世界のリーダー 退任演説

トランプ新大統領 就任演説

世界のリーダーの役割 終了します
退任表明演説でした

ビジネスマンの本性 自分ファースト
大統領になりました 自国ファーストを目指します
 


大統領選で浮き彫り「二つのアメリカ」
 

 

人生で、私が得意だと分かったことが2つある。障害を克服することと、優秀な人々が仕事でベストを尽くせるよう、やる気にさせることだ。
アメリカではとにかく金持ちが褒め称えられる傾向が強い国です。ドナルド・トランプ氏は破産したところからのし上がった姿がアメリカンドリームを感じさせているというのも人気の理由の一つだったのかもしれないですね。
金持ちは、難しい問題を解決できるから金持ちなのだ。問題から成長することを学べ。
もし、仕事と遊びのバランスを取っているなら、それをやめることだ。そしたら、仕事がもっと(遊びのように)楽しくなる。
「あぁ、休みをとりたいなぁ」と思ったらその仕事はあなたに合っていない。理想的な仕事とは、仕事と休みの区別がつかないようなものである。睡眠時間が短ければライバルに勝つチャンスも増える。私のやり方は非常に単純でストレートだ。求めるものを手に入れるためには押し、押し、押しの一手だ。
幸運はそうしばしばやって来ない。来た時は必ず、その機を完全に活かせ、たとえ死ぬほど働くことになろうとも。幸運が来たら、謙遜したり臆してる場合じゃない。最大の成功を掴みに行く時なのだ。これが、「大きなことを考える」ことの本当の意味だ。
批判は簡単である、批判されない人はリスクを取らない人だと気づくことよりも。
成功者になった後の問題の一つとして、嫉妬と妬みは必ずついて回る。「人生の敗者」と私が分類する人々は、他人を邪魔することに達成感を見出す。彼らに真の能力があれば、私と闘ったりせず、建設的なことをするはずだ。  
○ どうせ考えなるなら大きく考えろ。どうせ生きるなら大きく生きろ。もっと大きなディール(取引)をしなければならない。
○ 心配するのは時間の無駄だ。心配は問題を解決しようとする私の邪魔になる。
○ 経験と実績がない場合、エネルギーと情熱を売り込むべき。
○ 私に言わせれば、タフであるためには、たくましさと頭の良さと自信を兼ね備えている必要がある。
○ ルパート・マードックやスティーブ・ロス、ロン・ベレルマン、マーティ・デービスといった連中のタフさには敬服している。この人たちは当然成功するつもりでいるし、成功を収め続けるための方法を知り尽くしている。ビジネスが思うようにいかなくても、落ち込んだりしない。苦しい状況を好転させる力を持っている。
○ 私はタフな男だということになっている。それも当然だと思うようにしている。実力者たちにお前の時代は終わりだと言われ、結婚生活は破たん寸前、おまけにビジネスでのプレッシャーも増して来れば、タフでなければやっていけない。
○ 私にとって、お金は決して大きな動機ではなかった。スコアを付ける方法としてを除けば。真に刺激的なのは、そのゲームに参加することだ。我々は『大きなことを考えない理由』をあらゆる方法で考えなければならない 。 
○ 金持ちだけど、恋人がいない奴らを何人も知ってる。理由は金があってもちっとも魅力がないからだ。女性は魅力的な男を求めてるんだ。吸引力の話だよ。それから、尊敬できる相手であることもだな。(女性観について)
○ 「仕事と遊びのバランスをとろうなどと思うな。それより仕事をもっと楽しいものにしろ」
○ あなたが今どんな職業に就いていようと、情熱的に取りくんでいれば奇跡は起きる。 正しい人物とめぐり会い、その人の目にとまるのだ。私は何度もそういう実例を見てきた。
○ 『不当な扱いを受けたらやり返せ』『やり返す』ことは『目には目を』ではない!単なる『フェア』である。よし、ためらわずに反撃しよう。それは当然のマナーなのだ。すなわち『ウィンウィン』という奴だ。
○ 運命の転換にどのように対処するかが、勝者と敗者を分ける。
○ 日本人はウォール街でアメリカの会社を買い、ニューヨークで不動産を買っている。多分、マンハッタンを自分たちのものにしたいんだな。日本人と競り合っても勝てる見こみはない。どうみても彼らはこちらをコケにするためだけに法外な金額を払っているとしか思えない
○ ネットワークビジネスが収入源として成り立ち、それなりの見返りが期待できることは既に立証済みだ。それが貴方にぴったりのやりがいのあるビジネスになる可能性もある。目覚しい成功談は、ディストリビューターの勤勉さと熱意、商品自体の適切さ、タイミングの良さなど
○ いったん負けることによって、勝つための新たな戦術が見えてくることがある
○ いろんな人間がいるけどできるだけ相手と仲よくすること、またフェアであること。
○ 重要なのは自分の子どもを信頼することさ。オレの子どもたちはウォートン・スクール・オブ・ファイナンスで素晴らしい成績を修めた。オレも通った学校だ。ウォートンはビジネススクールでも最高だといわれている(ファミリービジネスについて)
○ 世の中に信じる者はいないと思え。この私でさえも絶対信じるな。(自分の息子へ)
○ 世の中に信じる者はいないと思え。この私でさえも絶対信じるな。(自分の息子へ)
○ 成功は、特別の人ににしか解き明かせない神秘などでは決してない。
○ ルパート・マードックやスティーブ・ロス、ロン・ベレルマン、マーティ・デービスといった連中のタフさには敬服している。この人たちは当然成功するつもりでいるし、成功を収め続けるための方法を知り尽くしている。ビジネスが思うようにいかなくても、落ち込んだりしな

 

トランプのスローガンは、レーガンのパクリ 2015/3
(自身のスローガンについて)「Make America great again」は私のスローガンだ。1年前に考えついて、使い続けている。みんなも使い、愛してくれてる。だが実は、このスローガンを最初に使ったのはレーガン大統領(1980年代) 。
ヒラリーは、夫も満足させられないのに、アメリカを満足させられるの? 2015/4
ヒラリー・クリントンが夫を満足させられていないなら、なぜ彼女は(自分が)アメリカを満足させられると思っているのか?
捕虜になって英雄になった人がいるが、捕虜にならなかった人の方がえらい 2015/7
(捕虜経験のあるマケイン上院軍事委員長に対して) 彼は英雄ではない。捕まったからこそ、英雄になったのだ。捕まらなかった人の方が、私はいいと思う。
ライバルの携帯番号を暴露 2015/7
(リンゼー・グラム上院議員から「間抜け」と呼ばれたことに腹を立て、グラム氏の携帯番号を読み上げる) これが(グラム氏の)正しい電話番号かは知らない。試してごらん。優柔不断なヤツだが、話し相手にはなるだろう。
ライバルを超低エネ呼ばわり 2015/10
ベン・カーソンは超低エネ(全く活力がない)。アメリカには巨大なエネルギー(トランプ)が必要だ。
9.11を何千もの人が喜んでいた 2015/11
(9.11に) ジャージーシティで何千もの人が、世界貿易センタービルの倒壊を見て喜んでいたのを、私はこの目で見た。
たとえ俺が発砲しても、選挙では勝つよ 2016/1
たとえ私がニューヨーク5番街の真ん中でだれかを撃っても、選挙の票は失わない。
勝利演説 2016/11
「アメリカは、分裂の傷を乗り越えて、団結すべき時である」 「この国のすべての民に誓おう、私はアメリカ人のための大統領となる、そしてそのことは私にとってとても大切なことだと」 「すべてのアメリカ人は、最大限のポテンシャルを発揮するチャンスを得るだろう。これまで忘れられてきた人々は、もう忘れられることはない」
トランプが心臓病で死んだ 2016/8
トランプが心臓病で亡くなったというデマが流れ、「トランプ 死」で人々が検索しまくったことがあった。実際は、そっくりさんによる偽の写真だった。
トランプのかつら疑惑
アンチや負け犬は認めたがらないが、ご存知の通り、私はかつらを着けていない。私の髪は不揃いかもしれない、だが私自身の髪だ。 
○ 「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべきだ」 この発言後、与野党一体となっての非難の大合唱に包まれました。
○ 「メキシコ人は麻薬や犯罪を持ち込む」
○ 「メキシコは問題のある人間を(米国に)送り込んでいる。彼らは強姦(ごうかん)犯だ」 メキシコに対して「国境に万里の長城を造る」
○ 「彼(マケイン氏)は戦争の英雄ではない。私は捕虜にならなかった人が好きだ」
○ 「どわははは、世界は俺を中心に回っているんだ!」 グラハム議員(共和党)に対し「ばか」「間抜け」
○ 「トランプさん、あなたはバットマンですか?」質問に対し、トランプ氏「そうだよ!」
○ 「おい!そんな小汚い子供より、俺を先に助けろ!!金ならいくらでもやるぞ!!」
○ 「あの顔を見てみろよ。だれがあんな顔の奴に投票するってんだ?」
○ 「移民なんかくそくらえ」
○ 「貴様ーーー!!俺を誰だと思ってるんだ!不動産王のトランプ様だぞ!!」
○ 「世界同時株安は中国、お前らのせいだ!」  

 

イスラム教徒
イスラム教徒はデータベースに登録するよ 2015/11
「(イスラム教徒をデータベースに登録すべきかという記者の質問に) 絶対に実施する。データベース以外にも、いろいろなシステムを備えるべきだ。」 「米当局が事態を把握できるまでの間、イスラム教徒をアメリカ入国禁止にすべきだ。」
イスラム教徒は入国禁止 2015/12
「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべきだ」
このドナルド・トランプ氏の発言の後、ホワイトハウスのローズ大統領副補佐官は、ドナルド・トランプ氏のこれらの発言を聞いて、アメリカの価値観に完全に反していると批判。アーネスト大統領報道官も、「(ドナルド・トランプ氏は)大統領就任の資格を失った」とドナルド・トランプ氏。アメリカ国内のイスラム教徒の団体もすぐさま会見を開き、「常軌を逸した発言だ」とドナルド・トランプ氏を非難するなど、反発の声が相次いでいました。 
女性蔑視
2005年のNBC番組収録前の司会者との会話
「きれいな女性には自動的に引き寄せられる。俺はいきなりキスしだすんだ。磁石のように。ひたすらキス。待ったりしない」 「君はスターだから、向こうはやらせてくれる。何でもできる」「(ピー)をわしづかみしろ。何でもできる」  
メキシコ移民
メキシコ移民は強姦魔 2015/6
(メキシコ移民について) メキシコは、ベストではない人々、問題があり、麻薬や犯罪を持ち込む人々を送り込んでくる。彼らは強姦魔だ、中には善良な人もいるかもしれないが。
メキシコ移民が入ってこないよう、国境に壁を作ろう。費用はメキシコ持ちで
(同じく大統領選出馬宣言時の発言) (不法移民の流入防止のために) メキシコとの国境に「万里の長城」を建設し、メキシコにその費用を払わせる。  

 

日本批判
日米大使を接待漬け 2015/7
日本の安倍はやり手だよ、やつはすごい。地獄の円安で、アメリカが日本と競争できないようにした。さらに、安倍は(駐日米大使の)キャロライン・ケネディを接待漬けにして(言うことを聞かせることで)、アメリカに打撃を与えた。
貿易不均衡だしフェアじゃない 2015/8
日本から、何百万台もの車がひっきりなしに輸入されてくる。アメリカは日本に牛肉を輸出しているが、日本は買わないという。これは貿易不均衡だしフェアじゃない。
日本人の英語はでたらめ 2015/8
日本や中国と交渉をする時、彼らは部屋に入ってきて、決して『「天気がいいですね」などのあいさつを先にしない。彼らは「我々はディールを望む(We want deals)!」と話す。
なんでアメリカが日本を守らないといけないの? 2015/9
(もし中国などが日本を攻撃したらどうするかという質問に) アメリカが一歩引いても、日本は自ら防衛できるだろう。日本は中国との戦争に勝ち続けた歴史があるからね。なぜ、アメリカは日本を守ってやっているのか?ご存知の通り、日米安保条約は面白いよ。なぜなら、他国がアメリカを攻撃しても、日本はアメリカを助けなくてよい。なのに、他国が日本を攻撃したら、アメリカは日本を助けなければならない。
コマツのトラクターは安いから買われているだけ 2015/9
(友人がキャタピラー社ではなくコマツのトラクターを買った話をして) 友人がコマツのトラクターを買ったのは、円安ドル高でアメリカは日本と価格競争ができないからだ。機械の性能差ではない、このレベルの円安誘導をされると競争は不可能だ。
日本とまともな貿易なんてできない 2014/4
アメリカは日本に、何百万台もの車を関税ゼロで輸入させている。日本とまともな貿易などできるものか。我が国は大変な問題を抱えている 。
日本の核保有は結構いいんじゃん 2016/3
(日本と韓国の核保有は) アメリカにとってそれほど悪いことではない。(中略) アメリカは強い軍事力を持った裕福な国だったが、もはやそうではない。
日本を守るのにはカネがかかるんだよ (日米安全保障について) 2016/10
(ヒラリー・クリントン氏の「トランプ氏は、日本や韓国はなぜ核を使わないのかと発言している」という批判に対して) 日本や他の国を守る限り、アメリカは大金を失う。我々は、サウジアラビア・日本・韓国などを守り続けるわけにはいかない。同盟国との協定を再交渉する必要があると思う。  
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トランプ大統領就任演説 

 

ロバーツ最高裁判所長官、カーター元大統領、クリントン元大統領、ブッシュ元大統領、オバマ大統領、そしてアメリカ国民の皆さん、世界の皆さん、ありがとう。私たちアメリカ国民はきょう、アメリカを再建し、国民のための約束を守るための、国家的な努力に加わりました。私たちはともに、アメリカと世界が今後数年間進む道を決めます。私たちは課題や困難に直面するでしょう。しかし、私たちはやり遂げます。私たちは4年ごとに、秩序だち、平和的な政権移行のために集結します。私たちは政権移行中の、オバマ大統領、そしてファーストレディーのミシェル夫人からの寛大な支援に感謝します。彼らは本当にすばらしかったです。
しかし、きょうの就任式はとても特別な意味を持ちます。なぜなら、きょう、私たちは単に、1つの政権から次の政権に、あるいは、1つの政党から別の政党に移行するだけでなく、権限を首都ワシントンの政治からアメリカ国民に返すからです。
あまりにも長い間、ワシントンの小さなグループが政府の恩恵にあずかる一方で、アメリカ国民が代償を払ってきました。ワシントンは栄えてきましたが、人々はその富を共有していません。政治家は繁栄してきましたが、仕事はなくなり、工場は閉鎖されてきました。既存の勢力は自分たちを守ってきましたが、国民のことは守ってきませんでした。彼らの勝利は皆さんの勝利ではありませんでした。彼らが首都で祝っている一方で、闘っている国中の家族たちを祝うことはほとんどありませんでした。すべてが変わります。いま、ここから始まります。なぜなら、この瞬間は皆さんの瞬間だからです。皆さんのものだからです。ここに集まっている皆さんの、そして、アメリカ国内で演説を見ている皆さんのものだからです。きょうという日は、皆さんの日です。皆さんへのお祝いです。そして、このアメリカ合衆国は、皆さんの国なのです。本当に大切なことは、どちらの政党が政権を握るかではなく、私たちの政府が国民によって統治されているかどうかということなのです。
2017年1月20日は、国民が再び国の統治者になった日として記憶されるでしょう。忘れられていた国民は、もう忘れられることはありません。皆があなたたちの声を聞いています。世界がこれまで見たことのない歴史的な運動の一部を担う、数百万もの瞬間に出会うでしょう。この運動の中心には、重要な信念があります。それは、国は国民のために奉仕するというものです。アメリカ国民は、子どもたちのためにすばらしい学校を、家族のために安全な地域を、そして自分たちのためによい仕事を望んでいます。これらは、高潔な皆さんが持つ、当然の要求です。しかし、あまりにも多くの国民が、違う現実に直面しています。母親と子どもたちは貧困にあえぎ、国中に、さびついた工場が墓石のように散らばっています。教育は金がかかり、若く輝かしい生徒たちは知識を得られていません。そして犯罪やギャング、薬物があまりに多くの命を奪い、可能性を奪っています。このアメリカの殺りくは、いま、ここで、終わります。私たちは1つの国であり、彼らの苦痛は私たちの苦痛です。彼らの夢は私たちの夢です。そして、彼らの成功は私たちの成功です。私たちは、1つの心、1つの故郷、そしてひとつの輝かしい運命を共有しています。
きょうの私の宣誓は、すべてのアメリカ国民に対する忠誠の宣誓です。何十年もの間、私たちは、アメリカの産業を犠牲にして、外国の産業を豊かにしてきました。ほかの国の軍隊を支援する一方で、非常に悲しいことに、われわれの軍を犠牲にしました。ほかの国の国境を守る一方で、自分たちの国境を守ることを拒んできました。そして、何兆ドルも海外で使う一方で、アメリカの産業は荒廃し衰退してきました。私たちが他の国を豊かにする一方で、われわれの国の富と強さ、そして自信は地平線のかなたに消えていきました。取り残される何百万人ものアメリカの労働者のことを考えもせず、1つまた1つと、工場は閉鎖し、この国をあとにしていきました。中間層の富は、彼らの家庭から奪われ、世界中で再分配されてきました。しかし、それは過去のことです。いま、私たちは未来だけに目を向けています。きょうここに集まった私たちは、新たな命令を発します。すべての都市、すべての外国の首都、そして権力が集まるすべての場所で、知られることになるでしょう。この日以降、新たなビジョンがわれわれの国を統治するでしょう。
この瞬間から、アメリカ第一となります。貿易、税、移民、外交問題に関するすべての決断は、アメリカの労働者とアメリカの家族を利するために下されます。ほかの国々が、われわれの製品を作り、われわれの企業を奪い取り、われわれの雇用を破壊するという略奪から、われわれの国境を守らなければなりません。保護主義こそが偉大な繁栄と強さにつながるのです。わたしは全力で皆さんのために戦います。何があっても皆さんを失望させません。アメリカは再び勝ち始めるでしょう、かつて無いほど勝つでしょう。私たちは雇用を取り戻します。私たちは国境を取り戻します。私たちは富を取り戻します。そして、私たちの夢を取り戻します。
私たちは、新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、そして鉄道を、このすばらしい国の至る所につくるでしょう。私たちは、人々を生活保護から切り離し、再び仕事につかせるでしょう。アメリカ人の手によって、アメリカの労働者によって、われわれの国を再建します。私たちは2つの簡単なルールを守ります。アメリカのものを買い、アメリカ人を雇用します。私たちは、世界の国々に、友情と親善を求めるでしょう。しかし、そうしながらも、すべての国々に、自分たちの利益を最優先にする権利があることを理解しています。私たちは、自分の生き方を他の人たちに押しつけるのではなく、自分たちの生き方が輝くことによって、他の人たちの手本となるようにします。
私たちは古い同盟関係を強化し、新たな同盟を作ります。そして、文明社会を結束させ、過激なイスラムのテロを地球から完全に根絶します。私たちの政治の根本にあるのは、アメリカに対する完全な忠誠心です。そして、国への忠誠心を通して、私たちはお互いに対する誠実さを再発見することになります。もし愛国心に心を開けば、偏見が生まれる余地はありません。聖書は「神の民が団結して生きていることができたら、どれほどすばらしいことでしょうか」と私たちに伝えています。私たちは心を開いて語り合い、意見が合わないことについては率直に議論をし、しかし、常に団結することを追い求めなければなりません。アメリカが団結すれば、誰も、アメリカが前に進むことを止めることはできないでしょう。そこにおそれがあってはなりません。私たちは守られ、そして守られ続けます。私たちは、すばらしい軍隊、そして、法の執行機関で働くすばらしい男性、女性に、守られています。そして最も大切なことですが、私たちは神によって守られています。
最後に、私たちは大きく考え、大きな夢を見るべきです。アメリカの人々は、努力をしているからこそ、国が存在し続けていけるということを理解しています。私たちは、話すだけで常に不満を述べ、行動を起こさず、問題に対応しようとしない政治家を受け入れる余地はありません。空虚な話をする時間は終わりました。行動を起こすときが来たのです。できないことを話すのはもうやめましょう。アメリカの心、闘争心、魂を打ち負かすような課題は、存在しません。私たちが失敗することはありません。私たちは再び栄え、繁栄するでしょう。私たちはこの新世紀のはじめに、宇宙の謎を解き明かし、地球を病から解放し、明日のエネルギーや産業、そして技術を、利用しようとしています。新しい国の誇りは私たちの魂を呼び覚まし、新しい視野を与え、分断を癒やすことになるでしょう。私たちの兵士が決して忘れなかった、古くからの知恵を思い起こすときです。それは私たちが黒い肌であろうと、褐色の肌であろうと、白い肌であろうと、私たちは同じ愛国者の赤い血を流し、偉大な自由を享受し、そして、偉大なアメリカ国旗をたたえるということです。そしてデトロイトの郊外で生まれた子どもたちも、風に吹きさらされたネブラスカで生まれた子どもたちも、同じ夜空を見て、同じ夢で心を満たし、同じ全知全能の創造者によって命を与えられています。だからこそアメリカ人の皆さん、近い街にいる人も、遠い街にいる人も、小さな村にいる人も、大きな村にいる人も、山から山へ、海から海へと、この言葉を伝えます。あなたたちは二度と無視されることはありません。あなたの声、希望、夢はアメリカの運命を決定づけます。そしてあなたの勇気、善良さ、愛は私たちの歩む道を導きます。ともに、私たちはアメリカを再び強くします。私たちはアメリカを再び豊かにします。私たちはアメリカを再び誇り高い国にします。私たちはアメリカを再び安全な国にします。そして、ともに、私たちはアメリカを再び偉大にします。ありがとうございます。神の祝福が皆様にありますように。神がアメリカを祝福しますように。 
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トランプ新大統領就任式 
リンカーンの聖書と母からもらった聖書
現在、日本時間では21日の深夜3時ごろである。
トランプ新大統領が誕生して小一時間時がたっている。全世界から注目を集めた第45代米国大統領の就任式をリアルタイムで見て、そこから垣間見えることを幾つか列挙したい。もちろん新政権はこれから逐次新たな展開を提示するだろうから、全てが予見できるわけではない。しかし、少なくともトランプ大統領の発言からつかみ取ることができたことを述べてみたいと思う。
まず、就任式前から話題となっていたことだが、大統領はリンカーンの聖書とお母さんからもらった聖書、この2冊の上に手を置いて宣誓をした。そして副大統領のペンス氏はレーガン大統領の聖書の上に手を置いた。これにはいろんな意味があるが、両者に共通しているのは、「強いリーダーシップを取っていく」という決意の表れであろう。
ご存じの通り、リンカーンは南北戦争を終結させ、奴隷解放を成し遂げた偉大なリーダーとしてアイコン化されている。そしてレーガンは1980年代に強い米国を内外に体現してみせた、近年で最も人気の高い大統領である。さらにトランプ大統領がお母さんからもらった聖書に手を置いたというのも、古き良き米国人の伝統を遵守(じゅんしゅ)している姿を演出しているのだろう。
これからのトランプ政権は、激しく反対する勢力をなだめ、米国の「共通の未来」を共に手を携えて構築していくことが求められる。だからリンカーンとレーガン、そして母親が透けて見えるようにしたのだろう。なかなか考えたな、と思う。
忘れ去られていた人は
トランプ大統領は、就任演説冒頭で「ワシントンから権限を取り上げ、皆さんに譲渡した」と述べた。さらに「エスタブリッシュメントから、皆さんは勝利した」と宣言し、自分が名もなき市井の人々に選ばれたことを訴えた。そこには「傲慢(ごうまん)な暴れん坊」ではなく、これからは「強い指導者」となっていくという意欲が垣間見えた。
冒頭からこのように述べることで、米国の総意で自分は選ばれたのだ、とあらためて強調したかったのだろう。そうしなければならないほど、彼の周囲にはいつも物騒な話題ばかりだ。暗殺とまではいかないが、暴動やデモが就任式のすぐそばで起こっていたし、就任式に欠席する議員も数十人単位でいたほどだ。
さらに彼は「忘れ去られていた人は、もうこれから忘れられたままであることはない」と弱者へ眼差しを向ける。「国家は市民のためにあるのだ」と高らかに宣言し、それがないがしろにされてきた今までの政治を「もう終わった」と言い放つ。畳み掛けるように、今までの政治が生み出したもの、解決できなかったものを具体的に挙げる。「貧困」「不十分な教育、雇用機会」「麻薬」「ギャング」「テロリズム」などである。
そして、分断されつつある米国ではなく、亀裂の修復を目指す「新しいアメリカ」が宣言された。米国大統領のお決まりの文句「1つの国家(ワン・ネイション)」が飛び出し、そのために自分は今、宣誓したのだ、と述べた。ここでトランプ支持者は歓声を上げた。
アメリカファースト
自分がどうして選ばれたのか、そして支持してくれた人々が何を求めているか、その辺りを、具体例を挙げながら誰にでも分かるように明確にしたという意味では、ポピュリズム的色合いが強く出ているといえる。さらに続く部分では、産業や防衛問題にも言及し、「米国は今までの他国の利益、国境を守ってきた」、しかしこれからは「アメリカファースト(米国第一主義)」であると2回繰り返して、自らの色を強調した。おそらくこの言葉にメディアは飛びつくだろう。それほどキャッチーである。
「アメリカの豊かさ、強さがはるかかなたへ遠ざかってしまった」「中間層の利権が失われてしまった」と述べ、米国の利権をきちんと守りつつ、その在り方を堅持することを宣言したところなど、お行儀のよい姿勢を見せているが、その本質はいつもの自分だぞ、というアピールにもなっていた。
詩編133編「見よ、兄弟が共に座っている」
演説の後半、トランプ大統領は聖書の一節を用いた。
「見よ、兄弟が共に座っている。なんという恵み、なんという喜び」(詩編133:1)
そして、このように一致団結する姿を神が祝福し、守ってくれるのだと語ったとき、式に集まっていた人々が一番大きな歓声を上げていた。
さらにこの後、まるでキング牧師がワシントン大行進の時に語った「私には夢がある」という演説をなぞらえたような文言が飛び出してきた。
「子どもたちは、黒人であっても白人であっても、そして他の人種であっても、またどんな境遇で生まれようとも、同じ夢を見ることができ、創造主から同じ命が吹き込まれていることを実感する時が必ず来る」
米国に関して、多くのメディアは「分断」という言葉で現状を表現しようとしている。その言葉をそのまま信用していいのかについて議論はある。トランプ大統領の演説を聞いていて、彼が用いた表現、文言は、彼のオリジナルというよりも、むしろマスコミによって生み出された言葉(「エスタブリッシュメントから権限を奪う」「国境を守る」「中間層の利権」「政治家を信用しない」など)を巧みに用いることで、人々を自分の世界観に引き込むことを狙ったような印象を受けた。
つまり、今までのような具体的な攻撃や不快感をあらわにするやり方ではなく、マスコミによって人々の間をかしましく飛び交っている「トランプ語録」の数々を、逆に本人が巧みに駆使することで、これからも人々の関心を引っ張り続ける戦法の一端を披露したように感じられたということである。
就任演説で語られたこれらの語録にとらわれず、その趣旨をつかみ取ろうとするなら、彼は人々に対して一致を説いているし、期待を持ってほしいと訴えている。これは従来の大統領たちが就任演説の時に普通に行ってきたことであり、何も珍しいことではない。ご丁寧に聖書の一節を用いながら訴えていることは、「さあ、手を取り合って強いアメリカを再現しましょう」ということである。そこに皆が聞きたかった「トランプ語録」をちりばめることで、彼らしさを演出することも忘れていない。
全世界が、自分に対して抱いているイメージを逆に利用しながら、彼は従来の大統領と同じ路線へと静かにゆっくりと舵を切ろうとしているのかもしれない。その目指すところがリンカーンなのか、キング牧師なのか、それともペンス副大統領が用いた聖書の持ち主、レーガンのようになるのか。これは、今後を見守らなければならないことだろう。
私個人としては、トランプ劇場の新幕は、観客を魅了するに足るエンタメショーとして及第であったろうと思う。さあ、米国の新たな一歩が始まった! 
オバマケア撤廃へ大統領令に署名
トランプ米大統領は20日、オバマ前政権が進めた医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃に向けた大統領令に署名した。ホワイトハウス報道官によると、大統領令はオバマケアの迅速な撤廃に向け、「各省庁に現行制度による経済的負担を軽減するよう指示するためのもの」という。トランプ氏は選挙中、オバマ前政権の目玉政策であるオバマケアの撤廃を公約。今月11日の記者会見では「厚生長官が議会で承認され次第、代替案を提案する」と説明していた。 
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ポピュリズムに警告 「ヒトラー生む」とローマ法王 
フランシスコ・ローマ法王は21日付のスペイン紙パイスに掲載されたインタビューで、ポピュリズム(大衆迎合主義)がナチス・ドイツの独裁者ヒトラーのような「救世主」を生み出すと警告した。ただ、20日に就任したトランプ米大統領がこのような指導者かどうかについては、判断を下すのは時期尚早との見方を示した。
「米国はナチス・ドイツか」=ツイッターでトランプ氏
法王は「欧州のポピュリズムの例は(ナチス政権が誕生した)1933年のドイツだ」と指摘。「ドイツはアイデンティティーを取り戻す指導者を求め、そこに現れたのがヒトラーだった。彼は国民に選ばれ、国民を破滅させた」と述べた。
さらに、当時のドイツはアイデンティティーを守るために「壁と有刺鉄線」で自国を防衛しようとしていたと語り、メキシコとの国境に壁を建設し不法移民の流入を阻止しようとするトランプ大統領の構想を批判した。 
メディアとの対決色鮮明
トランプ米大統領は21日、中央情報局(CIA)本部を訪れた際の演説で「私は今もメディアと戦争している。彼らは地球上で最も不誠実だ」と批判した。スパイサー大統領報道官も同日、20日の就任式について一部のメディアが「意図的に虚偽の報道をした」と非難、「責任を取ってもらう」と述べた。大統領は昨年の選挙戦からメディアへの強い不信感をあらわにしてきており、トランプ政権は発足早々、対決姿勢を鮮明にした。
トランプ大統領やスパイサー報道官が取り上げた問題の一つは就任式の人出だった。スパイサー氏はホワイトハウスで記者団に対し、人出を少なく見せようと場面を切り取った写真があったほか、人数も不正確だったと主張。「誰にも人数は分からない」としながら、ある区域では「約25万人」といった数字を挙げて反論した。
大統領は「150万人くらいに見えた」と述べ、群衆で埋まった範囲を指摘した。しかし、ワシントン・ポスト紙は2009年のオバマ大統領就任時の写真とも比較して、「誤り」と報じた。
二つ目の問題はホワイトハウスの大統領執務室にある公民権運動家キング牧師の胸像。トランプ大統領が執務室入りした20日夜、これが撤去されたという記者会の代表取材情報が流れたが、その後、担当記者が誤認だったと謝罪した。
トランプ大統領は「メディアがいかに不正直かということだ」と批判。スパイサー氏も「無責任」と断じた。しかし、選挙戦からの大統領自身の発言やツイートにはこれまで訂正も謝罪もしていない数々の事実誤認がある。 
3100万人が視聴 トランプ米大統領就任式
米調査会社ニールセン・メディア・リサーチが21日公表した集計結果によると、20日のトランプ大統領就任式をテレビの生放送を通じて視聴した人は推定で約3100万人だった。これは2009年に大統領に就任したオバマ氏の時(3780万人)より少ないが、これを除けば、1981年のレーガン氏(4180万人)以後で最も多い視聴者数だという。
視聴者数はブッシュ氏親子の就任時よりも多かった。父のブッシュ氏の就任時(89年)は2330万人。息子は2001年の1期目が2900万人、05年の2期目は1550万人だった。
オバマ氏の2期目(13年)は2060万人に減少。ビル・クリントン氏の1期目(1993年)は2970万人、2期目(97年)は2160万人だった。
ニールセンは、3大ネットワークやケーブルテレビなど全米12の放送局を対象に視聴者数を集計した。 
反トランプデモに300万人 全米各地で女性蔑視にノー
トランプ米大統領就任翌日の21日、トランプ氏の女性蔑視発言などに抗議するデモが首都ワシントンなど全米各地で行われた。政治専門紙ザ・ヒルによると、ワシントンで50万人が参加し、全米では少なくとも300万人に膨れ上がったとみられる。同様の大規模な抗議デモは、ロンドンやパリなど世界各地で広がりを見せた。
米新政権は発足から100日間は「ハネムーン期間」と呼ばれ、メディアなどは批判を控えるとされてきた。だが、トランプ政権は就任直後から激しい抗議に見舞われる異例の船出となった。
ワシントン中心部は、デモ隊のシンボルカラーであるピンクの帽子を身に着けた参加者であふれ、シュプレヒコールや歓声がこだました。
デモ隊は連邦議会議事堂近くで人気歌手マドンナさんらが参加して集会を開いた後、約2キロ離れたホワイトハウスまで行進。通りを埋める人波は途切れなく続いた。就任パレード用に設置された観客席が残るホワイトハウス前では「これが民主主義のあるべき姿だ」とシュプレヒコールを繰り返した。
トランプ氏は、選挙戦で明らかになった「スターなら、女性はさせてくれる」という過去の発言や性的嫌がらせを受けたと複数の女性から告発されたことで批判を受け、共和党内からも問題視された。デモ行進では、女性蔑視問題だけでなく、不法移民の追放やロシアへの接近などトランプ氏のさまざまな政策を批判するプラカードが掲げられた。
ニューヨークから来た会社経営者キャサリン・エルバートンさん(67)は「トランプ氏に(デモ隊のメッセージが)伝わるかどうかは分からないが、閣僚や上院議員、下院議員らには伝わるだろう」と語った。オハイオ州の教育機関で働くアンジーさん(46)は「(トランプ氏には)女性に対する尊敬の念がかけらもない。選挙の結果を受けてやって来た。時代が数十年、巻き戻ってしまうことを懸念している」と話した。
ニューヨークやボストン、シカゴ、ロサンゼルスなどでも数万〜数十万人規模のデモが行われた。ニューヨークのデモに参加した大学職員ミシェル・クオモさん(54)は「トランプ政権は女性を尊重せず、性差別や外国人嫌悪を刺激している」と批判した。
欧州でも21日、ロンドンやパリ、ベルリン、ローマなどの主要都市で反トランプデモが繰り広げられた。 
日本は「重要な同盟国」
国家安全保障局の谷内正太郎局長は22日、米国のトランプ政権発足を受けてフリン大統領補佐官(国家安全保障担当)と電話で会談し、緊密に連携していくことを確認した。フリン氏は「日本は重要な同盟国だ」と述べ、関係強化に意欲を表明。安倍晋三首相とトランプ大統領の早期の首脳会談実現に前向きな考えを伝えた。
電話会談は、フリン氏側からの申し入れで行われた。フリン氏は「今後とも緊密に意見交換、連携していきたい」と呼び掛け、谷内氏は「協力していくことを楽しみにしている」と応じた。 
フリン氏はまた、「トランプ大統領は安倍首相にお会いして意見交換することを大変楽しみにしている」と述べた。日米両政府は、2月上旬に首相が訪米して初の首脳会談を行う方向で最終調整している。 
トランプ氏と電話会談へ 東エルサレムで入植推進 イスラエル首相
イスラエルのネタニヤフ首相は22日の閣議で、トランプ米大統領と同日夜に電話会談する予定だと明らかにした。
両首脳の電話会談は、トランプ氏の大統領就任後初めて。ネタニヤフ首相は議題について「パレスチナ問題やシリア情勢、イランの脅威だ」と述べた。
一方、エルサレム市当局は22日、イスラエルが占領する東エルサレムの入植地ラモットなどに計566戸の住宅を建設することを承認した。オバマ前米政権の圧力を受け、ネタニヤフ首相が延期を要請していた計画で、東エルサレムを将来の国家の首都と見なすパレスチナが反発するのは必至だ。 
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米で液晶パネル工場検討 鴻海、傘下のシャープと
鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘董事長(会長)は22日、台北市内で記者会見し、傘下のシャープと米国で液晶パネル工場の建設を検討していると明らかにした。トランプ米大統領が訴える米国内の製造業振興に応じた形で、投資額は70億ドル(約8000億円)を超える見通しだ。ただ郭会長は「米新政権の政策を見る必要がある」と述べ、慎重に判断する考えを示した。 
鴻海は昨年12月に中国の広東省広州市に大型液晶パネル工場を建設すると発表。シャープの技術力を生かし、超高精細の8Kテレビに対応する大型パネルの量産を2019年から始める。米国工場でも同じパネルを生産する可能性がある。
ただ、人件費の高い米国でのパネル生産は、コスト競争力が課題となりそうだ。
鴻海は中国本土に多数の拠点を持つ。郭会長は米国投資に関して「中国政府の圧力を感じたことはない」と強調した。 
「抗議者、投票しなかった」 トランプ氏、デモに不満 
トランプ米大統領は22日朝、自身のツイッターに「大統領選があったのに、抗議者たちはなぜ投票しなかったのか。セレブたちはものごとを悪くする」と投稿し、21日に全米、世界各地で行われたトランプ氏の女性蔑視発言に抗議するデモに不満を漏らした。
大統領選では、敗北した民主党のクリントン氏がトランプ氏を総得票数で約290万票上回っており、抗議者が投票しなかったとは言えない。ツイッターではトランプ氏の一方的な主張に批判が投稿され、同氏は約1時間半後、弁明するように「私は同意しない場合でも、意見を表明する人の権利を認める」とツイートした。 
イスラエル首相と2月に会談 トランプ氏、電話で招待
トランプ米大統領は22日、ネタニヤフ・イスラエル首相と電話会談し、2月初旬にワシントンを訪問するようネタニヤフ首相に要請した。ネタニヤフ氏も応じる考えを伝えたもようだ。就任直後のイスラエル首脳との電話会談は、トランプ氏がイスラエルとの関係を重視している表れと言える。直接会談の具体的な日程は今後決めるという。
電話会談は「友好的だった」(イスラエル首相府)といい、両首脳は、トランプ氏が見直しを示唆しているイラン核合意や、イスラエルとパレスチナの和平問題について協議した。ホワイトハウスによれば、トランプ氏は「イスラエルの安全保障に対するこれまで以上の関与」を確認。また、イスラエルとパレスチナの和平は両者の直接交渉によってのみ達成できると強調した。
一方、ネタニヤフ首相は「地域の平和と安定を促進するという共通のビジョンを構築するため、トランプ大統領と緊密に連携する意思」を表明したという。
親イスラエル路線を取るトランプ政権の誕生を受け、テルアビブにある在イスラエル米大使館を、イスラエルが「首都」と主張しているエルサレムに移転するかが注目されているが、今回の電話会談で協議されたかは不明。トランプ氏は選挙戦中に大使館移転を明言していた。 
米大使館移転に関しては、エルサレムの帰属をめぐってイスラエルと対立するパレスチナや、イスラエルの主張を認めていない国際社会が懸念を深めている。AFP通信によれば、スパイサー米大統領報道官は「この件の協議は初期の段階にある」と述べており、2月の両首脳の直接会談の主要議題の一つになる可能性がある。 
執務室のカーテンを金色に
20日就任したトランプ米大統領が、ホワイトハウスの執務室内に設置しているカーテンをオバマ前大統領時代の深紅色から金色に変更したことが22日分かった。米紙ワシントン・タイムズ(電子版)などが報じた。
トランプ大統領が20日に執務室で大統領令に署名した際、取材したメディアが部屋の模様替えに気付いた。このほか、オバマ前大統領が移動させていたチャーチル元英首相の像も執務室内に戻された。オバマ氏は公民権運動の指導者キング牧師の像と取り換えていた。
トランプ大統領はまた、室内の本棚にセオドア・ルーズベルト第26代大統領の像を設置したほか、オバマ前大統領が飾っていた美術品を撤去した。 
早期にNAFTA再交渉
トランプ米大統領は22日、カナダ、メキシコ両国と早期に「北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を始める」と表明した。就任後にNAFTAに言及したのは初めて。トランプ氏は31日にメキシコのペニャニエト大統領と会談し、カナダのトルドー首相とも近く会う。
日本の自動車メーカーなどはNAFTA域内の関税優遇を前提に、メキシコなどに投資しており、協定が見直されれば、北米戦略に影響が及ぶ可能性がある。
トランプ氏は22日、ホワイトハウス高官の宣誓式で「NAFTAを再交渉する」と宣言。移民や安全保障についてもメキシコと協議する意向を示した。 
トランプ氏は大統領選でNAFTAを米国に有利な協定に変えると公約。ホワイトハウスは20日にNAFTAを再交渉し、カナダ、メキシコが応じない場合は、環太平洋連携協定(TPP)同様に「離脱する」と発表していた。 
トランプ氏、抗議デモに批判
トランプ米大統領は22日朝、前日に全米と世界各地に広がったトランプ氏への抗議デモに対し、ツイッターで「大統領選があったのに、抗議者たちはなぜ投票しなかったのか」と批判した。デモ参加者は首都ワシントンでは50万人を超え、1969年11月の「ベトナム反戦デモ」(60万人以上)に匹敵する規模になったと報じた米メディアもある。トランプ氏は「抗議するくらいだったら投票に行け」という趣旨の反論で、批判盛り上がりのけん制に躍起だ。
「女性たちの行進」と名付けられたデモは、当初、20万人の参加者が見込まれていたが、倍以上に膨らんだ。米首都地下鉄は、抗議デモが開かれた21日の乗客総数が100万人を超え、20日の就任式当日の乗客数(57万人)を43万人上回ったと説明。トランプ氏は就任式出席者数を「150万人くらいに見えた」と主張したが、複数の米メディアはデモ参加者が就任式の出席者を上回った可能性を報じた。
トランプ氏の女性蔑視発言などを受けたデモに首都では歌手のマドンナさんらも参加し、人種差別反対や性的少数者の権利保護などを幅広く表明。これに対し、トランプ氏は22日朝のツイートで「セレブたちはものごとを悪くする」と不快感を漏らした。
大統領選では、敗北した民主党のクリントン氏がトランプ氏を総得票数で約290万票上回っており、抗議者が投票しなかったと言うトランプ氏のツイッター発言は必ずしも的を射ていない。トランプ氏の一方的主張には批判が強まっており、同氏は約1時間半後、弁解するように「私は、同意しない場合でも、意見を表明する人の権利を認める」ともツイートした。 
一方、大統領就任式のテレビ視聴者数が推定約3100万人だったことについて、トランプ氏は「4年前(のオバマ前大統領2期目)より1100万人も多い」と自賛した。しかし米紙ワシントン・ポストは、3100万人という視聴者数が2009年のオバマ氏1期目の就任式と比べ、約700万人少ないと報道、誤解を招きかねないものだと指摘した。 
トランプ氏、納税申告書開示せず
米メディアによると、トランプ大統領のコンウェー大統領顧問は22日、同大統領が就任後も納税申告書を開示しない方針であることを明らかにした。ABCテレビのインタビューで語った。
トランプ氏は以前、内国歳入庁(IRS)の監査が終了すれば納税申告書を開示する意向を示していた。コンウェー氏は申告書開示を求める20万人以上の署名が集まっていることへの対応を問われ、「ホワイトハウスの対応は、納税申告書を開示しないということだ」と指摘。「人々は(開示に)関心を抱いていない」と述べた上で、「彼らはトランプ氏に投票した。大統領とその家族はすべての倫理的なルールに従っている」と強調した。
CNNテレビによれば、トランプ氏は大統領選期間中、1972年以降の主要政党の大統領候補としては、初めて納税申告書の開示をしなかった。 
トランプ氏にTPP翻意促す 菅官房長官
菅義偉官房長官は23日の記者会見で、トランプ米大統領が環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を表明したことについて「TPPは高い戦略的・経済的意義を有している。米国にとっての具体的意義に理解を促しながら、さまざまな機会を通じて粘り強く働き掛けをしていきたい」と述べ、翻意を促す考えを改めて示した。菅長官はトランプ氏の大統領就任を歓迎。同氏が「米国第一主義」を掲げ、保護主義的な姿勢を鮮明にしたことについては「わが国の企業に与える影響を注視していきたい」と述べた。「日本企業は、米国の良き企業市民として、米国経済に大きく貢献している」とも指摘した。 
豊田トヨタ社長、トランプ米政権との連携に意欲
トヨタ自動車の豊田章男社長は23日、岐阜県各務原市内で記者団に対し、米国のトランプ新政権との関係について、「行政と民間企業は地域の繁栄のため、お互いの得意分野で協力しあうことが大事だ」と述べ、連携に意欲を示した。豊田社長は、「自動車会社だけでは地域を幸せにできないし、行政だけでもできない」と指摘。その上で、「トヨタは世界のどの工場でも町一番(の工場)になりたいと思っており、今後も新たに取り組んで行く」と述べ、米国経済への貢献を続ける考えを強調した。また、就任前の10日に会談したペンス副大統領については、トヨタが工場を置くインディアナ州の前知事であることを説明。「トヨタが地域社会でいかに愛されているかを理解している人が副大統領に就いたことは心強い」とし、トランプ政権との関係構築に向け、ペンス副大統領への期待感を示した。 
〔米大統領就任反響〕 規制緩和によるプラス効果期待
桜田謙悟SOMPOホールディングス社長=米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを慎重に行っていくことやトランプ大統領の雇用確保の観点に基づく為替政策から、過度のドル高は回避される可能性が高い。当社の海外保険事業全体への影響については、新大統領の政策による各国経済への影響を踏まえ慎重に見極める必要がある。一定の規制緩和は高い確度で実現されると思われ、わが社のアメリカ事業にプラスになると期待している。 
〔米大統領就任反響〕 米政策動向などを注視
永野毅東京海上ホールディングス社長=米国のトランプ新大統領がどのような政策をとるのかはいまだ不透明感が高い。日米双方の景気、他国経済への波及、米国の政策の動向などを北米拠点と連携を密にし注視していく。法人税率改正や金融規制緩和といった政策で米国経済が活性化され、日本を含む世界経済全体に前向き感が広がっていくことを期待する。 
「トランプ監視」奮闘の米メディア
トランプ米大統領が米主要メディアの報道内容の信頼性を攻撃する中、米メディアはトランプ氏就任演説のファクト・チェック(事実確認)を通じ事実誤認を暴くなど対決姿勢を強めている。ニューヨーク・タイムズが就任演説に対して「トランプ大統領の暗黒郷米国」との社説を掲げたのをはじめ、有力紙は批判の論調を強めた。トランプ氏の監視に奮闘する米メディアの力が果たして、同氏の対応を変えられるか注目が集まる。
「希望より疑念」と演説批判
「今ここで、米国の殺りくは終わる」。就任演説でまずやり玉に挙がったのが、トランプ氏が米国の暴力犯罪を取り上げたこの発言。USAトゥデーは「ピーク時の1991年に比べ、2015年の暴力犯罪は半分以下になった」と指摘。ニューヨーク・タイムズも「確かに15年は前年比4%増となったが、長期的な減少傾向における一時的な上昇にすぎない」と分析した。
このほか、減り続ける「雇用を増やす」としたトランプ氏の発言も、USAトゥデーは「75カ月連続で雇用は増加している」と反論した。
ファクト・チェックに加え、就任演説の内容に対する評価も厳しい。ワシントン・ポストは社説で「この国がワシントンのエリートと外国権益にだまされ、損害を被り、貧困化し、犯罪が増加しているという誤ったイメージを描いた」と懸念を示し、「不安をかき立てることは、トランプ氏の政治的利益にかなうのかもしれないが、国の安定には寄与しない」と非難した。
ニューヨーク・タイムズは社説で就任演説が「希望より疑念を呼んだ」と論評。USAトゥデーの社説も「自身の優先政策を実行するために不可欠な国民や議会の支持を得る上で、この不作法な就任演説がどう役立つのか」と疑問視した。
「米国版文化大革命」
「米国第一」を全面に出したトランプ氏に対し、海外メディアは警戒を強めた。
英紙ガーディアン(電子版)は「これからは、他国のために何かすることにかなり消極的な大統領と付き合わなければならない」という見方を紹介。英紙タイムズ(電子版)も、トランプ氏がオバマ前政権の政策撤廃に着手したことに触れ、トランプ氏が「革命を始めた」と伝えた。
20日付の仏紙フィガロ(電子版)は、トランプ氏が地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」からの脱退を示唆したことを取り上げ、「欧州は中国と協力して環境問題に取り組み、インドをはじめとする他国を説得する役割を担うことになるだろう」と解説。米国抜きの国際秩序に対する欧州の重要性を指摘した。
一方、トランプ氏の相次ぐ対中批判発言にいら立つ中国指導部。共産党機関紙・人民日報系の環球時報は社説で、トランプ氏が演説で国内政治構造と国際貿易秩序での大きな変化を示唆したと伝え、「中国のネットユーザーの一部は『米国版文化大革命』を発動すると考えている」と紹介した。
同紙社説はまた、米中の貿易摩擦が起こると予想しつつ、トランプ氏が台湾問題で対中圧力を強めていることは「交渉カードにすぎない」と強調。一方で「もし中国を圧力で譲歩させたいなら、(トランプ氏が)あらゆる手段を利用することを排除できない」と強い警戒感を示した。 
〔米大統領就任反響〕 米国事業に変更なし
柄沢康喜MS&ADホールディングス社長=トランプ新大統領が目先の雇用創出など自国の成果追求にとどまることなく、「世界経済の牽引役である米国」の役割を果たすことに期待したい。当社グループの米国事業は、現時点で特段変更の予定はなく、世界最大の保険市場である米国を引き続き重要な市場と捉え、ビジネスの拡大を図っていく。 
米産業保護に懸念 榊原経団連会長
経団連の榊原定征会長は23日の記者会見で、米国のトランプ新大統領が自国産業の保護方針を打ち出したことについて「政府の保護下にある産業は体質を弱めこそすれ、強くすることはない」と懸念を表明。保護主義的な政策を改めるべきだとの認識を示した。米政権が環太平洋連携協定(TPP)から離脱を表明したことに関し、榊原会長は「TPPは完全に死んだわけではない」と述べた。北米自由貿易協定(NAFTA)も含め、日本の政府や経済界が自由貿易体制の経済的意義を粘り強く訴えていけば「大統領の翻意を促すことができるのではないか」と指摘。2017年秋にも訪米団を派遣する方針を明らかにした。米国の政策が世界経済に与える影響については「新政権が掲げる減税やインフラ投資などで米経済が強化され、世界経済をけん引する形になる」と楽観的な見方を示した。榊原氏は、日本で17年春闘が事実上スタートしたことに関連し、米国が保護主義的な動きを強化しても、日本の雇用や賃金には「今すぐ影響が及ぶことはない」との考えを明らかにした。 
トランプ氏と日米の絆強化・「共謀罪」早期成立目指す 安倍首相
安倍晋三首相は23日午後、衆院本会議で行われた代表質問で、20日に就任した米国のトランプ新大統領と「できるだけ早期に会談し、揺るぎない日米同盟の絆をさらに強化していきたい」と述べた。トランプ政権が離脱を正式発表した環太平洋連携協定(TPP)に関しては、「戦略的、経済的意義について腰を据えて理解を求めていきたい」として、翻意を促していく考えを示した。民進党の野田佳彦幹事長らへの答弁。
「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案について、首相は「国内法を整備し、国際組織犯罪防止条約を締結できなければ、2020年東京五輪・パラリンピックを開けないと言っても過言ではない」と指摘。「一般の方々が対象となることはあり得ない。国民の理解を得られるよう法整備に努める」と述べ、早期成立を目指す考えを強調した。
文部科学省が組織的に天下りをあっせんしていたことを受け、首相は「国民の信頼を揺るがすもので、あってはならないことだ。徹底した調査を行い、再発防止策を講じたい」と述べた。松野博一文科相も「深く反省すべきだ。厳正に対処し、文科省職員の抜本的な意識改革を進めていく」との考えを示した。民進党の大串博志政調会長の質問に答えた。
一方、首相は韓国・釜山で慰安婦を象徴する少女像が設置されたことに関し、「日韓合意の日本側の義務は全て果たしてきている。韓国側にも合意を誠実に履行するよう粘り強く求めていく」と述べ、少女像撤去を求めていく姿勢を示した。 
稲田朋美防衛相による昨年末の靖国神社参拝について、首相は「私人の立場での参拝に、政府として立ち入るべきものではない」と述べた。
安倍政権が掲げる20年度までの基礎的財政収支(PB)黒字化目標について、野田氏は「達成不可能だ」と断言。これに対し首相は「経済再生を図りながら実現していく」と、目標を堅持する考えを強調した。 
「一つの中国」堅持をトランプ政権にクギ
中国外務省の華春瑩・副報道局長は23日の定例会見で、トランプ米政権の発足を受け、「新政権は台湾問題の高度な敏感性を十分に認識し、『一つの中国』政策を堅持し、慎重かつ適切に問題に対処すべきだ」と述べ、新政権の台湾政策に改めてクギを刺した。華副局長は「双方は互いの核心的利益を尊重し、建設的なやり方で違いを管理し、両国関係の大局が妨げられないようにする必要がある」と強調。新政権とも「衝突せず、対抗せず」「相互尊重」「ウィンウィン協力」の原則の下、関係を発展させることに期待を示した。トランプ大統領が就任演説で「米国第一主義」を主張したことについては、「グローバル化時代では国家間の利益は融合しており、誰も独善的にはなれない」と反論。「(米中間の)貿易戦を仕掛けても、勝者はおらず、共倒れとなる」と経済分野でも米中の協調を訴えた。 
トランプ保護主義を警戒 産業界
トランプ米新大統領が環太平洋連携協定(TPP)からの離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉など保護主義的な政策を打ち出したことに、日本企業が警戒を強めている。NAFTAに加盟するメキシコは米国へ輸出される自動車の生産拠点になっており、進出企業への影響は避けられない。当面は「再交渉の中身を注視する」(ホンダ広報部)と情勢を慎重に見極める方針だ。日本貿易振興機構によると、メキシコに進出する日本企業は約1000社で、このうち約半数が自動車や自動車部品だ。人件費の安さを生かせると進出が相次いだ。現在、撤退の動きは出ていないが、米大統領選後、「投資のペースは落ちている」(同機構米州課)という。日産自動車はメキシコの3工場で年間80万台超を生産している。広報担当者は「北米での生産体制は非常に慎重に扱うべき課題」と対応の難しさをにじませる。マツダは「どのような政策であれ、実施されるなら対応する」とコメントする。東レは、メキシコで自動車のエアバッグ用繊維などの生産拠点を建設中だ。広報担当者は「投資方針を変える考えはないが、どのような影響があるか注視したい」と話す。TPP離脱表明に関し、産業界では「大変残念だが、経済連携拡大に向けた日本政府の取り組みに積極的に協力したい」(新日鉄住金の進藤孝生社長)との声が出ている。米国への輸出を念頭に、ベトナムで繊維事業を拡大している伊藤忠商事は「輸出先の変更もあり得る」(広報部)として、欧州などへの輸出シフトの検討も始めた。 
2国間交渉を警戒 農業関係者
米国のトランプ新大統領が環太平洋連携協定(TPP)から離脱する方針を発表したことを受け、国内の農業関係者の間に警戒感が広がった。米国が新たな2国間の貿易交渉を求めてくる可能性が出てきたためだ。日本の農産物市場の開放をめぐって「TPP以上に厳しい要求を突き付けてくるのではないか」との声が早くも出ている。TPPで牛肉や豚肉などの関税が大幅に引き下げられれば低価格の輸入品が増え、国内生産が打撃を受けるとされている。そのため、米国のTPP離脱宣言に、畜産関係者は「ひとまず、ほっとしている」と胸をなで下ろした。ただ、トランプ大統領が「米国第一」を掲げているだけに、先行きを楽観する関係者は少ない。日米交渉が現実のものとなれば「強引な貿易交渉を進めようとしてくる」(全国農業協同組合中央会の幹部)との見方が根強いからだ。政府は2015年10月のTPP大筋合意をきっかけに国内農業の体質強化に向けた事業に予算を配分している。ただでさえ、農業者の高齢化など国内農業の課題は多い。関東地方の野菜農家は「TPPの行方が不透明になっても、国産品の競争力を高める取り組みを支援してほしい」と語った。 
トランプ米政権、本格始動 迅速行動で指導力アピール
20日に就任式を終えたトランプ米大統領は週明けの23日、「米国第一」主義に基づく政策の実現に向けて本格始動した。米メディアによると、大統領周辺はこの日を「行動初日」と位置付けており、公約を迅速に実行に移し、指導力をアピールしたい考えだ。大統領は23日、ツイッターに「(今週は)雇用と国家安全保障に焦点を当てた忙しい週になる」と記した。大統領は同日、まずはホワイトハウスでビジネス界のリーダーとの朝食会に出席。この後、複数の大統領令に署名する。大統領令の内容は明らかにされていないが、昨年11月下旬には就任初日の行動計画として、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱通告などを挙げていた経緯がある。大統領はペンス副大統領と昼食をともにした後、午後に労働界のリーダーと意見交換。連邦議会の各党幹部を迎えたレセプションに出席するのに続き、ライアン下院議長(共和党)と会談し、公約実現に向けた協力を要請する見通しだ。一方、大統領は20日に閣僚7人の承認を上院で得る青写真を描いていたが、民主党の反対が強く、マティス国防長官とケリー国土安全保障長官の2人にとどまった。大統領は23日中に中央情報局(CIA)長官にポンペオ氏を充てる人事の承認も獲得し、安全保障の陣容を整えたい考えだ。今回の大統領交代は就任式が金曜日となったため、大統領は週末も慌ただしい日程をこなした。21日は礼拝を済ませた後、CIA本部を訪問。22日は政権高官の宣誓式に臨み、治安機関への感謝の集いに出席した。日程の合間を縫ってネタニヤフ・イスラエル首相と電話会談したのに加え、竜巻の被害が拡大するジョージア州のディール知事にも電話し、支援を約束した。ただ、新政権の船出は大統領にとって厳しいものとなった。21日にはトランプ氏に抗議するデモが全米各地で行われ、ベトナム反戦デモに匹敵すると言われる約50万人がワシントンに集結。ニューヨークなど全米各都市を加えれば、少なくとも300万人以上が参加したとみられている。 
米のTPP離脱で協議 日豪首脳
安倍晋三首相は23日、オーストラリアのターンブル首相と電話で会談し、トランプ米大統領が環太平洋連携協定(TPP)離脱を正式表明したことを受け、対応を協議した。豪州政府は米国抜きでTPPを発効できないか関係各国と協議する方針を示しており、電話会談でも話し合われた可能性がある。電話会談は豪州側の要請で行われた。ターンブル首相は、メルボルンで在留邦人が犠牲となった車の暴走事件に関し、安倍首相に弔意を伝えた。 
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日本市場に貿易障壁 自動車販売で名指し批判
トランプ米大統領は23日、「米国(の自動車メーカー)は日本国内で販売が増えていないのに、日本は米国に何十万台も輸出している」と主張、対日貿易で障壁があると日本を名指しで批判した。ホワイトハウスでの経済界首脳との会合で述べた。トランプ大統領は「この問題は協議しなければならない」と強調。日本に対し、「公正」な貿易を求める考えを明らかにした。中国市場についても「米国製品を売ることがほとんど不可能だ。自由貿易とはいえない」と非難した。また、法人税率を現行の35%から「15〜20%程度に引き下げる」と表明。オバマ前政権下の過剰な規制が企業活動を阻害しているとして「米国内規制の75%以上を撤廃する」と強調した。 
トランプ氏の米国第一歓迎 ハンガリー首相
AFP通信によると、ハンガリーのオルバン首相は23日、ブダペストでの会合で演説し、トランプ米大統領が掲げる「米国第一主義」は他国が追随できる先例だとして歓迎した。首相は、米国が自国を優先することで「われわれも自分たちを第一に考えることが認められるだろう」と指摘。「これは大きな自由だ」と強調した。オルバン首相は2015年から欧州に押し寄せた難民らの流入阻止策を取り、欧州連合(EU)が決めた加盟国の難民分担受け入れに反発。EUの意思決定に不満を訴えてきた。トランプ氏に対してはかねて支持を表明していた。 
アベノミクスに打撃
トランプ米大統領は選挙中の公約通り、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱に踏み切った。米国が内向き志向を強めることで、自由貿易の恩恵を取り込む狙いだった安倍政権の成長戦略は暗礁に乗り上げる恐れがある。トランプ氏は、米鉄鋼業などの衰退を招いたのはグローバル化のせいだと主張。20日の就任演説では「保護こそが素晴らしい繁栄と強さをもたらす」と力説し、多国間の自由貿易体制に距離を置き、保護主義政策を志向する姿勢を鮮明にした。安倍政権は、アベノミクスの実現には、貿易を通じた世界の成長を取り入れる必要があると強調してきた。貿易自由化に反対する農業団体などの反対を押し切ってTPP批准にたどり着いたものの、今後は戦略の練り直しを迫られる。また、米国のTPP離脱でアジア経済の勢力図が変わり、中国が影響力を増す可能性もある。米国はTPPにより、台頭する中国をけん制してきたが、今後は中国の外交、経済的な影響力がアジアで拡大しそうだ。トランプ政権は関税引き上げなどを示唆し、中国に圧力をかける構えで、米中間の経済摩擦の激化は避けられない。輸出入額の3割以上を米中が占める日本への影響は必至だ。 
米クローガー、1万人雇用へ
米食品スーパー大手クローガーは23日、米国内の店舗で約1万人を新たに雇用すると発表した。国内雇用の創出を最優先に掲げるトランプ大統領にアピールする狙いがあるとみられる。同社の現在の従業員数は、子会社を含め計44万3000人。2016年は1万2000人以上を新規に雇用したという。小売業界では、世界最大手の米ウォルマート・ストアーズが今月、米国内で今後1年間に1万人を新たに雇用すると発表。インターネット通販最大手の米アマゾン・ドット・コムも、今後1年半で10万人以上の雇用を米国で創出すると表明している。 
対テロ戦で協力確認 エジプト大統領と電話会談
トランプ米大統領は23日、エジプトのシシ大統領と電話で会談し、対テロ戦支援や同国の経済改革への協力を確認した。大統領就任以降、外国首脳との電話会談は4人目で、アラブ諸国首脳では最初となる。スパイサー大統領報道官が発表した。報道官は「トランプ大統領はエジプトへの軍事支援の継続と経済改革支援を約束し、(シシ大統領の)将来の米国訪問を話し合った」と説明した。シシ大統領は昨年9月、ニューヨークでトランプ氏と会談している。オバマ前政権は、2013年夏のエジプト治安当局によるデモ隊弾圧などを受けて同国への軍事支援を一時凍結。シシ大統領に対して、人権状況の改善などを求めていた。 
対米関係「再定義する」 NAFTA維持を模索 メキシコ大統領
メキシコのペニャニエト大統領は23日、外交政策演説で、トランプ米新政権に関し、「(対米関係を)再定義していかなければならない」と述べた。北米自由貿易協定(NAFTA)などをめぐって、両国が対等な立場で見直し協議に臨む重要性を訴えた。ペニャニエト氏は「国益を守るために行動する」と強調。米国の雇用を奪っているなどとメキシコ批判を繰り返すトランプ氏に対しては、「対立や服従ではなく、対話と交渉が求められている」と呼び掛けた。トランプ氏はメキシコとカナダがNAFTAの再交渉に応じなければ離脱する構えを見せている。ペニャニエト氏は「NAFTAを維持すべきだ」と述べ、見直しを迫る米国との交渉に応じる考えを明らかにした。不法移民問題では、トランプ氏が主張する「国境の壁建設」に反対する姿勢を改めて示した。 
トランプ大統領を提訴「外国政府からの対価は違憲」 米市民団体
トランプ米大統領が所有するホテルや不動産などの事業で外国政府から対価を受け取っているのは米国憲法に違反するとして、政治倫理に詳しい弁護士や憲法学者などでつくるワシントンの市民団体が23日、大統領をニューヨークの連邦裁判所に訴えた。提訴したのは「ワシントンの責任と倫理を求める市民(CREW)」のメンバーら。CREWは声明で「外国からの報酬に関する米憲法の規定は、議会の承認なしにトランプ氏が外国政府から対価を受け取ることを禁じている」と主張した。トランプ氏は提訴について「根拠がない」と記者団にコメントした。 
大統領補佐官の通信記録調査 ロシアの工作めぐりFBIなど
23日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、連邦捜査局(FBI)や中央情報局(CIA)がロシアの工作に関する調査の一環として、トランプ大統領の側近であるフリン大統領補佐官(国家安全保障担当)の通信記録を調べていたと報じた。犯罪につながるような証拠が見つかったかどうか、今も調査が続いているかどうかは不明という。フリン氏をめぐっては、ロシアのキスリャク駐米大使と昨年12月29日に電話で複数回話していたと米メディアが相次いで報道。この日はオバマ前大統領が対ロ制裁を発表した日だったことから、トランプ大統領が制裁をどう扱うかを話し合ったのではないかと臆測を呼んでいた。ジャーナル紙によると、FBIなどはこの時の通話内容を中心に、フリン氏とロシア政府当局者の通信記録を精査した。また、昨年8月まで選対本部議長を務め、ロシアとの親密な関係がうわさされたポール・マナフォート氏ら複数の元トランプ陣営関係者も調査の対象となった。スパイサー大統領報道官は23日の記者会見で、フリン氏とキスリャク氏は数日前も含め、これまでに2回しか電話したことがないと説明。いずれも大統領とプーチン・ロシア大統領の電話会談の調整などが目的だったと指摘し、問題はなかったとの認識を示した。 
NATO重視の立場強調 米国防長官
マティス米国防長官は23日、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長と電話で会談し、トランプ政権発足後も同盟関係を重視する米国の立場を強調した。国防総省のデービス報道部長が発表した。マティス長官は同日、ファロン英国防相、カナダのサージャン国防相ともそれぞれ電話協議を行い、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦での協力などについて話し合った。20日に正式就任したマティス長官と外国国防相の電話会談は初めて。トランプ大統領は先の欧州メディアとのインタビューで、NATOを「テロに対応しておらず、時代遅れだ」などと批判。一方、NATO変革連合軍最高司令官の経験もあるマティス氏は長官就任前の上院軍事委員会の公聴会で「同盟国を支えることで、米国はより強くなる」と述べ、同盟重視の姿勢を明確にしている。 
国務長官人事を承認 米上院外交委
米上院外交委員会は23日、トランプ大統領が国務長官に指名したレックス・ティラーソン前エクソンモービル会長(64)の就任を賛成11、反対10で承認した。上院本会議の承認を経て、就任する。委員会の共和党議員は賛成したが、民主党議員が反対に回った。また、中央情報局(CIA)長官に指名されたマイク・ポンペオ下院議員(53)の就任が上院本会議で承認された。ティラーソン氏がロシアのプーチン大統領と親しいことなどを懸念してきた共和党のマケイン議員らも同日までにティラーソン氏の人事に支持を表明しており、本会議でも承認される見通し。上院は定数100で、共和党が過半数の52議席を占める。人事承認に関する上院公聴会では、共和党のルビオ上院議員らがティラーソン氏とプーチン大統領との親密な関係を問題視。ティラーソン氏は「北大西洋条約機構(NATO)がロシアを警戒するのは正しい」と指摘するなど、「親ロシア」イメージの払拭(ふっしょく)を図った。ティラーソン氏は1975年、技術者として石油大手エクソンに入社し、2006年にトップに上り詰めた。外交や行政の実務経験がない極めて異例の国務長官となる。 
ドル高、一転けん制 次期米財務長官
ムニューチン次期米財務長官は、上院議員宛ての書簡で「過度に強いドルは、短期的に経済に悪影響を与える可能性がある」と指摘した。ブルームバーグテレビが23日報じた。ドル高をけん制する形となり、同日のニューヨーク外国為替市場ではドルが対円で急落し、円相場は前週末の1ドル=114円台後半から112円台後半に上伸した。トランプ大統領は先に米紙に対し「ドルは強過ぎる」と述べたが、ムニューチン氏は今回の書簡で、これに理解を示し、ドル高是正に動く可能性を示唆した。ムニューチン氏は19日の上院の承認公聴会で「長期的に強いドルが重要だ」と強調。歴代政権の判断を維持し、大統領発言で動揺する市場の沈静化を図っていた。ムニューチン氏はこのほか、貿易相手国の為替操作問題に取り組むと表明。中国の為替操作の実態を調べるほか、通貨安競争の回避に向け、国際通貨基金(IMF)や20カ国・地域(G20)などと連携すると述べた。 
「南シナ海支配を阻止」 米報道官
スパイサー米大統領報道官は23日の記者会見で、中国が南シナ海で進める軍事拠点化について、中国が造成する人工島が実際に公海にあるかどうかが問題で、「われわれはある国が国際水域を支配する行為を阻止する」と中国をけん制した。トランプ政権の対中政策をめぐっては、国務長官候補のティラーソン氏が上院指名公聴会で「(中国の)南シナ海の人工島への接近は認められない」と指摘。スパイサー氏は記者会見で具体的措置に触れなかったものの、「米国は国益を確実に守る」と強調した。スパイサー氏はまた、米中関係の方向性について「トランプ大統領は国家と米国の労働者の利益のために戦っている。(対中政策は)経済的かつ安全保障の観点から良い取引ができるかどうかで決まる」と説明した。 
就任直後の支持率45%
米調査会社ギャラップは23日、世論調査に基づくトランプ大統領の最初の支持率が45%だったと発表した。大統領選で選ばれた大統領の就任直後の支持率としては、比較できるデータが残る1953年以降で最低。不支持率は過去最高の45%だった。歴代大統領で最初の支持率が最も高かったのはケネディ氏の72%。2番目はアイゼンハワー氏とオバマ氏の68%で、これまで最も低かったのはレーガン氏とブッシュ氏(父)の51%だった。調査は就任式当日の20日から22日にかけて、全米の成人男女1525人を対象に実施した。 
日米摩擦再燃を懸念 トヨタ
トランプ米大統領が日米の自動車貿易を「公平ではない」と批判したことを受け、日本の自動車業界では、1980年代に激化した日米貿易摩擦が再燃しかねないとの懸念が広がっている。特に同氏から就任前に名指しで批判されたトヨタ自動車は困惑を隠せない様子だ。米国で車両生産を始めて約30年の歴史を強調し、米社会への貢献に引き続き理解を求めていく考えだ。「トヨタが地域に愛される企業であることを理解していただいており、心強い」。豊田章男社長は23日、トランプ政権との関係構築に向け、トヨタが工場を置くインディアナ州で知事を務めたペンス副大統領に期待感を示した。トヨタの米国戦略は現地化の歴史でもある。80年代に日米貿易摩擦が深刻化すると、トヨタは85年に米ゼネラル・モーターズ(GM)と合弁で米国で車両生産を開始。88年にはケンタッキー州に初の単独工場を稼働させ、米社会へ「良き企業市民」(豊田社長)として浸透を図ってきた。米国での生産台数は累計2500万台以上。全米で約13万6000人の従業員を抱える。豊田社長は「全ての工場がその町一番(の存在)になる取り組みを新たに進めていく」と語る。一方で、トヨタは米新政権の通商政策が「今までの延長線上ではないことはもはや明らか」(幹部)とも受け止めており、今後の政策の行方を慎重に見極める構えだ。 
中絶支援への補助金禁止
トランプ米大統領は23日、大統領権限を行使し、海外で家族計画の一環として、人工妊娠中絶の支援をしている団体への政府の補助金交付を禁止した。共和党は中絶に反対しており、民主党のオバマ前政権が認めた措置を撤回した。トランプ氏は選挙中、妊娠中絶手術を受けた女性への処罰の必要性に言及し、批判を浴びた。こうした経緯から、民主党支持者らはトランプ政権下で中絶の権利が脅かされる恐れがあると懸念を強めている。また、トランプ氏は大統領権限により、連邦職員の新規採用やポスト新設を凍結した。3カ月以内に職員の規模を縮小する長期計画を策定する。22日付以降の人事に適用するが、軍のほか、安全保障・治安関係や幹部の一部は対象から除外する。 
米大統領指示書
トランプ米大統領は環太平洋連携協定(TPP)からの永久離脱を米通商代表部(USTR)に命じる「大統領指示書」に署名した。指示書は、行政機関などに速やかに大統領の意向実施を促すことができる。通常は重要ではない措置に用い、議会や裁判所が取り消すことができる。大統領は、より厳格な措置を講じるため、「大統領令」を発動することもできる。大統領令は「指示書」と異なり、連邦官報への記載が必要。トランプ氏はTPP離脱を急ぐため、指示書を選択した可能性がある。トランプ政権の与党共和党は、オバマ前大統領による指示や大統領令を激しく批判してきた。 
米国に再考促す TPP関係閣僚
トランプ米大統領が環太平洋連携協定(TPP)からの永久離脱を大統領権限に基づいて指示したことに対し、24日の閣議後記者会見で関係閣僚からは「TPPが持つ戦略的、経済的意義について腰を据えて理解を求めていきたい」(麻生太郎財務相)などと、米国に再考を促す努力を粘り強く続けるとの見解が相次いで示された。閣僚発言は、米国にTPPへの復帰を求めつつ、米政権が求める2国間貿易交渉に防御線を張った格好だ。ただ、トランプ大統領は保護主義的な発言を繰り返しており、日本側の期待とは裏腹に情勢は厳しさを増している。岸田文雄外相は「(米国も)自由貿易において、戦後大きな利益を得てきたことは間違いない」と述べた上で「日米間でしっかり意思疎通を図っていくことは重要だ」と強調。石原伸晃経済再生相は「自由貿易体制は世界経済が成長する源泉だ」と指摘した。米国のTPPからの離脱をめぐっては、TPP署名国のオーストラリアが米国抜きの発効を含む代替案を各国に呼び掛けている。しかし、米離脱後のTPP署名国の経済規模は世界の国内総生産(GDP)の約4割から1割強へと大幅に縮小する。このため閣僚からは「従来の枠組みの中で貿易ルールを仕上げたい」(山本有二農林水産相)、「米国が入ることが非常に重要」(世耕弘成経済産業相)などと、米国の復帰を求めていく考えが示された。 
「対決も屈服もしない」 メキシコ大統領
メキシコのペニャニエト大統領は23日の演説で、貿易や不法移民問題をめぐるトランプ米新政権との交渉について「対決はしないが、屈服もしない」と述べた。ペニャニエト大統領は、トランプ大統領と2国間の貿易問題などについて話し合いたいとした上で、メキシコの国益は守ると強調した。不法移民の流入を防ぐため、対メキシコ国境に壁を構築するというトランプ大統領の構想に関しては「メキシコは壁(の有効性)を信じない。わが国が信じるのは架け橋だ」と語った。 
米大統領、支持基盤にアピール
トランプ米大統領は23日、環太平洋連携協定(TPP)からの永久離脱を通商代表部(USTR)に指示した。就任早々の指示に踏み切ったのは、大統領選勝利の原動力になったとされる労働者層へのアピールが狙いだ。しかし、伝統的な共和党の立場とはかけ離れており、党内からは批判の声も出ている。「これはずっと約束してきたことだ。労働者にとって素晴らしいことだ」。トランプ大統領は23日、忙しい日程の合間を縫ってホワイトハウスの執務室で指示書に署名する際、招き入れた報道陣を前にTPP離脱の意義をこう力説した。大統領は選挙の得票数では、民主党候補だったクリントン前国務長官に290万票近い差をつけられた。それでも当選できたのは、かつて製造業で栄えながら国際競争にさらされて衰退した中西部の「ラストベルト(さび付いた工業地帯)」の各州で競り勝ったことが大きい。その駆動力となったのがTPP離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の主張だ。これらの約束は、かつて民主党を支持していた白人労働者などを引きつけ、トランプ氏を当選ラインまで押し上げた。既成政治との対決を売りにする大統領にとって、支持者のサポートは生命線だ。大統領がTPP離脱と合わせ、人工妊娠中絶支援団体への補助金交付禁止と政府職員の新規採用凍結を指示した背景にも、キリスト教右派と保守強硬派「ティーパーティー(茶会)」への配慮がうかがえる。もっとも、トランプ政権はアジア外交を担当するスタッフはおろか、国務長官すら議会の承認待ちで空席の状態だ。そうした中でTPP離脱を決めたことには批判も出ている。共和党のマケイン上院議員は声明で「失望した」と表明。「経済ルールを書き直す隙を中国に与える。安全保障に深刻な結果を招く」と指摘した。これに対し、TPPに反対してきた民主党サイドからは「TPPが死んでうれしい」(サンダース上院議員)と歓迎する声が上がっている。 
得票敗北「不法移民のせい」
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)などによると、トランプ米大統領は23日、議会指導者との会合で、大統領選の得票総数で民主党のクリントン候補に及ばなかったのは、不法移民が大挙してクリントン氏に投票したためだと主張した。トランプ氏は大統領選後の昨年11月にも、ツイッターに「違法に投票した数百万人を差し引けば、得票総数でも私が勝っていた」と投稿。この主張に根拠はなく、各地の選管当局も不正投票の証拠を確認していないが、トランプ氏は就任後も事実に基づかない発言を繰り返している。大統領選では、獲得した選挙人の数でトランプ氏が勝利したが、得票総数は約290万票差でクリントン氏が上回った。23日の会合は非公開で、ライアン下院議長(共和)ら与野党の指導者が出席。ワシントン・ポスト紙(電子版)によれば、トランプ氏は席上、約10分間にわたって大統領選について発言し、「300万から500万票」の不正投票があったと述べたという。 
米自動車3社と会談へ 雇用で意見交換
トランプ米大統領は24日、ホワイトハウスで米自動車大手3社の経営トップと会談する。20日の就任演説で「米国製品の購入と米国人の雇用」促進を強調したトランプ氏が、各社に改めて国内の雇用拡大を迫るとみられる。会談にはゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のトップが出席する予定。スパイサー大統領報道官は「より多くの雇用を取り戻すため、どのように協力できるか意見を聞く」と説明した。雇用創出を重視するトランプ氏は、23日にも米製造業大手トップらと会談。法人税の15〜20%への引き下げや国内規制の75%の撤廃を約束し、米国にとどまるよう説得。同時に「米拠点を閉鎖して数千人を解雇し、海外に行くのなら、巨額の『国境税』を課す」とくぎを刺した。自動車業界は、生産拠点のメキシコ移転などで製造業を衰退させたとして、選挙期間中からトランプ氏の厳しい批判にさらされてきた。3社は今月、米工場への7億〜10億ドル(約790億〜1130億円)の投資を相次いで発表し、雇用効果をアピール。トランプ氏もツイッターで感謝の意を表すなど、態度を軟化させている。 
「米国第一」に転換 4カ国首脳と電話会談 トランプ外交
20日就任したトランプ米大統領は4カ国首脳と電話会談を行い、外交を本格的に始動した。オバマ前政権が重視した「国際協調」路線から「米国第一主義」に大きくかじを切ろうとしている。就任直後に電話会談したカナダのトルドー首相、メキシコのペニャニエト大統領には、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を突き付けた。国際的な枠組みや合意よりも米国の国益を最優先に考え、「経済と安全保障の観点での良い取引」(スパイサー大統領報道官)を重視する外交姿勢が鮮明になりつつある。トランプ大統領は、イスラエルのネタニヤフ首相と22日に電話し、「イスラエルの安全保障へのこれまで以上の関与」を約束。選挙戦で公言した米大使館のエルサレム移転を実行し、エルサレムがイスラエルの「首都」と認めるかが焦点だ。エルサレムの帰属や地位はパレスチナとの和平交渉で決めるという従来の米政府や国際社会の立場を覆すことになり、パレスチナやアラブ諸国が猛反発する恐れがある。一方、「アラブの盟主」エジプトのシシ大統領とは23日に電話会談し、軍事支援の継続や経済改革への支援を約束した。オバマ政権が批判してきた人権問題には踏み込まず、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦などでの協力を重視するとみられる。また、ロシアが主導し、カザフスタンで開かれたシリア内戦をめぐる和平協議には、駐カザフ米大使がオブザーバーとして出席した。主要人事の固まっていない国務省からの派遣は見送ったが、シリア問題やウクライナ紛争をめぐり悪化したロシアとの関係改善を目指すトランプ大統領の意欲を示した。 
トランプ大統領、TPP永久離脱 日本も名指し批判
トランプ米大統領は23日、環太平洋連携協定(TPP)からの永久離脱を、大統領権限に基づき米通商代表部(USTR)に指示した。「米国第一」主義に沿った2国間の貿易交渉、他国の「不公正な貿易」是正に政策の軸足を移す。自由貿易を標ぼうしてきた米国の政策転換が世界経済に動揺を与えるのは必至。TPPを柱にした安倍政権の成長戦略アベノミクスは見直しを迫られる。
トランプ氏は大統領令の署名に先立ち、米企業幹部らと会談。日本や中国の市場が閉鎖的だと批判した。2月上旬にも行われる見通しの日米首脳会談で、安倍晋三首相に2国間協定交渉の検討や一層の市場開放を求める公算が大きい。
大統領令は「TPPから離脱し、交渉からも永久に離脱する」と明記。米国の産業振興と労働者保護につながる「あらゆる2国間交渉の追求」も命じた。これを受け、USTRは日本など他のTPP署名国に離脱を通知する。
TPPは、日米など12カ国が2016年2月に署名した。米国が批准しなければ発効せず、現状の協定は実現の見通しが立たなくなった。日本政府は「米国の翻意を促す」として、自由貿易の重要性を引き続き訴えていく考えだが、極めて厳しい情勢だ。
トランプ氏は企業幹部らとの会合で、日本で米国車の販売が低迷している一方、「日本は米国で多くの車を売っている。公平ではない」などと主張し、是正に意欲を示した。法人税引き下げや規制緩和で米国内の投資を促す方針も表明。大統領令署名に際して「労働者にとって素晴らしいことだ」と強調した。
米国の保護主義政策への傾斜は、太平洋全域の外交、通商関係に影響を及ぼす公算が大きい。米国のアジアでの影響力が弱まり、日本と中国などが進める域内包括的経済連携(RCEP)締結交渉など、「米国抜き」の枠組みづくりが加速する可能性もある。
トランプ氏は大統領選で、TPPが米国経済、雇用にとって「災いだ」と非難。20日の就任演説後にホワイトハウスは基本政策を公表し、TPPから離脱し、カナダ、メキシコと締結した北米自由貿易協定(NAFTA)を再交渉すると表明していた。 
◇「TPP永久離脱」大統領令の骨子
一、環太平洋連携協定(TPP)署名国から離脱。TPP交渉からも永久に離脱
一、米産業振興・労働者保護につながる2国間貿易交渉を追求
一、米通商代表部(USTR)に、他国への離脱通知を指示 
トランプ米大統領、TPP離脱の大統領令に署名 1/24
トランプ米大統領は23日、選挙公約通り、環太平洋連携協定(TPP)からの正式離脱に関する大統領令に署名した。中国の影響が増す中、米国はアジア諸国と距離を置くことになる。
トランプ氏は、大統領令が「米労働者にとって素晴らしいことだ」と指摘。この日行われた労働組合幹部との会談では「すべての人や企業を国外移転させるばかげた貿易協定を停止させる」と述べた。
オバマ前大統領は中国の台頭に対抗するため、経済の軸としてアジア・太平洋重視の戦略へと転換。その一環としてTPP協定の合意を実現させたが、米議会の承認は得られていなかった。
トランプ氏の貿易政策を巡るスタンスは、国際通商協定により国内の仕事が奪われているという米国民の意識を映している。共和党は長らく自由貿易を掲げているが、環境は変わりつつあり、2012年の大統領選で共和党のロムニー候補の顧問を務めたフーバー研究所のランヒー・チェン氏は、「トランプ氏は長年はっきりしていたトレンドを反映している」と語った。
一方、シンクタンク「Center for the National Interest」のハリー・カジアニス氏は、トランプ氏がアジアの同盟国の不安をなくす別の方策を用意する必要があるとし、新たなアジア戦略の主軸として日本や台湾、ベトナムとまず接触すべきだと指摘した。 
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次から次へと署名…止まらない大統領令 1/25
トランプ氏が就任以来大統領令を連発している
トランプ米大統領が就任後、相次いで大統領令に署名している  / 大統領が議会の承認を得ることなく連邦政府や軍に直接発令することができる権限のこと / 権限の制限範囲は憲法で明確に規定されていないが、議会を通さずに政策を実現する有力な手段となる / 議会の採決が不要な大統領令を活用することで、オバマ前大統領の政策を速やかに覆す姿勢をアピールする
次々と署名するトランプ大統領
○ バマケア見直し
オバマケアは、6人に1人が無保険といわれたアメリカで、政府が補助金を出して、所得が低い人でも保険に加入できるようにするなど、事実上の国民皆保険を目指すもの / これについて、20日、第45代大統領に就任したトランプ氏は就任初日にホワイトハウスの大統領執務室で大統領令に署名し、オバマケアの見直しを指示 / トランプ政権と与党・共和党はオバマ前政権の政治的遺産であるオバマケアの撤廃を最優先課題に掲げており、就任初日から公約実現に動き出した / 大統領令では、代替案が完成するまでオバマケアによる財政負担を最小限に抑えるよう各省庁に指示した
○ TPP離脱
23日、米国が環太平洋連携協定(TPP)を離脱するための大統領令に署名 / 「今われわれがとった行動は、米国の労働者にとってすばらしいことだ」と述べた / 署名に先立つ会合では、日本の自動車市場が「公平ではない」と批判し、対日圧力を強める考えを表明 / 自由貿易圏の拡大を目指す多国間の貿易協定の締結を取りやめ、自国の利益を最優先にする米国第一主義に基づき、二国間の貿易交渉を推進する方針に政策転換する
○ 製造業の手続き簡略化
国内製造業に対する各種承認や規制をめぐる手続きを簡素化する大統領令に署名 / 「ノー」なら「ノー」、「イエス」なら「イエス」の回答を企業に迅速に伝達する必要があるとの考えを示した / トランプ氏は、鉄鋼業などの労働者の支持に応えるため、製造業の雇用創出を優先課題としている / 「ビジネス感覚」で個別に貿易相手国を揺さぶり、対米貿易黒字の削減や「不公正貿易」の是正を促すとみられる
○ パイプラインの建設プロジェクト
24日、カナダから米メキシコ湾に原油を運ぶ「キーストーンXLパイプライン」などの建設を推進する大統領令に署名 / キーストーンのプロジェクトはオバマ前政権下で却下された / トランプ大統領は石油業界に対し、より自由にインフラを拡大させる意向で、今回の動きはそうした方針を具体的に示す例となる / 米中西部を通る「ダコタ・アクセス・パイプライン」についても承認の手続きを進めるよう省庁に指示した
○ 中絶支援への補助金禁止
海外で家族計画の一環として、人工妊娠中絶の支援をしている団体への政府の補助金交付を禁止 / 共和党は中絶に反対しており、民主党のオバマ前政権が認めた措置を撤回した / 中絶に反対する保守派の意向を汲んだ政策の転換となった / 世界保健機関(WHO)は、年間2100万人以上の女性が発展途上国で危険な中絶をしており、妊産婦死亡の約13%を占めると推定している
○ 連邦政府の採用凍結
連邦職員の新規採用やポスト新設を凍結した / 3カ月以内に職員の規模を縮小する長期計画を策定する / スパイサー大統領報道官は23日の記者会見で「近年、連邦政府職員が劇的に拡大したことへの対抗策だ」として、空きポストの補充やポスト新設を中止すると説明 / 22日付以降の人事に適用するが、軍のほか、安全保障・治安関係や幹部の一部は対象から除外する
最近の大統領令を受けて国内では? / 賛否は別としてやる気は伝わってくる
トランプがガンガン大統領令署名しててやる気まんまんで面白い TPP離脱とかオバマケア白紙とかオバマの面子丸潰れだし 温暖化の規制も緩和して工場の規制も緩和して石油パイプラインも作ってシリアイラクからの難民も制限するそうだw 次にどんな大統領令が出てくるか米国民はドキドキだろうな。 / トランプはぶれていないな。TPP永久に離脱を大統領令で、それに安倍は腰を据えてトランプの理解を求めていくだとよ。むだな労力を使うな。あきらめ、今後どうしたら日本の生きる道を寝食を忘れて考えることだ。 / トランプ大統領ってなんでもかんでも大統領令でやってるけど、それって議会だと通らないってわかってるって事で、アメリカ第一は独裁なの?なイメージになりそうで時代に逆行してる気がしてる。 EU離脱も決まってから大騒ぎで トランプ大統領も決まってから大騒ぎで 選挙大事と改めて思ったわ。 / 大統領令って勅令みたいなもんらしいけど、こんなにパッパと出していくもんなのかね。選挙公約というか、そういうの守っていくのはそうなんだけど、議会は全く関与できない世界ぽいからこれが民主主義と言われてもなんだかなぁとも思うね。
まだまだ署名は続きそう
国家安全保障上の脅威をもたらすとみなす国の国民による米国への入国を禁止する見通し / トランプ氏は大統領選の選挙運動で、当初、イスラム教徒の入国を禁じると発言 / その後、「審査が十分に行われない」場所から渡航する人々への査証発給を停止すると修正していた / 大統領令には、難民の入国制限や、イスラム教国であるイラク、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメン出身の一部のビザ保有者に対する入国制限が含まれる見通し 
トランプ大統領 メキシコ国境に壁建設へ 大統領令に署名 1/26
アメリカのトランプ大統領は、25日、メキシコとの国境沿いに壁を築くよう命じる大統領令に署名し、「アメリカは国境を取り戻す。多くの命と雇用を守る」と述べ繰り返し主張してきた壁の建設に向けて動き出すことになりました。アメリカのトランプ大統領は、25日、視察先の国土安全保障省でメキシコとの国境沿いに壁を築き、国境警備を担う職員を5000人増員することなどを命じる大統領令に署名しました。このあと、トランプ大統領は職員を前に演説し不法移民の流入が治安を脅かしているとして「アメリカは国境を取り戻す。多くの命と雇用を守る。麻薬の密売人など犯罪者が好き勝手にふるまう日はきょうで終わりだ」と述べ、治安の確保に全力を挙げる姿勢を強調しました。トランプ大統領は、これまで壁の建設を繰り返し主張し、その費用はメキシコ政府が支払うとしていますが、メキシコ側は拒否する姿勢を強調しています。トランプ大統領は、これに先立ちABCテレビのインタビューで「壁の建設は数か月後には始まるだろう」という見通しを示すとともにまずはアメリカの費用で建設するものの、メキシコ側が全額返済する仕組みを作ると説明しました。トランプ大統領は、メキシコのペニャニエト大統領と来週会談する予定で、壁の建設がNAFTA=北米自由貿易協定の見直しとともに主要な議題になる見通しです。壁の建設をめぐっては国内のヒスパニック系団体などが反対していて、トランプ大統領への反発が強まることも予想されます。
ライアン下院議長「ともに取り組む」
アメリカのトランプ大統領が、メキシコとの国境沿いに壁を築くよう命じる大統領令に署名したことについて共和党のライアン下院議長は25日、声明を発表し、「これはアメリカを安全にするためのものだ。不法移民の流入を止めるため、トランプ政権とともに取り組む。トランプ大統領を称賛する」と述べ、共和党が多数を占める議会もメキシコとの国境沿いの壁の建設に向けて、トランプ政権と協力していく考えを示しました。
ホワイトハウス前で抗議
アメリカのトランプ大統領がメキシコとの国境沿いに壁を築くよう命じる大統領令に署名したことに対し、移民や難民の支援を行っている教会などの呼びかけで、ヒスパニックの人たちおよそ100人がホワイトハウスの前に集まって抗議しました。参加者たちは「壁はいらない」などと書かれたプラカードを持ち、ホワイトハウスに向かって「誰も送還させないぞ」とか「協力して戦い続けよう」と叫びました。両親がメキシコからの移民だという34歳の男性は、「多くの人が日々強制送還をおそれながら、これから何が起きるのか心配しています。この抗議活動がトランプ大統領に対する強いメッセージになってほしい」と話していました。
批判的な発言が相次ぐ
アメリカのトランプ大統領が、メキシコとの国境沿いに壁を築くよう命じる大統領令に署名したことについて25日、中米のドミニカ共和国で開かれた中南米の指導者らが集まる会議で、批判的な発言が相次ぎました。このうち、反米左派の南米エクアドルのコレア大統領は「中南米地域に限らず、世界中の移民は、しっかりと守られるべきだ。移民をなくすための解決策は壁を作ることではない」と述べ、移民の問題は、各国が協力して取り組むべきで、トランプ大統領の対応は問題の解決につながらないと非難しました。また、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長も、「アメリカの新政権がこの地域を尊重するよう望んでいるが、貿易や移民などの面で、この地域の利益を危機に陥れるような宣言がなされていることは気がかりだ」と述べてトランプ大統領の姿勢が中南米地域に及ぼす影響に懸念を示しました。 
大統領令連発で実行力誇示=トランプ氏就任1週間 1/26
トランプ米大統領の就任から27日で1週間。大統領はこの間、権限を駆使して大統領令などを連発し、企業経営で培った実行力をアピールした。ただ、根拠もなく中傷を繰り返すなどリーダーらしからぬ姿勢は相変わらずで、与党・共和党内ですら懸念が消えていない。
「何千人の命、何百万人の雇用、巨額のドルを救う2本の大統領令に署名した。大統領選中に訴えた移民制度改革の一環だ」。トランプ大統領は25日、国土安全保障省でメキシコ国境への壁建設を命じる大統領令に署名した後、待ち受けるテレビカメラの放列に向かってこう力説した。
移民制度改革のほかにも、就任日の20日に「オバマケア」と呼ばれる医療保険制度の撤廃に向けた大統領令に署名。週末を挟んだ23日には環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を指示し、24日にはオバマ前大統領が却下したはずのパイプライン建設計画の推進を命じた。
25日までにトランプ氏が署名した大統領令レベルの文書は12本。オバマ路線を覆すための署名式は26日も予定されており、日々の恒例行事となりつつある。ホワイトハウスは25日、「大胆な行動への称賛」と題した文書を配布し、「信じられない活動ペース」などとする識者評を紹介した。
一方、21日に中央情報局(CIA)本部を訪れた大統領は、神聖な場所であるCIA殉職者の碑を目の前にした演説で、「就任式の聴衆は150万人ぐらいに見えた。25万人という報道はうそだ」とメディア批判を展開。「見下げ果てた自己宣伝」(ブレナン前CIA長官)と非難の声が上がった。
続いて、スパイサー大統領報道官が記者会見し「過去最大の聴衆だった」とまくしたてたのも大統領の指示だったとの見方が強く、「子どものようだ」(米紙)と批判が出ている。
23日の議会指導者との会合では、大統領選の得票数で民主党候補のクリントン氏に及ばなかったのは、不法移民が大挙してクリントン氏に投票したからだと主張。事実ではないと批判を浴びると、25日、ツイッターで「不正投票を大々的に調査する」と宣言した。
大統領選でトランプ氏と鋭く対立した共和党のグラム上院議員は「理由もなく選挙制度を批判し続ければ、人々は大統領を人として疑い始める」と指摘。「批判をやめなければ、国を統治する能力をむしばむことになる」と警告した。 
トランプ氏、メキシコ国境に壁 大統領令に署名 1/26
トランプ米大統領は25日、不法移民への規制を強化する大統領令2件に署名した。メキシコとの国境沿いに「壁」を直ちに建設するよう連邦政府に指示したほか、不法移民に寛容な都市への連邦資金の交付カットなども命じた。治安対策として掲げた選挙公約の実現に動き出した形だが、メキシコは強く反発しており先行きは不透明だ。
大統領令はメキシコとの国境沿いに「物理的な壁を直ちに建設する」と明記した。国境を警備する職員を追加で5000人雇うほか、国境近くに不法移民の収容施設も整備する。こうした施策の実現に必要な作業を始めるよう国土安全保障省などの連邦政府に命じた。
議会の承認が必要な建設費用の見積もりも指示した。メキシコと陸続きで接する全長約3200キロメートルの国境には既に鉄製の柵などがあるが、東西を横断する「壁」を建てるとなると巨額の費用がかかるとみられている。
トランプ氏は25日に収録した米ABCテレビのインタビューで、壁の建設が「数カ月後」に始まると説明。建設費用はメキシコが後で全額返済すると強調した。これまでメキシコ政府は建設費用を負担しないと反発している。
別の大統領令では「サンクチュアリ・シティー(聖域都市)」と呼ばれ、不法移民を保護している地域に連邦資金を交付しないよう指示した。入国管理職員を追加で1万人雇う。母国が受け入れを拒否している不法移民の多くを犯罪者と非難したうえで、直ちに国外退去させるよう求めた。
トランプ氏は選挙中、メキシコ人を「暴行魔」と呼ぶなど差別的な発言を繰り返し、国内外から批判を浴びてきた。犯罪や薬物を米国に持ち込んで治安を悪化させているとしてメキシコ国境沿いに壁を建てたり、不法移民を米国から強制退去させたりすると公約に掲げて大統領選に当選した。 
トランプ氏の大統領令連発、議会権限の侵害懸念も 1/26
 共和党議員、オバマ氏の手法の再現を警戒
ドナルド・トランプ米大統領は移民制限から国家安全保障に至るまで多岐にわたる大統領令を発令している。連邦議会共和党の中からは、トランプ氏が連発する大統領令が最終的に議会の権限を侵害することになるのではないかとの懸念が出ている。
共和党議員の多くは、トランプ氏はバラク・オバマ前大統領が出した大統領令を無効にし、国の安全保障を担保する措置を取る権限を持っており、それは最高司令官としての役割と整合性があると考えている。メキシコとの国境に壁を築くというトランプ氏の政策を総論として支持する議員も多い。
「問題は大統領である誰かが大統領令を出すかどうかということではなく、その中身だ」。共和党のマイク・リー上院議員(ユタ州)はそう話した。今のところ行き過ぎた権限の行使を示すと思える大統領令は出ていないとも述べた。
だが、行政機関を監督し、政策に関する資金を提供するという連邦議会の役割をトランプ氏が尊重するかどうかについて、疑念が生じつつある。共和党議員は、移民政策や医療保険制度などに関するオバマ氏の大統領令は議会が合法的に有する権限を侵害したと指摘。トランプ氏が同じことをするかどうか注視しているという。
「早めに手を打つ責任が議会にはある。トランプ大統領がほしいままに使える権限に夢中になり過ぎる前のほうがいいかもしれない」。こう話すのは法律問題を扱う保守系の研究機関パシフィック・リーガル・センターで憲法を担当するシニアフェローのトッド・ガジアノ氏だ。同センターは数十年前、ロナルド・レーガン元大統領の側近によって設立された。
下院共和党の保守派議員で構成される「ハウス・フリーダム・コーカス」で会長を務めるマーク・メドウズ氏(ノースカロライナ州)は「大統領が米国民に約束したことを実行するための道具を確実に与えたいと考える保守派は多い。だが、議会を迂回したり、憲法によって定められている大統領権限を逸脱したりするような悪い前例を作ることのないよう適切な方法で行うことも担保したい」と話す。
中道派の共和党議員も警戒している。マイク・コフマン下院議員(コロラド州)はこれまでのトランプ氏による大統領令の発令は「かなり積極的」だとしたうえで、「(大統領令が)すでに施行されている法規制の範囲内であれば適切だと思うが、それが新たな法律を制定するものであれば不適切だと思う」と話した。
民主党議員の大半はトランプ氏の大統領令に反発している。クリス・マーフィー上院議員(コネティカット州)は、不法移民の一部に市民権を与える仕組みを作ると同時に、国境管理を強化し警察を助けるための法律を議会が制定すべきだと話す。「壁を築いたり地元警察から資金を奪ったりと、分断の元になるようなトランプ大統領の政策はわれわれの安全には役立たない」 
止まらぬトランプの大統領令連発 国連への拠出金削減か 1/26
就任以来、大統領令を連発しているトランプ大統領が、新たな大統領令を複数準備していることが分かった。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、一つはイランや北朝鮮などへの制裁を妨げる国際機関に対する、資金拠出の減額や停止を可能にする大統領令。対象となる機関は国連をはじめ国際刑事裁判所など。さらに、多国間条約の見直しに着手する大統領令の草案も準備中。トランプに盾を突く者は、国際機関だろうと国家だろうと許さないという態度を鮮明にしている。
トランプは就任初日、医療保険制度オバマケアを見直す大統領令に署名したのを皮切りに、人工中絶関連機関への補助金支出禁止、TPP離脱、石油パイプライン建設などの10本の大統領令に署名。25日にもメキシコ国境の壁建設、ニューヨークやシカゴなど、不法移民に寛大な“聖域都市”への補助金停止の大統領令に署名した。
大統領令は合衆国憲法第2条により、大統領の権限で策定でき、法律と同じ効力を持つ。
だが、トランプの個人的な意向で重要な国策が左右される懸念や、議会軽視とも取れる大統領令の連発に、与党の共和党からも反発が出るのは必至とみられ、今後の政権運営の火種となりそうだ。 

 

 

 
 
世界恐慌 1929/10/24

 

アメリカ合衆国の「永遠の繁栄」
第一次世界大戦中、ヨーロッパ各地で行われた戦争を援助していたアメリカ合衆国は、戦後イギリスに代わり、債務国から世界最大の債権国に変貌しました。戦時中より、アメリカ経済は著しい経済を遂げ、1920年代の工業生産力は、世界のどの地域をも圧倒し、「永遠の繁栄」という状況が続いていました。
暗黒の木曜日
著しい成長を遂げていたアメリカ経済ですが、1929年10月24日、ニューヨーク株式市場の株価が大暴落します。大恐慌の引き金となる「暗黒の木曜日」です。
この大暴落の原因は以下のようなものでした。
○購買力の低下 / 大戦直後から始まった農産物の価格が下落したため、農業に携わる人々の購買力が低下した。
○過剰な設備投資 / アメリカ国内の企業生産に関わる設備投資が次々と行われ、それに基づく生産過剰が起こっていた。
○貿易の縮小 / 戦後の復興を目指していたヨーロッパ諸国が次第に高関税政策をとるようになったことで、世界的に貿易が縮小した。
このような状況が重なって起こった恐慌は、アメリカ全土に広がり、その影響は全産業に及びます。その結果、さまざまな金融機関や企業が倒産し、その数は4500社にもなりました。また、これにより1933年までにアメリカ国内の失業者の数は1500万人にも達し、社会不安が広がりました。
世界恐慌へ
当時世界最大の債権国だったアメリカ合衆国の大不況は、瞬く間に全世界へと広がります。第一次世界大戦の敗戦国、ドイツとオーストリアでは、アメリカ資本による復興を目指していたため、大不況によって資本が引き上げられると、資金不足により企業や銀行が次々に倒産しました。1931年にイギリスが金本位制を停止すると、深刻なヨーロッパの状況を認識したアメリカは、フーヴァー=モラトリアムを行いました。これは、支援していたドイツ経済を立て直すため、一年間戦債や賠償の支払いを猶予するものでしたが、時すでに遅く、効果はありませんでした。このモラトリアムを行った第31代アメリカ大統領フーヴァーは、自身の任期中に起こった大恐慌に対し、自由放任主義を貫いたため、結果的にアメリカの不況は放置されることになりました。
バブル
 
 

 
2017/1
 
 2016/12
大統領選で浮き彫り「二つのアメリカ」

 

米社会の「声なき声」とは
2017年1月20日、人種差別や男女差別をあおるような発言を繰り返したドナルド・トランプ氏が米国の第45代大統領に就任する。世界に衝撃を与えた当選の背景には、グローバリズムから取り残された人々、富と貧困、社会の分断、ワシントンの政治家が聞き取れなかった「声なき声」があったと言われている。
大手メディアがとらえ切れなかった米社会の生の姿はどういうものなのか。カリフォルニア州オレンジ郡の地元新聞社で働く日本人記者が、日常の取材活動の中で見てきた「分断された社会」の姿を伝える。
編集局にうめき声
11月8日午後8時半、私が勤めるロサンゼルス郊外の地方新聞「オレンジ・カウンティ・レジスター」の編集局にうめき声が広がった。
CNNがフロリダ州でのトランプ候補勝利を伝えた瞬間だった。ジャーナリストとして冷静さを保たなければいけないことは、みんな分かっている。それほどまでに、まさかの展開だったのだ。
その晩、私のフェイスブックには、全米各地から「泣き崩れた」「子どもの将来が心配」などという友人たちの声が流れてきた。民主党支持者が多いロサンゼルスやニューヨークなど都市部では、トランプ氏の勝利に反発する人々のデモが行われた。レジスターが本社を置くオレンジ郡サンタアナ市でも、250人ほどの抗議者が交差点を封鎖して警察と衝突した。
大手メディアの予想を覆した大統領選挙。1年以上前から、候補者たちの一挙一動がテレビで報じられ続けてきた。不動産王として有名だったトランプ氏は、歯に衣着せぬ発言で特に注目を集めたが、多くのメディア関係者は彼が勝つとは思ってもいなかった。
ニューヨークの文化、政治、ライフスタイル情報を発信する「ニューヨーク・マガジン」のアダム・モス編集長は、選挙前に準備していた記事は全てヒラリー・クリントン候補の勝利を前提としたものだったと、ジャーナリストへのインタビューを行うポッドキャスト「ロングフォーム」に語った。
「誰もが(トランプが大統領になるなんて)想像すらしていなかった」
レジスターの同僚記者を含め、人種的に多様な米国の都会で働くジャーナリストたちは、差別的な表現をなくそうというポリティカル・コレクトネスに敏感だ。彼らは、「メキシコはアメリカに犯罪者や強姦犯を送り込んでいる」「貧困に苦しむ黒人たちに失うものなどない」などと、これまでの大統領候補ではあり得なかった言動を繰り返すトランプ氏を、国民が選ぶとは思わなかったのだろう。
しかし、私はトランプ氏が勝利したと聞いた時、周りほどの衝撃は受けなかった。信用していたデータ予想が大きく外れたことは意外だったが、アメリカがトランプ氏を選んだことに驚きはなかった。
ニューヨークやロサンゼルスといった大都会から離れた砂漠の町で、大手メディアが報じてこなかった「隠れた」アメリカをこの目で見ていたからである。そこには都市から押し寄せる時代の波に乗れない白人の、オバマ政権や既成政治勢力に対する不満と怒りが渦巻いていた。
「別世界」砂漠の町
私は2008年から5年間、ロサンゼルス市内から内陸側に140キロほど離れたサンバーナーディーノ郡ビクタービルという町で暮らし、そこの小さな新聞社「デイリープレス」で司法、経済記者として働いた。
ビクタービルは、ロサンゼルスとサンガブリエル山脈を挟んで内陸側に広がるモハビ砂漠に位置する。日本人にもおなじみの旧ルート66が通るこの市は、ビクターバレーと呼ばれる地域の中心をなす。一帯は西部劇の撮影などに使われているが、ほとんどの南カリフォルニア住民にとってはラスベガスに向かう途中の休憩スポットでしかない。ロサンゼルスやオレンジ郡の人にビクタービルにいたと話すと、決まって「どうしてそんな所に住んでいたのか」と聞かれる。
ビクターバレーには2000年代に入ってから、都会の数分の一の値段で買える安い家を求めて、ロサンゼルスやその郊外から人々が流れ込んだ。2000年から10年にかけて人口は50%以上も増加し、39万人にまで膨れ上がった。
ところが住宅バブルが崩壊すると、地域経済は壊滅状態に陥る。いわゆるサブプライムローンの返済ができなくなった人々は家を追われ、住宅街の3〜4割が空き家という光景も珍しくなかった。ビクターバレーは世界を震撼(しんかん)させたリーマンショックの震源地の一つとなる。
住民の多くは不況で大きく影響を受けた建築、製造や物流業界のブルーカラー職に就いていたので、ピーク時(2010年)の失業率は全米平均の2倍近い18%に達した。
当時、地元の野球スタジアムで行われたジョブフェアには、早朝から1800人もの失業者が長蛇の列をつくった。旧ルート66として観光客も訪れるビクタービルのメイン通りは、食事配給を待つホームレスのたまり場と化した。加えて急激な人口増加に伴い犯罪も増加し、「カリフォルニアで最も危険な町」といったリストにもランクインするように。
私が3年前にレジスターに転職した時には、ビクタービルとのあまりの格差にがく然とした。ロサンゼルスの南に隣接するオレンジ郡、特にその南部地域は高級住宅街として全米に知られる。海沿いには1000万ドル(約11億円)以上もする豪邸が立ち並び、ポルシェやマセラティが当たり前のように道を走っている。
現在、取材を担当しているアーバイン市は、優れた公立学校で知られているため、世界中から裕福な家族が集まり、1〜2億円する新築の家が飛ぶように売れている。高級アパートやマンションも建設ラッシュで、郊外にもかかわらず、ワンベッドルームの賃貸物件で月2000ドル(約22万円)以上もする。グーグルや韓国の「現代」といった世界的企業がオフィスを構え、新しい会社もどんどん進出してくるので、数年前までの不況を全く感じさせない。
住む場所によって、これほどまでに見える世界が違うのがアメリカという国なのである。
見捨てられた人々
オバマ政権下で国全体としてみれば不況から回復したものの、ビクターバレー住民の多くにとっては、その恩恵は感じられない。
地域の失業率は州全体の5.3%に近づいてきたものの、職探しを諦めた人々を加えたらもっと数値は高いのではないか、と地元のエコノミストたちは推測する。ウォルマートといった小売店や公立学校などが雇用を生み出しているが、若い優秀な人材を引き付けるような高収入の職は少ない。
「私の知っている男性のほとんどがいまだに失業しているわ」というのはビクターバレーに住むリンダ・マーシャルさん(74)。熱心なトランプ支持者だ。
元小学校教師の彼女と亡くなった夫の間には9人の子どもがいるが、そのうち40代の息子3人は失業中で、マーシャルさんと同居している。3人とも高校を卒業していないこともあって、なかなか職が見つからず、公的扶助で生活している。
彼女が子どもだった1950年代は、ほとんどの人が1つの職場を勤め上げて、クビになることなどなかった。マーシャルさんの父親は小学校の3年生までしか教育を受けていないが、機関車の整備員として家族を養えるだけの収入を得ていたという。
しかし、今やそんな終身雇用は期待できなくなっている。特に大学を出ていない者がホワイトカラーの職に就くのは難しい。
エコノミストたちは口をそろえて、ビクターバレーの経済発展を阻む要因として、住民の教育水準の低さを指摘する。25歳以上の人口のうち10人に1人しか大学を卒業していないビクターバレーに企業は進出したがらないという(アーバインでは25歳以上の3人に2人は大学を卒業している)。ビクタービル住民の半数近くは、山を越えてロサンゼルス近郊に通勤しているのだ。
「オバマ(大統領)は職がどんどん増えていると言うけど、私の住む周りには見当たらないわ。オバマは私たちを助けるために何もしていない。クリントンは、そういうオバマの政策を引き継ぐと言ってるのよ」とマーシャルさんは話す。
オバマ大統領や民主党は環境や不法移民を守るのに必死な一方、企業に対する規制を強めたり、税金を上げたりして国民の生活を苦しめる存在として保守派の目に映っている。都会のジャーナリストが想像していたよりも不満の声は大きかった。
女性蔑視、気にならない
トランプの女性蔑視発言は全く気にならないとマーシャルさんは言う。
「もっと大きな問題に目を向けなきゃダメよ。(2012年の大統領選で共和党候補だった)ロムニーは紳士的過ぎて民主党の連中に立ち向かうことができなかった。トランプならきっとやってくれるわ」
やはりトランプ支持者のマイケル・カレンさん(42)は「メキシコとの国境に壁を」というスローガンに強く賛同している。不法移民が犯罪を増やし、アメリカ人から仕事を奪い、税金を食いつぶしていると信じているからだ。
ビクタービルでは住宅バブルの時期にヒスパニック系住民が急増し、現在では人口の半分近くを占めている。カレンさんは空軍で3年間勤務した後に大学を卒業しているが、今年になって数年勤めていたデイリープレスの広告営業職をリストラされた。
「アメリカは主権国家として、どんな人がどんな目的で入国するのかをチェックしなくてはいけない。特に今は西洋文化を破壊しようとする過激派がいるから慎重にならないと。そんな時にヒラリーはシリアからの難民を受け入れようなんて言っている」と怒りをあらわにした。
トランプ氏が大統領候補になる数年前から、ビクターバレーでは医療保険制度改革法(オバマケア)廃止や不法移民の取り締まり強化を求める声が上がっていた。地元のカントリースタイルの酒場に、国旗デザインの服を身にまとった白人が数百人ほど集まり、オバマ政府から「自分たちの国を取り戻そう」「アメリカを復興させよう」という草の根運動を起こしていたのだ。私は取材をしていて、自分たちが少数派になりつつあることへの危機感を彼らから感じ取った。
ビクターバレーで出会ったこうした白人層が、まさにトランプ氏を支えた基盤なのである。民主党が優勢なカリフォルニアでは少数派だが、日本人にあまりなじみのない内陸部では彼らがマジョリティーなのだ。
「カリフォルニアは民主党」とはくくれない、このような地域間の溝こそが、日本には伝わらないアメリカの現実である。
トランプ氏はどうやって勝ったか
今回の選挙結果だけを見て、アメリカ人全体が右傾化しているのだと結論付けることはできない。獲得した選挙人の数だけ見ればトランプ氏の圧勝だが、実際はどっちに転んでもおかしくない接戦であったからだ。
大方の予想が外れたのは、民主党が確実に獲ると言われていたペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガンの3州でクリントン氏がわずかの差で負けたからである。これらの州では、前選挙でオバマ大統領に投票した大学を出ていない白人労働者層が大きくトランプ氏に傾いたと専門家たちは分析する。
既成勢力は何もしてくれない、都会のエリートたちには自分たちの苦しみは理解できないと感じる人々が、アメリカ経済の復活を第一に掲げるトランプ氏に賭けてみたくなったのだろう。
「トランプは普通の大統領じゃないんだ。彼は大企業にも恐れず話ができる。仕事も増えるし、給料も上がるはずさ」と前出のカレンさんは話す。
選挙報道のため150人もの有権者にインタビューをした同僚のマーティン・ウィスコル記者は、トランプ支持者の共通点として、現状の政治システムやポリティカル・コレクトネスに嫌気が差していると指摘する。彼らはトランプ氏が他の政治家と違い、相手が誰であろうと思ったことを率直に口にするところに引かれている。
一方、クリントン氏は総得票数で約290万票の差をつけてリードしていた。
問題は彼女への票が主に東海岸と西海岸の都市部に固まっていたこと。それに対して、トランプ票は全米に広く分布している。現行の選挙人制度では、クリントン氏のように一部の州で大勝するよりいくつもの州をわずかの差で獲る方が有利なのだ。
それを理解していたカリフォルニアのトランプ支持団体は、地元は捨てて、どちらの候補が勝つか分からない浮動州の有権者に電話を掛ける戦術を取った。
「カリフォルニアでの勝利はあり得ませんでしたから、私たちはフロリダやミシガン、コロラド、ネバダなどの数十万人もの有権者に電話を掛けて、なぜトランプに投票すべきか説得しようとしました」と、オレンジ郡の共和党委員を務めるトニー・ビールさんは言う。
皮肉にも現行の選挙制度を批判していたトランプ陣営が、結果的にその制度によって勝利を得たのだ。
「トランプに投票した人とは縁を切る」
トランプ支持者たちが勝利に酔いしれた投票日の夜、クリントン氏のサポーターたちは悲しみと不安、恐怖に打ちひしがれた。
不法滞在の移民を強制送還させるのではないか、オバマケアが廃止されるのではないか、人種問題が悪化するのではないかなど不安の声は大きい。トランプ氏に投票した人とは縁を切るとまでフェイスブックに書き込んだ友人も何人かいたほどだ。
「私には半分メキシコ人の血が流れています。メキシコ移民や他の有色人種の怒りをかき立てるような発言をしたドナルド・トランプを、私は何があっても支持することなんてできません」と電話インタビューの中で語ったのは、マンハッタンで弁護士アシスタントとして働くブルック・セルフさん(28)。
ビクタービルで育った彼女は、デイリープレスで2年ほど記者として働き、昨年、カリフォルニアからニューヨークに引っ越した。保守的な環境で育った彼女は、その反動もあってリベラルな思想を持つようになったという。
クリントン氏が大統領なら党の垣根を越えた中道的な法案や、働く女性を助ける政策を打ち出してくれるだろうと彼女は言う。子どもの頃から女性が大統領になるのを夢見ていた彼女は、選挙翌日に職場で涙を流した。
「トランプは私の大統領ではありません。彼は私やアメリカの価値観を代表するにふさわしくない」
一方、トランプ支持者たちは、彼が大統領として自国の利益を最優先にしてくれると期待を寄せる。
前出のビールさんは、トランプ氏が米国の製造業を海外から引き戻し、努力さえすれば誰もが「成功」できるアメリカンドリームを復活させてくれると話す。
彼はトランプ氏を1980年代に大統領を務めたロナルド・レーガンになぞらえる。レーガン大統領は減税や規制緩和といった経済政策を実施し、外交では強硬策を貫き「強いアメリカ」をアピールした。
「今こそ保守政策を全米各地で制定するチャンスです。そうすれば、(レーガン政権以来の)アメリカの繁栄が見られるはず。未来はとても明るいです」とビールさんは言う。
私が危惧するのは、大統領選挙で浮き彫りになった分断されたアメリカの溝の深さだ。
リベラル層がトランプ氏の独裁を恐れるように、トランプ氏に票を投じた人の中にはオバマ大統領を独裁者だと感じている人も多いのである。共和党が断固として反対していた医療保険制度改革法を押し通し、不法移民の強制送還を一時的に猶予する大統領令を出したオバマ大統領に保守層は怒りを募らせている。
これでは話が通じるわけもない。政治の話をした途端に人間関係がギクシャクしたという話はよく聞く。セルフさんは、今回の選挙で親友を失った。
「トランプ支持者の友達は、私が政治的にリベラル過ぎると言うのです。話せば話すほど、彼女との違いが明確になるだけでした。彼女は全く私の視点を理解してくれていないと感じます。私がメディアに影響されていると言うのです」
さらには、自分の価値観に合った情報だけが流れてきやすいフェイスブックのようなソーシャルメディアが溝を一層深めている。フェイスブックのユーザーたちが、自分の価値観を肯定してくれる情報を求め、逆に合わない情報を受け入れない傾向にあるとの研究も発表された。
あらゆる情報が飛び交うインターネット社会だが、意識せずにいると異なる価値観に触れる機会は限られてしまう。
地方社会を知らない大手メディア
こうした時代だからこそ、さまざまな人々の立場や思想を伝えるジャーナリズムの役割は大きい。
だが、残念ながら新聞やネットワークテレビのニュースなど、メディアに対する信頼度は既成の政治勢力と同じように低くなっている。特に87%の保守的共和党支持者は、ニュースメディアが偏っているとピュー研究所の調査に回答している。トランプ支持者の中には、大手メディアではなく保守系ネットサイトの情報に頼っている人も多い。
「ニューヨークタイムズやCBS、NBCなんかの偏向報道は明らかだったよ。プロのジャーナリストと呼ばれる人たちがクリントンを勝たせようとしているのには本当に腹が立った」とカレンさんは言う。
元記者でクリントン支持者のセルフさんも、メディアはトランプ氏の過激な発言やツイートばかりを取り上げるべきではなかったと話す。彼女が育ったビクタービルのような町の住民がなぜトランプ氏を支持するのか、ちゃんと耳を傾けるべきだったと言う。
「経済は回復していますが、アメリカ各地にある小さな町では、まだそれが感じられていません。ニューヨークには仕事があふれていて、給料も少しずつ上がっていますが、ビクタービルには私の望むような仕事はありません。記者として年に2万8000ドル(約330万円)ほどもらっていましたが、それではアパートに住むこともできずに両親と暮らしていました。まさに別世界です」
ほとんどのジャーナリストが大学出のエリートで、約9割が都会で働いているため、似通った価値観しか持っていないとの指摘も業界内外から出ている。
以前は、大学を卒業したばかりの記者は田舎の地方紙などで経験を積むのがアメリカではならわしだったが、デジタル時代になり都市の大手メディアが若手を雇うようになったことも影響している。
非営利調査報道機関プロパブリカのアレック・マクギリス記者(政治担当)は「(メディアと国民の)溝は大きくなり過ぎています。地方紙やメトロ紙の衰退で、メディアはみんなワシントンD.C.やニューヨークに集中している。近年では、そうした都市とそれ以外の場所の格差が広がっているのです」とCNNに語った。
急速に衰えるアメリカの新聞業界では、過去10年で100以上の日刊新聞が消え、40%もの職が編集局から失われた。
ジャーナリズムの果たすべき役割が非常に大きくなっている中で、失った信頼を回復できるかどうか。メディアをたたくことで支持を得てきたトランプ氏の大統領就任が現実となった今、メディアに課せられた責任は重い。