ニュースキャスターが消える

人気の ニュースキャスター 相次ぎ降板   
偶然です 
 
「しゃべるのが命」 
共通の個性 ちょっと辛めの政治・政策解説 
 


 
 

 

安倍政権の重圧か 各局批判キャスター相次ぎ交代  
テレビ各局の4月改編が少しずつオープンになっているが、目立つのは報道番組のキャスターの交代だ。テレビ朝日系「報道ステーション」の古舘伊知郎氏をはじめ、TBS系「NEWS23」の岸井成格氏と膳場貴子氏、そしてNHK「クローズアップ現代」の国谷裕子氏らが番組を去る。  
長年、放送界を取材してきたが、これほど同時に報道番組の顔が代わるというのは記憶にない。しかも、「視聴率の低迷」という番組改編の一般的な事情に組みしていないのも異例だ。先の3番組に共通しているのは、安倍政権とのあつれきだ。  
中でも岸井氏は、露骨な批判を受けた。政府与党が強引に国会を通した安全保障法制について、批判的なコメントを続けたところ、「放送法遵守を求める視聴者の会」が、産経新聞と読売新聞に全面広告を出稿した。報道が偏っていると、岸井氏1人を名指しで批判した。長年にわたってメディア界わいを取材してきたが、こんな個人を批判する広告も見たことはない。  
膳場氏も選挙特番で安倍首相ともめた。街の声の選別が意図的だと、生放送中に逆ギレされたことは記憶に新しい。国谷氏も、安保法制に関して、番組出演した菅官房長官に鋭い質問を繰り返したところ、後に、官邸からクレームを受けたと報じられた。  
この一連の流れの中で共通するのは、安倍政権の批判は許さないという、確固たる姿勢だ。報道の自由という民主主義の一丁目一番地への理解を示すこともなく、あくまでも、自分たちが行う政策は正しいという上から目線しか示さない。昭和の自民党の大物政治家を懐かしがっても仕方がないが、批判する報道に対して、その役割を認識して許容する、政治家としての度量の深さがあったように思う。  
それでいながら、安倍首相はメディアのトップとは仲良しだ。29日付の朝日新聞でも、池上彰氏がコラムで皮肉っぽく、「安部氏は誰と食事した?」と書いている。こんな蜜月ぶりをみせられると、このトップがいるメディアの記者の筆がゆるむのではないかと、心配せずにはいられない。もちろん、それが狙いなのかもしれないが。 
 
 

 

「NEWS23」 岸井成格 降板  
愕然とするようなニュースが飛び込んできた。TBSの看板ニュース番組「NEWS23」で、アンカーの岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)を降板させることが決まったというのだ。  
「TBS はすでに後任の人選に入っていて、内々に打診もしているようです。後任として名前が上がっているのは、朝日新聞特別編集委員の星浩氏。星氏は朝日では保守派寄りの政治部記者ですが、今年、朝日を定年になるので、退職後の就任をオファーしているようです。岸井さんが契約切れになる3月をめどに、交代させる方向で進めていると聞いていましたが、場合によってはもっと早まるかもしれません」(TBS関係者)  
この突然の人事の背景には、もちろん例の右派勢力による「NEWS23」と岸井攻撃がある。  
〈私達は、違法な報道を見逃しません〉──。今月14日の産経新聞、翌15日の読売新聞に、こんな異様なタイトルの全面の意見広告が掲載されたことをご存知の読者も多いだろう。  
この広告の出稿主は「放送法遵守を求める視聴者の会」なる聞いたこともない団体だが、呼びかけ人には、作曲家のすぎやまこういち氏や評論家の渡部昇一氏、SEALDsメンバーへの個人攻撃を行っていた経済評論家の上念司氏、ケント・ギルバート氏、事務局長には、安倍首相の復活のきっかけをつくった安倍ヨイショ本「約束の日 安倍晋三試論」(幻冬舎)の著者・小川榮太郎氏など、安倍政権応援団の極右人脈が名前を連ねている。  
そして、この広告が〈違法な報道〉と名指ししたのが、岸井氏と「NEWS23」だった。9月16日の同番組で岸井氏が「メディアとしても(安保法案の)廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」という発言を取り上げ、「放送法」第4条をもち出して〈岸井氏の発言は、この放送法第四条の規定に対する重大な違法行為〉としたのである。  
しかも、「放送法遵守を求める視聴者の会」は意見広告だけでなく、TBSと岸井氏、さらには総務省にまで公開質問状を送りつけたという。  
「これに、TBS幹部が真っ青になったようなんです。もともと、局内に岸井氏を交代させるという計画はあったようなんですが、この抗議を受けて、計画が一気に早まったようなんです」(前出・TBS関係者)  
しかし、この意見広告はそんな過剰に反応しなければならないものなのか。たしかに放送法第4条では放送事業者に対して《政治的に公平であること》を求めてはいるが、それは政権批判や特定の法律批判を禁ずるものではまったくない。  
また、岸井氏の「メディアとしても廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」という発言にしても、安保法制に単純に反対ということではなく、国民に対して説明不足のまま強行採決したことへの批判の延長線上に出てきたものだ。もしこれが政治的に不公平な発言というなら、たとえば、安倍政権の外交成果を評価するようなNHKやフジテレビ、日本テレビの報道もすべて放送法違反になってしまうだろう。  
しかも、これは別稿で検証するつもりだが、この意見広告を出した「放送法遵守を求める視聴者の会」自体が実体のよくわからない、きわめて政治的な意図をもった集団なのだ。  
どうしてこの程度のものに、TBSは神経質になっているのか。その背景には、官邸と自民党が「NEWS23」を標的にしているという問題がある。  
昨年末、安倍首相が「NEWS23」に生出演した際、街頭インタビューのVTRに「厳しい意見を意図的に選んでいる」と難癖をつけ、その後、自民党が在京テレビキー局に「報道圧力」文書を送りつけるという問題が起きたが、その後も自民党や官邸はさまざまな形で、同番組に圧力をかけ続けていた。  
安保法制審議中は例の文化芸術懇話会の弾圧発言が問題になったこともあって、一時、おさまっていたが、同法が成立した直後から、自民党「放送法の改正に関する小委員会」の佐藤勉委員長が、テレビの安保法制報道は問題だとして、「公平・公正・中立は壊れた。放送法も改正したほうがいい」と露骨な恫喝発言をするなど、再びTBS やテレビ朝日への圧力を強め始めた。  
実際、こうした動きに、TBSの武田信二社長が9月の定例会見で、安全保障関連法案をめぐる同局の一連の報道について、「弊社の報道が「一方に偏っていた」というご指摘があることも存じ上げているが、われわれは公平・公正に報道していると思っている」と弁明する事態になっている。  
「とくに、官邸と自民党が問題にしていたのが、岸井さんの発言だった。岸井さんはもともと政治部記者で、小泉政権時代は小泉改革を支持するなど、いわゆる毎日新聞でも保守色の強い記者だった。それが安保法制に厳しい姿勢を貫いたことで官邸や自民党は「裏切りだ」と怒り倍増だったようです。政治部を通じて「岸井をなんとかしろ」という声がTBS幹部に再三届けられたと聞いています。そんなところに、今回の岸井さんをバッシングする意見広告が出たことにより、TBSも動かざるを得なくなった。  
総務省にまで抗議、質問状を送りつけられたことで、TBS は非常にナーバスになっている。総務大臣はあの高市早苗さんですからね。これを口実にどんな圧力をかけられるかわからない。大事になる前に岸井さんを切ろうということでしょう」(全国紙政治部記者)  
いや、岸井氏だけでなく、これを機にメインキャスターの膳場貴子氏も降板させ、「NEWS23」を解体させる計画もあるといわれている。  
「膳場さんは今週から産休に入りましたが、そのまま復帰させずフェードアウトさせるという計画もあるようです。しかも、岸井さんの降板、星さんの起用とあわせて、放送時間を現在の1時間から短縮させ、番組自体もストレートニュースに変更するプランももち上がっています」(前出・TBS関係者)  
放送法を歪曲した今回の"報道圧力"である意見広告に、本来、TBSは強く抗議すべきである。それが何をか言わんや、相手の攻撃に屈し、ジャーナリズムとして当然の発言をしただけの岸井氏を降板させるとは──。以前、オウム真理教に絡んだビデオ事件の際に、筑紫哲也氏は「NEWS23」の番組内で「TBSはきょう、死んだに等しいと思います」と発言した。しかし、今度こそほんとうにTBSは「死のう」としているのではないか。圧力に萎縮し、服従すること。それは報道の自殺行為にほかならない。 

 

TBS系の報道番組「NEWS23」の岸井成格(しげただ)アンカー(71)が、3月末で降板することになった。  
TBSテレビの15日の発表によると、岸井氏は4月1日付で同局専属のスペシャルコメンテーターに就任。出演中の「サンデーモーニング」や報道番組、特別番組などに番組の枠を超えて随時出演し、政治・経済・国際など様々なニュースの背景や展望を解説・論評する。「NEWS23」も春から内容をリニューアルする方針で、岸井氏の後任などについては後日発表するという。  
岸井氏は毎日新聞特別編集委員で、2013年4月から「NEWS23」のアンカーを務めていた。岸井氏は「この度、スペシャルコメンテーターとして報道の第一線で発信を続けていくことになりました。その責任・使命の重さを自覚し、決意を新たにしています」とコメントしている。  
同局が社外ジャーナリストと専属のスペシャルコメンテーター契約を結ぶのは初めて。  
昨年、番組内で同氏が、「(安全保障関連法案に)メディアとしても廃案に向けて声をずっとあげ続けるべきだ」と発言したことについて、作曲家すぎやまこういちさんが代表呼びかけ人の「放送法遵守(じゅんしゅ)を求める視聴者の会」が「放送法に対する違反行為だ」とする意見広告を一部全国紙に出していた。  
TBS広報部は、今回の就任について「岸井氏の活躍の場を広げるため、以前から話し合いを進めていました。岸井氏の発言や意見広告とは全く関係ありません」としている。 

 

TBS系「NEWS23」でアンカーを務める岸井成格(しげただ)さん(71=毎日新聞特別編集委員)が来年3月いっぱいで同番組を降板することが24日、分かった。13年4月からニュース解説を担当し、メーンキャスターの膳場貴子アナ(40=産休中)を支えてきた。同局系「サンデーモーニング」のコメンテーターを長く務め、同局系の選挙特番の解説も務めてきた。9月16日放送の「NEWS23」で「安保法案は憲法違反であり、メディアとして廃案に向け、声を上げ続けるべき」と発言したことを、作曲家すぎやまこういち氏が代表を務める団体「放送法遵守(じゅんしゅ)を求める視聴者の会」(代表呼び掛け人)が放送法に違反するとして問題視。全国紙に意見広告を掲載し、公開質問状を出す騒ぎになっていた。岸井さんの降板についてTBS広報部は「番組の制作過程についてはお答えしていません」としている。 

 

TBSの看板報道番組「NEWS23」が、迷走を続けている。メインキャスターの膳場貴子アナ(40)が産休中に、ニュース解説を担当する岸井成格(しげただ)・毎日新聞特別編集委員(71)の降板情報……。悪い話ばかりが続き、これは何の呪いなのか――という声も上がっている。  
最初の“呪い”が、山本(現・中西)モナであることは、あらためて言うまでもない。細野豪志衆院議員との路チューを報じられ、抜擢から1カ月ももたずに番組を降りたのである。  
TBSの報道スタッフが言う。  
「その後、筑紫哲也さんに代わって、当時、共同通信社の編集局長だった後藤謙次さんを新キャスターに迎えたにもかかわらず、視聴率が取れないからと1年ちょっとで首を切った。憤慨した後藤さんはそれ以降、TBSに一切、出演しなくなったのです」  
さらに、そこに加わった呪い……。  
一般男性と再々婚を果たした膳場アナが12月初め、第1子となる女児を出産したのはご存じの通りだ。彼女自身は番組続投を希望しているらしいが、その一方で、相方とも言うべき岸井氏が来春にも降板するという話が持ち上がった。  
全国紙の記者が言う。「11月中旬、読売と産経新聞に、全面を使った意見広告が掲載されました。それは、作曲家のすぎやまこういちさんが代表の「放送法遵守を求める視聴者の会」という団体が出したもの。“メディアも安保法案廃案の声を上げるべきだ”という岸井さんの番組内での発言は、放送法に違反するという内容でした」  
その意見広告をきっかけに、TBSが安倍自民党の圧力に屈し、岸井外しに動いたと囁かれ始めたのだ。  
しかし、別の報道局スタッフによれば、「そもそも、「NEWS23」は、来年の4月から大幅にリニューアルをする予定になっていました。そこで、2年半以上出演している岸井さんもそろそろお役御免に、という意見は確かにあった。その後任として名前の挙がったなかの1人に、朝日新聞特別編集委員の星浩さんもいました。ただ、問題なのは、その意見広告を機に、まだ検討中だった人事の話が外部に漏れたことです。蚊帳の外に置かれた岸井さんは、すっかり機嫌を損ねてしまいました」  
さらに、膳場アナについても、「番組降板を女性週刊誌などに報じられると、膳場さんは自身のフェイスブックで誤報だと否定していました。ですが、正直なところ、続投が決定しているわけでもありません。乳飲み子を抱えた母親を深夜に働かせることで、TBSが世間の反発を買う恐れがあるからです。人事が迷走してばかりなので、局内では、いつまでも呪いが解けないと揶揄されています」(同)  
さて、岸井氏に話を聞こうとしたものの、「降板について、一言も聞いていません」と言うのみ。  
報道のTBSが復活するには、まだまだ遠い道のりがありそうだ 

 

●やっぱり...TBS『NEWS23』で岸井に続き膳場貴子降ろし! 2015/12
危惧は現実になってしまったようだ。本日、スポーツ報知が「TBS膳場アナ、「NEWS23」来年3月末降板へ「育児に専念したい」」という記事を出した。
本サイトでは、先日、同じ『NEWS23』でアンカーを務める岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)の降板問題を伝えた。自民党の圧力、そして安倍応援団の極右人脈で結成された「放送法遵守を求める視聴者の会」の意見広告に屈服したTBS が岸井氏の降板を決定。後任に星浩・朝日新聞特別解説委員が就く見込みであることを報じた。
が、その際に、岸井氏だけではなくメインキャスターの膳場貴子氏についても、「産休に入る膳場さんを、復帰させずフェードアウトさせるという計画もあるようです」というTBS関係者の証言を掲載していた。
やはり、本サイトが指摘していたとおり、TBSでは膳場アナ降ろしが進んでいたのだ。
ただし、スポーツ報知が書いている「膳場アナから『番組に区切りを付けて、育児に専念したい』と申し入れがありました」というのはまったくの嘘だ。
膳場アナは11月20日、妊娠出産のための産休前最後の放送でも「また皆様の前に戻って、この番組でお目にかかれる日を楽しみにしています」「新しい経験を通じて、視野を広げていけたらなと感じております」とお腹をさわりながら復帰に意欲的な発言を行っていた。それなのに、自ら「育児専念」を理由に降板など申し入れするはずがない......。
と、訝しんでいたら、今回のスポーツ報知の報道の少し後、当の膳場アナ本人がFacebookでこのように報道を否定した。
〈【コメントごとシェアして頂けると幸いです】責任と愛着を持ってやってきた仕事です。降板申し入れはしておりません。このような誤報を、たいへん残念に思っています。〉
また、この投稿に対するコメントに返信するかたちで、こうも述べている。
〈子供は大事に育てたいし、仕事でも責任を負いたい。贅沢だけど、生き方の大事な部分なので、この記事は見過ごせず、誤報だと声をあげてみました。〉
膳場アナが仕事と子育てを両立させようとしていたとすれば、この報道は事実無根というだけでなく、明らかにマタハラだろう。いったいどういう経緯でこんなものが出てきたのか。
「スポーツ報知にリークしたのは、もちろんTBSサイドです。リテラが報じていたように、TBS上層部としては自民党や官邸の圧力に耐えきれず、かなり前から岸井氏と膳場氏を番組から降ろして収束を図りたいと考えてきた。しかも、例の『視聴者の会』の意見広告問題があったので、一気に事態が進み始めたわけです。ところが、岸井氏も膳場氏もそれに抵抗しているため、TBS上層部はまず、膳場氏に対して"育児に専念するから降板"と先手を打つことで既成事実をつくりたかったのでしょう」(TBS関係者)
既報の通り、『NEWS23』は、以前から官邸と自民党より目障りな報道を行う番組として"標的"にされてきた問題がある。しかも、官邸と自民党は岸井氏だけでなく、膳場アナについてもかなり神経を尖らせていた。
そもそも『NEWS23』は、昨年11月、衆院解散を発表した当日に安倍首相が生出演。その日に番組で流されたアベノミクスの実感を街の人びとに訊いた街頭インタビューに対し、安倍首相は「厳しい意見を意図的に選んでいる」とブチ切れるという"事件"が発生した。その後、自民党は在京キー局に"報道圧力"の文書を送りつけたのだ。
しかし、膳場アナはこうした圧力にまったく怯まなかった。逆に、TBSの総選挙特番では、中継でつながった安倍首相に、街頭インタビュー問題を掘り返し、果敢にこう問うた。
「以前、番組に出演いただいた際、『実感ない』という街の声に対しておかしいと反論されていましたが、実際に全国まわってみて実感はどうでしたか?」
自民党の"報道圧力"のきっかけとなった問題を、膳場アナは堂々と質したのである。これに安倍首相はイラッとしながら「あのときは、街の声が偏っていた」などと言い張った。
以降、安倍政権は『報道ステーション』(テレビ朝日)同様に、『NEWS23』も目の敵にしてきた。その最大の標的の一人は岸井氏であったが、岸井氏とともに鋭い指摘を繰り出す膳場アナも"目障りな存在"であったことは想像に難くない。
また、とくに安保法が成立した直後からは、自民党「放送法の改正に関する小委員会」の佐藤勉委員長が、テレビの安保法制報道は問題だとして、「公平・公正・中立は壊れた。放送法も改正したほうがいい」と露骨な恫喝発言をするなど、再びTBS やテレビ朝日への圧力を強めはじめた。対してTBSの武田信二社長も9月の定例会見で「(安保法制の一連の報道は)弊社の報道が『一方に偏っていた』というご指摘があることも存じ上げているが、われわれは公平・公正に報道していると思っている」と弁明する事態になっていた。
そして、前述した「放送法遵守を求める視聴者の会」なる団体の意見広告──。TBSはこれらをきっかけに岸井氏と膳場アナを降板させ、『NEWS23』の放送時間を短縮、ストレートニュース番組にリニューアルしようと考えているとも洩れ伝わっている。"報道圧力"に屈したTBSが思い描く"恐怖のシナリオ"、その一端に、今回の膳場アナ降板報道問題があるというわけだ。
「実際、リテラに岸井氏と膳場アナの降板情報が出てからは、TBS内でも"降板はおかしい"という声が社員のあいだからあがり始めています。こうした空気に対抗するために、今回、TBS幹部がスポーツ報知に情報をリークしたのでしょう」(同前)
しかも、TBSが最悪なのは、政治圧力に屈した降板を糊塗するために、膳場アナへのマタハラを行ったことだ。これは、スポーツ報知へのリークだけではない。
実は、本日発売の「女性セブン」(小学館)には、同じく膳場アナの降板が報じられており、記事によると、膳場アナはTBS報道局幹部から「来年3月をもって専属契約を終わりにしたい」と告げられた際、出産を理由にされていたようなのだ。
「女性セブン」の記事では、膳場アナはほかの幹部からも「生まれてくる赤ちゃんのためにも、キャスターの仕事はやめたほうがいい」などと説得を受けたとある。一方の膳場アナは出産後の来春には復帰を、と考えていたといい、実際、広告代理店に勤める夫は「1年間の育児休暇まで申請していた」らしい。まさに膳場アナにとっては〈契約打ち切りの通告は事前の相談もなく、まったくの寝耳に水〉状態だったという。
もし、TBSがどうしても岸井氏や膳場アナを降板させるというなら、こういう姑息な嘘はやめて、「安倍政権の圧力に屈しました」「TBSは死にました」と正直に告白すべきだろう。
●『NEWS23』膳場貴子と岸井成格が最後の放送! 2016/3

 

膳場貴子キャスターとアンカーの岸井成格氏が、昨日25日の放送をもって『NEWS23』(TBS)を降板した。本サイトは昨年11月に岸井氏と膳場キャスターの降板、さらに岸井氏の後任が朝日新聞特別編集委員で保守派寄りの星浩氏であることをスクープしたが、ついにその日が来てしまったのだ。
そんな2人の最後の挨拶は、じつに含みのあるものだった。
「さまざまな立場からの視点や、健全な批判精神を大切に考えて、みなさまに未来を考える材料を提供できたらと取り組んでまいりましたが、いかがでしたでしょうか」(膳場貴子)
「報道は変化に敏感であると同時に、やっぱり極端な見方に偏らないで、そして世の中や人間としての良識・常識を信じて、それを基本にする。そして何よりも真実を伝えて、権力を監視する。そういうジャーナリズムの姿勢を貫くとうことがますます重要になってきているなと感じています」(岸井成格)
しかし、金曜日は放送時間が短いため、特集コーナーもなし。先日、『報道ステーション』(テレビ朝日)が緊急事態条項の危険性、ヒトラーと安倍首相の符号を指摘するという渾身の特集を放送したが、それとくらべると食い足りなさが残ったのは事実だ。しかも最後の最後に星浩氏が登場、「みなさんの思いをしっかりと引き継いでいきたい」と語ったが、保守寄りの記者だった星氏に期待などできそうにない。
安倍政権への最後の一撃を期待していた本サイトとしては残念な放送だった『NEWS23』。しかも岸井氏は、最後の放送の前日に日本外国特派員協会の会見に出席。会見は高市早苗総務相の「電波停止」発言に絡んだものだったが、その席で岸氏は政権からのメディア圧力について、このように語っていた。
「私に対して、直接、間接の政権側からの圧力は一切ありません」
この発言に対し、ネトウヨは「本人が圧力はないと認めました!」「アベノセイダーズ涙目w」と沸き返ったが、この岸井氏の発言を額面通り受け取ってしまう頭の悪さにそれこそあきれ返ってしまう。
本サイトでは繰り返し伝えてきたが、膳場・岸井氏降板の背景にあったのは、言うまでもなく安倍政権の圧力だ。『NEWS23』に対して安倍政権はかねてより非常に強い不快感を示しており、さまざまなチャンネルを使ってゆさぶりをかけていた。
たとえば、2014年に安倍首相が『NEWS23』に生出演した際、街頭インタビューのVTRに「厳しい意見を意図的に選んでいる」と難癖をつけ、その後、自民党が在京テレビキー局に「報道圧力」文書を送りつけるという問題が起きたが、その後も自民党や官邸は、政治部記者などを使って同番組に圧力をかけつづけていた。
そうした圧力は、安保法制審議中に文化芸術懇話会の弾圧発言が問題になったこともあり、一時は、おさまっていたが、同法が成立した直後から再び活発化。自民党の「放送法の改正に関する小委員会」の佐藤勉委員長がテレビの安保法制報道は問題だとして、「公平・公正・中立は壊れた。放送法も改正したほうがいい」と露骨な恫喝発言をするなど、またしてもTBS やテレビ朝日への圧力を強めはじめた。
しかも、自民党および官邸は、膳場キャスターと岸井氏を徹底的にマーク。というのも、膳場キャスターは14年の総選挙特番で安倍首相に対して報道圧力問題について問い質したことに激怒したといわれ、一方の岸井氏は、自民党側は"保守色が強い記者"と認識していたにもかかわらず、そんな岸井氏が安保法制に厳しい姿勢を貫いたことで「裏切りだ」と怒り倍増。政治部を通じて「岸井をなんとかしろ」という声をTBS幹部に再三届けてきたという。
さらに、そんななかで岸井氏を個人攻撃する「放送法遵守を求める視聴者の会」による意見広告が産経・読売新聞に掲載されたわけだが、これも仕掛人は極右思想の安倍応援団の面々だった。
つまり、岸井氏は「圧力は一切ありません」と言うものの、TBSにはいろんなかたちで"官邸の怒り"が伝えられていた。その結果、岸井氏と膳場キャスターは降板させられたのだ。
事実、岸井氏とともに記者会見に出席していた鳥越俊太郎氏は、政権側からのメディア圧力、なかでも菅義偉官房長官の"手口"を、このように語っている。少々長いが、重要な話なので紹介したい。
「菅官房長官が恐ろしいのは、オープンでの台詞ではない。大臣と記者との間ではオフ懇、オフレコの懇談会というが必ずあるんですね。『これはオフレコですよ。書いちゃだめですよ』と言いながら、本音を言う、と。記者も本音が聞けるから一応、オフ懇を受け入れているわけです。その場で、たとえば『昨日の『NEWS23』の岸井さんのあのコメントはちょっとね、いただけないよね』『あれ、ちょっと困るよ』というようなことをつぶやくわけですね。そうすると、それはオフ懇ですから表には出ませんけども、記者はちゃんとメモをして、それを上司に上げるわけです。その上司はさらに上の上司にあげて、それはどんどん上に上がっていきますから、『どうも、政府筋は岸井キャスターのコメントに嫌悪感を抱いているらしい』という空気がバッと広がるわけですね。これはTBSだけじゃなくて、他の局もみんなそうですけども、そうすると、現場がまず反応するわけです。『ここまで言うとまた言ってくるんじゃないか』と。『この人を出したらヤバイんじゃないか』とかね。人選とか、街頭で話を聞くときもできるだけ穏当な人の話を聞くとか。それから、問題の設定でもできるだけ柔らかめにするとか。こういうふうに萎縮をしていくわけです。毅然として切り込んでくという姿勢がだんだんなくなる」
こうした実態を岸井氏も知らないはずがないと思うが、4月からTBS専属のスペシャルコメンテーターに就任することが決まっているため、岸井氏は「直接の圧力はなかった」という言い方で、TBSを悪く言うのを控えたのだろう。
しかし、「直接の圧力はなかった」というのは、イコール報道が歪められていないということではない。局の上層部は常に政権の意向を忖度し、それを人事というかたちで反映している。
現場の人間は、もっと注意深く、政権とメディアの間で、何が起きているかを凝視しなければならない。 
 
 

 

「NHKクロ現」 国谷裕子 降板 
NHKの報道番組「クローズアップ現代」の国谷裕子(くにやひろこ)キャスター(58)が3月いっぱいで降板する方向で調整が進んでいると新聞各紙が報じた。ネット上では、過去の週刊誌報道などを元に、様々な憶測が流れている。  
クローズアップ現代は、1993年から始まり、月〜木曜日の19時半から30分ほどの放送で、内外のニュースを様々な角度から切り込んできた。  
番組当初からキャスターは国谷さんが務め、フリーランスで1年ごとに契約を更新してきた。国谷さんは、米ブラウン大学を出ており、英語でインタビューもできる国際派だ。クロ現を担当してからは、菊池寛賞、日本記者クラブ賞などを受賞している。  
ところが、朝日新聞が1月8日に報じたところでは、NHKの上層部は「内容を一新する」として、15年末に国谷さんの契約を更新しないと決め、本人にも伝えた。現場からは続投が求められたが、方針は変わらなかったという。4月からは、放送時間を22時に変更し、番組名も「クローズアップ現代+(プラス)」にするそうだ。国谷さんの後任としては、NHKの局アナを検討している。  
国谷さん自身は、番組降板について、プロデューサーが続投を求めたことを聞いて、「続けてきて良かった」と周囲に漏らしているという。  
番組の看板だった国谷さんが突然降板する方向になったことについて、その理由はあまり報じられていない。とはいえ、これまで番組の現場では、様々な確執があったことが、週刊誌に取り上げられてきた。  
写真誌「フライデー」の14年7月25日号では、国谷さんが番組に出演した菅義偉官房長官に「憲法の解釈を簡単に変えていいのか」と突っ込み、官邸からクレームがついたと報じた。菅氏らは報道を否定したというが、ネット上などでは、これで官邸に近いとされるNHKの籾井勝人会長から目を付けられたのではないかと指摘されている。 

 

●「NHK国谷裕子キャスター降板」に思う 2016/1
ご相談 / NHK「クローズアップ現代」のキャスター国谷裕子さんが降板されると聞きました。凛とした姿勢が好きでよく番組を拝見していましたので残念です。理由がいろいろ取り沙汰されていて、もやもやした気持ちが消えません。(40代、女性)
遙から / 「女性を応援する」「女性が活躍する社会」――そうしたスローガンを沈鬱な面持ちで聞き流している女は私だけだろうか。そう思わずにはいられないNHK「クローズアップ現代」のキャスター国谷裕子氏の降板確定だった。彼女が番組を通じて発信する情報は、彼女自身のパーソナリティ、理念なしには成立しないと視聴者ならお気づきだろう。構成台本であらかじめ書けることには限界がある。台本を超えて、突っこんで聞きたいことが彼女にはあった。そして、そこがこの番組の見どころだった。
闇の中で考える
忘れられないのは2008年、新銀行東京の経営危機をめぐる問題で石原慎太郎都知事(当時)に迫った時だ。「よろしくね〜」的態度で登場した知事に向かって厳しい質問を重ね、不機嫌を隠さない知事になおも追及を続けた。番組の最後で「ではまた」と締める国谷さんが汗だくだったのが、目に焼き付いて離れない。この人は命を削るように仕事をしている。相手を怒らせることを承知で、相手にとって最も嫌なことを質問している。そのせめぎ合いに全力で臨む真剣さが、汗の量に表れていると感じた。
私自身(比べるのも失礼な話だが)、トーク番組に出演後、衣装を脱ぐ時に「これほど汗をかいたのか…」と自分で驚くことがある。本番中はそれほど話のやり取りに集中している。喫茶店で4時間喋っても汗はかかない。公開の場で、相手が怒るとわかっている質問をして、怒らせる。その怒りの矛先が自分に向けられる。そういうことがどれほどのストレスか、私にも少しだけわかる。
彼女の降板理由と噂されているのが、集団的自衛権をめぐる問題で菅義偉官房長官をゲストに迎えた回だという。
降板確定後のメディアを見る限り、「しかし、しかし」と執拗だった、とか、菅氏がまだ喋っている途中に番組が終わり、NHKが後でえらく叱られたとかいう話も流れているが、菅氏は否定している。
とするならば、あれほど優秀で度胸も勇気もあり、20年以上番組に貢献し、幅広い年代の人々に受け入れられている稀有なキャスターが降板する理由は闇の中だ。SMAPの解散報道と似ている。本当のところは外からではわからない。
と割り切り気味に言いながら、何ともすっきりしない。私は降板のきっかけとなったとされる放送を吟味しないではいられなかった。
何度も放送を見た。キャスターの対応に無礼さはない。だがひとつ気づくところがあった。
それは番組が「なんか、いやーな雰囲気で終わった」ということ。
生放送にこだわりながら、深刻だったり複雑だったりするテーマを扱う番組では、時にすっきりと終わらないことがあるのは、想定の範囲内であろう。
残り20秒の攻防
私も(本当に比較して申し訳ないが)、生放送で言い足りずに誤解を与え、いやーな雰囲気で共演者を怒らせてしまい、CM中ずっと罵声を浴びせられ続けたことなどが過去に何度かあるし、それが原因で仕事を失ったこともある。だからといって、皆がびくびくしながら慎重な発言を重ねるだけでは、非常につまらない番組になる。敢えて攻めに徹するか、媚びや温和に走るか、といったことは、そのタレントの仕事の仕方、生き方にかかわる問題として常に自問自答される。
国谷キャスターは明らかに前者。そうして相手を怒らせるほど踏み入れば、“全面対決”や“自爆”の危険と紙一重のトークになる。それをさせてくれるかどうかはスタッフと局の腹のくくり方にかかる。今回はこの牙城が崩れた、と、私は見る。
では、スタッフが守り切れなかった直前の番組内容はどうだったか。その、"いやーな雰囲気"になったポイントを検証したい。
まず、番組の中身について乱暴なダイジェストを書くことにする。
冒頭で菅氏は言う。「ここ42年の間に、もはや一国では平和を守れなくなった」と。
そこから、憲法9条の解説、歴代総理の発言、そして新3原則などの説明に時間を使う。そして最後の最後。番組があと40秒で終わる、という時にそれはあった。
終了40秒前にNHKの男性が官房長官に聞く。
「(憲法解釈変更への)不安や懸念の払しょくは?」
官房長官は答える。
「しっかり慎重にひとつひとつ国会審議で国民に理解を求めていく」
この2つの会話で残り20秒になった。この時だ。行くつもりか国谷!と驚愕する質問があった。
国谷氏が菅氏にたたみ掛けた。くどいようだが、番組終了20秒前だ。
「憲法解釈変更の、原則部分での違和感や不安をどう払しょくしていくのか」
ほぼ、前述の男性と同じ質問だ。なぜ、20秒前に、同じ質問を相手に再度たたみ掛けたのか。
それは、熱さゆえに
つまりそれは「それでは答えになっとらん。無難な逃げ方をするな。説明責任を果たせ」という追い込みであり、ここに国谷氏の攻めの醍醐味を見る。この質問をし終えた段階で時間を見ると、菅氏の返答時間はすでに10秒しかない。質問に10秒。答えに10秒。時間で判断するに、「ここでそれを聞く!?」と、これはとんでもない勝負に出たなと感じた。
生放送の進行中、製作スタッフの大事な仕事の1つが、出演者にオンエア終了までの残時間を伝えることだ。私が出演する民報番組ではフロアADが逐次ボードで示してくれる。当然、NHKでもそれはあるはずだ。
ラスト20秒、が国谷氏に届いていないわけがない。なのに突っ込んでいった。
「憲法解釈変更の、原則部分での違和感と不安」について。これにいったい誰が10秒で答えられようか。
発言に慎重な菅氏。まして、憲法問題だ。不機嫌を隠さず言った。冒頭と同じ言葉だった。
「そもそも、42年間、一国で平和を守れる時代では…」で、番組が終わった。正確に言えば、喋っている途中なのだから、「終了」というより「中断」だ。
そりゃ、いやーな雰囲気でスタジオが満ちたであろうことは、容易に想像がつく。しかし、場慣れしているゲストなら、エンディングの音楽が流れ始めたタイミングで気がつくはずだ。「あ、もうそろそろ締めの時間だな」と。その場合、それにふさわしいひと言で締めるチャンスは残されていた。菅氏はそれに気づかなかったのか。
おそらく、だが、国谷氏の熱さが、菅氏を熱くさせたのではないか。
エンディング音楽が、あの、毎日のようにテレビに出ている菅氏の耳に入らなかったとするならば、それは菅氏も相当に熱くなっていたことの証明だ。
本気は小奇麗にまとまらない
最後まで相手を逃すまい、と食い下がるキャスターと、その姿勢に心から不機嫌になった政府要人。これは、最後は必ず気持ちよく終わらねばならないといった“媚び系”番組と比較すると、とてもエキサイティングだ。
いやーな気持ちで終わる番組とは、それほどに“本気度”が高い、ということだ。
翻って残り20秒で、国谷キャスターほどの経験があれば、菅氏に向かって、今後の政府への期待、宿題、課題などを喋り、礼まで言って「ではまた」という選択もあっただろう。それなら"気持ちよく"番組が終われた。
彼女はそれをしなかった。
このことが示すプロ根性。そして、そういうプロ根性を評価される時代ではもはやなくなった、ということは、少なくとも私にとっては他人事とは思えず沈鬱な気分になった。"いやーな気持ち"ということのほうが看過されない時代になったことを突き付けられる番組となった。
政治家をゲストに招くと陥りやすいことがある。それは都合のいい情報発信に番組を利用されかねないことだ。質問3秒、回答5分など珍しくない。着地は政党自慢になっていたりもする。そこを、相手に非礼なく話を止め、決して、自慢話や作為的言論に終始させず、痛いところを突いていく。こういう芸当にはプロの技術が要る。番組というのはいつでも政治の広報機関になりかねない。そこに待ったをかけられる稀有な女性、優秀な女性が外された。このことの意味は、優秀ゆえに外された、と私は理解する。
その流れを横目に見ながら、声高にアピールされる女性活用、女性活躍社会について考える。さて結局、権力者たちを居心地よく扱ってくれる女性を優秀とする時代なのか。
攻める女は止められない
「1億総活躍国民会議」の民間議員に選出された菊池桃子氏は、かつてのアイドル時代の癒し系の雰囲気を漂わせながら、言うべきことはしっかり発言する姿勢が脚光を浴びた。
その筋から見えてくるのは、癒しと強さを兼ね備えた女性。そうした“理想像”は結局、昔から変わらず、これからも続くのだろう。
でも、それが唯一解というわけでもないだろう。「一歩も引かずに敢えて攻める女」の凛々しさをリアルに目撃した勝ち気な女子たちは、「これはこれで、かっこいい」と、きっと思っている。
国会を見れば蓮舫氏がいる。「第二の国谷氏」はきっと出てくる。叩いても切っても、それを止めることはできない。女は「都合よく活用するもの」と思っていて、“いやーな気持ち”にさせることを許せない人には、さぞ目障りだろうが。
●NHKクロ現・国谷裕子キャスター「降板」 2016/1

 

NHKの報道番組「クローズアップ現代」の国谷裕子(くにやひろこ)キャスター(58)が3月いっぱいで降板する方向で調整が進んでいると新聞各紙が報じた。ネット上では、過去の週刊誌報道などを元に、様々な憶測が流れている。
クローズアップ現代は、1993年から始まり、月〜木曜日の19時半から30分ほどの放送で、内外のニュースを様々な角度から切り込んできた。
国谷さんの質問で、官邸と確執が生まれた?
番組当初からキャスターは国谷さんが務め、フリーランスで1年ごとに契約を更新してきた。国谷さんは、米ブラウン大学を出ており、英語でインタビューもできる国際派だ。クロ現を担当してからは、菊池寛賞、日本記者クラブ賞などを受賞している。
ところが、朝日新聞が1月8日に報じたところでは、NHKの上層部は「内容を一新する」として、15年末に国谷さんの契約を更新しないと決め、本人にも伝えた。現場からは続投が求められたが、方針は変わらなかったという。4月からは、放送時間を22時に変更し、番組名も「クローズアップ現代+(プラス)」にするそうだ。国谷さんの後任としては、NHKの局アナを検討している。
国谷さん自身は、番組降板について、プロデューサーが続投を求めたことを聞いて、「続けてきて良かった」と周囲に漏らしているという。
番組の看板だった国谷さんが突然降板する方向になったことについて、その理由はあまり報じられていない。とはいえ、これまで番組の現場では、様々な確執があったことが、週刊誌に取り上げられてきた。
写真誌「フライデー」の14年7月25日号では、国谷さんが番組に出演した菅義偉官房長官に「憲法の解釈を簡単に変えていいのか」と突っ込み、官邸からクレームがついたと報じた。菅氏らは報道を否定したというが、ネット上などでは、これで官邸に近いとされるNHKの籾井勝人会長から目を付けられたのではないかと指摘されている。
降板を冷静に受け止める向きも
15年4月には、写真誌「FLASH」が薬物問題を取り上げたクロ現の放送で「やらせ」があったと報じたことについて、NHKの調査委員会が一部に誤りがあったと認める報告をしたことを受けて、キャスターの国谷裕子さんが声を詰まらせて謝罪する事態になった。
その後、週刊現代が11月14日号で、クロ現が16年3月いっぱいで打ち切られる方針が決まったと報じた。官邸の意向を受けた籾井勝人会長サイドが、政治を扱う報道番組を縮小しようとしているとも指摘していた。
今回、クロ現の打ち切りはなかったものの、放送時間が深夜にずらされ、国谷さんが降板する方向だと報じられた。このことについて、識者からは、様々な見方が出ている。
元NHKアナウンサーの堀潤さんは、ツイッターで「菅官房長官出演以降、現場の元同僚や後輩たちからは『政治ネタを扱いにくくなった』と聞いていた」と打ち明けた。そして、クロ現について、「ついに骨抜きに」とも漏らしていた。
国谷さん「降板」と同じ時期に、テレ朝系「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスターも自ら降板するほか、TBS系「NEWS23」の岸井成格キャスターも降板する方向だと報じられている。こうしたことから、落合洋司弁護士は、「次々と抹殺されていく感じ」とツイッターで懸念を示していた。
ネット上でも、「ウワサされた通りの展開」「気骨の人から順に消されていく」「また報道統制か・・・」と憶測が飛び交うようになっている。
ただ、国谷さんについて、質問が偏っていたり弊害も出てきたりしているとの指摘もあり、「降板」について冷静に受け止める向きもあった。
●「国谷キャスター降板」に異議あり! 2016/1

 

実は、この話、去年の秋頃から、NHK関係者の間ですでに決まったことのように囁かれていた。
年明けになって新聞各紙が報道している国谷キャスターの降板と番組の放送枠の変更の件。
多くのNHK関係者が前から「もうこれは決まったこと」だと断定的に話していたので、年が明けてから新聞各紙が報道したことに「なぜ今頃になって?」と違和感を持ったほどだ。
NHKが新番組の公表やリニューアルなど番組の内容について外部に公表する際は、放送総局長の記者会見で行うことが常なので次の放送総局長会見で発表されるのだろうと予想していた。
それが読売新聞や朝日新聞などが、記者会見を待たずに国谷さんの降板を報道し始めたのだ。 
NHK「クロ現」の国谷裕子さん降板へ 出演は3月まで(朝日新聞)
「NHKの報道番組「クローズアップ現代」の国谷裕子(くにやひろこ)キャスター(58)が降板することが7日、わかった。出演は3月までで、4月以降は、現在月〜木曜の午後7時30分からの放送時間を午後10時に移し、番組名も「クローズアップ現代+(プラス)」にするという。」(朝日新聞デジタル)
なぜ彼女は降板させられるのか?
背景にあるのは、「クロ現」の「出家詐欺」"やらせ問題"である。
BPO(放送倫理・番組向上機構)は、昨年11月に放送倫理検証委員会で12月には放送人権委員会で、それぞれ結論を公表した。
「「情報提供者に依存した安易な取材」や「報道番組で許容される範囲を逸脱した表現」により、著しく正確性に欠ける情報を伝えたとして、「重大な放送倫理違反があった」と判断した。 」BPOの「放送倫理検証委員会」"出家詐欺"報道に関する意見
「本件映像には放送倫理上重大な問題がある。委員会は、NHKに対して、本決定を真摯に受けとめ、その趣旨を放送するとともに、今後こうした放送倫理上の問題がふたたび生じないよう、『クローズアップ現代』をはじめとする報道番組の取材・制作において放送倫理の順守をさらに徹底することを勧告する。」BPOの「放送人権委員会」"出家詐欺"報道に関する委員会決定
NHKでは4月上旬に局内に調査委員会を立ち上げ、下旬に報告書を公表したが、BPOの「放送倫理検証委員会」はこの「調査報告書」を、「放送倫理の観点からの検証が不十分」「深刻な問題を演出や編集の不適切さにわい小化することになってはいないかとの疑問を持たざるを得ない」と調査そのものの甘さや中途半端さを指摘した。
この問題について、国谷さんには何の落ち度もない。
大阪放送局にいた一人の記者が問題だらけの取材を行っていたこと、それを見過ごしていたNHK内の体制に責任がある。
つまり、BPOもあえて指摘したように、悪いのは今のNHKの「体制」なのだ。
NHKはその記者を解雇するなど、責任のある人間たちを処分して再発防止に取り組めばいいだけの話だ。
NHKのトップは籾井勝人会長である。
ところが、これをきっかけとして、NHKの上層部は、国谷さんごと、番組そのものを変えてしまってイメージも変えたい、という方針を決めた、と朝日新聞は伝えている。この記事は短いものだが、「上層部」と「クロ現を担当する大型企画開発センター」との間で意見の相違があったと書いている。特定の放送局の番組についての記事でこうした局内の対立にまで触れることはめったにないことだ。
「NHK関係者によると、クロ現を担当する大型企画開発センターは続投を強く求めたが、上層部は「内容を一新する」という方針を昨年末に決定。同センターを通じ、国谷さんにも契約を更新しない方針を伝えた。後任は同局アナウンサーを軸に検討しているという。国谷さんは「プロデューサーのみなさんが、編成枠が変わってもキャスターは継続したいと主張したと聞いて、これまで続けてきて良かったと思っている」と周囲に話しているという。」(朝日新聞デジタル)
この記事の報道が事実だとして、番組が変わって、国谷裕子というキャスターを降板させる。番組そのものは残るんです、放送時間が変更になるだけなんです、などと後から説明されたところで、その番組の本質的に事実上「消す」ことになってしまう。
たとえば、視聴率だけ考えても、
視聴率が高い夕方「7時のニュース」の直後に、様々なテーマを深掘りしたからこそ「クロ現」の意味があったのだ。
しかも「クロ現」は、社会の「現代」の問題を様々な切り口で見せようとする意欲的な番組だ。
ジャーナリズムを大学で教えている私も、テレビというメディアが社会をどう切り取っているのか、という題材で、よく「クロ現」を学生たちに見せる。
たとえば、2014年1月14日に放送された「あふれる"ポエム"?! 〜不透明な社会を覆うやさしいコトバ〜」など、居酒屋などの飲食店に行けばよく目にするようになった「夢をあきらめない」などの"ポエム"と呼ばれる言葉から現代社会の変容を伝えようとする意欲作だったし、2015年1月13日放送の「ヘイトスピーチを問う 〜戦後70年 いま何が〜」も日本社会で急に目立ち始めたヘイトスピーチの実態や背景に切り込んだ作品だった。
これを深夜で放送するのではなく、19時半に放送することに大きな意味があったと考える。
また、キャスターは国谷裕子さんでなければならない、と強く感じる。
最近、「報道番組」とか「ニュース」などという名称はかかげていても、政府要人に対してすっかり遠慮して「ヨイショ」しか言わないキャスターが目につく。報道現場で長年働いた経験で言えば、そういう人は「キャスター」を何年やったとしても「ジャーナリスト」ではない。
「国谷さん」だからこそ意味があったのだ。国谷さんはたぐいまれな「ジャーナリスト」だからだ。
2014年7月3日に放送された「集団的自衛権 菅官房長官に問う」では、集団的自衛権を容認するという憲法解釈を閣議決定した直後に、菅義偉官房長官をスタジオに招いて疑問点を尋ねた。予め用意した答えを繰り返す他は、「あー」とか「えー」「うー」という言葉を連発した官房長官に対して、「しかし」と明確な言葉で質問し続けた国谷さん。最後は官房長官が話している途中で(生放送なので)番組終了で幕切れになった。
短い時間に、あれほど相手を「理詰め」で追い詰めていけるキャスターを私は現在放送されているすべての報道番組を見渡しても見つけることはできない。あのワザは並のキャスターではできない。
ジャーナリストの役割は、権力が暴走しないかチェックすること。
それをあれほど体現した放送は最近めったにない。
だから、今回、新聞やテレビの報道も、ただ「国谷さんが降板する」とだけ伝えるだけにとどまっていることには不満だ。
「クロ現」を今のままで残してほしい。
「国谷さん」を残してほしい。
19時半からの「調査報道番組」を残してほしい。
今の「クロ現」は、国民にとっての財産、公共財だと考えるからだ。
それが失われようとしているのに、何も感じない、何も考えないのだろうか。
何か不祥事があると、誰かが詰め腹を切らされる。そして「体制を一新」させる。
これは今でもどの組織にもある日本的な責任の取り方だ。
でも、何も関与していない「国谷さん」が降板させられる。それでいいのか?
本当に責任を取るべき人間は別にいるのに、これほどの理不尽はない。 
僕は今回、ものすごく怒っている。こんなことをよしとしてしまうNHKの人たちの「鈍感さ」に対して。
それから、そのことをもっと大きく報道しない新聞などのメディアの「鈍さ」に対してもだ。
もちろん、今回の背景に「権力」の意向、あるいは「上層部」の意向があったとしても、このまま彼女を降板させてしまっていいはずがない。
●国谷裕子がNHK『クロ現』降板の舞台裏を告白! 2017/1

 

トランプ大統領のメディア攻撃に注目が集まっているが、それを見るにつけ、日本の宰相はトランプの先駆けだったとつくづく感じずにいられない。トランプのようにいちいち言葉にしないだけで、この国の総理大臣は放送法をねじ曲げて解釈し、圧力文書をキー局に送りつけるなどの"攻撃"を仕掛けてきた。そして、トランプよりもっと露骨に、萎縮しないキャスターたちを次々に降板に追い込んだことは記憶に新しい。
そのキャスターのひとりが、NHKの看板番組『クローズアップ現代』のキャスターを23年間にわたって務めた国谷裕子氏だ。その国谷氏が、先日、初の著書『キャスターという仕事』(岩波新書)を出版。約1年のときを経て、ついにあの降板騒動についても言及しているのだ。
まず、国谷氏の番組降板が判明したのは2016年1月7日のことだったが、本人に降板が伝えられたのは、その約2週間ほど前の15年12月26日だったという。
「〈クローズアップ現代〉を管轄する組織の責任者から、番組のキャスターとしての契約を二〇一六年度は更新しないことが決定された旨、伝えられた。(中略)NHKから契約更新しないと言われれば、それで私の〈クローズアップ現代〉でのキャスター生活は終わりになる」
国谷氏も「体力や健康上の理由などで、いつか自分から辞めることを申し出ることになるだろうと思っていた」というが、「(契約を更新しない理由が)番組のリニューアルに伴い、ということになるとは想像もしなかった」らしい。
実際、国谷氏が降板を言い渡される1カ月前も、制作現場では来年度も国谷氏でキャスター継続と提案しており、「一緒に番組を制作してきたプロデューサーたちは、上層部からのキャスター交代の指示に対して、夜一〇時からの放送になっても、番組内容のリニューアルをしても、キャスターは替えずにいきたいと最後まで主張した」というのだ。
国谷氏の降板は「上層部からのキャスター交代の指示」によって決定した──。国谷氏は降板を告げられたとき、こんなことを考えたという。
「ここ一、二年の〈クローズアップ現代〉のいくつかが浮かんできた。ケネディ大使へのインタビュー、菅官房長官へのインタビュー、沖縄の基地問題、「出家詐欺」報道」
国谷氏が頭に浮かべたこれらのうち、最大の原因として考えられているのが、いわずもがな菅義偉官房長官への集団的自衛権にかんするインタビューだ。この14年7月3日の放送で、国谷氏は舌鋒鋭く集団的自衛権の行使にかかわる問題点を次々に質したが(詳しくは既報【http://lite-ra.com/2016/04/post-2160.html】を参照)、放送終了後に菅官房長官が立腹し、官邸サイドはNHK上層部に猛抗議をしたと「FRIDAY」(講談社)が報じたほどに問題となった。
同誌によれば、官邸は"国谷が食い下がったことが気にくわなかった"というが、このときの国谷氏の質問はいずれもが正鵠を射るもので、キャスターとして当然、聞き出すべき事柄ばかりだった。にもかかわらず、「相手に対する批判的な内容を挙げてのインタビューは、その批判的な内容そのものが聞き手自身の意見だとみなされてしまい、番組は公平性を欠いているとの指摘もたびたび受ける」(国谷氏の著書より)という現実がある。
しかし、国谷氏の考え方は違う。「聞くべきことはきちんと聞く、角度を変えてでも繰り返し聞く、とりわけ批判的な側面からインタビューをし、そのことによって事実を浮かび上がらせる、それがフェアなインタビュー」と考えるからだ。
「菅官房長官への私のインタビューは、様々なメディアで、首相官邸周辺の不評を買ったとの報道がなされた。それが事実かどうか私は知らないが、もしそうだとすれば、『しかし』という切り返しの言葉を繰り返したことが、不評を買うことにつながったのかもしれない。まだまだ、『聞くべきことはきちんと聞く、繰り返し聞く』ということには、様々な困難が伴うのだろうか」
だが、国谷氏が安倍政権から「不評を買った」のは、これだけではないだろう。たとえば、15年7月23日に放送された『クロ現』の特集「検証 安保法制 いま何を問うべきか」において、国谷氏がこだわった点はこんなことだった。
番組づくりの上で、担当ディレクターは番組の構成表において「なかなか理解が進まない安保法制」と書き出していた、という。当時、当たり前のようにメディアは安保法制を語る際に使っていたフレーズだが、国谷氏はこの言葉に違和感を抱く。
「果たしてこの言葉の使い方は正しいのだろうか。『なかなか理解が進まない安保法制』という言葉は、文脈のなかでの置かれ方によっては、安保法制に反対が多いのは、人々の理解がまだ進んでいないからだ、という暗黙の示唆を潜ませることにならないだろうか。この言葉は、今は反対が多いが、人々の理解が進めば、いずれ賛成は増える、とのニュアンスをいつの間にか流布させることにもつながりかねないのではないだろうか。そういう言葉を、しっかり検証しないまま使用してよいのだろうか、私にはそう思えた」
テレビは映像の力を発揮するメディアだ。しかし他方で映像は全体像を映し出すものではないし、ときとして人びとの想像力も奪うことがある。だからこそ、国谷氏は「言葉の持つ力」を信じ、同時に言葉に慎重だった。官製報道などではない、いま現在の問題を深く掘り下げて視聴者とともに考える──そうした番組をつくってきたのだという矜持が、国谷氏の文章には滲み出ている。
国谷氏は本書のなかで、「私は長い間、かなり自由にインタビューやコメントが出来ていたように感じる」と書いている。そして「気をつけていたのは、視聴者に対してフェアであるために、問題を提起するとき、誰の立場にたって状況を見ているのか、自分の立ち位置を明確に示すようにしていたことだ」という。
「例えば、沖縄の基地問題を沖縄に行って取り上げるとき、基地負担を過重に背負っている沖縄の人々の目線で取り上げていることをはっきり伝えていた。基地問題をめぐっては、定時のニュースなどで政府の方針をたびたび伝えていれば、逆に〈クローズアップ現代〉で沖縄の人々の声を重点的に取り上げたとしても、公平公正を逸脱しているという指摘はNHK内からは聞こえてこなかった。NHKが取るべき公平公正な姿勢とはそういうものだと、長い間、私は理解し、仕事をしてきていた」
しかし、「ここ二、三年、自分が理解していたニュースや報道番組での公平公正のあり方に対して今までとは異なる風が吹いてきていることを感じた」と、国谷氏は振り返る。その時期は、安倍政権がメディアへの圧力を強めてきたタイミングと重なる。
「その風を受けてNHK内の空気にも変化が起きてきたように思う。例えば社会的にも大きな議論を呼んだ特定秘密保護法案については番組で取り上げることが出来なかった。また、戦後の安全保障政策の大転換と言われ、二〇一五年の国会で最大の争点となり、国民の間でも大きな議論を呼んだ安全保障関連法案については、参議院を通過した後にわずか一度取り上げるにとどまった」
これは『クロ現』に限った話などではなく、同時進行で他局でも起こったこと、そしていまもつづいている問題だ。報道はいつしか骨抜きにされ機能不全に陥り、たとえば南スーダンの戦闘が「衝突」と言い換えられても大した問題にならないという社会になってしまった。
オックスフォード大学出版局は、16年を代表する言葉として、客観的な事実が重視されず、感情的な訴えが政治に影響を与える状況を意味する「ポスト・トゥルース」を選んだ。だが、日本は数年前からすでにポスト・トゥルースの時代に入っている。このようななかで、メディアのあり方はどうあるべきか。国谷氏はこう綴っている。
「伝えられる情報のなかに事実ではないものが多くなっているとすれば、人々の生活に大きな影響を及ぼしかねない決断をする立場にある人間に対して、その人間から発せられた言葉の真意、言葉の根拠を丁寧に確かめなくてはならない。選択された政策や経営戦略などを検証するために、『問うべきことを問う』ことがますます求められていくのではないだろうか。ジャーナリズムがその姿勢を貫くことが、民主主義を脅かすpost-truthの世界を覆すことにつながっていくと信じたい」
●NHKで取り上げられなかったあの「問題」 2017/1

 

国谷さんが著書で明かした降板のいきさつ
NHK「クローズアップ現代」で23年にわたりキャスターを務めた国谷裕子さんが、著書『キャスターという仕事』(岩波新書)を出版した。クロ現の歴史を辿りながら、番組の裏側、自分の言葉で「問うべきことを問う」キャスターという仕事の意義を詰め込んだ一冊だ。
その中に、国谷さんがクロ現の降板をどうNHKから伝えられたのか、本人の言葉で綴られた一節がある。国谷さんは、NHKのアナウンサーではなく、1年もしくは3年ごとの出演契約を結んでいるキャスターだ。
NHKサイドから2016年度の契約を更新をしない、と告げられたのは2015年12月26日。この頃、クロ現は揺れていた。
その前年、2014年7月に放映された菅義偉官房長官への集団的自衛権をテーマにしたインタビューで、国谷さんは時間ギリギリまで「しかし……」と繰り返した。「そもそも(集団的自衛権の)解釈変更をしたこと」への違和感や不安をどう払拭するのか、と食い下がるように、質問を続けた。
この質問が首相官邸から不評を買った、と報道された。国谷さん自身は「それが事実はどうか私は知らない」が、「もしそうだとすれば、『しかし』という切り返しの言葉を繰り返したことが、不評を買うことにつながったのかもしれない」と書いている。
契約更新をしないと告げられる直前、2015年11月には放送倫理・番組向上機構(BPO)でクロ現が特集した出家詐欺問題についての意見書が公開された。
BPO意見書やNHKの報告書では、この特集について、放映されたシーンに事実関係の誤り、隠し撮り風の映像が「事実を歪曲したもの」などと指摘された。番組の信頼に関わる”事件”だった。
NHKサイドの説明は「編成の見直しに伴い、番組をリニューアルし、キャスターを一新する」というもの。
国谷さんはこれを「想像もしなかった」と記す。
降板直前、制作現場は継続を提言していた
「想像もしなかった」大きな理由は、BPO意見書で揺れる11月、制作現場が次年度も国谷さんのキャスター継続を提言していたことだ。プロデューサーたちは上層部からのキャスター交代の指示に対して、リニューアル後もキャスター継続を求めていたという。
国谷さんはここ数年、「これまで以上に多角的な視点、より深い分析」を求められていると感じ、資料を読み込む量も増えていた。
「心身ともにきつくなっていた」ため、「体力や健康上の理由で、いつか自分から辞めることを申し出ることになる」と考えていた、と明かす。
現場サイドがキャスター継続を望んだにもかかわらず、突然、NHK上層部の意向で打ち切りを告げられる。その胸中は多くは書かれていないが、頭に浮かんだ場面については記述がある。
菅官房長官のインタビュー、出家詐欺問題ーー。
「負担を強いられている沖縄の人々を第一の視聴者」とし、「沖縄の人々の目線で取り上げていることをはっきりと伝えた」沖縄問題の取り上げ方ーー。
ケネディ駐日大使(当時)インタビューで「日本とアメリカの関係は、安倍政権の一員、それにNHKの経営委員や会長の発言によって影響を受けていると言わざるをえません」と発言したことーー。
「不寛容な空気」
2016年3月17日の最終回を前に、国谷さんはこの23年間での社会の変化の一つとして、「不寛容な空気」の浸透をあげる。
「一人ひとりの個性が大切だと言いながら、組織の管理強化によって、社会全体に「不寛容な空気」が浸透していったのではないだろうか。<クローズアップ現代>がスタートしたころと比べて、テレビ報道に対しても不寛容な空気がじわじわと浸透するのをはっきりと感じていた。」
淡々とした筆致に、変化への強い違和感がにじみでる。
国谷さんの信条は、フェアであることだ、という。彼女が考えるフェアとはなにか。言及している文章を拾っておこう。
「わかりやすくするために、ある点を強調するために、ある部分を隠すとか、触れないとかはしない。知りえたことは隠さない。視聴者には判断材料はすべて示す。」
「問題を提起するとき、誰の立場にたって状況を見ているのか。自分の立ち位置を明確に示すようにしていたことだ。」
クロ現が取り上げなかった問題
いまのNHKは果たしてフェアなのか。
国谷さんは、「NHK内の空気」にも変化が起きていると思うとし、こんな事実を著書の最後で示している。
「社会的にも大きな議論を呼んだ特定秘密保護法案については番組で取り上げることが出来なかった。(中略)2015年の国会で最大の争点となり、国民の間でも大きな論議を呼んだ安全保障関連法案については、参議院を通過した後にわずか一度取り上げるにとどまった。」  
 
 

 

「報ステ」 古舘伊知郎 降板 
またひとり安倍政権に批判の論陣を張るメディア人が消えた。24日、テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」のメーンキャスター・古舘伊知郎が会見し、来年3月いっぱいで降板することを明らかにしたのだ。 
サバサバした表情で会見に現れた古舘は、「2年前から考えていた。急に心境が変わったことではない」と“円満降板”を強調。もっとも真相は不明で、古舘はつい最近まで、「オレ、絶対頑張るからな」と周囲に語り、“続投”に意欲を見せていたという。実際、後任について質問が飛ぶと、「ボクのようにあまり問題発言をしない人がいいんじゃないでしょうか」と自虐的に語り、「権力を監視し、警鐘を鳴らすのが報道番組。全く中立公正はあり得ないと思っている」とも語った。  
「古舘さんは原発報道をめぐって「圧力がかかって番組を打ち切られても本望」と発言したり、原発再稼働に向けて突っ走る政府に批判的な姿勢を強めていた。そんな最中の突然の降板劇です。むしろ何かあったと考える方が自然でしょう」(テレビ朝日関係者)  
報ステでは今年3月、元経産官僚の古賀茂明氏が番組内で「I am not Abe」と発言し、官邸からの“圧力”でコメンテーターを降板させられた。その古賀氏は古舘の降板をこう見ている。  
「古舘さんは「しゃべるのが命」という人だから、自分から降板するなんてありえないと思います。トークライブで原発の話をしようとしたら、台本を書き換えさせられたりと、報ステの番組はおろか、番組の外でも自由にモノを言うことができなくなっていたそうです。もう疲れちゃったんでしょう。古舘さんの方から辞めると言わせるように、テレ朝側が持っていったのでしょう」  
もはや、官邸にタテついて煙たがられているジャーナリスト、コメンテーターのクビ切り降板は珍しいことではない。  

 

●古舘伊知郎「報ステ」降板全真相と官邸大ハシャギの内幕 2015/12
またひとり安倍政権に批判の論陣を張るメディア人が消えた。24日、テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」のメーンキャスター・古舘伊知郎が会見し、来年3月いっぱいで降板することを明らかにしたのだ。官邸は“してやったり”ではないか。早速、テレ朝の報道局員のもとには、霞が関の官僚たちから“お祝い”の連絡が続々と届いているらしい。
サバサバした表情で会見に現れた古舘は、「2年前から考えていた。急に心境が変わったことではない」と“円満降板”を強調。もっとも真相は不明で、古舘はつい最近まで、「オレ、絶対頑張るからな」と周囲に語り、“続投”に意欲を見せていたという。実際、後任について質問が飛ぶと、「ボクのようにあまり問題発言をしない人がいいんじゃないでしょうか」と自虐的に語り、「権力を監視し、警鐘を鳴らすのが報道番組。全く中立公正はあり得ないと思っている」とも語った。
「古舘さんは原発報道をめぐって『圧力がかかって番組を打ち切られても本望』と発言したり、原発再稼働に向けて突っ走る政府に批判的な姿勢を強めていた。そんな最中の突然の降板劇です。むしろ何かあったと考える方が自然でしょう」(テレビ朝日関係者)
報ステでは今年3月、元経産官僚の古賀茂明氏が番組内で「I am not Abe」と発言し、官邸からの“圧力”でコメンテーターを降板させられた。その古賀氏は古舘の降板をこう見ている。
「古舘さんは『しゃべるのが命』という人だから、自分から降板するなんてありえないと思います。トークライブで原発の話をしようとしたら、台本を書き換えさせられたりと、報ステの番組はおろか、番組の外でも自由にモノを言うことができなくなっていたそうです。もう疲れちゃったんでしょう。古舘さんの方から辞めると言わせるように、テレ朝側が持っていったのでしょう」
もはや、官邸にタテついて煙たがられているジャーナリスト、コメンテーターのクビ切り降板は珍しいことではない。
安保法制をめぐる安倍政権の乱暴なやり方を批判していたジャーナリストの青木理氏も、今秋、「情報ライブ ミヤネ屋」(読売テレビ)のコメンテーターを突然降板した。TBSでも、安保法案に批判的なコメントをしていた報道番組「NEWS23」のメーンキャスター・岸井成格氏が来年3月いっぱいで降板すると報じられた。
これでは、言論の自由もへったくれもないのだが、番組を降ろされた本人たちは更迭劇をどう思っているのか。青木氏に聞いてみた。
「『ミヤネ屋』をクビになったのは事実ですが、説明があったわけではないので、詳しい事情は分かりません。私は社員じゃないので、方針に合わなかったり、必要がなくなったら切られるのは仕方がないと思う」
そのうえで、政府に批判的な発言が目立つジャーナリストやコメンテーターが相次いで降板している現状についてこう語った。
「テレビ局側の自粛なのか圧力なのか、それぞれの事情は知りません。だけど、結果を見れば政権側の思うツボだし、官邸にとっては好都合の状況が醸成されつつあると思う。このままいくとマジメに取材する報道番組が次々と消え、毒にも薬にもならないエンタメ番組ばかりになるでしょう。すなわちテレビ局が報道機関から娯楽機関に成り下がるということです。それでいいのか。重大な問題をはらんでいると思います」
前出の古賀氏は古舘について、「もう辞めると決まったのだから、残り3月まで思い切ってやりたいことをやって欲しいですね。そして4月になったら、『テレビというのは実はこういうことになっているんですよ』と、本当のことを話したらどうですか。そうすれば視聴者のリテラシーも高まると思います」と話す。
ぜひ期待したいものだ。
●古舘伊知郎が報ステ降板前に大言壮語! 2016/3

 

フリーアナウンサーの古舘伊知郎氏が3月末、12年にわたってキャスターを務めたテレビ朝日系「報道ステーション」を降板する。ここ最近の放送では、「(東京電力福島第1原発事故と甲状腺がんの)『因果関係がない』とするのは甚だ疑問」と訴えたり、ナチスを引き合いに出して緊急事態条項を盛り込んだ自民党の改憲草案に懸念を示したりと、「キャスターは反権力」と語った“古舘カラー”を色濃くにじませた報道が相次いでいる。
「もちろん日本で、ナチ、ヒトラーのようなことが起きるなんて、到底考えておりません。しかし、将来、緊急事態条項を悪用するような想定外の変な人が出てきた場合、どうなんだろう、ということも考えなければという結論に至り、私、1泊3日でワイマールに行ってきました」
18日の番組では、「憲法改正が徐々に視野に入ってきた」として、「独ワイマール憲法の“教訓” 『緊急事態条項』に警鐘…」などと題した古舘氏のドイツリポートを放送。ワイマール憲法とナチスの全権委任法を引き合いに出し、自民党の改憲草案に盛り込まれている緊急事態条項に警鐘を鳴らす内容だった。
「令状無しに身柄拘束」
古舘氏は現地から、「ワイマール憲法の『国家緊急権』の条文が、ヒトラーに独裁への道(全権委任法)を与えてしまった」「ヒトラーの国家緊急権行使を後押ししたのが、保守陣営と財界だった」などと、熱っぽくリポート。
途中、「強いドイツを取り戻す」「この道以外にない」と演説するヒトラーの映像や、強制収容所の様子、死体映像などを織り交ぜながら、ドイツのイエナ大教授が、自民改憲草案の緊急事態条項を「内閣の一人の人間に利用される危険性があり、とても問題」などと語るインタビューも放送された。
さらに、スタジオでは、早稲田大の長谷部恭男教授が「(自民草案の)緊急事態条項発動の要件が甘すぎる」「場合によっては、令状無しに怪しいと思われれば身柄を拘束されることも、理屈としてはありうる」などと自説を展開。特集は30分近くに及んだが、東日本大震災時の混乱を受けた議論の推移や、条項の必要性を説く識者の意見は紹介されなかった。
「因果関係があるんじゃという前提で…」
一方、東日本大震災から5年を迎えた3月11日には、福島の子供の甲状腺がんの現状を特集。福島県の大規模調査で166人に甲状腺がんか、悪性疑いという判定が出たことについて、古舘氏は「異常に多い」と指摘した。
番組では、手術を受けた女性や家族のインタビュー、複数の識者の話、チェルノブイリ取材などを交えながら、甲状腺がん患者の増加が「放射線の影響とは考えにくい」としている福島県の調査検討委員会の見解を疑問視。古舘氏は「(原発事故との)因果関係がないというのは甚だ疑問だ」と述べ、特集の終盤には「因果関係が分からないのであれば、因果関係があるんじゃないかという前提で、じっくり探っていくプロセスが必要ではないか」などと訴えた。
こうした報道に対し、「週刊新潮」は3月24日号で「いたずらに不安をあおるばかり」と批判。インターネット上では、がんが原発周辺の市町村で特に多く発見されているわけではないことや、がん発見が「異常に多い」とする見解には異論も根強いことなどを掘り下げていない番組内容を疑問視する声も上がっている。
「偏ってるんです、私」
24日の番組では、高市早苗総務相の「電波停止」発言に抗議するため、ジャーナリストの田原総一朗氏らが外国特派員協会で開いた記者会見を報道。古舘氏は「(番組編集に当たっての政治的公平や多角的な論点の提示を義務付けた)放送法4条は『倫理的規範』と認識している。現在の政権の考え方に沿う放送をやることが、放送法上の公平公正かというと、違うと考える」と述べ、田原氏らの訴えに同調する姿勢を示した。
昨年12月の降板会見で、「ニュースキャスターが意見を言ってはいけない、ということはないと思いますし、あるいはまた、偏っていると言われたら、偏ってるんです、私。人間は偏っていない人なんていないんです」と述べた古舘氏。卒業まで残りわずかとなり、その“舌好調”ぶりも、ラストスパートを迎えているようだ。果たして「もの申す」古舘氏の卒業企画の数々は、視聴者の共感を得られているだろうか。
●「色々な発言できなくなりつつある空気がある」  2016/3

 

テレビ朝日系列のニュース番組「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスター(61)が、3月31日の出演をもって番組を降板した。番組の最後に12年間のキャスター生活を振り返り「色々な発言ができなくなりつつあるような空気は感じている」などと熱く語った。
古舘さんは「古巣であるテレビ朝日に貢献できればという思いも強くあってこの大任を引き受けた」と振り返り、「風邪など一つもひくこともなく、無遅刻無欠勤で12年やらせていただくことができた」「テレビの前で今ご覧になっている皆様方の支えがあってこそだと、本当に痛感しております。ありがとうございました」と視聴者に感謝の言葉を述べた。
降板を決めた理由について、「普通の言葉でざっくばらんなニュース番組を作りたいと、真剣に思ってきた」としながら「現実はそんなに甘くありませんでした」と吐露。「テレビ局としても、放送する側としても、誰かを傷つけちゃいけないということも含めて、二重三重の『言葉の損害保険』をかけなくてはいけない」と説明。自らが目指していた方針とは必ずしも相容れない番組の環境が「正直申しますと、窮屈になってきました」と告白した。その上で「圧力がかかって辞めさせられるということでは一切ございません」と述べ、自らの意志で番組降板を決めたと強調した。
その一方で「この頃は報道番組で、あけっぴろげに昔よりも色々な発言ができなくなりつつあるような空気は感じています」と、今の報道界が萎縮していると指摘。「つるんつるんの無難な言葉で固めた番組など、ちっとも面白くありません」「情熱をもって番組をつくれば、多少は番組は偏る。しかし全体的にほど良いバランスに仕上げなおせば、そこに腐心をしていけば良いのではないか」と、視聴者に向けて自らの信念を語った。
最後に古舘さんは演歌歌手・細川たかしさんの曲「浪花節だよ人生は」の一節「人の情けにつかまりながら、折れた情けの枝で死ぬ」を紹介し「死んでまた再生します。皆さん、本当にありがとうございました」と、12年間のキャスター生活を締めくくった。
「報道ステーション」は4月11日からリニューアルして再開。テレビ朝日の富川悠太アナウンサー(39)が古舘さんの後任としてメインキャスターを務める。
●古舘キャスター「報ステ」降板会見 2016/3

 

「不自由な12年」
テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」を来年3月いっぱいで降板することを発表した古舘伊知郎キャスター(61)が24日、東京・六本木の同社で記者会見を行った。古舘キャスターの冒頭の発言は次の通り。
報道ステーションと言う番組タイトル、および番組はしっかりと残りますので、私のみが去る。これはこれでいいなと思います。できれば、MCが代わるわけですから、今までの報道ステーションを報道ステーションエピソード1、4月からはフォースの覚醒とかやってくれるとちょうどよかったかなと思いますけども、これもよしと思っております。
一つ言わせていただきたいのは、私の学び舎であるテレビ朝日、私はNETの入社試験を受けて、4月1日、茶封筒を持って入社式に臨んだ時には、看板は付け替えられていて、テレビ朝日と名前が変わっていた。僕は場所を間違えたのかと思いました。1977年にこの学び舎に入れていただいて、育てていただいて、フリーになってやってきましたが報道ステーションは2004年の4月にスタートしたわけですけども、その3年くらい前から私の事務所の会長と、現在テレビ朝日の会長の早河さんが会って、ニュースステーションの後をやってくれないかという交渉があったやに聞いています。私も、最後の1年くらいは参加したりして、でも、ずっと固辞しておりました。
エンターテインメントという言葉がありますが、僕はテレビは娯楽の箱だと思っていますので、スポーツ実況はバラエティー、その他司会、トーキングブルース、娯楽物で生きていきたいと言っていた。早河さんがうまくてですね、最後のほうは、古舘さん、自由に、あなたの絵を描いてよ、報道番組で、と言っていただいて、ころっとだまされてやるって言っちゃったんですね。絵を自由に描いてよ、という割にはものすごく不自由な12年間でございますけども。やってみたらとんでもないことで、言っていけないことと、いいことと、大変な綱渡り状態。
10年ひとくくりと内心思っておりまして、学び舎に貢献させていただかないといけない、指導者のかたに応えないといけない、という風に思ってやってまいりましたけども、10年を一つの区切りとして、今から2年くらい前ですけども、別な挑戦をさせていただきたい、と早河さんにお願いしました。でも、まだ契約が2年残っているし、もうちょっと頑張ってよ、というのが正直なところです。それから2年間よし、頑張るぞ、と頑張ってまいりまして、今年の夏くらいでしょうか、12年を一つの区切りとしてやめさせていただきたいと申し上げて、来年もやってよ、と慰留していただいたのはテレビ朝日、本当に感謝でございます。うれしいんですけども、固く、12年を一つの区切りと思ったので、辞めさせていただきたいというのを了解していただいた次第です。
卒業という都合のいい言葉もありますけども、自分で自主卒業というのはないので、ただ辞めるということです。もし卒業ということなら、12年もやっている訳ですからね、相当留年している。卒業と言うより、辞めさせていただくということです。
古賀氏の問題影響「全くない」
古舘キャスターとの質疑応答は次の通り。
Q:去年も降板の噂があった。そのころから決めていたのか。心境の変化はあったのか。
古舘 2年前くらい、10年を区切りとしないと申し訳ないと思っていた。内々に相談していた。急に心境が変わったことはない。去年の10月、トーキングブルースを一夜限りでやらせていただいた際に、トークネタですから、何が宮根だ、何が羽鳥だこの野郎、と言って、俺はやるぞと、半分ネタですよね。
Q:古賀茂明さんの問題の影響があったのでは。
A:それは全くありません。古賀さんに関して言わせていただければ、やっぱり経産省の官僚でいらしただけあって、聡明で、私の知らないことを楽屋で教えていただいて、感謝している。ただ、番組の中でああいう形でいざこざがあって、見解の相違が出たことは残念に思っています。それだけです。そのことが、今回の決意に至ったことは全くない。もう12年間いろんなことがありましたから、謝ったり、訂正したり、ごめんなさいと言ったり、いろんなことがありましたから、結構、生意気を言うと免疫ができている。一つ一つの事象が(あったから)辞めたかったということではない。
Q:新しいチャレンジとは、今後具体的には何をしたいか。テレビには出るか。
A:現在61でございますけども、体が続く限り現役でいたいという気持ちが、勝手ながらある。それは、しゃべり手としてやっていたいという自分の思いだけ。人様が、需要と供給の中で判断されるだけ。お呼びが掛かればやりたいな、というのが正直なところです。新しいジャンルにチャレンジしたいというようなことを先ほど局長がおっしゃってくれましたけれども、テレビ朝日のかっこをつけているところ。新しいジャンルなんてない。僕、フリーになってから、下手ですけどもドラマに出たこともありますし、NHKの連ドラに出たこともある。テレビ関連で、やっていないジャンルは、報道を最後に、ないんです。残っていない。ラジオであろうがテレビであろうが、トークの舞台だろうが、しゃべる仕事に関してはいろんなことをやりたいと思っている。具体的には何もない。オファーはないかもしれない。漠たる思いなのでビジョンはないが、例えば、2020年の東京五輪の開会式を実況中継させてもらいたいとか、年が年だから無理だと思いますが、アストロノーツになってISSに行って、宇宙ステーションから宇宙実況してみたいとか、深夜でデレデレしゃべるバラエティーをやりたいとか、夢想、妄想はあります。
「しゃべり倒したい」
Q:不自由な10年間という発言があった。どこらへんが一番不自由に感じたか。
A:放送コードを守りながらも、いっぱいしゃべってきた。まず、物量的に制約がある。ニュースが終わってスタジオに降りて、この件で私思うんですけどと言った瞬間にCM行けという指示が出る。バラエティーやスポーツ実況の放送コードと、報道は違いますから。バラエティーならラーメン屋と言えるんですけど、報道はラーメン店と言わなきゃいけない。おかしいでしょ、とせめぎ合うんですけど、報道には人権を守らなくてはいけない。テレビを見て下さる人の、報道とバラエティーを見るスタンスは違う。いろんな不自由がある。塀の上を歩いて、塀の上の中に入ってはまずいから外へ落ちろと言われた。ギリギリのところで、反省点はいっぱいありますけど、最低限の放送コードを守らせていただいた。その意味では自由はあった。今後はちょっと緩くなるから、唯一やりたいのは、しゃべり倒したい。12年間うっぷんがたまっている。そんなことです。
Q:4月以降後任が誰か、となる。昨年は一部週刊誌では宮根さん、羽鳥さんが挙がった。古舘さんから見て、どういう人がふさわしいか。
A:僕の12年間を考えると、どうでしょう。思い切り堅いジャーナリストもあるだろうし、ぴしっとやっていただく線もあるでしょうし、僕と同じアナウンサー系で前後左右を見てやるのもあるでしょうし、分かりません。僕には。テレビ局がどういう判断をするのか。ただ、報道ステーションという名前が残る以上、ちゃんと立派な人がやってくれるんだろうと固く信じています。僕も癖がありましたので、僕みたいな問題発言をしないほうがいいんじゃないですかね。きょうもずーっとネットを見ていましたら、時事通信が打った後かな、一番印象に残ったのが、古舘降板だってさ、やったぜ、というのがあった。そういう人がいっぱいいるんだな、そういう人にはよかったね、と言いたい。育ててくれてありがとうと言いたい。誹謗中傷、批判、非難がいっぱいあった。毎日メール、電話とかに目を通して、11年9カ月、目を通してきた。多い時は600本抗議がある。そういうときは、夕方、夜もへこみますが、考えてみると目一杯口汚く罵ってくれた人に鍛えられた。もしかしたら、この人が仕事でイライラして、こんな罵詈雑言を吐きつけて、布団かぶって寝て、また仕事に行くんだなと思える瞬間もあって、これも一種の社会貢献だな、と。ちょっと話がずれました。
Q:12年間で印象に残った思いは。
A:一つ挙げろと言われれば、東日本大震災。やはり、3月11日は忘れ得ぬ記憶です。たまたま内輪の話をして恐縮ですが、若林地区の仙台平野の、コールタールのような色をした大津波。その映像が、うちはなかったんです。ヘリコプターが飛んでいなかった。夜、CMがなくなりACの広告しかない状態で、夜7時から始まり、夜中の1時くらいまでやった。気仙沼の大火災の映像が入手できた。その状況を私が生で描写した。東日本大震災、福島第一の原発事故、これを伝え続けたことが一番印象に残っている。第二はリーマンショック。日比谷公園の派遣村に並んだこと。意外には、答えが出ない変なもの。イランがサルを宇宙に打ち上げた、とか。あんまり受けなかったですね。12年報道をやると鈍っちゃうんです。
「偏らない放送はできない」
Q:報道番組のキャスターというのは、どういう存在で、どういう役割を担っていると考えているのか。もう1点、安保法制の審議をめぐって、TBSの岸井さんの発言をめぐって偏っているという意見もあった。キャスターが番組内で自説を展開することについてどう意識していたか。
A:ニュースキャスターとは、と言うと、定義はさまざまあるかもしれません。権力に対して警鐘を鳴らす、監視するというのは報道番組が担っていると思います。一方で、商業放送、民間放送、電波事業です。とことん偏って、新聞のように突っ走ることもできない。綱引きが、テンションが張っている状態で、こっちに行ったらこっちに戻るとか、ぶれちゃいけない。反省は多々ありますが、基本的にニュースキャスターは、反権力であり、反暴力であり、言論の自由、表現の自由を守る側面もある。あまりにも偏ってはいけないとはいえ、全き純粋な中立公正はあり得ないと思います。素人のくせに、ジャーナリスト上がりでもないのに、いろんな意見を言うことにずーっと見ている人がいた。ちょっと言わなくなると、お前キャスターなんだから言え、素人のお前の意見が聞きたいと言われる。同じ人が言っている可能性がある。人間は多重人格。両方に応えたいと思って、抑えたり出たりしていた。未熟であることは当然ですけど、ニュースキャスターが意見を言ってはいけないということはないと思っている。偏っていると言われれば偏っている。偏っていない人間はいない。主観のない客観にすぎない。放送法も法的規範なのか、倫理規範なのかという議論がある。基本的に偏らない放送はできない。岸井さんのことは分かりませんが、ズバッとおっしゃられて小気味いいと思っていたのは事実。産経新聞に書かれて、テロについて。空爆で誤爆で死んだ人も、そっちから見ればテロじゃないか、と。半分うれしいんです。ネタになってるじゃん、と。
Q:ニュースの分野でどうされるということはありうるか。
A:あり得ますね。他局で血迷って降ってくることもあるかもしれない。そこは事務所と相談したい。
Q:やりたい?
A:今はありませんけど、虫がうずくかもしれません。12年やると、報道は報道で麻薬中毒じゃないかなと思う。禁断症状が出たらやっちゃおうかな。朝日新聞取材に来てください。産経新聞も来てください。朝日新聞と産経新聞で、音声多重で喋りますよ。
Q:番組をめぐっては、自民党から局の関係者が事情聴取を受けることもあった。反権力と言う話があった。政権与党からの圧力について。久米宏さんという存在から引き継いで、いつか違う地平に屹立してみせる、と言っていた。それが果たせたか。
A:新たな地平に屹立したかと言うと、そこまでは行ってはいない。爪をひっかけてという気概はあったが、新たなニュース番組の地平に屹立したかまで言うと、半ばでやめていくのかなという思いがある。もっと向いている仕事をやりたいと思って娯楽に行く人間だから、僕は本当に向いていたのかなというのはありますよ。反権力は100までやろうと思っていない。思ってこなかった。反権力という側面もある。一方では、権力の出すものをソースとして客観的に伝えることもある。さじ加減、湯加減だと思ってやってきた。ヒトから見ればだめだというのは、謙虚に受け止めています。
●「電波発言」に抗議の田原、岸井両氏ら…何を問題に 2016/3

 

何が言いたいのかよく分からない。3月31日にテレビ朝日系「報道ステーション」のキャスターを降板した古舘伊知郎氏は、番組の最後でこう述べた。「人間は少なからず偏っている。情熱を持って番組を作れば多少は番組は偏る」「何らかの圧力がかかって辞めさせられるということは一切ない」。
自分と番組は偏っているが、辞める理由とは関係ないということか。わざわざ最後に言い残す言葉かと当惑させられたが、このところ国会や一部新聞ではやっている「マスコミ萎縮論」を意識しての発言なのだろう。
高市早苗総務相の「電波発言」に抗議したジャーナリストの田原総一朗、岸井成格両氏らが3月24日、日本外国特派員協会で開いた記者会見も奇異に感じた。ニュースサイト「ブロゴス」によると、彼らは一様に安倍晋三政権を批判しつつ、矛盾するような意見も強調していた。
「私に対して直接・間接の圧力は一切ない」(岸井氏)、「政治の圧力なんてたいしたことない。僕は首相を3人失脚させたが、圧力なんて何もない」(田原氏)…。だとすると、がん首を並べて一体何を問題にしているのか。
ジャーナリズムは反権力であり、使命は権力の監視だとのステレオタイプに無理やり現実を当てはめようとして、自家撞着(じかどうちゃく)を起こしてはいないか。マスコミ自身が一つの権力である実態への自省は見えない。
思想家の吉本隆明はかつて、共産党による「小沢一郎元自治相=ファシスト」宣伝についてこう指摘した。「『小沢はファシズムだ』と幟(のぼり)を立てれば、周囲もすぐに同じことを言い出す状況のほうが、はるかにファシズムになる可能性が高い」(『わが「転向」』)。現在では、安倍首相がヒトラー呼ばわりされている。  
 
 

 

放送法順守を求める視聴者の会
この度、憂いを同じくする民間人7名が呼びかけ人となり、「放送法遵守を求める視聴者の会」(以下「視聴者の会」)を発足し、本日11月14日付産経新聞に、15日、読売新聞に一面全面広告を掲載。同広告ではTBSニュース23のメインキャスター岸井成格氏の放送法違反である疑いの非常に濃厚な発言を明確、詳細に批判し、国民に違法な報道への注意を喚起しました。また、視聴者の会では、TBS、岸井氏宛公開質問状を近く正式に投函する予定。  
報道番組の現状 
当会の調査によると、安保法制成立直前1週間の各局報道番組の法案への賛否の放送時間比較は、NHKニュースウォッチ32%:68%(賛成:反対、以下同)、日本テレビNEWS ZERO10%:90%、テレビ朝日報道ステーション5%:95%、TBS NEWS23 7%:93%、フジテレビあしたのニュース22%:78%など、常軌を逸した偏向報道となっています。特定秘密保護法、集団的自衛権の閣議決定など重大なトピックではほぼ同じ極端な偏向が繰り返されてきました。この現状を短期間に是正しない限り、国民が正しい政治判断を下すことは不可能です。 そこで視聴者の会では、以下の目標を実現するまで活動の手を絶対に休めません。  
目標 
テレビ事業者は放送法の規制下にあります。放送法第4条は以下の4項目を放送事業者に遵守するよう求めています。私達は、放送事業者が、この第4条を遵守し、重大な政治的争点で公正な放送時間配分(概算で4:6程度までの範囲内)を守らざるを得ない国民的な強い思潮を早期に作りだすことを唯一最大の目標とします。  
放送法第4条  
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。  
二 政治的に公平であること。  
三 報道は事実をまげないですること。  
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。  
行動方針 
1視聴者の会は、例えば「放送法に罰則規定を設ける」「放送局の解体」などの激しい争点になる主張を行わず、現行の放送法4条の遵守のみを求めてゆきます。  
2当会は、会として特定の政治的立場や主張を持ちません。特定の政治的主張を通したくてこの運動をしているのではありません。視聴者の会のキーワードは「国民の知る権利」です。偏向報道はまさしく「知る権利」の重大な侵害に他なりません。当会は「知る権利」を守ることに活動を特化します。  
3当会は新聞メディアは対象としません。新聞には完全な言論の自由が保障されています。今回の我々の会が問題にするのは放送法に規制された放送局のみです。  
4政治家の関与・賛同は厳に御断りし、一般国民の声のみを結集します。  
今後の活動 
本日の新聞広告掲載に続き、矢継ぎ早に各種広報を始めキャンペーンを展開します。違法性ある報道を国民の皆様に知らせ続けるホームページの更新、各界有識者の賛同者の募集、大規模な署名活動を展開してまいります。報道番組の公平化が早期に達成されるまで、皆様の力強い御賛同、御支援をお願いいたします。  
すぎやまこういち(代表/作曲家) / 渡部昇一(上智大学名誉教授) / 渡辺利夫(拓殖大学総長) / 鍵山秀三郎(株式会社イエローハット創業者) / ケント・ギルバート(カリォルニア州弁護士・タレント) / 上念司(経済評論家) / 小川榮太郎(事務局長/文藝評論家) 
 
 

 


 
2016/2  
 

 

放送法順守を求める視聴者の会
日本の任意団体。通称「視聴者の会」。  
放送法遵守を求める視聴者の会は、国民主権に基づく民主主義のもと、政治について国民が正しく判断できるよう、公平公正な報道を放送局に対して求め、国民の「知る権利」を守る活動を行う団体であるとしている。特定の政治的思想は持っておらず、いかなる立場の政治的主張であろうと、アンバランスで極端に偏向した姿勢での報道は許されないと考え、政治的立場がどうあれ公正な報道姿勢が守られていない限り、マスコミに対してその是正を求めてゆくことを会の方針としている。会の目的は放送局やニュース番組を糾弾することではなく、視聴者の立場から放送局に対し、放送法第4条を遵守し公平公正な報道により、国民の「知る権利」を守るよう求めてゆくことであり、公平公正な報道が実現されることのみが目的である。放送法に罰則を設けるなどの法改正は求めておらず、放送局が現行の放送法第4条を遵守しさえすれば、法改正の必要は無いという立場をとっている。特定の政治家や政治団体との関係は持っておらず、そのような関係を厳に断りながら運営する方針である。新聞については法的規制は無いため、新聞の主張内容や報道姿勢を監視する運動は行っておらず、あくまで対象は放送法の規制下にある放送事業者のみである。
沿革  
2015年に第3次安倍内閣によって提出され、国会で議論された平和安全法制について、同年9月16日放送の「NEWS23」(TBSテレビ)にて、番組のアンカーである岸井成格が「安保法案は憲法違反であり、‟メディアとしても”廃案に向けて声をずっと上げ続けるべき」と発言した。この岸井の発言に対し、  
○ 「放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない(第4条)」「政治的に公平であること(第2号)」「意見が対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすること(第4号)」と記された放送法第4条1から4項に違反する可能性がある  
○ 国民がマスコミによって「知る権利」を奪われかねない  
と主張し、すぎやまを代表とする7人の文化人が呼びかけ人となり、同年11月1日付で「放送法遵守を求める視聴者の会」が設立された。  
呼びかけ人のひとりであるケントは、9月22日付のブログで自身が「NEWS23」にVTR出演した際にオンエアに悪質な印象操作があったと述べており、  
○ 「「さすがはTBS、見事な編集だな〜!」と、久しぶりに感服しました」「「ケントは頭がおかしい」と反射的にツイートする人たちの、テレビを通じた印象操作のされっぷりが見事すぎる」  
と、不満を述べていた。  
視聴者の会は、同年11月15日に産経新聞、11月16日に讀賣新聞の朝刊にて、安保法制におけるNHKや民放キー局が制作している報道番組での賛成反対両論放送時間を集計し円グラフで比較、「NEWS23」「報道ステーション」「NEWSZERO」で90%以上の時間が反対意見に割かれていると述べ、メディアが反対派に偏った報道をしている、と主張した上で、放送事業者に対し放送法第4条の遵守を求める意見広告を出した。さらに、同年11月26日に記者会見を行い、事務局長の小川は  
○ 「検証を進めると、印象として言われる「偏向報道」という言葉では手ぬるい、違法的な状況が蔓延している。メディアは本来、さまざまな見解を伝え、事実と国民を媒介するものではないか」「強調したいのは、(保守派論客と呼ばれる)呼びかけ人の政治的見解を報じてほしくて会を始めたのではない、ということ。逆に、われわれの主張を全テレビ局が90%、賛成したり称賛したりするような状況は異常だ」「しかし、90%以上が政府や法案をあの手この手で叩き続けるのも異常だ。むしろ、国民の判断を奪う政治宣伝のレベルに達している。この現状は、政治的立場を超えて、誰もが問題視せざるをえない状況ではないか」  
と述べた。  
その後、視聴者の会は、岸井、TBSテレビ、総務省に対し放送法第4条を遵守するよう求める公開質問状を送った。12月22日付で、TBSテレビと総務省は視聴者の会からの質問状に対する返答を公表した。  
総務省の高市早苗大臣は、  
○ 他方、一つの番組のみでも、例えば、1.選挙期間中又はそれに近接する期間において、殊更に特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間にわたり取り上げる特別番組を放送した場合のように、選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合、2.国論を二分するような政治課題について、放送事業者が、一方の政治的見解を取り上げず、殊更に、他の政治的見解のみを取り上げて、それを支持する内容を相当の時間にわたり繰り返す番組を放送した場合のように、当該放送事業者の番組編集が不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められる場合といった極端な場合においては、一般論として「政治的に公平であること」を確保しているとは認められないと考えております。  
と回答している。  
しかし、岸井本人からの返答は無かった。これに対し、視聴者の会は  
○ 甚だ残念であります。岸井氏は放送局に属するニュースアナウンサーではなく、そもそもが毎日新聞の主筆まで務めた、現代を代表する「言論人」です。言論人とは、ついには、一個の個人の言葉の力のみに依って立つべきであり、その意味で、無回答という回答さえもTBSに代行させたのは、自ら、言論人の矜持を根底から放棄したに等しいと言えるのではないでしょうか。また、氏は、今日まで、政治家など他者に対して、極めて厳しい要求を突き付け続けてきた「実績」をお持ちです。自らが社会的な批判にさらされた時には、自分が過去、他者に要求してきた所に顧み、恥ずかしくない言動を取られるべきではなかったでしょうか。当会は、(TBS)社からの回答はなくとも、個人としての資格による岸井氏の回答はあるだろうと期待していました。TBSに「無回答という回答」を代行させた氏に対して、強い失望を禁じ得ません。  
とのコメントを出した。  
その後、2016年1月15日に、岸井が「NEWS23」のレギュラー出演を降板することが発表されたが、TBS広報部は「(昨年9月の)騒動以前に岸井さんと話し合っていたこと。政治的圧力や意見広告などは全く関係ありません」と説明したが、4月以降から新たにTBSテレビと「スペシャルコメンテーター」として専属契約をした事が発表され、「NEWS23」や「サンデーモーニング」、「選挙特番」を含め横断的に出演する事が決定。この事象に対し、事務局長の小川が共同通信のインタビューに回答したが、記事には使用形跡が無かったため、個人Facebookのフィードにて、  
2.TBSテレビ専属のスペシャルコメンテーターとしてならば、番組の中で同じ発言した場合、問題はないという認識でよいか? の問いに、  
○ 「勿論、番組全体が放送法第4条に則った論点の多角的提示を行った上で、個人としてのジャーナリストや言論人が同様の発言をするなら何ら問題はない。しかし「テレビ局専属のスペシャルコメンテーター」という岸井氏の新たな肩書は、放送事業者の組織人を意味するので、従来の毎日新聞社員の立場よりも発言の自由は制限されるのではないか。自由で強い発言をしたければ個人の資格に立つべきだ。」  
3.「報道ステーション」古館氏、「クローズアップ現代」(NHK)の国谷氏、岸井氏の3氏が降板、テレビの変化をどうお感じか? の問いに、  
○ 「万一、我々の活動と3氏の降板とに何らかの関係があるならば遺憾である。我々は多角的論点の提示を求めているので、特定のキャスターの降板を求めたつもりはない。寧ろ、局として放送法4条遵守に向けて、国民に見える形で取り組んでほしかったし、発言のカラーの強いキャスターを降板させるより、彼らを留任させた上で、論点を多角的に打ち出して、論争的でエッジの効いた報道番組を作ってもらいたかったというのが本音だ。」  
との回答をしたと公表した。
評価  
産経新聞社ワシントン駐在客員特派員兼論説委員の古森義久は、視聴者の会の意見広告を受けて自身のコラムにて、「NEWS23」では岸井も他の出演人物たちもすべて安保法案への反対の立場を一貫して示し続け、安保法案可決前後2週間、同法案への賛成側の主張や動きは全く報じられなかったことを指摘している。しかも、岸井は単に意見を述べるコメンテーターではなく、放送局側を代表する立場にあり、そのTBS代表が堂々とすべてのメディアに対して安保法案の廃案を求め続けるべきだという特定の主張を表明したことは明らかに放送法違反として映ると批判している。  
視聴者の会による意見広告を掲載した産経新聞は、視聴者の会の主張は視聴者として当然抱く疑問であり、公開質問状も回答できないような複雑な内容ではないため、岸井は自らが思うところを堂々と述べたらいいだけであり、返答できなかったということは岸井自身も自らの発言に問題があったと考えているのではないかと評している。また、岸井だけに問題があるのではなく、番組を仕切るキャスターにも、番組の責任者であるプロデューサーにも、そして番組を放送しているTBS自体にも責任があると批判した。さらに、メディアが視聴者に対して傲慢になっているのは、「単なる倫理規定」「従わなくても罰則はない」と制作者側が放送法を軽んじている姿勢に問題があるとし、「権力に対してチェック機能を果たすのがメディアの役割であり、批判するのであれば意見が偏っていても構わない」という「勘違いの正義感」も背景にあるのではないかと主張した。
批判  
視聴者の会の意見広告に対し、日本ジャーナリスト会議は、「安保法に対する国民の反対の声を伝えたもので放送法違反ではない。岸井氏への不当な攻撃はメディアの萎縮効果を狙ったもので、不当な攻撃を許さない」と声明を発表した。  
同年12月6日に日比谷野外音楽堂で行われた、安全保障関連法に反対する集会にて、岸井と大学の同じゼミ生で評論家の佐高信が、  
○ 「渡部昇一とか、例の愛国者擬きの人達が呼び掛けた意見広告で、全部がNEWS23のアンカー、岸井成格に対する個人攻撃だった」  
と批判し、自身が前社長で論説委員を務める「週刊金曜日」1069号(2015年12月25日)にて「右派市民運動による言論攻撃」として批判した。  
同年12月15日に砂川浩慶立教大学社会学部准教授、元「GALAC」(放送批評懇談会)編集長でジャーナリストの坂本衛、アジアプレス・インターナショナルの綿井健陽が日本外国特派員協会にて、「「放送法の誤った解釈を正し、言論・表現の自由を守る」ことを呼びかけるアピール」の記者会見を行い、記者からの「与党及び政府が活動支援しているのか?」の問いに対し、  
○ 「はっきりした証拠は見つからないが、放送に対して政府与党が強力に圧力をかけているのと同調するような意見広告が新聞に載っており、繋がってるのかなと思うが、色々な意見はあっていいので、批判したいのはあくまでも政府なので、その間違いを正したい。(坂本)」「日本のマスメディアが"安倍政権を支持するメディア"と、"ちゃんと批判するメディア"に二分している。この1年間で安倍さんが出演したテレビ局は限られて、日本のマスメディアは新聞とテレビが系列関係にあるので、安倍さんに近いグループだけで、視聴者の会が近いメディアに意見広告を出稿しており、安倍政権支持のメディア論調と、活動家らのネットの発言内容は非常に似通っている。(砂川)」「放送における"公平中立"というのは、いかなる政治家にも、経済界にも干渉されない、支配されない、影響されないという"自主独立の確保"だと思う。(綿井)」  
とし、視聴者の会の主張と手法を批判した。 

 

●すぎやまこういち  
(椙山浩一、1931 - ) 日本の作曲家、編曲家。日本作編曲家協会常任理事、日本音楽著作権協会評議員。  
○ 名義にひらがなを使用しているのは、「椙山」を読める人が少なかったため。初期の曲の一部ではクレジットを漢字表記にしていた。  
○ 演歌について「演歌こそ日本民族の音楽である、という権威付けは間違いである」「音楽芸術の面から見れば、瀧廉太郎から始まりすくすくと育っていた日本の音楽文化に、暗黒時代を築いたと断言してよい」「我々コンポーザーの間でも演歌を歌とは認めても、音楽的には優れた美しいものと認めている人は少ないのではないか」と否定的な見解を自著に記している。  
○ 趣味はクラシックカメラとゲーム(ビデオゲームに限らずさまざまなおもちゃ)の収集、読書と食べ歩き。 カメラの収集家としても著名で、カメラ雑誌でクラシックカメラや特殊なカメラに関する記事の執筆も手がける。  
○ 2ちゃんねらーであることを公の場で明らかにしている。2007年の「教科書改善の会」シンポジウムにおいて、「2ちゃんねるを見ている」と発言し、会場にいた人々に「2ちゃんねるを見たことがあるか」と質問したところ、ほとんどが中年以上であったにも関わらず多数の人が手を挙げた。さらに「アサヒる」という言葉をそのままの解釈で披露した。  
○ ゲーム好きであり、日本カジノ学会理事、日本バックギャモン協会名誉会長などを務めている。また、嫌煙の風潮に反発し、「喫煙文化研究会」を設立し、代表に就いている。  
主張と立場  
○ 国家基本問題研究所評議員、教科書改善の会賛同者、「国籍法の是正を求める国民ネット」代表委員、歴史事実委員会委員、「安倍総理を求める民間人有志の会」発起人などを務め、その一員として活動を行っている。  
○ 政治家に対する直接的な支援としては、松原仁・稲田朋美・城内実などの応援曲の作曲を手掛けたほか、2012年には稲田に計250万円(夫人・之子名義のものを含めると計450万円)、安倍晋三に計160万円、中山成彬に130万円、中山恭子に80万円、赤池誠章に50万円を献金するなど、金銭面での支援もおこなっている。  
○ 慰安婦問題や南京事件についても、たびたび否定的な態度を表明している。ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙に、「南京事件の被害者が30万人という説、およびそれに基づく日本軍の虐殺行為は事実として認められない」という趣旨の意見広告を載せようとし、一度は断られたが、2007年6月14日付ワシントン・ポスト紙に歴史事実委員会名義で「THE FACTS」(慰安婦問題について強制性はなかったとし、アメリカ合衆国下院121号決議案採択阻止を目指す目的の意見広告)が掲載された。これを主導し、広告費全額を負担したのはすぎやまである。決議案は採択されたが、すぎやまは「広告掲載を受けて当時の下院採決には十数人しか出席しなかった。広告には効果があった」と主張している。  
○ 2010年、三橋貴明、西村幸祐らとともに、「日本人による日本人のためのメディア」という趣旨のもと、“メディアを監視する”ウェブサイト「メディア・パトロール・ジャパン」を立ち上げ、コラムを執筆している。5月、藤井厳喜と西村幸祐が鳩山由紀夫を「公職選挙法違反」の容疑で告発した際、署名の中にすぎやまも名を連ねた。2015年には放送局に放送法遵守を求める「放送法遵守を求める視聴者の会」を興した。  
発言  
○ 過去において、古くは天皇制を論議することから憲法改正問題、集団的自衛権問題、有事法制問題など多くの論議のタブーが存在し、政治家はもちろんのこと、どれほど多くの国民を思考停止状態に追い込んできたことだろう。この非核三原則を論議すること自体を封殺しようとする人々は、全体主義政治体制に憧れを持っている人々なのだろうか?  
○ 武器というものは全て悪いものだという発想は、まさに憲法九条そのものです。  
○ 福田康夫首相の退陣表明は中国や韓国から惜しまれた。ギョーザ事件では中国内で同じ事件があったのに、中国の要請通り発表を控えるほどの『媚中派』だったからだ。尖閣諸島や竹島問題など国家間のせめぎ合いがある。次期首相は中韓に嫌がられても国益を優先する保守政治家を望む。  
○ 今の日本国内は“日本軍vs反日軍の内戦状態”にあると、私は思っている。 
●渡部昇一  
(1930 - ) 日本の英語学者、評論家。上智大学名誉教授。専攻は英語文法史。学位はミュンスター大学(ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学)博士。称号・名誉学位はミュンスター大学(ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学)名誉博士。公益財団法人日本財団評議員。山形県鶴岡市出身。昭和23年山形県立鶴岡中学校(旧制)卒業、昭和24年山形県立鶴岡第一高等学校(現:山形県立鶴岡南高等学校)卒業を経て、同年に上智大学文学部英文学科に入学。上智大学大学院西洋文化研究科修士課程修了を経てドイツのミュンスター大学(ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学)大学院博士課程修了。自著によると極貧の状態で大学を卒業し、奇跡的にヨーロッパの大学に留学し、学位を取ることができたという。ミュンスター大学(ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学)哲学博士(Dr.Phil. 1958年)、オックスフォード大学留学、ミュンスター大学(ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学)名誉哲学博士(Dr.Phil.h.c. 1994年)。ヨーロッパから帰国して10年ぐらい経った助教授の頃、フルブライト・ヘイズ法によるアジアからの訪問教授プランによって渡米、4つの州の6つの大学で半学期ずつ講義を行う。上智大学講師、助教授、教授を歴任して退職。上智大学より名誉教授の称号を受ける。専門の英語学以外にも歴史論、政治・社会評論を著している。内面の充実を求める生活のさまざまなヒントとアイデアを示した著書『知的生活の方法』はベストセラーとなった。また、大島淳一のペンネームでジョセフ・マーフィーの成功哲学を日本に紹介した。主な役職としては、インド親善協会理事長、日本財団理事、グレイトブリテン・ササカワ財団(日本財団のイギリスにおける機関)理事、野間教育財団理事、イオングループ環境財団評議員、エンゼル財団理事、「日本教育再生機構」顧問等。政治・歴史に関する評論については、保守系オピニオン誌である『正論』や『諸君!』『WiLL』『voice』『致知』などへの寄稿が多い。近年は魂の存在を肯定する発言を行なうなどスピリチュアリズムに関する著作を出版している。  
近現代史論  
○ 盧溝橋事件は中国共産党の陰謀である、戦前の学校で習った歴史の見方の方が正しかったと主張している。  
○ 南京事件に関しては、「ゲリラの捕虜などを残虐に殺してしまったことがあったのではないか、こういうゲリラに対する報復は世界史的に見て非常に残虐になりがちだ」と殺害の事実は認めているものの、「ゲリラは一般市民を装った便衣兵であり、捕虜は正式なリーダーのもとに降伏しなければ捕虜とは認められない。虐殺といえるのは被害者が一般市民となった場合であり、その被害者は約40から50名。ゆえに組織的な虐殺とはいえない」と虐殺行為は無かったと主張している。WiLL2007年4月号では、松井日記の南京についての記述を根拠に、「南京大虐殺は無かった」と主張している。  
○ 「ヒトラーやムッソリーニ、二・二六事件の青年将校らは共産主義者である」と主張している。  
○ 慰安婦問題に関しては、朝日新聞の吉田清治や吉見義明に関連しての報道や日本の弁護士の日本政府への訴訟、日本政府の安易な謝罪などが重なったことが原因で騒動になったもので、国家による強制や強制連行はなく、捏造であることが証明されているとしている。2007年、日本文化チャンネル桜社長(当時)の水島総が代表を務める「慰安婦問題の歴史的真実を求める会」がアメリカ合衆国下院による対日非難決議案(アメリカ合衆国下院121号決議)に対して作成した抗議書に賛同者の一人として署名した。抗議書が駐日アメリカ合衆国大使館へ手渡された同年7月13日、渡部は記者会見で「(対日非難決議案にあるように)朝鮮半島で20万人もの女性をかき集め、トラックで運べば暴動が起きる」と述べ、決議を非難した。  
○ 沖縄戦における集団自決問題について、「実際には積極的に日本軍に協力した沖縄の人々が復帰後、左翼メディアに煽動され、歴史で騒げば金が出ると考え、堕落した結果である。」と述べた。また戦時中「生きて虜囚の辱めを受けず」の戦陣訓をもっとも強く鼓吹したのは朝日新聞であったことは看過できないとしている。  
○ 戦後の“反日的左翼”の起源を、公職追放など占領政策によって利益を得た「敗戦利得者」および「コリア系」の出自を持つ人々に求め、彼らが東京大学、京都大学などの主要大学、朝日新聞などにポストを占めることで戦後の教育界、言論界は歪められたとしている。  
○ 対米協調主義であり、満州にアメリカを関わらせなかったことが失敗であったとして、現在の対中外交にもアメリカを関わらせるべきであるとしている。  
論争  
○ 南京事件についての主張は、現代史家の秦郁彦から批判されている。さらに秦は、渡部が『ドイツ参謀本部』において内容のみならず写真までも洋書から盗用していると主張している。  
○ 1980年『週刊文春』誌上で、小説家の大西巨人に対し、息子2人が血友病であり高額な医療費助成がなされていることから、「第一子が遺伝病であれば第二子を控えるのが社会に対する神聖な義務ではないか」と問題提起し、大きな論争を巻き起こした。  
○ 教科書誤報事件への批判などで朝日新聞・毎日新聞と激しく対立。  
○ 皇位継承問題に関しては男系主義者の立場を採っており、この点では小林よしのりと思想的に対立する。  
○ WiLL2008年7月号の日下公人との対談において、「…ですが美智子様が皇室に入られたために、宮中に仕えていた女性がみんな辞めてしまったそうです」と発言したことについて宮内庁より説明を求める抗議を受けている。宮内庁によれば、そのような事実はなく「その根拠,理由などを承知したく」渡部に要求している。また、同誌において渡部は「ですから、皇太子殿下が一番大切な時期にイギリスに4年も留学なさったというのは、長すぎます」と発言している点についても宮内庁は「当時の徳仁親王殿下が英国に留学なさったのは、昭和58年6月から昭和60年10月までの約2年間です」とその発言が正確性を欠いたものであることを指摘している。  
○ 自著にて「適度の放射能とは、実際にどのくらいか。著者はおそらく毎時20ミリシーベルトと毎時50ミリシーベルトの間にあるのではないかと推定している。」としているが、50ミリシーベルトは原発作業員の年間被曝限度であり、浴び続けると約6分で嘔吐などの急性症状が出る程の線量である。  
○ 『諸君!』誌で1984年新年号から始まったロッキード裁判批判キャンペーンの中で、冒頭陳述の意味や、「証拠能力」と「証拠の証明力」の区別を知らず、裁判記録さえ読むことなく自らの妄想を元に批判したと立花隆に批判された。なお、渡部は立花との公開論争の後、この件に関して沈黙を続けていたが、2012年2月に、渡部が1985年9月から『致知』において毎月連載している「歴史の教訓」において、立花の批判に再反論し、要望があればいつでも立花との議論に応じる構えを見せている。なお、これに対する立花からの反応は現在の所無い。 
●渡辺利夫  
(1939- ) 日本の経済学者(経済学博士)。拓殖大学学事顧問・前総長・元学長、東京工業大学名誉教授、日本安全保障・危機管理学会会長。専門は開発経済学、アジア経済。山梨県甲府市生まれ。  
1975年 筑波大学助教授。1980年 経済学博士(慶應義塾大学、学位論文『開発経済学研究 : 輸出と国民経済形成』)。1985年 同教授。1988年 東京工業大学工学部教授。2000年 同大学定年退官、東京工業大学名誉教授。拓殖大学国際開発学部教授、同学部長。2005年 拓殖大学学長。2013年 拓殖大学学長退任。 
●鍵山秀三郎  
(1933 - ) 株式会社ローヤル(現 イエローハット)の創業者。また、日本を美しくする会の相談役でもある。掃除をテーマにした活動・講演を全国各地で行なっている。東京都に生まれる。1952年 岐阜県立東濃高等学校を卒業。1953年 デトロイト商会に入社。1961年 デトロイトを退社、ローヤルを創業、社長に就任する。1998年 社長を退任、相談役に就任する。2008年 同相談役を辞任。  
○ 理想の会社像を追求し凡事を徹底せよ / 年商900億円を超えるカー用品販売会社、イエローハット。50年前の1962年に産声をあげた同社は、鍵山氏が自転車の行商からスタートさせた。1976年に卸売りから小売りへと業態転換し、1997年に東証一部に上場。翌年、鍵山氏は経営の第一線から退き、鮮やかな事業承継を果たした。78歳の現在はNPO法人「日本を美しくする会」の相談役として、日本全国で清掃活動と講演を行っている。同氏は「理想の会社像を追求し続けたからこそ、現在のイエローハットがある。もし売上や利益を追いかけていたら、途中で潰れていた」と語る。 
●ケント・シドニー・ギルバート  
(1952 - ) アメリカ・カリフォルニア州の弁護士。また、日本で外国人タレント、俳優、著作家として活動。ヴィ・ネットワーク・システムズ代表取締役。アイダホ州に生まれ、ユタ州で育つ。1970年にブリガムヤング大学に入学。翌1971年に末日聖徒イエス・キリスト教会のモルモン宣教師として初来日。1980年、経営学修士号(MBA)、法務博士号(JD)を取得し、国際法律事務所に就職。企業に関する法律コンサルタントとして再び来日し、弁護士業と並行して英会話学校『ケント・ギルバート外語学院』を経営する傍ら、タレント業に携わる。1989年10月1日、宮崎県高鍋町の「町民の日記念式典」で「おもしろ大国ニッポン 私が見た日本観と不思議なこと」の文化講演を行う。2015年、アパ日本再興財団による『第8回「真の近現代史観」懸賞論文』の最優秀藤誠志賞を受賞。『日本人の国民性が外交・国防に及ぼす悪影響について』と題した論文は日本人の誠実さなどを「世界標準を圧倒する高いレベル」と評価した上で、その国民性が「軍事を含む外交の分野では、最大の障害になる」等と指摘したものであった。  
発言  
○ 憲法9条について / 1988年に刊行した『ボクが見た日本国憲法』(PHP研究所)の中では、「僕は改正する必要はないと思うな」、憲法9条は「理想」とした上で、「理想は変えない方がいい」と語っていたが、2015年に日本会議が主催した集会においては、「(9条を堅持するのは)怪しい新興宗教の教義です」と述べ、憲法9条改正を支持する立場を取っている。  
○ 朝日新聞問題 / 2014年、いわゆる従軍慰安婦問題について誤報があったと朝日新聞が認めた事について、「必死の努力を続けてきた韓国人は赤っ恥をかかされた」「報告書を提出したクマラスワミに死んでも消せない汚点が歴史上に残っちゃった」「国連人権委員会の調査内容がいい加減だったことまでバレちゃった」等、自身のブログでコメントした。  
○ 国歌と愛国心について / 愛国心という言葉に強いアレルギー反応を示す日本人が意外と多いと述べ、「『愛国心=右翼=軍国主義=ファシズム』のような刷り込みがよほど強いのでしょうね。」と述べる。国旗や国歌は、自国のものであっても他国のものであっても誰もが無条件で大切に扱うべき存在だと述べ、「君が代」を教えない一部の教育委員会や校長は「国歌を歌えない日本人」を意図的に育てているとしか思えないと述べた。自身が東京マラソンに出場した際に六本木男声合唱団倶楽部の一員として「君が代」を歌ったが、その肝心の場面が放送されなかったとして、アメリカでは大きなイベントの時は必ず開会セレモニーがあり、その中で国歌の斉唱もしくは独唱と星条旗の掲揚は必要不可欠であり、その場面もテレビで放送されると述べた。東京大学などの国立大学の卒業式で「日の丸」や「君が代」を一切使わない事について、「留学生に配慮して」は全く理由にならないと述べ、逆に留学生が日本という国家や国民に対して、最大限の「配慮」と「感謝」をするべきと主張した。  
○ 韓国ソウル中央地検による産経支局長起訴について / 言論の自由に対するすごい弾圧であり、長すぎる出国禁止はいわば監禁であり、在宅起訴なんて完全にやりすぎと述べ、発展途上国や独裁政権のやり方であるとし、「韓国の政治の未熟さを全世界にさらしているようなもの」「子供っぽい。恥ずかしい行為の極み。」と述べた。引用元の韓国紙や記者が処罰されず、引用した加藤達也 (ジャーナリスト)前ソウル支局長は名誉毀損で在宅起訴するなんて明らかに公平性を欠いていると述べ、スケープゴートにされたとしか考えられないと述べた。また、米国では言論の自由がとても大切にされており、この程度のことで起訴されるなんてありえないと述べた。  
歴史認識  
○ 2013年出版の『不死鳥の国・ニッポン』の中で「〈日清戦争から日露戦争、第二次世界大戦にかけて、どのような歴史的経緯があったにせよ、日本が朝鮮半島や中国大陸、東南アジア諸国を「侵略」し、悲惨な戦争を繰り広げたことは事実である。(中略)また、その当時の日本人の多くが中国人や朝鮮人を差別し、彼らを民族的に見下しながら虐げていた事実を、一部の日本の年配者は否定していない。第二次世界大戦の終戦までに日本が行っていたことは国家として、そしてその国の国民である日本人として、歴史の必然であったとしても、負の遺産として顧みることは無駄ではないと思う。と発言している。  
○ いわゆる「従軍慰安婦の強制連行」は、最初は小説内の創作であり、それが反日的プロパガンダによっていつの間にか歴史的事実として世界中に認識されたとしている。歴史の真実を伝える側が、「歴史修正主義者」として非難されてきたと述べた。  
○ 日本が東南アジア諸国や中国大陸で「侵略戦争を行った」という話も創作された話としており、戦後占領政策の一部としてGHQが世界中に広めたプロパガンダであるとしている。嘘が暴かれることを「わが祖国・米国も喜びはしない。」としているが、戦後70年を迎えるにあたりそろそろ日本は近現代の間違った歴史認識の修正を堂々と主張すべきと述べた。  
○ 2014年に米国人ジャーナリスト、マイケル・ヨンが発表した、いわゆる「従軍慰安婦の強制連行」が嘘である事を報告した記事「日韓問題: 第二次世界大戦中、韓国人男性が臆病者だったとでも言うつもりか?」を、日本語に翻訳してブログに投稿。  
○ 世界抗日戦争史実維護連合会は日本だけを対象として貶める反日宣伝工作機関であるとして、南京大虐殺30万人や慰安婦強制連行20万人などの虚偽を拡散することは、人種差別等を撤廃する公民権法の趣旨に反しているので、アメリカ合衆国はこのような活動を取り締まれるよう法改正するべきであると提言しており、当該団体が戦争真実を擁護するならば中国共産党による日本人虐殺の通化事件、国民党軍による通州事件、黄河決壊事件等も擁護するべきであると主張している。 
●上念司  
(1969- ) 日本の経済評論家、著述家。東京都生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。大学時代は弁論部の辞達学会に所属。大学卒業後に日本長期信用銀行、臨海セミナーに勤務、その後独立。2007年、勝間和代と「株式会社監査と分析」を設立し、取締役・共同事業パートナーに就任。2011年の東日本大震災を受け、勝間と共に「デフレ脱却国民会議」を設立し、事務局長に就任。同年4月27日には記者会見を行い、震災対策として震災国債を日本銀行の買いオペ対象とすることを要求した。希望日本研究所客員研究員としても活動。  
中央大学辞達学会の後輩でもある憲政史研究家の倉山満とパートナーを組んで活動する事が多く、株式会社「監査と分析」取締役・共同事業パートナー、希望日本研究所所長としても協力関係にある。また、2013年に倉山が設立したYouTube「チャンネルくらら」では、開設当初から頻繁に共演し、日常的なパートナー関係にある。経済学者である浜田宏一の特別講義を2010年に受講した。このことについて、「浜田宏一に師事し薫陶を受けた」としている。自身の著書『「日銀貴族」が国を滅ぼす』は、経済学を本格的に教授してくれた浜田がいなければ生まれなかったとも述べている。サイドビジネスとして、渋谷と秋葉原にてフィットネス・ジムを経営している。  
主張  
○ 白川方明総裁までの日本銀行の政策を強く批判していた。2011年の時点で、 円高是正のために、日本銀行が目標を定め持続的な金融緩和を継続させることが必要であるとしていた。  
○ 「デフレ時にデフレ政策をやるとデフレを助長する」とする主張については「大抵『相対価格』と『一般物価』の違いが抜け落ちている。相対価格の変化をいちいち『デフレ政策』『インフレ政策』と定義し、その良し悪しを判断するやり方は、原因と結果を取り違えている」と指摘している。  
○ 日本のデフォルト(国家破産)懸念について「日本のように変動相場制を採用している国の自国通貨建ての債務においてのデフォルトは起こり得ない」「国家破産というものが固定相場制特有の現象であり、固定相場制の問題は相当に根が深い」と述べている。  
○ 日本の財政再建と災害対策について「デフレを脱却しないまま増税しても税収は増えず、財政再建はできない。 民間の投資が活発化するまで大胆な金融緩和と財政出動を続けることである。 緊縮財政による財政再建には理論的根拠がないばかりか、却って財政を悪化させる。金融緩和と財政出動を併用して早期にデフレ脱却を図るとともに、災害などの大きなリスクの顕在化に備えて国土を強靭化しなければならない」と述べている。消費税増税については「絶対に阻止しよう」「いくら増税しても税収は増えない」と主張し、財務事務次官の木下康司が増税を推進する首謀者であるとして、インターネット上でコラージュ等を用いて連日批判した。  
○ 日本の経済成長について「経済学的思考に立脚し『世界全体が栄えることによって自国が栄え、自国が栄えれば世界全体も栄える』ということこそ真実である。だからこそ、世の中の問題を解決するための方法として、経済全体のパイを拡大することが重要である」と述べている。  
○ アベノミクスについて、2013年に参議院予算委員会で開かれた2013年度予算案に関する公聴会で、「大胆な金融緩和に加え、景気の下支えには政府の財政出動が必要」「私たちが一番恐れるべきはデフレだ。アベノミクスの第1の矢は極めて正しい」と発言した。  
○ 原発について「大飯原発の再稼働に反対している人たちは、中国の原発の稼働停止を求めないと何の意味もない」「中国をはじめとした周辺諸国の原発・核兵器がなくならない限り、放射能の恐怖から逃れることはできない」「放射能のリスクを文字通りゼロにしたいなら、 周辺諸国の脱原発問題は避けて通れないはずである」「ひたすら日本の原発の再稼働反対だけを唱えるのは完全なダブルスタンダードである」と述べている。  
○ 中華人民共和国の情勢について、著書『悪中論』では中国経済に関するさまざまな統計・指標を収集し、中国の2013年の現状をデータから推計することを試みた。 
●小川榮太郎  
(1967- ) 日本の文芸評論家。私塾「創誠天志塾」塾長。東京都出身。大阪大学文学部卒業、埼玉大学大学院修士課程修了。専門は近代日本文学、19世紀ドイツ音楽。主な論文に『福田恆存の「平和論論争」』、『川端康成の「古都」』など。私塾「創誠天志塾」では塾長を務め、若い人たちを指導している。2009年に民主党の鳩山由紀夫を中心とする政権が誕生した事で「このままでは日本がとんでもないことになる」と思った経緯から安倍晋三を再度内閣総理大臣にする運動(「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」)を始める。この運動では、安倍を総理にする戦略を大局から細目へと立案した20ページほどの戦略プランを立て、下村博文を通じて安倍に渡ったと話している。2015年、著書『小林秀雄の後の二十一章』の出版を祝う会が開催され、首相の安倍晋三が出席し、あいさつする。2015年、「放送法遵守を求める視聴者の会」の呼びかけ人の一人(他には渡部昇一、すぎやまこういちなど。)として同会の記者会見に出席し、NHKと民放計6局の平和安全法制の審議に関するテレビ報道のあり方などを批判した。  
主張  
○ 歴史的仮名遣 / 歴史的仮名遣(正仮名遣い)を用いており、「正しい日本語を残すという意味で大事だと考えているから」と話している。正仮名遣いは800年以上も前(2015年現在)に確立している国語の「論理」であるとして、放置しておくと正仮名遣いは完全に消滅してしまうと予測している。GHQによる占領期に表音主義が導入された事について用言の活用が表記から消えてしまうとして、最終的には政治的な判断で、元に戻す必要があると話している。  
○ 憲法改正 / 制定過程に根本的な問題があるとしており、GHQによる占領期に制定されたことを踏まえ「当時の主権者はGHQで、その中身もGHQが英文で起草した」「憲法は国民が主権者として制定したと宣言している。これは嘘のストーリー」「本当の主権者が憲法の中身を書いていない事実は重い」として自主憲法制定の必要性を主張している。その一方で、「現実的には自主憲法制定は難しい」「逐条改正するほかないが、最優先すべきは9条だ」と指摘。9条については、「不安定な国際社会の中で、国家一番の責務は自衛できるかどうか」「陸海空軍がなければ自衛はできないのに、憲法には自衛隊の規定すらない」として、「9条2項で『自衛隊を保有する』と明記し、自衛権を行使できるようにしなければならない」と主張。2015年開催された「憲法改正を実現する九州大会」におけるシンポジウムでは、「政治日程に憲法改正が上がるのは画期的なことで、この好機を逃してはならない」「平和について、わめいている人たちこそが一番平和にふまじめな人たちであり、堂々と国民に本当の話を浸透させる必要がある」と話した。櫻井よしこによる「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の代表発起人の1人。