梅雨入り

コロナで外出自粛
まばらだが 気分転換 散歩の人たち

梅雨入り
小名木川遊歩道 
人影なくなる
 


梅雨梅雨と梅梅雨と過ごし方梅雨梅雨黴雨梅雨の雑学北海道に梅雨がない梅雨の体調不良梅雨の湿気対策梅雨と小説・・・
「梅雨」がつく季語梅雨仲夏と俳句・・・
梅雨の季語と俳句 / 季語1季語2季語3季語4季語5季語6季語7・・・
気象と梅雨・・・
 
梅雨明け 
 
 

 

●梅雨 (ばいう、つゆ)
1 日本の春から夏に移る時期に本州、四国、九州、沖縄地方でみられる雨の季節。つゆともいう。統計では、梅雨入りは沖縄地方が 5月8日で、しだいに北上し、東北北部が 6月12日頃である。これは暦の雑節の一つである入梅(太陽が黄経 80°を通過する日)とも符合する。梅雨明けは、沖縄地方が 6月23日頃で、最も遅い東北北部が 7月27日頃である。梅雨は秋霖とともに日本の二大雨季であり、秋霖が秋雨前線に起因するのに対し、梅雨は梅雨前線による長雨で、湿潤高温な気候はカビ害、食中毒などを招きやすく、古来一般に嫌われてきた。しかし、この雨季があるために稲作農耕文化が起こったという点でも重要な気象現象であるといえる。梅雨はインド方面の夏の季節風(モンスーン)と連動した気象現象で、同様の長雨は、朝鮮半島南部、中国の華南や華中の沿海部および台湾など東アジアの広範囲でもみられる。
2 春から夏への季節の変わり目に東アジアから東南アジアにかけてみられる長雨や曇天。太陽が黄経80度を通る日が暦の上の入梅で、6月11日頃。気象上の梅雨入りは、南西諸島で5月中旬、南九州で6月初め、西日本から東北地方にかけては6月上旬から中旬頃。本州南岸では、オホーツク海高気圧からの冷湿な北東風(やませ)と太平洋高気圧からの暖湿な南寄りの風が衝突して、梅雨前線が停滞する。やませが吹き続けると、低温・日照不足・梅雨寒(つゆざむ)をもたらす。7月中旬から下旬にかけて太平洋高気圧の勢力が強まると梅雨前線が北上または消滅して梅雨明けとなる。梅雨明け後に再び前線ができる場合が戻り梅雨。梅雨のない北海道では、年によっては、えぞ梅雨という梅雨に似た現象が現れる。菜の花が咲く3月中旬から4月にかけての長雨が菜種梅雨(なたねづゆ)で、春霖(しゅんりん)とも呼ぶ。この頃の雨が春雨(はるさめ)、梅雨入り前の長雨が走り梅雨。8月後半から10月にかけて現れやすい長雨は秋雨(あきさめ)で、秋霖(しゅうりん)とも呼ぶ。
3 6月ころの長雨の時節。また、その時期に降る長雨。暦の上では入梅・出梅の日が決められているが、実際には必ずしも一定していない。北海道を除く日本、中国の揚子江流域、朝鮮半島南部に特有の現象。五月雨(さみだれ)。ばいう。《季 夏》「―ふかし猪口にうきたる泡一つ/万太郎」 ・・・ 6月上旬から7月上・中旬にかけて、本州以南から朝鮮半島、揚子江流域に顕著に現れる季節的な雨。梅雨前線上を小低気圧が次々に東進して雨を降らせるもの。入梅の前に走り梅雨(づゆ)の見られることが多く、中休みには五月晴(さつきば)れとなることもあり、梅雨明けは雷を伴うことが多い。つゆ。さみだれ。《季 夏》「草の戸の開きしままなる―かな/虚子」。[補説] 梅の実が熟するころに降る雨の意、または、物に黴(かび)が生じるころに降る雨の意か。
4 〈つゆ〉とも。6月から7月にかけて中国の揚子江流域から日本の南部にかけて特に顕著に現れる季節的な雨。年によりその期間に長短があり、入梅、梅雨明けの日付も一定しない。暦の入梅は太陽が黄経80°を通過する日(6月11〜12日)で、特に気象学的意味はないが、日本の南岸の地方ではこのころに梅雨に入ることが多い。梅雨明けは日本の南岸では通常7月中旬ごろ、東北地方で7月下旬。北海道は梅雨がはっきり現れる年とそうでない年がある。梅雨現象は気象学的にみると梅雨前線が南岸沿いに停滞することに対応する。梅雨前線帯は通常、5月ごろ台湾と硫黄島を結ぶ緯度帯に現れ、一進一退しながら季節的に北上し、盛夏季には沿海州方面まで北上する。したがって梅雨は南ほど早く始まり、早く明ける。沖縄の梅雨は〈夏ぐれ〉と呼ばれる。小笠原の梅雨も5月が最盛期。梅雨の語源は梅の実の熟するころの雨、または〈黴雨〉でカビの雨を意味するという。〈つゆ〉は露、あるいはカビなどのため物が〈ついゆ(わるくなる)〉に由来するといわれ、陰暦5月ころの雨なので五月雨(さみだれ)の称もある。
5 〈つゆ〉ともいう。太陰太陽暦では梅雨の時期が5月にあたるので、五月雨(さみだれ)ともいった。梅雨は東アジアだけにみられる雨季で、6月上旬より7月上旬にかけて日本の南岸から中国の長江流域にかけて前線(梅雨前線)が停滞して長雨を降らせる現象である。梅雨は南寄りの季節風が直接あたる九州、四国、近畿、東海地方で顕著であり、この期間の降水量は年降水量のほぼ1/3(平年値は那覇で520mm、福岡で507mm、東京で260mm、仙台で265mm)に達する。
6 ・・・〈つゆ〉ともいう。太陰太陽暦では梅雨の時期が5月にあたるので、五月雨(さみだれ)ともいった。梅雨は東アジアだけにみられる雨季で、6月上旬より7月上旬にかけて日本の南岸から中国の長江流域にかけて前線(梅雨前線)が停滞して長雨を降らせる現象である。・・・このときは、前線の所に大きな低気圧はない。梅雨期にはこの前線を梅雨前線と呼ぶ。この時期には既に大陸の空気は暖かく、寒冷な空気はオホーツク海と三陸沖にある。・・・  
 
 

 

●梅雨(つゆ)と梅の関係
梅雨の雨は、梅にとって恵みの雨。この季節に雨が降ることで、梅の実は大きく膨らんでいく。ところで、「梅雨」はなぜ「梅の雨」と書くのだろう?
恵みの雨「梅雨(つゆ)」
「梅雨」とは、6月〜7月中旬、中国の長江下流域から朝鮮半島、日本列島(北海道を除く)に見られる雨期のこと。それほど雨足の強くない雨が、長期に亘って続くのが特徴。現在、中国では「梅雨(メイユー)」、韓国では「長霖(チャンマ)」と呼ぶ。「梅雨」は東アジア特有の雨期であり「梅」も東アジアにしか生息しない植物だ。
中国で生まれた言葉「梅雨(ばいう)」
「梅雨」の語源には、いくつかの説がある。
〇 「梅の実が熟す頃に降る雨」という意味で、中国の長江流域では「梅雨(ばいう)」と呼んでいたという説。
〇 「黴(カビ)が生えやすい時期の雨」という意味で、「黴雨(ばいう)」と呼んでいたが、カビでは語感が良くないので同じ読みで季節に合った「梅」の字を使い「梅雨」になったという説。
「梅雨」という言葉は、江戸時代に日本へ伝わり、その頃から、日本でも「梅雨(つゆ)」と呼ばれるようになった。それにも、いくつかの説がある。
日本で「梅雨(つゆ)」と呼ぶようになった由来
〇 「露(つゆ)」から連想した。
〇 梅の実が熟す時期だから「つはる」から連想した。
〇 梅の実が熟し潰れる時期だから「潰ゆ(つゆ)」と関連つけた。
〇 カビのせいで物がそこなわれる「費ゆ(つひゆ)」から連想した。
「梅雨」という言葉が伝わる以前は「五月雨(さみだれ)」といった。「さ」は陰暦の5月(現在の6月)、「みだれ」は「水垂れ」を意味する。
「梅雨」と係わりの深い言葉
「入梅(にゅうばい)」
雑節の一つで、太陽が黄経80度の点を通過する日。毎年6月11日か12日。立春から数えて135日目にあたる。本来は「梅雨入り」の漢語的表現だ。梅雨の季節全体を「入梅」と呼ぶ地方もある。
太陽黄経に基づく定義は現在のもので、芒種の後の最初の壬の日を「梅雨入り」 小暑の後の最初の壬の日を「梅雨明け」としていた時期もあった。
本当の梅雨入り・梅雨明けの日付は、年により地方により異なるものであるが、農家にとって梅雨入りの時期を知ることは田植えの日取りを決めるのに重要だったので、その目安としてこの暦日が設けられた。
「梅雨入り」と「梅雨明け」
気象庁では、前後数日間の天気経過と予想を比較し、晴天から曇雨天へ移り変わる中間の日を「梅雨入り」とする。近畿地方では6月上〜中旬頃。
現在は、気象庁の本庁、管区気象台及び地方中枢官署(新潟、名古屋、広島、高松、鹿児島の各地方気象台)が、観測及び予報に基づいて「梅雨入り・明け」を発表。
太平洋高気圧が夏にかけて強まり、オホーツク方面の気温が高まるにつれて「梅雨前線」は衰え、待望の「梅雨明け」となる。この間、約一か月半だ。 
●梅雨はなぜ梅という漢字なの?
“梅雨”に入りましたね!
今年は例年よりも早い“梅雨”入りとなりました…。雨が降り、蒸し暑かったり、涼しかったりと体調管理がたいへんですね。ところで、梅雨という漢字。なぜ「梅」という字が使われているのでしょうか。
“つゆ”の語源は、梅の実が熟す時期なので「熟(つ)ゆ」、その他には「露(つゆ)けき時期」、じめじめとして物が腐るので「潰(つい)ゆ」など、そしてかびが生え るので「黴雨(ばいう)」などと諸説あります。現在の私達は“つゆ”に入ることを「入梅」、そして「梅雨(ばいう・つゆ)」と書きます。
梅は中国が原産で大陸文化と共に渡来しました。早春に他の木よりも早く開花し、美しい色・形・芳香によって観賞用として好まれました。(このことから「松竹梅」として、おめでたい木のひとつとされました。)そして、果実は生食することはなく、身体に良い食品として加工し利用されてきました。中でも梅干しは平安時代中頃には効用が書かれた書物があり、武家社会では出陣の時に縁起物として食べられ、さらに兵糧食として「日持ちが良い」「のどの渇きをいやす」 「疲労回復」「水あたり」などの殺菌や整腸剤として重宝にされていました。江戸時代後半には「梅干しの七徳」といわれる効用が紹介されています。
【梅干しの七徳】
1.毒消しに効あり。ゆえにうどんには必ず梅干しをそえて出す。
2.防腐に効あり。夏は飯櫃の底に梅干し1個を入れておけばその飯は腐らず。
3.疫気を避けるに効あり。旅館では朝食に必ず梅干しを添えるを常とする。
4.その味かえず。
5.息づかいに効あり。走る際、梅干し1粒口に含めば息切れず。
6.頭痛を医するに効り。 婦人頭痛する毎に梅干しをこめかみに貼るを常とする。
7.梅干しよりなる梅酢は流行病に効あり。
今でも、梅干しは日本人にとって欠かすことのできない“ご飯のお供”として、おにぎりの具や日の丸弁当、梅和えなど料理の味付けに用いられ、そして朝食時には必ず一粒食べることを習慣にしている人も多いと思います。
梅と日本人のつながりは深く、この大切な梅を熟させるのがこの時期の長雨で あることから、「梅」という漢字が使われるようになったようです。
梅には疲労回復に効果があるといわれる“クエン酸”、“リンゴ酸”が豊富で、防腐効果や食欲増進、整腸作用に役立ちます。生活習慣病の予防から、食事は「減塩」とされ、梅干しを各家庭で作ることが少なくなってきたようではありますが、梅酒・梅ジュース・梅ジャムなどを作って、家庭の味を楽しみ、梅の効用で体調をととのえて下さい。  
●梅雨
中国地方は梅雨の最中です。平年の中国地方の梅雨明けは7月20日ごろですので、まだまだ梅雨は続きそうです。素朴な疑問ですが、この季節の長雨のことをなぜ「梅雨」「つゆ」と呼ぶのでしょうか?その語源を調べてみました。
まず、漢字の「梅雨」ですが、実は中国語の辞書にものっています。「梅雨」と「黴雨」。読み方(メイユーと発音するそうですが)も同じ。前者は「黄梅雨」とも書かれており、梅の実が熟すころの雨、後者はかび(黴)の生えやすいころの雨という意味になるそうです。
中国にも梅雨があるのか、と思われる方もいると思いますが、そもそも「梅雨」は「梅雨前線」によってもたらされますので、「梅雨前線」のかかる場所、つまり中国の一部(揚子江の中流〜下流にかけての地域)や台湾・韓国にもあります。(逆に前線のかからない北海道には梅雨はありません。)
唐の時代の太宗の詠んだ詠雨という漢詩に、和氣吹緑(※)野、梅雨灑芳田。新流添舊澗、宿霧足朝煙。雁濕行無次、花沾色更鮮。對此欣登歳、披襟弄五弦。というものがあります。2節目に「梅雨灑芳田。」(梅雨が芳田(いい匂いの田という意味のようですから麦畑を指していると思われます。春の麦の収穫時期がちょうど6月頃になります)を潤す)と書かれており、唐の時代には、「梅雨」という漢字が使われていたようです。
さらに、1500年代終わりごろに中国の李時珍(りちじん)とう学者が書いた「本草綱目」(ほんぞうこうもく)という本草学の本(簡単に言うと植物図鑑のようなもの)に「梅雨或作黴雨、言其沾衣及物、皆生黒(※)黴也。」(梅雨・黴雨は、服や物をぬらし、皆黒かびが生える)という表記がありますので、少なくとも約400年前には「梅雨」「黴雨」という二つの漢字を使っていたようです。
どちらにせよ、中国から渡ってきた漢字と意味を(ちなみに植物の梅も中国が原産で、遣隋使(あるいは遣唐使)によって日本にもたらされたという説が有力です。)そのまま、日本の気候に当てはめたというのが正解のようです。
さて読み方ですが、江戸時代の著名な学者、貝原益軒(かいばらえきけん)も監修をつとめた「日本歳時記」(1688年)には「此の月淫雨ふるこれを梅雨「つゆ」と名づく」という表記があります。どうやら、今の季節の長雨のことを一般的に「つゆ」と呼び始めたのは江戸時代になってからのようです。
さて、この読み方としての「つゆ」がどこから来ているかということですが、「露(つゆ)」から来ているという説、 あるいは湿気でものが腐ってしまうことから 「潰ゆ(ついゆ)」から来たという説、栗の花が咲いて落ちるころ(これがちょうど今の梅雨の季節と一致します)を表す「栗花落(ついり・つゆり)」から来たという説などがあります。
貝原益軒は「大和本草」という本を編纂するほど本草学にも造詣が深く、李時珍の「本草綱目」も読んだのではないのでしょうか? もしかすると上記の3つの説はどれかが正しいのではなく、どれも正しいのかもしれませんね。
いかがですか。語源については結局はっきりとしませんが、「梅雨」という言葉一つをとっても、気象と身近な自然現象とは密接に結びついているようです。  
 
 

 

●梅雨の意味と過ごし方
梅雨入りが近づいてきました。暑い夏が来る前の長雨シーズンの到来です。毎年6月頃、気象庁の「梅雨入り宣言」が話題になりますが、梅雨は旧暦では5月。「五月雨(さみだれ)」とはこの梅雨の時期の雨を指すものでした。雨が多く気分も沈みがちですが、お気に入りの傘やレインコート、長靴などで雨のおしゃれを楽しんだり、梅雨の意味を知り、湿気や食中毒の対策をしましょう。
「入梅(にゅうばい)」は「雑節」のひとつ
「雑節」とは、日本の季節の移り変わりをよりわかりやすく表したもので、主に農作業に深くかかわっています。雑節には「節分」、「お彼岸」、「社日」、「八十八夜」、「入梅」、「半夏生」、「土用」、「二百十日」、「二百二十日」があります。暦の上では「入梅」は6月10日頃からが目安とされています。田植えなどの農作業にとっては恵みの雨でもあり、大切な季節でもあります。
「梅雨」の意味は?
6月は日本各地が梅雨の季節に入る「入梅」を迎えます。例年、「入梅」から7月上旬頃の「梅雨明け」まで、北海道を除く一帯に長雨が降り。湿度も高くなってじめじめした日が続きます。「梅雨」というのは、ちょうど梅の実が熟す頃に雨が降ることからつけられた名前とされています。他にも、木の葉などにおりる「露」をさす、物が悪くなったり弱ったりする「ひつゆ」が転じたもの、カビが生えて色々なものが悪くなる時期のため、「黴雨(ばいう)」という、などの諸説もあります。
なぜ雨が降り続く?
この時期、東南アジアでみられる気象状況によるものです。大陸の冷たい高気圧と、太平洋の暖かい空気がぶつかり、大気の状態が不安定になり、そこで発生した梅雨前線が停滞するので、雨が続きます。雨の日でも蒸し暑い日と涼しい日があるのは、ふたつの気圧のせめぎ合いのためです。
雨をよける「てるてる坊主」の由来は?
運動会や遠足など、子どもたちが楽しみにしている行事の日が雨にならないように、願いを込めて飾るてるてる坊主。梅雨の時期にも軒先やベランダによくみられるものです。その由来は、手に持ったほうきで雲を払い、晴れの気を呼ぶといわれる、中国の「掃晴娘」とされています。本来は女の子だったのですが、日本では僧侶などが日乞いをしていたため、男性の姿に変化したといわれています。この習慣は現在の中国ではほとんど見かけないものです。
湿気対策はぬかりなく
エアコンや除湿器、扇風機や換気扇を使って、室内の空気を動かしましょう。洗濯物を室内に干すことも多く、湿度が上がってしまうこの時期、油断するとカビの発生を許してしまいます。湿度がこもりやすい押し入れやクローゼットなどは、扉を開けて扇風機の風をあてるなど工夫してみましょう。
食べ物にも要注意
梅雨の季節は食中毒が気になる季節でもあります。調理器具やキッチンは常に清潔。調理前は手を消毒する習慣をつけましょう。冷蔵庫は食材を入れすぎると冷蔵効果が落ちてしまいます。また、雑菌効果の高いお酢もどんどん活用しましょう。例えば、お弁当。おかずを詰める前にお酢でお弁当箱をさっと拭いて消毒したり、お米を炊くときにお酢を混ぜておくと、傷みにくくなります。お米2合に大さじ1杯弱が目安です。
体にいい「梅」を食べよう
強い抗菌力を持ち、疲労回復に効果があるクエン酸をたっぷり含んだ梅。梅酒や梅干しは昔から保存食として活用されてきました。現在では、料理はもちろん、はちみつや氷砂糖に漬けたシロップやジャムなどのスイーツも登場するなど、梅を使う保存食のバリエーションも増えています。ちなみに、梅干しを作るときは黄色く熟した梅を使います。  
 
 

 

●梅雨
日本の季節の変化のなかで、春から夏へと移り変わる途中のその前後の時期と比べて雨が多くなり日照が少なくなる季節現象です。梅雨は6月から7月にかけて続きます。
その梅雨期には、日本付近には一般に「梅雨前線」と呼ばれる前線帯が停滞し、ぐずついた天気が続くようになります。梅雨による雨は、生活に欠かせない水資源の供給源であるとともに、時に大雨による災害をもたらすため、梅雨に関する情報は社会的に関心が高まっています。
梅雨入り〜梅雨明け
梅雨入り、梅雨明けは各地方ごとに発表しています。石川県は北陸地方に含まれ、新潟、富山、福井県とともに、梅雨入り・梅雨明けの発表を行っています。
季節の変化は、「○日○時から」というような明確な境はなく、緩やかに変化していきます。梅雨も同じように、曇りや雨の日が多くなり次第に梅雨に入り、やがて雨の日が少なくなり梅雨が明けていきます。
このため、梅雨入りの・梅雨明けの日は、梅雨前後の移り変わりの期間(遷移期間)が数日程度あるため、この遷移期間のおおむね中日をもって「○○日頃」と表現します。
また、現在までの天候経過と1週間先までの見通しをもとに、梅雨入り・梅雨明けを天候情報により速報します。後日、春から夏へかけての実際の天候経過を考慮した検討を行い、当初発表した期日を変更する場合があります。
 
 

 

●梅雨・黴雨
つゆ
6月頃降り続く長雨。また、その頃の季節。太陽暦で6月10日頃から7月10日頃までの間。五月雨(さみだれ)。ばいう。 [季] 夏。「わらうてはをられずなりぬつゆの漏」 森川暁水。
ばいう
梅の実の熟する頃に降る雨の意。また、この時期に黴(かび)が生じやすいことから黴雨の意ともいう>
六月から七月中旬にかけ、朝鮮南部、長江下流域や北海道を除く日本に見られる雨期。梅雨前線上を低気圧が次々と東進することによる。五月中旬頃に走り梅雨(づゆ)を見、六月中旬頃に梅雨入り(入梅(にゆうばい))となる。雨がちで梅雨冷え(梅雨寒(つゆざむ))のする陰鬱な天気が続くが、梅雨の中休みには五月(さつき)晴れになることもある。梅雨の末期には、ときに集中豪雨を各地にもたらす。やがて太平洋高気圧が強まって前線を北方へ押しやると梅雨明け(出梅(しゆつばい))となって盛夏を迎える。雨量の少ない空梅雨(からつゆ)の年や梅雨明け後に戻り梅雨をみる年もある。つゆ。さみだれ。 [季] 夏。
 
 

 

●梅雨の雑学
立ち葵のてっぺんの花が咲くと梅雨が明ける
世界には「雨季」のある国や、一年中まんべんなく雨が降ったり、急に激しい雨「スコール」が降る国など、さまざまです。しかし、夏が来る前のおよそ1ヶ月間、雨が集中する「梅雨」となると、日本をはじめ中国、韓国、北朝鮮、台湾、ロシア沿岸部など一部に限られます。
とりわけ中国では、梅の実が黄色く熟すことを指す「黄梅」という言葉にちなんで「黄梅雨」などと呼ばれ、カビが発生しやすい季節にちなんで「黴雨(ばいう)」とも呼ばれます。その時期に生じるなんらかの自然現象が結びついているわけですね。
日本でも「立ち葵(たちあおい)の花がてっぺんまで咲くと梅雨が明ける」といわれています。立ち葵は別名「梅雨葵」。茎の一番下の花が開く頃に梅雨入りし、だんだんと上のほうの花が開いていって、最終的に一番上のつぼみが花開いた頃に梅雨が明ける。梅雨に冷え込む「梅雨寒(つゆざむ)」となれば花の生育も遅くなることから、その年の梅雨の傾向に合わせて、うまい具合に開花時期が合うことになります。
他にも「梅雨中の雷は、晴れ近し」といった言葉も。気圧が低い梅雨真っ盛りの頃には積乱雲がもたらす「熱雷」は一般的に発生しません。しかし太平洋高気圧が北上し、大気の状態が不安定になると積乱雲が生じて雷が鳴る、というわけです。
梅雨にも「陽性」と「陰性」がある
梅雨とは、たとえていうなら「南の高気圧」と「北の高気圧」の“仁義なき戦い”とでもいいましょうか。この2つの高気圧の勢力ががっぷり四つで組み合って動かず、その間に生じる気圧の谷間、いわゆる「梅雨前線」も動かないことが原因となっています。
しかしながら、前線の動きや位置によって梅雨の気候は若干変化します。時期や年ごとによっても、雨が降らない「空梅雨」になったりと、「性格」があるんです。梅雨にも「陽性」と「陰性」があること、ご存知ですか?
陽性の梅雨は、集中豪雨になったと思ったらカラリと晴れたりする、いわばスコールのような雨が繰り返し起こるタイプのもの。一方、陰性の梅雨は、止みそうにない雨がしとしとと降り続くタイプのものです。陽性か陰性かを左右するのは、梅雨前線の位置。一般的に、この前線より南側に位置する地域では陽性に、北側に位置する地域では陰性になります。ごく簡単にいえば、南国は陽性、北国は陰性。また、梅雨入りの時期は陰性で、梅雨の後半からは陽性に変わることも多くあります。
ちなみに、「梅雨が明けない」年も、地域によってはあるんです。たとえば秋田県では、平成13年や平成15年には梅雨明けが特定できませんでした。北vs南の高気圧の仁義なき戦いの決着がつかず、いつまで経っても梅雨前線が北上せずに雨が降り続き、暦の上で「立秋」を越えてしまった際に「梅雨明け無し」となるそうです。
さらに、梅雨が明けたはいいけれど、太平洋高気圧が弱まったスキに、北方のオホーツク海高気圧が再び強まってくることがあります。この高気圧には寒気がともなっているので、冷たい北風が吹いてきます。これが東北地方などに冷害をもたらす「やませ」と呼ばれる風です。そこに雨が伴うと、いわゆる「梅雨の戻り」と呼ばれることになります。
そして、南の高気圧が頑張って「夏」をもたらし終わると、季節は秋へ。この時期も、北の高気圧が再び力を盛り返してきて、梅雨の時期と同じような気圧配置となり、いわゆる「秋雨前線」が生じて長雨が降ることがあります。一部では、秋の風物詩とかけあわせて「すすき梅雨」などとも呼ばれる現象です。
関節が痛む・・・もしかして「天気痛」!?
最近よく耳にする言葉で「天気痛」なるものがあります。昔から「雨が降る前になると古傷が痛む」といったことはよくいわれていますよね。果たしてそれは本人の思い込みからくるものなのか、はたまた科学的に立証できるのか、現在研究が進んでいるところです。
一部では、低気圧に覆われた気候になると、アミノ酸の一種である「ヒスタミン」が増えるといわれています。そうなると結果的に、鼻水が出やすくなったり、皮膚にかゆみを覚えたり、関節に痛みを感じるなどのアレルギー症状が起きやすくなります。さらに気圧が変化することにより交感神経が緊張状態となり、痛みをもたらす一因になっているのではといわれています。
こうした症状がもし起きた場合、今回の特集で紹介している「梅雨のカラダメンテナンス」を実践することが効果的。ぜひとも日々の生活の中で、心がけてみてくださいね。
 
 

 

●なぜ北海道には梅雨がないのか?
6月の北海道はどんな天候?
6月といえば日本は梅雨時期で、どこへ行ってもジメジメした長雨のイメージが強いでしょう。しかし北海道は梅雨入りしません。梅雨がない北海道はどのような気候なのでしょうか。
気温・湿度が低く晴れる日が多い
北海道の6月は晴れが多く、過ごしやすい気候だといわれています。例えば、札幌の6月の平均日照時間は6.2時間ほどで、平均気温は16.7度くらいです。全国的には雨の多い時期なので、天候のよい旅行先を求めて北海道を訪れる人も少なくありません。
寒暖差があるので服装は要注意
晴れ間の多い北海道ですが、寒暖差には気を付けましょう。初夏とはいえ、朝晩はまだまだ冷え込むことも多く、肌寒さを感じることが多いです。一方で、日中の気温が27度を超える地域もあります。本州の感覚で、「もう6月だから半袖で大丈夫」と安心していると、風邪を引きこんでしまいかねません。この時期に北海道を訪れるなら、脱ぎ着しやすいカーディガンやパーカー、薄手のコートなどを1着持っておくことをおすすめします。
北海道に梅雨がない理由
なぜ北海道には梅雨がないのでしょうか。その理由を知る手がかりは、梅雨前線にあります。梅雨の定義や、梅雨前線の仕組みについて見ていきましょう。
梅雨の定義と梅雨前線の仕組み
『梅雨』とは、晩春から夏にかけて雨や曇りが多くなる気象現象です。4月下旬ごろになると、梅雨前線の元になる『小笠原気団(暖かく湿った空気)』と『オホーツク海気団(冷たく湿った空気)』が日本の南側でぶつかり始めます。ぶつかったところにできるのが、停滞前線である梅雨前線です。
梅雨入り・梅雨明けのタイミング
一般的な梅雨入りは、5月下旬ごろからです。この時期に小笠原気団の勢力は強くなり、日本の南側でオホーツク海気団とぶつかって北へせり出してきます。それに伴って、次第に梅雨前線も北上していきます。梅雨前線が北上して、数日間雨が降ることが予想されて、明らかにその前の時期より雨が増える傾向が見られると『梅雨入り』です。気団のぶつかる位置や、強さによって梅雨の期間も変化します。同程度の力でぶつかると梅雨が長引くことが多く、しとしとと長雨が続くでしょう。6月下旬〜7月上旬ごろになると、小笠原気団が勢力を増します。そのまま北上していくのですが、そのころにはオホーツク海気団の勢力が弱まっているのでぶつかる力がなく、『梅雨明け』となります。
北海道は梅雨前線の影響を受けにくい
梅雨前線が北海道近辺に上るのは、7月下旬ごろです。しかし、そのころには気温全体が上がっているので、ぶつかっている気団の温度や湿度の差も小さくなっています。そのまま勢力は弱まり、消えてしまうことがほとんどです。そのため、『梅雨前線は北海道まで届かない』とされています。届いたとしても、境目が分かりにくく、雨や曇りになることも稀です。結果的に、北海道は梅雨前線の影響を受けにくいといえるでしょう。しかし、梅雨がなくても雨が降らないわけではありません。地域によっては、天候に注意が必要になります。
梅雨がなくても天候は崩れやすい
「北海道は梅雨がなくてうらやましい」と思う人もいるかもしれません。しかし、地域によっては『蝦夷梅雨(えぞつゆ)』というものがあります。蝦夷梅雨は、北海道に住んでいる人以外には聞き慣れない言葉かもしれません。どんなものなのか、詳しく見ていきましょう。
夏前に訪れる蝦夷梅雨とは?
北海道の太平洋側の地域では、6月中旬から下旬にかけて雨が多く降ったり、湿度が上がってジメジメしたりします。晴れより雨の方が多い日が続きますが、期間はだいたい1〜2週間ほどです。これは、冷たく湿った空気の『オホーツク海高気圧』から気流が流れ込むことで、天候が不安定になるものです。まるで梅雨のように雨が降るので、蝦夷梅雨と呼ばれています。
近年は気温や湿度の上昇が頻繁に
基本的には梅雨がない北海道ですが、近年では変化が見られるようになりました。年々、気温や湿度は上昇傾向にあり、過ごしにくい日が多くなっています。気温が30度を超える日もあり、『夏でも涼しい北海道』のイメージは薄れつつあります。気温の高さやジメジメした空気に、梅雨のような過ごしにくさを感じることも多いようです。
地域による差も大きい
面積の広い北海道では、地域による天候差が大きいです。例えば、東側で太平洋に面する『霧の街』として有名な釧路は、夏でも気温が低く湿度が高い日が続きます。海風の影響を受けているため、雨が降っていなくても多湿なのです。洗濯物も乾きづらく、室内で乾かすためにストーブに火を入れることもあります。最北の稚内の辺りも、基本的には雨が降らないさわやかな時期といえます。しかし6月は平均12度前後と気温が低く、場合によっては薄手のセーターやコートも必要かもしれません。  
 
 

 

●体のだるさや皮膚のかゆみ 梅雨の体調不良に注意
梅雨の時期を迎え、体のだるさや皮膚のかゆみなど体調不良を訴える声がネット上で相次いでいて、専門家は高温多湿による不快感やカビなどの発生が原因の場合があるとして、症状を感じたら早めに医療機関を受診するよう呼びかけています。
各地で梅雨入りを迎え、インターネット上ではどんなことが調べられているのか。
IT大手ヤフーの検索データによりますと、九州北部や関東甲信などで梅雨入りが発表された11日、ネット上では「梅雨」ということばと一緒に「体調不良」や「頭痛」といったことばが多く検索されていたということです。
ヤフーによりますと例年、梅雨の時期には同じ傾向がみられ、去年1年間に「梅雨 体調不良」と検索した人のデータを分析すると、40代が3割弱、30代が2割余りと合わせて半数以上にのぼるほか、全体の7割以上を女性が占めると推定されています。
ツイッター上では「梅雨の時期特有のかゆみがきた」とか「体がだるい」などといった投稿が相次いでいるほか、ことしは新型コロナウイルスの影響でマスクによる顔の肌荒れを訴える人もいます。
子どものころからアトピー性皮膚炎の症状があるという愛知県の40代の男性は、毎年、梅雨入り前ごろから顔や腕に発疹やかゆみが現れてかゆみで眠れないこともあり、ひどい時は皮膚科で点滴を打ってもらったりアルコールで顔を拭いたりして対処しているということです。
梅雨がすぎた真夏にはある程度、症状は落ち着くということで、男性は「顔がかゆくなると、外にも出たくなくなるくらいとても憂うつな気分になります」と話しています。
東京・港区で内科や皮膚科の診療を行う医師の松崎道男さんによりますと梅雨の時期は高温多湿による不快感や急な気候の変化などで自律神経のバランスを崩しやすくめまいや体のだるさ、食欲不振、頭痛などの症状を訴える患者が増える傾向にあるということです。
また、カビやダニが増え、せきや体のかゆみなどのアレルギー症状を引き起こす人もいるほか、食中毒や熱中症も起こりやすく注意が必要だということです。
松崎さんは「クーラーや除湿機などを適切に利用して、快適に過ごせる環境を作っていくことが大切だ。晴れた日には布団を干したり、丁寧に掃除したりしてカビやダニを取り除くことも症状の軽減に効果がある」と話しています。そのうえで、「アレルギーなどの症状がある場合には、内科や皮膚科など、専門の医療機関に早めに相談してほしい」と呼びかけています。
 
 

 

●梅雨の湿気対策
梅雨の時期はどうして湿気が気になるの?
気象庁の2019年のデータによると、東京都の場合は6月〜10月に湿度が高くなっています。湿度が高いと感じるのは、空気の温度が関係しています。
空気の温度が高いと湿度も高く感じる
空気の温度によって、空気の中に含むことのできる水分の量は変わります。低い温度であれば水分量が少なく、温度が高くなるにしたがって同じ量の空気でも、たくさんの水分を含むことができるようになります。そのため、気温10度で「湿度50%」の場合と、気温25度で「湿度50%」の場合とでは、同じ50%の湿度でも気温25度の方が空気中にたくさんの水分を含んでいます。空気の温度が高くなる時期は、空気そのものに含まれる水分量が多くなるので、湿度が高いと感じます。
湿気が多くなる梅雨にはカビが発生しやすくなる!
湿度が高い日が続くと、心配なのはカビの発生です。お風呂やキッチンなどの水回り、窓や壁・床に結露が発生してカビの原因になってしまうこともあります。気温が高く湿度も上がる梅雨の時期は、カビにとっては絶好の繁殖条件が揃っています。カビはアトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患の原因にもなり、中にはカビ毒をつくる種類のカビもあるんです。またカビはダニのエサになるので、梅雨の時期に湿気対策を行いカビを防止することは、衛生的に生活をするために大切です!
カビが生える条件
カビが生える条件には、温度、湿度、栄養などが必要です。空気中に浮遊しているカビの胞子は室内の表面に付着して、温度が5℃〜35℃前後の場所で、付着した表面の水分と栄養で発育します。水分や埃がたまりやすいところ、手が届かない場所などにカビは生えやすくなります。またカビが発育する湿度は80%以上ですが、カビは空気中の水蒸気ではなく、付着した場所の表面の水分を使うので、室内湿度が80%以上だからといって発育するわけではありません。ただし室内湿度が高いと、窓や壁・床などに結露が発生するため表面にカビの原因となる水分がたまってしまいます。湿度を低く保つようにする、結露などの水分をまめに拭き取るようにするなど、湿気対策をきちんと行えばカビの発生は減らすことができます。
有効な梅雨の湿気対策!押入れなど狭い場所の湿気取りには小物が使える
梅雨を健康で快適に過ごすためにも、湿気対策は大切だということがわかりましたね。湿気対策は、家庭にあるものでカンタンにはじめられます!ご家庭内の場所ごとに有効な対策方法は異なります。まずは靴箱や台所のシンク下、押入れなど狭い場所で有効な湿気対策について紹介します。
新聞紙で消臭・除湿
紙類は湿気を吸収する性質があります。中でも新聞紙は表面に細かい凹凸が多く、見た目以上に表面積が広いために湿気の吸収力に有効で消臭効果もあります。台所のシンク下の隙間、押入れの中、家具の後ろなど、湿気が気になる場所に置いておくだけでもよいのですが、一度手でクシャクシャにしてから広げると、さらに表面積が増えてよく湿気を吸い取ってくれます。湿気を含んだ新聞紙は、定期的に取り替えましょう。
布団の湿気対策にも新聞紙が使える
布団には寝ている間にかいた汗が含まれるため、まめに干すなど湿気対策が重要です。でも梅雨の時期は雨の日が続いてなかなか干せず、カビやダニの発生が心配ですよね。布団を湿気から守る方法にも、新聞紙が使えるんですよ!
〇押入れにしまうときは、すのこと布団の間に新聞紙を使う
布団を押入れにしまうときは、すのこを置いてその上に布団を乗せると、布団の下に空間を作ると空気の通り道ができて湿気がたまりにくくなります。この時にすのこの下に新聞紙を入れておくと、さらに効果的に除湿できます。
〇布団を敷くときは、床と布団の間に新聞紙を使う
布団をフローリングの床に敷く場合は、布団と床の間に湿気がたまりやすいため、布団の下に新聞紙や除湿シートなどを敷くと除湿できます。また、布団は敷きっぱなしにしないように注意しましょう。
〇布団選びは素材もポイント
通気性に優れたクッション材「ブレスエアー」という製品があります。繊維が三次元状に複雑に絡み合ってできていて、多くのメーカーがブレスエアーを使った布団やクッションを販売しています。通気性だけでなく透水性にも優れていて、洗えるのも「ブレスエアー」の特長のひとつです。布団の買い替えを検討しているなら、どのような素材でできているのかもポイントです。
重曹で消臭・除湿
料理や掃除などで利用できる重曹には、消臭・除湿効果があります。お気に入りのアロマオイルを垂らすと、よい香りを楽しむこともできます。重曹は空き瓶などに多めに入れて蓋を開けたまま、靴箱やトイレなど、匂いや湿気が気になる場所に置きましょう。湿気を含んだ空気は下がる性質があるので、入れ物は低い場所に置きます。湿気を吸った重曹が固まってきたら取り替え時です。除湿剤として使用した重曹は、そのあと掃除のときにも使えますよ。
竹炭で消臭・調湿
炭も重曹と同様に、消臭・除湿効果があります。湿度が高くなると湿気を吸い込み、湿度が低くなると湿気を吐き出して、空間の湿度を一定に保とうとします。炭にはいくつか種類がありますが、湿気対策におススメなのは竹炭です。他の炭と比べて、竹炭には消臭・除湿をする細孔(さいこう)という小さな穴が多くあるため、除湿に向いているといわれています。効果が薄れてきたら木炭を天日干しするだけで再び利用できるので、半永久的に使えるエコなアイテムですよ!
有効な梅雨の湿気対策!室内など広い空間では換気が有効的
次に靴箱や押入れなどの狭い場所ではなく、室内全体の湿気対策について紹介します。
基本は窓を開けて換気◎雨の日だって換気しよう
室内はまめに換気することで、湿度を下げられます。換気をするときは、窓やドアを2カ所以上開けて空気の通り道を作ってあげることが大切です。同時に押入れやシンク下などの普段空気が流れにくい場所も、扉を開けて換気するとよいですよ。住宅の構造によっても空気がこもりやすい場合もあります。木造に比べてコンクリート造の住宅は気密性が高く、空気が流れにくくなるので、よりまめに換気することをおススメします。また雨の日は、外よりも室内の方が湿度が高くなっていることがあります。外の湿気が室内に入ってこないようにと、換気をしないのは逆効果です。雨の日でも換気するようにしましょう。
扇風機やサーキュレーターを使えば換気の効果がアップ!
換気は2カ所以上を開けて空気の通り道を作るとよいといいましたが、押入れやクローゼットなどの場所で扉が1カ所しかない場合は、扇風機やサーキュレーターを使うのがおススメです。扉を開けたまま、押入れやクローゼットの中に向けて空気を送れば、中の空気が流れて効果的に換気できます。
除湿器やエアコンの除湿運転(ドライ)機能を使って除湿する
エアコンの除湿(ドライ)機能を使っても、室内の湿度を下げることができます。でも湿度が気になってエアコンの除湿(ドライ)機能を使ったら、寒くなってしまったという経験はありませんか?除湿には弱冷房除湿と再熱除湿の2種類があり、違いは以下の通りです。
エアコンの除湿方法
〇弱冷房除湿
室内の温度も、湿度も下げる。T再熱除湿よりも消費電力が低く、電気代が安い。
〇再熱除湿
室内の温度は下げずに、湿度だけを下げる。T弱冷房除湿よりも消費電力が高く、電気代が高い。
一般的な除湿(ドライ)機能は弱冷房除湿の場合が多く、製品によって再熱除湿機能が付いたエアコンもあります。梅雨の時期は室内の温度によって、エアコンの弱冷房除湿と再熱除湿を使い分けるとよいでしょう。
除湿と換気で効率的に湿気対策をして、梅雨を快適に過ごそう
梅雨の時期に湿気を感じる原因とカビが発生する条件を解説し、ご家庭ですぐにできる梅雨の湿気対策を紹介しました。
新聞紙・重曹・竹炭など除湿効果の高いアイテムを取り入れれば、靴箱や台所のシンク下・押入れ・クローゼットなど狭い場所の湿気対策が手軽にできます。
また室内など広い空間の湿気対策には、窓を開けての換気が最も効果的です!換気をするときは、2カ所以上を開けて空気の流れを作る、室内だけでなく押入れやクローゼットなども同時に行うなどポイントをおさえて、まめに行いましょう。窓を開けて換気ができないときは、除湿器やエアコンの除湿運転(ドライ)機能も活用してみてくださいね。
梅雨は雨の日が多くなり湿度も高くなるので、きちんと湿気対策をして快適に過ごしたいですよね。今回紹介した方法は簡単な方法ばかりなので、今からでも試してみてくださいね!
 
 

 

●梅雨(つゆ)と小説
・・・  ここは南蛮寺の堂内である。ふだんならばまだ硝子画の窓に日の光の当っている時分であろう。が、今日は梅雨曇りだけに、日の暮の暗さと変りはない。その中にただゴティック風の柱がぼんやり木の肌を光らせながら、高だかとレクトリウムを守っている。そ・・・ 芥川竜之介「おしの」
・・・ 「当年は梅雨が長いようです。」「とかく雲行きが悪いんで弱りますな。天候も財界も昨今のようじゃ、――」 お絹の夫も横合いから、滑かな言葉をつけ加えた。ちょうど見舞いに来合せていた、この若い呉服屋の主人は、短い口髭に縁無しの眼鏡と云・・・ 芥川竜之介「お律と子等と」
・・・ ――こう云う調子で、啣え楊枝のまま与兵衛を出ると、麦藁帽子に梅雨晴の西日をよけて、夏外套の肩を並べながら、ぶらりとその神下しの婆の所へ出かけたと云います。 ここでその新蔵の心配な筋と云うのを御話しますと、家に使っていた女中の中に、お敏と・・・ 芥川竜之介「妖婆」
・・・ この血だらけの魚の現世の状に似ず、梅雨の日暮の森に掛って、青瑪瑙を畳んで高い、石段下を、横に、漁夫と魚で一列になった。 すぐここには見えない、木の鳥居は、海から吹抜けの風を厭ってか、窪地でたちまち氾濫れるらしい水場のせいか、一条や・・・ 泉鏡花「貝の穴に河童の居る事」
・・・ 中へ何を入れたか、だふりとして、ずしりと重量を溢まして、筵の上に仇光りの陰気な光沢を持った鼠色のその革鞄には、以来、大海鼠に手が生えて胸へ乗かかる夢を見て魘された。 梅雨期のせいか、その時はしとしとと皮に潤湿を帯びていたのに、年数・・・ 泉鏡花「革鞄の怪」
・・・ 春も深く、やがて梅雨も近かった。……庭に柿の老樹が一株。遣放しに手入れをしないから、根まわり雑草の生えた飛石の上を、ちょこちょことよりは、ふよふよと雀が一羽、羽を拡げながら歩行いていた。家内がつかつかと跣足で下りた。いけずな女で、確に小雀を・・・ 泉鏡花「二、三羽――十二、三羽」
・・・ ――この、時々ばらばらと来る梅雨模様の雨にもめげねえ群集だでね。相当の稼ぎはあっただが、もうやがて、大師様が奥の院から修禅寺へお下りだ。――遠くの方で、ドーンドーンと、御輿の太鼓の音が聞えては、誰もこちとらに構い手はねえよ。庵を上げた見世物・・・ 泉鏡花「山吹」
梅雨のうちに、花という花はたいていちってしまって、雨が上がると、いよいよ輝かしい夏がくるのであります。 ちょうどその季節でありました。遠い、あちらにあたって、カン、カン、カンカラカンノカン、……という磬の音がきこえてきました。・・・ 小川未明「海ほおずき」
・・・ そのときすでに、じめじめした梅雨が過ぎて、空は、まぶしく輝いていたのであります。 小川未明「海ぼたる」
梅雨の頃になると、村端の土手の上に、沢山のぐみがなりました。下の窪地には、雨水がたまって、それが、鏡のように澄んで、折から空を低く駆けて行く、雲の影を映していました。私達は、太い枝に飛びついて、ぶら下りながら赤く熟したのから、もぎとり・・・ 小川未明「果物の幻想」
・・・ 桜の花が中庭に咲き、そして散り、やがていやな梅雨が来ると、喜美子の病気はますますいけなくなった。梅雨があけると生国魂神社の夏祭が来る、丁度その宵宮の日であった。喜美子が教えていた戦死者の未亡人達が、やがて卒業して共同経営の勲洋裁店を開・・・ 織田作之助「旅への誘い」
・・・ そして梅雨明けをまたずにお定は息を引き取ったが、死ぬ前の日はさすがに叱言はいわず、ただ一言お光を可愛がってやと思いがけぬしんみりした声で言って、あとグウグウ鼾をかいて眠り、翌る朝眼をさましたときはもう臨終だった。失踪した椙のことをついに一言・・・ 織田作之助「螢」
・・・ 晩になってようよう発作のおさまったところで、私は少しばかりの粥を喰べた。梅雨前の雨が、同じ調子で、降り続いていた。 私は起きて、押入れの中から、私の書いたものの載っている古雑誌を引張りだして、私の分を切抜いて、妻が残して行った針と木綿・・・ 葛西善蔵「遁走」
・・・ 然し私自身みじめな気持になったのはその時が最初でした。梅雨が私を弱くしているのを知りました。 電車に乗っていてもう一つ困るのは車の響きが音楽に聴えることです。私はその響きを利用していい音楽を聴いてやろうと企てたことがありました。そんなこ・・・ 梶井基次郎「橡の花」
・・・ 二 この日は近ごろ珍しいいい天気であったが、次の日は梅雨前のこととて、朝から空模様怪しく、午後はじめじめ降りだした。普通の人ならせっかくの日曜をめちゃめちゃにしてしまったと不平を並べるところだが、時田先生、全く・・・ 国木田独歩「郊外」
・・・ セルの季節で、この陰鬱の梅雨が過ぎると、夏がやって来るのである。みんな客間に集って、母は、林檎の果汁をこしらえて、五人の子供に飲ませている。末弟ひとり、特別に大きいコップで飲んでいる。 退屈したときには、皆で、物語の連作をはじめるのが、・・・ 太宰治「愛と美について」
・・・ あれは、私が東京へ出て一年くらい経った、なんでもじめじめ雨の降り続いている梅雨の頃の事と覚えていますが、柄でも無く、印刷所の若いほうの職工と二人で傘をさして吉原へ遊びに行き、いやもう、ひどいめに逢いました。そもそも吉原の女と言えば、女性の中・・・ 太宰治「男女同権」
・・・ 戸塚の梅雨。本郷の黄昏。神田の祭礼。柏木の初雪。八丁堀の花火。芝の満月。天沼の蜩。銀座の稲妻。板橋脳病院のコスモス。荻窪の朝霧。武蔵野の夕陽。思い出の暗い花が、ぱらぱら躍って、整理は至難であった。また、無理にこさえて八景にまとめるのも・・・ 太宰治「東京八景」
・・・ 植木を植えかえる季節は梅雨時に限るとか、蟻を退治するのには、こうすればよいとか、なかなか博識である。私たちより四十も多く夏に逢い、四十回も多く花見をし、とにかく、四十回も其の余も多くの春と夏と秋と冬とを見て来たのだ。けれども、こと芸術に関し・・・ 太宰治「もの思う葦」
・・・ 六月の二日か三日から稿を起こした。梅雨の降りしきる窓ぎわでは、ことに気が落ちついて、筆が静かな作の気分と相一致するのを感じた。そのくせ、その時分の私の生活は『田舎教師』を書くにはふさわしくない気分に満たされていた。焦燥と煩悶、それに病・・・ 田山花袋「『田舎教師』について」
・・・ 梅雨期が来ると一雨ごとに緑の毛氈が濃密になるのが、不注意なものの目にもきわ立って見える。静かな雨が音もなく芝生に落ちて吸い込まれているのを見ていると、ほんとうに天界の甘露を含んだ一滴一滴を、数限りもない若芽が、その葉脈の一つ一つを歓喜・・・ 寺田寅彦「芝刈り」
・・・ 東京の家に帰ったのは梅雨も過ぎて庭の樹に蝉の声を聞くころであった。されば始めて逢う他郷の暮春と初夏との風景は、病後の少年に幽愁の詩趣なるものを教えずにはいなかったわけである。 病院は町はずれの小高い岡の中腹に建てられていたので、病室の窓・・・ 永井荷風「十六、七のころ」
・・・ 六月下旬の或日、めずらしく晴れた梅雨の空には、風も凉しく吹き通っていたのを幸、わたしは唖々子の病を東大久保西向天神の傍なるその居に問うた。枕元に有朋堂文庫本の『先哲叢談』が投げ出されてあった。唖々子は英語の外に独逸語にも通じていたが、・・・ 永井荷風「梅雨晴」
一 枇杷の実は熟して百合の花は既に散り、昼も蚊の鳴く植込の蔭には、七度も色を変えるという盛りの長い紫陽花の花さえ早や萎れてしまった。梅雨が過ぎて盆芝居の興行も千秋楽に近づくと誰も彼も避暑に行く。郷里へ帰る。そして炎暑の明い寂寞が・・・ 永井荷風「夏の町」
・・・ 「あの木立は枝を卸した事がないと見える。梅雨もだいぶ続いた。よう飽きもせずに降るの」と独り言のように言いながら、ふと思い出した体にて、吾が膝頭を丁々と平手をたてに切って敲く。「脚気かな、脚気かな」 残る二人は夢の詩か、詩の夢か、ちょと解・・・ 夏目漱石「一夜」
・・・ 両方だんだんぶっつかるとそこが梅雨になるんだ。日本が丁度それにあたるんだからね、仕方がないや。けれどもお前達のところは割合北から西へ外れてるから、梅雨らしいことはあんまりないだろう。あんまりサイクルホールの話をしたから何だか頭がぐるぐるしち・・・ 宮沢賢治「風野又三郎」
・・・ ぴったりと吸いよせられて、その肩のあたりや横顔をぼんやり浮上らせている列にそって顔から顔へ視線が行くと、これらの心がどんな気持で観ているであろうと、梅雨のいきれがひとしお身近に感じられた。若くて寡婦になったひと、その良人の肖像は幼い娘や息子・・・ 宮本百合子「雨の昼」
・・・ 冬の寒いとき、そして最も日本的な梅雨のふりつづくとき、撮影もしにくい光線と湿気との中で、ゴム長靴マント姿の学童たちの生活はどのように営まれているか。交通事故の防止のために市が子供らに払っている注意、子供ら自身の身につけている訓練。それらの・・・ 宮本百合子「映画の語る現実」
・・・ 梅雨期の前でよく雨が降った。中川は十日に一度ぐらいの割で、或る時はゴム長をはいてやって来た。同じ金の問題である。「君は、さすがに女だよ。もちっと目先をきかして、善処したらいいじゃないか。心証がわるくなるばっかりで、君の損だよ」・・・ 宮本百合子「刻々」
・・・ 六 梅雨期が近づき出すと、ここの花園の心配はこの院内のことばかりではなくなって来た。麓の海村には、その村全体の生活を支えている大きな漁場がひかえていた。上に肺病院を頂いた漁場の魚の売れ行きは拡大するより、縮小す・・・ 横光利一「花園の思想」
 
 

 

●「梅雨」がつく季語
梅雨の季語…時期を表わす言葉
「梅雨」の季語と言えばまず、「梅雨(つゆ・ばいう)」がありますね。これに付随して、長梅雨、走り梅雨、迎え梅雨、送り梅雨、戻り梅雨、といった時期を表わす言葉があります。「梅雨」は梅の実が熟すころの雨だから、という説と湿気が多く黴(かび)が発生しやすいから「黴雨(ばいう)」を季節の植物に読み替えて「梅雨」となった説があります。どちらが先かはわかりませんが、どちらも当てはまるところに昔の人の知恵を感じますね。
このほか梅にちなんで、「青梅雨」という季語もあります。
また、「梅の雨」という言い方が芭蕉の句に残っています。
『降る音や耳も酸うなる梅の雨(ふるおとやみみもすうなるうめのあめ)』 芭蕉
降る音を聞いて梅の酸っぱさを耳で感じる…五感と季語のブレンド具合が絶妙です。見るではなく、聞く。口の中ではなく、耳で「梅雨」という季節を表わすとは、さすが巨匠です。
梅雨の季語…一日の中で見つける言葉
朝から晩まで、一日の空に見る季語に、「梅雨夕焼け」、「梅雨の雲」、「梅雨の月」、「梅雨の星」などがあります。
例えば「梅雨夕焼け」…夕焼けは夏の季語です。立夏を過ぎ夏に入ったこの時期なら単に「夕焼け」でも通じるのですが、頭に「梅雨」をつけるだけで雨上がりの、または梅雨の晴れ間の夕方の雰囲気が伝わってきますね。雲も、梅雨の…とつくことで今にも雨が降り出しそうな厚い湿った雲が連想されますし、月や星にも空気中の湿気により、しっとりとした佇まいが漂います。
また、梅雨時の夜空を表わす「梅雨の闇」という季語には、より濃い夜が感じられますし、「梅雨晴れ」には幾日も続いた雨から覚めたような嬉しさが表れていますね。しかし、梅雨晴れも長く続くと「旱梅雨(ひでりづゆ)」と、湿気はおろか乾燥しきった状態に…こんな日が続いたあとの雨はまさに「喜雨(きう)」と呼ばれています。
四季と雨は仲良し? 梅雨はグローバル?
このように、夏の中でも梅雨は特別なものとして扱われてきました。梅雨入り・梅雨明けなどの言葉もその時期を重要に考えていたからこそ、生まれたのではないか…とさえ思えてきます。実際、四季を彩るさまざまな草花や景色は、太陽と雨のバランスがあってこその自然美です。
さて、この微妙な季節…海外の方にどう説明しましょうか?実は「baiu」と言うのがいちばん通じやすいのだそうです。「rainy season」は雨季であって、梅雨とは異なる季節感であることを私たち日本人がまず認識しておきたいものですね…その一方で、昨今の雨の降り方には雨季に近い激しさがあるのが心配です。とりあえず今は、この季節を楽しみながら過ごしたいものですね。
『軒先のあまつぶ愛し梅雨晴れ間』 柊花
 
 

 

●梅雨(つゆ) 仲夏
子季語 / 梅雨(ばいう)、黴雨、梅の雨、梅霖、青梅雨、荒梅雨、梅雨じめり、梅雨前線、梅雨時、ついり、五月曇
関連季語 / 五月雨、梅雨晴、梅雨雷、梅雨曇、空梅雨、迎へ梅雨、送り梅雨
六月ごろ、ひと月にわたって降りつづく長雨。さみだれのこと。ちょうど梅の実の熟れるころなので梅雨ともいう。梅雨の季節をさすこともある。(来歴) 『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。梅雨前線は、五月なかごろ、太平洋上で発生した高気圧が、洋上に張り出した大陸の高気圧とぶつかって発生し、太平洋高気圧の発達とともにしだいに押し上げられて、日本列島に近づく。六月中旬頃には日本列島に沿って横たわる形で停滞し、北海道と小笠原諸島を除く日本各地に大量の雨をもたらす。
降る音や耳もすう成る梅の雨    芭蕉 「続山の井」
折釘の笠に雫や梅雨の中   可幸 「古選」
焚火してもてなされたる入梅哉   白雄 「白雄句集」
梅雨晴れや蜩鳴くと書く日記   正岡子規 「子規句集」
梅雨眠し安らかな死を思ひつゝ   高浜虚子「六百五十句」
樹も草もしづかにて梅雨はじまりぬ   日野草城 「旦暮」
梅雨荒し泰山木もゆさゆさと   日野草城 「旦暮」
抱く吾子も梅雨の重みといふべしや   飯田龍太 「百戸の谿」
梅雨の傘たためば水の抜け落つる   長谷川櫂 「天球」
五月雨をあつめて早し最上川   芭蕉 「奥のほそ道」
五月雨の降残してや光堂   芭蕉 「奥のほそ道」
さみだれの空吹おとせ大井川   芭蕉 「真蹟懐紙」
五月雨に御物遠や月の顔   芭蕉 「続山の井」
五月雨も瀬ぶみ尋ぬ見馴河   芭蕉 「大和巡礼」
五月の雨岩ひばの緑いつまでぞ   芭蕉? 「向之岡」
五月雨や龍頭揚る番太郎   芭蕉? 「江戸新道」
五月雨に鶴の足みじかくなれり   芭蕉 「東日記」
髪はえて容顔蒼し五月雨   芭蕉 「続虚栗」
五月雨や桶の輪切る夜の声   芭蕉 「一字幽蘭集」
五月雨にかくれぬものや瀬田の橋   芭蕉 「曠野」
五月雨は滝降うづむみかさ哉   芭蕉 「荵摺」
五月雨や色紙へぎたる壁の跡   芭蕉 「嵯峨日記」
日の道や葵傾くさ月あめ   芭蕉 「猿蓑」
五月雨や蠶(かいこ)煩ふ桑の畑   芭蕉 「続猿蓑」
さみだれやとなりへ懸る丸木橋   素龍 「炭俵」
さみだれや大河を前に家二軒   蕪村 「蕪村句集」
五月雨や魚とる人の流るべう   高浜虚子「五百句」
さみだれや青柴積める軒の下   芥川龍之介 「澄江堂句集」  
 
 

 

●梅雨の季語
入梅(にゅうばい)
梅雨に入ることで、年によって日にちは異なる。梅雨入りははっきりしないので、薄曇り細々とした雨が降る日が重なって、いつしか梅雨入りとなっていることも多い。対して梅雨明けは雷鳴を伴い、その後快晴になりはっきりとわかる場合が多い。梅雨入り、梅雨明けともに気象庁により発表される。
古暦の雑節の「入梅」は立春から127日目、6月の11、12日頃にあたり、その後の30日間が梅雨になる。農作業の目安として用いられた。
梅雨に入る(つゆにいる)、梅雨入り、梅雨はじまる、梅雨の気配
焚火してもてなされたるついりかな 白雄
桑の木に桑茸生ふるついりかな 西山泊雲
世を隔て人を隔てゝ梅雨に入る 高野素十
樹も草もしづかにて梅雨はじまりぬ 日野草城
梅雨寒(つゆさむ)
梅雨の頃に低温になること。梅雨の時期には時折、北からのオホーツク海気団の勢力が強くなり、気温が下がり冷雨となる。梅雨寒が続くと、冷害を引き起こすこともある。
梅雨寒し(つゆさむし)、梅雨冷(つゆびえ)、寒き梅雨
とびからす病者に啼いて梅雨寒し 石橋秀野
梅雨冷や崖田にねまる出羽の山 角川源義
よるべなう螻蛄(けら)も水掻く梅雨寒き 金尾梅の門
しみじみと見て梅雨寒の田の面かな 牧瀬蟬之助
梅雨明(つゆあけ)
日本全土を蔽っていた梅雨前線も、次第に北上して沖縄から梅雨明けとなる。気象庁では梅雨明け宣言が出される。梅雨明け前には、多く雷鳴を伴った豪雨がある。農作業の目安として用いられた古暦の上では、入梅(6月11、12日)の後30日で梅雨明け(7月11、12日)とされた。
梅雨あがる、梅雨のあと
山の上に梅雨あけの月出でにけり 岡本癖三酔
梅雨明けぬ猫が先づ木に駈け登る 相生垣瓜人
梅雨明けをよろこぶ蝶の後をゆく 杉山岳陽
庭石に梅雨明けの雷ひびきけり 桂信子
梅雨空(つゆぞら)
梅雨の空一面、灰色の雨雲におおわれている空模様のこと。
梅雨の空、梅天(ばいてん)、五月空(さつきぞら)
梅雨空の月あるらしき雲明り 五百木瓢亭
梅天の蝶影となり羽となり 高木晴子
梅雨空に常より早くマストの灯 遠藤ゆきあき
梅雨の月(つゆのつき)
梅雨の時期に出る月。晴れて明るい月の見える時もあれば、曇っていてぼんやりとした明かりが見える時もある。
梅雨時の、雨気のこもった空の月である。
樅の芽を花とは見せつ梅雨の月 水原秋桜子
わが庭に椎の闇あり梅雨の月 山口青邨
梅雨の月障子あければなかりけり 岡田耿陽
翡翠に梅雨月ひかりはじめけり 飯田龍太
梅雨の月雲脱ぎ捨てゝなほ淡し 西谷しづ子
乾坤の闇一痕の梅雨の月 福田蓼汀
 
 

 

梅雨の星(つゆのほし)
梅雨の夜空の雲間から見える星。雲間からもれるように星の光が見えることもあれば、晴れ上がった梅雨空に見えることもある。雨雲にずっとおおわれている時期なので、星が見えた時の感慨も深まる。傍題の麦星、麦熟れ星とは、うしかい座の一等星アークトゥルスのことで、「さみだれぼし」などの和名を持つ。うしかい座のアークトゥルス、おとめ座のスピカ、しし座のデネボラで、春の大三角を形成している。
麦星(むぎぼし)、麦熟れ星(むぎうれぼし)
むささびや杉にともれる梅雨の星 水原秋櫻子
梅雨の星闇へピンセットで飾る 若木一朗
ドラセナの葉の隙洩るる梅雨の星 小林謙光
黒南風(くろはえ)
「はえ」とは南風のことで、梅雨の時期に、暗い梅雨空を吹く南風のことを「黒南風(くろはえ)」という。伊豆・鳥羽地方の船詞(ふなことば)でもある。また、梅雨半ばの強い南風を「荒南風(あらはえ)」という。
くろばえ、荒南風(あらはえ)
和歌の浦あら南風鳶を雲にせり 飯田蛇笏
黒南風に水汲み入るゝ戸口かな 原石鼎
黒ばえの宇治の山裾鷺渡る 野村泊月
梅雨が明けてからの南風を白南風(しろはえ)といいます。
ながし
梅雨の頃に吹く南風のことで、「ながし南風」ともいい、九州地方では梅雨そのものにもいう。湿気が多く蒸し暑い。
ながし南風(ながしはえ)
葦咲いて蜑(あま)の通い路ながし吹く 飯田蛇笏
瀬田川の舟出はらへるながしかな 織田烏不関
走り梅雨(はしりづゆ)
本格的に梅雨入りする前の5月末頃に、梅雨のようなぐずついた雨模様になること。
前梅雨(まえづゆ)、迎え梅雨(むかえづゆ)、梅雨の走り
書架の書の一つ逆しまはしり梅雨 林翔
走り梅雨古表札のまづ濡れて 小林清之介
五位鷺の声したたるや走梅雨 市村究一郎
擂鉢に胡麻の残り香走り梅雨 児玉輝代
梅雨(つゆ)
毎年6月ごろに、曇りや雨が一ヶ月ほど続く期間のこと。梅雨前線によってもたらされる。梅の実が黄熟する頃に降るので梅雨(ばいう)といい、黴が生えやすくなるために黴雨(ばいう)とも書く。
梅雨(ばいう)、黴雨(ばいう)、梅雨前線(ばいうぜんせん)、梅雨時(つゆどき)、梅雨寒(つゆさむ)、梅雨冷(つゆびえ)、青梅雨(あおつゆ)、黄梅雨(きづゆ…夏至の前に降る雨)ついり、梅霖(ばいりん)、梅の雨、梅雨空(つゆぞら)、梅天(ばいてん)、五月空(さつきぞら)、梅雨雲(つゆぐも)、五月雲(さつきぐも)、梅雨曇(つゆぐもり)、五月曇(さつきぐもり)、荒梅雨(あらづゆ)、空梅雨(からつゆ)、旱梅雨(ひでりつゆ)
筍梅雨(たけのこづゆ)、筍黴雨(たけのこづゆ)は「筍流し(たけのこながし)」の傍題で、筍の生える頃に吹く湿った南風のことです。
菖蒲酢もまじるや軒の梅の雨 貞徳
降音や耳もすふ成梅の雨 芭蕉
夕立のかしら入れたる梅雨かな 丈草
荒梅雨や山家の煙這ひまはる 前田普羅
万華鏡めきて尾燈や梅雨の街 阿波野青畝
梅雨とべり寺の大屋根うち煙り 高浜年尾
さよならと梅雨の車窓に指で書く 長谷川素逝
 
 

 

青梅雨(あおつゆ)
新緑に降る梅雨。梅雨に濡れた新緑の青々しさが一層感じられる言葉である。
青梅雨の雲しりぞけつ白鷺城 水原秋櫻子
青梅雨や幾千の鷺子を守る 島村元
青梅雨の墓場を通らねばならぬ 岡部弾丸
空梅雨(からつゆ)
梅雨の時期に雨がほとんど降らないこと。梅雨前線がはるか南に停滞したり、早めに北上してしまったりして夏が来ると空梅雨になる。旱梅雨(ひでりつゆ)ともいい、田植えの時期に田が干からびてしまったり、野菜が枯れたりなどの害を及ぼすこともある。
涸梅雨(かれつゆ)、旱梅雨(ひでりつゆ)、乾梅雨(からつゆ)
空梅雨に秋めく風や萩の上 籾山梓月
空梅雨の日輪病みて鶏鳴けり 高橋淡路女
空梅雨の月煌々とかなしけれ 深見けん二
五月雨(さみだれ)
六月(陰暦の五月)に降る長雨のことで、梅雨と同じ。梅雨が主にその時期を指すのに対し、五月雨は雨そのものを指す言葉である。
五月雨(さつきあめ)、さみだるる、五月雨雲(さみだれぐも)、五月雨傘(さみだれがさ)
五月雨や天下一枚うち曇り 宗因
五月雨の降りのこしてや光堂 芭蕉
五月雨をあつめて早し最上川 芭蕉
空も地もひとつになりぬ五月雨 杉風
うきくさも沈むばかりよ五月雨 蕪村
五月雨や田中に動く人一人 蓼太
五月雨の夜は音もせで明にけり 几董
五月雨や十里の杉の梢より 大谷句仏
のみさしの茶の冷たさよ五月雨 高村光太郎
さみだれのさゞなみ明り松の花 渡辺水巴
送り梅雨(おくりづゆ)
梅雨が明けるころになって、強い雨が降ること。梅雨を送り出すような雨で、雷鳴を伴うこともある。梅雨が明けたころにまた梅雨の雨が戻ることを、返り梅雨、戻り梅雨という。
返り梅雨(かえりづゆ)、戻り梅雨(もどりづゆ)
塩浜の夕べ明りや送り梅雨 岡本圭岳
七月の面暗しや返り梅雨 石塚友二
鐘撞いて僧が傘さす送り梅雨 森澄雄
薬降る(くすりふる)
陰暦5月5日を薬日といい、この日の午の刻(正午前後2時間)に降る雨のことをいう。竹の節にたまった水は神水で薬効があると伝えられ、竹の筒に雨水をためたもので薬を溶くのに用いられた。また、この日に雨が降ると、よく年は五穀豊穣と言われた。
神水(しんすい)
くすり降るよと手に額にうけとむる 塩崎緑
目のとどくかぎり津の国薬降る 宇多喜代子
薬降る宇陀の安騎野は佳き香せり 大石悦子
 
 

 

虎が雨(とらがあめ)
陰暦5月28日は曽我兄弟が討たれた日で、この日に降る雨のことを虎が雨という。兄の十郎祐成の愛人で大磯の遊女、虎御前の涙が雨になったと言い伝えられている。
虎が涙雨(とらがなみだあめ)、曽我の雨(そがのあめ)
草子見て涙たらすや虎が雨 路通
虎が雨晴れて小磯の夕日かな 内藤鳴雪
ひとたびの虹のあとより虎が雨 阿波野青畝
虹(にじ)
雨後の大気中の細かい水滴に太陽光が当たると、スペクトルである7色に分かれて虹が現れる。夏の夕立の後に現れることが多いので、夏の季語となった。虹の外側にもう一つ、副虹が見えることもあり、二重虹(ふたえにじ)という。
二重虹(ふたえにじ)、朝虹(あさにじ)、夕虹(ゆうにじ)、虹の輪(にじのわ)、虹の橋(にじのはし)、虹の帯(にじのおび)、虹の梁(にじのはり)
虹立ちて忽ち君の在る如し 高浜虚子
虹消えて忽ち君の無き如し 高浜虚子
虹の環の大きしづけさ湖底より 山口素堂
水平線の虹が捧ぐる朝の空 沢木欣一
梅雨雷(つゆかみなり)
梅雨の頃に鳴る雷のこと。梅雨の終わりに多いが、梅雨の期間中の雷すべてを梅雨雷と称する。
梅雨の雷(つゆのらい)
正直に梅雨雷の一つかな 一茶
梅雨の雷いま脳天を渡りくる 石川桂郎
梅雨の雷黴くさき廊うちひゞき 加藤楸邨
梅雨曇(つゆぐもり)
梅雨時の曇り。空一面梅雨の雲におおわれ、今にも雨が降りそうな状態。
ついり曇(ついりぐもり)、梅雨雲(つゆぐも)
小鴉の餌ふふむ声や梅雨曇 大谷句仏
荒海も今日は静かに梅雨ぐもり 池内たけし
絹機の管つや光る梅雨曇 石昌子
梅雨晴(つゆばれ)
梅雨の晴れ間、梅雨の中休みといわれるように、梅雨の最中の晴天のこと。雨の季節の晴れ間を喜ぶ気持ちが込められている。本来は梅雨が明けて晴天が続くようになったことをいう言葉であった。
梅雨晴間(つゆはれま)、梅雨の晴(つゆのはれ)、梅雨晴る(つゆはる)
入梅晴れや二軒並んで煤払ひ 一茶
梅雨晴や小村ありける峠口 水原秋櫻子
建てましのそこだけ夕日梅雨晴るゝ 永井東門居
師の浅間梅雨晴間得て見に出づる 富安風生
 
 

 

五月晴(さつきばれ)
五月を「さつき」と読む場合は陰暦の五月を指すので、梅雨の季節の晴れ間を指す言葉であった。今では梅雨前の陽暦五月の清々しい晴れに使われることも多く、そのまま定着している。その場合、「ごがつばれ」とも読む。
俳句では元の意味で使われることが多い。
朝虹は伊吹に凄し五月晴れ 麦水
抱きおこす葵の花やさ月ばれ 蝶夢
うれしさや小草影もつ五月晴 正岡子規
倒さ富士まこと湖にあり五月晴 赤星水竹居
五月晴置けるが如き土手の家 藤田耕雪
梅雨穴(つゆあな)
梅雨の頃、降り続いた雨によって地面が陥没し、そこから水が噴き出したりすること。地盤の緩いところや、湿潤の地で多く起こる、梅雨の災害の一つである。
墜栗花穴(ついりあな)
わが掘りて梅雨穴ともなし置けり 相生垣瓜人
井水増す(いみずます)
梅雨に降り続く雨のために井戸水が増し、濁りを帯びて見えること。
濁り井(にごりい)
五月川(さつきがわ)
五月雨の降り続く梅雨に、水量が増した川のこと。
五月川心細く水まさりたる 正岡子規
はるかより見えて足下を五月川 樋口清紫
出水(でみず)
梅雨時の大雨や集中豪雨により、河川が氾濫すること。なお、秋の台風による出水は秋出水という。
夏出水(なつでみず)、梅雨出水(つゆでみず)、出水川(でみずがわ)、水害(すいがい)
田の上を小舟行くなり梅雨出水 青木月斗
出水や牛引出づる真暗闇 村上鬼城
出水して森の奥なる月明り 中川宗淵
草のさき出て吹かるる梅雨出水 山上樹実雄
線路一つ出水の街を区切りけり 前田野生子
 
 

 

皐月波(さつきなみ)
陰暦5月ころの海に立つ波のこと。梅雨に入っており、荒南風(あらはえ)という強い南風により、海は荒れることが多い。
五月波(さつきなみ)
夏合羽(なつがっぱ)
江戸時代に、夏の雨降りの時に着た一重の合羽のこと。葛布や芭蕉布で作られ、のちに川越平が用いられ、富裕な町人の男性専用の雨具であった。
蒼朮を焼く(そうじゅつをやく)
薬用植物のおけら(うけら)の根茎を乾燥したものを蒼朮といい、梅雨の時季にこれを焼いて、室内の湿気を払った。
うけら焼く、おけら焼く、蒼朮を焚く(そうじゅつをたく)
をけら焚く香にもなれつつ五月雨 居然
蒼朮を焚きひそやかにすまひけり 清原枴童
蒼朮はけむりと灰になりにけり 阿波野青畝
水見舞(みずみまい)
洪水や浸水などの水害にあった知人を見舞うこと。また被害のあるなしにかかわらず、安否を問い合わせたりすることも含める。
神水(しんすい)
陰暦5月5日の午の刻に降った雨水が竹の節にたまったもの。薬効があると伝えられた。
しんずい、神水取る(しんずいとる)、竹の神水(たけのたまりみず)
 
 

 

川止め(かわどめ)
昔は出水によって川越えが危険な状況の時、その川を渡ることが禁じられることを川止めといった。梅雨時に最も多いため、夏の季語となっている。
川づかえ、川どまり
川止やつれづれに呼ぶ琵琶法師 伊藤松宇
雨蛙(あまがえる)
雨が降り出すとよく鳴き始めるのでこの名がついた。3cmほどの小さい蛙で、ふつうは緑色をしているが、周りの色にあわせて褐色になることもある。足先の吸盤で枝に吸い付いているところから、枝蛙(えだかわず)ともいう。
青蛙(あおがえる)、枝蛙(えだかわず)
村雨に出づるや須磨のあま蛙 信徳
雨蛙黒き仏の宙に鳴く 山口誓子
朴の葉にころがる雨や枝蛙 木津柳芽
青蛙鳴くや晴天湿りだす 田中鬼骨
蝸牛(かたつむり)
らせん状の殻を負い、頭に長短二対の触覚があり伸縮する陸生の巻貝。童謡に唄われていることもあり、人々に親しまれている。湿気を好むので梅雨に盛んに発生する。
かたつむり、かたつぶり、ででむし、でんでん虫、まいまい
文七にふまるな庭のかたつぶり 其角
白露や角に目を持つかたつぶり 嵐雪
ころころと笹こけ落ちし蝸牛 杉風
やさしさは殻透くばかり蝸牛 山口誓子
かたつむり日月遠くねむりたる 木下夕爾
花の香へ蝸牛角伸し殻も揺り 香西照雄
紫陽花(あじさい)
梅雨の期間に咲く紫陽花は、色が徐々に変化することから七変化とも呼ばれる。日本原産のガクアジサイの園芸種。花びらのように見えるのは萼で、中心に小さな花がある。
あずさい、手毬花(てまりばな)、四葩の花(よひらのはな)、七変化(しちへんげ)、八仙花(はっせんか)、かたしろぐさ、刺繍花(ししゅうばな)、瓊花(たまばな)
あぢさゐや澄み切ってある淵の上 蒼虬
紫陽花やはなだにかはるきのうけふ 正岡子規
紫陽花や白よりいでし浅みどり 渡辺水巴
水暗しあぢさゐの花映り澄む 野村泊月
紫陽花の浅黄のまゝの月夜かな 鈴木花蓑
あぢさゐの藍をつくして了りけり 安住敦
あぢさゐのどの花となく雫かな 岩井英雅  
 
 

 


 
 
 

 

 
 
 

 

●梅雨
(つゆ、ばいう) 北海道と小笠原諸島を除く日本、朝鮮半島南部、中国の南部から長江流域にかけての沿海部、および台湾など、東アジアの広範囲においてみられる特有の気象現象で、5月から7月にかけて来る曇りや雨の多い期間のこと。雨季の一種である。
●東アジアの四季変化における梅雨​
気候学的な季節変化を世界と比較したとき、東アジアでは春夏秋冬に梅雨を加えた五季、また日本に限るとさらに秋雨を加えた六季の変化がはっきりと表れる。
東アジアでは、春や秋は、温帯低気圧と移動性高気圧が交互に通過して周期的に天気が変化する。一方、盛夏期には亜熱帯高気圧(太平洋高気圧)の影響下に入って高温多湿な気団に覆われる。そして、春から盛夏の間と、盛夏から秋の間には、中国大陸東部から日本の東方沖に前線が停滞することで雨季となる。この中で、春から盛夏の間の雨季が梅雨、盛夏から秋の間の雨季が秋雨である。なお、梅雨は東アジア全体で明瞭である一方、秋雨は中国大陸方面では弱く日本列島方面で明瞭である。また、盛夏から秋の間の雨季の雨の内訳として、台風による雨も無視できないほど影響力を持っている。
梅雨の時期が始まることを梅雨入りや入梅(にゅうばい)といい、社会通念上・気象学上は春の終わりであるとともに夏の始まり(初夏)とされる。なお、日本の雑節の1つに入梅(6月11日頃)があり、暦の上ではこの日を入梅とするが、これは水を必要とする田植えの時期の目安とされている。また、梅雨が終わることを梅雨明けや出梅(しゅつばい)といい、これをもって本格的な夏(盛夏)の到来とすることが多い。ほとんどの地域では、気象当局が梅雨入りや梅雨明けの発表を行っている。
梅雨の期間はふつう1か月から1か月半程度である。また、梅雨期の降水量は九州では500mm程度で年間の約4分の1・関東や東海では300mm程度で年間の約5分の1ある。西日本では秋雨より梅雨の方が雨量が多いが、東日本では逆に秋雨の方が多い(台風の寄与もある)。梅雨の時期や雨量は、年によって大きく変動する場合があり、例えば150mm程度しか雨が降らなかったり、梅雨明けが平年より2週間も遅れたりすることがある。そのような年は猛暑・少雨であったり冷夏・多雨であったりと、夏の天候が良くなく気象災害が起きやすい。
東アジアは中緯度に位置している。同緯度の中東などのように亜熱帯高気圧の影響下にあって乾燥した気候となってもおかしくないが、大陸東岸は夏季に海洋を覆う亜熱帯高気圧の辺縁部になるため雨が多い傾向にある。これは北アメリカ大陸東岸も同じだが、九州では年間降水量が約2,000mmとなるなど、熱帯収束帯の雨量にも劣らないほどの雨量がある。この豊富な雨量に対する梅雨や秋雨の寄与は大きい。梅雨が大きな雨量をもたらす要因として、インドから東南アジアへとつながる高温多湿なアジア・モンスーンの影響を受けている事が挙げられる。
時折、梅雨は「雨がしとしとと降る」「それほど雨足の強くない雨や曇天が続く」と解説されることがある。これは東日本では正しいが、西日本ではあまり正しくない。梅雨の雨の降り方にも地域差があるためである。特に西日本や華中(長江の中下流域付近)では、積乱雲が集まった雲クラスターと呼ばれる水平規模100km前後の雲群がしばしば発生して東に進み、激しい雨をもたらすという特徴がある。日本本土で梅雨期にあたる6-7月の雨量を見ると、日降水量100mm以上の大雨の日やその雨量は西や南に行くほど多くなるほか、九州や四国太平洋側では2カ月間の雨量の半分以上がたった4-5日間の日降水量50mm以上の日にまとまって降っている。梅雨期の総雨量自体も、日本本土では西や南に行くほど多くなる。
●名称​
漢字表記「梅雨」の語源としては、この時期は梅の実が熟す頃であることからという説や、この時期は湿度が高くカビが生えやすいことから「黴雨(ばいう)」と呼ばれ、これが同じ音の「梅雨」に転じたという説、この時期は「毎」日のように雨が降るから「梅」という字が当てられたという説がある。普段の倍、雨が降るから「倍雨」というのはこじつけ(民間語源)である。このほかに「梅霖(ばいりん)」、旧暦で5月頃であることに由来する「五月雨(さみだれ)」、麦の実る頃であることに由来する「麦雨(ばくう)」などの別名がある。
なお、「五月雨」の語が転じて、梅雨時の雨のように、物事が長くだらだらと続くことを「五月雨式」と言うようになった。また梅雨の晴れ間のことを「五月晴れ(さつきばれ)」というが、この言葉は最近では「ごがつばれ」とも読んで新暦5月初旬のよく晴れた天候を指すことの方が多い。気象庁では5月の晴れのことを「さつき晴れ」と呼び、梅雨時の晴れ間のことを「梅雨の合間の晴れ」と呼ぶように取り決めている。五月雨の降る頃の夜の闇のことを「五月闇(さつきやみ)」という。
地方名には「ながし」(鹿児島県奄美群島)、「なーみっさ」(喜界島での別名)がある。沖縄では、梅雨が小満から芒種にかけての時期に当たるので「小満芒種(スーマンボースー、しょうまんぼうしゅ)」や「芒種雨(ボースーアミ、ぼうしゅあめ)」という別名がある。
中国では「梅雨(メイユー)」、台湾では「梅雨(メイユー)」や「芒種雨」、韓国では「장마(チャンマ)」という。中国では、古くは「梅雨」と同音の「霉雨」という字が当てられており、現在も用いられることがある。「霉」はカビのことであり、日本の「黴雨」と同じ意味である。中国では、梅が熟して黄色くなる時期の雨という意味の「黄梅雨(ファンメイユー)」もよく用いられる。
●メカニズムと経過​
気団​
梅雨の時期には、以下の4つの気団が東アジアに存在する。
〇 揚子江気団
中国北部・モンゴルから満州にかけての地域に存在。暖かく乾燥した大陸性の気団。移動性高気圧によって構成される。
〇 オホーツク海気団
オホーツク海に存在。冷たく湿った海洋性の気団。
〇 熱帯モンスーン気団
インドシナ半島・南シナ海から南西諸島近海にかけての地域に存在。暖かく非常に湿った海洋性の気団。インド洋の海洋性気団の影響を強く受けている。
〇 小笠原気団
北太平洋西部に存在。高温・多湿で海洋性の気団。
春から夏に季節が移り変わる際、東アジアでは性質の違うこれらの気団がせめぎ合う。中国大陸方面と日本列島・朝鮮半島方面ではせめぎ合う気団が異なる。
中国大陸方面 : 北の揚子江気団と南の熱帯モンスーン気団が接近し、主に両者の湿度の差によって停滞前線が形成される。
日本列島・朝鮮半島方面 : 北のオホーツク海気団と南の小笠原気団が接近し、主に両者の温度の差により、停滞前線が形成される。
性質が似ていることや、距離が離れていて干渉が少ないことなどから、北側の気団同士・南側の気団同士の間には、前線は形成されない。
北と南の気団が衝突した部分には東西数千kmに渡って梅雨前線(ばいうぜんせん)ができ、数か月に渡って少しずつ北上していく。この前線付近では雨が降り続くが、長雨の期間は各地域で1か月–2か月にもなる。これが梅雨である。
梅雨前線の最初​
冬の間、シベリアから中国大陸にかけての広範囲を冷たく乾燥したシベリア気団が覆っている。シベリア気団はしばしば南下して寒波をもたらし、日本の日本海側に大雪を降らせるが、チベット高原では高い山脈が邪魔して気団がそれ以上南下できない。そのチベット高原の南側、インド-フィリピンにかけての上空を亜熱帯ジェット気流が流れる。
冬が終わり春が近づくにつれ、シベリア気団は勢力が弱くなり、次第に北上していく。代わって中国大陸には暖かく乾燥した揚子江気団ができ始め、勢力を強めていく。春になると、揚子江気団は東の日本列島や朝鮮半島などに移動性高気圧を放出し、これが偏西風に乗って東に進み、高気圧の間にできた低気圧とともに春の移り変わりやすい天候を作り出している。
春が終わりに差し掛かるにつれて、南シナ海付近にある熱帯モンスーン気団が勢力を増し北上してくる。すると、揚子江気団と熱帯モンスーン気団が衝突し始める。地上天気図でみると、揚子江気団からできた高気圧と熱帯モンスーン気団からできた高気圧が南シナ海上でせめぎあい、その間に前線ができていることがわかる。これが最初の梅雨前線である。
例年、華南や南西諸島南方沖付近では5月上旬頃に、梅雨前線のでき始めである雲の帯(専門的には準定常的な雲帯と呼ぶことがある)が発生する。
明瞭になる梅雨前線​
5月上旬には南西諸島も梅雨前線の影響を受け始める。5月中旬ごろになると、梅雨前線ははっきりと天気図上に現れるようになり、華南や南西諸島付近に停滞する。
一方、初夏に入った5月ごろ、亜熱帯ジェット気流も北上し、チベット高原に差し掛かる。ただし、チベット高原は上空を流れる亜熱帯ジェット気流よりもさらに標高が高いため、亜熱帯ジェット気流はチベット高原を境に北と南の2つの流れに分かれてしまう。
分かれた亜熱帯ジェット気流のうち、北側の分流は、樺太付近で寒帯ジェット気流と合流する。さらにこの気流は、カムチャツカ半島付近で南側の分流と合流する。この合流の影響で上空の大気が滞ると、下降気流が発生して、その下層のオホーツク海上に高気圧ができる。この高気圧をオホーツク海高気圧といい、この高気圧の母体となる冷たく湿った気団をオホーツク海気団という。
同じごろ、太平洋中部の洋上でも高気圧が勢力を増し、範囲を西に広げてくる。この高気圧は北太平洋を帯状に覆う太平洋高気圧の西端で小笠原高気圧ともいい、この母体となる暖かく湿った気団を小笠原気団という。
5月下旬から6月上旬ごろになると、九州や四国が梅雨前線の影響下に入り始める。このころから、梅雨前線の東部ではオホーツク海気団と小笠原気団のせめぎあいの色が濃くなってくる。一方、華北や朝鮮半島、東日本では、高気圧と低気圧が交互にやってくる春のような天気が続く。
北上する梅雨前線​
北上を続ける梅雨前線は、6月中旬に入ると、中国では南嶺山脈付近に停滞、日本では本州付近にまで勢力を広げてくる。
次に梅雨前線は中国の江淮(長江流域・淮河流域)に北上する。6月下旬には華南や南西諸島が梅雨前線の勢力圏から抜ける。7月に入ると東北地方も梅雨入りし、北海道を除く日本の本土地域が本格的な長雨に突入する。また同じころ、朝鮮半島南部も長雨の時期に入る。
7月半ばを過ぎると、亜熱帯ジェット気流がチベット高原よりも北を流れるようになり、合流してオホーツク海気団が弱まってくる。一方で、太平洋高気圧が日本の南海上を覆い続けて晴天が続くようになり、日本本土や朝鮮半島も南から順に梅雨明けしてくる。
こうして北上してきた梅雨前線は最終的に、北京などの華北・中国東北部に達する。例年、この頃には前線の勢力も弱まっており、曇天続きになることはあるが前線が居座り続けるようなことはほとんどない。また、8月中旬・下旬を境にしてこれ以降の長雨はいわゆる秋雨であり、前線の名前も秋雨前線に変わるが、前線の南北の空気を構成する気団は同じである。ただし、秋雨は中国大陸方面ではほとんど見られない。西日本でも秋雨はあるものの雨量はそれほど多くない。一方、東日本、および北日本(北海道除く)では梅雨期の雨量よりもむしろ秋雨期の雨量の方が多いという傾向がある(ただし、秋雨期の雨量には台風によるまとまった雨も含まれる)。
梅雨前線の性質​
性質の違う2つの空気(気団という)がぶつかる所は大気の状態が不安定になり、前線が発生する。梅雨前線を構成する気団はいずれも勢力が拮抗しているため、ほぼ同じ地域を南北にゆっくりと移動する停滞前線となる。
梅雨前線の南側を構成する2つの気団はともに海洋を本拠地とする気団(海洋性気団)のため、海洋から大量の水蒸気を吸収して湿潤な空気を持っている。ただ、北側の気団と南側の気団とではお互いの温度差が小さいため、通常はほとんどが乱層雲の弱い雨雲で構成される。そのため、しとしととあまり強くない雨を長時間降らせる。
しかし、上空の寒気や乾燥した空気が流入したり、台風や地表付近に暖かく湿った空気(暖湿流)が流入したりすると、前線の活動が活発化して、積乱雲をともなった強い雨雲となり、時に豪雨となる。
2つの高気圧がせめぎあい、勢力のバランスがほぼつり合っているとき、梅雨前線はほとんど動かない。しかし、2つの高気圧の勢力のバランスが崩れたときや、低気圧が近づいてきたり、前線付近に低気圧が発生したりしたときは一時的に温暖前線や寒冷前線となることもある。梅雨前線の活動が太平洋高気圧の勢力拡大によって弱まるか、各地域の北側に押し上げられ、今後前線の影響による雨が降らない状況になったとき、梅雨が終わったとみなされる。
梅雨入りの特定なしの年​
年によっては梅雨入りの時期が特定できなかったり、あるいは発表がされないこともある。東・西日本(特に四国地方・近畿地方・北陸地方)ではこのパターンが数年に一回の割合で起こる。これは、太平洋高気圧の勢力が強いために梅雨前線が北陸地方から北上して進みそのまま夏空に突入し、南の高気圧となって次第に南下していくパターンである(小暑を境にして、小暑以降はそのまま梅雨明けになる)。この場合でも、四国地方、近畿地方、北陸地方では高温や晴天がやや多くなるものの、概ね晴天が続く「夏」が訪れている。このことから、年によっては、近畿地方における(本当の)夏は北陸地方よりも長いとされている。
梅雨明けの特定なしの年​
年によっては梅雨明けの時期が特定できなかったり、あるいは発表がされないこともある。東北地方(特に北東北・南東北)、関東甲信地方ではこのパターンが数年に一度の割合で起こる。これは、オホーツク高気圧の勢力が強いために梅雨前線が東北地方から北上できずにそのまま秋に突入し、秋雨前線となって次第に南下していくパターンである(立秋を境にして、立秋以降の長雨を秋雨とする)。この場合でも、北の北海道では低温や曇天がやや多くなるものの、概ね晴天が続く「夏」が訪れている。このことから、年によっては、東北地方における(本当の)夏は北海道よりも短いとされている。
アジアモンスーンと梅雨​
梅雨前線は、気象学的にはモンスーンをもたらす前線(モンスーン前線)の1つである。インドをはじめとした南アジアや東南アジアのモンスーンは、インド洋や西太平洋に端を発する高温多湿の気流が原因である。世界最多の年間降水量を有する地域(インドのチェラプンジ)を含むなど、この地域のモンスーンは地球上で最も規模が大きく、広範囲で連動して発生していることから、総称してアジア・モンスーンと呼ばれる。またこの影響を受ける地域をモンスーン・アジアという。
アジア・モンスーンの影響範囲はさらに東にまで及んでおり、南シナ海を覆う熱帯モンスーン気団にも影響を与えている。具体的には、南西諸島や華南の梅雨の降雨の大部分が熱帯モンスーン気団によってもたらされるほか、太平洋高気圧の辺縁を時計回りに吹く気流が、この熱帯モンスーン気団の影響を受けた空気を日本・朝鮮半島付近まで運んできて雨を増強する。このような関連性を考えて、気象学では一般的に、梅雨がある中国沿海部・朝鮮半島・日本列島の大部分をモンスーン・アジアに含める。
また、梅雨前線付近の上空の大気をみると、冬の空気と春・秋の空気の境目となる寒帯前線、春・秋の空気と夏の空気の境目となる亜熱帯前線が接近して存在していて、梅雨は「季節の変わり目」の性質が強い。
●各地の梅雨​
日本​
〇 沖縄〜東北​
日本では各地の地方気象台・気象庁が、数個の都府県をまとめた地域ごとに毎年梅雨入り・梅雨明けの発表をする(北海道を除く)。まず、梅雨入り・梅雨明けしたと思われるその日(休日の場合は、以降最初の平日)に「速報値」として発表が行われ、その発表に従って「梅雨入りしたとみられる」・「梅雨明けしたとみられる」と報道される。その後、5月から8月の天候経過を総合的に検討し、毎年9月に最終的な梅雨の時期を「確定値」として発表する。その際、速報値での梅雨入り・梅雨明けの期日の修正が行われたり、最終的に「特定せず」という表現になることもある。一般に、南の地域ほど梅雨の到来は早く、沖縄は5月中旬から6月下旬、東北・北陸では6月下旬から7月下旬頃となるのが平均的である。
梅雨入りや梅雨明けの発表は通常、次のようにして行われる。各気象台は主に、1週間後までの中期予報とそれまでの天候の推移から、晴れが比較的多い初夏から曇りや雨の多い梅雨へと変わる「境目」を推定して、それを梅雨入りの日として発表している。端的には、管轄地域で曇りや雨が今後数日以上続くと推定されるときにその初日を梅雨入りとする。梅雨明けの場合は逆に晴れが数日以上つづくときである。中期予報の根拠になるのは、誤差が比較的少ないジェット気流などの上空の大気の流れ(亜熱帯ジェット気流と梅雨前線の位置関係は対応がよい)の予想などである。ただ、この中期予報自体が外れると、発表通りにいかず晴れたりする。梅雨入りや梅雨明けの発表は、確定したことを発表するのではなく、気象庁によれば「予報的な要素を含んでいる」ので、外れる場合もある。
ただし、梅雨前線が停滞したまま立秋を過ぎると、梅雨明けの発表はされない。立秋の時期はちょうど、例年梅雨前線がもっとも北に達するころであり、これ以降はどちらかといえば秋雨の時期に入る。しかし、この場合でも翌年には通常通り「梅雨入り」を迎えるが、「梅雨明けがないまま一年を越して重畳的にまた梅雨入りとなる」わけではない。つまり、梅雨明けがない場合は「はっきりと夏の天気が現れないまま梅雨から秋雨へと移行する」と考える。
梅雨期間の終了発表のことを俗に梅雨明け宣言という。基本的に、梅雨前線の北上に伴って南から北へ順番に梅雨明けを迎えるが、必ずしもそのようにならない場合もある。前線が一部地域に残存してしまうような場合には、より北の地方の方が先に梅雨明けになる場合もある。過去に、先に梅雨入りした中国地方より後に梅雨入りした北陸地方が先に梅雨明けしたり、関東地方の梅雨明けが西日本より大幅に遅れたりした例がある。
梅雨の末期は太平洋高気圧の勢力が強くなって等圧線の間隔が込むことで高気圧のへりを回る「辺縁流」が強化され、暖湿流が入りやすくなるため豪雨となりやすい。逆に梅雨明け後から8月上旬くらいまでは「梅雨明け十日」といって天候が安定することが多く、猛暑に見舞われることもある。
梅雨の期間はどの地方でも40日から50日前後と大差はないが、期間中の降水量は大きく異なる。本土では西や南に行くほど多くなり、東北よりも関東・東海・近畿、関東・東海・近畿よりも九州北部、九州北部よりも九州南部の方が多い。一方南西諸島では、石垣島や那覇よりも名瀬の方が期間降水量は多く、総合的に日本付近の梅雨期の雨量は九州南部が最も多い。
〇 北海道​
実際の気象としては北海道にも道南を中心に梅雨前線がかかることはあるが、平均的な気象として、つまり気候学的には北海道に梅雨はないとされている。これは、梅雨前線が北海道に到達する梅雨末期は勢力が衰え、北上する速度が速くなっていて、降水が長く続かず前線がかかっても曇りとなるだけで雨が降らないようなことが多いためである。 しかし、記録的猛暑となった2010年を境に、近年は北海道南西部を中心にゲリラ豪雨や梅雨前線が弱まらずに勢力を保持したまま北海道付近に停滞するといった例が顕著に現れるようになり、中でも平成30年には、梅雨前線の停滞による大雨で河川の氾濫など平成30年7月豪雨となって北海道各地で被害を及ぼした。
北海道の中でも南西部太平洋側(渡島・胆振・日高)では本州の梅雨末期に大雨が降る事がある。また、北海道の広い範囲でこの時期は低温や日照不足が起こりやすいほか、釧路など東部で海霧の日数が多くなるのも、東日本の梅雨と同じくオホーツク海高気圧の影響を受けている。特に、5月下旬から6月上旬を中心として見られる一時的な低温は、北海道ではリラ(ライラック)の花が咲く時期であることから俗に「リラ冷え」とも呼ぶ。また、このようにぐずついた肌寒い天気が、年によっては2週間程度、本州の梅雨と同じ時期に続くことがあり、「蝦夷梅雨」(えぞつゆ)と呼ばれることがある。
〇 小笠原諸島​
小笠原諸島が春から夏への遷移期にあたる5月には、気団同士の中心が離れているため前線が形成されず、雨が長続きしない。そして初夏を迎える6月頃より太平洋高気圧の圏内に入ってその後ずっと覆われるため、こちらも梅雨がない。
中国大陸部・台湾​
中国中部・南部、台湾でも梅雨がみられる。中国大陸部では各都市の気象台が、台湾では中央気象局が梅雨入りと梅雨明けの発表をおこなっている。ある研究では、1971年-2000年の各都市の梅雨入り・梅雨明けの平均値で、長江下流域の梅雨入りは6月14日、梅雨明けは7月10日、淮河流域の梅雨入りは6月18日、梅雨明けは7月11日となっている。
目安として、台湾や華南では5月中旬ごろに梅雨前線による長雨が始まり6月下旬ごろに終わる。時間とともにだんだんと長雨の地域は北に移り、6月中旬ごろから7月上旬ごろに華東(長江中下流域)、6月下旬ごろから7月下旬ごろに華北の一部が長雨の時期となる。長雨はそれぞれ1か月ほど続く。
朝鮮半島​
朝鮮半島では6月下旬ごろから7月下旬ごろに長雨の時期となり、1か月ほど続く。北にいくほど長雨ははっきりしないものになる。
●梅雨の気象の特徴​
梅雨入り前の5月-6月ごろ、梅雨に似た天候がみられることがあり、これを走り梅雨(はしりづゆ)、梅雨の走り(つゆのはしり)、あるいは迎え梅雨(むかえづゆ)と呼ぶ。
梅雨入り当初は比較的しとしととした雨が連続することが多い。梅雨の半ばには一旦天気が回復する期間が出現することがある。この期間のことを梅雨の中休み(つゆのなかやすみ)という。
梅雨の時期、特に、長雨の場合は、日照時間が短いため、気温の上下(最高気温と最低気温の差、日較差)が小さく、肌寒く感じることがある。この寒さや天候を梅雨寒(つゆざむ)または梅雨冷(つゆびえ)と呼ぶ。一方、梅雨期間中の晴れ間は梅雨晴れ(つゆばれ)または梅雨の晴れ間と呼ばれ、特に、気温が高く、湿度も高い。そのため、梅雨晴れの日は不快指数が高くなり過ごしにくく、熱中症が起こりやすい傾向にある。
梅雨末期には降雨量が多くなることが多く、ときとして集中豪雨になることがある。南および西ほどこの傾向が強く、特に、九州では十数年に1回程度の割合でこの時期に一年分の降水量がわずか一週間で降ることもある(熊本県・宮崎県・鹿児島県の九州山地山沿いが典型例)。逆に、関東や東北など東日本では梅雨の時期よりもむしろ秋雨の時期のほうが雨量が多い。
梅雨末期の雨を荒梅雨(あらづゆ)あるいは暴れ梅雨(あばれづゆ)とも呼ぶ。また、梅雨の末期には雷をともなった雨が降ることが多く、これを送り梅雨(おくりづゆ)と呼ぶ。また、梅雨明けした後も、雨が続いたり、いったん晴れた後また雨が降ったりすることがある。これを帰り梅雨(かえりづゆ、返り梅雨とも書く)または戻り梅雨(もどりづゆ)と呼ぶ。これらの表現は近年ではあまり使われなくなってきている。
梅雨明けが遅れた年は冷夏となる場合も多く、冷害が発生しやすい傾向にある。
梅雨は日本の季節の中でも高温と高湿が共に顕著な時期であり、カビや食中毒の原因となる細菌・ウイルスの繁殖が進みやすいことから、これらに注意が必要な季節とされている。
空梅雨​
梅雨の期間中ほとんど雨が降らない場合がある。このような梅雨のことを空梅雨(からつゆ)という。空梅雨の場合、夏季に使用する水(特に稲作に必要な農業用水)が確保できなくなり、渇水を引き起こすことが多く、特に青森、秋田、岩手の北東北地方においては空梅雨になる確率がかなり高く、また、秋季〜冬季の降水量が少ない北部九州や瀬戸内地方などでは、空梅雨の後、台風などによるまとまった雨がない場合、渇水が1年以上続くこともある。
陰性・陽性​
あまり強くない雨が長く続くような梅雨を陰性の梅雨、雨が降るときは短期間に大量に降り、降らないときはすっきりと晴れるような梅雨を陽性の梅雨と表現することもある。陰性の梅雨を女梅雨(おんなづゆ)、陽性の梅雨を男梅雨(おとこづゆ)とも呼ぶ。性差別的な表現であるが、俳句では季語として使われる場合がある。
傾向として、陰性の場合は、オホーツク海高気圧の勢力が強いことが多く、陽性の場合は、太平洋高気圧の勢力が強いことが多いが、偏西風の流路や、北極振動・南方振動(ENSO、エルニーニョ・ラニーニャ)なども関係している。
台風との関連​
台風や熱帯低気圧は地上付近では周囲から空気を吸い上げる一方、上空数千m-1万mの対流圏上層では吸い上げた空気を湿らせて周囲に大量に放出している。そのため、梅雨前線の近くに台風や熱帯低気圧が接近または上陸すると、水蒸気をどんどん供給された梅雨前線が活発化して豪雨となる。また、梅雨前線が、勢力が弱まった台風や温帯低気圧とともに北上して一気に梅雨が明けることがある。
梅雨の豪雨パターン​
梅雨の時期の大雨や豪雨の事例をみていくと、気圧配置や気象状況にある程度のパターンがあるといわれている。日本海側で豪雨になりやすいのが日本海南部に停滞する梅雨前線付近を低気圧が東に進むパターンで、低気圧に向かって南西から湿った空気が流れ込み、その空気が山脈にぶつかって局地的な豪雨となりやすい。
太平洋側で豪雨になりやすいのが、梅雨前線が長期的に停滞するパターンや、太平洋側付近に梅雨前線、西側に低気圧がそれぞれ停滞するパターンであり、南-南東から湿った空気が流れ込み、同じようにその空気が山脈にぶつかって局地的な豪雨となりやすい。
このほか、梅雨前線沿いにクラウドクラスター(楕円形の雲群をつくる降水セルの一種。)と呼ばれる積乱雲の親雲が東進すると、豪雨となりやすいことが知られている。上空の大気が乾燥している中国大陸や東シナ海で形成され、日本方面へやってくることが多い。
海洋変動との関連​
統計的にみて、赤道付近の太平洋中部-東部にかけて海水温が上昇・西部で低下するエルニーニョ現象が発生したときは、日本各地で梅雨入り・梅雨明け共に遅くなる傾向にあり、降水量は平年並み、日照時間は多めとなる傾向にある。また、同じく中部-東部で海水温が低下・西部で上昇するラニーニャ現象が発生したときは、沖縄で梅雨入りが遅めになるのを除き、日本の一部で梅雨入り・梅雨明けともに早くなる傾向にあり、降水量は一部を除き多め、日照時間はやや少なめとなる傾向にある。
●梅雨予想の目的​
日本の気象庁が梅雨入り・梅雨明けの情報提供を始めたのは1955年ごろとされ、「お知らせ」として報道機関に連絡していた。気象情報として発表を始めたのは1986年になってからである。
梅雨の時期を発表することにより、長雨・豪雨という水害・土砂災害につながりやすい気象が頻発する時期としての「梅雨」を知らせることで防災意識を高める、多雨・高温多湿が長続きする「梅雨」の時期を知らせることで生活面・経済面での対策を容易にする、「梅雨」という一種の季節の開始・終了を知らせることで季節感を明確にする(春一番、木枯らし、初雪などの発表と同様の役割)といった効果が期待されている。
●梅雨に関連する文化​
植物​
ツユクサ(梅雨草)
ツユアオイ(梅雨葵)
アジサイ - 梅雨の時期に咲く代表的な花。梅雨を表現する際に出てくることが多い。
楽曲​
雨(作詞:北原白秋、作曲:弘田龍太郎)
雨ふり(作詞:北原白秋、作曲:中山晋平)
雨ふりお月さん(作詞:野口雨情、作曲:中山晋平)
雨降り熊の子
てるてる坊主(作詞:浅原六朗、作曲:中山晋平)
かたつむり(唱歌)
五月雨(作詞・作曲・歌:大瀧詠一)
俳句​
五月雨を 集めて早し 最上川 (松尾芭蕉)
五月雨や 大河を前に 家二軒 (与謝蕪村)
●類似の気象現象​
菜種梅雨
おもに3月下旬から4月上旬にかけての、連日降りつづく寒々とした降雨を「菜種梅雨」(なたねづゆ)という。菜の花が咲くころに降るためこの名前があり、花を催す雨という意味で「催花雨」(さいかう)とも呼ばれる。梅雨のように何日も降り続いたり、集中豪雨をみたりすることは少ないが、やはり、曇りや雨の日が多く、すっきりしない天気が何日も続くことが多い。
また、「春の長雨」や「春霖(しゅんりん)」、「催花雨(さいかう) とも言う。「春霖」の「霖」は長雨を表す漢字であり、春の長雨を表している。「催花雨」は、桜をはじめいろいろな花を催す(咲かせる)雨という意味である。「春雨(はるさめ)」も、このころの雨を指して言う場合が多く、月形半平太の名せりふ「春雨じゃ、濡(ぬ)れてゆこう」も、草木の芽を張らせ花を咲かせる柔らかい春の雨だからこそ、粋(いき)に聞こえる。
なお、NHKで「菜種梅雨」を言うときには、必ず説明を付けるようにしている。冬の間、本州付近を支配していた大陸高気圧の張り出しや、移動性高気圧の通り道が北に偏り、一方で、その北方高気圧の張り出しの南縁辺に沿って、冷湿な北東気流が吹いたり、本州南岸沿いに前線が停滞しやすくなるために生ずる。そのときには南岸に小低気圧が頻繁に発生しやすくなるのもまた特色である。そのため、西-東日本太平洋沿岸部にかけていう場合が多く、北日本にはこの現象はみられない。近年は、暖冬傾向および、温暖化の影響もあり、菜種梅雨が冬に繰り上がるきらいがあり、気候の変動が懸念される面もある。
また、菜種梅雨は梅雨のようにずっと続くということはなく、期間は一日中あるいは数日程度のことがほとんどである。
例としては、1990年(平成2年)2月は月の後半を中心に曇雨天続きで、東京での同・月間日照時間は僅か81時間しかならず、大暖冬を象徴するかのようだった。また、1985年(昭和60年)には3月は月全体を通して関東以西の太平洋側地方では冷たい雨の連続で、東京では同年月での快晴日数は0(梅雨期である6、7月を除いては初のワースト記録)、日本気象協会発行の天気図日記では「暗い3月」と評される程であった。その他、1986年(昭和61年)、1988年(昭和63年)、1991年(平成3年)、1992年(平成4年)、1995年(平成7年)、1999年(平成11年)と3月が比較的長いこと曇雨天が持続した影響で、月間日照時間は北日本を除いてかなり少なかったため、20世紀末にかけての3月は、「菜の花の上にお日様無し」、「行楽受難・鬼門の月」、「花見には 傘など雨具が 必需品」、「卒業式、終業式、離任式はいつも雨」などと不名誉なレッテルが貼られたこともあった。その他、2002年(平成14年)、2006年(平成18年)には2月おわりから3月初めにかけて、南岸前線が停滞したり、朝晩中心に雨の降りやすいすっきりしない空が続いて、お天気キャスターの一部では「菜種梅雨の走り?」と評されたりもした。
走り梅雨
おもに5月下旬から梅雨本番前ぶれのように雨が降り続く状態をいう。ちょうど、その時期が卯の花が咲くころにあたり、卯の花を腐らせるような雨ということから、卯の花腐し(うのはなくたし)とも呼ぶことがある。「走り」とは「先駆け」を意味し、「走り梅雨」とは梅雨に先駆けて降り続く雨と解釈することもある。「梅雨の走り」ともいう。沖縄など南西諸島の梅雨期にあり、南西諸島付近にある梅雨前線が一時的に本州南岸沿いに北上したときに多くみられる。また、オホーツク海高気圧が5月前半に出現した場合に北東気流の影響を受けやすくなるため、関東以北の太平洋側で低温と曇雨天が長続きすることがある。その他、メイストームなど、日本海や北日本方面を通過する発達した低気圧の後面に伸びる寒冷前線が本州を通過して、太平洋側に達した後、南海上の優勢な高気圧の北側に沿って、そのまま停滞前線と化して、太平洋側、おもに東日本太平洋沿岸部でしばらくぐずつき天気が続くケースもそのたぐいである。
秋雨(秋林)
おもに8月後半頃から10月頃にかけて(地域によって時期に差がある)降り続く長雨の時期をいう。「秋霖(しゅうりん)」、「すすき梅雨」などとも呼ぶ。
さざんか梅雨(山茶花梅雨)
おもに11月下旬から12月上旬にかけての、連続した降雨を「さざんか梅雨」という。さざんかが咲くころに降るためこの名前がある。 
 
 

 


 
2020/6