トランプ vs クリントン

大統領 討論会
ドナルド・トランプ vs  ヒラリー・クリントン

First round  トランプ < クリントン
2nd round   トランプ < クリントン
Third round   トランプ <  クリントン   [ CNN 52%がクリントン勝利 トランプ勝利は39% ]
before the Election
Presidential election  トランプ接戦 を制す
 


 
 
 
 

 

First round 
米大統領選 初のテレビ討論会は非難の応酬 評価分かれる

アメリカ大統領選挙に向けた初めてのテレビ討論会が行われ、民主党のクリントン候補と共和党のトランプ候補が、過激派組織IS=イスラミックステートへの対策や日本をはじめとする同盟国の防衛などをめぐって激しい論戦を繰り広げ、非難の応酬となりました。
テレビ討論会は、26日、東部ニューヨーク州の大学で行われました。
この中で、トランプ氏は、オバマ大統領と国務長官を務めたクリントン氏がISの台頭を招くなど中東をかつてない混乱に陥れたと厳しく批判しました。これに対し、クリントン氏は「トランプ氏はISを打倒する秘密の計画があると言うが、計画などないということだ」と反論しました。
一方、クリントン氏は「トランプ氏は何度も、日本や韓国などが核武装しても構わないと繰り返してきた。アメリカの最高司令官にふさわしくない」と批判しました。これに対し、トランプ氏は「われわれは日本や韓国などを守っているが、彼らは公平な負担をしていない」と反論し、日本をはじめとする同盟国の防衛などをめぐって激しい論戦を繰り広げ、非難の応酬となりました。
アメリカメディアの中には「大統領にふさわしいのはクリントン氏だけだと証明した」などとしてクリントン氏が上回ったという見方も出ています。一方で、インターネット上の調査では、トランプ氏が勝ったと思う人がおよそ60%に上るものがあるなど、トランプ氏がやや優勢となっていて、評価は分かれています。
両候補の争いは、次回、来月9日の討論会に持ち越される形となり、今後も激しい戦いが続く見通しです。
討論見守った学生は
討論会が行われたニューヨーク州の大学では、学生たちが集まり、テレビ画面を通じて議論の行方を見守る「ウオッチパーティー」と呼ばれる催しが開かれ、多くの学生たちが参加しました。参加した20歳の男子学生は「トランプ氏の経済についての話はよかったがクリントン氏の事実に基づいた議論も興味深くもっとしっかり聞きたいと思った。次の討論会も注目している」と話していました。また、21歳の女子学生は「討論会を聞いてクリントン氏がすべての人たちのことを考え平等な社会を作りたいと考えているのがわかった。クリントン氏を改めて支持しようと思った」と話していました。
両候補の発言を検証
大統領選挙の候補者の発言の真偽をチェックしている団体、「ポリティファクト」は今回のテレビ討論会について、18人のスタッフで発言の検証を行いました。討論会場近くに設けられたメディアセンターで論戦を見守った「ポリティファクト」のケイティー・サンダースさんは、「両候補の発言を検証したが、過去にも行った発言の繰り返しが多く、驚くべきものはなかった。例えばトランプ氏はきょうの討論会でも、『イラク戦争にかつて反対していた』と主張したが、この主張を裏付ける根拠は見つかっていない」と指摘しました。そのうえで、「まだ検証は終わっていないが、トランプ氏の発言には、いくつか事実誤認があった。クリントン氏は今のところそうした発言は見つかっていない」と述べ、討論会ではトランプ氏の発言に複数の事実関係の誤りがあったとしています。
「クリントン氏は準備で成果」と専門家
ミシガン大学でアメリカ大統領選挙の討論会を専門に研究しているアーロン・カール氏は討論会のあとNHKのインタビューに応じ、「最初はトランプ氏が攻勢に出たが途中で失速し、クリントン氏が全体的にパフォーマンスを維持していた。クリントン氏が討論会に向けた準備を行ってきた成果だと思う」と述べました。そのうえで「クリントン氏は最大の弱点であるメール問題でも、みずからの過ちを認めるなど、討論会では最善を尽くしていた」と述べ、しっかりと準備をして臨んだクリントン氏が成果を出すことが出来たと評価しました。
一方、トランプ氏については、「クリントン氏の家族に対する攻撃を控えるなど、大統領らしくみせるという最大の目標についてはよい仕事を見せたと思う。しかし特別な準備をしないで自然体で討論に臨むというトランプ氏の戦略はこれまでは通用したが、今回は準備不足という結果になったようだ」と述べました。
そのうえで、今後の選挙戦の見通しについて「今回の討論会がどちらに投票するか決めていない人たちにどれだけ影響があったかはまだわからない」と述べ、今後の有権者の動向を見極める必要があると指摘しました。
トランプ氏優勢とみる専門家も
アメリカ政治が専門のアメリカン大学のキャンディス・ネルソン教授は、NHKの取材に対し、「トランプ候補が優勢だったと思う。真剣な態度で、経済問題を把握していることを示した。これに対して、クリントン候補は、終始守りに入っているように見えた」としています。そして「前半は、印象に残る議論のやり取りはなかったが、後半はトランプ氏が盛り返したのに対し、クリントン氏は優勢を取り戻せなかった」と分析しています。そのうえで、「最初の討論会での劣勢は4年前の選挙の際にオバマ大統領が見せたように挽回は可能だ」として、次回以降の2回の討論会がどう影響するのか注視すべきだという見方を示しました。
米主要メディア「決定的ではない」
今回の討論会について、アメリカの主要メディアは、クリントン氏が優勢だったと評価する一方で、選挙戦を左右するような決定的な論戦ではなかったとも伝えています。
アメリカの新聞ワシントン・ポストは電子版に掲載した社説で、「大統領にふさわしいのはクリントン氏だけだと討論会で証明した」と報じました。この中でワシントン・ポストは、「クリントン氏はTPP=環太平洋パートナーシップ協定など貿易の問題では守勢だったものの、人種や外交などの問題で議論を優位に進めた」と評価しています。
また、アメリカの新聞ニューヨークタイムズも電子版の社説で、「討論が進むにつれてトランプ氏は、クリントン氏との議論に苦しみ、挽回できなかった」と指摘し、クリントン氏が優勢だったと伝えました。
さらにCNNは、討論会のあと視聴者を対象にどちらが勝利したかを質問したところ、クリントン氏が勝ったと感じた人が62%だったのに対し、トランプ氏は27%だったとし、クリントン氏のパフォーマンスがトランプ氏を上回ったと評価しました。ただ、この調査についてCNNは討論会の視聴者は全体的に共和党より民主党の支持者のほうが多い傾向にあるとしています。
一方、ウォールストリート・ジャーナルは電子版で「トランプ氏の議論は不十分だったが、クリントン氏をアメリカの停滞を招いた人物として描き上げることで点数を稼いだ。大統領選挙の焦点は有権者がリスクを承知でトランプ氏の変革を求めるかどうかだ」と伝えています。
またABCテレビは「両候補とも相手をいらいらさせることができることを示したが、勝利のメッセージを示すことはできなかった」と評価しており、選挙戦を左右するような決定的な論戦ではなかったとしています。 

 

米大統領選の両候補が初の討論会
クリントン氏は赤のパンツスーツ姿、トランプ氏は青色のネクタイに黒いスーツ姿で登場。両候補は互いの主張が偽りだと非難し合い、それぞれの陣営のウェブサイトで事実を確認するよう視聴者に促した。クリントン氏が「何でも非難されるような気になる」と漏らす一場面もあった。
クリントン氏は、トランプ氏が長年、人種差別的な態度を取ってきたことを批判。
一方のトランプ氏は、クリントン氏は長期間にわたる公職経験でほとんど成果を残していないと述べ、大統領として任務を果たすためのスタミナがないと指摘した。
肺炎診断を受けて選挙戦を一時中断したクリントン氏は、討論会で健在ぶりをアピールする必要があったが、入念な準備が奏功した。一方、滑り出しは好調だったトランプ氏は、次第に準備不足を露呈するような展開となった。
CNNと調査機関ORCが実施した調査によると、62%がクリントン氏勝利と回答し、トランプ氏が勝利したとの回答は27%だった。
討論会でクリントン氏が優勢だったとの見方が広がり、アジアの株式市場は持ち直した。
クリントン氏は、トランプ氏が打ち出している経済政策について、中間層を犠牲にして富裕層を優遇するものだとして強く批判。
クリントン氏は、トランプ氏の税制政策は「トリクルダウン(富裕層や大企業が豊かになると、最終的には下位にも富が行き渡るという理論)だ」として一蹴した。また、「トランプ氏の政策は、トリクルダウン理論の最も極端なバージョンであり、富裕層への過去最大の減税だ」と述べた。
クリントン氏はまた、トランプ氏の企業が契約を結ぶ一部の相手に支払いを怠ったことを非難。トランプ氏にだまされたという人の多くと会ったことを明らかにした。これに対してトランプ氏は、支払いが行われなかったのは、満足のいく結果が得られなかったからだと反論した。
一方、トランプ氏はクリントン氏の通商政策を攻撃。「米国の雇用が盗まれている状態に、歯止めをかけなければならない」と主張した。
トランプ氏は環太平洋連携協定(TPP)について、クリントン氏が「全面的に賛成していたが、どれほどひどいかについての私の主張を聞いて、『議論に勝てない』と思った」と指摘し、トランプ氏の発言で反対に回ったと攻撃した。
これに対してクリントン氏は「好き勝手に主張しているが、事実ではない」と反論した。
トランプ氏は、イランとの核合意や過激派組織「イスラム国」対策に関するクリントン氏の対応も厳しく批判した。   

 

識者はこうみる
クリントン氏優位か、朝までに評価変わる可能性も
(株式)先物市場が好感していることは、市場はヒラリー・クリントン氏が優位に討論を進めたとみているのだろう。市場は不透明感を嫌うといわれることが多い。大半の専門家は、ドナルド・トランプ氏のほうが不透明感が強い候補だとみているようだ。ただ、状況は(米国時間の)朝までに変わり得る。これから朝までに先物が下げに転じれば、トランプ氏優位との見方に転じたことになる。そうなればサプライズだ。
税制政策の違い鮮明
どちらの候補も、経済成長率を引き上げ、多くの人が恩恵を受けられる環境を整備することが重要だと主張したが、税制政策のアプローチの違いが鮮明になった。最終的にどのような政策が繁栄につながるか、両候補の間に見解の差があることが浮き彫りになった。
クリントン氏の健康不安払拭
先物とメキシコペソが小幅ながらもそろって上昇したことは、ヒラリー・クリントン氏のパフォーマンスが予想以上だったことを示唆している。市場はクリントン氏の健康問題を不安視していたが、討論会では元気そうに見え、力強く論戦を展開しており、市場に安心感を与えた。
クリントン氏優勢、短期的に市場を支援
<ベル・エア・インベストメント・アドバイザーズ(ロサンゼルス)の株式調査部門バイスプレジデント、アーロン・ジェット氏>
市場はヒラリー・クリントン氏が勝つことを望んでいる。クリントン氏が優勢(ドナルド・トランプ氏が劣勢)になればなるほど、市場は短期的には良好なパフォーマンスを示すだろう。クリントン氏は差し当たり市場を支援するのに十分うまく討論会をこなした。トランプ氏は時折長々と話す場面があり、クリントン氏の方がよく見えた。市場は26日の下落から幾分回復する見通しだ。
トランプ氏の政策、経済的合理性に欠ける
両候補は景気対策について異なる見解を示した。クリントン氏の税制・支出計画は明確でよく練られた内容だった。大幅減税と暗黙のインフラ支出を含むトランプ氏の考えは感情的には訴えるものがあるが、経済的合理性に欠け、それほど考えつくされてもいない。両候補は異なるタイプの有権者の支持を得るだろう。トランプ氏が感情的で情報不足だったことを示すよい例は、1)景気回復が「最悪」だったとの発言、2)米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が政治的な人物だとの発言、3)株価上昇は利上げが実施されれば「はじける」バブルであるとの発言だ。私見では、クリントン氏ははるかに多くの情報を持ち、大統領にふさわしい人物としての姿を見せた。一方でトランプ氏は、十分な情報は持ち合わせていないものの感情的に支持を得る人物のように映った。 トランプ氏も、変化をもたらす候補としてのイメージを打ち出し、討論会をうまくこなしたが、クリントン氏の方が優勢だったと考えている。

 

TV討論で「トランプの二流ぶり」が露呈した!
 まるでプロレスのマイクパフォーマンス
「うわー、これはいくらなんでもひどすぎる! 大統領テレビ討論に、WWEのプロレスラーがマイクパフォーマンスで殴りこんできたみたいや……」
というわけで米大統領選も佳境に入り、いよいよ民主党のヒラリー・クリントン候補と共和党のドナルド・トランプ候補の間で3回にわたるディベートが始まった。9月26日夜(日本時間27日午前)に行われた第1回のテレビ討論は、アメリカの有権者の62%がヒラリー優位と答えた。
連載「最強の働き方」の"番外編"として、このディベートについて率直な感想を述べていきたい。このディベートには、一流を目指すビジネスパーソンにとって、大いに参考になる内容が含まれているからだ。
聴衆を見誤ったドナルド・トランプ
まず、いくら共和党・トランプ陣営であり、またヒラリー候補のことが嫌いとはいえ、引き分け、よりによってトランプ優勢と答えた人が3割もいたのは驚きだ。
しょせん人は客観的に物事など見ることができず、好き嫌いで判断の9割は決まっている悲しい現実を再度思い起こさせてくれる、いい事例である。
今回の大統領テレビ討論でバレてしまったのは、ドナルドトランプ候補のコミュニケーション能力が、以下の3つの理由でいかに「三流の人間」かということであった。
第一にバレたのが、トランプ氏の幼稚さであった。ヒラリー候補が話している間に何度も割って入り、大声で叫び散らしている。あの落ち着きのないボディランゲージも、トランプ氏の焦りがにじみ出ていた。もしくはトランプ氏は、この感情的なパフォーマンス芸が自分の支持層に響くと思っているのだろうか。
これに対し、ヒラリー候補は悠然とした表情とボディランゲージ、トーンで余裕を演出し、大統領候補の風格を十分に演じてみせた。トランプ氏が幼稚にふるまえばふるまうほど、ヒラリー氏は感情的な対立に付き合うことなく、ますますゆっくりと落ち着いて話し、「大統領らしい風格」という面で明白すぎる差を見せつけたのだ。
第二にバレたのが、トランプ氏の不誠実さ。トランプ氏はほぼすべての質問に直接答えることなく、異なる話題に切り替えるか、ヒラリー氏への反論につなげていた。連邦税を公表しないことを指摘されても、経済政策を聞かれても、ヒラリー氏のメール私用問題やメキシコ・中国の批判へと話題を転換。司会者に「質問に答えていないので再度聞くが・・・」と何度尋ねられても、的外れな回答に終始していた。
トランプ氏がほぼすべての質問から逃げているか、はなから答える気がないのは明らかだった。すべての質問への回答をメキシコと中国への怒りの転換と、ヒラリー氏への個人攻撃にすり替えようと腹を決めているかのようですらあった。そしてそれらの「不誠実な姿勢」は、痛々しいまでに画面を通して世界中にバレてしまったのであった。
そして第三にバレたのが、トランプ氏の戦略性のなさであった。一言でいうと、対象とする聴衆と提供すべきメッセージを完全に見誤っていた。
「メールの内容を公開すれば、税金を公開する」と話した時にトランプ支持派から局地的な拍手が沸き起こったが、問題は今回の聴衆はそのような人々だけでなかったということだ。
トランプ氏は首尾一貫して、全体のオーディエンスを完全に見誤っていたといえる。日頃の共和党候補を選ぶ予備選であれば、自身の支持層が喜ぶ感情的・煽情的レトリックを言い散らしていればよかったかもしれない。しかし、民主党支持層や無党派層というまったく違うオーディエンスを説得しなければならない大統領テレビ討論の場で、トランプ氏は無残なまでにこれまでどおりか、それを劣化させたようなアジテーションに終始していた。
ディベートにしてもスピーチにしても、その時々のオーディエンスが誰なのかを考え、それに刺さるポイントと話し方で芸風を変えなければ、説得できるわけがないのである。
巧みなヒラリー候補の受け答え
これに対してヒラリーの回答の見事なこと見事なこと。すべての回答が入念に準備されていた。自身が突っ込まれるであろうことに対する(たとえばメール私用問題)受け答えも完全に準備されており、極めて落ち着いて、反論することなく素直に非を認めて、逆に潔さのアピールに成功していた。メール問題に関して問われた時も、待ってましたと言わんばかりの自信たっぷりの対応である。
そして、ヒラリー候補はオーディエンスの"民意"を理解していた。「経済成長の恩恵に浴していない、消えゆく中産階級が一部の高所得者層に対して不満を持っている」ことをきちんと把握していた。
彼女は、自身を苦労人の両親のストーリーで“中産階級・低所得者層の気持ちは私がわかっている”と印象付け、それと極めて鮮やかな対比として、「トランプ氏も嘘をついているのではなく、自分の富裕層という背景から信じていることを正直に話しているだけなのだ」と、低所得層・中産階級の代表vs.富裕層の代表という構図を鮮明に印象付けていた。
今回のテレビ討論第1ラウンドは、話し方・ボディランゲージ・話の内容のすべてで、ヒラリー圧勝であった。
一流のディベートに大切なこととは?
テレビ討論は、あと2回ある。トランプ氏は今後、どうすればよいのか。いやそもそもトランプはどうでもいいから、このようなディベートで、うまく立ち回るにはどうしたらいいのか。一流のビジネスリーダーや政治指導者の巧みなディベートの共通点から、そのインプリケーションを探りたいと思う。
人は見た目、話し方で9割説得され、話の内容は1割未満とはよく聞く話だが、この3点のすべてにおいて、正しく注意を払わなければならない。
まず外見に関してだが、見た目でヒラリーの圧勝だった。服装からして、健康不安で弱々しいというイメージがあった彼女が鮮明な深紅のスーツで力強さのアピールに成功した。これに対し、トランプ氏は冷静なイメージを出そうといつもの赤ではなく、青のネクタイでやってきた。しかし、彼に冷静な大統領像を演出させようとしても、特徴が消えるだけで、トランプの数少ない強みである”力強さ“を希薄化させる結果となった。
次に話し方だが、公開ディベートはつとめてゆっくりと腹式呼吸で落ち着いて話す。甲高い声で早口で話せば、それだけで負け戦だ。ディベート当日、トランプ氏はヒラリー候補の2倍速、3倍速で話していたが、内容はその10分の1にも満たなかった。
おまけに、相手の話に聞く耳を持たない印象をあれだけ植え付けては、一巻の終わりだ。トランプ氏のように相手の話をさえぎって何度も感情的に中傷を繰り返すようでは、弱い犬がキャンキャン叫ぶかの如く、非常に弱々しい愚かな印象を与えてしまうものである。
最後にディベートの内容だが、せめて質問に直接的に答えている必要があるのは言うまでもない。一部の、自分への熱狂的ファンだけ喜ばせばいい三流メディアだけで活動するのならまだしも、幅広い社会に向けたコミュニケーションをするのならば、内容とロジックのないパフォーマンスはいとも簡単に見破られてしまう。
特に、これはアメリカのうらやましいところだが、政治家の発言内容がポリティファクトのようなサイトで発言内容の真偽がつねにチェックされるインフラが整っている。言動の一致や発言内容の信頼性がつねにモニタリングされてしまうのだ。
ディベートするときは、パフォーマンスと内容の双方が伴っていなければ結局勝利できない。いざとなればK-1も総合格闘技もできる真の戦闘力、(政治の文脈で言えばビジョンと信念、戦略とロジックと支持層)を持ったうえで、一流のプロレスラーとしてパフォーマンスを織り交ぜて戦わなければ、勝てるわけがないのである。
皆様も、今後ディベートやスピーチに臨まれる際は、今回のトランプ氏の二流、三流と呼べるディベート内容を思い出して、他山の石としてほしい。本コラムをトランプ選対陣営が何かの間違いで読み、次回に生かされることを切に願う次第である。 
 
 
 

 

Sub round 
米副大統領候補・テレビ討論会
( 来月8日に投票が行われるアメリカ大統領選挙に向けて、4日に副大統領候補によるテレビ討論会が行われた。 )
「対テロ」「中東政策」
このなかで民主党のケイン氏は、過激派組織IS=イスラミックステートへの対策について「資金調達のネットワークやインターネットを利用した戦闘員の勧誘ルートを断たなければならない。同盟国とも協力して情報収集能力を強化させる必要があり、クリントン氏はこれらを実現できる経験がある」と述べて、テロとの戦いに勝てるのはクリントン氏だけだと訴えました。
これに対して、共和党のペンス氏は、今の最大の敵はISだとしたうえで、「クリントン氏が、アメリカ軍の一部をイラクに残留させるための交渉に失敗したことが、事実上、ISの誕生へとつながった」と述べ、ISを台頭させた要因を作ったとしてクリントン氏を批判しました。
また、イランの核開発問題をめぐる最終合意について、民主党のケイン氏は、「クリントン氏は同盟の築きかたを知っている。イランの核開発計画を阻止するために世界各国もイランに対して制裁を課すべきだと働きかけた」と述べ、クリントン氏が制裁への各国の参加を引き出したことが合意につながったとして、クリントン氏の実績を強調しました。
これに対して共和党のペンス氏は、「イランが核開発の野望を永久に放棄しないかぎり制裁解除はしないという方針だったはずだ。しかし、最終合意の期間が過ぎれば、イランが核兵器を手に入れることについて何の制限もなくなってしまう」と述べ、イランとの合意を批判しました。
さらに、シリアをめぐる問題についてペンス氏は、「アメリカはシリアの子どもたちや弱い市民を守るために、強いリーダーシップを発揮しなければならない」と述べて、アメリカは市民の犠牲を防ぐためにシリアの内戦への関与を強めるべきだという考えを示しました。
具体的には、アラブ諸国と連携してシリア国内に安全地帯を設けるほか、アサド政権に対する軍事攻撃にも備えを進め、さらにロシアに対してより強い姿勢で臨むべきだなどと主張し、シリアをめぐる政策について大統領候補のトランプ氏よりも踏み込んだ立場を示しました。
一方、ケイン氏は、安全地帯の設置について同意するにとどまり、トランプ氏が所得税の支払いを免れた可能性について指摘するなど、トランプ氏への批判を展開しました。
「核問題」
民主党のケイン氏は、「クリントン氏はイランの核開発をめぐる厳しい交渉も経験するなど核軍縮に取り組んできていて大統領にふさわしい人物だ」と述べました。さらに、「トランプ氏はより多くの国が核兵器を持てば世界はもっと平和になると考えていて、サウジアラビアや日本、韓国などが核を持つべきだと言っている。そして、核の戦争に発展する可能性やテロリストの手に核兵器が渡るおそれについても『みんな、その状況を楽しめばいい』と言った。核戦争のいったい何がそんなに楽しいのかペンス氏から聞いてみたい」と共和党の大統領候補であるトランプ氏の発言を激しく非難し、共和党のペンス氏の姿勢を問いただしました。
これに対し、ペンス氏はケイン氏の批判には応じず、「オバマ政権下でアメリカ国内の安全が脅かされるようになったのは反論の余地のないことだ。リーダーシップの欠如によって世界におけるアメリカの影響力は弱まった」などと現在の民主党による政権運営を批判しました。そのうえで「イランは核開発を放棄してはいない。合意の期間が過ぎれば何の制限もなくなってしまう」と述べて、イランとの合意を批判しました。
また、トランプ氏は日本などとともに韓国の核保有を容認する姿勢を示していますが、ペンス氏は、「アメリカの核兵器の近代化を進める。そして、アメリカの外交政策である朝鮮半島の非核化を進めるため、アジア太平洋の国々の力を集結して北朝鮮に核開発をやめさせるよう圧力をかける効果的な外交政策が必要だ」と述べました。
また、司会者がケイン氏に「北朝鮮がアメリカに届く核ミサイルを発射しそうだという情報を得た場合、先制攻撃を行うか」と尋ねたのに対しケイン氏は「大統領は差し迫った脅威からアメリカを守るために行動をおこさなければならない」と述べて、先制攻撃も辞さない考えを示唆しました。
「ロシア」
民主党のケイン氏は、司会者から、ロシアによるウクライナのクリミア併合についての対応を問われ、「トランプ候補やペンス氏は、プーチン大統領は偉大なリーダーだと言っているが、そうした称賛はやめよう」と批判しました。そして、ケイン氏は、「クリントン候補は、これまでに何度もロシアと向き合ってきた。国務長官として、戦略核兵器の大幅な削減を決めた米ロの新たな核軍縮条約に合意した。ウクライナに関しても同じようにロシアと向き合っている」と経験をアピールしたうえで、「トランプ氏は、クリミアがロシアに併合されたことは知らなかった」と批判しました。
これに対して共和党のペンス氏は、「クリントン氏は、かつてロシアとアメリカの関係をリセットすることが最優先事項だったと話していたが、これがロシアによるクリミアの併合につながった」と批判しました。さらに、ペンス氏は、「テロ支援国家のイランとロシアとの関係が強くなったのは、クリントン氏とオバマ大統領の外交政策が原因だ」と述べました。
しかし、ペンス氏が、ロシアのプーチン大統領のことを「小物で、いじめをしているリーダーだ」と述べたことで、アメリカのメディアは、これまでのトランプ氏のプーチン大統領に対する評価とは食い違っているなどと取り上げています。
「移民問題」
民主党のケイン氏は、党の移民政策について「私たちは、家族が一緒にいられるようにすることを最大の目標にしている」と強調しました。そのうえで、共和党のトランプ氏が主張する不法移民の扱いについて、「トランプ氏は、1600万もの人々を強制送還しようとしている。1100万人は書類を持たない人であり、450万人はアメリカで生まれた子どもの親たちで、こうした人々を排除しようとしている」と攻撃しました。
これに対してペンス氏は、「トランプ氏がやろうとしているのは、国境警備だけではない。壁を築き、地中や空まで監視を強め、犯罪を犯した外国人についても取り組むとしている。この国に不法に入国した者たちが犯罪に手を染めているにもかかわらず、われわれにはそれを組織的に追い出す体制も意思もない。アメリカの市民にとっては悲劇的なことだ」と反論し、国境管理や外国人の犯罪について厳しい姿勢で臨む考えを強調しました。

 

米副大統領候補、討論会で直接対決 税逃れや外交で非難の応酬
米大統領選の副大統領候補によるTV討論会が4日開かれ、民主党ティム・ケーン上院議員、共和党マイク・ペンス・インディアナ州知事が初めて直接対決した。
副大統領候補の討論会は1回のみ開かれる。両候補は冒頭から、相手の大統領候補の資質などをめぐり互いに攻撃、非難の応酬となった。
民主党のケーン候補は、共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏について「いつも自分を優先させている」として攻撃。メキシコ人を「レイプ犯、犯罪者」と決めつけたこと、オバマ大統領が米国生まれでないなどという「とんでもないうそ」をついたことをやり玉に挙げた。
ケーン候補は、トランプ氏は米国の安全保障にとって危険であり、女性やマイノリティーを侮辱したと批判。事業の巨額損失により連邦所得税の支払いを長年免除されてきた可能性についても厳しく追及した。
共和党のペンス候補は、民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン前国務長官について、中東政策に失敗し「制御不能にした」と述べた。
ペンス候補はまた、ロシアのプーチン大統領を「狭量ないじめっ子」のように振る舞う指導者と表現し、シリア内戦での対応を批判した。トランプ氏はプーチン大統領について、オバマ大統領より評価できるとして協力する姿勢を示しており、立場の違いが鮮明になった。
ペンス候補は「ロシアによる挑発行為に米国は立ち向かうべき」としており、こうした強硬姿勢は伝統的な保守派路線が反映されている。
CNN/ORCの調査によると、ペンス候補が勝利したとの回答は48%で、ケーン候補の42%を上回った。
米ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ氏が1995年に9億1600万ドル規模の損失を申告していたと報道した。同紙によると、トランプ氏は、この損失計上によって税額控除を受けた結果、最長で18年にわたって、連邦所得税の支払いを免れていた可能性があるという。
ケーン候補は、トランプ氏が納税記録の開示を再三拒否していることをあらためて問題視。ケーン氏は「大統領になる資格があることを示すためには、トランプ氏は納税申告書を公表する必要がある」と述べた。
ペンス候補は、トランプ氏は雇用創出に多大な貢献をしてきたと擁護したほか、米国の税法を想定通りに活用しただけ、などと反論した。 
 
 
 
 
 
 
 

 

2nd round 
米大統領選 両候補が互いに相手を非難 2回目の討論会

アメリカ大統領選挙の民主・共和の両候補による2回目のテレビ討論会が行われ、共和党のトランプ候補が女性を見下すような発言を釈明するとともに、民主党のクリントン候補のメール問題などで反撃したのに対し、クリントン氏は、トランプ氏は大統領としての資質に欠けると厳しく批判し、互いに相手を非難し合う形となりました。
アメリカ大統領選挙は、民主党のクリントン氏と共和党のトランプ氏の2回目の直接対決となるテレビ討論会が日本時間の10日午前、中西部ミズーリ州の大学で行われました。
この中で、トランプ氏はかつて「有名人になれば女性は何でもしてくれる」などと女性を見下すような発言をしていたことについて、「謝罪する」と述べる一方、「更衣室で交わす会話のようなものだ」として、私的で悪ふざけのような会話だったと釈明しました。
そのうえで、クリントン元大統領の女性問題を持ち出して「自分は言葉だけだが、クリントン元大統領は行動で女性を傷つけた」などと述べて、逆にクリントン氏側を非難し、批判をかわそうとしました。
そして、クリントン氏が公務に私用のメールアドレスを使用していた問題について、みずからが大統領になれば捜査を指示するとしたうえで、「あなたは刑務所に入ることになる」と攻撃しました。
これに対してクリントン氏は「トランプ氏の大統領としての資質が疑われているのは、今回の女性の問題だけではない。ヒスパニック系の人たちやイスラム教徒なども侮辱してきた」と述べ、一連の発言はトランプ氏が大統領としての資質を欠いていることを示していると非難を強めました。
さらに、トランプ氏はこれまで繰り返してきた侮辱的な発言の数々について一度も謝罪したことがないとしたうえで、「トランプ氏はみずからの言葉や行動に対して責任を取る必要がある」と批判しました。
世論調査でクリントン氏が徐々にリードを広げる中、女性をめぐるトランプ氏の発言を受けて共和党内では離反の動きが急速に広がるなど、トランプ氏は厳しい立場に立たされています。
互いに非難し合う形となった今回の論戦ではトランプ氏が持ちこたえ、こうした流れに一定の歯止めがかかったという見方も出ていますが、巻き返しにつながるのかどうかは不透明で、有権者の受け止めが注目されています。
討論会史上 最悪の中傷合戦
討論会の会場となったワシントン大学の教授で、アメリカ政治が専門のピーター・カスター氏は、討論会のあとNHKのインタビューに応じ、「今回の討論会は大統領選挙の討論会の歴史上、最もひどい中傷合戦だった。冒頭の15分間は怒りと非難に終始し、その後、次第に政策論争も行われたが、そこでも互いの中傷が行われた。通常、候補者は、冒頭、握手をするものだがそれも行われず、怒りに満ちた討論会だった」と論評しました。そのうえで、カスター教授は「今回の討論会はトランプ氏の女性問題一色だった感じがする。前回の討論会は明らかにクリントン氏の勝利だったが、今回は有権者の判断に影響を与えるようなやり取りは少なかった。私は勝者はいなかったと思う」と述べました。
「トランプ氏が支持者離れを食い止めた」
ミシガン大学で大統領選挙の討論会を専門に研究しているアーロン・カール氏は、「投票行動を決めていない有権者への訴えという面では、クリントン氏が質問をした会場の有権者個人にしっかりと向き合うなどすばらしい対応をした」と述べ、クリントン氏の有権者への対応を評価しました。一方で、カール氏は「トランプ氏はビル・クリントン元大統領の女性問題などを追及し、攻撃に転じたことで熱狂的な支持者を満足させ、ここ2日間、直面していた支持者離れを食い止めることができた。トランプ氏は前回の討論会よりもよいパフォーマンスを見せることができた」と述べ、討論会全体としてはトランプ氏が優勢だったいう見方を示しました。
米メディアの見方 分かれる
アメリカの主要メディアからは、今回のテレビ討論会について民主党のクリントン候補がトランプ候補を上回ったという評価が出る一方、女性を見下したような発言で批判を浴びているトランプ氏も、持論を展開して持ちこたえたという見方が出ています。
このうち、有力紙のワシントン・ポストは「クリントン氏はトランプ氏が勢いを取り戻すような失敗を犯さなかった」として、安定感を発揮したクリントン氏がトランプ氏を上回ったと指摘しました。
一方、有力紙のウォール・ストリート・ジャーナルは、オバマ政権が推進する医療保険制度改革などについてトランプ氏が持論を展開し、討論会が進むにつれてパフォーマンスがよくなったと評価しました。そのうえで「トランプ氏にとって討論会の目的が激しい批判に耐えて持ち直すことにあったとすれば、それは達成できた」として、女性をめぐる発言で厳しい立場に立たされていたトランプ氏が持ちこたえ、流れに一定の歯止めがかかったという見方を示しました。
また、有力紙のニューヨーク・タイムズは、クリントン氏とトランプ氏が討論会の冒頭、握手を交わさなかったことを取り上げ、「アメリカ政治の中でも非常に醜い瞬間だった」と指摘しました。
CNNは、500人余りの視聴者に討論会ではどちらが優れていたか尋ねたところ、クリントン氏と答えた人が57%だったのに対し、トランプ氏は34%だったと伝えました。ただし、質問に答えた人のうち、民主党支持者が36%を占めたのに対し、共和党支持者は27%だったとしています。
有権者「中傷が多すぎた」「時間のむだ」
首都ワシントンのレストランで討論会を見ていたテキサス州に住む35歳の男性は、「候補者どうしの中傷に時間を割きすぎていた。どのようにしてお互いの候補者が主張する政策を実行するのか全く分からなかった。まだどの候補に票を入れるのかは決められない」と話していました。
また一緒に討論会を見ていたこの男性の妻は、「候補者が質問に対して答えようとせず、残念なことに娯楽番組みたいな討論会で、見ているのが時間のむだのように感じいらいらしました」と話していました。
ネット上のアンケート調査 評価分かれる
アメリカ大統領選挙に向けたテレビ討論会を受けて、アメリカの各メディアは、討論会ではクリントン氏とトランプ氏のどちらが優れていたと思うかを尋ねるアンケート調査をネット上で実施し、その結果を公開しています。
調査結果は、いずれも日本時間の午後5時の時点で、NBCテレビの系列局「KJRH」では、延べ1万2000人余りのうち、63%がトランプ氏、37%がクリントン氏が勝ったと回答しています。
また、CBSテレビの支局「CBSニューヨーク」では、延べ3600人余りのうち、53%がトランプ氏、47%がクリントン氏が勝ったと回答しています。
そして、経済ニュース専門のテレビ局「CNBC」は回答者数を明らかにしていませんが、全体の52%がトランプ氏、48%がクリントン氏が勝ったと回答しています。
一方で、FOXテレビの支局「FOX2」では、延べ22万人余りが回答し、57%がクリントン氏、43%がトランプ氏が勝ったとしています。
これらのアンケートでは1人で複数回、回答することもできるため、重複してアンケートに答えている人が含まれる可能性がありますが、インターネット上では両者の評価が分かれています。

 

「トランプ劣勢」が裏目に、クリントン氏に新たな悩み 
米大統領選で民主党のヒラリー・クリントン候補の陣営にとっては新たなリスクが浮上しつつある。世論調査で共和党のドナルド・トランプ候補の劣勢が続けば、多くの民主党支持者が安心して実際の投票に行かなくなるという事態だ。
クリントン氏としては十分な得票を得られなければ、政策遂行に必要な政治的資源を欠いた状態で大統領に就任する形になる。最悪の場合は、落選もないとは言えない。
これは今までクリントン陣営が進めてきた選挙戦術と関係がある。つまりトランプ氏が当選した場合の危険性に多くの時間を費やし、クリントン氏自身の大統領としての魅力を具体的に提示してこなかったのだ。その結果、ミレニアル世代やマイノリティ、左派勢力など鍵となる有権者の間に、クリントン氏をぜひ当選させようという熱意は見当たらない。
世論調査からは、クリントン氏を支持する有権者の多くは第一義的にはトランプ氏の当選阻止が目的であり、トランプ氏勝利の可能性が遠のいたと考えれば、もはや選挙に行く動機は失われる。
フロリダ大学の選挙専門家、マイケル・マクドナルド氏は「投票率は選挙戦の伯仲度と関係する。接戦になるほど投票率は高まる」と指摘した。
ロイター/イプソスの最新世論調査では、クリントン氏支持者の約半数がトランプ氏を大統領にさせないためだと答えた。クリントン氏の政策が良いからとしたのは36.5%、人柄を理由に挙げたのは12.6%しかいない。
民主党支持層の大半を占める若者やアフリカ系、中南米系、低所得層といった有権者を投票所に赴かせるには、候補者や争点の面でそれなりの動機づけが必要になる。典型的なのはオバマ大統領が初当選した2008年のケースだ。
当然ながらクリントン陣営も、有権者がもうトランプ氏が勝つことはないだろうと思い込む展開をずっと懸念し、ことあるごとに選挙戦は厳しく、トランプ氏は大統領にふさわしくないとの考えを前面に打ち出してきた。ただ、支持率の面でクリントン氏の優位が広がるとともに、こうした戦術は行使が難しくなる。
トランプ氏が女性を蔑視したとされる発言の映像が公表された7日より前に実施したロイター/イプソスの50州調査によると、クリントン氏の当選確率は95%に達した。NBC/ウォールストリート・ジャーナル紙が10日発表した世論調査では、クリントン氏の支持率がトランプ氏を11%ポイント上回った。
クリントン氏は、ウォール街で多額の報酬を受け取って行った講演の抜粋が「ウィキリークス」に暴露され、その内容が民主党左派の怒りを買っている問題にも対処を迫られている。講演での発言は、クリントン氏が国際貿易を支持し、金融業界と癒着傾向にあるのではないかという左派側の懸念を裏付ける格好となった。
また左派の一部は、クリントン氏が大統領たるべきだというもっと説得力のある主張を掲げるまで静観しようとしている面もある。
民主党の指名候補をクリントン氏と争ったバーニー・サンダース氏のためにオンラインメディア対応を取り仕切った左派系コンサルティング会社レボリューション・メッセージングのクリエイティブディレクター、Arun Chaudhury氏は「この選挙を単なるトランプ氏の信任投票 にしてはならない」と釘を刺す。
同氏は、クリントン氏が発している主なメッセージは「みんなが立ち上がってトランプ氏の当選を阻止しなければならない」というもので、決してクリントン氏を大統領にしようと言っているわけではないと指摘した。
やはりサンダース陣営に属していた世論調査専門家のベン・ターチン氏は、クリントン氏がもう少し自身が大統領職に就く正統性を提供すれば、より大きな差で勝利できるだろうとの見方を示した。
選挙スローガンに目を向けると、「強い米国を取り戻す」というトランプ氏に比べて、「みんなで強くなろう」と呼びかけているクリントン氏は訴えかける力が弱い。
クリントン陣営もメッセージをある程度修正する必要性は認識しているように見える。
選挙戦が加速した9月以降、クリントン氏は党内の指名争いを勝ち抜いた際の作戦に回帰し、民主党の中核的な支持者である若者や女性などが最も不安を抱えている問題に焦点を当てた小規模な集会の開催を続けている。 

 

トランプ対ヒラリー、どんどん醜くなるワケ
 なぜこんな泥仕合になっているのか
共和党のドナルド・トランプ大統領候補が、民主党のヒラリー・クリントン候補を「嘘つき」と呼び、クリントン候補は「ドナルド・トランブは最高司令官や大統領にふさわしくない」ときっぱり言い返した。
10月9日夜の第2回のテレビ討論会で、両候補は互いの見解ではなく、その適性を叩き合った。トランプ氏は自分が当選したらクリントン氏を投獄するとまで語った。
米国人はいかにして、こんな闇に落ちてしまったのか、米大統領候補を事前にチェックするシステムに一体、何が起きたのか。答えはひとつだ。候補者をきちんとチェックするシステムが存在していないのだ。
かつては党のトップが、こうしたシステムを仕切っていた。彼らは複数の候補者を密室に連れ込み、「過去に当選を妨げるようなことがあったか」を問いただしたものだ。しかし、米国では何十年も前に、有権者が党のトップから、こうした権限を取り上げてしまった。
税金逃れや女性蔑視発言の暴露は遅すぎた
では、候補者をチェックするのは誰か。答えは報道機関だ。そして問題は、有権者の大半が報道機関を信用していないことだ。
トランプ氏に関しては、大統領選出馬を表明した当日から、大統領としての資質が疑われる数々の証拠があった。彼はメキシコからの移民を犯罪者やレイプ犯だと決めつけたが、彼の支持者はそれを意に介さなかった。政治的なアウトサイダーとしてトランプ氏は、支持者の怒りのメッセージを拡散させた。そんなことは、他の誰もやらなかった。
彼に最も打撃を与える暴露がなされるのは、遅すぎた。ニューヨーク・タイムズ紙は入手した過去の納税申告書の一部をもとに、トランプ氏が巨額損失の計上を通じ、所得税を20年近く納めていなかったと報じた。ワシントン・ポスト紙は7日、トランプ氏の過去の女性蔑視発言を伝えた。ハリウッドの娯楽ショーの司会者に対して語った冗談の記録だった。
この点に関してトランプ氏は討論会で、クリントン氏とその夫を執拗に攻撃。討論会の雰囲気を厳しく、対立的で、悲観的なものにした。また、トランプ氏の支持者を「嘆かわしい人々の集まり」と評したクリントン氏が「心にものすごい憎悪を抱えている」と批判した。
女性蔑視発言への批判を受けてトランプ氏がしたことは、ビル・クリントン氏が大統領時代にした行いに、大衆の注意を向けることだった。だが、逆効果になるかもしれない。ビル・クリントン氏が国を大きく混乱させたことを、有権者が思い出したがっているかは疑問だからだ。
また、ウィキリークスがクリントン氏に関する暴露を行ったのは打撃ではあったが、内容に新味はなく、致命的ではなかった。彼女にとって想定内だったし、ウィキリークス自体が中立的な情報源とは言い難いからだ。
トランプ氏は討論会で、オバマ大統領とヒラリー・クリントン氏が「分断された国」を作ったと非難した。だが、トランプ氏の態度は、彼が当選すれば分断を修復できるとの見方にはつながらなかった。荒々しい攻撃により、クリントン氏に割り当てられた時間と場所を侵害し続けたからだ。
トランプ氏は30年間にわたるクリントン氏の公職時代を痛烈に批判。税制改革やテロ終息、雇用回復など、やりたいと言ったことの多くを実現できなかったとした上で、「なぜやらなかったのか」知りたいと言った。クリントン氏の答えは、米国政府のシステムは複雑な問題を一撃で解決する権限を、大統領にすら与えていないというものだった。彼女は正しかったが、トランプ氏はこの議論に応じるのを拒絶した。
彼は、そうした問題すべてを解決する全能の指導者になると約束している。肝心なのは、彼の指導者がそれを信じている点だ。
最もワリを食うのは副大統領候補のペンス氏
共和党指導者の一部が大統領選から降りるよう求めたことに、トランプ氏は反発している。トランプ氏は共和党の指導者たちに逆らって政治的キャリアを積み上げてきたわけで、彼らに屈しようとはしていない。自分もろとも、彼らを引きずり降ろそうとしているだけだ。
本当に割りを食うのは、共和党副大統領候補でインディアナ州知事のマイク・ペンス氏だ。トランプ氏が今回落選すれば、ペンス氏は次回2020年の大統領選に出馬するだろう。だが、来月の選挙でトランプ氏が敗れ共和党が壊滅的な打撃を受ければ、今後数年間ペンス氏には逆風が予想される。ペンス氏はトランプ氏の女房役とされ、共和党員は2016年の大失敗を忘れたがるだろうからだ。
トランプ氏がこのまま選挙戦に残る一方で、ペンス氏が降りるようなことになれば、とても皮肉なことになってしまう。 
 
 
 
 
 
 
 

 

Third round
米大統領選  3回目の討論会

要旨
19日に行われた米大統領候補による第3回テレビ討論会での民主党ヒラリー・クリントン前国務長官と共和党ドナルド・トランプ氏の発言要旨は次の通り。
ロシア
クリントン氏 ロシアは米国へのサイバー攻撃に関与している。外国政府による大統領選の介入は、前例のない事態だ。プーチン大統領は操り人形(トランプ氏)を大統領にしたがっている。
トランプ氏 ロシアがサイバー攻撃をしているのか、中国なのか、クリントン氏には分からない。クリントン氏はプーチン大統領に出し抜かれて嫌っているだけだ。
わいせつ被害
クリントン氏 トランプ氏は、女性を見くびることで自分を大きく見せている。
トランプ氏 わいせつ被害を訴える女性の証言はうそで、フィクションだ。私は誰よりも女性を尊敬している。
選挙の不正
クリントン氏 トランプ氏は思い通りにならないことは全て不正と主張する。
トランプ氏 深刻な罪を犯したクリントン氏が立候補していることが不正だ。選挙結果を受け入れるかどうか、今は明言しない。その時点で検討する。
貿易問題
クリントン氏 環太平洋連携協定(TPP)は合意内容を判断し、反対した。大統領就任後も反対する。トランプ氏は企業経営で中国の鉄鋼を購入し、中国の雇用を支えてきた。
トランプ氏 クリントン氏はTPP批准を望んでいる。これまでの討論で(国務長官在任時にTPPを)「金字塔」と呼んだことを否定したが、全くのうそだ。
経済政策
クリントン氏 富裕層や企業の税負担を増やし、インフラや教育に投資する。トランプ氏は雇用を喪失させ、債務を膨らます。
トランプ氏 大幅減税し雇用を急増させる。経済成長率は1%から5〜6%になる。医療保険改革制度をつくりかえる。
対IS掃討戦
クリントン氏 過激派組織「イスラム国」(IS)をイラクから駆逐した後は、米部隊を派遣しない。シリアに飛行禁止区域を設置することで人命を救い、内戦終結を早めることができる。
トランプ氏 イランがイラクを手に入れようとしている。シリア北部アレッポの惨事は(内戦が始まった当時、国務長官だった)クリントン氏のせいだ。 
 
 
 
 
 
 
 
 
トランプ氏とクリントン氏、最後のテレビ討論会
 前回の討論会と同様、トランプ氏とクリントン氏は握手をせずに討論に入る。
連邦最高裁はどうあるべきか、憲法はどう解釈されるべきか
司会 / 連邦最高裁はどうあるべきか、憲法はどう解釈されるべきか
クリントン / 富裕層のためだけでなく、アメリカ国民のために立ち上がる最高裁を求めています。女性やLGBTの権利を守り、シチズンズ・ユナイテッド(注 / 最高裁判決によって2010年に選挙資金の無制限投入を可能にした保守系団体)にノーという最高裁です。婚姻の平等は後戻りできないし、ロー対ウェイド事件の判決(注 / 州法による妊娠中絶の規制を無効とした1973年の最高裁判決)は覆せない。シチズンズ・ユナイテッドに立ち向かい、労働者の働く権利を守る立場に立つべきだ。
トランプ / ゲンズバーグ判事は私に不適切な発言をし、謝罪を余儀なくされました。最高裁は(国民が銃を持つ権利を定めた)憲法修正第2条を守る必要がある。私が指名する判事は憲法を建国の父たちが考えたように解釈する。それが非常に重要だ。
クリントン / まず私は憲法修正2条を支持している。銃保有の権利を理解し尊重している。しかし合理的な規制が必要だ。憲法修正第2条を守ることと、人々の命を守ることに矛盾はない。1年で3万3000人の命が銃で失われている。包括的なチェック体制が必要だ。一種の改革をもたらすことは、憲法修正2条と対立しない。あなたはヘラー判決(ワシントンDCによる銃規制の無効を命じた2008年の最高裁判決)を指摘しているが、ワシントンDCは子供たちの命を守るために銃の安全な保管を命じようとしていた。人々の命を守ることと憲法修正2条を守ることは対立しない。
司会 / トランプさん、あなたはどうやって憲法修正2条を守りますか?
トランプ / ヘラー判決はとても強力で、ヒラリーはとても怒っている。スカリア判事の判決はとてもよくできていた。
クリントン / 私が怒っているのは多くの子供が負傷したり死亡したりしているからだ。しかし私は憲法修正2条を尊重する。ドナルドはNRA(全米ライフル協会)の支持を強く受けている。憲法修正2条は守られるべきだが、そのやり方は3万3000人の命を守るものでなくてはならない。
トランプ / シカゴは最も厳しい銃規制がある。しかし他の都市より銃犯罪は多い。私は憲法修正2条を強く支持する。ヒラリーが何と言おうと私はNRAから支持を受けたことを誇りに思う。
中絶の権利
司会 / 妊娠中絶について。あなたは中絶に反対しているが、ロー対ウェイド判決を覆す判事を任命するか。
トランプ / 私は中絶反対する判事を選ぶ。各州の判断になるだろう。
司会 / 具体的なことを聞いている。
トランプ / もし覆されたら州に戻って、そして州が決める。
司会 / あなたは憲法修正2条を守る最高裁がいいと言った。ロー対ウェイド判決は覆したいのか?
トランプ / 2〜3人の判事を我々が選べばそうなる。私は中絶反対の判事を選ぶからだ。だから各州が判断することになるだろう。
クリントン / 私はロー対ウェイド判決を強く支持する。これは女性の権利を最も親切に保障するものだからだ。多くの州で家族計画協会への資金援助に規制があり、女性たちがその選択を行使できていない。ドナルドは家族計画協会への資金援助打ち切りを支持しているが、私は家族計画協会を守る。女性の決断の権利を守る。今さら後戻りはできない。ドナルドは女性は処罰されるべきというが、そういった考えには大反対だ。
司会 / あなたの発言は、胎児の権利は憲法で保障されていないと解釈されている。後期中絶の禁止にも反対した。なぜ?
クリントン / なぜならロー対ウェイド判決が、人命と母親の健康が考慮される限りにおいて中絶規制が守られべきだと定めているからだ。妊娠後期の中絶は家族にとって辛い決断。米政府は、個人的な決断に介入するべきではない。女性の命を尊重すべきだ。
トランプ / ヒラリーは赤ちゃんの誕生よりも、子宮を引き裂いて妊娠9カ月の胎児を取り出す方がいいと言っている。ヒラリーはそれでOKだというが、私はそうじゃない。
クリントン / 恐ろしいレトリックを持ち出すのはよくない。私が会った女性の何人かでも会ってみなさい。中絶はどんな女性や家族にとっても最悪の選択。政府が介入すべきでない。中国やルーマニアのような妊娠中絶を規制する国に行ったことがある。家族が宗教や医学的助言にもとづいて下す決断に関与すべきでない。私はその権利を守る。
トランプ / 生まれるべき命の1日、2日、3日、4日前に、だれも介入すべきでない。
移民政策
司会 / では移民の問題に移ります。トランプさんは壁を造ろうと言い、クリントンさんは南部国境を守るためのプランは特にない。トランプさんは大規模な強制送還が必要だという。クリントンさんは市民権への優先権を与えるべきだという。 どちらが正しいのか?
トランプ / まずクリントン氏は恩赦を与えようとしている。不公平だ。私たちは強い国境が必要だ。彼らは不法にやってくる。麻薬がやってくる。ヒラリーは開かれた国境を求めている。ニューハンプシャーを訪れたが、気にかけたのは、ヒラリーとオバマが作り出した問題だ。最も大きいのはヘロインだ。若者に影響を与えている。麻薬をこの国に入れないようにしないといけない。我々には壁が必要だ。私が大統領になったら麻薬組織の指導者を国外退去にする。私を移民税関捜査局(ICE)の1万6500人以上が支持してくれている。彼らは強い国境を求めている。ニューハンプシャーに行ったが、多くの人の不満はヒラリーとオバマが引き起こした。南部国境からもたらされるヘロインが、若者に蔓延し、若者や大勢の人々の血液を毒している。強い国境を造り、すぐに麻薬を規制しないといけない。私の最初の仕事は、麻薬組織のボスを追い出し、この国の悪い奴らを追い出すことだ。
ヒラリー / 私がラスベガスで会ったアメリカ生まれの少女は、外国生まれの両親が強制送還されるのではないかと恐れていました。一生懸命働いているのに。私は家族を引き裂きたくない。ドナルドが言うような強制送還は反対だ。アメリカには1100万人の不法移民がいて、その400万人の子供がアメリカ生まれだ。ドナルドの言うのは、執行官が学校や家を荒らし回って不法移民をバスに乗せて国外に追い出すやり方だ。それは国を分裂させる考えだ。私は上院議員時代、国境警備の強化に賛成したし、私の移民改革プランはもちろん国境警備を含んでいる。暴力を犯した者など強制送還されるべき者はされるべきだ。しかしドナルドの案はメキシコ大統領も支持しなかった。壁の建設費用は負担しないと言ったからだ。私たちは法治国家の国民であり、法に基づいて行動すべきだ。
トランプ / 私はまずメキシコ大統領とよい会談を持ちました。彼女の夫が署名したNAFTAは最悪の条約だ。ヒラリーは壁を建設しようとしたが、何もしなかったから壁はできなかった。
司会 / ヒラリーさん。
クリントン / 私は国境警備に賛成した。それで…
トランプ / で、壁がある。
クリントン / ドナルドの話は移民バッシングのキャンペーンだ。メキシコ移民が強姦犯だの麻薬売人だのと。不法移民を闇から引き出して正しい経済活動に載せるのが正しいやり方だ。なぜなら雇用主も解雇したり賃金を下げたりできなくなるからだ。ドナルドはトランプタワーを建てるために不法移民を安くこき使ったからよく知っている。私は経済を活性化させたい。ドナルドのように不法移民労働者を追い出すことはしたくない。
トランプ / ヒラリーもオバマもあまり言いたがらないが、オバマ大統領は多くの人を国外退去にした。戻ってきて市民になることはできるが、アンフェアだ。市民権を得るには順番待ちがある。誰かが国境に勝手に入ってきて市民になれるのはよくない。
クリントン / 開かれた国境にはしない。それはこじつけだ。堅固な国境はあるが革新もある。両国間の問題だ。移民制度改革はブッシュ大統領も支持した。
司会 / クリントンさん、あなたはブラジルの銀行から22万5000ドルの献金を受けたとウィキリークスで暴露された。「私の夢は半球規模の市場と貿易、開かれた国境だ」と。開かれた国境はあなたの夢か?
クリントン / その文章を最後まで読んで欲しい。エネルギー政策について話している。国境を越えたエネルギーシステムのことだ。それは我々の大きな利益になる。だけどウィキリークスで大事なことは、ロシア政府が関与していることだ。アメリカのネットをハッキングしている。ロシア政府の最高レベル、はっきり言ってプーチン自身の命令だ。17の機関が選挙への影響を確認した。今夜、もっとも重要な質問は、トランプがプーチンの助けを得ていないと認めることであり、過去に恩恵を受けたロシアのスパイ活動を拒否するということだ。
トランプ / 開かれた国境からずいぶん話をそらすんだね。どうやってプーチンに…
司会 / 観客の皆さん、ご静粛に。
トランプ / 彼女が開かれた国境を求めている。そこから話をそらそうとしている。シリアから多くの人がやってくる。550%増やそうとしている。過激なイスラムテロリストを止めないといけない。私はプーチンは知らない。ロシアとアメリカが仲良くしてISを追及できればいい。我々は深刻な状況だ。ロシアは1800の核弾頭を持っていてまだ増え続けており、彼女は怖じ気付いている。
クリントン / だってプーチンは操り人形としてのアメリカ大統領がほしいから。はっきりしてるわよ。
トランプ / 操り人形じゃないよ。操り人形はあんただ。
クリントン / あなたは認めないだろうけど。
トランプ / あんたが操り人形だ。
クリントン / ロシアはアメリカへのサイバー攻撃に関与していて、あなたは国民へのスパイ活動に関与し地得る。あなたがプーチンとの関係を誇り、ほしいものを何でも与え、NATOを飼いならし、プーチンを助け続ける。外国政府が選挙に干渉するなんて前代未聞の事態だ。17の情報機関がスパイアタックを認定していて、それらはクレムリンの最高レベルから大統領選への干渉の目的で来ている。非常にゆゆしきことだ。
トランプ / ヒラリーはそれがロシアの仕業なのか、中国か他の誰なのか分かっていない。
クリントン / 17の情報機関を疑うの?
トランプ / 彼女は何も分かっていない。私は疑っている。
クリントン / 国民を守るために戦っている軍民の情報機関よりプーチンを信頼している…
トランプ / プーチンが好きでないのは、彼女よりプーチンがはるかに賢いからだ…
司会 / トランプさん、あなたに質問です。アメリカの情報機関のトップが、このハッキングの背後にロシアがいると断定しています。それが誰でアレ、ロシアのアメリカ大統領選への干渉を批判しますか?
トランプ / ロシアであれ、誰であれ。
司会 / 非難しますか?
トランプ / もちろん非難する。もちろん私はプーチンを知らない…
司会 / 別に聞いてないんですけど。
トランプ / 別に親友でもない。しかし私がロシアと仲良くできればいいことだ。プーチンはどこでも、シリアでもヒラリーやオバマより賢い行動を取った。彼らは弾頭を造ったけど我々は造れなかった。6兆ドル使って中東は占拠されてしまった。彼女は私が見たどの政府首脳より愚かだ。それは今後も続くだろう。
司会 / 移民からずいぶん離れてしまいましたが、そろそろ終わらせないといけません。
クリントン / この傲慢な人物は、核兵器の使用に対してもずいぶん軽い。
トランプ / 違う。
クリントン / あなたは核兵器について言及する。日本、韓国、サウジアラビアについても触れ、また核兵器をなぜ使わないのか、という。大統領が命令を下したらそれに従わないといけない。その時間はわずか4分だ。このような途方もないことをいう人に、核のコードを与えることはできない。
トランプ / 私は200人の将校から支持を受けている。日本や韓国を守っている。大変なお金を払っている。こうした協定は再交渉される必要がある。サウジや日本や韓国やその他の地域を守るお金はない。
クリントン / アジアの核競争とあなたは言った。どうぞ、その種の…
トランプ / 自分の国は自分で守れと言っただけだ。私は核とは言ってない。
クリントン / アメリカは同盟を通じて平和を守ってきた。ドナルドは同盟を破棄したいのだ。同盟は世界を、そしてアメリカを安全にする。私はアジアやヨーロッパ、中東の同盟国と行動を共にする。それが唯一の道だ。
司会 / 経済政策に行きます。どうやって経済を成長させるかは難しい問題です。クリントンさんの案では政府の力が大きい。政府支出を拡大する。トランプさんの案は規制緩和です。もう少し掘り下げましょう。
クリントン / 私は中間層を生かすことでアメリカが生きる。経済成長を中間層の家庭に多くの雇用機会を与えることが私の計画の根底にあります。第2次大戦以降で最大の雇用を提供して製造業を発展させる。クリーンエネルギーの新しい雇用創出で気候変動に対処できるだけでなく、新たな雇用機会とビジネスをつくる。最低賃金を引き上げて、フルタイムワーカーが貧困にならないようにする。男女の賃金を同等にする。高校やコミュニティーカレッジでも技術教育がもっと必要だ。所得12万5000ドル以下の家庭は大学の学費を免除する。バーニー・サンダースと私がつくった計画が機能すれば。企業をもっと貢献させる。でもドナルドの計画では雇用は失われる。ドナルドは富裕層に過去最大の減税を行う計画で。でもその改革では再び恐慌が訪れる。
トランプ / まず彼女の計画は増税だ。税金2倍かもしれない。大惨事だ。大学の授業料は他の国民が負担することになる。日本とドイツと申し上げたが、韓国もサウジも豊かで非常に強大な国だ。そんな国を守っている。私はNATOを支持するが資金は彼らが負担する必要がある。同盟国は偉大だと彼女は言うが、称賛するだけでは負担してもらえない。日本やドイツ、韓国などに、助けてくれと言わなければならない。オバマ政権で債務は2倍になった。NAFTAで雇用が他国に流出した。NAFTAは再交渉する。貿易はするが、素晴らしい協定を結ぶ。そうできなければ違う道を進む。法人税を大幅に減税して企業は雇用を始める。2兆ドルが政府に還元される。エンジンが再びかかって1%成長から脱却する。
クリントン / トランプ氏は過去最大の減税を行うと言っており、それはブッシュ政権の3倍の減税となる。一方、私の計画では債務は一銭も増やさない。でもトランプ氏の計画では債務が大幅に増える。夫のビル・クリントン政権では、債務を前政権から債務を3分の2の債務を減らした。私の計画では、人々に投資をして雇用を増やす。教育、スキルの訓練、人々の機会に投資する。そうすることで経済が成長する。
司会 / オバマ大統領の政権では経済が失速しました。
クリントン / 悪い経済状況を引き継いだ。私は当時上院議員だったが、人々があれほど苦しんでいるのを見たことはない。オバマ氏に責任はないが、オバマ氏のとったステップで経済は救われた。私は中間層に投資したい。債務は一銭も増やさないと言っている。多くの人にとって良い賃金の雇用を増やす。
司会 / 保守派のエコノミストも、あなたのアイデアは非現実的だという。
トランプ / インドの成長率は8%、中国は7%だ。我々は1%前後に過ぎない。雇用統計にいい数字は出ていない。ひどい内容だ。我が国は景気停滞が深刻だ。これ以上、製品を造れない。世界中から製品が流れ込んでいる。25年前の工場とはまったく違う。家族が苦しんでいる。彼女の夫がNAFTAに署名して以来、まったくこの国は好転していない。
クリントン / まず、TPPの最終草案を見たとき、私は反対した。TPPが職を生み出し、賃金を上げ、安全保障に寄与するか? 私は今は反対している。選挙後も反対する。大統領在任中は反対する。メキシコに仕事を移したのはドナルドだ。メキシコを含む12カ国に雇用を輸出した。中国について言及すべきは不法な鉄鋼・アルミのダンピングだ。国務長官時代、これに戦ってきた。ラスベガスのトランプホテルは中国の鉄鋼でできている。ドナルドのやったことはアメリカでなく中国の鉄鋼労働者に職を与えることだ。
トランプ / 我々は経済協定を結ぶだろう。貿易検察官を史上初めて設置する。アメリカの製品を買ってくれる協定を結び、仕事を探す。彼女は30年、何をしてきたのか。あなたはあらゆる国政に関与してきた。あなたがしてきたことはすべて悪い方向に向かっている。あなたは口ばかりで実行に移さない。国務長官をしながら60億ドルが国務省から失われている。あなたが大統領になったら大変な混乱になる。
クリントン / あなたはウソを言っている。何度も指摘されたじゃないの。いいでしょう、30年の間、何があったか言いましょう。1970年に私は子供擁護基金をつくり、アフリカ系の子供が学校で差別されることを防いできた。彼はそのとき自分のアパートで人種差別罪で訴追されていた。1980年ダイオ、私はアーカンソーで学校改革に取り組んでいた。彼は1400万ドルを父親からもらってビジネスを始めた。90年代、北京に行ったり女性の権利や人権をやっていた。彼は元ミス・ユニバースを侮辱していた。
トランプ / ちょっと待て。私はもっといい仕事をした。偉大な会社をつくった。100万ドルの借金で立派な会社をつくった。もし私に同じように国を任せてくれたら、誇れる国にする。そして率直に言って、シリアや移民、リビア、イラクはどうだ。オバマが作り出した小さなグループが巨大になった。イラクに派兵すべきではなかったが、簡単に撤退すべきではなかった。イラクに出兵した以上、簡単に撤退すべきでなかった。ISに誰よりもチャンスを与えたのだ。
大統領の資質
司会 / 行動に移していないと言っていたが、その後9人の女性が名乗り出た。なぜ多くの女性がこのように名乗り出たのか。
トランプ / まず私が知っている人たちだが、キャンペーンの中で主張しているに過ぎない。彼女は暴力を扇動している。1500ドルを提供してケンカをけしかけている。これはクリントン氏のやり方だ。話はまったくウソだ。こうした女性たちは有名になりたかったんだろう。犯罪行為だ。そしてシカゴでは暴動のために死にかけた人がいた。彼女が始めたことだ。女性たちは10分間の名声を獲得するために作り話をしたにすぎない。
クリントン / トランプ氏について、何人かの女性が性的被害にあったと公の場で証言してきた。これに対してトランプしは大きな集会で、「そんなことはしていない。なぜなら彼女たちは十分に魅力的でないから」「彼女を見てみろ、そんなはずがない。私が選ぶはずがない」。
トランプ / 言ってない、言ってない…
クリントン / トランプ氏は、女性に関してそのようなことを何度も繰り返し、自分の存在を大きく見せて、威厳付けをしようとしている。トランプ氏はそのような存在です。女性なら、どんな気持ちを持つのか。こんな人物が大統領にふさわしいのか。私たちはアメリカをもっと偉大にしたい。
トランプ / 私ほど女性を尊敬している人はいない。こうした主張はすべてウソだ。作り話だ。おそらくクリントン氏が始めた中傷キャンペーンの一環だろう。彼女は3万3000通のメールを処分している。彼女は何百回も国民や議会やFBIにウソをついている。収監されて当然だ。しかし大統領候補だからといってそのような目に遭わないのはおかしい。彼女のインチキに満ちたキャンペーンの中で行われている。
クリントン / ドナルドは自分に都合の悪い話をされると、責任を否定しますね。女性問題だけじゃない、すべてにおいて謝罪しない。障害のあるリポーターにも…
トランプ / 違う。
クリントン / (イラクで死亡したイスラム教徒の将校の遺族)カーン夫妻をテレビで侮辱した。ジョン・マケイン氏も侮辱した。連邦判事も、トランプ大学の不正を裁くにあたって両親がメキシコ人だから信用できないと言った。これはドナルドによる暗い危険な分断のパターンだ。彼は暴力を扇動し、集会で暴力をふるう人を称賛する。
トランプ / 私の集会で暴力沙汰が起きたのは悲しい。録画もある。だけど私はISへの対抗策を話す方がいい。
クリントン財団
司会 / クリントンさん、あなたは国務長官在任中、クリントン財団の利益になるようなことはしないと上院の委員会で宣誓した。だがEメールには、支援者が特別にあなたから恩恵を受けている。
クリントン / クリントン財団は国務長官時代から、国の利益を考えて取り組んできたもの。クリントン財団はチャリティー期間で、その功績を誇りに思っている。世界の1100万人がHIVの治療を受けられるようにした。これは世界の患者の半分ん当たる。
トランプ / クリントン財団は犯罪組織です。財団は、サウジアラビアやカタールからの献金も受けている。あなたは女性の権利を訴えているが、女性を虐げているところから献金を受けておいて、なぜそれを返金しないのか。
トランプ氏、選挙結果受け入れを明言せず
司会 / あなたもこの選挙の結果を完全に受け入れますか?
トランプ / そのときに精査して考える。酷い状況を目撃してきた。マスメディアは汚職に満ちてひどいことを報じている。真実が何かなんて考えていない。有権者をだまそうと考えている。11/8に不正が行われていないか明らかにする。数百万人が有権者登録をしている。その人たちはもともと登録すべきでない。その他も例をあげよう。クリントン氏は深刻な犯罪を犯している。もともと立候補など認められるべきでなかった。Eメール問題などいろいろな不正な
司会 / しかしこの国は伝統がある。負けた人が認めて団結する。国のためだ。あなたはその用意がないのか。
トランプ / そのときにお知らせする。
大統領の資質
クリントン / 大統領選挙を結果がどうあれ、それを受け入れなければ私たちの民主主義ではない。オバマ大統領はあなたに対して「泣き言をやめるように」言った。あたたにに大統領の資質はない。主要政党の候補とは思えない発言を繰り返してもいる。
クリントン / 240年にわたり、自由で公平な選挙を受け入れてきた。そして、その結果を受け入れてきた。
海外の紛争地
司会 / イラク軍がモスル奪還作戦を開始した。成功したら、その後どうするかが問題だ。アメリカ軍を空白に投入し、ISが返ってこないようにするか?
クリントン / アメリカの兵士を占領軍として送り込むことは反対だ。アメリカの利益に反する。
トランプ / モスルは悲しい状況だ。3カ月前から奇襲作戦が必要だと考えていたと言い続けていた。IS関係者は笑い飛ばしているだろう。我々は攻撃を予告し続けていたのだ。砂の上に一線を画すと言いながら、これが間違いだったという。モスルは最終的に奪還するが、非常に厳しい戦いが待っている。ISのリーダーは非常に賢い。イランが私たちに感謝状を書いている。イランは核合意によって核兵器を開発するだろう。イランはイラクを征服すると私は警告してきた。誰もがモスルからいなくなれば、イランが潤うことになる。
司会 / アレッポについて。あなたは事実でないことを言った。アレッポは事実上崩壊しているといった。
トランプ / 大惨事になっている。あなたは見たのか。
司会 / 25万人が暮らしていて殺害されている。だからこそアレッポ東部で空爆しているのだと。
トランプ / アレッポは大惨事となっている。悪夢だ。しかし崩壊しつつあることは間違いない。何が起きているか見て欲しい。それもヒラリーのせいだ。アサド政権と厳しい戦いを余儀なくされている。アサドの方が彼女やオバマより賢い。今ではロシアやイランと同盟関係を持っている。我々は1億5000万ドルもの資金をイランに送った。17億ドルを身代金として渡した。ヒラリーはウソをついている。もちろんISを壊滅したいと思っているかもしれないが、我々は反政府勢力を支持するといいながらその実態も知らない。ロシアとイランは結託してアサド政権と同じくらい悪い人物が反政府勢力にいる。ヒラリーは何も知らない。これこそが難民問題を引き起こしている。ISとつながりのある人物がアメリカに向かっている。ヒラリー、ありがとう、いい仕事をした。
トランプ / ISは32カ国に拡大しているが、もともと勢力は拡大するはずではなかった。相手の方が何枚も上を言っている。プーチンからもアサドからも出し抜かれている。いかに我が国のリーダーが愚かなのか示している。
難民問題
クリントン / 我が国は、女性や子供に扉を閉ざすことはない。アレッポで血を流した4歳の子の映像を見ましたよね。ISの問題は、イスラム教徒と取り組むべきでしょう。多くの人たちがオーランドで犠牲になった事件もありました。脅威があるのか、今の対策がふさわしいのか徹底的に考えていきます。
経済
司会 / なぜ債務が増えているのか。
トランプ / 私はすばらしい雇用を創出する。私はGDPを4〜6%に引き上げる。経済マシーンを再び復活させ、他の国が利用することのないようにする。今は怠慢な仕事をしている。政治のプロたちが大企業に働きかけているが、貿易交渉で不利な立場にいる。指導力を持ったビジネス界のリーダーを利用して貿易交渉をする。しかし今は政治のプロ、能力のない人がやっている。中国やもっと賢い人たちに利用されているのだ。これまでで数十年見たこともないような経済を打ち立てる。新しい企業をアメリカで活動できるようにする。
社会保障
司会 / トランプ氏が大統領になったら、メディケアや社会保障を救えるのか?
トランプ / 私は減税を行う。大惨事のオバマケアを廃止し、新しい制度を導入する。2017年には財政破綻するだろう。オバマケアは私たちの保険金が来年100%も上昇する。
クリントン / トランプ氏、あたなはアメリカを再び偉大にしようと言う。そして、私たちの政府を批判してきました。(共和党の)レーガン大統領を批判もしてきました。債務についてですが、私たちは財源を確保しており、債務が増えることはない。教育、インフラ、ほか様々な提言をしている。財源を確保している。正当な負担を強いることはあるでしょうが、それによって成長が損なわれることはないでしょう。
最後に
司会 / 最後、あなたがなぜ大統領になるべきか話してください。
クリントン / 私は、全ての人たちに協力してもらいたいと思っています。経済成長をさせ、公平な国にする。そのために、みなさんの協力が必要なのです。私は、より良い生活をもたらします。大統領になればそれを任務にします。所得を上げます。私にチャンスを与えてください。
トランプ / 軍は弱体化している。是正しなければならない。不法移民の問題に立ち向かわなければいけない。警察官は尊敬されていない。法と秩序を確立しなければならない。アフリカ系、ラテン系に貢献する。彼女は口ばかりで、いったん票をもらったら4年後まで何もしない。私はアメリカを再び偉大な国にする。それを今、始めないといけない。
( 討論会が終了) 

 

最終対決も「適性」巡り非難応酬 クリントン氏 VS トランプ氏
米大統領選候補の民主党クリントン前国務長官(68)と、共和党の実業家トランプ氏(70)による最後の直接対決となる第3回テレビ討論会が19日夜(日本時間20日午前)、西部ネバダ州ラスベガスで行われた。史上まれにみる「嫌われ者同士」とも称される両候補は、この夜も資質を巡り激しい応酬を展開。終了後の米CNNテレビの世論調査ではクリントン氏が勝利、「3戦全勝」として初の女性大統領誕生に向けて大きく前進した。トランプ氏は崖っぷちに追い込まれた。
「ウソだ。すべて作り話だ。彼女の陣営が促したに違いない」。先週来、体を触られたり、キスをされたりしたという女性が相次いで名乗り出ていることを司会者にただされたトランプ氏。必死で否定したがライバルが追い打ちをかける。「トランプ氏は『彼女たちは美しくないから、そのようなことはしなかった』と言っている」。過去の発言を周到に頭に入れ「トランプ氏=女性の敵」と印象づける作戦は明らかだった。
トランプ氏も負けてはいない。国務長官時代に家族が運営する「クリントン財団」の献金者を優遇していたのではないかとの疑惑について問われたクリントン氏が「仕事はすべて国益のためだった」とはぐらかすと、すかさず「犯罪組織だ」と切り込んだ。
90分間の討論会では「大統領としての適性」「移民」「経済」「最高裁」など6テーマで論戦を交わしたが、2人はほとんどのテーマで互いの「適性」を批判し合った。クリントン氏の発言中にトランプ氏が「なんて嫌な女だ」と口を挟む場面もあった。
過去2回の討論会ともメディアの大半はクリントン氏が「勝利」。トランプ氏は今月に入り、女性蔑視発言やセクハラ疑惑など相次ぐ醜聞で批判を受け支持率が低下。政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の一騎打ちを想定した世論調査の平均支持率でトランプ氏は1カ月前に約1ポイントだった差を約7ポイントまで広げられ、今回の討論会が巻き返しを図る「最後のチャンス」と言われていた。しかしCNNの世論調査によるとクリントン氏が「勝った」との回答が52%。トランプ氏は39%だった。
「選挙で不正が行われている」と主張していることに関し「選挙結果を受け入れると約束できるか」と質問されたトランプ氏は「そのときに考える」。正当性を認めない可能性も示唆した。冒頭も終了後も握手を交わさなかった2人。投票は11月8日に迫った。 

 

トランプ VS クリントン 最後のTV討論会
アメリカ大統領選挙は、日本時間20日午前10時すぎから民主党のクリントン候補、共和党のトランプ候補による最後のテレビ討論会が行われ、トランプ氏の女性に関するスキャンダルなどで非難の応酬となった。ネバダ州ラスベガスから近野宏明記者が伝える。
自らの女性蔑視発言などで窮地に追い込まれているトランプ氏。性的な被害にあったという女性が次々と名乗り出ていることについて、「でっちあげ」との主張を繰り返した。
トランプ氏「明らかにでっちあげ。女性たちが誰だかわからない。クリントン陣営が仕掛けた」
クリントン氏「彼は女性たちが性的暴行をしたくなるほど魅力的ではないから、するわけがないと言っている」
トランプ氏「そんなこと言っていない」「私ほど女性を尊敬している人間はいない」
「大統領の資質」という、今回最も注目されるテーマで女性蔑視問題などについて問われたトランプ氏は、クリントン氏が公務で私用メールを使っていた問題に話題を切り替えるなど、防戦に追われた。
また、討論では冒頭、大統領が指名権限をもっている連邦最高裁の判事についても議論された。9人の枠のうち現在1人が欠員状態で、ここに誰を指名するかは、銃規制や同性婚、中絶といった国を二分するような重要な判決の方向性を決めることになる。有権者にとっては極めて重要で、両候補とも、比較的冷静に議論をかわした形となった。
トランプ氏は支持率でクリントン氏に7ポイント近い差を付けられ、本選で獲得が予想される選挙人の数でも水をあけられている。しかし、政策論では起死回生へのきっかけをつかんだとは言い難い状況。 

 

CNN 討論会で52%がクリントン勝利、トランプ勝利は39%
CNNが米大統領選の候補者によるテレビ討論会直後に行った調査によれば、民主党のヒラリー・クリントン候補が討論に勝利したとの回答が52%。共和党のドナルド・トランプ候補が勝利との回答は39%だった。
最後の論戦となった19日の第3回テレビ討論会はネバダ州ラスベガスで行われ、両候補は、冒頭から女性の人工妊娠中絶の権利をめぐり激しく対立。トランプ氏は、大統領選挙の結果を受け入れるかどうかについて明言しなかった。
過去2回の討論会で互いの個人攻撃が目立ったのとは対照的に、今回は政策に基づいた議論が交わされ、銃所持の権利、移民問題などもテーマとなった。 

 

トランプ氏、選挙結果受け入れ明言せず / クリントン氏「女性蔑視」追及
米大統領選の第3回テレビ討論会は19日夜(日本時間20日午前)、西部ネバダ州ラスベガスのネバダ大学で開かれた。11月8日の投票に向けた最後の対決で、民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官(68)と共和党候補ドナルド・トランプ氏(70)が登壇。大統領選の不正操作を主張するトランプ氏は、投票結果を受け入れるかどうか明言しなかった。クリントン氏は、トランプ氏が女性を蔑視しているとして、資質に強い疑問を投げ掛けた。
討論会後のCNNテレビの世論調査では、クリントン氏勝利の評価が52%、トランプ氏が勝ったという回答が39%だった。主要米メディアの評価では、クリントン氏はこれまで2回の討論会でも勝者だった。
トランプ氏が最近、大統領選の不正を執拗(しつよう)に唱えているのを受け、米国内では、民主主義の根幹を危うくすると懸念する声が出ている。同氏はこの日の討論会で結果受け入れについて「その時点で検討する」と述べるにとどめ、約束しなかった。候補者が選挙自体の正当性を認めなければ、混乱が広がる恐れもある。
9日の第2回討論会でトランプ氏は、女性を思い通りにできるといった昔のわいせつ発言について、実際に行動に移したことはないと釈明に追われた。しかしその後、トランプ氏に無理やり体を触られたと訴える女性が続出した。
トランプ氏は19日の討論会で、女性たちの訴えは「うそで、フィクションだ」と主張。「こういう人たちを知らない」と強調し、クリントン陣営が仕掛けた可能性さえ示唆した。
これに対しクリントン氏は「(トランプ氏は)女性を見くびることで自分を大きく見せようと考えている」と非難。「私たちがどういう国民で、どういう国かを示すのは、私たち次第だ」と語り、トランプ氏は大統領にふさわしくないと訴えた。
一方、クリントン氏は、内部告発サイト「ウィキリークス」が公表した同氏関連のメールに基づき、銀行から報酬を受けた演説の内容について、司会者から追及された。
クリントン氏はこれに関し、メールが漏れた原因はロシア政府によるスパイ行為にあると指摘。ロシアのプーチン大統領に好意的な発言をしてきたトランプ氏の姿勢を逆に問題にしたが、トランプ氏は「プーチン氏を知っているわけではない」と反論した。 

 

クリントン氏の優位鮮明に / トランプ氏、結果受け入れ留保
米大統領選で最後となる第3回テレビ討論会が19日夜(日本時間20日午前)、西部ネバダ州ラスベガスのネバダ大学で開かれた。民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(68)と共和党のドナルド・トランプ氏(70)は再び激論を展開。選挙戦終盤で支持率を伸ばしているクリントン氏が勝利を収めたという評価が多く、優位が鮮明になった。
一方、今回の大統領選を不正選挙だと主張してきたトランプ氏は、選挙結果を認めるかどうか態度を明確にしなかった。「その時点で検討する」と留保し、明言を迫る司会者に対し「どちらとも言わないでおこう」と答えた。
トランプ氏は9月26日の第1回討論会では「彼女(クリントン氏)が勝てば、絶対に支持する」と断言していた。劣勢になって態度を翻したともいえ、11月8日に投票が迫った大統領選の先行きに不透明感が強まった。
トランプ氏はさらに、クリントン氏が国務長官として私用メールを公務に使った問題などを引き合いに「彼女は大統領選立候補を許されるべきではなかった」とまで言った。これを聞いたクリントン氏は「恐ろしい」と反応し、「トランプ氏は思い通りにならないことは、全て不正だと主張する」と非難した。
トランプ氏にわいせつ行為を受けたと訴える女性が9人も名乗り出た問題では、「妻に謝りさえしていない。何もしていないし、そうした女性たちに会ってもいないからだ」と真っ向から否定した。
過激派組織「イスラム国」(IS)をイラクから駆逐した後の米軍部隊派遣について、クリントン氏はオバマ政権と同様に否定的な立場を表明。シリア内戦には飛行禁止区域設置などで対処する方針を説明した。トランプ氏は、内戦下のシリア北部アレッポの惨状は「人道上の悪夢だ」とし、国務長官としてシリア情勢に関わっていたクリントン氏を非難した。 
キニピアック大が19日に公表した世論調査結果によれば、クリントン氏の支持率は50%、トランプ氏は44%だった。他方、メディアが反トランプ氏に偏っていると考える人は過半数の55%。「腐敗したメディア」が「不正」に加担しているというトランプ氏の主張を後押しする形にもなっている。 

 

最後の討論会、エサに食いついたトランプ氏
 冷静さもつかの間、前2回の非難合戦の繰り返しに
19日行われた米大統領候補の最後の討論会では、共和党ドナルド・トランプ氏は少しの間、落ち着いた慎み深い候補者になりつつあるように見えた。言葉による殴り合いに突入せず、冷静に自身の見解を説明するような候補者にだ。
その後、トランプ氏の好きなテーマ――不法移民の流入を封じるために国境に壁を築くこと――が出ると、クリントン氏はトランプ氏のメキシコ訪問に言及。トランプ氏がメキシコのペニャニエト大統領に対し、壁の建築費用をメキシコに払わせるという要求を面と向かって言えなかったと指摘した。
討論会の流れが変わったのはその時だ。クリントン氏がトランプ氏を挑発しようと「エサ」を投げたとすれば、トランプ氏はそれに食いついたのだ。カウンターパンチが得意だと自認するトランプ氏は、反撃を開始した。討論会は過去2回と同じような展開を見せ、険悪で緊張をはらんだ言葉の応酬に転じ、中身のある議論は非難合戦に取って代わった。同じことが三たび繰り返されたという印象であり、今回の討論会が選挙戦の様相を一変させる可能性はなさそうに思える。
トランプ氏はクリントン氏が国境の開放を望んでおり、3万3000通の電子メールを私用メールサーバーから削除したのは犯罪だと断じた。一方のクリントン氏はトランプ氏をロシアの「あやつり人形」だと言い放った。大統領選の結果を操作するため、クリントン氏の支持者たちのメールシステムに侵入するよう、トランプ氏がロシアに促したというのが根拠だ。
トランプ氏はクリントン氏が「非常に低俗な選挙活動」を行っており、自分の選挙集会を妨害するため暴漢を雇っていると訴えた。クリントン氏はトランプ氏が女性を食い物にしてきたことが明らかになったが同氏はそれを否定し、女性たちを侮辱したと非難。「ドナルドは女性をけなすことで自分が大物になれると考えている。彼は女性たちの尊厳を傷つけている」とした。
クリントン氏は、トランプ氏が米国の核兵器の起爆コードを握る人物には不適格だと述べた。一方、トランプ氏は過激派組織「イスラム国」(IS)が誕生した責任はクリントン氏にあると述べた。クリントン氏は攻撃の手を緩めず、トランプ氏の納税問題や移民を利用したことなどについて批判を繰り広げ、トランプ氏が反論すると微笑んだりした。トランプ氏は怒りを募らせ、クリントン氏が話している最中に割り込むというこれまでの討論会の態度を繰り返した。
低俗に向かう一方の非難合戦は、トランプ氏がクリントン氏はそもそも出馬が許されるべきではなかったと発言するまで続いた――そして驚くべきことに、トランプ氏は大統領選の結果がどうあれ、それを尊重すると明言するのを拒否したのだ。彼は「そのときになったら言う。あなた方の気をもませておく」と言った。これは前例のないことで、今回の討論会はこの返答によって記憶されることになるだろう。
これまでの討論会を聞いてきた人にとっては、新しい中身はほとんどなかった。中身という点では、両氏とも支持層を拡大するためというより、地盤固めを目指した議論を組み立ててきたようだ。
トランプ氏は最高裁判所に関する最初の質問への回答の中で、銃を持つ権利を支持していることを強調し、最高裁の判事にはこの権利を支持する人物の就任を望むと述べた。クリントン氏は同性愛者の権利や銃の所持制限、選挙資金の制限などを含むリベラル派の優先課題を支持する人物の就任を望むと回答した。
中絶問題でも同様に、両氏ともそれぞれの党の主張と一致する見解を述べた。クリントン氏は中絶の権利を熱心に訴え、一方のトランプ氏は中絶を禁止する州の法令が違憲だと判断した最高裁のロー対ウェイド判決について、この判決を最高裁が覆し、各州の裁量に戻せば喜ばしいことだと述べた。
最後の討論会に臨む両氏の目の前には、それぞれ異なる2つの戦略的選択があった。その選択肢には、世論調査の支持率での立ち位置と、大統領選までに残された選挙戦を展開する上で見込みのある道が反映されていた。
トランプ氏にとっての問題は、焦土作戦の様相を呈しているもの――クリントン氏を腐敗した不誠実な人物としてたたき、この選挙と政治プロセスがいかさまであると主張すること――を続けるのか、もしくは失われた雇用や不利な貿易協定といった人気のある経済的メッセージに軸足を戻すのかだ。後者のアプローチはトランプ氏の訴求力を広げるかもしれない。だが前者のアプローチはこれまで支持層をつかんできたうえ、クリントン氏を同時に引きずり下ろすことは、トランプ氏にとっては現段階で優先すべき目標のように見える。
一方のクリントン氏は、トランプ氏のやり方で戦う(個人攻撃を仕掛け、彼からの攻撃には同じように反撃する)か、もしくはそうした領域を無視し、より前向きな議論を試みるかを選ばなければならなかった(討論会の最後に有権者に向けて言った言葉のようにだ)。
前向きな議論を展開するという選択肢は、最終的にクリントン氏に投票する理由を浮動層に与えたいと考えている同氏のアドバイザーたちにはいくらか魅力的だった。だが、トランプ氏の攻撃に反撃しないことにも大きな危険が潜む懸念もあった。共和党候補の指名争いで多くの候補者がこのアプローチを試みたものの、結果的に苦しんだ。
結局、両氏とも両方のアプローチを少しずつ試みた。最後となった今回の討論会がほぼすでに決心している有権者の気持ちをさらに固める以上の判断材料になった可能性は少ない。クリントン氏にリードを許している選挙戦を一新させる必要のあったトランプ氏にとっては朗報ではないかもしれない。クリントン氏は討論会の序盤から、トランプ氏に挽回の機会を許すまいとする意気込みを明白に示していた。 

 

トランプ氏の敵はクリントン氏と自分自身
 冷静なトランプ氏を邪魔し続ける自分自身のエゴ
共和党候補のドナルド・トランプ氏が米大統領になる最大のチャンスは、自分自身よりも大きなテーマを選挙運動の中心にすることだっただろう。経済を再生させ、最高裁の判事を交代させ、イスラム国を壊滅させ、そのほか現状に満足していない国民に変化をもたらすようなことだ。19日に行われた米大統領候補による最後の討論会は、彼のアキレス腱である激高しやすさや傲慢さを露呈したとはいえ、もっと論点を絞った戦い方をしていれば、どうなっていたかという可能性を示すものだった。
トランプ氏が個々の論点で民主党候補ヒラリー・クリントン氏を言い負かすことはなさそうだが、討論会の大半においてクリントン氏との哲学的な違いを浮き彫りにすることができた。それは世論調査での劣勢を挽回するための最善の策といえる。彼は最高裁のあり方や銃を携帯する権利、憲法の本来の意味を守ることについて効果的に議論を進めた。
クリントン氏は米憲法の下で個人が武器を携帯する権利を認めたヘラー判決についての自らの反対の立場をうやむやにしようとしたが、トランプ氏はそれを許さなかった。クリントン氏はヘラー判決を覆すことはなくても、銃を厳しく規制する判事を任命することになるだろう。
トランプ氏は経済政策でも両者の大きな違いを示すことに成功した。彼は減税するが、クリントン氏は増税する。彼は医療保険制度改革法(オバマケア)を廃止するが、クリントン氏は拡大する。彼は経済をより強くして所得を増やすが、クリントン氏は所得を再配分したがっている。彼女はその計画で「政府債務を1セントたりとも増やさない」と主張するが、それはばかげている。
トランプ氏の貿易に対する考え方は間違っており、北米自由貿易協定(NAFTA)についての主張もばかげていると思うが、彼はクリントン氏がこの問題で二枚舌を使っていることを明確にした。クリントン氏は環太平洋経済連携協定(TPP)の条文を読んでから反対したと述べているが、内部告発サイト「ウィキリークス」の文書によると、TPPが合意に達する前から政治的な理由で反対の立場をすでに決めていたという。
討論会の司会、FOXニュースのクリス・ウォレス氏が、クリントン氏の国務長官在任中に外国企業からクリントン財団への寄付金を受けていたことを質問したときも、同氏は矛先をかわそうとした。トランプ氏がクリントン夫妻はハイチへの支援のためだとしながら、主に自分たちの友人が有利な契約を結べるよう取り計らっていると攻撃したのは正しかった。
問題は、これらのいずれかが有効打になったかどうかだ。クリントン陣営はトランプ氏の心理学的プロファイリングを行い、彼の最大の弱点は個人的な批判を無視したり受け流したりできないことだと結論づけたのに違いない。共和党の予備選挙における対立候補たちが犯した間違いは、彼を政策の中身について攻めて落とそうとしたことだ。これに対し、クリントン氏は彼の人間性が不適格であると示すことに注力した。19日の討論会では次から次へとわなをかけ続け、トランプ氏は大抵のわなにまんまとはまった。
クリントン氏がセクハラ被害を訴える女性たちのことを問いただすと、トランプ氏の愚かさが露呈した。彼は反撃に出ようと、クリントン陣営が手配した女性たちだと主張した。仮にそうだとしても、トランプ氏が11月8日に勝利するためには女性有権者に対してもっと上手に振る舞う必要があった。「私ほど女性に敬意を払っている人間はいない」と自慢するのではなく(女性へのわいせつ発言が発覚した後で、信じられる言葉ではない)、痛恨の極みとまでは行かなくても、謙虚さを女性有権者は見たかったはずだ。
トランプ氏の最大のミスは、大統領選で負けたときに結果を尊重すると明言するのを拒んだことだ。FOXのウォレス氏の問いかけにトランプ氏は「そのときになったら言う」と答えた。「あなた方の気をもませておくよ」と続けたのはなおさら悪かった。
こうしてトランプ氏は高慢なトークに戻り、負けず嫌いのせいで選挙戦の責任を取るのを拒否した。左派・右派を問わず有権者は選挙制度を信頼したいと思っている。トランプ氏の発言からは、彼と彼の陣営の最高責任者である(保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」会長の)スティーブ・バノン氏は、敗北したら自分たち以外の全員を責めるつもりなのかと疑いたくなる。確かにアル・ゴア氏は2000年の大統領選で最高裁の判決が出るまでジョージ・W・ブッシュ氏の勝利を受け入れなかったが、その例を見習いたいと思う共和党員がいるだろうか。
今回の選挙戦の厳しい現実は、共和党が勝利するお膳立てが整っていたということだ。国内が分裂し、不満が高まる中で、国民は新しい方向に踏み出したいと思っている。トランプ候補でさえ、第1回討論会が始まるまでは互角の戦いをしていた。3週間後に勝つにせよ負けるにせよ、その結果は彼自身がつかんだものだ。 
 
 
 
 

 

before the Election
直前予想

 

米国選挙、「クリントン対トランプ」以外の注目点 11/4
世界中のほとんどの人の関心は、8日の米大統領選に集まっている。しかし民主党のクリントン候補と共和党のトランプ候補のどちらかが勝つかという問題のほかにも、企業や金融業界に影響する重要な投票が実施される。
ウォール街は何に注目しているか
今回の上院の改選議席は34で、うち共和党が24を占めている。もし民主党が過半数を制すれば、銀行都市住宅委員長は現在のリチャード・シェルビー氏からシェロッド・ブラウン氏に交代する。そうなれば投資銀行への監視は強まり、追加的な規制が導入される可能性もある。例えばブラウン氏は、大手行の資本基準を引き上げたい意向だ。同委員長は、提出法案の審議や公聴会における証人の人選などで権限を有する。つまりJPモルガン(JPM.N)のダイモン最高経営責任者(CEO)や米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は、風当たりが強まってもおかしくない。
上院の支配権を左右するポイント
いくつかの改選議席では、共和党現職が苦戦している。その1つはペンシルベニア州のパトリック・トゥーミー議員で、議席を争う民主党のケイティ・マクギンティ氏はトゥーミー氏が過去に銀行業界で勤務し、ウォール街から支援されている点を批判している。
トゥーミー氏は、トランプ氏に投票するかどうかも明らかにしていない。
下院はどうか
共和党のポール・ライアン下院議長は、党内保守派の大半との関係が思わしくない。保守派議員40人で構成する「フリーダム・コーカス」は、選挙直後に予定されている下院指導部の選任投票の延期をほのめかしている。下院議長をだれにするか決定する力はないにしても、ライアン氏の再任阻止は可能かもしれない。ライアン氏が再任した場合も、保守派からの反対によって法人税制やインフラ投資などの問題で次期大統領や上院との折衝能力が弱まりかねない。フリーダム・コーカスは昨年、党内有力者ケビン・マッカーシー氏を下院議長への立候補辞退に追い込んだ。
ワシントン以外では
コロラド州では、医療保険改革(オバマケア)を廃止して、州独自の医療保険を導入する提案が住民投票に付される。州民は来年から平均で毎月20%の保険料引き上げに直面し、14の郡では取引所で保険を提供しているのが1社しかないという問題を抱えている。今回の投票で、公的保険が民間保険と全米レベルで競合する仕組みが存続可能かどうか1つの答えが示されるだろう。オバマケアに対してクリントン氏は支持、共和党員はおおむね反対の姿勢だ。
大麻合法化めぐる議論
今回は過去最多となる9つの州で、何らかの形で大麻を合法化することの是非を問う住民投票が実施される。特に注目されるカリフォルニア州では既に医療用の大麻使用は認められており、娯楽用を合法化するかどうかが焦点。富豪のジョージ・ソロス氏や起業家ショーン・パーカー氏などは合法化推進運動に加わっている。合法化が可決されれば、大麻関連業界の拡大を後押ししそうだ。連邦政府は依然として大麻を禁止している。
結局「クリントン対トランプ対決」が影響か
大統領選でクリントン氏とトランプ氏のどちらが当選するかが、上下両院の勢力図にある程度影響するのは確かだ。しかし具体的な影響度を明らかにするのは難しい。民主党の議員候補者は、クリントン氏が大勝して上院の過半数奪回につながる事態を期待している。一方で共和党議員候補者は、トランプ氏を支持するにしても否定するにしても、態度は煮え切らない。
各選挙において最も重大な要素となるのは投票率だ。その意味では、クリントン氏とトランプ氏の対決がやはりメーンイベントと言える。
背景となるニュース
○米国では8日に次期大統領選のほか、議会選なども行われる。
○上院選では共和党で金融業界に好意的なパット・トゥーミー議員(ペンシルベニア州)など何人かが激戦を展開中。もしも民主党が過半数を制すれば、銀行住宅都市委員長にはシェロッド・ブラウン議員(オハイオ州)が就任する見通しだ。
○下院においては共和党のポール・ライアン下院議長が党内保守派から指導部にとどまることに異議を唱えられかねない。ライアン氏がトランプ候補を積極的に支持しなかった点が保守派の怒りを買っている。
○また9つの州で大麻合法化の是非を問う住民投票が実施され、コロラド州では医療保険改革(オバマケア)の廃止提案が住民投票に付される。 

 

トランプ氏が支持率で猛追 逆転の可能性はあるのか? 11/6
いよいよ11月8日(アメリカ時間)にアメリカ大統領選挙の一般投票が行われます。支持率で急追する共和党候補のドナルド・トランプが逆転する可能性はあるのか、考えてみます。(上智大学教授・前嶋和弘)
(1)組織力
電子メール問題の再捜査決定をFBIのコミ―長官が発表した10月末以来、それまで「クリントンで確定」と思われていた選挙戦の状況が一気に大きく揺らいでいます。トランプの逆転勝利の目もあるのではないかという指摘すら、アメリカでも少し出てきました。実際にここ1週間のトランプの急追は信じられないほどであり、逆に言えば、それだけクリントンへの国民の信頼が厚いものではないことを如実に示しているといえます。
それでも次の3つの理由からクリントンがやや有利な状況は変わりません。
まず、組織力でクリントンは大きくトランプを上回っている点です。上述のように一般投票では激戦州をめぐる陣取りゲームが本選挙の最大のポイントです。特に選挙戦の最後の最後には、両党の候補者は選挙運動に投じる予算や時間をできるかぎり激戦州に重点的に配分し、その中でも、投票促進運動(GOTV運動)という地上戦が激戦州では大々的に繰り広げられています。投票促進運動とは、選挙に行くかどうかわからない無党派中で民主・共和いずれか寄りの層をビックデータで割り出し、ボランティアを使った頻繁な戸別訪問で投票を促す手法である。クリントンの場合、選挙資金も潤沢で組織力でもトランプに大きく勝っています。この“どぶ板選挙運動”で勝ち抜けやすいのは、やはりクリントンです。
トランプは選挙組織が弱い分、アメリカの選挙では伝統的な手法といえる、選挙CM(空中戦)に頼っています。自分の選挙資金で賄う分もありますが、その多くがトランプを押す外部応援団であるスーパーPACが提供しているCMです。スーパーPACは候補者陣営とは直接の関係がない「独立支出」を使った意見広告を提供する政治資金の再配分機関です。
2010年の最高裁判決で意見広告が選挙規制の枠外となることが確認されたため、スーパーPACは集めた資金を無尽蔵に投入することができるようになっています。これはトランプだけでなく、クリントン陣営でも同じですが、「直接の関係がない」とはいっても、スーパーPACは陣営に近い人物によって実際には運営されており選挙資金規正法の抜け穴となっています。トランプを支持するスーパーPACは、ここ最後の1週間に集中してトランプ批判のテレビCMの放映を連日提供し、クリントンのイメージ低下を進めています。ただ、クリントンを応援するスーパーPACも活発なので、「独立支出」を使ったネガティブキャンペーンCM合戦はどちらがトランプ有利とばかりとは言えない形です。
(2)期日前投票の普及
クリントンが有利である2つ目の理由が11月8日の一般投票の前に投票する「期日前投票(early voting)」です。期日前投票が今年の選挙では前回の2012年選挙以上に本格的に制度化されています。今年の夏の段階で筆者が各州の情報を調べたところ、その段階で37州とワシントン市が理由を説明する条件がない期日前投票を認めています(海外在住者などの郵送による不在者投票そのものは50州で認められています(そのうち、理由を示さなくても良い州は27州に上っています)。
報道によると、11月3日までに投票を済ませた有権者は合わせて3510万人に上り、前回の投票総数1億3000万人の約27%に達し、最終的には4割程度になる可能性もあるといます。FBIの再捜査発表前は「クリントン圧勝」というムードがありましたが、その段階でクリントンに投票した人たちもかなりいると考えられます。
(3)接戦になる政治文化
3つ目の理由は、上述の政治文化です。簡単に言えば、いつもの民主党支持者は民主党候補に、共和党支持者は共和党候補にその多くは票を投じるのがアメリカの選挙です。民主党の支持者が大多数は、クリントンの電子メール問題は「大したことがないことを蒸し返している」と感じるか、あるいは「クリントンの問題はあっても、トランプには絶対票を投じない」と思っているのではないでしょうか。
実はこの点は共和党支持者も同じです。「トランプにはついていけないことも多いが、仕方がない」「クリントンに入れるよりはマシ」と思っている共和党支持者もかなりいます。
今年の場合、特に共和党のトランプの場合、「白人ブルーカラー層」という熱烈な支持層を発掘しましたが、共和党の穏健派は離れていったといわれています。ただ、各種世論調査を見ますと、共和党の支持母体である「宗教保守層」と「小さな政府を志向する層」の多くはトランプ支持です。
各種調査でいつもと若干異なるのが「教育レベル」です。「教育レベルが高い層」は民主党候補よりも共和党候補に投票する傾向が強いのですが(所得と教育は相関することもあり、所得水準が高めれば、自分の財布に直結するため減税を主張する共和党候補に投票する傾向が強い)、今年の場合は「教育レベルが高い層」はクリントン支持の方が目立っています。
いずれにしろ、かなり「いつもの大統領選挙」に近くなってきています。民主党支持者と共和党支持者がイデオロギー的に分かれる「政治的分極化」とともに、数の上でも拮抗するが近年の傾向です。今年の選挙でも最後になってその傾向が現れ、クリントンとトランプが接戦になっているといえるのではないでしょうか。
ところで、2012年の大統領選挙でも選挙人は民主党のオバマと共和党のロムニーの選挙人の数は126も離れましたが、直前の世論調査では両者の差はほとんどなかった形です。調査にもよりますが、2012年の方が11月はじめのクリントンとトランプとの差よりも小さいものでした。
「まさか」はありうるのか?
トランプの場合、メディアに自分がどう映るか知り尽くしています。米墨国境の壁やムスリム入国禁止、日本核武装容認など、驚くべき発言が続きました。しかし。数々の暴言をメディアで広めることで、自分の支持拡大につなげるという、型破りな手法で、ここまで勝ち進んできました。
ただ、論じたように、最後の最後の段階では、やはりクリントンが有利です。ただ、それでもまだ「まさか」はありえるかもしれません。例えばあと数日でクリントンの健康問題、さらなる電子メール疑惑、テロなどがあれば、状況は変わってきます。そもそもトランプの追い上げのペースは驚くべきで、もし、FBIの再捜査宣言があと1カ月早かったら、と考えると状況は流動的でした。 

 

大統領選 「嵐」「悪夢」「まぼろし」 投開票あと2日、関係国警戒強める 11/6
民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(69)と、共和党のドナルド・トランプ氏(70)が争う米大統領選が投開票される8日まであと2日と迫った。どちらの候補が当選するのか。関係各国は固唾(かたず)をのんで行方を見守っている。【ワシントン会川晴之、モスクワ杉尾直哉】
メキシコ
「トランプ氏当選に備え危機対応策の準備を進めている」。メキシコのカルステンス中央銀行総裁は、米世論調査でトランプ氏の猛追が伝えられ始めた2日、地元テレビとのインタビューで危機対応策の準備に入ったことを明らかにした。総裁はトランプ氏が米大統領に就任した場合、メキシコ経済が「ハリケーンにあったような被害を受ける」と指摘している。
「メキシコ国境に壁を造る」と訴えるなど、移民排斥を唱えるトランプ氏。総延長で3000キロにも達する膨大な建設費は「もちろんメキシコに負担してもらう」と主張している。
さらにメキシコ、カナダとの北米自由貿易協定(NAFTA)の改定を明言。メキシコの米国向け輸出は全体の8割を超しており、NAFTA改定が実現すれば、経済は大打撃を受ける。メキシコの通貨ペソはトランプ氏の躍進とともに大幅に下落しており、トランプ大統領の誕生を警戒している。
イラン
「米国に死を!」。イランの首都テヘランで4日、一部市民が街頭に繰り出し、米国旗を焼き払った。この日は1979年のイスラム革命後、学生たちが米国大使館を占拠した記念日。昨年7月に米国など主要6カ国と、長年にわたる核開発問題解決に合意したイランだが、米国との国交は途絶したままだ。
ただ、市内にはアップル社の偽ショップや、ハリウッド映画のDVDを売る店が建ち並ぶなど米国人気は根強い。3回にわたる両候補のテレビ討論会のうち2回がイランでも放映された。
最高指導者ハメネイ師は2日、テレビ討論について「(米国の)破滅的な現実を示している」と論評し、ロウハニ大統領も先月23日の講演で「お互いを責め、さげすみ合っている。そんな民主主義は必要なのだろうか」と酷評した。
トランプ氏が当選すれば合意破棄もあり得る。合意をテコに国際社会への早期復帰を目指すイランにとっては「悪夢」を避けたいのが本音のようだ。
ロシア
「ロシアが軍事的脅威だというのは神話だ」。ロシアのプーチン大統領は10月27日、米大統領選で「ロシアの脅威」が争点の一つとなったことを念頭に、こう述べた。
対米関係はソ連崩壊後の過去25年で最悪と言える。ロシアの本音はその改善だが、専門家の間では「どちらが大統領になっても米側からの劇的な変化は望めない」との観測が強い。
プーチン氏は「本当の指導力とは、まぼろしの脅威を作り上げるのではなく、現実的な問題を見つめ、その解決のため各国の協力を強化することだ」と訴えた。「ロシアの脅威」を主張するクリントン氏へのメッセージだ。
クリントン氏が当選すれば対露政策はさらに厳しくなると予想される。一方、モスクワの米カナダ研究所のガルブゾフ所長は親露的な発言をしているトランプ氏について「米連邦議会や米政府の官僚組織の協力は得られない」と指摘。「トランプ政権が誕生したとしても困難な米露関係が長期にわたって続く」と述べた。  

 

トランプVSクリントン、運命の女神はどちらに微笑む?
再びeメール問題が民主党のクリントン候補を直撃し、勝負の行方が分からなくなってきました。米連邦捜査局(FBI)のコミー長官が再調査の意向を明らかにした10月28日を含む世論調査でも、クリントン候補のリードが1ポイントまで縮小。はたして、eメール問題再燃は今後どのような影響を与えるのでしょうか。
そもそも、初期反応としてツイッター動向をみるとトランプ候補ほどの世間をにぎわせたかは疑問が残ります。また1992年から6回の米大統領選で全て民主党候補を選出した州は選挙人を合計すると242人、6回連続で共和党候補を選出した州では102人にとどまり、選挙人でみた動向は民主党に有利な状況です。
支持層別にみてみましょう。両者の違いをみると、クリントン候補は1)白人以外、2)女性、3)18〜34歳と35〜49歳で顕著にリードしています。
2012年の投票者・年齢別シェアでは、45〜64歳が39.1%で首位。18〜24歳、25〜44歳層の合計も38.5%に及び比較的、若い層が選挙結果のカギを握るというわけです。この層の投票率が高くトランプ候補への鞍替えがなければ、基本的にクリントン候補が優勢な状況は変わりません。
気になる投票率も、接戦州の一角では高水準が期待されます。カリフォルニア州をはじめメイン州、マサチューセッツ州のほか、激戦州のアリゾナ州やネバダ州でマリファナ合法化をめぐる州民投票が行われるためです。ここで若い層の投票率を押し上げれば、クリントン候補に追い風が吹く公算。ただしネバダ州はラスベガスを擁しカジノ産業との結びつきが強いため、トランプ候補に傾く可能性は決して低くはないでしょう。
そもそも、隠れトランプ・ファンが本選で本領発揮するシナリオがあり得ます。
例えば、こちらをご覧下さい。「男性が男性らしい行動で罰せられている」という質問に「完全に賛成」、「概して賛成」との回答はトランプ候補支持者の間で高いことは言うまでもありません。しかし有権者の間で32%と、共和党の41%を下回るとはえ、決して無視できない水準でした。
同じ質問の支持政党別でも、共和党が43%に対し無党派層は38%とわずか5ポイント差しかありません。民主党の26%からは、10ポイント以上の距離を開けます。
こうした数字は、ポリティカリー・コレクトつまり世間的に正しい姿勢に辟易した方々が少なからず存在すること表し、トランプ候補に勝利をもたらし得ます。男性が感じる社会への閉塞感は、日本でも男尊女卑ならぬ女尊男卑が登場する通りで共通するものがありますね。さらにウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙の世論調査では、まだ投票する候補を決めていないとの回答のうち約30%が「共和党支持」で、「民主党支持」の21%を上回っていました。
最後に、男性と女性の投票動向を確認していきましょう。
1980年以降の米大統領選では、1984年から投票に占める割合で女性が男性を逆転しました。ところが、第3候補が健闘した1992年と2000年を除き、共和党候補に投票した男性の割合、あるいは民主党候補に投票した女性の割合どちらも55%という数字が勝利を決める分水嶺であることが分かります。 

 

トランプ、ジェイ・Zの「下品な」発言についてヒラリー・クリントンを批判
大統領選の共和党候補ドナルド・トランプは、クリーブランドで開催されたクリントン支援コンサートでのラッパーのジェイ・Zによる発言を引き合いに「彼が私に対して使ったひどい言葉をもし私が使ったらどうなるでしょう? 公の場であんな言葉はつかうべきでないでしょう」と批判した。
大統領選を目前に控えた2016年11月4日夜(現地時間)、クリーブランドで開催されたクリントン支援コンサートのステージで、ラッパーのジェイ・Zが汚い言葉を使ってドナルド・トランプを批判した。これに対し翌朝フロリダ州で開催した集会の場でトランプは、ジェイ・Zとクリントンの両者を激しく非難した。
「個人的にジェイ・Zは好きだが、昨晩の発言はどうでしょう」とトランプは、フロリダ州タンパでの支援集会に参加した支援者たちに問いかけた(CBSニュースによる)。「彼が私に対して使ったひどい言葉をもし私が使ったらどうなるでしょう? 公の場であんな言葉はつかうべきでないでしょう。彼の発言はすべて記録されています。彼の使った言葉の頭文字すら、ここで述べることもはばかられます。なぜなら、もし私がそのような言葉を使えば、大問題になるのはわかっているからです。昨晩の彼の発言は全部記録に残されています」と非難した。
トランプはまた、その夜に開催されるペンシルバニア州ハーシーで開催予定の彼の集会は、前日にジェイ・Zが開催した無料コンサートよりも多くの人を集めるだろう、と宣言した。ジェイ・Zのクリントン支援集会には、サプライズでビヨンセも登場し、クリントンを応援する熱のこもったスピーチを行った。
トランプ自身も選挙活動中の数々の下品な発言が問題となっており、一方のジェイ・Zは普段から歌詞に使う言葉には気を遣っているが、トランプと彼の選挙参謀のケリーアン・コンウェイは、ジェイ・Zの前日のステージ上での発言を酷評した。
「昨晩彼の使った言葉はあまりにも酷い。それを受けたヒラリー・クリントンもW私はドナルド・トランプのわいせつな発言は嫌いですWと言っていた。Wわいせつな発言?W私はジェイ・Zの使ったようなひどい言葉は、生まれてから一度も使ったことはありません」とトランプは述べ、さらに「これは、口先だけの政治家やその組織(民主党)の人々の体質を表しています」と続けた。
ジェイ・Zの支援コンサートが行われた週の初め、あるクリントン陣営の関係者はCNNに対し、クリーブランドでのコンサートに関して「クリントン側はジェイ・Zの発言には関与せず、すべてジェイ・Zに任せる」と発言している。
クリーブランドでの支援コンサート中、ジェイ・Zはトランプの名前を出して批判した訳ではない。
「ある男がいる。俺は彼に恨みがある訳じゃないが、奴の言葉で国は分裂する。彼は指導者としてふさわしくない。彼は俺の大統領になれないし、この国の大統領にもなれない。彼がこの国を分裂させ、弱体化させようとしても、我々が団結すればもっと強くなれる」と、ジェイ・Zはステージ上から観客に語りかけた。 

 

米紙 クリントン候補支持57社 トランプ候補支持2社
アメリカ大統領選挙は、日本時間の8日夜から投票が行われます。アメリカの有力紙のうち、民主党のクリントン候補を支持しているのは57社に上るのに対し、共和党のトランプ候補を支持しているのはわずか2社という異例の状況になっています。
アメリカでは、大統領選挙のたびに、新聞各社がどの候補者を支持するかを社説などで表明するのが恒例です。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校が有力紙100社の支持の状況を調べたところ、民主党のクリントン候補を支持しているのは「ワシントン・ポスト」や「ニューヨーク・タイムズ」など57社で、前回4年前の選挙で民主党の候補者だったオバマ大統領を支持した41社を上回っています。
前回の選挙で、共和党のロムニー候補を支持した35社のうち、共和党の地盤のテキサス州にある「ダラス・モーニングニュース」を含む14社が、今回はクリントン氏の支持に転じました。その結果、共和党のトランプ候補を支持しているのは、ネバダ州とフロリダ州のわずか2社にとどまっています。
さらに大手紙の「USAトゥデー」など3社が、支持する候補者について「トランプ氏以外」と表明する異例の状況となっています。
メディアの多くはトランプ氏の資質に疑問を投げかけていますが、トランプ氏は、多くの有権者の支持を得てクリントン氏に迫っていて、アメリカのメディアの論調と有権者の意識との隔たりも浮き彫りになっています。
共和党のトランプ候補はメディアを従来の勢力の一部と位置づけ、「メディアが選挙を不正に操作している」などと批判を繰り返しています。
今回の調査を行ったカリフォルニア大学サンタバーバラ校のウーリィー教授は、メディアが圧倒的にクリントン氏を支持しているのに対して、世論調査でトランプ氏がクリントン氏にひけをとらない支持率を獲得していることについて、「メディアは偏向していると繰り返すことでトランプ氏の支持者は新聞社の動向を気にしなくなっている」と指摘しています。そのうえで「新聞社が候補者を支持する代わりに非難することは珍しく、今回の「異例な選挙」を反映している」と話しています。 

 

米大統領選、両候補ラストスパート クリントン氏が4〜5Pリード 
米大統領選挙の投票日が2日後に迫った6日、共和党候補のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が5州を遊説して回る一方、民主党候補のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏は支持基盤で票固めに動き、激しい選挙戦を続けている。
世論調査でなお接戦の州があることが示されると、トランプ氏は重要な激戦州であるフロリダ(Florida)、 ノースカロライナ(North Carolina)、オハイオ(Ohio)、ペンシルべニア(Pennsylvania)を立て続けに訪問。さらに今後、民主党の牙城と言われたコロラド(Colorado)、ミシガン(Michigan)、ミネソタ(Minnesota)各州も回る計画だ。
6日にはクリントン氏がペンシルベニア、オハイオ、ニューハンプシャー(New Hampshire)の3州を、トランプ氏はより精力的にアイオワ(Iowa)、ミネソタ、ミシガン、ペンシルべニア、バージニア(Virginia)の5州を訪問する。
共和党全国委員会(Republican National Committee)のラインス・プリーバス(Reince Priebus)委員長は米ABCテレビの日曜の報道番組「ディス・ウイーク(This Week)」で、「われわれは勢いに乗った。ミシガンのようなところで勝てば(当選は)決まりだ」と語った。
これに対しクリントン陣営は、トランプ氏のミシガン州訪問にも余裕の構えを見せた。陣営の選対部長ジョン・ポデスタ(John Podesta)氏はABCに対し、「われわれは満足しており、力強い締めくくりを迎えている。だがやるべきことはまだ膨大にある」と述べた。
クリントン氏も抜かりはなく、7日の訪問先にミシガン州を加えた。
米NBCテレビと米紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)が6日に発表した合同の最終世論調査では、クリントン氏の支持率が44%、トランプ氏が40%で、クリントン氏が4ポイントリードしている。
ABCと米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)が同日に発表した合同世論調査では、クリントン氏が48%でトランプ氏は43%となっている。
ウェブサイト「ファイブサーティーエイト(FiveThirtyEight)」の運営者で選挙予測に定評がある統計専門家のネイト・シルバー(Nate Silver)氏は、クリントン氏が2対1でトランプ氏に勝利すると予測しているが、2012年のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領の時よりも、クリントン氏のリードは「確かさに欠ける」としている。 
 
クリントン氏とトランプ氏両候補 政策に関する主張の違い  11/9
世論調査でドナルド・トランプ候補を上回ったヒラリー・クリントン候補。
政策としては、オバマ大統領の政策を継承するものが多い。具体的には、同盟重視、TPP反対(オバマ政権の承認は容認姿勢)、イスラム国を念頭に置いた「敵」の打倒や、雇用の創出、銃規制強化、不法移民の市民権獲得を支持、賃金引上げなどを掲げている。
クリントン氏
より自由、公正で強い米国実現のため「団結すればもっと強くなれる」と呼び掛けた。
国家安全保障面では、イラクやアフガニスタン、フランスで頻発するテロとフロリダ州での銃乱射事件を例示。過激派組織「イスラム国」(IS)などを念頭に「われわれは覚悟を決めた敵に対処しており、打倒しなければならない」と決意表明した。
経済政策では、「全ての米国人がより良い生活ができる」ことを目標に設定した。そのために機会・雇用の創出、賃金引き上げを「大統領としての主要任務」と位置付けた。
トランプ氏
「米国第一主義」を掲げ、オバマ現政権に不満を抱える人達からの支持を募っている。具体的な政策としては、IS打倒、TPP離脱、銃規制強化に反対、オバマケアを撤廃、不法移民阻止、法人税の引き下げや相続税の廃止、パリ協定の阻止などを主張している。
ドナルド・トランプ氏(70)は8日、自動車産業の集積地、中西部デトロイトで演説し、法人税の最高税率を現行の35%から15%に引き下げるなど大規模減税を柱とする経済政策を発表した。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関しても「自動車産業にさらに大きな災難をもたらす」として、離脱の意向を重ねて表明した。
トランプ氏は税制改革に関し、法人税率の引き下げのほか、育児費用の全額税控除▽所得税率を現在の7段階から3段階に簡素化▽相続税の廃止ーなどを主張。演説で、トランプ氏は「レーガン元大統領による税制改革以来、最大の税制革命をもたらすことになる」と述べた。
また、「グローバリズムではなくアメリカニズムが私たちの新たな信条となる」と語り、米国第一主義を基本として自由貿易協定を見直す考えを強調。
主要政策の大きな違いは下記
外交の考え方
ヒラリー氏 / 同盟強化
トランプ氏 / 米国第一主義
経済の考え方
ヒラリー氏 / TPP反対(オバマ政権時代は容認)、一部国民・企業を対象に所得税や法人税の増税、クリーンエネルギーなどによる雇用創出
トランプ氏 / TPP反対、富裕層に対する所得税の減税、法人税の引き下げ
対日政策の考え方
ヒラリー氏 / 日米同盟重視
トランプ氏 / 駐留米軍の負担増額を要請。在日米軍撤退も視野に入れている(※後述)
移民に対しての考え方
ヒラリー氏 / 移民の市民権獲得を視野に入れた包括的な制度改革を検討
トランプ氏 / 不法移民阻止を支持
環境政策の違い
ヒラリー氏 / 地球温暖化対策を強化
トランプ氏 / 地球温暖化対策として、温室効果ガス排出量の削減を取り決める「パリ協定」からの離脱を検討
銃規制の違い
ヒラリー氏 / 銃規制強化を支持
トランプ氏 / 銃規制強化に反対  
 
苦渋の選択——ヒラリーはトランプより本当にマシなのか?
「ヒラリー・クリントンが、こんなにも好感度が低いのはなぜだろう?」。ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、デイヴィッド・ブルックスは、5月24日付の記事で、そう自問する。ブルックスはその答えをクリントンの政治上の実績ではなく、精神のあり方に求める。「『ヒラリー・クリントンは気晴らしに何をして楽しむか』と聞かれて、答えられる人がいるだろうか?」。ヒラリーがアピールに欠けるのは、おそらくその気性のためだとブルックスは考える。クリントンは、自分のキャリアのことからどうしても離れられない。ヒラリーの低い好感度は、「仕事人間の不人気に通じる。ソーシャルメディア時代に求められるのは、親密でパーソナルでうちとけ、ひとを信頼し、弱さを隠さないという姿勢だ。キャリア志向の堅苦しいクリントンのパーソナリティは、これに真っ向から対立している」。常日頃は、共和党シンパであるこのコラムニストのことばとも思えぬお手柔らかな見解には驚かされるが、ドナルド・トランプに対する反発がこのような奇妙な同盟関係を生んでいる。
ファーストレディ、米連邦議会上院議員、国務長官を体験したヒラリーだが、ブルックスのコラムを読んでいると、まるで政治の初舞台に立ったかのように聞こえる。2003年のイラク侵攻へのクリントンの支持、ゴールドマン・サックスの銀行関係者たちへの3回の講演(各回、22万5000ドルの講演料が支払われた)、自由貿易協定支持、リビアの指導者ムアンマル・カダフィ転覆への支持を、人々は忘れたと言ってよいだろうか? クリントン家の所有する多国籍慈善団体「クリントン財団」が、ヒラリーがオバマ政権の一員だったときに抱えていた利益相反の問題はどうなのか? ニューヨーク・タイムズ紙(2015年10月18日付)の報道によると、同財団の理事たちはクリントン国務長官に熱心なロビー活動を行った末、米連邦政府がルワンダでのエイズ撲滅プログラムのために割り当てていた予算を財団が準備したトレーニング・プログラムに振り替えさせるのに成功したという。
ヒラリーのウォールストリートとのつながりは言うまでもない。ウォールストリートはヒラリーの選挙戦と財団の両方に資金を提供している。トランプですら、2009年に10万ドル以上、財団に寄付した。トランプは、長年にわたりクリントン夫妻と親交が深く、2005年には3度目の結婚式にふたりを招待した。「ビルとヒラリー」は、教会で最前列の席を与えられた。満面の笑みから、夫妻の上機嫌が見てとれる。ヒラリー・クリントンにとっては、こういうことが楽しみなのだ。
11月の大統領選でヒラリーに投票することは、クリントン夫妻に票を投じることを意味する。2人は互いに最も親密なアドバイザーだからだ。ヒラリーはすでに本音を明かしている。自分が当選すれば、「ビルが経済再生を担当することになります。皆さんご存じのように、彼にはやり方がわかってますから」と。
児童擁護に熱心に取り組んできたというイメージをヒラリーは広めようとしている。30年以上前、ビルがアーカンソー州知事だった時代には、思いやりのある人物という評判がたつことを期待して、「児童保護基金」をはじめとする慈善団体と手を組んだ。しかし、南部で過ごした時間の大半、ヒラリーが多くの時間を割いたのはこの件ではなく、1977年から1992年までローズ法律事務所で特許法と知的財産を専門とする仕事に精を出した。ローズは、アーカンソーの政治とビジネスの結託を象徴する法律事務所で、労働組合を毛嫌いし、労働力の搾取が可能な諸国で生産された格安商品が大好きなウォルマートもそのクライアントだ。
多国籍企業を怒らせず
弁護士ヒラリー・クリントンは実績を買われて多国籍企業ウォルマートの取締役の座に付き、1986年から1992年まで務めて、年収1万8000ドルを得た(インフレ調整後の現在の金額では3万1000ドルに当たる)。ウォルマートを困らせるようなこと、とりわけその低賃金体系について、ヒラリーが口を開いたことはない(現在のウォルマート店員の平均給与、年俸1万9427ドルで子供を育てるのは困難だ)。 2013年から14年にディープサウスを旅したポール・セルーは、こう書いた。「サウスカロライナ、アラバマ、ミシシッピで、私が見いだしたのは、ジンバブエの町にも似た、見棄てられ追い詰められた町だ」(1)。アーカンソーの黒人貧困家庭には関心を示さず、「アフリカ象を救え」運動との提携を売り物プログラムのひとつとするクリントン財団を、セルーは揶揄した。
大統領第1期目から、ビル・クリントンは、従来、産業労働組合に過剰に頼っていた民主党の資金調達活動の変革をめざし、党の路線を右に変換した。このため、多国籍企業に人気だが民主党投票者には不人気だった北米自由貿易協定(NAFTA)を推進したが、ヒラリーがこの協定に反対したことは一度も無い。1992年9月、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領が交渉を進めていたこの協定をビルが支持することに決めたバージニア州アーリントンでの重要な会議にはヒラリーも出席し、その後、頑固に反対する民主党議員たちを取り込む戦略の策定に力を貸した。クリントン・チームの元メンバー、トム・ナイズの話では、「議員ひとりずつ、一本釣りでした。ひとりひとり、誰をどうやって落とせるか、頭をひねったんです」(2)。1993年11月、当時、下院で共和党の第2のボスだったニュート・ギングリッチの支援を得てNAFTAは批准された。1996年3月、ヒラリーは「NAFTAはその真価を証明していると思う」と満足げに語っている。
自由貿易の成功に勢いを得て、ビルは1930年代にまでさかのぼり、ルーズベルトのニューディール政策以来、施行されてきた福祉国家アメリカの原則の一部にまで手をつけた。1994年中間選挙での民主党の敗北により下院議長になったギングリッチの支援を得て、ビル・クリントンはアメリカの福祉制度「改革」を断行し、1100万以上の貧困家庭への援助を打ち切った。保健社会福祉省の計画担当次官補だったピーター・エデルマンは、「児童擁護基金」創設者の夫でもあったが、抗議を表明して辞任し、「この法は雇用促進につながらず、全面的に適用になると何百万人もの貧しい子供たちがとばっちりを受ける」と表明した。ビルの政策のおかげで、子供たち(特に黒人とラティーノ)が痛みを負わされることに、ヒラリーは沈黙を守った。
それから数年後、ビルは共和党の「ライバルたち」の力を借りてウォールストリートの規制緩和を行った。1999年11月にビルが廃止の署名をしたグラス・スティーガル法は、銀行が小口預金者の預金を投機的運用に向かわせることがないよう、1933年以来、商業銀行と投資銀行の分離を義務づけていた法律だ。現在、共和党のジョン・マケインなどが、この法の復活を提案している。だが、ヒラリーは違う。ヒラリーの経済顧問アラン・ブラインダーは、2015年に「グラス・スティーガル法の再来はない」と語っている。
ヒラリーの政治家としてのキャリアが本格的に開始されたのは2000年、夫と民主党の強力なお仲間たちの手で天下りを果たし、一度も住んだことがなかったニューヨーク州で連邦上院議員に立候補した。当選後、ブッシュ政権とうまがあうことがわかった。2002年10月の上院での演説では、サダム・フセインが大量破壊兵器を保有しているというホワイトハウスの嘘をそのまま使って、イラク侵攻支援を確言した。「予防戦争」を擁護し、1999年にビルが「100万人を超えるコソボのアルバニア人の退去や民族浄化を止めるという気高い目的で決断したセルビア空爆に匹敵する」とし、「私の決断にはおそらく、ペンシルバニア通りの向こう側、ホワイトハウスで、我が国が直面する重大な挑戦に取り組む夫の姿を見守った8年間の体験が影響を及ぼしている」と語った。フェミニストにあるまじきことばだが、いまでもツイッターのプロフィール欄で「妻にして母、お祖母ちゃん」と自己紹介していることを思えば驚くにはあたらない。
ヒラリーのこの2002年の演説の凡庸な表現には唖然とさせられる。だが、本人が書いたと決めて批判するのは公平を欠くだろう。実際、ゴーストライターを使うことも多いのだが、その名が公表されることはめったにない。バーバラ・ファインマン・トッド教授は、「子供たちが私たちに教えてくれる教訓」を取り上げたヒラリーのベストセラー書『村中みんなで』(1996)に自分の名がまったく触れられていないことに不満を述べた(3)。自伝ですら、自分で書いたかどうか怪しいものだ(4)。国務長官時代の回想録には「著作準備チーム」が動員されたが、本人はそのことをほとんど口にせずにいる(5)。
それはさておき、アメリカの外交政策の責任者だったヒラリーの4年間の記録は、どうにも心許ない。2011年、リビアの叛乱が勢いを増していた時、ヒラリーは「国際的承認が不在の状態で、アメリカが単独で行動することは、結果が読めない状況に足を踏み入れることになるという考えに、私も与します」と、慎重だった。その後、考えを変えた。その理由は?「サルコジ[仏大統領]から、軍事介入すべきだと耳にタコができるほど聞かされ続けました 。彼はダイナミックな人物で、いつもあふれんばかりの活気をみなぎらせ、行動の中心にいるのが大好きです。また、フランスの知識人ベルナール=アンリ・レヴィの影響もあります。2人とも、残忍な独裁者に苦しめられているリビア国民の悲惨に心底、心を動かされているのです」。この2人のフランス人にそそのかされ、「人道主義の危機」を回避すべく、クリントン国務長官は介入主義陣営に加わり、オバマ大統領共々、憲法が義務づけている議会の承認を求めることなく、アメリカを新たな戦争へと導いた。幸運なことに、終わり良ければすべて良し。「その後72時間内に、カダフィの防空力は 破壊され、ベンガジ住民は差し迫っていた荒廃から救われた」。回顧録の残りも、このノリだ。
自由貿易に関するUターン
バーニー・サンダース支持者たちの票を獲得するのに自らの右派イメージが妨げになっていることをヒラリーは承知している。対抗馬だったこの「社会主義者」が予備選でみせた成功に引かれて、ヒラリーは最近、過剰な債務を抱える銀行への課税、最低賃金の時給12ドルへの値上げ、家族の収入に基づいた大学の学費規制など、進歩的な対策を提案した。自由貿易に関する180度の転換には、目を見張るものがある。2012年11月、ヒラリーは、環太平洋連携協定(TPP) について、「TPPは、貿易協定に「ゴールド・スタンダード(最高度の基準)」を設けるもので、これにより自由で透明で公正な貿易が開かれる」と絶賛した。だが、3年後には、風向きが変わった。トランプとサンダースによる批判が有権者の心を捕らえたかに見えるからだ。ヒラリーは、2015年10月に「現時点で把握している内容は好ましいものではない。私が設定した高い基準を満たしているとは思えない」と述べた。それでも、2016年7月7日には、連邦議会でTPPの採決を許さない立場を公約するよう民主党に求めたサンダースの動きをヒラリー陣営は阻止した。
「イスラーム過激派」と「移民」に対する暴言をつのらせているトランプ候補に比べれば、ヒラリーの方が予測がつきやすそうにみえる。冷静さとバランス感覚で、一部の共和党員まで味方に引き入れている。ヒューレット・パッカード社の最高経営責任者でかつてはミット・ロムニー大統領候補選出委員会の選挙資金調達共同議長を務めたメグ・ホイットマンも、ロムニーの元顧問だったネオコンのロバート・ケイガンも、ヒラリー支援を公言した。ブッシュ一族は、今回の大統領選では棄権すると述べている。
さらにヒラリーは、「蛮行に対する最後の砦」として主流メディアのゆるぎない支持も得ている。ニューヨーカー誌のエディター、デイヴィッド・レムニックは、こう書いた。「ヒラリー・クリントンか、ドナルド・トランプか? 大統領選が、これほど違いが際立つ候補同士の争いになったことはなかった。クリントンは、最高に危険で何をしでかすか予測がつかない対立候補、権力を勝ち取るためにはどんな境界線も進んで無視するデマゴーグを相手に、強力で断固とした闘いを余儀なくされる」。
こうした物言いは、2002年のジャック・シラク大統領と国民戦線党首ジャン=マリー・ル・ペンの対決を思い出させる。この時には、フランスの左派は「ファシストの危険」から国を守るために右派の候補者を支持せざるを得なかった。だが、そのシラクでさえ、特に外交政策に関しては、ヒラリーよりは進歩的だった。今回のアメリカ大統領の場合、いわばアンゲラ・メルケルとシルヴィオ・ベルルスコーニとの間での勝者選びといった関係に近い。それだったらメルケル支持にまわろうとアメリカの左派は決めたのだ。 
 
米大統領選、過去の大接戦と圧勝劇は? 
アメリカ大統領選の投票が始まりました。事前の支持率では、民主党クリントン候補の優勢が伝えられてきましたが、私的メール問題のFBI捜査報道などもあり、最終盤には共和党トランプ候補の猛追を受け、接戦になっていると報じられています。
世界最大の経済大国にして軍事大国。唯一の超大国とも呼ばれるアメリカのリーダーを決める選挙は、過去も多くのドラマを生んできました。大統領選の過去の大接戦や圧勝劇を、戦後に絞って考察してみます。
圧勝 / 1952年「アイゼンハワー×スティーブンソン」
1929年に発生した世界恐慌の克服に加えて、第二次世界大戦の指揮を採った民主党のフランクリン・ルーズベルト大統領は史上最多の4選を果たしました。対日戦争終了直前に亡くなり、憲法の規定によってトルーマン副大統領が昇格します。
対日戦争の終結や戦後処理を担った後の1948年、トルーマンは大統領選に立候補しました。基盤の民主党が分裂するなど敗色濃厚とみなされていたにもかかわらず、共和党候補に奇跡の逆転勝利。結局民主党は約20年間、共和党を退け続けました。なおルーズベルト大統領の4選を期に憲法が修正され、51年からは現在と同じ4年2期までとなりました。
この48年選挙で共和党の一部から候補に擬せられたのが第二次世界大戦欧州戦線の英雄であったアイゼンハワー陸軍元帥です。この時は固辞しましたが、次の52年選挙では共和党の切り札としてトルーマン後継のスティーブンソン候補との勝負となります。
スティーブンソン候補はイリノイ州知事。政治家の名家の生まれで弁護士。大変な雄弁家でまさにエリートの趣があります。アイゼンハワー候補は政治経歴がない「ただの軍人」でホワイトハウス入りしても何もできないと印象づけようとしました。
アイゼンハワー候補はそこを逆手に取って民主党政権末期に起きた汚職事件を取り上げて清潔さをアピールしました。また日本が敗戦で中国・朝鮮半島から撤退した後に共産主義勢力が台頭し、50年から始まった朝鮮戦争の戦局がはかばかしくなかったので軍の英雄にかける国民の期待も強まりました。
支持者が身につける「選挙ピン」の威力も大いに発揮されました。“I Like Ike(私はアイクが好き)”はドワイト・「アイク」・アイゼンハワーの応援スローガンで、「ライク・アイク」の韻が評判となり口ぐせのように広まります。結果は48州(当時。アラスカとハワイがまだ未加盟)のうち39州を制して地滑り的勝利を果たし20年間の民主党支配を終わらせました。
56年の大統領選挙も同じ顔合わせでアイゼンハワー大統領が前回より多い41州を制しました。「ただの軍人」であっても、その軍歴が輝く朝鮮戦争の終結や回りに有能な人物を配して安定した政権運営をしたのが評価されたようです。
接戦 / 1960年「ケネディ×ニクソン」
ホワイトハウス奪還に燃える民主党は、4年2期を終えたアイゼンハワー大統領後の大統領の座をジョン・F・ケネディ候補に託します。ハーバード大学出身の43歳。米国白人の主流であるプロテスタントではなくカトリック教徒。今でいう「イケメン」でニューフロンティア政策を高々と掲げました。
ただこの時点でケネディ候補は相当な知名度を持っていたとしても、ライバル共和党のニクソン候補にはかないません。アイゼンハワー政権8年の間、副大統領の要職にあり、最初は30代でした。スピーチもうまく、いまだ国民的人気の高いアイゼンハワー氏の協力も十分に得ていたからです。
両者の選挙で一番の話題となったのは、この時初めて行われたテレビ(まだ白黒)討論会です。見た目の印象などを留意してはつらつとした健康さを見せつけたケネディ候補に対して、ニクソン候補は直前まで病気であったという不利もあって内容はともかく視覚的な敗北を背負い込んでしまいました。
結果は歴史的僅差。勝ったのはケネディ候補24州に対してニクソン候補は26州と上回りました。しかし獲得選挙人の数でケネディ候補がまさり大統領の座を射止めたのです。
アメリカ大統領選挙は直接選挙ではなく、州ごとに決まっている選挙人をどれだけ獲得できるかで決まります。選挙人数は上院議員(2人)と下院議員(人口比例)を合わせた数で原則として勝者総取りです。選挙人が20人以上の州でケネディ候補4勝(ニューヨーク45、ペンシルベニア32、イリノイ27、テキサス24)、ニクソン候補2勝(カリフォルニア32、オハイオ25)とリードしたのが決め手となりました。
圧勝 / 1964年「L・ジョンソン×ゴールドウォーター」
ケネディ大統領は1963年に暗殺され、残余期間をジョンソン副大統領が昇格して務めた後の大統領選です。ジョンソン候補は副大統領の時には「何もしていない」とからかわれてもいましたが、米副大統領は誰に限らず「ほとんど仕事がない世界最高の役職」ともいわれ、いわば職務に忠実であったに過ぎないと後に評価されています。大統領昇格後は公民権法を制定して黒人への差別を法的に取り除くなどの実績を挙げました。
共和党候補となったゴールドウォーターは公民権法に反対した事実からジョンソン陣営より「人種差別主義者」「極右」のレッテルを貼られて追い詰められます。失言も目立ち攻撃される材料にこと欠きませんでした。ケネディ人気と同情の余光に加えてネガティブキャンペーンに成功したジョンソン候補は50州のうち44州を獲得、得票率61.1%は史上最高という圧勝を収めました。
接戦 / 1968年「ニクソン×ハンフリー」
ジョンソン政権の末期、米軍が南ベトナム側で加わっていたベトナム戦争が泥沼化し、政権批判が次第に強まります。大統領が自身の再選を諦めたため民主党は次期候補者選びに苦労しました。最も人気があったロバート・ケネディ上院議員が暗殺されて一層混迷。結局ハンフリー副大統領が民主党の指名を受けるも、政権の一翼を担っていたため党内反戦派からは当初嫌われていました。
またもともとは民主党のウォレス前アラバマ州知事が公民権法反対、ベトナム戦争強硬解決を訴え第三党「アメリカ独立党」から出馬しました。同党と民主党は地盤が重なっていてハンフリー陣営としては痛手となります。
対する共和党はベトナムからの「名誉ある撤退」を主張したニクソン元副大統領が浮上しました。1960年大統領選の敗北後、不遇をかこっていたニクソン氏も64年の共和党大敗以降その実力が再評価されていたのです。
選挙はニクソン圧勝の見通しから一転し、ジョンソン政権の手法から距離を置き始めたハンフリー候補が巻き返すも32州でニクソン候補が勝利し念願の大統領への切符を手に入れました。72年も圧勝して再選されるも一大政治スキャンダル「ウォーターゲート事件」で猛反発に遭い74年に辞任しました。
圧勝 / 1980年「レーガン×カーター」
ウォーターゲート事件の余波が収まらず共和党政権への批判が強いなか76年に民主党はカーター候補を担いで当選。民主党が政権を奪還しました。
しかしカーター大統領の任期中は外交で失点ぞろい。79年に反米のホメイニ師率いるイラン・イスラム革命が起きてアメリカ大使館が占拠され、人質救出の軍事作戦を行ったものの失敗。さらに革命に基づく石油高などで経済も不振に陥りました。同年にはライバルのソ連によるアフガニスタン侵攻を許してしまいました。
俳優からカリフォルニア州知事を務めたのが共和党のレーガン候補です。後の共和党の基本路線になる「レーガノミクス」を掲げて経済再生を訴えるとともに軍事面では「強いアメリカ」復活を訴え圧勝しました。84年も圧勝で再選されます。
接戦 / 2000年「ジョージ・W・ブッシュ×ゴア」
民主党のビル・クリントン大統領後継のゴア候補と父も大統領を務めたブッシュ候補の激突。アメリカ大統領選挙史上もっとも接戦となった選挙の一つです。あまりの混戦でフロリダ州では再集計となりました。得票はゴア候補が上回るも選挙人獲得数でブッシュ候補が勝ちました。
1996年の大統領選挙(クリントン勝利)と00年を比較すると多くの州で民主から共和勝利となっています。
・ウェストバージニア(5人)・・・・南部
・ケンタッキー(8人)・・・・南部
・テネシー(11人)・・・・南部
・フロリダ(25人)・・・・南部
・アーカンソー(6人)・・・・南部
・ルイジアナ(9人)・・・・南部
・ニューハンプシャー(4人)・・・・東部
・オハイオ(21人)・・・・中西部
・ミズーリ(11人)・・・・中西部
・アリゾナ(8人)・・・・西部
・ネバダ(4人)・・・・西部
対して96年は共和だったが00年は民主という州はありません。つまり南部の6州(64人)をブッシュ候補は一挙に民主党から引き抜いた上に、中西部のオハイオとミズーリを手に入れたのです。特に選挙人21人を数えるオハイオの獲得は大きな勝因でした。
92年と96年の選挙で勝利を収めたクリントン候補は南部のアーカンソー州知事を務めています。00年の共和党ブッシュ候補はテキサス州(南部)知事出身。テキサスは選挙人34人の南部最大の州です。そこで地滑り的に南部票が民主から共和に移動したと推察されます。
もっともゴア候補も南部テネシー州選出の上院議員で「南部対決」だったにも関わらず南部票はブッシュ候補がゴッソリさらっていったのです。
少し「愚か」に見えた方が勝つ?
ブッシュ候補の勝因(ゴア候補の敗因でもある)はさまざま取りざたされています。面白い推論を1つご紹介します。それは「共和党候補が少し愚かに見えた方が勝つ」というものです。
ブッシュ候補は、大統領になってからも一部に“おバカ”エピソードを引いたジョークが広まります。同じような系譜に「ただの軍人」アイゼンハワー氏や「俳優上がり」のレーガン氏がいます。
前述の通り、アイゼンハワー候補に敗北したスティーブンソン候補はピカピカのエリートで、カーター候補はやせても枯れても現職、ゴア候補も見るからに「エリートが服を着ている」ような言動が売りでした。ふつうに考えると後者が勝ちそうなものですが、しばしば「傲慢」「相手への敬意を欠く」とみられるようです。
対して、多少発言などに難がある共和党候補には有権者が、愛すべき性格とか親しみやすいとか実直といった評価を与えられがちです。今回の「ヒラリー×トランプ」も民主党(ヒラリー・クリントン候補)がこれ以上ないというほど光り輝く経歴の持ち主に対して、トランプ候補は政治経験はありません。意外なようで、過去の大統領選挙を振り返ると案外とおかしくない組み合わせといえるかもしれません 。 
 
 

 

Presidential election
トランプ接戦を制す
アメリカ人 「万里の長城」を選択  

 

トランプ氏が勝利 米大統領選、接戦制す
米大統領選は8日、全米各州で投票、即日開票され、異端の共和党候補、ドナルド・トランプ氏(70)が「女性初」を目指した民主党候補、ヒラリー・クリントン前米国務長官(69)を接戦の末破った。激戦州のオハイオ、フロリダ、ノースカロライナなどを制したのが勝因だ。米国民は異端候補に米国の再生を託した。
米メディアの集計によると、選挙人の獲得数はトランプ氏は過半数の270人に達する見込みになった。
トランプ氏はオハイオやフロリダのほか、ノースカロライナ、ウェストバージニア、インディアナ、テネシー、ケンタッキー、テキサスなどの各州、クリントン氏はバージニア、バーモント、マサチューセッツ、ロードアイランド、ニューヨーク、イリノイ、オレゴンなどの各州で勝利を確実にした。
開票は東部時間8日午後6時(日本時間9日午前8時)から順次始まった。今年2月の二大政党の候補指名争いから始まった戦いが決着した。勝敗は各州に割り当てた計538人の「選挙人」の獲得数で決まる。過半数(270人)を得た候補が来年1月に次期大統領へ就任する。
共和党は8年ぶりのホワイトハウス奪還を目指してきた。当初、泡沫(ほうまつ)候補とみられたトランプ氏はビジネスで成功を収めた経験を前面に「米国を再び偉大にする」と呼びかけ、予備選を勝ち上がった。既存政治に反発し、景気回復から取り残されたと感じる白人の中低所得層を中心に支持を得た。
2008年に続いて民主党の候補指名争いに出馬し、早くから本命視されたクリントン氏は女性の昇進を阻む「ガラスの天井」の最後の一枚を破ると訴えた。副大統領候補は、民主党がティム・ケーン上院議員(58)、共和党はインディアナ州のマイク・ペンス知事(57)。
米大統領が打ち出す政策は米国内だけでなく世界情勢に連動する。世界経済は回復がもたつき、外交・安全保障ではロシアや中国が強硬姿勢を強める。過激派組織「イスラム国」(IS)など国際テロ組織の台頭も秩序を揺さぶる。 

 

敵失がもたらしたトランプのタナボタ勝利
「なぜこんなことになったんだ?」サンフランシスコダウンタウンのスターバックスで大声で怒鳴る男性。「カリフォルニアはクリントン勝利だったのに」と呆然とする店員。11月8日深夜、大統領選挙の結果が見えた米国内は不穏とも諦めともつかない奇妙な雰囲気に満ちていた。
ドナルド・J・トランプ氏(70)の第45代合衆国大統領就任。直前までこの結果を予測した人は非常に少なかった。選挙前日でも世論調査でのヒラリー・クリントンリードは5ポイントで、ウォール・ストリートは「ヒラリー優勢」のニュースからダウ平均が500ポイント近く上がるなど、楽勝ムードが漂っていた。しかし、蓋を開けてみれば思わぬ大差でのトランプ勝利。
トランプ氏は「コンプリケートなビジネスだったが我々は勝った。今こそアメリカはひとつにならなければならない」と勝利宣言を行った。これほどまでに分断された国が再びひとつにまとまるのか、米国人でなくとも疑問を持つところだが、米国人自身が選んだ結果なのだからこれはこれとして受け止めるしかない。
今回のヒラリーの敗因はどこにあったのか。考えてみれば、民主党は共和党よりもさらに内部分裂が激しかった、ということに気づく。共和党はパパブッシュにジョージ・ブッシュの2人の元大統領が「ヒラリーに投票する」と宣言、上院議員の大御所であるジョン・マケイン、前回の大統領候補のミット・ロムニーなど大物が次々に反トランプを表明、一見ひどい分裂状態にあるかに見えた。
しかし、彼らはほとんどが「過去の人」である。現上院議長のポール・ライアン、クリス・クリスティーNJ州知事など、現役大物はトランプ支持に回った。特にニュート・ギングリッチは有権者にeメールでトランプへの投票を要請、また各界の尊敬を集めるクリント・イーストウッドもトランプ支持だった。民主党政権が8年続いた後だけに、誰が候補であろうと共和党政権を取り戻したい、という意思は強かった。
一方の民主党。ヒラリーで一枚岩とはとても言えない状況だった。夏には民主党本部のeメールのリークにより「党本部とヒラリー陣営が不当な選挙操作を行いバーニー・サンダースの当選を阻害していた」ことが表明。無名の存在から一気にヒラリー対抗馬に駆け上がったサンダースではあるが、そんな汚い手を使わなければ勝てなかったのか、とヒラリーへの失望が増した。当のサンダースは自分の支持者に「ヒラリーへの投票を」と訴えたが、最後までサンダース支持者を取り込めなかったヒラリーの人望のなさにも問題がある。 

 

泡沫と思われた放言王 トランプの勝因は反グローバリズム
「史上最低の醜悪」などと言われた米国の大統領選は大接戦の末、共和党のトランプ候補が制した。この結果に、株式市場が大暴落するなど、世界中が騒然としているが、背景を探れば、そこには必然的ともいえる米国の闇がある。
確かにトランプの訴えはむちゃくちゃだった。口を開けば「メキシコとの国境に壁をつくる」「中国が雇用を奪っている」と他国を攻撃し、ワイセツ発言も酷くて「ピー」音をかぶせて伝えるニュース番組も多かった。さすがに、大新聞は一斉にトランプ批判に回り、発行部数上位100紙中、ヒラリー支持を表明したのが55紙だったのに対し、トランプ支持はわずか1紙だけだった。
しかし、それでもトランプ人気は落ちなかった。最後の最後でリードを許していたクリントンを逆転した。どんなに暴言を吐こうが、スキャンダルが飛び出そうが、あきれるほど根強い支持層に支えられたのである。支持率は終始40%台をキープし、最後はフロリダなど激戦州で次々と下馬評をひっくり返した。ツイッターのフォロワー数は、ヒラリーの1005万人に対し1280万人と凌駕、トランプの演説を生中継すると視聴率が跳ね上がるという現象も起こった。
疲弊したアメリカ国民が喝采、支持
なぜ、他人の悪口しか口にしないトランプのような下品な男が、ここまでアメリカ国民から熱狂的な支持を集めたのか。
トランプの主張は、ハッキリしている。一言でいえば、「排外主義」だが、それは「反グローバリズム」である。市場に任せれば経済はうまく回るとアメリカが30年間にわたり主導してきた「グローバリズム」と「新自由主義」を、真っ向から否定した。その訴えがアメリカ国民の心をとらえたのは間違いない。
外務省OBの天木直人氏(元レバノン大使)がこう言う。
「もともとグローバリズムは、“勝ち組”の政策です。格差が広がり、希望を持てない人を増やしてしまう。アメリカ国民も疲弊してしまった。一握りの富裕層だけが富み、中産階級が崩壊しつつあります。だから、以前から大衆の不満が充満していた。トランプはその不満を上手にすくい上げた形です。トランプが『中国が雇用を奪っている』『雇用を奪うTPPを止める』と自由貿易を批判すると、聴衆は拍手喝采し、熱狂した。これは“サンダース現象”にも通じる話です。ヒラリーと大統領候補の座を争ったサンダースも、新自由主義を否定し、TPPを『破滅的な協定だ』と批判して支持を集めた。アメリカ大統領選を通じて分かったのは、行き過ぎた新自由主義とグローバリズムが限界に達しつつあるということです。今後アメリカは、大きな転換を迫られると思う。熱心なTPP推進派だったヒラリーが、国民の強い反発を目の当たりにして『今も反対、選挙後も反対、大統領になっても反対』とTPP反対に宗旨変えしたことが、この先のアメリカを物語っています」
実際、新自由主義とグローバリズムによって、アメリカ国民の生活はボロボロになっている。安い労働力を求めて企業が海外に進出したために雇用は減り、その一方、安い商品が海外から流入し、アメリカ製は競争力を失ってしまった。グローバリズムに対するアメリカ国民の怒りと絶望が、トランプを押し上げたのである。大統領選で敗北したのは、新自由主義とグローバリズムだったのではないか。
TPPに参加したら日本経済は崩壊
グローバリズムへの「反動」は、アメリカだけの現象ではない。世界各国で「保護主義」の動きが強まっている。自由貿易を進めたはいいが、どの国もヘトヘトになっているからだ。
なのに安倍首相は、TPPを筆頭にした新自由主義を推し進めようとしているのだから、時代錯誤もいいところだ。もしTPPに参加したら、日本は決定的な打撃を受けてしまうだろう。筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)がこう言う。
「例外なき関税撤廃、自由貿易が大前提のTPPに参加したら、日本の産業と雇用が破壊されるのは必至です。たとえば、日本が強い自動車産業だって、とても全メーカーが生き残れるとは思えない。まず農業、林業、漁業は、安い外国産に太刀打ちできないでしょう。第1次産業が壊滅したら、地方経済は成り立たなくなる。今でもシャッター通りだらけなのに、地方は活気を失い、本当に死んでしまう。新自由主義とグローバリズムの本質は、一般国民を犠牲にしてグローバル企業を儲けさせることです。世界的な大企業は潤うが、大衆には恩恵がない。だからアメリカも、産業界はTPPに賛成し、多くの国民が反対している。それでも安倍首相はTPP参加を強行しようとしているのだから、どうかしています。百歩譲って、もしメード・イン・ジャパンが世界市場を席巻している時だったら、TPPに参加するメリットがあったかもしれませんが、国際競争力が低下している今、参加するのは狂気の沙汰です。日本の富と市場を、アメリカのグローバル企業に奪われるのは目に見えています」
グローバリズムをやめ、日本型を探せ
いずれ世界各国に、「グローバリズム」を見直す動きが広がっていくはずだ。「保護主義」の動きが強まってくるのは間違いない。日本も大急ぎで、行き過ぎたグローバリズムと一線を画すべきだ。
このままグローバルな競争に突入しても、過激なコスト競争に巻き込まれ、デフレ不況を悪化させるだけである。アベノミクスが「異次元の金融緩和」を実施し、経済対策に何十兆円もの税金をつぎ込んでも物価が上昇しないのは、過度なグローバル競争によって、国内にデフレ圧力がかかっているからである。
そもそも、日本のGDPの6割は個人消費なのだから、一部のグローバル企業を強くし、多少輸出を増やしたところで、景気が良くなるはずがないのだ。
「この20年、アメリカのエージェントのような経済学者やエコノミストが、グローバルスタンダードだ、構造改革だと日本式の経済システムをアメリカ型に変えてきたが、果たして日本国民の利益になったのかどうか。大失敗だったのは、この20年の日本経済が証明しています。今からでも日本の状況に合った経済システムを探すべきです。今振り返っても、年功序列、終身雇用、系列といった日本型経営はある意味、合理的なシステムでした。雇用が守られるので、サラリーマンは結婚、子育て、マイホーム取得と人生設計を立てられた。将来不安が少ない分、消費もできた。ところが、グローバルスタンダードに合わせるべきだと雇用を壊し、非正規を増やしたために、将来不安が強まり、消費が増えなくなってしまった。最悪なのは、社内に人材と技術の蓄積がなくなったために、商品開発力まで落ちてしまったことです」(経済評論家・斎藤満氏)
アメリカ大統領選でなぜ、「トランプ現象」や「サンダース現象」が起きたのか、日本はよく考える必要がある。 

 

トランプ氏、民主党の地盤を次々破壊 産業廃れた各州
トランプ氏は、以前からの共和党の地盤を確実に固めたほか、フロリダ州やノースカロライナ州など東部の激戦州を制した。特に、産業が廃れて「ラストベルト」と呼ばれる各州で支持を伸ばしたことが勝因となった。
トランプ氏は投票を控えた最終日に、フロリダ州など激戦州に加え、1992年から民主党が制してきたミシガン州などで相次いで遊説。選挙戦で訴え続けたスローガン「米国を再び偉大にしよう」を唱え、支持を呼びかけた。
今回の選挙で、ラストベルトは象徴的な意味を持つ。トランプ氏の支持者が多い高齢の白人男性は第2次大戦後、米国製造業の黄金期を経験。長く、米国経済と家族の生活を支えてきた。だが、経済のグローバル化とともに、鉄鋼や自動車などの産業は衰退した。
「自動車の街」と呼ばれたミシガン州の最大都市デトロイトは、高い失業率と犯罪率に苦しむ。
生活に不安を抱く白人労働者たちは、トランプ氏の訴えに熱烈に共鳴した。
「雇用がメキシコに逃げている」「不法移民は送り返せ」「クリントン氏ら政治家たちは何もしてこなかった」「自由貿易には反対だ」
トランプ氏は、長く政界にいた対立候補のクリントン氏を容赦なく批判した。既成政治とのしがらみのなさを強調することで、現状に不満を抱く人々を引きつけ、他国や貿易制度に責任を押しつけた。「政治経験が無い」という悪条件を、逆に利点に変える手法だった。
その結果、ラストベルトの各州で「労働者の党」をうたってきた民主党の地盤を破壊。人口や産業構成で「米国の縮図」とされるオハイオ州で早々に勝利を確実にし、ミシガン州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州でも得票を伸ばした。 

 

トランプ当選で日米安保が直面する重い課題
 異色の新大統領が進める外交政策に募る不安
世界中が固唾を飲んだ。11月8日(米国時間)の米国大統領選挙。大接戦の末、共和党のドナルド・トランプ候補(70)が民主党のヒラリー・クリントン候補(69)を破り、次期大統領となることが決定した。2017年1月末に就任する見込みだ。
選挙キャンペーン中、トランプ氏はマイノリティ(少数者)や女性、移民について、攻撃的で敵対的な発言をし、時に暴言を吐いたこともあった。トランプ氏を批判する人たちからの暴露によって、一層誇張されたきらいはあるが、それにしてもその言動は従来の常識ではありえないものだ。共和党の内部からも強い非難の声があがり、世論調査の支持率では、クリントン氏におよばない状況が続いてきた。
しかし、選挙間近になり、クリントン氏のメール不正使用問題についてFBI(米連邦捜査局)が捜査再開を公表したことを機に、クリントン氏の支持が下がり、トランプ氏が優位に立った。結局、FBIはクリントン氏を訴追しないこととしたものの、トランプ氏優位の状況は動かなかった。
不満の強い中低所得層からの支持
今回の基本的勝因は、首都ワシントンの既成政治に対する不満が強い、中低所得層の支持を得ることができたからだ。米国には低所得者の方が高所得者よりも税負担率が高いという現実がある。トランプ氏の場合、不満を抱えている人たちにわかりやすい言葉で語りかけて「偉大な米国」を取り戻すと、米国民の自尊心をくすぐった。
実際に新政権が中低所得層のためにどのような政策を講じるか、それに対する既成勢力の反発がどのように起こってくるかが、内政の焦点となる。これから政権発足に向けて、さまざまな準備が進められるが、内政・外交ともに強い不安が付きまとうのはやむを得ない。トランプ氏が核の発射ボタンを持つことなど「想像を絶するくらい恐ろしい」と思う人もいる。
まず問題となるのが、選挙戦からトランプ氏がしばしば言及してきた、不法移民対策だ。「不法移民が米国民の雇用を奪っている」「麻薬や犯罪を持ち込む」などと攻撃。「大統領になれば容赦しない」「米国から不法移民を追い払う」「新たな不法移民の流入を防ぐためメキシコとの国境に壁を作る」「費用はメキシコに払わせる」などなど、これまでの政権による生ぬるい対策は一新するといった、10項目の対策を発表している。
もっとも、事はそう簡単でない。トランプ氏は不法移民が米国民の職を奪っていると主張するが、米国は低賃金の労働力を必要としており、これまでの政権は法律違反があっても、ある程度は目をつぶってきた。米国内から不法移民をすべて追い出すと、米国の製品は価格が上昇して、競争力を失うに違いない。
不法移民問題の扱いを誤ると、ラテン系米国人(いわゆるラティノ)との関係が悪化する恐れもある。ラティノは全米で約3500万人(2010年の人口調査、全米人口の約16%)おり、これに不法移民を加えると、約5000万人に近いとも言われている。
イスラム敵視なら中東政策が躓く
イスラム攻撃も激しかった。
イスラム教徒は入国を一切認めない」と発言したこともある。ただ、イスラム教を敵視することは、計り知れない影響が出てくる。米国内のイスラム人口は、2050年までに約2%に増加するとみられる。キリスト教徒やユダヤ教徒より多くなるとの説もある。予測にはかなりの幅があるものの、いずれにしても、着実に増加する傾向であり、遠からず米国の一大勢力となるのは間違いない。テロ対策は重要だが、イスラムを敵視して、中東政策が成功するはずがない。トランプ氏はイスラムに関する考えを修正せざるをえなくなるだろう。
トランプ氏の場合、人種差別的な発言もしている。第二次世界大戦中の悪名高い日系人強制収用についても、是認するような発言をしたので、猛烈な抗議を受けたことがある。
そして今後、最も注目されるのが、安全保障政策だ。日本に対してトランプ氏は、いわゆる「安保タダ乗り論」を繰り返し述べており、米軍撤退の可能性にも言及した。
「米国は日本を防衛する義務があるのに、日本は米国を防衛する義務を負わないのは不公平だ」というのは、トランプ氏に限らず、多くの米国民が口にする議論だ。
だが、日本と米国が対等な安保条約を結べないのは、憲法に象徴される日本の戦後体制が原因である。日米が対等の条約を結ぶには、日本の安全は国際連合によって確保される、それができない間は米国に頼るといった、日本の安保原則を変えなければならない。
戦後すでに70年以上たっており、日本は戦争直後に決定されたことをいつまでも維持すべきでない、というのは一つの考えだろう。ただし、日本が憲法を改正、十分な軍事力を持って必要な体制を整え、核武装まですることは、世界の秩序や米国の世界戦略にも甚大な影響が出てくる。日本人はそのようなことを望んでなく、はたして米国にとってもそのような変化が好ましいのか疑問だ。それでは日米安保条約を維持する必要もなくなる。
対中国で一方的な批判はできない
もっとも、この問題についてのトランプ氏の発言は、二転三転している。安保については無知な面もあり、新政権として考えが固まるのを見届けなければならない。
もちろん対中国も焦点だ。
トランプ氏が日本以上に批判してきたのが中国である。中国の国営メディアは「トランプ氏は大口たたきの人種差別主義者」などとやり返してきた。為替操作を含め、経済面でも中国を厳しく非難しているが、米国は中国とも経済的に相互依存の関係にあり、米国の一方的な見方を押し付けることはできない。
政治・外交面で、米中は鋭く対立する面もあるが、協力は必要である。トランプ氏としても、選挙期間中のように一方的に発言するだけでは、政権はたちまち立ち往生するだろう。バランスの取れた発言は、あまりセクシーでなく、トランプ氏らしくないかもしれないが、諸状況を勘案したうえで、現実的かつメリハリを付けた政策を打ち出すべきだ。 

 

トランプ氏の当確に懸念「女性住みづらい国に…」
米大統領選は、実業家のドナルド・トランプ氏がヒラリー・クリントン氏に競り勝ち、初の女性大統領誕生はならなかった。
日本の女性からは落胆とともに、女性蔑視発言などが問題となってきたトランプ氏に「女性や移民が住み心地の悪い国になるのではないか」と心配する声も上がった。
大和証券グループ本社で、生え抜きの女性として初めて取締役に就任した田代桂子氏(53)は「発言などを見ていてもトランプ氏は上品さに欠ける。米国の展望について不安になる」と結果に驚く。女性蔑視発言などを念頭に、「彼のような価値観や道徳観が広まると、女性や移民にとって住み心地の悪い国になってしまう」と懸念した。
一方で「英国や台湾、南米など、世界で女性のリーダーが誕生している。クリントン氏の敗北で女性の政界進出が難しくなることはないだろう」と話した。
女性への暴力根絶などに取り組む「女性と人権全国ネットワーク」共同代表の佐藤香さん(48)は「弱者への差別的な発言をしてきたトランプ氏に、人権意識などないだろう。(クリントン氏にとって)負けてはいけない相手だった」とあぜんとした様子。
沖縄県うるま市で女性が元米海兵隊員に殺害された事件に言及し、「米軍基地と性暴力の問題についても、2度と起きないよう対策が進むとは思えない」と危機感をあらわにした。
駒沢大の大山礼子教授(政治制度論)は「米国でも女性候補者への採点は厳しくなりがち。例えば、ヒラリー氏がトランプ氏と同様の発言をしていたら候補者にすらなれなかっただろう」と分析。「民主党が女性を候補に選んだことが敗因になったとすれば残念だ」と話した。 

 

ヒラリーの敗因 「アメリカ国民は連邦政府を信用していない」
ジャーナリストの池上彰氏が9日、テレビ朝日系「ワイド!スクランブル」に登場。
米大統領選でヒラリー氏が米国民に嫌われる理由について、米国民が中央政府を信用していないという心情があると解説した。
番組では米大統領選の速報を報道。トランプ氏有利という情勢について、なぜヒラリー氏は嫌われるのか?という話題となった。
池上氏は、ヒラリー氏の夫が元大統領であることを挙げ「大統領時代の給料は実はそれほど高くはない。でも大統領を辞めた後にみんな財団を作るんです。そこで世界中から寄付を募る。また世界中を講演旅行して多額のお金が入るんです」という仕組みを説明。
テレビ朝日の小木逸平アナウンサーが「(夫の)引退後、財団があるのに、また大統領になっちゃってどうするの?っていう話ですか?」と、夫婦で“荒稼ぎ”する姿勢を指摘すると、池上氏は「そうです」とうなずいた。
また、米国民は「首都を信じていない。連邦政府を信用していないんです」とコメント。
過去の大統領についても、オバマ氏はイリノイ州、ビル・クリントン氏はアーカンソー州など、地方の政治から中央へ舞台を変えたことを挙げ「ワシントン政治に汚れていない人が選ばれていた。その点、(ヒラリー)クリントンさんはずっとワシントン。その不信感を(米国民は)持っている」と、ヒラリー氏が支持されない理由を解説した。
トランプ氏は政治家経験は一切ないが、「それが新鮮なんです」とも指摘していた。 

 

敗因はメール問題? 静まりかえったクリントン陣営
アメリカ大統領選挙で、当選が確実となった共和党のトランプ氏が勝利宣言を行いました。一方のクリントン陣営の会場から報告です。
クリントン氏は、正式には自らの口からまだ敗北宣言はしていません。こちらで準備されていた集会も、先ほどお開きになったばかりです。クリントン氏は登場しませんでした。クリントン氏の代わりに登場したのは陣営の選対本部長で、「私たちは票を数えている」と述べました。そのうえで、来ていた支持者たちに家に帰るように伝えました。「今夜は話さない。あす、もっとたくさん話すことがあるだろう」と話しています。会場は最初、各州でのクリントン氏の勝利が伝えられると、大きな歓声が上がっていましたが、激戦州のフロリダ州などをトランプ氏が取ると、次第に祈るような表情に変わっていきました。見ていられないとして、途中で帰ったり涙を見せる支持者の姿がありました。クリントン氏の夜が明けてからの予定は未定ですが、恐らく敗北宣言か何かの形でスピーチをすると思います。
(Q.民主党幹部から会場撤収の話があった時の支持者の様子は?)
陣営の責任者からスピーチがあったのはわずか数分ですが、その時はヒラリーコールが沸き起こったり、一時、盛り上がっていました。ただ、開票速報が着々と伝えられていくうちに、だんだん静かな雰囲気になり、食い入るような目で見ているのが印象的でした。
(Q.クリントン氏からトランプ氏に勝利をたたえる電話があったようだが?)
こちらの陣営から正式に電話でお祝いを伝えたという情報はまだ出ていません。
(Q.あすはクリントン氏はどのような動きになる?)
まだ集会が終わったばかりで、次の予定は出ていない状況ですが、恐らく、選対本部長も「あす、もっと話すことがある」というふうに言っていたので、何かしらの形で公の場に出てくるのではないかと思われます。 

 

クリントン氏の敗因は?、全ての層でオバマ氏得票を下回る
8日の米大統領選で民主党候補のヒラリー・クリントン氏が予想外の惨敗を喫した。オバマ現大統領が再選を果たした2012年の大統領選と比較して、その原因を分析する。
オバマ大統領を勝利に導いたのは黒人と中南米系、若者の「支持連合」だった。クリントン氏は、こうした層の投票率を前回のレベルまで引き上げられなかったのが敗因とみられる。
クリントン氏は米東部時間の9日午前2時(日本時間午後4時)すぎに敗北を認めた。投票締め切りの時点まで勝利を確信していたが、結果は民主党の安定地盤とされてきたウィスコンシン州やペンシルベニア州さえ落とす惨敗となった。
出口調査の数字によると、クリントン陣営が照準を合わせてきた主な層は勝ち取ったものの、12年のオバマ大統領に比べると、女性を含めた全ての層で当時の得票率を下回った。
黒人と中南米系の有権者をみると、トランプ氏の得票率は12年の共和党候補だったミット・ロムニー氏をわずかに上回っていた。トランプ氏が黒人や中南米系移民に対して差別発言を繰り返してきたにもかかわらずだ。
9日未明の時点で、黒人層からの支持率はクリントン氏が88%、トランプ氏が8%。前回はオバマ大統領が93%、ロムニー氏が7%と、さらに大きな差がついていた。投票者全体に占める黒人の割合は12%で、前回の13%を下回った。
オバマ大統領は最近、黒人の有権者にクリントン氏への支持を繰り返し呼び掛けてきたが、十分な人数を投票所へ向かわせることはできなかったようだ。
中南米系の有権者からの支持率はクリントン氏が65%、トランプ氏が29%。前回はオバマ大統領が71%、ロムニー氏が27%だった。中南米系の投票者が全体に占める割合は前回よりかなり拡大すると見込まれていたが、実際は1ポイント増の12%にとどまった。
オバマ大統領が若者からも強く支持されたのに対し、今回はクリントン氏と候補指名を争ったバーニー・サンダース氏に人気が集まった。18〜29歳の層からの支持率はクリントン氏55%、トランプ氏37%となったが、4年前はオバマ大統領が60%、ロムニー氏が37%と、リードの幅が広かった。
オバマ大統領の支持連合以外でも、クリントン氏の人気は4年前の大統領に及ばなかった。白人からの支持率は37%と、オバマ大統領の39%を下回った。
投票者の4%を占めたアジア系有権者では、クリントン氏の支持率が65%。オバマ大統領の73%を大きく下回った。 

 

上院・下院も過半数を…トランプ陣営勢い止まらず
アメリカメディアはトランプ氏の勝因についてどう分析しているのでしょうか。
アメリカメディアは開票結果を見て、西側のラスベガスがあるネバダやコロラドなど、クリントン氏が事前の予想より票を取って勝っています。ところが、東側のオハイオ州やその周辺の工業地帯の州で軒並み、トランプ氏が大幅に上回って勝っています。分析して明確な差があったとしています。それは、トランプ氏の反TPP(環太平洋経済連携協定)戦略が当たりました。つまり、他国との貿易協定がすべてのアメリカ経済・雇用をだめにしていると訴えていて、これが衰退している地域の白人労働者の胸に突き刺さりました。白人労働者は具体的な政策はあまり気にしていません。とにかく、現状よりもましになりたい、変えたいという思いが強く、そこが投票に新たに足を運んだのだと思います。そして、トランプ氏にはさらに良いニュースがありました。同時に行われた議会選挙で、共和党が上院も下院も過半数を維持しました。これは、大統領と上院・下院同じというのは珍しく、最大の力が発揮できる環境です。トランプ氏がこれまで主張しているオバマケアの廃止やTPP失効、メキシコ国境に壁を造る、日本の在日アメリカ軍基地の負担・経費を100%出させることなどを進めていくようです。政権移行チームの幹部に聞くと、例えばメキシコに壁を造る金を出させるのは、他の貿易での優遇税制などを洗い出して絞り込み、それで脅して代わりに金を出させるなどの取引を考えています。これから在日アメリカ軍の駐留経費も戦略的にふっかけてきて、かなり高めの球を投げてくることは十分、考えられます。 

 

「どちらが勝っても米国には損失」嫌われ者対決を制したのはトランプ氏
政治経験のない人物がアメリカ大統領に選ばれるシナリオを真剣に考えていたひとはどのくらいいるのだろうか? 11月8日(現地時間)に行われた米大統領選挙では、大方の予想に反し、実業家のドナルド・トランプ氏が当選に必要な270人以上の選挙人を獲得し、対抗馬のクリントン氏に約60ポイント以上の差を付けて勝利した。トランプ候補は9日の午前3時前、ニューヨークで支持者が集まる会場に家族と共に登場し、勝利宣言を行った。クリントン氏のスピーチは夜が明けてからになる見込みだが、トランプ氏はクリントン氏から敗北を認める電話をもらったことを勝利スピーチで明かしている。なぜ、トランプ氏が勝利し、クリントン氏は敗北したのか?トランプ氏の勝利にアメリカの有権者は何を感じているのだろうか?
世代間で大きさが異なる二大政党への不信感
8日午後10時頃、ニューヨークのブルックリンでは教師のモリー・カラブレーゼさんが夫と共にテレビで開票速報を見つめていた。すでにクリントン候補の苦戦がこの頃から始まっていたが、カラブレーゼさんは「すごく緊迫した雰囲気ですが、前の選挙では開票直後は共和党のロムニー候補がリードしていたんです。最後まで何が起こるかわからないので、希望を捨てずに開票結果を見届けようと思います」と語った。
同じ頃、首都ワシントンの政府機関で働くエリン・コーチャーさんは、アメリカ史上初となる女性大統領の誕生を楽しみにしながら、バージニア州の自宅で家族と共に開票速報をチェックしていた。
「今日は娘の学校で自分にとってのヒーローを選ぶ催し物があり、私の娘はローザ・パークス(公民権運動の母と呼ばれる黒人女性)を選びました。アフリカ系アメリカ人が大統領になり、今度は女性が大統領になる。人種や性別に関係なく、この国では努力次第ではなりたいものになれるんだという希望を、ローザ・パークスをヒーローに選んだ自分の娘にヒラリー・クリントン大統領誕生によってさらに強く持ってほしいと思っています」
様々な思いを抱えて、アメリカの国内外で多くの人が米大統領選挙の開票速報を注視し続けたが、当初の米メディアの予想に反して、勝者となったのは政治経験が全くなく、公の場での暴言や失言を繰り返してきたトランプ氏であった。
トランプ氏の勝因に関しては、これからメディアやシンクタンクが様々な見解を示すと思われるが、現時点ではっきりとしているのは人種や性別、世代間によってクリントンとトランプに対する支持がはっきりと分かれたことだ。
米NBCニュースは全米各州で開票作業が始まった直後に、全米の有権者に対して意識調査を実施。18歳から29歳までの若い有権者の54パーセントが民主党候補を支持すると答えたが(共和党支持と回答したのは37パーセント)、興味深いことに9パーセントが民主・共和の両党に属さない候補者を支持していると答えていた。2004年の大統領選挙で、二大政党に属さない候補者を支持すると回答した若い有権者はわずか1パーセントであったが、2008年に2パーセント、2012年に4パーセントと右肩上がりを見せ、今回はついに9パーセントにまで達した。ワシントンの政治システムを支持しない若年層の増加が顕著になっている。
65歳以上の有権者の間では、独立系候補を支持するという声はなく、2004年から現在まで、共和党支持が50パーセント台半ば、民主党支持が40パーセント台半ばという数字が変わらないままでいる。今後のアメリカ政治や選挙を予測する上で、若い有権者の「二大政党離れ」が重要なポイントになる可能性は高い。NBCニュースによると、大統領選挙で初めて投票を行った有権者の56パーセントがクリントンに投票し、40パーセントがトランプに投票したものの、4パーセントは独立系候補に投票していた。初めての大統領選挙で独立系候補に投票した有権者全てがいわゆるミレニアル世代(1980年代から2000年頃までに誕生した世代)なのかは不明だが、世代間で二大政党制に対する見方が異なることは間違いないだろう。
非白人でも目立ったクリントン氏への不信感
メキシコ人のディアナ・ガルシアさんはアメリカで高等教育を受け、現在はメキシコ国内の企業で働いているが、トランプ政権誕生後にメキシコ移民が一斉に強制送還されるリスクを懸念する。
「トランプがメキシコ移民に対する攻撃的な姿勢を打ち出し、それが彼を支持する有権者から支持された側面がある以上、トランプ政権誕生後にメキシコ人を含む多くの移民が実際に強制送還される可能性があります。しかし、アメリカ国内における低賃金の仕事を支えているのはメキシコ人を含む移民です。メキシコ人移民を強制送還した場合、アメリカ国内のサービス業や建設業などでは一気に人材不足が問題化するでしょうし、強制送還されたメキシコ人の雇用をメキシコ国内で作り出すのも困難な状態です。アメリカからの仕送りによって生活している家庭もメキシコには多く存在し、間違いなく両国間で大きな問題となるでしょう」
ガルシアさんは選挙前にメキシコ系アメリカ人の友人達と話をした際、メキシコ系アメリカ人コミュニティの中でクリントンを支持しないという声が意外に多いことを聞かされ、驚いたのだという。トランプのヒスパニック系に対する差別意識にほぼ全てのメキシコ系アメリカ人が憤っているものの、中絶を容認する姿勢を打ち出しているクリントンに対して、カトリック教徒が多いメキシコ系アメリカ人の中には嫌悪感を示すものも少なくなかったのだという。「自分たちが標的にされているのに、宗教的な理由で対抗馬のクリントンを支持しないことに驚きました」とガルシアさんは驚きを隠せない。
ミシガン州デトロイトで情報誌「メトロ・タイムズ」の編集主幹を務めるマイケル・ジャックマンさんは、「どちらの候補が勝利しても、アメリカにとっては大きな損失だ」と前置きしたうえで、トランプ人気がここまで躍進した理由について自身の思いを語る。
「一見すると、正反対のような2人だが、トランプとバーニー・サンダースには共通点がある。アメリカ国内の格差拡大がより深刻になり、雇用の確保が大きな問題となるなか、トランプもサンダースもアメリカ人に経済的な安定を与えるという主張を繰り返し、多くの支持者から賛同を得たのだ」
もちろん、クリントンもアメリカ国内の雇用増大や、ミドルクラス・貧困層のための政策を注視していたが、金融業界との繋がりがクローズアップされたこともあり、最後まで「富裕層にやさしい政治家」というイメージを拭うことはできなかった。
「三期目」があったらオバマ氏が圧勝?
クリントンは長きに渡って行ってきた選挙キャンペーンをペンシルバニア州フィラデルフィアで終え、市内で行われた最後の集会ではロック歌手のジョン・ボン・ジョヴィやブルース・スプリングスティーンも登場し、ライブ演奏でクリントンの選挙活動のフィナーレに花を添えた。この集会に参加したニュージャージー州出身のクラリッサ・シェパードさんが集会の様子を振り返る。
「集会の雰囲気は比較的良かったと思います。選挙での勝利を確信しているような、楽観的なムードでした。トランプ支持者との間で言い合いがありましたが、それ以外は本当にポジティブな雰囲気でした。クリントンとトランプのどちらかで大統領を選ばなくてはいけない状態ではクリントンに投票しますが、元閣僚としても元議員としても、彼女が有権者の信頼を勝ち得ているかといえば、必ずしもそうとは言えません。仮にオバマ大統領に3期目が許されていたのならば、今回の選挙はオバマ大統領の圧勝で終わっていたと思います」
「たられば」の話になってしまうが、シェパードさんのように、オバマ大統領に3期目があればと悔しがるアメリカ人有権者少なくなかった。米海軍で一等兵曹として二度の戦争に赴き、除隊後に関西で暮らすアフリカ系アメリカ人のC.スタンフォード・ブラウンさんもオバマ大統領の3期目が憲法で認められていないことを悔しがる一人だ。
「セオドア・ルーズベルト大統領のように、仮にオバマ大統領にもう一期与えられていたとすれば、トランプとクリントンがここまで接戦を演じることもなかったと思います。クリントンとトランプによる一連の選挙戦の流れと新大統領の誕生はアメリカの歴史の中で最悪な日の一つとして記憶されるでしょう」
オバマ大統領がホワイトハウスを去ることを悲しむアメリカ人は少なくなかったが、トランプ政権発足後、オバマ大統領の偉大さを痛感するアメリカ人が増えるのも必至だ。トランプは勝利宣言の中でアメリカの結束を声高に求めたが、むしろ国内がより深刻に分裂する危険にさらされている。 
 
 
 

 

トランプ新大統領が勝利宣言
 「私は全てのアメリカ人の大統領になる」
アメリカ大統領選挙で当選確実となった共和党候補ドナルド・トランプ氏(70)が11月9日未明(日本時間9日午後)、ニューヨークの陣営本部で支持者に向けて勝利を宣言した。トランプ氏は「私は全てのアメリカ人の大統領になる」と語る一方、「今こそ私たちは、一致団結した国民の姿を見せるべきです」「私を支持しなかった方にも、私は手を差し伸べます」と、自身を支持しなかった人々に歩み寄る姿勢を見せた。演説の詳細は以下のとおり。

ありがとうございます。皆さん、お待たせしました。
今、クリントン前国務長官から電話がかかってきました。クリントン氏は、私たちの勝利を祝ってくれました。私も心の底から、クリントン氏とご家族を称えました。ヒラリーは長きにわたり、懸命に戦ってきました。彼女の国に対する献身に対して、私たちは心から感謝をしています。
これからは分断の傷を癒していきましょう。団結を目指す時です。共和党員、民主党員、独立系の人々、国じゅうの全ての人たちに申し上げたい。今こそ私たちは、一致団結した国民の姿を見せるべきです。その時がやってきました。
私はここに誓います。私は、全てのアメリカ人の大統領になります。
私を支持しなかった方にも、私は手を差し伸べます。皆さんの支援、そして導きを求めます。一致団結して、この国を偉大な国にしていきましょう。
当初から述べていましたが、私たちの選挙は素晴らしい「運動」でした。懸命に働く数百万人の男性・女性たち、愛国者の人たち、明るい未来を志向する人たちの大きな運動でした。
この運動には、あらゆる人種の人々が参加し、宗教的な背景、信念を持った人たちが参加した運動でした。彼らは、この国の政府が国民のために奉仕することを求めたのです。
私たちは共に働く事で、緊急に求められる課題に取り組んでいきます。アメリカンドリームを再び復活させます。私はこれまでずっとビジネスの世界に身を置いてきましたが、まだ利用していない潜在的な力を掘り起こし、様々なプロジェクトをやってきました。今度は国のために、これを成し遂げたいと思います。
この国にはまだ非常に大きな可能性があります。この国のことを、私はよく知っています。まだまだ潜在的な力があります。
すべての国民が、自分の可能性を追求するチャンスが与えられる世界へ。世の中から「忘れられた人々」は、もはや忘れられた存在にはならないのです。我々は都市部のスラムやトンネル、高速道路などのインフラを立て直していきます。これは非常に重要なことなのです。インフラを立て直す過程で、大勢の人たちを雇用していきます。
また我々は、素晴らしい退役軍人たちについても対応していきます。この18カ月で、私は多くの人たちと知り合いました。この選挙戦で彼らと過ごした時間は、本当にすばらしい時間でした。彼らは素晴らしい人たちです。そして私たちは才能を持った人たちの能力を活かし、すべての人のためになることに取り組みます。
私たちには素晴らしい経済プランがあります。国の成長を倍増させます。世界で最も強い経済を作り出していきます。また、私たちと「良好な関係を築きたい」という国とは、うまく付き合っていきます。素晴らしい関係を築けることを期待しています。
どんな夢も大きすぎることはありません。我々が望む将来というのは、手の届かないものではありません。とにかく全てのことにおいて、ベストを追求します。
私たちは、自分たちの運命を再び継承しなければなりません。大胆な夢を見なければなりません。再び素晴らしいこと、成功することを夢見ていくのです。
そして、世界に向けて宣言します。私たちは、常にアメリカの利益を最優先しますが、全ての人・国に公正に対応します。紛争や対立ではなく、この機会にパートナーシップを。共通認識を探っていきます。
この機会にもう一度、素晴らしい歴史的な勝利をむかえるために携わってくれた人々にお礼を申し上げます。
まず両親に感謝を。いま天国から、私を見守ってくれている事でしょう。素晴らしい両親でした。メリアン・エリザベス姉妹、ロバート兄弟にも感謝を。それからフレッグ兄弟。素晴らしい家族・兄弟に恵まれました。
妻のメラニア、子のドン(トランプ・ジュニア)、イヴァンカ、エリック、ティファニー、バラン、みんなを愛している。ありがとう。これだけ大変な時間を一緒に過ごしてくれた。厳しい戦いだった。辛く、醜いところもあった。一緒に過ごしてくれた家族に、心より感謝します。
ジュリアーニ・元ニューヨーク市長にも心より感謝を。いろんな会合にも来てくれました。ニュージャージー州のクリスティー州知事も素晴らしい働きをしてくれた。ありがとう。そして、偉大な政治家、ジェフ・セッションズ上院議員も私の陣営に参加してくれました。偉大な人でした。
予備選で互いに争い、色々な意味で学ぶことになったベン・カーソン氏。また、マイク・ハッカビー氏もこの会場のどこかにいると思います。そして、マイク・フリン中将ら200人以上の軍の司令官たちが、私たちを支援してくれました。22人の名誉勲章受章者が私を信じてくれました。
スーパースターであるランス・プリバース共和党全国委員長も支援してくれました。共和党全国委員会で事務局の仕事をしてくれました。本当にありがとう。全国共和党委員会とのパートナーシップは、勝利につながりました。
シークレットーサービスの人たちにもお礼を申し上げたいです。彼らはタフで有能で、鋭い。本当に素晴らしい人たちです。それからニューヨーク市警察にも感謝します。
今回の選挙は、本当に歴史的なイベントでした。でも本当の意味で歴史的になるために、素晴らしいことを成し遂げなければなりません。私たちは、皆さんをがっかりさせません。私たちは偉大なことを成し遂げていきます。
私は皆さんの大統領になれることを、とても楽しみにしています。そして2年後、3年後、4年後、あるいは8年後に「とても誇りを持てた出来事だった」と言えるようにしたいです。選挙戦は終わりましたが、運動はまだ始まったばかりです。私たちはアメリカの国民のため、すぐに作業に取り掛かります。
そして願わくば、皆さんが大統領に誇りを持てるようにしたいです。今夜は素晴らしい夜になりました。私はこの国を愛しています。ありがとうございました。 

 

トランプ氏勝利 同盟国は慎重姿勢、極右は歓迎 各国の反応
米大統領選で共和党候補のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が予想外の勝利を収めたことを受け、世界各国の指導者たちは自国への影響を注視している。極右派の政治家らは同氏を称賛。主要同盟国からは、慎重さをにじませた祝意が寄せられた。
欧州
ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は、「ロシアは米国との成熟した関係を回復させたい意向であり、その準備が整っている」「遺憾ながらも悪化した関係を鑑みると、これが容易な道ではないことは承知している」と表明。
ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相は、トランプ氏が物議を醸す発言を繰り返したことに触れ、「ドイツと米国は民主主義、自由、法の支配の尊重、そして、出自や肌の色、宗教、性別、性的指向、政治的信条に左右されない人間としての尊厳という価値観を共有している」と述べ、首脳としての責任について念を押した。
英国のテリーザ・メイ(Theresa May)首相は「英国と米国は、自由と民主主義、進取の気性という価値観に基づいた持続的で特別な関係を築いている。この関係に基づき、次期大統領のトランプ氏と共に、向こう数年間にわたって両国の安全保障と繁栄を確保するために協働していくことを心待ちにしている」と述べた。
フランスのフランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領は、トランプ氏の勝利により「不確実性の時代」が幕を開けたとして、欧州に対し「団結」し続けるよう呼び掛けた。一方、仏極右政党「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)党首は、トランプ氏の当選は「わが国にとって良い知らせだ」と歓迎した。
ハンガリーで強硬な反移民政策を進める右派連立政権を率いるオルバン・ビクトル(Orban Viktor)首相は「素晴らしい知らせだ。民主主義はまだ生きている」と、トランプ氏に祝意を表明。
アジア
中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は米中関係の強化に焦点を置き、「私は中米関係を高度に重視し、あなたと協力し、衝突や対立なく互いを尊重する姿勢を保っていくことを期待している」と述べた。
安倍晋三(Shinzo Abe)首相は、トランプ氏に祝意を伝えるとともに、「日米両国は、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値の絆で固く結ばれた、揺るぎない同盟国」と述べた。
韓国の朴槿恵(Park Geun-Hye、パク・クネ)大統領は、米韓が協力して北朝鮮に圧力をかける方針は「新しい米政権の下でも不変」でなければいけないと述べた。
中東
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は「トランプ次期大統領はイスラエル国家にとって真の友であり、中東での安全保障と安定、平和に向け協働することを楽しみにしている」と述べた。
パレスチナ自治政府のマハムード・アッバス(Mahmud Abbas)議長は「2国家共存という解決策の基盤作りに関する次期大統領との協働および、1967年に定められた境界線に基づくパレスチナ国家設立の用意がある」と述べた。
米大陸
カナダのジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相は、同国にとって「米国以上に近い友人、パートナー、同盟国はいない」と述べ、貿易や投資、国際平和、安全保障などの問題でトランプ氏との協働を期待していると表明。
メキシコのエンリケ・ペニャニエト(Enrique Pena Nieto)大統領は、トランプ氏への祝意と、協働に向けた姿勢を表明。一方、トランプ氏が掲げていた、両国間の国境に壁を建設し、その費用をメキシコ側に払わせるとの公約について、クラウディア・ルイスマシュー・サリナス(Claudia Ruiz Massieu Salinus)外相は「壁の費用負担はわれわれの構想にはない」と、拒否する意向を示した。 

 

クリントン氏が敗北宣言
  「ガラスの天井は打ち破れなかったが...」
アメリカ大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏(70)に敗れた民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(69)は、投票から一夜明けた11月9日、ニューヨーク市内のホテルで敗北宣言をした。ハフポストUS版などが報じた。
クリントン氏は支持者らを前に、夫のビル・クリントン元大統領ら家族と共に紫の服で登場した。紫は民主党の青と、共和党の赤のシンボルカラーを混ぜた「超党派」を意味する。女性初のアメリカ大統領になれなかったことについてクリントン氏は、女性の社会進出を阻む「ガラスの天井」を打ち破れなかったと残念な気持ちを表明した。スピーチした内容を抜粋すると、以下の通り。
「昨晩、私はトランプ氏を祝福し、国のために協力すると申し出ました。全てのアメリカ人にとって成功を収める大統領となるように願っています。私達のハードワークに見合う成果ではなかったし、私達が共有する価値観やこの国に関するビジョンのために、選挙を勝つことができなくて申し訳なく思っています。しかし、素晴らしい選挙運動に対して、私は誇りに思うと同時に感謝しています。皆さんのための候補者になれたことは、私の生涯にとって、すごく名誉なことです。私たちの合法的な民主主義は、平和的な権力の移行を定めています。それとともに法の支配や信仰・表現の自由といった価値を尊重し、守らなければいけません。(大統領という)最高で最も困難な『ガラスの天井』は打ち破れませんでした。しかし、いつか誰かが、私たち考えているよりも早く達成することでしょう」 
 
 
 

 

ヒラリー・ローダム・クリントン
(Hillary Rodham Clinton / 1947- ) アメリカ合衆国の政治家、弁護士。アメリカ合衆国国務長官、上院議員を歴任。第42代アメリカ合衆国大統領ビル・クリントンの妻であり、1993-2001年までアメリカ合衆国のファーストレディだった。
ウィリアム・ジェファーソン・"ビル"・クリントン
(William Jefferson "Bill" Clinton / 1946- ) アメリカ合衆国の政治家。アーカンソー州司法長官、アーカンソー州知事、第42代アメリカ合衆国大統領を歴任。愛称はババ(Bubba, 南部英語で「兄弟」)。
ビルのスキャンダル
クリントンには1992年の大統領選挙から多くの疑惑やスキャンダルが存在していた。
○ ホワイトウォーター疑惑 / アーカンソー州知事時代、知人と不動産開発会社「ホワイトウォーター」を共同経営、不正土地取引や不正融資を行った疑惑。「ウォーターゲート事件以来の大統領不正疑惑」と騒がれたが、結局確かな証拠は見つからなかった。ちなみに後述のモニカ事件で有名になったケネス・スター独立検察官は、このホワイトウォーター疑惑の追及の中心人物である。
○ トラベルゲート / 知人の旅行業者をホワイトハウスの旅行事務所の責任者にするため、ヒラリーが「不正な経理が行われている」という理由でホワイトハウス旅行事務所の全員を解雇した。このため、解雇された元事務員らから告訴されている。
○ ファイルゲート / FBIが持つ共和党の要人の個人情報を不正に入手し、政治的攻撃に利用していた疑い。これもヒラリーが中心人物と見なされている。
○ 大統領次席法律顧問の自殺 / 次席法律顧問のヴィンセント・フォスターが、公園で口にくわえたピストルを発射させて自殺した。フォスターはホワイトウォーター疑惑やトラベルゲートについて、最も真相に近い人間とされていた。ちなみにフォスターはかつてヒラリーと同じ法律事務所にいて、彼女の愛人とも言われていた。
○ ベトナム徴兵忌避疑惑 / ベトナム戦争時、英オックスフォード大学に留学しており、召集令状をかけられたのにも関わらず徴兵忌避した疑惑。その後、1973年に徴兵制が廃止された後に軍役が「抽選制」になり、クリントンがこの抽選に応募したところ、順位が非常に低く徴兵されなかった。
○ ルインスキー事件
また、クリントンは大統領就任以前から多くの女性と交際があり、これは大統領選挙の最中から政敵の攻撃材料にされていたが、1998年にはモニカ・ルインスキー事件が発覚した。ルインスキー事件では、当初は肉体関係を否定していたものの、「ルインスキーさんと不適切な関係を持った」(I did have a relationship with Ms. Lewinsky that was not appropriate.) と告白せざるを得ない状況に追い込まれ、「不適切な関係(relationship that was not appropriate.)」は同年の流行語となった。大統領の「品格」を問われる事態に世論からも批判が沸き起こり、アメリカ大統領としては第17代のアンドリュー・ジョンソン以来の弾劾裁判にかけられた。
下院による訴追で行われた上院での弾劾裁判では、50:50、45:55と有罪評決に必要な2/3には達せず、かろうじて大統領罷免は免れた。しかし、アメリカ大統領は多民族国家であるアメリカ合衆国を束ねる大司祭という面があるとされ、このスキャンダルの過程で、クリントンが聖域であるはずの大統領執務室に隣接した書斎でオーラルセックスに及んだこと、その際に大統領執務室に常備されていた葉巻を持ち込んで使ったこと、ルインスキーの衣服を汚したことなどがマスコミに暴露され、大統領職としての権威を大きく失墜させたと非難された。
ヒラリーの寛大な援護と民主党の根強い支持によって、これを乗り切ったがクリントン政権は、このルインスキー事件の進展にタイミングを合わせるかのようにアフガニスタンやスーダンへの爆撃を行い、「スキャンダルから目をそらさせるための爆撃」だと批判された。しかし、9.11テロ後、これが1993年2月26日にニューヨークで起きた世界貿易センター爆破事件やその後のテロ未遂事件に対する報復・牽制的な攻撃であり、後のアルカイダなどとの対テロ戦争の前哨戦的なものであったと評価されるようになった。
とはいえ、このスキャンダルが2000年アメリカ合衆国大統領選挙に与えた影響は大きく、自身の政権で副大統領を務めたアル・ゴアが敗北する一因ともなった。 

 


 
2016/9
 
 
1998年 マルサにご対面
朝 家族が出かけるのを確認したか 二人のマルサの訪問を受ける
外出禁止 電話の使用禁止 告げられる
理由は 友人の知人の脱税容疑のようだった
マルサ 金で繋がる 幹 枝 葉っぱまで網をかぶせることを知る
私は友人の新会社の創設時 名義貸しをした
私の預金口座 名義貸しお小遣いの確定申告 全て調査済みだった
幹で何か疑義が発生した時の口裏合わせを防止するためか 
私は葉っぱ 家で半日 友人は枝 事務所で半日監禁状態
知人は新会社の取引先だった

半日の時間つぶし
「ルインスキー事件」の英文記事コピー 辞書片手に読む 
マルサ 何を読んでいるんですか
どうぞ コピーを見せる
マルサ にやっと笑う

私と友人 午後に放免