自分だけは大丈夫

自分だけは大丈夫
根拠のない 楽観的な考え
自己過信

コロナ禍 連日の感染者増加
のんき 自分は大丈夫
人流 流される 飲み込まれる

引きこもり老人 ステイホーム
理解できない 若い人の行動
 


正常性バイアス自己過信振り込め詐欺突然死楽観的思考自信たっぷりな理由自分の能力の過大評価政治家の過信詐欺師に騙される間違いを犯す心理・・・
諸話 / 西日本豪雨フィッシング詐欺昭和おじさん災害心理自分らしさの見つけ方新型コロナ・・・
 
 
 

 

●正常性バイアス?「自分は大丈夫」と思い込む、危険なメカニズム
4月に入り、転勤や入学などで初めての出来事や変化に緊張したり、戸惑っている人はいませんか?人間には些事に翻弄されないよう、自然と心の平穏を保つ働きが備わっているので、日常生活で問題に直面したときにも、それなりに対応できるチカラを有しています。ところが、大災害など未経験の事態に遭遇した場合、この働きが過剰反応し、脳が処理できなくなることがあります。これを「正常性バイアス」と言いますが、最近、話題に上ることの多い“この心理”が危ないのです!
「正常性バイアス」とは?
「正常性バイアス(normalcy bias)」は、心理学の用語です。社会心理学や災害心理学だけでなく、医療用語としても使われます。人間が予期しない事態に対峙したとき、「ありえない」という先入観や偏見(バイアス)が働き、物事を正常の範囲だと自動的に認識する心の働き(メカニズム)を指します。
何か起こるたびに反応していると精神的に疲れてしまうので、人間にはそのようなストレスを回避するために自然と“脳”が働き、“心”の平安を守る作用が備わっています。ところが、この防御作用ともいえる「正常性バイアス」が度を越すと、事は深刻な状況に……。つまり、一刻も早くその場を立ち去らなければならない非常事態であるにもかかわらず、“脳”の防御作用(=正常性バイアス)によってその認識が妨げられ、結果、生命の危険にさらされる状況を招きかねないのです。
逃げ遅れの心理「正常性バイアス」の恐ろしさ
甚大な被害を出した東日本大震災では、「大地震の混乱もあり、すぐに避難できなかった」「あれほど巨大な津波が来るとは想像できなかった」と思った人がたくさんいらしたことが、のちの報道によって明らかになりました。そう話していた人々が住む地域には、大型防潮堤等の水防施設が設置されていた……、また10m超の津波を経験した人がいなかった……などの様々な要因があり、迅速な避難行動が取れなかったことも事実です。よって、一概に「いち早く行動を取れるか」「危険に鈍感になっていないか」を明確に線引きできない部分もありますが、緊急事態下で的確な行動を取れるか否かの明暗を分けうる「正常性バイアス」の働きを、過去の災害が示唆する教訓として、私たちは理解しておきたいものです。
また、御嶽山の噴火の際にも同じような心理が働いていた可能性があります。火山の噴火という危険な状態に接しても、「大丈夫だろう」(=正常性バイアスの働き)と、立ち上る噴煙を撮影していたため、避難が遅れた人も少なくないといわれています。災害の報道をテレビで見ている多くの人は冷静であるがゆえ、「撮影している時間があれば逃げられたのでは?」と考えがちですが、災害に直面した当事者にしかわからない「正常性バイアス」は予想外の大きなチカラで人々の行動を制限します。そのため過去の事例からも、地震、洪水、火災などに直面した際、自分の身を守るために迅速に行動できる人は、“驚くほど少ない”ことが明らかになっています。
ほとんどの人が緊急時に茫然! では、どうしたらいい?
それでは、いざというとき、私たちはいったいどうしたらいいのでしょうか。突発的な災害や事故に遭った場合、事態の状況をとっさに判断できず、茫然としてしまう人がほとんどと言われています。「緊急地震速報の報道におびえて動けなかった」「非常ベルの音で凍りついてしまった」という話をよく聞きますよね。こういうときこそ必要なのが、「落ち着いて行動すること」。
そのために有効なのが「訓練」です。訓練を重ねることで、いざというとき、自然にいつもと同じ行動をとることができる、つまり、訓練と同じ行動をとることで身を守れる、というわけです。非常事態の際に「正常性バイアス」に脳を支配されないよう、本当に危険なのか、何をしたらいいかを見極める判断力を養っておきましょう。
最後は狼に食べられてしまう、イソップ物語『羊飼いと狼』
ここまで読まれた方は、イソップ物語の『羊飼いと狼』を思い出しませんか?羊飼いの少年に何度も「狼が来た」と言われて惑わされた村人は、いつしか「またか」と対応しなくなり、ついには本当の非常事態だということがわからなくなって、羊は狼に食べられてしまいます。物語の本来の目的は「うそをついてはいけない」ことを子どもに伝える童話なのですが、裏を返せば、村人の「正常性バイアス」の働きをうまく突いた、“戒め”のように聞こえなくもありません。
数々の災害や事故などによっていくつもの「想定外」が生まれ、「想定内」にする努力がなされていますが、いまだに「想定外」が出現し続けている昨今。私たちの心の在り方そのものが、さらなる災害を生みだすことのないよう、日頃から日常と非日常の切り替えに翻弄されず、冷静に対応することが求められています。 
正常性バイアス
認知バイアスの一種。社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のこと。
自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる。「正常化の偏見」、「恒常性バイアス」とも言う。
人間の心は、予期せぬ出来事に対して、ある程度「鈍感」にできている。日々の生活の中で生じる予期せぬ変化や新しい事象に、心が過剰に反応して疲弊しないために必要なはたらきで、ある程度の限界までは、正常の範囲として処理する心のメカニズムが備わっていると考えられる。
古い防災の常識では、災害に直面した人々の多くは、たやすくパニックに陥ってしまうものと信じられており、災害に関する情報を群衆にありのまま伝えて避難を急かすようなことは、かえって避難や救助の妨げになると考えられてきた。ところが後世の研究では、実際にパニックが起こるのは希なケースであるとされ、むしろ災害に直面した人々がただちに避難行動を取ろうとしない原因の一つとして、正常性バイアスなどの心の作用が注目されている。
具体的な例​
大邱地下鉄放火事件
2003年2月18日に、韓国の大邱市で起こった地下鉄火災。多くの乗客が煙が充満する車内の中で口や鼻を押さえながらも、座席に座ったまま逃げずに留まっている様子が乗客によって撮影されており、正常性バイアスが乗客たちの行動に影響したという指摘もある。「被害はたいしたことがないのでその場に留まるように」という旨の車内放送が流れたという証言もあり、こうした対処が正常性バイアスを助長した可能性もある。この火災は当時において、世界の地下鉄火災史上で2番目となる198人以上の死者を出した。
東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
津波避難をめぐる課題として「警報が出ているのを知りながら避難しない」人たちがいることが指摘されていた。実際に、地震発生直後のビッグデータによる人々の動線解析で、ある地域では地震直後にはほとんど動きがなく、多くの人々が実際に津波を目撃してから初めて避難行動に移り、結果、避難に遅れが生じたことが解明された。例えば海岸から5キロメートル離れた石巻市立大川小学校で、生徒74名と教師10名およびスクールバスの運転手が、避難先の決定を誤るなどして河川を遡上してきた津波に飲み込まれて死亡したケースでは、正常性バイアスによる根拠のない楽観的思考が対応を遅らせた可能性が指摘されている。
2014年の御嶽山噴火
御嶽山の噴火で登山者58人が噴石や噴煙に巻き込まれて死亡した。死亡者の多くが噴火後も火口付近にとどまり噴火の様子を写真撮影していたことがわかっており、携帯電話を手に持ったままの死体や、噴火から4分後に撮影した記録が残るカメラもあった。彼らが正常性バイアスの影響下にあり、「自分は大丈夫」と思っていた可能性が指摘されている。 
正常性バイアス・同調バイアスと新型コロナ感染対策
正常性バイアスとは?〜誰もが「自分だけは大丈夫」と信じている〜
「正常性バイアス」とは心理学で使われる用語で、人が予期しない事態に直面したとき、「ありえない」という先入観や思い込み(バイアス)が働き、起きていることを正常な範囲内だと自動的に考えてしまう、心の働きのことをいいます。
非常時には「まさかこんなことが起こるわけない」と捉えたり、目の前で起きていることは「これは現実ではなくヴァーチャルではないか」と考えてしまう傾向のため、認知バイアス(偏見による認識のゆがみ)が働き、現実を受け入れられない状態に陥いり、思い込みによって頭が非常事態であるという認識に切り替わらない状況に陥ることをいいます。
地震や津波、火災、洪水など、経験したことのない事態におそわれたとき、非常事態であるにもかかわらず、心の防衛機能(=正常性バイアス)によってその認識が妨げられ「自分に大きな危険がふりかかるわけがない」「まだ誰も逃げていないから大丈夫」と思い込んでしまい、正常な判断や身を守るための行動ができなくなり、避難行動が遅れてしまう現状があるのです。
正常性バイアスにより被害が拡大した事例〜東日本大震災〜
2011年3月に発生した東日本大震災では、15,000人を超える人が亡くなり、そのほとんどが津波による犠牲者となっています。地震が起きてから大津波が到達するまでには約1時間あり、津波から避難するには十分な時間であったと考えられます。しかし、「自分の住む町には高い堤防があるから逃げなくてもいいだろう」「自分の家はハザードマップでは安全なところだから大丈夫」と考えていた人たちもいました。そのような思い込みの結果、津波避難の警報が出ても避難しない人が多く、実際に津波を目撃してから初めて避難行動に移り、避難が遅れたことにより多数の犠牲者がでてしまいました。
正常性バイアスを打ち破った「釜石の奇跡」の事例
一方、正常性バイアスを打ち破り、多くの命を救った「釜石の奇跡」。ご存じの方も多いと思いますが、岩手県釜石市 釜石東中学校での出来事です。東日本大震災の起きた直後、学校では生徒が「津波がくるぞ!逃げろ!」と大声で叫びながら「避難先に指定されていたグループホーム」へ避難を始めました。しかし、迫りくる津波の様子を見た生徒たちが、「ここにいても危険だ」と先生に訴え、さらに高台の施設を目指して避難をすることとなります。避難の途中、その様子を見た近くの住民もつられて、高台に避難を開始します。そして、全員が高台についた、その30秒後に3メートルの高さを超える津波が施設の目前まで迫りました。
これは、学生が「あらかじめ定められた避難場所が安全である」という、正常性バイアスにとらわれず、冷静に状況を判断して、さらに安全な場所に避難を続けたことが一つ目の教訓です。そして、その学生の行動を見た人に伝わり、皆がつられて行動をしたことで、さらにたくさんの人の命を救いました。
『羊飼いと狼』
イソップ物語の「羊飼いと狼」のお話でも、羊飼いの少年に何度も「狼が来た」と言われて惑わされた村人は、いつしか「またか」と対応しなくなり、ついには本当の非常事態だということがわからなくなって、羊は狼に食べられてしまいます。物語の本来の目的は「うそをついてはいけない」ことを子どもに伝える童話なのですが、裏を返せば、村人の「正常性バイアス」の働きをうまく突いた、“戒め”のように聞こえなくもありません。
新型コロナウイルス感染拡大と正常性バイアス
今回の新型コロナ感染拡大も、この「正常性バイアス」による危機感の欠如というものが招いたともいえるかもしれません。ニュースで感染拡大を知らされるものの、「自分は大丈夫」「自分には関係ない」「まさか自分は感染しない」「まだ大丈夫」と思い、「3密」の行動をとってしまう。自分にとって都合の悪い情報を過小評価してしまった結果が現状であるという認識をもっておいたほうがよいのかもしれません。
しかし,「正常性バイアス」そのものが悪いというではなく、「正常性バイアス」は 人間にとって心のバランスをとるために必要なもので,災害時などに悪い方向へ働く傾向があるという人間の心理状況の「くせ」があるというだけの話です。
「想像力」で正常性バイアスに打ち勝つ
「正常性バイアス」が悪い方向へ働いてしまうのを防ぐために必要なのは,「訓練」と「想像力」です。 火災や地震などの自然災害に関しては,やはり日頃から「訓練」をしておくことで非常時にも状況 を正確に把握し,きちんと動けるようになります。
新型コロナウイルスの感染に関しては,「訓練」 というよりも「想像力」の問題です。「この状況で,感染対策をせずに大勢で会食したり、のんきに遠くに旅行したり、職場でお昼休みにマスクを外して歓談していたら感染する可能性が飛躍的に高まる」「自分が感染したら・・・・」という、あたりまえの「想像力」を働かせることがとても大切です。
同調バイアス
「同調バイアス」という言葉もあります。これは「周りの人と同じ行動をとる」ことが安全と考える心の働きです。特に,日本人はこの働きが強いのかもしれません。本来であれば迷うことなく逃げ るべき状況でも「周りの人が逃げない」から「自分も逃げない」という選択をする人が圧倒的に多 いとされています。例えば、火災で煙が充満しているのに「周りの人が逃げない」からとおとなしくその場で待機し, 結果的に死者が増えてしまうというケースもあります。
新型コロナウイルスの感染拡大も、一部の人が娯楽施設に集まったり,旅行に行ったりして「みんながしているから大丈夫」という「同調バイアス」が働いた結果であるのかもしれません。災害時には「正常性バイアス」と「同調バイアス」によって正常な判断ができなくなってしま うというケースがとても多いといわれています。 ただし、「正常性バイアス」と同じように,「同調バイアス」もそのものが悪いというわけではありま せん。現に「同調バイアス」は,災害など非常時に一致団結して助け合うということにもつながります。
ここでも「想像力」が求められると思うので,日頃から「想像力」をしっかりと働か せて「同調バイアス」で悪い方向へと進まないようにしていきたいですね。
「自分が感染した」とリアルに想像・シュミレーションしてみる
想像力を働かせて、「自分や家族に感染者が出た場合どうなるか」を、一度ゆっくりと頭のなかでリアルにシュミレーションしてみましょう。感染した場合、保健所と相談の上、症状により「自宅待機」「施設入所」「病院入院」いずれかになります。
もちろん症状が悪化して入院が長引くことや、最悪「命の危険」もあります。同居家族は、たいてい全員即座に濃厚接触者となり、自宅待機が求められます。PCR検査の結果、同居家族がさらに陽性となると・・・と感染の連鎖が止まりません(クラスター化)。また、感染確認前後の「行動調査」が行われます。3密の行動状況はなかったか、濃厚接触者はいるかヒアリングがあります。濃厚接触者には連絡が行き、PCR検査や自宅待機等の対応がとられます。当然、自分や家族、濃厚接触者は、仕事や学校は行けず、職場の同僚等にも多数の濃厚接触者がいる場合は、職場がストップしてしまい、収入が途絶えることだってあるでしょう。大切な家族たちとの普段の日常も一瞬で奪われますし、家族も濃厚接触者・感染者となり、家族の仕事や学校・仲間にも迷惑がかかる恐れも十分にあります。
こういった事態を、「自分にはまずおこらない」「周囲もそこまで考えていない」と思ってはいけません。そう感じたのなら「正常性バイアス」「同調バイアス」にとらわれています。感染者のほとんどは、感染の事実を知らされたとき、「まさか自分が本当に感染するとは」と思うのです。
もちろん、十分感染対策を行っていても、感染してしまうことはあるでしょう。しかし、「想像力」を働かせてこういったシュミレーションを事前に行い、基本的な感染対策とともに、3密となる場面を知恵と工夫で回避した上の感染と、無策に「正常性バイアス」「同調バイアス」にとらわれたまま感染した場合とでは、その意味合いが大きく異なります。
事前にシュミレーションした場合、誰かが感染しても、感染拡大させないためには、「同居家族以外は絶対に濃厚接触者とならない」行動がとても大切だと理解できるでしょう。
濃厚接触者の定義 〜コロナ時代の行動指針〜
「濃厚接触者の定義」はご存じでしょうか?「1m以内」で「マスクなし」で「15 分以上会話」した相手が、「2 日以内」にコロナの症状を示したら、あなたも濃厚接触者となります。 現時点で、同居家族以外であなたの濃厚接触者(「1m以内」で「マスクなし」で「15 分以上会話」した相手)は何人いらっしゃいますか?
最近の自身の行動をゆっくり振り返り、改めて一度何人の濃厚接触者がいるか確認してみましょう。あなたの濃厚接触者は、現時点・感染する前でもカウント可能なのです。そして、濃厚接触者とならない・作らない「知恵と工夫」は何かないでしょうか?アイデアをだしてみましょう。
この 「濃厚接触者の定義」「1m以内」「マスクなし」「15 分以上会話」を理解・記憶して、どうやって回避行動をとれるか、コロナ時代の行動の一つの指標にしましょう。「人とは、とにかく接するな・会うな・家にいろ」ではなく、「濃厚接触者とならないようお互い注意しよう」なら、具体的なイメージがわいて、日常生活・社会経済活動をしながら、みんなで取り組めるのではないでしょうか?
「想像力」を巡らせて事前に対策をとれば、誰かが感染しても、上記「濃厚接触者の定義」にあてはまる人が同居家族以外いないなら、職場の同僚やその家庭・学校等々まで広範囲に及ぶ、感染の連鎖は最小限となります。
感染者発生の際、職場や学校等の仲間、その家族等々を一気に道ずれにしないために、保健所に「これだけ対策をとっていたので、同居家族以外は濃厚接触者ではありません」と胸を張って主張できるだけの対策・行動をみんなで協力して行いましょう。それが、「想像力」を働かせて、このコロナ「災害」と正常性バイアス・同調バイアスに打ち勝つための具体的・有効な対策です。
職場内クラスター
特に注意すべき環境・盲点として、病院や工場など、職種にかかわらず「職場の昼休みや更衣室」に多くのクラスターが出ている事実があります。リラックスして、食事中や更衣中マスクを外して狭い空間で談笑する。適切な対策をとらなけければ、あえて夜にアルコールを伴う会食をせずとも、「3密」の空間で同居家族以外が濃厚接触者となってしまう環境です。
「想像力」を働かせて、知恵と工夫で同居家族以外では「絶対にお互い濃厚接触者とならない」意識・行動の徹底を行うことが、感染者が出ても、自分・家族・患者・職場・地域医療を救うために今できる最も有効な手段です。
心の非常スイッチをオンにするためには?
各種バイアスの影響で人間はなかなか心の非常スイッチが入らない状態に陥りやすいという性質を持っています。まずそうした人間の心のメカニズムを知り、それを克服するためには、「想像力」を養い、勇気を出して率先行動をとること。「危機事態におけるリーダーシップ」が重要だと考えます。
正しい知識を身に着け、「空振りでも構わない」という心がまえで、災害(新型コロナ感染拡大)が起こったらいち早く避難行動(徹底した感染対策)を起こしましょう。その危機感がまわりの人にも伝わり、被害を小さくすることが出来るのです。被害の拡大を防ぐには想像力と勇気ある正しい行動あるのみです! 
 
 

 

 
 
 

 

●楽観、短絡、自分勝手、自己過信…外出自粛を守れない人は、なぜ守れないのか
「念のため」はデマ拡散のトリガー
私たちの心は、自分や自分の生活を脅かす可能性のある事柄について、既知でも未知でも「恐ろしい」と感じるようにできています。
台風や地震などの自然災害や、いま世界が苦境に立たされている新型コロナウイルスの大流行、また、近いうちに大地震が起こるとされているなど、生活で感じる恐怖がゼロになることはありません。
未経験の非常事態であっても「もしも現実になったら大変だ」と想像しただけで「怖いな」「心配だな」と思いますよね。息苦しさや動悸など、身体的な不快感を伴うこともあり、リラックスした気持ちは低減します。が、その代わりに「回避するための行動を起こしやすくなる」というメリットが生まれます。
ウイルスにしても大地震にしても、想像だけで怖さや不安を感じることができれば、未経験で不確かなことであっても、「リスクへの準備をしたい」という意欲が高まります。
恐怖やストレスを感じたときには、無理にリラックスしようとせず、「必要な準備」をしてみるといいかもしれません。例えば、地震に備えて食器戸棚に耐震用の道具を取り付けるなど、合理的な「備える行動」を起こしてみる。すると、「必要な手段を施した」という事実が安心材料となり、リラックスできるようになります。
また、怖さや不安を感じると、つい情報を検索し続けてしまいますが、リラックスしたいときは、インターネットやマスコミなどからの情報収集を、信頼性のある必要最小限のものに留めることも大切です。危険に関する情報は、記憶に残りやすく、緊張状態につながります。
私たちに「記憶」という機能が備わったのは、危険な場所や生物を覚えることで生存確率を高めるため。危険情報を仲間に知らせておけば、集団としての生存確率はさらに高まるため、言葉の発達にもつながったと考えられています。
危険に関する情報は、多くの人に共通する関心事で、「入手すると人に伝えたくなる」という心理が働きます。
緊急かつ重要な情報は伝える必要がありますが、不確かな情報であっても「念のため」「とりあえず伝えておこう」と思ったり、「怖さを人にもわかってほしい」といった心理が働き、かえって拡散されやすくなります。
災害時に嘘の被害情報や対策法、いわゆるデマが出回ってしまうのも無理のないことです。
災害時のデマは、善意からの拡散である場合も多く、判断や対処の難しさが伴います。まずは、とにかく情報の出元を確認することが大切です。友達からの情報であっても、その情報元の信頼性を確認します。友達を疑うのは気が引けるかもしれませんが、人ではなく情報の信頼性を疑うことですので、冷静に危険回避の方法として実践していただければと思います。
トイレットペーパーは、なぜ消えた?
私たちは、リスクが間近に迫ると、なんらかの対処となる行動を起こしたくなります。この傾向から引き起こされる行動として、災害時の「買いだめ」があります。
「危険に対する不安」に「必要なものが手に入らなくなってしまう不安」がプラスされ、行動力が大変高まります。また、多くの人が買いだめを始めるので、「みんなもしているから」といった集団心理も働き、ますますエスカレートする結果に。買いだめは自然災害ではありませんから、人力で混乱を防ぐことが可能です。1人でも多くの人が「巻き込まれない」ことが大切です。
そのためには、まず自分が最低限必要な物と量を正確に知ったうえで、1週間分、1カ月分、3カ月分などの単位で、平時から無理なく少しずつ備蓄しておくことが効果的です。シャンプーなどはボトルに使い始めの日付を書いておくと、1本でどのくらいの期間もつかが正確に把握でき、安心できる分だけを合理的に備蓄できるようになります。
正確さや合理性は安心材料になりますから、買いだめ現象が起きたときも、心穏やかに過ごせますし、巻き込まれたり騒動に加担したりすることも避けることができます。
危険への温度差で、夫婦関係に亀裂も
災害時の心理には個人差があり、それがパートナーとの関係性の問題に発展してしまうこともあります。
まずは「危険」の程度や範囲には個人差があることを知っておきましょう。赤ちゃんは「何を恐れるべきか」という学習が不足しているため、危なっかしい行動がみられますが、成長とともに学習し、注意深さが身についていきます。成長過程で、危険についても学習していきますが、その判断基準は人によって違います。例えば、学生時代に微熱が出たとしましょう。少しくらいの熱なら登校し部活にも参加する人もいれば、微熱でも安静にする人もいます。
このように、生活や家庭環境など、人によって異なる様々な影響が、危険の程度や範囲に個人差を生み出します。
次に、「危険」への対処法についても個人差があります。危険に遭遇したときの反応は、「戦う」か「逃げるか」に分かれる傾向があります。一概には言えませんが、女性は守るという本能が強く、危険をできるだけ避け、男性は闘争という本能が強く、立ち向かおうとします。
そのため、夫婦間において「妻は用心深く、夫は楽観的」(もちろん逆のパターンも)といった温度差が生まれることがあります。
続いてカギとなってくるのは「相補性」。既婚者にパートナーを選んだ理由を聞くと「わかり合えるから」という答えが多いものです。と同時に、「自分にはない、いいところがある」という回答も多いです。パートナー選択において、お互いをわかり合える「共感性」と、補い合える「相補性」は、重要なポイントと言えます。
しかし、「相補性」には盲点があります。ベースになっているのはお互いの違いですから、実際に結婚生活をスタートしてみれば、「え、どうして石鹸で手を洗わないの?」「そこまで消毒するの?」などのズレに気づくようになります。些細な習慣や衛生観念などの違いはトラブルの原因になりやすく、温度差が生まれるひとつの大きな理由になります。
温度差というのは、1度考え始めると悪い方向へ転んでしまいがちですが、よい関係を築くために、次のことを取り入れてみてください。
まず「違うからこそ役割分担ができるね」と違いから生まれるメリットがあるという意識を口に出して共有する。そして、それぞれが持つ防災や衛生観念について語り合いましょう。計画的に備蓄したい、除菌はしっかりやりたい、賞味期限は守りたいなど、意識の違いを確認しましょう。
それから具体的に助け合える行動に落とし込みます。備蓄品や緊急連絡先のリスト作成、転倒防止対策用品の取り付け、保存食レシピ、役割分担を決めるなど。このような対話を持つことで、温度差がメリットに転じ、関係性もより強まるでしょう。
非常事態にはいつも以上に冷静な判断が求められます。
しかし、つい日常生活の延長上の出来事として捉え、危険性を過小評価し、「自分は大丈夫」と考えてしまう傾向があります。これは「正常性バイアス」と呼ばれています。表に示した通り、一概には言えませんが、「正常性バイアス」につながりやすい心理には様々なタイプがあります。
また「カリギュラ効果」という、禁止されるとむしろやりたくなってしまう心理も働きがちです。これは1980年に公開された映画『カリギュラ』が過激な内容のため一部地域で公開禁止となり、それがかえって注目を集めたことに由来しています。このような現象が起こるのは、人が本能的に持つ「自由に行動を選択したい欲求」に起因すると考えられています。この欲求は、赤ちゃんにさえ備わっていることが心理学的実験で確認されています。
禁じられると逆にやりたくなる
「してはダメ」という禁止の情報が入ると、人は「自由に行動を選択したいという欲求」が阻害され、ストレスを感じます。
すると今度はそれを均衡状態に戻したいという欲求が働き、禁止事項をどうしてもしたくなってくるというわけです。
このような「正常性バイアス」や「カリギュラ効果」といった心理傾向がある一方で、私たちには「有害なものは避けたい」という強い欲求も存在します。そのため「悪い結果になる」と予見できていれば、自然と自由に行動したい欲求を抑えられるようになります。
童話「鶴の恩返し」でも、「部屋を覗いたら鶴がいなくなってしまう」という結果をおじいさんとおばあさんがあらかじめわかっていれば、「覗きたい」という欲求を抑えることができたのかもしれません。
このように、行動の先にあるネガティブな結果をリアルに想像できれば、危険回避欲求のほうが勝り、行動を抑制することができます。
ただし、自動車教習所で見る交通事故映像のように、危険回避のために起こる刺激は、時の経過によって薄れてしまうこともあるので、繰り返し注意喚起する必要があります。
新しい時代へ生まれ変わるとき
今後も自然災害やウイルスの脅威と共存していく私たち。非常時には「真面目で働き者」といった日本人の美徳がかえってマイナスに働いてしまうことがあります。新型コロナウイルスが拡大するなか、無理して出勤してしまったがために事が大きくなってしまったという事例も、多々聞こえてきました。
一方で、在宅勤務が増え、仕事の合理化、スリム化が急速に進み、働き方だけでなく働く人の価値観も見直されるようになりました。ポツッと電子機器のスイッチを切れば、瞬時にプライベート空間に切り替わるワークスタイルが拡大し、ビジネスシーンでは合理化、スリム化が進んでいきます。
このような時代では、自社のカルチャーだけではなく、社会全体の状況や変化を瞬時に捉え、合理的な賢い指示や行動をしていく力がより重要になっていくでしょう。
技術的にはもうだいぶ前から可能であった、新しいビジネスシーン・価値観が、実はもう始まっています。災害には社会をガラッと大きく変える力があります。そして、その適応が新たな課題になることでしょう。 
正常性バイアスとは?災害時に「自分は大丈夫」と考える落とし穴。事例を知って対策しよう
様々な判断やストレスに過度に反応しないよう、心を守る機能「正常性バイアス」。この機能が逆に作用し、災害から逃げ遅れることもあります。
もともと、正常性バイアスは、日常でのたくさんの判断や、心理的ストレスの全てに反応をしなくても済むように、ある程度の範囲は正常なものとして考え、ふるいにかけることで、「心の平穏」を守るための機能として備わっています。
しかし、日常では心を守るための機能が、災害などの非常時に強く働くことで、一刻も早く避難しないといけない状況にいながら、「自分は大丈夫」「これくらいなら避難しなくてもいい」と考えてしまい、大きな落とし穴となる場合があります。
災害時の被害拡大の原因は「パニックになること」と思われがちですが、実は危険を過小評価する「正常化バイアス」による逃げ遅れが多くを占めています。
正常性バイアスに惑わされないためにどうすればいいのか、実際に起きた災害での事例と、その対策について紹介いたします。
正常性バイアスとは
「正常性バイアス」は心理学で使われる用語です。災害時における正常性バイアスの意味としては、人が予期しない事態に直面したとき、「ありえない」という先入観や思い込み(バイアス)が働き、起きていることを正常な範囲だと自動的に考えてしまう、心の働きのことをいいます。
地震や津波、火災、洪水など、経験したことのない事態におそわれたとき、非常事態であるにもかかわらず、心の防衛機能(=正常性バイアス)によってその認識が妨げられ「自分に大きな危険がふりかかるわけがない」「まだ誰も逃げていないから大丈夫」と思い込んでしまい、正常な判断や身を守るための行動ができなくなり、避難行動が遅れてしまう現状があるのです。
大きな災害があれば、正常な判断ができると思うかもしれませんが、実際に災害に直面すると「正常性バイアス」は予想外の大きなチカラで人々の行動を制限し、大きな災害や事故を生み出しています。
誰もが「自分だけは大丈夫」と信じている
想像してみてください。たった今、私たちが大震災にみまわれたとします。ゆれがおさまったあと、皆さんはどんなことをしているでしょう?
「自分や家族の無事を確認する」
「テレビやインターネットで自分が住んでいる地域の震度を確認する」
「津波警報が出ていないか確認をする」
「隣近所の人と無事を確認する」
自分の想像した内容は、ありましたでしょうか?
しかし、実際には「自分が大怪我をしている」こともありえます。自分の命を脅かすようなことは「自分にはおこらない」と考えていませんでしたか?これも正常性バイアスの一つです。
大震災が起きると、平静でなくなった心の中に、大量の情報が一気に入ってきます。このような状況で、次の行動を判断しなくてはならないのです。皆さんの中には、正しい判断を下そうと「務めて冷静に」考えようとする人もいるでしょう。しかし、冷静に判断をしたつもりでも、「自分に危険は起きるはずがない」という思い込みから、地震のおきた直後にもかかわらず「まだ緊急事態ではない」と、正常な判断できない状況に陥る恐れがあります。
また、災害大国である日本は、地震や台風や大雨による被害が多発し、たびたび避難勧告などが出されていますが、実際に避難する人が少ない現状もあります。
避難をしない理由としては「以前に避難勧告が出された時も自分は被害に遭わなかった」、「近隣の人も避難していないから」などが挙げられています。以前は問題がなかったとしても、今回も同様に問題ないという確証はありません。また、近隣の人が常に正しい判断をしているとも限りません。
上記のように根拠のない内容を「避難しない理由」として選択することも、正常性バイアスによる影響が及んでいると考えられます。「自分だけは大丈夫」「ここだけは大丈夫」という心理を見直し、生きのびるための最善の道を選択することが大切です。
正常性バイアスにより被害が拡大した事例
災害時の正常性バイアスによって、実際に大きな被害となったケースを紹介いたします。
平成30年7月豪雨(西日本豪雨災害)
西日本を中心に記録的な豪雨となり、中国・四国地方などで河川の氾濫や土砂災害が相次ぎ、200名を超える死者・行方不明者を出すなど甚大な被害が発生しました。
この豪雨が起きる前、気象庁では「大雨特別警報」を発令、記者会見を開きテレビやラジオを通じて災害発生の危険があることを呼びかけていました。しかし、NHKが被災者310人に対して行なったアンケートでは、「テレビ・ラジオ」がきっかけで避難を決意した人は4.5%と非常に少なく、周囲で浸水や川の氾濫、土砂災害が発生するなど、「周辺環境の悪化」してからの避難が1位(33.5%)という結果となっていました。
このように、どれだけ警報を発令していても、実際に身に危険が差し迫るまでは避難を決断しなかったという実態が明らかとなっています。また、被害が大きかった真備町では、「ダムがあるから安全と油断して逃げ遅れた」という声が多く聞かれました。
東日本大震災
2011年3月に発生した東日本大震災では、15,000人を超える人が亡くなり、そのほとんどが津波による犠牲者となっています。地震が起きてから大津波が到達するまでには約1時間あり、津波から避難するには十分な時間であったと考えられます。しかし、「自分の住む町には高い堤防があるから逃げなくてもいいだろう」「自分の家はハザードマップでは安全なところだから大丈夫」と考えていた人たちもいました。そのような思い込みの結果、津波避難の警報が出ても避難しない人が多く、実際に津波を目撃してから初めて避難行動に移り、避難が遅れたことにより多数の犠牲者がでてしまいました。
正常性バイアスによって根拠のない楽観的な思考に陥り、避難を遅らせた可能性が指摘されており、津波被害の大きな課題となっています。
大邱地下鉄放火事件
2003年に韓国の地下鉄で、約200人の犠牲者が出た悲惨な放火事件があります。火災が発生し車内に煙が充満、プラットフォームの反対側の電車が燃え、自分たちの車両にも煙がたち込めているにもかかわらず、鼻や口を抑えてシートに座ったままの乗客たちの写真が残されています。乗っている地下鉄の車内が火災の煙で充満しているのにも関わらず、「軽いボヤか何かだろう…」と思い込みその場にい続け、多くの乗客が炎と煙の犠牲になりました。
このような緊急事態に出くわした時、パニックのような過剰防衛反応を起さず、それを無視しようとする「正常性バイアス」が働き「逃げる」という選択肢を消し去ってしまった事例です。
正常性バイアスに惑わされないための対策
経験のないことは想像できない。危険について知っておくこと
正常性バイアスに惑わされないために重要なことは、危険について知ること=訓練することです。災害など予期しない事態に遭遇したときに正常性バイアスは起こります。
先ほどの、大震災が起きても「自分が怪我をする」とは想像できない例のように、実際に被災した経験がない人の多くは、自分にどんな危険が起こるかを想像ができません。防災に関する知識を身につけ、災害を想定した訓練を重ねることで、非常時にも正常な判断力を失わず、適切な行動をとることができるようになります。
また、自分の経験による誤った判断を防ぐために、実際に発生した災害事例を知っておくことも重要です。自治体のWEBサイトでは、過去の災害データやハザードマップで被害想定区域など確認することができます。自分が住んでいる地域にどんな危険があるのかを知ることも、実際のデータを基にした正常な判断につながります。
災害は想定外が起きるもの、避難が無駄になっても最善の行動を。
災害では想定外のことが起きることも肝に銘じておきましょう。東日本大震災では、前もって備えていた堤防を大きく超えて津波が襲ってきました。津波の被害の大きかった岩手県釜石市では「100回逃げて、100回来なくても、101回目も必ず逃げて」という標語が残されています。以前の避難が空振りに終わっても、今回は被害にあうかもしれないと考えて行動することが大切です。
正常性バイアスを打ち破った「釜石の奇跡」
最後に一つ、正常性バイアスを打ち破り、多くの命を救った「釜石の奇跡」をご紹介しましょう。
岩手県釜石市 釜石東中学校での出来事です。東日本大震災の起きた直後、中学校では生徒が「津波がくるぞ!逃げろ!」と大声で叫びながら避難先に指定されていたグループホームへ避難を始めました。隣接する小学校では子どもたちは校舎の3階に避難していましたが、中学生が避難する様子を見て、その後に続きました。そして、中学生と小学生は避難場所のグループホームに到着します。しかし、津波の様子を見た生徒たちが、ここにいても危険だと先生に訴え、さらに高台の施設を目指して避難をすることとなります。避難の途中、保育園から園児を避難させるのを手伝い、その様子を見た近くの住民もつられて、高台に避難を開始します。そして、全員が高台についた、その30秒後に津波が施設の目前まで迫りました。最初に避難したグループホームにも3メートルの高さを超える津波が押し寄せたそうです。
これは、中学生があらかじめ定められた避難場所が安全であるという、正常性バイアスにとらわれず、さらに安全な場所に避難を続けたことが一つ目の教訓です。そして、その中学生の行動を見た人に伝わり、皆がつられて行動をしたことで、さらにたくさんの人の命を救いました。
非日常的なできごとを前にすると、誰もが他人の行動を見て事態の深刻さを判断しようとします。「自分だけは大丈夫」という正常性バイアスは人にも伝わります。それとは逆に、一人が正常性バイアスを打ち破り避難を始めれば、ほかの人もつられて避難を始め、たくさんの人の命を救うこともできます。
被害の拡大を防ぐには行動あるのみ! 正しい知識を身に着け、「空振りでも構わない」という心がまえで、災害が起こったらいち早く避難行動を起こしましょう。その危機感がまわりの人にも伝わり、被害を小さくすることが出来るのです。 
 
 

 

 
 
 

 

●「自分は大丈夫」過信禁物 振り込め詐欺被害者像
「自分は大丈夫」との過信は禁物――。振り込め詐欺の被害者像が29日、警視庁が被害者や家族から聞き取り調査した結果で明らかになった。30〜50代の息子や孫がいる高齢女性を中心に満遍なく被害に遭っており、家族と同居している人や、周囲が判断力に問題がないとみていた人も油断できないという。同庁は「子供と定期的に連絡を取っている人でもだまされる可能性がある」と注意を呼びかけている。
調査対象は(1)オレオレ詐欺(2)還付金詐欺(3)架空請求詐欺(4)融資保証金詐欺――など被害者と対面せずに電話などで金の支払いを持ちかける手口の詐欺。同庁は、今年5〜7月に被害届(未遂を含む)を受理した東京都内在住の65歳以上の318人とその家族からの聞き取り結果を分析した。
被害者は81%が女性。全体のうち、一人暮らしは31%で、夫や家族と同居している人が62%だった。独居高齢者が被害に遭いやすいというイメージと異なり、同居親族がいても安心できない実態が明らかになった。
家族への調査では、回答した163人のうち「被害者の判断力や記憶力に問題がないと考えていた」人が71%にのぼり、家族が「だまされるかもしれない」と思っていたケースは6%だけ。被害者自身も92%は「自分は大丈夫だと思った」「考えたこともなかった」と回答。過去に同種被害に遭ったことがある人は4%だった。
オレオレ詐欺では、犯人が息子をかたるケースが79%で、孫は11%。被害者の82%は息子や孫が30〜50代だった。被害者の57%が1週間から1カ月に1回以上、息子らと連絡を取っており、音信不通の人だけが被害に遭うわけではない。
中には、自宅の2階に息子が在室していたにもかかわらず、危うくだまされかけたという女性のケースもあったという。
被害者の45%は「被害防止について家族と話し合ったことがある」と振り返っており、日ごろから注意していた人もだまされていた。
調査結果について、内藤佳津雄・日本大教授(認知心理学)は「電話の声は聞き取りにくく、いったん親族と思い込むと別人とは考えなくなる」と指摘する。警視庁幹部は「家族との電話の合言葉を決めるなど事前の対策が必要。役所をかたって『お金が戻る』と電話がかかってきたら、100%詐欺と考えてほしい」と注意を促している。 
 
 

 

 
 
 

 

●「自分は健康だから大丈夫」という過信が突然死につながる
ついさっきまで健康そうに見えた人が、予期せず帰らぬ人に――突然死は、文字通り何の告知もなく、その人の人生を強制的に幕引きしてしまう、なんともやりきれない亡くなり方です。
突然死は、医学的には「症状が出現してから24時間以内の予期しない内因死」と定義されています。内因死とは、事故で傷を負うなどの外部からの要因ではなく、自らの身体の中でなんらかの異変が起き、それがもとで亡くなることです。
実際にあったケースをお話ししましょう。
70歳代の女性、Aさんはある夜、急に胸が苦しくなったため、自分で救急車を呼びました。到着までの間、入院の可能性を考え、着替えや洗面道具など必要なものをひととおり用意しました。そして自分で歩いて救急車に乗り込み、病院へ向かったのですが、その車中で亡くなってしまったのです。胸の苦しさを自覚したとき、Aさんに残された時間は既にほんのわずかだったというわけです。
自分で入院の準備をし、自分の足で救急車に乗った人が、その後10分程度で亡くなってしまう――にわかには信じがたいことです。しかし、これが突然死の恐ろしさであり、誰にも予測がつかないのです。
「健康自慢」の人こそ注意してほしい
いわゆる「健康自慢」の人にも、突然死は容赦なく襲いかかります。
元Jリーガーの30代のサッカー選手が数年前、練習中に倒れそのまま亡くなってしまったことを覚えている人も多いと思います。このケースに限らず、およそ病気とは無縁のイメージがあるアスリートの突然死は、決して珍しいことではありません。
一般の人でも、昔、野球をやっていたとか、水泳で大きな競技会に出たとか、あるいはゴルフが大好きで、週末となるとラウンドに出ていたとか、運動になじみのある人はたくさんいます。そういう人は概して年を重ねても同年代に比べ体力があり、病気知らずの人が多いものです。
しかし、本当にどこも悪いところがなければ問題ないのですが、外見だけでは判断がつかないものです。本人はどこも悪くないと自信をもっていて、周囲から見てもあの人は健康そのものであったとしても、突然死は起こりえます。
皮肉なことに、普段から身体のあちらこちらに不調がある人ほど、ほんのささいな身体の変化もおおごとにならないよう用心し、節制するものでしょう。
一方、健康自慢の人は、体調に明らかな変化があっても、「このくらいなんともない」と低く見積もりがちです。「年のせい」とか「疲れのせい」「一晩寝れば治る」などと、やりすごしてしまうのです。いわんや自分に突然死の可能性があるなどとは、夢にも思わないでしょう。
しかし、そのまま何も手を打たないとしたら、もしかしたら突然死の確率を高めてしまっているかもしれないのです。
突然死の予防について、知識を持っていただきたいと思います。 
 
 

 

 
 
 

 

●“自分だけは大丈夫” 根拠ない楽観的思考が感染拡大招く
1年ほど前に日本で初めて新型コロナウイルス感染が判明してから、私たちの日常は大きく変化した。人は慣れたものには安心する一方で、未知なものには恐怖や不安を感じる。未知なものに遭遇するような「環境の変化」はそれ故にストレス要因となり、心身に影響を及ぼすことになる。自粛生活による“コロナ疲れ”を訴える人が増えてきたのもそのためだ。
長期間ストレスにさらされていると、ストレス反応(ストレスによる心身面や行動面へのさまざまな反応)が起こる。ストレス反応は心に表れるものとして無気力、イライラ感、気持ちの落ち込みなどがあり、身体面には頭痛、肩こり、胃痛などが、行動面には飲酒量の増加や人間関係のトラブルなどが表れる。
米心理学者のラザルス(1922〜2002年)らが提唱したストレスの心理学モデルによると、自分に降りかかった出来事をストレッサーとして認知すると、コーピング(ストレスに対処するための行動)が実行される。コーピングには問題焦点型と情動焦点型があり、前者は直面するストレスフルな出来事に直接対処できる場合に使われ、後者は自分で状況をコントロールできない対処不可能な状況で使われる方法だ。
コーピングが成功すればストレス反応は改善するが、この過程がうまくいかないと慢性のストレス反応につながったりもする。コロナ渦では、情動焦点型コーピングを使用しながらストレスを乗り越える機会が多いだろう。テレワークが大変な場合、通勤ストレスがなくなったと捉えてみる、気分転換に部屋の模様替えをするなどという方法である。不安な感情と距離を置き、心身の緊張を鎮めることができればコーピング成功となる。
今まで友人との飲食やイベント、旅行などのコーピングを頻繁に使用してきた人たちは、それ以外のコーピング方法が見つからないと、コロナ禍の環境に適応することが難しくなる。それで、「自分は大丈夫だから」と言って、家族に止められながらも感染の危険が大きなところへ旅行や飲み会に出かけてしまう。この“自分だけは大丈夫”という思い込みは、災害心理学で「正常性バイアス」と呼ばれ、自分に都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまうことである。予期せぬ変化に心が過剰に反応して疲弊してしまわないための防衛本能の一種であるが、自然災害などの非常事態時では避難を妨げる要因にもなる。
自粛期間中でも一定数の人たちは、自分の楽しみのために不要不急の外出をするようだ。心の不安を一掃するため正常性バイアスが発生することは、ある程度自然なことかもしれない。しかし、正常性バイアスによって根拠のない楽観的思考が蔓延(まんえん)することは、さらなる感染拡大を引き起こす可能性を秘めている。したがって、コロナの蔓延を抑えるためには正常性バイアスに惑わされないことが必要となり、そのためには、効果的なコーピングによってストレスに対処することである。
不安定な時代であればあるほど、ストレスマネジメントの能力が鍵となる。セルフモニタリングをして、自分はどの程度のストレスを抱えているか、普段どのコーピングを用いることが多いかを自覚し、直面したストレッサーに対して柔軟かつ現実的なコーピング方法を選択し、成功体験を増やしていきたい。 
 
 

 

 
 
 

 

●能力が低い人ほど自信たっぷりな理由、それは…
社会に出てから気づいたのは、自信満々なやつほど、仕事ができないということだ。特に、セルフブランディング、人脈自慢、ソー活、自己啓発など、自分磨きに精を出す「意識高い系(笑)」はその最たるもの。ポジティブに自信たっぷりに振る舞うことは決して悪いことではないはずなのに、どうして、自分自身の能力を過信している人ほど、同じようなミスを連発するのだろう。
心理学博士・榎本博明氏の『薄っぺらいのに自信満々な人』では、自信過剰な人に見られがちな仕事上の問題点を指摘している。榎本氏によれば、もともと人間は、自分の能力を過信してしまう生き物だという。それも、その傾向は能力が低い人ほど、顕著に現れるらしい。2000年にイグノーベル賞を受賞した英国のダニングとクルーガーは、このことをある実験により証明した。彼らは被験者に対して、論理的推論のセンスなどのテストを実施し、同時に、テストの結果について自己評価させた。すると、下位4分の1に属する底辺グループの平均得点は、下から12%のところに位置するものだったが、底辺グループの自己評価の平均は下から58%、「自分には平均以上の能力がある」と思い込んでいたという。最優秀グループでは、そのような過大評価はみられず、むしろ逆に自分の能力を実際よりも低く見積もる傾向が見られた。能力が低い人ほど、自己を高く評価していることがわかったという。
能力の低い人は、ただ何かをする能力が低いというだけでなく、自分の能力の程度を把握する能力も低い。このため、仕事のできない人ほど自分の仕事に自信を持っているようにみえるという不思議な現象が起きてしまうのだ。物事を理解する能力の低さが自己認知も妨げるため、自分の能力が低いという事実にも気づかないのだろう。これは、「意識高い系(笑)」にも同様にいえる。
「意識高い(笑)」人々は周囲からどう見られているかを気にしながらも、自分が人からどう見られているかには鈍感である。よく見られたいという思いが強過ぎてかえって、みっともない姿をさらしてしまう。自分の言動が適切だったかどうかを自身で判断する「セルフ・モニタリング」が働いていない。今はSNSを使って安易に発信をしやすい環境であるため、「セルフ・モニタリング」できていない彼らの行動は、過剰な承認欲求に振り回されていて周りの失笑を招く。
榎本氏によれば、“できる”人ほど、悲観的であり、“できない”人ほど楽観的である傾向にある。これは、“できる”人ほど、あらゆる可能性を想定しているためだ。いろんなケースを頭の中でシミュレーションし、最悪の事態まで想定するから、“できる”人は不安にかられる。一方で、楽観的な思考の人はそれができない。さらに、“できる”人は自分より上の能力の人と自分を比べる「上方比較」をし、自分もそこに到達できるように努力するが、“できない”人は下の能力の人と比べて見下す「下方比較」をして安心しまう。このため、彼らの能力にどんどん差が生まれていく。人は劣等感を受け入れることによって成長していくといっても過言ではないのに、能力のないものは劣等感すら持っていないのだ。
では、能力がない自信満々な人と仕事をすることになった場合、一体どうすれば良いのだろうか。ダニングとクルーガーは自信過剰な人の認知能力を鍛えるトレーニングをさせる実験も行っている。認知能力が向上すると、成績下位グルーブの過大評価傾向は弱まり、底辺グループのひとたちの著しい過大評価傾向は改善されることになった。つまり、能力を高めるようにトレーニングさせれば、自然と自分の能力の低さに気づくことになるようだ。自分の実力をあまりに過信することで致命的なミスを繰り返す者には、鍛練あるのみ。自分の能力を高めるほど、自信を失っていくとは何という皮肉だろう。果たしてそれが幸せなことなのか不幸なことなのかは議論が分かれるところだが、表面的な「意識が高い(笑)」行動をやめさせ、仕事に真剣に取り組ませるより仕方ないようだ。 
 
 

 

 
 
 

 

●なぜ人は自分の能力を過大評価する罠に陥ってしまうのか?
人間は自分の能力を適切に判断するのがとても苦手です。冗談半分であったとしても、やる事成す事大抵は上手く行くと思っているものです。しかし現実には多くの場面で自分が思う程物事は上手く行っていないという事があります。これが長期に渡って人が成功し続ける事の妨げになっているという説があります。確かに我々が自分の能力を過信する傾向にあったとしても一見大した問題ではないかもしれませんが、暢気に構えていると、できない部分を一向に改善できません。いまだ謎の多い分野ではありますが、人間の脳は得てしてこのように成長の妨げとなるワナのような動作をすることがあります。大切なのは無意識にもこうした脳のワナに引っかかる事があるという事実を知っておくことです。そして自分自身や他人を判断する際は、ここをしっかり心得ておくことが大事です。
自分のプラス面を過大評価
ほとんどの人が実体はさておき自分は素晴らしく、中の上ぐらいであると感じています。こうした考え方の傾向はあらゆる場面で見受けられます。例えば人と比べて本人の実力以上に自分は運転が上手いと思っていたりします(道路上にいる他のドライバーはみんな下手であり自分の運転は中の上だと感じています)。また世の中には性格の悪い人もいるが自分は非常に良いと感じていたり、実体よりも賢いと感じていたりするかもしれません。
心理学者はこれを「優越の錯覚」と呼びます。優越の錯覚とは認知バイアスのことで、これにより私たちは自身のプラスの性質を過大評価し、マイナスの性質を過小評価しています。人は得てして実際よりも自分は記憶力が良いとか人気があると認識しており、本当のの身体の状態よりも健康であると感じているのです。物を知らなければ知らないほど自分は何でもよくわかっていると考えがちなのはこれが理由です。どうしてそんな風に思ってしまうのか不可思議な気もしますが一般的によく見られる現象なのです。BBC Futureがこの話題について奇妙なある症例を番組で扱っていました。
   
1999年ニューヨーク州コーネル大学の教授でジャスティン・クルーガー氏とデビット・ダニング氏が調査を行い、特定分野において技術や能力に欠けている人々は自分が能力に欠けているという認識がほぼないという結果を導き出しました。
調査の初期の段階では、ピッツバーグ市で起きた銀行強盗のマッカーサー・ウィラーの件を症例として取り上げ検証しました。ウィラーは1995年に2つの銀行を襲撃した直後に逮捕されていますが、日中の犯行であったにも関わらず顔を覆う事もなく何一つ扮装らしいことをしていなかったとされています。警察が監視カメラの映像を本人に見せた所、彼は「でも俺はあのジュースをかぶっていたんだ!」と供述しました。
この不運な犯人は顔にレモンジュースを掛けておけば防犯カメラには映らないと信じ込んでいたと言うのです。
   
ここで注目すべきは人は何かを盲目的に信じれば信じるほど、プロの人間が指摘でもしない限り自分が間違った認識をしていたことに気付けないという点です。
一般的によく習い事が推奨されたりしますが、何かを習う時は他者も参加するような集団で習う事が大切です。つまり上手く習得できていないのに自分ではそれに気づけないと言うことがよくあるからです。他者と上手に関係を築きながら互いに技術を高め合うには、建設的なフィードバックの仕方を覚えておくのが良いでしょう。
失敗から目を背ける
我々は失敗から学ぶ生き物です。しかし他人の失敗にはとやかく頓着せず、ましては学ぶことなどあまりないと感じているのが普通ではないでしょうか。これは生存者バイアスと呼ばれるもので、一般に成功にはたくさん注目が集まるものですが失敗は見過ごされる傾向があります。自分のことだけならさほど支障が無いように見えても、実際にはこの生存者バイアスによって潜在的な問題が多々あるとされています。
   
勝者なのか敗者なのか成功か失敗か、生き残っているのかそれともほぼ死に体なのかなどなど、状況を正しく判断するのに必要なのは一方だけに目を向けてないかを常に確認することです。
例えば地元で繁盛しているレストランがたくさんあるからと言った理由で自分もレストランを開業したいと考えるなら、実はそこで何とか生き残って成功を遂げたレストランにだけ目を向けている可能性が高いということに気づかなければなりません。開業して1年以内に平均で90%のレストランが倒産しているといった事実もあります。失敗すると視野から外れてしまうので我々はその事実を見過ごしてしまうのです。
大変な功績を残した者だけが現存しているのが世の常です。日常的にそうした成功者の功績を目にしていると、現実から目を背け自分もビッグビジネスに参戦できるのではないかと思えてしまうのかもしれません。
また生存者バイアスによって脳の思考力が極端に衰えてくると、成功の方がよくあるケースだと思い込んでしまいます。ゆえに成功はとても簡単だという結論を短絡的に導いてしまうのです。これは完全に間違った判断で、生存者は元々属していた大きな集団(敗者も含めた)の中で成功できた代表格だという事実を見落としています。
   
生存者バイアスは歴史家や科学者・経済学者の分野だけの論議に思えるかもしれませんが、我々にとっても日常的に遭遇することなのです。成功を手にするのは容易だと考え始めると、事実と違っても「自分は成功に足る人物だ」と思ってしまいます。
これは自己啓発系の本でよく目にする問題だと言えます。人が富や幸福を楽な方法で得ようとする時、成功した人のテクニックがあるとするならそれを真似したいと思ってしまいがちですが、実はそれで上手く行くことは滅多にありません。なぜなら自己啓発本は失敗について深く触れていないからです。やる事全て上手く行くような印象を与えてしまうため、物事がすぐに好転しないと途中で簡単に諦めてしまいます。
何か助言を求めている時にこそ、他者の失敗から学ぶべきことはたくさんあります。日常には生存者バイアスが多々ある事を理解し、上手く行ってる所だけが世の中に伝わって行く傾向があることをまず知っておかねばなりません。そして実際には、成功者がいかに上手くやったかが重要ではなく、彼らは散々失敗もして来ていると言う事実を認識するのが大事です。
例えば自分自身の話だったらここまで成功するのにどれ程の失敗を重ねてきたか心に焼きつけていることでしょう。そのストーリーを聞けた他者は大変有意義なはずです。なぜなら失敗は成功の種であり、先人が踏んだ間違いをしっかり覚えておくことで同じ轍を踏まなくて良いからです。
自分のことは誰よりもわかっている
自分のことは自分が一番わかっていると誰もが思っています。これは「非対称の見識の錯覚」とされるものです。要は人が自分を見ているよりも自分は自分のことを良くわかっていると感じていること。奇妙ではありますがこれが何かを議論しようとする時に問題が生じます。
ある調査研究がジャーナル・パーソナリティとソーシャル・サイコロジーという雑誌で発表されました。
   
6種の研究が行われ、2人1組でパートナーとなり互いを観察してもらいました。これらの研究によって、「相手が自分のことを理解しているよりも、自分のほうが相手をよく理解している」という確信を人々が持つにいたるプロセスとメカニズムが明らかになりました。
また、実験対象が自分たち自身を観察する時よりも、他人を観察する時の方が、観察者と被観察者の間で起きる認識の差が少ない事がわかりました。
   
政治の世界を例として見てみましょう。政治討論番組などでよく見受けられますが、ある政治家が反対意見の政党の人と合間見える時、彼は相手が自分たちの見解を理解しているとは到底思えないといった姿勢を保ちます。反対に自分たちの意見については十分理解が及んでおり、ゆえに反対勢力が言ってることは間違っているのが良くわかると言った状態です。例えば「自分たちは賢いから民主党の主張など信用しない。民主党の言ってることは全て把握してはいるが、それに賛同はしない。彼らは決して共和党の主張というものを理解しようとしないし、万が一彼らが理解できると言うなら、こちらの主張に賛同するはずだ」(民主党側も同様の論理)。
このような状況は配偶者や上司などあなたの周りの人との議論においても容易に起きることが想像できます。我々が「相手の立場になってものを考える」ことの重要性を繰り返し言われてきているのに、なかなかそれができない理由は、「他人よりも自分は優れている」と考えているからです。これを克服するには自分が持つ偏見としっかり向き合うことが大切です。
残念なことに、こうした考えに陥っている時に出来ることはそう多くありません。これまで述べてきた思考の癖や脳のワナに自分が陥ってると気づいたら、少なくとも自分にも見えてない部分があるはずだということを一度受け入れてみましょう。我々は自分のことに関しては棚に上げて暮らしているものですので、誰かのことをとやかく言いたくなる時はそれを覚えておくようにしたいものです。 
 
 

 

 
 
 

 

●羽田議員のコロナ急死で、政治家の“過信”の空気が「間違いなく変わりました」
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月29日放送)に週刊文春記者の和田泰明が出演。立憲民主党の羽田雄一郎参院幹事長が新型コロナの感染により亡くなったことの政界への影響について解説した。
12月27日(日)に亡くなった立憲民主党の羽田雄一郎参院幹事長の死因が、新型コロナの感染によるものだったことがわかった。現職の国会議員が新型コロナの感染症で亡くなったのは初めてだ。
飯田)旧民主党政権では国土交通大臣を務めていた方でもあります。羽田孜さんの息子さん。どういう方だったのですか。
和田)僕は1度も取材したことがないので、28日に立憲民主党の方に取材したのですが、親分肌ですね。古き良き政治家ということで、まさに若い人に飯を食わせていると。高級中華が行きつけだったようで、そこに若手を集めて、当然ご馳走するのだということですが、あまりお酒を飲まれないと。取材した方は、下戸なのではないかと言っていましたが、高級中華なので美味しい時間帯にその人たちに出してもらうように気を使ったり、お酒を飲まないので自分で車を運転してきて、後輩を宿舎に送り届けたりしていたと。そのくらい悪く言う人がいないような。立憲は「自分が、自分が」という人が多いのですが、そのなかで紛れもなく人格者だったということを言っていましたね。
飯田)なるほど。持病がおありだったということも言われていて、糖尿病、高脂血症、高血圧だったと。基礎疾患があるとどうしてもリスクが高まるという話もありますが。
和田)政治家って過信があって、まさに菅総理と二階幹事長が会食していたと批判されましたが、自分たちは大丈夫だと、丈夫であることが政治生命を伸ばすことにもなるので、過信はあったのですが、今回の件で、流石にこれはいけないという風になっていると思いますね。
飯田)やはりこれで空気は変わりますか。
和田)間違いなく変わりました。
飯田)コロナが流行っているなかでも、感染防止対策をしていますよ、という形で政治資金パーティーをやったり、会合が行われたり、けっこういつもと変わらないことをやっているという感じで。
和田)やっていますね。それは私たちが(文春で)書いたのですが、厚生労働委員会の委員長だった渡嘉敷奈緒美さんという方が、コロナにかかったので不在のまま政治資金パーティーをやっていたということを書いたら、けっこうヤフー(ニュース)のトピックスに上がったりしたのです。僕の感覚からしたら「やるのかな」くらいだったのですが、一般の方からしたら「許さない」ということになっていて。田村厚労大臣も朝パーティーをやっていたり、加藤官房長官も昼食会をやったり、報じられないだけでけっこうやっているのです。
飯田)そうなのですね。
和田)はい。だから、感染防止をやっていると言っても、こういうときにお金集めかと。田村さんも当然医師会とかも呼んでいるのですよ。私の知り合いがたまたま参加していたのですが、やはり断れないと。そういう会を悪気なくやっているのですよ。
飯田)ルーティーンとして、という感じですか。
和田)はい。けっこうホテルのキャンセルも大変ですし、みんなに中止になったと連絡をするのも大変なわけで、そう考えたらやってしまおうということになるのでしょうね。しかし、それは普通の人の感覚からしたらおかしいというのは当然ですよね。
飯田)確かに、この冬も忘年会はもうやれないという感じで、みんな粛々と家で1人でお酒を飲むというような人が多いなかで。
和田)そうですね。渡嘉敷さんなどは、ホテルニューオータニの鶴の間という、いちばん大きい会食をやっているのですね。私も取材に行ったのですが、マスコミの人は入ってはいけないという張り紙があって、おそらくやましいと思ってやっているのだと思うのですけれども。
飯田)表向きは感染対策など理由をつけていても。
和田)その辺りナーバスになりながらも無理やりやっているというあたりですよね。だから、流石に来年はそういうのはできなくなりますよね。
飯田)経団連など、経済三団体の祝賀会も来年の頭は中止だということも報じられております。 
 
 

 

 
 
 

 

●なぜ詐欺師に騙されてしまうのか?「自分は大丈夫」という思い込みの罠
急増するネット詐欺
インターネットが普及するにつれて、それを利用した詐欺も多くみられるようになりました。LINE等のSNSを利用した詐欺が流行したことは、読者の皆様の記憶にも新しいと思います。これは、知り合いのSNSアカウントを装って、WebマネーやiTunesカードなどのプリペイドカードを購入し、そのシリアル番号を教えるように要求するという手口です。このような電子マネーを使用した手口は、詐欺師側からすると検挙されるリスクが低く、なおかつ簡単に実行できるというメリットがあります。特に、今年に入ってからは、電子マネーを使用した手口は昨年度同期比218%増と急激に増加しています。
振り込め詐欺被害額は氷山の一角?
このように、直接会うことなく金銭などを騙し取る詐欺は、「特殊詐欺」と呼ばれます。近年深刻な被害をもたらしている「振り込め詐欺」もこの特殊詐欺の一種です。特殊詐欺の被害額は未だ留まるところを知りません。例えば、平成28年度の振り込め詐欺などの特殊詐欺被害額は407.7億円でした。
被害額が過去最悪であった平成26年度に比べればやや減少していますが、注意しなければならないのは、すべての詐欺被害が報告されているというわけではない点です。法務省が行った被害暗数調査によれば、振り込め詐欺被害者の35.3%しか被害を届け出ていないことがわかっています(届出なしが35.3%、無回答等が29.4%)。
つまり、この毎年発表される詐欺被害額は氷山の一角であり、それが見える年とよく見えない年がある、と考えたほうがよさそうです。このことから、詐欺被害の実態は私たちが思うよりもはるかに深刻で、まだまだ注意しなければならない犯罪であるといえます。
「自分は大丈夫だ」という思い込み
ではなぜ、こんなにもテレビや新聞で耳にするにもかかわらず、振り込め詐欺被害は減らないのでしょうか?新種の詐欺が次々に生み出されている?手口が巧妙になっている?様々な理由があると思いますが、すべての振り込め詐欺被害によく見られるのは、「自分は大丈夫」という思い込みでしょう。
このことはデータとしても示されています。例えば、警視庁が振り込め詐欺被害者318名を対象に行った調査では、全体の92%が「自分は大丈夫だと思っていた」または「考えたこともなかった」と回答しています。つまり、被害者の大半は、「自分にかぎっては被害に遭うまい」とたかをくくっていたことになります。
また、この傾向はまだ振り込め詐欺被害に遭っていない人々についても同様なようです。日本国民1,878人を対象に内閣府が行った調査でも、「自分は被害にあわないと思う」または「どちらかといえば自分は被害にあわないと思う」という回答が全体の80.7%を占めています。
これらの調査からわかるのは、どうやら人間の心理には、「自分は大丈夫」という普遍的な思い込みがあるということです。
このような、「自分は大丈夫」という思い込みは、心理学では「楽観バイアス(optimism bias)」と呼ばれます。「バイアス」を直訳すると「歪み」ですが、心理学では「思い込み」という意味で使われます。そうすると、楽観バイアスというのは、「楽観的に考えてしまう思い込み」を指すことになります。1980年にヴァインシュタインが行った、楽観バイアスの存在を証明した研究があります。
この研究では、良い出来事 (例:80歳を超えて生きる) と悪い出来事(例:心臓病になる)が、他人に比べて自分に将来どの程度起きそうかを評定させました。その結果、ポジティブな出来事は自分に起こると評定したのに対して、ネガティブな出来事は自分には起こらないと評定していました。つまり、自分の将来は、他者の将来に比べて良いと判断することが示されたのです。(もちろんそんなわけないですよね?「全員が周りの人より良い」というのは論理的にあり得ない状態です。)
楽観バイアスを念頭においた対策を
ではなぜ人間は、このような楽観バイアスを抱いてしまうのでしょうか。その理由の1つが精神的に健康でいるためです。
さて、ここで以下の2種類のタイプの人を想像してみてください。1人目は、何もかも楽観的にとらえてあっけらかんとしている人です。その人は仕事で失敗してしまっても、「今回は運が悪かっただけだから大丈夫!次失敗しなければいい」と前向きにとらえます。もう1人は、何もかもを悲観的にとらえてしまう人です。その人は一度仕事で失敗すれば落ち込み、それを数か月も引きずります。
読者の皆さまの目にはどちらのほうが、精神的に健康そうに見えるでしょうか?断然、前者のような人々ですよね。楽観的な人というのは、「成功したのは自分のおかげ、失敗したのは運が悪かった」と捉えがちなため、自尊心が傷つくことは少ないです。一方で、悲観的な人は、「成功したのは運がよかったから、失敗したのは自分のせい」と考えてしまい、自尊心をすり減らします。これを繰り返すと、軽い抑うつ状態になってしまうこともあります。つまり、楽観バイアスは、精神的健康を保つために非常に重要な役割を果たしており、そのために、人間一般に存在すると考えられています。
楽観バイアスの弊害
以上のように、「自分は大丈夫」だと思う楽観バイアスは基本的には悪者ではないのです。しかし、この楽観バイアスがいつもプラスの影響をもたらしてくれるとは限りません。その1つがまさに、詐欺のような犯罪場面なのです。「巷では詐欺に気を付けろと騒がしいけれど、自分は大丈夫」という楽観バイアスを抱え続けていることは、対策を怠ってしまう原因となりかねません。
そうならないためには、楽観バイアスが存在するということを知り、自らを守るという考えを持つことが必要になるといえます。もちろん楽観バイアスについて知ったからといって、楽観バイアスが消えるわけではありません。しかし、そういう人間の心理の傾向があると知ることで、対策をしてみようという気持ちにはなることができると思います。覚えておいていただきたいのは、
「周りの皆も自分と同じように、自分だけは大丈夫だと思っている」ということです。そして、騙されるのは、その中の誰かなのです。近年では、電子マネーを使用した特殊詐欺以外にも、インターネット・オークションを利用した詐欺、インターネット・バンキングのアカウントを乗っ取るフィッシング詐欺など、テクノロジーの進歩に付随して様々な手口が出現しています。
「自分は大丈夫」、そんな気持ちを捨て、「万が一」に備えて対策をしてみませんか?  
 
 

 

 
 
 

 

●あなたが間違いを犯す36の心理パターン

 

人は毎日、間違った選択をさせられている
人は、多くの情報が溢れる生活の中で、大小様々な選択を日々迫られています。忙しい現代人に「ぼう大な選択」を1つ1つ時間をかけ、論理的に考えているヒマはありません。
そのため人は、考える手間が無く、物事の判断を一瞬でおこなえる「無意識」を使って、これら「ぼう大な選択」を処理しています。この「無意識」を使った判断は、効率的な選択をおこなえる一方、不合理でメリットの無い選択をしてしまいます。不合理な選択のことを「社会心理学」で「認知バイアス」と言い、日々その心理パターンが解明されています。解明されている心理パターンは、人間なら誰にでも当てはまってしまう人間の特性です。しかし、この心理パターンをビジネスの世界に応用して、人を操り、利益を上げるケースが多くあります。テレビで流れるCMや町中に溢れる看板、コンビニで見かける商品パッケージ、電気屋の店員など、皆さんの目にとまる多くの場所で、この心理パターンが使われ、不合理な選択をさせられています。また、日常生活や人とのコミュニケーションの場面においても「無意識」を使った判断で、不合理な結果になってしまうこともあります。
わたし達が不合理な選択をしないため、「人が誤った選択をしてしまう心理パターン」を総まとめにしました。

 

基準にひっぱられる(アンカリング効果)
人は、最初に印象に残った数字やものが、その後の判断に影響を及ぼす。
例)交渉時に大きな金額をふっかけてから、徐々に安くする
例)1万円が赤線で消され、7000円となってる
判断の基準となっているものが何なのか考え、費用対効果を考える必要がある。

 

流行に流される(バンドワゴン効果)
人は、世の中で流行しているというだけで、その流行物への価値を高めてしまう。
例)行列のできている店は美味しい
例)当選確実と言われている政治家へ、さらに票が集まる
これは、「多くの人が価値を感じているものは、自分にとっても価値が高い」というステレオタイプ的な思考が影響している。

 

相対的に考える
人は、あらゆる選択を相対的な基準で考える傾向がある。これは、絶対的な基準で考えるよりも、相対的に考えたほうが脳に負担がかからず楽で簡単なためである。
例)価格.comで相場を調べてからじゃないと、その商品が高いか安いか分からない
例)高級店では、普段なら高いと思う物も、安く見えてしまう
例)自分の給料が1万円上がっても、同僚が3万円上がっていると喜べない
例)同じ量でも、大きな皿に「少量」より、小さな皿に「山盛り」を選ぶ
価格.comの例は、相対的な比較対象がなければ、物の価値を判断できない典型例。例えばテレビを買う場合、価格.comで値段の相場を調べ、その相場を元に、高い安いを判断する。しかし、相場を知らなければ、「現状と購入後の変化」すなわち買ったことによる効果と、物の値段から、費用対効果を求める必要があり、精神的に大きな負担となる。比較する対象があれば楽に結論を出せるため、相対的な基準で考えてしまう。給料の例では、絶対的な基準で考えると給料が「1万円増えて」喜ばしいが、相対的な基準で考えると同僚より「2万円減っている」ため喜べない。皿の例では、正確に量を比較するのは手間がかかるため、簡単に比較できる相対的な見た目で「山盛り」を選ぶ。相対的に考えることは、早く簡単に答えを選択することができるため、費用対効果にすぐれている。しかし、高級店の例のように、意図的に比較対象を設定されると、不合理な結論になることがあるため、注意する必要がある。

 

復讐は快楽のため
人は、他人に復讐するとき大きな快楽を感じる。
例)自分を苦しめる者へ復讐する
例)社会のルールを破った者へ罰を与える
人は、復讐の快楽を得るために、自分の利益を考えずに行動する。それどころか、「自分に大きな不利益になる」と知っていても、復讐で得られる快楽を追及する。また、実際に行動をしなくとも、復讐を想像することで快楽を得ることもできる。 復讐は、精神的な快楽を得られる反面、物理的メリットが乏しいことを自覚しなければいけない。

 

自分に都合のいい情報だけを集める(確証バイアス)
人は、無意識的に「自分に都合のいい情報」や「先入観を裏付ける情報」だけを集め、反する情報を探そうとしない傾向がある。例えば、対立する2つの意見を調査するとき、自分の支持する意見を肯定する情報を重んじて、反する情報は軽くみたり、黙殺したりする。
例)新車を選ぶとき、ほしいと思っている車の情報ばかり集めてしまう
例)友人と議論になった。その後、自分の主張を正当化する情報ばかり集めてしまう
自分に都合のいい情報だけを集めるため、最初にもっていた先入観や思いこみは、さらに強いものになり、客観性を欠いたり、正しい情報を見逃す危険がある。

 

悪いところばかり見てしまう(観察者バイアス)
人は、他人や物を評価する場合、自分が期待する行動ばかりに目がいき、それ以外の行動に注意が向かなくなる。例えば人は、他人の悪い面ばかり見る傾向があり、その反面、良い面には目がいかない。
例)政治家のちょっとした悪いうわさ(TV報道)が、選挙の投票に影響する
例)メリットだけを強調された広告を信じ、デメリットを考慮しない
この「観察者バイアス」に陥らないには、今見ているのが「良い面」なのか「悪い面」なのか、どちらか一方に偏っていないかを意識する必要がある。

 

自分の所属する集団を高く評価する(内集団バイアス)
人は、自分が所属する集団(内集団)を他の集団よりも高く評価する傾向がある。また、評価の高い集団に属する人を、高く評価してしまう。
例)日本人は、他のアジア人より優れている
例)あの人は東大卒だから、優秀だろう
この「内集団バイアス」は、自分を高く評価してほしいという欲求があるため、自分と同一視する集団の評価を高めることで、自分の評価が高くなったと思い込むためにおこる。また、自分が所属する集団には好意的な態度をとり、それ以外の集団には差別的な態度をとる傾向もある。日本代表戦(スポーツ)のあいまに流れるCMは、他に比べて莫大なCM放映料で取引されていますが、それはCMの効果が非常に高いためだと言われている。視聴者が日本を応援しているとき、自分が日本人という集団の一員であると強く感じ、その時に流れるCMも自分と同じグループの一員であると錯覚してしまう。そして、日本代表戦のCMで見た商品やサービスを無意識的に優遇してしまい、CMの効果が飛躍的に高くなる。

 

人が集まると手抜きする(社会的手抜き)
人は、大人数で仕事をする場合、手を抜く傾向がある。
例)大勢で重いものを持つ場合
これは、他人がいる状況では、自分に期待されている仕事量が曖昧になるため、責任感の低下や他人から評価される心配が薄れるために起こる。個人ごとの仕事量と評価基準を明確にすることが必要となる。

 

過去の投資によって将来の投資を見誤る(サンクコスト)
人は、過去の投資の大きさによって、将来の投資を見誤る傾向がある。
例)ある事業に1000億払い、あと200億で完成という途中「完成したとしても赤字を垂れ流す」と知っても続けてしまう
例)不味い高級お菓子だけど、高いお金を払ったのでイヤイヤ食べる
例)戦争で犠牲になった兵士や資金が膨大なため、引くことができない
過去の投資の大小に関わらず、「将来の利益」や「損失回避」に繋がるのであれば投資を中止しなければいけない。

 

法則を見つけようとする(アポフェニア)(少数の法則)
人は、規則性の無いランダムな事柄に規則性や関連性を見つけようとする傾向がある。
例)コインを投げ、5回連続「表」が出たので、次は「裏」が出ると予測する
例)大安の日は、競馬の予想がよくあたる
少ない事例から規則性や平均値を求めようとするため、このような誤りをしてしまう。事例の数が多くなれば、必ず平均値へ近づいていくことを意識する。

 

他人が自分と同じ考えだと思う(偽の合意効果)
人は、他人も自分と「同じ考え」や「同じ知識」を持っていると思う傾向がある。
例)自分が良いと思ったものは、みんなが良いと思う
例)専門用語や業界用語を使って説明しても、一般人に伝わらない
相手の視点で考えてみる必要がある。

 

型にはまっている(代表性バイアス)(ステレオタイプ)
人は、代表的な事例を基準にして物事を判断する傾向がある。
例)これは値段が高いので、良いものなんだろう
例)飛行機は危険だと思っているが、実際には自動車のほうが死亡率が高い
例)あの人はメガネでリュックを背負っているのでオタクだろう
これは、代表的な事例から直感的に判断することで、脳にかかる負担を抑えようとしている。瞬時に答えを導けるため必ずしも悪いことではないが、論理的に考えることなく誤ちを犯してしまう典型例でもある。

 

成功は自分の手柄、失敗は他人のせい(自己奉仕バイアス)
人は、成功の原因を自分にあると思い、失敗の原因を他人や環境、不運だったなど自分が制御できないことにあると考える傾向がある。
例)今回のプロジェクト成功は、自分の交渉力のおかげだ
例)今年、株で損したのは、運が悪かったからだ
結果ではなく、結果に至ったプロセスを評価することが重要となる。

 

自分のものに価値を感じる(保有効果)
人は、自分が所有するものに高い価値を感じ、手放したくないと思う。
例)物が捨てられない
例)「効果がなければ返品ください」は、一度所有すると手放さないことを見越している
これは、所有物を手放す効用より、失う痛みのほうが大きいと感じる「損失回避」が原因の1つにあげられる。この誤りに陥らないためには、客観的にもの価値を評価し、第三者ならどう評価を下すか考えてみる。

 

未来より「今」を優先する(現在志向バイアス)
人は、時間が経てば多くの利益、損失があると知っていても、目先の利益を選んでしまう。
例)タバコを吸う(今の快楽のために、将来の健康を犠牲にする)
例)アリとキリギリス
例)必要ないものでも衝動買いする
評価する対象が「今」か「未来」かで、対象は同じであっても着目する観点が異なるためにおこる。つまり、「未来」はより抽象的な点に着目して、「今」はより具体的な点に着目して判断してしまう。

 

損失の苦痛は大きい(損失回避)
人は、利益と損失が同額である場合、利益で受ける効用より、損失から受ける苦痛のほうがはるかに大きく感じる。
例)1万円落として、1万円貰ったとしても、落としたことを後悔する
また、利益が大きくなるほど効用は減っていき、損失が大きくなるほど苦痛の度合いは減っていく傾向がある。
例)年収が上がるほど、満足度は少なくなっていく

 

失敗は記憶に残る(ツァイガルニク効果)
人は、成功よりも失敗のほうが強く記憶される傾向がある。
例)高校受験には成功したが、大学受験には失敗した
例)過去の失敗経験がトラウマになる
これは、成功することで目標に向かっていたときの緊張感から開放されるが、失敗して止めてしまうと緊張感だけが残り続けてしまうためにおこる。失敗のまま終わらせず、失敗した原因を改善しある程度の結果を残すことで、トラウマを回避できる。

 

目立つ部分にしか目がいかない(ハロー効果)
人は、他人や物の価値を、一部の目立つ特徴によって決めてしまう。目立つ特徴が「良い面」の場合、別の項目も「良い」と思い、「悪い面」の場合、別の項目も「悪い」と思う。
例)Aさんは英語が得意なので、ヒューマンスキルも高いだろう
例)Bさんは人相が悪いので、犯罪者かもしれない
評価する材料が少なすぎては、誤った結論になる可能性が高くなるため、多くの材料から判断できるように心がける必要がある。

 

利益は確実に、損失は回避したい(プロスペクト理論)
人は、利益を得る場面では確実性を好み、損失する場面ではリスクを好む。
例)10%の確立で100,000円もらえるより、100%の確立で9,500円もらえることを好む
例)ギャンブルの負けを取り返すそうと、大博打にでる
利益場面では、利益が下がったとしても「利益を得る確立が高くなる」ことを好み、損失場面では、損失が大きくなったとしても「損失を出さない確立が高くなる」ことを好む。(利益場面=ローリスク・ローリターン、損失場面=ハイリスク・ハイリターン)

 

表現が変われば印象も変わる(フレーミング効果)
人は、意思決定するとき、説明や質問のされ方によって、選択の結果が変わってしまう。
例)脂肪分5%ヨーグルトより、無脂肪分95%のヨーグルトのほうがよく売れる。
例)生存率95%より、死亡率5%と説明された病気のほうを恐れる
これは、意味が同じであっても、説明の表現や状況の違いによって、心理的な解釈が違ってくるためにおこる。数字のトリックに惑わされず、最終的な結果を評価しなければいけない。

 

終わってからなら、何とでも言える(後知恵バイアス)
人は、物事の結果を知ってから、それが予測可能だったと考える傾向がある。
例)最初からそうなると思っていた
例)昨日やっておけばよかった
例)サッカーの試合で負けた。FWの得点力が足りなかったせいだ
間違った選択を後悔するより、結果にいたったプロセス(思考や判断基準、行動)を評価し、反省しなければいけない。

 

自信過剰
人は、自分の能力や知識を過信する傾向があります。これは、物事を自分がコントロール可能だと思いこむことでリスクを過小評価し、主観的に自分を高く評価するためにおこる。
例)俺なら独立してもやっていける
客観的な視点から、自分の能力や環境を評価することが重要となる。

 

環境や状況を評価しない(根本的な帰属の誤り)
人は、他人の行動を評価するとき、その人の性格や能力などに注目し、その時の環境や状況を軽視する傾向がある。
例)納期に間に合わなかった。能力が無いせいだ(複数の仕事を抱えていたのに)
例)日本代表がサッカーの試合に負けた。FWに得点力が無いせいだ(ケガをしていたのに)
これは、行動の結果はその人そのものにあると考え、環境や状況といった気がつきにくい面を見落としているためである。この誤りに陥らないためには、同じ状況で自分や別の人だったら、どうするか考える。

 

終わりよければ全てよし(ピークエンドの法則)
人は、ある経験の記憶を、快苦が強烈だった「ピーク時」と「終了時」によって決めてしまう。
例)辛い受験勉強よりも、合格した喜びを覚えている
例)過去の体験を話すとき「良かったこと」または「悪かったこと」を全面に押しだして話をする
例)前の会社といえば、遅くまで残業したことや上司に怒られたことを思い出す
経験の記憶が、主観によって変えられ、その経験の時間的な長さは影響しない特徴がある。また、印象にある部分だけを過剰に強調して記憶してしまうことから、「過誤記憶」とも呼ばれる。

 

身近な人を好きになる(単純接触効果)
人は、何度も見たり聞いたり、繰り返し接するとその人物や物に好意度や印象が高まる。
例)テレビでよく聞く音楽を好きになる
例)文化祭の準備を一緒におこなった人達とより親密になる
この効果は、不快な環境よりも、快適な環境で接触が起こるときに高まりやすい。また、お互いに協力して作業をおこない、それが成功した場合も同様に高まりやすい。

 

占いを信じる(バーナム効果)
人は、誰にでもあてはまる一般的なことを、自分にだけ当てはまると錯覚してしまう。
例)占いや血液型診断は、人間がもつ「当たり前の特徴」を特定の人に当てはめ信じさせる

 

希望にすがる(希望的観測)
人は、論理的な証拠や合理性ではなく、「そうあって欲しい」とか「そうだったらいいな」という自分の希望に基づいて判断を行う。
例)民主党のマニフェストを「そうだったらいいな」と評価し、実現性を考えずに投票する
例)「買った家の価値が将来上がる」と夢を見させて破綻したサブプライムローン
希望は、人の精神を安定させる効果的なクスリと言える。しかし、損益が大きい場面では「希望」だけを見るのではなく、悲観的な面(リスク)も考慮しなければ、大きな損失をまねいてしまう。

 

受けた好意は返したくなる(返報性)
人は、他人から受けた好意を、お返したいという欲求がある。
例)スーパーでお姉さんから試食をもらうと、買わなければと思う
例)ヤマダ電機で店員さんから丁寧に説明を受けると、断りにくい
人は、「好意には好意で返す」義務感が芽生え、それを果たせない場合、罪悪感を感じてしまう。価値の無い好意に対しても、返したいという欲求が働き、それ以上の価値を返してしまう。(詐欺のテクニックでもっとも利用されている)

 

立場を変えない(コミットメントと一貫性)
人は、立場を明確にすると、その立場を強固に一貫して行動しようとする傾向がある。
例)「買う」と言った後に不利な条件を提示されても、買ってしまう
例)建設反対だった空港が完成した。飛行機は便利だが、反対していた立場上、乗れない
例)会議中、自分の意見に賛同する人がいないけど、引くに引けない
一貫性が自分の利益になることもあるため、その経験から無意識的に一貫性を保とうとする。
また、立場を変えることで、他人の期待を裏切り、自分の価値が下がることを恐れるという心理も働く。
得ている情報や状況が変わったにもかかわらず、一貫性を保つ傾向があるため注意する。例えば、セールスマンに「安くします」と言われ、「じゃあ買います」と言った後に「実はこの機能が不足しているんです」と打ち明けられても、そのまま買ってしまうなど。(特典除去法)

 

他人の考えに同調する(社会的証明)
人は、他人の考えや思想に影響を受け、自分の判断や行動を決定する傾向がある。
例)行列ができているお店は、良い店だと思う
例)クチコミやランキング、シェアNo1に影響されやすい
例)道が分からないとき、取りあえず大勢の人が進んでいる方向へ行く
自分の判断や行動に確信が持てないときに、他人の行動に影響を受けやすい。特に「自分と似ている他人」からもっとも影響を受ける。

 

好意
人は、自分が好意を持つ人からの頼みごとに応じやすい傾向がある。
例)ドラマの主役をドラマ中のCMに出すと、主役に好意を持つ人が見るため効果的
人は、見え透いていても、お世辞を言ってくれる人に好感を持つ。セールスマンがお世辞上手なのは、好意が持つ販売力を知っているため。

 

権威に従う
人は、科学者や専門家など、権威あるものからの情報を信じやすく、その要請にも影響されやすい。
例)東大教授が言うなら、間違いない
人は幼い頃から、親や教師といった権威者に、服従するよう教育されている。そして、従うことが自分で考える必要もなく楽で、自分より権力者の知恵のほうが効果的だと学習し、権力者へ無意識的に服従してしまう。権力者に「責任はとる」と言われれば、自分の意思に反する行為でも「自分のせいではない」と正当化し、行ってしまう。

 

希少性
人は、入手困難なものに高い価値を感じる。手に入りにくい商品、チャンス、情報を価値あるものだと思いこむ。これは、自由な選択が制限された現状を、なんとか自由を回復させたいという欲求によって、その自由を以前より欲するためにおこる。

 

禁止されているものに魅力を感じる
人は、禁止や制限されているものに、高い価値を感じる。これは、「希少性」や「自分で自由に選びたい欲求」「自分に都合のいい情報を集める」といった心理要素の複合効果によっておこる。また、公になっていない、制限された情報に説得力を感じやすく、信じこみやすい。これは、制限された情報に希少性を感じ、自分だけが知っている特別な情報だと考えるためである。

 

自由に選びたい(心理的リアクタンス)
人は、自分で自由に選択できる環境が脅かされる場合、反発して自由を回復したいと考える。例えば、人が説得を受けるとき、説得されると自分の自由が無くなると考え、説得とは逆の思いを強めてしまう。(ブーメラン効果)

 

自分を正当化する
人は、事実と自分の考えに「差」があると不快感を感じる。(認知的不協和) その不快感を解消するため、自分の考えや行動を以下4つのいずれかで変えようとする。
(1).事実を変える(事実が自分の考えになるよう努力する)
(2).考えを変える(事実を受けとめ、考えを改める)
(3).事実を軽視する(たいした問題じゃないから、まあいいか)
(4).新しい考えを追加する(あの人のせいだ!時期が悪かった)
行動したり、自分の非を認める(1)や(2)より、頭の中から消したり、他人や環境のせいにする(3)や(4)は心理的な負担が少ないため、選らばれやすい。

 

いかがでしたでしょうか。「誤った選択をさせられている」という心理パターンが、皆さんにも少なからずあったのではないでしょうか。これらパターンを知っておくことで、不合理な選択をしてしまう場面になったとき、冷静に自分の利益を考えることができるようになります。また、これらの心理パターンを応用して、人を操る立場になることもできます。  
 
 

 

●諸話

 

●西日本豪雨 自分だけは大丈夫…避難行動の遅れ背景に「正常性バイアス」  
西日本豪雨では、気象庁が事前に記者会見するなどして警戒を繰り返し呼びかけていたが、数十年に1度の大雨が予想される「大雨特別警報」の発令後も、ただちに避難しなかった人が多かった。人はなぜ逃げ遅れるのか。専門家からは、人間の心理的特性である「正常性バイアス」が働いたことで行動が遅れた可能性を指摘する声が上がっている。
気象庁は5日午後の記者会見で「記録的な大雨になる恐れがある」と、土砂災害や河川の氾濫に厳重な警戒を呼びかけた。翌6日午後7時40分ごろには広島、岡山、鳥取の3県に大雨特別警報が発令され、6日深夜〜7日未明には各地で冠水や土砂崩れが相次いだ。
だが、6日午後8時ごろ全域に避難指示が出された広島市安佐北区では、7日午前0時時点で避難所に身を寄せたのは市が把握している限りで874世帯1992人と、全体の5%強にとどまった。広島県呉市でも6日午後9時過ぎに市内全域で避難指示が出されたが、指定の避難所に来た住民は7日午前0時時点で1193人(世帯数不明)と、ごくわずかだった。
浸水で多数の犠牲者が出た岡山県倉敷市真備町では死者の約8割にあたる約40人が屋内で発見されており、逃げ遅れて溺死した人も多かったとみられる。
「被害に巻き込まれることが予想される事態に直面しても、人は日常生活の延長上と認識してしまいがち。都合の悪い情報を見過ごすなど、『自分だけは大丈夫』と思い込んでしまう傾向がある」
災害時の心理に詳しい東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は、避難遅れの一因に、そういった「正常性バイアス」という人間の心理的特性があった可能性を指摘する。
実際、真備町の避難所で避難生活を送る85歳の女性は、「避難勧告などが出ていたのはテレビを見て知っていたが、大丈夫だろうと思っていた」と振り返る。
正常性バイアスが原因で被害が拡大したとみられる事例は、過去にも起きている。広瀬名誉教授によると、2003年2月に韓国・大邱(テグ)で192人が死亡した地下鉄放火事件では、車両内に煙が充満していたにもかかわらず、その場にとどまり、犠牲になった乗客が多かったとされる。
国や自治体による警戒情報を、効果的な避難行動に結びつけるためにはどうすればいいのか。防災システム研究所の山村武彦所長は「情報伝達の仕方で人の行動は変えられる」と主張する。山村所長は「(自治体が出す)避難勧告や避難指示などの行政用語では事態の切迫性が伝わらない。『避難命令』などの直接的な表現や、『すぐに逃げてください』といった子供や高齢者でも分かる表現に改めるべきだ」とした上で、「災害時には『自分は被害に遭わない』という根拠のない楽観は禁物。堤防を高くするなどハード面の対策だけでなく、危機に敏感な『心の堤防』をあげる努力が行政・住民側双方に欠かせない」と話した。

正常性バイアス / 偏見や思い込み(バイアス)によって思考や判断、行動に影響を及ぼす心の仕組み。異常事態に直面しても「まだ正常の範囲」と捉えることで、小さな出来事に過剰反応せずに心の安定を図る作用があるが、災害時などでは避難のタイミングを失う危険性が指摘されている。 

 

●巧妙なフィッシング詐欺 「自分だけは大丈夫」に気を付けて 
パスワードを変更しないだけで利用制限?
これは個人メールをチェックしていた時の出来事です。様々なお知らせの中に「【重要】パスワード変更に関するお願い」という、実在のカード会社を名乗るメールが届いていました。「パスワードが長期間変更されていません。※※のパスワードは※※へのログインのみならず、インターネットショッピングの際に、ご本人を確認する重要な情報ですので、定期的なご変更をお願いいたします。(※は伏字にしています)」
ここまではよくある内容です。いつもなら読み飛ばすのですが、続けてこんなことが書いてありました。「つきましては、以下へアクセスの上、カードのご利用確認にご協力をお願い致します。ご回答をいただけない場合、カードのご利用制限が継続されることもございますので、予めご了承下さい。」え、利用制限? 聞きなれない言葉に一瞬慌てました。そして、「次へ進む」とあるリンクをクリックしそうになったのです。
でも、ここでハッとしました。「なんだかおかしい」と気づいたのは、「カードのご利用制限が継続される」という言葉です。カード会社は、いかにも不審な取引が行われた時にはそういう措置を取ることがあります。たとえば短時間のうちに続けて高額な取引があったとか、東京と大阪のようにまったく別の場所で続けて決済が行われた場合などには、不正使用ではないかと疑うからです。でも、パスワードを変更しないだけで利用制限とはおかしいですよね。そこでようやく、ひょっとしてフィッシング詐欺メールではないかと思い当たりました。
「取引を制限する」などの脅かしワードは詐欺メールの可能性大
フィッシングとは、実在するカード会社や銀行、通販サイトなどを騙ってメールを送り、カード番号やID、パスワードを入力させて盗み取る詐欺の手口です。メールの件名には【重要】【至急ご確認ください】など、緊急を装う言葉が使われており、「異常なログインがあったので、至急パスワードを変更してください」「不正を疑う取引がありましたので、アカウントの使用を制限します。再開するには画面に従って手続をしてください」など、受け取った人を慌てさせるような文章が続きます。そこでうっかり、メール内のリンクをクリックしてしまうと偽サイトが開き、IDやログインパスワード、カード番号などを入力させようとするのです。
まさにこうしたフィッシング詐欺についての取材をしたばかりだったのに、最初はすっかり本物だと思っていました。送られてきたアドレスが本物のカード会社とまったく同じだったこと、そして、メールのタイトルがよくある「パスワード変更に関するお願い」だったことが油断を招いたのです。自分でも「慌てさせる文言が出てきたら疑いましょう」という記事を書いてきたはずなのに、「カードの利用制限」という文章を信じそうになってしまうとは。
自分だけは騙されない、と自信を持っている人ほど危険だとはよく言ったものです。もし本当に不正使用などが心配な時は、メール内のリンクをクリックするのではなく、銀行やカード会社の公式サイトからアクセスして確認するようにしましょう。結局、このメールも偽物のフィッシングメールだと認定されました。 

 

●なぜ昭和おじさんたちは、緊急事態宣言でも"不要不急の出社"をしてしまうのか 
心理学的には珍しいことではない
緊急事態宣言が出されているのですから、「不要不急の出社は避ける」というのが、ごく普通の判断のように思えます。けれども、なぜか律儀に出社するおじさんは後を絶ちません。いや、おじさんだけでなく、だれでもそういうところがあるのです。これはいったいどうしてなのでしょう。
実のところ、心理学的にいうと、これは別に珍しいことでも何でもありません。自然災害のときを考えてみるとわかりやすいですね。大雨警報が出されようが、避難勧告が出されようが、人間というのは、「まあ、自分だけは大丈夫だろう」「今回も、何とかなるだろう」と甘い判断をするものだからです。
人間は、リスクに関して非常に鈍感なところがあります。ちょっとしたことに対して、いちいち過敏に反応し、怯えていると神経がすり減ってしまいますから、人間の心は鈍感であるように作られているのです。ですから、だれでもリスクの判断は甘いのです。自然災害時に逃げ遅れるのもそのためですし、緊急事態宣言が出されようが、普段と変わらずに出社してしまうのも、そのためです。
私たちは、自分に都合のいい考えを好むものです。新型コロナウイルスへの感染者がいくら増えていても、「それでも自分は感染しない」と考えます。自分だけは特別だと、非現実的な楽観性を持っているのが普通です。
「自分は大丈夫現象」を確認した心理学の研究
オーストラリアにあるディーキン大学の心理学者ロン・ゴールドは、「他の人は感染するかもしれないけど、自分は大丈夫だよ」と判断してしまう傾向が私たちにはあることを確認しています。
例えば、
「これから6年以内にあなたが解雇される見込みは?」
「6年以内に平均的な人が解雇される見込みは?」
「これから5年以内にあなたが麻薬常習者になる見込みは?」
「5年以内に平均的な人が麻薬常習者になる見込みは?」
「これから4年以内にあなたがエイズウィルスに感染する見込みは?」
「平均的な人が感染する見込みは?」
などと質問すると、すべての場合において、「平均的な人はそうなるかもしれないけど、自分は大丈夫」という非常に非現実的な判断をしていることが明らかになりました。
根拠など何もなくとも、私たちは漠然と「自分は平気」だと思い込みやすいのです。
男性のほうがリスクを過小評価しがち
また基本的に男性のほうが「リスクを小さく」判断することもわかっています。そのため、男性のほうがさまざまな依存症になりやすいのです。「自分だけはギャンブル中毒にならない」「アルコール中毒にならない」と思い込んでいるため、予防策をとらないからです。
もちろん、「なるべく外出するのをよそう」と考える人もいます。そういう人は、いろいろなメディアを使って、できるだけたくさんの情報を集めようとしている人です。たくさんのニュースに接することによって危機意識を高めているので、「自分だけは例外ともいっていられないな」と判断し、外出を控えるのですね。
あまりニュースを見ていない人がふらふらと街に出かけてしまうのは、危機意識がないため。普段と変わりない日常が続いていると感じているので、まさか自分が感染するとは思いもよらないのでしょう。
ですから、おじさんに出社を思いとどまらせるには、とにかくコロナウイルスが危険であるという情報を認識してもらうしかありません。危険であるという情報に接すれば接するほど、「なるほど、これは私もヤバいかもしれない……」と考えてくれるはずです。
責任感が強すぎるおじさんたち
もうひとつ、おじさんが不要不急の出社をしてしまうのは、単純に「責任感が強いから」という理由も考えられます。
日本人ビジネスマンは、とにかく責任感が強いので、仕事を簡単に放り出せないのです。かつて中東の情勢が緊迫し、すわ戦争かということで欧米のビジネスマンはさっさと逃げ出してしまったのに、日本人のビジネスマンだけは現地で普段通りに仕事をしていた、ということがありました。戦争になろうが何が起きようが、仕事を放りだすわけにはいかない。責任感の強いおじさんは、そういう思考をとるわけです。
お医者さんからうつ病だと診断されているのに、それでも出社しようとするおじさんも、やはり責任感が強いのです。自分の仕事を放りだして、自宅で休むことなどできないのです。そういうおじさんは、世の中がコロナウィルスの拡大で騒然としていようが、自分の仕事はやらなければならない、と考えるでしょう。なにしろ、戦争が起きそうなときでさえ外国から逃げ出さなかったくらいですから、コロナウイルス程度で怯えるわけがないのです。
「こんな時こそ出社せねば」と考えてしまう
責任感の強いおじさんは、「仕事を休む」ことが、「仕事をサボる」ように感じてしまいます。コロナに感染しないためには出社しないのが一番だとわかってはいるものの、そうはいっても出社しないと仕事をサボっているように感じて、罪悪感すら覚えてしまうのです。そんな罪悪感を覚えるくらいなら、いっそのこと出社してしまったほうが気がラク、ということもあるでしょう。特に、年配者になるほどそういう思考をとりやすいと考えられます。
若い人なら、「会社のために自分の生命を賭けるなんて、まっぴらごめん」と考えるでしょうから、「出社しない」という判断も簡単にできます。ムリに出社してコロナに感染するなんて、とんでもないと考えるはずです。出社しないことのハードルがそもそも低いのです。
その点、年配者はそういう判断はしません。コロナの影響で会社の業績が悪化していたら、なおさら忠誠心も、責任感も強いおじさんは、「こんなときだからこそ、出社しなければ!」と考えるのです。
年配のおじさんにとって会社と自分は一蓮托生ですから、沈みかかる船だからといって逃げ出すよりは、一緒に海に沈むことを選択しがちです。そんなメンタリティがあることもあって、「不要不急の出社」をするのだと心理学的には分析できます。
こうしたタイプのおじさんにはリスク情報を伝えるとともに、他社の対応事例など客観的な情報を伝えていくことが大切です。 

 

●「自分だけは危険じゃない」と思いこむ? 生き延びるための5つの「災害心理」 
「私は東日本大震災で、友人を1人なくしました。直後はまわりに言うこともできず、悲しみをどこにぶつけていいのかもわからず、悶々とした日々を過ごしていました。(中略)そんな自分が、大きな転機を経て防災に真正面から向き合うことになりました。そうすると備えることがいかに重要なのか、実感するようになりました。防災をするかしないかで、助かる確率は大きく変わります。」
こう記しているのは、『いつ大災害が起きても家族で生き延びる』(小川光一著)の著者。そんな経験を経て防災士の資格を取得し、47都道府県で約180回におよぶ防災講演を行ってきたのだとか。さらに『あの町に桜が咲けば』という防災ドキュメンタリー映画を製作し、全国で上映を続けてきたのだそうです。
ところがそんななかで持ち上がったのが、「自分の街は大丈夫」問題。「私の住んでいる地域は災害が少ない場所なので......」と繰り返す人がとても多かったというのです。
「たしかに、不安を抱えながら生きていくのは難しいことなので、仕方ないことなのかもしれません。しかし、地震を引き起こす活断層は日本の下に約2000層以上あります。台風は年平均26個来ますし、活火山は110山あります。日本全国、いつどこで災害が起きてもおかしくありません。いざ、被災してしまってから、「まさか自分が被災するとは思ってなかった」なんて、誰も言えない国に住んでいるのです。」
そこで本書では、「災害が起きる前にできること」と「災害が起きたときにするべきこと」に分け、"するべきこと"をまとめているわけです。きょうはそのなかから、第1章「災害心理を知ろう」に焦点を当ててみましょう。災害が起きた瞬間、「災害心理を知っているかどうか」が生死を分けるというのです。
災害心理1. 正常性バイアス「大丈夫。自分は危険じゃない」
災害心理の代表格が「正常性バイアス」。災害や事件に巻き込まれたとき、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人間の特性。多くの災害で、この正常性バイアスが大きく影響を及ぼしているのだそうです。
人間は、不安を感じながら生きていくことが難しい生き物。あれこれ心配していたら、精神的に病んでしまうので、なにかにつけて自分を安心させながら生活を送っているわけです。しかし、それ自体は悪いことではないにしても、正常性バイアスには問題もあることを著者は指摘しています。
緊急時でも、ある程度の限界まで「正常の範囲」として処理しがちだというのです。つまり、危険な目に遭っているにもかかわらず、「大丈夫、これはいつもどおり。自分は危険じゃない」と思ってしまいやすいということ。
たとえば避難勧告が出ても、「本当に命が危ない状況に直面して初めて逃げる」というようなこと。「災害の危険性」という都合の悪い情報を無視し、ポジティブな理由を並べて、正常化を図ってしまうわけです。だからこそ正常性バイアスが自分たちの心のなかに強く根づいていることをしっかり認識し、災害を甘く見るようなことがないようにする必要があるということ。
災害心理2. 凍りつき病「えっ...どうしよう...」
心理学者ジョン・リーチ氏の研究結果によると、災害時の人の行動は次の3つに大きく分かれるのだといいます。
   1. 落ち着いて行動する=およそ10〜15%
   2. 我を失って泣き叫ぶ=およそ15%
   3. 呆然、当惑、フリーズする=およそ70〜75%
大多数の人がショック状態に陥り、なにもできなくなってしまうというのです。予想していなかった急激な展開に脳がついていけず、呆然としてしまう「凍りつき病」といわれる状態。凍りつく時間は人それぞれ長短があるそうですが、その災害が鬼気迫るものであればあるほど、一瞬の凍りつきでも命取りになってしまうもの。
そして凍りつき病の原因のひとつが、正常性バイアス。自分の置かれている現実を受け入れることができず、都合の悪い状況を無視しようとして、固まってしまうわけです。また、もうひとつの原因として、「目の前の危機的状況に対し、どう動いたらいいのかわからない」ということもあげられるといいます。
防災の知識がなければ当然でもありますが、「こういう場合はまず頭を守る」「こういった場合はすぐ外に出る」など、シチュエーションごとの知恵を持っておくだけで、安全な決断や行動がとれるようになっていくそうです。また、凍りついた状態に陥っている人が近くにいた場合、体を揺すったり、大きな声で話しかけたりして、そのフリーズを解いてあげることも大切。
災害心理3. 戻ってしまう病「貴重品をいまのうちに取りに戻ろう」
これは、貴重品や忘れ物を取りに、危険な場所へつい戻ってしまう心理。2011年の東日本大震災がそうであったように、津波が到達する危険性がある場所に戻るとしたら、致命的な行動となってしまうといいます。
人間は誰でも欲が出るものなので、つい貴重品を取りに行ってしまうわけです。しかし命より大切な貴重品はないので、それ以外の欲は捨てる覚悟を日ごろから持っておくべき。危険な場所へ大事なものを取りに行こうとしている自分に気づいたときは、すぐ安全な場所に戻り、危険な状態が回避されるまで待機することが大事。もちろん、周囲の人がそういった行動を取ろうとしている場合は、どんな事情があろうと全力で止めることが必要だそうです。
災害心理4. 多数派同調バイアス「みんなでいるから大丈夫」
人間は集団で生活し、他人と協調することによって文明を発展させてきました。しかしその一方で、まわりの人と同調しすぎると、災害時に危険な状況に追い込まれてしまうのだとか。心理学的に「多数派同調バイアス」といい、自分以外に大勢の人がいるときに、1人なら行動できたはずのことができなくなる心理状態。
災害時に1人でいた場合、自分の判断で行動を起こすことになります。しかし周囲に人がいればいるほど、「みんなでいるから大丈夫」という安心感が大きくなり、避難行動などが遅れる傾向にあるというのです。また、「自分だけ騒いで逃げるのは恥ずかしい」という気持ちから、お互い無意識のうちに牽制しあってしまい、結果として逃げるタイミングを失うこともあるそうです。いわゆる「空気を読む」という状態。
「空気を読む」のが得意な私たちは、常に他人の目を機にするあまり、ときに自分の意思決定さえもそれに左右されてしまうもの。しかし、「みんながいるから大丈夫」なのではなく、「みんながいるから危険な状況に陥ることもある」と自覚しながら生きていかなければならないと著者は主張します。
災害心理5. あきらめる病「もういいよ。死ぬときは死ぬんだ」
人はいろんな理由をつけて、災害について考えることを避けようとするもの。そのなかでも少しタイプが異なり、年配の方に多いのが「あきらめる」という考え方なのだそうです。しっかり備えれば、そのぶん助かる見込みが増えるのが防災というもの。にもかかわらず、見込みがないと思って断念してしまう人が多いというのです。
このことについて著者は、あきらめるのはその人の勝手であり、自分がとやかくいう筋合いはないと認めています。ただしそこに、「あきらめたその先」だけは想像して欲しいとつけ加えてもいます。
その人があきらめると、近所の人が助けに来るはず。つまり、確実にまわりの人間が巻き込まれるということ。人間は危機的状況に直面すると、「自分の命を投げ打ってでも他者を助けたい」という愛他行動に出やすいといわれているそうです。それが家族や友人、愛着ある地域の住民などであれば、なおさらのこと。それに対して、あきらめている人の意思が硬かった場合、その場で押し問答がはじまり、助けに来た人と一緒に避難の機会を逃してしまうことになるというわけです。
こうした災害心理を知ったうえで、"どう考え、どう行動すべきか"を考える。それこそが、災害への備えとして最初にすべきことなのでしょう。 

 

●自分らしさの見つけ方 
21世紀を生きる女性のためのレッスンクラブSHElikesでのご登壇に先立ち、今回インタビューさせて頂いたのは、まさに現代女性のロールモデルそのものと言われている、猪熊真理子さん。彼女の経歴は下記のように、一見ものすごくきらびやかで、住む世界が違う人のように感じてしまいます。大学時代は心理学を学びつつ、読者モデルやボランティアなどと幅広く活動し、新卒でリクルートに入社。ゼクシィやホットペッパービューティーで活躍する傍ら、「女性が豊かに自由に生きていくこと」をコンセプトに、講演やイベント、セミナーなど延べ4千人を超える女性支援の活動を行ってきました。そして2014年にリクルートを退職し、会社を設立。女性活躍推進や、女性向け商品のマーケティングなどを行いつつ、書籍の出版など現在も活躍の幅を広げ続けています。しかしそんな彼女の人生観や、これまでの選択を聞いてみると、誰もが彼女のように”自分にとっての幸せを追求し、自分らしく活躍する生き方”を実現できると痛感しました。ぜひ猪熊さんの言葉に触れて、自分自身の可能性を最大限広げる生き方のエッセンスを少しでも感じて、一歩踏み出す勇気になれば幸いです。
⒈ 心に従い続けたことで、たくさん失敗もした。でも全部大丈夫だった。いつだって、等身大の自分でできる最大限を尽くすだけ。
○ 女性が自由に生きるためのサポートをずっと続けていらっしゃる猪熊さんですが、まずは現在のお仕事に至るまでの背景を教えてください。
新卒でまずはリクルートに入社しました。入社する前から「女性たちのリアルな代弁者でありたい」たいと考えていたので、営業よりも編集や企画に配属して欲しいと内定者の時に伝えていました。
実際、入ったばかりの営業研修では私はほとんど営業のできない新人でしたし(笑)ちなみに今の会社でも一切営業はしていなくて、紹介かインバウンドだけでやっています。営業は本当に好きじゃないからできないんですよね。
研修が終わると、ゼクシィ編集部に配属され、そこで花嫁さんのインサイトに寄り添う記事作りをしたり、入社2年目からは企画職になってすごく楽しかったのですが、より日常生活に寄り添った女性のインサイトに関わりたいと考えるようになって、ホットペッパービューティーを運営している美容事業部に異動しました。
○ リクルートでも女性のインサイトに関わり続けてきたんですね。
はい。カスタマーの通訳として、リアルな女性たちの代弁者である事を常に意識していました。
また一方で本業の傍ら、「女性が豊かに自由に生きていくためのサポート」も、少しずつ講演やイベントなどを通して行っていたので、女性活躍が進む時代の大きな変化の中で、そろそろ本業としてやっていきたいと思った時に退職を決意しました。
もちろん不安もありましたが、もし失敗したら周りの人に助けてもらえるんではないかと考えていたので、そこまで深刻に悩むことはありませんでした。
○ 7年のキャリアから飛び出す勇気がすごいですね。そこでつい踏みとどまって安定を求めてしまう人も多いと思いますが、一歩踏み出す勇気はどこから湧いてくるのですか?
確かに安定を失うのはこわいですが、人生はいつでもやり直せます。もし失敗しても、挫折しても、壊れてしまっても絶対に修正できると思った方が良いです。
もっとみなさん、社会や周りの人たちのことを信頼してもいいのではないでしょうか。
もし何かに挑戦したけれど失敗や挫折をしてしまって、ふっと倒れそうになったとしても、その時に自分の後ろで支えてくれる人を信頼して倒れられるか、ということが大切なんだと思います。
全く後ろに誰もいない状態で倒れるのは確かに危ないけれど、もしそういう存在があって、周りの人や社会を信頼していれば、挑戦する気持ちを持つことに繋がるんです。
⒉ 社会や周りの人を信頼していつでも倒れられる環境をつくるには、まず等身大の自分でできる最大限のギブを尽くして、信頼残高をためること。
○ 他人や社会を信頼する、というのは意外と難しいことに感じます。猪熊さんはどのようにして、今の信頼できる環境をつくってきたのですか。
まず毎日の生活の中で、いつも等身大の自分のままで、相手の役に立てること(ギブ)をできるだけして、「信頼残高」をためることがポイントだと思います。
それも見返りを求める為ではなく、シンプルに人の役に立ちたいと思って行動することが結果的に「信頼残高」を貯めることに繋がっていると思います。
信頼って貯金みたいに積み重ねて残高を増やすことができるものだと思っていて。例えばちゃんとお金を貯めていれば万が一お金を失っても、貯金で生きていける。
それと同じで、失敗して、もし信頼を失うような出来事がおこったとしても、過去にきちんと「信頼残高」を高められていれば、その信頼関係で人に助けてもらえたりチャンスを貰えたりする。
もちろん見返りを求める為に貯めるのではなく、まず純粋な気持ちで人の役に立ちたいって思って実行していくことが大切で、それが結果的に信頼関係を作ることに繋がっていると思います。
○ とても素敵な考え方ですね。でも相手に返せるものが何もないと感じることはありませんか?
よく「自分には何の価値も強みもない」と思う人がいますが、そうではありません。また、相手の立場や地位も全く関係ありません。
一人の人間対人間として、必ず何かしら返せるものはあると思います。例えば大学生の時、IT会社の経営者と話す機会があった時には、「最近の女子大生はどのようなことを考えているか」について話したこともありました。
立場が違っても、等身大の自分が持っているもの、知っていることの中で、目の前にいる人に今の自分ができることが何かないかな、とギブの精神を持って接していくことが大切なことだと思います。
そしてその行動の積み重ねが、”自分の強み”や”自分らしさ”に気づくきっかけにもなります。
○ 相手の立場や今の自分のスキルに関係なく、目の前の相手に返せるものを探し続ける姿勢が大切なんですね。猪熊さんが考える、自分らしさはどのようなものなんですか?
自分らしさって、自分が何に対して幸せを感じるのか、どうしたら心が満たされるのかを理解することだと思います。
それらの問いって自分の外には答えが無いと思っていて、本来、自分自身の中から湧き上がってくるものだと考えているんですね。
でもそう言っている私も、昔は自分の内側に聞いても、どうすれば自分が幸せなのかとか、自分の理想やなりたい自分が全然わからなかったんです。
○ 意外です。猪熊さんにもそんな時期があったのですね。
当たり前ですよ〜。お坊さんじゃないですから〜。(笑)
そういう答えって、自分に尋ねてみてその場でスッと返ってくるものじゃないんです。
だから大学生の時、やりたいことを見つけるために、とりあえず興味持ったものは何でもやってみようという信条で興味アンテナ高く張って、いろんなことに挑戦してみました。
読者モデルや、心理学の勉強や、会いたいと思う人には直接会いに行ったりしていました。その人がやっているイベントやセミナーに参加したり、友達に紹介してもらったりして。いろんなことを経験する中で自分に合う合わないが少しずつわかってきたんです。
○ そんな猪熊さんにとっての一番の幸せはなんですか?
私の幸せは、家族のような自分にとって大切な人を大切にすることですね。
私にとっての家族というのは、血のつながっている家族だけではなく、親友や仕事仲間など自分を受け入れてくれる大切な人たちのことで、言わば心の安全基地のことです。
そんな場所がないと人って自由になれないと思っていて、自分に何かあっても帰ってきて受け入れてくれる場所があること、それがあるから自由に自分らしくいられるんだと思います。
⒊ 失敗が許される”自分の人生”や、”自分の事業”の判断は、直感を一番大切に。
○ 様々な実績や責任を背負っていらっしゃる猪熊さんですが、お話を聞いていると、何にも縛られず、本当にご自身にとっての幸せな生き方を、等身大の形で実現していらっしゃるように感じます。そんな猪熊さんは悩んだり、壁にぶつかった時はどのように乗り越えていらっしゃるんですか?
この前悩んだ時は、伊勢神宮に一人で行って心の声を聞く時間を作りました。別にスピリチュアルにはまっている訳ではないのですが。(笑)心静かになれる場所がとても好きで。
自己内省の仕方って、人によって合う方法は違うんですよね。自分で気持ちを書きだすことが合っている人もいれば、話して内省できる人もいるし、掃除しながら考えるのが合っている人もいる。また、時期によっても合うやり方が変わったりもします。
今の私にとっては、伊勢神宮のように美しく、心が落ち着けるところで時間を過ごすことが自分のインスピレーションに素直になれる方法なんですよね。
○ インスピレーションに素直になれるというのはどのようなことでしょうか。
皆さん勘違いしていると思うんですが、直感やインスピレーションってすっごく微かなものなんです。(笑)
電撃や稲妻みたいな強力なものだと思っているけれどそうじゃなくって、ふっと吹いたら飛んでしまうようなもの些細なものなんです。
しかも言葉で降りてくる場合だけでなく、自分の中で言語化できない感覚だったりすることもあります。
現代社会で生きていると、やっぱり情報過多で、自分のその微かな心の動きに気付けないことが多いと思います。
朝起きるとテレビからニュースが流れてきて、ネットではインスタやSNSを通して人のライフスタイルが見ることができてそこで比べてしまったり。
そういうたくさんの強い情報や雑音があると気付けないし、かすかな心の動きを無視してしまうものなんですよね。
○ だからこそ心静かになれる方法を持つことが大切なんですね。
本当に悩んだ時は、自分の中に湧き上がってくる微かな気持ちに向き合う時間を持って、頭で判断するのではなく、心で判断する。YESかNOか、メリットかデメリットではなく、自分がどうなりたいか、どうしたいか、何が大事か、を基準に考えるようにしています。
私が最近目指しているのは、「感性は年をとるごとに赤ちゃんの頃のように何の制限もないありのままの状態に戻していって、その感性を実現するための知性は年ととるごとに豊かにしていきたい」と思っています。
私の中ではビジネスもある意味ではアートのようなものだと思っているので、感性も知性も常に磨き続けていきたいです。
⒋ 変わりたいなら、まずは環境や他人、未来に期待しすぎず、「自分が変える」という意識を持つこと。
○ それでは最後に、まさに今理想と現実のギャップに苦しんでいる女性たちにアドバイスをお願いいたします。
「ギャップを解決する為には、周りの人や会社が変わらないと」と思っている状態ではなかなか解決できないことが多いです。どんなことにも当事者意識を持って、「自分ごと」として関わっていく姿勢を持つことを意識してみてください。
もし今自分にとって居心地の悪い環境があれば、「自分がその状態を変えるには何ができるだろう」という風に自分主体で考えることがすごく大切です。
また、環境的に変えられないことあっても、「捉え方や心は自由」ということは忘れないようにすると良いと思います。
「自由に働きたい」という理由で起業を考える人もいますが、起業している人のほうが自由を得るのは難しかったりします。
会社に属していると、対峙するものの多くは社内で接する人や、その会社自体だったりしますが、自分で起業すると相手は”社会”です。社会を変えるってなかなか難しいですよね。だから起業=自由という訳ではないんです。
○ 自分を幸せにするのは自分自身ということを忘れないようにしたいと思います。ちなみに猪熊さんは理想と現実のギャップに苦しむことはありますか?
私は未来に期待しすぎないようにしているので、ギャップを感じるというよりも、今目の前にあるできることを一生懸命やろうと思っています。
将来のことは誰にもわからないので、将来どうなるかという結果よりも、そこに至るまでのプロセスを大切にしています。プロセスでDo my Bestを尽くしていれば、どんな結果になっても自分が納得できるからです。
未来や理想に期待をかけるのではなく、今の自分にできる最大限を尽くして、”自分にとっての幸せ”を大切にし続けることを考えて生きています。
最近、お悩み相談を受ける女性は、未来や他者に自分の幸せを期待しずぎて、自分ではなにも行動していない「いのり系女子」が多いと感じています。
例えば、「起業したいんです!」と言いながら、特に今何も行動していなかったり、グーグルで検索すればすぐわかることを聞かれたりします。でも本気でやりたいなら、今できることを始めるだろうし、できる方法を自分で調べるのではないでしょうか。
必要以上に不安を感じすぎなくていいので、今できる一生懸命をやってみてください。人間にはバイオリズムがあるので、やりたいと思った時に頑張ってみて、失敗したら人に助けてもらってまた立て直せばいいんです。そうやって色々経験する中でしか、わからないことや見えない景色がたくさんあります。
無理をせず、ぜひ今の人生を楽しんでください。 

 

●新型コロナ「自分だけは大丈夫!」の超危険 
もう“自分だけは大丈夫”という時ではないはずだ。スペインから20日に帰国した沖縄県の10代女性が新型コロナウイルスに感染していたケースが物議を醸している。女性は20日に成田空港に着きPCR検査を受け、検疫所から結果が出るまで待機してほしいという要請があったのにもかかわらず、同行の家族らと沖縄へ帰ってしまっていた。信じがたいことだが、世界中が混乱する状況でも危機意識の低い人はいるという。
10代女性は休校期間を利用し、家族や親戚計4人とともに13日にスペイン・マドリードへ。20日に帰国して成田空港の検疫所で検査を受け、待機要請がありながらも同日中に沖縄に戻り、翌21日に感染が判明した。ほかの家族や濃厚接触者は陰性だった。
スペインといえば14日に政府が非常事態宣言を出しているほど感染が拡大している国。外出は禁止でホテルやレストランも閉鎖しているという。現在、スペイン国内の感染者が2万人を超え、日本政府は同国の一部地域について感染症危険情報を渡航中止勧告を表すレベル3にしたほど。これは16日のことだが、女性が出発する以前からスペインでは感染者や死者が増えていた。行くのがためらわれるのはもちろんのこと、無事に帰国できるかどうかも不安な場所だ。
1月下旬に中国・武漢からチャーター機で邦人が帰国した際に一部が検査を拒否して帰宅したことに多くのバッシングが寄せられたが、今回も同じ。ネット上では「危機感も責任感もゼロ」「強制力のない要請に意味はあるのか」「コロナにかかりにいったとしか思えない」と怒りを通り越して、あきれる声がいっぱい。
中国から始まったコロナパニックだが、今では欧州や米国の感染者が急増。中国では21日に明らかになった46人の感染者のうち45人が英国やスペインなど海外を訪れたことのある人たちだったという。
こうした事情を反映して、日本でも海外から帰国して感染が発覚するケースが相次いでいる。神奈川県藤沢市の20代男性もスペインから帰国後の21日に感染が判明。奈良県ではメキシコから帰国した40代女性が感染。ほかに英国、フランス、イタリアなど欧州各国、フィリピンなどアジアからの帰国者にも感染例が出ている。
日本では東京都が花見の自粛を呼び掛けているが、海外ではイタリアやフランスなど外出そのものが制限されている地域もある。トルコは外出自粛どころか、65歳以上や慢性肺疾患などの持病がある人の外出を22日から禁止した。20日に外出禁止令が出たアルゼンチンでは、バイクで大陸縦断の旅をしていた日本人の60代男性が逮捕されてしまうほど徹底している。
こういう状況にもかかわらず、あたかも“自分は大丈夫”と言わんばかりに行動してしまう人が後を絶たない。
ある風俗嬢は「東南アジア帰りというサラリーマンが来たんです。大丈夫なのかなと慎重に話してみたら、その人は『家族にも近づかないでと言われてる』って言うんですよ。友達も相手にしてくれないから寂しいって言ってたけど、それで風俗に行こうっていう神経が分からない」と暴露。その場で風俗嬢の方からキャンセルしたという。
災害が起きたときに「自分は大丈夫」と過小評価してしまうことを「正常性バイアス」というが、まさにそんな感じだ。いくら自分自身が感染に気を付けていても、危機感の低すぎる人間が周囲にいたら対策も水の泡になりかねない。 

 

 
 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 
 
 
 

 

 
 

 


 
2021/5