日本の景気 2016 夏

どうなる日本の景気
   ●
6月
2016年度の日本経済は再びマイナス成長
海外投資家 1〜5月に日本株を4.5兆円売り越し
消費増税延期に対する海外メディアの評価 「機能していないアベノミクスの現状」
   ● 5月
景気足踏み長引く 1〜3月成長率の実勢は0%台 
日本経済、2期連続マイナス成長で危機的状況突入か 株価下落速度が史上3番目


 
 
 2016/7
焦点:荒れる日本市場、政策報道で右往左往 効果の議論なく 7/27
日本市場が荒れている。経済対策や追加緩和への思惑でドル/円や日本株が大きく振れる展開だ。ほぼ完全雇用状態とみられている日本で、大型の経済政策を打つ意味や効果に関する議論は置き去りにされ、事業規模や「真水」の多寡だけが短期売買の材料にされている。
報道に一喜一憂
日本政府は来週、経済対策を閣議決定する予定だが、27日の市場では、この経済対策に関する報道や要人発言で相場が大きく振れる展開となった。
経済対策の事業規模は20兆円程度というのが市場観測の大勢だったが、27兆円になりそうだと一部で報じられると、株高・円安が加速。日経平均<.N225>は400円超の上昇、ドル/円は一時106円台に上昇するなど、朝方に比べ2円近く上げ幅を拡大した。
日本政府が50年債の発行を検討するとの報道も市場の思惑を強めた。「大型の経済対策に国債発行。日銀が国債購入増をともなう追加緩和に踏み切るとの思惑もあり、疑似的にせよヘリコプターマネー(ヘリマネ)の色彩が強まるとみた短期筋が円売り・株買いに動いた」(国内証券トレーダー)という。
50年債に関しては、ロイターが午後、発行検討の事実はないとする財務省理財局の見解を伝えると、日本株とドル/円は上昇幅を縮めた。その後、安倍晋三首相が福岡市内での講演で、経済対策の事業規模が28兆円超になるとの見通しを示したことた伝わると、株高・円安が再開するという目まぐるしい展開となった。
ヘッドラインだけに反応
エコノミストが注目しているのは、経済対策の「真水」部分だ。国や地方が直接行う財政支出で、国内総生産(GDP)を押し上げる効果が期待できる。
一方、事業規模は「真水」に加え、中小企業向けの資金繰り支援なども含まれる。この部分で実際に資金がどれだけ出るかは、企業の借り入れ次第で、28兆円という数字はあくまでも全体の「枠」に過ぎない。
安倍首相はこの日の講演で財政措置(真水)は13兆円になるとの見通しを示したが、これには財政投融資が含まれる可能性も高い。財政投融資を除く国の支出分にしても、2016年度第2次補正予算だけの数字か、17年度当初予算などを含めた数年間の予算総額を示すのか、明らかにはなっていない。
「13兆円が減税など今年度のものであれば、円債市場への影響はあるが、従来言われているような財政投融資を含めた金額で、複数年度になる可能性が高いので市場への影響は限られるだろう」とSMBC日興証券・金融財政アナリストの末澤豪謙氏はみる。
それにもかかわらず、日本株やドル/円が反応したのは、短期筋が報道の見出しだけで売買しているからに過ぎない。「特に海外の短期筋はヘリマネの匂いがする報道には非常に敏感に反応する」(別の国内証券トレーダー)という。
経済対策は必要なのか
こうした派手な短期売買の勢いに弾かれるかのように、市場ですっかり沈静化してしまっているのが、経済対策の必要性や効果に関する議論だ。
日本の失業率は5月時点で3.2%程度。多くのエコノミストが構造失業率と同程度と試算している。有効求人倍率は24年7カ月ぶりの高水準。GDPは一進一退だが、英国のEU(欧州連合)離脱にともなう混乱も今のところ押さえられている。
需給ギャップは、内閣府試算で1─3月期マイナス1.1%程度(5.5兆円程度)とまだあり、消費や物価も弱い。ギャップを埋める意味で対策を打つ理由がないわけではないが、今回の施策のタイミングや規模については懐疑的な見方もある。
「いまの日本はほぼ完全雇用状態にある。人手が不足して公共投資もままならない。事業規模にせよ、真水にせよ、大型の経済対策が本当に必要なのかは疑問だ」とりそな銀行・アセットマネジメント部チーフ・エコノミストの黒瀬浩一氏は指摘する。
市場には、ヘリマネ的な政策が日本経済に必要な潜在成長率の引き上げに寄与するか、疑問を呈する声もある。
さらに「経済対策の事業規模が28兆円超と当初の想定より大きくなったのは、真水部分が小さそうだとして26日に株価が下がったためではないか」(日本アジア証券・グローバル・マーケティング部次長の清水三津雄氏)との見方も出ている。
政策に関する報道で株価や為替が短期筋の売買で大きく振れ、それによって政策の規模や骨格が影響されてしまうなら、将来の禍根となりかねない。 
 2016/7
経済成長なくして政府債務の削減は不可能 
大事なのは経済なんだよ、バカモノ。これは1992年の米大統領選で挑戦者だったクリントン陣営が再選を目指すブッシュ政権の経済失策をあげつらうために繰り返し唱えた合い言葉だが、以来このフレーズは選挙のたびに登場する。だが、恐らく経済の重要度は人々が考えていたよりもはるかに大きいだろう。
公的債務負担を徐々に軽減させる上での経済成長の重要性をエコノミストらは過小評価してきた。ピーターソン国際経済研究所の新たな研究論文はそう示唆している。
国債の利払いや財政赤字が政府債務の対国内総生産(GDP)比率を押し上げる一方で、経済成長は同比率を引き下げる。同研究所のシニアフェロー、パオロ・マウロ氏は「だが、経済成長率が高いと、税収が増えるという単純な理由から財政黒字も多くなる」と述べた。
米国、日本、ドイツなど主要先進9カ国で見ると、政府債務の対GDP平均比率は2007年末までの8年間で5.6ポイント上昇したのに対し、それ以降の8年間では31.6ポイントも上昇した。同論文の執筆者らはこうした変化を調査するにあたり、経済成長が財政収支に及ぼす影響を考慮した。すると、経済成長は同比率の引き下げに25ポイント、11ポイントそれぞれ貢献したことが分かったという。これは従来の経済成長の計算からうかがえる影響の2倍以上に相当する。
20カ国・地域(G20)は23・24日に中国で開いた財務相・中央銀行総裁会議で、低迷する景気のてこ入れのために財政政策を活用する決意を打ち出した。マウロ氏は、G20はすでに「危ない橋を渡っている」と指摘。経済成長の低迷は、突然の金利上昇や債務を財源とした刺激策の失敗を引き金に先進国が金利と債務のスパイラルに陥りかねないことを意味する。国際通貨基金(IMF)のデータによると、先進諸国の2016年の債務の対GDP比率は平均で115%だ。
マウロ氏はインタビューで、「現在は08年や09年と大きく異なる。ほぼ完全雇用の状態なので、同じ規模の財政出動から得られる効果は当時よりも少ない」とした上で、「金利は現時点で低いが、完全には分かっていない理由で急騰する可能性もある」と語った。
各国政府は低金利が続くよう祈るのではなく、段階的に支出削減や増税を行うべきだと同氏は求めている。
例えば、2012年に約120%で並んでいたアイルランドとイタリアの債務比率が直近で大きく乖離(かいり)しているのは経済成長率の違いで説明がつく。3年後の時点で、アイルランドが95%に低下したのに対し、イタリアは132%へ上昇した。この間の経済成長率が平均年率でそれぞれプラス4.8%とマイナス0.3%だったことが主因だ。米国の政府債務の対GDP比率は07年から18ポイント上昇したが、同年以降の経済成長率が横ばいだったとすれば、これだけの上昇で済んだだろうか。65ポイント上昇した日本とほぼ同じ道をたどったのではなかろうか。
大半のエコノミストは、高齢化、生産性の低下、金融危機の後遺症が数年に及ぶ低成長につながっているとの意見で一致しており、政府の借り入れ金利の長期的低下がせめてもの救いだと指摘する向きは多い。
かつて米議会予算局(CBO)局長を務めたハーバード大学のダグラス・エルメンドーフ経済学教授は「低金利が長期間続けば、国が維持できる債務の望ましい水準は通常よりも高くなる可能性がある」と指摘。ブルッキングス研究所のシニアフェロー、ルイス・シェイナー氏はインタビューで、各国政府は低金利が続くことを従来よりも強く確信しているかもしれないとの考えを示し、「以前なら債務の対GDP比率が高ければ金利は上昇すると考えていただろうが、これまでのところそうなってはいない。市場は長期的な財政見通しを知っており、今後も低金利が続くと予想している」と語った。
エルメンドーフ氏は、適切なインフレ支出によって財政赤字が膨らんだ場合、それ自体が経済成長を促す可能性があるとも指摘した。この可能性については、ピーターソン国際経済研究所の分析では言葉を濁している。同氏はインタビューで「財政政策が現在の世界経済成長に与える影響を無視するのは、主役のハムレットが登場しないハムレットを上演するようなものだ」と話した。
意外にも、マウロ氏の分析では、政府の財政出動の規模は金融危機後の8年間よりもその前の8年間の方が大きいことが分かった。「われわれがこのことに気づかなかったのは、経済成長が非常に堅調だったからだ。支出を増やすべきか、あるいは実質支出を一定に抑えて債務を返済すべきか、政府は経済成長に基づいて判断する」と同氏は説明した。最も財政出動に積極的だったのはオーストラリア、カナダ、米国だった。 
 2016/6
2016年度の日本経済は再びマイナス成長へ 
2015年度のGDP成長率(1次速報値)はプラス0.8%と、2年連続のマイナス成長はどうにか免れた。しかし、2016年度は再びマイナス成長に陥る可能性があるという。いったいどういうことなのか、経済アナリスト・森永卓郎氏が解説する。
今春闘の賃上げ率は、自動車や電機など主要製造業の労働組合で構成する金属労協の回答状況を見ると、昨年は平均2200円だった賃上げ額が1100円に半減しています。史上最高益となったトヨタ自動車でさえも、ベースアップ額が昨年の4000円から1500円へ大幅減となりました。
安倍晋三総理の要請に従って各社が大幅賃上げに走った昨年の「官製春闘」の趣は、今年はほとんど見られないのが現状です。
賃上げ額が昨年を大きく下回る中、年金はどうなっているのでしょう。昨年度は0.9%引き上げられた受給額は、昨年度の勤労者の名目手取り賃金変動率が前年比マイナス0.2%となったことを主要因に、物価・賃金によるスライドが行なわれず、昨年度と同額に据え置かれることとなりました。
勤労者の賃金上昇率が半減することに加えて、年金額もまったく増えない。その一方で、物価だけは今後間違いなく上がりそうです。これまでは、日銀の金融緩和による物価押し上げ効果を原油価格の下落が全部相殺し、物価は上がっていませんでした。だが、原油価格はどうやら底を打ったと思われます。
原油価格下落の一因として、米オバマ大統領がロシアにダメージを与える目的で、生産コストが1バレル=40ドルかかる米国のシェールオイル(頁岩油)を30ドルの価格で海外に輸出していたことがあります。
だが、米国といえども赤字販売を無期限に続けることはさすがに無理だったのか、原油価格も上昇に転じています。当面は、大きく下落することはないと思われます。
そうなれば、日銀の金融緩和の物価押し上げ効果が現実に発揮されることになるので、物価は年後半から上がっていくでしょう。
賃金も年金も増えない中で物価が上がれば、国民の実質所得はマイナスになることが明白です。実質所得がマイナスという状況下では、GDPの6割を占める個人消費が落ち込むのは確実。したがって、GDP成長率がプラスになることなどあり得ないので、2016年度は再びマイナス成長に転落することが現実味を増したと考えられます。  
 2016/6
海外投資家、1〜5月に日本株を4.5兆円売り越し 
 構造改革の遅れでアベノミクスに幻滅か
海外投資家が日本株を手放す動きが顕著になっている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によると、今年1〜5月、海外勢は日本株を累計約4.5兆円売り越した。同紙やロイターは、「アベノミクスへの幻滅」が背景にあることを伝えている。
日本株から手を引く海外投資家
WSJは、アベノミクスへの強い期待が失望に変わる中、海外投資家は近年にないペースで日本株を売っている、と語る。失望が大きくなる中、日本株を処分している、とも語り、撤退を印象づけている。ロイターも同様に、アベノミクスへの疑念のため、海外投資家は日本株から手を引くよう駆り立てられている、と語る。不安定な経済によりアベノミクスへの幻滅が募る中、海外投資家は日本株から手を引きつつある、と語っている。
両メディアは、海外投資家が今年、日本株を大きく売り越しているデータを挙げている。WSJは、QUICK(日本経済新聞社グループの金融情報サービス会社)が提供する東京証券取引所のデータによるものとして、今年1〜5月、海外勢は日本株を4.5兆円売り越した、と伝えている。少なくとも2003年以降のどの年の同じ時期よりも、規模の大きな集団脱出だ、と同紙は語っている。ロイターによるとこれは現物株式の売り越しで、前年同期の約2.83兆円の買い越しからのはっきりした転換だ、と語っている。
類例のデータを挙げるならば、2015年度、海外投資家は日本株を約5.1兆円売り越した(日経新聞、産経ニュース)。年度ベースで売り越したのは、「リーマン・ショック」の起きた2008年度以来だった。年度ベースの売り越し額としては、「ブラックマンデー」のあった1987年度に次ぐものである。
アベノミクスへの失望広がる
WSJは、アベノミクスへの失望が、海外投資家の売りの一因になっているとの見方を示した。売りの一部に関しては、世界経済の成長についての不安、特に今年初めの中国経済の急減速への懸念によって駆り立てられたものだが、多くの海外投資家は、アベノミクスへの失望の高まりについて指摘した、とWSJは語る。
アベノミクスは(公約の)持続的な成長を実現していない、とWSJは語る。日銀の2%の物価上昇率目標、構造改革を含めて、日本の政策立案者は明言した目標の達成に真剣に打ち込んでいるのか、疑いを持っている者もいる、としている。
スイスのあるプライベート・バンクでは、日銀が4月の金融政策決定会合で(金融政策を現状維持し)追加措置を取らなかったことから、日銀の目標達成への決意に不安を抱き、日本株への投資比率を削減するに至ったそうだ。WSJは、日銀の金融政策の影響力は弱まりつつあるように見える、とも語っている。
また、構造改革が進んでいないことがアベノミクスの問題という見方は、ロイターでも伝えられている。長期投資に重点を置く海外ファンドは、日本政府・日銀が3年以上、大規模な金融・財政刺激策を続けたにもかかわらず、日本を20年間に及ぶ景気停滞から脱出させることができないのではないかと疑っており、弱気筋になっている、とロイターは語る。「日本で達成されつつある構造改革がないため、日本株に見切りをつけた長期型投資家はたくさんいる」とJPモルガンの株式デリバティブ担当エグゼクティブディレクターのナイトウ・ミチロウ氏はロイターに語っている。
海外投資家の撤退が株安の一因に
日本株をめぐる海外投資家の見方は、大きく変わったようである。ロイターによれば、バンクオブアメリカ・メリルリンチのファンドマネジャー対象の最新の調査では、4月の日本株への投資配分は、アベノミクス開始以来、最低を記録したそうである。より多くの証券会社の見方が弱気になっている、とロイターは語る。
WSJは、今でも日本株を買い続けている投資家たちでさえ、アベノミクスの初期に享受した「楽なもうけ」は過去のものだと強調している、と伝える。
「多くの投資家は、日本株が長期投資対象として優良ではないと考えている」と、JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト重見吉徳氏はロイターに語っている。
WSJは、海外投資家が日本株から脱出していることが、今年に入って日経平均株価が12%低下するのに力を貸している、と語っている。
投資家の間でアベノミクスへの信頼が揺らいでいるとの調査結果
アベノミクスへの不信が増していることは、意識調査の結果にも表れている。ただしこちらは、海外投資家よりも日本の投資家が中心だ。
この調査は、オルタナティブ投資マネジメント協会(AIMA)の日本支部AIMA Japanが、シンガポールのヘッジファンド調査会社ユーリカヘッジに委託して行ったもので、米ニュース専門放送局CNBCと、日経新聞の英文ニュースメディア「日経アジアンレビュー」(NAR)がその結果を紹介している。回答者は、日本株への投資を事業内容に含む88企業で、調査は2〜5月に実施された(NAR)。CNBCによると、回答企業の約72%は日本を拠点とし、その他はシンガポール、アメリカなどだった。回答企業の大半の本社は日本にあるという。
CNBCは、ファンドマネジャーたちがアベノミクスへの信頼を失っていることが新たな調査で分かった、と語り、NARは、投資家の間でアベノミクスへの信頼が揺らいでいる、と語った。CNBCは、日本のファンドマネジャーはアベノミクスに悲観的になっている、とも語っている。
この調査で明らかに示されたのは、より多くの人がアベノミクスとその有効性について、悲観的な見方をするようになっていることだと、ユーリカヘッジの岩永聡会長が語ったとNARは伝えた。
昨年と大きく変わった経済の見通し
以下は調査結果からの抜粋である。前年の調査と比べて、見方が大きく変わっていることが示されている。
アベノミクスについて、成功しているとしたのは回答者のわずか16%だった。これは昨年の調査では72%で、大きく後退した(NAR)。部分的に成功しているとの回答が76%だった(CNBC)。今後についてはあまり楽観視されておらず、アベノミクスには今後の可能性が少ししかないとの回答が約44%で、9%は全くないと答えた(CNBC)。
今年、日本経済はプラス成長するかという質問に対して、するとの回答が約40%だったが、昨年は93%だった(CNBC)。51%はゼロ成長を予想しているという。
株価については、日経平均の今年の終値は15001〜17500円に収まるとの予想が46%だった。2万円台に達すると予想したのはわずか5%だったが、昨年は85%だった(NAR)。この結果について、NARは、安倍首相の経済政策への失望の広がりを際立たせている、と語った。 
 2016/6
消費増税延期に対する海外メディアの評価は? 
 “機能していないアベノミクスの現状では…”
安倍首相は1日、来年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを、2019年10月まで再度延期すると正式に発表した。この措置は、日本経済と、その再生を図るアベノミクスが現在直面している困難をあらためて浮き彫りにした。主要海外メディアの視点はどこにあっただろうか。
財政再建よりも足元の景気を優先することに理解を示す
首相は1日、首相官邸で記者会見を行い、消費税率引き上げの再延期を発表した(なお当記事で言及する海外メディア記事は、一部を除き、この会見前に発表された版である)。
俯瞰的に見ると、安倍首相がG7サミットで、世界経済がリスクを抱えた状況にあることを積極的に訴えていたため、延期決定についての驚きは主要欧米メディアには見られない。記事の多くでは、現在の日本の経済状況からして延期の判断は妥当、という見方が基調にあるようである。前回の2014年4月の8%への引き上げで、日本経済が景気後退に陥ったという説明が、ほとんどの記事にある。今回の延期の決断は、今以上に国内消費が低迷することを避けるためだ、という認識も広く共有されている。
一方、日本経済が現在、再度の消費税率引き上げに耐えられない状況になっていることについて、アベノミクスの効果が及ばなかったとの指摘が、複数のメディアで見られる。また一部の記事は、延期によって財政再建に向けた取り組みが先送りになるとし、この問題への懸念が高まるという点を中心に据えている。
アベノミクスは税率引き上げに耐えられるほど経済を改善しなかった
これらの点について、各メディアの記事を具体的に見てみよう。まずは、日本経済の現状とアベノミクスの進展についてだ。
ロイターは、首相は2012年12月、自身の経済再生の処方箋・アベノミクスでデフレを打破し、停滞する経済を再起動することを誓って就任したが、内需、外需がかたくなに低調な状況の中、ほとんど前進していない、と語り、アベノミクスの成果に辛口な評価だ。BBCも辛口で、首相は日本経済の回復に自らの信望を懸けているが、そのために何十億ドル相当もの財政刺激策と慣習にとらわれない金融政策を用いているにもかかわらず、何も機能していないように見える、としている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、首相は3年半前の就任時、継続的かつ力強い成長を約束したが、それを達成しようとする中で首相が直面している困難を、この(延期の)措置は明確に示す、としている。
インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ紙(INYT)は、(アベノミクスが追い求めてきた)物価上昇、消費の奨励といった目標は、達成が困難だと明らかになってきている、と述べた。物価上昇率はいまだに0%近くで、日本経済は、安倍首相が2012年末に就任して以来、13四半期中、5四半期でマイナス成長だった、と伝えている。
安倍首相の論法とは異なり、これらの記事では、原油安など世界経済の影響、外的要因はほとんど考慮に入れられていない。
将来的な財政不安のリスクと景気後退のリスクの天秤
延期という首相の判断について、各メディアはどのような評価を与えているだろうか。また、どのような効果があるとみているのだろうか。
BBCは、首相に他にできることがあったのかというと考えるのは難しい、と語り、状況からしてやむを得ない措置だとの認識をうかがわせる。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、延期は今でも不活発な消費を落ち込ませるのを避けるためだとし、延期によって、ガタピシいっている経済への強い経済的圧迫は避けられる、としている。また今回の延期は、小売業者や物価引き上げを懸命に試みている日銀を含めた日本の大半の産業部門にとって良い刺激となるだろう、と語り、経済への好影響の期待を示している。
ただしそういった好影響も、財政健全化の先送りと引き換えだとの見方がされている。FTは、延期は、成長計画・アベノミクスと、日本の税基盤を多様化する努力にとって最新のつまずきだとみなした。ブルームバーグは、延期の措置は、世界最大の債務を制御する政府の取り組みを難しくする一方、個人消費を力づけるのに役立つかもしれない、と語っている。ロイターは、日本経済に(消費の不振という)一層大きな弱点がある状況の中、首相の財政改革計画は棚上げとなる、と語る。
またロイターは、延期により、日本が抱える巨額の公的負債の抑制と、急速に高齢化が進み急増する社会保障費の財源作りについての首相の計画への疑念がかき立てられている、としている。
他に、INYTは、延期の決定によって、来る7月の参院選で自民党が有利になる可能性を取り上げている。
延期は痛みを先送りするだけ。構造改革が必要
延期はあくまで対症療法的なもので、日本経済が現在抱えている問題の本質的解決につながるものではない。ブルームバーグ論説委員室はブルームバーグ・ビューで、延期は、確実に広く受け入れられるもので、完全に擁護できるものだ、とし、また日本が抱える負債についても、その水準は目がくらむほど高いが、今のところは、並外れて低い金利を考えれば、きっと管理できるだろうとしている。それでも、延期はいくらか痛みを先送りするだけであり、日本の低成長、低物価上昇の未来を変えるのに大して役立たないだろう、と指摘している。
ブルームバーグ論説委員室は、構造改革こそ、アベノミクス、日本経済の本質的課題だという見方だ。もし自民党が予想されているように7月の参院選で良い結果を収めたなら、首相は民営化と、労働市場、製品市場の規制緩和での深刻な努力を復活させるべきだ、と述べる。また、首相はひどく必要とされる移民を増やすことと、企業に賃金上昇のさらなる圧力をかける方法を再び検討するべきだ、と主張している。そして、消費税率引き上げとちがって、(構造改革の)さらなる延期は賢明ではない、と結んでいる。
ロイターによると、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のソブリン格付け担当シニアディレクター(アジア太平洋担当)キム・エン・タン氏も、同様の見方をしているようだ。同氏は、もし消費税率引き上げを予定どおり実施すれば、低成長が続き、税収が落ち込む可能性を考慮して、「延期には一定の合理性がある」とロイターに語っている。しかしその一方、財政・金融政策の拡大には限界があり、大胆な構造改革を通じて経済成長と消費者物価を押し上げる必要がある、との見方を示している。 
 2016/5
景気、足踏み長引く 1〜3月成長率の実勢は0%台 
景気の足踏みが続いている。内閣府が18日発表した1〜3月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.4%増、年率換算で1.7%増となった。数字こそ高めだが、うるう年でかさ上げされた分を除くと実勢は0%台半ばの成長にとどまる。日本経済の基礎体力を強くする成長戦略が課題だ。
落ち込む設備投資
民間調査機関の試算では例年より1日多いうるう年の影響で、実質GDPは年率で1%強押し上げられている。2四半期ぶりにプラス成長に転じたのは、個人消費が前期比0.5%増となったことが大きい。うるう年要因を除けば、個人消費も横ばいにとどまる。
下支え役となってきた設備投資は、前期比1.4%減と3四半期ぶりに大きく落ち込んだ。海外経済の減速や金融市場の混乱を受け、企業が投資に慎重になった。
先行きは厳しい。民間調査機関10社の予測を集計したところ、4〜6月期は0.44%減と2四半期ぶりのマイナス成長となりそう。熊本地震の影響で生産が低下。頼みの訪日客消費も客単価は下落傾向で「あてにしてはいけない」(三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長)。円高も続き個人消費や設備投資はさえない展開が続きそうだ。
設備投資の先行指標となる4月の工作機械の国内受注額は前年同月比19.7%減の389億円と2013年4月以来となる減少幅だった。海外を含む総額でも32カ月ぶりに好不況の目安となる1000億円を下回った。
電子部品は、スマートフォン(スマホ)の失速が各社の生産を直撃している。国内メーカーが高性能部品を供給する米アップルの「iPhone」減産の影響を受けているほか、韓国サムスン電子や中国メーカーのスマホも振るわない。
世界経済の弱さが日本の景気にも影を落としている。GDPの見かけの数字が上がったくらいでは「景気が良くなった感じはない」(日立製作所の東原敏昭社長)。
潜在成長率、0.2%に低迷
   エコノミストの見方
   個人消費 / マイナス金利政策で金利収入が望めず、所得回復の割に消費が弱い
   設備投資・生産 / 熊本地震による生産活動の抑制が今後の下押し要因
   消費増税 / 増税後に世界景気の後退が重なるリスクがあり、先送りすべき
        / 予定通り実施すべき。延期すれば将来の負担増への懸念広がる
   財政出動 / 財政の持続可能性を考えると、5兆円程度で必要十分だ
   GDP予測 / 16年4〜6月期(年率)▲0.44
アベノミクスが始まった13年1〜3月期以降の全13四半期のうち、マイナス成長は5回。頻繁にマイナス成長に陥るのは日本経済の実力を示す潜在成長率が0.2%(日銀試算)と低いためだ。
アベノミクスは金融緩和と財政政策の効果で、13年度は目標とする実質2%成長を達成した。だが15年度は0.8%増と息切れが目立つようになってきた。金融政策や財政政策で時間稼ぎをしている間に成長戦略で経済を底上げする作戦だったが、潜在成長率はほとんど変わっていない。
この状況で財政政策などで無理に需要を増やせば人手不足が一段と深刻になる可能性がある。安定した成長を目指すには潜在成長率の引き上げが欠かせない。
必要なのが労働力の確保と設備投資などの資本投入、生産性の向上だ。労働力人口は1998年度から減少傾向が続く。15年度は高齢者や女性就労の拡大で増えたが15年間で170万人減った。
政府は18日に示した「ニッポン一億総活躍プラン」や経済財政運営の基本方針(骨太の方針)を通じ、成長力の引き上げをめざすが、まだまだ力不足だ。たとえば1〜3月期に減少に転じた設備投資。企業は人口減で日本での投資をためらう傾向がある。法人実効税率を海外並みに低くする税制改革など深掘りできる戦略は多く残っている。 
 2016/5
日本経済、2期連続マイナス成長で危機的状況突入か 
 株価下落速度が史上3番目
足下の経済動向について、筆者は非常に危機感を抱いている。背景には、年明け以降の株価の下落速度が歴史的に見ても非常に大きかったことがある。実際、過去2カ月間のピークからボトムまでどの程度株が下がったかを下落速度が大きい順に並べ替えると、過去最速の下落速度を記録したのが2008年のリーマン・ショックであり、その次が1990年代前半のバブル崩壊となる。実にその次が今回の年明け以降の株下落であり、2000年以降のITバブル崩壊を凌ぐ落ち込みという意味でも、非常に大きなマーケットの調整が起こったことがわかる。
さらに1年前との比較で見ても、1年前の日経平均株価は1万8000円台から1万9000円台へと、上昇基調にあった状況に対して、逆に今年は大きく値を下げたということで、真逆の動きになっている。
こうした状況は、すでに実体経済にも影響が出ている。事実、街角景気指数とされる景気ウォッチャー調査を見ると、現状・先行き判断DIとも8カ月連続で好不調の分かれ目となる50割れとなっている。時期的に見ても、チャイナショックを発端としたマーケットの去年の夏以降の混乱というのが大きく影響していることが推察される。
また、経済成長率を見ても、2015年10−12月期はマイナス成長となっている。さらに経済成長率は鉱工業生産の変化率と関係が深く、これを見ると生産計画ベースで1−3月期の鉱工業生産が前期比マイナスになっていることからすると、場合によっては経済成長率が2期連続でマイナス成長となる可能性もあり、非常に厳しい状況といえる。
さらに厳しい状況としては、アベノミクスの根幹はいかに好循環で賃金を上げるかというところだが、そこに赤信号が灯っている。
春闘の賃上げ率の先行指標として、労務行政研究所が2月初旬に公表した賃上げ率を見ると、去年よりも下がる予測になっているが、これは調査期間が去年12月から年明けの1月前半までだったことからすれば、恐らく実際の賃上げ率はさらに下がる可能性が高いと考えられる。17年ぶりの水準まで賃上げ率が上がった去年でも、毎月勤労統計ベースの名目賃金上昇率が+0.1%だった。それよりも賃上げ率が今年下がるということは、今年の名目賃金はマイナスの可能性が高い。つまり、このまま放置しておくと、今年の日本経済は相当厳しいことになることが想定される。
取り組むべき課題
以上を勘案すると、年前半に取り組むべき課題としては、需要刺激策が非常に重要だと考えられる。先般のG20でも、国際協調によりこの世界経済の難局を乗り切るために、すべての政策手段を用いるという政策協調がされたこともあり、日本もこれにある程度追従すべきだと考えられる。
すでに昨年度の補正予算というかたちで政策がまとめられており、このメニューについて全般的な方向性は一定の評価ができる。ただ、事業総額を見ると3.5兆円にとどまっており、これは内閣府の試算によれば来年度のGDPを+0.4%程度押し上げるということになっているが、第一生命経済研究所の計算によれば同+0.3%程度であり、非常に力不足である。このため、方向性としては、これをさらに拡充するという方向が良いのではないかと考えられる。
一方、公共事業について、よく建設現場で人手不足ということをいわれてきたが、建設労働者の労働需給判断DIを見ると、不足感は解消してきており、マイナス金利の面でも、今、安倍政権始まって以来、もっとも機動的な財政政策の効果が出やすい時期になっていると考えられる。
このため、公共事業も一定割合は増やす必要があろう。具体的には、熊本地震復興を筆頭に、介護施設や保育所の増設の部分については昨年度の補正予算では不十分であるため、そうした方向性の増額も考えられるだろう。また、国内の空港整備や港湾インフラといった日本全体の国際競争力が増すような公共投資であれば、国民にも理解される可能性が高いと考えられる。
さらには、数年前にトンネルが崩落した事故もあったように老朽化インフラの整備も重要である。日本のインフラは50年以上前に建っているものが多くを占めるため、老朽化インフラ整備については、本気で取り組めば甚大な需要が存在する。こうしたメニューを上手く取捨選択して、いかにワイズスペンディング(賢明な支出)というかたちがとれるかが重要であろう。
目安は需要不足
具体的に必要な規模については、ひとつ目安となるのは足下の需要不足である。去年の10−12月期時点で年換算8.6兆円となっているため、昨年の補正予算の規模も加味すれば最低でも5兆円規模は必要と考えられる。
さらに、ESPフォーキャスト調査に基づくエコノミストの予測の平均成長率が実現した場合、今後の日本のGDPギャップがどうなるかを予測すると、消費増税が織り込まれているため一旦は駆け込み需要で縮小するも、その後は反動減でマイナス7兆円のデフレギャップに逆戻りすることになる。
デフレ脱却を重視するのであれば、次の消費増税も織り込んだかたちで日本経済を考えると、17年度いっぱいまでは厳しいことになる。逆にデフレ脱却よりも財政再建ということを前向きに打ち出すのであれば、消費増税という選択肢もあるため、ここはどちらを重視するかによって重要な決断になってくるのかと思われる。 
 2016/4
GDPは連続マイナスの公算、それでも鈍い政府 
 大規模な対策を求める民間との間に温度差
28日に発表された鉱工業生産や家計調査などのデータを受け、今年1─3月期の国内総生産(GDP)は2期連続のマイナス成長となり、4─6月期もゼロ近辺の成長になるとの見通しが広がってきた。ただ、政府内では具体的な経済対策の規模や内容の詰めが進んでおらず、大規模な対策を求める民間サイドとは対照的な動きとなっている。
生産実勢は悪化、GDP連続悪化の公算
SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミストの丸山義正氏は「1─3月期がマイナス成長となる可能性は高くなった」とみている。
今年の2月はうるう年のため、本来ならばその調整を実施しないGDPはかさ上げされるはず。みずほ証券・シニアマーケットエコノミストの末廣徹氏は「うるう年による押し上げ効果は0.3%程度とみているが、それを除くと1─3月は実質的にマイナス成長」と予想。「テクニカルには景気後退」と指摘する。
実際、鉱工業生産指数は1─3月期が前期比1.1%低下となったが、問題は生産よりも出荷の減少幅が大きく、需要の停滞が色濃くなっている点だ。在庫が積み上がり、これまでの在庫調整の進捗が逆戻りし始め、今後の生産調整が長引く可能性が高まっているとみることができる。
また、足元の個人消費の停滞は、耐久財出荷の減退にも表れている。企業サイドも円高による収益懸念や生産の伸び悩みで、設備投資に消極的になってきた兆しが見え、その証拠として資本財出荷の大幅悪化を挙げることができそうだ。
さらに1─3月期の外需は、輸出よりも輸入の伸びが上回り、外需寄与度はマイナスと予想されている。景気のけん引役は見当たらず、1─3月期のマイナス成長を予想する声も民間エコノミストの中で広がりをみせている。
4─6月期についても、前期比ゼロ近辺の成長にとどまりそうだとの予想が、民間シンクタンクの間で増える傾向にある。
経済産業省は4月生産について、熊本地震の影響によるサプライチェーンへの打撃で、前月比マイナスに落ち込む公算が大きいとしている。
また、同省関係者は「地震の影響を除いても、生産の実勢は強くない」とし、生産回復が遅れる可能性が高まっている。
さらに個人消費は、雇用情勢が強い割に4割近くが非正規雇用者となっている現状や、将来の社会保障不安などを背景に、明確な心理改善が進みそうもないとの見通しも多くなっている。
経済対策の規模・中身、詰めはこれから
だが、景気の停滞感が強まっているのとは対照的に、政府の具体的な経済対策の規模や目玉政策は、まだ固まっていないもようだ。
複数の政府関係者は、対策の規模は全く決まっていないと口をそろえる。熊本地震の復旧対応で2016年度補正予算が5月中に成立する方向となっているが、景気浮揚を図るのは、その後に編成が予想される16年度の2次補正予算ということになる。
また、消費増税を予定通りに2017年4月から実施するかどうかの判断次第で、2次補正や経済対策全体の規模が変動する。
ただ、安倍晋三首相が消費増税の判断を明らかにしていない現状で、経済対策の規模や中身を話題にすること自体、政府内ではばかるムードもあるという。
対照的に民間エコノミストの間では、景気後退リスクへの対応を念頭に経済対策の大規模化が進むとの予想が広がっている。「消費増税延期と10兆円規模の経済対策の組み合わせもありえる」(JPモルガン証券・チーフエコノミスト、菅野雅明氏)との声や「消費増税の是非は長期的な財政判断もあるとはいえ、経済対策については大規模に実施せざるをえない情勢だ」(みずほ証券の末廣氏)との見方が浮上している。 
 2016/4
IMF「消費増税で日本はマイナス成長」と発表 
25年間GDPが伸びない不思議な国!?
IMF(国際通貨基金)は12日、世界経済の見通しを発表した。
日本については、円高や新興国の景気減速などの影響を受け、2016年の経済成長率(実質国内総生産(GDP)の前年比伸び率)は0.5%になると予想。消費税の増税が予定される来年は、主要国の中で唯一となるマイナス成長(0.1%)になると予測した。
その他の主要国の2016年の経済成長率は、アメリカは2.4%、欧州は1.5%、中国は6.5%、インドは7.5%、ブラジルはマイナス3.8%と予想。世界全体の経済成長率については、中国経済の減速などの理由から、3.2%になると予測した。
2014年も消費増税でマイナス成長
もし来年、消費増税が行われれば、IMFの予測通り、マイナス成長になる可能性は高い。実際、2014年にも消費税が8%にまで引き上げられたが、それにより国民の負担は年に約8兆円増え、2014年度のGDP成長率もマイナス0.1%となった。
またIMFの予測によると、2016年の日本の経済成長率は、他の先進国と比べて圧倒的に悪い。消費増税の影響があることはもちろんだが、実は、バブル期以降の25年間、日本のGDPはほとんど伸びていない。
25年間、日本の経済成長を止めてきた自民党(1993〜1995年は日本新党と新生党、2009〜2012年は民主党政権)は、大いに反省する必要がある。大川隆法・幸福の科学総裁は3月下旬、富山で行った講演で、自民党政治に対して苦言を呈した。
「この25年間、GDPが約500兆円のまま、ずっと止まっています。よほどの人でなかったら、こんな国家経営できません。放っておいても発展しますよ。発展させないために頑張っている人のために、国民のみなさんは税金を使って、投票もしてるんですよ。そろそろ怒って下さい。怒らなきゃ駄目ですよ」
衆院解散で消費増税の是非を問う?
安倍晋三首相は1日、記者団の質問に対し、「消費増税を延長するかは、発生した事態の下で、専門的な見地からの分析も踏まえ、その時の政治判断で決定すべき」と述べている。こうした発言もあり、今夏には消費増税の延長を争点に衆参同日選が行われるとの噂もある。
だが、同じ争点で2014年11月にも衆院解散を行っている。自身の政策が間違ったなら、その誤りを認めるべきだ。「国民に信を問う」などという美しい言葉を使って衆院解散をするのは、責任の押し付けにすぎず、選挙費用の無駄遣いでもある。
衆参同日選になるかはまだ分からないが、7月には参院選が行われる。各党の経済政策や実際に行ってきたことから、「真に国民を幸福にする政党はどこか」を見極めなければならない。 
 2016/4
IMF.日本、17年GDP成長率はマイナス0.1% 
世界経済見通し 17年4月予定の消費増税が重荷に
国際通貨基金(IMF)は12日発表した最新の世界経済見通しで、2017年の日本の実質国内総生産(GDP)成長率をマイナス0.1%とし、前回(1月)見通しから0.4ポイント下方修正した。17年4月に予定される消費増税が重荷になるためだ。16年も個人消費の弱さなどから0.5%との見通しを示し、0.5ポイント引き下げた。
IMFは日本経済について「最近の円高と新興国需要の弱まりで、16年前半は経済活動が抑制される」と予想。その後、資源安や補正予算の効果が成長を後押しするものの、消費増税で17年はマイナス成長に落ち込むと見込んだ。日銀のマイナス金利導入は「民間需要を支援すると期待される」として前向きに評価した。
世界経済全体の成長率も下方修正した。16年は3.2%と予想して0.2ポイント引き下げ、17年も0.1ポイント下方修正し3.5%と見込んだ。先進国が力強さを欠く中、中国経済の減速や資源安の影響で、資源輸出国のロシアやブラジルは深刻な不況が続く見通し。中国は財政支出拡大による景気下支えを打ち出したことを受け、小幅に上方修正した。
年明けに混乱した金融市場は落ち着きを取り戻したものの、IMFは「下振れリスクは依然大きく、金融の混乱が再発することもあり得る」と先行きに警戒感を表明した。
難民の増加に加え、英国で欧州連合(EU)からの離脱論が高まったり、米国で自由貿易への反発が強まったりするなど政治的な逆風に見舞われていることも指摘し、「賃金が上昇せず、格差が拡大する中、多くの人々が取り残されたと感じている。低成長は内向きで民族主義的な政策の進行を助長する」との分析も示した。各国当局には「回復が頓挫するリスクに対するため、即時かつ先を見越した対応が求められる」として、金融緩和だけでなく、財政出動や構造改革による成長力強化を呼びかけた。 
 2016/2
GDPマイナス成長 アベノミクスの終焉か 
私たちは「アベノミクス」の終わりを目撃しているのだろうか。世界3位の経済をデフレから脱却させる壮大な努力は、失敗したのか。
先月末には、日本銀行が初めてマイナス金利を導入し、未知の領域に足を踏み込んだ。先週は、日経平均株価は8%近く下落し、過去2年の上昇を打ち消す水準まで低下した。きょうの発表で、国内総生産(GDP)がまたもや縮小に転じたことが明らかになった。
安倍晋三首相と、首相の右腕の黒田東彦日銀総裁にとって、いずれも悪いニュースだ。しかしこれは2人のせいなのか。2人の計画はもう運が尽きたのか。
アベノミクスをめぐっては大げさな表現が色々と飛び交ってきた。おカネをどんどん刷ろうという日銀の一大増刷計画は「カネを吐き出すバズーカ」と呼ばれている。
日銀の黒田東彦総裁は、20年続くデフレに打ち勝つため、「できることは何でもやる」と繰り返してきた。しかしアベノミクスの根幹はリフレーションではない。円安誘導することだ。
成長の牽引役
なぜか。安倍首相と、首相に助言してきた人々は、日本経済を簡単に復活させる唯一の手段は輸出拡大だと知っているからだ。
富士通総研のマルティン・シュルツ上席主任研究員は、「日本経済をリフレ策によって再生させることができ、『アニマル・スピリット』も再び生まれると信じる人が少数いる。ただ、それを信じる人は少ない」とした上で、「今の日本には成長の牽引役がない。そのため、輸出が成長の最も大きな要素となっている」と語った。
シュルツ氏は日本経済の成長率1%あたり0.5〜0.7%分が輸出によるものだと指摘する。
理由は簡単だ、日本の人口は高齢化し、減少している。2020年には、人口減少が毎年60万人規模になる。そのなかで経済を成長させるのは非常に難しい。
しかし、日本は依然として工業大国だ。理論上は、日本製品が海外でもっと安くなれば需要は増加するはずだ。
円安
そのため、2012年から14年にかけて、対ドルでの円の為替レートは意図的に引き下げられた。1ドル=80円くらいだったのが1ドル=120円まで円安が進んだ。
大手の輸出企業にとっては、毎日がクリスマスだったようなものだ。2014年のトヨタ自動車は180億ドルと過去最高の利益を記録している。
だが、おめでたい状況に水を差す要因が2つある。一つは為替レートが突然円高に転じたこと。もう一つは、日本企業が棚からぼたもち的に得た利益を頑なに使おうとしないことだ。
日本政府にとっては円高の方がずっと頭が痛い問題だ。過去2週間で円は1ドル=120円から112円まで急上昇した。
これを受け、黒田日銀総裁はマイナス金利を初めて導入するという劇的な策を取った。
富士通総研のシュルツ氏は、「日銀は円高が進むまでマイナス金利を導入しようと思っていなかった」と語る。突然の円高は、ドイツや米国、中国という海外の要因が引き起こしたものだ。世界経済が不安定になると、投資家たちは資金を「避難先」に動かすが、日本も避難先の一つなのだ。
余剰資金
日銀はマイナス金利を導入することで、投資家たちに、ここに資金を滞留させれば損をすると伝えようとしている。
もし円高が続けば、マイナス金利幅を現在の0.1%から0.5%かそれ以上にさらに拡大することも可能だ。
マイナス金利は日本のメガバンクや企業も標的している。
東京に本拠を置くロジャーズ・インベストメント・アドバイザーズのエド・ロジャーズ最高経営責任者(CEO)は、「多くの日本企業は時価総額を超える額のキャッシュを持っている」と語る。
「日銀の量的緩和策は経済の流動性を取り戻すのを目的としている。マイナス金利は企業の保有資金を何か別のものに使わさせることを目指している」
しかし、銀行や企業は現金を溜め込み、バランスシートの改善に充当してきた。ロジャーズ氏は、日本企業の保有現金が3兆ドル(約340兆円)に上るのではないかとみている。
その一部がもし、配当引き上げや賃金引上げの原資になれば、長年不振が続く国内消費を大きく増加させるのではないかとロジャーズ氏は指摘する。
ロジャーズ氏は、「日本企業の行動やしくみを変えることを目指している。もっと株主にやさしく、被雇用者にもやさしい企業にしようとしている」とし、「マイナス金利は安倍首相や黒田総裁が日本の構造改革を強く決意していることを示している」と語った。
人口減
そこまで肯定的でない見方をする人もいる。日本企業が賃金を上げたり、国内でもっと投資しないのは全くもって論理的だという見解だ。
ジャパンマクロアドバイザーズの大久保琢史チーフエコノミストは、「企業の幹部は長期的な経済見通しに弱気」だと指摘する。「アベノミクスは終わり、日本はデフレに戻る。労働人口が減少している。そのため中長期的には、企業が賃金を引き上げず、雇用を増やさない十分な理由がある」と述べた。
富士通総研のシュルツ氏もそれに同意する。
シュルツ氏は、「日銀がしていることは若い経済には効き目があるかもしれない。しかし、年を取った経済には効かない。企業に投資させようとしているが、企業は海外に向かう」と指摘した。
過去3年間、安倍首相は日本の「アニマル・スピリット」を目覚めさせようと努力したが、分かったのは「人口は運命」という古くからの格言がいかに正しいかだ。
イノベーションへの抵抗
大久保氏は、「安倍首相は移民受け入れに否定的なので、一部は彼の責任でもある」と述べ、「日本は移民を歓迎する必要がある。しかし安倍内閣は右派の国粋主義者が大半なので、移民受け入れは実現しない」と語った。
日本の重要性が失われるわけではない。日本は世界最大の債権国であり、主要な輸出企業は世界で最も有力な企業群に入る。
しかし日本経済は、人口が急速に高齢化し減少する成熟した状態だ。国内の企業では、ヒエラルキーが深く根付き、イノベーションに抵抗する年長者が力を持っており、企業も「年老いて」いる。
日本の富の多くは高齢者が所有している。彼らは資産価値を守りたいと考えていて、インフレを恐れる。
これでは、日本で再び「アニマル・スピリット」が目覚めるとは考えられない。
「アベノミクス」の3本の矢
○ 金融政策の矢――デフレ対策に通貨供給量を拡大
○ 財政政策の矢――経済の需要刺激のため政府支出拡大
○ 構造改革の矢――経済の生産性と競争力拡大のための構造改革 
 2016/2
GDPマイナス成長は暖冬のせいではない 
2月15日に2015年10−12月期のGDP速報値が内閣府から公表された。結果をみると、実質GDP成長率は前の四半期と比べて0.4%減、年あたりの換算で1.4%減となり、2015年4−6月期以来のマイナス成長に沈んだ。もっとも、7−9月期の実質GDP成長率も昨年11月に公表された段階(一次速報値)ではマイナス成長であったから、日本経済は2015年4−6月期以降、ほぼゼロ近傍に近い成長率で推移していることがわかる。政府は2015年度の実質GDP成長率を1.2%と見込んでいるが、見通し通りの成長率の達成はほぼ絶望的な状況だ。これは安倍政権の政策運営にも少なからず影響を及ぼすだろう。
さて、今回公表されたGDP速報値について、石原経済再生担当大臣は記録的な暖冬により冬物衣料品などが大きく落ち込んだことで個人消費の減少幅が大きくなったことが主因との見方を示したとのことだ。
GDPは民間最終消費支出、民間住宅、民間企業設備、民間在庫品増加、政府最終消費支出、公的固定資本形成、公的在庫品増加、財・サービスの輸出と輸入という、9つの項目から構成される。個人消費は民間最終消費支出に含まれるが、年率換算で1.4%減となった実質GDP成長率が、どの項目によって生じているのかを確認すると、民間最終消費支出の落ち込みによる影響が最も大きくなっており、石原大臣の指摘する通り、個人消費を含む民間最終消費支出の落ち込みが主因であることが確認できる。
しかし、個人消費の落ち込みが記録的な暖冬により冬物衣料品などが大きく落ち込んだことが主因であるとはデータからは確認できない。
天候不順は言い訳
今回公表されたGDP統計では、家計消費の推移が自動車や家電製品といった耐久財、衣料品などの半耐久財、食品などの非耐久財、輸送・通信・介護・教育などを含むサービスといった4つの品目群(GDP統計では形態と言う)別にまとめられている。2015年7−9月期と比較しても、1年前の2014年10−12月期と比較しても、家計消費の落ち込みに最も大きく影響しているのは耐久財消費の落ち込みである。石原大臣の述べるとおり、家計消費の落ち込みの主因が冬物衣料品などが大きく落ち込んだことにあるのならば、その影響は半耐久財消費の大幅減という形で現れるはずだが、統計データを参照する限り、そうはなっていない。
思い起こせば、天候不順が消費低迷の主因であるという指摘は、2014年4月の消費税増税以降繰り返されてきた。確かに天候不順が消費を落ち込ませる可能性はゼロではない。しかし消費意欲が旺盛であれば、多少の天候不順でも、消費の落ち込みがこれほど長くかつ深刻な形で続くことはないだろう。GDP速報値の結果からは、2015年10−12月期の民間最終消費支出の値は304.5兆円だが、これは、消費税増税直後に大幅な落ち込みとなった2014年4−6月期の305.8兆円をも下回っているのである。これほどの大きな変動が天候不順で生じると考えられるのだろうか?
やや長い目で民間最終消費支出の推移をみれば、2002年から2012年までの10年間の民間最終消費支出は前期比0.2%程度のペースで緩やかに増加していたことがわかる。2013年に入るとこのペースがやや拡大したが、2014年4−6月期以降になると、民間最終消費は落ち込みが続き、2015年10-12月期の民間最終消費支出は、統計的に見て、前期比0.2%増のトレンドから有意に下ぶれしたと結論できる。つまり、統計的に「消費の底割れ」が生じたというのが今回の結果だということだ。
こうした「民間最終消費支出の底割れ」の主因は、大幅な落ち込みが始まったのが2014年4月以降であることから考えても消費税増税の影響と言えるだろう。消費税増税は、駆け込み需要とその反動減、さらに消費税増税に伴う物価上昇率の高まりが実質所得を減らすことの二つを通じて経済に影響を及ぼす。「消費税増税の影響は一時的であって、増税から1年以上経っても影響があるとは考えられない」と考える読者の方は、(仮に消費税減税といった政策が行われない限り)消費税率8%の負担が永続的にかかり続けるという事実を忘れているのではないか。加えて、わが国の場合、2017年4月から10%への消費税再増税が予定されている。多少所得が増えたとしても、2017年4月に増税が予定されているのだから、家計の財布の紐が緩まないのは当然とも言えるだろう。
消費税「減税」も検討を
冒頭で今回のGDP速報値の結果は、安倍政権の政策運営にも少なからず影響を及ぼすのではないかと述べた。石原大臣は今年1月に成立した2015年度補正予算を素早く実施していくことが必要と述べているが、経済効果は実際の執行のタイミングを考慮すると2015年度と16年度に分散され、非常に限定的なものに留まるだろう。もう今は2015年度補正予算の早期実行が課題なのではない。さらなる新たな手立てを早急に考え、実行すべき時なのである。つまり民間最終消費支出の悪化を考慮すれば、2016年度予算の早期成立後に即座に2016年度補正予算を編成すべき局面ということだ。
1月29日に日本銀行が決定した「マイナス金利付き量的・質的金融緩和策」の影響もあって、長期金利はさらなる低水準にとどめ置かれる可能性が濃厚な状況である。これは政府からみれば新規に国債を発行する際のコスト(金利負担)が低下している事を意味する。総需要が落ち込んでいる現状では、政府が短期的には財政政策により需要を支える必要があるし、大胆な財政政策を行ってもそのためのコストは低い。「今」は大胆な財政政策が必須であるし可能な状況なのである。
世界経済の変調が濃厚となる中で日本経済が堅調な成長軌道に乗っていくには、国内需要を高めることが必須である。財政政策のメニューは様々なものが考えられるが、例えば、民間最終消費の落ち込みに直接影響を及ぼし、かつ分かりやすい政策をというのであれば、2017年4月から予定している消費税増税を凍結し、さらに年限を絞って消費税減税(例えば消費税率を8%から6%にする)といった方策も考えられるし、軽減税率の仕組みを使って食費の消費税率を8%ではなく5%にするといった方法もありえるのではないか。前例がない政策を全て「異次元」だと片付けていては何も進まない。こうした取り組みがいかに多くできうるのかが、今後の日本経済の帰趨を決めることになるだろう。 
 
 
 
投資雑話1
円の価値が変わる為替相場
新聞には、『急激な円高!一時70円台に』などと見出しが大きく出る場合があります。
外貨取引をしたことがない方でも、一度は新聞やテレビのニュースなどで 「円高」「円安」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。FXの第一歩は、この「円高」「円安」という言葉に慣れ、馴染むことから始まります。
円高や円安がニュースになったり、人の話題に上ったりするのは、円高や円安が日本の経済はもちろん、私たちの生活の至る所に関わっているためです。
では、そもそも円高・円安ってどんなことをいうのでしょう?
円高と円安
円高とは、為替相場<1ドル=200円>から<1ドル=100円>になるような状態です。1ドルを購入するのに必要な円が少なくなったわけですから、円の価値が高くなったということになります。
円安はこの逆で、為替相場<1ドル=100円>から、<1ドル=200円>になるような状態で、1ドルを購入するのに必要な円が多くなったわけですから、円の価値が低くなったことになります。
1ドル=200円から1ドル=100円というように、数字が減っているのに円高、その逆に1ドル=100円から1ドル=200円というように、数字が増えているのに円安というのは、 何か妙な感じがしますが、これを理解することが、為替取引をする上で大切なのです。
今日のハンバーガーはお幾ら?
価値が変わるということは、次の例で見るとわかりやすいかも知れません。
たとえば、1つ1ドルのハンバーガーを買いに行くとします。1ドル=100円の昨日ならハンバーガーを一つ買うのに100円支払わなくてはなりません。でも、1ドル=80円の今日なら、80円支払えばいいのです。
昨日は80円で買えなかったハンバーガーが、今日は買えるのですから、 円の価値が上がっているということになりますね。これが円高ということです。
円高と円安
円安はこの逆で、昨日100円で買えたハンバーガーが、今日は120円出さなければ買えなくなってしまいます。円の価値が下がったということですね。
実際の相場は、1ドル=100円が翌日には1ドル=80円というようは大幅な変化はありませんが、為替相場(円の価値)は常に変わり続けているのです。
円相場の変動と企業の売上
新聞やニュースの話題に上がる「為替相場の変動」は、企業や投資家にとって、とても気になることで、かつ重要な情報です。
円高がどのように経済に影響を与えるかを、海外に輸出している自動車メーカーを一例に取って考えてみましょう。
為替と経済
T社は1台1万ドルの車をアメリカに輸出していたとします。円相場が1ドル=200円の場合は、売り上げとして200万円がT社に入ります。しかし1ドル=100円になった場合(円高)には、T社の売り上げは100万円となってしまいます。
1台当たりの生産コストが150万円だとした場合、前者では50万円の利益、後者は50万円の損失が発生します。輸出産業にとって、「円高」は大ダメージを受けることになりますね。
円高は日本にとって本当に悪いの?
円高の状況では、日本に輸入されるモノの値段が安くなります。
たとえば1枚10ドルのDVDは、1ドル=200円のときには、1枚2000円で売られますが、為替相場の影響によって、1ドル=100円に円高が進んだ場合、DVD1枚が1000円で売られるようになります。
消費者にとって円高は歓迎すべきことなのですが、企業の台所事情は一変します。
日本の企業は、生産コストの削減などによって安い輸入品との価格競争をしなければなりません。それでも業績が落ち込むと、社員の給料やボーナスが減り、場合によってはリストラなどで、従業員の削減に走ります。最悪の場合倒産も・・・。
収入が減ったり失職に追い込まれると、家計を圧迫することになりますから、お金を使わなくなり、他の産業へも飛び火しますね。
輸入業者はどうでしょう?
円高になると材料の仕入れ単価が少なくすみますから、仕入れ値によらず同じ価格で売るのであれば、円高は歓迎ですね。
海外旅行に行く予定のある人はどうでしょう?
1ドル=200円のときに10万円をドルに換えたら500ドルですが、1ドル=100円の円高時に換金すると1,000ドルが手に入ります。円高のほうが海外旅行者にとって好都合ということになります。
このように、その企業、その人の立場によって円高が良いのか、円安が良いのかは変わってきますが、日本は輸出大国ですから、円高よりも円安のほうが好ムードでしょう。
為替の相場(円相場)が変化することによって、企業の売り上げや損益に直接影響を与えることになりますから、為替相場と経済は密接に関係していることがわかりますね。
2種類の通貨を交換
外国為替取引とは、簡単に言うと2種類の通貨を交換する取引のことをいいます。
日本円を米ドルに交換したり、米ドルや豪ドル、ユーロ、ポンド、スイスフランなど、外国の通貨(外貨)を日本円に交換したりすることです。
もちろん、ユーロと米ドル、あるいはポンドとスイスフランなど、交換できる通貨は日本円ばかりではなく、円を介さない取引も可能です。
日本円をドルに交換することを『ドル買い』または『円売り』と言い、米ドルを日本円に交換することを『円買い』または『ドル売り』といいます。
通貨の交換レート
交換するときのレート(交換比率)は、その時のそれぞれの国における経済状況や政治状況、金利や貿易収支、世界情勢など様々な要因によって常に変動しています。
為替レートは、あくまでも2国間の通貨交換ですから、「円高・ドル安」という場合では、ドルに比べて円が強い(価値が高い)ということになりますが、円が全ての国の通貨に対して強いと言うことではありません。
円の価値が上がった、下がった、あるいは、ドルの価値が下がった、上がったなど、外国為替は通貨交換をする時点での2国間のレートで行われます。
為替取引で生じる差益(利益)と差損(損失)
為替取引の知識がない、あるいは為替取引の経験がない。。。そうした方でも海外旅行に行った経験がある方であれば、円を外貨に換えたり、外貨を円に戻したりという『両替』の経験があるかと思います。
為替取引は、この『両替』とほぼ同じことをしていることになるのです。
海外旅行時の例で考えてみよう
たとえば、海外旅行出発前に手持ちの10万円をドルに両替(ドル買)したとします。為替レートが1ドル=115円だとすれば、869.56ドルが手元に戻ります。
帰国して869.56ドルを再び日本円に両替(円買)したところ、円高が進み1ドル=110円になっていました。この場合、手にする日本円は 
110円×869.56ドル=95,651円
旅行前には10万円あった手持ち金が4,349円減っていますね。
逆に、帰国後に円安が進み1ドル=120円になっていたらどうでしょう。
120円×869.56ドル=104,347円
旅行前に10万円だった手持ち金は、4,347円増えています。
為替の損益
実際には『交換手数料』がかかりますから、全くこの通りではありませんが、円相場が動くと、買い戻した日本円に差が生じることが分かりますね。
FX(外国為替証拠金取引)を始めるには、こうした円の変動(為替相場)の動きを長期的にも短期的にも注目しながら、売り買いしていくことになるのです。
そもそも為替レートって?
異なった2種類の通貨を交換する場合の交換比率のことを『為替レート(外国為替相場)』といいます。この為替レートは一つではなく、いろいろな場面で異なった数値で示されます。
たとえば、海外旅行に出かける前にトラベラーズチェックを発行してもらうときのレートと、現金に交換してもらう場合のレートには違いがあります。
こうした銀行が直接顧客と取引する「対顧客市場」と、銀行間同士で取引が行われる「インターバンク市場」でもレートは異なります。
通常は、このインターバンク市場での交換比率を「為替レート」とよんでいます。
需要と供給の関係で動く
為替相場は、基本的には2国間の力関係によって、強い方の国の通貨が買われて高くなり、弱い国の通貨が売られて安くなります。
例えば、米ドルと日本円という2つの異なった通貨を比べた場合、米ドルが欲しいという人がたくさんいるにもかかわらず、日本円の人気が低ければ、需要の多い米ドルの価値が高くなります。
こうしたカラクリは、株式市場や債券市場と同じで、売られるものと買われるもの力関係、つまり、需要と供給のバランスによって値段が高くなったり安くなったりするのです。
為替の主な変動要因
需給関係に影響を与える要因
需要と供給の関係に大きく影響を与えるのは、景気や金利、国際収支といった、経済の基礎的な要因です。経済の基礎といってもさまざまな要素があり、この要素を「ファンダメンタルズ」と呼んでいます。つまり、経済の基礎的諸条件であるさまざまなファンダメンタルズ要因によって、為替相場(為替レート)の動向が変わっていくということです。
景気動向 / 景気が良い国の通貨は、株価や金利上昇への期待感から買われ上昇します。逆に景気が悪い国からは資本や資産が逃避するため、売られやすくなります。そのため、景気動向に関連する経済指標の発表は為替相場を動かす材料となります。特にアメリカの雇用統計やGDP(国内総生産)などの重要指標は注目度が高く相場に大きな影響を与えます。
金利・物価 / 基本的にお金は、低金利通貨の国から高金利通貨の国へと流れるため金利が高い国の通貨は買われ上昇します。金利は国内の景気や物価と密接に関係しており、例えば物価の上昇が強くなりインフレの傾向が出てくると中央銀行は金利を引き上げます。また、世界経済の中心である米国の金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)の声明と議事録は特に注目を集めます。
国際収支 / 貿易収支やサービス収支からなる経常収支や資本収支によって発生する実需は、為替変動の大きな要因となります。例えば、日本の経常収支が黒字だと、受け取った外貨を自国通貨に換える必要が出てくるので円高傾向になります。同様に資本収支において、資金流入のほうが多い「流入超」の状態だと自国通貨が買われます。
為替介 / 入金融当局は為替レートの急激な変動を抑制するため、または過度な通貨高、通貨安を是正するために為替介入を行うことがあります。日本では財務省の命令によって日銀が行い、その額は数兆円規模にのぼるため為替相場を動かす大きな要因となります。また、数カ国が連携して行う協調介入は為替相場の流れを大きく変えることもあります。
ファンダメンタルズ要因は、この他にもありますが、需給とは関係のない要因で為替レートが動くこともあります。
テクニカル的要因
為替市場に参加している投資家は、ほとんどのケースにおいてチャートを見ながらトレードしています。多くの投資家が同じようなチャートを利用して売買することから、チャート上で市場参加者の思惑を推測しながら取引が行われることがあります。為替市場ではサポートライン(支持線)やレジスタンスライン(抵抗線)は、多くの市場参加者に注目されています。そのため、ラインを突破すると短期的に相場を加速させることがあります。また、ラウンドナンバーと呼ばれる100円や80円などの切りの良い数字の近辺には、大量の注文が交錯するため為替が大きく動く場合があります。
投機的要因
膨大な資金を投入して短期的に利ざやを稼ぐ取引を繰り返すのが、ヘッジファンドや機関投資家よって構成されている「投機筋」です。投資額が大きく、外国為替市場における取引量を占める割合が大きいことから、短期的な為替相場は投機筋の影響が大きいといわれています。
地政学リスク
戦争やテロによって政情不安が起きると、投資活動や消費に悪影響が出ることを懸念され、その国の通貨は売られる傾向にあります。以前は「有事のドル買い」と呼ばれるように基軸通貨であるドルが買われることが多かったのですが、最近では永世中立国スイスのスイス・フランが資産の逃避先として買われるケースが目立ちます。
為替レートの急激な変動は、そのままリスクにもつながりますので、リスク要因についても知っておきましょう。 
 
投資雑話2
下落続ける円の価値 すでに真の実力は「1ドル=193円」に 2015/5
GWに海外旅行をした人は「円」の実力低下に驚きを隠さない。米国に行ってきたというOLは、「小さなクッキー数枚とコーヒーで1000円近くした」と嘆き、オーストラリアでバカンスを楽しんだサラリーマンは、「ペットボトル(500ミリ)が約500円だった」と目を丸くする。
アベノミクスの円安誘導で円の価値はここ数年、かなり下落した。安倍政権が発足した2012年12月は1ドル=85円水準だったが、現在は120円前後。40%以上も円安が進行し、たとえば100円で買えたキャンディーは140円を出さないと手に入らない計算になる。海外旅行組が嘆くのも当然だろう。
「この先、円の価値はもっと下落していくでしょう。今は米国がドル高(円安)を牽制しているため120円あたりで止まっていますが、日銀はマネタリーベース(市中の現金と日銀の当座預金の合計)を増やし続け、7日公表した4月の統計では史上初となる300兆円に達した。安倍政権発足時の倍以上に膨れ上がったのです」(市場関係者)
マネタリーベースは12年末に132兆円だったから、4月時点で実に2.27倍だ。通貨の量が増えれば、価値はその分減少する。マネタリーベースを元に単純計算すると、2年4カ月前の1ドル=85円が、現在の価値では1ドル=193円。恐ろしいまでの大幅下落だ。
「そこまで単純ではないとしても、円安要因であることに違いはありません。日銀が、2%の物価目標に到達するまでマネタリーベースを増加させるとしたら、どこまで金額が膨らむか未知数です」(第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏)
日銀は年間80兆円ペースで増加させるとしている。15年末は355兆円、16年末に435兆円、17年末には515兆円だ。
「500兆円を超すとなるとGDP(約530兆円)に匹敵する巨額さです。米国と比較しても異常な金融緩和といえます。米国の中央銀行に相当するFRBは過去の緩和策で資産規模を5倍にしていますが、それでも4.5兆ドル。米GDPは17兆ドルなので約4分の1の規模に収まっているのです」(経済評論家)
株式市場からは追加金融緩和策を求める声が高まっているが、これ以上の金融緩和は「円」の自殺行為だ。海外旅行など夢のまた夢になってしまう。 
 
投資雑話3
米ドルの価値低下=円高とは限らない!
書店の経済書コーナーには、様々な「トンデモ本」が並んでいます。特に為替関連の本は、分かっている人からすれば呆れてしまうような、主題から明らに誤っている本が沢山あります。典型的なのが、ドル円の為替レートが50円だとか60円だとかまで円高が進んでいく、と書かれたトンデモ本です。
円高本に共通する理論は「アメリカドルの価値が低下していくので、将来は円高になる!」という考えです。確かにアメリカ合衆国は、第二次大戦以前より、一貫してドルの価値を減価させていく政策を取っています。これは、ドル紙幣を新たに刷って、政府の借金(国債)の返済に当てることが目的です。ですからアメリカは一部の金融恐慌時を除き、一貫して通貨価値の下落(=インフレ)が続いています(※注)。
トンデモ経済本では、米ドルの価値が下落していくのだから、日本円に対しては円高になっていくと解説しています。相対的購買力平価説に習えば、米国の通貨価値が下落すれば、日本円の価値は相対的に見て高くなる=円高だという訳です。
しかし、この理論には大きな詐称が含まれています。米ドルの価値が下落することと、ドル円の為替レートが円高になることは、イコールで結ばれるとは限らないからです。
購買力平価説でも、ある条件を満たさないと「円高になる」とは言えないのです。米ドルの価値が下落していく時に、もう一方の日本円の価値が変わらない(又は上がっていく)のであれば、確かに円高になります。しかし米国と同様に、日本でもインフレ(通貨価値の下落)が起こっているのであれば、円高になるとは限りません。アメリカがインフレでも、日本のインフレ率の方が高ければ、逆に円安になっていくのです。
仮に現在、同じメーカーの缶コーラ1本が、アメリカで1ドル、日本では100円だとすれば、【コーラ1本=1ドル=100円】という式が成り立つので、購買力平価説での適正為替レートは1ドル=100円となります(図)。
ここでもし、アメリカで物価が2倍になるインフレが起きたとすれば、缶コーラ1本の値段は2ドルに値上がりします(図左下)。この時、日本ではインフレがゼロだとすれば、【コーラ1本=2ドル=100円】という関係が成り立つので、購買力平価説に習えば1ドル=50円の円高になるという訳です。
しかし同時に、日本でも物価が2倍になるインフレが起きたとすれば、【コーラ1本=2ドル=200円】となり、1ドル=100円が適正レートとなります(図)。アメリカでインフレが起きても、日本でも同様のインフレが起きれば、両国とも通貨の価値自体は下がっていますが、為替レートは変わらないのです。
将来の日本ではインフレが起きることはほぼ確実
アメリカは、今後も(借金の負担を減らす為に)意図的にインフレを起こし続けるでしょう。しかし、米ドルの通貨価値が減価しても、それ以上に日本円の通貨価値が減価すれば、為替レートは円安になっていくのです。日本政府の借金(対GDP比200%)とその内訳(95%が円建て)を考えれば、近い将来、日本円の価値が下落していく(インフレになる)確率は、極めて高いはずです。
この膨大な借金で政府がパンクしない為には、アメリカのように計画的にインフレを起こして、借金の負担を減らしていくしか方法が無いからです(歳出削減や増税で賄えるレベルを超えている)。一方で、今後も政府や日銀が何の対策もしないでいれば、ある日突然、日本国債の暴落をきっかけに、猛烈なインフレが起きる危険性も否定出来ません。
つまり、どう転んでも近い将来、日本経済はインフレに見舞われることは、まず間違いないのです。そして、アメリカ経済よりも日本経済の方が、問題がはるかに深刻(少子高齢化・無資源・膨大な借金)なことを考えれば、アメリカ以上のインフレ率になる=円安に進む可能性が極めて高いと、筆者は考えています。
これまで何度も書いているように、経済本の著者は、自分が有利になるようにあえて嘘を付く「ポジショントーク」を頻繁に行います。少なくとも、トンデモ経済本に書かれているような、一方的に円高が進んで1ドル50円だの60円だのになる可能性はほぼゼロだと、筆者が断言しておきます。 
 
投資雑話4
日本円の将来とその価値 2014/5
最大の問題は、日銀が目標にしている2%のインフレターゲットに遠く及ばない金利であるために、国債を償還時まで保有すると損をしてしまうため国内外を問わずトランプのババのように持ちたがらなくなることです。そのため最終的には日銀が引き受けざるを得ずそれがさらに紙幣を流通させお金の価値が下がる。日本の株式市場の売買代金は大半が外国人であるため日本円の価値が下がれば為替損になるため日本売りのエネルギーが蓄積されていくことになります。それを防ぐためにとか理由をつけてお金の回収(=大増税)などを納得させようとする可能性もありえます。安倍首相がマイナンバーで銀行預金を把握すると言ったそうですがそれを危険視する声もありますね。
以下具体的に説明します。
発行された国債の利払い額は償還時に決まっていますが、国債の売買価格は定額ではありません。そのためもし国債を買う人が多く売る人が少ない場合は実質金利は低下します。また債券の金利や預金金利なども格差を埋める形で変動します。
日銀の超異次元金融緩和は日銀が刷ったお金で国債などを銀行から買いまくるため、債券価格が上昇し金利が低下します。そしてお金がじゃぶじゃぶになりお金の価値が下がり物価が上がります。
銀行にしてみれば
・保有する国債を日銀が高く買い取るため売れば転売益が出る
・物価が上昇して金利が下がれば 保有しても国債の価値が目減りするので売った方が良いと思う。
そして余ったお金の運用先が株になるのです。
一見株価が上がってよいように思えるかもしれませんがそんなことはなく将来を見据えれば絶望的な材料しかありません。
円安になると(現在輸出超過であるため)貿易赤字が拡大するだけでなく、世界から見て日本の資産価値が落ちていることになります。従って外国人が、日本の資産を持つと含み損を抱えるために日本を安定した投資先とみなさなくなります。今、一時的に株価が上がって外国人投資家も買い越していますがこれは国内の銀行の動きを見越して投機取引で乗っているだけで、日本が信用されたいるわけではなくただ円安による価値目減りと銀行が株を買うことによる株価上昇を天秤にかけてギリギリの資産運用をしているだけなのです。そのため悪材料が出れば外国人投資家が一斉に売り浴びせて大暴落のリスクを常に抱えています。
一方 日銀の金融緩和の最大の目的は消費税増税他いろいろ増税をすることです。だから財務省のOBを送り込んで日銀を乗っ取り日銀と財務省が一心同体となり、お金の価値を下げるとともに、デフレ脱却でなくなったので景気回復したんだとこじつけて増税をすることになります。 結局国民から借りている借金を目減りさせてさらに増税という場当たり的な政策に過ぎません。国民には損害を与えることになります。景気回復するなどの言葉にだまされてアベノミクスを支持する国民もいずれ可処分所得が減った結果消費を抑制することになりますが、それでも物価高と増税が続きます。 国民の生活基盤が崩れた状況になれば株価上昇も見込めるはずもなく一時的な投機取引に乗っている外国人もそれを見抜いているので、一斉に日本市場から手を退くのは時間の問題でその時に本当の地獄絵図が展開されることになると思います。 

 
2016/6-
 
日銀が追加緩和、上場投信買い入れ6兆円に 7/29
日銀は29日の金融政策決定会合で追加金融緩和を決めた。英国の欧州連合(EU)離脱決定で世界経済の不透明感が強まり、企業や家計にも悪影響が及びかねないためだ。現在は年3。3兆円の上場投資信託(ETF)の買い入れ額を6兆円に増やすことが柱で、金融機関のドル資金調達の支援策も強化した。政府が打ち出した28兆円規模の経済対策と連携し、国内景気の底上げに向けた相乗効果を狙う。
銀行が日銀に預けるお金の一部にかけるマイナス金利は年マイナス0。1%で維持した。黒田東彦総裁は29日午後に記者会見し、今回の決定理由を説明する。追加緩和は9人の政策委員が賛成多数で決定。ETFの買い入れ拡大には佐藤健裕委員、木内登英委員が反対した。
追加緩和は1月に決めたマイナス金利政策の導入以来、約6カ月ぶり。黒田総裁の就任以降、4回目の金融緩和になる。ETFの買い入れ拡大に加え、日本の企業や金融機関のドル資金の調達を支援する仕組みも全員一致で決めた。
企業が海外事業を広げる際に必要なドルを日本の金融機関経由で供給する制度の強化だ。2012年に始まった制度で、限度額を従来の120億ドルから240億ドルに倍増した。日銀が金融機関にドルを供給する別の制度でも、円を事実上の担保としてドルを引き出せるようにする。
日銀が世の中に供給するお金の総量に当たるマネタリーベース(資金供給量)の増加ペースは年80兆円で据え置く。年80兆円の国債、年900億円の不動産投資信託(REIT)の買い増しペースも維持する。黒田総裁は次回の決定会合までに現行の金融緩和の総括的な検証を実施することを執行部に指示した。
日銀は「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」も公表。2016年度の消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く)の上昇率は前回4月の0。5%から0。1%に下方修正。17年度は1。7%のままで変えず、物価目標の達成時期も「17年度中」を維持した。
今回の追加緩和決定には、安倍首相の経済政策「アベノミクス」を再始動させるため、政府と協調する狙いもある。政府は8月2日に事業規模28兆円の経済対策を閣議決定する。日銀は発表文に「緩和的な金融環境を整えることは政府の取り組みと相乗的な効果を発揮する」との認識を明記。財政と金融政策の組み合わせで景気を底上げし、市場、家計、企業の日本経済に対する期待を上向かせたい考えだ。 
「経済対策28兆円超」低所得者向け給付延長へ 7/28
安倍晋三首相は27日、福岡市内で講演し、新たな経済対策の事業規模を28兆円超とする方針を表明した。国・地方の追加支出に財政投融資を加えた「財政措置」は13兆円とし、「大胆な経済対策をまとめたい」と述べた。政府はこの対策に、来年度からは予算化しない方針だった低所得者向けの「簡素な給付措置」の2年半延長も盛り込む。政府は年6000円の現行水準を年4000円とし、2年半で1万円を給付する方針だが、公明党は水準を維持して計1万5000円を給付するよう主張。調整が続いている。
首相が参院選直後の今月12日に、石原伸晃経済再生担当相らに経済対策策定を指示した際は「10兆円超の規模」との見方が多かったが、首相は2倍以上の額を示し、アベノミクス推進の姿勢を鮮明にした。ただ、財源は明示しなかった。
28兆円超の規模は、近年ではリーマン・ショック後に麻生政権が策定した2008年12月の対策(事業規模37兆円)や、09年4月の対策(同56。8兆円)に次ぐ規模だ。8月2日に閣議決定し、今秋の臨時国会に提出する16年度第2次補正予算案や、17年度当初予算案などに関連予算を計上する。
対策は、リニア中央新幹線の大阪延伸を最大8年前倒しするなどのインフラ整備や、首相が掲げる「1億総活躍社会」関連予算の重点配分などが柱。保育、介護の受け皿整備や、給付型奨学金の創設、年金受給に必要な保険料納付期間を25年から10年に短縮する無年金者対策などの「分配」重視策も並べた。
2年半延長する低所得者向け給付金は、消費税率を8%に引き上げた14年度から負担軽減策として実施し、今年度で終わる予定だった。消費税率10%への引き上げが来年4月から2年半延期されるのに伴い、同じ期間延長する方針だ。
また政府は、公明党が求めている「プレミアム付き旅行券・商品券」発行の「将来的な実施」を対策に記すことも検討している。
首相は講演で、27年ぶりの自民党の参院単独過半数確保に触れ、「私の政治家人生で初めての経験だ。それほどまでに安定した政治基盤を国民からいただき、引き締まる思いだ」とした上で、「自民党と公明党の連立という強固な土台の上に、助け合いながら政策を一層推進する」と公明党への配慮も示した。講演は福岡県内の経済団体などが主催した。