思いを貫く

思いを貫く
一度も成功していない 四回転半

挑戦
情熱
意気地
自分への 思い入れか
 


 
 
●フィギュア 羽生結弦記者会見 “残念ではなく感謝” 2/14
北京オリンピック、フィギュアスケート男子シングルの羽生結弦選手の記者会見が日本時間午後6時半すぎから北京市内にあるオリンピックのメインメディアセンターで始まりました。羽生選手の発言などを随時更新してお伝えします。
会見は日本時間の午後6時半すぎから始まりました。羽生選手は日本代表の赤いジャージ姿で会見場に入り、一礼してから席に着きました。
会見の冒頭、質疑応答が始まると、羽生選手はみずから手をあげて「先に僕からお話しさせていただきます」としたうえで「このようなバブル内で陽性者も出ている中、密になってしまうということもあり、このように壇上で答えさせていただきます。足を運んでくださりありがとうございます」と話しました。
“滑りやすくて跳びやすくて気持ちいいリンク”
羽生選手は「オリンピックで金メダルを獲得したネイサン・チェン選手が本当にすばらしい演技だった。金メダルは本当にすごい。また前後するが、この大会の関係している方々、ボランティアの方々、氷を作ってくださる方々に感謝している。ショートプログラムは氷に引っかかって悔しかったが、滑りやすくて跳びやすくて気持ちいいリンクでした。この場を借りて感謝します」と話しました。
“本当にいろんな人に支えられている” “感謝”
羽生選手は、演技を終えて初めてリンクで滑った14日の練習を終えた気持ちについて聞かれ「いろんなこと考えた。4回転半に挑んだこと、成功できなかったこと、今まで頑張ってきたこと、道のりの価値などについて考えました。やはり足首が痛いということがあり、練習は許容量以上に痛み止めを飲んで、やはりここで滑りたいと思った。この3日間、オリンピックのこと本当にいろんな人に支えられているんだなと。足首もたくさんケアしてくださった。歩くのでもちょっと痛いがサポートしてくれた。栄養の面でも本当にいろんな人に支えてもらっているんだなと感謝したいと思った3日間でした」と話しました。
“自分の演技 残念ではなく感謝”
羽生選手はフリーが終わったあとの気持ちを問われ、「自分の演技はベストではなかったが、それでも残念という雰囲気ではなく、感謝したいなと思った。カメラ越しに地元の方、被災地の方も含めていろんな方に感謝を伝えたいと思いました。氷にも、この氷好きだなと感謝していました」と話しました。
“最高のアクセルができた”
4回転半ジャンプ、クワッドアクセルについて聞かれ「まだまとまっていないです。練習で足を痛めた。片足でおりてねんざした。程度も思ったよりひどくていつもなら棄権しただろうし、安静にしていると思うが、それくらい悪くて朝の公式練習ではあまりに痛かったのでどうしようかと思った。注射を6分間練習の前に打ってもらって出場することを決めた。いろんな思いが渦巻いた結果として最高のアクセルができたと思います。自分自身のジャンプは負けたくないというか、あのジャンプだからきれいだといってもらえるし、僕はあのジャンプしかできないし、絶対思いっきり跳んで思いっきり高いアクセルを追求した。僕の中ではたどりつけたと思いますし、回転の判定もあるが僕の中では満足した」と話しました。
“僕のフィギュアスケートが好きと思った練習でした”
羽生選手は14日にリンクで滑ろうと思った理由について問われ「正直本当は滑っちゃいけない期間だったが、どうしても滑りたいと思って滑らせてもらいました」と話しました。また、実際にリンクに立ってどう思ったかについては「これまで習ってきたこととか小さいときにやってきたこととかをやってみて、『うまくなったな』と思って、それを見てもらうのが気持ちよかったり、僕は僕のフィギュアスケートが好きと思った練習でした。氷の感触を大切にしながら滑りたいと思っていました」と話しました。
“よかったという声をもらえてある意味幸せ”
羽生選手はみずからも被災した東日本大震災で被災した人からの声援について受け止めを聞かれると「いろんな方々から声をもらった。おめでとうにはならなかったかもしれないが、よかったという声をもらえてある意味幸せです。みなさんのために滑っているということと、自分のために滑っていることもあります。東日本大震災のとき、みんながひとつになることが、つらい犠牲のなかでみんなの心がひとつになることがあるれば幸せだと思う。こんなに応援してもらって光栄です。みなさんも自分を応援してくれることで幸せになってくれたらうれしいなと思います」と話しました。
“みな生活のなかでなにかしら挑戦してる”
羽生選手は、自身にとっての挑戦について聞かれると「別に僕だけが特別とは思っていなくて、みな生活のなかでなにかしら挑戦してると思う。それが生きることだと思う。家族を守ることも大変で、なにかしらの犠牲を払っている。なにひとつ挑戦ではないことはなくて、それが僕にとって4回転半ジャンプだったりオリンピックだったということ。僕は挑戦を大事にしてきたけど、自分のことを認められるきっかけになったらうれしい」と話しました。

会見の前はリンクに
羽生選手は14日、男子シングルのフリーが行われた今月10日以来、4日ぶりに報道陣の前に姿を見せました。競技会場に併設されたリンクで体の状態を確かめるようにゆっくりと滑りはじめ、はじめはジャンプを跳ばずにステップ一つ一つをじっくりと踏んでいました。そのあとトリプルアクセルを2回跳んで、直後に笑顔を浮かべるなどリラックスした様子でした。練習の最後には男子シングルのフリーでかけた「天と地と」にあわせて華麗なステップを披露し、およそ40分間の練習を終えました。
羽生結弦とオリンピック
羽生選手は、宮城県出身の27歳。2014年ソチオリンピックで日本の男子シングルで初となる金メダルを獲得。2018年のピョンチャンオリンピックで男子シングルで66年ぶりの連覇を果たしました。北京オリンピックには、男子シングル94年ぶりとなる3連覇をかけて出場。10日に行われた後半のフリーでは、自身の最大の目標と掲げてきた世界で誰も成功していない4回転半ジャンプ、クワッドアクセルに挑戦し、転倒して成功こそならなかったものの、国際スケート連盟の公認大会で4回転半ジャンプとして認定されました。試合のあとは「もう一生懸命頑張りました。正直これ以上ないくらい頑張ったと思います。報われない努力だったかもしれないですけど、確かにショートからうまくいかないこともいっぱいありましたけど、むしろうまくいかなかったことしかないですけど、今回。けれど一生懸命頑張りました」と話していました。
 
 
●羽生結弦「このオリンピックが最後かと聞かれ・・・」 記者会見でのQ&A  2/14
フィギュアスケート男子の羽生結弦選手(27)(ANA)が14日午後6時30分(日本時間)から、北京市内で記者会見を行った。主なやり取りは以下の通り。
Q:きょう、演技を終えてから初めてリンクで練習。リンクから離れていた数日間の気持ちの変化は?
羽生:もちろん色々なことを考えた。自分が4回転半に挑んで、成功させられなかったこと、今まで頑張ってきたこととか、道のりだとか、その価値とか、結果としての価値とか。色々なことを考えた。けど、まあ、足首が痛いのもあって、今日は練習、あんまりジャンプやっちゃいけないと思ってはいたが、痛み止めを飲んでいる、かなり強いものを許容量以上に。でもここで滑りたいと思ってここで滑った。この3日間、なんですかね、オリンピックのことについても、もちろん、今までのことを考えてた中で、うん、僕は色々な人に支えられているんだなということと、この足首に関しても、この3日間ですごくたくさんケアしてくださったり。まだ歩くのさえも痛いけど、それでも最大限治療してくださったり、サポートしてくださったり、食事栄養の面でもケアしてくれて、たくさんの人に支えられている。それにもっと感謝したいと思った3日間だった。
Q:フリーの演技が終わった後、観客席に向かっていつもより長くお辞儀して、氷に触れてリンクに何か伝えているしぐさ。どんな思いが?
羽生:えっと、うーん。実際にあそこに足を運んでくださった方があそこにいらっしゃって、自分の演技自体が結果として勝敗としてよかったかと思えば、ベストではなかったと思う。それでもなんか残念だったなという雰囲気には包まれなかった。すごく大きな拍手に包まれて、感謝したいなと。実際に目に見えてはいないが、カメラの向こうでたくさんの方が応援して下さった。地元のかた、被災地の方も含め、色々な国の方が見ている。オリンピックならでは。そういう方に感謝を(した)。いつも氷に挨拶するが、メインリンクで演技するのは最後だなと。ちょっと苦しい部分はあったが、この氷好きだなと感謝した。
Q:クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)への挑戦について。今後は?
羽生:どうなんでしょうかね? 自分の中でまとまっていない。あの時(フリー後)もそうだったが、今言えることとして、これを言うことが正しいのかわからないですし、言い訳臭くなって、なんかそれでいろいろ言われるのもやだなって、 平昌ピョンチャン オリンピックの時も、何か言ったら嫌われるだろうなと思っていたけど、前日の練習で足を痛めて、4回転半で自分の中で一番捻挫した。思ったよりひどくて、普通なら棄権していた。今でも安静にしないといけなくて、ドクターからも10日は安静と言われている。朝の公式練習もあまりにも痛かったので、どうしようかなと思ったんですけど、その後注射を打ってもらって、6分間練習の直前、10分前に出場を決めた。その注射だったり、痛みを消す感覚だったり、自分が追い込まれて、ショートプログラム(SP)も悔しくて、いろいろな思いが渦巻いた結果として、アドレナリンが出て、最高のアクセルができた。なので、ジャンプには色々な技術があって、4回転半を習得するにあたって、いろいろな技術を研究して学んで自分の4回転半につなげようと思ったが、自分自身のジャンプは、負けたくないっていうか、あのジャンプだからこそ、きれいだって言ってもらえるし、あのジャンプしかできないし。だから絶対に思い切り跳んで、思い切り高いアクセルで、思い切り早く(腕を)締めて、を追究した。その中では最高点に僕の中ではたどり着けたと思うし、回転の判定も色々あるだろうが、納得している。満足した4回転半だったと思う。
Q:4日経って、きょう滑ろうと思った理由と、リンクに立って抱いた感情を教えてください。
羽生:正直、本当は滑っちゃいけない期間だったんですけど、どうしても滑りたいなって思って滑らせてもらった。これから練習するとは思います。スケートのことを嫌いになることはたくさんあるし、フィギュアスケートってなんだろうとよく思うし、僕自身が目指していることがフィギュアスケートなのかと考えます。今日滑って今まで習ってきたことや、ちっちゃいころに習ったこととか、スケーティングうまくなったなとか、見ていただくことが気持ちいいとか、僕は僕のフィギュアスケートが好きだなと思えた練習だった。またここから練習していくに当たって、いろいろな感情が湧いているとは思うが、ジャンプ跳びたいと思って練習していたが、フィギュアスケート自体、自分が靴から感じる氷の感触とかを大切にしながら滑りたい。
Q:東日本大震災の時に、避難所で一緒だった方が、金沢市で羽生選手を応援する応援会報誌を作っていて、北京オリンピックで100号に。
羽生:いろいろな方からいろんな声をいただいたり、もちろん、「おめでとう」にはならなかったかもしれませんし、そうですね、「おめでとうございます」にはならなかったかもしれませんけど、いろいろな「よかった」という声をいただいて、僕はすごく、ある意味で幸せです。なんか、僕は皆さんのために滑っているところもあるし、僕自身のために滑っているところもあるし、色々な気持ちの中でフィギュアスケートと向き合っているが、なんか、うん、東日本大震災の時も感じましたが、何かをきっかけにみんなが一つになることがどれだけ素晴らしいかということを、あの東日本大震災から学んだ気がする。もちろん、つらい犠牲の中でだが、僕の演技が、みなさんの心が一つになるきっかけになれば幸せだし、それが災害でなく、もっと健康的に、何かを犠牲にすることでない、幸せな方向だったら幸せだし、こんなに応援してもらって光栄だと思うし、みなさんが自分を応援することで幸せになればと思う。
Q:王者として守るのでなく、王者として攻める、挑戦する。羽生選手にとって挑戦とは?
羽生:挑戦ですねえ。まあ、うーん、きっと別に、僕だけが特別だと何も思っていなくて、王者だったからとかじゃなくて、生活の中でみんな何かしら挑戦していると思う。それが大きいことだったり目に見えることだったり、報道されることだったり。その違いだけで、それが生きることだと思う。守ることだって挑戦。守ることって難しいことだし、大変なんですよ、守るって(笑)。家族を守るって大変だし、何かしらの犠牲や時間も必要。何一つ、挑戦じゃないことなんて存在しないと思う。僕にとってそれが4回転半やオリンピックにつながっていたり、それだけだった。僕も挑戦を大切にしてここまで来たが、みなさんも、ちょっとでも「自分は挑戦していた」「羽生結弦はこんなに褒めてもらえているが、自分も褒められるのでは?」と認めるきっかけになれば。
Q:挑戦した北京オリンピックの満足度はどのくらい? ご自分の4回転半はできたと言っているが、これからのモチベーションは?
羽生:らしい質問ですねえ。冷静に考えて自分の演技はどうだったか。ショートプログラムは、はっきり言って満足しています。ショート最初のジャンプでミスをしたり、何かしらトラブルがあったり、氷に嫌われてしまうこと、「ガコ」ってなったり、転倒じゃなかったり、ミスにつながらなくても「ガコ」ってなることはたまにある。その中でも崩れずに世界観を表現したこと、プラス、いいジャンプを跳べたことは満足している。フリーはもちろんサルコーをミスしたのは悔しいし、アクセルも降りたかったと思うが、でもなんか、上杉謙信っていうか、自分が目指していた「天と地と」の物語、生き様にふさわしい演技だと思う。冷静に考えたとしても。得点は伸びなくても、どうやったってシリアスエラーがあって、どんなに表現してもPCS(演技構成点)は出ないし、どんなに表現したい、世界観を表現したい、達成できたと思っても、点は上がらないが、悔しいけど、僕はフリープログラムを、プログラムとして満足している。モチベーションについて……。そうですね、正直な話、今まで4回転半を跳びたいと目指していた理由は、僕の心の中にいる9歳の自分がいて、あいつが「跳べ!」ってずっと言ってた。ずっと「お前、下手くそだな」って言われながら練習していて。今回のアクセルはほめてもらえたんですよね。一緒に跳んだというか。9歳の時と同じフォーム。ちょっと大きくなっただけで、一緒に跳んだ。それが自分らしいし、何より4回転半を探すにおいて技術的にたどり着いたのはあの時のアクセル。ずっと壁を登りたいと思っていて、いろいろなきっかけを作ってもらって、登ってこれたんですけど、最後に壁の上で手を伸ばしていたのは9歳の俺自身。最後にそいつの手を取って一緒に登ったなという感触があった。羽生結弦のアクセルはこれだと納得している。それがモチベーションとしてどうなるかは分からないが、今の気持ちとしては、あれがアンダーだったとしても、転倒だったとしても、うん、やっぱり、いつか見返した時に、羽生結弦のアクセルって軸が細くてジャンプが高くて、きれいだねって誇れるアクセルだった。
Q(海外メディア):中国のファンに一言ください。このオリンピックが最後のオリンピックか?
羽生:このオリンピックが最後かと聞かれたら分からない。えへへへ。オリンピックやってみて、オリンピックは特別だなって思いましたし、なんて言えばいいか、ケガをしてでも立ち上がって挑戦すべき舞台って、フィギュアスケーターとしてはそんなところは他にない。すごく幸せな気持ちだったので、また滑ってみたいという気持ちはある。2万件のメッセージや手紙をいただいたり、ボランティアさんも歓迎してくださったりとか。中国のファンの方も含めて歓迎してくださっているのを感じていて、そういう中で演技するのは幸せだなって思って滑った。なんか、ほんとに、そんなスケーター、そんな簡単にいないよなって思うし、羽生結弦でよかったなって思った。
Q(海外メディア):今後どうするのか?
羽生:そうだなあ……。ゴール……。4回転半を降りたいなっていう気持ちはもちろん少なからずあって、自分のプログラムを完成させたいという気持ちもある。自分のアクセルは完成したんじゃないかって思っている自分もいるので、これから先、フィギュアスケートをやっていくとして、うーん、どういう演技を目指したいかとか、どういうふうに皆さんに見ていただきたいかとか、いろいろなことを考えている。次のオリンピックとか、どこでやるのかなとか、自分の中でも把握できていない自分がいますし、正直混乱しているんですけど、でも、これからも、羽生結弦として、羽生結弦が大好きなフィギュアスケートを大切にしながら、極めていけたらいいなと思います。
Q:開幕前にオリンピック2連覇の実績を持っていて、それを失うのが怖いと言っていた。五輪王者ではなくなった今の感情は?
羽生:これは泣かせにくるやつ(質問)ですかね。とても重かったし、とても重かったからこそ、自分が目指しているフィギュアスケートと、自分が目指している4回転半ジャンプを常に探求できたと思う。きっと、オリンピック、まずソチで優勝していなかったら報道の数も違ったし、そこで「羽生結弦っていうスケーターがいるんだ」と、「パリの散歩道」や「ロミオとジュリエット」を見ていただいて、注目してくださるきっかけになった。平昌五輪で「SEIMEI」などやって、「羽生うまいじゃん」「これからも応援したいな」と思ってくださった方がいる。だからこそ、今がある。もちろん、3連覇っていうことは消えてしまったし、その重圧からは解放されたかもしれないが、ソチが終わったときと同じで、オリンピック王者だし、2連覇した人間だし、そこは誇りを持って2連覇した人間として、後ろ指をさされないように、明日の自分が今日を見た時に、胸を張っていられるように過ごしていたい。 (会見終了。5秒近く深々とお辞儀) 通訳の方もありがとうございました。 
●羽生結弦、大会直前にねんざ「普通の試合なら完全に棄権してた」 2/14
フィギュアスケート男子の羽生結弦(ANA)が14日、北京市内のメインメディアセンターで記者会見を行った。
羽生は大会前に捻挫(ねんざ)していたことを明かした。「今回、これを言うことが正しいか分からないですし、言い訳くさくなって、色々言われるのもやだなって。平昌の時もそうですけど、何か言ったら嫌われるというか。怖い気持ちもあるんですけど、事実なんで」と切り出すと「前日の練習で、足を痛めて。捻挫しました。思ったよりひどくて、普通の試合なら完全に棄権してた。今も安静にしてないといけない期間。それくらい悪くて。(当日)朝の公式練習、あまりにも痛くて、どうしようと思ったけど、そのあと注射打ってもらって出場を決めた」と話した。
通常の大会なら試合翌日に行われることが多い「一夜明け取材」の依頼が、報道各社から殺到し、個別に対応することが困難なため、会見形式で実施された。
ソチ、平昌大会金メダルの羽生はショートプログラム(SP)で8位と出遅れたが、フリーで巻き返して4位に入賞。挑んだクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)が世界で初めて認定された。20日のエキシビションに出演予定。
●「羽生結弦に敬意を示す」ビンドゥンドゥンが4回転半挑戦 顔面から壁に激突 2/14
北京五輪フィギュアスケート男子で4位となるも、その姿勢で中国に強烈な印象を残した羽生結弦(ANA)に敬意を示し、大会マスコットで大人気のビンドゥンドゥンが4回転半に挑戦。中国で大きな反響を呼んでいる。
礼儀正しさや、前人未到のクアッドアクセル(4回転半)に挑戦する姿が中国で高く評価されている羽生。大会の顔「ビンドゥンドゥン」も羽生の大ファン。ネット上では「羽生結弦への尊敬の念を示すビンドゥンドゥン」というタイトルで、大人気パンダが氷上ではないものの、どこかの会場内で4回転半ジャンプに挑む様子が投稿された。
ビンドゥンドゥンは、ジャンプの前動作のように両足を交互に動かしタイミングをはかると、勢いよくジャンプし回転。しかし、1回転しかできず着地すると、バランスを崩して顔面から壁に激突。周囲のスタッフが走って助けに来る様子が映されている。
中国国営メディア「グローバル・タイムズ」もこのほのぼの動画をツイート。ネット上では「かわいい!」という声のほかに「羽生選手に見てもらって、パワーにしてもらいたい」と願う声が多数上がっている。 
 
 
 
●羽生のアクシデント招いた「穴」に、関口宏「できたと思ったら直せば・・・」 2/13
13日のTBS系情報番組「関口宏のサンデーモーニング」では、北京冬季五輪のフィギュアスケート男子ショートプログラムで羽生結弦(27)=ANA=が氷にできていた穴の影響で4回転ジャンプが1回転になったアクシデントが紹介された。司会の関口宏(78)が「誰かが滑って穴ができたかもしれないと思ったら、直したらいいじゃないですか」と、リモート出演のプロフィギュアスケーター村上佳菜子さん(27)に疑問を投げ掛けた。
村上さんが羽生の状況について「他の選手が踏み切ったジャンプの穴だと思う。自分の溝や穴にはまってしまうことはよくあったりするが、試合ではなかなかない。ただ、羽生選手は過去にも自分の踏み切ったところで穴にはまったことを何度か経験している。それを避けるためにちょっとずらしたところに他の選手の穴にひっかかった。誰も悪くないアクシデントなのかな」と説明した。
関口の疑問については「製氷した後の最初のグループだったので、本当にまれ中のまれだと思います」と話し、同期生の羽生がフリーで4位まで挽回したことに「すごいと思います。なかなかできないこと。4回転アクセルに挑戦してくれたことでスケート界に新しい扉を開いてくれた」と話し、銀メダルの鍵山優真(18)=オリエンタルバイオ・星槎、銅メダルの宇野昌磨(24)=トヨタ自動車、中京大=と合わせて「あっぱれ」を3連発した。
●羽生結弦、中国では「エキシビション出演」がネット検索ランク1位 2/13
北京五輪のフィギュアスケートは10日、男子フリーが行われ、羽生結弦(ANA)は4位だった。大会終盤のエキシビションで演技するかどうかも注目されるが、多くのファンも決定を待ち望んでいる。同国メディアによると、ネットでの検索数が第1位となったという。
中国メディア「北京青年報オンライン」は、「今日の検索ランキング 羽生結弦のエキシビション出演がトップ」との見出しで記事を掲載した。20日に予定されているエキシビションについて、中国のネット上では「まだ終わっていない! 羽生結弦が冬季五輪エキシビションで演技」という情報が出回ったという。
記事では「この情報は、発表されるや否やランキング1位となり、6000万人以上が見ている」と紹介。「ネットユーザーはみな、羽生結弦に温かい気持ち、期待を抱き、『絶対に見逃せない』気持ちをコメントに託している」とも伝えた。
実際に寄せられていた中国ファンのコメントは「絶対に見逃してはだめ!」「2月20日は私の誕生日なの」「彼は、ハイランクの扱いをうけるべきだわ」「絶対に彼に知ってほしい。こんなに多くの人が彼を愛していることを知らせたい」「ユヅ、期待している」「彼には楽しい気持ちになってもらいたい」「今回は絶対に見逃さない」「中国人のロマン」などと紹介されている。
なお、羽生がエキシビションに出演するかどうかは、まだ発表されていない。
●村主章枝さん羽生結弦4A挑戦絶賛「きっとこのまま引退っていうのはない」 2/13
フィギュアスケート女子で04年トリノ五輪4位入賞の村主章枝さん(41)が13日、TBS系「サンデー・ジャポン」(日曜午前9時54分)に生出演し、北京オリンピック(五輪)に出場したフィギュアスケート男子の羽生結弦(27=ANA)について言及した。
男子フリーで、クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑戦した羽生について、村主さんは「昨年11月にケガをされてから本当に短い期間で立て直して、本人ももう右足の感覚がない、そういう状態の中で、チャレンジされたのは本当に素晴らしかったなと思います」と絶賛した。
今後の羽生の動向については「このままは辞めないと思います。『ぼくは負けず嫌いだから』とおっしゃっていることが多いので、必ず今まで有言実行で成功させて、チャレンジされてきた方なので、きっとこのまま引退っていうのはないと思います」と予想した。
●村主章枝さん 羽生結弦「リンク穴」30個くらいあったのでは  2/13
冬季五輪に2度出場した元フィギュアスケーターの村主章枝さん(41)が13日、TBS「サンデー・ジャポン」に出演。北京五輪で世界初のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑んだ羽生結弦(27)に拍手を送った。
共演者から羽生がSPで不運に見舞われた「リンクの穴」について聞かれると、村主さんは「2グループ滑ったら整氷しなければいけないルールがあって、整氷の際に、穴埋めってのもするんです、氷を持ってきてペタペタと」と説明した。
今大会の男子SPでは、1グループ目と2グループ目、3グループ目と4グループ目の間に整氷しており、羽生の4グループ目の前で整氷されていると指摘した。
そのうえで「一般の方々は穴ってできるの?穴って何?と思われた方も多いと思うんですけども、トウジャンプというつまさきをつくジャンプをすると穴が空くんです」と解説した。
「昨晩、いったい、どれくらい穴ができていたのかなと」と推計してみたとし、「羽生選手の前の2人の演技者は合計で5回ついてます」と計算し、6分練習はテレビカメラですべてを見ることができないが「みなさんが4回づつとかついてたら」として、「多くて30個くらいリンクに穴ができていたかなと思う」と語った。
「みなさんは30個と聞いて、どう感じられるか」と話し、リンクは広いとの指摘があると、「穴ができる場所というのもだいたい固まっているので、真ん中でジャンプを飛ぶ方は少ないので、だいたい四隅の方に」と説明していた。
●羽生結弦が14日夜に記者会見 JOCは発表内容を明かさず 2/13
日本オリンピック委員会(JOC)は13日、北京五輪のフィギュアスケートで3連覇を逃した羽生結弦(27=ANA)の記者会見を14日午後5時30分(日本時間6時30分)からメインメディアセンターで開くことを発表した。
今大会、羽生はショートプログラム(SP)で8位と出遅れ、表彰台に届かず4位に終わった。前人未到のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)は転倒し、国際スケート連盟(ISU)からジャンプとして「認定」されたものの成功には至らなかった。試合後は「やり切った」などと最後≠ほのめかす言動もあり、今後に注目が集まっている。4回転半の再挑戦については「もうちょっと時間ください。考えたいです」と話していた。
大会最終日の20日にはエキシビションが行われる。組織委員会から羽生が出場するか否かの正式アナウンスはない。
 
 
●フィギュアのエキシビに海外記者「羽生は?」の質問 「まだ内緒」 2/12
国際オリンピック委員会(IOC)は12日、北京五輪での定例会見を行った。会見では、海外メディアからフィギュアスケートで20日に予定されているエキシビションについて、「羽生選手は出場するのか」と質問があった。
会見では「コロナ禍だが、エキシビションは開催できるのか」と言う質問に続いて、羽生について聞かれ、IOCのアダムス広報部長は「ISU(国際スケート連盟)から情報提供がある」とだけ答えた。一方、北京五輪組織委員会の広報担当者は「私が知る限り、エキシビは実施される予定。でも、誰が出るかはまだ内緒です。最後まで発表することはしない」と説明した。
現状では、男子で銀メダルを獲得した鍵山優真(オリエンタルバイオ・星槎)、銅メダルの宇野昌磨(トヨタ自動車)とともに、4位の羽生結弦(ANA)も出場するとみられている。
●羽生結弦、180度囲まれた報道陣に小さな心配り 海外記者が感謝 2/12
北京五輪は10日、フィギュアスケートの男子フリーが行われ、羽生結弦(ANA)は4位だった。4回転アクセルに挑戦し、転倒したものの、採点表上ではISU公認大会で初めて認定された。演技後は各国の報道陣に180度囲まれたが、羽生がその中でふと見せた気遣いについて海外記者は「彼に助けてもらった」と伝えている。
挑戦を終え、ミックスゾーンで報道陣に囲まれた羽生。仕切りで羽生と記者らの間には一定の距離が保たれているため、録音する多数のスマートフォンやレコーダーが羽生の前のテーブルに置かれていた。
豪紙「シドニー・モーニング・ヘラルド」のアジア特派員、エリク・バグショー氏は、自身のツイッターで写真と共に現場の様子をレポート。「ハニュウがいるときのミックスゾーンは多くの群衆がいた」「列の外にいたレポーターに関しては双眼鏡を使ってハニュウを見ようとしていた」などと伝えたほか、羽生のささやかな気遣いにも注目していた。
目の前に置かれた報道陣の録音機器が乗ったトレーを、羽生は手に取って返却していたのだった。係員が間にいるため返却は任せても良かったが、演技後の疲労もある中で自ら返そうとした羽生に「スマホとレコーダートレーの件で彼には大変助けてもらった」とバグショー氏は感謝していた。
●二宮清純氏 羽生結弦を語るコメントにネット号泣「落ち着いてた涙がまた」 2/12
スポーツジャーナリスト・二宮清純氏が12日、読売テレビ系「ウェークアップ」に出演。北京五輪男子フィギュアで、成功はしなかったもののまだ誰もやったことのない4回転半ジャンプに挑戦した羽生結弦について「ちょっと別次元の世界で生きてる。アスリートでも特別な存在」と評し、ネットを号泣させた。
ショートプログラム(SP)でアクシデントもあった羽生は五輪3連覇ならず4位、ネーサン・チェン(米国)が金メダル、鍵山優真が銀、宇野昌磨が銅メダルの結果になった男子シングル。フィギュアスケートの今後の見どころを聞かれた二宮氏だったが、「私ね、羽生選手について一言だけ言わせていただきたんですけど」と口を開いた。
二宮氏は「彼のコメントで『何回も何回も体を打ちつけて、本当に死にに行くようなジャンプだった』っておっしゃってるんですね。今回の曲がNHKのあの『天と地と』ですよね、上杉謙信を描いた。本当に戦国武将のような気持ちだったんじゃないかなというふうに思うんですよね。ネーサン・チェンが羽生は『神の領域に達してる』と言ったけど全くその通りで、ちょっと別次元の世界で生きてる。アスリートでも特別な存在のような気がしますね」と敬意をにじませながらコメント。
キャスターの弁護士で中大法科大学院教授・野村修也氏も「僕も彼の挑戦見て、もうちょっと自分も頑張ってみようかなっていう勇気をもらいましたね」と、しみじみと話した。
この二宮氏のコメントに、ネットは「二宮清純さんの言葉にまた泣く朝、、、」「二宮清純氏のコメントに泣けました」「二宮清純氏の羽生くんへのコメントにやっと落ち着いてた涙がまた」「朝から二宮清純さんのコメント聞いて再び感極まる」「二宮清純さん、羽生くんの話ちゃんと改めて振り返って言ってくれてたの本当にありがとうございます」「化粧途中で号泣してしもたやん」「また涙腺がー」と涙。「二宮清純氏」もトレンド入りした。
●羽生結弦、「真の精神」を表現した中国紙一面が話題 2/12
北京五輪フィギュアスケート男子シングルで4位となった羽生結弦(ANA)が、中国紙の一面を飾った。中国紙「チャイナデイリー」がツイッターに11日付けの紙面画像を公開。「美は国や個人の価値観を超える」「真の精神ね」とファンの話題を集めている。
羽生が舞った。同紙が公開した画像。フリーで獲られたもので、両手を広げながら体をそらし、上を見上げている。目を瞑った希代のスケーター。水色の背景に「TRUE SPIRIT(真の精神)」の文字が記され、その下には「英雄的なハニュウは勇敢だったが、心が痛むように一歩足りなかった」と書かれている。
中国紙「チャイナデイリー」の香港版ツイッターは、文面に「今日のチャイナデイリー」と記して投稿。海外ファンからは「彼の演技はメダル以上のものに値した」「真の精神ね」「心の底から出たものは、他の人の心に届くもの」と注目を浴び、日本のファンからも「本当に綺麗だ」「『美』って国や個人の価値観超えちゃうんだね」「この写真に添えられた『TRUE SPIRIT』の文字が嬉しい」とコメントが寄せられている。
羽生はメダルこそならなかったものの、前人未到の4回転アクセルに挑戦し、国際スケート連盟にジャンプとして初めて認定された。挑み続けた姿は海外ファンの心を打ったようだ。
●浅田真央と羽生結弦が魂を燃やしたアクセルジャンプ 五輪に残したレガシー 2/12
羽生結弦は北京オリンピックの大舞台で、4回転アクセル(Quad Axel、4A)ジャンプに挑み、失敗したものの、国際スケート連盟(ISU)公認大会として、初めて公式ジャッジシートに「4A」が記録された。
そして、女子で、3A(Triple Axel)を初めて成功させたのは1988年の大会での伊藤みどりだった。同じ山田満知子コーチに師事した浅田真央は2014年ソチオリンピックでは「奇跡のフリー」で記録にも記憶にも残る3Aを跳び、世界のフィギュアファンの心を震わせた。
アクセルジャンプを進化させた日本人スケーターは世界のどのアスリートにも負けない練習量と飽くなき向上心を持っていた。彼らはフィギュアスケートをレベルアップさせた功労者として、スポーツ史を塗り替えたのである。
奇しくも男子フリースケーティング(FS)のあった2月10日は「アクセル」の生みの親、ノルウェーの名スケーター、アクセル・パウルゼン(Axel Paulsen)の命日の翌日にあたる。パウルゼンが1A(1回転アクセル)を国際大会で初めて跳んだのは1882年。最高難度のアクセルはパウルゼンの挑戦を称えて、名付けられた。
「フィギュアスケート羽生選手の挑戦で話題になった4回転アクセル、この「アクセル」という名前の由来はノルウェー人 だとご存じですか? 1882年のフィギュア選手アクセル・パウルセンが国際大会で初の1回転半ジャンプを跳んで以来、アクセルジャンプ と呼ばれ進化してきました」 ノルウェー大使館
羽生はそれからちょうど140年後に北京のリンクで、再び「アクセル」を世界に轟かせた。パウルゼンも天国でさぞかし、究極の高みを目指す27歳のスケーターの姿に嬉しさを抱いたに違いない。
アクセルは6種類あるジャンプのうち、唯一、前向きで踏み切る。左足外側のエッジを使って跳び、ほかのジャンプと同じ後ろ向きで降りるため、半回転多い。
スピードのついた状態で回転をつけて跳ぶことは難しく、負傷の恐れもあるので、多くのスケーターが習得に苦労してきた。
パウルセンが1Aを1882年に跳んでから、1948年の2Aの成功まで66年かかっている。3Aは1978年なので、2Aから3Aの到達には30年と進化の時間は半減した。しかし、4Aは3Aの成功から44年が経過しているが、これまで誰も成功していない。
一方、女子での1A成功は1920年、2Aは1953年。3Aは1988年のNHK杯で伊藤みどりが初めて成功を収めた。
ISUが公式ツイッターで「あともう少しで着氷していた」といった羽生の4Aは、どれほどの僅差だったのか?
メーテレで解説した世界選手権銀メダリスト、小塚崇彦さんが、クリーンな着氷ができる回転まで「6分の1」、滞空時間にすると「0.03秒」だったと説明し、今後の展開をこう予測した。
「周りの選手も『自分にも(4Aが)できるのでは』と背中を追わせてくれる存在には間違いないです」
それだけ、羽生の挑戦が世界のスケーターに与えたインパクトは計り知れないものだった。
2006年トリノ大会金、世界選手権で3度の王者に輝いたロシアのレジェンド、エフゲニー・プルシェンコは初日のショートプログラム(SP)で8位に沈んだ羽生を励まし、FSが終わった後はこんなメッセージをインスタグラムで送った。
「ユヅル・ハニュウよ。君が残したものは永遠に私たちの心の中に残るだろう。君の勇気とプロフェショナリズムは終わりがない」
この言葉には自らの経験がにじんでいた。2010年バンクーバー大会で、無難に収めれば金メダルの可能性が高まったかもしれないが、「フィギュアスケートの進化」のために、彼は果敢に4回転ジャンプに挑んだ。結果は失敗し、銀メダルになったのだが、果敢に挑んだ北京大会での羽生の姿はかつての自らの境遇と重なったのだろう。
地元でオリンピックを迎えた中国のエース、金博洋は交流のある羽生にこんなコメントを送った。フィギュアスケーターズ・オンラインが伝えている。
「ユヅルは27歳の年で、3度目のオリンピックに参加することを選んだ。彼は高みを目指し、4Aを跳ぼうと試みた。これは誰もがまねできない特別な何かだ。オリンピックとスポーツマンシップの精神を示してくれた」
新しいオリンピック王者も例外ではなかった。圧倒的なスケートを見せつけたネイサン・チェン(アメリカ)もこう言った。
「4回転アクセルが成功するまではもうあと少しで、もう時間の問題だと思う。ユヅがスポーツを進化させようとしたのを見ることができて、とてもわくわくした」
アクセルは8年前にも世界中を虜にした。
2014年のソチ大会フィギュア女子FSで浅田真央がラフマニノフの名曲に乗って跳んだトリプルアクセル(3A)は今でも世界中のファンの間で語り草になっている。
浅田も羽生と同様、SPで失敗。16位と出遅れ、一時、失意に陥ったものの、気力をふり絞ってFSに挑んだ。浅田のプログラムの振付を担当したロシアの名コーチ、タチアナ・タラソワは当時、ロシアのテレビ局の試合解説のため実況席にいた。
タラソワは半世紀以上も選手、コーチとしてリンクに立ち、この競技の発展を支えてきたレジェンドだ。そのタラソワにして、かつてフィギュア弱小国だった日本の少女の才能を認め、「男子のような演技をする真央は、私のスケートの概念を変えてくれた」と語らせるほどだった。
事実、コーチとして一緒に組んだ2010年バンクーバー大会で浅田は女子シングル史上初めて一つの競技会中に3度の3Aを成功させている。
ソチ大会のリンク。そんな愛弟子をタラソワはまるで自分の娘のように実況席から語り掛け、リンクに送り出した。浅田が3Aを成功して採点発表を待つスペース「キス&クライ」に戻ってくると、感動のあまり、声を震わせて解説した。
すべての演技が終了して、ソチのリンクに表彰台が設置された。優勝は愛弟子であるアデリーナ・ソトニコワ。彼女がリンクに現れた時、本来なら新女王へのコメントを添えるべきだったかもしれない。
しかし、タラソワの口から最初に紡ぎだされたのは、この表彰式にいない浅田に対してだった。タラソワは感謝の言葉を語った。
「真央、私のプログラムを踊ってくれてありがとう。夏に私の元に来てくれたわね。私はあなたのお願いを断れなかった。だから振付を引き受けたのよ。よくここまで頑張ったわね。本当につらかったでしょう?真央、あなたと一緒に取り組むことができた運命に私は感謝するわ」
ソチ大会にはまだ忘れ得ぬエピソードがある。
浅田の3Aにかける情熱と熱心な練習への姿勢は、フィギュア大国のロシアのスケーターたちにも大きな影響を与えた。
試合後のメディアセンターでのメダリスト記者会見で、コーチや選手に浅田の演技についてどう思うかを聞いた。最初に答えたのはソトニコワのコーチ、エレーナ・ブヤノバだった。
ブヤノバは「真央ほど練習に取り組むスケーターは見たことがない」などと、日々、自己犠牲する浅田の姿勢を絶賛し、思うような演技ができなかったことを悔やんだ。
ブヤノバの説明は長く、司会者がこれでもう十分だと思って、次の質問に行こうとした。しかし、ソトニコワが「私も答える」と司会者に目配せして、マイクを握った。FSで3Aを見事に跳んだ浅田の挑戦に向けられた感動的な言葉だった。
「私は真央を心から尊敬している。私にとって真央は模範でした。真央は我慢強くて、彼女が背負ってきた困難を乗り越えることができる人。私は真央と一緒の場にいることができて幸せでした。なぜなら、真央が卓越した人だったから」
現役を引退した浅田は今でもロシアのフィギュアファンや若きスケーターのアイドルとなっている。
かつて、日本人スケーターがオリンピックの表彰台にあがることは、遥か彼方の時代が長く続いた。しかし、今は世界のスケーターが模範となる選手がいる。男子では2018年、2022年と2大会連続で表彰台に2人の日本人スケーターがあがり、日本はまさしく、ロシアやアメリカと同様、フィギュア大国の仲間入りを果たした。
羽生の今回の4Aの挑戦は、ジャンプの最高難度の技「アクセル」をものにしようと、日本フィギュア界全体が底上げを図ってきたプロセスの延長線上にある。
羽生は、2010年バンクーバー大会でアジア人の男子シングル選手として史上初のメダルを獲得した高橋大輔の背中を追っかけて、実力を磨いた。そして、高橋から日本男子のエースを引き継いだ羽生が12シーズン第一線で踏ん張ったことで、宇野昌磨ら若手選手が育った。その貢献は計り知れないほどの価値がある。
今大会、中国では羽生フィーバーが起こった。人気を受け、FSから一夜明けた2月11日オリンピック公式新聞「24th」が1面に、羽生の演技中の渾身の1枚を大きく掲載し、「金メダリストにはなれなかったが、人々の心の中で王者になった」と伝えた。
中国版Twitterの微博(Weibo)には、羽生を追ってきた記者の手記が記され、ファンから支持を受けた。こうメッセージが記されていた。
「この数日間、彼は美しさ、強さ、優しさ、勇敢さであらゆる人をとりこにしてきた。これこそ羽生結弦という四文字が持つ魔力なのかもしれない」
羽生の4Aの挑戦は、中国のファンの熱気とともに、世界中の人々の記憶にも刻まれた。
憧れの羽生の背中を追ってきて、今大会2位となり、冬季では日本人最年少のメダリストになった18歳の鍵山優真が10日の一夜明けメダリスト記者会見でこう答えた。
「羽生選手の4回転半ジャンプは成功はしなくてもその挑戦に大きな意味があると思いますし、僕にとっては大きな伝説に残ると思います」
才能があふれる鍵山は、将来5回転ジャンプを跳ぶことも考えているという。いずれ、鍵山も、フィギュア界全体のレベルを押し上げようとした羽生のアクセルの挑戦の偉大さを身に染みて感じる時が訪れるに違いない。
4年後の2026年ミラノ・コルティナ大会でも、また、世界のファンの心を熱くする銀盤のドラマが繰り広げられるだろう。
●羽生結弦 「理想とする自己像に近づくため、努力を惜しまない」 2/12
更なる高みを目指す羽生結弦選手の「誰からも追随されないような“羽生結弦”になりたい」というこの言葉には、自己投資の本質が表現されている。自己投資とは、昨日よりも今日、今日よりも明日、自分自身のアップグレードを意識すること。羽生選手の言葉、発言に、嘘のない厳しい練習、そして世界を魅了する姿と結果がそれを証明している。
自分自身の能力なり、人間的な成長のために、投資をすること──。自己投資を端的に解釈すれば、一般にはそのような意味として捉えられる。
よりよい自分を目指し、例えば何らかの技術を習得する、技能を学ぶ。自己投資として、推奨されるものは少なくない。
ただ、そこには落とし穴がある。自己投資が目的になることだ。本来、自己投資は、実現したい未来の自分のための手段でしかない。なのにいつしか、すり替わってしまうのだ。技能を身につけたことで満足し、それを自身のためにどう活かすかは置き去りにされる。
では自己投資の成功者はどのような人間なのか。そう考えた時、浮かんでくるひとりの人物がいる。フィギュアスケートの羽生結弦である。
その輝かしいキャリアは言うまでもないだろう。オリンピック連覇をはじめ、フィギュアスケートの歴史に永遠に名を刻まれる結果を残してきた。
今なお、その歩みが止まることはない。今シーズン(2019年〜2020年)も、世界のトップスケーターが集うグランプリシリーズの2大会に出場し、どちらも他を圧する高得点で優勝を果たした。
成績ばかりではない。昨シーズンまでより、高いレベルの内容の演技をこなしているのだ。スポーツの世界ではしばしば「燃え尽き症候群」という言葉が用いられる。目標を達成するなどして、意欲を失う現象だ。
でも羽生は、オリンピック連覇という偉業を達成したにもかかわらず、燃え尽きることなど、無縁のようだ。
驚くべき進化を支える原動力は何なのか。
今シーズン(2019年〜2020年)、ある大会を終えた後の言葉にヒントがある。それは観客を熱狂の渦に巻きこむ素晴らしい演技を成し遂げた後だ。
「まだ20点、30点くらいだと思います」
羽生の自己評価は、意外なほど低かった。
だがそれが初めてではない。これまでも完璧な演技をしても、課題をあげ、「もっと練習をしなければ」と語ったことが何度もある。
理想とする自己像は果てしなく高い。いや、理想に近づけばさらに理想を高く吊り上げていく。どれだけよいパフォーマンスができても、そこにとどまらない。より高みへ、高みへと自ら向かっていく。
そこに羽生の真骨頂がある。容易に真似ることのできないマインドがある。
高く描き続ける理想の姿、という目的へ向かうための過程に妥協がないのも羽生の特色だ。だから日々の練習の取り組みに緩みはない。「今日」という一日を無駄にせず、理想へ向かうためにやるべきことに全力で取り組む。
練習風景を目にしたことがある。そこにあったのは、試合と変わらない緊張感で取り組む姿だった。その姿が、雄弁に羽生の日常を物語っていた。一分たりとも無駄にしたくない、というかのようだった。
常に高いところに描く理想へ向けて、怠りなく努力し続けることのできるメンタルこそ、羽生の土台である。そして理想に近づくために努力することをいとわない。逆に言えば、余分なことに手を染めない、煩わされたくない。余談めくが、平昌(ぴょんちゃん)五輪では、滞在期間中に韓国料理を楽しんだかどうか、といった質問が記者会見でなされたが、そういうことを考えたことはない、という旨の答えを返した。強くなるために無関係なことであったからだろう。
羽生は練習メニューでもコーチたちと話し合って参考となるものは取り入れ、トレーナーのアドバイスも受け、食事の取り方でも専門家の知見に学ぶ。それらが効果を発揮するのも、理想へ進みたいという目的が明確であり、そのための手段であることを知るからこそだ。自己投資の王者、とも言える。
繰り返しになるが、その根本は、理想へ一心に突き進むメンタル、つまり目的を見失わない姿勢にある。それは誰でも身につけられるものなのか、と聞かれれば、YESとは言いがたい。
ただ、そこに学ぶことはできる。人は誰しも迷いやすい。惑わされやすい。それでも、どんな自分になりたいかを考え、近づこうとすること。それが自己投資を意味あるものにする。 
 
 
●羽生結弦、悲壮感なき4年間の終幕 4回転アクセル初認定の意義 2/11
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。
北京五輪フィギュアスケートの男子フリーが10日に行われ、五輪3連覇を目指した羽生結弦は、ショートプログラム(SP)8位から順位を上げたものの4位に終わった。“五輪王者”の称号を手放す悔しい結果になったものの、試合後の表情にはやり切った想いも垣間見えた。前人未到の「4回転アクセル」を成功させることはできなかったが、五輪という大舞台でジャンプの種類として初認定。その挑戦が、フィギュアの歴史を動かしたことは間違いない。
五輪連覇の羽生結弦、世界選手権を3連覇中のネイサン・チェン、平昌五輪銀メダリストの宇野昌磨、そしてユース五輪王者で世界選手権銀メダルの鍵山優真。北京五輪フィギュアスケート男子シングルでメダル争いを繰り広げたこの4選手が、それぞれが目指した演技で清々しい戦いを見せてくれた。
追う者、追われる者、“忘れ物”を取り返しに来た者、究極にチャレンジした者、次世代のホープとしてアピールした者など、いろいろな役どころを持った選手たちが戦い抜いた今回の北京五輪男子フリーは、合計332.60点で金メダルに輝いたチェンや、合計310.05点の自己ベストを更新して銀メダルを獲得した鍵山、3位となり2大会連続のメダルを手にした宇野ら次世代が活躍を見せ、未来に向けた世代交代のバトンがしっかりと繋がった清々しい結果に終わったと言えないだろうか。
94年ぶりの五輪3連覇を期待されながら総合4位に終わった羽生だったが、五輪王者が目指した視線の先には、五輪タイトルよりも前人未踏の4回転アクセルの成功があった。首位と18点以上の点差がついたSP8位から逆転優勝を目指すなら、間違いなく、まだ完成できていない成功率も低い4回転アクセルを跳ばずに、演技の完成度が上がるジャンプ構成で戦う選択をすべきところだ。
だが、4年前の平昌五輪で2個目の金メダルを手にした直後に、競技人生最大の目標として4回転アクセルを跳ぶことを掲げて、この4年間、ただひたすらにこの超大技ジャンプの習得に励んできた羽生にとっては、必要不可欠なジャンプであり、自分自身を鼓舞するアイテムだった。
だからこそ、勝負がかかった最後の最後でも、五輪という最高の舞台だからこそ、4回転アクセルを演技構成から外さずに戦いを全うして負けた。SPで氷上の穴にエッジがはまる不運にも見舞われたが、羽生にとって3度目の五輪は、自身も認める次世代を背負うチェンに主役の座を明け渡す五輪であり、その新五輪王者や後輩たちにしっかりとバトンを繋げる役目を果たした旧王者の心意気を感じた戦いでもあったに違いない。
「全部出し切ったというのが正直な気持ちです。明らかに前の大会(昨年末の全日本選手権)よりも、いい(4回転)アクセルを跳んでましたし、うん……。なんか、もうちょっとだなと思う気持ちももちろんあるんですけど、でも、あれが僕のすべてかなって。それと、もちろんミスをしないということは大切だと思いますし、そうしないと勝てないというのは分かるんですけど、あの前半2つのミス(4回転アクセルと4回転サルコー)があってこその、この『天と地と』という物語が、ある意味、でき上がっていたのかなという気もします」
演技後にテレビのインタビューに答える羽生の言葉からは、複雑な心の内が垣間見えた。「五輪は発表会じゃない。勝負の場所で勝たなければいけない」と語っていた負けず嫌いの羽生にとって、戦いに敗れたことは間違いなく悔しい結果となった。
一方で、一番の目標だった4回転アクセルが片足着氷からの転倒という結果になり、ジャッジスコア(採点表)上では4回転アクセルと認定されて回転不足(アンダーローテーション)の判定になった。これは国際スケート連盟(ISU)の公認大会では初の認定となる快挙だ。もちろん、完璧なジャンプではないために成功とは言えず、羽生も喜んではいないだろうが、今回の挑戦が決して無駄ではなかったことは証明できた。
「もう、一生懸命に頑張りました。正直、これ以上ないぐらい頑張ったと思います。(少し声が震えて)報われない努力だったかもしれないですけど、でも……。確かにショート(SP)から上手くいかないこともいっぱいありましたけど、むしろ上手くいかなかったことしかないですけど、今回。一生懸命に頑張りました」
今、できる限りの力を振り絞って挑んだ五輪リンクでの自分らしい演技をそう振り返った羽生の顔に悲壮感はなく、悔しさの中にもやり切った満足感があったように見えた。3連覇という称号は手にできなかったが、五輪という大舞台で4回転アクセルに挑んだ五輪王者という輝かしい記録が、フィギュアスケートの歴史に刻まれたことは言うまでもない。
●羽生結弦の挑戦を表現した中国解説者の言葉 2/11
北京五輪のフィギュアスケートは10日、男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)8位の羽生結弦(ANA)は188.06点、合計283.21点で4位入賞となった。中国では解説者が羽生を表現した言葉が話題に。中国ファンから「今日は一日たくさん涙を流しちゃった」と声が上がっているという。
中国メディア「光明ネット」は「金博洋(ボーヤン・ジン)と羽生結弦が同時に検索人気ワードに! CCTVフィギュア解説に多くの人が感動」の見出しで記事を掲載。11位となった母国選手とともに注目を集めたという。また中国機関紙「中国青年報」から引用し「試合では多くの人がCCTVの解説の言葉に感動したようだ」と報道。中国国営放送「CCTV」の解説者・陳宝如氏は故事を交え、羽生をこう表現したという。
「守ることなどかなわない城を守り、勝つことのない戦(いくさ)を戦う。自分のうちの全ての栄誉、全ての輝きを歴史の車輪の下に横たえて毅然と立つ。ショートプログラムで敗北して1位に18点の遅れをとっても、彼は笑いながら取材を受け『氷に嫌われちゃったのかな』と言った。この飄々とした姿もまた王者の風格と言っていいだろう。天の意は測りがたく、頂にたどりつくことができなかったとしても。あなたが成し遂げたことはどれも歴史に記されるのだから、成敗(成功、失敗)など問題ではない」
このメッセージに中国のネットユーザーたちが感激。
「羽生はやっぱり一番かっこいい。いつかは成功すると信じてる」
「国籍も、容貌も、名前も、性格も、すべて考えなくても、羽生は本当に素晴らしい」
「4Aは国際試合ではまるで贅沢品」
「今日は一日たくさん涙を流しちゃった」
「金メダルは羽生結弦にとってはおまけのようなもの。4Aの成功こそが彼の願い」
「エキシビションにも出てほしい」
などと反応が上がっている。
4回転アクセル(4A)は惜しくも転倒となったが、ISU公認大会で初めて4回転アクセルとして認定された。足跡を残した羽生に中国ファンも感激しているようだ。
 
 
●羽生結弦「4回転半ジャンプ」 転倒も公認大会で史上初の認定  2/10
羽生結弦選手は、男子シングルのフリーで世界で誰も成功させていない「4回転半ジャンプ(=クワッドアクセル)」に挑み、成功こそなりませんでしたが、ISU=国際スケート連盟の公認大会で史上初めて4回転半ジャンプとして認定されました。
回転不足で完全な形での成功とはならなかったものの、羽生選手が挑んだ最高難度のジャンプが認定されたことで、世界のスケーターたちに新たな道筋が示されました。
羽生選手が本格的にクワッドアクセルに挑戦すると表明したのは4年前のピョンチャン大会です。
そこから最高難度の技の成功に向けて多くの時間を費やし、今回、ようやく技の認定までたどりつきました。
羽生選手が今回、新たな扉を開けたことで世界の選手たちもそれに追随して成功を目指す流れが生まれる可能性がある一方、スケーターたちにとってクワッドアクセルが「勝つために習得するジャンプ」になるためには、まだ時間がかかりそうです。
現在、ISUは、ジャンプの難易度ごとに基礎点を設けていて、例えば2回転ルッツだと2.10、3回転トーループだと4.20、トリプルアクセルでは8.00と決められています。
今回、羽生選手が認定されたクワッドアクセルは、すべてのジャンプのうち最も高い「12.50」に設定されています。
羽生選手がフリーの冒頭で飛んだジャンプ。公式記録を見ると、「4A」と記され、その右側に回転不足を意味する「<」マークがついています。また「BaseValue(=基礎点)」は「10.00」となっています。羽生選手のジャンプが、国際スケート連盟の公認大会であるオリンピックの舞台で「クワッドアクセル」と認定されたうえで、基礎点が本来の「12.50」から「10.00」に下げられて採点されたことを表しています。
一方で、クワッドアクセルの基礎点は4回転ルッツの11.50とは1点しか変わらず、4回転フリップとも1.5しか開いていません。
選手たちが勝つために新しいジャンプを習得しようとするとき、誰も成功していない難しいクワッドアクセルよりも4回転ルッツや4回転フリップなどに取り組んだ方が、効率はよいと言えます。
今回、羽生選手の挑戦が認定されたことで、新たな段階に入ったクワッドアクセルに対して、世界のスケーターたちがどのような姿勢で向き合うのか、今後の動向が注目されます。
前人未到の大技 4回転半ジャンプにこだわった理由とは
「早く会いたい存在」羽生選手は世界で誰も成功していない4回転半ジャンプへの思いを独特な表現でことばにしてきました。そして迎えた3回目のオリンピック、その前人未到の大技への挑戦を多くの人が固唾をのんで見守りました。
オリンピック3連覇をねらった羽生選手でしたが、前半のショートプログラムで冒頭の4回転サルコーにミスが出て、8位と大幅に出遅れ、トップのアメリカのネイサン・チェン選手とは18.82の差がつきました。
羽生選手は、後半のフリーで巻き返しを図るとともに自身の最大の目標と位置づける4回転半ジャンプの成功を目指しました。練習でも一度も成功していない最高の難度を誇る4回転半ジャンプ。これまでに1000回以上も挑戦していずれも失敗し、一時は1人、暗闇に取り残された感覚になったというほど自分を追い込んでその成功を目指してきました。
そうまでして4回転半ジャンプにこだわる理由について羽生選手は「人生、何度もあるわけではないし、自分で選んだ道」としたうえで「4回転半とか5回転を跳びたいと言っていた小さい頃の自分がいたり、またそれをずっと繰り返している今の心の中の自分がいる。それにずっと突き動かされている」と話していました。
そして北京オリンピックに向けて「4回転半ジャンプが、自分の手元にいま、駒としてちょっとでも使えるようになってきた中で、その子を仲間に引き入れてあげれれば勝てる。その子さえちゃんと一緒に“天と地と”に組み込めて今の構成が保てるのであれば、絶対に勝てると思える。だから4回転半は自分の武器にしなきゃいけないし、勝つならやらないといけない」と、大技の成功がオリンピック3連覇にもつながると信じていました。
初めて試合で挑戦した去年の全日本選手権では、成功できませんでしたが、8日のショートプログラムのあと、改めて今大会での挑戦に意欲を示していました。羽生選手は10日午前中の公式練習では4回転半ジャンプを跳ばず、右足を気にする様子も見せていましたが、そのあとの演技直前の練習では4回転半ジャンプを確認。本番に向けて感覚を研ぎ澄ましているようにも見えました。
迎えたフリー本番。「天と地と」の冒頭で勢いよく滑り始めるとタイミングを合わせて跳びましたが、着氷で転倒。羽生選手が早く会いたいと願ってきた4回転半ジャンプと北京で出会うことはできず、夢の実現は先へと持ち越されました。
●羽生の挑戦にきゃりー涙「本当に凄い。強い。輝いてる」 2/10
北京五輪・フィギュアスケート男子フリーが10日、行われ、羽生結弦(27)は4位で3度目の五輪を終えた。注目の4回転半に挑み、転倒したものの、ISUの公認大会では初めて4回転半と認定。最後まで挑戦し続けた演技で188・06点、SPとの合計で283・21点だった。
演技直後、歌手のきゃりーぱみゅーぱみゅ(29)はツイッターを投稿し、「羽生くんの挑戦に感動してTikTok配信しながら涙してしまいました(;_;)」と生配信中に涙したことを告白。「4年間ずっとずっと練習してきて、期待される中で日の丸を背負って本番を迎えるオリンピック選手達のメンタルは本当に凄い。強い。輝いている。たくさんの感動をありがとう。そのかっこいい姿に心打たれています」と称え、「私も、この感動をエネルギーに変えてライブに全力で挑みたいと思いました」とつづった。
タレント・中川翔子(36)も「羽生結弦さま、始まりから去り際まで最高に神がかった美しさでした、四回転半という人類未踏の挑戦という勇気、さまざまな偉業を成し遂げながらも攻め続け、私たちに勇気を光をありがとうございました!!あの去り際の美しさがすごすぎて忘れられない」とツイートした。
羽生は演技後、会場の3方向に向かい、90度以上、頭を下げ、「ありがとうございました」。スーッと一直線にキスアンドクライの場所に向かった姿はまるで演技の一部のような美しさだった。
●羽生結弦 松岡修造の一言に 壁に向かい顔隠して「悔しい…」泣き続ける 2/10
元テニス選手でスポーツキャスターの松岡修造が、世界初のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑んだ北京五輪の戦いを終えた羽生結弦をインタビューした様子が、テレビ朝日「報道ステーション」で放送された。
取材スペースに現れた羽生が「申し訳ねー」と笑うと、修造は第1声で「結弦さん、僕は、ありがとうと言いたいんですよ。お礼したい。だって誰もトライしたことがないものに、何があってもトライし続けましたよ」と語りかけた。
羽生は「ちょっと待って、だめだ…」と背を向けて、後方の壁に向かって顔を隠しながら「あー、テレビの前で泣くのいやなんだけどな。修造さんと長いからな」と言いながら、手で涙をぬぐった。
そして「悔しい」とつぶやいて、泣き続けた。
涙をぬぐって、再び顔を正面に向けた羽生に、修造は「苦しさの中にこのオリンピックで何を見たんですか?」と問うた。
羽生は「そうですね…もうなんか努力って報われないなって思いました。僕はオリンピックで金メダルをとるために、そして4回転半を決めきるための正しい努力をしてこれたと思ってます。自分の中では一番いい、一番近いアクセルが飛べたと思ってますので、その点に関しては満足してます」と語った。
修造が「4回転アクセルまだ応援していいのかな、まだ?」と聞くと、羽生は「わかんないです。出し切った」と笑って、頭を下げた。
●ネーサン・チェン 羽生結弦の4回転半挑戦に敬意 2/10
男子フィギュアスケートのメダリスト会見では、羽生結弦が跳んだクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)についての質問が飛んだ。
金メダルを手にしたネーサン・チェン(米国)は「まだできるところまではいけていないです。彼はきっとやるんだろうなと思っていた」としながら、自らの現状を説明した。
「4回転アクセルができるにはまだ時間がかかる。ユヅと一緒に競技をできる時間に生きられてうれしい。特にユヅはこの競技の壁をぶちやぶってきている。これからも限界を超えていくと思います」とその挑戦をたたえた。 
●平昌「金」の後、目指すと誓った4回転半…羽生結弦の挑戦の軌跡  2/10
北京オリンピックのフィギュアスケートは10日、男子フリーが行われ王者が決定する。ショートプログラム(SP)でスケートの刃が氷の溝にはまる不運なアクシデントでSP8位と出遅れた2大会連続「金」の羽生結弦(27)(ANA)が巻き返しを図る。鍵になるのは冒頭のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)。前人未到の大技にかける思いを追った。
2018年2月平昌大会
男子で66年ぶりの連覇を達成。国内外の記者ら約100人が集まった記者会見で「4回転アクセル(4回転半ジャンプ)を目指す」と明言し、「これからも、もうちょっとだけ自分の人生をスケートに懸けたいなと思っている」。
19年3月
チェンに敗れ2位だった世界選手権(さいたまスーパーアリーナ)のエキシビションで取材に応じ、「強い相手を見た時に沸き立つ、ぞわっとする感覚を味わいつつ勝ちたいと思えた。そのためにアクセルはある」。
同年9月
オータムクラシック(カナダ)の公式練習に伴う取材で4回転半ジャンプにも言及。「今シーズン中に(成功を)目指したい」
同年12月
グランプリ(GP)ファイナル(トリノ)のSPでチェンに12・95の大差をつけられた翌日の練習で4回転半ジャンプにも挑み、注目を浴びる。
20年2月
四大陸選手権(ソウル)に優勝、ジュニアとシニアの主要国際6大会を全て制覇。「今やっていることを突き詰めていく」。
同年3月
チェンとの再戦や4回転半ジャンプへの挑戦が注目されていた世界選手権(カナダ)は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で中止に。「残念だが、(関係者への)感染拡大のリスクが少しでも減ったことに 安堵あんど する気持ちもある」とする一方、「今の限界の先へと行けるよう練習していく」
同年12月
全日本選手権を5年ぶりに制覇。コロナ禍でコーチ不在の中、国内で孤独な練習を続けるうち、「戦うの、疲れたな」「やめようかな」とのマイナス思考にとらわれ、4回転半ジャンプどころか、代名詞のトリプルアクセル(3回転半)まで跳べなかった「どん底」の状況を克服。「やり方は間違っていない。暗い世の中で自分がつかみたい光に手を伸ばせた」
21年3月
世界選手権(ストックホルム)で、チェン、鍵山に次ぐ3位。オンライン取材では年明けから練習を再開した4回転半ジャンプに言及、「最終目標は成功させること。跳べないと一生満足できない」。1年後の北京オリンピックは、「その道の上にあれば、(目指すかどうか)考える」
同年12月
全日本選手権の公式練習後に取材に応じ、フリーで4回転半ジャンプに挑む考えを表明。北京大会についても「(4回転半成功の)延長線上にあるかもしれないと腹をくくって、ここまで来た」。目指すことを初めて明言した。初挑戦した4回転半ジャンプは回転が足りずに両足で着氷、転倒はせずこらえた。3回転半ジャンプの基礎点しか得られなかったものの「ホッとしている。頑張ったという感じ」 代表に決まり「出るからには勝ちをつかみ取りたい。武器として4回転半を携えていけるように頑張りたい」
22年2月北京大会
フリーに向け「コンディションは整っている。演技にも自信がある、しっかり練習して決めきりたい」。大技挑戦を改めて宣言した。

羽生は21年4月、世界国別対抗戦(丸善インテックアリーナ大阪)のエキシビションでマイクを握り、「僕たちの滑りが苦しみの中の光になることを願う」と語った後、東日本大震災の復興支援ソング「花は咲く」に乗せた舞を披露した。今回、首位のチェンとは18・82点の大差がついた。それでも、羽生は追求してきた4回転半で、期待を寄せる人々の光になるべくチャレンジする。
 
 
 
●羽生結弦「皆さんより僕が一番ふわふわ」 SP8位でも4回転半 2/8
オリンピック3連覇を目指す羽生結弦の北京大会での挑戦に黄色信号がともった。2月8日に行われた北京オリンピック・フィギュアスケート男子初日はショートプログラム(SP)で、羽生は冒頭の4回転サルコーを失敗。95.15点で全体の8位に沈んだ。最大のライバル、アメリカのネイサン・チェンは圧巻の演技を見せ、SP世界新記録の113.97点で首位発進した。過去の対戦データを見ると、2人の直接対決で羽生はSPでチェンに劣ると分が悪く、巻き返すには10日のフリースケーティング(FS)で前人未踏の4回転アクセル(4A)の成功が必須になってきた。
オリンピックの舞台には「魔物」が住んでいる。2連覇を果たしているオリンピックの申し子の羽生でも突然、猛威をふるってきた魔物の牙になすすべがなかった。SPのプログラムは19世紀のパリで数々の傑作を残した作曲家、カミーユ・サンサーンスの「序奏とカプリチオーソ」。親交のあるピアニスト、清塚信也さんが羽生のためにピアノバージョンに編曲し、自ら演奏した。滑らかな旋律を身体にしみこませ、ジェフリー・バトル、シェイ=リーン・ボーンの振り付けによって、高難度のジャンプやステップをなじませたはずだった。しかし、この日の演技では、高得点配分となる冒頭の4回転サルコーが抜けてしまい、1回転ジャンプに。その後、全ての要素をハイレベルで積み上げたが、冒頭ジャンプの大きな加点ポイントが抜けてしまい、結果は自己ベストの111.82点にははるかに及ばず、100点も超えられなかった。演技が終わった後、羽生は4回転サルコーを跳ぼうとしたリンク内の地点を触って確認すると、「はまってしまった」と嘆いた。演技前練習で他のスケーターが作った小さな穴に踏み切りの際につまずいてしまった。それでも、跳ぼうとしたが「頭が防衛に行っていた」形となって、ジャンプが抜けてしまったのだ。
羽生は演技後のインタビューにこう答えた。「いやあもう、しょうがないなあという感じです。自分の中でミスはなかったなと思っている。正直、皆さんより僕が一番ふわふわしている。ちょっと嫌われたなと思っています」
一方、オリンピック初出場となる2018年平昌大会で、SPの演技の全てのジャンプを失敗したチェン。北京大会は失ったプライドを取り返しに来た舞台だった。SPのプログラム「ラ・ボエーム」の調べに乗り、冒頭の高難易度の4回転サルコージャンプ、そして基礎点が1.1倍になる演技後半の4回転―3回転ジャンプも見事に決めて、出来栄え点(GOE)でも大きく加点した。結果は4日前の団体戦SPで出した自己ベスト111.71点を上回る113.97点。これまでの羽生の世界記録を塗り替える完璧な演技だった。
チェンは中国系アメリカ人で両親が中国生まれ。本人はアメリカ生まれだが、「陳巍」という中国名も持つ。自分のもう一つのルーツである祖国で、「北京にチェンあり」を世界に示した。
この世界新記録の圧巻の演技に、1990年代の人気テレビドラマ「HOTEL」の名セリフの「姉さん、事件です」のフレーズにもじって、ツイッター上では「#ネイサン、事件です」で大いに盛り上がっている。ここに興味深いデータを示す。故郷・仙台で4歳からスケートを始めた羽生がシニアデビューを果たしたのが15歳のときの2010年、グランプリ(GP)シリーズのNHK杯だった。最初のシーズンこそ、4試合に出場し無勝利だったが、翌2011―12シーズンから成長曲線を描く。2年目のシーズンにはGPロシア杯を含む2勝。そして、18歳を迎えた3年目の2012―13シーズンには、GPファイナル2位に入る。そして、高橋大輔、織田信成、小塚崇彦ら実力者を兼ね備えた全日本選手権ではついに優勝を果たし、トップスケータ―の仲間入りを果たした。
羽生は今季で12シーズン目となるが、この間にオリンピック、世界選手権、GPファイナル、四大陸選手権を全て制覇するキャリアゴールデンスラムを成し遂げた。男子では4人しかいない偉業だ。これまで、全日本選手権を含む個人戦に57大会に出場し、積み重ねた優勝回数は30回、優勝確率は.526で、現役のトップスケータ―では脅威の数値を誇る。史上最高の選手を意味する「GOAT」((Greatest Of All Timeの頭文字をとった言葉)と呼ばれるゆえんだ。最も負けている相手は4歳年上で、2018年に引退したパトリック・チャン(カナダ)だった。しかし、チャンには2014年、2018年のオリンピックという大舞台で勝っている。次に負けているのが、今大会のライバルであるチェンだった。羽生VSチェンの公式戦での直接対決はこれまでに10回ある。うち1回は2017年4月に東京で行われた国別対抗戦であり、個人が競う大会ではないが、SP、FSともにポイント数では比較対象が可能で、この場合の直接対決数に含む。羽生より5歳年下のチェンは羽生金メダルの2014年ソチオリンピック時はまだジュニアクラスだった。2016―2017シーズンからシニア入りし、それから羽生とのライバル物語が始まったのである。
以来、GPシリーズ、世界選手権、平昌オリンピックなどの世界最高峰の試合ではどちらかが優勝しているので、2人が顔を合わせる大会は、文字通り、近年のフィギュア男子の頂上決戦といえる。初対決は2016年11月のGPシリーズ・NHK杯だった。21歳で迎えた羽生は地元日本で、そつなく演技をまとめ、合計301.47点で優勝。まだ17歳のチェンはこの大会で羽生と30ポイントの差をつけられたが2位に入り、1か月後のGPファイナル(仏マルセイユ)での出場権を勝ち取る。マルセイユでの2回目の対決も羽生が貫録を見せて優勝したが、ここでチェンはFS197.55点を叩きだし、いきなりFSでの羽生越えを世界に見せつけた。そして、2017年2月に韓国・江陵で行われた四大陸選手権では、5本の4回転ジャンプを全て成功させて、ついに合計ポイントでも羽生を追い越し、優勝を果たした。このシーズンしめくくりとなる国別対抗戦でも羽生の合計ポイントを僅差で上回った。このシーズンは羽生の3勝2敗だったが、羽生の前に立ちはだかる若きチェンの存在感は大きなものだった。そして、羽生は2018年平昌大会で圧巻の演技を見せて、オリンピック連覇を成し遂げる。チェンはSPで全てのジャンプを失敗し、屈辱の17位に落ち込んだ。しかし、FSでは4回転ジャンプを6本挑戦し、うち五つを成功、羽生を上回るFSでは1位の215.08点の記録を残した。
気になるのは、平昌オリンピック以降、3回ある2人の直接対決で一度も羽生が勝てていないことだ。そして、この3年間の国際大会で羽生が唯一敗れているのはこのチェンなのである。複数の4回転ジャンプを身につけたチェンの強さは、羽生を圧倒している。2019年3月、さいたまスーパーアリーナで行われた世界選手権、同年12月にトリノで行われたGPファイナル、2021年3月にストックホルムで行われた世界選手権で、いずれも合計320点越えを果たして、優勝。対する羽生は得意なはずのFSで差をつけられ、20〜40ポイントの大差で負けている。2人の対決の傾向として、羽生がSPのポイントでチェンを上回れば、勝利するというジンクスがあったが、2021年の世界選手権ではSPポイントで羽生が勝ったものの、チェンがFSで巻き返し、力負けしている。そして、北京で迎えた羽生の3度目のオリンピック。SP8位というまさかの結果になってしまった。オリンピック前に「五輪3連覇という権利を有しているのは僕しかいない」「前回、前回とはまた違った強さでオリンピックに臨みたい」と語っていた羽生。3連覇を成し遂げるためには、これまで練習してきた前人未踏の4回転アクセルの成功が必須になってきた。それでも、演技後のインタビューで「コンディションはかなりいい。今日、そういう不運もあったんだけど、氷とも相性もいいと自分の中では思っているので、しっかり練習して決め切りたい。フリー頑張ります」と語っており、チェンを追い抜くことをあきらめていない。運命のFSは10日午前10時30分すぎにスタート、チェンとの頂上決戦は午後2時30分ごろに帰趨を決する。
 
 
●羽生結弦:前人未到の4回転アクセルに挑み、3度目の五輪金メダルを狙う 2/5
五輪2連覇を果たすなど、男子フィギュアスケートの絶対的王者として君臨してきた羽生結弦(はにゅう・ゆづる)。北京を目指す過程ではけがの回復が懸念されたが、昨年12月の全日本選手権で鮮やかな優勝を遂げ、王者健在をアピールした。3度目の五輪では最高難度の4回転アクセルに挑み、3度目の金メダルを目指す。
氷上の王者の華麗なる足跡
まさに世界のフィギュアスケート界をリードしてきた。リーダーとして氷上に立ち、スーパースターと呼ぶにふさわしい活躍も見せてきた。
いま、3度目のオリンピックを迎えた羽生結弦は、五輪チャンピオンでありつつも「挑戦者」として北京大会に挑む。
挑戦の理由を語る前に、あらためてその足跡をたどってみたい。
羽生は2010−2011シーズン、高校1年生でジュニアのカテゴリーからシニアに上がると、四大陸選手権で2位になるなど瞬く間に頭角を現した。成績もさることながら、4回転トウループを成功させトリプルアクセルも得意とするジャンプ力、男子では珍しい「イナバウアー」を交えるなど人を惹きつける演技力を備えていたことから、将来を嘱望される存在となった。
翌シーズン、早くもグランプリシリーズの一つ、ロシア大会で優勝するなどし、世界選手権代表に初めて選出された。大会では堂々の3位表彰台に上がる。しかもフリーの技術点では、同選手権出場選手中トップの得点を挙げた。
その原動力となったのは、「もっとうまくなりたい、すべての面が武器だと言われるスケーターになりたい」という志だった。
むろん、他の選手も同じように考えるに違いない。ただ羽生が異なっていたのは、その思いの強さだった。少年期を指導していた都築章一郎コーチは、彼が教える生徒の中でもできるまでやろうとする姿勢が飛び抜けていたと振り返る。
シニアに上がってからは先輩たちを手本に学び、追いつき追い越そうと努めた。強烈な負けず嫌いで、なにより自分に負けるのが許せなかった。先述の世界選手権銅メダルのときはショートプログラムで負傷し、一時はフリーの棄権を検討するほどだった。でもそれでは代表としての責任を果たせなくなるという責任感と、欠場は自分に敗れることになるという思いから出場を決意しての表彰台であった。
奇跡の五輪連覇
その後も数々の国際大会で好成績をおさめ、世界のトップを争うスケーターとなった羽生の最初のオリンピックが2014年のソチ大会であった。団体戦ショートプログラムの1位を経て出場した個人戦では、ショートプログラムで史上初の100点超えで1位。フリーでもジャンプの転倒などがあったものの1位。ライバルを寄せ付けない強さで、見事、金メダルを獲得した。
18年の平昌五輪では五輪連覇を果たしたが、大会までの経緯を考えれば、劇的な金メダルだった。
このシーズンの11月、羽生はNHK杯の公式練習中に転倒し、右足首を負傷。その後の大会はすべて欠場を余儀なくされるほど深刻なけがだった。13年から4連覇していたグランプリファイナル進出もかなわず、平昌五輪が復帰戦とならざるを得なかった。
しかし大会本番では、他を圧倒する演技を見せて金メダルを獲得。試合を終えて羽生が明かしたのは、まだけがが完治せず、本来の練習ができない中で大会を迎えたという事実だった。いくら第一人者とはいえ、奇跡的としか言いようのない連覇であった。
足早に足跡をたどったが、トップスケーターとしての地位を築き、圧倒的な存在感をもたらしているのは、これらの輝かしい成績だけが理由ではない。
2016−2017シーズン、羽生は国際スケート連盟公認大会では史上初めて4回転ループを成功させた。2017−2018シーズンには、過去にブランドン・ムロズが1度成功させたきりという4回転ルッツでも成功をおさめた。
そこにうかがえるのは、今いるところに安住することなく、常に成長を志す姿勢だ。フィギュアスケートの新たな可能性を見い出そうとする姿こそが、称賛を浴びてきたのである。
絶対王者が4回転アクセルに挑む理由
3度目の北京五輪にもまた、これまでのように挑戦者として挑む。平昌五輪後目指してきた4回転アクセルに挑むからだ。これまで一人として成功したことのない、最高難度のジャンプを成功させることこそ、平昌五輪後の羽生の最大のモチベーションであった。
むろん、誰もが困難だと認めるジャンプを成功させるのは生易しいことではない。羽生自身、練習に取り組みつつ、試合で披露するまでには時間を要した。だが、ついにプログラムの中に組み入れて挑んだ2021年12月末の全日本選手権で見せたそれは、成功の可能性を十分感じさせるレベルに達していた。
本大会で挑むリスクは高い。失敗すれば大きく減点され、金メダル争いから脱落する可能性をはらむ。それでも、挑戦をやめるつもりはない。その挑戦は、平昌五輪で連覇を果たしたあとの競技生活を送る上で、まさに原動力であったからだ。
羽生はその挑戦を自分自身だけの夢とは捉えていない。
「みんなの夢だから、みなさんが僕にかけてくれている夢だから、みなさんのためにも、かなえてあげたいなって思いました」
4回転アクセル挑戦を断念することなく、取り組む理由を尋ねられ、羽生はこう答えている。トップスケーターであるという自覚ゆえに、寄せられる期待の大きさも理解しているし、それに対する責任感も抱いている。だから、成功を信じ、北京で挑戦する。
勝負という意味においては、これまでの大会以上の難敵がいる。ネイサン・チェン(アメリカ)だ。平昌五輪にも出場していたが、オリンピックならではの重圧に苦しみ、ショートプログラム17位と大きく出遅れる。しかしフリーで巻き返して総合5位と力を示した。その後は上昇気流に乗り、平昌五輪の翌月に行なわれた世界選手権(羽生は欠場)で優勝したのを皮切りに、出場する国内外すべての大会で勝ち続けた。
昨年10月、グランプリシリーズ初戦のスケートアメリカで3位に終わって連勝はストップしたが、続くスケートカナダでは2位以下を大きく引き離して優勝。今年1月の全米選手権でも、ミスする場面もあったが他を圧倒して優勝している。フリーの演技に4回転ジャンプが計5本入ることが象徴するように、チェンもまた世界屈指のジャンパーである。拮抗(きっこう)した勝負が予想される。
羽生自身は今季もけがに苦しんだが、昨年12月の日本選手権ではさすが王者とうならせる圧巻の演技で健在をアピールした。北京でフィギュアスケート界と自身の夢をかなえ、3度目の王者となれるか。羽生の挑戦がスタートする。
 
 
●羽生結弦が挑む4回転半ジャンプは「前人未到の領域」…ジャンプ6種類の解説 2/3
北京五輪で羽生結弦(27)=ANA=が3連覇に挑むフィギュアスケート。ジャンプ、スピン、ステップを組み合わせた演技の中で、美しさと強さを得点で競う。中心となるジャンプは全部で6種類。その特徴を、2014年四大陸選手権優勝の無良崇人氏が解説した。羽生が北京五輪で成功を目指す4回転半ジャンプ(クワッドアクセル)については、跳び箱の世界記録を引き合いに「前人未到の領域」とうなった。(取材・構成=大谷 翔太)
6種類のジャンプは、トウループからアクセルまで順に基礎点が振り分けられ、技の美しさで出来栄え点(GOE)が加算される。無良氏は「選手それぞれに得意不得意はあります」とした上で、各ジャンプの特徴や難しさを解説した。注 / カッコ内は基礎点で全て4回転基準。ジャンプは左回転の場合。
1 トウループ(9・50点)
靴のつま先のギザギザの部分で氷を蹴って跳ぶことを「トウ(つま先)をつく」と言います。トウループは、右足を曲げて左足のトウをついて跳びます。重心を右足から左足に移す時に僕たちは「またぐ」と表現しますが、これは例えると左足でトウをつく瞬間に自分の左側にある溝をまたいでいくイメージ。「またぐ」ジャンプは、腰の左側を左(外側)に開いていきやすく上半身をひねりやすい。よって回転しやすいことが、基礎点が最も低いとされる理由の一つかと思います。
2 サルコー(9・70点)
靴の鉄の部分(エッジ)で釣り針のような軌道を描き、最後に小さいターンをきっかけに跳ぶと言われているのがエッジジャンプ。サルコーは、右足を前に動かして、後ろに滑らせた左足で釣り針を描くように跳びます。跳ぶ瞬間に両足がインサイドエッジとなり、膝下が「ハの字」になるのが特徴の一つ。トウはつきませんが、トウループと動きが近く跳ぶ最後の局面で一度またぐ動作が入るため、跳びやすいとされています。
3 ループ(10・50点)
エッジジャンプの一つ。サルコーとは逆の足、右足で滑ってきて釣り針を描いて跳ぶのがループです。跳ぶ瞬間に足が交差しているのも、特徴の一つです。
4 フリップ(11・00点)
左足で滑って、右足のトウをついて跳びます。フリップとルッツは、パッと見たところ同じように見えますが、曲がっている左足がインサイドエッジであればフリップです。靴の刃を上から見て、左足の親指側に傾いていればインサイド、小指側ならアウトサイドとなります。長方形のリンクを縦に上から滑ってきた時に、フリップはインサイドエッジになりやすい右側カーブの軌道を取るというのが基本的な跳び方です。
5 ルッツ(11・50点)
フリップと同じように、左足で滑って右でトウをつくジャンプ。左足はフリップとは逆のアウトサイドエッジとなります。左足を小指側に傾けるため、その時に一度腰を右にひねる動作が入る。本来、左にひねりたい中でそういう逆の動きが入るため、左への回転をつけにくくなり難しくなります。テレビでよく言われる「エッジエラー」とは、例えばルッツを予定していたジャンプで左足がインサイドエッジになってしまった時。減点の対象です。
6 アクセル(12・50点)
アクセルは、6種類の中で唯一前向きに跳びます。左足で滑って、右足を前に振り上げて跳ぶ。フィギュアスケートは、基本的に後ろ向きに滑っているため、前が見えない状態から跳ぶ事への恐怖心はありません。ただアクセルは、リンクの壁に突っ込んでいくような形になるため恐怖心があります。また、半回転多いことで「もっと回そう」としなければいけない。他のジャンプは意外と、手を開いている状態から手足を素早く体の中心にまとめることで跳べることが多い。ただアクセルは階段を3、4段とばして上るように踏み込んで上にあがろうとしなければいけないので、その難しさがあります。
現在、4回転ルッツを跳ぶ選手はいますが4回転半を成功させた選手は世界にいません。昔、「筋肉番付」というテレビ番組の中でモンスターボックスという跳び箱の競技がありました。あの世界記録が、確か25段くらい。そういう身体能力の頂点の頂点で、跳べる人がいるというのが4回転ルッツかなと。羽生選手が挑んでいる4回転アクセルは、それのさらに数段上。誰にも挑戦させたことがない、前人未到の領域に達しているという感覚で見ています。
フィギュアスケート男女シングルのルール
SP(ショートプログラム) / 演技時間は2分40秒±10秒。ジャンプは、2回転または3回転半、3回転または4回転の単独(女子は4回転は跳べない)、コンビネーション(アクセルと単独で選んだジャンプを含まない)の3回。スピン3回。ステップ1回。
フリー / 演技時間は4分±10秒。ジャンプは7回まで。男子は平昌五輪後に演技時間が30秒短くなり、ジャンプは8回から1本減った。コンビネーションは3回までで、うち一つは3連続が可能。すべての3回転および4回転のうち、2種類のみを2回行うことができる。その2種類の繰り返しのうち、4回転は1種類に制限(18―19年シーズンから)。スピン3回。ステップ1回、コレオシークエンス1回。
●羽生結弦が挑む4回転アクセルは“恐怖”との闘い! 1/19
フィギュアスケートの五輪連覇王者である羽生結弦の前に立ちはだかる高い壁。決めれば史上初の快挙とである4回転アクセルの挑戦がいかに難しいことか、欧州選手権王者のマルク・コンドラチュクの言葉から分かる。
昨年12月末に開催された全日本選手権。日本のエースは2連覇がかかるこの大会で、満を持してフィギュア界の歴史に名を刻もうと試みた。『天と地と』の冒頭で慎重に跳びあがった27歳だが、惜しくも両足着氷と失敗。それでも五輪連覇王者の意地を見せつけ2年連続6度目の優勝を飾った。
全6種類のジャンプがあるなか、唯一前向きに踏み切って半回転多く回るのがアクセル。4回転アクセルつまり、4回転半ジャンプということだ。先日の欧州選手権で優勝を果たしたコンドラチュクは、「5回転サルコーは試したことあるけど、4回転アクセルは…それは凄く怖い」と語ったと、ロシアメディア『Sports.ru』が伝える。
「正直、何で怖いか皆が理解できないのが不思議だよ。当然だけど、新しい技を学ぶのは怖い。実際に未知の世界へ足を踏み入れることは、落下もあれば、怪我のリスクだって付いて回る」
恐怖心をさらけ出した欧州チャンピオンは、さらにこう続けた。
「失敗の可能性が高い未知のものに挑戦するとき、自分の頭の中でまず克服し、その後に行なう必要がある。誰も出来ていないことは、それが本当に可能か分からないので本当に怖いこと」
3連覇がかかる北京五輪。果たして羽生はこの大技に再び挑むだろうか。世界の関係者やファンが熱い眼差しで見守る。
●「なんかできる気がしてきました(笑)」“崖っぷち好き”の羽生結弦 1/15
12月26日、全日本フィギュアスケート選手権2021で2連覇を果たし、北京五輪代表に内定した羽生結弦。話題となったのは「4回転アクセル」挑戦だ。この前人未到の大技について羽生はどう考えているのか。かつて本人が語っていたことを、キャスターの長野智子氏が綴る。
全日本選手権で、初めて4回転アクセルに挑んだ羽生結弦選手の姿を観ながら、私は感動とともに2017年にインタビューをした際の羽生結弦選手の言葉を思い起こさずにはいられなかった。
平昌五輪を約1年後に控えた当時、男子フィギュアスケートは多種類の4回転ジャンプが乱舞する「真4回転時代」へ、とさかんに報道されていた。そして4回転の中で当時誰も跳んだことがなかったのが「4回転アクセル」だった。
そんな中、私がキャスターをしていた「サンデーステーション」(テレ朝系)は、羽生結弦選手をゲストで迎えることになりある企画を考えた。
「羽生選手が4回転アクセルを跳んだ場合の回転がどうなるのか、羽生選手の3回転アクセルのデータをもとに、CGでジャンプの分解イメージ写真を作れないだろうか」
番組は専門家に参加してもらって綿密なデータ解析を行い、あくまでデータ上の結果であることを前提に、踏切から最高地点、着氷までの等身大分解写真を羽生選手本人にスタジオで見てもらうことにしたのだ。
番組本番、さっそく4回転アクセルについて聞いてみると、羽生選手はすでにシーズンオフに何度か試しているとのことだった。
「なかなか難しいですね。アクセルジャンプは前に跳んで、そのまま回転を締めなきゃいけないので、頭を打つリスクだとか、やっぱり怪我をしてしまうリスクが存在しています」
特別に回転が難しいと話す羽生選手に、実はこんなものを作りましたとスタジオ全体に4回転アクセルを跳ぶ羽生選手の等身大分解写真を展開したところ、羽生選手は「おー、おーすごい! (写真と)一緒にやりたいですね」と、とても喜んでくれたのを覚えている。
専門家の分析によると、4回転アクセルを跳ぶには、3回転アクセルよりもおよそ17センチ高く跳ぶ必要があるとのこと。それによって、着氷は3回転アクセルより1.1メートル延びる。そのためには、助走のスピードを今より10%速くしなければならないという結果が出た。
CGを見ながらそれを聞いた羽生選手は「そうなんですね。17センチって、数字だとそんなに高く!って思うんですけど、実際に(CG写真を)見ると髪の毛ぐらいですよね。ははは、あははは(笑)」と、とても楽しそう。
何回かインタビューしてきた中で、いつも感じるのは羽生選手の「崖っぷち好き」なところだ。彼はいつも言う。
「凄く高い目標をつくるんです。もう本当に指先が掛かるか掛からないくらいの目標。ジャンプして指先が掛かるか掛からないくらいのところに目標をおいてくらいついていく。そうやってがんばってきました」
助走の速さというのは、つまりは力。その力があればあるほど、高さも着氷までの幅も出しやすい。ただ、その力をしっかりコントロールしないと、軸がぶれて後ろや前に倒れてしまう。そういった意味では、かなりの力で跳ぶ必要のある4回転アクセルは本当に難しいジャンプであることが数字でよく理解できた、と感想を話してくれた羽生選手。そして、その後に彼が呟いた言葉が、私の忘れられない言葉となった。
「でも、なんかできる気がしてきました(笑)」
幼い頃の羽生選手を指導した都築章一郎コーチは言う。
「彼の場合、想像力が非常に強い子でした。自分がこういう想像をすると本当にそのように、身体が行っちゃうんですよね。ですから彼が想像できると本当にそこに行っちゃう。イメージっていうものをものすごい大事にする子なんです」
5年前に「4回転半のイメージができました」と笑顔で語った羽生選手だが、その後、どれだけリンクに身体を打ち付け、傷を負い、それでも立ち上がって、崖っぷちを這い上がってきたのか。その努力は想像を超えている。そして、それを心から楽しいと思える羽生選手だけしか見ることのできない前人未踏の世界がある。
番組の最後、自分が大切にしている言葉を彼はフリップにこう書いた。
「理想の先へ!」「完成形」に近づいたと感じてる今、見据えるのは「自分の限界と理想のもっと先」と語った羽生選手。北京オリンピックでの挑戦を期待している。
●羽生結弦「勝つなら4回転半ジャンプを」五輪代表内定から一夜  2021/12/27
フィギュアスケートの全日本選手権を優勝し、北京オリンピック代表に内定した羽生結弦選手が代表内定から一夜明けた27日、NHKの取材に応じ、オリンピック本番に向けて「勝つなら4回転半ジャンプを跳ばないといけないと思ってやっていかないといけない」と意気込みを話しました。
羽生選手は、26日まで行われた全日本選手権の男子シングルで、前半のショートプログラム、後半のフリーともにジャンプやスピン、ステップに圧倒的な演技を披露して、2位に20点以上の差をつけて優勝し、北京オリンピック代表に内定しました。
代表内定から一夜明けて、羽生選手はNHKの取材に応じ、現在の心境を語りました。
この中で、成功はならなかったものの、世界で誰も成し遂げていない4回転半ジャンプを初めて構成に組み込んだことを踏まえて「4回転半ジャンプ込みでフリーをやって、本番という舞台を経験できた。4回転半ジャンプに関しては確かに失敗だが、ほかの演技に失敗がなかったことはかなり大きい。出来栄え点に関しても評価していただけるようなジャンプを跳べたと思ってるし、ステップ、スピンに関してもしっかり集中して練習してきたことが発揮できている。まだまだ完璧ではないが自信にはなった」と今シーズンの初戦の演技に手応えを感じている様子でした。
試合後に「今のままではオリンピックで勝てない」と発言したことについては「直近の世界選手権で勝てていないというのはもちろんある。ピョンチャン大会では、自分がノーミスの演技をすれば勝てると思っていたが、今はそんなことはなく、自分がノーミスでも100%勝てるわけではない。正直、オリンピックが怖い」と胸の内を明かしました。
そのうえで「ただ、4回転半ジャンプをフリーに組み込んで演技を保てるのであれば絶対に勝てると思える。やはり4回転半ジャンプは自分の武器にしなくてはいけないし、勝つならやらないといけない」と自身の最大の目標と掲げる4回転半ジャンプの習得がオリンピック3連覇につながるという考えを示しました。
宇野昌磨「けがを早く治して早く練習したい」
男子シングルで、2大会連続のオリンピック代表に内定した宇野昌磨選手は「足のけがを早く治して、全日本選手権で見つかった課題を一刻も早く練習したいという気持ちが今はいちばん強い」と内定から一夜明けたばかりで、すでに先を見据えていました。そして、残り1か月余りとなった大会本番に向けて、「自分に足りないものはジャンプの種類ではなく、ジャンプの加点をどうもらうのかということと、表現力の面でももう一歩、自分なりの武器を携えなければいけない。現状に満足せず、新しい物に挑戦していきたい。オリンピックでどうしても完成した自分を見せたいというわけではなく、自分がどこまで成長するかまったくわからないので、自分の過程を見せられたらなと思っている」と話していました。
鍵山優真「自分らしさ全開で滑りたい」
男子シングルで初のオリンピック代表に内定した鍵山優真選手は、「全日本選手権では悔しい演技をしてしまったので、そのリベンジをまずは果たしたい。先輩2人はいろいろな挑戦をして、いい点数を出したり、いい演技をしたりしているのですごくかっこいい。いつかは超えなければならないと思っているので、自分ももっとレベルアップして、早ければ次のオリンピックでその差を詰められるところまで詰めていきたい」と話し、ともにオリンピック代表に内定した羽生結弦選手と宇野昌磨選手に敬意を示しつつ、さらなる飛躍を誓いました。そして、大会本番に向けて、「自分のやるべきことをまずは出し切って、ショートプログラムもフリーもミスのない演技をすることがいちばんの目標だ。オリンピックという4年に1度しかない貴重な舞台なので、硬くならずに自分らしさ全開で滑りたい」と意気込んでいました。
坂本花織「すべての要素をパーフェクトに」
女子シングルで2大会連続のオリンピック代表に内定した坂本花織選手は「全日本選手権で優勝すれば確実に代表内定だったので、優勝することとパーフェクトにやるだけだと思っていた。ショートプログラムは思い切りよくいけていたので、すごくよかったが、フリーは、どうしても優勝しなくてはいけないという気持ちがあったのか、守りに入っていた。まだまだ思い切って滑れるなと感じた」と、喜びとともに本番に向けた課題を話しました。そして「ジャンプは結構、出来栄え点をもらえるようになったが、まだまだ伸ばせると思う。ジャンプだけではなくて、スピンも気を抜かずに全力で回れるようにしたい。すべての要素をパーフェクトにできるように練習していきたい」と本番までの残り1か月余りの期間で精度を高めたいと話していました。
樋口新葉「もっと自信を持って滑れるよう練習」
女子シングルで、初めてのオリンピック代表に内定した樋口新葉選手は「本当にずっと目標にして、頑張ってきたことだったが、いざ出場できるとなると、あまり実感がわいていない」と、内定から一夜明けた率直な気持ちを話しました。そして、「今までは勝たなかったら意味がないとしか考えていなかったが、それだと全然楽しくなくて、好きでやっていることなのに嫌いになりそうなこともあった。自分は勝つためだけにスケートをやっているわけではないと思い始めてからは、つらいことがあっても、それもおもしろいと、全部をポジティブにとらえられるようになった。全日本選手権がいちばん自信をつかめた大会になったので、オリンピックまでの1か月でもっともっと自信を持って滑れるような練習をしてきたい」と話していました。
河辺愛菜「楽しみという気持ちが大きい」
女子シングルで、初めてのオリンピック代表に内定した河辺愛菜選手は「内定が決まったきのうの夜は、不安とびっくりが大きかったが、オリンピックで滑っている自分の姿を想像した時にすごくワクワクして、今は楽しみという気持ちのほうが大きい」と内定から一夜明けた心境を話しました。そして「最後までオリンピックはあまり意識せず、自己ベストを出すことだけを考えていた。結果的に、それがオリンピックにつながってうれしいし、これからも結果は考えず自己ベストだけを考えたい。オリンピックにふさわしい演技ができるように、もっともっと頑張らないといけない」と残り1か月余りとなった本番に向けて気を引き締めていました。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


2022/2