合意し、当面の危機が回避されました。
危機が回避されたのも束の間、財政健全化を巡って、再びギリシャとユーロ圏が対立し、2016年10月を最後に融資が見送られ、2017年7月に72億ユーロのギリシャ国債の償還期限を迎えることから、再び財政危機の再発の事態となりました。この事態に対して、2017年5月にギリシャ議会は、融資を受けるための条件となっていた、年金削減や増税を含む改革法案を可決し、同年6月に85億ユーロの追加融資を受けられることになり、ギリシャは財政危機を回避できました。
ギリシャ危機の問題点
ギリシャは、ユーロ圏の中で経済規模が3%にも満たない小国ですが、ギリシャ危機が世界を大きく揺るがすようになったのは、同国がユーロの一員であり、その危機がユーロ加盟各国のソブリン債に飛び火し、より大きな「欧州債務危機」となったからです。また、ギリシャ経済がEUと対立するロシアと地理的に近いことから、ギリシャを孤立化させることは、EUに地政学リスクを生じさせることにもなります。
<金融支援延長に合意できない場合の危機>
・ギリシャ政府の債務不履行危機(国債の利払いや償還に窮するリスク)
・ギリシャの銀行破綻危機(流動性破綻に陥るリスク)
・ギリシャのユーロ圏からの離脱危機(通貨問題の他に、地政学リスク)
ギリシャ危機の推移
・2009年10月:ギリシャの財政赤字の隠匿が判明
・2010年01月:欧州委員会が統計不備を指摘、ギリシャ国債格下げ
・2010年04月:ギリシャの財政赤字を13.6%に修正
・2010年05月:ギリシャへの第一次支援策決定
・2011年10月:ギリシャ政府が財政赤字削減目標の未達を発表
・2011年11月:ギリシャ首相の国民投票発言で国内外が反発
・2012年02月:ギリシャへの第ニ次支援策決定
・2012年05月:ギリシャ総選挙で連立協議失敗、ユーロ離脱懸念
・2012年06月:ギリシャ再選挙で連立政権発足
・2014年12月:議会で大統領を選出できず、総選挙実施へ
・2015年02月:反緊縮派の急進左派連合が勝利、支援4カ月延長合意
・2015年06月:IMFの借入を延滞、EUの第ニ次支援終了
・2015年08月:ギリシャへの第三次支援策決定
・2017年06月:ギリシャへの追加融資で合意、財政危機回避  
●「ギリシャ危機」の今 

 

そもそもギリシャ危機とは?
あれだけ世間で騒がれたギリシャ危機。連日ニュースでギリシャの首相が登場したのもあの時ぐらいではないでしょうか。ギリシャとEUとが金融を巡る争いをしていたことは、多くの人が認識したと思います。
しかし、実際のところギリシャ危機がどういうものかを正しく把握している人は多くないのではないでしょうか。
そもそも、「ギリシャ危機」とは「ギリシャ共和国の財政危機」のことです。2009年にギリシャ共和国の政権が交代したのですが、そのときに国家の財政赤字が公表した数字と異なっていたために問題となりました。GDPに対して5%ほどだと言われていたのですが、実際は13.6%ともなっていて、一気にギリシャが財政破綻するのでは?と憶測を呼びました。
そこでギリシャの国債が暴落し、関係の深い通貨のユーロも暴落してしまいました。EUやIMFは、ギリシャのために何度となく緊急支援をしてきました。2012年に第二次支援を決定したのですが、総額1300億ユーロという金額がEUの先進国の経済的負担になりました。
ギリシャ危機がもたらした影響
EUからの支援を受けていたギリシャですが、EUはただお金をギリシャに与えていたわけではありません。財政緊縮のための計画を実行する条件がついており、ギリシャ政府は政策を進めていました。支援金も返還義務があるものだったんですね。そのかいあって、財政面は改善しつつあったのですが、公務員の給与カットや増税、公共投資の削減によって景気が落ち込んでしまいました。国民の不満もたまり、ついに政権交代が起こってしまいます。そこで誕生したのがニュースでおなじみになったチプラス大統領を筆頭とする新政権です。
チプラス政権となって、IMFへの資金返還を延滞し、EUからの支援も終了してしまいます。緊縮策をEUは求めますが、これをギリシャは拒否。しかも、国民としてはEUに残ることを選択したため、交渉が難航するという事態に発展したわけです。今はEUによって第三次の金融支援が行われたため、当面の問題は解決しました。
ギリシャ危機のその後
現在、ギリシャでは年金制度の改革などが進んでいます。改革によって若者世代に年金が受け取れるようにしたり、自立した運用を行うよう法制度を整備したりしている最中です。
また、国内産業を盛んにするために、宿泊業等の自由化を進めました。これで競争力が高まり、若者の雇用を創出したりしています。
ギリシャはパルテノン神殿といった世界遺産も豊富にあり、観光業は一大産業です。
それから、地中海性気候を利用した農業も期待できます。良質なオリーブやぶどうがとれるため、オリーブオイルやワインといった加工品輸出も注目されている分野です。そして、実は石炭がとれるエネルギー大国。ただ、石炭は二酸化炭素を大量に排出するため再生可能エネルギーが模索されています。ギリシャでは、主に風力発電と太陽光発電が進んでいますが、実は日本の企業によって、二酸化炭素を再回収する新型の火力発電所も建設が進んでいます。現在は90%以上を火力発電に頼っていますが、今後エネルギー消費量も削減できる見通しです。

ギリシャは、地中海性気候でとても過ごしやすい国です。国民性も穏やかですが、その分余裕がなくなると人々の怠惰さが見え隠れするところがあります。財政としては改善に向かっていますが、再び同じような問題が起きることがないとは言えません。イギリスのようにEU離脱といった問題は起こっていませんが、再び財政難に陥るようなことがあれば、今度はEUから離脱宣告が起こるかもしれません。EUからの第三次の支援金を返済できるかどうかがカギを握っているといえます。 
●ギリシャショックが為替へ与えた影響 

 

2010年の春、ギリシャの財政不安はユーロ圏全体、さらに世界経済を巻き込んだ大混乱を引き起こしました。
ギリシャは歴史も長く世界的に有名な国家ですが、財政規模はアジアなら台湾やタイ、日本なら神奈川県と同じくらいで決して大きいわけではありません。
なぜこのような大騒動に発展したのでしょうか。
ギリシャ財政危機
きっかけは2009年10月にギリシャで政権交代が行われたことでした。
長く与党であった政党が野党に下り、新しい政党が政権与党になったのですが、新政権が財政をチェックしたところ、巨額の赤字が隠蔽されていたことが分かったのです。
それまで、ギリシャの財政赤字は、国内総生産(GDP)の4%程度と発表していたのですが、その実態は13%と3倍以上であり、累積の債務残高は国内総生産の113%と、国家の危機的状況でした。
硬直化して発展性に乏しい経済や、国内総生産の30%にもなるとされる闇経済(課税逃れ)といった多くの問題が数字としてあらわになったのです。
そこで新政権は財政再建策として大幅な増税や公務員の給与カットを発表しましたが、これに国民が怒りました。
給与や年金が減額される一方で、税金が上がるのですから、当然の反応と言って良いでしょう。
しかもギリシャは長く続いた左派政権により就労人口の40%が公務員という国ですので、人口の4分の1にあたる275万人がゼネラルストライキを起こし、経済は更なる混乱に陥ったのです。
単一通貨ユーロとギリシャ
共通通貨の根本的な問題に、各国の取りうる政策オプションが限られていることが挙げられます。
普通は経済・財政の調子が悪ければ、その国の通貨が売られて安くなり、バランスが取れるようになります。
日本経済が悪ければ円安になり、円安になれば輸出がしやすくなって経済が回復していくという流れと同じです。
しかしユーロ圏の場合は、国ごとにギリシャ・ユーロ安といったことが出来ません。
それどころか全体としてユーロ諸国が活況であればユーロの相場が高くなっていきますので輸出や観光業が不振となりやすく、ギリシャのような国は非常に苦しい立場に追い込まれます。
更に「決まりごと」がギリシャの財政再建を遅らせる可能性も指摘されました。
ユーロ圏は財政規律を守るため、財政赤字の対GDP比率や起債規模が決められています。
つまり既にその基準を超えていたギリシャは、国債発行額(収入)を減らしながら、財政バランスを回復(収入以上に支出を削減)させなければならず、節約しながら景気を良くするという無理難題を付きつけられたことになります。
ギリシャショックとは
ギリシャ財政危機はギリシャ単独の問題ですが、これを受けてギリシャショックと呼ばれる世界的な大混乱が起きました。
一つは「ギリシャと同様の国があるのではないか」という疑心暗鬼が、他の国に向けられたことです。
特に経済的に不安定とされていたPIIGS(豚。ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの頭文字をとった造語)諸国は、その一角が実際に崩れたことにより、財政不安をささやかれました。
もう一つは、ユーロ圏は運命共同体的な側面をもっているため、ユーロ加盟諸国全体にダメージを与えるとの見方が強まったことです。
ギリシャのソブリンリスクが現実化し、格付けの低下や、ギリシャ国債の価値下落、最悪デフォルト(国債償還不能)という事態になれば、それを持ち合っているユーロ諸国も損をするので当然の想像です。
これに加え、欧州連合はギリシャを支援するのか、それとも見捨てるのかという方針がはっきりしなかったことも、投資者心理に不安を与えました。
もしギリシャを支援すれば、次に財政危機に陥った国々にも同様の支援をしなければなりませんが、そこまでの余裕はありません。
逆に見捨てるとすれば、ギリシャの破綻がより近くなり、結果的にユーロ圏が本当にダメージを受けることになるのですから、困ります。
結果として「ユーロは全部ダメだ!」というリスク回避の動きになりました。
為替への影響
ギリシャの経済規模は3,575億ドル(2008年、IMF統計)とユーロ圏全体の2.5%程度で、ドイツ(3兆6,731億ドル)の10分の1以下、イギリス、フランスやイタリアにも遠く及ばず、オーストリアやポーランドといった旧共産圏諸国と肩を並べる程度に過ぎません。
日本なら都道府県レベルであり、東京・大阪・愛知より低く、神奈川県と同じくらいです。
もし大阪府が財政破綻しそうだとか、公務員給与が引き下げになるということになれば大ニュースにはなるでしょうが、それで日本円の為替相場が乱高下するという事態にはならないのと同じような規模です。
しかし、ギリシャの財政危機は、ユーロ圏全体を巻き込みました。
格付け各社がギリシャ国債の格付けを引き下げたのを見て、デフォルト不安からギリシャ国債は暴落。
株式市場も世界的に値を下げ、ユーロも多くの通貨との間で下落しました。
例えば日本円に対しては2009年10月に1ユーロ=約140円だったのが、2010年4月には1ユーロ=110円前後と20%以上も価値が下がってしまったのです。 
 
 
 
 〜2010

 

●2010年欧州ソブリン危機 
[ 欧州債務危機、欧州経済危機、欧州危機、通称ユーロ危機 ] 2009年10月のギリシャ政権交代による国家財政の粉飾決算の暴露から始まる、経済危機の連鎖である。スペイン、ポルトガルなどユーロ加盟諸国(PIIGS)、あるいはハンガリーやラトビアなど中東欧諸国へ波及した場合、世界的な金融危機に発展するかもしれないと懸念されている。2011年以降にもユーロ圏第三位のイタリア情勢が深刻化するなど、欧州不安は広範囲に拡大した。
地中海周辺諸国の財政問題はオスマン債務管理局の時代から世界経済を左右してきた。そして現代においては、欧州連合(EU)による欧州通貨統合が南欧に広がるにつれ、PIIGSと呼ばれる国々の経済の弱さが浮き彫りになった。問題は独仏のマネーがこれらの国に大量に投資されているため、欧州全体のマネーフローの問題になったことである。また世界金融危機後のけん引役の1つである欧州経済の不調が、今なお脆弱なアメリカや日本の経済危機の引き金を引くのではないかという懸念がある。
根本的には経済の規模、内容、政治が異なる国々による欧州通貨統合という実験が失敗に終わるのではないかという考え方が力を持ち始めていることにある。またドイツやフランス国民には、自分たちの稼いだお金が放漫財政の救済のためにどぶに捨てられると考え始め、またPIIGSにとっては稼いだ金を金利などによって吸い取られていると考え、EU全体の遠心力の爆発という大きな政治危機の引き金になりかねないとされる。
「欧州統合は戦争か平和かの問題であり、ユーロが平和を保証している」(コール独元首相)という考え方が根底にあり、英国のように通貨統合を単なる経済上の試みとはとらえず、安全保障上の政治的意思と大陸諸国は捉えている。
主要10カ国(G7+スペイン、韓国、スイス)の2000年と2008年の数字を比較すると、名目GDPは22.5兆ドル(以下同じ単位)から33.8へと11.3の増加だったが、債務総額は70.8から111.5へと40.7増加しており、GDP増加の4倍債務が膨らんでいる。金融危機の度に多額の資金が供給され、それは国債という政府の負債としてたまっている。余剰資金は金利や期待利益率の高い新興国に流入する。ギリシャは欧州金融危機を米投資銀行のアドバイスで欧州中央銀行 (ECB) からの融資で乗り切ったと言われる。いつまでも多額の借金を背負ったままでいられないので「ソブリンリスク」として、国家のデフォルトの危険は増している。2011年9月現在でギリシャの長期国債の金利は20%を超えている。
ロバート・フェルドマン(モルガン・スタンレーMUFG証券経済調査部長)や、稲葉延雄元日銀理事は、ストレステスト後の欧州は日本の1999年頃の感じであり、これから構造調整の痛みがあるだろうと説く。
世界最大の投信(運用資産1.1兆ドル)「ピムコ」のビル・グロスは外国債の危険を表す「炎の輪」を唱え、ギリシャ国債から早めに撤退した。
予測されていた危機
マネタリズムの祖であるミルトン・フリードマンはユーロの見通しの悪さを予見していた。適切な金融政策がとれるのは変動相場制があるからであり、統一通貨ではそれは不可能である。さらに悪いことに、ユーロ圏のように為替レート変動による経済の調整メカニズムを放棄している場合には国内の価格や賃金あるいは資本移動によってでしか調整メカニズムがはたらかないので、ユーロ圏各国が各自独立した文化や規制を有している状態のままユーロを導入すれば、ユーロ圏各国の政府が各々異なる政治的圧力にさらされ、それら政府同士での政治的軋轢が生じる。これはまさに現在のPIIGSとドイツのように、救済される側とする側とで異なる政治的圧力がはたらきユーロ圏政府間での交渉が行き詰っている状態をさしており、このような経済的困難が現れることは既にフリードマンによって危惧されていたのである。
通貨発行権限
PIIGS諸国などが抱える欧州債務問題の原因はユーロ圏ではドイツにあるECBだけがユーロ紙幣を発行する権限を有しているために、ユーロ圏の各加盟国が紙幣増刷によって自力で債務返済できないシステムをとっているからであると説明される。オッカムの剃刀の法則によって、自国通貨を発行できる中央銀行を有する米国や日本がその政府債務額に比して深刻な金融危機に陥っていないことを簡潔に説明でき、準備通貨としての地位や労働時間などその他の要素を債務問題の原因から矛盾無く排除することができる。
背景
1881年 - オスマン債務管理局が設置された。
1967年 - 欧州諸共同体が発足する。
1968年 - 12月、ベルギーのブリュッセルでICSDユーロクリアが設立される。
1970年9月 - ルクセンブルクでICSDセデルが設立される。
1973年 - ベルギーに国際銀行間通信協会が設立される。
1979年 - 欧州通貨制度始まる。イギリスは基本的に不参加だったが、マーストリヒト条約の前後にわたり参加。
1980年 - ベルギーで憲法改正。1970年に続く第二弾。地方分権にあたり、文化と経済の二元軸で、つまり地図上において異なる境界で自治体を区分。文化と経済の分離が進む。1988年と1993年にも同様の趣旨で改正される。
1981年4月 - ベルギーの公定歩合が15%を記録する。
1982年 - ロベルト・カルヴィが暗殺される。
1983年 - ジャック・ドロールが仏蔵相に就任し、フランソワ・ミッテランの社会主義政策を転換する。
1986年 - 2月、単一欧州議定書が調印される。10月、イギリスでビッグバン (金融市場)おこる。
1987年10月 - ブラックマンデー
1989年11月9日 - 東西ドイツを隔てていたベルリンの壁が崩壊。
1990年 - 東西ドイツ統一。各国は強大なドイツが欧州を支配することを恐れ、統一通貨への参加とECBの設立によりドイツが欧州の1つの国として生きることを選択。
1992年 - ポンド危機
1997-98年 - アジア通貨危機。
1998年 - ロシアのデフォルト、回収率50%。ロングターム・キャピタル・マネジメント破綻。
1999年1月 - ユーロ導入、1ユーロ=1.17ドル
2000年 - ギリシャのユーロ加盟。その条件は財政赤字を対GDP比3%以内に収めることであるが、この頃から粉飾は始まっていたと、2004年のEU財務相理事会において指摘があった。しかし経済回復に伴い英独仏の銀行や保険会社は南欧ブームに乗って、貸し付けを行った(PIIGS合計2兆ドル)。
2001年 - アルゼンチンがデフォルト、820億ドル、回収率30%。
2002年1月 - ユーロ紙幣・硬貨が流通開始。
2004年 - アテネオリンピック開催。ギリシャの借金が注ぎ込まれる。
2005年 - ギリシャの経常収支赤字が対GDP比5%に達する。2008年には8%。
2007年 - サブプライムローン危機が表面化。2008年9月のリーマン・ショック後の欧州経済危機について、各国政府がECBからの融資で切り抜ける一方、ISCD設立当初から関係していた金融機関は2007年12月から2010年6月にわたりFRBから16兆ドルのベイルアウトを受けた。
2008年1月 - SEPA(en:Single Euro Payments Area)稼動。
経緯
2009年
2009年10月 - ギリシャでゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ新政権への交代が起こり、それまで対GDP比3.7%とされた財政赤字が実際には12.5%であると発表する(2010年4月には13.6%に修正された)。国債規模の"粉飾"にはゴールドマン・サックスとの"不適切な"デリバティブ取引が関係していたとされる。ギリシャは小さい国(人口1,100万人、GDP3,600億ドル)で自力での解決は不可能である。そこで、2001年のアルゼンチンのデフォルトが思い出され、ソブリン・リスクが意識された。
12月16日 - スタンダード&プアーズ(S&P)がギリシャの長期格付け「A-」を「BBB+」に1段階引き下げ、ユーロ売りが始まる。
2010年1-6月
1月 - スペインが500億ユーロの緊急財政措置(歳出削減)。公共インフラ事業の凍結を含むため、景気の回復の遅れが懸念された。
1月28日 - クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場にて、ギリシャのCDSスプレッド(5年物)が400.5bp(ベーシスポイント)にまで拡大。10年物のギリシャ国債と独連邦債との利回り格差も393bp。
3月24日 - フィッチ・レーティングスがポルトガルの格付けを「AA」から「AA-」に引き下げ。
4月 - S&Pがポルトガルの格付けを「A+」から2ノッチ下げて「A-」に。
4月20日 - メキシコ湾の深海油田「マコンド・プロスペクト」において、国際石油資本・BPの掘削リグ「ディープウォーター・ホライゾン」が爆発炎上、その後沈没。史上最大規模の原油が流出(「2010年メキシコ湾原油流出事故」も参照)。
4月22日 - 欧州連合統計局(ユーロスタット)がギリシャの財政赤字を13.6%に上方修正し、さらに14%になる可能性があるとした。アイルランドは14.3%でギリシャを上回る。
4月27日 - S&Pがギリシャ国債を3段階引き下げて投資不適格に。
5月6日 - ECBのトリシェ総裁が記者の質問に答え、「ギリシャ国債買い上げはしない」と発言。
5月7日 - ギリシャ問題に加え、ニューヨーク株式市場でダウ平均株価が急落(現地では6日)。一時998ドル下がり、過去最大の下落となった。終値で347ドル安の大幅続落。また、欧州圏でのソブリンリスクの高まりと株価急落を受け、ドル資金市場ではドル不足が顕著になり欧州財政危機が、世界規模の金融危機に再び転化する兆候が現れている。
5月9日 独中心部ノルトライン=ヴェストファーレン州議会選挙が行われ、メルケル首相率いる与党側が敗北、ユーロ支援支出が問題となる。ECBは今までの政策を変更し、ギリシャ、スペイン、ポルトガル国債の買い切りオペを実行し、救済した。
5月12日 - スペインが150億ユーロの追加歳出削減発表。公務員給与の削減、子ども手当や介護基金などの社会支出削減。
5月18日 - 中国の温家宝首相は、北京を訪問したドイツのホルスト・ケーラー連邦大統領との会談の席上で、世界経済が危機的な状況であると認識している旨を発言した。
6月2日 - EUはギリシャに対する1,100億ユーロ(ドイツ負担224億ユーロ)の支援策を発表。
6月3日 - ハンガリー(ユーロ非加盟)新政権の政府与党の複数の幹部が、前政権による財政赤字の粉飾に言及した。それによれば、公表された3.8%ではなく7%以上であるという。EUや国際通貨基金(IMF)からの融資250億ドルのうち、オーストリア24%、ドイツ21%、イタリア17%となっている。そのためユーロや自国通貨フォリントが急落した。
6月8日 スイスの外貨準備が5月だけで790億スイスフラン、50%増。年初からの合計はGDPの1/4。ブルガリアでは、社会党政権に代わった中道右派の新政権が、2009年における財政赤字について債務の対GDP比を1.9%から3.7%に修正した。この事などから欧州委員会は、ユーロスタットの調査団によるブルガリア経済の監査を実施することを発表した。
6月10日 - EUは7,500億ユーロの支援策を発表(ドイツは1230億ユーロを負担)。
6月14日 - ムーディーズがギリシャの国債「A3」から4段階引き下げ投機的な等級「Ba1」に格下げ。
6月17日 EU、IMF、米財務省がスペインに2,500億ユーロの資金繰り援助を策定との報道。スペインの国債入札が順調。EU首脳会議が、26主要銀行の「ストレステスト」(健全性検査・資産査定の一種)の結果を7月に公表すると発表。
6月18日 - NY-COMEX金価格一時1263.7ドルと最高値を更新。
6月22日 フランスの大手銀行クレディ・アグリコールは、ギリシャ子会社エンポリキ銀行関連での4億ユーロの評価損の計上を発表した。またエンポリキ銀行の2010年における純損失が当初の予想の2倍を超える7億5,000万ユーロとなる見通しを示した。イギリス新政権が財政再建策を発表、VAT(付加価値税)を来年1月から現在の17.5%から20%に引き上げる。また銀行税を導入し、法人税は引き下げていく。これで財政赤字の対GDP比を現在の11.3%から15年度には1.2%まで下げる。
6月24日 欧州CDS市場にて、ギリシャのCDSスプレッド (5年物) が過去の最大水準を超える1085bpに拡大。10年物ギリシャ国債と独連邦債との利回り格差は802bp。BPの原油流出事故(4月20日)の影響で、米欧亜の石油大手の時価総額は、上位10社の合計だけでおよそ3100億ドル(約28兆円)減少した。
6月25日 ルーマニア憲法裁判所はEUとIMFからの20億ユーロの融資条件の緊縮財政措置の年金カットの一部を違憲とした。カナダでG20首脳会議開催。経済健全化のための緊縮財政を主張するEUと、景気悪化を懸念する米国が対立。EU委員会はストレステストの地方銀行への拡大(合計100行)を要請。特に懸念されるドイツの州立銀行ではバイエルン州立銀行の他約10行が検査対象になる。
6月29日 - ギリシャが24時間ゼネスト。
2010年7月-10月
7月1日 ECBの1年物オペ4420億ユーロが満期を迎える。日経平均株価が9191.60円となり、年初来安値を更新。NYで円相場が前年12月以来7ヶ月ぶりとなる86.98を付ける。
7月2日 EUの発表による欧州全体の失業率は10.0%、スペインは19.9%、ダウ平均株価が前年10月5日以来、約9カ月ぶりの安値となる9686.48ドルに下落。
7月8日 - フィナンシャル・タイムズの報道によれば、National Bank of Greece(ギリシャ)、Postbank(ドイツ)、bar Alpha Bank(ギリシャ)、Monte dei Paschi(イタリア)が特に多額の資本注入が必要という。
7月11日 - 国際決済銀行(BIS)が6月28日に発行した年次報告書の脚注とその後の電子メールから、欧州のある匿名の民間銀行(あるいは中央銀行)が346トンの金を担保にBISから140億ドルの融資(SDRスワップ)を受けたことが明らかになった。融資期間は1年以内で返済できない場合金は市場で売却される可能性があり金相場は弱含みになった。焦点とみられる各国中央銀行の金保有高はギリシャ112.2、スペイン281.6、ポルトガル382.5トンであり思惑を呼んでいる。資金ベースでは外国為替市場に占める規模は限定的であるが金流通にとっては世界の年間生産量の約20%に相当する。
7月13日 - ムーディーズは、ポルトガルの格付けを「AA2」から「A1」に2ノッチ引き下げ、見通しを「安定的」とした。
7月14日 - スペイン中央銀行によれば、同国銀行のECBからの借り入れが、6月は1263億€と、5月の856.2億€から48%急増し、1999年以降最大になった。
7月16日 - EU関係筋がストレステストの基準案を明らかにした。第1にコアTier 1(狭義の自己資本比率)を6%とする。ソブリンリスク(外国投資の危険度)へのエクスポージャー(負債)を第2とした。成長率の想定は甘いが、国債価格を5月下旬より下げる。
7月19日 - ムーディーズはアイルランドの格付けを「Aa1」から「Aa2」へ1ノッチ下げる。見通しは安定的。アイルランドの赤字は14%と欧州最大級。
7月23日 - 欧州銀行監督委員会(CEBS)にるストレステスト(91行)の結果公表。
2010年11月-
11月15日 - EU統計局はギリシャの対GDP赤字比率を2009年は15.4%(前回13.6%)、2008年は9.4%(同7.7%)と拡大修正した。目標は8.1%なので歳出削減追加を求められている。2009年度のユーロ圏16カ国の赤字は6.3%(前年2%)、EU全体では6.8%(前年2.3%)と拡大している。
11月21日 - アイルランドの報道機関が、アイルランドがEUとIMFに対して数百億€の金融支援を要請することを同日中に閣議に諮る旨を伝えた。支援の財源には、EUとIMFが2010年5月に設立した総額7,500億€(約85兆円)の「ユーロ防衛基金」が活用される見込みであるという。
11月22日 - フィナンシャル・タイムズはバークレーズ・キャピタルの発表として、バーゼル3の適用(自己資本比率コアTier1規制7%+余裕1%)で米国の上位銀行が資本不足となり、リスク資産の売却を迫られるだろうとした。バーゼル2(欧州は適用済み)の米国への適用の影響は予測が付かないとした。
12月8日 - IMFの専務理事ドミニク・ストロス=カーンが国連欧州本部での講演において、ヨーロッパがなおも厳しい情勢にあり経済・財政危機へのより効果的な対応策が必要であるとの見解を示した。一方欧州委員会(EUの行政部門)は、8日に金融機関規制の統一案を発表した。
12月17日 - ムーディーズはアイルランドの格付けを「Aa2」から「Baa1」に5段階引き下げ、見通しも「ネガティブ」とした。金融機関救済、経済見通し、国家の財政力といった問題があることが理由である。
ギリシャ問題
総論「ギリシャの経済」参照
スペイン問題
○「欧州の最大の問題はギリシャではなくスペインの金融問題」(クレディ・スイス証券の丸山俊ストラテジスト)とされる。スペインの住宅バブルが今後の引き締めで大打撃を受ける。1998年から2008年の10年間で住宅価格は3倍になった。マドリッド郊外では空室率は40%を超えている(大手銀行サンタンデールとBBVA(ビルバオ銀行)のCDS料率は6月に2%を超えた)。
○スペインはGDP世界9位の経済大国である。債務総額は2010年末で7,230億€(9,800億$)である。
・ 2000年から2008年にかけてスペインの家計債務は、日本や英国を含む先進10カ国の中で最高の40%の増加であった。
・ BIS集計によれば、スペインの債務額は約9,000億ドル(対GDP比66%)。2008年GDP1.6兆ドルである。
・ 2009年の住宅販売件数が2007年から44.7%減少し、100万戸以上の在庫がある。同期間の着工件数が74.1%と急減している中で、住宅価格は9.3%減しか下がっていないので、市場マヒ状態であるといえる(そのため損失額が確定できず、さらに増加する可能性を持つ。)。2010年の失業率は約20%、失業者数約500万人である。有期雇用者への手厚い保護のため期間従業員が多く、不動産バブル崩壊で一気に失業者が増えた。銀行の不動産業向け融資はGDPの4割4420億€になっている。
・ 2010年1月に500億ユーロ、5月に150億ユーロの緊急歳出削減を発表した。その中には公共インフラ整備、子供手当、公務員給与、介護基金などの普通聖域とされる内容も含まれている。これらの措置は財政健全化効果の他に景気を減速させる効果も持つので、スペインの将来は不透明である。
・ 2010年7月2日のEUの発表によれば、スペインの失業率は19.9%である。
・ 2011年 4月30日の155億€を初めとして、2011年は1,327億€の国債を償還する。債務総額は2010年末で7,230億€(9,800億$)である。BBVAは自己資本の2倍00億€の国債を抱え、サンタンデールは自己資本の8割500億€、コメルツは15%36億€。国債だけではなく2011年4〜6月にサンタンデールは110億€を償還(借り換え)する。
オーストリア・ハンガリー問題
ハンガリーでは、2010年4月に発足したオルバン新政権が6月3日に前政権の粉飾決算を公表したことから、財政破綻の可能性が語られるようになった。与党フィデス(ハンガリー市民同盟)のコーシャ副党首は、ハンガリーの財政がギリシャ同様の危機的状況に陥るのを避けるのは容易でない旨を語っている。国債のCDSスプレッドは200bpから400bpに跳ね上がったが、その後の財政再建策の発表などにより6月下旬現在300bp前後で落ち着いている。しかしオルバン政権は前政権によるIMF主導の緊縮財政に対する反対と減税の約束で政権を取ったため、国民の支持は不確かである。ハンガリーは1,500億円、国立銀行は500億円の「サムライ債」(円貨建て外債)(購入者に為替リスクが無いのが魅力だが、デフォルトリスク(破綻懸念)がある。為替リスクは発行体が負うので、為替相場が急落した場合デフォルトへの誘惑が大きい)を発行しており、個人も保有していると見られる。ハンガリーにはオーストリアがGDPの1割に当たる370億ドルを融資しており、チェコとルーマニアにも合計100億ドル融資している。破綻すれば大きな影響があるのは確実と見られる。
ハンガリーは自国通貨フォリントをユーロに統合すべく移行期間(ERM2)を実施中に今回の金融危機に見舞われた(2001年5月4日から非常に狭いクローリング・ペッグ制からERM2/ユーロペッグ制に移行、2008年2月25日から変動相場制度)。ハンガリーは公式には為替固定国ではなかったものの事実上ユーロペッグしたことがフォリントの大幅な実質高をもたらしていた。このことが危機の深刻化に影響しており、アジア通貨危機の際の構造と問題は類似している。
また2008年の世界的な金融危機の煽りを受け同10月28日から11月7日にかけてIMFやEUおよび世界銀行からの緊急融資がおこなわれており、大幅な金利引き上げや財政支出の厳しい削減を含んだ「構造改革」を要求されている。IMFは一般財政収支の赤字は2008年のGDP比3.4%を2009年に2.6%にするよう迫ったが、現実には2009年5月時点で3.9%とむしろ拡大するような状況であった。2010年は財政赤字幅をGDP比で3.8%に抑える計画だったが、それが7%超と大きく上回る見通しである。
投資家は安定した通貨に投資する。しかし危機が起きたときに中央銀行は外貨準備が少ないため、相場を維持できない。それを見越して投資家などはフォリントを売って外貨を買うためますます外貨が少なくなり、相場は暴落する。そうすると外貨建て債務が(中味は同じなのに)急増し、危機がより一層深刻化するのであるハンガリーでは金融機関による企業向け融資と個人向け融資ともに大半をユーロやスイスなどの外貨建て融資が占めており、その中でもスイスフラン建て融資は2009年末時点で61.5%にのぼっていた。2008年の金融危機以降、ECBやスイス中央銀行によるスワップによる流動性補填が実施されている。フォリントの下落がスイスフラン買いを加速し、ユーロ/スイスフラン下落をもたらしスイス中央銀行のユーロ買い介入の原因のひとつを占めるとの観測もある。
最近では、政権党が世界への影響を読み損なって、前政権に責任を取らせようとし、実際の影響はそれほど大きいものではない、という見方も多い。しかし東欧経済とユーロの構造問題自体が消えて無くなった訳ではない。
アイルランド問題
リーマン・ショック以降、不動産市場を基点に重篤な経済危機に陥ったが、公的資金の導入と国営化などにより銀行救済が行われ経済は小康状態を保っていた。しかし、不動産市場は低迷したままであり銀行の救済コストが上昇、巨額の追加支援が必要なことが明らかになり、2010年9月30日には最大5.7兆円規模の金融システム修復策を発表、同国の2010年の財政赤字はGDPの32%に拡大する見通しとなった。これらを受けムーディーズは2010年7月19日にアイルランド国債の格付けを「Aa1」から「Aa2」に引き下げ、2010年10月5日にはさらなる格下げの検討を発表、フィッチは2010年10月6日「AA-」から「A+」に引き下げ、見通しはネガティブとし今後さらに引き下げられる可能性を示唆した。11月10日、アイルランド中央銀行のホノハン総裁は外資系銀行を含む国内金融機関の融資損失は少なくとも同国GDPの55%に相当する850億ユーロになるとの推計を発表した。
アイルランドの財政危機のきっかけは、国が金融機関の損失を救済しすべての債務を保証したことだと言われている。金融機関を救済したため、財政赤字がGDPの30%以上(32%)となり、公債がGDPの176%になった。アイルランド向けエクスポージャーはギリシャ向けの3倍以上である5,000億ドル(約42兆円)と推定されている。イギリスはアイルランドへの数十億ポンドの融資を表明した。リーマン・ショック後から金融機関に投入された公的資金は約330億€であったが、アイルランド政府は最終的に500億€にのぼると試算した。金融機関へのECBからの支援は2010年10月末現在で1300億€にのぼり、アイルランド中央銀行からも350億€の支援を受けていた。アイルランド経済がここまで悪化したのは、1990年代前半から2007年までの間、12.5%の低い法人税率で企業を呼び込み、不動産バブルが起き、その後崩壊したためである。住宅着工件数は2006年のピークの1/8である。2008年まで4%台だった失業率が、2010年9月には14.1%に上昇している。
12月15日、アイルランド議会はEU-IMF主導の救済策受け入れを承認した。しかし金融機関支援策では、預金者だけでなく優先債権者や劣後債権者まで保証しており、モラルハザードのおそれと巨額の公的債務を生んでいる。この救済事例は「債権者に優しい」最後のものになるのではないかと言われている。
12月17日、ムーディーズはアイルランドの格付けを「Aa2」から「Baa1」に5段階引き下げ、見通しも「ネガティブ」とした。金融機関救済、経済見通し、国家の財政力といった問題があることが理由である。
2011年1月27日の欧州債権市場において、ギリシャやスペインとともにアイルランドの国債相場にも下落がみられた。アイルランド10年債は利回り9.13%、ドイツ債とのスプレッドは5.92ポイントとなった(ロンドン時間27日午後4時現在)。
主な債務国(借手)
○ ギリシャ - フランス788、ドイツ450、米国166ほか、(日本67)ほか、合計2170
 国債発行残高30兆円(GDPの1.2倍、7割は国外保有)。
 債務再編の見通し
 ・2010年の段階で、利払いは2009年は119億ユーロ、2012年は171億ユーロ、2014年は204億ユーロが見込まれていた。
 ・2010年の段階で、2014年には債務が3538億ユーロにのぼりピークに達すると見込まれていた。IMFの試算によると、2014年には707億ユーロの借り入れが必要となり、民間からの借り入れ残高は2650億ユーロとなるという。これらの他にも、EUとIMFに対する債務は2010年時点で850億ユーロであった。
○ ハンガリー - オーストリア370、ドイツ319、フランス111、(日本17)ほか、合計1398
○ スペイン - ドイツ2380、フランス2112、オランダ1197、イギリス1110、アメリカ580、(日本284)、ほか合計9257
○ ポルトガル−ドイツ474、フランス449、イギリス256、(日本43)ほか、合計2509
○ イタリア - フランス5078、ドイツ1897、イギリス765、日本544、アメリカ532ほか、合計11451
○ アイルランド−ドイツ1838、イギリス1727、アメリカ571、(日本217)ほか、合計6477
主な債権国
○ フランス - イタリア5078、スペイン2112、ギリシャ788、アイルランド521、ポルトガル449
○ ドイツ - スペイン2380、イタリア1897、アイルランド1838、ギリシャ450
○ イギリス - アイルランド1727、スペイン1100、イタリア765、ポルトガル256
○ オランダ - スペイン1197、イタリア691、ポーランド352
○ アメリカ - スペイン580、アイルランド571、イタリア532、ギリシャ166
○ 日本 - イタリア544、スペイン284、アイルランド217、ギリシャ67
日本への影響
日本の輸出企業には10円の円高ユーロ安が2%の減益要因になると言われている。欧州への輸出は全体の約1-2割程度である。PIIGSへの日本の融資残高は1000億ドル程度。ギリシャにとどまらず、スペイン、ポルトガルへ飛び火すれば、英独仏だけでは処理が難しく、世界金融危機にさらされるとされる。豪ドル相場は4月中旬以来13%下げ、国内株も15%安になっている。  
●ギリシャショックが為替へ与えた影響 2010 

 

2010年の春、ギリシャの財政不安はユーロ圏全体、さらに世界経済を巻き込んだ大混乱を引き起こしました。
ギリシャは歴史も長く世界的に有名な国家ですが、財政規模はアジアなら台湾やタイ、日本なら神奈川県と同じくらいで決して大きいわけではありません。
なぜこのような大騒動に発展したのでしょうか。
ギリシャ財政危機
きっかけは2009年10月にギリシャで政権交代が行われたことでした。
長く与党であった政党が野党に下り、新しい政党が政権与党になったのですが、新政権が財政をチェックしたところ、巨額の赤字が隠蔽されていたことが分かったのです。
それまで、ギリシャの財政赤字は、国内総生産(GDP)の4%程度と発表していたのですが、その実態は13%と3倍以上であり、累積の債務残高は国内総生産の113%と、国家の危機的状況でした。
硬直化して発展性に乏しい経済や、国内総生産の30%にもなるとされる闇経済(課税逃れ)といった多くの問題が数字としてあらわになったのです。
そこで新政権は財政再建策として大幅な増税や公務員の給与カットを発表しましたが、これに国民が怒りました。
給与や年金が減額される一方で、税金が上がるのですから、当然の反応と言って良いでしょう。
しかもギリシャは長く続いた左派政権により就労人口の40%が公務員という国ですので、人口の4分の1にあたる275万人がゼネラルストライキを起こし、経済は更なる混乱に陥ったのです。
単一通貨ユーロとギリシャ
共通通貨の根本的な問題に、各国の取りうる政策オプションが限られていることが挙げられます。
普通は経済・財政の調子が悪ければ、その国の通貨が売られて安くなり、バランスが取れるようになります。
日本経済が悪ければ円安になり、円安になれば輸出がしやすくなって経済が回復していくという流れと同じです。
しかしユーロ圏の場合は、国ごとにギリシャ・ユーロ安といったことが出来ません。
それどころか全体としてユーロ諸国が活況であればユーロの相場が高くなっていきますので輸出や観光業が不振となりやすく、ギリシャのような国は非常に苦しい立場に追い込まれます。
更に「決まりごと」がギリシャの財政再建を遅らせる可能性も指摘されました。
ユーロ圏は財政規律を守るため、財政赤字の対GDP比率や起債規模が決められています。
つまり既にその基準を超えていたギリシャは、国債発行額(収入)を減らしながら、財政バランスを回復(収入以上に支出を削減)させなければならず、節約しながら景気を良くするという無理難題を付きつけられたことになります。
ギリシャショックとは
ギリシャ財政危機はギリシャ単独の問題ですが、これを受けてギリシャショックと呼ばれる世界的な大混乱が起きました。
一つは「ギリシャと同様の国があるのではないか」という疑心暗鬼が、他の国に向けられたことです。
特に経済的に不安定とされていたPIIGS(豚。ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの頭文字をとった造語)諸国は、その一角が実際に崩れたことにより、財政不安をささやかれました。
もう一つは、ユーロ圏は運命共同体的な側面をもっているため、ユーロ加盟諸国全体にダメージを与えるとの見方が強まったことです。
ギリシャのソブリンリスクが現実化し、格付けの低下や、ギリシャ国債の価値下落、最悪デフォルト(国債償還不能)という事態になれば、それを持ち合っているユーロ諸国も損をするので当然の想像です。
これに加え、欧州連合はギリシャを支援するのか、それとも見捨てるのかという方針がはっきりしなかったことも、投資者心理に不安を与えました。
もしギリシャを支援すれば、次に財政危機に陥った国々にも同様の支援をしなければなりませんが、そこまでの余裕はありません。
逆に見捨てるとすれば、ギリシャの破綻がより近くなり、結果的にユーロ圏が本当にダメージを受けることになるのですから、困ります。
結果として「ユーロは全部ダメだ!」というリスク回避の動きになりました。
為替への影響
ギリシャの経済規模は3,575億ドル(2008年、IMF統計)とユーロ圏全体の2.5%程度で、ドイツ(3兆6,731億ドル)の10分の1以下、イギリス、フランスやイタリアにも遠く及ばず、オーストリアやポーランドといった旧共産圏諸国と肩を並べる程度に過ぎません。
日本なら都道府県レベルであり、東京・大阪・愛知より低く、神奈川県と同じくらいです。
もし大阪府が財政破綻しそうだとか、公務員給与が引き下げになるということになれば大ニュースにはなるでしょうが、それで日本円の為替相場が乱高下するという事態にはならないのと同じような規模です。
しかし、ギリシャの財政危機は、ユーロ圏全体を巻き込みました。
格付け各社がギリシャ国債の格付けを引き下げたのを見て、デフォルト不安からギリシャ国債は暴落。
株式市場も世界的に値を下げ、ユーロも多くの通貨との間で下落しました。
例えば日本円に対しては2009年10月に1ユーロ=約140円だったのが、2010年4月には1ユーロ=110円前後と20%以上も価値が下がってしまったのです。 
 

 

 

 

●財政破綻したギリシャと日本を比較してみる 2010/7 
目先のリスクは小さいが財政再建は不可避
6月17日、菅直人首相が自民党の10%という数字を参考にした消費税率引き上げの検討を始めるとの宣言をし、大きな話題となっている。
政府が発表した、初の財政再建戦略
筆者は東京工業大学の後輩であることもあり、古くから菅首相を見てきている。菅氏が副総理兼財務相をしていた時代は、ちょうど、2009年10月〜10年4月のギリシャ財政破綻がクローズアップされた時期に当たり、それを見て、財政への危機感を大きくしていたことを覚えている。
欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)といった国際機関からの圧力による財政再建がどれほど惨めなことかを理解し、「わが国が他国にはしの上げ下ろしまで指図されることがあってはならない」と発言していた。日本が自ら、財政再建に取り組むことの必要性を痛感した結果の発言ではないかと考えている。
6月22日、民主党政権としては初の財政再建戦略である「財政運営戦略」が閣議決定された。具体的には、基礎的財政収支の15年度までの赤字半減、20年度までの黒字化を掲げ、21年度以降に公的債務残高の対国内総生産(GDP)比の安定的な低下を目指す内容だ。
野田佳彦財務相はさらに、「財政運営戦略」と「中期財政フレーム」と整合的な予算編成を行うと述べた。11年度予算ではさっそく新規国債発行額を約44兆円以下とし、初年度からの財政運営戦略の徹底を強く印象づけた格好だ。この「財政運営戦略」と「中期財政フレーム」が財政再建の最後のカードになる可能性は高い。
破綻したギリシャと日本を比較してみる
いずれにせよ、10年度予算の新規国債発行額が過去最高の44兆3030億円となっている事実は変わらず、日本の財政状況は、当初予算段階から借金が税収を上回る戦後初の非常事態にまでなっているのだが、はたしてギリシャのようにはならないのだろうか。
ここで、主要国(G7)とPIGS(ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペイン)の国債金利と経済財政状況を比較してみよう。
   [ 表略 ]
表のように、日本は毎年の財政赤字が大きく、対GDP比債務残高は189%と世界最大になっている。
ここで、債務残高とは公債発行残高、借入金残高等の負債を合計したものであるが、そうした負債のみに注目するのではなく、政府が保有している金融資産(債券、貸付金、株式、出資金等)を控除した純債務にも注目する必要があるという議論が出てくる。
日本政府が保有している金融資産は大きいため、民間企業のような貸借対照表を描けば、問題はないとの見方だ。しかし、純債務で考えても下表のようにわが国の状況は悪く、OECDの推計によれば、2010年にはGDP比で100%を超えて、イタリアを抜いて世界一になるとも言われている。
ギリシャはどのように破綻していったか
数字的にはギリシャと同程度、もしくはさらにひどい状況にある日本の財政だが、ギリシャのような破綻を来す可能性はないのだろうか。ギリシャ危機の流れを復習してみよう。
09年10月、ギリシャ政権交代で誕生したパパンドレウ政権が財政赤字の対GDP比見込み値を3%台から12%台と大幅に上方修正した。これによりギリシャ国債は大きく売り込まれ、格付けが引き下げられた。
IMFの要求により10年に財政再建の方向性が定まったが、4月中旬以降、再び市場の懸念が高まる。米格付け会社S&Pはギリシャ国債の格付けを投機的水準とし、危機はスペイン、ポルトガルなどにも広がった。EUが3年間で800億ユーロ、IMFが300億ユーロの対ギリシャ融資枠を設定するなどの支援策を打った。
このように、ギリシャ財政危機の直接の引き金となったのは、国債の格付けが引き下げられ、金利が急騰したことにある。わが国でも同様の事態が起これば危ういが、今のところ国債金利は1%台前半となっており、歴史的にも、G7他国と比べても、とても低い水準だ。現在、わが国がギリシャのようになっていない理由としては、以下のようなものが挙げられる。
1) 経常収支が黒字で安定している。
2) 国内で国債が消化されている。これは、高い個人金融資産の水準を背景としている。
こうした事実を踏まえれば、外国資本の逃避によって日本が財政あるいは金融危機に陥るリスクは、今のところ小さいといえる。
しかし、人口減や少子高齢化等による貯蓄率の低下、労働供給の減少、慢性的なデフレギャップ、不採算部門の温存による生産力の低下といったリスクを踏まえれば、今後の財政再建を避けることはできないといえる。
本当の破綻は、「貯蓄率がマイナスになり国民の貯蓄が減り、国内で国債が売れなくなる時」とも言われている。その時期はもう数年で来ると、筆者は考えている。 
 

 

 
 

 

 
 
 
 2011

 

●現在の経済情勢は昭和恐慌前夜に似てきた 2011/2  
歴史は繰り返すと言われているが、大正と昭和初期に起きたことと、現代とが共通点が多い。歴史をしっかり学んでいたら、バブルとその崩壊による経済の混乱を避けることができたのにという思いが強く感じられる。
バブルと呼ばれる経済情勢は1989年頃以外に大正時代にもあった。そのバブルが崩壊した後、長いデフレの時代があり、その不況の真っ直中に政府は緊縮財政を行って、昭和恐慌に陥ったことは有名である。現在のマスコミの論調や政治家の発言で、デフレの中で緊縮財政をせよとの主張が台頭してきて、昭和恐慌前夜に酷似してきており、危険水域に入ったように思える。
順を追って話しを進めるため、1914年頃の背景から始める。日本はアメリカ、イギリス、イタリア、フランスに並ぶ世界五大国の1つであった。当時の対立する二大政党は緊縮財政の民政党と積極財政の政友会であった。この頃は日本製品に国際的競争力がついておらず、貿易赤字が続き、外国からの借金も積み上がり、利払いさえ危ない状況だった。1913年に高橋是清が大蔵大臣に就任し積極財政を展開し、貿易赤字は拡大したが、大規模な外資導入でなんとか賄っていた。つまりこの頃は外国からの借金が積み上がり、ギリシャのようになろうとしていた。
しかし、それを救ったのは1914〜1918年の第一次世界大戦だった。日本は戦場にならず、食料・日用品・軍需品の供給基地となりアジア市場を席巻した。ライバルであったヨーロッパ諸国は戦争で輸出の余裕が無くなり、その代わりに日本製品が進出していった。海運においても運送料の暴騰で巨額の利益を得た。1914年には500万円の貿易赤字だったものが、1915年〜1918年の4年間の経常収支黒字累計額は27億円となった。この頃のGNPが47億円であったことから、この額が如何に巨額だったかが分かる。ヨーロッパの戦争により日本は債務国から純債権国になり1919年には正貨保有高は20億円に達した。
注目しておかなければならないのは、金の輸出入である。当時は金本位制にするのか、金本位から離脱するのかで、国の経済の命運を分けていた。金本位制度なら、金が不足すると通貨を十分発行できず、デフレに陥ってしまったし、離脱すると為替が不安定になったからである。1917年金輸出が禁止された。つまり金本位制からの離脱である。貿易赤字で金の流出が続いていた戦前と違い、一気に戦争特需で金保有を増やした時に金輸出の禁止を行ったのは矛盾するように思えるが、アメリカが禁輸出の禁止を行ったのに足並みを揃えての禁止措置だった。
戦争特需で外貨(当時は金)が稼げてよかったと思うかもしれないが、高橋是清による度を超した積極財政でインフレとバブルを発生させてしまった。1919年の消費者物価は1915年の2.37倍になった。次のデータは卸売物価指数である。

米や綿花等はもっと激しく値上がりし、1919年には大戦前に比べ米価は3.6倍、綿花は7倍に暴騰している。なぜこのように物価が上がったのかといえば、戦争特需で海外で稼いだ外貨を円に換えたために、日本国内で出回るお金が増えたことに加え、国債を増発、金利引き下げたことで、更に通貨発行のテンポが早くなったことにある。しかも、その金は米とか綿花等投機の対象になるものに向かい、買いだめして値上がりを待ったため、戦争特需の恩恵を受けなかった庶民には逆に生活が苦しくなっている。1919年には全軍事予算が一般会計の45.8%に上っており、国民生活のためにお金が使われていない。
現在の日本や中国でも外需で金を稼いでいるが、インフレにならないのはなぜだろう。現在の日本の場合、稼いだドルは日本に持ち帰らない。日本国内で投資できるものが無いからだ。米や綿花を買っても値上がりの見込みが無い。土地投機も値下がりが続いていてとても買う気にならない。一方中国では、インフレを防ぐために預金準備率を上げて、お金が銀行から出きにくくしたり、金利を上げてお金を借りにくくしたり、売りオペでお金を吸収したり、近隣諸国に元を準備通貨として保有を義務づけたりしている。

大正時代の日本はそのような努力は全くしていない。それどころか1916年3月には公定歩合の引き下げを行っている。戦争特需で大成功した自信で、限りない発展をする日本をイメージしており、インフレを気にせず積極財政を続けている。軍備を増強して将来の戦争に備えることが念頭にあったのだろう。しかし、海外からの需要の急増に生産が間に合わず、ボタンを糊付けしただけの衣服を輸出したとのエピソードもあるくらいで、粗悪品でも何でも売れた。その反動で1918年11月の休戦により、ヨーロッパの企業が戻ってきて競争に勝てなくなり、海外需要の減少、物価の下落で経済は大きな打撃を受けた。
ところが、翌年の1919年には、再び経済は根拠の無い熱狂的なブームになり、地価、株価、商品相場などが異常な高騰を示した。学校の先生やサラリーマンなど、ありとあらゆる人々が株などの投機に熱中していた。株価が38915円の最高値をつけた1989年にそっくりだ。無謀にも銀行も設備投資に積極的に応じた。次の企業新設及び拡張計画資金のグラフをみれば、その異常さが分かる。

特需が終わり外需が減少し、設備投資が過剰になっていたのだから、この大正バブルは間もなく終わり、その反動が一気にやってくる。特需でインフレになったのと逆のことがバブル崩壊で起きた。輸出減少で再び貿易赤字となり、輸入を維持するには円を外貨に交換してもらわねばならないのだから、円が市中から消えていきデフレとなった。株、商品相場等も大暴落した。投機に走っていた人、企業が次々自己破産、倒産をし、銀行の取り付け騒ぎが続発し、休業が相次いだ。当時は預金者保護の仕組みが無かったので銀行が危なくなればすぐに取り付け騒ぎとなった。それに対し政府は緊急融資で対応した。この頃の経済をしっかり学習していたら、1989年のバブルとその後のバブル崩壊に伴う不良債権問題の発生は無かったろう。この1920年不況によるダメージは昭和恐慌より大きかったというのが鈴木正俊氏『昭和恐慌に学ぶ』の主張であり、その比較は次の表で分かる。

1920年不況を深刻にしたのは、「退場すべき企業は退場すべき」という考えであり、小泉・竹中路線でもあった。政府の失政によりバブルを発生させ、失政によりバブル崩壊となったのに、企業が潰れるのは企業に責任があると政府が決めつけた。このため、不況を深刻にさせ景気回復を困難にした。実際は政策の失敗のために退場させるべきでなかった企業を多数退場させてしまった。
1904〜1905年の日露戦争、1914〜1918年の第一次世界大戦、1931年の満州事変と続き、この時代は常に戦争と向き合わざるを得ない状況で、軍事支出が増大しやすかった。少なくとも大正時代には外国からの借金は気になっても、国債残高の増大にはそれほど気になっていなかったように見える。次の図は債務(国債発行残高)のGNP比である。

景気がよく、積極財政を行っていた第一次世界大戦中には債務のGNP比は減少。しかし、デフレが続いた1920年〜1930年の間では、債務のGNP比は徐々に増加している。高橋是清の積極財政(大量の国債発行)で経済が立ち直った1931年〜1936年になると増加は止まり、減少に転じている。これを見ても、景気が悪ければ国の借金(国債発行残高のGNP比)は増えていき、大量国債発行で景気を回復させれば実質的に借金は減るのだと分かる。
大正バブルで発生した過剰な投資が、その後の日本経済の足を引っ張った。更に悪いことに。1923年には関東大震災が発生し、日本のGNPの約3分の1の45億円の損害を出した。これに関連して発生した負債が金融恐慌の震源地になった。
1927年には台湾銀行の営業停止をきっかけに大規模な取り付け騒ぎが起きた。昭和金融恐慌が発生し、高橋是清蔵相は井上準之助日銀総裁と協力し、3週間の支払猶予措置(モラトリアム)を行った。全国的な金融パニックを収めるために紙幣を増発した。印刷が間に合わず、片面だけ印刷した急造の200円札を大量に発行して銀行の店頭に積み上げて見せて、預金者を安心させて金融恐慌を沈静化させた。現在は通貨も預金が中心であり、預金が守られている限り同様な金融パニックは起こりそうもない。
10年以上続いた不景気・デフレの最終章で国全体が恐ろしい集団催眠にかかってしまう。デフレの中で「緊縮財政」を肴に盛り上がったのだ。国民は〈お前塩断ち、私茶断ち〉〈うれし解禁とげるまで〉と「緊縮小唄」(西条八十作詞、中山晋平作曲〉を歌って金解禁を歓迎した。1930年は国債発行額を0にするための超緊縮予算となった。公務員給料の引き下げも行われた。
なぜこの不景気の中で緊縮財政を行うのかというと、貿易赤字が続いており、それを改善するということだった。なぜ金解禁(つまり金本位制への復帰)が必要だと考えていたのかというと、諸外国が次々と金本位制に復帰していたことと、それが為替の安定につながり貿易を促進に経済発展に必要だと考えたからである。井上準之助蔵相はIMFに影響を受けていたのだろう。IMFは資金融資の見返りに、経済の緊縮政策を要求する。つまり緊縮財政によって国際収支の均衡を図ろうとする。デフレ下での緊縮財政に加え、1929年に始まった世界大恐慌が事態を更に悪化させ、日本経済は昭和恐慌へと突入していった。
昭和恐慌前夜のこの危険な集団催眠に関しては現在の日本と多くの共通点がある。
1 バブル崩壊後デフレが続いている。
2 デフレなのに増税・歳出削減の議論が盛んである。
3 緊縮政策に国民が理解を示している。
4 IMFの影響を政府が受けている。
5 公務員給与の削減を主張している。
6 銀行の経営危機は何度も経験した。
7 国債発行を抑えようとしている。
8 不況で株価も下がっていた。
9 円高容認の声も強かった。
10 借金で歳出を計ってはいけないという論調。
以下に株価の動きを示す。高橋財政によって経済が持ち直す前は、株価は下がっていた。

井上蔵相により、1930年1月に旧平価での金解禁が断行された。旧平価ということは、円高にするということだ。通貨発行を拒否する菅内閣は事実上円高容認ということで、井上蔵相の政策と似ているとも言える。円高にするということは、日本製品のすべてを一斉に値上げすることに相当し、そうでなくても競争力の弱い日本製品が売れるわけがなかった。実際、翌年の1931年には、輸出は解禁前の半分に落ち込んだ。金解禁に反対した高橋亀吉は「財界攪乱罪」で警察に引っ張られた。マスコミは彼を「非国民」扱いにした。マスコミの偏向は現代も変わらない。
金解禁ということで、人々はお金を金に替え始めた。日銀の正貨準備は激減し1931年末に4.7億円と金解禁の前に比べ半減した。金本位制では金保有高が減れば、通貨もそれに比例して減らさなければならず、デフレが加速した。金が出て行く理由は簡単に説明してみよう。平価での金解禁ということは、国が金(ドル)を大安売りするということ。しかも国は金を少ししか持っていない。となると、今貯金を全部下ろして、金(ドル)を買っておけば、間もなく国は大安売りを止める。そうすれば、金(ドル)は値上がりし、そこで金(ドル)を売れば、大もうけができる。実際ドル買いをして儲けたのは住友、三井、三菱などの財閥だった。結局金本位制は2年弱で終わった。
1931年12月、政友会の犬飼内閣が成立し、新しく就任した高橋是清蔵相は金輸出を禁止、金本位制から離脱、そして積極財政による経済の立て直しを計った。それにより、日本は世界で最も早く世界大恐慌から立ち直ることができた。
 
最後に強調したい事は、デフレ経済で歳出削減や増税などの緊縮財政を行うことは、極めて危険であるということだ。多くの国民が消費税増税に賛成しているということは、昭和恐慌前夜と同じような非常に危険な状況に日本が陥っていると言える。 
●ギリシャ財政危機は他人事でない、日本国債の「安全神話」が崩れるリスク 2011 

 

「ギリシャ危機、主要国が拡散を警戒」「ユーロ防衛、異例の政策総動員」「欧州危機は米リーマンショックに酷似」――内外メディアは財政赤字で満身創痍(まんしんそうい)のギリシャ経済危機を連日のように取り上げている。株式や債券、為替などの金融市場は欧州、米国、日本の通貨当局のケタ外れの金融支援をひとまず評価したが、不安定な動きが続いている。問題の根が深いうえ、さまざまな国々の寄り合い所帯の欧州共同体(EU)という不安定構造での問題だけに、いつ何がきっかけでグローバルな連鎖のリスクに発展するか、正直言って、予測がつかない。
こう申し上げると、「ジャーナリストは、いつも『予断を許さない』とか『厳しい事態が避けられない』といった形で、危機をあおり過ぎる」とおしかりを受けるかもしれない。しかし、今回のギリシャ経済危機を見ていると、米国発の世界経済危機に発展した米リーマンショックに匹敵する構造的な危機をはらんでおり、間違いなく細心の注意が必要だ。
ところで実は、今回のコラムで私が取り上げたいと思っているのは、ギリシャ経済危機をきっかけに起きているソブリン(政府や公的機関の国債など債券)・リスクにからめて、日本国債の問題だ。日本国債は巨額の借金構造のもとで、イソップ物語のオオカミ少年のように「大変だ、大変だ」と10年以上も前から危機が言われながら、ギリシャのようにならなかったじゃないか、安全神話は続く、という専門家もいるが、私の見方は違う。日本は家計貯蓄の取り崩しなどをきっかけに「金融資産が1400兆円もあるので国債は大丈夫」といった安全神話の根拠が次第に崩れてきていることを指摘したい。
○ギリシャ現政権はEUやECB支援の見返り要求の緊縮財政策、乗り切れるか
その前に、日本国債とリンクするソブリン・リスクのギリシャ経済危機の問題を述べておこう。危ないな、と思う理由がいくつかある。1つは、ギリシャ自体のリスクだ。ギリシャの現政権は、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)からの巨額の財政、金融支援の見返りに、財政規律を強めるため公的年金の支払いカットなど緊縮財政、肥大化した官僚組織のリストラなどの荒療治策を受け入れたが、ギリシャ国民の反発が根強いだけに波乱含みだ。政治混乱がおさまらず、もしギリシャがユーロ圏離脱といった事態に発展したりすれば、EU全体の危機に広がる。
2つは、極めてあぶなっかしいジャンクボンドとの位置付けが金融市場にあるギリシャ国債にからむ問題だ。ギリシャと似たような巨額財政赤字を抱えるポルトガルやスペインの国債にまで影響が及び、それら国債の買い手がつかず、価格暴落(逆に利回り高騰)といった事態に陥ればユーロ圏全体の信用不安に発展する。そこで、ECBが異例のユーロ圏諸国の国債買い支えに乗り出したのだ。これは信用第一の中央銀行の屋台骨を揺さぶる問題だ。というのも中央銀行が、財政赤字ファイナンスのための国債を買えば市場リスクにさらされ、価格下落で保有国債の損失が表面化すれば中央銀行のリスクとなる。しかし今回、例外的に、欧州各国の民間金融機関が買取ったユーロ圏諸国の国債を買支える形でギリシャ国債にからむソブリン・リスクの回避を図った。危険な綱渡りだ。
○財政赤字で国家発行の国債に信用不安起きればソブリン・リスク
ソブリン・リスクというのは、国債発行で財政資金調達を図る政府自体に財政危機が表面化、国債の償還といった借金返済がままならず財政破たん、デフォルト(国家の債務不履行)が起きるリスクのことだ。とくにギリシャ危機の問題は、ギリシャという国の財政破たんリスク、それに似たようなリスクを抱えるポルトガルやスペイン、イタリアなどPIIGSというくくりで呼ばれている国々の国債への波及リスク、さらに欧州のユーロ圏諸国16カ国の民間金融機関のうち、これら財政赤字問題を抱える国々の国債を投資運用の面で買っていたのが一転、損失リスク問題が表面化し、金融システム全体の亀裂にリスクが及ぶ問題だ。
さて、ここで本題の日本国債の問題に話を移そう。まず、今回のギリシャ危機騒ぎで、行き場を失ったグローバルマネーが「質への逃避」という形でゴールド(金)に向かうと同時に、日本国債にも及んだ、という話を聞いて、思わず日本国債のどこが安全資産、逃避先なのかと思った。それほど、私にとっては、日本国債はさまざまなリスクを抱えているのだぞ、と思うのだが、めぐる情勢をよくご存じでない海外の投資家の人たちにとっては、これから申し上げる点が日本国債は安全資産と映っているのだろう。
○日本国債の安全神話、実は長期デフレによる低金利が支えとは皮肉な話
いま、日本国債が安全、と言われる理由はいくつかある。1つは、1400兆円にのぼる個人金融資産があり、これが支えになっていること、2つは日本経済が長期にデフレ経済で成長率が1%前後で低迷し、それに見合って超低金利の金融政策が続いていること、このためインフレリスクが少ないこと、もっと言えば期待インフレ率と言われる先行きの長期金利のレベルも1%台の低いレベルで推移し、これが大きく跳ね上がる可能性は低いこと、3つが日本国債の95%が日本郵政の郵貯や簡保生命の資金、民間金融機関の資金、さらに公的年金資金などで保有され、安定的な国内保有構造にある、このためギリシャ国債の70%が外国人投資家保有で、もし何かのきっかけで海外に資金逃避するといった不安定な状況にないこと――などが挙げられている。
バブル崩壊の後遺症で「失われた20年」といった形で経済のデフレが長期化していることが日本国債の安全神話のサポート要因になっている、というのは何とも皮肉な話だ。ところが国債発行元の財務省のある幹部は「デフレで国債の発行コストが少なくて済むといった安易な発想はしていない。デフレ脱却がマクロ政策の最優先課題であることは間違いない」と述べる。そして「それよりもジャーナリストやマーケットの心配性の人たちは、日本政府の財政赤字が膨らみ続け、2010年3月末で国債などの債務残高が過去最大の882兆円に及び先進国中で最悪状態になったことをとらえて、日本国債危機を言うが、結果は、この10年以上、ずっと問題なく事態乗り切りを図れているではないか。それは個人金融資産1400兆円などの支え構造が厳然としてあるからだ」という。
○格付け機関も日本国債を格下げ、市場も民主党のバラマキ政策を不安視
この財務省幹部も、そう開き直りのような発言をしながらも、一方では歴代の自民党、そして政権交代後の民主党の各政権がデフレ脱却のための財政資金確保などを理由に国債増発を強いて、そのツケを財政当局の現場に綱渡り的な国債管理政策に求めていることに対して強い不満があるのは確か。
しかし現実問題として、国際的な格付け機関スタンダード&プアーズ(S&P)が今年1月26日、ギリシャ財政危機が表面化した時期に日本の財政再建への取組みが見えないとして、長期国債格付けを引き下げネガティブ評価としている。ギリシャ危機も、これら格付け機関の厳しい市場の財務評価による格下げがもたらしたもので、日本の財務省だって日本国債の安全神話に強気ではおれないはずだ。
そこで、市場関係者の見方として、日本国債の暴落リスクを問題提起したみずほ証券金融市場調査部の特別レポート「緊急提言 2010年、ついに日本国債は暴落するのか」があるので、少し紹介させていただこう。レポートは、「どこまで国債発行は可能か、金利上昇はどこまでか、国債暴落対策は何か」といった副題がついているものだ。
○みずほ証券緊急提言「財政健全化のロードマップ、国債版マニフェストを」
みずほ証券によると、民主党政権下でバラマキ政策で財政赤字拡大が続くことを直視せざるを得ないこと、足元の政治状況が不安定に変動する中で財政規律の不安が存在すること、また、金融市場における受容力に不安が次第に高まっていることを挙げ、「不安を『オオカミ少年』として済ますことはできない」とし、国債暴落危機回避の対策を求めている。
レポートは確かに「日本は、公的債務残高を上回る個人金融資産と外貨準備を持っているため、国内でマネーフローが完結できる状況にありキャピタル・フライト(資金の海外逃避)が生じるリスクは少ない」としている。しかし、レポートは楽観論を戒めながら「まずは財政の健全化のためのロードマップの策定と実行性が問われる」とし、短期、中期、長期の「国債版マニフェスト」をつくるように求めている。
○個人の家計貯蓄の減少は無視できず、個人金融資産は実質500兆円説も
さて、ここからが私の指摘ポイントだ。日本国債の安全宣言を支える根拠が次第に崩れてきてリスクが増幅しつつあることを指摘したい。まず、人口の高齢化が進む経済社会で金融資産の取り崩しという形で家計貯蓄額の減少が進んでいることだ。総務省が5月に公表した2009年の平均家計調査では1世帯あたりの平均貯蓄額が1638万円となり、前年比で2.5%減となっている。貯蓄額の減少は今に始まったことでなく4年連続であり1つのトレンドとなってきた。米リーマンショックによる株価下落の影響などもあるが、先行き不安からの金融資産取り崩しも無視できない。現にかつては15%もあった日本の貯蓄率は今や3%台というから、個人金融資産1400兆円で安泰という論理にはつながらない。
それよりも個人金融資産1400兆円の数字の大きさが、日本国債の安全神話の支え部分だが、あるメガバンクのマクロ調査の担当者は興味深い話をしている。その担当者によると、住宅ローンなどの負債部分はじめいろいろなものを差し引くと、個人が本当に動かし得る金融資産は実質ベースで500兆円ぐらいかもしれない。日本国債をリアルにサポートできるのはその程度と言っても言い過ぎでない。楽観しない方がいい、という。
○金融機関の横並び体質はクレジットリスクが表面化したら一気に国債売却へ
前慶応大教授で、現在は千葉商科大学の島田晴雄学長も厳しい見方でいる。「日本はかつて、世界最大の貯蓄を持っているので、1990年代末のロシア、アジア危機のアジア諸国のような破たんにはならないと、これまで私たちはタカをくくってきたのでないか。潤沢にあるはずの国民の金融資産だが、住宅ローンや保険などを除いた家計の純粋な金融資産の総額は、実は1063兆円に過ぎない。2008年時点での政府の長期債務残高との差は100兆円を切っている。今のような大量の国債発行を続けると、今から1年半で政府債務が家計の純金融資産を上回ることになる。その場合、日本は事実上、純債務国に転落することだ。こうしたことは多くの関係者はすでに知っている」と、鋭く指摘している。私も同じ見方で、個人金融資産1400兆円あるから大丈夫という建前の論理に過度に頼らない方がいいと考える。
また、財務省などの論理は、日本国債の95%が国内の投資家などの保有構造にあり、70%が外国人保有という不安定なギリシャとは決定的に違うという点がベースにある。しかし、郵貯資金など活用する日本郵政、さらには保守的な民間金融機関は絶対の安定した行動主体かと言えばノーだろう。彼らもクレジット・リスクが不安定になることには神経質で、しかもひとたびリスクが表面化すれば、国債下落もしくは暴落による損失リスク回避のために一気に売却に走る。彼らの横並び体質は実にリスクで、一気に右ならえの行動に走る。みんなで渡れば赤信号でもこわくない、という集団論理で行動していたのが、リスク顕在化と同時に同じように売り逃げに動くからだ。
○国債頼みにならず税収増をうむ新成長戦略が事態を変える?
日本国債は大丈夫、という安全神話が少しずつ崩れる材料がまだまだある。友人のあるエコノミストは「政治的にはタブーだろうが、客観情勢として、ここまで財政が悪化してくると、場合によっては経営再建の一環で日本航空がとったように年金額の切り下げといった政策の選択肢も必要になって来る」という。
民主党政権の菅直人副首相兼財務相は2011年度の国債発行額の抑制を打ち出したが、目先の参院選対策を含めて選挙目当てのバラマキ政策を見直し、財政健全化の道筋をはっきり提示して、市場の信頼を得ることが必要だ。同時に、財政規律と経済成長をどうするか、国債発行に頼らず税収増を生みだすプラス成長の新成長戦略をどうするか明確に打ち出さないと、ジレンマに陥って、日本国債のソブリン・リスクが現実になるかもしれない。 
●ギリシャ債務処理の意味 2011/6 

 

2010 年5月のギリシャショックから早や一年、その間にセーフティーネットが整備され、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルの3ヶ国は救済された。一方、スペインやイタリアへの危機伝播はみられず、欧州債務危機は当該3ヵ国の救済をもって一旦小康状態を迎えるように見えた。しかし、ポルトガルに対する金融支援の合意後、ギリシャの債務再編懸念が急速に高まり、足元の金融市場では再び緊張が走る展開となっている。振り返ってみると、欧州債務国の国債利回りは金融支援合意後も上昇(価格下落)を続けており、信用不安は緩和するどころか拡大する状況であった。金融支援では資金繰り破綻は回避できても、支払い能力は改善しないからである。したがって、金融支援合意後も利回りが上昇しているのは当然の反応といえる。
本稿では、ギリシャを例に欧州債務問題の負の連鎖を断ち切るにあたって想定されうるいくつかのシナリオを整理し、今後の債務処理が持つ意味についての視座としたい。
そもそも、ギリシャ財政再建の実現可能性については、ギリシャ政府による最新の財政再建計画によれば、2015 年までに財政赤字の対名目GDP比率を1%まで削減する目標が掲げられている。2010 年時点の財政赤字は10.5%あるので、単純に向こう5年間は財政赤字の削減によって毎年約2%ずつGDPを押し下げる計算となる。それでも財政収支は黒字には届かないので、2016 年以降にも一段の緊縮措置を実行しなければならない状況である。しかし、ギリシャ経済は2年連続マイナス成長である上、厳しい緊縮措置に対する国内からの抵抗(ストライキ等)が根強いため、計画を実現するためのハードルは非常に高いと思われる。また、計画が実現してもなお、債務残高を持続可能な水準まで削減するには2016 年以降も一段の緊縮措置が必要である。仮にマーストリヒト条約の規定である対名目GDP比60%まで債務を削減するには、3%の財政黒字を10 年以上続けなければならない。
このように、ギリシャの財政再建の道のりは長く、実現可能性は非常に不透明と考えられる。一方、今後の資金需要を満たすには、EUやIMFからの救済が必要不可欠である。この状況を踏まえたうえで、以下ではギリシャ救済シナリオについて整理する。
まず、大前提としてギリシャは財政改革を断行し、財政収支を黒字化することが必要不可欠である。なぜなら、いかなる救済を受けたとしても、財政赤字の状態が続いている限り、債務は増え続けてしまうからである。
次に、今回のギリシャ救済のあり方について4つの手法を比較整理する。1債務再編(元本減免や利払停止等)については現時点では選択肢となり得ない。ギリシャの財政状況を鑑みれば、将来的にギリシャの債務再編の可能性は否定できない。しかし、ギリシャ国債の多くはギリシャ国内の銀行やユーロ圏の銀行、ECBが保有しており、債務再編を行った場合には金融システム不安が高まる可能性が高いため、欧州当局が危機につながるような対策を選択する蓋然性は低い。また、2債務条件変更(満期延長や金利減免等)についても国債保有者が満期延長や金利減免等を強制される場合には、同様のリスクが想定される。加えて、これら救済手法が採られた場合にはCDS(破綻リスクをヘッジする保険契約)の清算事由に該当し、金融市場へ多大な影響を及ぼすリスクも高い。
一方、3金融支援については民間投資家の負担が発生しないため金融システム不安の心配はない。ただし、金融支援は本質的な問題解決にはつながらないことに加え、債務国の救済に各国の税金を使うことに対する批判が強いことから安易に金融支援が選択される可能性も低い。
そこで、現実的な対応策として考えられるのが、4民間投資家による自発的な借換債(既存債券の借換えのために発行される債券)購入である。この方法であれば税金負担は回避される一方で、民間投資家が自発的に債務の借換えに応じることでCDSの清算事由に該当しない。加えて、債務再編のような元本減免や利払停止等の負担はないため、金融システム不安の心配は少ない。ただし、民間投資家が自発的に応じるかどうか不透明である。
最後に、今回のギリシャ救済がどのような方法で決着するにせよ、ギリシャ自身の財政改革の状況が芳しくなければ、再度信用リスクが高まりかねない状況には変わりはない。欧州債務問題はそれほど根の深い問題であり、解決を見るのは当分先の話であろう。 

 

●世界恐慌は金融屋が作ってる 2011/12  
次は日本国債の格下げだ「格付け屋」に支配された世界経済
ついにEU(欧州連合)の格付けまで「引き下げ見通し」に指定された。日本国債の格下げ懸念も高まっている。「そういうことには疎い」(菅直人前首相)などと言っている場合ではなくなってきた。
暴落を演出
「サブプライムローン関連の金融商品に高い格付けを出していたことで、格付け会社の信頼は地に堕ちたが、ギリシャに始まる世界各国の国債危機に乗じて、いつの間にか復活してきた。格付け会社が世界最強国であるアメリカの国債を格下げすると、これがトリガー(引き金)となって世界同時株安へと発展、欧州国債の格下げラッシュでもその影響力の強さを誇示している」(財務省OB)
各国の政府首脳たちが、いま、格付け会社の一挙手一投足に翻弄されている。
全国紙経済部記者もこう指摘する。
「12月5日の欧州総格下げ予告≠ヘインパクトが大きかった。米大手格付け会社『スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)』が突如としてドイツ、フランスを含むユーロ15ヵ国の長期国債の格付けを引き下げる方向で見直すと発表すると、世界のマーケットが反転≠オた。実はこの発表の数時間前に、メルコジ(ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領)が共同で会見を開き、欧州の国債危機に対する新たな抜本対策を講じる予定だと発表していた。それを好感、ユーロ相場は上げ基調で始まっていたのに、格下げ検討の発表を受けて一気に売りが先行、下落を開始した。日本の株式市場でも欧州懸念が再燃し、戻り始めていた日経平均が反落、8日ぶりの下げ幅を記録した」
会見後に見せたメルケルの笑顔は一転、苦衷に歪んだ。格付け会社による絶妙なタイミングでの介入≠ェ、市場に広まる欧州不安を火消しするために開いたメルコジ会見に水をさした格好だ。
リーマン・ショック後に鳴りを潜めていたヘッジファンド、格付け会社といった「金融屋」たちが、欧州危機を背景にして、その存在感を高めている。先週号でレポートしたように、一部のヘッジファンドは危機を利用して儲けようと動き出している。
ニュージャージー州在住の米国人ヘッジファンドファンドマネジャーは、目下欧州で広がる国債危機に乗じた投資で、「年率20%」という驚異的な利回りを叩き出しているという。
当人が語る。
「欧州危機のおかげで儲けることができました。私は債券投資が得意で、昨年ギリシャ危機がクローズアップされてから、PIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)の国債のショート(カラ売り)ポジションを仕込んだ。今夏、ギリシャの救済策がまとまるとの報道があった時は国債が値上がりして損切りをせざるをえない場面もあったけど、ほとんどは我々がカラ売りする度に国債が暴落してくれたからね。トータルでは年率20%の成績を残せた。ヘッジファンドが危機を煽っている?そんなこと知ったことじゃない。今年はフロリダの別荘にも行けず、徹夜で相場を見る日もあった。一生懸命働いた人が高収入を得るのは当たり前のことだ」
欧系投資銀行幹部も、こう言う。
「先日、イタリア国債の破綻リスクを示す指数がたいした理由もなく、膨れ上がったことがあった。なにがあったのかと見ていると、ベルルスコーニ(元首相)の女性問題が出てきた。こんな痴話話だけで指数が上がるのはおかしいなと思っていると、市場でこんな噂が流れた。『アメリカのヘッジファンドが大量にイタリア国債のショートポジションを持っていて、これで利益を出すために女性問題をメディアにリークしたらしい』---事の真相はわからない。ただこのように指数を巧みに動かす芸当≠ヘ、規制でがんじがらめにされている大手金融機関にはできない。どこぞのヘッジファンドの仕業に違いない」   
●2011年は全国で57件、日本でストライキが少ない理由  

 

「海外の工場などでストライキが起きたニュースをよくみますが、日本ではあまり聞きませんね。なぜですか」。近所の大学生の疑問に、探偵の松田章司が応じた。「昔はよく起きたというけど、確かに不思議だな。調べてみましょう」
デフレ下 賃上げ難しく
「これほど少ないとは」。ストライキ(スト)などの発生件数を調べた章司は驚いた。厚生労働省によると、2011年は全国で57件。ピーク時の1974年に9500件を超えていたのとは様変わりだ。
ストとは労働者が賃上げや労働条件の改善を求めて一斉に働くのをやめること。労働組合が会社への事前予告など手続きを踏み正当性が認められれば、ストで会社に生じた損害の賠償責任を免れるなど法の保護を受けられる。かつては鉄道やバスなどが停止するなど社会的な影響もあった。「04年にプロ野球選手会が球界再編を巡ってストをした事くらいしか覚えてないな」と章司。
一方、新興国では賃上げや待遇改善を巡ってストが頻発し日本企業も対応に苦慮している。スズキのインド子会社、マルチ・スズキのマネサール工場では昨年6月と10月に発生。今年7月には暴動が起き「安全確保のため会社側が工場を1カ月閉鎖した」(スズキ広報)。財政危機に陥ったギリシャやスペインなどで、緊縮政策に反対する公務員がストを起こしている。
「日本でも長時間労働やリストラなど、働く人に不満はあるはずだけど」。章司は電機業界などの産業別労働組合、電機連合を訪ねた。ストが減ったのは「経営側と組合が定期的に情報交換をする、労使協議の仕組みが普及してきたことが背景でしょう」と書記次長の岡本昌史さん(48)。
日本経済は70年〜80年代に石油ショックと円高に見舞われ、製造業を中心に先行きへの危機感が高まった。さらにバブル崩壊を経て長期低迷に陥った。難局を乗り切るために経営側と労組側は知恵を絞り、労使協調関係は一段と強まった。会社の経営が弱体化すると、倒産したり海外資本に買収されたりしかねないからだ。「深刻に対立する前に、話し合いで解決できるというわけか」
章司は労働経済学に詳しい大阪大学教授の大竹文雄さん(51)にも意見を求めた。高度成長期では年間5%以上の物価上昇が珍しくなく、激しいインフレに合わせて賃金も上げないと生活が苦しくなった。「来年どれくらい物価が上がるのか労使の見通しが食い違ったから、ストが多かったのでしょう」と大竹さん。
今は長期のデフレ傾向から抜け出せず、賃上げを求めにくくなった。年功序列や終身雇用が崩れつつあり、労組には雇用優先のムードも生まれストを起こしづらい環境になった。「長引く景気低迷も響いているのか」と章司はうなった。
事務所で報告すると、所長が首をかしげた。「ストが少ない理由はそれだけか。産業構造の変化にも原因があるんじゃないか」
そこで流通や繊維産業などの産業別労働組合、UAゼンセンを訪ねた。応対してくれた書記長の松浦昭彦さん(50)は「小売業や飲食業、介護などの業種で働く人が大幅に増えたこともストが減った一因だと思います」と説明する。
かつて日本では製造業で働く人が多く、労組に加入する比率も高かった。ところが小売業などは小規模の事業者が多いうえ、労組に加入しないアルバイトなどの非正規労働者の比率が高い。ほかの産業でも非正規労働者が増える傾向にある。厚労省によると、働く人のうち労組へ加入する人の割合を表す推定組織率は80年代初めまで3割を超えていたが、働き方の変化も加わって2000年代初めに2割を下回った。
「海外はどうなんだろう?」。章司は、労働運動総合研究所代表理事の熊谷金道さん(66)に事情を聴きに行った。「海外では業界団体ごとにトップ層と労組が交渉して、業界全体に関わるような大きなルールを決めます。企業ごとに交渉する日本に比べ、国民からストが支持されやすい環境にあります」
非正規労働者 増加も要因
「国民の支持か」。日本では企業の労組が単独で賃上げや待遇改善を訴えても、経済全体が長期低迷に陥り、多くの国民の共感を得られにくい。企業のサービスの低下につながるストは消費者でもある国民の企業イメージを悪化させかねない。企業競争が厳しくなるなかで、労組側もストには慎重にならざるを得ない。
非正規労働者も加入する労働組合、首都圏青年ユニオン書記長の河添誠さん(48)は「ストができないので街頭活動を通じて消費者や株主に訴えています。企業は昔に比べ外部の目を強く意識するようになってきたからです」と指摘した。
「日本でストは起きないのかな」とつぶやく章司に、労組に詳しい法政大学名誉教授の小池和男さん(80)が「実は見えない形でのストは今も起きている可能性があります」と指摘した。「労働条件に納得できない人が仕事に手を抜けば、それは実質的にストをしているのと同じだからです」
企業では業務が年々高度化し、個人のスキルや創造性などが生産性を左右するようになった。ストで労働時間を減らさなくても、働く人が労働の質を下げれば会社は経済的な打撃を受けるという構図だ。そこで社員のやる気を引き出し、優秀な人材を確保する環境作りが求められている。
労組も賃上げよりフレックスタイム制や育児支援など働く環境を充実させる施策を重視。企業側も時間をかけて議論に応じている。「新しい労使の緊張関係が生まれつつあるんだな」
報告を終えた章司に「うちの事務所はストはないし、労使協調の象徴だな」と所長。「ストをしなくても、抵抗手段はありますから」と章司が冷たい一言。
日本の労組 いつ組織? 第2次大戦後 全国で急速に
日本初の労働組合が誕生したのは明治後期のこと。米国で労働運動に触れた高野房太郎らの働きかけで労働組合期成会が1897年に結成され、金属機械工場で働く労働者が参加する鉄工組合が誕生した。政府が掲げる「富国強兵・殖産興業」の下、長時間労働など劣悪な労働環境が社会問題となっていた。
政府は多発した労働争議を抑え込むため、1900年に組合の団結やストなどを取り締まる治安警察法を公布。労働運動は弾圧を受けて、低調な時期が長く続いた。
だが、第2次世界大戦後に状況が一変した。民主化政策の一環として45年に労働組合法が公布され、日本で初めて労組が法律の保護を受けるようになる。インフレによる生活苦を改善するため賃金を上げる必要があり、全国各地で労組が急速に組織されていった。
力をつけた労組は経営側に労働条件改善を訴えるため頻繁にストを打った。特に注目を集めたのは、三井鉱山(現・日本コークス工業)が59年に三池炭鉱の人員整理を提案したことに端を発する三池闘争。60年1月に始まった無期限ストは282日間に及んだ。ただ長期ストにはしっかりした財政基盤が必要で、実施は一部に限られた。  
 

 

 
 
 
 2012

 

●ギリシャ2012/1-6
● 1
2012年の世界の1人当たりGDP、縮小の可能性=国連見通し 1/18
速やかに雇用を創出し、政府債務危機を防いで脆弱(ぜいじゃく)な銀行を支えない限り、今年の世界経済は0.5%の成長にとどまるとの見通しが、国連の研究で17日明らかになった。1人当たりで見れば、事実上の縮小となる。
国連の世界経済情勢と見通しに関する年間報告書は、今年の平均経済成長率を2.6%、2013年は3.2%と予測する。
想定では、ギリシャ政府債務の50%削減、短期、小規模の米景気刺激策、20カ国・地域(G20)が昨年11月、カンヌで交わした経済政策に関するコミットメントの実現を考慮に入れた。
報告は、先進国がこれら施策で経済情勢をどうにか切り抜けるものの、想定が過度に楽観的という高い危険性をはらむとした。
「政府債務危機、脆弱な銀行部門、(高い失業率と緊縮財政政策に関係する)弱い総需要、制度上の問題などによって引き起こされる政治の行き詰まりが相互に補強し合う、4つの弱点による下方スパイラルに陥る寸前にある」と指摘。「これら弱点の全てがすでに存在し、一つでもさらに悪化するなら、深刻な金融混乱や経済低迷につながる悪循環を引き起こしかねない」とした。
下方シナリオによると、0.5%の経済成長では人口増に対応できず、世界1人当たりの平均所得が減少する。また欧州連合(EU)経済は今年1.6%縮小、ドイツやフランス、英国はいずれも景気後退に陥る。
最も痛手をこうむるのはロシアで、大統領選で新たな社会、公共支出が生じ、原油価格が下落する場合、下方シナリオでは3.6%の縮小が見込まれる。基本シナリオでは3.9%成長とみられている。
ギリシャ、改革実行できないなら財政権限手放すべき=独経済相 1/30
ドイツのレスラー経済技術相は、ギリシャが支援条件となっている改革を実行できないのであれば、同国は財政に関する権限を外部組織に移管すべきとの考えを明らかにした。
ロイターは27日、関係筋の話として、ドイツがギリシャに対して財政政策に関する権限の一部を欧州の機関に譲るよう求めている、と報じているが、ドイツの閣僚がこの提案への支持を公にするのははじめて。
経済相はビルト紙のインタビューで「改革の実行においては、より強い指導力と監視が必要だ。ギリシャがこれをできないのであれば、欧州連合(EU)など外部からの指導や監視が必要となろう」と指摘した。
こうした要求に対して、ギリシャのベニゼロス財務相は、29日に声明を発表し、ギリシャは約束を履行する能力がある、と反論している。
28日付の英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は、ギリシャ政府が支援条件に沿わない財政を組んだ場合、ユーロ圏の「財政検査官」がこれを拒否できる仕組みを作ることを、ドイツが望んでいると報じた。 
● 2
ポルトガル、2012年の国債償還資金は調達済み 2/1
ポルトガルがギリシャの二の舞となり、新たな救済もくしくは債務再編を迫られるとの不安が広がっているが、同国は少なくとも向こう1年間の国債償還資金をすでに手当てしている。
欧州連合(EU)首脳会議に出席したコエリョ首相は、記者団に対し「同国は追加資金やさらなる時間を要請していない」と述べ、追加資金や支援延長を求めるつもりはないと言明した。
コエリョ首相は、厳格な財政緊縮策を着実に実行することで支援条件の財政目標を達成、競争力向上に向けた大胆な経済改革を断行することで、2013年終盤に債券市場に復帰するという青写真を描いている。
ポルトガルの債務をめぐる基本的な状況については、ギリシャほど切迫していないとみられている。
実質的な償還額は、ギリシャが今年全体で330億ユーロに達する一方、ポルトガルは、債務管理庁(IGCP)のデータで6月に101億ユーロの償還を一度迎えるだけで、資金はすでに調達済み。
来年についても、ギリシャの償還額が220億ユーロなのに対し、ポルトガルは9月に97億ユーロを支払うだけとなっている。
全体の債務水準でもみても、ギリシャ債務の対国内総生産(GDP)比率が160%に達するのに対し、ポルトガルは約100%とされる。
サンタンデールのエコノミストは「国債償還に不安な点はない。今年の償還分はすでに救済資金によってカバーされている」と話している。
<ポルトガル国債利回り高騰は一服>
この日の市場では、ポルトガル国債利回り高騰が一服。10年物利回りは62ベーシスポイント(bp)低下し16.75%となった。ただし、依然として年初の水準を320bp上回っており、ポルトガル国債の保証に要求されるアップフロントの支払いも過去最高となっている。
ポルトガルは2月1日に、最大で15億ユーロ規模の3カ月物・6カ月物国債の入札を控えており、市場関係者らは強い関心を持っている。
欧州委、2012年のユーロ圏成長率見通しを‐0.3%に下方修正 景気後退を予想 2/23
○ 欧州委、2012年のユーロ圏成長率をマイナス0.3%と予想
○ EUはゼロ成長と予想
○ 南北格差の拡大が浮き彫りに
○ 欧州委、財政赤字削減目標の堅持を強調 スペインには目標修正認める可能性
欧州委員会は23日、ユーロ圏および欧州連合(EU)諸国の最新経済予測を発表し、2012年のユーロ圏域内総生産(GDP)成長率がマイナス0.3%になるとの見通しを示した。前回予測のプラス0.5%から下方修正された。
その結果、ユーロ圏は過去3年で2度目のリセッション(景気後退)入りする可能性が高まった。
ユーロ圏が前回リセッションに陥ったのは2009年で、当時の成長率はマイナス4.3%と、1930年代以降最悪のリセッションに見舞われた。
EU27カ国のGDP伸び率については、前回予想の0.6%から0.0%に引き下げた。
主要国では、ドイツとフランスは2012年にそれぞれ0.6%、0.4%のプラス成長を遂げ、リセッションを回避できる見込み。
一方、ギリシャは5年連続でマイナス成長となるほか、スペインもマイナス1%に悪化するとの見通しが示され、南北格差の拡大が浮き彫りになった。
欧州委員会は「今年はEUのGDPが低迷し、ユーロ圏は緩やかなリセッションに入る見通しだ。弱体な債務国と脆弱な金融市場の悪循環が起きており、実体経済の鈍化にまだ歯止めはかかっていないようだ」との見方を示した。
国際通貨基金(IMF)は今年のユーロ圏GDP成長率がマイナス0.5%になるとの見通しを示しており、欧州委の予測はIMFの予測をわずかに上回る水準となった。
一方、ユーロ圏のインフレ率見通しは2.1%で、前回予想の1.7%から引き上げられた。 
欧州委員会のレーン委員(経済・通貨問題担当)は記者会見で、域内債務国の景気が停滞しても、厳しい財政赤字削減目標に緩和の余地はほとんどないとの立場を示し、「市場の厳しい目にさらされている国は財政目標を達成する用意を整えるべきだ」と述べた。
一方、スペインに関してはやや柔軟な姿勢を見せ、2012年の財政赤字目標を対国内総生産(GDP)比4.4%から上方修正することを認める可能性を示唆。EU統計局が収集し、4月に検証するすべての財政関連データを基にスペイン当局と協議し、全体像を踏まえて決定する方針だと述べた。 
 
 

 

● 4
2012年ギリシャ成長率、マイナス5%と予想 失業率は過去最悪の20%に=シンクタンク 4/2
ギリシャのシンクタンク、経済産業調査財団(IOBE)は2日、同国経済は2012年は5%のマイナス成長に陥るとの予想を示した。
また、ギリシャの2012年の失業率は、過去最悪だった2011年の17.3%を上回り、20%に上昇するとの予想を示した。
IOBEを率いるヤニス・ストウルナラス氏は記者団に対し、「リセッション(景気後退)から脱却し、経済を成長軌道に乗せることが重要となっている」と述べた。また、海外からの投資の誘致に向け、民営化プロセスの加速化が必要との考えを示した。 
ギリシャの2012年成長率予想は、欧州連合(EU)がマイナス4.7%、国際通貨基金(IMF)がマイナス4.8%としており、IOBEが示した予想は、これらを下回る。
IOBEは、ギリシャ政府による投資支出の削減は急激過ぎ、市場競争力の向上に向けた措置は不適切だったと指摘。さらに、民営化プロセスは緩慢過ぎるとし、政府の政策を批判した。
ストウルナラス氏は「民営化は成長のけん引力となり得る。海外からの投資を呼び込めるため、最も重要なけん引力となる可能性がある」としている。
2012年ギリシャ成長率は‐5%に悪化の見通し、改革・調整の継続が必要=中銀総裁 4/24
ギリシャ中央銀行のプロポボラス総裁は24日、今年の経済成長率はマイナス5%になるとの見通しを示した。3月に中銀が示した見通しはマイナス4.5%だった。
ギリシャは5年に及ぶリセッションに苦しんでいる。
総裁はギリシャ中銀(BOGr.AT)株主総会で、持続可能な成長に回帰するため、ユーロ圏や国際通貨基金(IMF)と合意した支援策に基づく改革や財政調整努力の継続が必要と述べた。
とりわけ5月6日の総選挙以降に改革を継続できなければ、ユーロ圏にとどまることは難しくなるとし、「選挙を受け、新政権や(改革・調整)プログラムの実施をめぐり疑念が広がるようであれば、現在みられる好ましい見通しは反転するだろう」と述べた。
総裁はまた、ユーロ圏は今年、緩やかなリセッションが見込まれるとし、債務危機が拡大すれば深化すると述べた。
総裁は、2012年の経常赤字が対国内総生産(GDP)比で7.5%と、前年の9.8%から縮小するとの見通しを示した。中銀による3月時点の予想は7%だった。
2012年のインフレ率の伸びは1.2%に鈍化し、2013年には0.5%を下回る水準に低下することが見込まれる。
総裁はさらに、財政赤字は著しく縮小したものの、高水準にとどまっていると指摘。そのうえで「2013年にプライマリー・バランス(基礎的財政収支)を黒字転換させることは達成可能」と述べた。 
● 5
ギリシャ、経済成長とともに債務削減進める必要=仏首相 5/18
フランスのエロー首相は18日、欧州各国はギリシャ支援に時間をかけ過ぎたと指摘し、同国の経済成長を促すとともに、債務削減を進めるのが目標との認識を示した。
首相はラジオ局フランス・アンテルに対し、「ギリシャは経済を復活させる必要がある。(EUの)使われていない資金があり、今必要なのはギリシャの財政を正常な形に戻しつつ、同国経済の復活を確かなものとするために後押しすることだ」と述べた。
また、「われわれはギリシャを支援するまでに時間をかけ過ぎた。同国の問題は2年もたつのに、事態は悪化する一方だ」と語った。 
 
●G8・マスコミ報道 5/18-19

 

欧州債務危機の処方箋で認識の違い浮き彫り G8が閉幕  
主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)は19日、2日目の日程を終え、首脳宣言を採択して閉幕した。ユーロ圏債務危機を鎮静化するための方策についてはなかなか意見が一致しなかった一方で、イラン産原油禁輸措置に備えた措置を巡っては大きな対立もなく合意した。  
G8首脳はユーロ圏の混乱が世界経済に深刻な脅威となっているという認識で一致した。しかし、肝心な解決策については各国の認識の違いが浮き彫りとなった。  
首脳宣言によると、G8首脳は各国経済を押し上げるための措置を取るとする一方で、「正しい方策は各国で同一ではない」との認識を示した。  
オバマ米大統領にできることといえば、欧州首脳にユーロ圏問題の解決を催促するくらいだが、欧州で経済危機が再燃して米国にまで波及すれば、11月の大統領選に向けたオバマ陣営の選挙活動にとって大きな打撃となりかねない。  
オバマ大統領は19日、「われわれはみな、成長と安定、財政再建に一体的に取り組むように全力を尽くしている。市民のための繁栄を達成するべく取り組みを進めなければならない」と述べた。  
G8の討議に出席したマイケル・フローマン米国家安全保障次席補佐官(国際経済担当)によると、各国首脳は主要国が財政を調整し、経済成長を押し上げることが必要だとの認識で完全に一致した。また、最善策については意見が分かれたものの、成長を押し上げるために新たな措置が必要なことでも大筋で合意した。  
しかし、討議に出席したその他の関係者は、ギリシャ問題とユーロ圏で広がっている債務問題への対応については意見が割れたままだったことを明らかにした。  
フランスのオランド新大統領など一部の首脳はギリシャに対し、ギリシャは将来にわたってユーロにとどまるという強いメッセージを送りたいとしていた。  
しかし、ドイツのメルケル首相はギリシャへの支持を明確にすれば、ギリシャに対して、救済の条件を満たさずただ乗りしてもかまわないという強力なメッセージを送ることになりかねないと主張。メルケル首相の立場を支持する首脳もいた。  
その結果、首脳宣言には、「われわれはギリシャが公約を守りながらユーロ圏に残ることへの関心を確認する」という歯切れの悪い表現が盛り込まれた。  
オバマ大統領が今回のサミットで最重要視していたのがメルケル首相だ。ドイツは欧州で緊縮財政の旗振り役を務めており、欧州で最も影響力のある国だからだ。オバマ大統領はメルケル首相と雑談した際に、欧州のさらに多くの国が不況に陥りかねないため、予算削減を求めるスタンスを緩和するよう促した。  
核兵器開発が懸念されるイランについては、G8首脳はイランへの圧力を維持すると表明した。しかし、今後数カ月のうちに実施される米国の新たな対イラン制裁や欧州連合(EU)のイラン産原油禁輸措置は世界の原油供給をさらに混乱させる可能性があることを認めた。  
G8首脳は国際エネルギー機関(IEA)に対して、「市場に十分かつ時宜を得た原油供給がなされるように適切に対処する」よう要請する準備ができていると述べた。  
ローズ米国家安全保障次席補佐官によると、G8首脳はシリアについて、政治的移行に進むことの必要性を中心に議論した。ローズ次席補佐官はロシアのメドベージェフ首相がこれについて異議を唱えなかったと述べた。  
G8首脳の多くは19日夜にシカゴに移動し、20日に開幕する北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席する。首脳会議ではアフガニスタン問題が主要議題になる見通し。 
G8、成長と財政の両立で合意  
ワシントン郊外のキャンプデービッドで開幕した主要8か国(G8)首脳会議(サミット)は19日午前(日本時間19日夜)、2日目の討議に入った。ギリシャに端を発する欧州の財政・金融危機など世界経済を取り上げ、危機の拡大を防ぐためG8各国が協調していくことを確認した。オバマ米大統領は、経済に関する協議の冒頭で「我々全員が、成長と安定と財政再建を確かなものにすることに取り組む」と述べた。会議では、世界経済の安定に向けて、各国が財政規律を守るだけでなく、経済回復を軌道に乗せる成長戦略を同時に進める必要性を打ち出すことで合意した。緊縮財政路線の見直しを掲げて仏大統領選に勝利したオランド新大統領の主張に一定の理解を示し、G8の協調姿勢を確認した形だ。 
G8首脳宣言、ギリシャのユーロ圏残留を期待  
ワシントン郊外のキャンプデービッドで開かれた主要8か国(G8)首脳会議(サミット)は19日夜(日本時間20日朝)、首脳宣言を採択して閉幕した。欧州の財政・金融危機の克服に向け、財政の健全化だけでなく経済成長も目指す重要性を強調した。焦点のギリシャ問題では、ユーロ圏に残ることが望ましいとの考えを示す一方、具体的な対策には踏み込まなかった。首脳宣言は冒頭で、世界経済の「成長及び雇用の促進は必要不可欠だ」と明記した。仏大統領選やギリシャの総選挙で、厳しい財政緊縮路線に不満が噴出したことや、議長国の米国が秋に大統領選を控え、オバマ大統領が失業率の改善を至上命令としている事情が背景にあるとみられる。宣言は同時に「持続可能な財政健全化政策を支持する」とも指摘し、経済成長と財政再建の両立を目指す新たな基本姿勢を提示した。 
G8宣言「成長も重視」 欧州危機、財政再建と両立  
米ワシントン郊外のキャンプデービッドで開かれていた主要国首脳会議(G8サミット)は19日(日本時間20日)、首脳宣言を採択して閉幕した。最大の焦点となった欧州の債務危機対策では、財政再建を進めながら経済成長も求めることを確認。ギリシャに対してはユーロ圏残留に期待をにじませるにとどめた。欧州諸国では財政緊縮の結果、景気や雇用に悪影響が出ているとの不満が高まっている。経済成長や雇用確保を重視する政策を掲げたフランスのオランド新大統領もこうした声に推され当選し、今回のG8サミットに初参加した。首脳宣言では、世界各国が財政再建に偏るのではなく、経済成長も追い求めるべきだと強調。これまでの緊縮一辺倒だった路線を修正した。財政健全化の公約を維持しつつ、成長を生みだそうとしている欧州の姿勢を歓迎した。構造改革や教育、社会基盤への投資を進めるとした。さらに「強くまとまりのあるユーロ圏」が重要であると訴えた。今月6日の総選挙で反緊縮派が躍進し、共通通貨ユーロからの離脱観測も流れているギリシャについて「(財政再建の)公約を尊重しつつ、ユーロ圏に残ることへの関心を確認する」との表現にとどめた。一部の首脳がユーロ残留を強く求める表現を採用することに反発し、主要国の足並みをそろえられなかった。また、民間の資金を活用したアフリカの農業支援策を発表。10年間で5千万人を貧困から救うとの目標を掲げた。 
G8首脳会議、緊縮策と成長促進策の両立目指すことで合意  
主要8カ国(G8)首脳会議(キャンプデービッド・サミット)は19日、ギリシャが引き続きユーロ圏にとどまることに強い期待を表明するととともに、欧州債務危機によって脅威にさらされる世界経済再生のため必要なあらゆる措置を講ずる、との宣言などを採択し閉幕した。G8は経済に関する首脳宣言の冒頭で、「成長と雇用の促進がわれわれの必須の責務」とし、欧州が引き続き緊縮策を進める一方で、低迷する経済にとって必要な成長促進策と両立させることが重要との認識を示した。首脳宣言は「われわれの経済を強化・再生させ、金融の緊張を取り除くためのあらゆる必要な措置を講ずることにコミットするとともに、適切な対応策がすべての国で同じではないとの認識を共有する」とした。また、スペインやイタリアへの波及が懸念されるなかギリシャ問題が重要な議題となり、「ギリシャが自らのコミットメントを尊重しつつ、引き続きユーロ圏にとどまることが、われわれの利益」との認識で一致した。閉幕後の記者会見で、ホスト国である米国のオバマ大統領は「成長と雇用が、われわれの最重要課題との認識で一致した」と述べ、欧州経済の成長は米国を含むあらゆる国にとって重要だと強調した。大統領は、欧州は財政緊縮策に取り組むと同時に、雇用創出のためのインフラ投資などのプログラムを進めるべきとの「コンセンサスが形成されつつある」と指摘した。さらに、多くのやるべき仕事は残っているが、欧州が経済的な課題を克服できると米国は確信していると述べた。 
経済成長と財政再建の両立目指す G8首脳宣言  
米ワシントン郊外のキャンプデービッドで開かれている主要国首脳会議(G8サミット)は2日目の19日午前(日本時間同日夜)、世界経済を巡る協議を行い、各国が経済成長と財政再建を両立させる道を探る首脳宣言を発表した。「世界経済に関するG8首脳宣言」は、19日夕(日本時間20日朝)に発表予定の会合全体の共同宣言に先だち、午前の協議に基づいてまとめられた。それによると、G8各国は、財政健全化の公約を維持しつつ、成長を生みだそうとしている欧州の姿勢を歓迎。「それぞれの国にとって正しい措置は同一ではないが、経済を強化するために必要なあらゆる措置をとる」と表明した。 
米仏大統領が18日にワシントンで首脳会談、G8前に問題協議へ  
オバマ米大統領は18日、主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)を前に、米ワシントンでフランスのオランド新大統領と会談する。会談では、深刻さを増すユーロ圏債務危機への対応やアフガニスタン駐留軍の撤退時期をめぐる問題について話し合う見通し。今週就任したばかりのオランド仏大統領は、財政緊縮に軸足を置いた欧州の危機対応に疑問を呈しているほか、アフガニスタンに駐留する仏軍を年内に撤退させる意向を表明していた。このうち欧州危機への対応では、オバマ大統領とオランド大統領は従来から、財政緊縮だけでなく経済成長促進を重視する政策を支持する考えで一致。G8サミットが開催されるワシントン郊外のキャンプデービッドに向かう前にホワイトハウスで行う会談では、両首脳がこの問題について共同戦線を形成するとみられる。週末のG8サミットでは、この欧州債務危機対応の問題が主要議題となる見通し。一方、アフガニスタン駐留軍の撤退時期をめぐる問題では、オバマ氏は北大西洋条約機構(NATO)加盟国の足並みを乱す早期撤退を掲げるオランド氏に再考を促す意向とみられる。 
G8、財政緊縮化と成長支援する方法に焦点当てる必要=米大統領  
オバマ米大統領は訪米中のオランド新仏大統領と会談後、主要8カ国(G8)は、ユーロ圏債務危機の緩和に向け、財政の緊縮化と同時に成長を支援する方法に焦点を当てる必要があるとの考えを示した。オバマ大統領は会談後の記者会見で「オランド大統領と(成長と緊縮財政の両立は)欧州の人々だけでなく、世界経済にとっても非常に重要な問題とのことで意見が一致した」と述べた。そのうえで、この日から2日間にわたりメリーランド州キャンプデービッドで開かれるG8首脳会議について「力強い成長を伴った緊縮財政に対してどのように責任ある対応ができるか、今日と明日、他のG8首脳と共に実りある議論を行いたい」と述べた。今回の会談がオバマ大統領と初顔合わせになったオランド大統領は、オバマ大統領に対し、成長を優先させることの重要性について語ったと述べた。両首脳はまた、ギリシャ問題に対し懸念を共有し、同国がユーロ圏にとどまることが重要との認識で一致したとした。 
G8:成長伴う財政再建を…欧州危機対応、米大統領が提起  
主要8カ国首脳会議(G8サミット)が18日夜(日本時間19日朝)、米ワシントン郊外のキャンプデービッドで開幕した。欧州債務危機への対応が最大の議題。欧州の一部で緊縮財政への反発が強まる中、オバマ米大統領は同日、経済成長を伴った財政再建の実現を各首脳と議論する姿勢を示した。19日に協議し、首脳宣言に盛り込まれる見通しだ。初日の夕食会では、イランや北朝鮮問題を協議した。6月の再選挙が予定されるギリシャの政局混乱を巡り、欧州債務危機が再び深刻化するとの懸念から、世界経済の不透明感が強まっている。オバマ大統領は18日のサミット開幕前のオランド仏大統領との会談後、「強い成長を伴った財政再建の責任ある対応について、G8首脳で議論する」と発言。欧州各国などが進める財政緊縮策だけでは世界経済を下押しするとの懸念も強いため、成長や雇用をより重視しつつ財政再建との両立を図るための議論を主導する姿勢を示した。夕食会では、議長国の米国が政治・安全保障分野の「最優先課題」(ドニロン米大統領補佐官)と位置付けるイランの核開発問題で、対イラン金融制裁など圧力継続の必要性を踏まえつつ、問題の外交的解決を確認した模様だ。国連安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランがウラン濃縮活動の停止などを巡る協議を23日に予定しており、G8は首脳宣言にこの協議を支持する方針を盛り込み、濃縮停止をイラン側に求める見通しだ。アサド政権による反体制派弾圧が続くシリア情勢も協議し、アナン国連・アラブ連盟合同特使(前国連事務総長)の調停に基づく停戦プロセスの支持では一致。ただ、アサド大統領の退陣を目指す米国にロシアが反発しており、G8として国連安保理での制裁強化を求める統一見解を打ち出すのは困難な状況だ。北朝鮮に対しては、ミサイル発射や核実験など新たな挑発を阻止するため、国際社会が連携を強化する方針を確認した。2日目の19日は世界経済のほか、エネルギーやアフガニスタン支援について議論し、同日夕(日本時間20日朝)、首脳宣言を採択し閉幕する。 
G8:「財政再建と成長両立」で一致  
米ワシントン郊外のキャンプデービッドで開かれている主要8カ国首脳会議(G8サミット)は19日朝(日本時間同日夜)、2日目の討議を行った。主要議題の欧州債務危機への対応について、G8各国は「財政再建と成長の両立」で一致した。危機の震源であるギリシャに対しては、緊縮策を実施するよう圧力をかけた。19日夕(同20日朝)に採択する首脳宣言に盛りこまれる見通しだ。オバマ大統領は19日の会議の冒頭で「成長、安定、財政再建が必要であることを確認する」との考えを表明。成長や雇用をより重視しつつ、財政再建と両立させるための議論を主導する考えを示した。先進各国は08年のリーマン・ショック後の金融危機対応などで財政支出が膨らみ、財政悪化が重い課題。欧州を中心に増税や歳出削減を急いできたが、財政緊縮策が雇用や所得の減少などを通じて景気を一段と冷え込ませ、かえって財政再建を遅らせる悪循環が新たな課題として浮上。緊縮策だけでは世界経済を下押しする懸念がある。緊縮策への反発が根強いギリシャの政局混乱で、欧州債務危機が再び深刻化するとの警戒感が広がり、世界経済の先行き不透明感は強まっている。討議では、ギリシャはユーロ圏にとどまるべきだとの意見が大勢を占めたが、緊縮策を実行しないままの「支援のただ乗り」を避けるべきだなどの厳しい意見も出た。野田佳彦首相は、日本が国際通貨基金(IMF)への資金拠出などを通じて欧州危機拡大への防止に貢献する姿勢を示すとともに、ユーロ圏に改めて自助努力を求める考えだ。2日目の討議では、「不安定な石油価格の問題点について議論」(オバマ大統領)するほかアフガニスタンへの経済支援、アフリカの食糧安全保障なども話し合う見通し。 
G8:ギリシャにユーロ圏残留促す 首脳宣言採択  
ワシントン郊外のキャンプデービッドで開かれた主要8カ国首脳会議(G8サミット)は19日夕(日本時間20日朝)、2日目の討議を終え、首脳宣言を採択し閉幕した。首脳宣言は欧州債務危機問題の克服に向けて「成長及び雇用の促進は必要不可欠」と明記。従来の財政再建優先路線から成長との両立を目指す方針に転換する姿勢を打ち出した。政局混迷で統一通貨ユーロからの離脱観測が出ているギリシャに対して「(G8は)ユーロ圏に残ることへの関心を確認する」との表現で、ユーロ圏残留を求めた。G8首脳宣言が経済問題でメンバー国以外に名指しで行動を求めるのは異例で、ギリシャのユーロ離脱に伴う国際金融市場の混乱への懸念の強さをうかがわせた。議長を務めたオバマ米大統領は19日のサミット閉幕後の会見で「欧州は重要な改革をしてきたが、まだすべきことは残っている」と述べ、危機克服に向けた一層の努力を求めた。首脳宣言は世界経済の現状について、欧州危機による市場の混乱も踏まえ「復調の兆しを示しているが、依然として強い逆風が吹いている」と分析。危機克服に向けて「経済を強化し、再活性化するとともに、金融市場の緊張と戦うために必要なあらゆる措置をとる」と明記した。一方で「それぞれの国にとって正しい措置は同じではない」とし、各国が個別の事情に応じて成長と財政健全化を進める方針を示した。野田佳彦首相は財政再建と成長の両立に関し、消費増税法案の今国会での成立を期す考えを各国に表明。同時に12年度は2%を超える経済成長を達成できるとの見通しを示した。欧州危機拡大の防波堤となる国際通貨基金(IMF)の融資基盤強化に600億ドルの拠出を決めた日本の貢献もアピールした。政治問題で、首脳宣言は、北朝鮮による先月13日の長距離弾道ミサイル発射を「国連安保理決議違反」と強く非難。その上で、核実験など更なる挑発行為に踏み切った場合には「国連安保理に行動を求める」と明記し、対北朝鮮追加制裁の必要性を明示した。イランの核兵器開発疑惑では、23日にイラク・バグダッドで開かれる国連安保理の常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランの協議の継続を要求。また、シリアの全ての当事者に暴力の即時停止を求め「適切な場合に更なる国連による措置を検討する」と盛り込み、安保理による制裁に含みを残した。今回のG8サミットには、野田首相のほか、フランスのオランド大統領、イタリアのモンティ首相が初めて参加。ロシアは欠席したプーチン大統領の代理でメドべージェフ首相が出席した。来年は英国で開催される予定。 
 

 

●ギリシャ2012/7-12
● 7
ギリシャの2012年成長率、‐7%を超えるマイナス成長の恐れ=サマラス首相 7/24
ギリシャのサマラス首相は24日、2012年の同国の経済成長率はマイナス7%を超えるマイナス成長となり、2014年までプラス成長を回復できない恐れがあるとの見方を示した。
同首相は議会の会合で「今年からリセッション(景気後退)に歯止めがかかり始め、2014年初旬にはプラス成長に戻ることができる」と述べた。
ギリシャ経済は過去5年間、マイナス成長に陥っている。 
● 8
高橋是清なき2012年の日本、だれが債務膨張を止めるのか 8/15
第二次世界大戦で日本が敗北してから67年目の夏を迎えた。8月15日は「終戦記念日」となっているが、日本が敗戦という結末へと大きくカーブしたのは、1936年2月26日の二二六事件で高橋是清蔵相(当時)が暗殺された時だろう。
軍部による巨額軍事費の要求圧力を止める人物がいなくなったとき、戦争への扉が開かれた。今の日本では、軍部は存在しなくなったのに、債務残高の膨張に歯止めがかからない。高橋是清のように体を張って歳出増大を食い止める人物や機関が存在しなくなったからではないか。亡国への道をストップさせるのは、最終的にマーケットによる警鐘ではないかと指摘したい。
<高橋蔵相の日銀引き受け、最終的に91%が民間消化に>
東京港区赤坂のカナダ大使館は、旧高橋邸の敷地内にある。隣接した高橋是清翁記念公園では、今日もセミが競うように鳴いているだろう。そこで高橋蔵相は76年前、陸軍皇道派の青年将校に惨殺された。高橋是清というと、一部のリフレ派の人々は、日本国債の日銀引き受けを決めた蔵相として称賛するが、その後の高橋蔵相の政策対応をみれば、日銀引き受けを長期間実施し、インフレを起こして政府債務の実質的な価値を減少させ、債務返済を容易にさせるということを全く考えていなかったことがわかる。1932年に日銀引き受けが始まるが、その後、日銀は一定部分を民間銀行に売り戻した。現内閣府次官の松元崇氏の著作である「恐慌に立ち向かった男 高橋是清」(中公文庫)によると、高橋蔵相の在任中に発行した国債39億円のうち、日銀引き受けは86%に及んだが、そのうち91%は市中消化された。松元氏は著書の中で、日銀引き受けは「一時の便法」だと高橋蔵相が考えていたことを紹介している。
<軍事費膨張、体を張って止めた高橋蔵相>
この松元氏の著書は、明治維新から高橋是清の死までに展開された戦前・日本の財政・金融史をわかりやすく説明し、鋭い視点で分析した力作だ。そこでは、1932年の最後の蔵相就任から暗殺されるまで、高橋是清が心血を注いだのが、膨張圧力の高まる軍事費の抑制であることについて、詳細に分析している。死の直前の予算編成になった1936年度予算案では、高橋蔵相が閣議室に世界地図を持ち込み、「対ソ戦の無益なことなどを説いて、陸軍の要求を抑えようとした」(松元氏の著書)という。蔵相在任中の32年度─36年度予算において、軍事費が経済成長率並みの伸びに抑え込まれたのは、「高橋蔵相による厳しい抑制方針の結果だった」と松元氏は指摘している。
<蔵相の歳出抑制機能、民主政治で最も重要と喝破した吉田茂>
高橋是清は「金がなければ戦争はできない」という持論を持っていたという。高橋蔵相の死後、軍事費の膨張を抑えることができなくなり、日中戦争、太平洋戦争へなだれ込み、9年後に敗戦となったことをわれわれは肝に銘じておくべきだ。財政の歯止めがなくなると、国家は暴走する。これは日本に限らず、世界史の中で何回も見てきたことだ。松元氏は著書の中で、吉田茂元首相の「回想十年」での発言を引用し、蔵相の権限の強さについて「予算編成に関する場合は、各省大臣を同時に敵にせねばならぬ立場のもので、その立場を強力にすることは政治の根本をただす所以である」「この機関は民主政治において、最も重要な機関である」との吉田氏のスタンスを紹介している。歳出は、何の制約もなければどんどんと膨張する。その防波堤となる蔵相と大蔵省の機能こそ、大切だと吉田氏は喝破した。だが、足元で展開されている日本の政治に、そのような機能は備わっているのだろうか。
<今の政府に見当たらない高橋是清の機能>
消費増税が決まった「税と社会保障の一体改革関連法」の付則18条2項に「成長並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」と明記されている。野田佳彦首相と安住淳財務相は国会審議の中で、消費税増税分を全額、社会保障関連経費に充てる方針に変更はない、との答弁を繰り返したが、法律の付則に明記された事項を盾に、民主、自民、公明の3党国会議員から、公共事業の増額要求が強まってくるのは明らかだ。もし、公共事業の増額に消費増税分の一部が流用されることになった場合、格付け会社から債務圧縮への意欲が乏しいとして、格下げへの圧力が増す展開が予想される。もっと本質的には、歳出膨張の圧力を抑え込む機能が、日本政府のどこにも存在しなくなったのではないか、という懸念が表面化することになるだろう。
<最後の頼りは市場の警鐘機能>
財政再建の基本手法は、歳入増を図るとともに歳出削減も実行することに尽きる。日本では昔から、中国の礼記を語源とする「入るを量って出を為す(制す)」ということが意識されてきた。しかし、政界で現実に展開されようとしているのは、消費増税すれば、歳入増が実現できるので、少しは公共事業に予算を回せるのではないか、という安易な風潮ではないか。このままでは、債務残高の対国内総生産(GDP)比率は、200%から300%へと上昇しかねず、ギリシャを笑えない「亡国への道」をひた走ることになりかねない。政治や行政に歳出削減機能を期待できないなら、最終的には市場機能によって、無茶な財政運営に警鐘を鳴らす事しか手段はなくなると予想する。高橋是清翁が存命なら、「整備新幹線はどんどん作りなさい」とは、決して言わないはずだ。  
● 9
G20代理会合が景気見通し悪化と認識、政府に追加策要請=メキシコ 9/25
メキシコ市で23―24日に開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁代理会合では、各国当局者が世界経済の減速に懸念を表明し、日米欧中銀の取り組みに続き政府が一段の措置を講じることが望ましいとの見解を示した。メキシコのロドリゲス財務次官が24日明らかにした。
世界経済の見通しは、前回のG20首脳会議が開催された6月から、悪化したとの認識が示されたという。
同財務次官はロイターに対し「(当局者の間には経済)情勢について懸念があり、金融政策だけでは不十分との確信もある。これは好ましいことだ。なぜなら、欧州中央銀行(ECB)や米連邦準備理事会(FRB)の決定は市場安定化に寄与したが、政府による一段の行動が必要だからだ」と語った。
そのうえで、景気見通しの悪化を考慮すれば、6月のG20首脳会議で各国が合意した成長支援と雇用改善に向けた措置の実施を加速する必要があるかもしれないとの認識を示した。
またFRBによる追加緩和決定を受けて、新興国から「通貨安競争」を招くとの懸念は示されなかったとし、景気先行き不安に関する議論が中心だったと述べた。
G20のある当局者は「実施されるべき他の措置がとられなかったため中銀が行動せざるを得なかったという見方から、(主要国中銀の)金融緩和に対する反応は控えめだった」と指摘し「前回(の金融緩和時)よりも波及効果は小さいとの見方が出ている」と述べた。
別の当局者は、新興国から以前批判されたFRBの量的緩和拡大について、世界的な経済見通しへの懸念拡大からみて必要悪だと指摘した。
ロドリゲス次官によると、食品・コモディティ価格高への対応には貿易改善や市場の透明性拡大が有効との見解で各国は一致した。国債通貨基金(IMF)への出資割当改革については、国内総生産(GDP)の比重を高めるべきとの点で、広く合意したという。
ギリシャ政府、120億ユーロの緊縮策を策定 9/26
ギリシャは、約120億ユーロ規模の一連の緊縮財政策の策定を終えたことを明らかにした。ギリシャへの追加支援に関する、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の3機関「トロイカ」との交渉成立に向け、一歩前進した。
トロイカは今月、ギリシャが示した緊縮策の当初案を一部却下し、政府は見直しを余儀なくされていた。
ギリシャ政府当局者によると、サマラス首相と財務相は25日夜遅くの会議で、新たな一連の対策で合意。今後、連立政党党首の支持とトロイカ当局者の承認を求める。
政府高官の1人は、ロイターに対し「政府は115億ユーロの緊縮策をまとめた。すべての詳細を決定した」と述べた。具体的な合意内容は明らかにしていない。
同緊縮策に関する連立政党党首との会合は27日に行われる見通し。トロイカとの協議は来週初めに調査団が再びギリシャ入りしてから再開される見込み。
欧州株反落、スペイン・ギリシャのデモで債務危機脱却の難しさ認識 9/27
26日の欧州株式市場は反落して終了した。スペインとギリシャで緊縮財政措置に反対するデモが行われ、ユーロ圏の債務危機からの脱却の難しさが認識されたことで、主要株価指数のこの日の下落率は過去2カ月で最大となった。
DJユーロSTOXX50種指数.STOXX50E終値は69.96ポイント(2.72%)安の2498.52。1日の下げとしては8月初旬以来最大となった。
FTSEユーロファースト300種指数.FTEU3は20.78ポイント(1.86%)安の1099.01で取引を終えた。
この日最も大きく下げたのが、利益確定の売りが出た金融株.SX7P。経営難に陥った銀行に対する資本注入方法に関してユーロ加盟国間に意見の相違があることも重しとなった。
経済指標が思わしくなかったことに加え、スウェーデンのスカニアSCVb.STが自動車市場は厳しい状況が続くとの見通しを示し、韓国の現代自動車(005380.KS)が欧州市場での目標達成時期を少なくとも1年延期するなど、企業から先行き見通しの暗い発表が相次いだことで、自動車.SXAPや素材.SXPPなどの景気循環株にも売りが出た。
ただ、ナティクシスの投資ストラテジスト、Benoit Peloille氏は「市場は明らかに反発していたため、調整の余地はある。それ以上のものではないと見ている」と述べた。
この日はリスクの高さを示すEUROSTOXX50ボラティリティ指数.V2TXが12%上昇し、2週間ぶりの高水準となった。
スペインの主要株価指数IBEX.IBEXは3.9%安。比較的裕福な北東部カタルーニャ州でスペインからの分離独立の機運が高まっていることで、スペインをとりまく情勢に対する懸念が増大している。
ギリシャ連立与党指導者、約120億ユーロの緊縮措置で基本合意 9/28
ギリシャの連立与党指導者は、およそ120億ユーロの緊縮措置でおおむね合意した。当局者が27日、明らかにした。今後は公務員給与の削減や年金カットの振り当てについて詳細を詰める。
ギリシャのストゥルナラス財務相は与党指導者との会談後に「基本合意が得られた。最終交渉に移る」と述べた。
財務省関係者は「来週いっぱいで最終合意し、議会の承認を得られることを望む」とし、10月8日のユーロ圏財務相会合までに、関連法案の法制化を目指していると明らかにした。
当局者によると、歳出削減規模を当初目標の115億ユーロから105億ユーロに引き下げ、税収増でまかなう譲歩案で合意した。
緊縮措置の実施期限を2年ではなく4年先延ばしすることに加え、議会で緊縮措置に関する承認が得られれば、次回融資の実施を保証するよう、債権者側に要求することでも意見が一致した。
全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のベニゼロス党首は記者団に対し、ギリシャが目標を大きく上回った場合や他分野で削減できた場合には、年金・給与削減の一部を縮小できるようにする条項を法案に盛り込むことを連立与党の指導者は望んでいると述べた。 
 

 

●10
ギリシャが1日に13年予算案発表へ、緊縮策盛り込む見通し 10/1
ギリシャ政府は1日に、公的支出の大幅削減策を盛り込んだ2013年予算案を発表する。ギリシャが国際社会から追加支援を得るには強力な緊縮策を講じる必要があるが、景気後退(リセッション)に陥っているギリシャ経済に追い打ちをかける恐れがある。
ギリシャ政府は315億ユーロに上る次回融資の実行を望んでおり、欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)・欧州中央銀行(ECB)で構成する合同調査団(トロイカ)は、現在の改革プログラムが順調に進展しているかどうか、判断を下そうとしている。
ギリシャは、債務の利払いを除いたすべての支出が税収で賄われていることを示すプライマリーバランスの黒字化を目指しているが、国民の間では緊縮策に対する不満が拡大し、26日には2大労組がゼネストを実施。抗議行動を繰り広げるデモ隊と警察が衝突するなど、大混乱に陥った。
2013年の予算案には、今後2年間で115億ユーロに上るコスト節減策の一環として、公的セクターの賃金、年金、社会保障給付のさらなる削減策が盛り込まれる見通し。
ある政府当局者はロイターに対し「厳しい予算案になるだろう。リセッションは6年目に入りそうだ。予算案はさらなる支出削減に焦点を当て、政治指導者が合意した措置が盛り込まれるだろう」と述べた。
別の政府関係者は、匿名を条件にロイターに対し、2013年の予算案には約75億ユーロの支出削減策のかなりの部分が盛り込まれることになると明らかにした。
サマラス政権を構成する連立与党指導者は、支出削減をめぐり数週間に及ぶ議論を続けた末、支出削減策の内容について合意。詳細について最終的な詰めの作業を行っている。
ギリシャ政府は、10月8日のユーロ圏財務相会合までに緊縮策について議会承認を得るため、早急に緊縮策をまとめ上げる必要がある。
ギリシャ政府は財政赤字の対国内総生産(GDP)比率を2011年の9.1%から今年は7.3%に引き下げることを目指しているが、GDP伸び率が予想以上に悪化する中、目標達成は困難になっている。
欧州委員会は2012年のGDP伸び率がマイナス4.7%になると予測していたが、緊縮策が予想以上に経済や内需を圧迫し、失業率は過去最高の24.4%に達している。
その結果、債務の利払いコストを除いた今年のプライマリー収支の赤字幅も、目標の対GDP比1.0%を上回る見通し。ギリシャ財務省は、プライマリー収支の赤字幅が対GDP比1.5%に達すると見込んでいる。
ユーロバンクのエコノミスト、プラトン・モノクロウソス氏は「新たな予算案は厳しいものとなるだろう。政府は長年赤字が続いてきたプライマリー収支を黒字化させなくてはならない。私の試算では、ギリシャが財政を安定させるには少なくとも対GDP比1.5%のプライマリー黒字を達成し、公的債務の対GDP比率を徐々に低下させなくてはならない」との見方を示した。
G7では欧州に債務問題への対応要請=財務官 10/3
中尾武彦財務官は3日、東京で来週開かれる日米欧7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議や、国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会では、日本は欧州に対して、債務危機抑制に向けてより断固とした行動をとるよう求める、との姿勢を示した。 ロイターとのインタビューで述べた。
11日のG7会合では欧州債務危機のほか、米国の「財政の崖」問題、中国や他の新興国の成長減速なども主な議題になるとした。
財務官は、為替問題に関しては、欧米と引き続き緊密に連絡をとると述べるとともに、円の過度な上昇に対しては措置をとる用意があると述べ、「もし過度な変動が為替市場で起こった場合には、必要に応じて断固とした対応をとる。日本政府の姿勢に変わりはない」と表明した。
円高は投資家が安全な投資先として円を求めている結果だとし、日本経済の実態を踏まえれば行き過ぎとの立場をあらためて示した。
ユーロ圏債務危機については、依然として国際社会の最優先課題の一つとしながら、これまでの取り組みを評価し、引き続き努力を重ねるよう求めた。
ユーロ圏は欧州中央銀行(ECB)の政策や救済基金、財政再建に関するユーロシステムのガバナンス強化に取り組み、多くの進展を遂げたと指摘。とりわけギリシャやスペインなどは改革と財政再建に極めて真剣に取り組んでいるとしたうえで、欧州の経済通貨同盟を維持・強化する措置の実行に向け、引き続き断固とした行動をとるべきとの見解を示した。
財務官は中国経済について、輸出不振や過去の政策引き締めによる鈍化に直面しているが、中期的に内需主導の高成長は達成可能との見方を示した。
また、尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる問題を理由に日中の金融協力を後退させるべきではないとの姿勢を示したうえで「後退のシグナルはない。中国とは緊密なやり取りをしている」と述べた。
合わせて開かれるミャンマー支援国会合に関しては、同国指導者が債権者に対し改革の意思を表明し、延滞債務解消と大規模経済支援に向けた道を開く機会になると指摘した。
ただ、ミャンマーと支援国との対話の緊密化に向けた初期段階の会合と位置付け、同国代表から政治・経済改革のいっそうの進展と内戦終結に向けた明確なメッセージを期待していると述べた。
2012年4─9月期の対内中長期債投資は4.1兆円の資本流入超、上半期ベースで過去最高 10/4
財務省の対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、今年4─9月期の対内中長期債投資は4兆1367億円の資本流入超となった。流入超の規模は2007年4─9月期(3兆9455億円)を上回り、05年の統計開始以来、上半期ベースで最高を記録した。ギリシャやスペインなど欧州の債務問題が長期化するとともに、グローバル経済に先行きに不透明感が出てきたことで、安全資産とされる日本国債が選好される流れが加速している。
財務省が4日に9月23日─9月29日の対外及び対内証券売買契約等の状況を発表したことを受け、資本流入額は4月以降の対内中長期債投資額(週次ベース)を合算して割り出した。
日本の10年最長期国債利回り(長期金利)は、4月初めに1.0%台を付けた後に低下に転じ、7月に0.720%に低下。8月と9月は0.8%を挟み、低位で安定している。余剰資金を抱える国内勢に加え、欧州債務不安や世界景気の減速懸念などを背景に、海外勢が消去法的に買いを入れているためだ。「外国政府がドルに傾斜していた外貨準備の運用先を円にも振り向け、多様化する動きも出ているもようだ」(みずほ証券・チーフ債券ストラテジストの三浦哲也氏)という。
一方で、12年4─9月期の対内短期債投資は4兆9830億円の資本流入超と、流入超の規模は前年同期比55.3%減となった。日銀が包括的な金融緩和で、資産買入等基金を通じて国庫短期証券を買い入れているため需給がひっ迫。「国庫短期証券の入札で応札倍率が上昇しているように、海外勢が買いたい量を手当てできないため、購入する債券の年限を延ばす動きが出ている」(メリルリンチ日本証券・チーフ債券ストラテジストの藤田昇悟氏)という。
9月23日─9月29日の対内証券投資では、株式が2396億円の資本流出超となる一方、中長期債が2980億円の資本流入超となり、海外勢の日本株売り/円債買いが明らかになった。沖縄県の尖閣諸島問題をきっかけに日中関係が緊迫化し、中国では日本製品の不買運動も伝えられており、「政治リスクに神経質な海外勢からは、日本株のアンダーパフォーマンスは否めないと厳しい声も聞かれ始めた」(外資系証券)という。
国内金融機関の債券関係者は「欧州債務問題の抜本的な解決に相当な時間がかかる上、これまで世界景気をけん引してきた中国をはじめとする新興国の景気減速が止まる気配が見えない。今後、異例とも言える超低金利の時間軸が日米欧でさらに延びることをマーケットが織り込み始めている。日本国債に資金が流れる構図は当面続くのではないか」とみている。
ECB理事会後のドラギ総裁の発言要旨 10/5
欧州中央銀行(ECB)は4日、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.75%に据え置いた。
下限金利の中銀預金金利もゼロに、上限金利の限界貸出金利も1.50%にそれぞれ据え置いた。
理事会後に開かれた記者会見でのドラギECB総裁の発言要旨は以下の通り。
<スペインは支援無しで危機を解決できるか>
(支援申請の)決定は完全に各国政府の手に委ねられている。ECBは可能なことを行った。また、OMTは改革をもたらす環境を築くだろう。ただ、主導権は各国政府にある。
<債券買い入れ計画は緊張緩和に寄与>
新たな債券買い入れプログラム(OMT)は過去数週間、(金融市場の)緊張緩和に寄与し、破壊的なシナリオが現実になるとの懸念後退につながった。
<政府は役割果たすべき>
政府は引き続き財政・構造上の不均衡是正に必要な措置を講じ、金融セクターの再編措置を推し進めることが不可欠だ。
<利下げは議論せず>(利下げを議論したかとの質問に対し)しなかった。
<スペインがECBの支援要請に十分な措置を講じているかとの質問に対し> (国債買い入れプログラム実施の)コンディショナリティと厳格な条件を同一視する傾向があるが、条件は必ずしも懲罰的である必要はない。実際、多くの条件は構造改革に関連しており、社会的負担を伴う半面、大規模な社会的利益をもたらす。さらに条件がしっかりと策定されれば、利益はコストを上回るだろう。これ(支援要請)はスペイン政府が決定することであり、他のユーロ圏各国政府は、プログラムが欧州金融安定ファシリティー(EFSF)/ 欧州安定メカニズム(ESM)に支援を要請するうえで十分であるかを決定する。また、支援の過程において国際通貨基金(IMF)の関与を積極的に模索していく。
<スペイン利回り>
(スペイン国債の利回りは適切か、それとも依然として金融政策を阻害しているかとの質問に対し)コメントしない。
<独連銀の伝統>
ドイツ連邦銀行の伝統が物価安定の確保だとすれば、ECBはその伝統と完全に調和している。
<債券買い入れと同時の利下げ>
(債券買い入れプログラムと並行した利下げは考えられるかとの質問に対し)非標準的な金融政策措置は標準的な措置が十分奏功しない場合に実施している。金融政策の波及経路を修復できるかどうか見極める必要がある。将来の金利変更については憶測しない。
<ギリシャ国債のロールオーバー>
(ロールオーバー)はマネタリー・ファイナンスに当たる。ECB保有債券の自発的な再編はいかなる場合もマネタリー・ファイナンスに当たると複数の場で述べてきた。
<OMTによる債券発行への影響>
ECBの国債買い入れプログラム(OMT)は、短期債の発行を促すことを目的としていないことから、こうした状況を監視していく。
<OMTの条件>
特定のプログラムが審査されている間はOMTは実施されない。審査が終了し、プログラムの履行が確認されれば再開される。
<ECBがなぜポルトガル国債を購入していないかとの質問に対し>
調整プログラム下にある国については、市場への完全なアクセスを回復するまで、OMTの対象にはならない。この理由から発行市場へアクセスできない場合にOMTが替わりとなるものではない。
<ECBは責務の範囲内で行動>
過去数カ月間に述べたことの繰り返しになるが、われわれは中期的な物価安定維持という責務の範囲内で行動している。金融政策の決定においては独立して行動している。ユーロは後戻りできない。
<弱い成長>
ユーロ圏の一部金融市場の緊張継続と高い不透明性が信頼感とセンチメントを依然圧迫する中、ユーロ圏の経済成長は引き続き弱いままとなる見通しだ。
<インフレ>
高水準のエネルギー価格と一部ユーロ加盟国における間接税引き上げを受け、インフレ率は2012年中は2%を上回る水準にとどまる見込みだが、来年には同水準を再び下回る見通しだ。したがって現在のインフレ水準は一時的となり、二次的影響にはつながらないはずだ。コストと賃金、物価の今後の動向を引き続き注視する。物価見通しへのリスクは引き続き中期的におおむね均衡している。
ユーロ圏重債務国、ギリシャ以外は経済改革が大きく進展=独財務相 10/5
ドイツのショイブレ財務相は4日、債務危機に見舞われたユーロ加盟国は、ギリシャ以外では経済改革の大きな進展が見られたとの見方を示した。
同財務相は「(支援)プログラムの下に置かれた国は、非常に困難な状況に置かれているギリシャ以外は、大幅な進展を見せた」と述べた。
スペインとイタリアに関しては、「プログラムを受けてはいないものの、両国が成し遂げたことは大きい」と評価。改革のために必要な取り組みを行う国には、公的財政の建て直しに向けより多くの時間が与えられるとの考えを示した。
スペイン、2012年と2013年の財政赤字目標は達成できない見込み=IMF 10/9
国際通貨基金(IMF)は9日、スペインは2012年と2013年の財政赤字目標を達成できず、来年の債務の対国内総生産(GDP)比率は90%超に跳ね上がるとの見通しを示した。
IMFの各国の財政状況に関する報告によると、スペインの財政赤字は今年GDP比で7%、来年は5.7%となる見込み。欧州連合(EU)と合意している目標は、今年は6.3%、来年は4.5%となっている。
スペインは2011年財政赤字が目標を大幅に上回って以来、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドに続き欧州危機の中心国になっている。
スペイン政府は先週、2012年の財政赤字の対GDP比率は7.4%に達するとの見通しを示した。ただこれには、赤字削減過程で考慮しないと欧州委員会と合意している銀行の資本増強が含まれている。
欧州委員会は最新の経済見通しを11月7日に発表する。
ドルと円が対ユーロで上昇、米決算や欧州めぐる懸念で=NY市場 10/10
9日のニューヨーク外国為替市場では、ドルと円がユーロに対して上昇。第3・四半期の米企業決算をめぐる警戒感に加え、ギリシャやスペインをめぐる先行き不透明感を背景に、質への逃避の動きが広がった。
インテル(INTC.O)など複数ハイテク株の投資判断引き下げを受けて米株式相場が下げ幅を拡大したことで、安全資産とされるドルと円への買いが加速した。
国際通貨基金(IMF)が世界経済の見通しを引き下げたこともあり、米決算シーズンを前に投資家の警戒感が強まった。
ユーロ/ドル0.7安の1.2880ドル。
ユーロ/円は0.9%安の100.75円。
ドル/円は0.1%安の78.22円となった。
米アルミ大手アルコア(AA.N)が取引終了後に発表した第3・四半期決算は、継続事業ベースの1株利益(特別項目除く)が0.03ドルと、アナリスト予想を上回った。
為替市場はこのニュースに反応薄となったが、第3・四半期の企業決算が弱い内容となれば、株価やユーロを圧迫し、安全とみられる通貨が買われる可能性がある。
アクション・エコノミクスのグローバル為替分析部門マネジングディレクター、ロナルド・シンプソン氏は「リスクオフ・トレードのようだ」と述べ、決算シーズン入りに伴い「株価が不安定な動きとなり、ドルの方向をある程度左右する可能性がある」との見方を示した。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が欧州議会で、ギリシャの経済改革は進展しているが、さらなる取り組みが必要との認識を示したことを受け、同国をめぐる懸念も再浮上した。
アテネではメルケル独首相がギリシャのサマラス首相と会談。ギリシャの改革のペースは加速していると評価し、同国のたどる困難な道はいずれ実を結ぶと訴えた。
スペインの全面支援要請をめぐる不透明感のほか、IMFが4月以降2度目となる世界経済見通しの引き下げを発表したこともユーロの圧迫材料となった。IMFはまた、経済問題に対する米欧の取り組みが不十分なら、景気低迷がさらに長引く可能性もあると警告した。
ユーロは、対スイスフランでは一時3週間ぶり高値をつけた。市場筋によると、カストディ業務を行う一部の米銀がスイスフランとデンマーククローネ建ての預金にマイナス金利の適用を始めたとの報道が材料視された。
ユーロ/スイスフランは0.1%高の1.2112フラン。一時は1.2143フランまで上昇した。
ドル/スイスフランは0.8%高の0.9400フラン。
7月のギリシャ失業率は25.1%、2年11カ月連続上昇 10/12
ギリシャ政府は11日、7月の失業率が25.1%となったと発表した。前月の24.8%から上昇。上昇は2年11カ月連続となる。
年齢別では15─24歳の失業率が54%に達した。若年層の失業率の上昇は、政府の緊縮財政措置に抗議するデモの激化にもつながっている。
こうしたなか、この日は米飲料大手コカ・コーラ(KO.N)傘下のコカ・コーラ・ヘレニック(CCH)HLBr.ATが、アテネ証券取引所からロンドン証券取引所に株式上場先を変更し、本社機能もスイスに移転させると発表。
ギリシャで時価総額が最大のCCHによるこうした動きは、ギリシャ経済にとり新たな打撃となる可能性もある。
CCHはロシアやナイジェリアを含む28カ国で飲料の生産を行っており、米コカ・コーラが同社の株式23%を保有する。CCHはギリシャ国内に持つ工場は今回の決定に影響は受けないとしている。
ギリシャの財政赤字削減問題「もう少し時間が必要」=IMF専務理事 10/12
国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会のため東京を訪れているラガルドIMF専務理事は12日、ギリシャの財政赤字削減問題について、「成長力の乏しさ、市場の圧力、これまでの努力を考えれば、もう少しの時間が必要だ」と述べた。
財政再建策については「われわれはいつも同じことを言っている。つまり、調整は必要だが、すべての国が同じペースで進むわけではないということだ。それは国ごとに異なり、他の政策パッケージの一部にもなる。しかし、現在先進国の肩にのしかかっている債務負担が長期的に持続可能でないことは疑いの余地がない」と語った。
ギリシャ国債価格上昇、ユーロ圏離脱リスク低下で 10/16
15日のユーロ圏金融・債券市場は、ギリシャ国債の利回りが2011年8月以来の水準に低下した。同国がユーロ圏を離脱するとの観測が後退した。
ユーロ圏がギリシャ債務の削減に向け新たな方策を模索するなか、2023年2月償還債の利回りは0.5%ポイント超低下した。
利回りは3月の債務再編直後の水準を下回っている。新たな緊縮策をめぐる観測でさらに低下する可能性もある。
市場参加者は、利回り低下の背景として、ギリシャのユーロ圏離脱をも迫ったこれまでの強硬姿勢が弱まったことを示すメルケル首相らドイツ当局者の発言を挙げる。
エキゾティックスのエコノミスト、ガブリエル・スターン氏は「メルケル首相は、ギリシャは離脱すべきでないとの見方にようやくたどり着いた。市場もそのことに気付き、向こう2─3カ月間、ギリシャの離脱はないとの期待が広がっている」と指摘。「離脱案はあまりにも高くつくという見方に皆がようやくたどり着いた」と話した。
ギリシャの10年債利回りは55ベーシスポイント(bp)低下し17.51%。
スペイン国債やドイツ連邦債は狭いレンジでの取引となった。スペインの金融支援要請に関する材料待ちとなった。
スペイン10年債利回りは13bp上昇し5.78%。ムーディーズが同国の格付けを引き下げる恐れなどが重荷となっている。
ドイツ連邦債先物の清算値は15ティック下落して141.55。
ギリシャのユーロ離脱、世界経済危機招く恐れ=独有力シンクタンク 10/17
独有力シンクタンクのベルテルスマン財団は17日、ギリシャのユーロ離脱は世界経済に多大な打撃をもたらすとして、絶対に回避すべきとの研究結果を公表した。
ギリシャのユーロ離脱による影響は「欧州だけでなく各国に波及し、世界的な経済危機を招く可能性がある」としている。
報告書では、ユーロ離脱によるギリシャの経済的損失が2020年までに総額1640億ユーロに達すると試算。
またポルトガルやスペイン、ひいてはイタリアなどの南欧諸国に対してもユーロ離脱への圧力が高まり、そうなれば「世界経済が深刻なリセッション(景気後退)に陥る恐れ」があるとしている。
その上で、最悪の場合、世界の主要42カ国の経済的損失は17兆2000億ユーロに及ぶとの見方を示し、絶対に回避する必要があると指摘した。
ギリシャが再び反緊縮策のストへ、EU首脳会議にあわせて実施 10/18
欧州連合(EU)首脳会議の開催に合わせ、ギリシャで追加の緊縮措置に抗議するストライキが実施される。過去3週間で2度目で、一連の賃下げや年金カットが及ぼす影響を訴える狙いがある。
ギリシャでは次回融資の獲得に向けたEU・欧州中央銀行(ECB)・国際通貨基金(IMF)の3者(トロイカ)調査団の要求を満たすため、115億ユーロの追加歳出削減策が用意されている。
民間労組のギリシャ労働総同盟(GSEE)のヤニス・パナゴプロス委員長は「たった1度でいいから政府はトロイカの不合理な要求を拒否すべきだ」と述べた。GSEEはギリシャの2大主要労組の1つ。
公務員連合(ADEDY)とGSEEの呼びかけで実施される24時間のストにより、官民両機関の業務の大半が停止する見込み。
ギリシャ最大野党が支持率トップに、緊縮策反発強まる=世論調査 10/19
調査会社VPRCが19日公表したギリシャの世論調査によると、最大野党で反緊縮を掲げる急進左派連合が急速に支持率を伸ばしていることが分かった。
次回融資獲得に向け、現政権が取りまとめを急いでいる追加緊縮策に対し、国民の反発が高まっていることを映した。
急進左派連合の支持率は30.5%で、サマラス首相率いる新民主主義党(ND)の27%を抜いた。
一方、連立政権に参加する全ギリシャ社会主義運動(PASOK)と民主左派党の支持率はそれぞれ5.5%と、6月の選挙時の12.3%、6.3%から大きく後退している。
また極右政党「黄金の夜明け」は14%と、6月から支持率をおよそ2倍に伸ばした。失業率の高止まりを背景に、移民排斥を主張し支持を集めている。
ギリシャ財務相、財政目標延長認められたと表明 10/24
ギリシャのストゥルナラス財務相は24日、同国に対する1300億ユーロの第2次金融支援に関連し、国際支援機関が財政赤字削減目標の達成期限延長を受け入れたと述べた。
ただドイツは、欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の3機関で構成するトロイカからの報告を受けてから欧州連合(EU)は決定を行うとしており、立場に食い違いが出ている。
ストゥルナラス財務相は議会で、「本日、期限延長を獲得した」とし、「われわれが(国際支援団と)作業を進めているすべてのシナリオは、期限が延長されるとの前提に基づいている」と述べた。
ギリシャはトロイカに対し、財政調整プログラムの目標達成期限を2年延長することを求めていた。
同財務相はトロイカとの交渉について「夜を徹した交渉の末に今朝、トロイカ側は退職手当、解雇予告期間の2つの主要な点で譲歩した」と述べた。
<ドイツ、IMFの立場>
IMFは同日、ギリシャへの支援条件について、過去数日間で協議に進展が見られたものの、依然課題が残っているとの見解を示した。
IMFは声明で「過去数日間で(協議に)進展が見られたが、関係者全体での合意を得るべき課題が一部残っている」と説明した。
ECBのドラギ総裁も記者団に対し、ギリシャの財政健全策実施見直しで進展があったと理解しているとしながらも、財政目標の達成期限延長が決定されたとは承知していないと述べている。
ドイツのショイブレ財務相は、対ギリシャ支援の条件となっている財政目標の達成期限が2年延長されたかどうかは確認できないとの立場を示し、ギリシャが救済策の条件を守ることが必要だと主張。
ただ「トロイカが、ギリシャだけでは変えられない客観的な事情があるとして、その解決策を提示すれば、ドイツ下院で審議し、それに従って決定を下す」との柔軟な姿勢も示した。
欧州委員会の報道官は24日、ギリシャと国際支援団との間の交渉で大きな進展が見られたものの、合意に至るまで「数点の」懸案が残っていると述べた。
報道官は「ギリシャ政府との交渉で大きな進展があった。ただ実務者レベルでの合意に至るまで、数点の懸案が残っている」と述べた。
<ギリシャ国内の調整も課題>
国際支援機関がギリシャの財政目標延長を認めた場合も、ギリシャ国内の調整という課題が残る。
連立政権に参加する全ギリシャ社会主義運動(PASOK)と民主左派党は、まだ緊縮策に支持を表明していない。
民主左派党のクベリス党首は24日、ロイターに対し「現段階でわたしの立場は変わっていない」と言明。国際支援機関から支援条件として求められている労働改革に対し、反対の立場を維持していることを明らかにした。
ストゥルナラス財務相は、新たな緊縮財政措置の議会採決を来週行うことを明らかにした。同措置は、緊縮財政と労働改革の2つの法案から成るとしている。
ギリシャ当局者は、民主左派党が労働改革に反対しても緊縮財政法案を通せるよう、法案を2つに分けたと説明している。
民主左派党は300議席中16議席しか保有しておらず、同党が反対しても法案通過は可能。ただ、同党が反対票を投じた場合、連立政権の基盤が一段と揺らぎ、ギリシャの改革継続に懐疑的な見方が浮上する恐れがある。
第3四半期のスペイン失業率、過去最高の25%に上昇 10/26
スペイン国家統計局(INE)が26日発表した第3・四半期の失業率は25%と第2・四半期の24.6%から悪化し、過去最高を更新した。市場予想では25.1%と見込まれていた。
失業者の数は580万人。
欧州連合(EU)加盟国の中では、ギリシャに次ぐ高い失業率となる。
スペインはEU当局から課された債務削減目標を達成するため、2014年までに600億ユーロ超の追加緊縮策を計画しているが、このことは一段の成長率の落ち込みや失業者の増加をもたらす可能性が大きい。
ノムラのロンドン在勤エコノミスト、シルビオ・ペルーゾ氏は「予想よりも弱い成長率と緊縮措置があわされば、失業率は来年、容易に26%に達するだろう」との見方を示した。
独財務相、ギリシャ国債「ヘアカット」は不可能=報道 10/29
ドイツのショイブレ財務相は28日放送のラジオインタビューで、政府が保有するギリシャ国債のヘアカット(債務減免)を受け入れる可能性を否定した。ただ、債務返済のための国債買い戻しプログラムが検討される可能性はあるとの認識を示した。
同相はラジオ局DEUtschlaNDfunkに対し、「(ヘアカットは)ユーロ圏加盟国の現実とはほとんど関係のない議論だ」と述べ、主権国家は保有するギリシャ国債に伴う多額の損失を帳消しにすることは法的に不可能、との見解を示した。
一方、ギリシャが債務返済のために新たに融資を受ける、国債買い戻しプログラムは選択肢になりうるとし、「真剣に検討できる」と語った。
ただ、欧州中央銀行(ECB)、欧州委員会、国際通貨基金(IMF)がギリシャの債務問題への取り組みの進捗に関する最終報告を提出するまでは、そのようなプログラムを検討することは拒否するとした。
ショイブレ財務相はまた、ギリシャとの合意には歳出が基準を超えた場合に支援を削減することが含まれる可能性があると発言。「こうしたあらゆる制御メカニズム、矯正メカニズムなどによって、われわれがこれまでギリシャのプログラムで得られなかった信用を回復できる可能性がある」と述べた。
ギリシャの労働改革、トロイカが譲歩拒否=財務相 10/29
ギリシャのストゥルナラス財務相は28日、連立与党に参加する民主左派党が反発している労働法改正について、国際通貨基金(IMF)・欧州連合(EU)などの国際支援機関(トロイカ)が一段の譲歩を拒否していることを明らかにした。
ギリシャ政府とトロイカは、緊縮策をめぐる交渉を数カ月にわたって続けているが、民主左派党が労働法改正に反対していることで、最終合意が遅れている。
民主左派党は、労働法を改正すれば労働者の権利が弱まると主張。来週の議会採決で反対票を投じる構えを示している。
同党は、国内賃金協定を労組組合員だけでなく全労働者に適用することや、結婚時に給与を10%引き上げる現行制度を維持することを求めている。
ストゥルナラス財務相は記者団に「トロイカは民主左派党の要求を拒否している」と述べた。
政府当局者は匿名を条件に、政府が来月5日に関連法案を議会に提出するとの見通しを示した。
民主左派党は300議席中16議席しか保有しておらず、同党が反対しても法案通過は可能。ただ、同党が反対票を投じた場合、連立政権の基盤が一段と揺らぎ、他の議員も国民に不人気な政策に反対票を投じる可能性がある。 
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ギリシャ問題、ユーロ圏財務相電話会議で大きな進展=独財務相 11/1
ドイツのショイブレ財務相は31日、ギリシャとの協議で「大きな進展」がみられたとしながらも、合意事項はまだないと述べた。
ユーロ圏財務相はこの日、電話会議を開きギリシャ問題に関して協議。ショイブレ財務相は会議後の記者会見で、「大きな進展があった」と述べた。
ただ、国際通貨基金(IMF)などの3機関で構成するトロイカからの報告は11月11日、もしくは12日まで得られないとの見通しを示した。
また、キプロスへの金融支援に関する協議は来年まで開始されないとの見方を示した。
ユーロが対ドルで下落、ギリシャの年金改革動向を嫌気 11/2
1日中盤のニューヨーク外国為替市場ではユーロがドルに対して下落した。ギリシャの裁判所が、国際支援機関から求められていた年金改革について憲法違反の可能性があるとの判断を下し、支援確保に必要な緊縮策の実行能力に対する懸念が広がった。
ユーロは対円では高めに推移している。
リスク選好が高まったことや、日本経済の見通し悪化、輸入企業による円売りが重しとなって、円はドルに対しても弱含んでいる。
ギリシャ与党PASOK議員が離党、財政緊縮措置に反対 11/2
ギリシャ連立与党の一角、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)所属のミハリス・カシス議員は1日、金融支援への見返りとして国際機関から求められている財政緊縮措置に反対するとして、同党を離党したことを明らかにした。
同氏はアテネ通信社に対し「わたしはもはやPASOKに所属しておらず、無所属になった」と語った。
議会では来週、重要改革法案をめぐる採決を予定している。PASOKでは前日の会合後、大半の所属議員が新たな緊縮法案に賛成する意向を表明する一方、5人の議員が難色を示し、カシス議員もその1人だった。
G20要人発言一覧 11/6
メキシコの首都メキシコ市で4─5日開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行首脳会議での要人発言要旨は以下の通り。
ショイブレ独財務相
<米「財政の崖」について>
「世界経済にさらなる打撃を与えることにならない方法で財政の崖を切り抜けるため、あらゆる措置が講じられなければならない」
<財政赤字について>
「持続的な成長には過剰な公的債務を削減することが避けられない」。ドイツは赤字削減目標を達成しつつある。「他国にもそれぞれの責任を果たすよう要請する」
ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事
「世界の経済状況は依然困難で、必要な政策措置が実施されなければ脆弱な景気回復がリスクに直面する」「米国にとって、いわゆる財政の崖に迅速に対応することが重要だ。時間が最も重要で、政策をめぐる著しい不透明感に対処しなくてはならない」「日本も同じような問題に直面しており、早急に行動計画を明確に示す必要がある。一方、欧州は依然として世界経済の問題となっており、より安定的なユーロ圏の実現に向け、政策のコミットメントを示すことが必要だ」
<債務・財政赤字削減目標について>
「適切なペースでなければならない。万能な解決策はない。名目上の目標に固執するよりも構造的な目標が必要だ。また、講じられる措置は可能な限り経済成長を支援するものであるべきだ」「さらに、短期的な措置に関連した中期的なコミットメントが必要となる。財政再建策だけではなく、包括的な対策でなければならない。特に市場の圧力がある場合は、そうでなければ機能しない」
カルステンス・メキシコ中央銀行総裁
<2013年までに財政赤字を半減させるというG20の合意について>
「声明ではこのコミットメントが存在することが示された。各国経済と世界経済の改善につながるため、これについてあらためて協議することが重要となる」「問題はおそらく、リセッション(景気後退)が当初見込まれていたよりも深刻なことだ。より迅速な解決策が必要だ」「このコミットメントは忘れ去られたわけではないが、最優先されているわけでもない。現在の方針は将来的に、より大きなコミットメントの達成を目指すことだ」
ミード・メキシコ財務相
<米「財政の崖」について>
「米財政を持続可能にするのに十分な調整となり、かつ米経済にそれほど大きなリスクをもたらさない打開策で、彼らが合意できることが妥当とみられる」
ビスコ・イタリア銀行(中央銀行)総裁
「G20での財政調整は、よりバランスのとれたものであるべきだ。会合では(調整余地が大きい国として)中国とドイツへの言及があったが、欧州はこの問題について見解が分かれている」「多くの国・地域が欧州情勢の進展を認めたが、一部では、欧州中央銀行(ECB)の新たな債券買い入れプログラム(OMT)や欧州安定メカニズム(ESM)を効果的に活用できるかどうか疑問視する声も聞かれた」「欧州以外の国に対し、これら制度の存在だけで金利押し下げに寄与したと説明することは難しい」
レーン欧州委員(経済・通貨問題担当)
<ギリシャ問題の解決策について>
「11月12日のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)までに債務負担の軽減方法について意見を一致させる必要がある。私はそれが可能であると確信している」「それと並行してというよりその前に、われわれが12日に決定に向けて前進できるよう、ギリシャ政府はまず構造改革案を打ち出し、議会に最優先事項として承認を求める見通しだ」
城島光力財務相
「G20としてサミットで合意した認識を引き続き共有することが重要であると主張し、声明は日本の考え方を反映して、為替の無秩序な動きは経済・金融の安定に悪影響を与えることが確認された。こうした認識がG20の間で共有されたことが、為替市場の安定につながると期待している」
グリア経済協力開発機構(OECD)事務総長
「財政の崖はないと考えている。(米大統領)選挙後の数カ月間にそのような劇的な結果を回避する合意があるだろう」
ギリシャ議会が財政緊縮法案を可決、反緊縮デモが拡大 11/8
ギリシャ議会は8日未明、欧州連合(EU)などから追加支援の条件として求められている財政緊縮策をかろうじて可決した。
ギリシャ政府は11日に2013年予算案を採決する予定で、それが承認されれば、財政破綻を避けるために不可欠な315億ユーロ(172億ドル)に上る追加融資を受けることが可能になる。
一方、国民の間では緊縮策に対する反発が高まっており、この日も議会周辺にデモ隊が集結。アテネ中心部の広場では10万人近い人々が「彼らはわれわれの血を吸っている」と抗議の声を上げた。
この日可決された一連の緊縮策には、総額135億ユーロに上る歳出削減策や増税策、それに労働者の雇用や解雇を容易にする制度などが盛り込まれている。
採決では、連立与党の一角を占める民主左派が棄権に回ったほか、サマラス首相が率いる主要与党の新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)からも若干の造反議員が出たもよう。
最終的に何票の賛成票があったのかはまだ明らかにされていないが、NDは1人、PASOKは6人の議員を、緊縮策を支持しなかったとして採決後に除名した。
議会周辺では、議会内に突入しようとしたデモ隊と警察隊が衝突。警察側は催涙ガスなどを用いて鎮圧に努めた。初めて放水銃も用いられた。
議会内でも、賃金がカットされることが判明した職員が職場を放棄し、議会の審議が一時中断するなど、混乱がみられた。
8月のギリシャ失業率は25.4%、過去最悪を更新 11/8
ギリシャ統計局(ELSTAT)が8日に発表した8月の失業率は25.4%で、39カ月連続で上昇、過去最悪を更新した。ユーロ圏の平均である11.5%の倍以上に達した。
景気低迷が始まった2008年以来、失業率は3倍以上になっている。なかでも、若年層の失業問題は深刻であり、15─24歳の層の8月の失業率は58%と、2008年8月の20%から急激に悪化している。
ギリシャ政府は、追加支援を受ける条件として、94億ユーロ規模の歳出削減・増税を計画しており、景気の一段の冷え込みが予想される。
8月の失業者数は、前年比38%増の127万人と過去最悪だった。
ギリシャの8月の失業率は、ユーロ圏ではスペインに次ぎ2番目に高い。欧州連合(EU)統計局によるとスペインの失業率は25.5%。
ECB理事会後のドラギ総裁の発言要旨 11/9
欧州中央銀行(ECB)は8日、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.75%に据え置いた。
下限金利の中銀預金金利もゼロに、上限金利の限界貸出金利も1.50%にそれぞれ据え置いた。
理事会後に開かれた記者会見でのドラギECB総裁の発言要旨は以下の通り。
<ユーロ圏経済、弱い状態続く見通し>
ユーロ圏の経済活動は弱い状態が続くことが見込まれる。ただ、ECBの金融政策スタンスは引き続き、ユーロ圏の経済成長を支えていく。また、金融市場の信頼感はECBの新たな国債買い入れプログラム(OMT)の決定を受け、明らかに改善した。
<最近の経済動向を受け12月にECBの経済見通しが下方修正されるかとの質問に対し>
12月に経済見通しを決定する際、最近の経済動向を配慮する。(最近示されている)景気減速の兆候が考慮される。
<ギリシャ>
ECBがギリシャへの財政ファイナンスはできないことを繰り返す。証券市場プログラム(SMP)を通じて購入した国債の利益をギリシャのために用いるかどうかは、各国政府の決定に委ねられる。
<ギリシャ緊縮財政策の可決について>
ECBと政策理事会は、昨日の採決を歓迎する。ギリシャ政府や市民が取った非常に重要なステップだ。2─3カ月前と比べて、前進していることを実際に示す。予算に関する採決が10日に行われるとみられる。ユーログループが見通したように、各国政府は来週、ギリシャ情勢について話し合う。ECBは価格安定を確実にし、金融政策の伝達経路の修復を目指すが、金融ファイナンスはできない。
<支援要請は政府次第>
(市場や銀行部門の)これらの兆候は全て勇気付けられるもので、それ自体が一段の金融政策拡大と等しいものになる。2─3カ月前と比べ、金融市場は相当緩和的になっているからだ。スペインの要請についてはコメントを控える。完全に政府の手に委ねられている。新たな債券買い入れプログラム(OMT)の諸条件は明確で、行動する用意が整っている。OMTは周知の通り、ユーロ圏のテールリスクを取り除くよう考案された完全に効果的な補強策で、われわれが行動する用意は実際にできている。
<銀行、LTROで調達した資金を返済>
ECBは流動性供給策によって市場に資金をあふれさせるとの批判があったが、そうなっていないことが分かる。実際、供給した資金は戻りつつあり、ECBのバランスシートはこれに合わせて縮小していく。また、長期資金供給オペ(LTRO)決定以降、インフレ高進という悪影響も出ていない。銀行がLTROで得た資金を返済している理由について、融資を行わないからか、リスクを回避しているからか、信用需要が弱いからか、私は断言する立場にはない。ただ重要なのは、今年第1・四半期に資金不足に伴うテールリスクが現実化する恐れがあったが、LTROによってそれが取り除かれたことだ。そのため、目的は達成されたと言える。
<ユーロ圏の財政再建に向けた取り組み、成果上げている>
単位労働コストの調整において目に見える進展があるが、労働市場の柔軟・流動化に向けた一段の取り組みが正当化される。財政政策に関しては、ユーロ圏諸国による財政再建に向けた取り組みは成果を上げつつある。財政が健全な状況を取り戻すまで、財政再建努力が継続されることが極めて重要だ。新財政協定の迅速な実施など、欧州連合(EU)の財政・ガバナンスの枠組みを完全に順守することで、われれは市場に力強いシグナルを発し、公共財政の健全性に対する信頼感を高めることができる。
<金利>
ECB理事会は常に、金融政策に関するすべての手段について検討する。この日は金利据え置きを決定した。来年の措置については協議していない。
<前向きな市場動向>
欧州域外、とりわけ米国のマネー・マーケット・ファンド(MMF)からの資金流入が戻っており、9月は前月比16%増だった。新たな債券買い入れプログラム(OMT)の発表以降、3カ月連続(のプラス)だ。融資状況についても有担保から無担保融資へとシフトしている。有担保融資は30%と、3月以来の低水準にとどまった。これは前向きな兆候だ。この他、限定的ながらユーロ圏の金融機関によるドル建ての債券発行も回復している。社債発行も小幅な増加が見受けられる。アイルランドやポルトガル国債に関する問題は少ない。スペインやイタリアの資金調達計画はほぼ完了している。これまで見られなかった両国国債の保有が増えている。ユーロ圏内の不均衡拡大の兆候を反映していた「ターゲット2」(域内のクロスボーダーの決済システム)についても、安定化している。
<回復の見通し>
ユーロ圏全体、また加盟各国レベルでも、基本的な状況は米国や、日本や英国などの他国と比べても、はるかに均衡している。1年前にはこのようなことは言えなかった。ユーロ圏の経常収支は均衡し、企業・家計債務はともに比較的低い水準にある。単位労働コストは低下に向かっており、財政再建化努力もすばらしい成果を上げている。これらすべてを背景に、ユーロ圏は回復に向かっている。遅いペースかつ緩やかではあるが、強固な回復が見込まれる。
<デフレリスク、一段の措置>
デフレとは物価下落が全セクターに幅広く波及し、自律的に継続することだ。これまでのところユーロ圏全体、各国レベルでもこうしたデフレの兆候は見られない。一部の域内諸国の競争力改善に伴う通常の物価調整とデフレを混同すべきではない。物価動向は概ねECBの責務に沿っている。また金融政策はすでに極めて緩和的であり、実質金利は域内大半でマイナスだ。一連の利下げ、2度にわたる大量の長期資金供給オペなど、ECBはこれまで複数の措置を実施してきた。これに加えOMTも発表し、それ自体で金融市場の状況が緩和された。だがわれわれは今後も経済活動を注視するとともに行動する用意がある。OMTや標準的な金融政策手段を活用する構えだ。
<スペイン政府債担保価値の計算ミス>
スペイン政府債の担保価値の計算ミスによる影響はまったくないが、ECB理事会はこれを深刻に受け止め、ユーロシステム監査委員会に、ユーロシステムにおける担保の枠組に関する調査を要請した。次回の理事会で、同調査の初期評価を基に一段の分析や行動が必要かどうかを協議する。
<ユーロ圏市場の断片化>
3カ月前まで、ユーロ圏の多くの国が自己達成的な期待を背景とする悪い均衡下にあった。同時に、これらの国では過去の政策ミス、もしくは政策の欠如によってもたらされた悪い均衡下にもあった。そのため、ユーロ圏の金融市場の断片化は基本的に、政策ミスに端を発しており、これを是正する必要がある。
<マイナス預金金利>
(それについては)協議していない。
<欧州の銀行監督>
金融の枠組み統合を実現する方策の一環として、2013年中の銀行監督一元化(SSM)開始を視野に入れ、単一の監督機構に関する立法的枠組みで合意する目標を(理事会は) 特に歓迎する。
<インフレは2%を上回る状態継続へ>
高いエネルギー価格や一部のユーロ加盟国の間接税引き上げによって、インフレは2012年の残りの期間、引き続き2%を上回るだろう。来年中にその水準を下回り、政策展望で価格安定に沿った水準で推移すると予想する。金融拡大の基調的なペースは引き続き落ち着いている。ユーロ圏のインフレ期待は、インフレ率を中期的に2%を下回るがこれに近い水準を維持するというわれわれの目標に沿って、引き続き抑制されている。
<OMT開始の用意>
ECBはOMTを開始する用意ができている。OMTは最悪のシナリオ回避の一助となり得る。そのため、壊滅的なシナリオが具現化するとの懸念を明らかに低下させる。
ギリシャ債務見通しでIMFとEUの見解相違、支援遅れも 11/9
ギリシャは歳出削減策の可決によってひとまず破綻を免れたが、なお重債務を抱えて返済が危ぶまれている上、将来の債務水準をめぐってさえ債権者である欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)の意見が食い違っている状態だ。
EUの欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、IMFから成る「トロイカ」は7月以来アテネ入りを繰り返し、ギリシャに債務返済能力があるかどうか見極めようとしている。
現在の債務総額は国内総生産(GDP)の175%で、来年には190%に拡大する見通し。2020年までに、IMFが長期的に持続可能な上限とする120%まで削減することは極端に難しそうだ。
7月にトロイカが示した最初の推計では、2020年の比率は最低130%だった。
3カ月後の今も状況は改善していない。複数の高官によると、IMFと欧州委は2020年の目標達成が不可能との認識では一致しているが、推計値が異なるという。
あるユーロ圏高官によると、IMFと委員会の推計値には20%ポイント、額にして約400億ユーロの開きがあり、欧州委の方が楽観的な見方だ。
IMFと欧州委との見解相違により、ギリシャ向けの次回支援315億ユーロの実施はさらに遅れる恐れがある。この高官は「真の問題は現在、トロイカ自体に内在する。彼らは合意できないのだ」と話した。
ギリシャ議会は辛うじて歳出削減策を可決したが、11日には厳しい2013年度予算を可決しなければならない。
ギリシャは来週末までに次回支援が必要だと訴えているのに対し、ユーロ圏高官らはもう少し先でもギリシャは生き延びられるが、いつまでももつわけではないと話す。
ギリシャが2020年頃までに債務比率を120%近くに抑えられないとなれば、IMFは救済から手を引かざるを得ず、ギリシャとユーロ圏を混乱に陥れるかもしれない。
<あらためて債務再編か>
このため、債務削減に向けたさらに画期的な選択肢が現在検討されている。
1つはギリシャ向け融資金利の一段の引き下げと、経済が立ち直るまで返済期限を延長することだ。
複数の高官によると、この案は幅広い支持を得ており、数週間中にこの線に沿って決定が下されそうだ。しかしこれだけでは債務比率を受け入れ可能な水準まで引き下げるには不十分だ。
もう一歩踏み込んだ措置としては、過去3年間に約380億ユーロのギリシャ国債を購入したECBが、利益確定を一切返上することだ。
ECBは大幅に値下がりした水準で国債を購入しているため、こうすればギリシャは市場価格次第で約120億ユーロを節約できると推計されている。
しかしECBによる利益返上も債務削減には不十分かもしれない。この結果、さらに2、3の選択肢が浮上する。
1つは、ギリシャに総額1270億ユーロの融資を実施したユーロ圏諸国が、その一部を棒引きするもので、公的部門関与(OSI)と呼ばれる。
IMFはOSIを支持しているが、ユーロ圏諸国にとっては納税者に損失を直接転嫁することを意味する。EU首脳は常に有権者に対し、そうした事態には陥らないと告げてきたため、これは窮余の策と言える。
もう1つの案は、ギリシャがユーロ圏の救済ファンドから低金利で借り入れた資金で国債を一部返済するというもので、ドイツが検討に前向きだ。
この措置を実施すれば理論上、ギリシャは資金調達コストを下げて債務残高を持続可能な水準に近づけることができる。ドイツのショイブレ財務相は支持を表明しているが、IMFは問題の先送りだとして反対している。
結局はギリシャの前にはなお山が立ちはだかっており、債務を持続可能な水準に抑える簡単な道は存在しない。その上、債務比率をGDP比120%に削減できたとしても問題が解消するわけではない。
120%という数字が定められたのは、当時の債務比率が120%だったイタリアが、なんとか債務管理に成功していたためだ。しかしイタリアは国債の国内保有比率が高いなど、ギリシャとは状況が大きく異なる。
ギリシャの現金準備は急速に減少、ぎりぎりの状態=副財務相 11/9
ギリシャのスタイコウラス副財務相は9日、ギリシャの現金準備が急速に減少しており、現在ぎりぎりの状態になっていると述べた。
同財務相は記者会見で、「政府の現金準備はぎりぎりの状態にある」とし、「これにより、経済は窒息状態になっている」と述べた。
ギリシャは総額1300億ユーロの支援の下での315億ユーロの次回融資の実施を待っているが、財務省高官はこの日、融資実施が遅延するとの公算が大きくなっていることから、政府は来週償還を迎える50億ユーロを超える財務省証券のロールオーバを検討していることを明らかにしている。
ユーロ圏財務相会合での当局者発言要旨 11/13
ユーロ圏財務相会合が12日開かれた。以下は当局者の発言要旨。
ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事
<ギリシャ債務の持続可能性について>
「ギリシャ債務の削減問題をめぐっては、あらゆる方策が検討されている。さらに向こう数日間にわたって、引き続き検討される見通しだ」「IMFとして我々が重視するのは、ギリシャ債務の持続可能性だ」「我々は、(ギリシャ債務のGDP比を)2020年までに120%にするというのが、適切なタイムテーブルだと考えている。違った考え方もある。最終的に重要なのはギリシャ債務が持続可能になることだ。ギリシャが立ち直り、やがて民間からの資本調達が可能になることだ」
<ギリシャ予算などについて>
「予算でこれまでに盛り込まれた施策が全て実行されているかをみるため、もう少し分析が必要だ。今後数日で、あとほんのいくつかの、これまでの追加措置を検証する」「成長の観点からも債務の持続性の観点からも非常に野心的で重要なプログラムで、ギリシャ当局の策定・実行により、実に力強い決意を示すことになる」
<キプロス支援について>
「銀行の資本再構築ニーズに関する分析が現在行われており、11月中か、12月上旬にも完了する見通し。これは、キプロスの銀行システムについて必要な措置の規模を評価するうえで、重要なファクターだ」
レーン欧州委員
<ギリシャのプログラムや構造改革について>
「ギリシャのプログラムについては、財政と構造問題を指摘したい。ギリシャの構造的な財政収支の調整幅が、2010年5月に最初のプログラムが始まった時点に求められた、2009―2014年に10%ポイントという目標をすでに上回っていることは注目に値する。実際、ギリシャは2010年以降、構造的収支を対GDP比で13%ポイント改善している。その比率は、2013年と14年に予想される追加的な措置によってさらに高まる見通しだ」「ギリシャ債務の持続可能性を目指したこのプログラムの可能性を公に否定しているすべての人々は、この事実に目を向けてほしい」「しかも、構造改革に関して言えば、何も進展していないという誤った認識を捨てるべき時だ。その認識は不公正で、単純に誤っている」
<キプロス救済について>
「状況はかなり困難で、経済や金融が大きな困難に直面しているため、すでに提示されているメモランダムについて合意することが重要だ。しかし、状況は進展している」
ユンケル・ユーログループ議長
<ギリシャ融資に関する決定と、11月16日の国債償還について>
「決定は近い。11月20日に決定できるようあらゆる努力をする」「どうやってとは言えないが、11月16日には、問題は起きない」
<ギリシャについて>
「ユーログループはギリシャ国民の多大な努力を認識しており、財政・構造改革を継続すれば、経済が持続的成長軌道に戻ると確信する」「ユーログループは、一連の改革法案が議会を通過するなど、改革プログラムを軌道に戻そうとする、ギリシャ当局による決意を歓迎する」「ユーログループは、ギリシャ政府が要請し、トロイカが報告した財政目標の修正が、財政健全化への今後の道のりにおいて適切な調整であるとの結論に達した。ユーログループは、理事会の採択を心待ちにしている」「ユーログループは、11月20日の特別会合で、ギリシャの改革プログラムの評価と合わせて、資金ニーズと債務持続可能性を議論する」
<スペインについて>
「我々はスペインの銀行プログラムがしっかりと軌道上にあることを歓迎する。最終的な評価が委員会に提出されるのを心待ちにしている」「11月末までの数週間以内に出される再編計画に関する委員会の決定は、レビューリポートとともに、銀行プログラムの第1次実施を決める上でベースになる。プログラム実施の決定は11月末までに行う。そうなれば、欧州安定メカニズム(ESM)が12月上旬に実施できる」
ショイブレ独財務相
<ギリシャに関する決定について>
「始めに、ギリシャがこれまでに成し遂げたことを検討する必要がある。徹底的ということが肝要であり、決定には独議会の関与が必要だ」「しかし、われわれはタイムフレームに沿って行動しており、我が国としての責任も認識している。同時に、われわれは法律に従っている」「ギリシャがすべての責務を果たしたことを見極めたうえで、欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)のトロイカ・リポートを精査したい。今後の措置はギリシャ政府がトロイカと解決策を見つけたかどうかによるが、私は今のところそれに関する通信社報道は目にしていない」
スペインのデギンドス経済相
<スペイン経済について>
スペインに関する国際機関の予想がわれわれの予想より低いことは認識している。われわれの予想を達成できるよう経済改革を進めている。
<赤字問題について>
「財政赤字の削減は、合理的なペースで行わなければならない。中期的には、じっかりとした公的財政が必要だが、将来的に問題が生じないように、合理的なペースであるべきだ。ユーログループも同じ考えだ」
ユーロ圏財務相会合、ギリシャ財政目標達成期限の2年延長に合意 11/13
12日に行われたユーロ圏財務相会合は、ギリシャの財政目標達成期限を2年延長することに合意したものの、ギリシャに対する次回融資の承認は先延ばしされた。
また、ギリシャの長期的な債務削減期限をめぐるユーロ圏と国際通貨基金(IMF)の見解の対立も鮮明になった。
ユーロ圏財務相会合に提出された文書によると、ギリシャの財政目標達成期限を2年延長することに伴い、326億ユーロの追加コストが生じると推定されている。
ユーログループのユンケル議長は、約6時間に及んだ協議後に記者会見し、「ユーログループは、ギリシャ政府が要請し、トロイカ(欧州連合、国際通貨基金、欧州中央銀行)から報告のあった財政収支の修正目標について、適切な調整であると結論づけた」と述べた。
ユンケル議長によると、ユーロ圏財務相は11月20日に次回の会合を開く予定。
ただ、ユーロ圏当局者は、ギリシャへの追加支援問題に関する新たな合意の詳細を詰める交渉には、その会合からさらに1週間かかる可能性があるとの認識を示した。
ギリシャ議会は11日までに財政赤字削減策および2013年予算案を可決。315億ユーロに上る追加支援を受けるために求められていた条件を整えたが、貸し手側は、ギリシャの債務を今後10年にわたり持続可能な軌道に乗せるための方法について合意が必要と判断した。
IMFのラガルド専務理事は、財政措置を固めるためさらなる作業が必要だと指摘。「予算に盛り込まれた施策が全て実行されていることを確認するため、もう少し分析が必要だ。今後数日間に、あとほんのいくつか、これまでの追加措置を検証する」と述べた。
トロイカの報告書は、ギリシャが2014年までに基礎的財政収支を国内総生産(GDP)の4.5%に相当する黒字にするという目標の達成期限を2年延長し、2016年とすることに伴い、326億ユーロの追加コストが生じると計算しており、次回のユーロ圏財務相会合では、その資金をどのように調達するかが重要な議題となる予定。
ラガルド専務理事はまた、ギリシャ債務の対GDP比率を来年見通しの190%前後から2020年までに120%に縮小する目標を、財政目標と同様に2年先送りするユーロ圏の案について、ユンケル議長と合意できなかったと表明。「IMFの見方では、2020年までに120%に引き下げるというのが適切なタイムテーブルだ。われわれの見解は明確に異なっている。重要なのは、ギリシャが自立できるよう、債務を持続可能な水準に戻すことだ」と語った。
IMFは、ギリシャの経済成長見通しが低く、対外借り入れ必要額が大規模であることを踏まえれば、GDPの120%としている目標を上回る債務は持続不可能とみている。
ギリシャが求めている次回融資については、トロイカが「債務の持続可能性分析」を通じ、債務削減の目標達成方法を明示しないうちは実行しない方針。
11月20日に開かれる次回のユーロ圏財務相会合で、この分析について詳しく議論するとみられる。
ギリシャは11月16日に50億ユーロの短期債償還を控えており、ユーロ圏からの次回融資を返済に充てたいと考えていたが、融資が先送りされたことで、ギリシャはその債務をロールオーバーする方針。
ユーログループのユンケル議長は「方法については言えないが、11月16日に問題が生じることはないだろう」と述べた。
一方、IMFはユーロ圏各国政府に対し、ギリシャに対する公的融資の一部を減免するよう求めているが、ドイツをはじめとする一部の国や欧州委員会は、法的に不可能だとして拒否している。
ラガルド専務理事はこの問題について「ギリシャの債務を削減するため、あらゆる手段が検討されており、今後も引き続き模索されることになる」と述べた。
第3四半期のギリシャGDP前年比‐7.2%、落ち込みさらに加速 11/14
ギリシャ統計当局(ELSTAT)が14日発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)速報値は、季節調整前で前年比7.2%減となり、第2・四半期の同6.3%減から落ち込みがさらに加速した。
厳しい緊縮財政が経済を圧迫するなか、マイナス成長は当面、悪化の一途をたどるとみられている。
マーフィン・エグナシア銀(アテネ)の投資サービス部長、クセノフォン・ダマラス氏は「すべての歳出削減策実施に伴い、2013年前半までリセッション(景気後退)は引き続き拡大するだろう」と予想。観光業が今年、予想以上に底堅く推移していることに言及し、観光業の恩恵がなければ経済はもっと悪化しているところだと述べた。
政府の中期財政計画によると、2012年の成長率はマイナス6.5%、13年はマイナス4.5%、14年はプラス0.2%が見込まれている。
ユーロ圏、金融危機以降2度目のリセッション入り 11/16
長引く債務危機の影響で第3・四半期のユーロ圏域内総生産(GDP)伸び率が前期に続きマイナスとなり、2009年の世界的な金融危機以降2度目となるリセッション(景気後退)に陥った。
欧州連合(EU)統計局が15日発表した第3・四半期のユーロ圏GDP速報値は前期比0.1%減。第2・四半期の0.2%減に続き、定義上のリセッション(景気後退)入りとなる2四半期連続のマイナスとなった。
第3・四半期はフランスとドイツがともに0.2%のプラス成長を確保したものの、オランダやスペイン、イタリア、オーストリアでいずれも景気が縮小し、ユーロ圏全体ではマイナスを回避できなかった。
イタリアは前期比0.2%減、スペインは0.3%減、キプロスは0.5%減。
オランダでも1.1%減と予想以上に大きく落ち込み、ユーロ圏で最も大幅なマイナスとなった。オーストリアは0.1%減。
前日に発表されたポルトガルも前期比0.8%減、ギリシャは前年比7.2%減と落ち込みがさらに加速している。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのエコノミスト、Paul De Grauwe氏は「欧州は完全に自ら招いた二番底に陥っている」との見方を示し、「南欧諸国の過剰な緊縮措置と北部欧州の追加措置を講じることへの消極姿勢の結果だ」と指摘した。
欧州経済の回復は依然程遠く、2009年にギリシャを震源に始まった債務危機の影響はなお世界中に波及し持続的な回復を阻んでいる。
アナリストは、第4・四半期には独仏もマイナス成長に転じる可能性があるとみている。
コメルツバンクのチーフエコノミスト、ヨルグ・クレーマー氏は「第3・四半期の独GDP統計は当面、良好な最後のデータとなる」との見方を示し、「来年半ばまで底堅い成長は回復できない見通しだ」と述べた。
多くのエコノミストは第4・四半期の独GDP伸び率が2011年末以降初めてマイナスになると予想している。そうなればフランスも後に続く可能性が高く、ABNアムロのジュースト・ボーモント氏は「仏経済は第4・四半期に再び縮小する」との見通しを示した。
欧州委員会は2012年のユーロ圏GDP伸び率についてマイナス0.4%になると予想している。
9月のギリシャ経常収支は3カ月連続の黒字=中銀 11/19
ギリシャ中央銀行によると、ギリシャは9月の経常収支が3カ月連続で黒字となった。貿易赤字の縮小が寄与した。
9月の経常収支は7億7500万ユーロ(9億8500万ドル)の黒字。前月は16億0100万ユーロの黒字、前年同月は10億7000万ユーロの赤字だった。
1―9月の経常収支は34億6200万ユーロの赤字で、前年同期の147億3800万ユーロの赤字から赤字幅が縮小した。
9月は観光業セクターの収入が前年比0.6%増加し、16億2000万ユーロとなった。1―9月の観光収入は90億9000万ユーロとなり、前年同期を2.7%下回った。
ギリシャが財政監視などに関する政令発令、ユーロ圏財務相会合に備え 11/19
ギリシャ政府は19日、財政目標の達成徹底や民営化収益の使途明確化などに関する政令を発令した。財政健全化に向けた措置の一環で、翌20日のユーロ圏財務相会合で有利な決定を引き出す狙いがあるとみられる。
具体的には、公的部門の財政状況を四半期ベースで監視し、目標に到達しない場合、歳出削減もしくは増税が自動的に行われる。また民営化による資金を中銀が管理するエスクロー(第3者預託)勘定に移すことで公的債務削減への使途を明確にする。
関係筋によると、これらの措置はドイツが要求していた。
ギリシャ政府は、先の緊縮法案可決に加え、今回の政令発令に至ったことについて、国際支援機関に対する義務を果たしたとの見方を示し、政府報道官はロイターに「最後の約束を果たした」と語った。
また、ストゥルナラス財務相は18日夜、サマラス首相との会談後、「ギリシャは20日(の財務相会合)に向け準備が完全に整った」と語った。
政令では、国有資産売却益を10日以内にギリシャ中銀が管理するエスクロー勘定に移管することを定めている。エスクロー勘定は今年3月、欧州連合(EU)および国際通貨基金(IMF)によるギリシャ第2次支援の下で設置された。
また、四半期ベースで財政を監視し、目標を達成できなければ歳出削減または増税を自動的に実施するほか、2014年から公的部門の借り入れを制限する。
政令は議会承認が不要で、ただちに発効されるが、公務員の中には一部改革に反対する声も根強い。
ユーロ上昇、ギリシャ支援協議や日銀追加緩和めぐる期待で 11/23
22日終盤の欧州外国為替市場では、ユーロが円に対して4月下旬以来約6カ月半ぶりの高値をつけた。ギリシャ支援をめぐって国際機関が間もなく合意に達するとの期待や、日銀が追加金融緩和に踏み切るとの見方からユーロが買われた。
ユーロは対ドルで3週間ぶりの高値に上昇した。11月のユーロ圏製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が3月以来の高水準となり市場予想を上回ったことも追い風になった。
ユーロ/円は0.3%高の1ユーロ=106.20円。一時、106.585円をつけた。
EBSデータによると、ユーロ/ドルは0.4%高の1ユーロ=1.2876ドル。トレーダーの話では、ギリシャやスペインの国債利回り低下で地合いが改善し、米国の投資家らがユーロを買っているという。
ドイツのメルケル首相が21日、来週26日のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の再協議で、ギリシャへの次回融資が決定する可能性があるとの見方を示したこともユーロに追い風とみられている。
ダンスク銀行の為替調査部門の責任者、アーン・ローマン・ラスムセン氏は「ギリシャに関して最終的な合意に達するかどうかは、それほど不安材料ではない」と話した。
アナリストらは、日銀の積極的な金融緩和をめぐる思惑から、円など金利の低い通貨を借りて、高利回りの資産に投資するキャリートレードが行われやすくなるとの見方を示しており、ユーロは対円で引き続き高めに推移する可能性があるという。
ドル/円は一時、1ドル=82.84円に上昇、4月初旬以来の高値をつけた。
円は、高金利の豪ドルや英ポンドに対しても7カ月半ぶりの安値をつけた。
自民党の安倍晋三総裁はこれまでに、物価目標達成に向けた「無制限」緩和や、ゼロもしくはマイナス金利の必要性に言及。アナリストらは、12月16日の衆院選が終わるまで円安傾向が続く可能性を指摘する。
日経平均続伸で始まる、米株高と円安好感し9400円回復 11/26
寄り付きの東京株式市場で日経平均は続伸。5月2日以来約6カ月半ぶりに9400円台を回復している。前週末の米国株が、ギリシャに対する融資実施の合意が近いとの観測や感謝祭明けの年末商戦への期待から大幅高となったことを好感した。
朝方の外為市場でユーロ/円が107円台に乗せたほか、上値が重かったドル/円も82円台半ばまで上昇し、自動車など輸出株が買われている。日経平均は13日安値からきょうの寄り付きまで800円強の上昇値幅を記録、短期的な過熱感は強い。9500円に接近すると利益確定売りが増えるとの見方もある。
ユーロ圏財務相会合、ギリシャ債務削減策合意の概要 11/27
ユーロ圏財務相と国際通貨基金(IMF)は26日深夜、ギリシャの債務削減策について合意した。合意の要点は以下の通り。
○ ギリシャは経済成長を取り戻すため、国内総生産(GDP)の4.55%に相当する基礎的財政黒字の達成目標期限を、2014年ではなく2016年とする。
○ ギリシャは民間投資家が保有する債務の買い戻しを実施する。実施日は12月12日。買い戻し額は発表されていないが、価格は11月23日の終値を上回らない水準とする。関係筋によると、ユーロ圏財務相会合では額面1ユーロ当たり35セント前後を念頭に議論された。
○ 債務買い戻しが望ましい成果を生んだ場合、IMFがプログラムに参加し、ユーロ圏は以下の措置を検討する。
○ 第1次支援策に基づくギリシャへの2国間融資の金利を100ベーシスポイント(bp)引き下げ、資金調達コストあるいはEURIBOR(欧州銀行間取引金利)プラス50bpの水準とする。支援を受けたアイルランドとポルトガルは金利を引き下げる必要はない。
○ 欧州金融安定ファシリティー(EFSF)は対ギリシャ融資の手数料を10bp引き下げる。
○ 対ギリシャ融資(2国間融資、EFSFからの融資の双方)の期間を15年延長する。
○ EFSFからの融資については利払いを10年間免除する。
○ 欧州中央銀行(ECB)が証券市場プログラム(SMP)に基づいて買い入れたギリシャ債から得た利益はギリシャに返還し、ギリシャはそれを2013年度以降の利払いに充てる。その金額は発表されていないが、関係筋によると110億ユーロ程度となる見込み。
○ ギリシャが基礎的財政黒字を達成し、改革プログラムに盛り込まれたすべての条件を満たした場合、ユーロ圏諸国はギリシャの債務持続可能性を支えるため、さらなる2国間融資の金利引き下げを含む追加支援策を検討する。
○ ギリシャの対GDP債務比率は2016年に175%、2020年に124%、2022年には110%を大幅に下回る水準に低下する。
○ ギリシャが合意した改革プログラムを順守すれば、ユーロ圏諸国はギリシャが市場からの資金調達が可能になるまで融資を継続する。
○ ギリシャは12月に344億ユーロの次回融資を受け取り、そのうち106億ユーロを財政ファイナンス、残りの238億ユーロは銀行の資本再編に充当する。貸し手が定めた改革目標を達成すれば、2013年第1・四半期にさらに93億ユーロの融資が3トランシェに分けて実施される。
○ 次回融資の実行に関する正式決定は、ユーロ圏諸国による国内手続きの完了や、債務買い戻しの実行状況に関する点検を経たうえで、12月13日に行われる。
ユーロ圏財務相とIMFがギリシャ債務削減策で合意、融資実行へ 11/27
ユーロ圏財務相と国際通貨基金(IMF)は26日、対ギリシャ融資の実施や債務削減策で合意した。ここ3週間で3度目の協議は12時間に及んだ。協議では、ギリシャ債務を400億ユーロ削減するための措置で合意。2020年までに同国債務を国内総生産(GDP)比124%に引き下げることを目指す。
当初は、2020年のギリシャ債務の対GDP比率を「持続可能性」の基準とされる「120%」まで引き下げる方向で交渉していたが、最終的には、この水準には若干届かない「124%」での合意となった。
ユンケル・ユーログループ議長は協議後、ユーロ圏財務相は12月13日に、ギリシャ融資の実施を正式に承認する予定だと明らかにした。
ギリシャは条件を満たせば、最大437億ユーロを段階的に受け取る。12月分は銀行向け238億ユーロ、財政支援に106億ユーロ。
全体の3分の1弱を占めるIMFによる融資分は、数週間以内に予定されているギリシャ国債の買い戻し実施後に支払われる予定という。
<実施済み融資の金利引き下げ、返済期限延長、債券買い戻し>
ギリシャの債務削減策では、公的融資の金利引き下げや、返済期限を15年延長し30年間とすること、10年間の利払い猶予で合意した。
実施済みのギリシャ向け2国間融資の金利は、現在の資金調達コストプラス150ベーシスポイント(bp)から、50bpに引き下げる。
欧州中央銀行(ECB)のギリシャ国債購入プログラムで生じた利益110億ユーロを、各国中銀がギリシャに還元することでも合意した。
また、民間投資家からギリシャ国債を買い戻すのに伴い、ギリシャ側に資金提供をすることについて合意した。当局者らは、ターゲットとしているコストは1ユーロ当たり35セント程度との見方を示している。
買い戻しの規模については、市場の不安定化を避けるため発表されなかった。ただ当局者は会合前、100億ユーロの数字に言及していた。
また、ドイツの主張により、ギリシャの債務返済を確実にするため、一部の特定の収入や支援金を「分離勘定」に入れることでも合意した。
ECBのドラギ総裁は「財務相の決定を歓迎する。不透明感を後退させ、欧州やギリシャへの信頼感を高める」と述べた。
ユーログループ議長はギリシャ国民にとって新たな希望だと強調。「単に資金の問題ではなく、ギリシャ国民、ユーロ圏全体にとってより良い将来を約束するものだ。断固とした改革機運、債務削減や成長回復に向けた措置の目標未達や実施の甘さが見られた時代は脱した」と述べた。
合意のニュースが伝わると、ユーロはドルに対して強含んだ。
<債務削減に向け「一段の措置」の可能性も>
ユーロ圏財務相は、ギリシャ債務の対GDP比率を2022年に「110%を大幅に下回る水準」まで引き下げるため、一段の措置をとると表明。ギリシャが基礎的財政収支黒字を達成することが見込まれる2016年から、融資返済の一部免除が必要になる可能性を示唆した。
ショイブレ独財務相は「ギリシャが基礎的財政収支の黒字化を達成するか、または達成する見通しとなり、すべての条件を満たしたとき、必要であれば、われわれは債務削減に向けた一段の措置を検討する」としている。
次に問題になるのは、ユーロ圏各国政府が対ギリシャ融資の一部について返済を免除せずに、ギリシャ債務が持続可能になるのかという点。
ドイツをはじめとする北部欧州諸国は、対ギリシャ公的融資の返済免除案には断固反対している。ただ、欧州連合(EU)当局者は、来年のドイツ総選挙後には反対姿勢が緩む可能性があるとの見方を示している。
IMF筋は、財政再建プログラムの完了後、ギリシャの融資返済を免除することが、債務を持続可能なものにする最も簡単な方法だと述べている。
ギリシャめぐる合意、玉虫色の決着との見方も 11/28
ユーロ圏財務相と国際通貨基金(IMF)が対ギリシャ融資実施や債務削減策で合意したことについて、当局者らからは評価する声も聞かれるものの、その一方で各方面に配慮した玉虫色の決着と見る向きもある。ギリシャの経済・財政再建はこれからが正念場となる。
ギリシャのサマラス首相は27日未明、記者団に対し、「全てがうまくいった。明日からギリシャの全国民にとって新たな日が始まる」と語った。
12時間に及んだ協議では、ギリシャ債務を400億ユーロ削減するための措置で合意。2020年までに同国債務を国内総生産(GDP)比124%に引き下げることを目指すことになった。
さらにギリシャ債務の対GDP比率を2022年に「110%を大幅に下回る水準」まで引き下げるため、一段の措置をとると表明。ギリシャが基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を達成することが見込まれる2016年から、融資返済の一部免除が必要になる可能性を示唆した。
これについて、JPモルガンのアナリスト、アレックス・ホワイト氏は、すべての向きにある程度配慮した内容であり、「創造的なあいまいさ」を含む玉虫色の決着との見方を示した。
ショイブレ独財務相は、ギリシャの基礎的財政収支の黒字化が急務と主張。「ギリシャが基礎的財政収支の黒字化を達成、または達成の見通しとなり、すべての条件を満たしたとき、必要であれば、われわれは債務削減に向けた一段の措置を検討する」と述べた。
ユーログループのユンケル議長は、ギリシャ向け次回融資の実施で政治的な合意に達したと表明。今後、ドイツやオランダなど一部諸国での議会承認を経た上で、12月13日に融資実施を正式に承認する見通しとした。ショイブレ財務相は時間が限られているとして、すでにドイツの議員らに今週投票を行うよう要請したことを明らかにした。
ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事は、今回の合意を歓迎するとともに、合意が「債務の持続可能性に著しく貢献する」と評価する一方、欧州がギリシャの債務買い戻しを柱とするコミットメントを果たさないかぎり、IMFからの支払いは行われないと言明した。同時にIMFが支援プログラムから撤退するつもりはないとも強調した。
オーストリアのファイマン首相は、ギリシャの経済・財政再建については、依然長い道のりが待ち構えていると認めた。シュピンデルエッガー副首相兼外相は、IMFの協力が重要だとした上で、「IMFは支援からの撤退をほのめかしたものの、撤退は回避された。これはわれわれ欧州勢にとって決定的なことだ」と述べた。
今回の合意では、民間投資家からギリシャ国債を買い戻すのに伴い、ギリシャ側に資金提供をすることについても盛り込まれた。当局者らは、ターゲットとしているコストは1ユーロ当たり35セント程度との見方を示している。買い戻しの規模については、市場の不安定化を避けるため発表されなかったが、当局者は会合前、100億ユーロの数字に言及していた。
ギリシャ向け支援策を賛成多数で承認=独下院 11/30
ドイツ連邦議会(下院)は30日、ギリシャの債務を2020年までに対国内総生産(GDP)比で124%に引き下げることを目指した支援策について、賛成多数で承認した。
今回の採決は、来年9月に連邦議会選挙を控え、メルケル首相率いる連立政権の信任を占うものとみられていた。
主要野党の社会民主党(SPD)と緑の党が支援策支持に回り、下院584票のうち、賛成473票、反対100票、棄権11票で可決された。 
●12
ギリシャ国債上昇、独議会の支援策承認で安ど感 12/1
30日のユーロ圏金融・債券市場では、ギリシャ国債が全般的に上昇した。独議会が対ギリシャ支援を承認したことで、安心感から買いが広がった。
今回承認された支援策は、ギリシャの債務の対国内総生産(GDP)比率を2020年に124%に引き下げるために必要な400億ユーロ相当の債務削減策に関する措置。
ただ支援策に含まれているギリシャ国債買い戻しをめぐっては不透明感も強く、安全資産とされる独連邦債への需要を下支えている。
ギリシャ国債は全般的に一段高となり、10年物利回りは20ベーシスポイント(bp)低下の16.14%となった。
イタリア10年債利回りは5bp低下の4.51%。スペイン10年債利回りは2bp低下の5.33%。ただイタリア、スペイン10年債ともに、前日つけた2年ぶり低水準の4.485%、8カ月ぶり低水準の5.21%からはそれぞれ上昇しており、利回りの低下基調にも息切れ感が漂う。
ギリシャが国際通貨基金(IMF)から次回融資を受け取るためには、12月13日までに国債買い戻しを完了する必要があるためで、買い戻しへの懐疑的な見方が背景にあるとみられている。
あるトレーダーは「独議会のギリシャ支援承認は安心材料だ。だが問題を先送りしたに過ぎず、国債買い戻しをめぐっては疑問が残る」と指摘した。
一方、独連邦債先物は5ティック安の142.79で清算。だがユーロ圏財務相会合でのギリシャ支援策承認を受けて27日につけた安値の141.84からは持ち直している。
現物10年債利回りは変わらずの1.38%。
ユーロ/ドルが6週間ぶり高値、ギリシャ・スペイン懸念緩和で=NY市場 12/4
3日のニューヨーク外国為替市場では、ユーロが対ドルで6週間ぶりの高値に上昇した。メルケル独首相がギリシャに対する債務減免を検討する可能性を排除しないとの考えを示し、スペインが銀行支援を正式に要請したことで、欧州債務危機に対する懸念が緩和した。
また、11月のユーロ圏製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値が46.2と速報値から横ばいとなり、3月以来の高水準を維持したことで、リスク選好度が回復したこともユーロ高に寄与した。
野村証券(ニューヨーク)の外為ストラテジスト、チャールズ・セント・アーナウド氏は「きょうはマイナスのニュースよりもプラスのニュースの方が多かったため、ユーロが上昇した」としている。
2日付の独ビルト日曜版によると、ドイツのメルケル首相は、ユーロ圏各国が保有するギリシャ国債などの債務の減免を将来検討する可能性がある、との考えを示した。
ユーロ/ドルは一時、1.3076ドルと10月22日以来の高値をつけた。その後若干押し戻され、0.5%高の1.3051ドルとなった。
ユーロは1日のムーディーズによる欧州救済基金の格下げを受けた下落からは回復している。ただ今後も、ユーロ圏の債務危機や米「財政の崖」問題に左右され、引き続き不安定な展開になることが予想される。
バークレイズ・キャピタルのアナリスト、サイモン・ヘイス氏は「米財政の崖の解決は依然先のようで、包括的な合意達成は年明けになる可能性が高まっている」との見方を示した。
終盤の取引で、ドル/円は0.3%安の82.25円。
円は、今月の衆院選で新政権が誕生すれば積極的な金融緩和につながるとの観測から、引き続き圧迫されている。
「岩盤」の日経平均9500円水準、くすぶる投資家の不安 12/5
日経平均の9500円水準が「岩盤」の抵抗ラインとなってきた。一時的に上抜くことはあっても厚い売りに押し返される展開が続いている。
12月5日、日経平均の9500円水準が「岩盤」の抵抗ラインとなってきた。11月撮影(2012年 ロイター/Issei Kato)
日本の衆院選挙が公示されたが、政権の枠組みや政策はまだ不透明。海外ではギリシャの国債買い戻し案などを好感し、欧州債務問題への警戒が後退したが、米国の「財政の崖」問題がくすぶり不安感が払しょくされたわけではない。投資家の「恐怖指数」は低い水準ながらも上昇気味だ。
<4度目の上抜け失敗>
日経平均が9500円をトライするのは前週から5日までに4回目となったが、売りが少ない時間帯に一時的に超えたことはあっても、いずれも上回って引けることはできなかった。「大量のショートを抱える短期筋が買い仕掛けても、分厚い売りにすぐに跳ね返される展開が続いている」(外資系証券トレーダー)という。5日の市場でも上海総合指数.SSECが午前中に3%以上の上昇となり、円安も進んだが、日経平均は9500円を一時上回ると売りに押され、上げ幅を縮小させた。
バリュエーション面でみて、日経9500円は、PBR(株価純資産倍率)が約1倍、PBR(株価収益率)が約15倍と割安感は乏しい水準だ。今年3月から5月にかけては、3月27日に年初来高値1万0255円を付けるなど商いを伴って9500円以上で売買されていたことで「安堵(あんど)感からヤレヤレの売りが出てきやすい。一段の円安でもない限り大きく上抜けるのは難しい」(みずほ証券エクイティ調査部シニアテクニカルアナリストの三浦豊氏)という。
海外投資家の買い越し額は、東証の3市場投資主体別売買内容調査では11月第2週と3週合計で3830億円と1─3月の約1兆2900億円と比べてもまだ小さいほか、「日経平均やTOPIXの先物ロングポジションを大量に抱えるとみられるCTA(商品投資顧問業者)は売り場を作るために、メジャーSQ(特別清算指数)算出前に買いを仕掛けるのではないか」(準大手証券ストラテジスト)との見方もある。
ただ、11月19日─11月22日のプログラム売買状況(東証調べ)によると、金額ベースの裁定買い残(当限・翌限以降の合計)は2兆1120億円と7カ月ぶりの高水準。「東証時価総額の1%にあたる2.6兆円程度までは膨らむ可能性がある」(準大手証券)とみられているが、上積み余地は小さくなっている。東証の空売り比率は4日時点で前日の10.8%から12.1%に上昇と、弱気派も増えてきた。
<欧州は「疑似ゴルディロックス」か>
海外環境も楽観を許さない。ギリシャ政府が発表した国債買い戻し条件は予想以上の買い戻し価格だったとして好感され、ユーロは上昇したが、投資家の「参加率」はまだ未定。一部のヘッジファンドは参加しない考えを示している。スペインも銀行支援を正式に要請したが、財政再建はまだ道半ばだ。ユーロ/ドルの上昇は米国の「財政の崖」への不安もあるという。
ドイツでは、11月のIFO独業況指数は予想外の上昇となったが、11月の失業者数は8カ月連続の増加となるなど、足元は不安定だ。「ドイツが最終的に債務問題を引き受ける心づもりを決めたようであり、安心できるが、そのドイツの体力も低下しており不安は残る」(国内証券エコノミスト)との声も多い。
投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー(VIX)指数.VIXは4日、17.12ポイントまで上昇。今年6月ごろの20ポイント台と比べればまだ低いが、3日連続上昇し約2週間半ぶりのレベルとなった。
三井住友銀行シニアグローバルマーケッツアナリストの岡川聡氏は、あくまで「疑似ゴルディロックス」と指摘。表面上、心地よい状態が続いているだけという。「過剰流動性相場の中、ユーロ/ドルも足元で騰勢を強めているが、今年はリスクオフの局面が何回か続いたので最終的な巻き戻しが主に出ている」とみている。
<日銀緩和期待が下支え>
ただ、日本株は調整色を強めてはいるが、底堅さも見せている。「足元は値幅調整というより日柄調整の最中で上値・下値とも限定されている。下げる局面では押し目買いに加え、個人投資家など高値で売った向きの買い戻しが入っているようだ。日替わりで循環物色が継続していることも全般相場の底堅さにつながっている」(マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏)という。
円債市場もしっかり。日銀の追加緩和期待を背景に金利は低下基調を続けている。基金による国債買い入れ増額と国債買い入れ年限の長期化が早かれ遅かれ打ち出されるとの思惑が台頭しているという。現行の国債買い入れ年限は最長3年。今後、国債買い入れ総額が発行額を超えてくる可能性があるため、買い入れ年限を4年、5年と延ばせば、利回り曲線には5年、10年と下押し圧力がかかりやすい。買い遅れている投資家が多いため、市場では「年限長期化を先取りする形で、当面は10年債で0.6%台定着を目指す展開になるのではないか」(国内金融機関)と強気な見方が多い。
バークレイズ証券・債券ストラテジストの丹治倫敦氏は、「投機筋の円ショートがたまっていることを踏まえると、為替がさらに円安方向に振れることは難しいのではないか。株式市場や為替市場が、外債購入などのアグレッシブな政策を織り込でいるとすれば、緩和期待のはく落で為替が円高方向に振れると、金利は低下方向に動きやすい」と指摘している。
9月のギリシャ失業率は26.0%、過去最悪を更新 12/6
ギリシャ統計局(ELSTAT)が6日発表した9月の失業率は26.0%となり、過去最悪を更新した。
同月のユーロ圏失業率の平均である11.6%の倍以上に達している。
8月の失業率については、25.3%へと改定された。
9月の失業率はスペインを上回り、ユーロ圏で最悪となった。
欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)によると、スペインの9月の失業率は25.8%だった。
ギリシャの景気後退(リセッション)は5年目に突入。中銀によると、景気の回復が始まるのは2014年とみられている。
特に若者の失業率が高く、15─24歳の9月の失業率は56%に達した。4年前の22%を大幅に上回っている。
9月の失業者数は前年同月比38%増の130万人だった。
ECB理事会後のドラギ総裁の発言要旨 12/7
欧州中央銀行(ECB)は6日、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.75%に据え置いた。 下限金利の中銀預金金利もゼロに、上限金利の限界貸出金利も1.50%にそれぞれ据え置いた。
理事会後に開かれた記者会見でのドラギECB総裁の発言要旨は以下の通り。
<金利めぐり幅広い議論>
幅広い議論が行われたが、コンセンサスは金利据え置きだった。
<成長見通し引き下げにもかかわらず利下げしない理由>
7月から現在にかけて、一部ユーロ加盟国のスプレッドもしくは国債(利回り)が200─250ベーシスポイント(bp)程度下がった。これは短期政策金利の引き下げによる効果をはるかに上回っている。今後も状況を注視していくが、ある意味でわれわれは必要なことの多くをすでに実行済みだ。
<ギリシャ国債買い戻し>
ギリシャに関しては、民間部門が多くを望み過ぎているとの声を耳にするが、多くを望んでいるのは公的部門というのが私の印象だ。(ギリシャ支援)プログラムは公的資金によるものであり、国債買い戻しもこの一環だ。現時点で、国債買い戻しの結果について述べることは時期尚早だろう。ただ、このような方策がとられることは初めてであり、極めて重要だ。
<OMT計画>
債券買い入れプログラム(OMT)の発動条件は非常に明解だ。交渉の余地はなく、特定の金利水準などに左右されることもない。OMTに関する声明にその条件がすべて記されている。OMTの主な目的は、デノミリスクに起因するユーロ圏の金融・財政の分裂を克服するためにテールリスクを取り除くことだ。実施に際しては、目的を達成できる規模で行う。
<アイルランド銀行支援の条件緩和の可能性>
(5日に発表された追加緊縮策は)財政およびより広範な構造上の観点で、健全な経済状況を回復しようとするアイルランド政府の決意をあらためて示した。条約で禁じられているため、ECBは財政ファイナンスとみなされるような行為を請け負うことはできない。その他の面では極めて好意的な立場だ。
<各国中銀保有のギリシャ国債のロールオーバー>
各国中銀が保有するギリシャ国債のロールオーバーについて深い議論は行わなかった。無論、討議したが、結論には至っていない。
<成長に対するリスク>
理事会は引き続き、ユーロ圏成長見通しに対し下振れリスクがあると考える。これは主に、ユーロ圏のソブリン債、ガバナンスの問題解決をめぐる不透明感に加え、地政学的問題や米国の財政政策の行方、民間投資や雇用、消費の回復が想定以上に遅れることによる潜在的な信頼感悪化に関連している。
<財政政策>
各国政府にとり、財政および構造上の不均衡を縮小させ、金融セクターの再編を進めることが不可欠だ。
<2013年に改善へ>
2013年中には、経済活動が緩やかに回復すると見込んでいる。これは世界の需要が持ち直すとともに、われわれの緩和的な金融政策スタンスおよび金融市場における信頼感の著しい改善が経済に波及するためだ。
<景気低迷>
ユーロ圏における景気低迷は来年も続く見通しだ。とりわけ、金融・非金融セクターにおけるバランスシートの調整や根強い不透明性が引き続き経済活動を圧迫するだろう。
<インフレリスク>
物価動向見通しへのリスクはおおむね均衡している。経済活動の弱まりが下振れリスクとなり得る半面、間接税などの引き上げや統制価格、原油価格の上昇が上振れリスクとなる。
<インフレ>
一部ユーロ圏加盟国におけるエネルギー価格高や間接税引き上げを理由に、主要政策金利を据え置くことを決定した。ユーロ圏消費者物価指数(HICP)はしばらく高止まりした後、ここ最近では予想通り低下しており、2013年には2%を下回る見通しとなっている。政策に関連する期間内において、インフレは物価安定と一致する水準にとどまることが見込まれる。
緊縮策のギリシャで「移民危機」、社会不満のはけ口に 12/9
エジプトからギリシャに渡ってきた移民のワリード・タレブさん(29)は、未払いだった賃金を請求したばかりに高い代償を支払うことになった。働いていた店の経営者から18時間にわたって暴行を受け、拘置所に入れられた上、ギリシャからの強制退去を言い渡されたのだった。
正式な書類を持たない移民が、闇労働市場に数十万人いると言われているギリシャ。同国南東部サラミナ島のパン屋で働いていたタレブさんが店の主人の怒りを買ったことは、ギリシャ経済危機をめぐる犠牲者の中で移民が最も弱い立場に置かれていることを示す象徴的な事件となった。
タレブさんによれば、パン屋の経営者ら3人に押さえられて首にチェーンを巻かれ、馬小屋で意識がもうろうとするまで殴られたという。イスラム教徒であるのに無理矢理ビールを飲まされ、椅子の上で身動きが出来ない状態で暴行を繰り返され、死も覚悟したと話す。18時間経って何とか逃げ出したタレブさんだったが、悪夢はそこで終わらなかった。
病院で治療を受けていたところ警察が来て、ギリシャで生活するための書類が不足しているとしてタレブさんを連行した。当時は食べることもできないほど衰弱した状態で、痛みでほとんど歩けないと訴えても容赦はなかったという。「問題は私が書類を持っていなかったことではなく、私が暴行を受けたということだったはずなのに」と語る。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、タレブさんのケースは移民が直面する「著しい残虐性」の氷山の一角だと指摘。エジプトの大使館からも抗議が寄せられた結果、ギリシャの公安相は4日、「人道的理由」でタレブさんの強制送還を見送る方針を発表した。
<なぜ自分だけ>
タレブさんは4日間にわたって身柄を拘束された際、30日以内にギリシャを出国するよう通達を受けた。一方、店の経営者は3日後に釈放された。警察によると、店の経営者は暴行は認めたものの、タレブさんが1万3000ユーロ(約140万円)を盗もうとしたと主張している。タレブさんが拘置所にいる間に知人に電話で聞いたところ、暴行を加えた人間はすでに全員拘置所から出ており、自分だけが拘束されていることが分かったという。ギリシャの「世界の医療団」によると、同国では人種差別的な攻撃に関して有罪判決が下ることはほとんどなく、移民が攻撃の対象になりやすいという現状がある。一方で警察は、病院で治療中だったタレブさんを連行したことについて、医師から許可を得た行為だと話しており、法律では不法移民を拘束することになっていると主張している。
<背中の十字傷>
スーダン人移民のハッサン・メッキさん(32)は今年8月、友人とアテネ市内を歩いていたところ、ギリシャ国旗を持ってバイクに乗った黒シャツ姿の男たちに突然襲われた。頭部を強打して気を失ったメッキさんは、気が付くと血だらけで、背中には「十字」の傷が刻まれていた。メッキさんは「正式な書類がないから、助けも求められない。私の命は今も危機にさらされている」と怯えた様子で語った。支持率を伸ばすギリシャの極右政党「黄金の夜明け」は、全ての移民を国内から排斥する方針を打ち出しており、同政党は人種差別的な襲撃との関連も疑われている。しかし、UNHCRによると、こうした襲撃事件の多くは被害者たちが強制送還を恐れて警察に行かないため、表沙汰になることはめったにない。
<ギリシャの「移民危機」>
ギリシャはアジアやアフリカからの移民にとって、欧州へ渡る際の主要な玄関口となっている。不法移民の問題には長年悩まされてきたギリシャだが、ここ数年で深刻な景気後退に突入し、移民問題は「危機」へと変わった。失業率は25%を超え、犯罪率上昇の背景にあるという理由で移民への風当たりは強くなっている。今年に入ってギリシャは国境警備を強化したが、成果はほとんど上がっていない。1─10月に逮捕した不法移民の数は7万人強だが、昨年の同じ時期は約8万2000人で、若干減少したにとどまっている。またUNHCRや人権団体などによると、ギリシャでは緊縮策の影響で拘置所の設備が乏しく、食料不足などの厳しい現状もある。ギリシャ当局者は、この問題の原因がいわゆる「ダブリンII規則」にあると指摘する。この協定では難民の責任は入国された国が持つと定めており、欧州の玄関口にあたるギリシャには負担がかかるという論理だ。ギリシャ政府はこの協定の撤廃を再三求めており、UNHCRからも、欧州は移民問題でギリシャを支援する必要があるとの声が上がっている。
それでも、人権団体「ヘレニック・リーグ・フォー・ヒューマン・ライツ」のディミトリス・クリストポロス氏は、ギリシャは移民政策の失敗を欧州のせいにするべきではないと話す。協定は廃止されるべきだが、「ギリシャ政府は実際にはこの問題について何もしていない」という。その代わりに、サマラス首相率いる新民主主義党(ND)は、支持率を伸ばす「黄金の夜明け」に有権者を取られることを恐れ、警察による不法移民の取り締まりを強化する措置などを取ってきた。また同首相は、移民を親に持つ子が国籍を簡単に取得できるようにする法律の廃止も検討しており、NDが右傾化してきたとみる専門家もいる。タレブさんが暴行を受けたサラミナ島では、移民に対するギリシャ人の態度がはっきりと分かれている。「卑劣な行為だ」と話す50歳の男性は、この事件がギリシャの社会的分裂を示していると指摘。「ギリシャ人の中には、債務危機に襲われたのは不法移民たちのせいだと考える人もいる」と話した。その一方で、こんな意見を口にする人もいた。「彼はひどく殴られたんだってね。それが本当なら良かった。殴られて当然だ」。
1─11月のギリシャ財政赤字は前年比40%縮小 12/11
ギリシャ財務省が10日発表した1─11月の中央政府の財政赤字は129億ユーロと、前年同期の215億ユーロから40%縮小した。
この数字には、社会保障費と地方政府向け支出は含まれていない。
スタイクラス財務次官は声明で「(予算執行は)満足のいく内容で、予想よりはるかに良好だった」と指摘。「これにより、2012年通年について良好な結果を見込むことが妥当になり、13年にプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字を確保する基盤になる」と述べた
ギリシャ国債買い戻し、応募は318億ユーロ=関係筋 12/12
ギリシャが国際通貨基金(IMF)などから次回融資を受けるための条件となっている国債買い戻しに対し、318億ユーロの応募があった。ユーロ圏筋が11日、明らかにした。
買い戻しに関わっている銀行関係者がこの数字を確認した。平均買い戻し価格は元本の33.5%としている。
買い戻し価格が予想より若干高いため、約4億5000万ユーロの不足が発生し、債務削減率は約9.5%ポイントと、目標の11%ポイントに満たない。
これを踏まえると、ギリシャの債務水準は2020年までに国内総生産(GDP)に対する比率で126.6%に低下するが、IMFと前月に合意した目標の124%には届かない。
ただ、予想は若干下回ったものの、当局者は下回った分の穴埋めは容易に行うことができるとしている。前出の銀行関係者も、追加的に政府に保有国債を売却する債券保有者を探すことは困難ではないとの見方を示し、「独バッドバンクは保有債券のすべてを差し出していないため、応募を促すことができる」と述べた。
同関係者は、「IMFは応募されていない債券の存在を黙認することはしない」としている。
ギリシャは100億ユーロを投じて300億ユーロの国債を買い戻し、先月欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)と合意した400億ユーロに上る債務削減目標の半分に相当する200億ユーロの債務を削減する計画。11日が民間債権者による応募期限だった。
ユーロ圏財務相はこの日、電話会議を行い、ギリシャの国債買い戻しの結果について協議する。
当局者によると、ユーロ圏財務相は電話会議を受けて声明などは発表しない見通し。13日にブリュッセルで会議を開き、ギリシャの国債買い戻しの結果について討議する。
EU首脳会議出席者の発言要旨 12/14
13日の欧州連合(EU)首脳会議では、EU財務相による銀行監督一元化での合意が承認されたが、ユーロ通貨同盟の次の段階をめぐっては意見が大きく分かれた。首脳らは14日に2日目の協議を再開する。13日の協議を終えた出席者の発言要旨は以下の通り。
<フランスのオランド大統領>
(銀行監督について) 「厳密に言えば、このメカニズムが直接カバーするのはドイツの銀行セクターの82%、フランスの銀行セクターの95%だ。これは預金への大きな安心を国民にもたらし、国家に対しては銀行の機能を一段と保証するものだろう」
(銀行への直接資本注入について) 「行程表が設定されているところだ。2013年上半期には一定の条件下で資本注入が可能になる」「破たん処理メカニズムは2013年末までに設立されるだろう。2014年初めには欧州、特にユーロ圏は制度全体を利用できるようになる」「個人的には、現在のユーロ危機を脱するための条件は達成されたと考えている。これからは経済危機自体からなんとか脱却する必要がある」
(政策協調について) 「これは競争力、経済成長、雇用に関するすべての国の取り組みを調整することだ。連帯メカニズムの詳細はEU大統領によって提案される予定だ」
(条約改正について) 「2014年には欧州議会の選挙があり、欧州委員会の変更がある予定だ。この際に条約改正など新たな局面が想定される」
<ドイツのメルケル首相>
「通貨同盟の今後の発展に向けた行程表で合意し、それぞれの重要な側面を協議した。とりわけ大事なのは、いつ何をやるかだった」「ユーロ圏の安定に向けて実を結んだ日程だった。一方で、対ギリシャ融資が決まった。ギリシャの首相がきょう、成長に焦点を遂に絞り始め、例えば税制改革といった必要な最後の措置を取ることができると発言したことは注目に値する」
(銀行同盟について) 「銀行監督の枠組みと共に、2つのことが必要だ。枠組みが2014年3月に整う時、欧州レベルでの監督下に置かれている銀行に直接資金注入するためのガイドラインが必要。これはよく検討されなければならない複雑な課題だ」「また欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が明確にしたように、欧州の監督下にある銀行の破綻処理ができる法的枠組みも必要だ」「これは公的資金から拠出されるべきではない。銀行の問題に責任のある関係各所も負担を背負えるように設立されるべき。これが極めて重要な点だ」
(経済統合・連帯基金について) 「経済政策の協調強化についても協議した。一方で、競争力を強化するため欧州委員会と各国がどのような取り決めを行うかの詳細を6月までに詰めることで合意した。また、財政健全化の過程にある国を支援するための資金供給の可能性も模索する」「競争力の向上に関連した支援を協議している」「極めて限られた予算を検討しており、数千億の話ではない、むしろ100億、150億、200億ユーロの話だ」
<バローゾ欧州委員長>
(銀行破綻処理メカニズムについて) 「欧州委員会は、2013年に単一の銀行破綻処理メカニズムに関する提案を行う。これは銀行同盟の次の重要な骨組みになる」
<ファンロンパイEU大統領>
(銀行破綻処理メカニズムについて) 「今晩、単一の破綻処理メカニズム導入を決定した」「金融セクターの強化につながるだろう。ソブリンと銀行の悪循環を断ち切れば、ユーロ圏や他の地域の成長と雇用に不可欠である安定の実現と融資条件の改善につながる」「ユーロ圏加盟国のニーズにかなうものだ。他の国にも開かれており、参加しない国のことも考慮されている。ECBと各国当局の負担の分担を適切に考慮した真に単一の制度だ」
<ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁>
(銀行監督について) 「単一の監督メカニズム創設は、ユーロ圏の金融統合に向けた重要なステップだ。信認向上に加え、中期的には、銀行間市場の回復・建て直しにつながる」「設計方針により、金融政策と監督は確実に分離されるだろう」
EU首脳会議、銀行破綻処理メカニズム構築など改革推進の決意表明 12/14
13日から始まった欧州連合(EU)首脳会議は、各国の財政再建や債務危機克服に向け、さらなる措置を推進していくことで合意した。
EU財務相が直前の会合で、銀行同盟の創設に向け域内の大手銀行監督を欧州中央銀行(ECB)に委ねる措置やギリシャへの追加融資に合意したことを受け、深夜まで8時間以上にわたって行われたこの日の首脳会合では、問題を抱えた銀行の破綻処理メカニズムを構築する方針が示された。しかし、そのメカニズムの構築完了時期については明らかになっていない。
首脳会合ではまた、各国に経済目標を順守させる方法や、一時的な経済ショックに見舞われた国を支援する「連帯基金」の創設についても暫定的な議論が行われた。ただ、どちらの問題についても深い議論には踏み込まず、本格的な論議は来年半ばまで先送りされた形となった。
債務危機で一時は大荒れとなった金融市場が落ち着きを取り戻す中、一部の当局者は、意思決定の上で甘えが入り込む恐れがあると懸念しており、首脳らは手綱を緩めない姿勢を示そうと努めているようだ。
それでも、首脳会議では具体的な決定は何も下されず、改革継続に向けた「口先の約束」をするにとどまった。
首脳会議の議長を務めたファンロンパイEU大統領は記者会見で「今夜、われわれは単一の銀行破綻処理メカニズムを導入することで合意した」と表明した。
バローゾ欧州委員長によると、銀行破綻処理メカニズムについては、2013年のうちに欧州委員会が提案を提示する予定。
フランスのオランド大統領は、そのメカニズムは2013年のうちに「形が見えてくる」だろうと述べたものの、今後1年間でそれが機能し始めるのか、それとも構築プロセスが始まるに過ぎないのかは明らかでない。
ドイツのメルケル首相も「われわれは通貨同盟の将来的な発展に向けたロードマップで合意した」と述べたが、議論の詳細については言及しなかった。
メルケル首相はまた、ユーロ圏の「連帯基金」について、基金の詳細を6月までに詰めることで合意したと明らかにした。連帯基金の規模は100億─200億ユーロを見込んでいるという。
<次の措置に向けた高いハードル>
EUは首脳会合のわずか数時間前に開かれた財務相会合で、ECBにユーロ圏の銀行監督権限を付与することで合意。さらに、ギリシャに対して最大500億ユーロの追加融資を行うことを承認した。ECBは合意に基づき、大手行150─200行を直接監督することになる。
ドラギECB総裁は、銀行監督権限をめぐる決定を歓迎し、安定した経済通貨同盟の実現に向けた重要な一歩になるとの考えを示した。
しかし、欧州にとって一息つける時間は限られている。問題を抱えた銀行の破綻処理メカニズムや預金者を保護する預金保証制度の構築という銀行同盟実現に向けた次のステップは、これまで以上に難しい問題への対処が必要になる。政治的あるいは財政的なハードルも待ち構えている。
バローゾ欧州委員長は「各国政府は、金融市場の環境が以前よりも好転しているという事実を、行動を先送りする口実とすべきではない」と釘を刺した。
2013年は早々にイタリアの総選挙が実施されるほか、スペインが全面的な支援要請に踏み切る可能性もある。9月に予定されているドイツの選挙も不安な材料だ。ギリシャ、アイルランド、ポルトガルなど、これまで支援を受けた国々の情勢が落ち着いたとしても、欧州にとって困難な道のりが続くことは間違いない。
とりわけ懸念されているのはモンティ首相の辞意表明を受けて早期に行われるとみられるイタリアの総選挙だ。
ベルルスコーニ前首相は緊縮策に反対する姿勢を表明しており、モンティ政権が推進してきた改革路線を次期政権が後退させることになれば、市場の混乱を招きかねない。
ギリシャ格付けを「選択的デフォルト」から引き上げ=S&P 12/19
格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は18日、ギリシャの格付けを「選択的デフォルト」から「Bマイナス」に引き上げた。見通しは「安定的」としている。
S&Pは、「格上げは、ギリシャをユーロ圏にとどめるための加盟各国の断固とした決意を反映している」とし、「財政・構造改革実施に向け政府が示しているコミットメントと、改革実施に立ちはだかる経済的・政治的な課題の双方を踏まえ、長期格付けの見通しを安定的とした」と説明した。
ギリシャは11月末に欧州連合(EU)、および国際通貨基金(IMF)と合意した債務削減策の下、国債買い戻しを実施。S&Pはこの国債買い戻しに民間部門が参加することはS&Pの基準で「選択的デフォルト」とみなされるとし、今月5日、同国の格付けを「CCC」から「選択的デフォルト」に引き下げていた。
国債買い戻しについては、IMF、および最大の支援国であるドイツなどが成功裏に終わったと評価。国債買い戻しが無事にこなされたことを受け、IMF、およびユーロ加盟国はギリシャに対する総額491億ユーロの次回融資実施で合意している。
ギリシャ国債利回り急低下、ECBの適格担保復活受け 12/20
欧州中央銀行(ECB)が19日、ギリシャ国債を流動性供給オペの適格担保として再び認めると発表したことを受け、欧州債券市場でギリシャ国債利回りが急低下している。
2023年2月償還債の利回りは147ベーシスポイント(bp)低下の11.42%となり、債務再編の一環として同国債が発行されて以来の低水準をつけた。ギリシャの指標10年債利回りとして、2011年2月以来の低水準となる。
ギリシャ大手銀2行、1―9月期の損失が前年同期から大幅拡大 12/22
ギリシャ大手銀ナショナル・バンク(NBG)(NBGr.AT)とアルファ・バンク(ACBr.AT)は21日、1―9月期の損失が前年同期から拡大したことを明らかにした。
NBGの損失額は24億5000万ユーロ(32億3000万ドル)と、前年同期の13億5000万ユーロから82%増加した。
アルファ・バンクの損失額も前年同期比25.6%増の7億1180万ユーロとなった。
アルファ・バンクの純受取利息は、ギリシャ中銀の緊急流動性支援(ELA)からの借り入れコストの上昇が響き16.4%減少した。貸倒引当金は41.5%増の11億7000万ユーロ。
NBGの引当金も43%増加し18億7000万ユーロとなった。
増資所要額はアルファ・バンクが全体で46億ユーロ。NBGについては、ギリシャ中銀の融安定基金(HFSF)から得た97億ユーロのつなぎ融資により狭義の中核的自己資本比率(Tier1)が10.3%となり、中銀の求める9%を上回っている。
今年度国債発行は44兆円にこだわらず=麻生財務相 12/27
麻生太郎副総理兼財務・金融・デフレ脱却円高対策担当相は27日未明、初閣議後に記者会見し、今年度の国債発行について、民主党政権が定めた44兆円の発行枠に「こだわらない」との考えを示した。同時に財政健全化目標も、新政権下で策定し直す方針を明らかにした。
<補正予算、首相が「思い切った規模」を指示>
安倍晋三首相はこの日、財務相に対して「経済再生を実現するため緊急経済対策を早急に策定し、今年度補正予算は国債発行枠44兆円にこだわらず、思い切った規模とすること」と指示。財務相は補正予算の規模について「数字で言える段階ではない」と言及を避けたが「政権が代わり、経済対策、デフレ不況対策、雇用対策等々に、財政出動、金融緩和、経済成長戦略の3つをまとめてやる方向になったと思ってもらえる補正を組むのが大前提」だと指摘。「44兆円(の発行枠)にこだわらないことは間違いない」と表明した。財務相は「基本的に景気が良くなったと思ってもらうのが第一。優先順位の一番はそれだ」とも述べた。財政健全化に関しては、国債の大半が国内で消化されている現状に触れ「ギリシャみたいになることはあり得ない」とし、健全化目標も「自民党政権で基本的なものを作らねばならない。民主党政権がやったものを、そのまま模倣することはない」と述べ、見直す考えを示した。安倍首相は来年度の予算編成について「財政健全化目標を踏まえたものとすること」と指示した。
<脱「デフレ不況」>
財務相は日本経済の現況を「資産のデフレーションによる不況に遭遇している状況から、まだ脱却していない」と分析。デフレ対策の必要性を強調したが、同時に「デフレ対策をやっ(て解決し)た経験者は世界中でゼロ。それが事実。これまでの反省も踏まえ、デフレ不況からの脱却に全力を挙げる。それが国民の負託に対する答えだ」と話した。
<国家の通貨切り下げ、できないルール>
円高対策については、これまでのG20で「国家が介入して、通貨を一方的に切り下げるとか上げるということは、できないルールになっている」と指摘。G20が定期会合を開催し始めて以降、円高が進行しているとして「日本は間違いなく約定通りやっている数少ない国との自負がある。各国がめちゃめちゃにならないようにするには、我々はきちんとやってるとはっきり言うのが大事なことだ」と話した。今回の総選挙で自民党の優勢が伝えられて以降、円安が進行したことには「為替は一概にこうなると言える話とは違う」としながらも、自公政権に対する「期待値のひとつであることは確か」として「口先介入でいい方向に行けばしめたもの」と述べた。ただ、経済政策運営は「日銀、財務省、成長戦略を組む経産省等々が一緒になってやる」とも表明。「日銀がお金を刷っても、それを必要とする実需に回らなければ、お金は銀行で寝たことになる。そういう失敗が2000年代に入ってある。そういう轍は踏まないよう(金融と財政、成長戦略の)3つを合わせて一緒にやる政治力がないと、対応は難しい」と話した。
<日銀との連携、諮問会議でより密に>
日銀と政府との関係については、日銀総裁と首相が定期的に出席する経済財政諮問会議を休止させたことが「連絡が密でなくなった一番大きな理由」だと総括。「諮問会議がスタートするので、連絡・連携は今までに比べればかなり密になる」との見通しを示した。日銀側にとっても、金融緩和を実施した以上は「財務省は財政出動、成長戦略はやってもらえるのかと言うのは当然。そのために諮問会議は重要なものだ」と述べた。
<消費増税、景気上向かねば引き上げず>
消費税率の引き上げについては「基本的に景気が上向かなければ上げないと(増税法の付則に)書いてある」として、過去の引き上げ時に税収が減少した経緯を説明。「これは経験則で、それほど昔の話ではない。安易に上げることにならないようにするため、きちんとした補正や本予算を編成し、景気が良くなったとの感じが出てこない限り、間違いなくまた同じことになる。そうならないような配慮が必要だ」と述べた。
2013年の欧州、遠心力との戦いに 12/27
ユーロ危機は2013年、欧州の危機へと姿を変えるだろう。共通通貨ユーロの存続はもう問題になっていないが、欧州経済は2年に及ぶ反循環的な緊縮財政を受けて立ち往生している。
さらに言えば、問題はどの国がユーロ圏から離脱するかではなく、ユーロ圏のさらなる統合強化が、ユーロ未導入国を欧州連合(EU)から離脱させることにつながらないかという点だ。
欧州は2013年、経済によって弱体化し、結束が脅かされることになるだろう。
ユーロ圏のリーダーたちが愚行を止めると決断したとしても、狂信的なまでに緊縮策に没頭した2年間の代償は払うことになる。ユーロを救うために取られた策だったが、結局うまくいかなかった。欧州各国の政府は2つの救済基金を創設し、ユーロ導入国3カ国を助け出し、経営難に陥った銀行への直接資本注入も可能にし、ギリシャの財政再建は2回実施した。欧州中央銀行(ECB)は銀行システムに低金利の資金を注ぎ込み、ユーロ圏維持に向けて必要な措置を全て講じる意向を表明した。
しかし、各国政府が財政規律を気にするあまり、これらの取り組みを弱めたことは一目瞭然だ。ユーロ圏経済は2012年は0.4%のマイナス成長になる見込みだが、2013年も停滞するとみられる。公的見通しは幅こそあるものの、緩やかなマイナスから微かなプラスという範囲を逸脱した予想はほとんどない。
楽観的なシナリオは、ユーロ圏のリーダーたちが来年、受け身の対応をやめて自発的に行動することだ。経済成長を刺激し、もはや耐えがたい水準になっている失業を減らすための共同政策を策定することだ。
一方で、ユーロ未導入国には、EU離れをうながす強い遠心力がかかる。英国など一部のユーロ未導入国はそもそも、EUを表面的な「単一市場」以上としては見ていなかった。しかし、EUが小さくなるか、通貨統合が強くなるかどちらかの選択を迫られれば、ユーロ圏各国が何を選ぶかは明白だ。2013年は、その選択がよりはっきりする1年になるのかもしれない。
ギリシャ4大銀、275億ユーロの資本増強必要=中銀 12/28
ギリシャ中央銀行は27日、同国の4大銀行が自己資本基準を満たすため必要な資本増強の規模は合計275億ユーロ(363億ドル)とする報告書を発表した。
報告書によると、国内商銀14行全体の追加資本所要額は405億ユーロ。このうち、ナショナル・バンク(NBGr.AT)、ユーロバンクEFGr.AT、アルファ・バンク(ACBr.AT)、ピレウス銀行(BOPr.AT)の大手4行が必要とする追加資本は2012年の国内総生産(GDP)の約14.5%に相当する275億ユーロとした。
ギリシャ政府と国際支援機関は同国に対する支援策1300億ユーロのうち500億ユーロをシステム上重要な4行の資本増強と存続不可能と判断した銀行の清算費用に振り向けている。ギリシャ中銀はこれについて、十分な額との見解を示した。
同支援策では、銀行は狭義の自己資本比率(コアTier1)6%を確保するため普通株を新規発行し、さらに一定の条件下で資本に転換される偶発転換社債(CoCo債)の発行を通じて9%の自己資本比率を確保する必要がある。
4行は来年1月末までにCoCo債の発行を完了し、4月末までに新株引受権の発行を完了する必要がある。 
 

 

 
 
 
 2013

 

●ギリシャ2013/1-6
● 1
「ギリシャはまだ危機脱していない」、財務相が改革の必要性強調 1/18
ギリシャのストゥルナラス財務相は17日、ギリシャはまだ危機を脱していないとの認識を示し、今後1年経済改革を遅らせようとする国内の圧力に立ち向かう決意を示した。
ロイターとのインタビューで述べた。
欧州連合(EU)内では、危機を脱するためのギリシャの取り組みや経済指標の改善を評価する声が広がりつつある。一方国内では、政府に対し緊縮策や改革の手を緩めるよう要求が強まっている。
財務相は「怖いのは、計画を後退させようとする社会やメディア、議会からの大きな圧力だ。われわれはこれに立ち向かわなければならない。勝利を宣言するのはまだ時期尚早だ」と述べた。
ギリシャは、3年にわたりユーロ圏を揺るがした債務危機から脱しつつある兆候がみられるという。
ユーロ圏は昨年対ギリシャの追加支援で合意。ギリシャが財政目標を達成し2013年に財政再建を実現すれば、さらなる支援もあり得るとの声も聞かれる。
財務相はさらなる国債買い戻しを含めこれを否定。ユーロ参加国への債務減免に関する協議は行われておらず、代わりに金利引き下げなどが検討される可能性があると述べた。
ギリシャ、15─16年に最大95億ユーロの追加支援必要=IMF 1/19
国際通貨基金(IMF)は18日、ギリシャは2015・16年の2年間で、55億─95億ユーロの追加支援が必要になるとの推計を発表した。
そのうえで、欧州がギリシャ支援を継続する用意があると確約していると言明した。
2014年以降のギリシャの追加資金需要に関し、IMFが推計を明示するのは今回が初めて。
IMFのギリシャ調査団代表を務めるポール・トムセン氏は、記者団との電話会議で「2015・16年に必要となる追加支援の規模に関わらず、(ギリシャの)資金不足を補うという欧州のパートナーによる確約はたとえ具体的でないとしても、IMFの政策と一致する」と語った。
欧州委員会は昨年12月、2015・16年の2年間で、ギリシャは56億ユーロの追加資金が必要になると推計している。
EU財務相理事会、11カ国の金融取引税導入準備を承認 1/23
欧州連合(EU)財務相理事会で過半数の財務相が、ドイツやフランスなどユーロ圏11カ国の金融取引税導入に向けた準備を承認した。理事会に出席した2人の当局者が明らかにした。
ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オーストリア、ポルトガル、ベルギー、エストニア、ギリシャ、スロバキア、スロベニアの各国が取引税に向けて準備を進める。
英国、ルクセンブルク、チェコ、マルタは棄権した。
今回の承認について、欧州委員会のシェメタ委員(税制担当)は「税制史上、画期的なことだ」と評価。各国政府が速やかに承認すれば来年1月から導入できると述べた。制度の具体的な中身については2月にも示したいとした。
金融取引税は現時点で英国などが対象から外れているものの、実際には取引の場所ではなく、取引を行う主体の本拠地で課税対象かどうかが決まる可能性があり、金融取引税を導入しない国々にまったく影響がないとは言い切れない。欧州最大の金融センターである英国もこの点を最も憂慮しているという。
12月のギリシャ銀行預金は4年ぶりの伸び、4カ月連続増=中銀 1/29
ギリシャ中央銀行が28日発表した12月末時点の企業・家計による国内銀行への預金額は、1613億6000万ユーロで4年ぶりの大きな伸びとなった。ギリシャをユーロ圏につなぎとめるため、他の欧州諸国が支援し続けるとの期待感が高まり、4カ月連続で増加した。
前月末時点の1558億9000万ユーロから3.5%増加した。
ギリシャ経済は最悪期脱出、プログラム実施に弾み=中銀総裁 1/30
ギリシャ中央銀行のプロボポラス総裁は29日、ギリシャ経済は最悪期を脱したとし、経済は依然マイナス成長が続いているものの、心理的には峠を越えたとの見方を示した。
総裁は英フィナンシャル・タイムズ(FT)とのビデオインタビューで「最悪期は過ぎたと思う。われわれはもっと楽観的になっていい」と語った。
さらに「経済プログラムを含めあらゆる法整備を済ませており、プログラムの完全実施に向け、政府の対応に弾みがついてきている」とした。
ことしの国内総生産(GDP)は4─4.5%のマイナス成長が見込まれるものの、心理的には峠を越えたと述べた。  
● 2
第4四半期のギリシャGDP‐6.0%、11月失業率は過去最悪 2/14
ユーロ圏統計局(ユーロスタット)とギリシャ統計当局(ELSTAT)が14日発表した2012年第4・四半期のギリシャ国内総生産(GDP)速報値は前年比6.0%減となった。
政府が進める緊縮財政によって、2013年も6年連続のマイナス成長になる公算が大きい。
また、2012年11月の失業率は過去最悪の27%に達した。
とりわけ、15─24歳の失業率は61.7%と、リセッション(景気後退)の影響で、若年層の失業問題が深刻化していることが浮き彫りとなった。
ユーロバンクのエコノミスト、プラトン・モノクロソス氏は、失業が通常、経済活動の遅行指数であることから、「極めて失望を誘う数字だ」と話した。
第3・四半期GDPの改定値は6.7%減だった。
2012年通年のGDPは6.45%減。
ギリシャ政府は、2013年のGDPを4.5%減と予想している。
ギリシャ経常収支、2012年は赤字幅が急減しユーロ導入後最小 2/19
2012年のギリシャ経常収支は55億8000万ユーロ(74億5000万ドル)の赤字となり、赤字幅は前年から73%減少してユーロ導入後で最小となった。輸入と国債利払いの減少が寄与した。
ギリシャ中銀によると、11年の経常赤字は206億3000万ユーロ。国内総生産(GDP)比では9.9%から2.9%に低下、少なくとも1999年以降で最小となった。記録的な経常赤字を記録した2008年には14.7%だった。
政府は、緊縮財政策により2014年には赤字がゼロになると予想している。
2012年の石油製品を除く輸入は12%減の416億ユーロ。ソブリン債の利払いも債務減免により急減、所得収支は75%減の21億6000万ユーロとなった。
観光収支は100億2000万ユーロと前年から4.6%減少したが、引き続き最も経常収支に寄与している。
12月末の外貨準備は55億ユーロ。 
● 3
ギリシャ株を「新興市場」に格下げ、ラッセル・インデックスが大手で初 3/5
ラッセル・インデックスは4日、3月の指数年次見直しで、ギリシャ株式の市場分類を「先進国市場」から「新興市場」に再分類すると明らかにした。格下げは大手の指数プロバイダーとして初めて。6月末から適用する。
世界の主要な債券指数からはすでにギリシャ国債は除外されている。
声明によると、3年間にわたる市場リスクの見直しを通じて、ギリシャが先進国市場の分類を獲得するための「マクロおよびオペレーショナルリスクの基準」に見合っていないことが明らかになったという。再分類は珍しいことだが、現在の分類での基準に合致しなくなればあり得るという。
ギリシャ・アテネ株式市場では、主要株価指数.ATGの構成銘柄の時価総額は現在320億ユーロ。アイルランドの主要株価指数.ISEQの約3分の1で、2008年の水準から比べると75%減少している。
ギリシャ中央政府の財政収支、再び赤字に=財務省 3/12
ギリシャ財務省は11日、中央政府の財政収支が再び赤字に陥ったことを明らかにした。ただ、今年の財政目標は依然達成されるとの見通しを示した。
1―2月の中央政府の財政赤字(地方政府の支出と社会保障支出を除く)は8億1300万ユーロ(10億6000万ドル)で前年同期の4億9500万ユーロから拡大した。
1月は1億7700万ユーロの黒字としていた。
昨年実施された債務再編に絡む高水準の利払いを除いた1―2月の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は4億6300万ユーロの黒字で、前年同期から26%増加した。
リーダーシップなき欧州の行方 3/14
欧州で次々と明らかになる政治や経済のドラマに、金融市場がネガティブに反応する可能性が高まっている。これまでのところ、欧州中央銀行(ECB)は資金供給を通じて投資家の神経を鎮めてはいるが、ユーロ圏全体の成長を回復させるには、金利を引き下げることが極めて重要だ。
ただ、それだけでは不十分だ。欧州の政治指導者たちは、ユーロ圏の慢性的経済問題に正面から立ち向かう意思が欠如しているとの認識に反論し、成長への明確な道筋を示す必要がある。緊縮策だけでは、成長回復には至らない。
ユーロ危機の舞台が周縁国から主要経済国へと移っている現在、状況は以前にも増して深刻化している。スペインは長引くマイナス成長から浮上する兆しを見せず、イタリアも山積する問題に直面し、フランスは景気後退へと移行しつつある。
ユーロ圏全体を見渡してみると、危機の痛みは失業率に最も顕著に表れている。欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)の最新の統計によると、ユーロ圏17カ国の失業率は11.9%で、1900万人が失業している。
各国失業率では、ギリシャが27%、スペインが26.2%で、若年層では両国とも55%を超える。ポルトガルは17.6%、イタリアは11.5%超、フランスも10.6%と高水準だ。
こうした国々の失業率は、向こう数カ月でさらに上昇しそうだ。そうなった場合、市民による抗議デモは増え、現政権の存続を脅かすリスクが高まるだろう。失業者数が間もなく2000万人に迫る見通しにもかかわらず、ユーロ圏諸国には、かつて中南米に持続的成長への道を開いた「ブレイディ?プラン」のような構想を考案したり、過去の債務危機から教訓を学ぶという姿勢が欠如している。
われわれは同じような光景を以前も目にしたことがある。1982年にメキシコで始まった危機は、すぐに他の中南米諸国を飲み込んでいき、政治的リーダーシップの失敗は大規模なデモを引き起こした。大半の国で国民は独裁政権を拒否し、民主主義を支持した。幸いにも多くの傑出した政治指導者が現れ、民主的アプローチを取る中、困難ながらも必要不可欠な経済政策に対する国民の理解を築いていった。彼らの努力が、地域経済再生への道を開くことになったブレイディ・プランの策定と実行を可能にしたのだ。
ユーロ圏の多くの国々においては、現指導者が成長に向け協力し、直ちに行動を起こさなければ、政治的脅威に見舞われることになるだろう。すでにギリシャとイタリアでは、ポピュリスト政治家が台頭している。
政治的リスクが高まっているにもかかわらず、欧州委員会もドイツ当局者も、4年目を迎えて深刻さを増すユーロ危機の中で、経済的困難に直面する国々に財政統合を求めるだけだ。彼らはこうした政治的リスクのみならず、自分たちが恨みを抱かれていることなど気に留めていないように見える。
断固たる措置が示されない限り、市場はこれ以上、辛抱することはできないだろう。ECBの金利引き下げに加え、以下の3つから成る行動が求められる。1つ目は、着実な日程表とともに、欧州銀行同盟の創設に向けた計画を加速させること。2つ目は、欧州安定メカニズム(ESM)やECBが、イタリアやスペインのほか、政治的に不安定な時期にあるユーロ圏諸国への財政支援を確約する声明を出すこと。3つ目は財政協定の順守に向けたタイムテーブルを提示すること。
加えて、ECBと比較的経済が強い国は、ユーロ圏全てのパートナーと協力して、例えば過去にブラジルや韓国、トルコで採られてきたような政策に負けないようなものを考え出す必要がある。こうした国々の場合、政府は金融市場の信用を回復する重要性を強調するとともに、世論の支持を得るのに必要なリーダーシップを発揮した。彼らが導入した政策には、生産性の向上や競争力の強化、成長回復などが含まれていた。
ユーロ圏ではこうしたリーダーシップが不在しているため、危機に陥っている国々で山積する問題は、他の国で浮上しつつある問題を悪化させ、欧州の貿易相手国にもますます影響を及ぼすことになる。ユーロ危機が世界全体の経済成長と貿易にこれ以上悪影響を与えないためにも、速やかに対処することが肝要だ。
ギリシャは改革で著しい進展、いくつかの問題残る=トロイカ調査団 3/14
国際通貨基金(IMF)、欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)の合同調査団「トロイカ」は14日、ギリシャについて声明を発表し、次回支援融資を受ける条件である改革で著しい進展を図っていると評価する一方で、いくつかの問題が残っていると指摘した。
現地での審査をいったん中断したトロイカは声明で「著しい進展が見られるが、問題がいくつか残っている」との見方を示した。
「これらの問題を解決するため、テクニカルな追加的作業が必要」となり、その作業を終えることを優先すると説明。4月初めに再びギリシャ入りし、審査を続ける方針とした。
ギリシャに対する審査は、昨年12月に500億ユーロ近くの同国向け融資実行で合意して以来。現在の予定では、28億ユーロ分の融資が今月実施されることになっている。
ギリシャは3月分の融資を受けるため、既に合意済みの賃金カットや増税のほか、公務員削減の具体案を提示する必要がある。
政府は公務員の削減に消極的だが、肥大化した公的部門の縮小がトロイカとの協議で争点になっているとの観測は否定している。
500億ユーロ規模の銀行資本増強の条件と期限も焦点となっており、銀行は期限までに資本増強を完了できず条件緩和を求めれば、国有化される可能性がある。
ギリシャ第4四半期失業率は26.0%、11・12月はユーロ圏最悪 3/15
ギリシャ統計当局(ELSTAT)によると、2012年第4・四半期の失業率は26.0%と、前四半期の24.8%から悪化した。
とりわけ、15─24歳の失業率は57.8%。前四半期の49.9%から悪化した。
昨年12月の失業率は26.4%と、ユーロ圏平均の11.8%の倍以上となった。11月は26.6%。11、12月の失業率はともに、域内で最悪の水準。
ギリシャのピレウス銀、国内のキプロス銀部門を買収へ 3/22
ギリシャ金融安定基金(HFSF)は22日、同国のピレウス銀行(BOPr.AT)がキプロスの銀行のギリシャ部門を買収すると発表した。
これにより、キプロス危機からギリシャの銀行を保護し、キプロスも膨張した銀行部門を縮小することが可能となる。
同計画をめぐっては、欧州当局の承認を得る必要がある。
HFSAは詳細には踏み込まなかったものの、関係者によると、キプロスの二大銀行バンク・オブ・キプロスBOCr.ATとキプロス・ポピュラー銀行CbpC.CYのギリシャ部門の買収をめぐり、ピレウス銀がアルファ・バンク(ACBr.AT)に競り勝った。
ニュースを受け、ピレウス銀の株価は20%超急上昇した。
キプロスの銀行第3位のヘレニック銀行HBNK.CYのギリシャ部門の先行きに関する発表はない。
HFSAの関係者はロイターに対し「今回の買収にヘレニック銀が含まれるかどうかは不明だ」と話している。
ギリシャ、キプロスの両国はこれに先立ち、キプロスの銀行のギリシャ部門を買収することで合意したことを明らかにしていた。
両国合意の報道を受けて、欧州株式市場は下げ幅を縮小した。
キプロス大統領府は「キプロスのアナスタシアディス大統領とギリシャのサマラス首相の会談後、キプロス銀のギリシャ部門をスピンオフする問題について、現在の状況下で最も望ましい条件で合意が得られたことが確認された。キプロスにとって大きな利点となる」としている。
ユーロ圏財務相は、対キプロス支援の条件として盛り込んだ銀行預金課税について、キプロスのギリシャ部門については対象外としている。ただ、ギリシャ銀への譲渡が条件となっている。
ギリシャ銀の幹部は匿名を条件に「ギリシャ政府と国内銀行システムは、預金に制限を設けることなく、国内のキプロス銀支店を26日に完全稼動させることを目標にしている」と明かした。
また、ギリシャ財務省は同日、キプロス銀行のギリシャ部門について、キプロス中銀と連携し、ギリシャ銀行グループへの移管に着手したことを明らかにした。
ユーロほぼ全面高、キプロス支援合意への期待で 3/23
22日午前中盤のニューヨーク外国為替市場では、ユーロがほぼ全面高の展開となっている。キプロスが来週25日の期限までに対応策をまとめ、金融支援を獲得するとの楽観的見方が高まっていることが背景。
キプロスは、国内銀行のギリシャ支店をスピンオフし、ギリシャの銀行グループに移管することでギリシャ政府と合意。金融支援獲得の条件とされる58億ユーロの不足資金捻出で前進した。
ユーロ/円は、独IFO業況指数が予想を下回ったことで2週間ぶり安値の121.44円をつける場面もあったが、その後切り返している。
キプロスリスク低下し不安後退、「一件落着」かは予断許さず 3/25
キプロス支援策が合意に至り、市場の不安感はひとまず後退している。金融システムの破綻といったテールリスクは低下。株式やユーロには買い戻しが入っている。
ただ、議会承認の必要性など不透明要素が残っているほか、欧州債務問題の根深さをあらためて示したことで、リスクオンの手も鈍りがちだ。預金者負担の衝撃は小さくなく、「一件落着」となるかはまだ予断を許さない。
<2時間粘って合意>
ユーロ圏財務相会合を2時間も遅らせて、粘ったかいがあったか、キプロスのアナスタシアディス大統領は、トロイカのラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁、ファンロンパイ欧州連合(EU)大統領のそうそうたるメンバーらと渡り合い、支援策について合意を得ることができたようだ。当初は銀行2行の閉鎖を提案されていたが、閉鎖はキプロス・ポピュラー(ライキ)銀行1行にとどまった。大口預金(10万ユーロ超)は凍結されたが、小口預金(10万ユーロ未満)を最大手銀行に移管されることが決まった。
支援策が合意されなければ、ECBは緊急流動性支援(ELA)を打ち切る構えさえみせていたことから、市場ではデフォルトリスクも警戒されていたが、日本時間午前8時40分過ぎに支援策の大枠案で合意したと伝わると、ユーロが急伸。ユーロ/円は123円ちょうど付近から123.80円まで上昇した。寄り付き後の日経平均.N225も大幅高となり1万2500円台を回復した。市場では「寄り付き前は売り越しだったが、海外勢の買いが増加した」(外資系証券トレーダー)との声もあった。
三井住友信託銀行マーケット・ストラテジストの瀬良良子氏は「キプロスとEUがなんとか支援策合意にたどりつけたことで、為替市場はいったんリスクオンの地合いに戻るとみている。前週は米経済指標が比較的強めだったにも関わらず、キプロス問題を背景に株価が停滞しリスクオンが後退したが、その後退した分を取り戻す展開を今週は予想する」と話す。
<不透明要素残る>
ただ、大口預金者がどの程度の損失を負担するかはまだ不明だ。市場では「預金残高が10万ユーロを超える場合は40%の課徴金を適用するとの一部報道もある。大口の投資家はさらに警戒感を強める可能性がある」(国内証券)と不安を示す声も残っている。
キプロスは経済規模に対して預金の比率が大きく、預金の半分を非居住者が保有するなど特殊性が強いとして、他国への影響は限定的との見方は多い。キプロスの銀行預金総額は約700億ユーロでGDP(約257億ドル=2011年)の2倍以上あり、そのうちの半分弱を保有する外国人の大半はロシア人とみられている。ただ、預金者に負担を求める「前例」ができたことで、投資家はそうしたリスクを織り込み、以前より慎重になるのではないかとの警戒感もある。
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のダイセルブルーム議長は25日、キプロス金融支援の一環で閉鎖されるキプロス・ポピュラー銀行について、シニア債の保有者も損失を負担すると述べた。キプロスの銀行の負債はほとんどが預金で、シニア・ジュニアの負債が小さく、影響は大きくないとみられているが、投資家にとっては懸念要因だ。
ドイツのショイブレ財務相は、キプロスの支援策について、キプロス議会の承認は必要としない、と語ったが、国内世論の同意を得るためにも議会承認は欠かせないとの見方もある。
<根が深い欧州債務問題>
JPモルガン証券・チーフ債券ストラテジストの山脇貴史氏は、キプロス問題の今後の注目点としては、1)預金流出を警戒して銀行の資本規制を解除できないリスク、2)キプロス国民の不満の高まりを受けた政治不安、3)キプロスへのエクスポージャーの大きいギリシャへの影響──を指摘する。
国債先物中心限月6月限は反落したが、下げ幅は3銭安と底堅い展開が続いている。円債市場には新生日銀による国債大量購入期待という「特殊事情」もあるが、キプロスの支援策について「これで問題が解決するとは思えず、最終的にキプロスの国民世論が大きく左右することになる」(国内金融機関)と慎重な見方も少なくない。30年超長期国債利回りは同3bp低い1.595%と2010年8月以来2年7カ月ぶりの水準に低下した。
日本株も急反発しているものの、商いはやや縮小気味で、前場の東証1部売買代金は9379億円と1兆円割れ。「様子見の投資家も多い」(米系証券トレーダー)という。
シティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏は「キプロス問題が一件落着になったとしても、欧州債務問題は本質的な意味では解決しない。当面は大きな問題が出てこないとしても、来年はスペインやポルトガルの財政健全化目標の最終年となる。現時点で達成の見込みは薄く、秋以降は再び波乱が起きる可能性が高まる」と警戒を崩さない。  
 

 

● 4
ギリシャ企業連盟代表、キプロス危機による景気後退悪化を懸念 4/4
ギリシャ最大の企業連盟、ヘレニック企業連盟(SEB)のダスカロポウロス代表は3日、キプロス危機によりギリシャの景気後退が2013年に一段と悪化する恐れがあるとの懸念を表明し、ギリシャ支援プログラムの下での緊縮財政措置を成長支援策に置き換えるよう訴えた。
ダスカロポウロス氏は記者団に対し、「ギリシャはキプロス危機により直接の影響を受けており、一部の推計によると、これにより国内総生産(GDP)が最大1%失われる恐れがある」と指摘。
「ギリシャに対する支援プログラムの成功が危うい状態となっているなか、リセッション(景気後退)が深刻化しているとの兆候が出ており、2014年に景気が回復するとの見通しは遠のいている」と述べた。
景気後退と緊縮財政措置により国民の忍耐の限界が試されているとし、ギリシャ政府、および国際支援団に対し、これまでに適用されているプログラムを成長支援策に置き換えるよう訴えた。
ギリシャ政府は2013年は4.5%のマイナス成長に陥るとの見通しを示している。
ギリシャの全輸出のうちキプロス向けは約9%。ギリシャ中銀筋は今週、キプロス経済が危機に陥っていることで、ギリシャの2013年のGDPが0.35%ポイント押し下げられるとの試算を示している。
12年ギリシャ財政赤字、政府の銀行支援除くベースでGDP比6%に縮小 4/11
ギリシャ統計局(ELSTAT)によると、2012年の同国財政赤字は政府による銀行支援の影響を除いたベースで対国内総生産(GDP)比6%と2011年の9.5%から縮小した。
政府の赤字削減目標はGDP比6.6%だった。
ただ、ELSTATが欧州連合(EU)の統計局に提出した暫定データに基づくと、財政赤字は銀行支援の影響を考慮したベースで194億ユーロ(GDP比10%)だった。
ギリシャ政府は欧州委員会が同国の財政状況を評価する際に銀行支援を除いた赤字データに注目するとみている。
スタイコウラス副財務相は、データ発表前に記者団に対し「ギリシャは銀行支援を除いた財政赤字データに基づいて評価される」と語った。
ELSTATによると、政府の銀行支援基金であるギリシャ金融安定基金(HFSF)は2012年の財政赤字を77億3000万ユーロ(4%ポイント)押し上げた。
また、2012年の国債関連費用を除いた基礎的財政赤字はGDP比5.0%に達した。ギリシャは2月に発表した2013─16年の財政計画に基づき、今年の基礎的財政収支でGDP比0.3%の黒字を目指している。
2012年の公的債務は3039億ユーロ(GDP比156.9%)。2011年はGDP比170.3%だった。
1月のギリシャ失業率、2006年以来で最悪の27.2%に 4/12
ギリシャ統計当局(ELSTAT)が11日発表した1月の失業率は27.2%と、12月の25.7%(改定値)から上昇し、過去最悪を更新した。
緊縮措置の長期化で景気後退が深刻化するなか、ELSTATが失業データを公表し始めた2006年以降で最悪の失業率となった。
15―24歳の若年層の失業率は59.3%。前年同月の51%から上昇した。
失業率は債務危機が発生した09年以降でほぼ3倍になった。ユーロ圏の平均失業率は12%となっている。
ナショナル銀行のエコノミスト、ニコス・マギナス氏は、季節雇用に支えられ昨年末は改善したものの、第1・四半期は厳しい状態が続いたとの見方を示した。
ギリシャの景気後退は6年目に入っている。今年の経済成長率はマイナス4.5%と予想されている。
金融緩和政策の副作用懸念、金融安定脅かすリスク=IMF 4/18
国際通貨基金(IMF)は17日、世界金融安定報告を公表し、中銀の金融緩和策による副作用に懸念を示した。社債の発行が引き続き増加する中、米連邦準備理事会(FRB)の低金利政策が社債引き受け基準の緩和を助長しているとして、金融安定を脅かしているとの見解を示した。
また、年金基金や保険会社は利回りを追求し、過剰なリスクを抱えている可能性があると分析。米国がまだ現在の信用サイクルにおいて3分の1進んだ段階にすぎないにもかかわらず、こうした状況が起きているとし、通常は2007年のように借り入れ基準の緩和はサイクルの後半に起きると指摘した。
IMFの金融・資本市場部門責任者、ホセ・ビナルス氏は、報告の中で「米国では社債引き受け基準が急速に緩んでいる。これは監視が必要な懸念事項だ」との見方を示した。
IMFはまた、リスク選好の高まりを受けて新興国は不安定な資金フローの影響を一段と受けやすくなっているとした。
全般的には、世界の金融安定は過去半年に改善し、資産バブルの明確な徴候は見られないとの見解を示した。だが政府は警戒を怠らず、構造・銀行セクター改革を断行すべきとし、取り組みを怠れば慢性的な金融危機を招く恐れがあるとした。
IMFはインフレが低水準で推移し失業率が高止まりしている状況下では、先進国は金融緩和を当面継続することが適切としているが、政策担当者に対し超緩和策の解除に伴う影響について検討を開始するよう促した。
ビナルス氏は「患者がまだ治療中のときに薬を止めるべきではないと思うが、その薬の副作用については常に注視すべきだ」と指摘した。
IMFはまた、各国に対し、銀行や企業が過剰なリスクを抱えないよう注視することを促した。
ユーロ圏の銀行セクター問題をめぐっては、キプロス、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペインの銀行で信用が引き続き収縮しており、ぜい弱な一般企業は依然として多くの債務を抱えているとした。
異例の銀行預金課税を盛り込んだキプロス支援策をめぐる混乱は、金融市場が依然としてぜい弱であることを浮き彫りにしたとの見解も示した。
その上で、金融の分断を是正するため、欧州連合(EU)は銀行同盟の実現に向けて引き続き取り組むべきだと指摘した。
世界で長引く低成長、景気刺激策の選択肢が限定的に 4/22
世界的な景気後退局面が終結して3年以上が経ったが、先進国と途上国双方で経済活動が活発さを欠いており、これまでにもっと大幅な回復を見込んでいた当局者らを当惑させ、景気刺激のための選択肢は次第に限られてきているとの懸念が拡大している。
米経済にとっては家計債務の水準が依然として足かせとなっている。ユーロ圏の一部はリセッションから抜け出せておらず、危機的な状況に次から次へと対応しなければならない状況だ。
中国やブラジルといった成長株もガス欠状態で、中国は2012年の国内総生産(GDP)成長率は1999年以来の低水準となった。ブラジルも経済の行き詰まりと、インフレ高進の脅威に直面している。
こうした状況に対して、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議および国際通貨基金(IMF)・世界銀行春季総会に集った関係者の憤りは目に見えるようだ。声明や討議の内容には、長期にわたる危機を制御するための妥当なポリシーミックスをこれまでに実現できていないことに対して、当局者らの苛立ちが反映されていた。
ブラジルのマンテガ財務相は19日、「最悪期は間違いなく過ぎた、と表明することができない」と述べ、「G20やその他の国際的なフォーラムの取り組みにもかかわらず、長引く危機のリスクがある」と指摘した。
先進国の中央銀行が2008年以降、政策金利を過去最低の水準に据え置き、融資や量的緩和を通じて銀行システムに6兆ドル以上を供給してきている。欧州中央銀行(ECB)はスペインやイタリアの借り入れコストが低下するよう支援。アイルランドやポルトガル、ギリシャに対しては緊急支援が行われた。
にもかかわらず、正常な状態に戻るというのは、まだ程遠い夢のようだ。
IMFは先週、2013年の世界経済のGDP見通しを下方修正。先進国は3年連続で成長率が2%を下回ることが予想され、米国の成長率見通しはわずか1.9%となっている。
ワシントンでのG20の会議では、ユーロ圏の状況に対する苛立ちが特に顕著に表れていた。IMFはユーロ圏が2年連続でマイナス成長になると見込む。
インドのチダムバラム財務相は会議の合間に、「欧州が団結しない限り、そして米国に見られる芽吹きが実際に花開いてしっかり成長しない限り、また日本がリフレ政策をとって2%のインフレ率を達成するというほぼ不可能な課題をこなさない限り、またこれら主要国が息を吹き返し、成長を取り戻さない限り、途上国や新興市場はどのようにして高成長を達成できるだろうか」 と述べた。
<日本の刺激策には暖かい歓迎>
日銀による大胆な金融緩和策に対して、新興市場の当局者でさえ楽観的な反応を示したのは、成長への力強い道筋を望む思いを理由として挙げることができるかもしれない。
マンテガ財務相は、主要な先進国で失業率が依然として高く、一層の財政刺激策が必要かもしれないとの見方を示した。これは特にユーロ圏でこのところ、反発が強かった万能薬だ。同財務相は日米などの需要の弱さに、新興市場はいや応なく影響を受けるとしている。
だが、次第に効果が薄れてきている極めて緩和的な金融政策への先進国の過度な依存が、当局者の懸念となっているのも明らか。低金利環境が長引けば、次の危機の種をまくことにさえなりかねない。
韓国のG20関係者は「一部先進国が複数回の量的緩和を実施したにもかかわらず、何も変わっていない」と述べた。
当局者らの憤りは、世界の金融および貿易面でのつながりが数十年前よりも一層深まったことも一因となっている。こうした状況下では、他国を阻害せずに自国に景気刺激策を導入することがより困難となっている。
途上国は、先進国の金融緩和策が資本流入につながり、インフレや資産バブルを加速させて、自国経済を不安定化させることを懸念している。
G20など大きな枠組みでは、こうしたことが緊迫感を生み出す原因となる。IMFの諮問機関である国際通貨金融委員会のターマン・シャンムガラトナム議長は、世界中の全ての人にとって完全に最適な組み合わせの政策はないとしたうえで、将来的なバブルのリスクなく景気を拡大させることができるポリシーミックスを見つけることが鍵だと指摘した。
ギリシャ、第1四半期は基礎的財政収支がわずかな黒字に 4/30
ギリシャ財務省は29日、第1・四半期の利払い費を除いたプライマリーバランス(基礎的財政収支)が9億6700万ユーロと、わずかな黒字になったと発表した。前年同期は23億8200万ユーロだった。
プライマリーバランスは地方自治体や社会保障関連団体の支出が含まれる。
ギリシャのスタイクラス財務次官は今年の目標達成に向けて順調だということを数値が示していると述べた。 
● 5
ギリシャやスペインでメーデーのデモ、緊縮策に反対 5/1
メーデーのきょう、財政緊縮策に反対しギリシャ国内の鉄道やフェリーは運休、病院の職員もストにはいっている。
首都アテネではデモやスト中の暴徒化に備え、約1000人の警察官が警備にあたっている。
ただ、デモ参加者は昨年水準を大幅に下回る見通し。昨年のギリシャの大規模デモでは、約10万人がスローガンを叫びながらアテネ中心部のシンタグマ広場に行進した。
さらに、ギリシャ正教の復活祭(イースター)を数日後に控え、公立学校は休みに入り、多くの労働者は既に旅行に出かけていることから、労組からの参加者も少なくなる見通し。
スペインの各地でも、数千人規模のデモが予定されている。失業率が過去最悪の27%を記録する同国では、2大労組のCCOOとUGTが国内80カ所でデモの実施を労働者や失業者に呼びかけた。
ギリシャを「Bマイナス」に格上げ、見通し「安定的」=フィッチ 5/15
格付け会社フィッチ・レーティングスは14日、ギリシャのソブリン格付けを「CCC」から「Bマイナス」に1段階引き上げた。
経済のリバランスや財政・経常赤字削減の進展を評価しており、ユーロ圏離脱のリスクが低下したとしている。
見通しは「安定的」。
フィッチは「生産の喪失や失業率上昇の代償は大きく、回復能力には依然疑問が残る」としつつも、「ソブリン債務の支援策や財政再建目標の緩和を背景に、中銀調査の景況感は3年ぶり高水準に持ち直しており、ユーロ離脱のリスクは後退した」と指摘した。
ギリシャの格付けをめぐっては、ムーディーズ・インベスターズ・サービスが「C」としているが、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は前年12月、「選択的デフォルト」から「Bマイナス」に引き上げ、見通しを「安定的」とした。
ただ、3社の格付けはいずれも投機的等級。アナリストの間では、ギリシャが最悪期を脱したとの見方に対する懐疑感は払しょくし切れていない。
キャピタル・エコノミクス(ロンドン)のアナリスト、ベン・メイ氏は、「状況は改善しているが、そもそもが非常に低い所からの改善だった」とし、「数カ月前と比べて切迫感は和らいだが、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に関わる問題は依然として存在しているため、最悪期を脱したかどうかは不明だ」と述べた。
フィッチはギリシャ経済について、2013年の成長率はマイナス4.3%になるとし、2014年にはぜい弱ながらも回復するとの見方を示した。
フィッチの予想は欧州連合(EU)/国際通貨基金(IMF)の予想とおおむね一致する。
ただフィッチは、実感可能な景気回復は依然として移ろいやすいと指摘。労働市場などで構造改革は進んだものの、改革に対する強い抵抗が存在することで、救済策の実施に対するリスクが根強いことが浮き彫りになっているとした。
この日の債券市場で、ギリシャ10年債利回りは2010年のEU/IMFによる支援実施以来の水準に低下。ギリシャ政府は2014年上半期にも市場からの資金調達を再開できるとの見通しを示している。
EU、若年層の失業対策への取り組み強化 5/27
欧州連合(EU)首脳らは、若年層の失業がEU内最大の問題とし、今後数カ月以内に対策を強化する方針を明らかにした。
EUのファンロンパイ大統領は、24日付の書簡で、若年層の失業はEUにとり最大の問題と指摘。「6月の欧州委員会は、ひとつの共通目標に向かい全てのレベルでの取り組みをまとめる場となる。その目的とは、やる気のある若者に就労や教育の機会を与えることだ」との考えを示した。
さらに「学校を卒業後4カ月以内に若者が、訓練を受け始めるか、学業を続けるか、もしくは仕事に就くことができるよう確実にする必要がある」とした。
そのえうで、若年層支援策が来年1月までに完全に機能するよう、準備を進める必要があるとした。
最新データによると、3月のEU内失業率は10.9%。ユーロ圏は12.1%。一方、米国の失業率は7.6%。
欧州の統計局が4月末時点に公表したデータによると、EU内の失業率はオーストリアが最も低く、4.7%。次いで、ドイツが5.4%、ルクセンブルクが5.7%となっている。最も失業率が高いのはギリシャで、27.2%。スペイン(26.7%)、ポルトガル(17.5%)と続く。 
● 6
ユーロ圏4月失業率が過去最悪12.2%、景気支援策への圧力高まりも 6/1
欧州連合(EU)統計局が31日発表した経済指標で、ユーロ圏の失業率が過去最悪の水準に上昇し、インフレ率も依然として欧州中央銀行(ECB)の目標を大幅に下回っていることが確認された。ECB、および各国政府が景気支援に向けた措置を採るよう今後圧力が高まる可能性がある。
EU統計局によると、4月のユーロ圏の失業率は12.2%と前月の12.1%から上昇し、1995年の統計開始以来最悪となった。
また、5月のユーロ圏のEU基準消費者物価指数(CPI)速報値は、前年同月比1.4%上昇となり、前月の1.2%からやや加速したものの、2%をやや下回る水準としているECBの目標を引き続き大幅に下回った。
物価上昇が前月からやや加速したことでデフレ懸念は遠のくと見られるものの、ギリシャで若年層の約3分の2が職に就けないなど雇用情勢は悪化しており、失業問題はユーロ圏全体に対する社会的な脅威となっている。
ユーロ圏中核国のフランスでも失業者数は4月に過去最悪の水準に増加、イタリアでは若年層の約40%が失業しており、全体の失業率は少なくとも過去36年で最悪の水準となっている。
こうしたなか一部エコノミストの間では、ECBは単に追加利下げを行うだけでなく、米連邦準備理事会(FRB)が実施しているような量的緩和の実施に踏み切る必要があるとの見方も出ている。ECBは6日に理事会を開く。
クレディ・アグリコル(パリ)のエコノミスト、フレドリック・ドクロゼット氏は、「失業率は2014年中ごろまで安定化しない」と予想。
野村インターナショナル(ロンドン)のシニアエコノミスト、ニック・マシューズ氏は、「ユーロ圏経済が力強く回復するとは予想していない。このため、ECBに対し、さらに標準的、非標準的な措置を採るよう、圧力がかかることになる」と述べた。
ECBのドラギ総裁はこれまでのところ、各国政府に行動を起こすよう呼びかける立場を取っている。
ロイターが調査したエコノミストの間でも、ECBが近い将来に主要政策金利であるリファイナンス金利の引き下げ、および下限金利の中銀預金金利を現在のゼロ%からマイナス圏への引き下げは行わないとの見方が大勢だ。
ただ、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのビスコ・イタリア中銀総裁は31日、中銀の年次会合での講演で、ECBはユーロ圏景気を支援するためにさらなる政策行動をとる用意があるとの考えを表明。
「政策理事会は、新たな情報が入手可能になれば再び介入し、現在の金融政策方針通りの信用状況を維持するために可能な措置は全て検討する用意がある」と述べた。
ECB理事会後のドラギ総裁の発言要旨 6/7
欧州中央銀行(ECB)は6日、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.5%に据え置いた。
下限金利の中銀預金金利も0.0%に、上限金利の限界貸出金利も1.0%にそれぞれ据え置いた。
理事会後に開かれた記者会見でのドラギECB総裁の発言要旨は以下の通り。
<ギリシャ問題への対応に関するIMFの報告書>
誤りを認めるこうした行為は実際のところ、過去に関する認識の誤りだ。つまり、われわれは過去の出来事を現在の視点で評価してしまう傾向があるということだ。4、5年前、ギリシャの調整プログラムに関する議論が行われていた時点では、全般的に現在よりも状況がはるかに悪かったということを忘れてはならない。
<政策決定>
現時点での行動を正当化するほど一方向への変化はなかったというのがわれわれの共通の認識だ。ただ、これまでも述べた通り、ECBは行動する用意があり、今後入手されるすべてのデータを引き続き注意深く見守っていく。
<財政規律を緩めるべきでない>
現在の市場の状況を過度に楽観視すべきではない。現在の市場の状況について、構造改革や競争力の向上を同時に行うことなく財政基準を長期的に緩めることを可能にするものと捉えるべきではない。
<国債買い入れプログラム(OMT)の効果>
近年発表した金融政策措置の中でOMTがおそらく最も成功した例だと言わずにはいられない。OMTを発表するまではデフレリスクが幾分意識されていた。
<キプロスの資本規制>
資本規制はユーロ圏の市場に深刻なひずみをもたらす。われわれは(この問題が浮上した)当時、ECBとしての見解を明確に示した。資本規制は解除時期が早ければ早いほど好ましく、これはキプロスの資金フローの安定とも矛盾しない。だがこれはわれわれの責任ではない。
<フォワードガイダンス>
流動性に関するフォワードガイダンスについてはすでに示してきた。他の中銀が実施しているように、別の種類のフォワードガイダンスには着手していないが、検討している。
<失業>
ECB理事会は、現在見られる失業の水準が景気循環的な要因と構造的な要因の両方に起因すると確信している。景気循環的な要因については、労働市場や全般的な経済活動が、貸し渋りや多くの国で実施されている財政再建に向けた取り組みの影響を受けていることに疑いの余地はない。構造的な要因が複数の国の労働市場で阻害要因となっていることも事実だ。これまでも何度も指摘してきたが、若年層の労働者のみが打撃を被っているようにみられる。そのため各国政府は、労働市場の構造的な弱さを解消するよう尽力すべきと考える。
<銀行監督、銀行清算>
単一の銀行監督機関が役割を引き継ぐまでに単一の銀行清算制度が整備されると確信している。単一の銀行清算当局の存在をめぐる問題は別だ。条約改定を伴うべきかをめぐり見解が分かれている。ただ、単一の清算メカニズムを整備するだけでも大きな進展であり、単一監督機関が責務を引き継ぐ上で一助になる。
<保守的なスタンス>
ECBは市場のボラティリティを高めるような措置はいっさい実施していない。ECBが他の中央銀行で行われているのと同様の措置を実施したという指摘があるとすれば、それには賛同できない。全般的にわれわれは現在、(他の中銀より)はるかに保守的なスタンスをとっていると言えるだろう。
<金利決定は全会一致だったのかとの質問に>
検討した際、変化は直ちに行動を起こすには十分ではないとの総意があった。
<ABS>
欧州投資銀行(EIB)とともに作業を続けているタスクフォースがあり、われわれは当然、ABSを担保として受け入れる可能性を検討する。ただいずれにしても、これは短期的な案ではなく、中長期的な提案だ。
<行動する用意がある>
今後の状況の展開を非常に注意深く見守り、行動する用意がある。
<非標準的政策>
資産担保証券(ABS)、長期資金供給オペ(LTRO)について協議した。追加の銀行ローン債権に関する枠組みの強化や担保政策についても話し合った。
<マイナスの預金金利>
マイナスの預金金利の可能性についても協議した。技術的に実施する用意はできているが、ある程度の意図しない影響があるほか、現時点では他の措置が実施されていることもあり、行動する理由はないと判断した。
<銀行同盟>
銀行同盟の確立に向けた断固とした措置は、(ユーロ圏信用市場の分断化を和らげるという)目的の達成に寄与するだろう。とりわけECB理事会としては、銀行システムの再統合に向けて進む上で、将来の単一監督制度および単一清算制度が不可欠な要素であり、早期の導入が必要だと強調する。
<EUの財政枠組み>
財政・経済政策に関する欧州の新たなガバナンスの枠組みを忠実に適用する必要がある。この点においてECB理事会は、過剰な財政赤字修正の期限延長に関する欧州委員会の決定が今後も特別な状況に限定されることが極めて重要だと考える。
<物価リスクは均衡>
物価動向の見通しに対するリスクは中期的におおむね均衡している。上振れリスクには統制価格や間接税の予想以上の引き上げや商品相場の上昇に関連したもので、下振れリスクには経済活動の減速によるものだ。
<インフレ>
前年比でのインフレ率は年内を通じてある程度のボラティリティを伴うと予想する。中期的な基調物価圧力は、低水準の設備稼働率と景気回復の控えめなぺースを反映し、引き続き抑制されるとみられる。
<成長リスクは下振れ>
理事会は引き続き、域内経済見通しへの下振れリスクを認識している。下振れリスクは、内外の需要が予想以上に弱くなる可能性や、ユーロ加盟国による構造改革が遅れたり十分に実行されなかったりすることなどだ。
<景気は年内に回復>
2012年半ば以降、金融市場が大幅に改善し、ECBが金融政策の緩和的スタンスを維持していることから、年内に景気は回復するとみられる。域内経済活動は安定化し、抑制されたペースになるものの年内を通じて回復すると見込まれる。
<緩和的な政策>
われわれの金融政策スタンスは、必要な限り緩和的であり続ける。今後われわれは経済と金融情勢に関して入手できる情報を非常に注意深く見守り、物価安定の見通しに対する影響があるか評価を行う。
<経済指標の改善>
最近の景況感調査のデータは低水準からの一定の回復を示している。
<物価圧力は控えめ>
ユーロ圏の基調的な物価上昇圧力は中期的に引き続き抑制される見通しだ。
ギリシャ支援めぐるIMFとEUの意見対立が鮮明に 6/7
国際通貨基金(IMF)が5日に公表したギリシャ支援に関する報告書をめぐり、欧州連合(EU)欧州委員会との意見対立が鮮明になった。
IMFとEU、欧州中央銀行(ECB)は2010年にギリシャへの第一次支援を決定。これについてIMFは報告書で、結局2012年にずれこんだ民間保有のギリシャ国債の再編を、10年に始めていればいくつかの面でもっとうまく対応できていたかもしれないとの見方を示した。
報告書は「前倒しの債務再編は、他のユーロ圏諸国には受け入れ難かっただろうが、ギリシャにはより良い結果をもたらしただろう」と指摘。債務再編の遅れは、民間投資家にギリシャ国債を売却する機会を与えて、ユーロ圏各国の政府と納税者に負担を転嫁しただけだったとしている。
IMFのライス報道官はワシントンで記者団に対して「われわれ全員は、一部の取り組みは違う方法で実施できただろうとみなす点で一致していると思う。そして、われわれは教訓を学び、順応したとの考えで欧州のパートナーと足並みはそろっているだろう」と語った。
これに対して欧州委は、第一次ギリシャ支援は極めて困難な状況でまとめられたもので、より早期の債務再編ができたかどうかではIMFとは見解に大きな隔たりがあると強調する。
欧州委のオコナー報道官は会見で「(IMFの)報告書は、2010年に前倒しで債務再編することが望ましかったと主張している。われわれは根本的に同意できない」と断言した。
IMFはまた、ギリシャ支援をめぐり、債務の持続性に関する内部基準を緩めたことと、ギリシャ経済の見通しを楽観視し過ぎた点で失敗を犯したことを認めた。
ギリシャでは、IMFが今になって支援策に盛り込んだ歳出削減や増税が経済に及ぼす影響を過小に見積もっていたと認めたことなどに、国民の間からは怒りの声が出ている。左派系の新聞は一面で「IMFが罪を認める」との見出しを掲げた。
サマラス首相は訪問中のヘルシンキで記者団に対して、IMFが誤りを認めたことは、最初からこうした措置を批判してきた自身の姿勢の正しさを裏付けたとの考えを表明。「そしてわれわれは過去1年間で、これらの間違いを正しつつある」と述べた。
ギリシャ政府のある高官はロイターに対して、IMFがこうした報告書を出したことは、今後同じ過ちの繰り返しが防げる点と、是正措置の必要性が生まれたという点でプラスの材料だとの見方を示した。
ギリシャPASOK党首、サマラス首相に連立政権維持を呼びかけ 6/13
全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のベニゼロス党首は12日、サマラス首相に対し3党による連立政権を維持するよう呼びかけた。
ギリシャ政府は緊縮措置の一環として国営放送のERTを突如閉鎖。これに対し連立政権内からも反対の声が上がっている。
ベニゼロス党首はERTの閉鎖について協議するための党内の会合後に声明を発表。そのなかで、「ERTは民主主義、公正な政府、連立政権の団結、ギリシャの将来の安定性を促進する触媒のような役割を果たすようになった」とし、「理由のない危機を作り出すべきではない」との考えを示した。
ベニゼロス党首はこの日、PASOKとともに連立政権を構成する民主左派党の党首と会談し、ERT閉鎖に対する意見のすり合わせを行う。PASOKと民主党左派はともに閉鎖に強く反対している。
ギリシャ国債利回りが上昇、民主左派党が連立離脱の可能性 6/21
ギリシャの10年国債利回りが4月下旬以来の高水準に上昇している。
国営放送の再開をめぐる協議が決裂したことから、サマラス首相率いる連立政権の一角を占める民主左派党が連立離脱の可能性を20日に示したことで、政治的リスクへの懸念が強まった。
10年国債利回りは70ベーシスポイント(bp)上昇の11.41%。他のユーロ圏周辺国債の利回りは低下している。
ギリシャが内閣改造、ストゥルナラス財務相は留任 6/25
ギリシャのサマラス首相は24日、3党連立政権の一翼を担っていた民主左派党の政権離脱によって政局が揺らぐ中、内閣改造を行った。
政府報道官がテレビを通じて明らかにしたところでは、ストゥルナラス財務相は留任し、引き続き国際支援機関との交渉に当たることになる。
副首相兼外相には、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のベニゼロス党首が就任する。民主左派党の離脱によって、PASOKはサマラス首相が率いる新民主主義党(ND)の唯一の連立パートナーとなる。
現在外相を務めるアブラモプロス氏は国防相に就任。キリアコス・ミツォタキス氏が行政改革相に就くことになり、来年末までに公務員の1万5000人削減を実施しなければならない。
新たな連立合意は数日以内に公表される。サマラス首相とPASOKのベニゼロス党首は財政目標達成を目指すことを繰り返し表明する見込み。ただし、新たな緊縮措置の実施は拒否し、深刻なリセッションの影響緩和に向けて段階的に減税が行えるよう国際支援機関と交渉するとみられる。
ギリシャ連立政権は当面存続可能、EU・IMFには強腰対応へ 6/26
ギリシャでは先週、国営放送ERTの閉鎖問題に抗議する形で3党連立政権の一角だった民主左派党が離脱し、サマラス首相は大きな痛手を受けた。
弱体化した連立政権は当面、何とか事態を乗り切っていける見込みだが、政権基盤確保のために欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)による新たな緊縮措置の要求には抵抗せざるを得なくなるだろう。
サマラス首相は、連立政権が議会においてかろうじて過半数(300議席中153議席)を保つだけになったことで、残る連立相手である全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の慰撫に走り、内閣改造で主要ポストを提供するとともにPASOKのベニゼロス党首を副首相に起用した。
これまでは指名した専門家2人を閣僚級ポストに送り込んだだけであまり口出ししない方針だったPASOKだが、25日に宣誓を終えた新内閣には11人のメンバーが名を連ねている。
PASOKが政権により入り込む形となり、また同党が新たな選挙で党勢が一層衰退するのを恐れている点からすると、サマラス首相が率いる中道右派の新民主主義党(ND)とPASOKだけの連立は、従来の3党連立よりも安定する、というのがアナリストの見方だ。
こうした状況に加えて、ギリシャ国民が再び選挙を実施することに反対しているため、連立政権は曲がりなりにも前に進んでいくことはできるだろう。選挙が行われて急進左派連合(SYRIZA)が勝利すればギリシャのユーロ離脱懸念が再燃し、事態が混乱しかねない。
それでも連立政権が2016年までの4年間の任期を全うすると予想する向きはほとんどいない。そして政権は、EUとIMFが支援プログラムの下で定められた財政目標達成のため追加的な緊縮措置の実行を要請する展開となれば、この秋にも正念場を迎える可能性があるとみられる。
調査会社マークのトーマス・ゲラキス代表は「大半の国民は選挙を望んでいないので、本来脆弱な政府も喜んで受け入れる」と指摘した上で、「政権が本当に生き残れるかは、重大なトラブルなしで諸改革を実行できるかどうかにかかっている」と述べた。
政治リスクを診断するテネオ・インテリジェンスは、連立政権の年内崩壊のシナリオは排除できないとしている。
<改革のハードル>
連立政権にとって大きな試練になるのは、これまでほとんど進ちょくしてこなかった来年末までの公的セクターの1万5000人の削減や民営化加速の計画が、軌道に乗っていると証明することだろう。
政治的に緊密に連帯している各労組は既に、公的セクターの人員削減と民営化の双方への対決姿勢を表明し、港湾労働者は2大港の売却計画に反対する意思表示として26日に7時間のストライキを呼び掛けている。
サマラス首相は、改革推進派のミツォタキス氏を行政改革担当相に起用した。とはいえ、過半数ぎりぎりの議席数で既得権を抱える強力な各種抵抗勢力に挑み、改革を進めていくのは容易ではなさそうだ。
議会では4人の無所属議員や、民主左派党の一部グループがギリシャのユーロ残留のために改革を支持するかもしれないと示唆しているが、彼らが無条件で支持することはありえない。
そして改革策がうまく実行できなければ、今度はEUとIMFから追加的な緊縮措置を求められる恐れが出てくる。
サマラス首相はこれまで、ギリシャをこれ以上の賃金引き下げや失業から救うためにこうした追加緊縮策は行わないと言明してきた。近く発表される2党連立政権の合意事項でも、追加緊縮策を拒絶するとともに、6年目に突入した深刻な景気後退を和らげるために、EUやIMFに緩やかな減税を行うことを主張していく見通しだ。
首相は25日の初閣議で「われわれの差し当たっての優先課題は、前倒しで景気回復軌道に復して失業問題に打ち勝ち、投資を呼び込んで、新たな緊縮措置を回避して若年層向けに雇用を創出することだ」と語った。
<強い態度>
連立与党に属する何人かの議員は、政府がEUやIMFにより強い態度で臨む意向だと示唆している。
PASOK幹部のコスタス・スカンダリディス氏はテレビ番組に出演し、「政府は強腰で交渉する」と述べて、低所得の労働者に対する一段の賃下げや増税は拒否するだろうとの考えを明らかにした。
ギリシャ政府は既に、EUやIMFに対して飲食店や燃料にかかる税率の引き上げを撤回するよう求めてきた。また国営ガス会社DEPAの売却失敗に伴う民営化における収入不足の穴埋めとして、新たな増税ないしは公的セクターの賃下げを行うことに抵抗している。
スカンダリディス氏は「これらが実行されれば、(支援)プログラムは決して機能しなくなる」と強調し、ギリシャ政府としては要求が通らなければEUやIMFに選挙をやると脅しをかけることもできるとの見方を示した。
別のPASOK幹部であるパナギオティス・リガス氏はもっと強硬で、政府はIMFが今月公表した報告書で2010─12年の第一次支援で重大な失敗があったと認めたことを利用して、交渉でより有利な条件を獲得するべきだとしている。
もっともドイツのメルケル首相は、9月の総選挙前にギリシャ問題で再び波風が立たないように懸命な努力を払っているので、それまではギリシャとEU、IMFの間に深刻な衝突は生じないとの見方が支配的。
ギリシャの連立政権にとって重大局面はすぐその後、同国とEU、IMFが2015─16年の財政目標達成のために必要な緊縮額を決める際に訪れるだろう。
EU首脳会議、80億ユーロの若者向け失業対策で合意 6/28
欧州連合(EU)首脳会議は27日、若者の失業対策に総額80億ユーロを充てることに合意した。若者の失業率は、ギリシャとスペインで60%前後、イタリアとポルトガルでも40%を越えている。15─24歳の失業者は600万人近くに達しており、「失われた世代」とも呼ばれている。
対策予算は2月時点の60億ユーロから80億ユーロに増額された。新卒・失業から4カ月以内の若者に職を斡旋したり、職業訓練や見習いを支援する。期間は来年から7年間。最初の2年間に予算を重点配分する。
エコノミストは、今回の対策について、対外的な宣伝にすぎないと批判。首脳からも、加盟各国が対策を講じなければ、効果は薄いとの声が出ている。 
 

 

 

 

●ギリシャ2013/7-12
● 7
ポルトガルとギリシャ情勢でユーロ圏危機再燃も 7/4
ポルトガルの政局不安は、ここ一年間近く落ち着きを見せていたユーロ圏危機が、再燃するかもしれないとの懸念を裏付けた。
ギリシャからキプロス、スロベニア、スペイン、イタリアときて、今度はポルトガル。わずか2日で財務相と外相が辞任し、欧州中央銀行(ECB)がとどめていた市場の静けさを崩すきっかけとなった。
ポルトガルのコエリョ首相は2日遅くの国民向け演説で、外相の辞任を認めておらず、政権運営を維持する構えを示した。
現時点では、最終的には政権が崩壊するとのシナリオの可能性が高まってきている。そうなれば、ポルトガルでは2011年に欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)と合意した支援の条件を満たせるかどうかに注目がすぐ集まることになるだろう。
ポルトガルはこれまで、経済を立て直すために適切な全ての措置を実施し、支援を受けた国として模範であり続けた。この評価が今では維持しづらくなってきている。こうした危機が表面化する前の先月でさえ、IMFはポルトガルの債務の状況が「極めてぜい弱」と指摘していた。
ギリシャが際どい状況に直面した直後に、ポルトガルの政局不安が続き、ユーロ圏は全面的な危機の状態に戻る一歩手前といったところかもしれない。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が昨夏、ユーロを守るために必要なあらゆる措置を講じると発言した後で落ち着きを取り戻した金融市場に、EUの当局者は支えられていた。
欧州委員会のバローゾ委員長は危機の最悪期は過ぎたと発言、レーン副委員長(経済・通貨問題担当)はかつてユーロ圏が崩壊すると予想していた「悲観論者」の主張を一蹴していた。
EUの外交官は、常に表面化しない問題がくすぶっているとし、危機の終結にはほど遠いとの見方を示した。緊急性は薄れたかもしれないが、水面下には混乱を巻き起こしかねない状況があるとの認識で一致しているとした。
2日に行われたユーロ圏17カ国の財務省関係者の会合に参加した1人の関係筋は、ユーロ圏に関する楽観は裏付けられるものがなく、みかけよりも状況は悪いとの認識で一致したことを明らかにした。
JPモルガンのアナリスト、アレックス・ホワイト氏は、ポルトガルの状況が特に懸念されていたと指摘。顧客向けのリサーチノートの中で、ポルタス外相の辞任発表により、短期的な懸念がかなり強まり、現時点でリスクが高まったようだと書いている。
<眠りから覚める危機>
より経済規模の大きいスペインやイタリアにもまた重大なリスクがある。また、スロベニアの銀行セクターの問題、キプロスでの改革の遅れ、アイルランドのスキャンダルのどれもが信頼感を損なうものとなっている。
イタリアのメディオバンカは顧客向けリサーチノートの中で先月後半、借り入れコストが低水準を維持し、景気がある程度軌道に乗らない限り、同国は結局、6カ月以内にEUに支援を要請せざるを得なくなると警告していた。
4月に就任したばかりのイタリアのレッタ首相は、連立政権内に不安要因を抱える。モンティ前首相が経済改革が遅れていることを理由に、支持撤回も辞さない構えを示している。
またスペインはこれまで、国の財政に対する支援を受けずに乗り切ってきたが、銀行セクターの立て直しには長い道のりが残されている。これはアイルランドも同様だ。
IMFは先月、両国の取り組みを評価した一方でリスクも指摘していた。
1人のユーロ圏高官は「ギリシャ以外にも懸念材料が多くあり、その他の問題については、ただ単に夏が過ぎるまで先延ばしにしたいだけだ」と述べた。
支援を受けた国の中で最も評価が高いアイルランドは、年内に支援プログラムから抜け出すことになる見込み。だが、評価が実際の状況より先行しているという問題もある。
EUの関連機関は8月に休暇期間に入るが、危機再燃の可能性がくすぶる中で、不安な夏を回避することはできないかもしれない。
ECB理事会後のドラギ総裁の発言要旨 7/4
欧州中央銀行(ECB)は4日、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.5%に据え置いた。
下限金利の中銀預金金利も0.0%に、上限金利の限界貸出金利も1.0%にそれぞれ据え置いた。
理事会後に開かれた記者会見でのドラギECB総裁の発言要旨は以下の通り。
<現時点で低金利に伴うリスクみられず>
低水準の金利が金融安定への深刻なリスクをはらんでいるとの見解で理事会は一致しているが、現時点でこういったリスクはみられず、フォワードガイダンスを示すことを正当化するすべての要因を確認している。
<緩和的政策からの出口>
前回われわれが発言したこと、さらにはいくつかの公の場での発言を確認することになるが、概して言えばわれわれの出口は非常に遠い。
<マイナス預金金利について>
われわれは依然予断を持たないし、技術的に用意ができている。これは将来についてのわれわれの選択肢に基本的に含まれている。
<ポルトガルでの緊縮は行き過ぎか>
ポルトガルは厳しい道のりの中、非常に大きな成果を上げてきた。新財務相を信頼している。この点においてポルトガルについて安心と感じている。
<コミュニケーションとフォワードガイダンス>
ECB理事会はフォワードガイダンスに関し、極めて大きなステップを踏み出した。コミュニケーションが今後どのような動きになるか憶測することは時期尚早と言える。
<フォワードガイダンスの根拠>
ECBは、金利へのバイアスが下向きとするフォワードガイダンスを示した。この新たな意思伝達手段は、中期インフレ見通しによって正当化されることになる。
<新たなギリシャ債務再編の可能性に関する質問に対し>
ギリシャについては現在調査が進められており、ギリシャは経済(調整)プログラムを継続していくことになる。ギリシャは著しい進展を遂げてきており、これを評価する必要がある。
<利下げについて議論>
利下げの可能性をめぐり、広範な議論を行った。
<下方バイアス>
ECB理事会はきょう、予見可能な将来における金利に下方バイアスをかけた。
<フォワードガイダンス>
ECB理事会はフォードガイダンスに関し、複数の形式をめぐり議論した。(フォワードガイダンス)については全会一致だった。6カ月でもなく、12カ月でもない。長期的ということだ。
<OMT>
ECBの国債買い入れプログラム(OMT)発動の用意は整っている。OMTは効果的な安全網だ。
<経済見通し>
ユーロ圏経済見通しへのリスクは引き続き下向きとなっている。
<金融市場の改善>
最近の動きはあるが、昨夏以降の金融市場全般の改善は、財政再建の進展同様、実体経済に波及していく。
<金利見通し>
ECB理事会は、主要なECBの金利が長期間にわたり、現行水準もしくはそれを下回る水準になると予想する。
<物価圧力>
中期的な基調物価圧力は引き続き抑制されることが見込まれる。
ギリシャ国債利回りが急低下、次回融資確保への期待感で 7/8 ギリ
シャの国債利回りが8日、急低下した。ギリシャが次回融資を確保できるとの期待感を背景に、同国国債は他のユーロ圏周辺国の国債をアウトパフォームしている。
ユーロ圏財務相はきょう、ギリシャへの次回融資について決定するため、会合を開催する。 欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)は8日、ギリシャ支援プログラムについて、ギリシャ政府との間に意見の相違があるとして、先行きは依然として不透明だ、と発表した。しかし、EUとギリシャの当局者は7日、ロイターに対して、ギリシャは融資について合意することができる、との見解を明らかにしている。
期間10年のギリシャ国債利回りは、31ベーシスポイント(bp)低下し、11.10%で推移している。政治的な混乱収拾への動きが出ているポルトガルの国債利回りは、5bp低下の7.14%。また、スペインとイタリアの国債利回りも低下している。
ギリシャ議会が緊縮法案を僅差で可決、70億ユーロ融資可能に 7/18
ギリシャ議会は17日、公務員削減を含む緊縮法案を僅差で可決した。サマラス首相にとっては、6月の国営放送の突如閉鎖や連立相手の政権離脱以来、初めての重要な採決となった。
17日深夜に行われた投票では、293票のうち153票が賛成票だった。法案の通過により、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)からの70億ユーロ(92億ドル)近くの融資が受けられることになる。
今回の法案は、2万5000人の公務員に異動や解雇を行うという非常に異論の多い計画。公務員は主に教師や地方警察官であり、この法案がきっかけとなって現地では毎日のようにデモ行進やストライキが実施されている。採決の時間には約5000人が議会の外に集結し、「われわれは屈しない」とシュプレヒコールを上げた。
採決の前に同首相は、国民の反発を抑えるため、約4年前のギリシャ危機以来初めてとなる減税の計画を発表。8月から、レストランでの飲食にかかる付加価値税率を23%から13%に引き下げると明らかにした。同首相はテレビでの演説で「われわれは山を登り続け、頂上に達する。頂上は遠くない。そして国民にとってよりよい毎日が訪れるだろう」と述べた。
「トロイカ」解散論に反対=欧州委のレーン副委員長 7/18
欧州委員会のレーン副委員長(経済・通貨問題担当)は18日、ユーロ圏債務危機に対処する上で、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)、欧州委員会を合わせた専門知識が必要だと指摘し、3機関による「トロイカ」体制を解散すべきとする提案に反対した。
レーン副委員長はロイターに寄せた電子メールの中で「トロイカは、ギリシャが直面していた危機への主要な対応としてユーロ圏加盟国の主導により2010年に設けられた」と指摘。トロイカが現在対応しているギリシャやポルトガル、アイルランド、キプロスの支援プログラムに触れ、「これらの状況はいずれも容易ではない」とした上で、「だが、何よりも重要なのは、われわれが3機関を結集し、補い合った専門知識を利用できるということだ」と説明した。
欧州委員会のレディング副委員長(司法・基本権・市民権担当)はこのほど、欧州は将来、IMFなしで問題を解決しなければならないと指摘。トロイカの解散を求めていた。
ギリシャの経済リスク後退、15―16年の財政赤字回避も=財務相 7/31
ギリシャのストゥルナラス財務相は、同国が2015―16年に財政赤字を回避できる可能性があるとの見方を示した。また観光業の堅調が続けば今年の経済成長率のマイナス幅が予想より小幅にとどまり、来年はプラス成長を回復するとの見通しを示した。
同相はロイターとのインタビューで、同国は今年、基礎的財政収支が黒字化する公算とし、経済リスクは後退したとの認識を示した。
今後の最大の課題は、緊縮財政による議員の疲弊感に起因する政治的リスクと指摘。「議員はトンネルの出口に光が見えることを信じなければならない。信じれば残りの数少ない必要な措置に対して賛成票を投じるだろうが、信じなければ賛成票を投じないだろう。これが大きなリスクだ」と語った。
欧州連合(EU)の最新予測では、2015―16年のギリシャの財政赤字は対国内総生産(GDP)比で約2%、額にして約40億ユーロになるとみられている。
一方、財務相は、今秋発表されるギリシャの最新予測では、財政赤字を回避するとの見通しが示される可能性があると指摘した。
財政赤字は成長率に非常に敏感に左右されるため、まずは数字を見る必要があるとしたうえで「赤字になる見通しとなった場合、賃金や年金の削減、増税といった措置で埋めることができないのは確実だ。赤字は改革で埋める必要がある」と述べた。
赤字回避は現実的に可能かとの質問に対し「可能だ」と明言し、より高い成長率と財政再建に向けた措置の履行が寄与するだろうとした。
観光業による歳入が予想を大きく上回っているとし、今後数カ月こういった状況が続けば今年の成長率はマイナス4.2%程度にとどまり、来年はプラス成長を回復するとの見方を示した。
多くのアナリストがギリシャに対する追加の債務軽減措置は不可避との見方を強めるなか、財務相は債務軽減措置について語ることは控えた。
「私見では、優先課題は基礎的財政収支の黒字化と来年のプラス成長回復」とし、1―2四半期のプラス成長と基礎的財政収支の黒字化が実現すれば、来年市場で資金を調達することも可能になるとの認識を示した。 
● 8
5月ギリシャ失業率が27.6%に悪化、06年公表開始以降で最悪 8/8
ギリシャ統計当局(ELSTAT)が8日発表した5月の失業率は27.6%と、同局がデータの公表を始めた2006年以降で最悪となった。
4月の改定値は27.0%だった。
失業率は、6月のユーロ圏の平均失業率(12.1%)の2倍以上に達している。
若年層(15─24歳)の失業率は64.9%に達した。
ギリシャ第2四半期GDPは前年比4.6%減、マイナス幅縮小 8/12
ギリシャ統計当局(ELSTAT)が12日発表した第2・四半期の国内総生産(GDP)伸び率は前年比マイナス4.6%と、第1・四半期の同マイナス5.6%からマイナス幅が縮小し、エコノミストの予想(マイナス5.0%)を上回った。
前期比のGDP伸び率は明らかにされていない。
アルファ・バンクのエコノミストは「リセッション(景気後退)は、観光業に支えられて第3・四半期に緩和し、第4・四半期も基準となる期との比較で和らぐだろう」と述べた。
上期のギリシャGDP伸び率は前年比マイナス5.1%となった。国際支援機関は通年の同国GDP伸び率がマイナス4.2%になると予想している。
2008年以降のギリシャの実質成長率は20%超のマイナスとなっている。2013年もマイナス成長となれば、ギリシャのリセッション(景気後退)は6年連続になる。
6月ギリシャ経常黒字は6.6億ユーロに拡大、観光収入急増で 8/19
ギリシャ中央銀行が19日発表した6月の経常収支は、6億6300万ユーロ(8億8400万ドル)の黒字となり、黒字幅が前年同月の7310万ユーロから拡大した。貿易赤字の縮小や観光業収入の急増が押し上げた。
同国最大の収入源である観光収入は前年同月比で21%増の15億9000万ユーロとなった。夏季の観光シーズンに旅行者が増え、海外からの現金の流入につながるという予想を後押しする内容となった。
上半期の観光収入は33億2000万ユーロとなり、前年同期比で18%増だった。
現地の観光業界は通年で観光収入が前年比10%増の110億ユーロになると予想している。観光客は過去最大の1700万人になると見込まれている。
ギリシャの経済危機を受けてホテルやレストランなどが価格を引き下げ、サービスを拡充したことに加え、ロシアからの旅行者のように、長期間滞在し平均支出が多い観光客が増えたことが、観光収入の押し上げ要因となっている。
ギリシャ国債利回り3週間ぶり高水準、独財務相が追加支援必要と発言 8/21
20日のユーロ圏金融・債券市場では、ショイブレ独財務相がギリシャに対する第3次支援実施が必要になるとの見解を示したことを受け、ギリシャ国債利回りが3週間ぶりの水準に上昇した。
ショイブレ財務相は遊説先で、「ギリシャには追加プログラムが必要になる」と発言。これを受け、9月の独総選挙が、発生からすでに3年が経過しているユーロ圏債務危機の大きな転換点となる可能性が意識された。
ギリシャ10年債利回りは28ベーシスポイント(bp)上昇の10.07%となり、ユーロ圏の他の国債をすべてアンダーパフォームした。
ショイブレ財務相は、一段のヘアカット(債務元本の削減)の可能性は否定。メリオン・ストックブローカーズの首席エコノミスト、アラン・マクエード氏は、「ショイブレ財務相の発言はドイツの有権者に向けたものだったと理解している」としながらも、「公的部門の債務再編が行われない場合、債務は持続可能ではないと誰もが考えるはずだ」と述べた。
市場では、ギリシャの債務持続性はドイツを筆頭とする支援各国が損失を肩代わりするかに左右されるとの見方が出ている。
米連邦準備理事会(FRB)が、現在月額850億ドルのペースで実施している国債買い入れの規模の縮小に近く着手するとの観測が高まるなか、このところ新興国から資金流出が加速している。市場関係者は、こうした動きもこの日のギリシャ国債利回りの上昇の背景にあったとの見方を示している。
FRBが緩和縮小を開始する時期について手掛かりを得ようと、21日に公表される7月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録に注目が集まっている。
新興国から資金が流出するなか、独連邦債が上昇。独10年債債利回りは6bp低下した。19日には2012年3月以来の高水準となる1.924%まで上昇していた。
独連邦債先物は68ティック高の140.61で取引を終えた。
ギリシャ、忍耐強い改革の実行が必要=アスムセンECB理事 8/22
欧州中央銀行(ECB)のアスムセン専務理事は、ギリシャ政府に対し経済改革を忍耐強く実行するように求め、同国当局者との協議を終えた。また、改革が実を結びつつあるという見方を示した。
アスムセン理事は、「改革で始めたことを続行し、今までの進展を台無しにせず、忍耐強さを示すようにわたしは求める」と述べた。
「第2・四半期の成長率を見れば、安定化の初期の兆しが見受けられる。ただもちろん、これは痛みを伴う過程で、失業率は許容できない水準に達している」と指摘した。
同理事のギリシャ訪問に際し、ショイブレ独財務相は、ギリシャへの第3次支援が必要になると発言している。
ギリシャ中央銀行の当局者によると、プロボポラス中銀総裁はアスムセン理事に対し、ギリシャの銀行救済プログラム向け資金は80億ユーロ程度の余裕があり、リストラとコスト削減をもってすれば、これが130億から140億ユーロに拡大すると伝えた。年内に行われる銀行ストレステスト(健全性審査)の結果必要となる資本不足の穴埋めを補うのに十分な額になるとみられる。
これまでに決まった対ギリシャ支援は合わせて約2400億ユーロ。
ギリシャ追加支援問題、ユーロ危機再来にはつながらず 8/23
ギリシャ追加支援問題は延々と深夜に及ぶマラソン交渉の再現を予感させるが、これが引き金となって、先にユーロ崩壊の恐れを生じさせた危機的状況が再び起きることはなさそうだ。
通貨ユーロの崩壊はもはや差し迫った危険ではなく、これは1年前にギリシャ救済で合意した際の政治交渉で生まれた連帯感を反映している。
当時、ユーロ圏最大の資金拠出国であるドイツは、ギリシャが財政再建努力の手綱を緩めず、競争力回復に向けた改革を続ける限り、ユーロ圏に残れるよう支援を継続することで合意。ポルトガルに対しても同様の約束を交わした。
しかし、ギリシャがまもなく計画の軌道から外れたことで、欧州の歩みは匍匐前進のよう遅々として進まず、過剰債務と脆弱な銀行部門を抱えて景気後退にあえぐ南欧諸国に対する懸念を鎮めるにはなお遠い状況となっている。
従って、意外にもドイツのショイブレ財務相が今週、ギリシャの追加支援策の必要性に言及した際に金融市場の反応は鈍かったが、混乱の可能性は残っているとコンサルタント会社G+エコノミクス(ロンドン)のレナ・コミレバ氏は指摘する。
コミレバ氏は「ユーロ圏が首尾よく危機を乗り越え、健全な銀行のバランスシート回復に支えられ、米国のように活力ある高い経済成長のサイクルに向かっていくシナリオを我々は描いているだろうか。答えはノーだ」と話す。
ギリシャだけでなく、その後に迫るポルトガルやキプロスの救済策をめぐる再交渉は明らかに次なる火種だ。同氏は「これらの国々は、市場での資金調達という点で自立できる状況からはほど遠い」と話した。
<表面化し始めた重圧>
支援者側の要求は3カ国政府に大きな重圧としてのしかかってきた。景気後退が長引き、EUやドイツから要求を突き付けられるにつれて、3カ国の財政緊縮策努力は政治的限界に近づいていくだろう。
それでも米国のピーターソン国際経済研究所(ワシントン)のジェイコブ・キルケガード氏は、双方に「改革と引き換えの支援」という図式を維持しようとさせる動機があると指摘する。
周縁国を見殺しにすればリスクの伝播を許し、ユーロ圏は非難を浴びるだろう。またギリシャがユーロ圏を離脱すれば、計り知れないコストを支払うことになる。銀行システムの崩壊に始まり、資本逃避とユーロ建て民間債務のデフォルトが起きるからだ。
キルケガード氏は「過去4、5年間にギリシャの経済状況は落ちるところまで落ちたが、これは心不全の状態だ」と話す。
周縁国に対して支援を行っている欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の「トロイカ」はギリシャの支援計画を今夏に見直す予定だ。
バークレイズのエコノミスト、ファブリック・モンターニュ氏(パリ)は、この見直しが「長引く困難な」議論になるとみている。ただ、 見直しは公的部門内での損失負担の割合をめぐる議論に限定されるため、市場に大きな混乱は起きないとの見方を最近のノートで示した。
ギリシャの民間債権者は保有分の大半について損失負担を受け入れており、ギリシャの政府債務の80%以上は公的な債権者が保有している。
さらにギリシャの差し迫った資金の必要性は比較的少ない。IMFは2014─15年の分でまだ手当ができていない必要資金を109億ユーロと試算しており、これは同国が既に受け取った2400億ユーロの支援に比べると極小規模だ。
<市場の落ち着きはまやかしか>
ギリシャは2013年に基礎的財政収支の黒字の達成を見込んでいる。実現すれば、対国内総生産(GDP)の政府債務残高比率の「さらに信頼性の高い持続的な低下」に向け、ユーロ圏加盟国に支援を要請する資格を得るからだ。
民間保有の国債は既に評価減が決まっており、サマラス首相率いる政府が公的債務削減を引き続き進めるにはトロイカと協調するしかない、とキルケガード氏は指摘する。
投資家もそれを承知している。ギリシャとの協議が市場を大きく揺るがす可能性が低いのはそのためで、未だ実施に至っていないものの、ECBの新たな債券買い入れプログラム(OMT)は市場に安心をもたらす支えとなっている。
キルケガード氏は「市場は周縁国で起きたことから教訓を学んでいる。すなわち公的部門の債務再編を達成する最善の方法は、まず宿題を最初に済ませるということだ」と話した。
IMFや多くのエコノミストが考えているように、もし最終的に債務負担の軽減が必要となった場合、ドイツなど欧州の支援国は自分たちが忌み嫌う損失負担をどのように実施するかが試される。
財政移転を禁止する条項を尊重しつつ、例えば最低金利で融資期間を50年に延長するといった手法はメンツの立つ選択肢だ。
最初の試練は恐らくユーロを揺るがす可能性が高い。ECBが来年、域内銀行の監督権限を一手に担う制度変更を控えて、ユーロ圏の銀行に対する資産審査が迫っているからだ。
コミレバ氏は、銀行は資本不足をうやむやにはできなくなるため、債権者や株主は影響をまともに受けるとみている。
同氏は審査によって「銀行の資本増強能力と政府の負担能力について、直ちに疑問が生じるだろう」とした。
ユーロ圏経済が22日のPMI指数で示した兆候に沿って成長を続けられない場合は、こうした疑念はますます深まる。
6月にスペインの銀行の不良債権比率は11.6%を記録した。ユーロ圏に真に必要なのは、銀行部門の不安を和らげる強い景気回復であり、通貨を支える時間的な余裕を与えることだ。  
● 9
ギリシャ第3次支援の想定は現実的=ユーログループ議長 9/5
ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)のダイセルブルーム議長(オランダ財務相)はギリシャへの支援について、現在実施している以上の支援が必要になると想定するのが現実的だとの考えを示した。
また、ユーログループはギリシャ向け融資金利の引き下げを検討する可能性があるが、検討時期は2014年4月以降になると述べた。
国際支援機関はギリシャが、2014年の下期以降、約100億─110億ユーロの支援が必要になると試算している。
ダイセルブルーム議長は欧州議会に対し、「ギリシャ第3次支援の可能性についていえば、最近の進展があるものの、ギリシャの問題は2014年までに完全に解決することはないだろう」と指摘。
「現行プログラムに加えて追加的支援が必要だと想定するのは現実的だ。ユーログループは、ギリシャが市場復帰を果たすまで、現行プログラム下で、さらにはそれ以上に、十分な支援をすると明確に表明してきた」と語った。
同議長はまた、2013年のギリシャ財政データを2014年4月に入手した後、ユーロ圏はギリシャ債務の何らかの追加的減免措置を検討する可能性があるという見方を示した。
「ユーログループは昨年、ギリシャが厳格に条件を満たす場合は、必要ならば融資金利のさらなる引き下げなどの追加的措置を検討することで合意した。来年の4月まで、条件が満たされたかを評価することはできない」と述べた。
第2四半期ギリシャGDPが改善、約3年ぶりの小幅な落ち込み 9/6
ギリシャ統計当局(ELSTAT)が6日発表した第2・四半期の国内総生産(GDP)改定値は前年比3.8%減となり、前回発表値の4.6%減から上方改定された。
観光業の回復が支えとなり、2010年第3・四半期以来、約3年ぶりの小幅な落ち込みにとどまったことで、経済が底打ちする可能性も見えてきた。
第1・四半期のGDPは同5.6%減。上期のGDPは前年同期比4.7%減となった。
前期比の数字は公表していない。
ナショナルバンクのエコノミスト、ニコス・マギナス氏は、今回の内容について予想外に底堅かったとした上で、第3・四半期も同様の流れが続くだろうと予想。「これにより通年目標であるマイナス4.2%の達成は十分可能で、目標超えもあり得る」と述べた。4.2%減は対ギリシャ支援を実施した国際機関による見通し。
GDPの約5分の1を占める観光は今年1─5月の期間に15.5%急増。昨年は約5%落ち込んでいた。当局者らは、今年の歳入が10%増の110億ユーロ、観光客は1700万人と過去最高を見込んでいる。
7月ギリシャ鉱工業生産は前年比8.1%減、CPIも引き続き低下 9/9
ギリシャ統計局が9日発表した同国7月の鉱工業生産は前年同月比で8.1%減少し、減少率は1年4カ月ぶりの大きさとなった。電力生産などの落ち込みが響いた。
ギリシャ経済は景気後退(リセッション)6年目に突入している。2013年は約4.2%のマイナス成長が見込まれている。
統計局によると8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.3%低下となった。賃金の引き下げや余剰生産能力が引き続き物価を押し下げている。
ギリシャの6月失業率は27.9%、06年以降で最悪 9/12
ギリシャ統計当局(ELSTAT)が12日発表した6月の失業率は27.9%となり、5月の27.6%から悪化。同局がデータの公表を始めた2006年以降で最悪となった。
失業率は、7月のユーロ圏の平均失業率(12.1%)の2倍以上に達している。
若年層(15─24歳)の失業率は58.8%に達した。
15─16年ギリシャ財政赤字、GDP比2%を大きく下回る=財務省 9/18
ギリシャ財務省の当局者は、2015─16年の財政赤字が国内総生産(GDP)の2%を「大きく下回る」との見通しを明らかにした。今年の観光シーズンが好調で、景気に好影響を与えるとみられるためだ。
欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は7月の報告書で、財政赤字が2015─16年にGDP比2%、約40億ユーロと推計している。
同当局者によると、政府は今年の経済成長率をマイナス3.8%、来年はプラス0.6%と予測、2015─16年の財政赤字が当初の見込みを下回る可能性が出てきたという。
政府は国際支援機関に対して、広範な追加緊縮策を講じなくても財政赤字の穴埋めは可能と説明する意向だ。
ギリシャの改革は前進、直近の経済指標も好ましい=ECB専務理事 9/19
欧州中央銀行(ECB)のアスムセン専務理事は19日、国際支援機関がギリシャの改革進ちょく状況などを点検するのを前に、同国の改革プログラムが前進し、直近の経済指標も好ましい内容となっているとの認識を示した。
ギリシャ野党、急進左派連合(SYRIZA)のツィプラス党首と会談後、記者団に語った。
ストゥルナラス財務相は、第2・四半期に少なくとも危機開始以降初めて第1・四半期に比べて拡大したと指摘している。
また、ギリシャ統計局の発表によると、第2・四半期の失業率は27.1%と、2009年第3・四半期以来約4年ぶりに四半期ベースで前期から改善した。
専務理事は「成長や今朝の雇用指標は前向きで勇気付けられる内容」と指摘。「われわれの見方では、プログラムは機能しており、前進が見られる」と述べた。
ギリシャを支援する欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)は22日から審査を開始し、改革の進ちょく状況に加え、市場での資金調達再開に先立ち、どの程度の追加支援が必要かを評価する。
今年のギリシャGDPは予想より小幅な4%減に、政府と調査団が一致=関係筋 9/25
欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)などの国際機関は、2013年のギリシャの国内総生産(GDP)が4.0%減と、従来予想より小幅なマイナスになるとの見通しで同国政府と一致した。ギリシャ財務省高官が24日明らかにした。
EU、IMF、欧州中央銀行(ECB)の3機関(トロイカ) はこれまで、ギリシャの13年の成長率はマイナス4.2%と予想していた。
財務省高官の1人は新たな見通しについて「控えめな予想だ」と述べ、さらに小幅なマイナスにとどまる可能性があることを示唆した。
ギリシャ政府は前週、13年の成長率がマイナス3.8%になるとの予想を明らかにし、ギリシャ経済は回復に向かっているとの見解を示していた。
ギリシャではトロイカ調査団が22日から改革の進ちょく状況や追加の資金不足額などについて審査を行っている。
財務省当局者が22日明らかにしたところによると、両者はギリシャの基礎的財政収支が今年、小幅な黒字になるとの予想でも近く一致する見込みという。 
 

 

●10
ギリシャ赤字、EU算出規定で対GDP比3%下回る見通し=当局者 10/3
ギリシャのスタイコウラス副財務相は2日、欧州連合(EU)算出規定に基づく同国の今年の財政赤字が、対国内総生産(GDP)比3%を下回るとの見通しを示した。
今年の予算に含まれる従来予想は5.2%。同相は、従来予想を下回る見通しとなった一因として、ユーロ圏諸国が昨年12月に合意したギリシャ国債の買い戻し効果を指摘した。
同相の言及した赤字予想は、EU統計局(ユーロスタット)の算出規定であるESA95に基づくもので、来週公表される2014年度予算案に含まれる見通し。
ギリシャ銀行株が上昇、米ヘッジファンドが積極投資との報道で 10/7
7日の欧州市場でギリシャの銀行株指数.FTATBNKが1.6%上昇した。著名投資家ジョン・ポールソン氏のヘッジファンドが、同セクターへ積極投資していると伝えられたことが材料。
アルファ銀行(ACBr.AT)とピレウス銀行(BOPr.AT)はそれぞれ0.85%、1.5%上昇した。
ギリシャ、来年後半にも債券市場に復帰へ=財務次官 10/7
ギリシャのスタイクラス財務次官は7日、来年後半にも債券市場に復帰する、との計画を示した。2014年予算案の発表後に明らかにした。
ギリシャは2010年以降、市場から資金を調達できない状況に陥っており、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)から合わせて2400億ユーロの融資を受けることで、資金繰りをつけてきた。直近の救済プログラムの下では、2014年下期までは資金が確保できる。
財務次官は「来年後半の復帰に向け措置をとっている」と述べた。
今年のギリシャ経済は最大4.2%縮小、その後安定化へ=IOBE 10/14
ギリシャの有力シンクタンクIOBEは14日、ギリシャ経済が2013年に最大4.2%縮小する見通しであるものの、安定化に近づきつつあるとの見方を示した。
IBOEは四半期報告書の中で、2013年の国内総生産(GDP)がマイナス4.1─マイナス4.2%になると予想。7月時点の予想である最大5%の縮小から上方修正した。
IBOEは「ギリシャ経済は安定局面に極めて近い」と指摘。「慢性的となっていた双子の赤字は均衡しつつあり、6年間に及ぶリセッション(景気後退)は緩やかに終えんに向かっている」とした。
2013年については、第2・四半期のGDPが予想を上回り、第3・四半期は観光シーズンが好調となったことが寄与し、一段の回復を遂げる公算が大きいとした。ただ、第4・四半期は鈍化することを見込んだ。2014年にはリセッションを脱する可能性が高いとした。
欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)による2013年のギリシャGDP見通しはマイナス4%となっている。
ギリシャがEU・IMFと対立、2014年予算不足額めぐり 10/19
ギリシャは2014年予算の不足資金をめぐり、欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)と対立している。政府当局者が18日、匿名を条件に明らかにした。
ギリシャ政府は新たな歳出削減措置は行わない立場を繰り返し示しているが、追加緊縮策の実施を迫られるのではとの見方も浮上している。
EU・IMFが設定した2014年予算目標に対しどの程度の不足額が生じるかが争点となっており、約20億ユーロと推測するEU・IMF側に対し、ギリシャ政府は約5億ユーロと主張している。
ギリシャ当局者は「債権団は7月まで不足額を指摘していなかったが、急に態度を変えた」と述べた。
EU・IMFは年金基金の損失をギリシャ政府より大幅に見積もっているほか、脱税の横行を理由に、税収も予想に届かないとみているためだという。
財務省高官によると、EU・IMF調査団は今月末に現地入りする予定。
ギリシャ、構造改革実施と行政の効率化加速する必要=欧州委 10/23
欧州委員会は22日、ギリシャについて、財政問題への対策は進展しているものの、景気てこ入れに向けて構造改革の実施と行政部門の効率化を加速する必要があるとの見解を示した。
欧州委員会のギリシャ担当部門は5回目の調査報告書で、税制度の機能改善、中央行政機関の改革、企業を支援し予測可能な事業環境の育成が必要と指摘。企業が市場で問題なく資金を調達し繁栄することによってしか成長と雇用は生み出せないとし、より包括的な中小企業支援策が求められるとの見解を示した。
また、同国経済の活性化に向けた総額76億ユーロの道路建設プロジェクトのほか、中小企業支援で欧州連合(EU)の資金や融資拡大を図っていく方針を示した。
ギリシャの追加緊縮策は不可能、債権団の圧力に屈せず=大統領 10/29
ギリシャのパプリアス大統領は28日、追加の緊縮策実施を迫る国際債権団からの圧力には屈しないとの考えを示した。
ギリシャと欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)の債権団は、来年の予算案をめぐり、不足金額の見通しで対立している。
債権団は来年のプライマリーバランス(基礎的財政収支)で国内総生産(GDP)比1.6%の黒字化という目標をギリシャが達成するには20億ユーロ程度の資金が不足すると予想しているが、ギリシャ政府は不足額を約5億ユーロと見積もっている。
大統領はこの日、第二次世界大戦中に同国がファシズムへ抵抗したことを記念する軍事パレードに出席。式典の後、記者団に対し「(債権団は)ギリシャ国民が脅しに屈すると考えるべきではない。ギリシャ国民が脅しに屈したことはいまだかつてない」と述べた。ただそれ以上の詳細については明らかにしなかった。 
●11
ギリシャ国債利回りが急上昇、独連立協議めぐる動き圧迫 11/13
12日のユーロ圏金融・債券市場では、ギリシャ国債利回りが急上昇。
ドイツの保守系与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と中道左派の社会民主党(SPD)が進める連立協議で、欧州連合(EU)への新規加盟などの重要問題に関し、国民投票の実施を求める案が浮上したことが圧迫材料となった。
この提案はEUレベルでドイツが資金を拠出するケースやドイツからEUへの重要権限の移管などを想定しており、仮に国民投票の実施が認められればドイツ政府の危機対応能力が著しく阻害される恐れがあるほか、ギリシャなど支援に頼る国にも影響が及ぶことが予想される。
コメルツ銀の金利ストラテジスト、デービッド・シュノーツ氏は「域内の支援制度の整備を遅らせるような動きは何であれ、関係諸国の国債に対して一定の価格調整をもたらすだろう」と述べた。
メルケル首相は国民投票について従来から否定的な立場を示しており、今回の提案も受け入れない公算が大きいが、仮に実施が認められれば政策の大転換となる。
10年物のギリシャ国債利回りが43ベーシスポイント(bp)上昇し8.58%。今月初旬時点では7.94%と、債務再編が行われた2012年3月以来の低水準をつけていた。他のギリシャ国債利回りも上昇した。
10年物のポルトガル国債利回りが8bp上昇し5.96%。格付け会社ムーディーズが前週末に同国の格付け見通しを引き上げたことで前日は利回りが低下していた。
独連邦債先物は31ティック安の140.70。一時140.53と10月23日以来の安値をつけた。米連邦準備理事会(FRB)が予想よりも早く金融緩和の縮小に踏み切る可能性があるとみられるなか、米国債の軟調な動きにつられる格好となった。米10年国債利回りはこの日2.4bp上昇し2.77%近辺で推移した。
第3四半期ギリシャGDP、3年ぶりの小幅なマイナス幅 11/15
ギリシャ統計当局(ELSTAT)が14日発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)伸び率は前年比マイナス3.0%と、3年ぶりに小幅なマイナス幅となった。第2・四半期はマイナス3.7%に改定された。エコノミストの予想はマイナス3.1%だった。
前期比のGDPは公表していない。
これにより、1─9月の成長率は前年比マイナス4.0%となった。国際支援機関は今年の成長率をマイナス4.0%と予想している。
ギリシャ経済改革、いくつかの問題が依然残っている=トロイカ調査団 11/21
欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の3機関で構成する「トロイカ」調査団は21日、今後の金融支援をめぐり、ギリシャの経済改革の進ちょく状況に関する調査を終え、まだ問題が残っているとの見解を示した。
トロイカは共同声明で「順調に進展しているが、いくつかの問題がまだ残っている。協議は各機関の本部から継続される」としている。
トロイカとギリシャは、同国の財政目標の達成に必要な予算削減の規模をめぐり意見が分かれている。
トロイカは12月上旬に調査のためギリシャに戻る予定。
ギリシャの物価下落、支援プログラムのリスクとなり得る=OECD 11/28
経済協力開発機構(OECD)は27日、ギリシャの物価下落が同国の金融支援プログラムに対するリスクとなる可能性について警告した。
OECDは、2020年までのギリシャの物価低下率が、国際支援機関の前提を12%上回る可能性があると指摘。これにより、経済成長に悪影響が及び、債務の対国内総生産(GDP)比率が予想よりも高くなるかもしれないと予測している。
ギリシャ株式はこの日、MSCI新興市場指数に再び組み込まれた。これまで10年余りの間、デベロップド(先進国)市場に分類されていたが、格下げとなった。
OECDはギリシャの債務が2020年以前に対GDP比で160%を下回ることはないと予想。ギリシャの支援機関である欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)は2020年に同比率が124%になるとしている。
OECDは、EU・IMFとの予測の差の「3分の2は想定されるデフレの拡大が占める」とし、「デフレ圧力は予想よりも強く、長引く可能性がある」との見解を示した。
OECDは、「インフレ率がマイナスとなるリスクが現実となった場合、ユーロ圏加盟国からの支援を検討する必要が生じるかもしれない」と指摘した。
OECDはギリシャの2014年の成長率がマイナス0.4%になると予想している。一方、ギリシャと支援機関は0.6%のプラス成長をみている。
OECDは、ギリシャが国際支援機関の要請に従って改革を全て実行したとしても、実質成長に「依然として下方」リスクがあると警告した。 
●12
アベノミクスは約束不履行の恐れ=カレツキー氏 12/2
景気に対する楽観論が広がり、株価が毎日のように高値を更新し続ける現在、1、2年後の世界経済で起こり得る失敗を予想してみる価値はあるだろう。
イラン戦争やユーロ崩壊が議題から消え去った今となっては、標準的な反応は米国で新種の金融バブルが崩壊しかねない、といったものだ。しかし、それとは全く異なる、もっと現実的な脅威が世界の別の場所、日本で頭をもたげつつある。
世界第3位の経済大国である日本の国内総生産(GDP)は、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャを合わせた規模に等しい。日本は今年、極めて異例なことに金融的な繁栄と経済成長におけるリーダーとなった。最新の国際通貨基金(IMF)予想によると、日本の2013年の成長率は2%程度と、先進7カ国(G7)中で最も高く、2位のカナダと米国の1.6%を優に上回る。
日本の株価は昨年12月から70%も上昇して米国の25%を大きく引き離し、コンセンサス・エコノミクスによると日本企業の利益は17%増と、ドイツ、米国の3─4%というわずかな増加率とは対照的だ。
安倍晋三首相の選出が経済に喚起した楽観論に心酔した者の一人として、私は現実的な検証の時が訪れたことを危惧する。7月の参院選後に日本を突如として麻痺させたかに見える、慢心による怠慢を観察していると、有名な格言(通常、ケインズ氏の言葉とされる)を思い出す価値がありそうだ。「事実が変われば、私も心変わりする」
私の悲観はアベノミクスの「三本の矢」、すなわち財政刺激、金融緩和、構造改革(成長戦略)に直接起因する。このうち金融緩和の矢はかつてない急スピードで飛んでいる。しかし財政の矢はブーメランと化して景気回復の息の根を止めてしまいそうだ。4月には消費税率が5%から8%に引き上げられるとともに財政支出も一部削減され、IMFによると構造的財政赤字をGDPの2.5%相当圧縮する影響をもたらす。
この大規模な財政引き締めは、今年の米国や2012年のイタリア、11年の英国の財政引き締めに等しく、緒に就いたばかりの日本の景気回復を台無しにするリスクが非常に大きい。安倍政権は他の税金の税率引き下げや公共投資の拡大によって、消費税増税のデフレ的影響の一部を相殺するという曖昧な約束を行っているが、詳細を示していないことには留意を要する。4月に消費税増税が経済を襲うことを考えれば、効果的な相殺措置を提案するために残された時間は短い。
実際、財務省は来年の財政を大きく緩めることに反対のようだ。日本の官僚機構は景気回復を後押しするために「できることは何でもやる」構えとは程遠く、私の予想通り、4月の増税による景気への影響を見極めてから、それを補う措置を提案するという順序を好んでいるように見える。問題は、消費の急減が明らかになるころには、次の景気後退を防ぐのが手遅れになっている恐れが十分あることだ。
金融市場は現在、来年の財政引き締めの危険性を気にかけていない。日銀が景気への影響を相殺すべく、一段と金融緩和を進めると予想しているためだ。日銀は、バランスシートの拡大ペースを今年発表済みの倍増からさらに速め始める可能性が高いが、それがどれほどの役に立つだろう。米国、英国、欧州大陸の最近の経験がいずれも教えるのは、金利がゼロに近く、これ以上引き下げられない状態において、金融緩和の力は財政に比べて弱いということだ。こうした環境下では、金融政策は資産価格を押し上げ資産効果を生み出すことを通じた間接的な働きしかしない。しかも日本で量的緩和によって債券価格を押し上げる余地は、これまでの米英以上に限られている。
最後に、アベノミクスの第三の矢である成長戦略は、矢というより藁に近いことが明らかになりつつある。7月の参院選後に待望された構造改革計画の大半は静かに忘れ去られた。労働市場と賃金の自由化、税制改正、原子力の回復、企業統治改革、サービス産業の規制緩和、年金基金運用の再配分などは、いずれも破棄されたか、先延ばしを繰り返している。確かに、環太平洋連携協定(TPP)に参加したことで一部の通商改革は活発に検討されている。しかしそれらの改革は主に農業絡みで経済活動を大幅に刺激する可能性は小さく、特に1、2年の時間軸では望み薄だ。
来年の消費税増税の影響を相殺する上で最も期待されるのは大幅な賃上げであり、トヨタ自動車など一部の主要企業はその意向を示している。しかしながら、最大手級で最も高収益の企業以外にそうした寛容さが広がる兆しはほとんど見られない。日本経済新聞が11月最終週に公表した調査によると、内部留保を給与の引き上げに充てると答えた企業は7%にとどまった。日経新聞によると、内部留保が6900億ドルと過去最高水準に積み上がっているにもかかわらず、大半の企業は「賃上げに慎重な姿勢を維持」している。大半の予想では、来年の春闘での平均賃上げ率は1%前後と、インフレ率にはなんとか追いつくが、消費税増税の影響を相殺するには不十分な水準にとどまりそうだ。
もちろん、日本経済を取り巻くこれらすべてのリスクを金融緩和が圧倒する可能性はある。金融市場が現在示唆しているのはそうした姿であり、市場のメッセージを無視することは禁物だ。しかし、金融市場の予知能力を信じたいなら、日本に対して強気に傾き過ぎるより、ウォール街やロンドン、香港、フランクフルトで拡大する楽観論に留意する方が安全なように見える。
ギリシャでデフレ強まる、11月インフレ率は過去最大のマイナス 12/9
ギリシャの11月インフレ率は前年比マイナス2.9%となり、1960年の統計開始以来の大幅なデフレを記録した。統計局によると、欧州連合(EU)基準のインフレ率は10月のマイナス1.9%から低下幅が拡大、予想のマイナス1.7%以上となった。
厳しい景気低迷、給与カット、大幅な余剰設備が重なり、物価下落を招いている。
ギリシャの9月失業率、27.4%に悪化 12/11
ギリシャ統計当局が発表した9月の失業率は27.4%となり、前月・前々月の27.3%から小幅に悪化した。
この失業率の水準は、9月のユーロ圏平均(11.6%)の2倍以上。同国では、緊縮財政を背景に6年間、景気後退が続いている。
若年層(15─24歳)の失業率は51.9%だった。
ギリシャ経済が来年回復へ、6年間の景気後退から脱却=中銀 12/17
ギリシャ中央銀行は17日、同国の経済が来年、6年続いたリセッション(景気後退)から脱却し、回復し始めるとの見通しを公表した。また、今年の国内総生産(GDP)伸び率予想をマイナス4.6%からマイナス4.0%に上方修正した。
今年は基礎的財政収支が黒字化し、経常収支も黒字になると予想している。
中銀は、政治の分極化した状況が景気の回復見通しにとってリスクだと指摘。対立する政治家に対し、危機から脱却するために国家政策で合意点を見いだすよう呼びかけた。
中銀は金融政策の中間報告で「景気が安定の道筋をたどっていることがはっきり示されるようになっており、リセッションが来年終了し、景気回復が始まると予想する根拠はある」と表明した。
週内に対ギリシャ融資10億ユーロ実施へ=ユーログループ議長 12/18
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の議長を務めるオランダのダイセルブルーム財務相は17日、週内に10億ユーロ(14億ドル)の対ギリシャ融資を実施すると明らかにした。
ギリシャは公的セクターの近代化や司法制度改革を実施するとともに、水道会社2社の民営化に道筋をつけたとして、融資実施に必要な措置を講じたとしている。
欧州の銀行改革、曲折伴いながらも前進続く 12/24
欧州連合(EU)では、物事がすんなりとは進んでいかない。先週、EUの財務相理事会で合意した域内銀行の破綻処理制度は、各国が生み出した、不格好で安定性に欠ける妥協の産物の典型といえる。
銀行同盟という欧州統合における最も大きな飛躍に向けたこの制度によれば、来年から欧州中央銀行(ECB)が域内の126の大手銀行を一元的に監督するのに合わせて、新設する「破綻処理委員会」が銀行解体や清算の時期を判断し、金融セクターから集めたお金で作る基金が処理の裏付けになる。
ただし今年5月のキプロスに対する救済の例に基づき、銀行の株主や債権者、大口預金者があらゆる損失を負担した後ではじめて、各国の、そして最終的には欧州全体で一元化する基金から資金が拠出される。
もっとも銀行の清算を命じるために必要な手続きが複雑であることや、意思決定が多層化する可能性、当初は域内共通の資金的なバックストップが存在しないことから、この不安定な新制度は機能しないばかりか、弱い銀行と加盟国の間で「破滅のループ」が起きるとの批判が出ている。
破綻処理の基金にお金が集まるまでには10年かかり、基金が市場から資金調達できるのかどうかもまだはっきりしていない。
エコノミストからは、基金が整備される前に、ECBが来年行う域内銀行に対するバランスシートチェックとストレステスト(健全性審査)で巨額の資本不足が判明した場合、どうなるのかと疑問が投じられている。
だがこうした批判は理論上は正しいものの、重要な点を見逃している。それはEUが金融・経済危機の4年間を通じて改革を途切れさせないという強い決意を示してきたということだ。
<欧州の決意>
そうした決意は、ECBのドラギ総裁が昨年7月にユーロ防衛のためにあらゆる手段を講じると表明し、ユーロ解体の思惑を打ち砕いたことに最もよく表れている。
総裁が打ち出した、国際支援プログラムを受け入れたユーロ圏加盟国の国債をECBが買い入れるという仕組みはこれまで発動されておらず、今後も発動されないかもしれない。それでも総裁の言葉によって、市場は落ち着きを維持している。
一方で銀行同盟については、域内の債務国と債権国、ユーロ圏加盟国と非加盟国の利害が対立したため複雑な形の解決を図らざるを得なくなり、直ちに全面合意できなかったこれまでの問題と同様に、まずは日程表を設定して厄介な詳細部分を段階的に詰めていく方式が採られた。
このため破綻処理基金は、銀行からお金を集めて最終的に10年後に一元化される形になった。
複雑性や進行の遅さ、中間地点の設定、将来に向けた意思表示などはすべて、連邦国家でも単なる国際機関でもないEUという壮大な構造物を建設し、手直ししていくための手段の一部だ。
単一通貨のユーロはこのようにして誕生し、それは不完全な姿であり、時間をかけて新たな性格を形成していかなければならないと創設者たちは承知していた。
EUの銀行同盟に向けた取り組みに対する批判の大半は、米連邦預金保険公社(FDIC)の態勢との比較でなされてきた。
EUもいずれはそうしたシステムに到達するかもしれないが、当面は主要な資金の担い手であるドイツにそこまで踏み込む準備ができていない。
メルケル首相は国内の納税者に他国の銀行の救済義務を負わせないと決めて、破綻処理基金が欧州安定メカニズム(ESM)から与信枠を供与されることはないと主張し、憲法裁判所の審査も回避しようとしている。
<自転車運転>
破綻処理制度の実施面においては、銀行の閉鎖は理論上の側面よりも単純になる可能性がある。なぜなら緊急時には、どの加盟国の当局も破綻処理委員会の勧告に異議を唱えそうにはないからだ。
実際には同委員会トップとECB、欧州委員会の間で電話を数回やり取りするだけで決着してしまうかもしれない。
この制度が機能しないようなら、恐らくは週末に事態が打開されることになる。それこそまさに欧州流の解決手法といえる。
たとえば2010年5月の2回の週末では、EU財務相理事会が1回目にはギリシャ支援を、続いてそれが市場の沈静化に不十分だと判明すると2回目には一時的な救済のための基金を創設することに合意した。
その後により大規模な恒久的な救済基金が登場したわけだが、それでも資金拠出は満場一致が必要とされ、ドイツなどは拒否権を確保している。
これは巧妙なやり方ではないように思われる。しかしそれでもEUは前進を続けている。これまでに相応の政治資源を投入しているばかりか、特にドイツでは通貨統合と単一市場が解体してしまった場合に直面する損失がどれだけ大きいかが強く認識されているためだ。
欧州の当局者は長い間、統合作業を転ばないために走り続けなければならない自転車の運転にたとえてきた。
この自転車は進行スピードがあまりにも遅く、真っ直ぐというよりもジグザグの軌跡をたどる場合があるが、先週の銀行破綻処理制度の合意からはともかくもなお前方へ向かっていることは明らかだ。
株式リターンの新興国トップはギリシャ、発展途上国はブルガリア 12/31
MSCIの新興国株価指数.MSCIEFで2013年のドル建てリターンが最も高かったのはギリシャ、発展途上国株価指数(フロンティアマーケット・インデックス).dMI7400000PUSではブルガリアがトップだった。
ギリシャ.MIGR00000PUSは、先進国から新興国に分類ステータスを格下げされ、11月に新興国株価指数に組み入れられた。しかし、指数構成国の見直しを見越したファンドマネージャーのポジション調整を背景に、非常に低い水準から大きく押し上げられ、今年の同国のリターンは50%を超える伸びとなった。
新興国分類で2位はエジプト。モルシ前大統領の失脚後に近隣中東諸国から受けた120億ドルの支援が好感された。
最下位はペルーで、鉱物価格の下落などが響いた。現在も内政の混乱が続いているトルコが下から2番目となった。
発展途上国でトップとなったブルガリアは、リターンが98%の伸びとなった。
隣国ギリシャとの銀行、貿易分野での密接な関係が懸念され昨年まで他の新興・発展途上国に遅れをとっていたが、今年は挽回する格好となった。
2位はエネルギー資源のほか金融サービスに強みを持つアラブ首長国連邦(UAE)で、地政学的に不安定な中東地域での逃避先となったことも奏功した。
発展途上国での最下位はウクライナ。債務不履行と通貨切り下げの回避に向けて、ロシアと150億ドルの緊急支援受け入れで合意した。 
 

 

 
 
 
 2014

 

●ギリシャ2014/1-6
● 1
ユーロ圏金融・債券市場・終盤=周辺国国債上昇、指標改善を好感 1/4
3日のユーロ圏金融・債券市場では周辺国国債が上昇。スペインの失業者数が大幅に減少したことや、ポルトガルの2014年予算案をめぐり同国大統領が政府を支持する立場を示したことで、ユーロ圏が危機から脱却しつつあるとの期待が高まった。
スペイン政府が発表した12月の登録失業者数は前月比2.24%減少し、12月としては最大の減少幅となった。
ポルトガルでは大統領が2日、同国の2014年予算案は憲法に違反しないとの法的助言を得たと表明し、憲法裁判所による違憲審査を求めない方針を示した。
スペイン10年債利回りは8ベーシスポイント(bp)低下の3.9%、ポルトガル10年債利回りは17bp低下の5.7%。ドイツ連邦債との利回り格差はスペインが2011年5月以降初めて200bpを下回り、ポルトガルも約375bpと、2011年2月以来の水準に縮小した。
イタリアやアイルランド、ギリシャの国債利回りも低下した。
インベステックの首席エコノミスト、フィリップ・ショー氏は、ユーロ圏危機が終わりを迎えたとの見方が市場では強まっていると指摘し、「債務の悪循環から抜け出し、好循環に向かっている。景気の改善が財政を支え、信頼感回復などにつながっている」と述べた。
中核国債券は今年、比較的慎重なスタートを切っており、10年物独連邦債先物は3ティック安の139.09で清算。10年債利回りは横ばいの1.94%となった。
2014年のユーロ圏経済を警戒すべき理由 1/7
昨年のユーロ圏は、ギリシャで巨額の財政赤字隠しが発覚した2009年以降で最も静かな1年だった。わずか1年あまり前に単一通貨圏の崩壊を予測したエコノミストらも含め、市場のコンセンサスは、ことしも昨年同様に穏やかな1年になるというものだ。
改革の実行に向けた政治的意思は固く、欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏を支えると公言して以来、債券市場からの圧力は食い止められており、ことしのユーロ圏は小幅ながらプラス成長が見込まれる。
スペイン、イタリア、ポルトガルが景気後退を脱し、ギリシャも年内に後に続く見通しだ。
それでも警戒すべき理由は十分にある。
<欧州議会選挙>
高失業率と財政緊縮疲れに加え、芳しくない域内の経済成長を背景に、5月の欧州議会選挙は少数政党が躍進する絶好の機会となる。識者の間では、仏極右政党・国民戦線(FN)、英国独立党(UKIP)、ギリシャの左派連盟シリザなど欧州統合に反対する政党が20%かそれを上回る議席を獲得するとの予想も出ている。そうなれば、法案の議決が多数決により行われる以上、欧州連合(EU)の主要党派は路線変更を迫られ、欧州の統合プロセスを前進させる能力に疑問符が突き付けられる可能性がある。野村証券のシニア政治アナリスト、アラステア・ニュートン氏は「議会選挙の結果、主要党派がEU懐疑色を強め、年後半に予定されている欧州委員長の選任や、銀行同盟関連の法案成立作業は複雑化するおそれがある」と指摘する。
<ストレステスト>
EUの銀行同盟創設に向けた当初の計画は薄められたのが明白だ。つまり、少なくとも今後数年間にわたり、経営難に陥った銀行の資金支援は究極的には自国政府の枠にとどまる。その結果、不健全な銀行と債務国の「死の連鎖」を断ち切れない状況は続く。11月からユーロ圏の銀行監督権限が一元化されるのに先立ち、ECBは欧州の大手行を対象とするストレステストの結果を公表する。銀行が資本増強を実施済みであることを考えれば、結果が大きな衝撃を与える可能性は限定的だ。それでも、ストレステストが終了するまで銀行貸し出しは抑制的な状況が続く公算が大きく、景気回復にも妨げとなる。しかも現在の銀行同盟の構造のままでは、将来に危機が再燃する余地が残されたままだ。
<ドイツ憲法裁>
ユーロ圏について明るい見方が広がっている主な原因は、市場がECBの設けたセーフティーネットを試すことに後ろ向きなためだ。ただ、1点のほころびによって事態が急変する可能性もある。ドイツの憲法裁判所は近く、導入以来一度も活用されたことがないECBの債券買い入れプログラムの合法性について判断する。同憲法裁はこれまで、ドイツ連邦議会の動きには監視の姿勢を強めながらも、危機対応策を真正面から否定することはなかった。だが、もし憲法裁が極端な判断を下せば、債券市場は再び単一通貨圏の弱小国への攻撃再開を宣言し、危機は再燃するだろう。
<改革意欲>
ECBは常々、財政難に陥った国が成長に向け必要な債務削減と経済改革法案の成立によって経済立て直しを図るため、ECBが時間稼ぎをしているのだと強調してきた。一番の火種は10年間にわたる景気停滞と団結力に欠ける連立政権を抱えたイタリアと、新たな景気後退のがけっぷちをさ迷っているフランスだろう。ベレンベルク銀行はユーロ圏の年次レビューの中で「フランスは欧州の主要国の中で唯一、健康状態に深刻な問題を抱えており、多くの対応策が実施されていない」と指摘している。オランド大統領は年頭演説で、雇用を増やした企業に対する税負担を軽減する提案を明らかにした。しかし、オランド大統領の支持率は過去最低水準で、大幅な改善は見込めない状況だ。緊縮疲れが最も強く表れているのは、債務危機の火付け役となったギリシャだ。連立政権は議会内で過半数を3議席上回るのみで、公的支援に反対する野党シリザは世論調査で支持率を上げている。このため政権は一段の歳出削減を容認しない方針で、財政を持続可能な軌道に回復させるにはさらに債務負担の軽減が必要になるだろう。
<デフレの懸念>
可能性は低いものの、仮にデフレが定着すれば欧州にとって最大の脅威となる。日本型の失われた10年の到来の可能性が高まり、国家債務の返済は一段と困難になるだろう。ユーロ圏の物価上昇率が0.7%にとどまったことで、ECBは昨年11月に利下げを迫られた。だが、日本が最終的に息を吹き返すきっかけとなった大規模金融緩和策のような対応に加盟国の多くは公然と異を唱えている。デフレに陥ることがなくても、債務削減計画や構造改革の遅れによって、ECBによる追加の対策実施が必要になる事態も予想される。ユーロ圏が過去に示した歴史というのは、市場の圧力がいったん和らぐと政策当局者は緊迫感を失い、圧力が強まるとぎりぎりの段階で防御策の強化に走るという事態の繰り返しだ。コンサルタント会社ルウェリン(ロンドン)のエコノミスト、ラッセル・ジョーンズ氏は「意外なほどに平穏だった2013年と比較すると、2014年はユーロ圏の金融市場にとって一段と困難で危険な年になる。しかし、差し迫ったユーロ圏崩壊の危機を予測するのは体系的に的外れであることが既に証明済みだ」と話している。
2013年のギリシャ中央政府の基礎的財政収支は黒字、追加支援に道 1/15
ギリシャ政府が14日発表した昨年の中央政府の基礎的財政収支は、6億9100万ユーロの黒字となり、追加の国際支援への道が開けた。
通年で基礎的財政収支が黒字化すれば、ユーロ圏や国際通貨基金(IMF)の追加支援を申請できることになっている。地方政府や年金基金を含む収支が黒字になる必要があるが、ギリシャ政府は達成可能と予想している。
スタイクラス財務次官は記者団に「ギリシャ国民による多年にわたる大きな犠牲を経て、今年の基礎的財政収支は黒字を達成する」と述べた。
ギリシャ政府は、地方政府や年金基金を含む昨年の基礎的財政黒字が、国内総生産(GDP)比で0.4%の8億1200万ユーロと見込む。今年はGDP比で1.6%への増加を目指している。
第3四半期のユーロ圏政府債務残高は6年ぶり減少 1/23
欧州連合(EU)統計局によると、2013年第3・四半期のユーロ圏の政府債務残高は8兆8420億ユーロ(11兆9800億ドル)と、域内総生産(GDP)比で92.7%となり、前四半期の93.4%から低下した。
債務残高は2007年第4・四半期以来、約6年ぶりに減少し、ユーロ圏がソブリン債務危機脱却に向けた転換期にある兆候を示唆した。
対GDP比率は2012年第3・四半期の90.0%から上昇したものの、欧州委員会は今回の統計について、ほぼ予想通りとの見方を示し、「(債務の)安定化は過去2年にわたる財政健全化の努力や景気回復の結果だ」と指摘した。
国別の政府債務は対GDP比でドイツが78.4%、フランスは92.7%にそれぞれ低下した。
イタリアは、ピークとなった前四半期の133.3%から132.9%に低下したものの、依然としてギリシャに次ぎ域内で2番目に高い水準となっている。
ギリシャは171.8%と、前四半期の168.8%から上昇。スペインも92.2%から93.4%に上昇した。
ポルトガルは前四半期の131.3%から128.7%に低下した。
INGのエコノミスト、カーステン・ブレゼスキ氏は「安定化の兆候を見せているユーロ圏の全体的な状況と一致する明るい兆しだ」と述べた。
ただ、大半のユーロ加盟国の政府債務はEUが上限とする対GDP比60%を依然として大きく上回っており、上限内に収まっているのはエストニアとラトビア、ルクセンブルク、スロバキアのみ。
1月からユーロ圏に加わったラトビアの政府債務は、13年第3・四半期の統計には含まれていない。
株安/円高に身構える政府・日銀、一部に楽観論も 1/27
急激な株安/円高に対し、政府・日銀が身構えている。従来はドル高/円安要因とみられていた米金融緩和の縮小が、新興国経済からの資金流出を加速する要因と位置付けられ、海外市場でリスク・オフムードが急速に広がっているためだ。
現時点で日本経済への影響については楽観視する声もある中で、株安と円高が一段と進む可能性があるのかどうか、政府・日銀は情報収集を急いでるもようだ。
27日の日経平均.N225は、一時前週末比400円を超える大幅安となった。外為市場でもドル/円が一時、101.77円と2013年12月6日以来の円高水準となった。
安倍晋三政権は政権の支持率に大きな影響を与えかねない株価の動向に神経をとがらせており、日経平均先物の動向を注視しているという。
菅義偉官房長官は同日午前の記者会見で、株安/円高について「市場に無用の混乱を招くためコメントしない」としつつ、「背景に米金融緩和に関する市場の思惑と新興国経済への懸念がある」と指摘。「今後の金融市場の動向と影響には、引き続き注視していきたい」と述べた。
政府内では前週末時点で「欧州もギリシャ問題は解決しておらず、リスクは色々とある」(政府高官)との声も聞かれたが、政権の支持率に影響があるとされる株価の先行きなどについて、急激な変調を予測する声は少なかった。
日銀は22日の金融政策決定会合で、米国で財政協議が進展し、金融緩和の縮小が市場に混乱を引き起こすことなく開始されたことから「(米経済の)不確実性が低下した」と判断。世界経済の先行きについての判断を小幅上方修正し、昨年12月の決定会合まで声明文に記載されていた「世界経済をめぐる不確実性は引き続き大きい」との文言を削除したばかりだった。
だが、その直後の欧米市場では、くすぶり続けていた中国の理財商品をめぐるデフォルト(債務不履行)懸念や予想外に弱かった経済指標などに加え、アルゼンチンの通貨急落などが拍車をかけ、米金融緩和縮小が新興国からの資金流出を加速しかねないとの懸念が高まった。
政府・日銀など政策当局の関係者は、市場の変動が急激だとして、27日朝から情報収集に努めているが、マーケットの変動が大きくなったのが、東京市場の終了した24日夜からだったため「情報収集はこれから」(ある政策当局者)との声も聞かれた。
一部には新興国から流出した資金が日本株に流入するとの期待も聞かれるが「海外投資家の円買いと日本株売りはセット」(外資系証券)のため、市場のリスクオフムードが継続する限り、円高と株安が続く可能性もある。
ギリシャ国債利回り低下、新興国売りが一段落 1/29
28日のユーロ圏金融・債券市場では、高リスク資産の売りが一段落する中、ギリシャ国債利回りが低下した。ただ、ギリシャがユーロ圏諸国の中で新興国市場の混乱に伴う影響にもっともぜい弱との見方から、同国の国債利回りは引き続き年初来の高水準付近にとどまっている。
前週始まった新興国売りは一服の兆しを示している。
トルコ中銀はこの日、リラ急落を受け、緊急会合を開催。リラ防衛に向け断固とした措置をとる姿勢を鮮明にした。市場では利上げが見込まれている。緊急会合の結果は現地時間29日午前零時(日本時間29日午前7時)に発表される。
ただ、28─29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果次第で新興国売りが再燃するとの懸念がくすぶる中、多くの市場参加者が高利回り債へのエクスポージャーを拡大することには消極的となっている。
ギリシャ10年債利回りは8ベーシスポイント(bp)低下し8.67%。前日は8.90%まで上昇していた。
ポルトガル10年債利回りは7bp低下し、5.14%。
イタリア、スペイン国債利回りも低下した。アナリストは、週内に行われる国債償還やクーポン支払いが両国の国債を支えていると指摘した。
イタリア10年債利回りは5bp低下し3.85%。スペイン10年債利回りも6bp低下の370%となった。
また、イタリアが同日実施した2年物ゼロクーポン債とインフレ連動債(2018年9月15日償還)の入札では強い引き合いがあり、ゼロクーポン債では利回りがユーロ導入以来の低水準となった。
ギリシャ13年基礎的財政収支、10億ユーロ超の黒字見込み=首相 1/31
ギリシャのサマラス首相は30日、2013年の基礎的財政収支が10億ユーロ以上の黒字になる見込みだと明らかにした。黒字化は追加の国際支援の申請に必要とされている。
首相はまた、2016年までの任期を全うする意向を示した。今年早期の選挙を実施するという憶測が出ていたが、これを打ち消す格好となった。
今年5月に欧州議会選挙を控え、世論調査では最大野党、急進左派連合(SYRIZA)の支持率が上昇しており、首相に圧力がかかっている。
首相率いる新民主主義党の党員に向けた演説でサマラス氏は、SYRIZAが無責任だと批判し、現在の取り組みを継続するよう訴えた。 
● 2
ギリシャと支援機関、2014年予算不足問題で大筋合意 2/5
ギリシャ政府は、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の3機関で構成するトロイカ調査団との間で、2014年の予算不足をめぐる問題で大筋合意した。2人の関係筋が4日明らかにした。これにより次回の49億ユーロの融資に向けた協議継続への道が開かれた。
次回融資に向けた条件の進捗審査は昨年9月に開始したが、予算不足見をめぐる問題で断続的に中断していた。
14日に発表された2013年の中央政府の基礎的財政収支が6億9100万ユーロの黒字と、予想外に強い結果となった。通年で基礎的財政収支が黒字化すれば追加支援を申請できることになっているため、予算不足額の見解に関する問題は主な争点から外れたという。
収支は地方政府や年金基金を含めた財政収支で黒字になる必要があり、この数字は4月まで発表されない。このため別の関係筋は、すべての問題が解決したとみるのは時期尚早だと指摘した。ギリシャは、2013年の基礎的財政収支は10億ユーロの黒字になると予想している。
追加支援の決定までにはなお、ギリシャ政府とトロイカが銀行のストレステストの条件や構造改革、支援の条件に含まれている警察官・軍人の給料削減を違憲としたギリシャ国家評議会の判断などの問題で合意する必要がある。
ギリシャ失業率が過去最悪の28%に上昇、昨年11月 2/14
ギリシャ統計当局が発表した昨年11月の失業率は28%で、前月の27.7%(改定値)から上昇、過去最悪水準を更新した。
失業率の水準は、ユーロ圏平均(12.1%)の2倍以上。緊縮財政が招いた不況が長引き、労働市場に影響を及ぼしていたことを浮き彫りにした。
ギリシャ国債利回り2年ぶり低水準近辺、融資実施への期待で 2/19
18日のユーロ圏金融・債券市場では、ギリシャ国債利回りが債務再編以降の最低水準近辺で推移した。
欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の3者合同調査団(トロイカ)は週内にギリシャを訪問する予定で、昨年9月以降延期されている次回融資実施への期待が高まっている。
トロイカは昨年、ギリシャ当局との協議が進展しないことから現地訪問を中断していた。ただギリシャ経済はその後、大幅な改善の兆しを見せている。
2013年の基礎的財政黒字が予想を上回ったほか、13年の国内総生産(GDP)伸び率は前年比でマイナス3.7%と、政府や国際支援機関の予想であるマイナス4%より小幅なマイナス成長にとどまった。
また関係筋の話から、これまで争点となっていた2014年の不足資金をめぐっても、ギリシャとトロイカはほぼ合意に達したが明らかになっている。
ギリシャ10年債利回りは7.58%。2012年3月に実施した債務再編以来の低水準を約10ベーシスポイント(bp)上回る水準となった。
ギリシャ国債の取引量やクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)取引が増加していることも心強い兆候だ。
ギリシャ中銀によると、年初から5週間の国債取引高はおよそ5億4600万ユーロとなった。これは2013年通年の約36%に相当し、12年通年の全取引高にほぼ匹敵する水準。
国内銀行やハイリスク投資を行うヘッジファンドのみならず、投資家の裾野が広がっていることを示しており、「欧州経済の回復期待から、とりわけニューヨークやロンドン、欧州から資金が流入している」(ディストレス債投資を手掛けるエクゾティクスのエコノミスト、ガブリエル・スターン氏)という。
債務再編以降、取引がほぼ枯渇していたCDS市場でも持ち直しの兆しが出ており、CDS取引が今後増えれば、ギリシャ国債のエクスポージャー対するリスクヘッジも可能になるため、さらなる相乗効果が期待できる。
ただギリシャ30年債利回りは3bp低下の7.28%と、依然として10年債利回りの水準を下回っており、見通しの改善にもかかわらず、投資家のデフォルト(債務不履行)懸念が根強いことを物語っている。
ギリシャの銀行の不良債権比率、13年9月末で31%に上昇=関係筋 2/27
ギリシャの銀行の不良債権比率は2013年9月末時点で約31%と、6月末の29.3%から上昇した。銀行関係者が明らかにした。
ギリシャ中央銀行が大手4行に示した数字によると、4行は計50億ユーロ(69億ドル)程度の資本増強が必要になるとみられる。この見積もりには国際支援機関の承認が必要。
不良債権は引き続き増加しているものの、増加ペースは鈍り始めている。昨年上期時点では、不良債権の48.3%が引き当て済みとなっていた。 
● 3
ギリシャの13年GDP改定値、マイナス3.9%に下方修正 3/12
ギリシャ統計局によると、2013年の国内総生産(GDP)改定値はマイナス3.9%で、2月時点でのマイナス3.7%から下方修正された。
金融危機に見舞われた2008年から13年までの6年間では、GDPが24%相当縮小したことになる。
ただ、景気は後退局面を脱しつつあるとみられ、欧州委員会などは同国の成長率が今年プラス0.6%まで回復すると見込んでいる。
ギリシャ国債利回り低下、次回融資実施合意受け 3/19
18日のユーロ圏金融・債券市場では、国際支援団がギリシャに対する次回融資実施で合意したことを受け、同国の国債利回りが大きく低下した。
ギリシャ10年債利回りは19ベーシスポイント(bp)低下の6.86%、30年債利回りは17bp低下の6.70%となった。
ギリシャ政府と、欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の3機関で構成する「トロイカ」は、次回融資について、過去6カ月間にわたり協議を継続。ICAPのストラテジストのフィリップ・タイソン氏は、「これまでギリシャをめぐる不透明感が払しょくできなかったため、融資実施で合意が得られたことは歓迎すべきことだ」と述べた。
ポルトガル10年債は10bp低下の4.47%となり、前週つけた4年ぶり低水準に迫った。
同国政府がリバースオークションで買い入れた2015年償還債は、予想を下回る5000万ユーロ。前月の13億2000万ユーロと比べると規模は格段に小さかった。
その他のユーロ圏の国債利回りは若干の低下。ドイツ憲法裁判所がこの日、予想通りに欧州安定メカニズム(ESM)は合憲との判断を示し、ESMの批准を認めた2012年の判断を維持したことが背景。 
 

 

● 4
ギリシャ向け次回融資を4月に実施へ=ユーログループ議長 4/1
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のダイセルブルーム議長は1日、ギリシャに対する次回融資を4月に実施する計画だと明らかにした。国債償還に充てられる見通し。
議長はまた、ユーログループがポルトガルに対する支援プログラムの終了に向けた協議を5月に行うと述べた。
議長は記者団に対し、「ポルトガルの景気回復は勢いを増している。銀行部門の安定化は進展している」との見解を示した。
「ポルトガルの出口戦略については5月の会合で話し合う」と述べた。
ギリシャ、向こう1年の資金を調達済み=ユーロ圏財務相会合議長 4/1
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のダイセルブルーム議長は1日、ギリシャは向こう1年間に必要とされる資金を十分に調達できており、ユーロ圏に第3次支援を求める意向はないと明らかにした。
議長によると、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)、欧州委員会で構成する「トロイカ」は、ギリシャが向こう1年間の資金の調達ができていると確認した。
議長は、ギリシャは第2次支援に次ぐさらなる支援をユーロ圏に求めない姿勢を示しているが、これが可能であるかは明らかではないとした。
「ギリシャ政府が追加的プログラムを求めないという野心を持っていることは承知している。無論、この野心を私も共有したいが、結論を出すには時期尚早だ」と述べた。
ギリシャ30年物国債利回りが6%割り込む、4年ぶり 4/3
3日の欧州市場で、ギリシャ国債の利回りが4年ぶり低水準を更新した。
ギリシャは今月中に発行市場に復帰し、5年債入札で20億ユーロを調達する予定。IFRによると、ドイツ銀行、バンク・オブ・メリルリンチ、JPモルガン、ゴールドマン・サックスが幹事に指名された。
30年物国債利回りは4年ぶりに6%を割り込んだ。10年物利回りは8ベーシスポイント(bp)低下し6.14%。
ギリシャ、今月中に国債市場に復帰 4/4
ギリシャは4月中に国債市場に復帰する。長期国債の発行は4年ぶりとなる。 銀行筋がトムソン・ロイターに明らかにしたところによると、ギリシャは5年債発行で20億ユーロ(27億5000万ドル)を調達する計画。
ギリシャの30年物国債利回りは3日、4年ぶりに6%を割り込んだ。10年債利回りも8ベーシスポイント(bp)低下し、6.14%を付けた。
欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)の救済を受けた国では、アイルランドが既に支援から脱却。ポルトガルも5月に支援から脱却する。
一方、ギリシャの経済問題は解決からほど遠い。失業率は27.5%を記録し、2013年末時点の公的債務は国内総生産(GDP)の176.2%に達した。
EUの未来を救う3つの「悪いニュース」 4/5
極右政党の躍進が、欧州議会を震撼させようとしている。フランスでは先週の統一地方選で、厳しい移民政策などを訴えるルペン党首率いる国民戦線が議席を伸ばした。同じような右派政党の伸長は、程度の違いこそあれ、欧州各地で起こりつつある。
5月に実施される欧州議会選挙では、仏国民戦線のほか、オーストリアの自由党、英国独立党、オランダの自由党のほか、フィンランド、ベルギー、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリアの極右・右派政党が100人を超える当選者を出すとみられている。
この半世紀で最も厳しい難局の中、欧州連合(EU)の舵取り役を担うブリュッセルの政治家や役人にとって、こうした極右議員らの選出は新たな「悪いニュース」だと言える。ただ、この悪いニュースは、他の2つの打撃となる問題とともに、実際にはEUを救う可能性もある。
EUの目的について無条件に議論を戦わせることは、眠気を誘う欧州議会を活性化させるだろう。極右政党が主張する反EU的な議題が取り上げられることもあるかもしれない。
こうした議題は長年避けられてきたが、次期選挙では避けて通れない争点となる。EUの擁護・推進を議論の中で熱く訴えることは、欧州の人々がEUの意味を理解し始めることにもなるだろう。
2つ目の悪いニュースは今やなじみの問題だ。低成長やマイナス成長が続くイタリア、スペイン、アイルランド、ポルトガル、ギリシャといったユーロ圏諸国が抱える公的債務の現状は、デフォルト(債務不履行)懸念さえもたらしている。ユーロ圏を構成する17加盟国の債務総額は昨年末時点で8兆8400億ユーロ(約1264兆4800億円)で、ユーロ圏諸国の国内総生産(GDP)の約93%に当たる。これは、ユーロ圏が定めた対GDP比60%という上限をはるかに上回っている。
ただし、これは進歩でもある。債務額は過去数カ月でわずかながら減少しており(1年前に比べて上回っているが)、ユーロ圏諸国は輸出額が輸入額を上回っているため、経常収支は現在黒字化している。これはいいニュースだ。欧州危機が起きた1つの理由は、こうした国々が数年前に蓄積した経常赤字だった。
しかし、経常黒字は同時にぜい弱さの兆候でもある。黒字転換に大きな役割を果たしたのはユーロ圏の内需停滞で、消費者は輸入品の購入を手控えた。こうした国々が消費意欲の改善につながる力強い成長を再び実現できなければ、良好に見える指標もスタグネーション(景気停滞)や新たな危機につながる可能性がある。
では、こうした問題に利点となり得るものはないのか。1つには、ユーロ圏、そしてEUの統合拡大につながるかもしれない。EUの政策執行機関である欧州委員会は、「深遠で純粋な経済・通貨連合」を目指そうとする議論を通じて、災いの中から福を得ようとしている。そして、この考えは「政治連合」と平行して実現されるべきものだ。
危機の裏側には、新たな国の創設という考え方がある。それはEUの創設者らが構想した「ヨーロッパ合衆国」で、ゆっくりとではあるが、やがて現実となるかもしれない。
3つ目の悪いニュースは切迫した悲劇だ。ウクライナの一部でありながら、ロシアに編入されたクリミアの問題。北大西洋条約機構(NATO)は、ロシア軍がウクライナ国境地帯に「非常に大規模な」部隊を集結させていると懸念を示している。ロシアのラブロフ外相は、ウクライナのNATO参加に対する拒否権行使やウクライナの中央集権排除を含む案を推し進めている。これにより、ウクライナ東部もロシアに取り込む狙いだ。
ウクライナのヤヌコビッチ前大統領は、EUとの協定計画を数カ月にわたって検討したが、署名の数週間前になって突然撤回し、ロシアが提唱する関税同盟「ユーラシア連合」加盟に向けて協議を始めた。これを受け、ヤヌコビッチ氏はデモ隊によって大統領の座を追われることになった。
ウクライナへの提案がロシアにどういう意味を持つのか、そしてウクライナがその提案を受け入れた場合、同国が欧州とロシアの間で取っていたバランスも壊れることを、EUが熟慮しなかったことを責めるのは当然だ。
これら3つの大きな問題は、どれも深刻かつ困難だが、反転につながる可能性もある。ただし、それは、将来に戦争を起こさないという、第2次世界大戦後のEU創設の背景にあった情熱や理想が復活したときだけだ。現在の後退は、欧州にその価値やエネルギーを再発見させ、逆境に打ち勝つことでより強い連合が生まれることを理解させることになるかもしれない。
欧州の人々にとって、挑戦は待ったなしと言える。指導者らが課題に立ち向かうことができれば、EUに未来はある。しかし、問題は消えてなくなると期待しながら、内向きになって恐れていては、未来はない。
ギリシャ10年債利回りが10年初旬以来の6%割れ、国債発行控え 4/10
9日のユーロ圏金融・債券市場では、翌日にギリシャ5年債の発行を控え、同国の10年債利回りが2010年初旬以来初めて6%を下回った。
ユーロ圏債務危機のなか国際支援を受けたギリシャは、2010年3月以来4年ぶりに市場に復帰する。トムソン・ロイター傘下のIFRによると、投資家から寄せられている関心は110億ユーロ。
ギリシャ10年債は一時5.896%まで低下した。
グレイロック・キャピタルの首席投資責任者(CIO)、ハンス・ヒュームズ氏は、非常に高い需要が見られるため、応札は発行予定額を大幅に超えるとの見方を示した。
ギリシャ国債利回りの低下を受け、その他のユーロ圏周辺国の国債利回りも低下。欧州中央銀行(ECB)による量的緩和実施の観測が遠のくなか、前週よりは高い水準にあるが、市場関係者は、ギリシャの国債発行が順調にこなされれば再び低下するとの見方を示した。
ポルトガル10年債利回りは2ベーシスポイント(bp)低下の3.92%、アイルランド10年債利回りは2bp低下の2.95%、イタリア10年債利回りは2bp低下の3.20%、スペイン10年債利回りは横ばいの3.21%となった。
今週はアイルランドが10日に10億ユーロの10年債を発行するほか、イタリアが11日に最大72億5000万ユーロの3年債、7年債、30年債を発行する。
ギリシャ国債に対する需要過熱、改革には逆効果 4/11
ギリシャが4年ぶりに発行した国債は、非常に活発な需要に迎えられた。5年債、30億ユーロ規模という今回の案件は、過去の国債保有者の損失と、現在の同国の経済的苦境がいずれも免罪され、忘れられたことを示唆している。
しかし同国はなおいくつもの大きな問題を抱えており、投資家が過度に熱狂すれば改革圧力が弱まりかねない。
5年債の発行利回りは4.95%で、550を超える投資家から200億ユーロを上回る応募があった。正式な取引が開始される前の「グレーマーケット」でも利回りは低下していた。
ギリシャにとって国債格付けはまだ投資適格級未満とはいえ、今回の起債が1つの節目になったのは間違いない。投資家が5年債で2012年3月時点で要求していた水準の12分の1の利回りを受け入れたとなればなおさらだろう。当時は、ギリシャが債務再編で民間の国債保有者に相当の損失負担を課す直前だった。昨年末まではギリシャの10年債利回りは9%近くで、今週になって4年ぶりに6%を下回っている。
ギリシャ政府は、世界的に投資家が利回りを求め、ありとあらゆるリスク資産の価格が押し上げられている事態の恩恵に浴している。さらに投資家は、総額3200億ユーロと国内総生産(GDP)の175%に相当するギリシャの債務規模も大目に見ようとしている。債務のおよそ90%が対公的機関である点を踏まえて、国債の買い手は、もう二度と窮地に陥ることはないとの思惑をめぐらせつつある。
利回りを追い求める投資家はまた、ギリシャ経済の暗澹たる姿からも目をそらそうとしている。GDPは08年以降で25%近く減少し、投資は約3分の1に落ち込んだ。良いニュースは、改革の方向性が曲がりなりにも良くなっていることや、基礎的財政収支が黒字で推移していることだろう。
市場と政治面の圧力を受けたギリシャ政府はこれまで、財政とそのほかの多くの深刻な経済的問題に対処しようとしてきた。それでも26.7%の失業率を押し下げたり、政府が有権者の向う見ずな要求に迎合しないように歯止めを掛ける上で、まだまだ必要なことは多々ある。
ところが今、市場の改革圧力は急速に弱まっており、政治家は従来ほど気に留めなくても良いと考えてしまうかもしれない。投資家が与える時期尚早の信認は、逆効果であることが証明されるだろう。
1─3月のギリシャ基礎的財政収支、目標上回る 4/15
ギリシャ中央政府の第1・四半期のプライマリーバランス(基礎的財政収支)は、16億ユーロ(22億2000万ドル)の黒字となった。スタイクラス財務次官が14日、明らかにした。
黒字幅は前年同期のおよそ3倍で、暫定目標の8億7800万ユーロも大きく上回ったとしている。
ギリシャの2013年基礎的財政黒字、対GDP比0.8%=欧州委 4/24
欧州委員会の発表によると、ギリシャのプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字幅は昨年、対国内総生産(GDP)比で0.8%になった。
EU統計局によると、ギリシャの公的債務は対GDP比で175.1%と、2012年の157.2%から上昇した。
ギリシャは国際機関による支援の下で、2016年に同比率を175%に、2020年に124%、2022年には110%をかなり下回る水準まで引き下げることを目標としている。
ギリシャ、資金不足埋めるのにEUになお依存=欧州委 4/25
欧州連合(EU)の欧州委員会は25日公表の報告書で、ギリシャの債務を取り巻く環境はやや悪化しており、十分な資金を調達するために同国はEUなどの国際機関に引き続き依存しているとの見解を示した。
欧州委は、ギリシャ債務の対国内総生産(GDP)比率が2020年に約125%、2022年に約112%になるという見通しを示した。これまでは2020年に同比率が124%、2022年には110%を大きく下回るとしていた。
報告書は、見通しが悪化した理由として、物価の調整を起因とする名目成長率予想の下方修正や、国有資産の民営化で見込まれる収入がやや減少したことを挙げた。
報告によると、2020年末までに見込まれる民営化収入は223億ユーロと、19億ユーロ減額された。
欧州委はまた、ギリシャは今月債券市場に復帰したものの、資金調達が十分にできていると見なされるには、引き続きユーロ圏が約束した支援に依存することになると指摘した。
報告書によると、ギリシャは2015年5月末までに55億ユーロ(76億ドル)の資金不足が見込まれている。 
● 5
仏財政赤字、目標達成できない見込み=欧州委 5/6
欧州委員会は5日、欧州連合(EU)加盟国の最新経済予測を発表、フランスについて、一段の財政健全化措置を講じなければ、2015年の財政赤字が国内総生産(GDP)比3.4%となり、目標の3.0%を達成できないとの見通しを示した。
2013年のフランスの財政赤字は同4.3%。目標の同4.1%を上回った。
フランス議会は公的支出を2017年までに500億ユーロ減らす対策を承認。バルス首相は先週、2015年の目標を3%で据え置く方針を再確認していた。
欧州委は、スペインについても、2015年の財政赤字が同6.1%と、目標の4.2%を上回ると予測、一段の赤字削減を求めた。
ギリシャ、ポルトガルについては財政赤字の縮小を予想した。
EU10カ国、16年の金融取引税導入で合意 5/7
フランスやドイツなど欧州連合(EU)10カ国の財務相は6日、株式やデリバティブの取引に課税する金融取引税を2016年1月から導入することで合意した。ただし、税率や課税方法などの詳細については意見がまとまらず、決定は先送りとなった。
ドイツのショイブレ財務相は「金融取引税に関して、取り組みを継続することで政治的な合意が得られた」と語った。
またフランスのサパン財務相は、今回の合意で欧州の危機対応能力が証明されたとした上で、株式への課税だけで年間60億ユーロ(80億ドル)の歳入が見込めるとした。ただ当初見込んだ350億ユーロからは大幅な縮小となる。
今回合意した10カ国は、オーストリア、ベルギー、エストニア、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スロバキア、スペイン。スロベニアは賛成を表明していたものの、ブラトゥシェク首相が辞任したため、合意に加わらなかった。
ギリシャ国債利回りが2カ月ぶり高水準、課税めぐる不透明感で 5/17
16日のユーロ圏金融・債券市場では、ギリシャ10年債利回りが前日に続き約2カ月ぶり高水準を更新した。海外投資家が保有するギリシャ国債に対する課税をめぐる不透明感が払拭しきれていないことが背景。
ギリシャ政府が海外投資家が保有するギリシャ国債に対し遡及的に課税する可能性があるとのうわさが前日から出ており、ギリシャ国債利回りは上昇していた。
この日は複数のギリシャ財務省関係筋がロイターに対し、海外のギリシャ国債保有者が2012─13年に得たキャピタル・ゲインに関する納税義務を撤廃する方針を表明、不安感の払拭に努めた。
ギリシャ10年債GR10YT=TWEB利回りは一時15ベーシスポイント(bp)上昇して6.97%と、3月21日以来の水準を更新。取引後半にかけて上げ幅を削り、終盤の取引では5bp上昇の6.88%となっている。
市場では、政府関係者が納税義務を撤廃すると表明しても、今週に入りギリシャ国債を手放した投資家を直ちに呼び戻すことは難しいとの見方が出ている。
コメルツ銀行の金利ストラテジスト、デビッド・シュナウツ氏は、「市場は若干落ち着きを取り戻したように見えるが、欧州議会選挙が近いこともあり、当面は不安定な動きが続くと見られる」と述べた。
ギリシャ国債利回りは年初から約250bp低下しているが、アナリストの間では、ヘッジファンドによる売りに端を発した今回の利回りの上昇が、単なる短期的な反転では済まない可能性もあるとの懸念も出ている。
BNPパリバのストラテジスト、パトリック・ジャック氏は、「市場が再び大きく乱高下するようになれば、リスク選好度に変化が出てくる可能性もある」としている。
ギリシャ国債をめぐる不透明感は他のユーロ圏債券にも広がり、ポルトガル10年債PT10YT=TWEB利回りは7bp上昇の3.792%となった。
スペインとイタリア国債は利回りが3%を上回った時点で買い戻しが入り、終盤の取引でスペイン10年債ES10YT=TWEB利回りは5bp低下の2.96%、イタリア10年債IT10YT=TWEB利回りは2bp低下の3.06%となった。
コメルツ銀行のシュナウツ氏は、「ポルトガル、ギリシャ国債は非常に不安定だが、イタリアとスペインはしっかりとしている」とし、「この日の取引でイタリアとスペイン国債が反発したことで、両国の国債に対する信頼感が高まる可能性がある」と述べた。
ギリシャ統一地方選で野党が躍進、緊縮財政への不満噴出 5/19
18日に投開票されたギリシャ統一地方選の第1回投票で、反緊縮派野党の急進左派連合(SYRIZA)が躍進した。緊縮財政に対する国民の不満が噴出した形となった。
シンギュラー・ロジックの公式予想では、SYRIZAはアテネ市長選で決選投票に進む見通し。SYRIZAは、アテネを含むアッティカ広域行政地域(人口で国全体の3分の1弱に相当)でもリードしている。
公式予想によると、アテネ市長選では開票率21%の時点で、SYRIZAの擁立候補が現職市長を追い上げており、得票率の差は1%ポイント未満となっている。
サマラス首相は「(決選投票が実施される)25日前後には欧州議会選挙もある。投票を通じて、ギリシャが着実な前進を確信できるようになるか、国家を後退させるかは、国民に委ねられている」と述べた。
欧州議会選、ギリシャは反緊縮派が「歴史的勝利」宣言 5/26
欧州各国で実施された欧州議会選挙は、ギリシャでは反緊縮派野党の急進左派連合(SYRIZA)が最多票を集めた。アレクシス・ツィプラス党首は、緊縮財政策に対する勝利を宣言した。
急進左派が国政選挙で勝利を収めるのは近代のギリシャで初めて。ただ、与党との票差は同国の連立政権を揺さぶるのに必要とされる5%ポイントには届かなかった。
ツィプラス氏は26日朝早くに集まった支援者らに対し、「これは歴史的な勝利だ」と強調。「ギリシャが緊縮策を非難したため、欧州全域で話題になっている」とした。
欧州議会選挙では、極右や急進左派など、欧州連合(EU)統合に懐疑的な勢力が各国で躍進した。
ギリシャ内務省によると、開票率95%の時点で、SYRIZAの得票率が26.5%と、サマラス首相の率いる新民主主義党(ND)の22.8%を上回った。
SYRIZAは、アテネを含むアッティカ地域の知事選でも勝利を収めた。同地域は総人口の約3分の1を抱えている。同地域で急進左派の知事が選ばれるのは初めて。
サマラス政権は2012年の発足以来、EUと国際通貨基金(IMF)の金融支援プログラムの下、厳しい緊縮策を実施してきた。
ただ、連立を組む全ギリシャ社会主義運動(PASOK)は大敗の予想に反し、8%の得票率を確保したため、ND・PASOK連合の合計得票率はSYRIZAを上回った。アナリストによると、これにより早期の総選挙の可能性は当面、なくなった。
欧州議会選で激震、EUは「死の淵」に 5/28
5月22─25日に実施された欧州議会選挙の投票結果を受け、欧州全域に激震が走った。英国、フランス、スペインなどでは、欧州連合(EU)懐疑派が大躍進を遂げたからだ。
今回の選挙結果は、加盟する28カ国の統合深化を掲げるEUに重傷を負わせたに等しい。EUは死の淵にあると言ってもいいかもしれない。以下にその理由を述べたいと思う。
1.英国はEUを脱退するかもしれない。キャメロン首相は、次期総選挙で自身が率いる保守党が勝利すれば、EU残留か離脱を問う国民投票を実施すると公約している。首相は、EUの持つ権限を可能な限り加盟国に戻すべきとするEU改革案を掲げているが、その実現性が怪しくなれば、英国の有権者は残留より脱退を選択するだろう。
政治的権限を加盟国に戻すという案は、反EU派が台頭している国々では、「統合深化」より魅力のある選択肢となり得る。しかし、もしキャメロン首相の改革案が欧州議会で受け入れられず、低成長にあえぐ欧州が弱体化したままでいるなら、EU脱退という答えが選ばれる公算が大きい。
2.欧州議会選で議席を獲得したEU懐疑派を詳しく見ると、反ユーロ政策を掲げる「ドイツのための選択肢」といった比較的穏健な政党から、ハンガリーの「ヨッビク」やギリシャの「黄金の夜明け」といった極右政党まで幅広い。ただ彼らは、欧州議会で何らかの急進的行動を起こすという方向性では一致している。
多くの国では、欧州議会での議席は、引退間近の政治家や自国の議会で議席を得られなかった政治家のためにある閑職とも言える。欧州議会には仕事熱心な議員も多いが、そうでない議員もたくさんいる。議論は往々にして退屈で、24の言語に通訳されるため進行が遅く、言葉は空席の列にむなしく響き渡る。
しかし、今回の議会選で様相は一変する。「解体業者」のグループが乗り込み、EU統合推進派は彼らと戦わなくてはならなくなる。もし統合推進派に戦う勇気が足りず、反EU派のメッセージが目立ち続けるなら、EUは苦境に陥るだろう。
3.2000年のユーロ導入は時期尚早だった。欧州の社会民主主義国家に肯定的なポール・クルーグマン氏でさえ、ユーロ導入は早計だったと考えている。ユーロは危機を脱したが、まだ完全に助かったわけではない。緊縮財政反対派はドイツを攻撃することで、債務危機で最も打撃を受けたPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)をデフォルトさせず、ユーロ圏にとどめておくという合意をひっくり返そうとするだろう。
ドイツはEUの要だ。メルケル首相はこれまでのところ、不本意ながらも、ユーロ圏の脆弱(ぜいじゃく)な安定性を保証するには十分な役割を果たしてきた。ギリシャやスペインの左派などはドイツが「宗主国化」していると主張するが、もしドイツがこうした国々の経済を持続させる意思を失えば、ユーロ圏は再び危機に陥る。そしておそらく、今回は命取りとなる。
欧州議会選の結果がもたらす変化の全貌は、これから明らかになってくる。「より大きな欧州」をモットーとし、熾烈(しれつ)で寝技を必要とするような政争とは無縁だった伝統的なEUの政治家には試練が待っている。 
● 6
欧州議会選の結果、仏とギリシャにはネガティブ=ムーディーズ 6/2
格付け会社ムーディーズは2日、先月の欧州議会選挙のフランスとギリシャでの結果は、欧州連合(EU)統合に懐疑的な勢力が躍進したため、2国の格付けに対してネガティブな意味合いを持つとの見解を示した。
ムーディーズはリポートで、EU懐疑派の躍進は「両国の政府が財政再建の手を緩めることを検討する可能性が増すという点で、下方リスクを拡大させる」と指摘。
一方、イタリアでレンツィ首相の中道左派「民主党」が圧勝したことはポジティブだと評した。
EUのその他の25加盟国については、中立的な結果だったとした。
中国首相、海洋の平和的な開発強調 6/23
中国の李克強首相は20日、訪問先のギリシャで両国海洋協力フォーラムに出席、海洋の平和的な開発を望むとの姿勢を強調した。中国外務省が21日、首相のフォーラムでの発言内容をウェブサイトに掲載した。
李首相は「中国は平和的開発という道をしっかりと歩む。海洋問題におけるいかなる覇権行為に断固として反対する」と主張。「過去の事例を見ても、協力を通じた海洋開発は多くの国に繁栄をもたらしたが、海洋をめぐって争えば、人類にとって悲惨な事態を招いた」と述べた。
中国は南シナ海の領有権をめぐってベトナム、フィリピン、台湾、マレーシア、ブルネイと争っている。中国は、ベトナムと中国が互いに領有権を主張する海域に石油掘削装置を搬入、緊張感が高まっている。
中国がギリシャに投資の意向、欧州への窓口として重視 6/23
中国はギリシャの空港や鉄道、港湾に投資する意向だ。両国が20日明らかにした。中国の李克強首相は関係強化を目指し、ギリシャを訪問。欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)の緊急融資に頼るギリシャは、成長促進と雇用創出に海外からの投資を必要としている。
中国側は、すでにピラエウス港の過半数株式に対する買収案を提示。ギリシャの当局者によると、クレタ島の空港建設や、政府が売却するアテネの主要空港にも中国側は関心を示している。
ギリシャのデンディアス開発相は、高速鉄道のプロジェクトについても協議したことを明らかにした。
中国とギリシャは共同声明で、「欧州への窓口というギリシャ特有の地理的な利点を中国は重視しており、港湾や道路、鉄道など基盤となるインフラ整備でギリシャとの協力関係を深める態勢にある」とした。
ユーロ圏、債務削減・成長加速へ本腰入れる必要=S&P幹部 6/25
格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の幹部は24日、ロイターのインタビューで、ユーロ圏諸国は、債務削減や成長加速に向けて、本腰を入れて取り組む必要が依然としてあるとの認識を示した。経済が好転するまでは、信用格付けの引き上げは見込めないとも述べた。
欧州・中東・アフリカのソブリン格付け部門の責任者、モーリッツ・クレーマー氏は、欧州の格付けは「この先落ち着いた時期」を迎えると見通した。
同氏は「まだ多くの宿題に取り組む必要がある。インフレが非常に低い状況下で債務が膨らめば、ユーロ圏の成長見通しに相当大きなリスクとなる」と指摘。「(経済の)基礎的条件が改善するまで、格付けを引き上げる必要はない」と述べた。
キプロスやギリシャが債券市場に復帰したが、両国の格付けに影響はほとんど出なかったと指摘した。
同氏は「ギリシャやキプロスは、自立や自ら資金調達する状態に程遠い」と分析。「ユーロ圏(債務)危機で教訓が得られたとすれば、いかに短期間に市場アクセスを再び失い得るかということだ。ギリシャの市場アクセスについて評価を下すのは時期尚早だ」と話した。
また、欧州中央銀行(ECB)が量的緩和(QE)に踏み込んだ場合、ユーロ圏の信用格付けに著しい影響は出ないとの見通しも示した。 
 

 

 

 

●ギリシャ2014/7-12
● 7
ユーロ圏崩壊リスクへの対応を英中銀が勧告、2011年に 7/2
イングランド銀行(英中央銀行、BOE)は1日、2011年9月に財務省に対し、ユーロ圏崩壊リスクに備えるよう勧告していたことを公表した。
当時はギリシャやポルトガル、スペインといった域内諸国の借り入れコストが大幅に上昇していた。BOEの金融行政委員会(FPC)は財務省に対し、加盟国がユーロ圏を離脱した場合のために、英国の銀行に対する救済策を準備する必要があると勧告したという。
BOEは、「FPCは欧州の状況が急速に悪化すると懸念していた。相互に関連し合う世界の金融市場で混乱が広がっていた」と説明。「このため、財務省はあらゆる不測の事態に備える必要があると考えた」とした。
BOEはこの勧告を当時公表することは市場のさらなる動揺を招く恐れがあるとして控えた。これまで定期的に公表を検討してきたが、ユーロ圏の銀行破綻処理を一元化するための法案の発効が控えているこのタイミングで公表することが適切だと判断したという。
BOEが公表したところによると、財務省はまた、2011年11月に英国の銀行を救済するための緊急対応策や中央清算機関の破綻に備えた有事立法を準備していた。
ユーロ圏危機は本当に終わったのか 7/29
ユーロ圏の政策当局者がこの夏はくつろげると考えているとすれば、それは重大な誤りだ。ユーロ圏危機は休眠中であり、死んだわけではない。
ユーロ圏は景気停滞、低インフレ、高失業率、そして債務に苦しんでいる。ショックに耐えられる態勢を整えていないため、危機はささいな一撃によってその恐ろしい頭をもたげるだろう。
そうした一撃がどこから到来するかは想像に難くない。ウクライナでのマレーシア航空機撃墜を受け、ロシアとの関係は急速に悪化した。欧州が制裁を科し、ロシア政府が対抗措置を採れば、これまたユーロ圏経済の痛手となろう。
ユーロ圏は惨事から身を守るための対策が必要だ。欧州中央銀行(ECB)はインフレ率を押し上げるために追加金融緩和を実施し、各国、特にフランスとイタリア、そしてドイツも構造改革にあらためて力を入れ、緊縮財政路線はある程度緩めなければならない。
しかしまずは問題に目を向よう。ドラギECB総裁がユーロ防衛に手を尽くすと宣言して以来の2年間というもの、金融市場は落ち着いている。しかしユーロ圏経済はほとんど成長していない。国際通貨基金(IMF)は先週、ユーロ圏の今年の成長率が1.1%にとどまるとの見通しを示した。先立つ景気後退の厳しさに照らせば、スズメの涙ほどの回復である。
確かに明るい側面もある。スペインは徹底的な労働市場・金融システム改革を有効に実施した結果、緩やかな景気回復を享受している。ギリシャでさえ冥界から蘇りつつあるようだ。
しかし大国の動向はぱっとしない。IMFによると、イタリアの今年の成長率は0.3%にとどまり、フランスは0.7%成長。ドイツは1.9%とましだが、ユーロ圏の成長エンジンたる同国ですら勢いを失っているように見える。IFO経済研究所の7月ドイツ業況指数は3カ月連続で低下した。
一方、ユーロ圏のインフレ率は0.5%で、2%弱というECBの目標を大幅に下回っている。こうした「ローフレーション」は2つの悪影響をもたらす。ユーロの高止まりを招いて輸出業者を圧迫するとともに、債務負担を重くするのだ。
イタリアの債務はことし、国内総生産(GDP)の135%に達すると欧州委員会が予想しており、最も心配だ。成長率とインフレ率が上昇しない限り、これほどの債務水準は持続できない。2兆1000億ユーロという債務額を考えると、返済難に陥った場合の余波は甚大なものになろう。債務が制御不可能になるという懸念を払しょくするため、イタリアは民営化計画を強化する必要がある。
ユーロ圏の一部政治家、とりわけフランスの政治家は金融・財政政策の緩和が解決策だと考えているようだ。これはある程度まで正しい。
金利はこれ以上下げられないので、ECBは決然と量的緩和に踏み出す必要がある。ユーロ圏の資本市場は概ね未発達であるため、量的緩和の手法は国債の大量購入になる。これはインフレ率の上昇と為替レートの低下という2つの恩恵をもたらすだろう。
真剣に構造改革に取り組んでいる国に対し、欧州委員会が財政赤字目標の達成期限に猶予を与えることも非常に有効だ。こうしたアプローチはスペインにおいて功を奏した。同国は改革遂行中、2度にわたって財政上の猶予を与えられている。しかし猶予期間は増税回避に使われるべきであり、公的支出削減の手を緩めてよいということではない。
その上、金融・財政政策の緩和のみに頼る策は、効果よりも弊害の方が大きいだろう。政府に改革を迫る圧力が弱まる。危機の再発は先送りされるかもしれないが、防げはしない。そして再発時の勢いは凄まじいものになろう。
最も心配なのはフランスだ。オランド大統領は公的支出の抑制、労働市場の自由化のいずれについても、ほとんど手を打っていない。バルス首相は経済改革に取り組んでいるが、大統領、社会党、そして国からの全面協力が得られていない。イタリアは少なくとも改革の必要性を理解しているし、改革断行の意志を持つレンツィ首相がいる。
オランド大統領は現在、モスコビシ前経済・財政相を欧州委員会の経済担当委員に推している。欧州委がフランス政府に改革を迫り続ける必要性を考えれば、委員の中にフランス政界の人物を滑り込ませるのは間違いだろう。
対照的に、スペインのデギンドス経済・競争力相を、ユーロ圏各国の財務相を束ねるユーログループの新議長に据えるのは良案だ。スペインは構造改革に成功したのだから、同国の経財相は構造改革の価値を仲間に説くのに最適の立場にある。
スペインの教訓はドイツにとっても心すべきものだ。ドイツは21世紀初頭に労働市場を改革したが、それ以降は成功に胡坐をかいている。優先課題はサービス市場の開放だ。そうすれば、ドイツの消費者の選択肢が広がると同時に、他の欧州諸国の納入企業にも市場が開かれ、これら国々の成長を助けるという二重の利点がある。
各国政府が構造改革に猛進する用意があるなら、欧州委員会が財政赤字達成期限に猶予を与えるだけで終わらせてはいけない。ECBも喜んで量的緩和に踏み切るべきだ。政策当局者は夏休みを使い、これら3要素を含む包括策で合意してほしい。 
● 8
ギリシャ支援の枠組み変更を検討、トロイカは廃止=EU筋 8/5
欧州連合(EU)はギリシャ支援について、同国自身が経済活性化プログラムを作成する形に切り替え、これまで改革の進展を監視してきた欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)によるトロイカ体制は廃止することを検討している。関係筋が明らかにした。
検討はまだ初期段階だが、ギリシャ向け第2次支援プログラムが年内に終了することから今後協議が進む見通し。
新たな支援の枠組みによると、ギリシャが6年間の改革プログラムをまとめ、達成するごとに債務負担を軽減する。新たな融資を行うのではなく返済期間を延長する公算が大きい。
トロイカの代わりに欧州委による特別チームが改革の進展をチェックし、審査はこれまでの四半期ごとから半年ごとに変更する。
関係筋は「ギリシャが改革を主導する必要がある。10月までに原案をまとめ12月までに決定し、来年から開始する」と述べた。
別の関係筋は、ユーロ圏が予備的信用枠を供与する可能性があると明らかにした。その場合はギリシャに対する厳しい監視が続くことになる。
同筋はポルトガルの支援脱却について「予備的信用枠を用いなかったのは失敗だった。ギリシャで同じ間違いを繰り返すわけにはいかない」と語った。
IMFについては、2016年までの現在の支援をそのまま継続する見込み。
財政健全化を主眼としたEU主導のプログラムとは異なり、ギリシャがまとめる経済改革案は成長と雇用に重点を置く。ギリシャが主導権を握ることで国内で改革が受け入れられやすくなる可能性がある。
ギリシャ支援については、3200億ユーロ(4300億ドル)を超え、国内総生産(GDP)の約175%に達する債務をいかにして管理可能なものにするかが焦点となる。
関係筋によると、ユーロ圏向け債務の借入コストの引き下げと返済期限の延長を軸に検討している。ECBとIMF向け債務は対象外としている。
ギリシャ国債利回り上昇、支援枠組み変更の観測で=ユーロ圏市場 8/6
5日のユーロ圏金融・債券市場では、ギリシャ国債利回りが2カ月ぶりの水準に上昇した。
ギリシャ支援について、欧州連合(EU)が欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)によるトロイカ体制を廃止し、ギリシャ自身が経済活性化プログラムを作成する形に切り替えることを検討していることが関係筋の話で明らかになったが、ギリシャの改革目標の達成に懐疑的な見方も出ている。
終盤の取引で、ギリシャ10年債GR10YT=TWEB利回りは30ベーシスポイント(bp)上昇の6.47%と、6月5日以来の高水準をつけた。1日の上昇としては5月以来の大きさとなる。ただ市場関係者は、ギリシャ国債の流動性が低くなっていることで振れが拡大したとしている。
RBCの欧州担当エコノミスト、ティモ・デル・カルピオ氏は、ギリシャは9月のトロイカ調査前に約600件の改革事項を実行に移すことができないとの地元紙の報道に言及し、「今年下半期はギリシャに対する注目度が上昇する」との見方を示した。
また、RIAキャピタル・マーケッツの債券ストラテジスト、ニック・スタメンコビッチ氏は、ポルトガル政府が大手行バンコ・エスピリト・サント(BES)BES.LSを救済すると発表したことを受け、ユーロ圏の銀行システム内にこの他にも問題が存在しているのではないかとの疑念が出ていると指摘。
ポルトガル10年債PT10YT=TWEB利回りは3.73%と、8bp上昇した。ただ、ウニクレディトのルカ・カッツラーニ氏は、夏季休暇シーズンに入り商いが細っていることから、この日の動きは市場全体の見方を反映したものではないとの見方を示している。
独10年債DE10YT=TWEB利回りは4bp上昇し1.17%となった。
ギリシャGDP、6年ぶりの小幅マイナス 8/14
ギリシャ統計庁が13日発表した第2・四半期の国内総生産(GDP)速報値は、季節調整済で前年同期比0.2%減となり、リセッション(景気後退)が始まった2008年終盤以降で最も小幅なマイナスにとどまった。エコノミスト予想は0.4%減だった。
前期比の数字は公表されていない。
ギリシャ、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)による今年のギリシャ経済の成長見通しは0.6%増となっている。 
● 9
EUが直面する3つの課題 9/2
欧州連合(EU)のファンロンパイ大統領は週末、後継に決まったポーランドのトゥスク首相に対し、3つの大きな課題が待ち構えていると語りかけた。低迷するユーロ圏経済、ウクライナ・ロシア間の危機、そして英国がEUを離脱するリスクだ。ウクライナ危機については、欧州大陸の安全保障に対する冷戦以来で最大の脅威だと大統領は表現した。これらの3つの問題はすべて結びついている。
ユーロ圏経済の弱さは、EUが対ロシア制裁に及び腰になっている理由の1つだ。以前から低下していた国内総生産(GDP)成長率は、第2・四半期にゼロまで落ち込んだ。インフレ率はまたもや低下してわずか0.3%となり、失業率は11.5%で高止まりしている。
イタリアがここ数年で3度目の景気後退に陥り、ドイツはマイナス成長、フランスは横ばいとなった今、かつてポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペインの頭文字を取って「リトルPIGS」と呼ばれたような危機はもはや存在しない。ユーロ圏3大国の苦境を言い表すには、新たに「FIG」という頭文字語を使うのが良いかもしれない。
もう一度ショックに見舞われた場合、ユーロ圏は簡単に耐えることはできない。ロシアが実質的にウクライナに侵攻しているにもかかわらず、EUがこれほどまでに弱腰なのはこのためだ。ロシアを国際金融システムから締め出したり、天然ガスの購入を禁止するといった本格的な制裁を講じれば、EUも打撃をくらうだろう。これまで承認された小規模な制裁でさえ、ロシア、EU双方の経済に驚くほど大きな影響をもたらした。企業や消費者の信頼感を揺さぶったからだ。
一方、ユーロ圏経済の低迷は英国のEU離脱リスクも高める。キャメロン英首相は来年の選挙で再選された場合、2017年末にこの問題で国民投票を行う計画だ。その時にユーロ圏が景気後退かデフレに陥っていれば、英国は死に体に縛り付けられている、自由になるべきだとユーロ懐疑派は主張しやすくなろう。
仮に英国がEUを離脱─いわゆるBrexit─すれば、欧州がロシアに対抗する力は弱まるだろう。英国はフランスと並びEU最強の軍事大国で、外交面でも活躍している。英国がEUを離脱した後のEUでは、ドイツの非介入的姿勢の支配力がますます強まろう。
英国の欧州懐疑派は、欧州の安全保障は常に米国主導の北大西洋条約機構(NATO)に依拠してきたのだから、そうした主張はナンセンスだと言う。今週のNATO首脳会議が開かれる場所はEU域内ではなくウェールズだ。その上、EUの外交・安全保障政策は、ウクライナ、イラク、シリアの危機に対する弱腰対応が物語るように、面目潰れではないかと。
こうした論点には幾らかの真理があるが、誇張が過ぎる。NATOが欧州の安全保証における柱なのは事実だとしても、EUも外交面で補助的な役割を果たしている。EUは28カ国の意見をとりまとめる必要があるため外交政策で多くの実績を収めてはいないが、徐々に一体的な行動を採るようになっている。
英国のEU離脱は2つの面で欧州の外交政策を損なうだろう。第1に、英国首相がEU各国首脳らとの定期的な会談を持たなくなれば、共通の立場の形成はいよいよ難しくなろう。第2に、英国のEU離脱は友好国と潜在的な敵国の双方に対し、欧州の結束が弱まりつつあるとの強力なシグナルを送ることになる。つまり欧州の発言力が弱まるということだ。
これら3つの課題に取り組むために、欧州首脳は大いに腕を磨いて臨む必要が出てこよう。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は先月のジャクソンホール講演で、ユーロ圏経済再生の処方箋を示した。各国政府が長期的な構造改革に取り組むことを前提に、金融政策を緩め、緊縮財政を緩めることだ。
この発言を迅速に行動に移す意思が総裁にあるかどうかは定かでない。しかしぐずぐずしている時ではない。ECBは今週、理事会を開く。国債買い入れ(いわゆる量的緩和)という大胆な措置に乗り出すべきだ。
最も大きな問題を抱えた2カ国、すなわちイタリアとフランスも構造改革を加速させる必要がある。明るい兆しがいくつかある。イタリアのレンツィ首相は先週、機能不全で経済の大きな足かせとなっている民事司法制度の改革に着手した。一方フランスのオランド大統領は内閣を改造し、改革に異を唱えた強硬な社会主義者を更迭した。しかし2人が現状の緊急性を完全に理解しているかどうかは、なお定かでない。
ロシアによるウクライナ攻撃を阻止する上で、EUが採れるすべには限界があることをEUは理解する必要がある。しかし同時に、制裁を通じてロシアを痛めつける必要性も認識せねばならない。これは自らも喜んで経済的打撃を被ることを意味する。そうしなければプーチン・ロシア大統領はEU域内の国々を脅してもよいのだと結論付けるかもしれない。
域内に目を転じれば、EUは官僚主義をもっと廃し、競争力を高める改革を必要としている。サービスおよび資本の単一市場を完成させることが主な手段だ。これは長期的な成長に好影響を及ぼすだけでなく、英国にEUに踏みとどまろうと思わせる格好の材料にもなる。
EU次期大統領に選出されたトゥスク氏の第1声は、英国の問題には個人的にも対処したい、というものだった。心強い発言だが、キャメロン英首相率いる保守党内で欧州懐疑派が猛威を振るっていることを考えれば、容易な仕事ではない。
EUの行く手には厳しい局面が待ち構えている。
ギリシャ経済、第3四半期は6年ぶりのプラス成長へ=財務相 9/8
ギリシャのハルドゥベリス財務相は6日、第3・四半期(7月―9月)の経済成長率がプラスに転じ、2008年以来のマイナス成長から6年ぶりに脱出するとの見通しを示した。
ギリシャ経済は大幅な景気後退に突入した2008年初めからマイナス成長が続き、国内総生産が25%近く減少していた。
アナリストも経済成長率が第3・四半期にプラスに転じると予想していたが、財務相のコメントはギリシャ政府として初めてこれを確認したもの。
2014年の通年についても、観光業が好調なことに加え投資回復の兆しが見えることから、ギリシャ政府のほか、欧州連合(EU)/IMFの債権者側も0.6%の経済成長を予想している。
声明によると、同国北部で財界人を前に講演したハルドゥべリス財務相は、「第3・四半期に小幅ながらもプラス成長を見込んでいる」と指摘。予想を上回る観光収入、消費支出の安定化、投資の減少ペースが鈍化してきたことが、経済にとって前向きな兆候だとした。
ギリシャ経済の第2・四半期は前年比0.3%のマイナス成長だったが、観光シーズンと重なったことでマイナス幅は2008年以来最小だった。
2010年以来、2度にわたる金融支援を受けたギリシャは、EUとIMFの援助に頼ることで財政破綻をまぬがれてきた。しかし今年に入って財政は好転。破綻の恐れは遠のき、再建の軌道にも乗り始めている。
すでに6年に及んでいる景気後退でギリシャのGDPは4分の3に縮小し、失業率も27%を超える記録的な水準になっていた。
S&P、ギリシャなど3カ国を新興国市場に分類変更へ 9/16
S&Pダウ・ジョーンズは15日、指数対象国の変更について、昨年10月時点での発表内容を確認するとともに、9月22日から実施すると明らかにした。
ギリシャは先進国市場から新興国市場へ、カタールとアラブ首長国連邦(UAE)はフロンティア市場から新興国市場に、それぞれ分類が変更となる。
新興国市場指数への組み入れ比率は、ギリシャが0.8%、カタールが0.9%、UAEは1.0%となる。
ギリシャ首相が早期の支援脱却に言及、市場不安視 9/24
ギリシャのサマラス首相は23日、欧州連合(EU)/国際通貨基金(IMF)からの支援を期限を待たずに脱却するとの見通しを示した。 メルケル独首相との会談後、共同会見で明らかにした。
ユーロ圏からの融資は2014年12月、IMFからの融資は2016年第1・四半期にそれぞれ終了する。
サマラス首相は今回、IMF融資の受け取りを一部見送る可能性を公の場で初めて認め、そうなれば「成功」と強調した。
次回のEU/IMFによる審査と銀行のストレステスト(健全性審査)後に、一段の債務軽減に関する協議が開始される見込みとしている。
メルケル首相も足並みをそろえるように「成功の最初の若芽が芽生えている」と述べ、ギリシャの改革努力を評価した。
ベータ証券のアセットマネジメント責任者、コスタス・ブカス氏は「サマラス首相の発言で、IMFがプログラムから外れることをギリシャ政府と欧州諸国が望んでいることは明白だ。IMFがギリシャの改革プログラムを監視し続けることを歓迎していない」と指摘した。
ギリシャの公的債務は今年、国内総生産(GDP)比で177%を越える見通しで、その大半はEUもしくはIMFからの借り入れとなっている。
市場では、早期の支援脱却にこだわれば、サマラス首相が望む一段の債務軽減が受けられなくなるとの不安が広がり、ギリシャ10年債 GR10YT=TWEB利回りは17ベーシスポイント(bp)上昇の6. 09%と、およそ1カ月ぶりの高水準をつけた。
またサマラス首相は、来年は必要な借り入れを市場で行うことが可能との見方を示した。
DZ銀行の債券ストラテジスト、ダニエル・レンツ氏は、ギリシャが市場からの資金調達に頼れば、巨大債務に対する「持続的な解決策を見い出す機会を先延ばしすることになる」とし、市場調達が増えるのに伴い、民間投資家のリスクも増大すると指摘した。 
 

 

●10
ギリシャ国債5月以来の安値、早期支援脱却懸念で 10/1
30日のユーロ圏金融・債券市場では、ギリシャ国債が5月以来の安値をつけた。国際支援からの早期脱却の可能性が引き続き重しとなっている。
ギリシャ10年債利回りGR10YT=TWEBは13ベーシスポイント(bp)上昇の6.65%。一時は4カ月ぶりの水準となる6.81bpに上昇した。
独10年債との利回り格差は571bp前後と、3月以来の水準に拡大した。
スペイン10年債ES10YT=TWEB、イタリア10年債IT10YT=TWEB利回りは6━7bp低下した。
スペイン国債は、カタルーニャ自治州が計画するスペインからの独立・分離の是非を問う住民投票について、憲法裁判所が差し止めるべきだとの判断を示したことが支援材料となった。
イタリアでは、反対の根強い労働改革をめぐり、レンツィ首相が党内の支持を得たことが買い安心感につながった。
だがレンツィ首相をめぐっては、交代観測が浮上しているほか、カタルーニャ市民の間では、憲法裁の判断を受けても住民投票の実施を求める声が根強い。
欧州中央銀行(ECB)の追加緩和への期待は大きいものの、ギリシャ国債も含め、市場では周辺国国債への強気な流れに調整色が出ている。
ECB理事会後のドラギ総裁発言要旨 10/2
欧州中央銀行(ECB)は2日、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.05%に据え置いた。
据え置きは市場の予想通りだった。
上限金利の限界貸出金利も0.30%に、下限金利の中銀預金金利もマイナス0.20%に据え置いた。
理事会後に開かれた会見でのドラギECB総裁の発言要旨は以下の通り。
<ECBの実績>
ECBはまず、金利を下限であるゼロ近辺に引き下げ、どの主要中銀も実施していないマイナスの中銀預金金利も導入した。次に異例の規模の流動性をシステムに注入し、さらなる一連の措置を承認したばかりだ。2012年にはシステム規模で危機対策を実施し、その結果、金利を広範に引き下げた。ECBを悪者とする見方は修正されるべきだ。
<政策の「駆け引き」はない>
駆け引きが大々的に行われているということはない。他の政策の存在でわれわれの措置がより効果的になる、あるいは、時には他の政策によって初めてわれわれの措置の効果が出るということを承知している。それぞれの役者が演じる役割がある。
<ユーロ懐疑論>
物事がうまくいかず、違った方向に進んでいるためユーロ懐疑的になるのは非常に理解できる。この地域では失業がまん延し、経済活動は非常に低調となっており、一部の諸国はリセッション脱却が不可能かのように見える。このため、人々が前向きになると期待するのは難しい。欧州の別の地域の人々は、他の人たちの代金を支払っていると感じているため同様の懐疑論がある。
<TLTRO>
「的を絞った長期資金供給オペ(TLTRO)」は、銀行がECBから借りた資金を確実に融資に回すよう設計したものだ。融資を行わなければ、すべてを返済する必要が生じる。
<ギリシャのABS>
(ギリシャが資産担保証券(ABS)の購入対象となるには)プログラムが必要だ。プログラムが無ければ、買い入れも無い。
<バランスシート規模の重要性>
すべてにおいて非常に正確な数字を求める気持ちは理解できる。その方が楽だからだ。ただ、バランスシートは非常に重要だが、手段に過ぎない。規模そのものを強調しようと思わない。われわれが守る必要のある究極、唯一の責務とは、インフレ率を2%未満で近辺の水準まで戻すことだ。これが、現在、さらに将来講じる可能性のある措置が成功したかを判断する究極の基準だ。
<為替レート>
為替レートは政策目標ではないが、物価安定および成長の双方にとって重要だ。
<ABS買い入れ>
資産担保証券(ABS)買い入れについては、慎重さを伴いながらもできるだけ包括的であることが望ましいことから、ギリシャ、キプロスなど格付けが「BBBマイナス」以下の国々も買い入れ対象とすることを決定した。留意点は2点ある。1点目は、当該資産の買い入れ場所が異なってもリスクは同等であるよう、特定の買い入れを行う際のリスク軽減措置を複数用意しているということ。2点目は、慎重な対応に関することで、基本的に(買い入れ)対象国は欧州連合(EU)との継続中のプログラムを保持すべきということだ。
<構造改革の加速>
複数の諸国では構造改革の立法と実行が加速される必要が明らかにある。これは製品および労働市場とともに、企業にとっての事業環境改善に向けた措置を含む。
<財政政策>
財政政策に関しては、ユーロ圏諸国はこれまでの進展を後戻りさせてはならず、安定成長協定のルールに沿って前進するべきだ。これは、各国政府が現在公表している2015年予算案に反映される必要がある。
<非伝統的手段用いる用意>
ECBによるすべての措置が経済に波及し、インフレ率の目標水準への回帰に寄与するだろう。低インフレの期間が過度に長引くリスクにさらに対処する必要が生じた場合、理事会は責務の範囲内で追加的な非伝統的手段を講じるという決意で一致している。
<物価リスクを注視>
EU基準の消費者物価指数(HICP)の年率の伸び率は向こう数カ月にわたり低水準にとどまり、その後2015年と2016年に緩やかに加速する見通しだ。理事会は中期的な価格動向の見通しに対するリスクを引き続き注視する。
<景気回復への逆風>
高水準の失業率や能力の著しい未活用、引き続き民間への融資の伸びがマイナスであることや官民で必要なバランスシートの調整などが今後も景気回復を阻害する公算が大きい。
<下向きの景気リスク>
ユーロ圏の景気見通しに対するリスクは引き続き下向きとなっている。特にユーロ圏成長の勢いがこのところ弱含み、地政学リスクも高まっていることは、信頼感に加え、とりわけ民間投資を圧迫する恐れがある。
<緩やかな回復>
ユーロ圏の緩やかな回復見通しに変更はない。ただ、この見通しの基礎となっている主な要因や前提は注視する必要がある。
<緩和スタンス>
われわれの資産買い入れは金融政策の緩和スタンスをより広範に強めることになる。また、主要政策金利についてのフォワードガイダンスを強化し、主要先進国間の金融政策サイクルの違いが著しく、さらに拡大しているという事実を明らかにしている。
<ABS・カバードボンドがバランスシートに及ぼす影響>
一連の「的を絞った長期資金供給オペ(TLTRO)」が2016年6月まで行われるが、それとともに(資産担保証券=ABSとカバードボンドの)買い入れに伴い、われわれのバランスシートに大きな影響が及ぶことになる。
ECBが買い入れ詳細公表、政策金利据え置き 10/3
欧州中央銀行(ECB)は2日、主要政策金利を据え置くとともに、資産担保証券(ABS)およびカバードボンドの買い入れの詳細を明らかにした。中小企業向け融資を促進し、ユーロ圏の景気押し上げを狙う。
買い入れは、カバードボンドが10月中旬、ABSが10─12月期中に開始。ギリシャ、キプロスなど格付けが「BBBマイナス」以下の国々も買い入れ対象とし、少なくとも2年間継続する。
リファイナンス金利は0.05%に、上限金利の限界貸出金は0.30%に、下限金利の中銀預金金利はマイナス0.20%にそれぞれ据え置かれた。
ドラギECB総裁は理事会後の記者会見で「われわれが講じるすべての措置が経済に効果を発揮すれば、インフレも目標水準に近づいていくだろう」と語った。
ECBがこれまでに決定した一連の措置については、バランスシートを2012年初頭の水準程度まで拡大させることで、市場への資金供給を増やすことが狙いとした。
ECBが買い入れに関心を持つこうした債券の総額は最大1兆ユーロに上ると指摘。ただ、実際の買い入れ額はこの水準に達しない可能性があるとした。
ECBは正式な国際金融プログラムの監視下にあることを条件に、投資不適格級のギリシャやキプロスなどの国の債券も幅広く買い入れ対象に含める。ドラギ総裁は「できる限り包括的に行うが、慎重に実施する」と述べ、条件付きとなることを強調した。
ロイターが今週行った調査では、ECBによるABS・カバードボンドの買い入れ額が向こう1年間で2000億ユーロに達すると予想されている。
ドラギ総裁は、必要なら追加措置をとる方針で理事会は一致していると強調、量的緩和(QE)の可能性に繰り返し含みを残した。ただ、QEをめぐってはバイトマン独連銀総裁ら内部からの反対が根強く、ECBが実際にQEに踏み切るのは困難ともみられている。実際、ドラギ総裁はこの日、早期の国債買い入れなどについてまったく言及しなかった。
これを受け、ユーロは対ドルで上昇、ユーロ圏国債利回りは上昇した。
ドイツではバイトマン連銀総裁がこれまでもABS買い入れに疑問を表明するなど、ECBの買い入れに対する根強い反論がある。こうした見方を反映し、独IFO経済研究所のシン所長は「ECBはついに救済機関、欧州バッドバンクと化した」と述べ、ECBの新たな買い入れ策に批判的な立場を示した。
ドラギ総裁はユーロ圏各国政府に対し、一部のリスクの高いABSに保証をつけるなどしてECBの買い入れ策の支援をするよう要請。ただ、独仏両国はこうした措置にも反対している。
ギリシャ株・債券が大幅安、10年債利回りは節目の7%突破 10/15
14日の欧州金融市場で、ギリシャの株・債券が売り込まれ、ギリシャ10年債利回りは心理的な節目となる7%を突破、7カ月ぶりの水準に上昇した。
ギリシャ政府が表明している国際支援からの早期脱却計画や、来年の総選挙の可能性をめぐる懸念が強まっており、売りが膨らんだ。
株式市場でも、銀行株.FTATBNKが下げをけん引する格好で、ギリシャ・アテネ株式市場のATG指数.ATGは5.7%下落した。
ギリシャ国債利回りは、政府が国際支援からの早期脱却の可能性に言及して以降、上昇基調にあった。
ギリシャでは来年2月に大統領選挙が実施される。サマラス首相が支援脱却の計画を推進するのは、自身の推薦する大統領候補への議会の支持取り付けが狙いとみられている。
ただこのところの利回り上昇を受けて、早期脱却は難しいとの観測が高まっており、そうなれば大統領を選出できず、解散総選挙の可能性が現実味を帯びると懸念されているもようだ。
ユーロ圏「四重苦」に市場警戒、忍び寄る危機再来の影 10/17
ユーロ圏に対する市場の警戒感が再び高まっている。ユーロ圏が抱える問題は、もたつく景気回復、低インフレ、フランスとイタリアの財政問題、債務危機の震源地ギリシャの政局リスクなど枚挙にいとまがない。
少なくとも現時点では、ユーロ圏危機が再燃したわけではない。債券市場は、神経質にはなっているが、2010─12年ほどの深刻さはない。世界市場は今週、大きく動揺したが、それは米中の経済指標がさえず、世界的な景気減速への懸念が広がったことが直接の原因だった。
しかしユーロ圏では、主要国間の政治的な緊張感が高まっているほか、ドイツと欧州中央銀行(ECB)との間の不協和音が顕在化するなか、回復を阻む4つのリスクがクローズアップされている。
1)エコノミストや投資家は、ドイツが自国と域内他国の経済問題の解決策として主張している財政緊縮策が不適切であり、その結果、需要が冷え込み、公共投資が拡大しないのではないかと懸念している。
2)米国や国際通貨基金(IMF)などは、ECBの金融緩和策が小粒、遅きに失する可能性を懸念。また、ECBに十分な政治的支援がなく、より大胆な措置に踏み込むことができない可能性もある、と見ている。
3)フランスとイタリアが赤字削減圧力に抵抗。2015年の予算案をめぐって、仏伊と欧州連合(EU)当局との対立が深まっている。
4)ギリシャは政治的な思惑を背景に、2400億ユーロの救済策からの早期脱却を目指している。市場では時期尚早との見方が強く、外部の支援なしに十分な財源を確保する能力はない、との声。解散総選挙が噂される中、過激な左派勢力が政権の座につく可能性も懸念される。
EU外交筋は「不安の時代が戻ってきた」と指摘。トレーダーは、ユーロ圏の解体可能性はもはや考えていないが、「危機は終わったとの見方は消えた」としている。
<緊縮派の独、成長重視の仏伊>
ドイツのメルケル首相は16日に議会で演説し、ユーロ圏の危機は終わっていない、と強調。
「欧州の経済通貨同盟の仕組みや、加盟各国の状況という点では、危機の原因は取り除かれてはいない」と述べた。
持続的な成長を確実にするために、加盟各国は財政目標を堅持する必要があるとし、赤字削減を先送りしようとする仏伊を暗に批判した。
メルケル首相は、EUの安定成長協定が定める財政ルールについて「すべての加盟国が全面的に尊重する必要がある」との考えを示した。
仏伊は、経済成長が最優先と主張。アジア欧州会議(ASEM)首脳会議に出席するためミラノに到着したオランド仏大統領は「経済成長を再び実現することが、市場安定化のための最良の方法だ」と述べた。
レンツィ伊首相も同調。「ここ数年は財政健全化を優先させ、成長をあきらめてきたが、投資なしに危機脱却は不可能」と強調した。
米財務省は15日に公表した為替報告書で、ドイツが自国経済を押し上げることで欧州経済全体を一段と支援できる、との見方を示した。
米政府当局者の間では、成長率やインフレ率低下に歯止めをかけるため、ドイツが率先して需要拡大策をとるべき、との声が出ている。
ドイツは2015年に、1969年以来初の財政均衡を達成する見通しで、大規模な公共投資を求める国際的な圧力に屈する気配はない。
<EU、12月首脳会議での妥協模索>
こうしたなか、EUは妥協の可能性を探っている。つまり、ドイツがインフラ投資を拡大し、フランスとイタリアは財政健全化の猶予を得る代わりに経済改革を加速する。さらに、ECBが国債買い入れなどの一段の緩和策を採用できるよう、政治的な環境を整えるというものだ。
EU当局者は、12月18─19日のEU首脳会議での合意を目指すが、合意へのハードルは高く、不十分な内容にとどまる可能性もある。
ドイツ連銀と財務相は、量的緩和はもとより、ECBが決定した資産担保証券(ABS)・カバードボンド買い入れについても批判的だ。
サパン仏財務相は、妥協への道のりの厳しさをこう説明している。
「ユーロ圏が持続的な成長を再び実現するにおいては、4つの課題がある。1つ目は金融政策だが、これは決着済み。われわれ政府が直面している残る3つの課題とは、財政健全化、構造改革、そして投資だ」「課題を一括で討議しても、妥協の可能性が高まるわけではない」
ギリシャ財政赤字、昨年のGDP比は実質1.8%に改善=EU 10/21
欧州連合(EU)統計局は21日、新たな会計制度の下で再計算したところ、2013年におけるギリシャ財政赤字の国内総生産(GDP)比率は実質1.8%に改善したと明らかにした。
同局によると、旧会計制度で12.7%だった全体的な財政赤字比率は12.2%に改定された。このうち、銀行セクター向け資本としての引当金が10.4%分を占めていたため、実質的な財政赤字比率も2.3%から1.8%に下方修正された。
ギリシャ株が大幅安、解散総選挙を警戒 10/30
30日序盤のギリシャ株式市場は、大幅に下落している。解散総選挙を警戒し、一部の投資家がエクスポージャーを縮小していると見られる。
0929GMT(日本時間午後6時29分)現在、アテネ市場のATG指数.ATGは4.6%下落。銀行株指数.FTATBNKは8.9%安。
ベータ・セキュリティーズのチーフトレーダー、タキス・ザマニス氏は「この国のリスクは、政治的な不透明感と、解散総選挙の可能性をめぐる警戒感だ。一部の投資家は資金を引き揚げている」と指摘した。
ギリシャの10年物国債利回りGR10YT=TWEBは35ベーシスポイント(bp)上昇して7.97%となり、節目の8%に接近している。 
●11
ギリシャの国際支援脱却、追加措置なければ不可能=EU高官 11/4
ギリシャが新たな支援を受けることなく既存の国際金融支援プログラムを脱却する可能性は「極めて低い」ことが、欧州連合(EU)高官の話で明らかになった。
同高官は記者団に対し、「完全に脱却する可能性は極めて低い」と述べた。「われわれは他にどのような選択肢があるのかを探る必要があるだろう。いかなる策を選んでも、ユーロ圏機関とギリシャ当局は契約関係を持つことになる」とした。
EUと国際通貨基金(IMF)による2400億ユーロに及ぶ金融支援プログラムは2010年5月に始まり、EUによる支援策は今年12月31日に期限を迎える。ギリシャは現在EU機関とIMFと交渉を行っており、EUの資金供与が終わった時点で同プログラムを終了する意向を示している。IMFは2016年初めまでの支援継続を表明している。
EU高官は、12月8日に予定されるユーロ圏財務相会合でギリシャ支援について決定が下されるとの見通しを示した。
同高官は支援の詳細については明らかにしていないが、当局者らはこれまで、欧州安定メカニズム(ESM)の強化条件付き与信枠(ECCL)の形を取る可能性が高いと述べている。ECCLが提供されることになれば、ギリシャはEUの執行機関である欧州委員会のきめ細かい監視の下に置かれることになる。
EU高官はまた、銀行の資本増強に向けた救済資金の未使用分を新たな与信枠に振り分けることが可能だとの見解も示した。
ユーロ圏、ギリシャ向け追加猶予措置の必要性を再検討=当局筋 11/6
ユーロ圏は、ギリシャ向け支援融資の返済条件をさらに緩和する必要があるか、再検討している。複数のユーロ圏当局者がロイターに明らかにした。支援の条件である改革が進展してギリシャ経済の見通しが改善したため、追加の猶予措置の必要性に疑問符がついているもようだ。
あるユーロ圏当局筋によると、現在、ギリシャの返済能力に関する分析を待っており、まだ決定されていないが、追加の条件緩和を見送る「可能性は排除されていない」と述べた。
2年前、ユーロ圏はギリシャに対する支援融資の返済条件を緩和した際、ギリシャ側が一定の条件を満たせば、一段の条件緩和を検討することで合意していた。
ギリシャ側は一段の条件緩和を訴え続けており、ハルドゥベリス財務相は5日、ロイターに対し、12月に予定する支援プログラムの最終審査の後、追加の条件緩和に関する協議が始まるとの見通しを示した。
ギリシャ政府は、ユーロ圏が再検討しているという話は聞いていないという。ある当局者は「返済条件緩和に関する合意は緊急対応策でなく、対象国へのほうびのようなものだった。その意味で、また、われわれが状況を改善させているというデータもあるのだから、合意通り、条件緩和の協議を続けるべきだ」と話した。
ギリシャは、基礎的財政収支の黒字化を予定より1年早く、2013年に達成。今年は、基礎的財政収支の黒字が目標を上回る見込みとなっている。
こうした取り組みを受け、ユーロ圏は、第1次支援融資の返済条件緩和の検討に入った。だが、欧州委員会筋は、ユーロ圏およびギリシャの経済情勢の変化を考慮しなければならない、と話す。
今や、ギリシャの財政赤字は、フランスやフィンランド、イタリアほど深刻でなく、リセッションが6年続いた経済も先行き見通しはかなり改善した。
2人目のユーロ圏当局者は、2012年の合意の前提から状況が大きく変化したと指摘し、「今やギリシャの債務は維持不能とは言えない。非常に維持可能だ」と語った。
ギリシャの10月CPIは下落幅拡大、デフレ状況続く 11/10
ギリシャ統計局(ELSTAT)が10日発表した10月の消費者物価指数(CPI)は前年比1.7%低下と、9月の0.8%低下から下落幅が拡大し、2013年12月以来の大幅な低下となった。
欧州連合(EU)基準のCPIは1.8%低下と、9月の1.1%低下から下落幅が拡大。ロイターがまとめたエコノミスト予想の1.0%低下を上回る下落幅だった。
ギリシャではここ1年8カ月にわたりデフレ状況が続いている。
ユーロ圏7─9月期GDP、成長弱く追加緩和期待 11/14
欧州連合(EU)統計局が発表した7─9月期のユーロ圏の域内総生産(GDP)速報値は、前期比0.2%増となり、前四半期の0.1%からわずかに拡大、市場予想の0.1%増を上回った。
フランスの成長率が予想を上回り、ドイツもかろうじて景気後退(リセッション)入りを逃れた。ただ、域内経済が弱いことに変わりはなく、今後新たな景気刺激策が必要となる可能性も依然残されている。
前年同期比での成長率は0.8%増、市場予想は0.7%増だった。
ABNアムロのエコノミスト、ニック・クニス氏は「ユーロ圏経済は引き続き拡大しており、経済は足元3度目の後退よりも緩やかな回復をたどる公算が大きい」と述ベた。
エコノミストの間では、成長が弱い上に年末にかけて経済が再度減速する可能性が高いことから、欧州中央銀行(ECB)は国債買い入れといった量的緩和(QE)を含む一段の対応策を迫られるものとみられている。
バークレイズは調査リポートで「景気回復はぜい弱かつ抑制されており、こうした状況を踏まえECBは2015年1─3月期末までに追加刺激策を打ち出さざるを得ないと引き続き予想される」とした。
国別では、ドイツのGDPが前期比0.1%増で予想と一致、前四半期の0.1%減から持ち直し、かろうじて景気後退入りを逃れた。
フランスは同0.3%増、前四半期の0.1%減からプラスに転じたほか、予想の0.2%増を上回った。
一方、イタリアは同0.1%減で、前四半期の0.2%減に続くマイナス成長となり、景気後退に逆戻りした。経済がゼロ成長以下となるのはこれで13四半期連続。
スペインは同0.5%増。ギリシャは0.7%増と3四半期連続でプラス成長を確保し、6年続いた景気後退(リセッション)からの脱却が鮮明となった。 
●12
ユーロ圏財務相、ギリシャ支援制度の半年延長を検討=文書 12/5
現行の対ギリシャ支援プログラムが年末に終了期限を迎えるなか、ユーロ圏の財務相は支援プログラムの半年間の延長を検討していることが、ロイターが入手した文書により明らかとなった。
この文書はユーロ圏財務相向けに作成されたもので、このなかで「支援プログラムに係る技術的な延長の目的は、ギリシャ当局が来年1月に必要な法案を採択できるよう、時間的な猶予を与えるためであるが、ギリシャで大統領選挙への準備が出遅れた場合、延長が長引く可能性も出てくる」と指摘した。
その上で「こうした点を踏まえ、支援プログラムは2015年6月末まで延長することが適切とみられる」とし、来週8日に開かれるユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の前に事務レベルで合意し、来年1月中旬までにすべての段取りを整えておくことが望ましいとした。
ギリシャ大統領選は与党に厳しい情勢、首相に追い風も 12/11
ギリシャ議会では今月、大統領選が実施されるが、アナリストの間では、連立与党の推すディマス前欧州委員の選出は厳しいとの見方が多い。
選出には定数300のうち少なくとも180票以上の賛成が必要だが、連立与党は155議席にとどまっており、残る25票を確保するには、無所属系議員の支持を取り付ける必要がある。
ただ無所属系議員は24人で、たとえサマラス首相が全員の支持を取り付けても1票足りない計算。しかも、一部の無所属系議員は、与党候補を支持しない意向を示しており、全員の支持を確保できる可能性は低い。
野党5党の議席は121。全員が反対票を投じれば、大統領を選出できず、解散総選挙となる。総選挙となった場合は、反緊縮派の急進左派連合(SYRIZA)が勝利するとみられている。
政治アナリストのジョン・ルイス氏は、サマラス首相が必要な支持を確保できないと予想。ただ政府関係者は、必要な票を確保できると自信を示しており、野党から造反者が1人も出ない保証はない。
<サマラス首相に2つの追い風>
サマラス首相には2つの追い風がある。まず、前回の選挙が実施されてから日が浅く、国民の大多数が選挙を望んでいない。また、総選挙で落選するリスクのある議員が、解散総選挙を望まないことも考えられる。
野党のうち、SYRIZA、共産党、黄金の夜明け党の3党は造反者が出る可能性が低いが、民主左派と独立ギリシャ人党では内部対立が起きており、造反者が出る可能性がある。
民主左派では先月、3議員が来年の選挙実施を条件に与党の大統領候補を支持する考えを表明しており、首相に譲歩する可能性がある。
無所属議員の大半は、連立与党か民主左派の出身で、一部の議員は与党を支持する考えを表明している。ただ、無所属議員の多くは現時点で明確な意向を示していない。
第1回投票は17日に実施される。
ギリシャ政治混迷、「取り返しつかない」経済的損害も=中銀総裁 12/16
ギリシャ中銀のストゥルナラス総裁は15日、講演原稿の中で、政治の混迷が深まる中、国内経済は「取り返しのつかない」損害を受けるリスクに直面しているとの認識を示した。
サマラス首相は政局不安を払しょくするために大統領選出の手続きを2カ月前倒ししたが、連立与党の推す候補者が支持を得られなければ早期の総選挙を実施することになる。世論調査によると、解散総選挙では反緊縮派の急進左派連合(SYRIZA)が勝利するとみられている。
財務相を務めた経験もあるストゥルナラス総裁は「最近の(政治)危機は深刻さを増しており、市場の流動性は速いペースで縮小している。現在、ギリシャ経済にって取り返しのつかない損害を受けるリスクは大きくなっている」と述べた。
「ギリシャはユーロ圏に必要」、欧州委員が改革路線強く支持 12/17
ギリシャで総選挙実施の可能性が浮上するなか、モスコビシ欧州委員(経済・財務・税制担当)は16日、サマラス首相が進める公的債務削減・経済改革路線を強く支持する考えを明らかにした。
記者団に語った。同氏は、改革の成果が表れつつあると評価、「ギリシャはユーロ圏に必要だ」と述べた。
ユーロ離脱せず、支援条件再交渉=ギリシャ野党党首 12/19
ギリシャ野党急進左派連合(SYRIZA)のツィプラス党首は18日、ギリシャはユーロ圏から離脱しないと言明した。ただ、SYRIZAが選挙で勝利すれば、欧州連合(EU)などから受けた支援の条件を再交渉する意向を示した。
ツィプラス党首はロイターのインタビューで「われわれが再交渉する意向を持っている債務と融資に関する合意について、一方的な措置をとるつもりはない」と述べた。
ただ、ギリシャをユーロ圏から離脱させないことにコミットしていると言明。ギリシャが国際通貨基金(IMF)から受けた融資は返済しなければならないとの立場を示した。
一方、欧州各国はギリシャの債務を免除、もしくは削減する必要があると主張。欧州中央銀行(ECB)が保有する債券の償還期限の延長を求める方針も示した。
ギリシャ議会は17日、次期大統領を選出する1回目の投票を実施したが、サマラス首相が擁立したディマス元欧州委員を選出できなかった。2回目の投票は23日に実施。3回目の投票で大統領を選出できなければ議会は解散され、総選挙が実施される。
世論調査ではSYRIZAの支持率がサマラス首相率いる新民主主義党(ND)を上回っており、現時点で総選挙が実施されれば、SYRIZAが勝利すると見られている。
ツィプラス氏がギリシャをユーロ圏から離脱させないことにコミットメントを示したことを受け、ギリシャの株価は上昇に転じた。
欧州株続伸、ギリシャ株買われる 12/19
18日の欧州株式市場は、続伸して取引を終えた。ギリシャ野党急進左派連合(SYRIZA)のツィプラス党首が、ギリシャはユーロ圏から離脱しないと発言したことでギリシャ株が大きく値を上げた。
原油価格が一時的に持ち直したことや、連邦公開市場委員会(FOMC)の声明がハト派的な内容だったことや、ロシア市場が比較的安定していたことも買い安心感につながった。
FTSEユーロファースト300種指数.FTEU3は39.47ポイント(3.00%)高の1356.23で取引を終えた。1日の上昇率は2011年11月以来、約3年ぶりの大きな伸びとなった。
DJユーロSTOXX50種指数.STOXX50Eは101.78(3.33%)高の3153.77だった。
ギリシャの主要株価指数.ATGは1.47%の上昇。次期大統領を決める選挙で現政権が推す候補者が勝利できなければ解散・総選挙となり、欧州連合(EU)主導の緊縮策に反対するSYRIZAが躍進するとみられている。ツィプラス党首は18日、EUなどによる支援の条件について再交渉し、ユーロ圏からの離脱を目指さない意向を示した。
北海ブレント原油LCOc1は一時、1バレル=63ドルまで持ち直し、石油関連株が買われた。ノルウェーの油田掘削会社シードリル(SDRL.OL)は9.0%値を上げた。STOXX欧州600石油・ガス株指数.SXEPは2.72%上昇した。原油価格は欧州市場の取引終了後、再び値を下げた。
米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が前日の記者会見で、FOMCを今後数回開くまでは利上げしないとしたことで、金融株も値を上げた。
欧州株続伸、政治不安でギリシャ株に売り 12/24
23日の欧州株式市場は続伸して取引を終えた。ただ、政治不安を嫌気する形でギリシャ株が売られ、欧州全体の株価も上昇幅は限定的だった。
FTSEユーロファースト300種指数.FTEU3は7.80ポイント(0.57%)高の1374.80で取引を終えた。DJユーロSTOXX50種指数は37.56(1.19%)高の3192.47となった。
ギリシャの主要株価指数.ATGは1.69%低下した。23日に行われた次期大統領選出のための2回目の投票では連立与党の候補が当選に必要な賛成票を得られず、29日に最終投票が行われることになった。
与党側が巻き返しを図れない場合、来年1月末にも総選挙が実施されることになり、欧州連合(EU)主導の緊縮策に反対する最大野党、急進左派連合(SYRIZA)の躍進が見込まれる。SYRIZAは選挙で勝利すれば、欧州連合(EU)などから受けた支援の条件について再交渉する意向を示している。
一方、ポルトガルのPSI─20指数.PSI20は1.83%上昇した。同国の財政赤字が縮小したことが好感された。
スペインのIBEX35指数.IBEXは、スペイン銀行(中央銀行)が経済成長見通しを引き上げたことを受けて、1.03%上昇した。
ドル続伸、強い米GDPを好感=NY市場 12/24
23日のニューヨーク外為市場では、ドルが主要通貨に対して続伸した。朝方発表の米第3・四半期実質国内総生産(GDP)確定値が11年ぶりの高い成長率となったことが好感され、ドル買いが継続した。
米GDPは前期比年率換算で5.0%増加となり、3.9%の改定値から1.1ポイント大幅上方修正された。米11月耐久財受注は予想を下回ったが、GDPがより材料視された。ドル/円JPY=は約2週間ぶり高値となる120.82円を付け、0.62%高の水準で取引されている。
ユーロ/ドルEUR=は2年4か月ぶりの安値を更新、終盤も0.50%安水準の1.2164ドルでの取引となっている。ギリシャ次期大統領選出のための2回目の投票で、連立与党の候補が必要な票数を得られず、ギリシャの政治的混乱が高まるとの観測でユーロ売り圧力が高まった。
ドルの主要6通貨に対するドル指数.DXYは、終盤0.36%高の90.093。2006年4月以来、約8年ぶりの高水準。
大きく上方修正された米GDPについて、DRWトレーディング(シカゴ)のストラテジスト、ルー・ブライアン氏は「大幅な修正があった時、まず最初に確認することは個人消費支出がどの程度その変化にかかわっているかだ。今回、それは2.2%増から3.2%増へと上方修正された。一見したところ、とても力強い修正だと言わざるを得ない」と述べた。
一方、英ポンドは下落した。英第3・四半期GDPは下方修正され、イングランド銀行(英中銀、BOE)に対する利上げ圧力が弱まった格好。ポンド/ドルGBP=は終盤0.65%安の1.5484ドル。
ユーロ/ドル小幅高、ギリシャ不安は続く=NY外為市場・中盤 12/30
週明け29日中盤のニューヨーク外為市場は、ユーロがドルに対して小幅高となった。ギリシャが次期大統領選出に失敗すると見込んでいた投資家が、利益確定のために売りポジションを解消した。
ギリシャ大統領選で連立与党のディマス候補への票は、選出に必要な180票に届かなかった。来年1月にも総選挙が実施されることになり、最大野党の急進左派連合(SYRIZA)が躍進して、欧州連合(EU)などの金融支援策が揺らぐ恐れがある。
この日はややユーロ高となったものの、上昇幅は限定的だった。欧州中央銀行(ECB)が国債購入を柱とした量的金融緩和を導入するとの観測が根強く、ユーロ/ドルは0.14%高の1.2193ドルで取引された。依然28カ月ぶりの安値水準で推移している。 
 

 

 
 
 
 2015

 

●ギリシャ2015/1-6 
● 1
ギリシャ議会解散、総選挙は1月25日実施へ 1/1
ギリシャは31日、議会を解散した。1月25日に総選挙を行うことが正式に決まった。
ギリシャ議会は29日に大統領を選出できなかったため、解散・総選挙が行われることになった。
世論調査によると、国際通貨基金(IMF)などの支援に反対する野党急進左派連合(SYRIZA)の支持率がサマラス首相率いる新民主主義党(ND)を上回っているが、リードは縮小している。
ユーロ圏、ギリシャを救済する義務はもはやない=独首相側近 1/1
メルケル独首相率いる与党の高官は、31日付の独紙ライニッシェ・ポストとのインタビューで、ギリシャの問題はユーロ圏の金融システム全体に対する重要性がもはやないため、域内の政治家らは同国を救済する義務はないとの見解を示した。
与党キリスト教民主同盟のミヒャエル・フックス氏はまた、ギリシャの政治家はユーロ圏のパートナー諸国を「強要する」ことはできないと述べた。
同氏は、ギリシャ野党急進左派連合(SYRIZA)が緊縮策や改革を後退させるのならば、欧州委員会、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)から成るトロイカはギリシャへの融資を削減する必要が出てくるとした。
「ギリシャを救済する必要があった時期は終わった。政治的に強要される可能性はない。ユーロ圏にとってギリシャのシステミックな重要性はもはやない」と述べた。
ドルが強気維持し2014年取引終了、来年も上昇相場の見通し=NY外為市場 1/1
31日のニューヨーク外為市場では、薄商いのなかドルがユーロとスイスフランに対し2年5カ月ぶりの高値をつけ、対円でもやや上昇した。主要6通貨に対するドル指数.DXYの年初からの上昇率は1997年以来最大となり、2014年の取引を堅調な地合いで締めくくった。来年もドル高基調は続くと見られている。
この日の取引でユーロ/ドルEUR=は一時1.2098ドルまで下落、節目となる1.21ドルを下回った。ドルは対スイスフランで一時0.9944フランまで上昇。終盤の取引では0.52%高の0.9939フランで推移している。
ドル/円JPY=は0.28%高の119.79円。ドル指数は0.33%上昇の90.288。
エバーバンク・ウエルス・マネジメントのシニア市場ストラテジスト、クリス・ガフニー氏は、「ドルは勝ち組に属し、市場参加者はドルのポジションを手放さないまま今年の取引を終えた」と述べた。
米国と日欧の金融政策の方向性の違いもドル高の支援要因となっている。ただ、来年上半期にドル高が一段と進んだ場合、米連邦準備理事会(FRB)が利上げ開始を延期する可能性もあるほか、中国などの新興国の波乱や、ギリシャのユーロ圏離脱問題の再燃など、世界の金融システムにとり懸念となる事態が発生する可能性もある。
コモンウェルス・フォーリン・エクスチェンジ(ワシントン)の主席市場アナリストのオマー・エシナー氏は、ドル高基調は継続するものの「市場のボラティリティーは高まる」との見方を示した。
ギリシャのパパンドレウ元首相が新党結成、総選挙にらみ 1/3
ギリシャで今月25日に総選挙が行われるのを前に、パパンドレウ元首相は2日、所属政党の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)を離党し、新党を結成すると発表した。
党名は「変革への動き」で翌3日に正式に発足するとした。
元首相は交流サイトのフェイスブックに投稿し、「わが国の革新勢力にとって今や次の大きな一歩を踏み出す時がやってきた」と述べた。
新党の政策など詳細は不明。
日経平均は続落、外部環境の不透明感を嫌気 1/5
前場の東京株式市場で日経平均は続落した。昨年末の米国株安やギリシャの政情不安が尾を引き、先物主導で売りが先行。一時231円安まで下げ幅が拡大した。ドル/円が落ち着いていることは支えだが、国内に手がかり材料が乏しい中で主力輸出株が利益確定売りに押されたほか、銀行、証券などの金融セクターも軟調だった。
大発会の東京株式市場はご祝儀相場とはならなかった。年明けでニューマネーの流入が見込めるほか、今年は日銀のETF買い拡大やGPIFなど公的年金の買い増しも予想されているが、外部環境の不透明感を払しょくするには至らなかった。売り一巡後は下げ幅が縮小したものの、安値からの戻りは限定的だった。市場では「短期的なリスク回避の動きだ。日経平均の日足チャートは12月18日と19日に空けたマドを埋め、すでに調整一巡感が出ている。通常国会が始まれば政策への期待感も浮上する。海外情勢にらみの展開ではあるが、日経平均の値幅調整は一両日で終了するとみている」(岡三オンライン証券チーフストラテジストの伊藤嘉洋氏)との声が出ていた。
個別銘柄では、秀英予備校(4678.T)が軟調。12月30日に2015年3月期連結業績予想の下方修正を発表し、嫌気された。半面、日本電産(6594.T)は反発。5日付日本経済新聞は、同社の2015年3月期(米国会計基準)の年間配当が従来予想(60円)を上回る80円程度になりそうと報じた。大幅増配期待の買いが入った。
初日からボラタイルな「官製相場」、2015年の展開暗示か 1/5
新年初日の東京市場は、動きの激しいボラタイルな展開となった。ギリシャの政情不安など海外の不透明感が強いにもかかわらず、特段の材料がないまま日本株はマイナス圏から急反転。日銀のETF(上場投資信託)購入を期待した買いが入るなど「官製相場」への期待が株価を押し上げた格好で、ドル/円JPY=EBSも切り返した。緩和マネー主導で大きく振れる今年の相場展開を暗示しているようだとの声も出ている。
<日銀ETF買いへの思惑>
大発会のマーケットには、その年の相場の特徴がしばしば表れることがある。日経平均.N225が3万8915円(終値ベース)の史上最高値を付けた1989年12月29日。翌年の大発会となった1990年1月4日は200円安で始まり、年間では1万5000円下落。バブル崩壊の予兆となった。
昨年初日の日経平均は、その前年末に9連騰と急上昇した反動が出て、380円安で始まった。昨年の値幅自体は4100円と、それほど大きいわけではなかったが、前年末の終値水準から下に2400円、上に1700円と上下に振れる荒れた相場展開を示唆するスタートとなった。
今年の大発会は、終値では42円安と小幅安だったが、一時はマイナス200円安まで下落。その後、一時90円高の水準まで一気に切り返すボラタイルな展開となった。特段の買い材料は見られず、上海総合指数.SSECが一時3%超の急伸を見せたが、コマツ(6301.T)などの株価はマイナスで、中国関連株がにぎわったわけではない。
相場を反転させた材料は、日銀によるETF買いへの期待だ。前場終値がマイナス圏だったことで、午後に入って買いが入るのではないかとの思惑が強まった。
「昨年の大納会(12月30日)は、日銀のETF買いが見送られたことが大幅安の一因となった。大発会は逆に日銀のETF買いが入ると期待されるとの見方から、短期筋による押し目買いが入ったようだ」(日本アジア証券グローバル・マーケティング部次長の清水三津雄氏)という。
<インパクト強まる日銀や公的年金の買い>
日銀は昨年10月31日に決定した追加金融緩和策で、ETFを2015年に3兆円購入することを決定した。東京株式市場の年間営業日を250日として、1日当たり「必ず」120億円買うことになる計算だ。
昨年10月31日以降、ETFの買い入れ規模は、それまでの147億円から374─380億円に拡大。そのペースであれば、ほぼ3日に1度は買い入れる必要がある。
東証1部売買代金は2兆円を割り込む水準に減少しており、取引時間中にまとまって出てくる買いの額としては、マーケットに与えるインパクトは十分だ。さらに中央銀行が株式を購入するというアナウンスメント効果は小さくない。
また年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や共済年金など「公的年金」が国内株を増やすポートフォリオへの変更を進めていることから、年間1.7─3.5兆円の資金が流入するとの試算もある。
「いいか悪いかは別にして、日銀やGPIFの買いが日本株相場を下支える要因になることは間違いない。しかし、日銀の追加緩和などを材料にヘッジファンドなどが仕掛けることが予想される。今年も『官製相場』が続くとみられるが、ボラタイルな相場展開は続くことになりそうだ」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は指摘する。
<株高と債券高の共存いつまで>
実際、現物株と先物を合わせた昨年の日本株の買い主体を見ると、12月15日の週までの累計では、外国人が2278億円と2013年の13兆6771億円から大きく減らしているのに対し、公的年金の売買を仲介する信託銀行は2兆7469億円と大きく買い越している。
現在、日本株を最も保有しているのはGPIFだが、ETF購入を進める日銀は近く日本生命を抜いて第2位の「大株主」となる見通しだ。「違和感はあるにせよ、GPIFと日銀の動向に神経質になるのはやむを得ない」(国内証券)というのが市場の本音だろう。
「官製相場」は円債市場も同じだ。10年債利回りは過去最低水準の0.3%台に低下。日本経済もしくは日本企業の業績が改善するとすれば、低過ぎる長期金利はいずれ正当化できなくなる。
一方、低い長期金利の方が「正しい」とすれば、今から10年後でさえ、景気や物価は上向いてない状態と言うことであり、株高の方が修正を迫られることになる。
「官製相場」が行き過ぎて、実体経済とかい離するような相場が形成されれば、いずれ、株高と低金利のどちらかが修正される形で大きく変動することになるため、警戒が必要だ。
湾岸諸国の株式市場が軒並み急落、原油価格の下落で 1/6
湾岸諸国の株式市場が6日、軒並み急落。北海ブレント原油先物が前日に続き、大幅下落したことや、ギリシャをめぐる懸念から世界的にリスク回避の動きが強まっている。
北海ブレント原油先物LCOc1は6日、供給過剰をめぐる懸念を背景に5年半ぶり安値を更新した。
MSCI新興国株指数.MSCIEFは1%安。
サウジアラビア株式市場.TASIは3.5%安。石油化学大手のサウジ基礎産業公社(SABIC)2010.SEが5.7%値下がりしている。
ドバイ.DFMGIは4.1%下落。
このほか、アブダビ.ADI(2%安)、クウェート.KWSE(1.8%安)、オマーン.MSI(1.3%安)、エジプト.EGX30(2.3%安)も軒並み下落している。
独伊首相が首脳会談、ギリシャ総選挙2日後に控え 1/7
イタリアのレンツィ首相は、1月22━23日にメルケル独首相を地元フィレンツェに招き、首脳会談を開催する。現地紙ラ・ナツィオーネとのインタビューで明らかにした。
会談の日程は、ユーロ離脱懸念が再燃しているギリシャの総選挙を2日後に控えたタイミングとなる。
成長を重視しより柔軟な財政運営を主張するレンツィ首相は、構造改革や支出削減を求めるメルケル首相について「個人的には良い関係を持っているが、時にわれわれの意見は分かれる」と指摘。フィレンツェの魅力を紹介する中で、メルケル氏の支持を得たい考えを示した。
ユーロ/ドルは9年ぶり安値更新、ECBの緩和観測強まる 1/9
8日のニューヨーク外為市場では、ユーロが対ドルで9年ぶり安値を更新した。朝方発表のユーロ圏経済指標が弱く、欧州中銀(ECB)の追加緩和策があらためて意識され、ユーロの軟調な動きが続いた。
ECBは22日に理事会を開き、量的緩和策を打ち出すと期待されており、利上げ時期を探る米連邦準備理事会(FRB)との金融政策の方向性の違いが浮き彫りとなった。
ドイツの11月鉱工業受注指数が低調で、前日発表されたユーロ圏の12月消費者物価指数(CPI)がマイナスとなり、ユーロ圏経済への警戒感が高まった。また25日に予定されているギリシャの総選挙で急進左派連合(SYRIZA)が勝利した場合に、緊縮財政をめぐりドイツとの対立が懸念される。
ユーロ/ドルEUR=は2005年12月以来の安値となる1.1754ドルに沈んだ後、終盤は0.41%安の1.17895ドルの水準。1.1750ドルにはオプション・バリアーが指摘されている。
ドル/円JPY=は119.97円に上昇後、終盤は0.32%高の119.63円の水準での取引となっている。ドルの主要6通貨に対するドル指数.DXYは9年ぶり高値の92.528に上昇後、直近は0.49%高の92.333。ユーロ安が影響している。
ドルの見通しについてブラウン・ブラザーズ・ハリマン(ニューヨーク)の通貨戦略部門の世界責任者、マーク・チャンドラー氏は「誰もがドルは買いだと言っている。そして実際誰もがドルをすでに買い持ちにしている」と述べた。
そのうえで同氏は「いま一番思うことは、ECBが理事会を開く22日に、うわさで売って事実で買う準備をすることだ。おそらくECBが追加緩和策を発表すれば、もう一段のユーロ安があるかもしれないが、利益確定の買い戻しが続くだろう」との考えを示した。
日経平均大幅反落、原油安による先行き不透明感で1万7000円割れ 1/13
前場の東京株式市場で日経平均は大幅反落。前引けは298円安で取引時間中としては1月7日以来3営業日ぶりに1万7000円を割り込んだ。原油安を背景に米国株安と円高が進んだことが嫌気され、自動車、電機などの主力株中心に売りが先行した。
円相場が1ドル117円台に上昇したことで一時は369円安まで下げ幅が拡大したが、前引けにかけては押し目買いも入りやや下げ渋る展開となった。
米原油先物は12日、5年9カ月ぶりの安値となる1バレル45ドル台で取引を終了している。原油安によるリスクオフの動きは日本株にも波及した。先行き不透明感から海外短期筋が先物に仕掛け的な売りを強めたとみられている。米企業の決算シーズンを控えているほか、来週には欧州で重要イベントを控えていることも見送り材料になった。個人の押し目買いや日銀ETF買いの期待などが支えになって下げ幅を縮小させたが、戻りは鈍かった。市場では「日本のファンダメンタルズに変化はないものの、ECB理事会やギリシャの総選挙を見極めるまで本格的には動きにくい。決算発表をみながらの個別対応になりそう」(東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏)との声が出ていた。
個別銘柄では、イオン(8267.T)が続落。前日比で5%を超える下げとなっている。9日、2014年3―11月期の連結営業利益が同47.9%減の493億円と大幅減益になったと発表し嫌気された。半面、オーエスジー(6136.T)は買われた。9日に発表した2014年11月期決算で営業利益が大幅増となり好感された。
東証1部の騰落数は、値上がり284銘柄に対し、値下がりが1491銘柄、変わらずが85銘柄だった。
ギリシャ国債利回りが上昇、国内2行が緊急流動性支援を申請 1/16
16日の欧州債券市場でギリシャ国債利回りが上昇している。
ギリシャ中銀筋はロイターに対し、国内2行が中銀に緊急流動性支援(ELA)を申請したことを明らかにした。25日の総選挙を控え、流動性がひっ迫していることが浮き彫りとなった。
10年国債利回りGR10YT=TWEBは40ベーシスポイント(bp)上昇し、9.51%。3年債利回りGR0029312=TWEBは137bp上昇し、11.71%。
ギリシャのユーロ圏離脱は論外=欧州委員長 1/17
欧州委員会のユンケル委員長は16日、ギリシャのユーロ圏離脱は論外との考えを示した。
同委員長はパリで行った記者会見で、「ギリシャがユーロ圏を離脱することはない。われわれがギリシャをユーロ圏から追放することもない」と述べ、ギリシャのユーロ圏離脱は論外との考えを示した。
ギリシャで25日に実施される総選挙では、最新の世論調査でも緊縮財政に反対する野党・急進左派連合(SYRIZA、シリザ)が優勢となっており、サマラス首相率いる与党・新民主主義党(ND)は遅れを取っている。
ユンケル委員長は内政には干渉しないとしながらも、前政権が確約したいかなる約束事も守られる必要があるとの考えを示した。
ギリシャ経常収支、11月は9.97億ユーロの赤字=中銀 1/20
ギリシャ中央銀行が20日発表した11月の経常収支は、9億9700万ユーロ(11億5000万ドル)の赤字だった。赤字額は、前年同月(7億5300万ユーロ)を上回った。
観光関連の収入は2億6700万ユーロ。前年同月の2億0500万ユーロを上回った。
2014年通年の経常収支は、輸入の減少や観光収入の増加で前年に続き黒字が予想されている。13年は12億4000万ユーロ、国内総生産(GDP)比約0.7%の黒字だった。
ECB、ギリシャの銀行に対する緊急流動性支援を承認=銀行筋 1/22
欧州中央銀行(ECB)は、ギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)を承認した。中央銀行を通じて実施する。銀行筋がロイターに明らかにした。銀行筋によると、実施が承認されたのは2週間で、その後継続できるかを判断するという。
国内大手2行から緊急融資の申請を受けたギリシャ中銀が、ELA制度を活用できるようECBに承認を求めていた。ELA制度の下では、各国の中銀は国内行の支援にECBの承認が必要。
ECB理事会後のドラギ総裁の発言要旨 1/23
欧州中央銀行(ECB)は22日、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.05%に据え置いた。ドラギ総裁は理事会後の会見で量的緩和(QE)プログラムの決定を発表した。総裁の発言要旨は以下の通り。
<ギリシャ国債買い入れ>
ギリシャに対する特別なルールはない。どの加盟国にも基本的に適用されるルールがあるだけだ。ギリシャ国債の買い入れが実施可能になるための条件がいくつかある。継続されなければならない免除措置、ある種のプログラムは必要だ。33%の発行体上限もある。これらは例外的なルールではなく、以前から存在していたものだ。
<スイス中銀のフラン上限撤廃決定>
他中銀の決定についてコメントしない。
<バブル発生リスク>
現段階でバブルは確認していない。一部地域の特定の市場で価格が急上昇している可能性はあっても、バブル時に見られるようなレバレッジや銀行融資の急拡大などは起きていない。しかしながら、われわれは警戒している。特定地域におけるバブルであれば、金融政策よりも、その地域に応じたマクロプルデンシャル措置をもって対応すべきだ。
<政府と欧州委の役割>
政府の行動が必要だ。欧州委員会からも財政政策の監視、また投資計画の実行の両面で行動が求められる。早急に実施される必要がある。スピードは絶対不可欠だ。
<多数が即時量的緩和を支持>
理事会は、資産買い入れプログラムが法的な意味で真の金融政策手段と表明することで全会一致した。このことは重要だ。と言うのも、(資産買い入れが)金融政策の手段で、適切な状況で活用しつつ、われわれが持つ選択肢の一部との原則が確立するからだ。また、採決しなくても良いほど大多数が即時発動の必要性を支持した(訂正)。即時発動が必要との意見が大勢を占めたと言える。ただし当然ながら異なる意見もあった。結局、リスク共有が20%、80%は共有しないとすることで考えがまとまった。
<量的緩和の成果>
今日決定された措置は、効果的だと信じている。インフレ、および中期インフレを押し上げるか、もしくは債券を現金に基本的に置き換えるリバランス効果をもたらす。このため、銀行はそうした時点で民間部門、家計、企業に融資を実施するインセンティブが高まる。そうなると、インフレ期待に対する伝達効果が表れる。これはまた1つの重要な伝達経路となる。
<財政ファイナンスを否定>
今回のプログラムについて、各国が財政を拡大させる動機付けと考えるなら、大きな間違いだ。財政ファイナンスをまったく意図していないことは明らかだ。財政ファイナンスにならないようプログラムを設計したというのが真相だ。
<リスク共有>
今回のプログラムは規模が極めて大きい。リスク共有の原則を維持したかった。そのため20%の割合を保持した。一方で、今後の動向次第で財政に意図せぬ結果が及ぶと懸念する多くの参加国の懸念を和らげるような決定をしたかった。こうしたリスクに対応するため、無制限債券買い入れ策(OMT:アウトライト・マネタリー・トランザクションズ)を稼動させる用意がある。
<理事会は唯一の決定機関>
リスク共有問題が、本日の金融政策決定でほぼ最も重要な事柄となった。このことに驚いた。中銀にとり、最も優先すべきは金融政策が効果を発揮することで、政策効果に偏見を持たず、これらが意味することを考慮することだ。様式や数量、諸規則、各種の制約は、ここフランクフルトで決められてきた。従って理事会が唯一の決定機関で、決定でユーロ圏全体の通貨・金融状況に影響が及ぶ。
<債券買い入れの制限>
2つの制限を設けた。ECBは銘柄あたり25%以上の買い入れ、および発行体の抱える債務の33%以上の買い入れは行わない。銘柄あたり25%の買い入れ制限は、債権者を平等に扱う「パリパス」条項に基づいているとECBが言明するうえでの根拠となる。
<損失の分担>
発生し得るコストの分担に関し、欧州機関の債券買い入れ(追加資産買い入れの12%を占め、加盟各国の中銀が買い入れを実施)については損失分担の対象となり、各国中銀が買い入れる残りについては対象としないことをECB理事会は決定した。これは、今回発表した資産買い入れプログラム全体の20%が、損失リスクの分担の対象になることを意味する。
<原油価格の影響>
このところの原油安で、景気回復が勢いを増す基盤が強化された。原油価格の下落は、家計の実質可処分所得や企業収益を下支えするだろう。
<需要と失業>
われわれの金融政策や、金融情勢の継続的な改善、財政再建・構造改革の進展も、内需を一段と下支えするだろう。さらに輸出への需要は、世界経済の恩恵を受けるとみられる。ただ、高水準の失業や相当規模の未活用能力、公的・民間部門で必要なバランスシート調整が、引き続きユーロ圏回復の重しとなるだろう。
<的を絞った長期資金供給オペ(TLTRO)の金利変更>
残る6回のTLTROについて、価格条件を変更することを決定した。適用金利は各オペ実施時のユーロシステムの主要リファイナンシング・オペ(MRO)金利と同水準となる。当初2回のTLTROで適用されたMRO金利への10ベーシスポイント(bp)上乗せが廃止される。
<インフレ>
欧州連合(EU)基準消費者物価指数(HICP)は向こう数カ月間、前年比で引き続き極めて低い伸びかマイナスとなる見込みで、最近の原油価格の急激な落ち込みを考慮しつつ、向こう数カ月間で大幅な修正がないとすれば、当該の低インフレは短期的に避けられない。金融政策対応に伴い、需要は回復すると期待しており、原油価格が今後段階的に値上がりすれば、インフレ率も2015年と16年に段階的に伸びていくと予想される。
<今回の決定の理由>
この日行った追加的な資産買い入れに関する政策決定は、以下に挙げる2点の望ましくない動向に対処するために打ち出された。第1に、インフレダイナミクスが、予想よりも弱い状態が続いている。第2に、昨年6月から9月までに実施された金融政策措置は金融市場における価格に実体のある改善をもたらしたが、これは量的な結果を裏付けるものではなかった。その結果、金融緩和の規模は、低インフレが長過ぎる期間にわたり継続するリスクの高まりに対し、適切に対処するには十分ではなかった。
<QEプログラム>
(理事会)は既存の資産担保証券(ABS)とカバードボンドの買い入れプログラムを含む拡大された資産買い入れプログラムを開始することを決定した。拡大プログラムの下では、公的および民間部門証券の購入は月額600億ユーロとなる。2016年9月末まで実施する予定で、いかなる場合でもインフレ率の道筋が持続的に調整され、2%をわずかに下回る水準とするわれわれの中期的なインフレ目標と整合性があると確認できるまで実施する。
ECB量的緩和、規模も中身も不十分 1/23
欧州中央銀行(ECB)流の量的緩和(QE)は市場の眼鏡にはかなったが、ユーロ圏経済や通貨同盟プロジェクトにも同様の好影響を及ぼすのには苦戦しそうだ。月額600億ユーロの資産を買い入れるドラギECB総裁のQEは、狭義ではあるが重要な尺度からすれば成功を収めた。
ユーロ圏の株価は7年ぶりの高値を付け、ユーロは対ドルで大幅に下げた。
よくぞここまでと言える成果だ。というのも2016年9月までに1兆ユーロ強の資産を買い入れる今回の計画は、その設計と本質部分の両方に重大な欠陥を抱えているからだ。
ECBのQEは来年9月までか、もしくは中期的なインフレ見通しが2.0%に達するまで継続する仕組み。最も重要なのは買い入れの大部分を担うのがECBではなく各国中銀であり、ECBが負担するリスクは20%にとどまる点だ。
債券を1ユーロ買い入れるごとに1ユーロが金融市場に流入する。トレーダーは買い入れには十分な規模があり、ECBが望むだろう動きをしても良いと判断した。これはQEにとって最低限のハードルだ。
しかし各国中銀にリスクを背負わせるという観点からすると、1ユーロの購入が1ユーロのマネーを意味しなくなる。ユーロ圏の金融政策は財政政策と同じく一枚岩ではないというのが、まごうことのないメッセージだ。ユーロ圏加盟国は確かに1つに結ばれているが、ひとたび情勢が悪化すればそれぞれをつるすロープの長さはバラバラになるだろう。
褒められたことではないが、ドイツの政治的立場や法律に配慮し続けるには負わねばならない代償だった。
しかしマネーが生まれて金融市場に流れ込む限り、金融市場はその資金を活用してくれるだろう。より不透明なのは資金がどこに向かい、何に使われるかだ。債券利回りの低下は企業にとって支えとなるが、ユーロ圏以外の地域、恐らく統一的な政策を採る国の市場でリスクを採る誘因にもなる。
<買い入れ規模は足りず>
もう1つの問題は、予想と比較した買い入れ規模ではなく、ユーロ圏経済への効果という尺度で見た規模であり、この点ではかなり雲行きが怪しくなる。
12月の報道によると、ECBの内部調査では1兆ユーロのQEはユーロ圏の物価を2年後に0.2─0.8%ポイント押し上げると試算されている。これは英米のQEについての試算に比べ物価押し上げ効果が5分の1ないし9分の1に相当する。ソシエテ・ジェネラルの試算でも、ユーロ圏のQEの物価押し上げ効果は米国の5分の1となった。
ソシエテ・ジェネラルのエコノミスト、マイケル・マルティネス氏は顧客向けノートで「QEが効果を持つには2兆あるいは3兆ユーロの規模が必要だ」とした。
「つまりインフレを中期的に2.0%近くに押し上げるのに必要な買い入れ規模は2兆ないし3兆ユーロで、わずか1兆ユーロではない。ECBがバランスシートをこの水準まで拡大するには、流動性規則や格付けなどの面で債券買い入れの条件を緩和するか、既に日銀が手を染めているように株式や不動産投資信託(REIT)、上場投信(ETF)など他の資産クラスの買い入れを検討しなければならない」
ユーロ圏の資本市場は米国などの地域とは役割が異なる。銀行融資への依存度がはるかに高いからだ。債券買い入れは銀行への直接的な影響が極めて小さく、銀行の自己資本水準の向上には役立たない。
ECBのQEは、少なくとも当初はギリシャにとって支援材料にならない。最も早くとも夏までは買い入れ対象にならないからだ。しかもその時点でECB、国際通貨基金(IMF)、欧州委員会の3者と良好な関係を保っていればの話だ。
25日の総選挙でどのような政権が生まれるにせよ、そのころまでには債務条件についての交渉が決着はしないまでも始まっており、ギリシャの方向性は今よりもはっきりするだろう。
それまでの間、金融市場はユーロ圏QEの効果を享受し続けると期待できそうだ。もう一つの光明は、ユーロ圏QEは規模と効果が小さ過ぎて、米連邦準備理事会(FRB)に金融引き締めを思いとどまらせる要因となりそうなことだ。
リスク資産にとって、FRBの利上げはギリシャのユーロ離脱に匹敵するほどの恐怖をもたらすであろうことを踏まえれば、投資家はECBがより大胆になれなかったことを歓迎してよい。
ユーロ圏の国債利回りが過去最低更新、ECBの緩和で 1/23
23日の欧州市場で、ユーロ圏諸国の国債利回りが過去最低を更新している。欧州中央銀行(ECB)が22日に発表した債券買い入れプログラムの規模が市場予想を上回ったことが背景。
ノーディアの首席債券アナリスト、Jan von Gerich氏は「ECBはかなり大胆な資産買い入れプログラムを打ち出し、大なたを振るった」と指摘した。
スペイン10年国債の利回りES10YT=TWEBは1.30%に低下、イタリア10年国債利回りIT10YT=TWEBは1.461%をつけ、ともに過去最低を更新した。
ドイツ連邦債10年物の利回りDE10YT=TWEBも0.368%と過去最低を記録した。
高格付け債と低格付け債の利回りスプレッドは大幅に縮小。ユーロ導入当初の数年以来のタイトな水準となった。
ドイツ連邦債30年物の利回りDE30YT=TWEBも初めて1%を下回った。2年物利回りDE2YT=TWEBはマイナス0.18%。
ギリシャ10年債の利回りGR10YT=TWEBも低下。ただ、週末の選挙を控えた不透明感から9%前後で推移している。
ECB緩和で改革努力緩めるべきでない=メルケル独首相 1/23
ドイツのメルケル首相は、イタリアだけでなくユーロ圏各国が構造改革に取り組むことが好ましいとし、欧州中央銀行(ECB)による国債買い入れで改革努力を緩めてはならないと述べた。
イタリアのレンツィ首相との共同記者会見でメルケル首相は、ECBの独立性を尊重するためECBの措置についてはコメントしないとしたうえで、各国政府による改革だけがユーロ圏を活性化できると強調した。
メルケル氏は、「ECBの決定を受けてイタリアが『もう改革は必要ない』と表明するという印象はなく、全ての国がそうであるべきだ」と指摘。「政治に取って代わることができる中銀は世界に1つもない。政治の指導者は責任を果たすべきだ」と述べた。
レンツィ首相はECBの決定はイタリアの改革を加速するよう促し、遅めることにはならないと言明した。
レンツィ氏は欧州委員会が欧州連合(EU)の財政規律について柔軟な立場を示していることや、EUの投資計画、ユーロ安、ECBの量的緩和を歓迎する姿勢を示し、「この4つの要因はイタリアにとって極めて重要で、われわれに改革をさらに加速させるよう迫っている」とした。
25日のギリシャ総選挙について両首相は、結果がユーロ圏に深刻な問題をもたらさないと確信していると述べるにとどめた。
ユーロ/ドル11年ぶり安値更新、ECBのQE決定で=NY外為市場 1/24
23日のニューヨーク外為市場では、ユーロが対ドルで11年ぶりの安値を更新。前日の欧州中央銀行(ECB)による国債買い入れ型の量的緩和(QE)実施の決定が引き続き材料視された。
ユーロ/ドルは一時2%超下落。1.1115ドルをつけ、2003年9月以来の安値を更新した。また、今週に入り、3%超下落した。
TD証券の首席為替ストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は、ユーロが年末までに0.96ドルまで下落する可能性があるとの見通しを示した。
ユーロ/円は1年4カ月ぶりの安値となる130.91円をつけた。
ユーロ/ポンドも74.295ペンスと、7年ぶり安値を更新した。
25日に実施されるギリシャ総選挙をめぐる不透明性もユーロへの重しとなったもよう。
ドルの主要6通貨に対するドル指数は0.96%上昇の94.980。約11年ぶり高値を更新。
ECBや日銀など、他の先進国中銀が実施している緩和政策とは対照的に、米連邦準備理事会(FRB)が利上げ開始に向かっていることを背景に、今後ドルが押し上げられることが見込まれる。
ただ、ドル/円は0.6%安の117.78円となった。アナリストは、さえない米株価動向に加え、日銀の追加緩和見送りに対する失望感が依然漂っていることを指摘した。
ギリシャ急進左派、反緊縮の右派と連立合意 1/26
ギリシャ総選挙で第1党に躍進した反緊縮派の急進左派連合(SYRIZA)は、同じく反緊縮を掲げる右派の保守政党「独立ギリシャ人」と連立を組むことで合意した。
急進左派連合は議会の定数300のうち149議席を獲得、単独過半数には2議席足りなかった。独立ギリシャ人党は13議席を獲得した。
急進左派のチプラス党首との会談後、独立ギリシャ人のカメノス党首は、「この瞬間からこの国に政府が誕生した。独立ギリシャ人はチプラス首相を信任する。基本合意に達した」と述べた。
左派と右派の連立は異例で、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)による財政緊縮策を条件とした金融支援策への反対の下で結束した格好となった。
ただ、両党は不法移民などの多くの社会問題で主張が異なっており、連立政権内で緊張が高まる可能性もある。
一方、ギリシャ国債を保有する債権者らはチプラス氏が要求している債務減免を拒否する立場を示しており、ギリシャに緊縮策を堅持するよう求めている。連立政権はこういった債権者らに対して強硬姿勢をとる可能性がある。
チプラス氏は新政権樹立に向けたパプリアス大統領の指示を受けるために26日1330GMT(日本時間午後10時30分)に大統領と会談し、その後、1400GMTに首相に就任するとみられる。内閣は27日に発表される見通し。
チプラス党首は宣誓就任後、中道左派の新党ポタミや共産党の党首とも協議し、次期政権への支持を要請する意向だ。
ギリシャ急進左派チプラス党首、新首相に就任 1/26
ギリシャ総選挙で第1党に躍進した反緊縮派の急進左派連合(SYRIZA)のチプラス党首は26日、新首相に就任した。
チプラス氏はこれに先立ち、組閣要請を受けるためパプリアス大統領と会談し、政権樹立に向けて十分な支持を固めたことを報告。大統領府で宣誓式が行われた。
翌27日までに閣僚名簿を明らかにする見通し。
急進左派連合は単独過半数には2議席足りなかったが、13議席を獲得した反緊縮の右派政党「独立ギリシャ人」と連立を組むことで合意している。
ギリシャ新内閣が始動、港湾売却計画停止など反緊縮路線を堅持 1/28
ギリシャのチプラス新首相は27日、閣僚人事を発表し、新内閣が始動した。反緊縮派の重鎮らを起用し、国内最大の港湾ピレウス港の売却計画を停止するなど、ユーロ圏や市場の警告にもかかわらず選挙公約を果たす姿勢を示している。
チプラス首相は、財務相にアテネ大学のファロファキス経済学教授を指名。
このほか、首相が発表した新内閣の顔ぶれによると、副首相にはチプラス氏率いる急進左派連合(SYRIZA)のドラガサキス氏、国防相には、急進左派連合が連立を組む右派小政党「独立ギリシャ人」のカメノス党首が指名された。
新政府は、ギリシャ向け国際支援の下で合意されていたピレウス港の管理会社ピレウス・ポート・オーソリティ(OLPr.AT)の67%株式の売却計画を停止すると発表した。株式の買い手候補には、中国の造船最大手、国営中国遠洋運輸集団(COSCO)のほか、4社の名が挙がっていた。
また政府高官によると、新政府は支援プログラムの条件の1つである公的セクターの職員に対するレイオフを一部解除する方針。
ギリシャ国債利回り急上昇、チプラス新政権への不安で 1/29
28日のユーロ圏金融・債券市場では、ギリシャの短期国債利回りが急上昇し、2012年以来の高水準を記録した。反緊縮政策を掲げるチプラス新政権が債権者への対立姿勢を強めていることが懸念されている。
チプラス首相は28日、国の主権回復へ抜本改革を推進するための委任を新政権が有権者から受けたと表明。新政権は、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)による金融支援の条件である民営化計画のうち、これまでに港湾ピレウス港や電力PPC、石油精製ヘレニック・ペトロリアムの売却計画を相次いで凍結した。
3年債利回りGR0029312=TWEBは306ベーシスポイント(bp)上昇の17.26%。5年債利回りGR5YT=TWEBGR105865031=も176bp上昇し13.71%となった。
10年債利回りGR10YT=TWEBは100bp上昇し10.8%。
他の周辺国債では、10年物のポルトガルPT10YT=TWEB、スペインES10YT=TWEB、イタリアIT10YT=TWEB国債利回りが11─22bp上昇し、それぞれ2.43%、1.51%、1.67%。
欧州株小幅続落、ギリシャ株に売り続く 1/29
28日の欧州株式市場は小幅続落して取引を終えた。ギリシャの新政権が、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)による金融支援の条件である民営化計画の一部を凍結したことが嫌気され同国株が続落し、全体水準を押し下げた。
FTSEユーロファースト300種指数.FTEU3は0.85ポイント(0.06%)安の1474.99で取引を終えた。DJユーロSTOXX50種指数.STOXX50Eは13.62(0.40%)安の3358.96だった。
ギリシャの主要株価指数.ATGは9.24%安となった。総選挙後の週明けから15.4%値下がりした。国内最大港湾のピレウス港の民営化が凍結されたことを受け、電力会社PPC(DEHr.AT)とピレウス港の管理会社ピレウス・ポート・オーソリティー(OLPr.AT)の株価は13.9%と7.3%それぞれ下落した。
米IT大手アップル(AAPL.O)の業績が好調だったことで、欧州株式市場でもハイテク銘柄が連れ高となった。アップルのサプライヤーである半導体設計の英ARMホールディングスARM.Lは1.7%上昇した。
ギリシャ新政権、選挙公約順守は経済に打撃=ユーログループ議長 1/30
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は29日、今週発足したギリシャのチプラス新政権に言及し、政権が選挙公約に執着すれば同国の景気回復や構造改革は頓挫しかねないとけん制した。
議長は、新政権の行動を現時点で判断するのは時期尚早とする一方、「率直にいって、政権がすべての選挙公約を守ろうとすれば、ギリシャの財政はすぐにも立ち行かなくなるだろう」と語った。
ギリシャ支援延長、改革継続の場合のみ=ドイツ 1/31
ドイツ財務省のイエーガー報道官は30日、ギリシャの債務減免を協議することは現実的ではなく、同国が約束した改革を継続する用意がある場合のみ、金融支援の延長が認められることになるとの見解を示した。
報道官は記者会見で、「金融支援プログラムは2月末に期限を迎えるが、秩序ある形で終了するにはギリシャによるさらなる取り組みが必要だ」と述べた。そのうえで、支援の終了を最終決定をするのは欧州委員会・欧州中央銀行(ECB)・国際通貨基金(IMF)の「トロイカ」だと続けた。
報道官はまた、ギリシャ新政府が発表した新たな措置が実行された場合、支援プログラムの妥当性が問われることになると指摘。これまでの新政府の発表によると、改革実施とは逆の方向に向かっているようだとの見方を示した。
ユーロ圏債券利回り低下、デフレ懸念や米GDP統計受け 1/31
30日のユーロ圏金融・債券市場では、独連邦債など格付けの高い国債を中心に利回りが低下した。1月のユーロ圏消費者物価統計を受けデフレ懸念が一段と意識されたことに加え、米経済成長が第4・四半期に大きく減速したことで世界経済への懸念が台頭したことが背景。
独10年債DE10YT=TWEB利回りは5ベーシスポイント(bp)低下の0.305%と、26日につけた過去最低水準の0.299%に迫った。この他のユーロ圏高格付け国債の利回りも5─6bp低下した。
周辺国国債利回りも低下し、イタリア10年債IT10YT=TWEB利回りは1.60%、スペイン10年債ES10YT=TWEBは1.43%と、ともに4─5bp低下した。
欧州連合(EU)統計局発表の1月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は前年比0.6%低下。前月の0.2%低下から加速し、2009年7月に並ぶ過去最大の低下率となった。また、第4・四半期の米実質国内総生産(GDP)速報値は季節調整後の年率換算で前期比2.6%増と、5.0%増だった第3・四半期から大きく減速した。
ナティクシスのジャン・フランソワ・ロビン氏は、「米GDP統計が思わしくなかったことで『リスクオフ』的な反応が出ている」としている。
米国ではこの日、30年債US30YT=RR利回りが過去最低を更新した。
ギリシャ10年債GR10YT=TWEB利回りは90bp上昇の10.50%。3年債GR0029312=TWEB利回りは19%程度まで約150bp上昇し、前年7月の発行以来の高水準を付けた。
ギリシャのバルファキス財務相はこの日、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)の調査団に協力しない方針を明らかにし、国際支援プログラムの延長を要請しないと言明している。
2
「ギリシャの乱」連鎖に身構える欧州、次はスペインか 2/2
ギリシャでは総選挙の結果、急進左派連合(SYRIZA)と右派「独立ギリシャ人」が手を組むという、これまでの常識では考えにくい形の連立政権が発足した。今年は欧州連合(EU)8カ国が総選挙を予定するが、長く続いた中道政権の支配はついに終焉を迎えるかもしれない。
欧州の多くの国では5年に及ぶ経済の低迷、実質賃金の減少、社会福祉の削減に有権者はうんざりしており、その怒りや不安を投票所でぶつけることになるだろう。欧州政界では2015年、ギリシャを震源に、想定外の地殻変動が起こる可能性がある。
欧州では第2次世界大戦後、中道右派と中道左派が政治を牛耳ってきた。ところが近年には、有権者の支持は中道政党から離れつつあり、代わって左派や右派のほか、コメディアン出身のベッペ・グリッロ氏(イタリア)のようないわば「異端の政治家」が人気を集めている。
多くの国の有権者は、既成政党の問題解決能力を疑問視。一般市民の懸念を理解せず、自らの利益ばかりを優先させる、と失望している。
一方、新興勢力の多くを結びつけているのは反EU、反緊縮だ。
マクシェーン英元欧州担当相はインタビューで「ロナルド・レーガンやマーガレット・サッチャーから始まった、リベラル個人主義や富の蓄積という30年サイクルは終わりに来た」と指摘。「今後少なくとも5年は、欧州は混乱し、不透明感が強まるだろう」との見方を示した。
今回のギリシャ総選挙のように、欧州の他の国でも反体制派が政権をとるケースが増えるのかどうかはまだ分からない。ただ、反体制派が政権入りすれば、安定感が低下するのは避けられない。
米シティで世界の政局を専門とするチーフアナリスト、ティナ・フォーダム氏は「振り返ってみると、2011年以降の欧州政府は悪くはなかった」と話す。「今後は、実力のほどが不明で、予想のつかない新興勢力から成る、より弱い政権が多くなると予想される」と述べた。
<次はスペインか>
ギリシャと同様に高失業率に悩むスペインにも、波乱の兆しが見られる。極左政党「ポデモス」が台頭し、ラホイ首相が率いる国民党(PP)や野党の社会労働党(PSOE)を支持率でリードしているのだ。
ポデモスの36歳のイグレシア党首は、ギリシャ新首相となった急進左派連合を率いる40歳のチプラス氏と親しいとされる。ギリシャが債務削減や緊縮緩和に成功すれば、ポデモスも勢いづく可能性がある。
ただ、支援策をめぐるギリシャとEUの交渉が長引き、金融市場が一段と不安定になれば、スペインの有権者もポデモスに票を投じるのをためらうかもしれない。スペインでは12月に総選挙が予定される。
ギリシャ銀3行、緊急流動性支援策で20億ユーロ借り入れ=関係筋 2/3
ギリシャの大手銀4行のうち3行が、緊急流動性支援(ELA)制度を通じてギリシャ銀行(中央銀行)から約20億ユーロを借り入れたことが、2人の事情に詳しい関係筋の話で明らかになった。預金の流出で流動性が低下したことが理由。
欧州中央銀行(ECB)は先月21日にギリシャの銀行に対するELAを承認した。関係筋は同制度を利用した銀行を公表することは控えた。
ECBは4日にELAの状況について見直しを行う予定。
ギリシャが債権者と合意の公算、ユーロ圏離脱回避か=英中銀当局者 2/3
イングランド銀行(中央銀行)金融行政委員会(FPC)のコーン委員は3日、ギリシャは債権者と合意に達し、ユーロ圏離脱を回避する公算が大きいとの見解を示した。
委員は議会の財務委員会に対し、「ギリシャとユーロ圏加盟国、国際通貨基金(IMF)が合意に向けて協力して取り組むと見込んでいる」と指摘。「ここ1、2日の間に少しの前進および譲歩を示す発言があった」と述べた。
ただ、こういった緊迫した状況では予想外の展開となるリスクもあると警告。それでもなお、英金融システムのギリシャへのエクスポージャーは「恐らく非常に小さい」と語った。
ギリシャ債務は持続不可能、資金回収できない恐れも=英中銀当局者 2/4
イングランド銀行(中央銀行)金融行政委員会(FPC)のテーラー委員は3日、ギリシャの債務は持続不可能で、債権国はすべての資金を回収できない可能性があるとの見方を示した。
同委員は議会の財政委員会に対し、ギリシャの債務は「持続不可能のようにみえる」とし、「債権国が資金を回収できると考えている場合、状況は見通しより悪い可能性がある」と述べた。
また、ギリシャ債務問題で合意が得られたとしても、財政・金融同盟の欠如など、ユーロ圏に内在する問題が解決するわけではないと述べた。
ドル大幅下落、ユーロはギリシャ懸念和らぎ全面高=NY市場 2/4
3日のニューヨーク外為市場では、ユーロが主要通貨に対して上昇する一方、ドルは主要通貨に対して2013年10月以来の下落幅となった。
ギリシャ新政権がユーロ圏諸国への債務減免要求を撤回し、新発債との交換を提案したことで、ギリシャ債務問題をめぐる懸念が和らぎユーロが買い戻された。
米指標が軟調でドルが売られたこともユーロの上昇要因となった。米12月製造業新規受注は市場予想を下回る前月比3.4%の大幅減となり、米連邦準備理事会(FRB)が6月までに利上げを行うとの観測が後退した。
ユーロ/ドルEUR=は約2週間ぶり高値となる1.1534ドルまで反発、終盤は1.28%高の1.1485ドルで取引されている。スイスフランもユーロにつれて買われ、ドル/スイスフランCHF=EBSは0.29%安の0.9247フラン。
ドル/円JPY=はほぼ横ばいの117.485円。またドルの主要6通貨に対するドル指数.DXYはほぼ1%安の水準となっている。
ギリシャへの金融支援をめぐる同国の新政権と欧州連合(EU)などとの交渉が進展するとの見方が浮上する一方、原油価格が反発。リスク回避ムードが後退し、これまで売られていたオーストラリアドル(豪ドル)やニュージーランドドル(NZドル)が買われた。
この日オーストラリア準備銀行(中銀、RBA)は政策金利を過去最低の2.25%に引き下げた。豪ドル/ドルAUD=D4は一時およそ6年ぶりの安値となる0.7627ドルをつけたが、その後ドル安で前日とほぼ横ばいの水準まで戻した。
クレディ・アグリコル(ニューヨーク)の通貨ストラテジストのマーク・マコーミック氏は「市場はリスクシナリオに注目している。それはこれまでドルに打ちのめされてきた通貨にとって支えになる」と述べた。
ECB、ギリシャ発行・保証の証券の最低格付け要件免除を取り消し 2/5
欧州中央銀行(ECB)は、ギリシャが発行・保証する証券の最低格付け要件免除を取り消すと発表した。現時点で支援プログラム審査めぐり良好な結論得られると想定できない、としている。
一方、ギリシャ中銀を通じた国内銀向け緊急流動性支援枠(ELA)の承認を更新した。ギリシャの銀行筋が4日、ロイターに明らかにした。ECBは前月、期間を2週間と定め、ELAを承認。同日、状況を見直し、更新したとみられる。
ギリシャ銀向け緊急融資枠、ECBが上限600億ユーロで合意=独紙 2/6
欧州中央銀行(ECB)は4日、ギリシャ中央銀行を通じた国内銀行向け緊急流動性支援枠(ELA)を最大600億ユーロ(685億ドル)にすることで合意した。ドイツ紙ウェルトが中銀筋の話として報じた。
ECBは報道についてノーコメントだった。
ECBは4日、格付けの低いギリシャ国債を資金供給の担保として認める特例措置を解除。これによりギリシャの銀行は、資金調達で同国中銀によるELAに依存することになった。
ギリシャ既存支援に同意せず、代わりにつなぎ措置要請へ 2/7
ギリシャ新政権は来週11日のユーロ圏財務相会合で、前政権が合意した既存の国際支援プログラムに関する合意は行わない。ギリシャ政府筋が6日、明らかにした。
政府筋によると、バルファキス財務相はユーロ圏財務相会合で既存のプログラムをめぐり合意しない代わりに、新政権が債務と改革に関する新たな計画を提示できるようになるまで、つなぎ的な措置での合意を求める。
バルファキス財務相は今週、欧州諸国を歴訪し債務問題について各国と協議したものの、各国はギリシャは欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)との合意を順守する必要があるとの姿勢を崩さず、ギリシャはユーロ圏で孤立を深めている。
ギリシャをめぐっては、ユーロ圏財務相が11日にブリュッセルで特別会合を開き、同国に対する今後の支援体制について協議。翌12日に開かれるEU首脳会議にはギリシャのチプラス新首相も出席する。
ユーロ圏財務相会合に先立ち、5日にブリュッセルで開かれた各国財務省当局者による準備会合では、ギリシャとその他のユーロ加盟国との間の意見の相違はあまりにも大きく、何も進展は得られなかった。
こうしたなか、この日は米国が在アテネ大使館を通してギリシャ政府に対し、IMFと欧州各国と協力して協議を進めるよう呼びかけるなど、圧力が高まっている。
欧州中央銀行(ECB)はギリシャ国債および同国が保証する証券を担保として認める特例措置を11日に解除することを決定。一部アナリストの間で、ギリシャがユーロ圏から追加支援を得られなければ同国は3月にも資金が底を付くとの見方が出るなど、ギリシャに残された時間は少なくなっている。
ギリシャ国債利回りが上昇、首相演説受け 2/9
9日の欧州市場で、ギリシャ国債利回りが最大で120ベーシスポイント(bp)上昇した。ギリシャのチプラス首相が議会演説で、2月末に期限となる欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)からの金融支援を延長しない考えを示したことを受けた。
LNGキャピタルのチーフ・クレジットストラテジスト、ゲリー・ジェンキンス氏は「ギリシャのユーロ離脱の可能性は35%から50%に上昇した」と述べた。
10年国債利回りGR10YT=TWEBは取引開始時に59bp上昇し11.04%。3年国債利回りGR0029312=TWEBは120bp上昇の19.18%。
格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は6日、ギリシャのソブリン信用格付けを「B」から「Bマイナス」に引き下げた。
円上昇、ギリシャ債務交渉懸念などでリスク回避=NY市場 2/10
9日のニューヨーク外為市場では、円がドルやユーロに対して上昇した。ギリシャ新政権が緊縮策継続をあらためて拒否し、安全資産とされる円が買われた。ギリシャのチプラス首相は8日議会で演説し、2月末に期限が迫る欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)による金融支援を延長する考えがないと表明した。
債権者との溝が埋まっていないため、今後の交渉の行方が懸念される。
ウクライナ東部では戦闘が激化し、メルケル独首相と米オバマ大統領が紛争解決に向けて会談したものの、これもリスク回避要因となっている。
ドル/円JPY=は終盤0.6%安の118.37円。ユーロ/円EURJPY=も0.3%安の134.14円での取引となっている。円については、アジア時間に日本の内閣府が発表した日本の1月消費者態度指数が上昇し、日銀の森本審議委員が日本は再びデフレに陥ることはないと発言したことも押し上げ要因となった。
ユーロ/ドルEUR=は直近0.2%高の1.1326ドルとなっている。
ギリシャはユーロ圏離脱の可能性を示唆しながら債権者と交渉している。ウェスタン・ユニオン・ビジネス・ソリューションズ(ワシントン)の上級市場アナリストのジョー・マニンボ氏は「もしギリシャがユーロ圏を離れるなら、市場の不透明感が増し、混乱する期間が長引くだろう」と述べた。
11日のユーロ圏財務相会合では、ギリシャのバルファキス財務相が包括的な要望を表明する予定で、12日のEU首脳会議でギリシャ問題が話し合われる。
ドルの主要6通貨に対するドル指数は0.2%安の94.475。ドルの見通しについて、クレディ・アグリコル(ニューヨーク)の通貨ストラテジストのマーク・マコーミック氏は「ドルはまだ5─7%ほど過大評価されている」とし、「市場は(ドル買い持ち)ポジションを少しばかり落としている」との見方を示した。
ギリシャとユーロ圏、「非常に悪い結果」招くリスク増大=英財務相 2/10
オズボーン英財務相は、ギリシャとユーロ圏の関係について、「非常に悪い結果」を招く判断ミスが発生する恐れが増していると述べた。ブルームバーグが報じた。
財務相は9日夜のブルームバーグテレビのインタビューで「ユーロ圏とギリシャ間の溝が世界経済や英国経済にもたらすリスクは、日に日に増大している」と発言。「非常に悪い結果を生む判断ミスや間違いのリスクも、大きくなっている」と述べた。
ギリシャ問題影落とす、G20が成長支援へ行動用意 2/11
トルコで開催されていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は10日、世界経済に関して慎重な見方を示し、必要なら成長支援に向け金融、財政政策を講じるとする声明を採択して閉幕した。
声明は「われわれは金融、財政政策のあり方を継続的に見直し、必要なら断固とした行動を取る」としている。
ルー米財務長官は世界経済の成長を米国のみに頼ることは良くないとして、ドイツなどの欧州諸国に支出拡大を求めた。
「欧州では需要が不足しており、財政政策が必要だ。財政余地の程度には違いがあるが、余地があるなら、需要拡大に活用すべき」と主張。
世界経済を車に例え、1つのタイヤだけがしっかりしていてもあとの3つがダメなら機能しないように、「米国が唯一の強力なタイヤなら、世界経済にとり望ましくない」と語った。
だがショイブレ独財務相は、米国だけでなく、「欧州の成長見通しも強まっている」と述べ、欧州経済に関しより明るい見方を示した。
経常黒字国であるドイツは、G20からの支出拡大要求をこれまで退けており、今回の声明でも、債務の国内総生産(GDP)比率を持続可能な軌道に乗せる方針が明記された。
G20会合では、ユーロ圏や日本の成長低迷に言及、一部の新興国も経済が減速しているとの認識を示した。
その上で、ユーロ圏経済の回復支援を一段と促すとして、欧州中央銀行(ECB)による量的緩和実施の決定を歓迎した。
さらに原油価格の急落も世界経済の成長押し上げの一助となるとの認識を示した。
議長国のトルコは、需要促進に向け具体的な投資目標の設定を提案したが、会合では受け入れられなかったもよう。
声明ではまた、テログループの資金源を断つための協調行動を求め、「テロリズム資金やマネーローンダリング(資金洗浄)に悪用されるリスクを低減するため、決済制度の透明性強化に向けた指針」の策定を呼びかけた。
<通貨政策めぐり不協和音か>
米財務省高官によると、ルー長官は「米国の労働者や企業が公正な競争環境を確保できるよう注力しており、いかなる国も輸出押し上げに向け為替レートを活用すべきではない」と強調。競争的な通貨切り下げ回避など、為替に関する既存のコミットメントを堅持する必要性を訴えた。
米政府内にはこれまで、ユーロや円の下落は景気支援策に伴う不可避の結果として概ね容認する空気があった。だが今回の長官の発言は、米国が為替操作の動きを警戒し始めている兆候ともいえそうだ。
一方、ECB理事会メンバーのノワイエ仏中銀総裁は、通貨安競争の兆候はなく、金融緩和の必要性をめぐる共通の理解があったと語った。
「G20内では、金融政策は中銀に課せられた物価目標の達成に向け、国内の事情で講じられているとの明確な意見の一致がある」とし、過去に存在した競争的な通貨切り下げをめぐる疑念は消失したとの認識を示した。
日銀の黒田東彦総裁も、日本の積極的な金融緩和に対する批判はなかったと述べた。
<ギリシャ問題影落とす>
今回の声明にギリシャ問題に関する言及はなかったが、G20の合間に行われた2カ国間協議やその他の会合では、ギリシャと欧州諸国との債務協議の行方をめぐり、多くの時間が割かれたようだ。
ECB理事会メンバーのワイトマン独連銀総裁はロイターとのインタビューで、ギリシャは財政健全化や経済改革で、信頼できる取り組みを行う必要があるとの認識を表明。ギリシャ問題で歩み寄る姿勢は全く示さなかった。
ギリシャは債務減免が必要─財務相=独誌 2/11
ギリシャのバルファキス財務相は、同国は近い将来に国債の元利払いができなくなるため、債務元本の減免(ヘアカット)あるいは債務再編が必要になるとの見解を示した。独シュテルン誌とのインタビューで語った。
発行日を前に公表されたインタビュー記事によると、同相は、「債務の返済がもはやできないのならば、ヘアカットが必要になる」と述べた。「重大なのは、ギリシャの債務が近い将来に返済できなくなるということだ」と強調した。
欧州株反落、ギリシャ先行きを懸念 2/12
11日の欧州株式市場は反落して取引を終えた。ギリシャの先行き懸念が重しとなったほか、イタリア金融大手ウニクレディト(CRDI.MI)の決算内容が嫌気され、銀行株が売られた。
FTSEユーロファースト300種指数.FTEU3は4.70ポイント(0.32%)安の1483.69で取引を終えた。
DJユーロSTOXX50種指数.STOXX50Eは8.99(0.27%)安の3374.14で引けた。
ギリシャのバルファキス財務相はこの日、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)に対し、支援プログラムの終了を要請する予定。ギリシャ・ナショナル銀行(NBG)(NBGr.AT)は9.1%、ピレウス銀行(BOPr.AT)は3.2%下落した。同国の主要株価指数.ATGは4.02%低下した。
ウニクレディトは3.5%の下落だった。通期の利益目標は達成したものの、自己資本がやや減ったことが嫌気された。
一方、ノルウェーの肥料大手ヤラ・インターナショナル(YAR.OL)は、昨年第4・四半期の利益が市場予想を上回ったほか、増配を発表したことが好感され、株価が5.1%上昇した。
ギリシャ問題で「前に進む」ことで合意した=ルクセンブルク 2/12
ルクセンブルクのグラメーニャ財務相は11日、ユーロ圏財務相はギリシャの財政問題について「前へ進む」ことで合意したと明らかにした。同問題をめぐっては、向こう数日間、協議を継続するとしている。ユーロ圏財務相会合後、記者団に「前へ進む(way forward)ことで合意した」と述べた。
きょうの会合では対立はなかったとしている。
同相によると、ギリシャの実務者が向こう数日をかけて、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)の実務者と協議を行う予定。ユーロ圏は週明け16日に再び財務相会合を開き、ギリシャとEUなどとの協議の結果を検証するという。
ユーロ圏とギリシャ、支援問題で合意できず=ユーログループ議長 2/12
ユーログループのデイセルブルム議長は12日未明、ギリシャの金融支援延長をめぐる臨時ユーロ圏財務相会合で、最終的な声明文についてギリシャ側と合意できなかった、と認めた。16日に再度、会合を開く。
議長は、会合後記者団に対して「現行プログラム継続の可能性を協議したが、結論には達しなかった。もう少し時間が必要だ」と述べた。
フィンランド首相がギリシャ問題に危機感、「16日の合意が必要」 2/12
フィンランドのスタブ首相は、ギリシャの債務問題は時間的に差し迫っており、ユーロ圏の財務相は16日の会合で合意にこぎつけなければならないと危機感を示した。
記者団に「期限が迫っており、懸念している。16日に合意をまとめる必要がある」と語った。
7時間に及んだ11日の臨時財務相会合は、今後の手続きに関する共同声明にすら合意できなかった。
ECB、ギリシャの銀行に緊急流動性50億ユーロ上積み 2/13
欧州中央銀行(ECB)は12日、ギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)を拡大した。ECBは、ELAを使ってギリシャ中銀が国内銀行に資金繰り支援できる金額を650億ユーロと、約50億ユーロ(57億ドル)上積みした。ギリシャ中銀と政府当局者がロイターに明らかにした。
ECBは既にギリシャの銀行への直接支援は制限している。
ECB理事会メンバーのノボトニー・オーストリア中銀総裁は、ギリシャが改革プログラムに同意すれば、ELAに代わりECBが直接資金供給を行うことが可能であると示唆した。
総裁はロイターに対して「新たな合意が得られれば、従来のシステムに戻ることが可能だろう。従来のシステムは積極的な(改革)プログラムが行われていることが条件だった」と述べた。
ドイツ国民の約半数、ギリシャのユーロ圏残留を希望=世論調査 2/13
独テレビARDが13日公表した世論調査によると、ギリシャのユーロ圏残留を望む人の割合は51%と過半数を上回り、3年前のユーロ圏債務危機時から増加した。
一方、ギリシャのユーロ圏離脱を望む人は41%と、3年前の65%から低下した。
調査は世論調査会社インフラテストが10─11日、1023人を対象に行った。
ギリシャ銀支援上積み、預金流出や混乱への備え背景に=関係筋 2/14
欧州中央銀行(ECB)が、ギリシャの銀行への緊急流動性支援(ELA)を拡大した背景には、預金流出が増えたことや、来週交渉が緊張局面を迎えるなか、流動性を確保させる狙いがあった。ギリシャの銀行関係筋が13日、こうした見方を示した。
国内主要行の幹部は「数行がELAの利用を増やす必要に迫られたのだろう」と指摘。ただ、「ECBは(拡大期間が終了する)18日まで、一定の余地や安心できる流動性確保を容認する意向があった」との見方を示した。
同幹部によると、このところの1日当たりの預金流出額は平均で3億━5億ユーロと指摘した。
別の主要行幹部も、1日4億━5億ユーロの資金が流出したとの認識を示す。同幹部は「流出は今週も続き、ここ数日間は状況が悪化した」と指摘。多い日には最大10億ユーロに達した可能性もあるという。
ただ、同幹部は「(ELA支援を)要求した理由が、実際に流出したためなのか、用心からかは分からない」と語った。
公式データによると、12月の預金流出額は40億ユーロだった。1月は総選挙を前に120億ユーロ程度にまで拡大したことが見込まれている。ただ、今月に入って、流出ペースの鈍化も伝えられていた。
ギリシャ債務危機、地政学リスクと国内政治せめぎ合い 2/16
ギリシャの債務危機をめぐる対立はつまるところ地政学リスクと国内政治のせめぎ合いだ。ギリシャの戦略的位置やロシアとの地政学的なつながりは、緊縮策の緩和と債務の返済猶予に関する欧州連合(EU)との交渉を優位に導く可能性がある。
その一方で、緊縮策に世論がいら立っているギリシャや、同国の優遇は許さないとするその他のユーロ圏加盟国におけるそれぞれの国内政治事情は、ギリシャへの支援継続を一段と難しくしている。
こうした逆方向の力学のせめぎ合いの行方はユーロ離脱の可否に決着をつけるものとなるが、ギリシャがユーロ圏から離脱すれば、キプロス、ことによるとポルトガルが後に続くのではないかとの観測も市場で浮上しかねない。
西側諸国はこの数十年間、ギリシャを東側陣営に取り込まれないようにするため、同国のつたないガバナンスや放漫財政に目をつぶり資金を投じてきた。
米国のトルーマン大統領はギリシャ内戦時の1947年、全体主義に反対し自由主義を支援するドクトリンを表明、ソ連が支援する共産主義勢力からギリシャを防衛するために資金を投じた。
ギリシャはその後の1952年に米主導の北大西洋条約機構(NATO)に加盟。トルコやイランとともに東西冷戦の最前線に立つことになった。ギリシャ国民の多くは依然として、1967─74年に同国を統治した軍事政権を米国が支援していたことを不快に思っている。
民主的なギリシャが1981年にEUに加盟してから2001年にユーロを導入するまでの20年間、経済発展に役立てるために差し引きで国内総生産(GDP)の4%に相当する財政移転をギリシャはEU予算から毎年受けていた。
EUと国際通貨基金(IMF)が2010年と12年の2度にわたり総額2400億ユーロの対ギリシャ支援を実施した主な背景は、ユーロ圏の一体性を維持するためだった。西側諸国がウクライナ問題でロシアと対立し、多くのEU加盟国でEU懐疑論が広まる中、ギリシャを支援することの地政学的な動機は相変わらず強固かもしれない。
一方、ドイツのメルケル首相もその他の欧州首脳も、ギリシャに貸した資金が返ってこないとは自国の議会に説明したくないと考えている。このため、ギリシャ新政権が当初求めていた債務の減免はなさそうだ。
また、ギリシャのチプラス首相は緊縮策を見直し、最低賃金の引き上げや解雇された公務員の再雇用などを約束している。
ギリシャが欧州と新しい合意に至らず、債務不履行(デフォルト)を引き起こしてユーロ離脱となれば、金融支援をロシアに求める動きも出てきそうだ。
ギリシャのパノス・カメノス国防相は先週、テレビの取材で「われわれが求めているのは取引だ。だが、それが不可能な場合や、ドイツが硬直的な態度を変えず欧州の分裂を望む場合は、プランBに移行せざるを得ない。プランBとは、他の資金源を利用するということだ」と発言。「それは米国かも知れないし、ロシアかも知れない。中国や他の国かも知れない」と述べた。
ギリシャ外相は先週、ロシアを訪問したほか、チプラス首相も5月に同国を訪問する予定だ。
EU内の一部閣僚はギリシャとの債務交渉で地政学リスクを明確に意識している。
イタリアのパドアン経済・財務相は先週、ブリュッセルで行われたEU首脳会議を受けて、ギリシャが欧州諸国との関係を犠牲にして、ロシアとの関係強化に動くリスクは低下したようだとの認識を示した。
ただ、ギリシャが実際にユーロ圏ではなく、ロシアに目を向けるのかは不透明だ。ロシアのプーチン大統領は、ギリシャがこれまでに感触を探った際も同国の支援に前のめりな様子はなかった。
ロシアはおそらくギリシャのエネルギーやインフラ資産に関心はあるのだろう。しかし、欧米の対ロシア制裁や原油安で国内経済が打撃を受ける中、ギリシャ支援に前向きな姿勢を見せていない。
ギリシャの銀行、14週間で担保尽きる公算=JPモルガン 2/17
JPモルガンは16日、ギリシャの銀行から週20億ユーロ程度の預金が流出しており、このペースが続けば、あと14週間で資金を得るための担保が枯渇するとの見方を示した。
JPモルガンの試算は、欧州中央銀行(ECB)、ギリシャ中銀から最大1080億ユーロの支援が供給されるとの前提に基づく。ギリシャの銀行はこのうち800億ユーロをすでに使用しており、残りは280億ユーロとなっている。
JPモルガンは、残る適格担保の大半は2012━13年にギリシャ銀の資本増強のためにユーロ圏諸国が提供した欧州金融安定ファシリティー(EFSF)債と指摘している。
また年初来のギリシャ銀からの預金流出額は推定で総額210億ユーロとの見方を示した。
ギリシャが6カ月の融資延長申請、破綻回避へ歩み寄り 2/20
ギリシャは19日、ユーロ圏諸国に対し、6カ月の融資延長を正式に申請した。現行の支援プログラム期限があと約1週間に迫っており、財政破綻を回避するため、譲歩案を提示し妥協点を探る。
ギリシャは新たな支援で合意しない限り、3月末までに手元資金が枯渇するとみられている。6カ月の延長で当座をしのぎながら、一段の債務軽減や成長重視の措置を盛り込んだ長期的な支援合意を債権団から引き出したい考えだ。
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は、ギリシャの融資延長申請を検討するため、20日にブリュッセルでユーログループを開催すると明らかにした。
だが域内で最も影響力の大きいドイツは、ギリシャの融資延長申請に難色を示している。
独財務省は延長申請は支援プログラムの条件を満たさないまま「つなぎ融資の方向に向かっている」とし、「抜本的な解決策」にはならないと指摘。16日のユーログループで合意した基準も満たしていないとした。
ドイツの当局者らは、ギリシャの融資延長申請について、多様な解釈の余地を残すもので「トロイの木馬」のようだとの見方を示した。
20日に開かれるユーログループに向け用意された文書草案によると、ドイツは、共同声明の草案作成を開始するだけの根拠をギリシャの提案に見い出すことはできないとした。
ギリシャの申請について一歩前進したとの見解を示すユーロ圏当局者もいるものの、20日の協議に向けたユーロ圏当局者の準備会合ではすべての当局者が、ギリシャは現在の支援プログラムの条件順守にコミットすることをより明確に示す必要があるとの見解でドイツと一致した。
ギリシャ政府当局者によると、同国のチプラス首相は19日、ドイツのメルケル首相と電話会談を行った。
会談は50分間にわたり行われ、「前向きな雰囲気のなか、ギリシャとユーロ圏にとって互いに有益な解決策を模索するために双方が話し合った」という。
ドイツ政府報道官は電話会談を確認したが、内容についてはコメントしなかった。
ギリシャ政府当局者は、現行の支援プログラムとは異なる条件を提案したと明かした。
延長期間中は財政均衡を維持し、脱税や汚職の撲滅に向けた改革に迅速に着手する一方、「人道危機」および成長支援に対応する措置を講じることを約束したという。
ロイターが入手した申請文書によると、ギリシャはすべての債権者への返済義務を履行するとともに、欧州連合(EU)/国際通貨基金(IMF)による現行の支援プログラムを法的拘束力のある枠組みとして認め、財政目標を阻害するような行動を一方的に取らないことを確約した。
また融資の延長期間、欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、IMFの3者で構成する「トロイカ」の監視を受け入れる意向も表明した。ギリシャのチプラス首相はこれまで、トロイカの受け入れを拒否し、協力を打ち切る意向を示しており、債権者側に譲歩した格好だ。
ただ支援策の条件である国内総生産(GDP)比で3%相当のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字という今年の財政目標については、「プライマリーバランスの適切な黒字」を目指すとするにとどめ、明言を避けた。チプラス首相はこれをGDP比1.5%に引き下げることを求めている。
財政目標に加え、労働市場改革、民営化など、現行の支援策で実施が見込まれていたその他の重要事項の詳細は現時点で不明。
ギリシャの融資延長申請を好感し、アテネ株式市場のATG指数.ATGは当初2%値を上げたが、ドイツ政府の冷ややかな見解を受けて押し戻され、1%高で終了した。銀行株も9%急伸したが、その後上げ幅の大部分を削る展開となった。
ギリシャ融資延長申請、来週までに債権者と合意可能=欧州委員 2/20
欧州連合(EU)のエッティンガー欧州委員は20日、ギリシャの融資延長申請をめぐり、債権者側と来週までに合意できるはずとの見解を示した。ただ、ユーロ圏諸国の政府首脳は来週再び会談する必要があるかもしれないと指摘した。
ドイツ出身の同委員はドイツのラジオ局DLFに対し、「われわれはギリシャがユーロ圏に残留できるよう取り組んでいる」と表明。「これに基づけば、今後8日間で合意することは依然として可能だと考えている。場合によっては、政府首脳の会談も必要だ」と述べた。
20日にはユーロ圏財務相会合(ユーログループ)がこの問題を話し合う予定。
ドイツはギリシャの融資延長申請について、金融支援プログラムの条件を満たさないため「抜本的な解決策」にはならないと批判している。
ギリシャ銀からの預金流出、先週は30億ユーロ=JPモルガン 2/23
JPモルガンの推計によると、先週1週間でギリシャの銀行から30億ユーロの預金が流出した。前週の20億ユーロからペースが加速しており、8週間以内に資金不足に陥る可能性があるとしている。
これまでは預金の流出により銀行は14週間で新たな資金調達のための担保が不足すると予想していた。
JPモルガンによれば、ギリシャの銀行は欧州中央銀行(ECB)とギリシャ中銀から最大1080億ユーロの調達が可能だが、すでに850億ユーロを借り入れ融資枠の残りは230億ユーロとなっている。
銀行業界幹部がロイターに語ったところによると、18─19日に10億ユーロ超、20日だけで10億ユーロ超の預金が引き出された。
JPモルガンはギリシャの銀行からの預金流出が年初から約250億ユーロに達し、1週間あたり30億ユーロを上回るペースと指摘した。
ギリシャ改革案、民営化計画を後退させない方針 2/24
ギリシャは改革案で、現在進行中あるいは完了した民営化計画を後退させない方針を示した。また、「人道上の危機」を解決するためのあらゆる取り組みが、予算に悪影響を及さないようにするとも表明した。ロイターが24日、改革計画の文書を確認した。
ギリシャは23日遅く、改革案のリストを債権者である欧州連合(EU)側と国際通貨基金(IMF)に提出。4カ月の支援延長にはこれらの関係機関からの承認が必要となる。
リストでは他に、税制を改革する方針も示された。ギリシャはまた、政府支出について、あらゆる項目を見直し、コントロールすると表明した。
さらに、公的部門の賃金体系について改革を約束。一段の賃下げを回避しつつ、全体的な給与支払いが増加しないようにする方針という。また、最低賃金の引き上げを行うことを視野に、賃金の団体交渉を段階的に導入するが、そうした引き上げは欧州および他の関係当局と協議した上で実施するという。
チプラス首相は、最低賃金をすぐに引き上げるとした選挙公約を後退させたことになる。
改革案は年金基金改革にも触れており、収支を改善するために基金を整理し、不正受給への抜け穴や早期退職の誘因を取り除くと約束。EUとIMFの支援団はこれまで年金支給額のさらなる引き下げを求めてきており、引き下げ回避を狙い妥協策を探る政府の姿勢が示された。
また、国内の銀行については、健全な商業上および銀行業の原則に基づいた経営が行われていることを確実にすると表明し、銀行の業務に政府が介入しないとの立場を明らかにした。
ギリシャ国債利回り大幅低下、改革案承認が追い風 2/25
24日のユーロ圏金融・債券市場では、ギリシャの国債利回りが大幅低下した。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)がギリシャの改革案リストを承認したことを受け、当面の財政破綻やユーロ圏離脱のリスクが後退したことを好感した。
ギリシャ10年債利回りは1カ月ぶりの低水準をつけ、126ベーシスポイント(bp)低下の8.89%となった。3年債利回りは402bp低下の12.54%と、1月の総選挙前の水準まで回復した<0#GRTSY=TWEB>。
マークイットによると、期間5年のギリシャのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は92bp低下の1373bp。
他の低格付け国債の利回りも低下した。
スペインES10YT=TWEB、イタリアIT10YT=TWEBの10年債利回りは3bp低下のそれぞれ1.39%、1.47%。ポルトガル10年債PT10YT=TWEB利回りは4bp低下の2.12%。
独連邦債に対するイタリア、ポルトガル国債の利回り格差はいずれも2010年5月以来の水準に縮小した。
ユーロ圏財務相がギリシャ案大筋承認、改革拡充も要求 2/25
ユーロ圏財務相(ユーログループ)は24日の電話協議で、ギリシャが提出した改革案を大筋で承認した。これにより同国への金融支援は4カ月間の延長が認められ、危惧されていた同国の破綻や金融システムの崩壊は当面回避される見通しとなった。
ただユーログループは改革案のさらなる拡充を求めており、ギリシャ、国際機関双方の交渉は今後も緊迫した状態が続きそうだ。
欧州委員会はこの日、ギリシャが提出した改革案リストについて、同国に対する金融支援の4カ月間延長で合意するための出発点になるとの見解を表明。欧州委のドムブロフスキス副委員長とモスコビシ委員(経済・財務担当)はユーログループのデイセルブルム議長宛ての書簡で「欧州委の部局はギリシャ政府の改革案を慎重に審査した」とした上で、「欧州委の見解では、このリストは十分に包括的で、支援についての検討を良い結論に導くための妥当な出発点となる」との考えを示し、ギリシャ新政権と協力して一般的なコミットメントを明確な政策行動に移すことに期待感を示した。
こうしたなか、ユーログループは、ギリシャ支援の延長を承認する条件として、改革案リストの拡大を同国に要求。「見直しの迅速かつ有意義な結果が得られるよう、各機関と緊密に協力しつつ、現行の取り決めに基づき、改革案リストの拡大およびさらなる進展をギリシャ当局に要請する」と述べるとともに、4月末までに見直しを完了する方針を明らかにした。
ギリシャ財務省の当局者は、今回の決定を受け、今年度の財政資金の不足分の手当てについて、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)側と直ちに協議を開始する方針を示した上で、具体的にはギリシャ政府による短期証券(Tビル)の追加発行や欧州中央銀行(ECB)が保有するギリシャ国債から得られる収入などで賄うことが選択肢に含まれるとした。
ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は、ギリシャの改革案を慎重ながらも歓迎する意向を示す一方、同国が過去に約束した事柄を放棄するような考えは持つべきではないと釘をさした。
またIMFのラガルド専務理事は、改革案について、同国支援を続けるうえで十分な内容と評価しつつ、重要な箇所で具体的な言及が不足していると指摘。「おそらく最も重要な部分を含むかなりの分野で、政府が予定する諸改革を行う意思があると、文面は明確な形で確約していない」とし、懸念される分野として労働市場改革や年金、付加価値税政策などを挙げた。
ギリシャ政権が閣僚反旗で亀裂、首相の綱渡り鮮明に 2/26
ギリシャのラファザニス・エネルギー相が電力会社の民営化をめぐって政府に楯突き、チプラス政権発足以来、初めて政権内の亀裂が露わになった。債権者と交渉するチプラス首相が、いかにぎりぎりの綱渡りを迫られているかが鮮明になった格好だ。
首相は先週、欧州連合(EU)および国際通貨基金(IMF)との間で救済プログラムの4カ月延長で合意した。債務不履行(デフォルト)の脅威にさらされて屈服した格好だが、表向きは勝利を装っており、今のところ国内で大きな反発や抗議は避けられている。
しかしエネルギー相が25日、電力会社PPC(DEHr.AT)や電力網大手ADMIEの民営化計画を推進しないと表明したことで、政権に最初の亀裂が入った。政府は24日、既に入札を開始した民営化事業については計画を凍結しないと約束する改革案をEUやIMFに提出したばかりだからだ。
ラファザニス氏は与党・急進左派連合(SYRIZA)内でも極左メンバーで、造反すれば政権を倒しかねない影響力がある。そうした兆候はまだ見られず、これまでのところ他の問題に関しては従来の主張を後退させている。
とはいえチプラス首相は今後数カ月間、EUとIMFから要求された不人気政策を実施しつつ、ラファザニス氏をなんとか味方に付け続ける必要がある。
首相は真っ向から相反する2つのメッセージを同時に発信せざるを得ない。債権者向けには緊縮路線を踏み外しませんと言い、与党議員と国民には緊縮策から抜け出したと説得する必要があるのだ。
ある政府高官によると、チプラス首相は密室会議の場でシリザ議員らに対し、「状況はなお厳しい。われわれは交渉力だけではなく、統治能力によって判断されることになる。早急にプログラムを実行しなければならない」と語ったという。
首相が食料費補助の実施や住宅差し押さえの回避などの「戦利品」を国民に届け、ギリシャが債務交渉で一定の柔軟性を勝ち取ったことを証明できるかどうかに多くは掛かってくるだろう。
ギリシャが24日に提出した改革案は、予算に負担を掛けない範囲で一定の社会福祉支出を許すとする文言が盛り込まれている。しかし今後、ギリシャはより具体的な改革計画を示し、4月末までに承認を得る必要がある。
何といっても重要なのは、支援を受け続けるために不人気な政策を採決に掛ける必要が出てくるかもしれないことであり、シリザ議員の一部が造反する可能性も考えられる。
世論調査機関アルコのコスタス・パナゴポロス氏は「シリザ議員を含め、だれもが実際に何が起こるのかを見守っている。あらゆる措置について逐一許可を仰ぐことになるのではないか。選挙前と変わらず、外国から指図されるのではないかと」と語る。
今のところ、国民はチプラス首相の交渉を圧倒的に支持している。真価が問われるのはシリザ自体および、救済に断固反対する連立政党「独立ギリシャ人」からの支持を維持できるかどうかだ、とパナゴポロス氏は指摘した。
<債権者は懐疑的>
ギリシャの改革案に対する債権者からの当初反応を見る限り、彼らはチプラス首相への強硬姿勢を緩めそうにない。IMFは改革案が詳細を欠いていると苦言を呈した。
こうした中、二律背反の立場に置かれているのはラファザニス・エネルギー相らシリザの古参議員だけではない。
経済学者から財務相に就任したバルファキス氏は何年も前から、救済策を「有毒」、「破滅を招く」、「ねずみ講」などと厳しく批判してきた。しかし今、憎むべき救済策の一環として改革案を策定しなければならなくなった。
バルファキス財務相は生意気な振る舞いでユーロ圏政策当局者の眉をひそめさせ、カジュアルな服装と言動で大いに注目を集めてきた。最近ではショイブレ・ドイツ財務相に「最大限の敬意」を示しているとしてショイブレ氏との対立説を否定するとともに、「彼が話すのを聞いて、異を唱えるのを楽しんでいるよ」とジャブを送った。
ユーロ圏財務相らとの交渉中、電話を取っていたのはチプラス首相自身だが、パナゴポロス氏によるとバルファキス氏が政権を去ることは考えにくい。彼が離脱すれば政権にとって大きな失点と見なされるからだ。
パナゴポロス氏は「バロファキス氏は政権に留まるだろう。彼は単なる一閣僚ではなくシンボルだ」と語った。
ギリシャの銀行に預金再流入、支援延長合意で 2/27
ギリシャの銀行筋は26日、ユーロ圏財務相が同国への金融支援の4カ月間延長を認めて以降、ギリシャの銀行に8億5000万ユーロ以上の預金が再び流入したと明らかにした。
同筋は匿名を条件に、「24日に約7億ユーロが戻り、25日は1億5000万以上となった」と述べた。
ユーロ圏財務相は24日、支援延長の条件となっていたギリシャの改革案を大筋で承認した。
ギリシャで新政権発足以来初のデモ、一部暴徒化し警官隊と衝突 2/27
ギリシャの首都アテネ中心部で26日、チプラス政権に反対するデモが行われ、一部が店の窓を割ったり、車両に放火するなど暴徒化、警官隊と衝突した。1カ月前の新政権発足以来、デモが行われるのは初めて。
デモには約450人が参加。その後50人程度が、アテネ中心部のエクサルヒア地区で、警官隊に火炎瓶や石を投げつける騒ぎとなった。
ギリシャ政府は先週、支援策延長で欧州連合(EU)と合意した。チプラス首相率いる急進左派連合(SYRIZA)内では、支援策を停止するとしていた公約が守られていないと、不満の声も上がっている。 
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ギリシャ、国債償還めぐりECBと交渉目指す 3/2
ギリシャのバルファキス財務相は28日、今年夏に償還期限が到来する欧州中央銀行(ECB)が保有するギリシャ国債について、ECBと交渉する必要がある、との見方を明らかにした。
ECBが保有しているギリシャ国債(67億ユーロ相当)は、7月と8月に償還期限を迎える。
地元テレビでのインタビューで述べた。財務相は債務返済について「われわれは戦う」と宣言。「返済に充てるカネはない」とも訴えた。
財務相は、交渉で何を目指すのかについては、明らかにしなかったが、そもそもギリシャ国債を購入したのはECBのミスだと非難した。
ECBによる2010年のギリシャ金融支援時の国債購入について、「交渉では(当時ECB総裁だった)トリシェ氏が残念ながら間違って購入したこれらの国債がどうなるのかが焦点の一つとなるだろう。私はあの購入はミスだと思うが、ECBは当時、市場でギリシャを支えるために購入した」と述べた。
ギリシャは、支援策の4カ月延長でユーロ圏と合意した際、債務返済義務をすべて履行することを約束した。しかしギリシャが実際に新たな金融支援を受けられるのは、欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)がギリシャ改革案の詳細を承認した後になる。
税収が目標を下回り、景気回復の足取りも鈍いなか、ギリシャは3月、IMFから受けた融資およそ16億ユーロを返済する必要がある。また4月には、8億ユーロの利払いが控える。7月と8月には、ECBが保有する国債の償還のほか、利払いなどで約75億ユーロが必要だ。
欧州復興開発銀、ギリシャ支援を決定 3/3
欧州復興開発銀行(EBRD)のチャクラバルティ総裁は、2020年末までのギリシャ支援を発表した。
ギリシャは昨年、EBRDの支援を求めたが、総選挙で情勢が不透明なことから審査は棚上げされていた。
ユーロ圏による4カ月の支援延長が決まり、全出資国・機関の支持で支援が決まった。
総裁によると、ギリシャへの低利での融資額に上限はないが、求められるプロジェクト次第で決定する。
ギリシャ、当面の資金手当てに年金基金の現金準備利用も=当局者 3/4
ギリシャ政府は今月必要な資金を手当てするため、年金基金や公共団体が保有する現金準備を利用することを検討している。債務庁当局者が3日、ロイターに明らかにした。
具体的には、年金基金などが短期レポ取引を通して債務庁に手元資金を貸し出す。貸し出し期間は1─15日に設定され、担保には主にギリシャ国債が利用される。期間が過ぎれば資金は利子付きで返済されるが、常にロールオーバーが可能となる。
関係筋はこれまで、こうした手法で政府は最大30億ユーロの調達が可能になるとしていたが、政府が利用可能な資金のうちどの程度をすでに利用したかは不明。
ギリシャは月内に国際通貨基金(IMF)に15億ユーロを返済する必要があるほか、年金や公務員給与の支払いなどで毎月約45億ユーロの資金が必要。今月末、もしくはそれより前に資金が枯渇する恐れが出ている。
ギリシャの改革案、「完成には程遠い」=ユーログループ議長 3/9
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長は、ギリシャが先週提出した改革リストについて、「完成には程遠い」との見解を示した。
同議長は8日、アムステルダムでのイベントで講演し、ギリシャの提案は「真剣」なものだが、十分ではないと指摘。ギリシャが6つの案を示したことを明らかにし、さらなる案が提示される見込みだと語った。
同議長は、ギリシャ前政権が合意した財政再建策の一部を別の改革と差し替えるという新政権の計画に言及し、「6つの案は『最初の6つ』ということだ。彼らが差し替えを求めている30%の部分としてはまったく受け入れられない」と強調。ギリシャもそれを承知していると述べた。
ユーログループは9日、ギリシャ支援について協議する。
ギリシャが改革案で債権団と合意した場合、2400億ユーロ規模の現行プログラムから残りの18億ユーロ(19億6000万ドル)の支援が受けられる。
ECBの量的緩和、開始後3日間の購入額は98億ユーロ=専務理事 3/12
欧州中央銀行(ECB)のクーレ専務理事は12日、ECBが9日から開始した量的緩和(QE)プログラムについて、3日間で98億ユーロ相当の資産を買い入れたことを明らかにした。また、購入した債券は、満期までの残存期間が平均で9年だった、と述べた。パリで講演した。
債券買い入れにおいては何ら問題に直面していないと強調し、3月は月額600億ユーロの購入目標を達成できるとの認識を示した。
専務理事は「QEは機能しており、今後も機能するはずだ」と述べた。
一部のユーロ圏投資家は債券を売り渋っており、ECBが買い入れ目標を達成できるか疑問視する声も出ていた。
クーレ氏は買い入れ可能な債券は十分にあり、市場を信頼する必要があると強調。ECBは市場の機能を尊重する方法で債券を買い入れていると説明したうえで、「われわれは市場を損なうことは望んでいない」と続けた。
また、ECBはQEを予測可能な方法で定期に行う方針と述べた。
同氏はQE策を含むECBの措置に言及し、「米金融政策をめぐる不透明感や新興国への影響を踏まえると、ユーロ圏諸国を取り巻くバブルを発生させることが重要」との見方を示した。
ギリシャ国債もできるだけ早期にQE関連の債券買い入れの対象となることを望むが、同国はまず、金融支援に関する審査を終わらせる必要があるとした。
一方、キプロスは金融支援の審査を近く成功裏に終わらせる見通しであることから、QEの一環として同国の国債を早期に買い入れることが可能になるだろうと語った。
クーレ氏は、欧州には改革が必要で、原油安に基づいた循環的回復だけを当てにするべきではないと訴えた。また、ユーロ安は米欧の金融政策の方向性の違いの必然の結果だとの認識を示した。
「(ユーロ安は)ユーロ圏と米国の方向性が異なる金融政策の必然的かつ自然な結果だ」と指摘。「この数日間では、9日に始まったばかりのわれわれの債券買い入れの影響(への対処法を)市場が学んでいることに絡む追加的要素があるかもしれない」とした。
米国、日本、英国の各中銀がQEを開始した時のように、これは「一時的な段階」とした。
ギリシャ失業率上昇、昨年第4四半期は26.1% 3/13
昨年第4・四半期のギリシャ失業率は26.1%で、前四半期の25.5%から上昇、同年第2・四半期(26.6%)以来の高水準となった。同国の統計当局が12日明らかにした。
1年間以上職に就かない、長期失業者の割合は、失業者全体の約73%を占めた。
同国はすでに、昨年12月までの月ごとの失業関連指標を公表済み。ただ、四半期指標と異なるサンプルが用いられている。四半期指標は季節調整を行っていない。
ギリシャがOECDと協力、チプラス首相が改革実行を確約 3/13
ギリシャと経済協力開発機構(OECD)は12日、同国の改革推進で協力する合意書に調印した。OECDがギリシャに対し、優先課題となっている改革の設計、実行についてノウハウを提供する。OECDは長期的に、改革の進ちょく状況のほか、効果も同国が評価できるよう支援するという。
チプラス首相はパリのOECD本部を訪問、長期的な財政再建を訴え、合意した改革の実行を確約した。
首相は記者団に対し「融資が迅速に実施されなくても懸念する理由はない。ギリシャは義務を果たす」と指摘。「ギリシャが進めようとする改革へのお墨付きを得るためにOECDを訪れた」と述べた。
首相は、債務再編が必須と指摘。債務を再編すれば、支援策に盛り込まれた国内総生産比で今年3%、16年には4.5%という「非現実的かつ景気後退をもたらすような」基礎的財政黒字を達成する必要がなくなると述べた。
ギリシャがユーロ離脱の波及警告、「次はスペインとイタリア」  3/16
ギリシャがユーロ圏を離脱すれば、次はスペインとイタリアが出て行く―。ギリシャのカメノス国防相は14日発売のドイツ紙ビルトのインタビュー記事の中で、ギリシャの脱ユーロの波及に警鐘を鳴らした。
カメノス氏は「もしギリシャが破裂すれば、スペインとイタリアが次だ。そしていずれドイツも破裂する」と警告。「われわれは問題をユーロ圏内で解決をすべきだが、ギリシャが負担を払い続けることはできない」と訴えた。
またギリシャは、3次金融支援を必要としていないと述べた上で、「1953年のロンドン会議でドイツが認められたような債務の棒引きが要る」と語った。
ギリシャとドイツは舌戦を繰り返しており、ギリシャ政府は、ドイツのショイブレ財務相がバルファキス財務相を侮辱したとして、ドイツ外務省に正式抗議に踏み切る事態に発展している。ギリシャのメディアによると、ショイブレ氏はバルファキス氏を「愚かなほど幼稚」と言ったという。
カメノス氏は、ショイブレ氏について「毎度毎度、なぜギリシャに敵意をむき出しにするのか理解できない」と指摘。「これは神経戦みたいなもので、ショイブレ氏はギリシャとドイツ両国の関係に水を差している」と非難した。
さらに、国民に選ばれたギリシャ新政府に対してショイブレ氏が忍耐力を持つよう求めるとともに、ドイツはギリシャに内政干渉していると明言した。その上で、「ドイツ政府の一部は、ギリシャを本当にユーロ圏から追い出そうとしていると感じる」と批判した。
カメノス氏はまた、欧州連合(EU)がウクライナ危機をめぐって対ロシア制裁を発動しているため、ギリシャは損失を被っていると主張。ギリシャはEUから補償を受けるべきだとの見解を示し、「そうでなければ、ギリシャは対ロシア制裁に参加しないし、参加できない」と強調した。
ギリシャ、これまで修復してきた信頼をすべて破壊=独財務相 3/17
ドイツのショイブレ財務相は16日、ギリシャのチプラス新政権について、これまでに修復してきた信頼をすべて破壊したと強く批判した。
財務相は、ギリシャ政府が船舶税を引き上げるという公約を守るとは思わないと述べた。また、ギリシャで債務問題が発生した理由として、同国が身の丈以上の支出をしたためとの見方をあらためて示した。
ギリシャ資産売却益、債務削減でなく社会福祉に 3/17
ギリシャは近く、民営化を行う機関を投資ファンドに転換し、資産売却に伴う収益を公的債務の削減でなく、社会福祉政策の財源として活用する法案を示す。バラバニ財務副大臣が明らかにした。
歳入を債務削減に使うよう求める国際債権団とギリシャ関係の緊張が一層高まる恐れもある。
同氏は議会委員会で、数週間以内に国有資産開発基金(HRADF)と、公共資産を管理・運営する企業を合併、新組織を設立する法案を示すと説明した。
ギリシャの財務、危険な状態=シュルツ欧州議長 3/19
欧州議会のシュルツ議長は19日、欧州連合(EU)首脳会議を前に、ギリシャの財務状況は「危険」な状態にあると述べ、破綻を回避するには短期的に20億―30億ユーロが必要との見方を示した。
独ラジオ局ドイチュラントフンクとのインタビューに答えたもので、シュルツ議長はギリシャが月内にさらなる支払いを余儀なくされると説明。同国の金融機関は資金が必要だが、中銀にはそれを供給する能力がほとんど枯渇していると主張した。
シュルツ議長は「ギリシャは、合意した義務を実行したほうが良い。そうすれば、さらに資金が援助されるだろう」とコメント。ギリシャが改革の進捗状況を隠しているとの報道に対しては「ギリシャ政府はもっと協力姿勢を強めるべきだ」と話した。
EU首脳会議は20日まで、ブリュッセルで開催される。
ギリシャ銀から1日3億ユーロ流出、悪化トレンドの始まり懸念 3/19
ギリシャの銀行からの預金流出額が18日だけで約3億ユーロとなったことが分かった。1日当たりの流出額としては、2月20日にギリシャ政府が金融支援の延長でユーロ圏と合意して以降最も大きくなった。事情に詳しいギリシャの銀行幹部2人が19日に明らかにした。
幹部の1人はロイターに対し、「交渉に進展がなく不透明感があることや、ネガティブなニュースがセンチメントを悪化させている。流出額は大きくはないが、悪化トレンドの始まりかどうかが懸念される」と述べた。
もう一人の銀行幹部は、「ギリシャのユーロ圏離脱が懸念されている現在の環境下では、預金者が近い将来に銀行に資金を戻すことは考えづらい」と指摘。「週末を前に預金の流出が続く可能性がある」とした。
欧州中央銀行(ECB)はギリシャ国債を定例資金供給オペの担保として例外的に受け入れる措置を解除しており、ギリシャの銀行は資金調達でギリシャ中銀を通じた緊急流動性支援枠(ELA)に依存する状況となっている。
銀行筋によると、ECBは18日、ギリシャの銀行に対するELAを4億ユーロ拡大し、698億ユーロとした。
ギリシャの銀行では政治情勢をめぐる不透明感から12、1月に約160億ユーロの預金が流出。2月も流出が続いたが、2月20日に金融支援の4カ月間延長で合意があったのを受け、預金が再び流入していた。
ギリシャの銀行によるECBとギリシャ中銀からの借り入れは2月に1043億ユーロと、国内総生産(GDP)の約57%に相当する水準に膨れた。
「支援なければ債務返済は不可能」、ギリシャ首相が独首相に警告 3/23
ギリシャのチプラス首相はドイツのメルケル首相に対し、欧州連合(EU)から短期的な支援が受けられなければ、今後数週間に控える債務返済の義務をギリシャが果たすことは「不可能」と警告した。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)が22日、15日付のメルケル首相宛て書簡の内容を伝えた。
メルケル首相は23日、チプラス首相と会談する予定。書簡でチプラス首相は、主に国際通貨基金(IMF)から受けた融資を返済するか、社会的支出を続けるかの判断を迫られることになると訴えた。
チプラス首相は、短期国債の発行を欧州中央銀行(ECB)が制限していると批判。また、ユーロ圏の支援機関が、新たな経済改革を導入するまで支援金支払いを拒んでいることも原因として挙げ、こうした状況下では「どんな政府でも債務返済は不可能だ」と指摘した。
チプラス首相はギリシャが誠実に義務を果たし、関係国と緊密に協力することにコミットしていると表明。ただ、短期的な資金繰りの方法を見つけられなければ、もっと大きな問題につながる可能性があると警告した。
チプラス首相は既に疲弊したギリシャの状況が、債務の返済で急激に悪化すると指摘。こうした状態が予想されるのに「見過ごすことはできない」としている。
ギリシャ株・債券大幅高、包括的な改革案提出表明で 3/25
24日の欧州金融市場でギリシャの株・債券がともに大きく値上がりしている。ギリシャが来週30日までに包括的な改革案をユーロ圏に提出する方針を示したことを好感している。
独当局者によると、前日行われたメルケル独首相とギリシャのチプラス首相の首脳会談により、双方に関係改善の兆しが見られたもよう。これを受け、ギリシャがユーロ圏諸国から支援を得ることができるとの楽観的見方が広がった。
ギリシャ2年債利回りは144ベーシスポイント(bp)低下の20.44%、10年債利回りは43bp低下の11.14%<0#GRTSY=TWEB>。
ギリシャ・アテネ株式市場のATG指数.ATGは1332GMT(日本時間午後10時32分)時点で、3.5%値上がり。一方、銀行株.FTATBNKは0.2%程度の上昇にとどまっている。
ギリシャ国債利回り急低下、支援合意への期待で 3/25
24日のユーロ圏金融・債券市場では、ギリシャの国債利回りが大幅低下し、2年物は約1週間ぶりの水準をつけた。ギリシャ政府が来週30日までに包括的な改革案をユーロ圏に提出する方針を示したことで、支援協議がまとまるとの期待が膨らんだ。
また 欧州金融安定ファシリティー(EFSF)が25日にギリシャ銀の資本増強向け資金12億ユーロについて、返還の可能性を検討すると伝わったことも追い風となった。
ギリシャ2年債利回りは約200ベーシスポイント(bp)低下し、20%の節目を割り込んだ。10年債利回りGR10YT=TWEBは60bp低下の10.98%。
他のユーロ圏国債は総じて利回りが上昇した。3月のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)速報値が堅調な内容だったことに加え、オランダ、スペインによる新発債の供給が背景にある。
スペイン10年債ES10YT=TWEB利回りは3bp上昇の1.30%。
トムソン・ロイター傘下のIFRによると、スペインが発行する35億ユーロの15年物インフレ指数連動債(TIPS)には、約67億ユーロの需要が集まった。
ギリシャ、ユーロ圏へ銀行救済基金12億ユーロの返金を法的要請 3/27
ギリシャは26日、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)に返金を要求していた同国の銀行救済基金の12億ユーロについて、改めて法的な返金要求を行ったことを明らかにした。
ギリシャは銀行救済基金の現金準備について、EFSFに対し過払い分を返金するよう要求。これに対しユーロ圏財務相会合(ユーログループ)は、ギリシャには法的権利がないとして要求を退ける判断を下した。
銀行救済を目的とするギリシャ金融安定基金(HFSF)は声明で「未利用のEFSF債の額は、払込資本と銀行の資本再構成などに使われた資金の差額を上回っており、ここにEFSFの関心を向けることができた」と指摘。「これに伴い、12億ユーロの資金の分離と返金を法的に要請した」と説明した。
ギリシャは新たな資金が得られなければ、来月にも手元資金が枯渇するとみられている。
 

 

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ギリシャが「9日に資金枯渇」と通告、債権団はつなぎ融資拒否 4/2
ギリシャが債権団に対し、来週9日に資金が枯渇すると伝え、改革案をめぐる合意前の融資実施を要請したものの、拒否されていたことが明らかになった。ユーロ圏の当局者が明らかにした。
ギリシャが要請したのは、1日にユーロ圏の財務次官らが開いた電話会議の場。ギリシャ財務省は、9日に資金が枯渇すると通告したとの報道を否定。
財務省声明は「4月1日のユーロ圏作業部会での協議内容を伝えるロイター報道を否定する」とした。
一方、ギリシャのブーチス内相は1日、9日に国際通貨基金(IMF)への4億5000万ユーロ分の融資返済を実行するか、あるいは給与・年金支払いを行うかの選択を迫られると発言。同相は後者を選択するとの見解を示した。
その後に政府報道官が「ギリシャがIMF融資の返済期限を守れないことはない」と否定していた。
ギリシャは、前政権が約束した改革を実行すればユーロ圏やIMFから72億ユーロの融資を受けることができる。ただ、そうなれば新政権は選挙時の公約に違反することになるため、これらの措置の大半の実施を拒んでいる。
ユーロ圏の当局者によると、ギリシャの代表は電話会議で「4月9日以降、国家の運営を維持していくことはできない」とし、改革案をめぐる合意がギリシャの「死体解剖」になってはならないと強調。合意に至るまで融資を実施しないのは非現実的だと言明した。
一方、ドイツなど各国の財務次官らは、総額2400億ユーロの支援のうち残りの融資実施には、改革案で合意し、ギリシャが改革を実施する必要があるとの主張を堅持した。
ユーロ圏の当局者らは、そのための法整備が必要だとしても、ギリシャが政府内や国営企業などから資金を工面することは可能との見方を示している。一方、ギリシャ側は、来週以降のIMFへの融資返済と給与・年金支払いの両方をまかなうにはこの方法では不十分と繰り返し主張している。
ギリシャが全債務の履行表明、9日の融資返済を確約 4/6
ギリシャのバルファキス財務相は5日、ワシントンで国際通貨基金(IMF)高官らと会談した後、「全債権者に対する全ての債務を履行する」との意向を示した。同相は、9日に期限を迎えるIMFに対する4億5000万ユーロの融資返済を確約した。
また、政府はギリシャを大幅に改革する計画で、債権者との「協議の効率化」を目指したいと述べた。
IMFのラガルド専務理事は、バルファキス財務相と会談後、「財務相による9日の支払い確約を歓迎する」との声明を発表した。
ギリシャは資金枯渇の危機に直面しており、欧州連合(EU)やIMFから支援を得るには改革案で合意する必要がある。
ラガルド専務理事は、アテネでの事務協議とブリュッセルでの支援をめぐる協議は「6日に速やかに再開する」とした。
ギリシャは最初の改革案がEUとIMFに承認されなかったため、より詳細な案を1日に提示した。ただ、ユーロ圏の当局者は、新たな支援を実施するためには、改革案をさらに調整する必要があるとの見方を示している。
ギリシャは4月8─9日のユーログループ実務者会議に期待しているが、それまでに合意に至る可能性は低い。次回ユーロ圏財務相会合は4月24日に予定されている。
ドイツ、ギリシャの戦争賠償請求に取り合わず=ガブリエル経済相 4/8
ギリシャ側が、ナチス・ドイツによる第2次世界大戦中の占領で同国が受けた損害として、ドイツに2787億ユーロの賠償金支払いを求めたのに対し、ドイツのガブリエル経済相は「ばかげている」として取り合わない姿勢を示した。
同相は、ギリシャが債務危機を乗り切るために多少の時間稼ぎをしようとしているに過ぎないとし、「そのことは第2次世界大戦とも賠償支払いとも何ら関係がない」と述べた。
ドイツは1960年に1億1500万ドイツマルクの支払いを行い、ギリシャへの義務を果たしたと繰り返し主張しているが、ドイツ財務省の報道官は7日、政府の立場に変わりはないと強調した。
ギリシャまた資金枯渇訴え、ユーロ圏は改革案要求=EU当局者 4/9
ギリシャは8日夜のユーロ圏財務次官会議で、資金が枯渇しつつあると訴えたものの、内容を改善した経済改革案の提出を急ぐよう求められた。欧州連合(EU)当局者が9日明らかにした。
流動性支援の前に、財政を持続可能なものにする施策リストの策定で前進する必要があると、ユーロ圏がギリシャに迫った形だ。
ユーロ圏関係者の1人は「ギリシャ側は、流動性が非常に悪化していると強く訴え、24日のユーロ圏財務相会合前に、何らかの流動性支援を求めた」と説明。「ただこうした要求がどのような形で受け入れられ得るかは誰もわからない。改革プログラムで一定の前進がなければ、支援する意思はない」と明言した。
別のユーロ圏当局者は、ギリシャ側の改革案について「具体的な方策、特に財政的な意味合いを示す記述がまだ足りない。24日の次期ユーロ圏財務相会合で決定が下されるべきだ」と語った。
ギリシャが債権団と施策について合意し、議会で関連法案を通過させれば、現行の国際支援(2400億ユーロ)のうち、72億ユーロを受け取る可能性がある。
また、ギリシャと債権団代表が21━22日までに改革案で合意し、ユーロ圏財務相が承認すれば、欧州中央銀行(ECB)がギリシャの短期国債発行枠を引き上げるなど、一定の支援を行う可能性もある。
ただ当局者の間では、ギリシャ政府の信頼度は低く、関連法案が議会で承認されない限り、約束が示されるだけで行動する者はいないとの見方が広がる。
為替リスク高まっている=IMF専務理事 4/10
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は9日、世界為替相場の急激な動向はドル高に連動しており、米金利の上昇によって状況が悪化することから、世界経済へのリスクが高まっているとの見解を示した。
専務理事はシンクタンクの大西洋評議会(アトランティック・カウンシル)での講演で「為替相場や為替に関するリスク、為替相場のボラティリティが、高まりつつあるリスクのひとつであることは明白」とし、とりわけ新興国企業がリスクにさらされていると語った。
また、ギリシャがIMF融資4億5000万ユーロ(4億6800万ドル)を返済したことを確認した。
ロシアパイプラインのギリシャ延長、近く最終合意=閣僚 4/11
ギリシャのラファザニス・エネルギー相は10日、ロシアからトルコにロシア産天然ガスを運ぶガスパイプラインをギリシャまで延長する計画について、ギリシャは参加することで近く最終合意するとの見通しを示した。
ギリシャのチプラス首相は今週のロシア訪問でプーチン大統領と会談し、両国間の提携強化で合意。提携案件の1つとして、ロシア産天然ガスを黒海経由でトルコに供給するパイプライン、「ターキッシュ・ストリーム」をギリシャまで延長する計画について協議した。
プーチン大統領はギリシャが同計画に参加するか具体的には合意していないとしているが、ラファザニス・エネルギー相はこの日、ギリシャのラジオ番組に対し、「(パイプラインをめぐり)近く最終合意に達する公算が大きい」と述べた。
同相は建設費は20億ユーロ(21億ドル)になると試算。建設と運営には100%民間資本が投入され、約2万人の雇用が創出されるとしている。
同相はまた、「ターキッシュ・ストリーム」延長後にギリシャがロシア産ガスを欧州に売却することで得られると想定される収入に見合う額をロシアが近くギリシャに提供することを検討していること確認。こうしたことはギリシャの財政上のひっ迫の緩和につながるとの考えを示した。
ロシアが提供する資金について、ギリシャはパイプラインが稼動開始する2019年以降に返済するとしている。
信頼薄れるギリシャ、「政治の転換」で債務問題解決を=専門家 4/14
ギリシャのチプラス政権は、ユーロ圏域内パートナーの信頼を失ってしまったことで、数週間前には浮上したかもしれない長期的な解決策も今や手の届かないものとなってしまったようだ。専門家らは、経済再生のチャンスを得るためには早期の政治転換が必要、としている。
ギリシャが危機を回避するための現実的な最善策は、国際通貨基金(IMF)からの高金利融資を早期に返済し、欧州中央銀行(ECB)が保有する債券を償還して、ユーロ圏政府から融資の期限を延長してもらうことで今後数年間の低利の融資を確保することだろう。
この案を提唱するピーターソン国際経済研究所のヤコブ・フンク・キルケゴール上級研究員は「これにより、ギリシャ債務の実質金利は2%以下と、2009年に始まったユーロ圏債務危機以前と比べてかなり低くなり、今後10年間に返済する元本は大幅に削減され、ギリシャは経済再生に向け、財政面で一息つく余地を得られる」と指摘する。
バルファキス財務相が示した、未払負債を国内総生産(GDP)連動債や永久債と交換する案とは異なり、IMFやECBへの早期返済は法的にも問題なく支持も得やすい。
しかし、ギリシャにとって経済的に理にかなうとしても、域内のパートナーがこの案に納得することはもはや困難と言えそうだ。
ギリシャは支援プログラムが停止し、市場からの資金調達もできないことから、IMFへの240億ユーロの返済と270億ユーロ相当のECB保有債券の償還を行う唯一の方法は、ユーロ圏の救済基金から資金を借りることとなる。つまり、ユーロ圏諸国は各国の議会に、さらなる対ギリシャ融資の承認を認めさせることが必要だ。
ドイツやオランダ、フィンランドなどは、もはやギリシャを信用しておらず、経済改革や財政緊縮を実行させる役割を果たすためIMFが関与を続けるよう望んですらいる。
また、多くのエコノミストやユーロ圏当局者は、ギリシャが望まないとしても、同国は年内に約300億ユーロ規模の支援第3弾が必要になるとみている。
パリに拠点を置くソブリン債運用アドバイザー、EM Conseilのエレーナ・ダリー氏やCIGIフェローでギリシャ債務問題を担当するミランダ・ザファ氏ら専門家は、チプラス首相が、債権者の信用維持と両立できない選挙公約を掲げ、ほぼ不可能な立場に自身を置いていると指摘する。
チプラス氏は資本規制に頼ったり、公務員給与をIOU(借用証書)で支払ったり、またユーロ圏からの離脱を余儀なくされることなく、経済再生のチャンスを得るため、早期に政治転換を図ることが必要だとしている。
たとえ与党急進左派連合(SYRIZA)を割ることになったとしても、痛みを伴う経済改革という代償を支払ってユーロ圏に留まりたいかどうかをギリシャ国民に問う国民投票の実施や、改革を実行できるよう連立政権を組み直すといった選択肢が望ましい、という。
ダリー氏は、ギリシャの債権者であるユーロ圏諸国は「ギリシャには繁栄した国家としてユーロに残留してもらいたいが、その一方でチプラス政権が無惨に失敗して造反を企む他の国や地域の教訓となるよう望んでいる」と指摘する。
欧州株反落、ギリシャ懸念再燃 4/15
14日の欧州株式市場は反落して取引を終えた。ギリシャが債務不履行(デフォルト)に陥ることへの懸念で市場心理が悪化した。
FTSEユーロファースト300指数.FTEU3は7.34ポイント(0.45%)安の1639.80。
DJユーロSTOXX50種指数.STOXX50Eは44.25ポイント(1.16%)安の3784.53だった。
ギリシャは月末までに債権団と改革案で合意できない場合、債務不履行(デフォルト)を宣言する方向で準備しているとの報道を受けて、同国への不安が再浮上した。ギリシャ政府は交渉が「順調に」進んでいると述べ、報道を否定している。
それでもなお、ギリシャ・ナショナル銀行(NBG)(NBGr.AT)は5.3%、アルファ銀行(ACBr.AT)は10.8%の値下がりとなった。
ユーロ圏のその他の銀行株も連れ安となった。イタリアの銀行大手ウニクレディト(CRDI.MI)は2.5%、スペインのサンタンデール(SAN.MC)は2.1%、同国のBBVA(BBVA.MC)は1.6%下落した。
外国為替市場でユーロが持ち直したことから、輸出関連銘柄で最近の利益を確定する動きも出た。フランスの高級ブランドLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH.PA)は2.5%、航空機大手の欧州エアバス(AIR.PA)は2.6%下げた。
一方、フランスの通信機器大手アルカテル・ルーセントALUA.PAは16.0%の急騰。フィンランドの同業ノキアNOK1V.HEと合併交渉を進めているとの発表が好感された。ノキアは3.6%下落した。
昨年のギリシャのプライマリーバランス、GDP比0.4%の黒字 4/15
ギリシャ統計局(ELSTAT)は15日、地方政府分を合わせた2014年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字が国内総生産(GDP)比0.4%になったと発表した。
欧州連合(EU)などとの間で合意した財政健全化目標とはベースが異なる。
合意では2014年のプライマリーバランスをGDP比1.5%の黒字とするよう求められていた。ギリシャ政府は正式な統計を発表していないが、達成できなかったとしている。
ELSTATによると、昨年の財政赤字はGDP比3.5%だった。
ギリシャをCCCプラスに格下げ、見通しネガティブ=S&P 4/16
格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は15日、ギリシャの長期ソブリン信用格付けを、「Bマイナス」から「CCCプラス」に引き下げた。格付け見通しは「ネガティブ」。
S&Pは「徹底的な経済改革、もしくは追加支援の実施がなければ、ギリシャの債務は持続不可能になるとみている」とした。
AIIB加入、G7で共同歩調とれず残念=独財務相 4/16
ドイツのショイブレ財務相は15日、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加をめぐり、主要7カ国(G7)で共同歩調をとれなかったことに失望を表明した。
G7ではドイツ、英国、フランス、イタリアがAIIBに加入する一方で、日本、米国は運営方針が不透明などとして参加を見送った。
ショイブレ財務相は米コロンビア大学で講演し「G7で共通の立場をとることができなかったことに若干失望している」と述べた。
ギリシャについては、金融市場の信頼を回復し経済の競争力を高める必要があると指摘し、ドイツには目標の達成に向けて協力する用意があると語った。
ギリシャは「前回の総選挙までは」予想を上回る回復を遂げていたとの見方を示した。「(改革)プログラムを実行しないで景気を回復させユーロ圏にとどまることを選挙で公約したなら、苦痛を被ることになるとチプラス(ギリシャ)首相に伝えた」と明らかにした。
また「チェコとポーランドがユーロ導入を決定すればできる限り早期の加盟を支持する」と述べた。
ギリシャ国債利回り上昇、格下げなど嫌気 ユーロも下落 4/16
トレードウェブによると、16日の欧州債券市場でギリシャ2年債利回りGR2YT=TWEBが100ベーシスポイント(bp)強上昇し、24.88%となった。
5年債利回りGR5YT=TWEBも70bp上昇し、17.78%。10年債利回りGR10YT=TWEBは16bp上昇し、12.12%。
スタンダード&プアーズ(S&P)がギリシャ国債を格下げしたことや、 ショイブレ独財務相が前日、対ギリシャ金融支援について、来週のユーロ圏財務相会合で、支援条件である経済改革について合意する見込みは薄いと述べたことが背景。
ユーロも対ポンドEURGBP=D4、対ドルEUR=で売られている。
1─3月ギリシャ基礎的財政黒字、目標上回る 4/17
ギリシャ財務省が16日発表した第1・四半期の中央政府のプライマリーバランス(基礎的財政収支)は、主に公的支出の減少を背景に、17億4000万ユーロの黒字となった。黒字幅は政府目標の1億1900万ユーロを上回った。
中央政府のプライマリーバランス黒字額には、社会保障関連機関や地方政府の予算は含まれていない。欧州連合(EU)/国際通貨基金(IMF)が注目している数値とも異なるが、ギリシャ財政の改善の度合いを見極める上で、一定の指針となる。
ギリシャ国債利回り急上昇、債務問題への不安根強く 4/17
16日のユーロ圏金融・債券市場では、中核国の国債利回りが過去最低水準を更新。ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が前日、量的緩和(QE)の完全実施を明言したことなどが追い風となった。一方、ギリシャをめぐる懸念から同国債利回りは急上昇した。
ギリシャの2年債利回りGR2YT=TWEBは4%ポイント強上昇し28%を突破、昨年7月以来の高水準となった。同国の債務問題に対する不安が根強い。英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)はギリシャ政府が融資の返済延期を要請するため国際通貨基金(IMF)に接触したものの、IMFはギリシャ側の要請を拒否したと報じた。これを受けてギリシャ政府は火消しに追われた。ギリシャのチプラス首相は16日、支援をめぐる国際債権団との交渉について、4月末までに合意が得られると「強く楽観視」していると述べた。
フランスの10年債利回りFR10YT=TWEBは0.33%と過去最低を更新。10年物の独連邦債利回りDE10YT=TWEBも0.073%に低下した。この他ベルギー、オーストリア、オランダ、フィンランドの10年債利回りが軒並み過去最低近辺で推移した。
G20「世界経済のリスク減退」、課題残るとも指摘 4/18
米ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は17日、先進国の成長見通しが改善するなか世界経済へのリスクは減退する一方、為替変動や低インフレ、地政学的緊張など課題は残されているとの共同声明を採択して閉幕した。
声明では「世界経済に対するリスクは前回の会合以降、一段と均衡している。ユーロ圏や日本など先進国における短期的な見通しは最近改善しているほか、米、英は底堅い成長を続けており、こうした動きが世界経済の一層力強い回復を後押しする可能性がある」と指摘した。
その一方で、「為替相場の変動や長引く低インフレ、持続的な内外の不均衡、高水準の公的債務、地政学的緊張など重大な課題が存在する」とした。
声明には、ギリシャへの直接の言及はなかった。トルコのババジャン副首相も記者会見で、ギリシャ問題が公式協議で主要議題とならなかったこと明らかにした。
しかし、ギリシャ問題が当局者の念頭に置かれていることは明確で、これに先立ち、オズボーン英財務相は記者団に対し、ギリシャをめぐる問題が一連の国際会議に重くのしかかっており、ギリシャ支援をめぐる交渉について「いずれの側に判断ミスや誤算などがあれば、欧州が4年前に経験したような危険な状態に再び陥るのは明らかだ」と述べた。
ギリシャと債権団の協議について、IMF欧州局を統括するポール・トムセン氏は記者団に対し、「数日中に大きく進展し、手続きを加速させることが重要」とし、「包括的なパッケージが必要であり、少なくとも数週間の討議が必要となることは明白だ」と語った。
声明では世界経済に対する明るい見方が示されたものの、米連邦準備理事会(FRB)が利上げ開始に向けた下地を整えるなか、金融市場のボラティリティーが高まるリスクが存在するとも指摘した。
「世界の金融政策が異なる方向に向かう環境において、各国は慎重に金融政策を調整し、マイナスの波及効果を最低限に抑制するため、明確な意思伝達を行う必要がある」と強調した。
また、資本流出に直面し、懸念視される新興国の状況については、必要に応じ、資本移動を規制するなどの措置を講じることが可能との見方を示した。
ギリシャの銀行、近く担保不足に陥る可能性=仏中銀総裁 4/20
フランス中央銀行のノワイエ総裁は、ギリシャが欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)と経済改革で合意しなければ、国内銀行は欧州中銀(ECB)からの資金供給を受けるための担保不足に近く陥るとの見通しを示した。20日付のフィガロ紙に掲載される。
総裁は「ギリシャの銀行はある時点で、(ECBの)緊急流動性資金を得るための担保さえ十分提供できなくなる可能性が高い。ギリシャが現在の状況を終息し、信認を再び確立するためユーロ圏諸国の支持のもとIMFとのプログラムを策定することが早急に求められる」と述べた。
ギリシャのユーロ圏離脱については「ユーロ圏にとってもトラウマ」となり、影響は世界経済にも波及すると指摘。しかしギリシャの方が影響は大きいとし「成長や失業といった根本的な問題に対応できなまま重大な経済危機を被ることになる」と述べた。
ギリシャ経常収支、2月は9.29億ユーロの赤字に拡大=中銀 4/20
ギリシャ中央銀行が20日発表した2月の経常収支は、9億2900万ユーロ(10億ドル)の赤字だった。赤字額は、前年同月の7億2900万ユーロ(7億8630万ドル)から拡大した。
サービス業の黒字額が減少したことや、配当や金利支払いがかさんだことが要因。観光関連の収入は1億5700万ユーロとなり、前年の1億3500万ユーロからの増加幅は限定的だった。
ユーロ全面安、ギリシャ債務不履行に懸念高まる=NY市場 4/21
20日のニューヨーク外為市場では、ギリシャ債務不履行の懸念が高まる中、ユーロが全面安の展開となった。逆にドルは主要通貨に対して上昇した。
ユーロ/ドルEUR=は終盤0.70%安の1.0730ドル。欧州中銀(ECB)の量的緩和策(QE)に加えて、ギリシャが数カ月以内にユーロ圏を離脱するのではという観測がユーロ売り圧力となった。
またギリシャ政府は20日、国営企業などがが抱える余剰資金を中央銀行に移管するよう指示したことで、ギリシャの資金繰りをめぐる懸念が増した。
ECBのコンスタンシオ副総裁は、ギリシャが債務不履行に陥っても必ずしもユーロ圏を離脱する必要はないと述べた。ただECB当局者の間では、5月に期限が迫る国際通貨基金(IMF)に対する10億ユーロの償還資金への懸念は消えていない。
ドルは終盤の取引で円JPY=とポンドGBP=に対して0.30%高。ドルの主要6通貨に対するドル指数.DXYは0.50%高となっている。
野村証券の上級エコノミスト兼アナリストのチャールズ・セント・アーノード氏は「ドルは押され気味に推移していたが、投資家がこの辺りの水準であればドルを買い持ちにしてもいいのではないかと判断しているところかもしれない」との見方を示した。
その他通貨では豪ドルが対ドルで下落。オーストラリア準備銀行(中銀、RBA)のスティーブンス総裁が20日にニューヨークで行われた講演後の質疑応答で、「豪ドルがさらに下落しなければ驚きだ」と述べたことで、豪ドル/米ドルは終盤0.70%安の0.7715ドルでの取引となっている。中国人民銀行が19日預金準備率を引き下げたため、一時約1カ月ぶり高値の0.7844ドルに上昇していた。
2014年ユーロ圏財政赤字はGDP比2.4%、ギリシャは3.5%=統計局 4/21
欧州連合(EU)統計局が21日発表した2014年の加盟国の財政収支および債務データ(1次速報)によると、ユーロ圏の財政赤字は域内総生産(GDP)比2.4%で、13年の2.9%から低下。債務残高はGDP比90.9%から91.9%に上昇した。
フランスの財政赤字は国内総生産(GDP)比4.0%で、2013年の4.1%からわずかに縮小した。
ギリシャの財政赤字はGDP比12.3%から3.5%に大幅に縮小。ただし、13年は銀行支援のために財政出動した影響で赤字が膨れ上がったという事情があり、その要因を除外すると、1.8%となる。
ギリシャの債務はGDP比175.0%から177.1%に上昇した。
ギリシャ2年債利回り30%突破、銀行の資金繰りめぐる懸念で=ユーロ圏債券市場 4/22
21日のユーロ圏金融・債券市場では、ギリシャ2年債利回りが、債務危機が深刻化していた2012年以来初めて30%を突破した。欧州中央銀行(ECB)がギリシャの銀行に対する資金供給の条件を厳格化するとのブルームバーグ報道が重しとなった。
ギリシャ2年債利回りは126ベーシスポイント(bp)上昇の30.24%をつけた。10年債<0#GRTSY=TWEB>利回りは34bp上昇の13.69%。
報道によると、ECBスタッフはギリシャの銀行が緊急の資金供給を受ける際に差し出す担保の価値評価をさらに引き下げる案を検討している。そうなればギリシャ銀への資金供給が細ることになる。
KBCのストラテジスト、ピエ・ラメンス氏は「市場は明らかにデフォルト(債務不履行)に近付いていると考えている。終局が迫っており、問題は数日以内、おそらく数週間以内に起こるかどうかだ」と指摘した。
ユンケル欧州委員長はこの日、早期合意が実現できるほど協議は進んでいないとし、ギリシャは取り組みを加速する必要があるとの見解を示した。
またユーロ圏財務相(ユーログループ)会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)はギリシャの支援協議をめぐり、今後数週間に合意できるとの見通しを示し、ギリシャのユーロ圏離脱を回避することがギリシャのみならず、ユーロ圏全体の利益となると述べた。
ECB緊急流動性支援、ギリシャ国内行の健全性と相関=独連銀理事 4/22
ドイツ連邦銀行(中銀)のドンブレット理事は21日、ギリシャへの緊急流動性支援(ELA)について、国内銀行の健全性と直接相関しており、前提条件が満たされる限り続けられるとの認識を示した。
ギリシャが債務不履行(デフォルト)に陥った場合、欧州中央銀行(ECB)がどのような対応を取るかについては言及を避けた。
同氏はビジネススクールの聴衆を前に「緊急流動性(支援)にギリシャ(政府)の状態が非常に重要なのは明らかだが、ギリシャ国内行の状況も大切だ」と述べた。
そのうえで「緊急流動性支援についてはユーロシステムに明確なルールがあり、ECBとユーロシステムは、ギリシャがその要件を満たす限り、ギリシャを支援する」と語った。
ECBは、ギリシャや同国の銀行に対し、1100億ユーロの流動性を供給している。
ギリシャ、パイプライン事業でロシアとの早期合意を期待 4/22
ギリシャのラファザニス・エネルギー相は21日、ロシア産天然ガスをギリシャ経由で欧州に運ぶパイプライン事業について、ロシアと近く合意したいとの考えを示した。
ギリシャを訪れているロシア国営天然ガス独占企業ガスプロム(GAZP.MM)のミレル最高経営責任者(CEO)はこの日、ギリシャのチプラス首相と会談。ラファザニス・エネルギー相は、同会談で「建設的な」意見交換が行われたと述べた。
そのうえで、「同パイプライン事業に対しギリシャは最大の関心を寄せており、最優先事項の1つと認識している。ロシア側と折衝を続けており、近く合意が得られると期待している」と語った。
ただ、同ガスパイプライン事業をめぐりロシアがギリシャに前払い金を払うことの是非についてはコメントを控えた。ガスプロムのミレルCEOもチプラス首相との会談後の記者会見で、この件については触れなかった。
国際支援団との協議が難航するなか、ギリシャの資金繰りは厳しくなっている。こうしたなか、ギリシャがロシアとパイプライン事業で合意すれば同国には最大50億ユーロの資金がもたらされると独シュピーゲル誌が報じたが、ロシアは18日、これを否定。
ギリシャ、債務交渉で見掛けより強い立場 4/23
ギリシャは債務問題をめぐる欧州連合(EU)との交渉で見掛け以上に強い立場にある。政府は7月に欧州中央銀行(ECB)が保有する国債36億ユーロを返済しない可能性が十分あるが、そうなれば事態は悪化するばかりだ。
EU諸国がこの返済不履行を「ハードデフォルト」だとみなせば、ギリシャが資本統制を導入したり国内銀が破綻したりするだろう。
EU側は融資実行の条件である改革をギリシャのチプラス首相に飲ませる手段として、2つの「むち」を手にしている。ギリシャの銀行は資金を必要としている。またギリシャ政府も資金を必要としており、こうした資金の大半は国際通貨基金(IMF)やECBへの返済を守るためのものだ。
もしギリシャがECBに返済できなければ、他のギリシャ国債もデフォルトと見なされる可能性がある。ギリシャの銀行の自己資本は毀損し、中銀による760億ユーロの流動性供給にアクセスするための担保も大きく減価する。銀行の破綻を食い止めるためにチプラス首相は資本統制の実施を迫られるかもしれない。ギリシャ国民は首相を非難するだろう。
ただチプラス首相の立場は一見したほど弱くはない。道義的な面では首相に分がある。ユーロ圏諸国は首相が痛みを伴う改革に合意し、支援基金からECBに資金を移すことができるようになることを望んでいるが、ギリシャ債務はいずれにせよ2012年に元本削減を実施してしかるべきだった。チプラス首相が改革に合意しなければならない道理はない。
国債に関する規定もチプラス首相の支えになるかもしれない。
クレディ・スイスの分析によると、ギリシャがデフォルトに陥ったかどうかの判断はギリシャの債権者、つまり他のEU諸国が判断しなければならない。ECBへの債務返済見送りは、EUのギリシャ向け融資がデフォルトに陥るトリガー(きっかけ)となるが、ギリシャの銀行が保有する国債については、EU加盟国が認めない限りトリガーにならない。チプラス首相は欧州諸国の責任を問うことが可能だ。
ECBの立場もまたチプラス首相の力添えとなる。ECBは流動性を供給し銀行を監督する機関として、緊急流動性支援(ELA)を実施する相手が支払い能力を備えており、かつ十分な担保を提供していることを確認する必要がある。それゆえに最近になって担保の掛け目を徐々に引き下げた。
しかしECBが昨年10月に実施した健全性審査(ストレステスト)ではギリシャの銀行は十分な自己資本を保有していると認定された。もしEU諸国がデフォルトはないと判断すれば、ECBはギリシャの銀行向けの資金供給を続けなければならない。
チプラス首相は、EU諸国が厳しい態度に出てもギリシャの脱EUの責めを負うことはないと分かり、職にとどまるだろう。プレッシャーにさらされているのはチプラス首相だけではない。
独財務相、ギリシャのデフォルトに備え「プランB」検討を示唆 4/27
ドイツのショイブレ財務相は25日、ギリシャのデフォルト(債務不履行)に備えた対策を準備していることを示唆した。
24日のギリシャ支援問題に関するユーロ圏財務相会合後、記者団から、ユーロ圏財務相は協議が物別れに終わった場合に備え「プランB」を検討しているかとの質問に「責任のある政治家に選択肢について聞くべきではない」と述べ、何が起きるかは想像力を使って予測するしかないと指摘した。
同相は、財務相らがプランBの策定に取り組んでいると答えれば、パニックを引き起こしかねないことを示唆し、1989年のドイツ統一の計画初期段階に水面下での準備が必要だったことを例に挙げた。
同相は「当時、統一計画を前もって明らかにしていれば、おそらく世界中が『ドイツは完全に気が狂った』と言っていたかもしれない」と語った。
24日の財務相会合では、資金が枯渇しつつあるにもかかわらず、支援条件となる改革の準備に後ろ向きなギリシャへの批判が高まった。
スロベニアの財務相は、3カ月間続いている協議に成果が得られないことから、おそらくユーロ圏財務相はギリシャのデフォルトに備え、プランBに関する協議を開始するべきだとの認識を示した。
合意見えないギリシャ協議、破綻見越した責任押し付け合い 4/27
ギリシャと国際債権団の協議は、同国が改革を実行する見返りに支援資金を受け取るという点で合意が成立する見通しが立たず、財政破綻までの距離がさらに近くなってきた。
こうした中で今までチキンゲームを繰り広げていたギリシャと債権団は、今度はいざ破綻した場合の責任を相手に押し付けようと非難合戦を展開している。
欧州各国の首脳、欧州中央銀行(ECB)関係者、ギリシャの政治家が足並みをそろえているのは、ギリシャが破綻し、デフォルト(債務不履行)が起きたとしても、自分たちがその元凶とされるのは御免だという姿勢だけだといえる。
ギリシャの左派政権は既にドイツをやり玉に挙げ、緊縮政策を押し付けて「人道上の危機」をもたらしたと攻撃している。
一方でユーロ圏諸国は、チプラス首相が率いるギリシャの新政権が交渉で脅迫的な言い回しや妨害行為をしたり、約束を守らなかったり、財政が火の車なのに厳しい選択を回避したと、とがめる構えだ。
ドイツや欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)の当局者からは「われわれはギリシャを救うためにできることは何でもやっているが、結局はギリシャ自身の問題だ」というメッセージが聞こえてきている。
チプラス首相とバルファキス財務相は当初、ドイツに対抗する仲間を探そうとしてフランスやイタリア、英国、EUを歴訪し、各メディアの取材に応じたものの、メディア以外で味方になってくれる相手は見つからなかった。
さらにチプラス氏は、第2次世界大戦中にナチス・ドイツがギリシャを占領したことの補償をあらためて要求した。ギリシャ政府が算定したその金額は2790億ユーロ(3035億ドル)と、ユーロ圏とIMFの今回の支援額である2400億ユーロを上回る。
これについてドイツは、ナチスの犠牲者に対しては補償済みであり、戦争犯罪に対する請求権は1990年のドイツ統一の際の旧連合国主力4カ国との協定で消滅したとの立場を取る。
ドイツのメルケル首相は努めて友好的な姿勢を示し、チプラス氏との信頼関係を築こうとしながらも、ギリシャは債権団が設定した年金の大幅削減などの改革条件は達成が必要だと主張している。
メルケル氏は先のチプラス氏との会談後に、ギリシャの財政資金枯渇を「阻止するためにあらゆることがなされなければならない」と語った。その上で「ドイツ側は求められた支援をすべて提供する用意はあるが、もちろん改革が実行されなければならない」と付け加えた。
投資家はこのメルケル氏の発言を2012年にECBのドラギ総裁がユーロ防衛のためにあらゆる手段を講じると約束したことになぞらえ、一時は局面好転につながるかもしれないと期待を寄せた。
だがメルケル氏の発言は、この先見込まれる非難に予防線を張ったものとも解釈できる。ドラギ総裁と違って、ギリシャの破綻を食い止めるために何でもやるべき「主体」には言及していない。
ドイツのショイブレ財務相に至っては、ギリシャがユーロ圏離脱を回避できるかどうかは疑わしいと公然と表明している。
24日に開かれたユーロ圏財務相会合は、ギリシャが要請していた支援金の一部早期支払いを拒否し、同国が完全な改革を実施するまでは長期支援や債務減免に応じないと表明した。
ギリシャの指導者たちは、同国の民意に耳を傾けて尊重するべきだと主張。債権団は、こちらも自国の有権者からの負託を受けていると反論している。
バルファキス氏によれば、ユーロ圏諸国が支援資金を提供しなかったのは、まずはギリシャを救うよりもそれぞれの国の銀行を守ろうとしたためだ。しかしユーロ圏諸国の当局者はそうした見方はまったく的外れだと指摘する。これらの銀行は12年にギリシャが民間の債権者に対して実施した債務再編で損失を被ったからだ。
バルファキス氏は非難の矛先をECBにも向けて、ECBはギリシャの銀行の流動性を枯渇させ、政府への短期貸付を大きく絞り込むことで同国を「窒息させつつある」と述べた。
これに憤慨したのはECBのドラギ総裁で、欧州議会における証言でECBのギリシャ向け支援額は1100億ユーロ前後に上ると説明している。
ギリシャ当局者はここ何週間にもわたって、ユーロ圏諸国に対して資金が底をついたと言い続けてきた挙句に、次の債務返済に充てる財源を見つけ出した。このため、あるEUの交渉担当者は「ギリシャはあまりに頻繁に『狼が来る(資金が枯渇する)』と叫んできたので、実際に破綻してもだれも信じないだろう」と突き放した。
EU欧州委員会のユンケル委員長は、チプラス氏が手遅れになる前に痛みを伴う改革を受け入れることで与党内をまとめると期待し、ぎりぎりまでギリシャをつなぎとめておきたい意向だ。
ユンケル氏にとっては、ユーロ圏の国際的立場からはギリシャの離脱は手痛い打撃であり、これが悪しき前例となって将来の危機において他の加盟国も離脱するのではないかとの思惑を投資家に持たせかねない。
ギリシャがたとえユーロ圏にとどまっても、他の加盟国やECBに対するデフォルトが発生すれば、EUの歴史上最悪のイベントの1つになるだろう。
ギリシャ国債利回り低下、交渉チーム再編を好感 4/27
27日のユーロ圏市場で、ギリシャ2年債の利回りが1%ポイント超低下した。同国が債権団との交渉チームを再編したことが好感されている。再編を通じて、バルファキス財務相の影響力が低下したとの見方も出ている。
ギリシャ2年債利回り<0#GRTSY=TWEB>は当初上昇していたが、再編のニュースを受けて100ベーシスポイント(bp)超低下し、24.87%をつける場面があった。
市場関係者の1人は、先週のユーロ圏財務相会合で、バルファキス氏が孤立し、チプラス氏もそうした状況を把握したと分析。「(バルファキス氏の)影響力が低下したことに市場は幾分安どしている」と話した。
追加融資なければギリシャはもたない=財務相会合議長 4/29
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は、ギリシャが債権団との交渉体制を刷新しただけでは事態打開は不可能とし、ギリシャが財政破綻を回避するには新たな融資が必要との認識を示した。RTLテレビのインタビューで述べた。
議長は「追加融資がなければ、ギリシャはもたない。それが現実だ」と語った。
またバルファキス財務相の役割を縮小し、交渉窓口に専任担当者を設けたことは幾分支援するかもしれないとしたが、過去2カ月の協議はほとんど進展が見られなかったと指摘。債権団との合意内容に関して国民投票を実施する案については「コストもかかり、政治をめぐる不透明感が著しく高まる。ギリシャ国民にその時間はないと思う」とし、否定的な考えを示した。
ギリシャのチプラス首相は、債権団との合意内容が自身の公約に反する場合、国民投票を実施する可能性があるとの考えを示唆している。
また「ユーログループとの確固たる合意がない限り、欧州中央銀行(ECB)資金に容易にアクセスできる道はない」とし、ECBがギリシャ銀への資金供給要件を緩和しない旨をギリシャ政府にも繰り返し伝えているとした。
ECB、ギリシャ銀向け緊急流動性支援を14億ユーロ拡大=銀行筋 4/29
欧州中央銀行(ECB)はギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)の上限を14億ユーロ引き上げ、769億ユーロとした。
銀行筋が29日、ロイターに明らかにした。
同筋は「まだ利用されていない流動性の残額は30億ユーロになった」と述べた。
ギリシャが債権団に改革案提出、暫定合意目指す 4/30
ギリシャは29日、債権団に改革案を提出する。
これまでの欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)との交渉で協議されている以上の踏み込んだ改革案が提示される見込みは低いが、法制化に向けた一連の改革案を示すことで、合意に真剣に取り組んでいる姿勢を示し、資金繰り改善へ少なくとも暫定的な合意を得たい考えだ。
ギリシャ当局者によると、まずはユーロ圏の財務省当局者が同日の会合で改革案を協議、翌30日にはギリシャやEUの債権団の実務者を交え、より広範な話し合いが行われる見通し。
債権団はこれまで、ギリシャが完全な改革案を示すまで、融資の一部実施などはしない立場を示しているが、ギリシャ政府は暫定合意することで、ECBがギリシャの銀行に行っている短期証券(Tビル)購入の制限緩和を狙っているもよう。
ムーディーズがギリシャ格下げ、政府債「Caa2」に 4/30
ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、ギリシャの政府債格付けを「Caa1」から「Caa2」に引き下げた。見通しはネガティブ。
ムーディーズは、ギリシャ政府が債務返済に間に合うよう、支援について国際債権団と合意できるのか不透明だと指摘。ギリシャの経済・金融・政治リスクのバランスは引き続き下向きとの見方を示した。
主要格付け会社のフィッチとスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、およびムーディーズは全社ともに昨年、弱いながらも景気回復の兆しが見え始めたとして、ギリシャの信用格付けを引き上げている。
ただムーディーズは今回、融資実施の前提となる経済改革案について合意に手間取っているため、見通しが不透明になった、と指摘した。
ムーディーズは「ギリシャと債権団は、主要な点について、認識に大きなずれがある。支援について目先合意する見込みはない」とした。
ムーディーズは、最終的にどういった結果になるのかは政治次第と指摘。「政治がどのような決断を下すのか非常に不透明。ギリシャがデフォルト(債務不履行)となる可能性は高まった」との見方を示した。
現地通貨・外貨建て債券のシーリングは「Ba3」から「B3」に引き下げた。
現地通貨・外貨建て銀行預金シーリングは「Caa1」から「Caa3」に引き下げた。預金凍結のリスクが高まったため、としている。 
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ギリシャ年金・労働改革で対立、資金難のなか協議に暗雲 5/4
ギリシャと国際債権団の間で、年金や労働改革で意見の隔たりが依然として大きく、集中協議の行方が見通しにくくなっている。ギリシャ政府報道官は4日、月末までに新規資金が必要と訴えた。
サケラリディス政府報道官は記者会見で、国際通貨基金(IMF)への月内返済(約10億ユーロ)を含む、すべての支払い義務を果たす意向を示した。
ただ「流動性問題が焦眉の急だ」と指摘。「ギリシャ政府は5月末まで、流動性の注入を待つことはない。可能な限り早期に、自国経済に流動性が注入されると期待している」と述べた。
政府当局者によると、ドラガサキス副首相は5日、フランクフルトで欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁と協議する。資金確保への取り組みを強めるとみられる。
ギリシャのスクルレティス労働相は4日、IMFは厳しい労働改革を要求しているとテレビで述べ、不満をにじませた。
IMFが、年金カットや大規模なレイオフに関する見直しを要求、ギリシャ政府の最低賃金引き上げ計画に反対していると指摘。「彼ら(IMF)は、ギリシャ国民の生活をこの5年間、破壊してきた(緊縮策)を一切いじらないよう求めている」と述べた。
バルファキス財務相も5日、パリとブリュッセルを訪れ、 欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務担当)らと会う。
ギリシャ紙カシメリニは、国内行がギリシャ中銀から融資を受ける条件を大幅に厳格化することについて、ECBが今週、検討すると伝えた。資金の代わりに差し出す担保価値の削減率(ヘアカット)を引き上げる。具体的には現在の23%から44、65、80%に引き上げることなどが検討されるという。ヘアカット率を引き上げれば、実質的に担保の価値が低下しギリシャの銀行が得られる資金の額が減少する。
ECBは報道に関するコメントを避けた。ただ、内情に詳しい関係筋は、担保政策の変更は今週行わず、緊急流動性支援がもう1週間延長される見通しを示した。
ECBのコンスタンシオ副総裁は、ギリシャと債権団が合意でき、ギリシャのユーロ圏離脱などは回避されるとの見方を示した。
オランダ紙とのインタビューが4日付紙面に掲載された。副総裁は「最悪のシナリオは避けられると確信する」と強調した。
また「ユーロ圏のストレスや脆弱性の度合いが、完全に変わった。連鎖反応の兆しはみられない」と述べ、ECBの債券買い入れプログラムが、ギリシャ問題をめぐる懸念の緩和につながっていると指摘した。
欧州委、ギリシャ成長見通しを下方修正 5/5
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は5日に公表したEU加盟28カ国の四半期経済見通しのなかで、ギリシャの2015年と16年の成長率予想、および財政黒字予想を下方修正した。
欧州委は「前年12月にギリシャで解散総選挙の実施が決定されてから不透明感が高まった」とし、「EU/国際通貨基金(IMF)の支援策へのコミットメントに対し現政権の政策スタンスが明確性を欠いていることで不透明感が一段と増している」と指摘。
4月21日までに収集した情報に基づき、ギリシャの2015年の成長率は0.5%になるとし、3カ月前に示した予想の2.5%から下方修正した。
2016年については、現在の政策が維持された場合は2.9%にとどまるとし、前回予想の3.6%から引き下げた。ギリシャの2014年の成長率は0.8%だった。
基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字については、2015年は国内総生産(GDP)比2.1%にとどまるとし、前回予想の4.8%から下方修正した。
2016年は現在の政策が継続されれば1.8%に低下すると予想。前回予想の5.2%から引き下げた。
ギリシャ株・債券急落、IMF支援打ち止め示唆との報道で 5/6
5日の欧州金融市場では、ギリシャの株、国債への売りが膨らんでいる。
国際通貨基金(IMF)の欧州担当責任者を務めるポール・トムセン氏が、欧州のパートナー諸国がギリシャの債務を軽減しない限り、ギリシャに対する資金援助を断つ構えを見せたとの英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙の報道が重しとなった。
ギリシャ10年債利回りは51ベーシスポイント(bp)上昇の 11.18%。前日は2カ月ぶり低水準となる9.84%をつけていた。2年債利回りは160bp上昇の21.13%。
ギリシャ・アテネ株式市場のATG指数.ATGは一時5%近く値下がり。銀行株.FTATBNKも10%近く急落している。
IMFの関係筋によると、トムセン氏は4月24日にリガで開催されたユーロ圏財務相会合で、明確にギリシャへの支援を停止する姿勢を見せたり、債務削減を求めたりしていないが、ギリシャ債務の持続可能性が悪化している点を強調していた。
ショイブレ独財務相も「IMFはそのような発言は行っていない」とし、トムセン氏は状況が「一段と厳しさを増している」と指摘したと述べた。
ギリシャ支援協議で一枚岩、EU・ECB・IMFが共同声明 5/7
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)は6日、3機関は一丸となってギリシャ支援協議に取り組んでいるとする共同声明を発表した。
ギリシャ政府当局者は前日、EUとIMFとの間に「深刻な」政策上の相違が存在しているため、ギリシャは譲歩できない状態になっているとの見解を表明。3機関の声明はこれに対応するものと見られる。
声明は、ギリシャの金融安定と経済成長を支援するとの目標を3機関は共有しているとし、「3機関は11日に具体的な進展が得られるよう、努力を続けている」としている。
ユーロ圏は11日にブリュッセルで財務相会合を開催。翌12日はギリシャのIMF融資が返済期限を迎える。
ユーログループ議長、ギリシャ流動性悪化への警戒感表明 5/7
ユーログループのデイセルブルム議長は、対ギリシャ金融支援をめぐる交渉について、現在の支援の枠組みが失効する6月末が政治的な期限となるが、ギリシャの流動性問題が悪化すれば、その時が事実上の期限となるのかもしれないとの見方を示した。
仏紙のインタビューで述べた。
議長は11日のユーロ圏財務相会合について、合意を望むには早すぎる、との認識をあらためて示す一方、早急な合意が必要と強調した。
ギリシャ、労働・年金問題では妥協不可能=政府報道官 5/7
ギリシャ政府報道官は、労働・年金問題では妥協不可能な一線を守るとし、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)も妥協すべきとの見解を示した。
報道官は「交渉には妥協点があるはずだ」とし、ギリシャ側は合意に向けて債務減免には固執していないとし、「これ以上の一線は越えられない。年金は削減できない」と述べた。
12日に迫ったIMFへの返済期限については、債務履行を目標にしていると述べた。
オーストリア財務相、ギリシャ債務不履行を懸念 5/8
オーストリアのシェリング財務相は7日、ギリシャが債務不履行(デフォルト)に陥れば直ちに多くの問題が噴出するのは目に見えているものの、数カ月間にわたり協議が行われているにもかかわらず妥当な解決策がいまだ見出されていないことに懸念を示した。
同財務相はロイターのインタビューに対し、「欧州中央銀行(ECB)によるギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)が実施されている間は問題はないが、デフォルトが発生すれば、直ちに問題に直面する」と指摘。
「ギリシャによるユーロ圏離脱は選択肢になく、ギリシャ支援第2弾も完了していないなかで第3弾は開始できず、ヘアカット(債務減免)も支援にならない」とし、「理にかなう解決策は皆無となっており、このような状況は自分自身これまで経験したことがない」と述べた。
また、ギリシャは毎月のように資金が底を尽くとしながらも、実際は資金は存在していたことを踏まえると、ギリシャの資金がまもなく底を尽くとの議論に対しては「若干の懐疑感」を持っていると指摘。ただ、今年下半期には確実に底を尽くとの見方を示した。
同財務相は、ユーロ圏離脱や欧州(EU)脱退の決定はギリシャにしかできないと指摘。欧州はギリシャ離脱による経済的な影響には対処できるとしながらも、政治的な影響は別の問題となると述べた。
またギリシャがユーロ圏を離脱し、独自の通貨を導入した場合、その通貨の価値は良くてユーロの半分程度となると見られるため、「ギリシャにとり、破滅的な状況となる」と述べた。
ギリシャ政府が改革計画公表、2015年成長率を再度引き下げ 5/11
ギリシャ政府は9日、経済改革に関するリポートを公表し、2015年の成長率が0.8%を上回る水準になるとの見通しを示した。
今回政府が示した成長率予想は、3月に国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)に示した1.4%や、昨年末の予算で想定した2.9%を下回る。
政府は89ページに及ぶリポートで、金融支援を即座に確保するための具体的な改革案には触れず、長期取り組みの枠組みに言及した。
リポートは、2014年の歳入が予想を下回ったうえ、資金調達をめぐる不透明感が高まったことから、経済見通しを立てるのが複雑になっているとしている。
そのうえで「ギリシャ経済にとり好ましい状況は維持される。2015年の成長率は2014年に示した0.8%を上回る」とした。
4月に策定された改革計画には、雇用促進や汚職取締り強化などの策が盛り込まれているが、向こう数年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字や成長率などの具体的な数値目標は示されていない。
欧州委員会は今週、ギリシャの2015年成長率を2.5%から0.5%に下方修正した。
ECB、ギリシャ銀向け緊急流動性支援枠を800億ユーロに拡大=銀行筋 5/13
欧州中央銀行(ECB)はギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)枠を11億ユーロ拡大し、800億ユーロとした。複数の銀行関係筋が12日、ロイターに対し明らかにした。
関係筋は、今回の拡大により利用可能な流動性バッファーは約35億ユーロになったとしている。
第1四半期ユーロ圏GDP、2年ぶり高成長 5/13
欧州連合(EU)統計局が発表した第1・四半期のユーロ圏の域内総生産(GDP)速報値は、前期比0.4%増、前年比1.0%増となり、予想をわずかに下回った。ドイツの伸びが予想に届かなかった。ただ、全体の伸び率は2013年第2・四半期以来ほぼ2年ぶりの大きさだった。
ロイター調査によるエコノミスト予想は前期比プラス0.5%、前年比プラス1.1%だった。
GDPの増加は、エネルギー価格や食料価格の下落、ユーロ安、欧州中央銀行(ECB)による量的緩和が背景とみられる。
各国別の数字をみると、ドイツは前期比0.3%増となり、14年第4・四半期の0.7%増に比べ鈍化した。対外貿易が重しとなった。市場予想は0.5%増だった。
フランスは同0.6%増。市場予想の0.4%増を上回り、2年ぶりの高い伸びとなった。
イタリアは同0.3%増と、予想の0.2%増を上回った。
ギリシャは同0.2%減。前年比では0.3%増だった。
ギリシャ首相「直ちに流動性を」、IMF返済前に債権団に要請 5/18
16日付のギリシャのカシメリニ紙によると、同国のチプラス首相は、国際通貨基金(IMF)への7億5000万ドルの資金返済期限前に、国際債権団に対し、直ちに流動性を提供しなければ履行できないと警告していた。
ギリシャは最終的に、期限の5月12日までにIMFの保有口座にある準備資金を利用して返済した。
同紙によると、チプラス首相は欧州委員会のユンケル委員長、IMFのラガルド専務理事、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁に宛てた5月8日付の書簡で、その旨を伝えたという。
書簡は、昨年8月以降2400億ユーロの支援プログラムからまったく資金を受け取っていないにもかかわらず、ギリシャは国内外の債務を履行してきたため、流動性源が不足していると強調。
流動性を回復するため、ECBがギリシャ国債に設けている発行上限を引き上げることや73億ユーロの一部融資実行に加え、2010年以降にECBがギリシャ債購入で得た利益19億ユーロの還元、ユーロ圏救済基金の12億ユーロの返還を提案した。
カシメリニ紙は、書簡は「こけおどし」ではないかと受け止められ、双方の溝が深まったとしている。
ギリシャ政府からのコメントは得られていない。
ギリシャ国債売られる、一段のIMF支援は難しい状況 5/18
18日の欧州債券市場ではギリシャ国債が売られている。
国際通貨基金(IMF)の内部メモによると、ギリシャによる6月5日の債務支払いは困難で、一段の支援を拙速に行う意向はないという。
バークレイズは18日、「ギリシャにとって今後2週間が非常に重要。政府のキャッシュ状態は非常に圧迫されており、デフォルトに近い状態」と指摘した。
ギリシャ2年国債GR2YT=TWEB利回りは257ベーシスポイント(bp)上昇し、3週間ぶり高水準の23.68%。10年国債GR10YT=TWEB利回りは55bp上昇の11.36%。
アテネ株式市場の主要指数.ATGは2%下落。
欧州債券・株式市場が上昇、ECB理事発言でQEに期待感 5/19
欧州債券・株式市場は、欧州中央銀行(ECB)のクーレ専務理事発言を受けて上昇している。
理事は量的緩和による債券買入を5・6月に小幅前倒して実施すると発言。
イタリアIT10YT=TWEBとスペインES10YT=TWEB10年国債利回りは12ベーシスポイント(bp)低下し、それぞれ1.80%と1.74%。ポルトガル国債PT10YT=TWEBも11bp低下の2.34%
ドイツ連邦10年債は7bp低下の0.58%。
RIAキャピタル・マーケッツのストラテジスト、ニック・スタメンコビッチ氏は「理事発言はECBが今後数カ月は債券を買い入れることを明確に示している」と述べた。
欧州株式市場もクーレ発言を受け数年ぶり高値付近に上昇。
ギリシャのアテネ株式市場の株価指数も上昇。数週間以内に債権者と合意するとの閣僚発言をはやしている。
FTSEユーロファースト300指数.FTEU3は1.5%高で14年強ぶり高値となる今年の最高値水準に迫っている。
クーレ専務理事は国債市場の調整ペースにも懸念を表明。スイス系銀行のストラテジストは「債券のリスクは高いと考えており、株式を選好する」と述べた。
ギリシャ、IMF返済より年金・公務員給与支払いを優先=財務相 5/21
ギリシャのバルファキス財務相は20日、6月5日が期限となっている国際通貨基金(IMF)への融資返済について、十分な資金が確保できない場合、年金や公務員給与の支払いを優先する考えを示した。英チャンネル4ニュースに対し述べた。
財務相は「可能なら、6月5日にIMFに融資を返済し、年金や公務員給与、その他の支払いを行う。できなければ、年金や公務員給与の支払いを優先する必要がある」とした。
独仏ギリシャ首脳が会談、支援協議継続などで合意 5/22
ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領は21日、ギリシャのチプラス首相と会談した。現行の支援プログラムの完了について協議し、独政府報道官によると、会談は「和やかで建設的」なものだった。
3首脳は今後も緊密に連絡を取り合うことや、ギリシャが債権団との協議を継続することなどで合意した。
ギリシャ最良の道は「2度目の総選挙」 5/26
ギリシャが直面するシナリオはどれも暗いが、最悪の事態を避けるチャンスはまだ残っている。そのためにはチプラス首相が口約束を実行に移すだけではなく、今年2度目の総選挙に踏み切る必要がある。
今後3カ月間に国際通貨基金(IMF)と欧州中央銀行(ECB)に対する一連の返済期限が到来することを踏まえれば、選挙のタイミングを決めるのは難しいが、なんとか実行は可能だ。
ギリシャが踏み出すべき最初の重要な第一歩は、債権者と短期的な合意を結ぶことによって72億ユーロの融資実行を可能とし、来月支払い不能に陥るのを避けることだ。依然として債権者との意見の隔たりが大きいことを考えれば、容易なことではないだろう。しかしチプラス首相は合意を楽観視していると話しており、ついに譲歩の用意ができたということかもしれない。
ギリシャが取り組むべき最重要課題は年金改革だ。同国の年金制度にはいくつもの例外規定があるため、国民は公式な退職年齢に達する遥か前から支給を受け始めることができる。債権者はこの点で一歩も譲るべきではない。
他方、ユーロ圏とIMFは労働改革については妥協に前向きな姿勢を示した方がよい。競争力の向上をもたらした改革を後退させないようギリシャに迫るのは正しいが、労働者の保護措置の廃止をこれ以上求める必要はない。
こうした短期的な交渉が合意にこぎつけたとしても、なお3つの疑問が残る。チプラス首相は合意に対して急進左派連合(SYRIZA)の支持を得られるだろうか。夏にかけて、あるいはより長期間にわたる返済資金をどう調達するのか。そしてギリシャと債権者は、さらなる改革と500億ユーロに及びそうな新規融資という、数年単位の新たな合意を結ぶ覚悟があるのだろうか。
これらの疑問に答える最良の方法が、再び総選挙を実施することだ。首相にとっては与党内の強硬派を一掃する手段となる上、長期的な救済プログラムの交渉に対する国民の負託を確保できれば、債権者側もギリシャは約束を守りそうだと信頼感を強めるだろう。その結果、現在と将来いずれにおいても資金繰りが楽になる。
チプラス首相が総選挙に踏み切らない限り、債権者が彼の約束を信じるのは難しいだろう。4カ月に及ぶ落胆続きの交渉を経た今、債権者は首相が金だけ確保して改革を怠るのではないかと危惧している。
ドイツを筆頭とするユーロ圏各国政府は、ギリシャ救済のための500億ユーロ超の追加融資を議会に説得するのに苦心しそうだ。IMFとしても追加融資の負担を背負いたくないわけで、IMFが融資しないならドイツ議会を納得させられる見込みはまずない。
チプラス首相が総選挙を宣言し、国を救うためには妥協が必要だと国民に訴えるなら、こうした状況に変化が生じる。国民がユーロ残留を望み、反対派の足並みが乱れていることを考えれば、首相が過半数を制する可能性は高いだろう。
今年2度目の総選挙を実施する最良のタイミングは7月だろう。債権者と目先の合意に漕ぎつけ、長期プログラムの交渉はまだ本格化していない時期だ。
このシナリオでは、首相は幾つかの不人気政策について債権者と合意し、これについて議会の支持を求める。与党内の強硬派から造反者が出そうなため、野党の協力が必要になる。債権者は既存の救済プログラムの融資、残り72億ユーロを実行に移す。これだけではギリシャは夏を乗り切れないため、ECBもギリシャ銀による政府短期国債の追加購入を認める。
チプラス首相はこの時点で総選挙に踏み切る。1月の総選挙から1年を経ていないため、首相はギリシャの法律に基づき与党から出馬する候補者を選ぶことができる。つまり造反者は独自の極左政党を好きに結成すればよいとして、彼らを追い出すことが可能なのだ。
総選挙が国民投票より望ましいのはこのためだ。ショイブレ・ドイツ財務相はあらためて国民の負託を得る手段として国民投票を提唱しているが、国民投票を実施しても国会議員の顔ぶれは変わらず、首相は身動きが取れないだろう。
総選挙後には新たな救済プログラムの交渉が完了する可能性がある。首相がより穏健な議員グループの後ろ盾を得れば、債権者は改革の見返りとしての追加融資に前向きになるだけでなく、ギリシャの巨額債務についてある程度の減免に合意しそうだ。現在実施している利払い猶予の延長と、融資返済期限の延長によって。
おとぎ話のように聞こえるかもしれない。しかしこれは、最悪の結末に至らない数少ないシナリオの一つだ。
第1四半期ギリシャGDP改定値は前期比‐0.2%、リセッションに 5/29
ギリシャ統計庁が発表した第1・四半期の国内総生産(GDP)改定値は、季節調整済みで前期比0.2%減となった。速報値と同じだった。昨年第4・四半期のGDPは前期比0.4%減少しており、ギリシャ経済が再びリセッション(景気後退)に戻ったことが確認された。
ギリシャは昨年、およそ6年に及んだリセッションから脱却したが、政局の混迷などが重しとなり、ここ数カ月間は不振が続いている。
前年同期比(季節調整済み)では0.4%増で、速報値の0.3%増から上方修正された。昨年第4・四半期の1.3%増から減速した。
ギリシャ期限切れで世界経済に「アクシデント」、米がG7に警告 5/30
主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、ギリシャ問題に関心が集まった。米国は29日、ギリシャ支援協議が6月の期限までに合意に至らなければ、世界経済に「アクシデント」が起こる可能性を指摘した。
ドイツは、局面打開の兆候はないとの見方を示した。
ルー米財務長官は、ギリシャがユーロ圏を離脱した場合の世界的な安定リスクを過小評価しないよう繰り返し訴えた。ルー氏は記者団に「世界でこれまで以上に安定や確実性が求められるときに、強い不透明感が存在する」と述べた。
ルー氏は残された時間は貴重と指摘。「1月以降の状況を顧みると、あまりにも多くの時間が非生産的に費やされた」と話した。
そのうえで、ギリシャ支援協議について、同国が融資返済期限を迎える前に先ず大枠で合意し、その後に詳細を詰める必要があると訴え、「期限がいつであれ、前日か前々日まで待つのは、アクシデントを招くだけだ」と語った。
ショイブレ独財務相は、事態打開の兆候はなく、ギリシャ当局者が示す前向きな見通しは、協議に反映されていないと述べた。
フランスのサパン財務相は記者団に、ギリシャがユーロ圏を離脱するシナリオは存在しないと述べた。
ギリシャ問題以外では、カナダやドイツが経済成長を再び実現させる最善策として、財政赤字の削減に注力するよう各国に改めて呼び掛けた。
一方、米国は、主要国は成長下支えやデフレ回避に向け、財政政策の活用を検討すべきと訴えた。 
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ギリシャ支援協議に不透明感、チプラス首相が債権団を強く批判 6/2
ギリシャのチプラス首相が、債権団を強く批判したことを受け、支援協議の行方に不透明感が広がった。
凍結中の現行ギリシャ支援は月内に期限切れを迎える。それまでに必要な議会承認などを経て支援を再開するため、ユーロ圏は合意期限を5日に設定した。
ギリシャや欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の協議内容に詳しい当局者は、1日の協議開催は予定されていないと明かし、合意発表が間近とする市場のうわさを否定した。
チプラス政権内部では、内輪もめの兆候が表れている。ギリシャの新たなIMF代表として、政府が指名した候補が1日、辞退に追い込まれた。
同候補が過去の支援プログラムを支持していたとして、急進左派連合(SYRIZA)強硬左派が人選に反対していた。
チプラス首相は、仏ルモンド紙のウェブサイト版に掲載された寄稿で、協議が依然合意に達していないことについて、ギリシャ側に責任はないと主張。理不尽な解決策を押し付け、ギリシャ選挙の民主的結果に無関心な一部の債権団に責任があるとの見方を示した。
チプラス首相は同31日、メルケル独首相、オランド仏大統領と電話会談。ドイツ政府報道官によると、建設的な雰囲気だったという。
ただ、欧州外交筋は寄稿原稿について、国内有権者向けのポーズとの見方を示す。協議内容に詳しい外交官の1人は「交渉が行われている。容易でないが進展している」と述べた。
ギリシャ首相が「現実的な案」を1日提示、大幅な妥協策なしと関係筋 6/2
ギリシャのチプラス首相は2日、ギリシャ政府は1日夜に包括的な改革案を債権団に提示したと述べた。交渉が合意に至るよう欧州首脳に受け入れを促した。
記者団に「ギリシャが危機から脱するために現実的な案を提示した。これが関係機関、債権者、欧州のパートナーに受け入れられれば欧州分裂のシナリオが終わりを迎える」としたうえで、「われわれは彼らが提案を出すのを待っているのではない。ギリシャが計画を提出しているのであり、現実主義に合わせたいのかどうか、決定は欧州の政治指導者側にあることは明らかだ」と述べた。
ただ関係筋によると、この提案には年金や労働問題などで新たに大きな妥協策が盛り込まれたわけではないという。
ギリシャ支援条件、欧州委・ECB・IMFが合意 6/3
欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)は2日、ギリシャ政府に対して提示する支援策の条件で合意した。欧州連合(EU)高官が明らかにした。
独仏首脳は前日、難航するギリシャ支援協議の決着を目指し、欧州委とECB、IMFの各トップを招き緊急会合を開催。債権団内の意見の相違を克服し、合意に導くよう圧力をかけていた。
ギリシャのチプラス政権が債権団の提案を受け入れるかどうかは不明。
G7サミット、対ロシア制裁の継続を確認 6/8
7日から始まった主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)で、各国首脳はウクライナ問題を協議し、ロシアが2月の和平合意を履行しない限り、同国への制裁を解除しない方針を確認した。
ギリシャ問題に関しては、債権団が提示した改革案を「ばかげている」と批判したチプラス首相に対し、ユンケル欧州委員長が失望感を表明。ギリシャのユーロ圏離脱は選択肢にないとの考えを再度示したうえで、だからといって、同国のユーロ圏離脱を回避するために委員長が手品のような妙案を示せるわけではないとし、ギリシャ側の十分な努力を求めた。
12月にパリで開かれる国連の気候変動対策サミットを前に、メルケル独首相は今回のサミットで地球温暖化対策も議題のひとつにしたい考え。
安倍晋三首相の報道官は、G7で二酸化炭素の排出削減目標を各国が設定すべきかとの質問に対して「そうなることが最善のシナリオだが、あすの協議の行方を見守る」と語った。
メルケル首相はサミット開幕前に、オバマ米大統領と会談。両国の友好関係を再度確認した。米情報機関がメルケル首相などへの盗聴活動を行っていたとされる問題で、両国関係はこのところ悪化していた。
ホワイトハウスの報道官によると、両首脳はギリシャの債務問題についても協議した。
ギリシャ、欧州委に新提案を提出 6/9
欧州委員会の報道官は9日、ギリシャ支援協議をめぐり、同国から複数の新たな提案を受け取ったことを明らかにした。報道官は会見で「今朝受け取った新提案を含め、様々な案が出ている」とし、欧州委、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の3機関が現在、提案を精査していることを明らかにした。
報道官によると、モスコビシ欧州委員(経済・財務担当)は前日、ギリシャの代表団とブリュッセルで面会した。
これに先立ち、ギリシャ政府当局者は9日、財政目標と債務負担軽減をめぐる債権団との溝を埋めるため、欧州委員会に代替案を提出したと明らかにした。
同当局者は「引き続き、政治レベルで債権団との意見交換を続ける。公式な反応を関心を持って待つ」と述べた。
ギリシャ合意間近でない、年金近代化必要=ユーログループ議長 6/10
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長は9日、ギリシャ支援協議の合意は間近ではないと言明した。
デイセルブルム議長はオランダRTLニューズとのインタビューで、ギリシャのチプラス首相が10日、独仏首脳とブリュッセルで会談することは定かではないとも語った。
議長は、ギリシャ側が楽観的な見方を示してきていることについて、同国に対する複雑な要請を過小評価しているとの見方を示した。
そのうえで、ギリシャと債権団が「今月末までに行われなくてはならいことについての合意にも至っていない」と語った。
議長はまた、ギリシャの年金制度が持続可能でなく、「近代化する必要がある」と強調した。
さらに、ギリシャの債務減免に関する議論について否定したほか、ギリシャ側に真剣な提案を行う用意がなければ、物事は前進しないとの見方を示した。
ギリシャの最新の提案、合意に沿っていない=欧州委報道官 6/10
欧州委員会の報道官は、ギリシャの最新の改革案について、1週間前に合意したものではないため、チプラス首相側の対応が必要との見解を示した。
報道官は「先週3日夜のユンケル委員長との合意について、ギリシャ政府は補足する必要があり、合意に向けてはギリシャ側のコートにボールがあるというのが欧州委側の見解だ」と述べた。
ギリシャ債務危機、ユーロ圏への悪影響小さい=米ムーディーズ 6/11
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは11日、ギリシャの支援交渉の難航は他のユーロ加盟国に大きな悪影響は及ぼしていないとの見方を示した。ギリシャのチプラス首相はこの日、債権団との間で問題解決のため集中的な協議をすると約束した。ただ、打開策は見えていない。
ムーディーズのアナリスト、アントニー・ガーレ氏は「ギリシャ支援をめぐる協議の結果には不透明感が残っているが、ユーロ圏における金融市場の断片化(フラグメンテーション)は解消が進んでおり、金融セクターの回復を示す前向きな兆しが見える」と述べた。
ギリシャ支援には同国の構造改革が必要=欧州委副委員長 6/15
欧州委員会のカタイネン副委員長は、ギリシャが債権者からさらなる支援を受けたい場合は構造改革を受け入れる必要があるとの考えを示した。
15日付のオーストリア紙スタンダードが同副委員長のインタビュー記事を掲載した。
これによると、同副委員長は「(ギリシャ支援協議で)合意は可能だが、それはギリシャ政府次第だ」と発言。欧州委員会のユンケル委員長は合意に向けて最善を尽くしてきたが、「残念ながらギリシャ政府は協力的でなかった」と述べた。
また、欧州連合(EU)、加盟国、欧州委員会の側にはギリシャに対してさまざまな支援を行う用意があるとしつつも、「資金だけでは助けにならない。一段の流動性を提供することが可能だが、構造的な改革がなければ何ももたらさない」と述べた。
ギリシャと債権団、ともに態度を硬化 「非常事態」に備える必要 6/16
ギリシャ債務問題の打開に向けた協議が14日に物別れに終わったことを受け、ギリシャ側も債権団側も態度を硬化、15日にはドイツ出身のエッティンガー欧州委員から「非常事態」に備える必要があるとの発言が飛び出すなど、混迷は深まっている。
14日の協議が物別れに終わったことについて、ギリシャ政府はこの日、協議再開のために提案を再提出する見込みはないと表明。チプラス首相は、ギリシャの尊厳を守る責任があるとし、再建団側が要求している一段の年金削減などを拒否する姿勢を鮮明にした。
欧州債権団との交渉が暗礁に乗り上げるなか、チプラス首相は18─20日にロシアを訪問し、同国で開催される経済フォーラムに出席するほか、プーチン大統領と会談する。
チプラス首相がロシア入りする18日には、ユーロ圏は財務相会合を開催。欧州連合(EU)当局者は、ギリシャがこの日までに改革事項をめぐる新たな提案を提出しなければ、ユーロ圏はギリシャに対し欧州側の要求を受け入れるかユーロ圏を離脱するか、最後通告を行う可能性があるとしている。
今月末に16億ユーロの国際通貨基金(IMF)融資が返済期限を迎えるまであと2週間。この日もギリシャの銀行からの預金流出は続き、銀行筋によると15日の流出額は約4億ユーロ(4億4900万ドル)に達した。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁はこの日に欧州議会で行った証言で、ギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)について、支払い能力があり十分な担保を持つ限り続ける考えを表明。
ただ、「ギリシャ政府が市場から資金調達できない場合、財政ファイナンスの禁止規則を回避するために、ECB供給の流動性を使用することはできない」とし、支援には制限が存在するとの認識も示した。
こうしたなか、南ドイツ新聞(電子版)は、週内にギリシャ支援協議が合意に達しない場合に備え、ユーロ圏がギリシャの銀行に対する資本規制導入を含む緊急対応策で合意したと報じた。
ギリシャ政府はこの報道を否定。ドイツ政府報道官は、報道内容を確認も否定もできないとコメントしている。
ギリシャ支援をめぐる不透明感が一段と高まるなか、ドイツ出身のエッティンガー欧州委員は、「ギリシャが非常事態に陥る恐れがあるため、緊急対策を準備しておく必要がある」と発言。
金融市場はこうした混迷に反応し、アテネ株式市場のATG指数.ATGはこの日の取引を前営業日終値比4.68%安で終了。ギリシャ2年債利回りは3%ポイントを超えて上昇し、29.02%に達した。
ロイターが短期金融市場関係者を対象に実施した調査では、ギリシャが年内にユーロ圏を離脱する確率は約30%と、前月の調査から上昇している。
ギリシャ協議、国民の約3分の2が譲歩必要と認識=世論調査 6/16
ギリシャ支援交渉が暗礁に乗り上げるなか、ギリシャ国民の約3分の2がチプラス政権が債権団との交渉で譲歩する必要があると考えていることが15日、世論調査で明らかになった。
メガテレビの委託でGPOが実施した同調査では、67.8%が交渉における譲歩の大部分はギリシャ側が行うと予想。債権団側がより大きく譲歩するとの予想は19.4%にとどまった。
一方、交渉が長期化していることの責任については、56.3%が債権者側にあると認識。ギリシャ側に責任があるとしたのは37.4%だった。
欧州周辺国の国債利回りが上昇、ギリシャ危機深刻化で 6/16
16日の欧州市場で、イタリア、スペイン、ポルトガルの国債利回りが上昇している。ギリシャと債権団の協議が不調に終わり、危機が深刻化していることが背景。
イタリア10年債利回りIT10YT=TWEBは12ベーシスポイント(bp)上昇し2.45%と昨年10月以来の高水準をつけた。スペイン10年債利回りES10YT=TWEBは14bp上昇の2.52%で8月以来の高水準、ポルトガル10年債利回りPT10Yt=TWEBは13bp上昇の3.38%で10月以来の高水準となっている。
ユーロ離脱ならギリシャ国民生活に打撃、燃料や医薬品が最も深刻 6/17
ギリシャ政府と国際債権団の交渉難航による警戒感が金融市場に広がる中、ギリシャ国民への必需品の供給をめぐる脅威が次第に意識されつつある。同国がデフォルト(債務不履行)に陥り、ユーロ圏からの離脱が迫った場合、真っ先に入手困難となるのが輸入依存度の高いエネルギー資源や医薬品とみられるためだ。
ギリシャの2014年の輸入額は620億ドルで、世界全体の18兆8000億ドルから見ると規模は小さいものの、日常生活に不可欠な燃料や人命にかかわる医薬品を確保できなければ、国民に深刻な影響を及ぼすことになる。
ユーロ圏離脱に備えるセーフティネット(安全網)はなく、旧通貨のドラクマに戻した場合の輸入品価格は、手の届かない水準に高騰する恐れがある。
ラッセル・インベストメンツのストラテジスト、ウーテル・ストゥルケンボーム氏は「簡単な話ではない。ギリシャはエネルギーと医薬品を大量に輸入しているため、人道的支援が必要となる。債権国はそれを考慮に入れざるを得ない」と述べた。
ただ、エネルギー問題ではロシアとの連携を強める可能性がある。ギリシャのチプラス首相は19日にロシアのサンクトペテルブルグでプーチン大統領と会談する予定だが、天然ガスの供給も話題となりそうだ。トムロン・ロイターのデータによると、ギリシャの天然ガス輸入のうちロシアの国営天然ガス会社ガスプロム(GAZP.MM)が80%を占めている。
医薬品については、製薬メーカーが供給を止めることへの道義的な圧力があり、欧州連合(EU)当局と今後の方策を協議している。
スイスのロシュ・ホールディングROG.VX、米ファイザー(PFE.N)、仏サノフィ(SASY.PA)など世界の医薬品大手は、支払いが滞る中でも製品を供給し続ける手立てを考えたいとしている。
ギリシャがユーロ圏を離脱し、ドラクマを復活させた場合、各メーカーは主要な医薬品の価格を引き下げる必要があるだろう。
しかし、欧州製薬団体EFPIAの代表は、ギリシャ向け価格の適用を他の国が求めることや、ギリシャの輸入品を他のEU加盟国に再輸出することを阻止しなければならないと述べた。同国は医薬品の世界売上高の1%弱を占めるにすぎないが、市場全体への影響力ははるかに大きくなりそうだ。
ギリシャの矛盾、割高な年金制度でも高齢者は困窮 6/18
ギリシャの首都アテネに暮らす多くの年金生活者が現在立たされている状況は、同国への支援をめぐる債権団との話し合いがうまくいかない理由の核心を突いている。
ギリシャの年金制度は国家予算の大きな部分を占めており、年金受給者は潤沢な年金を受け取っているように見えるかもしれない。しかし実際には、多くの高齢者は苦しい生活を送っている。
アテネに暮らす79歳のジーナ・ラズィさんは、光熱費や水道代を滞納しがちで、失業した息子に援助もしているという。「常に借金がある。昔のように映画館や劇場に行くことは考えられない」と話す。
こうした矛盾は、ギリシャの左派政権と、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)などの債権団との協議で、双方の溝が埋められない理由を説明する大きな手がかりとなる。
ギリシャは債権団に課された5年に及ぶ緊縮策の影響もあり、リセッション(景気後退)から本格的な不況へと陥った。一方、ギリシャ政府は、生活必需品への増税や年金削減といった緊縮策には断固反対の姿勢を示している。
ギリシャのデフォルト(債務不履行)やユーロ圏離脱が現実味を増すなか、チプラス政権は債権団が提示した改革案を「ばかげている」と一蹴。「ギリシャ政府だけでなく、国民すべてに恥をかかせる」狙いがあると非難している。
一方、債権団は、ギリシャの年金システムは経済規模に比べて大き過ぎると考えている。EU統計局(ユーロスタット)によると、2012年のギリシャの年金支出額は対国内総生産(GDP)比17.5%で、他のどのEU諸国よりも高い。ただこの数字は、現行の緊縮策により16%に下がっている。
しかし、ギリシャ支援協議に詳しい情報筋は、債務返済コスト以前に同国では賃金と年金が主要歳出の80%を占めているとし、「残りの20%はすでにぎりぎりまで切り詰められている」と指摘。「公務員には鉛筆もなく、メンテナンスが必要な建物は崩れ落ちている。賃金と年金に取り組まなければ、国家財政を持続可能にするのは不可能だ」と語った。
改革は何年にもわたって行われてきたが、ギリシャではいまだに年金の前倒し受給も可能だ。
一例を挙げると、野党・全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の党首に先週就任したフォフィ・ゲンニマタ氏は元銀行員で3人の子供がいるが、昨年に51歳で年金受給を申請。同氏の事務所は、議員になってからは受給を停止したとしている。
<増加する年金受給者>
ギリシャには、人口動態の面でも逆風が吹いている。2009年以降は、年金受給者の数が右肩上がりで増加。その要因には、国が賃金コスト削減の一環として労働者に早期退職を奨励していることや、政府が定年年齢を引き上げる前に退職を急ぐ「駆け込み」もあると考えられている。
多くのギリシャ人にとって、債権団の要求は不必要な新たな「弱い者いじめ」として映る。
債権団は具体的な年金削減を求めているわけではないとしている。しかしギリシャ側は、債権団の提案する改革案には、最貧困層年金受給者の一部に対する支援予算の削減が含まれていると主張している。前述のラズィさんの場合、月額650ユーロ(約9万円)の受給額から、180ユーロ(約2万5000円)削られることを意味する。
ギリシャの平均年金受給額は月額833ユーロ。同国最大の労働組合の研究所「INE-GSEE」によると、2009年時点の同1350ユーロからは減少している。政府はまた、年金受給者の45%は貧困ラインの665ユーロを下回る額しか受け取っていないとしている。失業率が25%を超える同国では、親や祖父母からの金銭的援助に頼っている人も多い。
<クリスマスボーナス>
年金改革は、高齢化が進む欧州の多くの国で問題となっている。イタリアは2012年の改革で、定年退職年齢を引き上げた。
年金支出が対GDP比で14%のフランスでは、2020年までに年金システムが92億ユーロの赤字になるとの試算が、同国の年金改革の諮問委員会から出されている。
また、一部公務員が40代で退職可能なブルガリアは、年金の受給開始年齢を引き上げようとしているが、それに対する抗議活動が最近起きている。
しかし、ギリシャには時間がない。ギリシャ政府はIMFへの16億ユーロの返済期限である6月末までに支援継続で合意を得る必要がある。
EU当局者によると、ギリシャは基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標で債権団に歩み寄ったが、どのようにして達成するかについては示さなかった。債権団はギリシャに年金制度改革で年間約20億ユーロの支出削減を求めているが、ギリシャは7100万ユーロの削減しか提案していないという。
年金での譲歩は、チプラス首相を新たな総選挙や国民投票へとUターンさせる可能性がある。今年1月の総選挙でチプラス氏が掲げた公約の1つは、低所得年金受給者に対するクリスマスボーナスを復活させるというものだった。しかしこの計画も、延期されるかもしれない。
過去の政権も年金問題に取り組んできた。2010─14年に年金受給額は平均で27%、最大で50%カットされた。2013年には定年退職年齢が平均で2年引き上げられた。ギリシャは年金前倒し受給をさらに制限する意向を示している。
政府のデータによると、ギリシャの平均退職年齢は現在、男性が63歳、女性が59歳となっている。
ギリシャ、返済しなければ7月1日からデフォルト=IMF専務理事 6/18
国債通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、ギリシャについて、6月30日の資金を返済しなかった場合、猶予期間や返済延期の可能性はないため7月からは債務不履行(デフォルト)状態になる、との見解を示した。
ルクセンブルク財務相との会談後、専務理事は記者団に対し「(ギリシャは)デフォルトとなる。そうならないように望む」と述べた。
さらに「猶予期間や2カ月の延期はない」とし、債権団との合意にはギリシャが年金制度を改革することが重要だと述べた。
ギリシャの銀行からの預金流出額、18日は10億ユーロ以上に=関係筋 6/19
複数の関係筋によると、ギリシャの銀行からの預金流出額は、18日だけでも10億ユーロ以上に達した。ギリシャと債権団の支援めぐる協議が先週決裂してから預金の引き出しは加速しており、15─18日の引き出しは、約30億ユーロ(33億9000万ドル)となった。
これは4月末時点の家計と企業の預金総額の約2.2%に相当する。
ある銀行関係者は「(預金引き出しの)列ができたり、パニックが起きているわけではない」と語り、債権団との交渉がまとまるかという不安から預金が引き出されている、と述べた。
ギリシャ中銀はコメントを控えている。
ギリシャ金融市場、波乱の1週間持ちこたえて終了 6/20
ギリシャ支援交渉が難航し、ユーロ圏は来週初めに同国がデフォルト(債務不履行)した場合への対応を協議する事態となるなか、ギリシャの金融市場は19日、波乱に満ちた1週間を持ちこたえて終了した。週明け22日に行われるユーロ圏首脳会議への期待が下支えとなっている。
ギリシャの主要株式指数ATGは前日の取引で3年ぶり安値を更新したが、この日は前日終値比約0.57%高で終了。ただ、下落率は週初からは11%、年初からは17%となっている。
債券市場では、今週に入り4月以来初めて30%を上回った2年債利回りが28.5%と、3ベーシスポイント(bp)低下し、今週に入り最低水準を付けた。
ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)の欧州金利ストラテジスト、マイケル・ミケリデス氏は、「市場はこうした状況に既視感を覚えている」としたうえで、「紆余曲折があろうとも、いつかは合意が得られるとの見方が大勢となっている」としている。
ユーラシア・グループによると、ギリシャの債務不履行、資本規制の導入、さらに同国がユーロ圏を離脱する可能性は高まってはいるものの、支援協議で合意が得られる確率は60%あるとしている。
マークイットによると、ギリシャの5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、この日は2895bpとなり、前日の2920bpから低下した。
ただ、ギリシャの銀行からは今週は30億ユーロを超える預金が流出。欧州中央銀行(ECB)は今週、ギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)枠を11億ユーロ引き上げ841億ユーロとしたが、流出額はこの上乗せ幅を大きく上回っている。
ステッペンウルフ・キャピタルの首席投資責任者(CIO)、フォーブス・テオロジテス氏は、「流動性は最低水準に落ち込んでおり、世界が終わりを迎えるかのように、人々は銀行から預金を引き出している」とし、「22日に銀行が業務を停止すれば、どのような事態になるか。こうした状況下では、価格水準は何の意味を持たない」としている。
ギリシャ緊張状態続く、預金流出加速や銀行支援拡大の動き 6/20
ギリシャをめぐる緊張状態が19日も続いた。国内銀行から預金流出が加速するなか、欧州中央銀行(ECB)は、銀行への流動性支援を拡大。チプラス首相は事態打開に自信と冷静さを示した。
19日は、銀行からの預金引き出しが推定約12億ユーロ(13億ドル)に達し、今週だけで約42億ユーロが流出したと、銀行関係者が明らかにした。関係筋の1人は「昨日よりも今日の方が厳しい状況だ。22日も同様に困難な公算が大きい」と述べた。
ギリシャ当局者によると、ECBは電話会議を開き、緊急流動性支援(ELA)枠を18億ユーロ拡大した。週明け22日のユーロ圏首脳会議まで、銀行システムを機能させるのに十分な規模とみられている。
ECBは22日の緊急首脳会議終了後、ELA枠を再び見直す、と当局者は説明した。
チプラス首相は緊急首脳会議の開催を歓迎。債務危機の解決によりユーロにとどまりながら、成長に戻ることが可能になるとの見解を表明した。
同氏は声明で「欧州連合(EU)規定と民主主義を順守した上で、ユーロのなかでギリシャを成長に戻すための解決となるだろう」と述べた。
ギリシャ中銀は、銀行システムが依然安定しているとして、預金者の懸念払しょくに努めた。
中銀は声明で「総裁は、銀行システムの安定性を確認した。同システムは、ギリシャ銀行(中央銀行)とECBの共同行動によって完全に守られている」とした。
現時点では、各銀行の支店前に行列ができる事態に至っていない。銀行筋の1人は「行列ができたり、パニックが起きたりしておらず、引き出し状況は静かで緩やかな段階だ」と語った。
国内最大の石油精製業者、ヘレニック・ペトロリアム(HEPr.AT)の広報担当者はロイターに、緊急計画を策定したと説明。国家が非常事態に陥った場合に備え、数カ月分の燃料を確保するという。
ユーロ下落、ギリシャデフォルト懸念で=NY外為 6/20
19日のニューヨーク外為市場では、ギリシャ支援協議が難航し同国がまもなくデフォルト(債務不履行)に陥るのではないかとの懸念からユーロが主要通貨に対して下落した。
終盤の取引でユーロ/ドルEUR=は0.02%安の1.1355ドルで推移。一時は1.1294ドルと、1.13ドルを下回る水準まで落ち込んだ。ユーロはこのほか、円EURJPY=、英ポンドEURGBP=、スイスフランEURCHF=EBSに対しても下落した。
支援交渉に進展が見られないなか、ギリシャの国際通貨基金(IMF)に対する16億ユーロの融資返済期限は月末に迫っており、ユーロ圏は週明け22日に緊急首脳会議を開いて対応を協議する。
ウエストパック(ニューヨーク)のシニア外為ストラテジスト、リチャード・フラヌロビッチ氏は、「市場ではギリシャが非常に大きな問題となっており、これがリスク回避の動き、ひいてはドル高につながっている」と述べた。
ドル/円JPY=は終盤の取引で0.28%安の122.62円。一時は上げていたが、米国債利回りの低下を受け下落に転じた。
ドルは3週連続での下落となるもようだが、一部アナリストはドル高基調は今後も続くと予想。BMOキャピタル・マーケッツの為替戦略部門グローバル責任者、グレッグ・アンダーソン氏は、「米連邦準備理事会(FRB)がまもなく利上げに踏み切ると明白に分かるようになれば、ドルは再び上昇に向かう」としている。
ギリシャ、支援協議合意なければ資本規制も 6/22
ギリシャは、支援の期限が月末に迫るなか今週の債権団との協議で合意できなければ、2013年に資本規制に追い込まれたキプロスのような道をたどる可能性がある。
キプロスは13年春に金融システムが崩壊の危機に陥り、支援プログラムを受け入れなければ、システムは崩壊するとの最後通告を受けた。
銀行預金の流出を防ぐため、ユーロ圏で初めて資本規制を導入したが、キプロスのケースでは2年後にこうした規制はすべて解除され、対処可能であることが示されている。
ギリシャの銀行は当時のキプロスの銀行と同様に、欧州中央銀行(ECB)の緊急流動性支援(ELA)に依存している。
債権団との支援協議が難航するなか、ギリシャの銀行からは預金流出が加速。これを受けてECBはELA枠を拡大した。
当時キプロスの財務相だったエコノミストのマイケル・サリス氏は、ECBが支援を止めた場合に何が起きるかほぼ確信しており、ロイターに対し「基本的に(ギリシャの銀行は)30分で閉鎖を余儀なくされる」と指摘した。
キプロスは1行の清算と、もう1行については破綻した際の損失吸収力として、負担を債権者や大口預金者に強制する「ベイルイン」を余儀なくされた。
ECBのギリシャ銀へのELAは今週初めまでの銀行の存続を可能にするにすぎず、再び見直しの協議が行われることになっている。
ギリシャ政府は、資本規制の計画はないと強調している。
<キプロスの資本規制は2年で終了>
キプロスの資本規制は2年で解除され、2008年の銀行危機後に同様の規制を導入し現在解除に向けた準備を進めているアイスランドとは対照的だ。
サリス氏は、キプロスの最優先事項は解除が困難となる過剰な資本規制を避けることだったと指摘。「アイスランドの例を踏まえ、われわれが2年で解除できると思っていた人は多くないだろう」と述べた。
コンサルタント会社サピエンタのエコノミスト、フィオナ・マレン氏は「アイスランドは銀行危機だけでなく、通貨も防衛する必要があった。同国の資本規制は同時にこの2つに対応しようとしていた」と指摘。
一方、「キプロスの場合、流動性への対応の問題だった。主な影響は心理的なもので、資金の流動性は停止しなかった」との見解を示した。
キプロスは2015年第1・四半期に、2011年以来のプラス成長に回復。現在2016年初めに終了が見込まれる10億ユーロの支援プログラムの2年目を迎えているが、当局者らは支援は必要ないとの見方を示している。
ユーロ圏首脳会議、ギリシャ提示の改革案を評価 週内合意目指す 6/23
欧州連合(EU)は22日、対ギリシャ支援問題を協議するためユーロ圏の緊急首脳会議を開いた。首脳らはギリシャ政府が新たに提出した財政再建策を、数日中の合意に向けた土台になるとして評価した。
会議を主催したトゥスクEU大統領は、24日夜のユーロ圏財務相会合で支援策を承認、25日朝にユーロ圏首脳の最終承認を目指す考えを示した。ただその前に、欧州政府、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の間で、詳細について合意する必要があると述べた。
ユンケル欧州委員長は「週内の合意を確信している」と強調した。
ギリシャ協議合意でも問題はIMF返済資金の捻出 6/23
もしギリシャが今週、凍結されている支援資金獲得のための改革実行を土壇場で受け入れて債権団との協議がまとまったとしても、月末までに国際通貨基金(IMF)に対する16億ユーロ(18億ドル)の債務返済資金を実際に手に入れる必要がある。
債権団の間ではこの返済資金を具体的にどう用立てるかをめぐり、ボールの押し付け合いが繰り広げられている。
ギリシャがIMFに耳をそろえて借金を返せない場合、デフォルト(債務不履行)が宣告され、預金取り付け騒ぎを防ぐために資本規制が導入されて、同国はユーロ圏離脱に近づくことになる。
ただユーロ圏各国政府によると、凍結中の72億ユーロの支援資金の支払いを月内に実行するには、もう遅すぎる。ギリシャが約束した改革実施のための法案を成立させない限り、各国議会が支払いを承認しないからだ。
もう1つの迅速に資金を供与できる手段は、欧州中央銀行(ECB)がギリシャ政府による国内銀行などへの短期国債売却枠の上限を引き上げることだ。チプラス首相は再三にわたり、ECBのドラギ総裁にそうしてほしいと訴えてきた。
しかしECB理事会内でドイツ連邦銀行やその同調者たちから強硬に反対されているドラギ総裁は、短国売却枠引き上げを認めるとすれば、ユーロ圏各国から凍結した支援資金が確実に支払らわれる場合のみだと表明している。
となればやはり月末には間に合わない。
そこでギリシャにIMF債務返済資金を用立てる残された方法は2つしかない。1つはECBが2010─11年に証券市場プログラム(SMP)に基づいて購入し、保有しているギリシャ国債から生じた利益の19億ユーロの活用。別の1つはギリシャの銀行資本増強のために設立されたギリシャ金融安定基金(HFSF)で使われていなかった109億ユーロだ。
欧州連合(EU)関係筋によると、これらの資金はどちらも事前に各国議会の承認を得なくても、ユーロ圏財務相会合で全会一致の合意が得られれば、ギリシャへの支払いが可能になる。
<厳しい条件付き>
複数の外交筋は、2つを比べるとECBのSMPで生じた利益が使われる可能性が大きいように思われると述べた。
その理由は既に2012年に、救済プログラムが完了した場合にギリシャに還元すると約束されている上に、ギリシャ政府に歳出方針を変更させない程度で資金繰りをつけさせる金額だからだ。
一方でHFSFで未使用だった109億ユーロについては、ギリシャが今年になって所有権を主張したものの、チプラス氏の反緊縮姿勢に憤慨したユーロ圏各国がいったん返還させた経緯がある。ユーロ圏側の主張は、これは銀行の資本増強の資金で、財政のやりくりが目的ではないというものだった。
2月に各国が合意した声明によると、いずれの資金の支払いにも厳格な条件が付いている。
理論的には2014年分のSMPの利益の移管は、支援状況に関する審査結果がIMFとECB、欧州委員会に認められ、ユーロ圏財務相会合の承認を受けることが条件になっている。
HFSFの資金支払いは、ECBと傘下の銀行監督部門の要請が必要になる。
EU当局者は、凍結されている支援資金の一部も、ギリシャが改革措置の立法化に取り組む意思があると証明するような「先行的な行動」を終えた段階で、支払うことが可能だとの見方を示した。
そうなれば7月と8月に満期を迎えるECB保有のギリシャ国債の償還資金も得られるだろう。
支援協議に詳しいある関係者は「合意が成立しても、誰かがギリシャのIMFに対する返済資金を捻出しなければならない。だがすべての機関がお見合いしながら『どうぞお先に、いやあなたこそどうぞ』と言うばかりだ」と嘆いた。
ギリシャの改革案、現行での議会承認難しい=議会副議長 6/23
ギリシャ議会のアレクシス・ミトロプーロス副議長は、同国政府が債権団に提出した改革案について、現在の形のままでは議会の通過は難しいとの認識を示した。
与党議員でもある同副議長はテレビで、「このままの形では議会可決は難しいと考えている」と述べた。
寄り付きの日経平均はITバブル期高値を更新、欧米株に連れ高 6/24
寄り付きの東京株式市場で、日経平均は前営業日比79円90銭高の2万0889円32銭と続伸。2000年4月12日につけたITバブル期の高値2万0833円21銭を更新し、約18年ぶりの高値水準となっている。
TOPIXも6月2日の年初来高値1683.19を更新し、2007年8月以来7年10カ月ぶりの高値となった。
ギリシャ債務交渉合意への期待感から前日の欧米株が上昇した流れを引き継ぎ、東京市場でも買い優勢の展開。銀行、証券など金融株のほか、食料品や不動産など内需系の銘柄が物色されている。
ギリシャ危機、ドイツの受注に影響まだない=IFOエコノミスト 6/24
独IFO経済研究所のエコノミスト、クラウス・ボールラーベ氏は24日、ギリシャ債務危機とユーロ圏の緊張状態による受注への影響はまだ見られていないとした上で、先行き不透明感にはつながっていると指摘した。
同氏はまた、IFO経済研究所がこの日発表した6月の独業況指数が107.4と前月の108.5から低下したことに関して、同研究所が先週上方修正した経済成長率見通しと矛盾することはないとの見解を示した。
IFOは17日、2015年のドイツ経済成長率見通しを1.9%とし、12月時点の予想の1.5%から上方修正した。
ボールラーベ氏は、第2・四半期の成長率は0.6%、第3・四半期の成長率は0.4%と予想した。
ユーロ圏周辺国の国債利回り上昇、ギリシャ懸念で 6/25
24日のユーロ圏金融・債券市場は、ギリシャ支援協議をめぐる懸念が強まり、周辺国国債利回りが上昇した。安全資産とされるドイツ国債利回りは低下した。
イタリアIT10YT=TWEB、スペインES10YT=TWEB、ポルトガルPT10YT=TWEBの10年債利回りは最大2ベーシスポイント(bp)上昇、イタリアとスペインが2.13%、ポルトガルは2.78%で推移した。
ドイツ10年債利回りDE10YT=TWEBは3bp低下して0.84%。ただ先週以降、約8bp上昇している。
これまでは、この日のユーロ圏財務相会合で、問題解決に近づくとの見方が広がっていた。
だが、ギリシャ債権団が、同国の改革案に大幅な修正を要求、協議の行方をめぐる不透明感が広がった。
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は仏誌で、ギリシャは税収増だけに頼らない、信頼ある改革案を提示する必要があるとの考えを示した。
チプラス首相は、ギリシャの提案を債権団の「一部」が拒否したと批判。スタサキス経済相は、まだ2─3の解決すべき問題が残っていると述べた。
首相率いる急進左派連合(SYRIZA)内から上がる反対意見も、市場の慎重な見方を裏付けていると、アナリストらは話す。
メリソン・ストックブローカーズの首席エコノミスト、アラン・マクエイド氏は「かなり楽観していたが、まさかの事態が起こった。(混乱が)もう終わるのか。私には分からない」と話した。
ギリシャの債務減免は不要、EUが分析 6/27
欧州連合(EU)は26日、3年間にわたって追加金融支援を受けられれば、ギリシャは債務減免がなくても債務を持続可能な状態に保てるとする分析を発表した。ただ、2012年にギリシャ救済の条件として設定した公的債務の管理目標は達成できないとしている。追加支援の条件である財政再建策について交渉する材料としてEU各国が共同で調査した。
12年の救済合意では、ギリシャは公的債務の対国内総生産(GDP)比を現在の175%から20年に124%に下げ、22年には110%を大幅に下回る水準にするとしている。
EUの分析は、このところの政治的混乱などを挙げて「2012年の目標はいかなるシナリオの下でも達成できないのは明らかだ」と指摘。経済のさらなる減速や公的部門の民営化に伴う収入の減少、銀行への追加金融支援の必要性などを要因として挙げた。
改定された見通しによると、ギリシャは財政改革策を全て実行した場合の最も楽観的シナリオでも、債務の対GDP比率は22年まで目標の124%に到達しない。15年の数値は172.8%と推計している。
改革が部分的にしか実行されない場合、数値は15年で174.3%、22年は135%になると見込んでいる。
最悪のケースで、国際通貨基金(IMF)が最も確率が高いと予想している「ベースライン」シナリオでは、15年が176.7%、20年は142.2%となる。
全てのシナリオは3年間の金融支援を前提としている。
ただEUはGDP比が、債務の持続可能性について何かを示すものではないとも指摘。年間の財政赤字と債務償還に必要な資金の合計がGDPに占める比率は、IMFが基準としている15%を下回っており、債務減免などは必要ないとした。
ユーロ圏がギリシャの支援延長を拒否、債務不履行に現実味 6/28
ユーロ圏の財務相は27日の会合で、ギリシャが求めていた金融支援の延長を拒否した。国際通貨基金(IMF)に対する30日の債務返済をギリシャが履行できない可能性が高まった。
ギリシャのチプラス首相は27日これより先、同国に対する支援の条件について是非を問う国民投票を7月5日に実施すると表明。ギリシャ政府はその後、16億ユーロの対IMF債務の返済期日でもある30日が期限の金融支援を国民投票後まで延長するよう要請した。
ユーロ圏は、ギリシャを除く18カ国で初めて財務相会合(ユーログループ)を開催し、ギリシャの要請を拒否することを決めた。
18カ国の財務相は、ユーロ圏の安定のために全力を挙げると表明。数年前のユーロ圏債務危機の最も深刻な時期に比べると状況は良いとの認識を示した。
ユーログループが発表した声明は、ギリシャが一方的に協議を打ち切ったと批判。
「現行のギリシャに対する金融支援、それに関連したすべての合意は2015年6月30日に終了する」とし、ギリシャの支援延長要請を拒否した。
27日の財務相会合への参加が認められなかったギリシャのバルファキス財務相は、要請が拒否されたことについて「加盟国の民主的な連合であるユーログループに対する信頼を確実に損ねることになる。信頼が永続的に損ねられることを非常に懸念している」と述べた。
<国民投票>
ギリシャに対する金融支援が予定通り30日に終了することが発表されたため、支援の条件についてギリシャ国民の意見を問う投票を実施することに疑問が生じている。
ただ、ギリシャがユーロ圏から離脱すれば、ユーロ圏の土台が揺らぎかねない懸念が強まっており、サパン仏財務相は、少なくとも仏は協議する用意がある、と述べた。
ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長は、ギリシャの議員は国民投票が賢明な措置かどうか熟慮の上、実施に同意すべきと述べた。
ギリシャの首都アテネでは、週末で大半の銀行が休業しているため、混乱の兆しはみられないが、警察は銀行周辺の警備を強化している。ギリシャ政府当局者は、預金の引き出し制限などの資本規制を実施する計画はないと話している。
銀行筋によると、27日には国内の現金自動預け払い機(ATM)のうち3分の1で一時紙幣切れとなった。
ギリシャ中銀は、現金自動預け払い機(ATM)の紙幣が底を尽くことのないよう万全の体制をとるとしている。
トゥスク欧州連合(EU)大統領は28日、ツイッターで、ギリシャはユーロ圏の一員であり続けなければならないとし、ギリシャの離脱回避に向け、域内各国首脳と連絡をとっていると述べた。
寄り付きの日経平均は大幅続落、ギリシャ懸念で一時500円超下げ 6/29
寄り付きの東京株式市場で、日経平均株価は前営業日比400円18銭安の2万0305円97銭と大幅続落で始まった。ギリシャ支援協議の決裂によりギリシャの債務不履行(デフォルト)に現実味が出てきたことから、リスク回避の売りが先行した。輸出株から内需株まで幅広く売られ全面安となっている。
寄り後の下げ幅は一時500円を超え、2万0200円割れまで下げた。今後のギリシャ情勢と欧米市場の反応を見極めたいとして積極的に押し目を拾う動きはみられていない。
深まるギリシャ危機、今後予想されるシナリオ 6/29
ギリシャ支援をめぐる同国政府と債権団の話し合いは決裂し、ギリシャ政府は30日を期限とする国際通貨基金(IMF)への16億ユーロの返済が不履行に陥る恐れがある。
今後予想されるギリシャ問題の展開をまとめた。
○30日以降の動き
ギリシャはIMFへの返済ができない恐れがあるが、ユーロ圏当局者からはIMFがギリシャ政府に対して即座に債務不履行を宣言せずに返済遅延にとどめると期待する声が出ている。その場合、ユーロ圏と欧州中央銀行(ECB)は、ギリシャはテクニカル的には債務不履行ではないと主張することが可能で、他の貸し手が返済を要求する状況を回避し、ECBはギリシャの銀行への資金提供を継続する余地が得られる。
○ECBの緊急流動性支援
ECBは28日、ギリシャの銀行に緊急流動性支援(ELA)を提供し、支援を続けることを決めた。ECB当局者は、ギリシャの銀行が十分な担保を保有する限り支援を継続すると示唆している。しかしギリシャがIMFへの返済で明確に不履行に陥り、ユーロ圏から金融支援を受けられる見通しが立たなければ、ギリシャの担保の価値は大幅に低下してELAは打ち切られる。
○ECBが保有するギリシャ国債の扱い
ECBは同行が保有するギリシャ国債35億ユーロ相当が償還期限を迎える7月20日まで支援の撤回を先送りする道を選ぶかもしれない。ギリシャがこの期限に支払いができなければ、ユーロ圏の支援を受けずに財源を見付けることは不可能で、ECBがギリシャ銀に資金を提供するのは難しくなる。
○IOU導入とユーロ圏からの段階的離脱
ギリシャの銀行セクターは、ECBからの支援がなければ経営破綻に陥り、政府は国内での支払いを賄うためにIOU(借用証書)など通貨の代替手段を導入せざるを得ない。ユーロに代わる支払いの代替手段がギリシャの新通貨となる可能性もある。ギリシャが2種類の通貨をどの程度維持できるか、維持するつもりかはっきりしないが、IOUはすぐに大幅な減価に見舞われるだろう。
○EU提案めぐる国民投票
ギリシャはキャッシュが不足して資本統制が導入され、社会不安の起きる恐れがある状態の中、7月5日にEUが提示した財政改革案の受け入れの是非を決める国民投票を実施する。政府は債権団の要求を拒否する方向に世論を誘導している。ギリシャやユーロ圏の政治家の一部は、投票はユーロ離脱の是非を問うに等しいものだとみている。
○EUの財政改革案が承認された場合
債権団側が追加支援の条件として示した提案が国民投票で支持されれば、ギリシャ政府は国際的な貸し手に第3弾の支援計画を求め、交渉しなければならない。当局者によると、その場合は先週末に決裂したよりも厳しい話し合いになり、数週間あるいは数カ月を要する可能性があるという。
高まるデフォルト危機、ギリシャ観光業が「譲れぬ一線」 6/29
ギリシャの観光地パロス島で小売店を家族経営するアレクシス・カライツォグロウさん(62)は、チプラス首相についてどう思うかとの問いに、まるで首相を蹴飛ばすかのような仕草をして見せた。
カライツォグロウさんが怒っているのは、低迷するギリシャ経済で唯一明るい観光業の一端を担う自身の店も、試練に直面するかもしれないからだ。
モノやサービスに対する付加価値税(VAT)引き上げは、債権団がギリシャ支援の条件の1つとしているが、ギリシャ政府は反発。チプラス首相は、7月5日に支援条件についての是非を問う国民投票を実施すると表明した。
しかし国民投票の前に、ギリシャは今月末に支払い期限を迎える債務の返済が不履行(デフォルト)となり、金融危機を引き起こす可能性がある。そうなれば、過去数年で最も好調になるとみられていた今年の観光シーズンが打撃を受ける恐れがある。
「海と観光はギリシャ経済の屋台骨だ。そこにも手が及ぶなら、もう未来はない」と、カライツォグロウさんは語る。
債権団は、レストランや他のサービスに対するVAT引き上げのほか、パロス島のような島々への優遇税制措置を廃止するよう求めている。増税となれば、顧客離れや収入激減のリスクがあっても、店側は値上げを余儀なくされる。
例えば、パロス島や他の島で一部の食品やレストランなどに課されるVATは現在9%だが、債権団が提示した改革案では23%に引き上げられる。カライツォグロウさんは「もしVATが23%に引き上げられるなら、海に飛び込んだ方がましだ」と愚痴をこぼした。
<露呈した矛盾>
カライツォグロウさんのような人たちの怒りは、ギリシャの矛盾を浮き彫りにしている。5年に及ぶ緊縮策の末に、財政破綻を回避すべく、ギリシャはさらなる緊縮策を迫られている。しかしそれは、すでに乏しい経済成長の機会を損なうリスクがある。
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は28日、債権団との交渉決裂前にギリシャに提示していた内容を公表。そのなかで、国内ホテル業界のVATは、23%ではなく13%に引き下げられていた。
パロス島のホテル経営者は「外貨の稼ぎ頭が観光であることは皆、分かっている。観光が打撃を受ければ、経済全体に影響が波及し、景気後退(リセッション)のスパイラルに陥るだろう。そのとき、債権団は返済を受けられるのか」と語った。
ギリシャ経済は昨年に不安定ながらも回復の兆しを見せていたが、再びリセッションに突入している。
ギリシャの小売連盟ESEEによると、4人に1人が失業状態にあり、1日に平均で59の事業が廃業に追い込まれているという。
一方、ギリシャの年間国内総生産(GDP)の約5分の1を占める観光業は、そうした暗い話は免れていた。業界団体SETEによれば、昨年に空路で同国を訪れた外国人観光客は15%超増加し、2015年の第1・四半期も17.5%増で好調を維持している。
<増税は手抜きか>
チプラス首相が率いる急進左派連合(SYRIZA)と連立を組む独立ギリシャ人党は、もし島への増税が実現するなら、政権から手を引くと脅しをかけている。
増税反対派は、増税は汚職や脱税対策、労働規制の見直し、年金制度改革など真の改革を犠牲にして歳入を増やそうとする「手抜き」の方法だと批判する。
パロス島で観光ポータルサイトを運営するニコラス・ステファノウさんは、「彼らは、大半が公務員である特権階級には手を付けたがらない」と話す。
一方、ギリシャがユーロ圏に残留するかどうかをめぐって高まる不安は、観光ビジネスにも影響を与え始めている。銀行の取り付け騒ぎや抗議デモへの懸念が高まる中、一部では予約が減少しているという。
ドイツ外務省は28日、ギリシャへ渡航する際には十分な現金を持って行くよう勧告した。
パロス島のホテル経営者、ディミトリス・スタブラキスさんは「今朝、宿泊客から何が起きているのか、どうしたらいいのかを聞かれた」とし、「これ(支援協議)はあまりに長くかかり過ぎている。そして今、国民投票で新たな混乱が始まるかもしれない」と話した。
一部のエコノミストは、もしギリシャがユーロ圏を離脱し、大幅に価値が下がった通貨ドラクマに戻れば、観光業や他のサービス部門にとってはプラスになる可能性があると指摘する。
だがスタブラキスさんは、それはリスクを冒すに値しないと話す。
「ドラクマに戻った場合にそれがどのように作用するのかなど、答えられていない疑問が多過ぎる。確かに安く休暇を過ごすことができるようになるだろうが、それが現実的な選択肢だと思わない」
冒頭の小売店を家族経営するカライツォグロウさんは、生活はすでに十分厳しいと話す。旅行代理店で働く妻は、200ユーロ(約2万7000円)減給されたという。娘が切り盛りする店も苦境に立たされることになるだろう。
「孫たちにアイスクリームも買ってやれないなんてことにはなりたくない。そんなことを再び考えてしまう」と、カライツォグロウさんの妻は語った。
中欧市場はトリプル安、ギリシャ危機で 6/29
29日の中欧市場は通貨安・株安・債券安のトリプル安となった。ギリシャの債務危機が嫌気された。
シティのアナリスト、ルイス・コスタ氏は「これまでの3期にわたるギリシャに関連した危機は、われわれに新興国通貨安を予期するよう教えており、中欧は通常、最も大きな打撃を受ける」と述べた。
ポーランド通貨ズロチPLN=とハンガリー通貨フォリントHUF=は対米ドルで約1.5%下落。対ユーロEURPLN=EURHUF=でもそれぞれ0.6─1.0%下落している。
中欧で流動性が最も高いポーランド株式市場.WIG20は3.5%安で寄り付いた。銀行株の下げがきつい。ハンガリー株.BUXも2.7%安。
ギリシャ首相が支援の短期延長で協力要請、欧州委員長に 6/29
ギリシャのチプラス首相は29日、欧州委員会のユンケル委員長に対し、国民投票を行えるようにするため、同国への支援を短期間延長するよう協力を求めた。政府当局者が明らかにした。
同様の延長申請は、これまで拒否されている。
当局者によると、チプラス氏はユンケル氏に、「銀行を閉鎖させることで、ギリシャ国民の民意表明を妨害することは、欧州の民主主義的伝統に反する」と主張。プログラムを数日間延長し、国内銀行システムの流動性回復への支援を求めたという。
またチプラス首相は欧州議会のシュルツ議長にも議会の支援を要請したとしている。
欧州金融市場はギリシャ危機でもパニックなく、ユーロ底堅い動き 6/30
ギリシャ支援協議決裂後初の取引となった週明け29日の欧州金融市場では、株やユーロ圏周辺国の国債が急落したものの、パニック的な様相は見られなかった。
ユーロ圏の株式は、欧州中央銀行(ECB)が量的緩和策を開始する前の年初の水準をなお大きく上回っている。ギリシャ情勢の影響を受けやすいスペイン、イタリア、ポルトガルの南欧諸国は国債利回りは22━34ベーシスポイント(bp)上昇したが、ユーロ圏債務危機が深刻化していた2011─12年につけた高水準を依然下回っている。
ユーロは大半の通貨に対し売られたが、対ドルでは切り返した。ユーロ買いを入れることでポジションを巻き戻す動きが出たと市場関係者は話している。
ユーロ/ドルEUR=EBSは一時1.0956ドルまで値を下げたが、ニューヨーク午前中盤の取引ではプラス圏に浮上。直近では約0.20%高の1.1186ドルで取引されている。
ラボ銀行のシニア通貨ストラテジスト、ジェーン・フォーリー氏は、ユーロに対し「パニック感は全くない」として、取引は秩序だっていると話した。また独連邦債が上昇していることも、投資家が欧州資産から完全には引き揚げていないことを示唆していると指摘した。
独連銀の前総裁で現在はスイス銀行大手UBSUBSN.VXの会長を務めるアクセル・ウェーバー氏は銀行関連の会議で「欧州の統合が崩壊することはないと確信している」と言明。「理にかなった解決策があると誰もが感じている。合理的な解決策を見い出すには時間がかかるものだが、欧州ではこうした解決策にたどりつくのに、アジアの金融市場が開く直前までかかることが常だ」と述べた。
ただ、ギリシャ支援協議の合意期待からこのところ上昇していた欧州大手銀行株は売り込まれた。STOxx欧州600銀行株指数.SX7Pは4%下落。過去4年に事業売却や資産圧縮などを通じギリシャへのエクスポージャーを縮小してきたが、ギリシャ危機がさらに悪化し、他のユーロ圏諸国にも影響が拡大するとの懸念が重しになっているもようだ。
ブルガリア、マケドニア、アルバニア、セルビア、ルーマニアでは数百万の国民がギリシャ銀の子会社に預金しており、南・東欧では今後、ギリシャ危機の余波が波及する可能性がある。同地域の中銀は影響を最小限にとどめるため、ギリシャ銀の子会社に対し、資金に親会社の手が及ばぬよう遮断することを指示した。
米仏首脳がギリシャめぐり会談、協議再開求める=ホワイトハウス 6/30
オバマ米大統領とフランスのオランド大統領は29日、ギリシャ危機について協議し、ギリシャの資金調達と改革での合意に向けて交渉を再開することが重要との認識で一致した。米ホワイトハウスが明らかにした。
ホワイトハウスの声明によると、米仏政府の経済政策担当者はギリシャ情勢と金融市場の動向を注視し、緊密に連絡を取っているとしている。
ギリシャの銀行を一部債務不履行「RD」に格下げ=フィッチ 6/30
格付け会社フィッチ・レーティングスは29日、資本規制が課されたギリシャの銀行の格付けを「RD(一部債務不履行)」に引き下げた。フィッチは、ギリシャの銀行の無担保優先長期債務格付けを「CCC/RR4」から「C/RR6」に引き下げていた。
フィッチは、ナショナル・バンク・オブ・グリース(NBG)、ピレウス・バンク、ユーロバンク・エルガシアス、アルファ・バンクの長期および短期発行体デフォルト格付け(IDR)を「CCC」あるいは「C」から「RD」に引き下げた。
また、上記4行の存続性格付けも「CCC」から「F(破たんしていると考えられる発行体)」に引き下げた。理由として、資本規制が課されなければ、デフォルト(債務不履行)に陥っていたと考えられるためと説明した。
ギリシャ首相が国民投票を実施する「本当の理由」 6/30
チプラス政権が銀行休業と資本規制に踏み切るなか、ギリシャはかつてないほどユーロ圏離脱に近づいている。国民投票の実施というチプラス首相の決断は、少なくとも当面はユーロ圏や国際債権団との交渉を事実上終わらせるものだった。
加えて、支援の1カ月延長を求める土壇場でのギリシャの要求を、ユーロ圏財務相会合は全会一致で拒否した。もし国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が、返済期限である6月30日の後にギリシャは正式に債務不履行(デフォルト)したと宣言するなら、同国はジンバブエやキューバやソマリアと肩を並べるデフォルト国家となる。
ギリシャは事実上、経済的にグローバル市場でのけ者扱いされるだけでなく、外交的にも「ならず者国家」として見られることになるだろう。
チプラス首相率いる急進左派連合(SYRIZA)は、国民投票の目的を民主主義の実践だとしている。SYRIZAの主張によれば、ユーロ圏首脳や国際債権団は、民主的に選ばれたギリシャ政府を倒そうと企んでいる。したがって、国民投票はギリシャ国民が民主的な意思決定を取り戻すために必要なのだという。国民投票によって、ギリシャの未来を自分たちで決めることができるというのだ。
このように説得力に満ちたストーリーは、SYRIZAの支持基盤と先の総選挙で同党に投票した有権者36%の感情に火を付けるものだ。チプラス首相は国民投票を、緊縮策と国家の威厳の対立構造に仕立て上げるだろう。本質的には、ギリシャがユーロ圏に残留するかどうかを決めることになる。
国民投票を行う背景には、チプラス政権の5カ月にわたる債権団とのハイリスクな瀬戸際交渉が裏目に出たことがある。そして今、責任あるリーダーシップと厳しい選択の時が来ている。国民投票を実施することでチプラス首相は責任を放棄し、代わりに、この極めて困難な状況を国民に「丸投げ」したのだ。
チプラス首相は明らかに、ギリシャの長期的な国益よりも、自身が率いる政党の短期的な利益、つまり政治的な生き残りと党の結束を優先している。欧州と合意に達することは、SYRIZAの分裂とチプラス政権の崩壊というリスクを負うことになる。党内の強硬派は、一段の緊縮策を課すような支援条件には断固反対する姿勢を示している。
もしチプラス政権が国益に従っていたら、今年1月後半の首相就任直後にも債権団との交渉を真剣に始めていただろう。国民投票も必要とあらば、6月の支払い期限前の5月までに適切に行われていただろう。
ギリシャの野党勢力は、SYRIZAが常にユーロ圏離脱を計画しており、それが意図的であろうと愚かな選択であろうと、「グレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)」に向かっていたと主張する。
経済安全保障に対するチプラス首相の向こう見ずとも言える無関心さは、ギリシャと欧州を極度の危険地帯へと引きずり込んでいる。チプラス政権が国民投票を実施するなら、崩壊のリスクは依然として現実であり続ける。欧州におけるギリシャの未来が決まり、欧州統合の構想自体を方向づけることになるだろう。
実際のところ、ギリシャは7月5日の国民投票前にデフォルトし、ユーロ圏を離脱する可能性さえある。
国民投票には、かなり曖昧な点が付いて回る。第一の疑問は、チプラス政権が1週間以内に国民投票を行うだけの管理能力と財源を持ち合わせているのかどうか、という点だ。
第二に、国民投票は本物というより、非現実的な民主主義の実践のように見えることだ。結局、ギリシャは債権団と拘束力のある合意に至ることはできなかった。このことは次のような疑問を投げかける。ギリシャ国民は何を問うために投票するのか。ギリシャ政府が受け入れなかった債権団の最終案の是非か。それとも、緊縮策そのものの是非か。
第三に、国民投票が実施され、ギリシャ経済もまだ持ちこたえているなら、次に何が起きるのか。反緊縮派が勝利するなら、ギリシャのユーロ離脱にとどめを刺すことになる。逆に、ユーロ残留派が勝つなら、チプラス政権に対する信任投票が行われることになる。必然的に、新たな選挙の実施と、その間に国の重要問題にあたる暫定政府が設置されるだろう。
しかしチプラス氏はそのようには捉えず、首相の座から降りることを拒否するかもしれない。考えられる同氏の反論は、民意が国民投票で明らかとなった以上、自身の首相としての責任はブリュッセルに戻り、欧州各国の首脳と最終案の交渉をするというものだ。
要するに、国民投票は緊縮策を問うものであり、チプラス政権に対する信任を問うものではないということだ。しかしながら、国民投票の実施は、憲法の危機が続いて起きる可能性も意味している。
国民投票はまた、チプラス首相に面目を保ちながら辞任する機会を提供する。たとえ敗北に終わったとしても、民主主義の擁護者として、一般市民の保護者として、支持者たちから称賛されるだろう。熱心な支持者はチプラス氏のことを、国家の威厳と誇りと主権のために果敢に闘った愛国者として美化するだろう。同氏はSYRIZAの党首であり続け、SYRIZAも傷を負うことはないだろう。
国民投票を行わなければ、SYRIZAは内部崩壊する恐れがある。したがって、チプラス首相の長期的な戦略ビジョンでは、国民投票の敗北はあくまで戦術的な敗北となる。そして野党党首として、チプラス氏は時間をかけて党を見直し、自身と党を主流の中道左派として生まれ変わらせることができる。
たとえ7月5日に負けても、チプラス氏はいつの日かまた闘うことができるよう生き延びるだろう。その一方で、ギリシャは生き残るために奮闘し、奈落の底に落ちるリスクに直面する。他の欧州諸国も引きずり込む可能性を秘めながら。
欧州の反EU政党、ギリシャ危機で「呉越同舟」 6/30
国際通貨基金(IMF)などの債権団との交渉で、一歩も引かない姿勢を見せるギリシャのチプラス首相。同国のユーロ圏離脱とそれに伴うユーロの基盤弱体化につながることが懸念されるなか、反欧州連合(EU)を掲げる各国の政党からは支持が集まっている。
こうした反体制的政党は、EUから課せられた緊縮策への拒否反応を除けば共通点はないに等しい。ただ、ギリシャが置かれた状況とチプラス首相への世論の同情は、伝統的政党への反発につながり、ひいては自分たちへの支持が拡大すると期待している。
チプラス首相に共感を示している政党には、スペインの急進左派「ポデモス」のほか、イタリアの反移民政党「北部同盟」や草の根勢力「五つ星運動」、フランスの極右政党「国民戦線(FN)」、反EUを掲げる「英国独立党(UKIP)」などがある。
各党は、債権団の改革案を拒否し、支援条件の是非を問う国民投票の実施を表明したチプラス首相に喝采を送っている。
5月に行われたスペインの統一地方選で躍進したポデモスは、債権団からの「脅迫」を前にして国民投票を呼びかけたチプラス首相の態度を「模範的」と称賛。29日に発表した声明では「現在の欧州には2つの対立する勢力がある。緊縮と民主主義、国民や市場による政治と選挙で選ばれていない団体だ。われわれは民主主義とともにあり、ギリシャ国民とともにある」と表明した。
長髪の政治学教授パブロ・イグレシアス氏が率いるポデモスは、少なくともイデオロギー的には、チプラス首相の急進左派連合(SYRIZA)に近い。左派である両党はともにユーロ自体は支持しているが、ユーロ圏を支える経済政策の変更を求めている。
マリーヌ・ルペン党首が率いるフランスの国民戦線は、SYRIZAなどと政治理念は対極にあるが、ユーロの弱体化につながるとの思惑から、今年1月のチプラス首相誕生を歓迎した。
ギリシャと債権団の交渉決裂に対する同党の反応は熱狂的でさえあった。フロリアン・フィリポ副党首は「欧州連合にとって最初の歴史的後退をまもなく目の当たりにするだろう」とし、ギリシャのユーロ離脱は「悪魔的プロジェクトの進行が必然ではないことを示す」と語った。
<欧州の失敗>
7年に及ぶ経済低迷と景気後退の中で反ユーロ感情が高まったイタリアでは、2つの主要野党がユーロ圏からの脱退を呼びかけている。
北部同盟のマテオ・サルビーニ議員は、ギリシャが直面する困難は「何よりもまず欧州の失敗」だと指摘。チプラス首相については、債権団の要求に屈せず「毅然(きぜん)とした態度を貫いている」とたたえた。
レンツィ首相率いる民主党に次ぐイタリアの第2党である五つ星運動は、チプラス首相が、欧州の南半分に課せられた緊縮策への幅広い反乱の道を開いていると評価。同党議員らは指導者ベッペ・グリッロ氏のブログに「まもなく南欧はユーロと緊縮の鎖を断ち切るだろう」と書き込んだ。
また、ベルルスコーニ元首相が率いる野党「フォルツァ・イタリア」は、2011年のユーロ圏債務危機の真っただ中にベルルスコーニ氏を強制的に退陣させたのと同様、EUが非民主的にチプラス首相を政権の座から引きずりおろそうとしていると非難している。
こうした本来異質である各党が、ギリシャ危機から本当の追い風を受けるかどうか判断するのは時期尚早だ。実際にギリシャがユーロから離脱し、その後どうなるかで変わってくる。
また、ユーロ圏各国の間では、ギリシャに対する世論は大きく分かれている。
昨年に780億ユーロの支援策を終了したポルトガルは、ギリシャに対しては厳しい態度を保っており、目立った反体制的な動きもない。国内の反ユーロ政党は共産党だけであり、その支持率は10%に満たない。
2013年に640億ユーロの支援策を終了後、力強い成長軌道に戻った「緊縮の申し子」アイルランドでは、政府の対ギリシャ強硬路線を左派野党が激しく批判している。ただ、国民の世論は分かれている。
ギリシャに最も厳しい目を向けるのは、同国に比べて所得や年金の水準が大幅に低いバルト3国だ。
バルト3国には大きな反体制的動きはなく、ラトビアの新ロシア派政党「調和センター」のような反ユーロを掲げていた勢力でさえ、ギリシャへの共感はゼロだ。
同党の幹部ヤニス・ウルバノビッチ氏はロイターの取材に、「ギリシャはユーロ圏加盟の前も後も欺き、そして現在も欺いている」と批判。「問題は、ギリシャがユーロ圏を離脱するかどうかではない。ギリシャが残留してユーロ圏を吹き飛ばすかどうかだ」と語った。
ギリシャのユーロ離脱、欧州にとり劇的な状況とならず=仏財務相 6/30
フランスのサパン財務相は30日、ギリシャがユーロ圏から離脱しても他の欧州諸国にとって劇的な状況とはならないだろうとの見解を示した。国営テレビ「フランス2」とのインタビューで語った。
同相は、実際の問題は債権団が示した改革案に関する7月5日の国民投票だと指摘。「影響を伴う投票だ。改革案が支持されれば、われわれは交渉を続ける。支持されなければ、未知の領域に足を踏み込むことになる」と述べた。
その上で「ギリシャが(ユーロ圏を)去った場合、他の欧州諸国にとって問題にはなるだろうが、劇的な状況とはならない。突然として経済に大きな変動をもたらすようなことはない」とし、前日の金融市場の急落について、これまでの上昇を受けた単なる調整との見方を示した。
同相は、前日までギリシャに交渉の場に戻るよう呼びかけていた。
ギリシャ、30日にIMFへの支払い行わず=財務相 6/30
ギリシャのバルファキス財務相は、30日が期限の国際通貨基金(IMF)への支払いを行わないとしたが、支援策について土壇場での合意を望んでいると述べた。
同相は30日に返済するかとの記者団の質問に対し「ノー」と答えた。30日で期限を迎える支援策について、ぎりぎりの段階での債権団との合意について「そうなるよう望む」と述べた。 
●ギリシャショック、世界に リスク回避の動き広がる 2015/6 

 

債務問題に直面するギリシャに対し、欧州連合(EU)が支援を延長しないと決めたことを受け、週明け29日の国際金融市場では投資家がリスクを回避する動きが広がり、株安が世界に波及した。ギリシャが欧州の単一通貨ユーロから離脱するシナリオが再燃し、投資家は他の南欧諸国への飛び火など欧州債務危機の再来を警戒し始めている。
ギリシャのチプラス首相はEUが支援の引き換えとして求めていた改革案を受け入れるかどうかをめぐって7月5日に国民投票をする方針を表明。これに反発するEUは金融支援の延長を拒否した。ギリシャは29日から銀行の営業を停止し、資本規制を導入することを強いられた。EUや国際通貨基金(IMF)の支援がなければ、30日が期限となる15億ユーロ強(約2000億円)のIMFへの債務返済は困難との見方が大勢だ。
週末のギリシャ・ショックを世界の主要市場で真っ先に受ける形となった東京市場ではユーロが大幅に下落。対ドルで一時1ユーロ=1.09ドル台後半と2%近く下落した。対円でも1ユーロ=133円台後半と、前週末に比べ4円以上の円高・ユーロ安水準をつけた。
株式市場は全面安となった。日経平均株価は前週末に比べて596円下落した。ほぼ1年5カ月ぶりの下落幅になる。中国株の大幅安も相場の重荷となり、海外投資家を中心に運用リスクを回避する売りが広がった。
日経平均の終値は前週末比596円(2.88%)安の2万0109円だった。米景気の先行き不安で610円下げた2014年2月4日以来の下げ幅となった。その他のアジアの主要市場も売りが優勢となった。
ギリシャの3年物国債(17年償還)利回りは前週末の20%近辺から大きく上昇(価格は下落)。一気に35%台まで跳ね上がり、12年の欧州債務危機後の最高水準に達した。スイス金融大手のUBSはロンドン時間28日夜(日本時間29日早朝)、急きょ投資家向けの電話会議を開き、「ギリシャのユーロ離脱リスクは4割になった」と警戒を促した。
投資家の間ではユーロ圏で債務危機が再現されるとの連想が強まった。欧州市場ではドイツ株が一時4%安となるなど、全面安となる一方、安全資産に資金が逃避し、ドイツの10年物国債利回りは一時0.7%台前半に急低下した。スイスフランにも買いが膨らみ、スイス中銀は為替介入に踏み切った。
投資家が警戒しているのが、問題がギリシャにとどまらず、スペインやイタリアなどの南欧諸国に波及することだ。12年の債務危機時には国債利回りの上昇で銀行の資産内容が悪化し、公的資本注入により財政負担が高まるという悪循環が広がった。12年当時と異なるのは「欧州中央銀行(ECB)が量的緩和策の拡大や(無制限に国債を買い入れる)OMTの発動という選択肢を持っていることだ」(JPモルガン・チェースのグレッグ・フゼシ氏)。
ECBは28日の理事会で「権限のなかで利用できるすべての政策手段を動員する」との方針を確認した。イタリアのパドアン経済・財務相は29日付の地元紙に「ギリシャ危機はイタリアに打撃を与えることはない」と語り、危機の波及を阻止するために全精力を傾ける構えだ。
アテネ証券取引所は株式の取引を中止。現行の金融支援が期限切れとなる7月以降もECBによる資金繰り支援を得られるのか不透明で、国民投票まで金融システムが持ちこたえられるのか、緊張感が高まっている。 
●「ギリシャ大混乱の可能性は35%」プライベートバンクによる予測シナリオ5つ 6/22   
ギリシャ債務問題は、22日にEU首脳会議が急遽召集されるなどギリギリの調整が続いていますが、はたして解決の糸口は見つかるのでしょうか?  
メルマガ『いつも感謝している高年の独り言』では、スイスのプライベートバンクによる予測シナリオを紹介。自国債務を「違法」と認定したギリシャ議会に返済の意志はなく、デフォルトは不可避としています。  
「全員が幸せになる」可能性はわずか5% ギリシャ予測シナリオ  
ギリシャの結末はどうなるのか?スイスの資産運用プライベート・バンクの予測を紹介します。円グラフを参照下さい。  
第1位 / 35%の確率で「混乱の果ての債務不履行」になる。ギリシャは約束した返済期日、金額を無視した上で、ギリシャ側が払える範囲の金額で債務返済は続ける。貸し手側にとっては、債権の帳消しにはならないのが唯一の救い。(しかしこれは甘いかも?通貨ユーロ圏として留まるには、資本流出制限が必要)  
第2位 / 25%の確率で「秩序ある債務不履行」。通貨ユーロ圏内に留まる為に必要な支援を受ける代わりに、貸し手側との協議を続行。資本流出制限となる。ギリシャ国内での債務に対して、ギリシャは政府借用書、即ち新通貨を発行しなければならない。(これも甘い。ギリシャにとっては累積債務が増えるだけである)  
第3位 / 20%の確率で「結論先延ばしの妥協」。この夏の期間だけでも生存させるための支援金をギリシャに渡す。(△貸し手側はこれを望むだろうが、借り手側は拒否する。累積債務が増えるだけだから。借り手側が望んでいるのは借金の減免である)  
第4位 / 15%の確率で「秩序ある債務不履行で、なおかつギリシャのユーロ圏離脱」。貸し手側と完全に対立する事態となる。財政政策に関しては、EUの要求条件に縛られずに独自路線を持つことになる。  
第5位 / 5%の確率で「全員が幸せになる結末を迎える」  
自国債務を「違法」と認定、ギリシャ議会に返済の意志なし  
ギリシャ議会の「債務真相究明委員会」による調査報告書が発行されました。以下は調査報告書の要旨です。  
報告書要旨のポイント  
ギリシャの債務の実態はこれまで暗闇の中であった。債務の実態を究明するために、2015年4月4日に「公的債務真相究明委員会」が議会内に設立され、これまで調査を続けてきた。これはその調査報告書である。  
結論部分  
ギリシャに債務を返済する能力はなく、その上、そもそもこれらの債務は返済すべきではないものである。その理由はギリシャ国民の基本的人権を侵害するものだからである。違法であり、ルール違反であり、おぞましいものゆえに、ギリシャはこの債務を返済すべきではないというのが我々の結論である。ギリシャ当局とEU加盟メンバーの他国政府(独、仏?)と組んで、破綻しそうな複数の金融機関を守る為に2010年の公的債務からの再建を妨害する陰謀を仕組んだのだ。2010年、2012年のギリシャ危機の救済支援基金とは、複雑な仕組みで外部から強制的に持ち込まれたものである。この時の支援基金はギリシャ側が管理したものではなく、貸し手側が厳重に管理して勝手に濫用したものであり、その1割も満たない金額が、ギリシャ政府の歳入に組み込まれただけだった。それ以外の9割以上は他の用途に充てられたことが分かっている。  
第一章  
債務が膨れ上がったのは、政府支出が過度に多かったのではない。実際にEU圏の他の国々よりも政府支出は少なかったのだ。債務が膨張した理由は、まず貸し手側の金利が異常に高かったこと。過大な軍費支出、違法な資本流出による税収低下、商業銀行への自己資本注入の為に債務が膨れたのだ。(国民を救済したのではなく、倒産する商業銀行を救済したという訳だ)  
ユーロという統一通貨圏の問題  
統一通貨ユーロを採用した為にギリシャの私的債務が増えた。欧州の銀行危機が現在進行形で姿を現し、それがギリシャの国家債務危機を増幅させた。ギリシャの前政権の政策が政府財政赤字を増やし、公的債務も増やして、2009年の国家債務危機の発生を助長させたのだ。  
最終章  
この報告書が現在の破壊的な緊縮策や苦境から脱出を望む人々の有効な道具になる事を希望する。古代ギリシャの歴史家のトゥキュディデスは「民主主義とは少数の者のためではなく多数の人々のために存在するものである」と語っている。最終章では、「累積債務で悩む南欧諸国よ。後に続け!」と言っているのでしょう。ギリシャ議会内の真相究明委員会が「ギリシャ債務は基本的人権を侵害する違法なものゆえ、返済する義務はない。無理強いしたって、返済能力は皆無だ」と断言したのです。  
ギリシャ議会は決断したと考えるべきで、そうなればギリシャ政府も従うはずです。ギリシャの首相、財務相は口を揃えて「トロイカは違法な借金を押し付けてきた」つまり「我々、ギリシャは被害者だ」と言っているのですから――終わりです。  
●ギリシャが“道連れ”にする危ない金融機関とは? 6/29   
 HSBCのエクスポージャーは約5000Mユーロ
大手金融機関が抱える前代未聞の不良債権  
一般メディアは、ギリシャ破綻か?それとも交渉妥結?毎日毎日、猫の目のごとく解説が変化し、右往左往の大忙しです。  
ゲーム理論の専門家の指揮で、ギリシャ側は、貸し手を右往左往させているのです。ギリシャの望みはただ一つ。借金の減免、踏み倒しです。それ以外の目標はないのです。  
これができないのであれば、自発的にEUの舞台から退陣するでしょう。交渉からギリシャに帰国したギリシャ財務相を待ち構えていたのは、議会でのスタンディング・オベーションでした。  
借金の減免措置を貸し手側から貰えなければ、ギリシャ側の自発的な踏み倒しです。借り手の方が貸し手の足元を見てしまったのです。  
自分達の陣営の大手金融機関が前代未聞の不良債権、資産を抱えて――困るのは貸し手です。29日月曜日、ギリシャのFX市場、株式市場、銀行の窓口が閉鎖されるでしょう。  
ギリシャ債務不履行に対して脆弱な金融機関は?  
さてそうなると、どこの金融機関が、ギリシャ債務不履行に対してのどの程度の脆弱性を抱えているのか?が注目の的。  
こちらの棒グラフは、ギリシャ破綻に対するエクスポージャー(丸裸の無防備のレベル)の大きさのグラフです。  
一番真っ裸なのは、HSBC、クレディ・アグリコル(フランスの大手金融機関)、ドイツ銀行、バークレイズ銀行の順番です。  
○ HSBCは減らしていますが、それでも5000Mユーロ残っています  
○ クレディ・アグリコルは大きく増やして5000Mユーロ近くに増えています  
○ ドイツ銀行は増やしはしなかったが、減らしもしなかった  
○ バークレイズは増やして1650Mユーロになっています  
しかし、これは直接的なエクスポージャーで、廻り回ってやってくる間接的なエクスポージャーは誰にもわかりません。  
例えばA銀行が破綻となれば、A銀行の債券、株式等を保有しているB銀行、C銀行も不良資産が増え、それらの紙証文を持っているD銀行までも腐ってきます。瞬間的に伝染していくのですが、その伝染を止めるには、それぞれの銀行の債務を踏み倒し、悪循環の連鎖を切断する、すなわちBail-Inするしか方法がないのです。その場合は、予告なしです。  
ギリシャの話ではなく、他のEU加盟国の話です。 

 

●ギリシャ2015/7-12
● 7
ギリシャ、IMFに返済期限延長を要請=副首相 7/1
ギリシャのドラガサキス副首相は30日、政府が国際通貨基金(IMF)に対し、16億ユーロの融資返済期限の延長を要請したことを明らかにした。国営テレビに対し述べた。
同副首相はまた、政府が欧州中央銀行(ECB)に対し、緊急流動性支援(ELA)枠の拡大を検討するよう要請したことも明らかにした。
ギリシャ支援が失効、IMFは返済期限延長を検討へ 7/1
欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)によるギリシャへの支援が30日に失効した。ギリシャは支援が切れる直前に債権団に対して支援の延長を求め、新提案が受け入れられれば、国民投票を中止する用意があるとの考えを示した。
IMFは、ギリシャが30日の期限までに15億ユーロの債務を返済しなかったことを確認。IMFのライス報道官は、ギリシャが同日、返済期限の延期を要請したことを明らかにし、IMFは理事会で検討すると述べた。一方、追加融資については、債務を返済しなければ受けられないと述べた。
ギリシャは、支援が切れる直前に、ユーロ圏諸国に、2年間の資金繰り支援や債務再編、つなぎ資金を確保する現行支援の延長を求めた。チプラス首相がデイセルブルム議長宛に1ページの書簡を送り、ロイターが入手した。
また、複数のユーロ圏関係筋によると、ギリシャのバルファキス財務相はユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の電話協議で、新たな融資が認められれば国民投票に関する政府方針の変更もあり得るとの見解を示した。
財務相は、双方が新たな融資で合意できれば、政府として、債権団の改革案受け入れの賛否を問う国民投票を取りやめるか、有権者に投票で賛成票を投じるよう勧める意向だと語ったという。
ユーログループのデイセルブルム議長(オランダ財務相)によると、ユーログループは7月1日0930GMT(日本時間午後6時半)に電話会議を開き、ギリシャ問題について討議する。
関係筋によると、チプラス首相が求めている、債務返済のための300億ユーロ近くの2年間の新規融資を協議する見通し。チプラス首相は債務再編も求めているが、債権団は受け入れに難色を示している。
ギリシャ世論調査、改革案反対が54% 銀行休業発表後は賛成増加 7/1
1日付のギリシャ紙エフィメリダ・トン・シンタクトンに掲載されたプロラータの世論調査によると、債権団の改革案受け入れの賛否を問う国民投票で、反対が54%となり、賛成の33%を上回った。未定は13%だった。調査は6月28─30日に実施された。
調査の回答期間中の28日に国内銀行の休業と資本規制導入が発表され、この発表の前と後の回答を比べると、後のほうが反対する割合が少なかった。
発表前には反対が57%、賛成が30%、未定が13%だったが、発表後では反対は46%にとどまり、賛成は37%、未定が17%だった。
支持政党別で見ると、与党・急進左派連合(SYRIZA)の支持者は77%が改革案に反対と回答。そのほかの反対割合は、極右・黄金の夜明け党(80%)、共産党(57%)となった。
一方、中道右派・新民主主義党(ND)の支持者は65%が賛成。親欧州の中道政党・ポタミの支持者は68%が、中道左派・全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の支持者は65%が、それぞれ改革案を容認した。
回答者の86%は国民投票に参加するとした。また、50%は国民投票を実施するとしたチプラス首相の決断を評価。一方で、国民投票の実施に反対したのは38%となった。
6月のギリシャ製造業PMIは46.9に低下、国内外で受注減少 7/1
マークイットが発表した6月のギリシャ製造業購買担当者景気指数(PMI)は46.9と、5月の48から低下し、景気拡大と悪化の分かれ目となる50を10カ月連続で下回った。輸出受注や生産の落ち込みが加速しているという。
製造業は、ギリシャ経済の約10%を占める。
マークイットのシニアエコノミスト、フィル・スミス氏は「支援協議が続いた6月中に、需要は低迷し、国内外からの新規受注は5月より大幅に縮小した」と指摘した。
ただ、人員削減は小規模にとどまった。スミス氏は「製造業では需要の縮小と比較してそれほど人員を削減していない。しかし新規受注が回復しなければ、今後リストラが加速するだろう」と述べた。
ギリシャ首相は改革案の否決訴え、国民投票まで協議棚上げ 7/2
ギリシャのチプラス首相は1日、国民向けにテレビ演説を行い、5日に予定されている国民投票で改革案を否決するよう訴えた。首相が反緊縮の姿勢をあらためて鮮明にしたことで、国民投票前に債権団との関係を修復する見込みは消えた。
チプラス首相は30日の債権団向けの書簡で、支援プログラム延長や新規救済融資と引き換えに、改革条件の多くを受け入れる方針を伝えていた。だが、首相は演説で態度を一転。ギリシャは「脅迫されている」と述べ、債権団との対決姿勢を前面に打ち出した。
ユーロ圏財務相(ユーログループ)はこの日、電話会議を開催し、チプラス首相の提案について協議した。だが会議は1時間ほどで終了。国民投票が終わるまで再協議をしない方針を決めた。
ユーログループのデイセルブルム議長(オランダ財務相)はチプラス首相の発言を受け、事態が進展する「可能性はほとんどない」と述べた。
ロイターが入手したチプラス首相の書簡によると、首相は税制改革や年金削減などの条件の大半を受け入れる意向を示す一方、今後2年の債務返済の資金を手当てするため290億ユーロの新規融資を要請した。
経済的に厳しい状況に追い込まれている首相が国民投票を中止・延期するか、あるいは国民に承認を提言するなどの観測も一部で浮上していたが、こうした見方を打ち消した格好だ。
首相は「国民投票はユーロ圏におけるわが国の立場を問うものではない。これは定められており、誰も疑うことはできない」とし、国民投票で債権団の改革案を否決しても、欧州またはユーロ圏に対する拒絶にはならないと強調。
否決すれば、経済的に実行可能かつギリシャの国際市場への復帰につながるような改革で合意するよう、債権団への圧力を強めることができると主張した。
ただ、欧州の当局者からは、ギリシャの国民投票は事実上、ユーロ圏残留の是非を問うものだとの指摘が相次いでおり、チプラス氏はこうした度重なる警告を振り切ったことになる。
ユーログループのデイセルブルム議長(オランダ財務相)は電話会議後、「過去の改革案を拒否するとともに、国民投票でも否決を勧めている状況では、協議を継続する理由はない」と言明。国民投票の結果が出るまで、ユーログループのレベルでも、またはギリシャ当局と債権団との間でも協議は行われないとした。
チプラス首相は国民投票で改革案が承認されれば退任する可能性を示唆しており、ユーロ圏内では国民投票前にチプラス氏と協議しても意味がないとの雰囲気が広がっている。
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は1日、ロイターとのインタビューで、ギリシャが要求している債務減免について、経済改革が先だと指摘した。
また欧州中央銀行(ECB)理事会は、ギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)枠を現行水準に据え置くことを決定。国内銀行が資金不足に直面するなか、ギリシャに圧力をかけた。
ギリシャの銀行は取り付け騒ぎを防ぐため今週に入って営業を停止。ATMの前には多くの人が列を成し、1日当たり60ユーロに預金引き出しが制限されているにもかかわらず、50ユーロ札や20ユーロ札が不足する兆候が見られる。
ギリシャ巨額追加支援、IMFが必要と警告 7/3
国際通貨基金(IMF)は2日、ギリシャが経済改革を実施せず、経済成長が予想よりも鈍化すれば、同国は大規模な債務減免のほか、欧州からの融資延長が必要になると警告した。
IMFは最新の債務持続性に関する報告書の草案で、ギリシャの政治が軌道に戻ったとしても、欧州諸国による融資は大幅に延長される必要があり、一段の譲許的融資が必要になるとの見方を示した。
ギリシャは6月29日に銀行の営業を停止、翌30日にはIMF融資返済を延滞したが、報告の草案はこうした事態が発生する前の評価に基づいている。
IMFは、ギリシャは欧州から追加的に360億ユーロ(398億9000万ドル)の支援が必要になると試算。
さらに、譲許的融資が2018年まで維持され、最も楽観的なIMFの現在の見通しに基づいたとしても、ギリシャの債務の対国内総生産(GDP)比率は2020年は150%、2022年は140%になると予想。「2012年11月に策定された債務目標達成には、GDPの30%以上に相当する債務の削減につながる債務元本減免(ヘアカット)が必要になる」とした。
また、融資条件などが緩和されたとしても、ギリシャの債務のGDP比率は向こう30年間は100%を下回ることはないとの予想も示した。
ギリシャの対ユーロ圏債務はデフォルト、EFSFが認定 7/4
ギリシャが今週、国際通貨基金(IMF)融資を返済しなかったことを受け、同国最大の債権者、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)は3日、対ユーロ圏債務についてギリシャがデフォルト(債務不履行)状態にあると認定した。
また、ギリシャ債務、1309億ユーロの早期返済を要求する権利を留保した。
EFSFは、IMFへの返済延滞について「ギリシャとEFSFの金融上の取り決めにより、ギリシャの債務不履行事由発生に至った」との認識を示した。
債務不履行事由の宣言を受け、市場関係者らは、ユーロ圏が5日の国民投票後の新たな交渉で、ギリシャの債務減免へ取り組まざるを得ない可能性があると指摘する。
ドイツ経済研究所(DIW)のマルセル・フラッシャー所長は「ギリシャの公的債務削減を、従来の想定より相当早期に行う必要があることを意味する」と分析。新たな支援で合意する前に、ユーロ圏がギリシャの債務持続性をまず回復させる必要があることを示すとした。
レグリング最高経営責任者(CEO)は、債権放棄や即時返済を要求する考えを否定した。
その上で「今回の債務不履行イベントは、深く憂慮する要因」と指摘。「全ての債権者に対する財政上の義務を履行するというギリシャの約束を破るもので、ギリシャ経済や国民に深刻な影響が及ぶ可能性が生じている」と述べた。
EFSFは、ユーロ圏諸国や欧州委員会、IMFと協議を行い、今後の行動を決めるとした。
また、EFSFは強固な保証の枠組みに支えられており、ギリシャの未払いは、EFSF債保有者への返済能力に影響しないと説明した。
ギリシャ銀、金融破綻に備え預金者負担を検討=FT 7/4
英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、ギリシャの銀行が金融破綻に備え、預金者に負担を求める緊急対応策を検討していると報じた。
それによると「8000ユーロ超の預金を対象に30%以上の『ヘアカット』を行う案が浮上しており、最低1行で実施される可能性が高まっている」と指摘。「ギリシャが支援プログラムに復帰した際、銀行セクターの全般的な再編の一環として(ヘアカットが)実施される」とした。
これについてバルファキス財務相はツイッターで「悪意のあるうわさだ」と発言。ギリシャ銀行協会のルカ・カツェリ会長もスカイTVに対し「まったく根拠がない」として否定した。
ギリシャが緊縮策を大差で拒否、債権団との溝深まる 7/6
欧州連合(EU)が求める緊縮策の是非を問うギリシャ国民投票が5日行われ、予想以上の大きな差で受け入れを拒否した。ユーロ圏への残留がさらに不透明になり、債権団との溝も深まっている。
欧州連合(EU)のトゥスク大統領は、ギリシャ問題を協議するため、7日にユーロ圏首脳会議を招集した。
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長の報道官は、7日のユーロ圏緊急首脳会議の前に、首脳会議の準備のための会合を開催すると表明した。
欧州中央銀行(ECB)は6日午前に理事会を開く予定。関係筋によると、ギリシャの銀行向け緊急流動性支援(ELA)は現行の水準に維持される見通しだ。
アジア市場では序盤の取引でユーロが下落、株も下げた。JPモルガンはリサーチノートで「情勢は流動的だが、現時点でギリシャのユーロ圏離脱の可能性が高まったようだ」と指摘した。
<銀行破綻も視野>
緊縮策が拒否されたことで、ギリシャ情勢が混迷の度を増すことは必至。ユーロ圏内での政治・金融面での立場が危うくなり、支援を受けることができなければ銀行破綻も視野に入る。ギリシャ政府は年金や公務員の賃金を支払うために、別の通貨を発行する必要に迫られる可能性もある。
開票では61%が反対となり、首都アテネ中心部の議会前にあるシンタグマ広場には、多くの市民が集まり、クラッカーを鳴らして喜びを表した。
教師のスタティス・エフティミアディス氏(47)は「『ノー』というメッセージは、欧州や国内からの圧力をわれわれが恐れていないことを示すものだ。われわれは欧州内で公平かつ自由に生きることを望んでいる」と述べた。
学生のネフェリ・ディモウ氏(23)は「今回の結果は力強い交渉力となり、欧州の人々はギリシャが植民地ではないことを理解するだろう」と語った。
<強気のチプラス首相>
同国のチプラス首相は、緊縮策受け入れが拒否されたことを歓迎し、休業中の銀行再開に向けて債権団と直ちに交渉を再開する用意があると述べた。
首相はテレビ演説で、今回の国民投票がユーロ圏在留の是非を問うとの見方を否定。「現在の困難な状況のなか、国民は勇気ある選択をした。国民の負託は欧州との決裂ではなく、実行可能な解決策に向けた交渉力を強めるものだと認識している」と述べた。
だが、ユーロ圏当局者は近いうちの交渉再開に難色を示す。
ガブリエル独副首相は独紙ターゲスシュピーゲルに対し、チプラス首相が「ギリシャと欧州が妥協に向け進んでいた最後の橋を破壊した」と批判し、新たな救済策について協議を考えることは難しい、と語った。
リトアニアのリンケビチュス外相はツイッターで「ギリシャ国民・政府はパラレルワールドに住んでおり、同国を支援することは困難だ」と指摘した。
メルケル独首相とオランド仏大統領は6日午後に、パリで会談する見通し。
EU悩ます「4重苦」、ギリシャ危機ですべて悪化も 7/6
欧州大陸の周縁で起きている4つの大きな危機が現在、欧州連合(EU)を飲み込む恐れがある。戦後に始まった「1つの欧州」を目指すプロジェクトは、数十年前に後戻りするかもしれない。
EUの結束と国際的な立場は、ギリシャの債務危機、ウクライナ紛争でのロシアの役割、英国のEUとの関係見直し、地中海の移民問題によって危機にさらされている。
これら4つの問題の1つでも適切に対応できなければ、他の問題の悪化を招き、EUが直面する危機は増幅されることになるだろう。
ギリシャのデフォルト(債務不履行)と「グレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)」は、EUが「史上最も統一された」共同体であるという長年のイメージを揺るがしかねない喫緊の課題だ。
ブリュッセルのシンクタンク、欧州政策センター(EPC)のファビアン・ズレーグ氏とジャニス・エマヌイリディス氏は「グレグジットの長期的な結果は、欧州のプロジェクト全体に影響を及ぼす。それは前例となり、EUの存在意義を一段と損なうことになるだろう」と指摘した。
ギリシャはユーロ圏域内総生産とEUの人口のそれぞれ2%を占めるにすぎないが、ユーロ圏諸国は同国にこれまで約2000億ユーロを支援しており、破綻すればEUにとって大打撃となる。
ギリシャの運命はいまなお不明だが、すでに明らかなのは、ユーロ創設者たちがユーロの結束は壊れないと宣言したとき、彼らはだまされていたということだ。
そして今、他のユーロ加盟国はギリシャを締め出し、結束を強めるべく、通貨統合における設計上の初期欠陥の一部を修正するなど直ちに措置を講じようとするかもしれない。
だが、次にリセッション(景気後退)もしくはソブリン債利回りの急上昇が起きれば、ユーロ圏は震撼し、市場はギリシャという前例を思い出すことになるだろう。
<不安定化>
ギリシャの経済崩壊は、それによってもたらされる困難と欧州の納税者が失った大金はさておき、欧州の他の3つの危機すべてを悪化させ、不安定なバルカン半島諸国をさらに不安定化させる恐れがある。
シリア内戦、イスラエル・パレスチナ問題、キプロスの南北分断などにより、地中海東部ではすでに緊張が高まっているなか、ギリシャはロシアに助けを求めるかもしれない。それと引き換えに、EUの対ロ制裁の延長にギリシャは反対、もしくは海軍施設の利用を許可する可能性すらある。
ギリシャは、ドイツやスウェーデンへと向かう最も安全なルートを求めてシリアやイラクから自国に流入する難民にすでに苦慮している。
「ボートピープル」の問題をめぐってはEU内で対立が起きている。イタリアなど難民流入の矢面に立つ他の国々は、資金提供や難民割り当てを拒否して連帯感が欠如しているとして、北部や東部のEU加盟諸国を非難。英国は難民1人の受け入れも拒否している。
5年に及ぶ協議の末にギリシャ危機の解決に失敗することは、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席ら権力拡大を狙う指導者の目にEUは弱く、分裂しているように映るだろう。
当局者らは、ユーロ圏の危機が一部の政策決定において再国有化をもたらし、ルールに基づいた超国家的ガバナンスという欧州モデルの「ソフトパワー」を弱体化させることを認識している。
しかしこの先、さらに悪い事態が待ち受けている。
英国のEU離脱をめぐる問題は、域内で2番目に大きな経済国であり、主要な金融センターを有する英国をEUが失うリスクを高めている。
複数の英世論調査でEU残留派が10ポイント程度リードしているにもかかわらず、EU当局者たちは不安を拭い切れないでいる。5月の英総選挙の結果は事前の世論調査とは見事に異なり、与党保守党が単独過半数で勝利を収めたものの、キャメロン首相は保守党内のEU懐疑派に足元をすくわれる恐れもある。
ユーロ圏の内側であろうと外側であろうと、社会不安と政治的大混乱を伴う長期的なギリシャ経済の破綻は、英国経済が「死に体」だと主張する人たちを勢いづかせることになるかもしれない。
ロシアが冷戦時代の敵意をいまだ英国に向け続け、英国を米国の最も忠実な同盟国とみなしていることを考えると、プーチン大統領は英国のEU離脱の可能性を歓迎するだろう。
そうなれば、ウクライナとジョージアに対するロシアの行動に対して強固な対応を求めるEU内の勢力を弱らせることになる。また、プーチン大統領はウクライナ問題で、ドイツのメルケル首相と交渉するうえで有利な立場に立つこともできるだろう。
欧州改革センターのレム・コルテベーク氏は、EUの連動する4つの危機を、新約聖書のヨハネの黙示録に出てくる4騎士に例え、「EUの指導者たちはこれら4人の騎士を手なずけるのに苦労するだろう。答えが見いだせなければ、騎士たちはEU内で混沌と不安と非難の応酬を駆り立て続けるだろう」と指摘している。
ギリシャ転換点は銀行破綻時の対応、ユーロ離脱の影響軽微 7/6
国民投票後のギリシャ情勢が次に迎える転換点は、ギリシャの銀行が資金繰りに窮して破綻する局面となりそうだ。その時点でユーロ離脱となるか、緊縮策と支援受け入れを決定するか、ギリシャ政府は最終的な決断を迫られる。
ただ、東京の市場関係者は欧州金融システムの安全網整備を理由に、事態の推移に楽観的。だが、中長期的な政治リスクやユーロの信認には打撃となるとの指摘もある。
<予想外の国民投票の結果>
ギリシャ国民が緊縮策受け入れに「ノー」を突きつけたことで、今後の欧州連合(EU)との支援交渉や欧州中央銀行(ECB)の支援継続が、危ぶまれる情勢になっている。
今後の行方について 「支援受け入れか、離脱かの分かれ道は、ギリシャの銀行破たんが訪れる時だ」──。第一生命経済研究所・主席エコノエミストの田中理氏はそうみている。
というのも、ECBによるギリシャの銀行向け緊急融資の規模が現在の水準のままでは、近日中のギリシャ民間銀行の営業再開は困難であり、現在の現金引き出しへの限定的対応についても近いうちに資金が枯渇するとみられている。このため、銀行が破たんに追い込まれるのは時間の問題ともえそうだ。
その時点で、EUからの支援受け入れを決断すれば、銀行資本の増強などにより、銀行は営業を再開できる。ただ、これまでよりも厳しい緊縮策の受け入れに「ノー」と言えなくなるほか、預金者の負担も覚悟する必要があるとの声も出ている。
一方、EUとの交渉が決裂し、ECBからの資金供給も途絶えることになれば、ギリシャの銀行は破たんする。最終的に独自通貨・ドラクマを発行せざるを得ず、ギリシャにとっては通貨安や金利上昇によって、一段と経済的に苦しい展開を迫られる可能性が高まる。
<波及は限定的の声多く>
とはいえ、ギリシャがユーロ離脱の道を選んだとしても、短期的に経済面だけをみれば、欧州金融システムや他国経済に波及する影響は極めて小さいとの予想が多い。
ギリシャ系銀行が進出するバルカン半島などの小国で、銀行破たんの影響は多少あろうが、ユーロ圏では金融システムの安全網が確立されている。また、ギリシャ債務はほぼ公的セクターの保有に限定されているからだ。ギリシャの経済規模もユーロ圏経済のわずか2%弱を占めるにすぎない。
田中氏の試算では、ギリシャがEUやECBへの債務返済が不可能となっても、加盟各国の財政負担は、現在より2─3%増となるに過ぎないという。
南欧諸国への波及も、2010年の頃に比べてリスクは限定的だとみられている。JPモルガン証券・シニアエコノミストの足立正道氏は「ギリシャ自体は急速に状況が悪化するだろうが、他に財政緊縮策をギリシャほど厳しく適用されている参加国はもはやなく、影響は小さい」とみている。
SMBC日興証券・チーフエコノミストの牧野潤一氏によれば、財政赤字の対GDP(国内総生産)比はイタリア、スペイン、ポルトガルともに依然として赤字だが、経常収支は3カ国とも黒字。財政赤字が国内貯蓄でファイナンスされて、なお余りがあることを示していると指摘する。
<中長期の3つの懸念>
もっとも中長期的には、懸念材料が3つ指摘されている。1つは、欧州の政治的な不安定化を招きかねないことだ。
欧州内部では、ユーロ安の進行により再び景気が二極化し、財政健全国であるドイツ、オランダの景気が輸出などをテコに一段と良くなり、他国への財政支援要請が強まるとみられている。
他方、台頭する極右政党など反ユーロ勢力は、ギリシャの反緊縮派勝利により勢いを増し、ドイツなどとの感情的な対立につながりかねない危うさを秘めている。英国のEU離脱のリスクも抱え、欧州は不安定な状況になる可能性もある。
もう1つは通貨ユーロの制度的な信認低下がじわじわと進行する可能性だ。クレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道氏は「ユーロには離脱規定がないし、早期警戒システムやサーベイランスといった国際通貨基金(IMF)のようなシステムを欠いている。このままでは、中長期的に準備通貨としての信用が低下しかねず、ユーロの価値は下落せざるを得ない」とみている。
そしてギリシャの銀行が破たんし、事実上ユーロ圏から離脱する場合、何が起きるのか──。
ギリシャ中銀がギリシャの銀行に出していた緊急流動性支援(ELA)の決済はどうなるのか、今は緊縮策を受け入れているポルトガルやスペインなど南欧諸国で、国民の緊縮策への不満が噴出し、その流れがイタリアなどに波及しないのか、といった未知数のリスクが山積。その行方は「リーマンショック」の発生後と同様に、実は市場の想定を上回る可能性も否定できない。
欧州経済・金融システムへの影響は、軽微とみている田中氏も「ここまで積み木を積んできて、その1つが欠けた場合の影響は、だれもわからない」とみている。
ギリシャ、銀行の営業停止を延長 7・8日も休業 7/6
ギリシャ銀行協会のカツェリ会長は6日、国内銀行の営業を7、8日も引き続き停止すると発表した。1日60ユーロとする預金引き出し上限を維持することも明らかにした。
同会長は財務省や銀行の代表らとの会合後、「銀行の営業停止を2日間延長し、7、8日も休業とすることを決定した」と述べた。
ギリシャ旅行の人気衰えず、外国人観光需要は拡大も 7/7
5日に実施された国民投票で緊縮策を拒否したギリシャには、さらなる経済的苦境が待ち受けているとみられる。しかし、海外から同国を訪れる旅行者は今のところ減っておらず、旅費が大幅に下がることで外国人観光需要はさらに高まる可能性さえある。
英国とドイツ、フランスの各旅行業協会は、ここまでギリシャ旅行のキャンセルは出ておらず、予約も堅調だとしている。
実際、旅行サイトのスカイスキャナーによると、ギリシャ行き航空便の需要はここ数日で増加。ギリシャの銀行が休業になった6月29日以降、7月・8月の英国発の航空便予約は14%増えたという。
同社は、スペインからギリシャへの航空便の検索も、6月28日─7月5日に20%増えたとしている。
ギリシャ支援に厳しい態度で臨んでいるドイツは、アテネで行われた反緊縮デモで矢面に立たされたが、国民の間でギリシャの観光地人気は衰えていない。
英トーマス・クックのドイツ部門は「ギリシャ行きの予約の水準に変わりはない」と説明。ドイツ旅行業協会DRVも、5月以降にギリシャ旅行の予約は堅調に増えているとしている。
昨年にギリシャを訪れた旅行者の数は約2200万人で、観光業は同国経済の18%を占める。
証券会社ジェフリーズのアナリストらは、ギリシャの債務問題をめぐる不透明感は直近の予約に一部影響を与えているかもしれないが、長期的な打撃とはならないと予想している。
欧州旅行大手のトーマス・クック(TCG.L)と独TUI(TUIT.L)(TUIGn.DE)の株価は過去1週間で下落したが、その背景は主として、チュニジアのホテル襲撃事件の影響とみられる。チュニジアの治安に不安を感じる旅行者は、代替渡航先としてギリシャを選ぶ可能性がある。
ギリシャ債務危機は、今夏のホリデーシーズン直前で予約を入れようとしている旅行者に「お買い得」を提供している側面もありそうだ。
旅行サイトのカヤックによると、ギリシャのホテル代は今週、昨年の同じ時期に比べて8%下がった。
一方、フランスの旅行会社ヘリアデスは、ギリシャのホテルと同国行きの飛行機はすでに予約でぎっしり埋まっているため、大幅な値引きはしていないとしている。
ギリシャではATMでの現金引き出しが1日60ユーロに制限され、首都アテネのシンタグマ広場では再び大規模な抗議集会が行われているが、各旅行会社によれば、コス島やコルフ島などのリゾート地は平静が保たれている。
英旅行業協会ABTAの広報担当は「現在のところ(現地の状況は)極めて通常通り。リゾート地での食品や医薬品などの不足は一切報告がない」としている。
旅行各社は、ギリシャに渡航する際には、小額紙幣で十分な現金を持っていくよう旅行者に勧めている。独DRVは、仮にギリシャが通貨をドラクマに戻したとしても、ユーロは引き続き使えるだろうとしている。
ギリシャ危機、市場を通り越して政治的な問題に=仏ソジェン 7/7
仏ソシエテ・ジェネラルのウデア最高経営責任者(CEO)は7日、ギリシャの債務危機は単に市場や銀行に対する試練というより、政治的な問題だとの見方を示した。
ウデアCEOは金融セクターのカンファレンスで「状況は結局のところ、政治的なものになっている。金融市場や銀行への影響を通り越している」と述べた。
CEOは、各銀行は5年前にギリシャ資産により損害を被ってから同国に対するエクスポージャーを減らしていたと指摘。ソジェンは2012年にギリシャのゲニキ銀行を売却しており、第1・四半期末時点で帳簿上でも取り引きにおいても同国へのエクスポージャーはないという。
ユーロが対ドルで5週間ぶり安値、ギリシャ懸念強まる=NY市場 7/8
7日のニューヨーク外為市場では、ユーロが対ドルで約5週間ぶり安値水準に下落した。
欧州中銀(ECB)が前日、ギリシャ銀行向けの緊急流動性支援(ELA)の水準を現行レベルで維持する一方、ギリシャ銀行が差し入れる担保のヘアカット(割引率)が引き上げられた。ギリシャの市中銀行が資金枯渇に陥り、ギリシャ問題が他の南欧諸国に波及するのではとの懸念が強まりユーロが売られた。
7日はユーロ圏財務相会合に引き続き首脳会議がブリュッセルで開かれたが、ギリシャ問題をめぐり会議では何の進展もなかった。
ただ、ECBが市場の動揺を抑えるために新たな政策を打ち出すのではとの期待で、パニック的なユーロ売りは今のところ見られない。
ユーロ/ドルEUR=は1.0917ドルに下落後、終盤は0.7%安の1.0978ドルで取引されている。ドイツ10年債利回りDE10YT=RRも6月初め以来の水準に低下し、欧米利回り格差からユーロ売り圧力がかかった。
ユーロ/円EURJPY=も6週間ぶり安値水準まで売られ、終盤は0.8%安の134.40円となっている。
市場はこの数日間が正念場と見ている。ギリシャのチプラス首相は新たな金融支援を求めるため欧州連合(EU)側に説得工作を行っている。
ウォーレン・フィナンシャル・サービスの主席投資オフィサー、ランディ・ウォーレン氏は「ギリシャも債権団側も妥協点を見出すことができると思いたい。ただその確信はない」と述べ、「求められている緊縮策は確かに必要だが、ギリシャには少し行き過ぎかもしれない。ギリシャはとても返済などできないし、結果良しとなるかどうか分からない」との認識を示した。
その他通貨では、資源国通貨が大幅下落となった。豪ドルは中国株式市場の急落を受けて対ドルで6年ぶり安値水準に下落。豪ドル/米ドルAUD=D4は終盤0.7%安の0.7440ドルで、鉄鉱石価格の下落も豪ドルの重しとなっている。
また、ニュージーランド(NZ)ドル/米ドルNZD=D4も5年ぶり安値に落ち込み、終盤は0.5%安の0.6645ドルでの取引。米ドル/カナダドルCAD=D4は3か月ぶり高値水準の1.2732ドルだった。
ドルの主要6通貨に対するドル指数.DXYは直近0.6%高の96.846となっている。
ユーロ圏首脳会議の共同声明 7/8
ユーロ圏首脳は7日、ブリュッセルでサミットを開き、閉幕後に共同声明を発表した。トゥスク欧州連合(EU)大統領が声明を読み上げた。
サミット声明
1.ギリシャの深刻な状況を議論した。ユーロ圏全体の金融の安定維持に向けて、ユーロ圏当局はあらゆる必要な措置をとる用意がある。
2.ギリシャの国民投票を受け、チプラス首相は、「欧州安定メカニズム(ESM)」設立条約が規定している、厳格な政策条件を含むフレームワーク内で、新たな支援プログラムを要請することを約束した。
3.既存のコミットメントやわれわれの共通ルールを尊重する合意基盤を構築することが可能かどうか、早急に検討することで一致した。
4.ギリシャ政府は遅くとも9日に、包括的かつ具体的な改革について詳細な提案を行う。3機関が精査し、ユーログループに報告する。
5.12日にあらためて首脳会議を開催する。
ギリシャ、交渉で合意なければ破綻の恐れ=EU大統領 7/8
欧州連合(EU)のトゥスク大統領は8日、ギリシャ支援交渉で合意が成立しなければ、ギリシャが破綻する恐れがあるとの認識を示した。欧州議会で述べた。
大統領は、最終合意の期限まであと4日しか残されていないと発言。「(ギリシャが破綻すれば)地政学的な意味でも、間違いなく欧州に悪影響が及ぶ」と述べた。
ギリシャが新たな金融支援要請、改革案を9日提示へ 7/9
財政危機に直面するギリシャは8日、新たな金融支援を欧州連合(EU)に正式に要請した。これを受けて、EU側は支援要請の審査を開始。EUが設定した12日の合意期限に向けて、調整が加速してきた。
今回要請したのはユーロ圏の金融安全網「欧州安定メカニズム(ESM)」を活用した支援。期間は3年で、規模など詳細は不明。またギリシャは、税制・年金改革の一部を来週にも実施し始めると表明した。
7日に開催されたユーロ圏緊急首脳会議は、ギリシャ政府に対して週末までに財政構造改革案を提示するよう要求。緊急首脳会議後に発表された共同声明によると、EU28カ国の首脳は12日に会合を開き、ギリシャについて決断を下す。12日が事実上の「最終期限」だ。
<ギリシャ、改革案を9日提示へ>
ギリシャのチプラス首相は8日、仏ストラスブールで開かれた欧州議会の本会議で演説し、ギリシャが陥った苦境については同国にも責任があると認めつつも、EUに対して「公平な合意」を訴えた。
首相は、ギリシャには「この袋小路」から抜け出す方法を要求する以外に選択肢はないと強調。「欧州と衝突することは望まない」とし、むしろ自国内の既得権益と対決する姿勢を示した。ただ肝心の改革案についてはほとんど詳細を明らかにせず、議員から不満の声が上がった。
首相は、9日に詳細な財政構造改革案を提示することを約束した。
ギリシャが提示した改革案が十分な内容と判断されれば、ユーロ圏財務相は11日の会合で、金融支援の実行と、何らかのつなぎ融資の実施を提言。12日のEU首脳会議で正式に承認するという流れになる。
ギリシャ政府は8日、銀行は13日まで休業になる、と発表した。ATMからの現金引き出し上限も1日あたり60ユーロに維持する。
一方、関係筋によると、欧州中央銀行(ECB)は8日、ギリシャの銀行向けの緊急流動性支援(ELA)枠を現行水準に据え置くことを決定した。銀行の手元現金が枯渇するのは時間の問題とみられている。
ギリシャ政府が改革案提出、増税や年金見直し盛り込む 7/10
ギリシャ政府は9日、新たな金融支援を受ける条件となる財政改革案を債権団に提出した。ギリシャ議会は10日に改革案を採決する。
ギリシャ政府は今回の改革案のなかで、2018年6月末までの3年間で535億ユーロ(約590億米ドル)の資金支援を要請。基礎的財政収支の黒字目標の見直しや、長期債務の「整理」などを求めた。
改革案では、島しょ部の優遇税制の段階的な廃止、海運会社の増税、国防費の削減、国有資産の民営化に向けた具体的な行程、ホテルやレストランの付加価値税(VAT、消費税)引き上げ、低年金受給者への上乗せ支給の削減などを盛り込み、債権団に歩み寄る姿勢を示した。
しかし、チプラス首相の連立相手の党首は改革案への署名を拒んでおり、ラファザニス・エネルギー相も署名しなかった。ギリシャ政権内部で依然として、改革への抵抗感が根強いことが浮き彫りになった。
ギリシャの政府関係者によると、10日のギリシャ議会での採決では、新規融資が実行される前にとる「事前措置」のリストについて、交渉する権限を政府に与えるかどうかに関するもの。その後支援合意がまとまれば、改革案を法制化するための採決を来週にも行う運びになる。
欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の3機関は10日夜までに改革案の1次評価を公表。十分な内容と判断されれば、11日のユーロ圏財務相会合で、新規支援についてギリシャと交渉に入るよう提言すべきかどうか決定する。決定には欧州安定メカニズム(ESM)の資本の80%に相当する国の賛成が必要だ。
欧州連合(EU)は12日首脳会議を合意の最終期限としている。
<焦点は債務負担の軽減>
焦点は債務負担の軽減措置を認めるかどうか。最大の債権国のドイツはこれまで、債務減免に強く反対してきたが、何らかの軽減措置もやむなしとの姿勢に傾いていることがうかがえる。
ショイブレ独財務相は9日、フランクフルトの会合で、ヘアカット(元本削減)は受け入れられないとの持論を展開したが、融資期間の延長や金利引き下げ、返済猶予期間の延長などの手段を通じて、ギリシャの債務を「組み替える」一定の余地があるとも述べた。
ギリシャ改革案、信頼性の面で問題=独与党幹部 7/10
ドイツの与党幹部は10日、ギリシャ政府が9日遅くに債権団に提示した改革案について、信頼性の面で問題があると述べた。
連邦議会与党会派のミヒャエル・フックス副議長はBBCラジオに「正直なところ、非常に慎重にならざるを得ない。信頼性の面で少し問題がある。(今回の改革案は)5日のギリシャ国民投票で否決された改革案とどこが違うのか」と述べた。
ギリシャ主要野党、首相による新改革案に基づく交渉を承認 7/11
ギリシャ主要野党の新民主主義党は10日、政府が新改革案に基づいて債権団と交渉することを認める方針を表明した。
新民主党は「合意の達成だけでなく、ギリシャのユーロ圏離脱を防ぐ手立てための権限を首相に委託する」とする声明を発表した。
議会は政府に交渉権限を付与するかこの日に採決を行う。
ギリシャ悲劇は防げるか 7/13
ギリシャ支援合意の最終期限とされた12日のユーロ圏首脳会議は同日中に結論が出ず、13日午前(日本時間の正午前後)に再開する見通しだ。それに先駆けて行われたユーロ圏財務相会合では、新たな支援に向けた交渉を再開するにはギリシャ側の一段の措置が必要とされ、結論は持ち越された。
ギリシャ政府がさらに踏み込んだ改革法案を議会で可決するのに与えられた猶予期間は15日までの3日間。ドイツ政府はギリシャがさらなる緊縮を受け入れないのであれば、一時的なユーロ離脱を要求している。ギリシャ支援協議はいよいよ大詰めを迎えている。
金融システムの崩壊とユーロ離脱の危機に直面するギリシャのチプラス首相は5日の国民投票後、早期の融資再開に向けて歩み寄りの姿勢をみせてきた。支援協議の再開に先駆けて、主要政党の党首から今後の支援協議での政権への支持を取り付けたほか、問題発言の多いバルファキス財務相を穏健派のツァカロトス外務副大臣に交代させた。
さらに6月末時点の債権者側の要求をほぼ全面的に受け入れた財政再建策を提出。同案に基づいて交渉する権限を政権に与える法案を議会で可決し、改革実行への決意を示した。こうしたギリシャ側の合意を模索する動きを受けて、フランス政府や欧州委員会がギリシャのユーロ離脱回避に向けて関係各国の説得に動き出したこともあり、12日のユーロ圏首脳会議までの合意実現への期待感も高まっていたが、そうした期待はまたも裏切られた。
<ドイツが反対する限りギリシャ救済は困難>
債権者側の言い分はこうだ。6月末に債権者がギリシャ側に提示した財政再建策は、中断していた2次支援プログラムを再開するのに当たって必要な措置だった。だが、新たな金融支援は3年間で総額535億ユーロと当初の想定を大きく上回る。しかも、6月末からの銀行の営業停止と資本規制の導入で経済環境の前提が大幅に狂っており、銀行救済費用も必要となる。最終的な支援総額は820―860億ユーロに上ると見積もられている。従来よりも大規模な金融支援が必要となったことで、ギリシャ側にはさらに踏み込んだ改革が要求されるわけだ。
金額の溝以上に深刻なのが、度重なる金融支援とギリシャの改革不実行、チプラス政権誕生後の対決姿勢がもたらしたギリシャに対する債権者の不信感だろう。債権者側が出した結論は、ギリシャが3日以内にさらに踏み込んだ改革関連法案を議会で可決しない限り支援交渉は開始しないという「最後通告」だった。
20日に欧州中央銀行(ECB)が保有する国債の償還期限が迫っており、今後のスケジュールはさらにタイトとなった。15日夜までにギリシャ議会が税制変更や年金改革などの法案を可決すれば、16日にドイツ議会を緊急招集して支援協議の再開を承認し、17―19日の間にユーロ圏財務相会合を開き、当面必要な資金支援を決定する。
国際通貨基金(IMF)への滞納金の返済やECBが保有する国債の償還費用に充てるため、20日までに70億ユーロ程度、8月中旬までにさらに50億ユーロ程度の資金が必要とみられている。ギリシャ政府が求めている債務軽減措置は当面の支援策に盛り込まれず、今後の改革の実行状況をみて判断する。その場合も、元本削減(ヘアカット)が行われることはなく、利払いの猶予期間や融資の返済期間の延長などが検討されることになる。
新たな融資の実行主体は、欧州連合(EU)の金融安全網である欧州安定メカニズム(ESM)となる。ESMによる融資決定には理事会を構成するユーロ圏財務相の全会一致の賛成が必要だ。ESMには緊急時の採決規定があり、ECBの資本金構成比に準じて各国に割り当てられた投票権で85%以上の賛成が得られれば、融資実行が可能となる。
この場合、融資実行はフィンランドなど投票権が小さい国が反対したとしても可能だが、27.1%の投票権を有するドイツが反対する限り不可能だ。なお、ESMにはつなぎ融資の制度がなく、当面の資金繰り危機を回避する方法は不透明だ。
<ギリシャのユーロ離脱は本当に現実解か>
欧米メディアにリークされたドイツのショイブレ財務相が作成したとされる文書では、ギリシャは議会の支持を得て改革案を迅速かつ大幅に改善させることが必要とし、それができないならばEU内にとどまる形で一時的にユーロを離脱させ、成長支援や人道支援を提供するとともに、債務負担を軽減する。
ただ、ドイツが提案するギリシャの一時的なユーロ離脱がEUの法体系の下で可能かどうかは必ずしも定かでない。EU条約にはEUからの離脱規定(EU基本条約第50条)があるが、ユーロ圏からの離脱規定はない。ギリシャがユーロを離脱するには、EUから離脱する必要があるとの見方が一般的だ。ただ、英国やデンマークのように、EU加盟国でありながらユーロの採用を免除(オプトアウト)されている国もあり、ギリシャにこうした特例を認めることもできなくはない。
これとは別に、EUの価値基準に違反した国に対する一時的な権利停止に関する規定(同第7条)を適用することも考えられる。つまり、ギリシャが財政規律に違反し、債務の返済を履行しないことをEUの価値基準に対する重大な違反とみなし、単一通貨ユーロを利用する権利を一時的に停止する。
ECBは6月24日以来、ギリシャの銀行への緊急流動性支援(ELA)の利用上限を886億ユーロに据え置いている。7日にはELAに適用されるギリシャ国債の担保価値の評価を厳格化し、銀行が利用可能な担保を絞り込んだ。銀行関係者によれば、銀行の流動性バッファーは数日内にも枯渇する可能性がある。
支援再開で合意できない状況下で、ECBがELAの利用上限を引き上げるのは困難だ。当面の銀行破綻を回避するためには、預金の引き出し制限をさらに強化し、流動性の枯渇を食い止める必要がある。
財政資金が枯渇したギリシャ政府が新たな金融支援なしに、20日に控える35億ユーロのECB保有国債の償還に応じる余裕はない。近日中に金融支援を受け取れなければ、ECBはギリシャの銀行へのELA供給を打ち切る可能性が高い。その場合、ギリシャの銀行破綻は避けられず、金融システムは崩壊の危機に瀕する。
債権者側の厳しい姿勢がギリシャの政局流動化を招く恐れもある。支援獲得を目指す国民投票後の政権の方針転換や、銀行の営業停止の長期化による国民生活への打撃を受け、ギリシャ国民の政権批判が徐々に広がる可能性もある。支援開始に先駆けてギリシャ議会では緊縮関連法案の議会採決が必要となるが、その過程で連立政権が崩壊するかもしれない。連立崩壊時に議会の解散・総選挙を行っている時間はギリシャに残されていない。挙国一致内閣の発足で支援協議を早期にまとめなければ、ギリシャの銀行破綻やユーロ離脱が一段と現実味を帯びる。
中長期的な課題はさておき、債権者からの信頼回復、支援条件でのさらなる譲歩、ギリシャ議会での法案可決、全会一致の支援決定、一部支援国での議会承認、つなぎ資金の手法、ELAの供給継続、銀行の破綻回避、政局流動化の封じ込めなど、早急に解決しなければならない問題が山積で、ギリシャに残された時間は少ない。何か1つの歯車が狂っても支援は暗礁に乗り上げる。
古代のギリシャ悲劇の多くは、最後に登場する神が事態を収拾して閉幕すると聞く。この複雑にもつれた糸をほどく秘策はあるのか、ギリシャのユーロ圏での将来を左右する最終幕がいま始まろうとしている。
ユーロ圏は瀬戸際の状況、合意なければ崩壊も=欧州議会議長 7/13
欧州議会のシュルツ議長は13日、欧州の将来は危機にひんしていると述べた。また、ギリシャの一時的なユーロ圏離脱は議題ではないとの認識を示した。
ブリュッセルでは、ユーロ圏首脳がギリシャ問題の合意に向け協議を続けている。
シュルツ議長はドイツのラジオで「今、欧州プロジェクトは極めて不安定な状態だ。ブリュッセルは瀬戸際の状況にあり、ユーロ圏は崩壊の危機にひんしている」と述べた。
独財務省が提案したとされるギリシャの一時的なユーロ圏離脱案については、議題ではなく、これ以上協議する必要はないとの認識を示した。
ユーロ圏首脳、ギリシャ支援プログラム開始で基本合意=EU大統領 7/13
欧州連合(EU)のトゥスク大統領は13日、徹夜で行われたユーロ圏首脳会合でギリシャへの支援プログラムの開始で基本合意したと明らかにした。EU首脳らの主な発言は以下の通り。
○ユーロ圏首脳、支援プログラムの開始で基本合意=EU大統領
○協議開始前にギリシャなどの各国議会の同意が必要=EU大統領
○支援には厳しい条件がついている=EU大統領
○ユーロ圏財務相がつなぎ融資について緊急協議へ=EU大統領
○ギリシャのユーロ離脱はない、今回の結果に満足=欧州委員長
○ギリシャ議会は一部の事項で早急に法制化へ=ユーログループ議長
○250億ユーロでギリシャの銀行の資本増強へ=ユーログループ議長
○ギリシャ議会は15日までに支援策に同意へ=ユーログループ議長
○ユーロ圏財務相が15日に電話会議の可能性、その後各国議会が承認=ユーログループ議長
○各国議会の承認後、ユーロ圏財務相が正式に支援協議を開始=ユーログループ議長
○週内に支援協議開始の準備が正式に整うよう望む=ユーログループ議長
○ギリシャの資産の一部を基金に移管し民営化・運営により債務返済に充てる=ユーログループ議長
○基金は銀行の資本増強にも充当=ユーログループ議長
ギリシャ危機解決へ協調用意、IMFが表明 7/14
ユーロ圏首脳が支援開始条件でギリシャと合意したことを受け、国際通貨基金(IMF)は13日、債務危機の解決に向け、ギリシャや欧州域内の債権者と連携する用意があると表明した。
ライス報道官は声明で「この重要な取り組みを前進させるため、IMFはギリシャ当局や欧州のパートナーと協調する用意がある」とした。
ドル上昇、焦点はギリシャから米利上げへ=NY市場 7/14
13日のニューヨーク外為市場では、ドルがユーロ、円、スイスフランなどの主要通貨に対して上昇した。ギリシャ支援策をめぐる協議でギリシャと国際債権団が合意に達し、市場の焦点が早ければ9月にも予想される米利上げへと移ったことでドルが買われた。
ユーロ圏首脳は13日、財政緊縮策を条件にギリシャに期間3年で860億ユーロ規模の支援を行うことで基本合意した。ただ、その後ユーロ/ドルEUR=は1.10ドルの大台を割り込み、終盤は1.1006ドルで取引されている。
アナリストによれば、ギリシャ問題に対する先行き不透明感は残るものの、合意で市場のテーマは米連邦準備理事会(FRB)の利上げに移った。
イエレンFRB議長とローゼングレン・ボストン地区連銀総裁は、先週10日に9月利上げの可能性について言及した。イエレン議長は15・16日に半期に一度の議会証言を行い、利上げ時期を探るうえでその発言が特に注目される。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(ニューヨーク)の通貨戦略部門のグローバル責任者、マーク・チャンドラー氏は「経済指標に新たに弱い数字が出てこなければ、FRBは9月に利上げに踏み切るだろう」との見通しを示した。
ドル/円JPY=EBSは1週間超ぶりの高値となる123.535円を付け、終盤もその水準での取引となっている。ドル/スイスフランCHF=EBSは終盤の取引で1.10%高の0.9496フラン。またドルの主要6通貨に対するドル指数.DXYは直近0.77%高の96.769だった。
前出のチャンドラー氏は、ギリシャ協議合意後、米債が売られる一方で独国債が買われ、米独10年債利回り格差DE10US10=TWEBが9ベーシスポイント(bp)拡大したこともドルの支援要因となったと指摘した。
さらにアナリストは、イラン核協議の合意が近づいているとの観測で原油価格が下落していることが、ユーロの重しとなっていると見ている。
TJMブローカレージ(シカゴ)の外為部門共同責任者、リチャード・スカローン氏は「原油価格が下落すれば、世界的なインフレ率低下の可能性が高まり、それは欧州により過度の、あるいは米国に対するよりも多くの影響を及ぼす」との認識を示した。 
ギリシャ支援合意は良いニュース、世界市場に安心感=甘利再生相 7/14
甘利明経済再生担当相は14日、閣議後の会見で、ユーロ圏首脳がギリシャへの支援で基本合意したことについて「良いニュースだ」とし、「世界市場に安心感を与える」との認識を示した。
そのうえでギリシャに対しては「増税以外で歳入を増やす手立てをしっかり考えていかないといけない」なか、「経済成長戦略にしっかり踏み込んで、財政再建をより確かなものにしていく次なるプランが重要になってくる」と指摘。具体策として浮上している国営施設の売却・民営化プランなど民間資金導入策に期待した。
<TPP、間に合わない国は後から参加する選択肢も>
先週の環太平洋連携協定(TPP)日米事務レベル協議を終え、「日米間だけで、対応する問題はかなり整理がついた」とし、残された課題は「日米閣僚、(参加)12カ国の閣僚で解決すべく最大努力したい」と指摘。「ハワイでの閣僚会合を妥決に至る最後の閣僚会合としなければならない」とTPP妥結に向けた決意を語った。
一方で、「12カ国全体で合意に至ることが大事だが、どうしても間に合わない国があるとすれば、TPPが合意・成立し、そののちに参加してもらう選択肢もゼロではない」と述べ、大筋合意を優先する考えをにじませた。
ESM、ギリシャに3年間で最大500億ユーロを支援=関係筋 7/14
欧州安定メカニズム(ESM)は、ギリシャに対し3年間で400億―500億ユーロ(440億―550億ドル)規模の金融支援を行う見通しだ。関係筋が明らかにした。ギリシャは820億―860億ユーロの資金を必要としており、残りについては国際通貨基金(IMF)が支援するもよう。
3月に失効するIMFの支援プログラムでは160億ユーロが利用可能であり、ギリシャの国有資産の民営化により利益が得られる可能性もある。
関係筋によると、支援期間の期限に向けてギリシャが自ら金融市場で資金調達することも可能だという。  
ギリシャ危機の教訓、ユーロは買いか 7/15
日銀の金融政策決定会合は事前の予想通り政策変更もなく、黒田総裁の記者会見もほぼ無風で終了した。このところ、ギリシャ支援をめぐる混乱や中国株の暴落などもあって、日本や米国の金融政策に対するマーケットの関心はやや薄れている。
米連邦準備理事会(FRB)の金融政策に対する期待を最も強く反映すると考えられる米2年金利と米ドル(以下ドル)の相関が完全に崩れてしまっているのも、そうしたマーケット情勢を反映しているのかもしれない。
ギリシャに対する支援を継続するか否かに関する混乱は、夜を徹して続けられた交渉の結果、現地の13日月曜日早朝(日本時間では夕方)になって、ようやくギリシャが諸改革案を法制化することなどを条件に、つなぎ融資などを含めた支援が延長されることとなった。
もっとも、今回のギリシャをめぐる問題は解決したと言うには程遠く、今後も時折、為替市場を変動させる材料として登場してくることが予想される。その時のためにも、ギリシャの混乱を受けて為替相場、特にユーロ、円、ドルがどのように動いたかを整理しておくことは重要であろう。
<実はすぐに反発したユーロ>
まず、今回のドタバタ劇の特徴としては、3週間連続で週末にネガティブサプライズがあった点だ。6月27日土曜日にチプラス・ギリシャ首相が、債権団が示した支援条件を受け入れるか否かをめぐり国民投票を実施すると表明。債権団との合意が成立しなかった。
そして、翌週7月5日日曜日に実施された国民投票では、支援条件受け入れを拒否する票が予想外に60%を超えてしまった。さらに、7月12日日曜日のユーロ圏首脳会議では、前述の通り日本が月曜日の取引を開始する頃にはまだ結論が出ていなかった。
このように、市場参加者は3週連続で、ギリシャのユーロ圏離脱に関する懸念を強めながら週明けの取引を開始した。興味深いことに、シドニー・日本市場の月曜日早朝の反応は、3回ともユーロが最も弱い通貨となり、円が最も強い通貨となるという動きだった。つまり、主要通貨ペアの中で、ユーロ円相場の下落方向への動きが最も大きかったことになる。
この反応は、直感的にも分かりやすかったかもしれない。ギリシャの混乱がユーロ売りと捉えられ、リスク回避志向の高まりで、投資家がポジションを閉じる行為を行うことによって、それまで資本調達通貨として売られていた円が買い戻されたという構図である。
しかし、この早朝のユーロ売り・円買いには、2つの注釈を付け加える必要がある。1点目は、早朝のユーロ円相場の下落は徐々にマグニチュードが小さくなっていったということだ。最初の6月30日月曜日早朝の下落は一時3%程度とかなり大きなものとなったが、翌週7月6日月曜日早朝は2%の下落、その翌週7月13日月曜日早朝は1%程度の下落にとどまった。
もう1つ付け加えたいのは、ユーロ円相場の下落がごく短期的なものに終わり、3回とも相場はすぐに反発したという点である。最初のケースでは3%も下落したユーロ円相場は、その日のNY時間終了時には下落分をほぼ取り戻していた。2回目は日本時間月曜日の夕方には下落分をほぼ取り戻し、3回目は多くの日本の市場参加者が出勤する前に下落分の8割以上を取り戻していた。
つまり、週末のギリシャ関連のネガティブなニュースを受けたユーロ売り・円買いの動きは、短期筋による投機的な側面が強かったと言える。思惑に基づく投機的な取引だったため、何度か繰り返されるうちに市場参加者は慣れてしまい、その動きは次第に小さくなり、ごく短期的なものにとどまったと言えるであろう。
<危機下の通貨が買い戻される理由>
次に、ギリシャをめぐる混乱が為替相場に与えた中期的な影響について考えてみたい。チプラス首相が国民投票実施を表明する直前の6月26日金曜日から7月10日金曜日までの2週間の騰落率を見ると、主要通貨の中で最も強かった通貨は円となっている。その次に強かったのは実はユーロとドルで、いずれも円に対しては0.9%下落という結果になっている。
つまり、ユーロドル相場は、この2週間のドタバタ劇を受けて上下動はしたものの、結局、同じレベルで取引されているわけだ。一方、この2週間で最も弱かったのは豪ドルや加ドルで、それぞれユーロに対して2.6%程度下落した。NZドルもユーロに対して1.9%、英ポンドも1.4%下落している。
このことは、ユーロという通貨が、円と同じ資本調達通貨の性質を強めていることを示唆していると考えられる。つまり、市場の不安定度が高まり、投資家がリスク回避的になると、その原因がユーロ圏内にあったとしても、ユーロは買い戻される結果になるのである。日本で東日本大震災があった時に円が買い戻されたのと同じ構図だ。
投資家は市場が安定している時には、低金利通貨を売って、高金利通貨を買う傾向が強くなる。市場で価格が大きく動かなくなると、金利差から得られる収益を狙おうとするからだ。しかし、相場の変動が大きくなり、先行き不透明感が強まりすぎると、保有するポジションの予想損失額が大きくなるため、投資家はポジションを閉じようとする。
この時、投資家は売っていた低金利通貨を買い戻し、買っていた高金利通貨を売り戻す必要が生じる。市場を不安定にさせている原因がその低金利通貨の国であっても、投資家の行動はポジションの手仕舞いなので、売っていた低金利通貨、つまり問題となっている国の通貨でも、それを買い戻すのである。
足元でユーロの3カ月金利はマイナス圏にあり、スイス、スウェーデンに次いで3番目に低く、日本よりも当然低い。したがって、金利差を狙った取引の時に売られる資本調達通貨という面では、円よりも低金利通貨であるユーロの方が適している。
13日月曜日の日本時間夕方になって、ギリシャが債権団と合意したとのニュースが流れて以降、市場は安定を取り戻し、世界の株価も堅調に推移しているが、この間最も弱い通貨となっているのがユーロである点を見ても分かるだろう。ユーロはギリシャ情勢が落ち着き、投資家のリスクテイク志向が強まると、低金利通貨として売られる対象となり、逆に情勢が不安定化すると、投資家のリスク回避志向が強まり、買い戻される通貨となっているのである。
よって、今後もギリシャ情勢が再び悪化した場合、ユーロは数時間程度の短期的な動きとしてはいったん売られるかもしれないが、中期的に見るとそこが買い場となる可能性が高いと考えられる。
特にこのロジックは、対ドルにおいて有効かもしれない。以前にもこのコラムで指摘した通り、ドルはFRBが最初に利上げを行うタイミングでピークをつけて、その後利上げが進むにつれて下落基調をたどる傾向があるからだ。したがって、ギリシャ情勢が悪化し、突発的にユーロが対ドルで売られた時には、逆に絶好の買い場となるのではないだろうか。
ただし、対円では、その判断は難しい。なぜなら、いまだに円ショートポジションの積み上がりは相対的に大きいと思われるからである。ギリシャ情勢の混乱で円が最強通貨となってしまう状態は、そう簡単には変わらないかもしれない。
欧州委が先週の対ギリシャ評価公表、債務負担軽減の可能性示す 7/15
欧州委員会は15日、ギリシャの支援要請に対して先週行った評価を公表した。ギリシャの債務負担を軽減する可能性を示す内容となっている。
評価文書は債務減免ではなく、返済期限の延長などによる債務負担軽減が可能と指摘。ただ、その場合でもギリシャが債権団から要求された改革措置を実行する必要があるとした。
文書は対国内総生産(GDP)比のギリシャ債務残高について、ギリシャが債務削減措置を取れば2020年に165%、22年に150%になるだろうとしつつ、187%、176%に達しそうだと指摘した。
ギリシャ債務の返済期限延長、価値低下ないなら選択肢=独財務省 7/15
独財務省のイエーガー報道官は15日、ギリシャ債務の返済期限を延長することについて、価値の大幅な低下につながらない限り1つの選択肢となるとの考えを示した。
同報道官は、ギリシャ債務の返済期限を30年程度まで延長することについて、「技術的にこうした可能性は存在する」とし、「検討可能な1つの選択肢となる」と述べた。
ただ、価値の大幅な低下につながる場合は「裏口からヘアカット(債務元本削減)を実施していることに他ならない」とし、解決策にはならないとの見解を示した。
また、独政府は国際通貨基金(IMF)によるギリシャ債務をめぐる評価を真剣に受け止めているとしながらも、財政・構造改革、および経済成長によりギリシャは債務を持続可能な軌道に戻すことができるとの見方を独政府は変えていないと述べた。
ギリシャ議会が財政改革案を可決、一部与党幹部は賛成せず 7/16
ギリシャ議会は、欧州諸国から金融支援を受けるために必要な財政改革法案を可決した。与党急進左派連合(SYRIZA)の一部議員が法案に強く反対し、審議は紛糾したが、野党が賛成に回ったことで法案は可決された。
定数300の議会で、賛成は229票。ただ、バルファキス前財務相を含むSYRIZAの議員38人が棄権あるいは反対だった。
財政改革法案の可決により、ギリシャの第3次支援に向けた欧州諸国との協議開始に道が開けたが、与党幹部が分裂しているチプラス政権の今後は分からない。
チプラス首相は、自身の意思に反して改革案を支持するが、選択肢はないと強調。困難が待ち受けていることを認めながらも「自分は最後まで責任を果たす」と決意を表明した。
ギリシャは最大860億ユーロの支援と引き換えに年金カットや付加価値税の増税などの緊縮案を受け入れた。民営化基金で500億ユーロの資産を担保として確保することも承認した。
与党幹部ではバルファキス前財務相、ラファザニス・エネルギー相、保健・社会保障省のストラトゥリス次官などが反対票を投じた。ラファザニス氏はチプラス首相に求められれば辞任する考えを示している。
ギリシャ議会での法案可決を受け、今後は支援交渉開始の支持を各国議会でとりつけることが必要となる。ユーロ圏財務相は、16日0800GMT(日本時間午後5時)から電話会議を開催する。欧州中央銀行(ECB)が保有する35億ユーロの国債償還期日が20日に迫る中、EU内部ではギリシャ向けつなぎ資金の提供が提案されている。
英国、チェコなどユーロ不採用のEU諸国からは反対の声があがっているものの、欧州金融安定メカニズム(EFSM)を活用し70億ユーロのつなぎ融資がギリシャに提供される見通しとなっている。
米財務長官、ギリシャ債務の持続可能性の実現を独仏財務相に要請 7/17
欧州訪問中のルー米財務長官は16日、ドイツとフランスの当局者に対し、ギリシャとの支援交渉にあたり、同国政府の確実な債務返済を可能にする案で合意するよう強く要請した。
米財務省当局者は、ルー長官がショイブレ独財務相やサパン仏財務相など欧州当局者との会談で「(ギリシャとの)今後の交渉で債務の持続可能性を実現することの重要性を強調した」と明らかにした。
長官はフランクフルトで欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁とも会談したという。
ギリシャに「追い貸し」を続けるのか 7/17
12日にブリュッセルで開催されたユーロ圏首脳会議は、ギリシャのチプラス首相と独仏首相らの個別会談を交えつつ約17時間にわたるロングランの討議となり、日付が13日に変わってから支援プログラムを開始することで基本合意が成立した。
金融支援の規模は3年間で820―860億ユーロの見込みで、欧州安定メカニズム(ESM)が活用される。
ギリシャ議会は財政再建策の一部を15日に賛成多数で可決した。その他の国で必要な議会承認手続きが終わった後、ユーロ圏の財務相が正式に支援協議を開始する。ドイツ連邦議会(下院)は17日にギリシャ支援交渉開始を認めるかどうかを審議・採決する。
ギリシャが求めていた債務の棒引き(債務減免)は、欧州連合(EU)条約の禁止規定に抵触することもあり、行われない。だが、ギリシャの改革に関する最初の審査後に必要と認められれば融資期限の延長など(債務再編)をユーロ圏は議論する用意があると、メルケル独首相は述べた。
ユーロ圏からのギリシャ離脱という最悪のシナリオは、やはり回避された。仮にそうした流れに入ることを首脳会議で決断してしまうと、通貨統合の政治的求心力が低下するうえに、通貨統合は不可逆的なプロセスであり、出たり入ったりするものではないという従来の常識が覆されて、南欧諸国の反EU政党を勢いづけてしまいかねなかった。
ギリシャ問題がここまでもつれたのは、ユーロ圏との協議を突然打ち切って緊縮策の是非を問う国民投票に打って出たチプラス首相のアクロバティックな政治手法に対し、欧州の政界で最も重要なキーパーソンであるメルケル独首相が強い不信感を抱いたからだろう。報道によれば、メルケル首相は首脳会議が始まる直前、「最も重要である信頼が失われてしまった。それは、厳しい協議になることを意味する」と述べていた。
また、ドイツの大連立政権で重要人物であるガブリエル副首相・社会民主党(SPD)党首も、ギリシャへの態度を硬化させた。ギリシャに批判的な国内世論がもはや無視できないレベルになっていたことも、ドイツの交渉姿勢に少なからず影響したと考えられる。
ドイツの面子が立つ、つまりドイツ国民に説明できる内容でなければ、メルケル首相は同意できなかった。これが、議論が長丁場になった大きな理由とみられる。ドイツによる提案の基本線を採用する形で、500億ユーロ規模のギリシャの国有資産を、独立した基金に移管することが基本合意に盛り込まれた。
ただし、ユーロ圏はドイツの言いなりというわけではない。合意が成立するよりも前に英ガーディアンが配信した記事は、ギリシャのユーロ圏離脱、いわゆるグレグジット(Grexit)に対するユーロ圏各国(19カ国のうちギリシャを除く18カ国)のスタンス、すなわちこの過激な選択肢を許容するかどうかを、次のように分類していた。
1)「Grexitを許容」
ドイツ、オーストリア、オランダ、ベルギー、フィンランド、スロバキア、リトアニア、ラトビア、マルタ(計9カ国)
2)「揺れているが、どちらかと言えばGrexit回避を望む」
ポルトガル、アイルランド、キプロス、スロベニア、エストニア(計5カ国)
3)「何としてもGrexitは回避」
フランス、イタリア、スペイン、ルクセンブルク(計4カ国)
興味深いことに1番目が9カ国で、2番目と3番目の合計も9カ国。ギリシャに対するスタンスで分類すると、国の数でカウントすれば勢力はきっ抗していた。首脳会議の議論が長丁場になったもう1つの大きな理由はこれだろう。ユーロ圏内の「南北対立」である。
<損切りできず追い貸しか>
世界の経済・マーケットを揺るがしかねない当面のリスク要因としてのギリシャ問題は、今回の基本合意成立によって、ひとまず押さえ込まれた形である。
だが、ユーロ圏首脳会議は交渉というより「異端審問」の場になり、屈服を強いられたチプラス首相は「磔(はりつけ)にされた」格好で、「打ちのめされていた」と報じられている。国民投票で反緊縮策が多数を占めた直後に今回の基本合意を突きつけられて、不満がうっ積したギリシャ人が、政治面で今後どのような動きを見せるかは予断を許さない。
ギリシャが本当に財政再建の目標数値をクリアできるのか、秋に実施との観測も出ている新たな総選挙結果がどのようなものになり、次期政権がいかなる政策方針をとるのかなど、ギリシャをめぐる不透明要因は引き続き多い。
そうした中で国際通貨基金(IMF)は14日、ギリシャが抱える債務の持続可能性が資本規制導入によって悪化しており、従来の想定を上回る規模でギリシャの負担を軽減する措置が必要だとする分析を公表した。大量の資金を借り入れているギリシャは、銀行の不良債権問題が日本で大きな焦点になっていた時期に取り沙汰された「開き直って道路の真ん中で寝転がることができる、立場の強い借り手」になった感が強い。
金融政策は一元化しつつも、財政運営・国債発行はばらばらという制度的な欠陥を抱えたまま、ユーロ圏は大きくなり過ぎた感が強い。
現地に行ってみればすぐわかるが、時間の流れがゆったりしているギリシャにはゲルマン的な規律正しい行動はなじまない。だが、今さら「損切り」的にギリシャを切り捨てることがどうしてもできず、さまざまな条件を付けながらもユーロ圏は結局のところ、また「追い貸し」に踏み切ったわけである。基本合意によってギリシャ問題の根本的な解決への道筋がついたわけではないことは、十分認識しておく必要がある。
世界経済の回復が今後徐々に加速する中で、ユーロ圏の景気回復にも追い風が吹き、ギリシャの財政状況が順調に改善するというのがベストシナリオである。だが、何らかのきっかけで世界経済が予想外に悪化する場合には、ギリシャ問題がリスク要因としてまた浮上する可能性が高い。その場合、さらに「追い貸し」するのかどうかをめぐってユーロ圏の財務相会合や首脳会議での議論がまた延々と続けられることは十分想定し得る。
13日のユーロ圏首脳会議終了後に、「今回の妥協には勝者も敗者もいない」「ギリシャ国民は辱められていないし、他の欧州の人々も面目をつぶされていない。これは典型的な欧州流の解決だ」とユンケル欧州委員長が述べていたと報じられたのが、筆者には大変印象的だった。
少なくとも1つ言えるのは、そうした「欧州流の解決」は、国際経済・金融におけるユーロという通貨の地位を高めてはいないということである。基軸通貨としてのドルの存在は、ライバル不在ゆえに、今後も揺らぎそうにない。
ギリシャが融資20億ユーロ返済、IMF「引き続き支援の用意」 7/21
国際通貨基金(IMF)は、ギリシャが延滞していた融資およそ20億ユーロを返済したと明らかにした。
コミュニケーション局のゲイリー・ライス局長は声明で「ギリシャの延滞はこれで解消された」とし、「IMFは金融安定および成長の回復に向けた取り組みの中で、ギリシャを引き続き支援していく用意がある」と述べた。
ギリシャが付加価値税引き上げ、レストランなど23%に 7/21
ギリシャでは20日から、レストランなどに課している付加価値税(VAT)の税率が従来の13%から23%に引き上げられた。
増税は支援と引き換えに債権団が要求、ギリシャ議会が可決したもので、レストランのほか、加工食品、タクシー、私立学校の授業料などが対象になる。
ギリシャでは失業率が25%を突破しており、今年の国内総生産(GDP)はすでにマイナス成長が予想されている。エコノミストは、生活に欠かせないモノやサービスが増税対象になっているため、ギリシャ国民の支出がかさむことは避けられない、との見方を示している。
ナショナル・バンクのニック・マッギナス氏は「リセッション(景気後退)につながる施策だ」と指摘。「しかし、需要に弾力性のない生活必需品が対象になっているため、税収は増えるだろう」としている。
ギリシャ、ユーロ離脱でもアルゼンチン型回復は望み薄か 7/23
ギリシャは辛うじてユーロ圏からの放逐を免れた。しかしいずれ発生する大規模なデフォルト(債務不履行)とユーロ圏からの永久離脱に向けて、時計は着実に時を刻んでいるとの慎重論もある。
2カ月後か2年後か分からない「その時」には、過去に大規模なデフォルトを起こしたアルゼンチンの教訓が再考されるのは間違いない。
アルゼンチンは2001年に1000億ドルと史上最大規模のデフォルトに陥った。通貨ペソはドルとのペッグ制が打ち切られ、75%も切り下がった。この結果、経済は大打撃を受け、実質国内総生産(GDP)は15%落ち込んでインフレ率は40%に達し、家計と企業の両方で資金繰りが行き詰まった。政府は今に至っても国際資本市場に復帰できずにいる。
しかしアルゼンチンは幸運にも世界的な経済情勢が追い風となり、間もなく景気が持ち直した。
ギリシャは08年から景気後退が続いて債務も巨額なため、ユーロ圏から離脱した方がうまく行くのではないかと一部のエコノミストはみている。再導入されるドラクマがユーロより50%割安になれば回復のきっかけになるのだろうか。
カリフォルニア大バークリー校のバリー・アイケングリーン教授(経済・政治科学)は、銀行制度の破綻や持続不可能な債務、国際競争力回復の必要性など、ギリシャとアルゼンチンには共通点があるとしながらも、「ギリシャの場合、ドラクマの再導入と通貨切り下げの効果がアルゼンチンよりも小さいと考える理由がある。ギリシャは市場が開かれておらず、輸出も少ない」と述べた。
隣国ブラジルの通貨が大きく下げる中、通貨ペソがドルに連動していたアルゼンチンは1999─2001年にかけて進んだドル高により輸出競争力が低下。最終的にペッグ制の廃止に追い込まれた。
ギリシャの競争力面の問題はもっと根深い。賃金が08年以来で40%減少し、単位当たり労働コストが下がったにもかかわらず、輸出が持ち直すことはなかった。
ここで疑問が持ち上がる。これほどの規模の「内部切り下げ」で競争力が高まらなかったのに、対外的な通貨価値が同程度切り下がったからといって効果は見込めるだろうか。賃金低下や通貨下落でその国の商品の価格が下がっても、結局は需要がなく供給能力の拡大余地も限られているのなら、経済活動には影響しない。
コモディティの主要輸出国であるアルゼンチンは、世界的なコモディティブームの始まりに通貨安が重なった点が幸運だった。
シティのチーフ・グローバル・エコノミストで「グレグジット」という言葉の生みの親であるウィレム・ブイター氏は「(アルゼンチンの前例が)ギリシャで繰り返されることはない。ギリシャ経済はもっと閉鎖的で、アルゼンチンが世界的なコモディティの超好循環で得たとの同じような効果を観光業や海運業で得られる望みは皆無だ」と述べた。
<需給ギャップに注意>
もっとも過去の歴史を振り返ると、通貨の大幅な減価が最終的に成長を上向かせた例は少なくない。ロシアは1998年にルーブルが75%下落した後、実質GDPが5年間で40%増加した。このほか韓国、メキシコ、マレーシア、タイなどでも通貨の下落後に成長が持ち直した例がある。
キャピタル・エコノミクスのアンドルー・ケニンガム氏は「通貨切り下げの最初の年に起こるマイナスのショックは侮れない。しかし急速な成長と雇用の回復局面が訪れるのはほぼ間違いない」と述べ、ギリシャでもアルゼンチン同様に雇用の改善が期待できるとの見方を示した。
その上、ギリシャがユーロを離脱したとしても欧州連合(EU)にはまず間違いなく残留しそうで、EU内における金融支援の純受益国であり続けるだろう。
より重要なのは需給ギャップ、すなわち実際の成長率と潜在成長率とのかい離が、回復に拍車を掛ける可能性だ。
通貨切り下げ前の需給ギャップが大きいほど、回復も大きくなる。経済開発協力機構(OECD)の計算では、ギリシャの需給ギャップは13%と極めて大きい。
ギリシャ経済、リセッションに後戻りへ=シンクタンク 7/24
ギリシャのシンクタンク、経済産業調査財団(IOBE)は23日、今年の国内経済見通しを下方修正し、経済が景気後退(リセッション)に後戻りするとの見方を示した。
最新の四半期報告によると、今年の成長率はマイナス2.0─2.5%となる見込み。4月時点では1%のプラス成長を予想していた。ギリシャ経済は昨年7年ぶりにリセッションから脱却、0.7%のプラス成長を回復したばかり。
3週間におよぶ銀行業務の停止や資本規制が、家計消費や投資、輸出、観光業の各分野に大きな打撃を与えるとした上で「銀行システムにおける最近の混乱ぶりやそれが自己資本に及ぼす影響、さらには新たな支援プログラムをめぐる交渉の行方などで、2015年後半は企業の設備投資が軒並み停滞する状況になるだろう」とした。
「ギリシャのユーロ圏残留望む」が50%に上昇=独世論調査 7/24
ドイツの調査会社ポリットバロメーターの調べによると、ギリシャがユーロ圏にとどまることを望むドイツ人が増えており、50%に達したことが分かった。ユーロ圏離脱が最も危ぶまれていた7月上旬時の41%から上昇した。
ただ71%は、第3次金融支援を受けても経済破綻を免れないだろうと回答。合意した改革案を実行する見通しは低いと考えている人は73%と大半を占めた。
金融支援の内容については判断が割れ、良いと答えた人は48%、悪いと答えた人は49%。ギリシャが支援と引き換えに合意した改革については、「厳しすぎる」が22%、「適正」が50%、「手ぬるい」が20%だった。
同社のZDFテレビ向けの調査で、1304人が対象となった。
ギリシャ銀の預金引き出し制限、数カ月継続か 7/27
ギリシャの銀行は同国向け支援の具体策をめぐるユーロ圏との交渉が決着し、新たな支援が実施されるまで、数カ月間にわたり資本統制を続けざるを得ない見通しだ。
ギリシャ銀の経営立て直しには、難しい選択がつきまとう。まずは債券保有者、ひいては大口預金者にまで損失を負担させた上で、ユーロ圏が銀行に資本注入するのか、あるいはギリシャ自体がさらに債務を積み上げて銀行を再建させるかだ。
ギリシャ向け支援第3弾をめぐる交渉は、この問題をめぐってもめることになりそうだ。
交渉当事者らは数週間中に合意にこぎつけたい意向だが、交渉が長引けば長引くほど銀行の経営環境は苦しくなり、預金引き出し制限が経済を圧迫することになる。
ドイツ連銀のワイトマン総裁は「結局のところ、銀行が十分な資本を確保するまで資本統制は解除できない」と述べた。
ギリシャ銀の資本増強には250億ユーロを要すると推計されており、同国が負担すれば、既に3000億ユーロを超える同国の債務はさらに膨らむことになる。
<渋るドイツ>
ギリシャ高官らは経済が下降スパイラルに陥るのを警戒し、銀行への早急な資金提供を求めている。
ギリシャ4大銀のうち、ナショナル・バンク・オブ・グリース、ユーロバンク、ピレウスの3行は昨年の欧州中央銀行(ECB)のストレステスト(健全性審査)で不合格となったが、状況は現在さらに劇的に悪化している。
ギリシャ財務省高官は「可能なら、銀行が真っ先に必要としている額だけまず準備してほしい。それは100億ユーロぐらいだろう」と述べた。
しかし、ドイツを含むユーロ圏諸国はこの要請に後ろ向きで、預金額10万ユーロを超える大口預金者、あるいは債券保有者の損失負担を求める可能性がある。
これに該当するギリシャ4大銀の預金額は計200億ユーロを超え、債券発行残高の約30億ユーロをはるかにしのぐ。
ギリシャ政府は預金者の損失負担を繰り返し否定しており、実施されれば論議を呼ぶだろう。何といってもギリシャでは、大口預金の大半は大富豪ではなく中小企業の口座だからだ。
ギリシャに詳しい破綻専門弁護士は「(大口預金者は)ロシアの新興財閥(オリガルヒ)と切って捨てられるキプロスとはわけが違う。ギリシャ復活の担い手として誰もが期待する正にその一群、つまり企業から資金を引きはがすことになる」と語る。
フランス銀行(中央銀行)総裁のノワイエECB理事も、預金者に損失を負担させるべきでないと主張し、他のECB理事の多くも同意見だと述べている。
しかしドイツの姿勢は異なり、銀行の債権者に損失を負担させるだけでなく、欧州安定メカニズム(ESM)による出資も回避し、ギリシャ自身が銀行の破綻処理を担うべきだとの主張も出ている。
キプロスが参考例となる。同国が支援を受けた際には主要2行が閉鎖された。資本統制は徐々に緩和されたものの、2年間も続いた。
複数のユーロ圏幹部によると、1つの選択肢はESMがギリシャ銀に直接資本を注入することだ。ESMはギリシャ銀の株主となり、将来の道筋を大きく左右することができるようになる。
しかしこの場合、銀行の債券保有者、場合によっては預金者の損失負担がまずは求められるだろう。
ギリシャ高官らは、そうした条件なしで資金を提供してもらうことを望んでいる。
ギリシャの銀行預金残高、6月は約6%減=ECB 7/27
欧州中央銀行(ECB)が27日発表したデータによると、6月のギリシャの銀行預金残高は1275億ユーロ(1410億ドル)となり、約6%減少した。ギリシャがユーロ圏から離脱するのではないかとの懸念から預金が引き出された。
預金残高は2003年末ごろ以来の低水準。ギリシャ政府は6月28日に銀行の一時閉鎖と資本規制の導入を決定したが、それよりも前に預金が大幅に流出していたことが示された。
銀行は現在は再開しているが、引き出し制限が設けられている。
5月のギリシャ小売売上高、前年比4.2%増 5カ月連続でプラス 7/31
ギリシャ統計局(ELSTAT)が31日発表した5月の小売売上高は数量ベースで前年同月比4.2%増と、2014年10月以来5カ月連続で増加した。長期のリセッションを経て、経済が上向いていることを示した。
ただ、昨年末にかけての政情不安や金融支援をめぐる債権団との協議難航が、消費者心理に悪影響を与えている。
金額ベースでは2.5%増だった。
4月の統計は、数量ベースで1.8%減、金額ベースで3.1%減に改定された。
ギリシャ首相、ユーロ離脱対策問題で釈明「責任ある政府の義務」 7/31
ギリシャのチプラス首相は31日、ユーロ圏を離脱させられた場合の準備を承認していたことを認めた。
バルファキス前財務相が今週、ユーロ圏離脱に備えた計画を準備していたことを明らかにした。その過程で、市民の税関連データを入手しようとしていたことが分かり、衝撃が走り憤りの声が上がった。
これについて、チプラス首相は31日、議会で「われわれはユーロ圏からの離脱計画を立てたことはないが、緊急時のための計画はあった」と述べた。
首相は、債権団がギリシャのユーロ圏離脱計画を用意していたため、ギリシャ政府は対応策を備えておく必要があったと説明。さらに計画を、戦争を控えた防衛計画になぞらえ、緊急対応策の策定は責任ある政府の義務だと主張した。  
● 8
ギリシャ年内の最優先課題、国内行資本増強=中銀当局者 8/1
ギリシャは、年末までに国内金融機関の資本を増強することを最優先課題とする方針だ。ギリシャ中央銀行の当局者が31日、ロイターに語った。
大口預金者らに損失負担を求める「ベイルイン」の回避が最優先事項という。
国内行の資金不足は預金流出で悪化し、資本増強には最大250億ユーロの資金が必要となる可能性もある。
当局者は「健全性審査(ストレステスト)や資産の質審査、資本増強というすべてのプロセスが、年末までに完了していることが望ましい」と述べた。
最も可能性が高いシナリオは、銀行救済基金を活用した資本増強との見方も示した。
追加支援でギリシャは幸せになれるのか=唐鎌大輔氏 8/3
ギリシャ情勢がようやく市場のテーマから外れようとしている。周知の通り、最大860億ユーロの3次金融支援の目途は立ち、欧州金融安定メカニズム(EFSM)を使用した70億ユーロのつなぎ融資の合意も得られた。だが、これで万事解決と考えるのは早計だ。
まず、最低でも3次支援が想定する今後3年間に関しては、欧州連合(EU)とギリシャは「監視する側」と「監視される側」の関係を続けることになる。ギリシャ国民からすれば「締め付ける側」と「締め付けられる側」と同義だ。
預金引き出しまで制限される事態に至り、「国民も事の重大さを認識したはず」との性善説に立つこともできるが、合意後、ギリシャのチプラス政権の変節に怒りを覚えた市民が暴徒化し、その鎮圧のために機動隊が催涙弾を発射する光景などが報じられているのを見るにつけ、あまり良い予感はしない。
恐らく次に同様の騒動が起きた場合、今度こそドイツが主張したような「5年間のユーロ一時離脱」やその類似案が幅を利かせる可能性が高い。
3次支援では総額550億ユーロの「価値ある資産(valuable assets)」が民営化基金に移管され、その基金がEUの監視下に置かれるため、債権者側からすれば「取りっぱぐれはない」という思いがありそうだが、本当に「価値ある資産」を根こそぎ持っていかれ、通貨ユーロも奪われた場合、ギリシャには何も残らない。
それほど一方的な蹂躙が起こる可能性は高くないが、3次支援に組み込まれた以上、「宿題」がこなせなかった時に訪れる結末はそれと近い悲惨なものになろう。長い目で見た場合、支援合意がポジティブな材料と言えるのかは疑わしく、それで幸せになれるかどうかはギリシャの忍耐次第だ。
また、EU監視下とはいえ基金の運営はギリシャ当局に任され、設置場所が同国内であることを踏まえると、「価値ある資産」の現金化が算段通り進むか定かではないという別の問題は残る。2次支援合意時、EU・欧州中銀(ECB)・国際通貨基金(IMF)のトロイカが監視のためアテネに常駐し、返済管理するので問題ないと言われたが、結果は周知の通りだ。
<一時離脱案の合理性>
それほどのリスクを背負ってまでギリシャがユーロ圏に残る意味はあるのだろうか。
確かに、ユーロ圏の円滑運営を志向する加盟国とEU当局(主に欧州委員会やECB)にとってみればギリシャの前例が「蟻(あり)の一穴」となり、今後の求心力に支障を来すという懸念があるため、離脱を防ぎたいという思いはあろう。平たく言えば、「我々の理想のためにここに残れ」ということである。
また、これまでユーロシステムとしてギリシャに供与した支援額(約3000億ユーロ、筆者試算)を焦げ付かせるわけにはいかないという思いもあるだろう。さらに、経済的理由は脇に置いても、欧州南東部がユーロ圏を含む西側陣営にとって地政学上の要衝であるという政治的理由もあろう(恐らく、これがギリシャを離脱させたくない最大の動機ではないか)。
しかし、ギリシャが債権者側の事情に付き合うためには、「永遠の割高通貨」であるユーロと半永久的な緊縮政策の2つを背負わなければならず、慢性的な痛みを伴う。バルファキス元財務相が極秘の離脱案を用意していたと暴露し話題になっているが、選択肢として検討されるのは至極合理的だ。
離脱は短期的には新通貨(ドラクマ)急落に伴う超インフレを皮切りとして深刻な景気後退を招く可能性が高く、政局も流動化しよう。だが、その代償として獲得する自身の金融政策と通貨は将来的な景気回復の切り札になり得る。過去、成功した緊縮プログラムの多くが通貨安を伴っていたことを踏まえると、緊縮と通貨高の重石を背負いつつ事態打開を強いられるギリシャの現状の方が無理筋に思える。
結局、「残留」と「離脱」の違いは「他人に苦しめられるか」「自分で苦しむか」の違いでしかない。後者の方がギリシャ国民の自尊心が幾分か守られた上で、将来的な復活の芽が大きいように感じられる。
<クルーグマン教授の例え話>
プリンストン大学のクルーグマン教授はニューヨーク・タイムズのブログで、通貨ユーロを「a Roach Motel(ゴキブリホイホイ)」に例えている。重債務国をゴキブリに例えることが適切かどうかはさておき、一度加盟したら抜けられず、通貨安という手段も封じられた状態で金科玉条の如く緊縮を強いられる現状をうまく言い表している。
このほか「監獄」や「更生施設」といった例えも耳にする。いずれの表現もユーロ圏に残留する限り、ドイツ色にかなり染まらなければ延々と「宿題」が課されるという構造的問題を捉えている。無理にドイツ色に染めようとした結果がチプラス政権という極めて扱い難い政権の誕生なのであり、ドイツの好む教条主義的な「宿題」を課す限り、第2、第3のチプラス政権が現れる可能性はある。
それが離脱であるかどうかは脇に置いたとしても、これまでとは異なる処方箋は検討されて然るべきだろう。この点、輸入関税と輸出補助金を組み合わせれば、離脱させずに通貨下落と同様の経済効果が得られるという声もある。
だが、そうした「離脱よりハードルが低い弥縫(びほう)策」こそ今後多用されやすく、ユーロ圏崩壊の「蟻の一穴」になる恐れが強い。共通通貨圏に残留させるために関税・非関税障壁を容認するのは本末転倒の極みである。
<ギリシャに残留メリットはあるか>
もちろん、EUやユーロに加盟することで巨大な経済圏において為替リスクゼロの商取引が可能となるし、国債金利も為替リスクプレミアムを除いた水準に抑制できる。これが節度を欠いた借金をギリシャに許した「諸悪の根源」のように指摘されることは多いが、調達した資金が生産性の高い投資に向けられていれば、ユーロ導入による「最大の果実」として持てはやされていたはずだ。
また、ギリシャのように経済がキャッチアップ過程にあり、慢性的に物価が上振れしやすい国からすれば、共通通貨圏に属し、同一基準で認証された財が流通することになれば、一物一価が徹底されやすくなり、物価も安定しやすいというメリットもある。さらに、少額だが、EU基金から域内格差是正のための補助金も受けられるし、パスポート検査などの出入国審査が廃止されている「シェンゲン協定」域内ならば人の往来が円滑になる。
だが、市場からの資金調達の道が閉ざされているギリシャにとって為替リスクゼロは現在進行形で享受しているメリットではない。EU基金からの財政移転にしても、十分に大きければそもそも今回の危機は起きていないわけで、さしたるメリットとは言えない。無理筋なポリシーミックスを受け入れて政情混乱に至った結果、観光客の足も遠ざかっており、シェンゲン協定の恩恵を活かせるような状況にもない。
もちろん、無事に「宿題」をクリアし、ユーロ加盟国として更生するならばそれが一番だ。これほど不遜な態度をとったギリシャを同一通貨圏にとどめ、事態を軟着陸させることが出来れば、「多様性の中の統一(Unity in diversity)」を標榜するEUの面目躍如となることも間違いない。
ただ、考えれば考えるほど、その難易度は高い。今後3年間、ギリシャとEUは再び茨(いばら)の道を歩むことになるのではないか。3次支援合意はそのスタート地点にすぎない。
ギリシャ株式市場、再開2日目も大幅下落 4大銀はストップ安圏 8/4
再開2日目となる4日朝のギリシャのアテネ証券取引所は大幅続落し、4.5%安で推移している。銀行株の下落率は30%程度に達し、相場全体を押し下げた。
ナショナル・バンク・オブ・グリース(NBG)(NBGr.AT)などの4大銀行は序盤で29%超下落し、実質的なストップ安となっている。
主要株価指数.ATGは前日、16.23%安の668.06で取引を終了。過去最大の下げとなった。投資家は債権団からのギリシャに対する追加金融支援や同国経済の悪化に対して、引き続き懸念を持っているという。
ギリシャと債権団、基礎的財政収支・成長率の基調シナリオで合意 8/11
ギリシャの政府高官によると、ギリシャと国際債権団は10日、現在協議中の支援条件の一部として、2016年と17年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の基調シナリオの予測値について合意した。
高官によると、基調シナリオでは2016年の基礎的財政収支の黒字を国内総生産(GDP)比0.5%、17年は同1.0%を見込んでいる。
基調シナリオではまた、2016年のGDPは0.5%のマイナス成長となり、17年はプラス2.3%に転じると想定しているという。
高官は「(ギリシャ支援)協議は最終段階に入った」としている。
ギリシャと、欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)からなる国際債権団は現在、最大860億ユーロの金融支援をめぐって協議している。ギリシャ政府は11日までに合意したいとの意向を示している。
ギリシャ支援合意で残るユーロ圏のもろさ 8/12
ユーロ圏の崩壊はあり得ないことなのか。ギリシャに対する新たな金融支援の正式合意が近づくなか、少なくともユーロ圏はかつてないほど強固なように見える。リスクは今や、ギリシャの離脱からユーロ圏中核メンバー間の経済的亀裂にシフトしている。
ギリシャに対する約860億ユーロの新しい支援に問題がある可能性はある。詳細は明らかになっておらず、国内総生産(GDP)の180%に相当するギリシャの公的債務を減額するという話も聞こえてこない。わずか数週間前まで、ギリシャのユーロ圏離脱は現実味を帯びていた。ギリシャ政府は支援と引き換えにすでに課されていた緊縮策にうんざりしており、欧州の主流をなす新自由主義的な思想とも相反している。他のユーロ圏メンバーも、ギリシャ離脱後の影響は対処可能だと自信があるよう見えた。
結局のところ、良識が勝ったようだ。債権団側からしてみれば、ギリシャのGDPはユーロ圏全体の2%に満たないため、同国への支援コストはごくわずかだと言える。ギリシャが改革の意思を示している限り、ユーロプロジェクトを守ることの恩恵は大きい。一方、ギリシャのチプラス首相にとっては、通貨崩壊を回避することが最優先であり、イデオロギーは二の次だ。
このことは、ユーロ圏が岩のように頑強であることを示しているのかもしれない。ギリシャのように崖っぷちに立たされ、政治的に不安定な状況である国は他にほとんど見当たらない。ユーロ圏でギリシャの次に弱いポルトガルの場合でも、強力な急進的反緊縮政党は存在しないし、緊急支援も必要としていない。
しかし実際には、ユーロ圏は依然として緊張と相違に頭を悩ませている。ユーロ安と原油安が圏内の比較的弱い経済国を後押ししてはいるものの、加盟国の不均衡な成長や過剰債務に対処したり、経済的打撃を緩和したりする方法をいまだ見いだしてはいない。
欧州中央銀行(ECB)でさえ、統合の難しさを嘆いている。欧州委員会のデータによると、ドイツの失業率が4.6%であるのに対し、フランスは同10.3%、スペインは同22%。フランスの債務は2016年までにGDPの100%近くまで増加する一方、ドイツでは同68%に縮小する見通しだ。ユーロ圏の大国は他の加盟国にとって何が最善なのかを決断できることを示したが、次の問題は自分たちにとって同じことができるかどうかだ。
ギリシャ、港湾や地方空港などの民営化急ぐ見通し=覚書 8/12
ギリシャ政府は国際債権団と合意した覚書(MOU)に基づき、港湾や地方空港、電力網会社の民営化を急ぐ方針だ。ロイターが入手した覚書の写しによると、政府保有株の売却益(銀行株を除く)は2015―17年に総額64億ユーロに上る見通しだ。
代替となる計画が提示されない限り、ギリシャ政府は今年10月までに、電力網大手ADMIEの民営化に関する「不可逆的な措置」を取ることを確約したという。
同国2大港湾のピレウス港とテッサロニキ港の株式売却期日は10月末までに発表される予定。
さらに、ギリシャ政府は地方空港の売却を「現時点での条件で」実施することも約束しており、売却先も決まっているという。昨年時点ではドイツの空港運営会社フラポート(FRAG.DE)が選定されていたが、今年1月のチプラス新政権の発足により計画は中断されていた。
ギリシャ初回支援230億ユーロ、ユーロ圏財務次官提言 8/15
ユーロ圏財務次官は、ギリシャ支援をめぐり14日にブリュッセルで会合を開いているユーロ圏財務相に対し、第3次支援策の下での初回支援として230億ユーロを同国に支払うよう提言した。ギリシャ政府当局者が同日、明らかにした。
同ギリシャ当局者によると、ユーロ圏財務次官は、債務返済に必要な130億ユーロ、および銀行資本増強のための資金として100億ユーロをギリシャに直ちに支払うよう提言した。
ギリシャ議会はこの日、新たな金融支援を受けるために必要な財政改革法案の採決を行い、可決。ユーロ圏財務相はこの日の会合でギリシャへの金融支援を決定する見込みとなっている。
ギリシャは今後も、ユーロ圏の頭痛の種に=フィンランド外相 8/17
フィンランドのティモ・ソイニ外相は、ギリシャはユーロ圏にとって今後数十年にわたり頭痛の種になるとの見方を示し、国際通貨基金(IMF)に対して新しい金融支援にも参加するよう求めた。
ソイニ外相は17日、公共放送のYLEとのインタビューで「残念ながら、ユーロ圏がこのまま続く限り、われわれはこの問題に直面し続けることになろう」と述べた。
ソイニ外相は「完全な債務減免は問題外だと考えている。ドイツも反対している。(償還期限、利回りなど)他の要因については交渉の余地がある」と話した。
外相はIMFに支援への参加を求めているが、IMFはギリシャの負担を軽減するため債務軽減を要請しており、第3次支援に参加するかどうかは現時点で不透明。
外相が所属するフィン人党はユーロ懐疑派であり、外相自身もギリシャ支援に異論を唱えている。
フィッチ、ギリシャをCCCに格上げ 支援合意受け 8/19
格付け会社フィッチ・レーティングスは、ギリシャの外貨および自国通貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)を従来の「CC」から「CCC」に引き上げた。ギリシャと国際債権団が第3次支援で合意したことで同国の債務不履行(デフォルト)リスクが低減したと指摘した。
ギリシャ政府と、国際通貨基金(IMF)などから成る債権団は先週、850億ユーロ(約940億ドル)の第3次金融支援で合意した。
フィッチは声明で、8月14日の合意により「ギリシャの民間セクターへの債務がデフォルトになる可能性は低下した」と指摘。ただ、支援が成功するかどうかのリスクは「引き続き高い」との見方を示した。
「ギリシャと債権団の間の信頼関係が修復されるまでには一定の時間が必要。また、ギリシャの政治状況はなお予測不可能だ」ともした。
フィッチは6月、支援交渉が難航しギリシャのユーロ圏離脱可能性が高まったとして同国格付けを「CCC」から「CC」に引き下げた。
ギリシャが増加する移民に苦慮、対策コストが財政を圧迫 8/20
ギリシャでは経済危機が続いているにもかかわらず周辺国からの移民が後を絶たず、対策コストが財政を一段と圧迫している。最近は中東諸国からの移民に加え、内戦の続くシリアからの難民も急増。先週だけで昨年全体の半数に近い約2万1000人が流入。今年に入ってからすでに16万人がギリシャに入国している。
ギリシャ政府は野党や人道支援団体から移民対策をめぐり批判を受けており、国連や欧州連合(EU)の関与がなければ移民問題が同国を根底から崩壊させる「緩慢燃焼性の爆弾になる」(市民擁護相)と危機感を募らせている。
ギリシャのフラブラリス国務相は、移民問題は同国や南欧諸国だけのものではなく「欧州と世界全体にとっての問題であり、早々に対応を迫られることになる」と指摘。
一方、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は18日、ギリシャに移民問題でさらに尽力するよう求めた。
ギリシャ総選挙、今度は心配無用 8/21
ギリシャで過去3年間、国民の審判を仰ぐ事態になった場合は、いつも金融市場が心配すべき理由が存在した。
この間に総選挙が3回、国民投票が1回行われ、いずれもギリシャの財政破綻とユーロ圏離脱を招く恐れがあった。
しかし恐らく9月に実施される今度の総選挙には、大きな懸念を抱く要素が見当たらない。チプラス首相は、厳しい条件がついた最大860億ユーロの支援プログラムを受け入れるという以前と180度違う方針について国民の支持を獲得し、より穏健な政権の指導者として再登場してくる可能性が大きい。
チプラス氏が現政権を樹立してからの7カ月は悲惨な状況だった。ギリシャ経済は深刻な景気後退に突入し、銀行は3週間にわたって閉鎖され、資本規制が導入された。しかし最終的に彼はユーロ圏の債権団と合意し、1月の選挙時に表明したすべての公約を事実上破棄した。
こんなひどい実績を考えるとチプラス氏が再選されそうだというのは驚くべきことと思われる。ただ彼の人気はなお高い。なぜなら汚職とも、危機をもたらした出来の悪い旧政権とも無縁である上、結局勝利できなかったとはいえ債権団相手に勇敢に闘ったとみられているからだ。
さらにチプラス氏にとって、敵対勢力が分裂しているのも幸いしている。同氏が率いる急進左派連合(SYRIZA)も恐らく所属議員の3分の1が極左の新党に合流する見通しである一方、この新党、もしくは中道や右派のどの政党も最大勢力としてSYRIZAに取って代わる公算は乏しい。だからチプラス氏は単独過半数を得られそうで、それが実現しなくても中道勢力の1つとの連立政権を成立させることができる。
残る主なリスクは、ギリシャが新たに合意した支援プログラムを着実に実行するかどうかになる。これから1カ月は選挙管理内閣が発足して政策をほとんど実施しない空白期間が続くだろう。だがその後は、合意は守ると断言しているチプラス氏が政権の顔ぶれを一新し、より有能な閣僚を起用する機会が出てくる。これが結局はギリシャの債権者や投資家が賞賛できるような、同国流の選挙での信の問い方になるのかもしれない。
ギリシャ除くユーロ加盟国の国債利回り上昇、中国利下げ受け 8/26
25日のユーロ圏金融・債券市場では、ギリシャを除くすべてのユーロ加盟国の国債利回りが上昇した。欧米の経済指標が良好だったことに加え、中国が利下げを発表したことでリスク選好度が上昇したことが背景。
前日は中国株の急落を受け安全資産に資金が流れたことで、独10年債DE10YT=TWEB利回りは0.51%と3カ月ぶりの低水準を付けたが、この日は0.76%まで上昇。ギリシャ以外の他のユーロ加盟国の国債利回りも4─16ベーシスポイント(bp)上昇した。
ただ、夏季休暇で薄商いとなっていることで相場の振れが拡大されたとの見方も出ている。
この日発表の経済指標では、独IFO経済研究所発表の8月の独業況指数が108.3と、5月以来の高水準を付けたほか、米大手民間調査機関のコンファレンス・ボード(CB)発表の8月の消費者信頼感指数が101.5と、1月以来の高水準に上昇した。
これを受けリスク選好度が上昇。ただ市場参加者は、中国が主要政策金利と銀行預金準備率を引き下げ、金融緩和による支援策を打ち出したことがリスク選好度の上昇に大きく寄与したと指摘。インベステックの首席エコノミスト、フィリップ・ショー氏は「こうした措置により 短期的な心理は明らかに安定化する」としている。
ただ、ベレンバーグのシニアエコノミスト、カルム・ピッカーリング氏は、「中国当局が一段の減速の防止に取り組んでいる姿勢を示すものではあるが、十分ではない可能性がある」と指摘。一部では今回の措置は中国経済の減速を食い止めるには不十分との見方も出ている。
ギリシャの銀行預金引き出し、7月は大幅に減少 資本規制が影響 8/27
ギリシャ中銀のデータによると、7月の銀行預金の引き出しは、資本規制の影響で大幅に減少した。7月の企業と家計の預金残高は、前月比14億ユーロ(1.14%)減の1208億3000万ユーロ(1367億ドル)で12年ぶり低水準。6月は1222億3000万ユーロだった。
減少は10カ月連続だが、6月28日に導入された資本規制の影響でペースは鈍化した。6月は76億8000万ユーロが引き出されていた。 
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7月のユーロ圏失業率、11%下回る 約3年ぶり低水準 9/1
欧州連合(EU)統計局が1日発表した7月のユーロ圏の失業率は10.9%に低下し、2012年2月以来初めて11%を下回った。イタリアで失業者数が大幅に減少した。
ユーロ圏の失業率は過去3カ月間11.1%で、ロイターがまとめたエコノミスト予想は横ばいとなっていた。
EU28カ国全体の失業率は9.5%と2011年6月以来の低水準となった。
失業者数はユーロ圏で前月比21万3000人、EU全体で23万2000人それぞれ減少した。
ユーロ圏で7月のデータを明らかにした17カ国のうち、失業者数は9カ国で減少し、5カ国で横ばいとなった。増加したのはフィンランド、フランス、リトアニアの3カ国にとどまった。イタリアは14万3000人減と6月の4万5000人増から一転して大きく減少した。
失業率が最も低かったのはドイツで4.7%、次いでチェコとマルタの5.1%。最も高かったのはギリシャで、最新の5月のデータでは25.0%だった。スペインが22.2%でこれに続いた。
ギリシャ民営化目標、今年達成できず=資産開発基金トップ 9/3
国際債権団から支援融資を受ける見返りに民営化を進め、今年14億ユーロの資金調達を目指していた件で、ギリシャが目標を達成できない見通しとなった。国有資産開発基金(HRADF)トップのStergiosPitsiorlas氏が2日、ロイターのインタビューで語った。
同氏は、今年の目標達成ができなくなったと指摘。「2016年の目標達成は現実的」との認識を示した。ギリシャは資産を売却し、来年に37億ユーロ、2017年は13億ユーロの資金調達を目指す。
ギリシャは昨年末、国内14空港の運営権をドイツ空港運営会社、フラポート(FRAG.DE)などを運営権の優先売却先に選定した。
ただ、手続きに時間がかかり、12月までに資金12億ユーロを受け取ることができない恐れがあるという。
テッサロニキ港の民営化をめぐってPitsiorlas氏は、入札条件を変更する考えを示した。当初の出資上限を67%から51%に引き下げる。3日にHRADFの取締役会で承認される見通しだ。
ギリシャ銀行にのしかかる不良債権、融資圧縮の悪循環 9/8
ギリシャ政府はようやく、欧州連合(EU)から最大860億ユーロに上る第3次金融支援を勝ち取ることに成功したが、ギリシャの民間銀行は不良債権が重くのしかかり、新たなスタートを切れないでいる。
ギリシャ政府と国際債権団の交渉が続いていた6カ月の間、ギリシャの銀行からは400億ユーロもの預金が流出。6月末にはついに、ギリシャの銀行は営業の一時停止に追い込まれ、資本規制が敷かれた。
その結果、ギリシャの銀行は深刻な痛手を負い、景気が悪化するなかで、融資の不良債権化への警戒感から貸し出しをさらに絞っている。
銀行は営業を再開し、資本規制も一部緩和されたが、民間セクターの雇用の75%を占める中小企業は、融資を受けるのが極めて困難だ。
ギリシャ経済の足元の見通しもさえない。ギリシャ政府は今年の国内総生産(GDP)を2.3%減、来年は1.3%減と予想している。
<民間投資家の動向がカギ>
当時ギリシャ首相だったチプラス氏が獲得した金融支援策には、ギリシャの銀行の資本再構築も含まれている。しかし、ロイターが今回、ギリシャ大手銀行の幹部や海外投資家に実施したインタビューでは、増資だけでは融資拡大にはつながらない、との声が多く聞かれた。
ギリシャの4大銀行の一角を占めるユーロバンク(EURBr.AT)のフォキオン・カラビアス最高経営責任者(CEO)は「経済が成長軌道に戻り、銀行の貸し出しが増えるかどうかは、多くの要因によって影響される。それは、政治的に安定しているか、財政構造改革が実行されたか、10月に予定される改革状況に関する初回審査に通るかどうか、民間投資家も参加した銀行の増資が成功するかどうか、などだ」と指摘した。
現在進行中の資産査定、続く健全性審査(ストレステスト)が完了すれば、銀行の必要な増資額が明らかになるだろう。第3次金融支援には、銀行の増資向けに最大250億ユーロが割り当てられているが、銀行関係者は、実際には100億─150億ユーロになる、と見ている。
民間の投資家が増資に応じるかどうかが、ギリシャの銀行に対する信頼感を測る上で注目される。民間の投資家から資金を多く集めることができれば、その分、EUからの金融支援を投じる額が少なくて済む。
民間投資家は2013年、ギリシャの銀行に対して合わせて30億ユーロを注入。昨年は、85億ユーロの増資に応じている。
<40%超える不良債権比率>
ギリシャの銀行にとって最大の足かせになっているのは、預金流出でもなければ、銀行株急落でもない。それは、貸し倒れる恐れのある融資であり、不良債権が増えれば資本不足の額もその分膨らみかねない。
ギリシャの銀行が抱える不良債権は、第1・四半期は1000億ユーロ超と、融資全体に占める比率は40.8%と推定されている。
ギリシャの銀行は昨年、不良債権の大半を占める企業向け融資の売却を模索した。ピレウス銀行(BOPr.AT)は、プライベートエクイティ(PE)投資のKKR(KKR.N)に法人融資を売却する取引をまとめた。
不良債権問題をめぐっては複数の解決策が提案されている。1つは「バッドバンク」を設立し、銀行のバランスシートをきれいにすることだ。公的資金が危険にさらされるという問題はあるが、海外投資家を引きつけ、貸し出しを増やすという点ではベストな選択かもしれない。
またギリシャ銀行の幹部が私的に提示しているのが、増資の一環でCoCo債(偶発転換社債)を発行すること。これは、資本が一定水準を下回った場合、株式に転換し、緩衝材の役割を果たすというものだ。
預金者を保護するためにも、不良債権問題の早急な解決が必要だ。銀行の資本再構築が今年末までに完了しない場合には、EUの「銀行再建・破綻処理指令(BRRD)」が発動されることになる。そうなれば、10万ユーロを超える預金者に損失が発生する可能性が出てくる。
一方、9月20日の総選挙を経て新政権が速やかに発足、支援条件を履行すれば、欧州中央銀行(ECB)はギリシャ国債の買い入れを開始する可能性がある。その場合は銀行の資金調達コストが低下、預金者に負担を強いるなどの「ヘアカット」は不要になる公算が大きい。
不良債権に投資するサンカティ・アドバイザーズのエグゼィティブバイスプレジデント、ブラッド・パルマー氏は「ギリシャの銀行が他の欧州諸国の銀行と違うのは、政治的、経済的な不透明感だ」と指摘。「これは、あらゆるプライシングの際に大きな差異となる」と述べた。
ギリシャの各政党党首がテレビ討論、経済危機めぐり論戦 9/10
20日に総選挙を控えるギリシャで9日、各政党党首がテレビ討論を行い、同国の経済危機をめぐって論戦を繰り広げた。
急進左派連合(SYRIZA)を率いるチプラス前首相は7月に国際債権団と合意した支援策について、ギリシャの安定化につながったと強調した。一方、同党と対立する保守系、新民主主義党(ND)のメイマラキス党首は経済に打撃を与えたと反論。SYRIZAが投資家を警戒させ、民間セクターの雇用を悪化させていると指摘した。
これに対し、チプラス氏は「われわれは公約のすべてを果たすことはできなかったが、戦って妥協案を持ち帰った。痛みを伴うかもしれないが、ポジティブな要素もある」と述べ、政権奪取後7カ月間の実績を訴えた。
世論調査によると、NDとSYRIZAの支持率は拮抗しており、連立を組むか、小規模政党との協力を余儀なくされる可能性がある。
テレビ討論には、小規模政党のポタミ、ギリシャ共産党、新党「国民連合」、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)、独立ギリシャ人の各党首も参加した。
世論調査で3位につけるネオナチ政党「黄金の夜明け」の党首は参加しなかった。
ドイツ国債利回り急上昇、一連の新発債供給や米FOMC控え 9/16
15日のユーロ圏金融・債券市場では、独連邦債利回りが急上昇した。米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えた様子見ムードで薄商いの中、相次ぐ新発債供給に備える動きが出た。
ストラテジストによると、16日の独30年債入札に加え、欧州安定メカニズム(ESM)が15日、10年債を近く発行する見込みと発表し、利回りの上昇が加速した。
独10年債DE10YT=TWEB利回りは10ベーシスポイント(bp)上昇の0.75%。7月の米小売売上高の上方修正などを受けて米国債利回りが上昇したことも、押し上げ要因となった。
他のユーロ圏国債の利回りも総じて上昇したが、スペイン国債は全体の流れに逆行。10年債利回りES10YT=TWEBは変わらずの2.13%となった。政治の不透明感を背景に最近売られたことで、国内投資家が割安感から買いを入れたことが支援したという。
ギリシャ国債利回りは年初来の低水準近辺で推移しており、10年債GR10YT=TWEB利回りは3bp低下の8.80%をつけた。
ギリシャ総選挙で与党快勝、チプラス氏が首相続投 9/21
ギリシャで20日に行われた議会(一院制、定数300)選挙は、チプラス前首相率いる与党・急進左派連合(SYRIZA)が145議席を獲得し、中道右派の最大野党・新民主主義党(ND)に勝利した。
SYRIZAの得票率は約35%。選挙前にSYRIZAと連立を組んでいた「独立ギリシャ人」は、得票率3.7%で10議席を獲得した。
選挙結果を受け、チプラス氏は21日午後に首相に就任。860億ユーロ規模の支援策の1回目の見直しを来月に控え、第2次チプラス政権にとり国内銀行の資本増強が急務となる。
チプラス氏は債務負担が軽減されない限りギリシャは景気後退から脱却できないと主張。SYRIZA幹部は、チプラス氏は債権団との債務軽減をめぐる交渉を「最初の重要な戦い」と位置付けているとしている。
チプラス氏はSYRIZA内で新たな支援策の内容をめぐり対立が見られたことを受け、国民の真意を問うために解散総選挙を実施。世論調査の結果を超える票数を獲得し、連立相手は1党のみで済みことから、より自由な政策運営が可能になると見られる。
政治評論家のアリスティデス・ハトツィス氏は今回の選挙結果について、「チプラス氏は個人的に大きな勝利を収めた。同氏はかつてない政治的な主導権を手にした」と指摘。一部アナリストの間では、チプラス氏が強い指導力を発揮できる立場を獲得したことで、債権団との交渉がこじれ、ギリシャによるユーロ圏離脱につながる恐れが出てくる可能性もあるとの懸念も出ている。
コンサルタントのユーラシア・グループによると、ギリシャが向こう2年間にユーロ圏を離脱する確率は30%となっている。
選挙で快勝したことで、チプラス氏にとり第1次政権時代の閣僚の再任が容易になる見通し。SYRIZA関係者は財務相にはチャカロトス氏が再任されるとの見方を示しているが、現時点ではまだ明確になっていない。
「独立ギリシャ人」を率いるカメノス氏によると、新内閣は23日朝に発表される。
続投後のチプラス氏が国際舞台に最初に姿を現すのは23日に開かれる難民・移民問題を協議するための欧州連合(EU)首脳会議となる。
ギリシャ首相、チャカロトス氏を財務相に再任 9/23
週末のギリシャ総選挙で与党急進左派連合(SYRIZA)が勝利したことを受け、続投が決まったチプラス首相は22日、チャカロトス氏を財務相に再任した。
また、選挙管理内閣で暫定財務相を務めたフリアラキス氏を財務副大臣に指名した。規定路線の継承を内外に示す狙いがあるとみられる。
8月のギリシャ銀行預金残高は前月比0.25%増、11カ月ぶりの増加 9/28
ギリシャ中央銀行が25日発表した統計によると、8月末時点の同国の企業・家計の銀行預金残高は前月末比で3億500万ユーロ(0.25%)増の1211億4000万ユーロ(1352億ドル)となり、11カ月ぶりに増加に転じた。
7月末は1208億3000万ユーロだった。ただ、8月も依然として2003年5月以来の低水準にとどまっている。
ギリシャ政府は6月28日、昨年10月から続いていた預金流出を阻止するため、資本移動規制を導入した。急激な預金流出でギリシャの銀行は、中銀からの「緊急流動性支援(ELA)」への依存度が高まっている。 
 

 

●10
ECB、ギリシャ向けELA上限引き下げ 流動性改善 10/7
欧州中央銀行(ECB)は6日、ギリシャの銀行向け緊急流動性支援(ELA)の上限を889億ユーロから879億ユーロに引き下げた。
ギリシャ中央銀行が7日に発表した。
同中銀は声明で「10億ユーロの引き下げはギリシャの銀行の流動性改善を反映している」と説明した。
ギリシャ向け融資30億ユーロ実行へ=欧州委員 10/22
欧州委員会のモスコビシ委員は22日、ギリシャ政府が改革を進めており、同国向け融資30億ユーロ(34億ドル)が実行されるとの見通しを示した。
同委員は仏ヨーロッパ1ラジオに「ギリシャは一定の改革を実行した。我々は30億ユーロ全額を融資する方針だ」と発言。
「11月から12月にかけては、ギリシャの銀行の資本再編とギリシャの債務問題に対応する」と述べた。 
●11
ギリシャ金融安定基金、4大銀の資本増強を支援へ=政府 11/2
ギリシャ政府は1日、銀行救済基金であるギリシャ金融安定基金(HFSF)が国内主要銀行の資本増強を支援すると発表した。各行が発行するCoCo債(偶発転換社債)や新株を買い入れる。
必要な支援の75%をCoCo債、25%を新株との交換を通じて提供する。
欧州中央銀行(ECB)によるストレステスト(健全性審査)で、ギリシャの4大銀行(ナショナル(NBGr.AT)、ピレウス(BOPr.AT)、ユーロバンク(EURBr.AT)、アルファ(ACBr.AT))は144億ユーロの資本不足を穴埋めする必要があることが示された。
ギリシャ議会が改革法案可決、第3次支援の初回審査になお課題 11/6
ギリシャ議会は6日未明、国際債権団から第3次金融支援と引き換えに求められていた改革に関する法案を賛成多数で可決した。
法案には、年金の計算に関する法律の改定、欧州連合(EU)エネルギー効率規則の順守に向けた措置、国内最大の港を売却するための措置、農業従事者に対する税優遇の廃止などが含まれる。
ギリシャは最大860億ユーロの第3次支援における初回審査を通過するため、債権団が求めている一連の改革を法制化する必要がある。
今回の法案可決は重要だが、初回融資260億ユーロの一部、20億ユーロを受け取るための審査にあたり課題がなお残っている。
ユーロ圏財務相は9日の会合で、ギリシャ政府が新たな支援を受ける条件を満たしているかどうかを審査するが、ギリシャ政府と債権団は、資本注入を受けるギリシャの銀行の不良債権を処理するためのメカニズムをめぐり意見が一致していない。
また、私学教育に対する23%の付加価値税(VAT)税率も債権団との交渉で争点として残る。ギリシャ財務省の高官は、6日中に教育費に対するVAT税率引き上げに代わる歳入増加策を発表するとしている。
ギリシャ、改革内容で債権団と全面合意 新規融資確保へ=財務相 11/17
ギリシャ政府は17日未明、住宅差押えに関する改革を含めた一連の改革案で国際債権団と合意し、新規融資の確保に近づいた。チャカロトス財務相が明らかにした。
ギリシャが先に債権団と合意した860億ユーロ相当の第3次支援策をめぐり、ギリシャが初回融資の一部を受け取るには、支援条件である改革案で債権団と合意し、ユーロ圏による改革状況の審査に通過する必要があった。
財務相は国際債権団との会合後、「重要項目すべてにおいて合意がなされた」と記者団に述べた。
同相は合意を受け、ギリシャ議会は一連の改革案の承認作業に移れるほか、ユーロ圏の財務次官会合(ユーロ・ワーキング・グループ)は20日に今回の合意を承認することになると発言。これにより、ギリシャは次回融資分20億ユーロ(21億5000万ドル)と国内銀行の資本注入分として約100億ユーロを受け取ることが可能になるとの見方を示した。
ギリシャと債権団は15日までに、改革プログラムの多くの部分で合意に達したが、住宅差押えからの保護の範囲や税金滞納の扱いが懸案となっていた。
ギリシャ政府当局者が明らかにした、住宅差押えに関する改革の合意内容によると、住宅ローンの返済が滞っている住宅保有者のうち、収入が貧困ラインを下回る世帯は差し押さえ対象から除外され、残りの世帯には融資元の銀行とローン再編を行う場合に3年間の差し押さえ猶予期間が与えられる。
ギリシャ大手4行の資本増強、資産悪化食い止めるに不十分=S&P 11/21
格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は20日、ギリシャの大手4行への資本増強は一段の資産価値の悪化を食い止めるには十分でないとの見方を示した。
資金が増強されるのはナショナル銀行(NBGr.AT)、ピレウス銀行(BOPr.AT)、ユーロバンク(EURBr.AT)、アルファ銀行(ACBr.AT)の4行。 欧州中央銀行(ECB)が実施したストレステスト(健全性審査)によると、4行は基本シナリオの下では総額44億ユーロの追加資本が必要。厳しいシナリオの下ではこの額は144億ユーロとなる。
S&Pは4行に対し実施が予定されている資本増強は、向こう1年から1年半の間に発生する可能性のある損失を吸収するに足りるに過ぎないと指摘。4行が不良債権問題に適切に対処するには、ECBが基本シナリオの下で想定した額より20億─40億ユーロ多く必要になるとの試算を示した。
ギリシャ、16年までの成長率予想を上方修正 15年はゼロ成長 11/23
ギリシャ政府は20日公表した予算案で、2015、16年の国内総生産(GDP)見通しをいずれも上方修正した。15年はゼロ成長(従来予想は2.3%のマイナス成長)、16年の成長率はマイナス0.7%(同マイナス1.3%)と見込んでいる。
予算案では、16年の国債利払い費を除く基礎的財政収支の黒字をGDP比0.5%とする目標を維持。政府は、これにより社会保障政策の推進が可能となると説明している。
ただ、社会福祉予算は1億ユーロにとどまった。歳出削減規模は57億ユーロで、このうち年金が18億ユーロ、国防費が5億ユーロ。また、政府によると、民営化による歳入は当初予想を下回る見込みという。
同国議会は19日、新たな金融支援の条件として債権団から要求された改革を実施するための法案を可決した。
同国財務省は「経済状況が悪い中での予算案提出だが、見通しは非常に明るい」と強調。「16年予算案は規模は小さいが、今後数年の政府の政策実施に向けた重要な一歩だ」と説明した。
エコノミストらは、銀行預金の流出抑制を目的に6月に実施された資本規制の影響が予想より軽微なことから、修正後の政府GDP予想は現実的だと分析している。
第3四半期ギリシャGDP改定値、前期比‐0.9%に下方修正 11/27
ギリシャ統計庁が27日発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)改定値は、季節調整済みで前期比0.9%のマイナスとなり、減少幅は速報値の0.5%を上回った。資本規制により投資、輸出や個人消費が悪影響を受けた。
前年同期比(季節調整済み)では1.1%減。速報値は0.4%減だった。
ナショナル・バンク(NBG)のエコノミスト、ニコス・マギナス氏は「今回の統計は、資本規制が輸出減少を招く中で不透明感により投資支出が大幅に減少したことを示している」と述べた。
資本投資は前期比で7.0%減少。輸出は7.1%減となった。半面、個人消費は比較的底堅く、1.0%減にとどまった。輸入は16.9%急減した。
マギナス氏は「通年の見通しを据え置き、GDPはマイナス0.5%程度になるだろう」と述べた。
第2・四半期は前期比で0.4%増から0.3%増へ、前年同期比で1.1%増から0.9%増へ、それぞれ下方修正された。 
●12
ギリシャ製造業PMI、11月は48.1 7カ月ぶり高水準 12/1
マークイットが発表した11月のギリシャ製造業購買担当者景気指数(PMI)は48.1となり、前月の47.3から上昇、7カ月ぶり高水準となった。景気拡大と悪化の分かれ目となる50は15カ月連続で下回っている。
マークイットのエコノミスト、サミュエル・アガス氏は「ギリシャ製造業は安定に向かっているようだ。稼働状況の悪化は鈍っており、政府の緊縮財政策に緩やかに適応していることを示している」と述べた。
産出・雇用指数は依然として割り込んではいるが50の水準に近づいた。新規受注と購買指数が急低下し、資本規制により消費が抑制されている状況を示した。
ただアガス氏は、産出価格の低下とユーロ安で消費が喚起され、製造業は2016年の序盤までに安定する可能性があるとの見方を示した。
ギリシャ、難民対策でEU支援受け入れ決定 12/4
ギリシャは3日、同国に押し寄せる難民への対応で、欧州連合(EU)の支援を受け入れることを決定した。ギリシャ北部の国境管理やエーゲ海諸島の国境ガード、立ち往生している難民へのテントなどの供給でEUの支援を受け入れる。
4日のEU内相会合では、ギリシャを経由してドイツなど欧州の豊かな国を目指す難民の問題で、ギリシャの対応策が十分でないという問題について協議が予定されているが、その直前にギリシャがEUの支援受け入れを決定した。
EU当局者は、欧州各国の出入国審査の原則廃止を定めたシェンゲン協定からギリシャを外すことはないと公言しているが、外交筋によると、4日の会合までに難民対策でEUとの協力姿勢を示すよう、ギリシャに対する圧力があった。
ギリシャ議会が16年予算案可決、年金削減や増税など緊縮盛り込む 12/7
ギリシャ議会(定数300)は6日未明、2016年予算案を賛成多数で可決した。予算案には、欧州連合(EU)など国際債権団が支援の条件として履行を求めている年金削減や増税など緊縮策が盛り込まれた。
ギリシャは8月、最大で860億ユーロの第3次支援で合意した。
可決された2016年予算案は、年金や国防費をそれぞれ18億ユーロ、5億ユーロ削減するなど、合わせて57億ユーロ(約62億ドル)規模の歳出カットを盛り込んだ。削減額は、今年の15億ユーロを大幅に上回っている。また、20億ユーロ以上の増税も盛り込まれた。
予算案の採決の結果は、賛成153、反対145、欠席2だった。
チプラス首相は採決前、議員らに対し「社会正義への配慮も必要ななか、今回の予算案作成は政府にとって厳しい仕事だった」と述べた。
ギリシャが改革の詳細でユーロ圏と合意、10億ユーロの融資獲得へ 12/14
財政再建を進めているギリシャのツァカロトス財務相は11日、同国がユーロ圏諸国から10億ユーロの支援融資を得る前提条件の詳細について、ユーロ圏と合意に達したと明らかにした。支援融資は最大860億ユーロの金融支援の一環。
ギリシャ政府は合意を実行に移すための関連法案を議会提出し15日に可決にこぎ着けた上で、18日までに10億ユーロの融資を受領する算段だ。今回固まったのは、ユーロ圏への債務返済などに充てるために新設する基金の制度設計や、国営電力会社PPCの完全子会社の送電会社ADMIEの株式売却、不良債権の流通市場整備など。
新基金は、現行のギリシャ資産開発基金(HRADF)とギリシャ金融安定基金(HFSF)、不動産、政府が保有するPPCの株式51%で構成。ギリシャ政府当局者は「新基金には監査委員会を設け、構成メンバーは政府とユーロ圏諸国が任命する」と指摘した。
監査委員のうち3人をギリシャ、2人をユーロ圏が選任し、ギリシャはユーロ圏、ユーロ圏はギリシャの人選に対して拒否権を持つ仕組み。監査委員会は新基金の経営陣を任命する。
ADMIEについては、株式の少なくとも51%をギリシャ政府が保有することでユーロ圏と合意した。
チプラス首相は議会で「ADMIEを政府の手中に維持することに成功した。われわれはユーロ圏との厳しい交渉で大きな勝利を収めている」と主張した。ギリシャのサマラス前政権は、ADMIE株の66%を売却する方針を決めたが、チプラス政権が今年1月に誕生し、売却を中止。8月の支援正式決定時、ギリシャとユーロ圏は、ADMIE株の売却に向けた入札を再開するか、ギリシャの電力市場を開放する代替策をまとめることで一致していた。
ギリシャのエネルギー省当局者によると、ADMIE株の残り49%のうち20%は特定の個人投資家に売却され、残り29%は浮動株としてアテネ証券取引所で取引されるという。
同当局者は「(ギリシャ以外の)欧州の送電会社1社が少数株主として(ADMIEの)株式を保有するよう(調整に)努めている」と話した。 一方、不良債権の流通市場整備をめぐっては、中小企業や個人の不良債権の取り扱いに関してギリシャがなおも抵抗。ハゲタカ投資家が中小企業や個人の不良債権を安値で買いたたき、資金回収を行うようなことが起きないようにする考えだ。
ギリシャのスタサキス経済相は、住宅ローンや消費者融資、中小企業融資などの不良債権は、流通市場の対象外だと強調。2016年2月15日までに規制の枠組みを整備すると語った。
ユーロ圏、ギリシャへの支払い暫定承認 18日までに最終決定=当局者 12/18
ユーロ圏の副財務相らは17日、ギリシャに対する10億ユーロの支援金支払いを暫定的に承認した。欧州連合(EU)当局者が明らかにした。ギリシャ側が社会的公正に重点を置いた経済対策法案の議会審議の見送りを決めたため。
当局者は「欧州安定メカニズム(ESM)理事会が18日夜に支払いをすませられるよう、(最終決定は)18日までに行われる見通し」とした。
チプラス首相は当初、同経済対策法案を議会に提出していたが、複数の関係筋によると、国際債権団が難色を示していた。 
●ギリシャ問題と3つの破綻原因 2015/7

 

以前からギリシャ問題に関する報道ニュースが賑わっていますが、ギリシャではいったい何が起きているのでしょうか。
ギリシャの財政破綻危機は突発的な事故によって起きた問題ではなく、ギリシャならではのあらゆる問題が絡まって発生している問題です。ギリシャのこれまでの経緯や、ギリシャが財政破綻寸前に陥っている原因などをわかりやすく紹介していきます。
ギリシャ危機とは?
ギリシャが財政的な危機に陥ってしまったのはここ最近の話だけではありません。
ギリシャ危機は2009年頃から騒がれており、その実態はギリシャ政権が変わったことで明らかになりました。
政権交代前の政府は財政赤字の対GDP比を3.7%としていましたが、実際は12.7%であることが政権交代によって発覚し、ギリシャは数字を誤魔化して信用と資金を各国から調達していたことが分かりました。
これによってギリシャに対する他国の目は変わり、信用と資金調達の術を失ったギリシャの資金繰りはさらに悪化していくことになります。
これを見た欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)は2010年にギリシャに対して、今後3年間で約1,155億ユーロの融資を実施する話で合意することとなります。
ギリシャはこれを機に3年間で300億ユーロの財政赤字の削減や増税、公務員のリストラなどに務める緊縮政策を始めますが、突然のこれらの政府の対応に国民からの反発は大きなものとなっていきます。
そして2015年、総選挙によって反緊縮政策を掲げるチプラス新内閣が発足します。チプラス首相が率いる右派連立政権はギリシャがユーロ圏に留まりながらも、現在の厳しい返済条件を緩和していく考えを持っている政権です。
○今のギリシャの状況
ギリシャは2015年6月中にIMFへの融資資金の返済をしなければなりません。
ところが、ギリシャは融資資金の返済ができるほどの緊縮政策がうまくいっておらず、条件の緩和交渉も6月27日に決裂しています。
現在のギリシャは国民投票で反対多数となり、国民が緊縮政策を否定する答えを出しましたが、ギリシャの姿勢は変わらずEUからの支援を受ける考えを持って交渉しています。
ギリシャが破綻寸前に陥った3つの原因
ギリシャがこのような手を尽くす術が全くない状況に陥ってしまった原因には、いくつかの原因が挙げられます。
○ギリシャが財政状況を誤魔化していた
ギリシャはEU加盟国であり、ユーロが使用できる国です。
ユーロが使用できる国になる為には一定の基準をクリアする必要がありますが、ギリシャはEU加盟国になる為に財政状況を誤魔化して参加基準を満たしました。参加基準を満たすことによってギリシャは一つのブランドを手に入れます。
そのブランドは「EUに参加できるほどの財政基準を満たしている国」という信用を得ることができるブランドであり、この信用があることによって世界の投資家などはギリシャを加盟前よりも信用してお金を貸すようになります。そして、その信用によって今までよりもさらに低金利で資金を調達できるようにもなってしまいました。
借金が多い国にはユーロが使えない決まりがありますが、当時のギリシャ政府はそのユーロを使えるようにする為に財政状況を粉飾して加盟国となってしまった為、元々返済できない国の借金を余計に増やしてしまいました。
その粉飾は2009年の政権交代によって明るみに出ることとなります。
○公務員の多さとライフスタイル
ギリシャは労働者の4人に1人が公務員であると言われています。
ギリシャは社会主義政権時代が長かったことから、公務員が優遇される傾向にあり、一旦採用した公務員は仕事の出来を問わず一切解雇をしないと言うシステムまであったほどです。
そのような緩んだ勤務状況を招くシステムと公務員の多さは国として、経済としてのクォリティの低下を招くことは避けられません。
さらに、ギリシャは労働時間が非常に短い国としても知られています。
ギリシャのライフスタイルは日本とは真逆で、午前中のみ仕事をして、昼食のあとの午後は昼寝をしたりのんびり過ごすといったライフスタイルが浸透しています。
圧倒的な仕事効率を図れば午前中のみ仕事をするだけでも、業績を上げていくことは不可能ではないかもしれませんが、国全体がそのようなライフスタイルでは経済の発展が起きないのも自然なことと言えます。
ギリシャは世界的にも有名な観光地として知られており、国の主な収入源は観光業によって成り立っています。ところが、ギリシャでは観光業以外の産業で特に目立って秀でた産業がない為、ギリシャの経済規模は然程大きいものとは言えません。
このような産業不振が引き起こされている原因にはギリシャ国民のライフスタイルや、優遇され過ぎている公務員制度が関係していると言えます。
○国の政策が変化していない
ギリシャは財政状況に見合わない国民に手厚い政策が施されています。
日本に比べて年金額は非常に多く、公務員に対する給料も仕事の出来関係なく、高給となっていました。
そのような政策は昔から変化しておらず、時代に合わせて国の政策が対応しきれていない現状があります。
さらに、この手厚い政策費用を国が捻出できていたのは、EUに加盟したことによる偽の信用があったからこそ成り立っていたものです。粉飾によるEU加盟が本来ならば借りることのできなかった借金を可能にさせ、今のギリシャの借金を余計に膨らませています。
今後のギリシャはどうなるのか
ギリシャは7月5日に行われた国民投票でEUからの緊縮政策の要求に反対しました。
この反対が意味するものはユーロ圏から離脱することを間接的に表明しているようなものであり、ギリシャがユーロ圏から離脱した場合、世界的な悪影響がもたらされる可能性が高いと考えられます。
そして緊縮政策を否定したギリシャは、EUなどからの融資を受けることができなくなり、金銭面での身動きが取れなくなるでしょう。結果、ギリシャ国内の銀行休業が長期化し、ギリシャ経済は今よりもさらに悪化します。
他国からの支援が期待できなくなったギリシャがこの状況から脱却する為には、ギリシャは新たな通貨を発行するしか道はありません。つまりそれは旧通貨のドラクマの復活を意味します。
ドラクマに切り替わった瞬間のギリシャ経済はドラクマの価値が圧倒的に低いことからハイパーインフレに突入し、最初の数か月間は国民に厳しい生活環境を強いることとなりますが、それもある一定のラインまで痛みを耐えきれば、徐々に国(ドラクマ)の価値も戻っていき、ユーロ圏に居続けるよりも早く国の再建に繋がっていくと考えられます。 
●ギリシャ経済危機の理由原因 2015/7
数年前から、ギリシャの経済状況が危機的状況にある、という報道を何回か耳にしたことがあるかと思います。いわゆる“ギリシャ危機”と呼ばれる経済危機ですね。この経済危機ですが、どうやら2017年に再び大きな転機を迎えると言われています。そもそも、いったいなぜ、ギリシャはここまでの経済危機に陥ってしまったのでしょうか? 長年続いているギリシャ経済の危機的状況について、これまでの流れをまとめながら、最新情報について解説していきます!
ギリシャ危機とは?
まずはギリシャ危機について振り返ってみましょう。
ギリシャ危機とは、2010年頃から騒がれるようになったギリシャ共和国における経済危機です。
ニュースでも一時期、毎日のように報道されていたため、何となくでも知っている人は多いかと思います。
このギリシャ危機の発端は、2009年10月。当時、政権交代があり、全ギリシャ社会主義運動のゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ新政権が誕生したことにあります。
この新政権(当時)によれば、新民主主義党が率いていた旧政権は、財政赤字を隠ぺいしていたらしく、GDPの4%程度と発表していたギリシャの赤字は、実際には13%ほどだったというのです。
ギリシャはEUに参加し、ユーロを使えるようにするために、財政赤字を粉飾していたわけです。
つまり、EU加盟という目先の出来事のために、「財政状況はそれほどひどくないですよ」と、ヨーロッパ各国を騙していたことになります。
これにより、当然ながらギリシャの信頼は失墜。各国の格付け会社がギリシャ国債の格付けを引き下げていきます。そして、『ギリシャが債務不履行(デフォルト)に陥るのでは?』との不安から、ギリシャ国債が暴落…。
ギリシャはEU加盟国だったため、ギリシャ国債とともに、ユーロまで暴落してしまったのです。そして、IMFやEUは、ギリシャに対して融資を行っていくわけですが、その金融支援もなかなか上手くいきません。
というのも、IMFとEU(とくにドイツ)、そしてギリシャが対立してしまっているからです。
何故対立しているかと言うと、
・ IMF→ギリシャに緊縮財政を、EUには債務削減を要請
・ EU→IMFが協力することを前提として、債務削減は受け入れられない
・ ギリシャ→難民問題まで起きてしまい、財政緊縮は限界に近づいている
と、それぞれがそれぞれの主張に反対する立場をとってしまっているのです。
この対立が原因となって、3回目のギリシャへの金融支援に遅れが生じています。このことは現在まで尾を引いて、2017年には、再びギリシャに経済危機が訪れるのではないかと言われる状況を迎えてしまいました…。
ギリシャ経済危機の原因は過剰な公的サービス!
では、そもそもなぜ、ギリシャの経済危機は起きてしまったのでしょう?その原因に迫っていこうと思います。
まず1つ目は、ギリシャの公的サービスが過剰に充実していたことにあります。
具体的には、
・ 病院の診察料が無料
・ 大学の学費が無料
・ 公的年金は現役賃金の95%を保証
といった、世界でも類を見ないレベルの、高水準の福祉政策ですね。
同時に、これらの公的サービスを実現するために公務員も多く採用されており、全労働人口の20%以上が公務員だったそうです。それなのに、経済成長戦略はなく、構造改革をしなかった。これこそが、ギリシャ経済危機のきっかけを起こしてしまったのです。
それに加え、ギリシャはEUに加盟するため、財政状況を粉飾する嘘をつきましたね。
つまるところ、ギリシャ経済危機を招いた原因というのは、ギリシャの自業自得とも言えるわけです。その結果、ギリシャは融資を受ける代わりに、財政緊縮を求められるわけです。
当然ながら、これにはギリシャ国民が反発します。その結果が現在のチプラス政権、つまり、国民に負担を強いることを許さないとする、緊縮財政反対派の急進左派連合が、国民から大きな支持を集めることとなったのです。
ギリシャ経済危機の日本への影響は?
ギリシャの経済危機は、日本に影響はあるのでしょうか?これについても解説していきますね。
まず、ギリシャの経済危機そのものが直接日本に影響することは少ないです。
しかし、ギリシャがEU離脱してしまう事態にまで発展すると、日本にも影響が起きてしまうでしょう。2016年に、イギリスのEU離脱が決定したことで、一時は円が不安定になりました。日本円は世界的にはある程度『信頼がある』とされていますから、ギリシャがEU離脱することで、ユーロに対する不安が募り、ユーロが売られ、円が買われるという流れになってしまうと、円高ユーロ安を招くことになるでしょう。そうなると、日本経済は再び停滞していく可能性があります。
つまり、ギリシャ経済危機によるギリシャの財政破綻が日本に影響を与えるのではなく、ギリシャ経済危機 → 第二次リーマンショックを引き起こす → 世界経済が恐慌状態に陥るという点で、ギリシャの経済危機が、日本でも危惧されているわけです。
まぁ、第二次リーマンショックと言うと、日本だけの問題ではなく、世界的な恐慌になってしまうわけですが。
まとめると、ギリシャ経済危機が日本に与える影響は…リーマンショックやイギリスのEU離脱、トランプショックなどと同じで円高になることを頭に入れておくと、いいかもしれませんね。また、世界的な影響としては、大恐慌に陥る恐れがあり、これもまた日本に影響するでしょう。日本からは遠い国で起きていることではありますが、決して他人事だと思わないようにしてくださいね。とは言っても、個人レベルでどうにかできる話ではないのも、また事実ですが…。

2010年頃に発生したギリシャ経済危機について、ギリシャ経済危機が起きた原因・これまでの経緯などを紹介してきました。
2017年には、再びギリシャの経済が危機的状況となると言われています。というのも、2017年7月には、ギリシャが初の国債返済の時期を迎えるからです。
さらには、ヨーロッパだとドイツで議会選挙、オランダでも総選挙、フランスで大統領選挙が行われます。選挙の結果次第では、これまで行ってきたギリシャ支援の方針が一気に変わってしまうこともありえるのです。 
●なぜギリシャは財政破綻の危機に強気でいられるか 2015/8 
左派政権がデフォルトを招く
債務不履行(デフォルト)の瀬戸際にあり、ユーロ圏の信用不安を引き起こしているギリシャ。なぜこうなってしまったのでしょうか。発端は1974年の民主化で政権に就いた、パパンドレウ率いる中道左派の全ギリシャ社会主義運動(パソック)の採った政策です。パソックは支持母体が国家公務員の労働組合です。官公労を支持母体とする日本の民主党とよく似ていますね。このパソックが支持者に公務員のポストを気前よくばらまき、手厚い福祉を公約した結果、国民の5人に1人が公務員となり、膨大な人件費と過大な福祉予算によって、国家財政は傾きました。しかもGDPの13%超に達していた財政赤字を1%と偽るという国家ぐるみの粉飾決算によりユーロ加盟を果たす(2001年)と、ユーロの信用力を利用し、たびたび赤字国債を発行しては資金調達を続けたので、財政状態はますます悪化しました。
ギリシャの粉飾決算が明るみに出ると、ギリシャ以外にも財政赤字の大きかったスペイン、ポルトガル、アイルランド、イタリアなどにも疑惑の目が向けられ、軒並み国債が暴落、これらの国に貸し込んでいたドイツやフランスの金融機関もあおりを受け、ヨーロッパ経済は大混乱。統一通貨ユーロの信用も大きく損なわれてしまったのです。それでもEU(欧州連合)側はギリシャを見捨てず、公務員の人員削減、年金の減額、増税など緊縮財政を行うことを条件に、欧州中央銀行(ECB)が追加融資を行ってきました。
ところがギリシャでは、今年1月に行われた総選挙で「年金も公務員数も減らさない、増税はしない、カネは外から借りるが、返済の予定はない」という「反緊縮財政」の公約を掲げた、チプラス党首率いる急進左派連合(シリザ)が勝利。日本でいえば、共産党+社民党+反原発運動みたいな政権が生まれたのです。このためドイツを中心とするEU側が態度を硬化させ、デフォルトの危機に陥ったのです。
一般に左派政権は「大きな政府」を志向します。福祉を手厚くし、公共事業に力を入れ、国営企業を増やすから、歳入より歳出のほうが大きくなります。これまでのデフォルト経験国の多くが左派政権です。たとえば、アルゼンチンは過去に何度も対外債務のデフォルトを宣言していますが、イギリスとのフォークランド紛争(82年)で軍事政権が倒れ、民政移管で政権に就いた左派の急進市民連盟が、予算のばらまきを行ったことが原因です。
破綻すれば輸出増となるか?
そんな破綻国家ギリシャを、ユーロ圏が見捨てないのはなぜでしょう? それはギリシャがロシア(冷戦期はソ連)の南下政策に対抗する重要な位置にあるからです。ここを押さえれば、クリミア半島のセバストポリ軍港を拠点とするソ連黒海艦隊は地中海に出ていけません。逆に、ソ連側がギリシャを保護国化してしまえば、地中海や中東、アジアへのアクセスが容易になります。だからアメリカは、ギリシャとトルコに多額の援助を与え(マーシャル・プラン)、NATO加盟を認めたのです。この構図は今も同じ。ユーロ圏を構成するEU諸国は、ウクライナ問題などをめぐりロシアとは緊張関係にあります。EUに見捨てられたギリシャがロシアや中国に接近し、経済支援の見返りに軍事協力を認めたりすれば、ユーロ圏にとって軍事的な脅威となります。だからEU側も、ギリシャに「ユーロ圏から出ていけ」とはいえないのです。
実は地政学的にギリシャと似た位置にあるのが朝鮮半島です。経済的にほぼ破綻状態にある北朝鮮が崩壊しないのは、中国とロシアの支援があるから。北朝鮮は何度も債務を踏み倒してきた困った国ですので、本音では、両国とも積極的に援助したいわけではないでしょう。しかし、北朝鮮が破綻して、韓国に併合されるようなことになったら、半島全体が親米政権となるおそれがある。それは中国やロシアとの国境まで米軍が迫ってくることを意味するため、両国としてはなんとしても避けたい。だから、何度踏み倒されても北朝鮮に援助を続けるしかないのです。
ギリシャのチプラス首相はインタビューで「(ユーロ加盟国が)われわれをユーロ圏から追い出すことはないだろう。代償は甚大だから」と語っていました。これまでも最後はユーロ側が折れて助けてくれたから、今回も大丈夫だろうと高を括っているのです。そういうところは韓国も似ています。
日韓併合(1910〜45)の間、日本が莫大な資金を出して、韓国のインフラを整備しました。戦後の65年に日韓基本条約を結んだときには、日本は韓国に対し5億ドルの経済援助を行いました。当時の韓国の国家予算は3.5億ドルです。97年のアジア通貨危機のときも支援し、通貨スワップを結んで通貨の安定を助けてきた実績もあります。それなのに韓国がいまだに日本に対し、植民地時代の謝罪と賠償を要求し続けるのは、要求すれば、日本は最後にはカネを出すということを、それまでの経験で学習したからにほかなりません。
さて、もしユーロ側からもう助けないとさじを投げられ、昨年来の原油安で苦しむロシアも、上海株暴落に見舞われている中国も、余裕がないからと援助をしてくれなかったら、ギリシャはどうなってしまうのでしょうか。
まず、現在国内で流通しているユーロは早晩底をつき、公務員給与の支払いも国債の返済もできなくなります。しかし、ギリシャには通貨発行権がないので勝手にユーロを刷るわけにもいかないから、かつての通貨「ドラクマ」を再発行するしかないでしょう。でも、財政破綻した国の通貨に信用などないので、結果的に猛烈なインフレに見舞われます。インフレで貨幣価値が下がれば、国民の生活がいま以上に苦しくなるのは避けられません。
もっとも、インフレは通貨安を招くので輸出には有利。たとえばロシアは98年のデフォルト後、通貨ルーブルの暴落で安くなった原油の輸出が伸びたため、ほどなく経済は回復しました。韓国もアジア通貨危機で景気が低迷しましたが、サムスンなどの輸出産業は通貨ウォンの暴落を追い風として急成長し、やがて韓国経済を牽引するまでになったのです。ただ、ギリシャには主な産業がオリーブなど農産物輸出と観光しかないので、通貨安の恩恵はあまり期待できません。結局は従来どおり、ユーロ圏諸国の援助にすがるしかないでしょう。 
●日本がギリシャのように破綻しない理由 2015/8
いくら借金をしているか、いくら資産を持ってるか
現在、ギリシャが事実上の債務不履行に陥っている。ユーロ圏にとどまるためには、多大な困難を乗り越えなければならない。
これに伴い、「政府の債務は日本のほうがギリシャより大きい。日本の財政は大丈夫なのか」という声が上がっている。
日本では20年以上にわたって政府の歳入より歳出が多い状態が続いている。日銀の資金循環統計によれば、地方公共団体を含めた日本の一般政府の負債合計は2015年3月末で1206兆円、名目GDP490兆円の246%に達した。IMF推計によるギリシャの対GDP比176%より大きい。
政府がこうした自転車操業を行っている状況はもちろん、望ましいことではない。しかし、日本の政府債務の対GDP比がギリシャに比べて大きいとしても、そこだけを捉えて「このままいけば、日本もギリシャと同じように債務不履行に陥り、経済がめちゃくちゃになる」と考えるのは大間違いである。
日本政府はかつても今も、「近い将来に資金繰りがつかなくなって債務返済が滞る」という状況にはない。世間の注目が集まっているいい機会なので、この点について述べたい。
ある人がお金持ちか貧乏かを考えるなら、その人がいくら借金をしているかだけでなく、いくら資産を持っているかも見なくては判断できない。当然、国家・政府も同じはずなのだが、財政危機を唱える人々はなぜかそこに言及しない。
日本の一般政府は、債務返済のために現金化できる資産を売り払ってきたギリシャ政府と異なり、15年3月末でまだ574兆円に達する金融資産を保有している。それを負債総額から差し引くと、残った分はGDP比で130%弱となる。
よい状態とはいえないが、一般政府の純債務残高が14年末で312億ユーロ、GDP比で174%となるギリシャよりはましといえる。日本では金融資産のほか、政府が保有する土地や官庁の建物など実物資産も相当な額に上る。
しかも日本は官民を合わせて見たとき、世界で最も多くの対外資産を持つ純債権国である。日本の対外純資産は14年末時点で366兆円と、24年連続で世界一である。このため、ギリシャ問題のような経済危機が起きると、世界の投資資金が円に集まり、円高が発生する。つまり、日本政府が発行している日本の円は、ECBが発行するユーロより、米国政府が発行する国債より信用があるということだ。対外純債務がGDPを大きく超えているギリシャとは、この点がまったく異なる。
日本では政府の税収を担保する家計の金融資産も、15年3月末で1700兆円以上と莫大だ。財務省は「政府債務というツケを次代に残すな」というが、家計の保有資産もいずれ将来世代に移転されることになる。日本人ほど将来世代のことを考えている国民はいない。
日本政府の債務は、円建てで発行されている。このため返済を求められれば、日銀でお金を刷ることにより、すぐに返すことができる。
同じことはギリシャにはできない。ギリシャの通貨はユーロで、借金もユーロ建てである。ユーロはECBが発行しており、ギリシャ政府はECBにお願いしてお金を貸してもらわなければ、政府の債務を返済できない。そのためには、ドイツなど他のユーロ加盟国を説得しなければならない。そこも日本とは決定的に違うところだ。
もちろん、日銀で刷ればよいといっても、あまりお金を刷りすぎればインフレになってしまうが、今の日本はインフレではなくデフレなので、そこを心配する必要はない。
そもそも、市場が日本国債が返済不能となることを心配しているのであれば、高い金利を約束しない限り、誰も日本国債を買ってくれないはずである。
ところが、日本国債の発行金利は、15年7月初めの10年国債で、年率0.5%前後であり、15%近いギリシャ国債とは比較にならない。同時点の米国10年債、イギリス10年債はどちらも2%台である。それだけ日本国債は、マーケットで返済の確実性を信頼されている。
ギリシャの財政悪化と、日本の消費税引き上げ
エコノミストの中には、「今でこそマーケットは平穏だが、いつ財政の不均衡のために金利が高騰するかわからない」という人もいる。本当にそう思うなら、国債を空売りすればいいだろう。国債金利の高騰とは国債価格の暴落だ。空売りしておけば大儲けできる。
国債価格が暴落すると脅かそうとするオオカミ少年的エコノミストは、みな口だけの評論家であって、自分で自分のいうことを信じてリスクを取っていない(そうでない人がいたら教えてほしい)。実際にリスクを取って市場で日本国債を売買しているプロのトレーダーたちは、どこの国の国債よりも日本国債を信用している。だから日本国債の金利は世界一低いのである。
もう一つ、ギリシャと日本で決定的に違う点がある。
日本では安倍政権の登場により、アベノミクスの第一の矢、黒田東彦総裁率いる日本銀行による積極的な金融緩和によって、日本経済を活気づかせることに成功した。これは円という単独通貨ゆえに、自らの意思で金融緩和を実行できたからだ。
ギリシャには同じことはできない。ギリシャの金融政策はECBによって決められ、ECBはユーロ全体の景気や雇用状態を見ながら金融政策を決定しており、ギリシャの個別の事情に合わせてはくれない。
ギリシャ国民の生産性を考えれば、本来は中央銀行がもっと緩和的な金融政策を実施し、通貨価値を下げることで国としての競争力を高める必要がある。現状の為替レートでは、ギリシャは輸出入のバランスが取れず、経常赤字を続けることになる。
米コネティカット州の私の自宅近くにある朝飯屋の女主人はギリシャ出身だ。「ギリシャの主要産業は観光業です。ドイツの都合のいいように決められる割高のユーロでは、円安で外国人ブームの日本とは反対に旅行客が逃げてしまいます」という。
日本の消費税に近い付加価値税を上げたりすれば、かえってギリシャの財政が悪化する可能性があることは、日本の消費税引き上げの経験からも明らかであろう。
ドイツとギリシャでは生産性が違うため、同じ通貨を使い同じ為替レートで競争したら、必ずドイツが勝つことになる。もしそうなったとき、お互いの財政が共通なら、儲けているドイツが利益の一部を税金で回収してギリシャに回すことで、両国の生活水準の格差を抑えることができる。しかし現実にはユーロ経済圏では、通貨は共通でも各国の財政は別なので、ギリシャがドイツから所得を移転してもらうのは無理。債務の減免くらいにとどまる。
ドイツの言い分は、幕下の力士に幕内の力士がユーロという土俵を変えずに、すぐさま体質を改善して対等の相撲を取れと命じているようなものだ。財政の構造改革も必要だが、ルールそのものを大きく変えなければ十分ではない。
この先、何らかの改革によりギリシャの生産性が急上昇すれば別だが、そうでもない限り、このままユーロ圏に留まったとしても、ギリシャの苦悩は繰り返されるであろう。
米経済学者ポール・クルーグマンは、ギリシャの国民投票の直前に米NYタイムズ紙上で、「ギリシャ国民はEUの求める緊縮財政に『NO』というべきだ」と述べていた(15年6月29日付)。英フィナンシャルタイムズ紙のマーティン・ウルフも、「ユーロに残れば、ギリシャの体験した苦難は繰り返される。離脱すれば目先で調整の苦しみがあり、将来も未知の試練が待っている。しかし、紺ぺきのエーゲ海に飛び込むつもりでギリシャ経済を再生したらどうか」と述べた(同30日付)。
復興予算の調達に大きな問題は生じなかった
私も同意見である。ユーロはヨーロッパ統一という政治的スローガンを満たし、加盟国に利益をもたらすはずだったが、ギリシャは違った。ユーロから離脱し、独自通貨に戻して自身の中央銀行が通貨を発行するようになれば、景気を回復させることができる。そもそも、最初からユーロに加盟などすべきではなかった。
財政赤字一般の議論にもどろう。確かに、財政が悪化すると急な財政出動が必要になった場合に対応できないし、予算の多くが金利の支払いに消え、本来の支出に回せる額が減ってしまうという理屈は正しい。
しかし実際は、11年に東日本大震災が発生し、政府は総額25兆円もの多額の復興予算を計上したが、その調達に大きな問題は出なかった。国債の利払いについては、15年度予算で10.1兆円と、歳出全体の10%強に収まっており、アメリカ、イギリス、ドイツなど、世界の主要国のいずれよりも低い。
政府が過大な債務をチャラにしようとしてインフレを起こすのが、最も大きな心配である。悪性のインフレが発生すると、国民全部が課税される結果になる。しかし今の日本は長年、デフレに悩まされているので、その心配は少ない。
もちろん、永遠に歳出が歳入を上回る状態は望ましくない。いずれは消費税率を上げるなどして、財政を均衡させなくてはならないが、問題はそのタイミングにある。
この場合、景気を好転させ、日本経済を成長軌道に乗せてから税金を取るアベノミクスの立場と、EUがギリシャに押し付けているように、経済の状態とは関係なくまず税率を上げようとする立場の2つがある。どちらが正しいのだろうか。
財務省は14年4月の消費税増税以前、「増税が実現すれば日本の財政への信認が高まり、国債発行金利も下がってくる」といっていたが、実際には上がってしまった。市場は「消費税率アップで景気が悪化すること」を重視したからだ。「消費税を上げても景気に大きな影響はない」などという強弁が嘘であることも、国民にわかってしまった。実際には消費税増税を機に景気が一気に冷え込み、14年は実質マイナス成長に転落してしまったからである。まさか財務省が、税収を下げてでも自らの権限拡大のために税率を上げようとしているとは思いたくないが。
消費税は今のところ、17年4月に10%に税率を上げることになっている。これを実施するときには、金融緩和の援軍も必要であろう。消費増税で一番苦しむのは低賃金、低所得、低年金生活者だ。生活必需品の税の免除とか、マイナンバー制を活用して生活困窮者に戻し税を支払うなどの所得分配上の配慮が必須であると考える。 
●ギリシャ危機なのか?ユーロ危機なのか? 2015/8 
1.はじめに
2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政赤字の実態を公表し、ユーロの信用が低下したことを契機としてギリシャで債務危機が起こり、南欧諸国を中心に広がった。一連の危機の連鎖は「ユーロ危機」と呼ばれる。ギリシャ支援のために、IMFとEUは2010年5月に第一次支援(総額1100億ユーロ)を決定し、さらに2012年2月にIMFとEUに民間が加わって第二次支援(総額1300億ユーロ)が決定された。ギリシャ政府に対しては、増税、年金改革、公務員改革、公共投資削減などによる財政の立て直しと公益事業の民営化が支援の条件として要求された。トロイカと呼ばれる主要債権団(EU、ECB、IMF)との約束を守り、緊縮財政路線を取った前政権が、諸改革を断行すると景気が悪化し、失業率が25%に上昇した。国民の反発は強まり、大規模なデモや暴動が起きた。国民の不満の声を反映して、2015年1月のギリシャの総選挙でチプラス首相に率いられた急進左派連合が政権を取った。今年2月のギリシャの新政権と債権団との交渉は、新政権にさらに4ヶ月の時間を与えることで合意された。債権団の中心であるEUとしては、支援継続の条件としてギリシャの財政改革は譲れないとしながらも、ギリシャが債務不履行に陥った場合の影響が欧州経済全体に波及することを恐れるため慎重にならざるを得ない。新しい交渉期限である6月末までに、ギリシャがどのように具体的な財政再建策を打ち出すのかが注目されてきた。
2.ギリシャ国民投票を経て見直されたギリシャ救済策
債権団が求める財政再建・緊縮策への賛否を問うギリシャの国民投票が、当初の期限である6月末をすぎた7月5日に実施され、反対票61%が賛成票39%を大きく上回った。チプラス首相は同日夜から、緊縮反対の「民意」を盾に債権団との再協議を行った。ユーロ圏諸国側は7日に緊急首脳会議を開き対応を協議した。チプラス首相が、交渉期限を過ぎた土壇場で国民投票を実施したのは、チプラス政権が国民の信認を失うことを避け、債権団側からいっそうの譲歩を引き出すための瀬戸際の作戦だったと思われる。債権団としてもギリシャの民意を無視するわけにもいかず、緊縮策の見直しを行った。7月12日に開かれたユーロ圏諸国の首脳会議はギリシャへの支援継続の方向で合意した。

新たなギリシャ救済策の内容(Euro Summit Statement, 2015年7月12日BBC News)
○ ギリシャ国会は、水曜日(7月15日)までに経済改革についての関連法案を採択すること。これらは年金制度の改革、税収とりわけ付加価値税の取り立ての強化を含むこと。ギリシャは労働市場の自由化、電力の送配電網の民営化、商店の営業時間の延長実施を確約すること。
○ ユーロ圏諸国は、3年間にわたるギリシャ支援融資(820億―860億ユーロ)の交渉を開始することに原則として合意。融資は主として欧州安定化基金(ESM)が行うが、2016年3月以降はIMFもこれに参加することが求められる。
○ ESM融資の返済メカニズムとして、ギリシャ政府は500億ユーロの信託基金を創設すること。この基金の半額はギリシャの商業銀行の資本強化のために使われる。残り半分はギリシャの債務残高を削減するために使われる。これらの資金は国有資産の民営化によりまかなわれる。
○ ギリシャはESMとは別に、破綻を回避するためのつなぎ融資を受け取る。一週間後の受け取る融資額は70億ユーロ、さらに8中旬までに50億ユーロと推定される。
○ ESMからの融資の内100億ユーロはギリシャの商業銀行の資本強化のためにつかわれる。ギリシャの商業銀行が必要とする総額は250億ユーロに上るものと推定される。
○ 欧州中央銀行(ECB),ユーロ圏諸国、IMFはギリシャ救済の諸条件の実施状況を厳密にモニターする。ESMによる救済策についての交渉はフィンランド、ドイツ、ギリシャそれぞれの国会承認が得られた後に開始される。
○ ユーロ圏諸国は、必要ならば、ギリシャの債務の期限延長に応じる用意があるが、これらの債務が放棄されることはない。欧州委員会(EC)はESM融資に加えて、ギリシャの経済成長と雇用増加を支援するために350億ユーロの分担金を募る。

チプラス首相はこの7月12日の合意の条件の一つである、今後の主要改革策についての国会承認をまとめあげた。この7月15日の国会承認の段階でもアテネ市内では反対派グループが火炎瓶で抗議の意志を示すなど、ギリシャ国内の混乱は完全に終わったわけではない。
3.ギリシャの事情
今回のギリシャ国民投票で借金の返済が厳しい状況下で、債権団の要求に「No!」を突きつけたギリシャ国民の側の心情を理解するには、ギリシャの現代史を振り返ることも役に立ちそうだ。2004年から2007年までギリシャの北に位置する隣国マケドニアで勤務したので、ギリシャには何度となく出かけた。マケドニアの首都スコピエから車で一時間半でギリシャ国境にたどり着く。そこからギリシャ第二の都市テッサロニキまでは一時間だ。テオ・アンゲロプロス監督の映画「旅芸人の記録」(1975年)は、第二次世界大戦前後のギリシャの困難な時代を描いた名作だが、この映画の中に次々と登場する外国の軍隊の移り変わりを見ていると、ギリシャが東西の勢力がぶつかり合って複雑な歴史を持つバルカン半島に位置する国であることがよくわかる。
わたしはマケドニアに住んでいた頃、ギリシャに対して批判的な気持ちを持っていた。冷戦が終わり、旧ユーゴスラヴィアが解体し、マケドニアが独立した時に「旧ユーゴスラヴィア・マケドニア共和国」という長い名前を付けることになったのは、国連加盟の段階でギリシャが「マケドニア」という国名に反対したからだ。これは歴史上に名高い古代マケドニアが現在のギリシャ北部、マケドニア、ブルガリア南部を含めた地域全体を含む大国だったことに由来している。その後もマケドニアとギリシャの間で名前をめぐる小競り合いが続いた。ギリシャがテッサロニキ国際空港を「マケドニア国際空港」と改名すると、マケドニアは対抗するかのように首都スコピエの空港を「アレキサンダー大王国際空港」と改名している。小さなお隣の国を相手に、かつての大国意識を振りかざすのは如何なものかと思っていたが、映画「旅芸人の記録」を見ると、この国も周辺の強国の間に挟まれて苦労してきたことが理解しやすくなる。
ギリシャでは1974年末に軍事政権が崩壊し、その後の民主化の過程の中で赤字国営企業の放置、賃上げ、福利厚生、年金などでの優遇政策がとられ、補助金への依存と赤字財政が恒常化する原因となった。1981年にギリシャはEUの前身である欧州共同体(EC)に加盟し、2001年には欧州単一通貨「ユーロ」を導入したが、赤字財政の実態は公にされないままだった。一方、ギリシャがユーロに加入したことで、ギリシャへの資本流入が加速され経済は表面的には安定した状態となり、改善すべき構造的な問題が放置される結果となった。やがてギリシャ財政の危機的状況が2009年末に政党間の対立の中で表面化した。
4.冷戦終結後のEU拡大の流れ
EUには1951年に欧州石炭鉄鋼共同体が設立されて以来の65年の歴史がある。EU発足当時の加盟国は6ヶ国で、その後数次にわたり拡大され現在の28か国になった。旧東側諸国10ヵ国が2004年から2007年にかけてEU加盟を果たした後で、EU拡大の動きは止まったままだ。クロアチア、FYRマケドニア、アルバニア、トルコはEU加盟候補国になったものの、すでに10年以上が経過している。この点でEU諸国が努力してきた欧州統合という大きなスローガンには注意信号が点滅していると言えるが、この上ユーロ圏が解体する事態になると欧州統合は大きく後退することになる。EU諸国としては今回のギリシャ危機への対応に慎重にならざるを得ない。

冷戦終結後のEU拡大の動き
1998年3月 / チェコ、エストニア、ハンガリー、ポーランド、スロべニアのEU加盟交渉開始
2000年2月 / ブルガリア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、スロバキアのEU加盟交渉開始
2004年 / チェコ、スロバキア、ハンガリー、ポーランド、スロベニア、バルト3国の8か国がEU加盟
2007年 / ブルガリア、ルーマニアがEU加盟
5.ユーロ圏(Euro Zone)諸国の立場
ユーロ圏は1999年に創設され、現在、19のEU加盟国が参加している。ユーロに関してのすべての政策決定はフランクフルトにある欧州中央銀行(ECB)が行う。

○ユーロ圏の19か国
オーストリア、ベルギー、キプロス、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、マルタ、オランダ、ポルトガル、スペイン、旧東側諸国5か国(エストニア、ラトビア、リトアニア、スロバキア、スロベニア)
○非ユーロ圏の9か国
デンマーク、スウェーデン、英国、旧東側諸国6か国(ブルガリア、クロアチア、チェコ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア)

ギリシャ以外のユーロ圏の18か国の立場は様々だ。7月13日の英紙タイムズはEU諸国の立場が分かれている状態を以下のように整理している。

○タカ派8か国(ギリシャに対し強硬姿勢をとる諸国)
・ フィンランド:連立与党はユーロ懐疑派。蔵相がギリシャへの追加融資に批判的
・ スロバキア:ギリシャのユーロ圏残留を望むが、債務減免には反対。
・ バルト3国:賃金水準も年金もギリシャより低い水準にあるので、ギリシャの特別扱いに反対。
・ ドイツ、オーストリア、スロバニア:ギリシャのユーロ圏残留を望むが、ギリシャの努力が条件。
○ハト派3ヵ国(ギリシャに対し柔軟姿勢をとる諸国)
・ フランス、イタリア:ギリシャのユーロ圏残留を重視。ドイツの姿勢が強硬すぎると批判。
・ キプロス:ギリシャと経済関係が密接なので、ギリシャのユーロ圏残留を重視。
○中間派7か国
・ オランダ:ドイツ寄りの立場ながらも、ギリシャの新提案には前向き。
・ スペイン、ポルトガル、アイルランド:債務減免には反対だが、ギリシャの離脱には反対。自らに飛び火する可能性があることと、その結果、信用が低下すれば、自国の借入コストが増大する。
・ ベルギー、ルクセンブルグ、マルタ:ギリシャがもう少し努力するならば、その提案を受諾すべき。

ドイツはタカ派のリーダーとして、ギリシャに対して厳しい姿勢を示してきた。これはユーロの信用低下を懸念したものだ。ハト派のフランス、イタリアとしてはドイツの厳しい姿勢に原則として賛同しながらも、決裂は望まないとする立場だと思われる。タカ派のスロバキアとバルト海諸国は旧ソ連圏の諸国であり、経済状態がギリシャと同様もしくはそれを下回る水準にあるので、相対的に豊かなギリシャが、さらなる支援を受け取ることに批判的だ。中間派のスペインはギリシャのユーロ圏離脱を懸念しながらも、ギリシャに譲歩しすぎることには難色を示してきた。これは自国の左派野党の立場を活気つかせ、緊縮財政をめぐる論議が自国に波及することを恐れるためだ。
6.IMFの見通し
IMFは、14日、その加盟国に提出したスタッフ報告を公表し、ギリシャに対する金融支援の必要性について2018年末までにユーロ圏各国によるおよそ850億ユーロの金融支援が必要になるとの予測を発表した。IMFは、今月はじめには、ユーロ圏各国による金融支援を含め、総額600億ユーロ程度の資金が必要だとする報告を公表していた。これを上方修正した理由として、ギリシャの商業銀行の休業が経済に大きな打撃を与えていると説明している。
7月14日のNYタイムズ紙によれば、IMF筋は、欧州各国によるギリシャ債務の大幅な減免がなければ、ギリシャ救済プランはサステイナビリティ(持続可能性)を欠くことになるとして、EUの新提案に批判的だ。債務の減免についてはEU各国としては避けて通りたいのが本音だが、債権団メンバーとしてのみならず、支援の条件となっている様々な改革の実施状況のアセスメントについてもIMFが重要な役割を果たす必要があるので、EU側としても無視するわけには行かない。7月20日になって、IMFは、ギリシャが16億SDR(ほぼ20億ユーロ)の債務を返済したことを発表した。IMFは今後もギリシャの財政安定化と経済成長にむけた努力を支援する用意があるという方針を明らかにした。
7.スティグリッツ教授によるギリシャ擁護論の骨子
ノーベル経済学賞を受賞し、世銀のチーフ・エコノミストなどを歴任したコロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授は7月9日付けのタイム誌でギリシャ支援の必要性を説いている。これはギリシャに緊縮政策の実施を求めるだけでは、出口のない不況が続くだけで危機の解決にはつながらないというものだ。その主な論旨は以下の通りである。

○ ギリシャに対してドイツが厳し過ぎる態度をとっているのは、第二次大戦後にマーシャルプランにより救済された国としては一貫性を欠くものだ。
○ ドイツはギリシャについて「とっくに破綻しているにも関わらず、救済と引き換えの最低限の条件を拒む国」というネガティブ・イメージを強調してきた。これは「プロパガンダ」である。
○ ギリシャは1990年代から、ギリシャ危機の開始時点までの経済成長率は3.9%で、EU平均の2.4%を上回っていた。ギリシャ危機が始まり緊縮政策がとられたことにより景気後退(depression)となり、GDPは25%低下し、失業率は25%に達した。これは債権団が要求した緊縮政策を実施した結果である。
○ ギリシャがユーロ圏を離脱する事態となった場合、ギリシャにとってはアルゼンチンの経験が参考になる。アルゼンチンもIMFのプログラムの下で緊縮政策を採用した結果、失業率を増やし、貧困が進行した。もしもアルゼンチンがIMFの方式に異議を申し立てず、緊縮政策を続けていたら、いまだに出口のない不況に苦しんでいたはずである。
○ 米国は第二次大戦後に、敗戦国ドイツに対して寛大な支援を行った。今度はギリシャに対して支援を行う時である。ギリシャに対する無償援助の増加、ギリシャからの輸入拡大、ギリシャ観光を増やすなどの支援策を含むべきだ。

スティグリッツ教授は最新のインタビューでも実効性のあるギリシャ支援が必要であることを強調し、過重債務に陥ったギリシャについて債務減免などの抜本的な救済策を取らずに追加融資を行うだけでは、利子の返済に充てられるだけなのでギリシャを救済することにはならないという指摘をしている。IMF・世銀のアプローチを批判することでも名高いスティグリッツ教授だが、今回はIMFが同教授と同様の立場でEUのギリシャ救済策を批判し、欧州各国によるギリシャ債務の減免を主張したのは皮肉な感じもする。
8.EUメンバーではあるがユーロ圏メンバーではない英国の立場
7月16日の英紙メトロ他によれば、欧州委員会(EC)から英国もギリシャ救済に参加することを要請されたキャメロン首相は「ユーロ圏諸国の問題は、ユーロ圏諸国が解決すべきだ」と強調し、英国民の税金がギリシャ救済に使われる可能性を明確に否定した。英国は欧州安定化基金(ESM)に14%の出資をしている。オズボーン蔵相はEUがギリシャ救済のためにESMのファンドを使うことに断固反対すると述べた。ESMは28のEU加盟国のための基金であり、ユーロ圏諸国の救済はユーロ圏に参加している19か国の責任でなされるべきとするのが英国の主張だ。
英国は第二次大戦後の米ソの超大国が覇権を競った国際社会で欧州が発言力を持つためには、軍事面のNATOに匹敵するような、欧州を束ねる経済共同体が必要であるとしてEUには参加した。他方、通貨政策については英国としての国家主権(sovereignty)が強く反映されるべきとしてユーロ圏には参加していない。英国の将来のリーダー候補の一人であるボリス・ジョンソン市長は2014年に「チャーチル・ファクター(The Churchill Factor –How One Man Made History)」という故チャーチル首相の評伝を書いてベストセラーになった。この本の中に「欧州人としてのチャーチル」という章がある。チャーチルが1940年代の末から欧州統合の理念をいち早く主張していたことに触れた部分で、ジョンソン市長は親EU派とEU懐疑派の両方が「チャーチルは自分たちの考え方の先駆者だ」と考えていることを指摘している。理念と現実の間の微妙なバランスを追及しながら、柔軟な対応を見せる英国の姿勢がチャーチルの時代から一貫していることを示すものとして面白い。
9.今後の動向を占う上でのロシアの動き
ギリシャ危機が世界を大きく揺るがすようになったのは、ギリシャがユーロ圏のメンバーであり、その危機がユーロ加盟各国に飛び火した場合には、より大きなユーロ危機になりかねないからだ。欧州の南東に位置するギリシャにはロシアが接近を図っていたという数紙の報道がある。EU側には旧ソ連崩壊後25年にわたって旧東側諸国の国々を取り込むために、様々な支援を行ってきた経緯がある。今になって、EU加盟国であるギリシャを孤立させ、経済制裁の相手国であるロシア側に追いやってしまう事態は避けたいところだ。ギリシャが債権団との交渉を目前に控えたタイミングでロシアに接近したのはユーロ圏の債権団に圧力をかけることが狙いだった可能性が高い。原油価格の下落や欧米諸国のロシア制裁の影響が大きく、当面は自国内での問題の対応で忙しいロシアには、ギリシャ救済を一手に引き受ける余裕は無いとする見方が多い。
10.EBRDによるギリシャ支援に向けた取り組み
今回のギリシャ危機をめぐる報道で印象深いのは金融危機対応のあり方そのものが議論されたことだ。「ギリシャへのさらなる金融支援は問題を先送りするだけではないのか?」、「ギリシャは改革の努力をしているのか?」、「社会福祉や年金を削減するだけの緊縮策では経済の活性化につながらない」などの諸点は、危機対応の持続可能性(sustainability)を問うものだ。この点でギリシャが2015年3月に、期限付き(2020年まで)ながら、EBRDの支援対象国となったことに注目する必要がある。EBRDは旧東側諸国の経済復興支援のために1991年4月に設立された国際金融機関だが、2008年秋の世界金融危機、2011年のアラブの春を経て、新たに「危機対応とその後の改革支援」という役割を果たすが期待されるようになった。EUもEBRDのメンバーであるのみならず、EU加盟諸国はグループとして最大株主である。
EBRDは2010年より、世界金融危機後の欧州地域の金融部門の安定化を支援するウィーン・イニシャチブに参加し、ギリシャ系の銀行への支援を行ってきた。民間企業、とりわけ中小企業の活性化を支援することにより内外からの投資を呼び込み、ギリシャと南東欧地域の経済連携の強化を図ることが期待されている。今回、EUを中心とする債権団がギリシャに要求した諸改革は、EBRDが支援対象である旧ソ連諸国との間で、四半世紀にわたり繰り返し議論してきた内容とほぼ一致するものだ。ギリシャはこれまでは支援国グループの一員だったが、支援を受ける国という立場に変わった。2020年という改革支援活動の期限が終了するまでにギリシャ経済が立ち直ることが期待されている。
11.結び
1999年にユーロ圏が設立されて以来、2008年の世界金融危機を経て初めて欧州経済は景気後退を迎えた。危機対応と景気回復に向けて欧州各国の協調の努力が強化されたことを通じて、EUの経済統合に向けた動きは加速したかに見えていた。他方で、ギリシャなど一部の国の債務不履行リスクが高まったことでEU各国の立場に違いが目立つようになった。債務危機への対応でユーロ圏諸国の首脳らは支援策をまとめたが、これはユーロ圏の国に対する財政運営支援を排除している基本条約の大きな方針転換となった。ギリシャ危機への対応でもEU各国の足並みは必ずしもそろっていない。今後も事態がどう推移するのか予断を許さない。
本稿ではギリシャ危機についての報道をフォローしながら、誰がどのような見方をしているかについて整理することを試みた。スティグリッツ氏が指摘するように緊縮策が必ずしもポジティブな結果につながらないこと、その実効性を検討すべきであるというのは重要な指摘だ。「金の卵を産むニワトリ」の童話もあるように、先人たちの知恵でもある。過重な債務に苦しむギリシャがいっそのこと破綻を宣言して、再建の道を歩むという選択もあるはずだが、これについては欧州統合という大きな夢を抱えるEUの内部では、事態がそのような形に展開することを望まない諸国も多い。1)ギリシャ危機が一国の話なのか、欧州全体の話なのか、2)経済・金融の話なのか、冷戦終了後の欧州の在り方をめぐる国際政治の話なのか、3)ギリシャの経済改革がこの国の特殊性に配慮して対応すべき話なのか、旧ソ連圏諸国がすでに1990年代に経験し、一定の荒療治が結果的に好結果をもたらしてきた移行経済諸国で経験済みの話なのか、などなど様々な見方が存在している。引き続き、事態の推移を見守る必要がある。 
●繰り返されるギリシャ危機の行方 2015/9 
ギリシャ経済は政府も民間も国外からの資金供給に依存する形になっている。ギリシャ経済を成長軌道に乗せることで、この状況を変えない限りはギリシャ政府の債務問題が再度頭をもたげてくることになる。
財政赤字の削減に相応の努力をしたギリシャ
ユーロ圏では、今年に入ってからギリシャ政府の債務問題が再び噴出している。この問題が世界の金融市場を揺るがすのは2010年、2012年に続いて3度目であり、嫌気が差している人も少なくないと思われる。
だが、同じ問題が同じ国で3回も繰り返されたということは、それ以前に打ち出された対応策が根本的な解決策では全くなかったことの裏返しでもある。ギリシャの債務危機が4度目を迎えることなく、終わりを迎えるためには何が必要なのだろうか。
ならばと考え始めてすぐに思いつくのは、やはり、ギリシャの財政再建がまだ不十分だったからではないかという点だ。今回のチプラス政権と債権者側との交渉のなかでも、ドイツをはじめとするユーロ加盟国の多くは、このような疑念のもと、財政再建のさらなる加速をギリシャ側に求めている。
しかし、EUの統計機関であるユーロスタットによると、2009年に名目GDP比で15.3%もあったギリシャの財政赤字は2014年には同3.5%と、この5年間で11.8%ポイントも改善している。この昨年の値は、かつては金融市場からギリシャと同列に扱われたスペイン(同5.8%)やポルトガル(同4.5%)のそれよりも低い。
また、ギリシャの一般政府の歳入は2009年にはGDP比で38.7%だったが、同じく5年後の2014年には同45.8%まで上昇している。実はこの値も、追加の財政再建を求めたドイツの歳入比率(同44.6%)を追い越している。これら一連の数字の改善を“不十分だ”と言ってしまえばそれまでだが、少なくとも、ギリシャはユーロ圏の求めに応じて、財政赤字の縮小に向けて相応の努力をしたことだけは間違いがない。
性急な緊縮財政が生み出したチプラス政権
ところが、ギリシャの一般政府の歳入の変化をGDP比ではなく実額で見ると、結論は大きく変わる。2009年時点では920億ユーロだったギリシャ政府の歳入は、5年後の2014年には820億ユーロと100億ユーロ(10.9%)も減っている。
歳入“額”が減ったのに歳入の“GDP比”が増えたのは、名目GDPがそれ以上に減ったからである。同じユーロスタットの統計によると、2009年のギリシャの名目GDPは2374億ユーロだったが、2014年には1791億ユーロとなり、率にして24.6%も縮小している。
これまでの放漫財政のツケを払っている面があるとはいえ、年金支給を大幅に切り下げて増税も受け入れた結果、経済は疲弊してGDPは4分の3になり、失業率も25%を超えてしまった。こうした経済の実態を肌身で感じているギリシャ国民は、性急な緊縮財政に未来はないと率直に感じたのだろう。だからこそ、反緊縮を掲げるチプラス政権が年初に誕生し、あそこまでユーロ圏との交渉がこじれても、7月5日の国民投票で6割もの人々が反緊縮を支持したのである。
国外資金への依存度を高めるギリシャ経済
このようなギリシャ経済の実情をお金の流れの視点から捉え直すと、より深刻な状況が浮かび上がってくる。図表はギリシャの資金過不足の推移である。これは同国経済のマクロ的な状況を金融取引の面から見たものであり、図表中央に横に走る実線より上にあれば、その経済主体が同国内での資金の出し手(=資金余剰)、下にあればその経済主体が同国での資金の借り手(=資金不足)であることを示している。
   [図表略]
この図表を見ると、この10年余りのギリシャ経済で資金を供給する側に立っていたのはほぼ一貫して海外部門であり、その資金の多くを政府が借り入れていたことが分かる。さらに2014年には、民間部門(家計、非金融法人、金融機関)も6.8%の資金不足に陥るなど、国全体が海外からの資金に依存していた。
鍵を握るのはギリシャ経済の成長
このように、ギリシャは海外資金への依存体質と財政再建、そして経済の疲弊という3つの課題を解決する必要がある。しかしこれまでは、財政再建を最優先したために、弱体化した経済がさらに弱って海外の資金に頼らざるを得なくなり、財政危機が繰り返されることになってしまった。優先順位が間違っているのである。
これからのギリシャが優先すべきは、同国経済が成長軌道に乗るための改革を加速させていくことである。ギリシャの主要産業は観光以外に乏しいとはいえ、ギリシャ経済の民間部門に少しずつ“稼ぐ力”がついてきて、それに合わせて税収も伸びてくれば、弱った経済に無理な増税をしてさらに経済を弱らせる必要もなくなる。
また、経済成長によって自国の民間部門が富(=資金余剰)を蓄積していけるようになれば、政府は海外資金に頼らず、民間の資金余剰から赤字分の資金を調達できるようになる。そうなると、政府の資金繰りも徐々に改善し、財政危機も遠のいていくことになるはずだ。
もっとも、ギリシャ経済の負担を軽くするという意味においては、IMFがEUに対して要求しているギリシャ政府の債務免除にどこまで踏み込めるかも重要なポイントになってくる。しかし、そうやって政府の債務負担を軽くしても、フローの面で同国経済が海外からの資金の借入れに依存する体質が残る限りは、早晩、同じ問題が頭をもたげてくることになる。
ギリシャ以外でも、緊縮財政などへの疑念を背景に極右・極左政党が勢力を伸ばしている。そういった政治環境下でのギリシャの財政危機やユーロ離脱リスクの高まりは、通貨ユーロそのものへの懸念拡大につながりかねない。だとすれば、ユーロ加盟国はギリシャ経済の成長に向けてより一層、真摯に取り組む必要がある。 
●ギリシャ危機が長引く構造要因 2015/9 
1.ギリシャ危機の再燃
現在、ユーロ圏はギリシャ危機に揺れている。ギリシャ危機が勃発したのは、2009年のことだ。それを契機に、ギリシャ国債が急落し、以後、ポルトガル、アイルランド、スペイン、イタリアに波及した。そして世界を揺るがすユーロ危機へと発展した。ユーロは、1999年に、統一通貨として誕生したが、その為替レートは2008年をピークに、長期的に大きく下落傾向にある。
ギリシャは、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)から金融支援を受けながら、緊縮財政によって、財政赤字を減らすことになった。しかし、それが計画通り進まず、再度、ギリシャの債務問題が欧州を揺るがしている。
造船や観光業以外に目立った産業のないギリシャは、貿易赤字が恒常化している。一方で、ドイツは製造業が世界最高水準の国際競争力を持つため、世界最大の経常黒字国だ。EU条約は、加盟国間の財政支援を禁止しているため、財政面で、ドイツなどが、直接的にギリシャを救済することはできない。これほどまでに経済のファンダメンタルズが違う国の通貨を統一することには、無理があったと考えられる。
2.政権交代がギリシャ危機を生んだ
2004年9以降、新民主主義党が政権与党であったが、2009年の総選挙で、ヨロゴス・パパンドレウ党首を首相とする社会主義運動党政権に交代した。政権交代後、社会主義運動党政権は、財政赤字の計算に重大な誤りがあったことを発表した。政権交代後、2009年度財政赤字の水準が対GDP比4%から12%(2009年実績は15%)へ大幅に上方修正された。その結果、信頼を失ったギリシャ国債が暴落して、その後の欧州全体の金融危機に発展した。
ギリシャは、EU(EC)に1981年に加盟し、ユーロには2001年に参加した。基本的に、EUに加盟するとユーロへの参加を求められる。本来は、1999年に、他のEU加盟国と共に、ギリシャも参加する予定だったが、ユーロ参加の基準を満たすことができなかった。このため、ギリシャは2年遅れで参加した。
ユーロ参加の要件として、経済収斂基準の達成と国内法制の整備が求められる。これは、ユーロ参加国の経済ファンダメンタルズが大きく違わないようにして、通貨価値を安定させようとする目的がある。ユーロ参加の時点の経済収斂基準は4項目ある(EU運営条約140条、付属議定書13号)。これらの中で、財政基準を満たすことが難しいので、当時の政権が不適切な財政処理をしたと言われている。
観光立国のギリシャにとって、EUと共通通貨を持つことは、観光客の両替の利便性を考えると、不可欠だった。もし、地中海のリゾート地として競合するイタリアやスペインなどがユーロを導入し、一方で、ギリシャがユーロを導入しなければ、競争上不利になることが考えられる。
しかも、2004年には国家の威信をかけた世界的なイベントであるアテネ・オリンピックが予定されていたので、ギリシャのユーロ参加には、国のメンツがかかっていた。そして、地中海の小国ギリシャとしては、EU加盟の恩恵を享受したいところだった。
3.ギリシャ危機はEU周辺国に飛び火した
2010年以降、ギリシャ危機は、EU周辺国と呼ばれるアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアに伝播した。これらの国債価格も大きく下がり、結果として、長期金利が急上昇した。それらも、ギリシャほどではないが、財政赤字の規模が大きかったからだ。特に、リーマン・ショック後の景気悪化が厳しかっただけに、いずれも財政収支が極端に悪化していた。
   (図表1)対ドイツ長期金利スプレッド
このため、再度、欧州では大型金融危機が発生した。ユーロ圏GDPに占める構成比(2014年)は、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド合計で5%にすぎないが、イタリアは16%、スペイン11%と、ドイツ、フランスに次ぐ経済規模であるため、ユーロ圏全体に与える影響は大きい。これらの債券や株式相場が大きく下落し、世界の金融市場に与える影響が大きくなった。
ギリシャに加えて、これらの4ヵ国も深刻な危機に陥った結果、2010年以降、2012年まで、厳しいユーロ危機がやってきた。スペイン、ポルトガル、アイルランドもIMFやEUなどの金融支援を受け、イタリアはIMF監視下に入った。ユーロ圏の経済成長率が大きく低下した結果、ユーロの為替相場は大きく下落した。
EUとユーロの問題点は、金融危機に陥った時の対応策がほとんど用意されていなかったことだ。19もの参加国を持ち、それらの中には経済力が弱い国も多いのだが、危機管理対策がほとんど準備されていなかった。
4.政治要因で再燃したギリシャ危機
ギリシャ政府は、IMFとEUの支援を受けて融資を受ける一方で、財政緊縮策を受け入
れた。これは、年金支給額の削減、公共投資の削減、電力、ガスなどの事業の民営化、公務員の削減、付加価値税の引き上げ(税率23%)、不動産税の創設などを含む。徴税システムの見直しによって、脱税を防ぐという手法もある。こうして、ギリシャ危機は一旦終息した。
   (図表2)ギリシャ政府債務の内訳(2015年3月末)
一時は鎮静化したかに見えたギリシャ危機だが、2015年の総選挙を期に、再燃した。危機後、ギリシャのGDPは、2008年のピーク比で25%減少し、一方で、失業率は25%まで高まった。
2011年には、国民の財政緊縮策に対する反発が強く、パパンドレウ首相は退陣した。そして、新民主主義党のサマラス党首が首相に就任した。その後も、財政緊縮策に対する反発が強く、2015年の総選挙では政権交代が起こった。緊縮財政に反対する野党の急進左派連合(SYRIZA)と緊縮財政反対の独立ギリシャ人党(ANEL)と連立政権を発足させた。2015年に、チプラス政権が誕生し、第二次ギリシャ危機が始まった。
ギリシャの政府と中央銀行の借金は、総額60兆円弱と大きい。これは、ギリシャのGDPの2倍以上だ。ギリシャ政府の借金は合計40兆円弱だ(2015年3月末)。シティグループ証券の推計では、そのうち、民間の銀行などが一部を保有しているが、政府債務の約80%は、EUやIMFなど海外の公的部門が支援したものだ。
2015年6月末に、最初に予定通り返済ができなくなったのは、IMFからの支援分だ。EUなどの支援額がすべて債務不履行にならない限り、IMFの支援額は債務不履行にはならない。このため、ギリシャからIMFへの返済が滞ったのは、債務不履行ではなく、返済の遅延と位置付けられる。
5.ユーロの不安定要因
1999年に新しい単一通貨ユーロが誕生し、ユーロ加盟国は11ヵ国で開始した(ギリシャは2001年に参加)。2002年に、15のEU加盟国中12ヵ国が自国の通貨を永久に放棄し、ユーロの流通が始まった。「自国の通貨を永久に放棄」というのは、たいへん重要だ。つまり、EU条約は、一旦、ユーロを採用すると後戻りはできないということを定めている。
ユーロ参加の時点では、経済収斂基準の4条件を守らねばならないが、参加後はこれらの条件を守らない国が少なくない。実際に、リーマン・ショック後、過剰な財政赤字状態に陥って、経済収斂基準から外れた国は多い。
EUの28加盟国中ユーロ参加国は19ヵ国にとどまる。ただし、ユーロは、モナコ、アンドラ、バチカン、サンマリノやコソボなどEU加盟国ではない国やフランス保護領等でも使用されている。また、EU未加盟のセルビア、ボスニアでは、国内通貨と並び、貿易契約の通貨として、ユーロが流通している。
ユーロの構造的な問題は、第一に、低所得のユーロ参加国の増加だ。EU加盟国のうち、ユーロ不参加国数は、ユーロ誕生時に4ヵ国しかなかったが、現在では9ヵ国となっている。その理由は、EU拡大だ。特に、EU加盟国が増えたのが、東欧だ。EUが生まれたのは1993年なので、1990年の冷戦終結直後に、マーストリヒト条約の内容をまとめていたことになる。つまり、EUの基本設計をしていた時点では、西欧、中欧、北欧だけで、EUを構成する予定だった。
しかし、東欧諸国を取り込むことによって、EUの安定性が高まると考えられた。これは、ロシアと対抗するためにも、かつて、ソ連の衛星国だった東欧諸国を取り込んだ方がいいという考えだ。
EU加盟国は、基本的にユーロ参加の義務がある。よって、EUに加盟する東欧諸国はすべてユーロに参加する義務を負う。2004年以降、13の東欧諸国がEUに加盟した。13ヵ国のうち、ユーロ参加国は、スロベニア(2007年参加)、キプロス、マルタ(2008年)、スロバキア(2009年)、エストニア(2011年)、ラトビア(2014年)、リトアニア(2015年)の7ヵ国にとどまる。経済的な条件を満たせないチェコ、ハンガリー、ポーランド、クロアチア、ブルガリア、ルーマニアの6ヵ国は、不参加だ。
これが、EU加盟国ながら、ユーロに参加していない国が増えた大きな理由だ。そして、ユーロ参加国であっても、所得水準の低い国が多くなった。
さらに、アイスランド、マケドニア、モンテネグロ、セルビア、トルコがEU加盟候補国となっている。西バルカン地域のアルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボも潜在的候補者として準備を行っている。つまり、今後、所得水準の低いユーロ参加国がますます増えるということだ。長期的に、経済格差の大きい国がユーロに参加することが増加することが予想されるため、構造的に、ユーロの不安定要因が増す恐れがある。
今後、ユーロには、経済水準の低い国が続々と参加し、結果として、経済水準の高いドイツなどの負担が相対的に増すことが予想される。ユーロ参加国の中で、1人当たりGDP(2015年IMF予想)が最も高いのがルクセンブルクの96,269ドル、一方で、最も低いのがラトビアの13,996ドルだ。このように、その格差は約7倍もある。これらが、一つの通貨を構成するのであるから、そもそも無理があると言わざるを得ない。
6.金融政策統一・財政政策不統一の原則
ユーロの構造的な問題は、第二に、金融政策統一・財政政策不統一だ。各国の財政政策と国債発行に関わるユーロ圏による監視、監督は、金融危機に陥らない限り、権限が限定的だ。極力、各国の主権が尊重される仕組みになっている。
ECBは、ユーロ圏各国の中央銀行に代わって金融政策を決定しているが、財政政策は一定の基準の下に各加盟国が独立して実施する。金融政策は、中央銀行が政治から一定の独立性を保って実施するが、財政政策は、政府が主導して決めている。
財政統合というのは簡単だが、現実には、国家のあり方まで左右する大問題なのだ。財政政策を統一するということは、国防費や社会保障支出もその対象となる。さらには、教育、文化などに対する支出まで他国の干渉を受けることになる。こうした制限、あるいは統一は、国家主権の根幹にかかわることである。
EU加盟国は28にも増え、社会、文化、宗教(例:プロテスタント、カトリック、英国国教会、東方国教会)などは、各国別に大きく異なる。そのため、歳出や税制の在り方についても、国別に多様だ。
たとえば、英国は、かつては「ゆりかごから墓場まで」と呼ばれる手厚い福祉政策が有名だったが、1980年代のサッチャー政権では徹底した「小さな政府」政策を実行した。つまり、財政政策は、その国の政治問題に直結するものなのだ。よって、EU全体で財政政策を統一することは馴染まない。
金融危機を迎えているギリシャ、ポルトガル、アイルランドは、これまで債務不履行に陥った発展途上国と異なり、先進国であり、かつ経済規模も相対的には大きい。このため、これらの財政危機問題は、国家版“too big to fail”(大きすぎて、つぶせない)になりかねない。その意味でも、安易な救済には踏み切れない。
これらの理由から、ユーロは、金融政策統一、財政政策不統一という、特殊な制度を選択した。その結果、EU条約は、加盟国間の財政支援を禁止している。つまり、財政面で、ドイツが、直接的に(厳密には間接的にも)ギリシャを救済することはできないのだ。
7.ギリシャのユーロ脱退はあり得るのか
歴史的に、欧州の通貨統合は歴史的にことごとく失敗し、現在もEU28ヵ国のうち9ものユーロ不参加国が存在する。そこに、ギリシャ危機などが生まれているだけに、ユーロ崩壊懸念が生じるのは当然とも言えよう。
しばしば、論議されるのが、ギリシャのユーロ離脱だ。しかし、実際には、以下の理由から、ユーロ参加国がユーロを離脱することは、言うほど簡単ではない。
(1) ユーロ離脱の制度がない。
EU条約上、EUを離脱すれば、ユーロから離脱することは可能だ。ただし、条約は「ユーロ参加国は、自国通貨を永久に放棄する」と定めており、ユーロ離脱自体を想定していない。このため、EU条約上、EU加盟国が一旦ユーロに参加すると、EUにとどまったままユーロを離脱する仕組みはない。
そして、EUが、ギリシャのような問題を抱える国をユーロから離脱させる方法もない。つまり、他のユーロ参加国が、「ルールを守れないのなら、ギリシャはユーロから出て行け」と言っても、実際には、ギリシャを追い出すルールはない。
小国ギリシャがEUから離脱するのは、安全保障の面からはリスクが大きい。ウクライナ、ロシア、中東に近いギリシャが、EUから脱退することは、外交、安全保障、経済など様々な理由から、ギリシャ、そしてEU双方にとって大きなリスクを伴う。このため、ギリシャのユーロ離脱は、ギリシャ、EU双方にとって、最後の選択肢となろう。
(2) 経済的合理性に乏しい。
ギリシャがEUから離脱し、同時に、ユーロから自国通貨を切り替えることは、全く不可能ではない。しかし、この場合、ギリシャの新通貨は大きく下落することだろう。そして、ユーロから脱退しても、債務はユーロ建てであるため、自国通貨換算債務は大きく増加することになる。それに伴い、大規模な債務削減が必要となる。
たとえば、住宅ローンを抱えている人は、借金はユーロ建てのままだが、給料はギリシャ通貨建てになる。その結果、借金はギリシャ通貨建てでは急増することとなり、自己破産が続出することが考えられる。これが、経済的、社会的に耐えられえるだろうか。
8.ギリシャ危機の今後の展望
一旦、収束したギリシャ危機だが、まだ、終わりではない。シティグループ証券は、今後1〜3年内に、ギリシャのユーロ離脱をベースシナリオとして想定する。つまり、当面は何とかなっても、ギリシャがユーロに長くとどまるのは無理があるということだ。過去、パパンドレウ、サマラスとEUの圧力に屈して緊縮策を受け入れた政権は、長続きしなかった。同じことは、チプラスにもあり得る。
ただし、世論調査では、EUやユーロ残留を希望するギリシャ国民が多い。ギリシャのユーロ離脱は、最後の選択肢になるはずだ。
ユーロ圏の経済成長率は、2012年の-0.8%から2014年には0.9%、2015年には1.5%と順調に回復する見込みだ。2016年以降、経済成長率、インフレ率回復を背景に、金利の上昇が予想される。その結果、ユーロの回復を予想する。
懸念された財政赤字だが、ユーロ圏全体の基礎的財政収支(税収で経常経費を賄える収支)は黒字に転換した。財政赤字が大きい日本や米国と対照的に、ドイツはもちろんのこと、ギリシャですら黒字だ。
危機の中で、明らかになったことは、ドイツの経済力の強さだ。ドイツの経済成長率は、決して高くはないが、安定している。リーマン・ショックやギリシャ危機においても、欧州の主要国の中では最も安定した成長を続けた。ドイツのユーロ圏におけるGDP構成比は30%近いので、その影響はたいへん大きい。加えて、ドイツは、インフレ率や失業率は低く、財政収支も黒字を続けている。必然的に、累積財政赤字対GDP比も小さい。
ユーロ圏の経済成長率が低下すると、ECBは金融緩和を実施することが多い。ユーロ圏の金利低下は、ユーロ下落要因だ。ユーロが下落すれば、遅行して、ドイツの輸出が増え、その結果、ドイツの成長率が高まる。今回も、そのメカニズムが働きつつある。ドイツはエネルギー輸入国であるだけに、原油価格下落の効果大も大きい。
ドイツの経常黒字は世界最高水準だ。そして、今後もこの水準を維持しよう。アイルランドやオランダも、経常黒字対GDPが高水準だ。2016年には、主要ユーロ参加国がすべて黒字の見通しとなっている。
   (図表3)ユーロ圏参加国の財政収支と基礎的財政収支
これまで危機と言われたアイルランド、スペイン、ポルトガルは既に危機を脱した。残るはギリシャだけだが、ギリシャのユーロ圏全体位占めるGDP構成比はわずかに2%だ(ドイツ29%)。よって、ギリシャ問題はユーロ圏全体で対処できる規模だ。
以上を総合すると、欧州経済は、今後も、その回復基調に大きな変化はあるまい。ギリシャ危機は長期化するが、短期的には世界を大きく揺るがすような危機にはならないであろう。
 
 
 
 2016

 

●ギリシャ2016/1-6 
● 1
ギリシャ野党の新党首、政局混迷招く恐れも 1/12
ギリシャ最大野党、中道右派の新民主主義党による新党首選出は、同国とユーロ圏債権国との対立を招くリスクをはらんでいる。政治の勢力図は一段と複雑化しそうだ。
一見すると、キリアコス・ミツォタキス元行政改革相の党首選出は正真正銘の朗報のように見えるだろう。ミツォタキス氏はリベラルな改革派であり、昨年1月に倒れた大連立政権において、最も有能な閣僚の一人とみられていた。彼が唱える政策は、既得権益の打倒、経済開放、適切な統治体制など、ギリシャが正に必要としているものだ。
債権者にとっては、左派のチプラス首相以外に代わり得る、信頼できる交渉相手が現れたことになる。首相はすったもんだの末に改革プログラムに合意したが、あまり熱意を持ってこれを実行していない。
しかし事態はそれほど単純ではないのかもしれない。チプラス政権はわずかな過半数しか確保しておらず、債権者との合意に基づき数多くの不人気な法案、中でも公的年金を削減する法案を通さねばならない。
ミツォタキス氏が選出されるまでは、首相は過半数の議席を頼みにするか、党内で造反者が増えた場合には中道あるいは中道左派の小政党と新たな連立を組むことで、何とか乗り切れそうに見えた。連立に失敗した場合でも、再び総選挙に打って出れば簡単に勝てたと思われる。
しかしチプラス首相が選挙という最後の賭けに出ることは、最早できないだろう。一方、小政党は、有権者がミツォタキス氏支持に流れるのを恐れ、チプラス氏との連立に二の足を踏むだろう。そうなると与党内の造反派は、自分たちこそがチプラス氏の頼みの綱だと踏んで勢い付きそうだ。
この結果、首相は債権者に対して強硬姿勢に出て、厳しい改革案の一部を骨抜きにしたい誘惑に駆られるかもしれない。ユーロ圏の代表者側も、もうチプラス首相だけが相手ではないのだから、安心して強硬姿勢をとれると感じるかもしれない。
このシナリオはもちろん、数多くの仮定に基づいている。しかしここから分かるのは、ミツォタキス氏の勝利自体は歓迎すべきものだとしても、想定外の連続だったドラマに、さらにサプライズが加わるかもしれないということだ。
S&Pがギリシャ「Bマイナス」に格上げ、見通し「安定的」 1/23
格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は22日、ギリシャの格付けを「CCCプラス」から「Bマイナス」に引き上げた。格付け見通しは「安定的」。
S&Pは「債権国との間に見解の相違は見られるものの、3月末までにギリシャは860億ユーロの金融支援策の条件を履行でき、これにより債務軽減に向けた公式協議の開始が可能になると見ている」とした。
● 2
ギリシャ主要株価指数25年ぶり安値、欧州金融部門への懸念重しに 2/9
ギリシャ株式市場で8日、主要株価指数ATGが少なくとも25年ぶりの安値を更新した。政治的な先行き不透明感が高まっていることに加え、欧州全体の金融セクターに対する懸念が出ていることが背景に売りがかさんでいる。
アテネ証券取引所の主要株価指数ATGは一時8%安となり、少なくとも1991年以来の安値を付けた。
大手行のナショナル銀行が28.6%安と大幅安となるなど金融株が売られるなか、アテネ証取の銀行株指数は26%急落し、最安値を更新した。
ギリシャのチャカロトス財務相はこの日、国際支援の条件となっている改革の進捗状況に関する審査は来週再開され、再開後は2週間で完了するとの見方を表明。ただ、ギリシャが年金、税制改革に積極姿勢を示していないため審査が長引くのではないかとの懸念から、ギリシャ国債利回りは上昇している。
世界経済に新たな火種、政策限界説が金融不安を増幅 2/10
昨年来の動揺が収まらない市場に、金融システム不安という新たな火種が浮上した。世界的な景気減速などを背景に金融機関の業績不振が目立ってきたためだが、現在は有効な追加緩和策や最悪時の公的資金注入といった政策の支えが期待しづらい情勢。実際に問題が表面化した際、事態の深刻化を避ける手立ては乏しいのではないかとの懸念が、市場の悲観論を増幅させている。
<金融システムの背を折る「最後のわら」>
2日間で日経平均.N225が1300円弱下落、長期金利JP10YTN=JBTCが初のマイナスへ転じた今回の混乱。きっかけとして有力視されているのは、ギリシャ懸念の再燃だ。来週から始まる国際債権団の改革審査が長期化するとの懸念から、8日のアテネ市場で銀行株が24%暴落。長期金利や保証コストを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)スプレッドが、半年ぶりの水準へ跳ね上がった。
懸念の連鎖がまず直撃したのは、ギリシャなど周縁国と直接深い関係を持つ欧州銀。過去最大の赤字を計上した直後のドイツ銀行(DBKGn.DE)や利益半減の仏BNPパリバ(BNPP.PA)など、問題が再燃すれば一段の波乱は避けられないとの見方が広がった。
欧州銀は多数のリスクに直面する。新興国ビジネスの停滞、原油安によるクレジット悪化、マイナス金利政策で失われる収益機会、株価などの資産価格急落、不良債権処理の遅れ──。その中で浮上したギリシャ問題は懸念の段階であっても、荷物をたくさん背負ったラクダの背を折る「最後のわら」(外銀幹部)となる可能性があった。
相次ぐ銀行業績への懸念は、金融システム不安にも直結しかねない。欧州銀の関連CDSは軒並み数年ぶりの水準へ上昇した。2008年に付けた異例の高水準には及ばないが、突然始まった急騰は関係者の耳目を広く集めている。
米国も他人事ではない。中国混乱や原油安が長期化し、金融環境は着実にタイト化。米連邦準備理事会(FRB)の調査では、昨年第4四半期に商工業向けの融資基準を厳格化させる動きが相次いだ。2期連続の基準引き上げは09年以来。
米市場では、社債などクレジットに異変が表れている。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが算出する社債と国債の利回り格差は、12年以来の水準へ拡大。米ダラス地区連銀のカプラン総裁は、信用スプレッドの拡大を「とりわけ注視している」と指摘し、警戒感をあらわにしている。
<マイナス金利の効力、住宅ローンのみ>
金融機関の業績悪化やシステム不安に対する懸念は、危機後も何度か浮上した。今回、従来とは異なる激しい反応を示した背景にあるのが、政策の限界説だ。
金融政策は機動性の高さもあり危機時に有効な手段だが、弛緩しきった政策が多少動いても、凍てついた不安心理を溶かすのは容易ではない。市場は「政策が成長の下振れリスクを埋めることができる、との確信を見失った」(BNPパリバ)という。
追加手段の1つとなる見通しのマイナス金利も評価は芳しくない。先行した欧州は1年半が経過しても成長は横ばいのまま。銀行貸出は増加したが住宅ローンが中心で、競争の厳しい地銀が体力を消耗する姿は変わらない。企業も「不安感が台頭し現金を保持しておきたいインセンティブが強い」(大和総研ロンドンリサーチセンターの菅野泰夫シニアエコノミスト)と、積極投資に動く気配は乏しい。
疑いの目は、金融不安と縁遠かった日本にも向く。3階層の金利システムを導入しても、利回り低下が地銀経営に重くのしかかることは間違いなく、大手銀も収益機会が失われる。マイナス金利を「ない」と言い続けた黒田東彦総裁の変節ぶりも「どうしてもサプライズを狙わねばならないほど、次の一手に窮しているのだろうか」(ヘッジファンド幹部)と映る。
<米大統領選有力候補、ほぼ全員が反ウォール街>
米ニューハンプシャー州で行われた大統領予備選挙は、サンダース上院議員、トランプ氏が勝利。初戦のアイオワ州と異なる展開は今後の混戦を示唆する結果となったが、現時点で数少なく確実なことがある。誰が勝ってもウォール街には逆風で、危機時の公的資金による救済など「もっての外」となる見通しが濃厚であることだ。
クリントン氏は監督強化などを盛り込んだ改革案を発表済みで、トランプ氏も課税強化案を表明。クルーズ氏は経営危機の金融機関は「破綻させる」と明言した。
一方の現職・オバマ大統領は議会の抵抗を受け本予算審議すら入れない状況で、リーダーシップは期待できそうもない。
難民問題に揺れる欧州も、躍進する極右・極左政党は基本的に銀行救済に否定的見解だ。ギリシャ懸念が今回強まった裏側には、救済を主導してきたメルケル独首相の求心力低下もあるとされる。世界の金融システムはしばらく、薄氷上を歩むしかない。
ギリシャ、第4四半期はマイナス成長 緊縮財政や資本規制が圧迫 2/12
欧州連合(EU)統計局によると、2015年第4・四半期のギリシャの国内総生産(GDP)速報値は、前期比0.6%減となった。緊縮財政や資本規制が引き続き投資、輸出、消費に影を落とした。ただ、市場予想(0.9%減)よりは小幅な落ち込みにとどまった。
前年比では1.9%減。市場予想は1.5%減だった。
第3・四半期は、前期比0.9%減から1.4%減に、前年比1.1%減から1.9%減に下方改定された。
ギリシャ警察、マケドニア国境地帯からの難民排除を開始 2/23
ギリシャ警察当局は23日、マケドニアと接する北部の国境地帯から難民らの排除を開始した。マケドニア政府が通行規制を強化したため、国境を接するギリシャ北部の町イドメニで難民数百人が身動きがとれない状態になっていた。
目撃者によれば、夜明け前にギリシャ警察と空のバスが、難民が集まっている場所に入ったという。難民約600人がギリシャ警察に包囲されている様子がみられたという。
現在、同町には1200人の難民が滞在しており、その多くはアフガニスタンからの移民や必要な入国書類を持たない個人とみられる。
 

 

● 4
再燃したギリシャ危機、英EU離脱問題と鉢合わせも 4/5
欧州連合(EU)の2大リスクであるギリシャ支援と英国のEU加盟の是非を問う国民投票が今夏、鉢合わせするかもしれない。ギリシャの財政的苦境と英国の国民投票は表面上、ほとんど関係なさそうにみえる。欧州の両極端で起きていることなのだから。
国際通貨基金(IMF)通貨基金とEUはギリシャ支援をめぐって対立している。これはウィキリークスがIMFの内部通話記録だとする生々しい文書を公開し、明るみに出た。双方が論争を素早く解決できなければ、ギリシャは7月にも現金が底を突く。英国が国民投票を実施する6月23日ごろに、ちょうど危機意識が高まるわけだ。
英国はユーロ圏のメンバーではなく、ギリシャ支援に貢献する義務はない。だから論理の上で双方につながりはない。しかし、ギリシャが再び破綻寸前に追い込まれたという危機意識に乗じて、英国内の欧州懐疑主義者らはEUから足を洗うべきだと主張するかもしれない。実際、英国が域内の移動の自由を定めたシェンゲン協定に加盟していないにもかかわらず、彼らは既に欧州の難民危機を同じ目的で巧みに利用しつつある。
もしすべてが計画通りに進んでいれば、今ごろギリシャに対する860億ユーロの最新の支援に関する審査は完了していた。ギリシャは当座の必要性に対処するための追加資金を手にしていた。債権者が中期の債務返済義務を「再構築(リプロファイリング)」することでも合意し、ギリシャが2022年以降に困難に直面せずに済む可能性があった。
また、欧州中央銀行(ECB)が量的緩和プログラムにギリシャ国債を対象に含めることで、国債利回りも低下していただろう。さらに重要な点として、ギリシャの銀行は貸し出し条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)に基づき、ECBから企業や家計向けの長期の融資資金をマイナス金利で借りることもできたのだ。これらすべてによってギリシャ経済は回復への道を歩むはずだった。
だが、このシナリオは現実化していない。一因として、チプラス首相率いる左派政権の動きの鈍さが挙げられる。政権は、2018年に基礎的財政収支を対国内総生産(GDP)比3.5%の黒字とする目標達成のため、中期的な財政引き締め策を提案するのが遅かった。長期的に経済の生産性を高める構造改革にも熱心ではない。とりわけ銀行が抱える巨額の不良債権の処理には及び腰だった。
しかし、金融支援審査が完了していない主な理由は、必要とされる事項をめぐるIMFと欧州委員会の対立だ。IMFの方がタカ派的でもあり、ハト派的でもある。
IMFは、新たな対策を実行しなければギリシャの2018年の基礎的財政収支はGDP比1%の赤字になると予想する。欧州委はこれに対し、0.5%程度の黒字を見込んでいる。結果としてIMFは、ギリシャが18年にGDP比3.5%の黒字を達成するには、GDP比4.5%相当の財政緊縮策が必要と考えているのに対し、欧州委は3%程度で足りると主張している。
他方、IMFはギリシャに追加でGDP比4.5%の緊縮策を課すのは不可能であり、非生産的とも考えており、ギリシャが実行できるのは最大で2.5%だと主張する。
問題は、IMFの主張に基づけば、ギリシャは18年に1.5%の黒字しか達成できないということだ。つまり長期的な持続性を確保するため、ユーロ圏の債権者は同国の債務軽減にもっと寛大な対応を迫られる。
こう着状態を打開する一つの方法は、ギリシャ政府が望む通り、IMFを支援プログラムから追い出すことだ。チプラス首相がギリシャの債務負担の追加的軽減を求めるIMFを除外しようとするのは、奇妙に見えるかもしれない。しかし、チプラス氏は、10年後に発動される債務返済条件の詳細よりも、迅速な合意の方を重視している。おそらく急速に低下した自身の支持率回復につながると考えているのだろう。
チプラス氏はIMFを支援団から除外するのに苦労するだろう。ドイツがIMFの残留を強く主張しているためだ。メルケル首相が考えを変えようとしても、ドイツ連邦議会は反対するだろう。確かにドイツは、ギリシャがGDP比3.5%の黒字達成という約束から逃れることを望んでおらず、昨年実際に合意した債務軽減の検討にも後ろ向きだ。それでもドイツは、IMFが構造改革や数値目標の達成に関して欧州委員会より厳しい姿勢を示している点は気に入っている。
これこそが、ウィキリークスの公開文書の中でIMF上層幹部が指摘しているジレンマだ。「メルケルさん、あなたは選択を迫られているのです。どちらがより高くつくのか、考えねばなりません。IMF抜きで事を進めて、ドイツ連邦議会に『IMFが参加していないだって』と楯突かれるのか。それとも債務軽減に取り組むのか。われわれとしては、IMFをつなぎとめておくためにはギリシャの債務軽減が必要だと考えています」
メルケル首相は数週間中に態度を決めるかもしれない。そうなれば、ギリシャのリスクが英国の国民投票に先立って鎮静化することも考えられる。何らかの弥縫策を講じてギリシャが7月に破綻するのを回避し、英国民投票が終わるまで問題を先送りする可能性もあり得る。さもなければ2つのリスクが激しくぶつかり合うだろう。
世界経済の下振れリスク強まる、各国の対策必要=IMF専務理事 4/5
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は5日、フランクフルトで講演し、世界経済は断固たる措置を取らなければ、下振れリスクが強まると表明、各国に対応を求めた。
中国による内需主導型経済への移行や長引く資源安、一部の国で見られる金融状況の引き締まりが先行きの不透明感を高めているとした。
専務理事は、2007━09年の金融危機からの回復が「依然として遅すぎ、脆弱すぎ、耐久力に対するリスクが強まっている」と指摘。
「危機的な状況ではないが、警戒している。成長の勢いがそがれている」としたうえで「政策当局者が課題と向き合い、ともに行動すれば、グローバルな心理とグローバル経済に大きな好影響を与えることができる」と述べた。
米国には最低賃金の引き上げ、欧州には職業訓練の改善、新興国には燃料補助金の削減と社会保障費の拡大が必要だとしている。
また「世界経済の見通しは過去半年で一段と弱まった」とし、IMFが来週、世界経済見通しを下方修正する可能性を示唆した。
専務理事は世界経済がこうした逆風に立ち向かう手段として、構造改革の加速、財政支援の拡大、金融緩和の継続を求めた。
米国については、最低賃金の引き上げや、ワーキングプア世帯への税額控除拡大、家族休暇の改善が、労働力の増加に寄与する可能性があると指摘。
欧州については、若者の失業を減らすため、職業訓練の改善や雇用のミスマッチへの対応が必要だと述べた。優遇税制を通じた研究開発投資の促進や公共投資の拡大も重要との認識も示した。
公的債務や借り入れの多い国に対しては、一段の財政健全化が必要と主張。ただ、ギリシャ支援策については触れなかった。
ギリシャの公務員連合が24時間スト、金融支援条件の年金改革に反対 4/7
ギリシャで7日、年金や税制改革に反対する公的セクターの職員らが24時間ストライキに入り、航空機の運行などに混乱が生じている。病院では最小限度の人員で対応している状況だ。
主催した公務員連合(ADEDY)は同国の公的セクター最大の労組で、約50万人の労働者や年金生活者が加入する。幹部のOdysseas Drivalas氏は「今回のストはウォーミングアップに過ぎない。政府の法案が議会に提出されたら、48時間ストを決行する」と表明。「金融危機以来、労働者は所得の半分をすでに失った。これ以上の負担には耐えられない。労働争議により、少なくとも政府に圧力はかけられる」と述べた。
欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)など国際債権団による第3次金融支援に向け、ギリシャの改革状況に関する審査が行われている。ただ、年金や税制改革といった政治的に難しい問題が含まれていることから、数カ月間遅れている。
2月のギリシャ経常赤字は8.04億ユーロ、前年比で縮小=中銀 4/20
ギリシャ中央銀行が20日発表した2月の経常収支は8億0400万ユーロ(9億1334万ドル)の赤字となった。赤字額は前年同期の14億5000万ユーロから縮小した。所得勘定の改善と貿易赤字の縮小が要因。
観光収入は1億3400万ユーロとなり、前年の1億4300万ユーロから減少した。
ギリシャの15年基礎的財政収支、目標上回る黒字=EU統計局 4/21
欧州連合(EU)統計局は21日、2015年のギリシャの基礎的財政収支(プライマリーバランス、利払い費を除く)が国内総生産(GDP)比0.7%と黒字となり、金融支援策で定めた目標を達成したと表明した。
目標は0.25%の赤字だった。
EU統計局の報道官は「欧州委員会の基本シナリオに沿った水準で、支援策の目標を大幅に上回った」と述べた。
プライマリーバランスは、ギリシャの改革の進展状況を見極める上で重要な指標。
● 5
ギリシャ公共・民間労組、48時間のゼネスト開始 改革に反対 5/6
ギリシャ向け国際支援の条件として同国が目指す税制・年金改革に反対する48時間のゼネストが6日、始まった。
ストはギリシャ最大の公共・民間労組が呼びかけた。港では船舶が停泊したままになり、政府機関も閉鎖。公共交通機関にも影響が出ている。
国内最大の民間労組である労働総同盟(GSEE)は改革について、6年にわたる緊縮財政の犠牲になってきた労働者や年金受給者を「破滅に導く」と批判。
同労組の当局者は9日に予定されるユーログループ(ユーロ圏財務相会合)に言及し、「彼らは優秀な生徒であることをユーログループに証明しようとしているが、それはギリシャの社会保障制度を崩壊させることになる」と語った。
ギリシャと債権団の間には、改革ペースをめぐる認識に隔たりがあり、ギリシャは、現在5月8日の採決に向け議会で審議されている改革法案が次回支援の確保につながることを期待している。
ギリシャ議会、税制・年金改革法案を可決 5/9
ギリシャ議会は、税制・年金改革法案を可決した。同国支援をめぐるユーロ圏財務相会合(ユーログループ)が9日に開催されるのを前に改革法案が可決されたことを受け、チプラス首相は欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)に支援融資の実行を訴えたい考えだ。
法案は、ギリシャが合意した2018年に対国内総生産(GDP)比3.5%の黒字達成に向けた資金確保を目指すもので、債券市場への復帰や持続可能な債務の実現に道を開く。
採決で、定数300の議会でかろうじて過半数を維持する連立与党の結束が試されたが、153人全員が法案を支持した。
同法案ではGDPの3%相当の資金捻出を目指すほか、高所得者の所得増税や免税対象額引き下げを検討する。
また20年間の就労後に月額384ユーロの国民年金を導入することや、年金給付の段階的な削減、および年金の再計算を行うことが盛り込まれた。
チャカロトス財務相は年金改革の影響を受けるのは富裕層で、貧困層ではないとし、改革を擁護した。
議員らに対し「われわれは約束したことを行った。したがって国際通貨基金(IMF)とドイツは実行可能な解決策を示さなければならない。債務について投資家に明確な展望を開く解決策をだ」と語った。
ギリシャ債務の持続可能性に深刻な懸念、ユーロ圏が分析 5/10
9日に行われた臨時のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)向けに準備された欧州安定メカニズム(ESM)の文書は、ギリシャ債務の長期的な持続可能性について深刻な懸念があると指摘した。
同文書は、ギリシャの国内総生産(GDP)伸び率が2018年に3.1%、2019年に2.8%、2020年に2.5%、2025年に1.5%、2030─2060年に1.3%になるとの基本シナリオを想定。
このシナリオに基づくと、同国の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は18─25年まで対GDP比3.5%の黒字を維持する。その後、黒字の比率は低下し始め、40─60年に同1.5%で推移すると分析した。
このESM文書を基に、ユーロ圏財務次官らはギリシャの債務軽減策を検討し、5月24日の財務相会合に提示する。
基本シナリオではギリシャの年間債務返済コストは2030年代終盤までGDP比15%未満、その後は20%未満にとどまると分析されている。
ただ文書は、さらに厳しいシナリオでは、債務の持続可能性を確保するために基本シナリオの場合よりも大規模な措置が必要になると指摘。
基本シナリオと比べて成長が弱く、財政黒字のGDP比が速いペースで低下した場合、ユーロ圏はギリシャ債務の平均償還期間を10年、あるいはそれ以上延長することが必要になるとした。基本シナリオでは延長期間は5年を想定している。
より厳しいシナリオではさらに欧州中央銀行(ECB)が保有するギリシャ国債から得た利益のギリシャへの還元、ESMによる国際通貨基金(IMF)融資の買い上げが必要になるという。
ギリシャ債務軽減、猶予期間と償還期限の延長・低金利必要=IMF 5/20
国際通貨基金(IMF)のライス報道官は19日、ギリシャの債務軽減をめぐる協議について、猶予期間と償還期限の延長のほか「非常な低金利」に焦点をあてて交渉する必要があるとの考えを示した。ただ、IMFがギリシャの債務返済を2040年まで停止するよう求めているとの報道については確認しなかった。
ライス報道官は定例記者会見で、ギリシャに対する債務軽減について予備段階の意見交換が行なわれたことを明らかにし、「われわれは、ヘアカット(債務元本削減)を行なうことなく債務の持続可能性を回復させることは可能だと考えている」と述べた。
ただ、そのためには「長い猶予期間と償還期限、非常に低い金利などの譲歩的な融資条件」が必要になると述べた。
ユーロ圏は24日に予定している財務相会合で、IMFがギリシャ支援に関与し続けることで合意できる対応策で最終合意したい考え。
ただライス報道官は、24日にユーロ圏が合意にこぎつけたとしても、IMF理事会がいつ同合意について検討するかは言えないとし、理事会に諮る用意はできているが、ギリシャ支援はIMFが他の国に対し実施する支援と歩調を合わせたものになる必要があるとの考えを示した。
ギリシャ議会、増税含む改革案可決 支援継続へ道 5/23
ギリシャ議会は22日、増税や新たな民営化基金の創設、銀行の不良債権売却に関する規制緩和を盛り込んだ改革法案を可決した。改革案の法制化は、国際債権団から次の融資を受けるための条件となっていた。
24日に開催されるユーロ圏財務相会合(ユーログループ)を前に法案を通過させ、支援凍結解除への道を開いた。
同法案には、付加価値税(VAT)を現行の23%から24%に引き上げることや燃料・タバコ、インターネット利用への増税、不動産税の延長なども含まれる。
連立政権は定数300の議会でかろうじて過半数(153)を占めるが、この法案については1人のみが、民営化基金と緊急時の歳出削減メカニズムに関する一部の条項に反対した。
議会前には数百人の市民が集まり、改革案への抗議デモを行った。
ユーロ圏のギリシャ支援、予想通りの問題先送り 5/26
ユーロ圏のギリシャ支援に関する今回の合意は、合理的で予想通り、そして問題山積だ。ユーロ圏の問題といえば、「政府は問題を先送りしているだけ」としばしば評価されてきたが、今回の合意はその域にさえ達していない。
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)はギリシャへの支援第3弾となる103億ユーロの融資実行で合意。国際通貨基金(IMF)の参加を取り付けられるような条件も練り上げた。争点となったのはIMFの要求、すなわちユーロ圏はギリシャに対し無条件の債務減免を前倒しで実施するとともに、低成長に配慮して財政黒字目標も引き下げよ、という求めだった。しかしギリシャを甘やかし過ぎると財政移転に対するドイツの抵抗をあおる。ドイツで反ユーロ心理が強まり、連邦議会選挙(総選挙)を控えていることを考えれば、これは危険な状況だ。
IMFは一定の譲歩を引き出した。ユーロ圏はギリシャ短期債務の一部を長期債務と交換することで、欧州中央銀行(ECB)が作り出した低金利の恩恵が最大限及ぶようにする。2018年以降、返済負担を抑える必要が生じれば金利への上限設定や、利払い繰り延べにも応じることで合意。それ以降は国内総生産(GDP)対比3.5%の財政黒字(利払いコストを除く)義務付けも止める。
しかし譲歩したのはIMF側も同じだ。IMFは資金調達コストの上限をGDPの10%とするよう求めていたが、決まったのは15%。財政黒字比率はIMFの求めた1.5%ではなく、ユーロ圏の財政規則に準拠することとした。債務減免の規模もその時の必要に応じて決まることとなっており、ユーロ圏が態度を翻す可能性が残る。こうした譲歩の見返りとして、IMFはギリシャ向け融資をユーロ圏の基金から早期に返済してもらえるかもしれない。
昨年のギリシャ選挙で急進左派連合(Syriza、シリザ)が勝利していなかった場合の想定に比べれば、ギリシャは今回、ましな合意を得られたのだろう。しかしこの程度の恩恵では、議会で薄氷の過半数維持に苦心するチプラス首相の大きな追い風にはなりそうもない。首相の行く手には、GDP対比3%相当の財政緊縮、そしてさらなる改革が待ち構える。ギリシャ情勢が不安定化し、ひいては欧州難民危機が深刻化するリスクに照らせば、債権者が厳しい選択を先送りしたのは驚くに足らない。
ギリシャ債務合意、IMF動かしたラガルド氏の剛腕 5/30
欧州連合(EU)のユーロ圏財務相会合は25日、未明に及ぶ長時間協議の末にギリシャの債務軽減で合意したが、ユーロ圏にギリシャ債務減免を強硬に求めていた国際通貨基金(IMF)が折れ、支援枠組みへの参加に前向きな姿勢に転じる上で決定的な役割を果たしたのは、協議の場にいないラガルド専務理事だった。
IMFはギリシャの債務は持続不可能だと主張し、ユーロ圏がギリシャ債務を再編しない限り第3弾となる今回の支援枠組みに加わらない方針を示していた。一方、ドイツのショイブレ財務相など一部のユーロ圏当局者は、モラルハザードを引き起こしかねないとして債務減免を拒否していた。
ユーロ圏の複数の当局者によると、協議ではIMF内部でトムセン欧州局長と他の当局者がいつになく緊迫したムードに包まれ、意思の疎通が難しくなっていることに驚かされたという。特に合意を最終的に受け入れる前に、トムセン局長がラガルド専務理事に連絡を取るのに数時間も待たされたのが目を引いた。
また別のユーロ圏当局者によると、協議場の外の廊下で専務理事と10分間の詰めの電話協議を行ったトムセン局長は「苛立っているようにみえた」。局長は合意の受け入れに反対したが、意見が通らなかったようだったという。
IMF当局者は、対応が遅れたのはカザフスタンを訪問中のラガルド専務理事と連絡を取るのに手間取ったのが主な理由だと説明。協議の前に事前の調整を行っており、「専務理事は欧州局長の立場を全面的に支持している」として、ラガルド氏とトムセン氏の間で意見対立があったとの見方を否定した。
ユーロ圏は、ギリシャはユーロ圏に加盟しており破綻を回避することはできるとして、IMFに債務減免について甘い扱いを求めている。またIMFの対ギリシャ融資の返済についても、それほど懸念する必要はないと主張している。
こうした点に関して一部のIMF当局者は合意成立後に記者団に対して、ギリシャへの追加融資の実行には必要な条件を満たす必要があると指摘した。
しかし複数のユーロ圏当局者は、末端の職員がどう考えようと、ラガルド専務理事が深夜の電話会談でトップレベルの言質を与えており、IMFの支援枠組みへの参加は確実だとみている。
ある欧州筋は「真の実力者はラガルド氏だ」と話した。
複数のEU当局者は、今回の合意はラガルド氏が日本で20―21日に開かれた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長やショイブレ財務相と会談した際に事実上決まっていたとみている。
別のユーロ圏当局者は「IMFは支援枠組みに参加すると考えている。参加前には秋に可能な手立てについて集中的に話し合う必要がある。しかし大丈夫なはずだ」と話した。
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ギリシャの景気回復、投資を通じて支援したい=フランス首相 6/2
フランスのバルス首相は2日、フランスは投資を通じてギリシャの景気回復を支援したい、との姿勢を明らかにした。ギリシャへの公式訪問に先立ち、ギリシャの経済紙「カシメリニ」とのインタビューで語った。
首相は「当然(フランスはギリシャへの投資に関心がある)。われわれは、フランス企業に対して、投資の可能性を検討するよう促している。ギリシャの景気回復を後押ししたいためだ」と述べた。その上で、関心のある分野として、エネルギーや観光、運輸、農業などを挙げた。
首相は、ギリシャの債務軽減をめぐる厳しい交渉の場では、フランスはギリシャを支持してきた、と指摘。今後も支え続ける、と述べた。
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)が先月、ギリシャへの追加融資枠を承認したことについて、首相は、前向きなシグナルを送ったと強調。2018年の金融支援プログラム終了までに、ギリシャが市場での資金調達に復帰する可能性への信頼感を高めた、との見方を示した。
バルス首相は「ギリシャの居場所は、欧州連合(EU)そしてユーロ圏だ。これが、フランスの変わらぬ立場であり、われわれが昨年、(ギリシャ金融支援の)合意達成に向けて努力した理由だ」と述べた。
ドイツ議会予算委、ギリシャへの追加融資実行を可決 6/10
先月のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)で合意した、ギリシャへの103億ユーロ(約116億4000万ドル)の追加融資について、ドイツ議会の予算委員会は10日、採決の結果、融資実行を可決した。
ギリシャ議会は先週、追加融資の条件だった改革法案を承認した。
英国のEU離脱リスク、警戒される金融波及ルート 6/16
英国が欧州連合(EU)を離脱した場合、警戒されるのは金融市場での波及ルートだ。英国の景気悪化や離脱連鎖も懸念材料だが、あくまで長期的な影響。短期的には、過去の金融危機のような、金融市場での信用収縮が最大のリスクとなる。その場合、金融セクターへの不安要因となるマイナス金利拡大などの金融緩和で防げるか予断は許さない。
<拡大するハイブリッド証券>
英国がEUを離脱した場合、国債の格付けが引き下げられる可能性がある。現在はスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が最高位のAAA、ムーディーズがAa1(最上位から2番目)を付与しているが、もし離脱となれば、S&Pは2ノッチ引き下げる可能性があることを明らかにしている。
英国債の格付けは比較的高いが、英国の銀行格付け(S&P)は大手でAからBBBと大半が低い。国債が格下げされればドミノ倒しのように銀行にも波及するため、信用力低下によるカウンターパーティリスクが高まる。
格下げがあれば、英国の銀行が発行しているハイブリッド証券などの価格急落も警戒される。ハイブリッド証券とは、優先株や劣後債など、株と債券の中間の性格を持った商品。債券よりも利回りは高いが、ボラティリティも高い。リーマン・ショックの際には4割近く下落する商品もあった。
リーマン・ショック後の金融規制の強化で、自己資本における株と債券の境目が曖昧になり、ハイブリッド証券の市場は拡大。昨年末で60兆円程度、そのうち英銀行が発行しているのは約2割弱あると推計されている。
日本でも人気で、ポートフォリオの4分の1程度を英国の銀行が発行するハイブリッド証券で組成されている日本のハイブリッド証券投資ファンドも複数ある。
「ハイブリッド証券の価格急落で、ファンドの基準価格が急落し、解約請求が相次ぐ、もしくは相次ぐと予想されれば、ファンドを縮小させるために、ポートフォリオ内の他の商品も売らなければならなくなる」とマネックス証券・チーフアナリストの大槻奈那氏は警戒する。
ファンドの解約に伴う売りの殺到は、過去の金融危機にもみられた現象だ。
<警戒されるトリガー抵触>
英ポンドが急落すれば、英銀行の自己資本比率に大きな影響が出る。海外通貨の価値が対ポンドで上昇することで、英銀行の海外資産からの収益が計算上膨らむため、収益面ではプラスだ。しかし、同時にリスクアセットが増えることになり、自己資本比率は低下する。
英銀行のカウンターパーティリスクが高まり、それが信用収縮に発展すれば、金融危機の扉が開く事態に接近しかねない。英銀行が自己資本比率を改善させるために、海外資産を売却すれば、他国の金融市場に大きな影響が出る展開も予想される。
リーマン・ショック時のような金融危機を防ぐため、国際的な業務を担う金融機関に対し、新たな自己資本規制(バーゼル3)が2013年に導入された。バーゼル3では、金融機関に対し自己資本強化を求めており、実際、各金融機関の自己資本は厚みを増している。
ただ、バーゼル3で自己資本として算入が認められることになったCoCo債など新型ハイブリッド証券にはリスクもある。発行体である金融機関の自己資本比率が予め定められた水準を下回った場合、元本の一部もしくは全部が削減されたり、強制的に株式に転換されるトリガー条項があるためだ。株式に転換されれば希薄化が起き、銀行株の圧迫要因になる。
ハイブリッド証券の発行は世界的に拡大している。ムーディーズ・アナリティックス・ジャパンのシニア・ディレクター、水野裕二氏は「世界的にみれば、自己資本がトリガー抵触までの余裕が小さい一部の金融機関もある。市場で資産価格が急落し極端な損失が出るような場合、懸念が高まるかもしれない」と指摘している。
<「ブレグジット」と「グレグジット」の連鎖>
ギリシャリスクが再燃する可能性もある。ユーロ圏財務相会合は5月、ギリシャへの支援第3弾となる103億ユーロの融資実行で合意した。しかし、ギリシャの財政再建は進んでおらず、国内総生産(GDP)比3%相当の財政緊縮や、さらなる改革を行う必要があり、政権基盤も不安定だ。
英国がEUを離脱すれば、ギリシャのユーロ離脱に道筋を付ける可能性がある。「ブレグジット」と「グレグジット」が結び付けば、「未だギリシャ国債を保有している欧州の銀行に不安が広がる恐れが強まる」と、りそな銀行・アセットマネジメント部チーフ・エコノミストの黒瀬浩一氏は警戒する。
昨年からスタートした欧州のSRM(単一破綻処理メカニズム)によって、政府の直接的な銀行救済は難しくなった。救ってしまうとその後モラルハザードが生じ、無謀なリスクをとってしまうかもしれないという理念が背後にある。国から銀行に対する支援のレベルは低下しており、この面だけで言えば、金融危機は起きやすくなっている。
金融市場が大混乱を起こせば、日米欧の中央銀行は金融緩和で対応することも考えられる。しかし、大混乱の要因が単なる投資家のリスク回避ではなく、信用不安であった場合、マイナス金利拡大などの緩和策では、収益圧迫が懸念される銀行株が下落するなど「火に油を注ぐ」ことになりかねない。流動性供給以外に何ができるか、当局の対応に注目が集まりそうだ。
英国民投票、「EU離脱」選択で何が起こるか 6/20
欧州連合(EU)は6月23日の英国民投票を控え、EU離脱(ブレグジット)の結果が出た場合のシナリオ作りを進めている。数多くのEU高官や加盟諸国外交官への取材に基づき、離脱の場合の「行程表」をまとめた。
○24日(金曜)─3つ、もしくはそれ以上のR
投票締め切りは23日午後10時(2100GMT=日本時間24日午前6時)。主だった出口調査は計画されていない。投票結果はブリュッセルで夜が明けるころに判明する見込み。
キャメロン英首相は国民投票で離脱が決まれば、「速やかに」EUに通告するとしているものの、少なくとも数日かかる可能性もある。首相にとって敗北を意味する離脱となれば、保守党内から辞任圧力が強まるだろう。辞任の圧力はたとえ残留が決まっても強まる可能性もある。
金融市場は荒れ、イングランド銀行(英中央銀行)と欧州中央銀行(ECB)はポンドやユーロに対する「ブレグジット・ショック」への対処方針を用意している。
加盟国のEU問題担当相や大使らが午前10時(0800GMT)までに定例会合のためルクセンブルクに集まる。行動をとるための最初の機会となる。
ドイツとフランス、EUの各機関は共同声明を発表する見込み。EU創設6カ国(ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)の外相が24日にベルリンで会合を開く可能性がある。
欧州委員会のユンケル委員長が午前10時30分(0830GMT)に、ブリュッセルの本部でトゥスクEU大統領、シュルツ欧州議会議長を会談。持ち回りのEU議長国を現在務めるオランダのルッテ首相も参加し、メッセージを発表する。
「遺憾(Regret)」、英国民の意思の「尊重(Respect)」、EU統合に向けた「決意(Resolve)」という3つの「R」が盛り込まれそうだ。
メッセージには4つ目のRが盛り込まれる可能性も。それはおそらく「報復(Reprisal)」だ。離脱する国が直面する苦境を警告することによって、他国が追随しないよう先手を打つ狙いだ。
○25日(土曜)─ユーログループ緊急会合も
一部のユーロ圏財務相はユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の緊急会合が開かれる可能性があると示唆。ただ、高官らによると、銀行セクターや市場混乱への対応はECBやその他規制当局が行うものとして、ユーログループによる緊急会合は開かれない見通し。
○26日(日曜)─EU旗の下に結集せよ
ユンケル欧州委員長は英国のジョナサン・ヒル委員を含む欧州委員28人を集め、臨時会議を開く。英国のEU離脱協議の責任を担うのが欧州委だ。
EU当局者らはブレグジットに備えた「プランB」はないと説明。しかし、昨年夏のギリシャ問題で似たような否定をしつつ、緊急事態に備えていたことを考えれば、額面通りには受け取れない。
「月曜(27日)までにすべての準備を整える必要がある」とEU高官は話す。
加盟国の大使や指導者らのアドバイザーである「シェルパ」は、国民投票でブレグジットが決定した場合、ブリュッセルで会合を開く予定。
○27日(月曜)─秩序立った協議を表明
世界の金融市場にとって新たな1週間が始まり、投資家や有権者は英国とEUがどこへ向かっているのか手掛かりを欲するだろう。
英国とEUは秩序立った協議を進めていくこと、そして直ちに何かが変化するわけではないことを表明する。
○28日(火曜)─キャメロン首相、離脱表明を迫られる
2日間にわたるEU首脳会議が予定されている。離脱結果が出ればキャメロン英首相の政治生命は終わるかもしれないが、与党保守党が後継者を選出するまでは現職にとどまるだろう。首相はブリュッセルで開かれる夕食会に出席する見通しだ。
最大の注目点は、キャメロン首相がトゥスクEU大統領に対し、離脱の法的根拠となるEU法50条の発動を通告するかどうかだ。
EU当局者や外交官らは、英国がすぐさま離脱手続きを開始することを望んでいる。現時点ではEUが英国にそうすることを強制する法的手段は見当たらない。
EU条約では加盟国の排除を認めていない。ただ、政治的な圧力が強まり、有権者の離脱意思を尊重することを英国政府に求めるだろう。英国抜きで他の27カ国が協議を開始する見通し。
キャメロン首相が国民投票で勝利すれば、首脳会議は首相のEU改革案に関して早急に議論する。同案は移民対応で英国に譲歩した内容となっている。
○29日(水曜)─キャメロン首相抜きで首脳会議
EU首脳会議2日目、キャメロン首相を除く27カ国の首脳が英国離脱後の道筋について協議する。EU法50条では、離脱協議の期限を2年間と定めている。EUは英国離脱に伴う予算の穴を埋めなくてはならない。また、英国に住むEU市民および欧州大陸に住む英国人の将来の権利を再保証する必要がある。
独仏を筆頭とするEU指導者らは直ちにEUの結束と統合を推進しようとするだろう。懐疑派の英国が去ることで、EUの軍事協力緊密化が再び俎上(そじょう)に上りそうだ。
2017年のフランス大統領選候補である極右のマリーヌ・ルペン氏の台頭を抑えるため、若年層を中心とした雇用創出などの対策も打ち出されそうだ。
EU指導者らは欧州委員会に交渉権限を与える。英国の一部では、新たな貿易条件をめぐる協議を含むため、離脱交渉が2年を超えるとみる向きもある。しかし、期限の延長にはEUで満場一致の賛成が必要となるが、EU内でそうなるとみる向きはほとんどいない。
一部では、将来の貿易条件に関する英国との協議は並行して進められるとの指摘も出ている。ユンケル委員長はこれまで、EUは2年間の離脱協議を優先し、その後は「白紙状態で」協議を開始すると語っている。
○30日(木曜)以降─2年間は現状維持
英国がEU離脱手続きに着手しても、2年間はすべてのEU法が英国に適用され、その後は一切適用されなくなる。
欧州議会の英国議員やヒル欧州委員は現職に留まり、EU公務員である英国人数千人も職務を続行し、英国の閣僚はEU閣僚理事会メンバーに名を連ねたままだ。ただ、彼らは実質的な発言権を持たなくなる。
また、英国は2017年後半に予定されるEU議長国の座を、次の順番のエストニアに譲るだろう。
欧州安定メカニズム、対ギリシャ融資75億ユーロ実行 6/21
ユーロ圏の金融安全網である欧州安定メカニズム(ESM)は21日、ギリシャが改革審査を通過したことを受けて、同国に対し75億ユーロ(85億ドル)の融資を実施した。
ESMのマネジングディレクター、クラウス・レグリング氏がアテネで、チャカロトス財務相との会談後に記者団に語った。
このうち56億ユーロは欧州中央銀行(ECB)や国際通貨基金(IMF)への支払いに、18億ユーロは延滞していた政府の支払いに充てられる。
レグリング氏によると、融資の金利は現在0.8%、期間は平均32年間。
ユンケル欧州委員長は訪問先のアテネで、「ギリシャは正しい方向に向かっている」とし、同国の改革努力を評価した。
英EU離脱問題、ギリシャ危機化の恐怖 6/27
世界中に衝撃を与えた英国の欧州連合(EU)離脱決定は、今後も長く市場心理の重石となろう。起こるはずのないことが起きたパニック的なポンド売り・株売りが止まったとしても、すぐに答えが出そうにない難題が山積しているからだ。
ざっと考えるだけでも、EU離脱後の英国の未来、英国社会の分断と政治情勢の不安定化、英国とEUの離脱協議の行方、金融センターとしてのロンドンの地盤沈下、スコットランドや北アイルランド(場合によってはロンドンさえも)が英国から独立するリスク、欧州各国でくすぶるEU懐疑論と離脱ドミノの恐怖、EU解体への漠然とした不安など、枚挙にいとまがない。今後の展開を予想するのは非常に難しく、その不確実性の高さが不安を増幅することになりそうだ。
<水面下で始まった英国とEUの攻防>
短期的な金融市場の動揺が一巡した後は、離脱に向けた英国とEUとの協議を見守る以外にないわけだが、まずはその協議がいつ始まるのかも分からない。
離脱に向けた手続きは、英国がEUに離脱の意向を正式に伝えたときから始まる。EU側が早急な離脱手続きの開始を求めているのに対し、英国側は離脱の通告を先送りしようとしている。協議期限は英国が離脱の意向を伝えてから2年間。延長もできるが、そのためには英国を除くEU加盟国の全会一致での合意が必要となる。
協議が長く、厳しいものになることは目に見えていて、2年以内に終わる見込みはほとんどない。合意しないまま2年が経過すると、英国に対するEU法の効力が停止する。つまり、離脱後の対EU関係などの取り決めが行われないまま、英国は域外に放り出される。EU市場へのアクセスは失われ、EUの貿易取引には域外関税が適用されることになる。
協議がまとまらずに困るのは英国の方で、交渉上の立場が弱い。だからこそ、2年間の時計の針が動き出す前に、EU側と水面下で下交渉をし、ある程度の合意ができた段階で離脱の意向を伝えたいと考えている。キャメロン首相が辞意を表明した今、誰が英国内でEUとの協議を主導するのかも定まっていない。
そもそも離脱派の間でも、離脱後の対EU関係について統一的な見解がない。まずは10月の保守党大会で次期首相を選び、国内の意見集約をしたうえで、EUとの協議に臨むことになろう。
対するEU側は、自国のEU懐疑論者への追い風となることを恐れ、交渉上の立場を少しでも強くしようとする英国の動きをけん制している。離脱投票後の不安定な状況をただ傍観することは、EU側が積極的に対応していないとの誤ったメッセージを金融市場に送る恐れもある。英国側とEU側の水面下での攻防はすでに始まっている。
<ギリシャ危機同様、市場不安の「元凶」に>
金融市場は少なくとも向こう2年間はこうした英国とEUとの神経戦に振り回されることになるが、その構図はどこかギリシャ危機時のギリシャ政府と債権者との関係にも似ている。
英国は新首相の下で、国民投票の結果を尊重しつつ、国益を最大限守るべく、関税、単一市場へのアクセス、国境管理、予算拠出の各点について、EU側に譲歩を求める。EU側は各国で伸張が著しい反EU勢力を勢いづかせないためにも、英国に甘い顔をすることは出来ず、厳しい要求を突き付ける。
その間、英国内では離脱後の先行き不透明感から新規の投資が手控えられ、直接投資の流入も激減し、景気は停滞色を強める。残留票を投じた国民は離脱決定と離脱協議に憤りを感じ、離脱票を投じた国民の一部も「こんなはずではなかった」「離脱派キャンペーンにだまされた」との不満を募らせる。国民投票の再実施や離脱手続きの撤回を求める声が高まったり、スコットランドや北アイルランドで英国からの独立を求める声が高まったりと、英国分裂のリスクも意識される。その間も、交渉期限を伝える時計の針は進んでいく。
一方のEU諸国でも、英国に厳しい要求を突き付けたところで、自国民のEUに対する不満が解消されるわけでもなく、反EU機運は静かに広がっていく。協議期間中には、オランダ、フランス、ドイツなどで重要な選挙が予定され、選挙でEU懐疑政党が躍進するたびに市場はさらにナーバスとなり、EUの政治家は英国にますます厳しい態度で臨もうとする。離脱のタブーが破られたことで、「離脱ドミノ」に対する防波堤は投票以前と比べて低くなっている。
なぜなら、英国に次いで離脱する国が現れれば、雪崩を打ったように離脱国が相次ぎ、EUが解体に向かうリスクが意識されるからだ。実際に国民投票を実施する国や離脱する国が現れるまでには至らなくても、市場の動揺は避けられない。
協議の難航や国内政局の不安定化が伝わるたびに、英国はEUから無秩序な形で離脱を余儀なくされるとの見方が強まる。不安のクライマックスは協議期限が終了する2年後で、恐らくその時点で協議は道半ばとみられ、協議期限を延長するか否かでギリギリの交渉が行われる。お互い簡単には譲歩できないチキンレースの様相を呈し、金融センターとしての地位が脅かされる英国とEUの喧嘩別れのリスクに金融市場は激しく動揺する。
それはあたかも、ギリシャ危機時に、協議の難航や政治リスクが伝えられるたびに市場が動揺し、国債償還が近づくとデフォルトやユーロ離脱への不安が市場に広がった様子を彷彿させる。
少なくとも2年間は続くこうした不安定な状況とEUの弱体化で、欧州発のリスクイベントに対する市場のリスク許容度は著しく低下していく。その間に様々な政治危機が訪れるであろうし、南欧の財政リスクを封じ込めている欧州中央銀行(ECB)の量的緩和策もいよいよ限界に近づいていくはずだ。英国民投票によって「パンドラの箱」は開かれてしまった。離脱投票後の「現実」に向き合わなくてはならない。 
●「破綻国家」ギリシャの現実 2016/3 

 

「ドイツへの玄関」へと向かう
シリア難民が戦火を逃れてヨーロッパに押し寄せている。私がその状況を取材するために欧州を訪れたのは2015年12月のことだった。ジャーナリストとして、世界的に注目を集める難民問題を取材することに特に気合いが入っていた。
しかし、実際に現地を訪れると、それ以上に大きな問題が、ヨーロッパに横たわっていることを知ることになる。
それは、ギリシャの超絶な不景気と治安の悪化である。
原因ははっきりしている。2010年に経済危機を迎え、財政は破綻寸前。元来公務員が多く、老人は支給される年金だけで生きているような国である。そのうえ国の財政が破綻したのだから、混乱ぶりは推して知るべしである。
ドイツを目指す難民にとって、ギリシャはドイツへの「玄関」となる。そこで私はギリシャに入り、難民問題について取材を行うことにした。
ところが実際にギリシャ入りした後に「シリア難民についてどう思いますか?」と国民に問いかけると、「難民よりも経済を再建してほしい。そっちのほうが重要だろ」と返ってくる。
「難民が押し寄せたことで、治安に変化はありましたか?」と聞けば、「それよりもロマをなんとかしてほしい」と言われてしまった(欧州では、数百年前から世界各地を流浪してきたロマに対する差別的な意識がいまだに残っている)。
この国ではいま、一体なにが起きているのか。今回は破綻寸前国家・ギリシャの現実をお伝えしようと思う。
油だけのパスタ
冒頭でも触れたように、ギリシャ国民が関心をもっているのは難民よりも「経済」であった。私がこのことを意識したのは、難民たちが欧州へ向かうために待機していたバス停に行った時だった。
アテネ市内の「地下鉄ヴィクトリア駅」を出たところにある公園には多くの人が溜まっていた。ここは、観光地として有名な場所ではないが、マケドニアに向けて出発するバスの発着場になっていた。ここにいる人々はドイツを目指す難民たちである。
若い男性が多い。彼らに対して、「どこから来たんですか?」「どこを目指すんですか?」とインタビューを重ねた。
彼らが食べている、支援団体から配給された弁当なんかもつまみ食いしてみたが、味付けがされていない、油を絡めただけのパスタがあまりに不味すぎて残してしまった。食べ物ひとつとっても、彼らを取り巻く環境がいかに厳しいものか分かる。
公園内をウロウロと取材していたわけだが、そこで気がついたことがある。難民が少数のグループに分かれて、どこかに出かけていくのだ。
バスを待っているだけで退屈なので、市内を観光でもするのだろうか。そんなことを思いながら彼らに付いて行くことにした。
彼らは5分ほど歩くと狭い路地に入っていく。取材をすれば話してくれるかもしれないが、断られては元も子もない。後をくっついて追いかけていくほうが確実だ。ストーカーや不審者のようで気味の悪いところはあるものの、取材ではよくあることなのだ。
同じ道に踏み込むと一気に雰囲気が暗くなった感じがした。
経済破綻の影響なのか、あるいは民度の問題なのかわからないが、アテネの裏町の荒廃した雰囲気は「不景気です」と言っているようなものだった。とはいえ裏社会の取材を長く続けてきた私からすると、このぐらいの状況のほうが馴染みの空気ともいえる。
仄暗いレッドライトのもとへ
男たちは細い路地に面したドアに出入りしている。昼間だというのに赤いライトが点灯しているドアだった。ライトの色のせいだろうか、卑猥な匂いが漂っている。
見ているだけでは結論を出すことはできない。入って確かめてみることにした。
ドアに近づいたが、隙間なくしっかりと閉まっているので中は覗けない。ただのドアが鉄扉のように重く感じられ、私のことを拒絶しているようだった。
いくつかのドアを回ってみたが同じだった。困り顔で佇んでいると中年男性が通りかかったので声をかけてみた。
「このライトがついているドアは何ですか?」「それはさ、あれだよ……楽しいところさ」
はにかみながらどこか同意を求めるように言ってきた。彼はギリシャ人でそれほど英語が堪能ではないようだ。その後言葉はギリシャ語になり、完全に何を言っているのかわからなくなった。だが、彼の微妙なはにかみ具合からここが「わいせつな場所」であることはほぼ確信できた。
次の瞬間。レッド・ライトの下のドアが開いた。
裸の女がドアから半身を乗り出してなにやら叫んでいた。おっぱいが丸見え。下半身はタオルを巻いただけ。口走る言葉の内容はわからないが、中年の女性が慌てたように走り寄ってきて女は再びドアの奥に入っていった。
一連の様子を眺めていたのは、中年男性も同じだった。お互いにアイコンタクトで「いいもの見たな」を伝え合った。国籍は違えど、ラッキースケベな状況を共有できたことに妙な連帯感が生まれていたのであった。
外国人お断り
このまま中を見ないで帰るという選択肢はない。ドアノブをまわして入ったが、薄暗い店内には誰もいない。気合を入れていただけに拍子抜けした。ここからどうすればいいのか……。とりあえず声を掛けてみる。
「ハロー」
店の奥で人の気配がし、初老に差し掛かったぐらいの女性が出てきた。
(この人が!?)
ギョッとなったのは一瞬で、すぐに脳内で訂正作業が進行した。ついさっき目撃した裸体の女性は、張りのある巨乳。失礼ながらこの棺桶に片足を突っ込んだような老婆であるはずもないので、もう一度「ハロー」と笑顔でこちらが客であることをアピールしてみた。どうやら私が外国人であることはすぐにわかったようだ。
「うちはギリシャ人だけだよ」
無理もない。私の容姿はどこからどう見ても黄色人種のそれである。慌てず騒がず「そうですか」と落ち着いた返事をした。一歩も引かない私に対しておばさんはさらに繰り返す。
「外国人はダメ。英語は話せない」
お前いま英語で話しているだろ!と突っ込みたいところだが、正直、どこかでこれ以上踏み込まなくて済んだことに安心していた。
とはいえ、なにも情報を得ぬまま帰るわけにもいかない。私はもう二、三質問を投げてみた。
売春婦も食えない国
「女の子はギリシャの子なの?」「うちのはポルトガルとルーマニアだよ」
やはり働いているのは外国人。実はギリシャ人はカップルのセックス回数が世界一といわれるほど性的に奔放とされる反面、「プライドが高いため、売春はしない」と聞いたことがある。
「プレイの値段は?」
しつこく食い下がる私におばさんは面倒くさそうに言った。
「ノーマルセックスは10ユーロ。それ以外はダメだよ」
10ユーロ! これは予想外の金額だった。日本円で1400円(取材当時のレート)だ。
実は、ギリシャでは売春が合法化されている。職業的に売春婦が許容されることに加えて、海外からの出稼ぎ売春婦が多い土地柄だ。特に04年に開催されたアテネ五輪の際には、売春業界もバブルのように盛り上がったらしい。その分、値段も膨れ上がったという。
その後、次第にギリシャの不景気とともに他の欧州諸国より相場が安くなったが、それでも40ユーロ(約6000円)ぐらいと聞いていた。だが、私に提示されたのはそのさらに四分の一。これほどの価格は発展途上国でも見たことがない。
強制的に搾取されているならいざしらず、合法的な管理売春業の場合は、店と売春婦の折半が基本である。
となるとギリシャの売春婦たちは一度に5ユーロしか利益を得られない。何人を相手にするのかはわからないが、10人相手にしても50ユーロに過ぎない。これで暮らしていくことができるのだろうか。余計なお世話ながら心配になってしまった。
さらに気になるのは「ノーマルセックス」だ。意味がわからないが、おばさんが苛ついているので聞くわけにもいかない。とりあえず「そうですか」と返事をすると、いよいよ本気で追い出しにかかってきた。
「とっとと帰っておくれ」「はいはい」
追い立てられるように店を出た。これまで暗く沈んだ雰囲気に見えていた路地が急に大人の社交場のように思えたのは、この通りの正体を知ったからだろう。しかし、気になるのはやっぱりおばさんの言っていた「ノーマルセックス」である。
「お金がないからね」
その後も何件か売春宿をまわり、「外国人お断り」と拒絶されながらも「ノーマルセックス以外のこともやるのか?」と聞いてみたところ、思いもよらぬことを教えられた。客として訪れる人の中には、肛門性交を要求してくる人がいるというのだ。
いくつかの宗教では結婚相手以外との性交が禁止されているが、肛門への挿入はセックスに含まれないと解釈しているものもあるらしい。そのように説明されたものの真偽の程はわからないし、宗教に関係なく肛門を使おうとする客はいそうだなと思った。
さきほどの老婆が言ったように、これらの店は「ギリシャ人以外お断り」。公園で出会った難民の男たちはどうしていたのかというと、どうやら連れ立って見学をしているだけの「ひやかし」のようで、ドアを開けて中を覗いたり入ったとしてもすぐに出てくるの繰り返し。
「遊ばないの?」「この先、お金が必要になるから」
声をかけた難民の若者はそう言ってバス停に戻っていった。
ありえないほどの安価で働く出稼ぎ売春婦と、その金すら節約しようとする難民たち。この構造が変わることは、しばらくないだろう。
公園に集まる薬物中毒者たち
アテネで難民取材を開始した私は、町の北部にあるヴィクトリア駅でレッド・ライト地区を巡った。
いかがわしい場所は治安が悪い、というのが一般的なイメージだろうが、私の個人的な見解では、そうとも限らない。というのも、管理売春が行われる場所には、そこを掌握しているギャングのような連中が目を光らせているため、トラブルは起きないし、何か起きたとしても連中が片付けてくれるからだ。
それでも、アテネのレッドライト地帯は、メインの通りを一本裏に入るだけで、荒廃した雰囲気が漂うようなところだった。経済破綻の影響は、レッド・ライトにも届いていた、ということだ。一回10ユーロという売春の値段を見ればそれは明らかだ。
さらに町のいたるところで目にしたのが、ドラッグに手を出している人たち。路上で注射器を腕に刺し、シンナーを吸引している。酩酊してそのまま突っ伏しているが誰も助けようとはしない。
地獄のような状況だが、それでも「腐ってもEU加盟国」。戦火に追われてきたシリア難民たちにしてみれば天国なのだろう。実際、2015年だけで84万人の難民があらゆる手段を用いてギリシャに流入し、ドイツを目指した。
アテネ市内のレッド・ライトエリアの近くに公園がある。欧州諸国への移動手段が確立されていなかった昨年夏頃には、そこで多くの難民がキャンプをしていた。そのことを伝えるニュース映像が記憶にあったので、公園を目指して行くことにした。
壊れたままのベンチが意味するもの
スマホの地図アプリで確認すると、その規模はかなり大きい。全域を歩きまわるには1〜2時間はかかるだろう。手当たり次第に探索するのは体力的にはしんどい。
おそらく、難民たちも同じように考えるはずだ。海路で来る人が大半のため、ピレウス港から上陸するはず。そうなればこの場所までは地下鉄で来ることになる。つまり、駅やバスターミナルに近い側の入り口周辺を探れば効率が良さそうだ。
そんなことを考えながら公園についたが、ホンネを言えば拍子抜けした。映像で見ていたような難民テントの群れがなかったからだ。地元の人達が散歩をしたりするのどかな光景が広がるばかり。
「これは読みが外れたか」とも思ったが、広大な公園なので入り口の光景だけで判断するわけにはいかない。奥に突き進んでいけば難民たちも溜まっているかもしれない。
20分ぐらい公園を歩きまわると、ひときわ異様な気が溜まっている場所に出た。叩き壊されたベンチと、散乱するゴミなどが目につく。
ニューヨークでは、1994年に市長になったルドルフ・ジュリアーニが「ブロークン・ウィンドウ(割れ窓)理論」をもってして治安の回復をはかった。窓ガラスを割るような程度の軽い犯罪を徹底的に取り締まることで、凶悪犯罪も抑止できる、という環境犯罪学上の理論である。
つまり破壊されたベンチが放置されているような場所は、きっと何かあるはずなのだ。これまでのスラム取材の勘からそう判断した。
ベンチ越しに茂みを見ると多くの人がいる気配がした。誰がいるのかわからないが、別に躊躇する必要もない。ポケットに入れたカメラを取り出して近づいていき、最初に遭遇した若い男に声を掛けた。
「ハロー。ここでみなさん、何をしているんですか?」「別に……買いに来たのか?」「買う?」「あれだよ、ハシシだろ?」
男の背後には放心したような人々が転がっていた。
ドラッグを資金源にする「自称」難民たち
男が口にした「ハシシ」とは、大麻樹脂から生成された幻覚を引き起こす作用のある加工植物製品、つまり麻薬のことである。ここは麻薬常習者の巣窟だったようだ。ビビって逃げ出してしまってもいいのだが、引っかかるところがある。いま話している男は、ギリシャ人ではなくインド系の顔立ちである。
「君たちは難民なの?」「難民? ああ、俺達は難民だ」「ドイツに行くの?」「関係ないだろ。買わないなら帰ってくれ」
早々に追い出しにかかられた。このまま帰ってなるものかと抵抗の意思表示をするべく、カメラを構えて彼の背後の状況を撮影しようとした。
「やめろ!」
男はカメラを取り上げにかかった。こちらが失礼なことをしているという自覚はあるが、カメラを取られてしまうわけにはいかない。
「ごめん、ごめん」「お前は警察か?」「ただのツーリスト(旅行者)だよ。そう興奮しないでくれ」「じゃあカメラをしまえ。なんのために来たんだ! 帰れ!」
交渉でどうにかなる範囲を超えた興奮度合いだ。薬物中毒者を相手に抵抗しても仕方ないので、ここはうまく流すしかない。「なんだよ、俺はただの旅行者だぞ」と毒づきながらその場を離れることにした。
だが、どうにも「難民」を自称した連中の正体が気にかかる。遠目に様子をうかがいながら、もう一度話しかける機会を探っていた。すると、ひとりの男が集団から離れてこちらに向かってくる。
目の前の木に腰を下ろすとガラスのパイプを取り出していじっている。絶好のチャンスだと思った。
ハシシを持つ男の正体
「少し話せませんか?」「あ?」「あなたたちは難民なんですか?」「ああ」「シリアからですか?」「違う……何が聞きたいんだ」
少しはまともに受け答えができるようだ。これは取材ができるかもしれない。そう思った時、先ほどハシシを売りつけてきた男が私に気づいて近寄ってきて我々の間に割って入った。
「なにやってる。早く帰れ!」「ちょっと話を聞いていただけだろ。何が悪いんだよ!」
さすがにこちらもムッとして言い返したところ、予期せぬ援護射撃があった。腰掛けていた男が「あっちで話そう」と言ったのだ。
売人の男はなにやらわめいていたが、こちらの知ったことではない。連中と距離をとったところで質問を再開した
「あなたたちはどこから来た難民なんですか?」「俺たちはカシミールから来た」
カシミールとはインドとパキスタンの国境地帯。この地域は両国の間で帰属を巡る領土問題が起きており、両軍のドンパチも珍しくない危険なエリアである。ついでにいえばハシシの産地としても有名だ。
「じゃあ、難民としてドイツに向かっているのですか?」「最初はそのつもりだった。だけど今は動けない」「ハシシの影響ですか?」「違う。俺たちはここに来るまでにお金を使ってきた。ハシシは金がなくなった時に売って旅費にしようと持ってきたものだ。だが、ここで使いきってしまった。だから今はあとから来る友達に連絡して持ってきてもらっている。ここにいる連中は(資金源となる)ハシシが届くのを待っているんだ」
状況は理解できたが、シリア難民であふれる欧州にカシミールからの難民も流入しているとは思いもしなかった。彼らが本当に難民であるのかの確証は持てないが、それでも多くの難民とともに移動して、EUに入るルートを通ってきたことは間違いない。つまり、彼らは麻薬の密輸に成功しているということになる。
多くの難民をさばくわけだから、入国管理が甘くなるのも仕方ないところはある。しかし、シリア難民にまぎれて、紛争地ではないエリアからより豊かな生活を求めて欧州に来る経済難民もいれば、テロリストだっているのだ。公園で出会った男たちは、はからずもそうした「様々な動機」で欧州に来ている難民がいることを教えてくれたわけだ。
「お前はこれ、やらなくていいのか?」
目の前でガラスパイプをライターで炙り始めた男は次第に目つきも溶け出していった。これ以上の取材は無理と判断し公園をあとにした。
活気のない売春街と、中毒者たちがたむろする公園。宿に戻る途中、荒廃した裏通りと地面に転がる注射器を見かけるたびに、この国の抱える闇の深さを突きつけられている気がしていた。しかもその闇は、難民問題の影に隠れてしまっており、世界に届くことはないのである。 

 

●ギリシャ2016/7-12 
● 7
ギリシャ、景気後退底入れの兆し=中銀総裁 7/12
ギリシャ中央銀行のストゥルナラス総裁は11日、中銀は同国の今年の経済成長率はマイナス0.3%になるとの見通しを維持すると述べた。政府が資本規制の緩和を提案したことなどで、前年のマイナス0.2%に続きマイナス成長率は穏健な水準にとどまるとしている。
同総裁は議会で、ギリシャの景気後退(リセッション)は底入れしつつある兆しが出ていると指摘。ただ、国際支援団に確約した改革事項の実施の手綱を緩めることがあってはならないと述べた。
今後の成長率見通しは17年がプラス2.5%、18年がプラス3.0%。ストゥルナラス総裁はこうした予想は欧州中央銀行(ECB)が緩和的な政策を維持することに加え、先行き不透明感の軽減、需要が再び増加するとの予想に基づいているとした。
ギリシャ銀向け緊急流動性支援、ECBが上限引き下げ 7/22
欧州中央銀行(ECB)はギリシャの銀行向け緊急流動性支援(ELA)の上限を14億ユーロ引き下げ572億ユーロ(629億ドル)とした。ギリシャ中央銀行が21日発表した。
ギリシャの銀行の流動性状況改善や民間セクターの預金流出に歯止めがかかったことを反映しているとしている。
● 8
ギリシャ製造業PMI、7月は48.7に低下 雇用は増加 8/1
マークイットが発表した7月のギリシャ製造業購買担当者景気指数(PMI)は48.7と、6月の50.4から低下し、景気拡大と悪化の分かれ目となる50を割り込んだ。
需要の減少を反映して、受注は23カ月連続でマイナスとなった。ただ、フランスやブルガリア、レバノン向けを中心に輸出需要は増加した。
生産は減少したものの、雇用は増加した。マークイットのエコノミスト、サミュエル・アガス氏は「7月のギリシャ製造業は、雇用が9年ぶりの大幅増加となった点以外は失望を誘う内容だった」と述べた。
英EU離脱、不透明感続けば業績に影響も=米バンカメ 8/2
米金融大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)(BAC.N)は1日、英国の欧州連合(EU)離脱の結果、同行の英事業がEUでビジネスを遂行する能力が制限された場合は、同行全体のビジネスと業績に悪影響が及びかねず、追加的なコストが発生する可能性もあるとの認識を示した。
バンカメは当局に提出した文書で、英離脱決定で一部事業の公正価値算出が複雑になったと指摘した。6月30日時点のバンカメの英国へのエクスポージャーはネットベースで563億1万ドルという。
バンカメはまた、英国民投票がイタリアやスペイン、ギリシャ、ポルトガルの「政治的なストレス、もしくは金融の不安定化」につながる可能性があるとの見方を示した。バンカメによると、スペイン、ギリシャ、ポルトガル各国へのエクスポージャーは6月30日現在、ネットベースでそれぞれ26億ドル、2億6100万ドル、1000万ドル。
● 9
ギリシャ首相、持続可能な成長には債務軽減が必要と主張 9/8
ギリシャのチプラス首相は8日、ユーロ圏に対し、債務の軽減措置なしに持続可能な成長に復帰することは難しいと主張した。
ギリシャの金融支援をめぐっては、秋に改革の進捗状況の検証が行われる予定で、ギリシャ政府は支援条件の一部である増税と年金削減が実を結ぶことを強調する見通し。
チプラス首相は、仏ルモンド紙のインタビューで、ギリシャ経済は今年プラス成長を達成し、来年は2.7%の成長が見込まれるものの、支援がないことが回復の障害になっていると主張した。
「回復は遅い。債務軽減措置でわれわれのパートナーから動きがないことが大きな原因だ。この問題で前進がなければ、ギリシャが成長を取り戻すことは難しいだろう」と述べた。
ユーロ圏就業者数が2008年以来の高水準、景気に明るい兆し 9/13
欧州連合(EU)統計局が13日発表した第2・四半期のユーロ圏の就業者数は、前期比0.4%増、前年比1.4%増となり、2008年以来の大きな伸びとなった。就業者数は昨今の金融危機後の高水準を記録、雇用が景気を支援する前向きな兆候が出ている。
第1・四半期については前期比0.3%増から0.4%増へ上方修正された。
第2・四半期は、主に農業、サービス部門で雇用が伸びた。
統計局によると、4━6月のユーロ圏就業者数は1億5330万人と、世界的な金融危機の影響が深刻化し始めていた2008年第4・四半期以来の水準に増加した。ユーロ圏で雇用が伸びるのはこれで10四半期連続。
国別では、横ばいとなったフィンランドを除き、すべての国で雇用が増加した。伸びはキプロスで0.8%となったほか、イタリア、スペイン、ギリシャはいずれも0.5%増えた。
ユーロ圏の成長は4━6月に鈍化したが、雇用拡大が第3・四半期も継続すれば、景気を支援し、英国の欧州連合(EU)離脱によるマイナスの影響を緩和する公算が大きい。
IHSのチーフ欧州担当エコノミスト、ハワード・アーチャー氏は「雇用の継続的な伸びと低インフレが消費を支えており、向こう数カ月にわたり、消費がユーロ圏景気を押し上げるとの期待を高める」と話す。
 

 

●10
ユーロ圏で「テーパー・タントラム」が起きない理由 10/6
米国債市場では3年前、連邦準備理事会(FRB)が量的緩和縮小を示唆したことを受けて「テーパー・タントラム(緩和縮小に対するかんしゃく玉の破裂の意味)」と呼ばれる大混乱が起きた。だがさえない経済成長が続く今のユーロ圏の国債市場は、事情がまったく異なる。欧州中央銀行(ECB)が毎月800億ユーロの債券買い入れを縮小するかもしれないと報道され、利回りが上昇した。といってもそれはせいぜい「テーパー・ウィンパー(緩和縮小への哀れな鳴き声)」といったところだろう。
ドイツ10年国債利回りは、ECB緩和縮小報道があった翌日の5日にわずか5ベーシスポイント(bp)上昇しただけだった。これは2013年5月に起きた米国のテーパー・タントラムのような暴力的な動きをECBが受け入れられる、と考えている投資家がほとんどいないことをはっきり示している。当時、米10年国債利回りは数カ月のうちに2倍近く跳ね上がって3%強となった。そんなことがユーロ圏で起きれば壊滅的な事態を招く。イタリアやポルトガルといった国は、借り入れコストが下がっているにもかかわらず依然として債務圧縮に苦労しているからだ。
弱い成長と物価上昇率もECBの手を縛るだろう。FRBが量的緩和縮小をにおわせた際、向こう1年の成長率は最高で3.4%になると予想していた。これはECBの2017年の成長率見通しの2倍以上の高さだ。さらに物価上昇率はECBが目標とする2%弱を下回り続けている。もしも緩和縮小があるとしても、それは非常にゆっくりしたペースになるとみられる。
物価上昇率が徐々に上向いていくというECBの想定が正しいとした場合、バークレイズのアナリストチームの試算では、ECBが最も低いケースの物価見通しを達成するためでも2018年までに毎月約450ユーロの債券を買い入れる必要がある。またバークレイズの予想するようにユーロ圏の成長率が1%程度で推移するなら、ECBは現在よりも緩和を強化しなければならなくなる。
FRBには緩和縮小の検討が許されるだけの政治的な支持があったが、それはECBに期待できない。ユーロ圏では経済基盤のより強い国は支出を増やすこと、より弱い国は構造改革の推進が求められている。ギリシャないしポルトガルといった一握りの国はまだ債務再編が必要な段階だ。しかし来年はドイツやフランスなどで選挙が予定され、どの国も課題はすぐに実行されない。結果的にECBの超緩和的な政策がしばらく続くことになる。
ギリシャの構造改革を欧州委が評価、ドイツは依然として懐疑的 10/11
欧州委員会は10日、ギリシャ救済融資の前提となっている同国の構造改革について、ユーロ圏による28億ドルの融資実行に向けた道筋を築くと前向きに評価した。
ただ、常にギリシャに対して厳しい姿勢で臨んできたドイツは、依然として懐疑的なスタンスのまま、必要な改革全てが実行されたわけではないとしている。
ギリシャは、資金を受け取るためには「マイルストーン」と呼ばれる15の改革を実行しなくてはならないが、その最後の改革が先週末に完了した。改革の内容は、欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、ユーロ圏の金融安定網「欧州安定メカニズム(ESM)」、国際通貨基金(IMF)の代表者で構成される機関により評価される。
欧州委員会のモスコビシ欧州委員(経済・財政担当)は、ルクセンブルクで開かれたユーロ圏財務相会合に臨む前に記者団に対し「15のマイルストーン全てが完了したという評価を与える予定だ」と述べた。「これによって、残っている28億ユーロの支出への道も開かれる。ギリシャ問題を巡っては、ぎりぎりの段階で物事が実行される傾向があるが、それでも実施はされた」とした。
ただ、欧州委員会の幹部らによると、ドイツを筆頭とするいくつかの国は、ギリシャにとっては、民営化基金が完全に機能するようにすることなど、マイルストーン完了までに、しなければならないことが残っていると主張している。これにより、ギリシャ救済プログラムに関する第1レビューとされるもののうち、最後に残った28億ユーロ融資の完全履行について判定が遅れる可能性がある。
融資の大半はギリシャ政府の支払い滞納を解消するために使われる。15の改革の完了は融資の実施につながるだけでなく、ギリシャが第2レビューと呼ばれる次段階の改革に進むことを可能にする。つまり、ギリシャの債務救済に関する話し合いを開始する環境が整うことになる。
ギリシャ政府が、今年末までに第2レビューに求められる改革の全てを完了できれば、ユーロ圏との間で中・長期の債務救済を受けるための条件交渉を始めることができる。ギリシャ政府にとっては重要な政治的勝利を意味する。
ユーロ圏の財務相らは今年5月、IMFが12月にギリシャの債務に関する新たな持続性分析を提出した後に債務救済範囲の話し合いを開始することで合意している。
モスコビシ氏はロイター通信の取材に対し「もし第2レビューが完了すれば、今年末以前にギリシャが責任を果たしたことを意味し、ユーロ圏も責任を果たすために、債務の話し合いには応じる必要がある」と述べた。
ギリシャが12年に国内の私的債務の再編を実施して以来、ユーロ圏の財務相らは同国にとっての主要な債権者となっている。財務相らは5月に債務救済に関する指針で合意し、全ての改革が実施されれば、指針はギリシャの総資金需要を中期的に国内総生産(GDP)の15%に抑制し、長期的にも20%未満に維持するとした。
ESM、対ギリシャ融資28億ユーロを実施 10/25
ユーロ圏の金融安定網「欧州安定メカニズム(ESM)」は25日、ユーロ圏財務相会議での決定に基づき、ギリシャに対し28億ユーロの融資を実施した。
11億ユーロは債務返済、残りの17億ユーロは延滞していた政府の支払いに充てられる。
ESMのマネジングディレクター、クラウス・レグリング氏は「ギリシャ政府は年金改革、銀行規制、エネルギー業界、歳入調整において鍵となる道しるべを達成した」と言明。「新たな民営化計画や投資ファンドについても進展があった。ESMプログラムで合意した改革案を引き続き実行していけば、ギリシャ経済の成長は来年加速し、来年には国債発行を再開できるだろう」と述べた。
●11
ギリシャで内閣改造、改革促進目指す 支持率狙いとの見方も 11/7
ギリシャのチプラス首相は4日、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)からの金融支援と引き換えに約束した改革の促進を目的とする内閣改造を行った。首相はチャカロトス財務相を留任させ、EUなどと合意した財政再建方針を堅持する姿勢を示した。
ただ、新たな入閣者は少なく、ポストの入れ替えが改造の大半を占めたため、支持率向上が狙いとの見方もある。
首相は5日、新内閣の閣僚が宣誓を終えた後、記者団に対し、内閣改造は「新たなスタートであり、明るい日々につながる」と語った。
内閣改造では、国有資産の民営化に公に反対していたスクルレティス・エネルギー相を内相とし、スタサキス経済相をエネルギー相に入れ替えた。また、米レビー経済研究所の所長でエコノミストのディミトリス・パパディミトリウ氏を経済相に起用した。
保守系野党の新民主主義党は、内閣改造を「腐敗した顔ぶれの再利用」と批判した。
ギリシャの債務負担軽減、むしろ害悪=独財務相 11/17
オバマ大統領がギリシャの債務負担軽減に支持を表明したのに対し、ドイツのショイブレ財務相は15日夜、ギリシャのためにならないとして反対する立場を示した。
独紙パッサウアー・ノイエ・プレッセの報道によると、ショイブレ財務相は「誰が『ギリシャの債務負担を減らす』と述べたとしても、同国にはむしろ害になる」と語った。
財務省は発言を確認したが、オバマ大統領の発言を受けたものではないとしている。
政府のザイベルト報道官は記者会見で、オバマ大統領がギリシャの債務軽減の重要性を指摘したことは承知していると述べた上で、ユーロ圏は5月にこの問題に関する今後の計画について合意していると指摘した。
財政緊縮だけでは成長を生まないとするオバマ大統領の発言については、独政府の立場と同じだと述べた。
「長期的な成長には持続可能な財政と構造改革の2本の柱が不可欠というのがわれわれの見解で、ギリシャに対する政策の基礎だ」と説明した。
●12
ユーロ圏財務相、ギリシャへの債務軽減策を承認 12/6
ユーロ圏財務相は5日にブリュッセルで開いたユーログループ会合で、ギリシャに対する債務削減策で合意した。ただ、財政目標達成に向けてギリシャが行う必要のある改革をめぐっては意見が分かれた。その結果、国際通貨基金(IMF)がギリシャの救済プログラムに参加するかは不透明となっている。
ユーロ圏財務相は、ギリシャに対する短期的な債務軽減策を承認した。公的債務を2060年までに国内総生産(GDP)比20%ポイント減らすとしている。
ユーロ圏の金融安全網である欧州安定メカニズム(ESM)が軽減策の詳細を策定、ユーロ圏財務相に提示した。
ESMの責任者、クラウス・レグリング氏は会見で、今回の措置は2030、40年代の債務返済を円滑にする一助となるとの見方を示した。融資金利を変動から固定にすることで、短期的にはギリシャの費用は増えるが、長期的には低減するとしている。
ユーロ圏財務相は、短期的な債務軽減策を承認したものの、ギリシャがどのように改革を実施するかについては合意に達しなかった。特に、従業員の解雇を容易にできる労働市場の規制改革については意見が分かれた。
ギリシャのツァカロトス財務相は、EU側が改革を要請するにあたっては、EUと合意した緊縮財政を実施したことでチプラス首相の支持率が低下しているという国内情勢を考慮すべきと主張している。
IMFは、ユーログループ内でギリシャの改革について合意が得られた後に同国の債務持続性を分析し、その後、救済プログラムに参加するかどうかを年末までに決定する予定。
ただ、デイセルブルム議長は、ギリシャの改革について年内に意見がまとまる可能性は低いとし、IMFの決定は先延ばしになるとの見方を示した。
ギリシャ年金受給者への一時金支給、ユーロ圏も容認へ=首相 12/16
ギリシャのチプラス首相は15日、低所得層の年金受給者にクリスマス手当として一時金を支払う政府案について、財政目標の達成を危うくすることはないと擁護した。
ブリュッセルでの欧州連合(EU)首脳会議を終えたチプラス首相は、同案について「(予想以上に良好な財政運営に基づく)一時的な措置だと誰もが理解している」と発言。「支援プログラムも2016年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化目標もリスクにさらすことなく、かつ2017年と2018年の財政に影響を与えない措置だと強調したい」と語った。
ユーロ圏の金融安全網である欧州安定メカニズム(ESM)は14日、ギリシャの年金受給者への一時金支給案の発表を受け、同国に対する短期的な債務軽減策の実施を停止したと表明。ESMプログラムで定めた目標などへの影響を精査中で、分析後に今後の対応を決定するとした。
チプラス首相は、ESMも、一時金支給案による財政への影響はないとの「自明の」見解を示すとの見方を示した。
ギリシャ議会は15日、低所得の年金受給者に一時金を支払う政府案を賛成多数で承認した。 
 

 

 
 
 
 2017

 

●ギリシャ2017/1-6 
● 1
世界的デフレ終焉、今回は本物か 1/16
デフレの終焉――。筆者がマクロ経済や金融市場の分析に関わって、この言葉をこれほど目にしたのは初めてだ。ほぼ同じ文脈で、債券の強気相場が終わったとの指摘も多い。いずれも半年前には少数派だった。一体、何が変わったのだろうか。
米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利が1つのきっかけになったとの見方に異論はないだろう。だが、それがなぜデフレに幕を下ろすことにつながるのか、明確な説明は見当たらない。
もちろん、トランプ氏の掲げる大規模な財政支出は、米国景気を押し上げ、需給ギャップの縮小を通じてデフレを終息させる可能性がある。その財源を米国債の発行に頼れば、国債市場の需給が緩み、債券価格には下落(金利には上昇)圧力がかかるだろう。
そして、米景気回復は連邦準備理事会(FRB)に金融緩和の縮小を促すため、米金利には一段と上昇圧力がかかる。さらに、米国以外の国・地域のファンダメンタルズに変化がなければ、ドルは上昇。米国の低金利を嫌気して国外へ向かっていた資金の一部は再び米国へ戻り、他の国・地域では資金流出と通貨下落が顕在化するだろう。
通貨下落は輸入物価の上昇を通じて、インフレ圧力を高める。通貨下落を阻止しようと為替介入に踏み切れば、外貨準備の減少が避けられない。外貨準備は通常、米国債をはじめとする主要先進国の債券で運用されている。米国以外の国・地域での為替介入は、国債の売りを通じて、米国を含む主要先進国の金利を上昇させるだろう。
金融市場間の連動性を踏まえれば、事の発端は米国でも、世界的な金利上昇となることに違和感はない。確かに、トランプ氏の掲げる大規模な財政支出は、デフレを終わらせ、債券相場を圧迫するだろう。
<トランプ氏よりオバマ政権の財政政策にヒント>
しかし、最も肝心なトランプ氏の財政政策は今のところ実現していない。それどころか、いつから、どの程度の規模の財政支出が、どのように具体化するかには高い不確実性がある。
トランプ氏の財政政策が人々にデフレの終焉(しゅうえん)を想起させるきっかけの1つになったことに疑いはないが、決定的とまでは言えなさそうだ。逆説的だが、このことが、今や少数派であるデフレ継続、債券強気派の根拠なのだろう。
筆者はトランプ氏よりも、オバマ米大統領の財政政策に注目している。実際、国際通貨基金(IMF)が2016年10月に公表した「財政モニター」によると、米国のプライマリーバランス(基礎的財政収支、景気循環調整済み)は対潜在国内総生産(GDP)比で2015年のマイナス1.42%から16年にはマイナス1.94%まで赤字幅が拡大。その分だけ、財政再建が後退したと言える。
米国でプライマリーバランスが悪化するのは6年ぶりだ。2016年はユーロ圏でも前年のプラス1.06%からプラス0.61%へ、日本でも前年のマイナス4.54%からマイナス4.80%へプライマリーバランスが悪化し、20カ国・地域(G20)では2年連続で赤字幅が拡大した。
中国の生産者物価指数(PPI)やユーロ圏の消費者物価指数(HICP)、米国の平均時給の伸び加速は、まだ見ぬトランプ氏の財政政策よりも、すでに実現した財政政策によってもたらされたと考えられる。
こうした財政政策の積極化とデフレ圧力の後退は、リーマン・ショック後にも確認できる。実際、米国のプライマリーバランスは住宅市場の崩壊が顕在化し始めた2007年以降、2010年まで4年連続で悪化。G20全体でも2007年にマイナス0.50%だったプライマリーバランスは2008年にマイナス1.52%、2009年にマイナス3.67%と急速に悪化した。
そして、金融緩和に積極的な財政政策が重なったことで、世界景気は2009年の前年比マイナス0.1%から2010年の同プラス5.4%へV字回復。2011年は同プラス4.2%へ鈍化したものの、世界景気の堅調さを示すとされるプラス4%台を維持した。
しかし、その後、ギリシャの財政問題などを受けて、欧州で財政再建への取り組みが本格化。米国でも財政均衡を主張する共和党茶会派が台頭し、リーマン・ショック後の積極財政路線は大幅な修正を余儀なくされた。当時、G20のプライマリーバランスは2010年にマイナス3.90%まで悪化した後、2011年にはマイナス2.83%と大幅に改善。2014年にはマイナス1.14%まで赤字幅が縮小した。
筆者は2016年にかけての世界的なデフレや低成長の原因について、構造問題よりも、拙速な財政政策の転換や金融緩和の修正にあったと考えている。2016年以降、それが再び修正されたのだから、デフレや低成長が終息するのも当然だ。
<欧州で強まる緊縮財政への拒否反応>
むろん、逆に言えば、このことは、今後の政策次第でデフレや債券の強気相場が再び訪れる可能性を示す。今の段階で、デフレや債券の強気相場が終焉したと結論付けることは難しい。
とはいえ、足元で2011年から2014年にみられた財政政策の急速な転換は起きそうにない。当時、いち早く緊縮財政に舵を切った英国は、欧州連合(EU)離脱への対応で景気を下支えする方針を明確にした。大陸欧州では、南欧諸国を中心に緊縮財政への拒否反応が強まっている。
これまで財政健全化に固執してきたドイツでさえも、国内では総選挙後の減税方針を示し、ギリシャのクリスマス手当の支給を阻止することができなかった。欧州各国の政治家にとって、難民に衣食住を提供する一方で国民に緊縮を求めることは難しい。
米大統領選でのトランプ氏の勝利は、各国政府が国民に不人気な政策を先送りせざるを得ない現実を改めて浮き彫りにしたと言える。財政再建の取り組みはいずれ避けて通れない道とはいえ、明日の生活に不安を抱える失業者や不安定な雇用環境にいる労働者などにとっては、理想論にしか聞こえないだろう。低成長と所得の伸び悩みは、緊縮財政に伴う国民の負担を一段と大きくする。
筆者はトランプ氏の勝利後、多くの国・地域で予想物価上昇率が上昇したことについて、緊縮財政への転換に時間がかかることを反映したと解釈している。そして、予想物価上昇率の上昇は、金融緩和の効果や原油価格の安定などとも相まってデフレの終焉を確実なものとするだろう。今回の債券相場の下落は、短期的なスピード調整があったとしても長期化する可能性があり、強気相場を終わらせるだけの材料もそろっているようにみえる。
ギリシャ、これ以上の歳入拡大策法制化は行わず=チプラス首相 1/25
ギリシャのチプラス首相は、改革の進捗状況に関する国際債権団の審査が行き詰まる中、今後、支援パッケージで合意した以上の歳入拡大策を法制化する意向はないと明言した。
25日付のギリシャ日刊紙「エフィメリダ・トン・シンタクトン」が首相とのインタビュー内容を報じた。
ギリシャの改革状況に関する審査は、財政目標や労働・エネルギー改革などをめぐって協議が難航。ユーロ圏の財務相らは26日にダブリンで開く会合でギリシャ問題を協議する見込みだが、決着がつくとは予想されていない。
チプラス首相は「(支援)合意に盛り込まれた以上の追加措置に関しては、1ユーロ足りと法制化することはないと断固表明する。プログラム終了後の期間についてはとりわけだ」と述べた。
首相はまた、早期総選挙の可能性も否定した。
● 2
ギリシャ再びデフォルト懸念、返済前に改革審査難航 2/8
ギリシャ国債の民間投資家は、デフォルト(債務不履行)はもう二度と起きないという5年前に欧州当局が表明した約束を信用できなくなっているようだ。
こうした強い約束があったからこそ、ギリシャは民間投資家に対して債務の大幅な元本削減を実施してからわずか2年で国際金融資本市場へのスピード復帰を果たした。
その際に国債を買った投資家の理屈は単純で、2012年に債務再編の適用を免れた公的債権者が、今度は痛みを引き受けるべきだというものだった。
しかし新たなギリシャ国債の最初の返済が7月17日に予定される中で、ギリシャと公的債権者を代表する欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)の話し合いは紛糾していることから、国債価格は公的債権者のリスク負担が実現しないリスクを織り込む水準まで下落している。
投資家にとって一番の懸念は、ギリシャの改革審査が7月初めまでに完了しない事態となれば、同国は債務返済の資金が確保できなくなるという点だ。
約300万ユーロのギリシャ債を保有するLBB─インベストのポートフォリオマネジャー、ルッツ・ローマイヤー氏は、ギリシャは債務を返済すると予想しながらも、果たして返済できるかどうか「若干の疑念」があると打ち明けた。
eMAXXのデータによると、このほかカルマニャック・ジェスティオンやルーミス・セイレス、パトナム・インベスト・マネジメント、PIMCOもギリシャ債に投資している。
ギリシャは最新の第3次金融支援を受け入れる見返りにさまざまな改革を実行することに合意したが、今年の選挙を前に国内有権者から反発を受けるのを恐れて支援条件を守っていない。
こうした中で7日の国債価格は額面当たり0.95ユーロで推移。償還期限が近づいて本来なら額面をやや上回っているべきところ、異例の低水準となった。トレーダーの話では、6%のデフォルト確率が織り込まれている。
ギリシャのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のプレミアムも急騰し、今後5年間のデフォルト発生確率を50%近くと示す水準にある。
デフォルト確率は今後数週間でさらに高まってもおかしくない。複数の欧州当局者は、20日に開く次回のユーロ圏財務相会合までに、ギリシャは問題点を解決する必要があると警告している。これを過ぎると3月のオランダを皮切りに、9月のドイツまで主要国が相次いで国政選挙に突入し、交渉が政治的に難しくなるとみられるからだ。
<時間との闘い>
1月26日のユーロ圏財務相会合では、債権団がアテネに戻って改革審査を完了するスケジュールを設定できなかった。ギリシャ側は今月7日、債権団の要求の一部は「非論理的」と批判し、歩み寄りの気配は見えない。
ソシエテ・ジェネラルのエコノミスト、Yvan Mamalet氏は「EU諸国の政治日程が立て込んでくれば、改革審査を完了するのは極めて困難なことが判明するだろう。だからこそ、3月初頭が合意に達する可能性がある最後の時期に思える。これを過ぎれば、7月の債務返済も厳しくなる」と指摘した。
ギリシャ第3次金融支援にIMFが参加するかどうか分からないことも、同国の返済ができなくなるリスクを高めかねない。IMF内には、ユーロ圏が課した財政目標に反対し、ギリシャに債務軽減措置を提供すべきだとの声がある。
ギリシャの主要債権者であるドイツは、IMFの関与は第3次支援に必要不可欠だと強調している。ショイブレ財務相は、ビルト紙のインタビューで、IMFが手を引くようなら、ギリシャのユーロ圏離脱に賛成するとまで言い切った。
ショイブレ氏の発言は極端かもしれないが、UBSのストラテジストは、IMF抜きの新たな合意が成立したとしても、欧州各国の議会が承認するまでに時間が必要で、それ自体がギリシャのデフォルトリスクを高めると予想している。
ギリシャ特別扱いせず=IMF専務理事 2/14
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は13日、対ギリシャ支援協議で合意に向け最善を尽くしているが、基本原則を曲げてギリシャに特別な条件を提示することはできないとの立場を示した。ロイターのインタビューに応じた。
ユンケル欧州委員長は週末、IMFがギリシャ支援でどのような役割を果たすのか決定していないため、協議は「揺らいでいる」との認識を表明。ギリシャのチプラス首相は、IMFは卑怯であり、同国に新たな要求をつきつけていると批判した。
ラガルド専務理事はこうした批判に対し、IMFとして問題の解決に積極的に取り組んでいるとしながらも、「特定の国に特別の対応をするわけにはいかない」と指摘。「われわれは国際社会に資金を提供しており、すべての国に同じ原則を適用する必要がある」とした。
IMFはこれまで、ギリシャに所得税や年金制度で長期改革の実施を求める一方、公的債権者はギリシャ債務を軽減するため元本削減(ヘアカット)に応じる必要があるとの考えを示してきた。ヘアカットにはドイツなどが強く反対している。
だがラガルド専務理事は、低金利の延長など、債務負担の軽減に向けた欧州諸国の取り組みを評価し、ギリシャの債務軽減は「ヘアカットを必要としない枠組みにおいて実現できると確信している」と指摘。詳細には踏み込まなかったが、ヘアカットなしでもギリシャ債務の持続可能性は担保できるとの考えを示した。
12月のギリシャ経常収支、前年比で赤字幅拡大 観光収入は小幅増 2/20
ギリシャ中央銀行が発表した2016年12月の経常収支は9億3000万ユーロ(9億8820万ドル)の赤字となり、赤字幅は前年同月の7億8000万ユーロから拡大した。
第一次所得収支の黒字幅縮小が影響した。
観光収入は前年同月の1億8400万ユーロから1億9300万ユーロにやや増加した。
2016年全体の経常収支は11億ユーロの赤字と、2億0600万ユーロの黒字だった前年から赤字転落。サービス収支の黒字幅縮小が響いた。
● 3
ギリシャの第4四半期成長率、改定値はマイナスに 輸出が下押し 3/6
ギリシャ統計局が発表した第4・四半期の経済成長率は3四半期ぶりにマイナス成長となった。
第4・四半期の国内総生産(GDP)改定値は、前期比マイナス1.2%となった。2月に発表した速報値はマイナス0.4%だった。
チプラス首相はこれに先立ち、閣議で国内経済は新たなページを開いたとし、今年は「異例に高い」成長率になるとの見通しを示していた。
第4・四半期は前年比ではマイナス1.1%、速報値はプラス0.3%だった。
ユーロバンクのエコノミストは「今回の改定により、速報値時点でプラス0.3%だった2016年の成長率は、マイナス0.1%になる見込み」と述べた。
成長率を下押ししたのは、民間消費の低迷とマイナスの寄与となった輸出。消費は前四半期比で1.1%減、輸入は4.5%増、輸入は1.4%減となった。総資本形成は1.8%増だった。
ギリシャ、改革巡りEUに援護要請 60周年宣言支持と駆け引き 3/24
ギリシャのチプラス首相はローマで開かれる欧州連合(EU)首脳会議を前に、EUの基礎となるローマ条約の調印60周年で採択する「ローマ宣言」を支持すると述べる一方、労働市場改革を求める国際通貨基金(IMF)に対抗するためEUの援護が必要との考えを示した。
チプラス首相はEUのトゥスク大統領と欧州委員会のユンケル委員長に宛てた書簡で、ローマ宣言を支持する意向だとした上で、「とはいえ、これらの功績をたたえるには、それがギリシャにも適用されることを公式に明確にする必要がある」と指摘。
ギリシャ支援を巡って、国際債権団は新たな融資の見返りにさらなる改革を求めているが、ギリシャは今週、労働者の権利保護を求めてローマ宣言への支持を留保する構えを見せた。
チプラス氏は書簡で「ギリシャの権利を共に保護し、欧州の社会モデルに戻れるよう支持を求める」と訴えた。
 

 

● 4
ギリシャ債務問題、見えてきた第4次支援の必要性 4/4
ギリシャの債権団は先週、年金改革を巡る議論が長時間にわたって紛糾したにもかかわらず、第3次金融支援に基づく今回の支払い実行を近く承認する公算が大きい。だがこれはギリシャ政府にとって来年半ばまでの時間稼ぎにすぎない。その後同国は、第4次となる新たな支援の枠組みが恐らく必要になるだろう。
チプラス首相は、7月に期限を迎える約75億ユーロを返済するため、ユーロ圏の債権団から十分な資金を得ることが不可欠だ。ギリシャとして、第3次支援が順調に進んでいると合意しないとそうした資金を確保できない。ところがチプラス氏には、困難な仕事に立ち向かうよりも交渉を引き延ばす性癖があり、これが既に経済に打撃を与えている。ギリシャは昨年第4・四半期にマイナス成長に陥り、今年第1・四半期もプラスに浮上できそうにない。
チプラス氏は、最終的には厳しい改革策を受け入れるように見える。たとえ人気のない年金の削減や2019、20両年の増税を含んでいてもだ。これらの措置によって、国内総生産(GDP)の2%相当の財政資金を節約できる。もっとも緊縮の度合いは今後和らげられるだろう。もしギリシャの財政運営が昨年同様、目標よりも良い成績で推移し続ければ、法人減税などによって改革がもたらす逆風を緩和することは可能になる。
ただしユーロ圏がギリシャを窮地に追い込んでいる。チプラス氏は7月の債務返済に十分な資金を得るはずだが、ユーロ圏の債権団の条件を受け入れないと、国内のサプライヤーに対する支払いの滞納を余儀なくされ、国内経済に痛手となる。こうした苦痛が長引けば、民間セクターの積極的な活動意欲がさらに損なわれてしまう。
チプラス氏にとって致命的とみなされるのは、今後銀行に起こるかもしれない事態だ。今年になって再び預金の流出が続いている。これは単に金融環境がまた引き締まるというだけでなく、経済が新たな下降局面に突入した場合は銀行に改めて資本注入が必要になるということだ。昨年導入された厳しいユーロ圏の銀行ルールに基づけば、預金者が損失負担を迫られるかもしれない。チプラス氏は2015年、瀬戸際交渉戦術で経済を混乱させ、資本規制を採用するという失策をおかしたが、もう一度試そうとすれば愚の骨頂となる。
次に債務軽減の問題がある。ドイツがギリシャ支援へ関与すべきだと主張している国際通貨基金(IMF)は、ユーロ圏の債権団がギリシャの負担を緩和することを望んでいる。そこでドイツのメルケル首相と、IMFのラガルド専務理事は、ギリシャ支援の輪にIMFをとどめながら、総選挙を9月に控えたドイツで有権者によるメルケル氏批判を招かないような形の債務軽減に関する言い回しを一致して生み出さなければならない。
こうした新たな言い回しは恐らく5月に案出され、欧州中央銀行(ECB)にギリシャ国債を資産買い入れ対象に組み込ませるだけの説得力を与えてくれるはずだ。そうなれば先行きへの期待が高まる。ギリシャが具体的な債務減免を受けられるのは来年からになるだろうが、チプラス氏の交渉力が弱まっている現状からすれば、その点について影響力はあまり行使できない。
ギリシャへの第3次支援の期限は来年半ばで、その後同国は自力で市場から資金を調達できるのだろうか。当然ほとんど現実味はなく、少なくとも何らかの助けなしでは立ち行かない。つまり第4次支援が想定される。
最低限としてギリシャはユーロ圏から予防的な借り入れ枠を設定してもらう必要がある。第3次の総額860億ユーロほどでないにせよ、いくらかの「実弾」も不可欠かもしれない。それでも今後の金融支援は、新規融資ではなく主に債務減免の形式になりそうだ。2022年以降に訪れる利払い額が膨らむ局面への対応が優先項目になるだろう。
ドイツなどの債権者は、こうした支援を厳しい条件なしに行うことはあり得ない。意のままにならないロバに言うことを聞かせるには、ニンジンをただ食べさせるのではなく、むちの先にニンジンを括り付けるべきだという古いことわざを彼らは承知している。
だから債務減免は、ギリシャが財政状況を改善させるのに伴って何度にも分けて実施されるとみられる。IMFが支援に加わることになれば、さらなる構造改革要求が盛り込まれても不思議ではない。
度重なる公約違反によって国内での支持が低下しているチプラス氏の立場では、こうした債権者側のすべての要求は受け入れるには過大かもしれない。そうなるとギリシャは来年再び総選挙となり、中道右派の新民主主義党(ND)が勝利に最も近い位置にある。それでも変わりそうにないのは、ギリシャがずっと先まで債務を抱えて身動きがままならない状態に置かれるということだろう。
ギリシャ追加支援、改革案で大枠合意=ユーログループ議長 4/7
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長は7日、ギリシャへの追加支援の条件となる改革について、同国とユーロ圏債権団が大枠合意したと明らかにした。
議長は、ユーロ圏財務相会合後に記者団に対して「規模やタイミング、改革の優先順位付けという点で大枠合意した。これに基づき今後数日さらに作業を進める」と説明した。
さらに、この進展により、交渉団をアテネに早急に送ることができると述べた。ただ、具体的な日程は決定していないという。
交渉団がアテネに戻るということは、支援条件となる改革に関して、スタッフレベルでの合意が近いことを意味している。その後、ユーロ圏財務相が承認すれば、ギリシャは新規融資を確保できる。
● 5
ギリシャ、国際債権団と改革案で合意=財務相 5/2
ギリシャのチャカロトス財務相は、同国と国際債権団が2日、金融支援を巡る改革案で合意したと発表した。これにより、新たな融資の確保に向けて道が開けたことになる。
財務相は記者団に対し「合意に達した」とし、「技術的な交渉はすべての分野で終了した。債務軽減協議への道が開けた」と述べた。
同案には、労働・エネルギー分野の改革のほか、年金削減や増税が含まれる。改革状況の審査の一環となる協議は昨年10月に開始し、昨年末に終了することが見込まれていた。
ギリシャは、7月期限の75億ユーロにのぼる債務支払いについて、ユーロ圏財務相らが同意する前に、新たな改革案を法制化しなければならない。次回予定されているユーロ圏財務相会合(ユーログループ)は5月22日。引き続きギリシャの債務削減について協議されるとみられている。
改革案では、ギリシャ政府が2019年の年金削減と20年の非課税限度額の引き下げを確約した。これにより、国内総生産(GDP)の2%相当を削減する。
この目標を上回れば、減税など、追加の緊縮策による影響を相殺するような一連の措置を始動させることが認められる見通し。
2日の改革案合意後、債権団は、一段の債務救済措置を認めるうえで重要な要素となるギリシャの中期的な基礎的財政収支の黒字目標を内々に決定したもよう。
IMFはギリシャに対し、緊縮策をさらに導入し、欧州連合(EU)による一段の債務救済措置が認められない限り、高水準の基礎的財政収支黒字を維持できないとの見方を示している。
ロイターが確認した草案文書によると、IMFは、ギリシャが債権団と合意した改革案を実行に移せば、基礎的財政収支が18年に2.2%の黒字に達し、19─21年には3.5%の黒字に向かうと予想。それ以降は基礎的財政収支の対GDP比目標を1.5%の黒字に引き下げると提案している。
ギリシャ政府報道間は今後の日程について、ユーロ圏財務相会合が開かれる5月22日、もしくはその数日後までに債権団と中期的な債務減免を含む包括的な合意を得たいと述べた。
ユーロ加盟国側は債務減免についてこれまでも条件が満たされれば交渉を開始する用意があるとの姿勢を示してきたが、ギリシャ側が示した日程に合意しているかは現時点では不明。
IMF報道官は今回の合意について、IMFによるギリシャ支援の関与を妨げてきた要因が1つ解消されたと指摘。ただIMFはこれまでもギリシャ支援に関与するには改革実施と債務減免の双方が必要との立場を示してきたとし、債務減免をめぐる項目がまだ残っていると述べた。
ギリシャ議会、改革法案を可決 追加融資確保・債務軽減へ前進 5/19
ギリシャ議会は18日、国際債権団から新たな融資を受けるための条件となっていた、年金削減や増税を含む改革法案を可決した。
議会の建物の外では、数千人が集まって新たな緊縮策に抗議し、一部でデモ隊が警官が衝突する騒ぎも起きた。
ギリシャは7月に期限を迎える75億ユーロの債務返済の資金を確保する必要がある。
ギリシャ政府は改革法案の可決により、国際債権団がギリシャに対し、75億ユーロの追加融資とさらなる債務軽減を認めることを期待している。
チプラス首相は議会で改革について「(ギリシャにとっての)新たな道を開く、決定的な転機だ」と語った。
来週22日にブリュッセルで開かれるユーロ圏財務相会合(ユーログループ)では、引き続きギリシャの債務問題が話し合われるほか、改革案の法制化を受けた金融支援プログラムの進捗評価が行われる見通し。
ギリシャ支援、現実的な経済見通しや債務削減の詳細が必要=IMF 5/23
国際通貨基金(IMF)のポール・トムセン欧州局長は、ギリシャ支援にIMFが参加するためには、同国経済についてユーロ圏がより現実的な想定を示すとともに、債務削減策についてさらに詳細を把握する必要があるとの認識を示した。
トムセン氏は22日に開かれたユーロ圏財務相会合(ユーログループ)とIMFの協議について、進展が見られたものの、合意には至っていないとし、「より現実的な想定とより具体的な情報が必要だ」と語った。
22日の協議で、ユーロ圏財務相とIMFはギリシャのプライマリーバランス(基礎的財政収支)について、2018年半ばの支援プログラム終了後から5年間、対国内総生産(GDP)比で3.5%の黒字を維持するとの見通しで合意した。
● 6
ギリシャの債務負担軽減、「公正な」解決策で合意へ=欧州委員 6/14
欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は14日、ギリシャと国際債権団は今週中に新たな融資に向けた妥協案で合意する見通しで、ギリシャの債務負担軽減を巡り「公正な解決策」が見つかるとの見解を示した。
ドイツの新聞社グループ向けのインタビューで語った。
14日付のインタビュー記事によると、モスコビシ委員は「もはや債務削減は誰も望んでいない。(期待できるのは)たとえば、返済期間を引き延ばすなどの債務負担の軽減策だ」と語った。
委員は、ギリシャは厳しい改革パッケージの法制化を評価されるべきで、ユーロ圏財務相は15日の会合で新規融資の実施で合意する可能性が高いとの見方を示し、「物事は正しい方向に向かっている」と述べた。
また、総額860億ユーロの第3次ギリシャ支援策における融資は3回目となる今回が最後となり、その後にギリシャは「ユーロ圏の通常の加盟国」に戻り、2018年には資本市場に復帰できる見通しだとした。
ギリシャ国債利回りが低下、ユーログループが85億ユーロ融資で合意 6/16
16日の欧州債券市場で、ギリシャ10年国債の利回りが約1カ月ぶり低水準で推移している。 ユーロ圏財務相は15日、ルクセンブルクで開催した会合(ユーログループ)で、ギリシャへの85億ユーロ(95億ドル)の融資実施で合意した。
10年国債GR10YT=TWEBの利回りは7ベーシスポイント(bp)低下し5.78%。5月23日以来の低水準となった。他の年限でも2―10bp低下している。 
●貧苦に沈むギリシャ、救済7年後の重い現実 2017/2

 

年金生活者のディミトラさんは、食料配給に頼る生活にまで落ちぶれるとは想像もしていなかった。今月は、コメ、パスタ2袋、ひよこ豆1パック、デーツ(ナツメヤシ)と牛乳1缶を受け取った。
かつては赤十字の給食施設で生活困窮者の支援に当たっていた73歳のディミトラさんは、ギリシャで増加している生活困窮者の1人だ。数十億ユーロを投じたギリシャ救済から7年、貧困の状況はまったく改善されていないどころか、欧州連合(EU)のどの国よりも悪化している。
「こんなことになるとは思いもよらなかった」と語る彼女は、姓を名乗らなかった。ギリシャでは今も、食料の施しを受けることは不名誉であるという意識があるからだ。「質素な暮らしをしていた。休暇を取ったこともない。何もしたことがない、何ひとつ」
現在、1カ月の収入332ユーロ(約4万円)のうち半分以上はアテネのちっぽけなアパートの家賃に消える。残りは諸々の請求書への支払いだ。
グローバル金融危機とその副次的な影響により、ユーロ圏の4カ国は国際融資団に頼らざるをえなくなった。アイルランド、ポルトガル、キプロスはいずれも救済を受けたが、救済が終わった後、これら諸国の経済は成長を再開した。だが2010年にいち早く救済を受けたギリシャは、その後も3次にわたる救済を必要とした。
EUと国際通貨基金(IMF)が供給した救済資金により、ギリシャは破綻を免れたが、国際債権団が課した条件である財政緊縮や改革政策の影響もあって、景気後退は本格的な不況へと転じてしまった。
世論調査での支持が低迷する左派主導政権を率いるギリシャのチプラス首相は、追加支援に反対している債権団との長期交渉の最新段階において、ギリシャ国民の苦境を大義名分にしようと試みた。
「欧州の名の下に略奪を受けた国家に対して、そしてこれほど多くの犠牲を払い、今も払い続けている国民に対して、私たちは皆、注意を払わなければならない」とチプラス首相は今月語った。
巨額の救済資金の多くは、過去の債務の返済に充てるための新規債務という形になっている。だが、生活水準の崩壊の責任は誰にあるかはさておき、EU統計局からの貧困状況を示す数値には驚かされる。
ギリシャはEU内の最貧国ではない。貧困率はブルガリアとルーマニアの方が高い。ギリシャは、この2国からさほど差のない第3位にある。EU統計局のデータによれば2015年、ギリシャ全人口の22.2%が「物質的に深刻に困窮」している。
また、世界金融危機が発生した2008年以降、旧共産圏のバルカン諸国において貧困率の数値が低下している(ルーマニアの場合は約3分の1低下した)のに対して、ギリシャの貧困率はほぼ2倍に上昇した。この時期、EU全体の水準は8.5%から8.1%に低下している。
○ 「ニーズは非常に大きい」
こうした統計が示す状況は、ディミトラさんが毎月の配給を受けるアテネが運営するフードバンク(無料給食施設)のような場所に色濃く反映されている。
ここでは、何十人ものギリシャ国民が、配給を受けるためのチケットを握りしめて粛然と待っている。皆、月約370ユーロという貧困ライン以下の生活にあると登録された人々だ。
フードバンクの責任者である市職員エレニ・カツーリ氏は「ニーズは非常に大きい」と言う。
アテネ中央部をカバーするこのフードバンクの数字を見ると、EU統計局による広範囲のデータと同じ傾向がローカルレベルでも確認できる。
カツーリ氏によれば、このフードバンクの登録者は約1万1000世帯(約2万6000人)で、2012年のわずか2500世帯、2014年の6000世帯から大幅に増加している。約5000人は子どもだ。
ここにある倉庫の棚や冷蔵庫の多くは空だ。フードバンクによる配給の内容は支援企業からの寄付次第だが、これらの企業もやはり経営に苦しんでいる場合が多い。
「これらの人々のニーズに今後も応えられるかどうか分からないので、心配している」とカツーリ氏は言う。「幼い子どもがいる家庭もあるが、日によっては、彼らのためのミルクさえ入手できない」
○ 「ただ生きているだけ」
経済開発協力機構(OECD)などの国際機関は、ギリシャ政府に対し、貧困や格差対策を優先するよう促している。
失業率はピーク時の28%から23%へとわずかに低下したが、依然としてEU内で最悪の水準に留まっている。危機が始まって以来、ギリシャ経済は4分の3の規模に縮小し、何千社もの企業が倒産した。
今年は経済が上向くのではないかという期待が強いものの、先週発表されたデータでは、2四半期連続で成長が続いたあと、10─12月期には再び後退に転じた。
生活水準の改善となると、これまで以上に遠い夢だ。
経営者団体のGSEVEE及び世論調査会社マルクの調査結果によれば、昨年は75%以上の世帯で所得が大幅に減少した。少なくとも1人の失業者を抱える世帯は全体の3分の1、食費を削らざるを得なかったと回答した世帯は40%に及んだ。
グリーク・オンブズマンによれば、水道・光熱費の支払いに苦しむ人の数が増えているという。アテネ近隣の質素な一角では、ギリシャ正教会が運営する給食施設が1日400食を提供している。
「誰もが苦しんでいる。すべてのギリシャ人が」。ここでボランティアとして働く61歳の元教師Eva Agkisalakiさんはそう漏らす。
彼女には年金受給資格がない。救済プログラムに基づいて定年退職年齢が67歳に引き上げられたときに契約が切れており、次の仕事を見つけられなかったからだという。やはり国際債権団が要求する改革に基づいて、夫の年金は980ユーロから600ユーロに削減されたが、その一部は息子や娘の家庭への仕送りに回している。
ボランティアの見返りとして、彼女は給食施設からの配給を受け取り、それを失業中の娘や息子と分け合っている。
「私たちは何もしていない」。豆のスープ、パン、卵、ピザ1切れ、リンゴという次回の給食に向けて木製の長いテーブルの用意を整えながら、彼女は語った。「ただ生きているというだけ。ほとんどのギリシャ人は、ただ生きているだけだ」
この給食施設の監督者であり、自らの企業から肉類を供給しているEvangelia Konsta氏によれば、この施設で食事を摂る人の数は2年間で2倍以上に増えた。利用者の電気料金や水道料金を教会が肩代わりすることも多いという。
「状況は悪くなっている。改善は見られないし、それが人々のニーズに反映されている」と同氏は語る。「1ユーロさえも持っていない人もいる」 

 

●ギリシャ2017/7-12 
● 7
ギリシャ、数週間以内に市場復帰 銀行関係者の間で観測高まる 7/12
ギリシャが向こう数週間以内に市場から資金を調達するとの見方が市場で高まっていることが分かった。実際に調達すれば2014年以来、初めてとなる。
ギリシャを巡っては、欧州安定メカニズム(ESM)の責任者、クラウス・レグリング氏が10日、ユーロ圏の支援プログラムが来年の年央に終了する前に市場や民間機関からの資金調達を復活させるための計画策定を進めるべきと指摘。
これに先立ちギリシャのチャカロトス財務相は先月、ロンドンで投資家との会合に出席したが、同会合に参加していたブルーベイ・アセットマネジメントはギリシャの市場復帰は非常に近いとの見方を示している。
ブルーベイのマーク・ダウディング氏はロイターに対し、「過去数カ月間はギリシャの市場復帰に関する銀行からの問い合わせは数週間に1件程度だったが、過去10日間ほどは連日、問い合わせがある」とし、こうした動きを踏まえるとギリシャの市場復帰は「非常に近い」と指摘。「投資家の多くが夏季休暇入りする前に、向こう数週間で市場から資金を調達する可能性がある」と述べた。
ギリシャ2年債利回りが7年ぶり低水準付近、債券市場復帰控え 7/25
25日の欧州金融債券市場では3年ぶりの国債市場復帰を控えたギリシャの2年債利回りGR2YT=RRが2010年以来の低水準付近で推移している。
序盤は3.29%と急低下した前日の3.21%からほぼ変わらずとなった。
ギリシャは25日、新発5年債の価格を決定する。
バークレイズの欧州担当首席エコノミスト、アントニオ・ガルシア・パスカル氏は「(国債発行の)タイミングはマクロ経済的にも市場の状況からも好ましい」と述べた。ギリシャ政府の基礎的財政収支(プライマリーバランス)が黒字になっているほか、国内経済の改善、政治リスクの低下、国際債権団による支援などを理由に挙げた。
一方、DZ銀行のアナリストは顧客向けリサーチノートで「象徴的な動きとみるべきだ。ギリシャの債務は高水準で依然として金融支援に依存している。資本市場で全額を独力で借り換えることはできない」との見方を示した。
● 8
ギリシャ、今年の成長率は2%近くになる見通し=首相 8/29
ギリシャのチプラス首相は29日、今年の国内総生産(GDP)伸び率が2%近くとなり、改定後の政府見通しをやや上回るだろうと述べた。
8月29日、ギリシャのチプラス首相は、今年のGDP伸び率が2%近くとなり、改定後の政府見通しをやや上回るだろうと述べた。写真はアテネで7月撮影(2017年 ロイター/Costas Baltas)
ユーロ圏財務相は6月にギリシャへの融資実施で合意し、ギリシャは7月には3年ぶりに債券市場に復帰した。
政府は5月に今年のGDP伸び率見通しを2.7%から1.8%に下方修正していた。
首相は「2017年の成長率が2%近くになるとの予測が確認されるだろう」と述べ、現行21.7%の失業率は来年には20%未満に低下するとの見通しも示した。
新たに設立する国家開発銀行について、来年第1・四半期には業務が開始されるだろうとも語った。
● 9
EU各国、過剰財政赤字巡るギリシャへの懲罰手続き終了を決定 9/25
欧州連合(EU)加盟各国は25日、ギリシャの財政状況が改善したことを受け、過剰な財政赤字を巡る同国への懲罰手続きを終えることを決定した。EU各国は、懲罰手続きを終えるよう求めた欧州委員会の提案を支持した。
エストニアのトニステ財務相は声明で「数年にわたる深刻な困難を経て、ギリシャの財政は大幅に良くなった。そのため本日の決定を歓迎する」とした。
ギリシャ、緊縮策で困窮する国民の支援に総額14億ユーロを拠出へ 9/25
ギリシャのチプラス首相は13日のテレビ演説で、財政緊縮プログラムで生活が困窮している年金生活者などを支援するため、総額14億ユーロを拠出すると発表した。
首相は、ギリシャ政府が金融支援プログラムで目指す2017年の基礎的財政収支の黒字目標を達成したため、支援金の拠出が可能だと説明した。
首相によると、政府は12月半ばまでに約7億2000万ユーロを所得水準や世帯規模などに応じて、非課税の一時金として340万人の国民に支給する。これとは別に3億1500万ユーロを年金生活者に支給。電気料金引き上げを防ぐ目的で、国内電力最大手PPC(DEHr.AT)に3億6000万ユーロを支給する。
チプラス首相は昨年、低所得の年金生活者に約6億ユーロを支給すると突然発表し、国際債権団の怒りを買った。
欧州委員会によると、今回の支給案は、ギリシャ政府が事前に欧州委と国際通貨基金(IMF)と協議した内容とおおむね一致する内容という。
 

 

●11
ギリシャ、緊縮策で困窮する国民の支援に総額14億ユーロを拠出へ 11/14
ギリシャのチプラス首相は13日のテレビ演説で、財政緊縮プログラムで生活が困窮している年金生活者などを支援するため、総額14億ユーロを拠出すると発表した。
首相は、ギリシャ政府が金融支援プログラムで目指す2017年の基礎的財政収支の黒字目標を達成したため、支援金の拠出が可能だと説明した。
首相によると、政府は12月半ばまでに約7億2000万ユーロを所得水準や世帯規模などに応じて、非課税の一時金として340万人の国民に支給する。これとは別に3億1500万ユーロを年金生活者に支給。電気料金引き上げを防ぐ目的で、国内電力最大手PPC(DEHr.AT)に3億6000万ユーロを支給する。
チプラス首相は昨年、低所得の年金生活者に約6億ユーロを支給すると突然発表し、国際債権団の怒りを買った。
欧州委員会によると、今回の支給案は、ギリシャ政府が事前に欧州委と国際通貨基金(IMF)と協議した内容とおおむね一致する内容という。 
●ギリシャ危機2015−緊迫の3週間 2017/7 

 

2015年夏、ギリシャ情勢は、予想を大きく超える劇的な急展開を辿った。以下に15年6月下旬から7月中旬まで、事態の変化に応じて執筆した4本のレポートを時系列で並べた。重要な動きとともに、その時々の筆者の考えを述べた部分にも下線を引いた。3週間余りの緊迫した情勢を振り返っていただけるのではないかと思う。
「ギリシャ危機2015」は、6月末の期限目前での支援協議決裂、銀行の一時休業と資本規制の導入、支援条件への是非を問う国民投票での圧倒的多数の「NO」というプロセスを経て、第3次支援プログラムの合意で終息した。しかし、ギリシャの政府の債務があまりに大きく(図表1)、支援条件があまりに厳しかったため、危機再燃のリスクを強く意識せざるを得なかった。
早ければ今夏の「ギリシャ危機2016」も想定できた。昨年同様、7月20日にECBなどが保有する23億ユーロの国債償還を控えるが、ギリシャの改革が難航し、新たな支援が凍結されたままになっていたからだ。
しかし、幸い、5月24日のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)で、年金や税制改革、民営化基金創設などの取り組みを認め、6月中に75億ユーロの支援を実行する方針が固まり、今夏の危機再燃は回避される見通しとなった。懸案の債務再編についても、24日のユーログループで、元本削減はしない大原則を維持しつつ、ギリシャの改革の進捗状況に合わせて、短期、中期、長期で実施する負担を軽減する案を協議した。債務再編を条件としてきたIMFの支援参加にも道が拓かれつつある。
「ギリシャ危機2015」終息後、EUにはシリアなどから大量の難民が流入、地中海をわたる難民のEUへの流入ルートの前線に位置するギリシャの地理的な重要性が改めて認識された。他方、大量の難民を受け入れたドイツでは、EUに流入する難民をコントロールすることが、最重要な政治課題となった。難民危機が、支援を巡るギリシャとドイツの力関係を微妙に変えた可能性がある。
経済データを見る限り、「ギリシャ危機2015」の景気や雇用への影響は当時予想されていたよりも軽微だったようだ。しかし、実質GDPは、16年1〜3月期の段階でも世界金融危機前の水準を25%余り、雇用は15%余り下回っている(図表2)。ユーロ離脱懸念を背景とする預金の流出も止まったものの、水準は回復しておらず(図表3)、資本規制の解除にも至っていない。
ギリシャの歳入のGDP比の水準は、EU・IMFによる支援開始からこれまでに、10%も引き上げられている(図表4)。大規模な財政緊縮によるギリシャ経済と社会の疲弊を憂慮する思いは、4本のレポートを執筆した当時も現在も変わっていない。
●ギリシャ新提案で交渉決裂は回避:6月22日ユーログループ、ユーロサミット
15年6月22日のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)、ユーロ圏臨時首脳会合(ユーロサミット)は、前日のギリシャ政府による新たな「改革プログラム」の提示を受けて、無秩序な債務不履行(デフォルト)、ユーロ離脱に発展しかねない交渉の決裂を回避した。
48時間で支援機関が新提案を精査、欧州時間の24日夜にユーログループの会合を開催、EUの定例首脳会議が予定される25日朝に最終承認を目指す。支援交渉の完全な決裂は、ギリシャにとってもユーロ圏にとっても政治的な失敗であり、土壇場での合意が期待される。
合意が成立すれば、とりあえず最悪のシナリオは回避されるが、7月以降も多くのハードルがある。IMF返済資金の捻出方法、72億ユーロの支援実行後の支援体制、改革プログラムがギリシャ経済の再生とユーロ圏に残留する可能性を高める内容かどうかなど見極めが必要だ。
交渉決裂は回避も、決定は24日〜25日に先送り
15年6月22日、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)とユーロ圏臨時首脳会議(ユーログループ)が開催された。22日の会合は、18日の定例のユーログループの会合でのギリシャ支援問題を巡る協議が物別れに終わったことを受けて設定された。凍結されてきた第二次支援プログラムの残金72億ユーロの支援は6月末に失効する。同じく6月末を期限とする国際通貨基金(IMF)への15.4億ユーロの返済の不履行(デフォルト)を回避するための最後の機会と位置づけられた。
結果として、22日の会合を前に、ギリシャ政府が21日に新たな「改革プログラム」を提示したことで、「無秩序なデフォルトとユーロ離脱」という最悪のシナリオに発展しかねない「支援交渉の完全な決裂」はとりあえず回避された。
ギリシャの新提案は、支援機関との間で争点となってきた年金改革については早期退職制度見直し、付加価値税についても、軽減税率見直しなどが盛り込まれたとされ、概ね好意的に受け止められた。ユーログループのデイセルブルム議長も、ギリシャ政府の新提案は「幅広く包括的」で「合意の土台となる可能性がある」と評し、首脳会議議長のトゥスクEU大統領も「前向きな一歩」と述べた。IMFのラガルド専務理事も「より詳細になった」としている。慎重ながらも、18日の会合後の極めて悲観的な空気は和らいだように感じる。
しかしながら、ギリシャの新提案を精査する時間が必要との理由から、支援実行の可否や期間延長などに関わる具体的な決定は見送った。48時間で支援機関が新提案を精査、欧州時間の24日夜に臨時のユーログループを開催して、合意を目指し、定例のEU首脳会議が予定される25日朝の最終承認が新たな目標となった。
合意不成立ならどうなるか?
18日の段階で、IMFのラガルド専務理事は、ギリシャ政府が6月末に返済しなかった場合、猶予期間や返済延期の期間は設けず、デフォルトと見なすとの立場を示している。
IMFへのデフォルトは、民間投資家が損失を被る国債のデフォルトとは異なるが、その後の国債の償還の可能性が低下することで、ギリシャ国債を担保とするギリシャの銀行の資金調達は更に厳しくなる。7月10日、17日に償還を予定している短期国債の引き受け手は主にギリシャの銀行だが、7月14日には117億円のサムライ債の償還も予定されており、日本の投資家が影響を受ける可能性もある。
「デフォルト=ユーロ離脱」ではないが、期限内に合意が成立しなければ、ギリシャのユーロ圏の一員としての権利が制限され、その後もユーロ圏との関係改善が図られなければ、ユーロ離脱に近づくことになるだろう。欧州中央銀行(ECB)は、政権交代後、ギリシャ政府の改革プログラムの実行が不確かになったことを受けて、15年2月11日からギリシャ国債を適格担保から外し、ギリシャの銀行は定例オペに参加できなくなった。ギリシャ国債は、同年3月に始まった量的緩和による国債買い入れプログラムの対象からも外されている。その一方、ECBは、ギリシャ中央銀行が、市中銀行に一定の金額を上限として、緊急流動性支援(ELA)を行うことは認めてきた。22日もECBはELAの上限引き上げを決めたが、仮に、交渉が決裂し、支援プログラムからの離脱が「確定」すれば、7〜8月に予定されるECBが保有する国債償還の目処も立たなくなり、ギリシャ国債を担保とするELAを制限あるいは停止せざるを得なくなるだろう。ELAは、預金流出が続くギリシャの銀行の命綱となってきた。支援交渉の決裂で預金流出が加速する一方、ELAが停止されれば、ギリシャの銀行システムは混乱に陥り、資本規制の導入は不可避になる。
支援交渉決裂はギリシャ政府、ユーロ圏の双方にとって政治的な失敗
15年1月のチプラス政権発足後、ギリシャ政府と欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)からなる支援機関との協議はおよそ5カ月にわたり、平行線を辿り続け、しばしば、『チキンゲーム』に例えられてきた。
しかし、支援交渉が完全に決裂し、ギリシャ政府がデフォルト、ユーロ離脱といった事態に発展することは、ギリシャにとってもユーロ圏にとっても政治的な失敗となる。このため極力回避する努力がなされると見られることが、土壇場での合意が期待される最大の理由だ。
チプラス政権や政権を支持する国民は、財政緊縮策の緩和や債務負担の軽減は望んでいるが、「ユーロ離脱」は望んでいない。
ユーロ圏にとってもギリシャのデフォルトやユーロ離脱は大きなダメージとなる。金融市場の混乱や周辺国の財政危機の連鎖を引き起こすリスクは2012年までに比べて低下している。12年に民間保有の債務が再編され、欧州安定メカニズム(ESM)、ECBの国債買い入れプログラム(OMT)さらに量的緩和と、危機拡大を防ぐ防火壁も分厚くなっているからだ。それでも、どのような副作用があるか、完全に予測することは困難であり、ユーロという制度への信頼を維持する観点からも、離脱国を出すことは望ましくない。ギリシャ経済が大混乱に陥ることを承知の上で切り離すことはEUの連帯を傷つけ、地政学的なリスクを高める。ギリシャに対してこれまでに実行した支援金が返済される可能性が低下することは、支援に参加した各国政府にとって大きな問題になる。
それでは、なぜ協議は平行線を辿ってきたのか?
双方ともに支援交渉の決裂が望ましくないのであれば、なぜ、協議に、これだけの時間を費やすことになったのだろうか。
チプラス政権は、支援の見返りに強制された行過ぎた財政緊縮や改革の軌道修正、債務負担の軽減を公約に掲げて総選挙に勝利し、発足した政権であり、交渉を引き延ばすインセンティブがあった。協議の争点の1つとなってきた年金分野では、ギリシャは、2010年以降、支給開始年齢の引き上げ(2012年11月、満額受給の場合;65歳→67歳)、満額受給に必要な積立期間の延長(2010年7月、37年→40年)、早期退職年齢の引き上げ(2011年から53歳→60歳)などの改革を行ってきた。一連の改革で、年金の給付の水準が大きく引き下げられ、貧困ラインを下回る水準の年金受給者が4割強を占めるとされている。チプラス政権は年金改革を超えてはならないレッドラインの一つと位置づけた。政権基盤固めには、支援機関と戦う姿勢を示すことが必要とされ、急進左派連合(SYRIZA)内の強硬派や連立パートナー「独立ギリシャ人」が安易な妥協を阻んだ。各種の世論調査では、SYRIZAは、最大野党のNDを大きく引き離し続けており、チプラス政権の瀬戸際戦術は、ある面では功を奏してきたようだ。
他方、ギリシャを支援してきたユーロ参加国の政府は、フランスやイタリアなどの大国も含めて「行過ぎた財政緊縮は却ってマイナス」という思いを共有する国は少なくないが、ギリシャの要求を許容できる範囲にも限界がある。ギリシャの年金制度を他国と比較すると、改革後も手厚すぎるように映る。年金支出のGDP比は、2012年時点で17.5%とユーロ圏で最も高かった(図表1)。改革により年金の支給開始年齢は多くの国と並ぶようになったが、早期退職制度の影響もあり、男性の実効退職年齢は61.9歳でOECD平均の64.2歳を大きく下回る(図表2)。これらのデータは、他国に比べて、ギリシャの名目GDPの落ち込み度が大きく、高齢化が進展し、雇用情勢が厳しい結果でもあり、一概に「年金の手厚さ」を示すものとは言えない。しかし、支援国の国民から見れば、「他国の国民がより長く働き、ギリシャの年金生活者を支える」構図に映る。
債務負担の軽減にも異論がある。ギリシャ政府債務残高の名目GDP比の水準は突出して高いが(図表3)、ユーロ圏からの支援は、アイルランドやポルトガルよりも返済猶予の期間が長く、平均償還期間は31.14年と、アイルランド、ポルトガルの20.8年よりも10年以上長い。支援金の金利も低く抑えられているため、一般政府の利払い費の名目GDP比は、ポルトガル、イタリア、アイルランドなどよりも低い(図表4)。ユーロ圏からの支援金の元本を削減する債務の再編は、救済を禁じたEU基本条約違反であり、極めて困難だ。一層の利払い負担の軽減も、財政健全化の目標をなんとか達成し、自力で調達する国々とのバランスを考えると限界がある。
   図表1 年金支出の対GDP比(2012年)
   図表2 年金支給開始年齢と実効退職年齢
   図表3 政府債務残高の対名目GDP比(2014年)
   図表4 一般政府利払いの対名目GDP比(2014年)
改革プログラムで週内合意成立でも多くのハードルが残る
今週中にも「改革プログラム」で合意すれば、とりあえず最悪のシナリオは回避される。
だが、ギリシャの資金繰りには7月以降も多くのハードルがある。支援機関との合意が、これらのハードルをカバーする内容なのかどうか見極める必要がある。
当面の問題として、6月末に迫るIMFへの返済資金を捻出するかがある。72億ユーロの支援金の受け取りには、合意した改革について、ギリシャ議会での法案の成立と、これを受けた支援国側の議会承認が必要となるが、合意自体が遅れたために、6月末までにこれらのプロセスを終えることは難しいと見られる。「改革プログラム」に関するギリシャ国内の議決が滞れば、さらに遅延する可能性もある。当面のつなぎとして、(1)ギリシャの銀行が主たる引き受け手となっている短期国債の発行枠の引き上げ、(2)ユーログループの管理下にあるギリシャの銀行増資のための基金(109億ユーロ)の流用、(3)プログラムの完了時にギリシャへの返済が予定されているECBのギリシャ国債購入からの利益(19億ユーロ)の活用などの選択肢が浮上しているが、最終的にどのような形で決着するのかは未だ見えない。
72億ユーロの支援金を受け取り、第二次支援プログラムが終了した後のギリシャ支援体制の青写真が、6月末までの合意に、どこまで盛り込まれるかにも注目したい。
いずれにせよ、最も重要な点は、「改革プログラム」が、全体として、ギリシャ経済の再生とユーロ圏に残留する可能性を高めることにつながるかどうかだ。
●ギリシャ支援6月末失効へ:なぜ協議は決裂したのか?これからどうなるのか?
15年6月27日、ユーログループは、支援機関側が提示した「改革プログラム」の最終案の賛否を問う国民投票を7月5日に実施する方針を表明したギリシャ政府からの支援期限の延長要請を退けた。ギリシャの銀行からは預金流出が加速しているが、ECBはギリシャ中央銀行へのELAの上限引き上げを見送り、ギリシャは29日から資本規制導入に追い込まれた。
6月末に現在の支援プログラムは失効、IMFへの延滞も避けられなくなったが、ただちにギリシャのユーロ離脱に発展する訳ではない。ギリシャ政府の要請で、ユーログループと支援協議を再開することは可能であり、現時点では、無秩序なデフォルトからユーロ離脱に発展することは避けられると見ている。
リスクシナリオは、国民投票の結果、「NO」が多数を占めた場合であり、ユーロ離脱が現実味を帯びる。しかし、その可能性は高くはなく、ギリシャが直面する問題の解決策にもならない。
ユーログループは国民投票を決めたギリシャへの支援延長を拒否−先週末からの流れ
ギリシャ支援協議が週末に急展開し、6月末を期限とする国際通貨基金(IMF)の15.4億ユーロの延滞が不可避となった。
22日には、ギリシャ政府が超えてはならない「レッドライン」としてきた年金改革も含む「改革プログラム」を提案したことで合意への期待が広がったが、裏切られてしまった。24日にプログラムを精査した支援機関側が「改革プログラム」の修正案を提示、受け入れを迫ったことで流れが変わった。
26日、ギリシャ政府は、支援機関側の最終案への賛否を問う国民投票を7月5日に実施する方針を表明、これに伴う支援期限の延長を支援機関側に要請した。しかし、27日、ユーログループは、ギリシャ政府からの支援期限の延長要請を退けた。これにより凍結されてきた72億ユーロの支援金とともに、欧州中央銀行(ECB)が国債買い入れプログラム(SMP)、ユーロ参加国の中央銀行が国家金融勘定(ANFA)を通じてギリシャ国債の償還で得た収益の受け取る権利も失効する。
28日には国民投票に関する法案がギリシャ議会を通過、ECBは、電話による緊急会合を開催し、ギリシャ中央銀行に認めている緊急流動性支援(ELA)の上限を26日の水準(約890億ユーロ)に据え置くことを決めた。
チプラス首相は、テレビ演説で、支援機関側に、国民投票実施のための支援期限の数日間の延長を引き続き求めていることを明らかにすると同時に、29日からの銀行営業の停止と資本規制の実施を発表した。
なぜ協議は決裂したのか
筆者は、支援協議の決裂は、ギリシャ政府にとっても、ユーロ圏にとっても政治的な失敗となるため、土壇場で合意が実現すると期待していた1。
しかしながらギリシャが、一時的にせよ、支援プログラムから外れる方向に事態が展開した原因は、チプラス政権が、実現不可能な公約を掲げて発足したことにあると考えている。
チプラス政権は、「財政緊縮緩和」、「債務負担の軽減」、そして「ユーロ残留」という道筋を探ろうとしてきた。だが、ユーロ圏から見れば、ギリシャに他のユーロ参加国とのバランスを著しく欠いた譲歩はできなかった。EUの基本条約が救済を禁じているために債務再編にも限界があった。
最終的に支援機関側は、支援プログラムを5カ月延長する提案とともに、ギリシャ政府が22日に提示した「改革プログラム」を、成長と両立し得る内容に改めるよう求めた。法人税収の増収への依存度を引き下げ、負担を公平化、年金制度は簡素化と早期退職を促す制度の見直しを前倒しするというのが大枠だ。例えば、年金分野では、(1)開始時期をギリシャ案の15年10月末から同年7月1日に前倒し、(2)年金受給開始年齢の67歳への段階的引き上げの最終期限をギリシャ案の2025年に対して2022年に前倒し、(3)低所得年金受給者向け手当て(EKAS)についてはギリシャ案の「段階的に代替する枠組みに切り替える」案に対して、支援機関案は19年までに段階的に廃止するなどを求めた。税制に関しては、(1)法人税率の引き上げ幅は、ギリシャ案の26%→29%を26%→28%に下方修正、(2)ギリシャ案の50万ユーロ以上の利益がある企業に15年度1回限りの12%の特別法人税を却下、(3)離島に永住する低所得者への特別税額控除の提案を却下、(4)付加価値税についてはギリシャ案の軽減税率対象品目の削減でGDP比0.74%の増収に対して、支援機関は同1%の増収を求めた。
チプラス政権は、「改革プログラム」を提案した段階では、年金改革に踏み込んでも、政権の支持基盤と思われる低所得者や弱者に配慮し、企業に負担を求めるという構図を維持することで、支持者に説明する方針だったと思われる。しかし、こうした政権としての配慮が刈り込まれた最終案を受け入れれば、政権の維持は困難だった。支援を受けながら政権を維持するための苦肉の策であった可能性がある。
しかし、支援機関から見れば、支援機関の提案の否決を呼びかけて実施される国民投票のために、チプラス政権に猶予を与えることは難しかった。
国民投票の決定を受けたユーログループの支援延長拒否、ECBのELAの上限引き上げ見送りによって、銀行の営業停止、資本規制の導入に追い込まれたギリシャ経済の混乱は避けられないだろう。
これからどうなるのか? ギリシャのユーロ離脱には直結せず、支援協議の再開も可能
国民投票を実施するチプラス政権の延長要請を拒否したことで、現在の支援プログラムは6月末に失効する見通しとなった。IMFへの延滞も避けられないが、ただちにユーロ離脱に発展することはない。ギリシャ政府の要請によってユーログループと支援協議を再開することは可能である。今後、無秩序なデフォルトの末、ユーロを離脱する事態に発展することは回避できるのではないか。
ユーロ圏としてもギリシャが、そうした状況に陥ることは好ましくない。12年までと違い、金融のネットワークを通じた危機拡大のリスクは低下しているし、財政危機の飛び火も起きにくくなっている。それでも、ユーロ離脱の意志はなく、その準備もしていないギリシャ政府を切り捨てることは、地政学的なリスクの観点、何よりもEUの連帯を大きく傷つけるからだ。
7月5日に実施される国民投票で「YES」が圧倒的多数を占めた場合、支援協議は再開しやすくなる。しかし、支援機関のチプラス政権への不信感は根強い。解散・総選挙を経て、新政権が協議にあたることが必要になるかもしれない。
リスクシナリオは、国民投票で支援機関提案の受け入れ拒否が多数を占めた場合
リスクシナリオは、国民投票の結果、「NO」が多数を占めた場合だろう。支援機関提案の受け入れ拒否が多数に終わったからといって、支援機関側が大きく譲歩する形で、協議を再開する可能性は高くない。
ギリシャが、ユーロ圏のバックアップを欠いたまま、長期に存続することは難しく、無秩序なデフォルト、国内の年金や公務員給与支払いなどのための借用証書(IOU)の発行などに追い込まれ、ユーロ離脱も現実味を帯びる。
現時点では、ユーロ離脱という未知の領域に発展しかねない「NO」が多数を占める可能性は高くはないと思われる。ただ、出口のない財政緊縮と不況は、ギリシャ国民のユーロ残留への意志を蝕んできた面はある。「NO」がどの位の割合を占めるのかは、気になるところだ。
ギリシャの人口のうち貧困と社会的排除のリスクにさらされている割合2は財政危機を境に急上昇し、14年には36%に達した(図表1)。ギリシャの貧困率は、ユーロに参加している19カ国で最も高く、EU加盟28カ国でも3番目に高い。貧困率がギリシャよりも高い、ないしギリシャと同じ程度の国は中東欧の国々で、これらの国の場合は、2004年以降のEU加盟時よりも低下している。「貧しくなった」という実感が最も強いのはギリシャだろう。
   図表1 貧困と社会的排除のリスクにさらされている人口の割合(貧困率)
   図表2  ギリシャの貧困率(年齢層別)
ちなみに、統計上は、貧困率が、とりわけ高く、かつ、上昇が目立つのは18〜24歳の若年層である。年金改革の影響を受ける55歳以上ないし65歳以上の貧困率は上昇が見られず、貧困の増大は、年金改革よりも、雇用情勢の悪化が長期化している影響が大きいと思われる(図表2)。
ギリシャの生産活動は、財政危機前のピークのおよそ7割の水準で停滞し、失業解消の目処が立たない中でも、ギリシャ国民の多数はユーロに対してポジティブなイメージを持っている。
しかし、世論調査では、チプラス政権による支援交渉が始まった2月以降、ユーロへの支持が低下していることが確認できる。特に、交渉が大詰めを迎えた6月は、支持と不支持の差は大きく縮小した(図表3)。
   図表3 ギリシャ国民のユーロに対する見方
   図表4 南欧のビジネス環境ランキング(2015年)
ユーロ離脱は問題の解決策にはならない
ギリシャの財政危機が表面化した当初から、ギリシャはユーロを離脱すべきとの議論はあった。ユーロを離脱、自国通貨ドラクマを復活させるベネフィットは、為替相場によって競争力が調整されるため、賃金・物価の切り下げという痛みを伴うルートのみに頼らずに済むことだ。
しかし、ギリシャの場合、自国通貨への復帰による競争力回復の効果は、あまり期待できない。域内からの輸入依存度が高く、ドラクマが対ユーロで大きく切り下がれば、輸入インフレで、インフレが加速する可能性がある。
そもそも、ギリシャの競争力の問題は、賃金の割高さより、徴税などの制度、行政手続きの効率性、投資関連規制などに根ざすものだ。世界銀行が作成しているビジネス関連の法規制や諸手続きに焦点を当てたビジネスのしやすさに関するランキングでは(図表4)、ギリシャは189カ国61位。ギリシャの後にEU・IMF支援を要請、すでに支援を卒業したポルトガルは25位、スペインは33位で、ギリシャよりも評価は高い。ユーロ圏で、ギリシャよりもランクが低いのは島嶼国家のキプロスとマルタだけだ。
こうしたビジネス環境に関わる問題は、ユーロを離脱しても解決しない。むしろ、離脱によって、ユーロ圏との間で為替リスクが発生、両替のコストも生じる。ECBによる金融政策だけでなく、一元的な銀行監督、単一化を目指す銀行破綻処理の枠組みなどからも外れ、銀行経営の健全性に対する見方も厳しいものとなる。ギリシャ当局がよほど努力しないかぎり、ユーロ離脱によるビジネス環境の不利化の悪影響を埋め合わせることはできないだろう。
財政運営も、ユーロを離脱したからといって楽にはならない。ユーロの離脱は、支援機関に対するデフォルトとセットとなり、ユーロ参加国としての信用補完効果も失われるため、市場復帰は遠のく。
チプラス政権もユーロ離脱が解決策とならないことを承知しているからこそ、ユーロ残留を前提に協議してきたのだろう。しかし、この5カ月間で、ユーロ残留と緊縮策の撤回は両立しないことが明らかになった。
ユーロの導入は、EU加盟国の義務であり、離脱に関するルールも定まっていない。ギリシャ国民が「NO」を突きつけた場合、EUにできるのは、そのプロセスをいかに秩序立ったものとするかに限られる。
●ギリシャのユーロ離脱シナリオを用意して開催される12日EU首脳会議
ギリシャとユーロ圏の双方が望んでいなかったデフォルトと事実上のユーロ離脱という最悪のシナリオがいよいよ現実味を帯びてきた。
15年7月7日のユーロサミットでは、ギリシャ政府に新たな支援の見返りに実行する改革案を9日までに提出するよう求め、12日にEU首脳会議を召集することを決めた。前日11日のユーログループの結果が芳しくなければ、12日の首脳会議は、ギリシャに改革案での合意か、ユーロ離脱かの選択を迫ることも考えられる。
チプラス首相が、ユーロ離脱を回避すべく、首脳会議で支援への暫定合意に漕ぎ着けようとすれば、「有利な条件」を期待してNOに票を投じた有権者を裏切ることになる。
首脳会議で「離脱」、「除名」を決議することはないが、支援要請を却下すれば、ECBのELA打ち切りにつながる。ギリシャ政府は、政府借用証書(IOU)などを発行するなどの対処を迫られ、事実上のユーロ離脱の様相を呈することになろう。その後の社会の混乱は避けられず、やはり有権者は裏切られたと感じるのではないか。
その後のギリシャには、法定通貨のユーロからドラクマへの切り替えという選択と、信頼に足る改革案を提示し直し、ユーロ参加国としての権利を回復する選択が残されるかもしれない。
ギリシャ情勢は、支援協議の決裂(6月26日)、銀行の一時休業、預金引き出し制限など資本規制導入(6月29日〜)、国民投票の改革案否決多数(7月5日)と、支援合意への期待を裏切る展開が続いた。
ギリシャとユーロ圏の双方が望んでいなかったデフォルトと事実上のユーロ離脱という最悪のシナリオがいよいよ現実味を帯びてきた。
ギリシャ政府は7日の段階では新たな支援の見返りに実行する改革案を提示せず
7月5日のギリシャの国民投票が、支援機関の改革の最終案への反対が61.31%と賛成の38.69%を大きく上回ったことを受けて、7日にユーロ圏財務大臣会合(ユーログループ)、ユーロ圏首脳会議(ユーロサミット)が開催された。7日のユーログループには、辞任したバルファキス氏の後任となったチャカロトス財務大臣が参加したが、支援の見返りに実行する改革案が提示されなかったため、具体的な協議は行われなかった。
7日にユーログループに続いて開催されたユーロサミットでは、ギリシャ政府に遅くとも9日までに改革案を提示するよう求め、12日にユーロ未導入のEU加盟国も参加するEU28カ国での首脳会議を開催することで合意した(図表1)。
8日の支援要請の段階では国民投票結果を受けた譲歩を迫る姿勢は見られず
ギリシャ政府は、8日に欧州安定メカニズム(ESM)に正式に期間3年の支援を要請、9日に包括的改革案の詳細を提出する方針を示した。
英フィナンシャル・タイムス紙がホームページ上に掲載したギリシャ政府の支援要請書によれば、緊急に協議を要請する理由として、金融システムの脆弱性、流動性の不足、債務の返済期限、国内の支払い遅延、IMFへの延滞の解消を挙げている。税制改正と年金改革は、来週早々にも実行に移すとし、IMFの延滞の早期解消や、今月20日に迫るECBが保有する35億ユーロの国債の償還資金などの確保のため「つなぎ融資」を求める意図が伺われる。
債務減免についても、「広範な議論の中で、公的債務が長期的に持続可能なものとなるような潜在的な方法について機会を歓迎する」というごく控えめな表現が盛り込まれているだけだ。
少なくともギリシャ政府の支援要請書を見る限り、国民投票の大差のNOを後ろ盾に、支援機関側に譲歩を迫ろうという強硬姿勢は感じられない。
しかしながら、9日に提出される包括的改革案を見なければ、支援合意に至るかどうか判断はできない。
   図表1 これまでの経緯と今後の予定
12日のEU首脳会議で、ギリシャ政府に改革案での合意か、ユーロ離脱かの選択を迫る可能性
本稿執筆時点(日本時間9日13時)では、9日に提出されたギリシャの改革案を検討した上で、首脳会議前日の11日にユーログループが、ESM支援の対象とするかどうかを協議する予定となっている。
7日にはEU法を立案する機関である欧州委員会のユンケル委員長は「ギリシャ離脱の詳細なシナリオを準備している」ことを明かしている。ユーログループの結果が芳しくなければ、12日のEU首脳会議は、ギリシャ政府に「改革案での合意」か「ユーロ離脱」かの選択を迫ることも考えられる。
ギリシャの改革の約束がなければ債務減免もない。合意はNOを投じた有権者を裏切ることに
ギリシャ政府が、支援を取り付けるには、ユーロ参加国としての義務を履行する姿勢を示さなければならない。ユーロ圏の支援は、ギリシャよりも所得水準が低い国を含む参加各国の拠出によるものである。支援を受けながら、持続不可能な年金制度も改革せず、付加価値税も見直さないという主張は通らない。
チプラス首相は、国民投票で「支援機関から有利な条件を引き出すことにつながる」とNOに賛同を求めた。5カ月にわたる協議で、支援機関側の譲歩の余地は殆どないことを承知していたにも関わらず、国民にはNOが支援獲得を阻み、事実上のユーロ離脱に発展するリスクを伴うことは説明しなかった。国民投票が、こうしたリスクを説明した上で実施された場合には、おそらくNOが圧倒的多数ということにはならず、むしろYESが勝ったのではないか。
ギリシャのデフォルトとユーロ離脱は、EUとしても回避したいシナリオだった。ユーロ圏はギリシャ支援にすでに1830億ユーロ(第一次支援の二国間融資で529億ユーロ、第二次支援のEFSFからの融資が1309億ユーロ)3を投じており、デフォルトすれば、これらの債務の再編が必要になる。ユーロから離脱すれば、「後戻りできない通貨」という前提が崩れる。2012年までに比べて、金融システムの混乱や財政危機の飛び火のリスクは低下、ESMやECBによるコントロール力も増したが、ユーロの信認は大きく傷つく。EUとNATO(北大西洋条約機構)にとって地理的要衝に位置するギリシャでの経済・社会の混乱拡大も望んでいなかったはずだ。
それでも、首脳会議の段階で、EU側が提示できるのは、銀行閉鎖後の社会情勢の混乱に対処するための人道支援(医薬品、食品、燃料の供給)くらいだろう。ギリシャ政府が求める債務減免は、IMFのラガルド専務理事や米国のルー財務長官も必要性を認めている。ユーログループとしても、金利の減免や返済猶予期間、償還期間の延長などの用意はあるだろう。しかし、チプラス政権は、発足からこれまでに改革に取り組んでこなかったことから、ギリシャ政府が、改革への強固な約束を実行する見返りとしてしか応じないだろう。また、基礎的財政収支の目標は決めるが、その具体的アプローチはギリシャ側に委ねるという方法もあり得るが、チプラス政権のポピュリズム色の強さへの警戒は強く、譲歩は容易ではないだろう。
チプラス首相が、ユーロ離脱を回避すべく、首脳会議で支援の「承認」に漕ぎ着けようとすれば、国民投票で否決されたものと大枠で変わらないか、それ以上に厳しい改革案を受け入れることになるだろう。仮に、人道支援に、将来の債務減免の約束が上積みされたとしても、チプラス首相の言葉を信じ、「有利な条件」を期待してNO票を投じた有権者は裏切られたと感じるかもしれない。
交渉の結果を、チプラス首相が、議会や国民に説明できるかは疑わしく、実行力にも不安が残る。
「離脱」決議は困難。支援要請の却下は、事実上の離脱に発展する
仮に、ギリシャ政府が、支援機関側を納得させるような包括的改革案を提示できない場合、あるいは支援機関側の修正提案の受け入れを拒否した場合も、12日の首脳会議で、ユーロ圏やEUからの「離脱」、「除名」を決議することはないと思われる。ユーロは「後戻りできない通貨」として導入されたため、EUの基本条約に離脱に関する手続きはない。EUからの離脱は、離脱を希望する加盟国の「告知」に始まる。少なくとも現在のギリシャ政府に、EUやユーロ圏を離脱する意志はない。
しかし、「事実上の」ユーロ離脱につながる決議が下される可能性はある。首脳会議が、ギリシャ政府のESMへの支援要請を「信頼に足る改革案を欠く」などの理由で「却下」すれば、ギリシャのデフォルトは避けられなくなる。ECBは、13日に予定している政策理事会で、首脳会議の決議を受け、ギリシャの銀行の命綱となっているギリシャ中央銀行による緊急流動性支援(ELA)を打ち切るという流れだ。
すでにECBは、支援協議が決裂した6月28日からELAの上限は886億ユーロで据え置かれており、ギリシャ政府は、1日当たり60ユーロを預金引き出しの上限とするなどの資本規制導入を迫られた。ECBは、6日、ELAの残高は維持したが、担保となっているギリシャ国債などの割引率を調整することを決めている。銀行経営への圧力は一段と強まっているはずだ。
ECBが、ELAの打ち切りを決めれば、ギリシャの商業銀行は破綻する。第二次支援プログラムで利用可能だった銀行増資や破綻処理のための109億ユーロは6月末に失効した。新たな支援が却下された状態では、ギリシャ政府は、銀行の資本再構築のために政府借用証書(IOU)などを発行し、対処を迫られるかもしれない。事実上のユーロ離脱の様相を呈することになる。
デフォルトすれば債務再編は可能になるが、新たな資金調達の道は当分閉ざされる。年金などの給付水準の実質的な切り下げは避けられないだろう。
国民投票でNOに票を投じた有権者には、その代償として、デフォルトとユーロ離脱といった事態を受け入れる覚悟が、どの程度あったのかわからない。このケースでも、有権者はチプラス首相に裏切られたと感じるのではないか。
EUからの離脱には直結させず。ユーロ圏復帰の道を残す可能性も
ELAが打ち切られ、IOUが流通するようになっても、ギリシャの法定通貨はユーロのままで、ギリシャ中央銀行は、ECBとユーロ参加国の銀行からなるユーロシステムの構成メンバーであろう。安全保障上の理由などから、EUからの離脱にも直結させないように思われる。
その後のギリシャには、法定通貨のユーロからドラクマへの切り替えという選択と、信頼に足る改革案を提示し直し、ユーロ参加国としての権利を回復する選択が残されるかもしれない。
支援協議がまたしても決裂した場合に備えて、欧州委員会が果たしてどのような離脱のシナリオを用意しているのか定かではないが、そのプロセスが極力秩序だったものであることが望ましい。これまでに様々な危機の場面で創造的な解決策を見出してきたヨーロッパの英知に期待したい。
●ユーロ圏からの離脱の可能性を含むギリシャ支援合意〜債務負担軽減のあり方を巡る調整が今後の焦点〜
ギリシャが支援再開の条件をクリア、当面のデフォルトとユーロ離脱は回避へ
15年7月12日に開催されたユーロ圏首脳会議は、17時間にわたる協議の末、3年間で最大860億ユーロの第3次支援を行うことで合意した。15日には、欧州安定メカニズム(ESM)の支援手続き開始の条件とされたギリシャ議会(議席数:300)での付加価値税の増税や年金改革等の法案が229票の賛成により成立したことで、フランスやドイツなどの議会での支援手続きが始動、ECBもELAの上限を向こう1週間で9億ユーロ引き上げるなど支援の動きが加速している。ESM支援の正式な始動には数週間を要するため、7月20日予定されるECBが保有する国債の償還や、国際通貨基金(IMF)への延滞の早期解消のためにEUから「つなぎ融資」が実施される見通しだ。20日には、先月29日から休業が続いた銀行も一部営業を再開できる見通しとなりつつある(図表1)。
   図表1 第3次支援合意後の流れと当面のスケジュール
支援協議がまとまらないまま、ECBへの国債償還が出来ず、これを受けてECBがELAを停止、ギリシャ政府が政府借用証書(IOU)を発行せざるを得なくなる、「無秩序なデフォルト、銀行システムの崩壊、事実上のユーロ離脱」というシナリオはとりあえず回避された(図表2)。
   図表2 改革関連法案審議結果によるシナリオ
ドイツが迫った「厳しい条件付きの支援」か「一時的なユーロ離脱」かの選択
12日の首脳会議は、6月までと違う雰囲気で開催された。ギリシャ支援に参加する多くのユーロ圏の国々は、5カ月にわたる協議の末に、EUの提案に「NO」を突きつける国民投票を実施したチプラス政権に不信感を強めた。欧州委員会のユンケル委員長は、「ギリシャのユーロ離脱の詳細なシナリオを準備している」と語り、ドイツの財務省は「厳しい条件付きの支援」か「一時的なユーロ離脱」という選択肢を用意、決断を迫ったとされる。
各種の報道によれば、ドイツが用意した「一時的なユーロの離脱」は、最低5年など一定の期間、ユーロ圏から離脱し、その間に本格的な債務再編と競争力の調整を進めるものとされる。EUの加盟国として、EUから経済成長のための支援や人道支援は受けることができる。混乱した状態のまま、偶発的にユーロ圏から切り離されることは望ましくないが、EUの支援を受けながら秩序立った形で一時的に離脱するのは好ましいようにも見える。
ギリシャのデフォルトやユーロ離脱が、市場を通じて拡大するリスクは、民間が保有するギリシャ向けの債権の残高が削減されているため、2010年、12年に比べて小さくなっている。ユーロ圏内の他国への財政危機の飛び火も、ギリシャの離脱が避けられない状況になれば、ECBが全力で阻止するだろう。
こうした変化が、政策当局者が「ユーロ離脱」という選択肢についてタブー視しなくなった背景にあるのだろう。
ユーロ残留を望み、厳しい条件を受け入れたギリシャ
ユーロ圏から離脱国が出ることが市場の混乱を引き起こさないとしても、「いったん導入したら離脱できない」ユーロの前提が崩れることが、単一通貨から、本来得られるはずのベネフィットを大きく制限し、存在意義を低下させるおそれはある。
例えば、ギリシャほどではないにせよ、過剰債務や低い競争力という問題がある南欧の国々の資金調達の条件は、急激で大規模ではないとしても、離脱がない場合に比べて、やはり不利になるのではないか。世界金融危機以降、単一通貨圏内の銀行市場では信用リスクの高まりを背景に分断が生じたが、1カ国でも離脱国が出れば、解消しないままとなるおそれもある。これらはユーロ圏経済の成長を抑制する要因となる。欧州統合の中核的プロジェクトであるユーロが痛手を負えば、EUも傷つく。
今回の首脳会議では、ドイツの「一時的離脱案」に、フランス、イタリアなどは反対したとされる。何よりも、当事国のギリシャ政府が、ユーロ圏への残留を望み、厳しい条件を受け入れたことで、支援継続で落ち着いた。
債務危機の後、ギリシャの生産・雇用水準の落ち込みはとりわけ厳しく、失業の長期化、貧困の増大など社会的危機の様相を呈している。こうしたギリシャ経済の現状を考えれば、本来、支援の条件は、ギリシャ政府と支援機関側の双方が譲歩する形で合意することが望まれた。しかし、国民投票を巡る混乱もあり、ギリシャ政府への不信感を一段と強めた債権者側と、ユーロ離脱を回避、銀行の営業停止を少しでも早く解除したいギリシャ政府との力関係で、ほぼ全面的にギリシャが譲歩する形になってしまった。
危機は遠からず再燃するおそれ
しかし、ギリシャがこの先、厳しい支援条件を順調にクリアし、回復軌道に乗るイメージは描き難い。今回は、無秩序なデフォルトと事実上のユーロ離脱を回避したものの、遠からず、今回と同じような状況、つまり改革が進まず、支援金を受け取れず、資金繰りに窮する状況に陥るリスクは高いと見ざるを得ない。
最大860億ユーロとされる金融支援を受け取るには、所定の期間内に約束した改革を実行し、支援機関の審査を「合格」しなければならない。第3次支援プログラムの条件をまとめた覚書(MOU)は作成途上だが、首脳会議で大筋合意したメニューには(図表3)、追加の年金改革のほか、財市場・労働市場の改革、500億ユーロ規模の国有資産を独立した基金に移管、民営化などによる売却を加速し、銀行の資本増強や債務の返済にあてるなどが盛り込まれている。従来の支援プログラムの覚書にも、民営化や規制改革は、盛り込まれていたが、十分に実行されてこなかったもので、ギリシャ経済の効率性と競争力を高めるために必要だ。
   図表3 ギリシャ第3次支援プログラムの条件
だが、改革は、目先の大幅な需要不足、雇用機会の不足といった問題の解決にはつながらない。短期的には、銀行休業の後遺症や、15日に可決された年金改革や付加価値増税の影響で、景気や雇用は一層落ち込むと予想される。
ギリシャが得た譲歩は、焼き直しのEUの成長資金と限定的な債務再編の可能性
今回の支援合意で需要拡大、雇用創出を直接掲げているのは欧州委員会の「ギリシャ政府がEU財政から2020年までに350億ユーロ調達できるよう支援する」プランだけだ。350億ユーロという金額は14年時点のギリシャのGDPのおよそ2割に相当する。見た目の規模の大きさに関わらず期待が高くないのは、ギリシャ経済の梃入れのために新たに設けられた資金という訳ではないからだろう。EUの財政は、予算の上限や配分が7年間固定される。350億ユーロの調達は、2007〜13年の予算枠の未利用分や、現在の2014〜20年の予算を有効に活用しようというものだ。ギリシャ支援が始まった2010年頃から実施されているが、十分な効果が確認できない計画の焼き直しの感がある。
ギリシャ政府が、財政健全化目標の緩和とともに要請してきた債務の再編もごく限定的なものに留まった。「プログラムを着実に実行し、最初の審査に合格した場合、返済猶予期間の延長や期限延長などには応じる」だが、「元本の削減は行なわない」と全面的に否定されてしまった。
終わりのない緊縮や改革への不満が募り、反EU・反ユーロ機運が高まるおそれ
ユーロ圏による支援の枠内に留まる限り、ギリシャ政府・議会の政策の自由度が大きく制限される問題もある。15日には、すでに基礎的財政収支目標から逸脱した場合には半自動的に歳出が削減される法案が成立している。さらに、ESM支援が始まれば、改革関連の法案は、草案の段階で支援機関の事前承認を得ることになる。債務危機を教訓に導入された新たなユーロ圏の政策監視ルールでは、均衡財政や歳出抑制のルール、予算の事前提出などが盛り込まれているが、ギリシャの財政政策・経済政策、つまり議会の権限への制約はさすがに厳し過ぎるように感じる。
15日の段階では、銀行の営業再開、ユーロ残留などへの強い思いで法案の成立が後押しされたが、危機意識が薄らいでくれば、終わりのない緊縮や改革への有権者の不満が募るおそれがある。>
支援協議が落ち着いた秋頃には総選挙が実施されるとの観測がある。チプラス政権は「反緊縮でも親EU・親ユーロ」だったが、次の政権は「反緊縮かつ反EU・反ユーロ」の性格を強めるおそれもある。ユーロとEUにとって、いよいよ望ましくない展開だ。
注1 
ギリシャ新提案で交渉決裂は回避 / 6月22日ユーログループ、ユーロサミット 2015/6/23
22日のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)、ユーロ圏臨時首脳会合(ユーロサミット)は、前日のギリシャ政府による新たな「改革プログラム」の提示を受けて、無秩序な債務不履行(デフォルト)、ユーロ離脱に発展しかねない交渉の決裂を回避した。
48時間で支援機関が新提案を精査、欧州時間の24日夜にユーログループの会合を開催、EUの定例首脳会議が予定される25日朝に最終承認を目指す。支援交渉の完全な決裂は、ギリシャにとってもユーロ圏にとっても政治的な失敗であり、土壇場での合意が期待される。
合意が成立すれば、とりあえず最悪のシナリオは回避されるが、7月以降も多くのハードルがある。IMF返済資金の捻出方法、72億ユーロの支援実行後の支援体制、改革プログラムがギリシャ経済の再生とユーロ圏に残留する可能性を高める内容かどうかなど見極めが必要だ。
交渉決裂は回避も、決定は24日〜25日に先送り
6月22日、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)とユーロ圏臨時首脳会議(ユーログループ)が開催された。22日の会合は、18日の定例のユーログループの会合でのギリシャ支援問題を巡る協議が物別れに終わったことを受けて設定された。凍結されてきた第二次支援プログラムの残金72億ユーロの支援は6月末に失効する。同じく6月末を期限とする国際通貨基金(IMF)への15.4億ユーロの返済の不履行(デフォルト)を回避するための最後の機会と位置づけられた。
結果として、22日の会合を前に、ギリシャ政府が21日に新たな「改革プログラム」を提示したことで、「無秩序なデフォルトとユーロ離脱」という最悪のシナリオに発展しかねない「支援交渉の完全な決裂」はとりあえず回避された。
ギリシャの新提案は、支援機関との間で争点となってきた年金改革については早期退職制度の見直し、付加価値税についても、軽減税率の見直しなどが盛り込まれたとされ、概ね好意的に受け止められた。ユーログループのデイセルブルム議長も、ギリシャ政府の新提案は「幅広く包括的」で「合意の土台となる可能性がある」と評し、首脳会議議長のトゥスクEU大統領も「前向きな一歩」と述べた。IMFのラガルド専務理事も「より詳細になった」としている。慎重ながらも、18日の会合後の極めて悲観的な空気は和らいだように感じる。
しかしながら、ギリシャの新提案を精査する時間が必要との理由から、支援実行の可否や期間延長などに関わる具体的な決定は見送った。48時間で支援機関が新提案を精査、欧州時間の24日夜に臨時のユーログループを開催して、合意を目指し、定例のEU首脳会議が予定される25日朝の最終承認が新たな目標となった。
合意不成立ならどうなるか?
18日の段階で、IMFのラガルド専務理事は、ギリシャ政府が6月末に返済しなかった場合、猶予期間や返済延期の期間は設けず、デフォルトと見なすとの立場を示している。
IMFへのデフォルトは、民間投資家が損失を被る国債のデフォルトとは異なるが、その後の国債の償還の可能性が低下することで、ギリシャ国債を担保とするギリシャの銀行の資金調達は更に厳しくなる。7月10日、17日に償還を予定している短期国債の引き受け手は主にギリシャの銀行だが、7月14日には117億円のサムライ債の償還も予定されており、日本の投資家が影響を受ける可能性もある。
「デフォルト=ユーロ離脱」ではないが、期限内に合意が成立しなければ、ギリシャのユーロ圏の一員としての権利が制限され、その後もユーロ圏との関係改善が図られなければ、ユーロ離脱に近づくことになるだろう。欧州中央銀行(ECB)は、政権交代後、ギリシャ政府の改革プログラムの実行が不確かになったことを受けて、2月11日からギリシャ国債を適格担保から外し、ギリシャの銀行は定例オペに参加できなくなった。ギリシャ国債は、3月に始まった量的緩和による国債買い入れプログラムの対象からも外されている。その一方、ECBは、ギリシャ中央銀行が、市中銀行に一定の金額を上限として、緊急流動性支援(ELA)を行うことは認めてきた。22日もECBはELAの上限引き上げを決めたが、仮に、交渉が決裂し、支援プログラムからの離脱が「確定」すれば、7〜8月に予定されるECBが保有する国債償還の目処も立たなくなり、ギリシャ国債を担保とするELAを制限あるいは停止せざるを得なくなるだろう。ELAは、預金流出が続くギリシャの銀行の命綱となってきた(図表2)。支援交渉の決裂で預金流出が加速する一方、ELAが停止されれば、ギリシャの銀行システムは混乱に陥り、資本規制の導入は不可避になる。
   図表1ギリシャ関連スケジュール
   図表2ギリシャ市中銀行の民間預金残高とギリシャ中央銀行の資金供給残高 
注2 (1)世帯内の成人(18〜59歳、学生を除く)1人につき、フルタイムで働いた場合の1年間の就業月数を12カ月とし、そのうち1世帯平均20%(2.4カ月)以下しか就業していない、(2)等価可処分所得の中央値の60%以下の収入しかない、(3) 1)家賃や公共料金、2)適度な暖房、3)予期せぬ出費、4)一日おきの肉や魚などのたんぱく質の摂取、5)年に一度の1週間のバカンス、6)自家用車、7)洗濯機、8)カラーテレビ、9)電話のうち4項目以上を賄えないという3つの条件のうち少なくとも1つにあてはまる。
注3 EUropean Stability Mechanism, “FAQ document on Greece”, Last updated: 30 June 2015による。IMFの融資残高は348億ユーロに上る。  
●ギリシャ危機とは? 原因やEU・日本への影響 2017/11   
2010年ギリシャ危機とは?
始まりはギリシャでの政権交代により、前政権の財政赤字隠しが発覚したことで、ギリシャ国債のデフォルトリスクが高まったことにあります。
2009年10月に総選挙にて誕生したPASOK(全ギリシャ社会主義運動 )新政権は前政権が公表した財政赤字の対GDP比を3,7%から、なんと12,7%と大幅に修正しました。しかも、この修正幅が他国ではほとんど見られないほど大きなものだったことから、ギリシャ政府に対する信頼はガタ落ちしたのです。
通常ユーロ参加国は、財政赤字額GDP比3%以内と政府債務残高GDP比60%以内という財政規律を順守する義務を負います。ギリシャの債務残高もGDPの113%にのぼっているので、ギリシャはどちらもクリアしていないことになります。
国債価格の急落、利回りの急騰
これを受けて、三大格付け会社がギリシャ国債を格下げしたため、デフォルトリスクが深刻化したのです。
2010年より、トロイカ(IMF、欧州委員会、欧州中央銀行の3機関)はギリシャに対して緊縮財政政策をとる条件で金銭支援を行っています。
2014年のギリシャの経済成長率はわずかながらもプラス成長しました。ユーロ圏離脱の騒ぎは沈静化し、ギリシャ経済は回復軌道にのったかのように思われたのです。
2015年ギリシャ危機とは?
しかし、事態は急変します。
2015年1月に緊縮財政政策拒否、EUとの再交渉を公約に掲げたシリザ(急進左派連合 )が政権の座についたことで、再び、ギリシャのデフォルトリスク、ユーロ圏離脱の懸念が浮上しました。
ギリシャでは皆保険制度がなく、貧困層は薬を買うこともできず、前政権の進める増税、公務員リストラ、年金減額などに対する反感が強まり、デモやストライキが頻発しました。失業率は、なんと5%から25%にも達したそうです。この国民の不満が反映された形で、シリザの指導者チプラス氏が首相となります。
2015年2月から始まったEUとチプラス首相との交渉は合意されないまま、その期限を過ぎてしまいました。金融支援は失効し、IMFに対する約16億ユーロ(約2200億円)の債務の返済もされず、ギリシャは事実上のデフォルト状態となりました。
緊縮政策のYES or NOを問う国民投票の実施
投票結果は「EU残留前提」で、緊縮NOの反対票が大きく上回り勝利したのです。 チプラス首相は同日夜から、緊縮反対の「民意」を盾にEUとの再協議を行いました。首相が、交渉期限を過ぎた土壇場で国民投票を実施したのは、EU側からの譲歩を引き出すための作戦だったとの憶測もあります。
EUとしてもギリシャの民意を無視するわけにもいかず、緊縮財政政策の見直しを行いました。その後、EUが第3次財政支援を行うことで交渉は妥結しました。
ギリシャ危機の原因は?
ギリシャ危機の一番の原因は財政赤字隠しからの大幅な引き上げ修正による信用不安ですが、一体なぜそれほどまでに財政赤字が膨れ上がったのでしょうか?
1 過剰な公的サービスによる財政支出の増加
ギリシャ危機からシリザ政権までの首相や主たる政治家はいわゆる名家出身です。 そうした政治家と大衆とのあいだには愕然とした差があり、それを埋めるために政党間の選挙争いは有権者へのサービス提供計画においてエスカレートします。
そのため、ギリシャの経済力を無視した年金制度をつくってしまったのです。また、政権の交代の度に自分たちの支持者を公務員として採用したため、ギリシャでは、4人に1人が公務員だと言われています。
2 税金の徴税不足による歳入減
脱税や税務署職員の汚職が蔓延しており、税金の回収能力が低いです。
3 EU内での競争力が弱い
国際的な金融・経済危機にギリシャは年産性向上のための構造改革を進んで取り入れたドイツ経済との競争に苦労し、ドイツからの輸入拡大で経常赤字を拡大させていきました。
ギリシャ危機の問題点とは?
1 ギリシャ国債のデフォルトリスク
ギリシャの国債はドイツやフランスなどの金融機関も保有しています。もし、デフォルトしてしまうと、国債を多く保有するEU諸国は巨額の損失を被ることになります。
2 ユーロ圏離脱問題
ギリシャが独自通貨を持てば金融政策を自由に行えるようになりますが、ハイパーインフレ、ユーロ建てのギリシャ国債を保有している国や金融機関にとってはデフォルトと計上されるため、マーケットは大混乱します。
また、スペイン・イタリア・ポルトガルなどにも危機が連鎖され、それらの国々の国債価格の大暴落が起こり、EU及び世界中を巻き込んだ金融危機が発生する可能性もあります。
ギリシャ自国では、対ユーロの為替相場が暴落し、規制により海外旅行を含めて、国際的な経済活動はきびしく制限されます。そのため、先の国民投票にも反映されるように、ギリシャ国民はユーロに留まりたいのです。
ギリシャはEUと対立するロシアと地理的に近いことから、ギリシャの孤立は地政学的リスクが生じると考えられています。
3 ギリシャとEUの長期的な対立
ギリシャ国債がデフォルトしても、ギリシャがユーロ圏を離脱しても、いずれにせよ、世界的な金融危機は避けられないでしょう。しかし、両者が対立したまま、一向に金融支援が決定されず、問題が長期化するのは、ギリシャとEU(特にドイツ)のそれぞれの要求の妥協点が見つからないからです。
ギリシャの要求は、緊縮財政政策の拒否、債務減免ですが、EUの要求はより一層の緊縮財政政策と真っ向から対立しています。
ギリシャ危機がEU・ヨーロッパ諸国に与えた影響とは?
第 2 のリーマンショックと恐れられたギリシャ危機ですが、 ギリシャの経済規模はユーロ圏のたった2%にすぎないのです。しかし、その不安がギリシャと同じようなユーロ圏の財政赤字国家に連鎖しました。
それら国家がよくニュースでも出ていたPIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字をとった造語です。)です。中でも、ユーロ圏 GDP の11%に達する大国スペインのデフォルトリスクはマーケットを動揺させるのに十分でした。
ドイツ、フランス、イギリスなどの大銀行は、2008年のリーマン・ショックでアメリカ銀行ほどのダメージを受けています。そのダメージを受けた金融機関はギリシャやスペインなどの国債を大量に購入していました。
現にギリシャ国債の75%、スペイン国債の50%はイギリスやドイツなどの大銀行が保有しています。ギリシャのデフォルトによって、大きな損失を被れば,スペインなどの国債を投げ売りして、バランスシートをカバーしなければならいない可能性もあります。
つまり、この危機がスペ インに波及してしまえば,ユーロ圏では支えることができないと市場で想起されたことで、ユーロ危機を連想させたのです。
ギリシャ危機は日本にも影響を与えた?
日本に影響を与えたとすると、それはギリシャ危機によるユーロ不安からの相対的な円高となります。日本は輸出企業が多いので、円高は商品の価格競争力を弱めめます。
実際のユーロ/円相場では2010年から2012年まで円高となっており、同年9月より円安へと転じています。
現在の日本では、経常収支の黒字も急速に減少しているため、 今後も日本国内で国債を賄えるのかという点では疑問的です。
もし、日本の国債が外貨建てで占められるようになれば、ギリシャのような深刻な事態になってしまうかもしれません。
ギリシャ危機のその後、現在のギリシャ経済は?
2017年、ギリシャ危機は再燃します。そして再び、グレグジットの可能性が浮上したのです。グレジットとは「ギリシャのユーロ圏離脱」を意味する造語で、Greece(グリース)とexit(エグジット)を組み合わせています。2016年のイギリスのEU離脱のブレグジットと同じように造語されました。
今夏、ギリシャが約70億ユーロの債務返済を控えている中、EUとIMFとギリシャの三者間が対立を続けているため、ギリシャは返済資金を確保できないのです。
それぞれの要求としては、EUは、IMFのギリシャ金融支援への復帰、IMFはギリシャへの緊縮財政政策と債務減免、ギリシャはこれ以上の緊縮財政政策の拒否となります。
2017年7月、ついにIMFは「予防的なスタンドバイ取り決め(SBA)」に基づく条件付きのギリシャ向け救済融資において、最大18億ドル(約2015億円)の融資枠を新たな発表しました。
ギリシャに支払いの見通しがなくても、IMFの参加は全ての当事者にとって有益だったこと、EUもギリシャに対して寛大な返済条件を提供するということでなんとか金融支援が決定し、ギリシャ発の金融危機は避けられました。
現在のギリシャ経済はGDPに関しては2012年ごろからか現在まで、大して変化はなく平行線をたどっていますが、経済成長に関しては2015年のマイナスから微少ではあるが、2016年にはプラスに転じています。
7年経っても解決しないギリシャ危機
約7年ほど続いたギリシャ危機ですが、現在でも、根本的な問題解決には至っていないようです。2016年イギリスのEU離脱によって引き起こされたブレグジットショックはマーケットを大混乱に陥れました。そのため、ギリシャのユーロ圏離脱に関しても、かなり慎重になっています。IMFの金融支援復帰で、ひとまず大規模な金融危機は避けられましたが、ギリシャ財政の早期回復を望むばかりです。 
 
 
 
 2018

 

●ギリシャ2018/1-6 
● 1
ギリシャ、中央政府の17年基礎的財政黒字が目標上回る 1/16
ギリシャ財務省が15日遅くに発表したデータによると、同国中央政府の2017年の基礎的財政収支は19億6000万ユーロの黒字となり、目標の8億7700万ユーロを大幅に上回った。歳出の抑制が目標達成につながった。
中央政府の財政黒字は社会保障関連機関や地方政府の予算が含まれない。欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)がギリシャ向け金融支援プログラムで基準にしている財政収支と算出方法が異なるが、財政状況の目安になる。
税収は488億ユーロと、目標を1億1000万ユーロ上回った。歳出は目標を17億5000万ユーロ下回る555億ユーロだった。
18年予算によると、ギリシャ政府は昨年の一般政府ベースの基礎的財政黒字の対国内総生産(GDP)比率を2.4%と見込んでいる。国際債権団が金融支援プログラムで設定した目標の1.75%を上回った。
 

 

● 4
ギリシャ国債、支援脱却後もECBは担保受け入れを=中銀総裁 4/19
ギリシャ中央銀行のストゥルナラス総裁は18日、ギリシャ国債の格付けが国際支援脱却後も投機的(ジャンク)等級にとどまった場合でも、引き続きオペ(公開市場操作)の担保として受け入れるよう欧州中央銀行(ECB)に求めた。
ECBはジャンク債を受け入れていないが、2016年にギリシャ国債を適格担保要件の適用除外とした。国際金融支援を受けていることが適用除外の条件の一つだが、ギリシャは8月に支援脱却が見込まれている。
ストゥルナラス氏はロンドン大学での講演で「ギリシャ国債の格付け改善が今後数カ月の主な課題だ。格上げされればギリシャは(支援)プログラム終了後に本格的な市場復帰が可能になる」と述べた。
そのために欧州諸国がこれまでに約束した中期的な債務負担軽減策を明確にし、ギリシャに残っている資本規制を支援終了後に撤廃すべきと指摘した。
支援脱却前に国債を発行して手元資金に余裕を持たせておく必要があると強調し、ECBがギリシャ国債をこれまで通り担保として受け入れれば助けになると語った。
「ECB(から借り入れ)とレポ取引の両方でギリシャ銀の資金調達コストが下がる」とし「国債の格付けが投資適格級を大幅に下回っている間は、適格担保要件の適用除外とすることが望ましい」と述べた。
● 6
ユーロ圏財務相、ギリシャに対する債務軽減策と新規融資で合意 6/22
ユーロ圏各国の財務相は22日、ギリシャに対する過去の融資の大半について、償還期限と返済猶予期間を10年延長する債務軽減策で合意した。また、支援プログラム終了後の資本市場復帰を支援するため、新たに150億ユーロを融資することでも合意した。
ギリシャは経済危機で資本市場へのアクセスを失い、2010年以降の3回の金融支援で基本的に財政を賄ってきた。
債権団から求められた数々の改革を行ったことでギリシャの経済は大いに改善したものの、資本市場に復帰するためには、財政が債務返済の負担によって再び破綻しないことを投資家に証明する必要がある。
当局者によると、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)で合意された債務軽減策には、第2次支援プログラムでギリシャが受けた融資の残高、約1300億ユーロの償還期限と返済猶予期間の10年延長が盛り込まれた。近い将来に返済期限が重なることを避けるのが狙い。
また、現行の第3次支援プログラムでの最後の融資資金としてギリシャに150億ユーロを拠出することも合意された。これにより、ギリシャの資本バッファーを拡大させ、8月20日に第3次支援プログラムが終了した後の同国の資本市場での資金調達を支援することを目指す。
ギリシャ政府は来年に国内総生産(GDP)の約7%に相当する額の返済期限を迎える。
償還期限の延期と返済猶予期間の延長は、ギリシャの債務返済は可能であると投資家に保証するための措置だ。
ただ、今回の債務軽減策は問題を先送りするだけで、ギリシャが国内の景気減速あるいはユーロ圏全体に対する市場の懸念の広がりの影響を受けやすい状況は続くとの見方もある。
ユーログループでは、ギリシャ債務の免除は検討されなかった。
また、ギリシャ政府にすでに合意した改革を撤回させないための金銭的なインセンティブを提供する案について合意がなされたかは不明。
ユーログループのセンテノ議長は記者会見で「8年の歳月を経てギリシャはようやく金融支援から脱却しつつある」と述べ、「ギリシャ債務の持続性を確保するために、債務軽減策が必要だった」と説明した。
ギリシャのツァカロトス財務相は、追加の債務軽減策により債務の持続性が確保され、資本市場に復帰する道が開けたとし「今回の合意にギリシャ政府は満足している」と語った。
ルメール仏財務相も「ギリシャの債務問題は過去のものだ」と指摘した。
ユーロ圏財務相は、ギリシャが債権団と合意した経済改革を計画通り実行した場合、2022年まで半年ごとに6億ユーロを支払うことでも合意した。これは、ギリシャが改革を続けるインセンティブになるとユーロ圏財務相は考えている。資金は、ユーロ圏の各国中銀が保有し、今後4年で段階的に償還を迎えるギリシャ国債の利益で賄う。
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、ギリシャに対する債務軽減策で合意したことについて、中期的な債務持続性の改善につながるとして歓迎した一方、長期的な持続性を巡っては疑念が残ると述べた。
8月に終了する第3次支援プログラムについて、残りの期間がわずかとなっているためIMFは参加しないとし、早期に債務の持続性を精査すると言明。ギリシャの債務の長期的な持続性を巡り、IMFは引き続き疑念を抱いているとした。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、債務負担軽減策により、ギリシャの中期的な債務持続性が改善すると評価した。
ギリシャの格付けを「B+」に引き上げ、債務軽減策受け=S&P 6/26
格付け会社S&Pグローバル・レーティングは、ギリシャの外貨建ておよび現地通貨建て長期債務格付けを「B」から「Bプラス」に引き上げた。ユーロ圏が同国に対する融資や債務軽減策で合意したことを受け、債務リスクが低下したと判断した。
ユーロ圏各国の財務相は22日、ギリシャに対する過去の融資の大半について、償還期限と返済猶予期間を10年延長する債務軽減策で合意した。また、支援プログラム終了後の資本市場復帰を支援するため、新たに150億ユーロを融資することでも合意した。
S&Pはこれについて「向こう2年間のソブリン債務返済リスクが大幅に低下する」と評価した。
また、ギリシャの銀行セクターは不良債権の削減で前進していると指摘し、これが成長に寄与するとの見方を示した。
見通しは「ポジティブ」から「安定的」に修正し、信用力に対するリスクのバランスを反映していると説明した。 
●忘れ去られたギリシャショックがこのままでは再燃する理由 2018/1

 

忘れ去られたギリシャ債務危機 世界がいま注視すべきリスクとは?
2010年、15年に世界の金融市場に激震を起こしたギリシャ債務問題。当時、メディアでは「ギリシャショック」という言葉が連日のように繰り返され、日本の市場関係者やビジネスパーソンも大きな不安に襲われた。
ところが、あれだけ騒がれたにもかかわらず、ギリシャ危機の後日談はめっきり語られなくなった。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないが、ギリシャが抱える構造問題は最悪期を脱したからといって、決して目を離していいものではない。世界にとって、長期的に動向を注視すべき問題だ。いったいギリシャは今、どのような状況になっているのか。現状とそこにある課題を改めて分析しよう。
統計を見る限り、ギリシャの景気は非常にスローなテンポだが持ち直しており、雇用情勢も最悪期よりは改善している。金融市場は落ち着いており、政府は昨年7月に3年ぶりとなる起債を行い、30億ユーロの5年物国債を発行した。金利も低下しており、12月初旬には10年物国債流通利回りが8年ぶりに5%を下回った。今年も市況次第ではあるが、複数回の起債が予定されている。
筆者は昨年10月、約2年半ぶりにアテネを訪問する機会を得た。実際に街中を見て回っても、前回訪問時(15年5月)よりも消費や建築は回っているような印象を受けた。また現地の銀行のアナリストやシンクタンクのエコノミストらにヒアリングを行い、ギリシャ経済に対する評価を聞いたが、どの有識者も「ギリシャ経済は最悪期を脱した」という見解を示していた。
ただ同時に強調されたのが、今年8月にも終了が予定されている欧州連合(EU)からの第三次金融支援以降も、EUや国際通貨基金(IMF)から何らかのサポートが得られない限り、ギリシャの財政は再び破綻する恐れがあるということだった。現在実施されている第三次金融支援は、15年8月の合意によるものであり、期間3年、最大860億ユーロというパッケージに基づいている。
これまでギリシャの債務問題は、最終的には何らかの合意に達するものの、それまでのプロセスは一筋縄ではいかず、ギリシャだけではなく欧州、そして世界の金融市場を混乱させてきた。第三次金融支援の終了を受けて、そうした状況が今年半ばにも再び生じることへの懸念が強まっているのである。
ここで、これまでのギリシャ債務問題の経緯を振り返っておこう。
(1)09年10月にギリシャによる財政統計の改ざんが発覚、これを受けて債務問題が顕在化。長期金利が上昇するなど経済への悪影響が深刻に。
(2)10年5月に最初の金融支援(第一次金融支援)が承認されたが、投資家の不安は止まず長期金利が急騰。
(3)12年3月に二度目の金融支援(第二次金融支援)が承認され、民間投資家による債務再編(PSI)などを経て、債務問題は小康状態に。
(4)15年1月に反緊縮を謳う急進左派連合(SYRIZA)政権が成立して債務問題が再燃、同年6月にはIMFからの借入返済が停止して情勢が緊迫化。
(5)15年8月にEUによる三度目の金融支援が承認され、情勢が安定。
次期ギリシャ支援のハードルに不安定なドイツ政治の現状
筆者がアテネを訪問していた昨秋、同地では、EUによるギリシャ支援の是非を決めるユーログループ(ユーロ圏財務相会合)で強い影響力を持つドイツの次期財務相ポストに一体誰が就くのかということが、大きな話題になっていた。そこで、今後も対ギリシャ支援の動向に大きな影響を与えると考えられるドイツで現在生じている政治不安に、話を転じてみたい。
ドイツのメルケル首相は当時、昨年9月の総選挙で自らが率いる与党、キリスト教民主同盟(CDU)と姉妹政党の同社会同盟(CSU)が議席を減らしたことを受けて、自由主義政党である自由民主党(FDP)と環境主義政党である同盟90/緑の党(G90/Grune)との連立(ジャマイカ連立)を模索していた。そして、長らく財務相としてメルケル首相を支えてきたCDUのショイブレ氏が連邦議会(下院)議長に転出したこともあり、次期財務相のポストはFDPから選出されることがほぼ確実な情勢であった。
自由主義政党であるFDPは、いわゆる「小さな政府」の志向が強い。そのため、CDU/CSU以上に健全財政を重視する。そして、EU統合深化の流れからも距離を置いている。加えてFDPは、5年ぶりの国政復帰となるため、内外で存在感を示そうと躍起である。そのFDPから次期財務相が選ばれることで、ユーログループでの対ギリシャ支援協議が難航するかもしれないという警戒感が、ギリシャ側で高まっていた。
しかしFDPは、G90/Gruneとの意見対立を理由に、昨年11月、連立協議から脱退した。メルケル首相は総選挙前までパートナーであった社会民主党(SPD)に対して大連立の継続を打診し、SPDのシュルツ党首も12月初旬の党大会を経て交渉のテーブルに着くことを正式に表明した。現状、新政権は大連立となる公算が大きいが、組閣協議は難航しており、ドイツの政治空白は春先以降まで続く見込みである。
FDPからドイツの新財務相が選ばれることはまずなくなったものの、それがギリシャにとって望ましいことかというと、必ずしもそうとは言えない。大連立が成立しても、ドイツ政治は内向き化を強めることになるためだ。
先の総選挙の結果、CDU/CSUとSPDはともに議席を大幅に減らした。一方で、有権者の票はFDPや民族主義政党である「ドイツのための選択肢(AfD)」に流れた。FDPやAfDの台頭は、これまでCDU/CSUとSPDが推進してきたEU政策や移民政策に対して、有権者の不満が溜まっていることを意味している。このような民意の手前、ドイツの新政権はギリシャに対して今までよりも厳しい立場をとらざるを得なくなるだろう。
今夏にも再燃が予想されるギリシャの債務問題の扱いは、ユーログループにとって最重要課題の1つである。そのユーログループでは、ドイツのショイブレ氏に加えて、長らく議長を務めたオランダのデイセルブルム財務相が引退する(後任議長はポルトガルのセンテノ財務相)など、年明けから執行体制が大きく変化している。こうした中で、内向き志向を強めると考えられるドイツ新政権の財務相の言動が、次期の対ギリシャ支援協議を取りまとめる上でのハードルになる可能性は高いと考えられる。
リスケによる債務再編なら危機再燃を回避できる理由
域内に様々な政治問題を抱えていることもあり、EUはギリシャの債務問題について軟着陸を図りたいところだろう。ただすでに三度の金融支援で2000億ユーロ(約27兆円)近い融資をしているEUにとって、追加で資金を提供することは容易な選択肢ではない。IMFはこれまでの借入について債務免除を行うべきだと提言しているが、それを行うと支援国の納税者負担が直ちに確定することになるため、先に述べた事情を抱えるドイツなどは真っ向から反対すると考えられる。
最も現実的な支援手段となるのは、返済延期や利子減免といったリスケジュール(リスケ)による債務再編である。三度の金融支援を受けた結果、ギリシャの公的債務残高の大半がEUとIMFからの借入となっている。この借入に対する返済や利払いの負担が軽減されれば、ギリシャ財政は拡大の余地が広がり、景気にとってプラスに働く。
政治的にも、リスケによる債務再編という選択肢はギリシャとEUの双方にとって好都合だ。ギリシャはリスケによる債務再編を勝ち取れば、名実ともに金融支援から「卒業」することができる。今年のいずれかのタイミングで解散総選挙が行われるという観測がくすぶる中で、ギリシャのチプラス首相としては、金融支援からの卒業を実績として大々的にアピールしたいところだろう。
またEU側にとっても、追加融資や債務免除のように実際の資金負担を伴わない支援であるため、各国の有権者に対する政治的な説明責任がつきやすいというメリットがある。特にユーログループに大きな影響力を持つ一方で、内向き志向を強めているドイツにとっても、この選択肢であれば歩み寄る余地がある。
こうしたことから、リスケジュールによる債務再編を軸に、第三次金融支援後の支援の在り方が模索されることになると考えられる。
債務問題の交渉次第では欧州金融市場が再び動揺か
ギリシャの債務問題をめぐる交渉は、これまでも一筋縄ではいかなかった。今回もまた、その行方次第では欧州の金融市場が動揺し、株安やユーロ安が進むと考えられる。
折しも欧州では、年明けから欧州中央銀行(ECB)が月次の資産買い取り額を600億ユーロから300億ユーロに減額するなど量的緩和の段階的縮小(テーパリング)に取り組み、超低金利環境からの脱却が模索されている。ドイツを中心に資産バブルへの警戒感もくすぶる中で、ギリシャの問題が思わぬ形で欧州の金融市場をクラッシュさせないか、当面注視する必要があるだろう。 
●2018年、ギリシャ債務問題の再燃に注意 2018/1
すでに記憶が薄れている人も多いだろうが、今から約3年前、ギリシャ情勢は非常に緊迫化していたことを覚えているだろうか。つまり、2015年1月のギリシャ総選挙では、緊縮財政を求めるEUに対して、「反緊縮」を唱える民族主義政党、急進左派連合(SYRIZA)が政権を奪取、アレクシス・チプラス党首が首相職の座に就いた時のことである。
2018年は「第3次金融支援」が終了する年
今一度、簡単に振り返っておこう。「国家的な粉飾決算」の発覚後、一段の緊縮強化を求める欧州連合(EU)との関係が悪化する中、2015年6月末には国際通貨基金(IMF)からの借り入れに対する返済が滞り、「第2次金融支援」がストップ(第1次支援は2010年に実施)した。
同年7月5日、チプラス首相は緊縮継続の是非を問う国民投票を実施。反対が61.3%、賛成が38.7%という結果がもたらされた。事態の緊迫化を受けて欧州の金融市場が不安定となる中で、ユーロ圏首脳は会談を開き、ギリシャに対する「第3次金融支援」の実施で合意に達した。そして同年8月14日、EUが欧州安定メカニズム(ESM)に基づく「期間3年、最大で850億ユーロ(約12兆円)」の支援パッケージの実施を正式に決定したことで、事態はようやく落ち着きを見せた。
その後ギリシャの債務問題は、第3次金融支援が曲がりなりにも継続されていることから、比較的落ち着いていた。その第3次金融支援が、2018年の夏にも終了することになる。言い換えれば、ギリシャの債務問題は2018年の前半にも再燃し、欧州の金融市場を圧迫する可能性がある、と考えられるのである。
さて、ギリシャ経済は2013年に入り下げ止まり、回復に向かうかに見えたが、足元にかけてはゼロ成長が常態化している。ひとことで言えば、輸出を中心に持ち直しの動きが見られるものの、その輸出の「景気けん引力」がそもそも乏しいため、外需の好調が内需に反映されない状態が続いている。
いわゆる「双子の赤字(貿易赤字と財政赤字)」に関してはすでに解消されており、フロー面での調整は一服している。一方で、「ストック面」での調整は停滞を余儀なくされている。とりわけ政府の借金を意味する公的債務残高の削減は進んでおらず、その規模は2017年6月末時点で3100億ユーロ(約42兆円)と、名目GDPの175%に相当する。経済のゼロ成長が常態化している中では、政府の借金など返せるわけがない。
結局、ギリシャ経済は、身の丈以上の借金を負ったために正常な経済活動が営めない、「支払い能力(ソルベンシー)危機」の状態が今も続いている。こうした中では、借金の返済負担を政策的に軽減して財政出動の余地を広げていくことこそが、事態の改善が見込まれる唯一の手段と言える。
幸か不幸か、これまでの金融支援の結果、ギリシャでは政府債務の大部分がEUとIMF(国際通貨基金)からの借入となっている。当事者間の合意さえ成立すれば、債務の返済負担に対する救済措置が成立する見込みがあるということでもある。
「リスケ」がメインシナリオだが…
ギリシャの財政状況を考えると、「第3次金融支援」が終了した後も、何らかの金融支援が必要不可欠となる。
最も実現可能性が高い政策オプションは、利子減免や支払い延期などといった「リスケジュール」による債務再編だろう。この手段であれば、ギリシャ側にとっては負担の大幅な軽減につながるし、EU側にとっては損失の顕在化も避けられる。
政治的にも、景気底打ちと「支援の卒業」を実績としたいギリシャのチプラス首相にとって、また支援疲れの世論に配慮したいEUの指導者にとって好都合である。これがメインシナリオとなりそうだ。
EUでは、カタルーニャの独立問題に揺れるスペインや、2018年5月までに総選挙を控えるイタリア、2019年3月までをEU離脱の期限としている英国など問題が山積している。それらを抱えながら、ギリシャの債務問題が再燃すれば、欧州各国における反EUの機運を刺激しかねない。EUとしては、2018年いずれかのタイミングで再燃する可能性のあるギリシャ債務問題は、何としても軟着陸させたい問題だ。
だが、ギリシャ債務問題は、その節目ごとに混乱が生じ、欧州の金融市場を不安定化させてきたことも事実だ。第3次金融支援終了後の支援の在り方を巡る交渉もまた、一筋縄ではいかないと考えられる。実は、ある大きな問題が存在するのだ。
その懸念事項とは、ギリシャ債務問題の解決に努めてきたEU側のキーパーソンが続々と引退することだ。
2017年9月のドイツの総選挙の結果、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)で圧倒的な存在感を示したウォルフガング・ショイブレ氏が財務相を勇退し、下院議長に転出した。また2018年1月には、オランダ財務相のイェルーン・ダイセルブルーム氏がユーログループ議長を任期満了で引退する予定だ。欧州委員長を務めるジャン=クロード・ユンケル氏やECB(欧州中央銀行)のマリオ・ドラギ総裁も、2019年の任期切れで退任することになる。
先の総選挙で与党が議席を減らしたことを受けて、ドイツのアンゲラ・メルケル首相の求心力も低下した。その結果、今後のEU統合をけん引すると期待されたフランスのエマニュエル・マクロン大統領との「共同リーダーシップ」(メルクロン)に対する期待もやや萎んでいる。
EU側のキーパーソンたちがこのように、世代交代を迎える中、ギリシャ債務問題を最前線で経験したことがない政治家達が、第3次金融支援終了後のギリシャを適切にマネジメントできるか、まったくもって未知数である。
再び、金融市場の不安定要因に?
一方、ギリシャ側でも、チプラス首相が2018年中に解散総選挙を実施するという観測が高まっている。与党SYRIZAの支持率は低迷しており、次期総選挙では最大野党の中道右派、新民主主義党(ND)を首班とする連立内閣が成立する公算が大きい。いまのところ、チプラス首相には、敢えて「政権を早く譲り渡す」という戦略をとることで、野党として党勢の回復に努めたいという思惑があるようだ。場合によっては、第3次金融支援後の金融支援の交渉そのものを、新政権に丸投げするリスクシナリオも考えられる。
繰り返しになるが、現時点では、リスケジュールによる債務再編でEUとギリシャは最終的には合意に達すると考えられるものの、交渉は一筋縄ではないかないだろう。当然、欧州や世界の金融市場にとっては不安定要因となり、リスクオフの流れを受けて株安やユーロ安などになる可能性がある。確率は高くないものの、交渉が決裂し、ギリシャ債務問題が本格的に再燃するような事態になれば、金融市場へのショックはより大きくなる。
EUはギリシャ債務問題に端を発したユーロ危機を受けさまざまな金融安定化のためのセーフティネットを整備してきた。象徴的な存在がESM(欧州安定メカニズム)だが、「欧州版IMF」への機能拡大構想に前進が見られず、また反EUのうねりのなかで、その機動力が低下していないか心配だ。欧州中央銀行(ECB)や米国が量的緩和プログラムの段階的縮小(テーパリング)に着手するなど、世界の金融環境が変わりつつある時、ギリシャ債務問題が相場を腰折れさせる引き金になるのか、注意が必要だ。 
●東京五輪前に「世界同時不況」がやってくる理由 2018/4 
好景気が続き、順調な成長が見込まれている世界経済。だが、決して楽観視することはできない。経済アナリストの中原圭介氏は、2019〜20年にはアメリカが景気後退に陥り、その悪影響が全世界へ波及する可能性があると指摘する。その引き金となるのは、すでにリーマン・ショック時を上回り、崩壊寸前にまで膨らんでしまったアメリカ人の「借金バブル」だという…。
たしかに今は堅調ですが
これからの世界経済の大きな流れについて、読者のみなさんはどのようにお考えでしょうか。アメリカであれ、欧州であれ、日本であれ、圧倒的多数の経済の専門家たちは、「世界経済の拡大基調は、2018〜2019年も続くだろう」という見解を示しています。
そのような専門家の見解を聞いている市井の人々のなかには、「世界経済は今後も順調に成長していくだろう」と考えている方々がけっこう多いのではないでしょうか。
たしかに、世界経済は今のところ、堅調に推移しています。国際通貨基金(IMF)や経済協力開発機構(OECD)が2017年以降になって、世界経済の見通しについて上方修正を繰り返していますが、そんないまの世界の好景気を牽引しているのが、アメリカ人の旺盛な消費です。
アメリカの個人消費が伸びている要因は、主にふたつあると考えられます。
ひとつめの要因というのは、原油安による物価の下落にあります。あまり知られていないことですが、原油安の影響がもっとも色濃く出た2015年には、アメリカの消費者物価はわずか0.1%の上昇にとどまり、卸売物価にいたってはマイナス0.9%とデフレの状況にあったのです。
実際のところ、2015年のアメリカの家計所得の中央値は5万6516ドルと5.2%増加し、その増加率は1967年の調査開始以来で最大となっています。これは、物価下落によって実質的な所得が上がり、アメリカ国民の購買力が高まっていた証左であるといえるでしょう。
不況とデフレに因果関係はありません
ここで、経済学者も政治家もメディアも間違っているのは、不況とデフレに因果関係があると考えていることです。
アメリカがこれまでインフレであったのは、エネルギー価格の高騰が主因です。2000年以降のエネルギー価格の値上がりは、本来は低インフレでもよいはずのアメリカに悪性のインフレをもたらし、アメリカ国民の生活水準を著しく悪化させてきたのです。
経済を見るうえで大事な視点は、生産設備の供給過剰によってもたらされる製品価格の下落と、エネルギーの供給過剰によってもたらされる物価下落を、明確に分けて考えなければならないということです。
歴史を振り返ると、設備投資の供給過剰による物価下落については、企業収益の悪化を通じて、それとほぼ同時に労働者の賃金も下がっていきますし、失業者も増えていきます。その挙げ句には、消費も冷え込んでいきます。
これに対して、エネルギーの供給過剰による物価下落については、たとえ名目賃金が微増であったとしても、物価の下落が進む分には国民生活に余裕ができ、むしろ消費は拡大することが期待できるという効果があります。
2014年10月から原油価格が暴落したアメリカでは、歴史にならってまさに物価低迷に起因する消費拡大が起こっていたのです。エネルギー価格の下落による物価の低迷は、産油国以外の人々の生活にとって購買力の高まりをもたらしていたというわけです。
借金を借金とも思わない国民性
アメリカの個人消費を伸ばしたふたつめの要因には、史上最低の水準で推移する低金利があげられます。
モノをローンで買うのが一般的なアメリカ国民にとって、金利が上がるというのはローンの支払総額(借金)が増えることを意味します。とくに自動車や住宅のように大きな買い物をする場合、ローン金利が上がる前に買っておきたいと考えるのは、人間の心理として万国共通のことでしょう。
アメリカ人は「借金」のことを「レバレッジ」という言葉で表現しています。レバレッジという言葉は、日本人のいう借金とは少し意味合いが異なり、手持ちの資金の何倍もの力で行える取引のことを指しますので、いかにも前向きな感じがします。
彼らは借金をレバレッジと捉えることによって、借金を大胆にできる、あるいは借金を借金とも思わないような国民性があるのでしょう。
住宅バブルが崩壊する以前、アメリカの家計では住宅を全額借金で購入し、その住宅を担保に再び借金をして自動車をはじめ、様々なモノを購入するという消費パターンが一般的でした。
さすがにバブル崩壊後は、アメリカの家計も借金返済を優先しなければならない時期もありましたが、今となっては史上最低の金利水準が家計の借金依存に再び拍車をかける状況になっているのです。
ですから、住宅バブル時の勢いはないとしても、アメリカの消費はこれからも増加し続けるだろうと見られています。
2018年1月に公表されたIMFの経済見通しでは、2017年の世界経済の成長率を3.7%と前回の見通し(2017年10月)から上方修正し、2018年と2019年の成長率も3.9%まで高まっていくだろうと予測しています。
こうした経済予測が強い後押しとなり、実に多くの専門家たちが世界経済の拡大基調は変わらないという見解を堅持し続けているのです。
リーマン・ショック時を上回るアメリカ人のローン
しかしながら、私が現状をどのように認識しているかというと、2020年くらいまでの世界経済の先行きを考えた時に、好況から不況に転じる本質的な問題が、経済の深層部で不均衡として蓄積していて、いつ激震が起きてもおかしくない状況にあると考えます。
具体的にはどういうことかというと、リーマン・ショック後の世界的な金融緩和を通して、先進国・新興国を問わず世界中の人々の借金が増えすぎてしまっている事実を重く見るべきなのです。
まずその筆頭として挙げたいのが、アメリカの家計債務です。ニューヨーク連邦準備銀行の調査によれば、アメリカの家計債務は2017年12月末時点で13兆1000億ドル(当時のドル円相場で換算すると約1410兆円)にまで膨らんでしまっているということです。
2017年3月末に12兆7300億ドルにまで膨らみ、サブプライムローン問題やリーマン・ショックが引き金となって世界金融危機が起こった2008年9月末の12兆6800億ドルを上回って以来、過去最高の水準を更新し続けているのです。
世界金融危機の発端となった住宅ローンがピーク時の残高に接近しているのに加えて、自動車ローン、クレジットカードローン、学生ローンなどが増え続けていて、中間層以下の世帯では2014年以降、借金に借金を重ねる消費が横行しているという現状が見て取れるというわけです。
景気後退に陥るリスクとしては十分すぎる
それぞれのローンのなかでも、延滞率の上昇が懸念されるのが自動車ローンです。
アメリカの新車販売台数は2016年に過去最高を更新し、2017年は若干の減少をしたものの、今でも過去最高の水準で推移していることには変わりがありません。自動車ローンの残高は2015年6月末に初めて1兆ドルを突破してから、2017年12月末には1兆2210億ドルまで膨らんでいるのです。
学生ローンも延滞率の上昇が懸念されています。2017年12月末の学生ローンの残高は1兆3780億ドルにまで増加し、2008年と比べると2倍以上にも膨らんでしまっているのです。
クレジットカードローンの延滞率にも注意が必要です。原油安によってアメリカ人の実質所得が大きく伸びた2015年を起点として、消費を謳歌する国民性が戻ってきているせいか、近年の増加率は自動車ローンや学生ローンと匹敵するまでになってきているのです。
住宅ローンは、サブプライムローン問題が世界金融危機の発端となったという反省から、審査がかなり厳しくなり、2017年12月末には8兆8820億ドルと過去最高(2008年9月末の9兆2940億ドル)の水準に肉薄していますが、延滞率は1.4%程度と住宅バブル崩壊前の水準を保っています。
家計債務の7割近くを住宅ローンが占めているため、住宅ローンの延滞率が高まらなければ、金融危機が起こるということはありません。
しかしながら、家計債務に占める自動車ローン、クレジットカードローン、学生ローンの比率が上昇傾向にあるなかで、これら3つのローンの延滞率が上昇していくことになれば、景気後退に陥るリスクとしては十分すぎるといえるでしょう。
大きく様変わりする日本の近未来
なぜなら、ひとたび家計が借金に耐え切れず延滞率が上昇し始めると、消費が減少に転じることによって景気は失速するようになっていきます。
住宅バブル崩壊に伴う世界金融危機の教訓から、住宅ローンの残高はそれほど増えていないとしても、自動車ローンやクレジットカードローンなどでは、身の丈に合わない消費が何をもたらすのかという教訓がまったく生かされていなかったというわけです。
おそらくは、金利の上昇が引き金になって、家計債務の延滞率が上昇すると同時に消費が減少するというリスクが顕在化し、借金経済を回し続けることが不可能な状況になっていくでしょう。
借金で経済が回っているうちは良いのですが、返済が滞って貸し剝がしされたり、新たな融資が手控えられたりした途端に景気の減速や後退が始まることは、誰の目から見ても明らかなことです。
非常に判断が難しいのは、「アメリカでいつ景気後退が始まるのか」という時期がわからないということです。
たしかに、1年後や2年後の金利の動向が読めないために、2018年にアメリカの景気が後退するかどうかはわかりません。ただし、2018年に景気が後退しなければ、2019年にはいっそう景気が後退する確率が高まっていくということだけはいえるでしょう。
ですから私は、2020年前後までの世界経済を見通した時に、楽観的な見通しや明るい展望を決して持つことができません。
詳細については、大きく様変わりしようとしている日本の近未来を描いた『日本の国難――2020年からの賃金・雇用・企業』に譲りますが、2019〜2020年はアメリカが景気後退に陥る局面を迎え、その悪影響が日本や中国、アジア、欧州にも行きわたるのではないかと予測しています。
東京オリンピックが開催される2020年以降、ただでさえ日本の人口減少が深刻化していくというのに、さらにそのうえ、アメリカ発の景気後退まで襲いかかってきたら、可処分所得の減少や失業者の増加はもちろんのこと、AIやITの分野で欧米に後れをとっている日本の大企業の淘汰・再編も免れないでしょう。
まさに、「国難」ともいえる状況に、私たちはどう立ち向かえばいいのか。最悪の事態に備えるためにも、いまは現実を直視し、冷静に先を見据えることが重要だと私は考えます。 
●銀行を救うため、日銀が9月に「量的緩和終了」を発表する可能性 2018/6 
ひとり現状維持の日銀が追っかける理由
6月12日から19日、先進国の中央銀行の金融政策決定会合が集中する「金融政策ウィーク」となった。
結果は、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は予想通り利上げし、欧州中央銀行 (ECB)も、今年末での量的緩和政策終了を決定した。一方、日本銀行は現状維持であった。
今後もFRBは金利を上げ続ける。ECBも量的緩和を終了する。これにはドイツで賃金が上昇し、一方、足元の景気減速は一時的という判断がある。この点では、ECBは後段で説明する中銀の”信念”に基づいて仕事をしたのである。
重要な理由があった。イタリアのポピュリズム政権誕生である。新政権が、ECBが保有するイタリア国債を債務免除にしろとか、疑似通貨(無利子の短期証券:代用通貨)を発行したいとか訳の分からないことを言い始めたからである。
まさにECBおよび中央銀行にとっての危機である。そのような甘えを断ち切るために、同じイタリア人のドラキや南欧の中銀総裁たちが、”信念”に基づき量的緩和終了を強引にすすめたのである。
筆者はさすがだと思った。政策金利については、来年夏までは現在の水準を維持することになる。
日本では政治的な圧力もあり、なかなか金利を平常化できない。政策協調を旨とする先進国の中央銀行間の“協定”も守れていない。しかし、政策転換の兆候は出始めている。
まず物価目標の2%の「達成時期」を外した。時期を外した目標に意味があるのであろうか。政府の年金などの社会保証の計算に物価上昇率1%とおいている。日本銀行のレポートでもそもそも景気が良くならないのだから、物価は上がらない、という趣旨であった。
さらに、最近、黒田総裁が盛んに使うのが「リバーサルレート」という言葉である。金利というモノは下げれば下げるほど、景気は良くなるはずである。しかし、副作用として銀行の収益を悪化させ、逆に景気が悪くなるというモノでもある。
金融庁のレポートでも、「地方銀行のほとんどは営業赤字」という趣旨のレポートも出されている。
金融政策の変更には納得性が必要になる。
日本では低賃金の労働者の存在、新興国の安価な製品、ネット通販の普及により、もう物価が上がる余地は少なく、一方、この「リバーサルレート」の副作用を強調し、「銀行救済」のために量的緩和終了を実行するというのが今回の論理である。
ECBが中央銀行の意地を見せており、日本銀行もせざるをえない。
機は熟した。少なくともFRBが金利を上げている間に日銀も金利を上げなければならない。言い換えれば、日銀だけが金利を上げると日本の“トラウマ”である「円高」の可能性が上昇する。これは避けたい。
そこで筆者は、次のFRBの“大きい会議”の今年9月に合わせ、日本銀行は「今年度末」に量的緩和の縮小を発表する可能性が高いと考える。
そして、ECBと合わせ「来年夏」にはマイナス金利の解除をしなければ、FRBの利上げが終わってしまうか可能性がある。
ちなみに今回のFRBの利上げについて、日本の報道の解説では「3月ぶり」とか書かれている文面を目にすることがよくあるが、なんともである。
FRBの公開市場委員会(FOMC、日銀の政策決定会合に相当)は年に8回ある。2カ月続きの大きい会議と小さい会議があって、このうち後半の方(3月、6月、9月、12月)の大きい会議でしか、金融政策の変更はしない。やっても年4回。「3ヵ月ぶり」ではなく、「連続して」が正しい。
それが中央銀行の仕事だから
金融政策を司る中央銀行の業務には、机上では分からない、現場には現場の理論がある。
しかも、金融論の教科書では、各国の中央銀行を同じように十把一絡げに書いてあるが、そうではない。各国の中央銀行ごとに性質が全くといっていいほど違うのである。 
金融における誤解で一番多いのが中央銀行の仕事である。銀行の銀行として「決済システム」(日本であれば日銀ネット)の整備は大前提である。そして、金融政策については、端的にいってしまえば「金利を上げる」ことが仕事なのである。
景気というものは、人間のカラダと一緒で調子がいいときもあるし、悪いときもある。その景気が悪くなった時に金利を下げれるように、平時の時に“できるだけ”金利を上げておくのが本当の仕事なのである。
これを「平常化」という。そこを分かっていない方が多い。日本銀行を含め、中央銀行の金利の引き上げを「勝ち」、引き下げを「負け」という。
もっといえば、金融、特に国際金融の世界は、教科書に書いていない協定、つまり握りが多数存在する。そして、それは様々な金融危機を経て、出来上がってきたものである。
たとえば、1987年にブラックマンデーが発生した。当時は先進国として米国・日本・西ドイツ(!)が世界の経済を牽引するという「機関車政策」なるものを行っていた。そして金利も一緒に下げていった。このことも日本のバブルの原因の1つであった。
何度か書いてきたが、両大戦の後、ハイパーインフレを経験したドイツは、本能的にインフレを嫌悪している。87年も西ドイツは、インフレ率が上昇したため、“いきなり”利上げをした。
その結果、米国ニューヨークの株式市場からドイツを始めとした欧州に向かって資金が急に流れた。これが87年のニューヨーク株価大暴落「ブラックマンデー」の構造である。この反省から、それ以降、「先進国は金融政策を協調する」ことになったのである。
2000年代になって、世界経済が「平常状態」になると、先進国中央銀行は協調して一斉に金利をあげた。米国FRBは5.25%まであげて、不動産バブルの崩壊まで続いた。
日本銀行も福井総裁の時に当時すでに導入していた量的緩和を終了し、ゼロ金利を解除した。これは先進国の中央銀行として当然の仕事であった。
最近も、米国FRBを始めとして、欧州、英国、カナダを始めとした先進国が、FRBに協調し、利上げないしは、量的緩和の縮小に動いている。
また注意したいのは、各国のベースとなっているインフレ率の違いである。
米国は個人消費支出(PCE)物価指数を使用する。そのためインフレ率も微妙に違う。さらに物価上昇のプロセスとして賃金上昇率が2.7%に達している。
これらのことを総合し、今年下期に物価上昇率2.1%を超えてくる。そのため、今年は4回金利を上げ、来年は3回、再来年は1回と考えている。これは自動的なプロセスなのである。
しかしながら、一方で、15年末から始まった引締め局面も2年半に達し、打ち止め観測も浮上しているのも事実である。政策金利の目標は3%弱、つまりあと4回とも考えている。
日銀の正常化政策はすでに始まっている
まさに最近でた「コーポレートガバナンスコード」にあるように、財務省と日本銀行の日本国債の持ち合いは“自分も”出来るだけ解消しなければならない。
日本の当局にとって、次なる目標は、国債を海外に売ることである。日本国債の金利は低すぎる。
以前、財務省の海外IRに同行したことがあったが、各国中銀等は購入するには、長期金利、つまり指標となる10年物国債利回りが1%は必要とのことであった。
現在は0%の日本の長期金利を上げるためにも、短期金利である政策金利の利上げが必要なのである。
日本の長期国債の国外投資家保有比率は足元約6%である。米国や欧州の場合、国外が約半分を保有している。海外保有比率が上昇するということは、現在の国債(財政)が失ったバロメータ機能が復活することも想定でき、これは自浄機能となる。
日本銀行と金融庁は関係者と協力し国債のメカニズムも改革している。決済期間を欧米並みのT+1(約定日の翌営業日決済)とした。
現在でも、国際証券決済機関ユーロクリア経由で海外投資家も決済できる。さらに、国債の決済システム「日銀ネット」の海外接続「グローバルアクセス」を推進して、さらに利便性を高めようとしている。
これら一連の日本銀行の行動は、「異次元」量的緩和後の経済正常化へ向けてのものなのである。つまり、ポスト量的緩和に向け、動きが始まっているのである。 

 

●ギリシャ2018/7- 
● 7
ギリシャ財務相、自力資金調達に自信 長期財政目標は見直しも 7/5
ギリシャのチャカロトス財務相はロイターとのインタビューに応じ、先に同意を得た債務軽減策の下、同国は自力での資金調達が可能とする一方、長期的な財政目標については将来的に見直しもあり得るとの考えを示した。
ユーロ圏財務相は6月、ギリシャに対する過去の融資の大半について、償還期限と返済猶予期間を10年延長する債務軽減策で合意した。また、8月20日に期限を迎える第3次支援プログラム終了後の資本市場復帰を支援するため、新たに150億ユーロを融資することでも合意した。
ギリシャが抱える債務は対国内総生産(GDP)比で約180%と、ユーロ圏加盟国の中で最も高い。
長期的な市場アクセスと債務返済を維持するため、今後新たな債務軽減策は必要かとの問いに対し、チャカロトス財務相は、必要に応じた追加策に関し、2017年にユーロ圏首脳から得られた確約はさらなるセーフティーネット(安全網)につながると指摘。「足元の状況が整い、これから政府が真摯に政策運営を行うなら、持続性の達成は可能だと思う」と述べ、改革を通じた債務の削減と持続的な高成長の達成こそが政府の目標だと述べた。
ギリシャは向こう2年間で一段の緊縮策の実施にコミットしており、基礎的財政収支(プライマリーバランス)は対GDP比で2022年にかけ3.5%の黒字、それ以降2060年までは同2.2%の黒字を目指しているが、国際通貨基金(IMF)は「目標はかなり野心的」との見方を示している。
チャカロトス氏は「財政黒字はエコノミストの立場からみれば高過ぎる」とした上で「政府は域内の財務相らとも協力してこの問題にあたり、IMFが指摘するよう、持続性に問題がないかどうか見極めていく」とした。
欧州委、ギリシャの財政規律順守を点検する仕組み決定 2018/7/12
欧州連合(EU)の欧州委員会は11日、ギリシャが8月に金融支援から脱却した後も、同国が約束通り財政規律を守っているかを定期的に点検するための仕組みを決定した。
ユーロ圏財務相は6月、ギリシャへの金融支援を8月に終了させる枠組みで合意。ギリシャの債務返済負担を軽減するほか、同国が約束した改革を進めているかを厳しく監視する仕組みを作ることを決定した。
ポルトガルやアイルランドなど、過去に金融支援から脱却した国に対してもEUは「監視」制度を設けていたが、今回ギリシャに対して「強化された監視」という仕組みを適用。EU担当者が3カ月ごとにギリシャを訪問するなど、過去の枠組みよりも厳しい内容とした。
こうした監視体制によりユーロ圏がギリシャ経済に過度に介入することになるとの批判があがっていることを踏まえ、欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は「強化された監視は、第4の金融支援ではない」と述べ、ギリシャの改革達成を後押しする枠組みだ、と説明した。
ユーロ圏財務相は、ギリシャが債権団と合意した経済改革を計画通り実行した場合、2022年まで半年ごとに6億ユーロを支払うことでも6月に合意している。資金は、ユーロ圏の各国中銀が保有し、今後4年で段階的に償還を迎えるギリシャ国債の利益で賄う。
指標に見るトルコ金融市場の「惨状」 2018/7/14
トルコの金融市場が徹底的に打ちのめされている。通貨リラは今年に入って20%以上急落し、過去最安値を更新。株式市場もここ2年余りで最大の下落幅を記録したほか、国債も売られている。
市場の混乱ぶりと、他の主要新興国市場に比べトルコの資産価値がどう評価されているかを一連のグラフィックで以下に示した。
○事態悪化物語る指数
ファゾム・コンサルティング社がまとめたソブリン発行体の財務の脆弱性を示す指数は、トルコを取り巻く状況がいかに悪化しているかを物語っている。この指数はデフォルトリスク、インフレリスク、各国の10年債利回り中央銀行の政策を総合的に加味し、0から10までの段階で表示。政府債務の面で1未満なら基本的に問題がなく、3を超えると不安があることを意味する。
○リラ安
現在の市場混乱の原因は、2010年からずっと軟化してきた通貨リラがさらに急落したことだ。
リラ安の主な影響は2つある。まず物価を押し上げるものの、中央銀行が利上げで対処しようにもエルドアン大統領が反対であることを承知しており、問題が生じる。
もう1つは、政府、企業や個人のドル建て債務の返済コストが高くなることだ。国際決済銀行(BIS)によると、トルコのドル建て債務は2000億ドルで、メキシコの2650億ドルに迫る水準だ。
一方でリラは、過小評価されているようにも見える。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが採用する購買力平価モデルによれば、現時点で32%過小評価されている。リラの次に過小評価されている南アフリカランドは25%、メキシコのペソは18%。
○利回り高騰
国債売りはすさまじい。中銀がここ数カ月で金利を5%引き上げたものの、トルコの物価上昇率が15%に達している実情を踏まえると、債券の実質利回りは1%を下回り、投資家にとって必ずしも魅力的ではない。
トルコと他の主要新興国の利回りを比較しても、どんな状況かが分かる。2年債利回りで見るとトルコは12日に約20%と過去最高水準となり、ブラジルの8.6%の2倍以上で、バングラデシュの4倍。両国ともムーディーズとフィッチの格付けはトルコと同じ「BBマイナス/Ba2」だ。
○与信拡大のつけ
トルコの高成長は借り入れブームに後押しされてきただけに、危うい状況になりかねない。同国の与信の前年比伸び率は20%と、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが動向を追っている新興国の中で、アルゼンチンとコンゴ民主共和国に次ぐ高さとなっている。
国際金融協会(IIF)のデータでは、トルコの銀行の預貸率は100%超で、資金調達市場で大規模な機能不全が起きれば流動性の面で厄介な事態になりかねない。南アフリカ、チリ、メキシコ、コロンビアも同様のリスクを抱える。
ただ、不良債権比率は3%と、ギリシャの46%やウクライナの56%よりもずっと小さい。
○株価は割安
株式市場のバリュエーションの主な尺度である株価収益率(PER)に目を向けると、イスタンブール証券取引所のBIST100種指数銘柄のPERは他の新興国株を大幅に下回っている。 
 
 
 

 

 
 
 
 

 

 
 
 
 2019

 

●ギリシャ2019/1-6
 
 

 

 
 

 

 

 

●ギリシャ2019/7-12
 
 

 

 
 

 

 
 
 
 2020

 

●ギリシャ2020/1-6
 
 

 

 
 

 

 

 

●ギリシャ2020/7-12
 
 

 

 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 

 

 

 

 

 



2018/7