「新しい判断」

消費増税先送り
「新しい判断」  判断理由は不透明
口にできない日本経済 マイナス成長目前

「アベノミクスの果実」
果実を食べた人 食べられる人 誰・・・
 


 
 
  
・・・この3年半のアベノミクスによって、国と地方あわせて税収は21兆円増加しました。私がこの経済政策を進めたとき、税収がそれで増えていくと言った人は少ないと思います。随分、批判にさらされました。・・・アベノミクスを一段と加速することで、税収を一段と増やしていきたい。その果実も使って可能な限り社会保障を充実させてまいります。・・・
 
「新しい判断」の何が一番問題か 6/11
今回の安倍総理の突然の増税の先送りについて、霞が関の担当部局の官僚の方々に質問した。
「予定していた社会保障を充実策のうち、何をやめ、何を実施するのか?」「予定どおり実施するものがあれば、その代替財源は何か?」「総理の言う『アベノミクスの果実』とは一体何を意味しているのか?」等々
これらの質問に対して、財務省や厚生労働省の担当者はしどろもどろの回答しかできなかった。こうした様子からも、今回の先送り決定が、各省間の十分な調整もないまま行われたことは明らかだった。
官邸の一部側近と経済産業省の幹部が極秘に進めたという報道があるが、そのとおりなのだろう。苦しそうに回答する彼らが気の毒でならなかった。
安倍政権は、自分たちに都合のいい政策を、少人数で極秘に資料を作って強引に進める。
今までの歴代政権ではありえなかったことだ。
プロセスを無視したこんな意思決定を、ただ黙認していいのだろうか?
思い出して欲しい。2年前の集団的自衛権の行使容認の時の日本人母子が乗る米艦艇を防衛しなくてはならないというパネルについて。
「紛争国から逃れようとしているお父さんやお母さんや、おじいさんやおばあさん、子どもたちかもしれない。彼らの乗っている米国の船を今、私たちは守ることができない。」と総理は訴えた。
しかし、米国の軍艦は、原則、外国人の民間人を乗せないルールになっている。専門家を交えて冷静に検討をすれば、こんな絵がつかえないのは明らかだ。
同様に、今回の消費税再送りに至るサミットに提出された4枚の「参考資料」も、あまりにも稚拙なものだった。
総理周辺だけで極秘に作成された「新しい判断」のもとになるもので、とにかく都合のいい数字をつまみ食いしている。各国首脳に配った英語版と、国内メディア向けの日本語で書いていることもなぜか違う。
しかし、あまりにも説得力のない資料だったのだろう。一部のG7首脳がこの資料を見て唖然とし「危機とまでいうのはいかがなものか」と反論したことは、新聞記事やニュースになったので、皆さんもご存知だろう。
今回の消費税見送りの決定は、内閣府や財務省といった政府内の担当部局さえ外し、総理周辺の一部の人間だけで行われている。自民党の稲田政調会長でさえ事前にこの資料を見ていなかったと言っている。
税制のような日本の将来を決める重要な政策を、総理周辺の少人数でてきとうな資料を作って、国民感情に訴えながら強引に通していく。
このような意思決定方法は危険ではないだろうか?
このままだと、今後も、国を左右する重要な政策が、「権力者の周りにいる少人数」で「十分な検証さえなく極秘で」決められてしまうことになる。
私は野党だからこれに声をあげているのではない。
こういうことに、ちゃんと声をだす人が世の中に誰もいなくなることは、日本にとって問題だ。だから、私は声をあげたい。
自民党内でも同じ懸念を抱いている人もいるはずだ。 
 
“嘘つき”安倍首相 次の“新しい判断”は「消費増税再々延期」 6/9
安倍首相は「新しい判断」として消費増税を2019年の10月まで延期することを発表した。
GDP(国内総生産)のおよそ6割の家計消費に冷や水を浴びせた2014年春の消費増税。「黒田バズーカ」だのと騒いだわりに、消費は一向に上向く気配がない。参院選を横目でにらみつつの決断とはいえ、消費税10%の先送りは歓迎の声も多いようだ。第一生命経済研究所の首席エコノミスト永濱利廣氏は言う。
「消費増税をやるべきではないとは思いません。ただ経済の現状をみると、今はそのタイミングでない。日本はずっと同じ過ちを繰り返してきた。金融政策で刺激して、景気が上向くとみるや増税に踏み切る。これではアクセルとブレーキを一緒に踏むのも同然。今は財政出動して弱り切った需要を本来の実力(潜在成長率)に見合うところまで引き上げることが最も重要なんです」
増税延期をめぐり、インチキ資料などで紛糾した顛末にはこんな意見もある。
「安倍さんの本心は、『せっかくアベノミクスがイイ感じだったのに、財務省の理屈に騙されて14年に消費増税し、シナリオが狂った。もう財務省の言うことは信用ならん』ですよ。秘密裏に経産省とサミットの資料作りをした理由もそこ」(あるエコノミスト)
今回は「折れた」財務省だが、そそくさと引き下がるとも思えない。20年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化、つまり新たな借金(国債発行)をせずに税収だけで支出をまかなう目標は堅持したまま。消費税10%で見込む増収は年5兆円。社会保障費の財源とあって、どう手当てするかも注目される。シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト、田代秀敏氏は財務官僚の狙いをこう予想する。
「代替財源はあると判断したから再延期したんでしょう。気付かぬような、気付くのに時間がかかるようなやり方で確保するはず」
田代氏は財務省のターゲットはいくつかあるとみる。
一つは国債利払い費に充てるお金だ。利払いも含めた国債費は、16年度予算で23.6兆円。ただ、マイナス金利の影響で、利払いに使わずに済むお金が年2兆円分あり、これを充てる可能性があるという。田代氏は「本来なら借金の元金返済のお金ですが、それを財源として使うなら自転車操業よりひどい。当面マイナス金利を続けることが前提となる」と解説する。
二つ目は医療や年金といった社会保障費の「公費負担」部分。「公費負担というのがポイントです。この部分で一世帯あたり月額3200円相当を削減すれば、約2兆円分手当てできます」。これで約4兆円になる。残りはたばこ税や酒税で地味に増税して取り戻すという算段だ。さしずめ見えぬ「ステルス増税」といったところだろう。
前出の永濱氏は、14年の消費増税による年8.1兆円の増収分は「全てが社会保障費に使われているわけでなく、手つかずのままのお金が3.4兆円分ある」とも言う。
当面はこうして財源をひねり出すほかないが、消費税は19年10月にホントに増税できるのか。
この「新しい判断」をした張本人の安倍首相は18年9月末が自民党総裁任期。スイス銀行出身の経済アナリスト、豊島逸夫氏の予想はこうだ。
「増税延期は、経済的には負荷を緩めたという意味がある。ただ経済成長に結びつけるには、財政出動によるカンフル剤だけでなく、病巣をえぐるような構造改革が必要。これは数年がかりの仕事で簡単に結果は出ない。日本経済が19年秋ごろに消費税10%に耐えられるほど良くなっているかと言えば、ノー。消費増税はたぶん無理です。安倍氏も負け戦をするとは思えない。18年には『私も任期ですから失礼します』と投げ出すでしょう」
潜在成長率はじりじりと下降し、いまやマイナスの一歩手前。経済底上げは一過性の策でなく、やはり中長期を見据えた構造改革が不可欠だ。ところが、今回の取材で驚きの事実を耳にした。
衆議院事務局によると、衆議院で戦後、任期満了まで全うして実施した総選挙は1976年の1回。ほかの25回はみな解散によるもので「外国人に言うとビックリですよ」(田代氏)。信任を得た4年間すら全うせずにコロコロ変わっては、未来を見据えた構造改革もへったくれもない。 
 
安倍首相、増税再延期「新しい判断だ」ただただ連発 6/2
安倍晋三首相は1日、会見し、消費税10%増税の再延期について「これまでのお約束とは異なる、新しい判断だ」と発言した。
「新しい判断」という言葉を突然登場させ、4〜5回連発したが、判断を新たにした理由は不透明で、こじつけと責任逃れの発言に終始。政権の実績の強調や野党批判では勇ましい言葉を並べたが、再延期については歯切れの悪さが目立った。
首相は14年、増税延期を理由に衆院解散・総選挙に踏み切る際、「再延期はない」と断言したと認め、「公約違反の声は真摯(しんし)に受け止める」と述べた。責任には触れなかった。再延期条件の1つにしたリーマン・ショック級の事態も、「現時点で発生していない」と認めたが、「増税は内需を腰折れさせかねない」と、押し切った。
「内閣不信任決議案提出で、衆院解散が頭の中によぎったのは否定しない」と衆参ダブル選を考えたことも明かした。関係者も「首相はやる気だった」と認めたが、現状では衆院で議席減の可能性があり、「守り」に転じた。一方「新しい判断は、国民の審判を仰ぐべきだ。国政選挙の参院選で国民の信を問いたい」と述べたが、野党からは「国民の信を問うのは、衆院選だ」の指摘も。獲得議席目標は、自民、公明両党で改選121議席の過半数(61議席)と高めを設定した。
参院選は22日公示、7月10日投開票の日程。自分に都合の良い「新しい判断」を続ける首相の姿勢が、新たな争点になりそうだ。 
 
民進・枝野氏「自民公約読むに値しない」 安倍首相の「新しい判断」を皮肉る
民進党の枝野幸男幹事長は4日、高知市で街頭演説し、安倍晋三首相が記者会見で「新しい判断」として来年4月の消費税再増税を2年半延期したことに関連し、「自民党はこれから、どんな公約を掲げても『新しい判断』をしたら、がらっと変えられる。自民党公約は読むに値しない」などと批判した。枝野氏は「安倍政治は、企業でいえば粉飾決算を積み重ねている」と指摘。3日に自民党が発表した公約についても「経済政策『アベノミクス』の成果をベラベラ並べているが、そもそも経済が心配で(税率)引き上げを延期するのでないか」と皮肉った。 
 
安倍首相「お約束と異なる新しい判断」あの消費増税「断言」の限りない軽さ 6/1
安倍晋三首相は2016年6月1日夕方、首相官邸で会見し、17年4月に予定されていた消費税率10%引き上げの時期をさらに2年半延期し、19年10月にする意向を表明した。当初は15年10月とされていた10%への引き上げ時期は14年11月に延期が発表され、その際、安倍首相は「再び延期することはない」ことを「断言いたします」と会見で明言していたが、この「断言」を覆した。安倍首相は、第1次政権でも続投を「お誓い申し上げます」と述べた2日後に退陣表明した「前科」がある。
「断言」や「誓い」といった言葉を使いながら、一転してひるがえす振る舞いが繰り返されている。こういった批判が出る可能性に配慮し、「批判があることも真摯に受け止める」と、安倍首相としては異例の低姿勢を見せたが、2年前の断言という言葉を限りなく軽くした記者会見となった。
「『公約違反』の批判真摯に受け止める」
安倍首相は14年11月18日、当初は15年10月だとされていた税率引き上げの時期を1年半先送りすることを記者会見で発表した。会見では、安倍首相は
「来年(15年)10月の引き上げを18か月延期し、そして18か月後、さらに延期するのではないかといった声がある。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年(17年)4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします」と述べ、衆院を解散して、信を問うとした。その14年12月の総選挙で自民党は大勝している。
今回の会見では、「世界経済の透明感」を背景に、消費増税は「内需を腰折れさせかねない」などと引き上げ再延期の理由を説明。14年11月の自らの発言にも冒頭発言の中で言及した。
「今回、再延期するという私の判断は、これまでのお約束と異なる新しい判断。『公約違反ではないか』とのご批判があることも真摯に受け止めている」などと理解を求め、冒頭発言の最後に
「国民の皆さんのご理解とご支持をお願いしたい」と正面に向かって頭を下げたが、「断言」を覆したことに対する陳謝の言葉はなかった。 
 
 
 
またもマイナス成長の日本経済はこのまま景気後退に陥るのか 2016/2
10〜12月期GDPもマイナス成長 目立った消費と輸出の弱さ
2015年10〜12月期GDPは、前期比年率−1.4%とエコノミストの予想を下回る弱い結果であった。7〜9月期の成長率が同+1.3%であったことからすれば、2015年の後半、日本経済は全く成長していないこととなる。
このままマイナス成長は続くのか。その検討の前に、まずは10〜12月期GDPの内容を見てみよう。
最もマイナスに寄与したのは、消費の前期比−0.8%である。11〜12月は記録的な暖冬の影響もあり、冬物の被服や家電の売上は大きく落ち込んでいた。しかし、消費の弱さは一時的な天候要因だけでなく、賃金上昇の弱さも影響している。
一人当たりの賃金上昇率は11月、12月と前年比で+0.0%、+0.1%と伸びが弱かった。消費センチメント(消費者の心理・態度)と連動性の強い食料価格は、前年比+2.2〜2.3%と、7〜9月期の+1.6〜1.9%から上昇が加速していた。これら賃金の弱さや消費センチメントの悪化もまた消費に影響を与えた。ただし、消費内容を見ると、耐久財・半耐久財は前期比大きく下げている(それぞれ−3.1%、−3.7%)のに対して、非耐久財・サービスの下げは比較的軽微であった(それぞれ−0.8%、−0.1%)。また、高齢者を中心としたサービス消費は相対的に堅調さが続いていた。温暖な気候もサービス消費には大きくはマイナスとならなかった。
輸出も前期比−0.9%と2四半期ぶりに悪化した。中国経済への懸念や米国の利上げ観測の影響から、米国の10〜12月期の成長率が前期比年率+0.7%と、7〜9月期の同+2.0%から大きく鈍化しており、日本の輸出にも影響を与えていた。
一方、設備投資は前期比+1.4%と2四半期連続の成長となった。企業は輸出数量の拡大に向けた投資から、新製品開発や研究開発、省力化・合理化投資を目的とした投資へ目的を変え始めており、グローバル環境の悪化に影響を受けにくくなっているようだ。
2期連続のマイナス成長は避けられそう リスクは株価下落の影響と輸出の低迷
消費のマイナスが仮に1〜3月期も続いてしまう場合、GDP成長率も2四半期連続でマイナス成長となるリスクが出てくる。2四半期連続のマイナスとなれば、「テクニカルリセッション」と呼ばれ不況期に入ったとみなされる。
しかし、そのシナリオは避けられる公算が大きい。一人当たり賃金上昇率は鈍さが見られるものの、就業者数と併せた総賃金を見ると、10〜12月期からさらに悪化する兆候は見られない(図表1)。原油価格の下落によるガソリン価格や電力料金の引き下げも支援材料となる。2四半期連続で消費がマイナスとなるリスクは、今のところ少ないと見る。
   図 就業者数と賃金の伸び率
消費動向調査からみた消費センチメントも比較的堅調さが続いている。ただし、株価下落に伴う「負の資産効果」は懸念材料となろう。UBS試算によると10%の株安で消費は0.18ポイント低下する。日経平均は2015年末の1万9033円から10〜15%程度低下しており、0.18〜0.27%程度消費が下押される可能性がある。そのため、1〜3月期の消費のリバウンドは前期比+0.3ポイントにとどまると見ている。
   図 消費センチメントの推移
一方、リスクは輸出にありそうだ。10〜12月期、輸出にカウントされるインバウンド消費は非常に強かった。非居住者家計の国内での購入は前期比+10.1%と7〜9月期の同+8.3%よりも加速していた。中国経済が鈍化する中でも、円安や中国内の中間所得層の拡大による恩恵は続いていたからだろう。
それにもかかわらず10〜12月期の輸出が大きく減少したのは、それだけ世界経済が弱くなっているからに他ならない。UBSでは1〜3月期の米国成長率は1.0%となり、弱さが続くと見ている。グローバルマーケットの混乱からリセッション(景気後退)懸念も高まっており、製造業のセンチメントは悪化している。伸び率は鈍化しつつもインバウンドの拡大は続くものの、輸出の弱さは継続しそうである。
政府と日銀は焦っている 政策対応は期待できる
弱い10〜12月期GDP、そして2四半期連続マイナス成長のリスクを感じる中、官邸、日銀は焦っているだろう。政府はリーマンショックの際、日本への影響は軽微である、マクロ環境は悪くない、として政策対応が遅くなったことを反省している。弱い景気指標はいくつかの政策対応につながってくるだろう。
目先、グローバルリセッション(世界景気後退)の懸念が高まる中、日本の弱いGDPもこの懸念を強める形となろう。2月26〜27日のG20での政策協調に注目が集まる。
ドル高が米国の輸出産業に悪影響を与えている状況下、協調的な為替介入は難しいが、グローバルリセッション懸念に配慮した対応、例えば、米国Fed(連邦準備制度)は拙速な利上げをしない、ECB(欧州中央銀行)と日銀は積極的な行動を続ける、中国は景気減速に対応した政策(財政出動)、などの動きが出てくれば、景気動向に安心感が出てくるだろう。
また、他国と比較して急騰している円に対して特別な配慮が見られれば、日本単独での為替介入もしやすくなる。その場合、介入を非不胎化*するためには追加的な量的緩和も出てくるかもしれない。現状の水準では日銀による3月緩和の可能性は高まっているが、付利引き下げ(マイナス金利拡大)に加えて量的緩和が選択される可能性もあるだろう。
また、日本の財政の面でも対応が期待できる。2017年4月に予定されている消費増税については、景気悪化が続く場合見送られる可能性が高まっている。安倍総理はリーマンショック級の景気後退が来ない限り延期はしないとの方針を繰り返し述べているが、足元のグローバルリセッションの懸念からすれば、ドイツ銀行の問題などリーマンショック級の影響が起きてもおかしくないと見ることもできよう。そこまでのリセッション懸念ではなかったとしても、5〜6月の成長戦略、骨太の方針に向け、大規模な補正予算が議論される可能性が高まる。
今後は消費回復を実感できる 鍵を握るのは春闘と物価動向
今後の日本経済はどういった成長となるだろうか? 私は足元では弱さが感じられるものの、2016年は消費の回復感が感じられる年になる、という主張を続けている。その際、春闘と物価の動向が重要な要素となろう。
足元のグローバル経済の悪化懸念と円高は、製造業の企業センチメントを悪化させており、春闘への懸念が生じている。
それでも鉄鋼などでは昨年以上のベースアップが要求されている。しかし、2016年の春闘は非製造業にも注目したい。総人件費の7割は非製造業である。非製造業はインバウンド消費や2014年4月の消費増税の影響が剥げ落ちたことで、2015年は大きく収益を拡大させた。経常利益の伸び率を2014年4〜9月期と2015年4〜9月期で比べてみると、非製造業は7.1%から18.3%へ加速させている。また、日銀短観で見た業況判断DIも非製造業は堅調な水準を維持している。製造業は昨年並みに留まったとしても、非製造業が、全体を底上げしていく可能性はあるだろう。
   図 製造業と非製造業の経常利益伸び率
もう1つ、物価の動向も重要な要素である。原油価格の大幅下落によるエネルギー関連価格の低下は、ガソリン価格の低下に加え、1月以降の電力料金に反映され始めている。また、2015年は上昇し続けた食料品価格の安定化も、消費センチメントにはプラスの影響を与えるだろう。物価上昇が上がりにくい状況は2%の物価上昇を目指す日銀にとっては厳しい状況となるが、消費者にとってはポジティブとなる。
マイナス金利の影響はどう出るか 重要なのは家計・企業の貯蓄行動
また、日銀が導入したマイナス金利の影響もまた重要なテーマとなろう。日米金利差の拡大の観点でみれば円安をもたらす効果はある。それ以上に重要な点は家計、企業の貯蓄行動に与える影響だ。
その影響はどうだろうか? 貯蓄を多く持たない家計にとっては、預金金利が下がることで、より貯蓄を増やすインセンティブへつながってしまうかもしれない。一方、貯蓄を多く持つ家計は逆に貯蓄のインセンティブを減らすだろう。
仮に家計が将来に備えた予備的貯蓄に基づく貯蓄を行っているのであれば、マイナス金利は若年層・低金融資産保有者層の消費行動にはマイナスとなり、資産を持つ高齢者・高金融資産保有者層の消費行動にはプラスとなる。日本の家計は1700兆円の金融資産を保有しているが、その7割程度は60歳以上の高齢者に偏っている。また、資産残高別に見ると4000万円以上の金融資産を持つ13%の家計で800兆円程度の金融資産を保有している。そのため、総じて見ればプラスとなる可能性がある。
マイナス金利は企業の貯蓄行動にも影響を与える。企業は貯蓄を十分に持っているため、銀行貸出は大きくは増えないかもしれない。しかし、企業向けの大口預金でマイナス金利が導入されれば、事実上の内部留保課税となる。企業の貯蓄保有動機は減少するだろう。
ただし、企業は配当や自社株買いには容易に配分できるが、賃金や設備投資となると積極的ではないかもしれない。マイナス金利と併せて、政府による規制緩和や税制対応などで、企業がより前向きに貯蓄を減らしていけるような支援が組み合されることが、設備投資のさらなる加速には必要だ。 
 
  
 
  
 
「増税再延期という『新しい判断』について参院選で国民の信を問いたい」
安倍晋三首相は1日夕、官邸で記者会見し、平成29年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを31年10月まで2年半延期する考えを正式に表明した。 
「本日、通常国会が閉会しました。成立した法律や予算によって、介護休業給付の拡充、介護や保育の受け皿整備、不妊治療への100%助成、ひとり親家庭への児童給付手当の増額など1億総活躍社会の実現に向け、新たな取り組みが次々とスタートします。少子高齢化の流れに歯止めをかけ、誰もが生きがいを感じられる社会をつくる。1億総活躍の未来を踏み出すため大きな一歩を踏み出す、未来へと挑戦する国会になったと考えています。他方、足下では新興国や途上国の経済が落ち込んでおり、世界経済が大きなリスクに直面している。こうした認識を先般、伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)に集まった世界のリーダーたちと共有しました。先般の熊本地震で、熊本や大分の観光業や農業、製造業など、九州の広い範囲にわたって経済や暮らしが打撃を受けています。これらが日本経済にとって新たな下ぶれリスクとなっている。最悪の場合、再びデフレの長いトンネルへと逆戻りするリスクがあります。今こそ、アベノミクスのエンジンを最大にふかし、こうしたリスクを振り払う、一気呵成に抜け出すため脱出速度を最大限まであげなければなりません。アベノミクスをもっと加速するのか、それとも後戻りするのか、これがきたる参院選の最大の争点です。伊勢志摩サミットで取りまとめた合意を、議長国として率先して実行に移す決意です。アベノミクス、三本の矢をもう一度力いっぱい放つため、総合的かつ大胆な経済対策をこの秋、講じる考えです」
「最も重要なことは、構造改革を断行し、将来の成長を生み出す、民間投資を喚起することでます。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の早期発効を目指します。さらには日本と欧州連合(EU)とのEPA(経済連携協定)など、良いものが良いと評価される自由で公正な経済圏を世界に拡大するため、新しい投資機会を作り出します。現下のゼロ金利環境を最大限に生かし、未来を見据えた民間投資を大胆に喚起します。新たな低利貸付制度によって、21世紀型のインフラを整備します。リニア中央新幹線の計画前倒し、整備新幹線の建設加速によって全国を一つの経済圏に統合する『地方創生回廊』を、できるだけ早くつくります」
「保育所や介護施設の整備など、未来の1億総活躍社会を見据えた投資を力強く進めます。最大のチャレンジは、多様な働き方を可能とする労働制度改革です。長時間労働の慣行を断ち切る、雇用形態にかかわらない均等待遇を確保する。そして同一労働同一賃金を実現します。非正規という言葉を日本国内から一掃する。その決意で全体の所得、全体の所得の底上げを図り、内需をしっかりと拡大していきます。こうした諸改革とあわせて、熊本地震の被災者の皆さんの不安な気持ちに寄り添いながら、被災地のニーズをしっかりと踏まえつつ本格的な復興対策を実施します。先進7カ国(G7)で協力し、世界的な需要を強化するため、将来の成長に資する分野で大胆に投資を進める。人工知能、ロボット、世界に先駆けた技術革新を日本から起こす。しっかりと内需を支える経済対策を行う考えです」
「その上で、来年4月に予定される消費税率10%への引き上げについて、お話しします。1年半前の衆院選で、私は『来年4月からの消費税率引き上げに向けて必要な経済状況を作り上げる』と約束しました。そして、アベノミクスを強力に推し進めてまいりました。現在、有効求人倍率は24年ぶりの高い水準となっています。都会だけの現象ではありません。就業地別である北海道から沖縄まで47都道府県、全て1倍を超えました。これは史上初めての出来事です。1人の就職者に対して、1つ以上の仕事があるという状況を作り出すことができたんです。リーマン・ショック以来、減少の一途をたどっていた正規雇用は昨年、8年ぶりに増加に転じ、26万人増えました。この春の高校生の就職率は24年ぶりの高さです。大学生の就職率は過去最高となりました。中小企業の倒産も、政権交代前から3割減少しています。ここまで倒産が減ったのは25年ぶりのことです。所得アップについても、連合の調査によれば、中小企業も含めて一昨年、昨年に続き、今年の春も3年連続で、今世紀に入って最も高い水準の賃上げを実現することができました。そしてパートの皆さんの賃金も過去最高を記録しています。一部の大企業で働いている方の給料が上がっただけではありません。パートで働いている皆さんの時給も過去最高となっているんです。どうかここも見ていただきたい。雇用をつくり、所得を増やす。まだまだ道半ばではありますが、アベノミクスは順調にその結果を出しています」
「しかし、世界経済はこの1年余りの間に想像を超えるスピードで変化し、不透明感を増しています。最大の懸念は、中国など新興国経済に陰りがみえることです。リーマン・ショックのときに匹敵するレベルで原油などの商品価格が下落し、投資が落ち込んだことで、新興国や途上国の経済が大きく傷ついています。これは世界経済が成長のエンジンを失いかねないということであり、世界的な需要の低迷、成長の減速が懸念されます。世界の経済の専門家が警鐘を鳴らしているのは、まさにこの点です。これまで7回にわたり『国際金融経済分析会合』を開催し、ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授やクルーグマン教授をはじめ、米国や欧州、アジアの経済の専門家から意見を伺ってまいりました。その専門家の多くが世界的な需要の低迷によって今年、そして来年、さらなる景気悪化を見込んでいます。こうした世界経済が直面するリスクについて、G7のリーダーたちと伊勢志摩サミットで率直に話し合いました。その結果、新たに危機に陥ることを回避するため、適時に全ての政策対応を行うことで合意し、首脳宣言に明記されました。私たちが直面しているリスクは、リーマン・ショックのような金融不安とは全く異なります。しかし、私たちはあの経験から学ばなければなりません。2009年、世界経済はマイナス成長となりましたが、2008年時点ではIMF(国際通貨基金)も4%近いプラス成長を予測するなど、そのリスクは十分に認識されていませんでした。プラス4%の成長予測が一気にマイナス成長になってしまう。これがリスクが現実のものとなったときの危機の恐ろしさです。私は世界経済の将来を決して悲観しているわけではありません。しかし、リスクには備えなければならない。今そこにあるリスクを正しく認識し、危機に陥ることを回避するため、しっかりと手を打つべきだと考えます。G7による合意、共通のリスク認識のもとに日本として構造改革の加速や財政出動などあらゆる政策を総動員してまいります。そうした中で、内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきであると、そう判断いたしました。いつまで延期するかについてお話しします。中国などにおいては、過剰設備や不良債権の問題など構造的課題への対応の遅れが指摘されており、新興国経済の回復には時間がかかる可能性があります。世界的な需要の低迷が長期化することも懸念されることから、できる限り長く、延期すべきだとも考えました。しかし、私は財政再建の旗を降ろしません。わが国への国際的な信認を確保しなければならない。そして社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たす。安倍内閣のこうした立場は揺るぎないものです。2020年度の財政健全化目標はしっかりと堅持します。そのため、ギリギリのタイミングである2019年10月には消費税率を10%へ引き上げることとし、30カ月延期することとします。その際、軽減税率を導入します。3年間のアベノミクスによって、国、地方あわせて税収は21兆円増えました。2年半の延期によって、その間にアベノミクスをもう一段加速する。そのことで、さらなる税収アップを確保し、2020年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を目指す考えです」
「1年半前、衆院を解散するにあたって、この場所で、私は消費税率の10%への引き上げについて『再び延期することはない』とはっきり断言しました。『リーマン・ショック級や東日本大震災級の事態が発生しない限り、予定通り来年4月から10%に引き上げる』と繰り返し約束してまいりました。世界経済は今、大きなリスクに直面しています。しかし、率直に申し上げて、現時点でリーマン・ショック級の事態は発生していない。それが事実です。熊本地震を大震災級だとして、再延期の理由にするつもりももちろんありません。そうした政治利用はひたすら復興に向かって頑張っている被災者の皆さんに大変失礼なことです」
「今回、再延期するという私の判断は、これまでのお約束と異なる『新しい判断』です。公約違反ではないかとの批判があることも真摯に受け止めています。国民生活に大きな影響を与える税制で、これまで約束してきたことと異なる判断を行うのであれば、まさに税制こそ民主主義です。まず国民の皆様の審判を仰いでから実行すべきです。信なくば立たず。国民の信頼と協力なくして政治は成り立ちません。新しい判断について国政選挙であるこの参院選を通して国民の信を問いたいと思います。国民の信を問う以上、目指すのは、連立与党で改選議席(121議席)の過半数の獲得です。これは改選前の現有議席を上回る高い目標でもあります。さらに、野党は政策の違いを棚上げしてまで、選挙目当てで候補の一本化を進めています。大変厳しい選挙戦となる。それは覚悟の上です。しかし、この選挙でしっかりと自民党、公明党の与党で過半数という国民の信任を得た上で、(消費税増税の再延期)関連法案を秋の臨時国会に提出し、アベノミクスを一層加速させていく、その決意です」
「9年前、私は総理大臣として夏の参院選で大敗し、その後、総理の職を辞することとなりました。あのときの挫折は今も私の胸に深く刻み込まれています。困難な政策であればあるほど国民的な理解を得て、国民とともに前に進むほかに道はない。これがあのときの反省であります。その反省の上に、この3年あまり国政に邁進してまいりました。4年前の衆院選、3年前の参院選、1年半前の衆院選。国民の皆様から大きな力をいただいてアベノミクスを加速することができました。その結果、世の中の雰囲気は大きく変わったことは事実です。まだまだ道なかばではありますが、雇用は確実に増え、所得も確実に上がっています。この道を力強く前に進んでいこうではありませんか。4年前のあの低迷した時代に後戻りさせてはなりません。世界経済がリスクに直面する今、ロケットが大気圏から脱出するときの様に、アベノミクスのエンジンを最大限にふかさなければなりません。デフレからの脱出速度をさらに上げていかなければなりません。そのためにはもう一度、国民の皆様の力が必要です。国民の皆様のご理解とご支持をお願いします」 
 
質疑応答
消費税増税について「平成29年4月に確実に10%に引き上げる」と明言したこととの整合性、実現できなかった政治的責任をどう考えるか。また、平成31年10月まで再延期したが、自身の自民党総裁任期を超える設定で「無責任だ」との指摘がある。さらに社会保障などの安定財源をどう確保するのか
「冒頭に申し上げたように、中国など新興国の経済が落ち込んでいます。世界経済において需要の低迷、成長の減速が懸念されています。伊勢志摩の地で、日本が議長国として開いたサミットで、この世界経済の状況、リスクについて認識を共有したわけです。新たな危機に陥ることを回避するため、全ての政策対応を行うことで合意し、首脳宣言に明記されたわけです。G7(先進7カ国)と協力して、日本としても構造改革の加速や財政出動などあらゆる施策を総動員しなければなりません。それが議長国として首脳宣言を作成するリーダーシップを取った国の責任だろうと思います。私たちが進めてきた『三本の矢』の政策をG7で進めていく。この認識を共有する中で、議論を主導した議長国・日本としての責任があると思います」
「先ほども申し上げたが、確かにリーマン・ショック級のことは起こっていません。大震災も起こっていないことは事実です。ですから新しい判断をした以上、国民の声をきかなければならないわけです。税こそ民主主義。この考え方は一貫しています。国民生活に大きな影響をあたえる税制で新しい判断をするのであれば、ご指摘のような『その判断は前の判断と違うではないか』というご批判も受け止めて、国民の皆さんの審判を受けた上で、秋の臨時国会にそのための法案を出したいと考えています。民主主義とは何か。それは選挙を通じて国民の声を聴くことです。この政治の責任、国民の声を聴くことで、われわれはしっかり選挙を勝ち抜いて、責任を果たしていきたいと考えています。国政選挙である参院選を通じて国民の信を問いたいと考えた次第です。そして、この選挙でしっかりと過半数という国民の信任を得た上で、31年10月からの引き上げを明記した関連法案を秋の臨時国会で成立させたい。加えて総合的かつ大胆な経済対策を講じ、アベノミクスを一層加速させていく決意です。先般の伊勢志摩サミットの合意にもとづき、G7諸国と力をあわせて世界経済が直面するリスクに立ち向かうことで、31年10月からの引き上げが可能な環境を整えるべく力を尽くしてまいりま」
「『総裁任期を超えるではないか』というご指摘がありました。今回は経済の再生のため、アベノミクスを進めていく上で、負荷をかけずにそのエンジンを最大限に回転させ、最大限にふかしていくことが必要です。脱出速度を得て、デフレから脱却していく。まさにリスクに直面するG7で経済の牽引役を果たしていきたい。先ほど申し上げたように、(消費税増税の再延期期間を)できるだけ延ばすことも考えたわけですが、同時に財政再建という旗を降ろすつもりはありません。その中で、最適なタイミングが31年10月という判断に至ったわけです。自民党の総裁任期で判断してはならないと判断したわけです。これを間違えれば、また20年間続いたデフレに戻る。どんなに頑張ったって仕事がない、という状況に戻ってしまう。どんなに頑張ったって給料が上がらない、という状況に戻ってしまう。それを単に私の任期がこうだから、この中におさめるという判断は、私はしませんでした。経済的に正しいという判断を選んだわけです。任期によって判断を歪めてはならない。当然、そういうご批判はあるだろうと思いました。しかし、例えば、2020年のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化目標というのも私の任期を超えている目標ですが、この目標にもしっかりとかなう判断をしたところです。この実現に向けた道筋を私の任期中にしっかりと見せていく、それが私の果たしていく責任であると考えたところです」
「社会保障については給付と負担のバランスを考えれば、10%への引き上げをする以上、その間、引き上げた場合と同じことを行うことはできないことは、ご理解いただきたいと思います。民進党のように赤字国債を発行して給付を全て賄う、社会保障費を全て賄うということは、私は無責任だと思います。赤字国債を財源に社会保障の充実を行うような無責任なことは、私たちは行いません。自民党と公明党の連立与党は、そういうことは絶対にしない。まず明確に申し上げておきたいと思います。安倍政権のもとで、子育て世帯を支援していく。この決意は揺らぎません。保育の受け皿50万人分の確保の来年度までの達成に向け、約束通り実施します。また、介護離職ゼロに向けた介護の受け皿50万人分の整備もスケジュール通り確実に進めていきます。さらに保育士、介護職員の処遇改善など1億総活躍プランに関する施策は、アベノミクスの果実の活用も含め財源を確保して優先して実施していく考えです。この3年半のアベノミクスによって、国と地方あわせて税収は21兆円増加しました。私がこの経済政策を進めたとき、税収がそれで増えていくと言った人は少ないと思います。随分、批判にさらされました。批判がありましたが、われわれはアベノミクスを進めた結果、国、地方あわせて税収が21兆円増えたわけであります。ですから、私たちの政策が失敗したとはいえないと思います。民進党が『失敗した』と言うのであれば、共産党と一緒になって代わりの政策を示していただきたい。アベノミクスを一段と加速することで、税収を一段と増やしていきたい。その果実も使って可能な限り社会保障を充実させてまいります。優先順位を付けながら、今後の予算編成の中で最大限努力をしていく考えです。」
−−参院選の日程はどう考えるか。消費税増税を再延期する決断にあたり、衆参同日選で国民の審判を仰ぐ考えはなかったのか。次の衆院選のタイミングをどう考えているのか
「まず、参院選の投開票日は7月10日とします。公示日は沖縄の慰霊の日に配慮して6月22日といたします。明日(2日)閣議決定します。そして、参院選の最大の争点は「アベノミクスを力強く前に進めていくのか、後戻りするのか」。これを決める選挙だと考えます。国民の信を問う選挙ですから、改選議席の過半数を自民党、公明党の与党で獲得すべく全力で選挙戦を戦っていく決意です」
「衆参同日選についてですが、先ほど『国民の信を問いたい』と申し上げましたが、今週に入って野党から内閣不信任決議案が提出されることに至りました。内閣不信任案ですから『内閣は総辞職せよ』ということだろう。当然、民進党の岡田克也代表はどういうわけかおっしゃらなかったんですが、解散を求める意味もあったのかなあ、と思います。そのときに、衆院を解散することについて、私の頭の中をよぎったことは否定しません。しかし、熊本地震の被災地で今も多くの方々が避難生活を強いられている中で、参院選を行うだけでも、その準備でも大変なご苦労をおかけしている状況です。こうしたことを考慮し、『同じ国政選挙である参院選で国民の信を問いたい』と判断したところです。全体の過半数であれば、前回(の参院選で)勝利した分の大きなプラスがあります。信を問うのであればそれは入れず、今回の改選議席の過半数。これは厳しい戦いになりますが、それを目標として定め、勝ち抜き、信任を得たい。そう決意したところです。そして私の任期は平成30年12月ではなく、9月までで、この任期の間に選挙をやるかどうか、今の段階では「解散の『か』の字もない」ということです」
今回の参院選で改憲勢力で3分の2議席を目指すのか。3分の2を獲得した場合、任期中に憲法改正の発議を目指すのか
「憲法改正は衆院、参院それぞれ3分の2… そう簡単ではないことは従来、申し上げていますし、例えば、自民党、公明党の与党で3分の2をとることは、それぞれとることは私は不可能であると申し上げてきました。憲法審査会で議論を進める中で『それだったら賛成しましょう』『ここをこう修文すれば議員が増えていく』ということになって、初めてその可能性が見えてくるわけです。われわれは憲法改正草案を示しています。『これをやりますから、3分の2になるために賛成する人は誰ですか』ということを募っているのではありません。そう簡単なことではありませんし、いわば決意として申し上げている。選挙の勝負というのは常に、過半をとった勢力が、例えば、衆院においては選挙で過半をとった勢力が政権を担います。ですから、そこが分岐点であるのは当然のことです。つまり、勝負の起点はどこかと言われれば、過半数だろうと思います。今度、消費税について、前回申し上げたことと違う新しいことを申し上げている中で、信を問うということを申し上げなければ、私は参院全体で、自民党、公明党で過半数を維持することを目標としました。今回はそうではない。まさにこの国政選挙で信を問いたいと申し上げていますから、過半数を改選議席の中でとるという厳しい目標を掲げたわけです」
伊勢志摩サミットでは中間層が経済的な利益を得られる財政出動や投資を行うべきだという認識を共有したが、個人消費の伸びに力強さがないことに対して批判があるが、どう受け止めるか。また消費増税の延期と合わせて中間層を分厚くするための経済対策を講じる考えは
「サミットでも、中間層の重要性について議論がありました。私からも『社会の安定性を確保していくためにも中間層が重要である』という趣旨のこと申し上げた。その考え方のもとで、われわれも今まで政策を進めてまいりました。三本の矢でもはやデフレではないという状況を作り出すことができました。例えば、非正規で働く方々の正社員化や最低賃金を3年連続で上げたことによってパートの時給が過去最高になったと先ほど申し上げました。今後も中間層が将来に期待を持てるようにするために財政支出や民間投資が重要だという指摘がありました。まさにその通りで、そのためにわれわれは1億総活躍社会の実現を目標に掲げて、教育費の負担軽減や子育て、介護と仕事を両立できる環境整備に力を尽くしているわけです。中間層が大切である、そのために1億総活躍社会を進めている、その中のエッセンスについて、G7の合意として書き込んでいくべきだということが合意されたわけですが、そのG7の合意も踏まえて、同一労働同一賃金の実現による非正規雇用のさらなる処遇改善や保育士、介護士の処遇改善、保育、介護の受け皿の整備や奨学金制度のさらなる拡充など1億総活躍社会の実現に向けた施策を進めていきたい。1億総活躍社会というのはみんなが活躍できる社会です。だからこそ、その結果は間違いなくそれを進めていけば中間層はより厚くなり、いわば欧米で起こっている一部の人たちに富が集中する、一部の人にしか機会がないという社会ではなく、みんなにチャンスがある社会をつくっていく、みんなに機会がある社会をつくっていく、みんながそれぞれ才能を生かしていくことができる社会をつくっていくことが、われわれが進めている1億総活躍社会であり、まさに今回の伊勢志摩サミットで指摘された議論はわれわれが進めてきた議論、やるべき政策と方向性を一致するものであったと、このように思っています」 
 
 
 
 

 
2016/6