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2008/10 
 
 
オバマは米国をソフトランディング出来るか (2008/10)
覇権の後退 
イラン攻撃の可能性は殆どない。イラン攻撃をしないならば、早晩石油ドル決済体制は崩れ、米ドルは基軸通貨でなくなる。米国債で財政赤字をファイナンスすることが困難になり、米国民は生活水準を落とし、軍事支出を削るため世界各地に展開していた基地や艦隊を撤退縮小し、米国は第二次世界大戦以降の覇権から撤退することとなる。  
これを世界的金融経済危機のさ中で、どうソフトランディングさせるかがオバマの肩に伸し掛かる。金融機関への資本注入は、実質的に新大統領候補の仕事になる。メディケア、メディケイドの改編による公的保険に近い国民皆健康保険制度の導入等でナショナル・ミニマムのセーフティーネットを張り、中間層以下の減税や日本の小渕政権的な公共工事の大盤振る舞い、中国・インド等への雇用の流出防止策で景気・雇用を下支え、新エネルギー分野への財政支出等により産業構造のシフトを図る。これらをドル基軸通貨制度終焉へ向かう中でのドル安を逆手にとって、製造業の米本土回帰等を追い風に行うことになる。中国・インド等への雇用の流出防止では、輸出国の劣悪な労働条件を人権問題に絡め責めるだろうが、相手のあることでどこまで奏効するか不明だ。セーフティーネットを張るとはいえ、国民の生活水準は落ちざるを得ず、恨みを買うだろう。ゴルバチョフは大きな流血なく冷戦を終わらせたが、その後生活の窮乏を強いられたロシア国民からいまだに恨みを買っている。  
米ドル通貨体制  
米ドル、ユーロ、円、人民元等を一定比率で加えた概念上のバスケット通貨単位を幅を持った固定相場で設定し貿易決済の指標とする。IMF(国際通貨基金)を改組強化して各国から準備金として出資させレートの維持・変更の実務機能を持たせる。この過程で基軸通貨でなくなったドルが暴落し、世界経済がクラッシュする可能性がある。  
安全保障体制  
米軍が縮小し世界各地から撤退するなら、それに代わる新しい軍事バランスと安全保障体制が必要となる。昨年5月に米太平洋軍のキーティング司令官は、会談した中国海軍幹部からハワイを起点とした米中による太平洋の「東西分割管理構想」を提案され拒絶したとされている。米軍の力が衰えるならば、太平洋に限らず、東西ヨーロッパで、中東で、中央・西アジアで、地域安全保障体制の創設・強化、日本のような米軍依存国にとってはミサイル防衛を含む自主防衛体制の確立が必要となる。地球レベルでは、国連常設部隊の創設、米国の核の傘に代わり得る核削減廃絶への具体的道筋、核管理体制、もしくは新しい核の傘が必要となる。さもなくば、太平洋においては或いは米中による「東西分割管理構想」が現実のものになり、各地では紛争が絶えないだろう。  
パンドラの箱 
通貨体制にしても、安全保障にしても米覇権なき後に単純な多極化が現れるなら、世界は第一次・第二次世界大戦前夜のように極端に不安定なものになる。冷戦が終わり、米国一人勝ちの時代が過ぎ、パンドラの箱が開いたまま残された。  
世界の国家、民族、市民は、自身の安全と繁栄と優越性を求めて、またこの世界的金融経済危機の中で生き残りを掛けて互いに競い合う。今までの世界構造が機能しなくなるのは避けられない。  
歴史、時代の変わり目、覇権の移行期には必ず大きな戦争や災難が襲ってきた。時代に適った新しい構造の構築、お互いに折り合う最適解に向けて、大きな争いなく合意を形成できるなら人類にとって幸いだ。米国のソフトランディングと共に世界構造のソフトランディングの中心人物の一人と成らざるを得ない。巧みな弁舌で見せた合理的思考パターンと説得力が、現実の大舞台で通用するかは今のところ未知数だ。