消える地方自治体

消滅 消える都市
消滅 消える地方自治体

自治体破れて山河あり
 


消滅可能性都市
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 

 
2016/5
 
消滅可能性都市のウソ
 消えるのは地方ではなく「地方自治体」である
今年、増田寛也氏の「消滅可能性都市」のレポートが世間を騒がしています。中央公論新社からも「地方消滅」なるセンセーショナルな新書本が、近日出されるそうです。しかしながら、この論自体が大変乱暴な意見であると共に、その処方箋そのものは極めて危険である。ますます地方を衰退させかねないので警告します。
このレポートが極めて世の中をミスリードしようとしているのは、2点あります。
都市そのものは消えない (今の)自治体が消える
「自治体破れて山河あり」
まずこの消滅可能性都市というのは、都市そのものが消えるということではない、ということです。このレポートで消えるといっているのは、女性が減少し出生数が減っていき、人口が1万人を切ると自治体経営そのものが成り立たなくなる、ということを言っているのです。
つまりなくなるのは地方そのものではなく、今の単位のままの地方自治法であって、それは人口減少社会において当たり前な話で、むしろそのために行政改革があるわけです。従来の行政単位のやり方を捨てて、広域行政でサービスを回していく、複数自治体横断で居住・業務両面での立地適正化を図るという対応をしないといけないという、現実に沿って破綻しない社会を実現する行政議論をするのが当然です。このまま行くと自治体は破綻して行政サービスはできなくなりますよ、という何も自分達が変わるという前提がないのが驚愕します。「自治体破れて山河あり」。今の自治体を変えて、変化する社会に対応するほうが現実的です。
処方箋がもはや夢であり政策ではない
もう1つは、政府を批判している体でありながら、処方箋がこれまで何度も政府がやってきた話を焼きまわししているだけという点です。
「東京一極集中をやめろ」というのも幾度と無く叫ばれた言葉です。都市機能を分散移転するとかアイデアはいくらでも出てきますが、東京から奪うという発想事態がイケてません。地方が伸びて、東京以上に魅力的になる方策を独自に考えるのではなく、東京から何かをぶんどろうという発想です。伝統的な地方分権的発想と同じで、権力を地方に戻すという、小さな箱のなかの争いです。
そもそも地方自治体単位での社会減(東京とかにとられる発想からすれば、社会増減の指摘だろう)は、都道府県単位でいえば遠野昔から発生しています。以下の一覧は、総務省統計局統計調査部国勢統計課「国勢調査最終報告書 日本の人口」からひっぱってきた都道府県別人口増減に関する資料です。赤くなっているのが減少している数字のところです。社会減(流入する人口より流出する人口のほうが上回っている)に至っては、戦前から真っ赤っ赤というところが少なくありません。今更これを変えるという案そのものが非現実的で、べき論と曖昧な見込みだけで巨額の財政支出をしたら、むしろ地方に沢山のインフラや医療福祉整備だけがなされて、その財政的重圧で地方の公共サービスが劣化し、さらに人が(特に若者が)住まなくなる可能性のほうが現実的です。そして、それらのツケは僕らの世代が払うことになるのです。
自治体のために人は住んでいるのではない
さらに、「地方に若者が戻るようにせよ」「子供を産めよ増やせよ」といったところで、人々はより好条件の職を求めたり、より良い教育を求めたり、より良い都市生活を求めた上で、東京を選択しているわけです。2000年代の10年だけでも首都圏では100万人クラスの社会増があるわけです。政令市一個分の人口が地方から首都圏に集まっているのです。それだけ地方に仕事も、教育も生活も相対的に見てないから、多くの人達は移動しているわけです。結局、厳しい言い方をすれば、地方自治体を主語とするこのレポートに則れば、これまでの地方自治体は地方の若者たちにとって何の魅力もないことしかしてこなかった、残るに値しない、可能性のない地域になっていたのではないでしょうかね。結局仕事作ると言っても、また公共事業を増加させ、公共資産を無駄に増加させてその維持費で将来の自治体がひいひい言うようになるだけでしょう。戦後高度経済成長期の公共ストック問題を今抱えてこんだけ朽ちるインフラ問題とかいっているのですから。ストックを作る間だけの仕事に自分の未来を託しませんよ。普通に。若者たちは馬鹿ではありません。そんなことわかっているからどんどん地方を抜け、政治・行政より相対的に経済が強い大都市へと移動し、戻りもしないのです。
その人達を地方に戻して、子供を産めよ育てよ・・・。それは国策だ。そういうこといっているから人が抜けて自分なりの人生を選択しているのではないでしょうか。若者たちは子供を産み育てるマシーンではありませんよ。どういう見方しているのでしょう。ほんと。
最後に外国からの移民政策については「高度人材に限る」とか言っていますが、そんなのは世界の高度人材の人たちが選択する側です。高度人材なんて世界各国が来て欲しいと思う人材なわけで、売り手市場です。買い手側である日本が「高度人材じゃないとあかんわ」とかいっている段階で、勘違いした上から目線も甚だしい。
既に政策のヒントは地方で起きている
今までどおりやってたら地方自治体が潰れるという当たり前なことを「地方消滅」と称して危機感を煽り、結局は「国がどうにかしろ」「国難だから若者どうにかしろ」というご意見を見るに、全くもってこんな政策打たれたらますます地方から若者もいなくなるなと思わされるところです。
しかしもう政策のヒントは地方で起きています。それをみれば色々なことがわかります。
乱雑な拡大した公共施設を集約し、その集約した施設開発は公共事業ではなく、民間開発事業で実施させて、公共床はテナントとして家賃を支払って入るという方式に変えられるようにする。行政からの支援についても、補助金・交付金ではなく、金融支援策に切り替える。民間施設も同居して公共施設にくる年間のべ数万人〜数十万の人たちを対象にした民間商業・サービスを考えて、持続的な仕事をつくる。既存の使われていない空き家などのストックをリノベーションして住める、職場を作れる、都市型産業の形成に向けた政策を考えて、持続的な仕事にしていく。
従来のなんでも税金でやるという地方の考え方を改め、経済開発的なアプローチを徹底しなければ、もちないわけです。さらに居住・業務に関しても立地適正化を図って効率化をし、行政サービスも自治体単位で実行せずに複数の自治体が相乗りする共同行政サービスの組合や会社をもっと効率的に走らせて、少ない財源でもサービスを保持できる方策を考えるのが当然でしょう。
もっとディテールをちゃんとつめなければ、全く話にならないわけですが、方向性そのものがこのレポートは全く今の実情、これからの未来に適合していません。むしろいま地方で成果をあげているケースをみればこれらの政策的ヒントはあると思うんですが、関係者のお耳にはどうしても届かないようです。
何より「べき論」ではなく、そのべき論を現実に導入・実現していく方策がなければ言って終わりだから、僕らは悩んで色々と全国各地で仲間と共にチャレンジし、小さな成果が出たら他の地域でも試したりをしている。自分達の身銭をきって。リスクを負って。
高みの見物でウソの地方消滅を流布するのはやめて頂きたい。
とはいえ、一市民にとっては、くだらない自治体の取り組みをみたら、その自治体を自らが変えることではなく、自治体を替える(自分が違うエリアに移住する)ほうがよっぽど簡単なのです。だからこそ人はダイナミックに移動しているのだと僕は思います。 
人口減の衝撃、896の自治体が消える
増田寛也元総務相が説く「不都合な真実」 2014/9
第2次安倍改造内閣の金看板になった地方創生。その背景には「896の自治体が人口減で消滅しかねない」ことがあるという。『地方消滅』(中公新書)を書いた増田寛也・元総務相に話を聞いた。
──サブタイトルに「東京一極集中が招く人口急減」とあります。
人口減少は、とかく出生率や少子化の問題として議論されることが多い。その観点に加えて、東京一極集中が人口減少を加速させていて、国土政策が大いに関係していることに気づいてもらいたかった。そこで、副題に強いメッセージ性を込め、東京一極集中は極点社会化を招いてしまうと警告を発した。
極点社会=東京だけが残る社会
──極点社会化?
東京だけが一極となり、東京だけが残る社会だ。そこには二つの意味があって、東京だけに人が集まる特異さ、異様さ、しかも「人口のブラックホール現象」を招いて、若者を集めのみ込んだうえで、東京での出産・子育ては厳しいがゆえに、結局東京自体も消滅していくことになる。その結果、日本は国全体としても消滅に向かってしまう。その状況を表現している。マイナスイメージを植え付けるつもりはないが、人口動態をあえてこういう表現にした。
──東京には大規模災害リスクもあります。
特に心配されるのは首都圏直下型地震だ。私は昨年末に報告をまとめた検討委員会の委員長をしていた。その報告で被害リスクが95兆円と試算したが、これは一次的な被害額。関連することを考え合わせればさらに被害は大きくなる。しかも、地震学者が30年以内に70%の確率で首都直下型地震は起きる可能性があるとしている。今のままで東京にだけあらゆる機能を集めておくのではなく、企業の事業継続計画(BCP)のようなもので作り替えていかなければならない。災害の面からも東京一極集中は問題なのだ。
──この本のデータ分析では東京都豊島区も「消滅可能性」のある自治体になっています。
今のままなら東京でも、たとえば豊島区は2040年には消滅しかねない。豊島区には、埼玉県からの社会的移動があればこそ人口を確保できてきたが、そうもいかなくなる。今回の分析は若年女性(20〜39歳)人口の減少率(10年→40年)において、その率が5割を超える推計の自治体を「消滅可能性都市」としたものだ。日本では生まれる子どもの95%をこの若年女性層が産んでいる。
──自治体ごとの2040年の姿が一覧できます。
岩手県知事の時代にいちばん欲しかったのが、市町村ごとのこの種のデータだった。国全体で人口が減るといわれ、県レベルの予測もできることはできるが、それに対して制度設計をどうするかとなったときに、せめて市町村ごとの減り方の見当がつかないと、住民の皆さんになかなか納得してもらえない。
地域ごとに特徴がある
──市町村によって、増減はもちろん一律ではありません。
岩手県でいえば盛岡市には周辺の市町村から若い人が集まる。盛岡市も人口は減るが、近隣県都の秋田市や青森市とは違って消滅可能性都市には入っていない。同じ県都でも、また同じ県内の市町村でもそれぞれ様子が異なる。だから、どういう人口推計になるのか、粗い数字でも欲しいと思っていた。昨年3月、政府の研究機関によって市町村ごとの推計が出されたので、これを私の属する日本創成会議なりにリアルな形にして、東京一極集中は止まらないという前提なども取り込んで、40年時点での姿を描いてみた。
──もともと出生率には地域差があります。
人口学者に聞くと、九州が高いのは結婚時期が早いからと。結婚時期がなぜ早いのか、この理由を追究しないといけないが、8割程度が消滅可能性都市に当てはまる北海道、東北地方は近年時期が遅くなり出生率も低い。たとえば北海道は札幌市内に若い女性が集まっているが、男性は道外に出て少なくなる。これに対して東北は、特に農村部に男性はけっこういるが、若い女性が少ない。こういう具合に結婚・出産の適齢と思われる年代層のいる割合は地域でだいぶ違う。
──政策が5年遅れると、人口が全国で300万減るペースになるのですか。
どこで減り、それが積み上がっての300万人なのかをはっきりさせたい。そこがカギだ。現状認識の差が対策を遅らせたり、間違った方向に行かせたりする。人口が増える自治体はもう本当にわずかだ。てきめんにあおりを受ける社会保障が全滅することのない形にしなければいけない。
──来年は国勢調査の年です。
人口の減った現実がはっきり見えてくる。また地域間のバランスの崩れもはっきり見える。東京へ人が集まる状況はまだ変わらず、地方がそうとう減る形だろう。
──悲観論でもなく楽観論でもなく対応せよ、と。
人口が減るのは間違いない。しかしこの程度のことでうちひしがれていても意味がない。本当にやらなければいけないことは何なのか。とにかくデータを集めて、住民がどう動いているか移動表を作る。年齢別にどうなっているのかもはっきりさせる。まず社会増減、自然増減の実態をつぶさに把握することだ。西日本の県や市町村では、沖縄県や鹿児島県あたりで自然増が続くようなところもある。しかし全国的には自然減が圧倒的に多くなってくる。その理由が何なのか。いま起きていること、これから起きそうなことを具体的に考えて対策を取る。それも一つの市町村だけでは対策は完結しなくなる。たとえば自分の自治体だけで若い人が外に出ていかないような仕事場をつくるのには限度がある。機能分担するところまで近隣自治体が連携しなければならなくなる。あれやこれや、試み挑戦すべき対策メニューはたくさんある。
社会保障制度の見直しが必要
──社会保障への影響も大きい。
人口減少が町村部で先行的に起きてくれば、介護保険の将来の姿は不安に包まれたものになる。いずれは市町村ごとの介護保険のあり方を抜本的に変えていかなければいけなくなり、社会保障の制度設計のし直しが始まる。人口急減は、「一人で一人を肩車する」ような社会保障制度さえ無理にする。社会保障はもろに影響を受けてしまう。
──政府が新たに創設した「まち・ひと・しごと創生本部」の役割は大きいわけですね。
鳥取県出身の適役を地方創生担当相に迎えて大いに期待している。有識者懇談会においても真剣な議論が始まっている。  
消滅可能性都市
少子化と人口減少が止まらず、存続が危ぶまれると指摘された896市区町村(全国の49・8%)。昨年5月に民間研究機関「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)が発表した。2010年からの30年間で、20〜39歳の女性の人口が5割以上減少することが指標。県内では平生町のほか、萩や長門、美祢各市、周防大島、上関、阿武各町の3市4町が該当する。

少子化の進行に伴う人口減少によって、存続が困難になると予測されている自治体。「日本創成会議」人口減少問題検討分科会が、2040年までに全国約1800市町村のうち約半数(896市町村)が消滅する恐れがある、と発表した(14年5月)。10年の国勢調査を基にした試算で、40年時点に20〜39歳の女性人口が半減する自治体を「消滅可能性都市」と見なしている。同時点までに人口1万人を切る523の自治体は、とりわけ消滅の危険性が高いという。「日本創成会議」座長・増田寛也が試算・発表したことから、通称「増田レポート」とも呼ばれる。
都道府県別では、青森・岩手・秋田・山形・島根の5県は8割以上の市町村が該当し、特に秋田県は大潟村を除く全自治体に消滅の危機があるという。人口が多い首都圏も例外ではなく、東京23区では豊島区、神奈川県では三浦市(他8自治体)、大阪市では中央区(他4区)なども「消滅可能性都市」にリストアップされている。なかでも、東京都は女性の出生率が低く、また地方都市の人口減少に伴い若年層の流入も減ることから、急激な高齢化による衰退が指摘されている。
このように「増田レポート」は、具体的な市町村名も発表したため、該当する自治体には大きな衝撃となった。一方、出産適齢期の女性人口の推移による分析で短絡すぎること、11年の東日本大震災をきっかけに進んでいる「ふるさと回帰」「田園回帰」の流れが加味されていないことなどから、推計・解釈自体に問題があるという批判も多い。なお、「消滅可能性都市」は、14年のユーキャン新語・流行語大賞の候補にもなった。

全国の市区町村別に2010年(平成22)から30年間の人口の移動を推計した場合、行政や社会保障の維持、雇用の確保などが困難になるとみられる自治体のこと。民間の有識者でつくる政策発信組織である日本創成会議の人口減少問題検討分科会が「人口再生産力に着目した市区町村別将来推計人口」をもとに試算し、2014年5月に少子化対策の提言とあわせて公表した。
出産可能年齢の95%にあたる若年女性人口(20〜39歳)を、人口の再生産力を中心的に担う層ととらえ、その若年女性人口が減少し続ける場合、人口の再生産力も低下し続け、総人口も減少する、というのが基本的な考え方である。これに基づき、人口移動が2010年から2015年の水準(推計)で続いた場合、地方から大都市圏への人口の流出が出生数を上回るため、多くの地方都市で人口減少が続き、2040年までに若年女性人口が5割以下に減少すると予測。試算では、政令指定都市の行政区を含む全国1800市区町村のうち、49.8%にあたる896自治体が消滅する可能性が高いという結果が出た。この数は、これまで国が試算していた危機的な自治体数373の倍以上の数にのぼっている。都道府県別では、青森、岩手、秋田、山形、島根の5県で若年女性人口の減少が8割以上にのぼっており、若年女性の人口が5割以上減少するとみられる自治体は24道県となった。
なお、この試算は国立社会保障・人口問題研究所が2013年3月に集計した人口推計データを基に行われたもので、福島県については、2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故の影響のため、人口の動向、推移の見通しが困難なことから市町村別人口推計は行われていない。  
「消滅自治体」は恐くない  
「消滅自治体」という言葉が日本中に衝撃を与えています。うちの地域は消滅するのか、と驚かれた人たちも多いでしょう。日本創成会議から発表された資料では、20歳〜39歳の若年女性の人口をキーファクターとしており、2040年までに若年女性の人口が半数以下となる地域を「消滅自治体」として定義しています。(PDF資料1:人口再生産力に着目した市区町村別将来推計人口について)
「消滅自治体」の人口規模
実際に消滅自治体のデータを詳しく見ていきましょう。(PDF資料2-1:全国市区町村別「20〜39歳女性」の将来推計人口)自治体の規模別に若年女性減少率を見てみると、人口の大きな自治体はだいたい-20〜40%のところに収束していく一方で、人口が少ない自治体にはプラスのところから-80%に達するところまで、様々な状況があることが分かります。
つまり、小規模な自治体においては何らかの地域環境や独自の施策によって、若年女性の増減に影響が出ていることが予想できます。そして、それらの要素は「消滅自治体」になるかどうかを左右する要素と言えるのではないでしょうか。
これら「消滅しない自治体」と「先端消滅自治体」のそれぞれの特徴を分析していくことで、若年女性が住みやすく子育てしやすい地域環境を明らかにしていきたいと考えております。もちろん現時点では、データを分析してそれぞれの自治体が持つ特徴について仮説を並べただけであり、それらを検証していくのは今後の研究テーマとなります。早速、「消滅しない自治体」ランキングを見ていきましょう。
「消滅しない自治体」ランキング
○ 石川県川北町(+10.9%)⇒年少人口19.5%に目標設定、3万円家賃補助
○ 秋田県大潟村(+8.0%)⇒干拓の村で、大規模専業農家が多い
○ 富山県舟橋村(+7.9%)⇒富山大と「人口問題プロジェクト」実施
○ 沖縄県北大東村(+6.7%)⇒EEZを抱える重要な離島で建設需要が多い
○ 横浜市都筑区(+1.1%)⇒港北ニュータウンなど、新興住宅地が多い
○ 沖縄県渡名喜村(±0%)⇒本島近くの離島、高校まで医療費無料
○ 福岡県粕屋町(‐0.3%)⇒福岡市のベッドタウンで交通の便が良し
○ 沖縄県多良間村(‐1.1%)⇒サンゴ礁の島でダイビングや肉牛生産が盛ん
○ 沖縄県宜野座村(‐1.6%)⇒米軍演習場があり、プロ野球キャンプも有名
○ 鳥取県日吉津村(‐2.4%)⇒米子市に囲まれており、イオンが中心にある
「消滅しない自治体」は何が違うのか?
上記「消滅しない自治体」ランキングを概観すると、1合併せず小規模自治体 2独自の地域優位性がある 3安定した仕事が多数存在 4住宅取得のしやすさ 5教育・医療等子育て優遇 といった要因によって、子どもを生んで育てやすい地域環境が存在することで出生率が上がり、自然増加していることが理解できます。
逆説的に言えば、独自の経済的自立と自治を図れるだけの地域経済基盤と地勢的優位性が存在しているからこそ、合併せずに小規模自治体として独自路線を歩むことができたとも言えます。そしてオリジナルな施策によって地域環境を整備していくことで、出生率が向上していったということでしょう。
続いて、真っ先に消滅するであろうと予測される「先端消滅自治体」について、同じくランキングで並べてみました。
「先端消滅自治体」ランキング
○ 徳島県神山町(‐72.4%)⇒「創造的過疎」を掲げ、社会増加に転じる
○ 鳥取県若桜町(‐72.4%)⇒交流人口拡大のための街並み再整備
○ 北海道夕張市(‐72.4%)⇒全国初の破たん自治体、近年の人口は安定
○ 京都府笠置町(‐72.9%)⇒京都市南部の山間地、文化財多数
○ 奈良県曽爾村(‐73.1%)⇒日本で最も美しい村に加盟、名水百選
○ 京都府南山城村(‐73.8%)⇒定住促進30万円、全戸光ファイバー完備
○ 奈良県吉野町(‐74.0%)⇒世界遺産を抱え、桜の名所など観光強化
○ 青森県今別町(‐76.2%)⇒北海道新幹線の駅が開業予定
○ 奈良県川上村(‐79.5%)⇒川上住まいるネット(空き家バンク)が盛ん
○ 群馬県南牧村(‐80.8%)⇒高齢化日本一で田舎暮らし体験をアピール
「先端消滅自治体」に見る、危機感の共有
この「先端消滅自治体」ランキングを見て、何を感じましたか?徳島県神山町は、アーティストインレジデンスやIT企業のサテライトオフィス誘致で知られ、2011年にはついに転入者が転出者を上回る社会増加となった、今最も注目を集めている過疎地域です。同様に、真っ先に消滅するであろうと予測された各地域は、それぞれユニークな取組みがすでに行なわれています。
これら「先端消滅自治体」における特徴は、 1人口減少を与件として受け入れ 2高齢化による自然減よりも交流・移住による社会増を目指す 3地域住民にも危機感を共有 4地域独自の魅力を深掘りしていく取組み といった、まったく過疎を諦めていない粘り強さを感じることができます。
結論 / 「消滅自治体」は問題提起に過ぎない
「消滅自治体」に関するデータを分析して、各自治体の取組みを概観してみると、自然増減がスコアに対する大きな要因となっていることが理解できます。一方で移住施策などを進めて社会増加を目指す自治体のスコアが悪くなる傾向となっています。
そしてどちらかといえば出生率や社会保障といった自然増加に関する要因は国家政策であり、移住や雇用創出といった社会増加に関する要因は自治体独自の施策となるため、「消滅自治体」というカテゴライズで自治体が実施できることは実は少なくなっています。
「消滅自治体」というインパクトの強い言葉で、地域における人口動態という問題提起を行なうことには成功しましたが、各論での地域を見ていくと本来的な課題が見えなくなってしまう恐れがあります。
隠れ「消滅自治体」を探せ
また、平成の大合併などで政令都市などに吸収された旧町村においては、隠れ「消滅自治体」としてその動向が見えなくなってしまっている地域も存在しています。むしろ危機感が分からなくなってしまい、行政機関も遠くなって急激に過疎化が進んでいるエリアもあります。
「消滅自治体」として名指しされた地域は、実はユニークな取組みがすでに実践されており、危機感も住民に共有されているためにさほど問題ないと言えます。一方で大都市圏の中には、危機感の薄いまま一気に高齢化が進んだり、出生率が低く抑えられているエリアが偏在しています。
今後、この問題提起を受けて実際にどのように一つひとつの地域が対処し、一人ひとりの住民が行動すれば良いのか、具体的な地域の取組みを探っていくことで可視化を進めていきたいと考えております。引き続き、研究を進めていきます。