新年度予算 知らしむべからず

平成29年度予算案
予算の詳細 各省庁 pdf 形式ファイルで公表しています
ただし 縦割り 書式はバラバラ
比較分析などできません

景気対策  経済対策
予算額を増やしただけです 中身とは無関係
 


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由(よ)らしむべし 知らしむべからず 
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不思議と役所以外の情報は出てこない
野党 算数の知識がない
専門家がいない 翻訳経済学者には無理
マスコミ 役人に逆らえない
民間 分析しても金にならない
 
平成29年度予算案 衆院本会議で可決 参院へ 2/27
一般会計の総額が過去最大の97兆4500億円余りとなる、新年度(平成29年度)予算案は、27日夕方、衆議院本会議で、自民・公明両党などの賛成多数で可決され、参議院に送られました。
予算案は、憲法の規定により、仮に参議院で採決が行われない場合でも、年度内の来月28日には成立することになりました。
一般会計の総額が過去最大の97兆4547億円となる新年度(平成29年度)予算案には、経済的に特に厳しい学生を対象に先行実施する返済の必要がない「給付型奨学金」や、50万人分の保育の受け皿確保、それに北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイル発射への対策強化などの費用が盛り込まれています。
予算案は、27日午後、衆議院予算委員会で、自民・公明両党の賛成多数で可決されたのを受けて、夕方開かれた衆議院本会議に緊急上程されました。
本会議では討論が行われ、自民党は「最大の景気対策である予算案の早期成立を図り、アベノミクスを力強く前に進め、デフレからの脱却を確実にすることが必要だ」と述べました。
これに対し、民進党は「天下りと引き換えに余分な補助金が配られていないかを解明しないまま予算案を通すことはできない」と述べました。
このあと、記名投票による採決が行われ、予算案は、自民・公明両党などの賛成多数で可決されて、参議院に送られました。
これにより、予算案は、憲法で定められた衆議院の優越で、仮に参議院で採決が行われない場合でも、30日が経過すれば自然成立するため、年度内の来月28日には成立することになりました。
自民 「景気対策 経済対策の両面からよかった」
自民党の二階幹事長は国会内で記者団に対し、「衆議院での新年度予算案の審議を円満に終え、通過させることができたことは、景気対策と経済対策の両面から大変よかった。とはいえ、さまざまな重要法案の審議はこれからなので、残された法案の早期成立に向けて、全力を挙げていきたい」と述べました。
公明 「年度内成立の見通し立ち 大きな意味ある」
公明党の井上幹事長は国会内で記者団に対し、「新年度予算案の成立が最大の景気対策と言ってきたので、年度内に成立する見通しがたったことは大きな意味がある。予算案には、給付型奨学金の創設や、保育士の人材確保策などが盛り込まれており、着実に成果を挙げられるよう、早期成立を期待したい」と述べました。
民進 「予算の審議打ち切り 極めて遺憾」
民進党の野田幹事長は記者会見で、「天下りや『共謀罪』、国有地払い下げの問題など、引き続き、議論になっているものや、解明されていないものがあり、審議が打ち切られる状況では到底ありえない。予算の審議を打ち切ることは極めて遺憾だ。舞台は参議院に移ることになるが、しっかりバトンタッチして、充実した審議を行いたい」と述べました。
共産 「暮らしと平和を壊す内容だ」
共産党の志位委員長は記者会見で、「予算案は、社会保障を削り、軍事費を増やす、暮らしと平和を壊す内容だ。また、PKO、『共謀罪』、天下り、森友学園など、いろいろな問題も吹き出し、徹底した審議が必要だったが、どの問題でも、国民に真剣に真実を語る姿勢が見られなかった。『隠蔽とごまかし』という安倍政権の政治姿勢を引き続き追及していく」と述べました。
維新「身を切る改革に切り込んでいない」
日本維新の会の馬場幹事長は党の代議士会で、「『身を切る改革』に全く切り込んでいないし、天下りの問題が発覚したにもかかわらず、これまでと同じような調子で、外郭団体などに予算をつけようとしている。やる気のない予算案には賛成できず、反対だ」と述べました。 
 
17年度予算案、過去最大97兆4547億円 閣議決定 2016/12/22
政府は22日、2017年度予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は97兆4547億円と5年連続で過去最高を更新した。高齢化で医療や介護などに使う社会保障費が膨らみ、16年度の当初予算から7329億円増える。税収は景気の足踏みを反映して1080億円増にとどまる。新しい国債の発行額は16年度からわずかに減るが、借金頼みの構図が続く。
政府は来年1月下旬に召集する通常国会に予算案を提出し、3月末までの成立を目指す。会計上の特殊要因を12年度予算から除くと、歳出総額は09年度予算から9年連続で過去最高を更新する。主要国で最悪の財政状況にもかかわらず、歳出の膨張が止まらない。
歳出の3割超を占める社会保障費は32兆4735億円で16年度に比べて4997億円増えた。高齢化の進行で医療が11兆5010億円、年金も11兆4831億円と、それぞれ2.0%、1.5%伸びる。「一億総活躍社会の実現」に向け、保育士の処遇改善などの財源も増やした。
社会保障費の伸びは厚生労働省の要求から1400億円圧縮。年平均5000億円増に抑える政府目標は達成した。麻生太郎財務相は記者会見で社会保障費の抑制について「できるものからやっていく姿勢は今後も変わらない」と述べた。
防衛関係費も過去最大の5兆1251億円と16年度から710億円増やす。ミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮などを念頭に防衛費を増やす。国が地方に配分する地方交付税交付金は15兆5671億円と2860億円増になる。地方への配分や防衛費が社会保障費に次ぐ歳出増の要因だ。
税収は57兆7120億円と見積もる。安倍晋三政権の発足以降、円安による企業業績の回復で大幅に伸びてきたが、17年度は1000億円ほどの伸びにとどまる。
政府は税収が伸び悩む分、税外収入を増やす。5兆3729億円と、16年度から6871億円増やす。日銀からの納付金が2307億円減少する一方で、外国為替資金特別会計から歳入への繰入額を16年度よりも8583億円増やす。
新しい国の借金になる新規国債の発行額は34兆3698億円と、16年度から622億円減る。7年連続の減少だが、安倍政権では減額幅が最も小さい。減額は税外収入の活用が主因で、財政健全化の道は一段と厳しさを増している。
税収で国債費を除いた政策経費をどれだけ賄えるかを示す国の基礎的財政収支は10兆8413億円の赤字で、16年度から小幅に悪化する。政府は国と地方の基礎的財政収支の赤字を20年度にゼロにする目標を掲げるが、実現は不透明だ。 
 
 
「国家予算の分析」 諸話
 
日本国のバランスシート分析 政府資産世界一、徴税力も強大 2017/1
「日本は1000兆円も借金があるから増税しなければいけない」「ギリシャのように破綻する可能性がある」──新聞・テレビで何度も繰り返されてきた“警告”だ。
だが、日本という国家の財務状況は「借金の額」だけを見ても判断できないはずだ。投資家や銀行が企業の経営状態が健全かをチェックする際には、必ず「バランスシート」を見る。では“日本国”についても同じように見てみるべきではないか。
借金は本当に“多い”のか?
政府は過去最高の97兆4547億円の来年度予算案を編成した。そのうち35%の34兆3700億円が借金(国債の新規発行)だ。
かつて自らを「世界一の借金王」と称した小渕恵三首相の時代に約645兆円(1999年度末)だった日本の国の借金総額はいまや1000兆円を超え、今年度末には1094兆円に達する。国民1人あたりで計算すると862万円だ。
しかし不思議なことに、政府は何十年にもわたって収入(税収)より支出の多い赤字予算を組んでいるにもかかわらず、日本経済には破綻したギリシャのようなインフレは起きないし、為替(円)も国債も暴落しない。世界の経済大国の地位を失っていない。なぜだろうか。
「借金の総額だけをみても国の財政の健全度はわからない。借金の金額が大きく見えても、それに見合う資産があり、十分な収入があれば破綻の心配はないからです」
そう語るのは国の資産を管理する財務省理財局の資金企画室長などを歴任した嘉悦大学教授の高橋洋一氏だ。
たとえば「オレは1億円の現金が手元にある」と豪語する人がいても、その人物が10億円の借金を抱えていれば内実は“火の車”だし、逆に「10億円の借金がある人物」でも、現金や株、土地などの資産を100億円以上持っていれば借金など苦にならない。
「資産」と「負債」の両方を見なければ借金が多いか少ないのか判断はできないのだ。そのため、上場企業には資産と負債を整理した「バランスシート(貸借対照表)」の公表が義務づけられ、投資家など誰でも経営の健全度を調べることができる。
実は、国(政府)にも国家財政を企業会計の基準で分析したバランスシートがある。最初に作ったのが高橋氏だった。
「1991年から1994年にかけて理財局で財政投融資資金(※注/年金積立金や郵便貯金を預かり、政府系金融機関や特殊法人に貸し付ける資金のこと)のリスクを管理するシステム作りの責任者だった時、必要に迫られて国のバランスシートを作成した。それをみれば国にどれだけの資産があるか、財政が健全かどうかが一目瞭然です」
高橋氏がバランスシートを作成した当時は「財務省限り」の非公表とされていた。毎年の表が公表されるようになったのは2000年10月からだ。
ところが、その後現在に至るまで、バランスシートの内容がメディアに取り上げられることはほとんどないまま「財政危機説」ばかりが報道されている。財務省を長く取材してきた東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏がいう。
「国のバランスシートは財務省のホームページに公表され、記者発表もされている。しかし、記者クラブの記者は不勉強で問題意識がないから、内容を吟味することなく、借金の総額だけを見て財政危機と思い込んでいる」
そこで本誌が高橋氏の解説を踏まえて国のバランスシートを読み解いていくと、興味深い国家財政の“秘密”が見えてきた。
750兆円の“見えない資産”
財務省が公表している最新の国のバランスシート(平成26年度/2014年度末決算)には、保有する様々な「資産」の金額や「負債」の金額が表示されている。
「資産の部」を一目見てわかるのが、日本政府は約680兆円もの資産を持つ“大資産家”ということだ。国がどんな資産を保有しているかを見ていこう。
まず金融資産から。「現金・預金」が約28兆円。これは各役所の金庫にある手元資金や政府が日銀の口座に預けている預金であり、国家公務員の給料や役所の備品購入、公共事業の工事代金などがここから支払われる。「有価証券」(約139兆円)の保有額が桁外れに巨額なのは、財務省(外国為替特別会計)がドル買いの為替介入で買った米国債を大量に保有しているからだ。
さらに大きな金額が続く。「貸付金」(約138兆円)は特殊法人や独立行政法人などへの貸し付け、「運用寄託金」(約104兆円)は年金積立金のうち政府が運用している金額だ。さらに独立行政法人への「出資金」(約70兆円)など、金融資産の総額は500兆円近くにものぼる。
ちなみに「未収金等」(約11.5兆円)は国税や年金保険料などの未収金分の金額で、「前払い費用」(約4兆円)は福島原発事故の賠償金や廃炉費用のうちまだ使われていない金額である。
次は「固定資産」。役所の庁舎(土地建物)、自衛隊の艦船、戦闘機などの「国有財産」が約29兆円、公共事業で建設した道路や橋、堤防などの「公共用財産」が148兆円と計算されている。
「日本の政府資産は世界一で、金融資産が巨額なのが特徴です。金融資産のうち、官僚の天下り先である特殊法人や独立行政法人などに流している貸付金と出資金を合わせると200兆円にもなる。つまり、天下り先が多いから金融資産が膨れあがった」(高橋氏)
ちなみに米国の連邦政府のバランスシート(2015会計年度)をみると、連邦政府の総資産は約377兆円でそのうち金融資産は約200兆円しかない(1ドル=117円で計算)。日本は経済規模(GDP)では米国の4分の1だが、政府の保有する金融資産は2倍以上あるのだ。
日本の国のバランスシートの「負債の部」も確かに巨額だ。「公債(国債)」が884兆円。為替介入のために必要な資金など、政府が1年未満の短期の資金繰りのために発行する「政府短期証券」が約99兆円、それに民間銀行からの「借入金」(28.9兆円)や「公的年金預り金(年金積立金)」(113.7兆円)などを合わせた負債合計は約1172兆円となっている。
財務省はホームページで「道路や堤防は買い手がないから売却できない。年金積立金の運用寄託金は将来の年金給付のためのもので、国債の返済にはあてられない」と説明。
資産は処分できないものばかりで、負債のざっと1000兆円は丸ごと「国の借金」だと強調しているが、高橋氏は「政府の金融資産のうち特殊法人などへの出資金や貸付金は天下り先を民営化すれば回収できる」と反論している。このあたりが専門家の間で議論のポイントとなるようだ。
ここで素朴な疑問が浮かぶ。民間企業であれば、資産より負債の方が多い「債務超過」状態は倒産の危機と見られる。
かつて日本航空が経営破綻(会社更生法を申請)した時のバランスシート(2010年1月決算)は、資産9718億円に対して、負債2兆6852億円。差し引き1兆7134億円の債務超過だった。
日本の国家財政は政府の資産を全部売ったとしてもまだ500兆円近い借金が残り、完全な債務超過だ。それは破綻の危機ではないのか。高橋氏の反論は明快だ。
「ほとんどの国のバランスシートは債務超過状態です。それでも企業と違って破綻しないのは、政府には徴税権といういわば“見えない資産”があるからです。日本の場合、少なく見積もっても毎年30兆円の税収(国税)がある(2017年度は57.7兆円の見通し)。
徴税力のある国の徴税権を資産として評価する場合、われわれ専門家は税収の25倍と計算する。税収が年間30兆円なら750兆円、税収40兆円とすれば1000兆円の見えない資産があるわけで、それを加味すると日本は全く債務超過ではない」
住宅ローンでたとえれば、定年も寿命もないサラリーマン(何年先も安定した収入のある国)は、より大きなローン(負債)を抱えても大丈夫というロジックだ。
確かに、日本人ほど政府のいいなりに税金を真面目に払う国民は他にない。高橋氏の指摘のように「徴税権」を750兆円の資産として国のバランスシートに計上すれば、資産と負債の差額は260兆円のプラスになる。日本とギリシャの違いもここにある。
「徴税権の資産価値は政府がちゃんと税金を徴収できるかにかかっている。ギリシャは日本と違って政府の徴税力が低いと見られているから国債の金利がハネ上がって財政が破綻した」(高橋氏)
5年前のギリシャ危機の際、同国の国債(10年物)は約35%の金利をつけなければ買い手がつかなかったが、現在の日本の国債(10年物)の金利はほぼゼロ。これが徴税力という国の信用の差であるという説明だ。 
 
日本の財政は破綻していない 森永卓郎氏「実質無借金に」 2016/12
政府・財務省は「日本の財政は破綻状態にある」と主張しているが、実際のところどうなのだろうか。経済アナリスト・森永卓郎氏が今の日本の財務状況を解析したところ、“画期的な転機”を迎えようとしているのだという。森永氏が解説する。

私は2016年度末(2017年3月末)までに、日本経済は画期的な転機を迎えると見ています。その理由は、2017年3月末までに日本の財政が実質“無借金”になることです。財務省は常々、「日本は1000兆円以上の借金を抱えていて、財政は破綻状態にある」と主張しています。確かに負債だけを見ればそうなのですが、一方で日本は大きな資産も抱えています。
財務省は毎年、日本政府に加えて国の業務と関連する事務・事業を行なう独立行政法人などの財務状況を一体的に示す「連結財務書類」を発表しています。2016年3月に発表された2014年度のバランスシートを見ると、負債から資産を差し引いた日本の純債務は439兆円にすぎません。
しかも、この連結財務書類には、財政の一番のカギを握る日本銀行が含まれていないのです。これまで日銀は金融緩和を進めるため、年間80兆円という猛烈なスピードで国債を買い続けています。その結果、2016年10月に日銀の国債保有高は400兆円を突破しました。
実は、この日銀が保有する国債は、政府にとって事実上、返さなくてよい借金なのです。日銀は国債を市場から購入して、日本銀行券を発行する。日本銀行券は国債と異なって、利払いの必要がないし、元本返済の必要もない。つまり、国債を日銀が購入するということは、国債を返済不要の日銀券にすり替えるということなのです。
そこで、日本の連結純債務439兆円から日銀が保有する国債残高400兆円を差し引くと、2016年10月時点の日本政府の本当の借金は40兆円にすぎない。しかも、2016年度下半期で日銀は国債をさらに40兆円程度買い増すと見られることから、日本政府は2016年度末には実質無借金経営になると計算できるのです。
ところが、これまでそれを誰も指摘していない。ならばと、私はそれを具体的にグラフ化してみました。これを見れば一目瞭然のように、長かった財政再建が2016年度末にようやく完了するのです。 
 
国の借金1053兆円の「大本営発表」より680兆円の資産考えよ 2016/11
「このままでは日本の財政は破綻する!」──財務省とメディアはそう煽り、国民は「それなら増税もやむなしか」と思い込まされている。しかし、経済評論家の上念司氏は、日本は「借金大国」どころか、世界一の「金持ち国」だとデータを用いて解説する。つまり、財務省やメディアは自らの都合のために嘘をついているのだ。

財務省が今年8月に発表した6月末時点での「国の借金」は、1053兆4676億円だった。大手メディアが大本営発表そのままに「国民一人あたり830万円の借金を抱えている」と報じるのも、もはや“恒例行事”となっている。
年々増え続ける「国の借金」は、2013年に「1000兆円」を突破。その規模は国内総生産(GDP)の2倍に上る。少子高齢化により社会保障費は膨らみ続け、今にも財政破綻するという「日本悲観論」が蔓延している。
確かに「1000兆円」の借金は莫大だが、負債の金額の多寡だけを見て経済を議論するのは全くのナンセンスだ。
一般的に銀行が企業や個人に融資する際、事業者の財務体質が健全かどうか、成長性があるかどうかが査定の基準となる。しかし、政府の財政について語られる際、その視点がごっそりと抜け落ちている。
財務省HPで公表されている政府の負債や資産を示す財務書類(バランスシート)を見ると、2014年度末の日本政府の負債額は1172兆円とあり、確かに1000兆円を超えている。しかし負債に隠れて見逃されているものがある。約680兆円の「資産」だ。なぜかこの数字に目を向けられることは少ない。
680兆円はアメリカの資産(300兆円)の2倍以上にあたり、前年に比べても27兆円も増加している。1年に27兆円も資産を増やしている国が、なぜ財政破綻寸前なのだろうか。
負債総額から資産を引いた本当の負債(純負債)は、1172兆円の半分以下の492兆円ということになる。この額は日本のGDPを下回る。
2012年にアベノミクスが始まってから、円安の影響もあり政府資産は毎年10兆〜30兆円増え続けている。加えて、税金を集める徴税権、通貨発行権、日銀保有の国債残高など財務書類に記されない要素を加味すれば、ギリシャのような財政破綻は考えられない。日本財政は健全であるということをもっと強調すべき状況なのだ。
日本の財政の“健全”たる所以は、前述の政府資産の大半を「金融資産」が占めていることである。政府資産のうち土地や建物の公共財など固定資産が約2割なのに対し、「現金・預金」や「有価証券」などすぐにでも換金・拠出できる資産が8割を占めているのが日本の特徴だ。要は日本は純粋に「金持ち」なのだ。
その資産額は、世界的に見てもダントツの多さを誇る。 
 
マイナス金利とは何か  2016/5
日本銀行(以下、日銀)が導入したマイナス金利が市中の話題になっています。そこで、今回はマイナス金利について考えてみたいと思います。
1 マイナス金利の意味
一昔前の日本では、給与は毎月現金で支払われていました。僕の初任給は(1972年)、たしか4万8,000円だったと記憶しています(話を単純化するために、給与=手取りと仮定)。僕は、8,000円を財布に入れ、残りの4万円を銀行に預けました。
銀行は、例えてみれば大きな貸金庫のようなものですから、普通は保管料を取られるはずです。ところが、銀行は僕の預けた4万円を、資金を必要としている企業に年利10%で貸し付けます。すると、4万円×10%=4,000円の利息が入ります。銀行はその4,000円の内、3,200円を保管料(銀行の経費)に当て、残りの800円を僕に利息として返してくれます。すると、僕が受け取る利息は、年利2%(800円÷4万円)となります。
貸出金利10%と預金利息2%の差8%を「利ざや」と呼んでいますが、銀行は「利ざや」で銀行経営に必要な経費を賄っています。これに対して保険会社は、お客さまからいただく保険料の中に経費(付加保険料)を組み込んでいます。
次に、企業はどうして銀行からお金を借りるのでしょう。それは、企業がお金をもっていないからであり、かつ、金利10%でお金を借りてもそれ以上(15%とか20%とか)もうかると考えているからです。もうけが仮に5%なら、10%でお金を借りる人はどこにもいませんね。
企業がお金持ちになりかつそのお金で投資をしてもあまりもうからないようになると、企業はお金を借りなくなり、借りてもらうためにその結果として金利は低くなっていきます。すると、利ざやは小さくなります。そこで銀行は、昔は無料だった送金手数料やATM利用手数料を取るようになります。それでも銀行の経費が賄えなくなると、銀行は貸金庫保管料を取りたいと考えるようになります。これがマイナス金利です。貸金庫保管料が仮に2%かかるとすると、僕の4万円は800円差し引かれて、1年後には3万9,200円になってしまうというわけです。
2 日銀のマイナス金利政策とは何か
次に日銀のマイナス金利政策を考えてみましょう。日銀は銀行の銀行です。銀行も僕と同じように、当面使わないお金を日銀に預けようとします。そこで、銀行が預けているお金にマイナス金利を日銀が付ければ、預けているお金が減ってしまうので、銀行は必死で貸出先を探すようになり、その結果、企業はお金を借りて経済活動が活発になり景気が良くなるのではないかと日銀は考えたのです。
もっとも、反論がない訳ではありません。企業がお金をいっぱい持っていたり、銀行からお金を借りて投資をしてももうからないと考えれば、銀行がいくら貸出先を探しても、銀行からお金を借りる企業は出てこないでしょう。
このように日銀のマイナス金利政策については、経済学者の間でも意見は大きく割れているのが実情です。
なお、日銀は銀行の一部の預金に対してのみマイナス金利を付しているだけで、個人の預金は対象外ですので、当面心配することは何もないと思います。
3 マイナス金利はライフネット生命にどのような影響があるか
ライフネット生命の死亡保険や医療保険は保障機能に特化した商品でその本質は掛け捨てです。皆さんは、毎月の給与から社会保険料(健康保険料)を引かれているでしょう。そのおかげで病気になった時、病院に払う治療費は原則3割負担で済みます。病気をせず病院に行かないと、その健康保険料は掛け捨てになりますが、掛け捨てがいやだからと言って、わざわざ病気になりたいと思う人はいないでしょう。これが保険の本質なのです。
ライフネット生命が販売している生命保険は、保障機能に特化した、掛け捨て商品ばかりです。もし、お客さまにお金をお返しする貯蓄型保険をたくさん販売していれば、マイナス金利の状況ではお金の運用が大変になります。即ち、ライフネット生命は貯蓄型保険を販売している生命保険会社に比べればマイナス金利の影響は軽微であると言っていいでしょう。
4 72のルールを覚えよう
金利の複利効果を表す「72のルール」というとても便利な公式があります。「72÷金利=元本が倍になる年数」というシンプルな公式です。お金は金利が金利を生んで(複利効果)雪だるま(スノーボール)がころがってふくれあがっていくように増えていきます。僕が勤め始めた頃の長期金利は8%以上ありましたので、72÷8=9年、つまり9年で元本が2倍、例えば100万円が200万円になったのです。こういう高度成長≒高金利の時代は、生命保険で貯蓄を行うことが合理的でした。ところが低金利時代に入ると事情は全く異なってきます。
   金利が
   1%なら、72÷1%=72年
   0.1%なら、72÷0.1%=720年
   0.01%なら、72÷0.01%=7200年
つまり、現在の超低金利の状態が続けば雪だるまが大きくなるには、石器時代から現在までと同じ位の時間が必要ですしかも、生命保険料には前述したように会社の経費(付加保険料)が組み込まれています。仮に付加保険料が保険料の10%としたら、お客様が支払った保険料(仮に1万円)の内、9,000円しか貯蓄に回せないので、超低金利の下では、元本(1万円)に戻ることさえ困難です。
金利が低くなると雪だるまは大きくなりません。マーケットはそのことをよく知っています。これは世界共通ですが、中央銀行が金利を下げると、株価は上昇します。スノーボールがふくらまなくなったので、リスクを取って変動商品に乗り換えるしか方法がないとみんなが考えるからです。人間の寿命を考えると、とても7200年は待てませんからね。逆に中央銀行が金利を上げると株価は下落します。これは、これからはスノーボールがふくらむぞ、リスクをとって変動商品に投資する必要はないぞ、とみんなが考えるからです。
これが、「低金利の時代は、生命保険は掛け捨てで、貯蓄は投資信託のような変動商品で」と僕が考える理由です。つまり、現在においては保険と貯蓄は分けて考えるべきなのです。 
 
2014年度予算を考える
政府の2014年度予算案が決定した。総額約96兆円と過去最大規模になる。政治は税金の分配に他ならないのであるから、予算を分析して正しく理解することは、民主主義の基本中の基本と言っていいだろう。では、さっそく、新年度予算案の中身を見てみよう。
プライマリーバランスはなお18兆円の大幅赤字
2014年度政府予算案の概要は次表の通りである。
まず、歳入面では、消費税の引き上げや景気の回復等により、税収は7年振りに50兆円台を回復した。しかし、予算規模には遠く及ばず、新発国債で41兆円の巨額がなお必要とされる。ここで注意しなければいけないのは、来年度の国債発行額は(実は41兆円ではなく)181.5兆円と史上最高になることだ。これは、過去に発行した国債の借替分があるためである。つまり、わが国の予算を円滑に執行するためには、181.5兆円の国債発行が前提となっているということを忘れてはならない(例えば、長期金利が仮に1%上がると、それだけで利払いが、1.8兆円増加する構造となっている。このことは、わが国では金利が高騰すれば、予算の編成が極めて困難になることを示唆している)。
次に歳出面では、社会保障が初めて30兆円の大台を突破した。次が公共事業の6兆円であるから、社会保障費を適切にコントロールすることがいかに重要であるかは一目瞭然であろう。この意味で税と社会保障の「一体改革」の重要性は、いくら指摘しても指摘し過ぎることはない。なお、社会保障費の内訳は、年金11.4兆円、医療10.9兆円、介護2.8兆円、子ども・子育て支援1.9兆円等となっている。
ところで、先進国の予算では、プライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)が、ことの他重要視される。わが国のPBは、予算案では18兆円の大幅赤字となっている。PBは、税収等から(国債の利払費を除いた)政策予算を差し引いたもので、PBが均衡していれば、毎年の経費が毎年の収入で賄われることになる(さもなければ、子どもや孫名義のクレジットカード(≒国債)を更に新たに使い続けることになる)。PBが均衡した場合、この年の国の債務の増加は利払分だけとなり、名目経済成長率と名目金利が同じと仮定すると、国の債務残高の名目GDP比率は一定になる。わが国は債務残高がG7の中でも突出しているだけではなくPBもG7中最悪であるという現状を、素直に直視しなければならない 。
政府は2020年度にPBの黒字化を目指しているが、18兆円をゼロにするということは大変な難事であることを自覚する必要があろう。
つらい選択だが、中負担・中福祉か高負担・高福祉を選ぶ必要がある。
税と社会保障の「一体改革」の必要性については、次のグラフもよく見てほしい。
この15年間でみると、高齢化により社会保障費が増える一方、社会保障以外の政策費はOECD諸国中最低の水準まで落ち込んだ。即ち、新しい政策に取り組む余力があまりなかったのだ。税負担も低位で推移しており、その当然の結果として、政府の財政収支は大幅に悪化した。この現実を直視して、一言でわが国の現状を言い表すとすれば「低負担・中福祉」社会ということになろう。
人間は「見たいものしか見ない動物である」とよく言われるが、このような数字を虚心坦懐に見れば、誰が考えてもわが国に残された具体的な選択肢は、「中負担・中福祉」(負担はさらに増えるが、給付≒福祉は現状程度にとどまる)か、北欧諸国のような「高負担・高福祉」しかないということが歴然である。誠につらい選択だが、私達の子どもや孫の世代にこれ以上の迷惑をかけないためには他に道はないのだ。
また、景気回復の効果は実はそれほど大きくはない。2013年度は景気が上向き、企業収益も好調で名目GDP成長率は2.5%と、実に対前年比2.7%も改善した。それでも対前年度当初予算対比で、法人税が1.3兆円(しかも、法人税率の引き下げが声高に主張されている)、所得税が0.9兆円増えたに過ぎないからだ。このように数字・ファクト・ロジックで素直に考えれば、消費税率10%への引き上げは、それこそ待った無しであろう。
政策予算72.6兆円は、対前年比で3.2%の伸びである。うち社会保障が4.8%増、公共事業が12.9%増、文教・科学振興が1.4%増、防衛が2.8%増である。メディアは、消費税の増税による家計の負担増に加えて、社会保障の切り込み不足や公共事業の大盤振る舞いを盛んに喧伝している。確かにその通りで、予算を大事に使う、少しでも経費を節減するという姿勢はとても大切なことだ。しかし、もっと大切なことは、予算に表れたわが国の財政の現状、わが国が置かれている状況を「整合性のとれた全体像」として、ありのままに市民に分かりやすく提示することではないのか。その観点からすれば、大方のメディアは「木を見て森を見ず」の感がしてならない。例えば、新発国債は、前年から1.6兆円減額されたが(消費税率引き上げによる増収が4.5兆円もあるのだから、本来なら新発国債はそれ以上に減額されるべきではないか)、国債の発行額自体は、史上最高で初めて180兆円を突破した。どちらが、より重要なファクトだろうか。問うまでもないだろう。しかるに、180兆円の方に重きを置いたメディアはほとんどなかったのである。
先進国の財政再建の黄金律は一般に、「6〜7割の歳出削減と3〜4割の増税の組み合わせ」が理想と言われている。しかし、わが国の「先進国の中でも突出した債務残高」と「低負担・中福祉」という現状に鑑みれば、それよりも遥かに厳しい前途が待ち受けている可能性が高いのだ。メディアには家計の負担増や公共事業の大盤振る舞い等、市民の素朴な感情に訴えるセンセーショナルな報道姿勢を改め、こういった「見たくない現実の全体像」をこそ、真摯に粘り強く報道、啓蒙して貰いたいものだ。  
 
国主導で社会保障予算の分析を 2013/11
 社会保障給付費110兆円>一般会計90兆円
11月中旬、社会保障改革プログラム法案(正式名称「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案」)が衆議院の厚労委員会及び本会議にて可決された。今後は参議院で法案を審議予定だ。
プログラム法は、医療・介護・年金を中心に来年度以降に実施する改革の工程表を記載するもので、前期高齢者(70―74歳)の医療費自己負担の引き上げや、高所得者を対象にした介護の自己負担割合の引き上げ等の検討を盛り込んでいる。
このような負担増を実施せざるを得ない背景には、現在(2013年度)、約110兆円にも達した社会保障給付費の存在がある。現在、年金=約50兆円、医療=約35兆円、介護=約9兆円であるが、2003年度の社会保障給付費は約84兆円であった。
すなわち、社会保障給付費は2003年度から13年度の10年間で、年平均2.6兆円程度のスピードで膨張してきた。消費税率1%の引き上げで約2.5兆円の増税収があると見込まれるが、2014年4月の消費増税(5%→8%)の増税収分を3年で食い潰してしまうような膨張スピードである。
このような状況において、社会保障予算の抑制や更なる増税は不可避であるが、日経ビジネスONLINEの記事(年金給付1%削減で特養入所待ちは解決できる)でも扱ったように、社会保障予算内(特に年金・医療・介護)における資源配分の見直しで、改善可能な政策も多いと考えられる。
というのは、もはや、社会保障給付費(110兆円)は、一般会計(90兆円)よりも20兆円以上も大きな予算となっているためである。一般会計と特別会計を合わせた予算(純計)は約230兆円(2012年度当初予算の歳出)であるが、社会保障給付費(110兆円)はその半分に相当する規模に達する。
一般会計予算については様々な精査が行われるものの、社会保障予算の精査は手薄であり、社会保障給付費の中身を分析する意義は大きい。
この関係では、厚労省で設置された「社会保障給付費の整理に関する検討会」が、2011年に公表した「社会保障給付費統計等の整理の方向性」が重要であり、この資料には以下の記述がある。
「社会保障の全体像の把握について
他方で、社会保障給付費のみならず、我が国における社会保障に要する費用全体を把握することは必要であり、整理後の社会保障給付費統計に含まれないこととなる1事業の実施が義務づけられていない事業、2「個人に帰属する給付」以外の「給付」に類似する事業、3施設整備費等を含めた費用を把握することとしてはどうか。」
だが、その後、社会保障の全体像の把握は十分に進捗していないのが現状である。また、社会保障給付費には、社会保障分野で地方が単独支出する項目も含まれることから、国だけでは限界があり、地方の支援も不可欠であることは言うまでもない。
このため、地方自治体(代表者)の協力も得つつ、経済財政諮問会議の下に、社会保障予算を分析する専門組織を設置し、まずはその分析を深めてはどうか。110兆円にも達する社会保障給付費の資源配分について、その改善の方向性に資する多くの発見があるはずである。 
 
積極財政?ばらまき? 予算案の重要ポイントを各紙が分析 2013/1
政府は29日、2013年度予算案を閣議決定した。一般会計の総額は92.6兆円と過去最大の規模となる。 歳入は、税収43.1兆円(前年比1.8%増)、新規国債発行42.9兆円(3.1%減)。歳出は、社会保障費29.1兆円(5.1%増)、公共事業費5.3兆円(15.6%増)、防衛費4.7兆円(0.8%増)、国債費22.2兆円(1.4%増)となっている。また、震災復興対策jは4.4兆円を別に計上した。政府は、2月下旬に予算案を国会に提出する予定だ。国家運営の肝となる予算案の重要なポイントを、各紙はそれぞれの視点から分析した。
朝日新聞は、1面で「人からコンクリートへ」と題し、生活保護を切り下げ公共事業を大幅に増加した予算案を、批判的に取り上げている。生活保護費は2.8兆円と12年度よりわずかに増えるが、給付水準引き下げなどで670億円削減されたことを報じた。一方公共事業費は、補正予算と合わせると10兆円規模に拡大したと指摘した。さらに、「見せかけの財政規律」を演出した点も批判している。13年度予算では、4年ぶりに国債発行額が税収を下回っている。報道によると、安倍首相は、バラマキ批判をかわすためにも、財政規律重視の姿勢を演出することに腐心したという。ただこれが実現したのは、10兆円規模という12年度の補正予算案を組み、本来は本予算で対応する分を前倒ししているためであると指摘した。民主党の細野幹事長は「粉飾に近い」と強く非難しているという。日銀の物価目標導入・追加緩和(金融緩和)、緊急経済対策(財政出動)、とアベノミクス「3本の矢」の具体策が明らかにされる中、成長戦略についてはまだ曖昧な状況だ。同紙は、予算を見る限り「心もとない」と批判、公共事業中心の景気対策だけに頼らず、「次元の違う」戦略をまとめるべきと示唆した。
読売新聞は、1面で「経済再生へ大型予算」と題し、デフレ脱却を実現し景気下支えを図る積極財政と報じた。全体的には、民主党時代に抑えられた分野へ予算を配分し、「バラマキ批判」をかわすため財政規律へも配慮するなど、安倍首相の意向を強く反映したものと報じている。特に民主党との違いについて詳しく分析した。減額が続いていた公共事業費・防衛費を増額する一方、民主党支持母体の一つである地方公務員の人件費カット(財源を4000億円削減)に成功したことが象徴的だという。一方、財政規律配慮の姿勢を見せるため国債発行額を税収以下に抑えた点については、現実的かどうか疑問を投げかけている。そもそも税収確保のためには実質2.5%の経済成長率を実現しなければならず、テクニカルな方法で歳出を少なくしている面もあるためだ。今後の課題としては、成長戦略の実現、年金など社会保障も含めた支出抑制を挙げた。
産経新聞は、1面で「「分配」から「成長」へ」と題し、民主党政権の家計支援重視姿勢から、産業支援を手厚くする姿勢への変化が現れていると報じた。3面では、家計にどう影響するか、具体的な説明を試みている。ポイントは、公共事業増加から景気回復の可能性、教育費の負担軽減、企業の雇用促進税制、住宅ローン・自動車減税などだ。また、国家予算を「アベ家の家計」に例えた説明も掲載した。予算案の1兆円を10万円に換算すると、下記のようになるという。年間収入(歳入)は926万円で、アベさんの稼ぎ(税収)は430万円と収入の約半分、足りない分は借金(国債発行)をして賄っている状況だ。支出(歳出)は、ローン返済(国債費)が222万円と出費の24%にのぼり、残りの約700万円で、防犯費(防衛費)、治療費や年金など(社会保障費)を払っていることになる。さらに、これまでの借金総額(国債残高)は7495万円にも達するという。財政規律の「演出」については、借金頼みの体質から抜けだしたわけではないと厳しい姿勢だ。今後は財政健全化と経済成長の両立が課題になると指摘した。 
 
日本には1000兆円の負債は嘘 本当は300兆円と元財務省職員 2011/2
いま日本は、1000兆円の負債を抱え、国民一人あたり800万円の借金を抱えている――。財務省はメディアでしきりにこう喧伝するが、「実際に財務省でその係」だった著者によれば、それは一面的な事実でしかない。「財務省がいうことは、発言の範囲では嘘はありません。ただし、全部はいわないのです。都合の悪いことはいわないでおくのですが、嘘はついていない。立派なものです」。
財務官僚たちが、あえていわない「都合の悪いこと」とは、特別会計の実像であり、そのさきにある特殊法人、つまり天下り制度のカラクリである。そのために彼らが使う強力な武器は、数字だ。したがって著者もまた、たぐい希なる数字のセンスを駆使し、建国以来はじめて国家財政を「バランスシート」にのせるシステムを構築した。結果、国民のまえに浮かび上がったのが、計18種類もある特別会計の不可思議な実態と、「埋蔵金」の存在である。
埋蔵金といっても、霞が関の地下に金塊や小判が隠されているわけではない。「特別会計ごとのバランスシートで……資産が負債を上回るとき」の「差額」を指したものだ。そこで顕在化した40兆円の埋蔵金の存在を、官僚らは「ない」というが「会計的には明らかに存在」している。
この埋蔵金も含め、特別会計が貯めこむ資産のなかには、天下り先である特殊法人への「出資金や貸付金」がある。本社である国の財政はとてつもない負債を抱えているというのに、子会社である特殊法人は、内部留保がありながらも廃止を恐れ、この出資金を手放そうとしない。
ここで冒頭に話を戻すと、財務省がいわなかったこれら資産は、総額700兆円ある。つまり資産と負債のバランスでみると、実質的な負債は300兆円。1000兆円という数字は、一種の増税キャンペーンなのである。 
 
2005年度 国家予算の分析 −社会保障費を中心に−
1.はじめに
一般に、国の2005 年度予算は82.2 兆円、うち社会保障関係費(以下、単に社会保障費という)は20.4 兆円であると認識されている。しかし、これは一般会計の部分だけである。国には一般会計のほかに、2005 年度時点で31 の特別会計がある。たとえば、政管健保や厚生年金の収支は、厚生保険特別会計で管理されている。一般会計だけでは、国家予算、そしてその中の社会保障費の全貌はわからない。
そこで、国の一般会計と特別会計とを連結し(これを連結国家予算という)、国家予算および国家予算における社会保障費の全体像を分析することとする。
国家予算はまた、社会保障費、文教科学費、公共事業費などに区分されている。視点を変えると連結国家予算の10 数%は人件費・経費等に使われているのであるが、そういった区分の実績については公表されていない。本稿では、連結国家予算を人件費・経費、補助金などの使途で区分して、分析することも試みた。
2.方 法
国の一般会計・特別会計予算1-2 から、所管別、会計別、勘定別、科目別に当初予算ベースの金額を入力した。年度によって項目の統廃合があるが、2005 年度当初予算のデータ項目は、歳入784、歳出6,883 であった。さらにこれらの項目ごとに、法令や文献をあたって使途を明確にした。
国家予算の各科目には、会計間勘定間の繰入繰出にあたるものが多い。A会計からB会計C勘定に繰り入れられ、B会計C勘定はその一部をB会計D勘定に繰り出すという関係がいくつもある。これらについては、会計間・勘定間の関係を追跡し、重複分として控除した上で、歳入・歳出をそれぞれ連結した。
財務省「財政統計」3 においても、連結国家予算の歳入総額、歳出総額は示されているが、使途などの内訳は公開されていない。そのため、上記のようにデータをひとつひとつ精査し、使途別に区分するという方法をとった。ただし、予算書自体が完全に細分化されているわけではないため、重複控除に限りがあったことを断っておきたい。とはいえ、今回の手法による連結歳出総額は240.1 兆円であり、「財政統計」上の239.7 兆円との差は0.2%であるので、結果の信頼性を大きく損ねるものではないと考える。
3.結 果
1)国家予算の全体像とその内訳
一般会計・特別会計予算の項目を個々に積み上げて合算した後、繰入繰出の重複を控除した結果、2005 年度の当初予算ベースでは歳入273.6 兆円、歳出(以下、連結歳出額と呼ぶ)240.1兆円と推計された(図1)。
   図1 国家予算の全体像(2005年度推計)
連結歳出額の使途は、次のように区分した。
 債務償還・・・国債の償還コストと利子の合計から借換額を控除したもの
 財政融資資金へ・・・財政融資資金への繰入
 地方交付税等・・・地方交付税・譲与金
 国民への給付・・・年金・医療・介護給付費国庫負担分、義務教育国庫負担分など、国民にほぼ直接的に還元されていると思われるもの
 人件費・経費等・・・人件費・経費、補助金ほか、他に分類できないもの
2005 年度の連結歳出総額の内訳は、債務償還87.1 兆円(36.3%)、財投融資資金へ繰入31.3兆円(13.0%)、地方交付税等15.9 兆円(6.6%)、国民への給付62.7 兆円(26.1%)、人件費・経費等43.1 兆円(17.9%)であった。
2005 年度は前年度に比べて、財政融資資金への繰入が減っているが、これはむしろ、前年の2004 年度に財政融資資金への繰入がいったん増えているためiである。
「人件費・経費等」には人件費・経費のほか、補助金、委託費等を含む。2004 年度の38.9兆円から2005 年度には43.1 兆円と大きく増加したのは、年金積立金を財投から引き上げ、新たに年金資金運用基金に出資したためである。この要因を除くと、2004 年度から2005 年度にかけては大きな変化、逆にいえば大胆なコスト削減は見られない。
2003 年度から2004 年度にかけての人件費・経費等の削減も、国立学校特別会計(2003 年度2.5 兆円)、国立病院特別会計(同0.8 兆円)が、独立行政法人化によって抜けたために過ぎない。
   図2 国家予算連結歳出総額の内訳推移
2)社会保障費の全体像とその内訳
2005 年度の連結歳出額のうち、社会保障費は67.0 兆円(以下、連結社会保障費と呼ぶ)であり、このうち給付費の合計は60.5 兆円であった(図3)。
連結社会保障費において、年金給付費は過去3 年間、継続して増加している。一方、医療給付費はまったく横ばいである(図4)。
2002 年10 月に老人保健法が改正され、老人医療受給対象年齢が毎年1 歳ずつ引き上げられ、また一部負担金を除く費用のうち、公費負担割合が30%から毎年4%ずつ引き上げられつつある。これに伴い、国保・政管健保等からの老人保健拠出金が減ったため、国保・政管健保に対する国庫補助が減少し、逆に老人保健に対する国庫負担が増加した。2004 年度には診療報酬(薬価)がマイナス1.0%改定となった。そして、2005 年度には国民健康保険における国庫負担の一部を都道府県負担とし、約5,400 億円が税源移譲されて、国の支出が減少した。
このように医療給付費にかかる国庫負担は、容易に抑制されている。
   図3 連結社会保障費の内訳推移(2005年度67.0兆円)
   図4 連結社会保障費における給付費の分野別推移
3)社会保障にかかわる業務コストの現状
厚生労働省本省関連費用(一般会計のみ)から、業務効率化に関連するものとして、庁費(事務用品費、消耗品費、光熱水費など)、通信専用料、電子計算機借料、超過勤務手当を集計した。電子計算機借料が増加しIT 化が進んでいることがうかがえるが、それにも増して年々超過勤務手当が増加している。また、2005 年には「医療給付適正化業務庁費」が前年比17 億円増の26億円となったこともあり、業務関連コスト合計で357.2 億円と前年比4.3%増となった(図5)。
政管健保、厚生年金は厚生保険特別会計で経理されている。図6 は、ここから「業務取扱費」を抽出したものである。「業務取扱費」は、社会保険庁の健康保険・厚生年金等にかかわる管理コストである。職員給与・手当など人件費は圧縮されつつあるが、経費の増加がこれを上回り、業務取扱費全体は年々増加している。さらに2005 年度には、「社会保険庁オンラインシステム庁費」90 億円が計上された。先行投資というのであれば、投資対効果を厳しくフォローすべきである。
   図5 厚生労働省(一般会計)業務効率化関連コスト
   図6 厚生保険特別会計 業務取扱費の推移
4.考 察
国家予算、特に社会保障費を議論する上では、主として次の3 点を認識しておく必要がある。
第一に、日本では、社会保障費負担の増大が問題視されている。しかし、米国でも国家予算の少なくない部分を社会保障費に割いている(2006 年度の歳出予算のうちメディケア、メディケイド、福祉関連支出に43.4%を割いている4)。諸外国に比べると日本の租税負担率が低いという事実もある。社会保障費が高いことが本当に問題で、これ以上の国民負担はできないのか。この点を整理して議論を再スタートしなければ、どんな制度設計をしても国民の合意は得られないであろう。
第二に、社会保障費として、ひと括りにされているが、予算上の動きは分野や項目によって大きく異なる。年金給付費は年々増加しているが、医療給付費は少なくとも過去3 年間ほとんど頭打ちである。老人保健法の改正、診療報酬の改定、国民健康保険財源の地方への移譲など、比較的対処しやすい(国民的にはきわめて大きい問題であるにもかかわらず)制度改正によって、国の負担分を容易にコントロールしてきたからである。福祉関連予算についても、「三位一体の改革」で地方の自主性を重んじるといえば聞こえは良いが、地方に移譲され、大きな地域格差が生じるおそれがある。
第三に、国民に給付されるべきコストについては厳しい予算編成がなされているが、官僚およびその周辺(補助金や委託費の受領先)にかかわる予算については、まだまだ安易に看過されているといえる。国家公務員給与など、指摘をうけやすい費目は削減されているものの、日常業務にかかわる経費については、大胆なコスト削減はなされていない。一部の費用を削っていても、総コストはかえって増加したというケースも見られる。こういった費用の中には、天下り組織からさらに外部へ「丸投げ」されているものもある。国の予算は基本的に単年度消化主義であるが、中期あるいは長期の費用対効果を測定し公表すること、補助金をつけているところには天下りしないこと、逆に天下りするのであれば補助金をつけないことなどを検討すべきである。 
 

 
2017/3